衆議院

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第23号 平成18年5月10日(水曜日)

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平成十八年五月十日(水曜日)

    午前九時三十一分開議

 出席委員

   委員長 石原 伸晃君 

   理事 倉田 雅年君 理事 棚橋 泰文君

   理事 西川 公也君 理事 早川 忠孝君

   理事 松島みどり君 理事 高山 智司君

   理事 平岡 秀夫君 理事 漆原 良夫君

      赤池 誠章君    稲田 朋美君

      近江屋信広君    太田 誠一君

      近藤 基彦君    笹川  堯君

      柴山 昌彦君    下村 博文君

      平沢 勝栄君    三ッ林隆志君

      水野 賢一君    森山 眞弓君

      矢野 隆司君    保岡 興治君

      柳本 卓治君    石関 貴史君

      枝野 幸男君    川内 博史君

      河村たかし君    小宮山泰子君

      細川 律夫君    伊藤  渉君

      保坂 展人君    滝   実君

      今村 雅弘君    山口 俊一君

    …………………………………

   法務大臣         杉浦 正健君

   法務副大臣        河野 太郎君

   法務大臣政務官      三ッ林隆志君

   政府参考人

   (法務省大臣官房長)   小津 博司君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    大林  宏君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 辻   優君

   法務委員会専門員     小菅 修一君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十日

 辞任         補欠選任

  柳澤 伯夫君     近藤 基彦君

  細川 律夫君     川内 博史君

同日

 辞任         補欠選任

  近藤 基彦君     柳澤 伯夫君

  川内 博史君     細川 律夫君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案(内閣提出、第百六十三回国会閣法第二二号)


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     ――――◇―――――

石原委員長 これより会議を開きます。

 第百六十三回国会、内閣提出、犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案並びにこれに対する早川忠孝君外二名提出の修正案及び平岡秀夫君外二名提出の修正案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として法務省大臣官房長小津博司君、法務省刑事局長大林宏君、外務省大臣官房参事官辻優君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石原委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

石原委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。倉田雅年君。

倉田委員 自由民主党の倉田雅年でございます。

 前回、私は、四月二十八日でございましたけれども、民主党案につきまして質問をいたしました。しかし、時間の不足もあり、質問し残した点も幾つかありますし、また、この法案、特に共謀罪の制定について危惧の念を抱いておられるマスコミとか日弁連あるいは労働団体、市民団体などの皆さんに法案の意義を真正面からしっかり理解していただくため、あえて再度、主として民主党案に対しまして質問をさせていただきます。

 ガリレオ・ガリレイというのは中世で有名な名前でございますが、なぜ裁判にかけられたのかということであります。これは宗教裁判ではありましたが、当時は、内心の考えが表明されただけでその内心の考え自体が処罰の対象となり得た、そういう時代であったわけでございます。宗教裁判であれ、刑事裁判であれ、同様であったのでございます。

 これに対して、近代刑法においては、考えることの自由、思想の自由が基本的人権とされるに至ったがゆえに、内心の考えないしはその表明だけでは原則的には罰せられない、実行された行為、しかも、罪刑法定主義に基づいて構成要件に該当する行為だけが罰せられる、こういうことが原則になっておりまして、内心の考えの表明の合致、つまり共謀が処罰対象となるのは非常に例が少ないということでございます。

 もっとも、例が少ないとはいっても、日本にも二十一件でございましたか、ございます。また、イギリスには共謀罪というのが前からございますし、また、大陸法では、犯罪集団に参加をすること、参加罪、こういうものがある。つまり、必要に応じては共謀罪も、共謀という段階で罰せられることも必要に応じてはあるんだ、このことも銘記をすべきではないかな、こう思うわけでございます。

 ところで、近年、とみに国境を越える人々の交流が日常化して、しかも、それが全世界的な状況となってくるのに伴って、犯罪も国境を越える国際性を帯びるところとなってきましたため、被害が大きい国際的な犯罪組織による重要犯罪を計画段階で未然に防止するために、これを、内心の考えの表明の合致、すなわち共謀を対象とする処罰を各国で共通的に設けて、各国共同して国民の安全を確保する道を開く、こういう必要性が出てきているわけでございます。と同時に、一定の法定刑以上の犯罪については、各国共通して共謀段階で処罰できるようにすることによって、共同して実質的にも国際犯罪を防止しよう、こういう道を開く必要が出てきているわけでございます。

 そこで、民主党の提案者にお聞きしたいんですが、近年、今言いましたように、国境を越えた人々の交流が全世界的に、かつ日常的になっていることに伴って、犯罪も国際化してきているわけでございます。中でも、犯罪組織による重大な被害を伴う犯罪については各国が協力してその未然防止に当たろうという目的で、国際組織犯罪防止条約、これが国連で採択されたわけでございます。民主党も、その目的に賛成して、平成十五年五月に条約の締結に賛成されたのではないでしょうか。簡潔にお答え願います。

平岡委員 お答え申し上げます。

 先生御指摘のように、民主党におきましても、暴力団などの組織的犯罪集団による犯罪を防止するための対策ということは講じなければいけないという考え方に立っておりまして、先生御指摘ありました国際組織犯罪防止条約につきましても、この条約の趣旨、目的には異論はないということでございまして、平成十五年の条約の締結に関する国会承認について賛成をさせていただいております。

 ただ、この賛成ということも、前にもちょっと議論がありましたけれども、国会における議決の方式としては留保つき賛成というのがあるわけではないということで、賛成なのか反対なのかというそういう位置づけの中で。ただ、この条約が持っている国内法制化の問題については、四月二十三日の衆議院の外務委員会で、同僚議員の方からも指摘をさせていただいておりまして、こういった共謀罪というものを国内法制化するに当たっては非常に謙抑的にやらなければいけないという点については指摘させていただいているということでございます。

倉田委員 引き続きお聞きをいたしますけれども、民主党提案者にお答えいただきたい。

 各国が協力して未然防止に当たろう、こういうことでございますが、この未然防止の方法として、一定以上の法定刑の定めのある重い犯罪については計画段階で処罰しよう、すなわち共謀罪ですね、こういうものがこの条約の中に含まれることになっていたわけですが、この共謀罪を犯罪とするということ自体についても、条約を賛成されたということは民主党さんも賛成されたのではないか。イエス、ノーで簡単にお答え願いたい。

平岡委員 イエス、ノーで答えるというほど単純な問題でもないので、少し説明させていただきたいと思います。

 そもそも、共謀罪と類似の、例えば陰謀罪とかそういうものが我が国の法体系の中にあることは、先ほど先生から御指摘されたとおりでありますけれども、二十一ある中で、その多くはギャンブルに関する、公正な競走を妨げるということを目的としたようなことを陰謀する、計画するというようなことが多くあるわけですね。それ以外について言えば、本当に刑法でも二つか三つとかという非常に限られたものでしかない。そういう原則に立ってみて、私たちとして考えてみれば、共謀罪という、内面の意思が発露された段階で、そこを犯罪としていくということについては、基本的に反対です。

 基本的に反対というところからスタートして、しかしながら、国際的ないろいろな協力の問題とかいうようなことも踏まえつつ、国内法の基本原則に沿って、ぎりぎりここまでなら何とか認めることもやむを得ないのではないか、そういう視点に立って今回の共謀罪を考えていきたいというスタンスに立っているということで御説明申し上げたいと思います。

倉田委員 ぎりぎり限定した上で共謀罪もやむを得ない、このような御意見と伺いました。

 そこで、さらに民主党さんにお聞きしたいんですが、民主党の修正案では、政府案や与党修正案が長期四年以上の犯罪についての共謀を処罰することにしているのに対しまして、長期五年を超える犯罪に縮小しようとしていらっしゃる。また、処罰条件を、実行に資する行為から予備行為の段階にまで進めた段階のものにしようではないか、こういうぐあいになさっているわけでございます。

 しかしながら、処罰の対象自体は政府案や与党修正案と同じく共謀そのものであるということ、これは間違いないでしょうね。これはイエス、ノーでお答えできると思います。よろしくお願いします。

平岡委員 共謀そのものであることは間違いがありませんけれども、では、その共謀はだれでも対象になるかというと、そうじゃないわけですね。どういう状況でも処罰の対象になるかというと、そうでもない。

 そういう意味においては、共謀そのものは確かに犯罪ということでの対象になっているわけでありますけれども、先ほど申し上げましたように非常に謙抑的に我々は物事を考えておりますので、先ほど先生から御指摘ありましたように、処罰できる状況というものについてはかなり限定して、犯罪組織性の問題とか国際性の問題であるとか、あるいは重大な犯罪というものが一体どの程度の量のものであるのかとか、あるいは合意されたものをさらに実行していくという段階の中で、合意を推進する行為というふうに条約に書いてありますけれども、それについては一体どういうものまでが含まれるのか、こういう点についてはかなり吟味をさせていただいて考えているということが、ここが私はポイントだろうというふうに思っています。

倉田委員 謙抑的にというのは、与党も同じでございます。

 そこで、問題は、政府案、与党修正案並びに民主党修正案ともに共謀を処罰の対象とするということ、この点は同じなわけですよ。それについて、いかに、全面的な国際交流時代が到来している中で、重大な犯罪から国民の生活の安全を守るという目的を達しつつ、他方で、マスコミとか弁護士会を初めとする国民の一部が抱かれているような、共謀という他からは見えにくい対象が捜査の対象ともなることによって日常の市民生活の心の平穏が害されるおそれはないか、この懸念を払拭することが、平岡先生おっしゃったように謙抑的であるということに通ずるのではないか、こう思うわけでございます。

 しかしながら、条約を前提として、条文上の具体的な、条約の条文上の制約の中で、この懸念を払拭する条文を日本の法としてつくることができるか、これが共通の課題ではないかなと私は思うわけです。

 そこで、まず、非常に基本的な事柄から確認しておきたいんですが、法務当局にお答え願いたいと思います。

 共謀罪について、報道等においては、目くばせをしただけで共謀罪が成立するなんという報道もあるんですね。共謀の意義や組織性の要件からして、実際問題としてそのようなことは絶対ないと思うんですけれども、この点につきまして、法務当局としてしっかりしたお答えを願いたい。

大林政府参考人 お答えいたします。

 まず、現実の問題として、目くばせをしたということだけで法案の共謀罪が成立するということは考えられません。

 すなわち、法案の共謀罪が成立するためには、漠然とした相談では足りず、これから実行しようという犯罪の目的、対象、手段、実行に至るまでの手順等について具体的かつ現実的な合意がなされなければなりません。また、法案の共謀罪は、重大な犯罪のうち、厳格な組織性の要件、すなわち、団体の活動として当該犯罪行為を実行するための組織により行われるもの等の要件を満たすものに限って成立しますので、暴力団の殺傷事犯や、いわゆる組織ぐるみによる振り込め詐欺のように、犯罪を実行するための組織の構成や指揮命令の方法、各人の役割分担等についても具体的かつ現実的な合意がなされなければなりません。

 したがって、このような犯罪の遂行に向けた具体的かつ現実的な合意が、目くばせという行為だけによって行われるということは考えられないところでございます。

倉田委員 引き続いて法務当局にお答え願いますが、報道等においては、共謀罪につきまして、共謀した後に思いとどまって実行を取りやめても処罰されてしまうのではないか、こういう疑念も出されているわけでございます。

 処罰条件が整わなければ処罰されるはずがないんですけれども、そのように考えていいのか。もうイエス、ノーで答えてください、時間がありません。

大林政府参考人 共謀があったと言えるためには、今申し上げたとおり、具体的かつ現実的な合意がなされなければならないということでございます。ですから、途中でやめたというのは、いろいろな証拠関係があると思います。それが途中で自然的に何もなくなってしまったというようなケースだって、これはそもそも共謀と言えるかどうかという問題があろうかと思います。

 また、仮に犯罪の実行について具体的かつ現実的な行為がなされた場合であっても、その実行までの間に捜査機関に自首したときは必ず刑が減刑または免除されることになっていますし、または与党の修正案によれば、共謀した後に、共謀に係る犯罪の実行に資する行為が行われなければ処罰されませんから、そのような行為が行われるまでに翻意して実行を取りやめた場合には処罰されることはないということになろうかと思います。

倉田委員 与党の提案者に少しお聞きします。

 前回の審議で、与党の修正案のうち「団体の活動として、」という要件につきまして、ここに言う「団体」は、その共同の目的が重大な犯罪等を実行することにある団体だけに限ることとした趣旨や、それから修正前との違いが質問され、明確に答弁をいただきました。

 この修正案の要件について、正当な目的を有する団体であっても共謀罪の対象になるのではないかという懸念をしている方々がいるわけでございますが、条文の解釈に当たってはその立法趣旨というものも十分考慮されなければならないところです。

 そこで、明確にしておきたいんですが、与党の修正案提出者として、一般の会社、労働組合、NPO、NGO、官公庁など、あるいはその他種々の団体でございますが、構成員の継続的な結びつきの基礎になっている目的が正当な活動を行うことにある団体については、共謀罪の対象にはまず頭からならないだろうと私は思うんですが、その辺のことを明確に再度お答え願いたい。

早川委員 まず、結論から申し上げますと、委員が指摘されましたとおり、いかなる種類、名称の団体であれ、その構成員の継続的な結合関係の基礎になっている目的が正当な活動を行うことにある団体につきましては、私どもが提案しております修正案によれば、およそ組織的な犯罪の共謀罪の対象とはならない。このことを改めて断言させていただきます。

 これまでの審議において御説明をしてまいりましたけれども、そもそも、今回の与党修正案は、法案が定めます組織的な犯罪の共謀罪が成立する範囲をさらに限定し、普通に活動している一般の団体の活動についてはおよそ対象にはならないということを法文上も明確にする趣旨から、その共同の目的が重大な犯罪等を実行することにある団体に係る活動に限る旨の文言を政府案に加えることによりまして、犯罪組織と言えるような団体の活動として行われるものである場合に限って組織的な犯罪の共謀罪の対象となり得ることを条文上もはっきりとさせたものであります。

 そして、この共同の目的とは、構成員の継続的な結合関係を基礎づけている、その根本となる目的をいうことから、御指摘のような、構成員の継続的な結びつきの基礎になっている目的が正当な活動を行うことにある団体は、結局は、その共同の目的が正当な活動を行うことにある団体にほかならないことになります。修正後の組織的な犯罪の共謀罪の成立要件であります、その共同の目的が重大な犯罪等を実行することにある団体には当然に当たらないことになるのでありまして、このような団体については、それがいかなる種類、名称のものであれ、組織的な犯罪の共謀罪の対象とはなり得ません。

 以上であります。

倉田委員 明快なお答えをありがとうございました。

 その組織的な犯罪集団ということの定義の問題があるんですけれども、今回の民主党の修正案では、組織的犯罪集団の定義につきまして、一定の犯罪を実行することを主たる目的または活動とする団体と民主党さんの案は決めているんですね。そうしますと、犯罪実行目的が認められない団体でも、一定の犯罪を実行することが主たる活動ということになっておれば、そのような団体も含まれてしまう。こういう点で与党の修正案よりも団体の定義の範囲がかなり広くなるのではないか、こう思うんですが、いかがでしょうか。

平岡委員 まず与党案について言うと、共同の目的という言葉を使って、その共同というのは何についての共同なのかというのが私ははっきりしていないと思うんですよね。

 つまり、我々、今から目的ということを言おうとしていますけれども、もともとの解説書では、共同の目的というのは、「結合体の構成員が共通して有し、その達成又は保持のために構成員が結合している目的」というふうに組織的犯罪処罰法の解説書の中で書いてあります。先ほど与党修正案提案者が、継続的結合関係の基礎となっている目的が共同の目的なんだ、こういうふうに言われておりましたけれども、そこはどこにも、その継続的結合関係の基礎となっている目的という言葉はどこにもあらわれていない、勝手にそうやって思い込んでいるだけということでありますし、共同の目的というときの共同というのは、むしろ多数人が共同して持っている目的があって団体というのができるということでありますから、先ほども明確にお答えをされたというふうに質問者が言われましたけれども、全然明確になっていない。むしろ、曲解しつつ言葉を違えて言っているということであって、全然明確になっていないというふうに私は思っております。

 そこで、御指摘の民主党案についてでありますけれども、まず、主たる目的という場合の目的というのは、基本的には、一般に法令用語において用いられている場合の目的と同趣旨の意味内容のものでありまして、当該団体の本来企図している業務の範囲を意味するものと考えております。そして、これに対して、主たる活動という場合の活動というのは、そのような目的のもとにおいて当該団体が実際に行っている行為をとらえたものということであります。すなわち、目的または活動という表現をとることによりまして、その当該団体の本来企図している業務及び現に行っている行為というものを実態に即してとらえようということで考えたものであります。

 そのような理解に立って、民主党の修正案では、重大犯罪を実行することを主たる目的または活動、この場合の活動は主たる活動ということの意味ですけれども、とする組織的犯罪集団に限定することによって、その本来企図した業務の大半、あるいは現に行っている行為を分量的に観察した場合の大半が重大犯罪行為である場合に限って共謀罪の対象にしようとしたということでございます。

 このような法形式をとっている国としては、国際的組織犯罪防止条約を締結しているノルウェーにおいても、組織犯罪集団については「三人以上の者の組織的な集団で、その主たる目的が三年以上の期間の自由刑で処罰され得る行為を行うことであるもの又はその活動が主としてそのような行為を行うことであるもの」というふうに定義しているということでございますので、条約上の問題もないと思いますし、先ほど言われた概念からいえば、与党の話については私も質問させてもらいましたけれども、共同の目的というものがたった一つならまだしも、幾つかある中で、その中の一つに例えば重大な犯罪を行うことが含まれているというような場合はどうするのか、あるいは、目的には掲げていないけれども、実際行っている活動の中に重大な犯罪がある場合は一体どうなるのか、こういう点については条文上もほとんどわからないという状態に陥っているというふうに思っております。

 そういう意味で、我々の表現について言えば、そこのところを、先ほど申し上げましたように、本来企図した業務の大半、あるいは現に行っている行為を分量的に観察した場合の大半が重大な犯罪行為である場合に限って対象とするということで明確にさせていただいたところでございます。

倉田委員 民主党のお答えでは、ノルウェーの規定を参考にしたとおっしゃるんですね。ところで、そのノルウェーなんですけれども、「三人以上の者の組織的な集団で、その主たる目的が三年以上の期間の自由刑で処罰され得る行為を行うことであるもの又はその活動が主としてそのような行為を行うことであるもの」をいう、ノルウェーは犯罪集団をそういうふうに規定しているんですね。

 つまり、ノルウェーのは条約よりもはるかに広いんですよ。期間の方も三年以上ということであります。そして、条約よりもさらに、条約は「目的」ということでやっているんですけれども、「又はその活動が主として」と、これも条約よりも広いんですよ。ということは、せっかく民主党さんが対象を絞ろうとなさっている意図に反して、このノルウェーの規定を持ってきちゃったということは、逆に広くなっているんじゃないかと私は思うわけでございます。

 ちなみに、条約の方ですけれども、犯罪集団の定義として「一又は二以上の重大な犯罪又はこの条約に従って定められる犯罪を行うことを目的として一体として行動するもの」これは条約の二条なんですけれども、そんなぐあいに規定しておりますよ。すなわち、条約上は重大な犯罪等を実行することを目的とする団体だけに限定しているんですね。もっと言えば、重大な犯罪等を実行する活動を行っている団体というのは条約上は対象になっていない。つまり、民主党案の方が条約よりも対象範囲が広い、そのように考えるわけです。

 そこで、質問していきますけれども、一定の犯罪を実行することを主たる活動とする団体を共謀罪の対象とする、つまり、活動ということを入れることによって、どのような目的で結成された団体であってもこれに当たることになってしまう。つまり、正当な目的で結成された会社であろうと市民団体であろうと、一定の犯罪を実行することを主たる活動としている以上は適用対象になってしまう。これはもう与党案よりもはるかに危険な案文ではないかと思いますが、いかがでしょうか。

平岡委員 この点については、この委員会でもかなり議論をされてきたところであります。正当に誕生した、例えば会社とかあるいは団体というものが、だんだんやっていることが重大な犯罪を行うようなことになってしまったものについてどうするのかということについては、政府の答弁では、総合的な判断でやっていくんだという答弁にしかなっていないということであります。

 そういうような状況も踏まえまして、確かに、委員の御指摘のとおり、団体が当初正当な目的で結成されたとしても、その団体の性質が一変して、その主たる活動が重大な犯罪等を実行することにある団体ということになれば、共謀罪の適用対象とされるというふうにしています。

 ただ、先ほども申し上げましたように、ここは主たる活動というものが一体どういうものなのかというところが大事だろうと思いますけれども、民主党修正案では、正当な目的で結成された団体が共謀罪の適用対象とされる状況というのは、その主たる活動が重大な犯罪等を実行することにあると認められる場合、すなわち、現に行っている行為を分量的に換算した場合の大半が重大犯罪行為である場合でなければならないという形で、正当に結成された団体が容易に共謀罪の適用対象とされてしまうということを明文上も限定するということになっています。

 逆に言うと、与党の、共同の目的が重大な犯罪行為をすることにある団体というのは、この目的というものが、先ほど与党の修正案の方が言われたようなことにはなっていないんですよね。なっていないところでそういう表現をとってしまえば、幾つかある中での目的の中にそういうものが含まれていれば、当然対象になる。その団体というのがいかに正当なことをずっとやっていても、その目的の中に一つの重大な犯罪を行うというようなことが行われているならばそれが対象になってしまうという意味においては、私は、これはほとんど制約はできていないんじゃないかというふうに思います。

倉田委員 いずれにせよ、私は、主たる活動という言葉があることによって、民主党案の方が、活動という要素を持ってくることによって、目的だけに絞る与党案より広くなる懸念をどうも禁じ得ない、そう思います。

 まだまだたくさんあるんですけれども、時間が来てしまいましたので、これで質問を終了させていただきます。

石原委員長 次に、川内博史君。

川内委員 おはようございます。民主党の川内博史と申します。

 大臣、私も、暴力団やあるいはテロ集団など国際的かつ組織的な犯罪集団による重大な犯罪行為に対処するために、我が国も国際組織犯罪防止条約を締結され、国内法整備を行っていくという方針あるいは趣旨というものに関しては、反対をするものではないわけであります。

 しかし、それはあくまでも暴力団やあるいはテロリスト集団などの国際的かつ組織的犯罪集団の重大な犯罪行為にのみ対処するべきものであって、間違っても我が国の、これまでこの委員会でも議論をされてきたように、刑事法の原則を崩すような、一般の団体あるいは一般市民の自由な活動あるいは表現の自由というものを規制するものであっては絶対にならないというふうに思います。このことは、政府の皆さんも、あるいは与党の皆さんも、そして私ども野党も、共通の認識である、ここまでは共通だというふうに思っております。

 その観点から、きょうは、委員長や与野党の理事の先生方にお許しをいただいて、幾つかの質問をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、与党の修正案提出者にお伺いをさせていただきますが、与党修正案では犯罪目的の団体によるものに限定するということでありますが、これは、政府案と比べて具体的にどのように限定されるのか。例えば、このような団体は政府案では対象となっているかもしれないが与党修正案では対象とはならないんだというような形で、わかりやすい御説明をいただきたいというふうに思います。

漆原委員 政府案におきましても、これまでの法案審議の中で法務省の方から答弁がありましたとおり、普通に活動しております一般の団体の活動が組織的な犯罪の共謀罪の対象となることは、通常は想定しがたいものと考えます。

 ただ、政府案では、条文上、この点が必ずしも明確であるとは言えないというふうに思っております。また、団体の共同の目的それ自体が、重大な犯罪行為等を実行することにあるという限定がなされているわけではございません。このようなことから、政府案に対しては、これまで、一般の労働組合や民間団体の活動がその対象となってしまうのではないかという強い御懸念が当委員会でも示されてきたところでございます。

 そこで、今回の修正案は、このような御懸念なども踏まえて、法案の組織的な犯罪の共謀罪が成立するのは、その共同の目的が重大な犯罪等を実行することにある団体、すなわち犯罪組織と言えるような団体の活動として行われるものについてだけであるということ、そして、その共同の目的が重大な犯罪等を実行することにあるとは認められないような団体については、条文上、組織的な犯罪の共謀罪は成立しないということとしております。

 このように、今回の修正案は、政府案に比べて法案の組織的な犯罪の共謀罪が成立する範囲を条文上より明確にしたとともに、これをさらに限定するということにあるわけでございます。

川内委員 今の御説明を聞かせていただいておりまして、条文上より明確にされたということでありますが、この説明を国民の皆様がお聞きになられて、おお、明確になっている、よくわかったという人は恐らくだれもいないのではないかというふうに思われます。

 では、そもそもなぜこういうわかりにくいことになってしまうのかなということを考えたときに、政府案でもあるいは与党修正案でも、この共謀罪なるものの対象になる犯罪というものが長期四年以上の刑罰のある犯罪ということで、合計六百十九もの犯罪が対象となるわけであります。なぜ六百十九もの犯罪に共謀罪を適用する必要があるのか、なぜ六百十九もの犯罪に共謀罪が適用されてしまうおそれがあるような法律をこの国会がつくらなければならないのかということに、国民の皆さんは大きな疑問を抱いていらっしゃるんだというふうに思うんですね。

 私、ここでちょっと条約の文言について確認をさせていただきたいんですが、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約の第二条、用語の解説のところに、(b)として「「重大な犯罪」とは、長期四年以上の自由を剥奪する刑又はこれより重い刑を科することができる犯罪を構成する行為をいう。」と書いてあります。重大な犯罪とは、長期四年以上の自由を剥奪する刑またはこれより重い刑を科することができる犯罪を構成する行為のすべて、あるいは犯罪を構成するすべての行為をいうとは書いていない、すべてとは書いていない。

 ということで、私は、この重大な犯罪というのは、条約の締約国それぞれに、何を重大な犯罪とするかということについては任されているのではないかというふうに思ったりもするんですが、私は条約については素人なので、条約についてのプロでいらっしゃいます外務省の方に来ていただいておりますから、この重大な犯罪という言葉の定義は、長期四年以上の自由を剥奪する刑またはこれより重い刑を科することができる犯罪を構成するすべての行為をいうというふうに読むのかということを教えていただきたいですし、すべてだとおっしゃるのであれば、これは、聞くところによると、解釈ノートとか、何かいろいろな解説があるそうですから、その根拠もあわせてお示しをいただきたいというふうに思います。

辻政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員から御質問がございました、いわゆる重大な犯罪というものは長期四年以上すべてを含むかどうか、こういう御質問でございます。

 この点につきましては、共謀罪の対象範囲をどういうふうにするかということで、どう理解するかということで、この委員会においても随分御議論をいただいてきたところだと理解してございます。

 今、共謀罪との関係で申し上げますれば、五条におきましては、共謀罪は重大な犯罪を行うことを合意することとされておりまして、重大な犯罪というのは、今委員もおっしゃるとおり、長期四年以上の自由を剥奪する刑またはこれより重い刑を科することができる犯罪を構成する行為、こういうふうにされております。

 したがいまして、この重大な犯罪に該当する犯罪については共謀罪を設けることがこの条約上の義務ということについては、先般来御説明申し上げているとおりでございます。

 この規定におきまして、この重大な犯罪について、その一部の犯罪を除外し得るとされておらず、条約上の規定におきまして、今委員もリファーされましたとおり、極めて、もう長期四年以上ということとされておりますので、この点については除外を設けることは条約上認められていないというふうに理解されるものでございます。

 この点につきましては、条約の交渉経緯におきましても、重大な犯罪の定義に関する議論の中では、長期四年以上の自由を剥奪する刑またはこれより重い刑を科すことができる犯罪ということで議論されておりましたので、そういう意味でも一部の除外を設けることはできない、そういうふうに理解しております。

 以上でございます。

川内委員 今の御説明はちょっと私には不十分なような気がするんですが、長期四年以上の自由を剥奪する刑またはこれより重い罪のすべてを重大な犯罪とするということの御説明としては、何とおっしゃいましたか、除外してはいけないと書いていないから除外してはいけないんだと。(発言する者あり)除外していいと書いていないから除外してはいけないんだという御説明だったんですかね。

辻政府参考人 若干、もし説明が足りなければ申し上げます。補足させていただきますけれども、まず、条約上の規定として、今委員が御指摘の点、すなわち、私が申し上げた、一部除外を認める規定になっているかどうかという文言上の問題でございますけれども、それにつきましては、条約二条(b)に書いてございますとおり、一部を除外することを認めている規定になっておりません。したがいまして、この条文の当然の解釈として、除外することはできない、こういうふうに理解しておるのが一点でございます。

 それから、若干、簡潔に御説明したので少し敷衍して申し上げます。

 条約の交渉経緯でございますけれども、この点はさんざん当委員会でも御議論になったところでございますけれども、重大な犯罪をどういうふうに定義づけるかということについては、条約の交渉経緯におきまして随分議論になったところでございます。その過程におきまして、長期三年以上という主張をする国と長期四年以上を主張する国との間で意見が対立しておって、実際には、アドホック委員会の第七回会合におきまして、両者の間で妥協が図られまして長期四年以上というふうに明示的に合意がされたところでございますので、例外を設けることは非常に難しいというか、認められておらない、そういうふうに理解しております。

川内委員 理解しておられるというのは、日本政府として理解しているということであって、この重大な犯罪という言葉の定義が、条約を締結するに当たって国際社会の共通の解釈になっているということではないということですか。

辻政府参考人 理解をしておると申し上げましたのは私ども政府としての理解を申し上げまして、当然、その前提にございますのは、条約の交渉経緯等を踏まえまして、各国の共通の理解が四年以上ということであるという理解を踏まえたものでございます。

川内委員 いや、四年以上というのは別にだれも否定していないわけで、その長期四年以上の自由を剥奪する刑のすべてが重大な犯罪なんだということが国際社会の共通の理解なのか。私は、この重大な犯罪ということに関して、長期四年以上の自由を剥奪する刑のすべてを重大な犯罪とせよ、するんだということを書いていないので、すべてでなくてもいいのではないかということを主張しているわけですが、川内の主張は間違いだ、ここはすべてなんだというのであれば、その根拠をあわせて示していただきたいということを先ほどから申し上げているわけですけれども。

辻政府参考人 今、委員の言葉をかりますならば、例外を設けていいというふうに理解していいかということであれば、そう理解はできないということでございます。したがいまして、四年以上にプラス、加えまして例外を設けることはできるかという要件につきましても、それはできないと理解してございます。一点目。

 それから二点目。根拠につきましては、条約と申しますのは、条約の交渉時の交渉、それから何よりも文言そのものをまず第一義的に解釈すべきものでございまして、条約の文言をごらんになってわかるとおり、例外は認めておりません。したがいまして例外を認めることはできない、そういうふうに理解しております。

川内委員 そうすると、条約第五条の三項、「組織的な犯罪集団への参加の犯罪化」というところの三項に、「1(a)(i)」、これは共謀罪ですね、共謀罪の「規定に従って定められる犯罪に関し自国の国内法上組織的な犯罪集団の関与が求められる締約国は、その国内法が組織的な犯罪集団の関与するすべての重大な犯罪を適用の対象とすることを確保する。」と書いてあります。

 そうすると、わざわざ五条の3で「犯罪集団の関与するすべての重大な犯罪」、すべてというふうに、すべてという言葉をここで使う必要は全くないわけですよね。重大な犯罪という言葉の定義が、長期四年以上の刑のすべてが重大な犯罪であるということであれば、もう一度ここですべてという言葉を使う必要は一切ないというふうに思いますが、いかがでしょうか。

辻政府参考人 お答え申し上げます。

 今、委員御指摘にございました第五条3の前段につきましては、五条1(a)(i)に定める行為を犯罪化するに当たって、組織的な犯罪集団の関与が求められる締約国は、組織犯罪集団の関与する重大な犯罪をやることの合意をすべて犯罪とする義務を負うことを確認した規定でございます。

 この場合にすべてと書いておりまして、今、他方で、比較におきまして、二条におきましてすべてと書いていないということで、反対解釈ということで今委員は御指摘をされたんだろうと思いますけれども、その点につきましては、異なる規定について書いてあるものでございますから、直接的に反対解釈ということが適用されるものとは理解しておりません。

 したがいまして、私が申し上げましたとおり、二条につきましては例外は認められないということにおいては変わりはないと思っております。

川内委員 ちょっと、今の説明もよくわからなかったんですが、条約において、条文上、自国の政府にとって、あるいは政府にとってというより国民にとって、有利な解釈をとっていくということは政府として当然あり得べき態度であるというふうに私は思いますが、先ほどから繰り返し申し上げているとおり、六百十九もの犯罪が共謀罪の対象になってしまうということによる不安感が国民の皆さんに広がっている。

 であるとするならば、条約の書きぶりの中で、日本にとって国民に不安を与えない形の条約の解釈というものができるのであれば、その解釈をとり、そして国内法化していくということが、私は、政府としてのとるべき、あり得べき態度であるというふうに思いますが、重大な犯罪とは長期四年以上の犯罪であるとは書いてあるが、長期四年以上のすべての犯罪とはこの条約に書いていないので、何でそんな、すべてすべてと自分の方から言わなきゃいけないのかなと私は思いますね。

 では、他方、この国際連合条約を締結している国において共謀罪の規定ぶりがどのようになっているのかということについてお伺いをさせていただきたいというふうに思いますが、例えば、共謀罪を採用している国は先進各国の中で、アメリカ、イギリス、カナダというふうに聞いております。参加罪がイタリア、フランス、ドイツ、ロシアというふうに聞いております。これは、我が党の修正案の提出者である平岡秀夫筆頭からも質問主意書が提出をされておりますが、この先進諸国、G8の中において共謀罪を採用している国の対象犯罪というものが数として幾つあるのかということを教えていただきたいというふうに思います。

辻政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員が言及されました質問主意書においてもお答えしたとおりでございますので、恐縮でございますが、各国の国内法における犯罪について、組織犯罪防止条約に規定する重大な犯罪に該当するものの数を網羅的に把握することは極めて困難であると考えておりまして、その数について具体的に申し上げることは、申しわけありませんが、できません。

川内委員 大臣、済みません。対象犯罪が六百十九もあることで、みんなおびえるわけですよね。条約上の重大な犯罪に該当する罰則一覧、これは衆議院の調査室がおつくりになられた資料でありますが、この中に、六百十九の犯罪がだあっと書いてあるわけです。例えば水道毒物混入致死とか、あるいは営利目的による覚せい剤の輸出入等とか、化学兵器使用による毒性物質等の発散とか、こういうものは共謀罪の対象として、犯罪が実行される前にこれは取り締まってもらった方が、市民生活が安心して暮らせるというふうに思いますよ。

 しかし、例えば、ぱっと見ただけでも、我々政治家に関するものでいえば、政治資金規正法、報告書不提出等とか、あるいは投資信託及び投資法人に関する法律でいえば設立企画人等の特別背任とか、あるいは独立行政法人国際観光振興機構法、役員等による収賄とか、もうさまざまな犯罪がこの共謀罪の重大な犯罪に該当するということで、一覧表として出ております。

 ほかの国も本当にこういうことになっているのかということは、国民の皆さんの重大な関心事だと思いますよ。アメリカでもイギリスでもカナダでも、あるいは共謀罪を採用する国々がすべて、こういう犯罪がすべて共謀罪の対象になっているのか、どのくらい共謀罪の対象犯罪というものがあるのかということについては、大変国民の皆さんが知りたい、あるいは、この共謀罪を議論する上で基礎的なデータになるものであるというふうに思います。

 そもそも、平岡先生が随分前に質問主意書を提出しているわけです。それについて、今外務省は、わかりませんとお答えになられるわけですね。

 では、外務省に重ねてお伺いしますが、この平岡質問主意書に基づいて、各国の状況をどのような形で、いつ、だれが、どういう人に対して尋ねたのか、口頭なのか文書なのか、文書で尋ねたのであれば、その文書の写しがあるというようなことまでしっかりと御答弁をいただき、どのような回答があったのかということを含めて御回答いただきたいと思います。

辻政府参考人 お答えいたします。

 今委員からお話のございました米国、英国及びカナダが、G8の中では共謀罪の規定を有していると承知しております。

 先ほど申し上げましたとおり、とりあえず簡潔にお答え申し上げましたけれども、網羅的に把握することは困難である、こういうお答えを申し上げました。その理由といたしましては、昨年の十月末に平岡委員からの質問主意書を得まして、各国にそれぞれ調査訓令を打ちまして調査をいたしました。それぞれ、それは口頭で答えをいただいております。具体的には、それぞれの大使館の書記官から、担当者から、いわゆる相手国政府の担当部局にお答えをお聞きしました。

 具体的なお答えぶりを申し上げますと、米国につきましては、重大な犯罪に該当する犯罪の数は、連邦刑法だけを見ても膨大な数に上り、また、特別法や各州の刑法において重大な犯罪に該当する膨大な数の犯罪が規定されている、したがって、全米で重大な犯罪に該当する犯罪の数について把握していないし、把握することもできない、こういう回答を得ております。また、英国及びカナダからは、重大な犯罪に該当する犯罪の数は把握していない、こういう回答を得ておりますので、そうお答えしたところでございます。

 以上でございます。

川内委員 いや、共謀罪の対象になる重大な犯罪の数を聞いているわけです。共謀罪の対象となる重大な犯罪を聞いているわけでありまして、今のお答えはちょっと違うんじゃないですか。

辻政府参考人 お答えを申し上げます。

 私どもが調査をいたしましたのは、共謀罪の規定があることを前提に重大な犯罪というものは何かということをお聞きしましたので、そういうお答えだったということです。したがいまして、共謀罪の対象となる重大な犯罪そのものの数について、それについては把握をしていないという各国政府のお答えでございました。

 以上でございます。

川内委員 共謀罪を前提にじゃないんですよ。共謀罪の対象となる重大な犯罪は幾つあるのかということをしっかりと調査していただかなければ、諸外国の状況がどうなのかということは国民的な関心事ですよ。この共謀罪というものに対して、みんな物すごい不安を持っているわけです。不安を持っているんですよ。早川先生、そこでううんと横に首を振っちゃだめですよ。みんな不安だから、これだけ興味と関心を持っているわけですから。だから限定的にしなきゃいけないし、しっかりと、わかりやすい、明文でわかりやすい状況にしていかなければならないと私は思いますよ。それは共通の認識だと思いますよ。

 そういう場合に、では諸外国でどういうことになっているのかということについては、アメリカではこうです、イギリスではこうです、カナダではこうです、参加罪を採用しているフランス、ドイツ、イタリア、ロシアではこうですということをしっかりと説明していただかなければならないというふうに思いますが、今の外務省のお答えは、口頭で聞いたということでしょう、口頭で。ちょっと答えてください。口頭で相手国に尋ねましたと、ここでちゃんと言ってください。

辻政府参考人 口頭でお聞きしました。それで、口頭で回答がありました。

川内委員 質問主意書というのは、政府が閣議決定をした上で院に対して答える大変に重要な質問書であります。これに対して答えるのに、口頭で聞いて口頭で、担当者同士のやりとりで、いや、そんなものはわかりませんよと言われて、それをそのまま答弁書に書くなんて、院に対してこんな失礼な態度はないですよ。

 委員長、これは可及的速やかに、文書でアメリカ、イギリス、カナダに対して、共謀罪の対象となる犯罪は幾つあるのかということを速やかに相手国政府に対して文書で問い合わせをしていただいて、文書で回答をいただく。それがこの審議の基礎的なデータだというふうに思いますが、委員長、いかがですか。

石原委員長 詳細につきましては後刻理事会で協議いたしますが、お話を聞かせていただいている限り、かなり院に対する対応が冷たいと私も感じましたので、川内委員の御指摘を十分踏まえて、法務省並びに外務省は、重大な犯罪、三カ国だけでございますので、しっかりと御提議をいただきたいと思います。

川内委員 では、委員長の御発言もございましたが、法務大臣、これは外交ルートを通じてやることですから、直接の所管ではないとはいいながら、共謀罪は所管の大臣でいらっしゃいますから、一言、ちょっと御見解をお尋ねしたいと思います。

杉浦国務大臣 お答えする前に、先生が冒頭申されました御認識については、私どもも全く共通でございます。

 国際犯罪防止条約を我が国は締結いたしました。そして、それを国会で条約は御承認賜っておるわけであります。その際は、反対は社会民主党だけ、共産党を含めて他の政党に御賛成いただいて承認を賜ったわけであります。

 その条約の目的は先生が申されたとおりでありまして、典型的な例は、国際テロ組織あるいは国際犯罪組織。名前が有名なのを挙げたら、中国の蛇頭なんかがそれに当たるんでしょうか。我が国の組織暴力団、国際提携をしているのも一部ございます。そういった国際的な犯罪組織の犯罪からそれぞれの国は国家国民を守る、国際的にそういうものを防止していこうという趣旨で締結されたわけでございます。それを実施するための法整備を今回お願い申し上げておるわけでございます。

 さまざま、国会でも審議が行われました。新聞等でもいろいろ懸念の向きが報道されておりますけれども、国会審議、もうこれで三国会目でございます。時間数もかなりありました。相当詳細に御質疑がなされ、答弁もなされ、そして民主党から修正案も提出されております。与党の修正案につきましては、私どもも政府提案の中身をさらに明確にするものというふうに思っておりますし、民主党の御提案の中にもしんしゃくさせていただいた方がいいなと思うものもございます。

 それらについては、この法案、修正されるべきものは修正をし、そして懸念すべきところは、例えば附帯決議できちっと対応していただくなりなんなりして、今、共謀罪の対象の罪が幾らかということで、ここに御不安があるというお話でございますが、そういった点も明らかにしていただいたらいかがかと思います。

 ただ、罪の数が多い。これは日本の法制度ですから日本はわかります、六百幾つあったわけですけれども、恐らく各国とも相当あると思います。長期、四年以上のものは、法治国家ですから、相当あると思います。我が国でしたら、各法律全部罰則を調べ上げてということは比較的容易にできるわけですが、他国の政府に対して、すべての法律を精査して罪が幾つあるのかということを言っても、口頭であったような回答があるということは容易に推測できるところだと思うんです。

 ただ、私が申し上げたいのは、今回新設をさせていただきたいと思っております共謀罪は、先ほど申し上げたような組織犯罪集団の犯罪者に対して適用される罪であって、一般国民の方に適用されるわけでは毛頭ないんですね。一億二千五百万国民のうち数万人の組織犯罪集団にだけ適用される罪でありまして、一般の国民の方には全く無縁の罪でございます。

 むしろ、国民の皆さんを組織集団の犯罪から守るために、共謀罪を設けてそういう罪を防止しよう、犯罪行為を防止しようという目的でございます。それはるる御説明申し上げておりますし、その点は御理解いただかなきゃならぬのじゃないかというふうに思っております。

川内委員 大臣の誠実な、一連の記者会見などでお話しになられる御様子は、私も敬意を表します。しかし、法律が今大臣がお話しになられた言葉どおりになっていないというところも大きな問題としてあるわけですね。

 ですから、あるいは法務省や取り締まり当局が運用として、この共謀罪が成立した暁に、組織犯罪集団、いわゆる暴力団やおれおれ詐欺の集団あるいはテロリストの集団に対して共謀罪を適用し、未然に国民の生活の安定、安心、安全というものを確保していくんだという、その運用の方針としてはよくわかります。しかし、法律の規定ぶりがそうはなっていないというところが共謀罪の大きな解消すべき問題点であるというふうに私は思うんですね。

 野党提出者の平岡先生、そうですよね。ここでちょっと演説してくださいよ。

平岡委員 まさに、今回の共謀罪について言えば、我が国の国内法の基本原則とも言われるものからかなり逸脱している、そういう罪であるということをまず基本に押さえなければいけない。そうである状況の中で、この共謀罪を六百十五にわたる罪について導入していくということについての国民の多くの皆さんの不安というものがある。

 先ほど大臣が言われたように、組織犯罪集団に限定していくんだということ、それは私は必要なことだと思いますけれども、しかし、では、そういうふうになっているのかと委員も質問されておりますけれども、私たちも、与党の修正案でも、先ほど何度となく言いましたけれども、共同の目的が重大な犯罪行為を行うことにある団体という限定で、本当に先ほど大臣が言われたようなものに限定されているのか。

 共同の目的、常識的に言えば、幾つも目的を持った団体というのはあるわけです。その中のたった一つがもしかして重大な犯罪に当たる。例えば、先ほど出ましたけれども、政治資金規正法の収支報告書の不提出というようなことについて、これがたまたまそういう状態になっているというふうなことも、それは目的としてあるかもしれない、そういうものも適用になってしまうかもしれないというふうに法律上は読める。

 そういうことではいけないんだということを我々としてはずっと言い続けているわけでありまして、大臣が言われたことが本当に素直に法律に書かれているのであれば、それは多くの国民の皆さんの不安も軽減されるだろうと思いますけれども、今の法案はそうなっていないというところに委員御指摘の問題がやはりあるというふうに我々としては考えています。

川内委員 大臣、法律の運用は行政府がやるものだというふうに思いますが、最終的な解釈は裁判所が確定をさせていくことだろうと思うんですね。

 であるとするならば、大臣がおっしゃられた、御答弁されたとおりの法律を書いておかなければ、例えば時の権力者あるいはそのときそのときの行政の運用の方針の変更によって共謀罪が濫用をされて、たくさんの人が迷惑をこうむる状況というか、怖い状況にならないとも限らない。そういうときに、では裁判所にその事案が持ち込まれて、法律どおりに読めばこれは共謀罪だと裁判官も認定をせざるを得ないというようなことも十分考えられるわけですから、だからこそ、どう限定をつけていくのか、どうわかりやすくしていくのかということについては十分な議論が必要だと思うし、諸外国の状況というものについても私はしっかりと把握をする必要があるというふうに思うんです。

 大臣は、共謀罪の対象犯罪について、恐らくアメリカもイギリスもカナダも大変な数になるだろうというふうにおっしゃられたが、私はそれをにわかには信じがたいんですね。アメリカ、イギリス、カナダの人たちが、これは共謀罪になるかもしれませんよといって、おとなしく、ああ、そういうものかなと思っているとはとても思えないですね。だからこそ、もしそうならそうで、ちゃんと相手国政府からの回答をもらって、諸外国もこうなっているんだということをしっかりと国民の皆さんに説明をすべきであるというふうに重ねて申し上げさせていただきたいと思います。

 あと、杉浦大臣に重ねて確認をさせていただきますが、政府案の組織犯罪処罰法改正案一条の目的の中には、「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を実施するため、」という目的が書き加えられております。この意味というのは一体何なのか。この目的規定の追加によって条約の文言が今回の共謀罪に関する条文の解釈、運用の指針となるのかということについて、法務大臣に伺わせていただきたいというふうに思います。

杉浦国務大臣 御答弁申し上げる前に、先生の御議論をお伺いして、またこの委員会の審議を拝聴していて思い出しましたのは、何年か前ですが、私、法務委員長をやっておりましたときに、組織犯罪対策三法を御審議願ったんですね。今度の法改正もその組織犯罪対策三法の改正ということをお願いしておるんですが、その議論のときに同じような議論がございまして、膨大な罪について、重大な罪について加重するという議論があったことを思い出しました。これは、日本でいえば組織犯罪に対して罪を加重するのであって、国民とは関係ないんだ、むしろ犯罪組織を壊滅させる、抑えるためにやるんだから、罪が多いことは国民にとっては喜ぶことではないかという議論も一方であったわけなんですが、そういう議論が行われまして、あの法律は制定されました。

 その後、施行状況を見ておりますと、厳格に組織犯罪にのみ適用されておりまして、あれが一般国民の方に拡張されて解釈、適用されたということは聞いておりません。先生を初め一般国民の方が、今回の法審議に際して、犯罪組織に対して適用されるべきものが、例えば労働組合とか一般の宗教団体とかそういうものにも適用されるんじゃないか、そういうおそれを抱いていらっしゃるんだと思いますが、私はこの法律、中身を拝見し、御審議の過程でも明らかになってまいりまして、また修正も厳格に行われようとしておりますが、そういうことから見て、そういう御懸念には及ばないという確信を持っておることだけ、まずもって申させていただきます。

 その上で、今回の国際組織犯罪防止条約の締結に伴う法整備として必要となりました組織的な犯罪の共謀罪とか証人等買収罪の新設等を、組織的犯罪処罰法の改正により行うこととしたわけでございます。そういうわけで、組織的犯罪処罰法はそもそもこの条約の実施を前提としておりませんでしたので、その国際組織犯罪防止条約の実施という目的が加わりますので、組織的犯罪処罰法の目的を定めました第一条に「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を実施するため、」という文言を加えることによりまして、そのような趣旨を明確にすることとしたわけでございます。

 また、先生御指摘の条文の解釈でございますが、るる御説明申し上げましたように、今度改正される組織的犯罪処罰法は、国際組織犯罪防止条約を実施するという目的を有するものでございますから、条約の文言が今回新設される組織的な犯罪の共謀罪に関する条文の解釈に際しましても、先生の御表現で言えば指針と申しましょうか、重要な参考となることは当然でございます。

川内委員 重要な指針となるということでございますが、であれば、大臣、本当に大臣にお言葉を返すようで恐縮なんですが、国会は運用の方針を議論する場ではなく、法律を議論する場でございますから、法律上どのように読めるのかということを考えれば、私は、与党も修正案を出し、野党も修正案を出していることにかんがみれば、政府案の書きぶりというのは甚だ、実は国民の皆さんに対して、運用の方針とは違う書きぶりがされていたのではないかというふうに思いますよ。それは、大臣として率直に御反省をいただかなければならぬことではないかというふうに思うんです。

 もうあと二、三分しかございませんので、最後に一問聞かせていただきますが、条約上、第五条の共謀罪のところで、「重大な犯罪を行うことを一又は二以上の者と合意することであって、国内法上求められるときは、その合意の参加者の一人による当該合意の内容を推進するための行為を伴い又は組織的な犯罪集団が関与するもの」という文言があるわけでございますが、この「組織的な犯罪集団が関与するもの」という言葉と、これを国内法にしたときの六条の二の規定との関係について御説明をいただきたいというふうに思います。

杉浦国務大臣 先生御指摘のような規定が条約にあるわけでございますが、その条約におきまして、共謀罪を国内法で犯罪とするに当たっては、組織的な犯罪集団が関与するものという組織性の要件をつけることを締約国に認めておるということも御指摘のとおりでございます。これを受けまして、我が国でも共謀罪に組織性の要件を付することとしたものでございます。

 その際、我が国には既に、先ほど来申し上げておりますように、組織的に行われる一定の犯罪につきまして、組織的犯罪処罰法がその刑を加重して処罰するための要件を定めております。そこに、団体の活動として当該犯罪を実行するための組織により行われるもの等という要件を定めておりますので、政府案の共謀罪につきましても、条約にある国際的組織犯罪集団が関与するものという文言を用いるのではなくて、既にある法律に定められたものと同じ要件、ある意味ではこちらの方が厳密だと思いますが、この要件を付することとした次第でございます。

川内委員 最後に外務省にお尋ねしますが、組織的な犯罪集団の関与という、条約の文言の中の「関与」という言葉の意味について最後に教えてください。

辻政府参考人 今委員御質問のございました「関与」、英語でいいますとインボルビング、こういう言葉でございますけれども、具体的な意味といたしましては、我が国としては、組織的な犯罪集団が関与するものという意味としまして、犯罪が組織的な犯罪集団の活動として当該犯罪に当たる行為を実行するための組織により行われるものであること等を意味するものと理解しております。したがいまして、当該犯罪に当たる行為を実行するための組織により行われるもの、こういうことだと思います。

川内委員 まだ若干時間があるようですから。

 今の答弁は、私は「関与」という言葉の意味を尋ねたんですけれども、行われるものというのはどういうことですか。

辻政府参考人 「関与」という言葉だけを取り上げての御質問であるとすれば、関与と申しますのは、犯罪集団が組織により行うということだと思います。犯罪を行う。

川内委員 関与というのは行うということなんですね。なるほど。

 では、終わります。ありがとうございました。

石原委員長 次に、枝野幸男君。

枝野委員 法務大臣を初めとして、この法律は、共謀罪は普通の人たちには関係ないと一生懸命おっしゃっておられます。先ほど、そもそも組織犯罪法をつくったときにも、これは暴力団とか、あのときオウム真理教とかいろいろ出てきましたから、そういうところが対象だということをおっしゃって、そうなっているじゃないかという御答弁がありましたが、今、保坂議員も教えてくれたんですが、例えば、ことしの二月に健康食品販売の会社に組織犯罪法が適用されています。こういった消費者被害をもたらすような話についても、豊田商事事件ぐらいになればそうかなと思わないではないですが、いわゆる詐欺的な商売の違法収益で会社をつくったから組織犯罪法を適用するということが現実に行われているわけです。

 では、どこまでが対象なんだろう。最初、暴力団とかオウムとか、そういう話が対象だと言っていた法律で、今も大臣はそういう認識のようですが、現実にはそうでないところでも適用されている。ここに適用したことの是非については、私は問うつもりはありません。だけれども、法律というのはそういうものだということであります。

 まず、その観点から、どなたが責任を持ってお答えできるのか、そちらにお任せをしていますが、そもそも、この国会の審議において、この条文はこう読むんだとかいうような提案者の発言、提案者、立法者の意思というものが発言をされて議事録に残っております。これはだれをどの程度拘束するんでしょうか。

 一個ずつ聞いていった方がわかりやすいと思いますので、閣法、内閣提出法案について大臣が、この法律はこういうふうに解釈をするんですというようなことを国会で答弁されている、これはだれを拘束するんですか。

杉浦国務大臣 一般論として申し上げますと、法令の解釈につきましては、当該法令の規定の文言、趣旨、他の規定との整合性等に即して論理的に確定すべき性質のものでございます。その際に、国会における法案審議の過程で立案者の意図が明らかにされているような場合には、そのような意図についても考慮されるべき重要な要素になるものと考えられます。したがいまして、内閣、すなわち政府による法令の解釈につきましても、立案者の意図を初めとするこれらの要素を考慮して行われるものと考えられます。

 一方で、法案審議における立案者の発言自体が政府を法的に拘束するかどうかという点につきましては、そこまでの効力はないものと考えられます。

枝野委員 政府すら拘束しないわけですね。今、例えば大臣が一生懸命、これは一部の人にしか関係ないんですよという御答弁をされていますが、それは法的には拘束力はない。いいですね。

杉浦国務大臣 有力な資料となるということでございます。

枝野委員 あっさり認めていただいたので、念のため聞いておきますが、これは刑事法です、裁判になり得ます。裁判所で起訴された事件について、起訴をするということは、どうも、文言上、この法律に該当しそうだ、だけれども、国会での提案者とかあるいは政府の答弁では、こういうものは対象じゃないんですよ、対象はこういう人たちだけなんですよという答弁があった、だからおれは無罪だといったときに、裁判所はその国会の議事録に拘束をされますか。

杉浦国務大臣 若干補足いたしますが、大臣の発言は大変重いものであると承知しております。

 お尋ねの趣旨は、憲法七十六条三項の解釈にかかわるものでございまして、法務省は憲法の解釈についてお答えする立場にございませんが、一般論として申し上げますと、裁判官は、その良心に従い独立して職権を行い、憲法と法律にのみ拘束されるとされており、法案審議における提案者の発言等は裁判官を法的に拘束するものではないものの、法律を解釈するに際しての重要な参考資料の一つとされるものと承知をしております。

枝野委員 重要な参考資料の一つであるということは、私も同感であります。しかし、法的には、拘束力は全く持っていません。

 ちなみに言うと、先ほど、政府に対する拘束力の話をしましたが、参考資料になると言いましたが、どの程度参考にするかしないかというのは、時の行政権を有するもの、内閣が判断できるわけですよね。過去の大臣が、この条文はこういうふうな意味でしか適用しませんと幾ら今大臣がおっしゃっていても、別の内閣が、あの内閣のときの判断は間違っていたので、おれたちは違う解釈をして検察権や警察権を適用する、執行すると言ったって、法的には何の問題もないですよね。

杉浦国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、法案審議における立案者の発言自体が政府を法的に拘束するというわけではないと考えております。

 新たな内閣になった場合ということでございますが、一般論として申し上げれば、法令の解釈は、先ほど申し上げたような考え方に基づいて論理的な追求の結果として示されるべきものと考えられることから、このような考え方を離れて政府が自由に法令の解釈を変更することができるという性質のものではないと考えられます。

枝野委員 ですから、今、この後、早川委員等にお尋ねします。そこでは、共同の目的がどういう意味なのかということについていろいろな御答弁があるんだと思いますが、それは多分、杉浦さんもそれでいいとおっしゃるでしょうし、いずれ早川さんが法務大臣になったら、早川法務大臣のもとでの検察や警察はそういう運用をするでしょうが、私たちが政権をとったときは全く縛られるつもりはありませんし、あるいは、共産党さんなり社民党さんなりが政権をとったときには一切縛られないものであるんだ、この言葉の読み方にはいろいろな読み方があるんだ、これが前提なんですよね。特に刑事法ですから、このことを前提としてお尋ねをしていきたいと思います。

 与党の修正案の六条の二に言う「共同の目的」ということについて、四月二十五日の委員会以来、早川委員はこうおっしゃっておられます。この共同の目的とは、結合体の構成員が共通して有し、その達成または保持のために構成員が結合している目的、すなわち構成員の継続的な結合関係の基礎になっている目的をいうと解されております。

 どこで解されているんですか。

早川委員 まず、法令の解釈について、その文言から当然、一定の解釈の範囲というのは定まってくるわけであります。

 現行の組織的犯罪処罰法において「団体」ということについて定義がございます。これは第二条の第一項ですけれども、「共同の目的を有する多数人の継続的結合体であって、その目的又は意思を実現する行為の全部又は一部が組織により反復して行われるものをいう。」こういう定義があるところであります。

 そこで、この定義規定の文言から、この共同の目的というのは、個々の構成員がその時々に有している目的をいうのではなく、多数人が共同して有しているものであり、かつ、継続的な結合体として有しているものでなければならない、こういうふうな論理的な帰結になろうかと思います。

 この定義規定の要件をすべて満たすものだけが組織的犯罪処罰法における団体に該当することから、多数人の継続的結合体であっても、共同の目的を有していないものはこの法律上の団体には当たらないことになること、これもまた論理的な帰結であると考えております。この共同の目的というのは、組織的犯罪処罰法上の団体に必要不可欠なもの、すなわち団体を団体たらしめている基礎的なものであること、これまた当然であろうと考えております。

 このような条文の規定の内容から当然に導かれる解釈といたしまして、与党修正案の共謀罪の規定に言います共同の目的とは、継続的な結合体の構成員が共通して有し、その達成または保持のために構成員が結合している目的、すなわち構成員の継続的な結合関係の基礎になっている目的であると解されることになる、これが私どもの考え方であります。

    〔委員長退席、松島委員長代理着席〕

枝野委員 それが二条のところから論理的に出てくるのかどうかということが問題なんだと思っています。「共同の目的を有する多数人の継続的結合体であって、」といったときに、共同の目的がなければ団体には当たらない。というのは、継続的結合体だけが六条の二の共同の目的があるとかないとかの問題になる団体なんだから、ここの対象になるのが共同の目的を持っている多数人の継続的結合体だから、その団体が継続的な結合の根拠になる共同の目的を持っている、それは論理的に出てきます。おっしゃるとおりです。

 しかしながら、修正案六条の二に出てきている共同の目的が、二条に言う共同の目的とイコールであるという保証は何もない。さらに言えば、共同の目的というのは一個である必要は全然ない。

 つまり、例えば、何か市民運動をやりましょうという共同の目的で多数人が継続的に結合している団体があります。そこで言う共同の目的はその市民活動でしょう。それが、市民活動ということが目的となっている団体が二条で団体ということの限定をされる。その団体の活動の中で、その共同の目的が犯罪を実行するものというのは、六条の二で修正で限定をされていることになっているんだけれども、この共同の目的が、もともと二条での団体性を有するかどうかということで言う共同の目的とイコールである必要は全然ない。

 つまり、市民活動をするというのが主たる目的ではあるけれども、市民活動をするということの中で、場合によっては座り込みとかなんとかというところで一定の犯罪に触れることが時々生ずるかもしれないけれども、そこはある程度やむを得ないよねということを付随的に持ち得る場合というのはあり得るわけです、やるかやらないかは別としても。その付随的な目的のところに犯罪ということがかかわってしまった場合に、そこを六条の二でどうやったら排除できるのかということが問題なわけなんです。どうですか。

早川委員 なかなか、今の御質問を国民の方がお聞きになっても、余りにも同じような言葉が随分つながっている、わかりにくいんだろうなというふうに思いました。

 そこで、まず私どもの修正案の中で書いていた中身をもう一度繰り返させていただきますと、構成員の継続的な結合の基礎となる目的が重大な犯罪を実行することにある団体、こういう趣旨で、その共同の目的が重大な犯罪を実行することにある団体、こういうふうに修正案を提示させていただきました。

 結局、この場合は、団体の共同の目的が重大な犯罪を実行することにあるというふうに限定をされるわけであります。複数の目的があるということを前提にしているのではなくて、当該結合の共同の目的があくまでも重大な犯罪を実行することにある団体ということに限るという趣旨でこのような文言を修正案として付加することにしたわけでありますので、私は、この表現ぶりで十分意図が達成できるのではないかと思います。

 なお、先ほど、こういった国会での提案者の提案の趣旨ということについて、これがどの程度現実の裁判所の解釈を拘束する拘束性があるかということについて法務大臣に御質問がありました。私は提案者として思っておりますことは、立法府であります国会で質疑が十分行われ、その質疑の内容が一義的に確定をしているという状況の中でその修正案が成立をした場合、その文言の解釈というのは、当然に裁判所においても重要な参考資料としてこれを参照されなければならないし、むしろ、これに相反するような判断を裁判所が行われるということは極めて異例なことになるのではないだろうかと思います。

 特に、刑事法制というのは国民の基本的人権を制約するものになるわけであります。当然、法の適用に当たって謙抑的でなければならないという大原則があるわけであります。さらに、その構成要件の解釈については厳格に、これを拡張解釈してはならない、これもまた刑事法制を貫く大原則である。結果的には、法律の解釈について一番求められるのは、法律の常識、良識に基づいた判断、いわゆるリーガルマインドと言われるものがここにどうしても出てくるであろう。

 もちろん、捜査当局あるいは検察当局、あるいは国会、裁判所、法律の判断というのはそれぞれ行います。最終的には司法の場で判断をされる。特に、裁判所も三審制をとっている関係で、最終的には法律判断そのものは最高裁判所の判断にゆだねざるを得ない、そういった重層的な関係にあります。そのすべての法律判断の過程において、国会の審議における提案者の立法の趣旨というのは十分尊重されなければならないと思います。また、それを逸脱するようなことがないようにするために、あえて法律の中に判断の際の留意事項というのを明文化する、こういう歯どめを設けることが極めて重要ではないかというふうに思っております。

    〔松島委員長代理退席、委員長着席〕

枝野委員 一般論としておっしゃっていることが何となくもっともらしいんですけれども、参考になることは参考にはなるんだと思います。私もそう思いますが、かといって、裁判所は拘束はされないですよ。

 それこそ、私は今、党の憲法調査会長をやっていますが、日本国憲法の解釈について、昭和二十一年の国会審議の国会答弁に裁判所も内閣も拘束されますか。全然されていませんでしょう。僕は、それはある意味必然だと思っています。法の条文には幅があるんだから、どう解釈するのかというのは、制定時において立法者が考えていた解釈と時代状況が変わったときの解釈というのは変わっているから、私は自衛隊は合憲だと思っていますし、だけれども、過去の議事録を見ていくと、自民党や自民党につながる政権の政府側が、どう見たって自衛隊違憲としか読めないような答弁を過去にされているんですよ。つまり、そういうのが法の解釈なんですよ。

 裁判所だって、そうやって国会での答弁だって変わり得ることを前提にして一定の参考にしているのであって、変えないものだったら条文に書けばいいんですよ、変わらずに将来にわたって拘束したいならば。だから、そこは前提がやはり全然違っているということを申し上げておきたい。

 もう一回、その共同の目的のところで、お互いにわかった上で、お互いに非常にわかりにくい議論になっているんだと思っているんですが、つまり、私たちが心配をしているのは、共同の目的という言葉を普通に読めば、普通に読めばですよ、それは、共同の目的というのはいろいろな目的があるわけですよ。

 例えば、一例で言うと、先ほど来、その政治団体の届け出義務違反も、これは四年以上だと対象になりますね。政治団体をつくるというときには、政治活動をするというのが共同の目的でありますけれども、届け出義務を怠るということもある意味では共同の目的なんですよね、主たる目的ではないけれども。だけれども、そうしないと、逆にすべての団体が適用されなくなりますよ。だって、犯罪を犯すこと自体を一番の目的とする団体なんてありますか。

 オウム真理教だって、犯罪を犯すことが目的だったのではなくて、その共同の目的は、これは我々には理解不能ですけれども、麻原何がしという人が自己満足を得たかったのか、経済的な利益を得たかったのかよくわかりませんが、とにかく何らかの目的があって、その手段として、例えばサリン事件のような犯罪をたくさん繰り返してきたんでしょう。暴力団だって、別に犯罪を犯さないけれども、世間から暴力団に持たれている怖いイメージを持たせて、なおかつその結果いろいろな不労所得がたくさん入ってくるんだったら、暴力団だって多分それでいいんでしょう。犯罪を犯すこと、そのこと自体が目的ではないんでしょう。

 だとすると、逆に言うと、共同の目的がその団体の継続的な結合のための基礎になっているということを逆にがちっと読み過ぎると、暴力団だってテロ集団だって、テロ集団の団体の結合の主たる目的は、例えばアルカイダだって、何らかの政治的意図を実現することが、継続の基礎になっている目的でしょう。それを実現するために、合法的な手段ではできない、だからという彼らの判断に基づいてテロをやっているわけですよ。同じことが、労働組合だって政党だって、いろいろなところで起こり得ますよ。

 政治家だって、例えば政治団体だって、これは継続的な団体になるでしょうね。政治団体だって、何とか候補を当選させたりとかその政治的な意図を実現することが第一の目的、主たる目的と言っちゃうとうちの法案とも矛盾するので難しいんだけれども、一番の目的であるのは間違いない。そして、そのことを実現する手段としても、主には、選挙によって合法的に、選挙で当選して実現をしようとするわけだけれども、しかし、時々、いや、これぐらいの形式犯の選挙違反だったら仕方がないなということで、その軽微な形式犯的な選挙違反については、ある意味では共同の目的になっている場合だってあり得る。

 それは、テロリスト集団が、特定の政治目的を持っているんだけれども、実現するためにテロをやるんだという、その政治的な意図を実現するということとテロを実行するということとの関係、日本の普通の政治家の政治団体が、選挙で当選するという目的と、それからそのために、例えば選挙違反もやむなし、あるいは政治資金規正法違反もやむなしと思うこととは、本質的に違いはありませんでしょう。

早川委員 たくさんの事例についての御質問があったんですけれども、いずれも、私は、御指摘があったケースは今回の組織犯罪の共謀罪の対象にならないケースを挙げられたんだなというふうに思いました。結果的には、私どもの修正案の読み方にまだそういう余地があるのかどうか、私はないと思っておりましたけれども、改めてその問題について説明を申し上げたいと思います。

 まず、団体の共同の目的が何であるかについては、個々の構成員の主観的な目的や具体的な活動を捨象した抽象的な目標によって判断されるのではないということであります。継続的な結合体全体の活動実態などから見て、客観的に何が構成員の継続的な結合関係の基礎になっているか、これが社会通念に従って判断されるべきものであると考えます。

 したがいまして、構成員の継続的な結合関係の基礎が正当な活動を行うことにある政治団体あるいは会社と異なりまして、一般にテロ団体あるいは詐欺会社と言われるような団体については、これは社会通念に従えば、継続的な結合体全体の活動実態などから見て、客観的に、構成員の継続的な結合関係の基礎となっているのが重大な犯罪等を実行することにある、そういうふうな団体であるというふうに判断される。これがいわゆる常識的な判断、法律家としてなすべき判断だろうというふうに考えている次第であります。

 その他いろいろな御質問がありましたけれども、いずれにしても、御指摘の事例については、これが組織的犯罪の共謀罪に該当するものでないというような形でのさらなる検討はしていかなければいけないのかなと私は思いました。

枝野委員 おっしゃりたいことは非常に理解をしますし、それから早川委員も、とにかくこれがむやみやたらに拡大解釈されることはだめなんだという意図に基づいて努力をされているんだろうなということは評価をしたいと思います。

 しかし、では、本当にそういう読み方になるのかということになると、必ずしも担保はないのではないだろうか。

 例えば、この法律ではもともと団体の定義として、「共同の目的を有する多数人の継続的結合体であって、」と書いてあります。ここに「共同の目的」という言葉があって、先ほど来というかこの間、この「共同の目的」というのは何なんだということでずっともめてきているわけであります。

 ですから、定義規定というのはこの法律は二条にもともとついていますから、二条に新たに本法において共同の目的とはという定義規定を置いて、そしてそれが、要するに拡大解釈がされないように、あるいは私は逆に限定され過ぎるのではないかという心配もあり得るとは思うんですけれども、そういったことのないようにすべきだと思うんですけれども、どうでしょう。

早川委員 もう既に御説明したところでありますけれども、まず与党修正案の共謀罪の規定に言う共同の目的の意義について申し上げますと、「共同の目的を有する多数人の継続的結合体であって、その目的又は意思を実現する行為の全部又は一部が組織により反復して行われるものをいう。」そういう団体の定義規定から導かれるものである。現在の与党修正案の文言であっても、これまで申し上げてきた意義を読み取ることは十分に可能である。また、この文言をこれと異なった意味に読むことは考えられないと思っているところであります。

 しかしながら、さらに何らかの工夫ができないだろうかということであります。これは委員にも、そういったことについての御提案があれば、また私も勉強はさせていただかなければいけないと思っております。

 民主党の修正案でも、いわゆる重大な犯罪を実行することを主たる目的または活動とする団体とされているところでありますけれども、これは既に質疑がなされておりますけれども、この規定における主たる目的が何を意味するのかが、だれが条文を読んでも一義的に明らかなのかという法律解釈上の疑義がやはり指摘をされているところであります。

 いずれにしても、少なくとも現時点においては、共同の目的という言葉は現行の組織的犯罪処罰法における団体の定義規定で既に使用されている言葉でありますので、これまでも実際特段の問題もなく適用されていることから、この法律の一部改正を内容とする本法案でも、引き続きこの共同の目的という言葉、用語を用いるのが最もいいのではないかなというふうには思っているところであります。

 しかし、何らかの工夫がさらにあればというところで協議はしたいと思います。

枝野委員 私は、ここを一つのポイントだと思っています。ここのところが拡大される余地があるということであれば、ほかのところでどんな配慮規定を置いても余り法的な歯どめにはならない。共同の目的あるいはその対象となる団体がきっちりと限定される、つまり、私は、早川委員がおっしゃったように、共同の目的の意味として、早川委員のような解釈をすること、それが可能であるとは思います。可能であるとは思いますが、まさに刑罰法規ですから、拡大解釈されないように、いかに他の読み方ができないようにするかということが目的である。

 そういう意味では、その「主たる目的又は活動」というのは、「共同の目的」と書くだけよりはずっと限定できていると我々は思っていますけれども、さらに工夫の余地はあるだろうと思いますので、ぜひともそこは柔軟に、慎重に、みんなが心配しなくてもいいような修正をさらにすることを求めたいというふうに思います。

 もう一つ、犯罪の実行に資する行為ということで限定を加えたということが与党修正案にあるわけですが、改めてお伺いしますが、この犯罪の実行に資する行為をなぜ加えたのかというところからまず教えてください。

早川委員 まず、政府の原案では、共謀段階でこれを処罰の対象とするということの中で、いわゆる顕示行為といった要件は全く出ておりませんでした。共謀というのは、どうしても内心の意思に係るものであって、外形的にこれをとらえることがなかなか難しいということであります。

 そこで、国際組織犯罪防止条約の中では、各国の法制において、いわゆる合意を推進する行為を付加するということが許されているというその条約上の規定を借用いたしまして、何とか、より構成要件を明確化し、かつ、その適用の範囲を限定、厳格化するために、犯罪の実行に資する行為が行われることを処罰条件として付加するという修正案を提案させていただきました。

枝野委員 早川委員は二十五日の質疑のところで、実行に資する行為と言えるためには三つの点が必要になりますと。きのうの参考人質疑でいろいろと参考人の方も混乱をされていたので改めて伺いますが、実行に資する行為は、共謀が成立した後に行われたものでなければいけないという理解をされている、そういう提案者の意思である、これを確認したいと思います。

早川委員 全くそのとおりであります。

枝野委員 そうしますと、きのう参考人質疑を早川委員も聞いていらっしゃったので通告を具体的にしていませんが、大丈夫だと思いますが、ある犯罪集団の一人があらかじめ犯罪のための凶器なりを用意して、そしてみんな集めて、そこで共謀が成立をしたというだけでは犯罪に資する行為ということにはならないという理解でよろしいですね。

早川委員 全く同一の理解であります。

枝野委員 今の点も、多分、与党が推薦をされた立派な大学の先生ですら誤解をきのうされていたようでございます。ですから、ここも、やはりさらに踏み込んだ要件の明確化が必要ではないのかと今の点について思います。

 もう一つ、そもそも条約を読みますと、先ほど早川委員もおっしゃいましたが、合意の内容を推進するための行為という訳がついているんですね。それから、早川委員の答弁でも、共謀に係る犯罪の実行に役立つ行為、共謀の推進といったことの表現も妥当するかと思いますけれどもとおっしゃっているんですね。

 私の理解では、共謀の推進というのと、それからこの条文に言います犯罪の実行に資する行為というのは大分意味が違うように思うんですけれども、どうですか。

早川委員 法律用語の解釈をどのようにするか、幅がある概念でありますけれども、条約で言っております、合意の内容を推進する、言えばエンアクト、要するに有効にさせるという用語でありますけれども、これは合意を基準とすれば、合意から前進する、推進するという用語になります。それから、犯罪の実行という結果から考えますと、その必要とされる客観的な行為というのが、犯罪の実行に資する行為。要するに、犯罪の実行の結果により近づいている、その結果から考えると、資する行為という表現を選ばせていただきました。

 その点で、果たして十分であるかどうかについて協議をしなければいけないと思います。

枝野委員 お互いが法律家同士なので余りこういう話をしたくないんですが、あえて国民的にわかりやすく言いますと、普通に、何かに資する、役に立つという日本語ですね。例えば、十人で共謀しました、十人で役割分担して犯罪を行おうとしています。心臓を動かしたり、呼吸したりすることも犯罪に資する行為じゃないですか。お笑いになるのでよくわかるんですけれども、つまり、存在をしていること自体が犯罪に資する行為なんですよ、十人なら十人でチームを組んで何かやろうとするということは。

 つまり、どこからが皆さんの言うオーバートアクトなのかということを考えたときに、ここは境界は相当広く日本語としては読み得る。提案者の早川委員の意図はともかくとして、普通に日本語として、資する。それはそうでしょう。水を飲むのも、食事をするのも、休憩をしておくのも、では、何時に討ち入るぞ、その前に一眠りしておくかというのだって、まさに犯罪に資する行為ですよ、日本語としては。

 こういうことを考えたときに、一方では、その条約の文言の合意の内容を推進するための行為というのは、これはかなり違いますね。少なくとも、単に生きて存在をしていること自体が、推進するという日本語には普通当たらないだろうな。ただ、若干危ないのは、何時に討ち入るからその前に一休みしておこうか、これは推進かもしれないなと思わないではないんだけれども。ということで、一つには、資するという言葉と推進するという言葉では、少なくとも日本語的に意味が違うんじゃないか。

 それからもう一つは、犯罪の実行に資するというのが与党修正案です。ところが、条約の案文を見ますと、合意の内容を推進すると書いてあるんですね。これは意味が違うと思います。合意した、つまりそこで共謀したことの内容を推進するというのと、犯罪に資するというのでは、犯罪の方が広いわけですよね。その合意した犯罪の内容を推進するではなくて、犯罪を推進するということになりますから、例えば、あした討ち入りをしようということについて合意をした、その合意を推進する行為と、同じことを、あさってやることには役に立つけれどもあしたには役に立たない、だけれどもそれはやはり犯罪に資する行為になっちゃうんじゃないかな。そんな細かいことを聞こうと思っているのではありません。

 だから、少なくとも、普通に日本語を読んだときには、明らかに、合意内容を推進するための行為という限定をかけた方が、法的な細かいことを今あえて申し上げましたが、逆に、あえて法的な細かいところはともかくとして、普通に日本語を読む立場からすれば、ずっときちっと限定されているなということになるんじゃないかと思うんですけれども、どうでしょう。

早川委員 あらかじめ確認をしておきたいところでありますけれども、あくまでも共謀に係る犯罪の実行に資する行為、これが修正案の提案者の趣旨でありますし、条文上もそういうふうになっているところであります。

 実行に資する行為の要件につきましては、この要件を設けた趣旨からして、実行の段階に至ったことのあらわれと言われるような行為、すなわち、犯罪の実行に実質的に役立つ行為でなければなりません。共謀に係る犯罪の実行にとってささいな意味しかないような行為はこれには当たりません。

 そういうことで、御指摘のような事例というのは、そういう意味では実行に資する行為には全く当たらない。例えば、単に息をしている、生きているというようなケースがこういった資する行為に当たるということはおよそ考えられないところであります。

 実行に資する行為と言えるためには、これを設けました趣旨から、第一に、共謀が成立した後であること、第二に、共謀の段階を超えた、すなわち共謀する行為とは別のものであること、第三に、共謀に係る犯罪の実行に実質的に役立つ行為、こういうことが必要であるというふうに考えております。

 したがいまして、その内容は明確でありますし、この条件というのが共謀罪として処罰される範囲を明確かつ限定的にするものであると考えているところであります。

枝野委員 おわかりいただいているとは思っているので余り言いませんが、別に私も、この条文で本当に、単に呼吸していたじゃないか、資する行為だと捕まえるとは思いません。しかし、この修正案が出て以来の議論の中でも、あるいはこれからも出てくると思いますが、ではどこからなのという話なんですよ。

 つまり、ささいなことはなりません、確かにそうなんでしょう。でも、ささいなこととは何なのかというのは余りにも漠然とし過ぎる。もちろん、この手のことはいろいろなケースがあり得るわけですから、すべてを条文に書いておくことはできません。

 我々の言っている予備だって、その予備という言葉だけだったらいろいろとれる。ただ、幸いにといいますか、予備罪というのはかつてから日本にずっとあって、予備というのはどういう行為かというのは判例の蓄積もしっかりあって、これは裁判所の判断自体の蓄積があるから、これについては、一定の限定をした解釈で法執行機関も裁判所もなるだろうということなので、一つの言葉でできるかなと。

 ただ、資するという話は、私の知る限りは前例はないし、なおかつ、それの基準になること、裁判所の見解などもないわけですから、どこまでどうなるのかというのは、立法者の意思は考慮はされるかもしれないけれども、わからない。だとしたら、ぎりぎり可能な中に、例えば今口頭でおっしゃられたような、ささいなことは入らないけれどもというのは条文には書けないでしょうけれども、より限定したことを書くということが必要ではないかというふうに私は思っています。

 特に、なぜこのオーバートアクトのような規定、つまり、条約の五条の1の「合意の内容を推進するための行為を伴い」というのを入れるべきなのかといえば、合意だけでは、要するに供述証拠以外の証拠は基本的にはないはずなわけです。だから問題だと思うんですよ。それで多くの皆さんが心配しているわけです。共謀ということだけであれば、共謀の証拠というのは、基本的には、当事者の供述、自供か、あるいは、それこそ広い意味での盗聴しかあり得ないわけですね。だれかが聞いていたという、これまた供述証拠で、だれかが録音していた、それで初めて物的証拠と半分言えるかなというぐらいです。やはりそれだけでは怖いよね。

 これは、きょうの新聞を見ると、一部については検察は取り調べの可視化というところに踏み込み始めているようですけれども、各国法制が違っていて、事実上弁護士が立ち会えるとか、それこそ録音、録画されているというような刑事訴訟手続の国であれば、それは供述証拠だけで共謀罪を摘発しますということもあってもいいかもしれない。つまり、自白の強要などのおそれがないという国では、あるいは少なくとも低い国では。でも、日本の場合は残念ながらそうではない。

 もし共謀だけで処罰しようというんだったら、自白の強要のおそれがないように、例えば、少なくとも共謀罪については、取り調べは全部弁護士の立ち会いとか、極端なことを言えば。逆に、そういうことをくっつけるならば、条約の趣旨から考えても、ある意味ではその共謀だけで処罰するということはあるかもしれない。だけれども、日本の刑事訴訟体系が今そうなっていない以上は、供述証拠だけではだめだという本来ある意味では刑事訴訟法的な部分のところを確保、担保するためにも、一定の行為が必要なんじゃないか。

 だとすると、その行為自体が一定のある犯罪の方向に向かっている、少なくとも、ああ、こういう合意があったという供述証拠を、確実であるなということを思わせる程度のものでないと、こういう規定を置いても、結果的に余り意味がないとなってしまうんじゃないか。こういうことを我々は危惧をしているということだけ申し上げて、ぜひ柔軟な対応をお願いしたいと思います。

 ちょっと通告していなかったので、答弁は場合によったら結構ですので、一方的にこちらから問題点の指摘をさせていただきたいんですが、私は英語ができないものですから、条約の解釈ということについて余り従来立ち入ってきませんでした。ところが、三十四条の、例の国際性の要件を入れちゃいけないという規定のところ、ここは大きな論点になっているわけですけれども、原文となる英語も、できないなりに今改めてちょっと読んでみて、なおかつまだ私自身も結論は出ていないんですが、果たして、政府がおっしゃっている解釈が絶対なのかということ自体が私はちょっと疑問があるということを指摘しておきたいと思います。

 日本語訳の条文で話をしますけれども、第五条等の規定に従って定められる犯罪については、国内法において、国際的な性質とは関係なく定めるというのが条約の条文です。第五条の規定に従って定められる犯罪についてはが主語です。第五条の規定に従って定められる犯罪というのは共謀罪です。共謀をするということについて犯罪化をする。ことについてはが主語です。述語は、国際的な性質とは関係なく定めるということを言っています。つまり、共謀そのものが越境性を持っている必要性を課してはいけませんよという規定にも読めませんかという問題提起です。

 いいですか。条文に書いてあるのは、五条の規定に従って定められる、つまり共謀罪については、国際的な性質とは関係なく定めると書いてあります。ここに書いてあるのは、実は厳密に言いますと、我が国で取り上げている、今問題になっている共謀罪の規定だけではありません。「組織的な犯罪集団が関与する重大な犯罪の実行を組織し、指示し、ほう助し、教唆し若しくは援助し又はこれについて相談すること。」というのも五条の中に規定をされています。定義の中に「組織的な犯罪集団が関与する重大な犯罪の実行を組織し、」とありますが、組織的な犯罪集団の外側にいる人たちも入っています。つまり、教唆とか援助とか、これについて相談をするということも入っています。対象は、組織的な犯罪集団の内部の人たちだけではありません。

 それで、この人の、つまり相談をするとか援助するという行動は、組織的な犯罪集団は国際的越境性を持っていて国際的な犯罪をやろうとしている場合であっても、国内で完結をする話です。国内において何かお金を集めてあげて、国内でお金を渡してあげる、援助とかというのはそういう話になります。

 確かに、そういうケースについて、そこ自体が越境性を持っていないとだめだということにしたら、物すごく限定をされてしまうでしょう。自分の国で犯罪が行われないからいいや、実際に例えば人が亡くなるとかというような犯罪については海外で行われるけれども、その共謀だけが国内で行われましたというときに、共謀だけ内で行われたんだから関係ないやということでは、まさにこの条約の目的である、国際的な組織犯罪を防止し及びこれと戦うための協力を促進するという観点からは確かにおかしいでしょう。共謀は国内的な問題だけれども、その共謀の結果行われる犯罪については越境性を持っているんだから、それはちゃんと国内で責任持って取り締まれよという条文なんじゃないでしょうか、三十四条の二項というのは。

 条文を私が素直に読む限りでは、私は英語できないので、繰り返しますが、日本語で読む限りはそう解釈する方が自然であって、さらに言いますと、この条約では、ほかのところ、例えば三条の適用範囲で、「この条約は、別段の定めがある場合を除くほか、」とは書いてありますが、「次の犯罪であって、性質上国際的なものであり、かつ、組織的な犯罪集団が関与するものの防止、捜査及び訴追について適用する。」と、わざわざこの条約の適用の範囲は国際的な犯罪ということが対象なんですという規定を置いているんです。その規定を置いているにもかかわらず、三十四条のところでは、五条、六条、八条、二十三条という、ほとんどあんこの部分のところを全部、国際性は要りませんよと少なくとも外務省は読んでいらっしゃるんだけれども、その読み方自体違うんじゃないですか。わざわざこう置いた上で読むということを考えると、国際的な犯罪を取り締まるためだけれども、共謀が国内だけで行われた場合でもちゃんと取り締まれと読むべきではないのかと私は思います。

 ぜひそこのところは、多分外務省は硬直的だと思いますので、法務省サイドも、あるいは衆議院法制局、もう一度、例えば、英語のできる方、原文にも戻って改めて考えていただくと、そもそも条約の留保とか以前の問題として、国際性の、つまり、共謀をする犯罪は越境性を要件とする、共謀自体は国内だけで行われても犯罪の対象にするということで、条約の文言には反しないとなると私は思います。

 もしそうでないというのだったら、この間ずっと言われてきている、条約締結に至るプロセスの、交渉過程の資料を出してくださいという話にやはり戻らざるを得ないんじゃないかというふうに思いますということを申し上げて、次の質問者に今回はかわります。もう一、二回質問させてください。

 以上です。

石原委員長 次に、保坂展人君。

保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。

 昨日来理事会で問題になっていますが、入管法の審議の際に、我々野党の側から、もっと資料はないのかと、我々、ポンチ絵を二枚だけいただきましたけれども、その図面だけ見ても、これはいろいろ背景を考えなきゃいかぬということで、要求していました。しかし、余り資料はたくさんは来ませんでした。

 しかし、何と法務省のホームページに、関係する入管の書類だけで、最適化計画といいますが、全部打ち出せない、二千ページぐらいに及ぶ大資料が掲載されている。この日付は三月三十一日ですね。つまり、この法案審議の際に、この中で確定しなかったにせよ、しかも、聞いてみると、三月の十日には案としてもうホームページに出していた。であれば、我々に対して、法務省のホームページ、ここを見てくださいということを当然言うべきじゃないか。

 国会審議とは一体何なのか。役所の出す一枚二枚のわずかな資料を見て、膨大な時間をかけて我々は資料を探索し、調査をし、問題はどうあるのかということを一生懸命考えている。しかし、その一方で、ホームページに出してあるということを一言言えばいいじゃないですか。この点、官房長、どうですか。

小津政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、事実関係について若干簡単に申し上げますと、御指摘の資料でございます最適化計画、これは、政府の方針に従いまして、ITを推進するという観点から、今後の業務、システムのあり方を見直すこととしますいわば青写真を描いたものでございまして、レガシーシステムからオープンシステムへの移行など、IT導入による合理化、省力化を推進する上での指針や留意点を示したものでございます。もちろん、中身は、予算とか決定した施策の内容自体を示すものではございません。

 この策定に当たりまして、パブリックコメントをいただきますために、原案を三月十日に法務省のホームページに掲載いたしまして、三月三十一日付で正式決定いたしました。これには膨大な添付資料がございますので、膨大な添付資料とともにすべてホームページ上で見られる状態になりましたのは四月二十一日になってからという事実経過でございます。

 もちろん、バイオメトリックスを活用した出入国審査体制の構築を含む今後の具体的なシステムの設計、開発につきましては国会で御答弁したとおりでございますし、それと異なる内容がこれに書いてあるわけではございません。

 しかしながら、こういうものがあるのであればもっと積極的に提供するべきではなかったかという委員の御指摘であろうと思われますので、その御指摘につきましては、我々法務省が資料を御提供するときに十分に留意して今後対応させていただきたいと思っております。

 以上でございます。

保坂(展)委員 杉浦法務大臣、今の点なんですが、原則なんですけれども、きのうこの自動化ゲートの写真をもらいましたけれども、こういうものをやはり審議中に見たかった。それから、たくさんあるんです、三月十日時点でホームページにアップされているものも。何かないんですかと言われて、いや、これしかないんですというようなやりとりを何回したかわからない。

 これからはしっかり法案審議の際には資料を出すこと。それで、今審議中ですね、この法案。大事な法案です。こういうものに対しても、すべからく、同じようなことに絶対ならないように、事務方にきちっと指示をしてください。

杉浦国務大臣 私も今、お伺いしたのは初めてでございますので、御趣旨、今官房長が答弁いたしましたが、よく事情を聞きまして、今後きちっと対応したいと思います。

保坂(展)委員 それでは官房長、この法案に係る資料で、今審議中ですよね、後からこんなものがあったのかなんということがないように、すべからく提出するということを答弁してください。

小津政府参考人 御指摘の点につきましては、事務方では、刑事局及び我々官房の方でそのように対応いたしているつもりでございます。

保坂(展)委員 もう一度、出していないものがないのかどうかも点検をしていただきたいということも言っておきたいと思います。

 では、本案に入ります。

 まず、今回の逐条解説なんですが、刑事局長に伺います。

 前回の答弁では、この逐条解説書によると、共同の目的の解釈のところですが、必ずしも暴力団などに限らないんだ、会社であったり、こういうことでしたが、これは担当者個人の見解または説明を記述したものであって、法務省の確定的な見解でないと答弁されました。であれば、私的著作物と考えてよろしいですか。

大林政府参考人 御指摘の解説書は、立案当時に議論のあった点などについて、担当者個人の見解または説明を記述したもので、法務省としての確定的な見解をお示ししたものではなく、法務省がその出版に関与したものではございません。

保坂(展)委員 その逐条解説はやはり現場でしっかり使われている。これはまさに、この法律をどう読むか、国会審議録よりよっぽど使われているはずなんですね。私的に、法務省は関与しないという内容でいいんですか。私的な著作物というふうに解釈できるんですか。どうですか。

大林政府参考人 御指摘の解説書は、立案作業に従事した担当者が書いたものです。ですから、その意味では、その法案の背景なり審議状況なり詳しい者が書いておりますので、非常に現場において参考になるものであることは間違いない、こういうふうに思います。

保坂(展)委員 では、私的な著作物ではなくて法案施行後に大変参考になるコンメンタール、だけれども法務省が関与するものではないという不思議な存在なんですが、昨年この問題をやりとりしました。その際に、若干内容において誤解を招く部分があるというふうに大林局長が答弁をされて、これは、きょういただきましたけれども、十一月二十八日付で、これは検察官の見るホームページでしょうか、こういうものに、今お配りの、答弁のある種要約のようなものを記載されたということですね。

 ただ、これを読んでも、逐条解説書のどこに誤解を招く表記があるのかということは書いていないんですね。そうですね。そうすると、その相関関係は、つまり、逐条解説書のどの点、どの記述に誤解を招く点があったんですか。誤解を招く点があったのであれば、そこを正すというのが法務省の仕事ではありませんか。

大林政府参考人 まず、どの部分が誤解を惹起する可能性があるかという部分については、前にも申し上げましたけれども、組織的犯罪処罰法第二条第一項は、団体について、「共同の目的を有する多数人の継続的結合体であって、その目的又は意思を実現する行為の全部又は一部が組織により反復して行われるもの」と定義していますけれども、これは、社会に存在する多種多様な人の集まりの中から、まずは、ある程度人の結びつきが強く、かつ組織性の高いものを選別するためであり、ここに言う共同の目的それ自体が必ずしも犯罪を実行するものに限られるわけではありません。

 この点、御指摘の解説書では、第二条に言う共同の目的について「その目的自体が必ずしも違法・不当なものであることを要しないのであり、例えば、会社が対外的な営利活動により利益を得ることなども、「共同の目的」に当たり得る。」と記載されていることから、かかる記載だけをもとにした場合には、およそ正当な目的を有している団体についても、今回の法案で新設することとしている組織的な犯罪の共謀罪が成立し得るという誤解を招きかねないと思われたことから、そのような答弁をしたものでございます。

 もっとも、この共同の目的を有する団体のすべてについて共謀罪が成立するわけではなく、共謀罪として処罰されるには、団体の活動として、当該犯罪行為を実行するための組織により行われるものという要件のすべてを満たす必要があるところ、正当な目的に基づいて活動している団体の活動がこれに該当しないということは、第二条だけではなく、第三条の文言をあわせて読めば理解できるところであり、御指摘の解説書にもその旨明記されているところでございます。

 もう一点の問題でございます。

 この検察官周知のものは、検察内部のネットワーク掲示板に掲載し、すべての検察官が閲覧できる周知措置をとったものでございます。

 御指摘のとおり、当該文書では、どのような誤解を招くおそれがあるかという点については特段触れておりませんけれども、この文書の趣旨は、その条文解釈について誤解が生じないようにし、当該法律の的確な運用、適用に努めることにありますので、改めて条文の解釈に関する文書を発出することにより、そのような趣旨は各検察庁においても十分理解されているものと考えております。

 しかも、この文書においては、共同の目的等の構成要件一つ一つについて、その意義や認定要素などが具体的に説明してありますし、団体の活動として、当該犯罪行為を実行するための組織により行われるものという要件について、正当な目的に基づいて活動している団体の活動についてはこれに該当しないということも明記されておりますので、解釈、運用に当たっての必要十分な説明はなされているもの、このように考えております。

保坂(展)委員 時間がないので答弁は短くお願いしたいんです。

 二〇〇三年二月二十六日の朝日新聞に、トヨタ車体という一部上場企業の中に、これは富士松工場というところの社員、元社員の方五名が恐喝及び恐喝未遂で逮捕されたと。これは百名であやめ会という団体をつくっていた。この団体に入るとやくざに顔がきくから言うことを聞いた方がいい、高額な置物などを買わせていくというような、そういう実態があったわけですね。大きな工場とか大きな会社であれば、そういうことも起こり得るわけですね。

 これは刑事局長に聞きますけれども、与党修正案の団体要件もこれはどうもクリアしているというふうに思われるんですね。あやめ会、こういう団体が共謀罪に該当するような四年以上の対象犯罪について何らかの謀議、共謀を行ったときには、この共謀罪は成立するというふうに考えていいですね。

大林政府参考人 先日から申し上げているとおり、犯罪の成否は個別具体的な事実関係によりますので、一概にお答えすることは困難でございます。

 ただ、これまでも申し上げているとおり、団体に該当するためには、その集団が、その所属する団体と別個の独立した社会的存在としての実体を有することが必要だということがまずございますし、団体と内部の集団との指揮命令関係とか、集団の位置づけとか構成、その集団の活動によって当該集団や団体が享受する効果、利益などの事情を考慮し、社会通念に従って判断されるということでございますので、一概に今のものが当たるかどうかというのは言えないというふうに思います。

保坂(展)委員 いや、これは本当にぴったりの事例で、三千円の会費を取っていたんですね。百人、だから、毎月三十万徴収していたんですね。何でみんな払うのか、やくざに顔がきくから。時々、その構成員に高い物を買わせるということで、恐喝ないし恐喝未遂で逮捕された。もちろん、会社の社員ではあるけれども、会社の業務として行っているわけじゃない。まさにそういった犯罪における収益、このあやめ会、その五人が逮捕されていますから、そういった若干の収益分配があったのかもしれないということが実例としてあるんですね。

 ちょっと時間がないので、提案者に対してお願いしている質問に移ります。

 前回、早川さんの方で答弁していただいた内容が若干かみ合っていないところがあったかと思います。

 インターネットを使って、与党修正案の団体要件をクリアしてというのが前提です。ですから、団体には当たらないという答弁はだめです。クリアして、ネット上の掲示板や会議室などで、場合によっては暗号とか符牒を凝らして書き込んだ。これは共謀罪に該当するケースというのは当然あるわけですね、今のネット環境などを見れば。

 ただ、そのときに、実行に資する行為というのはどこに見られるんだろうか。あるいは、実行に資する行為がない状態というのはどこに線引きされるんだろうか。答えていただきたいと思います。

漆原委員 いつも具体的事例を出してもらってありがたいなと思っているんです。

 ただ、団体をクリアしたというお話ですけれども、本当に組織的犯罪集団が後々証拠に残るような共謀の内容の事実をインターネットでやりとりすることというのはあるのかなというふうに思って、まず、ほとんどないのではないかというふうに思いますが、理論上はあるかもしれないということで、まことに希有な事例で、理論上という前提でお答えさせてもらいます。

 インターネットの掲示板において、犯罪組織に属する者が、その組織の活動として特定の重大な犯罪を実行することを具体的、現実的に合意したとしても、その段階ではまだ共謀ですね。実行に資する行為がなされたと言うには、さらに、共謀の成立の後に、共謀する行為とは別の、共謀に係る犯罪の実行に実質的に役立つ行為、この三つの要件が必要なわけであります。例えば、インターネットの上での共謀の後に、凶器を購入するなどの行為が必要だと思います。このように、仮にインターネット上で共謀がなされたとしても、それとは別に、犯罪の実行に資する行為がなければ、共謀罪として成立しない。

 ただ、インターネット外で行われる必要があるのかということも考えられますが、必ずしもインターネット外で共謀に資する行為が行われる必要はない。例えば、インターネットで凶器の購入をする申し込みをするとか、電話するのと同じことですから、そういうことが行われる場合には、実行に資する行為があったというふうに考えられるのではないかというふうに考えております。

保坂(展)委員 私も少年問題をやっていて、殺人サイトとか恐ろしいサイトがあるんですね、人の殺し方の研究をやっているんです。こういうものというのは、どこまでが冗談でどこまでが本当かわかりません。ですから、ここはもうちょっと深めたいんですが、もう一点、質問を予告していますので。

 きのうの参考人の藤本さんとのやりとりでお話しさせていただいた、実行に資する行為の与党修正案の三条件ですね。いわゆる共謀に事後的なものでなければならないということでした。

 ですから、先ほど枝野委員からもありましたように、例えば、工具とか地図などを箱の中に入れておいて、その箱に座って主犯格がみんなを呼び寄せて、さあやろうと共謀が成立したところで、例えば現行犯で、何らかのことで踏み込まれて、見つかった、ここへあるじゃないかという場合に共謀罪は成立なのかというと、先生方は成立じゃないとおっしゃる、藤本先生は、それはまあ同じでしょうというふうにおっしゃった。

 このあたりのことについて、非常にこれは、厳格にそのような立法者の意図を捜査機関がきっちり受けとめてやるかどうかという問題にもかかってきますよね。非常にあいまいなのは、では、実行に資する行為、例えば、そのふたを本人があけた、みんなが見た、これは実行に資する行為になるのかとか、いろいろ細かく考えていければいくんですが、そういう原則、今立法者の言う三条件というのは、本当に厳格化ということで捜査現場で遵守されるのか、これについて答弁をお願いします。

漆原委員 実行に資する行為というのは共謀した内容を実行に資するということでございますから、共謀のあった後に行われなければならないということは、これは条文上明らかでございます。

 したがって、今おっしゃったように、事前にあったというだけでは共謀罪の処罰要件を満たさないということになります。

保坂(展)委員 もう時間なのですが、事前にあったかどうかというのも非常にあいまいだと思うんですね。

 その共謀があった部屋に箱があって、資する行為に値するような物品が置かれていた、場合によっては予備に近いものかもしれませんけれども。そこはちょっと、厳格化、今その原則を言われましたけれども、捜査現場でそれが本当に遵守されるのかというのが質問でしたが、ちょっとお答えがいただけなかったので、またそこは議論させていただきたいと思います。

漆原委員 それはまさに証拠の問題でありまして、共謀の後にその物が用意されたという事実が証拠上認められなければ犯罪の処罰要件を満たさない、こうなりますから、私は厳格になっているというふうに考えております。

保坂(展)委員 では、議論の途中ですが、終わります。

石原委員長 次回は、来る十二日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二分散会


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