衆議院

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第12号 平成17年4月15日(金曜日)

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平成十七年四月十五日(金曜日)

    午前九時三十三分開議

 出席委員

   委員長 塩崎 恭久君

   理事 田村 憲久君 理事 平沢 勝栄君

   理事 三原 朝彦君 理事 吉野 正芳君

   理事 津川 祥吾君 理事 伴野  豊君

   理事 山内おさむ君 理事 漆原 良夫君

      井上 信治君    左藤  章君

      佐藤  勉君    笹川  堯君

      柴山 昌彦君    菅原 一秀君

      園田 博之君    田中 英夫君

      谷  公一君    早川 忠孝君

      松島みどり君    水野 賢一君

      森山 眞弓君    保岡 興治君

      柳澤 伯夫君    柳本 卓治君

      加藤 公一君    小泉 俊明君

      佐々木秀典君    樽井 良和君

      辻   惠君    長浜 博行君

      松野 信夫君    松本 大輔君

      江田 康幸君    谷口 隆義君

      富田 茂之君

    …………………………………

   法務大臣         南野知惠子君

   法務副大臣        滝   実君

   法務大臣政務官      富田 茂之君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局審議官)            振角 秀行君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局参事官)            大藤 俊行君

   政府参考人

   (金融庁証券取引等監視委員会事務局長)      長尾 和彦君

   政府参考人

   (総務省情報通信政策局長)            堀江 正弘君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    寺田 逸郎君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 加藤 治彦君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 佐々木豊成君

   政府参考人

   (国税庁次長)      村上 喜堂君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           大槻 勝啓君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           舟木  隆君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           桑山 信也君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            鈴木 正徳君

   法務委員会専門員     小菅 修一君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十五日

 辞任         補欠選任

  大前 繁雄君     田中 英夫君

  園田 博之君     佐藤  勉君

  河村たかし君     長浜 博行君

  江田 康幸君     谷口 隆義君

同日

 辞任         補欠選任

  佐藤  勉君     園田 博之君

  田中 英夫君     菅原 一秀君

  長浜 博行君     小泉 俊明君

  谷口 隆義君     江田 康幸君

同日

 辞任         補欠選任

  菅原 一秀君     大前 繁雄君

  小泉 俊明君     河村たかし君

    ―――――――――――――

四月十三日

 女性の人権の確立を目指す法制定に関する請願(石毛えい子君紹介)(第九六五号)

 女性の人権確立を目指す法制定に関する請願(石毛えい子君紹介)(第九九二号)

 同(森山眞弓君紹介)(第九九三号)

 国籍選択制度と国籍留保届の廃止に関する請願(寺田学君紹介)(第九九一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 会社法案(内閣提出第八一号)

 会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第八二号)


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     ――――◇―――――

塩崎委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、会社法案及び会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として金融庁総務企画局審議官振角秀行君、金融庁総務企画局参事官大藤俊行君、金融庁証券取引等監視委員会事務局長長尾和彦君、総務省情報通信政策局長堀江正弘君、法務省民事局長寺田逸郎君、財務省大臣官房審議官加藤治彦君、財務省大臣官房審議官佐々木豊成君、国税庁次長村上喜堂君、厚生労働省大臣官房審議官大槻勝啓君、経済産業省大臣官房審議官舟木隆君、経済産業省大臣官房審議官桑山信也君、中小企業庁事業環境部長鈴木正徳君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塩崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

塩崎委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。平沢勝栄君。

平沢委員 おはようございます。自由民主党の平沢勝栄でございます。大臣初め関係者の皆さん、本当にお疲れさまでございます。

 この前、監獄法の全面改正が衆議院を通過したわけですけれども、今度はいよいよ会社法の審議に入ったわけでございます。この前の監獄法改正がたしか明治四十一年の法律を改正したわけでございますけれども、今度の会社法は、明治三十二年の商法、それから有限会社法が昭和十三年ということで、もちろんその間何回となく部分的な改正は行われてきましたけれども、随分古い法律を今まで日本という国は使ってきたものだなという感じがしないでもありません。

 その間、社会、時代は大きく変わってきているわけでございまして、そうした中で、社会、時代の変化に対応することが極めて難しくなっている。そういう中で、今回、新しく商法の一部、それから有限会社法等を抜本的に改正しまして、新しく会社法案というのをつくったわけでございますけれども、千条近くに上る大変な法律でございまして、見ただけで何となくうんざりするような大変な法律でございます。関係者の御努力に心から敬意を表したいと思います。

 今回の会社法案については、いろいろなことが盛り込まれているわけでございまして、これについてはおいおいいろいろと質問が出るだろうと思います。株式会社と有限会社を一つにしたとか、資本金を撤廃したとか、会社経営の健全性の確保の点から代表訴訟制度を合理化した、あるいは会計参与制度を創設したとか、いろいろあるんですけれども、今回の件で国民の皆さんというか企業の経営者が一番注目しているのは、何といっても、ライブドアの問題がありまして、企業のMアンドA、これに対する防衛策がどうなるかということではないかなと思っております。

 もちろん、会社法全体が企業経営者に大きな影響が出るわけでございますけれども、その中でもとりわけこのMアンドAについての関心が極めて高いわけでございます。したがって、このMアンドAの問題に絞って御質問させていただきたいと思います。

 まずは大臣にお聞きしたいと思うんですけれども、今回のライブドアの問題でいろいろな問題点が出てきたわけでございまして、私は、ライブドアの問題というのは功もあったし罪もあったのではないかなと思います。

 罪の問題については後でいろいろ質問させていただきますけれども、功について言えば、現行法の制度について不備があったんじゃないかというようなことがいろいろとわかってきたわけでございます。

 そして、あわせまして、今度のライブドアの問題で、そもそも会社とはだれのものなのか。アメリカでは会社は株主のものであるということを言い切っていましたけれども、日本の経営者というのは、今まで、会社というのは自分のものだというか、経営陣のものだというようなところが極めて強かったんじゃないか。

 そもそも、株式を公開するということは、もうそこでオーナー企業でなくなるということであるはずにもかかわらず、政治家のいわば二世、三世というのは聞いたことがありますけれども、上場企業で二世、三世がその経営陣を引き継ぐということはどうなのかな。大体、欧米ではそんなことは余り聞いたことがないんじゃないかなという感じもしないでもないのです。何か、オーナー企業の経営者で、株式を公開しても、依然として会社というのは自分のものだというようなところが非常に強いんじゃないかなという感じがしないでもないわけです。

 そもそも、日本の今の経営者の中にも、もちろん一部ですけれども、いろいろと問題があることも間違いないわけでございまして、そういうことになってきますと、MアンドAをかけられても、これは場合によっては仕方がないことじゃないかな。場合によっては、それが企業価値を高めるなら、会社、株主とか関係者にとってもいいことじゃないかなという気がしないでもないわけです。

 大臣にお聞きしますけれども、今回いろいろと問題になった、会社ですね。会社というのはだれのものなのか、そして企業価値とは何なのか、これは今度の会社法の中ではどう位置づけられているのか、その点について、ちょっと答弁をお願いしたいと思います。

南野国務大臣 きょうから重要法案の一つである会社法の審議が始まります。委員長初め、委員の皆様方の本当に真摯な御質疑をお願いして、スムースな審議ができますようにと思っております。

 今先生からのお尋ねは、会社はだれのものであるのか、また企業価値という問題についてどうかというお尋ねがございました。

 株式会社は、純法制的には、営利法人として、株主の出資によって成り立っている。これによりますと、株主が利益を得る仕組みとなっている制度でございますので、第一義的には、株式会社は株主のためのものであるということは言えるというふうに思っております。

 もっとも、会社は、従業員とか取引先を初めとする会社の利害関係者のためにも活動する社会的存在でもありますので、我が国の経済活動の中核的な存在であるという側面もございます。そういう意味では、株式会社は、株主のみならず、債権者等の利害関係人のための法的な仕組みであるということも考えております。

 次に、企業価値についてのお尋ねでございますが、会社が第一義的に株主のものである以上、企業価値を高め、全体として株主の利益を最大化することが重要であり、会社を取り巻く環境にも十分配慮した上で、それに資する法整備を行ってまいりたいと思っております。

平沢委員 そういうことだろうと思います。今まで、特に日本の企業の経営者には、会社というのはステークホルダーのものという視点がかなり欠けていたんじゃないかな、その辺はこれからしっかり考えていかなければならないんじゃないかなと思います。

 そこで、次に、今回のライブドアの問題についてお聞きしたいと思うんです。

 ライブドアは、ニッポン放送の株式を市場内の立ち会い外というか時間外取引で大量に購入して、持ち株比率が三分の一を超えたことになったわけでございますけれども、そもそも市場内の立ち会い外取引というのは、いわば市場の中で機関投資家たちが持ち合いの解消等に使うというのが想定されていたわけで、企業の乗っ取りというか経営権の支配ということは想定されていなかったんじゃないかなと思います。

 報道によりますと、東証は、これまでも経営権取得を目的に立ち会い外取引を使えるかどうかというのは相談が何度もあった、それに対して、投資家に公平な売却機会を与えるTOB制度の趣旨でやるべきというようなことが報じられているわけでございますけれども、そうだとすると、今回のライブドアの大量買い付けは、証取法上は、いろいろ意見が分かれますけれども、違法だという意見もありますし、違法じゃなくても法の趣旨を著しく逸脱したという考え方もありますし、そもそも、東証のいわばいろいろな指導というんですか暗黙のルールというんですか、これを逸脱した、こういう見方もありますけれども、これについて、金融庁ですか、証取等監視委員会ですか、どちらでもいいですけれども、これをどう見ているか、ちょっと教えていただけますか。

振角政府参考人 お答えさせていただきたいと思います。

 先生御指摘のように、ライブドアがニッポン放送株を取得した時間外取引、立ち会い外取引については、いろいろな議論がありまして、また裁判所でもいろいろな見解が表明されたところだというふうに承知しているところでございます。

 我々としましては、立ち会い外取引というのは、あくまでも、この場合は東証でございますけれども、取引所におけます取引ということでございまして、今の現行法上では取引所外でやるときには公開買い付けをやれという一応法律のたてつけになっておりますので、現行法上でいいますと、基本的には公開買い付けの規制の対象とはならないというふうに考えておるところでございます。

平沢委員 TOB規制の対象外だということなんですけれども、それは確かに外見上はそうだと思うんです。それで、裁判所も、書類審査でしょうから、当然そうなるだろうと思うんです。

 しかし、もし、ライブドア側があらかじめ相手方と示し合わせたというか談合でこれを買っていた場合にはどうなるんですか。そこは全然事情が違ってくるんじゃないかと思うんです。ですから、それについてちょっとお答えください。

振角政府参考人 お答えさせていただきたいと思います。

 我々は、あくまでも証取法を所管している立場として、一般論として申し上げたわけでございまして、個別の事実認定に係る話は、また別に裁判所等で判断される余地はあるのかと思います。

平沢委員 今回の場合は、いろいろな意見があって、問題もあるんじゃないかなということがいろいろと言われているんですけれども、きょうはSEC、来ていますね。

 SECの場合、こうしたいろいろな問題がある場合には、当然のことながら、関係者から、買い手、売り手両方から聞いて、そして、あらかじめ示し合わせ、談合があったのかどうかということについて調べるのがSECの役割じゃないかなと思いますけれども、こうしたことをSECはやったのかどうか、これについて、ちょっとお答えできますか。

長尾政府参考人 今回の立ち会い外取引をめぐりまして、今先生御指摘のようないろいろな議論があるということは私ども承知しております。

 ただ、御案内のとおり、私ども監視委員会といたしましては、個別事案の調査の実施の有無というのは、大変恐縮ですけれども、従来よりお答えすることは差し控えさせていただいております。これは我々の活動を円滑に進めるためのものであることを御理解いただきたいと思います。

 なお、一般論になりますけれども、私ども監視委員会は、やはり証券取引に関するさまざまな資料、情報というのを収集しておりまして、そうした中で、仮に法令違反に該当する事実があると疑われる場合には、必要に応じて調査を行うこととはしております。

平沢委員 それは答えられないんでしょうけれども、しかし、調査をしなかったらおかしいし、だれが常識的に考えても何らかの談合的な話し合いが事前に行われていたんじゃないかなと思うわけで、そこにきちんとした調査がなされていなかったら、これはSECとしてレゾンデートルが問われるんじゃないかなという感じがしないでもありません。この場では答えられないでしょうけれども、これはきちんと調べる必要があるんじゃないかなと私は思います。

 それはともかくとして、今回のライブドアの問題でいろいろな法律的な不備も明らかになったわけでございまして、もちろんこの会社法の中でも、合併等の対価の柔軟化の一年凍結等がありました。

 きょうは総務省にも来てもらっていますけれども、外資規制、今までの電波法で二〇%のルールがありましたね。その二〇%ルールが、今回、間接規制という形で、いわば法の盲点を突かれたような形になったわけでございまして、恐らく総務省は電波法の改正を慌てて検討していると思うんですけれども、諸外国では、そもそも間接規制を当然想定した形でいわば規制がなされていたわけですね。日本は、今までこうした間接規制というのは、それこそ想定外だったわけですね。

 なぜ日本では、諸外国で当然盛り込まれていたこうした間接規制が想定外であったのか、それについてちょっとお答えいただけますか。

    〔委員長退席、吉野委員長代理着席〕

堀江政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御指摘ございましたように、現行の法制におきましては、放送局に関する外資規制におきましては直接出資の規制があるのみでございます。

 なぜそうなっているのか、間接規制がなぜ入っていないのかという御質問でございますが、電波法あるいは放送法等は、昭和二十年代あるいは三十年代に設けられた法制、三十三年に外資規制も厳格化されたわけですけれども、その当時におきましては、我が国の株式市場における外国人による出資割合は一%台ということで、極めて低かったわけでございます。そこで、外国人が日本法人を通じて間接的に我が国の放送事業者に対して大きな影響力を行使するというような状況までは想定されていなかったということで、その後もこのような傾向が続いたということで、間接規制は入れられていなかったということと考えております。

 なぜ入っていなかったということであれば、そういう事情でございます。

平沢委員 そういうことなんでしょうけれども、最近急速に外資がふえているわけで、これからまた聞きたいと思うんですけれども、小泉総理も、外資、どんどん入ってくれということを言っているわけなので、だとすれば、当然これは想定されたことではないかなという感じがします。

 ですから、これは総務省でも法務省でも金融庁でもいいんですけれども、今回、ライブドアという一企業の問題でいろいろといわば法律の不備が明らかになり、そして法律のいろいろな見直し、改正が行われているということになっているわけですけれども、諸外国から見れば、一企業の行動で、こういう形でいろいろな法改正が慌てて行われる、ある意味では、表現悪く言えば泥縄式に行われる、日本という国は何をやっているんだろうというような印象をどうも与えてしまうんじゃないかなという心配もしないではないんですけれども、これについては、総務省でも法務省でも金融庁でもいいんですけれども、どなたか答えていただけますか。では、総務省。

堀江政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のように、近年の急激な外国法人等による対内投資の増加、それからまた株式の保有のあり方、あるいは出資の方式等、さまざまな形態が進んで、急激に変化が起こっているわけでございます。そうしますと、外国人による間接出資についても検討する必要があるんじゃないかということでございまして、私どもも、現在、このような状況の変化に早急に対応すべく検討作業を進めているところでございます。

平沢委員 ほかのところにも聞きたいんですけれども、時間の関係で次に移らせていただきます。

 MアンドAがいろいろ言われていますけれども、MアンドA自体が決して悪いわけではないわけでございまして、MアンドAの中に友好的なのと敵対的なのとあって、敵対的というと何か全部悪いように言われますけれども、敵対的といったって、別に、悪い敵対的もあるでしょうけれども、よい敵対的だってあるわけでございます。

 例えば、経営陣の中には、いわば自分の地位にだけ安住して、企業価値を高める努力を全く怠っている経営陣だって、私は、日本の企業の経営者の中には、少なからずとは言わないけれども、これはかなり、かなりというか、いることは、同じことですけれども、いるんじゃないかなという気がしないでもありません。配当はしない、そして株価は全然上がらない、企業の利益も上がらない、そして自分の子供だけをまた次の社長に据えるなんというような企業だってあるわけですから。

 ですから、そうだとすれば、場合によっては、敵対的買収の敵というのは、恐らく現経営陣にとってみれば相手は敵でしょうけれども、株主にとっては全然敵にはならないんじゃないかなという感じがするんです。

 そもそも、小泉総理は、二〇〇一年でしたか、末に、五年間で外資の導入を倍にする、対日直接投資残高を倍増するということを言っているわけでございまして、そうだとすれば、これからどんどんこういうことはふえてくる。そういう中で、当然のことながら敵対的買収もふえる。その中で、日本の経営陣の中でのほほんとしているところは、場合によっては敵対的買収をかけられる。これが、場合によってはいいことだってあるんじゃないかなという気がします。

 そもそも、小泉総理が二〇〇一年に言ってから、このMアンドAというのはどのくらいふえて、それからその中で敵対的買収はどのくらいふえて、それから直接投資残高はどのくらいふえたか、これについてはどこかわかりますか。

舟木政府参考人 お答え申し上げます。

 日本におきますMアンドAの推移でございますが、これは民間会社の調査でございますが、これによりますと、九〇年代に入りまして、バブルの崩壊を受けて若干減少しましたが、年間五百件程度で推移しておりました。ところが、九〇年代後半以降、急速に増加をしておりまして、二〇〇四年には二千件を大幅に超えるまでになっているところでございます。

 このようにMアンドAが急増している理由としましては、持ち株会社の解禁でありますとか、会社法制の改革、企業再編税制の整備等々、友好的なMアンドAを促進するための大きな制度改革がございまして、大型の産業再編が進展したことが一因であろうというふうに考えているところでございます。

 なお、我が国におきますMアンドAのほとんどは友好的なものでございますが、最近に至りまして若干敵対的な買収も増加する兆しが見られているかなというふうに考えております。世界的に見ますと、世界のMアンドAの大体一割から二割は敵対的なものではないかという推計もあるところでございます。

 以上であります。(平沢委員「持ち株比率」と呼ぶ)日本企業におきます外国人の持ち株比率でございますが、十年前は一割弱でございました。これが二〇〇四年には二割を超えておりまして、大幅に上昇しているところでございます。

 以上であります。

平沢委員 そういう形で、小泉総理が、外資を積極的に導入する、バイ・ジャパンというようなことを外国で宣伝しているようですけれども、そういう形の中でどんどん外資が入ってきているわけで、それ自体は、経済の活性化の点からも決して悪いことではないだろうと思うんです。

 そこで、次に移らせていただきますけれども、合併対価の柔軟化、この部分は、今度のライブドアの問題もありまして、いろいろな意見があった中で、一年間凍結したわけでございますけれども、これについて法務省にお聞きしたいと思うんです。

 もともとこれは経済界も強く要望していたはずでございますけれども、今回のこの一年凍結というか延長、これについて、経済界、それから特にアメリカ、外国はどのように考えているのか。

 そもそも、一部の意見で、小泉総理の公約違反じゃないかというような声も一部にありますし、今まで進めてきた対日投資にこれからブレーキがかかるんじゃないかというような意見もあるんですけれども、この一年凍結についての法務省の考えをちょっとお聞かせいただけますか。

寺田政府参考人 この合併対価の柔軟化は、基本的には、合併をする状態になった二つの会社が話し合いの上合併するということの上でどのような手段があるかという問題ですから、基本的には敵対的買収そのものと直接的なつながりはないというふうには理解しております。ただ、いろいろな問題がございまして、企業の方に不安感があり、かつ、現在のいわゆる敵対的買収に対する対抗策が商法中に必ずしも十分ないのではないかという御意見が強くなってきたわけでございます。

 そこで、今回の商法の改正、会社法の制定によりまして、基本的に敵対的買収に対する対抗策を組みやすくするような仕組みが数多くございますので、そういう点で、先に、あらかじめそういう対抗策を株主総会で定款変更等をすることによって用意する、そういう機会を与える、これが一年間の猶予、あるいは施行を延期した理由だということを私どもの方でも御説明申し上げました。

 したがいまして、私どもの承知している範囲では、アメリカの経済界を含めまして、冷静に受けとめていただいたというふうに理解をいたしています。ただ、アメリカの経済界の一部には、失望したというような報道があったことも承知はいたしております。

平沢委員 では、経産省にお聞きしたいんですけれども、経産省は昨年の九月に企業価値研究会を立ち上げまして、これを立ち上げたときに、これは現行法の枠内での企業のいわば防衛策の指針づくりを始めるということなので、いろいろと、特に外国の機関投資家等からかなりの批判があったというふうにお聞きしているんです。

 そういう中で、経産省は、これは三月ですか、論点の骨子を公開していますね。この論点骨子を公開し、そしてあわせて、今の民事局長のお話にありましたように、合併等の対価の柔軟化が一年延期された、こういったことについて、経産省では外国の反応をどう理解しているのか、それをちょっとお聞かせいただけますか。

舟木政府参考人 お答えします。

 私ども経済産業省で、昨年の九月から企業価値研究会を開始しております。その際に、内外の機関投資家の方とも意見交換をいたしました。その際に、確かに防衛策に対する懸念が表明されたところでございます。その懸念と申しますのは、防衛策をうまく設計すれば企業価値の向上ということにつながるんだけれども、その設計次第によっては、すぐれた買収提案が排除されて、結果的に経営者の保身につながるのではないかといったようなものでございました。

 企業価値研究会では、こうした意見を踏まえまして、そうしたことにならないように、企業価値の向上、それからグローバルスタンダード、内外無差別、選択肢の拡大という四つの大原則のもとに検討を進めてきたところでございます。

 先生おっしゃいました論点骨子の公開を先月行ったところでございますが、さらに、これを踏まえまして、法務省と共同でこの五月にも合理的な防衛策のガイドラインをつくりたいというふうに考えておりまして、ガイドライン策定の際にも、こうした内外の機関投資家等々の御意見を十分踏まえながら検討を行ってまいりたいというふうに考えているところでございます。

 それから、最後のお尋ねの合併対価の柔軟化の一年凍結、三角合併に関するもの、これに関しましては、私どもは法務省ともよく調整をさせていただきまして、先ほど民事局長からお答えがあったとおり、私どもも考えているところでございます。

平沢委員 それで、経産省にお聞きしたいんですけれども、三月に論点骨子を公開して、敵対的買収への防衛策のガイドラインをこれから恐らくつくられるんだろうと思いますけれども、日本の経営者は、このガイドラインを恐らく見守って、それから、ことしの六月か来年の六月かは別にして、株主総会での防衛策、敵対的買収からの防衛策の検討に入るんだろうと思いますけれども、このガイドラインはいつごろ出される予定なのか、そして、これはどの程度の細目について規定を設けられる予定なのか、今答えられる範囲でお答えいただけますか。

舟木政府参考人 ガイドラインでございますが、できれば五月中にでも制定をしたいと思っておりますが、今後、法務省ともよく相談をしていきたいと思っております。また、関係の方々にもいろいろ意見を聞きながらつくっていきたいと思っておりますので、努力目標としてお聞きいただければと思います。

 それで、このガイドラインはどこら辺まで細かいものをつくるのかというお尋ねでございますが、企業価値研究会で論点公開を行っているところでございますので、これを基礎にしているところでございます。したがいまして、詳細なところはむしろこの論点公開の方に譲りまして、ガイドラインとしましては非常に大枠のところをきちっと固めることができればというふうに考えているところでございます。

平沢委員 時間が来ましたから最後の質問にさせていただきますが、法務省にお聞きしたいんですけれども、今回、いわば敵対的買収からのいろいろな防衛策が盛り込まれているわけですけれども、アメリカでは今、過度な買収防衛に対する反省といいますか、反動が起こっているわけですね。ですから、今回の法案でもポイズンピルが強化されていますけれども、逆に、アメリカではポイズンピルについても解毒するような方向で今動いているわけでございます。防衛策を講じることによって、今もありましたけれども、要するに余り経営者としてふさわしくない経営者を守る、いわば現経営陣を守るための法律になってしまうおそれはないのか。

 要するに、あくまでも会社法というのは、経営者を守るためのものじゃなくて、ステークホルダー全体、株主も含めたステークホルダー全体を守るためのものであるにもかかわらず、何度も言いますけれども、今日本の経営者の中にはいろいろと問題があることも事実ですし、大体、外国には恐らく総会屋というのはいないと思うんですよ。日本に総会屋がいるというのは、総会屋はけしからぬけれども、総会屋にすきを与える経営陣にもやはり問題があることも事実なわけで、日本の経営者自体も、かつては日本は政治は三流、経済は一流と言われたけれども、本当に経済は一流かな、経済だって三流じゃないかなという感じがしないでもないんです。

 そういう中で、本当に経営者として失格な経営陣を守ることに使われないかどうか、その辺のおそれはないかどうか、それをちょっとお聞かせいただきたいと思います。

寺田政府参考人 冒頭、先生から、会社はだれのためにあるのかというお話がございました。株式会社でいえば、大臣からもお答え申し上げましたように、株主でありますけれども、しかし、株式会社は基本的に株式を公開している会社を想定しているものでございまして、そういう意味では、マーケットの動きによって会社の効率的な運営というのを資金調達の面で図って、それで全体の経済活動を盛んにしていこう、こういう仕組みでございます。

 したがいまして、一定のものから会社の支配権を守ろうということは、それ自体として一つあり得る考えでありますけれども、しかし、これが過度になりますと、マーケットからの潤滑な資金調達を妨げて、適当でない、いわば副作用のようなものが出てくるわけでございます。そこら辺のバランスが非常に難しいものですから、経済産業省の方ともこのガイドラインというものを設けているわけでございますので、私どもも十分にその点については御協力をさせていただいて、この点について過ちなきよう期したいというふうに考えております。

平沢委員 では、時間が来ましたので終わります。ありがとうございました。

吉野委員長代理 次に、松島みどり君。

松島委員 今回の商法改正は、この数年間にわたるたびたびの改正の総仕上げであり、現代に適したものにする、さらに会社法を独立させるという意味で、大変な作業の結果、全体としては評価できるものだと私は考えております。

 その中で一つだけ、現代語にする、現代化するといいながら、どうもおかしいなと私が思うことがありまして、これは素朴に大臣に伺いたいと思っております。使用人という言葉でございます。

 まず、大臣は看護師さんとか助産師さんをされて、そしてまたその分野について教える仕事をされて、会社勤めの御経験があるかどうかということと、御経験がもしあるとしたら、その中で、使用人であると自分で思っていらっしゃったことがあるかどうか。

 それから、会社勤めをされたことがないとしたら、一般に、例えば大手町でも丸の内でも品川、新宿でもいいですけれども、朝も会社員がどっと駅から会社に向かっておりますけれども、あっ、使用人が歩いている、そんなように思われるかどうか、その言葉の受けとめ方をお聞かせいただきたいと思います。

    〔吉野委員長代理退席、平沢委員長代理着席〕

南野国務大臣 先生の言葉の問題でございますけれども、使用人という言葉と、それから今この法案の中で使われている使用人とか社員、それはもう既に定着している言葉であろうかなというふうにも一つ感じられておりますし、概念が定着している。そして、それを今度は変えて使うと、逆にこの法律の中での混乱が見られるのではないかなという二つの観点はございますが、使用人といいますと、この中にはただ、普通の役員もその中に含まれている、さらにまた役員になる取締役も使用人という枠組みの中で使われている、また社長の代理人といっても、社長から見る使用人という枠の中に入っているというふうなことでもございます。

 そういう意味で、従業員となると、役職がない人を一般に呼ばれているというようなこともあろうかなというふうに思いますので、先生のお話について、使用人と従業員、こうなるんじゃないかなという感覚もおありだと思いますが、そのように思っております。

松島委員 私は、大臣が法律のプロでないことは全く構わないことである、プロでないことのよさを生かしていただきたいとかねて思っておりまして、今の答弁には甚だ不満でございます。

 使用人という言葉が世の中に定着しているとは、普通、千人に聞いて九百九十八人か九人は思わないんじゃないだろうか。私自身は、この世界に入るまで十五年弱、朝日新聞の社員、職種は記者という仕事でしたが社員をやっておりましたが、自分で余り使用人と思ったことはございませんでしたし、もともと商法の中にでっちとか手代という言葉がずっと残っていて、それも前近代的な商法だということの象徴のように言われてきたんですけれども、私の感覚としましては、でっち、手代はなくなったけれども、明治、大正期の言葉から、使用人はせいぜい戦前、戦後直後ぐらいまでじゃないかなと。とても平成の大改革にはふさわしくないのではないか。

 言葉が定着しているというのは、私たびたび申し上げているんですが、法曹界、弁護士さんの間に定着しているだけであるということを言わせていただきたい。次の平成の早急なる大改革を求めたい、この点についてだけは言わせていただきたいと思っています。

 この後は、この法律の中での中小企業についての扱い。これは、私は、先ほど平沢委員からもお話がございましたが、株式を上場している大企業、大企業でなくても株式を上場している会社と非公開の中小企業というものは全く性質が違うものだと思います。それをきちっと今回の改正ではとらえていただいていると思っております。

 この点について、私は、自分が直接聞いた話で非常に印象に残っている言葉が、二十年前に聞いたんですが、ある創業者、自分の会社をつくって、その企業を上場させた人が感想を言っていました。ロイヤルホストというレストランのチェーンを全国につくっている福岡のロイヤルという会社の江頭匡一さん、実を申しますと、おととい、この質問をするに当たってこの人の言葉を思い出していましたら、ちょうどおととい八十二歳で亡くなられて、私はきのうの通夜ときょうの葬儀にこの委員会質問のために行けなかったんですが、こういうことを言われていました。

 自分は、食べ物屋といって一段さげすまれているような感覚があった分野を外食産業に仕立てたい、そう思って、それで上場を果たした。株式上場をするために一生懸命努力をして、書類も整えて提出した。やったと思う気持ちと同時に、書類を提出してその部屋を出るときに物すごく寂しさが込み上げてきた。これまでは自分の会社だと思っていたのがそうじゃない、公の会社になっちゃう、寂しさを禁じ得なくて、よっぽど書類をもう一度取り戻してこようかと思ったぐらいな、そんなことがあったんだよ、松島さん。こういうことを、二十年前、私がまだ二十八歳の新聞記者時代に聞いたことをよく覚えているんです。つまり、上場企業と株式の非公開企業は明確に違うと。法律でこういう整備をしたというのは非常にいいなと思っております。

 幾つか伺いたいと思います。

 質問するに当たりまして、商法というのは基本法でございまして、例えば会社をつくりやすくする、そしてつくった会社がいろいろな形態を、中小企業に合った形態を選ぶことができるようにする、そして存続して日本の中小企業が生き生きできるようにするというために商法をつくった、器でございます。それに魂を入れてそれを後押しするかどうかというのは、単に法務省の仕事を離れて、いろいろな役所なり、もちろん政治の問題でもありますが、そのバックアップがないと、支援がないとやっていけないと思うので、きょうはいろいろな役所の方に来ていただきました。

 まず、この何年か、二十年ぐらいの日本は、企業栄えて家業滅ぶ。親がつくった、あるいはおじいちゃん、ひいおじいちゃんがつくって、おばあちゃんでもいいですけれども、つくってきた会社を次の代にバトンタッチしようと思うときになかなかうまくいかない。そのネックが相続の仕組みと相続税と両方あると思います。

 相続の仕組みの中で、民法の、だれでも同じように子供なら同一条件で均一に相続しなきゃいけない、まず私、この仕組みがおかしいと思っておりますが、これはちょっとおいておきまして、今回の法律改正によっていいことがございました。もちろん上場していない会社ですけれども、株式の譲渡制限で、相続のときにも、定款に定めておいたら、だれには相続させていいけれども、だれには譲渡していいけれども、だれには譲渡しちゃいけないということを書き込めるようになった。

 どういうことが考えられるかといいますと、親と一緒に会社を経営している、例えば三人子供がいたとする。簡略にするために当該の社長の妻はもう亡くなっているとして、三人子供がいて、長男が一緒に仕事をしている。これが後継ぎです。次男はサラリーマンになっちゃった。長女はどこか遠いところへ結婚してお嫁に行った。仕事としては、長男が全部引き継がないと仕事をやっていけません。しかし、平等に相続の原則があったら、三分の一ずつ会社の株式を持ったとしたら、会社に直接かかわっていない二人の方が三分の二持つわけです。この人たちが、こんな東京の中で会社をやるよりは、会社なんか解散してしまって、全部土地を売って山分けしてくれた方がいいと言ったら、会社は消えちゃいます。対抗の手段がない。それを、今回の譲渡制限の定款によりまして、残る二人の子供の分を召し上げるというか会社が買っちゃう。あげない、とにかく取り上げて買うということができる、これはいいことだと思っております。

 私が考えますのに、より有効にやろうと思ったら、親が遺言をつくっておいて、それでも遺留分があるから、そうすると、遺留分を考えていくと、次男と長女の分は三分の一ずつなので買い上げるのは減らすことができるわけですけれども、それでもどっちにしても買い上げることになる。このときにどういう価格で買い上げるか。その前に相続税が発生しているわけです。

 主税局に申し上げたい。常に申し上げていることなんですが、相続税が発生するときに、相続税の評価というものが非常に高い。私は、事業の資産の相続の場合、これは別建てにしなければおかしいと思います。

 例えばの例ですけれども、田園調布に家があって、サラリーマンの子供が相続できない、それは構わないんです。どこにでも住んでいいと思います。しかしながら、事業というのは、その土地を離れて、いかに高価な土地のところでも離れて仕事はできないわけです。今の仕組みはというと、高い評価をする。では、納められないからと言ったら、物納したいというのを認めない。物納も認めていないのに高い評価額を決める。

 こういうことを続けていたら、せっかく商法をこういうふうに変えてもとても続けていけないと思うんですけれども、財務省、いかがでしょうか。

加藤政府参考人 今御指摘の事業承継の問題、私ども、円滑な事業承継という件につきましては、税制面でも十分その問題について議論をしてまいりました。

 今先生の御指摘の評価の問題でございますが、これはどうしても財産権を一定の経済価値に評価する、その過程で個別にその評価をどういう形で行うか、これはそれぞれ財産の種類等によって個別認定をしていくわけですので、この問題については、どういう評価が本来のその財産価値かという問題、これは今いろいろな基準等で行っておるわけでございます。

 ただ、全体として、事業承継の問題と相続税の負担の問題、どこかでやはり調和を図っていく必要があるということで、二つの観点で私ども議論をしてまいりました。

 一つは、相続税全体の負担の合理化、適正化、それから制度の合理化。昨今の改正では、相続税の最高税率の引き下げ等も行っておりますし、それから、相続税と贈与税の一体化、精算課税制度を導入しまして、やはり事前の事業承継が円滑に行えるようにという、一般的な相続税の制度の改正をしております。それからもう一つは、やはり事業承継というものに着目した特例を設けるということも行っておりまして、小規模事業用宅地の課税の特例、または株式の課税価格の特例等々、幾つかの制度は導入しております。

 ただ、最終的に相続税というものの存在を前提とする限りにおきまして、やはり財産権に対して金銭価値に評価して課税を行うというこの相続税の仕組み自体、基本的な構造がございますので、そこのところで一定のいろいろな配慮の限界もあるということは御理解をいただきたいと思っております。

    〔平沢委員長代理退席、委員長着席〕

松島委員 今言われた相続時精算制度、生前贈与をやりやすくするというのは、私も尽力した一人でございますが、これをやろうと思っても、生前贈与だから親の意向は働くんだけれども、その後、また遺留分という問題、遺留分なり取り返しが起こってまいります。これについても、先ほど申し上げましたように、民法に定める、すべての子供を平等にという、事業を継ぐ子も継がない子も、あるいは例えば親の介護をした子供、あるいは親の介護をしたのが長男の嫁であっても、その嫁には全然相続がなされないとか、私はこれは非常に問題だと思っているんですが、これはまた別の機会に質問させていただきたいと思いまして、商法の方に戻ります。

 次の質問は、会計参与という規定でございます。

 従来も、税理士さんというのは、税務申告の書類の作成が税理士の事業独占でございますが、それ以外にも、商法で言う計算書類、一般の言葉で言うと決算書といいますか、そういうようなものをつくり上げる仕事を現実にはやっている。税理士は、中小企業にとっては会計面のホームドクターみたいな存在を果たしています。例えば税に対する、相続に対する対策だとか、あるいは融資をどうしようかとか、今、機械を入れていいかどうかとか、補助金をどうしよう、助成金を受けられるかどうか、いろいろなことについて、税理士というのは相談相手でございます。

 この税理士を会計参与に、中小企業が、これは任意で、そういう機関を決めるというふうに定款に書かなきゃいけないんですけれども、書くことを選択したならば、会計参与という形で認められて、それに税理士がつくことができる。それによって、税務の申告書類だけでなくて計算書類も、いわばその会社の経理部の社員、株主じゃなくて、私が言うところの社員なんですけれども、経理部の従業員というか部長みたいな形で、そういうものをつくっていくことができるようになる。

 ここで質問がございます。これは、会計参与になると同時に、代表取締役と共同責任で作成する。と同時にまた、株主総会では共同して説明する責任がある。さらに、その書類というのは、会社に置いておくのと同時に、会計参与のところに、つまり税理士の事務所に、ある会社、上場していない会社の決算書も置いておいて、取引先、例えば金融機関だ何だが好きに、好きにということはないけれども見ることができるということになる。そうすると、税理士の事務所としてもいろいろ、ちゃんとそういう体制も整えなきゃいけない。結構責任と負担も生じるものでございます。

 それで、幾つか質問がございますが、まず、法務省に対しては、これで税理士さんに対して、行政処分とか罰則とか、何か、それはいけない、こういうことをしたらこういうとがめがあるとか、そういう制度が盛り込まれているのかどうか、まず聞きたいと思います。

寺田政府参考人 会計参与は、長年、中小企業が経済活動としては日本を非常に支えてきた存在ではありますけれども、しかし、外部に対しては、必ずしも情報公開の面で十分ではないというところから、その計算関係、会計処理というものを健全化させるために、最後の切り札というような形で今回制度をつくっているわけでございまして、おっしゃるとおり、公認会計士のほかに、税理士の皆さんがこれに相当する資格を与えられるわけであります。

 しかし、反面、当然のことながら、責任を負っていただく場面がありまして、具体的には、この会計書類が虚偽のものであったというようなことになりますと、百万円以下の過料、これが新たに設けられておりますし、当然のことながら、会社、第三者に違法な行為によって損害を与えれば、損害賠償責任を負うということになるわけでございます。

松島委員 次に、税理士法を所管しておられる国税庁に伺いたいと思います。

 今、税理士法では、例えば税理士が破産した場合とか、あるいは国税、地方税法に違反して禁錮以上の刑に処せられて、その刑が終了して五年以内の者については欠格条項であるとか、あるいは懲戒処分も、いろいろなケースによりましてですけれども、三年間仕事を禁止する、業務禁止、あるいは一年未満の停止、いろいろなことがあって、懲戒処分は年間二十件ぐらい発生しているようでございます。

 そこで、国税庁に伺いたいんですけれども、新しく会計参与という制度ができて、会計参与に税理士がなった場合に、何か問題があったら、やはりまたこういう処分の対象になるのか。税務申告書類の作成以外、今までの仕事じゃない部分の会計参与としての仕事での問題があったらそういう処分になるのかどうか、伺いたいと思います。

村上政府参考人 お答えいたします。

 今、会社法上の、法務省の方から処分の話がありまして、過料というお話がありましたが、あくまで税理士法上の欠格条項というのは禁錮刑以上の刑でございます。したがいまして、そういう処分でない限り、欠格条項には該当しないかと思います。

 ただ、懲戒処分の問題でありますが、会計参与制度というのは、会計に関する専門的識見を有する税理士や公認会計士が取締役らと共同して計算書類を作成することにより、株式会社の計算書類の適正さを確保するための制度として創設されたわけでございます。

 したがいまして、そういった制度の趣旨にかんがみますと、今お話しの、税理士さんが計算書類を偽って作成するなど不正な行為を行った場合には、それが税理士の信用または品位を害するような行為と認められるときには、いわゆる信用失墜行為といいますが、そういった認められたときには、やはり懲戒処分の対象になると考えられます。

松島委員 今伺いましたように、会計参与というのは、そういう意味でも責任を伴う。そしてまた、法務局に会社の登記をする際に、会計参与を設けているかどうかということは登記の対象になりますし、その中で、会計参与はだれだれがなった、その住所、氏名も登記されるというふうに、非常に重いものでございます。今までのように、任意で経理部員がわりに、経理部長がわりに計算書類をつくっていたときとは、格段に重さも質も違ってくると思います。ということは、言いかえますと、社外取締役ぐらいの報酬をもらわなきゃ割が合わないなとか、やはり報酬面でもいろいろな要求をしないと、とてもやっていけない仕事じゃないかなと私は思っております。

 そうした場合に、この会計参与というせっかくの制度が、でも、そんなの任意でつくっても金ばかりかかるしと中小企業が思ったのでは、なかなか普及しないと思います。

 そこで、中小企業庁に伺いたいんですが、中小企業庁もこの会計参与の制度というのを歓迎しておられるように私は見ているんですけれども、これが、例えば中小企業、中小企業といってもいろいろなクラスがございますけれども、どれぐらいの規模で、百社あったらそのうち何社ぐらい取り入れるだろうとか、あるいは、全然わからないけれども、もっと採用してもらうにはこういうふうにすればいいだろうとか、何かお考えがあるかどうか、伺いたいと思います。

鈴木政府参考人 ただいま先生から御指摘いただきました会計参与制度の中小企業への影響でございますけれども、私ども、大変大きいメリットがあると考えております。

 今委員から御指摘のとおり、責任が重いこの会計参与制度が、中小企業の計算書類をつくることによりまして、その透明性の確保ができると考えております。これによりまして、例えば、会計参与制度を中小企業が採用した場合には、物的担保に過度に依存しないような融資を金融機関から受けやすくなるとか、また、新規の取引先の信用を獲得しやすくなるなど、非常に大きいメリットがあるというふうに考えております。

 委員から御指摘いただきました、何割程度の中小企業が採用するのかということにつきましては、私ども、本制度が認められましたら一生懸命広報をまたさまざまの諸団体と一緒になりまして促進をしてまいりますけれども、現段階ではちょっと何割ということをお話しすることができないことを御理解いただきたいと思います。

 現在、例えば日本税理士会、また公認会計士協会と一緒になりまして新たな会計の指針もつくっておりまして、こういう取り組みを含めまして、私ども一生懸命普及啓発に努めていきたいと思っております。

松島委員 今言われたように、新しい会計指針、今、中小企業の場合は会計の指針をいろいろなところが、公認会計士協会、そして税理士会、さらに中小企業庁、いろいろなところが模索しておりますが、早く統一してつくっていただきたいと思います。

 さらに、今お話ございました、金融機関との取引において、会計参与制度を設けていると得だ、得だというか安心できる、そういうふうに金融機関に見ていただきたい、私もそう思う次第でございます。

 そこで、金融庁に伺いたいと思います。

 金融機関は、今、土地だけの担保で貸すんじゃなくて、その企業の能力、資質、いろいろ見ていけということになっております。企業の経営状態の真のところを見よということになっておりますが、そうはいっても、会社の社長さんが気合いが入っている顔をしているからとか、そんな漠然としたことで貸すわけにはいかない。そういったときに、この会計参与の制度の有無というのは、ぜひ、貸すときの基準に一つ項目を入れてもらいたいと思い、金融庁としても、そういう例えば基準づくりの中に盛り込んでいただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。

大藤政府参考人 お答えいたします。

 金融庁といたしまして、これまでも金融機関に対しまして、先生御指摘の担保や保証に過度に依存しない融資への積極的な取り組みを要請してきているところでございます。

 特に、中小地域金融機関につきましては、一昨年三月に公表したいわゆるリレーションシップバンキングのアクションプログラム等におきまして、担保、保証に過度に依存しない融資の促進等を掲げ、これに基づく金融機関の積極的な取り組みを繰り返し要請してきたところでございまして、去る三月二十九日に公表しました平成十七年度、十八年度を対象とする新しいアクションプログラムにおきましても、このような取り組みの一層の推進を要請しているところでございます。

 一般に、中小地域金融機関が地域の中小企業に対しまして担保、保証に過度に依存しない融資や迅速な審査など、円滑な資金供給等を進めていくためには、借り手の側におきましても、適切な会計に基づいた正確で信用力のある財務諸表、計算書類を作成していただくことが重要と考えております。こうした観点から、今般の会計参与制度の導入は、中小企業の財務諸表の正確性を高め、その信頼性の向上に資するものと考えておりまして、地域金融機関が中小企業金融の円滑化を図る上で有用なものであると考えております。

 先生の御指摘は、会計参与制度を導入した中小企業への融資に関して、何かインセンティブを与えてはいかがかという趣旨であると思いますが、金融庁といたしましては、信用力のある財務諸表の作成に努めている中小企業に対してインセンティブを付与するとともに、担保、保証に過度に依存しない融資等を促進する観点から、先ほど申し上げました新しいアクションプログラムにおきましても、財務諸表の精度が相対的に高い中小企業に対して、例えば担保、保証や金利等の面で優遇を行うなどの融資プログラムの整備、適用に向けた取り組み等により、中小企業の資金調達手法の多様化に向けた取り組みを推進するよう要請しているところでございます。

松島委員 わかりました。

 次に、創業時の資本金の規制の撤廃のことについて伺いたいと思います。

 いわゆる一円起業という、だれが名づけたか、この言葉もヒットいたしましたが、それによりまして、創業時から五年間という特例制度ですけれども、平成十五年二月にスタートして、二年間で、ことしの一月までに二万件この利用がございました。こうやって会社がたくさんつくられた。

 もともと、日本では、昭和五十年代半ばまでは、会社をつくる人の方が会社をやめる人より多かった。いわゆる開業率の方が廃業率を上回っていました。それが、昭和六十年ごろから逆転して、例えば、直近でいいますと、この直近というのが数値がちょっと古いんですが、平成十三年まで、十一年、十二年、十三年の平均でいいまして、これは逆転したままで、会社をやめるのが四・五%、そして新たに会社を起こすのが三・一%。これはつまり、千社あったら四十五社がその年に、その間にやめて、現在ある千社のうち三十一社が新しくできたもの、そういうふうに考えられております。そうやってどんどん減ってきている。これをぜひ逆転するためにも、今回のことはいいと思います。

 ただ、一般に、これは、例えば学生でありながら会社を起こすとか、あるいは家で生活に困っていない主婦の方が台所でつくった料理を宅配サービスするとか、庭先でフラワーアレンジメントを売るとか、そういうときはいいと思います。しかしながら、生活のかかった三十代、四十代、五十代、幾つでも結構ですけれども、それで生活がかかって、会社をやめた、いわゆる脱サラという、自分がみずから会社をやめた場合もあるし、会社がつぶれちゃった、つぶれて新しくどこかのサラリーマンになろうかと思っても、年齢もいっているし、なかなか雇ってもらえない、それでは自分で会社を起こそうかという場合がございます。

 そこで、問題があって、伺いたいのは厚生労働省なんですけれども、失業保険というのは、会社が倒産あるいは解雇したときは、年齢とか勤務年数によりますけれども、最低で九十日、最高で三百三十日失業手当が出ることになっています。そうじゃない、自己都合の場合でも九十日から百五十日出ます。

 しかしながら、次の会社をつくる準備を始めたら、もう失業手当をもらえなくなっちゃうわけです。会社を登記したらもらえなくなる。でも、すぐには食べていけないんです。新しい会社を、せっかく資本金、ほとんど要らないで、元手なしでつくることができても、自分の生活というのはやっていけない。家族の生活まで面倒を見ることはできない。これは、失業給付、最後まで払ってあげてもいいじゃないですかと私は思っていますが、厚生労働省、いかがでしょうか。

大槻政府参考人 お答え申し上げます。

 雇用保険の基本手当についてのお尋ねでございますけれども、この手当は、労働者が失業をしまして所得の源泉を喪失し、仕事を探すといった場合に、生活の安定を図りますとともに、再就職を支援するということを目的としているところでございます。

 したがいまして、この基本手当の受給者の方が起業などを目指されるといった場合におきましても、事業が開始をされるまでの間、これは基本手当は支給され得るわけでございますけれども、一たん開業された場合には、仕事を探していらっしゃるとは言えないということだと思いますので、この場合、基本手当は支給できないということでございます。

 関連しての説明を申し上げますと、基本手当の所定給付日数を一定以上残して開業されたといった場合、こういう場合、再就職手当が支給され得るわけでございます。一昨年五月になりますけれども、受給者の起業を支援するという観点から、この再就職手当の支給範囲を大幅に拡大いたしまして措置したところでございます。こういった給付も開業をされる方の生活支援に一定の役割を果たすというふうに考えているところでございます。

 また、加えまして、雇用保険の三事業におきましては、創業される方々に対しまして、創業に係る費用の一部を助成するという支援も行っているところでございまして、こういった施策の活用について努力をしてまいりたいというふうに考えております。

松島委員 時間が来ましたけれども、一点だけ確認させてください。

 再就職手当というのは、会社を起こしても、自分が会社をつくった場合にももらえるわけですか、例えば三百三十日までの残り日数の分というのは。

大槻政府参考人 再就職手当についてでございますけれども、この手当の考え方は、所定給付日数を三分の一以上かつ四十五日以上残して就職された場合あるいは開業された場合に適用されます。

松島委員 では、開業してもまだ残りをもらえるということを伺って安心いたしました。ぜひ、開業支援の給付もあるということでございますから、雇用特別会計、いろいろな問題が生じておりますが、ぜひこういう面でも有効に施策を打っていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

塩崎委員長 次に、早川忠孝君。

早川委員 自由民主党の早川忠孝でございます。

 いよいよ会社法についての質疑に入らせていただくわけでありますけれども、法務委員会における質疑のあり方をどうするのかなということで改めていろいろと思うところがありましたので、ちょっと申し上げたいと思うのです。

 きょうは、衆議院の憲法調査会で、衆議院の五年間にわたる憲法調査の報告取りまとめが行われ、その採決がなされているはずであります。私も憲法調査会の委員でありますけれども、たまたま採決の時間と質問の時間が重なりましたので、その採決には出ることはできませんでした。

 この憲法の議論をする中で、法律をつくるのは国会である、内閣というのは法律を執行する、行政の責任を負う、こういうことになっているわけですね。憲法の議論の中で、内閣がさまざまな法律案を発議する、提案するということではなくて、むしろ立法府であります国会が、国会議員が法律案の提案をすべきではないか、こういう議論が一部の先輩議員からなされまして、つらつら考えると、なるほどそうであるというふうに思いました。

 しかしながら、翻って今度はこの会社法案、千ページ余りのものをいろいろとこの二日間検討をいたしました。これだけのものを国会議員がみずから提案するだけの力はまだ我々は持ち合わせていないなというふうに痛感をいたしました。

 もし質問をするとすれば、これは大臣ではなくて、与党である自民党の司法制度調査会で、商法等の小委員長をされた塩崎委員長に質問するのが一番ふさわしいのではないだろうかなというふうに思ったわけであります。

 しかし、そうはいいましても、ただ国会議員の議論だけではなかなか法律を制定するということもできない。さらには、実務上のさまざまな問題点を材料にしながら、各界各層の意見をしっかりと受けとめて広範な法律制定の準備作業をする、こういう作業の積み重ねの中でようやく法案というのができ上がる。そういう意味では、今回のいわゆる会社法を所管される法務省とさらには法制審議会の役割というのが極めて大きかったのではないだろうか。

 あるいは、法案を作成する過程でパブリックコメントを一般から受けていただいて、それで国民のさまざまな意見を踏まえた形で法案を策定していく。この作業の中に極めて民主的なプロセスでの法案の制定というのがある。

 我々国会議員というのは、結果的には、与党の場合はなかなか委員会で質問をするという時間はない。むしろ野党の委員の先生方から細かい条項についても質疑がなされて、その質疑の中でようやく法案の細部について国民の前に本当の問題点の所在が明らかにされる、これが今までのプロセスだったんだろうなと。

 一昨年の十一月の衆議院選挙で初めて当選をさせていただいて、法務委員会の委員としていろいろな法案の審議に参加させていただいて、現在私が感想として持っているのがそんなことであります。しかし、それで本当に国会議員が十分役割を果たしたことになるだろうかなという反省をしております。

 今回は、先ほど先輩議員から、この会社法案に関連して、ライブドアによる会社の支配権獲得についてのさまざまな問題点の指摘、一般の中小会社等の経営の現場におけるさまざまな実務上の問題、あるいは関連の行政上の問題についての質問がありました。私の方からはやはり、一時間半もちょうだいしているということは、会社法案全体について、一応国民の皆さんに本当のこの改正作業の大事なポイントについて理解していただくための、そういう質疑をしていくということの大きな役割があるのだろうなと思っております。

 そこで、法務大臣は昨年の内閣改造で法務大臣という大変重いお役目に御就任をされたわけでありますが、この改正作業というのは非常に長い歴史があると思います。しかし、そういう経過を踏まえながら、法務大臣として今回の会社法の制定の意義等についてどのようにお考えであるか、お示しをいただきたいと思います。

南野国務大臣 お答えする前に、先生の議員としての真摯な態度というものが本当にいい形であらわされていくのではないかなと思っております。法律をつくるということには、閣法があり、議員立法があり、さらにまた条約というような形の中から我々の役割というものを果たしていくということがあろうかと思いますが、今、たまたま拝命している立場におきましてお答えをするという形になろうかと思います。でも、それぞれ議員という立場もこれありということでございますので、それはそれなりの真摯な態度で臨んでいかなければならないというふうに思っております。

 今、会社法制の理念ということのお尋ねがございました。

 会社制度の利用者の視点に立った会社類型の見直しというのがこのたびあろうかと思いますが、会社経営の機動性また柔軟性の向上、さらに会社経営の健全性をどう確保していくかというような基本理念といたしまして、社会経済情勢の変化に対応していく会社に関する各種制度の見直しをこのたびやっていこうと。長い経過があります。今まで検討してこられた中で、今のこの時点というのは本当の通過点であろうかと思いますが、短い通過点でありましても精力的に取り組んでいく、前、後、これを全部統合して、いい形の法案ができることを願っているところでございます。

早川委員 これはちょっと寺田民事局長に御説明をいただきたいんですが、法務大臣から、今回の会社法制の現代化についてどのような理念に基づいて行われたものかということに関連してお話がありました。私はやはり、先ほど申し上げましたとおり、相当長い検討作業を経て、法制審議会あるいはパブリックコメント、さらにはさまざまな新しい事象の発生等を踏まえてこういった会社法の提案に至っている。これについてはやはり実務を実際上支えてこられた方でないとなかなかその細かい経過までは御紹介できないだろうなというふうに思っておりまして、衆議院の調査局法務調査室でさまざまな資料を出していただいております。「法律案提出の背景及び経緯」ですね。いま少しそういったことについて民事局長から御説明をいただければ幸いであります。

寺田政府参考人 少し長くなりますから恐縮でございます。

 そもそも、冒頭に平沢委員の方からも御紹介がありましたとおり、この法律は明治時代初期、明治三十二年にできた法律でございます。当時はドイツの会社法というのを基本的に模範にいたしまして、当時のことでございますから、ドイツから法学者を呼んで、そういった方々がおつくりになった草案をもとにできた法律でございます。

 戦前はそれで機能していたわけでございますが、御承知のように、戦後、昭和二十五年、装いを新たにいたしまして、アメリカの影響を強く受けまして、授権資本制等、どちらかといいますと資本調達の機動力というものに重点を置いた会社法の法制度の整備というのが行われました。

 組織面で言えば、株主総会というものの機能に一定の限界があるということを直視して、取締役会の機能というものを高め、他方、従来からありました監査役というものの存在をどう見ていくかということを再検討した結果が昭和二十五年の法改正だったわけであります。

 その後、日本も高度成長の時期に入りましたので、会社法制もさまざまな面で検討が必要となりまして、法制審議会の方でも一般的に商法の会社の部分について全面的な法改正の検討を行ってまいったわけであります。しかし、当時から企業をめぐるさまざまな不正事犯というのがございました関係で、特に企業のビヘービアというものをどう規律するかということをどちらかというと優先的に、昭和四十一年、昭和五十六年という改正において行ってきたわけであります。

 その後、時が落ちつきまして、会社法の全面的な改正ということを再び企図したわけでありますが、平成二年からはバブル経済の崩壊というような事態にもなりまして、会社をめぐる環境というのもまた新たに変わったわけであります。

 そこで、平成二年以後は、それまでと違いまして、現実にごらんいただくとおわかりのとおり、ほぼ毎年に近いような形でさまざまな整備が行われました。その中には、自己株式の法制でありますとか新株予約権の法制でありますとかという株式の問題、それから機関の問題、計算の問題、さまざまな問題がございました。一番最後に、組織再編というのがやはり日本においても企業活動の上で非常に重要な手法だということが意識されまして、それで株式の移転、あるいは株式交換というような制度を含めまして組織再編についての法整備を行ってきた、こういうのが一般的に歴史を振り返ったところで言えることであろうかと思います。

 ここからわかるように、三つの問題がございます。

 一つは、明治三十二年の法律でございますので、何といっても片仮名でできております。この片仮名の法律を平仮名に直して、普通の方にも何とかわかっていただけるようなことにしたいというのが一つでございます。

 二番目は、戦前のドイツの法制と戦後のアメリカの昭和二十五年の改正による要素の導入。その後、先ほど申しました大会社制といいますか、監査についての重点的な整備を中心として、企業規模に応じた監査のあり方を見直すために商法の監査特例法というのを設けたり、その後もいわゆる株式についての手当てのために特別法を設けましたり、さまざまな特別法が出てきたところがございました。これらの法制度というのを、首尾一貫して一つの法律にまとめて体系的に整備するというのが二番目の問題でございます。

 三番目は、最後に申し上げました平成二年から後に順次行われてきた法整備、これは金融のいろいろなトラブルをめぐって相当急を要する問題もございましたし、経済活動が不振だということでいろんな側面からの手当てもなされましたが、それが一段落いたした段階で、果たしてそれを、言い方は悪いかもしれませんが、後から振り返ってもう一度再検討して、問題はないのかということを検討した上で全体の体系にまとめ上げるという作業がございました。

 これらの作業の三つの側面というのを、平成十四年から、それだけの作業にしては短い時間ではございますけれども精力的に行いまして、先ほど申しましたように、中間試案というものについて経済界の意見も相当詳細にお伺いして、それで今回、先ほど大臣からもお話がございましたとおり、会社をめぐる利用者の方々の御意向というのを正面から受けとめて、その上で、先ほど申し上げましたいろんな観点をベースに整備を図った、こういうことになるわけでございます。

 私どもとしては、大臣も今通過点というふうに表現されましたけれども、これで決して会社法がすべて、今後十年間は何の改正もなく耐えられるというようなことまで今申し上げるべき時期ではもちろんないとは思いますけれども、しかし、相当大幅な見直しをしたその結果であるというふうに御理解いただけると大変ありがたいと思います。

早川委員 私が大学生のときに勉強した商法から考えると、全く中身が変わっておりまして、特に、急遽全体の姿をつかもうと思って過去の制定の経緯から改正の状況から見始めたら、残念ながら、法律の専門家と思っていた私が全く対応できない。そのぐらいに大改正が次から次へと出てきてしまって、これでは一般の方は、会社法制の中身については当事者、利害関係者以外は全くわからない。そういう意味では、やはりどこかの段階でこれを改正する必要があったんだなということを痛感いたしました。

 そういう意味では、経済取引に関する憲法の改正作業が今なされたんだ、それで、ある意味で極めて大事な改正事項がこの中に入ってきているというふうに私は思っております。

 これは平成十三年当時でしょうか、企業統治の実効性の確保、高度情報化社会への対応、資金調達手段の改善、企業活動の国際化への対応などの視点から会社法の見直しをすべきである、こういうことが言われ、そういったことからの部分改正というのが順次行われてきて、平成十五年の十月には会社法制の現代化に関する要綱試案というのが策定をされて、基本的には、会社に係る諸制度間の規律の不均衡の是正と、先ほど御紹介ありました社会情勢の変化に対応するための各種制度の見直しなど、体系的かつ抜本的な会社法制度の実質的な改正、それから条文の片仮名文語体から平仮名口語体への変更、そして用語の整理、解釈の明確化、さらには商法の第二編と有限会社法と商法特例法の各規定を一つの法典、会社法としてまとめる、こういうふうな内容で、これが結局、会社法の現代化と言われるものなんだ、こういう理解をしているわけであります。

 会社法案の内容について、いろいろな要綱が示されているわけでありますけれども、私が一番気にしていますのは、経済取引に参入する法人のあり方、これは、言ってみれば国家にとってだれを国民とするかと同じように、経済取引世界における当事者はどうあるべきかということの中で、どういう法制のもとにどういう活動をすることになっているか、これが極めて基礎的な問題ではないだろうかと思うわけです。

 特に、これまでは株式会社と有限会社という形で二つの主要な会社があり、その他、合名会社、合資会社という法人形態があったわけでありますけれども、今回は株式会社と有限会社を一体化させるという、これも大きな変化になるわけであります。

 その点について、法務大臣、会社の種類に関してどのような見直しが今回の会社法案の中では行われているか、御説明をいただきたいと思います。

南野国務大臣 四種類から四種類への変化ということにもなるわけでございますが、現在の会社法制では、会社の種類といたしまして、先生が今お話しになられましたとおり、株式会社、有限会社、合名会社、合資会社、この四つが存在しているというふうに思っております。

 会社法案では、このうち株式会社と有限会社とを統合する、それとともに、創業、起業の活性化を図るために、新しい会社類型として合同会社を設けるということでございます。これによりまして、会社法案におきましては、会社の種類として、株式会社、合名会社、合資会社、合同会社、この四つに取りまとめられるということでございます。

早川委員 これも寺田民事局長にちょっとお伺いしたいんですが、有限会社と株式会社を一つのものにするということについて、現実にどのようなニーズがあったんだろうかということで、今回の会社法案の中では、従前の有限会社はそのまま存続する、新設の会社の中では有限会社的なものは新設の株式会社の中に全部包含するんだ、こういうふうなことでありますけれども、私自身は、有限会社というのは閉鎖会社として、しかも役員変更登記をしないまま一定の資産を保持する、そのために使う会社としては非常に役に立っている面があって、株式会社の場合は二年ごとに役員変更登記をしないといけない。役員変更登記を怠っていると、もちろん過料の制裁もありますし、それから法人格そのものをいずれは失ってしまう、こういうことになってしまう。中小企業にとっては、むしろ、そういった二年ごとに役員の変更登記をしないまま、ずっと存続できる有限会社のままでいいような形態もたくさんあったんじゃないか、こういうふうに思ってまいったわけでありますけれども、実際上、法務行政の中で、有限会社と株式会社を一体化するということの必要性というのはどの程度感じられたんでしょうか。

寺田政府参考人 これは、先ほども出ましたとおり、昭和十三年に有限会社法ができてから、株式会社と有限会社が併存していたわけでございます。

 当初、株式会社というのは、全くの公開というのを前提にして、だれでも出資することができる、そういう中での資本調達が容易な有限責任の会社ということで、これに対しまして、有限会社とは、今委員も御指摘のとおり、だれでもということではなく、むしろ閉鎖的な環境での資金調達が行われるそういう会社だ。現に、出資者であります社員の数も五十人に制限されているわけであります。

 そういう意味で、理念的にはそれぞれ使い勝手のいいものが想定されていてあったわけでございますけれども、ただ、現実を見ますと、確かに有限会社を上手に利用されている方もおられないわけではありませんけれども、しかし、大多数の株式会社は、実は、本来は有限会社でおられてふさわしいような規模の会社、しかも株式会社がその後、そういう現実を踏まえた上で、次々と譲渡制限のしやすいような形態というのに法整備もされてきたわけであります。

 今回、改めてさまざまな会社の類型を見直す中で、このような現実をむしろ直視いたしまして、株式会社というものの中に二種類を設けて、譲渡制限ができる会社とそうでない公開会社という形で分けてはどうかという議論になったわけであります。

 具体的に、このようなニーズがどういうところにあるかといいますと、最近では、非常に大きな会社でも大会社の子会社で閉鎖会社だという類型がございまして、こういう類型の方にとっては、やはり株式会社の法制というのはそれなりに意味があるわけであります。また、これからベンチャー的に起業をなさって、どんどん会社を発展させていかれるという場合を考えましても、最初は小さく、いろいろな公開会社に見られないような有利な立場で機動力を発揮して、その後公開をするに従ってどんどん大きくなっていく。これは一つの株式会社の中でそういう形態がとれるのはそれなりのメリットがあるという御指摘が経済界の方からも強くあったわけでございます。

 こういうような事情を総合的に勘案いたしまして、やはり今回は、一つの類型の中に大まかに分けますと二つのタイプを設けるというのが機能的ではないか、こう考えたわけでございます。

早川委員 取引の関係で考えますと、有限会社という肩書を持っている会社よりは株式会社という肩書を持った会社の方が信用性がより高い。ですから、なるべく株式会社を選びたい、実際上、株式会社の実態がなくてもそういうふうな傾向があったようであります。

 現在は株式会社の最低資本金が一千万、有限会社は三百万ということで、これは外形的に、有限会社の方が割に規模が小さいところ、株式会社の方がある意味で一定の資産規模を持っている会社、こういうふうな区別が経済取引の現場では行われていたと思うんですね。ただ、今回の会社法案では、要するに、新しい株式会社の設立時の出資額の規制について、いわゆる最低資本金制度が撤廃をされるという、これは非常に大きな変更だと思います。

 法務大臣に、この改正の点について、ちょっと所見をお伺いしたいと思います。

南野国務大臣 もう先生既に御案内のとおり、現行の商法におきましては、株式会社の設立には最低一千万円以上が出資として必要でありますと言われておりましたけれども、今回の新しい会社法案におきましては、それより容易に、易しく株式会社の設立ができるようにするために、出資額の制限を撤廃する、よく世間で言われております一円でも会社が起こせる、そういうような観点になっているということです。

    〔委員長退席、吉野委員長代理着席〕

早川委員 そうですね。これは松島委員からも御指摘があったところであります。一円起業という制度を認めたことによって、いわゆる起業、新しい業を起こすという流れがかなり本格的に始まり一定の成果をおさめた、私もこういう評価をしております。

 基本的に私はまだ、最低資本金制度の撤廃というのは果たして本当にいいんだろうかどうだろうかという疑問は持っていることは持っているのであります。これは経済産業省にお伺いをいたしますけれども、一円起業というこの利用状況、あるいは一円起業を認めることによって何か問題が発生をしていないかどうか、お伺いをしたいと思います。

舟木政府参考人 お答えいたします。

 一円起業制度についての御質問でございます。資本金一円からの会社設立を認めます最低資本金特例制度、これは平成十五年の二月に制度を創設しておりまして、これまで二万八千件の申請がございまして、そのうち二万三千社が会社を設立するに至っているところでございます。さらに、そのうちの千六百社は起業後に増資をしまして、株式会社一千万円、有限会社三百万円という所要の資本金額を満たすに至っておりまして、本制度を卒業しておるところでございます。

 このように、本制度は、非常に多くの方々に新たな挑戦のための手段として積極的に御利用いただいているところでございまして、その結果、本制度創設以来、法人の新規法人登記件数も着実に増加をしておりますし、起業促進に大きな成果が上がっていると認識をしているところでございます。

 こうした起業促進効果に加えまして、二〇〇四年三月に実施しました実態調査から推定をいたしますと、この制度を利用した起業によりまして四万名の新規雇用が創出をされたのではないかというふうに我々考えているところでございます。このような制度の普及のためにも、積極的なPR活動もしておるところでございます。

 このような制度は、財政負担に依存することなく新規の起業を促進するということによりまして、我が国経済の活性化の一助となっているというふうに私ども考えておりまして、非常に成果を出しているというふうに考えているところでございます。引き続き、ベンチャー企業などの新事業の創出、育成に全力で取り組んでまいりたいというふうに考えているところでございます。

早川委員 もう一度経済産業省にお伺いいたしますけれども、二つあるんですが、今回、最低資本金制度が撤廃をされるということで、いわゆる一円起業としてある程度非常にインセンティブを与えたわけですね。これは経済産業省の方でもそれなりの政策手段を動員されて、こういう大きな成果を上げられた。

 ところが、会社法そのものが変わってしまって、言ってみれば一円起業がそのまま認められるのと同じような形になってしまって、逆に言うと、これまでのように一円起業ということで起業促進の施策を推進するための努力が今度はなくなってしまうのかどうか。あるいは、同じように経済界の活性化のため、今回の会社法の改正というのを踏まえて、では、その後起業促進のためにどうされるんだろうか。

 私自身は、この一円起業は大変な成果をおさめた、これは相当のPR活動があってこそ、やはり成果をおさめたことなんだろうと。単に制度を持ったからといって起業は促進されるものでは決してないだろうと思っているんですけれども、その辺はいかがでしょうか。

舟木政府参考人 まず、制度のPRの点でございますが、私ども、本制度創設以来、非常に全力を挙げましてPR活動に取り組んでまいりました。こういった制度の手続等を記載しましたパンフレットの配布に加えまして、起業を意識する方は非常によくインターネットを使っておられますので、こういったインターネット等によるサービスもやっております。

 特に、ドリームゲートプロジェクトというプロジェクトをやっておりまして、これはボブ・サップをイメージキャラクターにお願いをして大々的にやっているものでございますが、こういったところでも、大体ドリームゲートのユーザー登録は三十万人おられますが、こういったドリームゲートの登録の方々にも、メールマガジンでありますとかホームページへの掲載でPRをやっておりますし、また、やはり成功体験が新しく始めようとする方にとっては非常に貴重なものでございますので、起業された方の体験をまとめた見やすい事例集を編集して、それを各地域の経済産業局等の相談申請窓口において配布をしたりしてきたところでございます。その結果、先生おっしゃいましたように、非常に多くの方に利用していただいて成果を上げてきているというふうに考えているところでございます。

 これが今回の会社法の改正により一般化するという点でございますが、我々は、この一般化は非常に歓迎をしておるところでございます。実はこの特例制度、特例でございますので、起業後五年間で、株式会社であれば一千万、有限会社であれば三百万円、資本充実をしまして本則にのっとったものにするか、ないしは合名会社、合資会社に変更するか、ないしは、その両方嫌であればもう廃止をするしかないというような制度であったわけでございます。もちろん、五年の間に成果を出されて、資本を充実されて株式会社になったり有限会社になったりされるというのは、これも非常に結構なことでございますが、ただし、いろいろな形態があるわけでございます。

 したがって、この特例という扱いから一般化されましたことによりまして、ますます多くの方に利用していただけるのではないかというふうに考えておるところでございますし、また、起業促進のためのいろいろな努力は私どももいろいろな方面でまたやっておりますので、引き続き全力で取り組んでまいりたいというふうに考えております。

早川委員 ありがとうございます。

 最低資本金制度が撤廃をされて、私が懸念をしておりますことは、取引関係に立つ債権者にとって、いわゆる相手会社の責任財産が実際はわからないと、取引の安定性が阻害されることになるのではないだろうかと。その辺、最近の資本金制度は随分変わっていますので、なかなか実際に取引関係に入る会社の責任財産がどうなっているかというのがわからなくなっていると思うんですけれども、今回の会社法案では、会社の債権者の保護についてはどんな配慮をされているんでしょうか。

寺田政府参考人 言うまでもなく、最低資本金制度は、本来は、株式会社あるいは有限会社が有限責任の出資者というものを基本にできているということの象徴であるわけであります。

 しかし、現実になぜ最低資本金制度を設けたかといいますと、一つは今のような理念で、正しい財産が会社にあるということを表示したいということにはあったわけでありますが、もう一つは、先ほども歴史を振り返って申し上げたとおり、有限会社と株式会社というものを使いでの上で区別する、その一つの手段でもあったわけであります。しかし、その二つ目の区別というのは、先ほど申しましたように、結局本当は余り効果がなかったのかもしれません。現に、株式会社の多数は資本金が実際は一千万円のところに張りついているわけであります。

 また、理念の面から申し上げましても、資本そのものは、別に会社にその財産が留保されているということが現実にあるということを示すものではございませんので、債権者にとっては、資本が何億円あろうが、その何億円が会社の外に実際に流出しているということであれば何の意味もないわけであります。言いかえれば、会社の債権者にとって大事なことは、実際に会社にある程度の資産があって、それがそのとおり正しく表示されているということであります。

 そこで、会社法案におきましては、資本の持つ機能のうち、設立時における出資規制としての意味というのをもはや維持しがたいということでやめまして、これは配当の際の配当可能利益を示すものとして資本も間接的な意味は持ちますが、そちらの方だけで資本の意味を若干残そうということに割り切ったわけであります。

 お尋ねの債権者の保護というのは、むしろ先ほど申しましたように、会社の財産状況が適切にあるということを示さなきゃいけませんので、先ほども松島委員の方から出ました会計参与制度の創設を初めといたしまして、会計監査人の設置範囲の拡大でありますとか、あるいは計算書類の適正の確保のためのさまざまな手段、あるいは会計帳簿の作成の適時性、正確性というものを明文化した。さらには、合名・合資会社を含めまして、すべての会社に貸借対照表、この計算書類の公告を義務づける、こういったところで確保したい、この方がむしろ実質的である、こういう判断で今度の会社法をつくっているわけでございます。

早川委員 実際、資本金の多寡でもって相手の会社の信用力を推しはかるということがいかに過ちを犯しやすいかというのは、我々が日常的に見聞をしているところであります。大企業と言われた会社が実態は粉飾決算で大変な債務超過であった、あるいは上場企業が上場廃止になるような、そういう実態であったとかということが出ております。

 そういう意味で、取引関係にある企業について一番大事なのは、コンプライアンスと言われる、いわゆる法令遵守という、そういった観点から必要な制度の整備を行うこと、今回の会社法の提案というのは多分それに資する提案である、こういうふうに私は思っているところであります。

 株式会社の関係ですが、いわゆる機関の設計の関係について非常にわかりづらくなってしまったかな、これは一度きちっと説明をいただいた方がいいかなと思いますので、株式会社の運営形態について今回の会社法案ではどのような見直しを行ったのかについて、寺田民事局長にお伺いをいたします。

寺田政府参考人 株式会社の運営形態は、株式会社が有限責任であるということから、債権者との関係を重視するのももちろんではありますけれども、しかし同時に、出資者が非常に多くなりますと、それと実際の株式会社の運営の関係をどうするか、よく言われるコーポレートガバナンスのコアに当たる部分でありますけれども、そこの規制というのが非常にポイントになるわけであります。

 それで、現在は、株式会社においては、会社の規模を基準といたしまして、法律上一律に一定の運営形態というのをいわば強制しているわけでございます。そこで、各会社は、例えば株式会社であれば必ず取締役会がなければならないというような、非常に窮屈な運営がされております。

 しかしながら、いろいろな情勢の変化がありまして、非常に大きな会社であるけれども譲渡制限が行われるべき会社であるとか、あるいは公開会社であるけれどもそれほど大きくない、あるいはベンチャー企業のように小さいけれども将来は大きくなり得る、いろいろな企業形態があるのに、これは法律の方でこういうやり方にしなさいということを基本にするのでなくて、むしろ利用者の方ができるだけ多くの選択肢の中から御自分の会社に見合った経営形態を、運営形態をお選びになるのが適当であるというのが今回の基本方針でございます。

 したがいまして、運営形態を選ぶ選択肢と申しますか、それは大幅に拡大をされております。衆議院の調査室の方でおつくりになった資料で申し上げますと、二十三ページに一覧表がありまして、非常に多くの経営形態のタイプがあるということがおわかりになると思いますが、基本は、株式会社のうち公開というものと大会社であるかどうかというものを見据えまして、公開会社については常に取締役会というものを置くということを基本にいたしております。

 公開会社といいますのは、いろいろな株主が出たり入ったりするわけであります。したがいまして、現実に株主による会社のコントロールというのにはおのずから制限があるわけでありまして、そこで取締役会がかなり実際の重要な決定をするということで責任を持ったものとして存在し、そういうものに相当大幅な決定権限をゆだねるというのがこの基本的な発想でございます。

 他方、大と中小との関係でいえば、大会社については必ず会計監査人というものを要求いたしております。これはやはり、会社の規模が大きくなりますと、債権者を初めといたしまして関係者の方が非常に多くなりますし、資産も大きいわけでありますから、やはりそれなりの専門家が第三者的立場でコントロール、チェックをしていただくという必要があるだろうということでございます。

 これらを軸にいたしまして、それぞれ考えられるわけでありますが、一番閉鎖的と申しますか小さい想定の譲渡制限がある中小会社にとりましては十一のタイプ、これは会計監査権限だけを有する監査役とそうでない業務監査権限を有する監査役を別のものと計算した場合の数でございますが、十一タイプ、公開の大会社にとっては二タイプでございますが、その間にさまざまなタイプがそれぞれの会社にとって選択できる、こういう仕組みになっております。

早川委員 私の方にも「株式会社の機関設計の柔軟化について」というペーパーがあるんですが、やはり口頭で御説明をいただいても一般の方にはなかなかわからないだろうな、私もよくわからないなというところであります。

 そこで、公開と公開でない会社、非常に簡単なことでありますけれども、まずその区分をちょっと御説明いただけますでしょうか。

寺田政府参考人 まず、公開と公開でない会社の区別でございますけれども、何をもって公開かといいますと、株式の譲渡制限をつけられる会社が公開でない会社でありまして、そうでなく、どなたでも株式がお買いになれる会社が公開会社、こういうことになるわけであります。これはもちろん、上場しているかどうかということとは相対的に別の概念でございます。

 それで、譲渡制限が行われる場合に、どういう形で株式の譲渡が行われるかといいますと、従前ですと取締役会の承認を得るということでございますが、これも今回は大幅に定款自治を認めまして、株主総会での承認もあり、取締役会での承認もあるという形になっております。

 公開会社につきましては、先ほど申し上げましたとおり、基本的には取締役会の設置を義務づけておりまして、この取締役会を義務づけるほかは、監査役をつける、あるいは監査役会をつける、あるいは委員会設置会社になる、これは大小の規模に応じて規制が異なる、こういう関係になっております。

早川委員 そこで、若干、世間でいろいろ問題が出てくる、いわゆる上場会社との関係でお聞きします。

 上場会社というのは当然、公開され、いわゆる大会社に入り、取締役会のほかに監査役会と会計監査人という形、あるいは、委員会設置会社の場合は取締役会と三つの委員会と会計監査人、大体こういうふうになるわけですね。

 ちょっとその辺について、上場の関係で、一般的に世間に登場する会社についてどういうふうな形で株式会社の機関が設計されているのか、御説明をいただきたいと思います。

寺田政府参考人 おっしゃられたとおり、大小の区分でいえば大会社であって、かつ公開の会社におきましては、今委員の御指摘のとおり、監査役会の設置をするかあるいは委員会の設置をするかの違いはありますが、取締役会と会計監査人をつけるということになっております。

 しかし、上場されている会社というのは、必ずしもここで言う大会社とは限らないわけでありまして、公開はしているけれども、しかし中小会社が上場しているというケースも、もちろん全体の数からいうと少ないわけではございますけれども、あります。そういうところにとりましては、取締役会の設置は義務づけられますが、監査役、監査役会あるいは会計監査人の設置というものにそれぞれ違いがある上場会社ができる、こういうことになります。

早川委員 会社はだれのものかという議論があります。これまでは、基本的には株主というふうな理解であったと思います。しかし、利害関係者、ステークホルダーという形ですね、当然、取引の関係者、従業員、あるいは一般の債権者もあるかもしれません。そういう意味では、法に基づいて一定の有効な法律活動をする存在としての法人に関係する全体の利益をしっかり守らなければならない。その一つとして、私は、いわゆる株式を上場している場合は、一般の投資者というのもやはり重要な存在になる。投資をしようとする方々にとって、その投資先の会社の経理が明確に、正確になされていなければならない。

 そういう観点からいって、取締役会と監査役会、プラス会計監査人、少なくとも会計監査人というのがいることによって、その上場している会社の会計の正確性というのは対外的に表示される。それを信頼して株式を購入し得るということになるのではないかなと思いますけれども、基本的にはそういう発想でよろしいでしょうか。

寺田政府参考人 おっしゃるとおり、全体の傾向からいえばそういうことが言えるかもしれません。ただ、厳密に申し上げますと、公開と上場とは違うということからおわかりのとおり、株式会社を考える場合に、債権者あるいは株主のほかに、潜在的な株主といいますか、投資家一般というのが重要でございますけれども、これはいわば市場というものを相手にするわけでございまして、公的な規制を初めとして、市場自体をどうコントロールし、あるいは律していくかということについての法制度は会社法制とは別途にあるわけでございます。そこにゆだねられるべき問題もあるわけでございまして、会社法制で、今の、上場されただれにでも買えるような問題とは別に、仮に公開をされているとはいっても、つまり一応株主はだれでもなり得るとはいっても、しかし現実には制約があるタイプのものについて果たして会計監査人まで要求するかどうかというのは、これはその会社の判断というのもあり得るだろうというふうにも考えるわけであります。

 つまり、会社にとって非常に有能な監査役、あるいは場合によっては外部の監査役の方もおいでになるかもしれません、そういった形で、それぞれの会社の工夫によってやるべき余地がやはりマーケットを必ずしも志向していない会社にとってはあるわけでございますので、その点で、会計監査人というのが有用であろうという全体の傾向については私も否定するものではございませんけれども、会社法制の中で必ずしもその設置を義務づけるというところまではいかないのじゃないかというふうに考えたわけでございます。

早川委員 おっしゃるとおり、中小会社で公開をしているとか、要するに、株式市場で取引対象となる株式と株式市場を経由しない株式というのは当然あるわけですね。

 本日は、ライブドアの関係がありました。基本的には、公開会社であれば株式は相対で取引して何ら法律上の問題は発生しない。株式市場に上場しているということの中で、その市場の公正さを担保するために、一定の証券取引等監視委員会による監視とか、あるいはそれぞれの証券取引所による内部規制の対象になるということで、会社法あるいは商法の考え方からすれば、ライブドアがニッポン放送の株を取得するという行為については、これは法律上の問題は法務省の立場からは別に出てこないということでよろしいでしょうか。

寺田政府参考人 先ほど申しましたように、非常に関係があることは否定できないわけでございますが、証券市場そのもののあり方について、会社法が直接これにかかわるということは別問題ではないかということで、避けているわけでございます。

早川委員 どちらかというと世間ではそういった証券市場に上場している会社のことがうわさになりますけれども、一般の取引の関係でいうと、むしろ、株式譲渡制限をしている中小会社の方がさまざまな取引の中に参加をしてくるということだと思いますね。ですから、物品の販売等をする場合も、その相手先がどんな会社であるかということを見るためには、相手の会社がどんな内容の会社なのか、どんな事業をやっているか、どの程度の資産を持っているか、こういったことがやはりわからないといけない。どういう形でこれをわかるようにするかなということであります。

 十幾つの類型があると言われている。その取引先の相手先の会社がどのような機関設計をしているか、これを知るための方法としてはどんなことが考えられるんでしょうか。

寺田政府参考人 先ほど申しました会社が選択できる機関、つまり、会計監査人でありますとか、会計参与についてもそうでございますが、あるいは監査役、監査役会、これらについて設置されているかどうかは登記簿上の表示をすることにいたしております。

早川委員 いわゆるIT化がどんどん進行している状況の中で、取引相手の会社がどういう会社であるかということをやはり瞬時にわかるようなシステムを用意しておかなければならないのではないかなというふうに思います。不動産についてはこれを、インターネット等で簡便に情報を収集するということで、私どもは利用したことがあるわけであります。

 いわゆる商業登記の関係でありますけれども、こういった会社の関係についてもインターネット等で簡便に相手の会社の登記事項等を見れるような、そういうシステムがあるというふうに聞いておりますけれども、その具体的内容についてお教えをいただきたいと思います。

寺田政府参考人 昭和六十年からのいろいろな企画によりまして、登記所が登記簿をコンピューター化するということにいたしておりました。不動産のみならず、会社についてもそれが進捗しておりまして、この会社法の施行までにはほぼ一〇〇%コンピューター化され、平成十二年からは、そのコンピューター化されたデータをもとにいたしまして、電気通信回線による登記情報の提供に関する法律に基づいて登記情報のオンライン提供ということをいたしております。

 したがいまして、これについてごらんになりたい方、利用者の方は、登記情報提供サービスというものを、契約ベースでございますけれども、していただくことによりまして、御自宅のあるいは事務所のパソコンから直接先ほど申しました登記事項というのをごらんいただけるということになると思います。

    〔吉野委員長代理退席、委員長着席〕

早川委員 いま少し、インターネットによる登記情報提供サービスについてお伺いをしたいのであります。

 私の方にリーフレットがあります。「不動産登記、商業・法人登記情報を、インターネットで確認できます。」「官公署等への電子申請等に必要な「照会番号」の発行もできます。」ということであります。

 問題は、どの程度の費用がかかるんだろうかなということでありますけれども、それについてお答えをいただきたいと思います。

寺田政府参考人 現在は、手数料は、登記情報提供サービスについて、昨年の四月一日から九百五十円ということになっております。

早川委員 現在のインターネットによる登記情報提供サービスでありますけれども、今回の会社法の施行に伴って登記事項がかなり大幅に変わってくるのではないだろうかと思いますけれども、それに対応しての作業というのは今どの程度進捗をしているものでしょうか。

寺田政府参考人 先ほども冒頭申し上げましたとおり、最近非常に商法の改正が多いものでございますから、コンピューターのプログラムを書きかえまして、それに対応するのも大変頻繁に行われておりますが、この会社法が制定されて、いわば商法が全面改正になるわけでございますので、当然のことながら、コンピューターのソフトもさらに大幅に書きかえてそれに対応するという準備を現在いたしております。

 この法律が公布されましてから一年半後までの政令で定める日に施行されるということになっておりまして、私どもはさまざまな関係から、一年半ぎりぎりではなくてもう少し前倒しで施行したいと考えておりますが、それにいたしましても、この間を利用いたしまして登記所の準備は万全を期したい、このように考えております。

早川委員 いわゆる財務諸表については、取引先の債権者が容易に相手方の情報を入手し得る、そういう方法は先ほどの決算の公告ということの関係で何か連動しているんでしょうか。

寺田政府参考人 先ほど、私、全会社と申しましたけれども、失礼いたしました、株式会社を言い間違えましたので、株式会社について公告を義務づけておりますので、これについては全会社のデータを公告という形でごらんいただけることになります。もちろん、それ以外の会社も任意で公告はされます。

 これらの公告については、電子公告について先ごろ法改正ができまして、それぞれの会社のいわばホームページ上、ウエブサイト上で公告が行われるということになりまして、その会社のウエブサイト、ホームページと登記所の方が数字の上でリンクしておりますので、登記所の登記からたどっていってそこのホームページが見られるような、そういう仕組みになっております。これによりまして計算書類の公告も電子で見られる実質が担保されているというふうに考えております。

早川委員 いま一度ちょっと確認をしたいのでありますけれども、それは、株式会社の決算の公告ということを電子的手続ですべて行うということでしょうか。そして、すべての会社がホームページにそれを公告するというように連動しているんでしょうか。それとも、たまたまホームページに公告をしているものに対してアクセスするようなシステムを今つくろうとしているということなんでしょうか。

寺田政府参考人 これは電子公告の法律に基づくものでありまして、義務ではございません。電子公告をしたい会社がするということでございます。しかしながら、そうでない会社は新聞によりまして公告しなきゃなりませんで、このコストが莫大なものになるということから電子公告の道が開かれたわけでございますので、そういうコストについて意識がある会社については、急速に電子公告の道へ進むだろうというふうに見込んでおります。しかし、全部ではございません。

早川委員 極めて高度情報社会にふさわしいインフラの整備が今進められようとしているんだなということを痛感いたしました。

 ただ、これはあくまでも決算書類の公告ということでありましょうから、今度は、いわゆる会計帳簿の作成の関係についてお伺いいたします。

 取引先債権者等の保護という観点からでありますけれども、やはり会計帳簿の記載というのは非常に正確になされなければならない。今回の会社法の改正の中ではどういう手当てがされているか、改めて御説明をいただきたいと思います。

寺田政府参考人 会計帳簿というのは会社にとって命でございますので、その正確性というのは、かねてから会社の方々は意識してやっていただいておるとは思うわけでございますけれども、しかし、それが法律上必ずしも担保されていないのではないかという御意見もあったわけでございます。

 そこで、今回の会社法におきましては、四百三十二条において、会計帳簿を適時に、正確なものとして作成しなければならないという規定を置いているわけでございます。現在の実務では、残念ながら、一年に一回、税務申告時にまとめて記帳するという運用がなされているところもあって、そうしますと、最近のようなスピーディーな時代に、場合によっては一年前のものを見せられるということになるわけでございます。これでは必ずしも適当でないということから、適時性について明文で記載をし、あわせて正確性についても、国際的にも、正確性を要求している、そういう規定を置いている例がございますので、我が国もこれに倣って、あえて条文上も正確性を明示しておこうということで、このような規定ぶりになっているわけでございます。

早川委員 会社法の四百三十二条でありますけれども、一項で、「株式会社は、法務省令で定めるところにより、適時に、正確な会計帳簿を作成しなければならない。」ということになっております。二項では、「株式会社は、会計帳簿の閉鎖の時から十年間、その会計帳簿及びその事業に関する重要な資料を保存しなければならない。」ということで、これは考えようによっては大変な義務規定になるだろう。

 実際上、一般の中小の企業等の経営の実態を考えますと、なかなかそこまでは対応できていないのが実情である。今度の株式会社に対しての会社法の規制というのは、相当高度の、社会に対してのやはり正確な記帳をするということについての意識づけを求めているんだなと思います。これを実際上、実効あらしめるためにはさまざまな担保が必要ではないのかな、教育も必要だと思います。

 まず、罰則があるのかないのかということと、こういう正確な記帳、適時の記帳をしなかった場合にいかなるペナルティーがあるのかということ、それから、この規定をそれぞれの会社に普及させるためにはどういう配慮をしていくのかということについてお伺いをしたいと思います。

寺田政府参考人 この規定に対する違反については、百万円を上限とする過料の制裁を用意いたしております。

 先ほどの実態を前提にこういう規定を設けるわけでありますから、これは相当に行政といたしましても、いろいろな手だてをもって関係者の方に御努力をいただかなきゃなりません。中小企業の関係の方が中心であろうと思われますけれども、私どもも、関係省庁等とも十分に御協議をし、あるいは、いろいろな広報その他、この規定の趣旨を御理解いただくような機会を、仮に法律が成立いたしましたら、持つということによりまして徹底を図りたい、このように考えております。

早川委員 これは相当、経済産業省、中小企業庁、あるいは商工会、商工会議所等、実際上の企業経営者の相談等に当たっている機関を活用しないと、末端までなかなか、こういった会計帳簿の記載についての義務違反について過料の制裁がある、それほど厳しい法制なんだということの理解が広がらない。そのためには相当程度の周知期間というのを設けないと、この規定はなかなか大変な規定になるというふうに思いますけれども、この記帳関係の義務規定の施行はいつを予定されていますか。

寺田政府参考人 先ほども申しました一般的な施行期日、つまり、公布から一年半の間に政令で定める日ということでございます。

早川委員 これは要望でありますけれども、その前にちょっと、既存の株式会社あるいは既存の有限会社等に対しての、この記帳義務についてはどのようになっていましょうか。

寺田政府参考人 これは、形の上では新しい規定ではございます。しかし、私どもといたしましては、先ほど申し上げましたとおり、本来は正確に、適時にやっていただかなきゃならないということは帳簿の性格上当然のことだと思っておりまして、あえてその正確性と適時性を求めるということを既存のものに適用しないという考えではございません。当然、そのような考えでやっていただきたいと思いますし、また、二項は現在もある規定でございますので、これについてはそのような問題はないだろうというふうに承知いたしております。

早川委員 新規設立の株式会社だけでなくて既存の株式会社にも同じ法の適用があるんだという大前提であるとすれば、先ほど来御指摘申し上げているとおり、実際の現場の実務との乖離が一番多く見られるのがこの部分ではないだろうかなと思います。そういう意味では、相当しっかりした教育、周知、あるいは、さまざまな機関を通じて、やはり行き届いた配慮が必要であろうかと思いますので、そのための特別の施策を講じていただきたいというふうに思っております。

 それから、会計参与制度についてはもう既に触れられておりますので、また後日、他の委員からも質問があると思いますので、その際にまた御説明をいただきたいと思います。

 代表訴訟の関係について、若干お伺いをしておきます。

 私は、会社の経営者の姿勢を正していく、会社の経営のいわゆる法令遵守、コンプライアンスを確立するという意味では、代表訴訟制度というのは非常に有効に機能したのではないかというふうに思ってまいりました。特に、代表訴訟を使い勝手がよい形にしてから非常にこれがふえた、有効に機能したというふうに思っております。もちろん、これが一つのきっかけとなってさまざまないわゆる濫訴に近い形での訴訟が起こされたのではないかなということで、経済界等からさまざまな、これをもう少し抑制的な形に変えてもらいたい、こういう要望があったということは十分理解しておりますけれども、今回の会社法の中で株主代表訴訟制度についてはどのような見直しを行うことになったんでしょうか。

寺田政府参考人 株主代表訴訟はコーポレートガバナンスの一環としても非常に重要な制度ですので、平成二年以後も幾つかの整備がなされてきたわけでありますけれども、今回、さらにそれにつけ加えまして、一方では株主代表訴訟を提起することができない場合というものを明確化いたしております。

 これは、本来は株主が会社のために、取締役の不正行為によって会社がこうむった損害を回復するというのがその趣旨でございますけれども、訴訟を提起することによって会社から何らかの利益が得られるんではないかというようなことも考えて起こされる、そういったことはこれまでも訴権の濫用ということで、裁判所が実務上の運用で解決していただいている部分もないわけじゃありませんけれども、この際、それを条文上もはっきりさせよう、こういう趣旨でございます。

 他方、最近の組織再編の非常に盛んになったことによって、株主代表訴訟を起こしていてもいつの間にか株主でなくなってしまうという事態が何件か生じたわけであります。代表的な裁判でも既に出ております。これは、株式交換や合併等によりまして原告適格がなくなってしまうということによって却下されるんではないかという問題です。これについて、原告として株主代表訴訟を起こした株主が株式交換等によって株主でなくなった場合であっても、その会社の完全親会社の株主となる場合など一定の場合、それが合理的だと思われる場合には原告適格を失わないようにする、これが八百五十一条でございます。

 三つ目は、株主から役員に対する提訴請求を受けたにもかかわらず、会社が何ら訴えを提起しないという場合において、株主側には必ずしも十分な会社側の事情というのはわからないわけであります。したがいまして、むしろ、会社の側から積極的に、なぜ訴えを提起しないのかということを明らかにしなきゃならない、こういう規定を八百四十七条四項で新設する。この三つが今回の株主代表訴訟をめぐる改正のポイントでございます。

早川委員 今回の会社法の制定の中で、特別清算についての見直しがされているということのようであります。これは、倒産法制の中でさまざまな制度改正がなされてまいって、本当に倒産法制の整備状況というのは画期的なものだと私は高く評価をしているわけであります。この特別清算の件と、もう一つは、会社の整理という制度が今回の会社法の中で廃止することになったということになっております。この理由について、ちょっと御説明をいただきたいと思います。

寺田政府参考人 おっしゃるとおり、倒産法制は、この間、民事再生法、破産法を整備するということによりまして、大幅に刷新されたわけでございます。残されたのがこの会社法の中の規定であります特別清算でございます。

 これは、債権者の多数決によりまして協定を定めて、その協定に基づいて弁済を行うというのがその本質でございますが、協定の可決要件が非常に厳しいので、なかなか利用しづらいという声が非常に強かったわけであります。現在は、議決権者の過半数の同意と議決権の総額の四分の三以上に当たる議決権を有する者の同意というのが要件になっておりますけれども、この四分の三というのが非常に重いわけであります。

 他方、この間の倒産法制の見直しにおいては、多数決の要件というのがかなりあちらこちらで緩和されてきております。そういったことのバランス上、もう少しここでも要件を下げればこの制度も利用されるんではないかという考えがございまして、今度の会社法では、先ほど議決権の総額の四分の三以上と決まっておりましたところを議決権の総額の三分の二以上に直してございます。これが一番大きな修正でございますが、そのほか、親子会社の管轄についての特例の創設あるいは特別清算開始の効力を受ける債権の範囲についての限定等も行っております。

 もう一つ、会社の整理についてのお尋ねがございました。

 この会社の整理は、株式会社の再建のための制度でございますけれども、ほとんど利用がございません。現実には実は民事再生法が非常に利用しやすくなりましたために、やはりほとんどの会社の再建というのは民事再生法が利用されるというのが実情でございます。

 私ども、この整理というのをさらに整備して使いやすくするということもあり得ることではあるとは思ったわけでございますけれども、しかし実際的に言うと民事再生法で事足りるのではないかというような判断で、今回は会社の整理という制度を廃止するということにいたしたわけでございます。

早川委員 いわゆる倒産処理法制について、本当に実務の状況を踏まえながら適宜に改正をされて、ようやく特別清算についてもその協定の可決要件の緩和と、それから今まで余り利用されていない会社の整理という制度を廃止する、これは非常に適切な改正であると私は思っております。

 最後に、LLCやLLP、合同会社というのが今回の会社法の中で採用されることになっております。問題は、税務上の取り扱いがどうなるのかなということについて、これは財務省の方にお伺いをしたいと思います。

佐々木政府参考人 合同会社に対する課税の件でございますが、今回の会社法案に対応する税制の整備につきましては、その施行に合わせまして今後の税制改正において対応する予定でございますので、現時点で財務省として合同会社の制度についての具体的な課税の考え方を申し上げるというのは非常に困難であるということを御理解賜りたいと思います。

 ただ、あえて一般論を申し上げますと、事業体の収益及び費用を帰属させる実質が備わっているということがその事業体に係る納税義務者の要件であるというふうに考えておりまして、合同会社の課税関係につきましては、こうした考え方や他の会社形態とのバランスなどを十分に踏まえ、その法的な位置づけに沿った適正な課税関係が構築される必要があるというふうに考えております。

早川委員 いろいろと今回の会社法の中身について御説明を賜りました。

 私は、会社というものについては、余り何度も細かい改正をしてわかりにくくしてしまうことは避けなければならない。取引関係の安定のために基本部分はしっかりと維持しながら、しかし個別の事象に対応するための必要な法制は、適宜その必要性に応じた限りの法制を導入する。例えば、企業買収の関係でさまざまな法律問題が発生した場合、今までの基本法制の中で対応し切れない場合には、そういった部分についてだけ特別に配慮した、その時点でのさまざまな意見を踏まえた法制を整備することが望ましいのではないかなと思います。

 あわせて、これは諸外国での法制もしっかりと受けとめながら対処をしていただきたいと思います。私どもが対処すべきことでありますけれども、要請をしておきたいと思います。

 以上であります。ありがとうございました。

塩崎委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

塩崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。谷口隆義君。

谷口委員 公明党の谷口隆義でございます。

 企業社会の基本法と言われております会社法に関しまして、本日、質問をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

 商法というのはビジネスの世界では非常に重要であるわけで、そういうこともございまして、公明党の中に企業法制プロジェクトチームというものをつくりまして、私、そこの座長をやっておったんですけれども、そこで法制審議会の委員の方々、また法務省の方々に五点にわたって提言をさせていただきまして、そのことも念頭に入れて、本日、質問をさせていただきたいというように思いますので、よろしくお願いをいたします。

 今申し上げたように、商法の改正の変遷と申しますか、これはもう長い歴史があるわけで、もともとの旧商法が制定をされまして百年以上たつわけで、今回のこの改正というのは大変大きな改正でございます。

 会社法制の変遷の状況を見てまいりますと、我が国商法は、ドイツ人のレースラーの商法草案を基に、明治二十三年四月二十六日、旧商法が制定をされたものである。我が国経済の進展とともに幾たびかの改正が加えられ、また、第二次世界大戦の敗戦により、米国の占領下の中で我が国社会経済の米国化が行われ、当初ドイツ法系であった会社法も米国制度を大量に受け入れた。その後も幾たびかの改正が行われ、現在に至っているというような状況のようでございます。

 そこで、まず初めに、法務大臣にお伺いをいたしたいわけでありますけれども、この会社法制、ドイツ法を基にした法律といえば債権者保護の立場に立った法律、一方、アメリカ法を基にした法律といえば投資家保護の法律、こういうようになるわけでありますけれども、今回のこの会社法案は一体どのような観点に立った法律なのか、御見解をお述べいただきたいと思います。

南野国務大臣 公明党さんにおかれましても、今御検討が進んでおり、御提言がなされたというふうにお聞きいたしております。

 先生の、ドイツ法、アメリカ法、それがどのような形になっているのかというお尋ねでございます。

 会社法制の現代化を内容といたします会社法案の基本理念は、会社経営の機動性、柔軟性を向上させますとともに、会社経営の健全性をも確保するということによりまして、より効率的で健全な企業社会を構築するというものでございます。

 会社法案の立案に当たりましては、ドイツ、アメリカを初めといたしまして、諸外国の会社法制を参考にいたしておりますが、会社法制が取り組むべき課題は、各国の社会経済や文化の状況に応じまして異なっていると理解いたしております。

 御指摘の債権者、投資家といった会社の利害関係者の利益の保護につきましては、会社法制の重要な役割の一つでございますが、会社法制におきましては、そのいずれかを重視するというのではなく、我が国の現在の社会経済情勢を踏まえまして、会社法制の取り組むべき課題に適切にこたえ、そして日本独自の法制を目指していこうとすることでございます。

谷口委員 今大臣がおっしゃったように、日本独自の法制というようなこと、大変これは重要なことでありますけれども、やはり会社法が一つの理念を持っておって、その理念の中で一体どういう方向に向いていくのかというのもまた非常に重要なことでございますので、その観点からお話をさせていただいたわけであります。

 その次に、そういうことの前提でお話をさせていただきますが、商法の中にいろいろ原則がございます。資本充実の原則というのがあるわけで、資本充実というこの観点で見ますと、今回、中小企業の企業行動に配意をした最低資本金規制の撤廃、このようなことが行われたわけで、これは一円でも起業できるということで大変中小企業にとってはありがたい法制でありますけれども、一方で、会社の資本の充実の原則という観点で見たときに一体どのようなとらえ方をされるのか、また、この資本充実の原則というのが一体見直しをされたのか、そのような観点で御答弁をお願いいたしたいと思います。

寺田政府参考人 最低資本金の制度の撤廃でございますが、これは、平成二年にこの制度が導入された際は、一つは理念的な問題がございまして、やはり有限責任の会社というのはそれ相応の実体が必要である、それは見かけ上も必要であるというような考え方でございました。もう一つは、どちらかというとより機能的な問題かもしれませんが、本来、株式会社と有限会社というのは想定している会社の規模等が異なるものであるから、なるべく、本来の有限会社であるべきものは有限会社に、それから本来株式会社であるものは株式会社に、こういう仕分けができると筋が通るということがあったわけでございます。

 しかしながら、その後も、必ずしも株式会社というのが、本来の株式会社が想定しているもののような、公開を志向した大きな規模の会社ということになりませんで、むしろ、日本に圧倒的に多数ございます中小企業というのが株式会社の形態を選択しているという現実があるわけでございます。

 そういう中で、この資本金の法制をどう扱うかということを、株式会社法制を全面的に見直す際にやはり見直さざるを得なかったわけでありますが、午前中にも申し上げたとおり、やはり資本金というのは、これは観念的な表示でございますが、それの果たす機能が、設立時に幾ら名目上なければいけないということによるいわば設立規制というのは、今日の会社の実情に合わないんじゃないか。むしろ、今委員も御指摘のような資本充実の原則の本当の底にある考え方を出すと、この資本の持っている機能の中の配当規制、つまり、本来あるべき配当可能利益の範囲内で配当が行われるべきであるということの関係で必要な純資産というようなところを中心に考えるべきではないかということから、設立規制としての最低資本金制度というのは今回廃止しようとするわけであります。

 したがって、改めて申し上げるまでもありませんけれども、資本充実の原則というのは、必ずしも資本金という形式上、名目上の金額が高いか安いか、あるいはあるかないかということではなくて、現実に出資がされた際に、払い込まれる資産というものがこの資本金というものを下回ってはならないという原則でありますから、その原則、つまり表示上と実態が合わなければいけないという原則からいたしますと、今回は少しも後退はしていないということになるわけで、単に、設立時にそれだけの名目上の金額を設定するということをやめたというにすぎないわけであります。

 むしろ、今回の会社法におきましても、例えば、新しい法律の二十八条でありますとか三十三条等をごらんいただきますと、原則として、払い込みをなす際にその金銭が資本という金額に見合ったものでなければなりませんので、これは当然現金ということを原則とするわけでございますし、現物出資が仮に行われる場合には、それについて検査役による調査というのも十分に行われる、こういうことを建前といたしておりますから、考え方は実質的には全く後退していないというようにお考えいただければと思います。

谷口委員 今民事局長がおっしゃったように、配当可能利益の純資産を維持するというところがやはり最大のポイントだというようにおっしゃったんだろうと思うわけでございます。今おっしゃったように、起業の際には、最低資本金の撤廃は非常に有益なわけで、そういう意味では、私は今回非常によかったのではないかというふうに思っております。

 それともう一つは、株主平等の原則というのがございます。現行法上は、商法三百四十五条第一項に規定しておりますように、企業が数種の株を発行している場合に定款変更があり、その定款変更によってある種類株の株主が損害を受けるといった場合に、株主総会の決議のほか、その種類株の株主総会の決議を要しておるわけでございます。これが今回は、法定種類株主総会の決議が必要となる場合を限定しているというようなことのようでございますけれども、これは、今申し上げました株主平等の原則から考えて、一体どのように考えるべきなのか、御答弁をお願いいたしたいと思います。

寺田政府参考人 株主平等原則というのは大変重要な原則でございまして、これは現行法では規定はございませんけれども、当然の前提とされているわけであります。それは、やはり株式会社というものが出資者の有限責任で成り立っているわけでございますけれども、非常に多数の出資者から多額の資金を集めるということによって成り立つというそもそもの由来がございますので、それを株という単位に分けて出資を求めるというところから、その株と株の間では平等だということがやはり原理的に決まっているからであります。しかし、実際の株式会社法制におきましては、単一の株式の性格ではございませんで、我が国におきましても種類株というのが認められ、その種類株が次第に複雑になってきているのは御承知のとおりでございます。

 それで、建前の上では、株主平等原則というのはそれぞれの種類株の株式を持っている株主間に言えるわけでありまして、種類株をまたいでは、これは観念的には株主平等原則ではございません。ただ、もちろんそこの間には合理的なある種の対応がなければならないということから、いろいろな法規制は調整規定としては想定はされておりますけれども、株主平等の原則は、そういう意味では建前上は働かないということであります。

 しかし、いずれにいたしましても、先ほど御指摘のありました商法三百四十五条の一項というのは、この種類株主にとりましては非常に重要な規定であります。これまでは、必ずしもその適用範囲が明らかでございませんで、どのような場合にこういった種類株主総会を開くのかということは、利益を不当に害するということだけが指標になっておりましたので、かえっていろいろ混乱を生ぜしめることになっておりました。

 そこで、今回、三百二十二条の一項にこの新しい規定を置いておりますが、そこでは、現行法の解釈として一般的に認められているものであります株式の種類の追加、株式の内容の変更等を類型化いたしまして、それらについての定款の変更というのが種類株主総会の対象になるということを明らかにしているわけでございます。それについて、これまでより後退したということはございません。

 なお、このほかに、三百二十二条は二号以下にこの種類株主総会についての別の類型を置いているわけでございます。

谷口委員 今、特定のところを申し上げたわけでありますけれども、この会社法全般の思想として、考え方として、株主平等の原則は一体どのように考えておられるのか、御答弁をお願いいたしたいと思います。

滝副大臣 今民事局長から基本的な考え方については申し上げたところでございますけれども、基本的には、委員御指摘のとおり、株主平等原則というのは、この新しい会社法においてもその原則を貫くということについては何ら変わりはないわけでございます。

 ただ、今回の場合には、今までが理念的に原則として観念されていたものが、今回は百九条という条文で、株式の内容及び数に応じて平等だということで、改めて基本原則を明確にしたというのが今回の会社法の特徴でございまして、単なる考え方を条文に落としたということを明らかにしているわけでございます。

谷口委員 いずれにいたしましても、株主平等の原則が後退したということはないというようなことでございますので、これを了としたいと思います。

 次に、今回、中小企業に対する配慮がいろいろな点で図られておるわけでございます。今現在、株式会社が百十四万社、このうち九八・三%が中小企業でございます。有限会社百八十五万社、合名会社一万九千社、合資会社八万六千社のほとんどが中小企業であります。また、この中小企業は日本の産業、経済を支える活力の源でございますので、元気を出してもらわなければなりません。

 今回、先ほども申し上げましたように、最低資本金制度の撤廃だとか有限会社と株式会社の一体化、このようなことを図られたわけであります。利用者の視点に立った場合に、これは非常に評価されるところであると私は考えております。

 そこで、お伺いをいたしたいわけでありますけれども、中小企業の企業行動について、この法案は一体どのようなことを期待されておられるのか、大臣にお伺いをいたします。

南野国務大臣 お尋ねの会社法案におきましては、会社制度の利用者の大半を占める中小企業の視点に立って、株式会社と有限会社の会社類型の統合、または機関設計の規律の柔軟化、さらに会計参与制度の創設など、改正を行うこととしております。

 このような改正は、中小企業がそれぞれの会社の実情に応じまして、適切なまたは最適なといいましょうか、機関設計を採用することを可能とするものでございまして、中小企業の経営の効率性または信用力の向上に資するものと期待いたしております。

谷口委員 そこで、ちょっと具体的なことをお伺いいたしたいわけでありますけれども、今回、LLCと言われる、会社法上合同会社と言われるようでありますけれども、この合同会社、また合資会社、合名会社、株式会社という事業体の形態がございます。これらが組織変更ができるということになっておるわけであります。機動的、弾力的に運用できる合同会社というのは非常に使い勝手がいいのだろうというように思うわけでありますけれども、一方で、旧来の合名会社、合資会社、このような会社類型があるわけであります。この合名、合資というのは、最近は余り設立の件数がないというようなことを言われておるわけでありますけれども、この合名、合資に合同会社が組織変更できるというような、この趣旨は一体どういうような趣旨なのか、お伺いをいたしたいと思います。

寺田政府参考人 合同会社と合名会社、合資会社の関係でございますけれども、まず、合同会社は今回新たにつくるものでございますけれども、基本的に、出資者全員が有限責任でございます。これに対しまして、合名会社、合資会社は少なくとも無限責任社員が必ずいる、こういう類型でございます。

 確かに、これまで合名会社、合資会社は、明治時代はともかくといたしまして、最近は余り利用例がないのはそのとおりでございます。しかし、今回、これまでは認めてこられなかった、一人でも会社の設立ができる、あるいは法人が無限責任社員となれるというようなこともございまして、合名会社、合資会社が、必ずしも今までのような、全く利用から見放されているという状態ではないことになるのではないかという感じが私どもとしてはいたしております。

 そこで、さまざまな会社の発展に応じまして、一部の社員、無限責任社員を有限責任にするというようなことが会社の発展において考えられるものでございます。逆に、一部の社員の無限責任社員化というのもあり得る。そういうさまざまな相互交流ということが会社の類型間であり得るという想定のもとに、私どもは、合同会社と合名、合資会社との間の組織変更というのも認められるということで、この法案をつくっているわけでございます。

谷口委員 そこで、この類型間の変更の場合に、一体どういう要件があるのか、これも簡潔に御答弁をお願いいたしたいと思います。

寺田政府参考人 調査室がおつくりになった資料の八十七ページに非常に簡潔でわかりやすい図をお示しになっておられますので、それをごらんいただくと一発でわかるわけでございますけれども。

 基本的には、無限責任社員あるいは有限責任社員の退社によりまして、合名会社、合資会社と合同会社の名前だけが変わる、つまり、合資会社の有限責任社員がいなくなりますと、これは合名会社になる、合資会社の無限責任社員が退社すると、これは合同会社になる、こういう形で、社員の退社というのがございます。これについては別に要件はございません。

 これに対しまして、社員の責任の変更や新たな社員が加入するということがございますが、これはすべて定款の変更が必要で、一般的には、これは人的会社でございますので、全員の同意でもって定款を変更するわけでございます。そういう手続で組織間の変更が行われるということでございます。

谷口委員 調査室の資料を読みたいと思いますが、いろいろな形で実態的に、市中では組織変更が、類型間の変更が行われるのではないかと思うわけであります。

 そこで、先ほど申し上げた、非常に機動的な事業体、LLC、合同会社についてお伺いをいたしたいわけでありますけれども、先ほどの答弁の中にもありましたように、この合同会社は有限責任だということと、広く定款自治が認められておるというようなこと、あと、今経済産業省のところで審議をされてもう上がったと思いますけれども、LLPというのがあります。これは組合形態ですけれども、このLLC、合同会社は会社形態でございます。この合同会社が広く普及するためには、税制上のこともあるのだろうと思います。しかし、これは法人形態でございますから、LLPのように構成員課税、パススルー課税がなかなか難しいのだろうというように思っております。しかし、これが広く使われるためには、税制上の対応も進めていく必要があるというように私は思っておるわけでございます。

 そこでお伺いをいたしたいのですが、合同会社は定款自治が広く認められておるわけです。それで、剰余金の分配のときに、現行法では、出資の割合に応じて利益の分配があるということが行われておるわけでございますけれども、今回の合同会社は定款自治が広く認められておりますから、例えば技術はあるのだけれども金がない、金があるのだけれども技術がないというような人たちが出資をしてやるのだけれども、今までであれば出資額に応じて分配ということでございましたので、なかなかうまくいかなかった。今回の場合は、出資は少ないのだけれども分配はある程度いただきますよというような、弾力的なことになるのだろうと思っておりますが、これはどうでしょうか。

寺田政府参考人 おっしゃるとおり、この日本版LLCと申しますか、合同会社は、外部的には有限責任の出資者による法人でございますが、内部的には組合そのもののような形態を認めております。したがいまして、定款の定めによって、出資価額の比率に応じない多様な分配をすることが可能でございます。もちろん定款に定めがなければ、基本的には出資額に応ずる、こういう定め方になっております。

谷口委員 それが非常に使い勝手がいい事業体だということになるわけでございますが、一方で、使い勝手がいいということは、これを悪用していろいろなことができ得るということもあるわけで、そのような観点でお尋ねをいたしたいわけでありますけれども、実はアメリカで以前大きな粉飾事例がありまして、エンロンという会社が傘下にSPC、特別目的会社というのを三千近くつくったのですね。それで本体の損をそのSPCにどんどん振っていって、それが連結の範囲に入っていなかったものですから、本体のところだけ格好よくなっておったけれども、実態はそうでなかったというような粉飾事例がございました。

 ですから、そういう観点でいきますと、非常に使い勝手のいい事業体でございますから、これから大手の会社がこのような合同会社をつくり、いろいろな形でこれを使っていくのだろうというように思うわけでございます。

 そこで、きょうは金融庁からきていただいておりますが、これは先ほどのLLPのところでもお聞きしたわけでございますけれども、連結グループに入るのかどうかというのが非常に難しいのですね。これが、出資で過半数を持っておったら、これはもう連結子会社だということでこのグループに入るわけですけれども、さっき申し上げましたように、出資は少ないのだけれども技術があるからということで、持ち分が分かれるわけですね。出資以上の持ち分が得られるということになるわけで、これに応じた会計規則、会計原則の変更が必要なのだろうと思います。これは会計原則ですから金融庁がやっておるわけでありませんが、金融庁は監督官庁ですから、金融庁の立場で御答弁をお願いいたしたいと思います。

振角政府参考人 お答えさせていただきたいと思います。

 LLPのときも御議論いただきましたけれども、基本的には、証取法に基づく連結財務諸表において、親会社が他の会社等を支配している場合、これらを子会社として連結しなければならないとされておりまして、LLCについても、親会社が支配していると認められる場合には連結されるということになっていると思っております。

 そうなりますと、一般的に支配しているか否かというのをどういうふうに判断するかということが非常に重要になってくると思っておりまして、そこは、意思決定機関を支配しているか否かというところが基本的な判断のポイントになるというふうに思っておるところでございまして、先ほど来議論がありますけれども、特定企業がLLCに過半数を超える出資を行った場合や、LLCが特定企業に多くの剰余金分配を行った場合であっても、当該LLCが当該企業に連結されるか否かは当該LLCの意思決定機関に対する支配の有無によって基本的に判断されるということになると考えております。

 いずれにしても、今後、LLCについては組織形態が多様であるということが予想されるために、支配しているか否かの判定に当たりましては、実態に応じた検討を行う必要があるというふうに考えているところでございます。

 先生も御指摘がありましたように、基本的にはこれは企業会計基準委員会で決める話だと思っておりますけれども、我々としましても、このような経済取引等の進展を注視しながら、適切な会計処理が行われるよう努めてまいりたいというふうに思っております。

谷口委員 今まさにおっしゃったとおりで、これからこれが実態的に組成されるというときにそういう基準をつくっていく必要があるだろうというように思うわけでございます。

 それで、合同会社が悪用されるような場合の悪用例について今例示をしていただければ非常にありがたいわけであります。また、その悪用があった場合の法的対応について、この二つについて御答弁をお願いいたしたいと思います。

富田大臣政務官 谷口委員の方からエンロンの紹介がありましたけれども、合同会社の制度が悪用される場合としては、例えば、出資者が債権者からの追及を免れるなどの法人格を濫用する目的で合同会社を設立する場合が想定されます。

 では、この場合にどういう法的な対応が用意されているのかということでございますが、本会社法案におきましては、現行法の取締役の第三者責任と同じような規定で、第五百九十七条に、合同会社の制度の悪用により損害をこうむった者は業務を執行する社員に対し責任の追及をすることができるという規定を置いております。

 また、第八百三十二条ですが、債権者からの追及を免れるために合同会社を設立した場合においては、社員の債権者に設立取り消しの訴えの提起権を与えるというふうにしております。

 さらに、法人格の濫用によって損害をこうむった者につきましては、法人格否認の法理により保護を図られることになるというふうに考えております。

谷口委員 今おっしゃったことであれなんですが、例えば個人の財産を債権者から隔離をするといったような場合は悪用例として考えられるんでしょうか。

寺田政府参考人 それはまさにそういう例を今想定されて政務官からお話し申し上げたところでありまして、政務官が申し上げたことの一部が、今、谷口委員が御指摘になった例でございます。

谷口委員 これは非常に難しいところがあると思うんですね。やはり積極的に頑張ってもらいたいという意味合いもあってこの合同会社をつくったわけですから。しかし一方で、現実にはいろいろな形で、このぎりぎりのところを行われる可能性もあるということですから、できれば具体的なガイドラインみたいなものを、一応こういうことが違法と考えられますよというようなものをつくるということも私は一つの方法なのではないかというように思っております。ぜひまた検討をお願いいたしたいと思います。

 あと、剰余金分配手続についてお伺いをいたしたいわけでございますが、今回の会社法案では、現物配当ということが認められるようになっております。現行法では金銭配当のみですから、これはいろいろな形で大きな影響が出てくるかもわかりません。

 その場合に、一つは、先ほどの民事局長のお話にもあったように、資本充実の原則というのは配当可能利益の純資産を維持することだというようなお話があったわけでありますけれども、この現物といった場合に、例えば、いろいろなことが想定されるんだろうと思うんですね。自社がつくっておる製品を配当がわりに株主に配るといったようなことだとか、また、小さな会社の場合は、ある不動産があって、この不動産の持ち分で分割をして配当にかえるというようなことだとか、いろいろなことが想定をされるわけでございます。

 まず初めに、どういうようなものがこの現物配当の対象として考えられるのか。また、この評価の問題が出てくると思うんです。配当規制を超えるか超えないかというぎりぎりの場合に、この会社の商品が原価なのか売り値なのかというようなことだとか、現物配当の場合は評価が必要になってくるわけでございます。この評価についてもどのようなことを考えておられるのか、御答弁をお願いいたしたいと思います。

寺田政府参考人 今回の改正法においては、御指摘のとおり、配当をできるものというのは財産的価値があるもの一般でございます。したがいまして、どのような財産かということに制限はございませんが、実務上を考えてみますと、やはり株式あるいは債券が多いのではないかなというふうに考えております。

 具体的には、例えば株式分割をした場合における分割会社がこの分割によって取得した承継会社の株式を分割会社の株主に分配する、あるいは、未上場の株式会社が、上場会社である関連会社の株式を多数持っている場合に、これを株主に現物配当するというのが想定の、あり得るケースの主なものではないのかなというふうに考えているわけでございますが、ほかにも、委員が御指摘のとおり、自社製品とかいろいろなものがあり得るわけであります。

 その場合に、配当利益の関係でどう評価するかということが非常に微妙な問題になりますが、この点は、配当可能利益の額というのは、会計帳簿に計上された価額、つまり簿価でございますので、時価ではございません。そういうことで、一般的な考え方に沿って行われるというふうに御理解いただきたいと思います。

 ただ、自社製品の簿価というのはなかなか求めにくいものでございますが、これは製作価格であろうかと考えております。

谷口委員 例えば、さっき局長がおっしゃった株式の場合は、これは上場しておると時価があるわけですね。その時価を現金配当のかわりに支払うという場合も、これはそのときの簿価、もちろん簿価はありますけれども、簿価に比べてはるかに時価が高いといったような場合、そうするとこれは問題にならないということですか。

寺田政府参考人 配当可能利益の算定というのは帳簿上のものでございますから、あくまでそれは簿価で計算するということでございます。

谷口委員 それを配当した後に、株主から、会社財産を不当に払い戻したといったような訴訟があったときにも十分対抗できるということですか。

寺田政府参考人 価額の算定というのは非常に難しいものでございますから、そもそも簿価が正しいかどうかという問題はもちろんございます。そういうことで、場合によっては違法配当の責任を追及されることがないわけではありません。しかし、正しい簿価が記載されていれば、その簿価によるということになるわけでございます。

谷口委員 今、局長がおっしゃったことは非常に重要なんです。これは、いろいろな形でこれを、まあ悪用とは言いませんけれども、配当可能利益の潜脱行為に行われる可能性があり得るということだと私は思うわけですけれども、今おっしゃったことを同じように答弁なさるんでしょうか、同じことだと。

寺田政府参考人 そのとおりでございます。つまり、配当可能利益の計算というのはあくまで帳簿上の掲載に基づいて行われるものでございますので、それはむしろ、帳簿以外のものを基準にすることはできないわけでございます。

 ただ、その帳簿が正しく記帳されているかどうかという問題はもちろんあるわけでございます。

谷口委員 もっと端的な例で申し上げますと、ある会社が有価証券をたくさん持っておられた、配当可能利益はもう算定できるわけですね。この配当利益でこの簿価が、古い年代の株をたくさん持っておられて、これを現在価値に引き直すともう全然違うといったような場合に、これは簿価でいいということになってくると、これはちょっと私、本来の配当可能利益の考え方からいってこれが妥当なのかどうか非常に疑うわけでありますけれども、今おっしゃったことで本当によろしいんですか。

 例えば、やっている会社の方は、今局長がおっしゃったようなことで現物配当をして、後で違法配当だと言われた場合、これは言われる場合がほとんどであろうと思いますよ、そのときに、いや、これは違法配当だ、いわゆる会社財産を不当に払い戻したということになるんだろうと思うんですが、それでよろしいんですか。

寺田政府参考人 それは、現在の配当可能利益の考え方から言えばそうならざるを得ないわけであります。

 ただし、先ほども申したように、簿価が果たしていいかどうかという、むしろ簿価の記載をどうすべきかという問題であろうかというふうに理解しております。

谷口委員 簿価の記載は、さっきも申し上げたように、二十年前に買った株価がそのときに正当な簿価なわけです。その後、これは時価を持っておりますから、例えばその株を市中で売却すると当時とは違う時価になっておるわけで、これはちょっと私、おっしゃっていることが理解できないんですが、果たしてそれでよろしいんでしょうか。もう一度。

寺田政府参考人 配当可能利益の計算というのはそもそも、簿価、つまり会計帳簿の数値の記載でもって行うということになっているわけでございますから、それはそうならざるを得ないわけでございます。

 ただし、もちろん、それを全部時価でやるという会計処理をするなら別でございますけれども、それはそうではなくて会計帳簿に基づく以上はそうならざるを得ないわけであります。

谷口委員 前半の部分はよくわかるんですよ。それは配当可能利益が算定されますから、その配当可能利益の範囲内で配当するわけですね。配当しないと、それは取締役も責任を問われますから。そのときに、これが簿価だと、この二十年ぐらい前に買った株を配当で回すときに、簿価だからそれで問題ないんだというように今おっしゃっているわけですけれども、ちょっと私は信じられないわけです。

 ですけれども、例えば、バランスシートでいいますと、今、取得価格で計上されている場合と、これが時価で計上されている場合とあるんだろうと思うんですね。時価で計上されている場合は、これは毎年あれするわけですから、それはそれでいいわけです。取得価格で計上されているようなものがありますと、現実の価格と非常に乖離があるというように思うわけですけれども、しかしそれも簿価だから、簿価だというのは、配当可能利益の算出は機械的にできますから、その範囲内だからいいんだと、果たしてそう言えるのでしょうか。

寺田政府参考人 再三同じことを申し上げて恐縮でございますけれども、その会社の配当可能利益の計算というのが会計帳簿に基づくものだということで簿価上の価額を基準としているということであれば、そうならざるを得ないわけでございます。

 ただし、その会社が、時価評価というのを全部基準にしてやるというふうに会計の基準の選択を切りかえれば別でございます。しかしそれは、簿価でやっているのか時価でやっているのかは外部にわかるわけでございますから、そういうことを前提にすべて議論がなされているわけで、おっしゃるように、これはもう時価会計を議論される際に常に問題になることでございます。簿価上の規制にするといろいろおかしな問題が出てくるとおっしゃるわけでございますけれども、それはそういう基準をとっている以上はやむを得ないものではないかなというふうに考えております。

谷口委員 これは、私は冒頭申し上げましたように、今までの金銭配当ならば何も問題なかったわけです。現物配当ということに今回なったわけで、私はそこでそういうような問題が出てくるのではないかという疑問をちょっと呈しておるわけでありまして、ちょっと今、私、民事局長がおっしゃったような、果たしてそれになるのかどうか。今お聞きした段階ではちょっとどうもぴんとこないんですが、これは長いこと時間をとっても仕方ありませんから、一応、私の申し上げたいことを今申し上げたわけであります。

 次に、会計参与についてお伺いをいたしたいと思います。

 今回、会計参与という制度が導入をされました。これは、株主総会によって選任をされて、会計に関する専門的識見を有する者が、取締役、執行役と共同して計算書類を作成する、また、当該計算書類を取締役、執行役とは別に保存し、株主、会社債権者等に対して開示することを職務とする会社の機関である、こういうことで今回できたわけでございます。

 この会計参与を設定された目的について、大臣にお伺いをいたしたいと思います。

南野国務大臣 先生お尋ねの目的でございますけれども、会計参与は、公認会計士または税理士の資格を持つ人が取締役と共同して計算書類を作成する株式会社の機関であります。特に、中小の株式会社の計算書類の適正を確保しようというものでございます。

 今回の会社法改正では、有限会社を株式会社に統合するとともに、株式会社につきましても、役員が取締役一人で足りる有限会社と同様の機関設計を認めることといたしたわけでございます。

 他方におきまして、株式会社につきましてはその規模を問わず決算公告が要求されるために、このような監査役を置かない簡素な機関設計の株式会社でも、計算書類の適正さを確保する必要がございます。そのようなことから、会計参与制度を創設するに至ったというわけでございます。

谷口委員 会社の作成する計算書類の信頼性が担保されるということで、これは私は大変いいことだと思っておりますが、この会計参与は任意で設置できるということでございます。法が予想しております会計参与の設置、この拡大に関しまして、どのようなことがポイントになるのか、お伺いをいたしたいと思います。

寺田政府参考人 会計参与は、やはり債権者を初めといたしまして、会社を取り巻く会計上の処理というのが株式会社の基本だということからしますと、非常に重要な一歩だというふうに考えております。ただ、現在も監査役でおやりになれること、あるいは取締役でもおやりになれること、それを専門家がやるということでございますから、設置はいろいろな会社の実情に応じて任意でやっていただくということでございます。

 私どもは、むしろこの設置が任意であるということを基本に考えますと、それについて、現に会計参与になられる方が実績を上げていただくというのがやはり一番大きなポイントであろうかと思います。つまり、会計参与を置いた結果、やはり計算書類というのは随分適正になったな、あるいは信頼性が上がったということで融資をより受けられやすくなったというような結果が出る、こういうことが多くの企業に会計参与が利用されるキーポイントではないかなというふうに考えております。

    〔委員長退席、田村(憲)委員長代理着席〕

谷口委員 今、寺田局長がおっしゃったまさにそのとおりだと思うわけでありまして、計算書類の信頼性を担保するわけですから、しっかり役割を与えられた会計参与に頑張ってもらいたい。その後は、やはり融資を受ける際、金融機関から、会計参与が設置をされているからこの会社は大変信頼性が高いと言われるようなことになれば、まさにこの法が期待しているところなんだろうと思うんです。今御答弁されたのは、そういうことをおっしゃっていただいたと思います。ですから、そういうことで、この制度が広く行き渡るというように私は大変期待をいたしたいと思うところであります。

 それで、次にお伺いをいたしたいわけでありますけれども、私は午前中の審議をちょっと聞いておりませんでして、この合併対価の柔軟化、三角合併等のことも出たんだろうと思うわけでございます。

 今回の会社法案は、組織再編、これは大変重要なポイントでございます。金銭だけではなくて、株式その他の資産で交付が認められる。買収、合併をする場合等々ですね、その対価の柔軟性。また、三角合併で親会社の株式を消滅会社の株主に割り当てられるといったようなことが認められるというのは大変いいことだと思います。

 一方で、敵対的買収に対して大変危機感を感じておられるところもあります。敵対的買収は、三角合併は必ずしもそういうようなことを想定したことではありませんが、十分この制度を利用して行われる可能性もあるというようなことなんだろうと思います。

 そういうことも含めまして、今回の会社法案が外国企業が日本企業を買収するようなことになる一つのきっかけだというようなことを言われておるわけでございますが、この会社法案は、一体、外国企業が日本企業を買収しやすくなった法案だと言えるのでありましょうか、お伺いいたしたいと思います。

寺田政府参考人 今回の合併対価の柔軟化は、これは国内の企業にとりまして、むしろ、一〇〇%子会社を持っている企業が一〇〇%を維持したままで合併をしたい、あるいは正確に言うと、させたい。あるいは、上場していない会社が上場している会社を吸収合併する、そういう際に、やはり自分の会社の株よりは親会社の株、あるいは現金、何らかのほかのものを利用した方がいいのではないかという声が多数寄せられた。そういうことに基づいて、日本企業の再編成を可能にするという意味でも非常に大きな位置づけを持ってつくられたものであります。

 ただ、おっしゃるとおり、法案を提出する過程で、外国企業の参入、敵対的買収を許すものではないかという御意見もありました。

 もともと、三角合併にせよ、あるいはほかの企業再編の手段にせよ、最終的には当該企業同士でこれは友好的に、つまり経営陣同士あるいは株主同士で理解し合った上でなされなければならないわけでございますから、敵対的買収と合併対価の柔軟化が結びつくということは、直接的には全くないところでございます。

 ただ、段階を踏んで行われる敵対的買収がもちろんあるわけでございまして、その第一弾としては、ねらった会社を敵対的にTOBなりなんなりを利用してまで買収するということがあり、それを買収した上で、さらに外国の親会社に相当するものが子会社同士を合併させるということが一つの日本における投資の手段として考えられないわけではないというところから、敵対的買収と結びつけてお考えになるところがおありになったわけであります。

 したがって、そういう環境の整備が外国企業を引きつける面が全くないかといえば、それは間接的にはあり得ることでございますので、私どもも、これに対しましては、逆にむしろ敵対的買収については対抗策をさまざま用意しておりますという会社法案の中身の説明を申し上げたわけでございますけれども、そういうような敵対的買収に対する対抗策を含めた買収問題と合併対価の柔軟化を含めた合併法制の問題は、本来は直接関係ない、切り離して考えられるべきところだろうというふうに考えております。

    〔田村(憲)委員長代理退席、平沢委員長代理着席〕

谷口委員 私もそう思うわけでありますが、この使い方いかんによって、やはりそういうことも危惧するような会社もあるんだろうと思います。現に、現行法でもそういう敵対的買収に備えるような対応はできるわけでありますけれども、恐怖心を持っておられる企業もあるのは現実の問題であります。

 それで、その次にお伺いいたしたいのは、一般的に、外国企業は割と高株価政策をとっておるわけであります。それは、配当率も高くて、いろんな株主に対するアピールもし、いろんな努力をして、大変高株価を維持するというところに一つの大きな企業としての目的を置いておるところがあるわけでございます。

 そういうような高株価の外国企業が、我が国の企業、これは優秀な企業でもそれほど株価が高くないといったようなところもあるわけです。そういうようなところに、親会社の高い株価を割り当てるということによって買収を進めていくというようなことが行われる可能性があるわけでありますけれども、このようなこと、高い株価の外国企業が優秀であっても低い株価の日本企業を買収するといったような可能性についてどのようにお考えなのか、御答弁をお願いいたしたいと思います。

寺田政府参考人 これは、ただいまも申し上げましたとおり、この合併の対価の柔軟化によって、日本の株価の低い企業の買収がやりやすくなるということは、一般的には想定されないわけであります。

 もちろん、これに対しましては、むしろ会社法としては、さまざまな買収に対する対抗策を用意いたしておりますし、また、買収に対する対抗策というのはさまざまございます。今おっしゃった、低い株価を高株価に変えるために配当をふやされるとか、いろいろなことを工夫されるわけであります。それは企業がいろいろ工夫でおやりになることでありまして、ただ、この会社法は、そういう企業の努力をやりやすくするという意味で、さまざまな手段は提供する。

 ただ、もちろん、その手段と申しましても、これは委員も先ほど御指摘になられましたように、何も買収すべてが敵対的ではないわけでございますし、また、仮に敵対的な買収でも、部分的には刺激になっていいというお考えも、経済全体をごらんになる立場からおありになるわけでございまして、さまざまなことが考えられるわけでございますけれども、私どもの立場からすると、やはり組織法的な整備というのは十分にしたいということでございますので、その限度で整備をしているというふうに御理解いただきたいと思います。

谷口委員 時間が参りましたのでこれで終わりたいと思いますが、きょう、一時間いただいて、いろいろなお話をさせていただきました。

 特に、最後の敵対的買収、まさに局長おっしゃるように、きょうの午前中のところを私、ちょっとテレビで見ておりましたら、大体一割から二割ぐらいは敵対的買収だというようなデータがあるようであります。ほとんどが友好的な買収ということで、再編をしたり、また組織改編をしたりといった場合には非常に弾力的なやりようができるわけで、今回のこの法改正につきまして私どもも支持するところでございますけれども、一方で、我が国を取り巻く国々の企業の中には、この際、我が国に乗り込んでいくということで、この改正商法、会社法を非常に勉強しているというようなことも聞くわけでありまして、その観点で、この会社法の運用は非常に重要だと思っております。

 以上で、時間が参りましたので終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

平沢委員長代理 次に、吉野正芳君。

吉野委員 会社法の審議も午後に入って深まってまいりました。私は、もっと大きな視点からこの会社法というものを眺めてみたいと思います。

 私たち人類、生まれて約五十万年くらいと言われていますけれども、暮らしてきているわけなんですね。生活していく上でいろいろな組織をつくって、それを利用しながら働き、暮らし、生活をしてきたわけなんですけれども、その中にあって、株式会社という制度はある意味で本当にすばらしい制度で、例えば、有限会社もある意味でのみ込んでしまった。組織でありますから効率性を確保していく、ということはイコール規制を緩和していくということなんですけれども、と同時に、公平性の確保、規制を強化していくという、いわゆるアクセルとブレーキ、このアクセルとブレーキをうまくコントロールしながら、一つの組織を本当に使い勝手のいい、役に立つ組織に変えてきているわけだと思います。

 そういう意味で、大臣の方で、株式会社とはだれのものなのか、いろいろ前の方々が聞いておりますけれども、では、視点を変えて、どんな役割を会社というものは持っているのか、直観的な思いで結構ですからお述べいただきたいと思います。

南野国務大臣 先ほどもお尋ねがございました。株式会社というのは、やはり株主のものかなというふうには思っておりますが、そのほかにいろいろな方々との関連がございますので、社員であったり、また、株を持っておられる方、ともどもに協調して社会をつくっていっているという点がございます。

 そういう意味では、株式会社は、純法制的には営利法人として株主の出資によって成り立っている、これによりまして株主が利益を得る仕組みとなっている制度ですから、第一義的には、今申したとおり、株式会社は株主のためのものであると言うことができます。

 しかし、取締役は、株式会社の利益を最大化するために株主から経営を任されておる人でもあります。取締役のために株式会社があるわけではございません。

 もっとも、株式会社は我が国の経済活動の中核的存在であるということは、これは言えると思います。その活動が債権者等の利害関係人に重大な影響を与える場面も少なくないということでございまして、会社法制は、株主だけではなく、債権者等の利害関係人の保護にも十分配慮した制度になっているものというふうに思います。

 そういう意味では、株式会社は、株主のみならず、債権者等の利害関係人のための法的な仕組みであるという面もあると考えております。

 また、株式会社は、その経済活動において占める位置から、社会一般にとって重要な存在である、先生がおっしゃっておられました、どう生きていくかということの経済社会の中の中枢を占めるものであるのかな、そのようにも思っております。

吉野委員 株式会社という制度が、これほどまでに私たちにとってある意味で役に立ってきたという、例えば今度も特区で、農業の分野にも株式会社の進出がオーケーになる。また、文教の分野にも、教育の分野にもオーケーになっていく、医療の分野にも株式会社という形態がオーケーになっていくという形で、その辺はどこに、我々が使い勝手がいいという株式会社の特徴があるのか、民事局長のお考えをちょっとお尋ねしたいと思います。

寺田政府参考人 今おっしゃられましたように、株式会社というのは、現代社会の経済にとってなくてはならない存在になっております。

 もともと、個人が経済活動をするには限界があるものですから、当然、団体を組んで経済活動を行わなければなりません。これは、民法上の組合ですとか、あるいは商法上の匿名組合というような形でそういうことが行われることは想定されているわけでありますけれども、しかし、それにもおのずから限界があります。というのは、こういう方々は個人で無限責任を負っていただかなければならない。極めて危険な企業活動をする場合に、その無限責任を負っていただく方の数にはおのずから限界があるわけであります。

 そこで、一つの工夫といたしまして、有限責任の制度を導入いたしまして、会社という組織を、しかも法人でつくったわけであります。この会社という制度の中でも、なお無限責任社員を残している会社も当初はあったわけでありますが、有限責任の社員を中心とする会社、つまりは、それが有限会社であり、株式会社などでございますけれども、そういう会社が主流になってきたというのは、やはりそれ相当の理由が今申したようにあるわけであります。

 そこから先はなかなか難しい問題がございます。つまり、大きくなればなるほど、出資者が全体の組織をどうコントロールしていくかということについて、やはり万全の体制はないわけでございます。

 そこで、どこの国でもそうでございますけれども、会社法制の中に、出資者という者とこれの経営に専門的に当たる者を分離するという考え方が出てまいりまして、それが株式会社を中心とする存在でございますが、株式会社はさらに、その出資の単位を区分いたしまして、株券という権利を表章する単位を取得した者が株主になるという形で、流通ということを非常に重点に考えてまいりました。

 つまり、世の中の多くの人を候補として出資者を募ることができる、そういう形態で、しかもその出資をもって責任を負えば足る、しかも経営は自分でない者がやってくれる、これが株式会社の現在の形態でございまして、それが社会で主流を占めるのも、今申したところから、おのずからうなずけるところがあるわけでございます。

 ただ、問題は、果たして経営を任すに足る専門家というのが本当に信頼する者になるかどうかというところ、あるいは、それをどういうふうに出資者がチェックしていくかというところでございまして、それがまさに、今私どもが会社法をつくるに当たりまして非常に苦労している側面だろうということは言えようと思いますが、そういう苦労をするだけの値打ちのある会社の存在にもなっているわけでございます。

吉野委員 まさに苦労するだけの値打ちのあるいわゆる株式会社であります。ただ、時代時代の環境といいますか、要請によっても変わってくるわけでありますので、これからももっともっとすばらしい株式会社というものを目指していってほしいと思います。

 私も、会社はだれのものかと聞かれると、いわゆるステークホルダー。でも、それは会社に直接かかわった方々だけでしかないのであって、例えば、ここに企業が立地して、公害問題が起きる。そこに住んでいる人々、そういう意味の、いわゆる社会的存在としての会社であって、社会的責任を負っている会社という視点から、あくまでもステークホルダー、利害関係人だけのものだという視点だけではなくて、地域社会にとっても大きな意味の利害関係がありますので、そんな観点からの会社法制というものを、これからまたいいものにしていってほしいと思います。

 次に、会計であります。

 商法三十二条の二項「商業帳簿ノ作成ニ関スル規定ノ解釈ニ付テハ公正ナル会計慣行ヲ斟酌スベシ」、いわゆるしんしゃく規定であります。今度、会社法の規定を見ますと、会社法四百三十一条であります。「株式会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする。」しんしゃく規定から準拠規定、「従うものとする。」ここに大きく変わったわけであります。個人の方々の商店を規制しますいわゆる新商法、ここの規定は十九条の一項なんですけれども、しんしゃく規定がなくなって、やはり「従うものとする。」どちらも「従うものとする。」というふうに変わりました。

 これはまさに、会計慣行というのは会計原則そのものでありまして、会計原則から会計基準が導かれておりますので、まさに会計原則、会計基準に従った会計をしなければならない、こう解釈をすることができるわけでありまして、まさにディスクロージャーの時代、企業の今の本当の姿を皆様方に見せていくという、ディスクローズしていくというところでは画期的な改正になっていると思います。

 私たちの今の世界は情報化社会なんですね。情報化社会というのは、情報の出し手と受け手に分かれると思うんですけれども、出し手は真実な情報を相手に伝えたいし、真実な情報を一生懸命出すわけなんですけれども、果たして、真実な情報だからそれがストレートに受け手に伝わるかというと、そうではないんです。受け手は人間でありますから、信頼できる情報に変わらないと、受け手として心に入ってこない。では、真実な情報から信頼できる情報に変換するにはどうすればいいのか。第三者チェックなんです。

 ここ東京の今現在の電力を、東京だけで見ると五割をつくっているんです、私の選挙区で。原子力発電所なんです。昨年、東電の事件がありました。東京電力も本当に今一生懸命心を入れかえまして、真実な情報を一生懸命出しています。これをチェックしているのが保安院なんです。保安院であっても、福島県は保安院のチェックを信用していないんです。いわゆる第三者性、独立性がないからという形で信用していなくて、県独自で再度チェックして、そして運転していいよ、こうやっているので、まさに第三者性、独立性がどう保たれているかというのが、信頼できる情報に変換できるかできないかの大きな瀬戸際になっていると思います。

 今回、そういう観点からの、会計参与制度、特に中小関係の会社にとって役立つ制度ができたわけなんです。融資が受けられやすいというメリットがあるんですけれども、もっとこの会計参与制度を導入することによって、会計参与にもメリットがあり、また中小企業にとってもメリットがあるか、そんなところを聞きたいと思います。

寺田政府参考人 この会計参与は、まさに委員が御指摘のとおり、外部の第三者によって企業の会計というものがより信頼性を増す、とりわけ、今まで比較的ないがしろにされてきた中小企業にとって、内部で会計処理を行う際に、信頼するに足る専門家がなかなかいなかったものですから、それをむしろ制度化して、外部に対して、そういう会計参与をつけているから信用ができるということを示す、それが大きな目的になるわけであります。

 先ほど申し上げましたように、任意設置でございますので、これが実際に利用されるかどうかはこの会計参与の方々の実績によるわけでございますけれども、実際に計算書類の適正さが確保されるという信用が増してくる、こういう事態になりましたら、全体の中小企業の企業活動にとって非常にプラスは大きいだろうと思います。

 もちろん、委員も御指摘のとおり、融資の面でもプラスになるわけでございましょうけれども、企業活動そのものに、信用できる会社だということで、取引の相手がふえ、あるいは出資者というのも新たに募ることが可能になってくるだろうということで、非常に期待をしているところでございます。

 他方、会計参与になられる方々でございますけれども、今まではいろいろな形で、制度が必ずしも整備されていない中で企業に関与されて努力されてこられた方々でありますけれども、制度的に中小企業をとりわけ念頭に置いてこのような制度ができた以上は、こういうことで企業会計の健全さの維持ということに努力されるということが公式に示されるわけでございますので、その意義は決して小さくないだろうと思います。

 ただ反面、先ほども申し上げたような、それについて不正が行われれば制裁もあるというだけの責任ある立場におつきになるわけでございますから、それを逆に立派にこなされれば、また一層職能集団としての信用も増すというように、うまく好転していくだろうと思われますので、とりわけそれについての御努力を私どもとしてもお願い申し上げたいところでございます。

吉野委員 経営者と共同して決算をしていくというわけなんですけれども、そこにも公認会計士、いわゆる監査ほどの独立性はないのでありますけれども、いわゆる中立性を会計参与の方々にも持っていただきたいと思うわけなんです。

 例えば税理士さんが、きちんとした経理組織がある会社なら別なんですけれども、いわゆる税務事務は当然、記帳代行までやって、本当に関係が深いつながりを持っている会社、銀行からお金を借りやすくなるから、例えば同族会社で、会計参与についていただければ借りやすくなるから、ただそれだけで会計参与になっている方も、本当に深いつながりがあるわけで、果たして独立性があるのかな、中立性が保てるのかなという懸念を持つわけなんです。

 でも、ここに会計参与についての責任という部分があれば、ある意味の深い癒着の心が、そうではないんだ、責任があるから中立性を保たねばならないんだ、そういう効果があるかと思うんですけれども、どんな責任があるのかお尋ねをしたいと思います。

寺田政府参考人 これは、会計監査法人などと違いまして、内部監査でございまして、会社の内部で取締役等と一緒になって会計の健全さを保つ、こういう役割でございます。したがいまして、役員と同等の責任を負うということになっております。

 具体的に申し上げますと、民事上の責任としては、会社に対する責任と第三者に対する責任がございます。

 会社に対しましては、任務を怠って損害を与えた場合には、四百二十三条の一項で損害賠償責任を負うということになります。この責任は総株主の同意がなければ免除することができませんが、社外取締役等と同等の立場であります。一定の距離を保って会社の役員をやっている、こういう立場に立つわけでございます。したがいまして、責任制限制度、つまり株主総会の決議等によりまして責任制限ができるということがございます。ただし、逆に、会社に対する責任は、株主代表訴訟の対象ともなるわけでございます。

 これに対しまして、第三者に対する責任というのは、これも役員同等で、悪意、重過失で、職務を行うについて損害を生ぜしめれば、その損害を与えた第三者に対しまして賠償責任を四百二十九条で負うことになります。

 また、計算書類や会計参与報告書に重要な事項について虚偽の記載をしたということになりますと、立証責任が転換されまして、みずから注意を怠らなかったことを証明しない限り賠償する責任を負うことになるわけでございます。

吉野委員 私の田舎の友達が税理士さんをやっているんですけれども、今度会計参与という制度ができるので就任するか、こう聞いたら、いや、責任が重くてなかなか就任はしたくない、こういう返事だったものですから、それではせっかくつくった制度が生かされない、きちんとした会計、適正な会計をしているということを国民にわかっていただくという制度が生かされないのかなと思いますので、その辺のところを、どうふやしていくかというところをお願い申し上げます。

    〔平沢委員長代理退席、田村(憲)委員長代理着席〕

寺田政府参考人 これは、先ほど申し上げたところから考えますと、ちょっと責任が重いからこういうものになりたくないというのは甚だ残念な感じがいたすわけでございますけれども、それも一つの現実ではあると思います。

 当初はそういうことではございましょうけれども、しかしこの制度というものの理解が進めば、ちょうど今、社外取締役等について、責任が重いからなかなかやりたがらなかったという方々も、積極的に御参加になる機運が少しずつ高まってきているのと同等に、こういうような方々についても、こういう道が開けて、ある程度その情報が普及してくれば、これについてのなりたい意向というのがふえてくるのではないかなというふうに期待をしているわけでございます。

 とりわけ、先ほど申し上げましたように、社外役員と同等の責任の制限がございますので、この責任の制限を保険等を組み合わせてうまく利用していただければ、少なくとも財産的にはそれほど御心配になることはないのではないかなというふうにも思います。

吉野委員 経済産業省でも、日経の新聞を見ますと「指南役養成促す」という形で、会計参与をたくさんつくろうという努力も見受けられるわけであります。

 最後に、中小企業会計の指針を今取りまとめているという新聞記事がございました。これは、中小企業庁が中小企業の会計に関する研究会報告という形で、中小企業庁も、中小企業の会計はこういう指針に従ってやりなさい。もう一つは、税理士会連合会でもつくっている。また公認会計士協会でも、中小企業版会計基準というものをつくっている。

 何か、世の中では三つの基準が中小企業会計にあるんだという、ある意味で誤解だと思うんですけれども、これを統合して一つの指針を出そうというところで、企業会計基準機構ですか、一番権威のある四団体が集まった中でこの指針づくりをしているところです。ことしの六月を目途に一つの指針を出そうという形で、今議論の途中なんですけれども、その中でどんな議論がされているのか、その経過を御説明していただきたいと思います。

寺田政府参考人 私どもの承知しているところを申し上げますと、中小企業の会計指針でございますが、現在は、御指摘のとおり、中小企業庁、税理士会連合会、公認会計士協会がそれぞれ別個におつくりになっていたようでございますが、現在、統合に向けた検討委員会というのをお開きになっておられまして、これらの方々がいずれも入っておられまして、そこで、この指針が企業会計基準とのダブルスタンダードにならないように、中小企業のそれぞれの特性を考慮した選択的な取り扱い等を含めた内容で検討をされているというふうに承知いたしております。

 私どもも十分に御協力を申し上げたいと考えております。

吉野委員 これで質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

田村(憲)委員長代理 次に、柴山昌彦君。

柴山委員 自由民主党の柴山昌彦でございます。

 本日の質疑、これで最後となりますので、どうかよろしくお願い申し上げます。

 今回の会社法の現代語化によりまして、本法律が国民により身近となる一方、企業文化の根幹が大変大きく変わることになるのではないかと私は思っております。

 そもそも、現行法上、会社の種類として、有限責任社員のみがいる株式会社、そして無限責任社員のみがいる合名会社というのが典型的でありまして、その両者がいる合資会社、それから、有限責任社員のみだけれども小規模閉鎖的な性格を有する有限会社というものもある。私は、こうした現行法上の会社の分類というものは、それなりにこれまで一定の合理性があったのではないかというように思っております。

 しかしながら、今度の法律においては、物的会社を株式会社一つというように定めた上で、さらに、有限責任社員のみだけれども、機関の柔軟性、それから利益配当の柔軟性というものを持つ新たな合同会社というものを新設するという改正を行っているわけであります。

 こうした新たな枠組みというものは、どのような要請によって定められたのか。また、今回のこの現代語化がその要請にこたえられているのかという根本的なところなんですが、ぜひ南野大臣の方にお伺いしたいと思います。

南野国務大臣 お答え申し上げます。

 会社法案は、株式会社と有限会社を統合して、先ほど先生がおっしゃったように株式会社に一本化いたしますが、これは、従来の物的会社の区分が理念どおりではなく形骸化しているという上に、物的会社に一様でないニーズがあるということでございます。最近では、株主総会と取締役のみから成る最も基本的な形の会社を出発点として、その成長に応じて、取締役会とか会計参与、監査役、会計監査人など、必要とされる機関を選択しながらステップアップしたいというような中小企業のニーズも出てきております。

 これらの事情にこたえるために、合同会社は、株式会社のように出資の比率で配当等を決めるのではなく、高い技術を持っている社員に厚く配当をすることができるようにするなど、柔軟な経営が可能な有限責任の法人制度の創設が必要であるというベンチャー企業等からの要請にこたえるために新設されたものであります。

 株式会社と有限会社の一本化も、合同会社の創設も、特に中小企業に高く評価していただいております。今回の改正は、その要請にこたえられているというふうに感じております。

柴山委員 昨日、衆議院を有限責任事業組合法がまさに通過をしたわけですけれども、この法律の中では、先ほどもちらっと御指摘ありましたとおり、いわゆるパススルーの課税、構成員課税の要請というものが実現をされることになり、かつ、各組合員が有限責任しか負わないという、その仕組みが実現したわけでございます。

 にもかかわらず、こうした合同会社という仕組みをつくるということについては、どのような実益があるんでしょうか。

寺田政府参考人 これは端的に申し上げますと、今御指摘になりましたLLPは、法人格がない、組合そのものでありながら、しかし出資者が有限責任を負っている。これに対しまして、合同会社、LLCと言われるものは、法人格があって、出資者が有限責任を負っている。ただ、内部的には組合そのものである。こういうことでございまして、違いは、法人格があるかないかというところでございます。

 したがいまして、LLP、有限責任事業組合と比べてどういうメリットがあるかということは、必然的に法人格があることによるメリットということになるわけでございまして、具体的に申し上げますと、例えば、組織変更等で将来株式会社にずっと移行していくというようなことが可能でございますし、あるいは、ほかの会社との合併、分割などが可能であるということがございます。また、法人格があるということでございまして、当然のことながらその名において登記ができる等、社会的にもあるいは取引上も非常に便利な、そういう地位に立つわけでございます。

柴山委員 従前、いわゆる組合的色彩の強い人的会社においては、社員たる地位の移転というものは、ほかの社員の同意があればできましたけれども、原則としてはできなかった。

 一方、物的会社においては、株式会社では、株式は原則として自由譲渡、有限会社は、小規模閉鎖性を加味して持ち分の譲渡が制限をされているとともに、社債発行も認められなかったわけですけれども、新法では、今局長が御指摘になった合同会社を含めて、それぞれの仕組み、譲渡性あるいは社債についてどのような扱いになっているのか、お答えいただきたいと思います。

寺田政府参考人 株式会社は、その社員の地位、つまり株式でございますが、それを譲渡することができる、自由に譲渡することができるというのが本質的な要請でございます。したがいまして、この新しい会社法におきましても、自由譲渡ということを原則にいたしております。

 しかし、これまでもございましたとおり、譲渡によりまして株式を取得したことの対抗要件であります株主名簿への書きかえを株式会社の承認に係らしめることができる、つまり譲渡を制限することができるわけでございます。これは、この新しい会社法においてもそれを引き継いでおりまして、会社の承認ということを制約として課することができるわけでございますが、ただ、新しい会社法においては、その承認すべき機関というのを、現在は取締役会の承認に係らしめているだけでございますけれども、定款自治を認めまして、株主総会等でも承認をすることができるような仕組みにすることもできるわけでございます。

 これに対しまして、持ち分会社、合名、合資会社等でございますが、これらは、社員の地位というのを基本的には全員の承諾がなければ譲渡することができないわけでございます。これは、この新しい会社法においても維持している原則でございます。

 では、どういうときに譲渡ができるかといいますと、有限責任社員については、業務を執行する社員の全員の承諾があれば持ち分の譲渡をすることができるわけでございます。ただし、定款でそれと異なる定めをすることももちろん許されております。

 社債につきましては、株式会社、持ち分会社とも、社債を発行することができるようにいたしております。

柴山委員 特に社債の部分については、有限会社にもこれを認めてほしい、小規模の物的会社についてもこれを認めてほしいという関係各位からの要望があったと伝え聞いております。

 さて、そこでちょっと疑問が出てくるのは、会社、特に社員の個性が重視される人的会社において、一人会社をこのたび認めることにしたわけですけれども、これは会社の社団性というものに反するのではないでしょうか。いかがでしょうか。

寺田政府参考人 これはなかなか、理論的にはいろいろ経緯があった問題でございます。

 つまり、株式会社が発展してきた経緯というものを追いますと、もともと団体というものがあり、その団体に法人格を与え、その地位というものを細分化して現在の発展形態をつくったということがございますので、どうしても団体ということが基礎になっていたわけであります。

 そこで、我が国の商法におきましても、かつては、これは、一人会社というのは認められないというような仕組みもございました。しかし、その後、むしろ、法人格ができた、そういう営利法人である会社を中心に考えて、一体社員は何人でなきゃいけないのかというように論理が逆転したわけであります。

 そこで、株式会社の場合は、特に今まで譲渡性ということがありました関係で、仮に一人会社でも、その地位というのはいろいろな形で複数人に譲渡し得るようなことになるわけでありますので、むしろ一時的に、これは結果的には恒久的になるかもわかりませんけれども、それが一人の会社であっても別に差し支えないのではないかという議論になりまして、そこで、株式会社においては一人会社が現行法で認められるということになっているわけであります。

 持ち分会社も、これは本来は譲渡性を持ち分に持たないものでありますけれども、しかし、先ほど申し上げましたように、社員の加入や持ち分譲渡というものもあり得ないわけではない、非常に例外的な場合ではございますけれども、あり得ないわけではないので、こういうことを全く無視して一人会社を認めないという規制をどうかというふうに問われますと、これもなかなか、論理的には一人会社を認めてもいいのではないかという結論にならざるを得ないわけであります。

 今回の見直しでは、そういうようなプロセスを経て、この持ち分会社についても一人会社が認められたということでございまして、ただ、私どもは、この一人会社がそう主流を占めるような存在になるだろうということは考えておりません。何と申しましても、この持ち分会社というのは、いろいろな団体というもの、無限責任社員を中心とした団体というものがやはり発展的に法人格を持ったものがどうしても中心になるだろうというふうには考えております。

柴山委員 将来の譲渡可能性というところから理論づけてくださったわけですけれども、実益からしても、例えば機関設計が簡素な有限責任社員による会社である合同会社、先ほど谷口先生の方からエンロン事件について言及がありましたけれども、こういうような会社で一人会社を認めると、いわゆる他者による監督ということがどうしても必要になってくるんじゃないか、一人会社によって有限責任の利点というものを享受させるということになると、会社債権者を害する事態が生じてくるのではないかということについて、どのようにお考えでしょうか。

寺田政府参考人 この会社内部の規律をどう保つかというのは、会社法の本質的な課題でございますので、ここは非常に慎重に考えなきゃならないところでございます。しかしながら、複数人いれば会社の規律が保てて、一人ではなかなか保ちにくいというのも難しい論理ではないかなと。

 つまり、こういう会社内部の規律、会社内部で運用を正していくというのは、それは社員が一人であろうが百人であろうが、やはり非常に難しい問題でありまして、それはむしろ、第三者チェックあるいは外部の方に対する情報提供、具体的には財産状況の開示等によって確保されるということになるのではないかなと。

 また、社員全員が有限責任である合同会社については、財産状況の開示について、債権者にも貸借対照表の閲覧権を認められる等の手だてがございますので、そういう形でチェックをしていくということにならざるを得ないのではないかなというふうに思っております。

柴山委員 一方の有限責任組合、これについては、先ほどの質問とちょっと関連しますけれども、一人で設立することはできるんでしょうか。

舟木政府参考人 お答え申し上げます。

 LLPでございますが、LLPは、組合契約を締結することで設立をされるものでございます。したがいまして、必然的に最低二人必要でございます。

柴山委員 そういう意味からすれば、先ほどの寺田局長に対する私の質問で、これが合同会社の一つのメリットになっているかなという気はいたします。

 それとあと、それぞれやはり、今局長の方からもお話があったとおり、第三者に対する公示ということが非常に重要になってくると思うんですが、合同会社と有限責任組合、それぞれ登記にどのような事項が含まれているのか。特に、責任の有限性というところから資本、これについて御説明いただきたいと思います。

寺田政府参考人 合同会社につきましては、これは法人でございますので、基本的な登記事項というのは、法人格を有するほかの会社と同様ございます。資本金の額も登記事項でございます。

舟木政府参考人 LLPの登記事項でございますが、これは今度のLLP法案の五十七条に規定をしているところでございまして、組合の名称、事業内容、所在地、組合員の氏名、名称、住所、組合の設立年月日、存続期間、組合員が法人の場合の職務執行者、組合契約で特に解散事由を定めたときはその事由が登記事項でございまして、出資金自体は登記事項にはなっておりません。

柴山委員 いろいろと両制度の間には違いがあるということがよくわかります。

 続きまして、ちょっと総則の関係なんですが、商号の規律について伺いたいと思います。

 今回の法律で、同一市町村内における商号の重複登記を排除する商法の十九条、これが廃止をされました。また、不正競争目的による商号使用の差しとめ請求を定めた商法二十条についても、これを削除するとともに、同一市町村内における利用にそういった不正競争目的を推定するといった規定、これもまた削除されたわけでございます。これはどのような趣旨に基づくものなんでしょうか。

寺田政府参考人 現在の同一商号、類似商号についての規制でございますが、これは問題点が幾つかございますけれども、第一に、その効力の範囲が同一市町村にあるというところです。東京で申しますと、例えばここですと千代田区でございます。千代田区にある会社を、例えば永田町商事という会社をつくりますと、千代田区に同一目的の永田町商事あるいは永田町商事に類似する商号を持つものについては、この規制によって登記ができない、こういう効力になるわけでございます。

 しかし、今日の経済情勢を考えますと、これが隣の中央区あるいは新宿区には設立できるのに千代田区にはつくれないというのは、余り実態に沿わない規制ではないかという指摘がかねてあったわけでございます。そこで、こういう規制をやめてはどうかという声がかねてからあったわけでございますので、それにこたえるというポイントが一つございます。

 もう一つは、これは同一目的の会社という点にございます。今日、会社というのはいろいろな営業活動をやっております。しかし、登記事項をごらんいただきますと、一定の目的、つまり、例えば物の売買ですとか不動産の建設でありますとかということが書いてございます。それが一致したものについて、同一商号規制、類似商号規制がかかるわけであります。そういたしますと、登記所の方では、それが同じ目的なのかどうかということを非常に苦心して審査をせざるを得ないということがございます。最近では、非常に新しい業種がどんどん出てくるわけでございますけれども、その業種が果たして同じなのか違うのかということを審査するのはまことに難しい問題でございます。

 そこで、これもまた利用者の方から、そういう登記所のさじかげん一つでできたりできなかったりするような規制というのはやめていただきたいという要請がこれまたあったわけでございまして、今回はそれにもこたえるということでございます。

 このように、設立についての事前規制としての商号の機能というのはなくなるわけでございますけれども、しかし、不正競争の目的で、相手会社に損害を与えようということで同じ商号を使うということになりますと、それは当然、事後的な規制の対象にはなるわけでございまして、今後は、そういうことも、規制に移行することによって、全体はスムーズに運営したいというように考えているところでございます。

柴山委員 事前規制から事後的な、個々の事情を考慮した上でのきめ細かな判断に移行するというお話で、その方向性自体は理解できないではありません。しかし、小規模の商店などは、やはり同一市町村内において同じ商号をかたられた事業者が活動すると大変困るという方も大勢いらっしゃるわけでして、そういった紛争を簡易迅速な形で事後解決するための工夫というものはやはり必要になってくるんじゃないかというように思っております。

 例えば、既存商号を含む商号を新たに登記しようという場合に、これは、同一の文字列があるかどうかというのは、今はパソコンですぐ検索できるわけですから、そういった類似先行登記の存在について後行者に対して通知されるようなシステムを設ければ、それは当然、後行者は、そういう先発している人の存在を認識しつつ、一定の覚悟を持ってやるというわけですから、当然のことながら、そういった事後的な紛争解決に当たって、かなり有力かつ簡便な指針を提起するということになると思うんですが、こういうシステムについてどのようにお考えでしょうか。

寺田政府参考人 このような類似商号規制、事前規制の廃止によりまして、かえってトラブルが非常にふえたということになりますと、やはりそれは望ましくないわけであります。おっしゃるとおり、それについての工夫が幾つか必要になります。

 まず、申請者側に対してどう対応するかでございますが、現在は、新たな申請人は、登記所の窓口において備え置いてある商号調査簿というのを閲覧することができますので、事前にどのような商号が既に登記されているかということを調査することは登記所で可能です。

 ただ、それは一々登記所に赴かなきゃなりません。申請する直前ならそうなさるわけでしょうけれども、もっと事前にわからないかという問題がございます。

 そこで、現在利用できるものといたしましては、登記全体のコンピューター化に並行いたしまして、登記情報提供サービスが平成十二年から実施されておりまして、この法律の施行までには全国のすべての会社はほぼその登記情報提供サービスの範囲内に入るだろうというふうに私ども努力しているところでございます。

 これは、インターネットで一定の手続を踏んでいただければ、どういうものが現在商号として登記されているかがわかる、そういう仕組みになっておりまして、この仕組み自体は、登記簿をとるのは有料でございますが、商号にどういうものがあるかということをインターネットで検索なさる範囲では無料でございます。

 本来的には、登記申請人がこういう努力をしていただきたいというふうに思うわけでございますが、当初はいろいろな混乱もございましょうから、私ども登記所の方でも、申請人の方に、事前に、こういう登記をされると登記されているものと全く同じ商号になりますよというような御注意というのは、場合によってはさせていただけるようになるのではないかなというように、そういう方向で少し検討をしてみたいというように思っております。

 また、御指摘になりましたADRその他の紛争解決についても、これも先ほど申したように、裁判所へ行けば事後的に差しとめ等の請求ができることになるわけでございますけれども、しかし、裁判所に行かないで解決できるというのにも一つのメリットがあることは言うまでもないことでございますので、私どもも含めまして、この点についても、施行までにさまざまな努力をさせていただきたいというふうに思っております。

柴山委員 ADRの点についてはよくわかったんですが、前者についてはちょっと納得できない部分がありまして、というのは、後から出ていく人は、それは調べればわかるというのはわかるんですけれども、あえてそういう事業者がいるということを内々に知っていて出ていく場合には、それは、そういうやつを排除して出ていきたいというやつは、調査をしなくてもわかっているわけでして、そういう人が不正の目的を持っているかどうかというものを簡易に立証する手段として強制的な事前通知制度というものをつくったらどうかというのが私の提案でございます。

寺田政府参考人 既に登記されている方の利益をどうやって守るかということで、これもまた大事なことだとは思います。ただ、こういうことを登記所の方でやるかどうかというのには、官と民のすみ分けの問題としてなかなか難しい問題がございます。

 いろいろな工夫はあり得ると思いますので、私どもの方でも、既に登記された方が何らかの形で通知が得られるような仕組みというのは考えられないかどうか、それは少し検討してみたいと思っております。

柴山委員 ぜひ御検討をお願いしたいと思います。

 次に、設立の部分について少し質問をさせていただきたいと思います。

 最低資本金制度がなくなった、平成二年に一たん設けておきながらまた廃止したわけでありますけれども、非常に事業者にとっては大きなメリットが生ずるというのは先ほど来いろいろ御説明をいただいたんですが、やはり、先ほど来御説明があったように、弊害もあるのではないかというように思っております。

 とりわけ、私の弁護士時代の経験から、法人格制度を濫用する事例がかなりふえてくるんじゃないかというように思っております。債務の免脱等、こういうような事例が今後ふえていくのではないかと思うんですが、当初、この法人格の濫用について配慮するというような条文が検討されていたやに伺っていますが、これがなくなってしまったというのはどういう事情によるものでしょうか。また、私が申し上げたような事例について、簡便にそういう事例というものを排除するための工夫というものがやはり必要になるのではないでしょうか。

    〔田村(憲)委員長代理退席、委員長着席〕

寺田政府参考人 最低資本金の制度の廃止についてはたびたび御説明しているとおりでございますけれども、おっしゃるとおり、これに伴って弊害がないかどうかということについても、もちろん慎重に考えなきゃいけないところでございます。

 そのことと若干関連をいたしまして、先ほど申しましたような法人格の濫用について具体的に規定を置くかどうかということでございますが、この平成十四年からの新しい会社法の検討の過程では、とりわけ試案に至る過程では、そのことについて検討いたした経緯がございます。

 しかしながら、検討の結果、逆に、濫用を否定する、こういう濫用は許さないということで条件をつけてしまうというのは、今の法人格否認の裁判所の論理というのが比較的いろいろな場合に柔軟に対応できるような形で設けられているということを考慮いたしますと、むしろ決め込んでしまわないか、つまりそれ以外の場合には法人格の濫用に当たらないということを決めつけてしまうのではないかという、つまりプラス・マイナスの比較からするとマイナスの方が大きいのではないかというような御議論がございまして、最終的に、法律上の規定という意味ではそういうような規定を置かないことにいたしております。

 しかしながら、そのことは、この場合に法人格の否認の論理がきかないということではもちろんないわけでありまして、今後もそのようなことの存在ということは念頭に置いて法人格というものを考えていただかなければならないわけでございます。

柴山委員 ありがとうございます。

 設立については、その健全性というものが非常に大きな要請になってくるのではないかなというように私は思っております。

 その観点から質問させていただきたいんですが、平成二年に、事後設立、会社設立後二年内に営業のために継続使用する資産を資本の二十分の一以上に当たる対価で取得する、こういった行為は、現物出資ですとか財産引き受けと同様の規制ということで、検査役の検査を要求するという法改正がなされたわけであります。しかし、今回、こういった検査役の検査の制度というものが廃止されることになったわけですが、なぜこのような廃止が行われたんでしょうか。

寺田政府参考人 これも平成二年の法改正によるものでございますけれども、もちろん事後設立におけるさまざまな問題というものについては適切に対応しなきゃならないわけでございます。この検査役の調査というのも、それを企図して導入された制度であります。

 しかしながら、二年間の間に財産を取得する場合にすべて検査役の調査を受けなきゃならないということについては、非常な費用や時間がかかる、円滑な事業の遂行の妨げになるということで、実務界には非常に評判が悪かった制度でございます。設立直後に大きな財産を購入するということは相当多く見られるわけでございまして、それに対してチェックがあるということは、なかなか会社の運営にとってはつらい問題だという御指摘があったわけでございます。

 こういう設立規制を避けるために、むしろ会社の成立後数年を経過したような休眠会社というものの利用が起きたり、あるいはこういう会社の高値での取引がされるというような非常にゆがんだ実務さえ登場したというふうに私どもも聞いております。

 そもそも、会社が事業のために必要な財産を購入するということについて、その対価が適正かどうかということは、これは会社の運用上非常に基本的なことでございまして、当然のことながら、取締役あるいは取締役会、あるいは場合によっては監査役というような、会社の普通の機構でその適正さがチェックできないということは、逆に申しますと、非常にゆゆしいことでございます。そういうようなことを、あり得るといいますか、しばしばあり得るというようなことを前提に制度を組むのはやや行き過ぎではないかなと私どもも、平成二年に導入したところではございますけれども、反省するに至ったわけであります。

 むしろ、先ほどのような、ゆがんだところに逃げ込ませるようなことをしないようにして、しかしながら、本来の取締役あるいはその他の執行者に対するチェックという形でこういうものの適正さは担保すべきではないかなというふうに考えているところでございます。

柴山委員 基本的には、事前規制というよりは、事後不都合が起きた場合にその責任をしっかりととっていくという方向、今回の法改正は基本的にそういう大きな流れになっていると思いますので、それがもし徹底されていれば、それで了としたいと思います。ただ、今御指摘になった、今回の設立の健全性を初めとして、資本の充実についての責任というものが軽くなっているのはおかしいんじゃないかというのをちょっとまた後ほど私は指摘させていただきたいと思います。

 続いて、機関の方に質問を移らせていただきたいと思います。

 近時、リコール隠しですとかあるいは粉飾決算が続出して、コンプライアンス強化ということが非常に大きなテーマとなっているわけですけれども、こうした観点から本法を見ると、会社のガバナンスを柔軟化して、株主の自主権限、自主監督権限を強化するというような仕組みになっていると思います。これもやはりシステムの柔軟化という今の流れに沿ったものであると思うんですが、果たしてそれでこれまで同様の会社債権者の保護というものが図れるんでしょうか。

寺田政府参考人 会社のガバナンス、つまり会社の内部で株主と執行を任された役員とでどういう権限の分配があるかということと債権者の保護ということは、私どもは直接結びつかないのではないかなというふうに考えております。

 株主と役員との関係、あるいは株主同士の関係については、おっしゃるように、この会社法においては相当柔軟化いたしまして、株主総会の決議により、あるいは定款の変更により、さまざまなことが可能になっております。しかし、債権者保護は、そういうこととは相対的に別の次元の問題として十分に考えていかなきゃならない、むしろ会社の有限責任との関係で考えていかなきゃならない問題だろう。

 具体的に申し上げますと、この会社法においても、会社の財産状況が適切に開示される、つまりディスクロージャー、あるいは会社にその財産があると示されている財産が現にきちっと留保される、そういうことが債権者のためには重要だと考えておりまして、まず、財産状況の適切な開示といたしましては、会計帳簿の作成の適時性、正確性の明文化、あるいは会計参与制度の創設、会計監査人の設置範囲の拡大、これらの施策をやっておりますし、あるいは株式会社はすべて計算書類、貸借対照表の公告の義務づけがなされているわけでございます。

 また、会社に示された財産というのが適正に留保されるかどうかという点については、株主に対して財産の払い戻しをする、従来ですと配当と言っておりますが、その配当規制について、一般的に財源規制を課す。これは自己株式の取得も、そういう整理で同じような規制をいたしております。また、財源規制に違反して配当を行った取締役の責任について、これが仮に配当可能利益を超えるということになりますと、総株主の同意があっても免除ができないという非常に厳しい規定を設けております。さらに、会社には純資産が三百万円なければ配当等ができないということにもいたしております。

 こういう形で、債権者に対しましては、会社の財産が十分に表示どおりあり、その表示が適正に世の中に示されているということを重視しているということで理解をいただきたいと思います。

柴山委員 会社債権者と限るのが少し語弊があるのであれば、利害関係人、ステークホルダーと言ってもいいかもしれません。

 いずれにしましても、会社の経営が適切になされるかどうかというのはやはり重要なことではないかと私は思っておりますので、以下ちょっと各論でお尋ねしたいと思います。

 今度の会社法で、株式の譲渡制限を行っているような会社、当然、こうした会社でも大会社はあるわけですけれども、従前、こうした会社にも当然のことながら取締役会が設けられて、取締役の相互チェックによって業務運営の適正性というものを図ってきたわけですけれども、譲渡制限会社、今度は取締役会が必ずしも必要ないというような形になっていますが、本当にこれで妥当なんでしょうか。

寺田政府参考人 まず、今回のガバナンスの基本を申し上げますと、株主総会の権限というのは、もし株主総会が望めば、運営、組織、管理の基本事項すべてについて株主総会の権限とすることができるわけでございます。これを二百九十五条の一項で定めております。

 しかしながら、取締役会を設置した会社においては、これらの会社の業務に関する重要な事項、これは取締役会にゆだねられる、こういう仕組みになっております。この場合には、株主総会が決議することができる事項は当然限定されるということになるわけであります。

 午前中も御説明申し上げましたとおり、株式会社法制の中で、今回は一方では公開ということを基準にし、他方では大か中小かということを基準にして、それによって、どういう運営形態、どういう役員の構成をとるかということを決めたわけでございますけれども、大会社について言えば、これは相当に大きいわけでございますので、財産管理面で重要性は高いということで会計監査人の存置というのを義務づけておりますけれども、しかし、大会社であっても譲渡制限を課している会社というのはだれでも株主になれるというわけではないので、必ずしも取締役会のように株主総会の権限を代行するという組織を義務づけることはないのではないか。

 つまり、やはり譲渡制限会社というのは株主にある程度の特殊性があるということも念頭に置かなければなりませんので、そういうところは株主総会の機能というのもある程度あるということを前提に制度を組まなければならないだろうというわけでございます。

 したがいまして、大会社であっても、譲渡制限会社においては取締役会の設置というのを必要的ということにしておりません。しかし、もちろん会社はさまざまな御事情があって、そういう取締役会を設けるということのメリットをお感じになることもあるわけでございますので、それは任意的には取締役会を置けるということになるわけでございます。

柴山委員 もう一つ、私が非常に疑問に思っているのは、取締役会を設置しない、取締役は一人でいいんだよという株式会社において、監査役会を設置できないという定めになったのは一体どういうことなんでしょうか。

寺田政府参考人 これは、先ほど私が申し上げました原則からいいますと、論理必然ではございません。つまり、一応、大会社、中小会社と公開会社、非公開会社で分けまして、基準を立てた上で、後はその範囲内で自由にやってくださいというのが基本でございますので、今おっしゃるように、取締役しかいないけれども監査役会がある会社というのも理論上は可能ではないかなというふうに私自身思うわけでございます。

 ただ、この場合は、取締役はあるいは場合によっては一人で、監査役は三人以上、こういうことになるわけであります。しかも、監査役は、この場合は社外監査役も入ってくるわけでありまして、そういう組織形態というのは現実にはちょっと考えにくいんじゃないかなということでございまして、今まで申し上げたことからすると、法律は緩やかに決めておいて、後は御自由にというポリシーからすると、少し逸脱した決め方かもしれませんが、そこまでニーズはないんじゃないかなということをここでは考えさせていただいたわけでございます。

柴山委員 定めは柔軟にというお話がたびたび出ておりましたけれども、今、資本市場の監督体制、これについてやはり充実強化させるべきではないかという議論が大変我々の間でかまびすしくなされているわけでして、例えば、日本版のSECの導入というか強化ですか、あるいは継続開示に関する課徴金の制度とか、そういうような仕組みというものが検討されているわけであります。

 そんな中で、やはり大きな会社については第三者によるきちんとした監督ということが必要になってくるのではないか、社外取締役の義務化、例えばこれを上場公開会社についてはやっていくべきではないかという議論があるわけなんです。今では当然、重要財産委員会を設置する場合には社外取締役は一人以上いなくちゃいけないということになっていますけれども、もう少し拡大をしていかなければいけないと思うんですが、この点、どのようにお考えでしょうか。

寺田政府参考人 これは大変難しい問題です。社外取締役は、言うまでもなく、社内に余り縁のない方を取締役としてお願いして、いろいろなチェックを相対的に独立してやっていただきたい、そういう意図でございます。それはそれとして、有用に思う企業の方はおいでになりますし、これを非常に有力なガバナンスの一つの工夫というふうに評価される方も多いわけであります。

 しかしながら、この社外取締役を強制するというのが果たして現実的かなということはやはり考えざるを得ないわけでございまして、会社によってはこういう社外取締役ではなく、むしろ監査役を充実させたいというふうにお思いの会社もおありになりますでしょうし、もっと違う形で会社のガバナンスを行いたいという会社もおありになるわけであります。

 委員会設置会社については社外の方というのが一つの大きな役割を持っておられますけれども、すべての株式会社、特に取締役の人数が余り多くない小規模の株式会社にこれを義務づけるというのは、少し義務としては重過ぎるかなという感じがいたしております。

柴山委員 今、監査役を強くしてもいいんじゃないかというお話があったんですが、その監査役も実は十分監査ができない仕組みになっているんじゃないかなということでお尋ねしたいんですが、今の制度ですと、監査役等に貸借対照表等を提出してから一定期間を経過しなければそれを承認する定時総会を開けないというたてつけになっているんですけれども、これが今度の法律では廃止されてしまう。そうなりますと、当然のことながら、監査役あるいは監査役会の監査の期間が十分確保できないのではないかという危惧が生じるんですが、これはどのようにお考えでしょうか。

寺田政府参考人 監査役に監査の期間を十分与えないということは許されないことでございますので、会社法でも、監査役等に一定の監査期間を確保するということに四百三十六条でなっております。

 ただ、現行法は、おっしゃるとおり、定時総会の七週間前に提出義務を課することによって、事実上、定時総会の開催時期を制限するというような形での規制になっております。しかし、それはどちらかというと、規制の仕方としてはやや異例で、定時総会の開催時期と監査に十分の期間を与えるということをぴったり連動させるという必然性はないのではないかと私どもは考えたわけでございます。

 もちろん、監査を受けた計算書類を定時総会に提出するというのは今度の会社法でも同じでございますから、監査が終了しなければ定時総会は開けないわけであります。しかしながら、その監査の期間の確保というのは監査の期間の確保という規定自体で決めたい、これが今回の考え方でございます。

柴山委員 ありがとうございます。

 続いて、取締役の任期についてお伺いしたいんですけれども、小規模の会社について取締役の任期をどうやって考えていくかというのは従来から大きな問題となっていたんですが、このたび最長十年ということになったわけですが、今、商事時効も五年ということになっていますし、また、最後の登記から五年間全然役員登記等が変わっていない場合に休眠会社が解散するというような制度、これも五年ということになっております。にもかかわらず最長十年というのは、いかにも長過ぎるんじゃないかなと。

 十年というと、個人商店も代がわりして、子供が立派な大人になるという大変な長い期間であります。十年という期間に合理性があるのかどうか、お聞かせいただきたいと思います。

寺田政府参考人 この点については、この法案を作成する過程でもいろいろ議論があったところでございます。

 実は、有限会社を廃止いたしまして、現在有限会社を想定されるような会社も株式会社として取り込むということにいたしました時点で、取締役の任期をどうするかというのは非常に大きな問題になったわけであります。有限会社には、御承知のとおり、役員の任期というのはございません。これに対しまして、株式会社について現行法は二年という年次を決めております。委員会設置会社については一年でございます。

 したがいまして、これをどう調整するかというところでございます。株式会社に典型的な大きな会社を考えてみれば、おっしゃるとおり、もっと短い期間でどんどん取締役の任期を来させてチェックをさせるということも十分考えられるわけでございます。

 しかしながら、やはり相当小さい会社も含まれるということが先ほどのことからもおわかりいただけるとおりでございますので、そういう会社について全く規制をしない、任期を決めないというのもともかくといたしまして、任期をどんどん短くしていくというのはやはり相当の負担になりますし、また、そういう必要性も必ずしもない会社も少なくないわけであります。

 そこで、さまざま調整いたしました結果、原則は二年としつつも、定款で十年と定めて、その範囲内で決められるという仕組みにいたしたわけでございます。

 これについてどういう評価があるかということはさまざまでありましょう。十年はおっしゃるとおり長過ぎるということもございますが、しかし他方で、今まで有限会社について全く規制がなかったのが十年ごとにやらなきゃならなくなったというのは相当の負担だとおっしゃる方も実はいることも事実でございます。そういうことで、私どもは、バランスからいうと、このぐらいが制度の大枠としては妥当かなというふうに現在のところは考えているところでございます。

 なお、会社法でこのとおり任期を決めたということになりますので、休眠会社の意義ということも変更をせざるを得ません。この会社法では四百七十二条で、最後の登記があった日から十二年を経過したものを休眠会社として扱うということにいたしているところでございます。

柴山委員 ありがとうございます。

 取締役会についてお尋ねします。

 従前、我々の理解では、持ち回り決議はいけませんというのが一つの大きな原則になっておりまして、取締役会の書面決議を認めてしまうと、取締役が実際に集まっていろいろ協議をしていかなくてはいけないというその実質が失われてしまうと思うんですが、今回の法律ではこれを認めてしまっております。これは問題ではないでしょうか。

 また、仮に書面決議を認めるとしても、やはり会社の実態に合わせて、これは一定の事項に限っていくべきではないでしょうか。

寺田政府参考人 これも、非常に小さな会社も株式会社の中に取り込むということによって、考えるとなかなか難しい問題になっております。

 現行法ではもちろん認められていなかったわけでございますので、これをどうするかということでございますが、会社法では、いろいろ小さな会社が簡易に取締役会を開かなきゃならない場面も想定いたしまして、書面決議も認めるということにいたしております。

 しかし、これはかなり限定的でございます。まず、定款に定めを置くことが必要でございます。しかも、取締役会の決議の対象になる事項についてそれぞれの取締役が同意をしており、かつ、業務監査権限を有する監査役が設置されていて、それについて監査役には意見がないという条件があるわけでございます。

 つまりは、株主、取締役、監査役、どれも、まあ問題ない、集まって相談するまでもないというときにだけこの書面決議が認められるということでございますので、社会的にほかにいろいろな会議体がございまして、一定の場合には認められておりますが、ここでも非常に限定的ながらそれを認めたというように御理解をいただきたいところでございます。

柴山委員 ありがとうございます。

 さて、いよいよ事前規制から事後責任の強化という、その事後責任についてお話を移していきたいと思いますが、取締役の責任を今回かなり広範に過失責任化しております。

 まず、そういったものは一体どういうものがあるのかということについてお伺いしたいと思います。

寺田政府参考人 現行法においては、二百六十六条で違法配当ほか四つの類型について取締役の無過失責任が認められ、法令と定款の違反についての責任、これが過失責任、こういう理解を通常されております。これに対して、委員会設置会社においては、違法配当でありますとかあるいは利益相反行為についての責任は、これは明らかに過失責任だという明文の規定があるわけでございます。

 そこで、今回、会社法を整理するに当たって、この点についてどう調整をするかという問題を検討したわけでございます。これは、とりわけこの前の商法の改正における委員会の附帯決議でも、この点についての調整が必要であるという御意向が示されていたところでもございます。

 私どもは、この点について、委員会設置会社に認められている過失責任というのがむしろ原則としてはあるべき姿であって、無過失責任というのは今の法律の立場からするとやや異例であるということで、しかも、事の実態を見れば、仮に無過失責任を過失責任にいたすとしてもそう大きな違いは出ないんじゃないかなという感じもいたしたところで、具体的に、分配可能額を超える額の剰余金を配当した場合の責任その他について、無過失責任を過失責任に転換させたということで立法的な解決を図ったわけでございます。

柴山委員 ただ、我々の従前の理解からすると、やはり取引主体にとっては、資本の充実というものは、資本を登記している以上、これはやはり絶対に信頼できるものでなくてはいけないわけで、証取法でも、開示書類の虚偽記載、これについては、市場における民事上の無過失責任、そういう制度になっております。

 無過失責任、要するに、先ほどディスクロージャーをきちんと確保していくべきだというお話をされましたけれども、そういった信頼に対するしっかりとした責任というものは、私はやはりとっていくべきじゃないか。従来、我々、やはり資本充実というのは担保責任で無過失責任というようにずっと教わってきたということもありますので、この点について、特に資本充実との関係で御説明いただければと思います。

寺田政府参考人 資本充実の原則は、先ほども御説明しましたとおり、表示された額の資本を現実に確保しなければならないという点でございます。したがいまして、それについては取締役は、役員は非常に重たい責任を持っているわけでございますので、これについて確保ができなければ、例えば設立のときはそれは許されないということになるわけでございますけれども、取締役の責任をどういう形でとるかということは、それとは別に過失責任化するということに矛盾はないだろうというふうには考えております。

柴山委員 一応、次の質問に移らせていただきます。

 今回、会社役員等についての責任ということで、会計監査人の責任、これについて、代表訴訟の対象となるという仕組みになるとともに、社外取締役同様の一部免除が認められたわけであります。しかし、会計監査人というのはそもそも会計書類を自分たちの専門性をもって監査するというのが職務なわけですから、社外取締役が会社の外から取締役の職務を執行するというのとはわけが違うというように私は思っております。一部免除というのは理論的におかしいのではないかと思っておりますが、この点、いかがでしょうか。

寺田政府参考人 おっしゃるとおり、会計監査人の責任の免除について、現行法上は何らの規定もないわけであります。

 これに対しまして、社外取締役の株式会社に対する責任についてこれは免除する規定がございまして、しかし、免除するには原則として総株主の同意を要するということにされております。また、一定の要件を満たす場合には、株主総会の特別決議等で責任の一部免除が認められるわけであります。

 会計監査人の株式会社に対する責任につきまして、これは非常に重大な責任でございますし、その地位の社外性ということもございますので、私ども、今回も、これはいろいろな平仄を考えまして、やはり社外取締役の株式会社に対する責任ということと異なるのはおかしいのではないかという結論に至ったわけでございます。したがいまして、会計監査人の責任についても社外取締役と同様の一部免除の制度を導入するということにいたしているわけでございます。

 なお、この会計監査人の責任の一部免除について、責任の限度額として確定金額を法定するということも一つの考え方ではございますが、法律上、当然に、確定金額に至るまでの責任が限定されるということは必ずしも合理的ではないのではないかということから見送っているところでございます。

柴山委員 必ずしも質問にお答えいただけていないかなと思いますが、時間もございませんので、先に進ませていただきます。

 代表訴訟についてお伺いしたいんですが、先ほどの御質問の中で簡易却下について御説明をいただきました。今の制度でも、先ほど局長御自身が御説明になりましたけれども、訴権濫用による却下ということもありますし、また、悪意の場合の担保提供命令、これも可能なわけですけれども、従前の制度で、果たして、そういう悪意の株主に対する制裁というか、濫訴に対しては対応不十分なんでしょうか。

寺田政府参考人 おっしゃるとおり、この種の訴訟、つまり本来の目的に沿わない代表訴訟の利用については、裁判所の方でさまざまな工夫をされております。訴権の濫用の法理により訴えの却下をされた例もあるということは先ほど御説明申し上げました。また、被告側の請求によりまして担保の提供が命ぜられるという仕組みもあるわけでございます。

 しかしながら、訴権の濫用については、これは必ずしも定着している扱いではございません。どういった場合に訴権の濫用になるかということを明示しておくことには一定の合理性があるというように考えております。

 それから、担保の提供命令というのは、これは、悪意の株主が訴訟を提起したことによって取締役自身に損害が生ずる、こういう場面の措置であります。私どもがこの場合に念頭に置いておりますのは、むしろ、取締役ではなくて、会社自体に損害が生ずる、原告の悪意ある訴訟追行によって会社がお金を原告に払わなきゃならない、無理やりですね、そういう事態を原告がねらって訴訟をしてくるというようなところを念頭に置いてあるわけでございますので、担保提供等によっては対応できないのではないかなということで、あえてこのような仕組みを今回御提案しているところでございます。

柴山委員 ありがとうございます。

 大分時間がなくなってまいりましたので、株式の問題に移りたいと思います。

 このたび、譲渡制限会社におきまして、株式の相続の扱いなんですが、相続というのは、いわば親の地位に取ってかわる、包括承継であるということになっているにもかかわらず、株式会社が相続人から株式を取得できるというような制度に改められているわけですが、これは一体どのような趣旨に基づくものなんでしょうか。

寺田政府参考人 おっしゃるとおり、相続は包括承継でありまして、財産の承継という観点からいたしますと、全く同一人が財産を持っている状況と変わりがないというのが法律上の原則でございます。

 しかし、組織上を考えてみますと、相続人が被相続人の地位にそのまま成りかわるということが必ずしも適当でない場面もありまして、株式の譲渡制限制度が置かれている株式会社において相続が生じた場合もその一つでございます。

 この譲渡制限制度というのは、形の上で一般承継という財産承継の形が認められている場合であっても、会社にとって必ずしも適当でない方が株式の所有者、株主におなりになるということはやはり認めがたいときもあることは否定できないところでございます。株式の売り渡しをもって株主たる地位を失わせるということは、それなりに閉鎖会社、非公開会社の実体を維持するときに必要な制度の一つと言えなくもないわけであります。中小企業における円滑な事業の承継という観点で団体からいろいろな要望が寄せられている中にも、この点が一つのポイントにもなっていたわけであります。

 そこで、今度の会社法では、定款の定めによりまして、相続その他の一般承継により株式を取得した者に対して株式会社の側から売り渡しを請求することができるという制度を設けたわけでございます。

柴山委員 ありがとうございます。

 株式の問題として最近よく議論になっているのが株式分割の問題でして、平成十三年に商法改正で一株当たりの純資産額規制、五万円を下回ってはならないという規制が廃止されてから、大分盛んに無償交付、分割等々が行われるようになってきたわけです。

 ただ、最近は、これが錬金術に使われているんじゃないかと。実際に株券が手元に届くまで売買ができないということで需給バランスが崩れるとか、あとは、小口になればそれは投資対象としての魅力が増すというような形で、錬金術に使われているんじゃないかという批判があるんですが、これに対して何か会社法上の手だてというものは講じられているんでしょうか。

寺田政府参考人 これは基本的には株式の流通上の問題で、市場の問題もございますので、いろいろ市場のルールでもっての工夫というのも一つあろうかと思います。

 会社法上の手だてといたしましては、昨年の通常国会で成立いたしました株式等の取引に係る決済の合理化を図るための社債等の振替に関する法律等の一部改正法によりまして、上場会社は、株券を出さない、不発行会社になるということが可能になったわけでございます。

 こうなりますと、株券の交付なしで株式を譲渡することが可能になりますので、おっしゃるような、株式の譲渡があるのにもかかわらず株券の交付がないためにさまざまな弊害が出るということはなくなるわけでございます。会社法案もこのことを前提にいたしておりますが、ただ、今申し上げた法律の施行は、公布の日の五年以内の政令で定める日というふうになっておりますので、平成十六年の六月から五年さらに先ということでございますから、今から四年少し先ということになるわけでございます。

 もう一つは、現行法においても株券の保振法がございます。

 これについて、原理的といいますか、法律の制度の上では、預託株券について、株券が発行されない段階でも株式の取引をすることがこれは可能でございます。ただ、保振の制度の運用に当たっておられる側面から申し上げると、運用者の方で、新株券が発行されるまでは株式の譲渡をしないという扱いを現在はされておられるようでございます。しかしながら、今のような問題もあるので、保振機関や株券の保護預かりを行っている証券会社の皆さんを中心に、もう少しこの点の運用が改善できないかということで御相談なさっておられるというふうに私どもは承知しております。

柴山委員 ありがとうございます。

 いよいよ佳境ということでしょうか、MアンドAの関係に行きたいと思っております。

 合併対価の柔軟化によって、外国会社の子会社とのいわゆる三角合併というものが法制度上認められるようになったわけですけれども、こうした三角合併、これは諸外国ではどのような取り扱いになっていますでしょうか。

寺田政府参考人 親会社の株券を合併によって消滅する会社に与えることによって三角合併をするというのが今御説明のあったいわゆる三角合併でございますが、これは、アメリカ合衆国において、ほぼすべての州が認めているところでございます。ただ、ヨーロッパではこのような形での合併は法制上は認められておらないようでございます。

柴山委員 当然それにかわる制度ということになるんでしょうが、いずれにいたしましても、日本で今回この制度を導入するに当たって、自民党の中でも、敵対的買収を促進するという効果がないのかということが活発に議論されましたが、これについての御説明を簡潔にお願いしたいと思います。

寺田政府参考人 一言で申し上げますと、合併というのは組織変更の当事者の合意による出来事でありまして、買収が敵対的であるかどうかであるにせよ、どういうふうに成功するか成功しないかというのは、これはそれに至る前の企業の株式の取得の問題でございまして、両者は直接的な関係はないというふうに理解をいたしております。

柴山委員 簡潔な御答弁ありがとうございました。

 ただ、会社の過半数の支配権を持った場合に取締役の解任決議ができるようになりましたね。従前は特別決議によらざれば取締役の解任というものはできなかったんですが、そういう意味では、経営陣の交代ということがより容易になったという側面は否定できないと思うんですが、この点、いかがでしょう。

寺田政府参考人 おっしゃるとおり、取締役の解任には特別決議が現行法では必要だったのを、ガバナンス強化の観点から、解任の要件を原則として普通決議に引き下げたわけでございます。つまりは、三分の二でない、二分の一をとっても取締役をとれないということはやはり原則として適当でないという判断でございます。

 しかし、会社のあり方は会社自身がお決めになることでございますので、これは定款でそういう要件でないように定めることもできるわけでございます。具体的には、もちろん特別決議に改めることも可能ですし、さらに、特殊決議等の厳しい要件を課することも法律上は可能ということになります。

柴山委員 そういう懸念がある一方で、先ほど小泉総理の対日投資促進のお話もありましたけれども、こうした対日投資を促進していくことが日本企業の活性化につながっていくというお話もあるわけでして、この点、経済産業省はどのようにお考えでしょうか。

桑山政府参考人 一般論として申し上げますけれども、今先生御指摘のとおり、対日直接投資の促進を図るということは、新しい技術とか経営ノウハウの導入、あるいは雇用の維持確保、あるいは消費者利益の増大といったようなことに資するということでございますので、我が国の経済活性化のかぎになるものと認識をしております。

 ただ、他方、こういう外国からの投資を促進するということといいましても、守るべき我が国の安全を損なうとか、そういうようなおそれのあるような外国からの投資等につきましては、外国為替及び外国貿易法、いわゆる外為法によりまして、きちんと規制することが必要と考えております。

 経済産業省といたしましても、このような認識のもとで安全保障上の必要な措置等に万全を期すということを十分確保いたしました上で、引き続き対日直接投資の促進に努めてまいりたいと思っております。

柴山委員 また、今日本企業はやはり、先ほどの御質問にもあったのですが、これは経済産業省の企業価値研究会でよく御検討されていると思うのですが、不当に低くしか評価されていないんじゃないかという実態があると思うんです。その実態についてどういうふうに把握されているか、お聞かせいただきたいと思います。また、その理由についても御見解を伺いたいと思います。

舟木政府参考人 日米の株価の時価総額の御質問でございます。

 これは、日米の株価の時価総額は網羅的に把握するということはできないわけでございますが、例えば、日本の東証一部上場企業の時価総額とアメリカ・ニューヨーク証券取引所上場企業の時価総額を二〇〇四年八月時点で比較をしてみますと、東証は三兆ドル程度、ニューヨーク証券取引所は十二兆ドル程度ということになっておりまして、約四倍の差があるということになっております。

 どういう要因でこういうことになったのかという御質問でございますが、株価の水準は、経済産業省としましても、その水準自体についてコメントすることはできないわけでございます。いずれにしましても、いろいろな要因によりこういう現実になっているわけですが、企業がみずからの価値を向上するための経営努力を引き続き行っていくことによって、日本企業の株価が上昇していくことを期待したいと考えております。

柴山委員 一般的には、利益配当が非常に少ない、あるいは経営の透明性、予測可能性というものに欠けるというようなことが要因として指摘されていると思います。

 今申し上げたような守るべきか開くべきかというはざまの中で、今回の会社法の改正で買収防衛策というものがとられていると思うんですが、これが本当に適切、有効なものなのかどうかということについて、どういう買収防衛策がとられているのかとともに簡潔に御説明いただきたいと思います。

寺田政府参考人 おっしゃるとおり、買収防衛策自体は企業でいろいろお考えになることでございます。

 極端に申し上げると、株価を上げることあるいは下げること自体が買収防衛策になる場合もございます。そういうこととは別に、普通に言われておりますポイズンピルですとか黄金株だとか言われるものがございます。これは、ポイズンピルでいいますと、強制転換条項つき株式あるいは新株予約権を利用した防衛策でございますし、黄金株は、種類株と譲渡制限というものを利用した防衛策でございます。

 このうち黄金株について、わかりやすいので申し上げますと、黄金株は、例えば一定の会社の重要な事項について、ほかの株とは違った権限を持つ株式ということになるわけでございます。具体的には、例えば合併をするときに、その合併は許さないというようなことを、この株式を持っている人だけがそういう権限を持つ、そういうような形での株でございますけれども、こういう株というものを持つということは現行法上も許されてはおります。しかし、だれにでも手に渡るということになりますと、防衛策としては少し不十分なものだというふうに理解はされているわけであります。

 それを、会社法によりまして譲渡制限と種類株というものを組み合わせることができるということになりますと、これは甚だ強い効力を持つわけでありますので、そういうことが会社法のもとでとれるようになるということは、それなりの有効性は防衛策としては高まる、そういう余地を与えるわけであります。

 ただ、そういうのを実際に利用されるかどうかということは、これはポイズンピルが毒薬ということで呼ばれていることからもおわかりになりますとおり、今さまざまな副作用があるわけであります。当然のことながら、マーケットに敬遠されるということも一つあり得るわけでありますので、それは会社自身でそれぞれ御判断になられることでありますし、特にポイズンピルと呼ばれるものの中には、やり方によっては相当株主の地位を危うくするというものもあり、裁判所でこれが完全に有効だというふうに認められるについて疑問符が打たれるものもあり得るわけであります。

 そういう意味で、経済産業省の方では、こういうものを特に客観的に会社の取締役の立場を離れて評価できる人が評価できるシステム、あるいは一般にこういうものをとっているということが十分に開示されるかどうかというようなマーケットに対する発信、そういったことを組み合わせてガイドラインを設けようというような方向で御検討になっておられると承知しております。

 私どもも、そういうことの努力と相まって、今回の会社法の整備とともに、企業の防衛策というのは進化していくだろうというふうには考えております。

柴山委員 ソトーあるいはライブドアの非常にジャーナリズムを騒がせた事件等で、今局長の方からお話があったとおり、この問題について過敏になっているという面もあるのじゃないかなと私は思います。

 こうした防衛策が経営陣の保身に使われ、過剰防衛ということになっていかないかという懸念がやはりあると私は思いますので、これについて、先ほど第三者チェックというお話がありました、マーケットによる淘汰というお話もありました、ほかに何か過剰防衛に対するチェック、考えられますでしょうか。

寺田政府参考人 これは、今委員も御説明の中で引用されました事件については、裁判所がその有効無効を御判断になったわけであります。その際には、株主への影響その他を考えまして、現在の特に不公正な有利発行等の枠組みを利用して、その枠内で違法と判断されたわけでありまして、そういう裁判所によるチェックというのも一つ考えられるわけであります。

 そもそもは、何といいましても株主を中心といたします会社の経営機構の中でそういうことの健全性が判断されるというのが第一のポイントではないかと思いますので、会社の関係者の皆様には、私どもも、こういったことの実際の機能については、経済産業省の方と御協力して十分に御説明した上でおとりいただく必要があるんじゃないかなというふうに思っているところでございます。

柴山委員 最後の質問です。

 企業価値、これにおいて、従業員あるいはステークホルダー、そういったものをどのように考えて、それらの利益も保護していかなくてはいけないのかということが、私はこれから新しいテーマとして問われていくべきではないかなと思っておりますので、そのあたり、経済産業省の方で何かお考えがあれば。

舟木政府参考人 従業員や取引先、地域といったいわゆるステークホルダーに関しての御質問でございます。

 企業価値、これは会社自体の持つ利益の総体であろうかと思いますが、これを長期的に高めていくためには、やはり従業員、取引先、地域といったステークホルダーと良好な協力関係を確立するということが不可欠であろうというふうに考えております。

 したがいまして、例えば、買収者が、ステークホルダーの利益をいたずらに犠牲にして、株主への配当だけをふやすような提案は、これは企業価値を損なうものであるというふうに我々考えておりまして、長期的な株価向上にもマイナスとなる場合もあると考えておるところでございます。

 いずれにしましても、企業価値を考えます上で、ステークホルダーの利益を無視して判断をすることはできないと考えておりまして、極めて重要なファクターであろうというふうに考えておるところでございます。

柴山委員 これからの課題として制度設計を私も一緒に考えていきたいと思いますので、どうか皆様方、格段の御支持、御支援のほどよろしくお願い申し上げます。

 長時間にわたりまして失礼いたしました。どうもありがとうございました。

塩崎委員長 次回は、来る十九日火曜日午後二時三十分理事会、午後二時四十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時散会


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