衆議院

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第4号 平成17年3月8日(火曜日)

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平成十七年三月八日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 塩崎 恭久君 

   理事 園田 博之君 理事 田村 憲久君

   理事 平沢 勝栄君 理事 吉野 正芳君

   理事 津川 祥吾君 理事 伴野  豊君

   理事 山内おさむ君 理事 漆原 良夫君

      井上 信治君    大前 繁雄君

      左藤  章君    笹川  堯君

      柴山 昌彦君    谷  公一君

      早川 忠孝君    松島みどり君

      三原 朝彦君    水野 賢一君

      森山 眞弓君    保岡 興治君

      柳澤 伯夫君    柳本 卓治君

      加藤 公一君    河村たかし君

      小林千代美君    佐々木秀典君

      樽井 良和君    辻   惠君

      松野 信夫君    松本 大輔君

      和田 隆志君    江田 康幸君

      富田 茂之君

    …………………………………

   法務大臣         南野知惠子君

   法務副大臣        滝   実君

   法務大臣政務官      富田 茂之君

   最高裁判所事務総局総務局長            園尾 隆司君

   最高裁判所事務総局経理局長            大谷 剛彦君

   最高裁判所事務総局刑事局長            大谷 直人君

   最高裁判所事務総局行政局長            高橋 利文君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          倉吉  敬君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    寺田 逸郎君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           徳永  保君

   法務委員会専門員     小菅 修一君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月八日

 辞任         補欠選任

  仙谷 由人君     和田 隆志君

同日

 辞任         補欠選任

  和田 隆志君     仙谷 由人君

    ―――――――――――――

三月八日

 不動産登記法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内閣提出第一〇号)

 下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第一一号)

 不動産登記法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三四号)


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     ――――◇―――――

塩崎委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案及び下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として法務省大臣官房司法法制部長倉吉敬君、法務省民事局長寺田逸郎君、文部科学省大臣官房審議官徳永保君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塩崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

塩崎委員長 この際、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局園尾総務局長、大谷経理局長、大谷刑事局長及び高橋行政局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塩崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

塩崎委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松野信夫君。

松野(信)委員 民主党の松野信夫です。

 きょうは、トップバッターということで質問をさせていただきます。よろしくお願いいたします。

 まず最初に、管轄の方についてお伺いをしたいと思います。

 今回のこの法案というものは、市町村合併がなされるということを踏まえて、従来どおりの管轄を基本的には維持していこう、こういうことかと思います。この管轄の問題というのは案外見落とされがちですけれども、実務家にとってはかなり重要なところでありまして、管轄がどうなるかということで、結構、勝負がそれでついてしまうというようなことも実際問題ではありますので、やはり重要な問題だということで取り上げていきたいと思います。

 それで、市町村合併というようなことが進んでいるわけですから、それに伴って管轄がどういうふうになっていくかということ、これはある意味では仕方がないところかなと思いますが、やはり当該住民にとっては、管轄、管轄というのは余りぴんとこない問題ではなかろうか。

 市町村合併というのはかなり関心も高い、マスコミでもよく報道がなされる。ですから、うちの町あるいは村がどうなるかというのはかなり関心がありますけれども、裁判所の管轄というのは余りぴんとこないところがあろうかと思うので、管轄問題はこうなりますということを地域住民にしっかり周知していくということがやはり大変大事なことだろうと思いますが、この点についてはどういうふうな形で周知徹底を図るのか、まずこの点についてお伺いしたいと思います。

園尾最高裁判所長官代理者 管轄の変更に関する住民への周知につきましては、まず、今回の法案の提出に先立ちまして、複数の裁判所の管轄区域をまたがって合併する地域の合併協議会に対しまして、地元の地方裁判所を通じて、合併に伴う管轄区域への影響を説明させていただいております。

 また、法改正後には、地元自治体や関係機関に改正内容を改めて周知いたしますほか、裁判所の窓口やホームページにおいて改正の内容の周知に努めまして、裁判所の利用者に支障が生じないように配慮をしていこうというように考えております。

松野(信)委員 きっちり周知徹底されて、そのとおり運用されればいいんですが、現実には、市町村合併がなされたということで、間違った管轄の裁判所に各種裁判あるいはその他の申し立てがなされるということも、これは十分あり得ることだろうと思います。

 それで、裁判所の方が、間違っていますよということで、例えば管轄違いで却下してしまうとか、あるいは移送だとかいうふうな、確かに、法律的に言えばそのような形になってしまうのかもしれませんが、その辺は当分の間はかなり弾力的に、例えば事実上の移送というような形で、ある程度のサービスをしてあげるというような配慮があってもおかしくはないと思いますが、その点はどのようにお考えでしょうか。

園尾最高裁判所長官代理者 誤った管轄裁判所に申し立てがなされました場合には、法律の規定に従いますと、基本的には、却下をするということではなくて、正しい管轄裁判所に移送するということになります。

 ただ、それでは手続に時間がかかってしまいますので、ただいまの事実上の移送というような御質問かと思いますが、誤った管轄裁判所の窓口に申し立てがされましたときには、窓口の段階で正しい管轄裁判所を御案内させていただいて、そこに御提出をいただくというのが最も適当であろうというふうに考えておりまして、このようなことを徹底して行うという考えでございます。

松野(信)委員 ありがとうございました。

 それから、今回の市町村合併で管轄の問題が発生するのは、要するに簡易裁判所だけかというふうに承知しております。地方裁判所の本庁ないし支部には特段の影響はないのではないかなというふうに思っております。

 そうすると、簡裁というものに関して見ますと、簡裁も最近はいろいろと事件の移動もかなりあったり、聞くところによりますと、いわゆる特定調停の申し立てが非常にふえているというようなことで、簡裁もそれなりの事件の動きというものがかなりなされているように聞いております。

 最近の簡裁の事件数の動向、あるいは特定調停がふえているということで、やはり調停委員というものをしっかり確保しなきゃいけないし、その質とか量とかはどういうふうに担保していくのか、この辺についてもお聞かせいただきたいと思います。

園尾最高裁判所長官代理者 御指摘のように、簡裁の民事事件は大変ふえておりまして、民事訴訟事件は平成十六年には十年間で過去最高の約三十七万一千件になるということでございまして、民事調停事件も、平成十五年がピークで、十六年はやや減少しましたものの、大変高原状態が続くということで、平成七年の約三・四倍の四十七万九千件というのが平成十六年の民事調停事件となっております。そのうちで、御指摘のように、特定調停事件というのは八割以上を占めるという状況でございまして、特定調停事件の増加ということが民事調停事件の増加の要因になっておるわけでございます。

 したがいまして、その執務体制、事件処理体制を整備していかなければならないということでございますが、調停委員に関して申し上げますと、平成十六年における民事調停委員数は、特定調停が導入されました平成十二年に比べまして約二千人増加しておりまして、一万四千人余りということになっております。

 先ほど述べましたとおりに、民事調停事件数はなお高原状態が続いておるということでございますので、平成十六年にやや事件数が減少したということではございますが、引き続きこの事件処理の体制には十分な努力をしていかなければいけないというふうに考えておりまして、調停委員の確保についても万全を期していきたいというように思っております。

松野(信)委員 ありがとうございました。

 ぜひ、地域住民の要請、これはある意味では経済政策の失敗の一つの結果でもなかろうかと思いますが、破産事件がふえている、特定調停が非常にふえているということで、現実にはそういう今お話しいただいたような事件数になっているわけで、ぜひしっかりと、特定調停に当たる人たちの確保、これをお願いしたいと思います。

 それから、続いて、裁判所の定員の問題についてお伺いをしていきたいと思います。

 今回、この法案で、また若干裁判官の定員がふえるということであります。しかし、長い間法曹のあり方をずっと見てまいりますと、我が国の裁判官にしても検察官にしても、必ずしも余りふえてきてはいない。どちらかというと、法曹人口でいうならば、弁護士の方は数がだんだんふえてきているわけですけれども、そしてまた事件数も着実にふえてきているし、最近では破産事件あたりも大変多いわけですね。しかし、それに伴って、弁護士はふえているけれども、裁判官あるいは検察官は必ずしもふえているわけではない。

 今回もわずかな、いわゆる微増にとどまるというようなことでありまして、今後、司法で物事を解決して安心、安全な社会をつくっていく、大臣がおっしゃるそういうような社会をつくっていくには、裁判官、検察官の質そして量、これをやはりしっかり確保していくということが大変大事なことだろうと思いますが、この点についての大臣の所見を伺いたいと思います。

南野国務大臣 ありがとうございます。お答え申し上げたいと思います。

 国民の期待にこたえる司法を構築するということの大きな課題に向かいましては、司法の人的基盤を充実強化するということ、これはもう不可欠であろうかと思っております。そのためには、法曹人口の増加を図る中で、裁判官、検察官につきましてもより一層の充実強化を図っていかなければならない、そのような必要があるというふうに考えております。

 また、法務省といたしましても、司法制度改革の進捗状況やその時々における事件数、社会の需要などを踏まえまして、関係省庁とも相談しながら、人的基盤の一層の充実強化に向けて適切な措置を講じてまいりたいと考えております。

 先生の御懸念が少しでも晴れるといいなというふうに思っておりますので、努力してまいります。

松野(信)委員 ぜひ、大臣のお気持ちに沿うような形で、裁判官、検察官の質と量をしっかり確保していくような、そういう方向でお願いをしたいと思います。

 少し具体的に見てまいりますと、実際に事件数というのはやはりかなりふえているというふうに統計的にもあらわれているのではないかと思います。

 一番典型的な数字で見ますと、いわゆる民事事件、一般の民事事件の件数、地方裁判所における第一審の通常訴訟ですが、これの新受事件数、これも確実にふえているわけですね。かなり前のところで数字を見ますと、昭和三十年の段階で六万三百九十という事件数であったものが、平成十五年の段階だと十五万七千八百三十三ということでありまして、二・六倍になっております。刑事事件も、それほどではないですけれども、昭和三十年で約八万ぐらいであったのが平成十五年で十一万になっている、こういう状況であります。

 裁判官の数というのは、昭和三十年の段階ですと二千三百二十七人ということになっていたのが、平成十五年で三千百三十九人ということでありますので、一・三倍、三割増し程度にしかふえていないわけです。今回、また若干ずつはふえるかなというふうに思いますが、どうも統計的には、事件数の伸びほどは裁判官の数はふえていないというのが率直なところではないかなというふうに思います。

 全く事件数と同等にふやすのがいいかどうかというのはいろいろ議論もあろうかと思いますが、裁判官が丁寧に、そして迅速に事件を処理するということであれば、もっともっとふやしていってしかるべきではないかなというふうに私は思いますが、この点についてはどのようにお考えでしょうか。

園尾最高裁判所長官代理者 裁判官の執務についての大変御理解のある御質問をいただきました。

 御指摘のように、民事訴訟事件は戦後一貫して増加しておりまして、刑事訴訟事件は、増減を繰り返しておるということがございますものの、平成五年以降は一貫して増加しておるということで、平成十六年には刑事事件も過去最高の記録を更新するというような状況になっております。

 裁判所におきましては、これらの事件動向を踏まえまして、裁判所における裁判官の増員を実現してきておるわけでございますが、さまざまな要素を考慮してその増員数を検討していくということでございまして、平成七年以降十年間の裁判官の増員数は三百三十九人というようになっておるわけでございます。

 裁判所としましては、今後ともより一層適正かつ迅速な裁判の実現を図っていくために、事件動向等を踏まえまして、しかるべく増員を検討していきたいというように考えておりますので、よろしくお願いいたします。

松野(信)委員 ぜひ増員をお考えいただきたい、今後とも。

 というのは、例えば、どうも裁判所というのは、予算を確保するという面についてもどれくらい熱心にやっているのかな、また裁判官の数をふやすということについてもどれくらい熱心にやっているのかなというふうに考えますと、やや疑問なしとしないところがこれまでの経過であります。

 たまたま私の方が現職の裁判所の裁判官といろいろ話をしたりしますと、例えば所長クラスになりますと、少ない裁判官の数でたくさんの事件を処理する、これが優秀な裁判官の目安だというようなことを平気な顔をして言うんですね。どんどん事件を処理する、それが優秀な裁判官のメルクマールだ、ちんたらちんたら事件処理が遅いのはだめだ、こういうような雰囲気で、優秀な裁判官というのはたくさん事件を抱えてどんどん処理する、それが優秀だというふうにどうも思っている節があるのではないかな。

 私は、決してそういうことではない、当事者が納得するような丁寧な処理というものがやはり必要なことではないか、こう思っております。

 それで、少し具体的な事件数の中身を見てまいりますと、私が調べている中では、特にやはり破産事件、これはかなりふえているわけですね。最近の統計ですと、平成十五年では、二十五万件を超えるというような状況です。過去をさかのぼりますと、昭和六十年から平成二年ぐらいまで、ちょうどバブルのころは大体一万件台です。一万数千というような状況であったのが、平成十五年、十六年はまだ出ていないかもしれませんが大体似たような数字で、二十五万件を超える、もう十倍以上になっている、こういうような状況であります。これは、破産だけではなくて、民事再生とかあるいは個人再生とか、それから先ほどお聞きしました簡裁における特定調停、要するにもう借金だらけで借金に追われている人たちが助けを求める、こういう事件が残念ながら非常にふえているわけであります。

 実際に見ますと、裁判官だけでなく書記官も大変だ。どうも裁判官は手が回らないのか、かなり書記官に、ある意味では、ちょっと、言うと悪いですけれども、下請に回しているようなところも見受けられます。そういう状況にあります。

 また、家裁、家庭裁判所の方、これも人事訴訟法が改正されまして、離婚事件もこちらで扱うというようなことにもなっておりますし、また、実際、離婚というものが残念ながらふえているわけでありまして、調停あたりも、また審判も実際にふえているということでありまして、そういうような破産とかの特にふえている事件、そういうものに裁判官なりあるいは書記官なりをやはり重点的に配備していくというようなことが内部としても非常に重要なことではないかと思いますが、この点はどのようにされているんでしょうか。

園尾最高裁判所長官代理者 ただいまのような、事件が激増するというような事態になりますと、裁判官、裁判所書記官、その他裁判所の職員が一丸となって事件と格闘するということになるわけでございますが、その事件への対処の仕方は、例えば庁の規模あるいはその管内の弁護士の数、そういうようなことによっても影響されておりまして、さまざまな工夫をしておるわけでございます。しかしながら、それでもやはり増員をしていかないと事件の処理の新しい工夫も円滑に進まないというようなこともございますので、増員の努力もしていくということで、並行して努力をしておるわけでございます。

 具体的な事件の内容について申しますと、破産事件は、ただいま御指摘のとおり、平成十五年には過去最高の二十五万件に達しまして、その後、平成十六年には一割余り減少するという事態になりましたが、なお高原状態の状況にあります。人事訴訟事件についても、これは平成十六年まで増加の傾向が続いております。

 このような中で、裁判所といたしましては、大都市圏の繁忙庁を中心に裁判官の増配置を行ってきておるところでございまして、例えば大規模庁の東京地裁の倒産部の裁判官について見てみますと、破産事件を担当する部署では、平成七年の七人から、平成十六年には十三人に増配置をするというようなことをやってきております。

 人事訴訟事件について申しますと、平成十六年四月から地方裁判所から家庭裁判所に事件が移管されたわけでございますが、これは地方裁判所から家庭裁判所への事件のシフトでございますので、これに応じて必要な配置の見直しを行ったところでございまして、東京家裁を例にとりますと、平成十六年四月には東京地裁から東京家裁へ四人の裁判官を移していくということを行っておるところでございます。

 今後も、各庁の事件動向や事件処理状況等を踏まえつつ、機動的な人的体制の整備に努めてまいりたいというように考えております。

松野(信)委員 ぜひ、人的な配置についても配慮をお願いしたいと思います。

 それから、修習生の問題について考えますと、これも数字を具体的に見ますと、最近、司法修習生の数、これは着実に増加をしているわけであります。数字的に見ましても、例えば平成七年の、これは修習期でいうと四十七期は修習終了が六百三十三人、平成八年だと六百九十九人、平成九年七百二十人というふうに着実にふえているし、平成十六年、五十七期の修習終了が千百七十八人ということで、だんだん司法修習生の数がふえている。今後とも、これは法科大学院との関係でふえていくことが予想されるわけです。

 ところが、実際に任官をしている数はどうなんだというふうに見ますと、これは裁判官をふやすというふうに言っておきながら、数は余り変わっていないんですよ。任官者、平成七年九十九人、平成八年も九十九人、大体百人前後ぐらいになっていて、平成十五年で百一人、平成十六年で百八人ということで、裁判官の数はふやすというふうに言ってはいらっしゃいますが、実際に司法修習生が卒業して任官をするというふうになった場合の任官者の数というのは、ここ十数年、大体百人前後ぐらいで、余り変わりがない。

 修習生の間には、一時、逆肩たたきということで、あんたは任官やめろ、もう難しいよということで、任官したいという人に対しても逆肩たたきのような形であきらめさせる、こういうようなこともありまして、もう少し、新しく卒業する修習生の中から裁判官として任官をとったらどうかというふうに私は率直に思っているんですが、この点はどうですか。

園尾最高裁判所長官代理者 裁判官の増員を図ってきておりますけれども、その増員は、裁判官の退職者数等のいわゆる減耗数と増員数を加えまして、これについて新たに裁判官を充員していくということで採用しておるわけでございます。

 このような状況の中で、ただいま御指摘のような司法修習生からの採用という数を見てまいりますと、例えば過去十年間で比べました場合には、十年前には全修習終了者のおよそ一四%程度の人員が判事補に任官するということでございましたが、最も最近では一〇%を若干切っておりまして九・一%という状況になっておりまして、そのような、裁判官に任用される率が若干減少しておるということはございます。

 ただ、これは、この司法制度の改革の中で弁護士の増加というのは、一つは法の支配を徹底していくということで、社会の津々浦々に法の支配を徹底していくというようなことで弁護士数の増加ということが図られておるわけでございまして、裁判官の数というのは新しい事件数というものを見ながらやっておるというところからこのような乖離が出てくるわけでございますが、ただ、大きな目で見てみますと、ただいま御指摘のように、司法の規模が大きくなるということに従いまして裁判官の増員というのも必要になってくるという認識でございまして、そのような心構えで裁判官の増員を求めておるということでございまして、今後とも一層そのような努力を続けていきたいというように考えております。

松野(信)委員 ぜひ裁判官の増員を考えていただかなければならないと思いますし、また、少し長期的な観点で見ましても、昨年、裁判員法というものが成立をいたしまして、この委員会でもかなり議論をしたわけでありますが、これが平成二十一年から実施されるということで、新たな裁判員制度というものが現実に入ってくる。その辺も見据えて裁判官の増員計画というのはやはり立てていかなければいけないのではないか、こういうふうに思っております。

 時間が余りありませんので、最後に、下級裁判所裁判官指名諮問委員会、これについてお伺いをしておきたいと思います。

 これは平成十五年から、法曹三者及び学識経験者によって下級裁判所裁判官指名諮問委員会というのが設置されているようであります。これは従来ですと、こういうような指名諮問委員会なしに最高裁が例えば任命するというような形、あるいは再任を拒否するというようなことで、多少物議を醸したときもありますけれども、そういうのをできるだけ避けよう、できるだけ第三者の目も入れて、こういうことで、このこと自体が直ちに悪いというふうには言えないと思います。こういうのでできるだけ客観性を担保していくということが大事なことだろうと思います。

 ただ、やはり、場合によっては再任を拒否される、あるいは任官を拒否されるというその本人に対して、しっかりした説明なり納得がいくような措置というものが大事なことだろうというふうに思っております。

 その中で見ますと、諮問委員会の規則の第四条には、最高裁の方は、候補者について指名するとかしたりしたときには決定の理由を委員会に告げる、こういうふうな規定になってはいるんですね。これはこれでいいんですが、肝心の、例えば再任を拒否される、任官を拒否されるその本人に対してはきちんとした説明がなされるのかどうか、その点はどうでしょうか。

園尾最高裁判所長官代理者 この下級裁判所裁判官指名諮問委員会という制度は、これは、裁判官の任命の公平性、中立性を保つということ、それから、第三者をこの委員会の委員に任命するということで、そこに情報が集まるということで任命の透明性も確保するということで制度がつくられまして、運用されておるところでございます。

 本人への告知、本人への推薦をするかどうかについての理由の告知ということに関しましては、現在、概括的な告知をそれぞれにしておるということはございますけれども、その内容をどの程度詳細に告知するかにつきましては、これは、この指名諮問委員会が十一人の合議体から成っておるということで、その合議体の中の全員の一致したところが指名諮問委員会の意思になるということでございますので、その理由の開示の方法についても、これは委員会の中で鋭意検討して、ただいまの御指摘のような、そのような意見も寄せられておりますので、委員会の中で独立性を持って検討するということが続いておるところでございます。

 いま少し、平成十五年にできた制度でございますので、この制度の成り行きを見守っていただければありがたいというように思っております。

松野(信)委員 時間が来ましたので終わりたいと思いますが、私も、この成り行きは十分注視をしていきたいと思いますし、できるだけ客観性、そして透明性があるような任官の仕方、これを追求していきたいと思います。ありがとうございました。

塩崎委員長 次に、松本大輔君。

松本(大)委員 民主党の松本大輔です。

 本日は、裁判所職員定員法の改正案を取り上げたいと思います。

 法務省作成の関係資料を読んでみますと、三ページに提案理由説明、「この法律案は、」裁判所の職員の定員数を増加する理由として、「下級裁判所における事件の適正かつ迅速な処理を図るため、」とされております。下級裁判所における事件と一口に言ってもいろいろだよなと思って読み進めていたんですけれども、二十三ページにより詳しい説明がありました。理由は(一)から(三)まで三つ掲げられておりまして、「(一)民事訴訟事件・知的財産権事件の審理充実」「(二)倒産事件処理の充実強化」「(三)刑事訴訟事件の審理充実・裁判員制度導入の態勢整備」とあります。

 本日は、時間の関係もありますので、この(一)、イの一番に取り上げられております「知的財産権事件の審理充実」という観点から御質問させていただければなというふうに思っています。

 知的財産権といえばすぐに思い浮かんでくるのが来月設置をされる知財高裁ではないかなというふうに思うんですけれども、現状を見る限りでは、私は、むしろ特許高裁と言う方が実態に近いのではないかなという印象を受けております。

 と申しますのも、特許などの技術型の知財訴訟については東京、大阪両地裁そして知財高裁に集約する、一方で、意匠権とか著作権とか商標権といういわゆる非技術型の知財訴訟に関しては集約しないというふうにされているからですね。非常に中途半端じゃないかな、知財高裁というよりはむしろ特許高裁に近い、中途半端じゃないかなという印象を受けたわけです。

 そこで、法務省にまずお伺いしたいと思います。

 なぜ非技術型の知財訴訟について専属管轄としなかったのか、知財訴訟に関して技術型と非技術型とで取り扱いを分けた理由について、根拠について御説明をお願いします。

寺田政府参考人 ただいま委員が御指摘になりました管轄の点は、平成十五年の民事訴訟法の改正で行われたものでございますが、この改正においては、特許権でありますとか実用新案権のような類型の訴訟については非常に審理が高度技術的な分野にかかわることが多いものでございますから、その審理に当たる体制もそれなりにその専門技術性に対応できるようなものでなければならないということがございます。

 また、審理の実態といたしまして、こういうような類型の訴訟においては非常に書面審理であることが多いわけでございます。したがいまして、その際に、こういう類型の訴訟については東京と大阪のような専門的な処理体制の充実しているところに集約して審理を行おうという判断が行われたわけでございます。

 他方、意匠でございますとか商標でございますとかあるいは著作権のようなものは、これほど専門技術性が高いというものが多いわけではございません。むしろ、非常に地域に密着した出来事というのが紛争の対象になることもあるわけでございます。

 例えば、地域におけるお酒の銘柄、ブランドというようなものをめぐる争いというようなものがこれらの中には含まれるわけでございますけれども、そういった争いは審理の内容そのものが非常に地域密着型であると同時に、審理の中身が、証人申請が行われることが多いわけでございますので、これらのものを一括して東京なり大阪なりに集中させるということになりますと、訴訟当事者の方の御不便というものも、便利になる面はないわけではございませんけれども、しかしそういう御不便というものをやはり相当重視しなきゃならないという配慮をしなきゃならないわけでございます。そこで、これらのものは必ずしも東京と大阪に集約するということはしないという扱いをしたわけでございます。

 他方、これらの商標のようなものであっても、専門技術性が高いものもないわけではございません。したがって、その際に、当事者の選択によって、これらのものを東京と大阪の専門体制の充実した裁判の処理ができる裁判所に訴えを提起することができるという扱いも同時にいたしてこれらのバランスをとっている、こういう考え方に基づくものでございます。

松本(大)委員 詳しく御答弁をいただいたんですが、私なりに端的に今の御答弁をまとめますと、著作権のような非技術型のものについては、地域に密着しているので、東京、大阪に集中するのは御不便もあろうか、だからその点に配慮した、集約することはしないということだったんですが、では、実際に起こされている訴訟はどこで起きているのかというのを見てみたいと思うんですけれども、今度は最高裁にお伺いします。

 知財訴訟における一審の新受件数、新規受け入れの件数、東京、大阪以外の地裁が占める割合が何%あるのか、技術型と非技術型に分けて、その割合をそれぞれ教えてください。

高橋最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 特許権、実用新案権等のいわゆる技術型の事件の東京、大阪両地裁の集中率……(松本(大)委員「ごめんなさい、平成十五年で。民訴法の改正の影響を受ける前の」と呼ぶ)それも申し上げます。集中率、すなわち、全体の何%の事件が東京、大阪の両地裁に提起されたかという点を見ますと、平成十五年の技術型の事件の集中率は両地裁合わせて八一・六%でございます。

 その後、平成十五年の、先ほどから出ております法改正によりまして、改正されました平成十六年四月以降は、技術型の事件については東京、大阪両地裁に対してしか訴えを提起することができなくなりました。その結果、技術型の事件の平成十六年四月以降の集中率はほぼ一〇〇%になっております。(松本(大)委員「十五年だけで結構です」と呼ぶ)十五年だけで結構ですか。はい。

 これに対し、意匠権、商標権、著作権等の非技術型の事件の平成十五年の東京、大阪両地裁への集中率は、六六・八%でございます。

松本(大)委員 控訴審についてはいかがでしょうか。同じく技術型、非技術型に分けて、平成十五年のデータを教えていただけますか。

高橋最高裁判所長官代理者 大変申しわけございません。控訴審についてはそれをとってございません。

松本(大)委員 実は、控訴審のデータについては、きのう質問取りの際にこちらでちょうだいしました。控訴審の方がどうかというと、言ってほしかったから今質問したんですけれども、控訴審については、技術型が八七・八%、非技術型が八六・一%です。

 つまり、どういうことかというと、先ほど、非技術型については地域密着型で利便性を考える必要があるから集約しないとおっしゃったにもかかわらず、実際の訴訟がどこで起こされているかといえば、一審は、技術型であれば八割、非技術型でも七割が東京、大阪で起こされているんですね。控訴審では、技術型も非技術型も九割が東京、大阪なんですよ。一割しか差がないのに、片や東京、大阪でしか提起ができない、片や地元で提起ができるというのは、利便性の確保というものに配慮をするという観点からすると、著しく公平さに欠ける議論ではないかなというふうに思うんです。

 そこで、大臣にお伺いします。

 冒頭に、技術型の知財訴訟と非技術型の知財訴訟とで取り扱いを分けられた理由として、地域密着型だからとか地域性というものを理由に挙げられたというのは、先ほどの客観的データから見る限り誤りであると考えますが、大臣の見解をお願いします。

南野国務大臣 お答えを申し上げますが、一概に誤りとだけは言えないのではないだろうか、いろいろな理由がその中にはあるのではないかなと思っております。

松本(大)委員 いろいろな理由があるのであれば、冒頭にそれをぜひ御説明してほしかったと思うんですけれども。

 先ほどの御答弁では、地域に密着しているということを理由として挙げられていたわけですね。地域に密着しているから配慮しなければいけないというふうにおっしゃられたわけですけれども、実際に、今聞いたデータで地域に密着しているかどうかといえば、訴訟を起こされているところはそうじゃないわけですよね。どっちも七割以上は、つまり大半は東京、大阪に集約されているんですよね、実際。

 東京、大阪への集約度が一割しか差がないのに、片や東京、大阪でしか提起ができない、片や地元で提起ができる。片や地理的利便性に考慮をされるし、片や地理的利便性は考慮されないというのは、著しく公平性を欠きませんか。その取り扱いの差異を生じるほど、それに足る理由づけとしては不適切ではないですかということを申し上げております。

寺田政府参考人 先ほど、最後に申し上げましたように、今委員がおっしゃる非技術型の意匠等の類型の訴訟においても、東京、大阪に選択的に訴訟を提起できるという道を開いたわけでございます。

 そうしますと、実際に当事者がどうお考えになるかというと、それは本当に地域密着型のものが地元の裁判所に提起をされ、それよりは別の配慮、例えばいい弁護士さんがいらっしゃる、あるいはいい審理体制があるという方を重視されれば、それは東京、大阪にそういう訴訟においても提起されることがあるということでございまして、そういう当事者に選択肢を与えるという制度はそれなりに合理的だろうというふうに思います。

 ただ、今後の訴訟の成り行きを慎重に注視しなければなりませんが、仮に圧倒的多数が東京、大阪にやはり提起されるという現実が生じましたときは、もう一度こういうことにも見直しをしなきゃならない場面が生ずるかもしれません。それはまたそのときのことでございまして、慎重に運用を見守ってまいりたい、このように考えております。

松本(大)委員 なぜ平成十五年のデータを求めたかというと、集約される前、民訴法の改正が行われる前の時点で、つまり判断材料として、その判断材料を踏まえた上での判断として適切であったかどうかということを今問うているわけですね。今おっしゃった、片や選択肢を残した、片や選択肢が残されなかったというのは、私は非常に不適切な理由づけであったと思いますし、客観的データとは食い違っている、誤りの答弁であった、理由づけであったというふうに思います。

 時間の関係がありますので、次に進みます。

 人員配置について伺います。

 冒頭に紹介しましたように、この資料の二十三ページ、増員の理由の筆頭には「知的財産権事件の審理充実」というのが掲げられているわけです。そこで、最高裁にお伺いしたいと思います。

 今回増員される裁判官七十五人の増員のうち、知財関係訴訟を取り扱う部門、具体的には東京、大阪両地裁の専門部とそれから知財高裁と大阪高裁の集中部の各部について、それぞれ、東京地裁プラス何名、大阪地裁プラス何名という形で教えてください。平成十七年予定で結構です。

園尾最高裁判所長官代理者 これは平成十七年四月の配置予定ということで御説明申し上げますと、まず、知財専門部の裁判官の増配置についてですが、これは平成十六年四月に地裁の知的財産権事件が東京、大阪に専属管轄化された後の新受事件数の動向等を踏まえまして、平成十七年四月には、知財専門部を設けております東京地裁、大阪地裁、知財高裁のうち、東京地裁に一人の裁判官を増配置するという予定でございます。

 次に、知財集中部についてですが、大阪高裁には知財集中部が置かれておりまして、知財事件のほか通常の民事控訴事件も取り扱っておりまして、知財事件は全事件のおよそ五分の一程度を占めるわけでございますが、この知財集中部につきましては、平成十七年四月に裁判官を五人から四人に減員する予定でございます。これは、民事訴訟法の改正によりまして、平成十六年四月からいわゆる技術型の知財事件の控訴事件が東京高裁ないし知財高裁に集中するということになりまして、大阪高裁には非技術型の知財控訴事件のみが係属する、それも大阪高裁管内の事件が係属するということとなりますので、その結果、大阪高裁の知財集中部の事件の負担が減少しておるということで、このような配置が考えられたわけでございます。

 いずれにしましても、これまでも知財事件の事務処理体制の強化ということで増員要求の柱にも立てて努力をしてまいりましたが、今後ともこのような検討を継続的にしていきたいというように思っておるところでございます。

    〔委員長退席、田村(憲)委員長代理着席〕

松本(大)委員 こういうふうに答えてくださいねというふうにお願いしたので、確認ですけれども、東京地裁はプラス一、大阪地裁はプラマイ・ゼロ、東京高裁はプラマイ・ゼロ、大阪高裁はマイナス一ということでよろしいでしょうか。イエスかノーかで答えてください。

園尾最高裁判所長官代理者 そのとおりでございます。

松本(大)委員 おかしいですよね。増員の理由として一番最初に「民事訴訟事件・知的財産権事件の審理充実」というのが掲げられていて、七十五人も増員されるのに、今伺った限りでは、知財関係の訴訟を取り扱っている、さっきの集中の度合いでもその大半を取り扱っているこの四つの部署で、増員されるのが東京地裁だけで、しかもそれは一名にすぎないんですよね。七十五名を増員する法案の理由の一番目に挙げられておきながら、その分の配分がたったの一名というのは、これはどうなんですかね。しかも、今の四つ、通算するとプラマイ・ゼロですよね。大阪高裁に至っては減員一名ですよね。プラマイ・ゼロです。

 つまり、通算すると増員の理由とはなっていないわけなんですが、この関係資料の「知的財産権事件の審理充実」というところは、これは抹消すべきではないでしょうかね。法務省に伺います。

倉吉政府参考人 確かに、知的財産権事件、最高裁の御説明によりますと、東京、大阪に集中しているわけでございますが、いろいろな事件の動向を見まして、それは全国的にも知的財産事件はあるわけでございまして、それを審理していくためには、地方の裁判官というのはいろいろな事件を審理しておりますので、特にこれによって何人ふえたのかというのはなかなか説明が難しいところはあろうかと思いますが、そういった最近の事件動向をすべて見て、知的財産であるとか破産であるとか刑事事件、いろいろなものを挙げまして、そういうものが全体的にふえている、あるいは質的に難しくなっている、そういうことに対応するためにトータルとして七十五人の増員が欲しい。

 それについての具体的な裁判官の配置については、今後とも、事件動向、いろいろあると思います、機動的に人員配置をしなければならないという事情もございますので、これからそういうのを見ながら裁判所において適切に人員の配置も含めて対処していくもの、こう考えております。

松本(大)委員 先ほど冒頭でもお伺いしましたとおり、東京、大阪への集約度が、非技術型でも一審で七割、二審で九割、技術型なら一審で八割、二審で九割。もう大部分、東京、大阪なんですよね。だから、知財事件の審理充実を掲げられるのであれば、何よりもここに増員が図られていなければならないのに、それはたった一名にしかすぎない。いや、ほかの地裁でもやっていらっしゃいますと。でも、七割から九割は東京、大阪なんですよ。その東京、大阪に増員が一名しかないのに、ほかのところに増員されるのであれば、それはその方がむしろおかしいということになります。

 昨年の山崎さんの答弁によれば、高度の専門性を要するというふうにたしかおっしゃっていたんですね、知財訴訟事件に関しては。高度の専門性を要する事件だからこそ、限られた人材は集中投資する、だからここに集めたという趣旨だと思うんですが、なのに、逆に地方の方にばらまいているのであれば、それは知財高裁の設立の趣旨そのものを没却せしめかねないという、これは非常に問題のある答弁だったんじゃないかなというふうに僕は考えます。

 時間の関係もあるので次に進みたいと思うんですが、せめて、これは百歩譲っても(一)はないんじゃないかなと思うんですよね。(四)知的財産権事件の審理充実としていただけるのであればわかるんですけれども、これは一番目に挙げられると、知財ブームに便乗して何か増員を図ろうとしたんじゃないかなというふうに僕なんかは勘ぐりたくなるというのが人情ではないかな、非常に違和感を感じざるを得ないということを指摘しておきたいと思います。

 さて、知財高裁が設置されるとはいえ、理工系の素養を持つ技術に精通した裁判官というのは非常に少ないんじゃないかなというふうに思います。ちょっと古いですが、二〇〇三年六月七日付の日経新聞に、「全国二千人強の裁判官のうち、理工系の学士を持つのはわずか十人前後。」という記事もありました。こういう状態だからこそ、裁判官あるいは裁判所に対するアドバイザーとして専門委員制度というのが導入されたのではないかなというふうに思っています。

 そこで、その専門委員制度の活用状況についてお伺いしたいというふうに思います。これは最高裁にお伺いします。東京、大阪の専門委員の数と、延べ出廷回数についてお聞かせください。

高橋最高裁判所長官代理者 技術型の知的財産関係訴訟に関与する専門委員の数は、合計百六十二名でございます。東京、大阪の裁判所に所属しております。その出廷回数につきましては、平成十六年四月一日に専門委員制度が発足して以降、平成十七年三月一日までで延べ百六回となっております。

松本(大)委員 百六十二名ですよね。百六十二名の専門委員の方がいらっしゃって、十一カ月間で百六回しか出廷されていないということは、少なくとも三分の一以上の方はこの十一カ月間一回も出廷されていないという計算になります。

 南野大臣もメンバーとなっている知的財産戦略本部が昨年五月にまとめた知的財産推進計画二〇〇四、これには、知財高裁において、「知的財産や技術に精通した専門人材を活用し、」中略「より一層適正・迅速な裁判を実現することが望まれる。」というふうにうたってあるんですけれども、百六十二人もせっかくいらっしゃるのに、三分の一以上は一回も出廷されていないというのは、私は、この知的財産推進計画の提言の趣旨とはちょっと乖離しているんじゃないかな、余り十分に活用されているとは言いがたい状況ではないかなというふうに感じるということを指摘しておきたいと思います。

 ちょっと時間の関係もあるので、次に進みます。

 技術系の素養を持った裁判官、理工系の素養を持った裁判官の育成というものは、知財訴訟の審理の充実化というものには欠かせない観点ではないかなというふうに思うんですが、ただ、その候補者たるべき法科大学院の志願者というものがここに来て激減しているというような報道がされております。

 具体的には、十月十七日付の朝日新聞なんですが、「九月末までに応募を締め切った四十六校のうち四十四校で、志願者数が下回った。約半数の学校で半減、中には一割に落ち込んだ所もある。特に社会人や他学部出身の志願者の減少が目立つ。」とあります。これは文科省に問い合わせたのですが、最終合格者とあわせて調査するので現時点では回答ができないということでした。

 そこで、私は、適性試験というんですか、統一適性試験の受験者数について調べてみましたら、大学入試センター実施分で受験者全体が一万四千人も減少しておりまして、理系学部の出身者は四割以上の減少となっています。この数字というのは、理系出身者が法科大学院というものを早くも敬遠し始めたということを示しているのではなかろうかというふうに思うんですけれども、そもそも法科大学院というものが、旧来の試験の弊害を打破する、公平性、開放性、多様性を旨とするという司法制度改革審議会の意見書の線で開設されたというふうに考えているんですが、実際は、そこと早くも矛盾を来しかねない状況になっているのではないかなというふうに思います。

 そこで、文科省さんにお伺いします。理系出身の志願者数の減少の原因について、その見解と対策をお伺いしたいと思います。

    〔田村(憲)委員長代理退席、委員長着席〕

徳永政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のように、確かに、理系学部出身者の受験者数、二千百二十三人で、昨年に比べて四一%の減少となっております。しかし、これは理系学部出身者に限らず、統一試験、適性試験の受験者総数全体が減少しているものでございまして、その受験者総数で見ましても、二万一千四百二十九人で、昨年に比べて四〇%の減少となっておりますので、これは決して理系学部出身者だけが減少しているということではないと思っております。

 受験者総数が減少した具体的な理由ということについては、正確にこれを分析することは困難でございますし、まだ把握しておりませんが、私ども思っておりますことは、昨年は、法科大学院制度が初めてできた、そういう制度創設という初年度もございまして、こういった法科大学院制度の創設を待っていらっしゃった社会人となっていた既修者の方が約二万七千人受験した、その方がことしは一万五千人に減少しているということが主な原因だと思っております。

 先生御指摘のように、司法制度改革審議会の意見書におきましても、多様なバックグラウンドを有する人材を受け入れるということが必要だと言われております。これを受けまして文部科学省でも、各法科大学院が、入学者のうち法学を履修する課程以外の課程を履修した者が三割以上になるように努めるということを告示で定めております。実際に、理系学部出身者を含めて法学部以外の者が約三四%去年入学しております。

 また、各法科大学院におきます実際の入学者の選抜におきましても、例えば東京大学ではそういう出身者枠十名を設けたり、入学者選抜の方法につきましてもいろいろ工夫をしております。

 文部科学省としては、こういう各大学の工夫、こういったもの、あるいはその教育内容につきましても、知財あるいは科学技術のリテラシーの養成といったことについて、これからもこういう大学の取り組みを支援していきたいと思っております。

松本(大)委員 先ほどの御答弁は、理系出身者の志願者の減少ということの理由づけになっていません。それは、御自身でおっしゃられたように、初めてできたのを待っていらっしゃった既修者の方が減少をしたというふうにお答えになられているからであります。

 むしろ、理系の方であれば、今までの職をなげうって全く新たな分野に進むというのは大変勇気の要ることですから、しばらく様子見をしたいという、より慎重な判断をされるのが普通ではないかなというふうに思います。だから、うまくいけば、本来であれば今後ふえていくことが期待された人たちではなかったのかなというふうに思いますし、全体が減っているんだからいいじゃないかという議論はもってのほかではないかなというふうに私は思います。

 私がなぜこのことを申し上げるかというと、統一試験の受験というのは、法務省による先月末の新司法試験の合格者数の発表よりも前だったからなんですね。つまり、志願者数の減少というインパクトは今後さらに襲ってくるのではないかなということです。先月の末に新司法試験の合格者数の枠が発表されたことによって、当初の期待よりも合格率が大幅に低下することが明らかになった。そのことによって、ことしあるいは来年と、さらに理系出身者が減っていくのではないかなというふうに懸念をしているわけです。

 さらに、配点も、公法、民事、刑事という実定法科目が二対三対二、知財といったような選択科目は最大で二までということで、どうしても実定法科目を中心に勉強せざるを得ない。こんなことだから理系出身者には敬遠されがちなのではないかな。しかも、合格率も非常に低い。果たしてそのリスクをとる価値があるかな、敬遠されているんじゃないかなというふうに思うんです。

 最後に大臣にお伺いしたいのは、知的財産推進計画二〇〇五年版に、知財に詳しい法曹人材の養成というものが盛り込まれる予定だというふうに伺っております。特許裁判をめぐる事件では、その裁判官がその技術を理解できるかどうかが判決を左右しかねない重要な要素となります。だからこそ、知財立国を掲げる日本にとっては、理工系あるいは技術の素養を持った裁判官の養成が急務であると私は考えます。

 そこで、知財戦略本部のメンバーである南野大臣にお伺いします。

 知財に強い法曹人材の予備軍である法科大学院の志願者数が減少しているというのは、日本にとっては憂慮すべき事態であるというふうに考えますが、法務省の最高責任者としての見解と対策についてお聞かせください。

南野国務大臣 裁判官の方々のバランスをとるということは、先生御指摘のとおり、大切なことかなというふうに思っておりまして、御提言は本当にごもっともだというふうに思います。裁判所もその提言を尊重しながらやっていくということであろうかなというふうに思っております。

松本(大)委員 時間がないので終わりますが、これは僕の提言ではなくて、あなたがメンバーでもある知財戦略推進本部が書いていることなんですからね。

 担い手の育成をあわせて進めていかなければ、絵にかいたもちに終わりますよ、知財高裁も絵にかいたもちに終わるんだということを強く指摘して、私の質問を終わります。

塩崎委員長 次に、辻惠君。

辻委員 民主党の辻惠でございます。

 本日は、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案、そして管轄をめぐる法律案に関連して質疑ということでありますが、裁判所の定員の問題ということは、結局のところ、司法の容量をどう考えるのか、司法の役割をどういうふうに考えるのかというところに帰着するものであります。そういう意味で、現在の司法は何が期待されていて、何を果たしていかなければいけないのか、そのためにどういうことを考えていかなければいけないのかという観点で、率直な意見交換というか、まず、基本的な見解をめぐって大臣、副大臣、政務官の御意見を承っていきたいな、こういうふうに思います。

 昨年の野沢法務大臣の通常国会、そして南野法務大臣になられて臨時国会、今回、通常国会ということでありますが、実際に質疑等、法案の提出の内容等を体験して感じるのは、本当に日本の国をどのようにしっかりと築いていくのか、いろいろな問題がたくさんある中で、どのように問題点を整理していって、二十一世紀の未来に向けて次の世代に本当に残していくものを英知を絞って協議していかなければいけない、議論していかなければいけないというふうに考えますけれども、そういう中期的な見通しをしっかり議論するのではなくて、何か当面のいろいろな問題の処理に大わらわであるというか、びほう策みたいなもの、かつ、むしろ時代に逆行するような法案がどうも出てきているような思いが非常にあります。そういう意味で、非常な危機感を覚えております。こんなことでいいのだろうかという思いがあります。

 臨時国会のときにも刑法の重罰化の問題で、私なりに、もちろん、処罰を重罰化することによって犯罪が抑止されるということだけを考えておられるわけではないんだろうけれども、結局、現実に出てきた結果とその機能するものということを考えれば、そういうふうになってしまうという懸念を非常に強く抱かざるを得ない法案が、一年も審議されないで、要するに、法制審に上がってから一年以内に拙速的にそういうものが法案になって通されてしまう。本当に、しっかりした議論がなされない議会というのは何なんだろう、委員会というのは何なんだろうという思いが非常にあります。

 そういう意味で、やはり政治家一人一人が、現在の時代についてどういう認識を持って、どういう危機感を持って、それを解決するために、本当にどういう見通しを、未来の構想を持って議論を闘わせるのかということが問われているんだなという思いがあります。ですから、議案を提出されている皆様方について、そういう見識が問われてくるんだということをより自覚していただきたいなというふうに思います。

 私は、前の通常国会の中で自分としては非常によかったなというふうに思うのは、自民党の中でも議論をしっかりできる議員とめぐり会えたことだというふうに思います。

 前回は与謝野馨理事に、民主党の提案の捜査の可視化の問題について、与謝野委員は時期尚早だというふうにおっしゃいましたけれども、終わった後何日かして、やあ、辻さん、辻さんということで、二、三十分意見交換をできました。与謝野委員は、イギリスに自分が留学している経過も含めていろいろなことをおっしゃって、自分の親友が死ぬときに、遺言で、捜査の可視化はぜひ、君、実現してくれというふうに言って死んでいったんだよと。本当かなというふうに思いましたけれども。

 そういうような話もあって、アプローチの視点というか、やはり違いはあるんだなというふうに思いましたけれども、共通に語り合える基盤というのが非常にある。議員としての経験年齢からすると全然、月とスッポンではありますけれども、やはり今、ともにこの二〇〇五年の時点で議員として日本の未来のために議論をしていくという立場に立ったときに、共通の会話が成立する関係の議員さんが反対党にもいらっしゃるということを……(発言する者あり)まあ、永遠に反対党だと思うので、やはりうれしかったなというふうに思います。

 あと、漆原議員が察知してか中座されていないのでありますが、今の公明党は、理念を喪失して自民党追随型の政治のオンパレードになっているけれども、その中で漆原議員は、独自の御意見をちゃんと持っていろいろなことをおっしゃっている。私は選挙区で公明党の人と対立しているから余り口をきくことははばかっていたのでありますが、話をしてみるとやはり共通に話し合える関係があるということで、法務委員会に所属して、そういう意味では非常によかったなというふうな思いもあるんですね。

 余り前置きが長くなってもよくないかもしれませんけれども、今国会で予算委員になって、四十日間、毎日のように顔を突き合わせて、やじり合ったりしている中で、やはり予算委員の中で自民党の議員の方々と会話ができるようになった、具体的なことで意見交換ができるようになったというのは、私にとっては非常によかったなというふうに思うんですね。

 きょう言いたいことは、この法務大臣、副大臣、政務官との間でも、そういう今の日本の現状について、とりわけ法務行政、司法行政の現状について率直に意見交換をして、その中で、違った見方からの意見がいろいろあって、複合的な観点で物事を見ていかないと、もちろん提案者の側ではその上で出しているんだというふうにおっしゃるとは思うんですけれども、反対意見を本当にどこまでちゃんとそしゃくして出しておられるのかということ、本当に認識して出しておられるのかということが、やはり疑問に思う点が多々ある。それではいけないのではないかなというふうに思うんですね。

 ですから、こういう委員会の場での質疑というのは、やはり一つの枠があって、言えることと言えない、立場上の問題もあると思うんですけれども、民主党は先日、法務省の方々とも懇親会を持たせていただいたし、最高裁の方とも懇親会を持たせていただいて、そういう共通の会話ができ、議論ができ、そういう基盤づくりということでやはり意味があることだったと思うんですが、ぜひ大臣、秘書官の方抜きに、一度意見交換の場を設定していただけませんか。いかがでしょう。

南野国務大臣 先生の御高邁な御意見をお伺いする機会をいただきたいと思っております。

辻委員 体型が似た者同士でうわさになるとまずいので、一対一か、また同僚の議員と一緒かはともかく、ぜひそういう場を設定させていただきたいなというふうに思います。

 党が違う富田政務官も、共通の知人がいますので、一度意見交換を直接したいと思うんですが、いかがでしょうか。

富田大臣政務官 辻先生は、弁護士としては私の先輩でありますし、議員歴は私の方が若干長いということで、議会のことについては私の方が知っている部分もあると思いますので、意見交換の場はぜひ持っていただきたいと思っております。

辻委員 ありがとうございます。

 それで、私は……(発言する者あり)副大臣。では、副大臣、いかがでしょうか。

滝副大臣 議事録に載らないことであれば、何でもしゃべりたいと思います。よろしくお願いします。

辻委員 きょうの質疑は、そういう意味で、司法の現状について、今の日本の時代認識をどういうふうにお持ちなのかということがやはり前提になるので、そこを出発点にお伺いしていきたいなというふうに思うんです。

 最初に申し上げさせていただくと、やはり法務省の基本的な、きちっと政治家の視点として検証して、スクリーンされて議案が出てきているのかなというのがどうも非常に疑問なんですね。そういう意味で、民主党の議員の立場で申し上げると、やはり民主党が政権交代するまでに、これ以上、余り法案を出さないでいただきたい。後で組みかえるのがそれだけ大変になるので、やはりそこはもう少し慎重に、ゆっくりしていただきたいなというふうに最初に申し上げておきたいなと思います。

 なぜ申し上げるかというと、先ほど御紹介申し上げたように、重罰化の問題にしても、法制審で取り上げて一年以内に拙速的に行う。今回、同僚議員が既に所信表明に対して質疑等をさせていただいていると思いますけれども、犯罪者の履歴の問題についても、性犯罪を犯した人ということになっていたのが、小泉首相が一言言ったら急に全犯罪者の情報というような形で、歯どめがないと申しますか、言ったらそのまま全部いくんだというふうに、みんなが道をざっとあけてしまうんですね、それでずっと進んでしまう。

 今まで、私が思っていたのは、そうじゃなくて、いろいろな観点から、それは違うだろうという障害物、ハードルを前に置いたりして、議論をしながら、それを越えていくというような議論があったと思うんですが、どうもそうじゃない。一瀉千里、すべてが進んでしまうというような傾向が非常に強くなっているような思いがあるんですね。

 そういう意味で、慎重に、もっと時間をかけて、法案の提出についても、パブリックコメントを求めたりというふうに言っても、それは既存の、ある立場の人たちが形だけ、私から申し上げれば当然出てくるだろうと予測可能なパブリックコメントが出てくるだけであって、本当にもっと掘り下げた議論になかなか至っていないなという思いはありますから、そういうふうな思いが強くあります。

 それで、きょうは二点について主に伺いたいのですが、刑法の重罰化の問題についてもそうなんですが、私は、今の社会を考えたときに、従来の総中流意識という、ある意味で幻想的にみんながまとまっていたという時代から、二極分化している。勝ち組と負け組に分かれて、しかもそれが、自由競争原理のかなり強い導入の中で、それはそれでいいんだというような傾向が色濃く社会を覆ってきている。その中で、負け組の人たちは、やはり先に希望がなかなか見出せない。したがって、自暴自棄になったり、希望が持てないんですね。

 ですから、犯罪ということを考えたときも、通常は、こうすれば自分に不利になるからこれはやめておこうというような抑止力が働くとかいうことを従来の目的刑、教育刑というのは議論をしてきたように思うんですが、そういう利益判断、利益衡量をするまでもなく絶望しているという層が生まれてきていて、そして二極分化が進んでいる。教育の問題についても、有名大学にはやはり収入の多い家庭の者しか入れなくなっている、そういう傾向が非常に強まっている。

 では、そういう中で司法の果たす役割は何なのか。犯罪がふえている。私は、数のカウントの問題について、一九九四年の統計のとり方について、やはり基準が変わって、確かに、大きく言えばそういうなだらかな傾向はあるにせよ、一挙にあの九四年、平成六年の時点で認知件数とかが大きく変わったということとは思わないんですけれども、そういう傾向は確かにあるだろう。

 犯罪をどうやって防止していかなければいけないのかというのも、確かにそうなんですね。だけれども、二極分化している、そういう社会の構造を前提にして、それを助長するような施策をするというのは、やはり方向が逆なのではないかなというふうに思うんですが、大臣、この点、どういう認識でおられますか。御自分のお考えを、ペーパーを見ずにお願いしたいと思います。

南野国務大臣 先生の高邁なお話をお聞きしていますと、本当にこんなに広がってしまって、先生の中に埋没されてしまっているような気がいたしておりますけれども、その話の中でありますけれども、少し私は意見を異にするのかなというふうに思っております。先生がお話しになられました総理の課題ということについても、私の考えとも少し違うのかな。

 そういう意味からは、小泉内閣の標榜する構造改革というところに視点を持っていってみるならば、官から民へ、国から地方へと、できるだけ権限を移譲していこうというようなところがあり、小さな政府ということも目指しているわけでございまして、過度の規制を排して、そこで透明性を持っていくフェアな競争が行われておるのではないか、社会経済が活性化するというような方向にも向かっていっているのではないかなと思っております。

 先生のおっしゃる勝ち犬、負け犬ですか、私は犬に例えられたくないですが……(辻委員「勝ち組」と呼ぶ)勝ち組、負け組。負け組で生涯を終わりたくないなというふうに思っていきますが、それを二分化して、あなたはこっち、こっちというのは、私の意見とは少し違うのかなというふうに思っております。

 そのような意味で、自由な競争が促進される点はあっていいのじゃないかな。それが直ちに、弱い者を切り捨てていくということ、そこまでは言えないのではないか。あくまで、排すべきは過度な規制であります。また、必要な保護は残していかなければならないというふうにも思っておりますし、まさに我々が今進めていこうとしている司法制度改革によりましても、司法の充実強化を図っていこう、弱者、少数者のケアをなるべく取り組んでいこうというような課題でございます。

 そういうことでございますから、総論的には、このような社会の二極分化が進んでいるということについては、私は別な考えを持っているということを御報告したいと思います。

辻委員 二極分化がいい悪いというのは次の話であって、現実が、やはり二極分化が進んでいることになっているのではないかという指摘をしているんですよ。だから、そこの認識は違うという認識なんですね。

 富田政務官、どうですか。

富田大臣政務官 大臣と異なる認識を政務官が言うというのは、ちょっと立場上問題だと思うんですが、政治家として聞かれているというふうに理解して答弁させていただければ。

 私も、落選していた三年半、弁護士に戻っていましたので、その間いろいろな相談を聞いていると、破産や離婚が多くなるという状況から見て、やはり大変な生活状態にいる人がふえてきているなと。それが先生の言われる負け組なのかどうかはわかりませんけれども、十年前に比べたらやはりかなり二極化しつつあるのではないかなという認識は、法曹の一員としては持っております。

辻委員 勝ち組、負け組というのは便宜的に言っただけで、もっと的確な表現の仕方があるのかもしれないんですけれども、大きく社会が分化していっている。

 日本は、イギリスなんかの階級社会と違って、階級、階層のそう大きな隔たりがないと言われていたのが、やはりかなり変わってきている、変容してきているのではないか。そういう中で、矛盾もさらに拡大していっているし、希望を持てなくなっている人々も、数もふえている。だから、自殺者が三万五千人とか自己破産者が二十四万人とかいうような事態も、それの一つのあらわれだと思うんですね。

 そういうときに、犯罪の件数もやはりそれとしてふえるだろうというふうに思われるし、司法の機能として秩序の維持も必要だということもよくわかるんですが、そのときに例えば重罰化をするということは、収容が過剰にもなるでしょうし、刑期が長くなればなるだけ矯正目的を果たすこともやりにくい、したがって再犯率も改善できない。恐らく、統計的に考えていけば、再犯率もふえていっているだろうというふうに思うんですね。

 だから、そういうときに、やはりトータルにどういう法務の行政を行っていくのかという立場が問われている。この間の法務省を初めとした御提案の内容は、国家の治安機能を強化するという方向にどうも傾斜し過ぎているように思うんですね。それはやはり一面的であるし、ある意味で、日本の中で排他的な感情を強めてしまう、市民社会がもっと包含力というか包容力を持って包み込む、そういう市民社会の力強さというのが減退してしまう、排除の論理に走ってしまって、本当に、かえって日本の国民の中の秩序が乱れてしまうということになってしまうのではないかという危惧を持つんですよ。

 ですから、私は、そういう観点にぜひお立ちいただきたいな、程度の差はいろいろあるにせよ。そういう観点から見たときに、刑法の重罰化はどうなのかというような問題も出てくると思うんですけれども、大臣はそういう観点にお立ちになっていない、こういうことですかね、さっきのお話は。

南野国務大臣 そういうような意味ではございませんで、もしそれが二極化されているのであれば、司法としては、それを統合する形の中でいい形をつくっていかなければならない、そのように思っているわけでございます。

辻委員 滝副大臣には申しわけないんですけれども、富田政務官、いかがですか。

富田大臣政務官 先生が御指摘の、社会の包容力を大事にしなきゃという考え方は、私も全く同感です。

 ただ、刑法の厳罰化がそれと全く反対の方向からされているかといったら、それは違うんじゃないかなと。一つ手段としては、やはり適正に、厳罰化も必要だ。一つの手段として厳罰化はする。もっと厳しくしなきゃならないと言う人もいますけれども、その手段の一つである。それと加えて、先生がおっしゃっている社会の包容力、これが減退していっていることに対して、それをどうやって復活させるのか。

 私も、このごろの事件を見ていますと、やはり規範意識の欠如というか、もう甚だしい。これはやはり教育の問題もあると思いますけれども、そういった総合的に考えていかなきゃいけないし、司法はやはりその一翼を担わなければいけないと思う。政治が全体として、規範意識をもう一度復活させるというか、そういった方向に社会を持っていかなきゃいけないんじゃないかなというふうに考えています。

辻委員 規範意識が減退、欠如してきているというのは同感なんですね。だけれども、何でなのかというのは、それは個人の責任の範囲の問題もあるだろうし、しかし、やはり社会的な原因もあるだろう。つまり、未来に希望を持てない、自分の立場からすれば自暴自棄にならざるを得ない、投げやりになってしまう。ですから、まともにいろいろなことを考えることを、気力も失う、意欲も失うという層が生み出されてきているというのは現にあると思うんですね。

 この間、民主党は、全国の刑務所について実態調査ということで、手分けしてみんなで刑務所見学に回っているんですね。その中で、受刑者の方のいろいろな様子を見たときに、やはり切り捨てられている層がどんどんふえてきている。幾ら規範意識云々と問うてみても、それを受け入れる素地なり意欲なりがむしろ失われている、そういう層が生み出されている、こういう問題点があると私は思うんですね。

 だから、そのときに、重罰化をすれば規範意識を涵養できるというのは、そういう側面がゼロとは言わないけれども、むしろ方向が逆転しているんじゃないかなというふうに私は思ったりするわけであります。

 そういうようなことからいって、治安強化で事足れりというような方策を、今それが問われている問題なのかといったら私は違うと思うし、そういう意味で、継続審議でずっとなっておる共謀罪について、また議案として審議を求めてこられるような動きがあると思いますけれども、これは明らかに、そういう意味で、現状を、むしろ今の混迷を深める二極分化の構造をさらに固定化して、それをより強めてしまう、そういう対立構造、排他的な構造をより強める方向に向かってしまう。

 しかも、これは刑法理論からすると、富田政務官は当然、もう釈迦に説法でありましょうが、人権保障機能が、やはり構成要件ということで守られているのを、要するにそれを全く緩めてしまうというような構造なんですよね。

 富田政務官、これは弁護士の立場でどうでしょう。この点についてお答えください。

富田大臣政務官 共謀罪について弁護士の立場として答えるというのはどうかと思うんですが、日弁連のパンフレット等を見ますと、何か相談しただけで罪になってしまうんだというような書き方をされていますけれども、あれは共謀罪の規定をちょっと誤解されているのではないかなと。

 私は、最初に、平成十五年ですか、復活して戻ってきて、今度の共謀罪の説明を受けたときに、多分辻委員が御懸念のように、これはかなり、これまでの共謀という、共謀共同正犯の枠を超えてしまうんじゃないかというような罪をつくろうとしているんじゃないかなというふうに思いましたけれども、今は結構説得されておりまして、なかなか限定的な規定ではないかなというふうに政務官としては考えております。

辻委員 率直な意見交換の場が法案提出までの間にそれぞれ設定できると思いますので、もう少しそれはいろいろな機会で議論を深めていきたいなというふうに思います。

 ちょっと時間もあります。最後に、国民の司法参加という問題で、裁判員制度法案が昨年可決された。ただ、具体的な制度設計の中についてはまだ全く煮詰まっていない、とりあえずPRの段階のようではあります。それは、私はもともと非常に危惧感を持っている法案ですから、いろいろ今後も意見を申し上げていきたいというふうに思うんですけれども、司法への国民参加というふうに言ったときに、国民に情報をきちっといろいろな意味で伝えるという意味で、マスコミの役割というのは物すごく大きいと私は思うんですね。

 ですから、マスコミの報道の自由というのは司法を支える重要な要素であると私は思いますが、大臣、いかがですか。ペーパーを見ずにお答えいただきたいと思います。

南野国務大臣 先生がおっしゃっておられることについてですが、マスコミ、報道機関の取り扱う取材、これはもういろいろ皆さん方は体験もおありだろうと思いますし、その方たちの自由というものは、それは報道の自由というところで尊重されなければならないというふうに思っておりますから、国民の知る権利にもこれは匹敵するものである、それは認めます。

 他方、司法、とりわけ捜査機関ということにおきましては、捜査を適正に遂行しようと思うところに秘密を保つ必要があるという場合が少なくありません。そういった問題についてはしかるべき配慮が必要ではないかな、同じマスコミのあり方をしてもそのような部分もあるのではないかな、そのようにいろいろ考えております。

辻委員 この問題については、また次の機会にぜひ取り上げさせていただきたいと思います。

 これは予算委員会でも指摘申し上げましたけれども、東京地検特捜部の井内部長が、マスコミはやくざ者より始末に負えない悪らつな存在だという文書を配っている。私は、これは非常に問題が大きいと。

 今回の日歯連の問題についても、政治家の責任のところまで至ったのはなぜなのか。もともとは滝川さんという会計責任者のトカゲのしっぽ切りで終わった案件が村岡さんのところまで届かざるを得なかったというのは何なのか。それはマスコミがいろいろ報道したからなんですよ。特捜部長は、それによって起訴できるものが起訴できなくなったというようなことをこの自分の私信で言っているけれども、逆ですよ。起訴すべきものを起訴しないで、ほおかむりして終わらせたのが特捜部長じゃないですか。それを棚に上げて要するにマスコミ批判を繰り返すなんて、本当に始末に負えない、私はこう思います。

 この問題について、現在もなお、橋本派のやみ献金問題について検察審査会の結果を受けて再捜査をしている東京地検特捜部の部長が、このような見解を持っている人がついているということについては物すごい危惧を持ちます。この問題について、やはり大臣が予算委員会でもはっきりこれについての御自分の見解を示されなかったという点は、私は極めて問題だと思っているので、もう時間がありませんからきょうは答弁は結構ですけれども、この問題は今後も重大な問題として質疑を続けていくということを申し上げて、きょうは終わります。

 ありがとうございました。

塩崎委員長 次に、小林千代美さん。

小林(千)委員 民主党の小林千代美です。

 裁判所定員法の一部改正について質問をしたいと思います。

 この法案については、私も昨年もここの委員会でこの法案改正について質問をさせていただきまして、ことしも同じ質問を実はしなければいけません。というところに、毎年やっているところに根本的な問題があるのではないかなというふうに思っているわけでございます。

 昨年は、この日切れ法案の中に裁判所法の一部改正というのもありまして、そこの中で裁判所の速記官の方々のあり方というものが問題になっておりました。これは、平成九年のときに裁判所の速記官の養成というのが事実上一時停止というふうになっておりましてから、毎年毎年、この日切れが出てくるたびに法務委員会で議論の種にもなっている問題でございます。

 昨年、この質問をして以降、最高裁の方では、速記官の方々が独自に開発をされた反訳ソフトの通称「はやとくん」が、昨年の十二月にインストールが許可されたということを私も速記官の方から伺いまして、本当に速記官の方々の自助努力というものが職場の中で報われたなというふうに、よかったと思っております。

 つきましては、昨年質問をいたしました答弁につきまして、何点か確認をしておかなければいけないところがございます。

 このように、裁判所速記官の皆様は御自身でさまざまな自助努力をしながら仕事に携わっていらっしゃるわけでございます。そのような速記官の方々の執務環境の整備につきまして、昨年、整備についてはできる限りの努力をしてまいりたいというふうに御答弁をいただきました。昨年から一年間でどのような環境整備が行われたのか、そして、これからどのようにさらに取り組んでいかれる予定なのかを御質問いたします。

園尾最高裁判所長官代理者 昨年の通常国会において御質問を受けて以後、現在までの間に検討いたしましたことの中で最も大きいのは、ただいま御指摘のありましたいわゆる「はやとくん」ソフトを裁判所の業務用パソコンにインストールすることを許可したことでございます。

 「はやとくん」ソフトは、ただいま御指摘のありましたとおり、速記官がみずから開発をしまして、その上に、ステンチュラという機器もみずからの負担で購入をして業務に使っておるということでございまして、これについて裁判所のパソコンで使いたいという強い要望があったわけでございますが、裁判所の業務用システムのソフトに悪影響を与えないことが確認されていないということでそれまでは認めていなかったわけですが、昨年秋に専門業者にソフトを検証してもらいまして、業務用ソフトに影響を与えないと確認できましたので、インストールを認めたものでございます。これで、これまで熱意を込めて仕事をしてきた速記官の人たちに喜んでもらえておるというように認識をしておるところでございます。

 これからも、速記官の能力が十分に発揮されるように、執務環境の整備については細かい一つ一つのことにつきましても配慮をしていきたいというように考えておるところでございます。

小林(千)委員 ぜひしっかり取り組んでいただきたいと思います。

 続きまして、もう一点。この速記官の皆様ですけれども、平成九年当時は八百七十名近くいらっしゃった。それが、毎年毎年、新しい養成がとまっているものですから、いわば自然減の状態になっているわけなんですね。現在は、昨年の数字で約三百五十名ぐらいまで減ってしまったということを伺っております。自分の後輩も入ってこない、先輩は抜けていくけれども新しい速記官は入ってこないという環境の中で、速記官の皆さんは仕事をされていらっしゃるわけでございます。身分からいえば、大変不安定な状況なのじゃないかなというふうに想像に値するわけでございます。ぜひ、そのようにやりがいを持っている速記官の皆さんがそのような処遇に関して不安を持たないで仕事に当たっていただかなければいけない、こういう環境をつくり出すことは私たちの責任だと思っております。

 この処遇につきましては、平成九年の速記官の養成の事実上停止のときに、時の事務総長がこのようにおっしゃっております。「これからもやりがいを持って働いていただけるよう、そのための環境づくり、処遇の改善等については、」中略しますけれども、「責任を持って、鋭意検討を進めていく、速記官の方々には今後とも安心して職務に精励していただきたいと考えている」というふうに答弁をなさっております。これについても、やはり間違いはないでしょうか。この信念のもとで待遇の改善というものに当たっていただいているでしょうか。

園尾最高裁判所長官代理者 そのような心構えで対処しておるということは、そのとおりでございます。

 一つ加えまして、処遇の改善ということにつきましては、その当時は、例えば速記官から書記官への転官というようなことも考えられていたわけでございますが、速記官は、その養成が停止されるということがありまして以後も、自発的な努力によりまして、ただいまのステンチュラという機器をみずから購入する、あるいは日本語変換ソフトをみずからの負担で開発するというようなことで、速記官の仕事の有用性というのを発揮して、速記官の仕事の中にやりがいを見出してやってきておるというように、これまで努力が継続されてきておるわけです。いわば、このような、まさに身を切るような思いで努力を続けて職務の向上に努めておるという速記官を裁判所職員として持っておるということは、私自身にとっても大変誇らしいことであるというように思っております。

 そのような速記官の努力に対して、速記官の仕事を続けていくという上でも少しでも配慮したいということで、ただいま申し上げましたような「はやとくん」ソフトのインストールというのも可能な限り早期に認めるということでやってきたわけでございますが、今最も大事なことは、このような姿勢を持ちまして、速記官に希望を持って仕事をしてもらうということが最も基礎的で最も重要なことだというように考えておるところでございます。今後も、そのような一つ一つの積み重ね、積み重ねられる一つ一つは大変小さなことでございますが、そういう一つ一つの積み重ねで私どもの気持ちをあらわしていきたいというように考えております。

小林(千)委員 昨年、裁判所法の一部改正につきましては附帯決議もついていたわけでございますけれども、この附帯決議の内容、「将来的に不安定な状況に置かれることのないよう十分な配慮をすべきである。」このような附帯決議も、昨年から一年間かけてしっかりと守られているというふうに先ほどの答弁で認識をさせていただきます。

 それで、速記といいますか、この記録のあり方というものが、これから裁判員制度が導入されるに当たりまして大きな役割を果たすのではないかなというふうに思っております。

 といいますのも、裁判員制度が始まりますと、長ければ二日、三日ないし一週間ぐらい、法廷が連日開廷されるということも予想されるということが言われております。私たちも、こういった質問をつくるときに、きのうの予算委員会のだれだれの質問を確認したいというふうに記録部の方にお願いをして速記録を早急につくってもらってチェックをして、だれが何を言った、大臣はこのようにおっしゃったというのを確認する作業をして質問づくりに当たっているんですけれども、同じようなことは法廷の中でもやはり行われると思います。

 そういうときに、今の記録のとり方のあり方で裁判員制度に果たしてついていけるのかどうなのかということを大変疑問に思っております。今は、速記の方による記録のとり方とは別に、録音反訳、いわゆるテープ起こしというやり方で同じように記録をとっていると言われておりますけれども、それにしても、即日はなかなか難しいと伺っています。何日かかけて、外注したものを、返ってきたものをチェックして、それが認められる、このようなやり方で本当にこれからの、四年後始まる裁判員制度に記録のあり方がついていけるのかどうか、それが一点。

 そして、昨年は、音声認識ソフトというのを私たちの法務部会でも見せていただいたんですよね、最高裁の方に。証言するときにここにマイクをつけるそうなんですよ。当然、皆さん、三者がマイクをつけている。その音声を拾って、それがパソコンの画面上で日本語に変換をされるというソフトの試運転を見せていただいたんですけれども、昨年見た限りでは、それが実際に実用されるかどうかというのは、多分これは、かなりのところ難しいのではないかなという感覚を持ちました。といいますのも、読んでいるのも正しい日本語のあり方の教科書的読み方をされているものしか実験されておりませんでしたし、実際の法廷の場で語っていることがきちんと記録されるのかというのは、まだまだ疑問視をしていかなければいけません。

 このような音声認識ソフトというのが一年間たってどのぐらい開発が進んだのか、そしてこれから裁判員制度が導入をされる四年後の記録というものはどういうふうにされていくべきなのか、お伺いいたします。

園尾最高裁判所長官代理者 裁判員制度は、私どもが、これを実施していかなければならないということで、今さまざまな観点から検討しておる制度でございます。その中でも、ただいまの記録のあり方をどうするかということについても鋭意検討を続けておるところでございまして、現在は関係機関等と討議を重ねておるという段階でございます。このような中で何ができ上がるかということにつきましては、まだ検討をさらに続けていくということで、施行がされる四年後までの間に研究を続けたいと思っております。

 大きな方向としては、現在、ただいま御指摘のように、速記官による速記録、録音反訳を利用した書記官調書それから通常の書記官調書という三つの選択肢で調書化しておるわけですが、それぞれをさらにどのように向上させていくのかという問題と、それ以外の何らかの方法が考えられるのかという両面から検討を続けておるところでございます。

 ただ、ただいま音声認識技術という問題も出てまいりましたが、これは新しい技術でございまして、特に一人が話をするあるいは講演をするということについて文字化するという技術は相当に発展しておるわけでございますが、現実の法廷で行われるような非定型の会話を文字化するということに関してはまだ新しい技術という段階で、これから開発をしていかなければならないというものでございます。

 そういうことで、御指摘のとおりに大変難しい問題に取り組まなければならないということでございますので、現段階の状況を申しますと、昨年に引き続きまして、調査研究をしておるという段階でございます。そういうことでございますが、さまざまなあらゆる可能性を研究しながら、今後の裁判員制度の施行を迎えるまでに調書作成などについての姿も確定していきたいというように思っておるところでございます。

小林(千)委員 この裁判員制度は、実際に市民が裁判に参加をする制度です。その市民の方には、司法の知識が全くない方も当然いらっしゃるでしょう。そういう方々が裁判に参加をして、実際に合議をし、そして判決を下すというような結論に持っていかなければいけません。そのときに、やはり法廷の中で行われている証言というのは、私が見ても全くわかりづらいような内容です。そういった内容がきちんと後で確認できる、どのように確認をしていけるか。または、今は本当に密室の中で行われている取り調べ状況、これが法廷の中でしっかりと確認できるように、可視化という問題も今大きなテーマとしてありますけれども、やはり裁判員制度導入に向けて、市民に開かれた、わかりやすい法廷の場をつくり上げていただくためにも、しっかりとこの問題については取り扱って、取り組んでいただきたいというふうに思います。

 もう一点、この裁判員制度の導入につきまして伺いたいんですけれども、先ほど民主党の委員の方からも、裁判員制度が導入されるに当たって、判事の数については、法曹者の数についてはどれだけ十分な体制で臨んでいくのかというような内容で質問がありました。

 もちろん、法曹者の充実もしていかなければいけない。それと同時に、職員の方々の仕事量というのも大変なものになってくると思うんですよね。特に、裁判官の手に行く前の事前の状況の整備ですとか、そういったことには膨大な時間が割かれるのではないか。そうすると、今のような職員の体制で本当に対応できるのかどうかというものは検証しなければいけないと思います。

 今回の定員法の一部改正につきましても、職員の増員は純増で十名です。昨年からそんなに数がふえているわけではありません。これから四年後の裁判員制度導入に向けて、どのような職員の増員体制を考えて、この裁判員制度を成功させようというふうに考えていらっしゃるでしょうか。

園尾最高裁判所長官代理者 これは、裁判員制度施行まで毎年毎年検討を重ねていくというような課題だと考えております。

 ただいま御指摘のような純増数ということではございますが、書記官の数の増員という点から見てみますと、百九十名の書記官数をふやす、そういう増員の計画を立てるということで進めていっております。

 ただ、一般の事務処理の面で、行政事務処理という観点から見ると、これは合理化できるものは合理化すべきであるというような観点から見直して純増という数が出てきておるわけですが、しかしながら、裁判に当たる書記官の数などについてはきちんと確保していきたいという考えで進めていっておるわけでございます。

 これも毎年毎年そのような姿勢で、最終像としまして、施行までに裁判の処理体制を充実させる、裁判官とともにその補助に当たる書記官その他の職員についても充実させるという、ただいまはこのような気持ちで当たっておるということで、現在の百九十名の書記官の増員という点についての気持ちを推しはかっていただければというように思っております。

小林(千)委員 続きまして、これからの司法制度改革をどのように成功に導いていくか。裁判員制度もこの大きな柱だと思いますし、それを成功させるも否も、問題は人ですから、これからの法曹をどのように育てていくかというのは大変重要なポイントだと思います。

 ところが、先ほど民主党の松本委員の発言にもありましたけれども、求められているような人材が今育て上げられるような環境にあるかどうか、大変大きな岐路に立っていると思います。

 衆議院の予算委員会におきましても、この司法試験合格者数問題につきましては、与野党ともに多くの委員が質問にも当たっておりました。私も大臣に予算委員会で質問をさせていただきました。そのときの質疑と答弁をここでもう一度行う気はございませんけれども、そのときに大臣は、この司法試験合格者数問題につきましては引き続き法務委員会で検討をしていきたいという内容の御答弁をいただいたと思っておりますので、これから質問に入らせていただきたいと思います。

 先ほど松本委員の質問にもありました。求められている人材というものは、法学部出身生だけではありません。他学部の出身生、あるいは文学系ではない、理工系あるいは医科系の卒業生も必要とされるでしょう。社会人経験のある学生も、人材も求められている。多種多様な経験を持つ法曹者というものが必要とされている今、そういった方々が本当にロースクールに入学してきてくれるかどうかというものが今岐路に立っていると思います。

 二月の二十八日の司法試験委員会では、これからの法曹の数の方針というものが出てまいりました。平成十八年の初年度が九百人から千百人程度、二年目の十九年は大体その倍ぐらいというような方針が出されたわけなんです。これは、最初、数が出たときに、平成二十二年の完成時までには三千名くらいというグラフを考えると、一次関数の直線的なグラフよりも少しスピードが上がったかなというようなイメージを持つわけなんですけれども、これからの合格者数問題につきまして、もちろん、社会の要請ですとか、あるいはどのような人材がこれからロースクールで育ってくるかという見えない部分もあると思います、しかしながら、これからの司法制度改革を進める上で、大臣、この合格者数について、これから二十二年に向けてどのような方針、見解を持っていらっしゃるでしょうか。司法試験委員会に任せますじゃなくて、大臣の言葉での答弁をお伺いしたいと思います。

南野国務大臣 私の考えを申し上げたいと思っておりますが、本当に今から司法制度を改革していこう、国民に開かれた司法というところに持っていくのには、先ほど先生も触れられました裁判員制度、それも大きな役割でございますが、今お尋ねの司法試験について、どのような人を育てていくのかという御意向でございます。

 裁判官の方にしても、やはり人間性というものが一番問われてくる、人対人との作業でございます。そういう意味では、あらゆるジャンルに裁判官の方々の専門性があればいいなというようなことも、先生はお考えの中にあるのではないかな。そういう意味から、先ほども理科系の問題もお話が出ておりました。

 そういうことはございますが、司法制度改革審議会の意見、または、それを受けた司法制度改革推進計画がございますが、そこでは、法曹人口の拡大というものにつきまして、法科大学院を含む新たな法曹養成制度の整備の状況を見定めながら、まだこれは見定めていく段階であろうと思いますが、平成二十二年ごろには司法試験の合格者数を年間三千人程度とするということを目指すものだというふうにされております。

 二月二十八日に開催されました司法試験委員会におきましては、これらの審議会意見や推進計画を踏まえた上で、平成二十年以降の新司法試験の合格者数のあり方については、今後の法科大学院における教育の実績、さらに受験生の動向等を見定めながらさらに検討することが適切であるとする一方、同年以降の司法試験の合格者数のあり方につきましては、同十九年の合格者数からさらに減少させても受験者に不当な不利益を与えない旨の取りまとめが行われていたと承知しております。

 その意味するところは御理解いただけていると思いますが、このような、平成二十年以降につきましては、具体的な数値は示されておりませんが、基本的には、プロセスとしての法曹養成の中核である法科大学院、それを重視していこうという考え方を示されたものと認識しております。

小林(千)委員 大臣の考え方を伺っているわけでございまして、今御発言されたようなことは、ここにもう書いてあるんですよね、二十二年ごろまでには三千人を目指すと。しかし、この中にも書いてございますけれども、これは、あくまでも計画的にできるだけ早期に達成すべき目標である、そして上限を意味するものでもないというふうにきちんと書かれているわけなんですよ。

 これからの司法制度改革、総責任者でございます大臣自身がこれからの法曹養成について、特に、他学部ですとか、多様な人生経験を持つ人材をどのように養成し、そして司法の中で活躍をさせていきたいというふうに考えているのか、その理念を伺っているんです。

南野国務大臣 先生のお尋ねではございますけれども、方向についても司法試験委員会の中で検討されております。それをやはり尊重する立場にあるということの御理解もいただきたいと思います。

小林(千)委員 大臣の考え方はないんですか。(発言する者あり)

南野国務大臣 丸投げというよりも、それぞれのつかさつかさでお仕事をしてくださっております。そのつかさをしっかりと守っていかなければならないというのが私の役割であろうと思っています。

小林(千)委員 私は丸投げと言っているわけではありません、大臣。ちゃんと残しておかなければいけませんので。

 やはり、これからの将来をどういうふうに考えるか、責任を持っている、この法務行政の中の最高責任者である大臣の声を伺いたいわけなんです。

 大臣がこの制度をどのようにしていきたいかというのは、それはもちろん、司法試験委員会でそれぞれどのような審議をされるかというのは大切なことでございますけれども、大臣自身がどのような認識を持っていくかというのでこれからの日本の将来が決まっていくんですよ。ぜひ大臣、どのようなお考えをお持ちですか。

南野国務大臣 先生のお考えの中にもあると思いますが、質、量ともに大切な課題でございます。

 そういう意味では、どのような人間を育てて、その育ってきた人間がどのような形で、どのような考えで司法に向かっていくのかというところも一番大切であろうと思っておりますので、無理やり連れてきて、この人をこうしなさいというようなことはできない課題でございまして、司法を目指す方々をポイントとして我々は育てていかなければならない。昔の裁判員のあり方というのは、ポイントで合格してこられていた。だけれども、そこを見直していこうというところで、今プロセスで育てていこうということですから、それがワンポイントと、差が出てくるというふうに私は考えております。

 そういうあり方をしっかりと見守っていかなければならないのが、これからの司法に向けた育て方ではないかなと思っています。

小林(千)委員 大臣、私は別に、他学部の卒業生や社会人を無理やり引っ張ってきて、司法試験を受けろだとかロースクールに入れろというふうに申し上げているわけではありません。

 しかし、今、そういった多種多様な人材がロースクールの中で生かされなければいけない、その理念というものがどうやら危うくなっている。三割はそのような人材が育たなければいけないというような提言もあります。そういった方々が、意思を持ってロースクールに入ってきたい、自分の今までの人生経験をこれからの司法の場に生かしていきたい、こういった若い人の熱意というものが本当に生かされるような改革を行っていただきたいというふうに申し上げているわけでございます。

 この理念というものを本当に成功させるために、ぜひ大臣に大きな役割を果たしていただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

南野国務大臣 精いっぱい努力してまいります。

小林(千)委員 ぜひ、御努力よろしくお願いを申し上げます。

 質問を終わります。

塩崎委員長 次に、井上信治君。

井上(信)委員 自由民主党の井上信治でございます。よろしくお願いいたします。

 まず冒頭、実は私、昨日、同僚、先輩の若手議員の皆様と一緒に多摩少年院の方に視察に行ってまいりました。ここは、私の地元、東京の一番西の外れ、私、西多摩出身でありますけれども、そこの隣町、八王子にある少年院でありまして、大正十二年、日本で最初の少年院ということで、非常に意義深いものでありました。

 地元との関係も非常になじみがありまして、良好な関係を保っている。そしてまた、中でもしっかりとした教育訓練が行われているということで、特に、とりわけ私が感銘を受けましたのは、実際に職務に当たられている教官の方々、この方々と座談会をやらせていただいたんですけれども、本当に高い志を持って、しかも、さまざまな肉体的、精神的ストレスにもかかわらず、しっかりと職務をやっていただいている。こういう方が支えているんだなということを、この場をおかりして敬意を表するとともに、本当にそういった現場でほとんどの方は必死になって一生懸命やっていると思います。そうした方々が実力を十分に発揮できるように、やはりこれは大臣以下、本当に法務省の幹部の方々、その制度づくり、枠組みづくりが必要だと思いますので、よろしくお願いいたしたいと思います。

 さて、法案でありますけれども、下級裁判所の管轄区域の問題に関しまして私が思いますのは、今回、平成十三年より三回にわたって、市町村合併に対応して、この下級裁判所の管轄区域、さまざまな法改正を行ってきたわけでありますけれども、その市町村合併をもとにして、それに対して、何か合併を機に市民の司法サービスが不便になってはいけないということでやられたということで、いわば対症療法的といいますか、その市町村合併に伴うものでありますけれども、むしろ、そうではなくて、全体として、やはり今、裁判所の整理統合、こういったことをしっかり考えるべきではないかなというふうに私は思っております。

 戦後六十年で一回しか大きな統廃合を行っていないということでありますから、これを機会に、市町村合併という、もう自治体の枠組みは今大きく変わりつつあるわけですから、やはり司法サービス、法務行政としても、この裁判所の区域、管轄そのもの自体をしっかり考えて統廃合をしていただきたいと思いますけれども、大臣の御見解を伺いたいと思います。

南野国務大臣 先生の御意向をしっかりと受けとめてまいりますが、でも、それは地方の管轄下の問題でございますので、どうぞ、その地方のあり方というものを大切に見守っていきたい。その中でどのように司法が果たせていくのか、下級裁判所のあり方というのも考えていかなければならないと思っております。

井上(信)委員 地方のあり方というか、市町村合併について言っているのではなくて、そうではなくて、裁判所の区域、管轄の話として、やはりこれは法務省として責任を持って考えていただきたいということであります。

 なぜ私がこういったことを申し上げるかというと、実は、ちょっと具体論をやらせていただきますけれども、私の地元においても、今、東京都は、御承知のように、下級裁判所、本庁が一つ、東京地裁があって、そして八王子支部が一カ所ということで、二カ所しかありません。全国では本庁五十、そして支部が二百三ある中で、東京は一カ所ずつということであります。

 今、八王子にあるこの裁判所も、立川に移るというような計画もあるというふうに聞いております。そうしてしまうと非常に、私のところは、もう山梨の県境に一番近い部落ですと、立川に行くまでに車でも電車でも二時間ぐらいかかるんですね。そうしたことで本当にいいのか、市民が望むそういった司法サービスができるのかどうか。

 特に私が問題とするのは、こういった区域の管轄に関しましても、実は利用者である地元の法曹界あるいは住民の方々、そしてまた市町村に対して、ほとんど満足な協議とかあるいは意見交換といった場が設けられていないということで、地元では大変心配に感じております。こんなことではいけないなと思っておりまして、ぜひそういうことをお考えいただきたい。

 ちょっと伺いたいのは、裁判所の設置基準、こういったものが実際あるのかどうか。さまざまな人口ですとかあるいは交通機関の利便性とか、普通に考えるとそういったことが必要だと思うんですけれども、そういったものが実際あるのかどうか、もしないのであれば、しっかり設置基準をつくっていただきたいと思っております。

園尾最高裁判所長官代理者 裁判所の認識について御説明いたしますと、司法制度改革審議会の意見書にもございますとおり、裁判所の配置は、裁判所へのアクセス、提供する司法サービスの質等を総合した国民の利便性を確保する観点から、人口動態、交通事情の変化、裁判所で取り扱う事件数の動向等を考慮の上、IT技術の進展等も視野に入れながら、総合的な利便性の向上の見地から検討する必要性があると認識しておるところでございます。

 このような要素につきまして、平素よりさまざまな数値について検討いたしておりますが、それに加えまして、現状におきましては、裁判員制度を初めとする司法制度改革に関連して新たに設けられました制度などについて順次検討をいたしまして、このような新たな事情の検討も加えまして、総合的な検討をしていくということを考えておるところでございます。本庁、支部を含めた設置の基準ということにつきましても、その一般的なところから検討しておるというところでございます。

井上(信)委員 ぜひ、国民は望んでおりますから、その検討を進めていただきたいと思います。

 次に、裁判所の定員法の改正案についてでありますけれども、今回、定員をふやすということで、これはもう非常によいことだと思っております。しっかりふやしていただきたいとは思うんですけれども、むしろ、単に少しずつふやしていくということではなくて、全体として、ふやしていって、では、これからどのような社会を目指していくのかという、そこのグランドデザインを伺いたいと思います。

 やはりこれから、例えば、今政府全体として、とにかく規制緩和を実行していく、事前規制から事後チェックへの世の中になっていくということで、普通に考えますと、当然、司法の役割というものがふえてくる、あるいは民間の活力をどんどんどんどん導入をしていって、そしてそれのチェックを司法にお願いしよう、最終的なチェックをやってもらおうという話になると思うんです。

 ただ、最高裁の過去の御答弁などによりますと、やはり病理的現象、今の訴訟に時間がかかるといったことに対して裁判官をふやして、そしてそれをしっかりやっていこうというような御答弁でありまして、むしろ、訴訟事件の件数については、これは今後のことだからよくわからないみたいな話ばかりであります。

 やはりそうではなくて、政府としてある程度、例えば欧米のような訴訟社会を目指していくのか、欧米といってもアメリカとヨーロッパじゃ大分違いますし、そういった意味で、しっかりとしたこれからの計画というかグランドデザインをぜひお答えいただきたいと思います。

南野国務大臣 お答え申し上げたいと思います。

 今後の国民生活のさまざまな場面におきまして法曹に対する需要がますます多様化し、または高度化していくことが予測されております。二十一世紀の司法を支えるためには、裁判官を初めとする司法の人的基盤の充実強化というものが不可欠であろうというふうに考えております。

 法務省といたしましても、司法制度改革の進捗状況、その時々における事件数、社会の需要などを踏まえながら、関係省庁とも相談しながら、人的基盤の一層の充実強化に向けて適切な措置を講じてまいりたいというふうに思っております。

井上(信)委員 私は、むしろ、事件数の増減とかそういったことに対応するということではなくて、しっかり政府として、行政としてどのような見通しを持って、そしてこの裁判官の増員に取り組んでいくのか、そういった方針をぜひ考えていただきたいというふうに思っております。

 そして、そういう中で、今回の合計七十五名の増員で本当に足りるのかどうか、これはちょっと、どういった根拠で七十五名なのか、その辺を伺いたいと思います。

 私が思いますに、やはり訴訟の中で、裁判迅速化法も通ったことでありますし、そういう意味では、迅速かつ公正な裁判というのと、そして充実した審理ということで、これはなかなか両立させるのは難しいと思います。そうした中で、やはり裁判官の増員のニーズが高まっている。これをやっていくことによって、こういったことをクリアしていかなければいけないというふうに思います。

 そして、あるいは今、法曹人口全体をとにかく増員していこうということに取り組んでおられるところでありますけれども、そうした中で、では、その法曹三者のバランスの問題があると思います。やはり今の目標に照らし合わせますと、少し裁判官の増員のペースは少ないのではないかな、バランスを失しているのではないのかなというふうに私は思っておりますけれども、その辺のところをいかが考えておられるのか、御見解をいただきたいと思います。

園尾最高裁判所長官代理者 裁判所といたしましては、これまでも、事件動向及び事件処理状況等を踏まえて裁判官の増員を図ってきておりまして、今後とも、必要な体制の整備に努めてまいりたいというように考えておるところでございます。

 他方、検察官や弁護士あるいは司法修習生の増加に対応して裁判官の数がどうあるべきかということでございますが、この点につきましては、やはり裁判所は事件処理をするという観点から裁判所の陣容ということを考えておりますので、今までの検討が基本になるわけでございますが、法曹人口の大幅な増加ということに伴いまして、当然のことながら、裁判所に係属する事件数も増加するということが予想されまして、このような観点から、より適正かつ迅速な裁判を実現する、あるいは専門事件への対応を強化するというために、裁判官の増員が必要であるという認識を持っておるところでございます。

 平成十七年度の増員につきましては、このような検討のもとに、裁判官の充員計画というようなことも踏まえまして、この七十五名という増員要求をしておるところでございます。

井上(信)委員 ぜひ、この七十五名にとどまらず、本当に毎年毎年、これからどんどんふやしていかなければ、これからの社会に対応できないというような認識を持っております。よろしくお願いいたしたいと思います。

 そして、その人数をふやしていくだけではなくて、当然のことながら、裁判官の質の充実をしっかりとやっていかなければいけないと思います。それについてもあわせてお願いするとともに、これは先ほどの下級裁判所の管轄あるいはその設立と同じ話でありますけれども、では、その増員した裁判官をどこにどういうふうに配置するか、これがやはりこれから具体的には最も大切なことになると思いますから、それについてはぜひ法務省内部で、しっかりとした適正な配置、これはやはり利用者の立場に立って、本当にニーズのあるところにしっかりとした適正な配置をしていただきたい、そのように思っております。

 いずれにいたしましても、これから本当に、訴訟の社会に対する重要性というものはますます上がっていくと思います。そうした中で、国民のニーズもどんどん高まっていく。私は、繰り返しますけれども、今回、本当に七十五名で、それで十分なのだろうか、それぐらいの意識を持っております。

 ただ、そうした中で、ぜひ大臣の方から、この法改正によって、しっかりと国民が満足できるような司法サービス、これからもしっかりやっていくんだという力強い決意を最後に伺いたいと思います。

南野国務大臣 本当に委員御指摘のとおり、司法を支える人的基盤を充実強化することが、国民にとっては身近で、迅速で、頼りがいのあるというような司法の実現をしていくことが極めて大事であるというふうに思っております。

 そういうことで、法務省といたしましても、人的基盤の一層の充実強化、先生がお話しになっておられるように、そのような方向に向けて鋭意努力してまいりたいというふうに思っております。

井上(信)委員 ぜひ、大臣がリーダーシップをとって、しっかりと取り組んでいただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

塩崎委員長 次に、漆原良夫君。

漆原委員 公明党の漆原でございます。私が最後のバッターになりましたので、よろしくお願い申し上げます。

 裁判所定員法についてお尋ねしたいんですが、この法案審査になるたびに私は、平成九年の三月、今ごろ、忙し過ぎる裁判官ということで質問をして、大幅な裁判官の増員ということを訴えたことをいつも思い出します。

 当時は、裁判官一人当たりの民事事件の手持ち件数は、全国平均で二百件から三百件という日弁連のアンケート結果が出ておりました。この点につきまして、当時、涌井長官代理者は、東京地裁あるいは八王子支部それから大阪地裁、民事担当の裁判官の手持ち事件数が二百五十件程度になっているというのが実態だ、さらに、新受件数は毎月二十から三十、こう答弁されておるわけでございますけれども、現在の東京地裁本庁そして八王子支部、大阪地裁の手持ち事件数、それから月間の新受件数はどのようになっているのか、お尋ねしたいと思います。

園尾最高裁判所長官代理者 ただいま御指摘のとおり、バブル経済の崩壊後に大都市部の裁判所を中心として民事事件が急増いたしまして、例えば東京地裁本庁におきましては、一時は裁判官一人当たりの手持ち事件数が三百件近くに上りました。その後、毎年大都市部の繁忙庁を中心に増員を行ってきたこと等によりまして、現在では裁判官一人当たりの負担件数はおおむね落ちつきを見せております。

 平成十六年における事件数を見てみますと、民事通常部の裁判官一人当たりの手持ち事件数は、東京地裁、同八王子支部及び大阪地裁、これらのいずれも平均百六十件ないし百七十件となっております。また、一カ月当たりの新受事件数は、東京地裁本庁、同八王子支部及び大阪地裁本庁とも二十五ないし三十件となっておるところでございます。

漆原委員 ありがとうございました。

 裁判官の生活状況について、当時のアンケートはこんなふうになっておりました。平日の夜、裁判記録を読んだり判決を書いたりしている裁判官は四十九名中四十名、八一%。土曜、日曜の両日とも仕事をしている裁判官は五十四名中三十二名、五九%。土日のどちらかの一日は仕事をしている裁判官は五十四名中十四名、二五%。したがって、土日に仕事をしている裁判官というのは五十四名中四十六名、八五%。

 これに対して涌井代理者は、「大都市部で、特に民事事件を担当しております裁判官は事件数がふえまして負担が重くなっておりますので、」「そういう仕事ぶりであるということは私どもの方も十分認識しております。」というふうに答弁されておられるわけなんですが、裁判官の手持ち件数が当時の二百五十から現在百六十ぐらいに減っているということで、これは大変結構なことだと思うんです。しかし、新受件数が今お話しになった二十五から三十というのは結構大変な数でありまして、毎日一件ずつ判決ないし和解で落としていかないとどんどん手持ち件数がふえる、こういう結果になろうかと思うんですが、裁判官の生活状況はその後の改善はなされたんでしょうか。いかがでしょうか。

園尾最高裁判所長官代理者 裁判官一人当たりの手持ち事件数は、平成九年ごろと比べまして、現在はさきに御説明しましたとおり一定程度減少をしておりまして、その意味では改善が図られているというように考えておるところでございます。

 しかしながら、現在は、平成九年当時にも増して困難な事件が裁判所に持ち込まれておりまして、また迅速処理も要請されるということでございますので、裁判官はなおかなり忙しい状況に置かれておるというように認識をしておるところでございます。

漆原委員 法務大臣にお尋ねしたいんですが、裁判官が忙しいとどうなるかというアンケート結果、驚くべき報告が出ておりまして、判決に影響はないと答えた裁判官は九名いるんですけれども、判決に影響がある、こう答えた裁判官は三十一名もいらしたわけであります。国民の権利の保護、司法に対する国民の信頼の維持という観点から、この事態はゆゆしき事態だというふうに私は思っております。

 裁判官の数を大幅に増員し、裁判官が十分に国民の信頼にこたえられるような環境を整備する必要があると私は思いますが、大臣はいかがでございましょうか。

南野国務大臣 今、先生がお読みになられたこのアンケート、本当にそれが支障を来すような判決が出されると困るなというふうにも思ったりいたしているわけでございます。そういう意味ではやはり環境を整えなければいけないということもございますが、先生御指摘のように、二十一世紀の我が国社会にふさわしい、国民にとって身近で信頼される司法を構築するための環境整備として、司法の人的基盤を充実強化することがまず大切であると思っております。裁判官の増員につきましても重要な課題であると認識しております。

 皆様方、議員の方々もそれぞれに裁判官と同じくらい大切な忙しいお時間を使っておられるというふうにも思いますが、今後とも、法曹人口ということにつきましては増加を図る中で、裁判官につきましてもより一層の充実強化に努めてまいりたいと思っております。

漆原委員 裁判官の増員問題は常にこの法務委員会で指摘されてきたんですけれども、今までまことに奇妙な現象がこの法務委員会で続いておりました。

 通常、役所は増員されることを喜ぶんですけれども、なかなか最高裁は喜ばない。委員のメンバーは大幅増員というふうに言うんですが、最高裁は結構消極的な発言でございまして、平成九年当時、私の質問でも、増員すべき裁判官の数は五百二十八名というふうに申し上げた。それに対して涌井代理者の答弁は、「今後も必要な裁判官の人員の確保に力を尽くしていきたい」という答弁にとどまっております。

 その後、十三年六月十二日に司法制度改革審議会の意見書で、全体として法曹人口の増加を図る中で裁判官を大幅に増員すべきであるという、明確に裁判官の大幅増員の必要性を指摘されたわけでございます。

 そこで最高裁にお尋ねしたいんですが、増員すべき裁判官の数はどのくらいと考えておられるのか。そして、その後の増員計画についてどう考えておられるのか。もう一つ、今回の判事補三十五名、判事四十名は、この増員計画における位置づけはどうなっているのか。三点あわせてお尋ねします。

園尾最高裁判所長官代理者 裁判所といたしましては、委員の御質問を受けましてから四年後ということになりますが、平成十三年に司法制度改革審議会において、裁判の迅速化や充実等のため、今後十年間で裁判官約五百人プラスアルファの増員が必要であるという意見を述べまして、平成十四年度から計画性を持って増員をしてきているところでございます。委員の御指摘から少しおくれてしまいましたが、平成十四年以降は毎年、判事、判事補合わせて四十五人を超える規模の増員をしておるところでございます。

 今回の増員要求は、このような計画性を持った増員に加えまして、裁判所にとって極めて重要な制度改革である裁判員制度導入に向けた体制整備を図ろうとするものでございます。裁判所としましては、今後も引き続き事件動向を踏まえて裁判の迅速化や充実等に必要な人的な体制の確保に努めてまいりたいというように思っております。

漆原委員 余り十分な答えではないなと思いますが、次に移ります。

 国民と司法、特に裁判官の関係について聞きたいんですが、日本の裁判官というのは国民から遠く離れた存在で、どこで何をして、何を考えているかわからない。裁判官も忙しいものですから、国民がどんなことを考えているかわからない。毎日裁判所と官舎の間を行ったり来たりして、毎日記録を読んでいる、こんな想像がされるわけなんですが、裁判員制度の導入によってこれからの司法は国民と裁判官が一緒になって支えていく、こういうシステムになったわけでありますから、これからの裁判官はもっと積極的にみずから国民、市民とかかわり合いを深めていく必要があるのではないかというふうに思いますが、今、最高裁が具体的にどんなことに取り組んでおられるのか、お尋ねしたいと思います。

園尾最高裁判所長官代理者 これまで裁判官個人個人としてはさまざまな接触を持つということもあったわけですが、ただいまのような御指摘も踏まえまして、裁判所もひとつ組織としてそのようなことも考えていくというような方向が必要なのではないかというようなことで検討しておるところでございます。

 このような観点から、まず、裁判官を裁判所外に派遣するという制度といたしまして、従来の、留学や民間企業での研修ということ、あるいは行政庁への出向ということに加えまして、弁護士事務所へ原則として二年間派遣する制度を導入したところでございまして、これらによって、原則としてすべての判事補が裁判所外での勤務を経験するという機会を持つことができるように考えていきたいということを現在実行中でございます。

 そのほかにも、これは裁判官個人個人の考え方ということにゆだねられるところではありますが、それを大いに推奨するという意味で、現在さまざまな裁判所で裁判官が外に出ていって講演をするといういわゆる出前講演ということ、あるいは出前講義というのを実行しております。

 これは、裁判官が学校、これも小学校、中学校、高校あるいは大学に行くという裁判官もおりますが、そのようなさまざまなところに出ていって、質疑に応答したり、あるいは、そのような方々が今度は裁判所に来られたという場合に、これも裁判官個々人の裁量でということでありますが、さまざまな案内をする。例えば、法廷で事件が終わった後に一般的な質問を受けるというようなことも積極的に努めようというような雰囲気を大いに守り立てておるというところでございます。

漆原委員 ありがとうございました。

 裁判員制度、大変な課題でございますけれども、裁判員制度が我が国に根づくかどうかは、参加していただいた裁判員がああよかったという充実感を持って帰っていただけるかどうかだというふうに思います。

 そういう意味では、裁判員と一緒に審理を進めていく、合議をする裁判官そして裁判長の審理の進め方が私は非常に重要なファクターになるだろうと思うんですね。職権的な進め方、専門用語をいっぱい使った説明の仕方では裁判員はついてこない。そういう意味で、よく説明し、よく理解し、よくリードしていく、こういう進め方が大変重要だと思いますけれども、この点についての最高裁の現在の、どんなふうに取り組んでおられるのか、お尋ねしたいと思います。

大谷(直)最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 評議の進行のあり方というのが裁判員裁判において大変重要であることは、委員御指摘のとおりであろうと私も思います。

 最高裁におきましても、その点を念頭に置きつつ模擬裁判などを実施してきたところでありますけれども、その結果等を見ましても、裁判員に自信を持って自由に発言してもらうためには争点や証拠を十分理解していただくことが不可欠でありまして、そのためにどのような形で争点や証拠を提示するのがよいか、あるいは、どうしたら裁判官と裁判員との間で良好なコミュニケーションを確立し、いわば一つのチームとして裁判を行うことができるかなどといった問題が改めて浮き彫りにされております。

 こうした課題につきましては、多角的に検討する必要があることは言うまでもございませんが、例えば、欧米諸国における刑事裁判の運用状況の調査研究も非常に重要であると考えております。そこで、裁判所といたしましては、昨年から欧米諸国に裁判官を派遣しておりまして、今後も引き続き、こうした海外派遣を含め、さらに調査検討を重ねて、委員が言われるような、裁判員の皆さんに参加してよかったという実感を持っていただける、そういった制度になるよう積極的に取り組んでまいりたいと思っております。

漆原委員 最後に法務大臣にお聞きしたいんですが、世論調査によりますと、まだまだ国民の半分ぐらいの人が裁判員になりたくないと考えているようでございますが、裁判員に対する国民に対する周知啓発活動が非常に大事だと思います。法務省は、これまでの取り組み及び今後どんなふうに取り組んでいかれるのか、大臣にお尋ねしたいと思います。

南野国務大臣 先生御指摘のとおり、あと四年しかない、だけれども四年もあるといういろいろな考え方の中で前向きに取り組んでいきたいというふうに思っているところでございますが、裁判員制度は、国民に身近な司法を実現するために本当に重要な制度であると思います。一方、国民の皆様に御負担をおかけすることになるのではないかということもありますが、それだけに、裁判の意義をよく理解していただき、進んで刑事裁判に参加していただける、そのように望んでいるところでございます。

 そのためには、法務省は、最高裁判所及び日本弁護士連合会と連携協力していただきながら、裁判員制度の広報啓発を推進してまいりました。特に、若い方から年配の方までが、国民が裁判に参加するということでございますので、その意義を十分に理解してもらわなければいけないと思っております。そういう意味では、中学校で模擬裁判の授業を行ったり、また生涯学習の場で制度の説明を行ったりいたしております。また、タウンミーティングなどでも大変いい反響をいただいておりますので、一般の方々とともにその意義を話し合ったりしているところでございます。

 今後も、最高裁、日弁連と連携協力した広報啓発をさらに充実して積極的に展開していきたいというふうに思っております。また、裁判員制度の円滑な導入を図りますためにも、政府全体としての取り組みを進めるために、近く内閣の司法制度改革推進室を中心に、法務省を初め関係省庁を集めた連絡会議が設置されるものと承知いたしております。法務省といたしましても全力で取り組んでまいります。

漆原委員 以上で終わります。大変ありがとうございました。

塩崎委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

塩崎委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 まず、内閣提出、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

塩崎委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 次に、内閣提出、下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

塩崎委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塩崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

塩崎委員長 次に、本日付託になりました内閣提出、不動産登記法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。南野法務大臣。

    ―――――――――――――

 不動産登記法等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

南野国務大臣 不動産登記法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を説明いたします。

 この法律案は、土地の筆界の迅速かつ適正な特定を図り、筆界をめぐる紛争の解決に資するため、登記官が、土地の所有権登記名義人等の申請に基づいて筆界を特定する制度を創設するほか、司法書士及び土地家屋調査士の業務について筆界特定についての手続の代理及び民間紛争解決手続の代理に関する規定を整備する等の法整備を行うものであります。

 まず、不動産登記法の改正について、その概要を御説明申し上げます。

 第一に、筆界の特定は、筆界特定登記官が、土地の所有権の登記名義人等の申請により、筆界調査委員の意見を踏まえて行うこととしております。

 第二に、筆界調査委員は、筆界特定のために必要な事実の調査を行い、筆界特定登記官に意見を提出することを職務とし、そのために必要な専門的知識及び経験を有する者のうちから任命することとしております。

 第三に、筆界特定の手続において、対象となる土地の所有権登記名義人等には、意見を述べ、資料を提出する機会が与えられることとしております。

 第四に、筆界特定の手続の記録は、登記所において公開することとしております。

 次に、不動産登記法の改正に伴う司法書士法及び土地家屋調査士法の改正について、その概要を御説明申し上げます。

 第一に、簡易裁判所における訴訟手続について代理することができる司法書士については、みずから代理人として関与している簡易裁判所における事件の上訴の提起を代理することができること、紛争の目的の価額が百四十万円を超えない民事紛争の仲裁手続について代理することができること、及び筆界特定の対象となる土地の価額に基づき法務省令で算定する額が百四十万円を超えないときは、筆界特定の手続について代理することができることとしております。

 第二に、土地家屋調査士については、筆界特定の手続について代理することができること、及び所定の研修の課程を修了し、かつ、法務大臣の認定を受けた土地家屋調査士は、筆界が明らかでないことを原因とする民事紛争に係る民間紛争解決手続であって法務大臣が指定する団体が行うものについて、弁護士との共同受任を条件として、代理することができることとしております。

 なお、この法律の施行に伴い、政省令の制定等所要の手続が必要となりますので、その期間を考慮いたしまして、この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。

 以上が、この法律案の趣旨であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。

塩崎委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

塩崎委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 ただいま議題となっております本案審査のため、来る十五日火曜日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塩崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る十五日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四十二分散会


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