衆議院

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第15号 平成17年4月26日(火曜日)

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平成十七年四月二十六日(火曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 塩崎 恭久君

   理事 田村 憲久君 理事 平沢 勝栄君

   理事 三原 朝彦君 理事 吉野 正芳君

   理事 津川 祥吾君 理事 伴野  豊君

   理事 山内おさむ君 理事 漆原 良夫君

      井上 信治君    小野 晋也君

      大前 繁雄君    左藤  章君

      笹川  堯君    柴山 昌彦君

      園田 博之君    西銘恒三郎君

      福井  照君    松島みどり君

      水野 賢一君    森山 眞弓君

      保岡 興治君    柳澤 伯夫君

      柳本 卓治君    岩國 哲人君

      加藤 公一君    河村たかし君

      小林千代美君    佐々木秀典君

      田中 慶秋君    高山 智司君

      辻   惠君    原口 一博君

      平岡 秀夫君    馬淵 澄夫君

      松野 信夫君    松本 大輔君

      江田 康幸君    富田 茂之君

    …………………………………

   法務大臣         南野知惠子君

   内閣府副大臣       七条  明君

   法務副大臣        滝   実君

   財務副大臣       田野瀬良太郎君

   厚生労働副大臣      衛藤 晟一君

   経済産業副大臣      小此木八郎君

   経済産業副大臣      保坂 三蔵君

   法務大臣政務官      富田 茂之君

   経済産業大臣政務官    山本 明彦君

   最高裁判所事務総局総務局長            園尾 隆司君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局経済取引局長)      伊東 章二君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局総括審議官)          三國谷勝範君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局審議官)            振角 秀行君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 蒲原 正義君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    寺田 逸郎君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    大林  宏君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 有吉  章君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           舟木  隆君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            鈴木 正徳君

   法務委員会専門員     小菅 修一君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十五日

 辞任         補欠選任

  早川 忠孝君     小野 晋也君

同月二十六日

            補欠選任

             秋葉 賢也君

同日

 辞任         補欠選任

  谷  公一君     西銘恒三郎君

  松島みどり君     福井  照君

  河村たかし君     田中 慶秋君

  佐々木秀典君     高山 智司君

  仙谷 由人君     岩國 哲人君

同日

 辞任         補欠選任

  西銘恒三郎君     谷  公一君

  福井  照君     松島みどり君

  岩國 哲人君     平岡 秀夫君

  田中 慶秋君     原口 一博君

  高山 智司君     佐々木秀典君

同日

 辞任         補欠選任

  原口 一博君     馬淵 澄夫君

  平岡 秀夫君     仙谷 由人君

同日

 辞任         補欠選任

  馬淵 澄夫君     河村たかし君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 会社法案(内閣提出第八一号)

 会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第八二号)


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     ――――◇―――――

塩崎委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、会社法案及び会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として公正取引委員会事務総局経済取引局長伊東章二君、金融庁総務企画局総括審議官三國谷勝範君、金融庁総務企画局審議官振角秀行君、法務省民事局長寺田逸郎君、法務省刑事局長大林宏君、財務省大臣官房審議官有吉章君、経済産業省大臣官房審議官舟木隆君、中小企業庁事業環境部長鈴木正徳君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塩崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

塩崎委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局園尾総務局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塩崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

塩崎委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松島みどりさん。

松島委員 会社法について、三回目の質問をさせていただきます。

 私、最初のときにも申し上げたんですが、これは本当に画期的な法改正だと思います。特に、中小企業のためになる、さらに新しい会社を起こしやすい、そういう法整備だと思います。ただ、法律というのは単に器とか条件を整えるだけで、それをもとに各役所なりも努力していただいて、日本の中で経済が活発に行われるように、それが願いでございます。そういう趣旨で質問させていただきます。

 まず、法務省の方に幾つか確認として伺わせていただきたいことがございます。

 会社設立時の出資額の規制の撤廃は、チャンスを広げるということで非常にいいことだと思います。しかし、これは平成二年に、株式会社の場合は資本金一千万円、有限会社三百万円と決めました。今、それから十五年たつわけですけれども、あのとき必死の思いで、一千万ためるのは大変だということで、集めるためにいろいろ借金をしたりして苦労された方々の中には、何だという気持ちになっている人も随分います。何とか一千万まであのとき頑張った方々は、ではこれで一円まで食いつぶしていっていいのかどうかということを一つ質問させていただきたいと思います。

滝副大臣 委員お尋ねのように、現行の商法では一千万という最低限度額がございますから、必死の思いでおつくりになった方が、今度の改正法でその制限がなくなるということでございます。

 その中で、それでは一千万円を食いつぶしていいかということでございますけれども、現在の商法でも設立後の資本金の額については特段の定めがございませんからそれは可能でございますし、それはその会社の判断でいける問題でございます。今度の会社法でももちろんそうでございます。ただ、それがいいかどうかというのは、それは経営者の判断の問題だろうと思います。

松島委員 了解いたしました。

 それから、今度の法律によりまして、みんな株式会社になれる。新しい会社をつくるときは全部株式会社であって、有限会社はなくなるというわけでございます。このように宣伝されますと、現在有限会社を名乗っている会社の方々は、自分たちはどうなるんだろうか、株式会社とみんな名前を変えなきゃいけないんじゃないか、そういうふうに思う方もいらっしゃると思いますので、そこの確認と、今の有限会社が株式会社に名前を変える場合にはどのような手続が必要なのかということをあわせて伺いたいと思います。

滝副大臣 委員御指摘のとおり、有限会社の制度がなくなるわけでございますけれども、現に有限会社として名前を使っている会社についてはそのままの名前を使っても結構でございますし、それから、いろいろな制約についても、当然それについての措置を講じておりますから、そのままで結構だと思います。

 ただ、名前を変えるときには二つ必要でございますね。まず定款変更をして、株式会社なら株式会社というふうに名前を変える。それから、今度は登記の問題では、有限会社の解散と、それから新しい株式会社なら株式会社の商号変更をするという場合に、解散登記と株式会社の設立登記、この二つの登記を同時に行うことが必要でございます。

松島委員 こういったことも、商法改正という大変なことですけれども、あの分厚い全体を読み通す人は世の中にはほとんどいないわけでございまして、どうか今申し上げました点に関しては、多くの有限会社の方々が不安にならないように周知徹底に努めていただきたいと思います。

 それから、破産者も取締役になれる、今度の変更点についての質問でございます。

 現行の商法では、取締役になれない人についての条項で、「破産手続開始ノ決定ヲ受ケ復権セザル者」というふうにございます。それが今度の新しい会社法では、「次に掲げる者は、取締役となることができない。」と定めている三百三十一条に破産者というのは入っておりません。

 去年の通常国会で破産法が成立いたしました。私は、このときもこの点については評価したんですが、手元に残るお金を拡大することによって、一度失敗した人でももう一度挑戦できる社会をつくっていこう、破産法の改正にもそういう趣旨があったと思います。

 そしてまた、破産した人というときに、例えば個人のクレジットカード破産、自分が使い過ぎたとかいったような破産の場合は、金銭管理ができない人間だ、とても会社の取締役にすることはできない、新しく会社をつくったりさせることはできないということが言えるかもしれません。

 しかし、今、破産という中では、小さい会社でオーナー会社の場合は、自分が保証人になっている。あるいは、連帯保証人、これも昨年の秋の民法の包括根保証制度禁止、これはすばらしい法律改正でございましたけれども、この四月から施行されて、これからの場合は限度額も定められているし、そしてまた期限も五年以内で定めることになっている。今までに包括根保証された方々については、経過措置で、この四月以降、三年ないしは五年で一遍打ち切って新しい仕組みにすることになっていますけれども、でもまだ引き続いている方がいらっしゃるわけですから、そういう形で連帯保証人になって自分がかぶっちゃう、破産するということも大いにあると思います。こういったときに、取締役になれない。取締役になれないということは、自分が新しくまた会社をつくることができないということでございますから、こういうことまで一律に排除するのはよくない。

 そういう意味で、今回の法改正、私はこの点について評価するんですが、こういうもう一度挑戦できる社会をつくるため、そういう趣旨だったというふうに理解してよろしいんでしょうか、法務副大臣。

滝副大臣 今度の会社法案につきましては、委員御指摘のとおり、取締役の欠格事由から破産者を除いているわけでございます。それは、委員の御指摘のとおり、再度の経済的な再生をする機会を与える、こういうこともその一つの理由でございますので、御指摘のとおりでございます。

松島委員 それでちょっとお伺いしたいんですが、これまでの法律ですと、破産開始決定を受けて復権せざる者はだめということでございまして、その復権というのは、今まで実際に破産手続が始まってから復権するまでというのはどれぐらいの間だめだったのか。これまでのことをちょっと振り返っていただいて、これは最高裁総務局長、今、総務局長というお立場で答えることじゃないかもしれませんけれども、かつて東京地裁のミスター破産と呼ばれた園尾局長にお伺いしたいと思います。

園尾最高裁判所長官代理者 最近は破産事件が迅速に進行するようになりまして、私の東京地裁での経験によりますと、財産隠しなどの不正行為を行っていない破産者であれば、破産申し立てから三カ月前後で免責の決定が出されるということが多くございまして、その場合には、その約一カ月後、すなわち破産申し立てから四カ月ないし五カ月で免責決定が確定して復権するということになります。

 しかしながら、会社経営者の破産者である場合に、復権が迅速に認められても適切な救済にはならないという場合が少なくございません。

 それはどういう場合かといいますと、規模は小さいけれども優秀な技術を持っていて、資金繰りが行き詰まっているが民事再生の申し立てをすれば再生可能であるというような会社がございます。しかし、そのような会社であっても、会社の経営者は、ただいま御指摘のように、通常、個人資産も含めてすべての資産を担保にお金を借りておりまして、個人の負債額は保証債務を含めますと一億円を超えるというような金額になりますことから、経営者個人については、破産の申し立てによって債務整理をせざるを得ないということが少なくないわけでございます。

 ところが、現在の商法によりますと、会社の経営者個人に破産手続開始決定がされると、取締役の地位を失うということになります。そうすると、一般に、零細な企業について、かわりの経営者を見つけてくるということが困難でございますから、結局、経営者が見つからないということで、会社の再生まで不可能になってしまうということがございます。

 これまで破産事件や民事再生事件を処理する中でこのような事例を相当数見てまいりましたので、破産手続開始決定があっても取締役の地位を失わないということになれば、そのような問題の一つの解決手段になるだろうというように考えております。

松島委員 非常によくわかりました。

 つまり、正確な技術などがあって、つぶすのがふさわしくない、民事再生でせっかく処理しようと思っている会社にとって、連続性を持ってその社長さんが取締役の地位にとどまるということが重要である。私は、会社がつぶれて、また新しい会社をつくるときというイメージで思っていたんですが、そうじゃない場合もあるということで、よく理解させていただきました。

 そして、このことが経済産業の立場から、起業をふやそうとしている中小企業庁から見て、またあるいは、会社が連続性を持って取締役がやっていくことの重要性という意味におきまして、実際に中小企業の経営者でもある山本政務官、山本政務官のところは破産して云々という心配はないとは思いますけれども、一般的なお考えを伺いたいと思います。

山本(明)大臣政務官 継続性の問題だと思いますけれども、私は、会社が倒産したときに、そのときに経営者がすぐまた復帰できるかどうかという問題というのは、逆にちょっと個人的には疑問も持っております。

 というのは、チャンスを与えるということは大変大切でありまして、今回はそういったことができるわけであります、いいことだと思いますけれども、逆に、大体地域に皆さん生きておるわけでありまして、そうしますと、その地域の人たちは彼を見ていまして、倒産したということは必ず迷惑を受けた債権者がおるわけでありますが、その債権者が見ておって、あれは、人に迷惑をかけておって、債務をちゃんと返せないうちにまた一人前でやっておるんじゃないかということがありますので、これはやはりある程度慎重にやっていかなければいけないと思います。

 そういった負の要素よりも、やはり前向きの要素を取り入れたのが今回の要素だと思いますので、そういった意味では非常に評価ができると思いますけれども、そんな面も考えながら経営者はやっていかなきゃいかぬ、こんなふうに私は思っています。

松島委員 実態に即した御答弁、ありがとうございました。確かに、破産によって迷惑をかけた取締役が続行するということは、チャンスであると同時に、ただ、そのときに、継続することによって、きちっと債権、いろいろなところに返していくということができやすいようだったら受け入れられるのじゃないかなと思っております。

 次に、法務局ももちろん法務省の所管でございますけれども、全国的に統合が進んでおりまして、数が減ってきています。法務局まで行くのは遠くて大変だ、そして統合でまた遠くなってしまったとか、そういうことをよく伺うわけですけれども、今回の法改正で、法務局に手続に行って手間暇がかかってというようなことを省ける利便が感じられることが二つございます。

 その一つは、取締役の任期の問題でございます。

 中小企業である株式譲渡制限会社が、これまで二年、たとえ譲渡制限会社であっても、取締役は二年ごとにかわらなきゃいけなかった。それを、今度、定款で十年まで延長できるということになりました。

 そうしますと、資本金一億円以下の中小企業の場合には、登録免許税は役員の変更登記の場合一万円かかります。現在は任期二年ですから、十年間だと、最初の一回目と、最後の十年目も入れますと六回かかって、六万円かかっちゃう。それに対して、今度のように任期十年まで延ばせるということになりましたら、十年間に、最初の年と十年目の二回で済むわけでございます。法務局に行く手間が減る上に、経費も少なくて済む。中小の株式譲渡制限会社とか同族会社の場合は、取締役というのがそう変更、異動が現実にはなくて、それに異議を唱える存在もいないので、問題はないと考えております。

 これについて、法務省としてそういうような考え方の立場に立っているのかどうかということを確認させていただきたい。

 もう一つは、起業するとき、仕事を起こすときに助かることでございますが、商号の登記がしやすくなった。

 これまで、会社をつくろうとすると、最初の登記の段階で、同一市町村に同じ商号があるかどうか、それから業種ごとに細かいことを、どういう業種だとか法務局から細かく聞かれたり、あるいは書き直しをさせられたりして、これは大変な手間で、これが一つの関門になっていました。ましてや、今あちこちで市町村の合併があるとその区域が広がるから、そのどこかにたまたま同じ商号の会社があるとつくれなかった。

 これをやめて、これから事後規制に移るということ、あそこの有名なお店の名前をまねようというような悪質な場合だけ問題にする事後規制にするということは非常にいいことだと私は思っているんですが、これまで、この登記のために書き直しというのはどれぐらいさせられたり、あるいは何カ月ぐらい待たされたりしたか。法務局の負の部分というか、まずかった部分はどれぐらい、どういうようなものだったのか、お伺いしたいと思います。

滝副大臣 最初の株式譲渡制限会社あるいは同族会社の問題でございますけれども、これについては、委員御指摘のとおり、役員の変更がほとんどない、こういうことで、最長十年まで、株式譲渡制限会社についてはそういうような措置を講じたということでございます。それによって、おっしゃるように、それなりに登記料が少なくて済むということではありますけれども、要するに、そういうような面倒なことを省いた、こういうことでございます。

 あと、登記の、何回やり直ししたかということについては、局長の方から御答弁をさせていただきます。

寺田政府参考人 実情を含めまして御説明申し上げます。

 御指摘のとおり、今の制度のもとでは、同一市町村のもとで同一目的、類似商号ということで規制がかかっておりますので、これから会社を設立しようとする場合に、当然、調査ということが必要になるわけでございます。

 調査自体は、これは今ではインターネットでも、コンピューター化された庁が非常に多くなっておりますので、どういう商号があるかというようなことを調査することはできるわけではございます。もちろん、登記所に行かれれば、それなりの調査はできるわけでございます。

 ただ、問題は、同一目的、類似商号に当たるかどうかというようなところで、これは非常に実務上も判断が難しいところでございましたので、実際に申請をされて、それが何回もやり直しをするということはございませんけれども、現実には、事前に法務局の方にお出かけになって、これは実際にどうなんでしょうという相談をなさることがかなり多いわけでございます。そういたしますと、その相談にかかる時間というのは相当ございまして、これはそれぞれの実情によってどれぐらいの長さかということは違いますけれども、相当な困難があったということは言えますので、それについては、今後、手続の時間というものは省略できる、こういうことになります。

 なお、申請自体は、法務局が、確かに統合等によって非常に御不便をおかけする部分があるわけでございますけれども、最近はようやくインターネットで申請もできるようになりましたので、その面での便宜も図るように努力してまいります。

松島委員 ぜひ、会社を起こす人が、最初の段階で手間暇かけさせられて、もうけにも何もつながらないことに本当に苦労することがないようによろしくお願いいたします。

 衛藤副大臣にせっかくお越しいただいておりますので、厚生労働省の方の質問を先にさせていただきます。

 厚生労働省の雇用保険特別会計というのは、以前は、サラリーマンが失業、会社の都合の場合もあるし自分の都合の場合もありますけれども、失業して次の職探しをして、次にまた会社のサラリーマンになる、それを前提につくられていましたが、私も、それ以外の場合もあるんじゃないかということを随分申し上げまして、例えば、これはここの場合とちょっと違いますけれども、自営業者が廃業したりして立ち行かなくなったときに、次の職探しの間に、これは貸し付けですけれども、生活資金の貸し付けをやってくれるようになったり、いろいろな改善がありました。

 そしてまた、今回に関係するんですけれども、会社をやめたサラリーマンが、次は就職するんじゃなしに自分が会社をつくろうといったときにどうするか。これも何とか手当てをしてほしいということを私も申し上げてきました。その結果、一昨年から幾つかいろいろな制度の改善が見られまして、そのこと自身は高く評価している次第でございます。

 そのうちの一つが受給資格者創業支援助成金、言葉は難しいんですけれども、五年以上雇用保険に入って、つまり会社員をやってきて、そして失業者の身分になって、次は自分が会社をつくるというときに、創業にかかわる費用の三分の一を支給してくれる。これはもうもらっちゃえるわけですね。上限二百万円ですけれども、支給してくれる。つまり、例えば六百万円、七百万円というようなお金がスタート時にかかったとしたら、その三分の一で上限二百万円ですから、二百万円をもらうことができる、非常にありがたい制度がございます。

 これはどんなものに使えるかというと、例えば会社を起こすときにすぐ困るのが、事務所の店舗を借りる、内装を整えたり、あるいは礼金とか家賃とか、そして走り回るための車が必要だ、パソコンが必要だ、チラシをつくる、パンフレットをつくる、そういった費用に、会社を立ち上げて三カ月以内にかかった費用をそういうふうに助成してくれるというわけでございます。

 しかしながら、これがなかなかうまく使われていない。平成十六年度の予算として三十億八千万円を立てたのに対して、十七年二月まで十一カ月分ですけれども、実績額は十九億八千万円、つまり三分の二ぐらいしか使われていない。平均百三十六万円、千四百六十三件利用されたわけですけれども、これはやはり宣伝不足なり使い勝手が悪い、何か問題があるんじゃないか。三十億円の予算に対して、十一カ月分とはいえ二十億円ぐらいしか使われていない。

 ちなみに、これは比較としては正しくない、全くそれがイコールというわけでは全然ないんですけれども、十六年度は、最低資本金規制の特例の制度を利用して、資本金一千万円に満たなくても会社を立ち上げることができるという臨時の措置をつくって、一万一千六百八十一件起業されました。

 もちろん、サラリーマンをやりながら土日に新しい仕事をしている、こういうのをやる人もいれば、これまで仕事をしていなかった主婦が立ち上げる場合もあれば大学生の場合もあるので、これは別に対象者の全部じゃない、このうちのごくごく一部、ある程度、何割かの人が対象だと思うんですけれども、こういうふうに小さい会社をつくる人が一万一千件あって、そのうちの何割かは会社をやめた人がつくっていると思われるのにもかかわらず、千四百件しか申し込みがなかったというのは、やはり何か問題があるんじゃないかなと思っておりまして、このせっかくの制度をどのように広報しておられるのか、そして、宣伝不足というか宣伝下手じゃないかなということを思いますので、御意見を伺いたい。

 それで、もう一つ、厚生労働関係で新しい制度としてこういう制度がございます。これもおととしの五月にスタートしたんですが、従来ありました失業手当の支給期間内に早目に再就職した人には再就職手当という制度があります。これは早目に、例えば三百三十日受給資格があるのに、途中でさっさと次の会社を見つけて再就職したという場合には、残りの期間もらえるはずの分の三割を一時金としてもらえる。いわば、早く見つかっておめでとうねというお祝い金なのか、おかげでたくさん払わなくて済むよという、ありがたいから礼金なのかわからないけれども、一時金として三割もらえる仕組みがもともとございます。

 これに対して、再就職した場合だけじゃなくて新しく会社をつくった場合にも、一昨年の五月、平成十五年から適用になりました。これは非常にいいことだと思うんですけれども、これも三割だけなんです。それも一時金でもらうだけなんです。

 さっき申し上げましたように、再就職した場合は、給料はひょっとしたら減っているかもしれないし、額はどうかわからないけれども、これから一応食べていくだけの給料をもらえるようになった、だから、これで失業手当から脱したということで、一時金で三割あげる、それでいいと思うんですけれども、会社をつくるだけで登記しただけ、あるいは、さっき言いましたように、店開きの準備を始めただけでは、とても食べていくのに足りない。

 そうしたら、一時金で三割あげるんじゃなくて、受給期間の間、百五十日とか二百日とか三百三十日とか、その人に応じた受給期間の間、ずっと支給し続けてあげる、あるいは五割か六割でもいいから支給し続けてあげる、生活費の足しにしてあげるということの方が性格上正しいんじゃないか、そうしてあげてほしいなという気がするんですが、いかがでしょうか。あわせてお答えいただければと思います。

衛藤副大臣 ただいま先生から、受給資格者創業支援助成金につきましての御質問をいただきました。

 平成十五年の二月に創設されまして、自立の意欲を有する失業者の方々を積極的に支援するという制度でございます。この設立に当たりましては、先生からも積極的な御支援をいただき、提言をいただいたところでございます。

 今、これにつきましては、平成十五年から具体的にスタートいたしましたので、この状況につきまして若干御報告をさせていただきますと、平成十五年度が十八億の予算で六億、そして十六年度が三十一億の予算に対して二十億というぐあいになっておりますので、二年目でございますけれども、まだ利用率が約六五パーぐらいでございますけれども、順次これは上がってきているところでございます。

 ただ、御指摘のように、まだまだ至らないところがございますので、これをもっとちゃんとやれるように頑張ってまいりたいと思っております。

 ですから、今までも雇用保険の受給者説明会あるいはいろいろな能力開発機構等が実施するイベント等において説明したり、あるいは中小企業庁と連絡をとりまして、ベンチャー企業等支援制度ガイドブックの活用によりまして、中小企業金融公庫等の金融関係の窓口等で積極的に周知しようというぐあいにやってきたところでございますけれども、さらに、御指摘のとおり、制度の内容により踏み込んだ細かな周知の徹底、そしてまた、中小企業庁の創業支援施策の一環での創業関係イベントの場を利用した積極的な周知等を図ってまいりたいと思っております。

 ことしの予算計上は約六十億でございますので、これも昨年に比べまして倍増させているということでございますから、この周知徹底を先生御指摘のとおり図っていかなければというぐあいに思っている次第でございます。

 また、もう一点の再就職手当といった一時金の問題でございますけれども、これは本当に松島委員から御指摘の中で、やっとこの制度を変えたわけでございます。それまでは、創業いたしましても雇用が予想されるところでないとだめですよということとしていましたのを、自分で創業すれば自分がこれを受け取れますよという形に切りかえてきたところでございまして、非常に喜ばれているというぐあいに私ども感じている次第でございます。

 そういう意味で、これを全額ずっと一定期間、三百三十日とあれば三分の一、とにかく検討しているところでございますけれども、趣旨からいって、いま一つ全期間出すというのは難しいのかなと。しかし、サラリーマン時代にももっとちゃんと早く皆に周知できる方法はないのかということで、経産省初め、いろいろなところとも連携しながら周知徹底について努力してまいりたいというように考えております。

松島委員 あと財務省の関係でございますが、国民生活金融公庫に新創業融資制度というのがございまして、担保がない、保証人を立てられないといった事情で資金調達できない開業者を支援しています。最初のスタートのときは融資限度額が百五十万円でしたけれども、今、どんどん順次引き上げられて七百五十万円まで貸してくれる。いい制度ですし、平成十六年度も融資実績六千三百四十一件、二百七億円と伸びています。しかし、これが、条件として開業資金の二分の一以上の自己資金があることということになっております。最低資本金制度も撤廃されることでもございますし、どうかこの条件を緩めていっていただきたいなと思う次第でございます。

 そして最後に、経済産業省に質問とお願いなんですが、商法改正というのはいろいろいい制度を含んでおりますけれども、なかなか一般の人に理解されにくい、とてもわからない。そしてまた、厚生労働省にいろいろな施策も打っていただきました。今私が述べましたように、国民生活金融公庫にも、スタートのときの立ち上げの融資のいい制度がございます。こういうのをやはり一本化して、例えば、各地の経済産業局、関東とか中国とかいろいろなところで、起業支援の何でも相談窓口とか、そういうのを開けないだろうか。あるいは、一括して、新しい仕事をつくっていくところは経済産業省あるいは中小企業庁であるということで、何かやっていっていただけないかと思うのですが、いかがでしょうか。

山本(明)大臣政務官 お答え申し上げます。

 相談窓口というのは大変大事でありまして、多ければ多いほどいいわけでありまして、経済産業局につくるのも大変結構だと思いますし、今いろいろな、厚生労働省とか金融関係のものを一緒にした場合には、補助金の関係等もありますので、一つの経済産業局に設置するのはなかなか難しいというふうに聞いておりますし、しかも、もし設置できたとしても、九つしかありませんので、果たして中小企業がそこへ行けるかどうかという問題の方が大きいというふうに私は思います。

 私がいつも言っておりますのは、商工会議所でもなかなか徹底いたしません。各中小企業のいろいろな業種団体がありますので、そういった業種団体等へ行って徹底するのが一番早く通じる、私はそのように思っていますから、そういったことをいつも指示はしておりますが、そういった形で少しでも多くの窓口をつくるということの方が私は大事だというふうに思っています。

松島委員 多くというのは、実際にいろいろなところで、例えば税理士さんが全部知っている、いろいろなところでいろいろな形で聞けるのが一番いいと思います。

 ただ、その場合に、ぜひ皆さん各役所の方で連携をとっていただきたいのが、ばらばらで、この役所はこういうことをやっている、この役所はこういうことをやっている。受ける方にとっては全部情報を得て全部利用した方がいいわけでございますから、それぞれの役所の縦割りにとらわれずに、どうかパッケージとして、全体、これもあれも、そして商法改正でこんなふうに登記も易しくなったというようなことが全部一括してわかるような、民間で本を書く人もいますけれども、もっとそういう窓口、できればそれはもちろん市町村であるのがいいんですけれども、どうかそういうのを構築していっていただいて、日本の経済がまた活力あふれるものになる、会社をつくりやすい社会になるように、私も含めてですけれども、皆さんとともに努力していきたいと思います。

 きょうはありがとうございました。

塩崎委員長 次に、柴山昌彦君。

柴山委員 自由民主党の柴山昌彦でございます。

 私は、質問二回目となります。前回の質問で社外取締役についてお伺いしたところ、次の日の朝刊に、これを上場会社に必要的に導入することが検討されるという記事が掲載されるなど、この委員会での質問が日本の企業制度のあり方というのをどんどん変えていっているのかなと思いまして、やりがいを感じている次第であります。そういった観点から、きょうも幾つか重要と思われる問題点について指摘、また御質問をさせていただきます。

 まず第一点目、代表訴訟の問題でございます。

 今度の会社法の中で、代表訴訟の却下、これは簡易却下制度だと言う方もいますが、「会社の正当な利益が著しく害される」ような場合ということが挙げられております。一般に、代表訴訟というのは会社に成りかわって役員に対して訴訟を起こす場合であるにもかかわらず、その訴訟の提起が会社の正当な利益を著しく害するというのはどのような場合を想定されているのでしょうか。

寺田政府参考人 会社から見ますと、その違法行為そのものによって損害をこうむっているということは当然想定するわけでございますけれども、しかし、会社の活動というのはさまざまな面で多方面にわたっているわけであります。別の法律関係でもって当該法律関係の責任の追及が影響を受けることがございます。

 私ども、今典型的に想定いたしておりますのは、会社が例えばアメリカで訴訟絡みの事件を起こしている、その場合に、アメリカの訴訟においては会社側にいろいろな特権がございます。私ども、今典型的に実務上こういうことがあり得ると言われておりますのは、アトーニー・クライアント・プリビレッジという特権の一つでございますけれども、日本で訴訟をすることによってある事実が明らかになる、そういたしますと、アメリカでのその特権が失われてしまって、その事実を明らかにしなきゃならない。それによって、別の訴訟で多大の損害をこうむる可能性がある。

 本来は、正当な権利として特権を主張して頑張っていけたのにそれができなくなる、そういうような場合が実務上は典型的に考えられるのではないかというふうに私どもは聞いております。

柴山委員 ただし、本来、追及されるべき責任であるわけですから、それはやむを得ないと考えることも当然可能だと思うわけです。

 次に、費用が過大な場合ということもあるんですけれども、そもそもこの費用が過大な場合というのを本当に類型の一つとして設けるのが妥当なのかどうか、また、その費用が過大な場合とはどのような場合を想定されているのか、それぞれお伺いしたいと思います。

寺田政府参考人 通常、損害賠償請求をするということになりましても、これは代表訴訟に限らず通常の場合を想定していただければおわかりになると思うのでございますが、相手方が無資力で、それの責任を追及するとすると、弁護士費用その他さまざまな手続費用がかかる可能性があるわけでございます。

 その場合に、そんなに費用がかかるなら、責任の追及ということで訴訟するということは避けた方が会社としては賢明ではないかという判断をする場合があるわけであります。代表訴訟もその意味では例外ではありませんで、その取締役の責任を追及するということは法律上は可能でも、しかし、その取締役が無資力で、実際に判決が出ても損害が回復することはまずない。にもかかわらず、その責任を追及するのに訴訟を起こす、弁護士費用がかかる。

 それが、通常の見合いですと、それはそういう違法な行為をしたことでございますのであり得るとも思うわけでございますけれども、それが非常に過大である、ほとんどとれる可能性がないのに物すごいお金をかけなきゃいけないというのは会社としてはやはり全体として避けるべきであるという判断をなさるのは、それは全く不合理なことではないだろうという判断でございまして、そのようなケースを念頭に置いて、このような却下事由というのを新たに設けようとしているものでございます。

柴山委員 ただし、代表訴訟については、先般の改正で八千二百円で訴訟が簡単に、手数料のレベルですけれども、提起できるようになったわけで、今弁護士費用というお話がありましたけれども、この弁護士費用だって、報酬の自由化ということが今後行われて、市場原理でどんどん競争が働いていくということになると、どれほど説得的な材料になるのかなということは疑問でございまして、また、それを裁判所が判断して却下をするというのが本当にあるべき姿なのかどうかということもちょっと疑問なんですが、これはもしかすると野党の議員の方から指摘をされるかもしれませんので、次の質問に移らせていただきたいと思います。

 一般的に、これは参考人質問の中でも出たんですけれども、親会社株主が事業子会社の役員に対して代表訴訟を起こせるような制度をつくるべきではないか。

 今回、一〇〇%親会社ができた場合にも従前の株主が原告たる地位を承継できるというシステムはできたんですが、そもそも、初めからそうした二重代表訴訟、こういうものを認めるべきではないかという提言が浜辺陽一郎弁護士の方からなされているわけですが、これについて法務省の方ではどのようなお考えをお持ちでしょうか。

寺田政府参考人 そういうお考えというのが理論上あり得ることは、私どもも承知をいたしております。

 この会社法案では、おっしゃるとおり、そのような訴訟を代表訴訟としては認めるという範囲に入れていないわけでございます。そもそも、親会社と子会社というのは法人としてはやはり別でございますので、責任追及を親会社の株主がするということが適当かどうかということを検討するといたしますと、そもそも親会社の役員というのが一体子会社とどういう関係にあるのか、取締役、監査役、会計監査人を含めまして、すべて非常に慎重に検討してみなきゃならないという問題がもともとあるわけでございます。

 つまり、親会社、子会社について、現在の責任追及のあり方というのは、それぞれの会社の中でのコーポレートガバナンスというものを前提にして行われているために、代表訴訟だけ一つ取り上げて親会社の権限というのを拡大するというのは、バランスを欠くのではないかということになるわけでございます。

 また、もう少し直接的に申し上げても、直接の利害関係にない会社の責任追及を認めるというわけでございますけれども、それはやはりそれなりの相当の重たい理由がなければならない、あるいは濫訴にならないかどうかというような別の角度からの検討も必要、そういう意味で、今回は総合的に親子会社の問題を検討するにいまだ至っておりませんので、この問題というのも、それだけを取り上げて認めるのは難しいことでございますし、またそれ自体としてもなかなか難しい問題だというように考えているわけでございます。

 なお、仮に、親会社の株主というものが損害を受けた、その損害と子会社の取締役の行為との間に因果関係が認められるということになりますと、これは申し上げるまでもないかもしれませんが、第三者に対する責任というのはございますので、その責任を直接追及していただければいいということになるのではなかろうかと考えております。

柴山委員 いずれにしても、昨年、UFJ銀行が三菱東京フィナンシャル・グループに拒否権つき優先株を発行したということで、銀行さんの親会社の株主が損害をこうむっているんじゃないかというようなジャーナリスティックな話題を通じて、子会社のガバナンスをどうやって確保していくのかということは大きな問題点になっていることは疑う余地はないと思っているわけでございます。

 そのような観点から、子会社のガバナンスを確保できるシステム、これについてお伺いしたいと思います。特に、親会社の株主あるいは親会社の監査役、それぞれが、例えば取締役の行為の差しとめ請求、これは当然同じ会社であればできるわけですけれども、そういうものを行っていけるのかどうか、どういうシステムがあるのかということについてお伺いしたいと思います。

寺田政府参考人 先ほども申しましたように、これは原則に立ち返るわけでございますけれども、子会社のガバナンスというのは、やはり子会社は一つの会社でございますので、その中で、会社に対して善管注意義務を負っています取締役でございますとかあるいは監査役、そういった方々によって確保されるべきものだろうというふうに考えております。

 仮に、先ほど委員が提示されました例というのは具体例でございますので、その点について私どもが具体的にどうすべきであるということを申し上げる立場にはございませんけれども、ただ、こういう子会社のガバナンスが適当でない、それについて親会社の側で何ができるかということでございますけれども、それはむしろ親会社のガバナンスの問題としても問題になり得るわけであります。つまり、親会社が子会社の適当な管理を怠っているということにもなりかねないわけでございます。その場合には、むしろ、親会社の株主は、親会社の取締役等の役員に対して責任を追及するということが筋ではないかと考えております。

 子会社のガバナンスについて、親会社の株主と監査役がどういうことができるかということの具体的な御質問がございましたので、少し細かくなりますが申し上げますと、この新しい会社法案の規定上、親会社の株主が子会社に対してできることは、これは裁判所の許可のもとではございますけれども、定款の閲覧、謄抄本の交付請求が一つございますが、そのほかには、さまざまな書類の閲覧謄写請求権がございます。株主総会の議事録、取締役会の議事録、会計参与の保存する計算書類、委員会の議事録、会計帳簿等々でございます。裁判所の許可ではございますけれども、そういう閲覧請求等の情報の開示を求めることによって、何が行われているかということを明らかにすることは可能でございます。

 次に、では親会社の監査役が何ができるかということでございますが、これは、職務を行うために必要があるときに、子会社に対して事業の報告を求めたり、子会社の業務、財産の状況を調査するということが権限として認められております。三百八十一条の三項でございます。

 なお、親会社の株主や監査役が直接に子会社の取締役の行為の差しとめができるということは、これは認められておりません。

柴山委員 ただ、一〇〇%子会社であれば、当然その親会社の意のままに子会社の経営陣は動くわけですから、ここに例えば強力な差しとめ請求権などの措置を講じていくということが求められていくのではないかなという問題意識はぜひ共有していただきたいと思っております。

 次の質問に移りますが、今回の改正で、株主総会の招集地、これは現行法では原則本店所在地あるいはその隣接地ということになっているわけですけれども、これが撤廃されたということで、恣意的な株主総会の招集地の選定が行われるのではないかという懸念があるところであります。

 言うまでもなく、本店所在地というのは定款記載事項で、これは株主総会の特別決議がなければ本来変更できないことになっているわけですが、これを一切縛りを外すということになると、株主に非常に大きな不利益をこうむらせる状況が考えられ得るわけですけれども、これについてはどのようにお考えでしょうか。

寺田政府参考人 現在の商法のもとでは、おっしゃるとおり、この株主総会の招集地につきまして、原則としては本店の所在地またはそれに隣接する地ということが決められておりまして、定款で別段の定めができる、こういう形での規定を置いているところでございます。これに対しまして、有限会社については全く規定がございません。

 今回、現実の問題として、多くの中小企業が株式会社のカテゴリーに入ってくるということを念頭に置きまして、現実に株式会社の形態をとっておられる中小企業の方々を含めまして、いろいろな意見をお伺いいたしました。この方々の御意見というのは、この株主総会の招集地の規定がこのままであると非常に不便であるというお話でございました。

 つまり、実態といたしましては、本店の所在地や隣接地外を株主総会の開催場所として用いる会社がふえている、これは大会社についても決して想定されないことではないわけでございまして、会場をわざわざお借りになって株主総会をお開きになるということもあり得るわけでございます。

 こういたしますと、一体どっちを原則にするのかという問題でございまして、私どもの方は、多くの会社の存在ということを念頭に置きまして、原則は自由、しかし、おっしゃるとおり、株主のことを十分お考えになって一定の場所で招集すべきであるというポリシーをおとりになる株式会社にとっては、定款でそのことをお定めになるべきである、こういう方針を今回とったわけでございます。これによって御不便が解消されると同時に、そういうポリシーを明らかにされる会社にとってもある種の解決方法になるだろうというふうに思うわけでございます。

 なお、現実にそういう定款がなくてどこでも招集ができる場合に、殊さらにある種の株主の方々にとって御不便な地を選ぶということになりますと、これは招集手続自体が著しく不公正だということで株主総会の取り消し事由になり得るということは御指摘申し上げたいと思います。

柴山委員 ありがとうございます。

 続いての質問ですが、会計監査人の責任についてでございます。

 前回、質問をさせていただいたときに必ずしも十分なお答えをいただいておりませんので、再度質問させていただきますが、そもそも会計監査人、これは公認会計士あるいは監査法人がやるわけですけれども、プロとして一定の提出された書類を監査するということを求められている以上、外部からその会社の社外取締役として職務を執行する社外取締役、これとは異なって、責任の一部免除ということを認めるのは不合理だと私は思うんですが、この点、どのようにお考えでしょうか。

寺田政府参考人 責任のあり方あるいは責任免除のあり方について、現状はどうなっているか、会社法案がどうなっているかということは前回御説明を申し上げました。

 これについての考え方でございますが、おっしゃるとおり、プロフェッショナル、ある種の職業倫理にある者ということで会社に対してより重たい責任を持つという考え方があり得ないわけではないと私も思うわけでございます。しかし、会社に対する関係としては、仮にプロフェッショナルな会計監査人であろうが、あるいは社外取締役で別にプロフェッショナルでない方であろうが、結局、会社に対してどういう義務を負うかという面では、その重要性において優劣をつけがたいものがあると私どもは考えるわけでございます。

 むしろ、会計監査人が専門家としてどういう責任を負うかということは、その会社に対してではなく世の中一般に対して負っていただきたいというふうに考えるものでございまして、これは、公認会計士法上のさまざまな責任、懲戒処分を受けるということを含めましてさまざまな責任というのをむしろ公認会計士として負っていただくというのがこの場合の問題解決の筋ではないか、こう考えたもので、今のような規定ぶりにしているわけでございます。

柴山委員 会計監査人と同じような話ですけれども、今度、監査役も権限についてはいろいろと見直しがされていると思っております。取締役会がある場合と取締役会がない場合、それぞれ監査役の業務監査権限、これがどのようになっているかということをお伺いしたいと思います。

 ちなみに、今小会社では、監査役の権限というのは、先ほど出た会計監査人と同様、会計監査だけ負担するという仕組みになっているわけですけれども、今度の新しい会社法では、それぞれの会社について監査役の業務監査権限というのはどのようになっているのでしょうか。

寺田政府参考人 監査役につきましては長い歴史があるわけでございます。戦後すぐ、あるいは不正事件が相次ぎました昭和四十年代、五十年代ということで、現在、それらを通じまして監査特例法もできた関係で、その監査特例法上の大会社とその後つけ加わりました中会社については業務監査権限があるということでございますが、それに対して小会社については会計監査権限のみでございます。つまり、そういう一対一の対応をこの業務監査権限についてはしているわけでございます。

 これに対しまして会社法案では、それぞれの会社の規模というものと監査役の業務監査権限というものが、こういう言ってみればワンパターンの一対一の対応というものが必ずしも今の会社の実態に合わないのではないか、むしろ会社御自身でそれを選択していただける、選択の幅というのを広げるべきではないかという考えでできております。逆に申しますと、むしろ中小企業というものについてもこの監査権限というものを強化する余地というのを広げよう、こういう考え方でございます。

 したがいまして、資本金の額にかかわらず監査役というのは原則として業務監査権限を持つということにいたしております。三百八十一条でございます。

 これに対しまして、非公開会社については、もし会社の方でそういうチョイスをなさって定款でお定めになれば、監査役の権限というのを会計監査権限だけに限定するということができるようになるわけでございます。三百八十九条でございます。

 ただ、その場合には、では今度はどなたが監督権限で欠けるものを補うかということになりますと、考え方は、当然、中小企業で、株主の方が権限を持つということになるべきであります。したがいまして、監査役が会計監査権限しか持っていない会社においては、株主によって違法行為の差しとめというのをより広く認めて、取締役会の招集権ですとか出席権というものを株主に与えるということで、株主によるガバナンスというものをより重視していく。会社の規模でのワンパターンではなくて会社のチョイスでそれぞれに対応していただける、そういう格好にいたしたわけでございます。

柴山委員 ありがとうございます。

 続きまして、株式の関係の質問に移りたいと思います。

 自己株式の取得なんですが、近年、非常に緩和をされてきているということで、今回の改正でも、株主総会の定時総会に限らない、普通決議によって一定の範囲、種類、数、そして一年を超えない範囲内の買い受け期間というものを決議すれば、その範囲内で自由に買い受けということができるようになるわけですけれども、これは、従来自己株式の取得の弊害として言われてきた株主の平等ですとかあるいはインサイダー取引の危険とか、そういうものを増幅させるものではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

寺田政府参考人 おっしゃるとおり、この自己株式の取得の問題につきましても、さまざまな契機はございましたけれども、基本的に自己株式というものの取得を拡大してきたという歴史がございます。結局のところ、自己株式の取得によって、会社の財産がどうなるかということと同時に、株主間の平等その他をどうするかというさまざまな考慮をしてこの間拡大をしてきたわけでございます。

 今度の会社法案においても、自己株式の取得については、これまでは授権する決議というのを、定時株主総会でしかできなかったところを、臨時の株主総会でもできるようにするということで、チャンスを広げるという部分はございます。

 しかし、この問題については、今委員も御指摘のとおり、むしろ株主間の不平等ということについてより神経をとがらすべきであるという声が強いわけでございまして、そういう声に応じまして、今回は、その取得条件、自己株式を会社が取得する条件の均等決定というものを義務づけるという規定を新たに置くことにいたしております。百五十七条の三項でございます。それとともに、総株主に、全部の株主に売却機会の確保のための通知、これも義務づけるようにしているわけでございます。つまり、自分が知らない間に、ある種の人だけが会社に株を取得されるということの不平等感というものをなくそう、そういうねらいでございます。

 したがいまして、一面では確かに、総会のチャンスを広げたわけでございますから、より自己株式にとっては便利になった面もあるわけでございますけれども、株主の平等原則の観点からいうと、むしろ今回は厳しくなったということが言えようかと思います。

 次に、インサイダー取引でございますけれども、これは、具体的な市場からの買い取りの注文というのは代表取締役が決定するところでございますので、どういうタイミングでどうするかということについて、特に新たにチャンスをふやしたからインサイダーの危険がふえたというものではございません。もともと、代表取締役がどういうタイミングで行うかによってインサイダー取引の危険が生ずるかどうかということについては、インサイダー取引についての規制自体でやはり対処していただかなければならない問題だろうというふうに思うわけでございます。

 したがって、そこは今回の改正によって影響を受けることはないだろう、むしろ別の対処方法にゆだねる、そういう考え方でございます。

    〔委員長退席、田村(憲)委員長代理着席〕

柴山委員 今、別の規制というお話がありましたので、そのあたりですね。要は、代表取締役が自己株式の取得を行える範囲が広がったということで、この点、証取法で何らかの手当てが新しくなされているのかどうかということについて、ちょっと金融庁の方にお伺いしたいと思います。

振角政府参考人 お答えいたしたいと思います。

 証取法におきましては、百六十六条というところでインサイダー取引の禁止を規定しておるんですけれども、その同条第二項におきまして、自己株式の取得をインサイダー取引の重要事実として規定しているところでございます。したがいまして、上場会社の役員等の会社関係者や第一次的な情報受領者というものが、自己株取得の決定の事実を知りながら、その事実が公表される前に当該上場会社の株式等の売買を行えばインサイダー取引に該当することとなりまして、自己株取得によるインサイダー取引を防止する規定は既に措置されているということでございます。

 これが入りましたのは、十三年に金庫株を解禁したときに、いろいろなまたリスクが高まるだろうというところで既に手当てしているところでございまして、今回の会社法改正に伴う改正は行っておらない、もうそのときに既に措置しておるというふうに考えているところでございます。

柴山委員 しっかりと運用をしていただけたらというように思っております。

 続きまして、株式の消却についての御質問です。

 従来、利益による株式の消却ということを行うという場合には、必ずその株主の同意がなければいけないのではないかという制度設計あるいは学説になっていたと思いますが、今回、株式の消却、一〇〇%減資の場合そのほか、どのような変更点がなされているでしょうか。

寺田政府参考人 御指摘のとおり、現行法においては、株式の消却というのは二つのタイプがございました。一つは、発行されている株式というのを、発行会社が取得することなく、株主の手元にあるままでこれを消却するということを決めるわけでございます。これが商法二百十三条等に規定されているわけでございます。これに対しまして、発行されている株式を発行会社が一たん取得して、取得済みの自己株式というのを消滅させる消却、自己株式の消却というのが二百十二条に規定されているわけでございます。

 今回、この関係を整理いたしまして、消却ということの意味は、これは会社が自分の手元にある株式を消却させることで、株主の手元にあるままで消却が起きることはないという整理をいたしました。逆に申しますと、今まで強制消却をしていた部分というのは、一たん会社が株式を取得して自己株の形にして、それを消却するということでございます。これは、株主の手元に置いたままでの消却というのは一体どういう法律関係なのか、必ずしもすっきりしないところがございましたので、このような整理をしたわけでございます。

 次に、減資が行われる際に、この株式の消却ということがあり得るわけでございます。現行法でも、減資によって無償で消却される、それと同時にさらに新たに新株を発行するということが会社の再建等で見られるわけでございます。これは、一〇〇%減資を行うためには株主全員の同意が必要である、こういう解釈のもとにそのようなプラクティスを行っているというふうに理解をいたしております。

 しかし、先ほども申しましたような整理がなされましたので、今後、一〇〇%減資というのは次のような形で可能になると考えております。

 つまり、現在発行されている株式を、一たん全部取得条項つきの種類株式とする定款の変更をいたします。これは、株主総会の特別決議と種類株主総会の決議でできることになります。もちろん、これに反対される方については買い取り請求権がこの際に生じるわけでございます。その上で、つまり全部取得条項つきの種類株式ができた上で、今度、その全部取得条項つき株式というのを取得するという株主総会の特別決議をするわけでございます。それと同時に、現在行われているように新株の発行を行えば、一〇〇%減資と同様の法律関係になるわけでございます。この場合に、株主総会の特別決議が行われる際には、反対株主には取得価格の決定請求権というのがあるわけでございます。

 そのような形で、今後も、一〇〇%減資に伴って、同時に新株を発行するということが一回のチャンスでできるわけでございます。

柴山委員 ありがとうございます。

 株式の質問を続けますが、今、株式の譲渡制限会社において議決権を制限する株式というものが発行可能なわけですけれども、その発行限度を撤廃するという定めになるかと思いますが、こうした譲渡制限会社というのは、特に取締役会がない会社の場合、株主による経営チェックというものが必要なわけですから、そのような場合に株主のチェックが弱まってしまうのではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

寺田政府参考人 これも会社の実態によるわけでございます。

 現行法においては、すべての株式会社について、議決権制限株式の発行限度というのを二分の一ということで定めているところでございます。これは、もともと株式会社というのは公開を前提にいたしておりまして、多数の株主の間で、しかもそれが入れかわる可能性がある株主の間で株式が持たれている状態というのを念頭に置きまして、少数の議決権を有する株主のみが会社を支配するというのは会社本来のあり方からすると適当でない、こういう考えに基づくものでございます。

 しかしながら、このたび、有限会社法制と一致させたということもあるわけでございますけれども、新たに中小企業を対象とするというふうに考えられます譲渡制限が行われる会社、こういう会社においては、そもそも株主が不特定多数と言えない場面も多いわけでございます。もともとどのような株主が会社について支配権を有するかというと、それはこういう会社においては会社自体が選んでいるに等しいわけでございます。

 そういうことを考え合わせますと、今度の会社法案においては、譲渡制限会社において議決権制限株式の発行限度というのを一律に決めてしまうのは適当でないというふうに思われるわけでございます。そこで、そのような制限というのを撤廃したわけでございます。

 もちろん、その場合に、そういう会社が一体どういうガバナンスを行われるかということはそれなりに慎重に考えていかなきゃならない面もございます。しかし、そういう会社においては、むしろ出資者、株主がどういうガバナンスを行うかということを直接考えるべきところでありまして、法制の上で議決権の制限を行うか行わないかによる規制を設けて、不特定多数の株主を相当数置いておくということを強制することによってガバナンスを確保するというのは、そういう会社の実態に合わない場面が多いのではないかというふうに考えられます。

 したがって、法律で一定の制限をかけるのはむしろやめまして、それぞれの会社にふさわしいガバナンスをそれぞれの会社でお考えになって、株主によっておやりになることをお決めいただく、そういう考え方に基づいているところでございます。

柴山委員 個人的には、そういう議決権が制限されているような会社で、かつ、取締役会がない場合には、監査役の設置を義務づけるべきではないかなというように私は思っておりますので、ぜひ御検討いただきたいと思っております。

 続きまして、次の質問なんですが、基準日の関係でお伺いしたいと思います。

 基準日、要は株主たる地位の確定の基準の日なんですけれども、それ以降に登場した株主について、これを会社の側から任意に株主と認めてよいかどうかということで従来から非常に大きな学説上の対立があったところなんですが、今回、特定の株主についてのみ基準日後の株主たる資格を認めることができるということになったわけです。このような扱いが、株主平等原則との関係から、取締役会の恣意的な運用を招くのではないかという批判が当然あるところだと思いますが、これについてどのようにお考えでしょうか。

寺田政府参考人 この規定は、もともと、基準日を設けて、そこで会社に対して議決権を有する株主というのを確定するという仕組みになっているわけでございますが、この基準日以後、例えば組織再編、合併等が行われまして新たに株主になる、なり得る者が出てきた場合に、その株主を会社として株主として認めていいのかどうかという問題があるわけでございます。これを一切だめということにいたしますと、むしろ会社にとりましては非常に組織再編等がやりにくくなるという影響も出てくるわけでございまして、それについて何らかの手を打ってほしいというのがむしろ実務界の要望であったわけでございます。

 今回、会社法案のこの百二十四条の四項というところで、基準日後に株式を取得した者についても議決権を行使することができるということの可能性を広げたわけでございます。

 もちろん、この場合に、一部の者については認めるけれどもその他の者については認めないという扱いをされる懸念がおっしゃるとおりあるわけでございます。もともと会社法においては、今度新たに株主平等原則を明文化したわけでございまして、この株主平等原則はこの場合にももちろん働くわけでございます。したがいまして、この株主平等原則に違反する扱いというのは許されないわけでございまして、例えば、同一の新株発行によって株主になった者のうち、一部の者だけをこの基準日以後の株主ということで株主として会社側が認めるというようなこと、これは許されないことでございます。

 したがいまして、この場合はむしろ、明文化された株主平等原則がきいてくるということを御理解いただきたいところでございます。

柴山委員 ありがとうございます。

 時間もございませんので、その他の部分についての質問に移りたいと思います。

 今回、社債についてもかなりさまざまな改正がなされているわけですが、社債管理会社の責任、これについて大分強化の方向で見直しが行われたというように承知しておりますが、具体的にどのような違いが生じているのか、お聞かせいただけたらというふうに思います。

寺田政府参考人 社債発行会社がデフォルトに陥る事例というのが最近出てきているわけでございます。そういった場合に、今まで社債発行会社に対して貸付債権等の債権を有する社債管理会社と実際の社債権者との間に利益相反が先鋭化するという事態が現実に生じているという指摘がされているところでございまして、平成五年に社債についてはいろいろ見直しをいたしましたが、その後、こういう社債発行会社あるいは社債の管理者というものをどう見るかということについて重大な変化が生じているという認識は私どもも持っていたわけでございます。

 会社法案をつくる際に、このことを念頭におきまして、むしろ社債管理会社の責任というのを重くしようという方針がとられまして、社債発行会社に支払い停止等の事態が生じたときの前三カ月間にされた社債管理者の債権の弁済の受領等について誠実義務違反の立証責任の転換等において社債管理者の責任を強化するという今の規定について、さらに次のような措置をとっているところでございます。

 一つは、社債発行会社に支払い停止等があった後にされた債権の弁済の受領についてもこの規定の対象にいたします。立証責任の転換が起こるわけでございます。二番目は、社債管理者自身のみならず、その親会社、子会社等の社債管理者と特別の関係がある者の行為もこの規定の対象にするというところでございます。三つ目は、社債管理者の行う相殺もこの規定の対象にするというところでございます。いずれも七百十条に規定を置いているところでございます。

柴山委員 管理会社の責任の強化ということについては、私は賛成をしたいというように思っております。

 時間が大分なくなってまいりましたので、いよいよ企業買収の問題に入っていきたいと思っております。

 今回、買収防衛策としてアメリカで導入されているいわゆるポイズンピルあるいは黄金株などの制度が、我が国の法制化でもこれを取り入れることができるということが明らかになったと言われております。ただ、それ以外にも世界各国さまざまな買収防衛策というものがあるというように承知をしておりますが、ポイズンピルあるいは黄金株といったもの以外の諸外国での買収防衛策について、これは企業価値研究会、経産省さんの方で研究されていると思うんですけれども、お聞かせいただきたいと思います。

舟木政府参考人 お答えします。

 ヨーロッパの各国における防衛策の状況でございますが、これは国によりまして異なっているようでございます。

 まず、イギリスでございますが、これは入り口段階でございます公開買い付け規制を課しておりまして、全部買い付け義務を課しているところでございます。したがいまして、部分買収は禁止ということになっておりまして、強圧的な買収を行いにくくする措置を講じているということのようでございます。ただし、イギリスにおきましては、各企業自身がアメリカのように自由な防衛策をとるということは原則禁止をされているというふうに承知をしております。

 ドイツでございますが、ドイツでは二〇〇二年に企業買収法を制定しております。これで新たな防衛策の体系を定めているところでございますが、ここでも入り口段階はイギリスと同様に公開買い付け規制を厳しくしておりまして、強圧的な買収を行いにくくする措置を講じているところでございます。これに加えまして、イギリスとは異なりますが、監査役会の承認があれば、それぞれの会社が独自で防衛策を採用することも可能ということになっておるようでございます。

 そのほか、北欧の各国、それからフランス、オランダ、こういったいわゆるヨーロッパの大陸諸国におきましては、黄金株や複数議決権株式といった種類株式が活用されておりまして、これらの国では、一株一議決権の原則に従う企業は三割に満たないという調査もあるようでございます。

 このように、ヨーロッパの各国では各国がそれぞれ独自の防衛策の体系を持っているわけですが、EUで、EU全体でMアンドAの市場を適正なものに形成するために、各国の企業買収に関するルールを統一しようという試みが行われているところでございます。

 二〇〇四年、昨年でございますが、EUの企業買収指令がまとまっておりまして、加盟国に対しまして、共通ルールとして全部買い付け義務が強制をされることになっておるようでございます。一方で、企業がみずから講じる防衛策、これは原則禁止とはされておりますが、各国の事情に応じて選択制とされているということのようでございます。

柴山委員 極めて貴重な御指摘だったと思います。要は、ポイズンピルとか黄金株のような、各会社で個別に買収防衛策をとるということに対しては、少なくともヨーロッパ諸国の間では法制度の上では後ろ向きのスタンスであるのかなというような認識でございます。

 ただし、一般に、敵対的買収を行う際に、それはきちんと公平な買収でなければいけない。経営権をある程度握った上で、残りの株主さんたちに対してより劣悪な条件で買いたたきをするという強圧的な買収というものは、やはりこれは規制をしていかなければいけないのではないか。全部買い付け義務というお話もありましたけれども、そういうような方向で日本でも検討を進めなければいけないと私は思っております。

 そこで、これは会社法のみならず証取法の分野にもまたがる問題だと思いますので、今の全部買い付け義務、あるいはちまたでスクイーズアウトとかあるいは買収におけるTOBのルールの改正ということが話題になっておりますが、これらについて、金融庁に現在の検討状況をお伺いしたいと思います。

振角政府参考人 それでは、金融庁の方からお答えさせていただきたいと思います。

 先生が御指摘されましたように、企業買収に関連した証取法に関連する制度としては、公開買い付け制度、いわゆるTOBがございます。

 金融庁としましては、企業の合併、買収、いわゆるMアンドAをめぐって今いろいろ活発な議論が行われているわけでございますけれども、この観点からいいますと、証券取引のいわゆる透明性、あるいは当事者間の公平というのが確保されることが極めて重要だというふうに考えておりまして、こうした観点から、会社法を所管する法務省と連携したり、あるいは今報告がありました経済産業省とも意見交換をしつつ、今後、現在ございます公開買い付け制度について、さらによりよくできないかという観点から議論をしているところでございます。

 具体的には、公開買い付け制度をめぐっては、以上の点を踏まえまして、今金融審議会というところで議論を行っているところでございます。金融審では、現在の証取法を、現在の貯蓄から投資へという大きな流れの中で、投資全体を横断的、機能的に規制する投資サービス法に改組することを念頭に置きまして幅広い議論が行われているところでございまして、その中における開示制度のあり方というところで議論を行っているというところでございますけれども、先ほど言いましたような観点から今議論が行われているというところが現状でございます。

柴山委員 検討を進めていただきたいと思います。特に、今申し上げたスクイーズアウトというのは、買収者に、一定以上の株式を取得した場合に、合併と同じように、要は、全部買う、残りの株式についても取得をして、少数者には対価のみを補償する、いわゆる締め出しの制度なんですが、これについても、円滑な合併と比較して、MアンドAの推進ということについては検討に値する制度ではないかなと思います。

 これについては、証取法なのか、あるいは会社法なのか、ちょっと所管が明確でない部分がありますが、法務省、副大臣にこのような制度についてどのようなお考えかということについてお伺いしたいと思います。

滝副大臣 今委員御指摘のように、基本的に、これは証取法の世界なのか、あるいは法務省の商法上の問題なのか、境界があいまいでございますけれども、少なくとも法務省所管の法制審でもこの全株買い取り義務の問題、あるいはスクイーズアウトの問題は議論をしてまいりました。

 議論はしてまいりましたけれども、これは賛否両論がありまして、なかなか決着のつかない問題なんですね。特に、基本的な認識としては、全株買い取り義務とスクイーズアウトはワンセットでもって導入しなければならない、そういうような共通認識はできているようでございますけれども、さて、それでは全株買い取り義務というものを認めようとすると、何か、一律に、画一的に認めるのはいささかどうだろうか、やはり例外事項なんかも設ける必要があるんじゃないだろうかな、こういう議論がございまして、そういったことで、なかなか法制審としては踏み切れない、こういうようなことでございました。

 しかし、今経産省からも報告がありましたように、企業価値研究会の研究もございます。そして、金融庁における検討もございます。そういうようなことをあわせながら、この問題は改めて、そういうものをにらみながら今後の問題として研究していく、こういうことであろうというふうに考えております。

柴山委員 よろしくお願い申し上げます。

 買収について、最近の報道で、東京証券取引所が上場会社さんに対して「敵対的買収防衛策の導入に際しての投資者保護上の留意事項について」というような形で通知をされたというように伺っております。

 一連のライブドアの事件をきっかけに過剰な防衛策というものが講じられるのではないかという懸念が一部には出ておりまして、これに対して対応したものだというように承知しているんですが、その大まかな内容と、こうした東証の処理についての御感想というのを最後に金融庁にお伺いしたいと思います。

振角政府参考人 お答えさせていただきたいと思います。

 基本的な趣旨は先生がおっしゃったとおりでございまして、敵対的買収防衛策につきましては、ライブドア事件以降、いろいろな報道等もありますし、さらに、先ほど経済産業省からお話がありましたように研究会が行われていまして、五月を目途に企業価値防衛指針が策定される見込みが示されたという中で、防衛策の早期導入について検討を進めている企業もあるというふうに聞いているところでございます。

 そういうような状況を踏まえまして、こうした個別の敵対的買収防衛策の導入に際しましては、投資者保護上問題が生じかねない事態も想定されるということで、二十一日に、先生御指摘のように、東京証券取引所から上場各社に対しまして、防衛策を導入する場合における投資者保護上の観点から何点か留意してほしいという事項を通知したということでございます。

 主な内容としましては四点ございまして、第一点は、株主、投資者への十分な適時開示を行うこと、第二点としては、防衛策の発動、解除及び維持条件が不透明でないこと、三番目としましては、買収者以外の株主、投資者に不測の損害を与える要因を含むものでないこと、第四番目としては、議決権行使による株主の意思表示が機能しないこととなるようなスキームでないことという四点の留意事項を定めているところでございます。

 金融庁としましては、複数の上場会社が株主総会に向けて防衛策を検討している中で、自主規制機関として東京証券取引所が投資者保護の観点からこのような留意事項を上場会社に通知することは、時宜を得た対応であるというふうに評価しているところでございます。

 以上でございます。

柴山委員 今回の会社法改正は、会社法のみならず、さまざまな隣接、関連する法律にも影響を与える非常に重要な改正だと思っております。きょう準備した質問は本当はまだまだたくさんありますけれども、同僚あるいは野党の先生方にしっかりとこの法案についての御質問をお願い申し上げて、私からの質問を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。

田村(憲)委員長代理 次に、漆原良夫君。

漆原委員 公明党の漆原でございます。

 まず、代表訴訟についてお尋ねしたいと思うんですが、現行法では代表訴訟を提起できる場合の制限規定というのはないわけでありまして、新法では八百四十七条一項一号、二号で、「責任追及等の訴えが当該株主若しくは第三者の不正な利益を図り又は当該株式会社に損害を加えることを目的とする場合」はだめだ、第一号。二号は、「責任追及等の訴えにより当該株式会社の正当な利益が著しく害されること、当該株式会社が過大な費用を負担することとなることその他これに準ずる事態が生ずることが相当の確実さをもって予想される場合」には、この訴えの提起はできない、この制限規定を設けておりますけれども、ただ、従来、こういう事例に該当する場合は、訴権の濫用ということで、訴えの却下ということでずっと判例法上処理されてきたというふうに思っておるんですが、新法で改めてこの制限規定を明文化した理由についてお尋ねしたいと思います。

寺田政府参考人 この代表訴訟は、株主というものの会社の機構上における立場というのが、ある程度の制約があるのが現実である。したがって、どちらかというと取締役等に会社の運営そのものを任せざるを得ない。しかし、最後のチェックは株主がするという趣旨で戦後設けられて、大変訴額の計算上も訴える側に便宜な制度に変わって現在に至っているわけであります。

 その過程で、おっしゃるとおり、これを余り本来の目的でない目的に利用される方について、会社の側からも、あるいは社会一般からも、そういうことでこの制度が悪用されるということはやはり避けるべきであるという御意見が非常に出てまいりました。裁判所は、それについて、おっしゃるとおり、具体的には権利濫用の一つでございます訴権の濫用という構成でこういう権利の主張をはねてきた、こういう経緯がございます。

 しかし、今度新たに会社法案をつくるに当たりまして、やはりこの株主代表訴訟というのも本来の目的のために使っていただいて、そのために、これが機能するということを重視したいという考えがございまして、そういう立場からは、権利濫用に当たるものをただ一般条項として権利濫用にしておくということではなくて、裁判所にとって判断のしやすい類型化を図って、これを許さない場合というのを公にしたいということがあったわけでございます。

 その場合に、どういう類型化をするかというのが一つの問題でございますが、一号の場合には自分の利益を図る場合等、それから二号の場合には過大の費用を要する等という分け方をいたしておりますが、いずれにいたしましても、本来の目的からするとずれている場合ということがこれまでの判例の立場から見ても言える場合ではなかろうかということで、このように決めているところでございます。

漆原委員 確かに、一般条項で内容が当事者にわからないで却下されるというよりは、却下される場合は、これこれこういう事態なんだという該当理由が明確になって却下された方が国民の立場から見て望ましいというふうに思います。

 続いて、担保提供命令についてお尋ねしますが、新法でも、責任追及等の訴えの提起が悪意によるものであることが疎明された場合には担保提供を命ずることができる、こうなっております。しかし、この代表訴訟と関連しまして、仮に八百四十七条一項の一号、二号の場合であっても、担保提供命令でカバーできるんじゃないか、あるいは、この前参考人がおっしゃっていました、屋上屋を重ねるようなものではないのかというふうな批判がなされております。

 ただ、私は、この八百四十七条一項一号、二号の場合と担保提供の場合は次元が違うんじゃないかなという気持ちを持っておるんですが、この点はどのように考えておられますか。

寺田政府参考人 おっしゃるとおり、担保提供というものも、濫訴を防ぐ一つの手段としてこれまでも認められてきて、現実に一定の機能を果たしているわけであります。

 しかし、御指摘のとおり、担保提供というのはやや場面を異にするところで機能する問題でございまして、具体的には、担保提供というのは、会社に対してではなくて当事者間で、相手方に対して損害が生じ得る、その損害をカバーするという建前でできている制度であります。つまり、この場合は取締役の損害についてカバーするというものでございます。

 したがいまして、会社にどのような損害が生ずるかということを問題にする今の却下事由、二つの場面とは問題を異にするところでございますので、この新たな規定を置くについての考慮のもとで、担保提供があるということは直接関係ないということになるわけでございます。したがって、屋上屋を重ねるという御批判は当たらないんじゃないかというふうに思っているところでございます。

漆原委員 ありがとうございました。私もそのように考えます。

 新法では、会社が責任追及等の訴えを提起しない場合には、請求株主等に対して不提訴の理由を通知しなければならない、こうなっておりますが、その趣旨についてお尋ねしたいと思います。

寺田政府参考人 これは実務上は、私ども、今度の改正の、代表訴訟の中で機能することを期待している仕組みの一つでございます。

 代表訴訟というのは、具体的には原告であります株主と被告である取締役が争う、こういうことでございますけれども、証拠の多くは会社が握っているということになるわけでございます。そこで、会社が当事者でないところから、なかなか会社のもとにある証拠というのが当事者の側に出てこない場合があるわけでございます。

 そこで、一体どういう理由で会社がその取締役を訴えないのかということがなかなか明らかにならない。そもそも、違法行為についてもそうでございますし、訴える経緯についてもそういうことになるわけでございます。また、現行法では、会社が取締役に対する提訴をしないと判断しても、そのプロセスというものが外部には全く明らかにならないわけでございますので、一体会社は本気でやっているのかというようなことが、株主の側から見ると御批判を受けるような状況も、あながち的を射ていないとは言えない、そういう状況にあるわけでございます。

 そういうところを今回考慮いたしまして、実際に訴訟資料を収集するという側面から何かいい手だてはないか、あるいは、会社が実際にどういうことを考慮して訴えないとしたかという判断の過程というのが明らかにできないかどうか、そういう二つの面から見て、代表訴訟についてこのような不提訴の理由の通知という制度を設けると、それらが相当に解消できるのではないかというふうに考えたわけでございます。

漆原委員 その場合に、会社が八百四十七条四項によって株主等に通知しなければならない事項はどういうものか、説明願いたいと思います。

寺田政府参考人 今申し上げました新しい仕組みの趣旨からいたしまして、具体的に責任追及等の訴えを提起しない理由に当たるものはどういうものかと申し上げますと、提訴請求に掲げられた事実関係について一体どういう社内調査をして、その結果がどういうことで、どういうような証拠に当たるようなものがあるのかということ、この社内調査によって判明した事実を前提として、役員の方々にどういう損害賠償の義務があると会社は考えるのか、それから仮に違法行為によって損害が生じて賠償義務があるとした場合に、では、なぜ訴えないのか、そういうことの理由、こういうことが責任追及等の訴えを提起しない理由に当たる典型的なものだというふうに考えております。

    〔田村(憲)委員長代理退席、委員長着席〕

漆原委員 確かに、代表訴訟を起こす場合に、資料が全部会社側にあって株主は何もないというのが、今まででも一番困ったことでありました。今回、このような制度ができることによって、大分助かるなという気持ちはします。

 さらに、この八百四十七条四項のほかに、新法で、原告となる株主が証拠を収集できる、そういうふうな措置を講じているところがあれば教えてもらいたいと思います。

寺田政府参考人 今申し上げました新しい通知の仕組みのほかに、証拠収集の方法として一番考えられますのは、株主の書類の閲覧請求権でございます。これは現行法にもあるところでございます。すなわち、株主総会の議事録、取締役会の議事録あるいは会計帳簿、これらについて株主が閲覧請求権を持っているわけでございます。

 ただ、現行法のもとにおいて、これらの書類の閲覧権は、基本的には株主総会の存在を前提として、株主総会において議決権を持っている株主に与えられる、こういう構成になっております。したがいまして、必ずしも代表訴訟を念頭に置いた規定ではありません。

 しかしながら、株主によるチェックということを考えた場合に、議決権の有無によって差別を設けるというのは適当ではないだろうという考えから、新しい会社法案においては、議決権のない株主であっても、一定数以上の株式を保有するということになりますと、各種書類の閲覧請求権というものがあるというふうに構成を変えているところでございます。

 もう一つは、裁判所が申し立てあるいは職権で訴訟の当事者に対して会計帳簿の提出を命ずるという制度がございますが、これは現在の商法の三十五条の商業帳簿提出命令というものを会社法において受け継いでいるということになるわけでございまして、こちらの方も訴訟の場面では利用ができるということになるわけでございます。

漆原委員 ありがとうございました。

 原告適格について若干お尋ねします。

 代表訴訟の係属中に株式交換が行われたため原告株主が適格を否定されたというふうな判例がありますが、この点については、新法はどのような改正を行っておりますでしょうか。

寺田政府参考人 これは実務上は、現行法の不備として一つ指摘されてきたところであります。現行法のもとでは、原告株主が株式交換によって完全親会社の株主となりますと、もとの会社の株主という立場がなくなりますので原告適格を失う、こういう考え方が有力でありまして、現にそのような裁判例もあるわけでございます。

 しかしながら、完全親会社の株主として、代表訴訟の結果について、間接的ではありながら、もともと株主であった立場もありながら、そのような訴訟活動がすべて無に帰してしまうというのはいささかどうかという御批判があったところでございます。

 そこで、新たに、株式交換等によりまして原告株主が完全親会社の株主になった場合でも原告適格を失わない、こういう規定を設けたわけでございます。このようなことで先ほどの御批判というのは避けられるというふうに考えております。

漆原委員 さらに、合併の対価が柔軟化される結果、合併によって原告である株主に金銭が交付される場合もあるわけでございますが、その場合の株主の適格はどうなるのか、教えてもらいたいと思います。

寺田政府参考人 この場合も、おっしゃるとおり、現行法では、株主ではないということで代表訴訟の追行が否定されるところでございます。

 会社法案では、原告が組織再編により完全親会社の株主となった場合、引き続き訴訟の追行を認めるということでございますが、反面、金銭を取得した場合には、もはや株主としての地位はどこにもないわけでございます。ただ金銭を有するもとの株主、こういう地位になってしまいます。そこで、自分の立場というのが代表訴訟の結果によって左右されないという状況に置かれてしまいますので、先ほどの親会社の株主としての立場をなお維持しているということに比べますと、原告として訴訟を追行させることに必ずしも真摯になれないのではないかなという考慮から、この場合は、代表訴訟の勝敗によって自分の権利は影響を受けないのではないかということで原告適格を認めないということにいたしているところでございます。

漆原委員 もう一つ、合併無効の訴え等の途中で株式交換が行われた場合、原告である株主の原告適格についてお尋ねしたいと思います。

寺田政府参考人 これもなかなか難問でございます。現行法では、解釈上は、やはり株主の地位がない以上は原告適格を失うという見解が有力であります。

 しかしながら、合併時に株主であった者は、総会の承認決議等の合併手続に関与して、自分の保有株式について変動の影響を直接受けた者でありますから、株主としての地位を失ったかどうかにかかわらず、この場合には自己の固有の利益として、合併の瑕疵そのものは主張できて当然ではないかという考慮がなされ得るところであります。

 特に、今度の新しい会社法案においては、合併対価の柔軟化によりまして金銭交付合併が行われるわけでございまして、その場合にはやはり合併によって金銭を受け取った株主にも当該合併自体の瑕疵を争わせないと、これは、そのものの原因が合併にあるところでございますので、おかしいのではないかということになるわけでございます。

 そこで、合併無効の訴えの提訴権者につきましては、そもそも合併をする会社の株主等であった者を含めまして、現在株主であるかどうかということとは無関係に合併の適否、有効無効ということの訴訟についての原告適格を認める、こういう手当てをいたしているところでございます。

漆原委員 日本版LLCと言われております合同会社においては株主代表訴訟のようなものはあるのかないのか、また、なければその理由をお尋ねします。

寺田政府参考人 日本版LLCと今おっしゃいました合同会社でございますが、これはそもそも会社の執行担当者と出資者というものの区別がない類型の会社でございます。すべての社員というものが原則としては業務執行にも当たり、かつ、会社を代表することもできるわけでございまして、出資者兼執行者というのが原則的な合同会社における会社の内部の形態になるわけでございます。

 そういたしますと、あえて代表訴訟のようなものを構成しなくても、代表権を有しない社員がいる場合はともかくといたしまして、普通の場合にはそういう必要はないだろうというふうに考えております。

 ただ、今申し上げた代表権を有しない社員というのを設けることが可能になっておりまして、その場合には六百二条で株主代表訴訟に準じた仕組みというものが当てはまる、こういう構成になっております。

漆原委員 時間の関係上、取締役の責任は後回しにしまして、企業防衛のことについてお尋ねしたいと思います。経済産業省にお尋ねしたいと思うんです。

 ライブドアによるニッポン放送株の買収を契機に、敵対的買収からいかにして企業を防衛するかという議論が活発に今されております。企業の側も、六月の株主総会での防衛策の導入のため真剣にその方策を研究していると聞いております。

 敵対的買収に対する防衛策として企業が新株予約権を用いたポイズンピルを導入する場合に、防衛を目的に発行される予約権が一種の含み益を有するため、条件によっては発行時とか発動時などに課税される可能性があると言われております。

 防衛策をとったときに課税関係が生ずるようでは安心して導入することはできないわけでありまして、SPC方式による信託方式はどうなんだろうか、あるいは全株主に割り当てるニレコ方式はどうなのか、ある程度類型化をして株主や企業に示す必要があるのではないかというふうに思っておりますが、経済産業省では、この点について財務省と検討中と聞いておるところでありますけれども、検討内容、進捗状況、またその検討結果の公表のめどについてお尋ねしたいと思います。

舟木政府参考人 ライツプランに関します税制の御質問でございます。

 ライツプランに関しまして、現行税制上の取り扱いにつきまして企業の関心が非常に高まっているというふうに私どもも認識をしているところでございます。このため、経済産業省としまして、現在税務当局と本件の取り扱いにつきまして検討を行っているところでございます。私どもの方からライツプランのある程度の類型を税務当局に示しまして、それに応じて税務当局の方で具体的なそれに対する課税の関係を検討しているところでございます。

 近日中には税務当局からある程度の方向性が示されるものと考えているところでございます。

漆原委員 大体どのぐらいの類型化を考えていらっしゃるのか。

 もう一つ、連休前に発表される予定なのか、連休直後なのか、その辺を、わかる範囲で結構ですから教えてください。

舟木政府参考人 類型と申しますか、企業価値研究会で公表させていただきました論点公開に、株主総会の議決を経まして、信託方式を使ってライツプランを発効するやり方でありますとか、それから事前警告型と呼んでおりますが、平時は事前警告にとどめまして有事に実際の発効を行うやり方とか、そういったものが具体的にはあるのかなと思っておりまして、税務当局とも、その考えられる可能なものにつきまして類型化をして検討しているところでございます。

 タイミングでございますが、私ども、先生御指摘のように、この次の株主総会で導入されようとしている企業に十分な予測可能性を持って安心して導入していただけるようなタイミングである程度の方向性を税務当局に出してもらいたいと思っておりまして、できるだけ早くと考えております。連休前かとか、ちょっと今の段階で、まだ検討中でございますので、確定的なことを申し上げられないことを御理解いただきたいと思います。

漆原委員 株主総会に間に合うように、十分時間をとれるように早い時期に公表していただきたいというふうに思っております。

 最後の質問になろうかと思いますが、ライブドアの買収工作について、ニッポン放送側は新株予約権の発行ということで対抗措置を講じたわけでありますけれども、東京高等裁判所は、それは著しく不公正な発行に当たるということで差しとめをしたということであります。

 企業が買収防衛策を導入するに際して、現経営者の支配権の維持とか確保を目的とするようなものであってはならないのは当たり前のことでありますが、敵対的買収やそれに対する企業の防衛策という問題はこれまで十分に議論されてこなかったテーマでもあります。したがって、過剰防衛に当たらない合理的な防衛策とは一体どのようなものか、法務省としても明確な基準を示すべきであると考えますが、どんなふうな御見解をお持ちか、お尋ねしたいと思います。

寺田政府参考人 おっしゃるとおり、過剰な買収防衛策ということが経済全体にとって適当でないということは、経済産業省もお話しになりましたとおり、私どもも認識を共通にするところでございます。しかしながら、具体的に何が過剰かということになりますと、おっしゃるとおり、最終的には裁判所が御判断になることでありますが、第一義的には株主が御判断になることであります。あるいは、潜在的な株主ということを含めますと、市場が御判断になることということが言えるかもしれません。

 ただ、そういうことになりますと、導入する企業にとっては、一体どういうものが適法かということを判断する手がかりが全くないという状況に置かれる。それはやはり適当ではないだろうということで、私どもも去年から経済産業省の皆様と研究会でさまざまな認識のすり合わせをしてきたわけであります。その中には、もちろん、基本的な考え方としては、会社の現経営陣がみずからのために企業の防衛策をとるという場合は多くは過剰になるのではないかなという考え方がどうも有力でありまして、裁判所もそのような考え方に基本的には立っておられるというふうに認識しておりますので、その限度では、抽象的な基準ではございますけれども、言えようかと思います。

 ただ、もう少し具体的にあり方を考えていかなきゃならないということで、先ほどの企業価値研究会のような動きがあるわけでございますので、私どももできるだけ協力して、裁判所の御判断というものをいろいろ分析した上でそれに御協力をいたしたいというふうに考えているところでございます。

漆原委員 本当にできるだけ早くその指針を示してもらって、企業が安心して合理的な防衛策をとれるような資料にしてもらいたいというふうにお願いを申し上げて、質問を終わります。ありがとうございました。

塩崎委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時三分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時四十五分開議

塩崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。田中慶秋君。

田中(慶)委員 私は、民主党の立場から、今回の会社法の問題等について質問させていただきます。

 そもそも、私は法務委員会の質問というのは初めてで、どちらかというと法律を知らない人間がなじまない形でやりますので、冒頭、法務大臣にまずお伺いしますが、最近よく遵法精神とかコンプライアンス等の話が出ますね。これはどういうことですか。教えてください。

南野国務大臣 コンプライアンスというのは、法令を遵守するという意味でございます。

田中(慶)委員 委員会もそのとおりだと私は思うんですね。まず、質問取りをする。その前提は、政務官が質問取りをするということがお互いの申し合わせ事項だと思います。そのことが現実に行われていない。副大臣制度をつくるときに、少なくてもそれぞれの役割分担があったと思います。そういう点では、政務官の仕事の中に質問取り、こういう問題があったわけでありますが、昨今は、そういうことが守られているところと守られていないところ、こういう形になっておりますので、遵法精神とか今のような形でコンプライアンスと言われている、こういう時代でありますから、まして法律を審議する場、決められたことだけはやはり守ってほしい。このことを冒頭にお願いしておきたいと思います。

 そこで、ぜひ質問をさせていただく問題は、最近の景気の問題を含めて、皆さんも御承知のように、日本の景気は、政府なりあるいは一部の大臣は、景気は踊り場だとか中二階だとかよく言われております。しかし、実体経済は大変厳しい環境にあり、企業間の格差あるいはまた業種間の格差、地域間の格差が広がる一方になってきているのは事実だと思います。

 そういう中で、今回の問題は、中小企業がこの会社法によって、プラスの面とマイナスの面、どちらかというと政府はプラスの面をよく強調されて宣伝をされているわけでありますけれども、マイナス面が全然何も語られていない、これが実態であります。

 しかし、今一番困っている人たちは、このマイナス面であります。そのことが、今回会社法の問題の中でどのように配慮をされ、どのような形で、そのメリットだけではなくデメリットをどう考えられているのか、まず冒頭にお答えをいただきたいと思います。

南野国務大臣 仄聞するところによりますと、いろいろな検討を重ねておりますけれども、中小企業の方々とはいろいろと会合を重ねておりまして、中小企業の方々が賛同していただける方向でこの問題は検討しておりますので、メリットは見えておりますが、私にはデメリットはまだ探されておりません。

田中(慶)委員 まず、大臣、あなたは中小企業の実態というものをよく把握されていないんだろうと思います。それもやむを得ない部分があろうかと思いますが、現実に、例えば今政府が打ち出しております中小企業に対する金融のあり方一つとっても、いろいろな制度融資がいっぱいあるわけですけれども、わかりにくい、使い勝手が悪い、そればかりか、今回も無担保無保証の問題等々もしっかりと政府は打ち出しておりますけれども、現場はなかなかそのとおりに動いていない、これが実態なんです。

 今回の会社法の中においても、有限会社なり株式会社が一緒になる、こういうことによって、デメリットも当然この中で考えておかなければいけない問題だと私は思います。

 特に、中小企業は、今一番大切なことは、仕事も欲しいけれども、その母体となるべき資金繰りが大変なんです。会社の経営者でありながら技術者でもあり、ある面では経理担当でもある、こういういろいろなものを兼ねてやっているわけでありますけれども、今回は、有限会社、株式会社、こういうものが一つの会社法によって改めて一緒になる、こういうことでありますから、これらについてどう配慮されているのか、まずお伺いしたいと思います。

保坂副大臣 これは私の方から御答弁させていただきます。

 今回の会社法におきましては、有限会社制度が株式会社制度に統合されるわけでございますが、現実的には、統合された後も、新会社法が成立いたしまして、すべての株式に譲渡制限がついている場合は、例えば取締役会とかあるいは監査役、この義務的な設置は緩和されたわけでございます。また、取締役あるいは監査役の任期も十年まで可能、こういうことはほとんど有限会社制度に近い決着をしたわけでございます。

 また、既存の有限会社は、百八十五万社ございますけれども、法律改正がなりまして新株式会社法になりましても現実にはそのまま残す、こういうようなところで中小企業に対する負担を極力なくそう、こういうことで努力しております。

 したがいまして、私どもといたしましては、成立いたしました際の新しい法律に関しまして周知徹底を図るべく最大の努力を傾けて、中小企業の支援に回りたいと存じております。

田中(慶)委員 今副大臣が言われたことは建前であって、現実問題として大変厳しい実態というものが生じているわけであります。

 例えば、先ほども若干申し上げましたけれども、有限会社に、有限責任なり個人責任、第三者責任というものが現実問題として負荷されてくるわけでありますし、こういう問題をしっかりとしていかないと、資金繰りが円滑になっていかないどころか、今でも貸し渋り、貸しはがしがあるわけでありますから、ある面ではこれだけお金がだぶついているにもかかわらず、お金の要るところに金を貸さないというのが今の実態なんです。

 ですから、今回の会社法はそういうところをどのように配慮されているのか、これが一番重要なことであろうと私は思っておりますけれども、その辺をどう配慮されているのか、お伺いをしたいと思います。

保坂副大臣 お答え申し上げます。

 今度の会社法におきまして、新たに会計参与という制度を取り入れることになりました。これは、取締役と共同いたしまして、計算書類の作成それから説明、情報開示等を共同で責任を負う立場の内部機関でございまして、これを設置するに関しましては任意で設置するということになっております。このことが負担になるのではないかと言われますが、逆に、中小企業の新株式会社にとりましては、債権者に対しまして情報の質の向上を行うということによって非常に信頼性が増すわけですね。そういう営みも一方でやりました。

 また、田中先生御心配のとおり、問題は、融資などでかなりマイナスを食うのではないか、こういうふうに言われておりますが、既に私どもといたしましては、過度に保証に頼らないような制度をずっと構築してきておりまして、昨年七月に導入いたしました証券化支援業務、これは、民間の金融機関に中小企業金融公庫から支援を行いまして、そして第三者保証なしで貸せる、こういう制度だとか、あるいはまた、いわゆる経営者本人の保証なしで、ちょっと金利は適度に上乗せいたしますが、こういう制度を全体の政府系三公庫でもやるとか、あるいは、今まで御活用いただいておりました国金で第二創業、これは今まで千五百万円が限度枠で第三者保証をとらずに融資しておりましたけれども、これも二千万円まで拡張するとか、こういう点で、多岐にわたる中小企業向けの金融の選択肢を広げることによって、両々相まって中小企業を強化する、こういう政策を今とっているわけでございまして、このたびの会社法の改正はその点では実が上がるものと確信しております。

田中(慶)委員 副大臣、あなたはそういうことをよく述べられておりますけれども、この債券化の問題等についても、あるいは枠の拡大等についても我々はさんざんやってきて、あなたたちがやってきたんじゃないんですよ。これは、去年、おととしから、全部無担保無保証の問題を含めてやろうということで特別チームをつくりながら、我々は提案しながら取り組んできて、やっと実行になったけれども、問題がまだあるんです。

 極端なことを言えば、債券化の問題だって、元請が判こをつかなければ現実には債券化にならない部分があるわけですから、こういうことを含めて、今私が言っていることは、実態と合わない部分がたくさん出てきている。あなたは何かスムーズにいっているようなことを言われておりますけれども、そうじゃない。だから、今回の会社法も、せっかくつくっても、仏つくって魂入れず、こういうことになる可能性が十分あるわけであります。

 今あなたが得々と述べられた、自慢げに言っております会計参与制度を見てください。すばらしいことかもわかりませんけれども、全部オープンになるんですよ。そうすると、中小企業のうまみというものは今までいろいろな形であったと思います。はっきり申し上げて、オーナーであり会計責任者であり、いろいろなことを含めて自分でおやりになっておりましたから、そういう点では自己資金もそこに投入してみたり、いろいろなことがあります。しかし、今度は全部オープンになるわけです。そういうことになって、ある面では、資産内容はこんなことだったのかということで貸し渋りの対象にもなりかねない。

 現実にそういうことはあるわけですから、そういうことも含めて十分議論をしておかないと、会社法をつくっても、あなたが今言われた会計参与制度、私は、時代ですからそれは的を射ているんだろうと思いますけれども、日本のずっと来た流れの中小零細企業は、それがある面ではうまみであったわけであります。それが今、この会社法ができることによって、逆にすべてオープンになってくる。あるいは税金そのものも、すべてオープンですから、ある面では全部課税対象になってくる。こういうことも検討しなければいけないわけでありますから、いいところばかりじゃなく、もう一面、影の部分をしっかりとしないと、中小企業はこのことによって大変な状態になってくる、私はその心配をしているわけであります。

 ですから、今あなたが言っていることと、現在の実体経済なり行っている問題の認識の差がそういうところに出てきているということ、このことをどう思いますか。

保坂副大臣 お答えいたします。

 現在の景況は、先生御心配なさるとおり、全体的には回復基調にあると言いながらも、確かに、地域だとか業種間の濃淡はともかくとしまして、中小企業には厳しいわけですね。とりわけ小規模企業はその厳しさはひとしおだという現状はよく認識しております。

 しかし、今回、先ほど冒頭で先生からコンプライアンスの話がございましたけれども、機関設計の中にこれを取り入れることにいたしましたけれども、現実的には、これは全部選択肢を任されているわけでございまして、必ずやりなさいということではないわけです。

 それから、会計参与なども、公認会計士とかあるいは税理士の先生方、この方々にお願いするわけですから、単にすべて中のものをオープンにするというだけではなくて、例えば経営に関しましての助言をいただくとか、そういう御自分のパートナーになるような制度を選択されたらいかがですかという提案をしているわけでございます。

 そして、最後に、公認会計士さんやあるいは税理士さんの先生方とは、本省といたしましても、常時接触いたしまして、経営の指導に当たってもらうようなお願いもしているところでございます。

田中(慶)委員 そのことは存じ上げているんですけれども、問題は、そういうことも含めて、今回の会社法の提案について、すなわち、議論をされてきているかどうかという問題なんですよ。

 例えば、今日本で、自殺者を見てくださいよ、三万人を超えているでしょう。何年続いているんですか。もう六年続いているんですよ、六年。これははっきり申し上げて、政治的責任である。そのうちの約三分の一近い人たちが企業の経営者であり、企業の何らかの責任者だと言われています。ということは、貸し渋り、貸しはがしに遭ったり、いろいろなことでとうとい生命がなくなっているわけであります。

 そういう中で今日を迎えているわけでありまして、あなたたちがいま少し総理に、日本の景気はもっと厳しいよ、こんなことをしっかりと提案していたならば、こういうことにならなかっただろうという部分もあります。

 そればかりじゃありません。例えば破産防止法、日本の破産防止法を外国と比較してごらんなさいよ。我々はさんざんこのことも含めて欧米並みの破産防止法を何とかやろうと、民主党はそのことについて積極的に提案をしてきたり、いろいろな努力をしてきた。しかし、現実には、与党の皆さんや政府はそれに乗り気じゃない。やるやるみたいなことを言っておりますけれども、現実にほんの少し修正をやろうとしているぐらいであって、抜本的な取り組みを行っていたならば、今のような自殺者の問題なり、あるいは第三者保証人になって身ぐるみ持っていかれて死に追い詰められるようなことはなかったと思います。そういうことが現実に今あるんですから。

 だから、そういう問題を含めて、今回、せっかくつくる、あるいは見直しをする会社法というものは、やはり十分その議論をしながら取り組んでいかなければいけない問題だと思いますが、それらについて、現実に、私は今のような説明をされると、何か腹が立ってくるんですね。余りそういうところについての配慮なり、あるいはそういうことが、ですから、最初、冒頭に申し上げたと思う。全然、これはノーと言っているわけじゃないんです。いい部分、期待される部分、しかしそのことだけをあなたたちは、皆さんが今回PR対象にばかりしている。今のような部分をもっと積極的に、日本の制度融資を見てくださいよ。その都度その都度、たくさんのメニューがいっぱいあって、選択肢はいいですよ、選択肢は広がったけれども、使い勝手が悪いし、どれを選んでいいかわからない、わかりにくくしている、こういう問題でありますから。

 今回の会社法は、そのことはないんですね。

保坂副大臣 大変厳しい御指摘でございますけれども、今回、会社法の見直しに関しましては、会社法の現代化という中で、LLPだとかLLCの問題も出てまいりました。それらとあわせて、また私たちも、先生おっしゃるとおり、どんなに努力をいたしましてもと言っては言い過ぎでございますけれども、やはりどうしても落ちこぼれていくところは、中小企業でございます。そのセーフティーネットに全力を挙げて取り組んでまいります。

 それから、会社の再生支援、これに関しましても、それぞれ、例えば先生の神奈川県でもやっていただいておりますとおり、いろいろなファンドまで設けていただいてやっているところがございますが、国といたしましても、各経済産業局を中心に、各都道府県、四十七都道府県に中小企業再生支援協議会を設けまして、これは結構実が上がっているのでございます。

 ですから、救うところは救い、そして意欲のある中小企業を何とか育てて、そして開業率も上げてというような総合的な中小企業対策の中で、この会社法が一つのきっかけになってもらえばいい、このように私たちは期待をしているところでございます。

田中(慶)委員 再生法も我々現場でさんざん議論してつくった法律であります。そして、修正をしたりいろいろなこと。しかし、現実に問題があって、まだまだ当初考えていた法律どおり動いていないわけでありますよ。ですから、はっきり申し上げて、それぞれの地域間の格差という問題もここにも出てきております。

 先ほど、今回の合同会社の問題が述べられておりますけれども、この日本版のLLC等の問題も含めてでありますけれども、私は、最低資本の問題を一つとっても、いいですか、一円から会社ができるよなんてことを、さんざんバラ色のようなPRばかりしていますよね。しかし、本気で会社をつくっていろいろなことをしようとすると、そこには必ず貸し渋りやいろいろな問題が現実に出ているという問題。そういう認識をしないで、何か非常にPRばかり、一円から会社ができます、こんなことばかり言っているのが現実でしょう。

 ましてや、見てください、今回の日本版のLLC問題は、やはりある面では、これから大変なことを私は心配しているんです。欧米の問題も参考にしていきますと、こういうことが今の日本で、ただただそのことに、最低資本制限の撤廃をするというような問題で飛びつきやすい状態かもわかりませんけれども、その裏に、しっかりとこれを十分フォローしていけるようにしておかないと大変なことになってくるだろう、私はそのことを心配しているんです。

 例えば、これらの問題も含めてでありますが、ここには幾つかの問題があると思います。ですから、この国が物づくりでいくのか、マネーゲームでいくのか、こういうことをはっきりとしていかないと、とんでもない過ちも出てきやせぬかという心配をしているわけであります。

 確かに、この資本金の撤廃によって、一円からできますよ、こんな話のことだと思いますけれども、しかし、今までの日本の技術や伝統、特許、こういう問題とあわせて、今回のような問題、特に、新しい時代といえば時代でしょう、先般のライブドアとフジテレビの問題等を見てもおわかりのように、それとの関連で、この日本版のLLCの問題や、あるいはまた欧米のLLPの問題等を含めて、どのような想定でこの合同会社を、有限責任組合の問題やらそういう問題を含めて、念頭に置いて検討されているのか、お聞かせをいただきたいと思います。

保坂副大臣 LLCに関しましては、合同会社でございますけれども、今までの日本の法制度でなかったシステムでございまして、アメリカでは十年間で八十万社が誕生したというような、株式会社が百万社ですから、新規に会社を起こすときには二分の一がLLCだ、こういうような実績がございます。それから、イギリスがそうでございますし、またフランスやドイツも同じような制度がございまして、日本でも新しくベンチャーが起きたり、新事業を誕生させるときに大きなきっかけにしようということで、今度の会社法の現代化の中でお取り上げいただき、そしてまた私どもはLLCのもう一方の部分を、経産省では組合の方でやっていく、こういうことでやっております。

 先生御指摘ありましたように、物づくりとの関係でございますけれども、これはさきに、昨年、中川経済産業大臣が発表いたしました新産業創造戦略、Nリポートと言っておりますが、この中でも、日本の将来は物づくりしかない、ここでしっかりと経済を確保して、そして高度の福祉社会をまた構築していくというような、そういう提案をなされておりまして、その中でも実は提案をしていたことが、おかげさまで今回法律としてお認めいただいた新しい制度でございます。

 したがいまして、これらが、先ほどお話がありました一円株式会社、これは一万社できましたけれども、このことによりまして、約二万七千人の雇用が新たに確保された、そして、一万社の一円企業も順次卒業して、普通の株式会社に発展していく、あるいは上場していく会社が中から出てまいりまして、私たちとしては大変喜んでいるわけでございますが、そういう施策に総合的に取り組んで、今回の会社法の改正に関しましても、ぜひ御理解をいただき、また成立させていただきたいと願っている次第でございます。

田中(慶)委員 現実問題として、この一万社が新しく云々ということでありますけれども、新しい一つの起業家育成というもの、そういう一つの半面と、もう一つは、先ほど来申し上げているように、自殺者の一万人以上の人たちが何らかの経営者であり、今の破産防止法の不備から再生ができない、やはりこの辺をもう少し突っ込んでやったら、私はもっともっと活力が見出せるんだろうと思います。

 大臣、この破産防止法は、綱引きで、法務省とか経済産業省とかがいろいろなことをやっておりますけれども、あなたはこの破産防止法に対するどういう認識がございますか。通告はしておりませんけれども、そのぐらい、大臣ですから考えられると思いますので、答弁ください。

南野国務大臣 先生、いろいろと御心配いただいております、いわゆる経営者の方々が本当に倒産とかそういうものをもって命をなくしてしまう、そういうような方々についてもいろいろと配慮していく法案というふうに考えておりますし、それをやっていくことによって、少しでもいい経営のあれが広がっていくようにというふうにも思っております。

田中(慶)委員 非常に抽象的でありますけれども、日本にも破産防止法はあるんですよ。欧米並みにした方がいい。どういうことかというと、倒産しても、次、再起できるような制度、例えば企業にまつわる関係の事務所の費用であるとか生活費の問題、せいぜい車、こういう問題はしっかりとこれを担保してやるべきである。にもかかわらず、日本はそうじゃないんです。そういうところに、先ほど一円で一万社の問題、しかし、こういうところにもっとメスを入れていけば、もっと日本の企業、産業というのは活性化できるし、それこそ自殺者も出ない、こういうことにつながっていくわけでありますから。

 会社法というものは、そういうところもしっかりと十分配慮した中でつくるべきじゃないか。ですから、今言っている、日の当たる部分ともう一つの裏の部分というのはそういうところにあるわけですから、これをちゃんとしなければいけないと私は思っています。

 限られた時間でありますけれども、例えば今、見てください、外資の問題。このことによって資本の規制緩和をする。いいですか。日本のゴルフ場は半分近くは外資ですよね。すばらしいホテル、約四、五〇%はもう外資になってきております。そういう形で、今度は今のような形で資本金を下げてくる。あらゆる物づくりを含めて、いろいろなところに外資の問題。外資ノー、すべてノーと言っているわけじゃありません。それに対して、どうハードルなり歯どめなり防御策なりを今回考えられたのか、大臣、お聞かせいただきたいと思います。

南野国務大臣 先生、外資というふうにおっしゃいましたけれども、これは特に外資でなくても、商売ということについては、これは関係していくものだというふうに思っています。

田中(慶)委員 ちょっと言っている意味がわからないと思いますが、もう時間でしょうけれども、今、日本は、ある面ではマネーゲームのような問題を含めて、ゴルフ場も旅館も、そして最近は製造業まで外資がぼんぼん入ってきている。今回の会社法の中で、それぞれ資本金なりそういうものをぐっと下げてくると、自由に、もっと入りやすい状態になってくるだろう。会社法そのものを検討するときには、そういうところも十分議論しておやりになったんだと思いますけれども、何か今の答弁では満足いきませんので、私は、御配慮いただいて、次回も質問させていただけるようでありますから、私も勉強しますけれども、大臣もよく勉強してきてください。次回はこんな程度じゃなくしっかりとやらせていただきますので。

 そのことを申し上げて、時間が参りましたので終わります。ありがとうございました。

塩崎委員長 次に、岩國哲人君。

 では、速記をとめて。

    〔速記中止〕

塩崎委員長 速記を起こしてください。

 岩國君。

岩國委員 民主党の岩國哲人でございます。

 まず、大臣に、今回の会社法改正案に当たりまして、どういう認識とそれから意欲を持ってこれに対応されたか、それをお伺いしたいと思います。

 今回の改正の一番最大のポイントは、大臣自身、何だと思っておられますか、今回の改正案の一番の大きな目玉、眼目というのは。どうぞお答えください。

南野国務大臣 大変大きなテーマを会社法の中では我々抱えているというふうに思っております。そういう意味では、三つの大きな柱があるかなと思います。利用者の視点に立った規律の見直しをやっていこう……(岩國委員「いや、大臣、一つだけと私はお願いしております」と呼ぶ)では、そういうことでございます。

岩國委員 大臣自身、自分としてはこれが一番大事だと思われるポイントは何ですか、一つだけお答えください。

南野国務大臣 株式会社と有限会社を統一することによって、今までも四つのタイプがありますけれども、このたびも、合同会社というような形をつくりながら四つのタイプを法案にしていく、そういう選択ができるということでございます。

岩國委員 これだけ経営者側も、投資家それから個人株主を含めまして、TOBだけではなくて、会社のあり方について関心が非常に高まっています。これは私は、資本主義社会にとってはいいことだと思っているんです。政治に対する関心だけではなくて、こういう会社の形態のあり方について。

 大臣が今、眼目としておっしゃったのは、会社の形態を幾つか整備してみる、私は、それが改正の最大のポイントではないと思うんですね。経営者としての意識、コーポレートガバナンスはどこにあるのか、逃げ回ることだけが経営者の役割なのか、立ち向かうことなのか、会社の企業価値を高めるための経営のあり方はどうなのか、そのためのインフラ整備はどうなっているのか、会社法はそれを現代の環境に合わせるようになっているのかどうか、私は、そこにあると思うんです。この有限会社とかそういうところとの、四つのタイプを一つにしてみます、あれこれしてみますということではないように私は思います。

 次に、もう一つ、日本の会社をごらんになった場合に、南野大臣御自身が、日本の会社を支配してみたい、経営権を取得してみたいと思うときに、外国の企業と日本の企業と、日本の企業の置かれている、そういう特殊な環境としてはどういうものがありますか。アメリカの会社だろうと、ヨーロッパの会社だろうと、日本の会社だろうと、会社法という大きなインフラの中に、日本の会社というものをターゲットにした場合に、日本の会社についてはどういうハードルが高いのか、買いやすく、ハードルが低いのか。外国と比べてどういう点が一番の特徴だ、相違だという意識を持ってこの改正案を提出されましたか。

南野国務大臣 一つのポイントは、やはり会社を起こすときの資本金というようなものも、それがなければ会社が起こせないというような、一千万円とかいう限度がございました。でも、このたびの法の改正によっては、一円からでも気持ちがあれば起こしていける、そういうような幅広い人たちに会社を起こしていこうという魅力を持ってもらうということもこの法律の改正にあると思います。

岩國委員 私の質問がちょっとおわかりいただけていないのかもしれません。会社を起こす云々ではなくて、会社を買収する。今世間一般で、よくお茶の間番組と言われるようなところにまで、大臣もごらんになっていると思います。そういう日本の会社というのは守られやすいのか、攻められやすいのか、外国と比べてどこが一番の特徴で、そして今度の改正案ではそれがちゃんと手当てができているかどうか、その点なんです。

南野国務大臣 このたびの株の動きというものも、一般人が見ても多少勉強になるという形が提供されたと思いますが、その中でやはり一番ポイントになるのは、黄金株という問題であったり、ポイズンピルという問題であったり、それは今まで日本では余り言われていなかったことではありますが、そういうものをもってして会社をちゃんと自分の進めやすいようにしていこうという形にあるのではないか。

 それについてついでに申し上げるならば、それを一年間ゆとりを持って展開していこう、みんなちゃんと整備してくださいというような意味を含めているのがこの法案の改正だと思います。

岩國委員 そうすると、今度の会社法改正の方向としては、今まで外国の会社に比べて攻められやすい、守りにくかった、ポイズンはなかった、黄金株はなかった日本の会社に、毒は持ってくる、黄金は持ってくるというやり方で、日本の会社を守るための防壁を高めようという方向でお考えになっていらっしゃるんですね。

南野国務大臣 それも一つであると思います。

岩國委員 それも一つということは、要するにそういう方向を肯定していらっしゃるということですか。

 日本の会社というものを私はヨーロッパから十年、アメリカから十年見ておりましたけれども、日本の会社というのはヨーロッパ、アメリカの会社に比べて非常にハードルが高い、防壁が既に高いんです。

 それは、日本株式会社といったような一つのコンセプトのもとに、国家ぐるみで守ろうという意識が非常に強いというメンタリティーのほかに、最近の経済政策でいえば、ゼロ金利政策でいろいろな企業の利益がかさ上げされている。最近の同友会の発表によりますと、長期金利が一%上がれば経常利益が五%減る、二%上がれば一割減るということです。裏返して言えば、ゼロ金利政策あるがゆえに、二%長期金利が低いということであれば、日本の企業の利益は一割かさ上げされているんですね。つまり、金融政策というもので、既に会社の価値、会社の利益はそれだけ高げたを履かされているということも二番目の防壁になっているわけです。

 三番目、大臣は持ち合い制というのを御存じですか、持ち合い株について。持ち合い株というものが長年にわたって存在しているということ、これが三番目の大きな防壁なんですね。

 これは、アメリカの会社にもヨーロッパの会社にも、この持ち合いという形のものはないんです。二割、三割の大手安定株主が存在して、それが常に城の殿様、経営者を守るためにしか存在しない。議決権を持ちながら、いつもそれを行使しようとしない。行使するときは、常に経営者側の提案に賛同することしかしない。何十年もこの議決権がそういうことに使われているということは、これは見えざる会社の社長、経営者自身の持ち株に相当するような隠れた議決権としての役割を果たしているわけです。おわかりですか。この三番目の城壁が一番高いものです。

 この持ち合い制というものがあって、国民性と政府の金融政策で守り、そして丸の内の企業同士が防衛するこの持ち合い制というのは、言ってみれば丸の内の安全保障条約みたいなものです。安保条約で、ずっと集団的安全保障で守られているわけですから。こんなものがよその国のどこにありますか。その上今度は、この改正法で、やれポイズンだ、やれ黄金株だ。これはちょっと過剰防衛じゃありませんか。お答えください。

南野国務大臣 過剰防衛というお言葉でございますが、企業の防衛をねらって会社法案ができているのではないというふうに思いますが、いろいろな株式の発足ということを見てみますと、結果としては防衛をしていかなければ自分の会社も成り立たないというようなこともあり、会社だけじゃなく従業員ももちろんそうですけれども、そういうような配慮もしなければならないというところにあるのではないかなと思っております。

岩國委員 先ほど、そういった防衛力をより高めるんだ、集団安全保障体制の上にさらに個別的自衛権も発動していくんだ、こういう発想ですね、この会社法改正は。そこまで必要なんですか。

 外国の企業の防衛体制と日本の企業の防衛体制とを国際的視野から見てお考えになって、日本の企業は過剰防衛なのか、全くよその国と同じ程度の防衛力なのか、それでもまだ防衛力は弱い方なのか、この三つのうちのどれか、お答えください。

南野国務大臣 その三つのうちの一つと言われても大変なんですが、いろいろな条件がありますので、防衛したいと思う人は防衛できるように、また、今のままでよければそのままでもいいというようなオプションもいろいろあるだろうというふうに思います。何を主として会社を起こそうとしているか、また会社を維持しようとしておられるかということについては、防衛が必要な場合にはそれができる仕組みをこの中に持ち込んでいると思います。

岩國委員 それではちょっと答弁にならないと思うんですね。防衛力というのは、防衛したいと思う人がやることが防衛力なんですよ。防衛したいと思わない人は、何も防衛力なんか発揮する必要はないわけですから。防衛したい人には防衛力を、防衛したくない人には、何とおっしゃいますか。

 要するに、防衛したいと思うときの防衛力というのは、この会社法の改正によって日本はよその国以上に会社防衛が強くなってしまう方向になっているのかどうか、端的にお答えください。

南野国務大臣 そのような方向になっていくだろうと思います。

岩國委員 私は、こういった過剰な防衛力というものに対して、既にいろいろな取引所からも、あるいは有識者の方からも批判的な意見が出ているということは御存じだと思います。そうしたこれからの株主の地位、あるいはそういった国際的な慣行というところから見た場合も、過剰な防衛力を内蔵したこの会社法改正というのは、その点一つをとらえても私は問題が多いと思います。

 次に、質問を変えます。

 いろいろな転換社債等が発行されています。会社の支配権をこれからとろうとする場合に、株式を買う以外に転換社債を買う、こういう方法がありますね。そして三番目に、新株引受権をもらう。四番目に、ワラントつき社債のワラントを買う。外国でその会社が発行している株式を土台にした預託証券を買う。これは、ADR、LDR、EDR、外国ではそういう預託証券で、外国で株式を買うこともできます。いろいろな土俵が幾つもありますけれども、転換社債についてまずお伺いします。

 転換社債の発行額の制限、資本金に対して、あるいは発行済み株数に対して。この発行限度については、今度の改正法では何らかの制限が強化される方向になっていますか、それとも全く改正されていませんか。

寺田政府参考人 社債の発行限度につきましては、かつては純資産額という上限がございましたが、それを廃止して以後ございません。この会社法についても、その点については何らの制約を置いておりません。

岩國委員 転換社債については。

寺田政府参考人 転換社債につきましては、整理といたしましては新株予約権つき社債ということになるわけでございますけれども、授権資本制度のもとで、株式会社が発行できる株式の数全体について、これはその会社ごとに決められているわけでございます。その会社の新株の枠内であれば新株予約権つきの社債も発行できる、こういうことになるわけでございます。

岩國委員 そうすると、転換社債を発行する時点で、例えば、一億株まで発行できるという会社があるとすれば、七千万株が既に発行済みとすれば、残り三千万株の枠に見合う転換社債の発行を、逆算して社債として発行できる、こういう考え方でしょうか。お答えください。

寺田政府参考人 先ほど申したことはそういうことでございます。

岩國委員 もうちょっとお近くに座っていただいた方がいいんですけれども。

 例えば、この三千万株を見合いにして三百億円の社債を発行した、そこまでは許されるわけですね。しかし、転換価格の修正条項でもって、三千万株だったはずのものが五千万株、六千万株、七千万株と社債の発行期間十年、十五年の間にふえていった場合には、それは、会社法によって、あるいは商法によってそれ以上の修正はできないような、そういうふうなことになりますか。それとも、全く発行時点だけのチェックであって、後は株数がどんどんふえても会社法の制限もなければ商法の制限もない。お答えください。

寺田政府参考人 会社の発行できる総株式数というものが決まっている以上は、それ以上の転換というのは許されないということになろうかと思います。したがって、限度いっぱいでそういうことになりますと、限度の枠を超えるということになれば、それは許されないことになるということでございます。

岩國委員 たしか、転換社債の発行枠というのは、資本金の四倍までとか、そういう制限があったんじゃないんですか。全くありませんでしたか。もう個々の会社が決めれば十倍でも百倍でも発行できる、こういうことですか。普遍的な法律というものは必要じゃないですか。

寺田政府参考人 発行価額については制約はございません。

岩國委員 私が聞いておるのは、一般株主の権利が侵害されるような大量な株式が転換社債という裏口を使って大量発行されてしまう。表玄関から出ていくのは、ちゃんと発行授権資本枠というものがあって、ちゃんとそこでヘッドカウントができるわけですね。裏口から深夜ひそかに出ていった、深夜ひそかにと言うと何か転換社債の発行が悪いみたいですけれども、転換社債という方法によって出発した裏口出発の証券発行が結果的にはその他大勢の株主と合流することによって表門から入ってくることがあるでしょう。私はそれを懸念して聞いているんです。

 今度のライブドアの場合にも、転換価格の修正がどんどん行われ、最初にだれも想像しなかったような大量発行が行われる。こういうことは今度の会社法できちんと制限がしてあって、一般株主が、ほとんどそういう情報を持つことのない個人株主が不測な損害をこうむるということがないように十分手当てはされていますかということなんです。お答えください。

寺田政府参考人 再三申し上げて恐縮でございますけれども、もともと株式の発行数というのは授権の枠内でございますから、それに反する新株予約権つき社債は許されない、これは裏口から入ってくることも許されないわけでございます、委員のおっしゃり方によれば。

 これに対して、発行価格をどこまで発行できるかということについては制約がない、価格の面での制約がないということを申し上げているわけです。

岩國委員 いいですか。あなた、転換価格と転換によって発行される株数との関係というのは頭の中にちゃんと入っていますか。

 転換価格について制限がないということは、転換価格百円とセットされたものが八十円になり、七十円になり、そして極端に言えば一円になる。転換価格の修正に限度はありませんということは、今の例で言えば百倍の発行が可能になる。授権資本の枠からいえば、本当は十倍でとめなきゃならぬところが、転換価格の修正がどんどん行く。ということは、十倍しか発行できないとあなたはおっしゃっている。にもかかわらず、転換価格は一円にまで下がる。そうすると、その差額の九千万株、九〇%というのは、発行されないにせ株式を発行しようというわけですか。

 発行される株数と転換価格というのは相関関係にあるでしょう。転換価格に制限がないということは、転換によって発行される株数についても制限がないということをあなたはおっしゃっているわけですよ。一方では、授権資本でおのずから制限があるとおっしゃっている。自分のおっしゃっていることが矛盾しているということにお気づきになりませんか。

寺田政府参考人 ですから、転換価格が下がっていって、その結果発行株式数がふえるというような結果、授権株式数の枠を超えてしまうことは許されないということを申し上げているわけです。

岩國委員 ということは、一円まで下がるんじゃなくて、三十五円とかそういうところで自然に天井につかえるということですね。転換価格の変更には限度がない。しかし、今おっしゃったことは、転換価格も逆算して授権資本の枠の中でおさまるように自然に一定の底、フロアが出てくるんだ、こういうことですか。これはいろいろな転換社債の発行条件の中に、そういう考え方で発行されておるんですか。どうぞお答えください。

寺田政府参考人 株式会社の法制における社債の仕組みの上では、今申し上げたとおり、下がっていけば、おのずから転換価格との調整によって仮に発行できる株式数がふえれば、そのふえた結果それが天井に達すれば、それ以後は許されないということになるわけでございます。

岩國委員 私は、この会社法改正の中心になっていらっしゃるんじゃないかと思いますけれども、そういう局長さんが、例えば転換社債を買った人が百億、みんな一億ずつ持っているとします。一年後に転換した人、結構です、あなたは授権資本の枠の中でございます、あなたはちゃんと真正の株式をもらいました。五年ぐらいたって、さあ、三十何番目にあらわれた人、あなたはアウトです、もう授権資本の枠に来ておりますから、あなたの価値、全くありませんよ、こういう扱いをしようというのが今度の会社法改正のねらいの一つですか。

 おかしいじゃありませんか。投資家の権利はどうやってそれで守られるんですか。事情を知った人、早く転換した人だけ、早い者勝ちの転換社債、これは世界で珍しい転換社債ですよ、あなたのおっしゃっている転換社債は。そうでしょう。転換価格の修正以内のところまではセーフとなる、それからその後は全部アウトの株。セーフの転換社債とアウトの転換社債、二本立てで発行されて、買った人はどっちがセーフかどっちがアウトかもわからない。こういうことでは全くマーケットは混乱するばかりじゃないですか。そういう程度の知識でこの会社法改正は行われているんですか。

 株式を発行する、発行した株式の株主の平等の原則、私はまだまだたくさん質問したいことがありますけれども、そうした表から出発する株式発行、普通株式発行と、裏口とあえて言いませんけれども、横口か別の口から発行されるワラントありそれから転換社債あり、いろいろなものがその中であるときに、この転換社債一つを取り上げたところでもう既に株数のチェックというものがよくできないような会社法になっているとすれば、これは随分悪用されると私は思います。

 現に、そういうものは悪用しよう、あるいは会社経営のために、経営権支配のために、買収のために使おうという関心が非常に高まっているときに、それをさっき南野大臣は、しっかりと守ってみせるのですと。これは、守ってみせるどころか、裏口は全然、ガードマンもおらないような状態ではないですか。そういう認識で、大臣、正しいのですか。今の議論を聞いておられて、大臣、一投資家として、一個人として、そんな会社があるとしたら、おかしいと思われませんか。

寺田政府参考人 これは現在の商法でも、今の会社法案のもとにおいても、先ほど私が御説明したことが、会社法の外枠の規制としてはそういう理解でございます。

 ただし、会社は転換価格を下げていって、当然のことながら、転換によって新株予約権が行使されて、それによって株数がふえる、それで授権株式の数を超えてしまうというようなことは、もともとそういう新株予約権つき社債の発行自体が、もしどこまでも価格が下がっていっても許される、どこまでも株式がふえるというような、この発行自体がおかしいわけでございます。

 それについてどういう規制をするかどうかは、これは商法上は何の規制もございませんが、確かに委員の御指摘のとおり、別の意味で、買い主といいますか、そういう権利者を保護する必要は、あるいはそういう意味ではあるのかもしれません。私が申し上げているのは、あくまで組織法としての会社法でどういう規制をしているかということを御説明しているわけでございます。

岩國委員 いいですか。私は最初からずっと一貫して聞いているのは、一般株主、個人投資家の株主権を希薄化させてはならないということなんです。一部の経営者あるいは取締役会の決議によって、今持っている株主の権利が、五年間たんすの中に大切に大切に、お父さんからもらった株式、娘さんが大事にしていらっしゃる。しかし、いつの間にか、これぐらいあった株券がこれぐらいの価値にしか、下がって、ない、こんなことがあってはならないわけです。

 そういう株式の価値の希薄化というのは何によって生ずるか。株式の希薄化というのは、増資によって生じます。二番目に、転換社債が発行されて、それが転換されて、株式の数がふえることによって希薄化が起きるのです。私が心配しているのは、この第二の希薄化についてどういう歯どめがちゃんとできているのか。これは三十分かかって、ほとんど答えらしい答えが出てこないのです。

 今、局長は、さらに珍しい、おもしろい答弁をされました。そういう、転換価格が下がって、株数を逆算すると授権資本の枠を超えるようなものは、当初においてそんな転換社債は発行されるわけがないとおっしゃったでしょう。ということは、その十年先に転換価格は幾らになるかということを十年さかのぼって、そこで予見して、だれがそんなことをできるんですか。みんな、時価によって、その後の増資形態によって、どんどん転換価格は下へ下へと修正されるのです。

 とすると、局長が計算されるのは、最低限の、常に一円という転換価格を想定して日本の転換社債というものは発行しなさいということを、局長は答弁としておっしゃっていることなんです。十年後、十五年後に二十五円なのか五円なのか一円なのか、わかりもしないで計算してみなさい、それで授権資本枠を超えていればアウトですよ、超えていなければセーフですよということは、最大限の限度というものを計算するときには、すべての転換価格は一円として発行しなさい。それでなかったら、いつどこで、さっき申し上げましたような、セーフの転換して普通株をもらえる人と、転換してだめ株をもらう人と、授権資本を超えた者、二通りが出てしまうではありませんか。

 どうぞ、御意見があったらおっしゃってください。

寺田政府参考人 私が申し上げていることは、その発行時点で計算いたしまして、授権株の枠内で転換できる数というのがあるわけでございます。商法には何らそういう規定はございませんし、会社法にもございませんが、価格修正型の転換社債、これは工夫でそういう商品をおつくりになっているわけです。そういう商品が、仮に幾ら幾らになると授権枠を超える、そのときに会社としては授権枠をふやさなければならない、そういうことまで想定して、すべて枠組みを整えた契約、社債の発行でないと許されないということを申し上げているわけで、もともと、一円になるかどうかという想定とは、それはまた全然別の問題でございます。つまり、もちろん余るほど授権枠があれば、あるいは一円まで想定しなければならないかもしれません。

 それともう一つ、希薄化の問題でございますが、これはもちろん株主平等の原則の問題がございます。勝手に新株発行を、有利で発行いたしますと、これは当然違法の問題も生ずるわけでございますが、そこのところを勘案いたしまして転換社債の中のある種の商品というものも設計をしていただかなければならないわけでございまして、これは商法自体あるいは会社法自体でどう決めるかというよりは、そういう会社法の枠内でどういう商品設計をされるかという問題であろうというふうに考えております。

岩國委員 全く局長は、一般の企業をちゃんと視野に入れ、それから将来の株主、将来のその転換社債を取得するであろう投資家、投資家というのは、平成十七年四月二十日の投資家が二十年間じっと同じ人ということはまずあり得ないわけです。転々流通するわけですから。ですから、十五年後の転換社債を買った人が、十五年後にもう授権資本いっぱいになった。十五年後の経営者が取締役会を開いて、授権資本枠をちゃんと引き上げてくれるという保証がなければ、危なくて買えないということでしょう。さっきおっしゃったのはそういうことですよ。

 常識的な会社は、もちろんそうされる会社もあるでしょう。しかし、常識がちゃんと担保され、保証されてなかったら、証券というものは買えないものなんです。そのために会社法が存在するんでしょう。世の中の経営者はこんなことはやりませんよ。ちゃんと、十五年後に転換価格が下がって、逆算すると授権資本を超えそうになった、一億株を一億二千万株に引き上げる、取締役会でそのとき決議いたしますから大丈夫です、それは証券会社のセールスマンが営業窓口で言う言葉ですよ、あなたのおっしゃっていることは。法律をつくる人のおっしゃることではありませんよ。

 もう時間が来ましたから、ほかの質問は全くできないままに、残念ながら私の質問を終わりますけれども、こういった、投資家、株主の権利を希薄化するような条項についても十分な議論もなしに、検討もなしに、私は午前中、財務金融委員会で、七条副大臣いらっしゃいました。同じようなことも少しは聞きました。その分野については、会社法の改正については十分こういった点についてはすり合わせを済ませて、自信を持って証取法の改正を提案したと。その証取法改正も、実はずさんな、抜け穴だらけのものではございました。私は期待してこの法務委員会に来たんです。どれくらい金融庁と法務省とのすり合わせが進んでおるかを、私は自分の目で確かめたかった。残念ながら、私の期待は裏切られました。

 質問を終わります。

塩崎委員長 次に、原口一博君。

原口委員 民主党の原口でございます。

 冒頭、委員長にお願いをしますが、私、今の岩國委員の質疑を拝見しておりまして、財務金融委員会の筆頭理事としても非常に驚きました。現実の市場や実務とは全く乖離をした議論を当局がし、そしてまさにマーケットの力やさまざまな問題について認識をしないままに、この法改正が行われているということが明らかになったわけで、私、委員長と先般、きょう衆議院で採決をされました証取法の改正についても、たまたま塩崎委員長がその責任者ということでお話をさせていただきましたけれども、私はこのように認識しています。

 いわゆる株式、証券と会社、あるいは銀行、保険、そういったものが分かれていた時代の会社法と、公開基準やあるいはさまざまなステージのフィールドが出てきている今のようなダイナミックな時代の会社法の改正とは、おのずと違うんだろうというふうに思います。

 そこで、委員長にお願いをしますが、ぜひ、質疑の中で、実務のわかったあるいは実務に即した議事を進めていただきたい、そのように思います。

 その上で、法務大臣にまず伺います。ちょっと、今の答弁で非常に不安になりましたので、改正の理念について確認をしておきます。

 会社法は、我が国にとってもどの国にとってもそうですけれども、経済の重要なインフラなんです。それで、今回の会社法改正は、近時のたび重なる改正を踏まえて、経営の自由度を高める、こういう改正だというふうに私は思っています。現在求められている会社は証券市場と一体となった本格的な公開株式会社、こういう時代に、経済司法の将来に大きな変革をもたらすものが今回の会社法だというふうに考えています。

 そこで、基本認識だけ申し上げておくと、自由度が増すというのはいいんです、使える道具が多くなる。企業再編についても随分踏み込んだ改正案が出ていますね、あるいは種類株についてもいろいろな種類株の問題が出ている。道具はたくさん使えますよといったときに、私たちが、国会、つまり中央政府を預かる、それをチェックする立場として考えておかなきゃいけないのは、では、どの土俵で、何をメルクマールにしてチェックをしていくか。

 あるいは、市場の皆さん、一般の株主の皆さん、債権者の皆さん、会社の経営者の皆さん、働く皆さんは、何をもって予見可能性を高めながら、予見可能性というのは、ああ、こんなふうになるんだからここから先はやっちゃいけない、ここから手前はやっていいんだという、そこが大事だと思っているんです。

 法務大臣の基本的な認識を伺いたいと思います。

南野国務大臣 会社法案におきましては、定款自治の範囲の拡大など、経営の自由度を高める方向で大きな改正が行われていこうとしております。

 このように、経営の自由度が高くなってまいりますと、経営者がどのような経営を行うかということについては、潜在的な株主を含めまして、株主によるチェックがより重要になってくるものと認識いたしております。特に、株式を市場で公開している公開会社におきましては、市場において会社のコーポレートガバナンスまたコンプライアンスなどについてチェックが行われ、市場からの正当な評価により適切な経営が行われることが非常に重要であると認識いたしております。

 そのために、会社について適正な情報開示が行われることが重要であります。具体的に、会社法案におきましては、内部統制システムの策定を義務づけ、その内容を事業報告書に記載することとした上で、これを株主や債権者に閲覧させることといたしております。

 なお、会社法制におきましては、公開大会社のみならず、中小企業が特色を生かした活動をして経済を支える基盤となることを考慮することも必要であろうかと思います。そのため、中小会社に組織上、運営上の自由を与えることも必要であろうと考えられております。

原口委員 今般のさまざまな一連の出来事の中でも議論がされましたけれども、やはり、一体だれが議決権を持っているかというのは、これは大きいですね。だれに議決権が渡っているのか。

 そこで、これは当局で結構ですから、さっきの、岩國議員が質問された転換社債、これは無記名でいつでも転換できる、そういうものだと思っていますが、いつこれの株主というのが確定できるんでしょうか。

寺田政府参考人 組織法としての会社法の立場から見ますと、結局のところ、株主総会で一体だれが株主としての権利を持つかということが非常に重要でございます。そのために、会社法の定めるやり方というのは、基準日というものを設けまして、その基準日で株主を決める。そこで株主名簿というものに正式に株主が記載される、こういう格好になるわけでございます。

原口委員 ということは、皆さんは、企業再編の手続をこの中で随分自由化はされていますけれども、つまり、今おっしゃる基準日まではだれが株主かということはわからないわけですね。そういう解釈でよろしいですね。

寺田政府参考人 企業の組織法上最も重要な株主総会における株主の確定という意味では、それがそうでございますので、最重要でございます。

 しかしながら、もちろん株主というものが単独株主権に基づいて書類の閲覧請求をするというような行為もございます。したがいまして、相対的な意味で、株主というものが基準日で全部決まるというわけではございません。

原口委員 委員長は私が質問している意味がおわかりになると思いますが、多分、今の答弁者は私の意図が一〇〇%御理解いただけない。

 つまり、今、皆さんは株式市場のみ、さっき岩國委員がお話しになりました、市場というのはいろいろなところで、いろいろな段階で広がっている。それは、何も今までの会社法、いわゆる古い商法が想定をしていた株式市場だけではありません。

 今、株式市場の中のお話を局長はされていて、本当は、今、私が質問の材料に使っています転換社債のフィールドがあってみたり、ワラントのフィールドがあってみたり、それから他国で売買をされている。例えば日本を代表するトヨタさんの株がアメリカで売買をされている。では、そこの株主のアイデンティファイというのは、いつ、だれが、どこでやるのかといったことをやはり考えていかなきゃいけない。国際市場が広がり、そして商品の幅も広がり、フィールドも広がる中を包含的に考えた中での規制改革でないと、結果的に、何が起こるかというと、自由度を高めた分だけかえって混乱が生じる、そういう危惧があるというふうに思います。

 大臣、いかがでしょうか。大臣、そこは通告しています。

南野国務大臣 今、先生のお話でございますけれども、経営の自由度が高められてというような前段から始まりまして、その自由化がかえって混乱を生じさせる危惧があるのではないかというような観点からであろうかと思います。

 会社法案では、経営の自由度を高める一方で、コーポレートガバナンスやコンプライアンス、そういうものの観点からの規定を整備して、また、開示を充実させることとしておるわけでございます。

 まず、コーポレートガバナンスの観点からは、すべての株式会社において会計監査人制度を採用することができることとした上で、会計監査人の会社に対する責任について、新たに株主代表訴訟の対象とすることや、また、取締役の解任決議の要件を特別決議から普通決議に緩和して、取締役に対する株主の監督機能を高めることとしております。

 また、株主代表訴訟におきまして、株式交換によって株主でなくなった者がそのまま訴訟を遂行することを認めることともしております。

 次に、コンプライアンスの観点からは、すべての大会社において、会社の……(原口委員「質問の観点だけ答えていただければ結構なんです」と呼ぶ)

塩崎委員長 焦点を絞ってください。

南野国務大臣 はい。では、そういうようなところでございます。

原口委員 やはり全く答弁がかみ合わないんですね。

 なぜかといえば、ダイナミズムの中で企業再編が行われているわけで、今回のライブドアとフジサンケイグループの問題についても、支配のあるところに責任が生じているのか、そしてその支配を、株という市場をもって支配しているのはだれなのかということが確定することが大事だったんです。それが、例えば貸し株で、SBIに、ニッポン放送ですか、その株が貸された。一体それによって議決権はどうなるのか、一体それによって支配と責任の関係はどうなるのか。つまり、今皆さんがお話しになっているのは、ステーティックな、年に一回、株主総会がありますね、そのときにこうあればいいですという、まだ時代がこれほど企業がダイナミズムに再編をしないときの法制を今説明されているわけです。

 私は、きょうはもうここにとどめますけれども、それで、これだけの自由化をしてしまえば何が起こるかといったら、結果的に混乱と予見可能性を低めるということが起こるというふうに思います。

 もう一つ。今回の会社法の中で、私ども金融の部門から見ていても非常に問題だなと思うのは、企業結合法制なんです。そのところをパスしている。企業再編については、どうぞ自由にやってくださいと。いや、そこは随分自由化された、私はそれがいけないと言っているんじゃないんです。再編後のルールについても改めておかないと。

 私は民主党の規制改革調査会の責任者をずっとしてきましたけれども、私たち民主党の規制の考え方というのはこうです。つまり、ファンダメンタルなルールについてはみんながわかるようにきっちりしておきましょう、そして、何かを変えるときには、変わらないものについてきっちり示しましょう。変えるというのは、変わらない、変えてはいけないことを明示することでもあるわけです。

 ですから、ぜひこれは、もうここで詰める時間はなかなか、また次の機会に譲りますけれども、今般の会社法制に企業再編の自由化が図られている中で、支配があるところに責任ありとの観点から、企業結合法制を、さらに結合した後のルールについて検討する必要があると考えます。これは法務省の中でも随分検討が進んでいたけれどもここには至らなかったような話も聞いていますが、なぜ今回、会社法案でその点の踏み込んだ検討が同時に出てきていないのか、そのことについて伺いたいと思います。

塩崎委員長 寺田民事局長。

原口委員 いやいや、これは大臣にです。通告のあるものは大臣。

南野国務大臣 既にされたことについては省略いたしますけれども、これからの問題ということでは、企業結合法制に対する対応、これは国際的にもその手法及び内容はさまざまであるところでありますが、拙速な規制強化や制度の創設はかえって企業活動の妨げとなるおそれもありますので、検討を慎重に行う必要があろうかと思います。

 グループ経営の進展に伴う利害関係者の利益の適切な保護というのは、これは重要な課題と考えておりますので、今後とも、実務における問題の状況を勘案しながら、適切な方策について検討を進める所存であります。

原口委員 いや、そういう答弁をされるんだったら、それをそっくりそのまま今回の会社法にお返ししますよ。だって、そうでしょう。拙速な企業再編の自由化をし、結果、では具体的に聞きますが、親子会社における親会社の取締役というのはどういう法的な責任を負っているんですか。

 今回、私たちの分野では、UFJホールディングスがその一〇〇%親会社であるUFJ銀行において、親会社の承認を得て、三菱東京フィナンシャル・グループに同銀行の株主総会の決議の一部に拒否権を与える内容の優先株式、これは黄金株というんですか、これを発行いたしましたが、この場合、親会社の株主としては、その取締役に対してどのような法的責任を追及することができるんですか。法務大臣に伺います。

南野国務大臣 委員御指摘のような優先株式の発行に際しましては、発行会社である子会社の定款変更が必要でありますので、完全親会社の代表者が完全子会社の株主総会で定款変更を承認する必要があるということでございます。

 この場合、完全親会社の経営陣は、グループ全体としての資金調達の必要性、優先株式の発行が完全親会社の株主に与える影響などを適切に判断しまして、その特別決議における議決権の行使をする義務を負うこととなります。

 もし、合理的な理由もなく、完全親会社の完全子会社に対する議決権の効力を著しく弱めるような優先株式が第三者に発行されたことにより、完全親会社に損害が生じた場合には、完全親会社の株主は完全親会社の経営陣に対して完全親会社に対する損害賠償責任を追及するための株主代表訴訟を提起することができることとなると考えられております。

原口委員 それは被害を与えた場合ですよね。

 ですから私は、今みたいな答弁だけでは、では、そこから先は司法でやりなさいといって、こういう企業再編法制の自由化を一気に認めることについては、よほど検討が必要だというふうに考えます。

 通告をしていないので更問いをしたいんですが、もう一つ、今回の会社法案で経営の自由度というのも高められているわけです。いわゆる事前規制から事後規制への転換が図られている。これは、私たち民主党も同じように主張をしてきました。だから、そこは是とします。

 ただ、現状では、きょう、理由もわからずに否決をしていただきましたけれども、日本版のSEC、それもできていない。しかも、金融サービス法も存在せず。事後的体制が的確に確立されない限り、ここもやはり、これは前に竹中大臣とも、別の委員会でしたか、自由というのは何かというと、法と正義のもとでの自由なんですよ。法と正義、ある一定のルールが守られている上での自由。きょう、私がこの委員会で強調したかったのは、その一定の枠は何なんですかと。今回の会社法の改正は、そのダイナミズムという枠も、それからチェックのところの合理性も、あるいは企業結合法制についてもパスをしてしまっていますね。そのパスをしてしまっている部分については詰めないといけないんじゃないか。

 ちょっと首をかしげられたので、きょう、一点だけ詰めておきたいことがあります。それは課徴金です。きょう、議員修正で証取法の改正修正案を全会一致で通していただきましたけれども、課徴金の性格をどう考えているのか。

 委員長のお許しをいただいて、私どもが委員長から提示していただいた、これは衆議院法制局ですかがおつくりいただいたペーパーを配付させていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。

塩崎委員長 はい、どうぞ。

原口委員 もうお手元にありますね。

塩崎委員長 あります。

原口委員 一体、ここのところをどう詰めるか。

 法務省に伺いますが、憲法三十九条は、いわゆる刑事罰等の、二重の刑事罰を否定したものであって、行政的な措置との併科を否定したものではないというふうに思うんですが、これは刑事局ですか、お尋ねをしたいと思います。

大林政府参考人 法務当局が一般的に憲法の解釈について意見を述べる立場にはないわけでございますけれども、あえて、刑事手続の運用に携わる立場にある者として、課徴金という行政上の措置に加えて刑事罰を科すことの適否が裁判上争われた過去の判例等を踏まえて申し上げますと、当該課徴金の趣旨、目的、性格や金額、それから刑事罰や課徴金がいかなる事案について科されるのかという刑事罰と課徴金の役割分担などのさまざまな事項を総合的に考慮して判断されるものだ、このように考えております。

原口委員 いや、その総合的に考慮してじゃどうしようもないんですよ。

 ここで、きょうは公取の皆さんにも、それから経産省の皆さんにも来ていただいていますが、あえて内閣法制局は呼びませんでした。

 内閣法制局は、先週の私の質疑に答えてこうおっしゃっています。「憲法三十九条後段は、同一の罪について、重ねて刑事上の責任を問われないというふうに規定しております。」これは私の理解と同じです。「ここで言う刑事上の責任とは何かということでございますが、これは基本的に刑事罰を想定していることは当然でございます。しかしながら、行政機関が科すものであっても、その趣旨、目的、性質等が実質的に刑罰と同一視されるようなものであれば、それはやはり憲法三十九条後段が規定する二重処罰の禁止、あるいはその趣旨に触れるのではないかというふうに理解しております。」内閣法制局はこう言っているわけです。

 図を見てください。今まで公取の皆さんは、あるいは経産省の、独禁法の世界では、不当な利得の簒奪だという説明をしていたわけです。不当な利得の簒奪だという説明の中にいる限りにおいては、行政上の抑止効果あるいは市場の損失、きょう私たちが審議をしている会社法というか、つまり経済活動全体の自由を侵してしまうような、信頼を根底から崩すような、例えばきょう財務金融委員会で採決をした証取法の継続開示義務違反のようなものについても課徴金は課せられないという、金融庁は結局そこで内閣法制局との詰めを失敗して、こんなルールですらできなかったんですね。

 「最広義の「利得(損失)」で説明可能か?」と書いてありますけれども、私はそれだけではやはり無理だと思います。抑止のため必要かつ合理的な金銭的賦課ということが、これは絶対必要だ。ところが、その右側に書いておりますように、ここで困るのは、刑事罰と近接してくるので、どこからどこまでが二重処罰にならないのかという問題が一つ。

 もう一つは、不当利得の簒奪という概念を中心に置けば、それでは不当利得の簒奪というのは一体何なんだ、不当利得というのは何なんだ。例えば有価証券報告書を、西武の事案のように四十年もうそを書いてきた。これによる利得というのは何なのか、計算できますか。逆に、計算できないことについては、いわゆる行政的措置は、抑止は働かないということであってはならないんじゃないか。私は、この辺のことをもうはっきりさせるときに来ている。

 このジレンマに陥らないために、私どもは、独禁法の中で行政制裁金という新しい概念を出してきたんです。つまり、不当利得の簒奪か、あるいはサンクションかもわからない。ぬえのような構造を持っている課徴金という中に迷い込んでしまっていれば、今回これだけの自由化が会社法の中で進もうという中で、市場のチェック機能が働かないんじゃないかというのが私たちの基本的な考え方なんです。大臣だったら賛成していただけると思うんですが、いかがでしょうか。

南野国務大臣 大変難しい問題でございますので、しっかりと勉強したいと思っております。

原口委員 それでは、経済産業省、それから公取にも来ていただいていますが、公取ももともとは不当利得の簒奪といったことに中心を置いた独禁法運用をされてきたと思いますが、随分そこのところは変わってきて、少なくとも、抑止のために必要かつ合理的な金銭的賦課、これが公取案の中にも、独禁法案の中にもあるのではないかと思うんですが、いかがですか。

伊東政府参考人 お答えいたします。

 独占禁止法上の課徴金制度は、カルテル、入札談合等の違反行為防止という行政目的を達成するために、行政庁が違反事業者等に対して金銭的不利益を課すという行政上の措置ということでございますが、従来のように不当利得相当額を徴収するだけでは違反行為の抑止のためには不十分であるということから、今般成立いたしました独占禁止法改正法では、不当利得相当額を上回る金銭を徴収する仕組みに改めたところでございます。

 したがいまして、課徴金制度は、今回の改正法によりまして、行政上の制裁としての機能をより強めたものではございますが、その法的性格は、今回の改正前後においても変わらない、違反行為防止のための行政上の措置という整理でございます。

舟木政府参考人 お答えいたします。

 独占禁止法の課徴金についてのお尋ねでございますが、私どもも公正取引委員会と同様に、この独占禁止法の課徴金の法的性格は、カルテルや談合等の違反行為防止という行政目的を達成するために行政庁が課する行政上の措置だというふうに考えておりまして、今回の改正によりまして、不当利得相当分に加え、再発防止的な意味合いを含むものになったというふうに考えております。

原口委員 やはり、聞いている方が混乱するのは何でかというと、当初は不当利得の徴収という説明を放棄しながら、そして社会的損失の負担という概念を根拠に制裁できないかということを、そういう説明が維持されてきたんです。しかし、最終的には違反行為の抑止を全面的に打ち出した。きょう詰めておきたいのはここなんです。

 一体、制裁なのかわからない、行政的措置なのか、あるいはこの一番下の刑事罰なのかわからない。ここのところの整理がつかない限り、実効性のある市場の監視、あるいは日本の経済全体の牽引役であるさまざまな会社のコンプライアンスといったことも守れない。つまり、さっき、コンプライアンスとは何かという質問を、冒頭田中委員がしていましたけれども、そのためにも、どこからどこまでが何に基づいてだめなのかといったことを明示する必要があると思うんですが、その点については御納得いただけますでしょうか、法務大臣。

 生まれて初めて、通告したものしか質問しないというのが今回なんですけれども、それだけ議論をかみ合わせたいと思っているんです。

 もう一つ、これは経済産業省、わざわざ来ていただいていますので。

 米国企業が日本で株式公開を行う場合には米国の会計基準を使用することが認められている。ところが、日本企業が米国で株式公開を行う場合には日本の会計基準を使用することが認められていません。相互主義じゃないかと思うんですが、この点についてはいかがですか。

 私たち、会社法を審議する中で、何をスタンダードとするのか。片っ方でアメリカはそういったことができるのに対して、我が国はかの国に対してそれができない。このことについてはどのような認識をお持ちですか。

舟木政府参考人 先生御指摘のとおり、現在、証券取引法上、外国企業が我が国市場におきまして株式公開を行う場合に、金融庁長官が公益または投資者保護に欠けることがないものとして認める場合に、本国基準または第三国基準に準拠する財務書類により開示をすることが認められております。すなわち、アメリカ企業は、我が国におきまして株式公開を行う場合には、アメリカの基準に準拠したものでいいというふうになっているわけでございますが、一方、日本企業が米国市場におきまして株式公開を行う場合には、アメリカのいわゆるSEC基準に準拠した連結財務諸表の開示を求められているところでございます。

 私ども、この会計に関しましては、現在、こういった問題に対処するために、会計基準の同一化、いわゆるコンバージェンスというプロジェクトを会計の専門家の方々に進めていただいておるところでございまして、グローバルな経済活動が進む中で、グローバルな資本市場の活性化ですとか投資交流を促進する観点からも、こういったコンバージェンスプロジェクトに期待をするところ大でございます。

原口委員 三角合併や、いろいろな敵対的買収、さまざまなお話が出ていますけれども、ルールのところで違うんですよ。ぜひこれは多くの同僚の皆さんにお話をしたいんですが、私たち国会議員がなすべきは、ルールにおける競争でしっかりと日本の国益を守っていくことだというふうに思います。

 今回の会社法の改正の中で、最後に指摘をしておきますが、私は、大企業、つまり世界に対して説明責任を果たすべき企業の会計基準と、一定の割合、ある範囲の中で説明責任を果たす会社の会計基準は、同一である必要は全くないと思っています。それをBISで横並びにしたために何が起こったかというと、結果、銀行の貸し渋りや貸しはがし、中小企業いじめといったことが起こっているわけで、私は、ぜひ、これはきょう最初の会社法の質問でこんな生意気なことを申し上げて恐縮ですが、ダイナミズムの中で、ルールにおける競争が競争の本質であるということを踏まえた会社法の改正を、与野党の枠を超えて、前向きに検討させていただきたい、このことを申し上げて、質問を終えます。

 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

塩崎委員長 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として法務省大臣官房審議官蒲原正義君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塩崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

塩崎委員長 次に、平岡秀夫君。

平岡委員 民主党の平岡秀夫でございます。

 私は、現在財務金融委員会の方に所属しておるんですけれども、今回の会社法案、非常に多岐にわたる論点があるということで、連合審査を一度ほどやらせていただいたわけでありますけれども、一度だけしか連合審査が行われていないということに対して、すごく不満に思っております。

 きょうも、質問させていただく事項は、経済産業省あるいは財務省、そうしたところにも関係する話でございますので、ぜひ、本来であれば大臣に来ていただいてしっかりと議論させていただきたかったということで、これからも連合審査はしっかりとやっていただきますように、委員長含めてお願いを申し上げておきたいというふうに思うわけであります。

 ということで、会社法案の質問に入っていくわけでありますけれども、その前に、きょうあった話で、会社法案とは関係ない話をちょっと一つだけ質問させていただきたいというふうに思っております。

 きょう午前の衆議院の議院運営委員会の理事会で、竹中平蔵郵政民営化担当大臣の海外渡航の問題が少し議論をされたようであります。そのときに、杉浦官房副長官は、竹中大臣については、所定の手続をせずに海外渡航した事実はないという調査結果を公表したというふうに報道されているところでございますけれども、そこで出入国管理を所管している法務省に対してお聞きいたします。

 大臣、竹中大臣が平成十三年に大臣に就任して以降の出入国の状況がどうであったかということについてお答えいただきたいと思います。

南野国務大臣 これは、個人の出入国記録につきましては、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律におきまして個人情報となっておりますので、お答えについては差し控えさせていただきます。

平岡委員 それは、民間人であろうが、こういった公務員であろうが、あるいは閣僚であろうが同じ取り扱いですか。

南野国務大臣 同じでございます。

平岡委員 それでは、ちょっと一般論で聞かせてもらいます。

 今、個人の情報については個人情報保護法に基づいて開示とかはできないという話でありましたけれども、個人の出入国の記録はどのようにされ、そして管理されているのか、保存期間はどうなっているのか、この点について明らかにしてください。

南野国務大臣 個人の出入国記録につきましては、空港等において取得した旅券情報などの出入国に関する記録を電算システム上で管理しております。日本人につきましては、直近三年分及び当年分を電算システム上で管理しております。

平岡委員 電算システムで管理しているのは直近三年ということのようですけれども、それ以外に、電算システムでないところでどこまでさかのぼって管理されていますか、保管されていますか。

南野国務大臣 そのことについては承知いたしておりません。

平岡委員 ちょっと、事務当局、答えてください。

蒲原政府参考人 お答えいたします。

 電算上は今大臣から御答弁したとおりでございますけれども、それより前の記録につきましては、基本的には電算から落ちまして、マイクロフィルムの形で保管しております。(平岡委員「何年」と呼ぶ)具体的なあれはございませんけれども、持っておりますのは、ちょっと今資料が手元にございませんから、もし間違っておりましたら後刻訂正させていただきますけれども、一九七〇年代ぐらいからのものがあるというふうに承知しております。

平岡委員 先ほど、個人情報保護法によって開示することができないというお話でありましたけれども、国政調査権に基づいてこの記録の開示あるいは閲覧を求めた場合は、法務省としては応じることができますか。

南野国務大臣 委員会からの要請があります場合には、その段階において判断させていただきます。

平岡委員 この問題、ぜひ理事会で取り上げていただいて、法務委員会としてこの情報についての開示を求めさせていただきたいというふうに思います。委員長、いかがですか。

塩崎委員長 この情報というのはどの情報ですか。

平岡委員 竹中大臣の出入国記録です。

塩崎委員長 後刻理事会に諮りたいと思います。

平岡委員 今は国政調査権に基づいての話でありましたけれども、それ以外に、私はよく新聞報道等で、出入国の記録を捜査当局が調べているという話を聞くことがあるわけでありますけれども、こういった出入国の記録を、出入国記録を管理しているところ以外に、ほかに提供するという場合はどんな場合があるんですか。

南野国務大臣 個人の出入国記録につきましては、警察等の行政機関からの法律等の照会規定に基づく照会がある場合には、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律第八条にのっとって回答することとしております。さらに、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律第十二条及び第十三条に基づきまして本人から請求がある場合については、回答することは可能となっております。

平岡委員 それでは、竹中大臣本人から請求があった場合も開示に応じるということでよろしいですね。それは、今言われたことですから、特に否定しなければそれで結構です。

 それでは、本題の方に移らせていただきます。

 まず最初に、合同会社の件についてお話を伺いたいと思います。

 まず、合同会社でありますけれども、今回の会社法案の中で新しくできたという形で規定されておりますけれども、この合同会社がつくられた理由、この制度がつくられた理由というのは何でしょう。

南野国務大臣 近年、株式会社のように出資の比率に従って配当などを行うのではなく、高い技術を持っている社員に配当を厚くするなど、より柔軟な経営が可能となる有限責任の法人制度が求められていました。合同会社は、このようなベンチャー企業等からの要請にこたえまして、創業、起業の活発化等を図るため新設することとしたものでありまして、その特徴は、出資者の全員が有限責任社員であり、内部関係には民法上の組合と同様の規律が適用される点にあります。

平岡委員 会社法をつくる立場として言えばそこまでしか言えないのかもしれませんけれども、これは、もともといろいろなところからこういうものをつくってほしいという要望があって今回実現したということであります。そのときの一つの大きな要望というのは、外資が日本への投資をする場合に当たって、アメリカのLLCといったような仕組みがないことによって投資を渋ってしまう。例えば、日本の有名な企業も外資とジョイントベンチャーをやろうとしたけれども、こうしたLLCといったような仕組みがないことによって、シンガポールで投資を行うことになったといったようなこともあるわけですね。

 ただ、そのときに、一つ言われているのは、先ほど大臣が言われたような仕組みも必要なのでありますけれども、そのほかにも、やはり税制上の取り扱いというものも投資を促進するに当たっては一つの大きな要因になるということであろうと思うんですね。そういう意味で、税制がどうなっているのかということについては今回の法案ではまだはっきりしていませんし、平沢委員がこの点について質問をされたときも、まだ検討中だということで政府参考人が答弁をしているようであります。

 そこで、一つお聞きしたいんですけれども、アメリカのLLCに対する課税の仕組みとその考え方がどうなっているのかということを、これは財務当局ですか、ちょっと教えてください。

田野瀬副大臣 LLCに対する課税の御質問でございますけれども、米国における課税は、持ち分が公開市場で取引される事業体や銀行等は法人課税になっております。その他の事業体は法人課税、構成員課税の選択制となっておるところでございます。

平岡委員 まさに、このLLCをつくるに当たって望まれているといいますか、これを使いたいと思っている人が望んでいる課税の仕組みというのは、先ほど言われましたが、構成員課税ということであるわけです。その構成員課税について、これはこれから税制改正の中でいろいろ検討されるんだと思いますけれども、日本でこの構成員課税を導入するということについてはどういう問題があるんですか。どういうふうに考えておられますか。

田野瀬副大臣 私が申し上げたアメリカにおける選択制の背景として、米国においては連邦レベルの統一的な会社法制が存在いたしておりません。各州が独自に多様な事業体を創設できる仕組みとなっているため、これらの多様な事業体を法人課税と構成員課税に切り分ける基準が形骸化した固有の事情がある、このように考えております。

 米国における法人課税と構成員課税の選択制については、国際的な租税回避を招きかねないなどの指摘がなされておりまして、いずれにせよ、これを我が国税制で採用することには、課税の公平や円滑な執行の確保の観点から問題が大きいことに留意する必要があると私ども考えておるところでございます。

 これらの点を踏まえると、米国LLCの例をよりどころとして我が国合同会社制度の課税関係を論じることは適当でないと考えておるところでございまして、いずれにしろ、合同会社制度の課税関係については、我が国税制の基本的な考え方にのっとりつつ、合名会社、合資会社等の他の会社形態とのバランス等を十分に踏まえて、その法的位置づけに沿った適正な課税関係が構築される必要がある、そのように考えておるところでございます。

平岡委員 適正な課税とかバランスのとれた課税とか、そういうことを言われても、何が何やらさっぱりわからない。大臣、わかりますか。わからないですよね。もっと具体的に、何が、どこが問題で、そういうアメリカでとられている構成員課税ということができないのか。それを端的に言ってください、端的に。

田野瀬副大臣 会社法案に対応する税制の整備については、その施行に合わせて今後の税制改正において対応する予定であり、合同会社制度について現時点で財務省としての具体的な課税の考え方、すなわち法人課税がだめだとかあるいは構成員課税にするなとかというような、そういった考え方を現在まだ検討中でございまして、申し上げることは困難でございますが、あえてここで申し上げさせていただくとすれば、我が国税制においては、民法組合について、組合員は組合事業から生ずる収益についてその発生当初から持ち分として所有権を有するとともに、組合員みずからが組合事業の債務に係る固有の責任を直接負っております。そういったことなど、組合員に組合事業の収益及び費用を帰属させるべき実質が備わっていることを踏まえて、組合員を納税義務者とし、組合段階では課税しないこととしております。

 また、今国会で御審議いただいております有限責任事業組合契約に関する法律案に基づく有限責任事業組合、すなわちLLPでございますけれども、この制度についても、民法組合の特例としての法的位置づけのもと、これらの点において民法組合と同様の仕組みが確保されていることを踏まえ、同様に組合員を納税義務者とすることが予定されております。

 以上から、合同会社については、会社法案から承知している範囲で申し上げれば、これらの各種の組合制度と法的位置づけはおのずから異なるものであると承知しており、その法的位置づけに沿った適正な課税関係が構築される必要がある、このように考えておるところでございます。

平岡委員 今の民法組合の話ですけれども、今回の合同会社について言えば、仕組みとしては、そこで上がった収益については、それぞれの構成員、社員に対してそれが配分されるという仕組み。それから、損失についても、出資の範囲内ではあるけれども、それぞれの社員に帰属するという仕組み。当然これは有限責任でありますから、会社が持っているものの範囲内でしかできないわけでありますけれども、そういうそれぞれの構成員に帰属するという仕組みをつくることによって構成員課税にすることは可能なんじゃないですか。なぜそれができないんですか。

田野瀬副大臣 合同会社制度については、先ほどから申し上げておることでございますけれども、大臣からお話がありましたように、創業段階のベンチャー企業、合弁会社その他少人数により事業を行うための会社に適した新たな会社類型として、私法上の観点から創設されるものと承知をいたしております。その課税関係のいかんにかかわらず、制度を導入する意義が認められるのではないかと考えております。

 他方、構成員課税をどのような事業体に認めるかは、合同会社制度と直接結びつくものではなく、事業体の法的位置づけや他の事業体とのバランス等を十分に踏まえつつ決められるべきものであり、一般論として、特定の事業体について税制上の例外的措置を講ずることについては、税制の公正、中立、簡素の観点から慎重な検討が必要である、このように考えております。

 財務省としては、構成員課税の仕組みについては、今国会で御審議いただいております有限責任事業組合契約に関する法律案に基づいて創設される有限責任事業組合、いわゆるLLP制度につき、民法組合の特例との法的位置づけを踏まえて、新たにその導入を目指すところであり、当該制度の着実な浸透を期待しておる、こういったところでございます。

平岡委員 今いろいろ説明されましたけれども、ちょっと余りにも、既存のものが全部正しくて、これから新しくつくるものは、既存のものから比べてみてちょっと外れているとかバランスがとれていないからというような考え方だけで物事を考えたら、世の中についていけない。

 先ほども原口委員からの指摘があったように、むしろ、あるべき税制というものを考えたときに、これまでの税制がもしそのあるべき税制に合っていないのならば、既存のものを変えていくということもあわせて考えていかなきゃいけない。そういう目でこれを見なければ、本当に適切な、国民の皆さんが望んでいるような税制はできないのかもしれないというふうに私は思うんです。

 そういう意味では、まだいろいろと検討しなければいけない点があるのかもしれません。税制改正の中で検討されるということでありますから、私も、税制改正の中で、どのような合同会社に対する税制がつくられていくのかということについてはちゃんと見てまいりたいというふうに思いますので、そのときはまたよろしくお願い申し上げたいというふうに思います。

 そこで、次に、ちょっと合併対価の柔軟化の問題に話を移させていただきたいというふうに思います。

 今回、この合併対価の柔軟化に対する規定の施行がほかの規定よりも一年延期されているというふうに言われておるわけでありますけれども、これはどういう理由でそうなっているのかという点について、大臣、お願いします。

南野国務大臣 合併対価の柔軟化は、敵対的買収に役立つものではございませんけれども、合併の対価が柔軟化されることによりまして合併が行いやすくなりますので、その前段階としての株式の買収についても投資意欲が増大し、結果として企業価値を損なうような敵対的買収が増加するのではないかという懸念があります。

 そこで、合併対価の柔軟化につきましては、我が国の企業が定時総会により買収防衛策を採用する機会を確保するため、その部分の施行について、施行を一年おくらせることといたしました。

 理由でございます。

平岡委員 今、合併をする前段階としての敵対的買収をする意欲がわいてくるというような話がちょっとあったわけでありますけれども、これは、合併を目的とする買収というのは敵対的買収ということになるんですか。どういう意味において敵対的買収になり得るんですか。

寺田政府参考人 敵対的買収というのは、そもそも商法あるいは会社法の中に定義があるわけではございませんで、基本的には、現在の会社あるいは現在の会社の執行部にとって好ましからざる買収であるということが言われております。

 いずれにいたしましても、この敵対的買収ということが現に行われようとする場合に、その行おうとする人は、その後、買収をした会社をどういうように自分の企業の中で用いようかということをいろいろ考えるわけでございます。その中の一つとして完全子会社にするということ等がございまして、完全子会社にできるなら、では買収をかけようかというようなことがございます。そのために、完全子会社化が可能になるような法制をとれば、敵対的な買収、つまりは、これは敵対的に限らず友好的なのもあるわけでございますけれども、買収そのものの意欲がわくということが言えるのではないかというふうに一般には言われているわけでございます。

    〔委員長退席、吉野委員長代理着席〕

平岡委員 物の本によると、買収をする場合の敵対的買収については三つに分類できる。一つがグリーンメーラー、買った株式を高く売るというようなことを目的にやるというようなケースですね。それからファイナンシャルバイヤー、金融裁定取引者というふうに言われているものがあります。三番目に、ストラテジックバイヤー、戦略的買収者、こういうふうになっているんですね。あえて言えば、合併を目的として買収をするというのはこのストラテジックバイヤーに該当するのかもしれない。ただ、このストラテジックバイヤーの場合は、逆に言うと、敵対的買収に該当するのかどうなのかということについては、かなりいろいろな議論があるところだと思うんですね。

 そういう意味で、敵対的買収という場合にここでまた出てくるのが、合理的な買収防衛策をとるための株主総会の決議ができるように一年間待つんだ、こういうふうになりますけれども、合併を目的とする買収に対する合理的な買収防衛策というのは、一体どんなものがあるんですか。

山本(明)大臣政務官 お答えいたします。

 経済産業省といたしましては、昨年九月から企業価値研究会というのをやっておりまして、そこで大分検討してきました。去る二十二日に論点公開をいたしまして、そうした中でどのように書いてあるかといいますと、基本的には、企業価値を損ねる買収と企業価値を高める買収とあるわけでありまして、企業価値を損ねる場合には機能しますけれども、企業価値を高める買収に対しては機能しない、そういうような基準だというふうに考えております。

 合理的な防衛策の基準であるために三つ考えておりまして、合理的防衛策の基準のその三つといいますのは、まず第一は、平時に導入するということ、公開をするということですね。第二には、委任状合戦によります株主の判断によりまして防衛策が解除できるようにすること。三つ目は、取締役の保身に走らないようにするために、社外チェックをしっかりすること、客観的解除要件を設定するということ、そして株主総会の事前承認、その三つのいずれかを必ず満たすこと、このように求めておるところでありまして、五月中には、法務省と一緒になりまして、企業価値防衛指針を作成すべく今準備をしておるところであります。

平岡委員 今のを聞いても、合併を目的とする買収について敵対的買収というふうになるのかどうか、逆に、敵対的買収と仮に位置づけられても、それに対する合理的な買収防衛策というのは一体何なのか、これについては非常にわかりづらい話になっていて、これと合併対価の柔軟化ということを結びつけて考えているということ自体が全く意味をなしていない、こういうふうに私は思うんですね。

 これは、一年延長する必要なんかないんじゃないですか。大臣、これは通告していませんけれども、一年延期するというのは、やめたらどうですか。

南野国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、合併対価の柔軟化そのものは、法律的、論理的に敵対的買収を増加させるものではありませんけれども、このような法律的、論理的な問題に対しまして、現実問題としては、合併対価の柔軟化によって敵対的買収が増加するのではないかというような懸念があることは、先ほども述べたとおりでございます。しかも、このような懸念が現実のものとなる可能性も否定することはできません。そこで、このような懸念に配慮いたしまして、その部分の施行を一年間おくらせようとしたものであり、従前の説明と矛盾するものではありません。

 次に、一年間延期することにより何を防ぎたいのか、要らないじゃないかというお尋ねでございますが、先ほど申し上げましたとおり、延期の理由は、我が国の企業にこれに対する防衛策を採用する機会を確保するためでございます。したがいまして、この延期により、我が国の企業が防衛策をとるか否かを検討する機会がないまま、企業価値を損なうような敵対的買収にさらされる懸念が増大する状況に置かれることを防ごうと考えているものであります。

    〔吉野委員長代理退席、委員長着席〕

平岡委員 敵対的買収に対する合理的な買収防衛策というのは、これはもっともっと議論をさせていただかなければいけないということで、ちょっときょうは時間がないのでこれ以上できないんですけれども。

 それを議論するに当たって、防衛策については、さまざまな株式が出ておるわけですよね。種類株ができるということで、いろいろな株式があるということ自体は法律でも考えているわけでありますけれども、逆に言うと、株式というのは一体何なのか。株式が株式である要件というのは一体何なのかというところが、ちょっと非常に疑問に思うような株式があるような気がするんですけれども、まず、株式が株式である要件というのは一体何なんでしょうか。

南野国務大臣 株式とは、会社法案には特に定義はございません。しかし、一般的には、株式会社における社員の地位を細分化して割合的地位の形にしたものであると説明されております。

 会社法案では、会社が営利法人であることにかんがみて、定款をもってしても自益権、具体的には、剰余金の配当、残余財産の分配を受ける権利の全部を制限することはできないこととしております。

 他方、議決権その他の共益権は、株主がその有する自益権を確保するために有する二次的な権利にすぎませんので、定款による権利の制限をすることに特に限界がないものと考えております。

平岡委員 今、法律の中に株主の権利という形で規定してあるということで、ある意味ではこういう権利を持っているものが株式であるというような形で説明できるかもしれませんけれども、逆に言うと、こういうものは株主の権利としてあってはいけない、こういうものがあると株式ではないんだという消極的なものも私はあるような気がするんです。これは通告していませんので事務当局でも結構ですけれども、こういうものがあってはならないという、そういう意味での株式の要件というのは一体どういうものがあるのか、その点についてまず教えておいていただきたいと思います。

寺田政府参考人 株式会社法制のもとにおいて、出資者の持ち分権というものをどう構成するかというのは非常に重要なポイントでございます。

 実際には種類株という形で、いろいろな形での株式がふえてきてはおりますけれども、では、一番こういうものがあってはならないというのは、どこまでそれができるのかということとの関係で決まるわけでございますが、私どもといたしましては、さまざまな種類はございますけれども、やはり株主としては、会社の営利性と関係するわけでございますけれども、配当を受け、残余財産の分配を受ける権利というのがあるわけでございます。その剰余金の配当あるいは残余財産の分配の権利というものを全く否定したような形での権利が表章される、そういう株券を持っている株主というのは、これは会社法上の株主の概念には当たらないだろうというふうに考えております。

平岡委員 ちょっと時間が来ちゃったので、金融担当副大臣、質問ができなくて済みません。また今度やりますので、ぜひお願いします。

 以上で質問を終わります。

塩崎委員長 次に、馬淵澄夫君。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

塩崎委員長 速記を起こしてください。

 馬淵澄夫君。

馬淵委員 民主党の馬淵でございます。きょうは、会社法の審議の中で質疑をさせていただくことになります。

 私、この会社法、今回の審議の中でいろいろと思い浮かべることがございます。

 今から十五年前、一九九〇年、当時、大阪の大証二部の会社、ゼネラル株式会社という会社がスイス・フラン建てCBを発行した。その大半がある企業に買い占められ、またそれと同時に兜町の証券金融からの買い占めに遭い、それこそ四七%という株式を取得され、直接ではありませんでしたが、高値買い取り要求というものに近い状況に陥りました。何やら私が五年前まで勤めておった会社であります。

 この会社で、いわゆる敵対的買収、この企業防衛の法務というところに、私は当時まだ二十代でございましたが、直接かかわるという機会でございました。そのときには、今般の審議の中にあるようなさまざまな企業の敵対的買収防衛策というものは法整備はされておらず、第三者割り当て増資によってその買い占めの株式の比率を下げていくということ、これしか方法がなかったわけでありますが、当時、私どもの会社で行った買収防衛策については、発行価格が有利か否か、買い占めによって不当にその価格が高められていたという状況の中で有利発行か否かという問題が一番の注目点でありました。

 当時は、いなげや、忠実屋あるいは宮入バルブ、タクマといったわずか数例の企業買収の例しかない中で、それこそアメリカにおけるさまざまな買収防衛策というものを、現地から書類を取り寄せ、あるいはさまざまなシンクタンクなどから資料を取り寄せてその方策を練ったものであります。

 九〇年のその買収劇は、第一審においては差しとめ請求を受け、差しとめとなりました。しかし、株価を引き上げることによって、第二回目の第三者割り当て、連続して行ったその第三者割り当てによって、差しとめ請求はなされましたが、これを却下として、我々は企業の経営権あるいは企業価値そのものを守ることができたわけであります。

 当時を振り返りますと、バブル真っ盛り、いわゆる企業の持っている時価総額というものがその資産価値よりも著しく低い状況の会社が幾つもありました。社会的に大変問題があるとされるようなグループからの買い占めに遭ったという例も多々報告されておりました。今思いますと、あの当時に今回この会社法で議論されているようなさまざまな敵対的買収防衛策というものがビルトインされていれば、もっと違った形だったのかもしれないと思います。

 しかし、一方で、私たちは、企業防衛をする中では、本当に企業防衛という方法が株主に資するものであるかということを一生懸命に現場の中で考えさせていただいた。今回、私は、この企業買収防衛策について質問をさせていただくわけでありますが、当時のそんな思いをつい浮かべながら、法務省の中でどのような形でしっかりと議論がなされてきたかということを一つ一つ、時間は短いんですが、確認をさせていただきたいというふうに思います。

 アメリカにおけるさまざまな敵対的買収防衛策、九〇年当時も幾つもありました。しかし、米国においては、ちょうどそのころが一つ目のピークであった。そして、その防衛策として、まず敵対的な買収のホスタイルの相手の株式の比率を希釈させるという形でライツプランというものが導入をされてまいりました。このライツプランは、敵対的買収の相手に対しての株式の比率を下げていくためのさまざまな権利行使ということを組み込んでいくわけであります。

 ところが、御存じのように、アメリカにおいては商法というものは存在せず、州法によって会社のさまざまな法律は定義されています。そして、このライツプランがあっという間に広がって導入をされていったわけでありますが、一方で、州法によってさまざまな、取締役の余りに逸脱したような経営権、その支配権を維持するためだけの行動を規制するという方向に動いてまいりました。

 経済産業省におかれましては、企業価値研究会の中で、この米国のライツプランというものについて研究をされています。そして、このライツプランがいっときはピークを迎えていったわけでありますが、徐々にこのライツプラン廃止の企業がふえてまいりました。ライツプランを導入するよりも廃止企業がふえていく、この傾向にある状況というのは、今申し上げたように、さまざまな州法の整備がなされていったということにあるわけであります。

 ここで一つお伺いをしたいのは、この減少傾向にあった理由というものを、今企業価値研究会、経産省の方でもやっておられますが、アメリカの状況をどのように今評価されているかということを端的にお答えいただけますでしょうか。

舟木政府参考人 お答えいたします。

 米国におきましては、ここ数年、ライツプランにつきまして確かに減少傾向であると思います。その理由でございますが、まず、幾つかの例を調べてみますと、個人株主がライツプラン導入の事前承認を求めるといった意見を会社に提出したり、廃止の提案を行ったり、それから、株主の過半がこういった提案に賛成に回ったような場合があるようでございますし、また、時価総額が向上して敵対的買収の危機が少なくなったというような場合にライツプランを廃止するようなケースが出てきているというふうに考えております。

馬淵委員 今御指摘がありましたように、株主が、そもそもそのようなライツプランというものが株主公平の原則を著しく害してはいないのかといった声が高まっていく中で、当然ながら、経営者というのは、敵対的買収に対抗するためにはそういった策があればこれをやりやすいんですけれども、一方で、本来ならば敵対的買収はなぜ起こり得るかというと、その株価価値、株価の総額が本来の持つ価値よりも著しく低いという状況にある、だからこそ買収というような形に遭ってしまう。

 先ほどもお話がありました、時価総額が余りにも大きい規模になれば買収されない。十兆円を超えるような企業もアメリカにはあります。こうした企業は買収されない、当然です。それだけの資金量を持つところはなかなかありません。経営者が本来なすべきは企業価値を高めることであるということが、このアメリカの歴史を見ても明らかになっているのではないかと私は思うわけであります。

 そして、先ほど、州レベルのさまざまな法律があると申し上げました。例えば事業結合規制法など、こうした法律は、買収者がある一定の株式の比率に達すれば、その段階で事業結合を規制するといった制限であります。このような形で、アメリカにおいては緩やかに、経営者がその支配権を維持するということに濫用されない形での新しい方向に向いた企業買収防衛策というものができつつあるというふうに私は感じています。

 そこで、今回この会社法の中では、まさに企業の敵対的買収に対する防衛策として、ライツプランの一つでありますポイズンピルをより有効に活用しようという方向に向いています。

 アメリカにおける環境というのは、先ほども申し上げたようにさまざまな州法もありますし、そして、過半数以上の独立した社外取締役がまさに会社の他の取締役の支配から離れた形でいる。そうした方々が、買収に遭った場合には独立の委員会を設置して、これらの対抗策に対しての適否というものを判断しようとする。つまり、すべてにおいてアメリカというのは、こうした買収の経緯の中で、資本市場の中で何を守るべきか、そしてどのような形で株主の利益を守るべきかという制度が整備されているんですね。

 ところが、今般の日本はどうでしょうか。十五年前に比べれば、確かにTOBの規制が入り、今般こうした形で新たにライツプランの充実というものが図られようとしています。しかし、社外取締役という立場、この方々が果たして会社の社内の取締役、例えば代表取締役の支配下にいないかといえば、これはなかなか難しいところがある。現状としては、日本の制度の整備の状況というのは十分に整備されていない状況であります。

 このような状況の中で、日米間の環境の違いの中でポイズンピルというものがより一層使われていくような状況になる、これは言いかえれば濫用というものを招くことにならないかということについていかがお考えでしょうか、お答えいただきたいと思います。

南野国務大臣 先生のポイズンピルに関する関係でございますけれども、取締役がいわゆるポイズンピルを導入して例えば新株予約券の発行を行う場合には、それが取締役の職務の執行の一環である以上、取締役はその判断に際して善管注意義務また忠実義務を負うことになるだろうと思います。

 そして、取締役がこれらの義務に違反してポイズンピルを導入したことにより会社に損害を負わせた場合には、その取締役は、これによって生じた損害を会社に対して賠償する等の責任を負うことになると思います。

馬淵委員 そういう仕組みで今回の法のたてつけをされたと思うんですが、ただ、私が今申し上げているのは、余りにも日米の環境の差があり過ぎる。

 アメリカにおいては、これだけの長い歴史、わずか二十年かもしれませんが、二十年、三十年といった歴史の中で、資本市場の中で、会社はだれのものなのか、そして経営とはだれのために資することを行うべきなのか、このことが企業買収、企業結合という荒波の中で培われてきたんです。

 ところが、この日本においては、本当に昨今やっとそうした事例が生まれつつある中で、私から見れば、買収ということに対して本当に経営者自身が理解をし、株主の価値を高めるということに対して、どういう方向で行動することが、自分たちが判断することが株主の利益に資するのかということを十分理解できているのかということについては、私は甚だ疑問を持っているわけであります。株主が本当に求めている価値を経営者がそこで判断できるのかということを、私は唯一、今回の導入の中では心配をしているわけであります。

 そこで、今大臣の方は、これは取締役が十分な責任を持って判断をしなきゃならぬ、こうお答えいただきました。確かに、ここでは善管注意義務、忠実義務というものが発生しますから、取締役がそれに反するということは代表訴訟のおそれを持つわけです。本当にそこまで取締役が十分な注意を払ってこうした方法をとるというような状況が今あるんだろうか。私は、その点について一つの、これもこちらの場ではお話があったのかもしれませんが、東証から出ました文書についてお尋ねをしたいと思っております。

 去る二十一日、東京証券取引所から上場会社代表者各位という形で、「敵対的買収防衛策の導入に際しての投資者保護上の留意事項について」という文書が発出されました。これは、今般の会社法の改正の中で、ポイズンピルが、いわゆる取締役がみずからの判断で、もちろんそれは代表訴訟のリスクを負いながらも判断で行うことができるかもしれないが、しかし、そこで過剰防衛とならないようにという形で、上場会社の経営者に対して自粛の要請をされていると報道もされています。

 まず私、第一点お聞きしたいのは、東証の発出したこの文書についての今政府の御見解というものはどういうものなのかということをお答えいただけますでしょうか。

振角政府参考人 お答えさせていただきたいと思います。

 今先生から御指摘がありましたように、去る二十一日に、東京証券取引所から上場各社に対して、敵対的買収防衛策を導入する場合における投資者保護の観点から留意事項というのを通知したところでございます。

 これにつきましては、ライブドア事件があったり、あるいは敵対的買収防衛策につきまして、経済産業省及び法務省により、五月を目途に企業価値防衛指針が策定される見込みが示された中におきまして、防衛策の早期導入について検討を進めている企業もあるという中で行われたものというふうに理解しているところでございます。

 金融庁としましては、これに対する評価ということでございますけれども、複数の上場会社が株主総会に向けて防衛策を検討している中で、自主規制機関として東京証券取引所が投資者保護の観点から留意事項を上場会社に通知することは時宜を得た対応だというふうに考えているところでございます。

馬淵委員 これは、私から見れば、今般の会社法の中でこうしたライツプラン、まさにポイズンピルというものが導入拡大されていく中で、東証としては、その現場を預かる立場としては、これが取締役の支配権維持のための濫用に使われかねないということを最も心配されているというあらわれじゃないんでしょうか。これは私は、時宜を得たということよりも、法が今審議されている中で、その前に現場の経営者の方々に対して、いや、これは気をつけてくださいよという発出というのは、極めて異例な気がするんですよ。時宜を得たというよりも、むしろ、この法が一方で濫用を招きかねないということの懸念を東証自身がお感じになっているんじゃないか、私はそのように感じるわけです。

 これはぜひ、もう一度、私の今申し上げた観点に対してのお答えをいただけませんでしょうか。

振角政府参考人 先ほどもお答えしましたように、今後、法律については今審議いただいているわけですから、その法律を踏まえてどうするかという対応はまた東証の方で考えられると思うんですけれども、これは現行法におきましていろいろな動きがあるというところにおいての東証の判断だというふうに思っているところでございます。

馬淵委員 現行法でももちろんこれは認められているものでありますから、現行法においても判断ということだということでお答えいただきましたが、これは私は、やはり会社法の中でこのポイズンピルというものがより使い勝手がよくなっていく中で、先ほど申し上げたように、米国のような十分な環境整備がなされていない、あるいは取締役の独立性というものも社外取締役を含めてまだ十分な形になっていないこの日本の状況を、現場の監督者が最も危惧して発出した文書だというふうに私は感じるわけであります。

 こうしたものがある環境で、果たして本当に今回の我が国の企業買収の防衛策というものがしっかりとした適正なものなのかということについて、さらにお話をさせていただきたいと思います。

 それでは、もう一方で、この企業の買収防衛策の中で、これは民事局の方からペーパーが出されておりました。その中には、このように書かれておりました。株主の利益を損なわない限りは可能、ここに可能と書いてあります。

 そこで、もう一度プリミティブのところに戻りますが、株主の利益を損なわない限り可能とありますが、株主の利益とはそもそも何を示しているということでしょうか。そして、それを決めるのはだれということになるんでしょうか。

南野国務大臣 企業価値を毀損するような敵対的買収に対しましては、合理的な防衛策を講じることが認められるべきでありますが、このような場合にも、防衛策が講じられることによって既に株主となっている人の経済的利益や権利を害するようなことは許されないと思います。

 すなわち、ここで言います株主の利益とは、既存の株主の経済的利益等を指しているものであります。そして、防衛策について株主の利益を害するものかどうかなど、その適法性等が争われ、株主による差しとめ請求や、また取締役に対する損害賠償請求がされた場合には、最終的に裁判所がその判断を行うことになります。

 なお、企業が濫用的な防衛策をとった場合には、株価が大幅に下落することにより市場からも激しく評価されることになると思います。したがいまして、その意味では、株式市場も防衛策の適否の判断が行われる場であると言えると思います。

馬淵委員 今まさに大臣がおっしゃった、市場の中、市場が決めていく、すなわち、まさに市場が判断していく、これは市場というのは株主になっていくわけです。その株主の経済的価値、そしてそれを損なわない状況を判断するのは市場であり、これは言いかえれば株主です。経営者が濫用すれば、そのような会社に対しての企業価値というのは当然損なわれると判断をして株主が株を手放せば、これは当然ながら株価は下がっていきます。企業価値が下がっていくわけです。そのようなことを判断するのは株主だということかと、今お答えをいただいたと思うわけであります。

 では、お聞きをしますが、この企業買収防衛策でのポイズンピル、これの決定を行える機関というのは、会社の中ではどこになるんでしょうか。

寺田政府参考人 これを導入するかどうかということは、これは基本的には会社の執行権を持っております取締役会で決まることでございます。

馬淵委員 まさに今、導入は執行権を持つ取締役会というお話をいただきました。そして、株主の利益を損なわない限り、まさにそれはだれが決めるのかというと株主だというお話を南野大臣からもいただいたわけです。

 このポイズンピルを導入するか否かについては、取締役会の決議で行えるわけなんですね。この取締役会決議で行えるということが、まさに私が申し上げているように、株主の利益を損ねかねない濫用につながる可能性がある。

 一方で、これをなぜ株主総会なりで決めていくということに、この会社法の中で議論として上がってこなかったのか、あるいはそこに対してなぜ取締役会決議ということを今回の段階で決定されていたのか、それについてお答えいただきたいと思います。

寺田政府参考人 もう少し詳しく説明を申し上げますが、もともとポイズンピルあるいはライツプランと言われるようなものの実現を可能にするというのは、これはもう法律にそのような規定がないとだめでございますけれども、あっても、そういう種類株というものをおよそ発行するかどうかということは、これは株主がお決めになることです。

 したがって、株主がおよそうちの会社ではそういうことをしないという決定をなされようとすれば、それは定款変更等でそれに対応することが可能になるわけです。

 しかしながら、その種類株が出されるということが決まって、じゃ、それを現実に出すか出さないか、これは執行の問題として取締役会でお決めになる、こういう構造になっているわけでございます。

馬淵委員 その種類株の発行までを株主総会で決議したとしても、その執行に関しては取締役会にゆだねる、その種類株の発行まで決めたんだから、後の執行に関しては取締役会にゆだねるというお話でありました。

 私が申し上げているのは、その後の濫用に関しては、これは結局、取締役が決定するわけですから、株主はそこに対しては歯どめをすることができないわけです。株主総会でその執行に関しても総会の承認を求めるという方向が本来なされてもおかしくはないんじゃないですか。少なくともアメリカにおいてそうした動向が現実に起きてきたという事情が、先ほどの私のライツプランの減の状況の中にも、お話の中にあったというふうに思います。

 この株主総会の決議を得ないでということに対して、もう一度政府の見解を、今私の尋ねた論点についてお答えいただけませんでしょうか。

寺田政府参考人 これは、おっしゃるような懸念というのは、会社のいろいろな性格にもよりますけれども、ないわけではございません。

 そういう会社は、そもそも定款で、そういうことを自分の会社としては制約するというふうにお決めになることは、これは可能でございます。そういう対処の仕方というのも、今回の会社法の、いわば会社による自由の範囲内ということでおやりいただける、あるいはそうすべきであるというふうに考えております。

馬淵委員 では、ちょっともう一つ、違った観点からお聞きします。

 ポイズンピルというのは、ある意味、これで決定的に買収させないという、そうした方策ではないと思います。そして、これは何を意味するかというと、敵対的買収防衛策というのは、ある意味で、株主と経営側、会社側がそこで交渉の時間を持つという、モラトリアムを用意することができるという一つの方策でもあるかと思います。となるならば、このポイズンピルという方法以外にも、実はそうした形はとることができるのではないかということでお聞きをしたいわけです。

 現在、TOBの最短期間というのは二十日間に設定されています。しかし、二十日であると、本当にその短い期間の中ですべてのことを決していかなければならない状況になる。逆に言えば、その交渉の時間を延長するという考えでいえば、TOBの最短期間を延ばしていくということも一つの方法論としてあるのではないでしょうか。これについてはいかがでしょう。

振角政府参考人 ただいまの御指摘に対してお答えさせていただきたいと思います。

 現在、先生がおっしゃいましたように、企業の買収や防衛策をめぐる議論の中で、敵対的な公開買い付けに対し、企業が対応策を検討する時間を確保し、対抗策を講じやすくするためには、最短の買い付け期間を延長すべきであるという指摘があることは承知しておるところでございます。

 この点については、今後、いろいろ検討していかないかぬと思っておりますけれども、従来は、どちらかというと迅速な企業再編行為に対する弊害ということも指摘されておりますし、また、諸外国の制度とも整合性があるようにいろいろ検討していかないかぬというふうに思っておりまして、今後、金融審等におきまして、今、投資サービス法全体の議論をしておる中で、各般の意見も聞きながら慎重に検討していきたいというふうに思っております。

馬淵委員 今のお話の中でも、これはまだ十分に検討しなきゃならぬ余地があるというお話でした。つまり、こうしたポイズンピルという一つの方法で、私が繰り返し申し上げている、取締役のみずからの支配権を保持するための濫用に陥らないように、他の方策があるのではないか、それが例えば、今申し上げたように、TOBの最短期間の延長という形で担保することが可能である、これはぜひ、その議論の中でもう一度詰めていっていただきたいと思うわけであります。

 そして、先ほどの私の質問に対して、ポイズンピルを総会決議にするか否かの部分に関しては定款等で定めればいいというお話でありましたが、定款の定めというのは、これはまた株主総会の特別決議になるわけでありまして、私が申し上げているのは、上場企業がこうした形でライツプランを、種類株を決定して、その後、取締役会で執行させるということが行われる場合に、株主の関与というのがなくなってしまうということを懸念しているんです。

 私は、そもそも上場する前に、うちの会社はこういう形なんだということで、それこそ防衛策をさまざまな形でビルトインして、そして未上場の段階でそれをすべて、これはアメリカのグーグルなんという会社は、もともとの創業者三名が、三人で五一%、いわゆる過半数、マジョリティーを確保するという議決権の株を持つということを決めているんです。これは上場前にです。

 こうした形であれば、これは当然ながら、上場前なので、そういった会社が上場してきて株主がその株を買うわけですから、株主公平の原則というのは守られるわけでありますが、今回のポイズンピルの導入拡大に関しては、上場会社が、今申し上げたような形で、既にある株主もいる中で、総会決議を得ずに、むやみに支配権の維持のために行動される可能性があることを、今般、法整備が十分でない、アメリカのような環境整備が十分でない状況で果たして行っていっていいのかということについての私自身の大変な疑念があるわけであります。

 もう時間が余りなくなってしまいましたが、その中で、この敵対的買収防衛策、TOBの期間の延長ということも私は今申し上げました。それはぜひ議論をしていただきたいし、現実的な方策として、この制度の中にビルトインをしていただきたいと思うわけであります。

 もう一方で、今度は総体的な御意見としてお聞きをしたいわけですが、敵対的買収防衛策というものに対する政府の基本的な方針、これは外資も含めたさまざまな企業の買収というものが、先ほどもお話がありましたライブドアの事件等々もある、そしてその一方にはリーマン・ブラザーズ、これはライブドアとの資本の流れのあるところがお金を渡しているという形でありますから、外資による企業買収といったものが懸念されるということが念頭にあるのか否か。

 まず、政府としては、この買収防衛策に対して基本的にはどういうお考えを持っているのかということを確認させてください。

舟木政府参考人 経済産業省に企業価値研究会を設置しまして、検討していただいているところでございますが、私どもの基本的な認識でございますが、まず日本におきましては、先生おっしゃいますとおり、やはり敵対的MアンドAに対する経験がアメリカ等に比べまして少ない。それで、何が公正な攻撃方法で、何が公正な防御方法なのかといった点につきまして、企業社会におけるコンセンサスがまだ形成されていないと理解をしておるところでございます。

 これを放置しますと、奇襲攻撃や過剰防衛、そういったものが繰り返される可能性もございますし、また、公正な防衛策の導入もちゅうちょされ、すなわち、法律違反じゃないかとか、裁判所によって否定されるんじゃないかといったような懸念から導入もちゅうちょされ、それが企業価値を損なうような企業買収を排除できなくなるといったようなことになる可能性もあるのではないかというふうに懸念をしておるところでございます。

 したがいまして、敵対的買収に関しまして、企業社会における公正なルールの形成を急ぐ必要があるのではないかと考えておりまして、昨年九月から企業価値研究会を始めておるわけです。論点公開は四月の二十二日に行ったところでございますが、この論点公開に寄せられますいろいろな御意見を踏まえまして、法務省と経済産業省と共同で、五月には合理的な防衛策に関する指針を策定してまいりたいというふうに考えておるところでございます。

馬淵委員 もう時間もなくなりましたので、最後になりますが、そうした合理的な防衛策の指針を定めること、もちろんこれも大事です。そして一方で、ライブドアがすべてそうだとは言いませんが、マネーゲームに躍るようなMアンドAというものは、とかくこれはマスコミなどに取りざたされがちです。

 しかし、私はみずから、恐らく国会議員の中でも、企業買収、MアンドAに携わってきた人間というのは、そう数はいないと思います。その実務をやってきた人間として私から申せば、本来の企業の防衛策というのは、やはり株主に対する情報公開であり、株主価値を高める企業の経営の姿勢そのものなんですね。いわゆるIRの確立、インベスターリレーションズの確立そのものがコーポレートガバナンスを高めて、そして企業価値を高めて、企業価値を高めることが、すなわち買収の防衛に最もつながるわけなんです。

 私は、今お進めいただいている企業価値研の五月のガイドラインというもの、これも非常に重要だと思いますし、今後、私の所属する財務金融委員会や、また法務委員会等々におきましても、そうした観点についてはぜひさまざまな形でかかわらせていただきたいと思うわけでありますが、最大の眼目は、経営者がみずからの企業価値を高めるためのIRに特化していくことだということを、ぜひ法務当局の皆さん方、関係当局の皆さん方、御理解をいただいた上で、健全な市場の育成を図っていただきたいというふうに思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

塩崎委員長 次に、高山智司君。

高山委員 民主党の高山智司でございます。

 私は、もともと経済産業委員会でございますので、きょうは余り法律がちがちの話ではなくて、経済産業的な、中小企業の振興、そういうような観点から質問してまいりたいと思います。

 まず初めに、これはもう何度も、同僚議員もいろいろ聞かれているかもしれませんが、一応大臣に、今回の会社法の改正で、まず、会社はだれのものなのかということを念頭に置かれたのかを、もう一度確認でお願いします。

南野国務大臣 お尋ねの件でございますが、株式会社は、純法律的には、営利法人として株主の出資により成り立っておりますので、これによって株主が利益を得る仕組みである制度でございます。したがって、一義的には、これは株主のものということができると思います。

 この場合における株主といいますのは、文字どおり、株式会社の株式を有する者という意味であり、それ以上のものではないというふうに思います。したがいまして、会社法案においては、委員の御指摘もあろうかと思いますが、特定の性質を有する株主を特に念頭に置くことではなく制度を構築しておりますということでございます。

高山委員 それでは、今度は経済産業副大臣の方に伺いたいんですけれども、経済産業副大臣としては、今回のこの会社法の改正ということももちろん念頭に置きながらですけれども、ふだん経済産業のいろいろ行政をやる上で、やはり会社はだれのものなんだということをお考えでやられておりますでしょうか。

小此木副大臣 一義的にはやはり株主のものであるかなということを認識しておりまして、会社にはやはり多種多様な面があって、多種多様な株主も存在をしているというふうに思います。中には、会社の長期的経営に携わらないというか、そういう株主が存在することも事実であると思います。

 一方で、会社には、特に上場企業、この中に従業員、顧客、地域社会などの多数のステークホルダーといいましょうか、そういった方々が存在しており、それは社会的存在であるとも考えられます。

 企業の利益の源は他社との競争力の向上にあり、この競争力は優秀な人材があって生み出されるものであり、この意味では、私は、上場企業は株主のものであるが、従業員も含めた先ほど申し上げたステークホルダーのものでもあり、取締役は人的資本も大事にして会社に対して責任を持って職務を遂行するべきだというふうに考えております。

高山委員 ありがとうございます。

 今、両大臣とも一義的には株主のものであるというようなお話をいただきましたけれども、株主といいましてもこれはいろいろな株主がやはりいると思うんですよね。村上ファンドのように物を言う株主だという人もいるかもしれないし、あるいは、おれがこの会社をつくった創業者で、自分が一番株を持っているという創業者の株主という人もいるだろうし、あるいは、今回のいろいろなライブドアだの何だのの騒動があったので、おもしろいから一株買ってみるかというような、通りすがりでただ持っているような株主の人、こういう人もいると思うし、あるいは、もう純粋に、会社なんというのは金融商品だから、もうかればいいんだということで買われている人、これはいろいろいると思うんですよ。

 そういう中で、そもそも商法で規定していたときの株主というもののイメージと、現代、このグローバル化して、会社なんかが売り買いされて、どんどん商品としての価値も出てきたというようになってきたこの昨今とで、随分株主というものの見方も変えていかなきゃいけないんじゃないのかなというふうに思います。

 まずその点、これは経済産業的な視点ですので経済産業副大臣の方に伺いたいんですけれども、昔の牧歌的な、会社は株主のものであるというころの昔の商法の時代から、やはり現代の、会社がどんどん売り買いされたり、あるいはMアンドAの対象になったり、そういうものになってきてから株主という概念は結構変わってきたんじゃないかと思うんですけれども、その点、副大臣、どういうふうに思われますか。

小此木副大臣 先ほども申し上げたと思うんですけれども、株式会社というのは株主のものであるというふうに理解をしているということは、やはり今でもそれは変わらないと思いますが、おっしゃるように、やはりその株主のあり方も変わってきた。会社経営というものも、日本では当たり前だというふうに思われているものが、海外を見てみたら、そうでもないな、進んでいるな、あるいはその逆もあろうかというふうに思う中で、やはりその価値観も変わってきた。

 一義的に、法律上では会社というものは株主であるというふうに認識を私はしておりますけれども、おっしゃるように、その価値観といいますか、そういったものが変わってきて、その価値観の異なる立場の方々から会社はだれのものと言われれば、異なる答えも出てくるのかなというふうにも思います。

高山委員 では次に、これは法務大臣、経済産業副大臣、両方に伺いたいと思いますけれども、会社はだれのものかという議論の中で出てくるときの取締役、この取締役というのは、では一体会社に対してどういう存在なのか。

 これは経済産業副大臣、まずどういうふうにお考えか。これはもう商法的な観点じゃなくていいんです。今、経済の動いている実態を見られている中で、取締役というのは一体この株式会社にとってどういう存在なのかということを伺いたいと思います。次に法務大臣に伺います。

小此木副大臣 会社の方向性を決めていくのには、やはり取締役会、あるいは大きな意味では株主総会というものもあろうかというふうに思います。その中で、その重要な決定に責任を、その株を持っていようがいまいが、その重要な決定には責任を持っている人物が取締役だというふうに認識しています。

高山委員 同じ質問で、株主とはこういうものだというお話はいただきましたけれども、法務大臣の方に、この取締役というのはそもそも株式会社においてどういう存在なのかという、どういう御認識かというのを伺いたいのですけれども。

南野国務大臣 これは、会社の執行機関でありますし、会社のために働いていく、会社を効率よく動かしていくというような立場の人だと思っております。

高山委員 また法務大臣にもう一度確認ですけれども、そうしますと、では、株主と取締役ということになりますと、一応、どちらが上か下かというふうにつけるとすれば、大臣としてはどちらを上か下かというふうにお考えですか。

滝副大臣 基本的には、取締役は株主総会で選任されるわけですね。監査役もそうでございますが。そういう意味では、取締役は、株主の意向を受けて執行に任ずる。

 あるいは、もう一つの機能としては、執行役としての取締役を取り締まる立場、そういう監督の権限を持っているものですから、取締役の場合には、今大臣が執行役と御答弁されましたけれども、同時に取締役を監督するという立場もございますので、そういう意味では、繰り返しますけれども、株主の意向を受けて仕事をする、こういうことだと思います。

高山委員 これは経済産業副大臣にも伺いたいのですけれども、取締役と株主というのは、一応どっちが上というふうに考えられていますか、経済産業副大臣の方で。(小此木副大臣「経済産業省として」と呼ぶ)副大臣の個人的な見解でも結構でございます。

小此木副大臣 恐縮です。私は、会社経営の経験はございませんけれども、株主と取締役、どっちが偉いかと、ぱっと言われると株主なのかなという考えを持っていますが、先ほど私も答弁いたしましたように、今、もう本当に多種多様な会社への思いですとか、いろいろな思いがあるというふうに思う観点から、どちらが偉いとか偉くないとかということはなかなか難しいことだというふうに思います。

 今も滝副大臣からもお話があったかとも思いますけれども、責任を持った取締役が取締役会で幾ら決定をしようと、やはり株主というものからすれば、それを否定できる部分もあるのかなというふうには思います。

高山委員 先ほどからちょっと禅問答のようで、いろいろ伺って恐縮だったのですけれども、やはり先ほどから同僚議員が聞いていますポイズンピルの使い方であったりなんだりで、どうもちょっと株主が軽視されちゃいないかということを私は非常に感じておりまして、その観点からもやはりきょうはどんどん聞いていきたいと思います。

 やはり日本の場合、昔、日本は神の国で、国民は寝ていてくれればいいというような発言をされた方もいますように、本当は国民主権の国なのに、なぜか、何かそういう自分が一回取締役のような立場になると、この会社はもうすっかり自分のものだというふうに勘違いされるような方がいると思いますので、念のため聞いておこうと思うのです。

 今回の改正の中で、株主の権利というのをちょっと制限するものが多過ぎやしないかというふうに思いまして、まずこれは法務大臣に伺いたいのですけれども、株主代表訴訟の中で、当該会社の正当な利益が著しく害される、あるいは費用が過大にかかるなどの要件で、株主代表訴訟が制限される項目を入れようとされていますけれども、これは何でこんな項目が必要なんですか。まず、この立法趣旨というか必要性を教えてください。

南野国務大臣 これにつきましては、濫用的な株主代表訴訟の提起によりまして株式会社や他の株主が損害をこうむるというところを防止するということであります。

高山委員 その濫用的な場合というのは、具体的にはどのようなものを想定されているのでしょうか。これは細かい話なので事務方でも結構ですけれども。

寺田政府参考人 今大臣から申し上げましたように、従前、この株主代表訴訟は非常に大事な制度でございますけれども、濫用されるケースがないわけではございませんでした。それを裁判所が訴権の濫用としてその権利の行使を制約していたわけでございますけれども、具体的に申し上げますと、株主が、会社全体の利益ということではなくて、自分が訴訟を起こすことによって利益を得る。一番悪いケースですと、会社に訴訟で嫌がらせをすることによって会社からお金を引き出す、そういうようなことが考えられるわけでございますけれども、そういうことに対して、類型的にそれを取り上げて訴訟を却下できるという仕組みにしたい。

 もう一つは、会社が、通常ですと、違法があり得るかもしれない、それについて訴訟を起こす要件というのは形式的には整っている。しかしながら、相手方である取締役が、例えば非常に資産がない、仮に訴訟で勝ってもほとんど取り立てができないような状況にある。反面、会社については、これは訴訟を追行していくについて非常に経費がかかる、簡単に言えばコスト倒れになる、それが非常に著しいケースがあり得るわけであります。

 そういうことを類型化いたしまして、このような訴権の濫用による却下というような条項を設けようとするものでございます。

高山委員 これはちょっと大臣に伺いたいんですけれども、今のような話は、確かに結果的にはもっともな面はあるかもしれません。だけれども、それは裁判の中で解決されればいいことであって、入り口から株主が訴えることに枠をはめてしまう、すごい萎縮的な効果がありますよね。こういうことを導入する必要があると思いますか、大臣にちょっと伺いたいんですけれども。

南野国務大臣 それに関連いたしましては、これらの導入しようと思う制度はいずれも株主や会社全体の利益を図っていこうというために講じられているものでありますので、バランスを欠いた立法ではないというふうに思っております。

高山委員 では、ちょっと大臣に確認で聞きたいんですけれども、株主代表訴訟で、訴えを起こすのは株主ですけれども、訴えられるのはだれですか。

南野国務大臣 訴えられるのは取締役ということになろうと思っています。

高山委員 そうしますと、これは会社の利益というよりは、訴えられている取締役の人が、自己保身のためにいろいろ会社の調査の費用や何やらを使ったりですとか、あるいは裁判上自分に有利になるように、会社を害するかもしれないけれどもいろいろな資料なんかを出すようなおそれがあるという問題であって、これは取締役の防御方法を規制すればいい話で、株主の権利を規制してこういった会社を害する事態を避けるというのは立法論的には間違っているような気がするんですけれども、まず大臣に伺って、その後事務方に伺います。

南野国務大臣 何事でもそうかと思いますが、まずはお互いの信頼関係にあるものだというふうに思っております。会社のものをうまくやっていこうということについては、株主もそうであろうと思いますし、取締役もそうであろうと思いますが、もし取締役に対してそういう嫌疑を持つ立場になった場合には、そのような形にもなるんじゃないでしょうか。

寺田政府参考人 おっしゃるとおり、訴訟が起きた場合に、その濫用が甚だしいというケースの中には、取締役に非常に損害を生ずるということもあるわけです。そういう懸念に対しては、現行法でも既に担保提供の仕組みがございまして、取締役を訴えることによって取締役に生じかねない損害について、あらかじめ裁判所が決めた担保の提供が求められる、こういう仕組みがあるわけでございます。

 ただ、ここで問題にしているのは、そういう取締役の損害ではなくて会社自体の損害になるわけでございます。先ほどは、会社が訴訟追行に著しい経費を要する、とても見合わないケースについて申し上げたわけでありますけれども、そういうようなもののほかにも、会社が訴訟に応ずることによって他方の法律関係に非常に悪影響を及ぼし、そこの場面で非常に大きな損害を受けるということもあるわけであります。

 そういう従来の取締役に対する嫌がらせのようなものとは別個の類型のものとしてここで念頭に置いておりますケースが先ほど申しました幾つかのケースでありまして、それに対してこういう類型化した却下事由を設けるというのが今回の構想でございます。

高山委員 いや、今大臣だけじゃなくて、局長も私の質問の意味を全然理解されていなかったのでちょっと驚いちゃったんですけれども、私が聞いたのは、こういう会社の利益を害するような訴訟を確かに起こされることはあるでしょう。それは今まで裁判の中で解決されてきたことで、今回立法化だということまで仮に認めるとしても、これは株主の権利を制限する形で認めるんじゃなくて、むしろ、訴えられる側の取締役がそういう会社を害するような自分の防御方法をやってはいけないとか、例えばそういう形で規制するべきであって、株主の側の権利を制限する形で立法するというのはおかしくないかということを言ったわけです。

 もう一回言うと、要するに、株主代表訴訟というのは株主VS取締役の闘いになるわけですよね。そのときに、何で株主の側の権利を制限するんですか。企業が例えばいろいろな秘密の書類を出さなきゃいけなかったり、会社側が調査費をいろいろかけたりというのは、これはむしろ受ける側に立つ取締役の責任じゃないですか。だから、これは取締役の側をむしろ制限するべきであって、株主の側は制限するべきでないと思うんです。

寺田政府参考人 失礼いたしました。取締役についての損害の問題ではなくて、逆に取締役側が悪いケースというのを想定されて株主との関係を論じておられたわけでございます。

 しかし、そういうケース、つまり株主と取締役との関係ではないことをここでは問題にしているということを先ほど申し上げたわけであります。つまり、株主と取締役の一体どっちが悪いのかというのは、具体的に訴訟の場でさまざまな観点から見られることも訴訟手続上はあるわけでございますけれども、そうではなくて、ここは訴訟をすること自体が会社に対する損害になるというケースを念頭に置いてあるわけであります。

 したがいまして、この場合には、取締役の行為をどうこうするかということではなくて、原告と被告である取締役との関係ではあるけれども、第三者である会社の利益を考慮して何らかの制約を設ける、それは原告の行為を制約する、こういう構成に立っているわけでございます。

高山委員 常に、訴訟というのは争い事ですから、被告がいて原告がいる。それで、訴えられる方の、今の説明だと取締役じゃなくて会社の利益を考えたということですが、私は、今回の立法というのは、ちょっと不当に株主の権利を制限することになりやしないかというふうに思っております。

 もう一つ聞きますけれども、それと同じように、もう一個株主の利益に反するものとして、今回株主総会の招集地の問題がありますよね。これはどうして自由にされたんでしょうか。これも、出られない株主が出てきて、事実上株主総会に参加できないということは十分考えられると思うんですけれども。

寺田政府参考人 今回の会社法の制定においては、有限会社の制度を廃止する、もちろん既存のものはそのまま保護するわけでございますが。今まで、株式会社の中にも、本来株式会社でないような、対象として考えていなかったようなものも入り込んでいるわけでございますけれども、そのほかに、新たに今後は、従来は有限会社で設立されようとされるようなそういう会社を想定しているわけでございます。そういう会社も含めて考えた場合に、従前、有限会社についてはこの点何らの制約もないわけでございますが、おっしゃるとおり、株式会社については原則として本店の所在地等に制約を置いていたわけでございます。

 今回は、この二つを総合して考えて、それから、実務の中小企業の方々から圧倒的に今の制約について御不便があるということも聞かされておりますし、また大会社の中にもそういう御不便がおありになる方がおられるということもお聞きしておりますので、原則としては制約を設けない、しかし、定款で、従前と同じ、あるいはまたそれと違った制約を株主の間でお決めいただいて設けるということによって新たな調整をしよう、こう考えているわけでございます。

 ただ、委員の御懸念は、もちろん、とんでもないところで株主総会が開催されることもあり得て、その場合、一部の株主にとって非常に御不便をおかけして、事実上出られなくなるというようなことがあり得るわけでございます。そういうことが仮に起こりました場合には、それは株主総会の取り消し事由になるということで対応すべきであるというふうに考えております。

高山委員 これは法務大臣に伺いたいんですけれども、今の招集地の問題です。これは、いろいろ中小企業の方の話を聞いたら、そういう制限があるのは不便だからぜひ撤廃してほしいというようなお話が当然出たと思いますけれども、それは経営者というか、取締役の方の意見を聞いたんじゃないんですか。株主の意見を聞いたら、これと同じような結論になったと思いますか。これは感想で聞きたいんですけれども、法務大臣に。

南野国務大臣 株主の方はいろいろなところにおられるだろうと思いますので、株主の方に聞いたら我が地元でというようなお声も出るかもわかりませんが、総体的に考えれば、皆さんが集まりやすいところでというような結論にもなろうかと思います。そうすると株主の意向ということにもなろうかと思いますが、それはその会社会社で違っているんじゃないかなと思います。

高山委員 とにかく、今回のこの改正、どうも株主の権利を軽視して、やたら今の取締役が楽になっているんじゃないかというふうに思います。

 もう一つ、任務懈怠責任の免除のところがあるんですけれども、免除の年数を六年にするとかなんとかありましたけれども、そもそも、この任務懈怠責任の免除ということが必要なのかどうなのか。

 これはちょっと法務大臣に伺いたいんですけれども、任務懈怠責任、これは、株主代表訴訟を起こされたときに、損害賠償請求される、それの賠償の範囲を制限しようじゃないかという規定ですけれども、これはそもそもそんな必要があるんでしょうか。これはちょっと考え方だけ聞きたいんですけれども、法務大臣に。

南野国務大臣 その理由につきましては、取締役の経営判断を過度に萎縮させないようにすることが、ひいては株主の利益につながるものであるというふうに思っております。

高山委員 それでは、全く質問の感じは変わるんですけれども、経済産業副大臣に中心に聞いていきたいと思うんです。

 今回の会社法の改正で、どうも企業の買収、MアンドAが非常にやりやすくなったという面や、そういう企業買収のおそれというのもいろいろ出てきているんですけれども、中小企業の事業継承について伺いたいと思うんです。

 本当に、農業だとかなんとかに比べて、明らかに中小企業の事業継承というのは優遇されていないと思うんです。今までは、現行法では中小企業の事業継承の一手段としてMアンドAを使うのはこういうところが問題だった、今回、経済産業省としてもいろいろ会社法の改正に意見を言ったんだけれども、今回のこの改正でこういうところが使い勝手がよくなっているというところがあれば、教えていただきたいと思います。

小此木副大臣 中小企業の円滑な事業の承継というのは、魅力ある技術等の知的財産を受け継いで、そして雇用を維持する上で非常に重要であることは議員御指摘のとおりであると思います。

 今回の会社法案により、企業の合併について、取締役会の決議のみで行える簡易組織再編の範囲を拡大、合併の対価として現金等を交付できるものとする合併対価の柔軟化等が措置されることになるというふうに思っています。これらの制度は、中小企業の事業の継承等において、円滑なMアンドAの実施を行うことに資するものと考えます。

 また、今回の会社法案では、株式会社がすべての株式について譲渡を制限しているいわゆる譲渡制限株式会社である場合、相続など譲渡以外の一定の事由が生じたことを条件として、会社が株式を取得することができる旨の定めを定款に設けることが認められました。これにより、これまでは防げなかった相続による株式の分散を防止することが可能となります。

 これらの改正は、中小企業における円滑な事業承継に役立つものであると、当省としても積極的に普及を行ってまいりたいと思います。

高山委員 相続の場合の話が今出ましたけれども、例えば、長男の方に全部継がせようというようなことでやったんだけれども、長女の方が遺留分の請求だという形でもめた場合、これはどういうふうになるんでしょうか。

小此木副大臣 例えば、今、長男と長女の方と。大体、中小企業の人というのは一〇〇%の株主が経営者の場合が多いのでありますから、引退される、あるいは亡くなられるという場合のことについてお伺いをされているんだというふうに思います。やはり、仮に長男を故人の思うところその経営者とするということであれば、本来であれば五〇%ずつ遺産として行くところでありますけれども、しかし、株と見合う額で金銭という形で受け渡すかわりに、会社の方向を定める議決といいますか、そういう部分では議決権はありませんよ、だけれどもその分の金銭はお渡ししますよという場合が考えられるというふうに認識しています。

高山委員 それではあと、中小企業をMアンドAする場合に、別にそれは長男にだけ継がせる必要はない思う、全くの他人に継いでいただいても、雇用が維持されるし看板も維持されるということで、非常にそれは意味があると思うんですけれども、大抵の中小企業は社長の個人保証がついていたりすることがあると思うんです。MアンドAをした場合に、その個人保証の扱いというのは、これは経済産業副大臣に聞きますけれども、どのようになりますかね。

小此木副大臣 MアンドAの条件次第ということになろうかというふうに思います。

高山委員 ただ、そうすると、MアンドAの条件次第ということでしたけれども、これは上場している大きい会社であれば、株価は幾らですねとかTOBで幾らでやりますと、わかりやすくていいんですけれども、中小企業を事業継承する場合に、やはり企業の価値をどういうふうに評価するかというのは非常に重要だと思うんです。これは、社長の個人保証がついているのか、一定程度継続するのか、そういったことでまず随分違ってくると思います。

 経済産業省の方では、大企業の企業価値は企業価値研究会でいろいろやられていたと思いますけれども、こういう中小企業の企業価値を正確にどうやって算出するかとか、そういうものの研究は、今のところ準備はされていますか。

小此木副大臣 いや、まだ大企業並みにはやっておりません。

高山委員 私、株主の権利が非常に害されるので、今回の会社法の改正は非常に問題じゃないかと思ったんですけれども、その一つは、何か大企業のMアンドAのことばかり結構話が行っちゃいまして、中小企業向けの事業継承にこれをうまく使ったらいいじゃないかという話が余りなされなかったような気がいたしますので、経済産業省の方でぜひそういう議論を今後続けていただきたいというふうにお願いして、質問を終わります。

塩崎委員長 次回は、公報を持ってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時五十九分散会


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