衆議院

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第7号 平成17年3月29日(火曜日)

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平成十七年三月二十九日(火曜日)

    午後二時四十一分開議

 出席委員

   委員長 塩崎 恭久君 

   理事 田村 憲久君 理事 平沢 勝栄君

   理事 吉野 正芳君 理事 津川 祥吾君

   理事 伴野  豊君 理事 山内おさむ君

   理事 漆原 良夫君

      井上 信治君    大前 繁雄君

      左藤  章君    笹川  堯君

      柴山 昌彦君    谷  公一君

      早川 忠孝君    松島みどり君

      三原 朝彦君    水野 賢一君

      森山 眞弓君    加藤 公一君

      河村たかし君    小林千代美君

      佐々木秀典君    樽井 良和君

      辻   惠君    松野 信夫君

      松本 大輔君    江田 康幸君

      富田 茂之君

    …………………………………

   法務大臣         南野知惠子君

   法務副大臣        滝   実君

   法務大臣政務官      富田 茂之君

   政府参考人

   (内閣官房司法制度改革推進室長)         本田 守弘君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  伊藤 哲朗君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    岡田  薫君

   政府参考人

   (総務省自治行政局長)  武智 健二君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          倉吉  敬君

   政府参考人

   (法務省人権擁護局長)  小西 秀宣君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  三浦 正晴君

   政府参考人

   (外務省大臣官房国際社会協力部長)        神余 隆博君

   法務委員会専門員     小菅 修一君

    ―――――――――――――

三月二十九日

 刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律案(内閣提出第七七号)

同月二十五日

 共謀罪の新設反対に関する請願(佐々木秀典君紹介)(第四九六号)

 同(東門美津子君紹介)(第五八〇号)

 借地借家法の改悪反対に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第六二八号)

 同(石井郁子君紹介)(第六二九号)

 同(穀田恵二君紹介)(第六三〇号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第六三一号)

 同(志位和夫君紹介)(第六三二号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第六三三号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第六三四号)

 同(山口富男君紹介)(第六三五号)

 同(吉井英勝君紹介)(第六三六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律案(内閣提出第七七号)

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

塩崎委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房司法制度改革推進室長本田守弘君、警察庁生活安全局長伊藤哲朗君、警察庁刑事局長岡田薫君、総務省自治行政局長武智健二君、法務省大臣官房司法法制部長倉吉敬君、法務省人権擁護局長小西秀宣君、法務省入国管理局長三浦正晴君、外務省大臣官房国際社会協力部長神余隆博君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塩崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

塩崎委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。三原朝彦君。

三原委員 自民党の三原です。

 先ほどの本会議の辻弁護士の元気のいい声を聞きまして、議員で弁護士さんで、ああいう人が社会にどんどん出てくると司法界も元気が出るかななんて思ったりもしましたけれども、どうなんでしょうね。いらっしゃいますか。褒めてやっているのに来ていないというのはけしからぬね。休んじゃだめだよ、あんなエネルギー使っちゃって。

 私がきょう質問したいことは、来年から新しい司法試験で、法科大学院を出た人が、法学部を出た人は二年間でいいからというので、来年から試験がありますよね。それで、そのことに関しての質問をちょっとさせていただきたいと思っているんですが、それというのも、地元に帰りますと、二月の終わりに司法試験委員会が大体九百人から千人ぐらい合格者をしましょうなんというようなことを言って、それでやはり、一生懸命勉強している人やそこで教えている人たちが、えっといって驚いたわけですよね。

 だから、見てみたら二千三百人ぐらいが法学部出身かな、そのうち千人だったら四割ぐらいしか通らない。それを称して詐欺とは言わないが、もうちょっと元気になるように、もうちょっと試験を通るように、教える側も頑張ろうし、試験を施行する側も大いに配慮も必要でないか、こう思っていたところが、やはり地元で教えている側の先生たちが、我々が一生懸命やっても初めからそんな数を決められたのでは、何のために新しい司法制度のもとで、平成十三年に司法制度の審議会があって、新しくこの世の中を、司法界も変化させましょうということでやってきたのに、そこに入っていく人たちに大変なことになるじゃないか、そういうことで陳情がありました。

 あとは、法科大学院に行っているという人からもメールなんかも来まして、じゃ、私たちはどういうことをやればいいんだと。教えてもらっている先生を信頼して、そこを一つ一つクリアしていけば自分も望んでいた司法界に入れるはずだ。ところが、初めから何か九百人、千人で、それ以外はだめなんという、そんなことが許されていいんだろうかということだったものですから、それは確かに、私も若かったら、そういうことにチャレンジしたとしたならば、ちょっとそれは、初めからそういうことを、塀をつくってしまって、障害物レースみたいに、ある程度の人以外はだめというようなことは、これはいかがなものか、こう思ったものだから、きょうはその質問を私はしようと思って、それで来た次第であります。(発言する者あり)そうですよ。ふだんは後ろにばかり座っているから、たまにはちょっと一言言わないと、辻さんに存在価値がなくなってつぶされちゃ困るしね。それで来たわけです。

 それで、今言いましたように、試験を受けようとする人の不安の第一は、新しい試験は文字どおり初めてのことで、どれほどの難易度なのか、そしてまた試験の質や量はどんなものなのか、それはわからないですよね。今までの旧来の司法試験だったら、やはりどういうことを勉強しておって、それで自分が試験を受けた後でも通ったか落ちたか、実は私も一遍三カ月で勉強してすぐ落ちちゃったんだけれども、それで通るわけないんだが、そういうことを考えたら、難易度とか質とか量とか、そういうことも大体わかりますよね。大学を受けるときの模擬試験みたいなものです、そういうのはわかるんです。

 ところが、今度のばかりは新しいことだから、それもいろいろ、この法科大学院の教育の法律の中に、一条、二条あたりはなかなかいいことが書いてありますよね。それにのっとって試験をするんでしょうから、二年間きちんと学習して、まじめに、そして先生の言われることを理解してやっておけば通るはずなのに、それでも四割しか通らないと初めから言われたのでは、これはやはりそれを、うん、そうですねと言うわけにはいかないし、そのために我々は予算措置もしてお金もどうぞと、今厳しい財政状況の中でもやったわけでしょう。そうしたら、そういう初めから九百人、千人というのはいかがなものか、こう思うわけであります。

 そこで、司法界、裁判官になる、検事になる、弁護士になるという人たちは、人物的にも、やはり人格形成もそれにふさわしい人じゃなきゃいけないし、また知的レベルも高くなきゃいけない。そして、そういうレベルまで来ておけば通る、こういうことになるんだけれども、そこのところでどうして八百人、九百人なんて、もしかしたら、レベルがぐっと今までの旧来の司法試験を受けている人よりも高い人が来ているかもわからない。まして、去年の四月から来た人は社会人が大体半分ぐらいなんでしょう。

 それはやはり志が学生の流れと違って、家庭を持ったりなんかしながらでも、すべて犠牲にしてでも頑張ろう、こういう人だったら、私はその意気込みだってさらに違うと思いますね。そういう人に初めから障害をもたらして、九百人、千人以外はだめですなんというのは、私はやはり理解できないんですが、そのところはどういうふうに考えておられますか。

    〔委員長退席、田村(憲)委員長代理着席〕

倉吉政府参考人 ただいま委員からお話がありましたとおりでして、全国のロースクールに社会人、お医者さんとか、企業に入ってからまたこちらを志したといったような、さまざまなバックボーンを持った方が入ってきておられると伺っております。私どもとしても、そういう方にぜひ法曹の道に進んでいただいて、そして法曹がより多様な層を持って質的にも量的にも豊かになってもらいたい、こう考えているところでございます。

 先ほど、司法試験委員会が合格者の数を発表したというお話がございましたが、これはあくまでも一応の目安でございます。委員会の方でも概括的な数値であるということを繰り返し断っているところでございます。

 なぜ司法試験委員会がこういう数字を出したかということなんですが、御承知のとおり、平成十八年から新司法試験と現行の司法試験、これは旧司法試験と呼びますが、新旧司法試験が並行して行われます。そうすると、今勉強している皆さん方が進路選択に当たってどちらを行けばいいんだろうかということについて、ある程度の目安は与えなければいけないだろうということが一つございます。

 それからもう一つ、この二つの試験は時期も違いまして、採点の時期、発表の時期も皆違います。試験問題も全く異なります。そういうことから、この両試験が円滑に進むためにも、ある程度の目安を出しておかなければいけない、こういうことがございました。そこで、司法試験委員会では、さきに発表したとおりの、おおよその目安を出したわけでございます。

 司法試験というのは、あくまでも、法曹となろうとする者に必要な学識と応用能力があるかどうか、これを判定するための国家試験でございまして、その合格者というのは、司法試験考査委員の合議による判定に基づいて司法試験委員会が決定する、こうされております。

 先ほどの、司法試験委員会が発表した数値というのは概括的な数値でございまして、決して確定的なものとして決定されたわけではございません。実際の試験結果に基づいて当然に変動し得る、このように考えております。

三原委員 司法制度改革審議会の平成十三年度に出されたものでも、それには修了者の相当程度、例えば約七、八割程度が新司法試験に合格できるよう、こう書いてあるんですね。そういう言い方なら、せめて、より具体的に言うんだったら、それに沿うようにして教育者も頑張ってもらいたいし、我々も、それに沿うぐらいの合格者が出てほしいと思いますみたいなことを言えばいい、私は心も優しいなとか思うけれども、司法試験の委員会は初めから九百、千なんといったら、何か血も涙もないような、そういう人が委員会の委員ですか。だから、そういうところは私はもうちょっと配慮、考慮すべきなんじゃないかと。

 だから今、倉吉さんが言われた説明では、まあ一応の目安で、そんなことは決まっていませんよ、こう言うんだったら、いや、もともとの七、八割のところを何とかみんな頑張ってもらいたいし、うちもしたいと思いますと言ってもらうのが司法試験の委員会の、これは人としての道じゃないですか。どうでしょうか。

倉吉政府参考人 ただいま七、八割の話がございましたが、ここはもう何度もこの席でも私、御説明しているかと思いますけれども、法科大学院を卒業した者、そしてその七、八割が司法試験に合格できるような、そういう充実した教育をしてほしい、そういうことをあの審議会の意見書は書いておりまして、これはあくまでも教育内容、教育方法について書いたものでございます。

 ただ、そうは申しましても、おっしゃることはよくわかります。お気持ちもよくわかります。七、八割が合格するような教育をさせてくれるんだろう、それであればベースになるのが入学者の数になってしまうということかもしれませんが、ただ、審議会の意見書には、ロースクールでは厳格な成績評価とそして厳格な修了認定が行われることが前提であるということが、これも明記されているわけでございます。

 今度の新しい法曹養成制度と申しますのは、ロースクールを中核といたしまして、ロースクールと司法試験そして司法修習というのをプロセスとしての法曹養成としてつないでいくということが大前提になっております。ロースクールの方で入学した者が仮に全員卒業していくのが当たり前だということになれば、そこは全部スルーになってしまいまして、プロセスとしての法曹養成と言うことはできないだろうと、これは思っております。

 ただ、最初に申し上げましたが、優秀な方、あるいは外からいろいろなバックボーンを持って入ってきておられる方、そういう方がたくさん入ってきておられるということはよく承知しておりまして、そういう方にはぜひ合格してほしい、少しでもそういう方がたくさん入れるように、そういうふうに、後ほどまたお尋ねになろうかと思いますが、司法試験の問題も変えておりますし、それからロースクールの教育におきましても、実務の教官を派遣する、こういうことをして、できるだけ中核となるロースクールを前提として、これと有機的連関を持たせた司法試験になるように努力を重ねているところでございます。

三原委員 ことわざというか言い方に、丸い豆腐も切りようじゃ四角、物も言いようで角が立つ、こう言うでしょう。それと同じことですよ。だから、物の言い方も、初めからちゃっと切ったように九百、千人でどうですなんて、バナナのたたき売りじゃないから、やはり人の一生を決めることだから、言いようをもうちょっと考えてこの司法試験の委員会も言えばよかったよね。

 そんな、知的レベルが最も高い人が、人の心臓をとめさせるようなことを言わないで、やる人に勇気を持たせる、希望を持たせるような言い方を、私はこれは資格試験と思うから、落とすんじゃない、大学の入試じゃありませんから、席が決まっていて、もうこれ以上の人は幾ら高い人でも席がないからまた来年来てねというのと、あるレベルより上に行けば、みんなあなたたちはこれから先司法界で頑張ってもらいますという、そうでなくても、例えば会社勤めしてもいいけれども法務部門で頑張ってみるとか、NPOあたりでもっとリーガルマインドを持ってやらせてみるとか、そういうことをやるわけだから。このレベルより上に行っている人はみんな、これから先、遵法精神をみずから発揮して社会でいろいろなことに貢献してくださいということである以上は、何か落とすのが目標みたいな、そういう意識だけはやはり持っちゃいけないし、勉強する人の側にもそういうことの恐怖をもたらしめるようなやり方というのは私はまずいと思いますから、そこのところは大いに反省してもらいたいと思うし、いわゆる試験の先生方に言っておいてくださいよ、あなた。

 しかし、私はこの新しいロースクール、法科大学院制度というのはすごくいいことだと思います。これから先、事前でいろいろなことを、今までは行政指導みたいな感じでいろいろなことを決めていたのを、より自由なこととしていく。そうすると、自由になればそれだけやはり問題、トラブルが起こったりあつれきが起こることはあります。そういうことを事後でちゃんとチェックをして、決められた法にのっとって物事をやっているかどうか、社会をフェアにしていく上で、リーガルマインドを持ってやってもらう人をどんどんふやしていこう、こういうことは、私は、これから先の二十一世紀の我が国の国の形として正しいことだと思うわけであります。

 だからこそ、私は、そういう人には法科大学院でちゃんとしたいい教育をしてもらっておいて、そしてできる限り多く、今度でも三年行く人も入れたら全部で五千六百人はいるんですね、五千五百九十人かな、六十八大学でそうなっていますから、そういう人たちのほとんどが、初めから七、八割と言わぬでも、資格試験ですから、レベルに行っておけば九割八分になろうと一〇〇%になろうと、それが六割になろうと私はいいと思うんです。

 試行錯誤のうちに、最初の第一回目からどうなるかというのはそれは難しい。みんな一生懸命、興味津々で見ていますけれども、時がたつにしたがって、二年、三年、五年、十年になるうちに、大体このぐらいのレベルだったら資格試験にみんな通りますという。例えば、国家試験からいえば医学部の試験はそうですよね。医学部の試験は、あるレベルを通っておけばみんな通してあげる。そのかわり、何か成績の悪い学年かなんかあるとだあんと落ちちゃったなんてありますよね。僕は、そうしたらそれでいいと思うんです。ちゃんと国がその人に有資格者といってやる以上は、ちゃんと威厳を持ったものでありながら、なおかつ社会に法律の専門家として貢献できるような人を出してもらうということは私はいいことだと思うし、そのためにもどんどん、そんな七割、八割と言わないで、ある資格があれば、その人が明らかに法律の専門家として社会でやっていけるということになれば、それが九割になったって一〇〇%になったっていいはずだと私は思うんです。そのことをいま一度ちゃんと念頭に置いて、何のために法科大学院ができたかというと、つまりそういうことなんでしょう。だから、それを私は強く要望したいと思います。

 次の質問に移りますけれども、ここでも何度かこの法科大学院のことに関していろいろ質問がありましたし、予算委員会でもあったのをテレビで私も見ていたりしていたんですけれども、特に今度の、去年から入った人でも、ほぼ半分近くが社会人から、ではもう一遍自分で人生チャレンジしようと入ってきた人がいます。家庭的に、例えば、ある瞬間だけもうちょっと親のすねかじってもという人もいるかもしれないが、そうもいかぬ、大学へ行くときだって奨学金で、一生懸命頑張ってアルバイトをして、それで会社に入ったけれども、弁護士の志を捨て切れない、こういうのがあったから入ろう、こうなったとしたときに、今度は経済的な面でも、財政支援の面でも少しはされておりますし、ここでも議論がありました。

 特に、例えば家庭を持っていて子供さんもいながらも、志は失いたくない、頑張ってみようということになったようなときに、ここでは無利子の奨学金とか有利子の奨学金なんてありますけれども、こうやって勉強して社会に出れば、それによって絶対に、その人たちこそ法律を勉強するんだから借りた金は返すことは言われなくたってやる、率先して進めるべき人たちなんだから、私は、この有利子の奨学金あたりでももっと枠を広げるような感じでやってもらうようにすることが大切だと思うんです。

 まして、今調べてみたら、私の住んでいる九州でも、福岡県は四つあります。長崎県はない。宮崎県もない。大分県もない。あと、沖縄、鹿児島、熊本、福岡はあるんですけれども。福岡の人だったら選択の幅はありますよ、家からでも通えるとかあるけれども。では、今言った宮崎とか大分とか長崎の人が、さあ法科大学院に行こうといったら、県を出なきゃいけない。そういう人たちは、例えば家族持ちだったりすると、この有利子奨学金だけでやっていけるかというと、常識的に考えてもできるわけないよね。その程度ぐらいまでもうちょっと配慮をするというようなことができなかったのかな、こう私は思うわけですよ。

 例えば、福岡に住んでいて、九州大学の目の前が家だったりなんかすると、それはもうラッキーということなんでしょうが、そうでない人でも、志は、男子一たび学に志し郷関を出ず、学もし成らずんば死しても帰らず、骨を埋むるただ墳墓の地のみならんや、人生至るところ青山あり、そういう気持ちを持った人がやはりこういう法律の勉強をしようというんだから、そういう面でのもうちょっと懐の深い配慮というのができないんだろうかね。そこのところをちょっと聞いてみたい。

倉吉政府参考人 ただいま奨学金の話がございましたが、奨学金という問題はもちろん御承知のとおり文科省が所管しておりまして、これについて法務省の方で責任を持って答弁する立場にはございませんが、ただ、司法制度改革審議会の意見書には、それについて触れたくだりがございます。そこをちょっと読んでみますと、「資力の十分でない者が経済的理由から法科大学院に入学することが困難となることのないように、奨学金、教育ローン、授業料免除制度等の各種の支援制度を十分に整備・活用すべきである。」こうなっておりまして、もちろん教育ローンというようなことになれば民間の力、こういうことになるのかもしれません。

 私どもとしても、そういう今御指摘のありました社会人となってから来られた方、それで経済的にもいろいろ事情がある、それから、特に重い御指摘だったと思いますが、ロースクールは全国隅々まであるわけではございません、地理的に偏りもございます。そういうところの困難も乗り越えながら来られている方が少しでも充実した勉強ができるように、やはりこういう制度を充実したものとして使っていかなければならない、非常に重要なことだと考えております。

三原委員 やはり志が経済的理由で絶たれるなんということは、こういう成熟した我が国のような社会ではもう許されざることだと思うんですね。その人の努力が足りないとか、知的レベルが頑張ってもちょっと足りなかったからなれなかったというんだったら、それは本人のいたし方ない場面があるでしょうけれども、それ以外の、自分の責任ではいかんともしがたいようなことでその人の職業とか夢、希望が絶たれるようでは、我が国は国家としてちょっと一等国と言えない、こう思うから。まして、今さっき申し上げましたように、今言われたようなことを基礎にして経済的なものをもうちょっとしてやれば、まさか司法界に入る人が金をふんだくって返さないなんということはないと思うから。そういう人は、もう初めからそういうことを学ぶにふさわしくない人なんだから。

 そういうことから考えたら、これからも、これはことしの予算のことで書いてありますけれども、私も一月ほど前にここで質問した人の話も聞いていたけれども、それだけではやはり足りないよね。出すべきところは出すということは、もちろん我々議員の方も大いに努力をしてその点に関しても応援をしなきゃいけないなと思っていますので、常に配慮をしていただきたいと思います。

 それと、先ほど申し上げた、場所の偏在ですよね。東京なんというのは今幾つあるんですか。えらいたくさんありますよね。ない県も半分ぐらいあるのかな。あと、長野県と静岡県に新しくできるということを書いてありましたね。でも、それ以外で足りないところ、今九州だけでも、言いましたように、長崎と大分と宮崎はないしね。四国だって一つしかないでしょう、あとの三県はもうないわけです。

 私は、言いたいのは、ずっと昔、医師の少ない県というのがあって、それで政府が各県に一つずつ、大きくてもちっちゃくてもいい、医科大学をつくると。佐賀医大をつくった、宮崎医大をつくった、琉球も医学部をつくった。そういうことをやっていったおかげで、医師の少ないところにも、やはりそこで学んでそこで生活すれば住めば都で、その地域に、例えばよその人が来ても、そこで住もうか、こういうことになる。僕の家のすぐ近所も、百万都市で医学部がなかったのが、福岡には九大の医学部と福岡大学医学部と久留米に久留米大学医学部というのがあります。また北九州も、今から二十数年前に産業医科大学というのが百万都市にできて、そうしたら、結構遠いところから来ているんです。その人たちがふるさとへ帰っちゃうかというと、案外そこで、ああ、北九州も悪くない、「花と龍」の町でいいと、それで居ついて住んでいる人がいるんですよ。

 それと同じことで、法科大学院だって、やはりその地域にあると、そこのふるさとの人だけじゃないかもしらぬが、来て勉強するうちにその地域を好きになって、そうしてそこから、いろいろな支部によっては何か弁護士さんが一人しかいないとか、無医村じゃないけれども無弁護士みたいなところもあるんでしょう、そういうところにも法律の光が広がっていく、こういうことにもなると私は思うんです。

 医学部と法科大学院と違うぞと言われればそうかもしれないが、何か意識的にそういうことを慫慂するような、そんなことは、これもまた文部省の仕事かもしらぬが、文部と法務は関係ありませんというんじゃなくて、法の光が全国あまねく渡るようにするような気持ちで、そういう意見の交換なり、将来そっちへ向かって、そのかわり、東京あたりのこんな多いの、もっとこう削りなさいよ。

 それは私立大学あたりは、今法学部では、法科大学院つくっなんて、もしかしたら生徒が来なくなるかもわからぬ、生徒数も少なくなる時代だから、これは競争に負けちゃうと大学自体がしぼむかもわからぬなんという心配もあるかもしらぬが、私は、そういうことも医学部の例に倣って、いい例だったんだから、法科大学院もそういう方向性を持つことを考えたらどうかと言いたいんですけれども、どうですか。

倉吉政府参考人 大学の設置の問題も確かに文科省の所管でございまして、責任を持って答弁できるということにはなりませんが、ただ、文科省の方でも、特に大学の設置、法科大学院をつくるとき、そのときは申請があったら、この規制緩和の時代ですから、一定の基準があればすべてを認めるという方向で認めてきたんだろうと思います。

 今の御指摘からは若干外れるかもしれませんが、今の司法制度改革というのは何のためにしているかといいますと、できるだけ国民に身近で頼りがいのある司法をつくろうということでございます。今まで司法に縁遠かった人にもっと理解をしてもらって、もっと利用してもらおう、こういうことでございまして、実は、法務省の方で進めております総合法律支援、さきの国会で法案を通していただきました総合法律支援制度というのがございます。

 これは全国あまねく、いわゆる法律相談等、いろいろな、困った人のために悩みを聞いて、それを適切な、法的紛争であればそれに解決に向けての道案内をしてあげよう、ここに行くといいですよとか、あるいは少額訴訟というのはこういう手続ですよ、そういうことを教えてあげるようにしようと。そして、これをまた全国につくっていこうというようなことも考えておりまして、今現に、徐々に現実化してきているところでございます。

 今後とも、そういう発想で、できるだけ一人一人の国民に、全国の国民に行き渡るような司法、そこに光が当たるような司法を目指して努力をしてまいりたいと思っております。

三原委員 今倉吉さんがおっしゃったように、どんどん法律がより身近になる。例えば、裁判員制度もそうですよね。人の刑を決めるのに、やはり法律が素人であっても、一般常識を見ながらそれに入り込んでいって議論していくというようなことがあるし、裁判所へ行かなくてもADRとか、そういうのにどんどんなってくると、地域に法律の専門家の弁護士さんがいるということは、一種の法律のお師匠さんですから、何かわからぬとお師匠さんのところにちょっと駆け込んでいって尋ねてみるぐらいの、そういう形が全国津々浦々にあることが、やはり法律というものをより身近にすることでもあると私は思うので、先ほど申し上げたように、法務省でも、文部省あたりとのいろいろな議論のすり合わせがあったときには、ぜひとも、医学部でちゃんと成功して、医学部のなかった県あたりでもお医者さんの確保を結構できるようになってきた、それと同じように、いい例があれば、それを見習うことに何もはばかることはないわけですから、その点でも議論があるときには必ず持ち出していただいて、話をしていただきたいということを申し上げて、時間が来ましたので、終わらせていただきます。

田村(憲)委員長代理 次に、漆原良夫君。

漆原委員 公明党の漆原でございます。

 まず最初に、警察庁に、暴力金融と警察の対応ということでお尋ねしたいと思います。

 最近、大変悪質になってきまして、勝手にお金を振り込んできまして、その上、法外な返済を迫るという本当に悪質な暴力金融事件が発生しております。

 これから申し上げるケースは私の事務所の担当弁護士が実際にやったケースでございますので、若干経過を説明させてもらいますと、平成十六年十二月に本人が、これは二十歳代の男性でございますけれども、携帯電話で、雑誌広告に掲載されていた貸金業者数社にお金の借り入れの申し込みをしたんですね。断られて借りられなかったんですが、その情報がどうも漏れたようなんです。二月七日に本人あてに、仮名でタカハシカオルという名義で、五千円が現金書留で送られてきました。

 翌日、会社にいた本人の携帯に電話があった。何とか商事のタカハシだ、封筒に五千円を入れて送った、受け取ったか、お金を貸すよ、こういうふうな電話がありまして、本人は、そんなものは要らない、こう断ったら、じゃ、その五千円と、情報を抹消するから抹消料として三万五千円、合わせて四万円を送金しろ、十四日までに送金しなければ、毎日、何十件、何百件、何千件と電話するぞ、こういうふうな電話が入ったわけです。

 翌日の九日に、今度は会社に電話がありまして、電話に出た女性事務職員に非常に卑わいな内容の話をしたり、あるいは、電話をかわりました社長に今度は暴言を吐くわけですね。

 九日の夕刻に、本人は、ある人のアドバイスを受けて、配達証明つき郵便で現金書留を送りました。それで、会社に来たら、社長から首だと。こんなことがしょっちゅうあっては、こんなことが毎回毎回あっては困る、こんなことを引っ張り込んできたおまえは首だということで、首を切られちゃった。解雇されました。

 十四日、タカハシから電話がありました。実は、十日以降は着信拒否で対応しておりましたけれども、今度は向こうが電話番号を変えてきたものですから、電話に出たらタカハシだったんですね。

 こういう内容でした。骨つぼを会社に送りつけてやるぞ、死ね、会社には、おまえの名前でコピー機なんかの高価なものを買って、請求書を送りつけてやるぞ、若い者に見張らせて社員の自宅まで跡をつけさせて、その子供を殺すぞ、会社に火をつけるぞと。それで、警察に相談したと本人は言ったんです。そうしたら、警察なんか怖くない、こんなことで捕まりっこないんだ、もし捕まってもすぐ出られる、出てきたらお礼参りする、住所も電話番号も知っているんだ、こういうふうな内容ですね。

 そこで、十七日の夜に、今度は自宅にタカハシから電話がありました。父親が対応しました。お父さんは、弁護士に依頼したので今後は弁護士に連絡してもらいたい、こう言いました。そうすると、タカハシの語調ががらっと変わりまして、家の周りを張り紙だらけにするぞ、息子を外国に売り飛ばすぞ、こういう恐喝、すごむわけですね。

 それで、十八日に、本人と父親が、警察署の防犯課の警察官に携帯電話の録音をしたものを聞いてもらって、今後の対応を相談した。こういうケースであります。

 そのときの防犯課の対応は次のとおりでして、電話に出ない方がいいよ、無視するに限るんだ、電話番号を変えた方がいい、なぜおまえは変えないのか、相手を逮捕しようとしても、電話だけだとなかなか捕まえられないんだと。それから、警察から相手へ電話してみようか、しかし、そうした場合には逆にもっとひどいことになる可能性があるんだが、それでいいのかと。結局、警察から相手には電話してもらわないことにして、帰ったわけですね。後は弁護士が対応して何とか処理したんです。

 本当に私がこの事件を通じて痛感するのは、タカハシと名乗るやつの人物の悪質さ、それからもう一つは、やはり警察の消極性を大変感じます。

 安心・安全社会の第一線の担い手というのは、やはりこれは警察官に頼るしかないわけですから、この事件で、殺すぞとか火をつけるとか外国に売り飛ばすというふうにおどかされている被害者を目の前にして、結局何もしなかった、何もできなかったということでありまして、本当にこれで、総理がおっしゃっているような安心・安全な日本国、また南野大臣もおっしゃっているような、世界一安全な国にするんだという、安心・安全な国の確立ができるのかどうか、大変心配をしております。

 江戸川区の広報には、こういう場合にどうするかという紙がありまして、こんなのが書いてある。「身に覚えのない請求に応じない」「こちらから一切連絡を取らない」「証拠は保管しておく」「悪質な場合は警察署に連絡する」、こうなっているわけですね。これは大体、みんなこういうのをつくっていると思うんです。

 実際に、これに基づいてかどうか知らぬけれども、このとおり警察署に行った、しかし、警察の対応が先ほど申し上げたとおりだ。本当にこれでいいのかどうか。警察庁、この警察署の対応についてどのようにお考えか、お考えを聞きたいと思います。

伊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のような暴力的な金融関係事案につきましては、事案により、詐欺、恐喝、暴行等により検挙を行うほか、出資法違反、貸金業規制法違反等により取り締まりを行うというのが私どもの方針でございますし、現実にそうしているところでございます。

 また、御相談に対する対応でございますけれども、警察に寄せられた相談につきましては、相談者の立場に立って真摯に対応するように努めているところでございまして、刑罰法令に抵触すると認められる場合には、相談担当課から直ちに事件主管課へ引き継ぐほか、刑罰法令に抵触しない場合におきましても、事案に応じて、相談者に対する防犯指導や、相手方に対する指導、警告などを行っているところでございます。

 今お話ございましたようなやりとりというものが仮に事実だとすれば、事件としての対応をすべきものと思いますし、相談への対応としてはまことに不適切なものであるというふうに考えているところであります。

 警察庁といたしましては、各都道府県警察に対しまして、相談者の立場に立った相談業務の推進に努めるよう指導しているところでございまして、今後とも適切な相談対応がなされるよう指導してまいりたいと考えております。

漆原委員 本当は、この人の名前を明かしてどこの署かということを、問い合わせがあったから言えれば一番よかったんだけれども、本人は望んでいませんので、今一般論として申し上げました。どうぞしっかりとした対応を全警察署に徹底してもらいたい、こう思うんですね。

 ここで問題なのは、このタカハシなる者が警察の対応をもう頭に入れているということなんですね。先ほど申しました、警察署で、相手を逮捕しようとしても電話だとなかなか捕まえられないんだ、こういう警察官の、防犯課の話があった。これと符合するように、タカハシが、警察なんか怖くないんだ、こんなことで捕まりっこないんだ、こういうふうに言っているわけですね。

 ですから、今までの警察が、こういう民事のケースあるいは貸し金のケース、電話でのやりとりのケースでなかなか腰が重かったという点もあって、そこのところが、どうせこのぐらいやったって警察は動きはしないんだという、ある意味ではなめられた状況じゃないのかなと思うんですね。そういう意味では、こういう事件をきちっと捜査するんだという毅然とした態度を示してもらうことによって、そのアナウンス効果によって結果的にはこういうのがおさまっていくんじゃないかというふうに思います。

 朝日新聞の三月二十三日付の朝刊で、同じような、勝手に振り込み金返せと恐喝したということで逮捕された事案がありましたね。それはどんなケースか、説明をしていただきたいと思います。

岡田政府参考人 お尋ねの件につきましては、昨年の十二月下旬に被害者の預金口座に身に覚えのない現金が振り込まれて、その後、返済が遅いなどといった理由で幾つかの因縁をつけられて、合計八万円余りを、私どもの認定ではおどし取られたという認定をいたしたわけでありますが、そういう事案のことと思われます。

 この事案につきましては、三月十八日に警視庁において被疑者を恐喝罪で逮捕して、現在捜査中のものというふうに承知しております。

漆原委員 ぜひ、人手も足りないところだと思いますけれども、しっかりした対応をして、本当に一般市民が困って泣きついた場合には何とかしてくれる警察署というふうになってもらいたいと思います。

 警察庁は結構でございます。ありがとうございました。

 次に、犯罪予防の観点から、総務省にお尋ねしたいと思います。

 これも朝日新聞三月十日付の朝刊に、こういうのが出ておりました。住民台帳閲覧し少女をねらい、わいせつ容疑で男を逮捕という大変ショッキングな記事が掲載されておりました。

 概要は、中学生の少女に性的暴力を加えたとして容疑者を強制わいせつの疑いで再逮捕した。同容疑者は、名古屋市内の区役所で住民基本台帳を閲覧し、家族構成や低年齢の少女がいる自宅を割り出して犯行を繰り返していた。同容疑者宅からは、名古屋市内の小中学生の女子約百八十人分の住所を基本台帳から転記したリストが押収されており、県警はほかにも十数件の余罪があると見ている、こういう記事でございまして、住民基本台帳の情報が犯罪に利用されているというゆゆしき事態でございます。

 個人情報保護法も四月一日から施行されるわけでございますけれども、この際、住民基本台帳の閲覧を正当な理由のある場合にのみ閲覧可能なようにする制限を加えるべきじゃないかと思うんですが、この点、いかがでしょうか。

武智政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、住民基本台帳の閲覧制度が悪用された事件が発生したということにつきましては、大変遺憾に存じているわけでございます。

 そこで、まず住民基本台帳の閲覧制度について御説明をさせていただきたいと思いますが、これは、前身であります昭和二十六年制定の住民登録法に始まり、昭和四十二年に現行の住民基本台帳法が制定をされたわけでありますが、これに引き継がれたものであります。

 住民基本台帳法十一条第一項におきまして、何人でも閲覧することができるとされておりまして、したがいまして、居住関係を公証する唯一の公簿として、行政機関や弁護士等の職務上の請求のほか、世論調査、学術調査、市場調査等に広く活用されているというのが現状であります。数字で申し上げますと、平成十五年度で一千三百万件の閲覧ということでございます。

 一方、これまで個人情報の保護の観点からとった措置ということになりますが、昭和六十年と平成十一年に改正が行われまして、閲覧の対象は氏名、住所、性別と生年月日の四情報に限定をする、そして、閲覧を請求する場合には請求事由を明らかにさせるとともに、不当な目的やそのおそれがある場合等には市町村長は請求を拒否できるという改正をしてきたところでございます。

 そこで、先ほど先生御指摘のとおり、この四月一日から個人情報保護法が全面施行されるわけでございますが、総務省といたしましても、個人情報保護を徹底するために、この閲覧制度につきましても、請求事由を厳格に審査すること、そして請求者の本人確認等につきまして、住民基本台帳の取り扱いの留意事項ということで地方公共団体に通知をしたところでございますので、まずはその趣旨を徹底していきたい、かように考えているところでございます。

漆原委員 今までオープンに出したものを急に全部制限するわけにいかないかもしれませんけれども、不当な目的に使用されるおそれがある場合には拒むことができるという条文になっていますね。したがって、どちらかというと、今までの運用が少しルーズになっていたのかなという気がします。

 したがって、今おっしゃいましたように、請求者の本人確認をきちっと義務づける、これが一つ。それから、どんな理由で請求するのかを書く欄がありますから、請求事由の厳格な審査。それから三番目、転記した内容が請求の事由と合致しているかどうかの確認、これを厳密に行うべきだと思いますが、改めて、いかがでしょうか。

武智政府参考人 ただいま先生から数点にわたって御指摘がございましたが、細かな話になりますが、先ほど申し上げました通知におきましては、これまでも指導してきたところではございますが、まず口頭の質問、それから関係文書の提示を求める、また、氏名、住所に怪しいようなところがあれば官公署の証明書を提出させる等々についての徹底を図るように指導しております。

 今御指摘の点につきましては、通知により指導していたところでありますが、さらにその徹底に十分期してまいりたいと思います。

漆原委員 総務省、ありがとうございました。結構でございます。

 司法制度改革についてお尋ねしたいと思います。

 推進本部は昨年の十一月三十日に消滅をして、翌日の十二月一日から司法制度改革推進室が内閣官房に設置されて現在に至っているわけでありますが、その職責と、それから今日の具体的な作業についてお尋ねしたいと思います。

本田政府参考人 お答えいたします。

 今般の司法制度改革につきましては、今後、一連の司法制度改革の成果を国民が実感できるよう、改革の本旨に従った制度の実施を図ることが極めて重要であります。

 現在、法務省を初めとする実施担当庁がその具体的な作業を進めているところでありますが、昨年十二月一日に内閣官房に設置された司法制度改革推進室は、このような司法制度改革推進に関する事項に係る政府の施策の統一を図るために必要な総合調整を行うということをその職責としております。

 ところで、具体的な取り組みでございますけれども、司法制度改革推進室では、一つには、国民が一定の重大刑事事件の裁判に参加する裁判員制度、それから国民に対し法による紛争の解決に必要な情報やサービスを提供するための総合法律支援、それから裁判外紛争解決手続、いわゆるADRの拡充、活性化、それから我が国の法令の外国語訳推進のための基盤整備などに関しまして、関係省庁間の連携が不可欠な事務についての総合調整を担当しているところであります。

 これまでの具体的な取り組みといたしましては、まず、法令の外国語訳につきましては、その推進のための基本原則、訳語ルール、いわゆる標準対訳辞書の策定など基盤整備に向けた検討作業を、また総合法律支援につきましては、日本司法支援センターの設立に向けて、主に相談窓口業務に関する関係機関の連携協力関係の構築を、さらにADRにつきましては、ADRの拡充・活性化関係省庁等連絡会議が平成十五年四月に策定しておりますアクションプランのフォローアップを、そして裁判員制度につきましては、広報啓発活動、国民の参加環境の整備、法教育など、裁判員制度の実施に向けた総合調整を行うことといたしまして、既にそれぞれの関係省庁連絡会議を開催して所要の検討作業を進めているところでございます。

漆原委員 司法制度改革推進室は、各省庁の単なる調整役であってはならないと私は思うんですね。司法制度改革の実現に向けてのある意味ではエンジンでなければならないし、ある意味ではまた各省庁を統括する作戦本部でもなければならないというふうに私は思っております。

 室長が当委員会で答弁されるのは初めてだと思いますが、その司法制度改革の実現に向けての室長の決意をお尋ねしたいと思います。

    〔田村(憲)委員長代理退席、委員長着席〕

本田政府参考人 先ほども申し上げましたとおり、今後は、一連の司法制度改革の成果を国民が実感できるよう、改革の本旨に従った制度の実施を図ることが重要であります。

 司法制度改革推進室は、このような司法制度改革推進に関する事項に係る政府の施策の統一を図るために必要な総合調整を行うという極めて重い責務を担っているわけでありまして、改革を円滑に実施に移し、その実を上げるために推進室が果たすべき役割は極めて大きいものと認識しております。

 推進室が発足して以来、先ほども申し上げましたとおり、裁判員制度の広報啓発を進めるための関係省庁等連絡会議を立ち上げるなど、鋭意改革実現のための取り組みを進めておりまして、今後とも、これらの制度が円滑に実施されるよう内閣官房として積極的にその責務を果たしてまいりたいと考えております。

漆原委員 司法制度改革の中の裁判員制度、この裁判員制度に関する国民に対する啓発活動はまだまだ不十分であると思います。法曹三者だけの啓発活動ではどうしても守備範囲が狭くなる。そこで私は、全国の学校、町内会などの自治会、経済界、労働界あるいは消費者団体、環境団体などを対象とした幅広い広報活動が必要と考えます。したがって、法務省、最高裁だけではなくて、文科省、総務省、経産省、厚労省など政府を挙げての広報活動を展開すべきだと思いますが、いかがでしょうか。

本田政府参考人 委員御指摘のとおり、裁判員制度を円滑に実施に移し、制度の趣旨、目的というものを実現するためには、国民の理解と協力が不可欠であります。そのため、政府を挙げて、広報活動を初めとする所要の施策を全力で推進する必要があると考えております。

 そのため、内閣官房といたしましても、先日、内閣官房副長官補を議長といたしまして、内閣官房、内閣府、警察庁、総務省、法務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、経済産業省、それに最高裁判所を構成員とする裁判員制度関係省庁等連絡会議の第一回会合を開催いたしまして、裁判員制度について、国民に対する広報活動のみならず、国民の参加環境の整備、法教育など、裁判員制度を円滑に実施するために必要な施策に関しまして、関係機関の連携を一層強化しながら、その効果的な実施を図っていくことといたしております。

 具体的には、今後、本年八月ごろまでに、裁判員制度の実施に向けた施策について具体的な行動計画を策定いたしまして、その実施状況について適宜フォローアップを行っていくことといたしております。

漆原委員 ところで、平成十六年六月に行政事件訴訟法が改正されたわけであります。その際に、本委員会で附帯決議が付されました。「政府は、個別行政実体法、行政手続及び司法審査に関する改革など行政訴訟制度を実質的に機能させるために必要な改革について、所要の体制の下に、国民の視点に立った改革を継続するよう努めること。」こういう内容でございます。

 この点について、自民党の国民と行政の関係を考える若手の会が、平成十六年九月三日に、行政法制度等改革推進本部設置を求める緊急提言の中で、恒常的改革機関の設置を求めております。我が党も、同じく十六年十一月六日、法務部会及び司法制度改革プロジェクトの連名で行政法改革提言を行いました。その中で、行政に対する司法によるチェック機能強化に関する審議会の設置を求めているところであります。

 そこでお尋ねしたいんですが、政府は行政法改革についてどのような体制で取り組もうとされているのか、体制をお聞きしたいと思います。

本田政府参考人 行政事件関係のお尋ねでございますが、司法制度改革推進室は、先ほども申し上げましたように、司法制度改革推進計画に基づく一連の改革につきまして、改革の本旨に従った制度の実施を図るということが重要であることから、司法制度改革に係る政府の施策の統一を図るために必要な総合調整を行うために設けられたものでございます。したがいまして、この推進室におきましてさらなる制度改革を企画立案するということは予定されていないわけでありまして、この点について委員の御理解をお願いしたいと思います。

漆原委員 推進室は自分の役目じゃないというと、これは一体だれがやるんですか。法務省、これはだれがやるんですか。

倉吉政府参考人 だれがやるのかという大変厳しい御質問でございますが、行政訴訟制度の改革につきましては、種々の論点について、さきの国会等でも検討されました。その上で、ただいま御質問の中にもありましたが、行政事件訴訟法の改正が行われたわけでございます。

 司法制度改革推進計画、政府の推進計画でございますが、これには、行政に対する司法審査のあり方というのが一つの論点として掲げられていたわけでありますが、この論点につきましては、さきの行政事件訴訟法の改正によりまして所要の措置は講ぜられたもの、こう考えております。

 委員からただいま御指摘のありましたのは、個別の行政実体法の問題、それから行政手続法の問題がございましたが、こういった問題は各省庁の所管にまたがるものでございまして、法務省限りでそのあり方全般を述べるという立場にはないと申し上げざるを得ません。

 ただ、少なくとも、行政訴訟制度につきましては、先ほども申し上げましたように、行政事件訴訟法が改正されまして、これが四月一日から施行されます。その新しい行政事件訴訟法の運用状況等を踏まえながら、今後とも訴訟制度について検討を進めてまいりたい、こう思っております。

漆原委員 今のお答えは大変おかしなお答えではないのかなと。附帯決議の中では、「個別行政実体法、行政手続及び司法審査に関する改革など行政訴訟制度を実質的に機能させるために必要な改革」、これについては法務大臣もしっかりやっていきますという法務省としてのお答えをされているわけです。しかし現実には、法務省は、各省庁にまたがることだから難しい。

 この附帯決議は、各省庁にまたがることでもしっかりやりますよということで法務大臣がお答えになっているはずでしょう。本来は、確かに、各省庁にまたがることを法務省だけでやるのは無理だと僕は思うんですね。そういう意味では、まさにこれは推進室、いわゆる各省庁を全部調整するあるいは統括するところでやらなくちゃできないわけですよ。そうでしょう。僕は、推進室も法務省もやる気がないんだなというふうに思っている。

 では、この附帯決議は一体何なんだ、附帯決議を誠実に実行しますと言った大臣のお答えは何なんだ、こう思いますが、もう一度。

倉吉政府参考人 先ほど、法務省といたしましては新しく改正された行政事件訴訟法の運用状況等も見守りながら検討を進めてまいりたいと申しました。その検討と申しますか、新しい行政事件訴訟法がどう運用されていくかというところにつきましては、先ほど委員が御指摘になった論点にもかかわるところはいろいろ出てくるのではないか、それは考えております。

 ただ、御指摘のような、どういう体制をつくってこれを実現していくか、附帯決議の内容のところでございますが、その体制を設けるべきかどうかということについては、法務省は、法務省限りで答えるということは、そういう立場にはございません。ただ、今後、今申し上げました行政事件訴訟法の運用状況等の諸般の状況を踏まえて検討されるべき問題であろう、そのように考えております。

漆原委員 本当は、現在予定されている検討課題は何か、進捗状況について説明してもらいたいという次の質問があるんだけれども、聞いても意味ないね。

 附帯決議で「所要の体制の下に、」とちゃんとうたっているにもかかわらず、その所要の体制が整っていない。非常に不満であります。さらに御検討、これは法務大臣もあわせて、内閣、政府一体としてやりますとお答えいただいたわけでございますし、また、やらなければならない問題だと思いますね。

 我々は、先回の行政事件訴訟法の改正は第一段、二段ロケットをぜひともやる必要があるんだということで一生懸命やってまいりました。だけれども、どうも今、二段ロケットは不発に終わりそうであります。塩崎委員長も一生懸命二段ロケットを発射させるように頑張ってきたんですが、なかなか二段ロケットの土台ができていない。

 そういうことでございますが、大臣もぜひ閣内で頑張っていただいて、二段ロケットが見事発射できるようにお願い申し上げまして、質問を終わらせてもらいます。

 ありがとうございました。

塩崎委員長 次に、山内おさむ君。

山内委員 民主党の山内おさむでございます。

 本日は、大臣と人権の問題について議論をさせていただこうと思っています。

 一九〇七年からハンセン病については隔離政策をとってきました。その問題について、この三月の一日でしたか、ハンセン病検証会議の最終報告書というのができまして、私もその内容を読ませていただきました。

 まず、国家的人権侵害、隔離政策のことをそう強く批判しておられますし、隔離政策を続けてきたのは、厚生労働省が療養所の予算を獲得するために続けてきたものだ、ここまで断じているんですね。

 まず、この内容について、大臣、何か所見がありましたらお願いします。

南野国務大臣 お答え申し上げます。

 御質問の報告書は厚生労働大臣に対して提出されたものでありますけれども、私も、取り急ぎ報告書の概要版に目を通してみました。

 詳細で包括的なものでございまして、法務省といたしましても、厚生労働省等の関係省庁と協力の上、今般の御提言を尊重して今後の施策の立案または実行に当たってまいりたいと存じております。

 なお、法務省におきましては、これまでも各種啓発活動に取り組んでまいりましたが、平成十七年度政府予算におきまして特別人権問題対策活動経費が認められたことに伴いまして、テレビの特別番組を制作放送、シンポジウムの開催、啓発ビデオの作成配付など、ハンセン病の正しい理解を深め、偏見をなくすための啓発活動を行う予定でございます。今後とも、効果的な啓発活動を推進してまいりたいと思っております。

 また、ハンセン病元患者等に対する人権侵害がなされた場合には、人権擁護機関として、調査を行い、必要に応じて関係者に対する啓発を行うなど、被害の救済に当たってまいりたいと思っております。

山内委員 ハンセン病の方は、世間ばかりじゃなくて身内からも偏見と差別を一身に受け、戸籍を抜かれ、そして墓も別にしてほしいと言われる。療養所から帰ることもできない。断種あるいは堕胎を強要され、生まれた子供まで殺されたのではないかという疑いまで持たれております。

 それに対して、熊本地裁の判決では、厚生労働省はもちろんですけれども、らい予防法を存置させてきた国会議員も断罪しているんですね。しかも、法曹界あるいは教育界、マスコミ、放送界、そういう関係機関についても厳しく反省を迫っているわけなんです。

 これからも検討をしてまいりますとか、あるいは啓発活動に力を入れていきます、ハンセン病の特別対策費で、今年度の予算で少し計上いたしましたというだけでは、本当にハンセン病の人たちの名誉を回復して、これからの治療をしっかりと行ってほしいというにはまだまだ冷たいと私は思うんですね。

 例えば、ハンセン病の人たちというのは、これからきちんと、薬もいろいろな薬が発明されて、治る病気なんだということなんですよ。だけれども、まだ治療を継続していく必要のある人も多いし、全く感染がゼロになったという病気でもないと思うんですね。これからそのお医者さんというのはまだまだ必要だと思うんですが、そういう手当てについてもやはりしっかりしていかなければいけないと思います。

 大臣は厚生労働の分野でも非常に力のある大臣だと思っていますので、そういう点についてもこれから力を傾けていただきたいと思います。どうでしょうか。

南野国務大臣 本当にハンセンの方々に対しては、少しでもいい生活が送れますようにということも一つございます。

 また、治療の面に関しましては、厚生労働省としっかりと検討させていただきたいと思っておりますが、厚生労働省の方でもしっかりとお考えいただけるものというふうに思っております。

山内委員 二〇〇一年五月の熊本地裁の判決で、昭和三十五年ごろには、諸外国から、ハンセン病について、隔離政策を続けるのはおかしい、しかも特効薬もできてきた、そう厳しく指摘してきたのにもかかわらず、今から約九年前までらい予防法を存置させてきたわけなんですね。

 その二〇〇一年五月の判決の同じ熊本県内で、今度は、ハンセン病の患者が宿泊をしようとお願いをしたホテルから、黒川温泉のあるホテルなんですけれども、そこで宿泊拒否という事件が起きたんですね。

 まだまだ日本というのは、幾ら裁判でいい判決が出た、みんなで見方を変えていかなければいけないというふうな世の中になっていくのかなと思っているところに、同じ熊本の、判決のあった県でそういう宿泊拒否があったということで、それを聞いたときに私もまたがっくりきたんですよ。

 しかも、宿泊拒否をされた経営者が謝罪をされた後も、ハンセン病の人たちというのは怒りがおさまらない人もいるわけじゃないですか。もっと本当に反省してほしいと声を上げた途端に、今度は、謝罪をしたんだから、もうハンセン病の人はそんなに文句を言わなくてもいいじゃないか、あなたたちも病気だったんだから仕方がないんじゃないか、宿泊拒否されるような病気だったんじゃないかというようなメールあるいは抗議文が患者団体の方にたくさん来たんですね。

 ですから、宿泊拒否も残念だけれども、その後の患者団体に対するバッシングも、まだまだ日本は人権というものについて十分な理解が国民の中にも根づいていないなと思うんです。大臣、この点どう思われますか。

南野国務大臣 その件につきましては、私も潮谷知事とも友達でありますので、いろいろお話ししたこともございます。また、私も、ハンセンを患われた方の中に友達もいます。そういう当事者の方々ともお話をする機会もございました。

 その中で、お尋ねについて申し上げますと、ハンセン病元患者さんの多くの非難が、また中傷が寄せられたということについて、我が国においてハンセン病に対する正しい知識と理解がいまだ十分でないということに起因すると思っており、その事案については私も、潮谷知事と同じく、大変遺憾であるなというふうに思っております。

 法務省の人権擁護機関といたしましては、国民がハンセン病に対して理解を深め、ハンセン病元患者の方々に対する偏見、差別をなくすための啓発活動を一層強化してまいりたいと考えております。

山内委員 大臣がそう言われると、次の質問が非常に、私も役目柄というか、通告もしているものですからつらいんですけれども。そこまで言われるのだったら、どうして島根県の平田市に来て、ハンセン病に対していわばらいの人と、私は、らいというのはやはり差別用語だと思うんですね、ここまで来ていると。そういうのを何回も繰り返して発言されて、親しい県会議員さんの新年会の場だったから余計くつろいだ気持ちになって話されたのかもしれないけれども、人権意識というものを常に持っていれば、そういうくつろいだ場でもそんなに差別用語というのは出しちゃいけないと思うんですよ。だから、それがすごく残念なんです。らいという名前で隔離政策を押しつけてきたわけですから、その発言は本当に大臣として資質が問われる、そう思っています。大臣、どうでしょうか。

南野国務大臣 私の不注意での発言であるということは、これは重々認めております。多くの患者さんやその関係の方々を傷つけたのかな、不愉快な思いをさせてしまったということについては大変申しわけないことをしたと思っております。

 ただ、そのときは、これはそのような意図ではなく、全く不注意であったことを御理解いただきたい。今後このような表現をしないことはもちろんでございますけれども、今後とも一層、ハンセン病の患者さんに対する差別と偏見ということはさらに取り除いていく、これを自分の踏み台として取り組んでいくというふうに思っております。

 そのときの私の気持ちは、予算がつきました、これから、元患者さんのお友達とアポイントがとれております、会いたいという気持ちがあって、そこでいろいろと話をし、人権問題についても取り組んでいきたいということの意思をあらわそうとしていて、ハンセンという言葉が出ずに、昔、学生時代から使っていたその問題、これは差別意識を考えたものではない言葉として出てしまったということは、大変私自身が悔やまれることでございます。失礼であったというふうに悔やんでおります。

山内委員 大臣の得意な分野は医療の分野だと思うんですよ。だから、医療用語というか、そういうような発言でマイナス点がつくというのは本当に残念です。

 もちろん、鳥取県や島根県のような山陰地方の田舎町に来て、何でもしゃべったって後で問題になることはないなんて思われないでしょう。だから、そういう意味でも本当に気をつけて話していただきたいと思うんですよ。

 しかも、大臣、もう一つ残念なのは、一月十日にその発言をする、翌日は多磨全生園療養所に行くという日程がもう既にわかっているわけでしょう。そうすると、新年会で発言する、あしたはハンセン病の療養施設に行くというのがもう日程的にわかっているのに、前の日にそういうことを言っちゃいけません。

 私自身もそんな、人権の問題についてよくわかっているのかと言われたら、やはり周りの人を傷つけるようなことも言ったり、したりしているのかもしれないんですよ。だから、大変難しい問題だとは思うんですけれども、本当に、大臣として人権擁護行政の最先端で担っておられるので、よく理解をしていただきたい、そう思います。

 二〇〇一年の五月十一日に熊本地方裁判所の判決が出ました。その判決が出た後、本当にすばらしい内容の判決だったものですから、私たちは法務省に対して、当時の大臣に、控訴をしないでくれ、福岡高等裁判所に控訴しないで熊本地裁の判決を確定させてくれと言ったんですよ。

 本当は、法務省は控訴すると思っていました。なぜならば、今まで百年近くやってきた国家の隔離政策というのが熊本地方裁判所という一つの裁判所でだけ否定されたわけですから、まだ上の段階で判断をし直してもらいたいという思いは、国家としては持つだろうなと思ったんですね。ところが、控訴を断念してくれたんですね。

 小泉総理は、うちのメンバーはいろいろと批判しますけれども、ハンセン病の控訴を断念したということは、彼は見上げたものだと私は思っているんですよ。ですから、判決が出て、控訴を断念して、ハンセン病の人全員をくくる和解案をつくり上げていった、非常にあのときは私も感動しました。

 そのときに、二〇〇一年の五月一日からは、大臣は厚生労働の副大臣に就任されていたんですね。ですから、熊本地裁の判決が出た、控訴も断念した、全患者団体と和解の条項が成立して救済の道がどっと開けたというときに厚生労働副大臣をやっておられて、ことしの一月の発言は許せませんよ。

 だから、ある元患者の人が、偏見や差別が今なお見えない壁として大きく立ちはだかっている、そういうふうにしみじみと語られている姿に出くわすと、大臣、本当に人権行政をしっかりとやっていただきたい、そう思います。

 大臣は、今国会の冒頭、つまり二月の十八日でしたか、所信表明の演説をされました。「人権の擁護は、法秩序の維持と国民の権利の保全の任に当たる法務大臣固有の職責でありますが、すべての者がひとしく人権を享有するとの理念は、分野を問わず、社会の隅々まで行き渡るべきものと考えております。」と述べておりますが、これは、法務省の役人がつくった文章だから読んだのか、それとも、少しは大臣が自分の思いとして人権のことに思いをいたして読んだものなのか、どちらなんでしょうか。

南野国務大臣 私も人の子でございます。人権問題については、自分が長い間かかわってきた仕事を通して一生懸命やっているつもりでございますし、厚生労働副大臣のときにも施設を回らせていただき、謝罪という形で坂口厚生労働大臣等々と回らせていただきました。人権問題については十分に考えている立場であります。そういう意味からは、ハンセンのみならず、その他の疾病もいろいろ携わってきております。そういう方々の人権という問題も心の中に秘めております。

 さらに、議員という立場になってからは、そういうことを十分に理解しながら、DV法の問題、さらにはまた性同一性の問題、そういったことに取り組んでいる、その足跡、自分自身でしっかり歩いているつもりでございますが、いっときの言葉の過ち、それは自分自身にとって許せないと思っていることでございます。それだけ御報告し、御了解いただきたいと思います。

山内委員 大臣は、先ほど述べた所信のあいさつに引き続いて、新しい人権救済制度を創設する人権擁護法案の提出及びその成立に向けて精力的な取り組みを進めるとも述べておられるんです。しかし、いまだにこの委員会にも国会にも提出がないじゃないですか。大臣は、今までの行動やことし一月の発言を反省した上に立って、どう精力的な取り組みをしておられるんですか。

南野国務大臣 法務省といたしまして、所管する法務省でございます。私の立場として、与党人権問題に関する懇話会、その方針決定を踏まえまして、人権擁護法案を早期に提出すべく、引き続き精力的に作業を進めておることも御報告したいと思います。

山内委員 他党のことだから、その内容について十分に認識をしているとまでは私もよう言いません。だけれども、例えば、三年前に人権擁護法の質疑をやったときに全く論点になっていない問題を論点にして、同じ与党・政府が、この三年間かわっていないのにもかかわらず、全然違う方向から議論をするというのは、私は今の議論を見ていてどうかなと思うんですね。

 例えば、人権侵害という概念がよくわからないという議論があるようです。しかし、法案の中に、旧法文の中に概念とか規定は書いてあるんですね。私は、もうあれで十分読み込めると思っているんですよ。

 しかも、私はこういうふうに思っています。都内やあるいは私の地元で何人かの人とこの問題について議論しているときに、入り口でがちがちの規定をして、この人たちしか人権委員会に足が向いたらいけません、来てはいけません、そういうような仕組みはつくっちゃいけないと私は思うんですよ。例えば、相続の問題で来られる方もいるかもしれない。その人が来られたときに、人権委員会は、弁護士さんのところへ行ったらとか司法書士さんのところで登記をしたらと言ってあげればいいことなんですよ。境界の問題で来られたら、土地家屋調査士さんのところへ相談に行かれたら、こういうアドバイスでいいと思うんですよ。

 先ほどもほかの議員から言われていたけれども、ADRも幾つもできる、司法支援センターもたくさん、各県にできます。こういう人権委員会という組織も、地方にもつくっていきます。ちょっと困ったり、何かで悩んだりしたときに、ここしか行けないですという仕組みをこの日本でつくるのか、どこに行ってもあなたの悩みは解消してあげられますよ、解決してあげられますよ、そういう社会をつくるのかが、私は今問われていると思うんです。

 だから、人権委員会に行くときにはこの問題でしか行けないという仕組みをつくるというのはよくないと私は思っている。そのためにも、人権とか人権侵害とかいうものの定義をきちんと決めて、そこから外れたものは人権委員会の窓口に来られても玄関で帰ってもらいますというような仕組みは、私はつくっちゃいけないと思っています。

 もう一つ議論があることに国籍条項の問題があるようですが、これは後ほど議論をさせていただこうと思います。

 今の人権委員会ですけれども、この人権委員会というのも、私たちは、もしこれから閣議決定をなされるんだったら、法務省あるいは法務省の外局、そういうところではなくて、もう少し法務省から離れたところで人権の状況についてしっかりと監視をしていく、そういうような仕組みをつくっていただきたい。

 特に、これから監獄法の審議が始まります。あるいは少年法の審議で、少年院あるいは少年刑務所の問題点などが議題に上がってくるでしょう。難民の問題については、引き続き私たちも、入管行政については冷たい部分が多い、そういう指摘もさせてもらいます。

 だから、そういう法務省が担当しているところ、そこはかなり人権が制限される、またはそのおそれの強い組織を掌握している法務省ではなくて、もっと別な組織で人権の問題についてはしっかりと政府の行いをチェックしていこう、そういう仕組みが必要だと思うんですが、大臣の所見をお聞きしたいと思います。

南野国務大臣 廃案となりました人権擁護法案におきましては、人権委員会は、国家行政組織法第三条第二項に基づきまして独立の行政委員会として設置されており、委員長及び委員の任命方法、身分保障、それから職権行使の独立性の保障などにより、その職権の行使に当たって、内閣や所轄の大臣等から影響を受けることがないよう高度の独立性を確保することとしていましたので、法務省の外局としましても独立性に問題を生じることはないと考えておりまして、その方向性は維持するべきと考えております。

山内委員 私は、人権擁護行政というものを本当に充実させたいと思うなら、やはりいい人材を持ってくること、それから、その持ってきた人材が意欲と能力を持って十分に力を発揮できる、そういう組織にすること、この二つが必要だと思うんですね。

 ところが、今現在でも、例えば矯正局で事件が起きた、あるいは刑事局で、検察官の取り調べが警察の自白をそのまま維持して、無罪の論告をしてしまう、そういうようなちょっと検察としては情けない問題が起きても、人権擁護局が刑事局とか矯正局に何か文句を言ったりというのを聞かないんですよ。その人権擁護局がごっそり人権委員会に行っても、何だ検事、警察の取り調べばかりうのみにしないでしっかり検察独自の捜査で頑張れとか、いやしくも無罪の論告をするようなことはやめてくださいよ。本当にしっかりと刑事局を叱咤激励する。あるいは矯正局で、国民がニュースを見て、刑務所は何やっているんだろうか、そういうような事件をもう起こさせない。

 そういうようなことは、同じ法務省のかまの飯を食ったところで長年続けてきて、その人権擁護局が人権委員会に移るだけでは、私はやはり、一番人権を侵害しそうな部分をチェックするというのが弱くなる、そう思うんですけれども、どうでしょうか。

南野国務大臣 先生御心配でございますけれども、私は心配しておりません。法務省にはいろいろな人材がおられるということでもございますし、人権委員会は高度の独立性が保たれておりますから、矯正、入管を指揮する監督である法務大臣からも影響を受けることはないんです。そういう意味では、御指摘の点について問題はない。外局に置いても、法務大臣が関与するものではないということもひとつ御安心いただきたいと思っております。

山内委員 もし万一、組織のあり方として、これは千歩も譲って、法務省の外局ということを曲げられないんだったら、そうだとしたら、よっぽどの人材を人権委員会の中に招き入れないと本当に不十分だと思いますよ。

 例えば、ハンセン病の元患者の皆さんとかあるいはHIVの被害者の方などは最前線で偏見と差別を受けてきた人ですよ。そういう人たちを人権委員会の委員として何人も選任していく。中央でいえば、三年前の法案だと五人ですから、何人もというわけにいかないのかもしれないけれども、そういう人たちこそ人権委員のメンバーとして迎え入れる、そういう決意が私は必要だと思うんですけれども、どうでしょうか。

小西政府参考人 申しわけありません。私の方でちょっと。

 人権委員会の委員と人権委員会の事務局の職員と双方のことをお尋ねでしたらちょっとあれだと思うんですが、今、人権委員会の委員のお話だと思いますけれども、そうだとすれば、それは国会の方の同意を得て選任するということになっておりますので、恐らくしっかりした立派な方がなっていただけるんじゃないかというふうに思っております。

 以上でございます。

山内委員 もちろんそうですよ。国会の同意人事だから、それはそうなんです。ただ、法務大臣として、あるいは人権擁護をつかさどってきた人権擁護局長として、どういう理念のもとにそういう人権委員会をつくられるのかなということが聞きたいんですよ。

 例えば、今まで一生懸命人権問題に取り組んできた人たち、あるいはNGOの皆さんとかジャーナリスト、あるいは手弁当で人権にかかわる事件をやってきたような弁護士とか、そういうような人たちをできるだけ入れ込んで、特に文句を言われそうな警察、検察、刑務所、入管、そういうところにもしっかりとした意見を賜って、私たちもこれからもっと人権の世紀がつくられていけるように頑張っていきます、そういうような、私が言ったって意味はないんですよ。やはり大臣や、人権委員会の事務局長の候補の一人である人権擁護局長が理念を言ってほしいんです。

小西政府参考人 まことに御激励はありがたいと思いますが、いまだ法案も提出できておりませんので将来のことはわかりません。ただし、人権委員会の委員についてのお考えはいろいろおありになると思います。ぜひともそういうところはまた先生方のお知恵も拝借して、恐らく国会の方でお決めいただくということになると思いますので、立派な方になっていただけるものだと思っております。

山内委員 人権擁護局長に、今せっかく答弁いただいたのでもう一つお聞きしたいんですけれども、ノーリターン制というのはとられないんでしょうか。つまり、人権を守る、啓発する、訴訟の援助までしていく、そういう仕組みを今つくろうとしているわけです。だから、よっぽど相談、調査、そういうものにもたけた人権委員が必要ですけれども、やはり事務局の力というのもすごいものがあると思うんですね。だから、その事務局を構成する人たちが例えば二年とか三年の周期で座ってまたもと来た役所に帰っていく、そういうことだとなかなか人権の芽というのは根づかないと思うんですが、ノーリターン制についてはどういうふうに考えていますか。

小西政府参考人 御指摘の点も非常に重要な論点だと思っております。人権委員会の委員ではなくて、人権委員会の事務局の職員のあり方ということでございます。

 ただし、これは、先ほど来申し上げていますが、まだ法案も出ておりませんので、今から先そこを含めて関係機関と協議していかなきゃいかぬだろうというふうに思っております。

 以上でございます。

山内委員 日本人の美徳の一つに、いろいろな配慮とか気兼ねとかということもあると思うんですね。だから、前いたところで人権問題が起きたときに、気兼ねをして相談とか調査とかに着手しにくいということが人権委員会の姿になっていくと、それはやはりそれでまた不幸なことだと思います。ノーリターン制については、また法案が提出されたらがちがちに議論させてもらおうと思いますけれども、検討は十分にしておいていただきたいと思います。

 それから、地方組織、これはどういうふうに考えておられるんでしょうか。

小西政府参考人 お答えいたします。

 いまだにまだ、先ほど来何回も繰り返して申しわけありませんけれども、法案を提出しておりませんので、また議論になっておりませんので、どういう形にするかということを厳密にはここで申し上げられません。まことに申しわけありませんけれども。

 ただ、現在、答申なんかにもありますのは、もちろん、既存の組織の活用ということも考えろということも言ってありますので、そういう可能性もあるかと思いますが、何分にもそこら辺は今から先関係機関と協議してからのことであろうと思っております。

山内委員 大臣、この点も理解していただきたい点なんですけれども、地方組織に地方法務局を使おうという構想もあるんですね。そうすると、大臣が直接的に指揮命令できる地方法務局が人権委員会の地方の出先機関というのかな、そういうふうになるという仕組みになって、せっかく人権委員会という仕組みを法務省の外局、外側の方につくろうとした趣旨と、地方法務局をその地方の組織に使おうというやり方は、何か利害が反していて一致しているというか、法律的に言うと少しおかしな仕組みだと私は思っています。その点も論点だけ指摘させていただきますので、いい法案をこの委員会に出していただきたいと思います。

 さて、人権擁護委員の、先ほどの国籍条項の論点も含めてお話をさせていただこうと思いますが、全国の人権擁護委員さん、無給でボランティア精神で一生懸命やっておられる。本当に私も頭が下がる思いがいたします。ただ、人権擁護審議会でしたか、そこで人権擁護委員さんというのが新しい時代にマッチした考えになかなかなってくれない人も多いんじゃないか。

 先日も、私、地元の法務局の方々と意見交換したんですけれども、例えば七十五歳、六歳の人が人権擁護委員さんなんですよ。それで、ネットによる差別とか、インターネットという言葉はもちろんですけれども、パソコンも、さわったり、画面を見たことがない、そういう人権擁護委員さんも、いや、私、批判しているわけじゃないんですからね、間違わないでくださいよ。そういうなかなか時代にマッチしない委員さんもおられて、世の中の人権状況についていけない、人権被害の状況についていけない委員さんもたくさんいるということなんですね。そういう人たちに対しての例えば研修とか、どういうふうに考えておられますか。

小西政府参考人 現在は、最初の新任研修、二年次研修、四年次研修、それから人権課題別研修ということでやっておりますが、今先生おっしゃるような新しい課題ということについても必要なことになってくるんじゃないかと思います。答申の方では、そういう研修の充実等含めて、人権擁護委員の活性化を提言していただいていると思いますので、法案の成否にかかわらず、またいろいろ我々も考えていかなきゃいけないんだろうというふうに思っておるところでございます。

山内委員 国籍条項の問題ですけれども、私は、国籍条項はつけるべきじゃないと思っています。

 今、日本の中で外国人登録証を持っておられる方が二百万人もいて、その国の数は百九十カ国、つまり、昔は、割とたくさんの民族がいるという国じゃなかったと思うんですね。だけれども、今、多人種多民族国家になったというか、ほとんど近づいていると私は思うんですよ。

 そういう世の中になってきていて、人権擁護委員の国籍だけは日本人でなければいけない、こういう今までの人権擁護法がどちらかというと間違っていて、私は、いろいろな人たちがいろいろな相談に来てください、最初に言いましたね、そういう人権委員会をつくるべきだと。だけれども、いろいろな人たちが来たって、いろいろな出来事に対処できなければ意味がない委員会でしかない。

 だから、例えば、そういう外国人の人たちが来て、日本で生活をしていろいろな偏見に遭いました、こういう差別を受けました、大衆浴場で入浴拒否されました、そういうような事件がありました、困って相談に来ましたと言ったら、ああ、私も昔そういうことを味わいましたよというような方が人権擁護委員とかになって親身に話を聞いてあげる、そういうような仕組みが必要だ。そのためにも、国籍条項をきちんと決めて、日本人でなければいけないというような狭い仕組みはつくってはいけないと私は思うのですが、大臣はどうでしょうか。

南野国務大臣 現行の人権擁護委員法におきまして、市町村長が市町村の議会の議員の選挙権を有する住民の中から人権擁護委員の候補者を推薦しなければならないと定めており、外国人を人権擁護委員に委嘱することはできませんが、人権擁護推進審議会の追加答申、これは平成十三年十二月において、我が国に定住する外国人が増加していることなどを踏まえて、外国人の中からも適任者を人権擁護委員に選任することを可能にする方策を検討すべきであると指摘されたところでございます。

 法務省におきましては、追加答申の指摘を踏まえまして、人権擁護法案を再提出するために検討を行っているところであります。先生の御意見が加味されるようにというふうにも思っております。

山内委員 人権擁護委員さんというのは全国で二万人ぐらいを選任しようという構想があるようです。二万人というと、その中には人権の擁護にたけた外国の方もたくさんおられると思うんですね。そういう人たちの知識とか経験とか能力を利用しない手はないと私は思います。だから、他党で恐縮ですけれども、今提出を拒んでおられる方々というのは本当に排外主義で、もう少し世の中を広く見られたらどうかなと私は思っています。

 国籍条項に関してもう一点。特定の団体の推薦者の人たちが人権擁護委員になるんじゃないか、そうすると特定の人たちにとって有利な人権行政が行われるんじゃないかということも論点として国会への提出を阻んでいる、そういう勢力があると私は聞いているんですけれども、これもまたおかしい議論だなと私は思うんですね。

 先ほど人権擁護局長がおっしゃったように、人権委員さんは国会の同意人事になります。それから、人権擁護の委員さんたちは市町村が一生懸命探してくれますよ。法務局の人たちが探す以上に、市町村の職員さんたちがいろいろなつてをたどって優秀な人たちを探してくれています。だから、選任の仕組みとしても、本当に幅広い層から、あるいは地域性も考えて、あそこの地区がちょっと少ないなと思えば田舎の方の地区からも人権擁護委員さんを出したりして、非常に満遍なく選任をしているということも私も知っています。

 そういう点から考えても、そういう市町村がつくる候補者リストというものも全く当てにならないものだといって、特定団体の恣意にゆがめられるんじゃないかという指摘は間違っていると私は思うんですが、大臣はどう思われますか。

小西政府参考人 現行法におきましては、人権擁護委員の選任に当たっては、人格識見高く、広く社会の実情に通じ、人権擁護に理解のある者という方に加えて、人権の擁護を目的とし、またはこれを支持する団体の構成員の中からも選任することができる、こういうことになっておりますけれども、現実に、手続的には、これを市町村長さんが推薦されるに当たっては、議会の意見を聞いた上で推薦していただきますし、これを受けまして法務大臣は、当該市町村を包括する弁護士会それから都道府県の人権擁護委員連合会の意見を聞いて、当該候補者が人権擁護委員として適当かどうかということを最終的に判断して委嘱しておるところでございまして、そういう手続を経る中でふさわしい方が選ばれておる、特定の団体の方に偏るとか、そういうことはないというふうに考えております。

山内委員 そう思います。だから、今提出を阻もうとしている勢力というのは本当に情けない、もう少し勉強してほしいなと私も思っています。

 余り時間がなくなりましたけれども、大臣、人権擁護委員さんというのは女性が三割ほどだそうなんですね。女性も共同参画して日本をつくっていかなければならないと思いますが、半分ぐらいは女性が人権擁護委員さんを占めるべきだ。あるいは、六十代後半から七十代前半の人権擁護委員さんがどうしても多いんですね。そうすると、世の中の動きに、十分研さんを積まないとなかなか、おくれをとられる方もおられると思いますので、若年者を人権擁護委員さんにする、元気のいい女性を引っ張り込む、そういうようなことは何か考えておられますか。

南野国務大臣 本当に何か秘策があればいいなというふうに思っておりますけれども、現在、全国約一万四千人の人権擁護委員のうちに女性は約五千名でございます。女性が占める割合は約三六%、先生がおっしゃったとおりでございますが、男女共同参画社会の実現が重要な人権課題となっていることであり、女性に関する人権問題に適切に対応することの必要性などから、人権擁護委員における女性の割合をさらに増加させることが望ましいと考えております。

 市町村長に対し、可能な限り女性委員の候補者を推薦していただくよう要望するなどして女性委員の拡大に努めておりますが、女性がこのような仕事につくというのは、既婚者であれば殿方の御理解も要るということでございますので、男女共同参画社会の中でともに頑張っていける形というものを、この立場でもお願いしたいというふうに思っております。

山内委員 人権擁護委員さんに関して最後の質問にさせてもらいますが、人権擁護委員さんも、ほかの役職を持っておられる方がおられるんですね。例えば民生委員、自治会長、あるいは保護司さんとの兼任の方もおられます。大変忙しい方々ばかりなんですね。しかも、本当にすがすがしい気持ちになるんですけれども、お金をもらわないことにまた生きがいを見つけているというか。だけれども、今おっしゃったように人材をもっともっと入れなくちゃいけないということになったら、やはり相応の支給というのは必要じゃないかと思いますし、もしそれが今の予算上困難であったとしても、実費にわたる部分はしっかりと面倒を見ていっていただきたいと思うのですが、どうでしょうか。

小西政府参考人 ただいま人権擁護委員さんは、今委員おっしゃいましたとおりで、ボランティア的な精神を持って活動していただけるというところに特性といいますか、我々としても価値を見出しておりまして、そういう制度でございますので、実費は弁償させていただきますが報酬的なものはないということでございます。ですけれども、実費の弁償につきましては、我々としてもできるだけ手厚くしていきたいというふうに思っておるところでございます。

山内委員 どうもありがとうございました。

 ハンセン病など差別された方々にとって、この問題に対しての偏見や差別を解消し、正しい知識を啓発してほしいと皆さんが望んでおられます。たくさんの不幸を生んだ、たくさんの苦労をしたのだから今こそ幸せになる権利がある、私はそう思って、これからも大臣と一緒に人権擁護の道を進みたいと思いますので、引き続きよろしくお願いします。

 ありがとうございました。

塩崎委員長 次に、松野信夫君。

松野(信)委員 民主党の松野信夫です。

 きょうは、人権の問題が先ほどから議論がありまして、私の方も人権の問題、これを取り上げていきたいと思います。特に外国人について難民認定の問題、これが現在大変大きな問題になっておりまして、とりわけクルド人難民、最近ではよくテレビでも新聞でも出てきておりますけれども、この問題を取り上げたいと思います。

 まず、これは外務省の方にお聞きすることになろうかと思いますが、ことしの一月十八日、トルコ国籍のクルド人でありましたアハメッド・カザンキランさん本人と長男のラマザンさんの二人がトルコに強制送還された、奥さんやそのほかの子供さんたちは日本に残る、こういうようなことで、家族ばらばら、こういうことがありました。これはもうだれしも、やはり一日も早く家族が一緒になって安心した平穏な生活が送れるように、それはもちろん大臣もそのようにお考えではないかと思います。

 このカザンキランさんたちがトルコで現在どういうふうな状況に置かれているのか、この点について調査、確認をしておられたら教えてください。

神余政府参考人 お答え申し上げます。

 カザンキラン氏とその長男が送還されたのは、先生御指摘のありましたように一月の十八日でございます。その後は、カザンキラン氏自身は自宅に戻っており、長男は兵役義務年齢に達していたために徴兵事務所に出向いたという情報を複数の情報源から得ております。また、長男の兵役期間につきましては、二〇〇六年、来年の四月十九日までの一年三カ月であるということも確認をしております。

松野(信)委員 そうすると、外務省の方は、問題のこのカザンキランさんたちについては現在確認をしておられるようですが、これは当分の間トルコでの生活状況を注目あるいは確認するということなんでしょうか。

神余政府参考人 これからも定期的にフォローしてまいりたいというふうに思っております。

松野(信)委員 今のところ、カザンキランさんと長男はトルコにいる、それから奥さんや二人の娘さんたちは日本にいるということで、ばらばらの状態になっているわけで、これについては一日も早く家族五人が一緒に生活できるような状況をやはりつくっていかなきゃいけない、これは外務省、あるいは法務省の方もまさに人権という観点からも、それはしていかなきゃいけないと思っておりますが、その辺の見通しについてはどういう状況でしょうか。

滝副大臣 残された御家族につきましては、子供のこともございまして日本に残留されているわけでございます。したがって、私どもとしては、恐らくはトルコにおける様子なんかも見つつ、国連事務所とも相談をして、どうするのかということを将来決めていくということになろうかと思います。

松野(信)委員 将来決めていくというお話ですが、そうすると、現時点で法務省、外務省あるいはUNHCRあたりと緊密に連絡をとりながら、そういう方策を探っているというふうにお聞きしてよろしいですか。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおりでございまして、現在UNHCRにおきまして、この妻子の方について、第三国定住等のあっせんの作業をしているところでございまして、我々とも協議をして、この作業が進んでいるところでございます。協議の進展を踏まえまして、適切に対処してまいりたいというふうに思っております。

松野(信)委員 それからもう一人、これは新聞でもよく出てきているんですが、同じトルコ国籍クルド人のエルダル・ドーガンさん、この方も、ことし三月十八日、収容されてしまいました。これは、ドーガンさんが仮放免の延長手続ということで出頭したところ、いきなり収容してしまった、こういうことでありました。このやり方はいささか、余り人道的ではないなというふうに言わざるを得ないわけです。何でこんな急に、いきなり収容してしまうんだろうか、その辺の判断ですね。私が聞いているところでは、現場サイドの判断ではなくてどうも上からの指示があったんじゃないか、こういうふうにも指摘されております。

 このドーガン氏を収容してしまったその辺の理由、いきさつについてお答えください。

滝副大臣 エルダル・ドーガン氏の問題でございますけれども、基本的には、訴訟において判決が決まった以上は、そのルールに従って手続を進める、こういうことでございますので、上から指示をしたとか、あるいは現場ではどうだとかということでは必ずしもございませんで、ルールに従ってそのような扱いをさせていただく、こういうことでございます。

松野(信)委員 ルールに従ってというふうに言われると、では実際に、ルールの運用がどうかということについて、やはり言及したくなってしまうわけですね。必ずしも画一的なルールというものがどうもできていない。その場その場の判断で収容したり、あるいは収容してもすぐ仮放免をしたりしなかったり、いきなり強制送還、例えばカザンキランさんみたいにしてしまうということで、どうもその辺がまちまちになっているというふうに言わざるを得ないですね。ドーガンさんにしても、一審でドーガンさんの方が敗訴したというふうに今おっしゃるんですが、控訴中であります。

 例えば、一審で敗訴したらすぐ収容する、そういうようなルールでもあるんですか。その点はどうでしょうか。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の方につきましては、退去強制令書が発付されておるわけでございまして、退去強制令書の効力といたしまして、身柄の収容及び送還ということができるわけでございます。

 現在、御本人は控訴したようでありますけれども、そもそも退去強制令書が発付されている方につきまして退去強制手続を行うということになりますと、身柄を収容した上で進めるということが入管法上の定めでございます。特に今、副大臣の方からも言及がございましたが、訴訟におきまして、一審ではございますが国側が勝訴したというような事案につきましては、基本的にはこの原則にのっとって手続を進めることとしておるところでございます。

松野(信)委員 ただ、実際に、国が一審で勝訴した、ではみんな収容しているかというと、これはお調べになればわかりますけれども、必ずしもそうではない。また、一たん収容したとしても、すぐ仮放免するというのも実際の運用としてはなされているわけで、必ずしも画一的にやっているわけではないというふうに、この点は指摘をしたいと思います。

 また、ドーガンさんの場合も、カザンキランさんと同じように、本人は収容する、しかし御家族はまた別々というような形になっているわけですね。これまた、家族でこういうふうなばらばらな状態というのは決して望ましいやり方ではない、やはり家族一緒になって、生活をきちっと平穏に保たれるような、そういうのを目指さなきゃいけないと思いますが、この辺についての見通しはどうなんでしょうか。

滝副大臣 ただいまも局長から御説明を申し上げていると思いますけれども、基本的には退去令書が先行しているんですね。要するに、不法滞在ですから、退去令状が先行していて、それに対して訴訟があるものですから、訴訟の期間だけは待っている。それで、一審で判決が出れば、そこでもってまた退去令状に基づいた手続をする。恐らくはこの方は、あるいは今どうなっているか知りませんけれども、控訴が出てくれば、そこでまた仮放免という手続もすることになるだろう。

 そういう例外的なものを中にかませているものですから、大変わかりにくいという問題があるわけでございますけれども、一応はそういうルールに従って手続を進めませんと、これは入管としての役目でございますから、そういうようなことが外から見ると何となくわかりにくい点があるだろうと思いますけれども、問題はそういうことでございます。

松野(信)委員 いやいや、私の質問は、今、仮放免にはちゃんとルールがあるというお話ですけれども、それを言うなら、このドーガンさんの場合だって、仮放免になっていたわけです。それの延長の手続に行ったところが、いきなり収容、こういうことなものですから、本当にルールの透明性は一体どうなんだろうかと、これは言いたくなるんです。

 ただ、私が質問したのは、家族がいる、子供さんや奥さんもいる、そういう人たちが将来一緒に生活できるような、その辺の見通しはどうかという質問なんです。

滝副大臣 できるだけ御家族と一緒の手続に乗せたいとは思いますけれども、ただ、家族は家族でまた考慮しなきゃならぬ問題もございますものですから、そこのところは手続としては分かれるということも、家族の状況を見てそういうことはあり得るということでございます。

松野(信)委員 続いて、難民認定に係る手続の中で、現地調査というものを法務省の方が行っておられる、これについて質問したいと思います。

 一般的に言って、難民認定に当たって、難民かどうか、迫害を受けるおそれがあるかないかというのを検討される、その過程で、難民認定を申請していらっしゃる人の出身国がどういう状況にあるか、迫害の実態があるかないか、そういうようなことを一般的に確認をするということ自体は、これはこれで別に非難することではないと思います。

 ただしかし、ともすると、現地調査をして、例えば相手の方の政府当局者から話を聞くというだけで終わりますと、それは、政府当局者は、我が国には迫害の事実はありません、人権侵害の事実なんて全くありません、大体そういうふうに言うものなわけですよね。だから、それだけで、なるほど、その国には人権侵害の事実はない、迫害の事実もないというふうに単純に考えてしまっては、これは全く誤りだというふうに思うわけです。

 そこで、現地調査のことなんですが、この現地調査というのは、法務省は大体いつごろから、どういう目的で行っておられるのか、そして、直接法務省の職員が出身国の現地の方に行っていろいろ調査をする、派遣するというようなのは、いつから、どういう目的で行っておられるのか、この点についてお答えください。

富田大臣政務官 今の一般的な調査につきましては、先生が今御指摘したとおり、そのような趣旨で、難民認定制度が昭和五十七年、一九八二年に発足しておりますけれども、それ以来、国際機関や外国政府による報告等を受けたり、また当該国の最新の情勢については外務省からの報告によって判断して調査を行ってきたところでございます。

 先生が最後に御質問されました法務省の職員が直接行う現地調査につきましては、当該国の教育制度、あるいは徴兵制度、裁判制度、公務員制度等の諸事情を調査する目的で行っておりまして、平成十四年の九月から当局の職員を派遣して実施しております。

松野(信)委員 そうすると、平成十四年から、これは毎年どこか特定の国に法務省の職員を派遣して行っているということだ、こういうことでしょうか。

富田大臣政務官 今まで四度ほど派遣しておりまして、平成十四年の九月にトルコ共和国、平成十五年の十二月にタイ王国とマレーシア、平成十六年の六月から七月にかけましてトルコ共和国、そして平成十六年の九月に英国の方に行っております。

松野(信)委員 そういうふうに法務省の職員を派遣する場合と、それから派遣しないで当該出身国の方に事情を聞くという場合、二通りあると思うのですけれども、例えば、サダム・フセイン政権のもとでイラクから逃げてきたという人についてサダム・フセイン政権に照会をする、あるいは北朝鮮から逃げてきたような人に対して北朝鮮政府に対して照会をする、そういうようなことはあったのでしょうか。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 手元に明確な資料があるわけではございませんが、私の記憶の限りではそういった事例はないというふうに思います。

松野(信)委員 それでは、お手元に資料をお渡ししていると思います。先ほど、平成十四年以降四回ほどやっていらっしゃるということで、まず資料二のところ、これも、先ほどお話しいただきましたマレーシアとタイに派遣をするということで、現実に派遣がされておられます。

 それで、最初に私がこの資料を入手してちょっと疑問に思ったのは、ミャンマーの難民とアチェの難民に関する現地調査だというふうに言っているので、それならミャンマーとかアチェ、インドネシアですね、の方に行くならわかりますけれども、マレーシアとタイに行っているというので、何でそういうふうなことになっているのか、これについてまずお答えください。

三浦政府参考人 委員御指摘の出張につきましては、まさにマレーシアとタイに行って調査をしておるわけでございますけれども、この目的といたしましては、ミャンマーとアチェの地域からマレーシア、タイに流入している避難民の方々の状況とか、マレーシア、タイ政府の対応状況等について調査に行ったものと承知しております。

松野(信)委員 トルコについてはまずトルコに行って調査をしているのですけれども、なぜ、では、そもそも出身国のミャンマーあるいはインドネシア、スマトラの方には行かなかったのでしょうか。

三浦政府参考人 先ほどもお答え申し上げましたとおり、マレーシアとタイにおけるアチェとミャンマーからの流入の方々、避難民の状況がどうかということが中心の眼目でございますが、あと、当該国の情勢等も考慮したのかなというふうに思っております。

松野(信)委員 どうも明快な回答ではないなというふうに言わざるを得ません。しかし、それぐらいしか回答できないならば、これは仕方がないです。

 資料二の二枚目を見ますと、旅費支出項目ということで、項が法務本省、目が政府開発援助外国旅費という目になっております。そうすると、これはODAを使って派遣したのかなというふうに思いますが、そのとおりだと理解してよろしいですか。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおりでございまして、政府開発援助外国旅費という目で出張をしているわけでございます。これは、いわゆるODA経費の一部でございます。出入国管理行政に係る諸制度について諸外国の実情を調査するための経費というふうにされております。

松野(信)委員 これは後からごらんいただきたいと思っていたのですが、資料三の方を見ますと、資料三は、トルコに平成十六年度に行っているんですが、このときはODAじゃないんです。目は単なる外国旅費という形になっている。ところが、平成十五年のマレーシア、タイは政府開発援助で行っているんですね。

 しかし、これは考えてみますと、ODAというのは言うならば相手国に対する援助、開発援助ということになるわけです。そうすると、法務省にとって、この現地調査をするというのが、相手国政府を援助してあげましょう、こういうような認識にどうも立っているんじゃないかというふうに言わざるを得ないわけです。

 難民認定というのは、ある意味では、当該国の政府から迫害を受けたというふうに言って逃げてきた人が、本当にそういう迫害のおそれがあるかないかというのを言うならばチェックしようというわけですから、まさに公正中立、場合によっては、相手国政府の言い分がもしかしたら間違っているかもしれない、そういうような疑いの目でもって迫害のおそれがあるかないかというのをやはりチェックしなきゃいけないわけですね。

 ところが、政府開発援助で予算をつけるということは、ある意味では、迫害の疑いがある相手国政府を支援してあげましょう、言うならばそういうことですから、どうもその法務省の感覚というのは、相手国政府というのは余り間違ったことを言っていないだろう、相手方政府を支援してもよかろう、こういうような感覚、まさにそういう人権感覚で予算をつけているんじゃないか、こういうふうに言わざるを得ないんですけれども、大臣、この点どう思いますか。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 このODA経費についてでございますけれども、先ほどちょっと御説明させていただきましたが、マレーシア及びタイに我が国から出張に行っておりまして、先ほど来御説明したような内容の調査及び一般情勢について調査をしてきたわけでございます。

 ところで、まさに委員御指摘のとおりミャンマー等には行っていないわけでございまして、ですからミャンマーを援助するというような形には直接ならないと思っておりますが、そのほかに、入国管理局といたしましては、毎年、アジア地区の各国から入国管理行政に従事する方々を招きまして入国管理セミナーというものを行っております。ここにおきまして、各国の入国管理上の問題点等について協議をする、議論をする、また有益な情報を提供するというようなことを行っております。こうした観点からこの実情調査の結果も活用させていただいているわけでございまして、これがまさしくODAの一環だというふうに考えております。

松野(信)委員 それをODAの一環だと言う感覚がやはり私はおかしいと思います。

 それで、資料三をごらんいただきたいと思いますが、資料三は、トルコに平成十六年に派遣しているようですが、これはODAを使っていない。目は単なる外国旅費ということでありまして、やはり外国に派遣するについて、このトルコの場合、政府開発援助の外国旅費だとぐあいが悪いというような判断が働いて、平成十六年に行ったときは単なる外国旅費になったのではないかと思うのですが、この点はいかがですか。

三浦政府参考人 委員御指摘の資料三に係る平成十六年のトルコの出張の件でございますが、これにつきましては、当時難民の訴訟が提起されていたトルコ人の方に関しまして個別の実態調査を行ったところがございます。

 これは先般御質問いただいた際にも若干お答え申し上げましたが、訴訟で既に難民を主張されている方のことが法廷で明らかになっているというような方々につきまして、その難民であるという根拠として、トルコ政府から逮捕状が自分に出ているんだというような主張をされている方が随分たくさんおられまして、これの真偽を確認するというような意味合いで出張しております。そういう趣旨でございますので、通常の外国旅費を使ったものでございます。

松野(信)委員 そうだとするならば、資料一、これは平成十四年に同じくトルコに出張した分です。これについては、資料一の二枚目を見ても、旅費はどうなっているのか記載がないのでわからないんですが、では、この平成十四年にトルコに行った場合の旅費は何から出ているんですか。

三浦政府参考人 御指摘の平成十四年のトルコ出張に関しましては、いわゆるODA経費の旅費を使っておるところでございます。この際の出張の目的につきましては、トルコにおける一般的な情勢を調査したということでございますので、ODA経費の旅費を使ったというふうに理解しております。

松野(信)委員 だから、それもまた本当に法務省の人権感覚がおかしいんですよ。ODAを使うということは、ではトルコ政府を開発支援しましょう、言うならばそういうことになるわけです。しかし、現実には、トルコから迫害を受けたということで、世界各地にクルド人が言うならば逃げていって難民認定申請をしているわけですから、そういうのに日本政府は、一般調査であるにせよ、ODAの予算を使うというこの感覚が、いかがなものかというふうに私は言わざるを得ないんです。

 そうすると、今のところのお話をまとめると、一般的な調査の場合は政府開発援助の費用で行く、そうでなくて、具体的に裁判になっているような人について調査する場合は、さすがにODAは使えなくて、一般的な外国旅費で行く、こういうふうな取り決めになっている、こういうことでよろしいですか。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 取り決めになっているかどうかということは定かでございませんが、その出張の性格を見まして、それにふさわしい旅費の費目を使っているということであります。

松野(信)委員 ふさわしいというふうなことを言われたけれども、それなら、トルコに行くのは、トルコ政府を支援するというのがまさにこの難民認定についてふさわしいという感覚を持っているんだとすれば、これはゆゆしき問題ですよ。大臣、どうお考えですか。いや、大臣に聞いているんですよ。あなたはもういいですから、大臣。

滝副大臣 大臣にかわりまして私の方から申し上げたいと思います。

 確かに、個別の、難民かどうかという難民の状況、迫害されている程度の問題、これについて調査するときには、さすがにこれは一般外国旅費を使わざるを得ない。しかし、何らかの理由でその国の、あるいは行った先の国とのいわば法務協力と申しますか、そういうものに該当する場合にはODA予算を使っていいんじゃないかという事務的な仕分けでございます。ですから、平成十四年の場合がそれに該当するかどうかというのは私ももう少し中身を見ないとわかりませんけれども、少なくとも事務的にはそういう細かな配慮をしている、こういうことでやっているというのが現状だろうと思います。十四年の問題は、もう少し中身を見てみます。

松野(信)委員 やはり予算の面からしても、いささかも妙な疑問、疑いといいますか、そういうものにならないような適切な運用をぜひしていただきたいなというふうに思います。

 それから、難民の認定に当たっては、とにかく出身国の政府から迫害を受けたかもしれないということで来ているわけですから、その出身国の政府からやはりいろいろな形で便宜を受けるというのは余り好ましいことではない、便宜を受ければどうしてもそちらの立場に立ちますから。そう思います。

 その観点からちょっとお聞きしますと、資料一の、これは平成十四年にトルコに行って、先ほどのお話ですと、特定の人のではなくて一般的な調査に行ったということのようですが、三枚目の日程表を見ますと、日程表の一番下のところ、「未定部分については、便宜供与依頼予定」というふうな記載があります。そうすると、確かにこれは、九月の四日、それで五日の記載がなくて六日あたりになっていて、九月四、五、六については未定になっていて、どうもこれはトルコ政府の方に便宜供与を受けたのではないかというふうに思われますが、いかがですか。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の日程表でございますが、これは法務省の出張予定者が我が国の外務省に提出した書類でございまして、ここに九月の四日と六日の欄に「未定」と書いてございまして、便名も「未定」となっておりますが、これは、トルコ国内におきまして、アンカラからガジアンテップというところに移動する際に航空機を使うという予定の出張日程を組んでおったわけでございますが、この航空チケットがこちらに、日本にいる間に手配できなかったということで、トルコに赴いた際に在トルコの日本大使館にそのチケットの購入方の便宜供与をお願いする予定であるという趣旨で記載されたものであるというふうに理解しております。

松野(信)委員 そうすると、当該トルコ政府の方からは特段の便宜供与は受けなかった。それは、平成十四年の場合とそれから平成十六年の場合、これは資料三ですけれども、平成十四年も平成十六年もトルコ政府あるいは地元当局の方からは特段の便宜供与はなかった、独自で調査をしたというふうに理解してよろしいんですか。それとも、何らかの便宜供与を受けたんでしょうか。

富田大臣政務官 平成十六年のトルコの調査の際には、外務省を通じまして、在外公館に対して宿舎の確保、送迎の手配、自動車及び運転手の手配等、また訪問先のアポイント等を依頼しております。ただ、首都を離れる際には、標識も標示板もないところに赴くことが予想されましたので、道案内としてトルコの公的機関の協力をお願いした事実はございます。

松野(信)委員 資料三の方の平成十六年の分ですけれども、これも私の方で調べたところ、七月五日、六日、七日、これは地上でいろいろ行動したりして動いているわけですね。どうもそこのところで、今ちょっと言われました道案内とかそういうのを受けたように思われます。

 そもそもこの平成十六年の場合は、こちらで調べますと、難民認定申請をしている九人の人の名前を治安当局に示した、また、クルド人の御家族の家を訪問した、その中の一家族というのがきょう最初にお話ししましたエルダル・ドーガンさんの家だ、こういうふうに聞いているんですが、そのとおり、それは間違いありませんか。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 私が承知している限り、今委員御指摘があったようなことであったというふうに記憶しております。

松野(信)委員 それで、その御家族、それはトルコの地方のことですから、日本人が急に行ったってどこの家がどうなっているかわからないから、地元の軍や警察に道案内を頼んだということかもしれませんけれども、それが例えばエルダル・ドーガンさんの家族に与える恐怖心、これはだれだってすぐわかることだろうというふうに思います。

 そういう人と一緒にいきなり訪問して、ドーガンさんは何の目的で日本に行ったんだというような質問をどうもしているみたいですけれども、そういうのがまさにしてはならないということで、例えばUNHCRから、そういう情報は出身国に与えてはならないというふうに指摘されていることではありませんか。どうですか。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘のありました、御家族に会ったという件でございますが、これはそれを目的として行ったということではございませんで、先ほど政務官の方からも御答弁ございましたが、首都を離れるようなケースにつきまして、地理不案内ということで、地元の警察の方で道案内を買って出てくれたという事情があったというふうに聞いております。その際に、その方の案内でたまたま赴いた先が御家族の家であったというようなことで聞いております。

松野(信)委員 済みません、時間がなくなったので、余りこの問題ばかりは扱えないんですが、どうも法務省の認識を見ますと、トルコではクルド人に対する迫害なんというのは過去も現在もないんだと。この法務省からトルコに出張した人の報告書あたりを見ますと、みんな金もうけに行った、そういうような趣旨で報告書ができ上がっているんです。

 どうも、トルコではクルド人に対する迫害というのはない、こういうような認識になっているのかなというふうに言わざるを得ないんですが、この点はどういう御認識を持っておられるのか、法務省と外務省と両方お答えいただけますか。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 法務省といたしましては、難民条約に規定されますところの迫害の有無については、あくまで個別案件ごとに、申請者の経歴や過去の逮捕歴等、個別の状況を前提に判断をするべきものだというふうに思っております。

 したがいまして、これを一般的に申し上げることはなかなか難しいわけでございますけれども、ただ、これまでに我が国におきまして裁判例というものがかなり積み重ねられておりまして、個別の案件に関するものではございますけれども、それらの裁判の中で、クルド人がクルド人であるということのみによって迫害を受けるということはないと認めている裁判例がかなりございますことを前提といたしまして、そのほかにも、そういう一般的なことのほかにも、過去におきまして、トルコについて人権保障状況を危惧する内容の報告書がEU等から出されたということがあることは承知しておりますけれども、他方、トルコにおきましては、一九九〇年代から、治安の安定とともに民主化の勢いが急速に進んでおるということもまた認識しているところでございます。

 特に、二〇〇一年、平成十三年でございますが、EU加盟に向けまして国家プログラムというものが発表されておりまして、EU諸国と同等となる法社会体制の実現に向けた改革が進められているというふうに聞いております。また、平成十六年には、二〇〇四年でございますが、EUがトルコの加盟交渉の開始を決定するというようなこともございまして、人権保障の状況は相当改善されたというふうに評価されているものと承知しているところでございます。

神余政府参考人 お答え申し上げます。

 トルコでは、南東部を中心にしまして多数のクルド系国民がいると言われておりますけれども、トルコからの分離独立を志向するテロ組織が南東部地域を中心に反政府武装ゲリラ闘争を展開して、トルコ政府がその鎮圧を図るべく大がかりな掃討作戦を行ったという時期があったことは承知をしております。しかしながら、現在はそのような状況にあるというふうには承知をしておりません。

 いずれにしても、先ほど法務省からお答えがあったように、迫害に当たる行為があったかどうかということについては個々のケースごとに判断をすべきものだというふうに思っております。

 さらに、欧州委員会のトルコに関する二〇〇四年の年次報告、あるいはアメリカ国務省の二〇〇四年の国別人権報告書の中で、トルコ国内で官憲による拷問等の一定の人権侵害が指摘されていることも承知をしております。

 他方、現在トルコは、EU加盟を目指した国内改革の中で、死刑制度の廃止、表現の自由、拷問の防止等の基本的人権の尊重のための法整備及び運用面での取り組みを進めているということもございます。クルド系国民の権利についても、クルド語の民間講座の開設認可、あるいはトルコ語以外の民間放送の認可等の取り組みが行われているということも承知をしております。

松野(信)委員 時間が来ましたのでもう質問はやめますが、今外務省の報告にありましたように、例えばアメリカ国務省の国別報告書、またイギリスの国別報告書の中でも、現在でもトルコでは迫害がなされている、こういうのがちゃんと報告されているわけですから、その辺を十分法務省も認識した上で、まさに人権感覚に富んだ難民の認定の処分をしていただきたいということを申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

塩崎委員長 次に、辻惠君。

辻委員 民主党の辻惠でございます。

 本日は、三月一日の予算委員会のときにも南野法務大臣に御質問させていただき、先日も改めてお伺いするというふうに申し上げた、井内顕策東京地検特捜部長がマスコミはやくざ者より始末に負えないというような文書を出したという点に関連して、やはりこれは、検察の捜査権という問題と報道の自由との兼ね合いの問題である。ロッキード事件のころからずっと一貫したせめぎ合いの中で推移してきた問題が、たまたま、特異な人格を持っておられたのかどうかちょっとわかりませんけれども、特異な形であらわれたものにすぎなくて、実は共通した問題としてあるのではないかなというふうに思います。

 ですから、そこの問題をどういう方向で今後整理していくのかというのは、とりわけ司法改革の中で検察庁も開かれた検察としてその姿勢が問い直されている、そういう中で、報道の自由と検察の捜査権の兼ね合いの問題というのは今後も見直されていかなければならない問題であるというふうに思いますので、問題点をとりあえず整理するという観点で御質問をさせていただきたい、こういうふうに思います。

 まず、新聞報道等によると、マスコミはやくざ者より始末に負えないというふうに記載した文書を井内特捜部長が司法記者クラブの数社の部長番記者に配ったというふうに報道されていますが、これについては、何社ぐらいに配ったというふうな事実確認をされておりますか。わかりますか。

南野国務大臣 私は存じ上げていなかったんですが、今、四社ぐらいではないかということでございます。

辻委員 読売新聞、毎日新聞、東京新聞、共同通信の四社の名前が挙がっているんですが、この四社は当時出入り禁止処分になっていたというふうにされておりますが、それは事実ですか。

南野国務大臣 出入り禁止にされていたということの事実はちょっと存じ上げておりません。

辻委員 報道によれば、文書を受け取ったのは、年末から年始にかけて特捜部を取材不対応、つまり出入り禁止処分になっている社の記者に、年賀状を出した人に対して、これはお返しするということで、そのときにその四社に対して配られたという報道になっているんですね。恐らく出入り禁止処分になっていたんだろうというふうに思います。これは、事実はまた改めて確認していただければいいと思うんですけれども。

 その出入り禁止処分というのは何なのかということについても少し御質問したいと思いますが、とりあえず、この文書について、一月の二十一日ですか、笠間治雄東京地検次席検事が記者会見を司法記者クラブで行われた、そのときに、陳謝を行うとともに井内部長名のおわび文を出したという報道がありますが、この事実と陳謝の内容及びおわび文の内容について御説明いただきたいと思います。

南野国務大臣 当該特捜部長は、上司である次席検事から口頭による注意を受けていると聞いておりますし、文書を配付した記者等に対し、報道関係の持つ社会的使命を正当に評価しない内容の文書を交付したことについて謝罪したと聞いております。

辻委員 ちょっと質問通告がおくれましたから、きょうこの場には御準備いただけないのも仕方がないと思うんですが、井内部長名のおわび文を出したというこのおわび文は委員会に提出していただけますか。

南野国務大臣 済みません。何か、文書はないようでございまして、これは口頭でということであったように今聞いております。――済みません、把握しておりませんで。文書はありますようですが、今手元にはございませんので。

辻委員 いや、ですから、それは法務委員会の場に提出していただけますか。

塩崎委員長 後刻理事会で、ああ、こちら。いや、こっちに言っているんじゃないの。(辻委員「こちらですね」と呼ぶ)そうであれば、後刻理事会で協議いたします。

辻委員 では、それは、処理は理事会にゆだねますが、ぜひおわび文の内容を確認させていただきたいというふうに思います。

 何をわびたのかが問題なんですよね。何を言ったのかということについては、これは既に予算委員会の場でもお配りいたしましたし、四ページにわたる文書を配ったようでありますが、この内容については、ちょっと大臣の御意見を具体的に伺っていきたいというふうに考えております。

 その前に、今の、一月二十一日の笠間治雄次席検事の陳謝というのは、だれに対して、具体的にどういう内容の陳謝をされたんですか。それをもう少し、詳細をきちっと教えていただけますか。

南野国務大臣 済みません、準備しておりませんで。

 文書を配付した特定の記者さんに対して陳謝したというふうに今聞いております。

辻委員 だから、四社に対して陳謝したということですよね。しかし、大臣、これは私信だから云々というような答弁をこれまでされておりますけれども、それであれば、司法記者クラブで陳謝の記者会見をする必要が果たしてあるのかという問題ですよね。四社に対してそれぞれ、これは申しわけなかったというふうに言えばいいことであって。

 ですから、これは、特捜部長ともあろう方が、マスコミはやくざ者より始末に負えないというふうに、それを配った、それはやはり、その職にある立場の人の考え方なり、四社に対してではあれ、それを、そういうことを平然と配るということ自体が、職責に本当にたえるのかどうなのかということで、やはり社会的に問題だから記者会見せざるを得なかったんだというふうに思うんですね。そうでなければ、笠間次席検事がわざわざ記者会見をされる必要はないわけですよ。

 だから、これは、司法記者クラブ全体に対して、マスコミに対してのやはり何らかの態度表明をせざるを得なかったから記者会見をされている。それは、マスコミに対してということであるけれども、それを通して国民の皆さんに対して検察庁の基本姿勢がやはり問われている問題だし、特捜部長の資質も問われている問題だから記者会見をされたんだというふうに思うんですよね。

 ですから、今のお答えは、四社に対してしたというお答えは、それはそれとしてわかりますが、内容はどうなんですか。具体的な陳謝の内容。笠間次席検事はわざわざ記者会見を開いて陳謝されているんだから、その内容をお聞かせいただきたいと思います。

南野国務大臣 今ちょっと詳細を尋ねたんですが、次席は記者会見はしていないということで、次席が文書をもって報道社にちゃんと謝罪したということであります。

 ちょっと詳しくわかりませんので、申しわけないです。

辻委員 では、具体的に記者会見を開いたのではなくて、記者クラブに行ってその四社を回っておわびをした、陳謝をしたということなんですね。

 そうすると、その陳謝の内容について、これは後日改めて御報告をいただきたいと思うので、理事の方で協議をしていただきたいというふうに思います。

 私は、今まで何回かこれに言及させていただいて、何でこだわるのかというのは、やはり検察庁が、要するに、捜査をマスコミから守るというか、結局、事後的に批判があれば批判すればいいんだ、捜査の継続中はマスコミはそれに対して言及すべきではないんだということを言っているんですよ。

 しかし、例えば「新聞研究」という、これは雑誌でしょうけれども、一九七六年九月号でも、これはロッキード事件をめぐる検察当局とマスコミとの闘いというかせめぎ合いについて報告していますし、また、これは九四年一月の「新聞研究」でありますけれども、これは当時のいわゆるゼネコン疑惑を追及する東京地検特捜部と、中央、地方政界とゼネコンの関係について、癒着が問題になった事件について特捜部とマスコミとがやはりせめぎ合いがあって、九三年の十一月五日に、日本新聞協会編集委員会が、検察当局が司法記者クラブ加盟各社に対して行ってきた記者会見への出席拒否や取材拒否などの措置、処分の慣行を改めるようにという文書を申し入れたりしているんですね。

 ですから、そこの問題というのは、やはり歴史的にずっと連綿と続いてきている問題であって、現在、よりそれがこういう形で問題になっているということは、まだ解決していないという問題ですから、やはりきちっと整理しなきゃいけないし、私の問題意識からすると、報道の自由に対する規制というか圧力が当時よりもさらに強まっているように非常に思うような事例が多々ありますもので、やはり報道の自由の意義ということ、それを検察庁もちゃんと尊重すべきだということをきちっと打ち出してほしいというふうに思うがゆえに質問させていただいているということであります。

 それで、今回の文書の内容について大臣の所見も伺っていきたいと思うんですが、その前に、取材拒否という検察庁がマスコミ各社に対して行う事実上の措置というか慣行というか、これについては現在どういうような慣行が成立していると考えられるんでしょうか。

南野国務大臣 検察においては、場合によっては取材に応じない対応をとらざるを得ない場合もあるというふうに聞いておりますが、これは、個々具体的な対応の詳細については把握いたしておりませんが、そのようなことを言っております。

辻委員 出入り禁止の処分というのがどうもあるらしくて、担当副部長の部屋での取材が禁止なんだという、これは第一レベルなんでしょうかね、一番緩やかな取材禁止。次は、朝駆け、夜回りを含む特捜部への出入り禁止、これは第二段階。第三段階は、定例会見を含む東京地検内の特捜部及び次席検事への出入り禁止。第四段階は、昼間の取材も朝駆けも夜回りも禁止され、最高検、東京高検、東京地検の検察庁三庁への出入り禁止というふうに、出入り禁止処分は四段階あるんだと。これは九四年一月の「新聞研究」で述べられているんです。

 ですから、これが現在生きているのかどうなのか、こういう慣行がなお続いているのかどうなのか、この点はいかがですか。

南野国務大臣 今先生からレクチャーを受けまして、そのような段々があるのかというふうに思いましたが、検察におきましては、従来より、司法記者クラブとの間で、捜査妨害等に当たるような取材とか、それから報道は差し控えられるように要望しているところがあったりしておりまして、そのような取材がなされた場合には、不本意ながら取材に対応しない場合があるというふうにも聞いております。これは報道の自由を考慮した上でということでございますが、捜査の秘密または適正な捜査遂行の必要性があるということからやむを得ずとっている措置でありまして、不当な規制には当たらないものと承知しております。

 それが何段階のことを言うのかというのはちょっとわかりませんが、もとより検察におきましては、報道関係の御意見を伺いながら、取材活動に対するより一層適切な対応について検討していくものと承知いたしております。

辻委員 いや、だから、これこれの処分が不当であるなんというふうには言っていないんですよ。こういうふうに、九四年一月の「新聞研究」という雑誌によれば、出入り禁止というか取材禁止に四段階あるというふうに紹介されていますよ、今もそういう慣行があるのかないのかを聞いているわけであって、具体的にどこそこの社に対して拒否したのが妥当なのかどうなのかとか、そんなことは聞いていないんですよ。

 とにかく、いや、捜査の密行性の立場から、報道の自由を侵害しているわけじゃないんだと結論だけおっしゃっているんですけれども、結論を言う前に、事実を聞いているんだから。だから、そこについて確認をされているのかどうなのか、まず答えてくださいよ。判断の前の事実の確認なんだから。

南野国務大臣 ですから、私は、先生からレクチャーを受けましたと申し上げていることは、それは知らなかったということでございますので、事実確認できておりません。

辻委員 では、いろいろ四段階の出入り禁止処分という、つまり、厳密な意味で処分性があるかどうかという、行政事件訴訟法の対象のような、そういう処分性の問題ではないけれども、慣行としての四段階の処分があるのかないのかについてはまたお聞かせいただきたいと思うんですが、少なくとも、今回、井内特捜部長が配った文書は、出入り禁止処分になっている、読売、毎日、東京、共同通信だったと報道されているんですよ。これは、出入り禁止になっていたということについては、今お答えできますか。いかがですか。

南野国務大臣 申しわけありません、わかりません。

辻委員 井内さんは、二〇〇三年十二月五日に東京地検の特捜部長に就任をして、そのときに朝日新聞の「ひと」欄で紹介をしているんですね。KSDの事件で村上正邦さんを取り扱った記事で、村上さんに、ここで腹を切ってみろというようなことを取り調べ中に言ったということを朝日新聞が「ひと」欄で紹介をした。これで腹を立てて、朝日新聞を出入り禁止にしたという報道があるんですよ。その事実は確認されていますか。

南野国務大臣 いや、本当、きょうは承知していないことばかりでございますので、申しわけありません。

辻委員 井内さんの問題を離れて、例えば、そういう新聞報道で、過去の事件について、この取り調べ検事が、例えば政治家に対して、本当かうそか、ここで腹を切ってみろというような取り調べもやった、ある意味では硬骨漢であるというふうに褒めているかもしれないし、剛腕検事だというふうに褒めそやしているかもしれない。そういう記事が出たとして、それを理由に出入り禁止にするなんということは、検察庁としてとるべきものなんですか。とっていいんですか、とってはいけないんですか。妥当であるか妥当でないか、法務大臣としてはどうお考えですか。

南野国務大臣 それが事実かどうかという確認は私自身できておりませんが、そういうことであるならば、妥当でないと思っております。

辻委員 いや、会話が成立しましたね。

 それでは、その上で、具体的にもう少し会話を成立させていきたいなというふうに思いますけれども。(発言する者あり)それは申しわけないです。

 「東京地検特捜部長に就任して」、そして「某受験生及び修習生向け雑誌の原稿抜粋」というふうに題する文書を井内特捜部長が四社に配付したというふうに報道されているんですよ。その中でいろいろおっしゃっている。引用させていただきますけれども、例えば、

  さらにマスコミとの戦いがあります。正直なところ、マスコミの取材と報道は捜査にとって有害無益です。マスコミが無闇に事件関係者に取材したり、特捜部が誰を呼びだして取り調べたとか、捜索をしたとかの捜査状況の報道をしたり、逮捕や捜索の強制捜査のいわゆる前打ち報道をしたりすることによって、事件関係者に捜査機関の動きや捜査の進展具合を察知され、事件関係者が否認や黙秘に転じたり、その口が固くなって供述が後退したり進展しなくなったり、証拠隠滅工作がなされたり、関係者の逃亡やあげくの果てには自殺に至るということが少なくありません。そのような報道や取材は、まさに、捜査を妨害し、事件を潰して刑事責任を負うべき者や組織にそれを免れさせ、社会正義の実現を妨げ、犯罪者及び犯罪組織を支援している以外の何物でもありません。それは、同時にマスコミが犯罪者そのものに成り下がっていることの現れであると言って少しも過言ではありません。

というようなことを言っているんですね。

 もっとひどいところもあるんですが、この今の読み上げた点について、まず、マスコミの取材と報道は捜査にとって有害無益であるという考えが一部にはあるようなんですけれども、法務大臣はどうお考えですか。

南野国務大臣 この場で、今の、本件文書の内容をつぶさに取り上げることはできませんけれども、例えば、先生お読みになっておられない部分でしょうが、マスコミとやくざを対比させた部分やマスコミを有害無益とした部分、今お読みになった部分については、やはり穏当を欠いているというふうには思っております。

辻委員 だから、非常に玉虫色の微妙な発言なんですよね、穏当を欠いているという。だけれども、それでは済まないんですよね。それでは済まないわけですよ。

 だから、少なくとも原理原則上どうなのかということについてはっきり言っていただきたい。いろいろな局面で、さっきから御紹介しているように、ロッキード事件もそうだし、佐川急便事件もそうですよ。検察の捜査権と報道の自由とのせめぎ合いがあった。しかし、報道の側がやはり加熱して行き過ぎる場合もあって、それはいろいろ批判もされなければいけない面もあるかもしれない。

 しかし、そういうふうに報道陣が一生懸命やることによってそれが国民に伝えられ、世論がそれに反応して、やはりこういうことは許されないんだということで、例えば政治浄化につながったりする。つまり、社会の活力を生み出していく、そういう機能というのはやはりマスコミにあるわけですよ。だから、憲法二十一条で報道の自由が決められている、保障されているんですよ。

 そういうことからいうと、一般的に言って、「マスコミの取材と報道は捜査にとって有害無益です。」なんていう断定はおかしいと思いますが、いかがですか。

南野国務大臣 それは、マスコミは本当にいい働きをしてくださっているというふうに思います。でも、捜査をする一方、その人たちもやはり一生懸命捜査をしようと思っているので、どの段階でどのような状況であったかということが交差した問題であろうかというふうに思っております。

辻委員 また会話が成立しなくなっているんですよ。

 違うんですよ。法務大臣だからといって、法務省を弁護するだけが役割ではないんですよ。具体的な場面において、体を張って守らなければいけないときもありますよ。だけれども、今はそんな話をしていないんですよ。原理原則として、「マスコミの取材と報道は捜査にとって有害無益」だなんというふうに言い放つことが、一般的に妥当ではないでしょう。それについて、どうなんですか。もう一回、確認してくださいよ。

南野国務大臣 報道機関の行う報道、これは取材の自由、これは国民の知る権利に資するものであり、十分尊重されなければならないというふうに思いますけれども、今先生がおっしゃったことについては、それはもう大変な問題であろうかなというふうには思っております。

辻委員 なるほど。一般的に、マスコミの取材と報道は捜査にとって有害無益であるというようなことはやはりおかしいのであって、大変な暴言だ、こういうことですよね。いやいや、質問はまだ終わっていませんので。

 そうすると、「マスコミは、やくざ者より始末に終えない悪辣な存在」である、これもやはり妥当でないですよね。いかがですか。

南野国務大臣 私と比べられたらやくざが怒るかもわかりませんが、それはやくざとかいろいろな人たちと比べる問題ではないというふうに思います。

辻委員 だから、本来、比べる問題ではないので、比べること自体、この人は何かやくざに親和性を持っているんじゃないかというふうに思うぐらいのことなんですよ。

 だから、比べること自体問題ないんですけれども、そもそもそういうことを言うこと自体、「マスコミは本当に有害無益な存在です。」とか「マスコミは、やくざ者より始末に終えない悪辣な存在です。」こんな発言自体、常識的に考えてもおかしいでしょう。検察官がこんなことを言うというのもおかしいでしょう。いかがですか。

南野国務大臣 先生御指摘のとおり、人間としておかしいのかなと思っております。

辻委員 先ほどの陳謝の内容とか、理事会の方に出されたものを拝見してもう一回、本当に人間的におかしいのか、検察官としての資質を欠くものなのかどうなのか、もう一回検討して、御質問させていただきたいというふうに思います。

 時間が来ましたので、これで終了いたします。ありがとうございました。

     ――――◇―――――

塩崎委員長 次に、本日付託になりました内閣提出、刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。南野法務大臣。

    ―――――――――――――

 刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

南野国務大臣 刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律案について、その趣旨を御説明いたします。

 現行の監獄法は、明治四十一年に制定されて以来、実質的な改正がされることなく今日に至っているため、被収容者の権利義務関係や職員の権限が明確ではなく、受刑者処遇の内容についても十分な規定が設けられていないなど、今日では極めて不十分なものとなっております。

 他方で、治安情勢の悪化を受けて、国民が安心して暮らせる安全な社会の実現が強く求められている昨今の状況にかんがみますと、受刑者の処遇に当たる行刑の役割は一層重要なものとなっているところであり、行刑改革を遂げ、行刑運営の充実を図ることは喫緊の課題であります。

 この法律案は、このような状況を踏まえて、刑事施設の適正な管理運営を図るとともに、刑事施設に収容されている受刑者等について、その人権を尊重しつつ、適切な処遇を行うため、所要の法整備を行おうとするものであります。

 この法律案の要点を申し上げます。

 第一は、刑事施設の基本及びその管理運営に関する事項を定めるものであり、刑事施設の運営の透明性を確保するために、刑事施設視察委員会の設置、組織及び権限についても定めることとしております。

 第二は、受刑者の処遇について定めるものであり、次の点などを主な内容としております。

 その一は、受刑者の権利及び義務の範囲を明らかにするとともに、その生活及び行動に制限を加える必要がある場合につき、その根拠及び限界を定めることであります。

 その二は、受刑者に対して、適正な生活条件の保障を図るとともに、医療、運動等その健康の維持のために適切な措置を講ずることであります。

 その三は、受刑者には矯正処遇として作業を行わせるとともに、改善更生及び円滑な社会復帰を図るため必要な指導を行うものとすること、矯正処遇は、受刑者ごとに作成する処遇要領に基づき、必要に応じ、専門的知識及び技術を活用して行うこと、自発性及び自律性を涵養するため、生活や行動に対する制限は、受刑者処遇の目的を達成する見込みが高まるに従い順次緩和されるものとすること、改善更生の意欲を喚起するため、優遇措置を講ずるものとすること、一定の条件を備える受刑者について、円滑な社会復帰を図るため、職員の同行なしに外出及び外泊することを許すことができるものとすること、その他受刑者の改善更生の意欲を喚起し、社会生活に適応する能力の育成を図るための処遇方法を定めることであります。

 その四は、面会、信書の発受等の外部交通についての規定を整備するものであります。

 その五は、一定の刑事施設の長の措置についての審査の申請、身体に対する違法な有形力の行使等についての事実の申告等の不服申し立て制度を整備することであります。

 第三は、労役場留置者の処遇、刑事施設に代用される警察留置場に係る規定の整備その他所要の措置を講ずるものであります。

 以上が、この法律案の趣旨であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。

塩崎委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

塩崎委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 ただいま議題となっております本案審査のため、来る四月五日火曜日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塩崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、明三十日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時五十二分散会


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