衆議院

メインへスキップ



第5号 平成18年10月27日(金曜日)

会議録本文へ
平成十八年十月二十七日(金曜日)

    午前十時四分開議

 出席委員

   委員長 七条  明君

   理事 上川 陽子君 理事 倉田 雅年君

   理事 棚橋 泰文君 理事 早川 忠孝君

   理事 松浪 健太君 理事 高山 智司君

   理事 平岡 秀夫君 理事 大口 善徳君

      赤池 誠章君    稲田 朋美君

      近江屋信広君    奥野 信亮君

      後藤田正純君    笹川  堯君

      柴山 昌彦君    杉浦 正健君

      鈴木 馨祐君    鈴木 淳司君

      三ッ林隆志君    宮腰 光寛君

      武藤 容治君    森山 眞弓君

      矢野 隆司君    保岡 興治君

      柳本 卓治君    若宮 健嗣君

      河村たかし君    後藤  斎君

      中井  洽君    細川 律夫君

      横山 北斗君    伊藤  渉君

      保坂 展人君    今村 雅弘君

      滝   実君    山口 俊一君

    …………………………………

   法務大臣         長勢 甚遠君

   内閣府副大臣       渡辺 喜美君

   法務副大臣        水野 賢一君

   内閣府大臣政務官     田村耕太郎君

   法務大臣政務官      奥野 信亮君

   外務大臣政務官      松島みどり君

   財務大臣政務官      江崎洋一郎君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局審議官)            畑中龍太郎君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局参事官)            山崎 穰一君

   政府参考人

   (法務省大臣官房長)   池上 政幸君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    寺田 逸郎君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    小津 博司君

   政府参考人

   (国税庁次長)      加藤 治彦君

   法務委員会専門員     小菅 修一君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月二十七日

 辞任         補欠選任

  杉浦 正健君     鈴木 淳司君

  武藤 容治君     鈴木 馨祐君

  石関 貴史君     後藤  斎君

  中井  洽君     大串 博志君

同日

 辞任         補欠選任

  鈴木 馨祐君     若宮 健嗣君

  鈴木 淳司君     杉浦 正健君

  後藤  斎君     石関 貴史君

同日

 辞任         補欠選任

  若宮 健嗣君     武藤 容治君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 連合審査会開会に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 信託法案(内閣提出、第百六十四回国会閣法第八三号)

 信託法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出、第百六十四回国会閣法第八四号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

七条委員長 これより会議を開きます。

 第百六十四回国会、内閣提出、信託法案及び第百六十四回国会、内閣提出、信託法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として金融庁総務企画局審議官畑中龍太郎君、金融庁総務企画局参事官山崎穰一君、法務省民事局長寺田逸郎君、法務省刑事局長小津博司君、国税庁次長加藤治彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

七条委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

七条委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。横山北斗君。

横山委員 民主党、横山北斗です。よろしくお願いいたします。

 きょうは、私が民主党の最初の質問者となります。最初に質問するということもありますが、この信託法については、専門性が高いのか、決して広く知られているものではないと思います。

 二〇〇四年に日本学会事務センターが破産して、そこは三百近い日本の学会の事務を預かる、大学の先生たちを初めとした方々の学会費を預かり、それが二〇〇四年に破産するということがありました。このとき、では、それならば預け方を信託にすればよかったのではないかな、各学会が委託者と受益者であり、受託者を学会事務センターがやっていれば、資金を流用していたというようなこともあるんですが、少なくともその後の請求権は残ったんじゃないかなと。

 しかし、三百近くある学会の中には法律関係の学会もたくさんあって、ほとんどそこでみんな事務手続をお願いしていたわけですけれども、したがって、そういう発想に至った学者というのは破産するまでだれもいなかったわけですね。要は、それぐらいこの法律がなじみがないということなんだろうなと私は思いました。

 したがいまして、きょうは本当に基礎的な部分から、二十五日に既に三人の方が質問されておりますけれども、そちらと重なり合う部分もございますが、違いは、より専門的、高度な質問であったのに対しまして、私は、より易しい質問をして、易しい質問といいますかだれにでもわかるようなお尋ねの仕方をして、ぜひ、易しく平明にお答えくださればと思います。今、インターネットでも全世界で見ることができるわけですけれども、信託法とは何かということについて、これを見て理解できる、そういう一時間になればなと思ってこれから質問していきたいと思っております。

 まず、信託制度の意義についてお尋ねいたします。

 信託というのは、その歴史は、十一―十三世紀、ヨーロッパで十字軍の遠征が行われていたころに、遠征する将兵たちが家族のために土地を第三者に信託するというところからこの制度が始まったというのが由来のようです。日本では、明治時代の中ごろに、資本主義経済の発展に伴ってこの制度が輸入されてくる。そして大正十一年、一九二二年に、信託法と信託業法の二法が制定され、そして戦後、この信託の仕組みを利用した金融商品が多く誕生して、制度的に根づいていったわけです。

 そこで、まず、その果たしてきた役割を含めまして、信託制度の意義について、最初にお尋ねしたいと思います。よろしくお願いいたします。

寺田政府参考人 今冒頭に、この制度は余りなじみがないという御指摘がありました。これは社会的にも、我が国だけでなく国際的にも、それほどどこででもあまねく見られる制度ではありません、余りなじみのある制度とは言えないわけでありますけれども、法律家にとりましても決して非常に親しいという制度ではありません。

 もともとが、この法律というのは、所有権という非常にしっかりした近代的な権利の概念というものに対して、一つの例外的な要素を持っているわけであります。

 もともとは、今、十字軍のお話もございましたけれども、イギリスの裁判所の中で確立したわけでありまして、しっかりした権利が余りに窮屈になりましたので、エクイティーコート、衡平法と呼んでおりますけれども、そういう例外的にもう少し柔軟な解決を図ろうということを目指した裁判所によって確立してきた制度だと言われております。

 ポイントは、財産上の権利をどなたかに預けるわけでありますけれども、形の上ではそれは完全な権利を移転するという形をとっております。しかし、この方は、一〇〇%自分の思うがままにその権利を行使できない、ある目的によって拘束されていて、多くは受益者と言われる方のためにその財産を運用するという形をとっている。つまり、形の上では受託者と言われる方が完全な権利を有しているんだけれども、実質的には受益者と言われるような受託者以外の方が恩恵を受けておられる、こういうことを一つの権利の姿として、権利関係として成り立たせているというのがこの信託の意義であります。

 我が国も、明治以来、フランス、ドイツの法律をもとに近代的な法体系をつくったわけでありますけれども、信託というものを一九二二年に、大正十一年に導入したというのはそれなりの理由があるわけでありまして、やはり普通の権利の帰属の仕方と少し違うやり方でもって資金の運用、財産の運用をするだけのニーズがあったわけであります。

 一番大きいのは、当時、担保つき社債というものが金融の一番の花形であったというところにあるわけであります。しかし、その用いられ方というのはそう多く広がったわけではありません。もともとが権利のあり方としてやや例外的な要素が先ほど申したようにあるために、それほどポピュラーになったわけではありません。

 しかし、戦後は、金融の面で、信託銀行を受託者とする営業信託というのが非常に大きな力を金融の中で持ってまいりました。したがって、実際に、戦後、世界で見られる、この我が国の社会で見られる信託というのは、信託銀行が受託者となって売る貸付信託、年金信託、証券投資信託、こういうものであったわけであります。

 ただ、最近は、バブル経済の崩壊前後に、資産の流動化ということを図るということが社会的にも非常に大きな命題になりまして、信託を利用いたしまして債権を一カ所に集める、その方が、それを第三者から運用の基礎にして、債権流動化信託と言っておりますけれども、そういう形での営業を行うということもしばしば出てきたわけであります。

 そのように、我が国の用いられ方というのは、数の面、量の面でいいますと、このような営業信託が非常に大きいところであります。しかし、信託の本来のあり方は必ずしもこういうものだけではございませんので、我が国においても、土地信託を個人でなされる方も、それほど多くありませんけれどもございますし、信託というのを本来の相続の代替として用いてはどうかというような提案も最近はされてきている。したがって、これからは信託というものの活躍の場が広がっていくのではないか、今はそういう時期ではなかろうかというように見ているわけでございます。

横山委員 ありがとうございました。

 なるほど、諸外国にもどこにでもある制度ではないということであれば、確かになじみがないのも理解できます。実際、今ここにおられる方の極めて多くが、例えば大学は法学部を卒業してきていると思いますが、信託法のゼミにいたとか、民法なり英米法なりの授業で四単位、通年で信託法をびっしり勉強してきたという人は多分いらっしゃらないんじゃないかなと思います。

 そういう意味でも、信託法が大正十一年にできて八十四年の時を経て初めての実質改正になる、つまり現代化を図るという中で、では、この現代化のねらいは何か。今のお答えの中にも重なり合う部分がございますけれども、改めて、現代化されることによって、それでは国民にどういう利益がもたらされるのかということについてお話しいただければと思います。

寺田政府参考人 先ほど申しましたような歴史を背負っている信託でございますけれども、大正十一年にできましてから、全く大きな改正を経ておりません。その間、先ほど、一方では営業信託が中心となって大きな力を持ってきたということを申し上げたわけでありますけれども、信託法以外に、例えば投資信託についてはそれの専門の法律がございますし、信託業法という法律も、事業者が信託を行う際の規制だけでなく、信託法の例外を定めるものとしても非常に大きな位置を持ってきているわけであります。

 そういう状況にあったわけでありますけれども、信託の方はこれから先どんどん利用をしていく道が、少しずついろいろな方から語られ始めてきているにもかかわらず、法律の方はどうもそういうことに必ずしも今のままではついていけないような状況ではないかという声が昭和四十年代、五十年代からあったわけであります。学者の先生方からもそういう、信託の今後を考えると、いろいろな形での試案が出ておりますけれども、根本的に信託法というものを見直してみる必要もあるのではないかという声が出ていたわけであります。

 私どもも、この法律、たまたま、全文が片仮名でできておる古い法律だということは一見してわかるわけでございますけれども、そういう周囲の法律の状況と社会の状況を総合いたしますと、やはりそろそろこの法律を見直すべきだろうというように考えるわけであります。

 とりわけ、やはり利用のしにくさというのがまず信託を運用する側にあります。非常に規制色が強い部分がございます。それは歴史的にも、そういう必要性が大正時代にあったところを背景にしてそうなっているわけでありますけれども、そういったところで、もう少し自由に運用をさせていただければもう少し運用の成果も上がるのではないかという声が、まず運用者側から聞こえてきます。

 次に、受益者側から見ましても、必ずしも受益者の権利が強い状態に今の信託法はなっておりません。むしろ、どちらかというと委託者が、財産を譲渡したものとしていろいろな権限を持っているというのが、建前としての今の信託法であります。そこもまた一つ見直すところがある。

 また、もう一つの問題といたしましては、やはりもう少し現代的なタイプの信託を構想してみてはどうかということで、事業の面でも個人の福祉の面でも、これから信託を利用していく上で考えられるものが幾つかあるのではないかということで、今後あり得る状況も想定いたしまして、見直しをここ数年図ってきたということになるわけでございます。

横山委員 ありがとうございました。

 今のお話で、営業信託を主としながら、相続など本来の役割にも使われていくものだ、最初の質問に対しましてのお答えの中にもございました。そういたしますと、改正の背景として、どういうニーズにこたえていこうかという点について、また改めてお聞きしたいと思います。

 つまり、一つには、資産流動化であるとか集団投資スキームとして利用するという経済活動上のニーズというのがあります。そして、これからの高齢社会を迎える中で、高齢者また障害者のよりよい生活をサポートするための福祉的ニーズというものも考えられると思います。こういう点に関しまして、どちらのニーズに重きを置いているのか、あるいはどちらも重点的にやっていくのか、そういうことも含めまして、国民の立場に立って、こういったニーズについての、どちらが大きかったかというようなことを中心にお話ししていただければと思います。

寺田政府参考人 これはなかなか、両者を比較してどちらにより重点があるかというのは申し上げにくいことでございます。

 実態といたしましては、先ほども申し上げましたとおり、戦後の我が国の社会においては、信託というのは営業信託中心であると言って差し支えないと思いますけれども、むしろこれからのことを考えますと、両方をやはりにらんでいかなきゃならない、両方をカバーできるものとしての基本法が要るのではないかというのが率直な私どものスタンス、気持ちでございます。

 今申し上げましたように、営業信託につきましては、歴史もありますし、用いられ方も大きいものですから、改正要望もいろいろなところから、実際に信託を用いておられる方々の間から出てくるわけであります。そういうことで、政府に対しましては、いわゆる商事目的での信託の利用に関する改正要望というのが寄せられたわけでございます。商事信託についての専門家の改正提言というのもまず出されたわけであります。

 しかし、それだけであれば、先ほど申しましたように、信託法本体ではなくて、その周辺にある特別法あるいは信託業法の手当てで足りたかもしれないわけでありますが、私どもとしては、むしろ、高齢化社会の進展に伴いまして、高齢者の財産管理でありますとかあるいは遺言にかわるような財産の移転の仕方について、もう少し信託が活躍できるような場があるのではないかというような思いから、両方をトータルしたベースとしての信託法というものを一つ姿として描いてみるべきではないかということを思って作業を進めてきたわけでございます。

 実際行われたことも、先ほど申しましたように、受託者の義務をどうするかということでございますとか、あるいは受益者の権利行使をどうするかということを中心に検討したわけでございますので、これは決して商事信託という一つのカテゴリーにのみ有効なものではなくて、双方に共通して有効な、最大公約数的なところも大きいわけでございます。したがいまして、どちらかというとなかなか言いづらく、あえて言えば双方を追っているということになろうかと思います。

横山委員 ありがとうございました。

 それでは、次は、この法律の問題点につきましてさまざまに指摘されていることについて、順次お尋ねしていきたいと思います。

 信託の本来的な性質、それは、委託者と受託者との間の信頼関係を基礎に、委託者の財産を受益者のために管理、処分する仕組みであるということにあるわけですけれども、近年の資産流動化や集団投資スキームの活用が加速する中で、信託の受託者を、単に倒産隔離機能や節税機能の組み込まれた、いわば器とみなしているという批判が出ております。これは、信託の本来的な意義が希薄化している、つまり、委託者と受託者との信頼関係が失われてきているという指摘になろうかと思いますが、こういった指摘についてどのようにお考えか、まずそれが第一点。

 そして、今のお答えの中に相続に関しましての関連法についてのお話が少しありましたが、こういう希薄化の状況を踏まえたときに、信託一般の規律を定める信託法の改正ではなくて、資産の流動化に関する法律あるいは投資信託及び投資法人に関する法律、こうした法律を改正するという選択肢もあったのではないかと思いますけれども、そういう方向をとらなかったという点について、以上二点についてお尋ねいたします。

寺田政府参考人 まず、信託という制度の本質が、先ほど申しましたように、基本的には、受託者と言われる者が財産を預かっていて、それを一定の目的のために運用している、管理しているという状態が本質的なところでございます。ここには一つポイントがございまして、それは、やはり受託者というのが信じるに足るものであるという信認というものがこの制度の基礎にあるわけでございます。その信認を受けている受託者が一定の目的を果たそうと一生懸命仕事をする、これが信託の本質であります。したがいまして、受託者にどういう者が当たるかというのが制度の非常に大きなポイントになるわけであります。

 委託者と受託者だけでありましたら、これは単なる契約の関係としてほかに幾らでもやりようはあるわけでございますので、私どもとしては、その目的によって拘束を受けている財産を運用する受託者というものがこの制度のやはり中心にある。そういう意味で、先ほど倒産隔離機能や節税機能のための器というような見方を紹介されたわけでありますけれども、そういうものは、確かに信託の一つの機能として全く要素がないわけではありませんけれども、しかし、本質的な要素からはほど遠いところにあるだろうというように考えているところでございます。

 信託法を見直すやり方について、次に御質問があったわけでございます。

 先ほど申しましたように、もし、事業あるいは営業的な信託について、一定の範囲で法律関係を新たにしていこうということであれば、おっしゃったように、例えば資産の流動化法でありますとかあるいは投資信託及び投資法人に関する法律のような特別法の改正で済ますということもあり得た。あるいは、信託業法は既に改正がされているわけでありますけれども、それで事足れりということもあり得たわけであります。

 しかし、先ほども申しましたように、これはむしろそういうことではなく、これからの社会で個人が利用できる信託というものも念頭に置いた場合に、やはり先ほど申した、受託者を中心とする法律関係である信託の基礎法である信託法というものを見直していくのが筋であろう、このように考えて、今回は全面的に、先ほど申しましたいろいろな法律関係について信託法自体の手当てをしようということで御提案をしているわけでございます。

横山委員 わかりました。ありがとうございます。

 では、引き続き、今回の信託法案では、信託行為の定めや受益者の同意等がある場合には利益の相反行為も許容するとされております。こういう受託者の忠実義務を任意法制化する理由はまずどこにあるのかということ。

 この忠実義務の任意法規性を認めますと、保険の際にも問題になりましたけれども、明確な認識がない同意に基づいて受益者の利益が不当に害されるおそれもあります。こうした点で、何らかの歯どめが必要なのではないか。

 忠実義務を任意法制化する理由と、そして何らかの歯どめをかける必要性、この二点についてお伺いしたいと思います。

寺田政府参考人 この忠実義務というのは、先ほど申しましたように、受託者に対する信認、基本的にはこれは受益者から観念的にそれを託されているということになるわけでございますけれども、それを中心とする法律関係ですから、今委員の御指摘にありました、忠実義務と言われる、財産を管理するに当たって受託者が一番基本的に心得ていなきゃならないことについての規定が中心になることはもう申すまでもないわけであります。

 実はこれまで、基本的に、利益相反行為、忠実義務と言われるものでございますけれども、その中に一般的に忠実義務を定めた規定はございませんでした。まず今回、それを基本的に大事な要素だということで明文化いたしました。

 次に、利益相反の行為は、現行の信託法の中では、受託者の固有財産と信託財産の間のやりとりを禁止する点だけが書かれていたわけでございますけれども、今回それを広げまして、さまざまな面で、競合行為も含めて、受託者がしてはいけないことを決めたわけであります。

 ただ、これが余り硬直的になりますと、現代においては非常に不便なところがございます。これまでのように、例えば自分の計算において行うことと信託財産の管理というものを全く切り離して考えなきゃいけないということになりますと、例えばビルの信託を受託した受託者にとりましては、空き室ができたときに、たまたま借り手が全くいない、自分ならば相場の家賃で借りられるのにということが、例えば信託銀行なんかにもあり得るわけであります。そういうときに、それを全くしてはならない、あるいはもうぎりぎりやむを得ない場合でしかそれが許されないということになりますと、これは甚だ窮屈であります。

 そういったことから、利益相反行為、忠実義務の一形態でありますけれども、そういう行為への制約というのを少し緩めるべきではないかという考えに学界の方でも進まれましたし、実務界の方でもそれを要望されたわけであります。

 そこで、今回、信託法案では、受託者による利益相反行為を原則的にはもちろん禁止してはおりますけれども、信託行為の定めがある場合や重要な事実の開示を受けて受益者が承認した場合などにその例外を認めることによって、柔軟化したわけであります。

 ただ、おっしゃるとおり、これに歯どめがないということになりますと非常に困るわけでありまして、その一つは、今も申しましたように、では、受益者がオーケーと言えばそれでいいかということはいろいろ問題が出てくるわけでございますので、規定の中に、既に、重要な事実の開示というのを必ず受託者側からしなきゃいけないということを決めているわけでございます。

 したがいまして、そこで同意というものに対する一つの前提条件を課しているというように御理解をいただきたいところでございます。その手続的な前提といたしましては、重要な事実というものを当然通知するということになるわけでございます。

 さらに今度は、実際に、いわば事後チェックの形になるわけでございますけれども、利益相反行為の禁止の違反に対してどういう措置がとれるかということも非常に大きいポイントでございます。それは今まで必ずしも明確になっておりませんでした。例えば、受託者が利益相反行為の禁止に違反して自分のポケットに利益を得てしまうということが起こったときに、その利益をどうするかということでございます。

 今度の法律では、その際に、その行為によって受託者が得た利益は信託財産に生じた損害と推定することによって、これを信託財産に取り戻させるということができるようにいたしております。

 これらの手当てによって、やや柔軟化はいたしましたが、しかし十分に歯どめはかかっているものというように考えているところでございます。

横山委員 わかりました。

 それでは、次に、自己信託、今回の信託法案によって最も関心を持たれている部分だと思いますが、これについてお尋ねしたいと思います。

 まず、現行の信託法のもとでは、委託者がみずから受託者ともなる自己信託が認められてこなかった。それが認められてこなかったのは、財産隠しに使われるといった弊害がこの自己信託という制度ではあるからだと考えられてきました。今回の信託法案ではなぜそのような弊害があっても認めるに至ったかについて、再度この理由をお聞きしたいということ。

 また、この自己信託がされた場合に、信託財産の所有権が移転しない、その名義も変わらない。そうしますと、自己信託がされたのかどうかさえ外部からわかりにくい。そういう問題点がある中で、これによる委託者の債権者の正当な権利が害されるというおそれがあります。今回の信託法案では、信託宣言の意思表示は公正証書その他の書面や電磁的記録に記載、記録することとなっておりまして、公正証書以外の書面や記録による場合も認めております。今回の法律案で、その自己信託の透明性を確保するためにいかなる措置がとられているのかについてお伺いいたします。

寺田政府参考人 現行法で実は自己信託というものはおよそあり得ないかについても、これはかねてから学界にも争いがありまして、どちらかといいますと、この信託法の日本での最も権威と言われた四宮博士を初め何人かの方は、本質的には自己信託というのは別におかしいことではない、信託宣言というのは信託にとってあり得ないことではないというお立場でございました。

 ただ、我が国においては、委託者が受託者に財産を譲渡するということが、物権法の秩序から観念的には非常に強く考えられておりましたので、自分から自分に譲渡するというようなことはやや考えにくいということから、もともと明文でも認められておりませんでしたし、実務界でもそれを行うということは避けてきた、こういう歴史があるわけであります。

 しかしながら、これは、この信託制度の母国でありますイギリスでありますとかあるいはアメリカではもとから制度としてはあったわけでございますし、現にそれを利用されるということも結構あったわけであります。

 今、委員は、所有権の移転がないのに、こうおっしゃったわけでありますけれども、しかし観念的には、委託者である個人、会社から、受託者としての個人、会社に所有権の移転がされる、これが受益者がいる状態で目的をもって拘束されるというわけでございますから、決してそのこと自体で全く信託から外れてしまうということではないわけであります。

 ただ、この点は法制審議会でもいろいろ議論があったわけでございますけれども、観念的に濫用がされるというのでやめた方がいいという御意見もあり、また、全くもうビジネスとしても使いやすいものだから使うようにした方がいいという意見もありましたが、多くの意見は、一定の制約を課した上で、この自己信託というのを法律上認めるのが最も合理的であるというお考えでありました。

 そこで、私どもは、これも後で出てくると思いますが、詐害行為等について一定の特則を設けるというような形をとりまして、この自己信託を認めたわけであります。

 おっしゃるとおり、この自己信託というのは、観念的には、先ほど申しましたように、所有権はある種の移転をするわけでありますが、しかし、なかなか目に見えにくいところでございます。そこで、例えば、日付をさかのぼらせて所有権の移転があったということによって債権者を害しようというようなことがあり得ますので、日付が動かないようにしようということで、公正証書あるいは確定日付のある書面というものを要求いたしております。まず、その点自体が透明性の一つのポイントではございます。

 また、登記、登録が必要になる財産につきましては、当然、自己信託といえども、この信託の登記、登録を要求いたします。

 最後に、信託というのはやはり独立の会計をなすわけでございますので、信託財産については、当然、貸借対照表、損益計算書その他の会計書類というものをつくるわけでございます。これに対しまして、利害関係者、この場合は、中心となるのは受益者になるわけでありますけれども、それが開示請求をする、閲覧をするというようなことができる。こういうことを通じまして透明性を確保するということに制度上なっているわけでございます。

横山委員 そうしますと、しかし、自己信託は、委託者以外の第三者が受託者となる通常の信託と異なって、債権者からの強制執行を免れる目的で財産隠しに利用されるおそれがあるということも言われているわけです。こうした指摘に対して、今回の信託法案でどういう対策がなされているのか。また、こうした制度を導入すること自体が、企業の透明性の確保であるとかガバナンス強化という現在の流れに沿わないのではないかなという気もいたしますが、この点についてはどのようにお考えでしょうか。

寺田政府参考人 先ほど申しましたように、この制度に対して比較的懐疑的な方は、これが濫用されることによって強制執行逃れに用いられるのではないかということを言われるわけであります。

 私どもからいたしますと、もともと、財産逃れとは言われるわけでありますけれども、AさんがAさんにこの自己信託を設定する場合に、それはAさんのものではもはやなくなるわけであります。観念的に所有権は移るだけのように見えるわけでありますけれども、実際にも、受益者でありますBさんというのが実質的な利益、権利を持つ、そういう主体として拘束がかかるわけでありますから、これは、普通にAさんからBさんに財産を譲渡したときと利益状況としてはほとんど変わらないというふうにまず見るわけであります。

 ただし、実際にその自己信託が行われる場合に、それが見えにくいというのはおっしゃるとおりでありますので、そこで、先ほど申しましたような弊害の防止措置といたしまして、特にこの詐害行為的な形で自己信託の設定が行われる場合に、特別の手当てをいたしております。

 それは、普通の信託について、委託者が受託者に対しまして財産を譲渡する、これが詐害行為に当たるという場合には、裁判所に詐害行為の取り消し訴訟を起こして、その後で財産を取り戻して権利行使をする、こういう形になるわけでありますけれども、この自己信託の信託財産に対しましては、委託者の債権者としては、わざわざ裁判所に詐害行為の取り消し訴訟を起こす必要はない、詐害行為ということを立証すれば、直接強制執行をかけていけるという特則を二十三条の二項に置いているわけでございます。

 逆に、受益者、受託者側としては、そういう詐害行為ではないんだ、あるいは自分が善意だからそういうことは取り戻せないんだということを異議の形で訴えを提起していくわけでございますから、原則と例外がいわば逆転しているというような形の法律関係をここで実現しようとしているわけでございます。

 なお、念のためでございますけれども、もともと執行妨害の目的で自己信託の設定がされるというような極端な場合には、公益を確保するためにその存立を許すことはできないというまでに悪質であるということであれば、裁判所に対しまして申し立てをして信託自体を終了させるという道も、百六十六条でありますけれども、あるわけであります。したがいまして、制度上、特にこの場合に、それだけの手当てをしているということはひとつ御理解をいただきたいところであります。

 透明性については先ほど申したとおりでございます。非常に大事なところでございますし、またこれが事業として行われる場合には、当然のことながら、信託業法上の透明性の確保ということもまた要求されるわけでございます。私どもとしては、運用に万全を期していくために、これについて十分な周知を図りたいと考えているところでございます。

横山委員 ありがとうございました。

 それでは、今度、この自己信託を会計の原則の点でお尋ねいたします。

 自己信託がされた後、その当該信託財産については、会計上は、固有財産と分別して信託勘定として管理することになります。この信託勘定について、これは会社法上の監査や金融商品取引法上の監査、連結開示の対象となるのかどうかについてお伺いいたします。

 また、この当該信託に係る信託の受益権のうち、委託者である会社自身が保有しているものについても監査や連結開示の対象となるのでしょうか、お尋ねします。

寺田政府参考人 これは会計上のことでございますので、またその会計の専門的な委員会においてさまざま具体的に検討をしていただくこともあろうかと思いますが、基本的には信託財産として、この自己信託も、受託者固有の財産に係る会計とは別個の勘定において会計処理することになるだろう、これは私どもも委員の御指摘のとおりだろうというふうに思っております。

 それで、会社が財産を自己信託した場合に、その信託受益権のありかが問題になるわけでございますけれども、それを売却等をしないままみずから保有している、こういう状態でありますと、信託財産についてのオフバランスは認められず、自己信託を行った会社の計算書類あるいは証券取引法の財務諸表に信託財産の内容が記載されるということになるのではなかろうかと思います。したがって、そうなりますと、これは当然、会計上も会社法上の監査の対象になるわけであります。これらが、仮に上場会社等の有価証券報告書を提出する必要のある会社、会社法上のいわゆる大会社に当たる場合には、その財務諸表について、公認会計士あるいは監査法人の監査を受けなければならない、こういうことになるわけでございます。

 これに対しまして、この受益権が第三者に売却されたという状態になりますと、当該財産はオフバランスされて、会社法の監査、金融商品取引法上の監査、開示の対象外になるもの、こう理解をいたしております。

 ただ、先ほど申しましたように、新しい制度として導入されることになった場合には、これらの会計法の取り扱いについて明確化が図られていく、より詳細に決められていくということになろうと思いますので、こうした観点から、会計基準の設定主体であります企業会計基準委員会、ASBJに対しまして、この自己信託を含む信託に関する会計処理基準の明確化を要請した、このように承知しているわけでございます。企業会計基準委員会においてはいずれ検討を進められていくだろうというふうに私どもも期待をしているところでございます。

横山委員 いずれ検討が進められていくということであれば、ではこの点についてはこれ以上の質問には行きません。

 それでは、次に、事業信託ということについてお尋ねしたいと思います。

 今回の信託法案で積極財産と消極財産を一まとめにして信託する事業信託を認めると伺っておりますけれども、まず、この事業信託という言葉自体が、二百七十一条あります法文の中に一度も出てこない。そうすると、この事業信託ということにつきましてのいわゆる根拠条文というのはどこになるのでしょうか、教えていただければと思います。

寺田政府参考人 今回の法改正におきましても、この点は本質的にこれまでと変わったということはございません。

 信託においては、先ほど来申し上げておりますとおり、受託者が財産を管理運用しているというのがポイントでありますけれども、この場合の委託者から譲渡を受けた財産というのは積極財産、プラスの財産を意味しているわけであります。今回の法案の第一条、第二条、定義というところがございますが、そこに財産の管理、処分と書いてありますこの財産が、まさにその積極財産を意味するわけであります。

 しかし、同時に、およそこの信託というものに債務負担行為をさせてはいけないのかというと、それはそんなことはないわけでございまして、もちろん、信託がスタートした後にこの信託の運用をしている過程でさまざまな信託財産に対する債権債務関係というのが生じるわけでありますけれども、それ以前に、信託前に生じた委託者の債権についても、信託行為の定めがあれば、この信託に対する負担をかけさせられるという規定がございます。これが二十一条の一項の三号でございます。

 したがいまして、よく、今回事業信託を新たに認めたんだ、こうおっしゃいますが、今までも解釈上、債務負担をさせられるという説もございましたし、私どもとしてはそれほど変わったことを考え出したわけではありません。ただ、明文として、今申し上げました二十一条の一項三号に明らかに債務負担行為が明示されましたので、その関係で、結局、プラスの財産とマイナス財産をともに持っている状態の権利関係が実現するということになったわけでありまして、そういう意味では、事業自体の信託をしたのと似たような状態をつくり出すということになるわけでございます。そこで、今言われているようなことがあるのではなかろうかと私どもは考えているところでございます。

横山委員 わかりました。

 それでは、この信託法につきまして、より広く国民に理解が深まり、そして高齢化社会を迎える中で、具体的な質問としては最後になりますが、福祉型の信託についてお聞きいたしたいと思います。

 高齢社会において、財産管理という問題の中で、これから個人やNPOなど高齢者の信託財産を業として預かろうとする福祉型信託制度のニーズは増大してくるものと考えられますが、この点の整備に当たって、今後どういう課題があるのか、問題があると認識しておられるのか、そして、福祉型信託制度の整備を具体的に進めていく上での今の展望といいますか、お教えいただければと思います。よろしくお願いいたします。

畑中政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員の御指摘にございましたように、高齢者等の将来の生計を維持するために一定の財産を信託するといったいわゆる福祉型の信託につきましては、我が国において高齢化社会が進む中で今後ニーズの増加が予想されるところであって、これらの担い手について、個人でありますとかNPOに拡大してはどうかという御議論があることは承知をいたしております。

 他方、この福祉型信託につきましては、特に業で行う場合につきまして、受益者が高齢者等であることから、受益者としての権利を十分行使し得ない場合もあるのではないかというような御指摘もございます。また、信託財産が毀損された場合に、受益者である高齢者の生活に重大な支障を及ぼすことになりかねない、こういった御指摘もあるわけでございまして、受託者の適格性あるいは義務などにつきましてしっかりとした検討を行う必要があると考えております。

 この福祉型信託を業として行う場合の信託業法上の取り扱いにつきましては、前回の信託業法の抜本改正の際に、本院の財金委員会の附帯決議あるいは参議院の財金委員会の附帯決議におきまして、次期信託業法改正時の検討事項の一つとして御指摘をいただいておるところでございます。前回改正法で予定しております施行後三年以内の検討の中におきまして、こうした観点も踏まえ、必要な検討を行ってまいりたいと考えております。

横山委員 わかりました。私の方ももう少しよく勉強いたします。

 それでは、最後に大臣にお伺いいたします。

 今まで一時間近く質問させていただきました。今回のこの信託法案につきまして、信託を資産流動化に利用しやすくする反面、その本質がゆがめられるのではないかとか、あるいは投資組合にかわる新たな器を提供することになると第二のホリエモン事件のようなものを生み出すのではないかとか、さまざまに出されている懸念の声について、この二点を中心に、総合的な大臣のこの法案を通すに際しましてのお考えを伺うことができればと思います。よろしくお願いいたします。

長勢国務大臣 新しい類型の信託を創設する等々改正をしておりますので、御疑問のようなお話もあるやには伺っております。

 ただ、新しく創設された信託におきましても、いずれも受託者が受益者あるいは信託目的のために信託事務の処理を行うという性格を持っておりますので、信託の本質がゆがめられるということにはならないのではないかというふうに考えておりますし、また、今ホリエモンの話がありましたが、そういう事件が起こるのではないかという御指摘があるわけでありますが、信託法案では、不法な目的に基づいて信託がされた場合には裁判所が信託の終了を命じる制度や、受託者等についての罰則規定を新設するなどしておりまして、信託制度の悪用を防止するために考え得る限りの手当てを講じておるというふうに考えております。

 そういうことでございますので、御懸念のような事件が起こるとかいうことはないと考えておりますし、信託の濫用というものを十分に防止できるものと考えております。

横山委員 幾つか質問で通告してあったにもかかわらず、お答えいただく御準備をされた皆様がおられましたら、大変失礼をいたしたと思って深くおわびいたします。

 私の質問はこれで終了いたします。

七条委員長 次に、高山智司君。

高山委員 民主党の高山智司でございます。

 引き続き法務委員会を担当させていただくことになりました。今度、大臣も本当に法務畑の長い方なので、また勉強させていただければと思っております。

 では、まずこれは大臣に伺いたいんですけれども、今回、信託法改正ということで法案提出に至った背景について伺いたいと思います。

長勢国務大臣 信託法は、大正十一年の制定以来、今まで実質的な改正は行われてきておりません。戦前あるいは前後を通じて余りこの制度というのは活発でない時代が続いておりましたが、近年、この信託を利用した金融商品、貸付信託ですとか年金信託ですとか証券投資信託というものが広く定着をしてまいりました。

 さらに、新たな形態での信託の活用として、資産流動化のための信託、すなわち、委託者から引き受けた不動産や金銭債権等の資産に信託を設定して、その受益権を投資家に販売するということで、委託者が資産そのものを投資家に販売することなく資金調達を行う、こういうふうに利用される、こういう形での活用も図られるようになってきております。

 こういうこともありまして、現行の信託法に対しまして、信託銀行あるいは事業会社を初めとする経済界からは、資産流動化に際しての信託宣言の許容、あるいは信託を活用しやすくするための関連法制の整備、見直し、あるいは信託受益権の有価証券化の許容などについて検討が求められてまいりましたし、また、信託の専門家においても幾つかの改正提言が公表されるということになりました。

 さらに一方で、こういう経済界だけでなくて、高齢化の進展に伴って、高齢者の財産管理を図るための制度として信託が注目をされるようになった。今後、高齢者や障害者等の生活を支援する目的での信託の活用が期待されるということは、衆参の国会の附帯決議などでも指摘をされておるところでございます。

 このように、多様な目的から信託全体を見直すべきということが議論になってまいりましたので、今般この見直しを行ったということでございます。

高山委員 今大臣のお話ですと、信託に関して経済界からの資産流動化等の要請もあり、また、福祉目的の信託での社会的ニーズもあるというお話をいただきましたけれども、それでは分けて、経済界からの要請といいますか、資産の流動化の方についてまず伺いたいと思います。

 これは法務委員会ではございませんけれども、信託業法の改正をして、随分信託財産の範囲ですとか手法が自由になったと思うんですが、まず、これは細かいことですので政府参考人で結構ですけれども、業法で改正されてどういうものが信託の対象にできるようになったか、教えてください。その財産の範囲がどういうところまで広がったか。

山崎政府参考人 前回の信託法改正ということでございますか。(高山委員「はい」と呼ぶ)

 例を申し上げますと、例えば知的財産権でありますとか、要は、限定列挙されておりましたものを外しましたものですから、例えば、例としては知的財産信託というようなものがございます。

高山委員 これは、今まで限定列挙されていたものが、広くいろいろな財産権を信託の対象にということで知的財産なんかも始まったと思うんですけれども、実際、これは制定というか改正した当時に、そういう要請がもう既に産業界からあったんですか。知的財産を信託に使いたい、そういう要請があったんでしょうか、その当時。

山崎政府参考人 当時の話でございますが、それぞれの具体的な要請に基づいて履行がなされたものというふうに承知してございます。

高山委員 それはまずどういう要請があったのかということと、あと、それに加えて、知的財産が今信託できるようになったということですけれども、これはいつからそれができるようになって、現時点でどのぐらいそういうのが出ていますか。実績を教えてください。

山崎政府参考人 どういう要請かということにつきましては、端的に知的財産を信託の対象にしてほしいという要請だというふうに理解してございます。

 それから、知的財産信託の利用実績でございます。できますようになったのは、したがって法改正以降でございますので、平成十六年十二月三十日からということになります。

 それから、現在までの実績でございますが、知的財産信託は、信託銀行及び信託会社で受託しておりますのは、映画ファンドに関するものが二件、それから特許権、商標権及びソフトウエア著作権に関するものがおのおの一件ということで、合計五件であるというふうに承知してございます。

 なお、このほか企業グループの中の知的財産を管理会社で集中的に管理するいわゆるグループ内信託というものがございまして、これは届け出制でございます。これにつきましては、現在八件の届け出が行われております。

 以上でございます。

高山委員 ちょっとこれは随分少ないなという印象があるんですけれども、産業界からすごいニーズがあったという割には、現時点で五件しかない。グループ内信託というのは、これまた別の使われ方だと思うんですね。だから、本来的な、委員会等でいろいろ説明があった、経済界からの要請があり知的財産まで広げたという割には随分使われていないなという印象を私は持つのですけれども、最後にまた大臣にも全体的な印象は伺いますけれども、これは当初からこんな五件ぐらいの話だったんですか。それとも、もっとばあっと広がっていって、産業界からニーズがあるから法律改正してくれというぐらいの、そんなニーズがあったんですか、改正の議論があった当初。それはどうだったんでしょうか、ちょっと教えてください。

山崎政府参考人 これは、先ほど申し上げましたように、法が施行されてから一年九カ月という期間でございまして、私ども、これが少ないという認識は有してございません。

 その理由でございますけれども、例えば知的財産がどれだけ収益を生むかについて評価が難しいとか、こういう問題はあろうかと思いますが、一年九カ月ということを考えますと、現時点において少ないというふうには認識しておりません。

高山委員 それともう一つ、グループ内の信託が八件ということでしたけれども、ちょっとこちらの方を伺いたいと思います。

 知的財産というと特許ですとかそういうことだと思うんですけれども、これはある意味、とある特許がとある特許の権利侵害になっているというようなことはよくある話でして、信託を受けているところというのはそんなに多くなかったと思うんです。そうすると、受託者の中で利益相反になるおそれというのが当然出てくると思うんですけれども、今、何かそういう問題が生じているのかどうかを教えてください。

山崎政府参考人 確かに、委員御指摘のように、利益相反の問題とかそういうこともあろうかと思います。先ほど評価の問題を申し上げましたが、このような問題もあるというふうに認識してございます。

 なお、グループ内信託についてお尋ねがございましたが、グループ内信託の場合には、企業内グループ各社が保有する知的財産を親会社あるいは親会社のもとに置かれた管理会社に集中して管理させるというものでございまして、これにつきましても、同様の問題は発生する余地はあるということでございます。

高山委員 ちょっと私の質問の仕方も悪かったので、もう一回整理して聞きますと、この知的財産の信託に関して、今信託を受けているところというんですか、受託者になっているところは何件ぐらいあるんですか。受託者になっているところ、信託を受けているところは何件ぐらいありますか。

山崎政府参考人 受託者が何業者いるかということでございますが、これは先ほど五件と申しましたが、受託者も五件でございます。

高山委員 この知的財産の信託というのはなかなか専門性が高いと思うんですけれども、だから、そんなにいろいろなところが受託者になれることではないと思うので、先ほどの利益相反の問題、いろいろなところでまだばらばらしているうちはいいですけれども、例えば五件の大きいところに大体集約されていくとか、とにかく利益相反するところがお互いに信託をしてくる可能性があるわけですね。

 そうしたときはまずどうするのかということと、今はまだ全体で五件しかないし、五業者ぐらいしかいないということでそういう競合が生じていないと思うんですけれども、今後、この信託がふえてきたときに、利益相反ですとか競合が生ずるおそれがあるのかということと、またそうした場合、一応どういうことを考えているのか。

山崎政府参考人 まことに申しわけありませんが、ちょっと答弁の訂正をさせていただきます。

 受託者の数は、銀行の数は三件でございます。まことに申しわけございませんでした。

 それから、競合の問題につきましては、もちろん、そういう利益相反とかいろいろな問題が生じるおそれがありますので、万一、違法な事態とかそういうものが生じないよう、それは監督なり検査なりの問題で対処するということでございます。もちろん、それぞれの会社におきまして、そういう問題が起きないよう十分注意していただくということが前提になろうかと思います。

高山委員 いや、もちろんそうだけれども、だって、業者の数が三件で、これはどんどんまた信託がふえていく見込みであるということだと、当然利益相反のおそれが起きてくると思うし、そうすると、ではもう信託は受け付けられませんねですとか、そういうふうになってくるということですか。

 私が言いたいのは、特許なんかの場合は、後になってこの権利侵害が顕在化してきたりとか、これは十分あるわけでしょう。顕在化してきたときにどういう方策でそれを適正に処理するというのを今考えているのか、それを教えてください。

山崎政府参考人 ただいまの、例えば信託銀行が受託をする際に、受益者との契約の中でそういうのは適正に処理されるべき問題であるというふうに考えてございます。

高山委員 今、契約の中でと言いますけれども、それは契約というか、とにかく信託を頼むときはうちのこれを有効活用したいから、財産価値を幾らにはかってもらってやってくれということで、競合というかパテント同士がぶつかり合うとか、その時点ではこれはわからないんじゃないですか。後で顕在化してきたときにどうなるんですか。利益相反というか特許同士のぶつかり合い、これが後で顕在化してきたときに、どういうふうにこれを処理したらいいんですか。

山崎政府参考人 それぞれの契約の中身でございますので、一般論でございますが、そういうことが生じた場合にはこういうふうにするというようなことを予測して契約をつくる必要があるということでございまして、そういうふうに取り扱われるものと考えてございます。

高山委員 そうしますと、まず契約のときの話ですけれども、信託銀行なりの会社、受ける方と頼む方ですけれども、知的財産というのは、そもそもこれが大体幾らぐらいの経済価値があるのかとかは、すごくはかりにくいわけですよね。その信託を使うことで、まあ大体これは幾らですよという価値をはっきりさせる、そういう機能が信託はあるから便利だということだと思うんですけれども、その価格が大体幾らぐらいであるとか、要するに受益権が幾らぐらいになるのかとか、これはどういう基準で決めていくんですか。

山崎政府参考人 そこが先ほどちょっと申し上げましたように非常に難しい点でございますが、それはそれぞれの基準の中で、基準と申しますよりはそれぞれの契約の中で、それぞれ対象となる知的財産に応じて決めていくものであるというふうに考えてございます。

高山委員 そうすると、受託者と委託者の間である意味自由に価格が決められるんだ、そういうことなんでしょうかね。それをちょっとまず伺いたいんですけれども。要するに、契約は自由である、だから、すごい安い受益権に設定しても高い受益権に設定しても、その辺は自由だ、そういうようなことですか。

山崎政府参考人 基本的には当事者の間の契約でございますが、当然受益者がいるわけでございますから、例えば、余りに価値のないものを高くつけたりすれば、それは成り立たないというようなことでございまして、そこは当事者間で適正なところに落ちついていくんだろうというふうに我々は期待しております。

高山委員 今の金融庁の答弁だと、当事者間で合意さえすれば適正な価格ですねというような話ですか。当事者間であればいいと。だから、外の第三者から見て、これはちょっと安過ぎるんじゃないの、あるいは高過ぎるんじゃないのということでも、まあ当事者間の合意で決めればそれは決まってしまう、そういうことですか。何か強行法規みたいなものはないんですか。完全に自由なのかということをちょっと。

山崎政府参考人 なかなか一律にお答えは難しいんですが、例えば、余りに善管注意義務違反だというレベルまで達すれば、これは我々の監督の対象になるということがあり得るというふうには考えてございます。

高山委員 それでは、グループ会社の方について伺いたいんですけれども、そのグループ会社での使われ方というのをもう一回詳しく説明してください。

山崎政府参考人 これもさまざまな使われ方がございますので一概に言えませんが、例えば、グループ内各社がそれぞれ保有するのはなかなか、それぞれ専門性もあり大変だということで、知的財産権を一つのところへ、管理会社に集中して管理する。これはこれなりにグループとしてメリットがあるのでこういうものが行われているというふうに理解してございます。

高山委員 これはグループで集中して管理するというのは、例えばどういうメリットがあるんですか。

山崎政府参考人 ただいま申し上げましたように、非常に専門性のある分野でございますので、ごく常識的に考えていただければと思いますが、それぞれの会社がそれぞれ知的財産権を管理している状態よりは、集中して管理した方がそれはメリットがあるということでございます。

高山委員 ちょっと今の、なぜ集中して管理した方がメリットがあるのかというのがよくわからないんですけれども。

 私が聞きたいのは、グループ会社とはいえ、一応全部別の会社なわけですよね。それぞれ財産権を持っていて、これを集中管理するのはいいんですけれども、そうすると、グループ内で一番親会社というか、発言権の強いところに都合よく使われちゃって、子会社の方は自分の持っていたパテントなんかを吸い寄せられてしまうというのか、そういうことにはなりやしませんか、このスキームですと。そのメリットというのが、全グループ的なメリットではなくて、全グループ的なメリットのように見えるけれども、一応別会社である子会社よりも親会社のメリットが大きくなるような気がするんですけれども、そういうことはないのでしょうか。

山崎政府参考人 一般的には受益権が子会社に行くわけでございます、この場合。したがって、受益権が子会社に行きますので、子会社も当然利益を受けることになりまして、一般的に親会社だけが利益を得るということはないというふうに考えてございます。

高山委員 先ほど、受益権の決め方が、相対の契約で、ほとんど自由に決められるというお話でしたけれども、そうすると、物すごい低い価格だとか物すごい高い価格というふうな価格設定になるということは絶対にないですか。

山崎政府参考人 これは絶対にないとか、そういうことは言えないと思いますが、それぞれ、例えば親子会社間であれば親子会社間の一般的な規制がかかっているわけでございまして、そういうもので律せられるべき問題、極端なケースはですね。先ほど善管注意義務ということを申し上げましたが、極端なケースになりますと、その法律上の規制がかかってくる場合があるというふうに考えてございます。

高山委員 すごい極端な例はもちろんそうだと思うんですけれども、これは事実上グループ会社なので、親会社からこのぐらいの価格でというふうに言われたら、まあそうだなみたいなことになりやしないか、ちょっとそういう懸念を持っているんです。

 だから、これは大臣にも伺いたいんですけれども、今回、グループ内での知的財産の信託ということですけれども、これは別に親会社、子会社で同じグループなんですから、特許を使うときにライセンス契約、そんな支障はなく当然契約できると思うし、では使用料はこれぐらいねということでやればいいわけで、財産権を全部こっちに持ってきてしまうようなこの信託の仕組みを使うというのは、余りにも親会社に有利過ぎるような印象を持ったんです。特に、受益権の価格のつけ方も相対であるということですから。

 これは、そういう何か不当な集中管理というのが、合理性とかグループの全体のメリットという名のもとに、親会社にだけ利益が集中するようになっちゃう懸念を私はちょっと持つんですけれども、大臣はどういう印象を持たれましたか。

長勢国務大臣 ちょっと、そういう場合の信託の実態はつまびらかではございませんが、グループ会社でそれぞれ特許があるのを、グループ全体として何らかの利益を生むように活用したいという趣旨でこの信託が組まれるということではないか、それは経営方針というか経営戦略の問題なのかなというふうに今聞いておりましたが。

高山委員 もちろん経営戦略なんですけれども、それはグループの親会社の経営戦略であって、一応別会社なわけでしょう、子会社も全部。それで、信託の受益権の価格を決めるのに親と子で話し合って決めるというんですけれども、対等な話し合いに本当になるのか。お互い、本当は一番渡したくないいい特許をどんどん吸い取られていってしまう、こういうことに実態としてはなっていくんじゃないのかなという懸念があるわけですよ。

 だから、さっきも利益相反のことをちょっとしつこく聞いたんですけれども、これは今のところ、ほとんど何の規制もなくやっているわけですよね。どんどんどんどん信託というスキームを使って強いところに財産が集まって、弱いところには、残るのは受益権だけ残るということになって不公平な印象を持つんですけれども、ちょっと大臣、またその点、いかがですか。

長勢国務大臣 信託のスキームの問題なのか、あるいは取引関係、親会社と子会社、信託でなくてもいろいろな場合があって、御懸念のようなことは起こらないという保障はないというか、あるという、よく行われているという意見もないわけじゃないんでしょうが、そのところの問題だろうと思いますので、信託法に言う利益相反という問題ではないのではないかと思いますが、何か間違っているかな。(高山委員「もし補足があれば」と呼ぶ)

寺田政府参考人 ちょっと補足をさせていただきます。

 私どもも、もちろんグループ企業の一括知的財産管理について、非常に詳しく実態を、それぞれ個々のケースについて調査して、あるいは把握しているわけじゃございませんので概念的な話にはなりますが、おっしゃるとおり、基本的には、グループ全体でその知的財産権を、Aという知的財産権とBという知的財産権を組み合わせるというようなことが可能になるので、そこで一括管理というのが望ましいという経営判断をなさるんだろうと思います。

 その場合に、だれがその受託者になり、だれが受益者になるかということは、さまざまそのグループによってあり得るわけですけれども、あるいは、おっしゃるとおり、親会社がなる場合、あるいは専門の子会社がなる場合もあろうかと思います。

 先ほど来、金融庁の方からもお話があるとおり、仮に受託者の方で管理に非常に偏りがあって、特定の受益者に有利になるということになりますと、これは今度の信託法上もございますし、現在でも観念的に認められております公平義務に違反するわけでございます。

 また、さっき受益権の価格のお話が出まして、これは、知的財産権はまだ評価というのが余り一定いたしておりませんが、仮に証券化されて市場があるものについては市場価格というのが恐らく成り立つんだろうと思いますし、そうではないものも、会計上は、すべてのこの知的財産が持っている収益というものから逆算してどのぐらいの時価がつくかということは計算が可能なんだろうと思います。その価格を前提にした受益のあり方と余りにかけ離れているということになりますと、当然のことながら善管注意義務に違反するということでございますので、信託法上はそういう規律がございます。どの程度になればそれは監督されるかというのは、まさに先ほど金融庁がおっしゃったとおりだろうと思います。

高山委員 今の局長の答弁の中で、特定の受益者だけがどうのこうのという、これは今余り関係ないですね。受益者間の公平ということじゃなくて、親会社だけが有利になるような、そういう受益権の価格設定をするのがちょっと問題じゃないのかなということで、その辺の疑念はまだ払拭されないんですけれども、今回のこの改正で、信託宣言というんですか、自己信託が取り入れられるということですけれども、何でこんなものが要るんでしょうか。これはどういうニーズ、要請があって取り入れられたのか、そこを教えてください。大臣、お願いします。

長勢国務大臣 詳しくはまた局長から答弁させますが、先ほど申しましたように、例えば民事上の信託という観点からいきますと、障害者のお子さんを持っている方が、自分の財産をその方に受益させたいというときに、ほかの方にわざわざ信託をするよりもみずから管理する方が安心である、またコストもかからないというようなことから、また、金融債権についても、資金確保のためにみずからやるということがコストの面でも安心の面でもやりやすいという観点から、こういう主張が行われてきたというふうに伺っております。

 ちょっと詳細は局長から答弁させます。

高山委員 まず、今の大臣のその理由で補足があれば、まず局長の方から、その背景、自己信託というものが導入されたその社会的ニーズ。

寺田政府参考人 これは先ほど来申し上げておりますように、今は非常に大きな信託銀行その他の会社が受託者になって実際には信託というのが動いているわけでございますけれども、今後は必ずしもそういう形でだけ信託が動くとは限らないわけであります。大臣の申し上げたとおりであります。

 とりわけ、例えば非常にお金がない方が、しかし、自分の財産とは別に、特定の目的、子供の教育、子供が例えば身体が余り自由でない方について将来の面倒を見られるようにというときに、その財産を隔離するということは、これは当然のことながら考えられるわけでありまして、現に福祉関係の関係者の方からは、わざわざほかの会社に普通の信託といった形で頼まないで、自分が受託者になって当面はやっていけるような形というのを希望されているという現実があるわけであります。

 また、ビジネスの面でも、これも大臣の方から概略申し上げましたが、労働者を雇用形態を全く変えることなく、特定のプロジェクトに係る事業部門について資産を自己信託して、そこで前と同じ形態で働いてもらう。しかし、経理上は全く区分されているから、その部分だけあるいは証券化し、受益権の形で資金調達をするような、そういう形態。

 また、債権者がかわるということについて債務者は非常に嫌われるという現実がございますので、債権を流動化させるために、自己信託の形で債権者が債権を切り離されて、それを受益権の形で販売されるというようなこともあるわけでありまして、ニーズは確実にあるわけでございます。

 先ほど来申し上げましたとおり、この形態も信託の本質に反することはないという学界からの理論的なバックアップもございまして、私どもも今回、いろいろな意見がございましたけれども、一定の歯どめをかけてこれを導入するのがこの時点では適当ではないかということで踏み切ったわけでございます。

高山委員 この自己信託に関しては、よく、脱税的に使われるんじゃないかとか会計上不明朗だとか、いろいろそういう御指摘があるわけですよね。そうすると、必ず、先ほど大臣も答弁されましたように、障害者の福祉にも役立つ、そういういい面もあるわけですけれども、これは何か条文上、障害者のとかという、そんな書き分けがあるんですか、それともないんでしょうか。意外と美名のもとに、実際使われてみると、脱税であるとか、そういうことにばかり使われているということが物すごくいっぱいあるわけですから、ちょっとまず、条文上どういう書き分けになっているのか、教えてください。

寺田政府参考人 条文上は、信託の設定の仕方として三つある。

 第一は、契約によるやり方。つまり、委託者と受託者が契約をして信託が設定され、受益者が決まっていく。第二は、遺言によって信託が設定される。この場合は、亡くなる方があらかじめ遺言で決められるわけですから、単独で決めるわけでございます。三番目が、この自己信託、信託宣言と言われるやり方でございまして、御自分で公正証書の整ったのを日付のある書面で宣言されて、それで信託の設定をされるわけでございます。

 その場合、この三つに共通してでございますが、目的に特にこの信託法上は制約は全くありません。ですから、福祉に用いるということはニーズから見て想定されるわけでありますけれども、福祉に限られることはない、先ほど申しましたようにビジネスに利用されることももちろんあるということでございます。

高山委員 そうすると、条文上は別に福祉目的とか障害者がということは書いていないわけですね。

 それで、現実、では、今そういう方たちはどうされているんですかということで、例えば遺言の信託であるとかほかの方法が今実際とられているわけですよね、信託宣言がない現在であっても。

 なぜわざわざそんなものをつくる必要があるのか。今十分できるんじゃないですか。成年後見制度というのがまた最近できたと思うんですけれども、その成年後見制度の活用により、十分、自分のお子さんの財産であるとか、何か障害を持たれている方の財産をコントロールすることはできると思うんですけれども、成年後見制度もあるし遺言信託もあるし、こういった中、自己信託が、まず、この福祉分野の話ですけれども、なぜ要るのか、ちょっとそれをまた答弁してください。

寺田政府参考人 これは、お金がある方は、おっしゃったように、今も現に信託銀行に自分の老後を支えるために信託を設定して、将来のファイナンスの計画をお立てになるということがあるわけであります。

 これに対しましてお金がない方はどうされるかといいますと、一つは、いよいよ成年後見になるまで待つということはあり得るわけでありますけれども、しかし、その際に、今お金があるのを、将来どういうふうにお金を使うかということをあらかじめ決めておくことはなかなかできないわけでありまして、今自分の手元に持っていれば、それはなくなってしまうかもわからない。あるいは、事業の失敗で、老後のために置いておいたお金まで債権者に持っていかれるかもしれないという状況にあることは否定できないところでございます。

 したがいまして、そういう方にとりましては、この自己信託のような簡便な形で財産を一定の範囲でキープして、ある目的、この場合には自分の老後のためということになるわけでありますけれども、あるいは障害をお持ちの方のお子さんのためということもあるわけでありますが、そういったことに使う。それは、繰り返しになりますけれども、お金があれば今は何とでもやりようがあるかもしれませんが、お金のない方にとってはなかなか道は狭いということになっているのではないかと私どもは伺っているところであります。

高山委員 そうでしょうかね。お金のない人というのは、こういう民法関係だけのことじゃなくて、ある意味、随分社会福祉が充実していますよね。そんな中、自分が事業をやって倒産したときに老後のお金をとっておきたいというのは、それは私も思いますし、ほとんどの人が思うと思うんですよね。

 そうすると、実際にこれが使われるのは、今、障害者の方とかお金のない方とかいろいろ言っていますけれども、これは、お金がある人で、自分の娘にお金を残したいから自己信託をするとか、それこそ事業が失敗するかもしれない、けれども、リスクをとりたい、やってみたい、でも、老後のお金がちょっと心配だから自己信託しておく。これが福祉目的なのかどうかというのは、ちょっと私はなかなかうなずけない部分があるんですけれども、実際ちょっと大臣、何かこう想像してみると、本当に障害なり、何か福祉を受けるべき立場の人で自己信託しなきゃいけない人というのは、なかなか事例として想定しにくいんですよ。結構お金持ちがイメージされてしまうんですけれども、大臣、そこで何か想定できますか。

長勢国務大臣 例えばマンションを貸し付けている方が、これを自己信託して、その分は将来とも確実に障害者の子なりなんなりに与えるようにしたいというようなことがまず一つのイメージでございますが、今先生の御疑問の点に答えているかどうかわかりませんが。(高山委員「補足があれば」と呼ぶ)

寺田政府参考人 ちょっと私の言い方が平た過ぎまして、ややミスリードだったと思いますけれども、お金がないというのも、例えば、社会福祉に頼らざるを得ないような方はここでは想定されないわけであります。今はある程度の財産をお持ちの方でありますけれども、しかし、非常なお金持ちとはほど遠いので専門家に頼んでその資金をどんどん運用していただくような、そういう立場じゃない方、普通の方、ある程度資産はあるけれどもそれほど大がかりな運用ができない方、そういう方が主として福祉の場面では想定されるわけであります。

高山委員 ちょっと繰り返しになりますけれども、それは別に遺言信託と後見制度があるわけですよね。それで何か穴があるわけですか。それで救われていない人がいる、そういうことですか。

寺田政府参考人 繰り返しになりますけれども、私どもがいろいろな方から実情を伺ってこういう信託についてのニーズを調査した際には、とりわけ障害児をお持ちの方で、ある程度資産は、多くはないけれどもお持ちの方が、その障害の方を、ぎりぎりやっていけるだけの資産を信託して、ずっと、自分が生きていても倒産のリスクから免れさせたい、そういうことにぜひ使いたいんだ、こうおっしゃっておられたわけであります。

高山委員 いや、だって、いいですか。条文上は障害ということで書き分けていないわけですよね。その中で、今伺っていますと、ある程度の資産をお持ちの方がとか言っているけれども、では、かなり大きい資産をお持ちの方はこの自己信託の制度を利用できないんですか。それと、その資産の多寡によって何か制限でもあるんでしょうか。ちょっとそれをまた確認で教えてください。

寺田政府参考人 先ほど来申し上げましたように、委員の方から、この制度がないとやっていけない人というのはどういう方だ、こういうお尋ねでございますのでそういうお答えを申し上げましたけれども、もちろん、この制度は、財産の額に利用者として何の制約があるわけじゃありませんし、目的もありませんので、非常に多額のお金持ちの方は自己信託を利用することだってできないわけではありません。しかし、そういう方はまさに専門家をお使いになって、信託銀行なりなんなりで運用されるわけでありましょうから、そういう方はこの自己信託がなければやっていけないというわけではありません。

 私どもがぜひ自己信託をつくってほしいという中で、個人のニーズがある、その個人がどういう方だとお聞きになると、先ほど申し上げたような方が想定されるということを申し上げているわけであります。

高山委員 だって、今ある制度の中でも、障害をお持ちの親御さんで、自分が土地建物とか小さいアパートを例えば持っているんだったら、それを信託すればいいじゃないですか。どうしてそれじゃだめなんですか。

寺田政府参考人 再三繰り返しになって恐縮でございますけれども、個人のニーズというものにおいて、それなら信託銀行を使えばいいじゃないかとおっしゃれば、そういう方はもちろんおられます。現在も、信託銀行でなくても、ある程度公的な形でも、やろうと思えばもちろんやれるわけであります。問題は、しかし、そういう障害をお持ちの方で、コストをかけることなく財産を残してやりたい、そういう方にとって自己信託が一つの魅力のある制度だということを申し上げているわけであります。

高山委員 私がさっきから申し上げているのは、確かに障害を持っているような方も、自分の少ない財産をコストをかけずにお子さんに残したいという希望はあるでしょうけれども、もっとすごいお金を持っている人だって、コストをかけずに自分のお子さんに財産を残したいと思っているんじゃないですか。むしろそういう人が利用することになっちゃいませんか、この自己信託というのは。いかがですか。

長勢国務大臣 そういう方も利用されるかもしれません。しかし、障害者の方ばかり申し上げるのも恐縮ですが、障害のあるお子さんをお持ちの方が将来をどうするかというのは非常に切実な問題でありますので、今先生もいろいろなケースをおっしゃいましたけれども、そういういろいろな選択肢を用意しておくということも必要なことですし、十分利用されるというふうに今までの議論の中で判断をしてこの制度を設けておるというふうに理解をしていただきたいと思います。

高山委員 大臣、自己信託というのは、さっき冒頭にもちょっと言いましたけれども、要するに、会計上疑義があるんじゃないかとか、いろいろな疑念があるわけですよ。だけれども、いや福祉目的もあるのでと言うので、では要るかなというふうに思ったんですけれども、よくよく考えてみると、これは余り利用されないんじゃないですか。さっきの知的財産じゃないですけれども。今、一件か二件だとかそういうことになっちゃって、実は悪用される事例の方が多くなっちゃうんじゃないのかなという懸念がありますね。

 それで、例えば障害者の方であるとかそういうのを、別に信託法の改正によって救う必要というのはあるんでしょうか。別に、釈迦に説法で恐縮ですけれども、厚生労働の方で十分な施策ができるでしょうし、今、後見の制度もある、そして遺言信託もできる、さらにいろいろな社会福祉もある中で、わざわざ自己信託が福祉目的に非常に使われるというのがいまいち納得できない部分がありますね。

 しかも、きのうも同僚議員の方の質問にもありましたけれども、担い手でNPOとかそういうのはだめなわけですよね。一般のNPO法人ですとか、これは今のところは受託者になれないわけですね。

 そうすると、何か実際に使われるのは、そういう福祉目的ではなくて、やはりお金持ち相手の話になってしまうのかなというふうに思いますけれども、大臣、その点はいかがですか。

長勢国務大臣 逆に言うと、こういう方を逆に使えないというふうに限定をする必要もまたないのかなと思いますし、従来我が国ではこの制度がなかったわけですから、そういう御心配もおありだろうと思いますが、先進国といいますか、この制度での先進国であるアメリカではこういう制度が大変普及しておるというふうにも伺っておりますし、ここでこれは必要ないと断定することはいかがかと思っております。

高山委員 ちょっと時間がなくなってきたので、膠着状態なので、もう一個聞きますけれども、他国で、信託というのは英米法と聞いておりますけれども、英米以外の国でこういう信託、自己信託という制度というのはあるんですか。

寺田政府参考人 冒頭に申しましたように、もともと信託というのが英米系の制度でございますので、自己信託も、イギリス、アメリカ、そういう信託の母国で認められているわけでございます。

 ただ、ヨーロッパも最近非常にこの信託に関心を持っておりまして、一部の国では既に信託法があるわけでございますけれども、共通のものとして統一法をこれからつくろうということでやっておりますが、その中には自己信託というようなものも一つのアイデアとしてはあるわけでございます。ただ、実定法では英米法以外のものでは私どもは承知しておりません。

高山委員 大臣、この自己信託というのは、そもそもわかりにくいと思うんですよね。委託者と受託者が同じ人で、しかも、同じ人間なんだけれども、いやこれは僕の財産じゃないんですよというのができる。だから、これは外形的に見たらやはりわかりにくいし、本当にこれを導入していいのかなと。

 先ほどから、きのうからですけれども、要は、財産隠しに使われたり、倒産逃れに使われたり、いろいろそういう懸念があるわけですよね。そんな中で、先ほどからのことですけれども、福祉目的に随分利用可能であるということもあるので、これはバランスとってしようがないんじゃないのかなというふうに思っておりましたけれども、先ほどから伺っていますと、現行ある制度で十分対応できて、別に新たにこれを何かつくる積極的な理由がどうも感ぜられないんです、その福祉目的の方に関して。

 これは、本当は福祉目的といいながら、やはり経済界からの要望という方が立法事実としては大きいのでしょうか。大臣に伺いたいんですけれども。

長勢国務大臣 経済界からも要望があったことも事実でありますし、両方の観点からこの制度を設けたところであります。

 それから、おっしゃるように悪用されないようにということは非常に大事なことですので、それについても今回の法案で十分整理をしておると思っておりますので、今言われたように、これは必要ないということにはならないのではないでしょうか。

高山委員 とにかく、福祉目的というのは法案を通そうとする方便のような感じを私は非常に受けますけれども、それはちょっとまた午後に譲るとして、まず、午前中にせっかく金融庁の金融副大臣もお越しですので、経済界からもどういう要望があったのかということも伺いたいんです。

 この自己信託の制度、経済界からはどういう要望があったんでしょうか、まず伺いたい。もう一回、再度になりますけれども。

寺田政府参考人 具体的なニーズといいますのは、先ほども申し上げましたとおり、ある一定の事業、プロジェクト的な事業において労働者をわざわざ移転させることなく、つまり、会社法上の事業譲渡などで別の会社にこれを切り離すということなしに、働く形態は全く同じままで、ノウハウ等の流出もなく事業をやろうということになりますと、この自己信託というのが一つの手段としては非常にやりやすいのではないかというお話がございます。

 それからまた、債権の流動化に関連いたしまして、多くの債務者の方は債権者がおかわりになると非常に戸惑われるということから、債権者をかえることなく債権を集めて、それを受益権の形で投資にお持ちになる、それで全体として債権の流動化が図られる、こういうときに利用できるのではないかという具体例もございます。

 そういう形で、経済界の御要望が当然背景にはなっておりますけれども、規制改革の方でもこの自己信託を一つの検討課題ということで挙げられたわけでございます。

高山委員 まず、前半の方の従業員の転籍というか、そういうのをしないである事業部ごと移転できるとか、あるいは新しい事業をできるというようなことが今言われましたけれども、そうしますと、これは会社法なんかで重大な営業譲渡をするときに、いろいろ規制がかかったりとか、そういうのを潜脱することにはなりませんかね、こういうことをまずするということが。

 それは、経済界からは要望があるでしょうよ。だけれども、これはそういう会社法上のいろいろな数々の面倒くさい規制、あるいはそういうものを潜脱するために産業界からのニーズがあった、そういう受け取り方を今したんですけれども、そういうことにはなりませんか。

寺田政府参考人 これは、事業譲渡に相当する行為を行うということになりますと、会社法の制約を当然受けるわけであります。ここでも自己信託の形で同様のことを行おうということになりますと、やはり会社法上の特別決議というものを必要とするわけでございます。

高山委員 あと、例えば何とかグループという大きい会社の中で新規事業をやるときに、そこの転籍をしないで自己信託をするというようなことだと思うんですけれども、そうすると、第三者から見たら大グループの、しかも正社員がやっている事業だからということで、取引や何やら始まったら、いや、実はこれは自己信託なんですよ、ここはまた別会計ですということで、取引的に物すごく混乱を生ずると思うんですけれども、その点は何か対策を練っていますか。

寺田政府参考人 これは、先ほども透明性ということで御議論があったわけでございますけれども、まず第一に、基本的に公正証書等のはっきりした形で信託の設定が行われなければならないわけであります。それからまた、会計上もまったく独立の形で会計書類、貸借対照表等をつくらなきゃならないわけでございますので、利害関係者からそれが請求されれば、そういう自己信託の貸借対照表という形でこれを提示し、あるいは閲覧させるということになるわけであります。

高山委員 それでは、ちょっと時間がなくなってきたので、こういう今の事業分割というか、こういうことにも使えるということで産業界からはメリットがあると思うんですけれども、今あるいろいろな種類株の発行の仕方ですとか、そういうことで金融的に今随分技術が進んできていますので、十分これは対応可能なんじゃないのか、わざわざこんな法的にわかりにくい自己信託を入れる必要ないんじゃないのかなというふうに私ちょっと思ったんです。

 それで、トラッキングストックという制度があるそうなんですけれども、これは金融担当の大臣に伺いたいと思うんですけれども、今、例えばこういう制度を使うことでこの自己信託と同じ効果が得られるんじゃないか。これはきのう聞いてあるので行っていると思うんですけれども、行っていませんか、これはきのう聞くよと言っておいたんだけれども。

渡辺(喜)副大臣 後ほど詳しくお答えさせていただきますが、トラッキングストックなるものと自己信託が果たして同じものなのかどうかは、定かに承知はいたしておりません。

山崎政府参考人 トラッキングストックという御指摘の手法があることは事実でございます。

 それは、子会社の株を売るかわりにそういう受益権に化体するというような方法があることは事実でございますけれども、もちろん、それが有効な場合もありましょうし、今の事業信託という方が有効な場合もあるということで、これは手法を広げるという意味でそういうことがあってもいいのではないかというふうに考えてございます。

高山委員 だから、手法を広げるというのは、一見、産業界的に考えたらそれはどんどん手法が広がった方がいいので、当然、捜査手法も話し合っただけでどんどん処罰の対象にするとか、どんどん手法を広げる方が使い勝手がよくなるのはわかりますけれども、その反面、やはりほかの懸念もあるわけです。

 例えば今のトラッキングストック、詳しくは言いませんけれども、要するに、現行法で十分対応可能なんじゃないんですか。それを自己信託という、外形上非常に混同を生ずるような、ひょっとしたらこれは脱税目的だとかあるいは資産隠しに使われるんじゃないかというような制度をわざわざぽんとつくってやってまで、この法案をわざわざ改正して自己信託を通すほど産業界のニーズがあるとはちょっと思えないんです。現行法で十分対応可能なんじゃないんですかということを私は思っているんです。

 ちょっと大臣に伺いたいんですけれども、これは今、金融の手法が随分高度化してきているわけですよね。そんな中で、いろいろな種類株を出すだとか、とある事業部の収益に連動させてその分だけの配当をするとか、いろいろ今はかなり自由になってきていますよね。それをさらに自己信託という、一見したらわかりにくいものですね、それは公正証書とかやるんだろうけれども、そこまでつくってやるほどの社会的ニーズが本当に今あると大臣が考えているかどうかを教えてください。

長勢国務大臣 経済の状況も世界的にも国内的にもいろいろ分野も広がっておりますし、それぞれの企業における事情も非常に多岐にわたるようになりました。そういう意味で、いろいろな手法を整備しておかないと経済の活性化に支障を来すというのが一般的な議論でありますし、特にこの信託法の改正については経済界からも大変強い御要望もあるところを考えますと、私はここで、今おっしゃるような脱税だとか資産隠しということは十分な配慮をしておりますが、そういうことを踏まえて、この改正をぜひひとつ御理解いただきたいと思っております。

高山委員 では、例えば、今債権の流動化というんでしょうか証券化、これはできないんですか。これは細かいことなので政府参考人でもいいんですけれども。

寺田政府参考人 結局のところ、今ある制度とどこが違うんだ、こういうお話だろうと思いますが、債権の流動化に関して申し上げれば、先ほど申し上げましたように、債権を譲渡し、その先がさらにそれを証券化して流動化するということはあるわけでありますけれども、その手法ですと債権者がかわってしまうわけです。この自己信託の場合ですと、先ほど申しましたように、所有権法の秩序では債権者は受託者としての債権者になりますのでかわりますが、しかし、債務者にとってみればそれは全く同じ人だ、そういうニーズが、こういう債権の流動化を扱っておられる方の間にニーズがあるということは事実でございます。

 それから、先ほどのトラッキングストックでございますが、これはおっしゃるとおり、トラッキングストックというものは、種類株を利用いたしまして、会社の業績に見合った株の値段をつけられるようなそういう株を出す、投資家にとってそれは一つの魅力であるというところでございますが、自己信託と違いますのは、倒産したときに、会社はトラッキングストックを出していても全部同じようにつぶれるわけであります。しかし、これは自己信託をした方の会社と自己信託をされた財産とは債権者の強制執行を含めました権利の行使の対応が変わりますので、そこは完全に隔離されてしまう。一方が倒産しても他方に影響を与えないというようになるわけであります。そこがトラッキングストックと大きく違うわけでありまして、それがまた論理的に言えば価格にも反映するはずでございます。

高山委員 もう時間が来ましたので午前の質問はあれですけれども、信託法というか信託というのは、やはりそもそも長期的な安心できる運用ということで英米法からもともとあった制度で、どうも何か最近、金融でどんどんどんどん自由にいろいろな手法をしたいということに走り過ぎているような感をちょっと私は受けました。今のトラッキングストックがどうのこうのと違いを今聞きましたけれども、それも、倒産したときに保全しておきたいということですよね。だから、やはりそれはどのお金持ちだって、自分が倒産したときにそのリスクをここまで抑えたいとか有限責任でいきたいというのは当たり前の話なので、そういうことをどんどん助長して本当にいいのかどうかという疑念が消えませんけれども、午前の質問を終わります。

七条委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時三分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時二十二分開議

七条委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。高山智司君。

高山委員 午前中に引き続き質疑を始めたいと思いますけれども、定足数も何となく足りているようですし、とにかく今質疑を始めたいと思います。

 まず、午前中に引き続きお越しいただいた渡辺副大臣に伺いたいんですけれども、今回、安倍政権で再チャレンジということで、政府の再チャレンジ政策について教えてください。

渡辺(喜)副大臣 小泉内閣の時代でございますが、五月にまとめたものがございます。これは多岐にわたりますので一々御説明は申し上げませんけれども。さらに、今、山本大臣が担当いたしまして、内閣官房の方にそういう担当のセクションをつくりまして、各省からえりすぐりの人たちを集めて、バージョンアップを図っているところでございます。

高山委員 各省からのえりすぐりの、勝ち組中の勝ち組の方が、一応、再チャレンジということでいろいろつくられているということです。

 まず、勝ち組だ負け組だというのは嫌な言葉ですけれども、ちょっと格差について伺いたいんです。渡辺副大臣は、この格差についてどういうふうにお考えになっておられるか、伺いたいと思います。

渡辺(喜)副大臣 格差というのは、世の中にてんこ盛りであると思うんですね。所得格差もあれば、資産格差も教育格差も、デジタルデバイドなんというのも最近はございまして、格差というものは、自由というものを重視すれば当然広がってくるものでございます。一方、平等を重視すれば格差は縮小をしてまいりますが、しかし、世の中の活力が失われるということではないでしょうか。したがって、自由をとるか平等をとるかという非常に哲学的な問題がこの格差問題の背景には隠れているものと思います。

 したがって、要は程度問題だと私は思っておりますが、そのバランスをとる、国民の常識に照らして、ちょっとこの格差はひど過ぎるではないかというものは是正をしていくべきでありましょうし、程度問題でございますから、将来、この程度の格差だったらしようがないか、そういう問題もあろうかと思います。

 いずれにいたしましても、勝ち組、負け組、格差固定化ということだけは避けなければいけないと考えております。

高山委員 私も、格差の固定化というのがやはり一番問題だなと思っております。また、今大臣から答弁がありましたように、自由と平等のバランスである、それで、その自由というのが活力を生んでいるという側面も当然あると思います。私も、競争の結果による格差に関しては、これは当然のことであると思っております。ただ、今の日本をちょっと見てみますと、みんなが横一線にスタートを切って競争しているとは思えない側面もあるなと。だから、私は、この生まれながらの格差というのをすごく問題視しているんです。

 大臣、まず、大臣の個人的なお考えで結構ですけれども、やはり日本にも、生まれながらの格差、要するに、生まれた家がお金持ちだとか都市部に生まれただとか、いろいろな事情で本当に横一線に平等なスタートは切れていないという現実があるんじゃないかと思うんですけれども、その点はいかがですか。

渡辺(喜)副大臣 それは、人間生まれながらに平等であるという理念がございましても、例えば一人一人体重も違いますし、性別も違いますし、顔かたちも違いますし、不幸にしてハンディキャップを持って生まれてくる子供もいるわけでございます。したがって、こうしたものを格差と称するのであれば、人間社会には宿命的なものかもしれません。

 しかし、先ほども申し上げましたように、その格差がずっと一生ついて回ってしまうんだというのでは、余りにも悲惨な社会になってしまうかと存じます。したがって、チャレンジをすることにより、また、失敗をしても再びチャレンジができる、そういう可能性を広げておくことが大事ではなかろうかと思います。

 子供の機会の平等ということについて、先生は大変御関心があるとお聞きをいたしております。勝ち組、負け組を固定させない社会の仕組みをつくるために、子供たちにとって多様な機会が与えられるということが大事であろうかと思います。まず、親、保護者の経済環境が就学、就労に影響を及ぼさないことがまず第一であろうかと思います。先ほど申し上げました、五月にまとめました「再チャレンジ可能な仕組みの構築(中間取りまとめ)」でございますが、この中にも何点か書いてございます。

 第一には、家庭の経済力にかかわらず、学ぶ意欲がある子供たちに、放課後や週末に地域の中で安全、安心に学習できる機会を提供すること。第二番目は、福祉事務所、ハローワークなどが一体となった就労支援、生活保護世帯、母子家庭の自立に向けた支援でございます。第三には、児童養護施設等の子供の就学、就労支援として、進学や就職の際の支度費の充実、あるいは就職や住居を借りる際に不利にならない仕組みの構築などを講ずることといたしております。

 こういった取り組みを通じて子供の機会の平等の確保に努めておるところでございますが、先ほども申し上げましたように、バージョンアップを今検討しているところでございますので、御提案がありましたらお教えをいただきたいと存じます。

高山委員 ちょっと根本的なところなんですけれども、今大臣がお話しになりましたように、太っているだとか生まれによってみたいな話がありましたけれども、そういったところはさすがにその国の法律の力ですとか施策で是正できるものではないと思いますけれども、生まれながらに、お金持ちの家に生まれた、あるいは貧しい家に生まれた、こういうことが今現実に起きているわけですよね。

 これに関して、お金持ちの家の子はまたいい教育を受けてお金持ちになる可能性が高く、貧しい家の子は給食費も払えないようなことになって、また教育も受けられないから所得も低くなってしまうという、何かそういう循環に陥っているようなところがあると私は思いまして、今の再チャレンジ施策は確かに、事後的に是正しようというようなことで一つ評価はできると思うんですけれども、そもそもの生まれによるところですね。

 つまり、私がきょう伺いたいのは、相続なり、例えば信託なんかを利用したこともそうかもしれませんけれども、自分の息子のために親がお金を残したいから、これを別財産にしておくということで、まあそうだなと思う側面もありますけれども、それは親の財産であって、決して子供の財産ではないわけですよね。

 そういう意味で、例えばこの信託もそうかもしれませんし、この相続というのを、お父さんの財産だから子供にそのままということを余り認めていては、いつまでたっても生まれながらの格差というのは広がる一方なんじゃないかなという懸念を私は持っているんですけれども、この点に関しての是正をするようなお考えがあるかどうか、これをまず大臣に伺います。

渡辺(喜)副大臣 これは尾身大臣のテリトリーの話でございますが、御指名でございますので答弁をさせていただきます。

 日本では、相続税をお支払いになる方は、大体、お亡くなりになる方の五人弱でございます。したがって、九十数%の方は相続税の対象になっていない、そういう国なんですね。相続税収は、昔、土地が高かったころは相当あったようでございますが、今は一兆円そこそこだと記憶いたしております。

 一方、フローの所得というものも税金が当然かかってくるわけでありますが、昔、松下幸之助さんの時代には、八十数%の税率でこのフローの所得、フローというのは、ストックでフローの方ですね、税金がかけられていたわけであります。当時の相続税は、たしか非常に重くて、三代相続が続くと、もうほとんど財産は没収されるというような話があったことを記憶いたしております。

 したがって、どういう社会がいいのか。相続税というものが一切ない国もございます。そういう国では、所得に対して割と厳しい累進課税などをかけている国もあるようでございますが、要は、これも程度問題だと思うんですね。とにかく、人間いつかは死ぬわけでございます。そうすると、一生懸命働いて、残した富はもう全部財団にしちゃう、公益法人にしちゃうという方もいらっしゃるでしょうし、何がしかは子孫に残したいという人たちもいるでしょう。したがって、自由をとるか平等をとるかということと同時に、こういった人間社会の根本的な仕組みの一つに相続というのはあると思います。

 いずれにしましても、最終的な決着はどこでつけるか。選挙で決めるしかないのかなと思っております。

高山委員 ありがとうございます。やはり政策通の渡辺先生ですので、内容のある議論ができると思うんです。

 今お話がありましたように、昔は相続税がきつくて、三代たったらもう家がなくなっちゃうというようなこともあり、みんなとにかく頑張って働く方がいいじゃないかという感じになっていたと思うんですよね。それが今度、例えば所得税だったりあるいは法人税、これはある意味、頑張った人のもうけた分からとるという税金ですよね。だから、そういうのが中心の方がよっぽど活力をそぐのであって、相続税というのは、ある意味、全然自分が働かないでも親の財産がぽっと入ってくるということで、先ほどの再チャレンジでもそうですけれども、活力ある社会という意味では、むしろ相続税をきちんと取って、今頑張っている、所得税だとか法人税、こちらを減税する方がより再チャレンジに資するんじゃないのかなと思います。

 ちょっと繰り返しになりますけれども、だから短目でいいんですけれども、その点に関して、大臣、いかがでしょうか。

渡辺(喜)副大臣 いずれにしても、議論は恐らくいずれ、時期は申し上げられませんけれども、税制の抜本的な改革をする中でこうした問題は研究されていくものと思います。

 議員御指摘の、要するに、フローで絞るかストックで網にかけるか、こういう議論も税制の根本的な問題の一つとして検討していくことになろうかと存じます。

高山委員 とにかく、自分の子供に財産を残したいというのであれば、それこそ信託の制度を利用するですとか、贈与という制度もありますので、それほど相続にこだわる必要はないんじゃないのかなというのが私の私見でございます。

 それでまた、この信託の話ですけれども、先ほど自己信託について、いろいろ立法事実について伺いました。ちょっとなかなか納得できないなという面がありますけれども、きょうお願いしていた質問がまだほかにもありますので、そちらに移ります。

 まず、目的信託というものですけれども、これはどういう制度ですか。これは大臣でお願いします。細かいことであれば政府でもいいですけれども。

寺田政府参考人 午前中から申し上げておりますとおり、信託は、原理的には受託者というものを中心にいたしまして、それが、受益者のためにある目的で拘束された財産を管理運営している、こういうことになるわけでございますけれども、この信託は、これも英米法ではある制度でございますけれども、具体的な受益者というものを予定せずに、もう少し抽象的な目的のために信託を設定する。例えば、自然科学の隆盛でありますとか自然の保護でありますとか、あるいは町内の交流でありますとか、そういうやや抽象的な目的のために信託を設定する。受託者は、その目的のためにその信託を運営して必要な給付を行う、こういうものでございます。

高山委員 目的信託は、どういう要請があって今回入ったものなんでしょうか。その背景を教えてください。

寺田政府参考人 この目的信託についても、実はいろいろなお立場がございます。

 基本的には、やはり先ほど申し上げましたものの延長になるわけでございますけれども、今ですと、財団をおつくりになって、それで、そういう資金をその財団から拠出して、ある種の目的のためにいろいろと活動をなさるということでありますけれども、財団といいますと法人をつくらなきゃならないということになるわけであります。そういう手間を省略いたしまして、この信託を利用して、そういう公益を含めた抽象的な目的のために財産の管理運営ができないか、こういう発想でございます。

 もともと現行法では、公益信託というのがこういうもののために認められております。ただ、これは、今の公益法人制度と同様に、営利、公益という全くの二分法でつくられておりますので、公益でもない、営利でもないというような目的のためには、全く信託を設定する余地が現行法ではないわけであります。しかし、そういう形でのニーズというものに今後対応していく必要がこれまたあるのではないか。幅広い信託の利用ということの一環といたしまして、この目的信託を利用するということが考えられるわけであります。

高山委員 今度、ちょっと大臣に聞きたいんですけれども、今の局長答弁にありました、公益でもなくて営利でもない信託、これはどういうものですか。

長勢国務大臣 公益信託というものはどういうものかということについては、今局長から答弁があったと思います。その部分は別途法律を整備することにいたしておりますので、それ以外の目的を持っておるもの、つまり受益者を特定しないものを目的信託と称すると思います。

 具体的な内容については、いろいろなケースが考えられるわけでございますが、先ほど来話題になっております、老人の介護、子育ての支援、地域の警備など地域社会における非営利事業であるとか、特定の企業の発展に功績のある人に対する奨励金の支給といった目的で信託を設定したい、こういうニーズがあった、要望が寄せられたというようなことでありましたので、具体的にはこういうようなことが考えられるんであろうと思います。

高山委員 その美名のもとにまた怪しいものがつくられているんじゃないのかなという疑念がまたふつふつとわいてきたんですけれども、公益目的じゃなくて、でも営利でもないものですよね。それで受益者が特定されていないとなると、本当はこの人にお金を行かせたいんだというようなことがあるんだけれども、そういう広く地域のためだとか老人介護だとかということをいろいろ言って、現実にもらえる人が物すごい特定されているということも十分考えられると思うんですね。

 ですから、もうちょっと具体的に、本当にどういう場面で今困っているのかというのを教えていただきたいんですけれども、これは細かい話なので政府参考人の方からでいいんですけれども、本当にそういう事例があるんですかね。

長勢国務大臣 詳細は局長から補足させますけれども、例えば、保育所の整備にこの財産を使ってもらいたいといったような場合に、公共団体なり保育所の事業者を通じて寄附をするというのか、利益を分配するという活動というようなものは考えられるのではないかなと思います。

高山委員 今、補足もないようなので伺いますけれども、例えば、今大臣もいみじくも言いましたけれども、今ちょっとうっかりというのか、寄附というような言葉もちょろっと出ましたけれども、日本は別に寄附もできるわけですよね。どうしてこういう目的信託という新たな制度をつくる必要があるのか、ちょっともう少しそこを御説明してください。

長勢国務大臣 午前中も、いろいろな面で、もうそれ以上手段をふやさなくてもいいんじゃないかという御指摘がございましたが、寄附ということになれば、税制上の問題なりいろいろな事情もある場合もあると思いますので、それをこういう形でふやすことは意味があるし、また、そういうところにぜひ広く金を使いたいというニーズにこたえることは有益なことだと思います。

高山委員 いや、やはりこの信託という制度は、午前中の最後にも言いましたけれども、そもそも長期的な、安定的な、どちらかというとそういう需要に向いていて、余りテクニカルなところで信託そのものを動かすのはどうかなとちょっと私思う面もあるんですけれども、目的信託が本当に必要なのかどうかというのがいまだによくわからないので、また政府参考人の方からも御答弁いただきたいんです。

 結局、今寄附の制度もあるし、それこそ財団もつくれるわけですよね。それなのに、あえてこういうものが要るというのは、財団というのは結構つくるのが大変で、いろいろ、目的は何だろうか、構成員がどう、寄附行為がどうあった、ちゃんと全部チェックしていくわけですね。何かこういうことを潜脱する意図でもあるんですか、今回のこの目的信託というのは。

長勢国務大臣 そういう目的はございません。まさに私が先ほど来答弁しているとおりであります。

寺田政府参考人 これは潜脱と申しますか、そうでないと申しますか、なかなか難しい問題がございます。というのは、世の中のニーズというのは、やはりできるだけ簡便にやりたいということがあることは、これはもう否定しがたいところです。

 それで、ここでまた表現が難しいんですけれども、非常に大がかりに、しっかりした弁護士さんも立てて、ちゃんとした手続をとれるという方であれば、それはおっしゃるとおり財団でもよろしいですし、また、自分で管理運営能力がある方ならば、それは自分でまさに寄附を毎年考えておやりになるようなこともあり得るわけであります。

 ただ、何度も申し上げますけれども、信託というのは、ある種の人に対する信認というのがあって、この人ならば任せておけるという人を選んで、その人に管理運営してもらうというところにポイントがありますので、それを法人とするか、それともこのように信託とするかというのは、その簡便さにおけるチョイスがあるわけでありますけれども、そういったニーズは、今後、公益法人制度というのも、もう少し幅広く、中間法人ができ、あるいは一般社団法人というような形に徐々になっていくわけでありますけれども、この信託制度も、そのように営利というものを目的としない、そういう対象を選んだ信託というのが出てくるということは、当然に我々としては予想しておかなきゃならないことだろうと思っております。

高山委員 いや、信託は、信託したら委託者は関係からぱっと離れていっちゃうわけですよね、受託者と受益者だけが残っていく関係で。それで、受益者も特定しないですとか、あるいは、これは目的信託とはちょっと離れますけれども、さっきの証券化してどんどん売れるとなってくると、何か信託本来から随分離れているような気がするんですね。

 それで、財団をつくったりするときに、いろいろ手続が厳格になっているそもそもの趣旨というのも考える必要があると思うんですけれども、財団法人をつくったりするときに、今手続が随分厳格ですよね。なぜ法人をつくるときに、普通の会社をつくるより手続が面倒くさく厳格になっているんですか、その理由を教えてください。

寺田政府参考人 現在の法制ですと、公益目的ということがまず立つわけでありまして、公益目的のために法人をつくるということになるわけです。そうすると、果たして公益を満たすものかどうかという審査は当然慎重にならざるを得ないわけであります。

 二つ目に、法人でありますから、その権利義務の主体として、独立の人の扱いをされるわけであります。当然のことながら、いろいろな社会活動においてもその法人の名をもってするということになりますし、法人の中の組織というのもそれなりのものでなければならない、財産もそれなりのものでなければならないということは、これは法人制度に必然的な要請があるわけでありまして、そういったことのチェックのために、手続というのは当然ある程度のスケールのものは予定されている、これが今の仕組みであります。

高山委員 それでは、その公益目的の決め方といいますか、公益目的かというこの判断はだれがしているんですか。

    〔委員長退席、上川委員長代理着席〕

寺田政府参考人 今度新しく法律ができたわけでありますけれども、その法律ができる前の、いわば現在もまだ施行されている法律によりますと、それは主務官庁が判断するということでありまして、中央官庁の場合もございますが、都道府県の場合もございます。

 ちなみに、信託においても、公益信託というのは、同様に主務官庁というのがございます。

高山委員 そうしますと、地域に幼稚園をつくるために、寄附なり信託なり、あるいは公益法人をつくる。地域のために幼稚園をつくろう、これは公益目的にはなりませんか。

寺田政府参考人 これはなかなか難しいところでございまして、本来、それが公益かどうかということは、実はいろいろ争いもあって、それがまた公益法人改革の一つの機縁になったわけでありますけれども、これまでの扱いですと、地域の幼稚園の運営というのは一つの公益だったという例もあるようにも思います。

 ただ、今後、この公益法人制度が整理された以後は、もう少し厳格になるというように私どもも聞かされております。

高山委員 そうしますと、今のでは何となく入る感じもするし、実際に入っているんだけれども、もう少し厳格にすると外れてしまう、これは外れる理由は何ですか。

寺田政府参考人 これはちょっと私の権限を超えるかもしれませんけれども、一般的に言いますと、今後の公益というものは相当、事業というものの性格が比較的薄いということが要求されていって、それが税務において特別な、優遇的な地位が与えられていることの根拠だ、こういう発想に出ているからではないかと思います。

高山委員 だから、私も、公益ですとかそういう美名のもとにばかり言うとちょっと紋切り型ですけれども、そういうことで事業を行っている場合が結構あるわけですよね。これはちょっと外していった方がいいんじゃないの、本当に公益目的のところだけ残しましょうということで公益法人改革というのがなされたと思うんですけれども、そうすると、では今度は大臣に伺いたいんですけれども、そういう多少事業性があったりなんなりしても、目的信託というんでしょうか、こういうことで何か優遇したり、別財産として、自分の財産とは違うよ、こういうふうにする必要性が今あるんでしょうか。

長勢国務大臣 それがなければどうしようもないかどうかという御質問ではないと思いますが、こういう信託という形でそういう目的を達成することについてのニーズはあるということで、我々、このような提案を申し上げておるわけであります。

高山委員 そうでしょうかね。やはり公益目的ですとか慈善事業だと言うと税制上もすごい有利な扱いを受けるし、あと、公益というか、そういう広く慈善事業のための財産ですから、倒産しても別財産にしておいてくださいと言いながら、実際にはそれはやはり単なる事業の財産だというようなものが多いんじゃないんですか。だから、この目的信託というのは、その公益法人改革の趣旨からするとちょっと逆行しているような印象を持つんですけれども、その点、大臣、いかがですか。

長勢国務大臣 ちょっと議論の中身について少し戸惑いを覚えながら答弁しておるのでございますが、公益法人改革は、公益というものを相当限定的にきちんとしようということだろうと思っております。もちろん、それをきちんとすることは大事なことでしたからそうしたわけですが、しかし、きちんとすればするほど、公益には資するというものでいろいろな形がありますから、やはりそれに資したい、あるいはそれに使いたいということを、いろいろなやり方を考えておいた方がいいということがいろいろなところから言われておるということだろうと思うんです。

 これによって一もうけしようとかという話と一緒に議論されるのはどういうことなのか、ちょっと私には、先ほど来言いましたように、若干そういう議論になじむかなという思いがしておりますが。

高山委員 いや、これそのものがすごいもうかるということではなくて、どうも、美名のもとに言われてはいるけれども、実際には、これは法文上は特に書き分けもないみたいだし、そういう使い方がまた可能になってくるんじゃないのかなという危惧を非常に持っていて、かつ、それがなかなか今までの答弁だと払拭されないなという思いを私は持っているんですけれども。

 もう一つ、先ほどちょっと通告した質問で、別の質問にさせていただきたいと思うんですけれども、けさの新聞なんかにも、高校の例の単位の未履修の問題があったと思います。これは、内申書も偽造なんかしてやっているという県もあったんですけれども、この点に関して、大臣、こういうのは何か犯罪になるんじゃないかと思うんですけれども、その点、いかがでしょうか。

長勢国務大臣 ちょっと中身が正確にわかりませんので明確なお答えはできませんが、いずれにしても、犯罪を構成するかどうかまでは、私、今はっきり申し上げられませんが、あってはならないことだとは思います。

高山委員 いえ、大臣、内申書の、例えば受けてもいない授業もみんな受けているみたいに書いて相手の大学に出すというのは、これは詐欺だとかなんとか、あるいは偽造につながらないんですか。ちょっとそこを確認したいんですけれども。

長勢国務大臣 ちょっと具体的な話になりますので、専門の担当局長から答弁させます。

小津政府参考人 ただいま大臣もお答え申し上げましたように、個別の事案でどういう犯罪が成立するかということになりますと、これはあくまでも収集された証拠に基づきまして判断されるべき事柄でございますので、これをお答えするということはいたしかねるということは御理解いただきたいと思います。

 御指摘が、例えば一般的に、公務員がうその書類をつくるということについて、それに関係するどういう構成要件があるかということでお答えさせていただければ、あくまで一般論でございますが、公務員が、職務に関し、行使の目的で、内容虚偽の文書を作成した場合には、刑法百五十六条の虚偽公文書作成罪ということが考えられるわけでございますし、虚偽公文書を行使したという場合には、虚偽公文書行使罪というものが考えられるということになろうかと思います。

高山委員 もう一つ、これも大臣が就任される前の話ですけれども、犯罪被害収益の問題がありましたね。スイスの銀行に五菱会の隠し口座があって、それをスイス当局が差し押さえたというお話でございました。この点に関して、たしかことしの五月、六月に法案が通ったと思うんですけれども、あのお金というのは今返ってきたんですか。

小津政府参考人 お答え申し上げます。

 いわゆる五菱会の資産に関しますスイスとの交渉でございますけれども、具体的な交渉の内容は外交交渉にかかわることでございますので差し控えさせていただきますけれども、これまでスイス連邦政府と交渉してまいったわけでございますけれども、現在、実際に資産を没収したチューリヒ州の政府を交えての交渉を行っているところでございます。

 いずれにいたしましても、成立させていただきました新しい法律は本年十二月に施行されるわけでございますので、できるだけ早期に合意を得られますよう、外務省と連携いたしまして努力しているところでございます。

高山委員 あの法律を通すときに、いろいろ趣旨説明の中でも、何か相互主義で、日本の方にそういう犯罪被害収益を分配するような法律がないものだからこの法案をつくるという、すごく現実的な差し迫った立法事実があるんだという話だったんですけれども、これはまだ全然返ってこないんですか。

    〔上川委員長代理退席、委員長着席〕

小津政府参考人 まさにその法律を成立させていただきましたので、それを踏まえて鋭意交渉しているところということでございまして、繰り返し申しますが、十二月に法律が施行されますので、できるだけ早く合意を得られるように努力しているところでございます。

高山委員 それでは、国内的に分配される被害者ですとか、そういう範囲、人数、こういったものの確定作業というのは今行っているんでしょうか。

小津政府参考人 それは、現在作業中でございます。

高山委員 あと、この犯罪被害収益のときにやたら五菱会のことが強調されたんですけれども、これは、ほかの事例で、そういうニーズといいますか、これに転用するというか、こういう事例は今あるんですか。

小津政府参考人 現時点で、どのような案件について、どのような動きがあるかということにつきましては、恐縮でございますが、外交交渉というだけではございませんで、捜査当局側のいろいろな動きの問題もございますので、本日のところ、それについて御答弁するのはちょっと差し控えさせていただきたいと思います。

高山委員 いや、今の話もそうですけれども、やはりマネーロンダリングとか、わかりにくいところにこういう信託も使われるんじゃないかなという懸念も私は持ったんですけれども、そういった点に関して、本当は今質疑の中でもいろいろと答弁をいただきたかったところですけれども、時間が来ました。

 我々としても、この法案はおおむね、いろいろなツールをふやすというのも、納得できない面もありますけれども、確かにそういう要請もあるんだろうと思いますけれども、やはり修正案を準備して、答弁だけではまた後から、法文上も何の書き分けもありませんので、美名のもとによからぬことに使われないように、何とかその辺を、確定したものをこれから考えてまいりたいと思います。これは、国会が決めることでございますけれども、大臣にもぜひ我々の考えを何とか取り入れて実施していただくようにお願い申し上げて、私の質問を終わります。

七条委員長 次に、平岡秀夫君。

平岡委員 民主党の平岡秀夫でございます。

 きょうは、信託法、そして信託法の施行に伴う関係法律の整備等に関するそれぞれ法律案を審議するということでございます。

 信託法の第一条を見てみますと、非常に簡単な言葉で始まっておりまして、「信託の要件、効力等については、他の法令に定めるもののほか、この法律の定めるところによる。」という規定しかないということです。

 よく考えてみますと、教育基本法とかそういう本当に憲法に準ずるようなものについては前文というのがあって、非常に大切な法律であるということをしっかりと書いているというのがある一方、並みの法律と言うとちょっと言葉が悪いんですけれども、普通の法律であれば、趣旨、目的規定にしっかりと、この法律が目指している目的というのは一体何なのかというようなことがざっと書いてあって、大体、それを見れば、この法律は何のためにつくり、何を目的としているのかというのがわかる。それに比べて、民法とか刑法なんかを見ると、本当にそういう趣旨、目的というのがほとんど書いていない、こういうふうになっていますね。

 それとの並びで見ますと、信託法というのは、民法とか刑法とか、いわば国の基本法になる部分、教育基本法のような法律ではないけれども、極めて重大な、重要な、ある意味では国の法律の仕組みの中の根幹をなす法律である、こういうふうな位置づけになっているんだろうと思います。

 そういう意味で、今回の信託法の改正は八十数年ぶりの改正ということでございますので、私たちとしては、しっかりと審議をしていかなければいけないというふうになっているということを感じております。

 まずそのことを申し上げまして、前回ちょっと質問させていただいて、ある意味では納得できないというか、答弁で、必ずしも十分に、準備不足もあって答えられなかったというようなところがあったので、確認の意味で質問させていただきたいというふうに思います。

 まず最初に、長勢法務大臣にお聞かせいただきたいと思いますけれども、せんだっての二十日の質問の中で、日本精神科病院協会関連の献金問題についてお伺いいたしました。その際、平成十一年については関係資料が残っていないので答弁できないけれども、平成十二年から昨年までの分についてはお答えをさせていただくということでお答えをいただきました。

 その際、私が、資料は残っていないという意味でいったら、では、十八年は、ことしはどうですかと聞いたら、そのときはちょっと手元に資料がないのでということでお答えになりましたものですから、平成十八年、ことしはどういうふうになっているのかということをまずお聞かせいただきたいというふうに思います。

長勢国務大臣 承知をしている範囲でお答えいたしますが、御指摘の日本精神科病院協会政治連盟からは、本年八月十一日に百万円の寄附をいただいております。これは、政治資金規正法に基づき、収支報告書に記載の上、報告をしたいと考えております。

平岡委員 前回もちょっと申し上げましたけれども、かつて五百万円の寄附をいただいたものを、いろいろな疑惑があるからということで半年後にお返しになった。その後、また翌年、そのまた翌年にそれぞれ二百万円、三百万円といただいて、結局、返したのか預けておったのをまた戻してもらったのかわからないような状態になっているというようなことでちょっと指摘させていただきました。

 ことし百万円ということで、この金額は我々にとってみれば本当に大きな金額だとは思いますけれども、大臣におかれましては、法務大臣ということで、今回、所管の法律の中に、先ほど私が申し上げた関係のものがあります。前もちょっと言いましたけれども、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律というのは、まさに法務省と厚生労働省の共管の法律ということでございますので、その点は、八月に献金を受けられていたということで、法務大臣じゃなかったかもしれませんけれども、十分にその辺の節度というものは考えていただきたい、こういうふうに思っておりますということをまず、この質問はこれでとりあえずおかさせていただきたいと思います。

 次に、もう一つ、これは例の入国管理の問題で、北朝鮮に対する我が国の、制裁と言うとちょっと、経済制裁と違いますので、ちょっと言葉を注意しなければいけませんけれども、我が国の対応についてという閣議決定で行われた措置、これが、国連安保理決議千七百十八号、今月の十四日に行われたものでありますけれども、これの第十三項、これを全部読み上げるのは大変ですから、関係部分だけちょっと読み上げますと、全関係国が外交努力を強化し、緊張を激化させるいかなる行動を避ける努力をしていることを歓迎し、さらなる努力を奨励するというふうに書いてある。このことと、今月の十三日に閣議決定された「北朝鮮による核実験に係る我が国の当面の対応について」という措置、これについては、これから間もなく国会承認にかけられるということになるんだろうと思いますけれども、これとの関係をどういうふうに我が国の政府では整理されているのか、この点についてお聞かせいただいたわけでありますけれども、どうもそのときの松島外務大臣政務官の御答弁というのは、何か私にとっては納得のしがたいものであった。

 それから、その後、実は我々の党の中での部門会議で、外務省さんに来ていただいて、この国会の承認というものについての判断をするに当たっての勉強会で、同じような質問を私は外務省の方にさせていただきましたけれども、そのときの説明も、どうも変だな、納得がいかないものであったというようなことなので、改めてここで、外務大臣政務官という立場であられますから、多分政府としての統一見解をしっかりと答えていただけるんだろうというふうに思いますので、私が提示させていただいた問題についての見解をしっかりと説明していただきたいというふうに思います。

松島大臣政務官 まず最初に、確認のために申し上げさせていただきたいのですけれども、国会承認、事後承認ということをおっしゃいましたが、入国管理のことについては、法律に基づく事後承認はございません。

 今国会で事後承認をいただくのは、船が入ってくる、これを全部、北朝鮮船籍のすべての船舶の入港を禁じるということ、これが特定船舶の入港の禁止に関する特別措置法に基づいて事後承認を必要とするというもの。もう一つは、輸入の禁止、北朝鮮からのすべての輸入を禁止するということ、これが外為法に基づく事後承認でございまして、入国管理に関する、委員が御指摘になりました件については事後承認案件ではございません。これを一応触れさせていただいた上で、もう一度御答弁をさせていただきます。

 委員の御指摘になられました一七一八号、国連安保理決議の一七一八号の十三パラグラフでございますが、委員もおっしゃいましたように、ここには確かに、御指摘のとおり、緊張を悪化させるおそれのあるいかなる行動も差し控えるよう奨励するという言葉がございます。しかしながら、それとあわせて、このパラグラフには、関係国に対して、外交努力を強化し、六者会合を早期に再開して、共同声明を早期に実施するのを促すといった規定も見られるところでございます。

 このように、外交努力によって北朝鮮をもう一度六者会合に、それも核保有国としてではない形できちっともう一度復帰してもらうという外交努力をしよう、そのために必要な措置というのは我々もとっているわけでございます。

 すなわち、決議というのは両方でございまして、その中で、緊張を悪化させる行為というのを委員が気にかけておられるのですが、今委員が御指摘になりました、北朝鮮籍の方が入ってくるのを原則やめてもらうということは、これは国連決議に言う緊張を悪化させる行為には当たらないと我々は考えている次第でございます。この行為とは、また別の、もう少し軍事的なこととか、その他の行為であって、入国管理法の、委員が御指摘の、北朝鮮籍の方を原則として入ってこないようにするということは、この緊張を悪化させる行為には当たらない、そのように考えております。

 政府は十月十一日に我が国の措置を発表しましたけれども、この措置は、事後承認を要する二件のものと、入国管理も含めて、この第十三パラグラフに言う緊張を悪化させる行為には当たらないと政府として考えております。

 以上であります。

平岡委員 今、大臣政務官は国連決議の部分をざっと読み上げられましたけれども、私も、前回は新聞に報道された決議というものに基づいて質問をいたしまして、若干ちょっと正確性を欠いてはいけないということで、外務省の方に、この決議の政府としての和文を仮訳でもいいから出してくれというふうに頼んだら、つくっていませんというふうに言うんですね。それで、英文をもらいまして、私も大体はわかるんですけれども、正式にこれを日本語で訳したときにはどういうふうに評価したらいいのかというのがなかなかわかりにくいので。

 それで、何か外務省として出しているものというのは、この二枚紙のものがあって、これを見せてもらったら、パラグラフ十三の話は全くどこにも触れていないんですよね。パラグラフ十三の話は全くどこにも触れていないですよ。外務省のこの二枚紙の、当時、十月十七日付で出された、外務省が対外的に説明しているペーパーですね。こんなことで、国民の皆さんに正しいことをちゃんと知らせようという姿勢が外務省には全くないのかというふうに、私は、まずその点を非常に残念に思いましたね。

 こういうことは、やはり国民の皆さんにも、決議はこうなっているんだ、我が国がとっていることというのは決議との関係ではこういうことなんだというしっかりとした説明ができるということは、やはり私は説明責任を果たしていかなきゃいけないというふうに思いますよ。

 まず、そういうことをちょっと抗議させていただいて、先ほど、入国管理は国会の承認の対象になっていないというような、それは私もわかっています。だけれども、一連のこの対応についてということで、幾つか示されたものの中に入国管理があり、船舶の入港の問題もありということの中で、こういうふうな問題を提起させていただいているわけですね。

 今の質問の答弁は、入国管理を厳しくすることは、第十三項で言っているところの、緊張を激化というふうに新聞では書いてありましたけれども、今は悪化というふうに呼ばれましたけれども、緊張を悪化させるようなものではないというふうに評価されていると言われました、入国管理の問題については。では、それ以外に書いてある問題については、これは、緊張を激化させる、悪化させるものであるというふうに評価しているということなんですか。どうですか。(松島大臣政務官「それ以外というのは」と呼ぶ)

 それ以外というのは、十月の十三日に閣議決定されたさまざまな措置です。だから、それは入港制限とか輸出輸入に関するものであるとか、それはこの緊張を悪化させるものになっているということですか。

松島大臣政務官 いいえ。今御指摘になったその点も含めて、十三日の閣議決定、入管の方は十一日から実施していますけれども、十三日の閣議決定に基づいて十四日から半年間規制をかけている船の問題も、そして輸入のストップの問題も、緊張を激化させるものではないと認識しております。

 日本が今回とったすべての政策のいずれにつきましても、緊張を激化させる、この安保理に反する、安保理で指摘している緊張を激化させるいかなる行動にも当たらないと認識しております。

平岡委員 日本が自分でこういうふうに思っていますというような話で済むなら、それはいいのかもしれませんね。今回とった措置というのが、やはり北朝鮮に対して対話と圧力という中の圧力の部分になっているわけですから、仮にこれが緊張を悪化させるようなものでないとしたら、この圧力というのは一体何なのか、全く効果のない圧力じゃないかと逆に私は聞いてみたいというふうに思いますけれども、私が聞きたい方向性はそうじゃないので、それはあえて聞きません。

 しかし、この前、いみじくも松島外務大臣政務官は、「日本のこの対応に対して、緊張を激化するような旨の態度は北朝鮮もとっていないところでございます。」というふうに答弁されたんですよね。つまり、日本がとっている措置に対して北朝鮮が圧力を感じるか何かして、では、逆に、今度は北朝鮮の方から日本との関係を悪化させるような、日本との関係の緊張を悪化させるような行為をとっていないから、だからこれは違うんですよというような答弁をされたんですけれども。

 私が言いたいのは、要は、日本が、それは緊張を激化させる、悪化させるような行為でないというふうに思っていても、相手にとってみれば、そういう対応措置を講じられている相手にとってみれば、ああ、これは何かすごいことをやられたな、こんなことをやられたんじゃおれたちも生きていけない、おれたちも何か仕返ししなきゃいけない、おれたちも何か対抗措置をとらなきゃいけない、こういう話になってきたら、それはこっちの思いとは別に、緊張を激化させる、そういうことになるんじゃないですか。

松島大臣政務官 政府が考えております緊張を悪化させる行為、緊張悪化を激化させる行為というのはどういうことかというと、北朝鮮が六者会合に戻るための、我々、すべての国の外交努力を無にする、機能不全にするような事態を起こさせることを、緊張を悪化させる行為というようにとらえております。

 なお、我が国が勝手に考えているわけではなく、この国連安保理決議というものは、我が国が関与して、深くかかわって決めた決議でございます。我が国が勝手に何かをやっている、決議と別のところで何かをやっているというものでは全くございません。当事者でございます。

平岡委員 この問題、ちょっともう時間をとってもあれですけれども、我が国が深くかかわってつくった国連決議だからこそ、この国連決議に反するような、あるいは反するというふうに評価されてしまうような行動はとるべきではないというのが私の意見です。さっきも言ったように、自分たちは、いや、そうじゃないと思っているけれども、相手にとってみればそういうふうに評価されることだってあるわけですからね、それは。

 だから、そういう意味では、私は、今回の国連決議に基づいていないこの措置については、十分に国連決議との関係をしっかりと整理しておかなければ、これから先どんなことが行われるかわからない、そういうふうになった場合には、国連決議との関係で大いに問題になってくるかもしれない、このことを指摘させていただいて、もう結構でございますので、信託法の審議に入らせていただきたいというふうに思います。

 これはある意味ではもうわかり切った話なのかもしれませんけれども、これだけの大改正でございますから、一つは、大前提として大臣にお聞きいたしたいと思います。

 先ほど、同僚の高山議員の方から、今回の改正の背景というのは一体なんですか、そういう問いがありまして、その背景を説明される中で、今回の改正の趣旨、目的もある程度言われてはいましたけれども、改めて、私が質問を開始するに当たって、大臣に、今回の改正の趣旨、目的というものをまず答弁していただきたいというふうに思います。

長勢国務大臣 現行の信託法は大正十一年に制定されたものでございますが、これまで八十年以上にわたって実質的な改正がなされないまま現在に至っております。しかし、近年に至って、信託を利用した金融商品、例えば貸付信託ですとか年金信託ですとか証券投資信託ですとかというものが広く定着をしてまいりました。さらに、新たな形態での信託の活用として、資産流動化のための信託の活用も図られるようになってきております。

 このような状況下で、現行の信託法に対しては、信託銀行や事業会社を初めとする経済界からは、資産流動化に際しての信託宣言の許容、さらなる信託スキームの活用に資する商事信託関連法制の見直し、信託受益権の有価証券化の必要などについて検討が求められてまいりました。また、信託の専門家による信託法の改正提言なども公表される状況になりました。さらに一方で、高齢化社会の進展に伴って、高齢者の財産管理を図るための制度として信託が注目されるようになりまして、今後は高齢者や障害者等の生活を支援する目的での信託の活用が期待されるという指摘もあるわけでございます。

 このように、金融商品としての信託のみならず、多様な目的のもとで信託を利用するニーズが高まっていることから、今般、信託法を全面的に見直し、信託に関する法律関係をより合理的で適切なものとするとともに、新たな類型の信託を創設し、あわせて、今回、表記を国民に理解しやすい現代用語によるものとするということのために、信託法の全面的な改正を行うこととしたものでございます。

平岡委員 私も、申しわけないんですけれども、大変大部な法律でございますからまだ全部読み切れていなくて、一歩一歩今読みほどいているところでございますけれども、大変な、ある意味では、分量といいますか、内容的に非常に密度の高い法律になっているというふうには思います。

 今回の信託法についていえば、現代法化されているということで、現代法化するに当たっては、解釈に疑義が生じないようにしっかりと書き込んでいくというのが最近の法律の傾向でありますから、読めば、書いてあることで大体わかるし解決できるということなんですけれども、ただ、やはり法律でございますから、いずれにしても解釈をしなければいけない、そういう場面が多く出てくるんですね。そうなったときに、この法律というのは一体どういう考え方に立ってつくられている法律なのか、立法者の意思というのが非常に重要になってくるということなんです。

 そこでちょっとお聞かせいただきたいんですけれども、信託の法的な性質についてはこれまでにさまざまな学説がございました。そうではあるんですけれども、今回の立法についてはどういう説に立って信託法がつくられているのか、この点についてまず明確にしておいていただきたいというふうに思います。このことが、いろいろ疑義が生じたときの解釈の一応の指針というものになってまいりますので、立法者として明確な意思をここで表明しておいていただきたいというふうに思います。

    〔委員長退席、松浪(健太)委員長代理着席〕

長勢国務大臣 御指摘のとおり、信託の本質、すなわち信託の基本的構造の考え方についてはさまざまな学説があるというふうに承知をいたしております。今回の立法は、基本的には、現在の信託法の起草者が採用した、またそういう意味で信託法の制定初期から唱えられてきた、いわゆる学説上は債権説というんだそうでございますが、それに立って行われておるものでございます。

 ここで債権説と申し上げますのは、信託によって受託者が信託財産の完全な所有権を取得すると考える一方で、受益者は受託者に対し信託目的に従った管理、処分を行うことを請求する債権的な請求権を有するとする考え方でございます。この考え方に立って行われております。

平岡委員 そこで、そういう考え方に立って今回の法案がつくられたわけでありますけれども、いろいろなところでいろいろな話を聞いてみますと、改正作業に当たって、例えば消費者団体の方々なんかは、自分たちは意見を聞かれていないし、何か無視されたんじゃないか、業界ばかり話を聞いたり、あるいは関係省庁、信託法に密接に関係している省庁、省庁がかかわるのはある程度当然としても、そこの意見だけが反映されているんじゃないかというようなことを言われる方もおられるんですけれども、この改正作業に当たって、これは幅広く意見を聞かれているのかどうか、この点についてお聞かせいただきたいというふうに思います。

寺田政府参考人 法制審議会は意見を聞くということについては比較的丁寧にやっている方と自負いたしておりますが、この信託についてもその例外ではございませんで、法制審議会の諮問を受けた後、審議をする過程で一度中間試案をつくりまして、それに対する各界からの御意見を伺うという手続、パブリックコメントの一種だと思いますけれども、そういう手続をとっております。

 このパブリックコメントの手続に当たりましては、各種、いろいろな団体、経済団体もございます、労働団体もございます、消費者関連の団体もございます、生協のようなところもございます、そういうところ、団体の数だけ申しますと、六十二の団体から意見を照会いたしておりますし、大学、法科大学院、それぞれ七十五、四十六という数でございますが、これらの大学の先生方にも御意見を伺うような手続をとっております。それからさらに、具体的に意見を提出された方々というのがおられます。全部で八十六の非常に貴重な御意見をいただいたわけでございますが、それを踏まえて調査審議を進めて、最後、要綱案を取りまとめる、こういう手続をとり、最後にその要綱案に基づいて法制審議会の総会で御議論いただいて、その要綱案が承認されましたので、これで法律をつくるベースをつくられたということで、それに基づいてこの信託法案ができたわけでございます。

 このように、この信託法案は、学識経験者それから法曹実務家、その他いろいろな方々の意見を踏まえておりまして、消費者団体の方々の御意見も伺っているところでございます。

 なお、法制審議会の委員にも、女性の消費者問題の専門家の方もおいでになるわけであります。

平岡委員 いろいろな方から聞かれたということ、それはそれで結構なことだと思いますけれども、まだ法案が成立したわけではございませんから、これから法案が成立するまでの間、いろいろな意見を聞いていただきたいというふうにも思います。参考人の方もお呼びしたいということで申し入れをさせていただいておりますし、ここでの議論もしっかりと行われるだろうというふうに思います。

 そういう中で、法案提出に当たって与党の皆さん方からもしっかり意見を聞かれた結果として、附則の方に何か変なものがひっついておるということも私は承知しております。その点についても、後ほどしっかりと議論をさせていただきたいというふうに思っております。

 そういうことで、この委員会の審議を通じて、より各界各層の意見が反映されるように努力していきたい、こういうふうに思っております。

 ところで、このでき上がった法案でありますけれども、いろいろな声がありますね。いろいろな雑誌とかあるいは報道とかに出ておりますけれども、ちょっと抽象的というか、概略的に言うと、今回の改正については、例えば商事信託偏重ではないかというような話とか、あるいは受託者の義務の任意化など、民事信託無視ではないかというのがありますね。これはまた同僚の大口委員なんかも指摘しておられましたけれども、福祉型信託制度の整備がなされていないのは問題ではないかといったような指摘もありますね。

 そういうような批判がいろいろあるわけでありますけれども、大体どんな批判があるかというのは当局の方も御承知だと思いますけれども、これらの批判について、総括的でとりあえず結構でございますから、当局としてどのように受けとめておられるかということについて御答弁をいただきたいと思います。

寺田政府参考人 私どもといたしましては、先ほどお話し申し上げましたとおり、各界からいろいろな意見を伺い、我が国で最もこれについてお詳しい先生方からも十分に信託の理論に基づいた御審議をいただいておりますので、それなりにバランスのとれた内容だということを考えているわけでございます。

 一方では、商事信託に偏っているという意見もございますし、他方では、まだまだ十分でないという意見もあるやに承っておりますけれども、私どもとしては、そういうことで、具体的に申し上げますと、民事にも十分配慮をいたしたつもりでございます。

 例えば、これは条文でいいますと九十条前後のことになるわけでございますけれども、これからの資産の運用を自分の後継者にどういうように引き継いでいってもらうという形でしていくかということの観点から、いわゆる後継ぎ遺贈型の受益者連続の信託、これは、一部の委員の先生方から非常に強く、こういうものがこれからの世の中には必要だという御意見があったわけでございますが、具体的には、配偶者、子女等の生活保障の必要性、あるいは個人企業の経営、農業経営における有能な後継者の確保、こういうニーズに基づいてつくられるというものでございます。もちろん、非常に長くなるということを避けるというようないろいろな配慮もいたしております。

 また、受益者が交代されるということを念頭に置いた規定もございます。これは、当然、家族の間でだれが面倒が見られるべき対象なのかということがそのときそのときで変わっていくということを念頭に置いたものでございまして、あるいは遺言代用の信託というものも、これは九十条でございますが、こういった家族の資産の運用ということにかかわっているわけでございます。

 一般的に言いますと、今度の信託法の重点というのは、これまでの現行の信託法が非常に規制が強くて、受託者にとってなかなか使いづらいところが一つある。それから、受益者の保護が必ずしも十分でない、どちらかというと委託者の方に権限が重きを置かれている。それから三つ目といたしましては、いろいろな新しいタイプの信託、先ほど来いろいろ御批判もいただいておりますけれども、自己信託などでございますが、そういう新しいタイプの信託モデル。大きく言いましてこの三つでございますけれども、いずれも商事信託に偏るものではなくて、民事信託においても十分に配慮をしてそういう新しい権利関係をつくろうということででき上がっているというように、概括的に申し上げますと考えているわけでございます。

平岡委員 今おっしゃられたことについて言えば、これからどういうふうに運用されていくことになるのか、そういう状況を見ていけば、本当に国民の皆さんが望んでいるものになっているのかどうかということが多分証明されていくのだろうというふうに思いますので、我々もしっかりとこれからの成り行きを見ておきたいというふうに思います。

 そこで、たまたま今、今回の改正について、民事信託について手厚く措置した、手厚くというか、今回新たに手当てをしたという話として、九十一条の後継ぎ遺贈型受益者連続の話がちょっとありました。

 私もちょっとこれは誤解じゃないかなとは思うのでありますけれども、ある方が、民法の世界ではいわゆる後継ぎ遺贈というのは期間制限的な所有権を認めることになるので無効であるというふうに解するのが有力であるというふうに言われているにもかかわらず、今回こうしたものが改正法案に盛り込まれているのはおかしいじゃないか、問題ではないかというふうに指摘している方がおられるんですけれども、この点について、誤解があるのなら、ぜひ誤解を解いていただきたいというふうに思います。

寺田政府参考人 今申し上げました後継ぎ遺贈型の受益者連続の信託と申しますのは、最初はAが受益者であるが、その後B、その後Cというように、あらかじめ次にだれ次にだれということを決めておく、そういう信託でございます。

 これに対しまして、いわゆる後継ぎ遺贈と申しますのは、遺言者が遺言によって最初の受遺者を決め、それから、その人がもし死亡すればその人の権利を終了して次の人、さらにその人が死亡すればまた次の人ということでございます。まさに今委員が御指摘になられましたとおり、この後継ぎ遺贈そのものはいわば期間的な所有権をそれぞれ認めていくことに結果としてなるわけであります。そこで、民法学者の間では、この後継ぎ遺贈そのものは基本的には民法上認められないものだということがほぼ通説になっているわけでございます。

 これに対しまして、後継ぎ遺贈という名前をかりてはおりますが、後継ぎ遺贈型の受益者連続の信託は、連続いたしますのはあくまで受益権でありまして、受託者が形式的に所有権を有しているということには変わりないわけであります。

 それで、先ほど申し上げましたけれども、受益権というのはあくまで本質的には債権的なものであり、一部それよりも強い効力を持つところが若干ございますけれども、そういうことであるから、これは民法上禁止するほど認めにくいものではないというのが普通の民法学者のお考えだというように理解をいたしているわけでございます。

 そういうわけで、今回、この点についてのニーズも非常に強く言われましたので、私どもといたしましては、これを新たに信託法の中に取り込むということにいたしております。

 ただし、非常に長い間こういう権利関係が残るというのも問題でございますので、年数を設けて、その期限で生きている方まで、その方が亡くなったときに最後の権利者が登場する、こういう仕組みにいたしているわけでございます。

平岡委員 遺贈されていくといいますか引き継がれていくものが、所有権であるのか、それとも受益権のような債権であるのかの違いによって、これが認められるのか認められないのかというような違いがあるというのが今の答弁された理由的なものだったのではないかなと思うんですけれども、ちょっと考えてみると、いや、必ずしもそうなのかなと。所有権はだめだけれども債権みたいなものだったらいいんだというのも何となく、現代的な感覚を持った人たちにとってみれば同じような、その人に対する財産権という意味においては同じなわけでありますから、そこにそれほどの違いがあるのかなというふうに私はちょっと疑問には思うんですね。

 疑問には思うけれども、そういう整理をされたということなら、そういう整理をされたということで、先ほど、債権説に立った立法がされているというようなことでもあるのかもしれませんから、それはそれで世の中の方々には、誤解をされているのであれば、その辺はしっかりとまた説明をしていただければというふうに思うところであります。

 ところで、いよいよだんだん攻めの話に入ってくるんですけれども、信託法と今回の関係整備法、私も見ましたけれども、政令事項とか法務省令とか内閣府令とか、いろいろ政省令委任というのが行われているんですよね。見たら、これは何が書かれるのかな、書かれることによっては本当に換骨奪胎みたいな話が起こってしまうんじゃないかなというようなことも感じるんですね。

 これは、これから信託法を審議しますから、とりあえずは信託業法の方で例を挙げてみますと、まず、信託業を定義するところで、「信託の引受けを行う営業」だと。その中に、信託の営業に括弧して、政令で定める者を除くというような形で、ちょっと修飾語はありますけれども、政令で信託の定義に当たらない者を除いてしまうとか、あるいは、今回の自己信託ですが、自己信託を業として行うというような形になり、特にその受益権を多数の者に対して渡していくというか、多数の者が受益権を取得するというようなケースについていえば、その対象となる多数の者というのは一体何なのかというのは、政令で定める人数というふうに書いてあったりとか、あるいは、そういう取得することができる場合であっても政令で定める場合に限るんだとか、あるいは、例外に当たるような場合でも政令で定める場合はこの限りでないんだとか、何か政令委任事項というところが非常にたくさんあるんですよね。

 あと、信託法の方でも、政令委任事項の具体的な問題の部分については、また特に問題だと思っている部分については触れようと思いますけれども。

 大臣、この分厚い法律ですけれども、今回の改正法関係で新たに政省令事項として位置づけられたものというのは一体どのぐらい数があるんですか。

    〔松浪(健太)委員長代理退席、委員長着席〕

長勢国務大臣 信託法案、技術的な部分もありますので、技術的、細目的な事項については、法律で定めるよりも下位法令で定める方がより適当と考えられる事項については、政令または省令に委任をすることといたしております。

 具体的には、信託法案においては、政令に委任しておるものが六カ所、法務省令への委任をしているものが五十六カ所ございます。

 その主な内容は、信託法案については……(平岡委員「内容はいいです。数を聞かせてください」と呼ぶ)いいですか。業法もですか。(平岡委員「あと、整備法案」と呼ぶ)整備法案。

 信託業法案については、政令への委任は九カ所、省令への委任は十四カ所行っております。

平岡委員 法務省が所管している法律以外の法律がたくさんあるので、法務省も自分のところでは調べ切れないということで二つの法案についてしか言ってくれなかったのかもしれませんけれども。

 普通、こういう政令事項とか省令事項とかというのは、法案審議の前にちゃんと表にして、ここについてはこういう考え方でこういうことを書きますよというのをくれるんですよね。それで、きのうも下さいよと言ったら、あるのかないのかわかりませんけれども検討しますというようなことでおしまいになっていて、普通、物すごい対決法案だったら、それだけで、それが出てくるまでは審議はせぬぞというぐらいのことを私としては言わなきゃいけない立場に立っておるのでありますけれども、今回、それほどの対決法案ではないのかなと思っているので、とりあえずきょうはこれぐらいにしますけれども。

 ぜひ、政令事項、省令事項、これはどういうことについてそうなっていて、それについてはどういうことを定めるつもりなのか。それは確定はしていないかもしれませんけれども、ちゃんとそういうものを資料として出していただくということをお約束いただきたいと思います。いかがですか。

長勢国務大臣 事情はわかりませんが、大量にわたるからという配慮もしたのかもしれませんが、当然、お届けするようにさせますので、よろしくお願いします。

平岡委員 ぜひ、これから当然いつもこうなるということなのでございますので、これから提出される法案については、政令事項、省令事項、必ず、こんな内容のものを予定しているんだと、それは細かいことは、まだ法制局審査とかもあるからそのとおりになるとも思いませんけれども、一応それは示した上でやっていただきたい。

 例えば、もうちょっと先に入ってしまうかもしれませんけれども、与党の強い要請で入ったと言われている信託法案附則第三項。この中に、「受益者の定めのない信託は、当分の間、政令で定める法人以外の者を受託者としてすることができない。」。

 これは、「政令で定める法人」というのは一体どういう法人を考えているんですか。場合によっては、後で勝手に政令で定めて、一部の人たちだけに、大企業だけに、裕福な人、これは法人だから人はいないのかもしれないけれども、力のある、政治力のある、献金をたくさんする、そういう法人にしか認めてくれないというようなことになったとするなら、それはあり得ないことだと思うんですけれども、何らかの考えに基づいて、それなりに公平性といいますか、透明性といいますか、そういうものを定められるんだろうと思いますけれども、一体、この「政令で定める法人」、どういう法人を定めるんですか。

寺田政府参考人 これは、先ほどもお話がありました、いわゆる目的信託に関する部分でございます。

 この附則の三項におきまして、「当分の間、政令で定める法人以外の者を受託者としてすることができない。」ということでございますが、この趣旨は、この受益者の定めが予定されない目的信託と言われるものについて、あらゆる者が受託者となることができるということになりますと、果たしてその信託の運用が新しいだけに公正にできるかどうかということに危惧があるということが、これは与党の審査の段階で示されまして、当分の間、そういう趣旨であれば、受託者をしっかりした方に限るということで運用し、運用がこなれれば、またその法人の範囲、あるいは受託者としての個人も含めた範囲も広げていこう、こういう趣旨でございます。

 それで、私どもが今政令として念頭に置いておりますのは、やはりしっかりしたということでございますので、財務的に見ても健全であり、人的構成においても公益に反するおそれが少ないと認められる者を受託することが可能な法人として定める、こういうことでございます。

平岡委員 「当分の間、」というふうになっているのは、これは当分の間が過ぎたらどうするんですか。

 つまり、皆さん方が考えている仕組みというのは、この受益者の定めのない信託、目的信託について言えば、常にそういう問題をはらんでいる信託というふうに位置づけているのか。それとも、何か世の中が非常によくなって、安倍政権のもとで美しい国にでもなったら、これはだれがやってもいいというようなものになっていく、そういうふうにお考えになっているのか。

 一体、これは思想が全然あらわれていないですよね、こんなの。こんな法律というのは私はおかしいと思いますね。どうですか。どういう状況になったらどうしようとしているんですか。さっき言ったしっかりした法人というのは、世の中で見たら、どこかの時代になったらすべての法人はしっかりした法人になるというようなことはあり得ないんですよね。これは、いつの時代でも、しっかりした人もいれば、しっかりしていない人もいる。それなのにもかかわらず、こんな形で法律が規定される。これはおかしいじゃないですか。どうですか。

寺田政府参考人 私どもといたしましては、本来、目的信託、もともと受益者の予定されない信託というのは、世の中のどういう方がお使いになっても、この信託法の範囲で御利用になれば、それは構わないものだということで考えてはおります。

 ただ、何分にもこれまでに全くない新しいタイプの信託でありますし、受益者がいないことによって、どういう利用がされるかということについての危惧というのは否定できないという御意見が非常に強かったわけでございます。したがいまして、こういう危惧がなくなるまでの間は、法人の範囲を限定して、受託者として適格な者だけを利用の対象にしようという思想でございます。

 もちろん、「当分の間、」がどうなるのかということについては、改めて国会で御審議いただくことでございます。

平岡委員 今のを聞いていると、何か「政令で定める法人」というのは、例えば、財務的な健全性とか人的に見て十分な構成になっているとかという話でいくと、そういうふうになると、大体資本金はこれぐらい以上で何とかがこうで、それで例えば登録制とか認可制とか許可制みたいな、そういうものと結びつけて、ちゃんとそうなっているかどうかというのを判定していくという作業が普通は必要なんですよね。

 では、ここで言う「政令で定める法人」というのは、何か一律的に書いたら、資本金が何億以上で人が何人以上で、そこの役員が過去何年間か処罰されたことがないような人がいるとかという、その程度のことが書かれるんですか。それとも、そういうものとして登録してきた人とか、あるいは認可した人とか、何かそういう当局としての判断が含まれるようなものとしてここを定められるんですか。どういうふうに考えているんですか。

寺田政府参考人 これは政令でございますので、法務省だけで決めるということも現段階ではやや僣越かもしれませんが、私どもといたしましては、別段ここで改めて許認可制度を設けるというようなことは考えておりません。政令の法文自体で資格が決まるようにするのが、透明性の上からもよろしいのではないかと考えております。

平岡委員 それでは、ここで「政令で定める法人」というふうに書いてもほとんど意味がないと私は思いますね。それは、大きな法人なら、例えば人がたくさんいる法人ならこれはしっかりした法人だというふうに一律に判断するというのは、私はおかしいと思いますね。そんなことでいったら、本当に大きな企業だけがおいしいことを味わえるというようなことにしかすぎないんじゃないかというふうに思うんですね。

 先ほど民事局長の答弁の中で、どういう理由で使われるかわからない、どういう内容で使われるかわからないという危惧があるのでというようなことを言われましたけれども、そんなのだったら、そもそもそんな目的信託みたいなものをつくっちゃいかぬですよ。

 目的信託について、どういうものなのかということについてのある程度の特定性ができるのであればそれなりに意味があるのかもしれませんけれども、先ほど高山委員の方からも、公益でもない営利でもない、一体どういう信託なんですかというふうな質問がありましたけれども、なかなかうまく答えられていないように私も思いました。

 こういう形で制度を中途半端な状態で導入するということについて、立法者としての見識を私は疑いますね。どうですか。もともとは、そうか、ごめんなさい、政府としては見識のある態度としてしっかり出したんだけれども、与党のところで見識の、もしかしたら、ないと言ったら失礼かもしれませんね、いろいろな見識を持った人たちがこういう形で何かするべきだということでやられたということですかね。どうですか、局長。

寺田政府参考人 もともと、先ほど申し上げましたように、法制審議会の検討を経てつくられました要綱案においては、これがどういう目的で使われる、あるいはどういう方々によって利用されるということについての何らの制約を課さずに制度として登場させて差し支えないという御判断だったわけであります。

 私どもも基本的にはその立場に立っているわけでありまして、この制度そのものがこれからの社会にとって必要がある、それが濫用されるおそれというのは一定の歯どめはあるということで考えているわけでございます。

 ただ、現実にそれをいろいろお示ししたところ、やはり相当の危惧はぬぐえない、世の中にはいろいろ反社会的な団体もある、そういうことでございましたので、なるほど初期の段階で、今度いろいろ新しい信託法の規定ができるわけでございますけれども、とりわけこの目的信託については、そういう危惧が強いということは、決して御見識がないというわけではありませんで、それは一般的な危惧としては当然理解ができるところでございます。

 そこで、私どもも、これについては当分の間は主体を限定するということに十分な理由があると考えて、こうさせていただいているわけでございます。

平岡委員 政令事項の話でここへ入っちゃったんですけれども、答弁だけじゃなくて、これから政令でどんなことが定められるのかということについては資料として提出していただくということで大臣からもお約束いただいたので、その出されたものを我々として見て、これで本当に問題がないのかということについてはしっかりと検証させていただきたいというふうに思いますので、とりあえずきょうはそのぐらいに、政令の部分はおしまいにします。

 せっかくこの目的信託のところに入っちゃったんで、ついでに聞こうと思うんですけれども、この「受益者の定めのない信託」ということで、「当分の間、政令で定める法人以外の者を受託者としてすることができない。」こう書いてあるんですね。だけれども、括弧書きの中に、「学術、技芸、慈善、祭祀、宗教その他公益を目的とするものを除く。」というふうに書いてあります。

 公益を目的とするものについてはどういうふうになっているんですか。私の理解では、この部分については、もともとの信託法の中で公益的な信託については別法というか抜き出したものでつくってあるというふうに理解はしていますけれども、一体それはどうしようとしているんですか。

寺田政府参考人 おっしゃるとおり、この法案をつくるつくり方の問題でありますけれども、現にあります現行法においては、公益信託の規定が一番最後のところに置かれているわけであります。これについては今回基本的に見直しをせずに、公益信託を除く一般の信託について新しく信託法として登場させているわけでございまして、それに伴いましてかつての信託法、現行法でございますけれども、これは公益信託に特化した法律に整備法で改められるという形をとっております。

 これは、もともと公益法人の改革というのが行われておりまして、この公益信託も、これも先ほど高山委員の御質問に対してお答えしたところでございますが、公益法人と同じような精神で見直しをすべきであるという考え方で進めてきたわけであります。

 ただ、私どもが信託法を国会に提出するに当たりましては、なお公益法人の基本的なスキームというのが完全には決まっていなかったわけでございますので、そこで私どもは、これを一たん切り離しまして、仮にこの法律を可決していただけるのであれば、その後速やかに、さきの通常国会で成立いたしました公益法人改革の一環でございます一般社団法人及び一般財団法人に関する法律の考え方に基づいて公益法人の法制も改めたい、このように考えているところでございます。

平岡委員 私も事前にそういう話を聞いて、今局長が答弁されたようなことだったんですけれども、公益法人制度改革関係法案というのはもう成立したんじゃないんですかね。今どういう状態になっているんですか。

寺田政府参考人 この法案の提出後、さきの通常国会において、いろいろ御議論の上提出されまして、それが成立したというように私どもは承知いたしております。

平岡委員 だから、成立しているのなら、先ほどから説明されているように、この公益を目的とする信託、受益者の定めのない信託の中でも公益を目的とする信託についても、やはりどういうふうな仕組みにするのかということについては、もう法案として出せる状態になっているんじゃないでしょうか。私たちとしては、ちゃんとその法案もこの中に盛り込んだものを出していただいて、総合的にこの法案を審議させていただきたいというふうに思うんですけれども、なぜ出せないんですか。一緒にして出し直していただけないですか。どうですか。

寺田政府参考人 先ほど申し上げましたような事情で、この法案がつくられましたときには、そういう考え方がまだ完全に固まっていなかったものですから、こういう状態になってお願いをしているわけでございます。私どもといたしましては、できるだけ早い時期に、この残りの公益信託の部分について改正案を用意したいと考えております。

平岡委員 それでは、一度、我々も、その公益法人制度改革関係法案がどういうふうな中身で成立し、これによって公益信託の部分についての法制がどういうふうになろうとしているのかということについてちゃんと説明をしていただいて、それとこの信託法の中がどう整合するのかしないのかという検証をしっかりとまずさせていただきたいというふうに思うんですね。

 せっかく信託法をつくったら、公益信託を入れようとしたらいろいろ問題が起こってきて、ここはああしなきゃいけない、こうしなきゃいけないというふうなことで、また大改正を来年の通常国会でしなければいけないというような事態では、本当に何をしているかわからないということになりますから、しっかりとその部分については説明を、まあ委員会で直接するのはちょっと大変ですから、とりあえずは、それぞれの、各政党でも結構でございますから、説明をしていただいて、それに基づいてまた質問をさせていただきたいというふうに思いますので、お願いを申し上げます。

 大臣、よろしいですね。

長勢国務大臣 いろいろ経過のある問題のようでありますが、できる限り審議を促進していただきますように、協力を申し上げたいと思います。

平岡委員 よろしく御協力をいただきたいというふうに思います。

 実は、きょうは、第一章のところ、総則ということで大変重要な部分であるので、いろいろ疑義があるところについてはしっかりと検証していこうと思ったんですけれども、余り時間がなくなってしまったので、これは次回の質問に回すことにさせていただきます。

 というのも、せっかくきょう、内閣府あるいは財務省からも政務官が来ておられるので、一時間四十分も何もしないで帰られたのでは、後で皆さんに怒られて、もう二度と来ないというふうに言われても困るので、そういう意味で、自己信託と目的信託のところをちょっと順番を変えまして、私の方からも質問をさせていただきたいというふうに思います。

 そこで、自己信託でありますけれども、先ほど来も、英米法の世界の話でありました。私も、聞くところによりますと、アメリカにおいても、個人の相続とか贈与の手段として使われている例はあるけれども、ビジネス分野ではほとんど使われていないんだ、自社資産の流動化を目的として信託宣言を利用した例は、ファニーメイの住宅ローン債権流動化のみであって、ケイマンのチャリタブルトラストは形式が異なっている。

 そういうような状況の中、日本がこれほど大々的に自己信託というようなものを法制化していいのかというようなことが言われているわけでありますけれども、この点については、まず、これは法務省の方ですけれども、どういうふうにお考えですか。

寺田政府参考人 おっしゃるとおり、自己信託というもの、アメリカでは信託宣言と言った方が正確かもしれませんが、そのタイプの信託がそれほど信託全体のメーンになるというように使われているということは確かにございません。

 しかしながら、決して一部の債権の回収にだけ使われているのではございませんで、多数の人から拠出を受けた財産をもって、その帰属者となる受託者が特定の事業を経営して、そこから生ずる利益、財産を拠出した受益者に分配する、こういう信託本来のやり方の中で自己信託を利用するものも、アメリカでは会社にかわる企業形態として発展をしてきて、現に使われていると私どもは聞かされております。

平岡委員 私が読んだといいますか、調べてもらったものでは、さっき私が質問のときに言ったようなものだけなんですよね。今民事局長さんがいみじくもそれ以外にもいろいろあるんだというふうに言われたので、これもまた、済みません、資料としていただいて、またちょっと勉強させていただきたいということであります。

 ところで、先ほど来から、この自己信託の問題については議論もされていました。同僚の高山議員からも、これは何か経済界からの要望でできたというのが真実じゃないかというような趣旨の質問がありましたよね。福祉目的みたいな話はどうも実態として考えにくい、どんなケースでそんなものが使えるかわからない、結局は経済界からこんなものをつくってほしいというようなことの声が反映されてこれができたんじゃないかというやりとりがあったと思います。

 振り返ってみると、これは一九八五年に学者の人たちがつくった試案というものが、やはり自己信託であるわけでありますけれども、その当時は、公益目的とかあるいは扶養目的とか教育目的に限定をしてつくろうというような発想で当時の試案というのはできているんですね。

 今回、それは除外されているということではありませんけれども、どうも先ほど来から議論を聞いてみると、こういうものに使われるということは余り多くはなくて、むしろ経済界の要望でいろいろなことに使おうとしているというのが実態ではないかという議論があったんですけれども、当時、そういうふうな目的に限定されていたということについては、どういうふうに思われますか。

 今回、いろいろな議論がありました。これもまた与党の審査の中で、何か適用を一年間おくらせるとかという、私にとってみれば、これは何なのかと、後でまた議論しますけれども、意味不明な状態に置かれてしまったものでありますけれども、こういうふうに目的を限定していくという中で自己信託というものを認めていく、信託宣言というものを認めていくという考え方をとるべきではないかというふうに思うんですけれども、どうでしょうか。

寺田政府参考人 おっしゃるとおり、まず、事実の問題といたしまして、一九八五年に策定されました信託法学会の信託法改正試案でございますが、最終的には、信託宣言については、目的の限定を加えないという案と、議員の御指摘のあるような公益目的等に限定するという案と、二つ案がございまして、第一案が限定なし、第二案が限定を加えるということで示されております。

 私どもも、この限定を加えるという案が、決してあってはならない案だとは思いません。そういう考えも十分に成り立つだろうとは思います。しかしながら、その後も時代はどんどん進んできているわけでありますけれども、これからの社会を考えた場合に、やはりもう少し簡便に金銭を預かって、それを自分で運用する、しかし、財産としては自分の個人財産から隔離しておきたいというニーズは確実に出てくるものだろうというふうに考えているわけであります。

 したがいまして、やはりここは、目的による限定というのを付さないのが、時代の趨勢から見ると適当ではないかなと考えているところでございます。

平岡委員 まあ、時代の趨勢と言われても、一年間適用を延期しなければいけないようなものでしかつくれない。逆に考えると、こういうものにまず限定してつくって、しばらくやってみたら、ああ、やはりいいなということでこの目的も拡大していく、本来そういうのが立法者のあり方だと私は思うんですよね。

 何か一年間、どんな弊害があるかわからないから適用をとにかくとめておこう、そのうちに政治状況も変わるかもわかりませんけれども、そのうちにどんなことが起こるか、また後で聞きますけれども、そういうふうな状況の中でこれをつくっていくというのは、何か私には非常に意味不明な、余り与党の悪口を言うと後でしかられてはいけないので、与党の姿勢というのは一体何なんだろうかな、一年延期したらそれで何がよくなるのかなというような、これはちょっとよくわからない、そういうような気持ちもしています。それではつくり方に少し無理があったのかなというふうにも思わないでもないということをまず指摘させていただきたいと思います。

 ところで、この自己信託が利用されるケースというのは、いろいろ、資料もいただいていますからわかっていますけれども、一つは、例の自分たちの債権の流動化みたいな話としてもこれは使えるというのが説明されていましたね。

 債権の流動化ということで考えると、ぱっと思いつくのが、やはり金融機関が持っている不良債権、こういうものについて、この仕組みをうまく使えば何かうまいことになる、うまいというのは変ですけれども、金融機関の健全性の確保とか、あるいは金融機関の資金調達とか、いろいろメリットがあるのではないかなというふうに思うんですけれども、その点について、当局としては、こんなことができるんじゃないか、こんなことに役に立つんじゃないかというふうに思っておられるケースがもしあるのなら、不良債権問題についてですよ、ちょっと指摘していただきたいというふうに思います。

田村大臣政務官 今平岡先生言われましたとおり、ファニーメイの例もありますとおり、実際、去年の八月に全銀協が出した意見書によりますと、自己信託というのは、不良債権を含めた貸出資産のオフバランス化、貸出債権の流通市場の整備に資するものである、そういう意見が出ていますので、自己信託が、不良債権も含めた貸出債権の流動化、こういうものにさまざまな実務ニーズがあるというふうに考えております。

平岡委員 それは私が質問で聞いた話だから、まあ、いいんですけれども。

 具体的には、これはどんなふうなイメージですか。どんなふうにして、どうしてやって、それは、例えば自己資本比率なんかにもいろいろ影響を与えるんじゃないかな、むしろ自己資本比率を高める方向にも使えるんじゃないかなとか、いろいろと思うんですよね。

 田村政務官がもし金融機関の経営者であったら、この仕組みができたときには、こんなふうに使ったら銀行経営が非常によくなっていくというか、プラスに働くということで、こんなことをやってみよう、そんなのをちょっと、アイデアを少し提示してもらえませんかね。そうすると、ああ、そうか、そういうものだったらこれは非常に役に立ついい信託だなというふうに私も説得されるかもしれない。

 もしそういうものが提示できないのだったら、まあ、余り社会の役に立つものじゃないのかもしれないというふうに割り切らざるを得なくなるかもしれませんから、しっかりと、これは事前に言っているんですから、質問を出しているんだから、ちょっと具体的なものを言ってください。

田村大臣政務官 今触れられましたとおり、自己資本比率の向上にはまず役立つと思います。信託受益権という形で売り切ればリスクアセットの削減につながるわけですから、自己資本比率の向上にもつながる。また、不良債権の流動化の場合、普通のスキームでありますと、債務者の方が債権者が入れかわることを非常に嫌がりますので、自己信託を使えば債権者がそのままであるということのメリットがあると思います。

 また、財産性の強い債権を自己信託で売り切れば、それはまたキャッシュインということになりますので、その入ってきたキャッシュを不良債権の処理に使える、そういうメリットもあると思います。

平岡委員 少しは、ああ、そうかなというふうに思いましたので、またしっかりと勉強させていただきたいというふうに思います。

 ところで、この自己信託について言えば、いろいろなところでの指摘で、租税回避の問題が指摘されているところでございますよね。あるものを見ますと、租税回避に利用される可能性があるんじゃないか、これに対しての対応を一体どうするのかというような議論もされているということなんですけれども、財務省の方では、この自己信託が導入されるに伴ってどういう税制が必要であると考えているのか、あるいは租税回避を防止していくためにはどういうことが必要であるというふうに考えておられるのか、その点について御答弁いただきたいと思います。

江崎大臣政務官 今平岡先生からの御指摘で、法人税等の租税回避ということでございましたが、今般の信託法案そのものは、多様な信託の類型の創設によりまして信託の利用機会を大幅に拡大していくということが目的である一方で、先ほど御指摘いただいた、租税回避に用いられる懸念も指摘されているわけでございます。

 そこで、基本的には、この自己信託、会社と同じような事業を行うような場合には、法人税の回避にならないように、やはり法人と同様の事業を信託形態で行うということであれば、課税の公平及び中立性の確保の観点から、法人課税を行うべきではないかということを今検討しているわけでございます。

 そして、その措置につきましては、今後十分な検討を行った上で、十九年度税制改正の中で租税措置をとっていくということがやはり適切ではないかということを現状考えております。

平岡委員 今、法人課税と類似のというか同様のというような表現がありましたけれども、これは、個人が自己信託をする場合でも、それは法人というような類型の中でやっていくということを考えておられるということなんですか。それとも、法人の中で自己信託をする場合には、両方とも法人、両方というのは、法人格を持っているのは一つですけれども、その法人と、その中で行われている自己信託の部分の信託勘定についての課税が、普通の法人と同じようにしようということですか。ちょっとはっきりとしなかったので、もう一遍答弁してください。

江崎大臣政務官 この点は、委員御指摘のとおり、ケースに分けてということでございますので、個人の場合、また法人の場合は法人の場合という課税体系をとっていくということを考えているということでございます。

平岡委員 それは当然じゃないですか。それは、個人の場合は個人で、法人の場合は法人で、それは所得税と法人税がそれぞれあるんですから。

 私が聞いているのは、個人が自己信託をするという場合の課税について、先ほど、法人課税に類したやり方でやるというふうに言われたんじゃないかなと。ただ、そこは、法人、個人ということの区別がないままに言われたものだから、個人についてもそういうふうにやるんですかということを聞いたんです。

江崎大臣政務官 これは、受益者が個人であるケースもありますし、また法人形態あるいは財団法人みたいになるケースもある。そのケース・バイ・ケースで整理をしていくということを今考えているということでございます。

平岡委員 ちょっと済みません。まだちょっと議論が深まっていないので、またいずれしっかりと時間をとって質問させていただきたいというふうに思います。

 十九年度の税制改正といえば、あともうちょっとですよね。大体十二月までには決めなきゃいけないわけですから、いまだにああでもないこうでもないというようなことを言われたんじゃ、ちょっと私も、これがいいのかどうかということについて、やはりこれは、租税回避をしようとしている人を防ぐことができないような状態に今税務当局が陥ってしまっているんじゃないかというふうに逆に心配をしてしまいますから、またしっかりと議論をさせていただきたい。きょうはそれぐらいにしておきたいと思います。

 というところで、ちょっと附則の第二項というものに入っていこうと思います。

 自己信託については、形式的に言うと、「第三条第三号の規定は、」ということになっていて、自己信託をする場合どういうふうにしてするのかというところの規定が一年間適用されないという仕組みの中で、これは全部がストップしてしまうということなんだろうと思うんですけれども、例えば、この規定を受けて、信託業法の中にも、自己信託を前提として、政令で定める人数以上の人が受益権を取得するというようなケースについては云々というのが、登録制になっていますよね。当然、その部分も一年間適用がされなくなる、つまり、自己信託の部分については全部がストップするという理解でいいということをまず確認しておきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

寺田政府参考人 信託業法の適用についてのお尋ねでございますけれども、基本的に、信託業法の前提となる自己信託の規定の適用が読みかえられるわけでございますので、それは当然信託業法にも反映するということで私は理解をいたしております。

平岡委員 だから、自己信託が全部ストップしてしまうということなんですけれども。

 まず、一年間の実施延長というのはなぜ必要なんですか。これは大臣にちゃんと答えてくださいということで頼んでおきましたので、大臣、なぜ一年間の適用延長が必要なんですか。

長勢国務大臣 議員御指摘のとおり、自己信託の方法について定める信託法案第三条第三号は、信託法案附則第二項により、施行の日から一年間適用しないということにしていますので、実質的に施行を延期することになっております。

 その趣旨でございますが、自己信託の制度趣旨、内容及び信託法上自己信託について講じられている債権者保護の措置等について、新しい制度でございますので、周知徹底を図る必要があります。また、会計、税制等の関連する他の制度における取り扱いについても、検討、周知する必要があるからでございます。

 なお、現在までのところでございますが、取り組みでございますが、会計については、会計基準の設定主体である企業会計基準委員会において、本年十月二十四日、自己信託を含めた信託に関する会計基準の処理について検討を進めていくことを正式に決定したところと承知をいたしております。また、税制についても、今お話があったように、平成十九年度の税制改正の中で十分な検討がされた上で適切に措置されるものと認識をしております。

 法務省といたしましては、これまでの間もそれぞれ関係機関、関係当局に対して信託法案の内容等について説明を行ってきておりますが、この法案を成立させていただいた後は、さらに関係当局と密接に連携をして会計や税制等の関連諸制度の整備に努めるとともに、自己信託部分についての施行までの間に会計や税制についての情報を含めて十分な周知を図っていく、こういう所存でおります。

平岡委員 幾つかの理由を挙げられたんですけれども、その中で、例えば会計の話だとかあるいは税制の話だとかありますけれども、もともと法案が提出されたのはことしの三月十日ですか、もともとはこの通常国会で成立を予定していたものが半年以上ずれているという中で、さっきの税制とかあれとかでいえば、一年の適用延長が半年でもいいのかなというような気もするんですけれども、そういうふうにはならないんですか。

長勢国務大臣 鋭意検討を進めておりますので、今申し上げたようなことで、周知徹底期間も含めて今法案を提出させていただいているところでございます。

平岡委員 大臣は当局の方で用意された答弁を見られて答弁されたと思うんですけれども、新聞なんかを見るとそんなふうには全然書いていないんですよね。

 この自己信託について言うと、要するに、ライブドアが投資事業組合を使ったように監査逃れに使われるおそれがある、本来の経済活動と違う偽装が行われるおそれがあるというような懸念が出て、何かいろいろな懸念がある、悪用される懸念があると。そういった懸念を払拭していくといいますか、どうやったら対応できるかというようなことの対応措置を考えていく、その期間として一年が必要だということじゃなかったんですか、大臣。

長勢国務大臣 会計基準あるいは税制の議論ということで、そういう点も考慮して議論はされるのかもしれませんけれども、そういう部分で今議論をしておるということでございます。

平岡委員 大臣ももごもごと、議論しておりますと。ここにも明確に、結局、合同会議というのは、自民党の法務部会と財務金融部会の合同会議ということで、きょうここにおられる方々もたくさんいるから、本当はここにおられる方に聞いた方が早いのかもしれませんけれども、そこでも、自己信託の施行を一年間先送りし、弊害が発生する可能性を検討することを条件に法案を了承した、こういうふうに明確に書いてありますね。

 つまり、一年間の間にいろいろ勉強して、何が悪いことが起こるのかというのは勉強しようじゃないか、こういうことだと思うんですけれども、勉強した結果、その一年間の間に何か対応措置が講じられるんですか。民事局長でいいです。

寺田政府参考人 この点でも、私どもは、自己信託そのものについて、会計基準あるいは税の問題というのは、しかるべき時期に適切な措置をとるということを期待して、その法案を提出しようと考えていたわけでございます。

 ただ、最終的なこの法案の提出に向けての議論の中で、脱税に使われないかよく検討してみる必要があるのではないか、つまり、税制をしっかりやる必要があるんじゃないか、それから、こういうやや不規則なものは本当にうまく会計にはまるのか、会計基準の面でも、そう簡単に普通と同じでいいのかということについて不安があるのではないかというような御指摘がありまして、それが混乱につながるということを恐れられた方が相当おられましたので、私どもも、それはなるほど理由のあることだということで、施行を一年実質的に延ばすという措置をとりまして、それでその間に十分な税制、会計の措置をとり、かつ、大臣からも申し上げましたとおり、そのことは安心ですということで周知を図る、そういう努力をさせていただく期間だということで理解をしているところでございます。

平岡委員 今言われた、安心であるということを周知するための期間が一年間必要だということですか。さっき大臣も、この制度の周知を図っていくために一年間必要だと。それは、いろいろな仕組みがあるから、新しい制度だから、その新しい制度を理解してもらうために周知期間が必要だというふうに言われたので、それはそういうこともあるかもしれない。だけれども、それは何もこの自己信託だけに限った話じゃなくて、ほかのものにも同じことは言えるわけですよね。今、安心であるということを周知するというふうに言われたわけですけれども、私、これはちょっと変な気がしますね。

 私が言いたかったのは、一年間かけて勉強しても、本当にまずかったら法律も改正しなきゃいけないかもしれない。そうしたら、これは一年間なんか待っていたって全く意味のない規定かもしれない。本当はもっとこれ、一年間待っている間じゃなくて、三年間ぐらい。法案審議で大変口うるさい野党がまたぎゃあぎゃあ言ってなかなか成立しないかもしれない。そういう意味でいったら、この一年間というのは、私は何のための一年間なのかなというのが本当にわからないんですよね、正直言って。

 先ほど来言われた税制の話、会計の話。いみじくも、施行日は公布の日から一年六カ月ですよね。皆さん方が考えておられたのは、多分、うまくいけば六月ぐらいに成立して、それで一年六カ月といったらこのぐらいだなと。

 今成立したら、一年六カ月となると、大体、税制改正が二回分できるんですよね。それだったら、僕はこの一年六カ月の間に十分な対応ができるんじゃないかと思うんですよ。いまだに一年間必要だという理由がよくわかりません。

 そんなに自信のない制度だったらやめてしまえ、自信があるんだったらこの一年六カ月の間に必要な会計制度、税制制度をしっかりやればいい、私はそう思うんですけれども、どうですか。

寺田政府参考人 もちろん、私どもとしては、関係省庁と十分な連絡をとりまして鋭意努力をするつもりでございます。しかしながら、やはり法案を提出する際の議論からいきますと、これは相当に努力をしないとなかなか御疑問を払拭できないかなと考えるところでもございます。私どもといたしましては、この期間を与えていただいたということで努力をしたいと思っております。

平岡委員 三月にそういう指摘があって、こういうふうに法律が非常に美しくない姿で附則の中に入ってしまいましたけれども、それから半年以上たっているわけですね。この半年間の間にこの自己信託についてどんな弊害があり得るというふうに、半年以上の間に勉強した結果として、国会も大分長い休みが続きましたから、多分一生懸命いろいろ勉強されたと思うんですけれども、どういうことが出てきましたか。

寺田政府参考人 現在の私どもの努力というのは、まずこの法案を通していただくために十分な御理解をいただくところでございますけれども、先ほど来いろいろな御意見がございますように、この制度をどう使われるかということについて、なお私どもの努力が十分でないという感じはいたしております。

 先ほどから委員にはいろいろ御指摘をいただきましたけれども、しかし、この制度を使うだけの十分な素地というのは既にあり、そういうことについて、あと残された問題を十分に検討してまいりたいと考えているところでございます。

平岡委員 何かこれ以上議論しても仕方がないような状態なのかもしれませんけれども、どうも与党の審査というのは、そんなに深く、ずっと全体を改正していくようなことはなかなかできなくて、表面的に一年延長したり、三年後の見直し規定を入れたり、政令で何か除いたりという程度のことをされるのかもしれませんけれども、やはり本質的な議論というのがちょっと足りないんじゃないかなと。

 そういう意味においては、やはりこの信託法案も、こういう与党の方々が持っておられる懸念が払拭できる状態になって初めて出してくる、あるいは、払拭できるような基本的な中身に変えて出してくる。例えば、先ほど言った目的信託が何か不安なら、目的信託を限定して、悪用されないような仕組みにしてから出して、しばらく使ってみたら、ああ、こういう点はこうすればいいな、こういうふうにするんだというふうになったときに初めて、今度は一般的なものにしていくとか、そういうことを立法者としてやはり考えるべきだと思いますね。

 その点をまず指摘させていただいたところで、ちょっとこれは自己信託の関連で聞いておかなければいけないかなということで聞いておきますけれども、先ほど信託業法の話を申し上げました。条文的にいうと、信託業法の五十条の二のところですね。自己信託に基づいて行われる信託行為についての特例みたいな話になっています。ここで、「信託の受益権を多数の者が取得することができる場合として政令で定める場合には、」こうなっていまして、その多数の者というのを政令で定める仕組みになっていますよね。

 この政令で定める人数というのは、何人を考えているんでしょうか。

畑中政府参考人 お答えいたします。

 これにつきましては、そもそも自己信託は、多数の受益者が生ずる場合、これに業規制をかけるということで、この多数を幾らにするかということは政令上規定をするということ、御指摘のとおりでございますが、現状ではまだこれこれということを決めたわけではございませんが、委員も御承知のように、証券取引法上、現在は金融商品取引法、これにおいて、一定の有価証券に関しては五十人を公募、私募の基準としているという規定がございます。こうしたことも参考にしながら、受益者の保護に欠けることのないように、この政令の内容を検討してまいりたいと考えております。

平岡委員 この議論も、先ほど冒頭にありましたように、政令事項というものがどういうふうに定められていくのかという資料を出していただいた上で、その点についての検証をしていきたいというふうに思うのですけれども、ちまたでは、大体五十人と書かれるのではないだろうか、こういうふうに言われているわけであります。

 そうすると、五十人ということになると、現在の債権流動化の相当部分が、登録、ここでは、五十条の二は、五十人以上の人が受益権を取得するような場合には登録しなければいけないということで、登録制で管理していこう、そういう仕組みになっているわけですけれども、五十人未満であれば、そこは業法は係らないということになってくるわけですね。そうすると、その部分については信託業法の範囲外で行われてしまうというような問題が出てくるというふうに思うわけですね。

 五十人だと、いろいろな人がいるから非常に微妙なケースだとは思うんですけれども、そういう五十人未満であれば信託業法の適用を受けない形で、つまり信託業法における登録を受けない形で行われるということについては、何か問題はないですか、どうですか。

田村大臣政務官 今言われました点につきましては、外形上多数に見えなくても、例えば自己信託が繰り返し設定される、そういう場合は、それを合計したものを、多数とみなされる場合はしっかり多数に適用していきますし、また信託受益権が分割される場合ですね、それもしっかりその分割された個数も含めて多数に適用するようにしていきますので、できる限り業法に適用される範囲でしっかりおさまるのではないか、そういうふうに考えています。

平岡委員 今政務官が答弁されたことはどこに書いてあるんですか。

畑中政府参考人 法律の五十条の二に政令がございますので、その中で、今政務官がおっしゃいましたように、分割でありますとか、あるいは頻繁に繰り返すというようなことで実質的に多数になる、そういった潜脱が起こらないように規定をしてまいりたいと思っております。

平岡委員 いみじくも言われたように、政務官が多分説明してもらって答えられたんだと思うんですけれども、その中身というのはどこにも書かれていないんですよね。これから書かれるんですよ。これから政令で書かれる。だから私は言っているんですよ。政令事項というのがどういうことが書かれるかしっかりと示してもらわない限りは、この法律のままでいいかどうかというのはわからない。

 私がさっきから言っている、五十人未満であればこれは大丈夫だと言えるんですかという話について言えば、いや、政令とは言わなかったけれども、こんな考え方で運用してまいりますから大丈夫です。でも、そんなことどこに書いている、どこにも書いていない。だから、政令で書かれるというのなら、やはりちゃんとここは政令を、どんなものが書かれるかということを示していただいて、それで我々としてはしっかりと法案審議をさせていただきたいというふうに思いますね。

 これは、政務官はこの業法についてだけの話でありますから、まず政務官にちょっと答弁をしていただいて、その後、全体的な話として大臣に答弁をしていただきたいというふうに思います。政令で書こうとしていることについてちゃんと示した上で国会審議をやっていただきたいということ。

田村大臣政務官 政令の内容につきましても、できる限り審議していただけるように、できる限り出していきまして、協力させていただきたいと思います。

長勢国務大臣 この議論、よく法案審議のときにある議論であります。物にもよりますけれども、今聞かれても方針も決まっていないものもありますし、それはそのように申し上げますし、またわかる範囲のものは御相談申し上げるという姿勢が大事だと思いますので、よろしくお願いいたします。

平岡委員 大臣のおっしゃるとおりだと私も思いますけれども、政令で現在の段階で示せないものもある。だけれども、では、我々としてそれを受け取ったときは、示せないのはわかるけれども、これがよく示されない限りは、法案でこのままでいいのかどうかということを我々として判断できないという場合も出てくるわけですね。だから、法案審議をしっかりとしていくために、必要だと思われるものについてはできるだけ出していただいて、我々は、そういう内容を踏まえながら法案の中身を、適否を判断していく姿勢が必要だというふうに思います。

 きょうは中身の方に入りまして、まだ条文審査ができなかったので、これから、大変申しわけないんですけれども、いろいろと疑義のあるところがたくさんあって、結構、国会でどういう答弁をしているかというのが、後で法律の解釈をしたりとか、運用のときに大変有効なんですよね。

 私も法令審査をするとき、あのとき国会答弁でどういうふうに答えているんだ、こういうことで確認をしたことも何度かありますので、ぜひともこの国会審議、冒頭言いましたように、この信託法というのは民法とか刑法のように非常に重要な法案、だからこそ、一条というのがあんなに簡単にしか書いていない、こういう法案ですから、しっかりと議論していきたいというふうに思います。

 こういうことで、大体時間が来たようでございますので、きょうの私の質問はこれでおしまいにさせていただきたいと思います。以上です。

    ―――――――――――――

七条委員長 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として法務省大臣官房長池上政幸君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

七条委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

七条委員長 次に、保坂展人君。

保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。

 本案に入る前に一点だけ、現在の新聞紙面をにぎわせております水谷建設事件の福島県ルート、この事件、いろいろ多様ですけれども、最近の報道によると、木戸ダムでしょうか、平成十二年八月入札における前田建設の役割、この前田建設がチャンピオンということで指名をされる際の鹿島の役割等々が報道されています。

 そういえば、昔ゼネコン事件というのがあったなと。新聞紙面によれば、こちらの東建協、東北建設業協議会ですか、こういうようなものも現在も健在だ、こういうふうに語っている関係者もいるということですが、刑事局長にこれら現状を、別に捜査の細部についてお尋ねするというわけではないんですけれども、いわゆるこの談合の体質というものがまだまだ根強いというふうに私は感じるんですが、その点、いかがでしょうか。

小津政府参考人 委員御指摘になられました本件についての報道内容ということになりますと、これは現時点で私どもとして、その真偽も含めて、それを前提にコメントは難しいのでございますけれども、当然検察当局といたしましては、これまでにも談合に絡む事件をやっているわけでございますし、この談合問題に対するいろいろな御意見、御指摘というものは十分に承知していると思うわけでございます。

 本件等も含めた具体的な事案ということになりますと、あくまでも個別の証拠に基づいて厳正公平、不偏不党にやっている、こういうことであろうかと思っております。

保坂(展)委員 実は、この後、幾つか伺って、大臣に感想をいただきたいと思っていたのですが、ちょっと今中座されているようなので、法案の方に入ってまた戻る形で、ちょっと変則ですが、やらせていただきたいと思います。

 まず、この信託法が制定された当時、不健全な業者というのがかなりあったというようなことが記録にあるんですけれども、どういう事情だったのか、お答えいただけますでしょうか。

寺田政府参考人 概略申し上げますと、現在の信託法は、信託業法とともに大正十一年、一九二二年に制定されたものでございまして、大正十二年の一月一日に施行されたものでございます。これは、信託業法と全く同時に成立したというところに非常に大きなポイントがございます。

 もともと立案の当初は、一方では担保付社債信託法のようなものがございまして、信託というものが特別法によって一部運用されてはいましたけれども、反面、信託会社という存在がございまして、これは実際は信託をしているというより、不健全な貸金業をやっていたということがどうも実情のようでございますけれども、これに対する取り締まりという側面もありまして、本来の健全な信託業に戻そうということで信託業法が企画されて、しかし、大もとの信託法がなくて、信託業法の取締法だけがあるというのもおかしな話なので、それではということで急遽信託法をつくった、こういう制定の経緯がございます。

 今申し上げましたように、不健全業者というのは、私どもの承知している範囲では、高利貸しの方々のように見受けられるわけでございます。

保坂(展)委員 信託業法が規制法として不健全業者、こういった人たちが、かなり前ですけれども、暗躍していたということに対する規制としてでき上がって、信託法がそのうちにできるという経過を話していただきました。

 きょうは野党の質疑で、各委員からもいろいろと疑問点が出されました。民事局長自身も参加をされてきた法制審の信託法部会委員の構成、こちらの方が公平だったのかどうか。この点について、ちょっとメンバーを見ますと、例えば三井住友銀行の方、ドイツ証券の方、中央三井の方、住友商事の方、オリエントコーポレーションですか、大体五人ぐらい金融機関関係者が入っていらっしゃって、学者の方四人、そして弁護士が一人、法務省から寺田さんを初め二人というような構成で、今ここで議論になっているような、高齢者福祉にかかわっている方の代表であるとか、あるいは個人の側でいろいろなシチュエーションで、いわば今後想定される、今議論になっているような個人の代表、つまり、受益者保護の視点を代表して語ってくれるような、本来はそういう委員も加えて議論すべきだったんじゃないかと思うんですが、その点はいかがですか。

寺田政府参考人 おっしゃるとおり、法制審議会の中の総会におきましては、有識者の方が非常に多くおいでになるわけでありますけれども、部会の中の構成をどうするかというのは大変難しい問題です。

 と申しますのは、この部会は基本的に非常に法律論が中心になりますので、むしろ社会的なニーズあるいは使いやすさというようなことは、客観的な事実として、委員の方からお話しいただくよりは、外部情報として私どもの方でいろいろと調査をする、あるいは、そういう方の御意見を別な機会に伺うというようなことが多いわけでございます。

 それで、御指摘のとおり、いろいろなやり方もあろうと思っておりますけれども、この信託法の部会におきましては、商事信託の分野の委員、幹事ばかりにならないように配慮はいたしておりますが、学者の方、弁護士の方、法律実務家、そういう方が中心になられて、それに、先ほどおっしゃったような、経済界のこれを利用されている方で、実際の法律実務をおやりになっている方が入っておられる、こういう構成でございます。

 むしろ、先ほどもお話ししましたとおり、審議の結果、途中で試案をつくりまして、それを公にして、国民、社会のいろいろな方々の御意見を伺っているわけでございますが、そこでは機関投資家、それから高齢福祉の担い手の方々からも御意見を伺っているわけでございます。

保坂(展)委員 今ちょっと談合事件問題をやろうとして、大臣をお待ちしながら、今度はこっちの信託業の質問も次に大臣へ聞くというところになってしまったので、お待ちします。

七条委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

七条委員長 速記を起こしてください。

 保坂展人君。

保坂(展)委員 法務大臣がちょっと中座されていたので、今聞いたのは、次に大臣への質問なんですが、この法制審のメンバーにもいわば高齢者福祉の代表であるとか、そういう人が一人も入っていないので、その点はどうかということを今聞きました。

 意見は聞いているということですけれども、多分自民党の中でこの信託法は、いわゆる部会ですか、合同部会などで議論されたと新聞などに出ていますけれども、ライブドア事件、あるいはその後に起きた村上ファンド事件、こういったことで、規制緩和をいろいろよかれと思って企業の要望を受けてやってきたけれども、想定外という言葉がはやりましたけれども、そういう事態が起きてしまった。こういった風潮、規制緩和、いわばよかれと思ってやった政策だけれども、穴があっていろいろ事件が起きた、この二つの事件について、大臣の考え方、受けとめ方、いかがですか。

長勢国務大臣 規制緩和は、いろいろな議論の末、これからの日本の経済の活性化、その他の面からいいことと思ってやってきたことでありますので、それはそれとして評価されるべきものと思います。ただ、どんな制度でもそうですけれども、全くそれと関係なく自分のもうけのためだけにやるというようなことが起きがちでありまして、これは非常に許しがたいことですし、それがまして刑罰に触れるようなことがあれば当然厳正に対処しなきゃならないと思っております。

 そういう意味で、今後とも、制度をつくるときにはそういう問題が生じないように、できる限りの努力をしていかなきゃならぬと私は思っています。

保坂(展)委員 では、今と同じ点を民事局長に伺いたいんですが、いわゆる想定外という言葉がいろいろな形でことしはやりました。この法改正によって、いわば性善説によって立てば大変利便性が高まる、他方で、いろいろこれから指摘をしていきたいと思うんですが、一種の穴というか、思ってもみなかった角度、こういうことについて手当ては十分だったのかという点について、いわゆる想定外を想定したかということについて伺いたいと思います。

寺田政府参考人 私ども、法制審議会で議論をしている間は、いわゆる今委員御指摘になった想定外ということが人々の口に上るような事態はまだ起こっていなかったわけでございますけれども、しかしながら、この信託の歴史は、けさの冒頭にも申しましたように、非常に窮屈な制度に風穴をあけるというようなところからスタートいたしまして、本来のアメリカ、イギリスの制度の中では非常に融通のきく制度として使われてきているわけであります。

 その制度を日本にどう取り入れるかというのは、専門家の間でも大変に議論のあり得るところでありまして、おっしゃったように、一方では、これが融通無碍なだけに非常に想定外のことが起こり得るそもそもの法律の仕組みだということも十分に警戒しなきゃならない。他方、しかし、その非常に窮屈な法律の中に、こういうものを、人間に対する一つの信認ということを中心にしてでき上がっていって、それが機能していくことについては、非常に社会的に期待感が一方である。

 問題はそのバランスであろうということで、私どもも、一方では、今よりうんと使いやすくするべきである、他方では、しかし、例えば受益者の権利を中心に、もう少しこの制度を制度自体として合理的なものにしていこう、決して一方的な、受託者だけが使いやすい制度だということにはしないようにしていこうという観点で議論はしたつもりでおります。

保坂(展)委員 いつも寺田さんの話はとてもわかりやすいんですが、もう少しコンパクトに、わかりやすく答えていただきたいと思います。

 基礎的なところなんですけれども、自己信託ということですが、委託者と受託者が単独で成立をすると。これまでは、法によってこれが可能なのは、いわば遺言によって移動するような場合だったというふうに聞いていますが、なぜ自己信託、要するに、委託者と受託者が単独で、同一で構わないということが成立し得るのかということをお答えいただきたいと思います。

寺田政府参考人 すんなりわかりやすい説明になるかどうか自信がないのでございますけれども、もともとこの信託というのはすっきりと法律関係として割り切りにくいところがあります。と申しますのは、信託の設定自体で、権利を、財産を譲渡する際に、それが実質的には受益者のところに行く、しかし、形式的には受託者のところに行くという分離があるからであります。

 したがって、この自己信託というものも、単独という点をとらえて見れば、それは自分から自分に行くということで違和感がある。もっとも、例といたしましては財団の設立みたいなことはございますけれども、違和感がおありになるかもしれませんが、この実質を見れば、しかし、委託者から受益者のところに実質的な権利が移るということでございますので、法律としてそんなにむちゃくちゃだということはございません。ただし、普通の法律としては、すっきりわかりやすいということでもまたない。法律の専門家の間でも、非常にそこの性質をめぐっては難しい議論があるところでございます。

保坂(展)委員 わかりやすい答弁でしたね。なかなか議論があるということでした。

 週刊東洋経済という雑誌に、こんな事例はどうなんだということで幾つかありましたので、ちょっとそれを答えていただきたいなと思います。

 例えば、これは企業買収、A社がB社をねらっているという例ですね。株式を買い続けて、四・九%と、あと五%まではほんの少しというところまで達した。それを超えると大量保有報告の義務が発生するので、この一つの手段として、買い進む手段として信託宣言を使う。B社の株主に対して、信託宣言によって信託受益権を対価を払って購入、五一%を超えた時点で信託を終了して株式の現物を受領し、いわば相手に気づかれずに買収成功、こういうことはあり得ますか。

畑中政府参考人 お答えいたします。

 ただいまの御質問は、大量保有報告書に関する潜脱が起こらないかという御質問だと思いますが、これは大量保有報告書制度上、今金融商品取引法で規定しておりますけれども、これは実際の株券を持っている場合にとどまらず、今御指摘がありましたように、信託受益権、この受益権の内容というのは、信託終了時に株式の現物を受領する、こういった場合にもこの保有者に該当するという規定がございますので、今御指摘になったようなケースにおきましても、大量保有報告書の提出義務を免れるということはないと考えております。

保坂(展)委員 では、もう一つ、例えばPL法の責任逃れみたいなことが起きてくる場合があるんじゃないかという事例があります。

 A社という会社が新商品、新製品を投入した。しかし、この製品に考えてもみなかった重大な欠陥が発生をしたということによって、例えば健康被害を受けた、あるいは損害を受けた、こういった被害者の方が被害者の会をつくって責任追及に立ち上がった。しかし、新製品の開発、製造はもう既に事業信託化されていた。当該事業の資産、負債を上限とする限定責任信託が行われていて、受益権は投資家に発行されていた。A社の責任は、この場合だと重過失や悪意の範囲でしか問えないのではないか。PL法はもともと無過失責任、製造物責任を問う体系であって、この被害者の会の皆さんは思ってもみなかったこの事業信託という壁の前で、開発、製造に関する施設の範囲内での損害賠償請求しかできないのかということで立ちどまったというようなことは考えられないですか。

寺田政府参考人 これは製造物責任法の解釈の問題でございますが、仮に今のような受託者がいたといたしましても、それは同法の二条三項の「製造業者等」に該当するので、故意、過失を問わない、いわゆる無過失責任を負うということはそれほど難しくない議論ではないかなと私どもは考えております。

 なお、仮に自己信託が行われておりましても、その不法行為債権あるいはこの製造物債権もその一種である場合が多いわけでございますが、そういったものはもちろん、普通の債権でありましても、受託者の固有財産にも信託財産と同様に係っていける、債権者としては両方が責任財産と考えていけるというのが基本スキームでございます。

保坂(展)委員 具体的な事例を幾つか挙げていきたいという中に、事業信託ということを考えたときに、この委員会でも以前議論をしました、会社法制の中の会社分割とか営業譲渡であるとか、古くは民事再生法の中で、では雇用関係あるいは労使関係が一体どうなっていくんだろうかというようなことを民事局にいろいろお尋ねしていたということがあります。

 例えば、自己信託と事業信託を組み合わせることによって、そういう状態で倒産していったときに、働いている労働者の労働債権の請求権の範囲がどのぐらいになるのか。社内預金などは一体どうなってしまうんだろうか。これまでの議論では、労働債権は優先債権であるということで保護の網がかかっていたはずなんですけれども、今回、これはどうなるんでしょうか。

寺田政府参考人 御指摘の問題は自己信託の問題として承りますが、会社が事業の一部を自己信託する、これは基本的には、再々申し上げておりますとおり、財産を譲渡し、かつ、債務を引き受けるという形になるわけでございますけれども、これがそのまま委託者兼受託者として事業を遂行するということになるわけでございます。したがいまして、そのこと自体で、使用者たる会社とそこで働く労働者の間の従前の労働契約には何の影響もないはずでございます。

 労働者が会社に対して有している労働債権、今社内預金もおっしゃいましたけれども、そういう債権については、労働者の地位が変わらない以上全く変化はないはずでございまして、同様に、受託者が倒産した場合においても、自己信託がされている場合とそうでない場合とで労働者の有する労働債権の及ぶ範囲について変化はない、こうお考えいただいてよろしいかと思います。

 なお、自己信託がされていましても、労働者の賃金債権の引き当てとなる財産が信託財産に限定されるというわけではないことは先ほど御説明したとおりでございますけれども、この場合にも、労働者の同意なく労働者の賃金請求権の引き当て債権が信託財産に限定されることは、いずれにしてもございません。

保坂(展)委員 そういう答弁なら安心できるという、答弁の中身としてはそうなんですけれども、実際のところ、労働法なども余り知らない、適用除外されているといいますか、そういう例えば請負労働であるとか、さまざまな形で、企業が自由自在な形で事業を展開している。

 そしてまた、自己信託による事業信託がなされていったときに、やはりいろいろ不安な点があるというふうに思いますけれども、今お答えいただきましたけれども、これは雇用関係ですね、今民事局長がお答えになったような労使関係や、あるいは、では労働組合があった場合に、その労働組合と会社の間で例えば紛争があって、その労働委員会で係争中であったとか、あるいは裁判中であったとか、いろいろなことが考えられるわけですけれども、その際にこのスキームで事業が信託をされていく、その際にいわば会社自体が抜け殻になってしまって、どこと交渉したらいいかわからないというようなことが起きないという答弁だったと思うんですが、そういうことを十分想定したり一応考えての提案なんでしょうか。その点、いかがですか。

寺田政府参考人 もちろん現実には、倒産そのものというよりは、倒産に関連するいろいろな問題で、全く機能が落ちてしまうということはあり得るわけでございまして、私が申し上げているのは、法律関係として労働者の地位には全く影響がない、そのことを前提として労働組合も、しかし、労働者の方も権利を主張されて、十分にそれに対抗していけるんだということを申し上げているわけでございます。

保坂(展)委員 この自己信託による事業信託というのは、別に制限はないんですよね。つまり、ある会社が、幾つかの事業部門があって、これを全部、例えば、仮に全部自己信託で事業信託をかけていくといった場合、そもそもの会社そのものは抜け殻になってしまう。こういった抜け殻になってしまっているような会社に法人格としての何か社会的な有用性とか意義があるのか、あるいはそういう事態はあり得ないんですか。その辺を教えてください。

寺田政府参考人 今おっしゃられたのは、一面では大変難しい問題ですが、しかし、これはこの自己信託に限らずあり得ることです。つまり、会社が自分の事業というのを実際はいろいろな形で運営していて、本体の会社には資産は形の上ではあるけれども、それは会社の大がかりな運営というようなことを支えるにはいささか貧弱だということは、これは今も会社法制上許されていることでして、それを自己信託だからおかしいということはないわけでございます。

 しかし、会社自体がそういうことを行えるかどうかというのは、これは会社法制の問題でございますので、むしろそちらの方で問題にすべきところでございますけれども、しかし、今おっしゃった範囲で、全く抜け殻というのは多分いささか比喩的過ぎるのではないかと。つまり、やはり親会社としての支配というのが及んでいるのが通常の形態ではないかなというように私としては考えております。

保坂(展)委員 だから、最初から想定外の想定をしていたんですかということをお聞きしているんですけれども、これは会社法があり、あるいは労働法があり、そういう中で、これまでの日本社会の雇用環境、あるいは会社の運営ということとまた別次元のところで、この信託法の自己信託による事業も信託できるということは、例えば、会社法制上とのかみ合わせというか、どういう関係になっているんですかね。会社法制上どういう状態であろうと、事業信託はできるんですか。

寺田政府参考人 会社のどのような形態、例えば今度新しい会社法によりますと、原則は株式会社でございますけれども、そのほかに合同会社もございますし、株式会社の中にも閉鎖会社、公開会社がございますが、これが自己信託をできる対象としては、別に会社の規模、形態は問わないものでございます。

保坂(展)委員 一般論で、労働組合の方は主張をしてもらって結構ですといっても、これはもう見たこともないような制度がいきなり始まって、いきなり、いや、もう信託は終わりましたよなんということになったら、かなりの混乱があるのかなということを想定します。そこについては、またもう少し深めてやりたいと思いますが。

 例えば、自己信託と事業信託の組み合わせで、収益性の高い事業などを切り離して利益を還元しないなど、さまざまな形の、今やりとりをしている事柄なんですけれども、国税庁にも来ていただいていますので、この信託法改正後の自己信託の事実などをなかなか表に出さずに、例えば贈与税などを逃れる者に対して、何か対策を具体的に考えておられるでしょうか。

加藤政府参考人 今御指摘の、今回の信託法によっていろいろな類型の信託がさまざまな活用が図られるということになると承知しておりますが、その場合、意図的に信託を利用して租税回避を図ろうという者に対しては、これは自己信託であるか、あるいは受託者が委託者以外の第三者である信託であるかにかかわらず、国税当局としては、やはり資料をきちっと収集する。例えば不動産登記であるとか、いろいろなあらゆる機会を通じて有効な資料情報を収集するとか、それから支払い調書制度を活用する、こうしたことで、私どもとしては課税関係の有無の事実をとにかく追求していく、これが私どもの使命だと思っております。

保坂(展)委員 では、ちょっと残りの時間、大臣もまた着席されていますので、最初に戻って、談合の福島県の問題について続けたいと思います。

 福島県で前知事が逮捕されたり、その弟の方がいろいろ活躍をされていたという中で、またもや談合の構造というのが報道されているわけですね。先ほど刑事局長にある程度答えていただきました。

 ところが、福島県というとどうだったかなと思って、私、この委員会で、この春、法務省の刑務所の工事とか入管の工事、つまり法務省の工事というのはどうなっているのかなということでお聞きをしたら、どうも、当時の防衛施設庁のいわば落札率というんですか、これが九六・六%だったんですが、それよりちょっと上回っていたんですね。かなり高い数字が並んでいた。

 今伺いますけれども、これは平成十五年度でしょうかね、福島県の福島刑務所及び福島刑務所支所の公開競争入札が行われていると思います。その際の予定価格と落札された価格、そしてそのパーセンテージ、受注した企業、官房長、お願いします。

池上政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねのうち、福島刑務所の庁舎及び処遇管理棟の新営工事、これは建築工事でよろしゅうございますね。建築工事につきましては、平成十五年八月二十七日、一般競争入札により実施がなされておりまして、予定価格は四十七億八十五万円、落札価格は四十三億八千九百万円、したがって落札率は九三・三七%でございます。落札業者は鹿島、五洋、りんかい日産特定JVという共同企業体でございます。

 次に、福島刑務所の庁舎及び処遇管理棟の新営建築工事につきましてお答え申し上げます。

 この工事は、平成十五年八月二十八日、同じく一般競争入札により実施されたものでございまして、予定価格は三十一億四千四百七十五万円、落札価格は三十億一千三百五十万円、落札率は九五・八三%でございます。落札業者は前田、日本国土、佐藤特定JVでございます。

 以上でございます。

保坂(展)委員 法務大臣、新聞紙面で見て、何かどこかで見た企業名と地名だなと思って、きのう取り寄せてみたら、やはりこの鹿島が福島刑務所を受け、福島刑務支所を前田建設初めのJVが受けている。しかも、落札率が九三・三七%と九五・八三%ですか、かなり高い。

 さらに、国会でのやりとりをやっていたときも、実は法務省官房では入札をしていたんですね。その資料を持ってきてもらったところ、これはことしの三月六日、この議論をしている最中だったかもしれませんが、大阪入管の建設の工事で、これは落札率だけ言えば九五・六八%で前田建設工業が落札、ことしですよ。それから網走刑務所、これはことしの三月二十二日、落札率だけ言いますと九九・五%。これはハザマ初めJVですね。今、もちろん検察当局は、談合はいかぬということで厳しく捜査しているんでしょうけれども、仮に、それで訴追をされて、何か実刑を受けて、入ったところがまた談合でできていたというような話になれば、これは笑い話じゃないわけですね。

 私も、前回、春に質問したときにかなり資料をいただきました。まずそれを大臣に見ていただいて、一体何がここにあるのか、やはり談合体質というのがかなり幅広くあるんじゃないですか、日本全国。ゼネコン汚職があっても、また、東北の鹿島を中心とした構造がまだ残っているということが今事件でも問われています。これに対して、大臣の考え方、お願いします。

長勢国務大臣 談合等、こういう不正なものが行われるということは、言うまでもなく許されることではない。また、先ほど申し上げましたように、それがまして刑法に触れるようなことがあれば、直ちに厳正に対処しなきゃならないことだと思います。

 当省としても、そういう問題がないように日ごろから注意しておりますし、そういう情報等があった場合にはきちんと調査をしておるという経過でございますので、今後ともその方針でしっかりとやっていきたいと思います。

保坂(展)委員 この議論を私、予算委員会と法務委員会で二回やっているんですね。どうもその最中だったと思うんですね、この工事が最終的に落札されたのは。

 網走刑務所といえば有名なところで、昔あったところが今は観光地になっていて、別の委員会でも委員派遣で行きましたけれども、網走刑務所に収容棟がつくられる。ことしの三月、九九・五%はどうですか、どういう感想を持ちますか。いかがですか、大臣。

長勢国務大臣 数字が極めて類似しているということはそのとおりですけれども、きちんとした一般競争入札で行われたんだと思いますので、似ているなというのが実感ですけれども、おっしゃるように、だからどうという評価を軽々にするべきことかどうかは、ちょっとよくわかりません。

保坂(展)委員 大臣、これは数字だけじゃわからないんですよ、本当に。わかりません。

 ただし、いや、法務省は例外だよ、法務省の工事なんか、そんなことは絶対あり得ないんだ、だから調べる必要も見る必要もないというふうにお感じなのか、いや、聖域はないんだ、しっかり、きちっと見直してみようということなのか、どちらなんでしょうか。

長勢国務大臣 先ほど言いましたように、日ごろ注意しておると思いますし、また、そういうおかしげな情報があれば調査をきちんとしております。今までのところそういう話がありませんので、特に今調査をしなきゃならぬと思っていたわけではありませんけれども、もう少し私も状況を聞いてみたいと思います。

保坂(展)委員 ちょっと済みません、最後のところだけ聞き取りにくかったんですが、結論だけお願いします、もう一回。

長勢国務大臣 事務方から当時の状況等を私も聞いてみたいと思います。

保坂(展)委員 では、これで終わります。

    ―――――――――――――

七条委員長 この際、連合審査会開会に関する件についてお諮りいたします。

 ただいま議題となっております両案に対し、財務金融委員会から連合審査会開会の申し入れがありましたので、これを受諾するに御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

七条委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 また、連合審査会において、政府参考人及び参考人から説明または意見を聴取する必要が生じました場合には、出席を求め、説明等を聴取することとし、その取り扱いにつきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

七条委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次に、お諮りいたします。

 連合審査会において、最高裁判所から出席説明の要求がありました場合には、これを承認することとし、その取り扱いにつきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

七条委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 なお、連合審査会の開会日時等につきましては、委員長間で協議の上、公報をもってお知らせいたしますので、御了承願います。

    ―――――――――――――

七条委員長 次に、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 ただいま議題となっております両案審査のため、本委員会において、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

七条委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時二十四分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.