衆議院

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第8号 平成17年3月30日(水曜日)

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平成十七年三月三十日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 塩崎 恭久君

   理事 園田 博之君 理事 田村 憲久君

   理事 平沢 勝栄君 理事 吉野 正芳君

   理事 津川 祥吾君 理事 伴野  豊君

   理事 山内おさむ君 理事 漆原 良夫君

      井上 信治君    大前 繁雄君

      左藤  章君    笹川  堯君

      柴山 昌彦君    谷  公一君

      早川 忠孝君    松島みどり君

      三原 朝彦君    水野 賢一君

      森山 眞弓君    保岡 興治君

      柳本 卓治君    加藤 公一君

      河村たかし君    小林千代美君

      佐々木秀典君    樽井 良和君

      辻   惠君    松野 信夫君

      松本 大輔君    江田 康幸君

      富田 茂之君

    …………………………………

   法務大臣         南野知惠子君

   法務副大臣        滝   実君

   法務大臣政務官      富田 茂之君

   最高裁判所事務総局刑事局長            大谷 直人君

   政府参考人

   (内閣府男女共同参画局長)            名取はにわ君

   政府参考人

   (警察庁長官官房総括審議官)           片桐  裕君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 吉田 英法君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 和田 康敬君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    寺田 逸郎君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    大林  宏君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    横田 尤孝君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    麻生 光洋君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  三浦 正晴君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           泉 紳一郎君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           岡島 敦子君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           黒川 達夫君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           大槻 勝啓君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           中島 正治君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           大谷 泰夫君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局次長)           大石  明君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    塩田 幸雄君

   政府参考人

   (社会保険庁運営部長)  青柳 親房君

   政府参考人

   (国土交通省航空・鉄道事故調査委員会事務局長)  福本 秀爾君

   法務委員会専門員     小菅 修一君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律案(内閣提出第七七号)

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

塩崎委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として内閣府男女共同参画局長名取はにわ君、警察庁長官官房審議官和田康敬君、法務省民事局長寺田逸郎君、法務省刑事局長大林宏君、法務省入国管理局長三浦正晴君、文部科学省大臣官房審議官泉紳一郎君、厚生労働省大臣官房審議官岡島敦子君、厚生労働省大臣官房審議官中島正治君、厚生労働省大臣官房審議官大谷泰夫君、厚生労働省職業安定局次長大石明君、社会保険庁運営部長青柳親房君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塩崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

塩崎委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。津川祥吾君。

津川委員 おはようございます。民主党の津川祥吾でございます。

 きょうは、昨日大臣が公表されました第三次出入国管理基本計画、こちらについて御質問させていただきます。

 まず、これはこれからの五カ年計画ということだと思いますが、そのベースの議論としまして大臣の所見をお伺いしたいんですが、これから日本が外国人をどのように受け入れていくのか、その具体的なイメージ、そういったものについて大臣としてどのようなお考えをお持ちか、まずお伺いをしたいと思います。

南野国務大臣 おはようございます。よろしくお願いいたします。

 法務省といたしましては、今先生がお尋ねの件につきましては、我が国社会の安全と秩序、それを保ちながら外国人の円滑な導入ということを図ることが国の内外からも要請されている事柄かなと思っております。我が国の経済社会の活性化や、それから一層の国際化を図る観点から、引き続き歓迎すべき外国人は受け入れていくというような推進に努めてまいりたい、そのように思っております。

 また、国民の意識や我が国の経済社会の状況などを踏まえながら、関係府省とも連携を図り、そして、今後の外国人の受け入れのあり方についても検討してまいる所存であります。

津川委員 それはこれに書かれている話であって、その前の段階のお話を今させていただきたかったんですが、要するに、専門的な、技術的な方、日本に来ていただきたい方にはぜひ来ていただきたいというのは、それはそのとおりだと思います。それはいいんですが、今、外国人の導入という言葉を使われたかと思うんですが、それは、観光客としてどんどん日本に来ていただいて、日本人もどんどん外国に観光に、旅行に行って交流を深めようという話とは別に、導入という話をされたのは、外国人労働力を日本の社会の中に組み込む、そういう話をされているんだと思います。それが、日本の社会の中で外国人の労働力というのをどういうふうにとらえるのかという話です。

 基本的には、今、まさに日本側が望む方に来ていただいている、そういう認識なんだと思いますが、これから例えば少子化、高齢化が進む。あるいは、日本の社会の経済発展のベースに例えば都市への人口の集中というものがあった、あるいは人口が増加していく、自然増のものも含めて人口がふえていく、お金と物と人、情報をある意味都市に集中をさせる、あるいは一次産業から二次産業に集中させる、そういったものの中で人がふえていくということをある程度前提にしながら発展をしてきた。

 これが、今、労働人口がどんどん減っていくという前提になったときに、どういう社会を目指すのか。減っていくんだったら減っていくなりの社会にするというのも一つの考え方だと思うんです。そうじゃなくて、減ったんだったら外国からでも人に入っていただいて、もちろん国内の生産性の向上ですとか、あるいは一たんリタイアしてしまった女性にもう一度入ってきていただきやすい環境をつくるとか、若者の就業をどんどん促進するとか、そういった前提は当たり前として、それに加えて、それだけでは足りないから、外国人の方にもどんどん入ってきていただいて日本の労働力不足というものを補おうというふうに考えるのかどうなのかということを伺いたいんです。

 だから、それは検討しますという話ではなくて、そういう社会を目指すのか、そうではないのか、大臣のお考えを伺いたいと思います。

南野国務大臣 先生が今おっしゃっておられる社会の情勢、これは人口動態の問題とも一つ関連してくると思います。それから、あとは労働環境という問題もあろうかと思います。そういう問題については、外国の相手方の国と我が国との交渉という役割の中で、今、問題点を解決しようとしていくものにFTAの問題も一つかかわってきております。その観点からは、専門職者というような段階に限っていこうという交渉がお互いの国で行われていたところもあります。それが我が国の、少子社会だからそのような形にするかというのは、これまたちょっと別なジャンルになってくるかなと思います。

 そういういろいろな問題点がそこに包含されておりますので、一概に、今先生がおっしゃっても、その包括的な問題について考えていくと、少子社会だから入れていこうというのはまだ論議に至っていないのではないかな、始まりつつある課題ではあろうというふうに思っておりますが、そういうものも今後検討していかなければならない課題だというふうに思っております。

津川委員 少子社会だからというのはちょっと違うかもしれませんが、いずれにしても、そういった外国人の方々に日本の中に入ってきていただいて、日本の中で働いていただくということを、専門職とかFTAの話ではなくて、入ってきていただくということはまだ論議が始まっていないんじゃないかという話をしましたけれども、その論議をしたいと思って今ここで大臣にお話をしているわけであります。

 一般的に、まだ政府の方針も固まっていないですし、私ども民主党としても必ずしも固まっておりません。国民論議としても盛り上がっているとはまだ言い切れない部分だと思います。当然のことながら、こちらの方向に進むべきだという方向性が出ているわけでもありませんが、今の段階で、まさに、出入国管理基本計画を読んで、ある意味一歩踏み込んだ発言をされている部分もお見受けするものですから、その先に大臣としてどういう外国人の受け入れを考えていらっしゃるのかを伺いたかったんですが、もう一度伺って別な答えが出てきますかね。出てこないですか、そうですか。ではやめます。

 私がちょっと簡単に仮にABCという三種類ぐらいに分類をしまして、Aは、今大臣がおっしゃった専門的な、技術的な能力を持っていらっしゃる方々に日本に来ていただく。あるいは、もちろん日本に研修に来ていただくとか技術を身につけて帰っていただくとか、あるいは留学生、就学生の方々も大いに来ていただいて、日本で勉強をしていただいて、その中でちょろっと仕事をするぐらいならそれは大いに結構、そういう考え方がAとしますね。

 Bは、そういう日本が求める方、日本が来てほしいという人に来てもらうんじゃなくて、日本に来たいという人に来てもらう。それは、当然ルールは必要だとしても、いわゆる単純労働も含めてそういった方々が日本にどんどんやってきて、それで日本の中に外国にルーツを持っていらっしゃる方々のある意味社会ができてしまう。その社会と日本の社会との間についても相互理解を深めるとか、そういった形で受け入れていくという考え方がもう一つあります。それはBの考え方。

 もう一つがその中間で、単純労働者もウエルカムだけれども、ただし、例えば非常に厳しい基準をつくって、日本の社会の中に彼らの社会、コミュニティーをつくってはいけないと。単純に入ってくるのはいいけれども、やはり単純に帰っていってもらわなきゃいけない、そういう政策が今まで余りうまくいかなかったというのが世界的には言われているそうであります。

 日本の国内に、今、難民の方が非常に来なくなったというのは、難民に対してある意味非常に厳しい対策をとった。日本というのは難民が行くにはふさわしくない国だ、あるいは、それと同じように、日本は単純労働で出稼ぎに行くにはいいけれども住むにはよくない国だ、だから、自分が一人で行くのはいいけれども、家族は連れてこない方がいい。例えば、子供が教育を受けられない、何かあっても社会保障を受けられない、そういう制度にしてしまえば、単純に一年間、二年間、三年間仕事をしに来るまではいいけれども、国内にそういう社会をつくってはいけませんよ、そういうもう一つのパターン、Cのパターンと私は言っていますけれども、そういう三種類ぐらいあり得ると思うんですね。

 大臣は、そういった三種類の考え方、日本が求める方、技術的、専門的な方々に主に来ていただくということを考えるのか、あるいは、もっと幅広く来ていただいて、日本の国内にそういった外国人の方々のコミュニティーができるところまである意味認めていくのか、あるいは、単純労働は認めるけれどもそういうコミュニティーをつくるところまでは、働きに来るところまではいいけれども住まれるのは困るというようなお考えをお持ちなのか。その三分類ぐらいでいうと、どの辺のイメージをお持ちでしょうか。

南野国務大臣 今先生がおっしゃったABCの段階がありますが、最後におっしゃった課題という問題については、またこれはちょっと別な問題点があろうかなというふうに思っておりますけれども、そういう方々と日本の市場の開放ということについてどういうふうに検討していくかというのが、今先生方とともに検討していこうとしている課題であろうかなというふうに思っております。

 私としましては、今、初めに、専門職の導入ということを先駆けてやっている段階でありますので、その動向を見ながら、また、日本の社会の人口動態、そういったこととも関連しながら、また、日本の経済の問題点もあろうかと思います、そういうこととも連動させながら、次のどのようなステップがいいのかということも考えていかなきゃならないと思っております。

津川委員 考えていかなきゃならないという答弁なんですが、では、そこまではまだ大臣としてはお考えがないということでよろしいですか。

南野国務大臣 それは、個人としては持っていても、一応、形としては、これから検討していく課題であると私は認識いたしております。

津川委員 いや、検討はいいんですが、要するに、外国人に単純労働でどんどん来ていただいて、住みついていただいて、ある意味で、もう日本の社会の中に彼らの社会をつくってしまうところまで、いいか悪いかは別として、そういったことを前提にして入国管理のあり方とか外国人の人権のあり方とかそういったものを考えるのと、ちょこっと働きに来るのはいいけれども、定住するんじゃなくて三年したら帰ってもらうというのを前提にする考え方では、システムのつくり方が全然違うと思うんですよ。

 ですから、大臣として今の段階でどういう日本の将来像を考えていらっしゃるのかを伺いたかったんですけれども、それは今の段階では、検討すべき課題だという認識であって、どっちになるかはわからない、こういうことでよろしいんですか。

南野国務大臣 先生がおっしゃるとおり、私の気持ちをお酌みいただいていると思いますけれども、要は、お入りいただく方、または我が国、受けとめる側、それもメリット、デメリットがお互いにあるだろうと思いますので、そこら辺の検討をしていかなきゃ、日本に来てつまらなかったとか、そういう日本の感情というものをその人たちが持ってしまうということも、これも我々としては、日本はいい国でというような印象も持っていただきたいというようなこともあります。

 そういうことからは、お互いのメリット、デメリットを調整していきながら、これからの労働力の問題であるならば労働力の問題、これから職業としての輸入ということを考えるならば、その問題も検討していかなければならないというふうに思っております。

津川委員 では、前提の議論はその程度にいたしまして、個別のことにちょっと入らせていただきますが、まず、専門的な方、技術的な能力を持っていらっしゃる方々の受け入れの話について伺います。

 これはもうどんな状況にあったとしても、日本として来ていただきたい方の話ですから、余り議論のあるところじゃないと思うんです。大いにウエルカムな人たちなんですけれども、そういった方々であっても在留期間が今短い。それを延長するべきだというようなことが指摘をされていると思いますが、海外、ヨーロッパの例などを見ましても、来てほしい人であれば在留期間が五年とか十年とかと言われるのが普通だと思うんです。日本の場合、この専門的、技術的な能力を持った方々の在留期間の延長についてどのように検討されているのか、お伺いをしたいと思います。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のように、世界で通用するような専門的な知識でございますとか技術等を有する優秀な外国人の方の受け入れにつきまして、出入国管理行政としてもこれに貢献していくべきであるというふうに思っております。

 現在、一回の許可で与えられます最長の在留期間は法律上三年というふうになっておりますが、今申し上げましたような観点からいたしまして、第三次出入国管理基本計画におきましては、高度な人材について一回に許可される在留期間の伸長を図っていくということとしておりますので、当局といたしましてもその方向で検討を進めているところでございます。

津川委員 いや、ですから、検討を図っていただいているのはいいんですが、例えば五年にするとか十年にするとか、あるいは条件をつけるのかわかりませんが、その具体的な話を今お答えいただければと思います。

三浦政府参考人 具体的な期間につきましては今後検討を進めていくという段階でございますけれども、現在、例えば構造改革特別区域制度がございます。この制度におきまして入管法の特例措置が設けられておりまして、一定の外国人の研究者などにつきましては、一回に許可される在留期間が五年間に伸長されているわけでございます。

 この措置につきましては、平成十七年度中に全国展開がされる予定になっております。このような問題の検討ともあわせまして、具体的な内容についての検討を進めてまいりたいと考えております。

津川委員 ありがとうございます。例えば五年とか、そういった検討になろうかと思います。

 その次でありますが、もう一つ、外国人の方が日本に来ていただくときにさまざまな場面で問題になるのが、日本語が必ずしもできない。

 ほかの諸外国と若干違うのが、英語ができればまあ何とかなるかと思って来たら、日本の場合は何ともならないということがあります。フランスは昔、英語で話しかけても無視されるという話がありましたけれども、日本人は別に無視しているわけじゃなくて、わからないということがある。これはしようがない話なんですけれども。

 ですから、日本に来ていただく以上は、やはり日本語をある程度マスターした方に来ていただく必要があるんだと。全くわからないけれども日本に来て、それで日本語を勉強しようという環境はなかなかできていないと思いますので、日本に来ていただく方には、日本語をやはりしっかりやっていただく、日本語能力をある程度担保するということが大事になってくるかと思いますが、その辺について今どのような検討をなされているか、伺います。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、日本に来られて生活する方は、日本語を習得しているにこしたことはないというふうに私も思うわけでございます。

 ただ、日本に来られる方でもいろいろなケースがございまして、例えば今、日系の、血縁を重視した形での本邦への在留を認めているようなケースもございます。こういった方々につきまして、定住者ということで生活されておるわけでありますが、日本語能力要件というものを課すことによりまして、血縁のある方が日本に入ってこられなくなるというような問題もございますので、こういう方について直ちに入国の要件というふうにするのはなかなか難しいのであろうというふうに思っております。

 ただ、先ほど来もちょっと御議論ございましたけれども、現在、専門的、技術的な分野ではないというような評価の分野について、いずれ我が国である程度受け入れをするというような議論がされる場合には、当然、日本語能力の要件ということもその中の検討の要素の一つとして考えていく必要があるのかなというふうには考えております。

津川委員 外国人労働力を大いに受け入れているような国の中では、その国の言葉ができるのをある意味条件としているという。日本に来て定住していただくのはいいけれども、仕事をするという目的で入ってこられる方は、日本語ができるということを前提にするという考え方もあり得ると思うんですね。それは、先方の国で、母国でしっかりと勉強していただくとか、あるいは先方の国でしっかり勉強していただくそのシステムについて日本政府が何らかの、条件なりシステムのあり方について、こういったものを最低限やってもらわなきゃいけませんよと、認可をするとか、そういうやり方もあり得ると思います。

 あるいは、何らかの条件によって、余り日本語ができないけれども来てしまう、しまうという言い方はおかしいかもしれませんが、来る方については、国内でしっかりと勉強していただくことについて、それも何らかの担保をして、それがままならないで仕事だけやっている方には帰っていただく、こういう考え方もあり得ると思うんですけれども、その辺はいかがでしょうか。

三浦政府参考人 日本語の教育の問題につきましては、法務省だけでにわかにお答えするのは難しい面もございますけれども、少なくとも、先ほど申し上げましたように、日本に在留される外国人は日本語ができるにこしたことはないわけでございますので、そういった日本語の習得の機会、これは拡大されるべきなのかなと思うわけでございますけれども、それにつきましてどんなことをすべきなのかということは関係省庁ともよく協議をしていきたいというふうに考えているところでございます。

津川委員 例えば留学生、就学生の方々。単純に日本に働きに行こうという方と相当違う、一線を画していると言っていいと思うんです。日本語を勉強する、最低限の部分はある程度わかっていて、なおかつ、日本でさらに日本語の勉強をしたい、日本の文化を勉強したいというような方々、そういった方々に、当然、日本を理解していただいて、日本を好きになっていただいて、そういった方々に日本に働いていただくというのは、ただただ金稼ぎに来ようかという方とはやはりちょっと違うかと思うんです。

 そういった意味で、留学に来られたり就学に来られて、ある程度しっかり勉強された方を、また日本で働いていただくという道をある程度考える。ドイツなどでも大学生の留学というのは非常に受け入れやすい。これは大学のシステムの違いもありますけれども、どんどん受け入れてくれる。そこでしっかりとした勉強をした方については、ドイツでの働くという条件も非常によくなるというふうな話があります。日本もそういうことを考えていく必要があるんじゃないか。

 留学生の方々をその後日本に受け入れていくという流れについて、検討されているかどうか伺います。

三浦政府参考人 委員御指摘ございましたとおり、留学生の方は我が国に興味を持っていただいている方でございまして、留学先として日本を選んでいただいている。その日本の文化に触れながら学んだという観点からしますと、我が国のよき理解者たり得る人材になる方だというふうに認識しております。

 こういう観点から、入国管理局におきましても、日本で留学されて学業を終えられた方が卒業後に我が国において就職等をする場合に、就労目的の在留資格への変更手続を円滑に行うように努めているところでございます。また、同様の観点から、留学生の方が卒業後に我が国で就職活動を行っておるようなケースで、大学の推薦がある場合には、もう留学の期間は終わっておるわけでございますが、留学から短期滞在という在留資格への変更を許可いたしまして、最長で百八十日間日本に滞在することを可能というふうにしております。

 さらに、就職内定者につきましては、企業において採用されたことの文書の提出がなされた場合には、内定から就職までの間、一定の要件のもとに在留を認めるべく、来年度に必要な措置を講じることとしておるところでございます。

津川委員 ところが、その当の留学生あるいは就学生と言われる勉強をしに来たはずの人が、いつの間にかいなくなってしまったりとか、あるいは、別にもともと働きに来る意思があったんじゃないんでしょうけれども、そうはいっても日本の物価が高くて生活もなかなか厳しい。普通の大学生、日本の大学生がするのと同じように、勉強しながら、勉強しない学生も多いですけれども、勉強しながらアルバイトをする。アルバイトをしているうちに、何だかんだ言って結局そっちばかりになってしまって、勉強がおろそかになって、さらにはどこかへいなくなってしまうという例があります。

 最初からそういう目的であったのは論外だと思うんですが、そうではなくて、本当に勉強をしたいと思って来たけれども、物価が高くて非常に厳しい、何だかんだ言っているうちに勉強が続かなくなって、本来やりたかった勉強ができなくなってしまうというのは非常に不幸なケースだと思います。

 そういった意味で、やはり奨学金制度を大いに活用するということをやるべきじゃないだろうか。日本にも当然そういった制度はありますけれども、これは先ほどのドイツの話でいいますと、ドイツに比べるとやはり非常に少ない。日本で大いに勉強していただきたいということであれば、その奨学金制度というものをもう少し拡充するということも必要ではないかと思いますが、この奨学金制度の現状と、今後どういった充実を図っていくか、これは文科省でよろしいですか、お願いします。

泉政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国で学ぶ留学生が経済的にも不安なく学業生活を送れるようにすることは非常に重要なことでございまして、そのための支援を充実していくことが必要と考えております。

 文部科学省といたしましては、このような観点から、国費外国人留学生に対する奨学金の支給ということを行ってきておりまして、これは、大学院学生については月額十七万五千円、学部学生については月額十三万五千円を支給するもので、合計一万二千人分ほどの枠をとってございます。これらに対しましてはさらに、渡日あるいは帰国にかかわる往復の航空券の発給を行うほか、授業料等の教育費を負担するといったことで、我が国において勉学に専念できるよう必要な支援を行っているところでございます。

 それから、私費の留学生に対しましても、学習奨励費という形で支給を行っておりまして、これにつきましては、大学院学生は月額七万円、学部学生等につきましては月額五万円で、合計約一万一千人分の枠を用意しているところでございます。

 それからさらに、留学生を受け入れて、その留学生に対して授業料の減免を行っている私立の大学等の学校法人に対しまして、授業料減免を行ったことに対する補助などの支援を行ってございまして、文部科学省といたしましては、引き続きこれらの施策を充実することによりまして、留学生の勉学の条件整備に努めてまいりたいと考えております。

津川委員 今、一体どのくらい月額払うかという話は細かく説明をいただきましたけれども、現状はどうなっているかというところの答弁がそれだと思うんですが、それをこれからどうやって充実させていきますかということについては、これから充実させていきますとしか答えていただけないんですが、どういうふうに充実させていくのか、しないのかでもいいんですけれども、このままのとおりでいきますという話なのか、ちょっと今後の話をしていただけますか。

泉政府参考人 ただいま申し上げました諸施策につきましては、例えば国費留学生の新規受け入れ人数でございますけれども、十六年度に比しまして、若干ではございますけれども、新規の受け入れ人数の増員を図ってございます。それから、私費の留学生の学習奨励費につきましても人数枠の増員を図ってございまして、こういった施策の充実の取り組みに引き続き取り組んでまいりたいというふうに考えております。

津川委員 では、何年までにどこまで広げるという発想があるかどうか。なければないでいいです、お答えいただけますか。

泉政府参考人 留学生の受け入れにつきましては、従来、留学生受け入れ十万人計画というものを策定いたしまして、先ほど申し上げました国費留学生の受け入れあるいは私費留学生に対する学習奨励費の支給等の施策の充実に努めてまいったところでございますけれども、留学生の受け入れ人数が、昨年の五月の段階の数字でございますけれども、十一万七千人ということになりまして、十万人が達成されたということになっているところでございます。

 こういった状況を踏まえまして、中教審の方で、留学生の受け入れ政策の新たなあり方について御検討いただきまして、平成十五年の十二月に答申をいただいたところでございまして、今後とも、留学生が五年間で今の三割程度はふえるであろうというような見込み等もいただいておりまして、そういった留学生の増加見込み等も勘案しながら、各年度の先ほど申し上げましたような施策の充実を図っていきたいというふうに考えております。

津川委員 わかりませんでしたけれども、要は、奨学金でどんどん来ていただこうとか、あるいは、どんどん来ていただく方に経済的な負担をしないで留学をしていただくという発想が余り積極的にはないのかなという感じを受けました。

 要するに、お金持ちの方が来ていただけばそれはそれでいいんでしょうけれども、来たけれども経済的に厳しいのでドロップアウトしてしまう方がいらっしゃる現実に対して、奨学金制度というのをもう少し戦略的に考えるべきじゃないかなという思いがあったものですから伺いましたが、それは検討していただければいいと思います。

 次が本題でございますが、今回のこの基本計画の中で、なかなか変わった表現をされたなと思うのが、これまでの専門的、技術的分野に該当する人々に対してより来やすい状況にするということはもちろん、観光で来られる方もどんどん来ていただきたいということももちろん、ただ、労働者という考え方、生産年齢人口が減っているということに対応するものとして、「現在では専門的、技術的分野に該当するとは評価されていない分野における外国人労働者の受入れ」ということを書いています。

 きのうの一部の報道では、もうそれを受け入れるんだというような報道がありましたけれども、それはちょっと勇み足かなと思いますが、その受け入れについて検討していくというんですね。検討していくというだけなら、検討する、いわゆる行政用語でいえば何もしないということも含めて検討するというような話にとられなくもないんですが、その前におもしろい言葉がついていまして、「着実に検討していく。」こういう日本語は普通余りないと思うんです。着実にといったら、実行していくとか実施していくという話で、着実に検討していくというのはいまいちよくわからないんです。

 そこで、専門的ではない、技術的ではない分野とされている方々の受け入れを検討するらしいですが、どういう分野の方々を今想定しているのか、お答えをいただきたいと思います。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 現時点で具体的にこの分野ということを私ども想定しているわけではございませんが、委員御指摘の表現の部分でございますけれども、やはり人口減少時代を迎えて、労働力の確保という観点から検討はすべき時期に来ているのではないかというのがこの第三次基本計画の表現の意味するところだろうというふうに思います。

 ただ、その中でもいろいろな要因がございまして、これも先ほど委員るる御指摘ございまして、大臣からも御答弁がございましたが、国内の治安問題でございますとか、労働市場に与える影響でございますとか、産業の発展、構造転換に与える影響、社会的なコスト等の問題もございます。こういったさまざまな観点を踏まえた上で検討をすべきである、こういう趣旨で書かれているものと私は承知しているわけでございます。

 現在では、専門的、技術的と評価されていない分野という場面ではいろいろなものがあり得るんだろうと思うのでありますけれども、この基本計画の表現を見ますと、この分野における受け入れというのは、受け入れを前提として検討するというふうには私どもも理解しておりませんで、いろいろなお考えがあると思いますので、そういうお考えを伺いながら、今後どういう方向に持っていくかということについては着実に検討をすべきだ、こういうふうに理解しておるところでございます。

津川委員 それはわからないですよ。全く入れないことも含めるということでしょう、そうしたら。着実に検討して入れないことになりましたというのも、そこまでありますという話なんですけれども、それはちょっといかがなものかと思います。局長としてはそういう答弁になるのはある意味では理解しますけれども。

 では、もう少し質問を変えますが、「現在では専門的、技術的分野に該当するとは評価されていない分野における外国人労働者」というのは、単純労働者というふうに読みかえていいですか。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、現在では専門的、技術的と評価されていない分野と申しますと、かなり幅が広くて、その表現のみでは単純労働者も入ってくるような理解ができるんだろうと思うんですが、そのほかに、実態として専門的、技術的な分野でありながら、入管法等の手当てで必ずしも専門的、技術的という評価をされていないところがあるのではないか、こういうところをまずはどういうふうに対処していくかということを考えるべきだろうと思っております。

 具体的に申しますと、外国の企業と日本の企業、企業同士が契約をいたしまして、外国の企業の従業員が日本に来まして、日本の企業と連携をして、長期間の出張でございますね、そこで共同研究開発などを行うというケースがございます。これを我々、長期出張、こういうふうに言っておるんですが、かなりITとか高度産業分野の方が多いというふうに理解しております。こういう人に対しまして、今、適切に付与する在留資格が必ずしも設定されていないんではないか、こういう問題意識がございます。ここら辺を何とか考えていかなきゃならないというのが一つ。

 それから、現在、資格の相互認証制度というのを特定の国と行っております。例えば、ある外国においてIT関連の特定の資格を持っている人は、日本の資格を持っていると同等に扱って、来ていただいて働いていただく。こういうところについて、これを要件を緩和していくという方向も一つの考え方かなというふうに思います。

 それと、現在、若干変形になっておりますのが、外国人の方であって日本の医師国家資格を取っておられる方ですとか日本の看護師の資格を持っておられる方について、さまざまな要因があったんだろうと思いますけれども、日本において医師や看護師として就労する年限を制限しておるというところがある、こういうところも緩和していくというような方向で、まずもってはこういうところを対象に考え方を整理していく必要があるのかなというふうに考えておるところでございます。

津川委員 今の話は、今現在、専門的、技術的分野とされている分野についての見直しをするという話だと思うんですよ、今の言い方は。それはITの関係の相当な技術を持っていらっしゃる方なわけでしょう。外国の資格を持っていらっしゃるわけでしょう。日本の資格を持っているような方でその期間を長くしようという話ですが、基本的に、専門的、技術的な方々の話しか今されなかったんですよ。

 今は専門的、技術的とはされていないけれども、専門的、技術的と言ってもいいんじゃないだろうかという人についての見直しという話をされているんですが、そういう文章なのか、単純労働者も含めて考えているのか、これはどっちなんですか。

三浦政府参考人 必ずしも、私が先ほど説明した長期出張者等に限定されるものではないという表現だと思っております。その中で、どういう考え方を持っていくかということについてはさまざまな要素を考えながら検討をすべき時期ではないか、こういう意味だと理解しております。

津川委員 では、単純労働者の定義が何かというのもあるかもしれませんが、報道などでは、農林水産業にかかわるところに入れるんじゃないかとか、これは単純な推測から書かれたものだとは思いますけれども、この文章の流れからいくと、人が減ったから受け入れをふやすと言っているんですから、要するに、人が足りない分野に入っていただく、こういう読み方が普通にすればできると思うんですね。

 単純労働者の方々に入っていただくということも検討の材料に入る、そういう答弁だと思いますが、一点だけ、ちょっと大臣、よろしいですか。今、看護師さんの話が出ましたので、日本の看護師の資格を持っていらっしゃる外国人の方が日本で看護師として仕事をされるということについて、御所見があれば伺いたいと思います。

南野国務大臣 これは、国際的にも看護の連盟というのがカバーされておりまして、そこでもいろいろ、例えば東南アジアの方々がアメリカに行くとか、アフリカからどこかに行くとか、それは仕事、ライセンスを持った者がいろいろ全国に散らばろうとしておりますけれども、そういう問題についても各国でちゃんと話し合いがされております。

 日本でも同じく話し合いがされておりまして、日本の看護の立場の人間といたしましては、日本で働く場合には日本のライセンスを取ってほしい。その理由は、先ほど言葉の問題も出ておりましたけれども、人々とかかわり合いをする職業である以上、コミュニケーションがとれるというのが一番のポイントである。これは老若男女を問わないわけでありますので、そういう基本的なベースの上に、そして働きに来ていただくならば、我が国でつくる条件というものにも適合していただきたい。さらにそれに適合した場合、国家試験を受けたりという条件が一緒のレベルに到達した場合は、労働賃金は日本の賃金と同じにしてほしいというような条件も我々検討会の中でやっておりますので、これは比較的全国共通しているというふうに思っております。

 だから、共通ライセンスは今のところありませんというところで、各国でそれが調整されているものと思っております。

津川委員 共通ライセンスなり、日本で働く以上は日本で働けるだけのルールにのっとっていただきたいというのは当然あり得ると思いますし、日本語が絶対必要な職業であれば日本語も相当堪能でなければいけない、そういうのはあり得ると思いますが、専門的な方とか技術的に能力を持っていらっしゃる方々の話だけするなら楽なんですが、実際は、現在、日本の社会がそうじゃないという話だと思うんですよ。単純労働と言われる人たち、そういう分野の人たちが相当入ってこられている。その中には日本語ができない方も実は相当いらっしゃる。

 先ほど、冒頭私は申し上げましたけれども、要するに、日本に来て働いているけれども、ある意味で日本の社会には溶け込んでいない。彼らだけの社会をつくっている。しかも、家族を連れてきて、子供を連れてきて、その家族、子供に対する社会保障制度が不十分であったりとか、これは厚生労働省の方から話をいただければいいんですが、それも、外国人であってもできるだけしっかりとそういった保障ができるようにやっていただく、あるいは子供であれば外国人であっても教育はしっかり受けられるようにする。外国人の教育ですから、日本人の教育とは条件が若干違う部分がたくさんありますので、その辺の制度はしっかりつくっていかなきゃいけない。

 特に、外国人労働者の多い自治体なんかでは、積極的にその問題点を認識して取り組みをしようということを相当やっているわけです。ただ、日本の国の認識として、日本には単純労働者はいないんだ、そういう認識を持たれているんじゃないのかなと思うんです。そういうのはいないから、そういう人たちについての働き方、生活の仕方についてのシステムについて十分に検討されてこなかった。

 だから、水面下ではそういう人たちはたくさんいるけれども、ある意味で、いろいろなところで弊害、問題が出てきてしまって、彼らはこっそりと自分たちの社会、コミュニティーをつくって、多少お金を稼いだら自分の国に帰っていく。あるいは、帰っていこうと思ったけれども、長年住んでいるうちに、子供は、日本語はできるけれども母国語ができなくなっちゃったとか、こんな話も幾らでもあるわけです。それはもう世界的には、例えばドイツとか、ヨーロッパの各国ではそういう例が幾らでもあって、何年間か来るつもり、あるいは何年間か受け入れるつもりだったけれども、自然発生的に外国人集落というものがどんどんできてしまう。そういった社会が国の中にできてしまう。それも、そもそも余り想定しなかったので、安い賃金で働いていて、その国の人たちと非常に大きな問題を起こしてしまう。

 今大臣がちらっと触れていただいたように、条件を同じにして、外国人であっても日本人と同じような条件で働いていただく、高い賃金で働いていただく。彼らにとってはプラスだし、雇用者側としては厳しい話かもしれませんけれども、日本の労働市場というものを考えたときにはそれが一つ必要な対策じゃないかなということが言われているんだと思うんです。

 大臣、これを読んで私が感じたのは、まさに、現場ではそうなっているのに、現場ではそういう人たちがいろいろ入ってきていろいろな問題が起きているのに、政治の場、特に政治家、大臣がその状況を認めようとしない、政治的な判断をしようとしない。日本には技術的な、専門的な方々が入ってくる、それについてどうするかという話しかしなくて、単純労働で入ってこられている方々の現状をある意味で無視してきている、あるいは目をつぶってきている。それが問題であって、いや、もう持ちこたえられませんということがここに書いてあるんだと思うんですよ。法務省がここまで書くのは、私はすごいなと思いますよ。「着実に検討していく。」というところまで書いているんですから、単純労働者まで。そうですよね。私は、やはりそこを政治的に判断しなきゃいけないと思うんです。

 これを、とにかくにっちもさっちもいかなくなってからどうするかという話ではなくて、まさにそういった方々を受け入れるのか、あるいは受け入れない社会にするのか。これはもう選択ですから、政治がどう判断するのか、あるいは国民世論がどう判断するのかというところだと思います。そこの議論をもうとにかくしてくださいという、これは現場の、役所の方々の悲鳴だと思うんですよ。入管だけじゃこたえられませんよ、一生懸命抑えていたけれどもばんばん入ってきて、中でどんどん住んでいるじゃないかと。いないことになっているので、どうなっているんだと言われても、我々どうしようもありませんという現場の悲鳴だと思いますよ。ですから、これをどう考えるのか。

 それからもう一つ、そういった方々を本当に受け入れていくという、ある意味で現状を追認していくときに非常に心配になるのが、やはり外国人に対する差別、偏見です。これも、話の中にも、例えばそういった方を受け入れていくときには、その受け入れが我が国の産業及び国民生活に与える影響を十分に勘案する必要があり、その中には例えばと、四つ出ているんですが……(南野国務大臣「何ページですか」と呼ぶ)ごめんなさい、十三ページなんですけれども、その上から五行目ですけれども、「例えば国内の治安に与える影響、国内労働市場に与える影響、産業の発展・構造転換に与える影響、社会的コスト等」と。一番最初に出てきているのが治安に与える影響なんですよ、大臣。一番最初に例えばで出てきたのが治安だというんです。外国人がたくさん入ってくると治安が悪くなると言っているんですよ、ここは。そういう認識でいいんですか、大臣。大臣の認識を伺います。

南野国務大臣 外国人の方々に来ていただくという観点につきましては、政府はやはり挙げて国際的な観点でそれを広げていこうという体制はとっておりますが、それはいろいろな省庁が関連してきます。先ほど先生がおっしゃったのは、農林の関係でしょうし、またそのほかにも経済産業省が掌握しているもの、または文部省、厚生労働省が、いろいろな省庁がありますので、その省庁の間でどのように検討していくかというのは、政府の課題でもあろうかと思っています。

 政府は、閉鎖するということではなく開放する形、受け入れていく形でどうしたらいいかということでございますが、それにつきましては、今先生がおっしゃった、犯罪と直接関係する方、そういうことを私は思ってはいませんけれども、そうならない方法をどうするか。もしそれが事実であるとすればどういう方式でいくかということで、出入国管理という問題点がそこで出てくるというふうに思います。そういう意味では、適正に手続をとられた方は日本にお入りいただく、それが適正でない方の場合には、我々にとっては大変悩ましい課題であるな、その悩ましい課題の問題点をなるべく早く解決していかなければならない。

 今先生が治安とおっしゃったことについては、不法に滞在しておられる方が二十五万人おられるという、それをどのように半減するかというところまで法務省の課題としてあるというわけでございますので、仕事をしていただく方はどうぞ歓迎ということも、我々、国際的な問題点として検討しているところであります。

津川委員 不法滞在だから法を犯しているじゃないかとおっしゃるかもしれませんけれども……(南野国務大臣「そんなこと言っていない。それは言っていないですよ」と呼ぶ)いやいや、不法滞在がこれだけと言いますけれども、それはルールがそうなっちゃっているんですよ。いや、なっちゃっているというとおかしいかもしれませんけれども、現実に合っていないんですよ。

 私は、治安に与える影響もそれは大事だと思いますよ。外国人がたくさん入ってくるときに、そういった方々が日本でどういう生活をされるのか。だけれども、それは、日本人であろうが外国人であろうが、犯罪を減らしていかなきゃいけないし、犯罪が起こったときにはちゃんと検挙していただかなきゃいけないしという話であって、外国人が多くなると治安が悪くなるというのは、やはりちょっと問題だと思いますね、そういう認識は。(南野国務大臣「そういう話じゃない」と呼ぶ)いや、そうじゃなくて、いいですか、例えば、「国内の治安に与える影響」というのが一番最初に出てくること自体が問題だと言っているんです。

 私が一番大きな問題だというのは、やはり労働市場に与える影響ですよ。労働市場に与える影響というのは、今、日本で働いている人たちが安い労働力がどんどん入ってきて困る、そういう問題点もありますが、もう一つは、単純労働の外国人の方々は全部帰ってくださいとか、あるいは日本の賃金水準と全く同じにしてくださいとか、すべて日本の社会保障制度と同じような条件を与えてくださいと言われたら困る中小企業が山ほどあるんですよ、現実は。政治家だからわかるでしょう、現場を歩けばそんなところが幾らでもあるのは。

 だから、今もう既に、どうやって受け入れようかという話の段階をある意味で超えちゃったんですよ。たくさん入ってきているんです。その現実をしっかり見て、そういった方々にどういうルールで働いていただくか、どういうルールで生活をしていただくかということを早急に議論しなきゃいけない。これから検討しますということを政治家が言っている場合ではないと私は思うんですよ。

 現場の方々ですら、もう法務省でも、厚生労働省、ごめんなさい、ちょっともう答弁をいただく時間がないけれども、厚生労働省でも警察庁でも、一つの省庁ではもう対応できませんと。だれがやるんだといったら、もう政治家が議論するしかないわけですよ。政治家が判断するしかないわけで、その議論をきょうさせていただきたかったんです、できませんでしたけれども。

 ぜひ、外国人がたくさん入ってくるとどうなるかとか、技術的な、専門的な分野をどうするかという話の段階でとどまるのではなくて、現実を見ていただいて、もういわゆる単純労働に相当多くの方々が入っていらっしゃる、その中でいろいろな問題点が起こっているという、その現実にまず立ち返った上で、どうやって受け入れていくべきなのか、受け入れていかないのかという議論をぜひさせていただきたいと思います。

 時間になりましたので、終わります。どうもありがとうございました。

塩崎委員長 次に、小林千代美さん。

小林(千)委員 民主党の小林千代美です。

 きょう、三月三十日に民主党は、野党三党と共同提出といたしまして、夫婦別姓制度に関する民法の一部を改正する法律案を参議院の方に提出いたしました。これは、衆参合わせて十一回目になります。めげずに出し続けなければいけないと思っているんですけれども、参議院が選挙をやりまして廃案になりましたので、新規に提出をし直しました。衆議院では、十五年の衆議院選挙の後、十六年の百五十九国会で提出をしておりまして、これは引き続きの継続審査というふうになっております。

 実は、私も当事者でした。平成七年から五年間ぐらい別姓を実施しておりました。民間の会社で働いておりまして、婚姻届は出していたものですから、いわゆる通称姓、旧姓を通称姓として使っておりまして、その煩わしさ、面倒くささというのが本当に身にしみて、自分で体験をしてきた者の一人として、また、議員になる前から、この問題につきましては地元の市民運動ですとかそういうところで取り組んでまいりましたので、一日も早くこの法案が通ることを願っている者の一人でございます。

 この問題が十年ぐらい前から国会でも議論に上げられておるところは御承知のとおりだと思います。平成八年に法制審議会が答申を大臣に対して出したわけでございますけれども、以来十年間、何も政府としては動きがありません。

 審議会の答申というものは、私たち、さまざまな法案を審議する上で参考にしなければいけないことですし、答申を受けて法案になってきたときに、例えばどこの部分が採用されたのか、採用されなかったのかということを見ることは大変重要なことだと思うんですけれども、大臣、平成八年からもう既に十年間経過しようとしておりますけれども、法制審議会が答申を大臣にしながら、閣法として今まで全く出てきていない。それは過去に三答申しかないそうですね、法制審議会が答申を大臣に出しながら、閣法として提案されなかったものは。圧倒的少数だということです。

 大臣、法制審議会が答申を出しながら、今まで政府として、閣法として提出していない、この理由は一体何なんでしょうか。

南野国務大臣 先生の熱を入れてのこの夫婦別氏等の課題があろうかと思っております。きょうお出しになられたということで、いずれ我々の方にもその趣旨が伝えられるというふうに思っております。

 我々は別氏と呼んでいますが、選択的な夫婦別氏等につきましては、法務省といたしまして、平成八年二月の法制審議会の答申を踏まえつつ、少しでも多くの方の御理解を得られるように努力を続けてきたところであります。

 先生がきょうお出しになられて、議員の間でもそれが周知するという方向であろうかと思っておりますが、しかしながら、この問題は、国民各層や関係各方面でさまざまな議論があるということも承知いたしております。

 政府として提出することにつきましては、なお各方面の御理解を得ることが難しい現状にあると言わざるを得ない、そういう認識を私は持っておりまして、したがいまして、現在のところ、閣法として提出するに至っていないということであろうかと思います。

小林(千)委員 この十年間、どのような検討をして、取り組みを関係各府省が行ってきたのかというところも私は指摘をしていかなければいけないと思うわけなんです。

 男女共同参画基本法というものができ上がりまして、それに基づき、基本計画というものができ上がっております。

 平成十二年に男女共同参画基本計画が上げられまして、「男女共同参画の視点に立った社会制度・慣行の見直し、意識の改革」というのが項目の中に挙げられております。それをするために、「具体的施策」といたしまして、「家族に関する法制の整備」というものを具体的にここでは挙げられているんですね。「選択的夫婦別氏制度の導入や、再婚禁止期間の短縮を含む婚姻及び離婚制度の改正について、国民の意識の動向を踏まえつつ、引き続き検討を進める。」という具体的施策が書いてございまして、「担当府省」として、内閣府、法務省、財務省、厚労省、関係府省となっているわけなんです。

 まず最初に、この担当府省とされております内閣府の方に伺います。この具体的施策を受けて、担当府省の内閣府といたしまして、この間、どのような検討あるいは取り組みをされていらっしゃるでしょうか。

名取政府参考人 お答えいたします。

 議員御指摘のとおり、平成十二年十二月に閣議決定されました男女共同参画基本計画におきましては、男女平等等の見地から、選択的夫婦別氏制度の導入について、国民の意識の動向を踏まえつつ、引き続き検討を進めるとされております。

 内閣府におきましては、これを踏まえまして、男女共同参画会議基本問題専門調査会におきまして調査検討を進めまして、平成十三年十月には「選択的夫婦別氏制度に関する審議の中間まとめ」を取りまとめたところでございます。この中で、「個人の多様な生き方を認め合う男女共同参画社会の実現に向けて、婚姻に際する夫婦の氏の使用に関する選択肢を拡大するため、夫婦が同氏か別氏かを選択できる選択的夫婦別氏制度の導入が望ましいと考える。」としているところでございます。

小林(千)委員 では、引き続き法務大臣の方に、このような施策がありまして、それを受けて具体的に実施をしなければいけない担当省として、法務省として、この五年間、どのような取り組みをしていらっしゃるでしょうか。

南野国務大臣 委員御指摘の基本計画を受けまして、世論の動向を把握するために、平成十三年五月に、内閣府において選択的夫婦別氏制度に関する世論調査が実施されました。この世論調査では、この制度の導入に賛成する意見も以前よりふえてきましたけれども、その一方で、今の法律を改める必要はないという意見や、婚姻前の氏を通称として使えるように法律を改めればよいとする意見も相当数あったということでございまして、国民の意見がなお分かれているということでございます。

 そこで、法務省としましても、世論調査にあらわれました世論の動向を踏まえまして、国民の理解をさらに深める必要があるという判断のもとに、法務省のホームページなどを通じまして制度の周知に努めてきたところであります。

小林(千)委員 実際に具体的な取り組みが、十二年、十三年ごろは随分積極的に動かれていた時代もあったようですけれども、当時、大臣は森山大臣でしたね。その後、五年間ぐらい議論がストップしている、取り組みが、あるいは検討がストップしているかのように思えてなりません。

 世論調査というのも、各種、いろいろなところがやっていますよ。もちろん政府としてもやっていますけれども、さまざまな民間の団体ですとかあるいはマスコミなんかもやっております。政府としては、世論調査、この間、昭和六十二年ぐらいから頻繁に行っていたようですけれども、平成十三年のデータを最後として、その後は世論調査もやっておりません。この間、理解に努めるために、具体的にどのような取り組みをしていたのかということが、政府として全く見えてこないわけなんですよ。

 国民の中で、世論がというよりも、これをぜひ実施してほしいという声が少なくなったとは到底思えません。私たちの具体的な身の回りを見てみましても、国会の中でも別氏を使っている当事者の方はたくさんいらっしゃいますし、具体的な名前もおわかりだと思いますし、多くなってきましたよ。女性だけではありません。男性も当事者です。きっと法務省の職員の方でも、多くの方が別氏を使っていらっしゃると思います。

 ニーズはふえてきているのに、世論に対して、このような対策を法務省は一体どれだけやっているんでしょうか。

南野国務大臣 先生おっしゃる選択的夫婦別氏制度については、家族のあり方とも大きく関連する問題であろうかと。そういう意味では、世論の動向を的確に把握することが重要である。先ほど申しましたけれども、前回の世論調査から既に四年近くが経過いたしておりますので、今後、再度の世論調査の実施について、調査を所管している内閣府と相談しながら検討していきたいというふうに思っております。

小林(千)委員 実際にこのように男女共同参画の視点に立った意識改革、制度改革というものを提案されているわけですから、それの実現に向けて積極的に法務省としても取り組んでいただきたいと思いますし、私たちも、私たちの責任として、世論を盛り上げていく、あるいは国会の中で活発に審議をしていくといったことは引き続き行っていきたいと思います。

 この間、さまざま、森山大臣の御発言もありましたし、前野沢大臣も、この件に関しては御自身のお考えも発表していらっしゃいます。南野大臣御本人として、この選択的別氏導入については、個人としてどのようにお考えでしょうか。

南野国務大臣 個人としてお問いになるならば、私は、生まれてこの方、南野という姓だけで通してきておりますので、そういうような観点から、特に他者がどのようにお感じになっているかということをいろいろ今収集させていただいて、どのような立場で生活することが当事者にとっていいのかということも今検討しているところであります。

 心の中で考えているところでありますが、両サイドの意見が私のところにはやってきておりますので、今ここで私が、これがいいよ、これがいいよということはちょっと申し上げられないんですが、そういう意見が大方の意見になれば、我々としては積極的にやっていこう。

 でも、それまでに、家族のあり方ということを皆様方がどのように考えていくのか。少子社会、または夫婦の問題、離婚が多いというような社会的な環境の中で、夫婦が仲よくいくということも一つのポイントになってくるわけです。それで、氏の表現の仕方というのは、どれを選択したいかというその家族がお決めになればいいことであろうと思いますけれども、その家族には子供さんもおられます。そういう方々の問題も含めながら、家族という観点をどう考えるかということであろうと思います。

小林(千)委員 私は、大臣御本人のお考えを聞きたかったんです。自分は当事者でないから必要ないと。いつ必要になるかわからないです、大臣。いつ自分が当事者になるかわからないですし、それは、自分が当事者でなくても、世の中にはそういう当事者はいらっしゃるわけです。もちろん両方の意見があると思います。賛成派の方もいらっしゃる、反対派の方もいらっしゃる。もちろんそれは勘案していかなきゃいけない。大臣個人、どういうふうにお考えですか。

南野国務大臣 私個人としては、両親が一つの名称を持ってもらったということは、子供としてうれしいなと思っています。家に帰って、私の母は吉留さん、父は南野さん。父と話をするときは、南野さん、これはどうですか、母に向かっては、吉留さん、どうですか、そういうような観点になるようなことには、子供は迷ってしまうのかなという気持ちも一つございます。

小林(千)委員 承知いたしました。

 ただ、家の中で、自分のお父さん、お母さんに向かって、南野さん、吉留さんというふうに話しかけることは余りないのじゃないかなというふうに思います。指摘しておきたいと思います。大臣のお考えは承知をいたしました。

 次に参ります。

 続きまして、昨年の十一月の一日に、出生届に関して、嫡出子でない子の戸籍における父母との続柄の記載、そして戸籍届書の様式について改正が行われました。これは法改正ではなくて、省令、施行規則の改正ですので国会の中で審議をされることはなかったわけでございますけれども、問題が問題ですから、もちろん非嫡出子の問題あるいはプライバシーに関する問題にもなってくると思いますので、当事者にしてみては、広く知らしめないといけない内容なわけなんですね。

 この戸籍法施行規則の改正について、どのようにあまねく周知徹底がされたでしょうかということを伺いたいんです。

 といいますのも、この規則改正につきましては、法務省民事局長のお名前で、各法務局長そして地方法務局長に関して、これこれこうする省令が公布、施行となりましたので関係する支局長及び市区町村長に周知徹底願いますという文書が民事局長から担当者に流れております。

 それを受けて、各担当の地方法務局長が各管内の支局長あるいは管内の市区町村長あてに、自治体あてに文書を配付しているんですけれども、これを見ると、民事局から来た内容をそのままコピーしてくっつけて通達しているんですよ。

 それで、各市町村は、具体的に窓口でそういった市民が来たら対応に当たらなければいけないわけですから、どうしているのかなというふうに思いました。まあ、行く方としましては、自分の子供をこういうふうに続柄を変えたい、プライバシーの侵害にも当たるからということで、例えば手続に何が必要なんだろう、どういう書類が必要なんだろう、できれば市役所に行くのは一回で済ませたいという思いは当然でしょうから、あらかじめいろいろなことは下調べしておきたいわけなんです。

 しかしながら、地元の市役所のホームページなどを見てみますと、書いていないところが圧倒的なんです。いろいろ探しまして、やっと見つけました。ある市の出生届に関するホームページのところで、嫡出でないお子さんの表記が変わりました、こうこうこうこうです、詳しくは法務省民事局のページをごらんください。法務省民事局のページを見ますと、詳しくは市町村にお尋ねください。たらい回し、または責任の転嫁、押しつけ、これでどうやって周知徹底したんですか。

寺田政府参考人 この問題は、身分関係で一つ重要な論点でもございましたので、私どもといたしましては、取り扱いを変えた直後に、おっしゃるとおりいろいろな形で広報いたしました。記者の対応もいたしまして、記者発表の形で、問題の性質それから取り扱いの変更について詳しく御説明も申し上げましたし、また、ホームページでも、今御批判がございましたけれども、制度の概要については御説明したわけです。

 ただ、私どもとしては、先ほど申し上げました通達で、具体的な手続については市町村の方で御説明になるという前提で広報したつもりでございますが、必ずしもその趣旨が市町村に御理解いただけなくて、おっしゃるとおりややそごがあるような印象を与えたということは、まことに遺憾でございます。

 具体的な手続的な御相談は、現地の市町村で十分にやれるような体制というものをとっていくように努力をいたしたいと思っております。

小林(千)委員 国で定められた省令の改正で地元自治体は取り組まなきゃいけないわけですから、このような不誠実なといいますか十分でない対応では、本当に市町村にとってはいい迷惑ですよ。当然、法務局にお問い合わせくださいということになってしまいますので、ここはもうちょっと丁寧な各自治体への対応というものをするべきじゃないでしょうか。

 もう一つ指摘したいんですけれども、私も、出生届を自分の市に行っておとといもらってきました、法改正により新しい様式になったものなんですけれども。行ったら、住民票をもらうところですとかテーブルがありまして、当然そこに並んでいるのかなと思いましたらなかったんですね、出生届が。ですので、窓口に行きまして、窓口の職員の方に、済みません、出生届くださいというふうに言いました。そうしたら、窓口の人が奥に行ってごちゃごちゃと話し合っていて、奥から段ボールを引っ張り出して新しい袋をあけて、はいどうぞというふうに渡されたんですよ。

 これは何でなんだろう。そこの市は、施行令が改正されてからこの五カ月間、一人も子供が生まれなかったということは考えられない。今のを法務省に伺いましたら、今までの様式のものを二重線で消して、古いのはもったいないから使いなさいとおっしゃっているんです。

 でも、これは事がプライバシーに関することで、これで以前の出生届を使わなくすることで幾ら経費節減かわからない。ほかにも経費節減しなければいけない、むだ遣いをやめなければいけないところは山ほどあるんですから、新しい出生届ぐらい使わせたらどうですか。

寺田政府参考人 戸籍事務といいますのは、そもそも論で申しわけございませんが、法定受託事務ということで、基本的な制度の根幹というのは国の方で決めますが、実際の事務というのは市町村の窓口で行うということが長年にわたる扱いでございまして、市町村の方も、戸籍の扱いがどういうことになるかということは、国の方から通知を受けて、実際に実務に当たる人というのも養成をし、その上で具体的な事務を窓口で行っているという体制でございますので、必ずしも詳細を全部国の方でまず御説明しなくても、市町村の方で制度の取り扱いの変更を受けて実際の事務を行える体制はあるわけでございます。ただ、先ほど申し上げましたように、時に十分でないところがございますので、これはまた反省点とさせていただきたいと思います。

 今の点は、出生届の変更の際に、なお十分に従来の届け出書というものを抱えている市町村もございますのでそういう扱いにいたしたわけでございますが、この問題に限らず、戸籍全般にプライバシーの問題というのは非常に重要になってきておりますし、個人情報の保護という意味でも、従来とは違った感覚でやっていかなきゃならないだろうと思いますので、これは今後も私ども十分に、いろいろな具体的な取り扱いの面で見直しをする必要があるのかもしれません、これは制度上の問題ではなくて。その点は御指摘のとおり十分配慮をいたしたいと思っております。

小林(千)委員 市町村に対しては、もうちょっと親切な対応をしていただきたいというふうに思います。

 さて、プライバシーの話も出ましたけれども、そもそも、この施行令の改正、なぜ改正をされたんでしょうか。

寺田政府参考人 これは、非嫡出子の表記をどのようにするかということがかねてから問題になっておりまして、平成十六年、昨年の三月二日に東京地裁で、この点が争点になっていた事件について判決が出ました。その判決においては、嫡出でない子の戸籍の続柄欄の記載のあり方につきまして、従来のやり方では問題があるという御指摘が判決の中でされたわけであります。

 そこで、この記載でなければならないのかという問題意識もかねてから持っておりましたので、当事者の方々の御要望というものも十分にしんしゃくした上で、嫡出でない子の戸籍の続柄欄というものの記載を、従来のように男、女という形から長男、長女という形に改めたわけでございます。

小林(千)委員 一つの裁判の判決がこの改正の理由になっているわけでございます。ところが、この東京地裁の裁判、先日三月二十四日に高裁の判決がおりまして、内容は、一審判決を覆す、プライバシーの侵害には当たらないという内容でした。

 個々の裁判について大臣に見識を、これの場合どうなんですかというのは、今まで聞いてもお答えいただけないことが多いわけなんですけれども、一般的に、このように一目見て婚外子、非嫡出子だというふうにわかってしまう、これはプライバシーの侵害であり、法のもとの平等を侵しているものではないんですか、大臣。

南野国務大臣 戸籍ということに関しましては、親族的身分関係というものをまず正確に明記しなければならない、そういう登録する問題がこの戸籍というところにありますけれども、それを公証することを目的とする制度でもあります。

 これは、民法上、嫡出子とそうでない子とでは法律的地位に差異がある以上、戸籍においては子が嫡出であるか否かということを区別ができるようにしておく必要がある。そういうようなことで、このような記載方法は合理的で、区別であるということは差別ではないというふうな解釈をいたします。そういうプライバシーの侵害に当たるものでもないということがこの問題点の理解であろうと思っております。

小林(千)委員 一審でこのような判決が出て、プライバシーの侵害に当たるからこの戸籍法施行規則を改正したんですね。プライバシーの侵害ではないんですか。

 確かに、今の民法九百条、嫡出子とそうでない子の相続については差異がございます。しかしながら、それだからといって、公開性のある戸籍、これはだれもが閲覧をすることが、取り寄せることができます。戸籍謄本あるいは戸籍抄本にも載っております。

 例えば就職をするときに、会社にあるいは職場に提出するということもあるでしょう。一目見て嫡出子かそうでないかということがわかる。それにより、今さまざまな差別というものが実際起きているわけなんです。そのような、例えば民法九百条があるからといって、一見してわかるような情報をさらしていいのかという問題です。大臣、この記載は差別には当たらないんですか。大臣に伺っています。

寺田政府参考人 大臣のお答えの前に、基本的な理解について若干御説明申し上げます。

 まず、私どもが戸籍の取り扱いを変えました、その施行規則を改正いたしましたのは、従来の扱いが憲法上問題であるからというわけではなくて、適当か適当でないか、相当か相当でないかというレベルで、今のままの制度を維持しておく必要はないんじゃないか、そういう考えから変更したわけで、決して、従来の扱いが憲法上問題であった、あるいは法律の非常に高い価値の上で問題があったという意味ではございません。

 もう一つは、先ほど委員は、戸籍はだれでも取り寄せたら見ることができるとおっしゃいましたが、戸籍は御本人その他利害関係のある方しか取り寄せることはできません。基本的に、登記のような公示制度とは違いまして、これは御本人の身分を御本人が第三者に対して証明する際に用いられるというのが主たる目的でございまして、だれでも見られるというような形ではございません。むしろ昨今、このようなプライバシーの考慮等もありまして、これについての取り扱いは非常に慎重にしているというのが現実でございます。

小林(千)委員 この戸籍法の第十条というところには、戸籍は何人でも謄本等の交付を請求ができ、公開が原則とされているというふうに書いているわけなんです。

 最近のいろいろな、例えばおれおれ詐欺ですとか振り込め詐欺ですとか、そういったところにこういった個人のプライバシーというものが利用されてしまってそのような被害に遭っているという現実があるわけですし、そういったところで情報をどういうふうに遮断するかといいますか、慎重にやらなければいけない。それで、先ほどこの戸籍法施行令の改正があったわけなんです。

 では、なぜ今までのこの戸籍法の省令というものを変えたんですか。維持する必要がないというふうに局長はおっしゃいましたけれども、大臣、これはプライバシーの侵害であるということだから改正したんでしょう。

寺田政府参考人 先ほど大臣が申し上げたことは、プライバシーという憲法上の配慮から見て、それについての侵害に当たるかどうかという意味では、高裁の判決が現にあったように、それはプライバシーの侵害ではないということになりますが、ただ、プライバシーというものの侵害に当たらない場合であっても、そのプライバシーの観点も含めて見て適当か適当でないかという判断はあるわけでございます。

 戸籍は、先ほど申しましたように、最終的にその人の身分関係がわかるようにしなければならないわけでございますが、続柄欄に何も明らかに非嫡出子であるということを殊さら強調してわかるようにしておく必要がなくて、身分事項欄で総合してわかればいいという配慮もあるわけでございますので、そういうさまざまな配慮をした上で変更を決めた、こういうことになるわけでございます。

南野国務大臣 今お答えいたしましたが、この記載についてのプライバシーということは、そうでないということの最高裁の判例などもございます。そういうような観点でありますけれども、表記の仕方をどうするかということにつきましては、選択肢があるというふうなことに立って、そして、それについてもいろいろな御意見があるということでございますが、そういうようなことから省令を変えた、今おっしゃるように長女、長男というような方向に変えたということでございますが、そういうことを御了解いただきたいと思っております。

小林(千)委員 どうも、この間の質問の中で答弁がずれているような気がしてなりません。先ほど、戸籍法の改正でこのような市町村にと質問しましたときは、プライバシーの問題もあるから変えたんだということをおっしゃっていながら、今は、プライバシーの侵害ではないというふうにおっしゃっている。これは私、もう一度この自分の会議録を見直して、もう一度後で質問をさせていただきますよ。今の一連の答弁の中で矛盾するところはなかったかどうか、後でまた検証させていただきたいと思います。

 この婚外子差別については、国連のさまざまな機関も日本に対して勧告を出しているところでございます。

 民主党の藤田一枝議員が、この件につきまして、先日、質問主意書を提出いたしました。例えば、国連の人権委員会、児童の権利に関する委員会、あるいは女子に対する差別の撤廃に関する委員会の中で、この婚外子差別については日本に対して勧告を行っております。

 しかしながら、それに対して答弁書の中では、そのような勧告は「いずれも法的拘束力を有するものではない。」というふうに切り捨てている。ところが、日本はこのさまざまな条約を批准しているんです。批准国としての責任はないんでしょうか、大臣。

南野国務大臣 我が国は、女子差別撤廃条約の締約国であります。今、批准しているとおっしゃった、そのとおりでありますが、これらの条約の規定を遵守する義務を負うのは当然である。

 しかし、議員の御指摘の、嫡出でない子の相続分の問題につきましては、男女平等の理念にも反するものではありません。これは不合理な差別にも当たりません。そういう意味で、女子差別撤廃条約等の条約に違反するものではないと認識しております。したがいまして、我が国がこれらの条約の締約国としての責任を果たしていないとは言えないということでございます。

小林(千)委員 確かに、非嫡出子、男の子だったから、女の子だったからで差別されているわけじゃないですよ。嫡出子か非嫡出子かで差別されているわけです。児童の権利に関する委員会でも、そういった観点から日本に対して勧告をしているわけでございます。

 それに対して、日本は、批准国としての、締約国としての責任をどういうふうにお考えなんでしょうか、大臣。

南野国務大臣 締約国の責任というのは先ほど申し上げたとおりでございますので、条約の締約国として責任を果たしていないということではないということで、これは差別ではないということでございます。

 条約委員会の最終見解に反しているとも言えません。それは、条約委員会の最終見解がもっともなものであれば、法的拘束力を有するものではないとしても、これに従うことも検討しなければならないと思いますけれども、嫡出でない子の相続分に対する最終見解ということが条約に対する理解を誤っていると考えておりますので、その最終見解を受けて民法改正をする必要もないというふうに思っております。

 ですから、締約に違反してはいないということと同時に、民法改正をすることも必要かと問われたら、それもする必要はないということでございます。

小林(千)委員 条約締約国だけれども、法的拘束力をその勧告は有しているものでないということで切り捨てるんであったら、それは、今度共謀罪が出てくるのかもしれないですけれども、何という条約でしたか、あの条約を日本が批准するために日本の国内の刑法を改正する必要はないんですよ。条約批准国としての責任というものをちゃんと果たすべきでしょう。

 日本が批准をしている限り、このような勧告を国連の委員会が出されている。そして、委員会のメンバーの中には、各国から入っておりますけれども、日本からも代表者としてその委員のメンバーに入っている。この間、さまざまな国連の勧告というものを、例の難民の問題にいたしましても日本は無視し続けているわけなんですけれども、世界の中で責任を果たす役割を持つ日本として、こういったところもきちんと対応する必要が大いにあると思います。

 この選択的夫婦別姓の問題に対しましては、子を持ちたいと思うカップルあるいは夫婦に対しても切実な問題でもございます。私たちも国会の中あるいは世論を通して活発な審議を引き続き行っていきたいと思いますので、法務省もこれからもしっかりと検討をしてください。よろしくお願いします。

南野国務大臣 ちょっと訂正させてください。

 先ほど最高裁と言いましたけれども、高裁の判例でございます。

小林(千)委員 以上です。終了します。

塩崎委員長 午前十一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十時三十三分休憩

     ――――◇―――――

    午前十一時三十分開議

塩崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。樽井良和君。

樽井委員 民主党の樽井良和です。休憩を挟んでの委員会にわざわざまた駆けつけていただきまして、本当にありがとうございます。

 きょうは、死因究明プロジェクトというのをやっておりまして、司法解剖の件についてお伺いいたします。

 日本では解剖率というのが極めて低い。欧米ですと、不明の死体というのは大体一〇%から五〇%解剖して調べるということなんですが、我が国の場合、これが四%ぐらいだ。そういった中で、死因が不明の死体は解剖されずにほとんど、変死体なのですが火葬されてしまっている。そんな中で、いろいろな殺人事件がやみに葬られている可能性というのが多々あるのではないかというような話がありますので、この辺についてお伺いしたいのですが、変死体があった場合の死因究明の現状についてお伺いいたします。

大林政府参考人 法律の建前からまず御説明したいと思いますが、司法検視がまずその前提となると思いますが、司法検視は、刑事訴訟法上、変死者または変死の疑いのある死体について行うこととされておりまして、個々の事案ごとに検察官がその要件に該当するか否かを具体的状況に即して判断し、司法検視の実施の要否を決しているものと承知しております。

樽井委員 実際には警察の方が、ちょっと怪しいなということになりますと検視ということをされる。検察官の代行で警察官が、五官によって、視覚とか聴覚、嗅覚、見た感じとかで、これは殺人の可能性があるとか、どういった亡くなり方をされたのだというのをまず見るということなのですが、これがなかなか問題になっていると思います。実際には、内部を切り開いてみないとわからないということが多々あるというような報告を受けておりますし、何か死因不明ということで立ち会ったお医者さんが書くと、警察から電話がかかってきて、ちょっとこれでは困るから何かもっともらしい結果を書いてくれといって、それで大体心筋梗塞だということで、日本のちょっと不明の死体はやたら心筋梗塞が多い、そういうふうな報告も出ております。

 警察の代行のときに、大体どのようなことで確かめて、実際の信憑性とかはどういったことになっているのでしょうか。その実情の方をお伺いしたいのですが。

和田政府参考人 警察におきまして検視をする場合については、まず死体の状況でございます。これはいろいろな死体現象がございますので、死後硬直の状況であるとか、あるいは外傷の有無でありますとか、それに加えて死体の現存する場所、周囲の状況でございます。その状況に加えて、関係者からの、あるいは目撃者がいなかったかどうか等、それから亡くなられた方について聞き得る範囲でその周囲の状況を見て、犯罪性があるのかないのかということを判断しておるところでございます。

樽井委員 実際に、バイク事故で亡くなったということで報告を受けているケースとかもあるのですけれども、そういうのでも何か、写真で見ると外傷が余りそれらしくなかったりとか、あるいはヘルメットが横にちゃんと脱いだ状態で置かれていたとか、そういった写真が残っておる。そういった状況でありながらも、では殺人の、いじめの可能性があるのではないかということになれば、もう死体はすぐ火葬されているので証拠がなくなっていたというようなことも実際には報告されておりますので、この辺、難しいと思いますけれども、もうちょっときちんとした検査の方法がないものかどうかと思うわけです。

 実際にCTスキャンとかMRIを使って調べた場合、二十体に四体ぐらいの割合で、外で検視しただけの状況とは違う内容であることが発見された、あるいはわかったというケースがあるのですが、このCTスキャン、MRI、こういった部分を使うということは、今のところ現状ではやられていないのでしょうか。

和田政府参考人 警察におきまして検視をする際に、CT検査なりあるいはMRIを使って警察が検視をしたという例はございません。

樽井委員 実際に、一つずつのケースですとまだ対応もできると思うのですが、今回ありましたように、例えばスマトラ沖で大量に地震の結果亡くなられたとか、新潟中越地震もありましたし、あるいは将来、ひょっとしたらテロ等が起こった場合、大量のそういった亡くなられた方を検査する上において、一人ずつ見ていくということで対応ができるのかどうかということなんですよね。そういった中で、CTスキャン、MRI、こういったものをどんどん入れていくことによって、迅速にそういったことを処理できるし、当然そうすべきだと思います。

 また、正確さを期する部分でも新しい技術を入れていくのは大事ですし、日本の倫理の面で考えますと、身内でも亡くなったときに、そんなメスを突き立てられたり解剖されたりすることというのが、それほど望む国民性ではないといいますか、そういったことを望まないので、切ったり中をのぞいたりしないで検査できる、そういったシステムを国としてつくっていくべきではないかと思います。もっときちんと管理された、そういった法医学解剖センターみたいなところを設置するとか、そういったことにも力を入れていただきたいし、そういったことを強く求めるのは、今回の地震とかで大量発生した死骸の身元確認とか、そういった面においても非常に効率が悪いということで、国の方で、あるいはいろいろな省庁から要望して、そういったCTスキャンとかMRI、こういったものを死体の検視に充てるようなシステムを取り込んでいただきたいと思います。

 あと、薬物殺人というのが、外でぱぱっと見たら余りわからないのですね。これでノーチェックになる可能性があるということなんですが、薬物殺人というのはどのようにして現状調べているのでしょうか。

和田政府参考人 まず、死体の現象等から薬物が疑われる場合もございます。それから、実際に解剖に付した上で、臓器あるいは血液等の薬物検査によって薬物が検出されたというケースもございまして、そういったことを端緒にして薬物による殺人事件ではないかということで捜査している場合もございます。

樽井委員 ところが、例えば石垣島で旅行中の妻が殺害されたトリカブト事件というのは、これは最初は発見されずに二件目で発見された。さらに有名なところでいいますと、和歌山の毒物カレー事件、これは砒素で亡くなられたのですが、これも何件かのそういった殺人が行われた後初めてわかったということなんですね。だから、早くそれに気づけば、犯人逮捕、そういったところにも結びつきますので、被害者がどんどん拡大されずに済むわけです。

 実際に、薬物の件でスクリーニングしたり調べたりする部分で、民間の方で調べると大体二十万ぐらいかかるらしいのですが、ほとんどそういった費用も組まれていない。二万円ぐらいでやられているということなんですね。先ほどの件に戻りますが、実際に見分に立ち会った医師の謝礼と言っていいのですかね、そういうのも三千円ぐらいだというのですね。余りにも予算が低過ぎるのではないかと思うのですが、その辺の問題点についていかがお考えでしょうか。

和田政府参考人 死体を検視する際の立ち会った医師の検案の謝金でありますとか、あと薬物等の検査の委託料につきまして、非常に安いのではないかという御指摘がございました。これは日本法医学会の方からもそういった旨の要望も受けておりまして、現在、警察庁と日本法医学会とでそういった司法解剖等に関する問題について協議を進めておるところでございまして、そういった協議の中でいろいろと検討してまいりたいというふうに考えております。

樽井委員 死体検案に立ち会う医師の謝礼金というのは大体三千円というのは、これは決まっている額なんですか。それとも、各地方によってばらばらとか、そのときの通例でこんなものだということなんでしょうか。

和田政府参考人 国庫におきまして予算上の措置として、一件につきまして三千円という形で予算を組んでおるところでございます。

樽井委員 その辺の予算につきましても、普通お医者さんが出かけてきて、見て、実際に三千円もらって帰るという、ちょっと餓鬼の使いじゃあらへんでというような世界で、謝礼というよりはもうちょっときちんとした給料として決められた額なりがあった方がいいんじゃないかな。例えば最低でも二万ぐらいは要るんじゃないかなというふうに普通考えるんですが、まあその辺はまた議論して、ちょっと三千円は少ないと思いますので、また検討していただけたらと思います。

 それで、実際に、留置場の中で死亡した人を余り解剖しないというのも日本だけだ、そういったこともありまして、今、法務委員会で行刑改革の方もやっているものですから、ちょっとあわせての質問になりますけれども、刑務所の医療が余りにも脆弱だ、実際に司法解剖の方も脆弱だということになりますと、例えばそういった刑務所で亡くなられた方、あるいは刑務所で病気になられた方を診るお医者さん、それとあわせて、怪しい変死体でありますとかそういったものを調べる付き添いのお医者さん、こういったものも同時にふやしていけないかと思うんですが、その辺の制度上の見解といいますか、これはちょっと通告していないですけれども、大臣、どう思われますか。

大林政府参考人 今のは矯正局の体制の問題なので、私の立場からちょっとお答えできるかどうかということなんですけれども、ただ、今御指摘のありました、例えば刑務所で亡くなられた方がいるという場合は、これは原則として検事が検視を立ち会って見て、それが犯罪死の疑いがないかどうかということは確認する建前になっております。これは名古屋刑務所の事件を契機としていろいろ御指摘がありまして、検察庁においてもここのところをきちっとやらなきゃならぬという認識でおりますので、やはりそういう疑いを招かないようなシステムといいますか、そういう運用が必要だというふうに考えております。

樽井委員 どっちにしても、同時に充実させるということも一つ考慮に入れていただきたいと思いますし、これは人手不足というのが非常に問題だと思います。

 これは実際に千葉県の法医学の教授が書いたものなんですが、千葉県で六千体以上の変死体が発見されている、だけれども担当者が二人しかいない、こんな状況も書かれております。これは、例えば免許といいますか、普通のお医者さんでも検視をしていいんですか。それとも、検視官の免許というものがあって、それを取得するのには何か要るんでしょうか。

和田政府参考人 警察において検視を担当している者について、特にそういう免許とかというものはございません。一応、一次的には警察署の刑事課長、係長が、これらは一定の研修、教養を受けた者でございますし、二次的には警察本部に検視官ということで、これは警察大学校等において一定期間の教養とそれから法医学教室等で研修を受けた者でございます。

 それから、立ち会うべき医師の方については、医師の方であれば、別にどなたということで特に何か特定の資格とかいうものは必要ではないということでございます。

樽井委員 例えば、引退された医師の方でありますとか、まだ医学習い始めの医師の卵の方でありますとか、そういった方も人手不足の中ではどういうふうな位置づけでこれを見ることを許されるのかということも考えていいのかなと思ったりもします。

 要するに、人手不足を解消するために、その地位の向上でありますとか、法医学解剖センターを設置するだとか、あるいは先ほど言いましたような、国としてのシステムとして刑務所医療との改善の連動で人員を募集していくだとか、こういったこともやっていかなければなかなか解消できない。余りにも少人数でこれをチェックする体制ですので、いまいちうまいこといっていないんじゃないかなというのが外から見た感じなんですが、人手不足を解消するためのといいますか、現在人手が不足しているという認識があるのかないのか、そしてふやすような措置をとろうとしているのかどうか。現状でいいのか、もうちょっとふやそうというような展望があるのか、その辺お聞かせ願えますか。

和田政府参考人 まず、死体の検視の場合の立ち会いの医師の方については、大体各警察署で最低一名ないし二名の方を委嘱しておりまして、特にその方々で不足しているという状況はないと思います。

 それからあと解剖する場合の、いわゆる法医学を専門にされる先生、法医学の先生というかそういう方についても、一応それぞれ大学の法医学教室においてやっておられる先生方で、格別今特に何か不足をして大変困っているという状況はまだ承知をいたしておりません。

樽井委員 その大学の先生なんですが、大学は独立法人化で金銭的な制度の維持が無理になってくるんじゃないかということがちょっと危惧されるんです。ヨーロッパでは大体大学というのは国から独立しているんだけれども、法医学だけは国立である。それで、アメリカの場合は検視庁というのが存在している。

 こういう中で、日本の今後のそういった制度、例えば、このままやってしまうと二〇〇七年度ぐらいから大体一件二十万円で病院でいいように使われかねないんじゃないかというような疑念も持たれているんですが、その辺の見解なり所見なり、お伺いできますか。

大林政府参考人 大学の位置づけの問題は私どもで申し上げられることではないんですけれども、今警察から御説明ありましたように、検視とか司法解剖というのは、死体といいますかそういうものがあって初めて動き出す。

 それで、レベルの問題を向上させなきゃならぬという問題も一つはあろうかと思いますけれども、今私どもが承知している限りにおきましては、検視とか司法解剖というのは、発見後直ちに迅速適正に実施しなきゃならぬという前提がまずございます。そういうことで、統一体として機能するような制度的なものをつくるというのは、ちょっと今の現状として、解剖までのことを考えた場合には実効性という面でやや問題があるのではないかなというふうに考えます。

 ただ、今御指摘のように、検視、司法解剖がやはり十分に機能するようにすべきだという御指摘はそのとおりでございまして、私どもも検討できることはやりたいというふうに考えております。

樽井委員 先ほどから言っておりますように、日本と欧米と、その解剖率も違う、そして大学での今後の取り扱い方も多分変わってくるであろう。そういった中で一番違うのが、検視によって、事件性というものがある、これはちょっと怪しいかなと思ったもののみが日本では司法解剖される。アメリカとか欧米の場合ですと、解剖によって事件性が出てくる。ああ、これは殺人だったんだということで出てくる。それで、何か日本の制度の考え方自体が本末転倒なんじゃないかというようなことに思われるんですが、この辺についていかがでしょう。

大林政府参考人 個々的な事案でどうかということはなかなか難しいと思いますし、その欧米の関係、私どもちょっとよく承知しておりませんので、パーセンテージがどうだという分析もできません。

 ただ、一般論として申し上げれば、死因が不明で解剖に至るものと、それから、例えば交通事故なんかの場合に、外形から見てもその死因が明らかだという場合、解剖までしなくても死因は明らかだというケースもあろうかと思います。ですから、確かに、おっしゃられるような難しい事案については解剖しなきゃわからない事案もございますけれども、解剖をしなくても犯罪として捜査していける場合もございますので、一概にパーセンテージでということはいかがかなというふうな感じがいたしております。

樽井委員 実際に、「死体は語る」というような本を昔読んだことがあるんですが、殺人であったわけですけれども、例えば、最初はお母さんが泣きながら子供が死んでいるといって通報してくる。それで、やけどの跡があるので、多分そういったことで亡くなられたんだろうということなんですが、よく調べるといろいろな、首を絞めたりした跡が出てくる。殺した後にちょっと自分の犯罪を隠すためにお湯をかけたんだというような、そういった事件が何個かある。そういったことがわかる検視官といいますか、その辺の教育現状はどうなのかなと思います。

 例えば、アメリカとかの小説でも、パトリシア・コーンウェルでしたかね、ドクター・スカーペッタというのは。あれも死体をずっと検視していく中で犯人を追い詰めていくという、あの文章はつくったのか本当なのかわからないですけれども、あれを見ていると、犯罪をかぎ分ける面ではかなり重要な役割をしているんだなと思うんです。大体、日本で検視官に当たられる方の教育とか、いかに専門的な、犯罪性に結びつけるような知識を持っているかとか、その現状なり、どうやってそれを学ぶのかとか、その辺の部分についてちょっと教えていただきたいんですが。

和田政府参考人 まず、警察官になりましたときに、一般的な形での死体の取り扱い、死体現象についての教養というのは、これは全警察官に行います。

 その中で、また刑事警察の、いわゆる刑事になった際に、その任用の際の教養の中でも死体の取り扱いについてさらに研修を加えると同時に、特に、警察の中で検視官という名称でこれを専門にしてやる者がおります。

 これにつきましては、警察大学校におきまして、一定期間、大体五週間ないし六週間ぐらい入校させて、一定の教養と、それから各大学の法医学教室における法医学の先生からのいろいろな解剖の実習、その場合のいろいろな所見等の教養を受けます。さらに加えて、そういう検視官になった者について、それぞれの県でいろいろ実体験をいたします。そういうものについての体験交流と申しますか、年に一回ないしあるいはブロックレベルでそういった事例研究、事例発表を検視官同士でもしますし、それから各地区の法医学の先生とあわせてそういった知見の交流みたいな形での研修も行っておるところでございます。

樽井委員 その検視結果、例えば写真、そういうものでありますとか、こういったケースではこういった殺人、あるいはこういった薬物による殺人が多いんだというようなこと、こういった情報交流も普通にやられているということなんですね。

 実際にいろいろな勉強会とかやられているということですが、それは、例えば捜査段階でどこかで情報をとってきたりとか、ネットワーク上でそんなことはできているんですか。もう囲っている情報になっているんですか。その検視のデータはどこに保存されて、どういうふうな扱いになっているんでしょう。

和田政府参考人 検視のそういった特異な取り扱いの事例については、全国的な会議で研修会がございまして、そこで一応資料としてまとめて、それをまた各県警察本部の方にフィードバックして、資料としては残っております。ですから、それぞれ検視官あるいは検視官候補生などがそれによって勉強するということも可能でございます。

樽井委員 雑誌の記事で恐縮なんですが、かつて、検視して、これが被害者の臓器ですよということで持ってきたのが本人のと違っていたという例があったということを聞いているんですが、そういった部分のデータの管理、あるいは手術をいつして、どうなったという管理とかも、だれがどういうふうに管理してやっているのかというのは、その仕組みはどういうふうな感じになっていますか。

和田政府参考人 検視の場合のそういうデータというものは警察にございますし、それから解剖した場合のいろいろな解剖所見等については、医師によって鑑定書というものが作成をされますので、それについては、もちろん事件になった場合については検察庁の方へ送致をしておくという形で、データとしては残るものだというふうに考えております。

樽井委員 食事前に余り検視や死体の話ばかりして、ちょっと私もだんだんブルーになってくるんですが。

 ただ、今までいろいろなところから寄せられた話なりデータを見ておりますと、余りにもずさんだったりとか、予算的にも極端に少ないだろう。それと、捜査の中で実にいいかげんに扱われているんじゃないかという疑念が、いろいろな事例が多いものですから、この辺の部分をきちんとしていただきたい。

 そして、これからさらに、冒頭の方でも言いましたように、大量に災害等で亡くなられた方とかの処理をする部分でも、身元確認あるいは死因の究明、こういった部分で最先端の技術をもうちょっと取り入れることを考えていった方がいいんじゃないかというような提案も含めまして、きょう、こうやって質問をさせていただいたわけであります。

 今後、こういった司法解剖、日本では欧米に比べたら非常に地位が低いというふうな認識の専門家が多いので、こういったことにも割と重要視して取り組むことによって、犯罪である事件を見逃さないで、またその犯人が次の犯行を起こす、特に毒物なんかはよく調べないとわからないので、次の犯行を起こすときの抑止力として十分機能するようなシステムなり、見識を持った方をどんどん増員するなりして役立たせていただきたいというふうなことを提言いたしまして、昼前に検視の話で失礼いたしましたが、時間が来ましたので質問を終わらせていただきます。ありがとうございます。

塩崎委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十八分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

塩崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 内閣提出、刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房総括審議官片桐裕君、警察庁長官官房審議官吉田英法君、法務省刑事局長大林宏君、法務省矯正局長横田尤孝君、法務省保護局長麻生光洋君、厚生労働省大臣官房審議官黒川達夫君、厚生労働省大臣官房審議官大槻勝啓君、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長塩田幸雄君、国土交通省航空・鉄道事故調査委員会事務局長福本秀爾君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塩崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

塩崎委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局大谷刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塩崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

塩崎委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。平沢勝栄君。

平沢委員 自民党の平沢勝栄でございます。

 本論に入る前に、法務大臣にお聞きしたいと思いますけれども、きのうの法務委員会で、東京地検の特捜部長が、一部マスコミの方に私信という形で、いわば今のマスコミのあり方はおかしいという趣旨の手紙を書いたことにつきまして、いろいろ質問が出たわけですけれども、それについて、法務大臣は答弁の中で、特捜部長は人間としておかしいのかなと思っているというような答弁をされたということで、きょうの新聞にも報道されております。議事録を見たらそのとおりになっているんですけれども。

 私は、これは全然おかしくないと思うんですよ。というのは、特捜部長が言いたかったのは、要するに、私も長年捜査をやってきましたけれども、捜査に携わっている者からしますと、マスコミ報道で、特に前打ち報道で捜査が妨害されたり、そしていろいろな形で邪魔されたりというケースは幾らでもあるんですよ。それで、悔しい思いをすることが幾らでもあるんです。だから、その辺の思いを特捜部長は一部の方に私信という形で言われたんだろうと私は思うんです。

 確かにその表現を見ますと、ややどうかなと思うところはありますよ、それは。しかし、これはマスコミの皆さん方の記者会見で言ったわけじゃないでしょう。私信で言ったわけですから、確かに表現の中に不適切なところがあったとしても、私信のそういうところまで一々言っていたら、これは例えば酒の席で言ったことまで一々、何だということにもなるわけで、問題は、特捜部長は何を言いたかったか。

 要するに、マスコミの中にもいろいろと、いわば捜査のあり方、捜査員の苦労を忘れて、場合によっては捜査を妨害して、自分の手柄、あるいは特だねだけに走って、そして捜査がどうなろうと、そんなことはもうお構いなしに報道してしまう、そういうことがあるんじゃないかな、その辺を言いたかったんじゃないかな。

 にもかかわらず、大臣の、人間としておかしいかなというような形のコメントがあって、それが報道されてしまうと、特捜部長の人格が否定されてしまうようなことになってしまうんじゃないかな、これはちょっと、大臣の御発言としてはどうかなと私は思うんですけれども、大臣、この御発言を撤回されるお気持ちはありませんか。

南野国務大臣 先生おっしゃるように、先生の御意向、十分理解できますし、私も昨日の分については撤回させていただきたいというふうに思っているところでございます。

 昨日の法務委員会におきまして、辻議員の質問に対する私の答弁で、言葉が足りなかった、そういうふうな意味で言葉が足りなかったばかりに真意が伝わらなかったということは、私にとっても大変残念なことであり、最後先生がお読みになられた文章という形で残ったということも、これは私の本意ではないということを申し上げておきたい、そういう意味で訂正させていただきたい、撤回していただければ、それはなおうれしいというふうに思っております。

 今回の文書の中で、マスコミとやくざを比べていることが常識的に見ておかしいのではないかというお尋ねがございました。私も常識的に一個人として考えてみました場合、マスコミとやくざを比べること、これ自身はそれはおかしいことだなというふうに思いますが、そういう表現については穏当を欠いているということは、私もそういうことだったんじゃないかなと思っております。そういう趣旨のことを述べたわけでございます。

 さらにまた、井内部長の検察官としての適性だとかその人格について、不適性であるとか、おかしいとか、そういうことを申し述べたわけではございません。そういうことを、きょう先生の御質問がありましたことを幸せに思いまして、答弁させていただきたい、心を明らかにしたいと思っております。

 議員御指摘されました、捜査機関においては、本当に適正、迅速に捜査活動をしなければならない、これは井内部長もおっしゃっていることであります。またさらに、秘密保持という問題点がありますので、マスコミが扇動するとせっかくの問題点も解決しないままに終わってしまう、残念なことが多かろうというふうに思い、報道とそこら辺、捜査ということのせめぎ合いが常に行われているのが捜査の部分ではないかなと。それはもう、その御苦労を大変ねぎらいたいと思っておりますし、感謝したいとも思っております。

 今回、特定の記者にお配りされたという、四社だったでしょうか、そのことにつきましても、その文書につきましても、このような御苦労の中で、捜査上の障害にならないようにということの一念がありましたし、仕事の熱心さがそこにあらわれているというふうにも思います。そういうような時点で報道は避けてもらいたいというようなことの趣旨でお書きになられた私信であるというふうにもお伺いいたしております。

 そうはいいましても、やはり世間一般の常識から見てみますと、表現をされたことの中には穏当を欠いた部分があったものというふうに考えております。

 以上のことでコメントさせていただきたいと思います。

平沢委員 今の大臣の御答弁、よくわかりましたけれども、確かに表現はどうかなと思うところはありますけれども、今大臣もおっしゃられたように、これは私信ですよね、私信だということ。そして、特捜部長はいろいろ仕事を一生懸命やっている過程の中で、やはりマスコミ報道で捜査にいろいろな支障が出たという思いをされたんだと思います。

 私自身も、警察にいたときに、随分マスコミ報道で捜査が、いわばいろいろな形で支障を来したことが何度もあったんですよ。ですから、マスコミ報道は大事ですよ、これは。しかし、あくまでも捜査に支障のない範囲内での報道でなければならないんだけれども、必ずしもそうはいかないところが今の日本のマスコミなんだから、マスコミにも反省すべき点が多々あるわけですから、その辺は大臣もよく酌んでもらいたいなと。表現の適切かどうかという問題はありますけれども、それはそんなに目くじら立てるほどの問題かなという感じが私はしますので、そこは大臣、よろしくお願いしたいと思います。

 そこで、本論に入ります。

 監獄法の改正でございますけれども、九十七年ぶりの改正でございます。細かいことは時間が余りありませんので避けますけれども、過去三度ほど改正しようということでやったわけですけれども、代用監獄の問題等もありまして、衆議院の解散で廃案になってきたといういきさつがありました。その過程で、今度、名古屋刑務所の問題もありまして、受刑者の人権等に最大限配慮した形の、今回、こういう形の監獄法の改正がなされたわけでございまして、これは法務当局の御努力を多としたいと思います。

 行刑改革会議では、「国民に理解され、支えられる刑務所」ということを言っているわけでございます。そして今、こういった行刑施設は、国際的に理解されるような行刑施設でなければならない、国際的な基準に合ったものでなければならないということも言われているわけですけれども、今回のこの法改正について大臣としてはどういう御所見をお持ちか、総論的にちょっとお答えいただけませんでしょうか。

南野国務大臣 今回の法改正、本当に待ちに待った法改正と言われても過言ではない形のものであろうかと思いますが、一連の名古屋刑務所の事案から出発したものかなというふうにも思っております。

 関係職員につきましては、また手続が継続しているところでありますが、いずれにいたしましても、職員による被収容者に対する違法な実力行使、これは絶対にあってはならないことは申し上げるまでもございません。この法案におきましても、刑事施設の規律、秩序を維持するために、職員に、隔離、制止等の措置、戒具の使用及び保護室への収容などの措置をとる権限を認めているところでありますが、他方で、こうした措置が適切にとられますように、またその要件と限界を明らかにしているところでもあり、その適正な運用が行われるよう努めてまいりたいというふうに考えており、この法案を御審議いただきたいと思っております。

平沢委員 今回の法案につきまして、日弁連の方から、国際的な人権基準に照らしてまだ疑問の点が多々あるというような意見書が出ていますけれども、私自身は必ずしもそうは思わないんです。

 私も、外国の刑務所というのは随分見てきました。それで、法務省の関係者初め、裁判官あるいは弁護士の方も随分外国の刑務所を案内させていただきました。それで、皆さん方みんなびっくりされるのは、警察の施設も刑務所も、そういった行刑施設は日本の方がすぐれているなと皆さん驚かれるんですよ。確かに、文書とか規約とか何かでは日本はいろいろ言われるかもしれませんけれども、では、外国の刑務所の実態を見てください、実際に外国の警察の留置場を見てくださいと。

 法務省に聞きたいんですけれども、外国の刑務所ではよく暴動なんかが起こっていたでしょう。あれはなぜ起こっていたかわかるでしょう。要するに、待遇が余りにも悪いからですよ。では、日本の刑務所で暴動なんか起こったなんということが今までありますか。

 それから、ちなみに、ついでに聞きたいんですけれども、警察も来ていますけれども、警察の留置場を外国の留置場と比較してください、あるいは外国の刑務所と。言葉じゃないですよ、規約じゃないですよ、実態ですよ。それを比較してくださいよ。どちらがそういう面では人権に配慮したものになっているか。この辺、では、まず法務省からちょっと答えてください。

横田政府参考人 お答え申し上げます。

 外国の刑務所で暴動とか大規模な脱走とか、そういうことがあるということは時折ニュースなどでも接しておりまして、承知しています。詳しいことはわかりませんけれども、そういうことがあることは承知しております。

 それから、日本の場合でございますけれども、これもちょっと今詳細お答えすることはできませんけれども、終戦後のまだ混乱期と言える時代には、よく耳にする外国のような大規模なものではございませんけれども、刑務所内で暴動といいますか、そういう混乱があったケースがあったと聞いておりますけれども、それは昭和三十年代くらいまでのことでございまして、その後は全くございません。

 それから、我が国の行刑が国際的な行刑理念、基準から大きくおくれをとっているというような御意見もありますけれども、我が国の行刑は、受刑者の安全で秩序ある共同生活と適切な処遇環境を確保するために、施設の規律及び秩序を適正に維持しつつ、受刑者の改善更生及び円滑な社会復帰を図るという基本的な理念に基づいて行われてきておりまして、この理念は、この規律及び秩序の維持の必要性を認めつつ、受刑者の改善更生及び円滑な社会復帰を図ることを規定している被拘禁者処遇最低基準規則、これは一九五五年、国連犯罪防止会議によって採択されたものですけれども、これにも合致しておりまして、国際的な行刑理念にかなうものでございます。行刑改革会議提言におきましてもこのことをお認めになっておりまして、我が国の行刑の基本的理念は今後の行刑運営においても維持されるべきであるというふうにおっしゃっています。

平沢委員 では、警察庁。

片桐政府参考人 お答え申し上げます。

 外国のいわゆる留置場といいますかジェールといいますか、そういうものに関する資料を手元に持っておりませんけれども、ただ言えますことは、今委員おっしゃられた国際的な基準に照らして、我が国の留置場の施設、そしてまた運用は、これに十分マッチした、合致したものであるというふうに考えておりまして、人権には十分配意したものとなっているというふうに考えております。

平沢委員 法務省にお聞きしたいんですけれども、刑務所を出ていった方がもう一回戻ってくる再入率は、三年間で三二・九%、五年間で四六・九%、極めて高いわけですよね。ですから、これは五年間で約半数がまた戻ってくる。ということは、まだ犯罪を犯している人はもっといるかもしれない、捕まらないだけで。ですから、刑務所から出ていった人に対して必ずしもいわば矯正機能が十分に施されていない、したがって、また戻ってくる。

 私は、もう外国の刑務所も随分見てきましたけれども、こんなところ二度と入るのは御免だなというようなところがあるんですけれども、日本の刑務所は、まあ結局入ってきてもそれほど、そんな嫌なところではないと。それで、事実、つい先日もまた刑務所に入りたいということで犯罪を犯した人がいます。

 警察白書を見てみますと、警察白書に何て書いてあるかというと、中国人の犯罪者です。日本の刑は軽くて、窃盗でもせいぜい数年なので我慢できるとか、日本の刑務所はきれいで、テレビも見られ、中国での生活より楽だ、だから犯罪を犯すということが警察の白書に堂々と書いてあるんですよ。警察庁、犯罪者の取り調べの中でこんな発言は本当にあったんですか、中国人犯罪者から。

片桐政府参考人 都道府県警察の捜査の過程で中国人等の被疑者が警察捜査でありますとか留置場または刑務所等について述べていることとして私どもに報告のあったものを警察白書に掲載しているわけでございますが、その中で、今委員がおっしゃられたのでございますけれども、若干重複しますけれども、例えば、日本の警察はけん銃を撃たないので犯罪を犯しても危険が少ないとか、また、日本の警察は絶対に殴らないので怖くない、否認をしていれば強制退去だけで済むとか、また、日本の刑務所や留置場はきれいだし、看守も人権を尊重してくれる、中国での普通の生活よりも楽だとか、また、日本は刑が軽くて、窃盗でもせいぜい数年なので我慢できるといったような言動があったというふうに承知しております。

平沢委員 では、法務省の方はどうですか。(発言する者あり)黙っていなさい。うるさい。ちょっと委員長、黙らせろ、あの人。

塩崎委員長 静粛に願います。

横田政府参考人 中国の刑務所の状況につきましては、私ども必ずしもそうつまびらかにしておりませんので一概に申し上げられませんけれども、いずれにいたしましても、委員がおっしゃいましたような再入所率というものがございますことは事実でございます。

 私どもといたしましては、再犯に及ぶ要因というのはさまざまなものがあって、その防止を期するにはいろいろな観点から社会全体として取り組むべき問題であろうかとは思っておりますけれども、しかし、今申し上げたような再入率がこれでいいんだというふうに決して思っているわけではございません。

 今後とも、私どもは、受刑者に対して厳正に刑を執行しつつ、犯罪の責任を自覚させ、改善更生の意欲を喚起するための矯正処遇を充実させることに努めてまいります。

平沢委員 人権人権と言っている人もいいんですけれども、人権も大事ですけれども、同時に刑務官の人権も大事で、それから警察の看守の方の人権も大事なんです。

 法務省にお聞きしたいですけれども、刑務官に対する暴行あるいは看守への暴行というのも結構あるみたいなんです。刑務官への暴行、例えば資料を見させていただきますと、受刑者から暴行、脅迫を受けた刑務官というのは四三%とか、こういう統計数字が出ていまして、刑務官にとってもこれはまさに本当に大変な仕事だな、危険と背中合わせの仕事だなという感じがするんです。

 「懲罰に関する日英比較」という資料を見させていただきますと、同じ収容人数でありながら、日本の懲罰件数が英国に比べて極端に低いんですよ。ですから、恐らく日本の場合はある程度の、要するに規律違反というのは黙認しているんじゃないかな、だから日英で数字を比較しますとこんなに日本の数字が低く出ているんじゃないかなと思いますけれども、これは法務省、どうですか。

横田政府参考人 その前に、職員に対する傷害及び暴行事犯によって懲罰を科した件数から申し上げますと、平成十二年に五百二十四件でありましたのが、連年増加しておりまして、平成十六年には一・六倍の八百二十八件に上っているということで、刑務官が大変厳しい勤務環境にあるということを申し上げることができると思います。

 そこで、今委員おっしゃった日英比較でございますけれども、これにつきましては、確かにこの数字を見ますと、イギリスが大変多いということになります。ただ、今私、英国の懲罰の規則といいますか、どういうものについてどうされるかというのはよく存じ上げませんので、この数字の比較だけで申し上げていいのかわかりませんけれども、日本はある意味では大変、厳正、適正な規律が保たれたことも一つあるのかなという感じもしないでもございません。

 いずれにいたしましても、この点につきましては、さらにちょっと研究した上で、またお答えできればしたいと思います。

平沢委員 時間があれですので終わらせていただきますけれども、外国との比較は、聞いてみますと法務省も警察も必ずしも十分実態調査をしていないようでございますけれども、この辺の実態調査をぜひこれから進めていただきたいな、これは要望として申し上げたいと思います。

 それともう一つは、中国人が日本で捕まる、そのときの処遇。あわせて、日本人が外国で捕まるわけでしょう、外国の刑務所に入れられる、そのときの処遇というのはどうなるかということもぜひ調べていただきたいなと。これはまた次回質問させていただきますので、よろしくお願いしたいと思います。

 最後に、法務大臣に一言だけ質問させていただきますけれども、菊池寛に「若杉裁判長」という短編小説がありますけれども、お読みになられたことがありますか。一言だけで。

南野国務大臣 いいえ、ございません。

平沢委員 読んだことないですか。

南野国務大臣 はい、ございません。

平沢委員 「若杉裁判長」というのは、私は、岡村さんという弁護士の方、要するに御自分の奥さんが殺されちゃったという被害に遭われた方にも読むように言わせていただいたんですけれども、若杉裁判長という方は、要するに敬けんなクリスチャンで、自分が裁判長のときに、犯罪者に非常に同情して寛大な判決だけを下していった。ところが、自分が犯罪の被害者になる、それで、奥さんそれから三人の子供さんが大変な精神的なショックを受けると、それからがらっと考え方が変わるというのが、この菊池寛の「若杉裁判長」という短編小説なんです。

 これは、法務大臣、ぜひ読んでください。要するに、人権、人権も大事ですよ。しかし、私たちは当事者のことも考えなきゃならない。そのことをぜひ法務大臣にお願いして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

塩崎委員長 次に、松島みどり君。

松島委員 質問させていただきます。

 今回、明治四十一年、一九〇八年以来九十七年ぶりの法改正で、これでやっと監獄法という恐ろしい名前の法律がなくなることを、私はほっとする、安堵する思いでおります。

 今回の法改正で私が最も評価しておりますのは、従来希望者にだけ行っておりました刑務所の中での教育というものを義務化する点でございます。

 国民が刑務所に求めているものは、犯人が二度と犯罪を犯さない真人間になって出てくること、それが大事だと思います。そして、そのためには、懲役として単純作業をやらせるだけでは無意味でございます。殺人や傷害など人の身体を傷つけた犯罪、放火もこれに含めていいかもしれませんけれども、こういった犯罪に対する問題、そしてまた性犯罪、性犯罪の場合は大人に対する犯罪と小児性愛と言われる子供たちに対する犯罪はまた性格が違います。そして、窃盗や万引きなどの、あるいは詐欺や横領などの財産犯、あるいは交通犯罪といった犯罪ごとにこの教育というものの対策も立てるべきだと思います。これについて、今、法改正の中に新しく教育ということが書き込まれるわけですけれども、各分野の新しい教育について、法務省はこれから自信を持って進めると言えますでしょうか。

 そしてまた、犯罪の種類ごとにこういうふうに教育をするんでしたら、刑務所を分けて、覚せい剤だけというのもかなり今まで意図してやっているようですけれども、ここは覚せい剤だけだとか、あるいは性犯罪を犯した人だけだとか、そういう刑務所ごとに集中的に配置して入れることによって効率的に教育を進めていくということはお考えかどうか、伺いたいと思います。

横田政府参考人 お答えいたします。

 刑務所におきましては、これまでも、罪名または犯罪に至る原因となった性格や行動傾向その他の円滑な社会復帰の障害となり得る要因に着目いたしまして、同じ類型に属する者を小集団として編成して行う指導として、覚せい剤の乱用防止、暴力団の離脱指導、それから窃盗防止指導、被害者の視点を取り入れた教育などの処遇類型別指導というものを行っておりました。

 しかし、これらの指導は法律での根拠が明確でなかったことから、受刑者に対して受講を強力に働きかけることが困難な状況にありましたし、また、指導プログラムにつきましても、各施設が試行錯誤の上で実施しているものでございまして、統一的、標準的なものが存在していないので、十分とは言いがたいものがありました。

 そこで、この法案におきましては、受刑者全般に対し、その者にふさわしい教育処遇を受けることを義務づけることとしておりまして、これにより、受刑者の真の改善更生を図るための処遇をより積極的に実施していきたいと考えています。

 委員御指摘のように、新法案のもとで効果的、効率的に改善指導を実施するために、この特定のプログラムに基づく指導を受講させるべき受刑者につきまして、これは特定のプログラムをこれからつくっていこうとしているわけですけれども、そういったものにつきましても、例えば今委員おっしゃいましたように、そのプログラムを実施する刑務所に集めて指導する方策も含めて検討してまいりたいと考えております。

 なお、今申し上げました矯正プログラムですけれども、これにつきましては、ちょっと申し上げましたように、いわゆる専門家といいますか、そういった方の御意見を聞きながら、これから類型的にまたいろいろ新しいプログラムをつくっていきたいと考えているところでございます。それを実施していこうということでございます。

松島委員 今、これはせっかく法律を改正するわけですけれども、これから取り組まなきゃいけない課題というのは、教育というプログラムを考えるだけでも本当に大変なことだと思います。しっかり心してやっていただきたいと思います。

 大臣に伺いたいと思います。

 これは刑務所の入り口と出口の問題に関するのですが、先ほど平沢委員からも人権とは何かという話がございました。私は、人権というのはまず被害者の立場、そしてまた犯罪が起こらないこと、すべての人たちが犯罪に巻き込まれずに日本の治安がきちっと守られること、これが人権にとって大事なことであって、犯罪者の人権などというのは二の次、三の次だと思っております。

 その前提で申し上げますと、他人を死傷させたり性犯罪を行ったりした凶悪犯罪者については、心を入れかえたというふうに刑務所でといいますか法務省が判断してからでなければ世の中に出してはいけない、私はそういう思いを持っている人間でございます。

 今の法律体系では、バランス論で法定刑が決まっていて、裁判官がいろいろなバランスで、あるいは過去の判例に基づいて懲役何年とか執行猶予とかを出す。必ずしもその年数刑務所にいたからといってその人が次に罪を犯さないかどうかなんてわからない、そういう状況でも出してしまうわけです。

 私、先ほども申し上げました、この前の委員会でも申し上げましたが、例えば子供に対する性犯罪を犯した者、こういう人たちは比較的気がよい人が多くて、刑務所の中では逆らったりしないで、優等生で早いこと出たりする。これはやはり、さっき申しました教育をしっかりやるということと、教育できちっと治っているかどうかという判断。例えば、私も全然素人ですからわかりません、まさか児童ポルノを見せるわけにいきませんから、小学生の女の子たちがプールで水着姿で遊んでいる映像か何かを見せて、変な反応を示さないかどうかなどというのをうそ発見器みたいな形のイメージで点検して、これは真っ当になったと思ったら出す。そうでなければ、裁判官が言った何年が来たって、出されたら世の中は困るんです、もう一度犯罪を犯されると困るんですということを一つ考えております。

 そしてもう一つ、この性犯罪に関しましては、法務省のプロじゃなくて大臣の率直な考えで私の意見に対して御意見を伺いたいんです。

 例えば、懲役何年というんじゃなくて、私もよくわかりませんけれども、男の人が性的意欲をなくす、これも個人差があるんでしょうけれども、例えば五十五歳か六十歳か七十歳か知りませんけれども、その年齢に達するまで……(発言する者あり)いや、知らないから知らないと言った。失礼も何も、わからないですから、私。その年齢に達するまで例えば刑務所に入れておくとか。そういう犯罪を犯した人ですよ、三回も五回も十回もそういう犯罪を犯して……(発言する者あり)失礼って、犯罪でどれだけ女が傷つくと思っているんですか、子供であれ大人であれ。被害者の立場に立って考えたことがあるんですか、あなたは。私はそう思っております。そういう人たちが出てこないようにする。

 あるいは、出てもいいんです、ほかのことはまともに生活を行ってもいいんです。(発言する者あり)いや、知らないから言っているんです。例えば、そのほかの生活は自由に行ってもいいけれども、やり方は、これも研究の上ですけれども、去勢手術を行うとか、あるいは刑務所から出すならば、刑務所にいる間じゃだめです、出した後、薬物治療、例えば男性ホルモンを抑える治療を必ず定期的に受けに来い、でなければ外へ出さないとか、そういうことまですべきではないかと。

 私は、心身を傷つけられた少女たちのことを考えると、ついこの間、名古屋でも、住民基本台帳を見て、母子家庭でお母さんが働きに出ている、それをけなげに守っている子供たちのところをねらって、小学生から中学生の女の子のところをねらって何度も犯行に及んだような男がいたわけです。そういうことを考えますと、これぐらいのことを考える法律というのに根本的に切りかえるべきだ、法律家だけに任せておくと今までの延長線上のことしかないから、そういうふうにお考えにならないでしょうか。御意見を伺いたいと思います。

南野国務大臣 本当に、先生がおっしゃったように、犯罪というものは再犯を防ぎたい、そういう思いの前に、犯罪を犯さないように社会環境が整っていけばいいのかなという思いもございます。

 でも、犯罪に対して我々はどのようにするかというと、今、刑務所の方では、矯正行政という観点の中で、本当にその人を教育することによって、矯正することによってリボーンして社会にお返しできるかな、そのことの役割をするのが我々の刑務所のあり方であろうというふうに思っているところでございます。今先生のお話をお聞きしまして、本当に世間の方々はいろいろな大きな幅でこの問題点をお考えいただいている、その大きな幅の中で我々がどのようにできるかということもあろうかなと思っております。

 先生が今幾つかお話しになられました、満期後も出所させない、あるいは出所後も治療を義務づけるなどということの制度につきましては、このような御意見があるということも承知いたしておりますけれども、刑事責任を果たし終わった人に対してこのように一定の自由の制約を課すということについては、その対象者または期間という問題もございます。それを的確に判断するという基準もなかなか持ち合わせにくいのかな、過度の制約とならないか、いろいろな問題があり、慎重に検討すべきものと思っております。

 また、累犯者に対しまして、先ほど男性のことをお話しになられましたが、去勢手術を行うなどということについては、これ同様に種々の問題に絡んでくるというふうに思っております。また、性的能力が衰える年齢まで刑務所におれということについても、これも大変いろいろな観点から問題があるのではないかなと考えております。

 いずれにしましても、性犯罪者の再犯防止のための施策、これは委員御指摘のとおり大変重要な課題でございます。先般、緊急にとり得る対策をお示ししたところでございますので、当面はこれらを着実に実施してまいりたいと思っております。

松島委員 今、生まれ変わらせる、再生させるというお話がございました。それで、次の質問に移りたいと思います。

 刑務所から出た人たちが、せっかく心を入れかえてまじめにやろうと思いましても、なかなか職を得られない、そのために、例えば万引きや窃盗、無銭飲食などを再犯して刑務所に戻ってくる、そういうケースがいろいろあると思います。こういう軽微な犯罪を防ぐのも非常に重要なことではないかと思います。

 そうした中で、厚生労働省に伺いたいと思います。

 厚生労働省には、六十歳から六十四歳までの高齢者や障害者など、就職困難な人を新しく雇い入れた事業主に助成制度があります。これは、近いところでいいますと、例えば平成十五年度は五百七十九億円の予算に対して二百四十七億円しか使われていない、毎年半分ぐらい残しているんですけれども、このことは置いておきまして、こういったことだとか、あるいは雇用者に占める障害者の割合が一・八%を超している事業所は一人当たり月二万七千円の助成がなされている、あるいは障害者をたくさん雇っていますと税制上のいろいろな優遇措置がございます。

 こういった制度を障害者や高齢者だけでなく、就職困難者という観点から、厚生労働省の政策の中で、元受刑者でまじめに心を入れかえて働こうと思っている人たちに対して、こういう助成金や、そういう人を雇う会社、事業所については税制上の優遇措置を設ける、そういうお考えをぜひとっていただきたいんですが、どのようにお考えでしょうか。

大槻政府参考人 お答え申し上げます。

 刑務所の出所者などの方々の生活の安定を図ることは極めて重要であると考えております。特に、就職をして自立を目指すという方々につきましては、厚生労働省といたしましても、刑務所、少年院及び更生保護機関といった機関と連携をいたしまして、こういった機関から情報提供があった場合には、きめ細かな職業紹介、就職の実現に取り組んでおるところでございます。

 こうした、御指摘の刑務所の出所者などを雇い入れた事業主に対しましての経済的な支援、助成金制度あるいは税制優遇措置といったものの活用あるいは創設という御意見でございますけれども、その点につきましては、刑務所の出所者などを考えますと、やはり個々人によりまして就職が困難な事情というものはさまざまであろうかと考えております。そういった意味で、一律に雇い入れ助成等の対象とするということでこの解決ができるのかどうかという点で検討を要する点があるのではないかと思います。

 また、雇い入れ助成等の運用に当たりまして、支給対象となる事業主に対しましては、やはり求職者が刑務所の出所者であるといったことの情報を提供していく必要が生じるわけでございまして、そういった意味で刑務所出所者のプライバシーの保護の観点からも慎重に検討する必要もあるのではないか。

 こういったことから、難しい面があると考えておりますけれども、御指摘の点も留意しつつ、今後、関係機関等連携いたしまして、多角的な面から研究課題としていきたいと考えております。

松島委員 善意に頼っているだけではなかなか解決しない面があると思います。ぜひ、これは私どもも政治の問題として解決に向けて頑張りたいと思っております。

 これに類することでございますけれども、この三月末まで、平成十六年度まで、厚生労働省には緊急地域雇用開発事業というのがございました。これは、自治体がつくり出した事業に交付金を出した、そういうようなわけでございますけれども、同じ形で、国が事業を創出してこういった試みをできないか。

 例えば、よく言われることですが、山間部に山林の労働者が不足しているなどの問題が起きている。その植林作業など、これは地球温暖化の対策にもなりますし、そういった事業を国が予算を獲得して、役所の壁を取っ払ってそういう事業をつくり出して、そこの中で次の職場を何とか見つけていくということができないか。これは大臣か副大臣か、お答えいただければと思う次第でございます。

滝副大臣 今委員の御提案は、大変すばらしい提案のように思います。

 日本でも、実は、明治二十一年ぐらいから更生保護事業ということが刑務所を中心にして展開されまして、民間組織として、いわば半官半民でしょうか、そういう格好で更生事業が出発したわけでございます。一時は工場を持つ、あるいは農園も持つ、そういう格好で日本ではやってきた経験があるのでございますけれども、その後、雇用の機会が増大してきたこともあって、更生保護事業ということについてもやや縮小していた経緯がございます。

 したがって、日本もまたさらに一段と雇用の機会が縮小してくる、こういうような状況にかんがみますと、やはりそろそろ明治の原点に返ってそういうようなことができればいいなというのは率直な感じでございます。

松島委員 ぜひ、大臣、副大臣とともに我々も、これはどの党の方でも御一緒に取り組んでいきたいな、考えていきたいなという、いわゆる更生というのを実現させるためにもやっていきたいというテーマですので、よろしくお願いいたします。

 今、刑務所の過剰収容問題が大変になっております。私どもも、この法務委員会からの視察で一年前に府中刑務所へ行きました。

 今、刑務所だけ見ますと、定員に対して一一八%も入って、刑務官の仕事というか全体の刑務所の職員一人当たりの受刑者の持ち人数というか担当人数が四・三人で、欧米に比べてずっと多い。ヨーロッパは少ないんですけれども、アメリカは三・一二人、それに対しても一・五倍日本の場合は刑務所の職員が抱えておられる。これは刑務所の職員すべて含めてですから、いわゆる一番最先端の看守というか刑務官というか、そういう方はもっともっと、五十人も何十人も一手に引き受けている、そういう大変な思いをされているわけでございます。

 府中刑務所を見させていただいたとき思いましたのは、独居房という名前、全然名前じゃなくて二人入っている、六人部屋に八人、九人入っている。それは、普通の人でもいらいらしてけんかになりますね。夜中、トイレに行くときに、足をけ散らかしていったとかなんとかいってけんかになる。それもさばかなきゃいけない。そういって大変な日常生活を送っているのが刑務官の方々だと思っています。(発言する者あり)独居房に二人と言いました。六人部屋に八人と言いました。

塩崎委員長 質問を続けてください。

松島委員 刑務所はほかの施設との決定的違いがあります。ほかの施設、例えば老人ホームですとか、病院ですとか、保育園ですと、いっぱいだから待ってくれと。待機児童という言葉はあるけれども、受刑者の前の待機何とかはない。とにかく押し込んでしまうしかない。あるいは、この人たちは都合が悪いからもう出ていってくれとほかの施設だったら言えるけれども、それが言えない、それが非常に大変なところじゃないかと私も思っております。

 この視点というのを、私はちょっと言葉にして教えられたのが、もと刑務所に心理技官としてお勤めで、今大学の先生をやっている浜井浩一さんという方が法学セミナーに「刑務所の風景」という非常にわかりやすい記事を連載されています。これでこの視点を私は得ました。そしてまた、書物という点でいいますと、元衆議院議員の山本譲司さんの「獄窓記」、これは読んで非常に感動したんですが、看守の助手役として、例えば高齢者や精神障害者の下の世話までして、そういうことをされてこられた。

 それから、もう一つ、私が読んだ本の中には、辻仁成さんという作家が、芥川賞を受賞した作品ですけれども「海峡の光」という、これは、函館の刑務所に勤める刑務官のところに、小学校時代の優等生の同級生が、優等生だったのに自分をいじめ尽くした同級生がやってくる、周りにも相手にも気づかれないようにしていろいろなことを観察している刑務官が出てくる。その中で非常に印象的なのは、語弊があっては申しわけないんですが、刑務所に入っている人たちは、つまり元受刑者で今は外へ出てナイトパブの呼び込みをやっている男がこう言うわけですよ。おれらはしばらくお勤めしたらあそこから出られるけれども、おやっさんたちは、おやっさんというのは刑務官ですね、おやっさんたちは大変ですよね、大変ですよね、一生あそこから出られないんですからと。

 つまり、ある一つの社会の中に、特殊なあそこというニュアンスの塀の中の一つの閉鎖的なところで働いていく方たちの大変さというのが、さっき申しました浜井さんのあれにも、山本さんのを読んでも出てくるわけですね。その中から刑務官という仕事を本当に、府中刑務所でも、例えば非番のときでも何かあったら飛び出していかなきゃいけないといって、職員住宅が隣にあったり、本当に大変な思いで仕事をされている。いろいろな公務員の職種がある中でも、非常に厳しい職種ではないかと思っております。

 その中で、やはりこの過剰収容というのを減らすのが何よりも、まず取っかかりとしては、何か外部とお手紙をどれだけやりとりするとか、いろいろ細かいことを法律は決めていますけれども、とにかく詰め込み主義がなくならない限り、どうしようもないんじゃないかと。その中で、今法務省が模索しておられるというか、今度歩み出されたPFIというのは、私は非常に意味のあることじゃないかと思っております。

 これについて伺いたいんですけれども、PFI、刑務所で画期的な試みだと思います。幸い、第一号の山口県の美祢では入札にも企業連合が三つ参加したぐらいですし、それ以外にも刑務所を誘致している自治体が全国で、いろいろな形の刑務所でしょうけれども、六十ぐらいある。ぜひ、財産犯とか交通犯罪、あるいは殺人罪といっても、殺人罪の中には、家庭内暴力に悩んでとか、妻の介護疲れでとかいう本当に同情する殺人の名の方もいる。そういった、ほかの周囲に脅威を与えない、恐怖感を与えない、こういった人たちは、このPFIの仕組みで結構つくっていってほしいと思うんですが、これからどんなおつもりでいらっしゃるかということ。

 そして、私自身も税制改正の中で努力しましたけれども、まだ道半ばでございましたこのPFIで、こういった場合には国に成りかわってやるので、ライバルの民間事業者はいないわけです。全く民間のライバルはいないわけだから、固定資産税や不動産取得税もやはりただにしてもらうべきだと思っておりますし、来年も、次の税制改正も頑張ろうと思っているんですけれども。これは今後進めていくテーマだと思っているんですが、大臣、展望はいかがでしょうか。

南野国務大臣 本当に、先生おっしゃるように、いろいろと民間の活力をお願いしながらということでございます。

 一番のポイントは、やはり刑務所の過剰収容、この一一八%に対してどのようにしていくのか。従来からの施設の整備拡充に加えて、今先生おっしゃっていただいたPFI手法を活用することといたしており、施設の警備や受刑者の処遇の一部につきましても構造改革特区制度を活用するなどいたしまして、幅広く民間委託を行おうということでございます。

 もっとも、初めて民間委託を行うということでございますので、運営に支障を生じるおそれが少ない収容者に限定すべきであると考えられておりますし、山口県美祢市に整備を進めている第一号のPFI事業では男女の初犯受刑者合計千名を収容することといたしております。また、先般、事業予定地として島根県那賀郡旭町を選定した第二号のPFI事業でございますが、男子の初犯受刑者等二千名を収容することと検討いたしております。

 今後のPFI手法の活用につきましては、第一号、第二号の運用状況を見詰めながら検討してまいりたいと思いますが、今、全国の方々から、地域の活性化というようなことについても望まれているところでございます。それについては病院との連携ということも大切なことでありますので、いろいろと運用には心得ていくと思っております。

松島委員 今、最後に言われました病院との連携というのは、恐らく地域で好感を持たれることの一つは、病院過疎の地で病院ができるということだと思います。厚生労働の分野にも非常に詳しくいらっしゃった南野大臣でございますから、ぜひこれは進めていっていただきたいなと思う次第でございます。

 それから次に、外国人受刑者の扱いの問題について伺いたいと思います。

 過剰収容の中の一つの問題としては、外国人受刑者が非常にふえている、このことがあると思います。私、府中刑務所を見たときに思った感想としましては、例えば、イラン人は宗教上の理由で豚肉なしのメニューをわざわざつくるですとか、あるいはパン食したかったら希望をとるとか、逆差別でずるいんじゃないかと。日本人ですと、御飯がいいか、パンがいいか、そばがいいかなんてだれも聞いてくれないのに、何でかという思いが非常にいたしました。

 それとともに、十六年末、昨年末の来日外国人受刑者、つまり外国からやってきた人の受刑者については三千六百三十二人で、これは全体の五%近くになっています。このうち、中国人が断トツのトップ、四六%で千六百八十六人です。先ほど平沢委員から話もありましたが、中国人の犯罪者のために日本国民の税金が使われていることに対して、一般の日本国民からは非常に反発が強いものがございます。欧州評議会の国際受刑者移送条約に加盟しているアメリカやヨーロッパ諸国の受刑者は日本から本国に移送できますが、中国との間でもまず早く結んでほしいということ。中国人の受刑者を本国に速やかに帰すようにすべきだと思っております。

 そして、その際、早く結んでいただきたいということについてと、もう一つ、本人の希望なんか聞いている場合じゃありません。本人に、日本で刑務所暮らしをしたいか、中国で刑務所暮らしをしたいかなんて聞いて同意を求めるという、わざわざ日本へ来て犯罪を犯してまで、そんなぜいたくなことを言わせるべきでなくて、日本がその方が適切だと思えばさっさと帰すように、そういう法律にしてもらうように要望したいんですが、いかがでしょうか。

横田政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、外国人受刑者の食事の点などでございますけれども、外国人の受刑者に対しましては、その宗教上の戒律及び習慣に配慮いたしまして、例えばイスラム教徒の受刑者に対しましては、豚肉を使わない食事を給与するなどしております。また、その食習慣の違いに配慮して、外国人を多く収容する一部の施設では外国人受刑者にパンを給与する場合もございます。

 一般に、外国人受刑者は言語、宗教等に起因した受刑生活上の困難がありますので、一九八五年に我が国も参加した犯罪防止及び犯罪者処遇に関する国際連合会議において採択された外国人被拘禁者の処遇に関する勧告におきましても、外国人受刑者の宗教上の戒律及び習慣は尊重されなければならないとされているところでございまして、その趣旨を踏まえ、外国人受刑者の受刑生活上の困難を緩和し、円滑に収容生活を送らせるために宗教等に配慮した処遇を実施しております。

 宗教が生活の重要な部分となっている者に対しまして宗教上の戒律等に配慮しない処遇を行うことにより生じることが予測される問題を考慮いたしますとするならば、施設の管理運営上の観点からも、宗教等に一定の配慮をした処遇が必要になってくると考えております。それから、食事など、受刑者の生活の中で重要なものにつきましても、同様に施設の管理運営上の観点から、可能な範囲で習慣の違いに一定の配慮をした処遇が必要と考えております。

 それから、移送の問題でありますけれども、中国と受刑者移送条約を結ぶに当たりましては本人の意思にかかわらず移送を行うことができるようにすべきであるとのことでございますが、我が国が加入している欧州評議会の受刑者移送条約では、受刑者の改善更生及び円滑な社会復帰の促進をその目的としておりますことから、受刑者自身が受刑者移送に同意していることを要件としております。

 他方、御指摘のとおり、一般に国際受刑者移送は、受刑者本人の同意が必要不可欠とまでは言えず、今後、我が国が他国と受刑者移送条約を締結する場合には、以上を踏まえ、受刑者本人の同意を要件とすべきか否かを総合的に検討する必要があると考えております。

 いずれにいたしましても、私どもといたしましても、できるだけ早く中国との間で受刑者移送条約を結びたいと考えておりまして、その締結につきまして、外務省を通じて、現在中国側に打診しているところでございます。

松島委員 今おっしゃったように、欧州評議会の条約は本人の同意ということになっているわけですから、これは中国ですから別建てで、日中でつくるときにはきちっとやっていただきたいと思っております。

 最後に大臣に、今後御一緒に考えていただきたいことだけ、一つだけ申し上げさせていただきたいと思っております。

 刑務所の中に今、六十歳以上の人の割合が、昨年末で一一・六%になっています。急激にふえています。先ほど申し上げました、例えば山本さんの「獄窓記」の中にも出てきますが、高齢者や、もちろん認知症などの高齢によるものも含めて、精神障害者という人が随分多く刑務所に入っている。

 最初に私が申しましたのは、二度と犯罪を犯さないような人になって出てきてほしいということなんですけれども、しかしながら、この人たちは刑務所で刑を科すということが適しているのか。例えば認知症などだと、自分が悪いことをして刑務所で服役されているという意識もなかったら、その意味もない。そしてまた、その後、刑期満了して出ていく先というのが、更生という、高齢者で働けない、体の都合で働けない人たちの場合は、それも余り考えられない。そうしたときは刑務所という形が適しているのか。

 しかしながら一方で、といって、老人ホームというのはみんな入りたいのになかなか入れない、競争率が高いのに、刑務所に入れるべき人を老人ホームに入れるのも、これもずるいことになってしまう。今後一体どうしていくべきなのかということを、私自身も解決がつかない問題なんですけれども、質疑時間が終了いたしましたし、また大臣、そしてまた法務省だけじゃない、きょうは厚生労働省の方にも来ていただきましたが、ともに全体として考えていくテーマだと思っております。

 今後、この新しい法律がその趣旨にのっとって、先ほど私申しましたように、教育がきちっとされることを中心として、これからも一層取り組んでいただきたいと思います。どうもありがとうございました。

塩崎委員長 次に、谷公一君。

谷委員 自由民主党の谷公一でございます。

 論客の平沢先生、松島先生の後で大変やりづらいわけでございますけれども、少し質問をさせていただきたいというふうに思います。

 今回の法律によりまして、いわゆる刑事施設について、受刑者の権利義務あるいは職員の権限の明確化であるとか、社会復帰に向けた処遇の充実、不服申し立て制度の整備等々をなされているということにつきましては大変評価をするわけでございますけれども、しかし、一方で、これは逆ではないかと。つまり、この法案が施行されますと、受刑者、刑が確定している人の処遇について相当、少なくとも現行の法制度よりも充実された制度のもとで運用がなされる。しかし、有罪か無罪かわからない未決拘禁者については、若干改正はされることになっておりますが、基本的には古い法律である監獄法がそのまま適用される。いわば、逆転現象が起こる。

 そういうことについて滝副大臣に、ちょっとくどいようですけれども、どちらを先に法制度をすべきかということを考えれば、これは明らかに未決拘禁者ではないかというふうに私は思いますし、世間の常識もそうではないかと思いますが、その点についてお尋ねしたいと思います。

滝副大臣 今、委員の方から、監獄法の改正につきまして、現行監獄法でも対象にいたしております未決拘禁者の問題の方がその他のいわゆる刑務所の改革の問題よりも先行すべきじゃないかという御指摘だと思います。

 これは、まさしくそのとおりだというふうにも思います。実は、未決拘禁者の問題が重さとして軽いから後へ送ったというわけでは決してございませんで、むしろ逆の面があるわけですね。この扱いについてはいろいろな面で大きな山を抱えている、そういうこともあって、従来から監獄法の改正がなかなか実現してこなかったという経緯もありますように、この問題は大変各方面から考えなきゃなりませんし、また、この未決拘禁者の施設については、ある意味では、新しい技術も背景にしてこの問題を解決した方がいいという問題もございます。

 さようなことで、この問題は大きな山でありますから、まずそれから手がけるというのは委員御指摘のとおりでございますけれども、余りにも山が大きいということもございますし、そしてまた、ただいま申しましたように、新しい技術を駆使したことを導入することによって、今まで懸案とされてきたものを解決する道もあるんじゃないだろうか、こういうようなことも含めまして、今回、この問題を少なくとも一年間ぐらい先延ばししまして、その上で解決を図っていく。そして、今の刑務所の問題も、近々の問題がたくさんございますから、この問題から手がけていこう、こういうことでございまして、決して拘禁者施設の方が軽いから後回しにするとかという問題ではなくて、むしろおっしゃるようなことを考えながらも先送りをさせていただく、こういうことでございます。

谷委員 やや抽象的に副大臣は言われたわけですが、いわゆる代用監獄の問題が未決拘禁者の扱いについては一番ネックであろうかと思います。ただ、私個人といたしましては、代用監獄の問題をいわば理由として、法務省、警察庁それから日弁連も含めて、三者がずっとそのままにしておいたという責任はやはりあるのではないかというふうに思います。

 今副大臣言われました、一年ぐらいをめどということですが、では、具体的に、これからどういうふうにその三者が協議を進め、いつの国会をめどに、これから未決拘禁者の処遇を改善するための法案を提出すべく進めていこうとされているのか、富田政務官にお尋ねしたいと思います。

富田大臣政務官 今、先生の方から、代用監獄制度の問題で三者がこれまできちんとしてこなかったのはだめだというふうな御指摘がございましたけれども、その代用監獄制度のあり方を含めて、警察庁及び日本弁護士連合会との三者で今後も協議を行いまして、平成十八年の通常国会への法案の提出を目指して最大限努力してまいる所存でございます。

谷委員 私は、代用監獄について、日本弁護士連合会も言い分があるといいますか、筋論としてはわからないわけでもないんですが、しかし、この問題は現実的な着地点というのを考えていかないと、理想論だけを言っても前に進まないというふうに思います。それは私の意見でございますので、今後とも、鋭意関係者の皆さんの御努力をお願いしたいというふうに思います。

 さて、もう一度もとの問題に戻るのですけれども、受刑者の処遇は、今回、この法律によって大きくといいますか、少なくとも法制度の上では大きく変わる。では、そうでない未決拘禁者はどうなるのかという問題であります。

 それは、具体的に言うと、留置場などの処遇については相変わらず今の監獄法をもとに処遇をされる。それで一方、刑が確定した人は非常に、態度がよければ、一人で外泊も認められるとか面会も相当自由にできるとか、パソコンも持ち込み可ということになるんですか、そういうこともあるかもわかりませんけれども、留置場などの処遇は具体的に今までとどう変わるのかということについて、警察庁の方にお尋ねしたいと思います。

片桐政府参考人 今回の法案提出の経緯につきましては、ただいま法務省から御説明があったとおりでございまして、今回の法案におきましては、まず受刑者の処遇にかかわる法整備を急ぐ必要があるという観点から、これを今回先行させたということでございます。

 そして、今回の法案では、受刑者の処遇については、従来の監獄法の規定と比べますと、例えば収容開始時に必要事項の告知を行うとか、また健康診断や診療等の医療面での配慮を行うとか、また戒具の使用要件の明確化を図るとか、また不服申し立て制度を設けるとか、そしてまた刑事施設視察委員会の設置をするとかといったような、受刑者の権利保護にかかわる規定が整備されたところでございます。

 しかし、他方で、では、未決拘禁者を収容する警察留置場はどうなっているかということでございますけれども、従来から、現行監獄法等の規定によるほかに、国家公安委員会規則でございます被疑者留置規則とか、また通達等によって、未決拘禁者の処遇については各種の施策を講じてまいったところでございます。

 例えば、収容開始時の告知に関しましては、日課時限の告知を行う、また遵守事項の告知を行うとか、物品の貸与、また自費で購入できる物品についての教示を行うとかといったような告知を行っております。また、医療に関しましては、疾病の際の治療ほか、月二回の定期健康診断を行うとか、また戒具の使用につきましても、要件、手続をきっちり決めまして、必要な監視体制をとるとか、また苦情については、看守勤務員のほかに署長とか警察本部長に対する申し出ができるほか、また警察法第七十九条に基づいて都道府県公安委員会に対してこれも行うことができる、そしてこれはいずれも誠実に処理をすることとしているとか、また刑事施設視察委員会にかわるものとして都道府県公安委員会が、留置業務を含めてすべての警察業務全般について市民の目から管理監督を行うとかといったような施策を講じているところでございまして、新法と比べて、現在の運用が遜色のない運用であるというふうに私どもは考えております。

 警察としましては、これまでも未決拘禁者の処遇の適正化のためにこのような可能な限りの施策を講じてまいったところでございますけれども、今後ともさらに必要な施策を講じてまいりたいと考えております。

谷委員 それでは、こういう理解でよろしいんでしょうか。警察としては、今回新法が制定されて相当法制度の上では改善されるけれども、既に現時点で遜色ないぐらいそういう点について配慮をしていて、新たに、来年の法改正に先立って、今回の法改正に合わせてとるべき、あるいは改善すべきものは特にないという理解でよろしいんでしょうか。

片桐政府参考人 お答え申し上げます。

 私ども、現在の段階では、受刑者に比べて、厳密に詰めたわけではございませんけれども、おおむね新法の基準に合ったような、法制度は別にしまして運用はなされていると思っていますけれども、ただ、今後、代用監獄制度につきましては法務省そしてまた日弁連とも協議してまいりますので、その中で、さらにやるべきことがあるかどうかについてまた協議してまいりたいと考えております。

谷委員 わかりました。留置場の方も、どちらかというと、我々はそちらの方の可能性の方がより高いわけでございますので、きちんとしていただければというふうに思います。

 それでは、不服申し立て制度についてお尋ねしたいと思います。

 今回、質問するということで少し調べておりまして、情願という言葉を初めて知ったわけでございますが、現在、監獄法によって情願という制度がある。最近非常にふえているということでございますけれども、なぜふえているのか、どういうふうにそれを分析しているのかということが一つと、では、それはどういうふうに処理されているんでしょうかというのが二つ目と、それから、統計で見ると相当数出ているんですけれども、例えば平成十六年、大臣情願六千三百六十三件。それで、括弧七件というのが、採択件数わずか七件、何でこんなに低いのかなと素朴に思うんですが、お答え願います。

横田政府参考人 お答えいたします。

 まず、委員おっしゃいますように、法務大臣に対する情願の申し立て件数は近年著しく増加しておりまして、平成十三年には二千九百四十二件でありましたものが、平成十六年には七千五百件に至っております。なぜこれがふえたのかということ、これは必ずしも一概に述べることは大変困難であると思いますけれども、一つには、近年の過剰収容に伴いまして生活環境が悪化しているということもまた考えられるのではないかなというふうには思っております。

 その処理でございますけれども、これは大臣に対する情願でございますので、最終的には大臣の御裁決をいただくということになっております。採択のことを今おっしゃいまして、少ないのではないかということで、件数でいえば、それは情願の件数に比較いたしますと少ないということは御指摘のとおりでございます。

 その理由がどういうことかということもまた一概になかなかわかりにくいんですけれども、一つには、やはり各施設におきまして違法不当と言われるような取り扱いがあった場合には、情願の申し立てを待つまでもなく是正の措置を講じているということもありますし、また、施設の処置に違法不当がない場合でありましても、より適切な事務処理または被収容者処遇を実施するという観点から、改善措置を講ずるべきと認めた場合には情願の処理において施設に指導するなどして、より適切な施設運営を図っているということもまたあろうかと思います。

 それから、もう一つは、この情願の中にも、これは情願というのは本来、現在の監獄法では「在監者監獄ノ処置ニ対シ不服アルトキハ」ということで、監獄の処置に不服あるものについて情願を行うんですけれども、現実問題としましては、必ずしも監獄の処置に対する一種の不服申し立て、情願というものでないものを情願という形でなされてきておりまして、統計的にいいますと全体的に言うと八割から九割近くが、言ってみれば監獄の処置についてのものではないというものが大変多うございますので、どうしても、監獄の処置に対する、本来の情願に対する裁決の中になってきますと、やはり採択が件数としてはそう多くないということになろうかと思います。

谷委員 ありがとうございます。

 職員の勤務条件についてお尋ねしたいと思います。

 先ほど松島先生も質問されていましたが、職員の待遇というよりも、自衛隊であるとか、あるいは警察、消防、刑務官、そういう仕事に従事する方は、やはり一定数きちんとした人員配置で、健康管理も毎日、日々を、いわば余裕を持ったそういう勤務条件でないと、いざというときに本当に役に立たないというふうに思います。私も兵庫県で防災局長をしていまして、局長になっているときは、とにかく体を壊してはいけない、酒も余り飲み過ぎてはいけない、いつ電話が、いつ地震があるかわからないわけですから。

 ですから、そういう意味で、どうもいろいろお聞きしてみたり、あるいは諸外国のそういう一人頭の人数などを考えると、相当ハードだ。あるいは年休取得も、どうもほかの国家公務員と比べて何か極端に低いように思うのですが、どういう認識をされているのかということ、今後どう取り組むのかということについてお尋ねしたいと思います。

横田政府参考人 委員御指摘ございましたように、被収容者数が大変増加しておりまして、それに伴いまして、職員の負担も増大しております。平成十五年度を見ますと、例えば四週八休制が確保できずに、週休日も満足に与えることができていない施設が、七十四庁中六十四庁ございます。

 それから年次休暇取得日数につきましても年々減少しておりまして、保安業務に従事する職員の平均は、平成十一年度には五・九日だったものが、平成十五年度には三・九日となって減っております。国家公務員全体の平均はおよそ十一日程度でございますので、それに比較いたしますと、刑務官の負担の重さは顕著なものがあるというふうに考えております。

 こういう状況のもとで、関係各方面の御理解をいただきまして、平成十七年度予算におきましては、五百三十四人の増員が認められたことでございます。そして、これらの職員の有効活用により、過剰収容に伴う職員負担の軽減を図ることができるものと考えております。

 しかしながら、最近の犯罪情勢等からいたしますと、収容人員の増加傾向はなお継続するものと予想され、これに伴いまして、刑務所等の収容状態は依然として厳しい状態が続くことが推測され、これによって刑務官の負担もまた厳しい状態が続くであろうと考えられますので、今後とも所要の措置が講じられますように努力を続けてまいりたいと思います。

谷委員 今年度、そういう現状にかんがみて、数百人の増員をしていただいたということですが、しかし、警察に比べればけた違いだと思います。調べたところ、この十年で、全国の都道府県警察は二万四十九人ふえているのです。八・九%ふえている。埼玉県警だけで二千九十一人ふえている。平成七年から平成十六年ですよ。千葉県も一千六百人。神奈川県も一千六百人ぐらいふえている。それに比べれば、まだまだやはり充実する必要があるのかなというふうに思います。

 それからもう一つ、もう時間がなくなりましたので質問をいたしませんが、処遇の面で、やはり専門職員が非常に少ないように思います。心理学を専攻している職員がわずか百名ということを聞きまして、びっくりしました。今、例えば一つの児童相談所でも、心理学、教育学、社会学を専攻した児童福祉士と言われる人が、大きいところであれば数十人はいます。全国でわずか百人というのも、もっともっとそれも充実しないと、きちんとした社会復帰のためのプログラムの実効性は確保できないのではないかと思いますので、その辺もよろしくお願いしたいと思います。

 どうもありがとうございました。

塩崎委員長 次に、早川忠孝君。

早川委員 自由民主党の早川忠孝でございます。

 刑事施設及び受刑者の処遇等に関する本法律案でありますけれども、これは明治四十一年に制定された監獄法を一新するというもので、私としては、国際的な行刑の理念に沿う立派な法律であるというふうに評価しております。私自身、弁護士会で昭和五十二年当時から監獄法の改正問題に携わっておりまして、この法務委員会で質疑の機会をちょうだいしたことを本当に感謝しております。

 監獄法の改正の問題、三つの基本理念があったわけであります。近代化、法律化、国際化というふうに言われます。この法案の中では、刑事施設視察委員会の設置あるいは受刑者の外部交通権の拡大、あるいはこれまでの規律偏重の姿勢が一定程度是正されたこと、さらには受刑者の医療水準の確保等の措置が行われている。

 ただ、これに対して、現在の最大の課題であります過剰収容問題については対処ができていない。あるいは受刑者についての単独室の原則を今回の監獄法改正の中では採用していないといったような批判も出されているところであります。

 行刑改革会議の方では、「現下の過剰収容状態においては、受刑者の処遇に当たる刑務官等の人的体制や、受刑者を収容する施設等の物的体制が限界に達している」という認識を持っており、「深刻な過剰収容状態は処遇環境の悪化を招き、受刑者のために適切な処遇を行う上でも支障を生じかねないことから、その改善のため、物的体制の整備を求める。」あるいは「職員数の絶対的不足による執務環境の悪化を解消すべく人的体制の整備、充実を求める」、このような提言をされていたところであります。

 そこで法務大臣にまずお伺いをさせていただきます。

 大臣はこれまで刑事施設を視察されて、これまでの行刑運営の実情についてどのような点に問題があると感じておられたのか、今回の新法の制定で行刑運営の現場がどのように変わると思われているか、そういったことについて大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

    〔委員長退席、田村(憲)委員長代理着席〕

南野国務大臣 私は昨年の九月に就任させていただいて以来、五カ所の刑務所等を視察させていただきました。いずれにおきましても、厳しい過剰収容状態の中でございまして、受刑者に少しでも効果のある教育を実施しようとしている職員の姿がまた印象的に残っております。

 喫緊の課題といたしまして考えておりますことは、やはり過剰収容状態をどのように緩和するかということであろうと思います。その緩和の解消はもちろんでございますけれども、また国民が安心して暮らせる安全な社会を再生するには、受刑者がその犯した罪を十分に自覚した上で、改善更生していこうという意欲を持っていただくことが大切であります。そのためには、必要な指導を実施するということであります。

 そういう意味では、環境と同時に、そういった矯正ということへの心を入れるということでもあろうかと思いますが、そうした観点から法案は、受刑者に作業のほか改善指導及び教科指導を受けることを法律上義務づける。今まで義務づけられておりませんでしたので、これからは義務づけていこうとするなど、受刑者の改善更生の意欲をもちろんできるだけ喚起させていただき、社会生活に適応する能力というものを育成する、そういった処遇を考えていこうということでございます。刑事施設におきましても、受刑者の改善更生及び社会復帰を図るための処遇をより積極的に実施することとなると考えているところでございます。

 今後とも、この法案の求める行刑運営を実現するために、最大限の努力をしてまいりたいというふうに思っております。刑務所を視察させていただいたりしたことが、この審議に役立っていきますようにということを願っております。

早川委員 ありがとうございます。

 これまでの委員から、余り具体的な法案の中身に触れていなかった点があると思いますので、今回の法案の一つの目玉となっております受刑者処遇の具体的な改善の点についてお伺いをさせていただきます。

 この法案では、一部の受刑者に外部通勤作業、外出または外泊を認めることとしております。その要件として、仮釈放を許すことのできる期間を経過したという要件が付されているわけでありますけれども、具体的にはどのような受刑者にこういった外部通勤作業あるいは外出または外泊を認めるということを想定されているのか、お伺いをしたいと思います。

横田政府参考人 お答えいたします。

 この法案におきまして、仮釈放を許すために必要な期間を経過したことを要件といたしましたのは、外部通勤作業等がその現実の態様において一時的にせよ実質的に受刑者を拘禁から解くものである以上、それが自由刑の執行の範囲内にあるものとして許容され、一般国民感情の承認を得るために必要な条件と考えるからでございます。

 さらに、実務上の観点から申し上げましても、外部通勤作業等の対象者としての適格性の判断には、単に科学的な診断技法による人格調査のみならず、相当な期間の行動観察、処遇状況の検討を要すると考えるからでございます。

 法案におきましては、外部通勤作業等が許されるためには、さらに、開放的施設において処遇を受けていることなどの要件が必要であるとしておりますが、これは、対象者は自律心と責任感が信頼するに足りる者に限定しなければならないと考えるからでございます。具体的には、市原刑務所のような開放的施設で処遇を受けている者や、これに準じた処遇を受けている者に限定して許すことになると思います。

 なお、このような受刑者であれば常に外部通勤作業や外出、外泊が許されるというものではございませんで、円滑な社会復帰を図るため必要がある場合に許可することができるというものでございます。

早川委員 これは外部通勤作業あるいは外出または外泊を認めるということでありますけれども、その間には受刑者というのは刑事施設や保護関係機関等の監督を全く離れることになる、そういうふうに思われます。そういうことをして本当に大丈夫なのか、国民がそれを受け入れるだろうかということについてお伺いいたしたいと思います。

 あわせて、もしいろいろな不安感があるということになると、刑事施設の長は外部通勤作業等を認めることをかえってためらうことになって、結果的には、制度はあっても使われないということになるのではないだろうか、あるいは、受け入れの作業所がなければ全く意味がないことになるのではないかと思いますけれども、この辺はいかがでしょうか。

横田政府参考人 お答え申し上げます。

 おっしゃいますように、外部通勤作業、外出、外泊には刑事施設の職員は同行しません。更生保護機関の職員等による監督も予定されておりません。しかし、外部通勤作業の対象となる受刑者は、先ほども申し上げましたように、自律心と責任感が信頼するに足り、現にその自律的行動に期待した処遇を受けている者に限定されます。その上、外部通勤作業を許すに当たりましては、受刑者が遵守すべき事項が定められまして、これに違反した場合には懲罰を科することができることとしておりますほか、刑事施設の長による適正な指導等を行うことも考えられるところでございまして、対象となった受刑者がその間に不適切な行動に及ぶおそれは極めて少ないものと考えています。

 一方で、この処遇方法は、受刑者に自律心と責任感に基づく自主的な行動規制を行わせることにより円滑な社会復帰を図る制度でございまして、刑事施設内における作業につくことによっては取得できない技能などを取得させたり、一般社会の中で正しい人間関係を築く方法を学ばせる効果もあり、また外出、外泊は家族関係の維持、修復を図り、釈放後の生活のための準備をすることなどができる点におきましても、受刑者の円滑な社会復帰に有効なものと考えております。

 刑事施設の長におきましては、このような制度の意義を十分に踏まえ、個々の事案ごとに、自律的な行動が期待できる受刑者について、その必要性及び相当性を判断して、適切に外部通勤作業等を実施することになるものでございますので、許される例がないなどということにはならないと考えているところでありますけれども、いずれにいたしましても、制度の意義を踏まえ、その適正な運用には十分意を用いてまいりたいと考えております。

早川委員 ありがとうございます。

 行刑改革会議の提言ではこういう文言があるんですね。職員配置などの問題を解決した上で、これは受刑者について「最低一日一時間の運動時間を確保するように努めるべき」と。ところが、今回の法案にはこういった点についての言及がないわけであります。行刑改革会議の提言をそのまま法案化するということになれば、何らかの形で法案に明記すべきではないかと思われますけれども、いかがでしょうか。

横田政府参考人 お答えいたします。

 適切な運動の機会の付与は受刑者の健康の保持のために必要でありまして、現行法が「健康ヲ保ツニ必要ナル運動ヲ為サシム」と規定しているのにとどまっているのに対しまして、法案、三十四条でございますけれども、これにおきましては、「受刑者には、日曜日その他法務省令で定める日を除き、できる限り戸外で、その健康を保持するため適切な運動を行う機会を与えなければならない。」といたしまして、平日には原則として毎日、できる限り戸外で運動の機会を保障する旨の規定を設けたところでございます。

 しかしながら、現下の収容状況や運動のためのスペース及び職員配置の状況を前提といたしますと、大多数の刑事施設において、一日一時間の運動の機会を確保することは現実問題として不可能でありまして、このような不可能なことを法文に規定することは適当ではないと考えております。

 もとより、提言の趣旨に沿って、できる限り運動の機会を拡充するよう努力すべきことは当然でございまして、現在、一部の施設におきましては、運動時間の延長というものを試行的に実施している施設もございますので、そういった施設の試行状況等も参考にしながら、適切な運用に努めてまいりたいと考えております。

早川委員 ありがとうございます。

 いずれにしても、過剰収容問題あるいは刑務官の勤務条件の改善等の問題が依然として残ってくるんだということだと私は理解をしております。

 今回、刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律案が上程されたことによって、刑務所等が抱えている問題が国民的な論議の対象になってきたということは大変な成果であったと私は思っておりますので、今後とも引き続いて検討をしていきたいというふうに思っております。

 さて、これは警察庁にお伺いをしたいのでありますけれども、今回の改正というのはあくまでも刑が確定した受刑者の処遇に関する改正だと思います。そしてまた、受刑者というのは本来は刑務所において処遇されるべきと考えますけれども、この法案の第三編補則の第四章に警察留置場に関する規定がございます。なぜこういう規定が置かれることになったのかということと、あわせまして、これは刑務所等では防声具は使用しないということになっているのにかかわらず、警察の留置場においては防声具を使用するという制度になっているのはなぜなのでしょうか。その辺の理由をお伺いしたいと思います。

片桐政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、法案の第三編補則第四章に関するお尋ねでございますけれども、まず、今回の法案策定の考え方から申し上げますと、従来、意見の相違のございました代用監獄制度を初めとした未決拘禁者の処遇部分につきましては、引き続き協議、検討を行うということにいたしまして、まず行刑部分の改革を急ぐために、受刑者の処遇を中心とした法整備を図ることとしたということであります。

 具体的に申し上げますと、まず一つには、未決拘禁者に関する規定、また代用監獄に関する規定、この中には受刑者を収容することができるとする部分を含んでおりますけれども、この部分は当面手を加えずに、内容を変えないままにそのまま残そうということにいたしております。これについては、また日弁連、法務省と引き続き協議をしていくということにいたしております。

 二つ目には、今回は受刑者にかかわる法整備を中心に行いますが、これに伴って、未決拘禁者を収容する部分を含めて、刑事施設一般に関する総則規定が第一編に置かれております。そういった中身になっているわけでございますが、その結果、刑事施設一般に関する第一編の総則規定と第二編の受刑者に関する規定が、原則的には代用刑事施設たる警察留置場にも適用されるということになるわけでございますけれども、他方で、警察留置場と刑事施設とでは、組織系統であるとか施設の規模、内容等が異なっておりますので、所要の読みかえ規定でありますとか、また適用除外規定を置く必要があるということでございます。こういった意味で第三編第四章の規定を置いたものでございまして、受刑者の権利保護であるとか、また看守勤務員の権限の明確化等のためには、ぜひとも必要な規定であるというふうに考えております。

 次に、防声具に関するお尋ねでございますけれども、現在の監獄法及びその施行規則によりますと、戒具として防声具の使用が認められているところでございますが、本法案につきましては、刑事施設の受刑者に対する防声具の使用が規定されてはおりません。これは、刑事施設においては防音効果の高い保護室の整備が進んでおりまして、したがって、この防声具を使用する必要がなくなったこと等によるものであると承知いたしております。

 これに対しまして、警察留置場におきましては、こういった保護室に相当する施設、我々はこれを保安室と呼んでいますけれども、この保安室の整備がまだ十分ではございません。他方で、被留置者が大声を上げて、他の留置人に迷惑を及ぼすなど留置場内の平穏を害し、また秩序を乱す事案もありますことから、留置場においては引き続き防声具を使用することが必要であるというふうに考えているものであります。ただ、その使用は、他に方法がないときに限って認めるということにいたしておりまして、したがって、保安室の整備された留置場におきましてはこれを使用することはないということでございます。

    〔田村(憲)委員長代理退席、吉野委員長代理着席〕

早川委員 私は、基本的に受刑者の処遇というのは、その収容施設が刑務所であろうと、あるいは警察の留置場であろうと、全く均一でなければならない、これが大原則だと考えております。その意味で、留置場において現実に受刑者に対して防声具を使用することがないように、さまざまな検討をしていただかなければならないだろう。

 これはあらかじめ質問しておりませんでしたけれども、刑が確定した受刑者で、警察の留置場において処遇を要する対象者、あるいは、その期間とは大体どの程度のことを考えていたらよろしいでしょうか。

片桐政府参考人 現在、代用監獄である警察留置場に収容している受刑者の数は、これは延べなのでございますけれども、六千六百人日、延べで年間六千六百人ということでございます。

早川委員 本来的には刑務所の方に移監をするという大原則だと思いますので、極めて短期間においての処遇であり、しかも刑が確定をしているということですから、捜査段階での被疑者、被告人というのとはまた大分、現実には対応が違ってくるんだろうなというふうに思っております。

 防声具の使用で死亡事故も発生したということもありますので、くれぐれもそういう事故が再発をすることがないように、関係の機関においては対処をしていただくことを要請し、あわせて、法務省におかれては、引き続いて刑務所等の施設の改善あるいは刑務官に対する処遇の改善に努めていただくよう要請をして、質問を終わります。ありがとうございました。

吉野委員長代理 次に、江田康幸君。

江田委員 公明党の江田康幸でございます。本日は、引き続きまして監獄法の改正について質問をさせていただきます。

 最近の我が国は、治安状況の悪化が大きな社会問題となっておるところでありまして、かつては、治安のよさは世界でも誇っていたわけでありましたが、最近では、もう多くの方々、国民が心配しているような、身近に凶悪事件が相次いで発生しているような状況でございます。

 このような状況の中で、国民が安心して暮らせる安全な社会を再生していくためには、さまざまな観点から対策を講じなければならないと思いますけれども、その一つとして、やはりこの監獄法の改正に焦点が当たっておりますところの、刑務所における受刑者の処遇を充実させることによって、一人でも多くの受刑者を改善更生させて、健全な社会人として社会に復帰させる、このことが何よりも大切ではないかなと私は考えます。

 その意味でも、約百年ぶりでしょうか、明治四十一年にできた監獄法が改正されて、受刑者の処遇を中心とした法案が今国会にこのように提出されて審議されるということは、非常に意義あること、画期的な、重要なことであると評価をしております。

 幾つか質問をしたいと思っておりますが、まずは、先ほどからも多くの皆さんが御指摘されているように、過剰収容の状態が刑務所は続いているということでございます。その一方で、刑の執行を受けて刑務所を出た者のうちで、半分近くの者は五年以内に再び刑務所に戻ってしまうという現実もあるわけでございます。出所した人が再び犯罪を犯してしまう原因というのはいろいろあるかと思いますけれども、その一つとしては、刑務所において受刑者に対する指導がきちんと行われているかどうか、その仕組みをきちんとつくる、それが必要であると考えます。

 そこで、まず最初に、基本的な問題でございますが、この法案の大きな目的として考えられる受刑者に対する処遇の充実について、大臣、どのような基本的な考えでこの法案を立案されたのか、お伺いいたします。

南野国務大臣 お答え申し上げます。

 監獄法は、先生今おっしゃったとおり、約百年前に施行されて以来、実質的な改正がなされることなく今日に至っております。被収容者の権利義務や職員の権限が明確に規定されていないということのほか、受刑者の改善更生及び円滑な社会復帰の実現、そういう行刑の理念に基づく処遇方法が定められていないというようなことで、極めて不十分なものであるということで、それが第一でございます。

 そのため、刑事施設の適正な管理運営を図るとともに、受刑者等の人権を尊重しながら適切な処遇を行うために必要な事項等を定める法案を提出しようとするものでございます。

 先生御指摘のとおり、治安に対する国民の関心が高まっております。国民が安心して暮らせる安全な社会、それを再生することが求められております今日であります。受刑者の改善更生及び社会復帰を図りながら再犯を防止するための処遇を充実させるということは極めて重要なことであり、矯正行政を十分に果たしていくことによって再びリボーンして社会に貢献できる方になっていただきたいという願いがございます。

江田委員 今大臣申されましたように、これまでが、権利義務関係も、また職員の権限というのも不明確であったと。私も、今回の監獄法の改正、質問するに当たりまして勉強する中で、すればするほど、これはなぜ早く、本当に改正に至らなかったのかというような思いがするくらい、また国民の目線からしても、早くこれは改正するべきところではなかったのかなという思いがいたします。

 次の質問でございますけれども、この法案では、これまでの法律では必ずしも十分に行うことができなかった教育的な指導を充実させるということで、そこに力点が置かれているわけでありますけれども、その前提としましては、これまではどのような指導を行ってきて、どのような問題が起こっていたのか。特に、受刑者の中でも数が多いとされている薬物事犯の受刑者、それから暴力団受刑者に対する指導の実情について説明をしていただきたいと思います。

 あわせてでございますが、この薬物事犯の受刑者に対する指導として、今般研究を重ねて処遇プログラムができ上がったということでございますけれども、その具体的な内容についても御説明を願いたいと思います。

横田政府参考人 お答えいたします。

 受刑者に対しましては、一般的な生活指導のほか、覚せい剤乱用防止教育、暴力団離脱指導、被害者の視点を取り入れた教育などの処遇類型別指導を行ってきたところでございますが、これらの指導は、法律上の根拠も明確ではないことから、受刑者に対して受講を強力に働きかけることが困難な状況にあり、また、指導プログラムにつきましても、各施設が試行錯誤の上に実施しているもので、十分とは言いがたい面がございました。

 覚せい剤乱用防止教育につきましては、平成十六年四月現在、七十庁で実施されておりまして、具体的内容は施設ごとに異なるものの、一こま一時間の指導を週一回から月一回の頻度で実施し、専門家の講話や討議、課題作文等を通じて、薬害や覚せい剤の依存症を理解させるなどの指導を行っているものでございます。

 薬物依存者の教育処遇につきましては、昨年、当局において外部の有識者の方々とともに研究会を開催し、この研究会の結果を踏まえ、グループワークによる指導を充実させることや、ダルクなどの自助グループと連携することなどを内容とする標準的プログラムを作成しているところでございまして、さらにその内容を充実させるように努めてまいりたいと思います。

 また、暴力団受刑者に対する離脱指導でございますが、平成十六年四月現在、三十二の庁で実施されております。警察機関等の協力を得ながら、講話や討議等を通じて離脱の意思を固めさせることに努めているところでございます。これまでは、離脱の意思を持ち、離脱指導を受けることを希望する者に対してこれを実施していたにとどまっていたものでございますが、今後は、離脱の意思を持たない者に対しても、個別の必要性に応じ、暴力団の反社会性を認識させる等の指導を行いつつ、離脱を強く働きかけてまいりたいと思います。

 なお、最後に委員の方から、薬物依存者に対する教育プログラムができているので、その内容というお尋ねがございましたが、先ほど申し上げましたように、現在策定しているところでございますので、でき上がりましたら、お尋ねがございましたら、またお答え申し上げさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

江田委員 受刑者の中で更生が一番難しいとなってきているのが、やはり薬物事犯であり、暴力団受刑者、この関係だと思われます。

 今般の改正で、今おっしゃられましたように、例えば暴力団関係なんかも、これまで離脱希望者だけであったんでしょうけれども、希望のない者も指導をしていくというふうに変わるということが確認できました。また、研究会ができた薬物事犯の処遇プログラムについても非常に私関心がございます。やはり、薬物からの離脱というか、これは非常に難しいところがあると専門家からも聞いておりますので、ぜひ処遇プログラムを早急に、この法案が通る予定でございますので、進めていただきたいと思います。

 もう一つ質問ですが、この法案には、改善指導の内容としまして、受刑者に対して、先ほどから大臣が何度もおっしゃっておられますけれども、犯罪の責任を自覚させるという観点が盛り込まれているわけでございます。この点が非常に大事なことだと思うんですが、これまでは、やはり被害者という観点が取り残されていた。被害者が受けたそういう被害感情を、それをどう受刑者が受けて、それを更生に役立てるのかというところがなかなか進んでいなかったと思うんです。

 受刑者が本当の意味で改善更生をするというためには、やはり被害者の状況を理解させて、そして犯罪の責任を自覚させるということがまず必要であるかと思いますが、大臣、受刑者に対する指導に当たりましては、このような点を十分に踏まえていくべきと考えられますけれども、そのお考えはいかがでしょうか。

南野国務大臣 本当に先生がおっしゃるとおりだというふうに思っております。受刑者が真に改善更生するためには、被害者の悲しみ、また苦しみ、それを理解し、みずから犯した罪の重大性というものを反省するべきだ、また、それを認識して心を変えるというようなことが一番のポイントであろうかと思います。そのような責任を自覚するとともに、被害者に対する償いの気持ちを持つということが必要であると考えております。

 そのような観点に立ちまして、刑務所におきましては、近年、被害者の視点を取り入れた教育を実施しているところでございます。今回の法改正によりまして、受刑者に対します改善指導がこれまた義務づけられるということに伴いまして、指導の充実により一層努力してまいりたいと思っております。

江田委員 大臣から今総論が述べられましたので、具体的にはどのような指導になっているか、もっと細かいことがございますでしょうから、よろしくお願いします。

横田政府参考人 お答えいたします。

 刑務所におきましては、受刑者が、みずからが犯した犯罪による被害の実態や被害者の心情等を認識した上で、その責任を実感し、被害者や遺族への謝罪など誠意を持って対応する気持ちを涵養するための教育が必要でありまして、現在、処遇類型別指導の一類型として、講義や集団討議のほか、ビデオ教材や録音教材、被害者の方の手記等を利用した、被害者の視点を取り入れた教育というものを実施しているところでございまして、最近におきましては、犯罪被害者や支援団体の方々による講演等により、被害者の心の傷、苦しみや悲しみを受刑者に伝える取り組みも開始しております。

 矯正局におきましては、このような観点から、教育の充実を図るために、昨年、被害者支援団体を含めた外部有識者をメンバーとする研究会を開催したところでございまして、現在、研究会でいただいた御意見を踏まえ、標準的なプログラムを作成するなどしているところでございます。

 今後とも、このような方策を通じて、より多くの受刑者に被害者の生の声を聞かせる機会を設けるなど、この教育の充実に努めてまいりたいと考えております。

江田委員 この被害者の視点を取り入れた指導というのが今回の改正でも非常に重要かと思いますので、しっかりと進めていただきたいと思います。

 次に、性犯罪者の処遇について幾つかお尋ねをしたいと思っています。

 奈良市で起きました少女誘拐殺害事件によりまして、いわゆる小児性愛者の問題がクローズアップされたわけでございますけれども、インターネットやテレビでも異常な小児性愛をあおるようなものがはんらんしているような状況でありまして、極めて深刻な問題であると受けとめております。子供は自分の身を守るという能力は低いわけでありまして、また社会全体として、だからこそ子供を守ることが必要でありますし、性犯罪を受けた子供のその心理状況、心身に与えられる影響というのも指摘されているわけでございます。

 一方で、奈良市で起きた少女誘拐殺害事件を契機に再犯の問題が注目されたわけであります。新潟の少女監禁事件も再犯であったわけであります。また、奈良市の少女誘拐殺害事件もそうであった。

 警察庁から公表されているデータでございますけれども、最近、新たな調査結果がまとまったということで、三月の四日に公表されているんだと思いますが、そのデータを見ますと、結果として、子供を対象とした性犯罪が四百六十六人いるという中で、同じ子供対象の性犯罪を犯した者が七十四人、これは一五・九%に相当するんですが、これはほかの犯罪と比べて高くはないという数字だということを説明されます。しかし、過去何らかの犯罪経歴を持つ者がその中に百九十三人いて、その百九十三人を分析すると、過去、子供対象の性犯罪経歴を持つ者が七十四人いる。これは四割近く、すなわち、過去に何らかの犯罪経歴がある者のうちで、同じ子供対象の性犯罪を犯す者が四割近くいるということを示しているわけでございます。すなわち、過去に同様の事件を犯した者によって子供対象の性犯罪は引き起こされているということが非常に明らかになってきたと思います。

 そういうような意味でも、子供に対する性犯罪を犯した受刑者に対しましては、刑務所において専門的な教育、指導を行う必要があると思われますが、子供に対する性犯罪など性犯罪を犯した受刑者に対しましては、これまでどのような指導が行われてきたのか、また今後これに対してどのように取り組んでいくつもりか、その点をお伺いいたします。

横田政府参考人 お答えいたします。

 子供に対する事犯を含めた性犯罪を犯した受刑者に対しましては、現在、一部の行刑施設におきまして性犯罪防止に関する処遇類型別指導を実施しておりますが、希望する者を対象としていることもございまして、この指導を受ける受刑者は少なく、また、統一的、標準的なプログラムが存在していないなど、十分とは言いがたい面がございました。このため、この法案におきましては、受刑者に必要な改善指導等を受けることを義務づけ、性犯罪を犯した受刑者に対しましても必要な改善指導を受けるよう、強力に働きかけることが可能となるようにしているところでございます。

 また、性犯罪防止のための指導を内容的に充実させるため、精神医学、心理学等の専門家の協力を得て、科学的、体系的なプログラムを策定することとしておりまして、現在、専門家の人選等の準備を具体的に進めているところでございますが、できるだけ早い時期にこれを立ち上げて、いいプログラムをつくりたいというふうに考えております。

江田委員 私、この性犯罪者の処遇については最大の関心を持ってこの法案の成立を見ているわけでございます。

 おっしゃられたように、専門の教育プログラムというのが果たしてできるのか。研究会で検討はなされていくんだと思いますけれども、それがまだ見えない。そういう中で、性犯罪者の処遇を含めて、受刑者の処遇を中心とする法改正が行われていくわけでございます。やはり、でき得る限りの最大の専門的な教育プログラムを開発、また作成すべきだと思います。効果的なプログラムの作成に全力を注入していっていただきたい。

 また、専門教官の育成ということを言われましたけれども、先ほどから出ておりますように、心理学を修めている方々がどれだけいるのかということになると、全国で百人しかいないというような実情でもある。そういう中で本当に充実した更生教育が行われるかというのが、いまだ疑問でございます。そういうところも含めて、本当に人材等においても確保できるように、我々政治の側としてもしっかりと予算も確保していかなければならないと思っております。

 次の質問に入らせていただきますけれども、刑務所において、今これは刑務所を中心とする法改正でございますからそうなんですが、刑務所において十分な指導を行っていったとしても、とにかく性犯罪を初めとする再犯を防ぐということのためには、社会に戻ってからのフォローというのがなされないと効果は期待できないわけであります。

 先般、法務大臣が発表されました再犯防止のための緊急的対策の中でも、性犯罪仮出獄者等に対し、その者にふさわしい教育処遇を受けることを遵守事項として定め、これを守るように指導するということが挙げられておりました。私も社会内での処遇を充実させるべきだと思いますけれども、今後、性犯罪者に対する社会内処遇を充実させるための具体的な方策についてお尋ねしたいと思います。

 また、民間施設で、ある更生保護施設での性犯罪者の受け入れが消極的だという新聞報道もあっております。これはたしか読売新聞の調査によるんでしょうけれども、全国九十四施設のうち、過半数に当たる五十三施設が入所を拒否している、受け入れているところはわずか三カ所であるという実態が報道されておりました。その理由としては、性犯罪者の場合には矯正が難しいということと、周りの住民の理解が得られないというようなことであったかと思います。

 また、もう一つでございますけれども、保護観察所の人的体制、その充実が必要ではないかと思うわけであります。聞くところによりますと、性犯罪前歴者を受け入れた場合に、更生状況を見きわめる専門のスタッフ、職員が必要でありますけれども、これを雇えるだけの余力というか資力がある施設は少ない。こういう現実、実情の中で、法務省としてはどのような対策が今後必要であると思われているか、そのことをお伺いいたします。

    〔吉野委員長代理退席、委員長着席〕

南野国務大臣 先生のお尋ねが二つ、三つあったかなと思います。少し長くなるようでございますが。

 先般、法務省におきまして、再犯防止のための緊急対策を発表させていただいたところでございます。その中で、仮出獄性犯罪者の再犯を防止するため、保護観察官の直接的関与を強化していくといたしましたほか、平成十七年度中に策定することといたしております性犯罪者に対する再犯防止プログラムによりまして、その効果が十分に得られるよう、今、処遇の充実をしていくところでございます。

 保護観察所では、現に数多くの保護観察事件等を取り扱っておりまして、また、昨今の急激な犯罪情勢の悪化を反映した中では、個々の事案の内容は複雑化、またさらに困難化いたしております。その処遇上、特別な配慮を要する事案も増加してきているのでございまして、保護観察官の負担は従前にも比べまして相当に増しているというのが現状であろうかと思います。

 したがいまして、先生が御指摘になられましたとおり、保護観察等の処遇に携わる人的体制につきましては、これまで以上に充実していく必要がある。これは鋭意努力してまいりたいというふうに思っております。

 次に、更生保護施設についてでございますけれども、私は先月、更生保護施設を訪問させていただきました。職員の方々からお話を伺いましたが、まことに御苦労の多い大変なお仕事でございます。更生保護施設は全国に百一ありまして、すべて民間法人が運営しておられるわけですが、地域の理解と協力がないと、どうしようもないということでございます。

 また、刑務所を出所した後に帰るところがない人などを一定期間保護しておられますけれども、性犯罪者に対する地域社会の厳しい感情に配慮しなければならない。地域の目が大変厳しゅうございます。職員体制が必ずしもまた十分ではないということなどから性犯罪者の受け入れに慎重になっている面がある、先生が御指摘されたとおりであると思われます。

 また、各更生保護施設を所管しております保護観察所では、入所者に対する保護措置または処遇方法等につきましても常時更生保護施設と協議を行っているところでございますけれども、性犯罪者に対する処遇プログラムの策定状況等をも踏まえながら、性犯罪者の受け入れのあり方について検討していくとともに、今後とも更生保護施設に対しさまざまな形で支援を強化してまいりたいと思っております。本当に感謝している方々でございます。

    〔委員長退席、田村(憲)委員長代理着席〕

江田委員 私も、この更生保護施設の存在というか意義というのは非常に大きいと思うのであります。仮出獄して二三%は行きどころがないというところを引き受けてやっておられる。しかし、そこに先ほど言ったような現状がございます。大臣も御指摘されました。

 どうするか。本当にこういう性犯罪前歴者の教育を、刑務所とこの保護施設でのプログラムが一体となったようなプログラムをもって進めていくのは、やはりそれを担うのは保護観察官であり保護司ではないか、またそれ以外の専門スタッフなのか、そこのところが見えておりません。ですから、そういうところをしっかりと進めなければ、絵にかいたもちと言われても仕方がないわけでございまして、そのところに今後はまた焦点を当てて法務省としても前に進めていただきたいと思います。

 最後でございますけれども、行刑のあり方全体についてお伺いをしておきます。

 先ほどから出ております。刑務所は今大変な状況にあるわけですね。この改革が必要と言われた当初においては、看守の暴力から受刑者を守れといったような単純な視点ではなかったかなという思いもします。しかし、そういう単純な視点では済まされないような複雑な状況にあるのが刑務所であるということが、私も勉強する中でわかってまいりました。

 法務省が平成十五年に行った受刑者へのアンケート結果によりますと、三四%が職員から暴力、おどし、いじめを受けた。しかし一方で、逆に、四三%の職員の人たちは受刑者から暴力を振るわれたりおどされたことがあり、その五七%は身の危険を感じる経験をしたと回答しております。双方向なんですね、この人権の問題。さらに、受刑者同士の暴力やいじめを目撃したことがある刑務官は何と約七割に上っている。

 一方で、刑務所は深刻な過剰状態が続いているというのは、先ほどからの指摘もございます。収容率は一二〇%にも達しようとしている状況だと思います。その割に刑務官はふえない。日本は一人当たりの受刑者数が先進国で断然多いわけでございまして、一人で七、八十人の受刑者を担当する刑務官もいるわけであります。昨年中にとれた有給休暇は三日以内という刑務官は六割、その半数は一日も休めなかった。

 こういうような環境が、受刑者、刑務官双方のストレスを増して、刑務所内の緊張を高めているような状況ではないかと私は想定いたします。先ほどから申されているような効果的なプログラムを用いた更生教育もその人間が実施するわけでございますから、このような状況の中では行き届かないということも心配されます。

 刑務官をめぐるこれら諸問題を解決するには小手先の対応では無理であると指摘する専門家もおります。現実を踏まえまして、行刑のあり方全体を改めなければならないと思いますけれども、刑務所は治安の最後のとりでと言われますけれども、これらの課題、問題に今回の法改正は総合的に対応しておりますでしょうか、大臣に最後お伺いをいたします。

南野国務大臣 先生御指摘のとおり、常態的な過剰収容によって受刑者の処遇環境というのは大変厳しいものとなっております。その処遇に当たります職員の負担も年々増加いたしておりまして、先生が先ほどおっしゃったとおりの事案も発生しているわけでございます。

 受刑者の人権を保障しながら適切な処遇を行うことによりまして、真の意味での改善更生また社会復帰を図るということは、安心して暮らせる安全な社会を再生するということにも重要なことでございます。そのためには、過剰収容状態の緩和、解消による処遇環境の改善または整備を含めまして、抜本的な行刑改革を進めることが必要である、先生の御指摘のとおりであると思っております。

 この法案は行刑改革を進める上で極めて重要なものでございまして、これによりまして法的枠組みにおきまして受刑者処遇を充実させることができるようにとのことになりますが、今後とも必要な人的または物的体制の充実に努めていきますとともに、効果的な処遇プログラムの策定など、受刑者処遇の内容の充実にも努めてまいるという所存でございます。

 また、今回は法改正を行わないことといたしました未決拘禁者等の処遇に関する部分につきましても、関係機関との協議を進め、できる限り早期に法改正を実現したいということも念願といたしております。

 以上です。

江田委員 時間が参りましたので、これで終わります。ありがとうございました。

田村(憲)委員長代理 次に、伴野豊君。

伴野委員 民主党の伴野豊でございます。

 本日は、刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律案ということで、大臣に一時間ばかりおつき合いいただいて、質問させていただきたいと思います。

 重い法案ですよね、これ。私もかれこれ、これで委員にしていただいて五年近くになろうとしているんですが、いろいろな法案、自分なりにチェックをし、見てきたつもりでございます。

 私のポリシーとして、いろいろな課題や指摘はするものの、最終的には提案をしていく形で質問をしていきたいと思ってきたんですね。政権準備党でもございますし、批判だけの批判をしていてもしようがない。今回もそういう視点でずっと勉強させてもらいました。自問自答することが多くて、当然人権という、被害者の人権、加害者の人権、国民世論、さまざまな思いをしていく中で本当に堂々めぐりいたしまして、こうしたら解決できるんだというようなことがなかなか自分の中でもアイデアフラッシュできなくて、場合によっては、自問自答していく中で哲学的なことも考えてみたり。

 私も人の子でございまして、前にも申し上げたかもしれませんが、九歳の女の子を持つ親でございます。できるだけこのことを真剣にといいますか集中して考えるために、自分の娘が、先ほど松島先生からもいろいろ性犯罪の話があり、性犯罪に遭ったら何を考えるだろうというようなことを考えていくんですが、やはり想像の域を超えないんです。そういう事象に現実に遭っていない。

 それから、私自身も刑務所のことを考える。入ったことはないんですよね。視察はさせてもらいました。視察をしたときですら、ここから刑務所ですよと言われたときに、これが刑務所の空気なのかという表現しにくい、ここからが刑務所なのかという思いをしたぐらい、今までは知らない世界だったんですね。

 ある面、これは先進国の方に直接聞いたわけじゃないんですが、ほかの先進国に比べて、どうも日本は、そういう暗の部分というか、見せちゃいけない、あるいは考えない方がいいんだ、表現が悪いかもしれませんが、臭い物にふたをするぐらいの、多少そういうところがなかったのかと。

 今回も、これは一九〇八年以来の監獄法の改正ですよね。そういった非常に重い法案を今、目の前にされて、大臣も多分私と同じような思いをされているところがたくさんあるんじゃないか。失礼ですけれども、大臣も多分収監されたことはないと思いますし、お身内の中にそういう御不幸があったかどうかはわかりませんが。そういう、いろいろ考えていきたいけれども、実際経験したことがない中で、想像の中でいろいろ物を考えなきゃいけないジレンマとともに、しかしやっていることはすごく重い話。

 先般、予算委員会の中でも、私は都市計画をやってきた、その中で、いい鉄道をつくりましょう、いい道路をつくりましょう、いい町をつくりましょうとやってきたとしても、正直言って、私の都市計画の中に、今まで刑務所をどう配置するかというのは余りなかったですよ。私も、刑務所というのは余りかかわりたくないというか、その計画がどうなっているのかというのは、はっきり申し上げて、この法案を目の当たりにするまで、ここまで真剣に考えたことはなかったです、正直申し上げて。

 それだけ重たい法案を目の当たりにして、一方で、考え方としまして、もうこれ以上先送りできない。ここできっちり歯どめをかけておかないと、あなたたちがいた時代にこういう法案をきちっと審議したのに、もうその後もなかなか改善されていないじゃないかと言われたくもない。だから、想像をしながらも、できるだけいい法律にしたいなと思って読み込んだつもりなんですけれども、私は今、そういう思いで、複雑な思いとともに、自分の決意も相当強く持っております。

 大臣、今、この法案に対して、どんな思いで臨まれて、どんな決意を持っていらっしゃるか。ある面、刑務所にまつわるこの周辺のことをきっちりやれるかどうかというのは、国のレベルといいますか、文化度、品格、成熟度もあらわしているんだろうと思うんですね。どんな思いで臨まれているのか、お答えいただければ。

    〔田村(憲)委員長代理退席、委員長着席〕

南野国務大臣 私の感想を申し上げます。

 先生が今るるお話しになられたことを、本当に心の中に入れながら聞かせていただきました。

 刑務所を視察させていただいている間に、個室、これはある研修、アジ研の方々は、その中に入って研修をするというようなことも聞いております。私も、そういう体験も持たなきゃいけない、視察をさせていただいただけでありますが、その中での心というものをどのように見ていくかということも痛切に感じて、視察から帰ってきたところでございます。

 幸いに犯罪者の身内はいないということで、私もほっとしているところでございますが、いろいろな形の中で、生きている以上、その中にかかわる可能性というのは出てくるというふうに思っております。

 そういう意味で、この重たい法案に対してどのように感じるかということで、百年ぶりに改正しようとしている。それは先人たちのいろいろな足跡が見られるところではありますけれども、このたびの形といたしましては、刑事施設の適正な管理運営を図っていこうということも中に入ります。受刑者等の人権を尊重しつつ、適切な処遇を行うための必要な事項等も定めようとしているものであります。

 私が、国民が安心して暮らせる安全な社会を再生するという喫緊の課題を実現するというためにも、行刑改革を遂げて、受刑者の真の改善更生を図るための処遇を充実させることがぜひとも必要であるというふうに考えております。こうした処遇を実現するにはこの法案が必要不可欠であると考えておるくらい熱を入れているつもりではございますが、現在、刑事施設は過剰収容等の問題を抱えておりますけれども、国民に理解され、支えられる施設を目指し、不退転の決意で、本法案の成立を初めとする改革に取り組んでまいりたいと思います。

 官民一体となったPFIということについても、我々検討をし、今第二号目の成立をも認めていこうとしているところでございます。

伴野委員 大臣も重い法案だということを、言わずもがなで、その思いは一緒なんだろうと思います。

 それで、今回の趣旨説明をされたときの提案理由説明というのを改めて読んでみました。二行目、三行目、四行目が私はどうも、最初はするっと読んでしまったんですけれども、あえてちょっと読み直させてもらいます。

 「現行の監獄法は、明治四十一年に制定されて以来、実質的な改正がされることなく今日に至っているため、被収容者の権利義務関係や職員の権限が明確ではなく、受刑者処遇の内容についても十分な規定が設けられていないなど、今日では極めて不十分なものとなっております。」というこの三行。

 最初、さらっと読んでしまったんですが、ある面、すごく大胆な文章。行政の方が多分草案を考えられて、大臣もごらんになったんだと思うんですが、役所の方というのは、往々にして先輩がやってこられたことを余り否定されない。非常に不十分だと思っていても、現状ではいいんだと言いつつも、改善する点があるから法改正するんだという文章をたくさん見てきた人間とすると、これは結構大胆に、相当たまっていたものを噴き出したのかなという思いもしないでもなく、まあ、認めるべきところを認めた上でということなのかというふうにも読めないわけでもないですが。

 すごく皮肉っぽくとると、この百年、法治国家でありながら、受刑者処遇の内容についても十分な規定が設けられていない中で我が国はやってきてしまったことをお認めになっているのかなと思うと、非常に非常に潔いと言いつつも、ちょっとええっと、今いろいろおっしゃっていますけれども、ある面、怖い部分があったのかなという気がしてなりません。

 それで、なぜ今日まで見直しができなかったのか、いろいろな理由があるんだと思います。やり方の順番もあろうかと思うんですが、できるところからやっていくということなのかもしれませんけれども、今までなかなか前へ進まなかった一つのキーワードに代用監獄というのが、多分大臣も御存じだと思いますが、というか、絶対御存じだと思いますけれども、そういうことを考えると、いわゆる裁判が確定する前のところから本当は入っていかなきゃいけないのかなという気もしないでもないんですが、このあたりのところも含めて、なぜ今日まで極めて不十分なものとなっていたのか、大臣、お答えいただけますか。

南野国務大臣 いろいろな御意見があろうかと思いますが、今、法務省挙げてこの法案に取り組んでおります。しかも、今までのいろいろな経緯がございますが、経緯はともかく、このような状態で放置されてきましたことは不幸なことであったと言わざるを得ませんし、何としても、喫緊の課題でございますので、この行刑改革をなし遂げるために、法案の早い成立というものを目指して全力で取り組まなければならないと考えております。

 監獄法につきましては、御指摘のとおり、長年にわたって実質的改正がなされてきませんでした。被収容者の処遇の種々の問題が生じております。

 法務省といたしましては、監獄法の全面的な改正が必要であると考え、昭和五十七年から三度にわたりまして刑事施設法案を国会に提出してまいりましたけれども、いわゆる代用監獄の制度に関する意見の隔たりがあったことなどから、成立を見ずに今日に至りました。その現状を御報告するのみとさせていただきたいと思います。

伴野委員 登場人物がどうあれ、どういうアクターがどういう動きをされるにしろ、トリガーを引かれるのは法務省だと思いますし、プロデューサーといいますか、最終的な責任者は法務省だと思いますので、やっとの思いでこぎつけられたという思いがあるのかもしれませんが、いろいろな登場人物の戦いの跡というのが今回も第百四十六条、警察留置場の云々という規定の中に残っているのかなという心配もしつつ、未決の部分、いわゆる被勾留者の方、被疑者と言われる方のところですね、このあたりの扱いというか対応、早く御検討いただけるようお願いを申し上げたいと思います。

 さて、少し法案の中身に入っていきたいと思います。

 この後は、大臣に細かく通告していないこともあろうかと思いますが、政府参考人の方とやりとりをしている中で、方向性とか御感想とか、そういう大臣としてお答えいただきたいことは幾つか振らさせていただきますので、そのときにお答えいただきたいと思います。

 それで、いろいろな思いがあって、確かに、見直しをしたいという部分も幾つかあって今日まで至った。そうした中で、この後河村代議士がお触れになるかもしれませんが、名古屋の事件、さらには、昨今のもう本当に許しがたい、とんでもない事件。

 国民の目線で見ますと、刑務所なり、あるいは刑務所の中で何が行われているかということに、少なくとも私の地元でいろいろ聞いてみますと、特にお子さんを持っているお母様方が関心を持たれたのは、やはり、出獄されてすぐの方がもう本当にとんでもない事件を起こされて、我が子もどうなっちゃうかもしれないという、はっきり申し上げて自分の周辺に危険が迫ってきた。このときに、刑務所では何が行われているのか、どういうところなんだろうか、そこへ至るまではどういう過程を踏む、あるいはその中でどういう教育が行われ、そこから出ていってからどういう処置が行われているか、今物すごく御関心が高いです。

 そういう中で、私は、百年前の刑務所というものの果たしてもらうべき機能と、これからの、二十一世紀型の刑務所というのですか、機能は随分変わってくるだろうし、変わらなければいけないんだと思うんですね。

 そもそもの、ハード的な箱物をつくればいいというのではなくて、ソフトといいますかコンテンツといいますか、刑務所でどういう機能を持たせるかというところをきっちり整理した上で、法整備もした上で、できることならできるだけ早く、最終的に、刑を科すところ、もっと言うならば、もっと残酷な言い方をすれば、刑を科した者は自由を奪ってそこに閉じこめておけばいいんだというような発想があったとすれば、それから早く脱却して、最終目的はやはり犯罪を起こさせないような機能の一つの通過点にとらえるべき。全体としては社会で犯罪を少なくしていかなければいけないと思いますが、そのある部分を刑務所が担うんだ、すべてそれは連続であり、段差があってもいけないし、できるだけ滑らかになるべきだと思うんですね。そういった観点でいろいろお聞かせいただきたいと思います。

 また、ある方は、治安の最後のとりでだと言う方もいらっしゃいます。

 前、裁判官を御経験になった方とたまたまお話ししたときに、裁判官の方ですら、自分がかかわった事件の判決が終わればそれで事足りるというか、その後この人はどうなったということは、正直言って余り関心を持たなかった、持ってもいられなかった、しかし、これからは、自分が判決を下した人がどういう刑を終えて、どういうふうに更生していってくれたかなというところまで思いをめぐらしていかないと解決にならないのかなということをくしくもおっしゃっていましたが、私は、それはシステムの中にそういうことも取り入れてもいいんじゃないのかなと思うんですね。

 そうした思いの中で、今の私の意見に対して、大臣、いかがでしょうか。

南野国務大臣 先生と同感でございまして、やはり、先ほど申しました、刑務所の中では、刑を犯した人たちが、次の社会に向かって罪人にならないようにということの教育を受け、そして、その問題を自分が消化した上でリボーンしていくというところの人生の通過点といえばそれでもありますし、社会に向かってさらに誕生するというところの通過点であるというふうに思っております。

伴野委員 先ほど来、大臣はリボーンという、ぜひそうあってもらいたいですね。そういう機能を高めていかないと、やはり被害者の方も当然ですし、被害者の方が一番不幸ですが、確かに犯罪自体を嗜好的にやるというものもあるそうでございます、犯罪心理の中に。そういう方は別として、性善説に立つならば、犯罪をする人も不幸な人ですよ。そういった観点に、やはり少しでも幸せの入り口にだれかがかかわって連れていってあげるということが、国家の成熟度というか、国のレベルを高めていくことになるんじゃないかな、ぜひそんな思いで一緒に頑張らせていただければと思うんです。

 そういった刑務所のありようをお話しさせていただく中で、やはり処遇が今現状はどうなっているか、これをどう改善していけばいいのか。

 与党の先生方の御質問の中にもたくさん出てきましたが、過剰収容の対策というか課題は、これは本当に喫緊の課題で、ほっておけない。これも予算委員会あるいは前の所信のときに質問させていただいたかもしれませんが、確かに、道路や鉄道を敷くのと違って、ふえていくことを喜びにする施設じゃありませんから、なかなか五カ年計画とか十カ年計画というのはつくれない、なかなかつくりにくいなと思います。それから、多分、国民的な見方とすれば、そこにお金をかけてくれるなら、何も悪いことをしていないこちらの部分にお金をつけてくれという議論もないわけじゃない。

 だけれども、先ほども言った、必要な重要なインフラである、ここがなければ皆さん方が築いてきた幸せあるいは治安も大きく崩れてしまうかもしれない、そのための投資が必要なんだ、特にこの刑務所周辺の投資が必要なんだという観点ができるとすれば、ある一定の考え方を整理して、どこまで投資していいんだ、そういうことができるとするならば、私は、その考え方にのっとって、定量的な計画をそろそろやってもいいし、余りセンセーショナルになるとつくることが目的にされても困ってしまいますので、常識的な今の傾向をとらまえた上で、ここぐらいはきちっとしていかないと、国としての根幹が揺るぎかねない。

 先ほどおっしゃっていた、治安がこれ以上悪くならないためにも、これぐらいの投資は許されるんだという考え方の中で、そろそろ定量的な計画を、私は、財務省が何と言おうと、オープンにしてもいいんじゃないか。少なくとも、法務省の中である程度の定量的な計画をつくっているならば、もし超党派でこれぐらいやるべきだと思ったら、それはそれで超党派で臨めばいいじゃないですか。我々、政権準備党なんですから、いつでもその心得はあると思いますよ。むだな投資はだめですが、必要な投資はやらなければいけない。

 そんな中で、今、定量計画というのはきちっとなされているんでしょうか、いかがでしょうか。

横田政府参考人 お答えいたします。

 先生がおっしゃっている定量的な計画というのは、受刑者に対する職員の比率、あるいは被収容者に対しての適切、適正な職員の数という意味での定量的なという御趣旨であるのか、ちょっとあれですけれども、いずれにいたしましても、なかなか、事柄の性質上、定量的な計画というのは、率直に申し上げてこれは難しいというのが結論でございます。

 それに、行刑と申しますのは、先ほど大臣もお答えし、先生もおっしゃっておりますように、刑の執行、そしてそれを通じまして受刑者の改善更生、社会復帰を図るということでございますけれども、それにつきましてはまたいろいろな手段、方法があると思いますし、それにはどのようなプログラムを組んでどのようなことを行っていくかによってまた大分動いてくることでございます。

 私どもとして今申し上げられることは、御指摘のように、過剰収容が大変厳しゅうございますけれども、そしてまた、それが解決しなければ、緩和、解消されなければ、私どもが目指している行刑改革、この新しい法律に基づく新しい行刑というものが、これは大変困難であるということは御指摘のとおりで、私どももこれは何とかしたいと思っていますが、そういった過剰収容への対策を進めるとともに、職員の過剰な負担を軽減しまして、受刑者の改善更生、それから円滑な社会復帰を図るための処遇を充実させるためにさまざまな努力を重ねたいし、そのための人的、物的な充実を図るために精いっぱい努力したいということ以上にはなかなか、ちょっと申し上げにくうございますので、お許しいただきたいと思います。

伴野委員 もうちょっと前向きなお話ができるかと思ったのですが、定量的な計画がないと言われてしまうと、こちらも少しは言い返さないと、計画を専門にしている人間でございますので。それは場当たり的と言われてもしようがなくなるのですね、ないと言われては。

 本当はないはずはないと思うのですよ。そんな、毎年、では場当たり的に、ここをつくりましょう、こうしましょうとやっている方が大変で、うちのような小さな政治事務所でも、来年のことをどうしようとか、五年後はどうしようとか、スタッフがふえたらどうしようとか、これだけいろいろな面会があってどうやっていこう、だれだって考えるのですよ。逆に言えば、リーダーがいれば考えるのですよ。

 では、今の局長さんの御答弁だと、局長さんにリーダーシップがないのかという極論を言わなければいけなくなる。そんなことはないわけで、あると思うし、思っていらっしゃるならば、それはもう前広にやって、どこかの行政法人じゃないですけれども、つくったら空っぽだったと。要するに、住宅がそれは困りますよ、つくったけれども空っぽは。つくったけれども空っぽだったというのは、刑務所だったら望ましいのですよ、犯罪を犯した人が少なければ。

 だから、難しさはわかりますよ。難しさはわかりますが、与党の方も、政権準備党の私どもも、だれが見たって今の過剰収容は改善していってもらわなければいけないといったときに、計画がないというのは、もうちょっとやはり、そっちの方がきついと思いますよ、それは。

 だから、先ほどどういう指摘かわからないとおっしゃっていましたが、例えば、一人当たり、いわゆる行刑施設の職員さんが何人の受刑者に対応しているかというようなことを一つの目標とするならば、今の四人というものを、少なくとも三・一人のアメリカレベルに十年後にはしたいとか、いやいや、もっと加速して、イギリスまではいかなければいけないんだとか、いやいや、日本はそういうところは手厚くやるんだ、スウェーデンを目指せというのでもいいと思うのですが、そういう目標がなければ、計画というのはなかなか難しい。逆に、目標がないのに計画を立てるというのは、計画論からいったら不可能なんですね。

 そういうのがあった上で、さらには収容規模とか、ほかのインフラをどうするんだ。最終的には、刑務所というのは何だというところに立ち返って、刑務所でどういう機能を持たせるかによって、いろいろなプログラムをつくるなら、どれだけのお金が要る、どれだけの人材が要って、どうするんだというようなことは計画していかないと、少なくとも今は望まれる状態ではないので、ぜひその計画を持って、いい計画であれば一緒に応援していく、政権準備党ですから、早く一緒に計画をつくりましょう。

 ちょっと気になるアンケートのことを次にお聞きしたいと思います。

 平成十五年十月二十日、刑務官さんに対するアンケートをしていらっしゃると思いますが、その中で、刑務所の問題点に、先ほど挙げた過剰収容の問題が指摘されております。次に指摘されているので多いのが、「刑務所の組織」という指摘が五六%あるんですね。

 これは会社にたとえると、会社の組織が悪いと社員が言っているとすると、やはりこれは早く改善しなければと多分経営者は思うのですね。あるいは、どこに問題点があると社員は訴えているんだというのを経営者なら考えると思うのですよ。刑務所の組織に問題があるということはどう御認識されて、今後どう改善されていこうと。

 実際、現場で刑務官の方が丸腰でやっていらっしゃるということには、正直言って、素人であることを暴露するようであれですが、丸腰でやっていることには本当に頭が下がります。これは敬意を払うしかないと思っているのです。

 そうした中で、組織にも問題があると言っているんだから、手をこまねいておってもらっては困るわけですね。身を危険にさらしてでも、体を張ってでも、受刑者のリボーンに向かって頑張っている刑務官さんが、刑務所の組織に問題があると半分以上の方が言っている。これに対して、どこに問題点があると御認識されて、今後どういう解決をされていくか、お答えいただけますでしょうか。

横田政府参考人 委員の御指摘は、行刑改革会議が行った行刑の実情に関する調査、刑務官に対するアンケートのことであるというふうに思いますけれども、近年、行刑施設におきましては、被収容者の急増に伴い、刑務官の業務量が増加し、常態的に休日出勤等を命じざるを得ない、そういう施設があるほか、年次休暇取得日数についても年々減少するなど、刑務官の負担の増大が顕著であります。そのような職場環境といいますか、職務環境、そういったものに対するいろいろな、さまざまな思いというものがこのアンケート結果にあらわれているのではないかというふうに思われます。

 そのために、各行刑施設におきましては、常日ごろから職務研究会や個別相談等の機会を活用いたしまして、可能な限り、刑務官の職務上の悩みや相談を上司が徴するように努めているところでありますけれども、さらに平成十五年六月に矯正局に窓口を設置いたしまして、刑務官が矯正局の参事官に直接相談、提言できる体制を整備いたしましたほか、平成十六年三月、昨年三月からは、こうした窓口を矯正管区等にも拡大したところでございます。

 そうしたことによって、厳しい職場環境の中で厳しい勤務をしている刑務官たちがそういった悩みを率直に打ち明けて、そしてその中で、できるだけいい環境をつくって、風通しのいい職場をつくろうということで私ども努力しておりますし、これからもまたそれを続けていきたいというふうに考えているところでございます。

伴野委員 先般、刑務所の中を視察させていただいたときに、正確な人数はわかりませんが、百人を超える受刑者の方を一人の方が監視しながら作業をされていたという光景に出くわしましたけれども、刑を受ける必要のない百人の人を一つの行動をさせるだけでも大変な世の中なのに、刑を受けている人を、一定のルールの中といえども、活動を整然とさせていくという仕事は、これは相当ストレスがたまると思うのですね。

 休暇がないというのは政治家も一緒ですけれども、それと、いろいろな人間を相手にするという意味では政治家も一緒なのかなと思いますが、やはりまたちょっと違った、想像を絶する状況もあろうかと思いますので、できるだけ職場におけるストレスを解消できるような刑務官さんの処遇にしていただきたい、これは要望しておきたいと思います。

 それで、計画をしていく上で、先ほど私はこれは一つの投資であると申し上げました。そうすると、どこまで国のお金をつぎ込んでいいのか。これは野方図ではいけないし、やはりここには理念が必要、哲学が必要だと思うのですね。

 現在、受刑者お一人当たり、日本は二百六十三万円、国のお金を使っている。ちなみに、イギリスは六百四十万円、スウェーデンは八百七十八万円。スウェーデンはざっと三倍から四倍。イギリスは倍以上ですかね。お金を使えば済むというものではないと思いますし、国民的な感情も考え上げなきゃいけない。要するに、罪を何も犯していない人にどれだけ国が補償しているかということを、これも多分バランスを見ながらやらざるを得ないんだと思います。

 被害者支援基本法ができました。しかしながら、残念ながら、見舞金程度なのかな、被害者支援基本法も。

 それから、アメリカが、九・一一のときに亡くなられたときはたしか、私の記憶違いかもしれませんが、お一人当たり一億近く出したんじゃないかな。これは記憶違いだったら申しわけありません。とにかく破格の、これは命の値段というのかもしれませんが、テロに対して防げなかった国の一つの補償ということからすると、一つの基準として、国民の目線から見ると、生活保護をされている方が今幾ら受給されているかというのも一つの数字的な目安だと思うんです。さらには、交通事故で亡くなると保険がどれぐらい出るか。

 それから、命の値段、まあ、命に値段がつけられるものではない、これは当たり前のことです、地球より重い。ですが、こういった投資的な観点から考えると、やはりそこはどうしてもどこか押さえなきゃいけない。

 おもしろいことに、私も知らなかったんですが、ある保険会社のホームページを見てみますと、自分の命の値段というのが出てくるんですよ。これはあくまでも保険上ですけれども。

 ちなみに、私の条件を入れてみますと、正確に言いますと私の年齢で私の家族を持っている一般サラリーマンの値段、これをやると、大体一億でした。これはいろいろ差があると思うんです。

 ちなみに、大臣も、ホームページで、それをやられて、御自身の命の値段を一回ちょっと見てみると……(南野国務大臣「安いでしょう」と呼ぶ)いやいや、そんなことないですよ、高いですよ。すごく高いと思いますよ。これ以上申し上げませんが。

 一つの命の計算をしていく上で、いわゆるファクターになっているものが年収、年齢、ここまでは私も何となくわかったんですね。あと、残された遺族というのもファクターになっていて、これが全部掛け算できているんですね。

 特に、最後の、残された遺族の数が掛け算になってくるというのは、これはお父さん、例えば私がどこかで理不尽な殺人に遭ったとします。そうすると、お父さんが持って帰ってくる年収なり、あるいは持ってくる幸せと言ったらいいんですかね、そうすると、私のところは二人、子供が一人で妻がいるんですけれども、二人が享受できたのを拒絶させたということで、多分、掛ける二になるのかなと私は解釈しているんです。

 けさも女房に電話しまして、大体我々は一億円ぐらいだよと。娘はありがたいことに、お父さん、お金よりもお父さんが元気に帰ってきてくれるのがいいんだよと。少なくとも女房はきょうの午前中の時点では、あなたが帰ってくる方がいいと言ってくれたんですが、これは今後保証はありません。

 ちょっと余談になってしまいましたが、国として、国民的な観点から見たときに、殺人が起きちゃうか起きなかったかということで比較してどこまで投資していいんだという考え方ができるとすれば、今何を申し上げたいかといいますと、この方一人亡くせば、殺人で亡くせば、一億できかないんですよ、実際のところ。最低でも一億という言い方をしていいんじゃないかと思いますね。保険でやるのは最低ライン。本当ならそこにいろいろな思いが加わって、そんな一億円どころじゃない。

 だから、人を一人殺されることを防げるんだったらこの一億は投資していいと言えるのか、いやいや、やはりその半分ぐらいの五千万は投資してもいいんだ、こういう考え方でやっていってもいいんじゃないかな、こういう論法で少し財務省をつついていいんじゃないかなと思うんですね。

 そのためにも、今回の法改正によってどれだけ新しい犯罪を抑えられたのかというのをできるだけ定量的にとらえて、これだけ新しい犯罪を抑えられたんだよ、これが起こっていたとするならば、国として本当は、殺人が例えば五百件減ったとすると、五百億以上の、国なり国民に受益を与えたんだよ、だから、その半分の二百五十、あるいは四割の二百億は投資していいんだよという論法は、僕は使っていいんだと思うんですね。

 このあたりはどうでしょう。この考え方は、どちらにお答えいただきましょうか、お答えいただける方でいいです。

    〔委員長退席、吉野委員長代理着席〕

横田政府参考人 大変難しい御質問で、先生のおっしゃるお考えというのは、聞いていてなるほどという、お考えそのものは大変よくわかりました。

 ただ、私どもは、行政の立場からしても、なかなかそういう発想でこれまでも考えてきてはおりませんで、もっと、ある意味での積み上げ方式的な物の考え方で組んできたということでございますので、ただいまの先生のお考え方を、大変いい勉強をさせていただいたということでお答えしたいと思います。

    〔吉野委員長代理退席、委員長着席〕

伴野委員 今の考え方というのは、一言で言うとリスク分析、いわゆるリスクを抑えるための投資であるならばここまでは許される。確かに人の命の値段をつけちゃうというのは非常に不届きなんですが、しかしリスク分析をする上では必要な考え方ですので、大臣、ぜひちょっとそんなことも勉強していただいて、今度財務省にかけ合っていただけませんでしょうか。そのあたりはお答えいただけませんか。

南野国務大臣 本当に、先生の計算の仕方というのは、これは頭のマッサージで大変おもしろいと思います。人の価値というものをどういうふうな形ではかっていくか。それによって、我々が今検討しているのは、矯正行政の中で、その人が再犯を犯さないというところで、どれだけその価値を見出していこうかとしているようなもので、それに今急いでいるわけで、今までなかった類型別の行政をしっかりとやっていこうというところに我々の意気込みがあると解釈していただいていいと思いますが、それの効果があらわれるのはもう少し先なんです。

 だから、今先生がおっしゃったように、一億でどれくらいかけていくかということは、どれくらいかけるかということによって、次の犯罪防止の一億が生まれてくるかどうかというのが今にかかっていると思いますので、そういう意味で、この法案、また矯正行政について頑張っていこうと思っているところです。

伴野委員 今のリスク分析の話をしますと、多分、論法で論法を返そうという方からすると、なかなか相関がはかれないじゃないか、効果分析ができないじゃないかとおっしゃるんですが、だからといって、考えなくていいということではないんですね。やっている以上はやはり何らかの効果があるわけで、それをどう効果測定する方法があるのかというのは、ここは英知を皆さんで出し合っていただいて、そこに何らかの確からしさが見えてくるならばそこまでは投資していいというのがやはりリスク分析のまず第一歩でございます。

 それは、だれだって交通事故に遭わなきゃいいはずなんですよ。あるいは、殺人に遭いたくないと思うんですよ。だけれども、世の中、起きてしまっている以上は、それは何らかの考え方でリスクを回避する方法を、どうそれを投資につなげていくか、ぜひ考えていただければと思います。

 次に行かせていただきたいと思います。

 たくさん質問したかったんですが、なかなか進めませんが、これもちょっと提案なんですけれども、今、いろいろ分類をされていますよね、処遇をしていく上での分類。ここにいろいろ、AとかBとかJとかWとかYとかMとかPとかFとか、先ほども外国人の取り扱いについていろいろ御意見があったかと思うんですが、この分類職員の方というのは、多分今は分類までは心理職の方がかかわっていらっしゃって、その後の処遇をどうするかというところには、アドバイスなり多少のかかわりはしているでしょうが、一対一でついていないように私は伺っているんです。

 もしそうだとすれば、先ほど申し上げた、判断した人が、そこで終わりじゃなくて、どうなっていくのかというのをずっと追跡していただいて、できることなら、はっきり言って心理職の人が日ごろの生活の中にももっとかかわっていただいて、カウンセリングもどんどん一緒にやってもらうことも必要なのかなと思うんですね。そうした中で、きちっとそれを記録に残して、データに残していただきたい。

 後ほどもしプログラムの話に入れれば、その情報集積の仕方について議論をしたいと思いますが、まずここの段階では、その分類職員さんが処遇の方へもっと積極的に参加してもらいたいし、させるべきではないかと思いますが、そのあたりはいかがですか。

横田政府参考人 お答えいたします。

 分類を担当している職員というのは、主として心理関係の人が多いわけでございますけれども、おっしゃるように、そういった専門の方を、これからは処遇の中にもどんどん入ってもらおうというふうには考えております。それで、十七年度の予算案におきましても、カウンセリングを行えるようなそういう方、六人の増員、それから、二十四カ庁に、民間委託でございますけれども、そういった専門の方も入ってもらうということで、今後、よりよい充実した処遇を行う上では、いろいろなことを取り入れていきたいというふうに考えております。

伴野委員 ぜひ、その方向性でお願いしたいと思います。

 今、分類のお話が出ましたので、ちょっとわき道へそれるかもしれないんですが、厚生労働省の方、お越しいただいていますね。では、ちょっとお聞きしたいといいますか、最近気になる新聞記事を目にしました。いわゆる心神喪失者医療観察法がこの七月からスタートするわけでございますが、どうも施設の方が追いついていないという記事が載っておりました。

 これは、もしこのとおりだとすると、宙に浮いちゃう人が出てきて、これは半分ブラックジョークなんですが、宙に浮いちゃうぐらいだったら、精神鑑定のときに責任を問えるとしちゃえというようなことをおっしゃる人もいらっしゃる。荒っぽいことにならないためにも、どんな現状でどんな課題を今抱えているのか、ぜひ前広にお答えいただければと。よろしくお願いします。

塩田政府参考人 心神喪失者等医療観察法は、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った人に対しまして、適切な医療を行うことなどによってその人の社会復帰を促進することを目的とする法律でございます。現在、厚生労働省、関係の方々の協力を得ながら、その施行に向けて努力をしているところでございます。

 この医療観察法の施行に当たりましては、裁判所による入院決定を受けた方々を入院させる指定入院医療機関の整備が大変重要になるわけであります。国公立などの公的な医療機関において、今後三年間で段階的に、全国でおおむね二十四カ所、約七百床を確保することが必要であると考えているところでございます。

 このため、厚生労働省として、これまで、まず国立関係の病院でありますけれども、八カ所を候補として、地域住民の方々に対しまして、全国で延べ九十回を超える説明会を行ってきたところでありまして、十七年度中に三カ所の整備の見通しが立っておりますけれども、その他の箇所については、いまだ住民の方々の十分な理解を得られていない状況にございます。

 次に、都道府県関係の病院でありますけれども、関係の都道府県に対しまして、副大臣ほか幹部が直接訪問いたしまして、整備を強く要請してきたところでありますけれども、現在のところ、一、二の都道府県を除きまして、整備に積極的ではない状況にございます。

 現時点におきましては、指定入院医療機関を計画数確保することが非常に厳しい状況にあるということは事実でございます。しかしながら、厚生労働省といたしましては、医療観察法の対象となる人の社会復帰のためにも、また、質の高い精神医療を提供するこの法律の趣旨からしまして、精神保健福祉の一層の向上を図る、あるいは底上げを図るという観点からも、この医療観察法をしっかりと施行することが必要不可欠であると考えているところでございます。

 厚生労働省といたしましては、今後とも、質の高い精神医療を提供する機関であります指定入院医療機関の整備に省を挙げて最大限の努力を行うこととしているところでございます。加えまして、どうしたらこういう質の高い精神医療を提供できる指定入院医療機関の確保を進められるか、これから関係省庁あるいは都道府県はもとより、国会の先生方の御意見やお知恵をいただきまして、幅広くいろいろな御意見をお聞きしながら検討しまして、医療観察法が所期の目的を達成できるよう、確実な施行に向けて省を挙げて精いっぱい努力したいと考えているところでございます。

伴野委員 この手のお話はNIMBYと言うんだと思うんですね。住民の方もある程度、社会としてはこういう機能を持ったものが必要だと思いつつも、自分のかかわるエリアには来てほしくないという、この手のものの一つであるんだと思うんです。

 先ほどリスク分析の話もしましたけれども、やはりまず住民の理解を根気よくやっていただいて、その上で、これも、今は厚生労働省の方が答えていただきましたけれども、法務省さんとも連携を十分にとっていただいて、ぜひ、先ほど申し上げた必要不可欠な施設、機能だと思いますので、前へ進めていただくためにはどうしたらいいかということを一緒に考えさせていただいて、間違っても非常に荒っぽい処理の仕方にならないことをお願い申し上げて、この質問はこのぐらいにしておきたいと思います。

 次に、処遇改善あるいは刑務所の機能を持たせる上で、今回、更生プログラムといいますか、教育プログラムの充実というのは一つの柱に来ていると思うんですが、先ほども、松島議員初め、性犯罪のお話、私も、これも何度も言っちゃいますけれども、娘が被害に遭ったら、多分冷静さを失うと思うんですね。想像しても、先ほど申し上げたように、多分想像の域を出ていないんだと思うんですね、その苦しみというのは。ある方は、これは心の殺人だと言う方もいらっしゃるし、人格の殺人だと言う方もいらっしゃる。確かに難しい領域なんですが、イギリスでは、認知行動療法とか、あるいは各国でもさまざまな研究をされて、何とかしようとしていらっしゃる。その部分は、残念ながら少し日本はおくれているんじゃないかな。

 それで、今度、矯正プログラムづくりということで、性犯罪処遇委員会というのができて、十人程度の専門家でおやりになる。これは十人じゃなくてもいいんじゃないですか。もっとみんなに聞いて、どうしたらいいんだと。

 正直言って、私は男性ですが、確かに性欲もそれなりに持っていますが、いわゆる犯罪と言われるその手のビデオ等を見ると、逆に意欲をなくす感覚も持っている人間なんですね。理性的な多くの男性というのは、やはりいろいろなものを理性でコントロールできているんだと思いますし、また、性犯罪の専門家のお話を聞くと、そのこと自体が嗜好につながっていると、本人もとめたいけれどもとめられない、案外本人も悩んでいることもあるというようなことも伺っています。

 そうした中で、非常に難しい領域のものを、私は法務省さんだけで抱える必要はないと思うんですよ。文部科学省の協力や精神医学、すべての領域の英知を結集して、もっと言うならば、外国にいろいろ調査に行ったっていいじゃないですか。その中で一つでも効果があるものなら、私はやる価値があるんじゃないかと思います。

 今、性犯罪の更生プログラムについてお話ししましたが、そのあたりの御意見あるいはお考え、方向性、いかがでしょうか。

横田政府参考人 今委員もおっしゃいましたように、私どもも、性犯罪に対する教育プログラムを策定するための研究会といいますか検討会といいますか、そういうものをつくる予定でございます。

 十人じゃなくて、もっと大勢でいいじゃないかということなんですが、今私ども考えております十人前後といいますのは、そういった研究会といいますか検討会といいますか、そういうグループの専門家の方々をそのくらいの数でお願いしようとしているわけでございまして、そこだけでやろうということじゃなくて、恐らく、今後どういった研究をしていこうか、手法をどうしましょうかということは、そういった先生方の御意見を伺いながらやっていくことになりますので、恐らくまたさまざまなそれ以外の方の御意見を伺うこともあるでしょうし、もしかしたら海外のいろいろな研究というところもやはり入ってくるのかもしれません。

 そういったことで、私どもは、とにかく最初から一生懸命勉強する、そういう心構えで、大変難しい問題ということは十分認識しておりますけれども、その中で精いっぱいやっていきたいと考えております。

伴野委員 どうしても、今までの発想ですと、どこかに専門家の方を集めて議論いただくというのも一つの手なんですが、これは提案型というのも取り入れていただいて、例えば、その手の研究をしたいとおっしゃっている方百人に提案をしていただいて、ある程度、これはいけそうかなと思われるもの、これも判断がいろいろあるところでございますけれども、一人の研究者に、仮に一億つける、研究してください、三年でそれなりのアウトプットを出してください。

 そうすると、確かにそれは百億円かかりますけれども、それで一つの本当の矯正プログラムが、あるいはきっかけでもいいです、できるなら、私は、さっきのリスク分析じゃないですが、安い買い物だと思いますよ。それで苦しんでいらっしゃる方が今後減ってくれるならば、それは安いものだと思います。

 ぜひそういうこともお考えいただいて、研究費という形でやはりインセンティブをつけないと、なかなかこの領域というのはお医者さんも、正直言って、お医者さんにとっての、大変失礼な言い方かもしれませんが、NIMBYになっていないかな、ノット・イン・マイ・バック・ヤードになっているんじゃないかな、そんなふうに思いますので、インセンティブが働く方法をぜひ工夫をしていただいて、そうすれば私は英知が集まってくると思うんですね。

 今どき研究費一億円もらえるといったら、かなりの研究者が集まる。それは、別に日本人がやりたくないといったら世界から集めてもいいじゃないですか。それぐらいの感覚で取り組んでいただけると、百年来の法改正に匹敵する成果が出てくるんじゃないかな、私はそんなふうに思います。

 時間がなくなってまいりました。いろいろ本当は聞きたかったんですが、もう最後の質問になってしまうかもしれませんが、いろいろ、不服申し立て制度も今回の法改正で変わるようでございます。今の現状でも請願の方法というのはいろいろございます。これも数がウナギ登りになっているんですね。最新のデータを見せていただいても、統計的に残っているもので、法務大臣あての請願が七千五百件。私のところも法務の委員だということでいろいろな方からいろいろなお手紙をもらいますけれども、この数には到底及びません。

 大臣、実際今までお目通しになったことはあるのか、あるいはその中で見られた感想、今どんなふうにお持ちになっていらっしゃるのか、その中で幾つか改善をされたケースが今まであったのかなかったのか、お答えいただけますか。

南野国務大臣 情願という問題につきまして、野沢前大臣から引き継ぎを受けまして、進達された情願書を私自身でも読ませていただいております。その所感につきましてのお尋ねですが、まず件数が多い、七千を超えるというようなことでございますが、その件数だけじゃなく内容にもさまざまなものがございます。

 情願につきましては、被収容者の声が直接私どもに届くという意味では意義がある制度であろうかと思いますが、一方、件数の急増などに伴いまして、すべてを速やかに処理するというのは、これはちょっと時間がかかり、多少難しくなっております。しかし、これは適正に、迅速な処理を確保するために、新しい方法を見つけていかなければならないというふうにも思っております。

 そういう意味では、このたびの不服申し立て制度というような形に転換するような形になると思いますが、先生お尋ねの情願の申し立てについて感じたことといいますと、先ほど松島議員もおっしゃっておられましたが、刑務所の中で、外国人の方は食物を選んで、パンとか御飯とか食べられるのに、自分はどうして御飯だけなのか、そういうのも情願でやってまいりますし、また、下着を二着もらっているんですけれども、それを交代ですればいいんですけれども、それが破れるまで着ているとなかなかかえが来ないとかいうような、そういうような話も出されております。

 そのほか、いろいろございますが、調査すべきは調査をしていき、A、B、Cというようなランクに分けながら整理をさせていただいているところでございます。多くは受刑者の生活に対する不満というようなものも見せていただいております。

伴野委員 私のところに来る手紙からも大体推測しますと、本当にいろいろな御意見があるんだと思いますね。中には本当にぴんと反応して対応してもらわなきゃいけないところから、正直言って手紙の趣旨がよくわからないものが多分あると思います。

 ですから、仕組みを新たにつくっていただいたので、仕組みというのはやはり機能しなければ何の意味もありませんので、確かにこの一万通に近いようなものが来れば、大臣で、短期間に、九十日なりで見ろといったって無理だと思いますので、副大臣や政務官の方も手分けして見ていただいて、ぴんとこなきゃいけない情報に対してはやはりぴんときていただいて対応していただける、そういった仕組みあるいは機能もぜひつくり上げていただければ、そんなふうに私は思います。

 時間がやってまいりましたので、本当はもっといろいろお聞きしたかったんですが、また別の機会もあろうかと思いますので、本日の質問はこれにて終わらせていただきます。ありがとうございました。

塩崎委員長 次に、河村たかし君。

河村(た)委員 河村たかしでございます。

 まず一つ、ちょっと確認しておきたいのは、今回のこの法律、監獄法改正というのはちょっと古いですから、矯正施設等の改革に関する法律ですが、それをやる前提としまして、こちらにも自民党の方もようけお見えになるけれども、二年、三年ほど前からありました名古屋の刑務所の話が一番最初のまくら言葉で使われていますが、これをきっかけとしてということで行刑改革会議があって、それから今回のこの法律の改正につながった、そういう御理解でええですな。

南野国務大臣 先生のおっしゃるような形だというふうに思っておりますし、このたびの法案の改正、鋭意やっていきたいと思いますが、きっかけは、おっしゃるとおり名古屋のそれがスタートであろうかなというふうに思っております。(河村(た)委員「それと言わないで、ちゃんと言ってください」と呼ぶ)名古屋の刑務所における事件でございます。

河村(た)委員 事件と言わずに事案と言うようにしておるんですよ。これ、ちょっと訂正してくださいよ。

南野国務大臣 では、事件が不適切であるならば、事案というふうに申し上げます。

河村(た)委員 いやいや、意外なことをおっしゃいますけれども。

 そうしまして、それに関してこの中間報告を出されたわけですよね。これが平成十五年三月三十一日。裁判は裁判でございますので、こちらの方を今、これは委員会に出されたやつですから。

 こういうことで、立法事実という言葉がありますよね、立法事実。それはどういうことですかね、まず一般論として。

 ちょっとお答えは、私はいじめるつもりはありませんので、もしいかぬかったらこちらの偉い様にかわっていただければ結構でございます。立法事実というのはどういうことですか、一般的に。

横田政府参考人 一つの法律を新しくつくるといいますか、あるいは改正する場合もそうですけれども、つくるための理由となる事実のことですね。

河村(た)委員 今言われたように、一つの法律をつくる前提となる重要なる事実だと。立法事実、こういうことがあったからこういう法案ができた、そういうことですね、平たいことを言えば。

横田政府参考人 そういうことです。

河村(た)委員 こういう事実があった、だからこういう法制度をつくるのが必要だと。そういうことですと、もし立法事実が違っていた場合は、法律のつくり方とか、そういうものも全く違ったふうになる可能性はありますね、これは一般論として。

横田政府参考人 大体、先生がどういうことをおっしゃりたいかというのはわかるんですけれども、恐らく、必ずしもそうとも言い切れないんじゃないかという感じがいたします。

河村(た)委員 そんなむちゃくちゃな話はないじゃないですか。それは、こういう社会的背景があるからこういう法律をつくるんでということで。その理由というのは大きいですよ、それは。

横田政府参考人 立法事実といってもいろいろなことがあると思いますので、立法事実としてもいろいろあると思いますけれども、私、推測して申し上げてよろしいでしょうか。

 恐らく、委員がおっしゃっているのは、いわゆる名古屋刑務所事案が立法事実であるということだから、その事実が動いた場合はどうなのかということであろうというふうに推測いたしますけれども、今度の法案は、名古屋刑務所の事案そのものゆえに制定しようというものではございませんので、私はそういう認識でおりますし、私はというか、法務省としてはそういうことでございます。

河村(た)委員 いやいや、これはまたちょっと、これでは初めからもう終わりですね、これ。これははっきりいろいろな書類に、常に、名古屋刑務所の事案を契機としてと。(発言する者あり)契機ですよ。契機ですよ、それは。そんなことは当たり前だ。これは皆さん、委員会の人、怒らにゃいかぬですよ、これによって審議してきたんだから、これが事実であるという審議を。(発言する者あり)それはそうですよ。そのことを事実として、この中間報告があるじゃないですか。

 ここに書いてありますよ。「はじめに」を読みましょうか。行刑運営の実情に関する中間報告、平成十五年三月三十一日。「はじめに」と、一ページ目ですよ、これ。「当委員会は、一連の名古屋刑務所事件により刑務官の逮捕が相次いだことなどを受け、森山法務大臣の指示に基づき、平成十五年二月十三日、省を挙げて、これらの事件の原因の徹底解明など国民の不信を払拭するための所要の調査を行い、行刑運営の在り方全体を徹底して見直し、抜本的な再発防止策の検討・策定を目的として設置された。」こうなっていますよね。これに基づいて策定されたと。この一つのあり方が今回のこの法律でしょう。

横田政府参考人 お答えいたします。

 これまでも、いろいろな機会にいわゆる監獄法改正については御説明申し上げてまいりましたけれども、もともとこの法律といいますのは、既に昭和五十五年以来三度にわたって、法務省、政府は監獄法の改正案ということで、改正法案、いわゆる刑事施設法案ということで提出してまいりまして、結局、今度の法案も、大きく言えばその流れに乗っているわけです。

 つまり、明治四十一年に制定された法律そのものがもはや時代にそぐわなくなってきた、十分に機能しなくなってきたということがあるので、これについて改正しましょうということで始まったもので、いわゆる先生がおっしゃっている名古屋刑務所の事案といいますのは、また、行刑改革会議というものがつくられて、そして行刑のあり方というものを根本から見直す、それによって、やはり監獄法の改正は必要だというふうになったことがあって、今回また、このような形で法案を提出させていただいたということでありまして、名古屋刑務所事案がきっかけになったことは否定いたしませんけれども、それゆえに本法案を提出するに至ったというものでは決してございません。

河村(た)委員 それは、ずっとかつてからの懸案事項でしたからね。これは当たり前なんですけれども、きっかけになったということははっきり言っていただきましたので、それで結構だと思います。

 それで、もう一つ、今配ったやつ、これはちょっと、園田先生も見えますけれども、全党一致で決議したやつですよね。矯正施設運営に関する決議(平成十五年七月十八日衆議院法務委員会議決)。これは全党、全員一致だったと思いますけれども。

 ここで、「名古屋刑務所三事案を中心とする「行刑運営の実情に関する中間報告」」今言いましたやつですね、平成十五年三月三十一日付ですか、「は、当委員会の審議に照らしても、事実の存否を含め、不正確且つ不十分であるものといわざるを得ない。」こうあって、ちょっと飛びまして、「この際、政府は、」「再調査の上、速やかに当委員会に報告すべきである。」と。これは報告されたですかな。

横田政府参考人 お答えいたします。

 この決議に対することとして、まず、端的に、しかも明確な形といいますか、形取っておりますのは、平成十五年七月二十八日に、「行刑運営をめぐる問題点の整理(国会審議における指摘を踏まえて)」と題する行刑運営に関する調査検討委員会の報告がございますが、速やかに当委員会に報告すべきであることに対しては、これをもってお答えをしたというふうに理解をいたしております。

河村(た)委員 いやいや、これはまたちょっと意外です。事実の存否を含めて、ほとんど同じことが書いてあるんですけれども、これは。

 こういう状況で今のこの法律が審議をされておるんですけれども、少なくともその一番のきっかけとなったと言われていました名古屋刑務所の三つの事案が、本当にそのことが、はっきり言いますと、あれは刑務官の資質にと書いてありますから、資質にということですね、これ。そうであったのか、それとも、ほかの違う原因であったのか。あれはああいう故意犯であったのか、単なる事故であったのか。これは大きいんですよ。事故なら事故で次の、僕は、刑務官も刑務官ですけれども、受刑者を守るためにも、事故なら事故ということをはっきりさせないと、再発防止につながりませんから。

 そこでちょっとお伺いしたいのは、これは大臣、今ちょっと森山さんがお見えになりませんのであれですけれども、この間、森山大臣が「法務大臣の八八〇日」という本を出されて、その中の百四十七ページの辺に、私のことを書いていただいておるのは非常にありがたいことでございますけれども、それはいいんですけれども、ここに書いてある中に、河村さんが、名古屋刑務所の話を追及されてきたけれども、「四月下旬頃から一転して、「起訴された刑務官は無実だ、それなのに無実の罪を負わされている」として、「森山さんにも辞めろなどと言って悪かった、法務省は、刑務官の無実を明らかにするために名古屋刑務所事件をもっとよく調査しなければならない」と、法務委員会の場で言われるようになりました。」ということで、森山さんが書いていただいておるのは、このこと自体は非常にありがたいことでございますが、その三行目ぐらい後に、要するに、「行政上の調査を行うに当たっても、裁判に不当な影響を与えないように十分配慮しなければなりません、」こういうふうに出ておるんですね、大臣。

 これ、どうですか。行政上の調査、ありますわね。これは前にも聞いたことあるんですよ、今まで、大臣の中で、野沢さんにも。裁判は裁判でやっていますけれども。これは、大臣は別個に、名古屋刑務所の話、あなたの部下ですから、部下ですよね。部下が本当にこういう罪を犯したかどうか、別個に調査する義務があるのかどうなのか、ちょっと答えてください。

南野国務大臣 先生今お尋ねの名古屋事案でございますが、法務省では、行刑行政を所管する立場から、これまでにも可能な限り行政上の調査を行い、国会に対し二回にわたりまして行政上の調査結果を御報告いたしまして、その後も、勾留中の被告人を含めた関係者から事情聴取などを行ったところでありますけれども、これまでに国会に御報告した内容を覆すに足りる事実は把握しておりません。

 一連の名古屋刑務所の事案につきましては、現在、名古屋地方裁判所に公判が係属しているものと承知しておりますが、今後とも、公判の推移を見守りつつ、必要に応じて調査等を実施してまいりたいと思っております。

河村(た)委員 何ですか。今までのを覆すだけの心証を得ていないんですか、あなた、今言われましたけれども。調査はされているわけね。されている。(南野国務大臣「調査結果は報告してまいりました」と呼ぶ)はいはい。

 例えば放水事案なんというのは御存じですか。放水、水をかけている。あれの水圧は〇・六キロというふうに書いてあるんですよ。これは質問通告したんですけれども、〇・六キロというのはどのぐらいの水圧だか御存じですか。きのう質問通告しましたよ、私。悪いけれども、これは中間報告にも書いてありますよ。裁判のことは言いませんけれども、中間報告にも書いてありますよ、〇・六キロの水圧であったと。どんな水圧ですか、〇・六キロというのは。

南野国務大臣 ちょっと実験する時間がございませんでしたので、どのスピード、どの強さが〇・六キロなのかというのは、ちょっと試していないです。申しわけありません。

河村(た)委員 いや、だから、そんな書いたやつをぽんぽん、あなたの部下なんだよ、刑務官。それを、事実を覆すだけの心証を得ていないなんて。水をかけて人が死んだというんでしょう。水圧〇・六キロがどのぐらいのことか確認しないの、あなた、上司なのに。それで、口先だけで、悪いけれども、ここで、刑務官のことも大事にしてやってくれって、そう言うわけ。ちょっとおかしいんじゃないかと思いますよ、これは、幾ら何でも。

 横田さんが手を挙げてみえるから。どんな水圧ですか、〇・六キロというのは。

横田政府参考人 私もそういうことにちょっと疎いので、〇・六キロというのがどの程度か申し上げられませんけれども、一センチ当たりだったでしょうか、当たりに六キロの力が加わるというふうに理解しておりました。ちょっと、間違っていたら申しわけありません。

河村(た)委員 私は別に物理や化学の授業をやっておるんじゃなくて、〇・六キロというのは、きのう言ったでしょう、質問通告してありますよ、東京都の水道の水圧は何キロかというのを。

滝副大臣 私のかつての専門分野でございますから申し上げますと、消防の放水の水圧が一平方センチメートル当たり三キロでございます。東京都の水道の本管の水圧が、恐らく〇・六キロだと思います。

河村(た)委員 そんなむちゃくちゃ勝手なことを言ってもらっちゃ困りますよ。ちゃんと調べたのを言ってくださいよ。調べたでしょう、東京都の水道を。それじゃ、ここから水を出してはかってくださる、そこの便所の水でいいから。どんなもんですか。言ったでしょう、水道局に電話してと。

横田政府参考人 東京都下の水道の水圧についてということで委員からきのうお話がございましたので、きのうはちょっともう向こうの都の方が連絡がつかなかったのでけさになりましたけれども、急遽電話で確認した範囲ですので、とりあえずの結論ということになりますが、このようなお答えがございました。

 給水本管から各戸の、家ですね、配管分岐点、本管から枝に分かれている、そこの……(河村(た)委員「蛇口から出るところでいいよ」と呼ぶ)いや、お答えでいただいたのは、それしか受けていませんので。それについて、都下全体の平均値といった統計はないと思うが、二十三特別区内であれば、最低でも〇・二メガパスカル、一平方センチメートル当たり二キログラムは、二十三区内のほぼ九九%のエリアで確保されているということで、これは電話回答でございます。蛇口のところについては、これは恐らく、蛇口の位置とか、それによって随分異なると思いますので、わかりません。

河村(た)委員 今言う話は二キロです、二キロ。蛇口はもうちょっと低いです、蛇口は。一・二とか、いろいろアローアンスがあるんですよ、当然のことながら。

 〇・六ですよ、大臣、刑務官がかけた水が。東京都の水道は二ですよ。死ぬと思いますか、それで。あなたの部下ですよ、部下。

南野国務大臣 今、刑事公判中でございますので、ちょっと差し控えさせていただきたいと思います。

河村(た)委員 ちょっと悪いけれども、国土交通省、来ているでしょう。ちょっと国土交通省に。国土交通省来ていますけれども、例えば鉄道事故なんかがあるんですよね、これは一方、裁判もやるんですよ。だけれども、一方、事故調というのがあるんですよ、国土交通省に。これは当然だよね。有罪、無罪、これは別ですけれども、再発防止があると思うんです。この事故調の目的というのは何ですか。

福本政府参考人 お答えいたします。

 航空・鉄道事故調査委員会は、航空事故及び鉄道事故の原因を究明するための調査を適確に行わせるとともに、これらの事故の兆候につきまして必要な調査を行い、もって航空事故及び鉄道事故の防止に寄与することを目的として設置されておるところでございます。

 したがいまして、当委員会の行う事故等調査は、航空事故及び鉄道事故等の原因を究明し、これらの再発防止に寄与するということを目的として行うものでございます。

河村(た)委員 もう一回。そうすると、裁判が同時に係属することになることがあり得ますわね、当然これは。それとの関係はどうなるんですか。無関係に調査するわけでしょう、淡々と。

福本政府参考人 お答えいたします。

 今申し上げましたように、私どもの調査はあくまでも事故原因の究明と再発防止ということでございますので、司法当局が行われます犯罪捜査等々とは一線を画すものでございます。(河村(た)委員「別個に淡々とやるわけですね、これは」と呼ぶ)そういうことでございます。

塩崎委員長 指名を受けてから御発言をしてください。

河村(た)委員 大臣、わかりましたか。そういうことなんです。裁判とは関係ないんです、これは。

 あなた、それと、処分していますよ、刑務官を、休職処分に。起訴と休職は違いますからね。これは間違いないですよ。これは確認してください。処分しましたと。前任者ですけれども。

 それと、刑務官ばかりじゃないですから。今、裁判にかかっていない人もたくさんいますから。

横田政府参考人 いわゆる名古屋事案といいますか事件、刑事事件になっていますから事件でございますけれども、それの被告につきましては、起訴に伴いまして起訴休職処分に付されております。

河村(た)委員 別個ですよ。別個の処分ですよ。何遍も言いますけれども、それは別個の処分なんですよ。

 それと、そればかり言うんだったら、起訴されていない人を処分しておるでしょう、たくさん、放水でも革手錠でも。あるじゃないですか。だから、別個にちゃんと行政処分しておるじゃないですか。

横田政府参考人 それぞれ何について処分をしたかということが人によって違いますので、一概にそれはお答えできるものではないと思います。

河村(た)委員 大臣、今の話を聞いておられて、あなたの部下が裁判にかかっておろうが、しかし、事故の原因を究明するというのは、今の国土交通省でわかったでしょう。なぜこういうことが起きたのか、これを究明しないと受刑者を守ることにならないんだよ。また起こることがあり得るじゃないですか。交通事故だってそうですよ。運転手だけじゃなくて、例えば車両の整備不良だった、車輪がどこか構造的に壊れておったかと。それはあなたの仕事じゃないですか。

 ところで、今、水圧の話をしたでしょう、東京都の水道、二キロ。いろいろアローアンスが、一・二とか、そのぐらいなんですよ、そこの蛇口で出る水は。刑務官がかけた水は〇・六ですよ、言っておきますけれども。これは争えない事実なんですよ。あなたのこの中間報告にも書いてあるんですよ、〇・六と。余り裁判のことを言いたくないけれども、検察庁もそう言っているんですよ、〇・六だと。

 先がたあなたは、自分の心証を覆すほどに至らなかった。なぜそんなことを言うんですか、あなたの部下だったら。ここまで言ったら調べようと思わないですか、あなた。

横田政府参考人 おっしゃるように、中間報告におきましても、法務省も初めから〇・六キロということで報告しているとおりでございます。そのこと自体は問題なくて、要するに、今委員がおっしゃっているのは、まさに例のホース事件の死因が何かということについてでありまして、その死因が何かということがまさにその刑事裁判の一番の論点でありまして、そのこと自体、やはりそれは裁判によって確定すべき事実であるというふうに考えております。

河村(た)委員 ちょっとこれ、やはりやめましょうか。(発言する者あり)そうじゃありませんよ。

 では、これも聞きましょう。裁判における事実の確定と行政における事実の確定は質が違うじゃないですか。これは大臣より専門家に聞きましょう。裁判においては、疑わしきは被告人の利益にでしょう。だから、一定の事実が、真偽があいまいになればもうそれでいいんですよ、裁判というのは。そうですよ。絶対的な事実が確定しなくてもいいんですよ。

 だけれども、行政の方はしっかりしてもらわないと、保護房内でだれかが死んだ、なぜなんだ、これをはっきりしてもらわないと再発するじゃないですか。(発言する者あり)いや、ルールは別ですよ。(発言する者あり)いや、そうですよ。だから、事実が何であったかが大きいんです。何を言っておるんですか。

 だから、それは本当の事故であったのか、ほかの原因だったのか。刑務官が本当に放水をして陵虐をしたのか、それとも、中にプラスチックのものが入っていて、保護房というのはそういう自殺とか自傷からも守らにゃいかぬのですよ、だけれども、注意義務を怠ってそういうものを入れてしまっていたのが原因だったのか。それをしっかりしないと、後のいろいろな日本の仕組みをつくるのはできないじゃないですか。私は、別に何もああだこうだと言っておるのじゃないですよ、政党がどうのこうのと言って、これは。

 私は、日本の国の治安を守る一番ベースのところの活動をしておる人を、きちっとまじめにやっておる人は大事にしてあげようと言っておるのですよ。こんなことを、真実を追求しないといったら、何なんですかと言いたいよ、自民党にも、私は。あなたたちは与党自民党だといって偉そうなことを言っておるでしょう。それなら国の一番下のそういうベーシックなところを、事実をはっきりさせようじゃないか。(発言する者あり)いや、違いますよ。同じように並行してやるんだよ。

 では、聞きましょう。それは根本的に間違っていますよ、悪いけど、その考え方は。園田さん、両方並行してやるんです。

塩崎委員長 河村たかし君、政府に対して質問しているんじゃないんですか。よろしいですか。

(河村(た)委員「これは、本当にやらないと、こんなのだめですよ」と呼ぶ)まだ発言は続いているんですか、続いていないの、どっちなの。(河村(た)委員「じゃ、ようございます」と呼ぶ)答弁に移っていいですか。(河村(た)委員「はい。いいです」と呼ぶ)

横田政府参考人 行政上の調査とそれから捜査とは、これは別のものでございまして、私どもやはり、行政運営をしていく上で必要なこと、テーマがございましたら、それに必要な限りにおいて調査をするということで、刑事捜査における事実の確定の度合いと、それから行政調査における事実の確定の度合いが高いか低いかということは、これは比較の問題にはならないというふうに思っています。

 それぞれ調査目的、捜査目的が違う。それぞれ別個のものであって、範囲もまた異なってくる、対象もまた異なってくるというものでございます。委員は、まさに今おっしゃっているのは、いわゆるホース事件における死因の確定が行政上も必要だというふうにおっしゃっているんですけれども、私ども、現時点におきましては、矯正行政を運営していく上で、死因そのものの確定がなければ行政の運営ができないとか支障を来すとか、あるいは今後の矯正の運営に資するものを得られないとかというふうには考えていないということでございます。

河村(た)委員 やはり、ちょっとこれでやめますよ。なぜかというと、原因が特定できないのに、原因をはっきりさせないのに、これは今後の行政運営に関係ない。何がどうして死んだかわからないのに、プラスチック片である場合と刑務官の暴行である場合と、全然違うじゃないですか。(発言する者あり)当然そうじゃないですか。そういう固いものが入っておるんだったら、すぐそういう自傷行為に使えるものをチェックすべきだし……(発言する者あり)当然そうじゃないですか、こんなもの。当たり前ですよ。では、なぜあなたは暴行を断定したんですか、これで。

 これは行刑改革会議中間報告ですよ。ここの九月のところを読みましょうか。

 「十二月事件」、九ページ。これは、悪いですけれども、委員会に報告されたやつですからね。これは間違いなくこちらの話ですよ。「懲らしめの目的で、その必要がないのに、受刑者」「の肛門部を目掛け、消防用ホースを用いて多量に放水する暴行を加え、」と。これはなぜ断定したんですか。何なんですか。

塩崎委員長 質問は終わったんですか。

河村(た)委員 はい。何なんですか、これは。何でこんなことを言うんですか。

大林政府参考人 この件に関しましては、私が官房長のときにタッチしていることでございます。あのときにも答弁申し上げたとおり、最初の段階におきましては、主として検察からの資料に基づいて、原因がどうなっているかということについてお知らせするという意味でつくったものでございます。

 その後、委員を初め法務委員会でいろいろな御指摘がありまして、表現等において不十分ではないかということもありまして、二番目といいますか、次の報告書ができたものでございます。

河村(た)委員 今のは、それはどなたに聞いてどう言われましたか。根拠は何だったんですかね、こう断定した根拠は。

大林政府参考人 今申し上げたとおり、一番最初の中間報告は、主として検察の捜査の結果を前提としてつくられたものでございます。その後、委員を初め、いろいろ表現において断定的なものはいかがかとかいう御意見がございました。そういうものをもとにして、第二版目の修正を加えたものでございます。

河村(た)委員 捜査のといって、矯正局は何をやっていたのですか、矯正局は。

横田政府参考人 これは、行刑運営に関する調査検討委員会において調査をしたその結果が中間報告になっているわけですけれども、もとより矯正局は、この調査検討委員会のメンバーとして必要な調査、行政調査を行いました。

 それから、先ほど私が申し上げたことについてちょっと一点付加させていただきたいんですが、死因そのものは、現時点において私どもは、行政運営上、確定しなければならないというふうに思っていないということですけれども、それは、もう一つは、これまた、これを申し上げるとまた委員から反論が出ますけれども、現に、死因そのものがやはり裁判の一番の争点になっているわけですので、現時点においてそれについて行政調査を及ぼすことは、これは裁判に不当な影響を及ぼすおそれがあるわけですので、これはできないということで、この裁判の推移を見守りながら、なお行政運営上この点について調査しなきゃならないなという点があれば、これにつきましてはやはり行うという趣旨でございます。

 それから、委員からは、これまでの国会の審議におきまして、あのホース事件の死因はプラスチック片で本人が、自傷行為なんだという御主張がございました。仮にそのようなことが事実であるとすれば、これは行政といたしましては、矯正の立場といたしましては、そのような保護房内における安全確保について不十分な点があったかなかったかということ、あるいは保護房の中において使用すべきものはどのようなものであるべきかといったようなことが、これは行政上問題になるわけですので、その点については調査いたしましたが、その結果、これまで報告したことを覆すに足りる事実は出なかったということで、これについてはこれまでも御答弁を申し上げたことがあることでございます。

 以上でございます。

河村(た)委員 何か悪いけれども、ちょっとむちゃくちゃで、僕のビデオを見ましたね、私がある刑務官と話をしているのを。彼は、保護房内で、当日、割れたプラスチックを見たと言っているじゃないですか。彼に聞きましたか、電話でもして、本当かと。

横田政府参考人 お答えいたします。

 まず、河村委員が今おっしゃいました、委員が刑務官と話をしている、あるいは刑務官に事情を聞いている場面を録画したビデオというのは、一昨日、私、拝見いたしました。今委員がおっしゃったような部分があったことも事実でございます。

 先ほど来申し上げましたとおり、私どもといたしましては、現に公判中のことでございますので、その公判の推移を見ながら、必要があれば必要な調査を行うということでございます。

河村(た)委員 そうなってくると、悪いけれども、本当に全然違うんですよ、これ。きっかけにすぎないかどうか知りませんけれども、二年前にこれをやって、調べましたら、このホースの問題だけでも、質問しているのは三十二回ですよ。予算委員会も入れてですよ。刑務官が暴行したと言っている、それが責任だと。それで、こちらは刑務官の資質に問題があると。

 問題があるのは管理者じゃなかったのか、実は。それをまずはっきりさせなきゃ、そんなことをあいまいにしてルールを変えて、通じるわけないじゃないですか、そんなこと。そんなひどい、むごい話が世の中のどこにあるんですか、一体。これは委員会が怒らなければだめですよ、本当に。

 それじゃ、矯正局、ホースのことで三人起訴されていますけれども、一人の方は僕は余り、ちょっとお会いできないけれども、三月三十一日にこの中間報告を出されるまで、ヒアリングをしましたか、状況を。

横田政府参考人 申しわけございません、ちょっと最後の部分が聞き取れなかったんですが、ヒアリングしましたか、何々をとおっしゃったんですが。

河村(た)委員 ホースの話で、今、当然矯正局も必要な調査をされていると言いましたので、それは当然ですよね。当然ですよ、三月三十一日に報告書を委員会に出すんだったら。

 それでは、少なくとも、名前はちょっと言いませんが、そのお二方なり刑務官に、現にそこで起訴され、そのときは、一人は二月十二日逮捕ですけれども、その以前でもいいですよ、ヒアリングをされていますよね。

横田政府参考人 御質問はわかりました。この中間報告の前にはしておりません。

河村(た)委員 してない。そうです、してないんですよ。

 ちょっと、こういう前提においては、やはり法案の審議はまずいと私は思いますよ。もうちょっときちっとした、少なくとも、このきっかけとなった名古屋刑務所のこの三つの事案について、どういうことであったのか、最低でもこれを出し直してですよ、もう一回。そんな、犯罪を断定して。それからこの法案の審議をお願いするのが当然じゃないですか、国会議員に対して。

 これは私、ちょっとやめるので、ちょっと時間、それを出してからにしてください。ちょっと幾ら何でも、一応の経過の報告だけ出してくれればいいですよ。今のままじゃ余りにひどいよ、これは。(発言する者あり)委員長、速記をとめてください。

塩崎委員長 速記をとめて。

    〔速記中止〕

塩崎委員長 速記を起こしてください。

 河村たかし議員から、再調査の上ということで、これが出ていない、これを出せ、こういう話でありますが、政府は再調査を、十五年の七月二十八日に再調査を踏まえて問題点の整理というのを出しているという話をしておりますので、まずそこのところを説明させますので、政府の方から説明をしてもらって、それを受けて質疑を続けてください。

 それでは、横田矯正局長。

横田政府参考人 お答え申し上げます。

 平成十五年七月十八日に衆議院法務委員会の議決がございまして、その中で「この際、政府は、国民に信頼される開かれた行刑改革を実現するため、過剰収容問題の解消及び刑務官の増員を含む行刑運営のあり方全体を徹底的に見直し、特に矯正行政の責任や検察のあり方についても検討し、再調査の上、速やかに当委員会に報告すべきである。」ということで、まず、速やかな報告というものを求められました。

 この平成十五年の通常国会におきましては、いわゆる名古屋事案のみならず、矯正行政というものがあらゆる観点から論議、議論の対象となりました。いわゆる名古屋事案のほかの中でも例えば情願の取り下げの問題であるとか、そういう新しい問題が起きましたし、それから、過去十年間の全国の刑務所、行刑施設における被収容者の死亡の全部の検討とか、それから、いわゆる死亡帳が紛失した、あるいは身分帳が紛失したとか、それから医療の問題もさまざまな観点で議論されました。

 そういったことも踏まえて、私どもは、この衆議院法務委員会で議論の対象となりましたあらゆる事柄につきまして、それまでの調査結果、検討結果を取りまとめて、「行刑運営をめぐる問題点の整理」と題する報告書をつくりまして、これをもって報告をいたしたということでございます。

 以上です。

河村(た)委員 とにかく、状況を本人には聞いていない。本人に、水をかけた本人ですよ、刑務官に。聞いていないと言われたでしょう。そんなのを調査だと言われたって、何で怒らないの、皆さん、これは国会で必死に審議しておるのに。ないですよ、幾ら何でも、これ。だから、そんなの、そんな再調査の上なんて信じられないということですよ、はっきり言えば。そうでしょう、その前のことからもそうだし。(発言する者あり)二年前だって大きいですよ。

大林政府参考人 今、調査のことを、本人といいますか、被告になっている方々の調査についてお尋ねがありました。

 あの当時にも御答弁申し上げたところでございますけれども、あのときは、今の三事件、特にホース事件が一番最後の捜査になりました。検察において関係人を調べている段階がございます。それから、逮捕に至った人もいます。ですから、あの当時にも答弁があったと思いますけれども、やはり捜査続行中、さらに身柄になったということで、矯正局の方ではその他の、本人以外の調査について進めたはずでございます。

 その当人のものについては、やはり捜査、起訴されたということで、その後において矯正局において調査した、本人たちにも事情を聞いたというふうに承知しております。

河村(た)委員 余り人生の先輩に怒っても、血圧も上がりますし、あれですけれども。

 それでは、ドクターに聞かれましたか、悪いですけれども、法医学者に。死んだんでしょう。亡くなられているわけです。亡くなられた原因を調査するわけでしょう。解剖した人がいますよね。聞かれましたか、その方に。

横田政府参考人 済みません。私の記憶で申し上げます。

 矯正局としては、解剖医に行政調査を行うといいますか、事情を聞くということはいたしておりません。申し上げるまでもなく、まさにこれは刑事裁判においてその最大の争点である死因に関する重要な証人になることが考えられるわけですので、それについて私どもとしては聴取しておりません。

河村(た)委員 裁判になんかなっていないんですよ、まだ別に。話が出てきて、内部通報があったのは暮れにあったんでしょう。そのころに行けばいつでもできるじゃないですか、そんなの。全然理由にならぬですよ。国会に対して行政が誠意ある回答をしようと思えば、まず皆さんだって、何か事故が起こったら医者のところに行くのは当たり前じゃないですか、こんなの。

 当事者にも聞いていない、医者にも聞いていない、そんな報告書が出てきて、それがきっかけになった法律を漫然と通せだって。それはやはりいかぬと思いますよ。

 だから、私は切り離してもいいんだけれども、そうならそうで、悪いけれども、ちゃんともう一回、今の状況で、これは塩崎さんも一緒におったので、わかっておるでしょう。放置していくのはだめなんだって、やはり人命がかかっているから。八名の刑務官とほかの人もいますよ。

 それから、もっと言えば、今後の受刑者のことをみんな言っているけれども、こういう事故原因をきちっと究明することが受刑者を助けることになるんですよ。真剣に取り組んでくださいよ。だから、きちっともう一回中間報告をやり直す、こんなところを。

 大臣だって、〇・六の水圧、一遍自分でやってくださいよ。〇・六の水圧で本当に死ぬのかどうか、見ればすぐわかりますよ、そんなの。あなたの部下だよ、言っておくけれども。部下を守ることもあるけれども、では、なぜ死んだんだ、なぜこんな事故が起きたかと。いわゆる受刑者を守ることになるじゃないですか、真実がわかれば。繰り返さぬじゃないですか。それからにしてくださいよ。

 だから、僕、とりあえず、その報告書をもらって、また後で質問しますから、きょうはちょっとやめさせてください。こんなことでは本当にやる気にならない。後で質問しますから。

大林政府参考人 委員がおっしゃっているのは、死因についてお医者さんの間で意見が違うという事実があるように私ども承知しております。それはまさに、先ほどから申し上げているとおり、死因は何かということについてお医者さんはそれぞれ、検察は検察で鑑定を嘱託しています。そのほかのお医者さんの中ではそうじゃないんじゃないかという御意見があるというふうに裁判の方は承知しております。

 まさに、それは今裁判の中身、捜査の中身でございまして、それについて矯正の方でさらにその先生に死因を尋ねるということは、私どもの立場からしてはいかがかなというふうに思いますので、それはそれなりのことをやって、今裁判で争いになっていますので、矯正が鑑定の先生方に直接当たらなかったからといって、矯正の調査が不十分だということにはならないと私は思います。

河村(た)委員 余りしゃべりたくないけれども、今になってから言っておるだけのことであって、当初、一番最初のきっかけのときは、時間は幾らでもあったはずですよ、一番初めのきっかけのときは。これは平成十三年十二月でしょう。それから問題になってきたのは、十四年の五月、九月となって、九月の逮捕が十月にあって、それから内部告発があったのが十二月だとか言っているじゃないですか。そのころに幾らでも時間があったじゃないですか。国会に、真摯な態度があるなら、そのころはまだ別に刑事事件になるかどうか全然わからぬのだから。

 何でこんな、死んだということは確かですから、なぜ死んだんだろうかと。まず矯正局は、再発防止の観点から、医者のところに行くのも当然だし、なぜ死んだんだろうか、刑務官たちに一体何があったんだと聞くのは当たり前じゃないですか。その報告書を持ってきて国会が審議に入らなかったら、何にもわからぬじゃないですか。

 今でこそ、大林さんが裁判のこと、後のことを言っておるけれども、違うよ、そんなの。こんなことを議論しておったってしようがないので、もっときちっとやり直させてもらうまで、きょうはちょっとやめさせてくださいよ。またやりますから。

塩崎委員長 河村たかし議員に申し上げますが、切り離してということであれば、何をお知りになりたいのかをもう少し明確にしていただいて、理事会に出していただきたいと思います、紙ででも。

 それで、河村議員もあの当時おられましたが、我々の、きょうお配りをいただいた決議は、十五年の七月の十八日にありますが、その中に「再調査の上、速やかに当委員会に報告すべき」ということで、先ほど御説明があったように、その十日後に「行刑運営をめぐる問題点の整理」という形で出てきた。それがこの決議に対する政府の対応だったわけですね。そのとき、我々はみんないたわけです。そのときは、今御指摘のようなことがそう先鋭的に問題に、この報告に対してはなかったと思うんですね。

 したがって、今ここで我々がやるべきことは、刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律案についての審議をしなきゃいかぬ。

 立法事実の話がありましたが、立法事実の一つに、ですからきっかけに名古屋の問題があるにせよ、この決議にも「昨年来、全国の矯正施設において種々の問題が表面化したこと」と書いてありますよね。ということは、名古屋の問題もきっかけで、これはもちろん一番大きなきっかけだったわけですけれども、前々からいろいろな問題が起き、またそのときに集中的にいろいろな問題が起きた。

 ですから、立法事実が十分あるわけですから、その問題だけを取り上げて、それに今の点で不明確な点があるから審議ができないというのは少しどうかなという感じがするので、もし切り離していただけるというならば、お知りになりたいことをもう少し明確に書いてでも理事会にお出しをいただいて、それに対して政府が改めて答弁をするのかどうかということを諮って、それはまた一般質疑なりでやってもらって、この時間はやはり法案の審議にしていただきたい。

河村(た)委員 何か、奇異なことをおっしゃられると思うんですけれども、委員長もお見えになりましたので。

塩崎委員長 いやいや、そうですよ。

河村(た)委員 そうでしょう。この二年間にわたってやってきた。これは、前提事実が違っておったらどうなるんですか、一体。

 まず、皆さん、殺人者と言った人がおりますからね、ここで。いいんですか、あれは。無答責だからいいんですか。

 それと、この法律につながったのも、基本的なパターンは、要するに名古屋の刑務所のフラストレーションが高まっておる、過剰収容だと。過剰収容、フラストレーション、全国の刑務所にも潜在的なそういう問題がある。そういうことから、刑事施設をどうするか、刑務官をふやせと言ってふやしたじゃないですか、これは皆さんで決議に入れて。そういうふうになってきたじゃないですか。

 だから、この中も、暴行があったから権利義務をはっきりしよう、これは昔からの論点ですけれども、受刑者とそれから刑務官との権利義務の関係をはっきりしようと。みんなつながっているじゃないですか、全部。(発言する者あり)同時にやればいいじゃないですか、何も。私は、そんなことで政局にしようなんて、そんなつもりは全然ないですから。(発言する者あり)いや、だから、委員長からして怒らなきゃおかしいと思うんですよ。何なんだと言いたい、私は。

塩崎委員長 それは十五年に出ているものだから、そのときに怒らなきゃいけないね。

河村(た)委員 いや、それはだんだん事実というのはわかってきますからね。

塩崎委員長 だから、それは一般質疑でやればいいよ。

河村(た)委員 いや、僕はそういう考え方というのは考えられませんね。どうなっておるんですか、本当に。ここまでおかしいというふうになってきておるわけですよ。

 それで、この中間報告、これが出て、これに基づいて、これが大きなスタートになっていったわけですよ。事実の認定、みんな書いてあるんですよ。

 では、ウエスト、穴が、六十センチの穴、入ったとこれに書いてありますけれども、このベルトの穴を確認しましたか。ビデオを見ればわかりますけれども、後ろから。縛った残りがあるからわかりますよ。確認しましたか。

横田政府参考人 大分以前の委員会で河村委員から、あのビデオでベルトの位置がわかるじゃないか、間隔がわかるじゃないかとおっしゃいましたが、あのとき私も答弁した記憶がありますけれども、私どもの機器といいますか、においていかように再生しても厳密にそれは計測できる状況にはなかったということで、この点は現在も変わりません。

河村(た)委員 これは、行政の不作為というか、国土交通省は帰ってしまったけれども、これが仮に鉄道事故だった場合、こういうことを言って、仮に車輪にひびが入っている、これが確認できぬのと同じですよ、言っておきますけれども。簡単にわかるんですよ、裏のビデオを見れば、刑務官がどこまでベルトを締めたかというのは。後、こうやってまとめるところがあるから。

 委員長、国会の権威にかかわりますよ、これ、言っておきますけれども。これは書いてあるんですよ、六十センチだといって。

塩崎委員長 それは中間報告でしょう。

河村(た)委員 中間報告。

塩崎委員長 中間報告の後に報告が出ているわけだから。

河村(た)委員 同じですよ、それは後のも。後のも同じですよ。

塩崎委員長 だから、その後のものを問題にしてくれよ。

河村(た)委員 後のも同じですよ。後のも同じでしょう、これ。同じですよ。

 これはやはり、いや、受刑者のためにもならぬ。これは明らかに、委員会挙げて本当の真相は何であったかということを究明しないと、次の事故の発生をストップすることはできないよ、法律の条文をつくったって。だめですよ、これ。

 だから、それじゃ、それをもう一回出し直すのを理事会に求めますよ。今塩崎さんが言われたことだったら、それを。

塩崎委員長 では、それは後刻理事会に出していただいて、そこで……

河村(た)委員 出していただいてって、何ですか、それは。

塩崎委員長 いや、何を知りたいのかをもう少し明確にしていただきたい。

河村(た)委員 いや、だから、事実認定していますから、ここで。だから、刑務官の暴行と放水のことを認定していますよ。これは一体、本当にそうなのか。調査は幾らでもできますから、今言ったように。

塩崎委員長 その一点ですか。

河村(た)委員 いやいや、それから革手錠もそうですよ。

塩崎委員長 ですから、それだったら書いたもので出していただかないと、後からあれもない、これもないでは話にならない。

河村(た)委員 いやいや、そんなことはすぐわかりますから。

塩崎委員長 いや、すぐわかるって、それは河村さんの頭の中ではわかるけれども、こっちはわからないんだから。

河村(た)委員 いや、名古屋刑務所の三つの事案についての事実を認定していますから、全部。事実認定について、その真意について改めて報告してくださいということです。当たり前ですよ、こんなの。

塩崎委員長 だから、それは後刻理事会で諮りたいと思います。よろしいですか。

河村(た)委員 理事会で諮るって、そんなもの、本当は委員長、自分の意見を言やいいんだよ、私はいつも思うけれども。そんな決まり文句を言っておったってしようがないですよ、そんなものは。(発言する者あり)いや、理事会で諮るのはいいんだけれども。

 では、理事会でそれはお願いして。

塩崎委員長 よろしいですか。続けてください。

河村(た)委員 それからもう一つ、シャワー室を保護房のすぐ横につくったんですけれども、このつくった理由をひとつ聞かせてください。

横田政府参考人 委員のお尋ねは、これは府中刑務所の新しい保護房の前に、前室にシャワー室を新設した理由というお尋ねというふうに理解した上で、お答え申し上げます。

 府中刑務所におきましては、いわゆる新保護房というものをつくりました。そこの前室部分にシャワー室を設けました。

 これは、保護房に収容される被収容者の衛生管理をしやすくすることに加え、室内や自己、これは被収容者ですけれども、それの体に汚物を塗布するなどの異常行動を反復する者の場合、その都度、多数の職員により被収容者を浴室などに連行して洗体、体を洗わなければならないということも往々にしてあるために、それらの職員の負担を軽減することも目的として、保護房のすぐ近くにシャワー室を設けたということでございます。

河村(た)委員 では、シャワー室がないときは、どういうふうにされておったんでしょうか。被収容者が汚物等を体にひっつけて暴れておったら、どうされたのですか。

横田政府参考人 被収容者が汚物で体を汚したというような場合に、刑務官がお湯とか水でぬらした布でふいてやったりしていたというふうに聞いております。

河村(た)委員 それは大変な困難というか、保護房の中に収容しておるわけですね、保護房収容時ですからね。それは簡単にできるんですか。

横田政府参考人 簡単にという御趣旨がちょっとよくわかりませんが、保護房の中だから簡単にできるかできないかということでございましょうか。

河村(た)委員 いや、刑務官が負傷する危険とか、そういうことはないんですか。そんな簡単に保護房内で体をふいたりできるんですか。

横田政府参考人 刑務官が危険を感ずるような状態であるならば、あえてその場において体をきれいにしてやるということはしなくて、落ちついた後になってからやるということだというふうに聞いております。

河村(た)委員 では、落ちついてからやるということは、落ちついたという状況というのは、保護房解除になりますね、入浴させる場合は。

横田政府参考人 もちろん解除になります。したがって、解除後にそのような体をふいたりといったことをするということでございます。

河村(た)委員 一方、要するに、被収容者に対する衛生管理義務というのはありますね。これは確認してください。

横田政府参考人 一般的に言えば、刑務所は、行刑施設は、被収容者の健康を維持する、そのために必要な措置をとるということ、これはもう当然でございます。

河村(た)委員 そうしたら、いわゆる保護房解除ができないような暴れている状況で、鎮静化していないような人が、仮に一週間とか全然入浴していない人がおった場合、どうするんですか。

横田政府参考人 仮定の問題でございますので、どうお答えしたらいいかわかりませんが、一週間全くもう何をしようにも抵抗的になる、一週間連続して抵抗状態ができるということがあるのかどうかちょっとわかりかねますが、いずれにいたしましても、ちょっとそういう事態が私としては想像いたしかねますので、お答えできません。

河村(た)委員 しかし、現実にあるでしょう、一週間までいかなくても数日とか。その場合どうすればいいんですか。どうすればいいんですか。

 では、一つ端的に言いましょう。そういう場合に、例えば、今の〇・六キロの水圧ですね、ちょっと具体的なものが挟まって申しわけないんだけれども、〇・六ということは東京都の水道の水圧より低いわけですよ。そのようなもので、仮に、これは井戸水だったんです、名古屋の場合。そういうようなもので房内清掃と同時に体を洗ったとしても、状況はいろいろあるかもわかりませんよ、そういう必要性も出てくるんじゃないんですか、場合によっては。

 それとも、しない方がいいんですか、体を洗わずに不潔のままで。どうなんですか、そこは。

塩崎委員長 河村たかし議員に申し上げますが、質疑時間が来ておりますので、これで最後の答弁にしていただきたいと思います。

横田政府参考人 今委員がおっしゃったことから直ちに、刑務官がその被収容者に対してどうしても体をふいてあげなければならないということにはならないと思いますが。(河村(た)委員「水で体を洗うことはできるかと聞いている」と呼ぶ)水でというのはどういう、先ほど申し上げましたように、タオルなどを水やお湯でぬらして、そしてふいてあげるというふうに聞いております。

河村(た)委員 これで終わりますけれども、暴れていてそういうことができない場合の問題を言っているわけです。保護房というのは大変危険なんですよ。

 とりあえず、きょうはこれで終わりまして、次に引き継ぎたいと思います。終わります。

塩崎委員長 次回は、来る四月一日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十九分散会


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