衆議院

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第29号 平成18年6月9日(金曜日)

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平成十八年六月九日(金曜日)

    午前九時三十一分開議

 出席委員

   委員長 石原 伸晃君

   理事 倉田 雅年君 理事 棚橋 泰文君

   理事 西川 公也君 理事 早川 忠孝君

   理事 松島みどり君 理事 高山 智司君

   理事 平岡 秀夫君 理事 漆原 良夫君

      赤池 誠章君    稲田 朋美君

      近江屋信広君    太田 誠一君

      笹川  堯君    柴山 昌彦君

      下村 博文君    西銘恒三郎君

      平沢 勝栄君    三ッ林隆志君

      水野 賢一君    森山 眞弓君

      矢野 隆司君    保岡 興治君

      柳澤 伯夫君    柳本 卓治君

      山本ともひろ君    石関 貴史君

      枝野 幸男君    河村たかし君

      小宮山泰子君    細川 律夫君

      伊藤  渉君    保坂 展人君

      滝   実君    今村 雅弘君

      山口 俊一君

    …………………………………

   法務大臣         杉浦 正健君

   法務副大臣        河野 太郎君

   法務大臣政務官      三ッ林隆志君

   政府参考人

   (内閣府犯罪被害者等施策推進室長)        荒木 二郎君

   政府参考人

   (警察庁長官官房長)   安藤 隆春君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 和田 康敬君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  竹花  豊君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    縄田  修君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          倉吉  敬君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    大林  宏君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    中谷比呂樹君

   参考人

   (法政大学大学院法務研究科教授)         今井 猛嘉君

   参考人

   (弁護士)        木村 裕二君

   法務委員会専門員     小菅 修一君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月九日

 辞任         補欠選任

  笹川  堯君     西銘恒三郎君

  柳本 卓治君     山本ともひろ君

同日

 辞任         補欠選任

  西銘恒三郎君     笹川  堯君

  山本ともひろ君    柳本 卓治君

    ―――――――――――――

六月八日

 裁判所の人的・物的充実に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二七三三号)

 同(石井郁子君紹介)(第二七三四号)

 同(笠井亮君紹介)(第二七三五号)

 同(穀田恵二君紹介)(第二七三六号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第二七三七号)

 同(志位和夫君紹介)(第二七三八号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二七三九号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二七四〇号)

 同(吉井英勝君紹介)(第二七四一号)

 同(石関貴史君紹介)(第二八〇一号)

 同(漆原良夫君紹介)(第二八〇二号)

 同(滝実君紹介)(第二八〇三号)

 同(倉田雅年君紹介)(第二八七一号)

 共謀罪の新設反対に関する請願(穀田恵二君紹介)(第二七四二号)

 民法改正による夫婦別姓も可能な制度の導入に関する請願(野田聖子君紹介)(第二七四三号)

 同(萩原誠司君紹介)(第二八六七号)

 治安維持法犠牲者に対する国家賠償法の制定を求めることに関する請願(川内博史君紹介)(第二七四四号)

 同(安住淳君紹介)(第二七九七号)

 同(古賀一成君紹介)(第二七九八号)

 同(佐々木隆博君紹介)(第二七九九号)

 同(前田雄吉君紹介)(第二八〇〇号)

 同(仲野博子君紹介)(第二八六八号)

 同(古川元久君紹介)(第二八六九号)

 同(松木謙公君紹介)(第二八七〇号)

 民法改正において選択的夫婦別氏制度の導入に関する請願(前原誠司君紹介)(第二七九六号)

 民法第七百六十六条改正と共同親権特別立法に関する請願(石井郁子君紹介)(第二八六六号)

同月九日

 共謀罪の新設反対に関する請願(穀田恵二君紹介)(第二九七九号)

 法務局・更生保護官署・入国管理官署及び少年院施設の増員に関する請願(枝野幸男君紹介)(第二九八〇号)

 民法第七百六十六条改正と共同親権特別立法に関する請願(枝野幸男君紹介)(第二九八一号)

 裁判所の人的・物的充実に関する請願(津村啓介君紹介)(第三一五〇号)

 同(保坂展人君紹介)(第三一五一号)

 治安維持法犠牲者に対する国家賠償法の制定を求めることに関する請願(大串博志君紹介)(第三二四二号)

 同(原口一博君紹介)(第三二四三号)

 同(保坂展人君紹介)(第三三二八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四九号)(参議院送付)

 犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律案(内閣提出第五〇号)(参議院送付)

 法の適用に関する通則法案(内閣提出第四三号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――

石原委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、参議院送付、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の一部を改正する法律案並びに犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として内閣府犯罪被害者等施策推進室長荒木二郎君、警察庁長官官房長安藤隆春君、警察庁長官官房審議官和田康敬君、警察庁生活安全局長竹花豊君、警察庁刑事局長縄田修君、法務省大臣官房司法法制部長倉吉敬君、法務省刑事局長大林宏君、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長中谷比呂樹君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石原委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

石原委員長 質疑の申し出がありますので、これを許します。石関貴史君。

石関委員 おはようございます。民主党の石関貴史です。

 この二つの法律案でございますが、まず、法務大臣にお伺いをしたいと思います。

 この法律案については、五菱会というものに関する事件があって、これを直接のきっかけとして改正をされ、あるいは法律が策定をされるということになったと承知をしております。

 法務大臣にお伺いしたいのは、いわゆるやみ金ではございませんが、私、最近、自分で気がついて思うことに、都銀の支店に出入りをするときに、以前には全く見かけなかった、やみ金ではございませんが、消費者金融の大変な宣伝、広告というものを目にするようになりました。これは、都銀と当該の消費者金融と一体ではないかなというふうに思われるほど、銀行本体が宣伝をしていると感じるぐらい、こういったものを見かけるようになりました。しばらく前には、こういったことは全くなかったことであります。

 こんな状況になっている消費者金融、都銀さんと消費者金融さん、その業務について、どちらがどうというものではありませんが、こういった状況が今現にあるわけでございますが、どうして今こういった状況になっているのか。都銀においても消費者金融の宣伝が非常に派手にされているということであります。

 大臣、このことについては、どうしてこういうことになっているのか、また、こういった都銀の中における消費者金融の宣伝をどうお感じになりますでしょうか。

杉浦国務大臣 金融行政の現状については所管ではございませんし、最近はとんと離れておりますし、私は銀行にも参りませんのでよくわかりませんが、アイフルの問題ですか、金融庁が営業を停止いたしましたが、ああいうのを拝見していますと、金融システム全体の中でやはり検討すべき問題があるなということは感じます。

石関委員 ありがとうございます。

 テレビ等の宣伝においても、以前は、いわゆるゴールデンタイムとか昼間に消費者金融の宣伝はしないということが暗黙のルールとしてあったというふうに承知をしておりますが、今、随分状況が変わっているんだなというふうに私は感じております。所管でないのは承知の上でありますが、大臣のお考えをお聞きいたしました。ありがとうございました。

 さて、法案に入りますけれども、先ほど申し上げましたように、この法律案の直接のきっかけになったのは、いわゆる五菱会系のやみ金融事件だというふうに承知をしております。この事件の経緯について、簡潔に当局から御説明をいただきたいと思います。

 この件については、国家公安委員長さんにぜひ詳しい経緯と、また、公安委員会の中でも、これだけの大事件でありますのでいろいろな御議論もされているだろうというふうに思いましたので、ぜひお尋ねをしたいということでありましたが、おいでになれないということで、ちょっと残念でございました。内閣委員会の方で国家公安委員会の皆さんにもおいでをいただきたいということでありましたが、こちらの方もそのことができなかったということでありますので、ぜひ、重要な法案でございますので、こちらの委員会で公安委員会委員長にお尋ねをしたいと思っておりましたが、おいでいただけませんので、当局の方から御説明をお願いします。

竹花政府参考人 お答え申し上げます。

 暴力団山口組旧五菱会関係者らは、大規模なやみ金融グループを組織し、全国の多重債務者等を対象に、ダイレクトメールによる融資を勧誘するなどいたしまして、高金利貸し付けを長期に、大規模に行っていた事件でございます。さらに、香港等を経由いたしまして、スイス所在の外国銀行に約五十一億円を送金するなど、国内外に多額の犯罪収益等を隠匿していたものでございます。

 一連の事件で、出資法違反、組織的犯罪処罰法違反等により、暴力団構成員を含む七十八名を検挙したところでございます。

石関委員 この五菱会事件の犯罪収益、先日も委員の方から質問がありました。スイスの当局が没収をしているということでありますが、聞くところによると、この預金残高の半分ぐらいしか返還をされないということも聞いております。こういうことなのかどうか、改めてお尋ねをします。

 そして、この犯罪収益の返還について、国際的なルールはどのようなルールになっているのか、このことについてお尋ねをいたします。

大林政府参考人 御指摘の、スイスが没収した約五十一億円の財産を譲り受けるための交渉につきましては、現在、外交ルートで協議が継続されているところでございます。

 スイスから譲り受けることができる金額の見込みを含め、協議の状況及び内容につきましては、外交交渉に関することでもあり、お答えを差し控えさせていただきますが、法務省といたしましては、外務省と緊密に連絡をとりつつ、引き続き適切に対応してまいりたい、このように考えております。

石関委員 外交交渉を行われているということでありますが、この交渉の際の国際的なルール、先ほどお尋ねをしました。犯罪収益の返還についてのルールというものはないんですか。

大林政府参考人 没収した財産の引き渡しに関する諸外国の法制は、それぞれ異なっております。

 例えば、アメリカなどは、連邦法の規定により、没収した資産の引き渡しを行うことができる、相互主義の保証は法律上の要件ではない、当該資産の没収のために行われた相手国の協力の程度に応じて、八〇%を上限に引き渡しを行うような規定がされています。また、イギリスは、法律上の規定は特にないが、没収した資産の引き渡しを行うことができる、相互主義の保証は要件とされていない。あるいはフランスは、法律上の規定により、没収した資産の引き渡しを行うことができる。それから、二国間の合意または相互主義の保証が必要であるというようなことがありまして、一つの問題としては、やはり相互主義の保証というのが一つの大きな課題かなというふうに考えております。

石関委員 被害者への給付金を最大限確保するのは当然のことだろうと思いますし、我々が目指すべきものだというふうに思いますが、これは外交交渉ですから、当事者は外務省の方でやっていると思います。返還額も最大限ふやすということを我々は考えなければいけない。そういったときに、今、このスイスの事例ですけれども、具体的には、当事者として、我が国の代表としてだれが、どこで、どんな交渉が行われているかということを具体的に御教示いただきたいと思います。

大林政府参考人 先ほども申し上げましたように、協議の状況及び内容につきましては、外交交渉に関することでもあり、お答えを差し控えさせていただきたい。ただ、法務省といたしましても、委員がおっしゃられたように、今回の問題は被害者に分配するということを一つの前提としておりますので、金額等についてもできるだけ協力いただけるように全力を尽くしたい、このように考えております。

石関委員 最大限確保できるように、法務省としても最大限の努力をお願いしたいと思います。

 しかし、犯罪収益でこの例ですとスイスに行ってしまった、ほかの事例でもほかの国に行ったということがあるんだろうと思いますが、単純に考えて、全額戻ってきて普通だろうというふうに私は思うんですが、これはどうして交渉になってしまうのか。全額返してくれないんですか。

大林政府参考人 組織犯罪防止という観点から、いわゆるマネーロンダリングに関与するものにつきましては、各国が協力して、犯罪組織からそういう資産等を没収して、そういう組織犯罪を起こさないようにするという協力体制といいますか、そういう意思の合致がなされておりまして、基本的な考え方は、その国々において、マネロンによってそういう資産が国内にある場合は、それを没収できる。したがいまして、その原資がどこであろうと、基本的に、国内法で没収できるものについては、その没収した金額についてはその国が使用できるといいますか、国庫に入れる、そういう法制に基本的にはなっています。

 したがいまして、今、全体的に、いろいろな国の法制はございますが、基本的には、その国において没収したらその国においてその処分を決めるというのが一つの原則になっております。

 ですから、今委員おっしゃるように、その原資をたどっていけばいろいろな国の被害者がいるかもしれませんけれども、そういう基本的な法制の中で、しかしながら、今申し上げた被害者との調整といいますか、そういう問題において、外交交渉において、それを一部あるいは全部を分配することができるというような国際協力的な観点も今兼ね合わせているということでございまして、基本的な考え方としては、その国で没収したらもうその国が処分できるというのが原則になっているということを御理解いただきたいと思います。

石関委員 今御答弁いただきましたその原則ですか、ほかの国からこの国に送金された、この国で没収をされたものについてはその国で没収して使える。使えるというのが適切かどうかわかりませんが、そういう御説明でありましたが、この原則は何に書いてあるんですか。どのように決まっているんでしょうか。この原則についてお答えください。

大林政府参考人 基本的には、その国の法制によるということでございます。

 ただ、もちろん、御承知のとおり、国際間においてテロ防止のためにいろいろな対策が協議されておりますので、そういう考え方もちろん取り入れられているわけですが、我が国においても、当然マネロンについては犯罪行為でありますし、薬物については必然的に没収、それからその他のものについては、任意的ではありますけれども没収という制度ができておりますし、基本的には、今申し上げたとおり、各国の法制によって定められているということでございます。

石関委員 確認しますけれども、そうすると、国際的な合意や、原則とおっしゃいましたけれども、合意とか何か、規定をされたものはないということでよろしいんでしょうか。各国の法制によるということでありますので、国際的に合意をされたものではないということでよろしいんですね。

大林政府参考人 今申し上げたとおり、各国の法制でございまして、各国の没収したものについて統一的に、例えば国際機関等の定めによってこういう形で分配しなければならない、そういうふうな合意はまだなされておりません。

石関委員 それでは、先ほど米国、英国その他の例を挙げていただきましたけれども、この法案が成立したとすれば、外国政府による犯罪収益の没収や返還、この共助については何カ国ぐらいこの法案の成立によって可能になるんでしょうか。

大林政府参考人 先ほど申し上げたとおり、相互主義について明文で規定がされている国と、そうでない国がございます。しかしながら、本法律は、譲り受ける方も、あるいは譲与するといいますか渡す方も、両方について定めてございます。ですから、相手方に相互主義に関する明文があろうとなかろうと、基本的には相互主義を明言しておりますので、どの国とでもそのような交渉ができるということになると思います。

石関委員 それでは次に、被害者の掘り起こしについてお尋ねをします。

 この五菱会の事件では、被害者は二万人もいるというふうに聞いております。この二万人の実態をどこまで把握をされているのか、そして、そうした被害者、二万人というのも大変な人数でありますが、こういった被害者のすべての救済策としてこの法律が機能するということなんでしょうか。いかがですか。

大林政府参考人 私どもとして、まだ詳細な人数までは把握しておりません。この法律を成立させていただいて、この法律に従って調査し、被害者を確定していくという形になろうかと思います。そこで、この法律の規定があります公告等の手段をとって、あるいは、既に捜査記録等もありますので、その中身を検討しつつ、被害者の掘り起こしといいますか調査に努めていきたい、このように考えております。

石関委員 それでは、その被害者の確定についてなんですが、支給対象となる被害者をどのようにして確定するのかということをお尋ねします。

 例えば、刑事裁判上の被害者とされていない者についてはどのようにして確定をするのか、また、こういった組織的な詐欺で、先ほど、五菱会については被害者が二万人と言われているということですが、大変膨大な被害者の数になるということで、すべての被害者の損害について起訴ができないという場合についてはいかがなんでしょうか。

大林政府参考人 基本的には、起訴された犯罪、それからそのもの、一連の犯行、私どもは余罪と呼んでおりますけれども、そのものについて被害者を確定していくという作業があると思います。

 基本的には、捜査記録にあらわれた人、起訴された者、あるいは余罪として、被害に遭われた方についてまず特定をしていくということで、個別に通知をしていく。それからさらに、今度の公告の手続もありますので、その中から被害者に申請していただくということで確定していくということになろうかと思います。

石関委員 犯罪被害に遭った人たちのいわゆる掘り起こしと言ってもいいと思います、これについては、先日、矢野委員からも質問がございました。この法律の条文では官報の公告で行うというふうに書いてあります。これも矢野委員から指摘がありましたが、普通の人でなかなか官報などを見る人はいないというふうに私も思います。

 被害回復の給付金の申請ができる者に対しては、自分が申請可能であることを認識できるようにもっと効果的な方法が必要だと私も強く思っているところでありますが、これについてはいかがお考えですか。大臣、御答弁いただけますか。

杉浦国務大臣 五菱会の事件は、まだ最終的に何人かよくわかりませんが、相当多数だというふうに言われておるわけでございます。そういった方々、被害者に被害を回復するということは、この法律の目的でもございますし、一番重要なことですから、申請資格のある被害者に申請の機会を十分与えるということは極めて大事なことだというふうに思っております。

 法律では、官報、公告とか、知れている被害者への通知とかいうふうに書いてあるわけですが、それでは不十分でございまして、例えば、検察庁も法務省もホームページというものを持っております。それに載せるとか、あるいは関係する団体、いろいろございますが、そういうところへ通知をして御協力を仰ぐとか、個別具体的な事件に応じてできる限りの周知方法を採用して、徹底を図る必要があるというふうに思っております。

石関委員 大臣がおっしゃったとおり、しっかりこれは配慮をして、しっかり掘り起こしをするということが必要だと思います。

 今お話がありました、いろいろな団体を通じて掘り起こしを行うということでありますが、こういった団体は今のところどんなものが想定をされるんでしょうか。

大林政府参考人 例えば五菱会の事件では、既に民事的な事件も提訴されています。関係する被害者団体もございます。あるいは消費者団体もございます。ですから、今大臣が答弁されたように、事件に応じてそのような団体にも御協力を求めて、被害者の掘り出しといいますか確保に努めたいと考えております。

石関委員 それでは、今御答弁いただいたような各団体を通じたり、あらゆる手段でこういった掘り起こしを行うということでありますが、この掘り起こしの広報活動と言っていいんでしょうか、これをやる費用がどこから出るかということであります。この費用というのは、例えば没収した犯罪財産で賄われることになっているんでしょうか。あるいは、ほかの部分から賄われるのか、お尋ねします。

大林政府参考人 原則は給付資金の中から賄われるということになります。

石関委員 今御答弁を伺っておりますと、これは参議院で我が党民主党が修正案を提出いたしましたが、ここに、検察官は、支給手続の開始決定に際して、公告した事項を広報活動等を通じて周知するよう努めるものとする。まさにこういうことを努めるという御答弁でもありましたので、こういった旨の規定をやはり規定として書いておくべきではないかというふうに、私は改めて今御答弁を伺っていて思うわけでありますが、これについてはいかがお考えですか。

大林政府参考人 周知、広報の徹底に努めるというようなことで、費用の面についても法律上義務づけるというような、確かに委員のおっしゃるような形も方法としては考えられるんでしょうけれども、費用の問題、微妙な問題もありますし、また、個々的なケースによっていろいろ形態も違うものもあろうかと思いますので、私どもとしては、今回の制度を始めるに当たり、できるだけ努力するということで御理解いただきたいなというふうに考えております。

石関委員 ただ、御答弁を聞いていると、大臣の御答弁も今の御答弁も、もちろん一貫しているわけでありますけれども、まさに民主党の修正案に書いてあることをおっしゃっているわけですから、これについてはしっかり書いておくということが、やはり今伺っていてもあるべきではないかというふうに思います。

 今御説明がありましたけれども、大臣、規定をしないというどうしてもの理由があるんでしょうか。

杉浦国務大臣 当然の前提でございますので、改めて書く必要があるかどうかということだと思うんですけれども、明記しなくても当然やるべきことではないかと私は思いますけれども。

石関委員 当然のことであるわけですから、じゃ、規定がなくてもしっかりやっていただくということでよろしいでしょうね。

 それでは次に移りますが、支給法について、九条の一項では被害者が給付申請に際して疎明資料を提出するということになっています。この疎明資料というのは具体的にはどういったものを指すのかということをお尋ねします。

 これは、余り厳格なものを請求するということになると、申請をする人が限られてしまうということになりかねないと思います。先ほどからお尋ねをしております被害者の掘り起こしということには、これは余り厳格にすると逆の機能を果たしてしまうことになろうと思います。

 また、こういった提出すべき資料を紛失している場合もあると思います。本人うっかりですとか、いろいろな場面でそういったものがないということも考えられますが、そういった場合にはどのように対応するのか。

大林政府参考人 給付金の支給申請に当たって提出すべき疎明資料は、個別具体的な事案の内容によって異なるものであるため、一概に申し上げることは困難でございますが、例えば、被害金の受け渡しに銀行振り込みが利用されたような事件であれば、振り込みを行ったことを明らかにする預金通帳や振り込み明細書等、ダイレクトメールや電子メールによる欺罔等があった事件であれば、それらの郵便物や電子メールを印字した紙等が考えられるところでございます。一方、余り客観性に乏しい資料でございますと、いわゆる成り済ましに対する支給を防ぐことが困難になるという問題もございます。

 ただ、今御指摘のように、例えば資料を紛失してしまったという被害者もあろうと思います。それは、刑事記録上検察官が把握しているものについては、資料を提出していただかなくても資格を認め得る場合もありますので、そのような場合には申請人に過度の負担をかけないような柔軟な対応をとることが可能である、このように考えております。

石関委員 個別の事案についてしっかり判断をして、今のようにしっかりとした対応をしていただきたいと思います。

 それでは次に、こういった申請をする方々の安全の確保についてお尋ねをしたいと思います。

 この法律案では、被害者として名乗り出た方、被害回復給付金の申請者のリストである裁定表の閲覧がだれでもできるようになっているというふうに理解をしておりますが、こういった被害者として名乗り出た人たちの名前、これがやみ金業者や暴力団に知れてしまう、筒抜けになってしまうというおそれがあると思います。

 先日の、やはりこれも矢野委員からの質問でもございました、お礼参りという言葉を使われておりましたが、本当にこの法律のシステムで被害者の安全がしっかりと確保できるのかどうか、このことについて国家公安委員長から、大丈夫だ、安心してください、こういったお言葉も聞きたいなというふうに思っていたんですが、おいでいただけませんので、このシステムで被害者の安全がしっかり確保できるのかどうかということについてお尋ねをします。

和田政府参考人 お答えをいたします。

 暴力団からそういった報復を受けるおそれのある方に対して十分な保護対策を講じるということは、これは暴力団対策の基本でございます。これまでにもそういった保護対策につきましては、対象者の方と十分連絡をとらせていただきまして、そういった危険の状況に応じて一定の資機材を貸与して警戒するとか、あるいはその身辺を警察官が警戒するとか、こういった措置をとっております。今後とも、個別具体的な状況に応じてそういった警戒措置を徹底してまいりたい、このように考えております。

石関委員 個別にしっかり連絡をとり合って安全を確保しているということでありますが、今おっしゃいました資機材を提供するということですが、どんな資機材を提供して、こういうときには例えばボタンを押してくれとか、いろいろなことがあると思うんですが、国民の皆さんに安心いただくためにも、こういうものがありますよというのをお知らせいただければと思います。

和田政府参考人 資機材といたしましては、一定の、防犯のカメラでございますとか、先ほど委員御指摘のございました緊急の通報装置というのがございます。これは設置しておきますと、ボタンを押すと、直接直近の警察署なり警察の指令室に通報できるものもございますし、また携帯のものも、そういった形のものもございます。そういった資機材を活用することによっての警戒もやっておるところでございます。

石関委員 今のカメラというのは、自宅のところに設置をしてくれるとか、そういったカメラなのか、自分でカメラを持ってもしようがないですから、そういったカメラなのかどうかということと、例えば、この法案に関する被害者の方々、この方々の安全を確保するための今のカメラとか資機材も高価なものからいろいろあるんだと思いますが、こういった部分の費用は警察の方から出るということですか。

和田政府参考人 対象になる方々の状況というのは、それぞれあろうと思います。その危険の度合いに応じて警戒の措置というのがあるわけでございまして、そうした危険性の度合いに応じて、私どもの方で用意しておりますそういった資機材を貸与するということもございます。

石関委員 こちらもやはり参議院において民主党が提出をしております修正案、これには、裁定表を閲覧することができる者を申請人のうち資格裁定を受けた者に限定をするということになっておりまして、今伺っておりますと、やはりこういった形で限定をしておいた方が、今のような安全を確保するということについてはしっかりと確保できるのではないかと思いますし、これはそもそも、裁定表の閲覧が限定をせずにだれでもできるようになるというのは、こんなことがあるのでだれでも見られるようになっているんですよ、いいことがあるんだろうと思いますが、どういう理由でこうなっているんでしょうか。

大林政府参考人 本法案は、他の申請人に対する資格裁定に対しても不服の申し立てを行い得ることとしており、このような不服申し立ての機会を実質的に確保するため、資格裁定を受けた者以外の申請人についても裁定表を閲覧できることとしております。

 しかしながら、一方で、例えばやみ金業者や暴力団等の真の被害者でない者が裁定表の閲覧を通じて被害者に対する報復等を行うような事態があってはならないということで考えているのは、もう委員がおっしゃるとおりでございます。

 そこで、今回の法整備におきましては、まず被害回復給付金の支給の申請を受け付けるに際して本人確認を行うことを考えている上、虚偽の申請については、詐欺またはその未遂罪が成立し得るほか、被害回復給付金支給法にも虚偽申請罪を設けることとしており、そのような罰則により、被害者でない者による申請を防ぐこととしております。

 また、裁定表への記載事項につきましても、不必要に被害者の情報を開示すべきではないことから、例えば、資格裁定を受けた者の住所については、これを記載することは予定しておりません。

 今おっしゃられる資格裁定を受けた者に限るべきではないかというお考えがあることは私どもも承知しておりますけれども、しかしながら、たとえ拒否裁定を受けた者であっても、これに対して不服を申し立てることは許されるところでございまして、その不服の申し立てが認められて、拒否裁定が資格裁定に変更する可能性がある以上、初めから資格裁定を受けた者と同様、他人の資格裁定に対して不服を申し立てる利益を認めざるを得ないと考えられます。

 建前はそうでございますが、先ほど申し上げたとおり、委員がおっしゃるようなおそれというものがありますので、やはり本人確認とか、あるいは今の閲覧させる内容、不服申し立てに資するような内容にできるだけ限定していくというような努力をしていく必要があるというふうに考えております。

石関委員 続いて、この組織的な犯罪の処罰法十三条の三項、没収、追徴の範囲について規定をしている。「犯罪の性質に照らし、」「犯人に対する損害賠償請求権その他の請求権の行使が困難であると認められるとき。」というふうになっております。これは、具体的にはどういった場合を想定して指しているのかということ、暴力団が関与した犯罪全てが対象になるということであるのか、犯罪の被害額の大小には関係がないということであるのか、わかりやすく御説明をいただきたいと思います。

大林政府参考人 今御指摘の組織的犯罪処罰法第十三条第三項第一号後段の「犯罪の性質」とは、犯罪被害財産を得る原因となった犯罪の罪の種類、犯罪行為が組織的に敢行されたかどうかなどの犯罪行為の対応等の客観的な事情を言い、「損害賠償請求権その他の請求権の行使が困難であると認められるとき。」とは、このような客観的事情から判断して、被害者が犯人に対する損害賠償請求権等を行使することが困難であると認められる場合を言います。

 これに該当するかどうかは、具体的な事案の内容に応じて個別に判断されることとなりますが、例えば、同号前段の要件には必ずしも当たらないものの、組織的な対応で犯罪行為が行われたような事案のほか、暴力団員が殊さらに自己が所属する暴力団組織の威力や組織による報復の可能性を示しつつ恐喝に及ぶ事案などもこれに該当し得るものと考えております。

 今御指摘のあった被害額の大小につきましては、これはまたケースごとに、今のような要件にかかわるようなものであれば、それが影響することもあろうかと思います。

石関委員 重ねてお尋ねをします。

 今の請求権の行使が困難である場合ということについてお尋ねしますが、これは、被害者側の事情も考慮するということである、あるいは、専ら犯人側の事情のみで判断をするのか。

 例えば、経済的な事情で、被害者側の事情ですが、提訴が困難な場合であるとか、民法上の請求権を行使する、被害を回復した、こういった方がいた場合、例えば個別に示談をしたとか、こういった場合についてはどうなるのか。犯人の方で見れば、犯人が被害者の一部と刑事裁判手続の中で刑事和解、犯罪被害者保護法の四条ですか、刑事和解をした場合はどうなのか。被害者側の方ですね、行使が困難ではないと判断をされて、その他の者について適用がなくなってしまうのではないかという懸念を持っておりますが、これについてはいかがでしょうか。

大林政府参考人 基本的には法で定められています「犯罪の性質に照らし、」ということでございまして、例えば、被害者と被告人の間の人的関係とかいうものは、基本的にはそれを前提にしているものではございません。あくまでも犯罪の性質に照らして損害賠償請求が困難と認められる場合を原則としております。

 それから、今の和解をした場合等につきましては、基本的に和解をしたことによってこのような手続がとれないというものではございません。恐らく、ケースケースでいろいろあろうとは思いますけれども、今おっしゃられるような被害者側の事情というよりは、基本的には犯罪の性質に照らしてこの要件に当たるかどうか、没収を認めるかどうかという問題であろうというふうに考えております。

石関委員 それでは、犯人の範囲についてお尋ねしますが、この犯人というのは、どういう範囲の者を指すのかということであります。

 民法上の共同不法行為者を指すのか、そうではなくて、有罪の判決を受けた者、これが犯人だということである、後者なのかなというふうに思いますが、これをお尋ねして、そうであるとすれば、例えば、起訴をされない共犯者に対して損害賠償請求することが可能である場合でも適用があることになるか。有罪となった被告人が数人いて、そのうち一人の犯人、数人いたうちの一人には損害賠償請求することが可能である、こういった場合には適用があるのかないのか。

大林政府参考人 今御指摘の十三条第三項第一号の犯人の範囲でございますが、犯人とは、一般に、罪を犯した者を意味する言葉でございまして、刑事事件に関して、公訴を提起され、その裁判がまだ確定していない者を指す被告人とは異なるものでございます。したがいまして、今御指摘がありましたように、犯人には、当該被告事件において被告人とされている者のほか、当該事件の共犯者なども含まれることになります。

 今おっしゃられる、一つの例として挙げられた、共犯者が何人かいる、その一部について損害賠償請求がなされているという事案であっても、先ほど申し上げたとおり、「犯罪の性質に照らし、」ということで、その要件に当たる者であれば併存するということもあり得る。要するに、今回の没収による分配手続も得られる、それから、民事訴訟法の手続も行われるということが両方併存することもあり得る、このように考えております。

石関委員 それでは、「請求権の行使が困難である」。請求権の行使の困難というのは、これを判断する基準は何によって判断をするのか。

 個々の事件や犯罪被害者の実情も十分に勘案するということであると思いますが、柔軟かつ的確な判断が行われるように努めるのは当然だというふうに思いますが、この判断の基準というのはどのようになっていますか。

大林政府参考人 被害者が犯人に対する損害賠償請求権等を十分に行使することができないような事案ということになりますけれども、具体的には、暴力団等により組織的に行われた恐喝事件など、団体からの報復や嫌がらせなどを恐れ、被害者がみずから損害賠償請求権を行使することをためらう可能性があると認められる事案、組織的に行われた振り込め詐欺事案、事件などにおいて、犯罪被害財産について、その帰属や管理が変更されたり隠匿されたりすることにより、だれを相手に請求権を行使すれば実際に賠償金を得ることができるかの判断に困難を伴うような事案、それから、犯罪被害財産が第三者に収受されたことにより、私法上の請求権を行使して、その返還を求めることにつき困難が生じているような事案などを想定しております。

石関委員 今御答弁を伺っておりまして、やはり、これも参議院で民主党が修正案を出している部分がありますが、「犯罪の性質に照らし、」というのがわかりづらい、こういった書きぶりでは、検察官の判断でこれはいいとかだめとか、こういうことになりかねないのではないかという懸念があります。

 犯罪被害者救済の観点から考えれば、やはり、参議院の民主党修正案のように、法案中の「犯罪の性質に照らし、」この要件を削除して、犯罪の性質にかかわらず、犯人に対する損害賠償請求権その他の請求権の行使が困難であると認められるときには適用できるようにすべきだと思います。先ほどの御答弁を伺っていても、やはりこのように改めて考えますが、いかがでしょうか。

大林政府参考人 「犯罪の性質に照らし、」という文言を仮に削除することとした場合に、理由のいかんを問わず、損害賠償請求権等の行使が困難でありさえすれば、犯罪被害財産の没収、追徴が可能になるということになるわけでございますが、その場合に、被害者本人の性格や意思、犯人との関係など、種々の主観的な事情も想定されるところでございまして、そうしたことのすべてを刑事裁判における審理の対象とすることにつきましては、手続自体の、審理の過度の負担になりやしないか、裁判の遅延を招くなどの問題がありやしないか等の問題もございますので、やはり、このような一つの範囲というものを示していく方が妥当であるというふうに私どもは考えております。

石関委員 今伺っていても民主党案というのはいい案だったと思いますけれども、わかりました。

 この法案は、刑事事件として立件された場合の制度であるということですが、多くの消費者被害というのは、犯罪としての立件が困難であるケースが多いと思います。将来的には、国民、消費者が利用できる民事上の違法収益を吐き出しさせる被害回復の新制度、こういったものが必要であろうと考えますが、いかがでしょうか。

河野副大臣 今、内閣府で、経済的支援に関する検討会というのが設けられておりますので、将来的には、そこで、刑事事件にならないものについて、どういった形で被害回復ができるか、さまざまなことを検討していくことになっております。

石関委員 被害者の中でも、特に弱者である高齢者ですとか認知症の被害者の方々、こういった方々のために国や地方自治体が被害を回復する、こういった制度も必要ではないかというふうに思いますが、これについてはいかがでしょうか。

河野副大臣 刑事事件になりましたものは、今回のこのスキームで、認知症の方であっても、例えば成年後見人その他を利用して被害回復をすることができます。

 刑事事件にならないものにつきましては、今後の検討課題になっております。

石関委員 それでは、検察官の対応能力についてお尋ねをします。

 被害回復の事務管理人を検察とした理由は何なのか、弁護士の役割というのはその中ではどうなるのか、お尋ねをします。

杉浦国務大臣 今回は、五菱会の事件が契機になって検討を始めたわけですが、将来、具体的にどういう事件にこの法律が適用されるか、ちょっとまだよくわかりませんけれども、被害者が少ないものもあると思いますし、多数になるものも、さまざまだと思うんです。御指摘の、事務管理人を弁護士としたケースというのは、被害者は数多くあって、認定から事務手続まで、多い場合が想定されていると思います。

 それを念頭に置いて見ますと、支給手続全体として見ますと、破産手続に類似しているわけですね。没収した財産はこれだけ、認定された人はこれだけ、費用を除いて、このように配分するということになるわけですから、類似しておることもございます。支給手続を適正かつ迅速に行うには、法律の専門家であって、法令、法律事務に精通して、破産管財人等の経験のある方に関与していただくのがより適切である場合があると思っております。

 被害者の数が少なければ、検察官だけで事務官を使ってやるということで足りると思いますが、多い場合はそういうふうに思っております。

 検察官は、支給手続の前提となっています刑事手続もかかわっておりますので、支給手続が公正、適正に行われているという信頼を確保するためには、当該刑事事件とかかわりのない弁護士さん、第三者で、高度の職業倫理があり、適切な職務の遂行を期待することができる弁護士を手続に関与させた方がより適切である場合があるとも思うわけでございます。

 そこで、本法案においては、弁護士の中から選任した被害回復事務管理人に、裁定のための審査に関する事務その他の事務を行わせることができることとしたものでございます。

石関委員 そうすると、当然、検察官の仕事がふえるということになってくると思います。今の体制で対応がしっかりやり切れるのかどうかということを懸念いたします。

 被害回復の給付金の支給手続が速やかに、そして確実になされるという、このために、検察官に対する研修の充実とか、検察庁の人的、物的、こういった体制をしっかり整備していかなきゃいけないだろうというふうに思いますが、これについては、大臣、いかがですか。

杉浦国務大臣 先生のおっしゃるとおりだと思うんですが、ただ、事件といいますか、五菱会の場合は五十億を超えるお金を没収するということなんですが、これに類するような事件がどれぐらい出てくるかというのはちょっと予測できないんですね。ですから、今後の様子を見て、事件が多い場合は弁護士さんの協力をいただく場合も出てまいりましょうから、全体としてどれぐらい検察官の事務をふやすことになるかはちょっと不透明でございます。正直言って、事件としては、数としては余り多くないんじゃないか、そんな感じもいたしますので、この法律の適用の状況を見守りながら対応していくことに相なると思います。

 教育その他の点については、先生がおっしゃるとおり、対応する体制は考えていかなきゃいかぬと思います。

石関委員 事件数が少ないのではないかというお考えですけれども、事件数が少なくても被害者の数が膨大に上るということもありますので、しっかりした体制づくりをお願いしたいと思います。

 あと、破産との関係ですけれども、没収して保全をした財産に対しては、どんな機関も手を出せないということになるのかどうか。先ほど御説明いただいた犯人が破産をした場合というのは、犯罪被害者以外の債権者も保護されるべきものだというふうに私は解しておりますが、破産管財人の手にゆだねる方がこういったことを考えたときに公平だ、こういった考えもあると思いますが、これについてはいかがでしょうか、破産との関係。

大林政府参考人 犯罪被害回復給付金は没収した犯罪被害財産等から支給されるものでございますので、犯人が破産した場合に犯罪被害財産を没収等することができるかどうかが問題となります。

 まず、犯罪被害財産の没収につきましては、破産手続と没収保全との関係について、いわゆる先着主義の原則によりますので、没収保全が破産手続開始決定に先行するときは破産手続による破産財団に属する財産の処分が制限され、没収保全がされる前に破産手続開始決定がされていた場合は没収の裁判をすることができないこととされております。したがいまして、没収保全が破産手続開始決定に先行するときは犯罪被害財産を没収することができ、これを被害回復給付金の支給に充てることができることになります。

 ですから、今委員が御指摘のように、一方で破産財団から、それから破産管財人がいるということでございますが、ただ、両者の関係は、当然、給付を受ける対象が違います。一般債権者であるか、こちらは犯罪被害者であるかということでございまして、そのどちらを優先させることができないために、今のような調整規定といいますか、優先関係を法律に定めたものでございます。

 もちろん破産管財人も信頼される方が選任されているわけでございますけれども、やはり、その利益を受けるといいますか、そういう対象が違いますし、制度も違うということで、破産管財人にお任せすると一概にはちょっと言いにくい。制度の趣旨にかんがみて、やはりその手続を最初にした者が優先していくという形はやむを得ないんじゃないかというふうに考えております。

石関委員 それでは、支給対象犯罪行為により失われた財産の範囲についてお尋ねをいたします。

 例えば出資法違反の罪において、現に支払った利息の総額が該当するかどうか。犯人から貸し付けと称して交付を受けた額について控除をして裁定をされることはないんでしょうか。

大林政府参考人 被害回復給付金法案の第九条第一項第二号に掲げる「支給対象犯罪行為により失われた財産」とは、申請の理由としている支給対象犯罪行為により被害者から犯人に移転した財産をいわば被害者側から表現したものでございます。これを犯人側から表現すれば、当該支給対象犯罪行為によりその被害を受けた者から得た財産、すなわち犯罪被害財産に対応するものと考えております。

 今おっしゃられるものについては、御指摘のとおり、控除されるというふうに考えております。

石関委員 それでは、支給法ですけれども、余剰金ですね。二度にわたって支給金を支給して、それでも余った余剰金については、一般会計に入れるということになっています。しかし、これはもともとは被害者のお金ですから、残ったお金も被害者の救済のために使っていくというのが私はあるべき姿ではないかと思いますが、どうして一般会計の方に繰り入れることになったのか、基本的な考え方をお尋ねします。

杉浦国務大臣 本法案によりまして被害者に支給する給付資金というものは、そもそも、没収、追徴の裁判及びその執行の効果として国に帰属している財産でございます。本来的には、そのような財産は一般会計の歳入に繰り入れることが原則でございますが、被害者の救済のために支給するという特定の目的のために使用することを前提として、いわゆる保管金として取り扱うこととしている次第でございます。したがいまして、犯罪被害財産支給手続の終了後に残余がある場合には、もはや何らかの特定の使用目的があるものではないので、原則どおり、これを一般会計の歳入に繰り入れることとしたものでございます。

 しかし、こういう場合は余りないんじゃないか、剰余金が残ることは余りないと思いますが、あったら、そういうこととなります。

石関委員 さっきも、事件は余り多くないんじゃないかとか、大臣のお考えだというふうに思いますが、あったらどうかと、制度のお話ですのでお尋ねをしているわけでありますが、大臣の予測ではなくて、制度がどうなっているか、しっかりすき間がないようにつくっておかなければいけませんので、お尋ねをしているというわけであります。

 今御答弁いただきましたけれども、この一般会計の歳入に繰り入れられる給付資金について、新たに判明をした犯罪被害者等に支給することができる制度をつくる、あとは、犯罪被害者支援団体等の経費に充てる、こういった制度、あるいは犯罪被害者の保護基金をつくるとか、犯罪被害者等の支援に直接利用できる方策、こういった方策やいろいろな制度を創立する、基金をつくる、こういったことは私はやはり必要ではないかなというふうに思いますが、大臣、こういった検討をされるべきだと思いますが、いかがですか。

杉浦国務大臣 基本的には、給付金の支給後に剰余財産が生じることは可能性は低いと考えられますけれども、ということは、犯罪行為の被害者についても広く給付金の支給対象といたしますし、一たん剰余財産が生じた場合であっても、また特別支給手続というものでさらにこの財産を給付金の支給に充てることとしておるわけでございます。

 しかし、剰余を生じることはないわけではないわけであります。この点、剰余財産を別途被害者等の支援のために利用することにつきましては、被害者保護、支援のための施策全体の中で検討していかなきゃならない問題でございますので、先ほど副大臣が申しました経済的支援に関する検討会、これは犯罪被害者等基本計画に基づいて内閣府に設置されているものでございますが、ここで議論されるべき問題だと思っております。

石関委員 この法案と租税債権優先、この両者の関係についてお尋ねします。

 五菱会の事件では、被告から押収した現金のうち一億円を国税が持っていってしまったということであります。犯罪被害財産というのは不正な活動によって得られたものですので、それを被害者に返さないで税金で持っていってしまうというのは、国の倫理としては私はいかがなものかなというふうに思います。

 犯罪被害財産に係る国税滞納処分のあり方についてはどのようにお考えになられるか。国税の滞納処分との優先関係について、この法案の作成過程においてはどのような検討が実際になされたのか、お尋ねします。

河野副大臣 実際には、捜査をやった上でないと犯人の所得ですとか犯罪収益というのはなかなか確定しませんから、先に国税が持っていくということは余りないんだろうと思います。

 あった場合はどうなんだということになると思いますが、国税が来て先に持っていかないようにそこだけとめましょうという考えはあると思いますが、その場合も、民事の強制執行をすると、先に国税に払って残りを民事の債権者で分けるというスキームがあります。それまでとめると、非常に民事の債務関係が不安定になるわけであります。

 では、そのときも国税は外そうじゃないかというと、今度は犯罪被害者以外の一般の債権者も国税より優先するということになってしまいますので、そういうことでいいんだろうか、そこは国税の関係もいろいろ議論しなければならない、そう簡単なことではないということですので、結局のところ、極めてまれなケースが起きた場合には現行法では先に着手したものからという主義でやらざるを得ないなということでございます。

石関委員 今質問してまいりまして御答弁いただいた中で、しかし、やはりしっかり法律に書き込める部分は書き込んでいく方がよろしいんだろうというふうに思います。

 大臣からも幾つか御答弁いただきましたが、車の運転でも大丈夫だろうとか、事件が少ないだろうとか、大臣のお考えもわからないではありませんが、だろう運転していると危ないということになりますので、すき間のないようなしっかりとした法制度、被害者の回復のために行っていくべきだというふうに思います。

 ありがとうございました。以上で質問を終わります。

    ―――――――――――――

石原委員長 ただいま、両案審査のため、参考人として法政大学大学院法務研究科教授今井猛嘉君、弁護士木村裕二君の両名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に委員会を代表して一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多忙の中をおいでいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、今井参考人、木村参考人の順に、それぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言いただきますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願いたいと思います。

 それでは、まず今井参考人によろしくお願いいたします。

今井参考人 法政大学の今井と申します。

 本日は、御案内の二法案、すなわち組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の一部を改正する法律案と、犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律案につきまして、若干の意見を述べさせていただきたいと存じます。

 刑法を勉強している者でございますので、限られた観点ではございますが、若干の意見を述べたいと存じます。レジュメの項目に沿ってお話しさせてください。

 まず、きょうの意見の対象は先ほど述べました二法案でございますが、確認といたしまして、この二法案の骨子を簡単に見させていただきたいと存じます。

 私が思うところ、この二法案には三つの重要な制度が含まれていると思われます。

 それは、第一に組織的な犯罪。例えば、組織的になされた詐欺罪ですとか出資法違反を前提犯罪とする犯罪収益等隠匿罪、マネーロンダリング罪ですけれども、これらによって犯人が事実上確保するに至った犯罪収益をより効果的に剥奪するという制度の創設でございます。第二点は、これを被害者に給付する制度、手続の新設が企図されている点でございます。

 前者の組織的犯罪に係る犯罪収益の剥奪の強化というところは、組織的犯罪処罰法改正案において目指されており、また、後者の被害者への資金の還付という点につきましては、被害回復給付金の新設として、被害回復給付金支給法案において意図されているところでございます。

 これらに加えて第三といたしまして、外国にあると思われます組織的犯罪に係る犯罪収益の還付方法、手続の創設も組織的犯罪処罰法改正案において目指されている注目すべき点だろうと思われます。

 これらの制度の背景でございますけれども、当然ながら、現在の法制度では十分対応できない事態が生じたために考案されたものと思われます。

 まず、現行の法制度における原則を確認いたしますと、財産犯、例えば詐欺罪でありますとか恐喝罪等の被害者は、瑕疵のある意思表示に基づいて犯人に金銭等の財産的利益を移転しておりますけれども、この意思表示は取り消しが可能であったり、あるいは無効であることから、犯人には当該財産的利益を終局的に保持する権限はございません。そこで、被害者は、不当利得返還請求権に基づき、あるいは損害賠償請求権に基づきまして、犯人から利益の返還を請求することが可能であります。これらは通常の民事訴訟手続に基づいてなされることになります。

 こうした私権の実現に係る原則を踏まえまして、現在の組織的犯罪処罰法、組犯法とも略称させていただきますけれども、同法のもとでは犯罪被害財産の没収、追徴が禁止されているところでございます。没収、追徴されました犯罪被害財産は国庫に帰属いたしますので、被害者がこれを取り戻すことができなくなる、これを防止するのが組犯法の趣旨でございます。

 以上が原則なのですけれども、実際には、暴力団関係者の統括するやみ金融組織により被害に遭った者が、民事法の原則に従って自力で財産的利益の回復を図ることは、非常に困難でございます。こうした被害者には、民訴を提起するだけの財産的余裕がないことも多いですし、また、資力はあっても、暴力団関係者を被告として民訴を遂行するという決断には相当の勇気が必要かと思われます。この点、想像にかたくありません。こうした実際上の難点が伏在していることは、組犯法の立法段階でも意識されていたことですが、現実に深刻な問題であったということは、御存じの旧五菱会事件を通じて明らかになったところでございます。

 そこで、このような現実に対応するために、レジュメの(1)、(2)、(3)と書いております対策、新制度が提案されており、これが上記二法案の骨子となっているところでございます。

 この点に関しましては、さきの三点挙げた第三番目の点、外国所在の犯罪収益の還付方法の創設という点についても一言述べたいと思います。

 これは、組織的犯罪の国際化に対応する大きな意味を持つものかと思います。例えば、組織的にやみ金融業を行った団体は、獲得した違法な財産を蓄積した後、その再投資を図ると思われますが、その際には、違法な資金を洗浄する、すなわちマネーロンダリングする必要があります。その有力な手段として、銀行秘密が高度に保持されているスイス等海外の金融機関に預金をする傾向があると言われています。現に、この点は旧五菱会事件でも発覚しているところですが、海外の捜査金融当局がマネーロンダリングの疑いのある預金を発見すれば、通常、関連する口座を凍結し、銀行取引を停止し、また預金債権の剥奪をします。そういった預金債権相当額を日本に戻さない限り、日本の被害者の実質的な保護ということに至りませんので、この第三の点も非常に意義のある点だと考えております。

 今述べてきたところで、既に若干の私の評価は述べておりますけれども、まとめますと、ここで挙げられている三つの制度は、犯罪被害者保護の充実という点、組織化された犯罪、これは国際犯罪とも密接にリンクしておりますが、組織犯罪及び国際犯罪対策として現在まさに要求されている制度であり、速やかな実現を期待するところでございます。

 制度が成立した場合の運用面と制度面についての展望でございますが、運用面といたしましては、犯罪被害者の方にこのような手続があり権利を実行できる点を十分周知させることが重要です。これは皆さんも御存じのところで、私も全くそのように思っております。

 それを超えて、さらに一般的な犯罪被害者保護法制をつくるべきか。これはさらに検討を要するところですが、今回の法案が旧五菱会事件を契機としたものであり、かつ、極めて悪質、重大な組織犯罪対策であったことを考えると、現在では、これをまず着実に運用し、その後、税法等他の制度を勘案して、より一般的な制度の可能性を探るべきではないか、個人的には、あるいは学者としてはそのように思っているところでございます。

 若干はしょっておりますけれども、ごく簡単な意見を開陳させていただきました。どうもありがとうございました。(拍手)

石原委員長 どうもありがとうございました。

 次に、木村参考人にお願いいたします。

木村参考人 弁護士の木村裕二と申します。

 私は、全国ヤミ金融対策会議とヤミ金融被害対策弁護団の事務局長をしています。弁護団は、山口組五菱会のやみ金融事件の被害者百七十五名の依頼を受けて、やみ金融グループ幹部の梶山進らに対する損害賠償請求の裁判を行っております。

 今回、御審議いただいております改正組織犯罪処罰法及び被害回復給付金支給法は、犯罪収益を確実に剥奪するという意味でも、また被害者救済という意味でも、実に画期的な制度であると思います。このことを、五菱会やみ金融事件に具体的にかかわっている立場から申し上げたいと思います。

 全国ヤミ金融対策会議は、二〇〇〇年十二月、全国の弁護士、司法書士、被害者の会らで結成しました。二〇〇二年九月から昨年十二月まで、七度にわたって、延べ二万七千件のやみ金融業者の集団告発を行っております。

 この集団告発というのは、一時に多数の情報を集中して悪質業者の存在を浮かび上がらせ、また、まとまった人数で捜査に協力できる体制を用意することを目的としています。しかし、それでも二〇〇二年ごろは、やみ金業者の数は余りに多く、その全容もつかめない状態で、被害は全国的に拡大する一方ではないかと感ぜられていました。

 しかし、二〇〇三年八月、やみ金の帝王、梶山進が逮捕され、ピラミッド構造の巨大なやみ金融組織の存在が明らかになりました。五菱会やみ金融組織は、およそ二十七のグループで構成され、最盛期には一千店舗を傘下におさめて、数千億円の収益を上げていたと言われております。

 そして、この犯罪収益の一部、米ドル札二億円相当と現金一億円が国内で押収されました。また、五十一億円相当の預金がスイスで凍結されました。これが二〇〇三年十一月ごろから二〇〇四年初めごろの状況です。このように巨大な資金の存在が浮かび上がってきて、果たしてこれをどうするかという問題に直面したわけです。

 ところが、現行法上、犯罪収益であっても、それが犯罪被害財産である場合には没収することができないとされています。その趣旨は、被害弁償を優先するためというのですけれども、国が没収とともに犯罪被害者に被害弁償金を分配するという制度はありません。現行法上、個々の被害者自身が民事訴訟を提起して、民事執行を行うよりほか道はありません。

 没収もできず、民事執行も受けなければ、犯罪収益が犯罪組織の手元に戻ってしまうおそれがあります。これを阻止することがまず第一の目標と考えられました。同時に、組織犯罪処罰法が、犯罪被害財産は被害者に返還されなければならないと規定している以上、これを空文にしてはならない、これが第二の目標となりました。

 さらに、海外への没収資産の返還、分配を求めるための法的枠組みがないという問題で、スイス当局の方は、没収した資金を日本側に一部返してもよいという意向を示し、日本の事情はわかっているので気長に待つ方針だというふうに言ってくれておりました。ですが、日本の被害者が一人も、だれ一人、具体的行動を起こさず、いつまでたっても被害状況が明らかにされないのであれば、スイス当局としてもこれ以上無理して待ってあげる必要はないというふうに言わざるを得なくなることもあるのではないかというおそれがありました。

 そこで、前例のないことで成否のほどはわかりませんが、時期を失うわけにもいかないということで、二〇〇四年春、訴訟を提起する方針を決めました。ところが、ここから実際に裁判を提起することができるまで、なお半年近くかかりました。

 五菱会やみ金融事件の場合は、全国に何万人もの被害者がおります。彼らは、末端の店舗は知っていますけれども、それが五菱会系列のやみ金融店舗かどうかは知らないでいます。何万人もの被害者は、自分が当該事件の被害者だったということさえ知らないままでいます。

 私たちもまた、五菱会系やみ金融事件の被害者情報を特に持っているわけではありません。民間の私的弁護団には、捜査の秘密やプライバシーを侵害して全被害者にアクセスするような手段は持ち合わせていません。したがって、まず一部の原告で裁判を起こして、さらに、そこに参加してくださいという呼びかけをしていくしか方法がありませんでした。そこで、二〇〇四年十一月、過去の集団告発の案件の中から、五菱会系列のやみ金店舗による被害案件を抽出して、まず八十二名の原告で東京地裁に訴訟を提起したのです。

 そもそも、やみ金融ですとか振り込め詐欺のように、広く市民社会を標的とする組織犯罪の場合、被害者が自分で民事訴訟を提起することは極めて困難です。もともと、被害者は背後の大物との接点はありませんので、自分が当該事件の被害者であることさえ知りません。知らないから、名乗り出ようがないということです。たとえ、そうかもしれないと想像できたにしても、その背後関係を明らかにする手がかり、証拠は自分の側には何も存在しませんので、自信を持って名乗り出ることもできません。これが最小にして最大の問題です。

 仮に、自分とその大物とのつながりを知ったとしても、報復を恐れて提訴に踏み切ることが難しい。そこを踏み切ったとしても、犯罪組織の実態を解明したり証拠を収集するような手段は民間人の被害者にはありませんので、刑事記録の閲覧、謄写に依存せざるを得ません。そうすると費用がかかりますので、自分の被害額と照らし合わせて費用対効果を考えればちゅうちょせざるを得ないということになります。

 さらに、費用をいとわず提訴しようということであれば、多数の被害者が同じように検察庁に記録の謄写の申請をするということが同時に行われることになりますので、社会的に見れば極めて非効率ということであります。

 さて、今回御審議いただいています改正組織犯罪処罰法と被害回復給付金支給法というのは、犯罪収益を確実に剥奪するという意味でも、被害者救済という意味でも、画期的な制度であるということが言えると思います。

 犯罪収益を確実に剥奪することは、同種犯罪の再発を抑止するということにつながります。もしも巨額の違法収益が放置されるなら、違法行為のやり得を許してしまうなら、いつまでたっても違法行為はやむことがないでしょう。単に悪事が繰り返されるというだけではなくて、連綿として続く違法行為の集団、人脈が、さらに悪質化し、拡大していくことが懸念されます。そのつなぎ目となるのが、やはり金です。加害者の手元に残った違法収益です。

 巨額の違法収益を放置すれば、市民社会は危険にさらされます。違法収益をその都度吐き出させて、危険な流れを断ち切らなければならないと思います。この制度は、違法収益吐き出し制度の、日本における初めの一歩という貴重な制度であると思っています。

 次に、被害者救済における大きな前進について述べますが、この制度は、先ほど申し上げましたような、被害者自身が民事訴訟を提起する場合に負わされる困難を大幅に取り除いてくれます。

 この手続では、被害者は自分の住所、氏名を加害者にさらす必要はありませんので、報復の心配はなくなります。犯罪収益であることは刑事裁判で認定済みでありますので、あとは自分の被害について、検察官や被害回復事務管理人の側で収集している証拠と突き合わせて裁定をしてもらえばよいのであって、被害者の側で全部の証拠をそろえて出す必要はありません。大量の被害者がいる事件で公平な被害回復を図るための集団的な手続として、実に画期的な制度であると思っております。

 ただ、この画期的な手続に参加する機会をすべての被害者に保障するためには、手続を主宰する側において被害者の掘り起こしをする努力が必要であると思います。官報は見たことがない、そんなものは知らない、役所のホームページは見たことがないというのが被害者の多くの実情であろうと思いますので、知らないから名乗り出ない被害者にどうやって接近して、どうやって掘り起こすことができるか、これがこの制度の最初の試金石となるのではないかと思っています。

 以上が、この法案に対する評価と運用上の基本的な問題であると思います。

 続きまして、法案に対する意見、希望を述べさせていただきたいと思います。

 配付させていただきました「意見の要旨」というA4二枚の紙がありますが、この「3 犯罪被害者保護のための基金の整備」というところをごらんいただければと思います。

 法律案では、剰余金が生じた場合には一般会計の歳入に繰り入れることにしていますが、しかし、剰余金が生じてしまうというのは、被害者の置かれた状況などによって手続に参加できなかった、そういう被害者のお金でありますので、そのような被害者の損失において国が利得するとすると、それはやはりふさわしくないのではないか。

 そこで、犯罪被害者保護のための基金を整備して、剰余金が生じたような事件においてはこの剰余金を基金に組み入れて、次の事件のために使うというような仕組みがぜひ欲しいと思っております。

 といいますのは、被害者を掘り起こす工夫をしようと思えば、例えば、いろいろな媒体を使って多数の被害者にこの手続を周知させていくとか、さまざまな調査を行うなど、費用がかかります。人手もかかります。初動費用が必要なわけなんですけれども、もしもあらかじめ費用がないとすると、掘り起こしも十分にはできない。そうすると、せっかくよい理想で出発した手続だけれども、さっぱり成果が上がらないということになってしまいます。そうしますと、さらにそもそも費用不足が見込まれるような事件については、初めからどうもこの制度は使えないなというふうに引いてしまう、先細りになってしまうという心配があります。

 事件の種類によって被害者へのアクセスの難易度というのはさまざまであろうと思いますけれども、難しい事件であればあるほど、このような公的な手続をぜひとも活用してほしいところであります。

 もしも一般会計の予算の枠内でやろうとすると、どうしてもやはりある種の遠慮のようなものが生じざるを得ないと思うのですけれども、提案させていただいたような基金をつくって、違法収益の吐き出し制度というのは、国の一般的な財政のお世話になるだけではなくて、ある程度自前で回転できるというような仕組みをつくっておくことができれば、違法収益吐き出しの制度が一定の継続性と発展性を持つことができるのではないかと思っております。

 四番の「租税債権に対する優先」についても、基本的な考え方は同じです。被害者救済との関係ではいかがかということと、一般会計に組み入れるのではなく、この手続の中で基金を整備する方に向かっていくことができればよりよいのではないかということであります。

 考え方としては、やはり犯罪被害財産に関しては、この制度によって、租税収入の確保よりも被害回復という国の責務を優先させたというふうに思っております。

 確かに、最初からすべてを望むことはできないので、まず可能なことから実現していただきたいとは思いますけれども、なお、この制度は刑事手続の没収を起点とする被害回復手続であるということに基づく限界があります。それは、例えば多数の消費者に対する詐欺商法などの事件で、一部の被害者についての詐欺罪でしか起訴できなかった場合について、被害回復給付金を受ける出口の方では、一連の行為として行われた犯罪行為による被害者も手続には参加して配当を受けられますけれども、没収の対象に関してはもともと起訴された案件の被害額しか原資とすることができない、入り口は狭いけれども出口は広い、そういう問題があります。

 それから二つ目は、刑事裁判では厳格な立証が要求されるので、犯罪収益とおぼしき財産が発見されたとしても、直ちに没収することができるとは限らないし、また、そもそも捜査機関が動かなければこの手続は始まらないということでありますので、犯罪収益の剥奪を超えて、より広く民事上の違法収益の吐き出し、被害回復のための制度を引き続き検討していただきたいと思います。

 私の意見は以上とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

石原委員長 どうもありがとうございました。

 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

石原委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。赤池誠章君。

赤池委員 自由民主党の赤池誠章でございます。

 本日は、参考人の先生方、大変御多用の中、当委員会で御意見をちょうだいいたしまして、ありがとうございます。短い時間ですが、質問をさせていただきたいと思います。

 既に両先生の御発言を聞いておりまして、今回の法改正、そして新法制定ということに関して、改めて高く評価をしていただいているということではなかったかと思います。

 私は、法務委員会に所属をさせていただいて日がないんですが、地元は山梨県の甲府市でして、甲府刑務所の方にも地元ということもあって視察をさせていただきましたし、また、自民党の一年生の中でも府中刑務所の方に視察をさせていただきました。

 なかなか刑務所という中は、こういう国会議員の立場でないと、通常、視察はあるそうなんですが、すべて見せていただくことはないということだったんですが、意見も聞かせていただいたり事細かく見せていただく中で、改めて、小泉改革が治安回復元年とうたう中で、その治安回復の中で一線で働かれている方々の問題、そして刑務所の中を見ますと、結局、今回の背景にもなっておりますいわゆる組織暴力、暴力団の方が、当然薬物の問題も含めて、いわゆる主要な再犯の担い手になっている。当然、一般の方が犯罪を犯して入るということも、もちろんこういう時代あるかもしれませんが、とにかく、いわゆる組織暴力、暴力団の方々が繰り返し繰り返し再犯を犯して刑務所の中に入っているという実情を目の当たりにさせていただきました。

 そういう面では、組織暴力にどう対峙していくかということが治安回復にとって第一義的な意味を持つということでもございますし、そして、警察庁の方でも組織暴力に対して相当厳しくやっている中で、御案内のとおり、いわゆる今回の背景になっておりますやみ金融を含めて、結局、暴力団の資金源をどう退治していくか。従来のような恐喝やシノギと呼ばれるような手法ももちろんですが、多様化の中で本当に巧妙になってきた。その一環がやみ金であり、また最近振り込め詐欺に見られるような案件だということで、なかなかこの法律だけではぴんと来なかったんですが、その背景というのは本当に市民生活に直結した大変な問題だなということを改めて勉強させていただいたところでございます。

 そんな中で、既に意見表明をなされておりますが、再度、この法案の評価をそれぞれ両先生から簡潔にいただければというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。

石原委員長 今井参考人、木村参考人の順番で御評価を賜りたいと思います。よろしくお願いいたします。

今井参考人 ありがとうございます。

 先ほども申し上げましたが、今議員がおっしゃいましたように、組織犯罪対策として違法な収益をカットする、その再投資を防ぐ、そういった動機を外すという意味におきまして、今回提案されている諸制度は非常に有効なもので高く評価しておりますし、今後は、組織犯罪集団が行うであろうマネーロンダリング対策とリンクさせて、効果的な執行を望むところでございます。

木村参考人 組織犯罪対策という意味では、犯罪の道具、手段を奪うということ、それから収益を奪うということが大きな柱となると思います。道具に関しては、例えば預金口座の不正売買を禁止する法律がつくられたり、携帯電話の不正利用防止法などがつくられて、やみ金融や振り込め詐欺の対策として使われることが期待されております。そして、今回この制度ができますならば、収益を剥奪するもう一つの切り込みができると期待しています。

赤池委員 そういう面では両先生からも高く評価され、先ほど画期的だという御意見もいただいたということで、本法案を速やかに可決、成立していくことが我々国会議員の責務ではないかと改めて感じさせていただいたところでございます。

 そういう面では、制度設計には問題はないということですが、ただ、先生方には、今後の運用面とか展望面でそれぞれ御意見を聞かせていただきました。基本的な制度、法体系、制度設計はいいけれども、その先、具体的にどう運用していくか、そしてさらに、より抜本的な部分に向けての課題ということも御意見をいただいておりまして、その中で一つ、掘り起こしという問題がございます。

 既に当委員会でも何度か法務省の方に質問させていただいた部分があるわけなんですが、当然、制度として周知徹底をしていくことは大事なことだと思うんですね。実際、今回のやみ金の事件を見てみても、いわゆる出資法違反の部分は返さなくてもいいという基本的なことさえわかっていらっしゃらない、また、それにつけ込むような形、また、いわゆる精神的な圧迫の中で、思考を停止するような形でつけ込むということもあるわけなんです。

 そういう一人一人にとっては非常に微妙な問題が絡む中で、終わったということで安心している中で、当然、被害を回復してくれるというのはもちろん大事な話なんですが、これは非常に微妙な、プライバシーという言い方も変なんですが、つまり、自分にとっては非常に心の傷があって、それを回復してくれるのはいいんだけれども、これをまた周知、つまり周りの方に知られたくないなという心理も一面働くのかもしれないなということもあります。実際、やはり、そういったものを早く忘れたがったりとか、お金を返してくれるのはありがたいんだけれども、それをもう一度、家族であったりまた職場の方であったり周りの方に、そんなことに絡んでいたのかなんということを知られたくないという心理も働くのではないか。

 そういう面では、当然、周知徹底をしていくということは大事な反面、相当、ケース・バイ・ケースとして、微妙な問題も絡んで、例えば、通知するといっても、いわゆる検察庁から来るというと、我々市民生活をしていると検察庁から通知をもらうということはあり得ない話で、それだけで何かとんでもないことになったのではないかという、内容を読めば別に問題はないにしても、家族だったり、また、例えば住所の関係で職場に行った場合なんということになると、それだけで何か変なうわさになるということで、運用面、掘り起こしと一言で言っても、相当微妙な問題も絡むのかなというような気がいたしております。

 それぞれの、特に木村先生、実際の事件を取り扱っておられるのでその辺詳しいかもしれませんが、それぞれ両先生に、その辺の掘り起こしの微妙な問題に関して御意見をいただければと思います。

今井参考人 被害者の方を掘り起こし、その権利に目覚めて活動していただくということは極めて大事なところだと思います。

 しかし、今御指摘のように、被害者の中には、もう忘れたいからそっとしておいてほしいという方もおられますので、まずは、そういった新たな、壁があっても越えていって、権利の実現に行きたいという方々の積極的な行動の積み重ねによって、他の潜在的な被害者の方々の意識を高めていく、意識を高めるというのは変な言い方ですけれども、権利に目覚めていただくということが必要であって、社会全体としていきなり被害者の権利のために進もうというのは少し抵抗が大きいかもしれないと個人的には思っております。

 また、今御指摘のように、検察庁からの通知があった場合という話ですけれども、個人情報保護という観点からいっても、プライバシーの保護という観点からいっても、望まない方も現にいらっしゃるかもしれない、あるいはそれは被害の額に依存しているかもしれませんけれども、もう少し実情を見させていただきたいと個人的には思っております。

木村参考人 被害者へどうやって接近するかというのは、特に我々民間の私的弁護団の場合は、やはりかなり遠慮せざるを得ませんでした。このような公的な手続となると、またプライバシーですとかそういった秘密の問題についても、一定度正当化できる根拠を持った近づき方ができるのではないかと思っています。

 確かに、個々の被害者によっては、知らせてもらっても手続には参加したくないという方もいらっしゃるだろうとは思うんですけれども、ただ、もともと知らないままに放置されているということとの兼ね合いで考えますならば、まずは知らせる努力をして、その後、御本人の御判断というのはあってよろしいかと思うんですけれども、やはり知らせる努力はせざるを得ないのではないかと思います。

 例えば、手紙を送るについても、名前のわからない白い封筒で送るとか、そのような細かな配慮というのはあり得るかと思いますし、イメージを喚起していただく意味で、発想の転換として一つ紹介させていただくのは、アメリカなんですけれども、FTCが行っていることなんですが、詐欺商法の事件で被害者掘り起こしをするために、詐欺商法の会社が行っていた広告と全く同じデザインの広告を掲載して、この広告にひっかかった方はFTCに御連絡をと電話番号が書いてある、そういうふうな接近の仕方というのがありました。これはいろいろ工夫をしていくことが必要であると思います。

赤池委員 ありがとうございました。

 実務に携わっていらっしゃる方ならではの情報もいただきまして、今後、速やかに通して、具体的な運用の面において先生方の意見を反映できるような形で、引き続き私も意見を述べていきたいなというふうに思いました。何をおいても、当然、周知徹底は必要なんですが、やはり微妙な部分というのはケース、ケースとして相当あると考えておりますので、できるだけ配慮をした形での被害の回復というものに力を尽くしていきたいと思います。

 そして、ちょっと時間もないんですが、もう一点だけお聞かせいただきたいのは、木村先生の方から基金という御提案もいただいております。そういう面では、まず制度設計からいうと、もともと、一般財政に入れるわけではないんですから、いわゆる限られた中で、もしかすると、余るというよりも足りなくなるみたいなことも当然考え得るということで、基本的に、制度の設計としては、もともと基金に回すほどのものが果たしてあるかなしやという部分も感じております。

 そして、当然、本格的な救済、先ほど言ったように一般法でさらにより突っ込んでという、次のステップとしては大事かもしれませんが、今回においては、いわゆるこういった事態の中で、それをプールするという法体系、法の仕組みをどうするかということでも相当、結構時間もかかるかもしれないということで、そういう面では、今回はこのような形の制度設計として、残存が残るか残らないか、ほとんど残らないかもしれない。逆に、これだけ返してくれといっても自分の分だけ返らないということも当然考え得る中での問題ですから、今回の制度設計においては、まずは残存ということは一般会計、しかし、その先という二段階の考え方でいいのではないかと私は思うんですが、それぞれ両先生の御意見を基金に関していただければと思います。

今井参考人 恒常的な被害者保護施策のための基金をつくるというのは、将来の大きな課題であると個人的には思っております。

 しかしながら、今回の提案に係る制度は、組織的で重大でかつ国際的な色彩を帯びた犯罪対策ということですので、なかなかそこまで行きませんが、将来基金をつくるときには、犯罪被害者ではありますけれども、もう少し広い視点、例えば消費者保護のあり方、消費者教育の一環などという点も考え、また税金の有効な活用ということも考えて、特に犯罪にリンクした、犯罪被害に限定された領域ではなく、もう少し広い観点から、税金類似の基金の創設であれば私は考えられると思っております。

木村参考人 確かに、多くの事件では、没収された財産の方が少なくて、全員が全額の弁償を受けられるわけではないけれども、平等な配当で我慢しなければならないという事件が多いだろうと思います。

 ただし、出発点となる五菱会の事件で、もしスイスから戻されてくるお金があったとして、そこにおいて剰余金が生じるような事態も起こるかもしれないというふうに予想をしております。

赤池委員 時間が参りましたので、私の質問は二点のみということでございましたけれども、速やかに本法を可決、採決し、そして、より運用面、さらにその先にあるものに向けて引き続き努力をしていきたいと思います。

 きょうはありがとうございました。

石原委員長 次に、高山智司君。

高山委員 民主党の高山智司でございます。

 今井先生、木村先生、きょうは、本当にお忙しい中、ありがとうございます。

 まず伺いたいのは、今、同僚議員からも聞かれましたけれども、まず余剰金の問題ですけれども、今回の五菱会の事件では、五十一億円がスイス当局にマネーロンダリングということで没収された、それで、そのうちの一部を日本に返してもいいよと言っているという話でございますけれども、本来、これは全部被害者のお金なんじゃないのかなという気もしているんです。

 これはまず木村先生の方に伺いたいんですけれども、今回のこの事件で、そもそも五十一億円ぐらいで被害は足りているものなんですか。それとも、もっとこれからいろいろな人が出てきて被害が拡大しそうな勢いなのか、まずちょっとその辺を伺いたいんですけれども。

木村参考人 本当の被害は、多分、被害者は数万人いるだろうと思いますし、犯罪収益は数百億円、数千億円という規模ではないかと思われます。それから、やみ金の店舗は最盛期には一千店舗ぐらいあったと言われていますけれども、刑事記録の中などで把握できていると思われるのは百程度であると思います。

 だから、本当の被害全体からすれば五十一億円というのはごくわずかかもしれないですけれども、かといって、解明されていなかったものをどうやって解明していくか。それができないとすると余剰金が生じてしまうかもしれない。最後の問題として、あとは、実際に被害者の方が被害に遭ったのは二〇〇二年、二〇〇三年ごろが中心です。三年前、四年前のことですので、そこの被害者にたどり着けるかどうか。そこでも全員に行き渡らず、余剰金が生じてしまうかもしれないと思っています。

高山委員 先ほどの被害者の掘り起こしというところでも問題になったんですけれども、これは両先生に伺いたいんです。

 例えば今回の五菱会の事件ですけれども、やみ金業者が、五菱会金融とか五菱会ローンとか、そういう名前だったんでしょうかね。これは例えば高山ローンとかにこにこクレジットとか、何かそういうような名前でやっていて、自分が五菱会の被害者だと気づいていない方々が多々いると思うんです。

 そういったものをやる際に、当然これは警察の協力というのが不可欠だと思うんですけれども、こういう経済事犯というんですか、悪質な、特に暴力団が絡むような事件で警察はどの程度まで協力するべきなのか。私は、もちろん全面的にということはあると思いますけれども、往々にして、警察の方で、これはちょっと今捜査中だから出せないとか、あると思うんですよね。こういったことを制度上どういう担保ができるかとか、あるいはどの程度まで協力させるべきなのかとかいうのを、専門的な観点からどのようにお考えかを伺いたいんですけれども。

石原委員長 両参考人、今井参考人、木村参考人の順でお願いいたします。

今井参考人 警察が捜査をしているときに、被害者とともに闘おうとしている弁護団等にどういう情報が提供されるか、そういう御質問ですか。(高山委員「はい」と呼ぶ)はい。

 まず、一般的には、御存じの暴対法というものができるまでは、警察が民事不介入の原則をとっておりましたので、民事事件に関して余り介入しておりません。しかし、暴対法以降は、特に指定暴力団が行う違法な行為については積極的に関与しておりますし、ちょっと詳細、具体的な名前は今失念しておりますけれども、そういった対暴力団に係る民間の団体があり、それらの支援を得て情報は得ていると思いますが、他方で、やはり捜査の秘密ということがあろうかと思いますので、なかなか具体的なところまではわからないというふうに私は聞いております。特に銀行秘密に係ってくると、まずそもそも警察が照会しても教えてくれないという話も聞くことがございまして、議員のおっしゃるとおり、非常に難しい問題だと認識しております。

木村参考人 まず、店の名前ですけれども、当然ながら、五菱会ローンなどと名乗っているわけではありません。末端の店舗は、例えばウインズサービスとかアトラスサービスとか、そういった一般的な名前を使っていまして、特に、店長らに対しては、組織の上のことは絶対にしゃべるな、上とのつながりはしゃべるなということでおどかしておりますので、それが被害者に知られるような形で営業をしていたわけではないということであります。したがって、掘り起こしのためには、店の名前を公表して、この店の被害に遭った人はというような呼びかけをすることが必要になってくるかと思います。

 ところで、やみ金の場合はまだ店というつながりの接点がありますけれども、振り込め詐欺の場合はもっと難しいです。振り込め詐欺の場合は、自分の息子の名前を名乗って電話をかけてきたあの男というものしか残りませんので、あとの接点はお金を振り込まされた相手方の口座ですね。だから、被害者に呼びかけていくに当たっては、口座というものをある程度開示していかなければならないんじゃないかと思います。

 これは、普通に何か裁判を起こしましたといって何行かの新聞記事に載る程度ではとてもとても、そんなスペースはとってもらえませんし、お金を使ってそれを広報するということは普通にはできないことですので、この公的な手続の中でぜひ、店舗の名前を明らかにするとか、かかわった口座の名前を明らかにするとかいうことはやっていただきたいと思います。

 それで、捜査をする上でも、そのようなことが見込まれる事件の場合は、あらかじめそういった観点で組織の全体像を明らかにするということをやっていただきたいと思います。

高山委員 木村参考人に、実践的な経験をされたところから、もう少し今のところを掘り下げて伺いたいんですけれども、警察との協力関係というのはどのような感じで、大体すごく協力的にうまくいっているものなのか、それとも、やはりちょっとまだ不十分だなと感じられているところがあるのか、まずそこを伺いたいんですけれども。

木村参考人 そうですね。広く一般的に言えば、なかなか協力関係をつくるというのは難しいという面はあるかと思います。個別の事件でこのような被害がありましたと被害届を出したり告発、告訴をしようと思っても、なかなか捜査してもらうまでが大変という面はあります。ただ、この五菱会事件のような大きな広がりを持った事件の場合には、やはり警察の方の側も非常に協力的になっていただいていた面はありました。

高山委員 警察は非常に協力的だということだったので、それはいいと思うんですけれども、あと、国税との関係もちょっと伺いたいんです。

 これは両参考人に伺いたいんですけれども、今回のこの五菱会事件でも、国税滞納分の差し押さえとの関係というのが出てきたと思うんです。これはもう価値観の問題と言ってもいいのかもしれないんですけれども、確かに、国税滞納をするのもやはり悪いことだし、人をだましてお金を取ることも悪いことだ。だけれども、国税というのは国家権力そのもので、すごい権力もあり、緻密に調べて仕事としてやっていく。それに比べて、今回の五菱会の被害者というのは、正直言って、そもそも、余り金融のことも詳しくないからこういうやみ金にかかっちゃうわけですね。

 そういう人たちとの対比をした場合に、裁判のことを伺うのではないんですけれども、今後のことなんですけれども、今後もこういうことは起こり得ると思うんですね。国税の皆さんも仕事ですから、これはまじめに早く差し押さえなきゃ、幾ら幾らちゃんと取らなきゃということでやっているんだと思いますけれども、これはやはり政策判断で、何か制度上うまく整理をしなきゃいけないんじゃないかなと私は思っているんです。

 両参考人に、この国税滞納分との先後関係といいますか、どちらを優先させるべきかという政策判断ですね、どのようなお考えをお持ちか、教えてください。

今井参考人 御指摘の部分は非常に難しい問題で、例えば別の経済犯罪の法律をつくるときも、いつも問題となってくるところでございます。

 先後関係自体は恐らくいじれないのではないかと、私は租税法専門ではありませんが、思うのですが、例えば、税金を徴収するというときに、制裁的機能があるのであるということを認めて、違法性が疑われるような事業に係る徴税ということに関しては、他と違った税率を掛けて、そこで上積みをとって基金を設定するということがあればいいのではないかと個人的には思っておりますが、これはやはり租税法の体系、憲法上の税法の体系を全部考えないといけないので、今後ぜひ早急に検討されたいと思っております。

木村参考人 まず、先着手ということで言えば、一般の被害者と税金と並べてスタートを切れば、税金の方が早いだろうと思います。常に負けてしまうということだと思います。

 それから、この手続での没収との関係で言えば、没収した犯罪収益がすべて国庫に帰属するという、現在の状態では先着手主義であっても、どちらにしても行き先は同じだから、どっちの手続が先に始まっても余り大きな差異はないかもしれないんですけれども、今回、一般会計に直ちに組み入れるんじゃなくて、被害者に分配するという手続を設けたわけですので、たまたま税金の差し押さえが先行していたとしても、この手続にひとまず優先して回すという考え方もあるのではないかと私は思っております。

高山委員 この租税の滞納分と犯罪被害者との先後関係を論じると、いや、そんな犯罪被害者の方を優先すると、一般の民事の普通に持っている債権者との関係でもまた混乱を生じてしまうというような意見もあるんですけれども、私は、この一般の民事の債権と犯罪の被害者の債権と、あと租税債権と、この三つを区別して考えることは十分可能だと思うんですけれども、先生方、この三つの債権の先後関係をどう整理して考えたらいいかというところを、今の時点でのお考えを伺えますか。

今井参考人 そうですね。非常に大事な視点であると思いますし、私も個人的にはそういう方向が望ましいと思っておりますけれども、租税債権と他の一般民事の債権を分けた上で、先ほど私の意見のところでも述べたのですけれども、犯罪被害者というときに、例えば詐欺の被害に遭っているときに、まだ詐欺に係る契約を取り消していない、あるいは取り消したというときには、被害者であると同時に民事債権者にもなるわけで、もしもその明確な行為と因果関係があって犯罪被害と認定された人がいれば、その人方を特に厚く保護するために犯罪被害債権の優先度を高めることは可能かと思いますが、それ以前に、他の経済犯罪一般にもそうなんですけれども、民事法上の有効性と、ここで言っているところの犯罪被害というものをどういうふうに区分けするか、民事法と刑事法との区別を議論しないといけないと思っております。

 繰り返しますと、租税債権と他の債権の区別は可能かと思いますが、犯罪被害者を保護するためには、まずは明確な区切りをして、その被害者方に特に手厚い手当てをしていく、これがスタートであろうと思っております。

木村参考人 本日意見として述べさせていただいたのは、税金とそれから被害回復給付金支給制度との優劣ということでは、後者を優先すべきじゃないかということであります。個別の被害者が個人個人で損害賠償請求権を行使するときと、税金との関係、あるいはほかの一般民事との関係という意味では、必ずしもそこまで踏み込んで申し上げたつもりではありませんでした。

高山委員 ちょっと時間もなくなってきましたので、また五菱会の事件の話にまた戻るんですけれども、五十一億円、マネーロンダリングであると。それで、実際問題、本当の被害はもっと大きいんじゃないかというようなこともあると思うんですけれども、スイス当局はその一部だけ返していいというようなお話でした。

 だから、やはりこれは先生に頑張っていただいて、日本の被害者はこれだけの額があるぞということをまず早急に確定していただいて、スイスに、いや、こんな五十一億じゃ全然足らぬ、だから全部返せというようなことを、これは政府としても言いたいと思うんですけれども、この被害財産を確定していく上で、それこそ先ほどの話じゃないですけれども、五菱会ローンという形でやっているわけじゃないから、自分が被害者じゃないと思っている人もいっぱいいるわけですよね。でも、この事件がまた報道されていくと、ちょこちょこ出てくるかもしれませんね。

 そうすると、これは両先生に伺いたいんですけれども、後から、いや、何かいろいろ新聞見てみたら、どうもおれもそうらしい、返ってくるんですか、こう駆け込み寺的に後で来た人、これはどう対応したらいいというふうにお考えですか。

今井参考人 実体法的に言えば、あるいは実態として言えば、例えば五菱会のやみ金によって被害を受けた人というのは初めから確定していて、それは発見すべきだろうと思います。

 しかし、例えば、今回の法案においても、資格の裁定であるとか裁定のための時期を区切っておりますけれども、バランスの問題かと思います。明確に被害を疎明している方々を迅速に保護するという必要性と、実はあれは昔の領収証が出てきたので、おれは被害者だったんだと思うような人をどこまで保護するかは、時間との兼ね合いで、どこかで区切らざるを得ない問題で、実体法上の請求権をどこか手続法で区切るのは、残念ながら仕方がないことかと思っております。

木村参考人 この点については、法制審議会で御議論いただいている中で、やはり論点として出てきまして、そこで、一たん手続を終了する時期が来ても、またおくれて参加してくる人のために再度そのチャンスを与えるという仕組みまではつくっております。ただ、永久にというわけにはいかないので、その特別の手続も終わった後は、やはり被害回復を受ける機会はなくなってしまうということでありますので、だからこそ最初の掘り起こしが大事というふうに考えております。

高山委員 時間が参りましたけれども、本当にこの手の経済犯罪というのはどんどん新しい手が出てきて、なかなかこの国会というのは決めるのが遅くて、後手後手に回る部分もありまして、先生方には最前線でそういう悪の組織と闘っていただいて、本当に感謝をしております。我々国会の方でも、とにかくスピーディーに、先生方が闘いやすい武器をつくれますように頑張ってまいりたいと思います。

 どうもきょうはありがとうございました。

石原委員長 次に、伊藤渉君。

伊藤(渉)委員 公明党の伊藤渉です。

 冒頭、本日は当委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。

 早速質問に入らせていただきますけれども、まず初めに、今何度も出てきました五菱会事件で、スイス銀行に五十一億というお金が今あると。そもそもこれがどれだけ日本に戻ってくるかという議論がなされていて、私、報道ベースでしか存じ上げないんですが、米国ですか、スイスは米国との間に、没収は基本原則として折半する二国間協定がある、欧州各国との間でも折半が一般的な処理方法として定着しつつあるという報道を読んで、そもそもその半分しか返ってこないということになると、先ほどのお話を聞いていても、非常に厳しいなと思うわけですが、半分というものの妥当性というのはどういうふうに理解すればいいのか。

 また、ここから、日本とスイスはこれを今協議をしているんですが、こういう考え方もあるというような何か御意見をいただければありがたいと思いますので、両先生にお伺いをいたします。

今井参考人 今回、スイス・チューリッヒ州が没収をしていると報道されているお金でございますけれども、これがマネーロンダリングの対象財産であると言われておりますが、御存じのように、マネーロンダリング罪というのは、もともとアメリカ発祥の新しい犯罪で、それがヨーロッパに広がっていって、スイスにおいて特に問題であると言われて、現在のようになっているところでございます。

 そうした場合に、日本法の今回の法案でいきますと、譲与に係る財産の折半ということなんですけれども、これは恐らく外交上も通常のことかなと想像しております。勉強したことがございますけれども、各国において経済取引がグローバル化しているときに、一国だけではなく同種の国において同様のマネーロンダリングが起こったときに、資金を折半しておいて、それを次の捜査活動費用等に充てるというのは、外交的にも妥当なものかと思います。

 恐らく例外があって、一国の主権の及ぶ範囲において明確なマネーロンダリング等があった場合には、例外規定によってその国がすべてを没収するということはあり得るかもしれませんが、それはケース・バイ・ケースの交渉事項なのかもしれません。

木村参考人 私も聞いておるところでは、折半というのが一般的な慣例であるようです。

 これは本当に、国と国との間の問題ですので、我々民間人が乗り込んでいってというのはとてもとても大変ですので、国としての働きかけをいただく中で、そこに随行させていただければと思っています。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 もう一点は、先ほど来出ていた没収金の残余金の取り扱いのお話ですけれども、この点については法制審でも相当議論がされていて、支給手続終了後に給付資金の残余が生じた場合には、当該残余の額を基金として犯罪被害者のための施策に充てることを検討すべき、これも書いてございました。また一方で、これは政府、関係機関にまたがる多角的な見地からの検討が必要な問題なので、法制審刑事法部会では検討になじまないという指摘で、本格的な検討はそこで今とまっているというような書きぶりになっていました。

 木村参考人にお伺いしますけれども、先ほど御意見の中で、基金を創設してはどうかと。そういう方法もあるなと思う一方で、非常に素人的な発想ですが、要するに、基金を創設してためておくと、実際に被害に遭われた方じゃない、また別の事件の方にそのお金が使われるということになるので、国に納めるのがいいのか、類似の事件で被害に遭われた方に払う方がいいのか、これは、今の段階では私はどちらがいいのか、ちょっと判断をしかねるところがあるので、もう一度、その辺のお考えについてお伺いしたいと思います。

木村参考人 最初のうちは、この手続を使える範囲内での同種の事件ということになるのではないかと思います。

 ただ、将来的には、犯罪被害者といっても、生命身体を加害された被害者あるいはその遺族の方に関しては何か手当てが十分できるようなことに、これまた貢献できればさらにすばらしいのではないかなということを思い描いています。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 ちょっと、幾つか細かい点について御意見をいただきたいと思います。

 まず支給の申請期間についてですが、今回の法律では、支給の申請期間、公告があった日から起算して三十日以上と、最低のレベルを規定していて、加えて特別支給申請期間というのもあって、これも三十日以上と。要するに、上限については特に記述がないわけです。

 この点についても、法制審の部会では、被害の回復給付金の支給を行うための制度を実効的なものとするためには、事案の規模や給付資金の額等の事情に応じ、想定し得る被害者が申請を行うのに十分な期間を定めることが必要と、日本語で書くときっとこういうことになるのかなと思います。

 これは参議院で既に何度か議論がされていて、例えばという答弁で、五菱会のようなケースだと半年ぐらい必要ではなかろうかと答弁もなされていました。

 この支給申請期間というのは非常に難しい問題だなと思うわけで、どの程度の期間を待って申請者を確定させるのが妥当なのか、これはまさに御意見という形でお伺いできればと思います。例えば五菱会の場合だったらというような、そういったお答え方でも結構ですので、よろしくお願いします。

今井参考人 五菱会の事件の場合、被害者の方々がどれほどいて、どれほど苦しんでいるか、私は具体的に存じておりませんのでなかなか難しいのですが、今御指摘ありました、例えば半年というのは最低限なのかなという個人的な感想は持ちます。

 大規模であって、特にあのように上納金システムを十分使っていて、上に行けば行くほど下の者との関係が途切れている、被害者も上が見えないという場合には、事案によってはやはり半年を超えて一年などということも十分あり得るだろう、あってしかるべきかと思っております。

木村参考人 私も、五菱会の件に関しては、まだその店の一部しか解明されていないというふうなところから出発しなければなりませんので、半年程度というのは必要なのではないかなと思います。

 やはり、申請をする期間を与えることも必要ですし、一方では、もう既にわかっている被害者の方には早く分配しなければならないということとのバランスで決めなければなりませんが、五菱会の場合はある程度の期間を必要とするのはやむを得ないと思います。

伊藤(渉)委員 続いて、では給付金の額の問題で、この制度で被害者が受けることのできる被害給付金の額は、支給対象犯罪行為により失われた財産の価額を基準として定めるとなっている。これは参議院での質問であったんですが、事案によっては、これは慰謝料等を含めるのが適当ではないかというような考え方もあると。さらには、必要な弁護士の費用ですとか、つまり、被害回復というものを念頭にこれまで失った財産までを回復すると見るのか、あるいは精神的な損失をどう見るのかという考えがあると思います。

 確かに、慰謝料等は民事賠償請求権の範疇である、主観的要素も含むので、個別具体性が強いので迅速な分配にはなじまないという考え方から、今回はこれは外されているというふうにお聞きしましたけれども、この弁護士費用ですとか慰謝料ですとか、こういったことを含む、含まないということに対しての御意見をお伺いしたいと思います。

今井参考人 今、参議院での議論を御紹介していただきまして、私も聞いていて、基本的には法律の制度としてはそのような整理なのだろうと思っております。

 慰謝料は個別具体的に個人の主観面を考慮して決められるもので、民事訴訟においても非常に大きな、額の算定が難しいものでございます。

 また、現実問題として、弁護士費用をかけなければ弁護士さんと一緒に戦えないということはそのとおりなので、そういったことに保護の必要がないとは全く思わないのですけれども、これは犯罪被害者の方に迅速に給付を与えるというのとは別の、先ほども少し申しましたが、広い意味での悪徳商法に係る消費者保護の問題、あるいは弁護士会等のプロボノの関係で考慮されてはいかがかと個人的には思っております。

木村参考人 私は、慰謝料とか弁護士費用とかも、例えば剰余が生じてしまいそうな事件の場合においては含めてもよいのではないかなというふうに思ってはおりました。

 ただ、多くの事件の場合は、むしろ被害額全体に比べて没収できた財産は少ないであろうと思いますので、そうすると、外をどこに広げるかというよりは、被害者間で公平に分配すること、早く分配することが優先することになるのではないかと思います。

伊藤(渉)委員 次に、迅速な分配という観点から、没収、追徴をされる犯罪被害財産、これは当然被害者の財産でございますので、裁判所、裁判官はこの犯罪被害財産返還率というか、原則返還を徹底する、これが非常に重要だと思います。

 この犯罪被害財産を被害者の方が取り戻すために、実際の運用で、官報ということがありますけれども、これはいかに実際の被害者の方にお知らせをするかというこの運用面での方法、周知の方法等が非常に今後重要になると思いますけれども、この周知の方法と、いかに多くの人にこの犯罪被害金を分配していくか、そのための運用面について何かアドバイスをいただければと思います。これも両先生にお伺いします。

今井参考人 被害者の方に権利を有していることを早く周知徹底して認識していただくことが極めて大事である、おっしゃるとおりでございますが、恐らく、その前提といたしましては、捜査機関がまず迅速に犯罪として立件をし、捜査を進めるということがあり、その過程でマスコミ等の報道によって実は自分たちの権利が侵害されているんだということを知ることが大事なのかと思います。

 今回の五菱会の事件の場合には、借りる方も他の機関からは借りられず、また脅迫的な言辞を受けて借りてしまったという場合もありえ、全国に被害者が散っていたこともあって、権利侵害はわかっていても立ち上がるのに相当な苦痛があられたのではないかと思いますけれども、他の類型の消費者犯罪等に関しては、もう少しマスコミを通じての周知によっても実効性があろうかと思っております。

木村参考人 意見陳述でも申し上げましたが、官報は見たことがないとか自分はパソコンを持っていないとかいうような人もかなり含まれているでしょうから、一般的な周知方法だけじゃなくて、ダイレクトにその人に、あなたはこの事件の被害者でしたということを知らせる機会がつくられることが必要ではないかと思います。

 やみ金とか振り込め詐欺の場合は、口座に入金したということで、その振り込みの際に名前、電話番号などが記録として残るはずですので、そこからたどっていくというのが一つの方法であろうかと思います。これは膨大な作業が必要であると思いますけれども、やるに値することであると思います。

伊藤(渉)委員 では、これで最後の質問、また両先生にお伺いしますが、最後に疎明資料についての御意見をいただきたいと思います。

 給付金の支給に当たって提出すべき疎明資料の内容については、これも参議院での答弁で、預金通帳や振り込みの明細書、郵便物やメールの印字した紙などというような答弁がありました。この点も、公告等を通じて、被害に遭った方、これを掘り起こす。そして、過去を振り返って、対象犯罪の基礎となる事実について疎明する資料を用意する。できるだけ多くの方にお返しするという意味では、余りバーを上げ過ぎるとお返しできなくなる。

 一方で、成り済ましというか、実際には被害者でもないのに支給を求めてくる、この微妙なバランスをとらなきゃいけないところだと思いますので、この点についても、疎明資料の運用という意味で、最後に御意見をいただければと思います。

今井参考人 今回、考案されている給付というのが、検察官のもとでなされる、広い意味では基本的には行政処分かと思いますので、今のような疎明資料に基づく処分であらざるを得ないと思いますけれども、成り済ましの防止ということは確かに重要です。

 ただ、それは、疎明資料を持ってきて、私に支給資格があると申請する段の本人確認を徹底するということでまずとめるべきかと思っております。

木村参考人 私も、成り済ましの点は今井先生と同じです。本人確認の徹底ということであろうかと思います。

 振り込み明細に関して言えば、実際に被害に遭って、自殺しようとして、その後、引っ越しをして、その際に全部燃やしちゃいましたという人もおりました。だから、手元に残っていないとだめだというのでは余りに過酷ですし、もう何年もたっていますから捨てていてもしようがないと思いますので、むしろ、被害回復事務管理人なり検察の方で、例えば口座をきちんと把握しておいて、その名前の入金ならこれこれというような、あとは本人かどうかの同一性の確認でパスできるというふうにしておいていただきたいと思います。

伊藤(渉)委員 ありがとうございました。運用の中でさまざま詰めていかなければならない内容もあるかと思いますけれども、総論として非常に重要な法案ですので、また速やかに成立するよう努力していきたいと思います。ありがとうございました。

石原委員長 次に、保坂展人君。

保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。

 木村参考人に伺いますけれども、大変、やみ金対策ということでずっと取り組まれてきたことに本当に敬意を表したいと思いますが、今回の立法で、これまで泣き寝入りをされてきた多くの被害者、これは五菱会関係かどうかはわからないわけですけれども、続々と名乗りを上げられたり、損害回復ということで、何とかならないのかということで声を上げられる可能性というのはどのくらいあるとお感じになっていらっしゃいますか。

木村参考人 そうですね、これは本当にわかりませんけれども、これが初めての制度でありますし、先ほどは三年前だからと申し上げましたが、まだその記憶は残っていると思いますので、接触の機会に恵まれれば手続に参加してくる方はいるだろうと思います。ただ、そこではやはり手続を主宰する側から積極的に働きかけていくことが重要であると思います。

保坂(展)委員 続けて、先ほどの意見陳述の中で、違法収益吐き出しの制度について、なお課題が残っているということで、三点ほど挙げられておりますが、最後に「例えば、国や地方自治体に対して、違法な活動を行って多数の被害者に対し財産上の被害を与える者らを取り締まる民事上の権限を付与し、」というようなことが提案されていますけれども、もう少し詳しくお考えを述べていただきたいと思うんです。

木村参考人 例えば、預かり金商法のような、高率の配当を約束してお金を集めて実態は詐欺であるというような被害も、これまた多数ありますし、一個の事件でかなり巨額の被害を生み出してしまうことがあるんです。そのような事件の場合、基本的には詐欺罪として立件することを視野に置くと、やはり、どう考えてもそれは詐欺だろうと言えるような被害事実が発生したときに踏み込むということになりがちであろうと思います。それは、ある意味で刑事司法の謙抑性という面ではやむを得ない側面はあるかと思うんですけれども。

 一方で、そうやって待っているというか、その間に被害がどんどん拡大していく、これを早くとめる手だてはないんだろうかということが大事なテーマになってきて、刑事で切り込むのが難しいとすれば民事的な手段で、早く違法行為をとめさせて、被害の回復へ切りかえさせる、そういう制度、これもまた個別の被害者とか弁護士とかでは難しいものだと思いますので、一つの制度として構想していただきたいというふうに思っています。

保坂(展)委員 続いて、今井参考人に伺いたいんですが、今回の立法は、組織的な犯罪処罰法のフレームで、マネーロンダリングというところに着目してなされていると思うんですけれども、このマネーロンダリングという行為がなかったり、あるいは、別に組織犯罪ではないけれども、被害においては、個人に与える打撃ということではそう重い軽いはないと思うんですが、その辺の均衡を図る上で、今後課題になること、今回、組織犯罪対策の観点でこれは行われるわけですが、今後の課題も含めて伺いたいと思います。

今井参考人 それは非常に難しい問題なのでございますけれども、一つ思いつきますのは、組犯法によって実行されました、例えば没収、追徴の対象となる財産の範囲を拡大していることを、一般刑法犯においても、特に利得を目的とする犯罪においてそういったものの導入可能性を検討するということは、刑罰の多様化という意味において考えるべきではないかと思っております。

保坂(展)委員 続けてなんですが、先ほどから、犯罪被害の対策の基金というようなことを我々も考えるべきではないかというふうに思うんですが、これについて、今井参考人に、各国の制度、取り組みなどで注目に値するものがあれば御紹介願えないかと思うんですが。

今井参考人 各国、主要国すべてを個人的に調べ上げているわけではございませんが、アメリカでは、きょうの議論でも出ておりますけれども、各種の基金をつくっております。ただ、それは、犯罪被害による利得を国が没収しプールしておくというものではなく、広い意味での消費者保護政策の一環として、先ほど出ていますが、FTCでありますとか、あるいは証券取引に係るSEC等によって、行政処分としてないしは広い意味での民事処分として制裁を加え、それをプールして基金化するということがあると聞いております。

 他のヨーロッパ諸国においては、まだこういったものがすごく動いているということはないかと思いますが、それは、日本と同様に民事と刑事の区別というものが法体制の原則ですので、なかなかそこを動かせないのではないかと思っております。

保坂(展)委員 木村参考人に伺いたいんですけれども、手をかえ品をかえ、いろいろな形でやみ金にかかわってきたグループは、またいろいろな方法を開発しているというふうに思うんですね。今のその実態、我々は五菱会に関してこうやって特別に、スイスにあるというようなことでイメージできるわけですが、なかなかそういったふうに把握し切れない実態があるかと思いますが、今日的な課題で、なお対策が急がれている問題について挙げていただきたいと思うんです。

木村参考人 やみ金融については、一時その取り締まりが厳しくなると今度は振り込め詐欺に転向したりというようなことがあり、また振り込め詐欺の検挙が厳しくなるとやみ金に戻ってきたりというような傾向があります。

 それから、数日前新聞で報道されていましたけれども、お年寄りをねらった架空請求のような被害がどうも大量に発生しているらしい。被害に遭ったという意識を持ちにくいとか、自分で行動しにくい人をねらう非常に卑劣な犯行であると思いますけれども、例えばリフォーム詐欺もそういうものかもしれません。そういう自分で自分の権利を守ることが難しい人がねらわれていくのではないか、その対策はやはりぜひお考えいただきたいと思っています。

保坂(展)委員 木村参考人に。

 要するに、先ほど今井参考人にもお聞きしましたけれども、犯罪被害の対策のための基金を、犯罪収益の没収の残余の額を充てるというのも一つの考えでしょうけれども、そういったことがなくてもやはりこれは整備していくべきなのではないかというふうに私ども考えております。お考えをお聞かせいただきたいと思います。

木村参考人 まさに先生のおっしゃるとおりで、ぜひそうしていただきたいと思います。被害者のお金だけで基金というのはやはり余りに政策として寂しいと思いますので、よろしくお願いいたします。

保坂(展)委員 今回、この二つの法案でぜひ早期に被害者の回復というものを望みたいわけですけれども、今井参考人にちょっと伺います。

 検察官の調査権限ということはどのような、犯罪被害に遭った人たちを捜すということかと思うんですけれども、今回具体的にどういう活動が期待されるのか、その点について伺いたいと思います。

今井参考人 法案を見る限りにおきますと、直接犯罪被害を惹起した犯罪行為プラスアルファとして、その一連の犯罪行為あるいは一連の対象行為というものが視野に入ってきております。恐らく、検察官の方が捜査を遂げている過程におきましては、余罪の捜査でありますとか、やみ金の事件でありますならば末端のいろいろな店舗を見た上で上に上っていくと思いますけれども、どこまでを絞り込めるか。すなわち、被害者が実際にはどれぐらいいるか、他方で、公判を維持するための証拠の絞り込みというところで徐々に、例えば起訴状に特定される事実、被害者は減っていくと思います。

 とはいえ、その捜査の過程で知り得た被害者には、今回の制度が整備されますならば、例えば被害回復のために通知をするなどとして、かなり実態的に満足のいく結果が出るのではないかと思っております。

保坂(展)委員 広報の点で先ほどから意見が出ておりますけれども、木村参考人に、こんな工夫ができるのではないかという御意見がありましたら述べていただきたいと思います。

木村参考人 やみ金の被害が何でここまで大きくなったかというと、勧誘を直接個人個人にやっているからなのです。多重債務者に対して、多重債務者のリストを入手してダイレクトメールを送って勧誘するから大きな被害が生まれることになったわけです。だから、被害回復を図るためにも、やはり直接通知する、働きかけるということが必要であると思います。これは余り画期的な意見ではありません、全く平凡な意見ですけれども、そのことは申し上げたいと思います。

保坂(展)委員 今の点について今井参考人に聞いて終わりたいと思いますが、被害者に対する告知の方法について述べていただきたいと思います。

今井参考人 先ほど木村参考人の御意見を聞いておりまして、FTCですか、被害に遭った方々に同じようなパターンを使って被害の届け出を告知しているという例が紹介されましたが、それはとてもいいアイデアだと個人的に思いました。

 日本においてもそのような制度をつくる。でも、これは法的に言うと、犯罪被害者の方に権利の行使を申し出るようにというのではなくて、広い意味でやはり消費者保護の政策として、その中でだんだんとダークなものがブラックになって犯罪被害者となっていくんだろうと思いますので、ぜひすそ野の広い、実は眠っているかもしれない被害者の方々への告知政策をお考えになっていただきたいと思っております。

保坂(展)委員 これにて終わります。どうもありがとうございました。

石原委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 参考人の方々には、貴重な御意見をまことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。

 この際、暫時休憩いたします。

    午前十一時五十五分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時十七分開議

石原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、内閣提出、参議院送付、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の一部を改正する法律案並びに犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小宮山泰子君。

小宮山(泰)委員 民主党の小宮山泰子でございます。本日、初めて法務委員会におきましての質問をさせていただきます。

 私自身、この法務というものを、先般からずっと皆様の質疑を聞いておりまして、非常に専門用語等この世界で通用する言葉が多く、正直申し上げまして、一般の方を対象にした犯罪というものに関しては、どうなっているのかというのがなかなかわかりづらいのではないか……(発言する者あり)松島先生もそのとおりだと。議員会館で、いつも同じ部屋で、赤い服を着ていらっしゃって、わかりやすくて本当にありがたいと思います。

 共謀罪のときもそうですけれども、やはり専門用語になっていく。また、今も、けさからずっと質疑を聞いていても、これを法律家以外の方が聞いてどれだけわかるのか、告知ができるのかということも非常に懸念をしているところであります。

 本日、私は、そういった意味で、一般の方の意見、特に被害者の立場になりまして、その方々が、どうやったらこの経済犯罪、財産という貴重なものを奪われたこの犯罪に関してその権利や身分というものが守れるか、その立場におきまして質問をさせていただきたいと思います。

 今まで、犯罪被害者というのは、やはり泣き寝入りということが多かったのではないかと思います。大きな意味で、資本を持ったところがしっかりとした弁護士たちを立てることができ、もしくは、被害者の方々は、お金がない、またその方法を知らないがために泣き寝入りをするといったことが現状だと思います。

 その中において、こういった法案が出てくるということは、ある意味、非常に新しい第一歩でもあり、そして被害者の救済につながる有効な法律であるというふうに考えていきたい。また、新しい場面が生まれてくるんだと思っております。であるからこそ、この法律が現実に有効に作用し、そして運用される、そういった法律にしなければいけないという思いを強く持っております。

 昭和五十年代半ばから、犯罪被害者を支援する立法が行われていますけれども、幾つかの新しい制度もでき上がってきました。しかし、この制度というのはまだまだ歴史が浅い、また発展途中であるということもつけ加えさせていただきたいと思います。

 それでは、当委員会での初めての質問でございます。犯罪被害者の被害回復、犯罪被害者の支援制度の全体像につきまして、まず最初に、これまでに創設された、そして運用されてきた制度についての概略、また実績の概略についてお伺いしてまいります。

 犯罪被害者等給付金支給法、犯罪被害者等基本法、総合法律支援法、こちらができて、また始まっている部分もございます。この点に関しまして、簡略にではありますけれども、警察庁、法務省、内閣府から順次お伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

安藤政府参考人 警察におきましては、人の生命または身体を害する犯罪行為により亡くなられました方の御遺族、または重傷病を負い、もしくは障害の残った方に対しまして、社会の連帯共助の精神に基づきまして国が給付金を支給する犯罪被害給付制度を所掌しているわけでございます。

 本制度に基づきまして、昭和五十六年一月施行以来平成十八年三月までの間に、約五千名に対しまして総額約百七十億円の犯罪被害者等給付金が支給されてきたところ、被害者の精神的、経済的打撃の軽減に一定の成果を上げてきたものと考えております。

 また、本制度につきましては、平成十三年の犯給法の改正によりまして、大幅な支給水準の引き上げとか、重傷病給付金の創設、あるいは障害給付金の支給対象の拡大など、制度の抜本的な見直しがそのとき行われました。

 加えまして、本年四月におきましても、重傷病給付金の支給範囲とか支給期間の拡大が行われるなど、被害者救済にさらに有効なものとなっていると考えております。

 今後ともさらなる努力に努めてまいりたいと思っております。

倉吉政府参考人 御指摘の総合法律支援法の関係を法務省から答弁させていただきます。

 この総合法律支援法に基づきまして、ことしの四月十日、日本司法支援センターが設立されました。現在、十月からの業務開始に向けて鋭意準備作業を進めているところでございますが、この支援センターでは、犯罪被害者の方々のためにさまざまな取り組みをしている組織等がたくさんございますが、こうしたところと緊密な連携関係を構築し、個々の犯罪被害者の方が受けておられる心身のダメージ等に十分に配慮しながら、そのときに最も必要な援助が受けられるよう、集約した情報を速やかに、かつ懇切丁寧に提供しようということで準備を進めているところでございます。

 また、この点は法律に明記されているところでございますが、支援センターでは、各地の弁護士会や日本弁護士連合会と連携して、犯罪被害者の援助に精通した弁護士を紹介する、こういう体制を整備するということも予定されております。

 このように、センターにおきましては、犯罪被害者に対する情報提供を業務の一つとしておりますので、現在御審議いただいております法案による給付金支給手続に関しましても、今後、検察官から支援センターに対し、個別具体的な事件に応じて情報提供をいただき、これを御照会に応じてまた提供していくというようなことをしながら、連携を図ってまいりたいと思っております。

荒木政府参考人 お答え申し上げます。

 犯罪被害者等基本法に基づきまして、昨年末、犯罪被害者等基本計画が閣議決定されたところであります。

 基本計画におきまして、省庁の枠を超えた検討が必要であるとされました、経済的支援を手厚いものとするための検討、それから支援のための連携に関する検討、民間団体への援助を手厚いものとするための検討につきまして、既に有識者と関係省庁から成ります三つの検討会を立ち上げ、被害者の視点に立った検討を行っているところであります。平成十九年末を目途に結論を得ることとされております。

 また、基本法に基づき設置されました、官房長官を会長とする犯罪被害者等施策推進会議が行います施策の推進状況の検証、評価、監視機能を補佐いたします基本計画推進専門委員等会議を立ち上げましたほか、施策の進捗状況につきまして、基本法に定めます年次報告、いわゆる白書でありますけれども、これを今年中に国会に提出すべく準備を行っております。

 さらに、地方公共団体あるいは国民の方への広報啓発が大変重要であると考えておりまして、既に都道府県の担当課長等の会議を開催いたしましたほか、パンフレット、ポスター等も作成、配布をいたしております。十一月二十五日から十二月一日までが犯罪被害者週間というふうに基本計画でなっておりまして、これに合わせまして政府主催の啓発イベント等を開催すべく準備を進めております。

 今後も、関係省庁と一層連携いたしまして、政府を挙げて被害者のための施策が着実に推進されますよう努めてまいりたいと考えております。

小宮山(泰)委員 各省庁いろいろされていらっしゃるということでありますけれども、ではそれがどれだけ周知ができるのか、まあ、まだ制度が始まっていない準備段階、十九年に向けて、内閣府の方は検討中であるということもたくさんあります。また、法務省についても、まだ、スタートが十月だということで、なかなかその点に関してはやはり告知、どれだけ被害者の方が、いろいろ相談をする窓口があり、救済してくれるかもしれないところがあるということを知ることというのは非常に重要だと思います。

 ちょっと指摘させていただきたいんですけれども、今内閣府の方も、パンフ、ポスター等を配布などしていくという答弁もありました。しかし、それがどれだけ本当に告知されるんだろうかという思いを強くします。

 特に、私、今回のことで、「法務省だより あかれんが」の中で、「日本司法支援センター誕生!」というのがあります。私は余り、正直申し上げまして、この広報をあちらこちらで見たことがございません。やはり関係のところに配られている。逆に言えば、こういうパンフレット、リーフとか新聞とか広報誌をもらうようなところの方は、相談に行く場所というのは最初から結構わかっているんじゃないかなと思います。

 これは古いバージョンなので、今はホームページのアドレスも入ったといいますが、ちょうだいいたしました法務省の方の名刺の裏に、困ったなと思ったら、まずは相談、法テラス、平成十八年秋オープンと書いてあるんですけれども、法テラスが何か書いていないとか、根本的なことなんですね。

 そういう意味では、自分たちが売り込みたいことというのはわかるんですけれども、やはり受け取る方の側に立った告知というものを心がけていただきたいなという思いもしますし、各省庁との連携をもっと密にしていただきたい。

 昔から、私も県会議員をやっていたときにそうですが、痴漢の被害に遭った人がいても、それは本人も言いづらい、またどこに言っていいかわからない、どうしたらいいんですかといって女性の議員である私の方に、被害を受けた方が直接ではありません、近所の方が私のところに相談に来られた事例があります。そのときは、埼玉県警の方に、女性の警察官をということで電話をすれば出ていただいて対応していただけるということで、運用の仕方とかを変えてもらうことで対応していったのです。

 被害を受けた方というのは、これになったもとは、例えばギャンブルで使い込んでサラ金に駆け込んだとか、そういったことも含めて、自分が悪いのであると。被害者の意識というものは通常の状態ではありません。

 やはり今回も、五菱会、暴力団などが重なっていること、それを知らない方も多分いらっしゃるでしょう。しかし、まずもって、被害者が、自分が被害に遭った、加害者に対して何かアクションを起こさなければいけないというところまではいきづらい。これは例えるならば、DVの症状にすごく似ているんだと思うんです。やはり自分が悪いから、そしてそこでとめてしまって、自分が経済的に苦しいのも自分が悪いから、家族にも言えない、親戚にも近所にもばれたら困る。加害者の悪いことをやったということに関してのもう一歩踏み込んだことが必要なんだと思います。

 今回の法案で、申し出をするということが、本当に救済をされるかどうかの意味において非常に大きな点、差を生んでくるんだと思いますので、その点に関して、DVだと、やはりこういった、自分が悪いんだと思い込む女性の例がすごく多いと思うんです。

 厚生労働省に来ていただいておりますので、これまでの犯罪被害回復、犯罪被害者の支援制度についての御説明をいただきたいと思います。特に、犯罪被害者の精神的なダメージについて、それについて相談や専門家のカウンセリングを行う制度の現状についても伺っていきたいと思います。

 精神的なダメージを受ける。自分で受けているということも認識できなくなってしまう。これは、暴力であったり、子供であったらネグレクトであったり、また経済的な暴力というんでしょうか、そういったものでPTSDにかかっていく。苦痛を伴っているもので、本当に苦しんでいらっしゃると思います。しかし、これを乗り越えていかなければ、この法案ができても、自分が借りたところが、暴力団がさらに後ろについていて、二次被害を恐れる余りにまた言えない、それではやはり本当の意味での救済につながっていかない。ぜひその点に関してお答えいただきたいと思います。

 特に、平成十六年の犯罪被害者等基本法の十四条には、保健医療サービス及び福祉サービスの提供として、「国及び地方公共団体は、犯罪被害者等が心理的外傷その他犯罪等により心身に受けた影響から回復できるようにするため、その心身の状況等に応じた適切な保健医療サービス及び福祉サービスが提供されるよう必要な施策を講ずるものとする。」と定められておりますが、昨年十二月には法律に基づく基本計画も制定されています。本法の実施状況についてもあわせて御説明ください。

中谷政府参考人 御答弁申し上げます。

 犯罪被害に遭われた方々を含めまして、事件、事故によりまして大きな心の痛手を負った方、すなわち、PTSDなど精神的に影響を受けた方々のケアにつきましては、早期からの対応のみならず、保健所、精神保健福祉センター、医療機関など、継続的、体系的な支援が必要であるというふうに考えております。

 このため、まず、委員御指摘の相談の窓口を充実させるということが大切でございますので、これは、都道府県に置かれております保健所、精神保健福祉センターにおきまして、心の健康問題に関する相談を行っていただいておるわけでございます。そして、今、その充実を図ることが重要だと思っております。

 そのために、こういう相談活動の質の向上を図るために、PTSD対策に係る専門家の養成研修、これを平成八年度から開始したところでございまして、平成十三年からは、この中で、犯罪被害者の心のケアに関する研修、これも追加したところでございます。

 それから、やはり国としましては、こういう現場でよりよいサービスが行われるためにどうやったらいいんだろうか、このマニュアルをつくる、あるいはそのマニュアルを普及していく、これが重要でございますので、平成十七年度から、厚生労働科学研究によりまして、犯罪被害者の精神状態に関する実態やニーズの把握、あるいは、精神保健福祉センターなどの職員が犯罪被害者にかかわる場合のマニュアル、こういう研究調査事業を行っておるところでございます。そして、これらを都道府県において普及をしていく。また、それに当たりましては、今御指摘のありました計画に基づいて、関係省庁と連携をしまして、犯罪被害に遭われた方々の心のケアに一生懸命取り組んでまいりたいと思っております。

小宮山(泰)委員 一生懸命ぜひ取り組んでいただきたいと思いますが、もう少しちょっと追加で伺っていきたいと思います。

 具体的にどうされていくんでしょうか。通告という意味ではしていないですけれども、確かに、この点はまだまだ、ここが、どこに出てくるか、被害に遭った方がどういったところに接触してくるかというのはわかりません。場合によっては、当然、財産に関しての犯罪に巻き込まれたがため、そこに至る間には恐らく、心の葛藤であったり家庭内の問題であったり、いろいろなことを抱えている場合もあるんだと思います。

 ぜひ、そういう意味では、カウンセリングの部分、そこに行くのもなかなか大変だとは思うんですけれども、行った後に、事後の問題ですね、しっかりと自分の現実とそして何をするべきかということを自分で判断ができるようにするために、カウンセリングの部分というのは、まだまだ地域においても人材不足、また最近の三位一体の中においては、経済的にも地域ができることではなくなってくると思います。その点に関しても、どういうふうに厚生労働省はお考えになっているのか、お伺いしたいと思います。

中谷政府参考人 御答弁申し上げます。

 今、精神保健福祉センターは全国に六十三カ所ございます。それから保健所は約五百カ所ございます。こういうところにおきます相談の窓口の充実ということで先ほど御答弁申し上げたわけでございますが、その中で、今委員御指摘の保健医療以外の部分のところも重要でございますので、先ほど御紹介いたしました研修会の中で例えばどんなことをやっておるかといいますと、人間関係の専門家の方をお招きいたしましたトラウマカウンセリングの技法の研修、あるいは遺族のケアの実際、あるいは子供とPTSDと学校保健、こういう幅広い研修をさせていただきまして、その相談窓口の方々が地域の資源を利用いたしまして、被害に遭われた方々の精神ケア、これを充実するように研修会を行っておる、こういう状況でございます。

小宮山(泰)委員 今ちょっと思ったんですけれども、三ッ林政務官、医師でいらっしゃいますけれども、ちょっと通告はしていないんですけれども、発言者の中に入っておりますので。

 こういったトラブルを持っていると、精神的にきますと、体にも当然変調がくる。病院、医療機関等でも、当然、こういった問題を抱え込んだ方々が、悩んで、そして体にいろいろな変調を起こして診察に来るということもあり得ると思います。こういった場合においてもそういったところと連携するべきかどうかというのをぜひちょっと伺わせていただきたいんですけれども、よろしいでしょうか。

三ッ林大臣政務官 お答えいたします。

 私はもともと小児科で、犯罪被害者の方というのは余り経験はないんですけれども、私がやっていたもので、子供の家庭内暴力に対するもので、地域の保健所なんかと私どもが一緒にネットワークを組んでいろいろそれに対する、家庭裁判所なんかと相談したというふうなものもありました。

 実際にいろいろな方がそういう窓口を訪れるためには、いろいろなネットワークを組んで幅広く網の目のような形でやっていかないと、なかなかいろいろな人をそういう対応策の中に入れていくのは難しいのかなと思いますから、そういうふうな方向でいく方がいいのではないかと思っております。

小宮山(泰)委員 ないわけじゃなくて、あったわけですから、あったと言っていただきたいなと。やはりいろいろなところに出てくると思います。

 そこで、大臣に伺いたいと思います。

 今、各省庁から答弁がございましたけれども、犯罪被害回復と犯罪被害者支援制度というのは、先ほども言いましたけれども、日本の司法の中でもまだまだ歴史が浅い。そして、今も答弁がありましたけれども、ある意味、これから検討するとか、そういった言葉も非常に多く答弁にございます。

 また、法務省におかれては、これから本格的に動き出す制度であり、そういう意味では新しい被害者に対しての回復であり、人権を守っていく。法務省としても本当にこれはきちんとやっていただかなければいけない問題だと思っております。

 そこで、やはり人権を守って、そして個人の尊厳が尊重されること、また財産権が保障されるように、改めて大臣にはこれを要望していきたいと思いますし、そのためには最大限の努力をしていただきたいと思っております。

 特に、行政に対しての不信感というのはいろいろあると思います。例えば私の県、埼玉県ではございますが、桶川のストーカー事件など、警察に何度も相談に行った、しかし取り合ってもらえなかった。今は大分頑張ってはいるようですけれども、でも、その後にもこういった問題は今も続いております。

 また、先般でいえば、国家公安委員長を内閣委員会の方にお呼びしていたのに出席が取りやめになったりとか、本来もっとオープンにいろいろなことをしっかりと答弁していただきたい、明らかにしていただきたい、そういったときにそういったことがなされない。

 また、厚生労働もそうですけれども、いろいろなところで隠ぺい体質みたいなものが大量に出てくる。社会保険庁の問題ですね。

 こういったものをニュースで日々いろいろな国民の方が見ている。行政にどれだけ相談に行って大丈夫なのかと。また、身近なところでいけば市役所とか、いろいろなところもそうです、国もそうです、役所というところに持っていくとたらい回しにされるというのは、みんな常識のように話していることでもあります。

 やはりこういった不信感というものを一掃しなければ、もう一歩前進して、この行政が置いているセンターやそういった相談の機関というものをどれだけ置いておいても、信用されなかったら、やはり足を運びません。真摯に聞いてもらえると思えない、もしかするとここでまた被害に遭うのではないか、ここでもしだめだったらもうだめだという思いに、さらに最悪な方に精神状態も持っていかれてしまうおそれがあります。

 刑事手続におきましても、犯罪被害者保護の視点から、近年改善も見られるというのはわかってはおりますが、犯罪被害者の人権と個人の尊厳が最大限に尊重されるように、運用におきましても、大臣においては、制度改善につきまして、ぜひその点の御決意を伺わせていただきたいと思います。

杉浦国務大臣 とかく法務委員会を敬遠される先生方がいらっしゃるんですけれども、先生におかれましては、こうやって質疑に立っていただきまして、感謝いたしておる次第であります。今後ともひとつ法務委員会をまずもってよろしくお願い申し上げる次第でございます。

 先生のお話を伺っていて、国民といいますか市民にとってどうなのか、そういう視線といいますか目線が大事なんだということは、本当におっしゃるとおりだと思います。

 先ほど、司法法制部長が極めて役人的な答弁を日本司法支援センターについていたしましたけれども、私は、金平理事長を初め役員がお見えになったときも機会あるごとに申し上げているんですけれども、日本司法支援センターは、いわゆるお役所仕事であっては絶対困ると。本当に国民のニーズにこたえるんだという気持ちで、親切に丁寧に、お見えになる方、電話をかけてこられる方に対応してほしいということを、機会あるごとに、口を酸っぱくして申し上げておるわけでございます。

 犯罪被害者に対する支援というのは、あのセンターの事業の大きな柱として法律に書き込まれておるわけですから、そういう意味では、司法支援センターは、十月、正式に業務開始なんですけれども、役に立つセンターになってもらうことを期待いたしております。

 実は、犯罪被害者等基本法、これも議員立法なんですけれども、議員時代に、司法制度改革の、端くれの方に位置づけられるんですが、いろいろ取り組んでまいった一人でございます。これは始まったばかりで、基本法が、一昨年ですか、やっと国会を通って、お通し願って、基本計画も昨年十二月にできて、政府で決めたばかりでございまして、まだまだこれから始めることだということも御理解いただきたいと思います。

 法務省でも、やることがたくさんあります。ちょっと法律用語で大変恐縮なんですが、法務省でやるべきこと、一番主なものは二つありまして、一つは、附帯私訴と言っておりますけれども、刑事裁判の手続の中で民事の裁判も一緒に審理して結論を出してもらうことを検討することになっております。

 それからもう一つの大きい課題は、刑事裁判の中に被害者は無視されているんですね。参考人みたいなものです、証人みたいな。被害者の方々は、刑事裁判というのは、検察官と被告人がこう向かい合って、裁判所が間へ入っているわけですが、そこに当事者として、被害者として参加する、被害者として物を言わせてほしいという要望が強いんですね。当事者参加と言っていますが、この二つが、一番大きい、法務省として検討すべきことだと思います。二年以内に結論を出すことになっていますので、今、省内で検討を急がせておるところでございます。

 今度の法案も、この基本計画が求める施策の一環として位置づけられるものでございますが、これは、法案をお通しいただければ大変な前進だと思います。要するに、被害に遭った犯罪被害者の加害者に対する権利、民事上は損害賠償請求権です。これは一般債権です。だから、ほかに例えば債権者がいれば、権利としては同列のものなんですね。ですけれども、この法律が施行されますと、国が没収した財産についてですが、国税よりも優先して被害者に配られる、一般債権者よりも。

 国税債権というのはすごい債権でして、ともかくごぼっと持っていくんですよね。担保債権者も辟易するぐらいの債権なんですが、これよりも先に、弁護士さんいらっしゃるけれども、被害者に関しては、国が没収した財産を国税よりも優先的に被害者の弁済に充てようという大変な制度でございまして、大きな前進だと言ってよろしいかと思うんです。

 それを初めとして、今、内閣府の方で、申し上げたように、経済的支援についてはもう二回ほど検討会をやっておられます。今警察にある制度とか、それをもっともっと拡充して、犯罪被害者の経済的な支援を、国として何をすべきかということをこれから検討して、いずれ国会にも諮られると思いますが、始まってまいりますので、先生、これからは法務委員になっていただいて、それらが前進するようにウオッチしていただければありがたいと思っております。

 法務省としてやるべきことは、基本計画に沿っていろいろございますが、犯罪被害者等のための施策の実現に向けて精いっぱい努力してまいりたいと思っておるところでございます。

小宮山(泰)委員 今回の組織的犯罪処罰法の改正が必要になった背景について伺ってまいりたいと思います。

 その前に、大臣、いろいろと本当にありがとうございます。でも、内閣府とか、いろいろな意味、縦割り行政がよくないといって、今、一カ所にまとめると、かえって会議だけやって現実には動いていないというところも、いろいろなものを調べていくと、会議ばかり立っていて、やっていくのが大量にあります。総理大臣をトップにしたものでいっても、本当に、一回、二回、最初にカメラ入りやった後にはほとんどやらないというのも現実にあります。これは現実には被害者がたくさんいるわけですし、これからも、この法律が通ることで被害者の方を救うためにも、会議検討中やそういったもので終わらせないように、横の連携を強くほかの省庁にも伝えていただくことをお願いしたいと思います。

 さて、この法改正の背景となったことに関して、関連して質問をしてまいります。

 やみ金融事件の犯罪収益約五十一億円をスイスが没収して、日本に引き渡すためには相互主義の保障が必要、つまり、日本が没収した場合に、スイスが引き渡しを要求すれば日本政府は引き渡すという保障が必要になったということから、今回の改正が必要になったと理解しております。

 法務省で調べていただきました資料によりますと、犯罪収益金の引き渡しでスイスと同じように相互主義の保障を採用している国に、フランスがあります。また、アメリカは、相互保障を必要とはしていませんが、没収のために相手国が協力した程度に応じて、八〇%を上限として引き渡すということにもなっているようです。また、イギリスにおいては、アメリカ同様に、五〇%を上限に引き渡すとなっているようでもあります。

 そこで質問であります。スイスは、没収した財産について、通常折半、適当な理由があればこの限りではないとしておりますが、今後日本が引き渡しを受ける見込み金額や、その割合というんでしょうか、そういう点を含めて、この点に関しまして、どのような対応になっていくのか、御説明をお願いします。

大林政府参考人 御指摘のスイスが没収した約五十一億円の財産を譲り受けるための交渉につきましては、現在、外交ルートで協議が継続されているところでございます。

 スイスから譲り受けることができる金額の見込みを含め、協議の状況及び内容につきましては、外交交渉に関することでもあり、お答えを差し控えさせていただきますけれども、法務省といたしましては、外務省と緊密に連携をとりつつ、できるだけ被害者のために対応していきたい、このように考えております。

小宮山(泰)委員 そのほかの諸外国に犯罪財産が移転されて、その国に没収された場合、今回の改正法は有効に機能するのか、その点に関して。

 また、スイスとのこの関係というのがリーディングケースになっていくというふうに考えております。回収できるけれども、そのほかの国とはうまくいくのか、その点に関して伺いたいと思います。お願いします。

大林政府参考人 委員御指摘のとおり、外国で没収された犯罪被害財産についても、その被害に遭われた方々の被害を回復して救済することは重要なことであると考えております。個別の事案ごとの相手国との交渉いかんによることにもなりますけれども、法務省といたしましては、外務省と緊密に連携をとりつつ、適切に対応してまいりたいと考えております。

小宮山(泰)委員 この問題に関して、先般からの共謀罪のあの審議の過程を見ていて、きょう外務省の方には来ていただいていないんですけれども、やはり各国の状況というものをあの審議の過程でよく調べていない、面倒くさいとは言わないですけれども、そんなふうにしかとれないような気もいたしました。ある意味、外務省の、海外と日本との関係、日本の権利を守る、そういった関係や立場というものが、私から見ると非常に信用し切れない部分がございます。

 その点、法務省においては、犯罪被害者を守るということでセンターもつくり、これから頑張っていかれようということでありますので、その外務省との関係も含めまして、やはりこのケース、もっともっと強く、外務省にはしっかりと勉強もしていただき、そして日本の利益を守っていただけるように頑張っていただきたい。それをしっかりと法務省からは目を光らせてチェックをしていただきたいと思います。

 時間もなくなってまいりましたので、次に行きます。

 この改正の重要な条文と考えておりますけれども、第十三条の三項に「犯罪被害財産を没収することができる。」とあります。この点に関してはいろいろな方がやはり疑問に思っていると思いますが、その点に関しても私も重ねて質問していきたいと思います。

 没収できる場合の要件を簡単に説明いただきたい、かなり簡単にお願いいたします。

 また、十三条三項一号には「その他犯罪の性質に照らし、」とし、被害者の犯人に対する損害賠償請求などが困難であると認めるときも没収可能としております。広範囲に適用できるような書き方になっていますけれども、どのような事例を想定しているのか。

 また、十三条三項三号に、情を知って、収受する行為が行われたときとありますが、これは、犯罪被害財産と知りながらそれを取得した第三者の管理下にある財産も没収できるという意味なのか。お答えください。

大林政府参考人 組織的犯罪処罰法第十三条第三項第一号後段につきましては、犯罪の罪の種類、犯罪行為の態様等の具体的事情から判断して、被害者が犯人に対する損害賠償請求権等を行使することが困難であると認められる場合でございまして、今もう一問の問題で、知って収受する行為が行われたときという御質問がありました。

 犯人以外の者が犯罪の後、情を知って、犯罪被害財産を含む不法財産等を取得した場合には、同法第十五条第一項ただし書きにより、当該財産の所有権等が犯人以外の第三者に帰属する場合でも、これを没収することができるとされておりますので、その要件を満たす場合には、これを取得した第三者から没収することが可能ということになります。

小宮山(泰)委員 非常に法律的な御答弁、ありがとうございます。

 それでは、できるわけですけれども、簡単に言えばできるんですよね。今回も、けさの参考人の方からありました、支店長とかが上の存在、要するに、暴力団が背後にいるということを被害者には知らせないようにしたということであります。当然、働いている人は薄々感じながらも、聞かない方がいい、聞かなくても自分はお金が入るからそれでいいんだということで、知らずに、もしくは知ろうせず、確認をせずに収受した第三者の場合はどうなるんでしょうか。

大林政府参考人 お尋ねの件は、個別事情によりまして、やはり証拠認定の問題であろうと思います。

 その事実関係があって、黙認したとか、あえて知らないふりをした、ただ事実は知っていたということであれば、証拠関係に従って、知っていたと認定される場合もあろうかと思います。(小宮山(泰)委員「知らなかったことを聞いているんですよ。知らずにと言ったでしょう」と呼ぶ)そういう認定をされた場合には、やはり知らないというふうな認定がされざるを得ないんじゃないかと思います。

小宮山(泰)委員 ぜひ、その点に関してはきちんと調べてもらうようなことをやっていただきたいと思います。なかなか共犯というものに関しては難しいところがあるとは思いますが、その点に関しては、やはり被害者というものの立場、そして度合いも含めて勘案して、ぜひ慎重に対応していただきたいと思います。

 十三条の一項は現行法どおりで残るそうですけれども、没収できる財産の対象として不動産、動産、金銭債権とありますが、刑法の原則では、盗んだ米でもちをつくれば没収できないと聞いております。犯罪被害財産が現金から例えば金塊とか土地とか建物に形を変えていても没収ができるのか、お伺いします。

大林政府参考人 御指摘のそれぞれのものが、今回の改正法案による改正後の組織的犯罪処罰法第十三条第三項による没収の対象となる同条第一項各号に掲げる財産に当たり得るのかという御質問だと思います。

 まず、盗んだ米でもちをつくったという事例につきましては、当該もちは窃盗罪により得た財産である米を加工して変更を加えたものであって、米との同一性があると認められれば犯罪収益に当たる、没収もできるということでございます。

 それからもう一つの、盗品の対価として金塊や土地建物を得たという事例につきましては、当該金塊や土地建物が当該盗品の処分に基づいて得た財産として特定され、追跡可能な場合には、犯罪収益に由来する財産に当たることになります。これも、そのような認定ができれば没収できます。

 なお、金塊や土地建物が正当な財産をも用いて得られた場合には、当該金塊や土地建物は没収することができず、その場合には盗品の価額分を追徴するという形になろうかと思います。

小宮山(泰)委員 それでは、犯罪財産没収までの司法手続について伺いますけれども、犯罪について処罰を求める起訴と犯罪被害財産の没収というのは同じ手続で行われるのでしょうか。よろしくお願いいたします。

大林政府参考人 今回の法案が施行された後に、例えば財産犯である詐欺罪を犯した犯人が起訴されたという事件を例にして御説明いたします。

 その犯人が詐欺によって被害者から得た犯罪被害財産が犯人の口座に残っていたといたしますと、この犯罪被害財産について、改正後の組織的犯罪処罰法第十三条第三項各号の要件を満たす場合には没収することができます。

 そこで、検察官は詐欺罪についての懲役刑の求刑とともに、その犯罪被害財産を没収すべきとの求刑を行い、裁判所は、被告人が有罪であって、かつ、先ほど述べた犯罪被害財産の没収の要件を満たし没収すべきものと認める場合には、判決において、被告人に対する懲役刑とともに犯罪被害財産を没収する旨の言い渡しを行うことになります。

 そして、この判決が確定いたしますと、犯罪被害財産である預金債権が国に帰属しますけれども、検察官がこの預金債権に相当する現金を保管するに至れば、これを原資として、今回の被害回復給付金の支給手続が進められることになります。

小宮山(泰)委員 もう時間がないので最後になりますけれども、ぜひ今までの広報のこと、そういった被害に遭う方は、ある意味、行政のところにそんなに来るわけではありません。ぜひ、広報をしていくというときには、場合によっては、例えばパチンコ屋さんであったり病院であったり、またスーパーマーケットとか、日常、いろいろな、そういった可能性のある方の目に触れる場所にあるところにどんどん告知をするもしくは張れるようにする、そういった手法もとっていただきたいと思います。

 最後に、本当に時間がないところ申しわけないんですけれども、大臣にお伺いします。

 これは、けさの参考人の方も言っておりました。DVのときもそうです。子供のころに受けた被害、精神的なもので、そのことを言い出すまでに大変長い時間がかかることがある。だからこそ、期間を定めていないのがあの法律の特徴でもあると思います。

 今回のことも、国庫に入ってしまう、途中申請がなければ戻ってしまうだけでは、本当にやっと言えるような状態になったときの被害者というものが、あのときだったんだけれども申請窓口が閉められちゃってもうだめなんだと言われないためにも、犯罪被害者保護のための基金、そういったものはやはり早急に検討をしなければいけないと思います。その点に関して、ぜひ大臣に最後に思いを伺わせていただきたいと思います。

杉浦国務大臣 けさほど石関委員の御質問にもお答え申し上げましたが、その問題は、犯罪被害者のための経済的被害回復のための委員会、内閣府に設けられておりますが、そちらの方で検討されるべき問題だというふうに思っております。

小宮山(泰)委員 ぜひ、現実的に被害者を守る、そういうための基金をつくることを提案いたしまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

石原委員長 次に、枝野幸男君。

枝野委員 お疲れさまでございます。民主党の枝野でございます。

 今回の犯罪収益吐き出し関連二法案は、五菱会事件を契機としまして、私ども民主党も、昨年の三月に党内にプロジェクトチームをつくりまして、私が座長を務めさせていただいて、検討をスタートさせました。

 率直に申し上げて、法務省の対応というのはどちらかというとスローであることが多いんですけれども、今回の件は、スイスとの外交関係ということがあったにしても、法務省にしては大変速いスピードで、また内容的にも、これから申し上げるとおり、今後さらに検討していただきたいというか、改善を要する部分はあるというふうには思いますけれども、おおむね、少なくとも当面の問題を解決するために必要な措置をとっていただいているというふうに思っておりますので、率直に高く評価をしたいと思っております。ですから、少なくともこの法案の本体の話については対決的ではありませんので、余り警戒心を持たずにお答えをしていただきたいのです。

 まず、実は、先ほど参考人質疑を一時間半ほど聞かせていただきまして、大変我々としても参考になるお話をいただきました。聞いていなかったらけしからぬとは言いませんので、どこかで聞いておられましたか、三人の方にちょっとお尋ねをさせていただきたいのです。

杉浦国務大臣 申しわけありません。聞いておりませんでした。

河野副大臣 聞いておりません。

三ッ林大臣政務官 すべてではありませんけれども、一部は聞いておりました。

枝野委員 そうなんだろうと思います。

 ただ、これは参考人の性質にも、あるいは法案の性質にもよるんだろうと思いますが、先ほど聞いておりまして、法案そのものがいいとか悪いとか意見が分かれていてということであるレベルの参考人であるならば、一方の提出者である政府側としては、聞いてもせんないかということはあるのかもしれません。

 しかし、きょうのような場合は、運用に当たってどういうことを留意しなきゃいけないかとか、今後検討しなきゃならない部分はどういうことがあるのかということでは、もしかすると、法案審議をする委員の側よりも政府に聞いていていただいた方が、多分参考人の御発言いただいた趣旨についても生きるのかなというふうに思っております。

 これはこの委員会だけで決められることではありませんけれども、参考人質疑のときに、一般的には提出者はいなくていいということになっておりまして、私も議員立法の提案者になることが結構あるものですから、そういう自分がそちらの立場のときを考えると、参考人質疑のときぐらい抜けたいなという気持ちもよくわかるんですが、少し、参考人の性格、性質、あるいは法案の種類によっては考えてもいいんじゃないかということを、これは問題提起させていただきたいと思います。

 通告させていただいている中身に入りたいと思いますが、今回の法案による手続は、被害回復給付金の支給手続の主体が検察官ということになっております。私どもが提起をしておりました考え方では、もちろん検察官が裁判所に対して申し立てをする主体ではあるんだろう、しかし、お忙しい検察官に、犯罪捜査そのものとは違うこうした処理をしていただくまでのことは実はないんじゃないかと。

 今回の政府の案においても、結局、検察官は、弁護士に委託をして、そこで配当的な手続をするということになっているわけでありまして、ダイレクトに裁判所に検察官が申し立てて、裁判所が破産管財人類似の弁護士等を選任して、そこが裁判所の監督を受けて、破産手続のように、申し出を受けてチェックして配当する、こういう手続をした方が、検察官の本来業務の軽減という形、意味からもいいんじゃないかということで、我々はそういう案を当初提起しておりました。法案提出前の段階で法務省の皆さんともかなり議論をさせていただきましたが、結果的に検察官が担うということになりました。

 ちょっと意地の悪い聞き方をさせていただきますが、まず、警察庁に、警察から送検をして検察が起訴をするという流れの中にありますので、ある意味では一番検察の忙しさ、あるいは忙しくないとかということを知っておられると思いますので、検察官というのは暇なんですか、余っているんですか。

縄田政府参考人 検察庁の体制について、私どももすべて承知しているわけではございませんので、答弁は差し控えさせていただきたいと思います。ただ、一線の方から特に体制についてどうこうという話は特段聞いておりません。

枝野委員 これもちゃんと言っておかなきゃいけないと思います。きょう、国家公安委員長ではなくて警察庁の政府参考人ということで、これは理事会でのお決めでありますので、これはこれで結構なんです。

 私は、政府委員制度が政府参考人制度に変わるときの趣旨は、基本的に、国会でのやりとりは答える側も聞く側も政治家同士であるべきであると思っておりますので、法務省さんからも大分嫌がられているとは思いますが、政府参考人以外でやりたいということでずっと申し上げてきております。

 ただ、警察庁と国家公安委員長の関係はどうなるんだろう、あえて言えば全体に独立行政委員会の場合はどうなるんだろうということは、実は非常に悩ましい問題であります。基本的には、大臣が長を務める独立行政委員会ですから、そのもとにある警察庁を含めて国家公安委員長が御答弁になるべきだし、実は、政府参考人制度導入の趣旨からすれば、その国家公安委員長たる国務大臣に国務大臣政務官を置いて、内閣委員会以外のところでの政治家同士のやりとりにちゃんとかかわれるようにするというのが筋だろうというふうに思っておりますので、これまた法務委員会限りでできることではありませんが、問題提起をしっかりしておきたいというふうに思っております。

 今は警察の立場からお答えをいただけませんでしたが、法務省にお尋ねをいたします。検察官は暇なんですか、余っているんですか。

杉浦国務大臣 私どもの目から見ておりまして、暇だとは思いません。相当処理する件数は山積しておりますし、毎年増員要求をいたしております。このところ、治安対策が重要だということで、今年度も検察官四十三人の純増を認められたところでございます。

枝野委員 そうなんだと思うんですよね。検察官の忙しさというのは、私も法曹の一員でありますから、同期などの仲間、先輩後輩、検事になっている人もいます。もちろん、お互い守秘義務のある仕事ですから細かい詳しいことまでは聞けませんが、相当忙しく仕事をしているなということは十分承知しているつもりでありますし、ですから、私も、与党時代はもちろんですけれども、一貫して、検察官、裁判官等含めてですけれども、増員をするべきであるということで、全体としての公務員の削減とはちょっと違うということを申し上げてきております。

 だとすると、これは物事の組み立て方だと思いますけれども、今回のように検察官が主導をするという形にするよりも、検察官が裁判所に申し立てて、裁判所が指定をした弁護士が管財人的に処理をするということの方が、今の制度だと裁判所はほとんどコストゼロということになりますが、検察と裁判所と両方合わせたトータルのコストという意味ではずっと小さくて済むのではないのかな。そういう観点からの制度の組み立ては御検討をされなかったのでしょうか、お尋ねをいたします。

杉浦国務大臣 今回の法案では、先生のような御意見を民主党が持っておられるということは承知しておったと思いますけれども、支給手続の主宰者を検察官とした、裁判官にしなかったというわけでございますが、それは、この制度は、犯人と被害者との間の民事上の権利義務を確定する、破産手続は権利義務を確定するのが一つの要素になっておるんですが、そういうものではなくて、没収等によって国庫に帰属した金銭等につきまして、これをその事件の被害者に支給する行政上の制度であるため、このような行政事務を裁判所に行わせることとするのは司法機関である裁判所の機能に照らして疑問がある、行政機関においてこれを実施するのが相当である、こう考えられたことが一つ。

 それから、本制度は、刑事裁判において認定された犯罪行為と一連の犯行として行われたいわゆる余罪の被害者をも救済の対象とするものでございますので、捜査、公判を通じてその事案の全容を知り得る立場にある検察官を手続の実施主体とすることが制度として最も合理的であって、迅速な被害者の救済にも資するものと考えたことなどに基づくものでございます。

枝野委員 前段の方の話はちょっとまた後でやりますが、僕は、先ほど来の話を伺って、午前中からの質疑を聞いております限りでは、これは通告しておりませんのでお答えになれなければいいんですけれども、被害者の存在とか、例えば今度の五菱会事件でいえば、実際に被害者を掘り起こしてその人たちに出てきてもらってなんということについて、一番よくわかっているのはむしろ検察というよりも警察ではないかという前提に午前中からの議論は成り立っていると思っておりまして、いずれにしても、検察であれ警察であれ、そこの御協力をいただかないと進められないのは間違いないわけであります。

 なおかつ、具体的なことを言えば、恐らく、捜査して起訴、特に公判、検事がそのままやるということはあり得るのかなと思わないではないですが、捜査した検事がこの給付手続の担当検事になるなんということは余り想定できないんじゃないのかななんということを思いますと、必ずしも決定的な理由ではないんじゃないかと。

 それで、前段の方をむしろお尋ねしたいと思うんですが、確かに、今回は刑事裁判で没収をされた財産について配当します、被害者に充てます、したがってそれは行政的な手続ですと。とりあえず、五菱会の事件が、後ろの切れている話もありますから、今回したことはやむを得ないということを最初に申し上げた上で、しかし、同じような案件であっても、そもそも起訴をして、有罪になって、没収されるかどうかということは、刑事政策的見地から起訴便宜主義で決められるんですよね。一定の要件を満たしていれば必ず起訴されて、そして一定の証拠がそろっていれば必ず有罪になって、没収されるというわけではなくて、それ以外の刑事政策的ないろいろな判断を踏まえて、起訴するか起訴しないか、つまり没収されるか没収されないかが決まるんですよね。

 それから、刑事裁判において求められる証明度の高い低いということと、民事的に救済をすべきであるかすべきでないかということについての証明度の高い低い、これは決定的に違います。刑事裁判の方が厳格に立証しなければいけません。民事的に、この人は被害者であって、この人に加害者の持っている財産を移転すべきであるということについての証明度はかなり低くて済むということになっています。

 そうしますと、結局、本来同じように被害者が救済されるべき案件であっても、たまたま刑事事件として有罪にするにはほんのちょっと証拠が足りないというケースでは、この手続には乗らない、あるいは、刑事裁判として有罪にして没収できるという要件がそろっていたとしても、起訴便宜主義に基づいて起訴しない、したがって没収されないからこの手続で被害救済されない、こういうことがあり得るという仕組みなわけですね。

 これはちょっと、ある意味では足りないといいますか、少なくとも被害者のサイドから見れば合理性に欠ける、あるいはアンフェアであるという認識、受けとめをされないでしょうか。いかがですか。

杉浦国務大臣 先ほどもちょっと申しましたけれども、今回の法整備は、犯罪被害者の加害者に対する債権、損害賠償請求債権、これは一般債権でございますが、その債権を一定の場合に国税を初めとする優先債権よりも優越する地位に据えまして犯罪被害者に配分しよう、救済に資そうという考え方でできておるわけでございます。ですから、どの範囲まで認めるかというのは非常に大きい問題だと思います。

 今回の法整備は、先生に釈迦に説法で恐縮なんですが、刑事手続で没収した犯罪被害財産等を原資として被害回復給付金を支給するものでございますから、起訴猶予処分とされた場合、要するに裁判にならない場合には、その原資となるべき財産がないことになりますので、被害回復給付金を支給することはできない。アンフェアといえば、先生の御表現は、これはいたし方ない面があると思います。

 御指摘になったお考えからすると、被害者の経済的救済を図るための制度をさらにもっときめ細かくやるべきだという御意見だと思いますが、また繰り返しになりますけれども、これは犯罪被害者の方々に対する経済的支援をどうするかという問題になると思いますので、先ほど来何回も答弁しておりますが、経済的支援に関する検討会、内閣府に設けられておりますけれども、そこで、御指摘のような点も踏まえまして、さまざまな角度から検討されるべきものというふうに思っております。

枝野委員 大臣、わかっておられての御答弁かなと思うので、さらに突っ込んでいくのはちょっとなにかなと思いつつも、あえてきちっと申し上げておいた方がいいと思うんですが、犯罪被害者を救済する全体の仕組みという構造の中で考えていく必要性、当然だと思っています。

 ただ、実は、午前中の今井法政大学教授のお話などでも、この犯罪被害者を救済するという話が、民事法と刑事法との仕分けの境目みたいな話のところなんですよね。午前中の今井先生は、刑事法の先生ということで、民事法とか租税法とかの絡みのところは余り深入りをせずに御説明をいただきました。

 今回のこの法案も多分刑事局が担当されているんだろうと思うんですが、まさに刑事と民事の境目のところをどうするのかというのは非常に法律がわかっていないとやりにくい世界の話のところで、わかっていないところで変な組み立てをすると、結局、多分、非常に象徴的な意味では、民事局がだめだと言ったり、刑事局がおかしいと言ったりとか、そもそも民事と刑事の区別がついていないじゃないかという話になったりとか、そういう議論で非常に時間がかかっていくのではないかと思っているんです。

 私どもは、被害救済、特に消費者被害の救済という観点から、消費者契約法の改正案に対して損害賠償請求の団体訴権まで認めるべきであるという法案を提出いたしまして、これは内閣委員会で審議をいたしました。三ッ林政務官には内閣委員会にお出ましをいただいて、そこでやりとりをさせていただきましたが、多分お答えにはなれないだろうと思いますが、内閣府の方で担当されている方、もしかすると法務省からの出向なのかもしれませんけれども、大臣を初めとして、全体としてその議論の中では、申しわけないけれども、基本となるべき法律的な知識とかシステムの御理解が十分ではないんじゃないかという中での法案がつくられていたり、あるいは質疑でのやりとりがあったというのは事実だと思っています。

 もちろん、先ほど小宮山さんが言いましたとおり、一般の方にもわかるような議論もしなきゃならないという一方で、法律的にしっかりとした枠組みを組み立てませんと現場で矛盾が生じますので。

 こういったことを考えると、大臣、もちろん内閣府で全体像を組み立てるということは大事でありますし、そのことを法務省の見地からプッシュしていただくことも大事ですけれども、特に犯罪被害者の被害を救済する、民刑事の境目というかすき間というか重なり合いというか、この部分のところは、法務省、つまり具体的には民事局と刑事局との間で協力をして、あるいは法制審の民事法の部会と刑事法の部会、あるいは両方の学者さんから人をピックアップしてなどという形で法務省が主導をしないと、結局、実効性のあるシステムというのを組み立てていくことは、少なくとも、行政的な部分だけだったらいいかもしれません。しかし、最終的には、刑事、民事の境目のところ、すき間のところで司法手続的なものを使って被害者を救済しようという一番最後のセーフティーネットといいますか、一番最後の踏みとどまりの徳俵の部分のところというのは、これはやはり司法制度に絡むところでやらざるを得ない。

 そういう考え方からすると、もっと法務省が踏み込んでこの議論をリードする、あるいはこの議論の中の今申し上げたような部分についてはむしろ法務省が先行して、リードして行うということではないかと思っておるんですが、いかがでしょうか。

杉浦国務大臣 内閣府の会議には法務省も参加しておりますし、第二回目に有識者の方も御参加いただいて議論されたと伺っております。これからもさまざまな角度から検討されると思うんです。

 私は、犯罪被害者に対する救済というのは、いわゆる一般の民事司法手続ではない、行政というか政治が決断すべき手続だと思うんです。本来ならば犯罪加害者が払うべき損害賠償金を、結局、ある程度国ないし公が負担していくことになるんじゃないでしょうか。これは、すぐれて行政的といいますか、政治が被害者をどう救済するか、どこまでやるのがいいのか、またどのような手法でやるのがいいのかということでございますので、その中での整理は法務省としてはきっちりついていると思うんです。

 その上で、しかし、国会が御制定くださった犯罪被害者等基本法に基づいて、政府が基本計画を閣議決定いたしました。この決定に基づいて政治がどう取り組むかということでございますので、これは、法務省が主導とおっしゃったんですが、基本的に余り法務省が出しゃばるべきことではないんじゃないか、ただ、後ろを向いてはいけない、前を向いて取り組まなきゃいけませんけれども、私はそういう感じで受け取っております。

枝野委員 大臣、ちょっとそこは認識が違うんじゃないかと私は思います。

 つまり、大臣がおっしゃられた、税金を使ってでも被害者を救済しなきゃならない。例えば通り魔に殺されてしまった方であるとか、例えば加害者の側に財産がないということなのでそこでは救われない、こういう犯罪被害者もたくさんいるわけで、こういう人たちに対してはまさに行政的観点から救済をする、これはちょっと法務省が出しゃばり過ぎない方がいい、それは全くおっしゃるとおりだと思います。

 ただ、まさに今回の法案なんかもそうなんですけれども、犯罪被害を救済するといった場合には、加害者に財産がない場合も多いですけれども、しかし、加害者が犯罪収益を抱え込んでいる、こういうケースもたくさんあるわけですよね。この場合については、まさに税金を使って被害者を救済する前に、その加害者が持っている犯罪収益を吐き出させることこそがまず第一弾になされなきゃならない。これは、大臣もそこは共通して思っていただけると思うんです。

 ここの部分の仕組みは、今回、大変ここは法務省は頑張られて第一歩をしるしていただきましたが、残念ながら、民刑事の本当に境目のところであるがゆえに、今まで私たちも含めて十分な検討、分析もできてこなかったこともあります。法務省だけの責任にするつもりは全くありません。しかし、ここはやはり欠けている、不足をしている。今回の第一歩として、この犯罪収益を吐き出させれば被害のかなりが救済できるということについて法務省が主導でしっかりやれば、犯罪収益を抱え込んでいない加害者による被害の救済というところに限られた予算を集中的に投資できるわけですから、全体としていいことになるじゃないですか。

 ですから、やはりここは法務省が、もちろんメンバーに参加いただいたのもわかっていますけれども、かなり積極的にリードをしてこの部分だけでも進めていただきたいというふうに申し上げているんです。

杉浦国務大臣 その点は今回の法律によって、先生にも高い御評価をいただいておりますが、犯罪収益を国が没収して、そして犯罪被害者に優先的に被害の回復に充てるという制度をもし法律を通していただければ確立できるわけでありまして、第一歩だと思います。それを運用しながら、さらに犯罪被害者のためにどういう手当てが必要か、先生のさまざまな御指摘、いろいろ御指摘ございますが、これを含めて、これから手直しするところは手直ししていったらいいんじゃないか。犯罪被害者への犯罪収益、犯罪被害財産の還付という意味では、画期的な制度を今お認めいただこうとしているんだというふうに私は理解しております。

枝野委員 大臣、別にここでそんなに腰を引かなくても問題ないんじゃないでしょうか。我々も画期的だと思います。本当に、法務省がここまでこの短期間でやったということを高く評価します。せっかくなんですから、第一歩をようやくつくれます、だから次のステップについても、もちろん、では、やりますと言ったからまた半年とか一年で結論が出てくるかどうか、それは非常に難しいということはよくわかっています。我々も対案的なものを検討していく上で大変でしたし、あるいは別の視点から消費者契約法の改正ということで団体訴権をつくろう、これも大変だったのはよくわかっていますので、期限を切っていつまでにやれとかと言うつもりはありません。

 しかし、大臣がやはり、これは第一歩で画期的だ、この画期的なものをさらに充実したものにするために法務省の皆さんに頑張ってもらいたい、これぐらいの御答弁をいただいてもいいんじゃないでしょうか。

杉浦国務大臣 その点は、おっしゃるとおり、法務省の民事、刑事双方、皆さんとも、基本計画に基づいて、国として、特に法務省として、何ができる、何をなさなきゃいけないかという点については真剣に考えていると思います。先生の御指摘の点も含めて、これから前向きに取り組んでまいると確信しております。

枝野委員 大臣も御理解いただいたと思うんですが、この話は本当に大臣が主導でないと進みません。なぜかといったら、やはり民事局の人は民事的な視点で物を見ます、刑事局の人は刑事的な視点で物を見ます。いい悪いじゃなくて、それが役割だと思いますから、そうでないと困ると思います。

 ですから、そのすき間というか、その部分のところの話というのは、言えるとすれば、次官か大臣か、つまりここにいらっしゃる三人か法務次官か、それぐらいの人しか主導できないわけですので、ここはそういう意識を持って頑張っていただきたいというふうに思っています。

 もう一点だけ。先ほど来、これも話に出た没収保全と滞納処分の先後関係なんですね。今の法律だと、没収が滞納処分に先行すれば没収が可能だ、被害救済に充てられる。しかし、滞納処分が没収保全に先行すれば、滞納処分が優先して被害救済はなされない。これはこういうことでよろしいですね。

河野副大臣 おっしゃるとおりです。

枝野委員 滞納処分の主体、没収処分の主体、これはどちらも、あえて憲法的に正確に言いますと、内閣なんですよね。国民から見たら、一般的な言い方で言えば、どちらも政府なんですよ。それが法務省だとか検察庁だとか国税庁だとかと分かれているのは、あくまでも内閣の側の都合で内部部局が分かれているにすぎないんですよね。国民から見れば、行政権を委託している相手は内閣であって、別の言い方で、一般的な言い方であれば政府であって、そのしょせん内部的な、何とか課が先にやったから、こっちの課が後だったからという話に国民の立場からすればすぎないんですよ。その内部の事情で被害者の救済に差が出るというのは、これはやはりおかしいんじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

河野副大臣 国税の滞納の問題とだけであれば、そういう議論が成り立つかもしれませんが、民事の強制執行というもう一つ別な手続がございます。その手続の場合には、国税の取り分を取った残りを一般の債権者で分けるわけで、その手続もだめだとすると、民事の債権関係が混乱をする。では、国税は全部そこだけだめにしようとすると、今度は逆に一般の債権者が犯罪被害者と優先をする、あるいは一般の債権者にも国税よりも優先的な権利を認めるようなことになるわけです。

 検討課題の一つかもしれませんが、当面は現在のやり方でやらざるを得ないと思います。

枝野委員 御指摘のことはよくわかります。簡単じゃないということもよくわかります。それこそ財務省と話をつけないと、法務省限りで、これでいきますというわけにいかない話でしょう。それはよくわかります。わかりますけれども、今の話も、いろいろな応用のやり方はあると思います、制度の組み立て方としては。

 つまり、国税滞納処分で押さえている、それに基づいてなどで強制執行がスタートしたときには、本来国税が取れる分相当については、そもそも国税が押さえていようが、それとも検察、警察が押さえていようが、どっちも政府が押さえていたことには変わりないんだから、この手続に乗せる、その部分については。こういう説明の仕方はあり得ると思う。

 今のがベストだと必ずしも申し上げるわけではない。だけれども、少なくとも被害者の立場から見たときには、今のようないろいろな悩ましい問題があることはおいておいて、それはおいておかざるを得ないというのは、今回、評価をしているわけですから私も理解していますが、しかし、消費者の立場から見たら、同じ政府じゃないの、何やっているの、おかしいじゃないというふうに受け取られるということについての認識は十分持っていただきたいんですけれども、それはよろしいでしょうか。

河野副大臣 御指摘いただいたような問題といいますか、イシュー、論点というのがあるということは認識をしております。

枝野委員 これも、副大臣か大臣か、お答えいただきたい。通告でそこまで踏み込んでいませんから、考え方というか理解をいただければと思います。

 実は、先ほど来これはずっと出ていますが、いろいろな被害に遭って損害賠償請求権を持っている、だけれども、そういう場合には、国税の方が大体先に押さえちゃって、国税に持っていかれちゃうせいで被害者が救済されませんねというのは、徐々に部分的に改善されてきているところがあるのは知っていますが、しかし、まだまだたくさん残っているわけであります。

 理屈はいろいろ立てようがあります。理屈はいろいろ立てようがありますけれども、しかし、それは何なんだろうなという国民の素朴な感情というのも、これは大事にしなきゃいけないと思うし、やはり少なくとも税金で持っていって、その集めた税金で被害者を別途救済しますとかということを考えたら、それはやはりまずは損害賠償請求権などというのは少し優先して考えてもいいのではないだろうか。

 もちろん、一般債権との関係とか、単純な話ではないのはよくわかっていますが、しかし、これまた全体としての強制執行や破産手続という法務省が主導せざるを得ない部分の話でありますので、これはやはり問題意識を持って、強制執行における債権の優劣関係、全体像のところで、特に税と他の損害賠償請求債権との関係ということについては、かなり問題意識を持って法務省に頑張っていただかなければいけないと思いますので、ぜひお願いをします。

 御回答があればいただきますが、どうしますか。

河野副大臣 この論点については、引き続き検討してまいりたいと思います。

枝野委員 自民党の総裁になられたら全体を動かせますので、頑張っていただければと思います。

 いわゆる大野病院問題について、お尋ねをさせていただきたいと思います。

 前回、いろいろな問題提起をさせていただきました。この問題は、本当に人が亡くなられている、しかも、お子さんを産むときにお母さんが亡くなられているということで、亡くなられた方、あるいは御家族の方のお気持ちというのはいかばかりかというふうにお見舞いとお悔やみを申し上げます。

 それから、個別の刑事事件そのものについて、いい悪いということを立法府が云々することは適切でないというふうに思っていますが、しかし、現実にこの事件を契機として、日本の産科医療、あるいは、最近私がいろいろなところで聞くところによると、産科医療だけではなくてリスクの高い医療全体に非常に消極的になってきているという声を非常に多く聞きます。

 例えば、電車の中とかあるいは飛行機の中などで、よく、急病人が出たのでお医者さんはいらっしゃいませんかと。前ならばそういうときに名乗っていたんだけれども、そこで何かあったときに刑事責任を問われるんじゃ、ここは黙っていた方がいいかなと思わざるを得ないんだなんというお医者さんの声というものが表に出てきている。

 もともとそういう思い、お医者さんも、聖人君子ではありません、人間ですから、そういった思いがあったりしても、外に向かって言わなかった。でも、そういったことを言わざるを得ないお医者さんが出てきているというような状況で、かなり日本の産科医療あるいはリスクの高い医療全体に対する大きな影響がある。

 これに対しては何らかの、少なくとも調査検討は必要ではないかということを申し上げたつもりでおりますが、その後、きょうまでに法務省として何らかの調査であるとか検討であるとかをされたんでしょうか。

三ッ林大臣政務官 お答えいたします。

 医療事故における死因究明等のあり方につきましては、以前からさまざまなところで議論が行われていたと承知しております。そして、本件の起訴後におきましても、超党派でつくられております医療事故防止議員連盟の会議に担当者が出席しましたり、厚生労働省等の関係省庁と意見交換を行っているところであります。

 ちなみに、医療事故防止議員連盟、私も関係しておりますが、今回の大野病院の事件が起きる以前より、第三者的な医療事故調査委員会のようなものの設立が必要ではないかということで、ずっと議論を重ねている議連であります。

枝野委員 その議連がいろいろ頑張っておられるということについては理解をしているつもりでおりますが、現に、ここ数年と言っていいんでしょうか、飛行機や電車の中でお医者さんはいらっしゃいますかという呼びかけに対してという話も、数年前に、そこで呼びかけに応じて治療に当たったんだけれども責任を問われたなどというケースがあった。やはりそこでいろいろとみんな腰を引かざるを得なくなっているということを聞いております。

 現場の医療は待ってくれませんし、例えば、数字のとり方のようですが、一部の報道では、産科を目指している人がむしろ少し戻ったという報道もありますけれども、現場で聞く限りでは、この事件も含めて、さらに産科を目指す若いお医者さんが減っている、あるいは産科をやめて別の科に行くお医者さんが急速にふえているなどという実態があって、現に、出産は待ってくれません、まして少子化の時代に、出産がしにくい、できにくいということは待ってくれませんので、この状態のまま一年、二年、三年で、いい制度ができましたでいいとは私は必ずしも思わない。

 そういう意味では、やはり法務省として、この事件の処理、扱いをどうするのか。そして、こうした事件について、もちろん今回のことが本当に医師として刑事責任を問われるに値するようなミスであったのならそうであるべきだし、だけれども、どうも多くの医師が、そうではない、こんなミスで刑事責任まで問われたらとてもリスクの高い医療はできないとかなり広範な医師が言っているという現実があるわけですから、そこに対して早急にメッセージを発信しないといけないと私は思うんです。

 つまり、これは刑事裁判ですから、刑事裁判として、これは近日中にも公判前の整理手続が始まると聞いておりますが、それはそこで、形式的にと言うとなんですが、業務上過失致死罪に当たるのか当たらないのかということはあるでしょう。しかし、同時に、これだけ社会的に大きな影響を与えている以上は、これは多くの医師が誤解なんだ、皆さんが普通の技量を持って普通に治療に当たっていれば刑事責任を問われるようなことはないんだということであるならば、そのことのメッセージをきちっと発信する責任が法務省にある。

 そうでないならば、この事件の起訴自体を見直すことの権限も唯一法務大臣に与えられている。少なくとも、どちらの事案であったのかということについて調査をして、分析をして、そして結論を下す責任は法務省にある、法務大臣にあると思うんです。

 そういった調査というか検討はされていないんでしょうか。

杉浦国務大臣 御指摘の事件については、現在、福島地方裁判所に公判係属中でございます。同地方裁判所において適切に審理されるものと考えております。

枝野委員 法務大臣、何で法務大臣には指揮権があるんですか。

杉浦国務大臣 指揮権はございますが、私は個別的事件について指揮権を行使する考えは今のところ持っておりません。

枝野委員 制度があるということと、大臣がそれを行使するかどうか、御自身の、大臣の信念に基づいてどうするかという話は別です。

 制度として、なぜ個別的事件についても発動できる指揮権という制度があるんですか。

杉浦国務大臣 検察庁は、法務大臣の指揮命令、監督のもとにございます。

枝野委員 現に、過去に一回だけ、法務大臣の指揮権は発動されているんですね、個別案件において。その事件で指揮権を発動したことが適切であったかどうか、これは歴史的にもいろいろな評価があるんでしょう。

 しかし、私は、少なくとも今回のようなケース、先ほど来申し上げているとおり、この事件が単純な刑事裁判として有罪に当たるだけの立証、つまり違法性や構成要件該当性や有責性があるのかどうか、これはまさに司法の問題ですから立法府が介入すべきではないし、私はそれがどういう結論であるのかということについては判断する材料を持っていませんから、現場の検事が逮捕して起訴したことについて、それはいろいろな評価があり、最終的には裁判所が判断することだと思います。

 しかし、この逮捕と起訴がまさに社会的に大きな影響を与えているんです。日本の産科医療あるいはリスクの高い医療に対して、多くの医師が、こんなんじゃやってられないという声を現実に上げているんですよ。現実に、そのことによって産科をやめたという声もたくさん上がっているんですよ。

 そういうときに、先ほど来申し上げているとおり、いや、だから起訴を取り下げろと言うつもりはありません。だったら、少なくとも検察を指揮監督する立場にある法務省として、いや、医師の皆さん、これは皆さんの誤解ですということについて行政的、政治的なメッセージを発信するか、あるいは、調べてみたら、これは多分有罪案件かもしれないけれども、いろいろな事情を考えたら起訴猶予にすべき案件であったということにするのか、そのことが唯一できるのが法務大臣なんですよ。

 我々のところに、ここで捜査資料を出してきて、本当にこれが逮捕、起訴に値する案件だったかどうか、そんなことを我々に調べさせろだなんて言っても無駄だし、言うべきでもないと思います。あるいは、我々自身だって、その医学的見地を含めてやらないと、本当にこれが逮捕、起訴に値する案件だったのかどうかという判断はできません。唯一できるのが法務省なんですよ。その観点をしっかり持っていただきたい。

 でなければ、ずるずるずるずる、結局、もう裁判所に投げちゃったから、後は裁判所の結論です、有罪になれば、検察は悪くありませんでした、それでおしまいです。そういう事案なんでしょうか。僕は、そうではないから問題なのではないかというふうに思っているんですが、大臣、いかがですか。

杉浦国務大臣 私は、この件について、個別的指揮権を行使する考えはございません。

枝野委員 では、法務大臣は、このことによって日本の産科医療あるいはリスクの高い医療について出る影響に対して、どういう責任をとられるんですか。

杉浦国務大臣 本件については福島地方裁判所で係属中で、その裁判の過程で法と証拠に基づいた適切な判断がなされるものと思っております。

 政治と申しますか、行政の問題としては、主管は厚生労働省でありまして、例えば、一般的な第三者による検討委員会を設けるとか、そういう医療行政については厚生労働省の所管に属しておりますので、私の方からその点についてコメントを申し上げるのは不適切だと思います。

枝野委員 大臣、申しわけないけれども、日本の内閣制度のことについても間違っているし、大臣としての職責についての認識も、それは間違っているというふうに私は思います。

 私は、前回の質問以来繰り返し、場合によっては指揮権発動も含めてと申し上げておりますが、指揮権を発動しろと言っているんじゃないんです。だけれども、最終的にその権限を持っているのは法務大臣だけなんです。そしてなおかつ、検察の持っている、警察の持っている捜査資料を見ることができる、そのことが適切であるのも法務大臣だけなんです。国会議員に見せろと言ったって、見せるべきでない。あるいは厚生労働大臣が見せろと言ったって、見せるべきではない。そうじゃありませんか。それはそうでしょう、大臣。

 法務大臣だけが、これは確かに司法だけで考えれば有罪になるかもしれないけれども、しかし、多くの医師の皆さんが言っているのが本当だ、あるいは、多くの医師の皆さんが言っているのが間違っているんだ、そのことを、つまり、検察官は法と証拠だけに基づいてやってもらわなきゃいけないんですよ。法と証拠に基づいて起訴をした検察の判断に加えて、日本の医療システム全体、あの医師に責任があるのかないのかわかりませんよ、あるのかないのかわからないけれども、少なくともそのことで日本の医療に対して大きなリスクが生じている、そのことについて、権限を持っておられるのは大臣だけなんですから、今のような形式的な御答弁では、私は法務大臣としての責任を果たしていないと言わざるを得ないと思っています。

 本件について警察庁にもお尋ねをします。

 福島県警は本件捜査に当たった警察官を表彰したという報道がなされていますが、事実でしょうか。

縄田政府参考人 本年五月に、捜査に当たった警察官六名について表彰したというふうに報告を受けております。

枝野委員 本件がこうした形で、これは私だけじゃなくて党派を超えて、政治の世界でもいろいろなところで問題になっていますし、それから、一部の医師が問題にしているんじゃなくて、かなりまとまった形のいろいろな声が上がっている、社会問題化をしている事件です。それから、純粋に司法の問題だけ考えても、これは刑事裁判として争われている案件であって、有罪であるかどうかというのは最高裁まで行ってみなきゃわからない案件で、もし表彰をするんだとしても、せめて刑事裁判の結論が出てから、一般的に言えば、この社会的な問題の影響との兼ね合いを見てやるべきじゃないか。

 念のために申し上げますと、争っている事件だから表彰しちゃいけないと言うつもりはありませんよ。粗暴犯的なもので、その犯人逮捕に当たって危険を顧みず頑張りましたというような話であれば、裁判で起訴案件について争っているということがあっても、これは当然表彰してその努力に報いなきゃならないというふうに思いますが、どうもこの案件は違うんじゃないのかなと思うんですけれども、実際に、今回の表彰の報道を受けて、何だ、何を考えているんだという声がかなり聞こえてきているんですけれども、そういったことを考慮しなくていいんでしょうか。

縄田政府参考人 今回の事件の捜査処理等につきましてさまざまな意見があることは十分承知をいたしております。これは私どもの考えと異なるところもあるかもしれません。

 それは別といたしまして、表彰の問題でございますけれども、警察におきましては、事件捜査を遂げまして検察庁に送致する、その後、公判請求といいますか起訴されるということで、警察における一通りの捜査の過程は終了するわけでございます。その時点をとらえまして、捜査で非常に苦労をした者等につきまして、功労を総合的に判断して表彰するということを通常行ってございます。

 何年かたちますと所属も変わりますし、やはり表彰の効果があるといいますか、士気高揚にかかわる場面でやることが必要だという判断で福島におきましては表彰したというふうに聞いております。

枝野委員 一般的には、もちろん早く表彰してさしあげた方がいろいろな意味でいいとは思うんですけれども、私が先ほど来申し上げてきたようなことについての考慮が要らないのかどうかということをお尋ねしているわけであります。

 さらに申し上げると、実は、前回の質問のときに法務省にかなり、業務上過失致死の過失に当たるのかどうかというのが本件においては唯一と言っていい争点、論点だろうと思います。したがって、法律問題であるので、この事件の捜査は検察が主導したんだという先入観を持っておりました。ですから、本件逮捕をした警察官がどうこうという話ではなくて、検察庁として、非常に高度な知識を要する医療過誤について、どこからは過失でどこまでは、結果は残念だったけれども、刑事責任が問えるような過失ではないという見きわめをするのか、相当高度な一般的知識と、さらに言うと個別案件におけるそれを分析する能力というものが問われるんだと思っていましたので、そういうことについてどういうことを日ごろからちゃんとやっているんですかということを前回の質疑では実は法務省にお尋ねをしたんです。

 表彰されるような、もちろんこれは大変エネルギーを使って、そして裁判所が逮捕状を出し、なおかつ検察庁が起訴をした案件ですから、そのこと自体、現場の警察官の方の御努力は多としたいと思いますが、むしろ、これは警察の方が主導した、つまり、過失の判断基準などについての基本的な検討判断、あるいはその過失の判断基準に基づいてどういう証拠関係が必要なのかということについての主導は警察がしたという理解を、この表彰という事実から見ていいんでしょうか。

縄田政府参考人 今回の事件につきましては、福島県警察において、昨年三月に事件を認知いたしました。検察庁とも緊密に連携を図りつつ、所要の捜査を慎重に推進した結果、今回の逮捕、送致ということになったものでございます。

 検察庁とは、当然、送致する前に、いろいろな情報交換、あるいは捜査の状況等について、突然の送致というわけにもまいりませんので、十分打ち合わせをするというのが通常の実務であろうと思っております。

枝野委員 もちろん、そういうことがあっていいんです。すべての知能犯的な部分のところを検察だけでできるわけではない。警察も知能犯的なところにいろいろやる。特に、業務上過失などということについて、いろいろな案件があり得ますから、警察がやっていただくのはいいんです。

 ということは、前回、法務省に聞いたお尋ねをしたい。

 つまり、医療過誤の本当にぎりぎりのこの事案、人が亡くなっている、御家族からすれば刑務所にほうり込んでほしいと思うのは当然だろうと思います。しかし、医療の現場というのは、ベストを尽くしても患者さんが亡くなるということは、むしろそれがたくさんあるわけですから、患者さんが亡くなられたからといって医師を逮捕していたら、日本じゅうから医師がいなくなっちゃう、少なくともリスクの高い医師をやる人はいなくなっちゃうわけです。

 当然のことながら、その過失の判断基準、あるいはそのためにどういう材料が必要なのかということについての相当な知識、能力が必要であるし、この手の案件がそんなめったやたらに、一つの県で一年に何十件もあってノウハウが蓄積されているということもないでしょう。したがって、全国的にそういった材料を集約するということを当然しているんだろうと思うんですが、警察としてはどういうことをやっているんでしょうか。

縄田政府参考人 今回の事件もそうでございますけれども、こういった医療過誤の事案というのは、一件一件全部事情が違います、案件も違います。

 通常、警察官といたしましては、その過失の認定というところが委員御案内のとおり一番重要なポイントであろうかと思いますが、鑑定嘱託ということで、専門家の大学の教授等に意見を求めるといいますか、材料を提供して意見を求めるということを十分行います。さらに、鑑定書はいただかないにしても、専門家の方々からかなり広範な範囲から意見を聞くということになります。それからもう一つは、周辺の関係者でございます。こういったことで事実関係を詰めていくということになろうかと思います。

 こういったことを総合的に判断しながら、今回の場合は、臨床医療の水準がどうであったのか、一般医師の知識あるいは技術がどうであったのか、ここら辺のところが大きな分かれ目になろうかと思いますけれども、そういったものも十分掌握の上で過失の有無等について判断をしていく、こういうことになろうかと思います。

 医療過誤の事件につきましては、警察庁の方にできる限り報告を求めるようにしてございます。そういった意味においては、係の方で、ノウハウといいますか、いろいろなケースについては集約をするように努め、また一線から問い合わせ等がありましたら指導していく、こういう体制になってございます。

枝野委員 前回、これは河野副大臣がおっしゃっていただいたんですかね、それから、先ほどの三ッ林政務官のお話でもそういうことだと思うんですが、医療過誤であるとか、私はきょうは聞きませんが、例えば航空機事故であるとか、非常に高度な専門性を有し、なおかつ、その行為自体がもともと高いリスクを持っているというようなことで生じた事故、これが業務上過失として刑事手続においてその真相を究明し、再発防止をし、そして処罰をするということが常に正しいのかというと、やはりそうではないんだろうと思うんですね。

 何といっても、一番大事なことは再発防止であろう。再発防止のためには、例えば、場合によっては刑事免責をすることですべての証拠、供述をきちっと集める、そのことによって、なぜそうした事象が起きたのかという原因が究明でき、その結果として、事故の再発を防ぐことができるという側面も一方ではある。

 だからといって、医師の一部は、国によっては医師の過失というのは刑事責任を問わない国もあるんだなんということを言っていらっしゃる方もありますが、それはそれで私は違うと思う。

 リスクというか、違うことをやれば助けられるのにというかなり強い認識を持っていた、私は薬害エイズ事件での医師の責任というのはむしろ追及をする側でありましたし、それから、おなかの中にガーゼとかはさみとかを残してきちゃうとか、与えるべき薬と違う薬を間違えて劇薬を投与してしまったとか、素人でもわかるような、さすがに医師がそういうことをやってもらっちゃ困るよねという話のようなところも一方にあるわけですから、それはそれできちっと刑事責任を問わないといけない部分もたくさんある。

 この仕分けはしっかりとやらなきゃいけないし、この仕分けをしっかりやるというまず制度論を本当に急いでいただかないといけないし、これをやるべき主体は、厚生労働省ではなくて、やはり法務省だと私は思うんですよ。

 そういう仕分けをしっかりしたからといって、実際、航空機事故については聞いています。つまり、航空事故調査委員会は、免責を前提に、すべての事実関係を全部出してくれ、それで事故防止を図りたいんだと。ところが、警察は犯罪捜査として業務上過失致死等で入ってくるので、そこでのせめぎ合いになって、当事者としてはどうしていいのかわからなくなるなどということも聞いています。これはまさに、犯罪捜査はどこの部分をやるんだということの限定というか仕分けのところと絡む話だと思うので、厚生労働省にやらせておけばいいという話ではないと思います。

 それから、法務大臣に、最後にもう一度だけ申し上げておきたい。

 私は、今、すべての人が不幸な状態だと思います。当然、逮捕された医師、これは有罪であるのかどうかで結論的にはどうなるのか変わってきますが、例えば捜査に当たられた皆さん、起訴をされた検事、これは一部の人たちからだと思いますけれども、いわゆるネット上などでは、これを主導した次席検事は診療拒否しろみたいな話まで一部では言っている人たちが出てきたりしていて、だけれども、この人たちも、職務に忠実に頑張って、法と証拠に基づいて、これは業務上過失に当たるんだと思われたから起訴されたんでしょう。

 多くの現場の医師の皆さんも、本当は命を助けるために、リスクの高い医療ほど一生懸命頑張ってやりたいと思っているんだけれども、でも、そんなことで、ちょっと避けられないようなミスでも起訴されちゃうんじゃ腰を引かざるを得ないということで、非常にある意味で不幸な状況にある。当然、そのことによって医師が減っているという状況の国民全体も不幸な状況にある。今、すべての人たちが不幸な状況にあるんですよ。繰り返しますが、あえて言えば、検事さんや警察官も今、不幸な状況にある。

 唯一この状態をほどけるのは、先ほど来申し上げていますが、法務大臣が、どちらかなんですよ。しっかりと調べて、医師の皆さんに向かって、皆さんの心配は杞憂であると堂々と説明できるような調査をして説明をするのか、それとも、そうではないという判断をしてしかるべき対応をするのか。それが唯一できるのは法務大臣なんだ。

 その責任感を持ってこの問題に対処していただかないと、一件の刑事事件の話、こんなことを取り上げないんです。それは、しっかりとした、しかるべき弁護士がついて、間違っていたとしても、それは裁判所で是正をしてもらう、それが司法制度だと思うんです。

 だけれども、この問題は違う。大きな影響を与えている、その責任感を持って、法務大臣にしかるべき調査をまずしていただきたい。事実関係を、刑事司法という観点とは別の視点でしっかりと調査をしていただきたい。

 重ねてお願いをして、質問を終わります。以上です。

石原委員長 次に、保坂展人君。

保坂(展)委員 法務大臣に質問をしたいと思います。

 本当にきのう身近なところから相談を受けたことなんですが、いきなりはがきが送られてきて、これはもう数年前に亡くなった方のあて先で、訴状受理通達書ということで、その亡くなった方が何か未納料金があった、契約破棄が行われているというので民事訴訟が起きたと。その後はだんだんめちゃくちゃになるんですけれども、これは、本人が死亡している場合、遺族が連絡しろ、こう書いてあるんですね。そして、連絡がなければ原告側の主張が全面的に受理され、本件訴訟を認めたものとみなし、東京簡裁民事執行部による強制執行が、給与、動産、不動産、有価証券等々をやります、民事執行管理事務局、東京都港区、こういうはがきが送られてきた。どうしたらいいだろうかと慌てるんですね、大変なことに巻き込まれたんじゃないかと。

 こういうことは何かお耳に入っているでしょうか。

杉浦国務大臣 頻々と耳に入ります。

 つい、きょうお昼に後援会の方が大臣室に来られたんですが、その方もそれに類したような、法務省民事訴訟センターという名前で同じようなことを請求してきたと。その方は物のわかった方なので、ひどいのが来ましたよ、調べてくださいと言ってはがきを置いていかれましたけれども、そのときに皆さんに聞いたら、いや、そのたぐいのはがきは随分あっちこっちに来ていますよ、私のふるさとですね、こういうことを言っておられました。

 ともかく、おれおれ詐欺から始まって振り込め詐欺になり、詐欺も手が込んできましたね、公的機関の名前を使って。ちょっとわかった人なら、ばかばかしいことが書いてあるなと思うんですけれども、そういう事情を知らない人がもらったらびっくりするような内容のはがきを、僕の地元でもそうですから、全国的にやっているんじゃないでしょうかね。これは、私がいただいたはがきはすぐ刑事局にあれして、しかるべく調査をしてもらうようにしましたけれども。

 そういう意味でも、私は、日本司法支援センターが早く業務を開始することを願っているんです。そこへ持ち込んでもらえば、すぐ刑事告訴するとか協力して、征伐に力が入ると思うんですね。困った世の中だというふうに思います。

保坂(展)委員 まさか法務省の看板が詐欺の材料に使われるというのは本当にゆゆしき事態だと思うんですが、夫を失った老いた妻がこういうものを受け取ったときに動転するわけですね、怖いことになったと。それで電話をすると、そこから先が多分いろいろあるんだろうと思います。

 ぜひ国民の皆さんにこういう状況があることをきちっとお伝えして、こういうようなはがきでいきなり来るなんということはあり得ないし、まして、そのはがきが届いて二日以内に連絡しなければ全部強制執行が行われるなんて、そんなばかなことはないと告知されたらいかがでしょうか。よろしくお願いします。

杉浦国務大臣 今資料が手元に来たんですけれども、法務省の広報室には、本当にこのような機関があるのか、見覚えがないために確認したいなどの問い合わせが多数寄せられている、一月に約三百件ほど電話で問い合わせがあるということでございます。

 法務省では、ホームページや広報誌、報道発表などで注意喚起をしているほか、問い合わせがあったものについては警察庁に情報提供しているということでございます。

 また、警察庁、国民生活センターのホームページでも、同様の情報を掲載して注意喚起を行っているということでございます。

保坂(展)委員 ぜひしっかり浸透させていただきたいというふうに思います。

 では、この法案についてやっていきたいと思います。

 刑事局長に伺いますが、この組織的犯罪処罰法の運用の現状についてなんですが、大体、暴力団関係、フロント企業などに適用されてきたというふうに聞いておりますけれども、ハートライフ社という北海道の健康食品の会社について、法人では初めての適用が行われたというふうに聞いています。犯罪収益を出資金に充てて法人を設立したというようなこと、これが該当したということなんですが、この犯罪というのは何だったのか、そして、被害金額や被害者からの何か求償のようなことはあるのか、お願いします。

大林政府参考人 御指摘の事件につきましては、判決が出て既に確定しております。

 その事案の概要は、被告人らは、健康食品等販売会社、株式会社ハートライフの役員であるが、共謀の上、ハートライフが薬局開設者及び医薬品販売業のいずれの許可も受けず、かつ法定の事由がないのに、平成十六年十一月十五日ころから平成十六年十二月十九日ころまでの間、静岡県内において、被害者六十八名に対し、業として医薬品である、これは二種類なんですが、これを販売した薬事法違反の罪により得た販売代金三千二百七十四万二千八十五円が混和した財産の一部である現金一千万円を用いることにより、Aをして札幌市に本店を置く株式会社の設立に際して発行された株式の総数千株を引き受けさせるとともに、その発行価額一千万円の払い込みをさせるなどして同会社発起人の地位を取得させたものであるが、同会社の事業経営を支配する目的で同会社の発起人としての権限を行使させ、その会社の取締役に選任させた、このような事案であって、他に余りない事例だというふうに承知しております。

保坂(展)委員 というと、これは薬事法違反ということだと、犯罪による被害者はどうなんですかね。買った人がだまされたということには直接はならないということは、こういうケースでは今御提案の法律の適用はないということなんでしょうか。

大林政府参考人 不法収益の定義の中に別表というのがございまして、今の薬事法は別表三十八という方に記載されていますので、この違反が犯罪収益をもたらすというふうに認定される場合があると思います。

保坂(展)委員 それでは、午前中も問題になっていたんですが、被害者の掘り起こしについて聞いていきたいと思うんです。

 官報を熟読している方は非常に少ない。いらっしゃるとは思いますけれども、極めて少ない。ホームページも、見れる人、見れない人、特にお年を召した方は余り見ることがないということなんですが、これは、それ以外の方法、例えばポスターなどの方法は考えられないのか。

 そうすると、今度は費用の問題などが問題になってくると思いますが、この費用というのは、その事案、事件、その犯罪による財産を押さえて、その中から出していくということなんでしょうか。そうだとすると、宣伝をすればするほどその財産自身がなくなってしまうということもあるかと思うんですが、この辺について考えていることをお願いします。

大林政府参考人 御指摘のとおり、官報もそうでございますが、その他の手段で、例えばおっしゃられるポスターの作成についても、基本的な費用としては給付資金から支出されるという問題がございまして、費用対効果という問題がございます。事案によっては、割合と被害者がはっきりしているものもございますし、今度の五菱会等の事件みたいに非常に広範囲に、多数にわたってある場合もありますし、やはりそれぞれ、今の費用の問題を頭に置きつつ、工夫していく必要があろうかな、そういうふうに考えております。

保坂(展)委員 被害回復給付金の支給申請期間なんですけれども、これは、電気製品のメーカーが欠陥のストーブを回収しようとしても、なかなかできない。新聞広告をたびたび出します。テレビのCMにも出します。それから個別に、各家庭にはがきも多分出したと思うんですね。それでも完全じゃない。これは一〇〇%ということはあり得ないと思いますが、この手の全国にまたがるこういうものを、それでは申請してくださいよと、公告というんですかね、そういうふうに決めてから、そのかかる期間、これはやはり相当とった方がいいんじゃないかというふうに思うんですが、その点はどうなっていますか。

大林政府参考人 被害回復法案の第七条第二項は、支給申請期間につきまして、犯罪被害財産支給手続を開始する旨の決定についての公告があった日の翌日から起算して三十日以上の期間としなければならないとして、その下限を定めております。

 ただ、委員がおっしゃられるように、事案によってはなかなかその周知に時間がかかるものもあろうかと思います。その場合は、今のような三十日以上ということではなくて、あるいは数カ月のような期間をとらなきゃいけない場合もあり得るのではないか、このように考えております。

保坂(展)委員 それは多分その広報の手段との兼ね合いもあると思うんですが、相当やってもなかなか十分な告知ができないということですから、十分慎重にやってほしいと思います。

 続いて、二十八条の一項関係の検察官の調査権限についてなんですが、具体的に何をどのように検察官はできるのか、どういう運用になるのか、この点についてお願いします。

大林政府参考人 被害回復給付金支給法二十八条は、検察官が犯罪被害財産支給手続の事務を行い、あるいは被害回復事務管理人が被害回復事務を行う過程において、未判明の事実を確認する必要がある場合に、そのような調査を実効的に実施するためには、その旨の調査権限を設ける必要があることから、検察官及び被害回復事務管理人の調査権限を規定したものでございます。

 このような必要がある場合として、例えば、知れている対象被害者の転居先を確認する必要が生ずる場合などがその例の一つとして挙げられます。

保坂(展)委員 続いて、被害回復事務管理人を置くことができるようになったが、これを設ける設けないの判断はどういうふうに行われるのか、また、選任はどうするのかということについてお願いします。

大林政府参考人 これは、検察官においてこの事務を主体的にやらなきゃならないわけでございますけれども、事案によっては非常に複雑なものもございますし、破産管財人等の仕事をやっておられる弁護士さんに関与させるのが適当であるという場合もございますので、このような制度を設けたものでございます。

 選任は、基本的には担当検察官が選任する、その過程におきましては、当然そういう事務になれた方々のお話を聞いて選任する、こういう形になろうかと思います。

保坂(展)委員 参議院での議論を見ておりますと、これは裁定表の閲覧ということがかなり問題になったようでございます。被害回復給付金の申請者に対する裁定が行われたとき、不服申し立ての権利を保障するという趣旨、あるいは拒否裁定の当事者もこれを閲覧することができるという制度そのものは趣旨としてわかるんですが、参議院の審議で指摘された点では、これが、だれがどのように申請しているかということで報復されたり、新たな犯罪の対象になったりという心配がやはりあるのではないかということでしたけれども、これについて少し検討したいというような答弁があったかと思いますが、どう考えられていますか。

大林政府参考人 裁定に対しては当然不服申し立ての機会を確保しなければならないという問題がありまして、裁定表を閲覧できるような制度は必要であると考えております。

 ただ、委員がおっしゃられるように、それを悪用してといいますか、そういうものを報復的な措置に利用されるということは、私どもも非常にそこは気にしているところでございまして、基本的にはそういう資料について罰則がついているという問題もありますし、それは頭に置きながら、事件関係者ではないかどうかということの本人確認に十分意を尽くす必要があると思います。

 また、既に御答弁申し上げているとおり、裁定表に、住所等、氏名以外のもので本人を特定させるというか、そういうようなものをなるべく記載させないように努力しなきゃならないと思いますし、それから、この制度を動かしていくためには今後細かい事項についていろいろ検討しなきゃなりませんので、その過程においてできることがあれば、これを踏まえていろいろと検討させていただきたいと考えております。

保坂(展)委員 ぜひ慎重にやっていただきたいと思います。

 最後に法務大臣に伺いたいと思うんですが、この議論の中で、残余財産の一般財政への繰り入れということが議論されておりました。被害に対する基金に充てるべきじゃないかと。

 午前中の参考人質疑でも私は申し上げたんですが、これは本当に法務省の基本指針や考え方を伺う質問なんですが、大臣、例えば、車で過失でひかれてしまった場合には保険がおりますよね。ところが、故意に車によってひかれた場合には、犯罪被害に対する見舞金でしょうか、こういうことで、なかなか残った遺族が生活を立てていくのに足らない。これは非常に矛盾があると思うんですね。

 犯罪被害の救済のための基金、例えばこれは一案ですが、犯罪被害保険みたいな制度があり得るかななんということを考えたこともありますけれども、これは基本的な構想、指針としてどう考えていらっしゃるのか、お聞きしたいと思います。

杉浦国務大臣 犯罪被害者に対する抜本的救済、経済的支援にはさまざまな考えがあると思うんですが、そういった被害を受けた方々が損害を回復して経済的負担を軽減することができるよう支援を行うことは極めて重要だと思っております。

 さまざまな考えがあり得ると思うんですが、現在、内閣府に経済的支援に関する検討会が設けられまして、検討が進められておりますので、そこで検討していただくことが適当だと思っております。

 法務省としても、先生からいろいろ今御意見がありましたけれども、それ以外の観点も含めまして、引き続き必要な検討は行ってまいりたいと思っております。

保坂(展)委員 ぜひ検討していただきたいと思います。

 組織的犯罪における損害、そして個人の犯罪における損害も、あるいは組織犯罪ではない何らかの犯罪における損害も、これは同じなんですね、受ける側にとっては。ですから、今回の制度を突破口にして、この均衡を図るべく努力をいただきたいと申し上げて、終わります。

石原委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

石原委員長 これより両案を一括して討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 まず、内閣提出、参議院送付、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

石原委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 次に、内閣提出、参議院送付、犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

石原委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

石原委員長 この際、ただいま議決いたしました両案に対し、棚橋泰文君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、社会民主党・市民連合及び国民新党・日本・無所属の会の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。高山智司君。

高山委員 ただいま議題となりました附帯決議案について、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。

    組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の一部を改正する法律案及び犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。

 一 法の趣旨、内容等について、司法関係者及び犯罪被害者団体を始め、広く国民に周知徹底するよう努めること。

 二 法整備の目的が損害賠償請求権の行使が困難な被害者を救済することであることを踏まえ、犯罪被害者の実情を十分勘案した法の運用を行うよう努めること。

 三 対象被害者等が被害回復給付金の申請ができることを十分認識し得るよう、事案に応じて、犯罪被害者団体等を通じての情報提供等、法定の公告・通知以外の方法も活用し、支給対象犯罪行為の範囲等について周知徹底を図ること。

 四 被害回復給付金の支給申請期間については、事案の規模や給付資金の額等に応じ、想定し得る被害者が申請を行うのに十分な期間を定めること。

 五 被害回復給付金の申請者が安心して確実に申請できるよう、十分配慮するとともに、法の施行後の状況等を勘案し、必要があれば迅速に適切な措置を講ずること。

 六 被害回復事務管理人については、適任者を確保するとともに、被害回復事務が公平かつ適正に行われるよう十分配慮すること。

 七 被害回復給付金の申請書に添付する疎明資料は、被害者や被害額を特定するためのものであることを十分に周知し、その趣旨を踏まえて適正な支給手続を行うよう努めること。

 八 一般会計の歳入に繰り入れる給付資金に関しては、法の施行後の状況等を勘案し、これを新たに判明した犯罪被害者等に支給することができる制度、これを犯罪被害者支援団体等の経費に充てることができる制度等、犯罪被害者等の保護等に直接利用できる方策について、引き続き検討すること。

 九 被害回復給付金の支給手続が迅速かつ確実になされるよう、検察官に対する研修の充実等を含め検察庁の人的・物的体制の整備に努めること。

 十 被害回復給付金の支給対象となる犯罪被害者の範囲の拡大及び犯罪被害財産に係る国税滞納処分の在り方については、法の施行後の状況等を勘案し、我が国の民事法制等との関連も踏まえつつ、引き続き検討をすること。

 十一 犯罪被害者等基本計画に基づき政府において検討が進められている被害者が刑事裁判に直接関与することのできる制度の導入等について、できるだけ早期に結論を出し、その結論に従った施策を速やかに実施すること。

 十二 犯罪被害者等への支援については、社会全体の理解と協力が必要不可欠であることを踏まえ、関係機関と民間団体との連携強化や犯罪被害者等に対する国や地方公共団体の財政支援の在り方等に関して、諸外国の施策や立法例等も勘案し、必要な施策の推進に努めること。

 十三 犯罪被害者を含む違法行為により被害を被った者の損害の回復を国等の関与により容易にする制度の導入を含め、新たな被害者救済の仕組みについて、諸外国の立法例や損害賠償請求に関する諸施策等も勘案し、速やかに所要の検討を行うこと。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

石原委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

石原委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。杉浦法務大臣。

杉浦国務大臣 ただいま可決されました組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の一部を改正する法律案及び犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。

 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

石原委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石原委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

石原委員長 次に、内閣提出、参議院送付、法の適用に関する通則法案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。杉浦法務大臣。

    ―――――――――――――

 法の適用に関する通則法案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

杉浦国務大臣 法の適用に関する通則法案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 この法律案は、国際的な取引等の増加や多様化などの社会経済情勢の変化及び近時における諸外国の国際私法に関する法整備の動向にかんがみ、法例の全部を改正し、財産的法律関係の準拠法の指定などの規定を整備するとともに、これを現代用語の表記にしようとするものでございます。

 第一に、この法律案は、法例中の国際私法規定について、法律行為、不法行為、債権譲渡などに関する規定を中心に見直しを行うこととしており、その要点は、次のとおりであります。

 まず、法律行為の成立及び効力に関する準拠法について、当事者による選択がない場合には、法律行為の当時における当該法律行為の最密接関係地法によるものとするなどの規定を設けるほか、消費者契約及び労働契約について、消費者及び労働者の保護の観点から、消費者の常居所地法または労働契約の最密接関係地法中の特定の強行規定を適用すべき旨の主張をすることができるものとするなどの規定を設けることとしております。

 次に、不法行為によって生ずる債権の成立及び効力に関する準拠法について、原則として、加害行為の結果が発生した地の法により、その結果発生地が通常予見できない場合には加害行為地法によるものとして、規律の明確化を図るほか、生産物責任及び名誉、信用の毀損に関する特例規定や当事者による準拠法の変更に関する規定などを設けることとしております。

 また、債権の譲渡の債務者その他の第三者に対する効力について、譲渡に係る債権の準拠法によるものとしております。

 このほか、隔地的な法律行為の方式、行為能力の制限に関する取引保護、後見開始の審判等及び失踪宣告、外国人の被後見人等に対する日本法の適用に関する規定などの整備をすることとしております。

 第二に、この法律案は、法例の表記を現代語化するとともに、その題名を変更しようとするものであります。

 法例は、明治三十一年に制定された法律であり、片仮名の文語体で表記されていることから、利用者にわかりやすい平仮名の口語体に改めるべきであるという指摘がされております。そこで、この法律案は、片仮名、文語体の表記を平仮名、口語体に改め、より利用者にわかりやすいものとすることとしております。また、題名についても、国民にわかりやすいものとするため、法の適用に関する通則法に改めることとしております。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに可決していただきますようお願いいたします。

石原委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

石原委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 ただいま議題となっております本案審査のため、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石原委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る十三日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時二十八分散会


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