衆議院

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第24号 平成18年5月12日(金曜日)

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平成十八年五月十二日(金曜日)

    午前九時三十四分開議

 出席委員

   委員長 石原 伸晃君

   理事 倉田 雅年君 理事 棚橋 泰文君

   理事 西川 公也君 理事 早川 忠孝君

   理事 松島みどり君 理事 高山 智司君

   理事 平岡 秀夫君 理事 漆原 良夫君

      赤池 誠章君    稲田 朋美君

      近江屋信広君    太田 誠一君

      笹川  堯君    柴山 昌彦君

      下村 博文君    平沢 勝栄君

      三ッ林隆志君    水野 賢一君

      森山 眞弓君    矢野 隆司君

      保岡 興治君    柳澤 伯夫君

      柳本 卓治君    石関 貴史君

      枝野 幸男君    河村たかし君

      小宮山泰子君    細川 律夫君

      伊藤  渉君    保坂 展人君

      滝   実君    今村 雅弘君

      山口 俊一君

    …………………………………

   法務大臣         杉浦 正健君

   法務副大臣        河野 太郎君

   法務大臣政務官      三ッ林隆志君

   外務大臣政務官      山中あき子君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    縄田  修君

   政府参考人

   (警察庁交通局長)    矢代 隆義君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    大林  宏君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 辻   優君

   法務委員会専門員     小菅 修一君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案(内閣提出、第百六十三回国会閣法第二二号)


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     ――――◇―――――

石原委員長 これより会議を開きます。

 第百六十三回国会、内閣提出、犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案並びにこれに対する早川忠孝君外二名提出の修正案及び平岡秀夫君外二名提出の修正案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として警察庁刑事局長縄田修君、警察庁交通局長矢代隆義君、法務省刑事局長大林宏君、外務省大臣官房参事官辻優君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石原委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

石原委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河村たかし君。

河村(た)委員 おはようございます。河村たかしでございます。

 きょうは、ちょっと初めに、まず事例に即して、よく質疑にもありますけれども、今回の共謀罪と称される罪が適用になるかどうか伺っていきたい、こういうことでございます。

 まずは、これは私の事例なんですけれども、名古屋に、「消された校舎」という本になっていますけれども、一遍杉浦大臣にもお願いしたことがあるぐらいなんですが、ある戦前の立派な校舎、建物がありまして、私は古い建物が大好きなんですよ。歴史的建造物、こういうものを簡単に壊す文化というのはとんでもないということで、実力を行使してでもそれを阻止しようということで、端的に言いますと、校門に自分の体をチェーンで結わえて、数カ月にわたって座り込みをやって、これは私は訴えられました。河村たかしは座り込みなどをして取り壊し工事を妨害してはならないとの仮処分を求めるということです。一人だけではありません、多いときには百人ぐらいの方が座り込んでおったと思います。

 それで、私の場合、旭丘の場合は、それは不幸にも全くうそでした。実際は、耐震診断等はやっていません。非常に丈夫な建物で、文化庁なんかも、申請すれば登録有形文化財になりますよと文書で回答した。文教委員会で、残してほしいというような当局のお話があったようなんだけれども、うそによって取り壊されたということです。

 私の場合は、その旭丘ばかりじゃなくて、ほかのそういう歴史的建造物をやはり日本の国の中へたくさん残していくという信念がありますもので、その後も、滋賀県の豊郷小学校、あそこも参りまして、取り壊し阻止のためにじいさん、ばあさんが教室の中におりましたが、皆さんと一緒に、励ましたり、運動をしてきた。

 それから、ほかにも、例えば銀座に、あれはライオンだったかな、ビアホールがあります。あれもええんですよ。部分保存になっていますけれども、あれを壊すといううわさがあったものだから、私は電話をかけて、もしそういうことをやるなら、全国の酒飲みに呼びかけて、目の前に座り込むぞ、実力でも阻止するということをやっておる本人でございます、私は。

 それで、結局、こういうような活動については、この問題の罪に当たるかどうか。まず初めの、組織的な威力業務妨害罪ですか、これは現に私、阻止しましたからね、工事に一人入ってきたものだから。いや、本当ですよ、実力でなければどうにもならぬのだから。こういうものに政治は全く動きません。オール与党で全然だめ。

 こういうことでやってきましたけれども、まず、組織的な威力業務妨害罪に当たるかどうか。

早川委員 犯罪の成否というのは、個別具体的な事実関係によりますので、これを離れて一概に結論をお答えすることは極めて困難であることをまず御了解をいただきたいと思います。

 そこで、あくまで一般論として申し上げますと、与党修正案の組織的な犯罪の共謀罪が成立するためには、その共同の目的が重大な犯罪等を実行することにある団体の活動として、犯罪行為を実行するための組織により行われる重大な犯罪を実行することについて、共謀、すなわち、具体的かつ現実的な合意が行われたという要件のすべてを満たすことが必要であります。

 お尋ねの座り込みについてでありますけれども、これが威力業務妨害罪に言う威力に該当するか否かがまず問題となり、これに当たらない場合には組織的な犯罪の共謀罪は成立しないことになります。

 次に、お尋ねのような市民団体が組織的犯罪処罰法の団体に該当するか否かが問題となります。同法の団体とは、共同の目的を有する多数人の継続的結合体であって、その目的または意思を実現する行為の全部または一部が組織により反復して行われるものをいいます。この組織とは、指揮命令に基づき、あらかじめ定められた任務の分担に従って構成員が一体として行動する人の結合体をいいます。これは同法の第二条の第一項に明定されているところであります。

 したがいまして、お尋ねのような市民団体につきましては、構成員が対等の立場で活動しているのが通常であろうと思われ、構成員の間に指揮命令関係等がない場合には、そもそも本条に言う団体に該当せず、組織的な犯罪の共謀罪は成立しないことになります。

 また、お尋ねのような、座り込みをすることになっているメンバーが犯罪を実行するための組織に当たるか否か、すなわち、いわば実行部隊のように、威力業務妨害を実行することがその組織の構成員の結合関係の基礎になっているか否かが問題となります。通常の活動のための組織における指揮命令等を犯罪行為に利用したにすぎないような場合には、犯罪行為を実行するための組織に当たらず、したがいまして、組織的な犯罪の共謀罪は成立しないことになります。

 さらに、お尋ねのような市民団体が、与党修正案の団体の限定要件、すなわち、その共同の目的が重大な犯罪等を実行することにある団体に該当するか否かが問題となるところでありますけれども、ここに言う共同の目的とは、結合体の構成員が共通して有し、その達成または保持のために構成員が結合している目的、すなわち構成員の継続的な結合関係の基礎になっている目的をいうと解されておりますから、当該犯罪を実行することが構成員の継続的な結合関係の基礎になっていることが必要になると考えられます。

 そして、団体の共同の目的が何であるかにつきましては、当該団体全体の活動実態などから見て、何が構成員の継続的な結合関係の基礎になっているかが社会通念に従って判断されるべきものと考えられます。

 そこで、お尋ねの市民団体は、文化財的価値があるとして校舎の保存を求めるために同校のOBで形成され、校舎建てかえへの反対運動を行っていたということでありますから、これを前提としますと、その構成員の継続的な結合関係の基礎になっている目的はそのような正当な活動を行うことにあると認められるのが通常であると思われます。そのような団体において、仮に重大な犯罪に当たる行為を行うことを意思決定したとしても、そのことだけで直ちに、構成員の継続的な結合関係の基礎になっている目的がそのような犯罪行為を実行することにあると認められることにはならないと考えられます。

 したがいまして、そのような場合には、その共同の目的が重大な犯罪等を実行することにある団体に該当せず、したがって、組織的な犯罪の共謀罪は成立しないことになります。

 以上のとおり、与党修正案の組織的な犯罪の共謀罪が成立するためには、これらの要件のすべてを満たすことが必要であります。これらの一つでも満たさない場合には、組織的な犯罪の共謀罪は成立しないものと考えられます。

河村(た)委員 いや、しかし、聞いておると、これはそのまま当てはまるのではないかと私は思いますね。何なんですかね。これは反対じゃないですか。この工事を阻止するのは、はっきり言いまして、そんな生易しい話じゃないですよ、本当に阻止しようとすると。何か皆さん、議員の場合はわあわあ言っておるだけのが多いですけれども。

 今聞いてきましたけれども、共同の目的が継続している、これは明らかに、要するに、みんなで、旭丘高校の場合でも、まず残そうか、耐震診断をやろうか、いろいろやっているんです。

 これは、途中から、座り込みと実力によって阻止せざるを得ない、そういった場合、何人か外れるんです、やるとわかるんですけれども。私はそこまではやらないという人が出てくるんですよ。そこから変容していくんです。

 その団体の目的、共同の目的、実力を行使しても工事に入ってくる人を阻止することになるんですよ。継続して行う、数カ月にわたって連続です。一遍や二遍でも継続と言えるかどうか知りませんけれども、ずっと数カ月、どれだけやったかな、物すごく長かったですよ。

 それから、指揮命令系統、これもちゃんとないと連絡もとれませんし、食事も要るんですよ。朝飯、握り飯を食べたり、食事も要る。それから、実際、工事に入ってくるといけませんので、そういうときにお互いにどうするか、そういう連絡もとるということは間違いなくありますよ。

 それから、いろいろばっと言われたんで、全部私も書けなんだけれども、実行部隊の結合関係、これはすごいですよ。これは本当に、そういう組織集団は強いと思われますけれども、本当に気持ちを持ってやっておる人たちの目的というのは強いんですよ。そうでしょう。ほかのいわゆる暴力団とかそういうのと違いますから、本当に目的が一致していますので、実力を使ってでも絶対取り壊し工事を阻止する、こういうことですよ。

 それから、目的を全体で見ると言われましたけれども、全体は物すごくクリアですね。それから、基礎になっている目的が、そういう歴史的建造物を保存するということ。

 だから、問題は、もし早川さんがそう言うなら、それでは、あなたたちの修正案にそういうふうに書いていないでしょう。目的は、外れるのは、一番最後の前二項の適用に当たってはかな、どっちですか。とにかく、目的がよければいいという条文はないんですね。言っておるのは行為だけなんです。それでは、これははっきり言って当てはまり得るんじゃないんですか。一体どこが違うんですか。

早川委員 まず、修正案についてのお尋ねだと思いますけれども、河村委員がお読みになっている部分の読み方の話から申し上げますと、あくまでも修正案というのは、構成要件を明確化し、かつ、限定しようという目的であるものであります。

 そこで、政府原案の団体の活動の中に括弧書きとして、「その共同の目的」が重大な犯罪を実行することにある団体、こういう書きぶりの中の「その」というのを活動のというふうに読んでしまうと、それが誤解のもとになってしまう。その共同の目的が重大な犯罪を実行することにある団体、これは結局、その目的というのは団体に係るということは文理上明らかなんですけれども、ただ、なかなかわかりづらい。その前の言葉に引きずられて解釈すると、「その」というのが活動のというふうにどうも読み込まれてしまったのかなと。弁護士会等でもいろいろな御意見がありますけれども、どうも、その前の文言に引きずられてしまって拡大解釈の余地があるのではないか、こういうことで心配が示されたわけであります。

 しかし、基本的には、構成員の継続的な結合の基礎となる目的が重大な犯罪を実行することにある、そういう団体というふうに限ると限定をしたことによって、実は組織的な犯罪を行う集団だけが対象なんだというふうに限定をさせていただいたつもりであります。

 ところで、今、河村委員のような御指摘があって、これが一般に非常に流布をしてしまう、誤解だということの内容がなかなか理解いただけないということの中で、我々、再修正ということを民主党の議員とともに提案をさせていただきたいということで精力的に作業をしているところであります。

 そういうことで、言ってみれば、これは参考人として櫻井参考人がお話しになりましたが、組織的な犯罪集団ということに絞ってというお話がありました。そういうことで、再修正の作業の中身には、この文言、法律の文言の中に、組織的な犯罪集団、こういう用語をつくるということを今提案を検討させていただいているところであります。

河村(た)委員 そうすると、これは本当にきちっとしていかないと、適用になるといっておどされるだけでもかなわぬわけですよ、実際。それは、座り込みなどをしなくて、ほかの、議員がしっかりやってくれて実際に動けば別なんだけれども、そうでない場合。

 そうすると、よく考えてみると、どうも、初めはいい目的だった場合、歴史的建造物を残そう、こういうような場合はよくて、では、初めから、こういうのがあるかどうか知りませんけれども、よく占有屋というのがありますね、あれは罪になるでしょう。どこかで立ち退きなんかを請求されたときに、初めに入って、組織的にそういうことをやって、嫌がらせをやって何か金を取ろう、こっちは入りますね。

早川委員 今、河村委員が御指摘になった事例が、例えば、要するに、強制執行を妨害する目的のために暴力団等がそういったところを占拠しているというようなケースを念頭に置かれたのかなと思いますが、いずれにしても、個別具体的な事案に基づいて判断をしなければならないという大原則があります。

 そういう状況の中で、その構成員の継続的な結合の基礎となっている目的が重大な犯罪を実行することにある団体かどうかということ、さらには、組織的な、要するに、そういった重大な犯罪を実行する組織があるのかどうか、そういったことを個別具体的に判断する、そういうことになりますので、一般論としてはちょっとお答えしづらい話であります。

河村(た)委員 いや、これは一般論として答えてもらわないかぬですよ。何でかといったら、法律をつくるんですから、日本の国民の皆さんがこれを読んで、自分が罪になるかどうか、これを判断しないといかぬですからね。これを罪刑法定主義というんでしょう。結局、それが市民生活を守るということですから。これはあなた、答えないかぬですよ。

 今言ったように、例えば、工事を妨害しよう、もともとそういうような目的だとどうもだめで、絶対有罪という意味ではないからね、ここは裁判所じゃないんだからいいんですよ。だから、そういうものはどうも危なそうだと。反対に、当初の目的はどうもそうではなかった、もっと文化財を守るとか、ほかにもあるかもわからぬけれども、当初の目的は社会的に立派な目的であった、しかし、途中から実力行使もやむなしというふうに変貌していった場合は、これはやはりいいんですか。

 だから、そうならそうでちゃんと書いてもらわないかぬ、そういう意味での基礎の目的だと。基礎の目的だけだったら、途中で変貌したなり、変貌したのかわかりませんよ、座り込みの例で私は体験しましたから。座り込むというと、これはやはり人間がかわるんですよ、共通している人もおりますけれども。かわるといったって全部かわるみたいじゃないけれども、これはやはり嫌だという人がおるんですよ。赤穂浪士じゃないけれども、わしは討ち入りは嫌だという人もおったでしょう。そういうふうになるんですよ。その場合、基礎の目的というのはやはりあるんですよ、取り壊し工事を妨害するというのは。

 この辺、どうですか。それならはっきり書いてちょうだい。

早川委員 まず、御質問の内容を正確に把握しなきゃいけないんですが、正当な目的で活動していた団体が、その後、重大な犯罪等を実行する目的で活動するようになった場合にはこれに該当するのかどうか、こういう御質問だと思います。

 そこで、団体の共同の目的が何であるのかを判断するに当たっては、団体の過去の性質や共同の目的の変質の有無が問題となるものではなく、その時点において、継続的な結合体全体の活動実態などから見て、客観的に何が構成員の継続的な結合関係の基礎になっているのかが社会通念に従って判断されるべきものであります。お尋ねの点につきましては、その時点における共同の目的が重大な犯罪等を実行することにあると認められるか否かによるものと考えられます。

 なお、ある特定の時期に、ある特定の犯罪に当たる活動をしたことだけで直ちに、その団体の共同の目的が重大な犯罪等を実行することにあると認められるわけではなく、いまだ重大な犯罪等を実行することが構成員の継続的な結合関係の基礎になっているとまでは認められない場合には、その共同の目的が重大な犯罪等を実行することにある団体には当たらないことになります。

 また、過去に正当な目的で活動していたことがある団体であればおよそこれに当たらないのかどうかということがもし御質問の趣旨であるとすれば、過去に正当な目的で活動していたことがあったとしても、その後その団体の性質が一変し、共謀が行われた時点において、重大な犯罪等を実行することが構成員の継続的な結合関係の基礎になっていると認められる場合には、その共同の目的が重大な犯罪等を実行することにある団体に当たることにもなります。

 もっとも、ある特定の時期に、ある特定の犯罪に当たる活動をしたことだけで直ちに、その団体の共同の目的が重大な犯罪等を実行することにあると認められるわけではなく、いまだ重大な犯罪等を実行することが構成員の継続的な結合関係の基礎になっているとまでは認められない場合には、その共同の目的が重大な犯罪等を実行することにある団体には当たらないことになるのであります。

河村(た)委員 これはやはり大変です。今はっきり言われたように、これはその時点において判断すると。過去がどういうことであったかというのは、今はっきり、そういう過去の目的ではなくと言われたな。

 過去の目的ではなく、その時点における目的が基礎になっているかどうか、どういう目的が基礎になっているかどうかで判断するということになると、傍聴人もようけ来てみえる人がおるけれども、これはやはりなりますね。これはやはりなるんです。これは、取り壊し工事の妨害とか、いろいろな工事をやるものはありますね、そういうのを妨害しようというのは、これはなります。だから、ここは、なるならなるとはっきり言ってもらわないかぬ。今言った話で、初めの推定が違いますよ。なり得ると言ってください。

 では、歴史的建造物を、例えば東京駅前に今郵便局の建物が、古いものがあります。丸ビルを壊してしまったけれども、あれもいい建物なんです。大阪にもあります。大阪中郵、あれを壊すという話も聞いておる。これはとんでもないと。ああいう建物というのは森の中の大木みたいで、巨樹みたいなもので、例えば東京丸の内が物すごい近代的なビルばかりになったとしても、ああいうものが一つ残っておるのは非常にいいのです。東京駅自体がそうでしょう。

 それで、絶対だめだということになって、そうやってやっておるうちはいいけれども、それでは、みんなで郵便局の前に人間の鎖かなんか知りませんけれども全員座り込んで、絶対工事をさせないとなったら、これはやはりなりますよ。

早川委員 私は、ならないというふうに思います。

 といいますのは、そもそも、いわゆる組織的な犯罪集団という概念に今のようなケースが当たるというふうにお考えになること自体が果たしていいのかどうか。そこまでのことを考えて今回のいわゆる条約刑法が提案されているわけでは全くないわけであります。

 そういう状況の中で、もちろん法文の書きぶりがひとり歩きするおそれがあるのではないかという心配の中で、それをどうやって限定するかということの工夫を重ねてまいりました。さまざまな懸念を全部なくしていくために、最終的には、組織的な犯罪集団という用語を用いることによって、御指摘のような事例にまで適用されることがないようにしたいというふうに考えているところであります。

河村(た)委員 やはりよく考えてみると、今の認識の中には、過去の行為の実績というのは早川さんにも入っているわけですよ、なぜそういうのがならないかという。暴力団というか、暴力団でなくても、そういういわゆる占有屋というのはなり得るだろうと思うけれども、そういうのが当たって、では、なぜ、建物を壊さずにみんなで頑張ろうというのがならないかというと、やはりその当初の目的、これが頭の中に入っておるんですよ、早川さんの頭に。だから、当然、犯罪集団とは言えないよと言うんだったら、法文も、やはり言い方を変えてもらわないかぬですよ。それがあるとこっちは言っておって、絶対ないとおかしいもん、今の話は。

 犯罪というか、そういうものをやる場合に、過去のことを書くというのは悩ましいと思いますけれども、そういうような違いですね。その場に着目してやったら、同じですよ。その場で取り壊し工事を妨害しておる、これは同じですよ。だから、そういうふうに書くことはできないのかということですね。

杉浦国務大臣 私が指名されているわけじゃないので……(河村(た)委員「杉浦さんに頼んだけれども、やってくれなんだがね、校舎の取り壊し」と呼ぶ)ああ、あの一中のやつね。河村先生は愛知一中、私は愛知二中の出身で、あれは本当に残したかったですけれどもね。私は、柳澤先生も関係しておると思うけれども、歴史的建造物の保存を進める会の会員でございまして、歴史的建造物がなくなっていく、何とかしたいと思っている一人であります。(河村(た)委員「行動せないかぬよ、大臣。会員だけでは何にもなりゃせぬ」と呼ぶ)できるだけのことはしているつもりなんですが。

 ただ先生、先生のお話を伺っておって、威力業務妨害罪、場合によってですよ、反対運動をやっていて、座り込んでということは、威力業務妨害罪に当たる場合があるかもしれないとは思うんですが、この法律の組織犯罪の対象となる共謀とか云々には全く無縁だということは御理解いただかなきゃいかぬと思うんです。

 最初の目的はよかったけれども途中でおかしくなったということもあるという、法律上の説明は非常に難しい説明なんですが、御説明があったとおりなんですが、典型的な例は、リフォーム詐欺集団ですね。

 僕の地元で一社あったんですが、もともとはまともなリフォーム会社だったわけですが、途中で、会社ぐるみでリフォーム詐欺を始めたわけです。会社ごと全員逮捕されましてあれしましたが、これは、途中で社長がかわって、会社ぐるみで年寄り相手の詐欺リフォームを始めたわけで、こういう場合には、この法律が成立しておれば、犯罪行為を行う会社になっちゃったわけですから、この法律に基づく共謀というのも適用の余地はあるかもしれません。

 しかし、先生のおっしゃる反対運動、これは正当な目的を持った結合体ですから。ただ、その反対運動の一部分が、それは威力業務妨害罪に当たる場合もあり得るかもしれません、場合によっては。しかし、この法律で言う共謀罪の適用があるかどうかになったら、それはもう全くないというふうに思っていただきたい。この共謀の適用になるのは別だと思います。

河村(た)委員 今言われた、要するに、威力業務妨害罪が成立し得るんだったら、それを共謀してやればあり得るわけでしょう。だけれども、まあええわ、ちょっとほかのがありますので。

 まず、こういう事例は絶対排除するように、さらに立法作業を、修正作業を進めてもらわないかぬです。そこだけちょっと答弁してください。

早川委員 結局、共同の目的という解釈の中で申し上げておりますけれども、先ほど、文化財を守るためにその団体が形成されている、この目的が共同の目的であるというふうに私どもが説明をしているところであります。それで、そのための修正案を出しております。(河村(た)委員「過去のことだもの」と呼ぶ)

 ただし、それについて、過去のことであっても、全体的に、その団体は貴重な文化財を守るために、たまたまそういった、一部、威力業務妨害罪に当たるような行為が行われているかもしれない、その辺の評価の問題は別ですけれども、団体の共同の目的はそうじゃないんです。あくまでも文化財を守る、こういうために結合している、そういったのが継続的な結合の基礎にある、こういうふうに考えています。

 ただし、今委員が御指摘のように、それでもなお、一般の誤解、不安を招くようなことであれば、それがないようにしていくというのは当然我々の責務だと思っておりますので、そのために、組織的な犯罪集団という用語を法文上明記するということで、今努力をしているところであります。

河村(た)委員 そうしたら、今の話では、当初の目的がやはり頭の中にあるんだね。それがあって、それがあくまでベースにあるからという認識があるんでしょう。そういうのはやはり排除する。

 そうじゃないでしょう。漆原さん、そうじゃないと言っておる。

漆原委員 杉浦大臣からもお答えになったように、最初、正当な会社をやるつもりが、途中でリフォーム詐欺会社の専門集団に変わった、これはまさに、最初の正当な業務、営業活動の目的が途中でなくなる事例なわけですね。

 今先生のおっしゃっている、文化財を保護するために、場合によっては実力行使をするということは、その実力行使をするという段階でも、文化財を守るという大きな目標があるわけですから、全く条件としては違うというふうに思います。

河村(た)委員 それならそれで、ちょっとは安心になるかね。適用について、これは言ってもらうだけで大分違いますよ。

 それでは、当初の目的があるものでもう一つだけ。

 端的に言いますと、この間うち、会社の脱税なんかがありましたけれども、これはどうですかね。逮捕された方、みえましたよね。脱税もありますし、それから有価証券報告書なんかは割と、利益が出ておるように、これはかなり継続的にやっておるのがありますよ、会社の中で。所得税法違反、仮に、二つパターンがありますわね。税金を出さぬ方にする方の脱税の共謀、それからもう一個は利益をわざと出すようにする、これは上場会社なんかであり得ると思うんだけれども。この間うち、これはあったじゃないですか。これは当てはまりますよね。

漆原委員 河村委員は具体的な問題を出して質問していただいて、これは、その都度、与党案の構成要件がきちっと担保されることを示す機会を与えていただいているということで、私は、大変貴重な意見でもあるし、うれしいなと思っておりますので、一生懸命答えさせていただきたいというふうに思っております。

 まず、お尋ねの点についてでございますけれども、先ほど早川委員が申しましたように、犯罪の成否は、まさに具体的事件ごとに事実関係が異なりますので、一概には申し上げられませんけれども、一般論として申し上げますと、与党修正案の組織的な犯罪の共謀罪が成立するためには、その共同の目的が重大な犯罪等を実行することにある団体の活動として、犯罪行為を実行するための組織によって行われる重大な犯罪を実行することについて、共謀、すなわち、具体的かつ現実的な合意が行われたという要件のすべてを満たす必要があります。

 まず、お尋ねのような脱税に関与する会社組織が犯罪行為を実行するための組織に当たるかどうか、すなわち、いわば実行部隊のように、犯罪を実行することがその組織の構成員の結合関係の基礎になっているか否かが問題となりますが、通常の業務のための組織における指揮命令等を犯罪行為に利用したにすぎないような場合には、犯罪行為を実行するための組織には当たらないというふうに考えております。

 次に、お尋ねの会社が与党修正案の団体の限定要件、すなわち、共同の目的が重大な犯罪等を実行することにある団体に該当するか否かの問題になりますけれども、ここで言う共同の目的というのは、結合体の構成員が共通して有し、その達成または保持のために構成員が結合している目的、すなわち構成員の継続的な結合関係の基礎になっている目的をいうと解釈されます。当該犯罪を実行することが構成員の継続的な結合関係の基礎になっていることが必要であると考えます。そして、団体の共同の目的が何であるかについては、当該団体全体の活動実態などから見て、何が構成員の継続的な結合関係の基礎になっているかどうか、これが社会通念によって判断されるべきものと考えます。

 そこで、お尋ねの会社は、通常は正当な営業活動を行っているものと思いますけれども、これを前提としますと、その構成員の継続的な結合関係の基礎になっている目的というのは、そのような正当な活動を行うことにあると認められるのが通常であると思われます。そのような団体において、仮に重大な犯罪に当たる行為を行うことを意思決定したとしても、さらには、お尋ねのように、それを毎年のように繰り返していたとしても、そのことだけで直ちに、構成員の継続的な結合関係の基礎になっている目的がそのような犯罪を実行することにあると認められることにはならないというふうに考えております。

 したがって、そのような場合には、その共同の目的が重大な犯罪等を実行することにある団体には当たらず、組織的な犯罪の共謀罪は成立しないというふうに考えております。

河村(た)委員 そうすると、どうも、目的はあるんだけれども、基礎というのが重要なんだね。何遍も言っていますけれども、基礎。

漆原委員 全くそのとおりでございます。(発言する者あり)

河村(た)委員 それでは、それを書いてもらおうか、平岡さんも言っておるし。基礎を書いておいてくださいよ。

早川委員 もともと、この法律そのものの解釈が、継続的な結合関係の基礎にある目的、こういうことに文言上解釈される、そういうふうに出てくるわけですから、委員が御指摘のような懸念というのは実質上ないわけであります。

 しかし、それでもその辺の疑念が払拭できないということであれば、組織的な犯罪集団、こういう表現ぶりを採用することは適当ではないかと思います。

河村(た)委員 今持ってきてもらったけれども、共同の目的とはとずっと書いてありますけれども、基礎とはと書いていないですね。これは、財団法人法曹会「組織的犯罪対策関連三法の解説」というものには基礎というのはないですよ。

 これはいいんですよ。こういうのは健全なんですよ。普通、党議拘束がかかっておって、修正なんかあらへんわけですよ。こうなると、これが本当の国会ですよ。連続的に修正していくというのは、実は非常にいいことなんですよ。何の問題もないし、本来の姿だ。

 だから、基礎と入れたらどうですか。

早川委員 まず、文言上の問題として、この委員会で質疑をすることによってその趣旨というのは明確になってきていると思うんですが、念のために申し上げますと、現行の組織的犯罪処罰法におきまして、第二条の第一項で、「「団体」とは、共同の目的を有する多数人の継続的結合体であって、その目的又は意思を実現する行為の全部又は一部が組織により反復して行われるものをいう。」という定義があるところであります。

 そこで、この定義規定の文言からは、当然に、共同の目的というのは、個々の構成員がその時々に有している目的をいうのではなくて、あくまでも多数人が共同して有している、かつ、継続的結合体として有しているものでなければならないということになるわけです。

 この定義規定の要件をすべて満たすものだけが組織的犯罪処罰法における団体に該当することから、多数人の継続的結合体であっても、共同の目的を有していないものはこの法律上の団体に当たらないこととなるのもまた当然のことと考えられます。共同の目的は、この法律上の団体に必要不可欠なもの、すなわち団体を団体たらしめている基礎的なものであることもまた明らかであると考えられます。

 このような条文の規定の内容から当然に導かれる解釈としまして、与党修正案の共謀罪の規定に言います共同の目的とは、継続的な結合体の構成員が共通して有し、その達成または保持のために構成員が結合している目的、すなわち構成員の継続的な結合関係の基礎になっている目的であると解されることになるのであります。

河村(た)委員 時間があと五分ですから、それはまた今後に持っていきます。

 警察庁に来ていただいておりますので、これを聞かないかぬですけれども、要するに、免許不提示で捕まえてしまえと。

 これは大事なんですよ。自民党に聞きたいけれども、にせメールだけ、にせメールの真相が何だかんだ言って、本当のテープを提示したのに何で聞かないんですか。これは早川さん、どうですか。自民党。(発言する者あり)

 委員長、時間がないから、質問し直します。

 それは、早川さん、本当に抗議しておきますからね。こういうものこそ、テープをみんなで聞こうということにならないかぬですよ。すごい人権侵害、重大ですよ。

 では、局長、言いますけれども、同種の事犯が奈良県で、ノーヘルメットで走っておった、そこへ、結局、免許を見せろ、こう言うんです。

 皆さん、僕も知らなかったけれども、免許提示の義務というのはないんですね、任意ならあるけれども。やはり謙抑的になっておるだろうと思うけれども、そうやって、いや、それはないですよと言ったら、そんな法律勝手につくるなと言って、それで、逮捕するぞ、手錠かけるぞと何遍もおどされた、そういう事例があって、その後謝罪したという事例がありましたね。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御指摘の事案につきましては、私どもと申しますか、警察庁としては承知しておりません。

 なお、兵庫の事案ですが、これは免許の提示をしないので逮捕したというのではなくて、単車で、バイクで歩道を通行したという通行区分違反で逮捕しているものでございまして、その際に、本人の人物の特定ができず、逃亡のおそれがあったので、これを逮捕したということでございます。

河村(た)委員 何が言いたいかというと、これ、公務員には適用あるとかないとか、前、議論がありましたけれども、はっきり言うと、そういうような交通違反でも、ちょっと反抗する人間、反抗というのは武力じゃないですよ、言うことを素直に聞かぬ人間に提示しろというのは、ちゃんと法律に書いていないんですよ。切符を切るときに提示しなさいと書いていない。そういうものでもみんな逮捕してしまえということを、兵庫と奈良で出てきたから、こんなもの二つ出てくる以上は、実際、捜査機関の中でそれこそ共謀しているんじゃないか、こういうことなんです。だから、これはこの共謀罪と同じような話なんですよ。

 いや、ちょっといけませんよ。だから、きょうは本人に確認したんだよ。きのうメールが来たから、本人にきょう電話して、それで遅くなったんですよ、やはり本人に確認せないかぬと思って。いや、いいです、言ってくださいと言われて、私、すぐ警察庁に言ったんですよ、控室に。だれか聞いておるでしょう。聞いておるとだけ言ってください、あるということだけ。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 大変申しわけございませんが、私どもはこれを確認いたしておりません。

河村(た)委員 これは一時間以上ありますよ。わざと遅くしたんじゃないですよ。本人に電話をかけて、きょうの朝まで連絡がとれなかったんです。こういうのはちょっと不誠実ですよ、局長。

 そういうことでございまして、最後に一つ聞いておこうか。

 身元確認は免許でするというルールがあるのかないのか。

 それからもう一つ、こういうような場合、道路交通法違反で、いろいろ現場でややこしいわけだ。ここのところは、やはり現場のお巡りさんたちにとっても、一つルールがあると安心するわけですよ。だから、そういうようなマニュアルというんですか、結局、免許証を提示しなかったときどうするかとか、そういうのは研修でやっておるのかやっていないのか。もしそういうものがあったら、これは資料として出してほしいということです。これだけ答弁してください。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 身元確認を免許証で行うというのがルールかということであれば、これはルールではありません。必ずしも免許証による必要はないわけであります。ただ、被疑者の人定事項を迅速かつ確実に確認しようと思いますと、これは運転免許証が最も適当であり、また合理的でありますので、通常は本人と運転免許証の顔写真を照合し、本人が運転免許証記載の人物であるということを確認した上で、運転免許証の記載事項により人定事項を確認しているわけでございます。

 それから二点目ですが、身元確認のやり方をどのようにするかということのマニュアルはございませんし、それは……(河村(た)委員「ない」と呼ぶ)はい。(河村(た)委員「指導はしていないのか」と呼ぶ)これは、人物の特定のためにさまざまな方法があるわけでございまして、そのケースケースによりまして必要な措置をとるわけでございます。

 例えば、免許証を持っていないという不携帯の場合もございます。そのような場合にどのようにして特定するかということでございますが、これは、まず、免許証照会によりまして、本人が申し立てた人物に免許が与えられているかどうかを確認いたします。それから、本人がその人物に該当するか否かを確認するために、身分証明書等、人物、人定事項を特定できる他の資料の提示、あるいは家族に電話して確認いたしましたり、あるいは免許証照会を行った結果と、本人が免許証の記載事項について申し立てる事実がございますが、その間に矛盾点はないか、こういうようなことでもって全体の心証を得て、人物の特定をいたすということでございます。(河村(た)委員「奈良のことは調べますと一言言っておいてください」と呼ぶ)

 奈良のことにつきましては、御指摘の案件につきまして、事実等の存在について確認したいと思っております。

河村(た)委員 では、以上です。

石原委員長 次に、平岡秀夫君。

平岡委員 民主党の平岡秀夫でございます。

 共謀罪については本当にたくさんの問題があるということで、まだまだ議論しなければいけないことがたくさんあるわけでございます。今、組織的犯罪集団の問題について特に河村委員の方から質問がありまして、私もこの点についてはしっかりと質問していきたいんですけれども、ほかの論点もあったり時間の都合もありますので、最初に、この共謀罪についての数限りない国民が持っておられる不安の中から、捜査の問題についてちょっとだけ取り上げてみたいと思います。

 実は、私たち民主党は、当局の捜査のあり方について、取り調べとか捜査をできるだけ可視化していくべきだということで法案も提出させていただいておりまして、ぜひこの法案をしっかりと審議していただきたいということでお願いを申し上げておるわけでありますけれども、なかなかこの委員会で審議をしていただけないということであります。

 共謀罪というのは、昔から議論されている中で、一つは、やはり共謀という事実をどう立証するのかというのが非常に難しいということで、例えば自白を強要するようなことにつながってしまうんじゃないか、あるいは誘導的な取り調べが行われるんじゃないかということが危惧されているわけでありますけれども、そういう意味においては、捜査のあり方、私はこの共謀罪を考えるに当たっても、今の捜査当局の捜査のあり方がそれでいいのかということをしっかりと検証してみなければいけないというふうに思っているわけであります。

 そう思っていたところに、たまたま九日の日に、杉浦法務大臣が閣議後の記者会見で、検事取り調べを録画するということについて、これまで少人数のグループで研究をしてきて、ことしの七月から東京地方検察庁で試行的にやってみるということを発表されたというふうに報道されているわけであります。

 そこで、我々は、ぜひこの試行というのをできるだけ早く本格的な実施ということにしてもらいたいと思っているわけでありますけれども、大臣がこの検事取り調べの可視化について試行すると発表されたわけでありますので、どのように試行し、そしてどのように本格実施することを考えておられるのかという点について、大臣の御答弁をお願いいたします。

杉浦国務大臣 取り調べの可視化につきましては、当委員会でも過去何度も御質疑があったところであります。与党の中でも、例えばここにお見えの方であれば、漆原先生は前々から可視化を導入すべきだというお考えの持ち主で、与党内でも議論が行われているというふうに承知いたしております。

 このたび、検察庁における取り調べの録音、録画、可視化を試行、試みに行うことになったわけでございますが、この中身は、裁判員裁判対象事件についてでございます。裁判員制度があと三年後に導入されるということで、今、諸般の準備を進めておられるわけでございますが、検察官が立証責任を負っておるわけですが、その立場で行われた捜査の任意性の効果的、効率的な立証のため必要と認められるものについて、被疑者の取り調べのうち、立証の必要性を考え、取り調べの機能を損なわない範囲内で相当と認められる部分を録音、録画することを試みるものであるというふうに承知いたしております。

 試行期間は、本年七月から一年半程度を当面の予定としておりまして、試行庁は東京地方検察庁とのことでございますが、他の地方検察庁についても、最高検察庁が事件を選び、個別に実施することもあり得ると聞いております。

 試行後にどのような取り扱いをするかについては、試行の結果を検証した上で判断されることになるというふうに承知をいたしております。

平岡委員 裁判員制度との関係もあるのかもしれませんけれども、我々は、裁判員制度と直接的な関係がなくても、これまで代用監獄の問題とかいろいろな問題の中で、こういう密室における取り調べというものがいかに冤罪事件を起こしてきたか、いかに無理やりな自白というものが強要されてきたかということについてるる指摘してきたところでございますので、これはしっかりと取り組んでいただきたいということを法務大臣にはお願い申し上げたいと思います。

 そこで、きょうの新聞を見ましたら、警察庁長官が、いや、検察の方ではやるのかもしらぬけれども、警察じゃそんなことやらないんだというようなことを記者会見で言われたように報道されておりました。

 警察庁にお聞きしますけれども、検察庁段階での無理な取り調べという方が本当は余り多くなくて、むしろ問題なのは警察における取り調べであるというふうに多くの方々は認識していると思います。そういう状況の中で、捜査の可視化を警察庁としては行っていかないんだということについてはどうも腑に落ちないんですけれども、警察庁はこの点についてどのようにお考えになっていますか。

縄田政府参考人 お答え申し上げます。

 警察は、第一次捜査機関として事案の真相を明らかにするということが重要な責務であります。被疑者の取り調べもまさにその目的のために行うものであります。

 警察におきまして、今、可視化ということで録音、録画という御指摘でございますけれども、私どもといたしましては、これは、取り調べの過程の中で被疑者との信頼関係の構築が阻害される。と申しますのは、被疑者にとりまして、取り調べをされる者にとりましては、まさに言いたくないことを言わなきゃいかぬ話になりますし、取り調べ官におきましては、これは反省をして真実を語ってもらわなきゃいかぬということでありまして、まさに、こういった説得の過程というのは人間関係の構築、信頼関係の構築の中で初めてなされるものだろうと思っています。そういった中で、ビデオカメラあるいは録音ということになりますと、そういった信頼関係がどうしても円滑になされることが阻害されるものだろうと考えております。

 これは、取り調べに限らず、一般社会生活の中でも同様の場面、いろいろな事象があろうかと思いますけれども、そういった場面でも同じことだろう、どうしても心理的な圧迫を受け、真実が語りづらくなるという状況は同じだろうというふうに考えております。

 二点目は、組織犯罪の検挙、情報収集活動が非常に困難になる。といいますのは、これは、暴力団を初めこういう組織犯罪のものを調べてまいりますけれども、調べの過程の中では、いろいろな組織の状況あるいは首領の動向等々も聞いてまいります。そういったことにとりまして、あるいは共犯者、関与した者等々の関連もありますが、こういったものが後ほど公にされるというか出てまいりますと、なかなか話しづらくなるといいますか、こういった面で非常に支障があるものと私どもは考えております。

 三点目は、これは第三者のプライバシーが侵害される可能性がある。と申しますのは、取り調べの過程の中で、被害者の状況もかなり話をいたします。そういった中で、まさに悔悟の念を持って、改悛の情を持って話してもらうということにもなります。あるいは、被疑者の親族といいますか、そういった関係のことも当然話もしてまいりますし、取り調べに当たる捜査官のプライバシーにかかわることをいろいろ話すこともございます。そういったことがございまして、いずれにしましても、取り調べの機能が大きく阻害されることになろうか、こういうふうに考えております。この結果、事案の真相解明というのがどうしても困難になる、犯罪の検挙活動自体に支障を来すおそれがあるということでございます。そういうふうに考えてございます。

 警察におきましては、録音、録画の実施につきましては極めて慎重な検討が必要だというふうに考えております。

平岡委員 今、被疑者と警察との信頼関係が大切だというふうに言われましたけれども、ある人の論文の中には、そもそも、公の場で、公権力の行使が行われる場においてそういう信頼関係ということを考えること自体がやはりおかしいんじゃないか、国家権力は、一人の個人を告発しようという権力作用そのものが働いている場にほかならない、もともと公の場だということを言っておられます。

 それから、先ほどの話の中では、こういう制度を導入すると自白が得られなくなったりすることもあるというふうに言っていますけれども、今イギリスで導入されている中では、録音制度を実施してみると、テープレコーダーを用いても、警察官や被疑者が心理的に緊張して、尋問の手続が形式的な紋切り型のものになることはなく、被疑者の取り調べにおける自白率が低下することもなかった、有罪率もほとんど変化が見られなかった、こういうような結果を報告されているということであります。

 いろいろと先ほど、組織犯罪の場合の情報が漏れるとか、第三者のプライバシーが漏れるとか、そういうお話がありましたけれども、その点について言えば、検察庁で取り調べる場合であったって同じようなことがあるわけであります。それから、どのような形でこれを、録音、録画したものについて利用するかというその利用の仕方によってもそういう問題は防げるだろうというふうに私は思うわけでありますので、警察庁、本当に一番問題が多いところは警察でございますから、しっかりと検察庁の動きも見ながら、私はこの捜査の可視化ということについて積極的に、前向きに取り組んでいただくことをここで要請しておきたいと思います。

 時間がないので可視化の話はこれぐらいにさせていただいて、先日来からいろいろ議論されている中で、ちょっと私自身も確認をしておくこと、詰めておかなければならないことがあろうかというふうに思いますので、そのような点についてやりたいと思います。

 まず最初は、重大な犯罪ということでございますけれども、この委員会の二十八日の審議の中で、これは伊藤外務政務官が答弁されていますけれども、重大な犯罪というものを五年以上または五年超とすることについては、この条約の趣旨、目的に反するものでございますというふうに言っておられるわけでありますけれども、私は、念頭に置いているのは多分、条約法に関するウィーン条約だと思うので、反するというよりはむしろ、この条約の趣旨、目的と両立しないのかどうなのかというところが条約の留保について問題になるわけでありますけれども、あえてここで、趣旨、目的に反するものでございますというふうに言われていることが私はどうも納得がいかないわけであります。

 というのも、これは、条約交渉経緯においては、もともと、リスト方式でやったらどうかとかいうようなことも議論されてまいりました。さらには、こういう長期の自由刑について、三年以上とするのがいいのか、四年以上とするのがいいのか、五年以上とするのがいいのか、こういうことについても議論されてきているというそういう中で、これを四年でなくて五年以上とか五年超にしてしまったらこの条約の趣旨、目的に反するとか、この条約の趣旨、目的と両立しなくなる話だというふうに言うこと自体が、私はこれは非常に問題があるというふうに思うわけです。

 そこで、改めて外務政務官にお聞かせいただきたいと思いますけれども、そうした条約交渉経緯に照らしてみても、私は、この重大な犯罪というものについてそれぞれの国の状況においてある程度の幅を持って考えるということは、決して条約の趣旨、目的と両立しないことではないんだということを確認したいと思います。答弁願います。

山中大臣政務官 本条約は、法定刑に基づく一律の基準により定められた重大な犯罪というものを対象として共謀罪等を設けることをすべての締約国に義務づけることにより組織的な犯罪を実効的に防止しよう、そういう趣旨のものでございます。本条約をこのような趣旨、目的に照らせば、重大な犯罪を長期五年以上または五年超の自由刑を定めた犯罪に限定して、長期四年以上五年未満または五年以下の自由刑を定めた犯罪を排除することを認められないというふうに考えております。

 そして、条約の交渉経緯の中で、重大な犯罪をリスト方式により定めるべしとの主張がなされたことはございます。しかしながら、リスト方式も一律の基準により重大な犯罪を定めようとしていた点は同様でございまして、他のすべての国が重大な犯罪について同一の定義を適用しているときに、我が国のみがそれと違う形でつけていい、理由づけをできるというふうには考えておりません。

平岡委員 それじゃお聞きしますけれども、この条約のもともとの趣旨、目的というのは、国際的な組織犯罪の防止、あるいはその取り締まり、それと戦うことだというふうにあるわけですね。

 例えば、A国で四年以上の自由刑のある罪がありました。我が国でもそれは当然あるわけでありますけれども、その四年以上の罪というのが、我が国の法律に照らしてみたらこれは四年以上になっていないというような場合、三年以上、三年ぐらいしかない、三年以下しかないというようなときは、これは、捜査について協力依頼があったときは、これは受けるんですか、受けないんですか、どうなるんですか。

辻政府参考人 捜査共助の問題につきましては、要すればまた法務省の方から御答弁いただきたいと思いますけれども、先ほど、今、趣旨、目的とそれから法定刑を三年以上、四年以上、五年以上、こういう議論があったことの関係について、平岡委員、御質問でございますので補足させていただきますけれども、まさに、どの範囲を対象として共謀罪を定めるかということについて議論があったものでございます。

 そこで……(平岡委員「私の質問だけに答えてくださいよ」と呼ぶ)わかりました。それでは……(発言する者あり)

石原委員長 御静粛に願います。

辻政府参考人 したがいまして、法定刑で特に議論になりましたのは三年か四年かというところでございまして、それを四年というふうにさらに狭めた合意がされたものでございますので、それを超えまして五年とするということは、やはり条約がまさに交渉の経緯で議論をされた点からは外れるものと思います。

 それで次に、もしこれは間違えておりましたらば法務省の方からお答えいただきますけれども、捜査共助につきましては、双罰性という問題があるので、もし双罰性が満たされないものであれば、それは難しいものになると思います。

平岡委員 このように、この条約に基づいてつくったって、できるものとできないものがあるわけですよ。だから、それがそれぞれの国でどういうふうになっているかということは大切なんです。重大な犯罪とはどういうものがあるのかということが大切なんです。そういう意味においては、我が国でこれを五年超というふうに判断すること自体は、決してこの条約の趣旨、目的に反することではないんです。このことを私は確認しておきたい。どうですか。

山中大臣政務官 本条約の趣旨、目的は、先ほども申し上げましたように、法定刑に基づく一律の基準により定められた重大な犯罪を対象として共謀罪等を設けることをすべての締約国に義務づけることというような、組織的な犯罪を実効的に防止しようとすることにあるわけでございますから、そのことを考えますと、仮に御指摘のように重大な犯罪を長期五年超の自由刑を定めた犯罪に限定した場合、一律の基準により定められた重大な犯罪というものを前提として、国際社会が足並みをそろえて国際的な組織犯罪の防止に協力していくという中で、我が国だけがその基準と違う基準を適用するということによって、組織犯罪を防止する国際的なネットワークというものの万が一穴になり、ひいては国際社会から信頼を失うということにもなりかねませんので、それぞれの国の事情はありますが、我が国としては、国際社会と共通の形で推進していくという意思であります。

平岡委員 この法律では参加罪というのもあるんですよね、参加罪。それで、各国の状況として、例えばフランスなんかは参加罪の方式でこの条約を締結しているというふうに聞いておりますけれども、フランスは既に条約は締結したというふうに、四月二十五日の答弁の中で、柴山委員の質問の中で答えられております。このフランスは、締結に当たって何か条約の留保とか解釈宣言していますか。

辻政府参考人 お答えいたします。

 突然のお尋ねですので、もし間違えていれば後で訂正いたしますが、していないと思います。

平岡委員 それで、フランスが対象としている組織的な犯罪集団の犯罪活動に参加するということが参加罪なんですね。この場合に言う組織的な犯罪集団というのは、定義としては条約の中にありますよね。これは、組織的な犯罪集団が構成されるときの重大な犯罪というのは一体何なんですか。――まあ、いいですよ。重大な犯罪というものを実行する、そういう団体なんですよね。重大な犯罪等ということでありますね。

 では、フランスにおいて、組織的な犯罪集団というふうに言われているところの凶徒の結社罪というのがあるわけですね。この凶徒の結社というのはどういう団体をそのように言っているんですか。これも通告はしていないからわからないかもしれませんけれども、こういう基礎的な資料があるんですよ。これは外務省さんの方から提供されたようなものがたくさん挙がっていると思うんですけれども。

 この凶徒の結社罪を見ると、「一又は数個の重罪」、重罪というのは「無期又は長期三十年、二十年若しくは十五年以下の懲役又は禁錮で罰せられる罪」ということですよね。「又は五年以上の拘禁刑で処罰される軽罪」、こういうふうになっているんですね。これは五年以上というふうになっているわけですね。

 これは、組織的な犯罪集団ということの定義の中にある重大な犯罪ということがあくまでも皆さん方が言っておられるものであれば、フランスは条約に違反しているということであるという理解でいいんですか。

辻政府参考人 お答えいたします。

 フランスにつきましては今委員御指摘のような条文になってございますが、フランスにおきましては、五年以上となっておりますが、四年以上五年未満の刑につきましては存在しない、罰については存在しない、こういうふうに理解しております。

平岡委員 軽罪とは長期十年以下の拘禁刑で罰せられる罪といっているので、長期十年以下で、五年以上じゃなくて十年以下というのは、三年も四年も入るんですよ。今の答弁はおかしいんじゃないですか。そんなのは当然あり得るじゃないですか。わざわざ、凶徒の結社罪、五年以上の拘禁刑で処罰される軽罪、そういうふうに書いてあるんです。そういうもので構成されている結社に対して、結社の活動について参加するというふうになっているわけですからね。これはもう、フランスはこの条約の趣旨、目的に反する活動をしている、条約の締結をしている、重大な抗議をしなきゃいけない、そういうことですよね。

辻政府参考人 済みません、ちょっと手元に今条文が直ちにございませんので、申しわけございませんけれども、ただ、私が理解しておりますのは、今申し上げましたように、五年以上と書いてある部分につきましては、四年以上五年未満の刑が存在しない、罰が存在しないということですから、その部分についての共謀罪の対象犯罪とする必要がない、そういうふうに理解しておりますので条約違反ではない、そういうふうに理解しております。(発言する者あり)失礼、参加罪です。

平岡委員 参加罪でも、先ほど言いましたように、組織的犯罪集団という概念があって、そこの活動に対して参加をするということでありますから、組織的犯罪集団についての重大な犯罪というのは同じなわけですよね。今の説明でいくと、何でフランスにおいては五年以上の拘禁で処罰される軽罪というものをあえて定義しなければいけないのか。ないんだったら、別に、ただ単に軽罪と書けばいいわけですよね。そこは非常に論理矛盾ですよ。

 そういう意味においては、フランスの刑もしっかりチェックして、フランスのこの取り扱いがどうなっているのか、しっかりとチェックして、また答弁していただきたいというふうに思います。外務政務官、それでよろしいですね。

山中大臣政務官 先ほど辻参事官が御答弁申し上げましたけれども、鋭意確認をさせていただきます。

 以上でございます。

平岡委員 私は、この問題について言うと、四年か五年かというところは、この条約の趣旨、目的と両立しないような違いだとは決して思わないんですよね。

 我が国は、重大な犯罪というのはこういうものだから、その範囲内においてしっかりと協力させていただく。その五年としたものがもしかしたら相手の国では四年以上になっていて、その捜査協力を求めてきたときには、我が国で五年以上であればそれは捜査協力できるわけですから、決してこの条約に基づく活動というものが、全く国際的な組織犯罪を防止しようという活動を我が国が邪魔しようとか、阻害しようとか、やらないようにしようとしているわけじゃないわけですからね。そこはやはり、我が国の法制の中で重大な犯罪というのは一体どんなものかということをしっかりと考えて、それに基づいて国内法制化をすることは、決してこの条約の趣旨、目的と両立しないことではない、この趣旨、目的に反するものではないということを、ここで私としては明言させていただきたいというふうに思います。

 そこで、もう一つ、条約に関連して、行為の越境性についてもこの委員会で議論されていまして、四月二十八日に伊藤外務大臣政務官が、要約すれば、国際性の要件を付さないことは本条約の中核をなす規定であるというふうな答弁をしているところでありますけれども、私は、このことについて言うと、条約交渉経緯を見ますと、こういう規定は、国際性の要件を付さないこととする、これについて解釈もいろいろこれから議論いたしますけれども、この規定そのものについては、もともとの条約案には入っていなかった。途中からいろいろ提案されてきて、そしてフランス提案というものが第十回アドホック会合の前あたりぐらいに出てきて、それで議論されたというようなことを考えると、必ずしもこれは中核をなす規定であるというふうには私は理解すべきではないと思うわけであります。

 そういう意味では、同じ三十四条の一項に、国内法の基本原則に基づいて国内法制化を図っていけという規定をやはりしっかりと認識した上で、私は、この越境性の問題については、決して、これを国内法制化するときに入れないからといって、この条約の趣旨、目的と両立しなくなるということではないというものだというふうに思っています。

 この点について、外務大臣政務官、外務省の見解をお聞かせいただきたいと思います。

山中大臣政務官 本条約三十四条の2の規定は、法の抜け穴を巧みに利用して行われる国際的な組織犯罪の実態に適用する、そういうための、国際的な組織犯罪の防止を特に有効にするためのものであり、または取り締まりの必要性が特に高い行為類型などについて、国際的な性質の存在を要件とすることなく犯罪とすることを各国に義務づけたものであります。これは、国際的な組織犯罪への効果的な対処を目的とした本条約のまさに中核をなす規定であるというふうに考えられます。

 条約の交渉の過程において、国際性を要件とするべきであるという意見と、要件にすべきではないという意見の対立があったことは事実であります。しかしながら、議論を重ねた結果、国際組織犯罪の実態に的確に対処し、捜査、訴追などに関する国際協力を確保すべき、そういう観点を踏まえれば、本条の規定を設けることが必要との認識で最終的に一致したものです。このような経緯にかんがみれば、同規定の重要性は明らかであるというふうに考えられます。

 また、条約交渉の過程において、本条三十四条の2の規定が、条約の適用範囲にかかわる条項からの条約の実施にかかわる条項に移されたということは、当該規定の性質を踏まえて適切な場所に移されたものにすぎず、その重要性を何らかの意味で減ずるものではないというふうに理解しております。

平岡委員 この話について言うと、いろいろ議論はあって、反対している国も多かったわけですよね。特にG77諸国なんかにおいては。

 では、その反対している人たちは、この条約の趣旨、目的を変えてしまおうというふうに思ったんですか。この趣旨、目的と両立しないような提案をしていたんでしょうか。どうですか。この国際性の要件を入れるべきではないというふうに主張していた国々は、この条約の趣旨、目的と両立しない、そういう提案をしていたというふうに、これは常識的な話ですから、外務政務官、両立しない提案をしていたということですね。よろしいですね。

山中大臣政務官 ただいま私が答弁いたしましたように、要件にすべきである、要件にすべきでないという意見があったにもかかわらず、討論を重ねた結果、合意に基づいたということでございますから、そこに基づくのは当然のことと理解いたします。

平岡委員 では、外務政務官、聞きますけれども、この条約の趣旨、目的と両立しないという概念ですよ。両立しないというのは、この条約の中で、一言一句、要するにそれと違うことを何か国内法制化したら、もうそれは両立しないということですか。では、どこに線があるんですか、あなたの頭の中では。政務官だよ。(発言する者あり)

石原委員長 御静粛に願います。

 辻参事官。(発言する者あり)

辻政府参考人 済みません、委員長の御指名でございますので、お答えさせていただきます。(平岡委員「手を挙げるからじゃないか。何で手を挙げるんだよ。この前も注意したじゃないか」と呼ぶ)それはまた質問でございますから。(平岡委員「条約の中身を聞いてるんじゃないよ」と呼ぶ)

 個別具体的に、ある規定、ある事項が条約の趣旨、目的と両立するかどうかという御判断は検討の上できると思いますけれども、何がそうじゃないか一律に述べよ、ないしは基準を一般的に述べよということは非常に難しいと思います。

平岡委員 ならば、今問題視しているのは越境性ですよね。越境性の要件をつけるかつけないかでは各国の意見は分かれていましたと。越境性の要件をつけるべきだというふうに言っていた、そういう諸外国というのは、この条約の趣旨、目的に反する提案をしていた、この条約の趣旨、目的と両立しない提案をしていたという理解でいいんですね、政務官。

 提案の中身を聞いているんだから。最終的な合意じゃない。最終的な合意だったら、それは全部合意だよ。この全部合意されたことを一言一句違う提案をしていたら我々の法律はアウトですよ。そういうことじゃないですか。

山中大臣政務官 今のように、いろいろな意見があって議論していたわけで、どちらが正しいか、どちらが間違っているかというようなことではなく、一番公式にいろいろな国に適用しやすい、そしてお互いにここの基準でやれるというところに一致したわけです。ですから、一致した基準に基づくときに、どういう文言であればそれに基づかないか基づくかという細かいことをおっしゃっているのかどうかわかりませんが、今の基準に一致した点によるということは、これは国際的な約束である、そういうふうに考えております。(発言する者あり)

石原委員長 御静粛に願います。

平岡委員 それじゃ、条約法に関するウィーン条約において留保の表明が許されている、留保を付すことができるということでずっと挙げてありますけれども、具体的な規定があるとかというようなことはともかくとして、「当該留保が条約の趣旨及び目的と両立しないものであるとき。」という条項があるのはどうしてあるんですか。あなたの意見だと、条約が合意したものであれば、合意したものと反することを国内法で決めたら、それはもう条約の趣旨、目的と両立しないということになるから、留保なんかそもそもあり得ないということになっちゃうじゃないですか。そんなことはおかしいでしょう、政務官。(発言する者あり)

石原委員長 辻参事官。(発言する者あり)辻参事官。

辻政府参考人 済みません、委員長の御指名でございますので、またお答えさせていただきます。(平岡委員「手を挙げるからだよ」と呼ぶ)済みません。

 最初の質問で……(発言する者あり)

石原委員長 御静粛に願います。

辻政府参考人 条約の交渉過程でいろいろと議論する場合に、各国がそれぞれの立場を述べること自体、その結果、それが条約の最終案文と違うことをもって、その条約の趣旨、目的に反するということは全くないと思います。

 条約の趣旨、目的を達成するためにどういうやり方がいいのかということで議論して、どういう形で重大犯罪等を決めたらいいのかという議論をしたのでありますから、その中において、趣旨、目的を達成する手段の議論をしたんだろうと私は理解しております。

 したがいまして、そういうことをもって、おっしゃるとおり、一部の国がこういう形で決めることについて反対したのは確かでございますが、最終的に、山中政務官が申し上げましたとおり、そういう趣旨、目的を達成するために必要な手段はこういうことだという合意をしたものだと理解しております。

平岡委員 今、辻参事官が言った、手段についての合意であって、趣旨、目的と両立しないことを決めたわけじゃないんですよね。両立しないということを片方が主張して、それが受け入れられなかったということじゃないんですよね。趣旨、目的に反することを提案したから、それが認められなかったということではない。手段について、それは議論した結果としてこっちの方の手段が選ばれたというだけであって、本条約の趣旨、目的と両立しないことではないんですよ。

 そこのところを、何か一言一句、この条約と違うことを国内法制化したら、もうそれは条約の趣旨、目的と反するから留保することはできないんだ、そんなことを言ったら、条約法に関するウィーン条約の、先ほど私が読み上げた規定なんかないに等しいじゃないですか。そういうことを外務省の方で、これを見てみると、去年からそういう振りつけがされているようでありますけれども、それはおかしいですよ。その点をまず私は指摘させていただきたいと思います。

 この点に関してもっとさらに突っ込んで考えてみると、この前、同僚の枝野議員の方から、この条約の三十四条の第二項の規定というのは、本当に共謀罪の対象となっている重大な犯罪についての越境性を要件を付してはいけないというふうになっているのかというと、私は、文理的に言うとそうなっていないと思いますね。

 共謀罪を設けるに当たって、共謀罪そのもの、フランスの提案の中にも、オフェンシズ・ゼムセルブズ、これについて越境性を持たせてはいけない、まあ、持たせてはいけないということについてもまだ意見が、解釈が分かれていますから何とも言えませんけれども、少なくとも共謀罪そのものについて越境性を持たせてはいけないというふうに解釈されるということであります。

 その点について、私どもも、外務省のこれまでの説明というのはおかしいじゃないかというふうに思うわけですけれども、政務官、いかがですか。

山中大臣政務官 そもそも、本条約の第五条の1(a)(i)に関する共謀罪というのは、重大な犯罪を行うことに合意するということです。この点、共謀の対象となる重大な犯罪と合意することとを切り離して考えて、例えば、重大な犯罪に国際性が認められるにもかかわらず、そのような重大な犯罪を合意することには国際性がないというような形の考え方は不自然であるというふうに考えます。

 また、本条約第三十四条2の趣旨は、法の抜け道を巧みに利用してさまざまな国において活動を展開している組織的な犯罪集団の性格にかんがみれば、本条約第三条1の規定にかかわらず、問題となる犯罪について国際性の要件をつけるべきではないということはあります。したがって、共謀行為それ自体のみならず、その対象となる犯罪についても国際性の要件を付すことはできないというふうに解釈されます。

 なお、本条約第三十四条の2の解釈については、米国及び英国からも、共謀行為それ自体及び共謀の対象となる犯罪のいずれについても国際性の要件を付すことはできないと理解しているという回答を得ております。

平岡委員 米英が言っているのは、それはいつの段階で言っているんですか。

辻政府参考人 ついきのう、きょうの段階でございます。

平岡委員 条約交渉過程の中でそのことが明確にされているのならいいですよ。でも、つくられた後に、聞いてみたらどうですかと、それは逆に言えば、我々は、日本はこの条項についてはこう考えていますと。

 この条約の第三条の「適用範囲」のところでは、「次の犯罪であって、」ということで、「次の犯罪」の中には、この条約でつくるべきとされる共謀罪と重大な犯罪とは別々に書いてあって、それぞれについて、性質上国際的なものであるというものについて適用するんだ、こう書いてある。だから、第五条についても、性質上国際的なものとそうでないものがあるという前提で条文が書いてあるんですよ。

 文理解釈していったら、共謀罪そのものについて国際性の要件をつけてはいけない、まあ、つけてはいけないというふうに読むべきかどうかというのは、そこは争いがありますけれども、外務省の見解に立ってみても、共謀罪そのものについて性質上国際的な要件をつけちゃいけないということになっているだけですよ。これが文理解釈ですよ。だから、我が国はそういう解釈をします、それは別にアメリカやイギリスに聞く必要なんか全くない。我が国は条約交渉過程の中でそういうふうに合意しているんだ、我々はそういうふうに解釈しますということで何の問題もないわけですよ。

辻政府参考人 済みません、いろいろと御不満があるんでしょうから、またはっきり答弁するように申し上げます。

 最後に平岡委員が御指摘ございました三条との関係について申し上げまして、その後、さらに文理解釈について申し上げたいと思います。

 御指摘のとおり、本条約第三条1は、(a)第五条等に定められる犯罪、(b)重大な犯罪について、それぞれ国際性及び組織性を要件としています。しかしながら、本条約第三十四条2の規定は、本条約第五条等の規定に従って定められる犯罪に関して規定しているものです。したがいまして、三条1が(a)、(b)に分けてそれぞれ国際性及び組織性を要件としていることは、先ほど述べました三十四条2の解釈に直接の影響を及ぼすものとは理解しておりません。

 また、追加的に、解釈について御説明申し上げます。

 本条約第三十四条2のただし書きには、「第五条の規定により組織的な犯罪集団の関与が要求される場合は、この限りでない。」という規定があります。本条約第五条1(a)(i)において、この組織的な犯罪集団が関与するものという要件は重大な犯罪のものに係っています。すなわち、組織的な犯罪集団が関与する重大な犯罪というふうに読めます。すなわち、本条約第三十四条2のただし書きによって、組織的な犯罪集団の関与の要件を加えることが例外的に許されるのは、あくまでも共謀罪の対象犯罪である重大な犯罪であることは明らかであります。

 したがいまして、三十四条2の解釈といたしまして、共謀罪について、国際的な性質と組織的な犯罪集団の関与を要件を付してはならないとまとめて規定しているものでございますから、共謀だけではなく対象となる犯罪にも及ぶことは明らかであると理解しています。

 以上でございます。

平岡委員 全く明らかじゃないですよね。

 今言われた組織的な犯罪集団の話は、第五条のところで言われましたけれども、ここにはまた、逆に言うと、越境性の話は書いていないわけですから、そんなところを条文として引用してきたって全く意味がない。むしろ、共謀罪についても、性質上国際的なものとそうでないものがあることを前提として、性質上国際的なものがある共謀罪について、それを立法化するということが今求められているというふうに解釈するのが文理的である、素直なんですよ。フランスの提案の中でも、よく読めばそういうふうに書いてあるんですよ。ただ、提案した人は誤解をしているのかもしれませんけれどもね。

 ただ、我々は、その誤解は誤解として、我が国の国内法制にはその方が適当だから、ではそっちの方の、誤解されたままかもしらぬけれども、それを採用させていただきましょうということで、何の問題もない。もし仮に、百歩譲ってそれが問題だと言われる方がおられるのであれば、そこは条約の留保という形ででも、国際的な性質を有するかどうかということについて、我が国では、国内法制化するときはとり得る話なんだ。これは決して、国際的な捜査協力をするときに、この条約の趣旨、目的と両立しないということではないということですから、私は留保自体も可能だと思いますね。

 そういう意味において、これは非常に多くの論点がまだ残されている。

 きょうは、組織的犯罪集団についても、本当は半分以上、質問を用意してきたのでありますけれども、全く質問ができませんでしたので、また改めてしっかりと議論させていただきたいというふうに思いますけれども、一つだけ聞いておきます。

 皆さんが言われている共同の目的の共同というのは、だれにとって共同なんですか。与党修正案で出されている部分でございますけれども。

早川委員 端的に申し上げれば、構成員にとって共同の目的。結果的には、団体の共同の目的というのはそういうことだと思います。

平岡委員 今の提案でいくと、第二条の定義のところにある共同の目的と、修正案で提出されている共同の目的というときの、だれにとって共同なのかということについて、僕は、文理的には違いがあって、概念を非常にわかりづらくしているというふうに思います。

 そういう意味で、前から言っているように、皆さん方が共同の目的と言って説明していることは、どこの解説書にもこれまで書かれてきていなかったし、これまで書かれてきた解説書とも矛盾しているし、文理的にも成り立ち得ない構造になっていますし、そこはしっかりとよく見直していただきたいということをお願い申し上げまして、時間が参りましたので私の質問を終わりたいと思います。

早川委員 念のため、共同の目的の意義について再度御説明だけをしておきます。(平岡委員「もういいです、それは同じことですから」と呼ぶ)

 現行の組織的犯罪処罰法において、「「団体」とは、共同の目的を有する多数人の継続的結合体であって、その目的又は意思を実現する行為の全部又は一部が組織により反復して行われるものをいう。」と定義されているところであります。

 この定義規定の文言からは、当然、この共同の目的は、個々の構成員がその時々に有している目的をいうのではなく、多数人が共同して有しており、かつ、継続的結合体として有しているものでなければならないことが導かれます。この定義規定の要件をすべて満たすものだけが組織的犯罪処罰法における団体に該当することから、こういう、多数人の継続的結合体であっても共同の目的を有していないものはこの法律上の団体に当たらないということになるわけであります。この共同の目的は、法律上の団体に必要不可欠なもの、すなわち、団体を団体たらしめている基礎的なものであることも明らかであります。

 したがいまして、このような条文の規定の内容から当然に導かれる解釈としまして、与党修正案の共謀罪の規定に言う共同の目的とは、継続的な結合体の構成員が共通して有し、その達成または保持のために構成員が結合している目的、すなわち構成員の継続的な結合関係の基礎になっている目的であると解することになります。

平岡委員 それはあなたが勝手にそう思い込むのは別に自由ですけれども、世の中の人が法律を見てどう解釈するかですよ。

 だから、今説明されたことをしっかりと条文に書いていただければ、その点についての紛れは少なくなるわけでありますから、早川さんが、与党提案者が頭でしっかりと考えていることをしっかりと条文に書く、そのことをぜひやってくださいよ。何でそれができないんですか。僕はそれが、これまで何人かの方々がそういうふうにアドバイスをしているのに、かたくなに、何か自分の頭の中で考えていることが唯一正しいことだというふうに固執されること自体がちょっと私は問題があると思いますね。これはもういいです。答弁は要りません。(発言する者あり)終わらないじゃないですか、そんなことをやっていたら。

早川委員 最後のお話でありますけれども、共同修正のための作業を今懸命に進めているところでありますので、組織的な犯罪集団という言葉を使うということまで提案させていただいております。ぜひ、その辺を野党の皆さんから積極的に御提案を賜りたいと思います。

平岡委員 いや、組織的な犯罪集団という言葉を使えば一つの概念が決まってしまうというものじゃないんですよね。組織的な犯罪集団というのは一体何なんですかということが今まさに問題になっているわけですから、そこがしっかりと書いていない限りはだめなんですよ。(発言する者あり)だから、答弁するからいけないんですよ。答弁するからいけないんだ、そんなの。何で認めるんですか、あなた方が。あなた方が認める必要はない。

 しっかりとそこは考えてくださいね。よろしくお願いします。

石原委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時十二分散会


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