衆議院

メインへスキップ



第4号 平成16年11月5日(金曜日)

会議録本文へ
平成十六年十一月五日(金曜日)

    午前九時二分開議

 出席委員

   委員長 塩崎 恭久君 

   理事 園田 博之君 理事 田村 憲久君

   理事 西田  猛君 理事 平沢 勝栄君

   理事 津川 祥吾君 理事 伴野  豊君

   理事 山内おさむ君 理事 漆原 良夫君

      井上 信治君    宇野  治君

      大前 繁雄君    上川 陽子君

      左藤  章君    笹川  堯君

      柴山 昌彦君    谷  公一君

      早川 忠孝君    松島みどり君

      三原 朝彦君    水野 賢一君

      森山 眞弓君    保岡 興治君

      柳澤 伯夫君    柳本 卓治君

      加藤 公一君    鎌田さゆり君

      河村たかし君    小林千代美君

      佐々木秀典君    高井 美穂君

      樽井 良和君    辻   惠君

      松野 信夫君    松本 大輔君

      江田 康幸君    富田 茂之君

    …………………………………

   法務大臣         南野知惠子君

   法務副大臣        滝   実君

   法務大臣政務官      富田 茂之君

   政府参考人

   (司法制度改革推進本部事務局長)         山崎  潮君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          寺田 逸郎君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    大林  宏君

   参考人

   (明治大学法科大学院教授)            青山 善充君

   参考人

   (日本弁護士連合会副会長)            松尾 良風君

   参考人

   (埼玉大学経済学部非常勤講師)          原  早苗君

   法務委員会専門員     小菅 修一君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月五日

 辞任         補欠選任

  井上 信治君     宇野  治君

  左藤  章君     上川 陽子君

  仙谷 由人君     高井 美穂君

同日

 辞任         補欠選任

  宇野  治君     井上 信治君

  上川 陽子君     左藤  章君

  高井 美穂君     仙谷 由人君

    ―――――――――――――

十一月四日

 国籍選択制度と国籍留保届の廃止に関する請願(中井洽君紹介)(第二号)

 国籍法の改正に関する請願(岩國哲人君紹介)(第三号)

 同(都築譲君紹介)(第四号)

 同(松野信夫君紹介)(第五号)

 同(五十嵐文彦君紹介)(第三一号)

 同(稲見哲男君紹介)(第三七号)

 同(高木美智代君紹介)(第三八号)

 同(丸谷佳織君紹介)(第八七号)

 同(玄葉光一郎君紹介)(第九六号)

 同(藤田一枝君紹介)(第九七号)

 同(水島広子君紹介)(第九八号)

 同(石毛えい子君紹介)(第一四五号)

 敗訴者負担制度を導入しないことに関する請願(泉房穂君紹介)(第三二号)

 同(樽井良和君紹介)(第三三号)

 同外一件(辻惠君紹介)(第三九号)

 同(石井郁子君紹介)(第四三号)

 同(鎌田さゆり君紹介)(第九九号)

 弁護士報酬の敗訴者負担制度を導入しないことに関する請願(泉房穂君紹介)(第三四号)

 同(津川祥吾君紹介)(第三五号)

 同(松野信夫君紹介)(第三六号)

 同(照屋寛徳君紹介)(第四〇号)

 同外一件(小林千代美君紹介)(第四四号)

 同(永田寿康君紹介)(第四五号)

 同(松本大輔君紹介)(第八八号)

 同(小宮山洋子君紹介)(第九三号)

 民法改正による夫婦別姓も可能な制度の導入に関する請願(松島みどり君紹介)(第九二号)

は本委員会に付託された。

十一月四日

 国籍法の改正に関する請願(第四号)は「都築譲君紹介」を「伴野豊君紹介」に訂正された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律案(内閣提出第六号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

塩崎委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、明治大学法科大学院教授青山善充君、日本弁護士連合会副会長松尾良風君、埼玉大学経済学部非常勤講師原早苗君、以上三名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に委員会を代表して一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中にもかかわりませず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただくようにお願い申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、青山参考人、松尾参考人、原参考人の順に、それぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。

 それでは、まず青山参考人にお願いいたします。

青山参考人 ただいま御紹介いただきました明治大学法科大学院の青山善充です。

 本日は、当委員会におきまして、目下御審議中の裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律案につきまして、意見を申し述べる機会を与えられましたことを大変光栄に存じております。

 私は、過去四十年近く東京大学法学部において民事訴訟法や裁判法を中心とする民事司法法の研究教育に携わり、現在は、本年四月から新発足いたしました明治大学の法科大学院、いわゆるロースクールでありますが、これにおきまして民事訴訟法の教鞭をとっております。また、日本における行政型ADR機関の一つであります国土交通省の船員中央労働委員会の公益委員並びに現在会長を務めさせていただいております。本法案との関係では、司法制度改革推進本部のADR検討会の座長として、約三年間、本法案の制度設計に関与してまいりました。

 本日は、そのような立場から、ADR検討会での議論も交えてお話しさせていただきます。

 時間の関係もございますので、早速本題に入りますが、本日の私の意見陳述は四点、第一にADRに関する法律を制定することの意義いかん、第二に本法案の特徴、第三に本法案の評価、第四にADRの今後の課題の四点にわたって意見を申し述べます。

 第一は、ADRに関する本法案のような法律を制定することの意義いかんという問題でございます。

 御存じのとおり、司法制度改革審議会意見書は、ADRについて、「裁判機能の充実に格別の努力を傾注すべきことに加えて、ADRが、国民にとって裁判と並ぶ魅力的な選択肢となるよう、その拡充、活性化を図るべきである。」と言っております。これを受けて、ADRの利用促進、裁判手続との連携強化のための基本的な枠組みを規定する法律の制定を提言しているわけでございます。この提言を実現するための制度設計のために、ADR検討会はこれまで約三年間、慎重にその審議をしてまいりました。

 それでは、さかのぼって、なぜ裁判の手続のほかにそれと並んでADRが必要なのかということであります。

 この点につきましては、一つには、裁判所の負担軽減という視点が考えられます。増加する一方の法的紛争を処理するシステムとして裁判制度しかないといたしますと、やがて裁判所は事件数の増大にパンクしてしまう可能性があります。日本では現在そこまではいっておりませんが、アメリカで過去二十年間にADRが急速に発展した背景には、裁判所の負担軽減というファクターがあったことを見逃すわけにはまいりません。

 二つ目は、こちらの方がより本質的な理由でございますが、裁判制度には幾つかの避けがたい制約がございます。これに対しまして、ADRはそれをカバーするメリットを持っていることであります。

 ここで、ADRのメリットを幾つか挙げますと、第一に、私的自治の原則による当事者の主体性の尊重ということがございます。紛争の強制的解決の制度であります裁判と違いまして、ADRによる解決は、結局のところ当事者の合意でございますから、当事者の意思が尊重されるということであります。

 第二に、事案についての専門的知見の活用ができるということであります。裁判は、法律の専門家である裁判官が主宰し、事案の専門家、例えば、建築紛争でいいますと建築家とか、特許紛争ですと弁理士さんというような方々は、せいぜい専門委員または鑑定人として関与するにすぎないのに対しまして、ADRは、そういう紛争事案の専門家が直接関与することができるわけであります。

 第三に、迅速、安価ということが挙げられます。三審制が保障されている裁判に比べますと、ADRによる解決は当事者の合意でございますから、一般的には時間も費用も少なくて済むということであります。

 第四に、手続の柔軟性があります。裁判の手続は厳格に法律で定められ、これをむやみに変更することはできませんけれども、ADRは、その手続も事案に合わせて自由に取り決めることができることであります。

 第五に、手続の非公開が挙げられます。裁判は原則公開でございますが、ADRは非公開でありますから、営業の秘密とかプライバシーが十分に保護されることが挙げられます。

 第六に、条理、実情を踏まえた妥当な解決ということが挙げられます。裁判は実体法に従った一刀両断的な解決にならざるを得ませんけれども、ADRは当事者の合意に基づく解決でありますから、条理を加味し実情に即した解決案を出すことができるというわけであります。

 ADRには、このようなメリットがございます。

 このように、裁判とADRとが全く異なる特徴を持つシステムであるといたしますと、この両者を併存させることが、利用者である国民の選択肢を広げるという意味で望ましいわけでございます。

 しかるに、日本のADRの現状を見ますと、民事調停、家事調停という裁判所附属型ADRは極めて活況を呈しており、また、行政型ADRも、例えば建設工事紛争審査会、労働委員会、公害等調整委員会、国民生活センター等々も、その特化した紛争の解決に活躍しております。これに対して、民間型ADRは、その数は多数ございますものの、幾つかの例外、例えば日本商事仲裁協会、日本海運集会所、交通事故紛争処理センター、各弁護士会による仲裁センター、自動車製造物責任相談センター等を除けば、一般的には余り活発に利用されているとは言えない状況にございます。

 そこで、本法律を制定する意義でございますけれども、ADRを今後日本でもっと拡充、活性化させるためには、ADRを司法制度の一翼を担うものとして確固とした位置づけを与えるとともに、利用者である国民の理解の増進を図り、安心してADRを利用してもらえるように一定の法的効果を付与することが必要であり、これが本法律を制定する最大の意義であると私は考えております。

 次に、意見具申の第二点でございますが、本法案の特徴につきまして三点申し述べます。

 第一の特徴は、本法案、特に第一章が、ADRの定義、基本理念、国等の責務に関する規定を置くことによって、ADRの位置づけを明確にしていることであります。ADRが今後発展していくためには、民事司法体系上にADRをきちんと位置づける必要があることは今申し上げたとおりでございますが、この第一章はそれにこたえるものであり、民間型ADRのみならず、裁判所附属型あるいは行政型ADRにも適用される基本法的規定と言うことができます。

 この点につきまして、ADR検討会での議論では、こうした基本理念や責務だけでなく、手続の開始から終了までの手続規定を設けることによって、これをADRの一般法とすべきではないかという意見もございました。しかし、既存のADRは法律またはそれぞれの機関の規則によって既に手続規定を持っておりますから、改めて手続のモデルのようなものは不要であるという結論に至った次第でございます。

 本法案の特徴の第二点は、本法案第二章で、民間のADR業務に対する法務大臣の認証制度を取り入れたことでございます。ここで認証の対象となるADRの業務とは、和解の仲介を行うこと、すなわちあっせんとか調停とか呼ばれるものを指しております。仲裁は含まれておりません。

 さて、この認証制度の採否に関しましては、ADR検討会の内部でも、あるいは関係団体からのヒアリングやパブリックコメントでも、積極、消極、さまざまな議論がございました。消極説の根拠は、第一に、本来私的自治が支配すべきADRに対して認証という形で国が介入するのは不当ではないか、第二に、認証によってADR機関の格付が行われるのではないか、第三に、認証によってADRの本来あるべき多様性が阻害されるのではないかというようなものでございました。

 これにつきまして、ADR検討会では多くの時間をかけて慎重かつ活発な議論を展開いたしましたが、結論としては、認証制度を取り入れることに大方の賛同が得られました。その理由を要約すれば、次のとおりでございます。

 第一に、認証を受けるか否かということはあくまでもADR機関の自由にゆだねられるから、ADRの自主性を阻害するものではない。第二に、認証を受けなくてもADR事業を行い得ることは従来と同じであり、この制度の導入が従来と比べてADR機関に不利益をもたらすものではない。第三に、ADRの拡充、活性化に向けて、時効の中断や弁護士法第七十二条の特例という法的効果を認めるためにはどんなADRでもよい、例えば暴力団等の反社会的勢力が設立するようなADR機関でもよいというわけにはまいらず、その事業の適正を確保する必要がある。第四に、何よりも、制度の利用者にとっては認証によって選択の目安が与えられ、一定の効果を持つものとして安心して制度を利用することができる。第五に、認証の基準を業務の適正を確保する必要最小限なものに絞れば、国がADR機関に対して過度に介入したり、ADR機関の格付、画一化を招くといった弊害を避けることができるというのがその理由でございます。

 ただ、消極説の挙げる心配も理由があることでございまして、そこで、認証制度がADRに萎縮効果を与えたり、本来の目的を超えて行政が民間に過度に介入することがないよう、本法案ではかなりきめ細かに認証の基準、手続、その後の業務遂行上の義務について規定を設けております。そのため第二章の条文が膨れ上がっておりますが、それは今申しましたような事情によるものと私は理解しております。

 本法案の第三の特徴は、本法案第三章で、認証ADR事業の利用に関して、時効の中断、裁判手続との連携等の法的効果を認めた点でございます。

 従来、民間のADR機関に調停やあっせんを申し立てても、時効の中断について特別の規定がなかったために、手続が長引きますとその間に時効が完成してしまい、それを防ぐためには別途裁判所に訴えを提起しておかなければならないという不都合がございました。本法案は、認証を受けたADRについて時効の中断の効果を認めたものであり、これは民間型ADRの発展にとって大きな第一歩と考えられます。

 法的効果に関して、ADR検討会では、さらに強い効果、すなわちADRを利用して和解が成立した場合には、その和解に執行力を与えるべきではないかという意見もございました。しかし、これについては時期尚早ではないか、今後の課題として検討しようということで見送ったという経緯がございます。

 私の意見陳述の第三点でございますが、本法案の評価いかんということでございます。

 ADR検討会の座長のおまえが評価をするのはおこがましいとあるいは言われるかもしれませんが、私としては、この法案が現段階では望み得べきベストの法案というふうに考えております。現段階ではと限定を付しました理由は、先ほどから御紹介しておりますように、認証制度の導入や執行力の見送りについては、ADR検討会の全委員が満場一致で賛成したということではなく、さまざまな意見がある中で、その最大公約数をとってようやくまとめ上げたというものであるからであります。

 なぜ満場一致とならなかったかということでございますが、一つには、事柄が非常に難しかったこと、もう一つには、ADRに関するこれまでの学問的蓄積が十分になされていなかったことが挙げられます。事柄が難しかったと申しますのは、例えば、今後の日本社会において裁判とADRとの機能分担をどう考えるか、民間の紛争解決事業に対する国の関与のあり方はいかにあるべきかというようなフィロソフィーに関する問題については、各委員の考え方が当然異なりますし、ADRによる紛争解決に強い法的効果を与えた場合に、それが活性化をもたらすのか、濫用の弊害が出ないかという予測の問題については十分なデータがございませんでした。

 ADRに関する学問という点では、日本にはまだ十分な蓄積がございません。各委員とも手探りで勉強しながら審議に臨むという状態でございました。この点、私が司法制度改革推進本部でもう一つ座長を務めました仲裁検討会の方は、仲裁について学問的蓄積が十分あったために、一年間の審議を行っただけで仲裁法案をまとめることができたことに比較しますと、その違いは明らかであります。

 以上を要するに、本法案は現段階ではベストだけれども、実際に施行してみて絶対に不都合を生じないとはなお断言できないというのが、私の正直な告白でございます。本法案附則第二条が、施行後五年を経過した段階での施行状況の検討と必要な場合の見直し条項を置いているのは、こうした状況を反映したものであると御理解いただければというふうに存じます。

 最後に、意見陳述の第四として、ADRの今後の課題ということについて、私の意見ないし希望を三点申し述べたいと思います。

 この法案が仮に成立したといたしましても、それだけで日本におけるADRが一挙に拡充、活性化するというものではもちろんありません。日本におけるADRが真に国民にとって裁判と並ぶ魅力的な選択肢となるためには、今後、国や地方公共団体が本法案第四条に掲げる責務を忠実に果たすだけでなく、クリアしなければならない幾つかの課題があります。

 第一に、ADR機関の質の向上が必須の課題でございます。日本には数多くのADR機関があるものの、業界団体のADR機関の中には、休眠状態であったり、苦情処理体制が備わっていることのアリバイとしか思えないADR機関も散見されないではありません。

 この際、すべてのADR機関は、みずからの機関またはその手続が本法案第三条第一項の理念に適合しているか否か、すなわち、その手続が「法による紛争の解決のための手続として、紛争の当事者の自主的な紛争解決の努力を尊重しつつ、公正かつ適正に実施され、かつ、専門的な知見を反映して紛争の実情に即した迅速な解決を図るもの」になっているか否かを真摯に再点検し、不備があれば改善することが必要と思います。このような自己点検と情報開示を定期的に行い、絶えず自己改革することによって、利用者にわかりやすく安心して利用してもらえる機関に成長することこそが、日本におけるADRが発展、活性化する最も重要な条件であると私は信じております。

 第二に、ADR手続を実施するあっせん人、調停人、さらには仲裁人をどのように育成していくかという問題がございます。ADRが伸びるか否かは、このような手続実施者に人を得ることができるか否かにかかっております。この点で、昨年、日本弁護士連合会を事務局として、仲裁人を養成することを主たる目的として日本仲裁人協会が発足し、既に研修会等の事業を行っていることは高く評価すべきものと考えます。

 しかし、それだけでは足りません。社会に生起する紛争を裁判所の手をかりずに解決することは、そのことを通じてADR機関が社会に貢献していることにほかなりません。このことを考えれば、国としては、手続実施者の養成を各ADR機関に任せきりにするのでなく、本法案第四条に規定する「国等の責務」のうち、「その他必要な措置」として真摯に考えていただきたいと思います。この点は、各ADR機関の所管省庁や、これから認証業務を担うことになる法務省に格段の努力をお願いしておきたいと思うものであります。

 第三に、日本におけるADRが発展するためには、ADRの実務や理論に対する学問的バックアップが必要でございます。先ほど私は、仲裁については学問的蓄積があったから仲裁検討会は一年で作業を終わることができたのに、ADRについてはそれがなかったから三年かかったというふうに申しましたが、それは今回、ADR検討会の座長を務めましてつくづく実感したことでありまして、我が身の不勉強を恥じた次第でございます。

 そこで、その反省の上に立って、先ごろ、十月二十三日でございますが、私は、尊敬する何人かの民事訴訟法学者と語らって、仲裁ADR法学会という学会を発足させました。会員はまだ二百名を超えた程度でございますが、この学会がやがて仲裁法やADR法に関心を持つ学者や実務家の研究発表や情報交換のフォーラムになることを通じて、日本の仲裁やADRの発展に寄与することを期待し、また、私みずからも努力することをお約束しまして、少し時間が超過いたしましたが、私の意見陳述を終わります。(拍手)

塩崎委員長 どうもありがとうございました。

 次に、松尾参考人にお願いいたします。

松尾参考人 日本弁護士連合会の副会長の松尾良風と申します。ひとつよろしくお願い申し上げます。

 本日は、裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律案について日弁連の意見を申し述べる機会をいただき、まことにありがとうございました。

 この法律案の名称はちょっと長過ぎて極めて話しづらいので、これまで使われてきた名称、つまりADR法と略称させていただきます。

 まず最初に、ADR法案について日弁連はどう考えているのかということを結論から申し上げますが、本法案は、ADRの自主性、多様性を配慮しながら、ADRを利用する市民の権利利益の擁護を重視しておりまして、そのことがADRの拡充、活性化につながると評価しておりまして、基本的に賛成であります。

 ただし、後に詳しく述べさせていただきますが、利用者である市民の権利利益の確保を図るという観点からしますと、幾つか不十分あるいは不明確と言わざるを得ない部分もありますので、これらの点については国会審議の中で明らかにしていただきたいと思っております。

 既に、ADRの現状やメリット、あるいは今次の司法改革におけるADRの意義や位置づけ、あるいは検討会での議論状況などについては、法務大臣からの御説明あるいはこれまでの審議の中で明らかになっておると思いますので、これらの点については省略させていただきます。

 私の方からは、三十七回に及ぶ検討会において議論となった争点の幾つかについて、日弁連はどのような意見であり、本法案ではどのように規定されたのか、日弁連が考える問題点は何かということについて順次お話ししたいと思います。

 青山参考人のお話にも既にありましたように、ADRに関する争点は、ほとんどがADRに関する基本的考え方の相違から生じております。この点について最初に触れさせていただきますが、本日、皆様に配付させていただきました資料のうち、色刷りのワンペーパーがございます。それをお出しいただきたいと思いますが、このワンペーパーの、両面に印刷されているんですが、「ADR法に関する日弁連の意見(図解)」とする面を開いていただきたいと思います。この図の左半分、左の中段くらいに二つの基本的考え方が対比して記載されております。

 一つの考え方は、主としてADRを運営する立場から、ADRの拡充、活性化のためには自主性、多様性を尊重すべきであり、ADRに関する規制はできるだけ排除すべきとする考え方であります。もう一つの考え方は、主としてADRを利用する市民の立場から、市民が安心してADRを利用できるようにすることがADRの拡充、活性化につながる、そのためにはADRに関しある程度の規制をすることが必要であるとする考え方であります。

 この二つの考え方が検討会においても激しく対立しておりました。私がこれから順次お話しする争点についても、いずれの立場に立つかによってその結論を異にすることになります。

 ここで、ただいまごらんいただいたペーパーの裏面をごらんいただきたいと思います。ここにADR法に関する日弁連の意見が要約されておりますけれども、日弁連は、ADRを利用する市民の立場を重視しまして、市民の権利利益を擁護するという観点から、次のような意見を述べております。

 第一点は、ADR基本法を制定し、国民一般にADRを選択する目安を提供するため、認証制度を導入することに賛成する。あわせて、ADRの自主性、多様性確保の見地から、ADRの中には認証を受けないものもあってよく、選択制とすべきであるということでございます。

 第二点は、ADRの認証の効果として、紛争解決の実効性の確保という観点から、一定の法的効果の付与、つまり、調停前置の例外、訴訟手続の任意的中止、時効中断効が考えられるべきであるということです。

 ただし、法的効果のうち、執行力の付与については、国民に与える影響が格段に大きいということから慎重に検討すべきであり、将来の課題として、今回の立法では導入すべきではないということでございます。

 第三点は、専門家の活用の問題でございますが、手続実施者に関してはADR法に規定を置く反面、手続代理については、個別の資格者ごとに事情が異なるため、職種ごとに検討を加えて個別法において措置するということでございます。また、手続実施者に関する弁護士法第七十二条の緩和の問題につきましては、同条の制度趣旨を基本に据え、紛争が公正かつ的確に解決されるに足る能力、資質を確保するという観点から、弁護士の一定の関与を認証の要件もしくは認証事業者の業務遂行上の義務として課すということです。

 なお、認証事業者が取り扱うことができる紛争の範囲は、その専門能力の範囲内に限定されるべきであるということでございます。

 第四点は、認証制度の導入に当たっては、ADRの自主性、多様性確保の見地から、公的な関与を最低限にとどめるべきであるということでございます。

 この日弁連の意見の詳細については、皆様に配付させていただきました、本年五月八日付の「ADR法に関する日弁連の意見」と題する資料がございますので、それをごらんいただきたいと思います。

 ところで、本法案についての評価ですが、本法案は、前述した二つの基本的考え方の調整を図りながら、ADRを利用する市民の立場をより重視して、市民の権利や利益の擁護のために最低限必要と思われる規定を置いております。

 例えば、第二章第一節においては、ADR利用者への選択の目安の提供と業務の適正性の確保の観点から認証制度を導入しながらも、第五条において、認証を受けるか否かは紛争解決事業者の任意としたことは、まさに二つの基本的考え方の調整を図ったものということができます。

 また、第十条において、認証審査参与員の制度を設け、法務大臣の認証及びその後の監督について専門的知識経験を有する者の意見を聞くとしたことも、ADRの健全な発展のためには積極的意義があるものと考えております。

 さらに、認証に伴う法的効果として、時効中断効、訴訟手続の中止効、調停前置原則の不適用の効果を付与しまして、執行力の付与については、将来の課題として今回の立法では見送られたことについては、市民の権利利益の擁護、濫用の防止という観点からは、妥当な政策的判断であったと考えております。

 以上から明らかでありますように、本法案は、日弁連が従来から主張してきた意見とおおむね一致するものでありまして、基本的には評価できると考えております。

 しかし、ADRが紛争の解決でありまして、当事者の法的権利義務を処分したり確認したりするものである以上、法の枠内で行われなければならないことは言うまでもありません。

 ADR法案の第三条「基本理念等」の中に、法による紛争解決とうたわれていることも、まさにこのことを直接的に表現したものでありまして、裁判外であっても、法による公正かつ適正な解決が図られなければならないということは論をまたないところでございます。

 したがって、有資格者である弁護士が、法の支配の重要な担い手としてADR活動の中心に位置する必要があります。

 昭和四十六年七月十四日の最高裁判決が弁護士法第七十二条の趣旨について述べておりますように、法的知識もなく倫理的な規律に服することがない者が他人の法律事件に介入することは、当事者その他関係者の権利利益を損ね、法律生活の公正円滑な営みを妨げるということになります。このことは、紛争の解決手続であるADRにおいてもひとしく妥当することであります。だからこそ、現行弁護士法第七十二条はADR手続実施を業として行うことを弁護士に限定しているものでございます。

 ADRにおいても、弁護士法七十二条の趣旨は尊重されるべきものでありまして、ADR検討会においても確認されていることであり、また本法案においても前提になっているものと理解しております。

 このような観点から本法案を検討しますと、まず、認証の基準の中で、弁護士の関与に関する規定として、第六条第五号で「手続実施者が弁護士でない場合において、民間紛争解決手続の実施に当たり法令の解釈適用に関し専門的知識を必要とするときに、弁護士の助言を受けることができるようにするための措置を定めていること。」と規定されておりますが、この規定は、市民の権利利益を守るために弁護士法七十二条の趣旨を実質的に生かすという観点からは不明確な点が残り、解釈によってはその趣旨に反する運用がなされるおそれがあると危惧しております。

 まず第一に、法文では「法令の解釈適用に関し専門的知識を必要とするときに、」とありますが、この「法令の解釈適用」という言葉は極めて狭い範囲に限定されるという印象がぬぐえません。

 紛争解決にとって、狭い意味での和解内容の適法性、すなわち法律に違反していないかどうかということだけではなくて、仮に形式的に法律に違反していないとしても、和解内容が著しく不公正ではないか、あるいは当事者が真にその法的意味と自分の権利を理解した上でのものなのかどうか、社会的に相当であるかどうかといった判断が重要になります。

 弁護士は、単に法令に関し専門的知識を有しているだけではなく、訴訟あるいは示談等の紛争解決の業務の経験を通し、狭い意味での和解内容の適法性だけではなく、それが社会的に相当であるか否かを判断する専門的知識を有する紛争解決の専門家であります。

 したがって、弁護士の助言を必要とすべき場合が余りにも狭く解釈されないように、そして、具体的にいかなる場合が法令の解釈適用に関し専門家の知識を必要とするのかについて、明らかにしていただきたいと考えております。

 第二点として、法文では「弁護士の助言を受けることができるようにするための措置」とされておりまして、この文言からだけでは、弁護士の助言を受けることができる措置さえ定めておけばよく、実際に個々のケースにおいて弁護士の助言を受けるか否かは、手続実施者が任意的に判断すればよいかのように解釈できる余地があります。

 法令の解釈適用に関し専門的知識を必要とするときには、国民の権利利益を擁護するために速やかに弁護士の助言を受けることは必要的とされるべきであり、手続実施者の任意的判断にゆだねるべきではないと考えております。

 また、具体的にいかなる措置をとればよいのかということも明らかにしていただきたいと考えております。

 これら弁護士の関与に関する諸点は、ADR法のもとにおいて、これからのADRの健全な発展を図るためには重要な事柄であると認識しております。基本理念の面における法による解決が実際のADRでも間違いなく行われるよう、以上の点に関しては慎重に御審議いただくようお願い申し上げます。

 次に、弁護士の関与の点以外の点に関する要望となりますが、例えば、高利の金融業者の業界団体が法務大臣の認証を受けてADRを設置する、そして借り手との金銭消費貸借契約の条項の中に、紛争が生じた場合には、その業者が行うADRを利用することという合意条項を入れまして、裁判所やその他の紛争解決手続を直ちに利用できないものとした上で、このADRの手続の中で、手続実施者がその金融業者に有利な和解案を提示するというようなことが起こらないかという心配もあります。

 そこで、かような不適切なADRには認証がなされないように配慮をしていただくとともに、ADR手続利用者に対しては、ADR手続からの離脱の自由の確保について、事前に十分に告知するなどの方策を講じていただきたいと考えております。

 さらに、本法案の第二十四条では「民間紛争解決手続の業務の特性への配慮」に関する規定が置かれております。

 確かに、ADRの中には秘密性、非公開性を特色とするものがありますし、それが裁判と比較した場合の利点でもあります。また、ADRは司法作用の延長線上の紛争解決手続というふうに言えますが、認証官庁の検査等の監督権限の行使の過程で、個々の和解あっせんや調停手続を審査するようなことがあっては、ADRの自主性、多様性が害されることになってしまいます。

 そこで、ADRの認証及び監督に当たっては、この第二十四条の民間紛争解決手続の業務の特性への配慮規定を十分に尊重して運用していただくことを希望しておきたいと思います。

 最後となりますけれども、今後、司法制度改革の重要な一環として、ADRを国民にとって裁判と並ぶ魅力的な選択肢とするためには、ADRに関する国民の理解の増進や、手続実施者等の担い手の育成、連携や協力の推進など、ADRに関する基盤の整備をする必要があります。

 そこで、国や地方自治体に対し、広報活動の充実や一層の財政的支援をお願い申し上げまして、私の意見とさせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

塩崎委員長 どうもありがとうございました。

 次に、原参考人にお願いいたします。

原参考人 きょうは、ちょっと長いタイトルですので、私もADR法と略して意見を述べさせていただきたいと思いますけれども、ADR法の審議に参考人として招致をしていただきまして、大変ありがとうございました。私自身は、埼玉大学経済学部の非常勤講師というふうに所属がなっておりますけれども、ADR検討会に消費者、利用者の立場ということで参画をいたしました。消費者運動に二十数年携わっておりまして、そういった見地から、きょうの意見を述べさせていただきたいというふうに思っております。

 最初に、このADR法案ができるということなんですけれども、二年半という時間をかけてきました。これは、先ほど青山座長のお話にもありましたように、なかなか、学問的な研究ですとか、それから実際にどういったニーズがあるのかとか、実際の利用者の不満とかはどういうところにあるのかというような調査とか、そういうものが大変不足をしておりまして、勉強しながら、考えながらの検討を重ねたということで二年半という時間がかかりましたが、それだけ内容はかなり検討を尽くした形で、今、最善ということで出てきているというふうに思います。

 私ども検討委員がいつも考えていたのは、司法制度改革の報告書で、裁判と並ぶ魅力的な選択肢となるようにというのが宿題としてついておりまして、この裁判と並ぶ魅力的な選択肢にするためにはどうしたらいいかということを非常に考えさせられた二年半ということになります。

 私は、今回、この法律、制定ということになるというふうに思っておりますけれども、法律の制定のみで魅力ある存在になるというふうには考えておりません。苦情や紛争解決の仕組みの中できちんとこのADRが位置づけられて、活用されていってこそ、ADR法が生きてくるというふうに考えております。もとより、司法そのもの、それから裁判そのものが、利用者にとって魅力ある存在であることも必須です。裁判にかわるものではなくて、双方ともが魅力ある選択肢であるべきだというふうに考えております。

 以下、法律の必要性、法律の内容について、それからADR全体を取り巻く仕組みについて意見を述べたいと思います。

 最初に、第一に、裁判外紛争解決手続の立法化の必要性についてです。

 これについては、三点のことを考えております。

 一つは、消費者トラブルというのは各地の消費者センターですとか国民生活センターなどに寄せられておりますけれども、年間数十万件だったものが、昨年度は百万件を超え、百四十万件に迫ろうというふうにしております。こういった消費者が抱えるトラブルというものは大変多いわけですけれども、消費生活センターなどを利用するものは四%にすぎないというふうに調査でも出ておりまして、世の中には、解決に至らず滞留をしている苦情とか不満とか紛争とかというのが数多く存在をしております。これは、紛争解決の仕組みがとられていない、それから機能していないことにも大きな原因があるというふうに考えております。

 それから、二つ目ですが、規制改革政策の展開のもとで、これまでの消費者行政というのは事前チェックということで進められてきておりましたけれども、今後については、市場ルールの整備ですとか民事ルールの変更ということを積み重ねるというようなことで徐々に転換をしており、消費者みずからが苦情や紛争解決に取り組むべきだという面もふえてきております。しかし、消費者トラブルというのは、少額被害のためとか、それから立証の壁の厚さということもあり、訴訟をためらうケースが大変多いということも特徴で、裁判に至らない簡易な紛争解決のための仕組みというものも求められております。

 それから、三番目ですが、判断を裁判官に預けるのではなく、私的自治のもと、自分たちが自主的に紛争解決に取り組みたいという機運も高まっております。これは、国境を越えるネット取引とか金融取引など、消費者を取り巻くトラブルも国内だけではなくて国境を越えるようなものも登場してきているというところで、法律の判断によらない紛争解決の仕組みが求められているということも背景にあると考えております。

 次に、裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律案について意見を述べたいと思います。

 ここについても三点ございますけれども、三点の中に、またちょっと項目によっては少し詳しく触れてみたいと思う点もございます。

 まず一つですが、当事者同士が主体的に紛争解決に取り組める法律になってほしいというふうに思っております。

 法律の名称も紛争解決手続というふうにしておりまして、これまで紛争処理ですとか苦情処理という言葉を使ってきておりましたけれども、処理ではなくて解決という言葉にしております。法律の中でも、第三条でも、「紛争の当事者の自主的な紛争解決の努力を尊重しつつ、」という文言が入っておりまして、そのとおりだというふうに考えております。これは、認証制をとっておりますけれども、認証の有無にかかわらず、どのADRであっても柔軟な解決の仕組みづくりということで検討をしていただきたいというふうに思っております。

 二点目は、公正さが担保されるということです。ここには幾つかの項目を考えております。

 一つは、法律の第六条に定められている「認証の基準」にあるように紛争解決手続が公正に組まれ、さらに、法第十四条にあるとおり、利用者に、定められた事項について説明義務を課すということです。これも、認証の有無にかかわらず、どのADRであっても遵守していただきたいと考えております。

 それから二つ目は、言葉の定義の明確化と選択性の確保が必要だということです。ADRという言葉は大変なじみがない言葉ではありますけれども、消費者とか国民の間では、相談、苦情、調停、裁定、仲裁などさまざまな言葉が用いられて、混乱しているのが実情です。定義を明確化して、自分が今どの立場に立っているのかということがはっきりわかり、消費者や利用者の選択が最後まで働くということが確保されているということが必須だと思います。

 それから三番目ですが、公正さを確保するためには透明性の視点が欠かせません。ADRのメリットとして、よく非開示性が強調されることがあるわけですけれども、これは、BツーBの場合、例えば事業者対事業者の場合とか、CツーCの場合、一般の市民対市民の場合というところでは有用かもしれませんけれども、事業者対消費者、それから労働者対雇用者といったトラブルに関しては、こういった秘密性とはやはり相入れないのではないかというふうに思っております。必要最低限の秘密保持、もちろん、個人情報保護の、プライバシーへの配慮といったような秘密保持はかけても、そのADRにどのような案件がかかり、どういう解決を得ているかは開示していただきたいと考えます。それでないと、消費者や利用者からはADRの選択もできないし、公正さもジャッジできません。

 それから四点目ですが、第一条にある「公正な第三者」という文言が入っております。「第三者」の冠に「公正な」という文言が入っているということですが、この「公正な第三者」になるための人材育成が欠かせないと考えております。ADRは当事者の間に入る第三者が果たす役割が非常に大きいということも考えて、これは法律の中に規定はされておりますけれども、国等の責務、それからADR機関の責務としてぜひ考えていただきたいと思っております。

 それから五番目ですが、消費者対事業者、労働者対雇用主のように、構造的に力の格差が存在する当事者間の紛争解決のための配慮が必要だと考えております。考えられる例としては、契約書面などに一定のADR機関利用の定めを一方的に置いたりするようなことですね。離脱ができるので仲裁とは違いますけれども、そういった構造的な力の格差という場面の紛争解決のための配慮ということは欠かせないというふうに思っております。

 それから、この法律案についての大きな三点目についての意見なんですが、認証制を選択的導入にしたということについて、四点ほど意見を述べたいと思います。

 これは検討会の中で、法的効果の付与の話と絡めて、どのADR機関にも法的効果付与は認められないだろう、そうすると、やはり、認証基準というものに沿って、ここであれば大丈夫であろうというようなADR機関に付与をするということで、最後、非常に検討を重ねた結果、選択制ということでこの認証制を導入いたしました。これは、私としては、多様性の中での選択肢になるということで、現状、今の形では、こういう形でスタートするのが妥当ではないかというふうに考えております。

 それから、法的効果の付与の中で執行力の付与についても検討を尽くしたわけですけれども、執行力の付与については、その与える影響というものが大変大きいということで今回は見送りました。これで妥当ではなかったかというふうに考えております。

 それから二つ目ですが、認証制を導入することで、弁護士法の第七十二条を原則的に外すということを可能にいたしました。これは、ADRの担い手として、必ずしも法的判断を必要としない解決手法があってもいいとして多様な人材の登用の道を開いたということになると思います。社会的に見てその紛争解決が適正なものであったかどうか、公正なものであったかどうかのジャッジというものは、ADRの透明性を図ることで確保されていくのではないかということを期待しております。

 三点目ですが、一方、認証制が導入されることでの悪用の懸念も検討会ではたびたび議論となりました。つまり、ADRの認証を取ることで、お墨つきをもらっている、私どものADRはお墨つきをもらっているということで、その中でかなり自由な解決手法をとれますので、消費者や利用者にとって不利な形での紛争解決という仕組みを迫られるということがあってはならないというふうに考えておりまして、このADRの名称独占の問題については審議を尽くしていただきたいというふうに思っております。

 それから最後ですが、法律が認証制を軸にして制定されますけれども、認証を取るところについてはいろいろな条文でいろいろなことが明確化されてきておりますけれども、認証を取らないADRというものも世の中には存在するということになります。こういったものに対しての配慮とか目配りというものも、法律の中には盛り込まれませんけれども、審議の中では検討を尽くしていただきたい点です。

 大きな点の三番目、法律ができるだけではADRの活性化とかそれから魅力ある選択肢にはならないというふうに申し上げた点について、若干意見を述べたいと思います。五十三分までに終われということなのであと一分しかないのですけれども、ちょっと三分程度お話をさせていただきたいと思います。ちょっと項目的に、羅列的に、大変恐縮です。

 一つは、ポータルサイトの設置とかADR間の連携が必要です。ADRに対する消費者の認知度は、いまだ非常に低いものです。認知度を上げることと、どこにどのようなADRがあるのかを広く知ってもらうということが大切で、それから各ADR機関の連携も必須だと思っております。

 二つ目は、コストの負担の問題です。これも、法律の第二十八条で「報酬を受けることができる。」という条文を置いて、ADRの運営にかかる費用の負担の問題ということは明示をしておりますけれども、だれがどのような形で負担をしていくのか。検討会の当初では、法律扶助の適用ができないかどうかということの検討もいたしました。ただ、条文化には至っておりません。それぞれのADRにゆだねるしかないところですけれども、こうしたことの配慮は絶対欠かすことができないというふうに、これは、利用者もそれからADR機関側からも非常に強い意見が出ているところです。

 それから三番目なんですけれども、相談とか苦情体制の整備がまず必須だと思います。紛争解決の手続だけ手厚く法整備をしても、その前の段階の相談とか苦情体制の整備から考えていかなければならないというふうに思っております。

 それから四番目ですが、政策などに生かす方策が必要です。裁判で判決となれば、そこで示された判断というのは判例として積み重ねられていきますけれども、ADRでは、どこでどのように解決が図られたのかは、必ずしも明示的にされるわけではありません。判例は社会性を持ちますけれども、ADRでの解決も何らかの工夫をして社会性を持たせ、特に消費者政策などは思うところですけれども、そういった政策などに反映させる道筋も必要だと考えております。

 それから五番目ですが、国際的視野が必要ということです。現在、国際標準化機構、ISOでは、ADRの規格化がガイドラインとしてまとめられようとしております。来年十一月ごろに発効の予定です。国際的にもADRのあり方は関心を集めておりますし、ネット取引に見られるように国際間の取引も活発化しています。こうした中でのADRのあり方の検討も必須です。

 それから最後に、消費者や利用者による紛争解決プロセスのチェックということです。認証を取るADRであっても、紛争解決プロセスのチェックは内容までは踏み込まないということを、検討会でもかなりそういう検討結果というんでしょうか、というところになっておりますけれども、認証を取らないADRというのは、基本的には当事者同士が納得すれば自由な設計になるということになりますので、消費者や利用者によるチェックは欠かせないと考えております。

 この点については、CI、国際消費者機構でも、二〇〇〇年度から各国のADRについて消費者の視点からのチェックというような、調査というようなことも進められておりますので、こういった視点も欠かせないと思っております。

 ADRは、私は、社会には非常に有用な存在だというふうに考えております。法律が制定されることで、こうした紛争解決の場を利用する機運が高まることを期待しております。これが既存のADRの改善、それから活性化にも結びついていくことも期待をしております。審議を十分尽くして、この法案を世の中に送り出していただきたいと考えております。

 以上、私の意見ということで陳述をさせていただきました。どうもありがとうございました。(拍手)

塩崎委員長 どうもありがとうございました。

 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

塩崎委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。早川忠孝君。

早川委員 自民党の早川忠孝でございます。本日は、青山参考人、松尾参考人、原参考人におかれましては、法務委員会の御審議に御出席を賜りまして貴重な御意見を賜りました。ありがとうございます。

 まず、青山参考人にお伺いしたいのでありますけれども、ADRと一般に言われます。私がADRという言葉を最初に耳にしたのは、アメリカのローファームに行ったときに、たまたま弁護士さんが、きょうはADRで担当する人がいないんだよ、こういう話がありまして、裁判手続によらないで、実はアメリカの弁護士が紛争の解決のためにADRということを活用している。ADRと一概に言いますけれども、結局、英語で言うと、オルタナティブ・ディスピュート・レゾリューション、要するに、裁判代替解決手続というふうに言うのが適当なのかなと思います。

 さらに、今回の、いろいろ国民にわかりやすい用語をつくるという意味からしますと、私自身は、今回の手続法について英語をなるべく使わない方がやはりいいんじゃないか。そういう意味では、法による紛争解決のための裁判外手続利用促進法、こういうふうな、まず法によるということが一つ、それから紛争解決のための裁判外の手続だ、それを利用促進させよう、こういうふうな内容になるのではないだろうかなというふうに思います。

 結果的には、法によるという縛りを常に意識しないと、今回の法制定の意義というのはかなり薄まってしまうのではないだろうかと私自身は思っているんですが、そこで、青山参考人にお伺いしたいんですが、諸外国においては、いわゆるADRという手続は大体どんなものがあるんでしょうか。検討会等ではどのような御調査をされていましたでしょうか。

青山参考人 二つの点で御質問があったというふうに思っておりますが、ADRという言葉をどういうふうに日本語として訳しかえるかということでございます。法によるという、法による裁判外の紛争解決というのが直接ではないかという御指摘であったかと思います。

 これは、法律の名称としてはそういうことは入っておりませんけれども、法文の中には「法による」という言葉を入れております。この「法による」の「法」は、決して実定法というような狭い意味ではなくて、法の支配というような広い意味での法でございますが、それは入っておりますので御指摘のとおりかというふうに思っております。

 第二点の、ADRというものが諸外国でどのように使われているかという御質問でございますが、これは、各国それぞれ十分に調査したというわけでもございません。私も十分承知しているというわけでもございませんけれども、一番発達しておりますのは、先ほどもちょっと名前を出しましたけれどもアメリカでございまして、アメリカでは、裁判所の事件が多過ぎる、そこで、その裁判所の負担の軽減を図るというために、裁判所に来た事件をADRに回付するということを考えている、そういう使い方がございます。

 それから、最近では、フランスでもドイツでもADRとの裁判所の連携ということを模索しているというふうに承知しております。

 以上でございます。

早川委員 青山参考人にお伺いいたしますけれども、今回の法の制定によりまして、私は、非認証型の裁判外の紛争解決手続というのが、ある意味では法的に初めて認知されることになるのではないだろうかなと思っています。法による適正な紛争の解決に資するような非認証型の裁判外紛争解決制度でなければならない、これは、法は、はっきりとは書いておりませんけれども、そういう精神をやはり生かしながら考えていかなきゃいけない。

 ところが、最近、いわゆる暴力団員等あるいは悪質な高利金融業者等の関係者が、NPO法人等の名前でもってさまざまな法的なトラブルに関与し、介在し、不当な利益をむさぼっているのではないかと思われるような事案が散見をされるわけであります。

 今回の非認証型の裁判外紛争解決制度に法的な根拠を与えることによって、こういった、これまではそういった民間のさまざまなトラブルを抱えた方々に対しての代理的なこととか、いろいろなことを引き受けた人たちが、今度は、ADR、要するに紛争解決の調停、あっせん、仲裁的な手続の窓口をやりますよということを大々的に宣伝してしまう。いろいろな意味で、囲い込みをしてしまって、法による適正な解決を妨げてしまうということになるおそれはないだろうか。

 こういったことに対して、今回の法では、どうも何らの手当てもなされていないように思いますけれども、検討会では、こういった事態に対してはどのような検討がされたんでしょうか。

青山参考人 お答えいたします。

 検討会でも、非認証型の反社会的勢力がADR機関をつくりまして、そして、当事者の紛争を食い物にするという事態が生ずることは絶対避けなければならないということは、一同認識していたわけでございます。それを出発点としております。

 それで、第三条で、先ほどちょっと条文を引用いたしませんでしたけれども、「裁判外紛争解決手続は、法による紛争の解決のための手続として、」という、この「法による紛争の解決」ということを入れました。これは、ただ、両当事者が合意して、それでいいよと言いさえすればそれでいいんだということではなくて、その紛争の解決は、これは先ほど松尾参考人も指摘されたことでございますけれども、あくまでも法にのっとった紛争の解決でなければならないということをここにうたい込んだつもりでございます。

 なお、この法律は、非認証型の紛争解決機関に根拠を与えた、これによって、どんどん、どの団体でも自由に紛争解決機関として名乗り出てほしいということを言っているわけではもちろんございませんで、従来も、日本にはたくさんの紛争解決機関、ADR機関がございますけれども、それに対して目配りをしまして、裁判外の紛争解決のよいところを積極的に利用していくADRを育成していきたいというのがこの法律の理念でございます。

 今後そういう反社会的なものが出てきた場合には、この法律とは別の枠組みで、これは刑罰とかそういうことによって対処する。この法律だけではなくて、総合法律支援、日本司法支援センターというのが間もなくできますが、そういうものとか、刑事法とか、そういうものをあわせて、そういう反社会的な勢力が、ADRの名をかりて、利用者、庶民の紛争を食い物にする事態はどうしても抑え込んでいかなければならないというふうに考えているものであります。

早川委員 原参考人にお伺いいたします。

 まず、消費者側で、現在の裁判制度についてやはりいろいろ御不満があるから、逆に言うとADRを要望されているということだと思いますが、現行の裁判制度について、どんな点について、特に消費者側として御不満があるのか。あるいは、今後どのような形態のADRが発足することを消費者側としては求められているのか。そういったことについて、お考えをお述べいただければ幸いです。

原参考人 二つの御質問をいただきました。即答というのはなかなか難しいですけれども、まず、裁判について消費者がどのように考えているのかということですけれども、先ほども少し触れさせていただきましたけれども、やはり裁判というのは、一つは、よく言われるのは、大変、費用がかかる、それから、時間がかかるというところで、このあたりは、今回の司法制度改革の中でも改善をしていこうという機運が高まって、少しずつ進んでいるというふうに考えております。

 あともう一つは、今回ADRをなぜ利用したいかということ、裁判との一番対比で考えると、裁判というのは、やはり裁判官が判決を下すというんでしょうか、判断をする、それに結果として、執行力の付与もありますし、従わなければならないという形になりますけれども、そうではなくて、自分たちがみずから出ていって、紛争を抱える当事者同士が主体的に解決をしてみたいというようなものが、ADRの魅力を感じさせるものにあるのではないかなというふうに思っております。

 それからもう一つは、これは、裁判ではないんですけれども、消費者側が訴訟を余り利用したがらないというのは、やはり立証負担の壁が、それぞれの法律について消費者側に重いということですね。立証負担の壁が厚いというか、高いというか、そういうことを感じるためになかなか訴訟にいかない。それから、少額被害が多いということも、訴訟になかなかなじまないというようなところがあるのではないかというふうに考えております。

 ですから、そういう意味では、消費者の団体訴権ですとかクラスアクションですとか、そういった道も検討されるべきだというふうに思っております。

 それから二点目の、ADR、どういうものをということなんですけれども、ADRの利点としては、簡易迅速、廉価と、非公開性というんでしょうか、秘密性というようなことが挙げられていますけれども、ここにあるとおり、簡易迅速あたりはぜひお願いしたいと思うんですが、廉価というところが、事業者が持っていらっしゃるようなADRであれば、事業者団体負担というようなことで、訴訟よりは負担が軽い形でも構成されるかなというふうに思っておりますけれども、そのままストレートにはいかないというふうに思っております。

 それから、秘密性のところについては、事業者対消費者のトラブルのところでは、私としては、基本的には個人情報保護のような秘密保持はかけた上での開示、透明性を図ってほしいと思っております。

早川委員 時間が余りありませんので、松尾参考人に、若干弁護士会としての、こういったADRを求めるような社会的な今のニーズですけれども、これまで弁護士会がこういったさまざまな紛争解決にどんな形で対応をされてきたのか、いわゆる裁判外の関与という形で、司法改革運動の前からいろいろおやりになっていることがあると思うんですね。それが限界に来ているのか来ていないのかということも含め、あるいは、多様な市民の法的紛争に対してこれからはどういうふうに対応されるかということをひとつお伺いしたい。

 さらには、弁護士法七十二条違反事件というのがたくさんあるけれども、残念だけれども、現実には捜査当局がこれをまともに取り上げないということの中で、結果的には、さまざまな反社会的な集団等がさまざまな民事紛争に絡んできてしまって、法による解決を妨げた、そういう現象もあったかと思います。これに対して、弁護士会としてはどのようにお考えであるか。

 この二点、お答えをいただきたいと思います。

松尾参考人 二つの点についての御質問でしたが、まず最初の、弁護士会として裁判外の紛争解決についてどのように取り組んできたかということでございますが、まず、数年、もう六、七年前からですか、弁護士会に仲裁センターというものを設けまして、積極的に裁判外紛争を解決しようということで取り組んでおります。これは、徐々に件数もふえまして、昨年度は一年間にほぼ一千二百件余りの案件を扱うというふうになっております。当初五、六百件がもう倍以上になっておるということで、徐々にはふえてはきておるんですけれども、やはりもう一つ、なかなかADRというのが認知されていないということもあってか、伸びていないということで、このADR法が制定されてさらに促進されるということを非常に期待しておる。

 そのほかに、弁護士会の中には交通事故相談センターというものがありまして、そこでも示談あっせんなどの業務を行っているということで、弁護士会としては、できるだけ裁判外の紛争解決をやっていこうという姿勢でおります。

 それから、もう一つ、七十二条違反の問題なんですが、これは、かなり七十二条違反の問題が全国的に多いということで、弁護士会も、各単位会が非弁の取り締まりということで委員会などを設けて、いろいろ調査あるいは告発などもしておるんですが、なかなか捜査当局もいまいちきちっと応じてくれないというところもありましたので、やはり今後、七十二条問題、非弁行為の問題というのは非常に大きな問題になるというふうに我々も認識しておりまして、日弁連としても、積極的に、もっと厳しく取り組もうということになっております。

 以上です。

早川委員 ありがとうございました。質問を終わります。

塩崎委員長 次に、左藤章君。

左藤委員 自由民主党の左藤章でございます。

 きょうは、参考人の先生方、御苦労さまでございます。

 まず、青山参考人に御質問をさせていただきたいと思います。

 先ほどお話しされましたように、三年半にわたってこのADRの研究会を司法制度改革推進本部でなさって、ここまでこぎつけられた。本当に、御努力に感謝と敬意を表したいと思います。

 私も、当選以来ずっと司法制度をやっておりまして、そのときに初めて聞いたのがこのADRという言葉でありまして、いつも、裁判所に行っていろいろな紛争をするのに時間とお金もかかる、もっと身軽に、手軽に行けるところはないかなんという話でちょうどこの話があったので、すばらしい制度ができるんじゃないかと期待をしておるんですが。

 そこで、御質問をさせていただきたいんですが、こういうADRということができると、裁判所との関係、どこまでが裁判所にしていただく、また紛争外のADRで手続をして解決をできるかという、境界というのは非常に難しい点もあるかと思いますが、その点は、青山先生、どうお考えになっておられますか。

青山参考人 大変難しい質問でございまして、答えに実は窮しているわけでございますが、私は、民事訴訟法学者ですから、民事訴訟法こそが、裁判所による裁判こそが紛争解決の王道であり、それが司法の中核だということをずっと学生に教え続けてまいりました。

 司法制度、裁判所による紛争解決が司法の中核であるということは、今後とも決して変わるものではないと思います。しかし、それでは、ADRがそれとどこまで役割分担をして、二十一世紀の社会に、国民に対して選択肢を広げていくのかという点については、検討会の内部でもいろいろな意見が、いろいろな見通しが語られたわけでございます。

 私自身は、先ほども幾つか申しましたけれども、ADRにはそれぞれの特徴がございますので、そういうADRの特徴、メリットを国民に対して十分に理解をしてもらえば、自分の抱えている紛争が、裁判所によって公開の法廷で裁いてもらうのが適切な紛争なのか、それとも紛争事案の専門家によってむしろ判断をしてもらうのが適当なのかということを御自分で判断なさって、そして、場合によってはADRに行こう、場合によってはこれはもう裁判所しかないという選択をそれぞれの紛争当事者がみずからの責任と情報に基づいてするという社会に、私は十年、二十年たつと日本も進展していくのではないかというふうに思っております。

 そういたしますと、今の紛争の事件数でいいますと、もう圧倒的多数が裁判所による紛争解決でございますけれども、それが、例えば五%とか一割とかあるいは二割という程度はADR機関が全体として役割分担をするという社会になっていくのではないかというふうな見通しを立てている次第でございます。

 お答えになっているかどうかわかりませんけれども、そういうふうに私自身は考えております。

左藤委員 ありがとうございます。

 今、我が国のADR、今から認証という話になりますが、現実、認証されていない、今やっているものでは、司法型、行政型、民間型とそれぞれあるわけでありますが、特に民間型というのは、弁護士会の仲介センター等がございます。こういうのがそれぞれに認証を、行政型も、先ほどお話ありました、建設工事関係とか国民生活センターとかいろいろあるんですが、これは認証をみんな受けた方がいいのか、受ける必要がないのか、まず、松尾参考人に御質問をさせていただきたいと思います。

松尾参考人 弁護士会の中では、認証を受けるか否かということが非常に今大議論になっております。やはり、今まで運営してきた人たちは、自分たちのADRの自主性、多様性を尊重したいと考える方も結構おりまして、認証を受けないと言っておられる方もいますし、やはり、法的効果が付与されると、これは非常に利用しやすくなるんだという観点から、やはり受けるというところもありまして、どっちがいいのかということは今一概に言えない。

 やはり、このADR法ができて、その実績を見ながら皆さんが決めていく問題であろう、こういうふうに考えております。

左藤委員 わかりました。

 そうすると、弁護士会という、これはもうれっきとした、社会的含めてみんなが信用している場所ですから何も問題はない、認証を受けようが受けまいがどうということないと思うんですが、今から新しくいろいろ仲介をやろう、あっせんをしようということになると、やはり認証を受けていただいた方が、一般の国民から見れば、安心をするといいますか、非常に行きやすいといいますか、そういうことがあると思うんですね。

 そういう中で、いろいろ先ほど原参考人がおっしゃったように、消費者のクレーム、何か百四十万件、一年のうちにあるとおっしゃっておりましたけれども、これは全体で四%にしかすぎないんだという話ですが、そういう話になると、やはり消費者、我々、スーパーなりお店とかでいろいろ買って、これはおかしいじゃないかとかという話になると、消費者センターというのもあるかもしれませんが、消費者センター以外に、やはり認証を受けたADRというものは、どうもあった方が我々はいいんじゃないかな、こう考えるんですが、原参考人はどうお考えでしょうか。

原参考人 消費者が抱えるトラブルのうち四%ぐらいしか消費者センターと国民生活センターには行っていなくて、それが百四十万件と聞かれて大変大きな数に驚かれたと思いますけれども、百四十万件のうち、かなりが不当請求、架空請求ということに今なっておりまして、それでもここ数年は百万件に近いというオーダーになっています。

 こういったものが認証制をとるADRに行くのか、そうではないADRに行くのかというところになりますけれども、既に、製造物責任法が成立をしたときに、各事業者団体がPLセンターというものをつくっております。それから、金融機関でもいろいろなところがこういったADRの機能を設けておりまして、必ずしも消費者にとっては遠い存在とかそういうものではないんですけれども、いかにしてもその認知度が低いということと、それから、事業者団体がおやりになっていらっしゃるので、専門性はあるにしても、公正さがどうなのかということが、もう少し透明性を上げられないと外から見えないというようなところがネックになっているかと思います。

 ですから、こういう法律ができることでそのあたりの改善は大変進んでいくというふうに期待をしておりまして、利用は高まると思います。

 それで、認証を受けるかどうかですけれども、弁護士会の仲裁センターの場合は、弁護士法第七十二条のことはありませんので時効中断とかほかの関連になると思うんですが、ほかの民間のADRは、やはり弁護士法第七十二条とそれから時効中断、ここをどう判断されるかというところになって、やはり弁護士会と同じように、少し実績とか様子を見てというようなことでの判断になられるのではないかなと。

 やはりそれぞれの判断がなされるというふうに考えておりまして、消費者からしても、どちらがいいというふうにも今の段階で即答はちょっとできかねるというふうな感じがしておりまして、それぞれのADR機関の判断を見させていただきたいと思っております。

左藤委員 今おっしゃった弁護士さんとの関係で、弁護士さんに入っていただくと当然安心、厳格というか、中立という立場だろうと思うんですが、ちょっとかたいかなとか柔軟性がないかなとか、こういう問題があるんですが、その辺はどういうお考えですか。

原参考人 かたいかなとか柔軟性があるかなというよりは、紛争の内容によっては、法律的な専門性よりは、例えば、医療ミスとか医療事故であれば医療の専門家ですとか、それからPLセンターなんかですと、製品の欠陥についての専門家というようなものの判断がまず求められるというようなものもあって、そういった紛争の案件によるというところですね。だから、必ずしも法律よりは、少し専門性がある意見を聞いてみたいというようなところにあると思います。

 それから、弁護士さんの関与を求めることができるというような規定ではちょっと緩やかなのかもしれませんけれども、私は、弁護士さんは努力なされればいいと思いますね。いろいろなADR機関がぜひ弁護士さんに加わっていただきたい、かかわっていただきたいというふうに、努力をなさっていかれるということが一層魅力を高めるということになると思っております。

左藤委員 松尾参考人も原参考人も、実は執行力の付与については、どっちかというと慎重なお考えをなさっています。でも、もしADRに持ち込んでぜひこれをお願いしたいというので、話がついた。ついたけれども、執行力がなかったら実行してくれるか。裁判で判決がおりてもなかなか実効を伴わないときがあって、少年犯罪なんか特によくあるんですが、これはちょっと話が別ですけれども、そういう問題があるんです。

 それについて青山先生は、この執行力の付与についてはどうお考えでしょうか。

青山参考人 執行力の付与の点は見送ったということは先ほど申しましたけれども、もうちょっと立ち入って申しますと、両当事者がここのADR機関で紛争を解決してほしいというふうに申し込んできて、それではやりましょうとして受けて、そして両当事者の和解が成立した。和解が成立したにもかかわらず、一方の当事者はその義務として与えられた、課されたものを実行しないということになりますと、その紛争解決機関のかなえの軽重を問われるということになりますし、当事者の期待が裏切られるということになる。

 そういうことからいいますと、両当事者が真に合意をして成立させた和解については、それが裁判所でなくても、ADR機関であっても強制執行ができるということにする方が、理論の筋としては落ちつきがよいということは言うまでもありません。

 しかし、今度の裁判外紛争解決の促進に関する法律は、何しろ初めての試みとしてこういうものを導入したわけでございまして、この法律がどういうふうに実際に施行されるかということについては、先ほど申しましたように、十分に確信が持てない。そこで、五年間の施行の様子を見てから、それで、もしやはり必要だということになれば、その段階で執行力を付与するという改正をしても遅くないのではないだろうかというふうに考えたというのが見送った経緯でございまして、検討会として執行力は付与すべきでないという結論に達したということではございませんので、これは将来の課題ということで、引き続き検討していただければというふうに私自身は思っております。

 以上でございます。

左藤委員 もう一つ、認証の件ですが、認証審査参与員というのを法務大臣がお決めになって意見を聴取する、こういうことになっておりますが、この認証審査参与員、特に経験豊かな方、専門知識を持っている方、こういう漠然とした考え方、これは後で決めるんですが、これについて、例えばこういう人であって人数はこの程度だ、こういうお考えは、青山先生はどうお考えでしょうか。

青山参考人 検討会では、認証について審査をする、あるいは、認証を取り消して異議申し立てがあった場合にそれを審査するということについては、法務大臣だけで判断するのではなくて、第三者機関、公正な第三者機関でこれを審査すべきであるということが強く主張されました。しかし、こういう財政状況の中で、新しい第三者機関をつくることは不可能であるということになった結果、法務大臣が認証する、あるいは認証の取り消しについての異議申し立てを審査する場合であっても、必ず参与員と言われる学識経験者の意見を聞くという仕組みをそこで仕組んだわけでございます。

 ただ、どういう人がその認証を審査するのが適当であるかということについて、きちんと法律に書いてあるわけではございません。多分、私は、ADRについての実務家と、それから、ADRについてこれまで研究をしてきた研究者、そういう方々の英知を絞ってその審議に当たるということであろうというふうに思っております。

 人数としてもはっきりいたしませんけれども、例えば十人から二十人程度ということが私としては考えられるのではないかというふうに思っております。これは私見でございます。

 以上でございます。

左藤委員 もう時間がありませんので、これを最後の質問にさせていただきます。

 同様に、松尾先生、弁護士会としては今の件、参与員についてはどうお考えか、お願いを申し上げます。

松尾参考人 弁護士会としては、認証審査参与員にはできるだけ法律の専門家であり第三者的な判断もできる弁護士が入るべきである。弁護士が入らないとしても、やはり、例えば退職した裁判官とか、そういう法曹資格のある人間が入ってほしい、こういうふうに考えております。(左藤委員「人数の方は」と呼ぶ)

 人数については、事務局の方からもはっきり言われていないんですが、これは、認証を申請する件数との兼ね合いで決められていくことになるのかなと思います。一人、二人では足りない、やはりある程度の、少なくとも十人程度の人数は欲しいな、そんなふうには思っていますけれども。

左藤委員 ありがとうございました。

 以上で質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

塩崎委員長 次に、漆原良夫君。

漆原委員 公明党の漆原でございます。

 きょうは、三人の先生方、本当にありがとうございました。

 ADRというのはなかなか聞きなれない言葉で、私どもも、そんなのあったのかなという、特に民間のADRについては、本当に国民の皆さんも知らないし、我々も知らないで、民事紛争解決はやはり裁判所を中心にしてやらざるを得ないんだなということで、いろいろなことを考えてきたんですが、利用しやすい裁判を考えてきましたが、やはり弁護士が足りないということもあり、裁判の硬直性ということもあり、なかなか少額の、特には少額の事件、また事件になる直前のことについては利用されないという非常に残念な思いであったんですが、ADRという基本法ができて、これが本当に意見書にあるように裁判と並ぶ魅力的な選択肢というふうになるというのであれば、大変これはすばらしいことだなと。また、これを育成して、日本に余り根づいていない制度を日本に育成していく大きなきっかけになるんじゃないかなというふうに思って、大変評価しております。

 ところで、原参考人にまずお尋ねします。

 認証制を今回選択制として導入したわけでございますけれども、ADR、アメリカで大変盛んだと言われておりますが、アメリカのADRは、この認証については、認証なしでやっているのか、認証ありでやっているのか、選択なのか、この辺はどんなものなんでしょうか。

原参考人 アメリカの状況については、確かにこのADRというものについてはアメリカからスタートして、かなり盛んになってきて、今国境を越えるトラブルもふえているので、消費者トラブルの中でもさまざまな国で取り組みがあるというところにあると思いますけれども、アメリカ自体はこういった認証制というものをとっているというようには私は聞いておりません。

 ただ、私も、学者、肩書きはそのようになっておりますけれども、学者ではありませんので、正確なことについては青山先生の方から御回答をいただいた方がいいかというふうに思いますが。

漆原委員 では、青山参考人にお尋ね申し上げます。

青山参考人 お尋ねでございますけれども、アメリカのADRは認証制度というものをとっておりません。

 アメリカではなぜADRが盛んになったかといいますと、先ほども申しましたように、事件が非常にたくさん出てきたということで、そして、裁判には時間と費用がかかる。その時間と費用がかかる原因は主にディスカバリーです。お互いに相手方の手持ちの文書を取り合って、トライアルになる前に物すごい分量の文書をお互いに取り合う。それが非常に費用がかかる、時間もかかる。それよりも、当事者同士で相対で解決しよう、しかし話し合いでは解決しないので、公正な第三者に間に入ってもらって、そこで話し合いをしましょう、そういう形でADRが盛んになってきたわけであります。

 現在、アメリカでは、連邦ADR法というのが制定されまして、裁判所に来た事件でも、これはADRが適当であるという場合には、あのADRに行ってあなた方は解決してきたらどうですかというふうに勧告をするという仕組みで、裁判所とADRの関係が連携がとられております。

 なぜ日本で認証制というものを取り入れたかということでございますけれども、先ほどもちょっと申しましたけれども、これは、日本ではADRがまだ十分に歴史があるわけでもない、しかし、その中でこういう新しいものを、ADRを紛争解決機関として裁判所と役割を分担しながら国民に選択肢を広げていくとすれば、やはり法的効果との関係で認証という制度を取り入れざるを得ないというふうに最終的には決断してこういうことになったということを御理解いただきたいと思います。

漆原委員 その点は私も同感でございます。

 そこで、認証の基準というふうになるわけでございますけれども、先ほど松尾参考人の方から、これは六条の五号ですか、詳しく述べられておりました。私も、この点、この書きぶりが非常にひっかかりまして、「弁護士の助言を受けることができるようにするための措置を定めていること。」というふうな書き方になっているわけですね。

 やはり公正性の担保として何らかの弁護士の関与が必要だ、実施者が弁護士でない場合は、最低限必要だろうというふうに私は思っておるんですが、この書き方ですと、どこまで関与させるのか不明なんですね。

 例えば、ADRを行う事務所に弁護士が常駐して、必要に応じてすぐ、よく裁判所では、調停を行う場合に、裁判官が常駐して、調停委員の弁護士が担当していますけれども、裁判官がいて、すぐ聞きに行ける体制になっていますね。それと同じように、弁護士が一人ないし二人その事務所に常駐して、何か事があったら、すぐ即座に聞きに行ける体制をとるべきだというふうに言っているのか、それとも、もっと緩く解釈すれば、弁護士さんに聞けるという契約でもあればいいなという、法律助言顧問契約でもしていればいいのかなという、こんなところの、幅広いわけなんですけれども、ここはどの程度の弁護士の関与を必要とされているのか、青山参考人にお尋ねしたいと思います。

青山参考人 先ほど、これは松尾参考人からも御指摘になりました第六条の五号の「民間紛争解決手続の実施に当たり法令の解釈適用に関し専門的知識を必要とするときに、弁護士の助言を受けることができるようにするための措置を定めていること。」というこの文言の解釈いかんということ、そういう御質問であったかと思います。

 これは、七十二条の適用を外してADRがやれるということでございますから、そのための担保としてこの六条の五号を置くという経緯でございます。

 そういたしますと、一番大事なことは、両当事者が話し合いをしまして、公正な第三者を仲介人にして話し合いをしまして、最後に和解を取り結ぶ、それで紛争が解決するわけでございますが、その和解を取り結ぶ最後の場面というのは、しばしばやはり法律的な判断が必要になる場面がございます。全く法律的な判断が必要でないという事案もそれはたくさんございますけれども、法律的な問題が絡んでくるという事案があるわけでございます。そういうときに、弁護士の助言がすぐ求められる、そういう体制になっている、そういうシステムになっているということを、これは要求しているものであろうというふうに思っております。

 なお、これは私が今申しましたのは私見でございまして、ADR検討会は基本的な枠組みを設定するのが仕事でございまして、あとの条文化作業は、司法制度改革推進本部の事務局あるいは法制局等できちんと詰めた上で、この法律がつくられた。この法律の文言の正確な正しい解釈は、さらにこれから、そういう立法当局が詳しい解説書なりを公にして、その基準に従ってなされるというふうに思っております。

 以上でございます。

漆原委員 この点、松尾参考人はどのようにお考えでしょうか。

松尾参考人 先ほどもお話ししましたけれども、この文言、非常に不明確、あいまいだなという感じがしておりまして、やはり、この国会の審議の中できちっと、どういう場合が六条の五号の規定に当たるのかということを、政省令あるいはガイドラインなどを設けてはっきりさせていただきたいなというふうに考えております。できるだけ弁護士の関与がこの文言で狭められないように、実質的に弁護士法七十二条の趣旨を尊重されて運用されるように期待しております。

漆原委員 和解はお互いの権利関係がごちゃごちゃした中でやって、あるとき急に和解しようという機運になる場合があるんですね。そのときに法律解釈が、ちょっと待ってよというのでその機運を逃しちゃうと、今度集まったときもう和解ができないというケースがいっぱいありますね。ですから、私は、その機運になったときに即座に弁護士に相談できる体制をとっていなければやはりいけないんじゃないかなというふうに思っております。

 それから、これは原参考人にお尋ねしたいんですが、例えば、やはり公正性の担保なんですけれども、消費者金融が実施主体になったとしますね。そこにお金を借りた一般の消費者が相談に行くという、認証制だから安心だと思って行くわけですね。実際は、その元本を、高金利を払って長い間払ってきました。元本を算入できるにもかかわらず、任意で弁済すれば不法利得にならぬわけですから、相談に乗った人が、業界に有利なように、元本算入をしないで、高額な元利合わせて任意で弁済するような契約をする。これだと消費者は全然保護されませんね。こういう場合は、この法案で措置はされているんでしょうか。

原参考人 実は私もそういった点を大変恐れているというところで、私自身が考えるのは、苦情とか紛争というものがある、これがどういう苦情とか紛争の解決の機関にかかわるかによって第二のトラブルの温床になるというふうに思っておりまして、そういう意味で、ADRがどういった形のものができ上がっていくのか、公正さが担保されるのかというのは非常に大きな問題だというふうに考えております。

 今回の法律は認証制を軸にしておりますけれども、一応基本的な考え方というようなところに示されている点は、私は、認証制をとらないADRでも尊重していただきたいというふうに思っております。そこの部分は、認証制をとらないところは、自由と言えばとても言葉はいいですけれども、悪く言えば野放しということにもなるわけですので、そのあたりに向けての消費者団体によるチェックですとか市民団体によるチェックとか、そういったことも今後必要になってくるのではないかなというふうに思っております。同じようなところは危惧しているということです。

漆原委員 この点、青山参考人、いかがでございましょうか。

青山参考人 ADR法ができてADRが進展するのは大いに結構だけれども、公正が担保されなければいけないとおっしゃるのはもうそのとおりだと思います。

 公正の担保の仕方はいろいろあると思いますが、認証制度もその一つですけれども、認証を受けないADRというのも十分にあり得る。それはそれで独自の活動をして、例えば、自分のところは時効の中断は必要ないから認証を取らないんだということも十分あり得ると思います。

 問題は、そういうADR機関が紛争の当事者を食い物にしないようにチェックしていくという体制ですね。これは、情報の公開を求めるとか、あるいは、今ADRジャパンというようなインターネットがありますけれども、そういうもので常に国民的視点から監視していく、そういう体制も必要ではないだろうかというふうに考えております。

漆原委員 時間が参りました。大変ありがとうございました。

塩崎委員長 次に、辻惠君。

辻委員 民主党・無所属クラブの辻惠でございます。

 私は、このADRということを論ずるに当たって、この検討会で三十七回検討会をされたということで、部分的ではありますが、一応議事録を一部拝見いたしました。

 これは、先ほど原参考人もおっしゃっていたんですが、司法制度改革審議会の報告書で、ADRが、国民にとって裁判と並ぶ魅力的な選択肢となるよう、拡充、活性化を図るということがまずその目標として最初に設定されていて、それにそぐうような方向でどう議論を煮詰めていくのか、考え方としては二つの方向からの考え方があるという御紹介もありましたけれども、どうもそういう傾向が強いのかなというふうに思うわけであります。

 私は、これは裁判を含めて日本の紛争解決の制度をどのようにつくっていくのかという国家的な戦略の問題だ、こういうふうに青山参考人もおっしゃっておられますが、まず、基本となる裁判制度というものが今の社会、国家の中で本当に十全に機能しているのかどうなのか、ここの検証抜きには、ADRということを何か接ぎ木的に持ってきても、本来的な国家的な戦略を打ち立てることにはつながらない、このように思うんですね。

 もちろん、現在の裁判制度の検証ということは一方でなされているし、その三十七回の中で、私も全部読んでいるわけではありませんから、当然議論、検討されているというふうに思うわけでありますが、まず、今の裁判制度、司法消極主義ということで果たして本当に十全に機能しているかという問題があるし、また、迅速に解決が図られないのではないかとかいうような点もあるし、専門性について、本当に専門的な事案についてカバーできるような状態にあるのかという問題も確かにあります。

 しかし、では仮に、専門的な知識が十分に裁判でカバーできていないからといって、そのかわりにADRを持ってくるというのは、私は本末転倒ではないか、このように思うわけであります。弁護士法七十二条の専門性、独占主義ということがありますが、法律関連各職種の方々の専門性を生かすということについても、裁判の制度の中でどのように位置づけて、より積極的に関与していただける位置があり得るのかということを一方で検討すべきだろう。そこの検討がどこまでなされたのかということがやはりもう少しきちっと明確にされるべきだし、それにかわるものとしてADRでということになると、やはり、繰り返しになりますが、どうも本末転倒なんではないかというふうに私は思わざるを得ないのであります。

 そもそも、まず、現時点でADRの立法目的はよしとしましょう。ADRの立法事実が本当に現在成熟したものとしてあるのかということの検討が必要だと思うんですね。司法型のADR、行政型のADR、民間型のADRというふうにあって、結局、現時点で機能しているのは司法型のADRであって、民間型のADRについては、私も弁護士として交通事故紛争処理センターの委員を五年ぐらいやりましたし、また、弁護士会の仲裁センターの委員も三年ぐらいやった。それから弁理士さんの、私、弁理士登録もしていますから、弁理士の立場で、知的所有権の仲裁センターについても登録をしたりしていた。しかし、なかなかそれは、民間型のADRが十全には機能していない。

 こういう中で、本当にADRを今立法化を急ぐ立法事実が本当にあるんだろうかという点が私としてはお尋ねしたいところであって、私は、二十一世紀の日本の国家、その中での紛争解決の戦略ということを考えるときに、やはり、国民の間のいろいろな関係の紛争について権利義務があいまいにされることは、最終的にはやはりこれは司法の機能としてきっちりと結論が、権利性はきちっと救済されるんだということが一方できちっと担保されていて、その上で具体的な話し合いでの解決のあり方とかいうことをいろいろ探っていくというのはいいと思うんですけれども、今、その権利救済というところが司法消極主義を含めてきっちりしていないときに、この問題をおいておいてADRだけを先行するというようにどうも司法審の方が考えているような節を私は感じてならないもので、その点に関連してちょっとお伺いさせていただきたい、このように思います。

 まず青山参考人に、これは定義としては、窓口相談とか苦情受け付けとか、そういういっぱいあるような、これはADRとしては定義としては含まないということでいいんでしょうか。

青山参考人 司法制度をどういうふうに国家戦略として位置づけるかという大議論を伺いましたけれども、それは全くそのとおりでございます。ただ、ADR検討会の立場から申しますと、司法制度改革審議会の報告書ができ、それを受けて十一の検討会ができて、至上命令が与えられたわけでございますので、私どもはそれに向かってひたすら努力をしたというのが実際のところでございます。

 ただ、もちろん、ADRだけが突出しているわけではありませんで、私は別に法制審議会の民事訴訟法部会部会長、それから人事訴訟法部会長をやりまして、民事訴訟法の改正も手がけたところでございまして、民事裁判というものを、計画審理を進め、専門委員を導入し、迅速に解決するということも一方ではやっているということは御理解いただきたいと思います。

 そこで、お尋ねの、ADRの定義に相談とか苦情処理ということが入るか否かという御質問だというふうに承ってよろしゅうございますか。これは、条文で申しますと、第一条の裁判外紛争解決手続という言葉の定義といたしまして、「訴訟手続によらずに民事上の紛争の解決をしようとする紛争の当事者のため、公正な第三者が関与して、その解決を図る手続をいう。」ということでございますので、ただ相談を受け付ける、あるいは苦情処理を受け付けるというのは、ここで言う裁判外紛争解決ではない、公正な第三者が両当事者の間に立つということを考えております。

辻委員 消費者トラブルで、原参考人、数十万件あったのが百数十万件にふえてきたというふうに先ほどおっしゃったと思いますけれども、結局、苦情のトラブル、相談はあるけれども、これは両当事者が顔をそろえて、公正な第三者が間に入ってということでは必ずしもないわけであるから、今、青山参考人がおっしゃった、多くの場合はADRの対象外の問題なのかなというふうに思うわけであります。

 そこで、どうも、どの参考人のお話を伺っていても、ADRが弁護士会を中心にいろいろ、千件とかふえてきている、徐々に広がってきているというお話はあるんですが、それを何とか法制化しなければいけないということが、むしろ、確固としたADR法案ということで位置づけを与えれば逆に今のADRが活性化するんだと。どうも本末転倒、つまり、ADR法案をつくれば何か活性化するんだと。そこはそのように思えてならないんですが、青山参考人にその点、ちょっと時間がないので申しわけないんですが、一点伺いたい。

 それから、非認証のADRについて、これは横行の危険、野放しの状態になる危険がある。ではどうチェックさせるのか。私は以前、まあ非常にとんまではありましたけれども、オートバイの自動二輪を取ろうということで自動車教習所に通ったら、そこは実地試験免除だと思って通っていたら、免除じゃなかったんですよね。いわゆる認証を受けていると思ったら、認証を受けていない。そういうような消費者被害、まあそれはもう自業自得ですけれども、消費者被害的なことが起こるADRというのはいっぱい生じる可能性があるんですよ。だから、そういうのが野放し状態になってしまうというのはどうなのかということを青山参考人に伺いたい。

 それから、ちょっと時間の関係で、質問だけ先に申し上げさせていただきます、ちょっとずるいかもしれませんが。

 松尾参考人に、ADRは市民の権利利益に資するんだと。では、具体的にどういう場合をイメージされているのか。高木佳子委員は第四回の検討会で、もともと本人の決断というのがADRの前提なんだから、もともと手間と時間がかかる、収益ビジネスはできないんだ、簡易迅速、廉価ということは実現は難しいんじゃないかというようなことをおっしゃっている。この点について、同じ弁護士としてどのようにお考えなのか。

 それから、原参考人について、金融機関がADRが幾つかある、歴史的に長いがほとんど機能不全であった、これはどう分析しているのかということをまず前提的に検討しなくちゃいけないということを第一回の検討会でおっしゃっている。では、これはどう検討されてこの法案ということに合意をなされていったのか。

 そしてもう一点、司法型、民間型では圧倒的に消費者に不利な状況が生ずるんだ、したがって行政的ADRを考えていく必要があるんだというふうにおっしゃっていた。そうすると、私は、これは行政権が肥大化するのでいろいろな問題点が生じるだろうというふうに思うんですが、結果的には民間型ADRでこのような法案が提案されているのは、この中で当初原参考人がおっしゃっていた消費者に不利な、圧倒的不利な状況というのは救済されないことになっているのか。

 それぞれお答えいただきたいと思います。

青山参考人 私に対する質問は二点あったと思います。

 初めに、ADR立法ありきではないか、ADRさえ、立法さえできればADRが盛んになるというふうに考えているのではないかという御質問であったかと思います。

 先ほども冒頭に申しましたように、ADRの立法ができればADRが盛んになるということは考えておりません。むしろ、ADRをますます盛んにしていくためには、先ほど申しました幾つかの施策が相伴って、ADRが日本における司法制度の中にきちんと位置づけられることになるであろうというふうに考えております。

 第二点の質問は、認証を受けないADRが野放しになるのではないか、これは消費者が裏切られることになるのではないかという御質問であったかと思います。

 ADRは本来、多様性、自主性を持ったものでございますから、認証制度を導入するということはむしろ例外的な措置であるというふうに私は考えております。

 それでは、認証されていないADRによってだまされることがあるのではないか、被害が生ずるのではないかという御質問でございますけれども、もともと、紛争解決事業というものはペイをする事業ではございません。アメリカのアメリカ仲裁協会という、AAAという組織がございますけれども、そこは年間、ちょっと数字がはっきりしませんけれども、一万件とかそういう数を扱っているからこそ独自の事業でペイをしておりますけれども、通常はなかなかそれでペイをするということはない。そこに参入してくるというのは、よほどそういう、自分の事業と関係があるというようなところが入ってくるんだろうと思います。

 場合によっては、そういうことは、例えば暴力団などが入ってきた場合には恐らく刑事的な問題としてこれをチェックすることになるであろうし、あるいは、先ほど言いましたように、そうでなくても、十分な情報の公開がなされ、賢い消費者としてこれを選択していく、そういう社会に日本が成熟していくことを期待してADR法を世の中に私としては送り出したいというふうに考えている次第でございます。

松尾参考人 ADRが市民の権利利益の擁護に資するのか、こういう御質問でしたけれども、私は、弁護士の関与が実質的に担保されれば、それは市民の権利利益の擁護に資する制度になるだろう、こういうふうに考えております。

 具体的にどういう場合にADRが利用されるのかということについては、やはり裁判というのは公開で行われ、また、権利義務を確認するという意味で非常に厳格な手続がとられているわけです。そのために時間が非常にかかるという側面は否めないと思うんです。その辺は、ADRの場合、手続も比較的柔軟に定められておりますし、非公開であるということからして、そういうケースなどにおいては利用されることになるだろう。そのほかに、簡易で迅速な解決を求めるとか、安価、比較的手数料が安いということなどから利用される余地が十分あるだろうと考えております。

原参考人 私の発言、多分二年ぐらい前のものだと思いますけれども、金融関係については、金融庁の中に金融トラブル連絡調整協議会というのを設けて、今四年目ぐらいに入っているかと思いますけれども、各金融機関のADRを集めて、それから消費者団体、金融庁も参画をして改善のための努力をしているというところにはなると思います。

 その当時お話をしたことは、まず、ADR、本来テーブルに着く、着かないというのは自由なものですから、まず消費者側が申し立ててもテーブルに着かない、それから資料を出さない、結果が出ても結果を尊重しないというようなところがあって、消費者側がせっかく利用しようと思っても事業者側がそれをはねてしまうというところが非常に問題と思っておりまして、それから、開示もほとんどされていなかったので、一体どういう案件がどのように改善をされているのかとか、担い手の育成あたりについても不十分さというようなものを感じていたというのが二年前の状況です。徐々に改善ですけれども、根本的なところにはまだなかなか至っていないということですね。

 それから、行政型ADRについてなんですけれども、おっしゃられるとおりのところもございまして、税金をどれだけ使うのかという話がありますので、私としてはちょっと二つを考えていて、それであっても行政型ADRというふうに総括、総称していますけれども、一つは助言機能的なもの、それから本当に第三者が入っての紛争解決というようなところと両方あると思うんですが、助言的なところはかなり期待をされている、消費者もそれを期待して電話をしているというところがあると思います。

 それから、紛争解決については、私は、わずかであっても機能としてあることが、やはり事業者へのカウンターパンチとか、消費者政策に生かすところへは機能するのではないかというふうに思っております。ただ、無限定なことは考えておりませんで、やはり事業者の責務であろうというふうに思っています。

 それから、先ほどちょっと本末転倒というようにおっしゃられたところの一つなんですが、専門性の話なんですけれども、専門性があるからADRというふうには私も考えていなくて、もちろんそれもあるんですけれども、私は、やはり裁判の中で、例えば鑑定人を得たいと思っても、自動車の欠陥であっても鑑定をしてくださる方が本当に少ないですね。それから、医療もそうですね。そういうところで、私は、裁判の中にもっと専門性というものが、皆さんが参画をしていただけるというような道筋がぜひそれは並行して道を開けていただくように検討していただきたいというように思っております。

辻委員 時間が参りました。

 いろいろ議論をしてさらにいろいろお教えいただきたいところが多々ありますが、きょうはこれで終わらせていただきます。

 どうもいろいろありがとうございました。

塩崎委員長 次に、樽井良和君。

樽井委員 民主党の樽井良和です。

 参考人の皆様方、朝から貴重な意見を本当にありがとうございます。そして、たび重なる今までの検討会の中で御尽力をいただいたこと、心より敬意をあらわします。本当にありがとうございます。

 私、せんだって、代表質問の方でADRの方を質問したんですけれども、まず、一つ実感として感じるのが、ADRというものが認知されていないということなんですね。言葉も含めてのことなんですが、例えば後援会でADRの質問をすると言うと、だれもADRというものを知らない。さらに、国会でいろいろな審議があっても、後ろの方から議員が何のことを言っているのかわからないからやじができない、そういう状態でありまして、原参考人にちょっとお伺いしたいんですが、先ほど言っておりました言葉の明確化、ADRを例えばアピールするためにどういった方法があるのか。

 そして、個人的な意見で結構ですので、ADR、オルタナティブ・ディスピュート・レゾリューションですか、それやったらぱっと訳せる人もいないと思いますので、具体的に何と呼べば国民がぱっと意味を理解して、そしてアピール性があるのか。その具体的なADRの呼び方というか一般認知の言語を明確化した言葉がおありでしたら、ひとつお教えいただきたいのですが。

原参考人 最後に一番難しい問題が出てきたという感じがしているんですが。実はADR検討会でも第一回目の検討会のときに、この言葉が難しいということでわかりやすい言葉を考えようと、それは宿題だったんですね、最後までだれも宿題を提出できなかったというのが実態です。

 ただ、法律を提案するためには何らかの言葉が要るということで、実直に、丁寧に、裁判外の紛争の解決手続という言葉をそれぞれはめ込んだということで、私としては、処理ではなくて解決ということが入ったところは皆さんの合意のような感じはしております。

 ただ、これにかわるとてもいい提案というのはなかなか難しくて、これは青山先生にも聞いていただきたいと思います。

    〔委員長退席、西田委員長代理着席〕

樽井委員 それでは青山先生、ひとつお願いします。

青山参考人 ADRという言葉が認知されていないということでございますけれども、私もこういう経験がございます。もう二十年ぐらい前でございますけれども、あるところでADRの話をいたしました。ADRって何、それはアデランスのことと聞かれたことがございまして、そこから思いますと、司法制度改革審議会の意見書で、裁判と並ぶ魅力的な選択肢となるように拡充、活性化を図れということになり、法案ができ、こういうところで参考人としてADRについてお話をすることになるというのは、やはり世の中随分進歩しているというふうに思うわけであります。

 それで、ADRという言葉はどう裁判外紛争解決という言葉以外にもっと優しく呼びかえてわかりやすくしたらいいか、どうだろうかといいますと、これはなかなか難しい。今、原参考人がおっしゃいましたように議論をしたところでございますが、これはアイデアを募集したらどうかというふうに私は思っております。

 場合によっては、NPO法人が今でもNPO法人として一般に通用していくように、これからは裁判外紛争解決という言葉にかわってADRという言葉がもう一般に通用するようなことになるかもしれない。先ほど、学会の名称を私もさんざん考えまして、結局、仲裁ADR法学会ということで学会を設立いたしましたので、これからさらに十年、二十年たつとADRはもうすっかり日本語となっているということになるかもしれないというふうに思っています。

樽井委員 アデランスも結構なんですが、ぜひわかりやすい、ADRを普及させるというのも大事なんですが、例えば簡易紛争解決法とか、所とか、そういうような、裁判以外のという以外にまた、その性質をあらわした言葉も入れていただけたらアピール性がちょっと高くなるのかななんて考えております。

 それでまた、今お答えいただいた青山参考人の方に質問いたしたいんですが、ADRと、要するに裁判の紛争解決の手法とかによっていろいろ判決が変わってくると思うんですね。先ほどおっしゃっていたように、実情とか当事者の本意を踏まえた結果がADRの方が出やすい。裁判の方だったら、恐らく今までの判例を弁護士が見て大体こんなところだろうと決めていくことが多いと思うんですが、具体的に、ADRと、それと裁判と、こんな紛争を解決した場合は、裁判だったら当然こんな結果だったんだけれども、ADRだからこんな結果になりましたよというような、そういった具体例はありますか。

青山参考人 やはり裁判は、実体法を基準として解決して、判決はそれに従って書かなくちゃいけませんものですから、原告の請求が、例えば百万円の債務不履行だ、それで、証拠を調べると被告は百万円確かに借りているということになりますと、それは被告は原告に百万円を支払えという判決を書く以外にはほかに書きようがない、これが裁判の実情でございます。

 しかし、ADRだと、百万円払えというふうに申立人が言っている、しかし、その実情を聞くと、いや、今までだってさんざん当事者の間で取引があって、十分もうけているじゃないかとか、被告はそれだけの資力がたえ得るかとか、そういういろいろな実情を考慮した上で、百万円ではなくて、これは六十万円で解決するというようなことがADRなら、これは当事者の合意ですから、最終的にできるというところが、裁判とADRの違いというふうに御理解いただければと思います。

樽井委員 結局、最後の判決でどういったことを期待するからADRを選ぶとか裁判を選ぶとかいう、グレーゾーンとかあるいはオール・オア・ナッシングをとるのかとか、いろんなことを考えるのも国民の選択肢だと思いますので、大体この例だったらこういう判決が出たんだというような、そういう経過みたいなのが選ぶときのある程度の基準になると思います。個性的なADR、あるいは、裁判ではこうだけれども、こういうところでやればこんな結果になりましたよというような事例もぜひ挙げていただければと思います。

 それで、松尾参考人にお伺いしたいんですが、弁護士が一定の関与をするべきだということなんですけれども、通常、例えば、歯医者さんとかでも、難しいところを歯医者さんがちょちょいっとやってあとは看護師さんがやるのと同じように、難しいところにちょっと弁護士が出てきて手を加えるというのは当然考えられるんですが、迅速で安価なADR、そこに、例えば弁護士の方が来て手を加えた。その相談料とか、当然かかってくると思うんですね。

 それで、何回も相談に行っていたら余り値段が変わらなくなっちゃったとか、あるいは、余りにも簡単なことを聞きに来るので、こんなのだったらもうおれがやった方が早いというふうにいらいらしてくるとか、いろんな事例があると思うんですが、その辺について、実際にどういった形で関与して、関与することによってどういった、要するに、それをADRで訴えて、弁護士の方が関与することによって訴えた人が得をするのかどうかということですね。弁護士に最初から行っているのと値段が変わらないようだったら余り意味がないと思いますので、その辺、どういったふうな関与の仕方をされるということなんでしょうか。

    〔西田委員長代理退席、委員長着席〕

松尾参考人 あらゆる紛争は、これはやはり基本的には法律に基づいて、法律は紛争を解決するための規範だと思うんです。そういう意味で、法律によらずして紛争を解決するというのはちょっと問題ではないかと思います。

 それで、今の問題ですが、ADR法というのは、手続主宰の中で、やはり紛争を解決する過程で重要な場面というのはあるわけですね。法的判断が求められるとか、果たしてこの内容が社会的に相当なものかどうかという、そういう実質的な、非常に難しい判断が迫られるケースが結構ある。そういう場合に、弁護士が関与してきちっといろいろ助言をしていくということであって、そのことが決して手続費用を高くしたりすることにはならないと考えております。

樽井委員 いろいろな事例に対して弁護士の方がいろいろ意見を言いながら、最初はADRをやっても頼りない機関もあると思いますので、そういったところにぜひ御尽力いただいて、紛争解決がきちっとできるように指示していただければと思います。

 ちょっと時間が少ないので、最後になって、ちょっと皆さんがまだ聞いていない質問をしようと思うんですが、原参考人にお伺いしたいんですけれども、今会社でよくやっているのが、例えばEコマースですね。個人や企業が商品購入から決済までの商取引を、インターネットとかを使って行ってしまうということ。これが、このADRに関しては可能性が非常にあることだと思います。

 実際に、いろいろな紛争を、例えばホームページで、ここだったら解決してくれるんじゃないかというページを探して、その中で例えばフォームがあって、こういうことを解決したいんですけれどもとかいって、やりとりをしていく。そういった中で紛争を解決していくということがあると思うんですが、同時に、ネット上では、また情報が何か漏えいしてしまったりとか、いろいろな問題が起こると思うんです。

 それで、原参考人の方がEコマースの利用について何か言及をされていた箇所があったと思いますので、海外でこういうふうな事例があるとか、ここから先、例えばカテゴリーキラー等、価格破壊においてもこういったことが起こり得るということ、あるいはこういう紛争にはこれはすごくいいんだとか、またそれをどういう機関がつくっていってどういうふうに進めるべきだとか、このADRをEコマースでやっていく、そのことについて何か御意見があれば、お伺いしたいんですが。

原参考人 Eコマースの利用については、先ほどコスト論の話をいたしましたけれども、コストを削減するという意味でも可能性としてはあるのではないかと思っております。日本でももちろんありますけれども、ただ、かかる案件が何か少額なものなので、それであってもなかなかコスト的には大変だというのがたしかヒアリングの中でもありました。

 私自身は、特に電子商取引の部分については、これは、国境を越える取引というものもございますので、Eコマースでやっていくということは十分に考えられるのではないかなというふうに思っています。

 おっしゃられたように、情報漏えいとか、こういったあたりが課題としてはありますけれども、例えばPLや何かですと、実際に製造物の欠陥というようなところが争点になりますから、物がないといけないというのでなじまないというようなところはあるかもしれませんが、電子商取引とか金融とか情報関連とかこういった分野では、かなり可能性が高いというふうに思っております。

樽井委員 貴重な御意見、朝から本当にありがとうございます。

 時間が迫っておりますので、お三方に、このADRにおいて、どこを改善するべきなのか、あるいは、どこに今まで問題点があったのかということも踏まえてなんですが、この後何をすべきなのか、ずばり一言ずつお伺いしたいのですが、お三方、よろしくお願いします。

青山参考人 冒頭の意見陳述で申しました三つのうちで私が一番大事なことだと思っておりますのは、ADRを担当する人材の養成だというふうに思っております。

 以上です。

松尾参考人 最初のお話でも申し上げましたけれども、やはり人材の養成とか、あるいは理解の増進を図るために広報活動を充実させるとか、そういうような基盤の整備をぜひ積極的にやっていただきたいと考えております。

 以上です。

原参考人 三人同じ答えになるのは大変恐縮なんですけれども、法律ができることはやはり第一歩にすぎなくて、法律ができることでADRの認知度というものは非常に上がるのではないかということを私は期待しておりますけれども、実は、法律だけでは何も始まったということにはなっておらずに、基盤の充実というところが一番図られるべきであろうと。それは、人材の話であったりコストの話ということになると思います。

 あと、利用者側からすると、透明性を上げることでぜひ公正さのジャッジが図られるということを期待しております。

 以上です。

樽井委員 時間が参りましたので、人材の育成、それから基盤の整備、今後ともぜひ御意見をいただけたらと思います。

 きょうは本当にありがとうございます。質問を終わります。

塩崎委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 参考人の方々には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 参考人の方々は御退席いただいて結構でございます。

    ―――――――――――――

塩崎委員長 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として司法制度改革推進本部事務局長山崎潮君、法務省大臣官房司法法制部長寺田逸郎君、法務省刑事局長大林宏君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塩崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

塩崎委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。辻惠君。

辻委員 民主党・無所属クラブの辻惠でございます。

 最初に、南野法務大臣に十月十九日の予算委員会で質疑をさせていただきました。この質疑の経過について、小泉首相が、いじめるのはかわいそうだというようなことを述べたというふうに新聞報道がありました。南野大臣、いじめられたというふうには思っておられないと思うし、また、そのように言われることは心外だというふうにお感じになっていると思うんですが、いかがでしょう。

南野国務大臣 いじめられたとは思っておりません。辻先生、ベテランの先生からここで御指導いただいていると思っております。

辻委員 そのとおりです。私、普通の質問を淡々とやらせていただいたし、別に大臣のことを何らか、何かを取り上げてやゆしたようなこともないし、しっかりとした議論をしていきたいという姿勢で臨みました。きょうも同じであります。

 南野大臣、満州から引き揚げてこられて、そして、今は看護師、看護婦さんの学校へ行かれて、いろいろやはり人生経験を長く踏まれてこられた。私は、人生経験なり、そういう深さと広さ、長さということが、やはり対人関係とかいろいろな社会的場面において、その人の蓄積なり見識となってあらわれるんだろうというふうに思っております。

 そういう意味において、お互い、見識のある態度を持って、きょうはしっかりとした議論をさせていただきたいというふうに冒頭でお願いします。よろしいでしょうか。

南野国務大臣 どうぞよろしくお願いいたします。

辻委員 法案の審議、もう既に成立した法案もございますけれども、実質的な内容を伴う審議というのはきょうこれからであるということで、法務行政をつかさどるお立場の南野大臣に対して、基本的な政治家としての姿勢なり、そして法務大臣としてどのような政治姿勢でお臨みになるのかというのは、やはり前提的に伺っておきたいというふうに思うわけであります。

 それに当たっては、十月十九日の予算委員会で質問させていただいたように、この国会で冒頭大きな問題になっているのはやはり政治と金の問題であって、私は予算委員会の質疑の中でこのように申し上げました。

 つまり、例えば、南野大臣、看護連盟の方から、政治資金管理団体か政治団体かはともかくとしてですよ、業界から多額の献金があって、それが南野さんの選挙活動や政治活動に使われているということを国民の立場から見れば、やはり業界の利害で動くのではないかというふうに思うのは、ある意味で自然な感想だと思うんですね。

 ですから、例えば法務大臣として業務に当たられて、一方でその業界の団体とも利害が対立するような場面において果たしてどういうお考えで職務に当たられるのだろうか、やはりそこの問題をしっかりと説明いただくというのが、これは法務大臣として必要不可欠だと思いますが、この点はいかがですか。そう思われますか、思われませんか。

南野国務大臣 そのように思っております。

辻委員 ですから、国民の立場に立って、一業界団体の利害の体現者ということではなくて、国会議員でありますから当然全国民の代表者である、かつ法務大臣であられるわけだから、法務行政をつかさどる統括責任者の立場であるという立場に立ってやはり物を考え、国民にも説明責任を果たしていくべきだ、そのようにお考えだということを今承りました。

 そういう立場に立ったときに、日本看護連盟という業界団体から、これは参議院の予算委員会で簗瀬委員の方からの質疑でもありましたが、全政治献金の中の八割が日本看護連盟からのものであると。そして、今まで御質問をされた回数のうちかなりの部分、やはり看護連盟に関する質問を専らされてきたというようなことについて、しっかりと国民に対して、それはどういう意味であって、今法務大臣としてどういう姿勢で臨むのかということをやはり説明されるべきだと思いますが、その点、御説明いただけませんか。

南野国務大臣 風邪を引いていまして大変お聞き苦しいと思いますが、お許しくださいませ。

 もちろん、私は、看護職であり助産職でもございます。のおの知惠子後援会は、看護連盟のメンバーの方々が私を支えるためにつくってくれた団体でございますから、関係ないということはないというふうに思っておりますし、御指摘は、私あるいは私の支援団体が、その政治資金の多くを看護連盟からの寄附によっていることについての御批判かとも思われるんですが、そうでございますか。

辻委員 問いに対して問いでお答えいただいて、何とお答えすればいいのか、少し考えますけれども。

 いや、ですから、政治団体から政治団体、または政治団体から政治資金管理団体への寄附とか金銭の移動については、これは政治資金規正法なり法案の問題であるから、今それが法案に抵触するとかいうことを言っているわけじゃないんですよ。

 だから、予算委員会の場でも細田官房長官もそうおっしゃったし、小泉首相も別の場でおっしゃっているように、その業界の団体が業界の利益を図ろうということで献金するというのは別に悪いことじゃないんじゃないですかというふうにおっしゃっていたと思うんですね。

 法律的には問題ない。確かに、そういう現実があるから、それは南野さんに限らず、もっと巨額の政治献金を業界団体から受けている人もかなりいると思いますよ。

 ただ、私が申し上げているのは、そういう法律的な問題ではなくて、今、法務行政をつかさどる、そして政治と金の問題について今東京地検特捜部が捜査中である事案もあるし、また昨日から東京地裁で公判が始まっている、そういう政治と金をめぐる問題が非常に今ホットな状態で国民が注視しているときに、業界のある種お抱え議員であるというふうに国民が見てもおかしくないような立場の南野大臣として、やはり道義的にその点について説明する意味はあるんじゃないか、説明責任がやはりあるんじゃないか、こういう質問なんですよ。だから、そこについてお答えいただけませんか。

南野国務大臣 お答えいたします。

 私の姿勢ということもございまして、私は助産師として長年活動し、看護や助産の世界の地位の向上、待遇改善の必要性を身をもって感じております。そのために活動してきたところでございまして、看護連盟の皆さんの御推薦をいただいて、この国政の世界に飛び込んできました。以来、確かに、看護師、助産師の地位の向上、待遇改善のために尽くしてきたという自負はございます。

 自分自身では、より広く女性や弱者の地位の向上などのために働いているという気概がございますし、事実、先生御存じのように、DVの問題または性同一性障害、児童虐待や高齢者虐待に対する取り組みや性犯罪の重罰化といったような女性や弱者を保護するための制度の実現、または福祉、保育、さらには少子化対策などにも真剣に取り組んでおります。

 看護連盟の言いなりになっているとか、看護連盟からお金をもらって何々したとか、何々をお礼としてお金をもらったとか、そういうことは一度もございませんし、法務大臣として、中立性、公正性、これを疑わしめることは全くないと考えております。

 もちろん、より広く、より多くの方々から支援していただけますように今後とも積極的に努めてまいりたいと思っておりますが、そのことだけは御理解いただきたいと思っております。

辻委員 看護連盟の顧問でもあられた時期があると。今は法務大臣についておられるから、それは辞しておられるのかもしれないですけれども、南野知惠子さんと清水嘉与子さんが三年ごとに看護連盟の組織内議員的な立場におられて、選挙に当選されているというふうに思うんです。

 看護連盟の側から、大体平均すると三年ごとに、選挙の前に、南野さんの選挙の前には南野さんの政治団体に、清水さんの選挙の前には清水さんの政治団体に一億五千とか二億とか献金があって、予算委員会の場では、新聞報道でその点を指摘されたということについて、その後お調べになりましたかというふうにお伺いしたところ、のおの知惠子後援会については自分は責任者でも直接かかわっている者でもないから、その説明を求める立場でもないんだというふうにおっしゃっていたと思うんですが、やはりその点について国民に少なくとも最低限の説明を行うべきではないかというふうに思います。

 南野知惠子さんの、二〇〇三年ののおの知惠子後援会は、やはり三億円近い金額が残金として繰り越しになっているわけですよね。これは恐らく、来年度の政治資金収支報告書を見れば、選挙がありましたから使われているんじゃないかというふうに思うわけでありますが、選挙に何億円というお金が必要だというような、そういう選挙のあり方についてはどう思われますか。

南野国務大臣 選挙に対して使ったお金ということにつきましては、この前も御報告いたしましたが、のおの知惠子後援会から選挙事務所の方に一千三百万いただいたということは、この前申し上げたとおりでございます。

辻委員 しゃくし定規な話をしているのでは全然ないんですよ。

 実質的な話をしていて、要するに、国民が知りたがっているのは、実際選挙にお金がかかるから、そして看護連盟の組織内議員だから、一億五千とか二億とかが、二〇〇二年、二〇〇三年に南野さんの名前を付した政治団体に入っているんだと。そこから、資金管理団体にはそれは一千万か何かしか動いていないかもしれないけれども、そこがある意味では選挙部隊になって、お金を使って選挙をやっているわけですよ。そういうふうに見ているし、それがまず実質に合っていると思うんですよ。だから、そういう実質的な話をしているわけです。

 何億というお金が選挙にかかるというその選挙のあり方について、南野法務大臣としては、政治家として、みずからの政治姿勢としてどのようにお考えなのか。あなたのお考えを伺っているんですよ。お答えください。

南野国務大臣 ただいまもお答えいたしましたけれども、のおの知惠子後援会、これは私が管理している団体ではないということはもう先生御存じ、御承知であります。

 それから、選挙に対しては千三百万円いただいている、その他はのおの知惠子後援会の政治活動、それに使用されているというふうに思います。

辻委員 問いに対する答えになっていないじゃないですか。

 委員長、これはちゃんと整理してくださいよ。ちゃんと答えさせてくださいよ。

塩崎委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

塩崎委員長 速記を起こしてください。

 南野法務大臣。

南野国務大臣 選挙に幾ら費用がかかるかということではないと。御質問をもう一度お願いします。

辻委員 もう少し具体的に言いましょう。例えば、二億、三億という大金が選挙にかかる、そういう選挙のあり方について、政治家としてどのような見解をお持ちですか、こうお伺いしているんです。

南野国務大臣 私の場合もでございますが、そのような大金をかけているとは思いません。政治資金規正法にのっとった中で、いただいているお金の中でやっておりますので。

辻委員 だから、質問に対する答えじゃないんですよ。あなたがどうなのかというのは、それは次に質問するかもしれないけれども、今質問しているのは違うんですよ。政治家としてそのような選挙のあり方についてどのようにお考えなのか、このことを伺っているんですよ。

 だから、質問に対する答えになっていないんですよ。ちゃんと理解して答えてくださいよ。

南野国務大臣 私個人の感覚といたしましては、そんなに多くのお金をかける必要は要らないのではないかなと思っております。選挙一般ですよ。

辻委員 選挙一般の話を伺っているんですね。

 それは、御本人はある意味ではみこしかもしれないから、後援会がいろいろ担いで、だから、例えば南野さんを当選させるためにいろいろな後援会が動いて、全部で幾らかかるのかというようなことが問題になるわけですよ。

 南野さんの場合には幾らかかったのかわからない。それはまた場合によっては伺うことがあるかもしれないけれども、そういう選挙のあり方で、何億もかかるような選挙のあり方について、法務大臣が一政治家としてどのようにお考えなのか。そういうことが望ましいとお考えなのか、そうではないとお考えなのか。自分の考えをお述べいただきたいんですよ。

南野国務大臣 私は参議院に所属いたしております。参議院の選挙のあり方ということについては、地方からの選出の議員もおられますし、私は比例という立場で出させていただいております。その問題については、この前参議院が終わったばかりでございますし、これからもいろいろ議論していかなければならない細かい問題点も残されているというふうに思っております。この選挙のあり方ということは、大変みんなで議論していかなければならないことだと思っております。

辻委員 議論するのはその先なんですよ。議論する以前に、あなたのお考えを伺って、そして納得すれば別にそれで問題がないし、それに納得できなければまた違う質問をするかもしれませんよ。

 とにかく、質問にきちっと答えてくださいよ。理解していますか、質問の意味を。ちゃんともう一回答えてください。

南野国務大臣 それは、先ほどお答えしましたように、それほどお金をかけてしない方がいいのではないかと。それはもうそれぞれのお立場で御議論されていると思いますけれども、私もそのように思っておるところでございます。

辻委員 巨額のお金がかかる選挙というのはやはり望ましくないということを今おっしゃったと思うんですね。もう十分前におっしゃることができたんだろうと僕は思いますよ。だけれども、とまっていたから、五分しか進んでいないというふうに私は理解しておりますけれども。

 結局、これは自民党に限らずどの政党もやはり問われる問題であって、政治と金の問題というのは。ひとり対岸の問題として民主党は言っているつもりではないんですよ。みずからに返ってくる問題だというふうに、これはしっかりと思います。

 だけれども、問題なのは、日歯連の問題で問題になったのは、業界団体がたくさんのお金を、政治献金を行う、それによって具体的な政策がその業界団体の利益に沿うようにゆがめられる可能性があるんではないか。

 実際、九月十七日に私が刑事告発をした自民党の佐藤勉さんの例がそれに当たるかどうかはわからない。それは、現在、東京地検特捜部が捜査をやっているというふうに思うんですよ。その東京地検特捜部を一般的には指揮する立場に法務大臣はおられるんですよ。検察庁法十四条で、一般指揮権というのはあるわけだから。

 だから、政治とお金の問題について、そのように巨額のお金、先ほどの佐藤勉さんの例では、五百万自民党に渡って、自民党が二百万抜いて三百万本人のところへ行った、こういう例だというふうに伝えられているんです、新聞報道では。だけれども、五百万に限らず、三千万動いたというような領収書があるとかいうような質問も出ていたわけですよ。

 だから、そういうようなお金によって政策が動かされる、その可能性がある、そういうふうに政策がゆがむとすれば、これは問題なのではないかというふうに思いますけれども、法務大臣はその点はどうお考えですか。

南野国務大臣 御指摘の事案に関して、政治資金をめぐる種々の問題がございます、取り上げられております。先生は例えば日歯連のお話をされましたけれども、私は個別の案件には申し上げられないということは先生御存じでございますので、看護連盟が日歯連と同じだという発想をまず切っていただきたいというふうに思っております。

 各党各会派で十分に御議論いただくことが基本であると考えておりますので、政治資金は関係する法律にのっとって適正に処理されているということを御報告いたします。

辻委員 何かちょっとずつちょっとずつずれた答えをされる。まあ、ちょっとじゃないんだよ。今ちょっと塩を送ってちょっとだと言ったのであって、随分ずれていますよ、これは。私はいろいろ質問を、先に、ADR法案に進めなくなってしまうわけですよ。

 だから、やはりお金で政治の政策がゆがむというような、そういうあり方はいけないことだと思うんじゃないんですか。これはみんなうんと言うと思うんですけれども、法務大臣、うんとおっしゃらないんですか。

南野国務大臣 そのように明確におっしゃっていただければ、そのとおりでございます。

辻委員 前回の予算委員会でも、質問の仕方が悪いような言い方をされるんですよ。そんなことないですよ。甘利委員長があなたに、ちゃんと質問に正確に答えてくださいと言っているじゃないですか。引用したっていいですよ、これ。(南野国務大臣「私も読んでいます」と呼ぶ)読んでいるんでしょう。

 今だって、私は、塩崎委員長がおっしゃるから、二回三回ちゃんと整理して言っているんですよ。そういう言い方はちょっとやめていただきたい。

 私が看護連盟のことを看護協会と言い間違えたら、言い間違えたから、それは間違えましたと言っているのに、わざわざ速記録に残るように、看護協会は違いますよというようなことをわざわざ言うというのは、やはりちょっと、性格、どうなんだろう、こう思わざるを得ませんよ。公然と何とかしたらまずいから、思うこともあるということしか言いませんけれども。率直にやりましょうよ、率直に。

 それで、やはり政治と金の問題というのはきっちり議論をしていくべきだというふうに思うんですよ。

 これは、週刊ポストの二〇〇四年の十一月十二日。普通の自民党議員は政策活動費から三百万、四百万の氷代ともち代を受け取る程度しか恩恵を受けていないのに、南野知惠子さんは二〇〇〇年から二〇〇三年の間に二千八百五十万もの党の資金を受けている、こういうふうに報道されているんですが、これは御自分のことだから事実はおわかりなんですか。

南野国務大臣 お尋ねの出金、お金のことにつきましては、党が開催する女性局の研修会または会合、これの開催実費でございます。これらの研修会や会合につきましては、当時私が女性局長でありましたから、私が事務局から、担当の方から説明を受けて、稟議決裁をいたしております。私が女性局長であるという名前が、そこで稟議決裁をした立場であります。

 実際にお金を受け取ってはおりません。お金を受け取っているのはもちろん事務局で、それが動いているわけでございますが、私はその支払いに立ち会うこともありません。その全額を研修会または会合にかかる費用の支払いに充てていると報告を受けております。

辻委員 自民党もそうだし民主党もそうだが、有機的な組織体としてちゃんと組織活動をやるわけだから、いろいろな経費がかかるというのは、これは当然のことで、その立場によってそれを支払った形になるということはあり得ることだから、それ自体は別に問題だとかどうのこうのと言っているわけじゃないんですよ。

 ただ、この週刊ポストの記事によれば、これはあくまでも記事だから、伝聞なので実際はどうなのかわかりませんけれども、二〇〇〇年の一月に九百八十八万八千円、二〇〇一年の三月に九百七十九万九千百円の支出が自民党から南野知惠子さんにあったというふうに報道されている。そうすると、これに見合う研修会というのは、どこでどういう研修会が開かれたんですか。それは南野さんは認識しているんですか、掌握しているんですか。いかがですか。

南野国務大臣 これは、週刊ポストがどこで入手されたかわかりませんが、私が女性局長の間には、八つの研修会及び会合をいたしております。それが、先生がおっしゃった平成十二年一月十七日の研修会とか、十二年四月二十六日の分、十二年の五月十九日の分、十二年十月二十六日、我々、何回も会合を行っております。それは、東京でしたり、またはブロックでやったり、いろいろな、あらゆるところで研修会をやっておりますので、私がそのとき女性局長であるということで担当したことは、覚えておるというか、大分古い時分でございますが、そのようなかかわりをしたことは覚えております。

辻委員 そうすると、それは女性局長としてやはり決裁をするわけじゃないですか、党の活動として。研修会があった、それは自民党の正規の機関の活動だから、自民党からお金が払われて、それは女性局長のお立場で決裁をするということだから、当然、その時点で、決裁ということで認識されていると思うんですよ。

 その決裁に当たって、自民党の中では、どなたとそういうお金の動き、決裁については協議されるんですか。そういうような支払いの責任者というのはだれになるんですか。

南野国務大臣 女性局の担当者、窓口という人がおりまして、女性でございますが、その窓口の方と、このたび女性局でこういうふうな会議をしますよということの説明を受けて、稟議決裁をいたしております。

 実際にお金を受け取るのは事務局であり、その支払いに立ち会うということは、私はありません。その全額を研修費やまたは会合にかかわる費用に充てている。事務局の方と話をするわけでございます。

辻委員 当時の自民党の経理局長というのはどなたなんですか。

南野国務大臣 私、ちょっと存じませんけれども、私が直接担当する女性局長の担当は、小川さんという女性でございます。

辻委員 元宿仁さんという方が、その小川さんの上司に当たられる方ですか。

南野国務大臣 元宿さんとおっしゃる方、名前は聞いたことがありますが、私、顔とは一致いたしておりません。わかりません。

辻委員 医師会とか日本歯科医師会、薬剤師会、日本看護協会、四師連というんですか、四つの師の連合、政治連盟でしょうかね、というところがかなり巨額の政治献金を、自民党ないしは自民党の外郭団体である国民政治協会ないしは自民党の議員の方々に献金されているという事実が報道されているんですけれども、そういう事実については認識されていますか。

南野国務大臣 そのことについては承知しておりません。

 先生が四師会とおっしゃっていましたが、もともとは三師会プラス看護婦でありました。それが、名称を変更したことによって、今、四師会というふうに言っていると思いますが、それは看護協会の方のグループの人たちとのかかわりでございます。

辻委員 先ほどちょっと御紹介をした佐藤勉さん、そして自民党の経理局長であった元宿仁さんについて、九月十七日付で東京地検特捜部に刑事告発状が出されて、これが受理されているんですよ。この事実については確認されていますか。

南野国務大臣 はい、そのことは伺っております。

辻委員 事実の概要についてどのように認識されているんですか。どのように聞いているんですか。どういう事実の申し立てがあったというふうに理解しているんですか。

南野国務大臣 東京地方検察庁におきまして、九月十七日、政治資金規正法違反の事実により告発状の提出を受け、現在捜査中であるものというふうに承知しております。

辻委員 質問は違うんですよ。刑事告発があった事実については、それはもう紛れもない事実なんですよ。だから、刑事告発の、どういう内容で告発があったのかという事実について、どのように現時点で認識されているのか、これを伺っているんですよ。

南野国務大臣 告発事実の要旨でございますか。(辻委員「はい」と呼ぶ)それは、佐藤勉衆議院議員及び元宿仁自民党本部事務局兼経理局長が、共謀の上、いわゆる日歯連からの迂回献金について、佐藤議員が代表を務める自民党栃木県第四選挙区支部の政治団体の収支報告書に記載しなかったという政治資金規正法違反の事実であるということを承知しております。

辻委員 今述べられた、いわゆる迂回献金とおっしゃいましたが、いわゆる迂回献金というのは具体的にはどういう事実関係を指しておっしゃっているんですか。

南野国務大臣 迂回献金ということだけ書いてございますので。私は、その迂回献金がどういうものかということについて、この案件については言えないということでございます。

辻委員 言えないとかどうとか、また同じ問題に、エアポケットに落ち込むのはやめましょうよ。

 要するに、評価の問題を聞いているんじゃないんですよ。どういう事実がその告発の事実として書かれているのかということですよ。それについて認識しているから、いわゆる迂回献金だとあなたの評価が出てきたわけですよ。だから、あなたがいわゆる迂回献金だと御説明なされた前提としての事実については、どういう事実を事実として理解しているのですかということを聞いているんですよ。

南野国務大臣 具体的事案になります、佐藤勉さんという名前も出ておりますので。そこで、ここでは述べることは差し控えます。

辻委員 それは捜査の秘密でも何でもないじゃないですか。告発された事実としてどういうことが書かれているのかということを聞いているだけなんですよ。だから……(南野国務大臣「先ほど申し上げた」と呼ぶ)いやいや、だから……(発言する者あり)外野席、うるさい。

 どういう事実が書かれているのか。それをあなたはいわゆる迂回献金というふうに評価されたんだから、その評価の前提となる理解があるわけですよ。だから、それを伺っているんだよ。

 だから、それを……(発言する者あり)いや、だから、ある記載されていた事実があって、それを認識したわけですよ。それをあなたは表現するに当たって、いわゆる迂回献金と言って表現したんだから、そのいわゆる迂回献金としてあなたが概念づけをした前提となる事実というのはどういう事実なんですか。それを答えてください。

南野国務大臣 これは一般論でございます。迂回献金ということについて一般論的に言われていますのは、複数の政治団体を経由して目的の政治家に献金することをいうと今のところ理解しております。

辻委員 では、今おっしゃった迂回献金については、一政治家の立場として、あなたはそれは望ましいものであると考えているのか、それは避けるべきものと考えているのか、いずれなんですか。

南野国務大臣 先生の御意見と一緒と思いますが、避けるべきと思います。

辻委員 この九月十七日に刑事告発された事件については、報告は何回受けているんですか。どういう頻度で報告は受けていますか。

南野国務大臣 先生、弁護士さんでいらっしゃいますので、私の方に御指導いただきたいんでございますが、特定の事件についてどのように報告を受けているかについては、捜査、公判の中身でございます。それにかかわることでございますので、お答えを差し控えたいと思っております。

辻委員 だから、またそれ、質問に対する答えと食い違っているんですよ。どういう報告を受けているのかと聞いていないんです。同じことをまた繰り返さないでいただきたい。報告を何回受けているのか、頻度を聞いているんですよ。内容を聞いているんじゃないんだから。

 何で聞いているのかというと、それは、重要事案について法務大臣は報告を受ける義務があるんですよ。それは受けなくていいんだ、そういう判断をされているんだったら、それでもいいんですよ。どっちなんですか。報告をやはり徴しているわけでしょう。そうすると、その報告をどの程度の頻度で受けているのかというのは、これは答えるべきですよ。答えてください。

南野国務大臣 これは個別事案になります。私が、何回受けて、どの期間受けて、いついつ受けてとか、そういう具体例については申し述べられないということは、弁護士のベテラン先生なら御存じだと思っております。

辻委員 だから、そういう嫌みをつけ加えるのはやめましょうよ。私は一回も嫌みを言っていないですよ、あなたに対して。

 報告を受けていくべき事案だというふうに理解をしておられますか。

南野国務大臣 お答えいたします。

 それぞれの件につきまして、それぞれのところで検討しておられることと思いますし、また、その案件は捜査中の問題でありますので、私が知っていても言えませんし、ということでございます。

辻委員 違うんですよ。だから、法務大臣としての姿勢がそこで問われることになるんですよ。

 この国会で政治と金の問題が問題になっている、焦点になっているわけですよ。一億円の橋本派に対する献金の問題について証人喚問を求めている、焦点になっている。それに関連して、政治資金規正法の改正の問題で、連立与党の方も言っている、民主党も提案をしようとしている。

 そういう中で、この迂回献金が問題になっている。それは真実はどうかわからない。だけれども、刑事告発が出ている事案について、報告を徴すべき事案として考えていないんだとすれば、法務大臣としてこれは失格ですよ。国会に対して、政治と金の問題をきちっと報告しなければいけない責務があるんですよ。そういう国民が注視している問題について、あなたが報告を受けないということであれば、これは職務怠慢ですよ。だから聞いているんですよ。一般論じゃないんだよ。ちゃんと答えてください。

南野国務大臣 聞いているとか聞いていないとかということよりも、個別の事件に係る内容の報告は、検察当局による捜査活動などの内容と密接な関連を有しておることと考えており、お答えいたしかねるということを御理解いただきたい。聞いているか、聞いていないか、聞いていない、聞いている、そのことも言えないのが私の立場であることは御理解していただいていると思います。

辻委員 理解できません。そんなの法務大臣の立場としてはおかしいですよ。法務大臣は、法務行政全般について責任を持つんですよ、つかさどる立場にあるんですよ。だから、重要な問題が発生すれば、それは法務行政の一環として事態を認識しなければいけないんですよ、報告を求めなければいけないんですよ。

 だから、この迂回献金で刑事告発されている問題について、どうでもいい問題だとして考えているのであれば、それは報告を受けなくていいですよ。報告を受けるのか、受けるものと考えているのか。後ろからそれを出さないで。あなた、どういう立場で出しているんだよ。委員長、これは退場を求めますよ。自分の意見でちゃんと物を言わないとおかしいじゃないですか。そうでしょう。一々後ろからのメモを見ない。

 報告を受ける事案と考えているのかどうなのか、あなたの政治とお金をめぐる問題についての基本的な政治姿勢が問われている問題なんですよ。だから、それについて報告を受けるものと考えているか考えていないのか、答えないこと自体が、あなた、問題になるんですよ。答えてください。

南野国務大臣 報告をどのタイミングで受けるかとか、報告は受けておりますけれども、その報告の中身については、今捜査中なので言えない。

辻委員 ちょっと整理してください。

塩崎委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

塩崎委員長 速記を起こしてください。

 南野法務大臣。

南野国務大臣 私の考えといたしましては、やはり報告を受ける事案だということは思っておりますが、その中身についてどうしたこうした……(発言する者あり)では、中身は言いません。

辻委員 これは何分までですか。

塩崎委員長 二十二分までです。

辻委員 いえいえ、だって途中で二回とめているから。

塩崎委員長 ごめんなさい、三分とまっていますので、二十五分までであります。

辻委員 また伺いますよ。次の質問に移ります。空転させるのはやめましょう。

 それで、所信表明演説についてちょっと伺いたいというふうに思います。

 これは塩崎委員長がおっしゃっている、次に、国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします、一つ、裁判所の司法行政に関する事項、二つ、法務行政及び検察行政に関する事項、三つ、国内治安に関する事項、四つ、人権擁護に関する事項。先日山内委員からも質問がありましたけれども、人権擁護に関する事項は二十二字しか書いていないということなんですね。

 専ら、凶悪重大事件が続発しているとか、刑法犯の認知件数が非常にふえているとか、刑法犯罪の検挙率が非常に悪くなっているとか、あと共謀罪とか刑法の重罰化の法案の必要性があるとか、厳格な出入国の管理が必要だとか、また、イラクの国際テロ組織に対応しなければいけない、北朝鮮に対応しなければいけない、オウム真理教に関して団体規制法を厳格に適用しなければいけない、これだけ、三分の二以上はそういうくだりで書かれているんですよ。これは治安主義的な傾向が非常に濃厚な所信表明演説になっているんですよ。法務大臣だから治安主義的な傾向を強く言わなければいけない、そんなことないじゃないですか。

 南野さん、こうおっしゃっているんじゃないんですか。「弱者にやさしく他者に寛容な社会、特に、少数の異質な人々にも寛容で多様な生き方やあり方を認めるような社会を築いていくことが重要」だ、こうおっしゃっているでしょう。それはあなたの言葉としておっしゃっているんですよ。そのことと、法務大臣になったら言うことが変わるんですか。後ろからメモを出さない。ちゃんと答えてください。自分の信念とこれはどう整合性があるんですか。答えてください。

南野国務大臣 今先生、いろいろと私のことについてもお話しくださいました。

 司法行政のすべては人権にあるというふうに思っておりますので、今のいろいろな事案が全部共通して人権にあるということを私は信じておりますし、私の姿勢は変わっておりません。

辻委員 「性同一性障害者性別取扱特例法 監修 南野知惠子」という本のこれは勧誘のチラシですが、私のところに送られてきました。それに今引用させていただいた言葉が載っているわけですよ、「少数の異質な人々にも寛容で多様な生き方やあり方を認めるような社会を築いていくことが重要である」と。

 例えば、出入国審査について、これはやはり正規な形で入国された方、そうでない方を含めて、非常に外国人を排除するような出入国管理の実態があるように私は思います。通常国会で質問したときに、難民の認定についても、国連難民高等弁務官が出している勧告にも従わない、日本の法務省は。弱者、異質な人々に対して寛容で広く対処していこうという南野さんの立場にかんがみれば、それは矛盾するんじゃないですか。そういう在日の外国人の方々の人権なりについても、弱者ですよ、これは。国民という範疇に入るかどうかは別として、居住している弱者について寛容な社会をつくっていくということがやはり一つの基本なんじゃないですか。

 そういう立場から考えると、あなたの今回の所信表明演説のこの出入国管理に関する部分は、あなたの言葉じゃないですね。どうですか。

南野国務大臣 私の言葉でございます。

 また、その前段階で、その本、お買い求めいただけることを大変うれしく思っております。

辻委員 これは、いろいろな法案が今後出てくるから、その中でやはりきっちりと基本的な考え方というのを議論した方がいいと思うんですね。

 排外主義的に、非常にナショナリスティックに、そういう日本を、治安主義的に国家を再編していくということは、ろくなことにならないと思いますよ。日本の資本主義の懐の深さ、非常に寛容なところ、そういうことで日本がやはり繁栄してきたという現実があるわけだから。自民党だから、連立与党だからということでそこをせせこましく考えるのは間違っている。もっとやはり柔軟に考えていっていただきたいなというふうに一応申し上げておきます。議論については、次回以降またこの点についてはさせていただこう、こういうふうに思いますから。

 それで、ADRについて。

 このADRということについて、これは司法制度審議会の報告書で、最初からですよ、ADRが国民にとって裁判と並ぶ魅力的な選択肢となるように拡充、活性化を図るということで、検討会の冒頭で山崎さんがおっしゃっているんですよ。

 ここで山崎さんにまずお出ましいただく前に、そういうようなことで検討会が出発したんだということは、南野大臣は認識されているんですか。

南野国務大臣 御指摘のとおり、いわゆる民間のADRについては、必ずしも十分には今はまだ活用されていない状況にあると思いますけれども、内外の社会経済情勢の変化に伴って考えてみますと、紛争の実情に応じ、即して、迅速な解決を図る手続、そのような重要性は高まってきているものと考えておりますので、ADRの問題点についても真摯に検討していかなきゃならない、そのように思っております。

辻委員 今おっしゃった、では、紛争の解決にとってプラスとなるようなADRというのは、どういうADRがあるというふうにお考えなんですか。想定して物をおっしゃっていると思うんだけれども、具体的に教えてください。

南野国務大臣 この法律案におきましては、現状のADRをめぐる問題点の改善を図る、そういう観点から、認証の制度を設け、あわせて時効の中断等にかかわる特例を定めて、その便利の向上を図ること等によりADRの拡充及び活性化を図っていこうというところがADRのポイントであります。

辻委員 それは問いに対する答えじゃないんですよ。

 だから、民間型のADRで、従来弁護士会で、交通事故相談センターとか仲裁センターとか、いろいろなことが試行されているわけですね。ただ、やはり圧倒的な件数は、民事調停とか家事調停とか、司法型のADRがほとんどですよ。この間の質問の中でたしか出たと思いますが、四十九万件。一方で、弁護士会のそういう仲裁センターというのは千件かそこらなんですよ。

 ですから、このADR法案というのは民間型ADRを念頭に置いて法案が提案されているけれども、一方で四十九万件ある司法型のADRがあって、訴訟の件数も、この間のお答えではたしか同じぐらい、同数ぐらいだと。だから、四十九万件と四十九万件があって、民間型のADRの中で今一番機能していると思われる弁護士会のそういう仲裁センターは千件なんですよ。

 だから、その千件を、このADR法案をつくればそちらが活性化していくんだみたいな言い方がどうもされているから、そうじゃないでしょう、もっとその前に考えるべきことがあるんでしょうと。今民間型のADRというのは実態がないんだから、ある意味では。

 もちろん、いろいろな関連職種の方々が努力されていて、私は、その方々のいろいろな専門知識ということについては司法機能の中にきちっと位置づけて取り組むべきだという意見を持っているんですけれども、そういうADRということについて、まだ試行錯誤で熟していない段階で、非常に美辞麗句というか、裁判と並ぶ魅力的な選択肢となるように、こういうことを、ボールを投げて、失礼な言い方かもしれないけれども、先ほど参考人の御意見を見ると、それに近づかなければいけない、それに近づかなければいけないということで、みんな努力をしてそっちに行く。だけれども、そもそもその魅力的な選択肢というのがまず前提とされていいのかどうなのかというのが議論されなきゃいけない。

 こういう状況の中で、ADRを今急いでつくらなきゃいけない立法事実があるとは思えないんですよ。この点、どうお考えですか。

山崎政府参考人 確かに、裁判、これが中心であるということはそのとおりかもしれませんけれども、ただ、人にはさまざまな考えがございますので、例えば、裁判じゃなくて、非公開の場所できちっとした解決をしてほしいと願う方も相当おられるはずでございます。

 今は、調停ということですね、裁判所の調停、これは使われているわけでございますけれども、裁判所の調停といってもオールマイティーでございまして、非常に専門性が高いという分野を幾つも持っているというわけではございません。そういうような分野というのは、民間にもいろいろな知恵があるわけでございます。そういう知恵をおかりしながら、紛争を早期に、安く、それから秘密を守りながら解決をしていく、こういうニーズがあるわけでございます。

 現在育っていないのは、いろいろな欠陥とか、手続が十分でないというところがあるから、その発展が阻害されているわけです。今後は、確かにそういうものを育てていこう、こういう気持ちでやっていることは間違いございません。現在がそれほど使われていないということで、これからは使われていく、それを期待してやっているということは間違いございません。

辻委員 だから、立法目的としては理解できますよ。だけれども、ほとんど使われていないわけですよ。

 だから、山崎さん今おっしゃっているけれども、民間型ADRが、では一年後にどういう形態のADRがこの法案をつくれば生まれてくるんですか。それによって迅速、簡易、廉価、そういうADRが本当に機能するんですか。これは検討会の中でも、高木弁護士は、本来なかなか実現は不可能なんじゃないかというふうな意見を言っているじゃないですか、第四回で。だから、要するに、まだ全然機が熟していないんじゃないですか。

 みんないろいろな思いがおありになって、私は、専門家の知識なりをちゃんと受けとめて、本当に紛争解決に協力していただけるようなシステムをつくるのは必要だと思いますけれども、それは本来の司法機能をもっと充実させる方向でだってあり得る話じゃないですか。ADRでなければならないということにはそれは直結しないと思いますよ。

 かつ、ADR法案をつくれば、今活性化していないものが活性化するかもしれない、活性化するんだ、それを期待してやるんだと。つまり、本末転倒なんですよ。私はそう思いますが、まあ、御意見、反論は当然出てくるんで、余り聞きたくないけれども、一応おっしゃってください。

山崎政府参考人 私も裁判が重要であるということは当然認めておるわけでございまして、したがいまして、まずそっちの活性化ということでこの三年間やってきたわけでございます。さまざまな法律改正をやっております。それが、賛成していただけるか、いいか悪いか、それは各人の受け取り方でございますが、我々はこれからよくなるものとして改正をしたわけでございます。

 ただ、人にはいろんな考え方がございますので、裁判だけじゃなくて他のところでも解決してほしいというニーズが現実にあるわけでございます。先ほど原参考人のお話でも、どんどん相談件数がふえている、こういう現状にあるわけでございまして、それを放置できるかという問題だ。それはやはり、きちっとそれに対した対応を立てるのが政府の責任であるということでございます。

辻委員 いや、原参考人の御意見は、窓口相談とか苦情相談がふえたということであって、これは一方当事者から意見を聞いているだけのものであって、本来的なADRではないですよ。ADRではないというふうに、青山参考人、定義をはっきりおっしゃいましたよ。違いますよ、それは。

 だから、ADRということをつくり出していく、いろいろ考えて検討していくのはいいんだけれども、現実には全然具体的なイメージがないじゃないですか、ADRということがどういうふうにできてきているのか。一方で、非認証のADRが出てきたときには、これは法律家のチェックもないわけでしょう。だから、消費者がどんな被害を受けるかわからないわけですよ。

 だから、そういうような見きわめと手当てと、そして獲得すべきADRがこのように実現するんだという具体的なイマジネーションがまだない段階で拙速的に法案をつくるというのは、やはり立法事実を欠いている段階でつくるというのはおかしいんじゃないですか。どうですか、これ。

山崎政府参考人 今のままほっておけば、それのイメージもわかないわけです。それから、将来的にも育っていかないわけでございます。我々は、そういうことをむしろやりやすいような環境を整えて、大いに活性化をしていただきたいということでございまして、ほっておけば何の進展もないということになります。それで本当に社会としていいのかということが問われているわけでございますので、我々はそれに対するお答えをさせていただくということでございます。

辻委員 そんな具体的な成算というか見通しもないのに、当てずっぽうで、見切り発車でとりあえず発車しよう、何も動かないよりはそれの方がいいんだ、そういうのはやはり議論としては転倒していると思うんですよね。

 やはり弁護士会も、現にあるADRでいろいろ努力をされていますよ。弁理士会もいろいろ努力をされている。ほかの、司法書士会にしても、行政書士会にしても、社労士会の方々にしても、土地家屋調査士会の方々にしても、自分たちの専門知識を具体的に紛争解決にどのように生かしていくのかということについて、いろいろ御尽力、御努力、チャレンジされているというふうに思いますよ。だから、そこについてはもう少し具体的なイメージがちゃんと出てくるということを見きわめる必要があるんじゃないですか。

 一方で、そこが見きわめられないのに非認証のADRが雨後のタケノコのように出てきたら、弊害の方がふえますよ、これ。それで、ああ失敗したと。

 見切り発車でとにかくやるだけやってみよう、そうじゃないでしょう。法案の提出者としては、社会が混乱に陥ったり、消費者がそれで消費者被害をこうむるような危険性について防止するという成算を持って提案しなきゃいけないんじゃないですか。今の状態では、非認証のADRについて、そのような消費者被害を防止できるという手当てが全然なされていないんじゃないですか。この点について何か考えがあるんですか。

山崎政府参考人 ですから、現在ある旧来型、旧来というか現在型ですね、現在型のものについていろいろ問題があれば、これは弁護士法の規制があるわけでございますので、そういうところで大いに取り締まるということになろうかと思います。だから、それはそれの道があるということでございます。また、認証は認証について、おかしいものは排除するシステムがちゃんと用意はされているということでございます。

辻委員 まだ準備した質問はいろいろありますが、議論を続けてもちょっと時間切れになると思います。

 最後に申し上げておきたいのは、ADR、つまり、裁判による決裁型という以外に、要するに話し合いで解決していく、そういう機能を社会的にシステムとしてつくり出していくということの必要性、重要性というのは、これは確かにあるだろうというふうに思います。だけれども、一方で、裁判が果たして本当に十全に機能しているかどうか。それは救済が本当に図られていない。これは裁判官の資質の問題でもあるし、官僚司法と言われるような裁判の判決の内容の問題でもあるし、そこに専門家の知恵を投入するような制度がきちっと位置づけられていないという問題もある。

 だから、そういう意味では、司法の機能をしっかりと確立するという議論をもう一回やりながら、それと連携しながらADRの問題を考えるべきなんじゃないかというふうに私はやはりなお思いますので、その点、ぜひ皆さん考慮をしながら審議をいただければいいかなというふうに思います。

 そのことを最後に訴えて、終わりたいと思います。ありがとうございました。

塩崎委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時二十七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

塩崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。加藤公一君。

加藤(公)委員 民主党の加藤公一でございます。

 法務委員会ではやや久方ぶりでございますが、新しい大臣、副大臣、政務官に質問させていただく第一弾でございますので、大臣、就任当初よりおっしゃっていたように、どなたにもわかりやすいように、ぜひ御答弁をお願い申し上げたいと思います。

 では、早速、時間も限られてございますので、このADRの法案について伺いますが、この法案、提出をされました後に私なりに勉強させていただきましたが、最終的にきょうはいろいろ細かなことも伺っていかないと、本当にこの法案がどの程度社会にいい影響を及ぼすのかというところがなかなか見えてまいりません。新しい制度だと言ってしまえばそれまででありますが、少し具体的なところをきょうは教えていただきながら、私も理解を深めたいと思っております。

 まず最初に大臣にお伺いをいたしますけれども、今回のこの法案によって認証制度というのができますと、認証紛争解決事業者というものができることになりますが、それにおいて一番大事なのは中立性の担保ということになるだろうと思っております。その認証をするに当たって、では、どういう基準で、どういう具体的な条件で認証をされるのか、まずここから伺いたいと思います。

南野国務大臣 ありがとうございます。先生とともに勉強したいと思っております。

 民間紛争解決の手続の認証に当たりましては、この公正性、適正性が担保されることが必要であると考えております。

 そこで、認証の基準といたしましては、三つございまして、紛争の分野に応じてふさわしい者を手続実施者として選任することや、二番目といたしましては、利害関係を有するなど公正な手続の実施を妨げるおそれがある場合の手続実施者の排除、それは除くということでございます。三番目といたしましては、実質的支配者等が手続実施者に対して不当な影響を及ぼすことの排除、これも、そうしてはいけませんよということなどが定められております。また、これらを踏まえまして、業務を行うのに必要な知識及び能力を有するかどうかも認証の基準になってまいりますということでございます。

加藤(公)委員 法案でいうと六条の「認証の基準」のところを、今、少しかみ砕いてお話をいただいたんだろうと思うんですが、法案の文言を見ても、あるいは今の大臣のお話を聞いても、なかなか、では何が基準なのか、何がよくて何がだめなのかというのが非常にわかりにくいところがあるものですから、少し細かな話になりますけれども、少し突っ込んで伺いたいと思います。

 この六条を見ますと、本文の中に、今もありましたが、「当該業務を行うのに必要な知識及び能力並びに経理的基礎を有するもの」と書いてあるんですが、では、この「経理的基礎」というのは一体何を指すのか、具体的に少しお話を伺いたいと思います。

山崎政府参考人 この経理的基礎でございますけれども、当該民間紛争解決事業者がその紛争解決手続の業務を適正かつ確実に遂行するということ、それに足りる基本的財産あるいは資金調達能力、これがあるかどうかということを判断するということでございます。

 すなわち、財産的基礎がないと、手続を始めたはいいが途中でだめになってしまうということも起こり得るわけでございますので、そうなりますと、ユーザーである国民の方が迷惑するわけでございますので、そういうことがないような安定した話し合いができるようにということから、財産を持っているか、財産はないけれども資金調達能力があるかどうか、こういう点を問う、こういうことでございます。

加藤(公)委員 財産があるか、資金調達能力があるか、いずれかだというお話ですが、その資金調達能力というのは、例えば、民間の紛争解決事業者が独立して経営をしていられるだけの何がしかの収入があるということを意味していらっしゃるんですか。ちょっと確認をさせてください。

山崎政府参考人 ちょっと具体的には、これからいろいろ申請があって、いろいろなパターンが出てくるんだと思います。ですから、今委員がおっしゃったような態様のものもあれば、それは場合によっては、これは手数料を取ってやってもいいわけでございますので、その収入で賄っていくということもあり得るかとも思いますし、いろいろなパターンがあり得るだろうというふうに思っております。

加藤(公)委員 今のお話ですと、資金調達能力がない場合には逆に財産があればいいという話ですが、財産があって資金調達能力がないということは、その事業者は、財産を食いつぶすだけということになるんじゃないですか。つまり、その事業者自体が未来永劫、永久とは言いませんが、将来にわたって安定的に事業が行えるということであるならば、その事業自体で、あるいは、もしくはそれ以外の何がしかの収入で経営ができるという状態でなければならないと思うんですが、そうなると、今度は財産があるやなしやというのは余り関係ないように思うんですけれども、いかがでしょう。

山崎政府参考人 基本的には今委員がおっしゃったとおりかと思いますけれども、ただ、基本財産があるということは、それは確かに、食いつぶせば、ほかを借りる、場所を借りてやるということも可能になるわけですので、全く関係がないというわけではないというふうに理解しております。

加藤(公)委員 ではもう一点、別のテーマについて少し細かいところを伺いますが、六条の三号に「手続実施者が紛争の当事者と利害関係を有すること」という表現があります。ここで言う「利害関係」というのはいかなるものを指すのか、具体的に教えていただきたいと思います。

山崎政府参考人 ここでイメージしているのは、裁判手続に裁判官等の除斥事由とか忌避事由がございますけれども、その辺を念頭に置いて、裁判ではございませんので、それを利害関係というふうに表現をしております。

 例えば、一定の親族関係にあるとか、それから過去にいろいろな取引を行ったとか、あるいは業務委託を請け負ったとか、そういうような関係とか、そういうものが含まれてくるということでございます。

加藤(公)委員 幾つか伺っていってもし整合性が私の頭の中で整理できなければ少し戻って伺うこともありますので、先にちょっとお知らせをしておきます。

 次に、六条の三号には、今度、実施者を排除する方法の定めというのがありますが、これは、紛争解決事業者が手続実施者を排除することができるということだけで十分なのかどうか、その点について伺いたいと思います。

山崎政府参考人 まず、解決事業者ですか、そちらの方で、こういうものはその手続から除外をするというルールをつくるというのは、一つ、典型的に考えられます。

 それから、依頼者の、依頼者というか申立人ですね、当事者の方から、こういう関係にあったではないか、だからここからどいてくれ、こういうやり方もあろうかと思います。それは、決め方になろうかと思います。

 ただ、当事者から言っていく方は、それでその手続実施者がそのままいるということになれば、もうここでは話し合いはしないという選択もございますので、両方あり得るのかなというふうに思います。

加藤(公)委員 事業者とそれから当事者、申立人の方、両方からというお話があったんですが、例えば、手続実施者の方が、その事業者のところに来た調停の問題について、この件については自分でおりたい、公正にできない可能性があるからおりたい、忌避したいという場合には、これは可能になるような手続がここに書かれている必要はないんでしょうか。

山崎政府参考人 裁判でいえば回避手続、みずからどく、そういう手続だろうと思いますけれども、少なくとも事業者側においてはそういうルールを定めている必要があるだろうというふうに私は思います。ただ、当事者側から申し出があったときにどういうふうにするかというのは、それはそれぞれのところの決め方かなというふうに思います。

加藤(公)委員 それから、同じ六条四号のところですけれども、ここで、「その他の事由」に云々かんぬん、いろいろ書いてありますが、「その他の事由」という言葉が出てきます。ここは少し具体的に、イメージがわくように御説明をいただきたいんですが。

山崎政府参考人 この六条四号ですか、これ自体、非常に長く書いてあってわかりにくい条文かというふうに思いますけれども、要は、ここにも事例が出ておりまして、最初の、冒頭の括弧内に、「申請者の株式の所有、」それから「申請者に対する融資その他の事由」、こういうふうに書いてありますので、典型的に言えるのは、株式会社であれば株式の所有で比較できるわけですけれども、それ以外に、合名、合資とか有限会社、こういうものは持ち分とかそういうもので決まってまいりますので、それに準ずるような形のことを言っているわけでございます。

 それ以外の法人でもいろいろな比較の方法はあろうかと思いますけれども、そういうような、実質的にどれだけの出資をしているかとか、そういう比較をしていく、こういうことでございます。

加藤(公)委員 では、同じくその六条四号の文章の中で、「その事業に重要な影響を与える関係にあるもの」という表現が出てきますが、「その事業」というのは一体何を指すのか。紛争解決事業者が行っている事業全体を指すのか、それとも、その事業者が行う事業のうち、民間紛争解決事業だけを指すのか、いずれでしょうか。

山崎政府参考人 これは前者の広くとる方でございまして、紛争解決事業者が紛争解決業務をやっていますが、それ以外の事業を行っている場合ですね。それの関係で、やはり実質的な支配を受けるというものについても含まれるというふうに考えております。例えば、そういうような関係の依頼者というのは、カスタマーですね、それが手続に入ってくる場合もあるわけでございますので、そういうことを考えると、その辺の関係は広く考えて排除をしておいた方がいい、こういうことでございます。

加藤(公)委員 法律上は、今おっしゃられたようなことは、最終的に「法務省令で定める者」ということで一くくりになっているわけでありまして、当然、法律が成立をすることになれば、その後省令でさらに具体的に書くということになるんでしょうが、法案の審議でありますから、もう少し具体的に我々もイメージをしたいなと思っておりまして、例えば、では「法務省令で定める者」として挙げられる可能性の高いものというのは、今の段階で、例えばどんなものがあるのか。それは、今カスタマー云々と取引先の件はおっしゃられましたが、ほかにどんな可能性があるのか、教えていただけますでしょうか。

山崎政府参考人 今、事業全体をとらえる場合をちょっと申し上げたんですけれども、それ以外にもこれからちょっといろいろ研究をしていきたいというふうに思っておりますけれども、ここのところは絞るつもりはございませんので、広くとらえるということでございますので、どういう事例があろうと、その場合はやはりこの条項の対象になるというふうに考えております。

 基本的にここで考えているのは二つのパターンでございまして、一つは、親会社がございます、それで、親会社がやっている業務がございます、この業務についてADRをやりたいという場合に、子会社をつくりまして、その子会社にADRの手続をやらせる、こういうパターンのものが一つでございます。

 それからもう一つは、親会社がございます、親会社がみずからADRをやるわけですが、そこでそれに関連する業務をやっているとこの問題に直接ひっかかることになりますので、そこでその業務を子会社に出すということでございまして、こちらは親会社が申請人になる。先ほど申し上げましたのは、子会社が申請人になる、こういうタイプ。この二つのタイプを言っているわけでございます。

 それから、これに準ずるものもございますので、子会社同士の関係、これも当然出てくるわけでございますので、縦と横、こういうものを拾い上げるということでございます。

加藤(公)委員 紛争解決事業者の中で、今のお話ですと、もちろんすべてそれだけということではないんでしょうが、民間の営利法人のケースを想定していらっしゃるのかなという気がするんですが、例えば、出資関係とか取引関係がなくても、個人的に非常に深いつながりのある方、外形的には何の関係がなかったとしても個人的に非常に深いつながりのある方というのは、当然何がしかの影響を及ぼすことは往々にしてあるわけでございまして、そうしたケースを排除する必要はないのかというところに疑問を感じるんですが、いかがでしょう。

山崎政府参考人 この条文の書き方では、「その他の事由を通じて申請者の事業を実質的に支配し、」と書かれておりますので、そういう意味では、今おっしゃられたような極めてつながりが強いというような場合、それもやはり一つの事例かなというふうに思っております。

加藤(公)委員 今ここで少し議論をさせていただいただけでも、かなり各論で具体的にイメージをしないとわかりにくいんですね、この法律を読んだだけでは。

 大臣にも今聞いていただいていたから、もう私が申し上げたい問題点というのは御理解をいただいていると思うんですけれども、最終的にこれはだめよということを決めるのは、法律が成立をした場合、後に省令で決めるわけですよね。省令で決めるということでありますが、大臣、だれが決めるんですか。

南野国務大臣 それは、法務大臣の方で決めるものです。

加藤(公)委員 だからこそ伺ったわけでありますが、南野法務大臣が最終的に決断をして決められる、省令にするということでありますから、ぜひ、具体的に、だれが見てもわかるように例示をして省令を出していただきたいんですね。

 今の議論の中でも、例えば、では、裁判に全部取ってかわるわけではもちろんありませんけれども、裁判に行かなくても済むように当事者の方の選択肢を広げようという話でありますから、これなら認証されて当然だという基準があって初めて信頼性が確保されるわけですから、ぜひ具体的に、どなたから見ても、ああ、これなら大丈夫だな、こういうものが排除されているなら大丈夫だなというところまで踏み込んで省令をつくっていただきたいとお願いを申し上げておきたいと思います。

 では、続いて認証事業者の中立性の問題を少し伺ってまいりたいと思います。

 まず、認証紛争解決事業者というのは、手数料というんでしょうか報酬というんでしょうか、調停に当たっての収入以外にほかの収入、報酬というものを受け取ることができるんでしょうか。いかがですか。

山崎政府参考人 基本的に、ここに何も決めておりませんので、受け取ることは可能かと思います。現在でも、あるADR機関で、例えば贖罪寄附を受けたりとか、そういうものも現実にあるわけでございますので、そのことは禁じられていない。

 ただし、それをもらうことによって、先ほどの実質的支配の問題ですね、こういうようなつながりを生じ得るというものについては、それはまずいだろうということになるかもしれませんけれども、そうでない限りは可能であるというふうに理解をしております。

加藤(公)委員 では、別の観点から伺いますが、認証を受けようとする紛争解決事業者の法人格については限定をされていないというふうに理解しておりますが、念のために伺いますが、例えば、NPO法人が認証紛争解決事業者になることは可能ですか。

山崎政府参考人 これも限定しておりませんので、要件を備えていただければ、認証基準を備えていただければオーケーでございます。

加藤(公)委員 同様に、政党や政治団体がこの事業者になることは可能ですか。

山崎政府参考人 結論からいえば、何も要件を定めておりませんので、可能ということになりますけれども、現実に考えると、本当に政党が仮にこの業務をやるといった場合に、どういう業務か、業務の範囲かということも問題になるわけでございますので、本当に現実に起こるかどうかというのはちょっとわかりません。ただ、観念的には、この基準を満たしていれば可能であるということになります。

加藤(公)委員 私が伺っているのは、確かに、良心的、善意で考えれば本当にそんなことが起こり得るんだろうかという疑問は当然出てくるとは思うんですが、NPO法人もそうでありまして、制度ができればすべて性善的に運用が進むとは限らないわけで、悪用する人も中には出てくるわけですから、政党、政治団体といってもさまざまでございますので、その意味から、リスクを考える上で、今伺ったということであります。

 では、続いて同じような質問でありますが、この認証紛争解決事業者に、法人ではなくて個人がなることは可能ですか。

山崎政府参考人 これについても可能でございます。ただし、認証基準はきちっと満たしていただくということになります。

加藤(公)委員 個人で可能ということになりますと、例えば、あるお一人の方がその紛争解決事業者になって、何がしかの基準を満たして認証を申請するということも当然可能なわけで、通れば、認証紛争解決事業者にある個人がなるわけですね。そのときに、その個人の紛争解決事業者の方が、御自身が手続実施者になる場合というのは認められるんでしょうか。

山崎政府参考人 これは、結論からいえば可能でございます。

 ただ、手続実施者になるためには、それなりの能力を有しているということを認証基準にうたっておりますので、そこを満たしていただければ可能であるということになります。

加藤(公)委員 実は私も、この法案を勉強させていただいて、一番ひっかかったのはここなんですね。

 つまりは、その調停の能力をお持ちの方が、どこかの組織に属するのではなくて、御自身が手続実施者にもなるし、なるしというよりは、もう最初からその能力を持った方が、事業者として個人でやるということが可能だとなりますと、さっきのお話ですと、認証事業者は報酬以外の寄附なども受けてもいいということになっておりますから、実質上、手続実施者が手数料以外の報酬を受けてもいいということにはなりませんか。

山崎政府参考人 どうも、先ほど委員が御質問になった点で、私の答えとちょっと認識の差があるのかなというふうに思うんですけれども、手続の当事者から、手数料とかそれから報酬、それ以外のものをもらうというのはまずいんだろうと私は思っておりまして、寄附と言ったのは、それ以外のところからの寄附というイメージで申し上げたわけでございますので、確かに、事件当事者から決められたもの以外をもらうというのは、これはもう厳に許されないことだというふうに思います。

加藤(公)委員 その事件に関していないことであれば可能なんですか。

山崎政府参考人 事件に関していなければ、一般的に、篤志家というのはおられますから、そういう方が寄附をして、それを受け取るということは可能でございます。

加藤(公)委員 もう少し具体的に伺うとすると、AさんならAさんという方がいて、手続実施者でもあり事業者でもある、認証もされました、こういうケースの場合に、Aさんは、この法律でいえば、紛争解決事業だけをしなければならないという縛りはないですね。ほかの仕事を兼業しても構わない。そうすると、紛争の当事者の方からは当然決められた手数料しか受け取っていないけれども、そのAさんが行っている別の事業で、この当事者の方々が何かお金を渡す、何かを買うという可能性は十分にあり得ますね。それは、その取引だけを見れば健全な商取引ということにもなるわけですが、少し引いて見れば、大局的に見れば大いに問題があるのではないかと思って伺っているんですが、そういうケースは想定されていませんか。

山崎政府参考人 確かに、その事件としてはもらっていない、しかし他の事業の関係でということでございますね。

 こうなりますと、先ほど利害関係云々ということをちょっと申し上げたと思いますけれども、場合によっては、その辺にひっかかる可能性はあるんだろうと思います。ただ、ちょっと具体的事案がどういうふうになってくるかということで、しかとはお答えはできませんけれども、仮に、そういう問題も生じ得るので、ケース・バイ・ケースであろうというふうに思います。

加藤(公)委員 私もいろいろ思考実験をしてみまして、法律を厳密に読んでいくと、やはりそういう今申し上げたようなケースは可能だろうというふうに私も思っていたんですね。でも、それが可能なのはやはりおかしいんじゃないかと。しかし、一個一個詰めていくと、やはり可能になる。

 そこで考えたのは、例えば、今回のこの調停ではなくて、民間紛争解決事業ではなくて、仲裁だと仲裁法という法律があって、そのときには、収賄の罰則規定がございますよね。この法律にはありませんね。なぜ収賄に関する規定あるいは罰則が設けられていないのかというところが、今の話の中で私は一番疑問になったんですね。

 これを設ける必要があるのではないかというふうに思うんですが、もし必要がないということであれば、私にもわかるように、わかりやすく御説明をいただきたいんですが。

山崎政府参考人 仲裁は、裁判権を放棄して、それで、主張なり証拠を出して、最後は、仲裁人は裁判官と同じように裁断をするわけでございます。ですから、そういう関係では、そこにそでの下が入るということは好ましいことではないということでございまして、まさにそれが贈収賄につながるということで罰する、こういう考えだろうと思います。

 こちらのADRは、基本は話し合いでございまして、裁断するわけではないんですね。両者の意思が合致したからということで、そこで調停なり和解をする、そういう世界でございますので、そういうような怪しい状況があるならば、みずから離脱することが可能なわけでございます。仲裁の方はちょっと離脱することができないということにもなりますので、そこは大きな違いがあるのかなということで、罰則は設けておりません。ただ、そういうことをすれば、最終的には認証の取り消しということにもなるわけでございまして、社会的にはペナルティーを負う、こういうことになろうかと思います。

加藤(公)委員 認証が取り消される件については、ちょっと後で改めて伺いたいんですが、確かに、仲裁の場合には、仲裁がされればそれに従わなければならないわけですし、今回のこの民間紛争解決事業というものとは明らかに違うとは思います。ですから、当然、その仲裁法で定める罰則の方が圧倒的に重いということもよくわかります。

 ただ、調停で気に入らなければそこから離脱できるとはいっても、法理論上はもちろんそうなんですが、実際に、その調停の場に、当事者同士が合意をして、ここで調停をしましょうということで臨んだときに、手続実施者が何か提案をするわけですね。この辺でお互い和解をしませんかという提案をするときに、答えは一つではないですね。紛争解決の落としどころというのは決して一つじゃないですね。当然幅があって、AさんとBさんがもめていれば、本当はこの辺で和解したいけれども、最悪ここで我慢しようかというラインをお互いが持っているわけですね。そのときに、手続実施者が、その範囲の中でどちらかに有利な方に結論を導くということは十分に可能ですし、それがおかしいではないかということを事実上証明するのは物すごく難しいんじゃないかと思うわけです。

 だから、仲裁法ほど厳しい規定が必要だとは言いませんけれども、規制あるいは罰則というものが何がしかあってもおかしくはないだろうと思うんですが、いかがですか。

山崎政府参考人 委員御指摘のお考えも理解はできますけれども、やはりここは、基本的には自由な話し合いの場ということでございまして、今、裁量の範囲内で若干どっちかに有利というような案を出すということは、これは裁量の範囲内でその本人もオーケーと言ったことについては、それはやはり最終的には本人の意思が入っているわけでございますので、やはりそこは、そこまで厳しく罰するということは必要ないのではないかというふうに考えております。

加藤(公)委員 公正に手続がされて今おっしゃった結論であれば、全くそのとおりだと思います。ある一定の範囲の中でお互いが合意をするんだったらそれは何の問題もない、そのとおりなんですが、そのある範囲の中とはいえ、わかりやすく言えば、片方からそでの下が入っていた、片方からわいろが行っていたという状況があるんだとすれば、それは公正ではないんじゃないかと思うんですが、これは、法理論上はここ以上詰めるとわかりません。わかりませんが、一般に、私個人としては利用することがないことを望みますけれども、でも、世の中にこれだけ紛争が多い以上、何がしかのトラブルで使うことだってあるかもしれませんから、そのときに、本当にそれで安心できるんだろうかというところにやはり疑問があるわけです。

 大臣、今議論を聞いていただいていて、どうですか。この調停の手続実施者の方がわいろを、わいろと呼んでいいのかどうか言葉は知りません、あえてそでの下と言いましょうか、それを受け取っていたとして、でもお互い合意したんだからしようがないでしょうということで本当にいいのかどうか。どう思われますか。

南野国務大臣 それがわいろということにはっきりなるようであれば、それはいけないことだろうと思います。

加藤(公)委員 はっきりなるかどうかというのは、それこそ法律を書いたときにどう書くかになっちゃいますから、ここでその仮定の話をしても仕方ないとは思いますけれども。

 要するに、紛争の当事者の片側から簡単に言えば何がしかの利益供与を受けた手続実施者が、多少とはいえ片方に分のいい調停案を出して、もちろん、ここで折り合いがつかなければ裁判という方法もありますよ、あるいはほかでやっていただいても結構ですよという自由はあるものの、一度そこで調停の場に着いた人たちが、また改めてゼロからやり直しましょうというのは相当な手間ですから、何とかそこで決着をつけたいと思うのが普通の感覚だと思うんですね。

 それが多少なりともゆがむ可能性があるんだったら、別に罰則をつけたって正義に基づいて事業をやっている人は何にも困らないわけですから、その点を検討していただいてもいいと市民感覚で思いますけれども、市民感覚で大臣、どう思われますか。

南野国務大臣 ADRの認証取り消しの一つの枠もございますので、そういったところでもそれは効果を出していけばいいんじゃないかなと思っております。

加藤(公)委員 認証取り消しだけでは十分な規制にならないと私は思ったから実は伺ったのでありますが、この問題提起は、余り先送りはしたくはありませんけれども、法案を五年後に見直す可能性もあるわけですから、宿題としてぜひ考えていただきたい。

 それは、今あるADR機関の方々がインチキしているという意味ではもちろんありませんが、これまでの法務省からの御説明を聞いていると、中には、いや、今回はビジネスチャンスです、こうおっしゃった方もある。とり方によってはそれはそうですよね。新しいビジネスが生まれるわけですから、新しい事業が生まれるわけですから、そういう考え方だってあります。新しい紛争解決事業者が出てくる芽というのは十分にあるわけで、その方々がすべて正義に基づいて事業を行うかどうかというのは一〇〇%保証できるものじゃないわけですから、ここはやはりぜひ厳しく見ていただきたい。

 ゆがんだら何が起きるかというと、このADR全体、まじめに一生懸命やっていらっしゃる方についても不信感を抱かれて、制度自体が崩壊をするということになるわけですから、だから、あえて申し上げておりますので。司法制度改革推進本部は何かもう間もなく、なくなると言っていいのか、どうなるかわかりません、組織改編になるんでしょうけれども、法務省として、ぜひ責任を持ってこれはチェックをしていただきたいと強く強く強く申し上げておきますので、大臣、よろしくお願いします。

 では、次に行きたいと思います。

 今申し上げてきたのはすべて、この認証紛争解決事業者の中立性というのをいかに保つかということであります。本当にこれが中立だということがどなたから見ても確認をされないと信頼性がないわけでありますから伺ってきたんですが、先ほど事務局長あるいは大臣からもありましたけれども、仮に、何か悪用事例といいますか、今申し上げたようなよからぬことがあった場合には、認証を取り消すからそれでペナルティーになるんだというお話でしたけれども、何かあくどいことをした事業者があったときに、その認証取り消し以外のペナルティーというのは何かありますか。

山崎政府参考人 どういうことを行ったかにもよるわけでございますけれども、例えば受けた事件のプライバシーを暴露してしまったとか、そういうようなケースだというふうに考えますと、それは当然損害賠償責任を負うということにもなる、民事的にも負う、それから行政的には取り消しになる、こういうペナルティーだということでございます。

加藤(公)委員 結局、行政的には認証が取り消されるというだけで、あとは民事でやってください、こういう話だと理解してよろしいんでしょうか。確認をさせてください。

山崎政府参考人 ちょっと答弁が不十分だったと思いますけれども、例えば悪用するケースで、偽りその他不正な手段によって認証を受けたような場合、これが後に発覚したというような場合であれば、これは取り消しとともに刑事罰の対象にもしているということでございまして、行政罰、刑事罰、民事罰、この三つが対応できるということでございます。

加藤(公)委員 では、それに関連をして伺うんですが、先ほど来、ペナルティーとしては、もちろん刑事罰とか民事の訴訟というのはあるにしても、認証の取り消しというのがやはり一番大きなペナルティー、大きいというか一番可能性の高いペナルティーということになるんだろうと思うんですが、その認証されていた紛争解決事業者が何がしかの理由で認証取り消しになる、不適格だということになった場合に、どういう手続、どういう方法でそれは取り消されるんでしょうか。

山崎政府参考人 これは、取り消しに関しましては二十三条という規定があるわけでございますけれども、必要的に取り消す場合とそれから任意的に取り消す場合と両方ございます。

 取り消しにつきましても、まずいろいろと報告を求めるんだろうと思うんですね、着手としては。それから、それに基づいて検査をする、それから是正命令あるいは勧告等をするということになろうかと思います。それでも従わないというような場合、それから、もう是正命令をしてもほとんど従うつもりがないという場合もあり得るかもしれませんけれども、そういうような場合に取り消しに至るということでございます。

 ただ、取り消しについても、それは法務大臣の方で御判断をいただくわけでございますけれども、やはりそこにはある程度の客観性、専門性を導入する必要があるということで、この法案で認証参与員を設けておりますけれども、この参与員の意見もきちっと聞いた上で客観的に判断をする、こういうシステムになっております。

加藤(公)委員 では、仮に、一度認証された事業者が何がしかの理由で認証の取り消しを受けたというときに、今度は、その事業者が再度認証を受けることは可能なんでしょうか。

山崎政府参考人 この件は、七条の六号、七号ですか、この辺に記載がされているわけでございますけれども、例えば取り消しを受けてから五年を経過しない者、こういう者については再度申請をすることができない、こういうことで、一定の期間除外をするということにしております。

加藤(公)委員 逆に言うと、一度取り消された事業者が、五年経過すれば再度認証の申請ができるということになりますが、そのときの審査というのは、最初に受けた審査と同じなんですか。

山崎政府参考人 基本的には、チェック項目は同じでございます。ただ、実際に過去に問題を起こしたということになれば、その点の備えがきちっとできているかどうかは、それは厳しい目になっていくというのは当然でございます。

加藤(公)委員 その認証でありますけれども、私が読む限り、期限があるものでもないし更新制度があるわけでもないというふうに理解をしておりますが、それは間違いありませんか。

山崎政府参考人 認証制度でございますので、免許とは違いますので、期間を区切っているわけではございません。

 ただ、一たん通ればそのまま未来永劫にいいのかという問題もございますので、その辺はちょっと別の形で、年に一度は必ず法務大臣の方に業務報告書等を作成して提出するというシステムを設けておりますので、ここで判断をして、おかしい状態があれば、これは検査をするとか、そういう形で是正をしていくというふうに考えております。

加藤(公)委員 何で今そのお話を伺ったかというと、年に一度報告書が出てくる、書類でチェックをして、おかしくないかどうか見ますよというのは、まさに、最初に申請されたものを、認証するかどうかを判断する項目を確認するということだろうと思うんですね。つまり、さっき御質問をした経理的基礎とか能力とかなんとかとか、多分そういうことだったり、あるいは資本関係云々とか、外形的なチェックにならざるを得ないですね。

 しかし、先ほど来私が心配をしているようなケース、つまり、明らかに不公正だとは言えないけれども、どうも納得度の低い調停が多いとか、そこの認証事業者で和解をした人たちが実は後々不満が多いとかいうことは、この毎年の報告書ではわからないですね、書類ですから。

 私が不安なのは、国が認証したということになると物すごい看板がつくわけですよ。一般の方からすれば、それは安心に違いない。ここはもう大丈夫なんだと思って、そのADR機関に恐らく行かれると思うんですね。

 新しい制度ですから、その安心感を裏切ることのないようにしてほしいとは思うものの、結果的にどの程度の満足が得られるかというのはわからないですよね、最初の段階で。それは、この報告書でもわからないですよね。私は、それを調べる必要があるのではないだろうか、こう思うわけです。法律上、五年後見直しとは書いてありますが、それまで報告書を見てきて、問題がないからこのままいきましょうというふうに安直にされると、今私が不安に思っていることはやみに葬り去られてしまうのではないか、こう思っております。

 仮に法律が通って、仮にこの認証制度がスタートをした後に、報告書以外の方法も含めて、本当に一般の国民の方にこの認証ADR制度が満足度の高い制度として利用されているかどうかというチェック、あるいは、それぞれのADR機関が一般の方にとって満足度の高い事業を行っているかどうかというチェックをして、できればそれを公表すべきじゃないかと思うんですが、いかがお考えでしょうか。

山崎政府参考人 委員の御指摘、まことにごもっともでございまして、これから育てていこうという場合には悪い芽は早く摘むということが重要になってくるわけでございます。

 ただいま御指摘の点は、この法の六条の十六号で「申請者が行う民間紛争解決手続の業務に関する苦情の取扱いについて定めていること。」ということになっておりまして、その事業者が、苦情の受付、これをきちっとやっている、やる、そういうシステム、これについての結果はどういうことであるかということ、これもやはり報告書に盛ってもらうということ、こういうことを通じて最終的なチェックをしていく。

 あるいは、昔流でいけば直訴みたいなものもあるかもしれません。こういうものも、当然、行政でございますので受け付けて、それに基づいて適正な手当てをしていく、こういうふうに考えているわけでございます。

加藤(公)委員 この六条の十六号というのは、要するに、民間紛争解決事業者が自分のところで手続をしたものについてのクレームを受ける手続ですよね。それは自分のところでやった事業の結果に対するクレームを自分のところで受ける話ですから、報告書に書くときにどう書くかといっても、そのクレームを受けた本人が、うそは書かないまでも、それは日本語ですからいろいろな、てにをはを変えるだけでイメージは変わるわけです。

 さっき事務局長がおっしゃったように、行政として一般的に、クレームとまでは言わないまでも、何がしかの窓口をつくる。直訴とおっしゃいましたが、そういう日本語がいいかどうかはわかりませんが、直接一般の方から、ADR機関を使ったけれども実際こうだったよとか、いいと思ってやったんだけれども、冷静になって考えてみたら、ほかではこんな話があって何かちょっと損しちゃった気分だよとか、あるいは物すごくよくやってくれてスピーディーでよかったよとか、どういう声が来るかわかりませんが、それは受けるべきだと思います。

 それは、一般論ではなくて、個別の認証機関についてもそういう情報をとるべきだろう、行政が直接利用者の方から声を聞くべきだろうと私は思うんですが、いかがですか。

山崎政府参考人 先ほど申し上げた中で、事業者が苦情処理をいたしますけれども、それで、報告で本当のことをどのぐらい書いているかという問題は確かにございます。これは検査をすることができますので、そのものは、直訴、直訴じゃないですね、苦情があったものについては全部保存しておくことということで検査をすることは可能だと。

 それはそれとして、行政として、国の責務にも記載されておりますけれども、内外の動向とか利用の状況その他いろいろ調査をするということで将来に結びつける、これが国の責務であるということもうたっておりますので、そういう関係からは何らかの工夫をして、苦情をきちっとみずから受けるということもしていく方向で考えざるを得ないだろうというふうに思っております。

加藤(公)委員 ぜひそれはお願いをしたいと思いますし、その情報が利用者たる国民の方に伝わらないと、実は意味がないと思うんですね。

 新しい制度をつくって、先ほど午前中の質疑でも、そもそもADRという言葉自体がわからないという話が出ていましたけれども、多分これが広まるのに相当時間もかかるでしょうし、理解をされるには物すごい時間と労力が必要だと思いますから、仮に利用しようということになった方にとっても、何だかよくわからないけれどもここを勧められたから行ってみようかとか、あるいは、何かPRを見たからとりあえず駆け込んでみようかという方だって当然あるわけで、そういう方々に対しても不利益のないように、情報を開示していただきたいと思います。

 そこで、この認証事業者、つまり国がお墨つきを与えるということでありますから、当然厳格な基準が必要ですし、それが、きょう議論してきたように、できるだけ具体的にわかりやすい状態になっていなきゃいけないと思うんですが、認証した後も、今申し上げたように、さまざまな角度から事業者をチェックしていただくと同時に、その情報を公にしていただきたい。一〇〇%できるかどうかというのは多少議論があるかもわかりませんが、できる限りオープンにしていただきたいと思うんですが、この考え方について御意見を承りたいと思います。

山崎政府参考人 まず第一の開示の方法でございますけれども、業務報告あるいは財務諸表ですか、これの提出を毎年求めておりますので、これが役所の方に来れば、文書開示の手続をとっていただければ当然見られるということにはなります。そういう方法は一つあるということでございます。

 それとは別に、こういうものを公にするかどうかという問題、みずから公にするかどうかという問題でございますけれども、これにつきましては、いろいろな意見を今後お聞きした上で、どういうふうにしていくかを課題として考えてまいりたいというふうに思っております。

加藤(公)委員 文書開示の手続をすれば見せる、それはそうなんですけれども、この御時世でありますから、かなりの情報がインターネット一つで見られたりする時代ですからね、別に隠さなきゃいけない情報じゃないはずですから、基本的にはぜひ情報をオープンにしていただいて、そのことがこのADRの制度を広く広めることになると私は思いますので、今ここで確約しろとは言いませんから、でき得る限り開示する方向で検討していただきたいと思います。

 大臣、一言だけ、お願いしたいので、その方向で検討していただけますでしょうか。

南野国務大臣 できるだけ努力していきます。

加藤(公)委員 では、認証の申請手続の件を伺いたいと思います。

 今全国で民間紛争解決事業者というのが幾つあるかは正確にはわからないというお話ではございますが、だからといって一万、十万あるとも思えません。百なのか五百なのか、多くて千なのか、それは知りませんけれども、そうした皆さんが、恐らく、この制度ができれば、自分たちも認証を受けて、きちんと国からお墨つきをもらって事業を進めようと考えられるのは当然でございまして、その手続をするに当たって、事業者の方はどこに行けば手続ができるのか、どこで手続の対応をしていただけるのか、大臣、教えていただけますでしょうか。

滝副大臣 法務大臣でございますから、法務省の法制部ということになっております。

加藤(公)委員 それは、東京だけということですか。

滝副大臣 地方からの声もあろうかと思うのでございますけれども、本人の直接面接ということは特に求めておりませんので、手紙とかあるいはインターネットとか、そういう方法もあろうかと思いますけれども、具体的にはこれから手続については決めるということでございますので、十分そういうことを配慮しながらやってまいりたいと思っています。

加藤(公)委員 冷静に考えて、北海道や沖縄に事業者の方があって、申請するのに東京まで出てこいというのは、これは幾ら何でもない話だと思いますから、ネットでやれるのか手紙で送るのかわかりませんけれども、それは、幾ら何でも東京に呼びつけるようなことだけはないように、ぜひお願いをしたいと思います。

 それともう一つ、新しい制度ですから、申請したいという方が自分でいろいろ判断をしたいと思ってもなかなかわからないことも多いと思うんですが、何がしか相談窓口みたいなものを設けられる御予定はありますか。

滝副大臣 基本的には、ただいまのところ、例えば地方法務局をそういうふうな窓口にしたらどうかとか、そういうことも内部的に検討しておりますので、そういった点についても配慮してまいりたいと思っています。

加藤(公)委員 地方法務局にされるのであれば、もちろんそれも一つの考え方だと思いますから、限定をしないで、日本全国どこでも聞いたらわかるという体制に、ぜひお願いを申し上げたいと思います。今まで事業者がない地域に出てくる可能性も十分にあるというふうに思っておりますので、それはくれぐれもよろしくお願いしたいと思います。

 それから、少し細かなことになりますが、仮にどなたかが認証の申請をされた場合に、それが認証されるのかあるいは却下されてしまうのか、それまでの、判断をされるまでの期間というのはどれぐらいを想定されていますか。

滝副大臣 基本的には、この種のものは、大体標準月数二カ月程度というようなことになっておりますので、この問題も、恐らくそういうようなことで基準を決めさせていただこう、こういうふうに思っております。

加藤(公)委員 それで、その認証申請をして、審査をするときに、先ほども出てきましたけれども、手続実施者にふさわしい方を選任できるということが要件になっていますが、では、実際はどんな人が手続実施者としてふさわしいのか、つまり、手続実施者になれるのか。これもまだ法律を読む段階では非常にあいまいでございますので、少し具体的に示していただきたいと思います。

山崎政府参考人 この法律案では、専門的知見を活用して和解の仲介を行う紛争の範囲を定めるということをいっておりますので、まず、この範囲の問題について、それを解決するのに必要な一定程度の専門的知識あるいは法律的な知識、これを有しているかどうかということがまず一つのポイントになります。

 それからもう一つは、知識は有していても、紛争を解決するというのはまた別の能力というんですか、そういうものが必要になってくるわけでございますので、紛争解決の手法とかあるいは和解案の定め方とか、こういうものにもある程度たけている人。この二つがチェックポイントかなということでございます。

加藤(公)委員 確かに、それはそのとおりで、おっしゃるとおりだとは思うんですが、では、具体的にどんな方なのかと。例えば、裁判官のOBであれば、それはそうでしょう。それはいいですよね。だれにもわかりやすいと思うんですが、ほかにどんな方が想定されるんですか。

山崎政府参考人 想定でございますが、大学の先生ということはあるかと思います。弁護士資格を持っている方もおられると思うんですね、そういうジャンルの方。それから、直接その事業に関与はしていなくても、同種の事業で、実際の実務界で活躍している方、そういう方とか、あるいは各種士族の先生方もおられますので、そういう方々。いろいろなジャンルが考えられるだろうというふうに思います。

加藤(公)委員 では、申請をしたときに、仮に、何かの理由でそれが通らなかった、却下をされてしまったという場合には、その申請者の方に対しては何が問題で却下されたかということは明らかにしていただけるんでしょうか。

寺田政府参考人 これは、行政手続法に従いまして、却下する場合にはその理由を示すということになります。この案件についてもその手続をとるということにいたしたいと思います。

加藤(公)委員 では、続いて、もう時間が大分迫っておりますが、認証に大変大きな影響のある認証審査参与員の件について伺いたいと思いますが、この認証審査参与員というのは一体どなたが任命をされるんですか、法務大臣。

南野国務大臣 認証審査参与員につきましては、民間紛争の解決手続に関する専門的な知識経験を有する人のうちから法務大臣が任命いたします。

加藤(公)委員 南野大臣が任命をされるということになるんだろうと思いますが、認証に当たって、認証審査参与員の方から意見が上がってきて、大臣はその意見に拘束をされるんですか。

南野国務大臣 認証審査参与員につきましては、法務大臣の諮問機関と位置づけられております。その意見は法的拘束力はありませんけれども、法務大臣は、認証審査参与員から聴取した意見を十分に踏まえて認証に係る処分を行うことになるものと考えております。

加藤(公)委員 十分に踏まえるということは、ほぼその認証審査参与員の方の意見どおりによほどのことがない限りはなるということですか。

南野国務大臣 先ほどお尋ねになりました、拘束はされないということでございます。

加藤(公)委員 拘束はされない、わかりました。拘束はされないのは、そのとおりです。拘束はされないけれども、よほどの特別な理由がない限りはその意見が尊重されて、大臣が任命をされるということでよろしいんですか。

南野国務大臣 はい、そのとおりでございます。

加藤(公)委員 時計を見ながらなので大分慌てておりますが、ぎりぎりなので、最後に一問だけ、どうしても伺いたいことがあるので、そこを伺いたいと思います。

 今回、新しい制度をつくられるわけでありますから、これを利用者になる国民の皆さんに理解をしていただかなければならない。知っているだけではだめで、名前を聞いたことあるだけでもだめで、いざ困ったときに使えなきゃしようがないわけですから、認知、つまり理解をしてもらうということはかなり大変な労力が必要だと私は思っているんですが、どうやってこの新しい制度の理解を深めていただくおつもりか、その手段、方策について伺いたいと思います。

南野国務大臣 ADRの手続につきまして民間の理解の増進を図ることは、国や地方公共団体の重要な課題と認識しております。本法律案におきましても、この点について、国の責務を定めております。

 具体的には、国は、ADR手続につきまして、内外の制度や、また利用状況の調査及び分析、またその情報の国民への提供、教育や広報の充実などに努めることにいたしております。また、地方公共団体は、ADR手続について、地域内で行われるものに関する情報、それの住民への提供、地方公共団体が行うものの広報の充実などに努めることにいたしております。

加藤(公)委員 時間になりましたから終わりますが、大臣、多分、今読まれたのを見て、御自身で具体的にどういう方法でPRされるかというのはわからないですよね。私が聞いてもわからないので、多分、この委員会で今後いろいろな法案を議論させていただくんだと思いますが、済みません、わかるようにぜひお願いします。

 それを読まれても、では、インターネットを使うのか、パンフレットをつくるつもりなのか、テレビコマーシャルをやるつもりなのか何なのか全然わからないので、私が聞きたいのはそういうことでございますから、国民にわかりやすい議論をぜひ国会でしたいと思っておりますので、その点を最後にお願いをして、終わりたいと思います。ありがとうございました。

塩崎委員長 次に、樽井良和君。

樽井委員 民主党の樽井良和です。

 ADR法案は、本当に可能性もあれば問題もどんどん出てくる法案だと思っております。前回本会議でも質問いたしましたとおり、いろいろな問題をはらんでいるんですが、まず、本会議で質問をした中で、大臣の答弁がちょっと不十分だったかなと思うところから入っていきたいと思います。

 大臣、人を裁く司法制度、これを改革する部分において、まず自分たちの襟を正さないといけない、これがまず政治家がすべきことであるというふうに私は考えるんですが、その辺の所見はいかがですか。

南野国務大臣 先生のおっしゃるとおりだと思います。

樽井委員 本会議でも言いましたが、旧橋本派の一億円やみ献金問題、自民党の政治資金団体である国民政治協会や自民党本部を利用した迂回献金問題、こういった問題に対して、法務大臣は指揮権を発動して、この捜査をちゃんとやってくれ、こういうふうに指示したのか指示していないのか、それか、するのかしないのか、お答えいただきたい。

南野国務大臣 検察当局におきましては、刑事事件の捜査処理に当たり、必要な捜査を行い適正に対処しているものと信頼いたしておりますので、したがいまして、御指摘のような必要は感じておりません。

樽井委員 法務大臣、検事総長にこの捜査をちゃんとしてほしいということを指示する権利があるんですが、そういったことをするつもりも今後ないというふうなことでよろしいですか。

南野国務大臣 十分信頼申し上げておりますので、ありません。

樽井委員 国民は、こういった問題を何かうやむやなままこういった改革をすることに対して非常に不信感を抱いているものと思っております。そしてまた、民主党の方もこういった問題はきちんとしなけりゃいけないんだということを強く訴えてきているんですが、その辺について、力を入れていこうという気があるのか、するかしないかは別として、そういうふうに思っているのかどうか、お伺いいたします。

南野国務大臣 お尋ねにつきましては、私も、諸先輩に倣い、検察の独立性を尊重してまいりたいというふうに思っておりますので、信頼申し上げております。

樽井委員 例えば、常識的に考えて、一億円もらったかどうか忘れたとか、そういうことを言って、国民が普通に信じて通るものではないと思うんです。

 例えば、そういったことで議員辞職しなかったという場合、今まで議員辞職した方、あるいはこれから議員辞職を求められる方でしなければならなくなる方というのはやはり議員でいるわけですよ。それで、これほどのこともしていないのに、もっと本当のところを言えば、罪からすればえらい軽い罪で議員辞職した方から見れば、こんな、例えば一億円ぐらいもらっておいて記載していなかった、これで言い逃れできるのかというふうに思うわけです。

 その辺について、どういうふうにお考えですか、所見をお伺いします。

南野国務大臣 個別の案件でございますのでどれがどれということでは申しませんが、そういう個別の案件については申し上げることができないということを申し上げます。

樽井委員 いえいえ、そんな個別の案件とかいうんじゃなくて、例えば今回ちゃんと起訴されなかったとして、起訴を実際にされた案件もあるわけです。そして、議員辞職を今までしてきた議員もいるし、これからまた議員辞職を求められる議員もいるわけですから、その議員にとっては、今回の事件よりは、自分はそこまでのことをしていない、そういうふうな見解を持っている議員が当然いると思うんですね。その辺について、そういったアンバランス、国民から見ても、これで辞職にならないのにこれでは辞職なのかよ、そういうふうに当然思う事件というのはたくさんあります。

 そういったときに、法務大臣が、これはちょっとおかしいんじゃないかというようなことを言う権利があるのに、では言わないということなんですか。

南野国務大臣 個別の事件を単純に比較することは、ああだこうだということは、これはすることではないと思いますが、事実や法律関係にもいろいろと異なっていることを先生今ごっちゃにおっしゃっていると思います。適当と思われませんが、いずれにしても、検察当局においては、必要な捜査を行い、その結果に基づいて適切に処分しているわけでございますので、正確に、適切になされていると私は信じております。

樽井委員 その正確で適切な判断が出た後、これはどうもおかしいんじゃないかという、大臣がその判断に疑問が生じた場合は追及するんですか。

南野国務大臣 信頼いたしておりますので、いたしません。

樽井委員 それでは、例えば政治家がこういった献金問題とかで何か不正があった場合の捜査に大臣からは全く意見しない、もう本当に検察当局に任せているんだということでよろしいんですか。

南野国務大臣 検察当局におきましては、刑事事件の捜査処理に当たり、必要な捜査を行った上でいろいろと適正に対処しているものと私は信頼申しております。したがって、御指摘のような必要は感じておりません。

樽井委員 信頼しているのはいいんですけれども、大臣、その中身に関してはどういうふうになっているのかというような、そういう問い合わせも今後ともしないで任せておくというふうな判断でよろしいんですか。

南野国務大臣 結果が出たことについてはそのとおりであります。

樽井委員 では、例えば政治家がこういった何か不正問題を起こしたときに対しては、大臣はそれを追及しないで、今後ともその法律の改革のみに頭を使っていくというふうな見解でおられるということですね。

南野国務大臣 先生も御存じだと思いますけれども、個別の事件を単純に比較することは、事実や法律関係も異なることから適当と思われませんが、いずれにせよ、検察当局においては、必要な捜査を行い、その結果に基づいて適切に処分されているわけですから、そのように私は信頼申しております。

樽井委員 普通の見識として、国民が政治家に不信を持つということは、いろいろな改革を進める上においてもいろいろな国民の不信感というものが邪魔をするということがたくさんあるわけです。そういった中で、こういった問題をきちんきちんと信頼できる処理をしていくことが、政治家が前面に立って改革を進めていくということができることだと私は思っておりますので、そういったところを全くノータッチで、無関心だという態度でやるのはちょっとおかしいんじゃないか、こう思っています。

 では、先に進めていきます。

 隣接法律専門職種への代理権の付与問題についてなんですが、各種専門士業に代理権を付与するのかどうかなんですが、司法書士、弁理士、税理士、不動産鑑定士、土地家屋調査士、社会保険労務士、行政書士、その他各種専門士業、これは大臣の見解で結構ですので、どの専門職種に代理権を付与するのか、それともこれは考えていないというのか、その辺をお答えいただきたいのです。

南野国務大臣 司法書士等の隣接法律専門職種に関するADR手続の代理権の付与につきましてお尋ねであると思います。

 これは、各職種について、社会的要請や法律的、専門的能力等があるかどうかという観点から、職種ごとに検討を進めておりますが、現段階では具体的結論を得ておりません。引き続き検討を進めまして、司法制度改革推進本部の設置期限である今月末までには具体的方法を取りまとめたいと考えております。

樽井委員 その付与する問題に関しましては、大臣としての、例えば、今、立場上、どこどこに付与してどこどこに付与しないというのは問題があるから言わないのか、それとも、本当は考えているけれども言えないのか、考えていないのか、どちらなんですか。

南野国務大臣 弁護士法第七十二条の趣旨を損なわないことが前提でありますけれども、ADRの当事者にとっては、身近な専門家の中から、当事者の事情や事案の性格等に応じた適切な代理人を選択できる状況となっていることは、ADRの利用の促進を図る上で有益なことであると考えております。

樽井委員 いえ、ちょっとまた質問と違うんですが、大臣は、例えばさっき言いました七専門職種、専門士業、その他の専門士業について、一個ずつ見解を持っていられて、これは適切だ、不適切だということを付与する部分において考えていらっしゃるけれども今さっき言わなかったのか、それとも、考えてもいないのかということなんですが、大臣本人が考えているかどうかです。

南野国務大臣 それは、この法案を提出させていただく以上、考えていないと先生は思われますか。考えております。

樽井委員 これは後々、例えば紛争解決を市場として見た場合、最初に大事な質問をしているわけなんです。

 それで、大臣が、どこどこに付与するのか、しないのか、こう考えているかによって市場がまた大きくなったり小さくなったりしますので、大体、例えば七つ専門職種ありますが、これは、例えば、全部ぐらい認めるのか、あるいは一個二個にしているのか、その辺のざくっとした部分ではどういうふうにお考えですか。

山崎政府参考人 先ほど大臣からも御答弁ありましたけれども、現在検討中ということでございます。

 それは、大臣の頭にも、我々事務局の頭にも、ある程度のものはございます。ただ、これは今、いろいろな手続を経て、最終的に定めていく途中の段階でございますので、若干時間はかしていただきたいということでございまして、それぞれの職種の特徴がいろいろございますので、それに見合ってどのようにしていくかということ、これは現在検討中ということでございます。

樽井委員 いろいろな方がいろいろなADRに関する質問をして、私はそこにかぶらない部分で御質問をしているんですが、一つの紛争解決市場とした場合、弁護士を含めて、ADRでもこれを商売として考えることを前提に御質問をしていっているんですけれども、例えば、いろいろなところで認める認めないはあるとして、新しく今回認証を付与されて、どれだけ紛争解決、ADRの紛争を処理する方が誕生するんですか。人口的なビジョンというのはありますか、何人ぐらいその解決に携わる人がふえるんだという。

山崎政府参考人 これは、数字であらわすのは大変難しいということでございます。

 現在、いろいろな活躍している団体があるわけでございますけれども、そういう団体の方で、そのままの状態で今後も続けていきたい、こういう希望をお持ちの方もおられると思いますし、あるいは、認証制度に乗っかってやりたいという方もおられます。これについては全く自由ということで制度を組んでおりますので、今私の方から、こういう団体の方が来られるはずだということは全く言えない状況でございます。

 それからもう一つは、新規参入の問題も当然あろうかと思います。これは、今やっている分野とはまた違った分野、それから非常に先端を行く分野とか、そういうようなところもございますし、それから、従来不十分なところ、こういうところに新たに申請をしてくるということはございますけれども、ちょっと今数値でどのぐらいということが言えないことを御勘弁いただきたいと思います。

樽井委員 新しく参入するところも、ある機関をちゃんと認めるのもそうなんですが、これは大体、紛争の数というのがあるわけですから、今まで裁判で処理していた分、それがADRで何個か処理されるようになったら、やはり市場としては弁護士のシェアをちょっととっていったりとか、そういうことも当然考えられるわけです。あるいは、ADRの機関においても、物すごい市場原理の中では、ほとんど仕事がないのかあるのかわからないという状態にもなるわけですから。

 例えば、前にタクシーの業界に自由に参入を認めてどんどんほうり込んだら、むちゃくちゃ市場が、値段が下がってきたりしてしんどくなってきた、そういうこともあるわけで、当然、大体これぐらいの人口に抑えようというような目安とかいうのがないと、僕はちょっとだめだと思うんですが、それはもうなすに任せて適当にぼんぼんぼんぼんこれはこれはと決めていって、後、人口とかはどうなっても知らないというふうな決め方なのか、それとも、もうこれぐらいでやめておこうという段階まできたらすっと抑えるのか、その辺はどういうふうなやり方でやっておるのですか。

山崎政府参考人 この法律の考え方は、認証基準、これを満たすものについては認証をするということでございますので、そこで総量規制をしたりとか、そういうことは考えておりません。

 後は市場原理で、たくさんできて乱立すれば、それは当然経営として成り立たないということにもなろうと思いますので、そこのところは市場原理にある程度任せる、こういうことでございます。

樽井委員 大体市場原理で上下するとは思うんですが、例えばADRで同じ紛争を解決した場合、弁護士にかかる手数料と比べてどれぐらいの割合の手数料になるものなんでしょうか。

山崎政府参考人 これは大変難しい答えになるわけでございますけれども、そもそも、現在弁護士の報酬がどのぐらいであるかということ自体、公式のものは全くございませんので、私どもにはわかりかねる世界であるということでございます。

 それから、以前には、弁護士の報酬等については、一定の会則で決めておりまして、それを標準にしてやっていくという基準があったわけでございますが、この制度をやめました。独禁法の問題もございまして、やめました。したがいまして、現在、どの程度の手数料でやっているかということ自体もわからないという状況でございます。

 したがいまして、では、今度新しいADRでどの程度でやっていくかということも、なかなか難しいところでございます。

 ただ、紛争の対象、これがどのぐらいの金額かということがございますよね。それとのバランスで、ある一定割合以上を超えるものは著しい手数料になるから、それはだめだということは決められると思いますけれども、その以下のところは、それぞれ、交渉事でございますのでそこで決めていただく、こういうことを考えているわけでございます。

樽井委員 弁護士も幾らもらっているのかわからないといっても、大体、ざくっとしたもの、そんな正確な数字でなくてもいいから。

 例えば、アメリカでは、今ADRをやっている、そして紛争解決で同じぐらいのことを処理するときに、例えば離婚訴訟だったら、こっちの弁護士を頼んだら何ドルだけれども、大体ADRだと一般的にはこれぐらいかという割合があると思うんですね。そういった割合というか、極端な話、十分の一とかいうのか、それとも一緒ぐらいだというのか、そんなので結構です、これから先の市場なり利用度なりが変わってくるので、その辺、大体の数字でいいから。そんな数字もないんですか。

山崎政府参考人 世界の法制、ある程度調べておりますけれども、我が国でも、弁護士の報酬とADRの手数料、両方手数料ですけれども、それがどれだけ違うかというデータがないわけでして、いわんや外国も、いろいろな法制がばらばらでございますので、それについてのデータは我々としても把握はしておりません。

 例えば日本で、ちょっと私、直接弁護士をやっておりませんから今数字もございませんけれども、例えば、事件を請け負って、これが一千万円の事件だという場合、着手金というのを多分弁護士はもらうわけでございますけれども、どうですかね、一割ぐらいか、あるいはそれ以下ということにはなるんだろうと思います。

 それから、今までの感覚でいえば、例えば訴訟に勝った場合、成功報酬は何十%とか、そういうのはありましたけれども、それは一定の基準でございますけれども、現実にどうなっているかということは、やはり我々としてはわからないという世界でございます。

樽井委員 朝、いろいろ聞いておりますと、迅速で廉価だ、そういうふうな意見を聞きました。それで、廉価だと言うからには、何か見たから廉価なのか、大体あるんだと思うんですね。やる上において、こんなもの幾らになるかわからないよなんという計画は多分ないと思うんです。例えば大体半額ぐらいやとか、そんな、五%ぐらい誤差があってもいいですから、大体どれぐらいのものなんですかと言っている。それはほかのところでも市場でわかるでしょう。一〇%ぐらい誤差があってもいいんです。

山崎政府参考人 これを施行するまでに若干時間もございますし、それから、最終的には、著しく不当な手数料を取ってはならないということも法律に書かれておりますので、基準になっておりますので、その辺の基準は定めざるを得ないということになりますので、今後、海外の調査とかそういうこと、あるいはちょっと公表の数字がございませんけれども、可能な限り、大体の数字がわかればそれを見ながら、最終的に大体このぐらいということを定めてまいりたいというふうに思っております。

樽井委員 今後調べたらわかると。つくる前に、大体こんな制度でこれぐらいのことが起こり得るだろうというビジョンがなかったのかどうか。

 また、私、これはきのう、値段については絶対質問しますよということで、質問取りに来たわけですから、何で今後調べるんですか。きのう調べたらいいじゃないですか。

山崎政府参考人 ですから、直ちに調べるような性質のものではないんですね。これからちょっといろいろな関係方面にお願いをして、正確な数字でなくても教えていただきたいということで、その辺、秘密の問題もありますので、それを解除していただいて教えていただく、こういう作業をしなければなりませんので。

 確かに御質問いただきました、事前に。ただ、私も、いろいろ担当者を督促して、本当にないのかということを確かめましたけれども、現実にはないんです。ということで、申しわけございませんけれども、御理解を賜りたいと思います。

樽井委員 実際に弁護をしている方とかあるいはADRをしている方に、ぶっちゃけた話、どのぐらいもらっているのと言って聞くぐらいのことでもある程度はわかると私は思うんですね。

 これはおかしいんですよ。普通、例えば、何か事業をしますよ、銀行にお金を借りに行きますよというときには、試算表を出せと言うでしょう。ちゃんと、これぐらい売り上げがあって、あなた、例えば中華料理屋つくるんだったら、ここの店にこれだけお金がかかって、何を幾らで売って、それだったらお客さんがこのぐらい来るからこのぐらい利益があってというような話をしないとお金なんか貸さないじゃないですか。

 何で、法律を通すときには、大体これぐらいのコストで国民にサービスができて、これぐらいの弁護士費用があるから市場のこのぐらいをとって、大体こういう世界が予想されますというそのビジョンを先に描いてから法律をつくっていないんですか。そういうことをするから、赤字だらけになって、それで、全然利益を考えないから、後で、公務員はそんなんとかと言われるんですよ。

 だから、ビジョンをちゃんとつくっていないのかという話です。これが実行されたときに大体これぐらいになりますねというそのビジョンでいえば、例えば、同じ法律だったら、安価で迅速だということは、どれぐらい期間が迅速で、弁護士に比べて安価なのかという、ざくっとした予想でいいです、それは外れても怒りませんから、大体こんなものだというのはないんですか。

    〔委員長退席、田村委員長代理着席〕

山崎政府参考人 報酬とか手数料、これは事件によってもさまざまでございます。ですから、それを一律に決めることはできないし、では、国の方でこのぐらいとやって、そういう形でいいのかどうかという問題でございます。それはやはり相対交渉の問題でございますので、高いところには来ないですね。安くていい調停をやってくれるところには来るということでございますので、そこは一律に、これだけ、十分の一以下だとか、そういうことは言えないということで御理解を賜りたいというふうに思います。

樽井委員 コストというのは非常に大事な問題で、例えば、五十万円何かだまされて損した人が、この紛争解決に百万かかるんだったら泣き寝入るわけですよ。それが、例えばこのADRの機関だったら、ぱぱっと言うたら十万円で処理できるねといったら、それが、今まで紛争としては成り立たなかった部分の潜在的なものが出てくるわけでしょう。だから、この値段というのはすごく大事なんですよ。高ければ頼まないし、安ければ今まで頼まなかった人も頼むわけですから。

 大体、ほかの国でもADRをやられているんだから、これぐらいなものだろうというぐらいの、そんな見識も何にもなしに、もうなすに任せてぱんぱんぱんと認証して、市場がこれだけあって、人口ももうどうでもいいや、とりあえず書類がそろっていたら許可おろすよとやった後、ふたをあけてみたら、もうとんでもないことが待っているのか、何が待っているのか知らないですけれども、ある程度のビジョンとか計算とかをしないで法律を通しているんですか。

 今後、この認証をどれどれにするのかという問題に対しても、ちゃんと計算してやらないとだめでしょう。計算をしなくて、もうどうでもいい、また、値段とかも何にも、市場も考えていない、そういうことでやっていかれるんですか。

山崎政府参考人 いや、それは、申請する事業者が判断して合理的な手数料の基準を打ち出す、ユーザーの方がそれで利用していただけるかというところで決まってくるわけでございます。

 本当にざくっとした言い方、当たっていなくてもいいとおっしゃられれば、紛争の対象の額がございますね、それの例えば一〇%がありますね、それ以下ということがイメージだろうというふうに思います。

 現在、弁護士の事件で、先ほどちょっと申し上げましたけれども、記憶でございますから間違っているかもしれませんけれども、着手金で例えば一〇%もらって、成功報酬でまた何十%という、それが前提といたしますと、そちらの上の成功報酬というものはほぼないだろうという額だろう。ですから、一〇%から以下ですね。それがどの辺になるかというのはまだ、紛争の対象とかボリュームによっても違ってくるというような、私はそういう感覚で思っております。

樽井委員 ADRの方は、どちらかといえばもうちょっとわかりやすい。そんな、扉をあけて、例えば、紛争時価とか書いておるようなADRはないでしょう。ちゃんと、大体この場合はこれぐらいですよというのがないと、こっちはえらい高い、こっちはむちゃくちゃ安い。

 例えば、何か司法書士におろしますよ、付与しますよという場合はどういうふうに取り決められるんですか、その値段というのは。団体が決めるのか、それとも個人個人が勝手に決められるのか、その辺はどうなんでしょう。

山崎政府参考人 これは、基本的に団体が定めます。これを統一的にどこかで定めるというルールは、現在はそういうことはできないということになっておりますので、それぞれのところがみずからの判断で決めるわけです。これをきっちり利用者にわかるように明示をしていなければならないというふうにしておりますので、これを見て、こんな高いところでやりたくないという方は別途のところに行かれるかと思います。これは、現在の士族の報酬、すべてそういう体系になっておりますので、統一的にどこかで決めるということはもう全部やめましたので、それぞれの事務所によってそれぞれの手数料が違っている、その中で利用者が選んでいただく、こういうシステムになっておりますので、基本的にはそれと同じになるわけでございます。

樽井委員 では、例えば、司法書士の一つの団体が、大体これの紛争ではこれぐらいでいこうと言ったら、もうそれで全部統一されていくというふうに考えてよろしいですか。極端に、個別に高いところがどんと出てくる可能性は十分あり得る、極端に安いところも出てくるということなんですね。

山崎政府参考人 今申し上げましたように、ある団体が幾つかのADRを全国でやる、そのときに、A、B、Cとあって、AとB、Cも共通の値段でやるということは問うていないわけでございますので、現在、そういうルールでやるということは禁止されておりますので、それぞれのところでそれぞれの手数料を考えていただく、ユーザーの方はそれを選んでいただくということでございますので、統一をするということは考えておりません。

樽井委員 訴える方にいたしましては、訴えたときの、要するに、代理とかをしてもらったときの手数料というのがまず一番最初に気になるところだと思いますので、その辺が何か余りあいまいで、幾ら取られるのかわからないというのは行きにくいんですよね。大体こんなものだという、業界の数字とか、そういうものはやはり国民に認知されるようにはするんですか。

山崎政府参考人 これはまだそこまで、私、最終的に考えてはおりませんけれども、ただ、今までの例でございますけれども、弁護士の報酬、これを弁護士会の会則で定めることをやめまして各人が決めていくといった場合に、やはりユーザーの方が、ではどのぐらいかということがわからないということで、会の方でいろいろ努力をしていただいて、それぞれの弁護士から、自分はこうだというものを出していただきまして、それの平均値、こういうものについて公表をするという形で利用の目安を設ける、こういうことをやっておりますので、今後、この業界についてもそれぞれ出していただいて、その平均値をどこかで公表するとかいうことはやっていかざるを得ないだろうと思います。

 それからもう一つは、先ほど申し上げましたように、必ず、利用する場合に手数料がどのぐらいになるかを完全に掲示をして、わかるようにして選んでいただく、こういうこともやるということでございます。

樽井委員 先ほど聞いて、ちょっと答弁で漏れていたかもわからないんですが、期間というのはどうなんでしょう。それは、裁判では例えば二年ぐらいかかるんですけれども、ADRだったらどれぐらいで解決できる、そういう期間的な割合というのは大体どれぐらいが目安になるものなんでしょう。

山崎政府参考人 これも紛争の種類と程度によるわけでございますので、これは一概には言えないと思いますけれども、裁判を利用せずに速くやってもらいたいという当事者の希望からいけば、これは私の感覚で申し上げますけれども、どんなに長くても四、五回だろうというふうに思っており、二、三回で終わるのが一番いいだろう、一回で終わるというのが本当は理想ですけれども、なかなかそこまでは難しい、長引いても二、三回だろう、こういうことでございます。

    〔田村委員長代理退席、委員長着席〕

樽井委員 安価で迅速やというのを売りに、そして、わかりやすくてプライバシーも守られるというふうな、そういったADRとして売り込んでいかなければ、市場がこれからどんどん広がっていくことが余りないので、そういう部分もちゃんと、やるんだったらやるでアピールしていかなければならない、そういうふうに思っております。

 具体的な例で言いますと、例えば二十年前に司法書士の試験を通った。ずっと会社の定款とかをつくる文書だけやっていた、要するに不動産の登記とか。それで、代理権を付与された。何か紛争解決、問題を処理してくださいねというのが近所のおばちゃんか何かから話が来て、おっ、やってみようかということになった。こういうときに、物すごく、法的知識とかいう部分に関しては、資質も含めてですけれども、むちゃくちゃないと思うんですよね。

 そういった中で、例えば、今までずっと司法書士の免許を取っていた、あるいは、ほかに何を代理権として付与されるのか知らないですけれども、どこかの機関でやっていたけれども、もう何年もそういう紛争解決なんというのは頭になかったものですから、その仕事だけやっていて、もう知識的にはない方はたくさんいると思うので、そういうときに、再試験と言ったらあれですけれども、許可をおろす前に、当然、ちょっと勉強したり、ちょっとした試験をしたりするのは当たり前だと思うんですけれども、そういう試験とかはないんですか。

山崎政府参考人 最終的には、まだどのようにするかは決まっておりませんで、若干お時間をいただきたいんですけれども、今御指摘のような点、やはりきちっとした専門的な能力、紛争解決能力を持っていなければならないということになりますので、現在、例えば司法書士について、一定の研修をきちっと経るということですね。そのことによって、簡易裁判所の事件、これについて訴訟代理をすることができるという場合、このような一定の研修をして、試験をして受かるということで、能力担保措置というふうに言っておりますけれども、こういうものを加えていく必要、これはあろうかというふうに、一般的でございますけれども、あろうかと思っております。

樽井委員 そういった勉強なり試験なりというのは、任意の団体がやるのか、それとも国がやるのか、どっちなんですか。

山崎政府参考人 現在やっているやり方は、やはり団体で行いますけれども、そこに弁護士等の参加をいただいて、きちっとしたチェックをする、こういう体制でございます。ただ、最終的には、これは法務省の方でその団体に委嘱してやるということになりますので、最後、そこの研修結果が法務省の方に参りまして、最終的にはそこで法務大臣の方でチェックをするということでございます。最初がちょっと不正確でございましたが、最終的には国の認定ということになるわけでございます。

樽井委員 それで、これから司法書士の免許を、例えば、通ったとして、代理権を付与されたとして、司法書士の試験を受けるというときには、当然、紛争解決に当たる、そういったADRの問題とかも入っているわけですね。

山崎政府参考人 ちょっと試験の方を私は所管しておりませんけれども、前に所管をしていたあれで言いますと、例えば司法書士の場合に、民事訴訟法とかあるいは民事執行法、こういうような手続法、これについては択一式で試験科目に入っております。

 いわば、今後、そういうような紛争解決手続、そういうことについて、各試験でどのようなものを盛り込んでいくか、これが当然問われることになろうかと思いますので、それぞれのところでそれなりのことを判断していただくということになろうかと思いまして、こちらからどうしろということを言うことはできないということでございます。

樽井委員 今までに紛争解決に携わることがなかったそういう各専門士業が携わることになるということは、レベルがある意味では上がるといいますか、そういうことになるので、例えば試験とか合格率が難しくなるとか、そういったことは全然ないんですか、考えられていないんですか。

山崎政府参考人 確かに、権限がふえていけばそれだけ人気になるということだろうと思いますから、そういう意味では、場合によっては試験が難しくなる可能性はあるということでございます。

樽井委員 弁護士法七十二条の趣旨からしても、本当に、法的知識という面からしたら、もうずっと長いことそういった勉強をしていないとか、合格してから何年もたって、それで紛争解決というのがもう事実上難しいと思いますので、その辺、さっき、これは、許可を付与するのはもうあと一カ月半ぐらい後でしたよね。付与するのは一カ月半後なのに、まだどこの機関が何をするかというのは正式に決まっていないんですか。

山崎政府参考人 代理の話はまだ現在検討中でございますので、先ほど能力担保措置とかそういうのを申し上げたのは一般論として申し上げているわけでございますので、そういう関係の方の結論はもうしばらくお待ちをいただきたいということでございます。

 今やっているこの法律の関係では、そういう隣接する法律専門職種の方々は、ADRの主宰の方に参加をするかどうかという問題でございまして、代理の問題はちょっと分けておりますので、そこは今後の問題ということで御理解を賜りたいと思います。

樽井委員 その代理権を付与するのは、正確に大体いつごろまず決定して、それで、いつごろ例えば試験なりそういったものを受けなければならないというのが決まるのか。それがずれていたらちょっとおかしいと思うわけですね。

山崎政府参考人 わかりました。

 先ほど冒頭に大臣の方からお話があったかと思いますけれども、私どもの本部、十一月中で終わりますので、十一月中には大きな方針、どういうふうにしていくかの方針は本部として打ち出します。それで決めさせていただくということになりますが、では、決まったことについてどうやって実行していくかという問題が残ります。

 これは、それぞれ業法を所管している省庁がございますので、そこの所管している省庁が来年の通常国会以降にみずから判断をされて、その決まった方針で法律改正案を出していく、こういうことを考えております。例えば、法務省でいえば司法書士法、土地家屋調査士法ということになるわけでございますし、弁理士法であれば経済産業省ということになりまして、それぞれ所管のところでその法律改正を出していく。それが通った後に、そこに能力担保措置が必要だということになれば、それが施行された以降そういうものを受けていただく、こういう手順になるわけでございます。

樽井委員 もう一つ、具体的に管理できるのかどうかということに関して、具体的にこんなことがあったらどうしようというのを聞きたいと思うんですが、例えば、今、不動産屋へ賃貸とかで行くと、宅建主任の免許はぺたっと張っているかもしれない。でも、その宅建主任がそこにいるのかといえば、何か、いなかったりとか、名前だけ貸していたりするような小さな業者がたくさんあるわけです。実際にあるんです。

 例えば、ADRの許可がおりますよね、それで、ADRの許可がおりたというのをぺたっと張っておいて、例えば司法書士なりなんなりの方は、そこにはちょっと顔を出すか、いないか、どっちかだ、ふだんはアルバイトの方がちょちょっと紛争解決を実はやっていて、免許だけ持っている人が、たまに自分が出てくるだけだというような、こういうようなケースというのが出てくるかもしれないですよね。こういうふうなケースに対しては、どういうふうにお考えですか。

山崎政府参考人 紛争解決事業者が主宰するわけでございますけれども、実際やるのは手続実施者でございます。

 これは、認証基準の場合に、どういう方が手続実施者になるかということをきっちり、はっきりさせていただくということになりますが、その方が紛争解決手続をやらなければならないわけでございまして、その方以外にだれか委嘱してやるということは許されない。そういうことをやれば、最終的には是正命令とか勧告とか、そういうことを受けることになりますし、それでも是正がされないということになれば認証の取り消しということにもなるということでございます。

樽井委員 そのことが法律違反だというのは重々わかっている話で、それだったら、例えば宅建主任だってそこにいなければならないのはわかっているわけです。わかっているんだけれども、そういう免許だけ持っている人の名前だけ貸すとか、張って、やはりバイトの人が処理する方が効率がいいのかどうか、やってしまう、このケースだって十分、法律としたらこれをやっちゃだめだよというのはわかっているんだけれども、当然そういうふうなことをするんじゃないかという予測がありますよね。それはもうないということでよろしいんですか。

山崎政府参考人 それは、認証の申請があれば幾つかのハードルをクリアするわけでございますので、通常はそういうことは起こらないだろうというふうに思いますけれども、不幸にしてそういうことが起これば、これはいろいろなところから事実を察知できますから、そういうことから、先ほど言いましたように、認証の取り消しというような場合、ひどい場合には刑事罰というようなこと、そういうことも対象になっていくということでございますので、そこで処理をするということでございます。

樽井委員 ADRの場合、だれかが代理をして事件を見るだけでもプライバシーが侵害されているわけです。言ってみたら、全然関係ないアルバイトなりそこにいた事務員なりが、だれそれが離婚でもめているとかを知るわけですから。

 そういったことに対して、刑事罰というのはどの程度のものが発せられるのか。あるいは、その代理権を取り消すというだけで終わるんですか。例えば、専門職種で司法書士なり弁理士なりという方がいて、その司法書士もなくなるんですか。ADRの代理権だけなくなるのか、その仕事自体がなくなるのか。

山崎政府参考人 我々の、こちらの世界では、認証の取り消しということになりますけれども、その事実がそれぞれ士族の資格の問題に発展すれば、除名、それから職務停止とか、そういうような処分になることも当然あり得るということでございます。それは、対象がそれぞれによって違うということです。

樽井委員 これでいろいろプライバシーの問題が出てきたり、普通、弁護士だったら周りを固めているスタッフなりバイトなりも、極端なことを言えば、ある程度司法の勉強をされていて将来弁護士を目指している方とか、立場的にもいろいろな面で、そういったことではすごく弁護士法七十二条の条件を満たす方が多いと思うんですが、普通に、例えばそういった小さい町の司法書士の専門士業をやっているおじちゃんみたいなのが、そこで紛争を処理しようかと書類で来た場合は、当然横にいるのは、そういった司法に詳しい方ではなくて、近所のパートのおばちゃんであるとか、自分の奥さんであるとか、そのぐらいのレベルの方だというのはたくさんあると思うんですね。

 そういったところで、こういう問題を処理する能力についてもかなり疑問視が出てくるんですけれども、そういった部分は考えなかったのですか。

山崎政府参考人 認証の基準として、手続実施者については、それぞれの専門的な能力を持っていることと紛争解決能力を持っているということです。それがチェック項目になっているわけでございますので、そこでクリアされる方については、それは当然そういう業務をやっていただいて結構でございますし、だれかを補助者に使ってそれでやるということになれば、これはもうやはり取り消しの対象になっていくということでございますので、そこで峻別をされるということでございますので、選ぶときには、確かに能力があるかどうか、それを見るわけでございますから、そういう方が当然この業務をやられることは構わないわけでございます。

 ただ、それの対象になっていない人を使ってやる、これは厳に許されないことだということで、先ほどからその御心配をいただいているようでございますが、士族の方々が本当にそんなことをするかということになると、私はしないだろうというふうに思っております。

樽井委員 ちょっと忙しくなったら、例えば横にいるだれかスタッフに、これ、ちょっと見ておいてくれとか、ここからここまでちょっと処理してくれとかいうようなことはあるような気がしますけれどもね、私は。

 その辺は、そういうふうに言うんだったら、きちんと取り締まることもしていただけるんですよね。

山崎政府参考人 これは、今対象にしているものは主宰する方でございますから、代理とはちょっと違うわけでございますけれども、主宰側においてそういうこのルールに違反したようなことをすれば、それは当然認証の取り消しの対象にもなります。それから、事由によってでございますけれども、刑事罰とか、そういうような問題にも発展をするということでございます。

樽井委員 罰があって、それが法律違反だというのはわかっているんですが、当然、例えば線路に置き石をしたらあかんことはだれもわかっておるわけです。

 それで、実際にしたときに、だれがどういう体制で取り締まってそれをのけるのかというような、そういうちゃんとしたシステムはあるんですか。いろんな面で、プライバシーがここで漏れているから、では、そこがちょっと怪しいぞといったら、だれかが、担当者が行って権利を取り消すとかいう、そういう手続はどういうふうな形になっていますか。

山崎政府参考人 国の方として、そういう端緒がつかまえられれば、例えば報告を求めたり、それからみずから検査をし、それに対する是正命令を出したり勧告をしたりということが全部可能になっておりますし、それでも従わないというようなことになれば認証の取り消しという形になりますので、国みずから検査をすることも当然可能になっております。

樽井委員 具体的にはどういった検査をされるんですか。

山崎政府参考人 例えば、秘密が漏れたというような場合であれば、現実に、その秘密をどう保管しているか、これを全部検査する。それから、現実に、具体的な事例で、中身に入ることは余り好ましくはありませんけれども、そういうような場合には、具体的に、秘密が漏れた原因、本当にどれだけが漏れたのか、これを全部聞き取りとか調査をせざるを得ないだろうというふうに思います。その結果に基づいて、罰するものは罰する、こういうことになろうかと思います。

樽井委員 その辺の検査の徹底とかシステム化みたいなものをきちんとやっていただかないと、収拾がつかないような制度になっても困りますので、その辺、よろしくお願いします。

 それで、しつこいようなんですけれども、何かこの手数料というのが、ADRの場合は、朝も言いましたけれども、Eコマースのような、例えばインターネットでこういった紛争取引をしたりする場合も含めて、手数料の常識的な取り決めというのをある程度国が管理しないと、底なしになったときにはその市場が何かもうばらばらにならないかなみたいなイメージがあるんですが、その辺は、どんな機関が出てきても、コスト的にはもう問題なく自由ということでよろしいんですか。

山崎政府参考人 この認証基準の中に、手数料に関しまして六条の十五号という規定がございまして、報酬または費用について「これが著しく不当なものでないこと。」という認証基準が入っておりますので、ある限度は、これ以上はもう著しいということで限度はあろうかと思いますけれども、その範囲内なら、では、どの程度の手数料を報酬にするか、これはそれぞれの事業者が決めていただくということでございます。一定の限度以上は著しいというようなことで、それは歯どめはかけるということでございます。

樽井委員 大体、今までのいろいろな法律改正で自由化した後とかの流れを見ておりますと、価格破壊みたいな業者がある一定の市場になったときにぼんと出てきて、例えば、これはNPOでも参加できるわけですから、当然、もう一万円でもいいやなんという団体が出かねないですよね、ネットでこの紛争解決処理をして。

 ひとり勝ちしたような団体がぼんと出てきた場合に、言ってみれば、弁護士の報酬とかはだんだん値崩れしていってということになれば、弁護士であるとか今回のADRに参加できた団体にしても、紛争処理に対するコスト割れみたいなものがだんだん起こってきて、紛争解決市場と言えばちょっと道徳的にどうかと思いますけれども、商売をしているわけですから、弁護士なんかにしても、これがえらい奪われたあげく、値崩れして、成り立たなくなっていくというようなことも当然考えられるような気がするんですが、その辺になったときの何か対策とか、そういう可能性はお考えでないですか。

山崎政府参考人 それは、極めて安い手数料でやるところが出てきて、そこがひとり勝ちということは、可能性としてはないとは言えません。ただ、それはいろいろなジャンルがございますので、ある特定のジャンルについてはここがかなり主導的にやっているとか、そういうことになりますけれども、ほかのジャンルはまた別でございます。

 それで、そこで安くたっていい解決をするということであれば何ら構わないわけでございまして、それについてやはり我々の方からとやかく言うことはできないだろう、最終的には市場原理でどういうふうにやっていくかというのは決まるだろうということを考えておりまして、それが非常におかしい状況、不当な状況になれば、それはまた調査の対象になるということだと思います。

樽井委員 いろいろな団体でどんどん値崩れしていくというその現象自体で、結局はだれももうかっていない、それでデフレも進行していくというような段階というのが、国民の方から見れば、短期的にはいいんだけれども、長期的な経済で見た場合に、例えば弁護士の方も含めて、ちょっとある意味、市場をとられたり値段が下がっていったりするのは本意じゃない部分というのがたくさん出ている、そういうふうに思います。

 実際に、例えばタクシーの業界で、今まで障害者とかを移送していたような団体で、何となくそれでもっていたところが、NPO団体が出て、ただで運びますよということになったら、それで市場がなくなって、もう経営危機になっているというような会社なんかの話も聞くわけですから、こういったADRが出てきたり、あるいは、弁護士が今まで紛争解決していたものを、価格破壊で、自分たちは意識を持って超安値で紛争を解決しますという、ネットを使った、Eコマースの本当に斬新的なスタイルのものが出てくるような気が私はするんですよね、いろいろな問題を解決しますよみたいな。

 今までは弁護士というものがきちんと許可としてあったのでいけていたのですが、そのたがが外れたみたいになって、だあっと、もうだれもかれも紛争解決に参加していくということで、この紛争解決に携わる人自身の収入というか、こういった部分がかなり減ってくるんじゃないかという部分もちょっと危惧している部分があります。

 そういう部分では全く対策はとらずに、もうそのまま放置していくというので、今の意見ではよろしかったですか。

山崎政府参考人 どういう事態を言われたのか、ちょっと私も完全につかみ切れないんですけれども、それでも、国民が利用するということは、それは内容がいいからでありまして、それはそれとして何も言えないことだろうと思います。

 ただ、そのやり方によって、非常にあこぎなやり方をするとか、それからこの認証基準に結局違反をするというような事態が生じているということになれば、それはもう取り消しの対象になるということで是正をしていかなければならないということで、それに反しない限りは、それは活動の自由ということになろうかというふうに思っております。

樽井委員 いずれにいたしましても、この法案が通って実行することになると、紛争解決においてはかなりいろいろな可能性が出てくると思いますので、正直言うと、これも実際にやってみなければわからない部分というのはあると思うんです。やったときに、ちゃんと経過を分析して、その問題を解決するんだ、いつごろと切って、ここで一回経過を分析して、また法案に対してその分析結果を反映させようというような、そういった取り組みはなさるんですか。

山崎政府参考人 この法案の附則の二条で、五年後、必要があれば見直すということをうたっておりまして、これをやるためにはその前からある程度データの蓄積が必要でございます。そういうことは着々と用意をして、また必要なものはオープンにしてやっていくということになろうかと思いますが、いずれにしましても、この問題につきまして、法務省の方できちっとした対応をされるものというふうに期待をしております。

樽井委員 時代はもうどんどんどんどん流れるのが速くなっていますから、五年と言わず、やったら一年後、二年後と的確にその都度見ていって、こういうところに問題がありますといえば即座に対処していかなければ、今までの紛争解決の中の市場なり、あるいはプライバシーなり、そういったものがだんだん壊れていくんじゃないかと思いますので、そういったところの監督だけはきちんとしていただけるよう強く要請いたしまして、時間が来ましたので質問を終わらせていただきます。

塩崎委員長 次に、山内おさむ君。

山内委員 民主党の山内おさむでございます。

 大臣、先日、私と大臣とで質疑しましたときに、大臣の発言について間違いがあるのではないかと、質疑が終わった後指摘させていただいたところがあるんですが、その件に関しては大臣から何か答弁がございますか。

南野国務大臣 多分それは、私が書いていますようにというところでございましょうか。(山内委員「はい」と呼ぶ)それは、私の所信表明に書いた文とは違って、私が書いているのは、いろいろな自分の関連する本に書いてあるということでございますので、誤解がありましたら失礼だったと思います。

山内委員 私は、所信あいさつに対する質疑をずっと続けておりました。その中で、人権に触れた部分は一体何文字しか書いていないんですかと言ったら、大臣は、文字数はわかりませんでした、わからないと言われた。だから、私は字数を調べていたので二十二文字ですと言いました。実際に二十二文字しか、あなたは所信あいさつの中で人権について触れた部分はないんですよ。

 ところが、問答を続けているうちに、あなたは、「例えば、私も書いておりますが、高齢者問題、児童虐待問題、高齢者の虐待もしかりであろうかと思いますので、」と、所信あいさつには一言も触れていないことを、「私も書いておりますが、高齢者問題」云々と。これは全く間違いですよね。

 私は、できれば、我が党のメンバーがもう何人も立ったので、その冒頭ででもあなたの方から訂正を言ってほしかった。それを言われないので、私がやはり聞かざるを得ないのかなと思って聞いているんですけれども。ほかで書いたことを私は聞いているわけじゃないんですよ。あなたが所信のあいさつで言われたことを、これはどういう意味ですか、どういう思いですかと聞いているので、ほかには人権のことを触れているから、たった二十二文字しか私は人権のことなんか関心がないですよという答弁にはならぬでしょう。きちんと、やはり言い間違いは、言い間違いがありましたというふうに言ってもらえませんか。

南野国務大臣 所信については、そこに書いてあるということとはそごがございますので、言い間違っております。

 でも、所信表明の中に人権問題は、その他、触れさせていただいているように思います。例えば、出入国の問題にしても、いろいろ、それは全部集約すれば人権問題にはなろうかなというふうにも思っておりますが、そのポイントは確かに間違っておりました。

山内委員 だから、大臣、よく新聞でやゆされるように、余りわかっていないのに、いろいろなことを言い過ぎるという評価があるでしょう。

 あなたが書かれている入国管理、難民の問題は、しっかりと取り締まります、水際で阻止しますということなんですよ。つまり、治安対策なんですよ。だから、あなたが触れているのは、この二十二文字しかないんですよ。それを、ごちゃごちゃ、いろいろなことを言わないで、裁判所の問題、法務・検察の問題、それから国内治安の問題、そして人権擁護の問題と。人権の問題と治安の問題については分かれて我々はあなたと議論するわけだから、その点は、治安の問題は、ひいては犯罪被害者が少なくなっていいんじゃないか、そういう思いで多分言われているんだと思うけれども、だけれども、治安の問題は治安の問題としてあなたは書かれているし、私が聞いているのは、人権あるいは人権擁護法、今後どうしますか、そういうことで聞いているので、やはり聞かれたことだけでいいですから答えてください。

 それから、先ほど私、あなたの答弁でこれは絶対に許せないと思ったのは、質問者が質問しているのにあなたが質問で返す、しかも、この法律について、あなたはどういう魂、思いを込めてこの法案を我々に提出したんですかと法務委員が質問したら、私が何も考えないで提案していると思いますかというような答弁はないでしょう。そう思いますよ。

 だから、さっきからうちのメンバーが全員言うように、やはり誠実に、いい法律をお互いにつくっていきましょうよ。だから、そういう質疑であり、そういう答弁を私はこれからも期待したいと思います。

 ところで、先ほど言われたように、児童虐待の問題とか高齢者の虐待の問題、これ、ほかで触れていると言われたけれども、どうして所信あいさつで書かなかったんですか。

南野国務大臣 その問題は、別に、別にというか、法務相の所信で申し上げる中身ではないのではないかなと感じたものでございますので、そこには書きませんでした。

山内委員 そうすると、あなたが人権についてはいろいろな諸問題があると書いている諸問題は、何を考えてこういう書きぶりになったんですか。

南野国務大臣 人権問題としての人権が取り組む諸問題ということで考えたところでございます。含まれていると思っております。

山内委員 人権状況というのは、さっきからお話ししているように、高齢者虐待の問題も今喫緊の課題だと思っています。大臣も、昨年の選挙の前、選挙の前だからDV法を通したりしたわけじゃないでしょう。そういう問題もたくさんあります。

 DV法を通されたけれども、まだ加害者更生プログラムについてどうしようかという積み残しもたくさんありますよね。大臣は、その二十二文字の中に、何々、何を思いを込めて書いてあるんですか。何をどうしたいんですか、人権については。

南野国務大臣 いろいろな課題が含まれております。

山内委員 人権侵害救済法とか人権擁護法というのは、ひとり同和問題、部落問題のためだけじゃないんですよね。マスコミで被害に遭った、あるいは高齢者虐待を受けた、そういう人たちも、人権侵害、差別を受けた、そういうことで救済してほしいという願いがこもっている法案だったんですよ。いろいろ選挙とかで廃案になっちゃいました。

 とても残念なことだったけれども、廃案になった後は、必ず、政府の方がまた磨きをかけて新しい法案を出してくれると思ったんですよ。ところが、いつ出しますかと聞いても、答えられないんですよね。もう少し、本当に児童虐待や児童買春とか、あるいはトラフィッキングですか、それから高齢者虐待の問題、もし仮に大臣が、そういうことは許してはおけないなと思うんだったら、それを救済するための仕組み、人権を救済するための仕組みも、それこそ今急いで仕組みをつくっていく必要があるんじゃないんですか。

南野国務大臣 人権擁護問題につきましても、廃案になったばかりでございますので、もう一度しっかりと確認していかなければならないというふうに思っておりますので、それらについては早急に検討したいというふうに思っております。

山内委員 それでは、参議院では、人権擁護法の何と何が問題点だと指摘されて、どういうふうに検討をしているんですか。

滝副大臣 この問題は、参議院の段階で、通常国会の期末に各党集まりまして、どういうふうにこなすかということがございましたものですから、私の方から便宜申し上げさせていただきたいと思うんです。

 基本的に、参議院の委員会で継続したまま膠着状態になってまいりました法案でございます。それだけに、与野党それぞれ代表者にお集まりいただいて、どういうような打開をすべきかということでやってまいったわけでございますけれども、期限切れで参議院の選挙に突入したものですから、基本的にはそこで継続できずに終わった問題でございます。

 その中で、基本的に二、三点が御指摘のとおりあるわけですね。一つは、要するに、この人権委員会をどこに所属させるかということで、当時の法律では法務省ということを考えてきたわけでございますけれども、意見としては、やはりこれは内閣府、総理大臣のもとに置くべきだという強い意見がございました。そして二番目には、地方の委員会を置くべきだ、中央の人権委員会だけでなくて、それぞれ地方に、あるいは各県が無理であればブロックに人権委員会をせめて置くべきだと。

 こういうような、大きな問題としては二つほどデッドロックになったままであったものですから、結局、法務省としては、その後こういう会期末に各党集まっていただいて議論してもなかなか決着がつかなかったものですから、その糸口をどうするかということで現在苦慮しているところでございまして、大臣の方から早急にというふうに御答弁申し上げましたけれども、そういう経緯を踏まえて申し上げておりますことを御理解いただきたいと思うのでございます。

山内委員 副大臣は論点を的確にお話をされたと思いますけれども、副大臣、もしそういうふうに思っておられるんでしたら、通常国会で法案を出しますとかというようなことは言えないんですか。

滝副大臣 これは、大臣が申しましたように、早急にというふうに申し上げておりますから、とにかく年内にでも、もう一遍各党の意見を打診するとか、せめて与党の中でまずはこの議論をもう少し詰めていく必要がございますので、そういった手続を経ながら、何とか早急にという大臣の気持ちを体したことができればいいというふうに思っておるわけでございます。

山内委員 ありがとうございました。

 大臣は、所信あいさつの中で、治安が乱れたことの一つに、少年による重大犯罪が続発しとか、来日外国人による犯罪も多発しているということを指摘しておられます。

 ところが、大臣の職責が青少年育成を担当する大臣にもなっておられるようですので、その少年犯罪が治安を悪くするということと少年を健全に育成していこうという大臣の職責と、どういうふうに自分の中で整理をされているんでしょうか。

南野国務大臣 非行を犯した少年にも私は愛が必要だというふうにも思っておりますが、非行を犯した少年の健全な育成を図ることは少年法の目的であろうかと思っております。極めて重要であるというふうにも思っておりますし、もっとも、非行少年の健全育成を図るためには、非行やそれから少年の状況に応じた適切な措置を行い、その責任に関する自覚を促していくことも必要であろうかと思っております。

山内委員 そうすると、今回、成人に対して重罰化の法案を提案されておられますけれども、少年についてはどうなんですか。重罰を今後科すというような、厳しく取り締まりをするという方針というか考えでおられるんでしょうか。

南野国務大臣 少年の健全育成を図るためには、非行や少年の状況に応じた適切な措置をしなければならない、発育途上の子供たちでございますので、そういう愛とむち、それを適切に対応していかなければならないのではないかな、そのように私個人は思っております。

山内委員 治安が悪化したと大臣は言われますけれども、ある学者の中には、かつてと比べて、特に終戦後のころとかあるいはバブル崩壊のころなどと比べて治安は、改善もしていないけれども、悪化もそうしていないんじゃないかと指摘する学者がおられます。

 数字を拾ってみますと、凶悪事件の中でも殺人事件、人口十万人当たりの発生率は、昭和二十五年には人口十万人当たり三万五千件あったのが、平成十四年には十万人当たり約一万一千件にとどまっている。つまり、凶悪犯罪は、終戦直後が特殊な混乱期にあったとはいえ、減っているのは間違いない。

 主にどういう点をとらえて大臣は、とにかく一行目に、つまり治安の回復こそ私の一番最初に行う責務ですというような宣言をされたのか、どの点をとらえてこういう発言になっているのか、教えてください。

南野国務大臣 一つは、我が国の刑法犯認知件数というものにつきましても、依然として戦後の最高水準で推移しているということがございます。凶悪殺傷事犯や来日外国人の方々による犯罪も多発しているという、この事実の数がございます。一方、刑法犯の検挙率は過去最低の水準に落ち込んでおります。

 このような状況にかんがみて、私は我が国の治安は危機的ともいうべき状況にあるものと考えております。

山内委員 私は、個人的には外国人の問題について多少興味を持っている議員の一人だと思っているんですが、来日外国人犯罪が多発しているから危険だみたいなことを言われると、またちょっと統計を拾ってみました。

 平成十年と平成十四年を比較します。確かに件数は一万六千件から二万件へとふえていますけれども、実は、来日外国人も四百五十五万人から五百七十七万人と増加をしているんです。それから、来日外国人のうちで検挙された者の割合は、〇・三五%から〇・三六%と〇・〇一%上回っているだけなんですね。

 ですから、これからすると、大臣が言われるほどの治安状況の悪化は、来日外国人による犯罪の多発というこの書きぶりとは違うんじゃないかと思うのですが、どうでしょうか。

南野国務大臣 委員の御指摘の数値は今述べられたとおりでございますけれども、私にお尋ねの、あいさつにおいて私が「来日外国人による犯罪も多発しております。」と申し上げましたのは、全国の検察庁における来日外国人による犯罪の受理人数が増加していることなどを踏まえて申し上げたものであり、このような来日外国人犯罪の増加は国民の治安に対する不安を高める要因になっているもの、そのように考えております。

 先生も数値を挙げられましたが、私どもの手元にもそのような数値がございます。

山内委員 ただ、私が述べた数値は、つまりは、〇・三五%の検挙者のその余の、まあ一〇〇%近い数値は日本人ですよね。日本人が犯罪を犯しているからなんですよね。

 だから、どう言ったらいいのでしょうか、来日外国人の犯罪が多発と、件数として見れば数がふえている、それは私もわかりますよ。だけれども、そもそも日本人の犯罪がふえ続けている、減らない、これをどうしようかという悩みが余り所信あいさつの中で触れていないものですから、そのもどかしさがあるし、それから、来日外国人と言われるとちょっと待ってよと言いたいところもあって指摘させてもらいました。

 私の言いたいことをぜひ理解していただきまして、この質問はこの点については終わりたいと思うんですが、小泉首相が、今、ビザなし渡航とか、あるいは観光立国日本を提唱しておられます。つまり、大臣が、水際作戦だ、入管行政をしっかりします、来日外国人は事件をたくさん起こしていますとメッセージを発すれば発するほど、その小泉さんの思いが、総理の思いが、法務大臣がスカートのすそを踏んづけているみたいな、海外との交流を押し戻すような、そういうようなあいさつにも聞こえるんですけれども、私が間違っていたら、どうぞ教えてやってください。

南野国務大臣 先生もきっとあれでございましょう。私が申し上げたいのは、厳格な出入国審査を実施して、そして水際対策に努めることと、それから観光立国の推進のために円滑な出入国審査を実施することはいずれも重要な施策である、これは先生御理解いただけると思います。

 そういうめり張りのきいた審査によりまして、双方を実現すべく日々努力しているところでございます。観光立国を目指す我が国としては、どうぞお客様にもお越しいただきたい、そういう形の中で、出入国の審査も十分にさせていただきたいということもこれありでございます。

山内委員 これも指摘するだけにとどめておきますけれども、今、メキシコを初めとして、自由貿易、経済連携協定の締結がこれからますます、今度は東南アジアを中心に広がっていくと思うんですね。つまり、日本は、いろいろな部門、分野での門戸を広げて、海外の皆さんと一緒になって食料計画とかあるいは労働条件について話し合いをしていきますよ、オープンな国にしていきますというのが私は今の日本のメッセージだと思うんですよ。

 だとすると、やはりそこに、国際犯罪化をどうのこうのとか、入国管理の実施も必要不可欠であるとか、すごく、前回も言いましたけれども、女性の大臣としての優しさよりも、男以上に何か、すごい剛腕の人だなというふうに聞いていて思ったものですから、そういう日本の行くべき姿というものもやはりよく理解しながら法務行政を進めていっていただきたいと思います。

 それでは、法案の審議に入らせていただきます。

 今あるADRが利用件数が余り芳しくないんじゃないかと言われていますが、まず、その原因からお答え願いたいと思います。

滝副大臣 現在の法制度の中で法律に書かれているのは、例えば商工会議所法に、民事の紛争の調停、仲介というようなことが商工会議所の一つの機能として法定されているわけでございますけれども、ここにやってくるのは、基本的には、自分のところで処理せずに、御案内のとおり、弁護士会の仲裁センターにお願いをするという格好で処理しているものですから、なかなか一般的にPRができていないというところもあるんじゃなかろうかな、こういう感じがございます。

 それともう一つは、今の例示しました商工会議所の場合でも、具体的にADRの効果が、法律の条文には書いてあるんですけれども何も法的な効果が与えられていないということもあって、なかなか、そこへ申し込んで何の得があるんだろうかというようなことで、今日までせっかくの条文がそれほど生きていない。たまたま出てくると、それは商工会議所としてはもちろん歓迎はしているわけですけれども、結果的には、余り法的な効果が与えられていない、こういうようなこともあって、基本的には、なかなか事実問題として活用されにくい、余りメリットがないということの一言に尽きるように考えております。

山内委員 そこで、法案の第一条で、「内外の社会経済情勢の変化に伴い、」ADR法を考えましたという書き方になっているんですが、ここで指摘されている「内外の社会経済情勢の変化」というのは、事務局長、どういう点を言っているんですか。

山崎政府参考人 これは、司法制度改革全般にわたる観点からの考え方でございますけれども、もともとをただせば、行政改革が始まりまして、それで、事前規制ということをやめていこう、こういう社会に変えていこうということでございます。

 そうなりますと、自由なルールで決めていくということになる、透明なルールで決めていこうということになりますけれども、最終的には、その事後チェックは裁判所で行おう、そこの裁判所の手続をそれではもっと国民に使い勝手のいいものにしようというところから、この司法制度改革そのものが始まったわけでございます。

 今後事件がふえていくだろう、そういう中で、やはり裁判の方も円滑に動かなきゃいかぬ。しかし、全部が裁判所に行って、それで解決をするということもなかなか難しい状況にある。それをどうやって裁いていくかということから、もう一つは、やはり裁判に行かない世界、そこで解決する、そういうようなこと、こういう方法を考えていこう、そういうふうに社会が変わってきているということ、それを言っているわけでございます。

山内委員 しかし、この司法制度改革という改革の内容は裁判所の充実にもあったと思うんですね。つまり、調停機能を裁判外、ADRに含めるのか、裁判所の中の機能じゃないかという、どっちの見方もあると思うんですけれども、調停という存在、あるいは裁判所を充実していこう、そういう考えを本来なら持つべきだと。そのために、受験生の前の学生の段階から法科大学院という仕組みなどもつくり上げてきたわけですからね。

 だから、まずは調停を含めた裁判所の充実を図っていこう、予算もしっかり分捕ってこよう、そういう思いがあったと思うんですが、その裁判所の充実という方向に勢いを向けるのが、司法制度改革の中でまだまだ予算が足りないな、とるのが下手だな、修習生も給費制をやめちゃうし、いろいろな統廃合も考えておられるし、何か割とだんだん財務当局からやられてきつつあるかな。だから、もっと裁判所を充実しようという方向に進むべきなのに、それはそれだ、だけれども、裁判外の手続で裁判所制度の不十分な部分を何とか補ってもらおう、そういう議論に見えるんですけれども、どうでしょうか。

山崎政府参考人 ただいまの指摘、裁判制度を充実させて国民に使い勝手のいいものにするということ、これは大変な重要な話でございますので、これで我々は、三年間、一生懸命やってきたわけでございます。それでかなりのアウトプットを出したはずでございます。

 これから実行に移して、それでどれだけの成果が出てくるかということだろうと私は大変期待しておるわけでございますけれども、そういう一方で、一生懸命やりました、これからどんどんそれを実行していくという段階に至っておりますけれども、ただ、国民の希望は、何でもかんでも裁判でやるということを望まない人もかなりおられるということでございまして、例えば、裁判に持ち込まず、本当に二、三回の期日で、それほど値段は高くなくて、それから秘密が守れて解決ができる、こういうことを希望される方もいるわけでございますので、そういう方々に選択の余地を、どちらを選ぶかということを提供しよう、こういうことでございまして、片っ方を重要視しないということではございません。十分やってきている。それとともに、選んでいただくために片っ方も充実していこう、こういうことでございまして、矛盾するものではないと私は理解をしております。

山内委員 この三年間、本当に山崎さんは一生懸命頑張られたなというのは、私も近くにいてずっとわかっております。今月末で大任を果たされて、一つの大きな仕事をやり遂げられたということで、それは、委員の中には今まで失礼な質問をしたかもしれませんけれども、本当に山崎さんの仕事ぶりについてはみんな尊敬をしていると思っているんです。

 だけれども、今の発言は、やはり中にいる人の発言だと思うんですよ。裁判制度については十分にやってきた、だからもう一つ、ADRを考えているんだと言われると、私たちからすると、裁判制度というのはまだまだ不十分だと思っているんですよ。だから、これから法務省とか内閣の方とか、推進本部がばらけていくとは思いますけれども、やはり国を挙げてまだまだ裁判、とにかく人権あるいは国民の生命財産の最後の守り手は裁判所なわけですから、その裁判所をまだまだ充実していくべきだという思いだけはこれからも持って今後の人生を生きていってほしいと思っております。

 少し細かい点に入っていきますが、例えば、こういうことはないでしょうか。高利の金融業者の団体が、法務大臣の認証を受けて紛争解決業務を行う。借り手との金銭貸借の条項の中に、紛争が生じたときは当該ADR機関を利用する、そういう合意条項を入れている。この合意条項については、当局はどういうふうに考えていますか。

山崎政府参考人 ただいまは温かい励ましのお言葉をいただきまして、余生も十分に生きていきたいというふうに思っております。

 この質問に対するお答えでございますけれども、仲裁でございますと、仲裁はもうそのまま、手続、拘束されるわけでございますから、これは話し合いでございますと和解でございますので、和解をしない自由があるわけでございますので、仮にそういう約束があっても、これが嫌だということであれば、それは、その席に着かないということで、そういうことが可能であるということになりますけれども、例えば、消費者の問題等で、消費者の一存で依頼契約を解除した場合には事業者に調停合意違反による違約金を支払う旨、こういうような条項を定めているとか、そういうことになれば、これは消費者契約法との関係で無効ということもあり得るということでございます。そういうような法律構成で考えているということでございます。

山内委員 ただ、そういう合意条項を入れて、裁判所あるいはそのほかの紛争解決手段の方を利用しないように心理的に拘束した上で、その金融業者に有利な和解案を提示するということが起こるということがあり得るんじゃないかと思うんですが、大丈夫ですか。

山崎政府参考人 その点は、御心配の向きは、確かにそのとおりかと思います。それで、この手続の中では、最初に標準的な手続を利用者に説明する義務を課しているわけでございまして、その中で、離脱の自由ということ、これについてきちっと説明をさせる、そういうようなことを考えておるわけでございます。

山内委員 今言われた離脱の自由については、これは、手続利用者が、やはり、ここで解決をしなければならないんじゃないかと何か追い込まれていくというような精神状態になると思うんですよね。

 だから、離脱の自由がありますよということを十分に認識させる。ADRの事業者あるいは現場の手続実施者にその旨をよく説明させるとか、そういう手続的に認証を与えるときに、何か法務省の方で認証を受けに来た人たちに話をするとか、マニュアルみたいなものはつくられないんですか。

寺田政府参考人 今御指摘のようなことも含めまして、この問題の運用は何せ初めてのことでございますのでさまざまなことがございます。

 もちろん、一方には、この認証を受けない事業者というのがおいでになって、そこはもう完全に自由な世界でやっておられるわけでございます。

 それに対して、認証を受ける事業者というのは、一定の法律効果を求めておいでになるわけでございますから、それなりの規律に服していただかなければならないわけでございまして、もちろん法律上いろいろなことが決まっておりますが、その他のことも必要に応じてまた適宜対処してまいりたいと思いますし、おっしゃるとおり、法律上の解釈上、いろいろ難しいことがございますので、それにつきましてはまた適切な措置を別に考えたいと思っております。

山内委員 大臣、今議論している論点は、やはり解決をする際に、力の差がある人たちが一方にはいて、弱い人が一方にいる、そういう場面もあると思うんですね。例えば、消費者紛争とか労働紛争、そういう当事者間に力の格差などがある場合に、弱い立場にある消費者や労働者の側に立って紛争を解決していく、そういうときに、細かい配慮だけれども、離脱の自由についてはしっかりと手続主宰者が両当事者にきちんと話をしていく、もう嫌だなと思ったらこの席を立っていいんですよ、そういうようなことを話していこうという議論を今寺田さんたちとしていたんですが、大臣、今、そういう手続主宰のADR機関も認証を受けられると思うんですけれども、どういう点に注意を払ったりされるお考えでしょうか。

南野国務大臣 先生のお優しさがにじみ出ているように思いますが、裁判外紛争解決手続は、柔軟な手続によりまして紛争の実情に即した迅速な解決を図ることができる、そういう特徴を有しております。したがいまして、御指摘のようなADR機関につきましても、業務の適正性を確保する観点から必要とされる一定の認証要件に適合するものであれば認証を受けられるものと考えております。

 また、御指摘のようなADR機関を含め、多様なADRがその特色を生かしながら発展していくことは、ADRの利用の促進という観点からも望ましいというふうに思っております。

山内委員 それから、よく議論になりますのが六条の第五号、弁護士関与が決められている。この点について少し議論をさせていただこうと思います。

 まず、ここに「弁護士の助言」というのがありますけれども、これは、最初に、どういう意味として使っておられるのでしょうか。

山崎政府参考人 これは紛争解決の業務でございますので、定型的にできる事件というものも、紛争もあろうかと思いますけれども、やはり事件、紛争によっては相当難しい法律上の専門的な知識を要するものもあるわけでございます。そういう点について、十分その観点を反映させないで紛争を解決するということは当事者にとっても将来的に不幸になることもあり得るということを考えまして、専門的な知識を要する、そういうような判断を要するものについては、弁護士の助言を得た上で最終的な和解をしてほしい、こういうことを言っているわけでございます。

 助言でございますので、その場にいる必要はございませんし、助言の方法はどういう方法でも結構でございます。直接会ってでも結構ですし、インターネットでも電話でもそれは可能である、こういうことでございます。

山内委員 手続実施場所にいる必要はない、助言を受けるのは電話でもいいということを言われましたが、手続実施をしているそこの建物内に待機している必要はないんでしょうか。あるいは、その助言というのは、全く肉声ということは必要なくて、ファクスでも何でもいいということなんでしょうか。

山崎政府参考人 その建物内にいる必要もございません。現在の社会でございますから、回線がつながっていれば意思は確かめられるわけでございますので、もちろん肉声でなくてファクスでも、あるいはインターネットでも何でも、それは意思がきっちり伝わればいい、こういうことでございます。

山内委員 例えば、司法書士会がADR機関をつくる、あるいは土地家屋調査士がそういう機関をつくる、そういう団体が、今までの実績とか経験とかそういうものを、弁護士をきちんと判断して、それなりの能力のある人をしっかりとそういう助言者として採用すると思うんですが、そういう人は忙しい人が多くて、事務所にいない場合も多分往々にしてあると思うんですよ。

 そうすると、紛争処理として受け付けをした事件数が物すごくたくさんあるADR機関が、例えば一人の、それも事件数も顧問先もたくさん持っていて毎日ばたばたしているような弁護士を一人雇えばそれでいいのかなという気もするんですが、そういう心配に対してはどういうふうに答えを用意していますか。

山崎政府参考人 それは、現実に助言ができるような体制をとっていなければならないわけでございまして、ただいまの御指摘のような場合でありますと、直ちに助言を、直ちにというか速やかに助言を得るということが難しい場合もあり得るだろうと思います。ですから、その受ける事件の関係からいけば、一人の弁護士ではなくて、複数の弁護士あるいは複数の事務所等と、何かあれば助言をいただけるようなそういうシステムを設ける必要があるという場合もあり得るだろうと思います。

 それから、その場にいなくても結構でございますので、どこか、出張先でも、連絡がつけばそこで助言をしていただくということでも結構でございますので、その場所は問わず、それから必要であれば複数の弁護士さん、そういう方も最終的には連絡がつくようにしておく、こういうことになろうかと思います。

山内委員 「法令の解釈適用に関し専門的知識を必要とするとき」という判断は、だれがするんでしょうか。

山崎政府参考人 これは、第一義的に事件を解決しているのは手続実施者ということになりますので、最終的にはそこの判断にはなりますけれども、それでは場合によってはそこのその判断が漏れるということも考えられますので、それだけではなくて、その紛争解決事業者のところで一定のマニュアルとかそういうものをつくりまして、こういう場合には助言を受けるとか、そういうようなものをつくり上げて、客観性を持たせる。その上で、手続実施者がその個別の事案によって判断をしていく、こういう構造になるだろうというふうに考えております。

山内委員 ちょっとよくわからないんですが、手続実施者がまず第一義的に判断をすると、手続実施者が、これは弁護士の助言を得るまでのことはない、必要ない、そう簡単に判断をすると、弁護士関与制度を認めた趣旨というのが没却するんじゃないかと思うんですけれども、どうでしょうか。

山崎政府参考人 私も同じようなことを申したつもりでございますが、ちょっと言葉が足りなかったかと思いますけれども、そういうような判断で漏れる場合もあり得ますので、その前に、定型的なマニュアルをつくって、こういうものについては弁護士の助言を受ける、そういうものをつくっておきまして、それに準拠しながら、後、そこの範囲内で最終的にそれが本当に高度の専門的な知識を要するものかどうかというような点、この点についても実施者の方でもちろん判断をいたしますけれども、定型的なものについては助言を受けるというマニュアル、これを作成する必要があるだろうと思っております。

山内委員 マニュアルをつくられるということなら、それは非常にいいことだと思います。

 条文の書き方なんですけれども、「法令の解釈適用に関し」というと、法令の解釈とか法令の適用というと、コンメンタールを読んだりすればいいんじゃないかと思うんですよ。それをわざわざ弁護士のところに電話をして相談をする、そこまでの必要はないと思うんですが、余りにもこの「法令の解釈適用に関し」というのが狭い書きぶりになっていませんか。

 つまり、何が言いたいかというと、例えば法令違反あるいは公序良俗違反が生ずるおそれがある、そういうような事案に和解案を提示したり、あるいは、和解を成立させようとして、和解内容の適法性について手続を利用する人たちから判断を求められたときに、この「法令の解釈適用」というのにくくれるのかどうかと思うんですけれども。

山崎政府参考人 例えば、法律の解釈適用でございますと、解釈によって具体的な和解案をつくった場合には、それが例えば公序良俗に違反するといえば、まさに解釈の問題とそれから適用の問題、両方を含んでいるものでございますので、その和解案の違法性というか適法性と、それから、それを具体的に当てはめたときにそういうような条項で正しいのかどうかという相当性、この両方を含むものというふうに我々は理解をしておるわけでございます。

山内委員 では、こういう場合はどうでしょうか。例えば、甲と乙との間に交通事故の問題もある、お金の貸し借りの問題もある、相続の問題もあるという場合に、甲と乙との間の紛争は、例えば相続問題なら相続問題だけが解決したら、相続問題、本件については解決をすると。それを、甲と乙との間に何らもう問題、争いはない、債権債務の関係も何もないと。本件に関してはと書くときと、何らというときで、後で紛争になることがありますよね。そういうようなことは法令の解釈適用とはちょっと違うような気がするんですけれども、どうですか。

山崎政府参考人 最終的には、具体的な、これでこういう和解案をつくっていいかどうかの適用、具体的な適用になってくるわけでございますので、要するに、広い意味では、その条項をつくって、それが将来問題になるというようなもの、これもやはりチェックをしなければならないということで、広くそこは適用の問題として理解をしているわけでございます。

山内委員 そうすると、当局の考え方は、私なりに理解すると、余り無理にというか強引に和解に持っていくんじゃなくて、何か問題がありそうな場合にはきちんと弁護士の関与を求めるけれども、ちょっといろいろな問題が派生するなと思ったら、手続は終了して裁判所の方に行ってもらう、そういうような思いでADRをつくり上げておられるのかなと思うんですけれども、どうでしょうか。

山崎政府参考人 いろいろな事案があろうかと思いますけれども、まず、基本的にはここで解決をしてほしいということでございますので、それは、若干問題が、難しい問題があっても、弁護士の助言を受けてなるべくそこで解決をしてもらいたい、こういうことでございます。

 それから、助言を得ても、そのまま進行すること、そういうことが当事者間の最終的な合意に非常に影響がある、非常に、何といいますか、紛争状態をもっと大きくしてしまうというような場合には、これはもう手続を打ち切って、最終的には裁判できっちり決めてもらう、こういうような選択をするということになろうかと思いますので、まず広く、求めてきている当事者には助言を得ながら最終的な合意に達するように努力をする、それでも、それではうまくいかないというものについては裁判所の方で解決をしてほしい、こういう考え方でございます。

山内委員 和解が成立するということに、ADRの利用料金の基準をそこに持っていく、つまり、和解が成立したら幾ら払いますというような料金の設定をすると、ADRの機関はやはり和解を積極的に成立させようと思うんですよね。だから、和解の成立という要件で料金を設定させないで、それ以外の部分で報酬が受けられるようにすると、強要という心配をしなくてもいいと思うんですけれども、その辺の配慮はどうでしょうか。

山崎政府参考人 具体的な報酬についてはこれから詰めてまいりたいと思いますけれども、ただいま委員御指摘の点は一つの考慮要素にはなるだろうというふうに理解をしておりまして、ちょっと、今後、その点はきっちり検討をしてまいりたいというふうに思っております。

山内委員 いろいろ細かい点、まだまだ来週も質疑をさせていただこうと思いますけれども、このADR機関というのは、例えば、相殺の主張をすればいいのに何でしないのかなとか、名目上の登記名義人から建物や土地の明け渡しを求められている人が何十年もそこに住んでいる、どうして時効の主張をされないのかなと、何かこう、法律を知っていれば知っているほど、手続主宰者としてはいじいじする当事者もあると思うんですよね。そうすると、仮にそういうアドバイスをしたら、手続主宰者に対していわば負ける方は不信感を持つでしょうし、そういう問題と弁護士関与の問題というのはどういうふうに考え分けをしたらいいんでしょうか。

山崎政府参考人 ただいま御指摘の点は裁判においても大変難しい問題でございまして、これは考え方が分かれるところであろうかと思います。

 私もかつて一つの例を自分で経験をしておりますけれども、建設の紛争の関係でございまして、契約条項に仲裁で行うということが書かれているんですが、仲裁の主張をしていないんですね。それでいきなり裁判に来ているわけでございますが、私が、仲裁の点はどうなんでしょうかと言ったら、それは主張しませんということを言われまして、裁判所でやってほしいということで、それぞれいろいろ選択が当事者にあるわけでございまして、その点については非常に状況状況で難しい問題がございます。

 したがいまして、こういう難しい問題、専門的な判断の問題については弁護士の助言を受けて対応してもらいたいというふうに考えております。

山内委員 一定の形で弁護士の関与を担保するということで公正な和解が実現されることを私も念じております。国民がしっかりと司法手続に依存しなくても公正な解決が保障されるような仕組みに、ぜひ当局と一緒になっていい仕組みをつくり上げていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 ありがとうございました。

塩崎委員長 次回は、来る九日火曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時五十九分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.