衆議院

メインへスキップ



第34号 平成16年6月11日(金曜日)

会議録本文へ
平成十六年六月十一日(金曜日)

    午前十時三十分開議

 出席委員

   委員長 柳本 卓治君

   理事 塩崎 恭久君 理事 下村 博文君

   理事 森岡 正宏君 理事 与謝野 馨君

   理事 佐々木秀典君 理事 永田 寿康君

   理事 山内おさむ君 理事 漆原 良夫君

      川上 義博君    左藤  章君

      桜井 郁三君    柴山 昌彦君

      中野  清君    早川 忠孝君

      平沢 勝栄君    古屋 圭司君

      松島みどり君    森山 眞弓君

      保岡 興治君    柳澤 伯夫君

      山際大志郎君    阿久津幸彦君

      泉  房穂君    鎌田さゆり君

      河村たかし君    小宮山洋子君

      中井  洽君    本多 平直君

      松木 謙公君    松野 信夫君

      上田  勇君    富田 茂之君

    …………………………………

   法務大臣         野沢 太三君

   法務副大臣        実川 幸夫君

   法務大臣政務官      中野  清君

   最高裁判所事務総局総務局長            中山 隆夫君

   最高裁判所事務総局民事局長

   兼最高裁判所事務総局行政局長           園尾 隆司君

   最高裁判所事務総局家庭局長            山崎  恒君

   政府参考人

   (内閣官房拉致被害者・家族支援室長)       小熊  博君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    瀬川 勝久君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局参事官)            西原 政雄君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    房村 精一君

   政府参考人

   (法務省人権擁護局長)  吉戒 修一君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 加藤 治彦君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           金森 越哉君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       伍藤 忠春君

   法務委員会専門員     横田 猛雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十一日

 辞任         補欠選任

  加藤 公一君     阿久津幸彦君

  小林千代美君     松木 謙公君

同日

 辞任         補欠選任

  阿久津幸彦君     加藤 公一君

  松木 謙公君     小林千代美君

    ―――――――――――――

六月十一日

 民法の一部を改正する法律案(枝野幸男君外六名提出、衆法第四〇号)

同月四日

 治安維持法の犠牲者に対する国家賠償法の制定に関する請願(市村浩一郎君紹介)(第二七九九号)

 同(大谷信盛君紹介)(第二八〇〇号)

 同(梶原康弘君紹介)(第二八〇一号)

 同(川内博史君紹介)(第二八〇二号)

 同(城島正光君紹介)(第二八〇三号)

 同(寺田学君紹介)(第二八〇四号)

 同(土井たか子君紹介)(第二八〇五号)

 同(土肥隆一君紹介)(第二八〇六号)

 同(平岡秀夫君紹介)(第二八〇七号)

 同(前田雄吉君紹介)(第二八〇八号)

 同(松野信夫君紹介)(第二八〇九号)

 同(横路孝弘君紹介)(第二八一〇号)

 同(市村浩一郎君紹介)(第二八四〇号)

 同(大谷信盛君紹介)(第二八四一号)

 同(大畠章宏君紹介)(第二八四二号)

 同(金田誠一君紹介)(第二八四三号)

 同(菊田まきこ君紹介)(第二八四四号)

 同(土井たか子君紹介)(第二八四五号)

 同(中村哲治君紹介)(第二八四六号)

 同(西村智奈美君紹介)(第二八四七号)

 同(松野信夫君紹介)(第二八四八号)

 同(横路孝弘君紹介)(第二八四九号)

 同(伊藤忠治君紹介)(第二八七五号)

 同(池田元久君紹介)(第二八七六号)

 同(市村浩一郎君紹介)(第二八七七号)

 同(鹿野道彦君紹介)(第二八七八号)

 同(照屋寛徳君紹介)(第二八七九号)

 同(土井たか子君紹介)(第二八八〇号)

 同(稲見哲男君紹介)(第二九〇七号)

 同(小林憲司君紹介)(第二九〇八号)

 同(辻惠君紹介)(第二九〇九号)

 同(山本喜代宏君紹介)(第二九一〇号)

 同(海江田万里君紹介)(第二九三二号)

 同(小林千代美君紹介)(第二九三三号)

 同(篠原孝君紹介)(第二九三四号)

 同(土井たか子君紹介)(第二九三五号)

 同(中塚一宏君紹介)(第二九三六号)

 同(肥田美代子君紹介)(第二九三七号)

 同(藤田幸久君紹介)(第二九三八号)

 同(山本喜代宏君紹介)(第二九三九号)

 国籍選択制度と国籍留保届の廃止に関する請願(河村たかし君紹介)(第二八七三号)

 法務局・更生保護官署・入国管理官署及び少年院施設の増員に関する請願(山際大志郎君紹介)(第二八七四号)

 同(辻惠君紹介)(第二九〇六号)

 同(上田勇君紹介)(第二九三一号)

同月七日

 裁判所の人的・物的充実に関する請願(富田茂之君紹介)(第二九六四号)

 同(松野信夫君紹介)(第二九六五号)

 同(山花郁夫君紹介)(第二九六六号)

 同(上田勇君紹介)(第三〇二五号)

 同(今野東君紹介)(第三〇二六号)

 同(山内おさむ君紹介)(第三〇二七号)

 同(小宮山洋子君紹介)(第三〇六七号)

 同(辻惠君紹介)(第三〇六八号)

 同(山際大志郎君紹介)(第三〇六九号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第三一一二号)

 同(石井郁子君紹介)(第三一一三号)

 同(穀田恵二君紹介)(第三一一四号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第三一一五号)

 同(志位和夫君紹介)(第三一一六号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第三一一七号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第三一一八号)

 同(山口富男君紹介)(第三一一九号)

 同(吉井英勝君紹介)(第三一二〇号)

 法務局・更生保護官署・入国管理官署及び少年院施設の増員に関する請願(保利耕輔君紹介)(第二九六七号)

 同(山内おさむ君紹介)(第三〇一八号)

 同(小宮山洋子君紹介)(第三〇六二号)

 治安維持法の犠牲者に対する国家賠償法の制定に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二九六八号)

 同(石井一君紹介)(第二九六九号)

 同(大島敦君紹介)(第二九七〇号)

 同(玄葉光一郎君紹介)(第二九七一号)

 同(小林千代美君紹介)(第二九七二号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二九七三号)

 同(筒井信隆君紹介)(第二九七四号)

 同(土井たか子君紹介)(第二九七五号)

 同(山本喜代宏君紹介)(第二九七六号)

 同(小泉俊明君紹介)(第三〇一九号)

 同(小林千代美君紹介)(第三〇二〇号)

 同(鉢呂吉雄君紹介)(第三〇二一号)

 同(古川元久君紹介)(第三〇二二号)

 同(山内おさむ君紹介)(第三〇二三号)

 同(山本喜代宏君紹介)(第三〇二四号)

 同(近藤洋介君紹介)(第三〇六三号)

 同(鈴木康友君紹介)(第三〇六四号)

 同(谷畑孝君紹介)(第三〇六五号)

 同(長浜博行君紹介)(第三〇六六号)

 国籍選択制度と国籍留保届の廃止に関する請願(近藤昭一君紹介)(第三一一一号)

同月八日

 法務局・更生保護官署・入国管理官署及び少年院施設の増員に関する請願(小林千代美君紹介)(第三一六五号)

 同(泉房穂君紹介)(第三二三二号)

 同(鎌田さゆり君紹介)(第三二三三号)

 治安維持法の犠牲者に対する国家賠償法の制定に関する請願(原口一博君紹介)(第三一六六号)

 同(鎌田さゆり君紹介)(第三二三四号)

 同(岸本健君紹介)(第三二三五号)

 同(笠浩史君紹介)(第三二三六号)

 裁判所の人的・物的充実に関する請願(小林千代美君紹介)(第三一六七号)

 同(徳田虎雄君紹介)(第三一六八号)

 同(永田寿康君紹介)(第三一六九号)

 同(泉房穂君紹介)(第三二三七号)

 同(鎌田さゆり君紹介)(第三二三八号)

 重国籍容認に関する請願(泉房穂君紹介)(第三二二五号)

 同(小宮山洋子君紹介)(第三二二六号)

 同(楢崎欣弥君紹介)(第三二二七号)

 同(横路孝弘君紹介)(第三二二八号)

 国籍選択制度と国籍留保届の廃止に関する請願(泉房穂君紹介)(第三二二九号)

 同(小宮山洋子君紹介)(第三二三〇号)

 同(横路孝弘君紹介)(第三二三一号)

同月九日

 国籍選択制度と国籍留保届の廃止に関する請願(阿久津幸彦君紹介)(第三二八七号)

 国籍法の改正に関する請願(渡辺周君紹介)(第三二八八号)

 治安維持法の犠牲者に対する国家賠償法の制定に関する請願(阿部知子君紹介)(第三二八九号)

 同(井上和雄君紹介)(第三二九〇号)

 同(五島正規君紹介)(第三二九一号)

 同(山岡賢次君紹介)(第三二九二号)

 同(渡辺周君紹介)(第三二九三号)

 裁判所の人的・物的充実に関する請願(中村哲治君紹介)(第三二九四号)

 重国籍容認に関する請願(阿久津幸彦君紹介)(第三二九五号)

 同(池坊保子君紹介)(第三二九六号)

 同(石毛えい子君紹介)(第三二九七号)

 同(藤田一枝君紹介)(第三二九八号)

 同(増子輝彦君紹介)(第三二九九号)

 同(松野信夫君紹介)(第三三〇〇号)

 同(渡辺周君紹介)(第三三〇一号)

同月十日

 国籍選択制度と国籍留保届の廃止に関する請願(市村浩一郎君紹介)(第三四四四号)

 同(土肥隆一君紹介)(第三四四五号)

 同(肥田美代子君紹介)(第三七一〇号)

 同(鳩山由紀夫君紹介)(第三八三二号)

 裁判所の人的・物的充実に関する請願(水島広子君紹介)(第三四四六号)

 同(枝野幸男君紹介)(第三五五三号)

 同(加藤公一君紹介)(第三六四七号)

 同(小西理君紹介)(第三六四八号)

 同(石井郁子君紹介)(第三七一七号)

 同(佐々木秀典君紹介)(第三八三三号)

 重国籍容認に関する請願(大出彰君紹介)(第三四四七号)

 同(前原誠司君紹介)(第三四四八号)

 同(山内おさむ君紹介)(第三四四九号)

 同(辻惠君紹介)(第三六四九号)

 同(丸谷佳織君紹介)(第三六五〇号)

 同(鳩山由紀夫君紹介)(第三八三四号)

 民族差別強化反対に関する請願(阿部知子君紹介)(第三五五〇号)

 法務局・更生保護官署・入国管理官署及び少年院施設の増員に関する請願(枝野幸男君紹介)(第三五五一号)

 同(石井郁子君紹介)(第三七一一号)

 同(志位和夫君紹介)(第三七一二号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第三七一三号)

 同(山口富男君紹介)(第三七一四号)

 治安維持法の犠牲者に対する国家賠償法の制定に関する請願(枝野幸男君紹介)(第三五五二号)

 同(近藤昭一君紹介)(第三六四五号)

 同(山内おさむ君紹介)(第三六四六号)

 同(北川知克君紹介)(第三七一五号)

 同(古本伸一郎君紹介)(第三七一六号)

 民法を改正し、夫婦別姓も可能となるような制度導入に関する請願(石井郁子君紹介)(第三八三〇号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第三八三一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 民事関係手続の改善のための民事訴訟法等の一部を改正する法律案(内閣提出第七七号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

柳本委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、民事関係手続の改善のための民事訴訟法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房拉致被害者・家族支援室長小熊博君、警察庁警備局長瀬川勝久君、金融庁総務企画局参事官西原政雄君、法務省民事局長房村精一君、法務省人権擁護局長吉戒修一君、財務省大臣官房審議官加藤治彦君、文部科学省大臣官房審議官金森越哉君及び厚生労働省雇用均等・児童家庭局長伍藤忠春君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

柳本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

柳本委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局中山総務局長、園尾民事局長及び山崎家庭局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

柳本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

柳本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山内おさむ君。

山内委員 民主党の山内おさむでございます。

 北朝鮮による拉致被害者で、福井県小浜市の地村保志さん富貴恵さん夫妻は、六月三日、同日発売の週刊新潮六月十日号が掲載した次男清志さんの喫煙報道が事実無根であるとして、新潮社に訂正と謝罪を求めて抗議しておられます。

 問題の記事は、「十六歳「地村家次男」の「喫煙」に困惑する警察」との見出しのもとに、

 〈タバコを喫煙。注意すべきかどうか困りました〉

  地村家の地元の福井県警から警察庁に、こうした主旨の報告があがっていた。「子供たちは小浜に来てから、結構、外出しています。最初の二〜三日、清志くんは咥えタバコで歩いたり、タバコのポイ捨てもしていたといいます。火事になる心配もあるので、警察官も注意しようと思ったらしいけど、言葉も通じないので、迷ったようです」

  と、警察庁関係者。「この話が庁内の一部に伝わった時、”そういえば、平壌でも吸っていたな”と、話題になりました。五月二十二日の小泉総理の再訪朝には警察庁からも人間が随行しましたが、うちの者が平壌の空港で待機していた子供たちのうち、この地村さんの次男坊が喫煙していたのを見たんですよ」

との部分でございます。

 週刊新潮のこの記事について、地村さん夫妻は、全くの事実無根であり、子供たちは精神的ショックを受けているとして、新潮社に対して訂正と謝罪を求めたところ、同社からは、喫煙の情報があり、事実関係を調査した上で報じた、警察庁関係者からの複数の詳細な証言を得ているとして、訂正にも謝罪にも応じない旨の回答がなされているとのことであります。

 そこで、まず警察庁にお尋ねしますが、「十六歳「地村家次男」の「喫煙」に困惑する警察」の記事内容はすべて警察庁関係者の情報となっています。もしも警察庁関係者によって情報提供がなされたとすれば、これはまたゆゆしき問題でもあろうかと思いますが、記事の内容に沿って具体的に尋ねていきます。

 まず第一に、「〈タバコを喫煙。注意すべきかどうか困りました〉 地村家の地元の福井県警から警察庁に、こうした主旨の報告があがっていた。」との部分について、これが事実かどうか、伺います。

瀬川政府参考人 お答えいたします。

 福井県警察からそのような報告は警察庁にはございません。さらに、今回のあの報道を踏まえまして、その後改めて福井県警察に再度確認をいたしたところでございますが、そのような状況を見た者はいないという報告を受けております。

山内委員 第二に、「清志くんは咥えタバコで歩いたり、タバコのポイ捨てもしていたといいます。火事になる心配もあるので、警察官も注意しようと思ったらしいけど、言葉も通じないので、迷ったようです」との部分について、これは事実でしょうか。

瀬川政府参考人 先ほどお答え申し上げましたとおり、福井県警察に確認をいたしましたところ、そもそも地村保志さんの次男の方が喫煙しているものを見た者は福井県警察にはいないということでございます。

山内委員 第三に、「この話が庁内の一部に伝わった時、”そういえば、平壌でも吸っていたな”と、話題になりました。」「うちの者が平壌の空港で待機していた子供たちのうち、この地村さんの次男坊が喫煙していたのを見たんですよ」との部分について、これは事実かどうかを伺います。

瀬川政府参考人 このたびの小泉総理の北朝鮮訪問に伴い平壌に派遣をされました警察職員に確認をいたしましたが、地村さんの次男の方が平壌で喫煙をしているというものを見た者はだれもおりません。

山内委員 仮にそういう事実がないとすれば、警察庁としては新潮社に対してどのように対処をされたのか、お聞きしたいと思います。

瀬川政府参考人 お答えいたします。

 先ほど来お答えしたような状況でございますので、これは事実と異なる内容を警察関係者が語ったという記事になっております。このことは警察の信頼を著しく損ねるものであるというふうに考えますところ、六月の四日、警察庁といたしまして、週刊新潮に対して抗議を行うとともに、記事の訂正を求めたところでございます。これに対しまして、六月九日、記事の訂正については応じかねるという趣旨の回答が新潮社から参りましたところでございます。これに対しまして、警察庁といたしましては、昨日、六月十日でございますが、再度抗議を行うとともに、訂正方要求をしているところでございます。

 また、福井県警察におきましても、今回の報道が、地村さんの御家族と警察の信頼関係を損なわせるばかりでなく、国民の警察に対する信頼も損なうということにつながるものであるという認識のもと、六月四日、週刊新潮に対して、福井県警察としても抗議を行うとともに、記事の訂正を求めているところというふうに承知をしております。

山内委員 警察庁、もう結構ですから、退席してください。

 これに関連しまして、杉浦官房副長官は、六月五日、地村さん御夫妻と面談した際に、この問題について、原則として地村さんと週刊新潮の問題だが、事実と違うなら子供の将来にとって大変なことだ、政府の立場でも事実関係を調べると約束されたとのことであります。

 まず伺いますが、拉致被害者・家族支援室としては、まず、この次男坊さんの喫煙の事実を、今までの面会等々の時期を含めて、また日本に帰ってこられて、喫煙の事実を見たりあるいは聞いたりしたことがあるかどうか、そして、杉浦官房副長官の発言のように、具体的に調査が進んでいるのかどうかについて伺いたいと思います。

小熊政府参考人 お答えいたします。

 拉致被害者・家族支援室におきましては、地村保志さんから直接お話を伺っております。地村さんは、ここ一年数カ月ほどお子様たちと一緒に過ごしておりませんでしたので、お子様たちの御兄弟を含めて、平壌での生活も含めて話を聞いたようでございますけれども、喫煙の事実はないということを確認しております。

 また、拉致被害者・家族支援室の職員が帰国に際しては同行しておりますけれども、その場でもそのような事実は見ておりません。

 また、警察からも、先ほど警備局長が答弁なさったようなことを警察からも話を聞いておりまして、掲載記事が事実に反するものであるということを確認しております。

山内委員 その掲載記事が事実と違っているということならば、今後どういうような措置を家族支援室としてはとる考えでしょうか。

小熊政府参考人 私どもといたしましては、日本雑誌協会に対しまして、地村さんの抗議の意をお伝えするとともに、しかるべき対応について申し入れを行ったところでございます。

 また、被害者の方のお気持ちとしては、子供たちを一日も早く日本の社会になじませるためには、精神的不安や動揺をできる限り最小限に抑えまして、できる限り静かな落ちついた環境で生活させたいと考えております。

 そのような視点から、かねてより被害者の方から報道機関に対して、配慮の行き届いた取材、報道を要請しておりますけれども、私どももそうした意向を最大限尊重いたしまして、今回の件につきましても、引き続き、地村さんの御意向を十分にお聞きしながら必要な御支援を行ってまいりたいと考えております。

山内委員 雑誌協会あるいは新聞協会などとこれからも協議を重ねていただいて、本当に家族の皆さんがゆったりと安心して生活ができるような環境をつくっていってあげてほしいと思います。

 支援室はもう結構でございます。

 最後に、この問題について法務省にお尋ねしますが、まず、福井地方法務局小浜支局あるいは法務省の人権擁護局としては、この問題についてどう考えて、どう対処するつもりでしょうか。

吉戒政府参考人 お答え申し上げます。

 地村さんが週刊誌の記事に関して抗議文を送った旨の報道がなされたということから、先週、六月四日に、福井地方法務局の職員が地村さんにお会いいたしまして、事情をお聞きしております。その際、地村さんが、法務省の人権擁護機関に救済を求めることも検討するというふうにおっしゃったことから、六月の八日、法務省の人権擁護局の職員が地村さんにお会いいたしまして、法務省の人権擁護機関では人権侵害の被害申告を受けて調査、救済をしていること、それから、その手続の概要等につきまして具体的に説明をいたしたところでございます。

山内委員 人権擁護法あるいは人権侵害救済法という法律について、まだ審議あるいは制定の段階に至っていませんけれども、今、やはり法務局あるいは人権擁護局のところで、地村さんたちのこういう人権侵害については守ってあげる役所だと思いますので、これからも努力をしていっていただきたいと思います。

 この件、大臣、済みませんが、日本に帰ってこられた皆さんは、できるだけ静かに見守ってあげることが大切だと思っています。帰国された方々の人権と報道のあり方について、今までの議論をお聞きいただきまして御見解がありましたら、お伺いしたいと思います。

野沢国務大臣 やはり、事実に基づかない報道がなされるということはまず大変残念だと思います。そういったことのないよう、節度のある報道をまずは期待をするところでございますが、こうした問題がまた出た場合につきましても、やはり何といいましても、今委員も御指摘のとおり、御家族そして御本人たちの日本社会への適応といいますか対応ができるだけ今後とも円滑にいきますことを第一のやはり主題にしまして、必要な措置については万全を期してまいりたいと思っております。

 重ねて、報道のあり方につきましての節度ある対応を期待するところでございます。

山内委員 それでは、法案の質疑に入らせていただきます。

 私は、不動産競売の改正の問題について議論をさせていただこうと思うんですが、最低売却価額制度については一定の理解があったと思うのですが、なぜ今回改正するということになったんでしょうか。

房村政府参考人 最低売却価額制度につきましては、競売物件が不当な安い値段で売られるということを防止することによりまして、債権者あるいは所有者の権利を守る、こういう役割を果たしているわけでございます。

 今回、最低売却価額制度については見直しを行いまして、いろいろな御意見も伺いましたが、多くの意見は、そのような基本的な最低売却価額の役割というものは今後も維持すべきである、こういう御意見でございました。ただ同時に、最低売却価額が実勢価格を上回って定められている、そういうようなことから売却することができない競売物件が一定数存在する、こういう御指摘も受けたところでございます。

 競売の実績等を見ましても、売却価額を下げることによって売却が可能になっている物件がある程度ございますので、そういう指摘もそれなりに当たっている部分があるのではないか。このようなことから、最低売却価額制度についての見直しをいたしまして、売却価額の評価というものについてはある程度の幅があるということが通常でございますので、その幅の範囲内であれば評価額より多少下回った額でも売却を認めて差し支えないのではないか。また、そういうことによって、従来売れなくてもう一度売却価額を下げて売却が可能になったもの、そういう物件が一回の売却で売れるようになる、こういう効果も期待できる。こういうことから、最低売却価額を基準価額といたしまして、その基準価額の二割を下回る額まで競売の入札を可能とする、こういう改正をしたわけでございます。

山内委員 ただ、競売物件というのは、例えば、まず銀行が不良債権処理をするときには任意売却を求める。だから、任意売却で売れなかった物件が競売の不動産になっているという事情があるんじゃないかと思いますし、それから、やはり売れていない、あるいは売りにくい不動産というのは山林や田畑で、そういう実勢価格というのを把握しにくいような土地じゃないかなと思うんです。

 そもそも、自分たちが将来ずっと、子供や孫の代まで住んでいこうという物件を、言葉は悪いですけれども、きずものの不動産をわざわざ裁判所に出向いて買いに行って競落して、それで一家の財産をつくり上げていく、そういう通念がちょっとまだ足りないんじゃないかと思いますし、やはり裁判所に行くということだけでも、一般の人にとっては、暗い役所ですので、余り行きにくい。それから、競売についても、広報がまだやはり不十分で、新聞広告の一面を使った公告というのもまだ最近ですよね。それから、申し立てから売却命令まで半年とか十カ月とかかかる。

 そういうようないろいろな事情があって、競売がまだ不人気である、あるいはなじみがないということもあると思いますので、その内部的な問題点についてまず解決する努力が今まであったのかなと思うんですが、どうでしょうか。

房村政府参考人 御指摘のように、競売については、一般の市民がなかなか参加しにくい、そういうようなことから、物件も、通常の任意の売却に比べて低い価額でしか売れない、こういうような問題点が指摘をされてきたところでございます。

 ただ、最近は、裁判所におかれましても非常にそういう点については努力をしております。まず、期間的に申し上げますと、現在、平均的な競売でございますと開始決定から約十カ月程度で最後まで行っているということで、従来に比べますと相当短縮化されております。

 それから、暗くてなかなか参加しにくい、あるいは競売物件についての広報が不足しているのではないか、こういう点につきましては、ただいまの御指摘にもありましたような、新聞の一面を使いまして競売物件を公告して広く一般の方の参加を求める、こういう努力もしているところでございますし、最近は、インターネットを用いまして競売物件の情報を広く国民に知らせる、こういう努力もしているところでございます。

 そのようなことから、売却率につきましても、例えば東京地裁あるいは大阪地裁ですと九〇%あるいは八〇%近い売却率になっておりますし、売却価額も最低売却価額を数割以上上回る額で売れる物件が非常に多くなっております。それは、やはりそのような裁判所の努力によりまして、多くの方々が競売に参加をする、そういうことから、物件についても相当評価を上回る高い額で売却されている、そういうことではないかと思っております。

 ただ、同時に、御指摘のように、山林であるとか農地のように、そもそも売りにくい物件もございますし、また評価が難しいものもございます。そういう点については、評価をより適正に行うことによって、実勢価格を上回るような最低売却価額でなくする、そういう評価の適正化の努力も必要だろうと思いますが、これについても全国的に評価人の均一化を図るための努力が続けられているところでございます。

 そういった個々の競売を円滑に行う、適正に行うための努力というのは当然今後も継続していかなければならないわけでございますが、それと同時に、先ほど申し上げましたように、価格の評価というのには当然一定の幅が伴う、こういう性質に着目いたしまして、売っていい幅を広くする、そういう観点から今回の改正を考えたわけでございまして、御指摘のような、いわば内部的な手続の適正化のための努力とあわせて、これらの施策によりまして不動産競売がより適切なものとなっていくということを期待しているわけでございます。

山内委員 その迅速化ということで最高裁にお聞きしますけれども、実務上、物件明細書を作成する、評価人が評価書をつくり上げる、執行官が現況調査報告書で報告をするという、いわゆる三点セットを提出する、そのことをもっと迅速化すれば、先ほど言ったような事情も少しずつ改善されるんじゃないかと思うんですが、何かいい手を考えておられますか。

園尾最高裁判所長官代理者 現況調査報告書や評価書を作成するのには、現状では一カ月半ないし二カ月程度かかっておるというような状況にございます。これをできるだけ早くするために、これまでも努力してまいりましたし、現在も努力中であるということでございます。

 一般の不動産業者が物件を売却するために権利関係の価格の調査やあるいは占有者の調査をするというのにそれほどの時間がかからないというのに対しまして、不動産競売においてはなぜそれだけの時間がかかるのかということでございますが、その理由としましては、基本的には、一般の不動産の売却においては、物件の所有者ないし売り主は、より早く、より高く売却をしてもらいたいというために、売却のための調査に協力的であるのに対しまして、不動産競売におきましては、物件の所有者ないし債務者は、何とか売却されたくないと思っておりますために、権利関係の調査に非協力的であったり、あるいは競売を妨害する行為に及ぶということも珍しくないということが挙げられようかと思います。

 具体的に申し上げますと、現況調査に赴いた執行官に対しまして、占有者が執行妨害を目的として虚偽の内容の賃貸借契約書を提出するということもございます。したがいまして、一般の不動産売買の場合とは異なりまして、不動産競売の場合には、現場で賃貸借契約書の提出を受けた場合に、執行官はその内容が真実かどうかの裏づけの調査をするという必要がございます。そのために、占有者に複数回面接して権利関係について調査をしたり、遠方の関係者に照会書を郵送して回答を求めたりいたします。占有者が外国人で日本語を解しないという場合もございますが、その場合には通訳人を同行するというような手続もとっております。

 このような事態に直面いたしますために、一般の不動産の売却に比べまして、不動産競売においては調査に先ほど申しましたような時間がかかっておるわけでございますが、裁判所といたしましては、執行官や評価人の意見を聞いて調査のための運用基準を随時見直すというようなことをいたしまして、これらの手続がより迅速に進むように努力をしてきておるところでございますが、今後もそのような努力を続けていきたいというように考えております。

山内委員 例えば、一回目の競売に付す金額を鑑定書記載の金額にして、落ちなければ一割減で二回目を実施して、落ちなければ三回目には二割減でやるという方法もあったと思うんですよね。それから、一回目の競売のときには、まだ、例えば不動産業者がその物件についてどれだけ流通性があるのか調査できなかった、だけれども、二回目に競売が実施されたときには鑑定士さんの評価書以上の金額で札が入る、そういうチャンスも今回の改正によって何かとれなくなるんじゃないかと思うんですが、その点、どうですかね。

房村政府参考人 現在の運用でございますが、これは裁判所によっても違うようですが、一般的には、最低売却価額を定めて競売いたしまして、入札がありませんともう一度実施するわけですが、そのときには大体二割程度下げて行っているというのが実情だと伺っております。

 そういう実情からいたしますと、それは最初の評価と売れなかったという事実を加味して最低売却価額を二割程度下げている。改めて評価をしないまま下げられるということは、やはり評価にある程度の幅があるということを踏まえた上の現在の実務の運用ではないかと思っておりまして、そういうことであれば、最初から法律でその二割程度下回った額までの入札を認めるといたしましても、そう支障は生じないのではないか、こう思っているわけでございます。

 ただ、確かに、二回実施することに比べますと、一回でありますと入札希望者の数が制限されるおそれがありますので、そういう意味では、先ほどから申し上げているような新聞への公告であるとかインターネットを使って広く入札者の機会を与える、こういうことの努力をあわせ行うことによって、入札者が減ってしまって高く売れるチャンスがなくなる、そういうことは防げるのではないか。

 また逆に、二回といいますと、一回やり直しますと大体三、四カ月は延びてしまいますので、やはり全体的に手続を迅速に処理するという観点からいたしますと、二割程度下回る額までの入札を認めることによって一回で売れる物件がふえるということは、全体としては好ましいのではないか、こう思っております。

山内委員 金融庁に来てもらっていますので、あと二、三問、金融庁に聞いて終わりにしたいと思うんですが、不動産競売事件で競売になっている不動産を買って家族の生活の場にしようと考えるときに、競売で落とすときには一番抵当権を設定できないで競売代金を納めるわけですから、住宅ローンの設定の仕方というんですかね、普通は一番抵当権をつけてから、普通の取引の場合には融資を実行して住宅ローンの実行があるんですけれども、競売の場合には、そういうことが、一番抵当をまずつけてからということができないために、住宅ローンの考え方が導入できるのかなという思いがあります。

 それからもう一つは、最初に二割お金を入れてから一カ月後に全額を入れるという、何かちょっと違った融資の仕方にもなるわけですから、住宅を求めたいという人にとって、競売で住宅を求めるということは、十分に今の金融業界ではできているシステムなんですか。

西原政府参考人 お答えいたします。

 今初めて聞いた話で、質問の通告の中にちょっと今の事項は盛り込まれていなかったように思いますが、調べた上で、後ほどまた答えさせていただきたいと思います。

房村政府参考人 御指摘のように、競落をした物件についてあらかじめ抵当権が設定できないということで、ローンを利用して競売申し込みができないという指摘があったものですから、代金納付の方法を工夫いたしまして、司法書士の方を通じて代金納付をするという新しい方法をつくって、その方法による場合には抵当権設定ができる、すなわちローンを利用して競落ができるという実務上の工夫をして対応しておりますので、今後そういう方法のPRについても努めていきたい、こう思っております。

山内委員 金融庁に、では最後に。

 A、B、Cという土地がありまして、それが形も面積も全く同じ土地です。Aという土地は一千万で売買ができました。Bという土地は、競売にかかりまして、一千万の大体七掛けで評価書ができます。七百万の鑑定評価書ができて、その八割で落とすことができるわけですから、七百万掛ける八割の五百六十万円で落札することができます。そうすると、時価というのはどの金額のことを言うんですか。

西原政府参考人 今おっしゃっておられることは、七掛けにしてといいますのは、検査マニュアルにおける担保評価についての話でございましょうか。

 実は、七掛けにするしないといいますのは、不良債権といいますか、債権にどれだけ引き当てをするかの前提として、担保カバーがどれだけできているか、それで、担保カバーされていない部分についていかに引き当てをするか。こういうときに、そのカバー分を計算する際に、一つの不動産の評価には、先ほど幅があるという話がございましたが、精度にも、非常に十分な精度を持ったものとそうでないものということがあって、必ずしも十分な精度がないものについては、七掛けにすればそれはそれで認めましょうというのが実は検査マニュアルの考え方でございます。

 したがいまして、十分な精度を持った評価があれば、それは一〇〇%評価で、それを処分可能見込み額というような形で評価することが可能でございますので、必ずしも七掛けにするというようなことは必要ないかと思います。

山内委員 そうすると、Cという土地の所有者が銀行からお金を借りる際に、Aは一千万で流通した、Bは競売で五百六十万で買われた、そのときに、銀行がCの土地については五百六十万の価値でしか評価しませんよということにはならないと聞いていいんですね。

西原政府参考人 A、B、Cがありまして、Aが一千万、それでBが五百六十万で仮に売買されたということになりますと、いわゆる近傍における売買実例というような形になると思いますので、Cについては、そういったことを含めたところで新たな評価がなされるというふうに考えております。

山内委員 わかりました。

 貸し渋りというのはまだ続いているようですので、そういうふうに競売の新しい制度が導入されることによって、また何か評価を下げて、貸し出しも渋るというようなことがないようにぜひ努めていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

柳本委員長 御苦労さま。

 鎌田さゆりさん。

鎌田委員 お疲れさまでございます。民主党の鎌田さゆりです。よろしくお願いします。

 私は、きょうは、通告をし予定をしております質問は民事訴訟の手続のオンライン化についてでございますけれども、その質問に入る前に、もうここ数年というか、また最近、連日というか、テレビ、報道等を通じて多くの国民の目に触れ、耳に伝わる事案についてちょっとお伺いをしたいと思います。特に、房村民事局長にお伺いしたい件なんですけれども。

 それは、向井亜紀さんという女性が、代理母の仕組みのもとで、今は本当にお幸せに子供さんと、まただんなさんの高田さんと御家庭で暮らしていらっしゃいますけれども、この件について、今問題とされている政策的な中身についてではなくて、いわゆる役所での対応ですとか、それから個人情報を守るというところから伺っていきたいんですけれども、まず、局長、向井さんのホームページはごらんになったことはありますか。

房村政府参考人 はい。拝見いたしました。

鎌田委員 私も、きのう、おとといと拝見をし、そして、私は正直申し上げて、えっ、うそ、本当にそうなのというふうに非常に驚いて、がっかりし、残念だなという思いを持ったんですが、今一緒にどういう感想を持ったか聞けばよかったんですけれども。

 このホームページに書かれてある、日記風になっている向井さんのこの手記ですけれども、まず非常に驚いたところからですけれども、向井さん本人が、今回出生届を出したときの不受理という取り扱いについて、役所から説明を受ける前に報道に伝わって、公表されて、御自分たちが役所から知らされて知る前に、自分たちがマスコミを通して知るというこの流れが、きのう、きょうとホームページには書かれてあるわけです。向井さんのこのホームページでの主張は、「国がこういった個人情報を、本人たちに一言の断りも連絡もなく公表しても構わないということなのでしょうか。」とあるんですね。

 まず、このことについて、法務省としての言い分というか、本当なのかということ。それでもし、確かにそうだというのであれば、この件についての見解を伺いたいと思います。

房村政府参考人 その点につきましては、この事件についてどういう処理をする、あるいはどういう処理を自治体に対して指示した、こういうことについて法務省として公表したことは一切ございません。

 また、ホームページにそういう記載があるものですから担当の部局に確認をいたしましたが、担当部局におきましても、この問題について報道機関からの取材は一切受けていないと。したがって、少なくともそういうことを法務省の方で公表したり、担当部局の者が報道機関に語ったりしたことは一切ありません。

鎌田委員 そうしますと、この間の手続、届けのやりとりの中で、私も、一〇〇%、どちらかの言い分がというより、両方聞かないとと思っていますから、もしかしたら何らかの誤解があったかもしれないし。しかし、いずれにせよ、世界じゅう、どこでも、いつでも見ることができる向井さんのこのホームページを通して、向井さんはこのように感じていらっしゃるわけですね。

 ですから、そこのところは、これは向井さんだけが感じていることじゃなくて、これを通して多くの国民が、またかというような思いを抱くかもしれません。というか、抱いていると思いますので、やはりここのところは、私は、適切な対応というものが必要だと思いますし、マスコミ等へ法務省として情報は何にも公表していないというふうにここで御答弁いただきましたけれども、果たしてこのままでいいのかなという思いはございますので、それは私の意見としてお聞き届けをいただきたいと思います。

 そうすると、外に対してはそういう個人的な情報は決して出していないという民事局長の今答弁をいただきましたが、役所の対応として、法務省の担当される方がいらっしゃって、この間やりとりをしているわけですね。その中で、電話をしても取り次いでもらえない、ファクスを送っても返信が返ってこない、面談を申し込んでも、一度会ったんだから二度会う必要はない、代理人を差し向けるならその人に答えてもいいですよ、しかし、文書による説明は絶対にできませんと。こういうふうに、具体的に細かく向井さんの主張があるわけですね。

 私は、この中で、いや、一つはあったかもしれないけれども二つは違うとか、そういう問題ではなく、これが本当に、向井さんがこうやって具体に書いていらっしゃるということは、それに対してもまたお答えなさるものがあればお答えしていただきたいということと、文書による説明は絶対にできませんと突っぱねられたというふうにあるんですけれども、ここの文書というところについては、そういうふうに法務省として答えるようになっているのかどうか、あるいは文書による説明はできないものなのか、お答えいただきたいと思います。

房村政府参考人 この件につきまして、個別の問題、余り細かいことを申し上げるのはどうかと思いますが、少なくとも、御本人と弁護士の方も同道して法務省の担当者がお会いして直接お話を伺い、こちらの考え方も説明しているところでございます。

 個々のやりとりがどうであったか、私も細かく存じませんが、少なくとも、こちらの基本的な考え方は十分御説明してあるはずでございますので、それ以上に特に文書で言わなければならないようなことはないだろうと思っております。

鎌田委員 今の御答弁ですと、口頭で直接お会いしているときにちゃんと御説明をしているから文書ではと、それは必要ないということであって、別に文書で出しちゃいけないという決まりがあるというわけじゃないというふうに解しました。

 ですけれども、個別の事案について細かくということをおっしゃいましたけれども、思い出していただきたいんですが、私はこの法務委員会に、自分自身が法曹界の人間でも何でもなく、たまたま自分の知り合いで、戸籍が自分の知らない間に勝手に改ざんされてしまって、知らない人と結婚させられていて、制度上、自分の家からはもうバッテン印で消されてしまっている、そういうたった一人の若い女性の叫び、救済してほしいと。

 そして、そのお父さんが、自分の目の黒いうちに娘の戸籍をきれいにするんだという、本当にもう日本全国のうちのたったその一家庭、一人の声を持って私は法務委員会に所属を希望して、その声をここで訴えて、当時森山眞弓法務大臣が前向きに、そして局長も本当にあのとき受け入れてくださって、戸籍法などというとんでもない法律、改正なんて絶対無理だろうと、しかも自分は野党ですし、言い出しっぺが。

 ですが、しかし、時間をいただく中で御理解をいただいて、本当に改正ができて、もちろんその被害者も救われ、そしてその後、私のホームページに全国から、実は自分の戸籍がこういうことで記載に過誤があった、これも直るんですか、これも直るんですかと多くの問い合わせがあって、結局は一人のその救済が日本全国多くの人の救済につながっていったんですね。

 ですから、今、局長は個別のとおっしゃいましたけれども、同じように子供が授からなくて悩んでいる方、いろいろな仕組みを利用して何とか子供を授かりたいという方々にとっては、まして同じ日本人の、向井さん、家庭であっては、私たちは人ごとではないですし、やはり、そういう方がこういう疑問を抱いている、残念な思いを抱いているというのに対しては、これは真摯に受けとめて真摯に対応していくのが当然自然なことだと思うんですね。

 ですから、弁護士の方と、代理人の方と来て御相談に乗る、説明をするときには実際そうかもしれない。しかし、このように具体にホームページに記載があるということは、法務省の役所として、あるいはこれは法務省だけの問題じゃないかもしれません。いわゆる毎日毎日、何百件、何千件という事案を取り扱っているところにおいては、また同じようなことで問い合わせがあるとか、そうなると、つい軽んじてしまうことがあるかもしれない。

 ですけれども、私は今申し上げたような理由をもって、ぜひそういう態度は、いつも言われていることだと思いますけれども改めていただいて、そして、文書による説明は絶対にできませんと突っぱねる、局長が今おっしゃったようなことを体して現場ではそうなっているわけですね。だから、文書でぜひ説明を求めたいという声があれば、そういうものには私はぜひこたえるべきだと思うんですね。

 そんな、そんなと言うんじゃおかしいですね。丁寧にやるのは当たり前で、文書一つで、向井さん方がより正しく理解をし納得し、そしてお互いの納得が進んでいくのであるのですから、これは今後、文書による説明が求められたときにはぜひそのような対応を、私はこの法務委員会の場で求めたいというふうに思いますが、出していただけますね。

    〔委員長退席、森岡委員長代理着席〕

房村政府参考人 別にこの件を軽んじているわけではなくて、まさに担当者が法務本省において直接お目にかかって相当な時間を費やして御説明をしているわけです。ですから、それは決して軽んじているとかそういうものではない。私どもの基本的な考え方を御理解いただくために直接お目にかかって話すということが、もちろん一番理解をしていただく道だろうと思いますから、そういう方法をとったわけでございます。

 それと、具体的な問題については、これはあくまで一般論でございますけれども、法務省としてそういった代理出産について母子関係をどう考えるかということについては、法制審議会でも検討を進めてきておりました。

 代理出産というようなことについては当初の民法が想定していなかったことはそのとおりでございますけれども、基本的に母子関係は分娩の事実によって確定するんだ、こういう最高裁の考え方がございますし、法制審議会の議論の中でも、学者を中心にほとんどの方が、やはり母子関係というのは分娩の事実で決まるのではないか、仮に卵子あるいは胚の提供を受けたとしても、やはり自分の胎内で十カ月育てて出生した、分娩した、こういう事実に基づいて認定するというのが現行法の解釈だろう、こういうことがほとんどの意見でございました。

 また、今後の代理出産にどう対応するかという問題については、これは厚生労働省の方で行為規制でやっておりますので、そういう基本的な考え方に基づいて個々の事件について処理をするわけでございますので、そういうことは当然こちらから十分説明をしているわけでございます。

鎌田委員 中段のそれは、私は初めに触れないというふうに申し上げましたので、いいんです。役所の対応のことを言っているんです。

 とにかく、文書できちんと説明をいただきたいという声に、じゃ、こたえられないという局長の今の答弁になりますよ。ちゃんと口頭で説明しているんだから文書で答えられないということになります、今のは。

 では、伺いますけれども、これは六月九日ですからおとといになると思いますが、出生届不受理の経緯を聞いていないというのを局長ごらんになったかどうかわかりませんけれども、まだその不受理の経緯を聞いていないというのは、これは向井さんのホームページにあります。これは、不受理の経緯は、今後、いつ、どういう形で御説明をなさるんでしょうか。

房村政府参考人 出生届は市区町村の窓口に提出をされます。したがいまして、不受理処分をするのは市区町村ということになります。その市区町村が出生届の受理について疑問が生じた場合には、法務局にその指示を仰ぐ、相談をする。それが事案によっては法務省まで来る。それに基づいてこちら側は指示をして、具体的な処分を行うのは市区町村ということになります。

鎌田委員 その市区町村、担当の区役所は、法務局、法務省から何の説明も聞いていないので、全くわかりませんと。不受理の経緯の説明を聞けるのかどうか向井さんが区役所に問い合わせたら、法務局からも法務省からも何の説明も聞いていないので全くわからない、お話しすることは不可能ですというふうに区役所から言われているんですね。

 いや、局長の今の答弁、本当にそれは理解できます。しかし、受け付けをするのはそっちだから、そういう判断を下すのもそっちだから、それで何かあればこっちへ来るからと。

 私は、こんなに今、全国的に多くの国民が、どうなるんだろう、もしかしたら民法、今おっしゃったようなそういうところにもかかわっていって大きな変革があるのかもしれないというふうに見守っている人、そういう方々は必ず見ていますよ、向井さんのこういうホームページ。これは余りにも、よく縦割り、縦割りと言うけれども、縦割りの中で今度はまた分かれていて、法務省は、いやそれは法務局がやるんだから、いや担当の区役所、窓口だからと、そういうわけにはいかないと思うんですよ。

 ですから、局長、これだけで時間いっぱいとるのはあれなんで、ぜひ、これだけ今社会問題化しております。局長も今おっしゃったように、これから審議会等でこの問題について議論が進められていくと思います。ですから、この問題については、単に役所での、あそこがやるから、ここがやるからといった手続上の問題として片づけるのではなく、ぜひ、局長の指示、号令のもと、この分野の法務局それから役所もきちんと対応するということ、そして、今後、個人情報を勝手に国が先に漏らしたという誤解をなさっている方々が多くいらっしゃる、そういうところに対しての適切な対応というものを強く求めたいと思いますので、前向きな御答弁をお願いします。

房村政府参考人 先ほど申し上げた、例えば、実際に出生届の届け出を受けた市区町村から指示を求められた法務局あるいは法務省が不受理あるいは受理という指示をする場合には、当然その理由もあわせて連絡をしているわけでございます。ですから、自治体の方で、例えば不受理の処分をするときに、どういう理由に基づいて不受理にするのか、法務局からの指示が法律的にどういう理由で不受理なんだということがわからないということはないはずで、それは、わかるように指示をしているはずでございます。

 それともう一つ、対応については、もちろん私どもとして、今後も国民の方々の指摘には真摯に耳も傾けて誠実に対応しなければいけないだろうと思っておりますので、いろんな意味で行き違いがあったとすれば、私どもとしても、今後、そういう点も含めて反省をして、しかるべき対応をしていきたい、こう思っております。

鎌田委員 後段の方は私も素直にそのまま今の御答弁を受け取らせていただいて、真摯に、反省をしながらという言葉を局長おっしゃっていただきましたので、ぜひ対応を求めたいと思います。

 しかし、前段は、しつこい、くどいようですが、「「法務局、法務省から何の説明も聞いていないので、まったくわかりません。お話しすることは不可能です」と、言われてしまいましたが、」「出かけるだけ出かけてみましょう。」これがホームページの記載なんですね。とっても残念。いや、局長もきっと残念だと思うんですよ。指示しているはずだ、そんなふうに答えていないはずだ、ちゃんとやっているはずだ、今御答弁いただいたとおりだと思いますので。しかし、もしかしたら、局長のわからないところで。

 私は、このホームページの向井さんのずっと一連の記載というものは、非常に切々と、うそ、誇張のない形で、ぜひ自分たちが取り組んでいらっしゃるこの問題を知ってほしいという気持ちで記されていると思いますので、そこのところは、わからないはずがない、説明していないはずがないという答弁には非常に違和感を覚えますけれども、後段の方を理解するとして、ぜひそのような対応を今後求めたいと思います。

 それでは、法案についてなんですけれども、民事関係手続の改善のための民事訴訟法等の一部を改正する法律案で、インターネットオンライン化、これを利用した申し立て等のことについて伺います。

 時間が大分なくなってしまったので、ちょっと、通告をさせていただいていた内容を前半ばっと飛ばしまして、私は、率直に言って、もちろん、法曹界の人間じゃないので実務はしたことがございません。ですから、司法の現場に直面をしたとき、司法サービスを利用する市民の側からいつものように伺いたいと思うんです。

 今、訴状というものについては、これはもう、もちろん今回の制度導入でオンラインでオーケーになるようですけれども、この訴状もこれでオーケーになるわけでしょうか。その確認と、そうすると、その副本、正本以外の副本について、これはどこがどういう形で責任を持って相手方に送達をするということになるんでしょうか。確認させてください。

房村政府参考人 今回の改正が実現いたしますと、法律で書面で申し立てることになっているものがオンラインで申し立てられるようになりますので、訴状もその範囲に入ってまいります。

 ただ、この法律ができると直ちに全部の裁判所でそれができるというわけではございませんので、そこは、裁判所の方の準備に合わせて、そもそもそういう受け付ける準備がない裁判所では受け付けられませんので、そこは、裁判所規則の整備その他、手続を進めた上で、順次可能になっていくということだろうと思っておりますが、法律的には、今後は訴状についても可能になっていく。

 その場合、相手方に対する送達等をどうするかという点でございますが、これは、この法律では、オンラインで受け付けたものについては書面に打ち出す、その書面を訴訟記録につづる、あるいは送達、あるいは閲覧等もそれで行う、こういう考え方をとっております。

鎌田委員 そうすると、今の御説明ですと、やはり迅速化というよりは、便利になるかなと。正直申し上げて、私は本当に素人の立場ですけれども、今まで、司法制度改革のいろいろな法案を議論するときに、感動物がありましたり、もちろん異論があって議論したものもありますけれども、非常に大きな新しい制度変換で感動するような内容のものもあったりしたんですが、正直、今回のは感動はしないかなと。

 いや、法律に、目的のところに、迅速、充実という、百年に一度の一連の司法改革、それと同じように、迅速、充実と、同じ文句が並んでいるけれども、迅速、充実というよりは、今、IT時代に向けて、多様な、いろいろなニーズがもういっぱいある、その多様なニーズにこたえる、一つにちょっとこたえようかなと。確かに、これを専門ですごくやっている方にとっては、ああ、いいなと、喜ばしいかもしれないですけれども、余り感動物ではないかなというのが正直なところだったんですね。一緒にほほ笑んで、笑っていただくと、もしかしたら若干なりとも同感の部分はあるのかなと。

 というのは、平成十三年六月に審議会からの意見書でこれが出てきて、ちょうどこの時期というのは森さんから小泉さんにかわった直後でして、森さんのITをぶち上げたその直後だったんですよね。総務省が中心になってこれを進めていって、しかし、何だかその割には余り、ちょっと地に足がつかないところで、ふわふわしたところでIT、ITとやっていて、そして今度これなので、何か総務省からやれやれと言われてやっているのかしら、そんなうがった見方もちょっとしたりしないではないんですけれども、そんな感想を持ちながら実は法案を見た人間として、今のところをちょっと知りたかったので。

 そうすると、自分の代理人の方々、あるいは訴えを起こそうとする方にとって、裁判所がすぐ近くならば、余りこれは、今までよりちょっと一つやり方がふえたですけれども、遠いところで、例えば沖縄の方が東京で、あるいは仙台の人間が札幌でとなったりすると、やはりこれは非常に便利な制度導入なのかなということは率直に評価を申し上げたいと思うんですけれども。

 それで、私は、反対は全然ございませんし、ぜひ、これによってさらに多様なニーズにこたえていくことができる、そしてこれによって便利になる人がふえるというのであれば、応援をしたいというふうに思うんですけれども、しかし、これは、書記官の方が、あるいは裁判所でこれを受け付ける方にとって、今、ファクスで送られてくるものを常にちゃんと点検して見ていなきゃならない、それから送達されてくるものも見なきゃならない。そして、今度これになると、画面、いわゆるネットの画面の方も常に見ていなくちゃいけないというような、事務作業量が非常に今までよりもまた煩雑にふえるのじゃないか。

 そうすると、その人員の拡充、それからこのネットオンライン化を進めていくに当たってのいわゆるハード面、設備面での充実というものは、これは絶対必要なわけでして、そうなると、それらに向けての人員配置に基づく、それも含めての予算の充実ということ、これは大丈夫なんですよね。

中山最高裁判所長官代理者 法律案によりますと、オンラインによる申し立て等というものは、百三十二条の十第三項で、裁判所のサーバーのファイルに記録されたときに裁判所に到達したものとみなされる。したがって、法的効果はそこで生ずるということが考えられるわけですが、そうなりますと、二十四時間ずっと見ていなければならないというものではありませんで、朝来たときに、ああ来ているなということで打ち出す、打ち出した後は、郵送されてきた場合と同じようにその書面を相手に仕事をするということでありますから、その負担量というものはほとんど変わらないというふうに考えております。

鎌田委員 負担量は変わらないということで、そうすると、書記官の事務的なそういうお仕事をなさる方は負担量は変わらないんだから、今までのままで十分だというふうなお考えなんでしょう。そうですか。

 地方において法曹の方々から御意見を伺うと、そこのところの御懸念を抱いている方が非常に多くて、それから私、今質問させていただいたのは、人員配置を含めて、それから設備投資のところ、そこはちゃんと心配なく、予算措置というものがこれからちゃんと見通しとして立てられていらっしゃるんですねというのに対してはお答えがなかったので、ぜひそれはもう一回重ねて伺いたいと思うんです。

 あと、今御答弁いただいた中に、裁判所の方のネットに入ってきた、そこにもちろん入ってきた時点の時間、日にちが記されるわけですから、入ってきたら、今の答弁からすると、送ってよこした相手に、確かに受け取りましたよとまた返事をするんですね。それを伺います。

中山最高裁判所長官代理者 相手に、いつどこの裁判所が受け付けたということが行くようになっております。

 また、仮に、万が一サーバーがぐあいが悪くなったということで届かなかったという場合には、届いておりません、こういったものが届くようになっております。

鎌田委員 そうすると、申し立て等をした方が、ちゃんとそれが届いているということは確認、送っただけで安心じゃなくて、送ったものの返事が来て、ちゃんと安心になるということなわけですか。わかりました。

 それで、署名押印等にかわる措置として、当該署名押印等にかえなければならない措置を法律で規定されておりますけれども、これについては、最高裁の方で電子署名の方を検討されているということですが、この電子署名の証明書発行、証明書を出すところの認証機関は大分、複数あるようですけれども、最高裁の方で、こことこことか、ここにとか、もうお決めになっているやに聞いておりますけれども、一つというふうにもうお決めになったというふうに聞いておりますが、それはどちらなんでしょうか。

中山最高裁判所長官代理者 実は今、既に民事訴訟規則の三条で、ファクシミリによる提出書類というものが認められておりますが、これらについて、オンラインによる受け付けをできる、そういったシステムをつくっていこうということを考えまして、昨年の十月段階で、既に、最高裁規則制定権に基づき、電子情報処理組織を用いて取り扱う民事訴訟手続における申立て等の方式等に関する規則というものを制定いたしました。

 これはこの一月一日から施行されているわけでありますけれども、現実に、裁判所の中でそういったオンライン申し立てを受け付けるというようなことがまだ準備できておりませんので、そういうものを着々と、着実に進めてきたわけであります。この七月一日から、札幌地裁におきまして、ごくごく一部の書類でありますが、まず始めてみようということを、今、準備を進めているところでございます。

 そういったときに、記名押印にかわる措置として、今お話がありましたように電子署名ということを考えているわけでありますが、その規則を、さらに細則というものを設けましたときに、その中に、どこどこの電子署名を用いてもらいたい、こういうことを書き込んでいるわけであります。

 これはいずれ公告されるということになりますが、そこに書かれてありますのは、目下のところは、電子認証登記所の提供する商業登記に基礎を置く電子認証制度及び日本認証サービス株式会社の提供するアクレディティドサイン・パブリックサービス2の二種類の電子証明書に対応することができるということにしております。

鎌田委員 質疑時間が終了してしまいましたので、最後、答弁は必要としません、ちょっと意見というか考えだけ述べて終わりにしたいと思います。

 認定認証事業者が平成十六年六月四日現在で二十一事業者、資料としていただきました、ございますが、今のお答えですと、例えばその二つをそういうふうにもう決めていると。これから最高裁としてこの制度を導入した際には、今の二つのうち一つになるのか、あるいは、私が質問したのは、もうあらかじめ決めているんであればそれを教えてくれというふうに聞きましたので、今の御答弁では、これから先のところじゃなくて、もう既にそのサービスを行っているところという――これから先のところの二社ですか。済みません、わかりました。

 では、この二社がそうやって行っていくということなんですけれども、この制度ですと、いわゆる申請をしてから署名がおりるまで二、三週間かかる。それから、負担的にも、数万円のお金、負担が必要とされるわけですね。私は、やはりそういう負担を求めていく、それから時間的な制約もかけていくということよりは、最高裁がこの運用の責任者としてやっていくわけですから、最高裁として独自の、そういう署名、証明に当たるものを発行する。申請をしてきたら、あなたはこれでオーケーですよというようなこと。負担を強いたり、時間的な制約を相手に求めていくような、そういう現状のままで、私、このままで行くのはどうかなと。

 これから先、最高裁として検討していく中で、最高裁がみずからそういうことをやれるというようなことを検討していくべきではないかと思いまして、質問をとりにきていただいたときの打ち合わせでは、それはぜひ検討したいという考えを伺っておりますので、ぜひ今後の検討を期待して、注意深く見守っていきたいというふうに思います。

 以上です。終わります。

森岡委員長代理 御苦労さまでした。

 松野信夫君。

松野(信)委員 民主党の松野信夫です。

 私の方からも、この民事訴訟法の一部改正について、まず最初にオンラインの問題について質問をさせていただきたいと思います。

 改正法案の百三十二条の十という条文がありまして、これによりますと、民事訴訟に関する手続の申し立て、ほとんどがオンラインでできるというような規定になっております。

 そうすると、一般的に民事訴訟を考えてみますと、まず最初に訴状の申し立てをする、被告から答弁書が出てくる。途中で準備書面が出たり、あるいは証拠申し出書などが出てくる。判決が出れば、判決に対して、控訴状とかあるいは控訴理由書が出てくる。こういうのが一連の流れで出てくるわけですが、今回の法案を見ますと、どうも、最高裁判所規則で定めるところによりオンラインでできるというふうになっていて、具体的に、最高裁判所でどういうふうな規則が定められるのかというのが必ずしもまだよくわかっていないところがあるかなというふうに思います。

 法令を見ますと、さっき申し上げた、訴状から、それこそ控訴状、上告状まで、全部出せるように法令上は読めるんですが、本当にそういうようなことをお考えになっておられるのか。最高裁規則で、手始めにどういうふうなところからされようとするのか、この辺についてまず答弁を求めます。

中山最高裁判所長官代理者 私の方からお答え申し上げますが、先ほども御答弁申し上げましたとおり、七月一日から札幌地裁で、まず一部の文書で始めてみようということで、このオンライン受け付けをやるつもりでございますが、それは期日指定・変更関係のものだけから始めてみようと思っております。

 裁判所が受け付ける書面というものは、それは訴訟当事者の権利義務に非常に大きく関係してくるものでございますから、万々が一にも、システム上問題が生じて、そこにそごが生ずるということがあってはならないというふうに思っているところであります。

 現在、委員も御承知のように、裁判所ではファクシミリを認めている書面がございますが、それは、例えば、その提出により訴訟手続の開始、続行、停止または完結させる書面は除いたもの、こういうふうに規定されているわけでございまして、これは、ファクシミリによる誤送信ということもあり得るということから、いわば訴状あるいは控訴状、そういったものについては認めていないということになるわけでございます。

 訴状までいつの段階でできるかどうかというのは、今後さらにそのシステムを稼働させてみて間違いないかどうか、あるいは今現在脆弱であると言われている部分がどのように今後のIT技術の発展で克服されていくのか、さらには暗号技術とかシステムのより安定的な稼働がどのような形で実現されるのか、そういったところを見きわめた上で進めていきたいというふうに考えているところであります。

松野(信)委員 オンライン化するということで、一面では便利になるということは、これは否定できないことかと思いますが、しかし、どうも、今回の法案でいろいろ電子化、電子化ということで、これは法務委員会だけではなくほかの委員会の法案審議でもよく電子化に絡んだ法案が出てきているんです。言うならば、e―Japanの一環として法務省サイドでもいろいろ御検討された結果ではないかなというふうに思っているんですが、しかし、何でもかんでも電子化すればいいというものではないというふうに思います。

 今国会で出されました例えば不動産登記法、これも電子化する。一面では便利になるかもしれませんが、どうも、いろいろ審議を見てまいりますと、どのくらい運用の面で使われるか、具体的にどうなるかというのは、やってみないとよくわからないというのが率直なところではないかなという疑問がありますので、やはり、かなり慎重に考えなきゃいけないだろうというふうに思います。

 それともう一点。この法案、特に百三十二条の十にもありますように、「最高裁判所規則で定めるところにより、」こういう規定があるし、ほかにも、例えば裁判員法、今回最大重要の法案の裁判員法でも、やたらに政令によるというような形で委任をしてしまうというところが非常に見られるわけで、これまた、ある意味ではやってみなきゃわからないというのがどうも背景にあるんじゃないかなということで、私としては、そういう点からすると大変心配をしているところもあります。

 今御答弁いただいたように、余りリスクの少ないところから徐々に導入をしていくのが穏当なところではないかな。ですから、現在でもファクスなどでやりとりしています期日の打ち合わせの程度、あるいは審理計画、その程度、その辺のところから少しずつ進めるべきではないかなというふうに思っておりまして、例えば控訴状とかなんかでいうと、二週間以内にしなきゃならない。控訴期限を徒過したか徒過していないかというようなことで、非常にデリケートなところがあるわけです。訴状一本にしても、普通は期間制限はないのが多いわけですけれども、だけれども、行政訴訟あたりですと一定期間内にしなきゃいけないということで、そういう意味のリスクもあるだろうというふうに思います。

 それからもう一点は、いろいろな書面には、添付書類というのがよく裁判では出てくるわけですね。添付書類は、恐らくこれはそう簡単にオンラインで提出するというのは難しいだろう。いろいろな図面を訴状に添付して出す、いろいろな書面に図表あたりも出すというような形が当然考えられるわけで、そういうのはそう簡単にオンラインには乗らないんではないか。そうすると、訴状本体あるいは一定の書面本体はオンラインでぱっと提出できる、しかし、それに添付するさまざまな書面、これはオンラインに乗らないで、別に郵送で送られてくる、こういうばらばらの扱いにもなるんではないかという心配をしているんですが、この点はどうですか。

中山最高裁判所長官代理者 例えば、準備書面に添付されている図表等のうち、一般的なソフトウエアを利用して作成されているものや、あるいはスキャンをしてPDFファイルというものに変換させれば、これはインターネットに乗せることが可能である、また、そういうようなものも受け付けるようなシステムを構築しているところでございます。

松野(信)委員 スキャンを利用するというのも一つの手であるかとは思いますけれども、これも必ずしも万全ではない。きれいにスキャンできる場合もあれば、ゆがんで出てきたり、必ずしもきれいではなくて、多少ぎざぎざが出てきたりというのもあるわけです。

 例えば、先ほどお話ありましたように、準備書面とかいろいろな書証もファクスでどうぞということで、今実務的にはよくファクスが使われているんです。ただ、これも、当初は何でもファクスでどうぞというふうにやって、例えば、地図あたりとかいろいろな図面、書証の図面あたりもファクスで送っていたら、途中で裁判所の方から、そういう細かいのはファクスで送るな、そういうのはきれいにコピーをして別途提出してくださいと、逆にそういうような運用面で問題も出てくるわけで、一律にすべてオンラインでというのは現実にはなかなか難しいだろうというふうに思いますので、この辺は非常に慎重に考えてもらいたいというふうに思います。

 それからもう一つ。やはり心配な点は、特に民事訴訟というのは非常にプライバシーにかかわる、プライベートなことでありますので、やたら外に漏れるということが非常に心配なわけですね。データが漏えいしたり、あるいは、だれかが最高裁あるいはホームページあたりに侵入してそういうデータを改ざんするとか、消滅するとか、そういう点が一番心配なわけですが、その辺のセキュリティーはどのように考えておられますか。

中山最高裁判所長官代理者 データの改ざんとか、あるいは本人に成り済ましてというようなものの防止につきましては、電子署名を用いることによってこれが防止できるというふうに考えておりますし、政府は認証基盤をつくられましたので、裁判所の方でもつくりまして、そこと相互にこれを認証したというところ、そういったものを立ち上げたところでもございます。

 また、不正侵入による情報の漏えいとかあるいは消滅を防止するためには、ファイアウオールを設け、さらにはセキュリティーソフトをまた受領段階で、受け付けた段階でそれを活用するといったことによって、万全の措置を講じてまいりたいというふうに思っておるところであります。

松野(信)委員 一応、例えばいろいろな準備書面類をオンラインで裁判所に提出すると、聞くところによると、最高裁判所のホームページあたりを開いて、そこでいろいろクリックをしたりして送るようなことをお考えになっているということなんですが、そうすると、恐らく裁判所の方のサーバーにそういうデータが一たんは入るということだろうと思うんですね。そして、記録はどうするかというと、この法案を見ますと、そこからやはりプリントアウトして書面で記録は残しておくということですから、現在の記録をビニールのファイルでつくっているのと基本的に余り変わらない形になるかな。しかし、恐らく裁判所の方のサーバーには、いろいろな当事者から送られてきたデータというのがたくさん入っているはずだと思うんですね。

 そうすると、そういうものはいつまで保存をするような体制になっているのか。例えば、事件が終了するまではペーパーにも残し、サーバーの方にも記録を残しというような形になるのか。あるいは、何年間かサーバーの中には保存するというふうにお考えになっているのか。この点はどうですか。

    〔森岡委員長代理退席、委員長着席〕

中山最高裁判所長官代理者 それはまた今後検討していかなければならないところだと思っておりますけれども、現在のところ、例えば、記録でございますと、事件が確定後五年間保存するということになっています。これをこちらのインターネットの受け付けの方に置きかえておりますと、インターネットで受け付けましてその上でこれを打ち出したというところで、いわばそれが確定行為があったみたいなものでございますので、その後五年間データとしては保存していくということでやっていくことはどうかなというふうに今現在は考えているところでございます。

松野(信)委員 五年ぐらいデータとして残しておくということになると、やはり心配なのは漏えいの問題だろうというふうに思います。

 現に、新聞報道にもよりますと、最高裁の方が、裁判所の事務官の試験の合格者について、最高裁のホームページで間違って見られるような状態にしてしまった、本来ならばまだまだ発表される前の段階で最高裁のホームページに載せるというような、どうもこれはミスだというふうに言っておられるようですが、やはり、どうしてもコンピューターを扱うということになると、載せてはならないものを載せちゃったということは、現にどうも起きているようです。

 これの原因、これはどういうふうに把握をしておられますか。

中山最高裁判所長官代理者 まことに遺憾なことでございますけれども、平成十六年度裁判所職員採用1種試験及び同2種試験について、第一次試験の合格者発表を六月八日に予定し、担当者がその準備作業をしていたところ、手違いで合格者の受験番号が最高裁判所のホームページ上で一たん外部から閲覧できるような状況になったということがございました。

 ただ、これは、担当者の単純な作業ミスでありまして、ハッキングによるものやシステムの脆弱性によるものではない、まだ原稿段階としてつくっている、まだこれはホームページとリンクされていないというふうに考えて、実はリンクされている状態になってしまった、こういうことでございます。

松野(信)委員 単純な作業ミスだという御説明ですけれども、こういうデータが漏れてしまうというのは、大体どこかで何らかの単純なミスで出てしまうということも間々よくあることですね。

 ですから、今後ともコンピューターがどんどん社会に活用されていくということ自体、そういう流れでしょうから、それを簡単にとめるというのは現実には難しいところがあろうかと思いますが、肝心かなめの最高裁でこういうような問題が起こるということになると、それこそ司法に対する信頼の問題にもつながるし、そんなでは危なっかしくてこんなオンラインなんかで書面は出せないという問題にもなりかねないと思うんですね。

 現実にこれまで情報が漏えいしたというのは、例えばサラ金の会社の顧客名簿が出たとかあるいは通信販売の会社の情報が出た、そういうのが多いようですけれども、それでも重大な問題ですけれども、それにも増して、やはり、こういう裁判所というようなまさに国民から信頼をとらなきゃいけないところでミスが出たということになると、これは大変大きな問題だろうというふうに思いますので、ぜひそうならないようにこれはお願いしたいというふうに思います。

 それから、いろいろな書面の到達については、裁判所の方にファイル化された時点で到達したものとみなすというふうに規定上ではなっているんですが、ただ、心配なのは、申立人の方は送ったつもりで届いたと思っているけれども、現実には届いていなかった、あるいは何らかの機械の故障で届いていなかったというようなことでも起きると、いつまでに届かなければアウトになってしまうという手続もあるわけで、その辺の到達の確認というのは非常に重要なことだと思いますが、これはどのように手当てをしていますか。

中山最高裁判所長官代理者 オンラインによる申し立てを行いましたときには、申立人の最後の作業の場面で、いつ、どこの裁判所に、何が到達したかということを画面表示する、こういうようなことで到達の事実が確認できるようなシステムにするということで考えているところであります。

 また、仮に何らかの障害によって申し立てが到達しなかったという場合には、その旨が画面に表示されるようなシステムをまたこれも構築しているというところでございます。

松野(信)委員 時々、実際の裁判などでは、裁判官あたりから、先生がつくった最終準備書面のファイルが入ったフロッピーディスクをくださいというふうに言われることが、現実の実務ではあります。そうすると、裁判官から言われればそういうファイルを差し上げた方がいいかなということで、書面とは別にそういうフロッピーをプレゼントするというのが現実にはあります。

 直ちにこれがよくないと、どうせオンラインでしようというような時代ですから、これがよくないとはなかなか言いにくいのかもしれませんが、ただ、実務経験から見ますと、余りにそういうデータに頼るというと、確かに簡単に判決ができてしまう。原告の主張はこうだ、被告の主張はこうだ、よって、裁判所はこう判断するということで、判決は確かにスピーディーにできてしまうかもしれませんが、そうすると、判決をつくり上げることにだけ精力が注がれて、本当の本人さんたちの言いたいところを十分に酌み取って、法律的な争点、いろいろな問題点をしっかり酌み取るよりは、どうも体裁ばかり整えるのに力が注がれてしまうんじゃないかな、こういう心配があるんですが、そういうようなフロッピーをやりとりしているということについては、これはどうお考えでしょうか。

中山最高裁判所長官代理者 一部にそういうようなことが行われているというふうにも承知しております。

 しかし、今委員御指摘のような本来の事案の解明、そして解決といったところに力点を置かずに、判決作成だけに力が注がれるというようなことになってはならないのは、これはまた当然のことでありますし、また、ともすると、そういったフロッピーをもらうというようなことにより判決が長くなり過ぎるというようなこともあり得るのではないかなというふうに、それぞれ各裁判官は戒めながら、日々仕事をしているというふうに考えております。

松野(信)委員 オンラインのは、次に、管轄の合意の点について御質問したいと思います。

 管轄の合意、合意管轄についても、法案の十一条の三項で、電子化で管轄合意ができるというふうになっているんですが、どうも余りイメージとしては、具体的にどうする、どういう形で管轄合意を電子化で、それを裁判所が、なるほど、確かに原告と被告と電子化した形で管轄合意していますねとこれをしっかり確認できるのか、その辺の実際の仕組み、やり方がどうもわかりにくいんですが、この点はどのように考えておられますか。

房村政府参考人 今回、管轄の合意についても電子的なものでもよいということにいたしましたが、多分、管轄の合意だけ電子データでつくるということは余り多くはないのではないか、もとになる契約そのものが電子データの形でつくられて、その中に管轄についての合意も含まれているということが一般的ではないかと思っています。

 いずれにしても、そういう正式の電子的な記録に残す場合、後日の紛争に備えるということになれば、やはり電子署名のような形をして正確な記録にしておくということが考えられますし、そういう記録であれば、それを電子データの形で法廷に出して、その電子データを読み取った結果がこうですということを立証していくということになるのではないか。あるいは、第三者にその電子データを渡して書面化して、この電子データを書面化すればこうなるということを書証として提出するということもあるいは考えられるかもしれません。そこは、今後こういう電子データをどのような形で立証していくかということは、裁判所がそれぞれ御工夫をされていくのではないか、こう思っております。

松野(信)委員 電子化による合意管轄でこんなことがもしかしたらあり得るかなと思うのは、最近よくインターネットを通じて物の売買がなされているわけです。コンピューター上、インターネットにつなげて、それこそいろいろな物品を購入するということで、購入しますかというところに、はいにクリックをして買う、それで先に代金を払うというような形になっているわけですね。これは、現在、それ専門のサイトもできていて、非常に取引量もふえているわけです。一見便利ですけれども、トラブルもまた同様にたくさん発生をしているわけです。

 そうすると、こういうようなところで、例えば、インターネットでそれこそ物品を購入するというときに、購入しますかという方に、はいというのにクリックをする。そうすると、自動的に、そういうインターネットの売買のときには、もう約款上、合意管轄がしっかりインターネットのところに載っていて、合意管轄は東京地裁です、よその、地方の人が購入した場合も全部東京地裁ですというふうになっているということも十分考えられるので、これでも、管轄の合意が電子化で成立しているというふうにお考えなんでしょうか。

 そうすると、地方、北海道の人が購入したのも、全部東京地裁に起こされちゃうということになるんでしょうか。

房村政府参考人 インターネットでの契約の成立の問題でございますが、約款が画面上表示され、それに同意するということを送信して、それが電子的な記録として保存されるということであれば、これは、その約款の中に管轄についての合意が含まれていれば、それは、契約内容として管轄の合意がある、かつ、電子的データとしてそれが保存されているということになろうかと思います。

松野(信)委員 ただ、現実に、そういうようなので、大抵は嫌だとは言えないわけですね。どうしてもこの商品が欲しいということになると、大体普通の人は、そんな管轄合意なんというところは見ないで、購入しますという方をクリックするわけです。

 それで、その販売会社の本社の管轄ということで、例えば東京地裁にどんどん起こされるということになったら、これはたまらないだろうなということにもなって、そういう場合は、ぜひ移送の手続あたりもしてあげないと、これは大変大きな問題になるんじゃないかと思うんですが、この点はどうですか。

房村政府参考人 管轄の合意につきましては、書面で行う場合にも同様の問題が指摘されていたところでございます。

 そういうことから、御指摘のように、民事訴訟法においては、専属的合意管轄の定めがあった場合でも、「当事者及び尋問を受けるべき証人の住所、使用すべき検証物の所在地その他の事情を考慮して、訴訟の著しい遅滞を避け、又は当事者間の衡平を図るため必要があると認めるときは、」本来の「管轄裁判所に移送することができる。」こうしておりますので、これは当然のことながら、電子的な管轄の合意の場合にも適用されます。

松野(信)委員 ぜひそういう形で弾力的に運用をお願いしたいと思います。

 時間が余りありませんが、公示催告について聞いておきますが、公示催告は、今回の法案では、全体的には現代語化をして、そして時間短縮を図っている。公示催告期間が六カ月から二カ月ということで短縮しているわけですが、全体的に、そうすると、四カ月ぐらいは短縮になるということなのか。それ以外にも、こういう点の改善で、さらにスピーディーに出てくるということになるんでしょうか。

房村政府参考人 御指摘のように、有価証券の無効宣言のための公示催告の場合、従来六カ月の公示催告期間を二カ月にしておりますので、最小限四カ月は短縮できるということになります。

 そのほかに、従来除権判決が、判決手続ということで必要的に口頭弁論期日を定めまして当事者の出頭を要するということでありましたのを決定手続にいたしますので、特に催告期間中に権利の届け出がないような場合に、あえて当事者の出頭を求める必要がなくなりますので、そういった観点からも、より一層の短縮化が図られる場合がある、こう考えております。

松野(信)委員 それから、これは私がよく申し上げているんですが、公示催告については、これは新法で言うと百四十四条なんですけれども、「裁判所の掲示場に掲示し、かつ、官報に掲載する方法によってする。」こうなっているわけですね。しかし、これも前から言われていることなんですが、裁判所の掲示場に掲示したからといって、そんなの一々見る人はまずいない。それから、官報に掲載するといったって、そんな官報を一々見る人はまずいない。まさに形式的な手続だけ踏みましたよということにしかならないというのが実態ではないかな。

 むしろ、やるならば、もう裁判所の掲示場の掲示あるいは官報の掲載なんかするよりは、せっかく裁判所のホームページあたりを充実させるというようなことも言っておられるんですから、場合によっては裁判所のホームページに一定期間掲載するというような形で、それでもう事足れりというようなことの方が私はずっと合理的だろうというふうに思っておるんですが、この点はいかがでしょうか。

房村政府参考人 実は、御指摘の裁判所の掲示場への掲示につきましては、検討の過程でもほとんど見る人がいないのではないかという指摘もあったのですが、しかし同時に、現実にその掲示場の掲示を見て裁判所に出頭する例が、公示送達の場合などで、数はごく少ないわけですが現実にある、こういう指摘もありまして、そういうことであれば、やはり公示催告についても、従来の裁判所の掲示場をあえて廃止するまでのことはないのではないかということで存続をさせるということとなりました。

 また、官報でございますが、官報については、御承知のように、現在インターネット上のホームページで官報が無料で閲覧できる、過去一週間分の官報について閲覧ができるというような形で、従来に比べますと大分周知力が強まっております。

 さらに、有料のものではございますが、申し込みをしてやれば官報について過去の分をすべて検索できる、こういうシステムもサービス提供されておりますので、本当に有価証券等については官報で確認をしているという方もいらっしゃるものですから、そういう意味で、官報の周知力がこれだけ高まっているということからも、官報をやはり基本的な公告方法として維持をするということを考えたものでございます。

 裁判所のホームページの点につきましては、今後裁判所の電子化を踏まえながら、今後の検討課題ではないか、こう思っております。

松野(信)委員 一方では、裁判所の方はオンライン、オンラインということで進められるということで、それはそれでいいんですが、ただ、オンラインを進めるについては、当初申し上げたように、司法手続が必ずしもそれにすぐにはそぐわない面があるし、プライバシーの保護の点があるので、これはやはり慎重にしなきゃならない。

 他方、もっと、今申し上げた公示催告的な面、これは官報をごらんになって、それで確認している人もいるというんですが、そういう人は大抵パソコンぐらい持っていてホームページぐらい簡単にアクセスできるわけですから、何もそういうのは別にペーパーの官報によらなくても、最高裁あるいは法務省のホームページに官報のかわりを載せておけばそれで十分ではないかな、そちらの方こそむしろコンピューターを活用する方向で充実したらどうかということを申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

柳本委員長 御苦労さま。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時九分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時四分開議

柳本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。本多平直君。

本多委員 民主党の本多平直です。

 まず、委員会の再開に際し、委員長、おくれられた理由をお教えください。

柳本委員長 申しわけございません。ちょっと車が込んでしまいましたので、ちょうど七分前に出たんですけれども、申しわけございませんでした。

本多委員 ぜひそういうことのないようにお願いをいたします。

柳本委員長 初めてでございます。

本多委員 それでは、法案の質問に移らせていただきたいと思います。

 午前中に松野委員の方からも質問があって、こういう民事裁判の手続を電子化していくという方向性に関しては、できるところからきちんと進めていくという方向性については、いいことだと私も思っているんですが、ちょっと大きな話という観点から、行政手続も今一生懸命IT化、オンライン化などを進めている。そして、裁判の手続も徐々に進めているわけですが、こういうふうにオンライン化を進めていくことのプラスという面は、迅速化でありますとか、かかわる人間の簡便性でありますとかというところは理解をしております。

 しかし、例えば、松野委員の方から午前中割と細かく具体的に問い詰めさせていただいたんですが、マイナス面というのも当然あると思うんですね。そこに関して、政府としてはどう把握をされているのかをお答えください。

実川副大臣 本法案では、民事訴訟手続等におきます申し立てをインターネットで行うことを可能とするなどの措置を講じておりますけれども、このようなオンライン化を図るに当たりましては、今委員御指摘のように、他人への成り済まし、あるいはまたデータの改ざんといった事態を防止する必要があるものと考えております。

 そこで、本法律案では、インターネットによる申し立てを行う場合には、署名押印にかわる措置を講じなければならないものとしておりまして、その具体的な方法でありますけれども、最高裁判所規則で定められることになっておりますけれども、いわゆる電子署名を付さなければならないとする予定であるというふうに聞いております。これによりまして、成り済まし等を防止して、セキュリティーを確保することができるものというふうに考えております。

 また、御質問の、インターネットを利用しない方の利便性についてでございますけれども、本法案は、従来の書面による申し立てはこれまでどおりとすることができることになっております。したがって、インターネットをしない方の利便性が損なわれるということはないというふうに思っております。

本多委員 副大臣からは、私はマイナス面を伺ったんですが、それに対してどう対応するかというところまでお答えをいただきました。

 ということは、政府としては、今のところマイナス面がないというお答えかと思うんですが、しかし私は、やはり新しい技術を、どうも政府の答弁というのは、別に、完璧だと言っておく方がいいのかどうか私はわからなくて、新しいことをやっていくんだから、いろいろ問題点を発見しながら、それを順次直していくというような観点でお答えをいただければ納得がいくんですが、いかがでしょうか。

 今で大丈夫だということでいいのか。そうじゃないでしょう、新しい仕組みをやるわけですから。

野沢国務大臣 私どもは、昨今の電子技術の進歩に対しまして、新しい法律の各種体系をそういった新技術の上に乗せていくということで、最善の議論を尽くして法案をつくっておるわけでございます。

 そういうことで、今委員御指摘のとおりの問題点あるいはマイナスの面というのは、運用の過程であるいは出てくることも考えられますので、その時点でまた十分考えまして、しっかりと見直しをしていけばいいんじゃないか。だんだんよくするということが一つ前提としてあると思います。

本多委員 わかりました。大臣のような姿勢で臨んでいただければ、こういう新しい制度を導入していくときに、非常にいい考え方だと思いますので、まさにこの瞬間にも新しい技術、つまり、いい方の技術も進んでいますが、悪いことをしようという方の技術もどんどんどんどん毎日進んでいるのがインターネットの世界ですので、そこのところを大臣も認識をされて、新しい制度の運用に努力をしていただければと思います。

 もう一点、私、これはマイナス点とは言い切れないんですが、こういうことをどんどんIT化を進めるのにはやはり費用がかかると考えております。今、政府全体でも、e―Japanということで、どんどんどんどん、電子化すると言えば予算がつくというような風潮が見受けられまして、ある種の新しい公共事業として、コンピューターのハードの会社であるとかソフトの会社が大変もうかっている。そのこと自体、いい悪いは問いませんが、この今回の法律制度にもやはりある程度のコストがかかると思うんですが、最高裁さん、どのぐらいの費用が今回の新しい法案によってかかっていくのか、お答えを願います。

中山最高裁判所長官代理者 裁判所におきましては、平成十四年度から、裁判手続のオンライン化の基礎となるシステムとして、インターネット上において利用者に対する窓口を提供するシステムである汎用受付等システムと、電子署名を付した安全な通信を確保するためのシステムである認証局システムの開発を進めてまいりました。

 さらに、昨年十月二十九日に、第一審の民事訴訟手続における申し立て等のうち、民訴規則三条一項の規定によりファクシミリを送信して裁判所に提出することができるものについて、オンラインの方法でこれを提出することが可能とするために、電子情報処理組織を用いて取り扱う民事訴訟手続における申立て等の方式等に関する規則を制定したところであります。この規則に基づきまして、午前中にもお話し申し上げましたが、間もなく札幌地裁において、今委員がおっしゃったように、まず確実で、それほど問題のないところをきちんと検証しながら進めたいということで、期日指定・変更関係のことに限ってまずは出発してみたいと思っております。

 これらの汎用受付等システムと認証局システムの開発のために、既に、平成十四年度、開発費用として三億六千万円、機器整備費用として約一億三千万円、平成十五年度は、開発費用として約一億九千万円、機器整備費用として約五千万円の各予算措置を認められてきたところであります。平成十六年度におきましても、機能をさらに拡充するために、開発費用として約一億一千万円、機器整備費用として約五千万円、また研修費用、運用費用、保守費用として約三億六千万円の予算措置が認められました。

 平成十七年度以降の展開につきましては、これは国民の司法に対するアクセスを拡充するという見地から、これからの札幌地裁での運用状況等を見ながら、さらにオンラインを可能とする範囲を拡充していくことにしている予定でございますが、現段階で、平成十七年度以降の予算要求について金銭的なことを述べることは、まだ検討中でありできないということで御理解いただきたいと思います。

本多委員 これまでも大体億単位のお金をこういうオンライン化に使ってこられて、私は、ちょっと予算の仕組みがどういうことなのかまだ定かではないんですが、今後もどれぐらいかかるかは予算要求のところになってみないとわからないということですので、同じようなお金、もっと多くの予算が使われていく可能性があると思います。

 私個人なんかでもそうなんですけれども、やはり、インターネットとか、まさにそれよりもっと大きなシステムでやるわけですから、わからないので業者任せになるというようなことが今まで以上に、今までの一般的な公共事業以上に起こる蓋然性があると思います。そういったところで、最高裁さん、そういうふうにならないような工夫を何かされているんでしたら、それについてお答えをください。

中山最高裁判所長官代理者 裁判所では、システムの開発はこれ以外にもいろいろ行っておりますけれども、委員御指摘のように、開発業者任せにならないよう、別の専門業者の支援を得ながらプロジェクト管理を行うなどしてきているところでありますし、間もなくCIO補佐官というものを採用する予定にしており、これは民間からでございますが、その方たちの意見も十分聴取しながら、さらに検討を進めていきたいと考えているところであります。

本多委員 ぜひ、オンライン化に伴って予算のむだ遣いなどが発生することのないように、しっかりとした運用をしていただければと思っています。

 次に、最低売却価額制度、これを改めていくということについての質問に移らせていただきたいと思います。

 この制度があるという背景に、法務省さんから御説明をいただきましたけれども、外国にはない、競売のときにこういう執行妨害という、アンダーグラウンドな皆さんが自分たちで不当な利益を得るために執行妨害ということが日本では割と行われている、このことが最低売却価額であるとか今回の基準価額ですとか、こういう制度を設けなきゃいけない背景にあるというふうに伺いました。

 現状を、こういう執行妨害というのは外国には余りないということですので、なぜこういうことが日本では起こっているのか、どんな対策を今法務省さんとしてはされているのか、お答えをください。

実川副大臣 委員御指摘のとおり、我が国にあるような執行妨害、これは諸外国には存在していないと言われております。その理由についてでありますけれども、詳細に分析した資料はありませんけれども、あくまで推測にすぎませんが、諸外国では、執行妨害により得られる経済的な利益がそれほど大きくないために、反社会的勢力にとって執行妨害を行う経済的動機が生じにくいということがあるものというふうに言われております。

 それから、我が国においては、現行の民事執行法の施行後、執行妨害対策のために、これまでに何回か民事執行法などの改正を行ってまいりました。最近では、昨年の民法及び民事執行法の改正によりまして、執行妨害目的であります不動産を占有する者を立ち退かせるためを目的とします保全処分の発令要件を緩和したり、また執行妨害に悪用されております短期賃貸借制度を廃止するなどの執行妨害対策を講じております。

 昨年の改正法はこの四月に施行されたばかりでございますので、その改正法による執行妨害対策の効果でありますけれども、まだ判明していない状況でありますけれども、今後とも、執行妨害の動向を注視する必要があるというふうに思っております。

    〔委員長退席、下村委員長代理着席〕

本多委員 対策もとられているということを伺ったんですが、外国にないようなことが、もちろん土地というものの価値が日本は外国と違うというような背景があるにしても、やはり司法の根幹にかかわるところだと思いますので、こういうところでそういうアンダーグラウンドな勢力が不当な利益を得るようなことが起こらないように。

 そして、今回のこの改正案というのは、ある意味、執行妨害のようなことが起こるということを残念ながら前提にして、それを防ぐという改正であると思います。もちろん制度を改善していくということは当然必要なんですけれども、あわせて、執行妨害という悪の大もとをしっかり正すという方も怠らずにやっていただければと考えておりますので、どうぞよろしくお願いをいたします。

 もう一点なんですが、これはなかなか、役所の方から説明を聞いても、私としてはどうなのかな。つまり、今までやっていた最低売却価額というものではなかなか売れないケースがある、競売が成立しないケースがあって、今回、二割下げたところまで認めるという制度に改めるわけなんですが、これを運用していたのは最高裁さんということでよろしいんでしょうか。不動産鑑定士さんなんかが実務をやられていたということだと思うんですが、どうしてこういう制度を改正しなきゃいけないような運用の問題点があったんでしょうか。

園尾最高裁判所長官代理者 評価につきましては、これまで裁判所とそれから評価人との間でさまざまな研究をして、適正な評価ということについて検討を重ねたところでございます。

 この評価の適正化それから執行妨害、それと最低売却価額の関係について御説明を申し上げたいというように思います。

 最低売却価額につきましては、民事執行法が制定される前の古い手続では、売却をしても入札がないというような場合には、原則的に最低売却価額を引き下げなければならないという規定になっておりました。したがいまして、入札を妨げておくと値段が下がっていくということから、価格を下げる目的で執行妨害をするということが後を絶たないという指摘がされておりまして、民事執行法の制定によりまして、一たん定めた最低売却価額は原則として下げないんだという大きな方針を打ち立てたわけでございます。このような方針を出して、十数年間にわたって鋭意検討をしてまいりまして、これはこれで大変大きな成果を上げまして、執行妨害排除にも役立つという評価を受けてきたところでございます。

 ところが、長引く不況の中で、特に平成七、八年というようなころになりますと、不動産価格がかなり大幅に減少していくという、我が国ではかつて経験をしたことのないような事態に直面いたしまして、これによって不動産の最低売却価額を下げないということを厳格にやっていきますと物件が売れないという事態に直面いたしました。

 そこで、最高裁としましては、平成十年に最高裁規則を改正するというような方法もとりまして、そのころ以降、最低売却価額を評価人の意見を聞きながら弾力的に下げていくというような運用を始めたところでございます。その結果、売却率も平成十一年以降徐々に上昇してくるということで、不動産競売の迅速化が図られて、今日に至っておるというところでございます。

 そのような中ではございますが、余りに急激に最低売却価額を下げるというと、これは、かつて経験したような競売妨害というようなことを誘発していくということで、現在、評価人の意見も聞きながら慎重に下げていくということで、弾力的ではありながら、例えば二割前後の減少というようなところが大変多くなっておるという実情にございます。今回の法改正の検討の中でも、そのような実情を考慮した上で、より弾力的な売却手続を検討されたものだというように理解をしております。

本多委員 いろいろな努力をされているという御説明はわかりました。

 ただ、私がお聞きをしたかったのは、そもそも最低売却価額というのを決めるときの決め方というのをもうちょっと努力をすれば、このような改正を、幾ら世の中の土地の値段の状況が変わったりしても、不動産鑑定士という方は、そのことで食っている仕事なわけですね、私たち素人にやれと言っているわけではなくて、そのことのプロなんですから、そういう状況に対応してもうちょっと適切な値段をつけていたら、今回のような改正はなくても運用でしっかりやれたのではないかという私の意見を申し述べて、この問題から移らせていただきたいと思います。

 次に、この法案の改正のポイントの一つ、養育費の問題について、多分、後からの委員もやると思いますので、簡単にちょっと、私の感想めいた話なんです。

 今回新たに、養育費の取り立てということで間接強制という方法がとられるということになって、これは、養育費が払ってもらえないで困っている、一般的にはお母さんと子供さんにとっては、武器が一つふえるわけですから、非常にいいことだと思います。

 ただ、今までの直接強制がなかなか使いにくいという声がお母さんのサイドからあったということについて、どうしてなんだろうと、ふと、まだわからないところがあるので御説明いただきたいんですが、つまり、会社に直接取り立てに行くと会社をやめちゃうかもしれない、そういう実態というのは本当にあるんでしょうか、どうなんでしょうか。そこをお答えください。

中野大臣政務官 本多委員の御質問にお答えをしたいと思います。

 養育費の支払い義務につきましては、これまで、今おっしゃるとおり、債務者の給与債権を差し押さえる等の直接強制の方法しか認められていなかった、これはおっしゃるとおりでございますが、このような強制執行を行いますと、今おっしゃるとおり、債務者が勤務先にいづらくなって辞職または失職するおそれがあることから、このような方法をとり続けられない場合があると指摘されております。

 これは、実際に平成十三年の最高裁判所が行った実情調査によりましても、債権者が強制執行制度を利用しなかった理由、いろいろございましたけれども、その中には、例えば、この手続をよく知らなかったとか、また費用がかかるとか、そういうこともございますけれども、特に、相手方が職を失う心配がある、特にこれは離婚の話でございますから、いわゆる債権者が職場の事情をよく知っているという中で、そういうことを挙げた方が多くいられるわけなんです。

 このようなことから、この法律案では、直接強制のほかに、債務者が履行しなかった場合一定の制裁を持つよう裁判所が命ずるという、この間接強制の方法によることも認めることにしたわけでございまして、これによって、先ほど言いましたいわゆる差し押さえ等の直接強制をとりづらいような事例においても養育費の履行確保を図ることができるというふうに考えたわけでございます。

本多委員 当事者の方がそう言っているんですから、現場を知らない私がどうこう言うのもなんなんですが、私の個人的な意見としては、要は、会社にいづらくしてやった方がいいとまで思うんですよね、つまり、養育費を払っていないような父親は。本当にやめちゃったら困るんですが、そこのところは、私は、会社の側に問題があって、家庭でトラブルがあるからといってやめなきゃいけないような雰囲気、離婚だろうと養育費を払っていなかろうと、会社をやめなきゃいけないようなふうになるのも、またそれはある面で困るので、そこは、もうちょっと運用と、世の中のお互いの……。

 小さな会社では難しいということを実務の担当者から聞きました。でも、大企業なんかでは、もうどんどん直接強制をかけても、経理担当者がある程度把握をしたり上司がわかるだけで、会社にいづらくなるというようなことはないので、今回、新しい武器がふえましたけれども、私は、直接強制という手段でしっかりと、養育費を払うと言っていたのに払わないような、一般的には元夫のような人にしっかりと取り立てていくということもあきらめずに追求をしていただきたいと思っています。

 その観点と関連をするんですが、今回、間接強制という手段をふやしたことはいいことだと思いますが、世の中には、延滞金がつきますよ、なかなか払わないとプラスでつきますよという、ペナルティーで払わそうというものは、別に公的なものに限らずいろいろあるわけですが、果たしてこれの実効性をどのぐらいあるとお考えなんでしょうか。つまり、今まで払わない、子供を育てる、自分の子供を育てる費用を払わないような人に、多少の上乗せをするから払うというのは、どのぐらいの実効性を見込んで今度制度を導入されているんでしょうか。

中野大臣政務官 今、本多委員がいろいろおっしゃったことはわかる面が多々ございますけれども、御質問の中に、今の債務者が養育費を支払わない理由についていろいろあるわけでございますけれども、先ほど申し上げました最高裁判所の実態調査によりますと、債権者が認識している、なぜ払わないかということについては、まず相手方がお金がない、こういうことがあります。これと、お金があるけれども支払いをちゃんとしないという場合と、二つを債権者は理解している。お金がない方は、やむを得ないと言っちゃおかしいんですけれども、どうしようもないんですけれども、今回私どもが法案の間接強制、これは、債務者が資力があるにもかかわらず支払わない場合に用いる方法だということは御理解いただけると思うのでございます。

 間接強制というのは、債務者が履行しない場合に一定の制裁金を支払うよう裁判所が命ずるものでございまして、債務者にとっては、債権者に支払うべき金額が増加していくということはできる限り避けたいと考えるのが通常ではないだろうかと思うのでございます。過去の判例等でいきますと、例えば、引き渡しをしないというときに一日一万円とかというような判例もあったり、そういう意味で、債務者の方が経済的にいろいろ不利益をこうむるということは理解すると思うのでございます。

 ですから、そういう意味で、具体的ないろいろな事案におきまして、裁判所が決定として、債務者に心理的な強制が働くような適切な額の間接強制金が定まりますと、養育費の任意履行を促す効果は十分にあるんだろうと考えておるわけでございます。

 よろしくどうぞお願いします。

本多委員 ぜひそういう方向でこの新しい制度がしっかり活用されることを念願しております。

 しかし、やはりそうはいっても、払わない、払えないというケースが出てくると思うんですね。これは、事普通の借金を返さないという話とは違って、子供を育てるためのお金です。想像できると思うんですけれども、離婚をして片親で育てていくという大変さの中で、予定されていた養育費が入らないということがどういう状況を招くかというのは、まさに想像できるところだと思います。

 私は、何らかのもう一歩先を、なかなかこれは、厚生労働省さんも絡みますし、法務省さんだけでどうにかできるような話ではないと思うのですが、一歩先を見た、例えば一時期公的に立てかえるであるとか、何か新しい方法を、検討を始めていただきたいと考えているんです。

 こういう検討には、やはり法務省さんだけではお答えできないと思いますので、大臣が、内閣として検討を始めるぐらいのところは何とかお答えをいただけないでしょうか。

野沢国務大臣 子供は国の宝ということで、委員のお気持ちはよくわかるわけでございます。養育費の履行の確保を図るということは、子供の養育にとっては極めて重要なことと認識しております。

 そのためには、御指摘のように、民事手続以外の方策も考えられるところでございますが、まずは、法務省としては、昨年、将来分の養育費についての給料債権の差し押さえ等を認める措置を講じまして、さらに今回の法律案では、間接強制の方法によることも認めることとしておるわけでございます。所管する民事法の分野におきましては、考え得る限りの措置を講じてきたところでございます。

 このような措置によって、養育費に係る権利がより円滑に実施されることとなり、子供の養育に支障を生ずる事態が減少するものと考えておりますが、また内閣等における発言の機会等がございました暁には、私もそのお気持ちをしっかりとお伝えしたいと思っております。

本多委員 前向きの御答弁をありがとうございます。

 もう時間があとわずかになっているんですが、法案に関する質問は大体この辺なんですけれども、法務委員会で、私、今国会で発言する機会も多分もうそんなにないと思われるので、ちょっと裁判ということで、関連をするかどうかわかりませんが、別件で質問させていただきたいんです。

 私、ずっと、痴漢冤罪ということで困っているという方々とおつき合いをしてまいりました。もちろん、皆さんの立場からいうと、裁判はしっかりと行われている、冤罪というのも、そういうことはできるだけないようにしているというお立場はよくわかっております、当然そうだと思っています。そして、もし冤罪というようなことがあったときも、再審とかいう、さらにその制度も担保されているということはよくわかっているんですが、実は、私のような世代の普通のサラリーマンが、ある日突然犯罪者になる、そして、ましてや冤罪というものが起こりやすい、極めて満員の込んだ電車の中で、数少ない証拠のもとでということで、私はやはりここは問題が何かあり得ると思っております。

 つまり、それは、法務省さんの場合だと検察ということになるんですが、裁判の段階でもそうですし警察の段階でもそうですし、もっと言いますと鉄道会社の段階でもいろいろな問題があると思うんですけれども、こういう問題があるということを大臣にちょっと認識していただきたいと思うんですが、大臣はどういう御認識がおありでしょうか。

    〔下村委員長代理退席、委員長着席〕

野沢国務大臣 刑事裁判は、刑事事件につきまして、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにして、刑罰法令を適正かつ迅速に実現することを目的としておりまして、刑事訴訟法においても、そのための具体的な裁判手続を定めているところでございます。

 もとより有罪無罪につきましては、個々の裁判の結果によるわけですが、検察当局においては、疑わしきは被告人の利益に、この原則によりまして、検察官が公訴事実の挙証責任を負っていることを踏まえまして、御指摘の電車内での痴漢事件等につきましても、まずは捜査段階で可能な限りの証拠収集に努めまして、収集された証拠を慎重に吟味、検討して、処分を決定し、公訴を提起した事件については適正に公訴維持に努めているものと承知しております。

 なお、昨今の首都圏等における電車の混雑率は逐年改善をされておりまして、そういった面からも間接的に改善が図られていくかと期待をいたしております。

本多委員 そういうことで困っている、まさに普通の、まじめに会社にまさに満員電車の中で通っていて、そして奥さんにも大変な思いをさせ、子供さんにも大変な思いをさせて、こういう犯罪で、もちろん実際に被害に遭っている女性の方々はたくさんいるわけで、こういう犯罪自体は許すことができないんですが、間違われやすい環境の中で間違われている方がいるということは、ほぼ私はある事実だと思っていますので、ぜひそこのところはしっかりと捜査面でも判断をしていただければと思います。

 冤罪の話をしましたので、最後に一点、大臣に御確認をしたいと思います。

 会期末が迫っておりますが、私は、死刑についての議論、この法務委員会でも時々出ます。政治家によっていろいろお立場がある、特に大臣は、今の法体系のもとでの法務大臣ですから、それはその法の、刑の執行とかに関して一定の責任がおありだという立場はよくわかっていますし、意見の違いをここで論じるつもりはないんですが、執行の時期についてなんです。これがいわゆる、もちろんこれを法務省さんはお認めになったことはないですが、国会の会期が終わった後を選ぶとか、それから参議院選挙が始まって政治家がみんな忙しくて、一定数、反対派もいるわけですよね、そこにそういう批判が起きない時期を選ぶという傾向があるという指摘がされています。

 このことについてお認めにならなくていいんですけれども、私は、法体系の根幹にかかわることは、私たちが選挙をいつやるかとか、会期をいつやるかというのは、極めて政治的な駆け引きの中で決まる、政治闘争の中で決まる政治的な日程なんですよ。こんなことで、人間の一生を絶つという極めて重い刑の執行時期が左右されるというのは、全く関係があってはいけないことだと思っていますので、そこだけは大臣にお答えをいただきたい。

 こういうものと、我々が国会をいつ閉じるか、参議院選挙をいつやるかという政治日程とのかかわりなどが全くない、そういう判断をするべきだと考えますが、大臣はいかがお考えでしょうか。

野沢国務大臣 死刑執行に関しましては、個々の事案につきまして、関係記録を十分に精査し、刑の執行停止あるいは再審または非常上告の有無、恩赦を相当とする情状の有無などにつきまして慎重に検討しまして、これらの事由等がないと認めた場合に初めて執行命令を発することとしているものでございまして、特定の時期を選んでその執行をしているものではないと考えております。

本多委員 ぜひそういう立場で、それで、大臣もう政治家としての大きなまとめの時期に入られているという報道も聞いておりますので、大事な判断はしっかりと慎重になさるようにお願いをして、私の質問を終わりたいと思います。

柳本委員長 御苦労さん。

 泉房穂君。

泉(房)委員 民主党の泉房穂です。よろしくお願いします。ただいまより一時間質問させていただきます。

 きょうのテーマは養育費の確保についてであります。

 私自身、国会議員になるときにどうしてもしたい仕事が二つありまして、一つが成年後見の問題、もう一つがこの養育費の確保の問題であります。弁護士をしておりまして、一つは、成年後見であれば、高齢者や障害者で判断能力のない方、みずから判断能力のほとんどない方の場合、もちろん物も言えません、そういった方々のために何かできないかという思い。そしてもう一つは、小さな子供たちが、実際、親の事情によって離婚して、その結果、生活に困って自分の進学とかいろいろなところで不利益をこうむっている、この物言えぬ子供たちにとって何かできることがないか。この二つが、私が国会議員に立候補した最も大きな理由の二つでありました。その一つのテーマを本日させていただくことは本当にありがたいと思っております。

 法案との関係では、いわゆる民訴法改正との関係では間接強制というテーマでありますが、私の感覚といたしましては、確かに間接強制自体が一定の効果をもたらすことは期待するものでありますが、本来、養育費の確保という問題は、そこの場面よりももっと違うところに大事な問題があるのではないかというふうに感じております。

 本日、お手元の方に資料を配らせていただいております。二枚目を見ていただければいいわけですけれども、二枚目の方に、現在の養育費の取り決め状況などについての資料が配られています。

 まず、前提として、今日の離婚の割合についてでありますが、これは御存じだと思いますが、統計によりますと、昨年度一年間、平成十五年度で、婚姻届を出した方は七十四万組、そして離婚届を出した方は二十八万四千組でありまして、単純に割合を出しますと三割八分であります。冗談めかして言ってはいけないのですけれども、例えばイチローの打率のような高い打率で離婚になってしまっている。つまり、離婚というのは珍しい話ではなくて、まさに今の社会において非常に真正面からとらえなければならない問題であろう。そういった意味においてこの三割八分という離婚率については認識すべきだと思います。

 そして、その中で実際に子供さんのいる率でありますが、これの場合は六割であります。離婚される方のうち六割の御家庭で、養育を必要とするお子さんがいるわけであります。これらのお子さんは一昨年度で十七万件と聞いておりますが、実際、件数だそうですから、子供の数は二十万人を優に超える方が、毎年、親の離婚に伴って養育環境に変化を生じているという状況であります。

 こういったお子さん全員にすべからくきっちりと、本来払われるべき養育費が届けられるべきであることは当然でありますが、実際のところどの程度かといいますと、資料二に戻っていただければ結構なんですが、実際のところ、「養育費の取り決めをしている」数自体が三五・一%、三分の一であります。これを書面でしている「文書あり」の率で掛け算しますと、二割程度しか書面にて養育費の取り決めをしておりません。

 二つおりまして、「養育費の受給状況」を見ますと、現在も養育費を受けている方は二〇・八%でありますから、五分の一、十件のうち二件程度しか実際養育費を受けていない、八割が養育費の不払い状況にあるという実態が見えてまいります。

 このときに、先に指摘したいのは、何に原因があるかというと、根本的には、一枚目を見ていただいたら結構なんですけれども、諸外国の離婚制度を見ますと、協議離婚というものがあるのは実は珍しくて、日本はあります、ただ、イギリス、フランス、ドイツ、スイス、イタリア、スペイン、スウェーデン、アメリカ、オーストラリアなどでは、そもそも、公的機関の関与しないような協議離婚などはありません。いわゆるロシアや中国や韓国においても、何らかの形で公的な関与が期待されています。

 これはなぜかというと、離婚というものは親同士の問題でありますが、そこに例えばお子さんが関与した場合、親権の問題、養育費の問題、面接交渉、親と子が会う問題、また、離婚に伴う慰謝料や財産分与の問題、もろもろの法律問題がかかわるわけでありまして、これを単に当事者間のみにゆだねていっていいのかという問題意識からきていると思います。

 しかるに、日本の場合は、この協議離婚の率が全体の九割を占めています。ほとんど諸外国で見られない協議離婚が、日本の場合、九割を占めている。そのような方々はほとんど、弁護士や裁判所と全く関係ないところで離婚に至り、養育費の定めもすることなく、離婚後の生活状況になってしまっているというふうに言わざるを得ません。

 親は確かに自分の意思によって離婚するわけでありますから、そのことに伴う不利益がみずからにかかわったとしても、それはある意味、本人の意思に基づくことだと言えると思います。しかし、その結果、子供が、本来、養育費を得るものが得られていないということ自体は、やはり本当に問題だと思っております。これをどうやって改善していくかということをテーマにして、本日は、質問をしていきたいと思います。

 この際、検討の順序といたしましては、この法案の間接強制というものは、私からすると本当に、裁判所なり弁護士が関与し、かつ、その中で、債務名義といいますが、強制執行ができる状況にある方についてのお話でありますので、場面としては随分限定された、数的にも少数のものに関係するテーマだと思います。

 もっと大きく見ますと、一番重要なのは、養育費に関するような法的な知識が国民一般的には浸透していない、本当にみんなの法的知識の欠落から、養育費の支払い状況が進んでいないというふうなところの、まず法的知識の問題であります。

 第二は、実際、離婚する場合に、ちゃんと養育費を取り決めるべきだという、離婚時における取り決めの問題であります。

 そして三つ目は、取り決めただけでは、それで強制執行ができるわけではなくて、それが、公的な調停調書なり公正証書なり、何らかの公的な、裁判所なり公証役場の関与したような手続がなされないと、今回の法案の予定している間接強制にたどり着かないわけでありまして、いわゆる債務名義といいますが、そういった強制執行可能な状態にどうやって持っていくかという問題が三つ目の問題。

 そして四つ目としては、すぐに強制手段をとるのでなく、一般的には男性が多いと思いますが、女性側に親権が行き、お子さんを養育していって、男性が不払いの状況が一般的でありますから、それを前提に考えますと、その男性側にどうやって支払いをする動機づけをさせるのかということが次に来るんだと思います。

 そしてその次に、それでも払わないときに、強制手段をどう用いるのか。

 そして最後に、それでもなおかつ支払われないときに、公的な、国なり地方自治体なりが子供に対してどういった責任を負うのかというような順序で考えていくべきであって、今回の法案のしている間接強制の問題は、五番目の、本当にそこの段階の問題だと私は認識しています。

 本日は、この順番に沿いまして質問をしていきたいと思います。

 まずは、大臣に対しまして、先ほど来申し上げております現在の養育費の支払い状況等についてどのような御認識をお持ちなのか、そして、改善を要すると私は考えますが、大臣はどのようにお考えか、お答えください。

野沢国務大臣 大変包括的に養育費の問題につきましてお調べをいただいた上での御質問ということで、敬意を表する次第でございます。

 まず、養育費が子供を養育するために必要不可欠なものであることはもう間違いがございません、委員御指摘のとおりでございますが、父母間においてその支払いについて取り決めがなされまして、しかも、それが確実に履行されることが非常に大事なことと考えております。

 そこで、本法律案では、養育費の支払い義務の履行を確保するために、民事執行制度において、これまで認められていた直接強制の方法のほかに、債務者が履行しない場合には一定の制裁金を支払うよう裁判所が命じて履行を心理的に強制する、いわゆる間接強制の方法によることも認めることとしたものでございます。

泉(房)委員 再度大臣にシンプルにお答えいただきたいのは、現状の養育費の支払いが二割にとどまっている、この状況がこれでいいのか、何とかしなきゃいけないのか、そのために、すぐにとは申しませんが、何らかの検討を要するのか、この点についてのお答えをお願いします。

野沢国務大臣 これは今度の間接強制の方法等も活用しながら、やはり大事なことは、子供たちを大事に育てようという世論の喚起、国民の皆様方の、子供を大切にするという、そういった心構えをみんなで醸成をしていく一つの国民運動のような形でキャンペーンをすることが極めて大事と考えております。

泉(房)委員 引き続き質問をさせていただきますが、今も大臣おっしゃったように、本当に国民的な意識といいますか、部分が重要だとは私も思います。そのときに、大事なことは、いざ本当に離婚に至ったときに、どうのこうの、ばたばたするんでなくて、もっと前の段階から、早い段階から、もし仮に離婚になった場合、お子さんがいる場合、どういうことをきっちりしておくべきなのかということを一般的な国民の知識として持っておくような状況にすることが本当は大事なのではないかと思います。

 それは、早い段階で言えば中学生や高校生の段階から、別にこの養育費の問題に限りませんが、やはり社会人としてある程度備えておくべき法的知識をきっちりと早い段階からお伝えする。また、結婚をする際、そして出産の際のそれぞれの手続の際にも、先ほど来申しておりますが、三分の一以上の方が結婚した後に離婚するような現実を前にしたときに、離婚というものは珍しくないわけでありますから、そもそも、結婚をしたり出産したときに離婚の話をすることは確かに違和感はあるかもしれませんが、少なくても、もしもに備えて、ちゃんと知識を伝えるというような工夫はしておいてもいいのではないかと思う次第であります。

 そこで、まずお伺いしたいのが、学校教育において、法的な知識をきっちりと伝えるような努力をしてはどうかという質問であります。これは文部科学省にかかわる問題だと思います。

 私自身も、地元にいて、中学生の、例えば総合学習なりの授業に出かけていって、一時間、例えばサラ金に手を出してはいけないような話であるとか、また、離婚や相続の一般的な話であるとか、困ったときは弁護士さんとかにちゃんと相談しなさいよという話を一時間したりしています。

 そういった制度は、今、例えば現に弁護士会では弁護士派遣制度というのが行われておりますので、学校の授業の中にうまく組み込むことによって、そう何時間もする必要もなくて、一時間だけでもいいから、弁護士さんなり司法書士さんからそういった話を聞くだけでも、後日、思い出して、あ、困ったときはどうしなきゃいけないなという取っかかりになると思います。

 こういった点、文部科学省、どのような取り組みをしていかれる御予定なのか、お答えください。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 法や司法は実際の日常生活と密接にかかわっておりまして、生徒が、法や司法について理解するとともに、将来の自分の生活に生かせるようにすることは重要であると考えております。

 このため、中学校の社会科や高等学校の公民科におきましては、法の意義や、法に基づく公正な裁判の保障があること、裁判の働きなどを指導することとしておりまして、教科書では、民事裁判の手順や家族の間での争い事を扱う家庭裁判所の仕事、全国に弁護士会や公的機関による法律相談窓口があることなどについて記述しているものも見られるところでございます。

 また、高等学校の家庭科におきましては、婚姻や夫婦、親子など、家族に関する法律を取り上げ、基礎的な知識を理解させることといたしております。

 さらに、学校によりましては、先生から御紹介がございましたように、より実感を伴う理解を促すという観点から、例えば、総合的な学習の時間などを活用いたしまして、裁判の傍聴体験を行ったり、弁護士会による模擬裁判や講師派遣による指導を行っているところも見られるところでございます。

 今後とも、各学校において、法や司法に関する教育が適切に行われるように努めてまいりたいと存じます。

泉(房)委員 お答えはありましたが、まだまだ不十分だと思いますし、大事なことは、一般的な何か建前論ではなくて、本当に困ったときに何をすればいいのかということをちゃんとそれぞれの子供たちが認識することで、いざ困ったときにはどうしなきゃいけないかという立場でちゃんと知識を伝えていく必要があると思います。要するに、困るときというのはトラブルのときだから、そういうふうな観点で、伝えるような努力を引き続きお願いしたいと思います。

 続いて、厚生労働省についてであります。

 厚生労働省については、例えば、私の案としては、出産時に母子手帳を渡したり、いろいろ出産時に厚生労働省の関与する機会は多いと思います。子供が生まれたということはうれしいことではありますが、その分、親の責任というものを自覚してもらう必要もあると思います。そして、もしも離婚に至ったときにどういった対応をとるべきか。少なくても、どちらかが子供を引き取るということになる場合に、他方がその場合であってもちゃんと親の責任を自覚して養育費を払わなきゃいけないし、また養育費を払ってもらわないことを避けるためにちゃんと養育費の取り決めぐらいは離婚するときにはしなきゃいけないとか、最低限の知識を何らかそういった機会をとらえて伝えていく努力をしてもいいのかなと思います。

 具体的には、簡単なパンフレットのようなものをつくって母子手帳に挟み込むようなことでもすれば、もしものとき、数年後に母子手帳を開いて、あったなと思い出してみるということになるかもしれません。母子手帳は大抵の方は大事にとっているものですから、そういったことも例えば一つの案かと思います。

 その点、どのような工夫の余地があるのか、厚生労働省、お答えください。

伍藤政府参考人 養育費に関する広報、周知の問題でございますが、私ども、全国の自治体に母子家庭の自立支援員、こういったものを配置しておりますが、そういった方々が母子家庭の相談に応ずるような際のガイドブックとかパンフレットとか、こういったところに工夫を凝らして養育費の問題について相談に乗るとか、あるいは、ただいま全国に設置を進めております母子家庭の就業・自立支援センターというのを、これは全都道府県に設置を進めておりますが、こういったところで、専門の弁護士さんによる相談でありますとか、いろいろな形で養育費の確保のために工夫を凝らしておるつもりでございます。

 今御提案のありました、母子健康手帳を交付する際に何らかそういった養育費について周知をする方法は考えられないかということでございますが、これも一つの御提案とは思いますが、一つ、この母子健康手帳は、子供が誕生した際にあるいは誕生する前に、妊娠、出産、育児についての記録を書き込むものでございますし、ただいま次世代育成支援ということで父親の育児参加ということを私ども進めておりますが、こういう人生のスタートといいますか、子育てを共同してやっていこうという際に離婚を想定した知識の周知ということが適当かどうかということについては、いろいろのさまざまな意見があろうかと思いますので、慎重に検討すべきかなというふうな気もいたしますが、いずれにしても、いろいろな形で、この養育費の確保の問題についてはあらゆる手だてを講じて周知を図っていかなければいけない問題だというふうには考えております。

泉(房)委員 工夫としてはいろいろな工夫があると思います。ただ、大事なことは、離婚というものについて真正面からやはりとらえて、繰り返しですが、社会実態として三割八分もの離婚率があり、そのうちお子さんのいる方が六割いる、しかるに、養育費の支払いはそのうちの二割にとどまっていて八割の御家庭では養育費を受け取れない現実があるということを踏まえて、どのようにして親御さんの自覚を促し、そして親としてとるべき態度をしっかり認識させるのかという見地で工夫をしていただいたらいいと思うのであって、それはいろいろな工夫があると思いますので、御検討をお願いしたいと思います。

 そして、裁判所に対してでありますが、これは、私も弁護士で、毎日のように、一番多い事件の相談が離婚ですので、田舎の弁護士なので毎日電話で三、四件離婚の相談を受け続けているわけです。そのときに言うことはもう全く一緒で、十分、十五分同じことを言い続けているわけですけれども、養育費に関してやはり一番多い誤解というものは、親権のない方もちゃんと養育費を払わなあかん、お母ちゃんの方に子供の親権が行ってお母ちゃんの方に子供が行ってもお父ちゃんはやはりちゃんとお金を払わなあかん、子供になかなかお母ちゃんが会わさぬと言うても、たとえお母ちゃんが会わせてくれなくてもお子さんにはちゃんと養育費を払わなあかんのやとか。

 あとは、離婚のときに典型的に多いのは、離婚してくれたらもう何でもいいからと言うて、お母ちゃんが養育費はもういい、構わぬと言うて離婚するケースが多いわけです。しかしながら、法的には、仮に母親であるお母さんが養育費を要らぬと言っても子供の権利は残りますから、その場合であってももちろん養育費は請求できるわけです。

 具体的に言えば、とにかく夫の暴力に耐えかねて、離婚届だけ出してくれればいい、何も要らぬと言って本当に逃げるように離婚した御家庭の場合、いざ離婚してみたところ、お子さんを抱えて本当に生活に困っている方がたくさんおられます。そのときに、いや、自分は養育費を要らぬと言って離婚してしまったからもうだめなんだと思い込んでいる方がたくさんおられるわけです。そうではないんだよ、離婚した後子供さんの養育に困っていた場合、ちゃんとお父ちゃんに対して子供の面倒を見てくださいと請求できるんだよという知識が欠けているわけであります。そういったことをきっちりと伝えていく努力が必要なわけであります。

 ところが、例えば具体的に、いざ裁判所までたどり着いた方に対してでも、具体的には裁判所などで家事相談といってそういった相談をしておりますが、そこで伝えることの多くは、調停の仕方、こういう紙に書いてこういう戸籍謄本が要りますよとか、そういったことが多くて、本当に大事なそういったところがなかなか伝え切れていないのではないかと思うわけであります。

 具体的な提案としては、裁判所の方で最低限知っておいてもらったら望ましいようなパンフレットなどもつくって、少なくても、裁判所に離婚に関して相談に来られた方に対してはそれをお渡しして、家に帰ってちゃんと読んでくださいねというぐらいのことをすべきじゃないか。そうすることによって、冷静になったときに改めて、ああそうだそうだ、まだこんなことができるんだと思い返すということになると思うわけであります。

 そういった努力を裁判所としてはもっと工夫していくべきじゃないかと私は思うわけでありますが、裁判所のお考えをお聞かせください。

山崎最高裁判所長官代理者 離婚に当たりまして養育費の取り決めが必要となるような当事者に対しましては、おっしゃるとおり、家事相談や調停の場などにおいて、養育費の性格、仕組み、取り決めの仕方などについて正確な理解が得られるように説明を行っていると承知しております。また、その前提として、家事相談の担当者や調停委員に対しまして養育費に関する研修を実施するなどして、わかりやすく、かつ正しい説明ができるように努めているところでございます。

 委員御指摘のとおり、当事者が正しい知識を得られるようにすることは重要なことでございますので、今後とも、家事相談の担当者、調停委員に対する研修を充実させるなどして、当事者の養育費に関する理解が深められるように努力してまいりたいと考えております。

 また、既に養育費の履行確保に関するリーフレットを作成して当事者にもお配りしているところでございますが、養育費について当事者に理解していただくためにさらにどのような方法が考えられるか、引き続き検討してまいりたいと思っております。

泉(房)委員 家事相談の担当者や調停委員に対する研修が必要なのはそのとおりだと思います。ただ、そこにはおのずから限界がありまして、本当に離婚できるかどうかで相談に来られた方に対して口頭でいろいろなことを説明し尽くすことはできません。そのときの当事者の気持ちは、もう離婚できたらいいという気持ちに高ぶっている方に対して、冷静なその後の養育費のことなりいろいろなことを説明してもなかなか耳に入りません。ですから、ちゃんと冷静なときに読み返せるような何かパンフレットのようなものがあった方がいいのじゃないかと私は申し上げている次第でありますので、研修のみならず、そういった工夫もぜひともお願いしたいと思います。

 続いて、最後に法務省に対してであります。

 今回、この法案が成立をすれば、間接強制という制度ができたというような広報をなされると思いますが、繰り返し申し上げますが、間接強制というのは本当に全体の中での一部の問題でありまして、もっとトータルに養育費の確保に向けての広報が必要であろうと私は思いますので、そういった見地から、例えば法務省のホームページに養育費に関するQアンドAのコーナーをつくるであるとか、何らかそういったいろいろな工夫をしていったらどうかと思いますが、その点、いかがお考えでしょうか。お答えください。

房村政府参考人 御指摘のように、今回新たに設けます間接強制、これは、その前提として、まずは養育費の取り決めがなければなりませんし、しかもそれが執行可能な債務名義の形になっていなければなりません。したがいまして、今回の間接強制の制度をPRするに当たりましては、そのような養育費の取り決めの重要性あるいは債務名義化する方法、こういったものも含めて広報したいと思いますし、御指摘のホームページに掲載するということも含めて前向きに検討していきたい、こう思っております。

泉(房)委員 前向きな御答弁と理解しますので、よろしくお願いしたいと思います。

 続いて、二つ目の、実際の養育費の取り決めがなされていない状況をどのようにして改善するかの問題であります。今答弁にもありました、間接強制に至る前にまず取り決めがあって、その後債務名義という間接強制可能な状況に持っていって初めて今回の法案のところにたどり着きますので、その前段階の問題であります。

 この問題につきましては、日弁連の方からも提言がなされております。お配りした資料の三枚目の方に、日本弁護士連合会からの提言の紙を配らせていただいておりますが、そのうちの二番目の方に、養育費取り決め届け出制度を新設したらどうかという提言が日弁連からされておりまして、もう一枚めくった四枚目の方に、具体的な合意書のサンプルというものもつけております。こういった形で、離婚届け出に当たって養育費についての届け出もしたらどうかというのが日弁連の提言であります。

 これも一つの案だと思いますが、私自身が思うのは、それをしなくても、現行の離婚届の様式を変えることによってある程度の工夫が可能ではないかという提案を申し上げたいと思います。

 本日、お手元の方に離婚届け出用紙もお配りしております。こういったものはなかなか見ることは多くないのかもしれませんが、私などは毎日のように見ておりますので見なれておるんですが、この離婚届を見てもらったら、せっかくの機会なんでよく見ていただいたらいいんですが、離婚届を書くときに、いつも書く方から不思議がられるのは、離婚について決めることというのは、これも当然御存じかと思いますが、離婚するかしないかで離婚すると決まった後に決めなあかんのは、子供がいる場合、親権がどっちかという問題、それから養育費をどうするかという問題、面接交渉といって、一緒に暮らしていない親と子供がどのようにして会うのかというその問題、そして、お金については、あと慰謝料の問題と財産分与、この五つが基本的なポイントになるわけであります。

 そういったことを一生懸命話し合って決めて、いざ離婚届を書く段になって、実際書く欄を見ますと、住所や本籍や名前はいいとしても、あと親権を書く欄が(5)の方にありますが、あとの(6)、(7)、(8)、(9)、(10)については、「同居の期間」とか、「別居する前の住所」とか、「別居する前の世帯のおもな仕事と夫妻の職業」とかいう欄がありまして、一体何でこんなもの書かなあかんのかとみんなに聞かれます。私は、こんなの書かぬでいいんですよと言って、大抵書くなと言うてますが、書くなというのは、書いてもいいけれども、そのときの精神状態からいったら、本当に思い切って離婚に至った中での精神状態からして、何でこんなことを書くのかという気持ちの方が一般やと思うんです。

 これは、確かにある意味調査の関係上だと思いますが、それは、わざわざこういった形でしなくてももっと違う形でやったらどうか、非常に配慮に欠けているというふうに私は思いますし、そのこと以上に思うのは、親権を書く欄はありますが、養育費や面接交渉や慰謝料や財産分与を書く欄はありません。これは、確かに戸籍実務においては特に必要がないのかもしれませんけれども、当事者にとっては最も大きな問題であります。

 こういった欄がない結果どういうことになっているかというと、離婚届を見ながら離婚するかどうか悩んでいるような方々を想像したときに、大抵じいっと離婚届を見ながら考えたりするわけです。この欄に沿って頭をめぐらせたりするわけであります。この欄に、もしも養育費や面接交渉や慰謝料や財産分与の欄があれば、そのことも考えなきゃいけないなというふうに思うわけであります。その欄を絶対的に書かなあかんとなると、プライバシーの問題が生じるでしょう。しかしながら、もし書かれるんだったら書いたらどうぞというぐらいであれば、別にプライバシーの問題は生じないと思います。

 そして、具体的には、そういった欄を、書けるような欄をつくった上で、その上で、例えば、離婚届け出用紙を一枚じゃなくてカーボンコピーで三枚つづりにしておいて、一枚は役所に提出し、その写しの部分を二枚、夫と妻が持つようにすれば、それ自体が、ある意味養育費の取り決めを含めた離婚合意書の役割を果たす。とすると、離婚の際に養育費を取り決める率もふえるでしょうし、また、それが書面化されていれば、その後、その書面をもっていわゆる債務名義をとって、今回法案の予定しているような間接強制につなげていくということにもつながると思うわけです。

 これは、別に法律を変える必要がなくて、離婚届の様式変更で対応できるのではないかと私は思うので、例えば一つの案ですけれども、そういった工夫の余地があるのではないかと私は思う次第であります。この点、どのようにお考えなのか、法務省、お答えください。

房村政府参考人 離婚届に養育費の支払いあるいは面接交渉、こういうようなものを書く欄を設けたらどうかという御提案でございますが、確かに、離婚届用紙にそういった欄がありますと、離婚の際にそういった事項を決めるべきだという、そういう注意を喚起する、そういう役割を果たせるのではないか、これはそうは思っております。

 ただ、しかし同時に、これは事柄が極めてプライバシーに触れる事柄でございまして、しかも、現行の戸籍の実務からいたしましても、戸籍の届け出用紙には、基本的に、戸籍に記載する事項あるいは届け出の適否を判断するに必要な事項を記載していただくということが原則でございます。それを超えて、今言ったようなプライバシーにわたる事項を仮に任意記載欄として設けるとしても、やはり、様式に印刷されていますと、そういう事柄をなぜ書かなければいけないのか、こういう疑問を持たれるおそれが当然あるわけでございます。

 記載をすれば、当然それは市町村の担当者の目に触れるということにもなりますので、そういう点については、これは相当慎重に考えなければいけないのではないか。本当に、そういったものを設けて、ある意味では人に知られたくないような事柄を書くということを事実上勧める形になりかねないものですから、そこは相当慎重な検討が必要ではないか、こう思っております。

 なお、離婚届の同居の期間とか別居する前の住所等、直接戸籍に記載せず、また申請の適否を判断するに必要でない事項についても欄が設けられておりますが、これは、この注意書きのところにもありますように、人口動態調査、統計法に基づく指定統計、こういう形で、統計法での協力を求められてそれを実施している。そのことを御理解いただけるように、今ここにもそういう記載をしているわけでございますが、そういった特に法的根拠があって記載をお願いしている事項でございますので、いわゆる完全な任意記載事項とは性質が異なりますので、御指摘のような事柄を完全な任意記載事項とするにしても、用紙に設けるかどうかは、これは相当慎重な検討が必要ではないか、こう思っております。

泉(房)委員 そう前向きな答弁を期待していたわけじゃないですが、いきなりは難しいと思うんですけれども、繰り返しですけれども、何度も申し上げますが、実際だれが困るかといったら子供が困るわけであります。子供が困らないようにどういう工夫をするかであります。

 プライバシーの問題があるのは、私は何度も申し上げているけれども、当たり前であります。ただ、離婚届を出すこと自体に、ある意味離婚という事実を開示しているわけでありまして、あと、どのような工夫があるかであります。

 今のお答えに対して、私は知恵として思うのは、例えば、だったらこの紙を、具体的に言いますけれども、三枚つづりにして、一枚目と二枚目と三枚目のうち、三枚目だけ今申し上げた任意的な記載事項の養育費やそういった取り決めの部分だけない欄をつくって、その三枚目を役所に提出する。そうすると、役所には現行と同じものを提出することになります。

 しかしながら、一枚目、二枚目には、まさに協議離婚合意書のようなものができ上がるわけであります。そういったいろいろな工夫があるわけでありまして、シンプルにプライバシーという一言をもってできないと言うのではなくて、プライバシーを配慮しながらどのような知恵が出せるのかといった方向で前向きな検討をお願いしたいと思います。

 きょうやりとりをしたところで、なかなかすぐに答えは難しいので、検討をお願いしたいということにとどめまして、もう一つ、今までは運用面の問題でありました。しかしながら、根本的には法整備が必要でないかとは思うわけであります。

 同じ話になりますが、一ページ目を見まして、協議離婚が九割もある国というのは日本唯一であります。その結果、繰り返しですが、離婚という状況のもとに、養育費の取り決めがなされず子供たちが泣いておるという現状があるわけでありますから、そこをどのように改善するかというと、それは本来法整備が必要であって、具体的には、例えば、せめてお子さんのいるような方の離婚については、調停という裁判所の手続を挟んでからするように法改正をするであるとか、例えば、公証役場というところがあって、そこに行って離婚協議書をつくる。そうすることによって、養育費の取り決めがなされ、しかも、債務名義までできますので、そういった工夫をするとか、何らかの法的な手当てが要るのではないかと思うわけであります。

 それをして、では、実質的に何か不利益があるかというと、そんなことはないわけであります。諸外国の場合、最近は日本も離婚率が高まりましたが、諸外国の方は、過去は随分離婚率は高くありました。それでも、ほかの国を見ると、みんな裁判所を関与させたりして手続をさせているわけであります。

 日本でできないことはないと思いますし、実際上、協議離婚という形で当事者で合意していても、例えば私などは必ず、もう離婚しようと思いますという方が来られたら、だったら、何とかお二人で裁判所に行って、調停という形で一回だけでいいので、そこで調停調書というものをつくっておきなさい、そうすることによって後々トラブルがなくて済みますよとアドバイスをしたり、また、裁判所というものが嫌いだったら、裁判所じゃなくて公証役場というのもあるから、つくった紙を公証役場に持っていってそれを正式な書類にしてもらいなさいというふうにアドバイスします。そうすることによって、いわゆる債務名義が得られて、もし不払いのときに、今回法案を予定しているような手続ができるというふうにつながるわけであります。

 そういったことを実務的にも私はしているつもりですけれども、それをもう少し法整備の形でできないかという提案でありますが、この点、すぐに前向きな答えは難しいかもしれませんけれども、そういった必要性の認識について尋ねたいと思います。

房村政府参考人 御指摘のように、離婚に際しましては、子供の養育費あるいは面接交渉、財産分与、こういったものについて取り決めをすることが望ましいわけでございますし、かつ、その内容を調書あるいは公正証書のような形にして明確にし、かつ、必要に応じて執行できるということが最も望ましい形だろうとは思っています。そういう意味で、当事者の方が裁判所に赴かれまして、調停を成立させて調停調書を作成するということは非常にいいことだろうと思っています。

 ただ、逆に、そうしないと離婚ができないということにすることがいいかどうかというのはなかなか、離婚の自由との関係がございますし、また、先ほど先生が御指摘になりましたように、非常に暴力に耐えかねて一刻も早く離婚をしたい、そういうときに、例えば養育費の取り決めをしないと離婚ができない、そういう状況になりますと、離婚をしたいばかりに、養育費について譲って離婚を成立させるということも心配になるわけでございます。

 現行の扱いでは、確かに養育費等の取り決めなしに離婚できますが、離婚した後、養育費の支払いを求めて審判を起こして、裁判所の判断によって、相手方の同意がなくても負担をしてもらうということは十分可能になっているわけでございます。これは財産分与についてもそうですし、面接交渉についてもそうです。そういったものをすべて当事者の話し合いの離婚の席で決めなければならないといたしますと、離婚を望む方が不当に譲歩を強いられるというおそれが十分あるわけでございます。

 したがいまして、法的にどういう形でそれを決めていくかということは、そういった点も含めて相当慎重な検討が必要ではないか、こう思っております。

泉(房)委員 答弁としては最初に慎重な検討というのがあって、その理由づけを言ってはるのかなと思うんですけれども、問題が違うと思うんですよ。

 暴力に耐えかねて離婚する方についての問題は、そういった方が暴力から逃れるような工夫をどうしていくかの問題であって、それを、養育費を決めることがまずければ養育費を後から決められるという形で、公的な部分でフォローしてあげればいいんであって、その部分については、今の理由として何か手続できないといえば、では諸外国はどうしているのかと見たときに、諸外国は皆、公的関与をしながらしているわけです。

 公的関与の仕方の問題ですから、私が提案しているのは公的な関与をしたらどうですかということであって、その関与の仕方について、養育費をその場で決めないけないのか、後で決めてもいいのか、いろいろな工夫があると思いますから、そのあたりで工夫をお願いしたいという趣旨でありますので、慎重な検討とおっしゃっていますが、検討はお願いしたいと思います。

 それから次に、実際上、取り決めがあっても、強制執行するには債務名義という強制執行可能な状態に持っていかなきゃなりません。この際に、実際かかわっていて一つ問題だなと思うのは、わざわざ調停までしている方が調停離婚をする際に、調停離婚が嫌だと言われる方が間々おられます。どうしてだめなんですかと聞くと、調停離婚してしまうと戸籍謄本に調停離婚という字が載ってしまう、すると、その戸籍を見た方が、ああ、この人、調停離婚というて裁判所まで行って離婚したんやなと思われてしまう、それが嫌だという方であります。

 私自身は、調停離婚であろうが協議離婚であろうが、そのことを気にすること自体が問題だと思いますが、実際に、そういったことを気になさって、調停離婚と書かれないために、調停をしておきながら協議離婚という形で、債務名義を得ない形で離婚してしまう方が何人もおられます。

 私としては、そうであれば、戸籍謄本の記載から、調停離婚とかそういった協議離婚という字じゃなくて、離婚だけにすればどうかと思うわけであります。死亡については死亡だけです。どんな死亡か書くわけではありません。婚姻についても、どういった婚姻かというような事情を書くわけではありません。離婚については幾つかの種別があるので、それについては確かに種別があることは認めますが、戸籍謄本に書く必要性があるかというたら、私はないと思います。

 現実に、調停離婚、協議離婚が戸籍に記載されるがゆえに債務名義をとることをちゅうちょされる方がいるという現実を見たときに、その部分について記載の仕方を変えるというような工夫があってもいいのかなと思うわけでありますが、この点、どのようなお考えか、お答えください。

房村政府参考人 協議離婚の場合には、離婚届を届け出たその届け出によって離婚が成立いたします。それに対しまして、調停離婚の場合には、調停が成立した時点で離婚の効力が生じております。その調停離婚で生じたことを報告的に戸籍に記載をしてもらう。したがいまして、いつ離婚がその効力を生じたかということは、届け出によるいわゆる協議離婚と調停離婚とではそれぞれ違ってくるわけです。

 ですから、そういった性質の差がありますので、戸籍面上、それを同一の扱いで記載をするというのは難しいだろうと思っております。

泉(房)委員 今の答弁はおかしいです。

 いつ離婚したかということがわかればいいんであって、協議離婚の場合は届け出のときに離婚です、調停離婚や審判離婚は裁判所で決まったときが離婚であってということはそのとおりです。であれば、その日にちをちゃんと書けるようにすればいいんであって、戸籍にわざわざ調停や協議という字を入れる必要はないと思います。それは違った形でそこの確認をすればいいのであって、必ずしも戸籍に書く必要があると私は思いません。その点、どのようにお考えですか。

房村政府参考人 まさに、戸籍面の記載によって、いつ離婚の効果が生じたかがわかるように、協議離婚の届け出であれば、いつ届け出があったということを記載して協議離婚と書くわけでございますし、調停離婚については、その調停の成立の月日を書いて調停離婚成立ということになるわけでございます。したがいまして、それは当然、調停で生じた離婚の効果と、離婚届の届け出によって生じた離婚の発生日というのは同じようには書けないわけでございますので、それは、記載の仕方としては、どうしてもそういう区別が出てくるということになろうかと思います。

泉(房)委員 日にちがわかればいいんであって、記載方法は別に離婚二文字でいいじゃないですか。そういう問題なんであって、お役所的に、何か違うから違うことを何でも書いておこうということじゃなくて、そこを書くことによって困っている方がいるんだったら最低限必要なところだけにして、あとの部分は違う形で確認するような工夫をしたらどうですかという提案なので、きょう、これ以上聞いても前向きな答えはきついのかもしれませんが、よろしく検討ください。

 続いて、実際上の、取り決めがあって、にかかわらず払わない場合の問題であります。

 これも繰り返しですが、北風と太陽の話ではありませんけれども、北風びゅうびゅう吹かせたからといって、では効果があるかというと、必ずしもそうではありません。むしろ、払う気持ちになるような工夫も大事だと思います。

 具体的に場面を考えますと、多くの場合、一般的に男性が多いわけですが、どうして不払いをするかというと、お金がなくて払わない方もいます。しかしながら、お金のない方についても、払う気持ちがあれば何らかの、生活の節約をするとか、今の時代であれば、それ自体は望ましくはありませんけれども、親族なり、何らかの借り入れを含めて、少なくとも子供にはふびんな思いをさせないということで、自分自身がしんどくても頑張るというような動機さえあれば、するわけであります。

 また、多くの場合、不払いの理由は、経済的理由のみならず、親権が妻の方にあるんだったらそっちで面倒見ろとかいうような発想であります。親権争いをして、子供はうちの方が親権だと妻と夫が争ったときに、妻側がどうしても子供をそばに置きたいと思ったときに、夫が言うせりふとしては、そこまで言って親権とるんだったら自分で生活面倒見いよというせりふを言うのが非常に多いわけであります。

 また、面接交渉の問題で、お母さんの手元に子供さんがいるときに、お母さんも、離婚したわけですから、そうそうしょっちゅう離婚した夫の顔を見たいわけじゃない、そういった事情もあって子供になかなか会わせない。すると、離婚した夫の方は、子供の顔も見られないんだったら養育費払わないと言って払わない、こういうのが一番典型的であります。

 であれば、例えば工夫としては、面接交渉については、離婚時に、養育費の取り決めと一緒に、ちゃんと面接交渉についても月に二回、三回会うとか、そのうち一回は泊まりにするとか、そういったこともちゃんと工夫する、そこを決める。そのことによって、お母さんの方にも、意地張らぬと、お父ちゃんとお母ちゃんの問題は子供に影響しないようにした方がいいでしょうという説得のもとに、お子さんとお父さんが会う機会をつくる。そのことによって、お父さんも払う気になるといった効果がもたらされると思います。

 また、親権の問題についても、私も実務をやっていて思うのは、本当にみんな親権が大事、大事と思い込んでいるんですけれども、実際上、離婚してどっち側に親権が行ったとしても、その親権を実際上行使する場面というのはほとんど、本当に限られた場面にすぎません。にもかかわらず、親権を持った方が何か物すごい権利を持ち、物すごく大事であるかのような思い込みを皆さんなさっていると思うわけでありますが、私などは、こういったケースの場合、お父ちゃんがどうしても親権が欲しいというんだったらお父さんの方に親権を渡す、そのかわり、監護権といって実際養育するのはお母さんの側にする。そういう形によって、お父さんに対して、あなた、どうしても親権が欲しいといって親権をとった以上はちゃんと養育費を払ってくださいよという中で、養育費の金額も気持ちふやすような工夫をしながら、できるだけ子供さんに手厚いような工夫ができないかというようなことをやっております。

 ただ、法的には親権と監護権の分離というのは、建前としては望ましくないというような答えが返ってくるのかもしれませんが、私が言いたいのは、お父さんの側に養育費を払おうというような動機づけをさせるような実務上の運用の工夫とか、そういったことができないかという問題であります。この点、何らかの工夫の余地がないのか、裁判所の方、何か知恵があればお答えください。

山崎最高裁判所長官代理者 一般的に養育費につきましては長期間にわたる履行確保が必要であるということでございますので、委員御指摘の観点というのはまことに重要なものと考えております。

 したがいまして、養育費を取り決める調停の場におきましては、子の成長のために養育費の支払いが重要であるということを十分理解してもらうとともに、扶養義務者側の権利にも配慮するなど、今御指摘がございましたように、親権者、監護者の指定の関係、あるいは面接交渉の関係等に関する当事者双方の考え、言い分、要望などを具体的に聞きながら、子の福祉にかない、かつ双方が納得できるような解決を導くよう、個別具体的なケースにおいて努力しているところだろうと承知しております。

泉(房)委員 今個別具体的とおっしゃいましたが、事案は個別ですけれども、裁判所として、何らかそこら辺、知恵を絞って、こういった方法がありますよというような方向づけぐらいはされたらどうかと私は思います。

 そしてもう一点、これは財務金融の関係ですが、税法上、例えば、これは日弁連も提言していますが、養育費を払った場合に所得税の所得控除の一項目として養育費控除を設けるといった、そういった工夫をすることによって養育費支払いの動機づけに持っていくというような工夫の余地、このあたり、日弁連の提言もあります、どのようにお考えか、お答えください。

加藤政府参考人 お答えいたします。

 現行の所得税法の体系では、親子の関係で子供を扶養するという場合、これは結婚をしているかしていないかとかそういうことでなくて、あくまでも親が子を扶養するという状況に着目して、生計を一にしている場合には扶養控除を適用するというシステムをとっております。これは、生計を一にするというのは、一緒に生活するとか居住をともにするということではなくて、生計費が負担されているということで結構でございまして、離婚した方が、自分が扶養親族にその人を入れて実際に生活費等々を養育費の形で送金をするという場合は、扶養控除の対象になるということでございます。

泉(房)委員 続いて、実際に払わないときに、今度は厳しい手段の方であります。これは、繰り返しですが、今回の間接強制もあるわけであります。この点は同僚議員が多く質問しましたのできょう私は質問いたしませんが、諸外国を見ますと、養育費を払わないときに罰則を設けている国もあるようであります。

 ただ、私個人は、厳しくすることによって払わすようなことじゃなくて、親子の問題ですから、お父さんが子供に養育費を払いたいと思って払い、ちゃんと子供と月に何度か顔を合わせて、良好な親子関係が保てるような工夫の中で養育費の支払いを確保するようなことが本来望ましいのであって、払わぬかったら制裁金を課すような発想自体は、一つの知恵かもしれませんけれども、私個人は余り望むものではありません。むしろ、養育費をきっちり取り決めて、そして離婚した後も良好な親子関係が続くような工夫を公的にどのようにサポートしていくかという視点こそが私は大事だと思っております。

 しかしながら、実際上、いろいろ工夫をしても、払わない方は払いません。その結果、子供さんが実際その後生活していって進学したりしたいと思っても、なかなか進学の選択肢も狭まってしまうという現状があろうかと思います。そういったときに、公がどのように何らかの知恵を絞るかという問題であります。

 一つには、児童扶養手当というのがあります。これもお手元の資料の五枚目、六枚目の方につづらせていただいておりますが、現在も児童扶養手当はもちろんあります。しかしながら、児童扶養手当につきましては、十四年の八月から、養育費を受け取っている場合、その八割が所得制限の考慮の要素に組み込まれてしまいましたので、実際上どういったことが起こっているかといいますと、これまでは、お父さんから養育費を受け取り、かつ児童扶養手当も受け取れていた方が、その運用の変化に伴いまして、実際上、養育費をもらっているんだから児童扶養手当はもっと少なくていいでしょうというふうになってしまっています。

 これは、お国の財政の厳しい折、また離婚の数がふえ児童扶養手当をもらう方の数がふえている中、財政的な問題もあったのかもしれませんが、ただ、私が思うのは、例えば今回の国会でも児童手当につきましては六歳から九歳に拡充がなされ、小学校一年生、二年生、三年生のお子さんについても児童手当を渡すというような法律改正がなされております。その財源につきましては、年間二千億円がさらに加わっているわけであります。

 一方でそういったことをしておきながら、それ以上に苦しい生活環境にある母子家庭、まあ母子家庭が多いですが、この母子家庭の方々のお子さんに対して財源を理由に切り詰めていくということは、むしろ本当に困っている方に対して手厚くすべきじゃないかと私は思うので、整合性がどうかなと疑問に思う次第であります。このあたり、どのようにお考えなのか、お答えください。

伍藤政府参考人 児童扶養手当と児童手当についてのお尋ねでございますが、御質問のありました所得制限に養育費を算入する、この趣旨につきましては、やはり児童扶養手当というのが、一般に、我が国において所得水準が低い状態に置かれております母子家庭に対して生活の安定を図る観点から福祉的な措置として講じられておる制度でございますので、まず民法の大原則である扶養義務を履行する、こういう原則との調和を図るという観点から、所得制限を算定する際に養育費を算入する、こういう措置を講じておるものでございますので、これはやむを得ないことかなというふうに思っております。

 もう一つの御質問であります児童手当の拡充をするということとの関連でございますが、児童扶養手当は、今申しましたように、母子家庭の置かれておる生活実態に着目して給付する福祉的な制度である、それから児童手当も、社会保障制度の一つではございますが、広く子育てを推進していくという観点から、これは諸外国もそうでありますが、諸外国の場合にはこれは所得制限なしにやっておるところがほとんどでありますが、我が国の場合には、従来から児童手当も一定の所得制限をかけて実施をしておりますが、これは、児童の健全育成を図るという観点から、子供が生まれれば一律に給付をする、そういう観点から給付をされておるものでございまして、おのずから趣旨が違うということしか申し上げられませんが、いずれにしても、それぞれの制度の趣旨に沿って拡充を図ってきておるというところが実情でございます。

泉(房)委員 お答えとしては今言われたような理由づけになるのかもしれませんが、ただ、現実は、これまでは養育費をもらえて、かつ児童扶養手当も満額もらえた方が、もらう金額は減っているという事実は事実であります。また、実際上、母子家庭という、より厳しい生活環境にある方について、より厳しい措置になってしまっているということも事実でありますので、そのあたり、私としては納得のいかない次第であります。

 また、今回の部分についてもう一つ納得いかないのが、資料の六枚目を見ていただいたらいいわけですが、今回、養育費をもらっている方はこういった書式で申告してくださいという運用がなされております。しかしながら、本当にもらっているかどうかはだれにもわかりません。

 実際にこの紙を書く方がどういう発想になるかと思いますと、お父さんと離婚をして、小さな子供を抱えて生活に困っているお母さんがこの紙を見ながらどう思うか。本当はお父ちゃんから養育費をもらっているけれども、そのことを書いてしまって出したら、その結果、実際に児童扶養手当が減ってしまう。しかしながら、子供の生活が困っている。せめて、たくさんもらいたいと思ったら、この紙を出さずにおこうと思うのが人間の気持ちであります。

 この申告によって、まさに正直者がよりもらう額が減る、そういったことはやはりおかしいと私は思っております。この点、どのようにお考えか、お答えください。

伍藤政府参考人 所得に算入する際の手続でございますが、あくまで現在の社会の実態に対応するという観点から本人の申告によっておるわけでありますし、これしか方法がとり得ないということで本人の申告によるということでございます。

 これをきちんと履行するためにどういう手段があるかということでございますが、法制度の中に、虚偽の申請をした場合とか不正な手段で受給した場合の手当の停止の措置とか、あるいは手当の返還の措置、こういった制度を盛り込んでおりまして、心理的なそういった強制を図りつつ実効を確保する、こういうことでございますが、確かに、正直に申告をする者とそうでない者との差があるではないかということについてはそのとおりかと思いますが、現実の問題の処理の仕方としては、今のところこういう方法しかないということで、こういったことをできるだけきちんとやっていくように現場の行政機関を督励していきたいというふうに考えております。

泉(房)委員 この問題は、要するに養育費について公的関与が薄いことによる問題だと思います。

 諸外国を見ますと、立てかえ払い制度などのある国もあります。養育費を払わないときは、一たん国が立てかえて払って、そのお金を当の払うべき、まあお父さんが多いでしょうが、その方から償還するといった制度が、実際上、例えばスウェーデンなどでもあります。

 そういった制度を用いることによって、この不公平は解消されるわけでありまして、今のように公的関与の薄い中、正直者のみがもらう額が減ってしまう、しかも多くの子供たちが養育費をもらえないまま放置されているという状況を見たときに、やはり、立てかえ払い制度も含めて公的関与をより深めていくといった方向での検討が必要かと思いますが、この点、どのようにお考えでしょうか。

伍藤政府参考人 これは先ほど来いろいろ議論をされておりますように、立てかえ払い制度そのものをどうするかという前提として、我が国の離婚制度がどういう形でなされておるかということと密接に関連をする問題でございますから、離婚手続の中で何らかの形で養育費がきちんと取り決められる、そういう環境整備といいますか、そういう基盤が整備されて初めてこういう立てかえ払いとか公的関与という仕組みが成り立つんじゃないかと思いますので、私どもとしては、現在の仕組みを前提として、できるだけこの養育費の支払いが確保されるように、こういった認識を深めて、あるいは広報、周知を徹底するということにまずは全力を挙げていきたいというふうに考えております。

泉(房)委員 資料の最後の七枚目でありますが、確かに私自身も、児童扶養手当を単に金額をふやせとか、そういった意味で全く考えてはおりません。もっと違った工夫が要るのではないかという視点であります。

 この最後の七枚目の方を見まして、「養育費の確保」という欄も真ん中辺にありまして、そこには「専門相談の実施」とか「養育費の手引きの作成」なども書かれておりますが、実際のところ、専門相談の実施といってもどの程度なされているのか、また、手引といっても、聞くところによりますと、八千部つくって、それを関係機関に渡している程度だと聞きます。これではなかなか心もとないのでありまして、なお一層の工夫の必要があると思いますので、この点は指摘させていただきます。

 そして、本日最後に法務大臣にお答えいただきたいのは、きょうは、私、養育費の問題をトータルに御質問させていただきました。すぐに解決ができる問題じゃないのかもしれませんが、繰り返しですが、二割の子供しか養育費をもらっていない、八割の子供たちは養育費をもらえていない現状を、何らかの関係機関の工夫と努力によって改善を図るべきだろうと私は強く思う次第でありまして、また引き続きこの問題を取り上げていきたいと思っておる次第でありますが、大臣としてどのような決意なのか、どういった方向を望んでおるのか、お答えいただきたいと思います。

野沢国務大臣 これまで委員の御指摘をお伺いいたしまして、養育費の支払いの確保ということが子供の養育のために大変重要であることを再認識いたしておるところでございます。

 法務省といたしましては、所管する民事法の分野で、昨年は将来分の養育費についての給料債権の差し押さえ等を認める措置を講じ、今回の法律案では、さらに、間接強制の方法によることも認めることとしたものでございます。

 このような措置によりまして、養育費に係る権利がより円滑に実施、実現されることとなりまして、子供の養育に支障を生ずる事態が減少するものと期待をいたしておるわけでございますが、これで十分と考えるかどうかということに関しては、まだまだこれは課題が残っておると私は思っておりまして、子供たちが健全に育ってまいりますようさらなる努力を官民挙げて努めていかなければならないことを認識しておる次第でございます。

 引き続き、委員の御熱心な御活動に大いに期待をいたしております。

泉(房)委員 ありがとうございました。

 引き続き、また質問していきたいと思います。どうもありがとうございました。

柳本委員長 御苦労さまでございます。

 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

 次回は、来る十五日火曜日午前九時四十五分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時三十六分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.