衆議院

メインへスキップ



第6号 平成18年3月15日(水曜日)

会議録本文へ
平成十八年三月十五日(水曜日)

    午前九時二十八分開議

 出席委員

   委員長 石原 伸晃君 

   理事 倉田 雅年君 理事 棚橋 泰文君

   理事 西川 公也君 理事 早川 忠孝君

   理事 松島みどり君 理事 高山 智司君

   理事 平岡 秀夫君 理事 漆原 良夫君

      赤池 誠章君    赤城 徳彦君

      稲田 朋美君    近江屋信広君

      太田 誠一君    笹川  堯君

      柴山 昌彦君    下村 博文君

      平沢 勝栄君    三ッ林隆志君

      水野 賢一君    矢野 隆司君

      保岡 興治君    柳本 卓治君

      石関 貴史君    泉  健太君

      枝野 幸男君    津村 啓介君

      細川 律夫君    伊藤  渉君

      保坂 展人君    滝   実君

      今村 雅弘君

    …………………………………

   法務大臣         杉浦 正健君

   法務副大臣        河野 太郎君

   法務大臣政務官      三ッ林隆志君

   政府参考人       

   (法務省大臣官房長)   小津 博司君

   政府参考人       

   (法務省民事局長)    寺田 逸郎君

   政府参考人       

   (法務省刑事局長)    大林  宏君

   政府参考人       

   (法務省矯正局長)    小貫 芳信君

   政府参考人       

   (法務省入国管理局長)  三浦 正晴君

   政府参考人       

   (財務省主計局次長)   鈴木 正規君

   法務委員会専門員     小菅 修一君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十五日

 辞任         補欠選任

  森山 眞弓君     赤城 徳彦君

  河村たかし君     泉  健太君

同日

 辞任         補欠選任

  赤城 徳彦君     森山 眞弓君

  泉  健太君     河村たかし君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案(内閣提出第五六号)

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

石原委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として法務省大臣官房長小津博司君、法務省民事局長寺田逸郎君、法務省刑事局長大林宏君、法務省矯正局長小貫芳信君、法務省入国管理局長三浦正晴君、財務省主計局次長鈴木正規君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石原委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

石原委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。枝野幸男君。

枝野委員 きのうに引き続き、質問をさせていただきます。

 きのう通告した二つのテーマの前に、きのう最高裁で、いわゆる光市の母子殺人事件の上告審審理が弁護人が出頭しないということで流れた、こういう事件が起こりました。弁護人が死刑廃止論者であるということが背景にあるだろうという報道もなされています。

 ただ、これについては、どうして欠席をしたのか、詳細な事実関係を把握する立場にございません。事実関係が不明確なものは国会質疑をしない方がいいと思いますし、また、これがどういう処理になるのかは、弁護士会の自治である懲戒、これは弁護士会の自治の問題でありますので、ここで法務大臣に逆に御見解を言っていただいたらいけない問題だとも思います。

 しかし、一般論として、司法に携わる裁判官、検察官あるいは弁護士、例えば現行の法制度、刑事訴訟手続であるとかあるいは死刑制度の是非などを含めて、さまざまな個人的な、特に専門家としての見解があるかと思います。それを法廷外で、まあ裁判官の場合は問題かもしれませんが、いろいろと運動、主張される、これは当然の権利、自由であると思いますが、法廷内の手続等においては、私は、裁判官であれ検察官であれ、当然のことながら弁護士であれ、現行の法体系、法制度を前提として、それに基づいて訴訟行動を行うというのが職業倫理であるし、法のもとにおける役割であるというふうに考えますが、一般論として大臣の見解をお伺いします。

杉浦国務大臣 一般論としては、先生のおっしゃるとおりだと思います。

 法の支配は国の国是でございますので、法の定めるところに従って職責を果たすのは、一般論として当然のことだと思っております。

枝野委員 まず、私の個人的な見解を念のため申し上げておきますが、私は、仮出獄のない終身刑を導入し、それを活用するということを前提に、死刑制度は廃止をしてもいいのではないか。特にヨーロッパの先進国はそれが常識であるということを考えると、仮出獄のない終身刑の設置というのは絶対的条件でありますけれども、その個人的な意見を前提としながら、しかし、死刑制度を廃止すべきという論者がそのことを背景に訴訟を遅延させるようなことがあってはいけないというふうに思っています。これは逆に大臣の見解を言っていただいては困ると思いますので、お尋ねをしません。

 ただ、大臣には、法務大臣は、一般論としてですが、死刑の判決が確定した事件について、その執行についての最終的な判断をする権限が与えられております。大臣も死刑制度についてはいろいろな個人的な御意見を政治家としてお持ちだということを知っているつもりでおりますが、先ほどの法の支配という観点からは、大臣が個人的に立法政策としてどうあるべきかという意見があったとしても、もし当局から法務大臣として死刑の執行についての判断を求められたときには、現行法に基づいて判断をされるのが筋であるというふうに思いますが、それでよろしいでしょうか。

杉浦国務大臣 先生のおっしゃるとおりでございまして、適正、適切に対処いたします。

枝野委員 それでは、本来予定していたテーマに入りたいと思いますが、私のライフワークとは言いたくないんですが、というのは、十年ぐらいで決着がつくと思っていましたので、何かライフワークになりかけてしまっていること自体が心外なんでありますが、民法改正についてお尋ねをしたいと思います。

 選択的夫婦別氏制度の導入などを盛り込んだ法制審議会の答申から、既に十年以上の歳月が流れております。この間、法制審の答申がありながら、法務省は全くこれを動かしておりません。このような事態をどのように感じておられるのか、大臣の見解をまずお伺いします。

杉浦国務大臣 この問題につきましては、もう先生御案内のとおり、国民の各界各層でさまざまな議論が、はっきり言って割れているというのが実情だと承知しております。民主党の中も必ずしも全員一致じゃないと思いますけれども、特に私の所属する自由民主党では、この問題になりますと議論が白熱して、党議決定に至らないというのが実情でございます。年齢層でも、どちらかというと古い世代といいますか年配の世代、私の世代の方は反対論が多うございますし、若い世代の方は賛成論の方が多いかとも思うんですよ。さらにそれらの中でも賛否割れているんじゃないかと思います。

 この問題も、もちろん申し上げるまでもなく、婚姻制度とか家族のあり方と関連する重要な問題でございまして、私ども法務省としては、大方の理解を得て法案を提出する、すべきだ、現状ではそういう状況ではないと思っております。

 先生のおっしゃるとおり、法制審答申から十年が経過しておるわけでございます。法務省は何もやっていないわけではございませんで、法務省のホームページにはその内容を掲載しておりますし、タウンミーティングでも取り上げておりますし、地方公共団体やその他の男女共同参画関係のシンポジウム等においてチラシを配布するなど、多くの方の理解を得られるよう努力をしてはまいっておりますけれども、実情はそういうところでございます。

枝野委員 大臣はわかった上でおっしゃっておられるんだろうと思うんですが、これはすべてのカップルに別姓を強制しよう、こういう話ではありません。もし、すべての夫婦を別姓にしろというのであれば、国民的なコンセンサスという問題だと私も思います。しかしながら、別姓にしたいというカップルの自由を認めるというのは、これはコンセンサスの問題ではなくて少数意見の尊重、人権の問題であると思います。

 人権の問題について、私は、多数決原理だけでは物事を割り切れない。特に人権擁護の役割のある法務省は、少数者の人権を維持する、確保するという観点から、むしろコンセンサスが得られないのであれば、そのコンセンサスを得るための努力をする役割をする、それが人権擁護の役割を担っている法務省の役割であるというふうに思っていますが、いかがですか。

杉浦国務大臣 法務省としては努力をいたしておることは先ほど申し上げたとおりでございますが、事柄が家族、婚姻制度の根幹にかかわる問題でございますので、日本の伝統、今の同姓制度は武家社会から来ておるようですけれども、長い歴史と伝統のある、その上で議論されていることでございますので、中身は私も承知しておるつもりでございますが、議論が尽きないという実情だと思っております。

枝野委員 だから、同姓、同じ氏を名乗るということが基本であるということを変えろだなんてだれも言っていないんですよ。歴史と伝統に基づいて同じ氏を名乗っていただいていいんですよ。だけれども、それでは困るという人の自由をどうして認めないのか、だれに迷惑をかけるのかという話であるという根幹をぜひ、大臣はわかっていてそう答えられないんだろうと思いますが、考えていただきたいと思います。

 もう一つ、少子化対策ということを一生懸命おっしゃってはおられるようでありますが、別に少子化対策のために選択的夫婦別姓を推進するというわけではありませんが、結果として、選択的夫婦別姓制度が導入をされていないということで結婚をちゅうちょされている若いカップルが少なからずいるということはお認めになりますね。

杉浦国務大臣 その点、私、ちょっとわからないんです。愛があれば結婚するのであって、制度がどうのこうので結婚するわけではないと思います。

 私が知っている人で、若いカップルでこういう例がございます。一人っ子で結婚する、実際結婚しましたが、事実上結婚しただけで、これは一例ですから全部が全部そうだと思いませんが、事実上結婚して籍を入れていない。理由を聞きましたら、子供を二人以上つくって、両方のうちを継げるようにするんだ、それがうまくいったら籍を入れてもいいというようなことを言っていました。

 いろいろ結婚する方同士、二人がそれぞれの実情を踏まえて、事実婚にするなり籍を入れるなり、籍を入れた場合でも、私はそういう例は知りませんが、一人っ子で、片方の姓を名乗ると片方のうちは姓が絶えちゃうという場合には、子供をつくって、両親が生きておられれば養子に出したらいいわけで、お互いの家族に対する理解と愛情があれば解決できる問題ではないかと思うんです。

 だから、こういう制度がないからちゅうちょするという気持ちは、仮にいらっしゃる方がいるとしても、私は理解できません。

枝野委員 半分認めていらっしゃるじゃないですか。

 つまり、現行制度の中では、法律婚をしたら同じ氏にならざるを得ない、そのことを避けるために、つまり、そうした価値観を持たない、夫婦別の氏でいいじゃないかという価値を持っているがために、現行の法律婚をすると同じ氏を強制されるということを避けるために、今大臣もおっしゃられたような、いろいろな工夫をして事実婚で当面いかざるを得ないということをしていらっしゃる方もいるし、あるいは私の知っているケースですが、同じ相手、カップルで法律婚と離婚とを繰り返すことによって、夫婦の氏を別々にし、なおかつ、子供が複数いるに当たって、その子供たちの氏を別々にするという、その家族にとっての一番望ましいスタイルをとるために非常に手間のかかる手続を余儀なくしているという現実があるわけですね。

 それを、なぜそんな面倒くさい手続を余儀なくしなきゃならないのかということが全く理解できない。選択的夫婦別姓さえ認めれば、そうしたややこしい手続をとる必要はないし、私は、たくさんいると申し上げたつもりはありません。少なからずいるのではないかということを申し上げました。法律婚をすれば同じ氏にならざるを得ないので法律婚はできない。だから事実婚だけれども、事実婚という状況の中では、将来のことを考えると子供を産み育てることについてちゅうちょするという方がいないということをおっしゃられるというのは、やはり現状がわかっていないんじゃないかと言わざるを得ないと思っております。

 そこで、少し違った観点からこの話について議論をしてみたいと思うんですが、今も大臣、事実婚の話をされました。法律婚と事実婚との間で、氏の問題以外に法律効果は何が違いますか。

杉浦国務大臣 幾らか差があるようでございます。事実婚の場合であっても、解釈上、婚姻費用の分担義務とか離婚の際の財産分与など、法律婚で認められる効果のうち一定のものが認められております。

 違いとしては、民法上はっきりしているのは、問題にされている氏のほかに、婚姻成年擬制、子の嫡出性、親権所在、法律婚は共同行使ですが事実婚は片方、配偶者の相続権等がございます。税法とか、税法では解釈で所得税や贈与税の配偶者控除は法律婚における配偶者に限られている。これは僕はちょっとおかしいと思うんですが。社会保障については、事実婚の配偶者にも遺族給付の受給資格が認められている。こういった異同があるようでございます。

枝野委員 今お話があった成年擬制の話は、二十歳未満の人にしか意味がない話であります。相続については、お互いに遺言書を書き合っていれば、同じ効果をもたらすことができます。あえて言えば、事実婚と法律婚とで決定的に違いがあるとすれば、税法上の配偶者控除の問題ぐらいでしょうか。今それについては、大臣、これは果たして合理的かというような趣旨の御発言がありました。

 そうしますと、私は実際相談をされれば勧めてもおりますが、選択的夫婦別姓がなかなか成立しない、通らない、だけれども氏を一つにしたくないと。いや、日本は既に事実婚でも法律婚とほぼ準ずるような法律効果があります、配偶者控除の問題ぐらいです、したがって、配偶者控除の問題はダブルインカムであれば意味がありませんから、ここも意味がありません、したがって、何もわざわざ法律婚をする必要はありませんということをお勧めしています。

 このままこの制度が放置をされていけば、どんどんどんどん事実婚が拡大をしていくということになりますし、私もそうせざるを得ないだろうと思います。そのことは望ましいことだとお思いですか。

杉浦国務大臣 望ましい望ましくないよりも、これは婚姻の当事者が決めることでございますので、事実上そういう方向に行くとすれば、それはいたし方ないことじゃないか、こう思います。

枝野委員 大変いい御答弁をいただきました。

 私も、戸籍制度とかそういう法律婚制度自体がもはや法的に余り意味がなくなってきているのではないかと思っておりますので、大臣みずからやむを得ないということでありますので、選択的夫婦別姓を望んでいながら法律が通っていないということで困っていらっしゃる方は、大臣もやむを得ないとおっしゃっているんで、今後はどんどん事実婚を勧めていかれればいいんじゃないかということを申し上げておきたいと思います。

 次に参ります。婚外子相続分差別の問題について申し上げたいと思います。

 婚外子相続分差別を認め続けている合理的な根拠は何でしょうか。

杉浦国務大臣 枝野先生、お言葉を返すようですが、事実婚にするか籍を入れるかということは婚姻する本人同士が定めることでございますので、その結果がどうなるかはわからない。それについて法務大臣としてどうこう申し上げる立場にないということを申し上げたということを御理解いただきたいと思います。

 婚外子の相続分差別を認め続ける合理的な理由はあるかという点でございますが、現在、非嫡出子は嫡出子の二分の一と法定されております。これについても平等にしていいじゃないかという議論があることはよく承知しておりますが、現在の法律は、嫡出子の立場、つまり法律上の配偶者の間に生まれた子と、そうでない子、典型例は浮気した女性に子供が生まれた場合、一つの例だと思いますが、しかし、その子の立場も尊重しなきゃならない。その立場にも配慮して半分にしたという法律婚の尊重と嫡出でない子の保護との調整を図ったのだというふうに理解をしております。このような立法理由については、最高裁の判例においても合理的な根拠があるとされております。

 ただ、これもいろいろ議論があって、その問題も法制審の答申にも入れたんですけれども、さまざま議論があるところでございまして、私の知っている、私を支持してくださる女性ですと、等しくするのは絶対に反対だ、二分の一、いや、そんなの認める必要もないという人すらいるわけでございまして、これも全く議論が分かれておりまして、非常にセンシティブな問題であるというふうに承知しております。

枝野委員 ちょっと戻りますけれども、大臣は、法律婚を選ぶのか事実婚を選ぶのか、それは本人の御判断だとおっしゃっているわけですよね。法律婚を選ぶのか事実婚を選ぶのかすら本人の判断なんですから、ましてや、氏を選ぶということについて本人の判断なんだということをなぜおっしゃれないのか。私は、まさに感情問題としか思えない。

 それから、今の相続分差別の問題ですけれども、ちょっと聞くと、特に法律婚の関係にある反対配偶者の感情というのはわからないではありません。しかしながら、まさに家族の問題とか夫婦の問題というのは、法律によって保障をされないと維持できないような関係を法律がどれぐらい後押しするのかという問題だと思うんですね。本人同士のまさに愛情の問題でありますから、つまり、婚外性交渉によって子供が生まれるかどうかということについては、法律がどんなに縛ろうと何をしようと、これはまさに夫婦間の愛情の問題であったりそれぞれの個人の倫理観の問題であって、私は法律で縛れる話ではないんだと思うんです。そこのところの部分の問題まで法律で担保しようという、まさに個人としての人間力に自信のない人が別姓を反対したり婚外子差別に反対をしているんだと私は言わざるを得ない。

 ちなみに言うと、私は選択的夫婦別姓に賛成ですが、私自身は夫婦別姓にするつもりは全くありません。しかしながら、そういうことでちゃんと夫婦のきずなをつなげるんだ、あるいは婚外子の相続分を半分にしてもらわないと相手が浮気するかもしれない、浮気で子供が生まれるかもしれないという不安はないんだという自信を持っている人たちに対してその自由を認めないというのは、私は僣越な話であるというふうに思っています。

 さらに言うと、確かにその反対配偶者、法律婚の関係にある反対配偶者の立場を考えると、一見合理的な話だと思いますが、これはむしろ夫婦の財産制度についての物の考え方をもうちょっときちっと整理するということが必要なんじゃないでしょうか。つまり、夫婦は別産であると同時に夫婦共有財産というものがある。例えば、いわゆるかぎ括弧つきですが、内助の功的に夫婦名義になっているんだけれども、内助の功が大きく貢献をして夫名義の財産になっていました。これがその内助の功を果たしていない女性の子供のところに行くのは感情的に許せない、これは感情的にわからないではない。

 でも、そもそも夫婦の財産のあり方として、内助の功が本当に認められるようなケースについて、その財産が夫単独名義になって、夫の相続財産になるということ自体を変えなければいけないんじゃないのか。

 つまり、夫婦ともに共同してつくり上げた財産は夫婦共有財産であるべきであって、夫単独あるいは妻単独の相続財産の対象になるというのは、まさに夫婦共同して以外のところで得た財産であるとか、あるいはそれぞれの親からの相続財産であるとか、そういうところに限られれば、今の問題は解決するんじゃないですか、大臣。

杉浦国務大臣 そういう御意見もあることは承知しております。

 私の場合、旧民法の家が、まだ、新しい戦後の民法で変えられる前の時代に生まれ育ったものですから、今おっしゃられたような議論を聞くと抵抗を感じる部分もあるわけなんです。

 自民党内の議論を拝見していますと、先生のような議論をされる方もある、正反対の議論をされる方もある、本当にさまざまでございます。

 私はどの立場に特にこだわっているというわけじゃございませんが、少なくとも法律は国会を通らなきゃだめでございますので、まず与党で御議論いただいて御了承いただかなければ法案として提出できませんので、その与党の御議論が党議決定に至る、ここに熱心に議論されている方も何人かいらっしゃいますが、それを待たざるを得ない、法務省としてはそういう立場でございます。

枝野委員 政府の立場からは御答弁いただけないと思いますが、今のお話ですけれども、大臣最初におっしゃられたとおり、民主党の中にも両論があります、そのとおりです。自民党の中にも両論あります、よく知っております。

 まさに、今の日本において政党の違いを分けている分水嶺になるテーマとは違うところに、私は、この選択的夫婦別姓などの問題についての線があるんだろうと思います。やむを得ないと思います。

 それは、世の中には多種多様なテーマがあって、すべてのテーマについて共通の立ち位置に立つとは限りませんから、ある問題についてで一つの政党ができ上がると、それ以外のテーマについては違っている人たちが同じ党の中にいるというのはあり得る話で、まさにこの問題はそうなっているんですから、むしろこの問題は、まさに党議拘束を外して、党の中の意見をまとめるということよりも、それぞれの立場の中で、国会の中できちっと議論をして進めていくということを、もし、特に改正反対論者の皆さん、自信あるんだったら、どうしてそれをなさらないのか。それで採決しましょうよ。記名投票で採決しましょうよ。それで否決をされたら、また次の機会、次の選挙後に我々頑張りますよ。そういうことをせずに、それで十年も放置をされているということが私は特に許されないと思っています。

 最終的に国会の中で、今、国会議員に本当に党議拘束を外して記名投票をしたら否決をされるという状況であるならば、それはそれで一定の現実であると思います。しかし、まさにこれがお互い、与党も野党第一党もお互い党内が割れているということを大臣自身もお認めになっているんだから、まさに党議拘束に適さない問題であるということを前提に物事を進めていただきたいというふうに私は申し上げたいと思っております。

 もう一つ、従来、民法改正というと、この婚外子差別と選択的夫婦別姓が大きな問題でありましたが、実は、最近というか、もともとこういう問題はあったんですが、本当に現実に現場で困っている方がたくさん出てきているという話が出てきている。それは嫡出推定の話であります。

 大臣も弁護士の御出身でありますから十分御承知だと思いますけれども、死別などの場合は別といたしまして、離婚に至る大部分のケースでは、まず当然のことながら別居が先行している。別居はしていないとしても、夫婦間の性交渉がないような状態がある程度先行している方が圧倒的多数であると思います。ましてや、離婚の調停とか訴訟などを経て離婚に至るというケースでは、まさに長期間にわたって夫婦間の性交渉がなかったというのは、もう社会通念上は常識であると思います。

 ところが、こうしたケースであっても嫡出推定が働いてしまいます。夫婦の間の貞操義務というのが一応あると思いますので、法律上離婚が認められるまでは他の異性との性交渉がないというようなケースであったとしても、特に女性の場合は待婚期間半年というのはあるかもしれないけれども、正式に離婚が認められたということで、離婚直後に懐妊に至るというケースはやはり少なからずあり得るというふうに思います。

 ところが、こうしたケースでも嫡出推定が働くので、離婚から三百日以内の出産の場合は前夫の子と推定をされる。しかも、これは嫡出推定と言われていますが、推定なんて生易しいものじゃない。前の夫から嫡出否認の訴えがなされるなど、家庭裁判所を巻き込んで、いわゆる裁判手続を経なければその推定を否定できない。ましてや、離婚をしていますので、前の夫が協力をしてくれない、あるいは協力を求めること自体も、離婚に至っているんですから求めがたいというケースがあるわけですね。

 もはや、この嫡出推定、こうしたケースについてまで推定を超えてみなし規定に近いぐらいのやり方をしているのは時代に合っていないと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

杉浦国務大臣 先生のおっしゃったような例、別居している、離婚訴訟等で激しく争っている、それで離婚が成立した後に懐妊した場合だと思うんですが、一般的にどれぐらい例があるかわかりませんが、私、弁護士として一、二やったことがありますけれども、例としては特異な例だと思うんですけれども、そういう例の場合に、前の夫の子だと推定することは実態に適合しないと思うんです。

 ただ、法律は、この社会の安定を図る。婚姻関係、子供の関係についても、父と子の関係でございましたら、早期確定、早く確定しなきゃいかぬ。それから、親子の争いを防止するという見地から定められている。婚姻の解消の日から三百日以内に出生した子を前の夫の子と推定するというのは、そういう社会の要請から定められていると思うので、一般論としてはそれは合理的なルールだと思うんです。御指摘のような事情のあるケースは特異なケースだと思うんです。その場合には、裁判で争いなさいと、こういうことになると思うんです。

 見直しを行うべきだというお考えのようでございますが、したがって、そういう事情でございますので、嫡出推定のあり方を見直すとすれば、慎重の上にも慎重に検討すべきことだと私は思っております。

枝野委員 私も、嫡出推定という制度自体を完全になくしてしまうといろいろややこしいんだと、婚姻中の子についても一々父親がだれであるのかということを証明しなきゃならないとか、例えば、もう明確に死別などの場合には、婚姻の解消から三百日以内に生まれました、それは亡くなられた前の夫の子ですということの推定を働かすのは一種合理的だと思いますし、推定自体を否定するつもりは全くありません。

 ただ、現状の、今おっしゃられた特異なケースかどうかというのは、何を基準に特異というかということだと思いますけれども、つまり、離婚のケースの場合に、離婚の前に別居、少なくとも夫婦間の性交渉がないという期間が相当程度先行していて、そして離婚に至るということの方がむしろ普通であって、離婚の前日に性交渉があるなどというケースの方が私は特異なケースだというふうに思います。そこは認識の違いがあるかもしれませんが、いずれにしても、そういうケースのときに、例えば現行法では、前の別れた夫の協力を事実上得なければ嫡出否認の裁判手続もなかなか進まないんですね。

 どうも、現行の裁判所の運用を見てみると、相当厳格にこの嫡出推定を運用しているようで、その離婚に至るための交渉の中で何月何日に会っているから、だからそこで懐妊をした可能性があるだなんてばかなことを言った裁判官がいるらしいんですよね。あるわけないじゃないですか、離婚の交渉をしている途中で。そういう現実を考えたときには、少なくとも、その離婚後三百日というところの間の推定については、推定に対する反証についてもっと要件を緩和する。これは裁判所にゆだねてもなかなか前に進みませんので、立法的な解決を検討する必要が急速にあるんじゃないかと思いますけれども、いかがですか。

杉浦国務大臣 この問題を扱うのは家庭裁判所であって、家庭裁判所は山のようにこういう問題を抱えておられると思うんですけれども、裁判所のとられる態度についてどうこう申し上げることは差し控えた方がいいと思うんですが、私の乏しい経験でこういう例があったんですね。

 離婚調停をやる、調停不調で訴訟までいったんですが、その当事者が、私は女性の方を受けたんですが、調停が終わる、訴訟の期日に会うとまた気分が盛り上がって、すっとホテルへ行っちゃう。そういう性交渉を繰り返している例がありまして、私は辞任しました。それは、向こうの方が、いや、その気持ちがあるんだから離婚する意思がないんだ、そもそもないんだと、つまり、性交渉を持つことは意思がないんだ、なのに訴訟を起こすのはけしからぬというようなことを言われたものですから、私は弁護士を辞任したことがございます。それは別居している人たちだったんですが。

 要するに、私が言いたかったのは、別居して離婚訴訟で争っていても、ケースによっては性交渉も、私の場合体験しているわけで、なかなかそういう特異な例については判断が難しいわけです。したがって、社会通念に基づく合理的なルール、婚姻解消の日から三百日以内に出生した子は前夫の子と推定するという、こういう推定ルールを変更するというのは、御意見はよくわかります、御指摘の点はわかりますが、慎重の上にも慎重に、検討するとすればしなきゃならない、こう思っておる次第でございます。

枝野委員 大臣がおっしゃられたようなケースがあることは私も理解しますが、それこそ特異な例だからこそ辞任をされたんじゃないかというふうに思うんですが。

 もちろん、軽々に、逆に法律を変えることによって混乱を生じさせてはいけないと思うんですが、社会通念というのは変わるんですよね。

 何年前と言ったらいいのかわかりませんけれども、何十年か前には、婚姻届を出してあるいは少なくとも結婚式などを挙げた後に懐妊をするというのが一種の社会通念であったんだろうと思います、よかれあしかれ。ところが、現状では、懐妊という事実が先行して婚姻届を出す、結婚式を挙げるということの方がむしろ一般的になってきているところもあるわけですね。明らかに社会通念というか時代状況は変わってきているという構造をしっかりと認識をしないと、現場の制度のはざまの中で具体的に困る方がいらっしゃるわけです。

 しかも、例えば、これは子供の問題ですから、つまり、本当の父親でない父親が戸籍上父親で一度たりとも書かれてしまうということは、将来の子の福祉のことを考えても非常に避けたいケースであるわけでありますから、本来の父親ができるだけ早く認知になるのかな、これをできるようにしてあげるというのは、やはり子の福祉にとっても大変重要なことなわけですから、制度のはざまの部分のところだとは思います、そういう意味ではレアケースかもしれません。しかし、明らかに社会通念は時代によって変わっている。それに対応して、その制度のすき間に落ちることのないようにするのは、政治やあるいは法務省の役割だというふうに思いますので、善処を期待したいと思います。

 もう一点、民法ともう一つ刑事関係のところですが、具体的な事件の話はしません。それから、先般来この委員会でも、法務省がというか東京地検の記者会見で、何でそんなに早く記者会見ができたのかというやりとりがありますが、そうした個別の案件をやるつもりはありませんが、一般論として。

 新聞に載るような重大刑事事件の場合、逮捕しましたとか起訴しました、こういった場合には、記者会見、記者発表などがなされてそうした事実が報道される、これはわかります。それから、捜査の途中でも、しかるべき担当者が公式に捜査の経緯を公表するということがあるんだろうということはよくわかります。

 しかし、新聞、テレビなどの報道を見ておりますと、被疑者の供述内容であるとか捜査機関でなければ把握できないような事実が、いわゆる捜査筋の話としてという形で報道されているんですよね。一個一個全部追いかけているわけじゃありませんが、捜査当局、つまり検察庁や警察などからそうした記者発表などがなされたとも見えない、つまり非公式な情報に基づいて、新聞、テレビなどが、被疑者は自白をしているとか、被疑者は証言を拒否しているとか、こういう新しい証拠が見つかったとか、こういう話が報道されているんですよね。こうしたことは望ましいことなんでしょうか。

杉浦国務大臣 検察当局の方で捜査情報や捜査方針を外部に漏らすというようなことはあり得ないと考えております。

 しかし、おっしゃるような報道が頻繁になされているわけでございまして、適正な捜査や公判の遂行に支障を生ずるような報道がしばしばなされておるわけでございまして、これは望ましいことではない、報道がなされることは望ましいことではないと思っております。

 ただ、先生御案内のとおり、特に社会の耳目を引く事件だとそうですが、そうでないことでもそうですけれども、報道各社はさまざまな取材活動を行っております。

 私が外務副大臣、官房副長官のとき、それぞれ問題の時期だったものですから、夜討ち朝駆け、ともかくマスコミ対応をどうするかということで神経をすり減らした部分がございました。言ってもいないことを書かれる。その話は杉浦から出たに違いないと疑われる。

 あの方々は、質問して黙っていますと、顔色を見て、これはイエスかノーか、勝手に判断をして書く部分もございます。検察官についても恐らくそういうことがあると思うんです、夜討ち朝駆け。記者会見をやっております、それぞれ広報担当がいて、それぞれの庁で定期的にやっておりますが、そういう記者会見の際に質問が出て、それに対する応答ぶりを見ながら勝手に判断して書くということもあり得るんじゃないか、自分自身の体験からそう思うんです。

 ですから、それほど報道機関には、私どもが働きかけて動くところじゃありませんので、報道機関自体をどうこうするわけにまいりませんが、少なくともそういう、先生が御指摘のような報道がしばしばあることから迷惑を受ける、適正な捜査に影響を与えかねない、支障を与えかねないということはしばしばございまして、口頭でクラブで注意する、記者会見の際注意する、抗議という言葉は適切じゃないかもしれませんが、こういうことは間々あるようでございます。

 私が外務副大臣のときには、記者クラブに、そういうことはございません、注意してくれという紙を何回か張り出しました。検察庁の場合、紙を張り出すというのはかえって捜査に響くから原則としてやっていないようですけれども、この点は、報道各社がそれぞれの使命に基づいて取材をして報道されることの結果が記事になるわけで、だからといって検察当局が捜査情報や捜査方針を外部に漏らすということとは違う問題だと私は思っております。(発言する者あり)

枝野委員 今ありましたけれども、記者の問題なんでしょうか。確かに私も、言ってもいない、やってもいないことを勝手に報道機関に書かれて大変な迷惑を受けたこともあります。あるいは、記者会見などで話したことが、ちゃんと流れを聞いていていただいた方は趣旨を間違えなかったけれども、いいかげんな聞き方をしていたので趣旨を百八十度違って書かれて迷惑を受けたということもあります。そういった意味では、記者の皆さんの資質、能力というのも問われるべき部分はあるんだろうと思いますが、しかし一方で、もっと大事なことは、捜査機関の側から、公式な発表以外に、幾ら夜討ち朝駆けでつきまとわれたとしても、何かほのめかしたり漏らしたりしていいのかどうかという側の話です。

 捜査機関側が話していない、漏らしていない、記者発表以外のところで一切やっていないということであるならば、例えば、そういった旨の報道がなされたら、全部、これは抗議は当然だと思いますが、報道機関に対して国として損害賠償請求訴訟すら僕はできるんじゃないかなと、もし本当にしゃべっていないならですよ。ところが、そうしたケースは聞かないんですよね。

 新聞にリークをされたという言われ方をしますが、リークをされた捜査情報の中でも、捜査機関が抗議をして出入り禁止にしたりしているケースは非常に恣意的なんですよね、全部にやっているわけじゃない。どうもこれは捜査機関も黙認のうちに出したので抗議もしてないから出入り禁止にもしていないのかな、こっちはそうじゃなくて勝手にやったから、これは書くなと言ったのに書いたから抗議して出入り禁止にしているのかなというような、めり張り、仕分けをしているとしか思えないような対応だと思うんですね。

 もし本当に捜査機関がいわゆるリーク等をしていないというのであるならば、それを前提とした厳しい対応を報道機関に対して横並びで一律に求めるべきであるというふうに思いますが、いかがでしょうか。

杉浦国務大臣 検察官にも守秘義務がございます。もし漏らしているとすれば守秘義務違反でございますので、刑事罰の対象にもなるということは御承知のとおりであります。

 そういうことはないと私どもは思っておりますが、一般論として申し上げますと、検察当局は捜査をしております。時間を限られた範囲内で捜査をしておるわけでございますので、適正な捜査の遂行に支障を生ずるような報道がなされた場合には、もちろん報道の自由にも配慮しながら、事案に応じて適切な対応をしておるものと承知しております。記者会見で口頭で注意したり、抗議したり、さまざまな適切な対応をしていると承知しております。

 また、これを訴えたらどうかというようなお話がございましたが、あくまで一般論として申し上げますと、御指摘のような記事は数多く出るわけでございまして、もう一々対応する余裕はない、片一方は捜査をやっておりますから、そういうこともございます。内容が著しく捜査の妨害となり、あるいは将来の公判に影響するというような場合には、場合によっては当該報道機関に遺憾の意を伝えるなどして適切に対応しているというふうに承知いたしております。

枝野委員 大臣、起訴状一本主義というのは当然御存じですよね。刑事裁判を起こすときには、裁判官に予断を与えてはいけないということで、まずは起訴状以外の情報を提示しないというところで公判がスタートするわけです。検察官と弁護人が両方そろって初めてさまざまな具体的な主張が検察官の主張として提示をされるので、それまでは裁判所には起訴状以外の情報を与えないということなんです。これは非常に合理的なことだと思います。

 ところが、プロの裁判官は報道は報道だという区別ができると思いますが、まもなく裁判員制度というのを導入するわけですよ。プロの裁判官は確かに報道と起訴状一本主義と、使い分けといいますか、しっかりと分けた事実認定ができるだろうと思います、そのトレーニングをしているわけですから。ところが、一般の国民の皆さん、裁判員になっていただくというのに、この起訴状一本主義とかその理念を全部しっかり教え込んで、報道で聞いたことは全部頭から忘れてください、さあ裁判ですよなんて、現実に機能するはずないじゃないですか。

 したがって、捜査の支障とかという問題じゃないんです。捜査機関として、起訴状一本主義という観点から、将来の裁判員候補者に対して、予備軍に対して予断を与えない範囲の中で、なおかつ公益の観点から、必要な情報だけをしっかりと管理、コントロールして、少なくとも、捜査機関からの公表、捜査機関筋によればという公表、もちろん、メディアが独自の足で稼いで、その捜査官の人たちを尾行して回っていたらああいうところへ行っていた、こういうところへ行っていた、独自に調査報道してそれが出てしまう、これは報道機関として当然の権利だし、やむを得ないことで、逆にそういうことで、捜査機関の意に反する報道がある、そんなことは抗議しちゃいけないことなんですが、捜査機関から、捜査機関筋だなんていう報道がなされたら、それはこの起訴状一本主義の観点から絶対に許されないことなんだという思いで、しっかりと対応していただかなければいけないと思いますが、その決意を最後にお聞かせください。

杉浦国務大臣 先生のおっしゃるとおり、検察当局は従来から、関係者の名誉やプライバシーへの影響、捜査、公判への影響の有無、程度などのほか、裁判所へ予断を与えるおそれの有無、起訴状一本主義のもとにおいて、そういった問題についても留意しながら、公判請求の時点そのほかで適正に報道発表を行ってきたものと承知しております。起訴状記載の事実を超えて検察当局が報道発表を行ったことはないと承知しております。

 裁判員制度のもとでも同様に、御指摘のように裁判員に予断を与えるおそれの有無といった問題を考慮しなきゃならない。特に裁判員の方は法律家ではございません、素人の方ですから、特にそういった点を考慮しながら適正に対処していかなければならないと考えております。

枝野委員 まず大臣に申し上げたいのは、一つは、今、検察の話しかおっしゃっておりませんが、もちろん法務省が所管をしているのは検察だけですけれども、起訴状一本主義ということの観点からすれば、起訴権限を持っている検察庁、そこが捜査の監督をするんですから、そこを通じて警察当局も含めて今のようにやっていただかないといけないということをまずきちっと申し上げておきたい。

 それから、今大臣が、きちっとした判断に基づいた公表、発表以外はしていないということをおっしゃられましたので、今後、例えば、捜査機関筋によればとか、捜査機関が非公式に漏らしたのでなければとてもこういう報道はできないなという報道があったら、この委員会の場において、具体的にどうしてこういう記事が出てきたのか、そして、そういう記事が出たことについて、本当に漏らしていないんだったらどういう対応をするのかということについて個別に今後聞いていかせていただきますので、そのことを申し上げて質問を終わります。

 ありがとうございます。

石原委員長 次に、高山智司君。

高山委員 民主党の高山智司でございます。

 きょうは、今資料も配らせていただいておりますけれども、登記特別会計の件を引き続き伺いたいと思います。

 まず初めに、登記特別会計ということですけれども、なぜこれは特別会計になったのか、その理由を教えてください。これは大臣で結構です。

杉浦国務大臣 登記特別会計でございますが、先生からお配りいただいた資料に登記特別会計の設置目的、仕組み等ございますが、特別会計を設置いたしまして、その経理を一般会計と区分して行うことの必要性は二点ほどございます。

 基本的には、第一に、受益者負担の原則に基づく登記関係手数料収入が、先生の概要にもございますが、法務省で進めてまいりました登記関係事務のコンピューター化、登記情報システムの運用等に要する費用に充当されることが明確になる、つまり受益と負担の関係が明確になるということが一つ。

 それから、特にこのところ法務省が進めてまいりましたコンピューター化、地図のコンピューター化と登記のコンピューター化、登記情報システムの円滑な運用等の長期的視野に立った投資、単年度では処理し切れない投資に見合う安定的な登記関係手数料の設定を可能とすることといったような現実的要請から登記特別会計が設置されたものと承知をいたしております。

    〔委員長退席、早川委員長代理着席〕

高山委員 そうしますと、今大臣おっしゃいましたように受益と負担の明確化ということでございますけれども、この登記特別会計、単年度で見ても、ことしのでもいいですし去年のでもいいんですけれども、実際、登記手数料収入と全体の登記特別会計と言われるものの歳入と歳出、これはどのように明確に区分経理されているのか、ちょっと御説明願えますか。

杉浦国務大臣 詳しいことは後ほどまた説明させるといたしまして、私は、この特別会計、今改革が進められていますけれども、割合わかりやすい、透明性のある会計だと思っているんです。極論すれば、なくたっていい、なくてもいい。収入は収入で上げ、支出は支出で、毎年これだけ投資が必要だということでやっていけばいいわけですが、さっき申しそびれたわけですが、財政当局の事情から、これだけ必要投資は手数料収入を上げることによって賄いなさいというようなことがあって、手数料収入はもちろん関係省庁と相談しながら決めるんですけれども、支出に見合う収入を図ってきたということだと思うんです。

 一般会計からの繰り入れというのは原則として法務局の人件費部分に充当ということで、割合透明性のある運用がなされてきたというふうに承知しております。

 具体的なことは事務方から。

河野副大臣 登記特会、二つに分かれております。

 一つは、登記の審査をするところ。これは一般会計からの繰り入れで賄うというのが原則でございます。その大もとは登録免許税でありますが、登録免許税はそのまま一般会計になりますので、多分観念的には、登録免許税が来るということではなくて一般会計から繰り入れる、これは登記審査に当たる人件費に充てるということであります。

 それからもう一つは、登記の情報を提供する。これは手数料でございます。この手数料は、登記特別会計に特定財源として入ってくる。そして、ここで入ってきた手数料相当分で、登記情報管理の事務の人件費あるいはコンピューター経費というものに充てる、そういうことになっております。

寺田政府参考人 基本的には、今大臣、副大臣から御説明申し上げたとおりであります。

 この登記特別会計ができる前は全部一般会計で登記事務の諸経費を賄っていたわけでございますけれども、特に、当時は登記簿謄本と言っておりましたけれども、その情報を開示する部分の手続、運用というのが著しく時代におくれかねないような状況であったためにコンピューター化を決意して、したがいまして、主としてコンピューター化というのは、登記の情報を外部に出すということにメリットがあるという理解でいたわけであります。

 したがいまして、その後も、現にそのように使うということを基本方針としておりまして、先ほど副大臣からも御説明を申し上げましたとおり、手数料収入、これは特別会計の中では特定財源と言っておりますけれども、その特定財源で、登記の現になされている情報というものを外部の方がお知りになるための諸手段の改善というものに充てているわけでございます。

 現在は、これは平成元年からでございますけれども、コンピューターに事務の処理を置きかえておりますけれども、その置きかえるための費用、それから現にコンピューターのオペレーションを行うための費用、そういうものが、従前の人件費等に加えてこの特定財源で賄われるということになります。

 当然のことながら、移行、置きかえるための経費というのが一時的には非常に大きいものになるために、現在は特定財源の負担している部分というのが非常に大きくなっているわけでございますが、このコンピューター化が完成した暁には、それはコンピューターの運用のための、オペレーションのための費用に限定されるわけでございますので、次第にその部分は縮小していくということになります。

 非常に難しいのは、人件費と、それから、例えば登記所の中で光熱費をどうするかとか、あるいは暖房をどうするかとかいうようなたぐいの費用でございますが、これはそれぞれ、登記特別会計ができた際に、一体、一般財源からの繰入分でどこまで負担するか、それから、先ほど申し上げました手数料収入の特定財源でどこまで負担するかということを決めたわけでございます。

 基本的には実情に応じて決めるということでございまして、例えば人件費でありますと、現実には登記所は、先ほど申したように、費用とは逆に、審査ということが事務上の非常に大きな比重を占めているわけでございます。これは、外部から新たに登記申請がなされる、その登記が果たして正しいかどうかということを審査することが、まさに現在の権利者の権利の保護と新しい者の権利の擁護のバランス上必要な登記の事務の核心でありますから、その部分に人を多く充てているわけでございます。

 したがいまして、当初大臣が申し上げましたように、繰入財源のほぼ九割以上はこの人件費に充てられるということになっておりまして、人件費自体のおおむね七割、働いている人全体の七割が審査事務に当たっているものとして登記特別会計の中での経理区分をして、毎年予算を計上しているのが実情でございます。

 また、これは人件費に比べますと圧倒的に小さいわけでございますけれども、光熱費その他につきましては、大体、登記所の中で審査に要するスペースと情報を提供するためのスペースとは一体どのぐらいの割合かということを現にはかりまして、その割合でもって、光熱費をそれぞれ繰入財源、特定財源で負担する。こちらの方は、例えば待合室のお客様というのは大体は証明書をとりにお見えになる方が多いものですから、そういうところの関係で、特定財源での負担というのが人件費とは逆に大きくなっている。そういう経理区分をいたしているわけでございます。

高山委員 私は、これは去年も少し質問させていただいて、こういう言葉だけのやりとりではわかりにくいと思いまして、きょうはこの資料をつけさせていただきました。これは法務省の方でつくっていただいた説明資料です。これを皆さんにもお配りしていると思います。

 大臣、先ほど、この登記特別会計、割かし明確に区分されているじゃないかというお話がありましたけれども、例えば、いいですか、このカラーのものを見ていただいても、上のブルーのところにも人件費とあって、下の方にも人件費となっていますよね。これは全然区分経理されていないじゃないですか。どうしてこういうことになるんですか。

 今局長の方から御説明ありましたけれども、七対三の割合であるとかなんとかというのは、これは全部、ある意味フィクションじゃないんですか。実際問題は、同じ人が同じ場所で仕事をしている。だから、本来であれば、全部オレンジになるのか、それとも、いや、人件費に関しては全部ブルー、つまり一般会計からの繰り入れなんだ、それで登記情報システム最適化とか電算化だけがこの手数料のオレンジのもので例えばやるのか、どっちかはっきりした方がいいんじゃないんですかね。

 本来であれば、受益者負担ということでいえば、これはもっとすごくかかるので、では、手数料を上げましょうというような話にする方が私は自然だと思うんですよ。これは全然区分されていないですよ、大臣。この表を見ていかが感じられますか。これは、私がつくったんじゃなくて、法務省の説明資料ですけれども。

    〔早川委員長代理退席、委員長着席〕

河野副大臣 登録の審査に係る人件費は登録免許税、登録免許税と言うと財務省にしかられてしまうかもしれませんが、それは一般財源からいただいたもので充てるということになっております。オレンジの方の手数料に充てるものは、証明事務に係る人件費であります。同じ人間がやっているならば、どちらの割合がどれだけかということを出して、それに応じて一般会計からの繰り入れと手数料収入を充てるというのが今の登記特会のやり方であります。

高山委員 大臣、いろいろとこの図を見て、今、おかしいなというような顔をされていますけれども、実際、例えば、先ほどから副大臣おっしゃっていますように、もし登録免許税だというならばわかりますよ。でも、登録免許税だったら五千四百億も入ってくるんじゃないですか。そうしたら十分それで賄えるじゃないですか。特別会計をもしやるのであれば、登録免許税が財源である、その中で賄っているんだ、こういうことならわかりますけれども、この手数料の方で賄うということなわけですよね。足りない分を一般会計から入れている。それでこういう、ごちゃまぜというか、歳出なんか特に、全然区分経理されていないじゃないですか。どうしてこれが特別会計である必要があるんでしょうか。これだったら、一般会計でも全然いいんじゃないんですか。

 今度は大臣にちょっと見解を伺いたいんですけれども。

石原委員長 河野副大臣の後、杉浦大臣にも発言を求めます。

河野副大臣 登録免許税を全部いただけるのならいただきたいと思います。むしろ、法務省としては、登録免許税の余っているのを一般会計に繰り入れているんだと言う方がいいのかもしれませんが、そういうことを言うと財務省に怒られてしまいますから。登録免許税というのは、今、一般会計にそのまま入る一般財源であって、そこからいただいているわけで、登録免許税というのは、この登記に使われる経費以外の国の財政にも寄与しているわけであります。

 ですから、登録免許税で五千何百億いただいて、それでさっさとやってしまえというお考えもあるかもしれませんが、現状ではそうなっておりません。

杉浦国務大臣 細かなことはわかりませんが、登記特会は、コンピューター化の投資がほぼ終了する平成二十一年でしたかに廃止することになっております。この下の方の投資部分がなくなるということでございますので、特別会計としての処理はなくなります。登記手数料等は全部国庫に入りますし、そこから人件費ももらう、必要なオペレーションの経費ももらうというふうになっていくと思います。長期、十年ぐらいかかりましたか、多額の投資が終わりますので、そういうふうに処理されるわけです。

 ここのところがどうしてこういうふうに区分されたか、恐らく財務当局との折衝がいろいろあるんだと思うんです。なぜこのブルーの部分がこう重なっているのか、よく説明を聞いてみますが、恐らく、私の推測では、財政当局と、では、この部分は財政当局、ここは特定財源の収支でやって、剰余金も要りますから、収入は景気の悪いときは減りますので、そういう剰余金制度を設けるとか、いろいろなことを折衝して、こういうふうに財政当局との間で決めた結果こうなったんじゃないかな、こう思っております。

高山委員 いや、大臣、これはかなりわかりにくいんですよ、本当に。私も、わかりにくいから、事務方の方に聞いて、きょうの質疑でも、多分言葉のやりとりだと相当わかりにくいなと思ったので、事務局のつくった一番わかりやすい表を出させていただいて、それを大臣に見ていただいても、それこそ、この一般財源のブルーの部分とオレンジの部分、これは区分経理されていないじゃないですか。

 大臣、この表を見て、あと実態、今の説明を聞いて、これは区分経理されているなと思いますか。私はこれは区分経理されていないと思いますけれども、ちょっと大臣の所見を伺いたいんです。

河野副大臣 きちっと区分経理されていると思います。

杉浦国務大臣 私、経理のことはよくわかりませんので、区分経理という、どういう意味でおっしゃっているかわかりませんが、事務方にはきちっと経理を区分してやっておるというふうに伺っております。

高山委員 大臣、さっきから事務方の方がいろいろ説明して、何対何の割合だとかということを言っていますけれども、そもそも、この特別会計というのは受益と負担の割合をはっきりさせるということだったわけですよね。

 そうしたら、先ほどから河野副大臣が言っていることでちょっとおかしいのは、登録免許税がどうのこうのと言っていますけれども、登録免許税なのか、全部国庫に入って一般財源なのかという仕切りは、これはもう終わっている話でしょう。これは、登録免許税じゃなくて一般財源ですよ。ここに登録免許税と何となくこう書いてありますけれども、本来、一般財源からただ来ているだけであって、これは、そうあればいいなという法務省の思いが書いてあるだけだと思うんですよね。

 ですから、千八百億の総額のうちの半分ぐらい一般会計から入ってきていて、全然これは区分経理になっていない、受益と負担の割合がはっきりしていないんじゃないんですか。

 実際、これは大臣が見てもすっきりわからない。しかも、何回も何回も今やりとりをやっているのにわからないというものが、手数料を払っている受益者の方が、ああ、私は今この事務経費のうちの四割だかの分なんだなと、こういうことをわかって、受益と負担の割合が、これは払われているというようなものなんでしょうか。これは手数料ですからね、税金ではなくて手数料ですから。きちんとした区分経理がなされているとは私は到底思えませんけれども、まず、副大臣が手を挙げているので、副大臣からお願いします。

河野副大臣 証明書の発行に関する事務に係る経費を手数料で賄っている、これは明確に区分経理がされております。

 登録免許税と言うとまた怒られてしまうかもしれませんが、登録免許税というのは、国の財政を背負っていく一般財源でありますと言うとまた怒られるかもしれませんが、証明書を発行する部分以外の審査に当たる人件費もこの特別会計の中で一元化をして見る。それに対して証明書発行に要した手数料を充てるのは適切でないので、一般財源を繰り入れていただいて、その一般財源で審査分の人件費を充てる。明確に区分経理が行われております。

高山委員 先ほどからちょっと副大臣、登録免許税ということをやたら言いますけれども、私も、いや、これは本来、では、登録免許税で全部特別会計をすればいいじゃないか、そっちがよっぽど話がシンプルだと思う一人ではありますけれども、実際問題としてはこれは違うわけですよね。

 ですから、これはただ一般会計から不足分を繰り入れているだけですから、ちょっと今の発言は訂正してもらえませんか。何かあたかも登録免許税が財源だというようにちょっと聞こえるんですけれども。

河野副大臣 登録免許税が財源だということは訂正をいたします。それは一般財源の繰り入れであります。登録免許税というのは、この特会の受益者負担を負担する部分ではなくて、登録免許税というのは国の財政の収入の大きな一部でありますので、それがこの特会のための収入だというのはちょっと私の勇み足でございます。

高山委員 それでは、話も整理できたと思いますので、改めて大臣に伺います。

 これは、手数料でそもそも取って、その中で賄っていこうということだったはずですよね。それが、一般会計から例えば出ているのが人件費だけならまだしも、この手数料のオレンジの部分でもまた人件費が出ていますよね。これでは全然、例えば一般会計でもっと多くとればいいじゃないですか、これだけの事務手続がかかっているんだと要求して。

 本当は大臣に伺いたいんですけれども、そもそもこの登記特別会計ができるときに、受益と負担をはっきりさせる、それでコンピューター化に主に使うんだ、長期的な計画であるということであれば、この手数料のオレンジの部分は全部そういう経費に使われるべきであって、これがまた人件費にも使われちゃっているじゃないですか。私は、これは区分経理がなされているとは言えないと思いますよ。

 今度は大臣から御答弁願います。

杉浦国務大臣 区分経理の言葉云々はよくわかりませんが、これをごらんいただけばわかりますように、このオレンジの部分は大体、右、左、合っていますよね。この歳出の部分のうち、登記情報システム最適化実施経費、コンピューター化、地図管理業務・システム最適化実施、地図もコンピューター化していますから、この事業について、十年ぐらいですか、投資をずっと続けてきたわけですね。これを実施するために登記手数料を上げてきた。だから、この部分、それに伴う人件費も管理事務費もいろいろ入れると、そういうものを積算した上で、予備費も入れてここをバランスさせたという作業が一つあったと思います。

 それと同時に、今まで、特会をつくる前から、法務局の人件費、審査費等々の収支についての検討があったと思います。それを財政当局と協議しながらこういう形になったと思うんです。

 私が言いたいのは、このオレンジの部分の受益と負担はおおむね合っているんじゃないか、一般会計からの繰り入れというのも、そもそも一般会計で負担しておった分については相応しているんじゃないか、そういう趣旨で申し上げているわけで、このオレンジとブルーがまじり合っているところの部分はよくわかりませんが、これは恐らく財政当局との間で、ここまでは一般財源、こちらからこちらは特定財源という仕分けがされた結果じゃないかと思うんですが、民事局長に聞いていただければ、そのあたりのことは詳しくわかると思います。

寺田政府参考人 まず、この表でございますが、若干つたないために混乱を生ぜしめるとしたら、おわび申し上げます。

 と申しますのは、もともとこの表をつくりますときに、歳入と歳出の関係がぱっと目で見てわかるようにという要請と、登録免許税との関係は一体どうなっているんだという御指摘がいろいろございましたので、こういうふうにあえて登録免許税と書かせていただいて、それで、下の手数料は登記特別会計への矢印が実線でございますが、上の方は一般歳入という形で点線にしてある。つまり、これは間接的にしか意味がないということを示したつもりでございますので、もしその点が混乱の原因でございましたら、これはまことに申しわけございません。

 今大臣が申し上げましたとおり、もともとこれは、コンピューターへの登記システムの変換というものが受益者によって支えられるべきだというところからスタートしているわけでございますので、受益者の、つまりそこは証明書の手数料を払う方でございますけれども、そういう方のお払いになる手数料はすべてコンピューター化に使われるということが最低条件でございます。その最低条件を満たすために、この登記特別会計の特定財源の支出はそういうことを明確にしているつもりで、区分経理がされているわけでございます。

 そうした場合に、ではその手数料の負担というのは一体どれぐらいであるべきかということをお考えになればおわかりになると思いますけれども、この方々は何も、コンピューターによってデータが処理されていることだけでそれだけの証明書をとっているわけではありません。当然のことながら、それに至るさまざまな人手を介する、あるいは、登記所そのものを設営して、その場に登記所があるということからも受益を受けておられるわけであります。

 ただ、その受益の範囲がどこまでかというところは非常に難しい問題でございまして、そこには、今議員が御指摘になられましたように、完全にフィクションの要素がないというのはなかなか困難なことではございますけれども、しかし、やはり受益と負担の関係を明確にするためには、それをできる限り現実に近づけようとする努力を財政当局といたしているわけでございます。

 その一つが人件費でございまして、例えば大きい登記所をごらんになるとおわかりになりますが、この証明書の発行事務というのは、明らかに担当の従事職員がそれに専念しております。そういった者の人件費というのは当然に証明書の手数料に反映されるべきであって、これは特定財源で賄われるべきものであるということはだれしも異論がないところでございます。

 したがいまして、そういった意味でいろいろ検討してみますと、大体全体の三割ぐらいがそういう証明書の発行という情報の提供の部分に従事しているというふうに見られるために、こういう人件費をあえて区分しておるわけでございます。

 これを仮に全部一般会計からの繰り入れでもって賄うということになりますと、証明書を発行して手数料を払っている人は、バランス上、不当に利益を得ているということになり、納税者とのバランスがとれないわけでございますので、こういう措置をとっているわけでございます。

 それから、今大臣が最後に御説明申し上げました、真ん中の両方に係っている部分、これが、私が冒頭に御説明申し上げましたとおり、例えば登記所の中で、この部屋もそうでございますけれども、一体何割ぐらいがこちら側に利用されているか、何割ぐらいがこちら側に利用されているかということを見まして、その割合を決めて、これは特定財源で賄おう、これは繰入財源で賄おうということで、この部分は特定財源で賄う、つまり、証明書発行の部分がスペースを多くとっているために、光熱費はこのような負担になっている。

 若干おわかりになりにくいところがおありになることはもちろん私も否定いたしませんが、基本的には、その思想というのは明確にあらわれているというふうに考えております。

高山委員 そうしますと、この特別会計をつくられた昭和六十年当時のことですけれども、そのときは、登記の証明書ですか、これをもらいに行くときには手数料というのは一体幾らで、そしてそれが、特別会計を入れますよということ、つまりコンピューター化しますよということで幾らか上げたわけですよね。このコンピューター化も、さっき大臣が二十一年に終わるようなお話をされていましたから、そうすると、この手数料はまた下がるということでよろしいのか。

 それともう一つ、では、昭和六十年当時に手数料を取っていたのは、これはどういう経理の処理になっていたんでしょうかね。それは一般会計に入っていたんですか。それとも、こういう受益者負担だということでやられていたんでしょうか。ちょっとそこを説明してください、当時の話と。

寺田政府参考人 登記特別会計ができる前、つまり昭和五十年代でございますが、当時は登記簿謄本あるいは登記簿抄本と言っておりましたけれども、登記簿謄本に関して言えば、基本的には一通三百五十円でございました。これは全部一般会計に入るわけでございます。

 ただ、この三百五十円をどのぐらいの額にすべきかということについては、今の特別会計ほど厳格ではございませんけれども、大ざっぱに、大体どのぐらいのコストがかかるものかという計算はもちろんしていたわけでございます。ただ、登記特別会計になりますと、それが一層厳格になりまして、先ほど申したように、特定財源に係る経費が全体これぐらいで、それを、何通発行しているから一通幾ら、こういう計算をするわけでございますけれども、昭和六十年に登記特別会計ができる際には、そのコスト全体を計算いたしまして、証明書一通当たり四百円ということにいたしております。

 その後、まことに申しわけないんですけれども、やはりコンピューターの移行の時点では、相当このコンピューター化にコストがかかります。したがって、利用者、証明書をおとりになる方にはそれ相応の御負担をいただくということで、随時、六百円、八百円、千円と値上げをしてまいりまして、平成十年から一通千円になっております。その後は、先ほど申しましたように、移行作業もおおむね峠を越しまして、むしろこの特定財源で賄うべき支出というのは徐々に減りつつある現状にございますので、そこでも計算をいたしておりますけれども、千円をもう上げる状況にはないということで、その後、千円に据え置かれております。

 ちなみに、この手数料は三年ごとに見直しをしているわけでございますけれども、そのような状況でございまして、今後でございますが、当然のことながら、この特定財源で負担すべき全体の経費というものが下がれば、先ほど申しましたように、これはまさに特別会計を設けていることのメリットでありますけれども、利用者の方々の負担すべきコストというのは下がるわけでございますので、当然、手数料というのもそれを反映した額になるだろうということを考えているわけでございます。全体をそのように、今後は、御負担をできるだけ減らすということを当然念頭に置きながら、三年ごとにその手数料というものを検討してまいりたいと思っております。

高山委員 そうしますと、先ほど大臣、間違いを責めるわけじゃないですけれども、この表で言いますところのオレンジの人件費の二百数億、これは登記事務ですよね。書類を出したり入れたり、こういうことで、その分の何割かの負担だと。

 それで、それは六十一年以前からも当然そういう事務はやっているわけで、お金を取ってやっていたわけですから、そこはわかりますけれども、私が言いたいのは、特別会計にした部分で、例えば値上げの部分が幾らかあったわけですよね、当時。その分はもう純粋にコンピューター化の移行経費に使うべきであって、従来から取っていた手数料の分は、もともと一般会計から出て、要するに、六十一年以前はこのオレンジだブルーだというふうに分けているほど複雑じゃなかったと思いますよ。人件費は人件費、庁費は庁費というふうに出ていたわけですよね。そのまま維持していればよかったのに、どうしてこういうわざわざ複雑に、説明するがためになのでしょうか、わかりませんけれども、なっているのか。

 つまり私が言いたいのは、手数料を、本来コンピューター化なんだということで取っておきながら、どうも従来の人件費だとか庁費の部分に、これは当時からずっと充てていたんじゃないんですか、今もそうですけれども。要するに、特別会計をするためには受益と負担の割合をはっきりさせる、それはコンピューター化の経費であるということを言いながら、初めから、今までは一般会計で賄っていた人件費あるいは庁費にこれを充てていたんじゃないですか、昭和六十一年当時から。それはいかがですか、河野副大臣。

河野副大臣 コンピューター化のメリットというのは、コンピューターだけ置いておいてもだめなわけで、そこから証明書なり情報を取り出すということが最終的には受益者にとってメリットになるわけで、その部分を切り分けて手数料の中に組み込めたわけであります。

 ですから、手数料の部分でそこまで賄うことになっているというのはおかしいことでも何でもない。以前は、そのコンピューター部分がなかったわけですから、そこに対して人件費なりそれに係る経費が乗っていたということであります。

高山委員 今の副大臣の説明はおかしいと思います。

 やはり六十一年以前、例えばコンピューター化される以前は、では、利用者の方は、登記所に来て、自分で勝手にどこどこ入っていって、自分で全部コピーして、自分で全部やっていたわけじゃないですよね。それは、職員の人が出してきて、やってくれていたわけですね。だから、その手間というか、その経費は変わらないじゃないですか。今、コンピューターからぴいっと出てきたものを何かコピーしたりして渡すという手間と、ブックであるものをコピーして渡す、そこの部分は同じじゃないですか、そういう意味で人件費というのは。

 しかも、先ほどの局長の答弁であれば、登録免許税にかかわる部分と手数料の部分と、じっと見て何対何の割合だなというふうにやって出した割合ですよね。

 ですから、今副大臣がおっしゃったように、コンピューター化に使われている経費というのは明確に少なくとも分けられますよ。しかも、実際、今のこの予算書を見ても、これはコンピューター化に使われている経費だというのは分けて計上して、しかも執行もされています。

 だけれども、そこに、説明のためのものを聞きますと、必ず、コンピューター化だけじゃなくて、乙事務と甲事務と何か分けていて、その甲事務の分は、これは手数料収入なんですという説明があるのがおかしいんじゃないんですか。つまり、その分、手数料を取り過ぎているんじゃないんですか、そういう指摘です。

寺田政府参考人 これは繰り返しになりますけれども、基本的には副大臣が御説明申し上げたとおりでありまして、コンピューター化のための、もちろん区分経理の必要性から出たことではありますけれども、しかし、手数料によって得られる特定財源というものが一体どこまで負担するかということになりますと、結局、その手数料でもって利益を受けている証明書をもらう人が、一体、どういうコストでこの利益を得ているかということを考えざるを得ないわけであります。

 それは、コンピューターだけでできているわけではありませんで、コンピューター以外にも、さっき申し上げましたように、場所とか人のためのコストというのはある程度は負担していただかなければその証明書は出てこないわけでございますので、その部分を計算の上で当然負担させて手数料額全体を計算するのは全くおかしいことではないというふうに思っております。

 ただ、委員の誤解は、多分、昭和六十年前にはこういうことはおよそなかったのではないかということからきているのだと思いますけれども、先ほど申し上げましたように、昭和六十年以前も手数料が三百五十円というのをどうやって計算したかといいますと、それは人件費が一銭も入っていないわけではないわけでありまして、それはその事務に従事している人を、今ほど厳密ではございませんけれども、大ざっぱに、大体このぐらいの人件費がかかっているから、その人件費分はコストの計算に入れていたわけでございますので、そこは基本的に、あえて申し上げれば、登記特会設立前と後とで思想がめちゃくちゃに変わっているわけではないわけです。

 ただ、違うのは、コンピューターを入れる、それは最終的にはいろいろな方のメリットになるわけでございますけれども、基本的には、証明書を得られる方の事務改善によるメリットというのが圧倒的に大きいので、では、この方々に負担してもらおう、したがって、コンピューター化の経費は、甲号と登記所では呼んでおりますけれども、審査事務に必要な一般会計からの繰り入れには負担させないでおこう、そこがこの登記特会の一番のポイントになるわけでございまして、この柱は、この登記特会ができた以後、全く崩していないわけでございます。したがって、一般納税者の方々が不当にコストを負担しているということがないということは確実でございます。

高山委員 今の私の言いぶりがちょっとはっきり言わなかったらあれですけれども、つまり、六十一年以前にも三百円取っていた、それは、大ざっぱに登記事務にこのぐらいかかるということで計算していたというような話がありましたけれども、私が言いたいのは、その六十一年に特別会計になった。そのときは、コンピューター化の費用がということが一番の目的にあって、そして受益と負担の割合をということだったと思うんです。

 そうしたら、六十一年以前は、要するに、登記所の庁費だとか人件費というのは全部一般会計から出されていたわけですよね。だから、純粋にコンピューター化の経費の部分だけ手数料を値上げするなりなんなりして、そこを特別会計にすればよかったんじゃないんですか。

 それを、すごく大ざっぱな計算でもともと手数料というのが決まっていて、それが適正かどうかということももちろん争いはあると思いますけれども、仮にそれが適正だとして、その大ざっぱに決まっていた手数料の分に何かちょっと上乗せしたら、その上乗せした部分だけが本当はコンピューター化の費用に使われれば、受益と負担、はっきりしていますけれども、このお客さんというか登記所に行って証明書をもらう人にとってみたら、それは同じですよ。ブックからコピーしたものが出てこようが、コンピューターから出てこようが、同じ証明書が出てくるわけですから、コンピューター化に使う部分だけ値上げして、そこの部分を、純粋にこれはコンピューター化に使われていますよというならいいんだけれども、また、この説明なんかを見ると、今までは、本来、一般会計で使われていたところにも特別会計で何か賄われているような、そういう気がするんです。

 つまり、その手数料の中で、手数料三百円だったのを四百円にした、その四百円の中で、上げた百円分だけがコンピューター化に使われているということじゃないですよね。そこも何かばらばらになっちゃっていますよね。だから、受益と負担の割合がということをおっしゃるけれども、そこははっきりしないんじゃないんですか、こういう質問です。ちょっともう一回答弁をお願いします。

寺田政府参考人 御趣旨はよくわかりました。

 まず第一に、昭和六十年の登記特会ができる以前は、手数料も一般会計に入っているわけです。したがいまして、その一般会計で人件費を全部負担していたといっても、それは、経済的には手数料によって負担されていた部分もあるということは事実でございますので、その構造は、思想的には今も昔もそんなに変わっておるわけではないわけであります。

 次に、登記特別会計は区分特会の一つでございますけれども、区分特会は、こういう部分の収入というのはこういう部分の支出を負担するということで区分をするというところに意義があるわけであります。

 おっしゃるとおり、一つの考え方としては、登記のコンピューター化に幾らかかる、したがって、手数料のうち幾ら部分はコンピューター化経費だ、そのコンピューター化経費にかかる部分だけを特別会計にするという思想も、全くおよそあり得ないわけではないと私も思いますが、しかし、普通の意味での特別会計というのは、やはりこの手数料というものの全体が一体どこまで負担すべきかということで区分するというのは普通の考え方であります。

 そういうふうにいたしますと、手数料で負担すべき部分に、先ほど申したように、人件費のうち、その人がメリットを受けている分を負担させるということは自然なことでありまして、そういった意味で、委員のおっしゃるように、支出部分の区分というのが若干わかりにくいことは事実でありますが、逆に、委員のようなお考えをとりますと、今度は、収入部分の区分というのがはっきりしてこない。一体、どこの部分を本来特別会計にすべきかということを毎年毎年考えなきゃいけないということになりますので、これはなかなかとりにくい制度ではないかなと思います。

 お気持ちは、コンピューターということで負担させているんですから、できるだけコンピューターに特化したような形でわかりやすいようにせよという御趣旨だと思いますので、私どもも、それは十分今後とも、利用者の方々に、皆さんのお支払いになっている手数料のうち、こういう形でコンピューター化がなし遂げられているんだよということを十分説明する責任は負っているんだなということを改めて自覚している次第でございます。

高山委員 これはちょっと大臣に伺いたいんですけれども、今、局長が、そういうコンピューター化のところだけはっきりしたような手数料の取り方という考え方もあるにはあるけれども、逆にややこしくなるからとらなかったというような話をしましたけれども、だって、さっき大臣が言いましたように、コンピューター化が平成二十一年には終わる、そうしたら手数料をがっと下げるわけですよね。さっき、下げていただけるということも断言していましたけれども。

 これは、下げたら、ではその下げた部分がまさにコンピューター化の部分であるんじゃないんですか。それで、今千円なのが例えば三百円にまた戻った、そうしたら、ああ、では、三百円が手数料なんだなと。しかも、コンピューター化したから人件費の部分が随分節減できるということが多分裏にあるだろうから、貨幣価値なんかも考えると、昔と同じ三百円というと、随分これは本当は安くなっていることにはなるんでしょうけれども。

 そうしたら、ずばりその七百円の部分がコンピューター化の経費なんじゃないですか。物すごくはっきりしていると思いますよ。取るときに、七百円と三百円別々に取れと言っているんじゃないですよ。一緒に取ったっていいんですよ。その中の七百円はコンピューター化の経費ですよとはっきりしていればいいけれども、何か全部を一緒にしちゃって、さらに一般会計からも半分足して、だから何か無駄遣いが行われているんじゃないかなということを、後でこれはまた話します。

 これについて、まず、二十一年にコンピューター化が終わったら手数料は絶対下げるということを断言していただいて、そういう考えに立てば、残った部分がまさに、今までどおりの出し入れというか、コピーしたりなんなりの人件費なんじゃないんですか。

寺田政府参考人 先ほど、手数料が下げられるような考え方をお示しいたしました。もちろん、これは基本的な考え方でございまして、具体的には、そのときの状況に応じて、財政当局その他関係の部署と御相談の上、具体的に額を決めさせていただきますので、今の時点で必ず下がるという言い方は、それは無理だろうと思います。

 しかし、何度も申しますように、基本的な構図を見れば、それは下がってしかるべきという考え方が合理的であろうということは一般的には言えようということで、先ほどそのような御説明を申し上げたわけでございます。具体的な手続あるいは額というものは、今後決められるべきものであります。

 それからもう一つは、これは私の説明が悪かったのかもしれませんが、コンピューター経費と申しますのは、何もコンピューター化が終わるとゼロになるわけではございません。コンピューターは、大まかに言えば、運用、オペレーションのための経費と、それから移行のための経費があるわけでございます。

 それで、冒頭の説明で申し上げましたように、現在、この移行過程においては、その移行というのは、旧来の登記簿のデータというものの誤りがあればそれを訂正しながら電子データに置きかえていくという作業でございますので、これは相当にコストがかかる作業でございます。現在でも二百億レベルを必要としているわけでございます。これに対して、オペレーションに必要なものは、一たんできましたデータの管理でございますので、基本的には、これはコンピューターの進展というものをもろに反映するはずでございます。

 現に私どもも、たびたびおしかりを受けておりますけれども、昭和五十年代の思想に基づいてできました現在のコンピューターの基本設計というものを平成十五年から見直しをいたしておりまして、その後、新しい、オープンでだれでも、ソフトというものは維持しながらハードというものは置きかえられるような仕組みになるわけでございます。

 そういたしますと、コストは当然、全体に、オペレーションは下がっていくわけでございますけれども、しかし、それ自体はなお登記の事務に必要なコストでございますので、何も、コンピューター化が終われば人件費と建物の費用だけで登記所全体が運営されるわけではない、そこは一つ御理解をいただきたいところでございます。

高山委員 今局長が言いましたように、コンピューター化と言ったけれども、そのコンピューター化の中には、いわゆるコンピューターに本当に移行する作業と、今度はそのメンテナンスの部分があると。

 それで、後で問題にしますけれども、このメンテナンスの部分の方が多いんですよ。コンピューターのレンタル費、サーバーレンタル費に毎年三百五十億近くかかっているわけですから、そのメンテナンスに。毎年ですよ。しかも、その移行費には二百億円しかかけていない。だから、ここが問題だという話は、今時間がなくなってきましたので、次回に譲りますけれども。

 まず、ちょっともう一つ伺いたいのは、収入と支出の間で剰余金が出ているんですけれども、剰余金が出るんだったら手数料を下げたらいいじゃないですか。何でこの剰余金というのは常に出ているんですか、副大臣。

河野副大臣 郵政公社からの印紙収入が二月おくれで入ってまいりますので、運転資金ということで二カ月分、百二十億円はどの時点を切っても必要になります。これは、月末で締めればその部分が剰余金になります。

 それから、これは、三年間の件数を予測して、かかる費用を三年間の件数で予測して手数料を出しておりますので、証明書というのは景気がよくなれば当然ふえるわけですから、おかげさまで景気回復の波に乗って収入がふえております。これは当然、その次のローリングのときには手数料を下げることになります。

 それから、コンピューターにつきましても、今局長から話がありましたように、見直しをして、大分低価格、効率のいいものにしておりますので、その差額分もこの中に含まれて、締めて二百億円の剰余金になっております。

高山委員 ちょっと時間がありませんので、今の剰余金の話はまた次の機会に譲ります。

 大臣に最後に伺いたいのですけれども、これは、ブックレス移行だというようなことで特別会計になりました。それで、今後、二十一年には全部終わるという話が先ほど大臣の答弁の中からも出ましたけれども、その後もこの登記特別会計というのは続くのでしょうか。それとも、二十一年の時点で特別会計としては廃止ということなんでしょうか。

杉浦国務大臣 これは政府部内の検討で廃止することが決まっております。二十二年に廃止ということになっております。

 私、個人的には、そもそも設ける必要もなかったのじゃないのかと思っているぐらいでございまして、必要な経費は予算に組む、収入は適正なものを国庫に納めればいいというぐらいに私個人としては思っておったわけで、この特別会計の話は、やむを得ないというよりも、むしろ当然だと思っております。

高山委員 最後の大臣の個人的な考えと私も見解が同じですので、ここで矛をおさめて質問を終わります。

石原委員長 次に、保坂展人君。

保坂(展)委員 昨日に質問をいたしました点に引き続いて、まず法務大臣に基本的な見解を伺いたいのですが、例えば、談合等について議論してきているわけですが、法務省は、みずからのことについては、他省庁より厳しい基準あるいは姿勢でこの問題に臨んでいかなければいけない、こういう認識はございますか。

杉浦国務大臣 御指摘のとおり、一言で言うと法の番人でございますから、他省庁と同列よりも、もっと厳しい姿勢で臨まなければならないと思っております。

保坂(展)委員 刑事局長に来ていただいています。

 昨日も答弁いただきましたけれども、今回、防衛施設庁における官製談合事件がございました。官製談合といっても、役所のOBの方がかなり業者を束ねたり仕切ったりというようなことで、大きな役割を果たしていたと報道等で聞いています。この官製談合の問題点、端的に、どういうところにあるんでしょうか。

大林政府参考人 今お尋ねの個別具体的な事件にかかわる部分というのは、ちょっと私の方で申し上げることはできないんですが、いわゆる官製談合事件につきましては、発注を適正に行うべき立場にある公務員である者が関与しているということに特色がありまして、そういう身分等につきましては、検察官が処分等を決する上でやはり重要な判断要素の一つになるのではないか、このように考えております。

保坂(展)委員 今度は官房長に伺います。

 一千万円以上の工事で一般競争入札に付されたもの、平成十四年度の中で四件の工事があり、そのうち三件が不落随契、つまり、入札が調わず随意契約に転じたということでございます。四十九億のうち四十二億ほど、金額でいって八六%、件数において七五%、非常に高いわけですけれども、これは当初一個、二度目に二個、三度目に三個、つまり、何度か資料を出していただいていますけれども、結果として四件中三件というふうになったわけですが、不落随契か一般競争入札で落札をしたのかというのは、見分けにくいものなんでしょうか。よろしいですか。

小津政府参考人 その工事だけをとりましたら、見分けにくいものではございません。たくさんの工事のいろいろな数字を整理しております過程で、こちらの時間的な制約の中での対応が不十分であったということにつきましては、改めておわび申し上げます。

保坂(展)委員 いろいろ調べてみますと、国土交通省では、二〇〇二年、平成十四年、この年でございますね、不落随契が二千六百一件、一七%。これは、国土交通省の港湾を除く工事、二千六百一件も不落随契があったということで、これは多過ぎるという議論が始まったということを、官房長、御存じだったでしょうか。

 法務省でもこの不落随契の原則廃止、厳正化に向けて踏み込むというニュースも見られるんですが、その辺の認識はいかがでしょう。

小津政府参考人 お答え申し上げます。

 不落随契をこれまで行ってきた理由はいろいろあるわけでございますが、国土交通省における不落随契のパーセントというものを私ども目にいたしましたので、手元の資料で法務省発注工事の一定期間につきまして計算してみましたところ、それよりも数%高い数字、二〇%を少し超えるぐらいの数字のようであるという状況だけ把握しました。

 いずれにいたしましても、私どももこれまで、もちろん法令に基づく手続でございますし、また、入札が不調に終わった場合にもう一度入札をやり直すということになりますと、どうしてもそれだけ工事の開始がおくれてしまう等々の理由から、この不落随契をやってきたわけでございますけれども、他方、いろいろな観点から、できる限り一般競争入札を行うべきであるということで、法務省といたしましても、平成十八年度から、原則として不落随契を行うことなく、一般競争入札で行いたいと考えているところでございます。

保坂(展)委員 この不落随契となった工事、これは大阪少年鑑別所と東京入管第二庁舎の工事三件なんですが、この金額の大きな大阪少年鑑別所と東京入管の平成十四年度における不落随契になった建築工事のそれぞれの総額は幾らだったのか。

小津政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、東京入国管理局第二分庁舎新営建築工事ということだと思いますが、請負金額の合計は二十五億九百五十万円でございます。次に、大阪少年鑑別所新営建築工事でございますけれども、請負金額合計額は二十億六千百六十七万五千円でございます。

保坂(展)委員 大臣に伺います。

 要するに、入札をするはずだったけれども、結果として入札じゃなくて随契で、その後、追加工事とかで幾つかまとまって、二十五億と二十億というのは、結果として随意で行われている。

 この不落随契の問題点として、落札率が高どまりしてしまうんじゃないか、不落随契をするための見積もり合わせが結果として予定価格を探ることにつながってしまうのではないかとか、あるいは競争の形骸化ということで国民から見られてしまうという指摘があるんですが、大臣の見解を伺います。

杉浦国務大臣 一般的に世間からそういう御指摘が出るのは理解できないわけではございません。

 ただ、法務省の場合、私、いろいろ聞いてみたんですが、落札がない場合というのは、予定価格を非常に厳しく査定して設定した関係上、そこまで入れる企業がないというような事情の場合が多いようでございまして、先ほど官房長が申しましたように、これからは国土交通省のあれも見ながら、あり方、いわゆる不落随契がないような方向で検討してまいりたいと思っております。

保坂(展)委員 いや、国土交通省におくれをとるのではなくて、むしろ先にやってほしいということを先ほどから申し上げているんですが、新聞紙面で探して、いろいろちょっと探っておりましたら、これは二〇〇三年十月二日の中日新聞でしょうか、名古屋法務局の二人の職員が入札不正、こういう記事があります。

 これは、二〇〇一年の法務局の庁舎補修工事で、指名競争入札に絡んで、指名業者の選定に特定の建設会社を関与させたということで、会計課係長、係員二人が、A社ならA社を指名業者へというふうに推薦した。この指名業者にA社がなって、入札はA社の推薦した四社など計十社で行われて、その業者が結局、七百八十五万円で落札をした。さらに、その係員の方はA社に、弟の建設会社を機会があれば使ってほしいと働きかけて、別の工事でA社は弟の会社を使った。

 法務局としては、談合を助長するおそれもあり、公務員としてふさわしくない、ただし、実害がなかったため戒告である。これは本当ですか。

寺田政府参考人 基本的には委員御指摘のとおりでございます。

 名古屋法務局の会計課の職員、今おっしゃいました係長と係員でございますが、平成十三年に名古屋法務局の昭和出張所の庁舎の屋根と外壁の補修工事の競争入札を行うに当たりまして、工事金額についての見積もりを依頼した特定の業者からその指名業者を推薦させるというようなことをいたしまして、その選定に関与させた事案である、こういうことでございます。

 こうした行為は入札の公平を害するものでありまして、平成十五年の三月三十一日付で、名古屋法務局長において、この二名を戒告処分、管理者であります会計課長を厳重注意処分といたしております。

 この事案の発生は、御指摘のとおり、入札手続の透明性、公平性を阻害して、法務行政に対する信頼を失わせるものでございまして、大変に遺憾に思っている次第でございます。今後、このような入札手続を含めた会計事務処理における検査体制の確保を図るなど、再発防止には万全を期するところで考えてまいりたいと思っております。

保坂(展)委員 実害がなかったから戒告処分だというのは、いかがなものかというふうに思いますね。

 いろいろ、工事件数も少ないし、落札率が高いからといって、それがイコール問題だということじゃないという答弁をずっといただいてきましたけれども、ここで官房長にもう一点聞きます。

 平成十五年度の一般競争入札の中で、松江刑務所の八億二千七百四十万円、九九・六八%、これは熊谷組が落としています。徳島刑務所、七億七千四百二十一万円、九九・六八%、これを大成建設が落としています。平成十六年三月二十二日、同日に行われた入札で、別々の工事。九九・六八%という四けたの数字がぴったり合ってしまう。これはどういうことですか。

小津政府参考人 委員から御指摘を受けまして私どもも見てみたわけでございますが、さらに細かく申しますと、松江刑務所の落札率が九九・六七六%、徳島刑務所の工事の落札率が九九・六八一%でございました。もちろん、極めて近接した数字が同じ日の入札であったということで、率直なところ驚いたわけでございますが、もちろん、それぞれの入札手続相互に関係はございませんで、これも偶然の一致と言うしかないと現時点では認識しております。

保坂(展)委員 偶然が多いんですよね。

 では、続けて聞きますが、この平成十五年度一般競争入札のリストの中に、今申し上げた二工事がございます、松江刑務所、徳島刑務所。ところが、入札日は平成十六年の三月二十二日になっているんですね。翌年なんですね。これはなぜでしょうか。

小津政府参考人 ちょっと今手元の資料を確認しておりますので、しばらくお待ちいただきたい。

石原委員長 どのぐらいかかりますか。すぐ出ますか。どうですか。

小津政府参考人 後ほど、調べまして御報告あるいは御答弁させていただきます。

保坂(展)委員 ちょっと大臣、よろしいでしょうか。

 かなり大変な思いで、誠実に対応していただいたと思います。この資料というのは、二〇〇〇年以降、一千万円以上の工事について、落札率、入札開始日、その状況、予定価格、請負価格、出してほしいということで、実は試行錯誤がありまして、これは完成版ですということで、しっかり精査をして持ってきていただいたはずなんですね。平成十五年度の一般競争入札の欄に翌年のがあるというのは、これはちょっと、まずわかりません。

 と同時に、先ほどの愛知の法務局の話ですね。これについて、戒告処分。内容は、確かに金額は少ない。しかし、実害はないといっても、実際にそこの札を落としているわけです。弟の建設会社を使ってくれと言った係員の会社が下請に入っていたんですね。非常に小さいかもしれない。しかし、これは許されないことだ。いかがですか。まず大臣に聞いてから。

杉浦国務大臣 名古屋法務局の件は、先生が御質問なさるということで知ったんですが、甚だ遺憾なことだと思います。処分も済んでおるということですけれども、またよく調べてみたいと思っております。

 前半の部分については官房長から。先生の御要望に応じて作成したようなんですが、もし御疑問の点があれば、委員会でも直接でも、おっしゃっていただければ誠実に対応させていただきます。

小津政府参考人 委員御指摘の資料、すぐ手元にございませんで、大変失礼いたしました。

 御指摘は、松江刑務所と徳島刑務所の入札日が十六年三月二十二日になっているではないかということであろうと思います。この表は平成十五年度一般競争入札でございますので、十六年三月も十五年度、そういう整理でございます。失礼いたしました。

保坂(展)委員 それは私の間違いでした。年度だということで、わかりました。

 最後に、大臣に、私がずっと取り組んでおります袴田巌さんのことについて、一言だけ伺いたいと思うんですけれども、彼は冤罪を訴えています。そして、有名なプロボクサー事件で、プロボクシング界も挙げて応援をしたということで知られている方ですね。

 この方は、もう十年ほど、ほとんど面会を拒絶されている。そして、私、二〇〇三年に、お姉さん、弁護士さんと三十分だけお会いすることができましたけれども、大変、自己認識というか、自分がどこにいるのか、拘禁反応が強くて、精神の状態もよくない、こういう状態でございました。

 その袴田さんに対して成年後見制度を適用する、こういうことで申請がなされています。成年後見制度を申請された裁判所の側は、本人を鑑定しなければならないわけですね。ところが、面会しても本人が出てこないものですから、鑑定ができない。鑑定不能で門前払いになりかねないということで、これは袴田弁護団の方から要請がありまして、どうにかならないだろうかと。なかなかどうにもならない状態で推移をしております。

 もともと不動産の処分等で当事者能力を喪失した人に対する成年後見制度は、確定死刑囚で再審請求中の袴田巌さんですが、除外されるわけはないので、この点について、知恵を出して御努力をいただけないか。少なくとも、鑑定をするためには本人に会わなければいけません。医療記録だけで裁判所に鑑定書を出すというのは難しいでしょう。そういう意味で、法務大臣、努力していただけないでしょうか。

杉浦国務大臣 正直申して、私、詳しく事案内容を存じ上げておりません。今いろいろ用意してもらったんですが、よくわからないところもございますので、勉強させていただきます。

保坂(展)委員 矯正局長はいらっしゃいますか。補足的に、何か努力できることがあったら答弁していただけますか。

小貫政府参考人 いろいろ御指摘を受けて、今検討しているところでございます。ただ、これは一つの司法制度の遂行という面もございますので、なお一層検討させていただきたい、このように考えております。

保坂(展)委員 引き続き議論をさせていただきたいと思います。よろしく。

 終わります。

     ――――◇―――――

石原委員長 次に、内閣提出、出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。杉浦法務大臣。

    ―――――――――――――

 出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

杉浦国務大臣 出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 国際テロをめぐる情勢には依然として厳しいものがあり、国民の生命と安全を守るため、テロの未然防止対策を不断に見直していかなければならないとの認識に立って、政府は、平成十六年十二月、テロの未然防止に関する行動計画を決定いたしました。この行動計画では、テロの発生を未然に防ぐため、出入国管理及び難民認定法の改正案を平成十八年の通常国会、この国会に提出することとされています。

 また、出入国管理行政に対しては、問題のない特定の外国人の利便性を高めるために出入国手続の簡素化、迅速化を図ること、及び退去強制の迅速、円滑化を図ることが求められています。

 さらに、政府は、構造改革特別区域において講じられている外国人研究者受け入れ促進事業及び外国人情報処理技術者受け入れ促進事業等を全国において実施するための措置を平成十七年度中にとることを決定しております。

 この法律案は、以上に述べた情勢にかんがみ、所要の法整備を図るため、出入国管理及び難民認定法の一部を改正するものでございます。

 この法律案の要点を申し上げます。

 第一は、テロの未然防止のための規定の整備でございます。これは、出入国の公正な管理を図り、ひいては国民の生命と安全を守るため、上陸審査時に特別永住者等を除く外国人に指紋等の個人識別情報の提供を義務づけ、テロリストの入国等の規制を適切に行うための退去強制事由の整備等を行い、本邦に入る船舶等の長に、船舶等の乗員及び乗客に係る氏名その他の事項の事前報告を義務づけるものでございます。

 第二は、出入国管理の一層の円滑化のための措置でございます。この関係では、まず、上陸審査手続を簡素化、迅速化するため、一定の要件に該当する特別永住者等の外国人が、指紋等の個人識別情報を利用した自動化ゲートを通過することを可能といたします。また、退去強制の迅速、円滑化を図るため、退去強制令書の発付を受けた者のうち自費出国の許可を受けた者については、本国送還の原則を緩和して本国以外の受け入れ国への送還を可能といたします。

 第三は、構造改革特別区域法に規定されている特例措置等を全国において実施するための規定の整備でございます。これは、構造改革特別区域法において在留資格に関する特例措置として規定されている特定研究活動及び特定情報処理活動等、並びにこれに準ずる外国人教授の教育活動等を、出入国管理及び難民認定法の在留資格として規定するものでございます。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。

 ありがとうございました。

石原委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る十七日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十一分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.