衆議院

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第8号 平成19年3月23日(金曜日)

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平成十九年三月二十三日(金曜日)

    午前九時三十三分開議

 出席委員

   委員長 七条  明君

   理事 上川 陽子君 理事 倉田 雅年君

   理事 武田 良太君 理事 棚橋 泰文君

   理事 高山 智司君 理事 平岡 秀夫君

   理事 大口 善徳君

      赤池 誠章君    稲田 朋美君

      今村 雅弘君    小野寺五典君

      近江屋信広君    奥野 信亮君

      後藤田正純君    佐藤  錬君

      笹川  堯君    清水鴻一郎君

      柴山 昌彦君    杉浦 正健君

      丹羽 秀樹君    馬渡 龍治君

      松浪 健太君    三ッ林隆志君

      武藤 容治君    矢野 隆司君

      保岡 興治君    柳本 卓治君

      山口 俊一君    石関 貴史君

      大串 博志君    河村たかし君

      田名部匡代君    中井  洽君

      横山 北斗君    神崎 武法君

      保坂 展人君    滝   実君

    …………………………………

   法務大臣         長勢 甚遠君

   法務副大臣        水野 賢一君

   法務大臣政務官      奥野 信亮君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    縄田  修君

   政府参考人

   (総務省自治行政局長)  藤井 昭夫君

   政府参考人

   (法務省大臣官房訟務総括審議官)         大竹たかし君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    寺田 逸郎君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           宮坂  亘君

   法務委員会専門員     小菅 修一君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十二日

 辞任         補欠選任

  河村たかし君     太田 和美君

同日

 辞任         補欠選任

  太田 和美君     河村たかし君

同月二十三日

 辞任         補欠選任

  清水鴻一郎君     小野寺五典君

  三ッ林隆志君     佐藤  錬君

  森山 眞弓君     丹羽 秀樹君

  保岡 興治君     馬渡 龍治君

  柳本 卓治君     松浪 健太君

  河村たかし君     田名部匡代君

同日

 辞任         補欠選任

  小野寺五典君     清水鴻一郎君

  佐藤  錬君     三ッ林隆志君

  丹羽 秀樹君     森山 眞弓君

  馬渡 龍治君     保岡 興治君

  松浪 健太君     柳本 卓治君

  田名部匡代君     河村たかし君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 戸籍法の一部を改正する法律案(内閣提出第五九号)

 少年法等の一部を改正する法律案(内閣提出、第百六十四回国会閣法第四四号)


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     ――――◇―――――

七条委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、戸籍法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として警察庁刑事局長縄田修君、総務省自治行政局長藤井昭夫君、法務省大臣官房訟務総括審議官大竹たかし君、法務省民事局長寺田逸郎君、厚生労働省大臣官房審議官宮坂亘君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

七条委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

七条委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中井洽君。

中井委員 おはようございます。民主党の中井洽でございます。

 一時間という時間をちょうだいいたしまして、今回出されました戸籍法の一部を改正する法律案を中心に、関連すること、あるいはまた、久しぶりにお時間をいただきましたので、法案そのものに関連はしませんが、法務行政関係、少し気になっていることを二つ三つ尋ねていきたいと考えております。

 私、予算委員会等ほかの委員会でも、もうほとんど役所の方は御遠慮いただいて、大臣でお答えいただいて結構だ、わからなかったらわからなくて結構だ、こう言っておりますので、私もずさんなことを聞きますから、大臣は詳しく御存じでありましょうから、お考えをお述べいただいて、議論ができれば、こう考えておりますので、役所の方は大半もうきょうはお引き取りをいただいての論議ということになります。御理解をいただきたいと思います。

 戸籍法といいますと、私は二つ三つ頭に浮かぶことがございます。一つは、戸籍のコンピューター化でございます。私、短い期間、法務大臣を務めさせていただきましたときに、この法案が衆議院から参議院へ行きまして、大変もめて、成立が困難だ、こういう状況下であったことを懐かしく思い出しております。当時の自民党さん、野党でございまして、本当にむちゃくちゃというか厳しいというか、国会での運用で、細川、羽田内閣は毎日、苦心惨たんの国会をやっておりまして、私もこのコンピューター化の法案、何とか御理解をいただこうということで、参議院のいろいろな方々のところへ御説明に上がったものでございます。そのときに言われましたのが、中井さん、コンピューターはいいけれども、あなたのこの洽という字はコンピューターに入るのか、入らないだろう、こうさんざん言われまして、ちゃんと入るようにいたしたという思い出もございます。

 その後、十年少し経過をしました。町村合併もかなり過般大きく行われましたが、そういう中でこの戸籍のコンピューター化、現行、どれぐらいの進捗率であると大臣は御承知でしょうか。

長勢国務大臣 法務大臣の大先輩である中井先生から御質問いただいて光栄に存じます。

 今の御質問でございますが、御存じのとおり、平成六年に導入を開始して以来、市町村においてコンピューター化を進めていただいておるわけでございます。平成十八年三月三十一日現在の戸籍のコンピューター化率は、市町村別に見ますと、六三・五%の市町村でやっている。そのコンピューター化された市区町村の本籍人口率は、約六八・四%ということになっております。

 最近の状況は、本籍人口率まではまだ集計は終わっておりませんが、市町村別で見ますと、平成十九年三月二十二日現在、直近では、市町村別のコンピューター化率は、約六八・三%となっております。

 今申しましたように、現時点での本籍人口率について把握しているのは、先ほど申し上げました十八年三月三十一日の分、つまり六八・四%という状況でございます。

中井委員 人口でどのぐらいコンピューター化できているのかというのは、きのうお尋ねしましたら、そういう統計がありませんで、事務局、大急ぎでやっていただいたようでございます。大変ありがとうございます。

 しかし、この戸籍という大事な問題を法的に決めるのは法務省、やるのは市町村だ、こういって、財政的バックアップも含めてせずに、ただただ見ているというところは少し違うだろう、しりをたたくというのはなかなか難しいことかもしれませんが、これだけのコンピューター時代に、基本たる戸籍、コンピューター化がされていないというのは私は残念なことだと思っております。できるだけ早く対応していただくように要望したいと思っています。

 同時に、今回の、原則公開から制限するという法律、この戸籍のコンピューター化が完成したときに、この公開あるいは制限、あるいは今の公開の方法でいいのか、コンピューターで請求して、コンピューターでとることができるようになるのかとか、そういったことについて、法務省として頭の中に考えておられるのかどうか、お尋ねをいたします。

長勢国務大臣 コンピューター化の進捗に合わせて、戸籍のいろいろな問題のやり方については、これから検討を進めたいと思っております。

中井委員 世の中ありとあらゆる面でコンピューター化が進んでいるわけでありますので、ぜひ、この戸籍のコンピューター化を督促されますと同時に、対応をお考えいただくようお願いいたしておきます。

 お尋ねしましたついでにと申し上げると失礼ですが、法務局の統廃合、そして地籍のコンピューター化、これもお進めになっておられると思います。どれぐらいの進捗率で、いつ完成されるのか、お答えをいただきます。

長勢国務大臣 今、地図のコンピューター化を進めておるわけでございます。

 このコンピューター化は、地図情報の適正な維持管理及びその内容の充実、国民への行政サービスの向上等を実現するために、登記所が保管する地図及び地図に準ずる図面の電子化を図り、このデータを地図情報システムに登録するものでございますが、平成十八年度から平成二十二年度までの五年間ですべての登記所に導入する予定にいたしております。

 現在の進捗率でございますが、面積ではまだ把握をいたしておりませんけれども、登記所の庁数では、全体の登記所の約一六%の地図がコンピューター化されておるという状況でございます。

中井委員 このコンピューター化も、OBも使って一つ一つコンピューターに入れていくという作業、大変膨大な量になると聞いておりますし、バックアップセンターをどこへつくるかとか、難しいこともあるようでございます。

 先ほどの戸籍のコンピューター化も、本籍を含め、名前も多様でありますから、ローマ字のように簡単にいきませんから、時間はかかるだろう、しかし、一度仕上げれば大変な効果を上げるものだと私は考えております。これもぜひ期限内にきっちりと終わって、コンピューター時代にふさわしい法務局、法務行政、こういったものが行われるように御努力をいただきたいと申し上げます。

 それから、戸籍でもう一つ思い出しますことは、大臣に就任いたしまして、私は、法務行政というのはほとんど知らずに大臣に就任したものですから、いろいろなレクチャーを受けました。長勢先生は御専門でいらっしゃるから、そう大したレクチャーはお受けになっていないと思いますが、法務大臣の任務あるいは職責というものを聞かされたと思うのでありますが、その一番に何が載っておると御記憶でしょうか。

長勢国務大臣 一番というのは、レク資料のですか、大臣レクの最初の……(中井委員「大臣の任務表とか職責表みたいな、説明してもらったときの」と呼ぶ)いや、ちょっと正確に今覚えておりません。申しわけありません。

中井委員 私、説明を受けましたときに、死刑の執行かなと思いましたら、一番は、何と皇統譜、天皇家の系図をお預かりする。これは、法務大臣、法務省の一番の、最初に書かれている任務でございます。

 どこにあるか、御存じですか。どこに預かっているか。秘書官、そんなこと教えなくていいんだ。そんなこと知らなくたっていいんだよ、別に。御存じですかと聞いておるんですから。

長勢国務大臣 所管であることはそのとおりでございまして、職責上、一応拝見をさせていただきましたが、あり場所等については余り言わないようにと言われたように記憶をいたしております。

中井委員 私、意外としゃべっていますが、ぜひごらんになって、どこにお預かりしているか、ぜひ御記憶におとどめいただけたらと思います。

 天皇家の戸籍だけは法務省で、あとは市町村の窓口、こういう形になっているわけでございます。そういうことを含めて、法務大臣が閣議の席では、円卓のところでは総理の隣、ナンバーワンという形のところにいらっしゃることも含めて、戸籍を預かるというのは非常に大事な法務省の仕事だ、こういうふうに私は改めてその当時認識をいたしたものでございます。

 世界じゅう、日本のようにこういうきちっとした戸籍を持っている国というのは、もう既に議論があったと思いますが、珍しいことであります。同時に、僕は、極めて煩雑だ、複雑だ、こういうふうにも思っております。これからの改革の世の中で、この戸籍のあり方というものも、先ほどのコンピューター化も含めていろいろな議論をすべきだ、こう考えています。

 その中の一環として、どうしても頭の中に落ちてこないのが本籍ということでございます。本籍というのはなぜ要るのだろう。名前と住所でどうしてだめなんだろう。本籍が必要だという理由を、大臣はどのように御説明をされますか。

長勢国務大臣 先生ですら疑問に思われるくらいですから、非常に何かわかりにくい点があるような気もしないわけではございません。そういう意味で、私も説明を聞きましたので、教えてもらったことを今答弁させていただきます。

 本籍とは、人の戸籍上の所在場所をいうということになっておりまして、新たに戸籍を編製する場合には、必ず本籍が定められ、その本籍と定められた場所の市区町村の長において戸籍を編製し、その市区町村役場に戸籍が備えられる。そして、戸籍の記載に係る届け出がどこの市区町村にされても、すべて本籍地に送付され、そこで戸籍の記載がされるということになっております。

 このように、本籍は、戸籍の所在する市区町村を明らかにする機能を有するものでありますが、戸籍の筆頭者の氏名とともに、当該戸籍を特定する役割も持っており、また、戸籍簿を編綴する順序のもとともされております。そして、個人を特定し、その同一性を認識するには戸籍が利用されるのが通常でありますから、戸籍を特定する要素である本籍は、個人を特定する重要な役割を果たしておるわけであります。

 戸籍の本籍がなくなった場合には、以上のとおり、戸籍の特定ができないことになり、個人を特定するという戸籍の重要な役割を十分に果たせなくなることに加え、戸籍簿の整理が適切に行われず、戸籍事務の処理に支障を来し、また、戸籍の謄抄本等の請求の際にも、利用者に不便をかけかねないなどの問題が生ずることになるというふうに理解をしております。

中井委員 お読みをいただいたんですが、大化の改新の前ぐらいから日本はこういうのをきちっとつくって、江戸時代はどうしていたんですかね、お寺にあったり、町の会長というんですか、そういう人のところにあったのか、やはりお寺にあったのか、わかりませんが、明治になってこういう形でつくられて、租税、特にお米あるいは徴兵、こういったことに活用されてきたんだろう。世界一緻密で、精緻なものであることは間違いありません。

 アメリカやイギリスの推理小説を見ておりますと、他人に成り済ますのは実に簡単。出生証明をとるんですね、年格好が同じぐらいで死んだ人の。出生証明をとって、それをもとにパスポートの申請やいろいろなことをやって他人に成り済ますなんという手口がありまして、こんなに簡単にいくのかなといつも読みながら感心しているんです。そういう国もあれば、いろいろなやり方をやっていらっしゃる国もあるが、日本みたいに住民票と戸籍と二つあって、極めて精緻にやっているというのはないんだろう。

 本籍をどうして書くのか、これもまたわからないことでございます。私らは選挙に立候補するときに本籍地まで書かされる。なぜだろう、何の必要があるんだろう。ありとあらゆる書類に本籍というものを日本の公の機関はお求めになる。したがって、今回の法改正でも、八士業の皆さん方は公の書類をつくるについてこれを請求することができる、こういうふうになっているわけであります。しかし、こんなに本籍地というのは要るのかと僕は常日ごろ思っております。この辺をもう少し世界の流れの中でお考えいただく。さっきの、コンピューター化なんかでも、本籍というのがなかったらもっと簡単だ。

 どうしてそう身分関係を立証するものが要るのか、ここのところも僕はよくわかりません。民法上いろいろあるのでしょう。だけれども、世界の他の国々は、そんな親子関係やら子供関係やら書かない住民票や何かの中で法制度を維持しているわけでありますから。日本が世界一人口が多いというわけでもありませんし、十分やれるのじゃないか、こんなことをふわっと思っているんですが、この点について、文章じゃなしに、大臣個人としてどんな感想でありましょうか。お答えをいただきます。

長勢国務大臣 世界の中で日本の戸籍制度が非常に精緻にできておって、それが国民に親しまれ利用されておるというのはそのとおりでございます。同時に、今先生のように、理論的に本籍地というのが何で必要だという話になりますと、一般の方々には、不便だと思ったり、要らないと思う人もたくさんおられると思いますし、正直言って、私自身も何でかなという感じはいたしましたけれども、説明を聞いてみると、先ほどの説明は多分先生も余りよくわからないという感じだったのではないかと思いますけれども、やはりこの戸籍制度を持っておる中で、個人を特定し、同一性を認識するという上で非常に役割を果たしているんだなということを私も理解したわけでございます。

 同時に、本籍を書くということについて、一部にはいろいろな御意見もないわけではないと承知をしておりますけれども、多くの一般国民は、これを直さなきゃならぬというような感じでおっしゃっている方はそんなにもおられないのではないかなという意味で、今後いろいろな議論はまた行われていくのでしょうけれども、今急にどうという議論をしなきゃならぬ状況ではないのではないかなと私は思っております。

中井委員 急にどうこうするという議論を僕はきょうはやっているつもりはありません。ただ、それほど精緻に一生懸命、世界で唯一の例みたいな、台湾や韓国は日本の統治時代のことがありますから続いているのかもしれませんが、こういう国しかやっていないのをずっと続けておる。その割には、その大事だという本籍は、日本国内であったらどこへでも移せるんですね。移せなくすればいいのに移せるんですね。これもまたおかしなことだ。私らみたいに移さないと四代、五代と本籍のままだあっと、膨大なことになるのじゃないかと思ったりもいたします。昔を懐かしむのにとってみるのにはいいのかもしれませんが、そこら辺は少し今の時代で考えていくべきことがあるのじゃないかな、こういう気がいたします。

 私どもも少し長期的なことで勉強してまいりますが、法務省におかれましても、守る一方ということではなしに、時代時代にふさわしい制度というものをどうするか、一度御議論をいただいたらどうだろう、こんなふうに思っております。

 それでは、法案に少し入らせてもらいますが、先ほど申し上げましたように、今回は公開制度から制限という形で法律改正が提案されました。私どもの党も賛成するんだろう、私も別に異論はありませんから、余り細かく幾つかの点で議論をいたしませんが、どうしても腑に落ちないところがございますので、この点で議論をしたいと思います。

 これは、八士業の方々が、例えば私なら私の戸籍謄本をとった、そうすると、だれだれさん、こういう業種の方が中井さんの戸籍謄本をいつ幾日とりましたよという通知は私にいただけるんですか。

長勢国務大臣 現在の法律においては、戸籍の謄抄本等の交付請求が第三者からされた場合に、請求された戸籍に記載されている者に対して通知をする制度というものはございません。

 この点につきまして、交付請求書の開示の問題について、パブリックコメントにおきましては、戸籍謄本等の請求が今おっしゃった士業の方も含めて第三者からされた際、請求された戸籍の本人に対してだれが自分の戸籍謄本等を請求したかということについて通知をする制度を設けるべきではないかという意見も寄せられていたところでございます。

 しかしながら、法制審の戸籍法部会の審議においては、交付請求書についての情報の開示については、同部会においても、また、先ほど言いましたように、パブリックコメントにおいても、意見が分かれたということでありましたので、戸籍法の中に特段の規定は設けないということにされたところでございます。

 そのような審議結果を踏まえて、同部会においては、交付請求書の開示の制度をさらに発展させた形態である本人通知制度を設けることは適当ではなく、また、市町村窓口における事務処理上の問題を考えても実現の困難な制度であるというふうにされたところでございます。

 こういう理由から、戸籍謄本等の請求が第三者からされた際、請求された戸籍の本人に対してだれが請求したかを通知するということについては特段の規定を設けないということになりました。

中井委員 そうすると、八士業の方がだれかから御依頼を受けて私の戸籍謄本をとる、しかし、それは大半は交付されるけれども、私には連絡いただけない、それから、私の戸籍に同一で載っている者以外の一般の人が私の謄本を正当な理由でとる、それも私には知らされない、こういう御答弁であったと思うんですね。

 これがわからないんですね。その理由は、今お読みになった中では、戸籍謄本の請求の票を開示することが情報公開に合わない、こういうニュアンスの御議論の経過だというお話でございます。しかし、それがプライバシー、情報公開なら、戸籍だって情報だ。私の妻がいつ死んで、子供が幾つでというのだって、これは全くプライバシーでしょう、国会議員だから少々のことはいいですが。それはどんどこ出せるんだ、しかし請求した人がだれかというのは全然わからないというのは、僕はさっぱりこの発想がわかりません。

 市町村の窓口の事務が大変だ、こういうことでございます。年間四千万近い数があると聞かせていただいていますが、それは、当人に通知する料金も窓口でお取りになればいいのでありますから、別にどんなことはないと思いますが、総務省さん、いかがでございますか。そんなに面倒くさい作業でございましょうか。

 あるいはまた、ひょっとすると、条例等があって通知している市町村もあるのか。情報公開というそれぞれの地方自治体で決められている中に、戸籍は写させてもいいが、それを請求した人の情報は公開しないという、僕はそういう情報公開法があるというのは少しいびつじゃないかという気がするんですが、いかがですか。

藤井政府参考人 お答えいたします。

 住民票の写しも、今法務大臣から御答弁されましたが、戸籍抄本の交付請求の場合と同様に、だれか第三者が交付請求をした場合、そのお名前を仮に本人が知りたいと言っても、これは、一般的な情報の取り扱いに関する制度である個人情報保護条例とか情報公開条例とか、そういう手続にゆだねている市町村がほとんどであるというふうに承知しております。

 そこで、お尋ねは、情報公開なり個人情報保護法で、開示不開示の基準で、なぜ個人の場合は黒塗りにするとか一切出さないという仕組みにしているのかという趣旨のお尋ねかと思います。

 これは、実際は条例で決められていることなので、規定ぶりはいろいろありますが、ただ、基本的な考え方は、一般的に、情報公開条例にしても個人情報保護条例にしても、開示不開示は、基本的に支障のあるおそれのある情報以外は公開する、そういうつくり方になっております。ただ、その中で、個人に関する情報については、仮に公開された場合、非常に人格の尊厳とかそういう重大な権利利益にかかわるおそれが高いということで、ここは保護を厚くするという開示基準になっています。

 その保護を厚くするというのはどういうつくり方をしているかというと、大体、基本的に個人が識別される可能性がある、そういった場合は原則不開示にする、ただし、そうはいっても開示して支障のないような一定の場合、そういう場合は開示するという、いわば個人情報以外のつくり方と逆転させているところでございます。

 基本的にそういう考え方になっているんですが、実は、私どもも、住民票の写しの交付の請求のあり方を、ちょうど今改正法案を出しているところでございますが、研究会で検討されたことがあるんですが、そのときも、戸籍法の話と同様に、請求された場合、その人がだれかというのは通知してもいいじゃないかという意見もありました。ただ、その中での議論で、こういう住民票の写しの交付請求についてだけ特別に、だれが請求したかというのも、第三者も個人ですので、その場合の個人は特に開示するんだとか通知するんだという特段の制度を設ける必要性も現状ではないのじゃないかという意見がありましたし、あるいは国民の意見なんかの流れを見て、やはり引き続きその問題は検討すべきじゃないかという御意見もありました。ただ、大勢としては、現状ではやはり一般的な個人情報保護条例なり情報公開条例なりにゆだねるということでいいのじゃないかということで、私どももそういう制度設計にしております。

 それで、最後にお尋ねのあった、もともと戸籍法で御論議をされておられますが、住民票も同じでございますけれども、住民票も氏名、住所、性別なんかは公表するということになっている、これも個人情報じゃないかというようなことで、住民基本台帳法では一方で個人情報を出すという判断をしながら、第三者が請求した場合はその氏名を出さないというのは整合性を欠くんじゃないかという御指摘かと思います。

 そこは、一般的な情報公開法とか個人情報保護法の基準では、あくまで一般原則として決めているんですが、住民票の場合は、もともと正当な、例えば権利義務関係のある民民の関係において法律関係を遂行させるためには、住所、氏名、そういったものを法的に認証する必要性がある、そういう特段の政策的な必要性というものがあるがゆえに、氏名、住所、年齢、性別、そういうものを公表するということを一つの立法政策判断として判断している。

 それはどういうことかというと、やはり個人情報といったって、住民基本台帳法の世界では、むしろそういう氏名、住所、年齢、性別は公表した方がより利益が多い、そういう判断をしているということで、この住民基本台帳法で特別な扱いをしているということで、それについては公表するということになっています。一般法制としての情報公開条例、個人情報保護条例では、そういう特別の法律の立法政策判断がある場合はそれを優越しますということで、公表するという制度が維持されているというふうに私どもは認識しております。

中井委員 法務関係の議論というのは専門用語やらいろいろ飛び交いまして大変難しいので、よくわからないところもあるわけでございますが、要は、戸籍というのは公開だ、それから住民票も原則的にそういう公益のために公開だ、したがって、それをとったことを通知するということは、とった人のプライバシーがあって、情報公開でできないけれども、当人に知らせるというまではいかないという議論が勝った、こういうことのようでありますが、法制審やらいろいろな議論あるいはパブリックコメントなんかも半々であったように私は聞いております。

 例えば、弁護士さんが何か訴訟があって私の戸籍謄本をとる。私だって知りたいですよ、何で訴えられるのか。どうして私の戸籍謄本が要るんだ。お上というか公がおとりになるというのはまた別だろうと思いますが、民間人がおとりになる、これはやはり御連絡をいただくべきだと僕は思います。

 今度は、正当な理由があればという形に書きかえられる、今までは不当な理由で請求してはならないとなっていたけれども、正当な理由があればという形になる法律改正でございます。だから、それは第三者もそういう形の中で他人の戸籍謄本をとることができる。それは、とられた当人は、やはりプライバシーの侵害だと思うのは当たり前じゃないでしょうか。だから、それをわざわざ、本人、身分証明書といって確認するんですから、住所も書かせるんですから、これこれここの人がとりに来ましたよ、こうやって役所が連絡する、その連絡賃は請求した人にもらえばいい、私は何でもないと思うんですが、大臣、どうでしょうか。

長勢国務大臣 先生の言われたような御意見もあったりして、大変な議論をしたというふうに承知をいたしておりますが、おっしゃるように、意見が半々に分かれたという中で、時期尚早というか、情報開示通知制度までをまだ設ける段階ではないという法制審等々の御判断があって、今その法案を提出させていただいているところでございます。

中井委員 そういう議論があったということを強く御認識いただいて、法制審等にお伝えをいただく、あるいは民事局の中でも御議論いただく、こういうことを続けていただきたいと思います。

 ここに、「戸籍証明書等請求書」というのを、これはどこの市町村のかわかりませんがお持ちいただいてあります。これは、請求に来た人の名前、住所、その次に、請求する人の本籍等、こうなっておるんですね。さっき、本籍、氏名でインデックスみたいにして使っておるんだ、こういうお話でした。だけれども、例えば、私の戸籍謄本が要るという人がどうして私の本籍、番号を知っておるんでしょうか、これがわからない。行政書士さんあるいは弁護士さんは、私の本籍、番地まで知っておるわけがない。どうして本籍と名前でとれるのか、これがわからない。どうお思いですか。わからなかったらわからないで結構です。

長勢国務大臣 申しわけありません。よくわかりません。

中井委員 総務省さん、わかりますか。どうして、他人の本籍がわかっていて文書を書けるんですか。どうして書けるの。

藤井政府参考人 戸籍についてはちょっと所管外ですのでお答えしにくいところですが、住民票についてもやはり同様に、請求書の手持ちもありませんが、当然、第三者が請求されたような場合は、その氏名それから住所、そういったものは記載することが求められておると思っております。

 これは、一つは、今回の改正しようとしているところにもかかわるんですが、みだりに関係のない人が請求したりするということになりますと、住民票、これも個人情報ですが、これが本来正当でない人たちにも行き回る可能性があるものですから、やはり本人確認ということを厳しくしようとしております。少なくとも、請求……(中井委員「違うことを答弁しないで。どうして他人の本籍地がわかるのと聞いておるんだから、とる前に。それを教えてください」と呼ぶ)ちょっとそこは、戸籍法固有の話であればちょっと私の方から答弁……(中井委員「いや、窓口のことだろうと思うから。どうしてわかるの。見せておるわけ」と呼ぶ)ちょっと戸籍の方については私は正直申してわかりません。

中井委員 これは、私が法務大臣の戸籍謄本をとろうと思ったら、私の住所、名前を書くんですね。その次に本籍を書くんですね、大臣の。そして名前。それが要するに本籍地と名前で戸籍謄本がとれるインデックスになっている、こういうことでしょう。だけれども、何も知らぬ僕が法務大臣の本籍などわかるわけがないじゃないですか。これはやはり窓口で教えておるんじゃないですか。では、どうやってわかるんですか。わかるわけがないじゃないですか。これはどうなんですか。それは見られるからなんですか。

藤井政府参考人 今ちょっと確認したんですが、大体戸籍を請求する方は、別途、契約書等でいろいろ本籍なんかを把握していて、それをむしろ確認するために改めて戸籍抄本を求めるという場合が多いようでございます。したがいまして、認証された情報ではありませんが、第三者の方も、あらかじめこの方はここの本籍を持っているんだという情報を知った上で請求する場合が多いということだそうでございます。

中井委員 年間四千万のうち、大半は当人であり、戸籍の同じ面に載っている家族であり、あるいは係累者であり、あるいはまた土地を買ってもらって登記をしてもらうとか、いろいろな当人からの依頼で当人の戸籍謄本をとるというのも多いんだと思います。しかし、訴訟をする相手方がやってくるということもあるだろうし、それからやはりいろいろな目的で人の戸籍謄本をとるという人も、これは三千九百万通ぐらいの中にたくさんある。その人はどうやって本籍地の番号を知るんだと僕は言っておるわけですよ。知っているのが当たり前じゃないとこんな書類は出せないじゃないですか。当人の今の住所と名前だけで調べてくれといって調べて本籍地がわかるというなら、話はまた別ですよ。ちょっとおかしな仕組みじゃないでしょうか、僕はそう思って見せてもらうんですね。

 だれかわかる、後ろの人。

長勢国務大臣 相手の本籍がわからない限り交付は受けられないということでしょうから、逆に言うと、教えるとか教えないではなくて、それを何らかの形で請求者がわかっている場合に、その謄本を請求するということではないか。ちょっと正確には私もよくわからないのが本当です。済みません。

中井委員 僕はあえてこんなことを言いたくありませんが、手元に、八士業のうちの何人かの方が、お金をもらって他人のをとって商売しておったという幾つかのニュースをもらってあります。

 これは、何千人のものをどうやって知るんですか。本籍の番号がわからなきゃ、そんなものわかるはずがない。だから、どこか窓口へ行って教えてもらうなり聞くなり、全部できるんじゃないか、僕はそう思うんですね。ここのところの仕組みをもう少しきちっと明らかにしてほしい。あれだったら、横山君の質問時間にだれか答えてくれますか。僕はあと十分しかないから、横山君、後で聞いてくれるか。ごめん。だれか答弁できる、用意してくれる。(発言する者あり)はい。それじゃ、そういう形でぜひお願いを申し上げたい。

 そして、先ほど申し上げた戸籍をとられた当人への通知、そんなの簡単なことですから、ぜひお考えいただくように重ねて要請をいたしておきます。

 あと十分で、気になっている事件が、二つ裁判がございましたので、これについて少し私なりの意見を申し上げ、それぞれ関係の御担当から御答弁を賜りたい、このように思っております。

 一つは、西村真悟衆議院議員の弁護士法違反、それから組織犯罪処罰法違反についての裁判でございます。

 大阪地裁で二月七日に判決が出まして、弁護士法違反については有罪、組織犯罪処罰法違反については無罪、こういう判決が出て、検察側、被告側とも控訴せず、こういうことで、西村議員は懲役二年、執行猶予五年、こういう刑が確定をいたしました。

 私、現職の国会議員が逮捕され、起訴され、裁判になって、一審で無罪というのはちょっと聞いたことがありません。多分、藤波先生の事件が一つあるかと思っております。しかし、これは直ちに控訴されて、高裁、最高裁と有罪でございます。この西村君のものは、こういったことを見ると、極めて異例な捜査だったと私は思っています。

 別に、どうこうということではありません。当人も、片一方は有罪を認めておるわけでございます。しかし、この点における検察当局の反省、感想、こういったものを率直にお尋ねしたい。

 また同時に、申し上げていいかどうかはわかりませんが、昨年の十二月に、この西村事件を調べました担当の検事さんが割腹自殺未遂をなさったという事件がありました。大臣はこれを御存じでしょうか。

 そういったことを含めて、極めて私は、当人の犯した罪は別にいたしまして、何か妙な捜査のやり方、そして立件のあり方、裁判の持っていき方、こういったことを感じています。

 大臣が個々の事件について意見を言うというのは非常に難しいことだと思います。しかし、この判決を受けた率直な感想や、あるいは自殺未遂の件等は大臣のお耳に入っておったのかどうか、こういったことを含めてお考えを承ります。

長勢国務大臣 この事件については、今、法務大臣の御経験のある先生がおっしゃるとおりで、具体的な事件の裁判や争訟活動についてはコメントは差し控える立場にございますが、検事さんが自殺を図られたという事件があったことは私も伺っております。(中井委員「担当というのは知っているんですか」と呼ぶ)はい、聞いておりました。

 また同時に、この事件、判決の内容は先生御存じだろうと思いますが、こういういろいろな意見の食い違いがあって判決がこうなっておるわけでありますが、それに基づいて、控訴をしなかったことにもそれなりの判断があってそうなったものと思っております。

 いずれにしても、一般論として、結果として無罪になるということもあり得るわけでございまして、その際に、捜査が不当だったとか起訴自体が違法だったというふうに断ずるのもいかがかなというふうには思います。

中井委員 感想を言わないと言いながら、断ずるのはおかしいという感想を言われるというのもおかしいと私は思います。

 警察庁にお尋ねをいたします。

 鹿児島の方で、数年前の選挙違反事件で、現職の当選したての県会議員以下十二名が、買収ということで逮捕、起訴されて、そして、四年余りの裁判の結果、全員無罪という形になって、鹿児島地検がこれまた控訴を断念したという事件がありました。この事件をめぐってさまざまな報道がされて、かなり強引な乱暴な警察の調査で、全くの冤罪と言ってもいいような状況であったと報じられております。いまだにこんなことをやっているのかという思い、ひとしきりであります。

 かなり厳しい処分をするんだろうなと思っておったら、警察庁長官が、もとの県警本部長、当時の県警本部長を呼んで注意文書を手渡した。長官がやったから重たいんだとおっしゃるが、公務員の身分ということに関して、給料がどうなるわけでもなければ何もならない。これに基づいて鹿児島県警も当時の捜査の担当者に厳重注意、これで終わっておる、こういう報告がなされております。私は、少し違うのじゃないか、こういう思いがいたします。

 経過は結構ですが、どうしてこういう軽い処分にとどまるのか、この点についてお聞かせをください。

縄田政府参考人 処分等に関してのお尋ねでございます。

 警察本部長につきましては、御案内のとおり、捜査の全般を指揮監督する立場にあります。今回の事件の場合も、本部長指揮事件ということでございまして、本部長といたしましては、捜査の節目節目で報告を聞き、適切に判断をし、捜査指揮をすることが求められております。

 本件につきましても、所要の報告を受けた上で判断、指揮をしておった、こういうふうに報告を受けておりますし、私も、当時の本部長から二度にわたって、一時間以上にわたっていろいろな状況も聞かせていただきました。

 そういったことを評価いたしますと、法令等に殊さら反する行為をしようという意図はございませんで、何とか事実解明をしようということで精いっぱい努力をしておった、そういった中で判断にまさに不十分なものがあったということは重く受けとめなきゃいかぬと思っております。

 したがいまして、委員の御指摘もわからないわけではないのですけれども、公務員の人に対して懲戒処分ということになりますと、非常に重く、また、その理由もなかなか見出しがたいということで、さはさりながら、判決の内容等から見ましても、警察としても反省すべき点は多々ある、これを生かしていかなければならないということで、これは極めて異例ではありますけれども、長官から直接、文書によって注意ということがなされたというふうに考えております。

中井委員 二つあります。

 警察も、あるいは検察も事件をいろいろと扱われますけれども、立件して起訴されるというのは半分ぐらいだと聞いております。あとは不起訴処分であったり、いろいろな仕方、略式であったり、起訴に持っていくのは半分ぐらい、そして起訴に持っていったら〇・一%ぐらいしか負けない、これは世界に冠たる数字であります。よその国ではあり得ない。

 起訴するにはかなり証拠を集められる努力をされている、このことは承知をいたしておりますが、一方では、例えば、調べられた人が罪を認めなかったらいつまででも留置所へ入れ続ける、自白して、お上にはいはいと言ったら釈放する、こういう世界に摩訶不思議なシステムで証拠をつくっている国が日本だと僕は思っています。

 どんな国民であれ、だれであれ、裁判があるまでは無罪、起訴されようと何しようと本当に裁判で決まるまでは無罪ということが前提である。しかし、新聞には逮捕前からどんどん情報を流す、そして警察や検察の筋書きどおり言わないといつまででも留置所に入れている、こういう中で立件していくと時々思いもかけない大失敗をやるんだ、僕は今度の鹿児島の事件等を含めてそういうふうに見ています。

 人間のやることですから、または裁判という別の独立した機関が判断することでありますから、それは勝ち負けはあります。当然のことであります。しかし、負けたときに、どうして無残に負けたのか、無罪になったのかということをきちっと検証してほしい。そうじゃないと今後に生きない。

 今の御答弁なんかは、もう日本じゅう聞いたことのないような用語を使っているよ、刑事局長さん。日本で一番東大出がさっと出世するのはあなたのところや。そんな組織は一番古いんだよ、東大出の方がいっぱいおられて悪いが。警察という大事なところが形骸化している。僕は、捜査のあり方等を含めて、そういうふうに感じております。

 今度の事件はそういったことの一端が出てきた、こう思っていますから、こういうことを契機に、一つ反省、検証プロジェクトチームみたいなものでもつくって、そしてこういうことが起こらないように、言葉だけで戒めるんじゃなしに、実際に検証してやってみてください。私は、そのように感じます。

 以上申し上げまして、質問を終わります。ありがとうございました。

七条委員長 次に、横山北斗君。

横山委員 民主党の横山北斗です。

 我が国の戸籍制度は、国民の親族的身分関係を登録、公証する制度として一般に広く公開され、社会生活におけるさまざまな場面で国民に広く利用されてきました。プライバシー保護の観点から戸籍の閲覧制度等が廃止された昭和五十一年の戸籍法の改正の際にも、戸籍の公開原則は維持すべきものとされております。

 本法律案においては、個人に関する情報を保護するため、戸籍の謄抄本等の交付請求をすることのできる場合を制限するとされておりますが、現在においても戸籍による身分関係の公証の必要性は存在しており、この二つの要請を満たす必要があります。

 加えて、本法律案では、届け出の際に本人確認を行うこととし、代理人等により届け出がされるなど本人確認ができなかった場合には、当該確認できなかった届け出人に対して届け出があったことの通知を発することとするなど、虚偽の届け出を防止するための措置を講じていますが、その実効性を確保することは極めて重要です。

 そこで、まず、この戸籍制度の意義、改正の趣旨、改正後の戸籍法の運用などにつきまして、大臣の方から総合的な御所見をお伺いしたいと思います。

長勢国務大臣 戸籍制度は、国民の親族的な身分関係を登録、公証することを目的とする制度でございまして、この制定から昭和五十一年の改正に至る経過については、先生御指摘のとおりでございます。それから既に約三十年たっておるわけでございまして、その間に、自己のプライバシーにわたる情報を他人に知られたくないという国民の意識はますます高まり、個人情報の保護が社会的に要請されるに至っております。

 さらに、戸籍謄本等を不正に取得するという事件も続けて発生をし、戸籍の公開制度について、時代の要請に合わせて見直すべきであるという要望が関係各界から強く出されるという状況になっております。また、不当な目的によることが明らかか否かという現行法の要件の定め方も、地域によっては扱いが統一されていないという指摘もあったわけでございます。

 そこで、今回、戸籍を公開されることによって果たされる公証機能の維持に留意しつつも、個人情報をより適切に保護する観点から、今先生のお話しになったような、戸籍謄本等の交付請求をすることができる場合を明確にする等の見直しを行うとともに、その交付請求の際に交付請求者の本人確認を行うこと、不正請求行為に対する制裁を強化すること等により、不正な請求を防止する措置を講ずることとしたわけであります。

 さらに、近年、虚偽の婚姻等の届け出によって戸籍に真実でない記載がされる事件も相次いで発生したことから、このような事態を防止するための措置を講ずることが強く要望されておりまして、そこで、本法律案におきましては、届け出の際の確認手続や、当該手続において確認ができなかった届け出事件の本人に対する通知手続等を定めるなど、虚偽の届け出を防止し、戸籍の真実性を担保するための措置をあわせて講ずることとしておるわけであります。

 改正法案の成立後の運用につきましては、戸籍事務が日本国民の親族的身分関係を登録、公証する事務であり、国民に密接な関係を有するものでありますので、戸籍を利用する一般国民、戸籍の謄抄本等の交付事務を行っている市区町村担当者の方々に法改正の内容を十分理解していただくと同時に、可能な限り全国的に統一された処理がなされる必要があると思っておりますので、このため、成立の暁には、法務省令、通達等で実施の細目を定め、改正法の内容とともに周知徹底をし、全国一律の運用が実現できるように努めてまいりたいと考えております。

    〔委員長退席、倉田委員長代理着席〕

横山委員 それでは、戸籍の沿革について、明治四年に制定された壬申戸籍が初めての全国的戸籍であるということらしいのですけれども、この壬申戸籍以降の戸籍制度についての位置づけ、それから記載事項、その概略について全般的にお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。

寺田政府参考人 少し長くなって恐縮でございますが、今おっしゃいました壬申戸籍が、我が国の近代化とともに、明治四年に太政官布告をもちまして最初に設けられた身分登録制度と言えるものでございます。ただ、これは、今の戸籍と異なりまして、親族的な身分関係だけではなくて、徴税その他、徴兵とかさまざまな行政目的のために設けられたものでございまして、人口統計あるいは住所登録等の性格もあわせ持っていたわけでございます。

 特徴としては、何といいましても、まず戸というものを単位にいたしまして、その戸に帰属する人々、それを個人としてとらえている、こういう親族団体の構成員としてのとらえ方、これが一番大きな特徴でございます。しかし、身分的な事項も、婚姻、縁組など、さまざまな事項が登録事項となっております。

 もう少し詳しく申し上げますと、登録事項には、戸の総人員の姓名、年齢、戸主との続き柄、身分関係のほか、華士族、それから平民の別、職業、どこのお寺に所属しているか、氏神、こういったものも記載されていたわけでございます。

 明治十九年にこの壬申戸籍の改革がございまして、この戸籍が戸ごとに別様式になったということで、そういう意味では非常に便利になると同時に、バックアップといたしまして副本制度ができまして、災害に備えるという体制もできたわけでございます。

 今の戸籍法の一番最初というのは、恐らくは明治三十一年の戸籍法ということになろうかと思います。このときに、今の壬申戸籍から離れまして、戸籍が親族的な身分関係のみを主とした目的とするという性格のものに切りかえられたわけでございます。行政的な性格あるいは戸口調査的な性格というものはここで払拭されたということになっております。

 しかし、戸籍はここでも基本的には戸単位でございまして、戸主の交代によって戸籍が改められる。あるいは、家に入る、家を去るというようなことが、戸籍の入る、出るの原因となっているわけでございます。

 なお、戸籍のほかに身分登記簿というのが設けられておりまして、身分に関する事項というのはまず登記簿に登記され、それから主要事項のみが戸籍簿に転記される、こういう格好になっております。

 大正四年に戸籍法が改められまして、基本的には同じでございますけれども、身分登記簿の制度が廃止されました。現在の戸籍簿一本になったわけでございます。

 戦後、昭和二十二年に今の法律第二百二十二号の戸籍法が成立いたしました。これは、言うまでもなく、民法の第四編親族及び第五編相続というものが全面的に改正されまして、これに合わせて新しい戸籍法ができたわけでございます。

 このことからもおわかりになりますように、戸籍法の改正は戦後の家制度の改革というものに伴うものでございまして、戸籍編製の単位は、従来の家というものに変わりまして、夫婦、親子という単位に変わったわけでございます。婚姻によっても新たに戸籍が編製されて、子は親の戸籍に入るということになりますけれども、親子三代が一緒になっている戸籍はなくなったということでございます。

 現行戸籍法では、戸籍法の中にそれぞれの戸籍変動の原因についての規定がございまして、それ以前の隠居でございますとか家督相続のようなものの届け出は廃止され、新たに、生存配偶者の復氏、それから姻族関係の終了、入籍、分籍、こういう規定が設けられて現在の戸籍法にそのまま引き継がれている、こういう経緯がございます。

横山委員 それでは、戸籍の記載原因について、戸籍の記載の原因となるものはどのような身分関係が生じたときなのか、また、戸籍記載の原因によっては新たに戸籍の編製を要する場合があると思いますけれども、それはどのような場合なのでしょうか、現行法について、お願いします。

寺田政府参考人 戸籍の記載は基本的には届け出を原因とするということにいたしておりまして、対象者から届け出が行われるということに基づいて戸籍の記載がされるわけでございます。これには二つございまして、一つは報告的な届け出、もう一つは創設的な届け出でございます。

 まず、報告的な届け出でございますが、これは、既に生じた事実というものを戸籍当局に届け出るという格好をとるものでございまして、具体的には、出生、死亡、失踪宣告、裁判上の離婚、離縁、こういったものでございます。それぞれに定められた届け出義務者が一定の期間内にこういう報告的な届け出をするということになります。

 これに対しまして創設的な届け出というのは、その届け出が受理されることによって身分関係の効力が生ずる、発生、変更、消滅というような効力が生ずるわけでございまして、これに当たるものといたしまして、任意の認知、縁組、婚姻、協議上の離縁、離婚、復氏、姻族関係の終了、分籍、入籍、こういうものがございます。

 戸籍は、先ほど申しましたように夫婦単位でございまして、一つの夫婦及びこれと氏を同じくする子で編製されるという原則をとっておりまして、配偶者のない者についてはその者及びこれと氏を同じくする子について、それから配偶者も子もない者で父母の戸籍に入らない者についてはその者のみについて戸籍がそれぞれ編製されるわけでございます。

 先ほど申し上げましたように、もともと戦前は家ごとに一戸籍を編製していたということでございますが、現在の戸籍法上は夫婦とその子供を編製単位とするということになっているわけでございます。

横山委員 戸籍に記載される者は日本人ということですが、その判断は何を基準にしているのでしょうか。また、外国人が日本に帰化したケースでは、戸籍にはどのように記載されるのでしょうか。

寺田政府参考人 基本的に、戸籍というのは日本国籍を有する者についてのみ編製されるものでありまして、外国人については編製されないわけでございます。したがいまして、何が日本人かということとだれについて戸籍が編製されるかということは、それぞれパラレルになっているわけでございます。国籍法で日本国籍の取得原因が決まっておりますので、結局のところ、だれが日本人かということは国籍法によって決まるということでございます。

 国籍法には、大きく分けまして二つの国籍取得原因が書かれておりまして、一つは、出生そのものによって日本国籍を取得する場合。これは、たびたび御説明しているところでございますけれども、「出生の時に父又は母が日本国民であるとき。」が原則となっているところでございます。

 これに対しまして、帰化によって日本国籍を後発的に取得するという場合がございます。日本国民でない者は帰化によりまして日本国籍を取得することができるわけでございますが、この帰化というのは基本的には法務大臣の許可でございまして、国籍法に規定されております帰化条件、住所、能力、素行、生計、重国籍防止、こういう帰化条件というものを備えている、その者の中から法務大臣が許可を与えて日本国籍を与える、こういう段取りになるわけでございます。

 帰化いたしますと、帰化者の戸籍の記載でございますが、帰化者につきましては、既存の戸籍に入る場合を除きまして、もちろん新しい戸籍をつくるわけでございます。帰化者の戸籍の身分事項欄には、帰化の記載とともに、出生に関する事項、認知に関する事項、現に継続する婚姻に関する事項など、重要な身分事項が記載されるわけでございます。

横山委員 戸籍に記載される者が日本人である場合、では外国人と結婚した場合、例えば私が外国人の妻と結婚したとき、妻の欄というのは空欄になるわけでしょうか。どういう記載になるのでしょうか、教えてください。

寺田政府参考人 父母の戸籍に在籍する日本人が外国人と婚姻する場合には、その外国人との婚姻の届け出に基づいて日本人配偶者について新しい戸籍を編製するということになるわけでございます。そのときは、日本人配偶者について、その身分事項欄に外国人との婚姻事項を記載する。つまり、外国人とこの日本人が結婚しましたということにいたします。それで、配偶者欄を設けておりまして、それに夫または妻と記載するわけでございます。

 戸籍実務においては、日本人が外国人と婚姻いたしましても、夫婦の称すべき氏の選択の余地はないということになっておりまして、日本人配偶者の婚姻前の氏で戸籍が編製されるわけでございます。

 これに対しまして、既に戸籍の筆頭者となっている日本人が外国人と婚姻した場合には、新たに戸籍を編製せずにその者の戸籍に、外国人との婚姻事項、だれだれと婚姻したということを書きまして、配偶者欄に夫または妻と記載するわけでございます。

 いずれの場合にも、外国人に関する記載は日本人の配偶者の身分事項欄のみに記載されておりまして、外国人に関して戸籍が設けられるというわけではございません。

横山委員 そうすると、やはり空欄になるにはなるんですよね。そういうことですよね。私の方に、いろいろな記載事項の中にこの人と結婚したと書かれるだけで、子供が仮にそれをとったときに、妻の欄というのは空欄なんですか、もう一回お聞きしたいんです。

寺田政府参考人 配偶者として配偶者の氏名が記載されるわけでございます。同時に、配偶者の国籍も、例えばフランスとかアメリカとか書かれるわけでございます。

横山委員 失礼しました。

 それでは、次の質問に移ります。

 戸籍には身分関係が記載されることになっておりまして、いつだれと婚姻したか、いつどこで生まれたか、一覧的にわかるようになっております。ほかにも明らかになる身分関係もあるのでしょうか、また、こうした我が国の戸籍のように身分関係を一覧できる仕組みを持つ国はほかにもあるのでしょうか、お伺いいたします。

寺田政府参考人 戸籍には、今おっしゃいました出生の事項のほか、婚姻、離婚、縁組、離縁、認知、それから親子関係の形成、消滅、これは認知でもそうでございますけれども、そのほかに、さらに死亡事項ももちろん記載されるわけでございます。かつては成年後見に付される禁治産などがこれに記載されておりましたけれども、今はこれは別の登記ということになっているわけでございます。

 我が国の戸籍のような身分関係を一覧できる仕組みを持つ国があるかということでございますが、私どもが承知している範囲では、韓国が我が国とほとんど同じようなタイプの戸籍を有しているというふうに聞いております。

横山委員 先ほど中井先生が平成六年の戸籍法改正のことを問題にいたしまして、そのときコンピューター戸籍が認められたと。いま一度、紙戸籍とどういうふうに違うのか、それからコンピューターならではのメリット、工夫があるのか、それから全国一律になっていない理由について、法務省の方からお聞かせ願えればと思います。

寺田政府参考人 まず機能面から申し上げますと、当然のことながら、コンピューターでございますので、例えば検索機能とか記録機能などがございます。これは外部に対しては意味のないことでございますけれども、内部の事務処理にとりましては大変時間を短縮、事務処理上の能率の向上ということにつながっているわけでございます。

 また、審査機能も持っておりますので、例えば、婚姻年齢に達しない者が婚姻届を出してくるというときに、それをはねるというような機能もコンピューターで可能になっているところでございます。また、身分関係を当然のことながら証明書という形で公証するわけでございますけれども、その事務処理も大変にスピードアップできるわけでございます。

 形式でございますけれども、戸籍がコンピューター化されますと、謄抄本にかわりまして、今申し上げましたような戸籍に記録された事項についての証明書、こういうものが発行されることになります。これには、戸籍に記録されている事項の全部を証明する全部事項証明書、個人、戸籍に入っている中の一人の者の全部の事項を証明する個人事項証明書、それから証明を求められた事項のみを証明する一部事項証明書、この三種類を用意いたしております。戸籍謄本と違いまして、左横書きでアラビア数字を用い、身分事項の表示方法についても記録事項のインデックスを設けるなどして、わかりやすく、見やすいものになっております。

 このコンピューター化、大変威力を発揮するところも多いところでございますけれども、基本的には市町村の事務だということで、市町村の判断でコンピューター化をされるということをこれまでいたしているところでございます。したがいまして、先ほど申し上げました、現在ですと六十数%ということになるわけでございますけれども、なおコンピューターの導入をしておられない市町村もおいでになるわけでございます。

 私どもといたしましては、財政的な面はともかくといたしまして、コンピューターの処理ということが、結局のところ、戸籍の正確性あるいは事務処理能力の向上等さまざまな面でプラスの面が多いということで、できるだけ早くコンピューター化を達成していただきたいということで、あらゆる機会を通じまして、市町村にはコンピューター化について前向きに御検討いただくようお願いをいたしているところでございます。

 また、コンピューター化の仕様そのものについては法務省の方でも十分にいろいろな機能をテストいたしまして、導入を容易にするように図っているところでございます。

横山委員 ただいまのお答えに関係して、そうすると、コンピューター化するためには費用もかかるわけですから、財政的な問題もあるということになると財政的な面、それから法務省として奨励していても今六十数%にとどまっているということは、まだ紙戸籍でやっているところというのは、認識としては、格差社会の中でおくれている自治体というか、そういう理解でよろしいんでしょうか。

寺田政府参考人 これは、内容的にいいますと、コンピューター化された戸籍も従来の戸籍簿による戸籍も、値打ちとしては等しいわけでございます。

 ただ、先ほど申しましたように、事務処理の向上等という機能面でのプラスをそれぞれの市町村でどう評価されるかということでございまして、それは、結局のところ、それぞれの市町村でどういうことにプライオリティーを置いて行政をなさるかという御判断でございますので、私どもの方は、それが導入されていない市町村がおくれているとか意識が十分でないとかいうふうに申し上げるつもりは全くありません。

 ただ、全国的な展開という意味で申しますと、できるだけコンピューター化するということのメリットを御理解いただきたいということは常々申し上げているところでございます。

横山委員 それでは、戸籍の公開制度についてお尋ねいたします。

 この法律案では、これまでの公開制度が見直される。まず、戸籍に記載されている者による請求に関して、本法律案では、戸籍に記載されている者に加え、その配偶者、直系尊属または直系卑属は理由を明らかにすることなく交付請求を求められるものとされております。したがって、離婚後、自分の子と前の妻とが同一戸籍に記載されている場合には、別れた夫は自分の子の直系の尊属として理由を明らかにすることなく当該戸籍の謄抄本等の交付請求をできることになる。この点について、問題はないのでしょうか。

 例えば、DVで別れて、妻がどこか前の夫のわからないところで子供と暮らしているのに、こういうものを通じて居場所を突きとめられるとかいう心配はないのでしょうか、お尋ねします。

寺田政府参考人 これは一つの問題点だというように私どもも認識をいたしております。

 今委員がおっしゃったように、例えば、離婚後も自分の子供と自分のもとの妻が一緒に載っている戸籍を自分がその子の尊属としてとることができる、それはそのとおりでございます。これは、現行法のもとでもそうでございますし、今度の改正案でもその点についての改正を加えていないということになるわけでございます。

 実は、この検討をする際に、今の十条の二の第一項の自分の戸籍をとるということの自分というのはどの範囲かということで、法制審議会でも御議論をいただいたところでございます。一番極端に言いますと、自分とは本当に自分だけであるということで、当該戸籍の自分の部分だけは理由なくとれるけれども、自分の子、妻を含めて、その他の者は第三者請求として仕切るべきだという考え方もあり得るわけでございます。そういたしますと、委員の御懸念のような事態は生じないということになるわけでございます。

 ただし、そういう御議論がなされたわけでございますけれども、多数といいますか、圧倒的多数の方は、やはり、一つの戸籍に入っている者とその尊属、卑属については、それは理由なしにとれるというのが、社会通念上、今の日本の社会のあり方として適当ではないかという御意見をお持ちでございまして、私どもも、その意見の分布からいいまして、その点でこれを個人に限ってしまうというのはやはりちょっと無理があるということで、今のようにいたしているところでございます。

 なお、今の御懸念でございますけれども、もとの妻が離婚した夫からDV被害を受けていた場合に、離婚した夫が理由を明らかにすることなくその所在を確認できるのは不適当であるという御指摘がございますけれども、戸籍は住所を記載事項としておりませんで、これは、住民基本台帳の関係で、住民票及び戸籍の付票を見れば明らかになるわけでございます。

 したがいまして、これは戸籍法の範囲の外の問題というように言えるわけでございますけれども、この戸籍の付票の交付請求につきましては、写しの交付に関して、省令二条一項において、記載されている者の直系尊属であっても、DV被害者であった妻がさらなる暴力を受けることにより、その生命身体に危害のおそれがある場合には、請求の理由を明らかにすべきものとされているわけでございます。

 今回、住民基本台帳法についても、戸籍法の改正と平仄を合わせて改正法案が提出されているところは、先ほども総務省の方で御説明になったところでございますけれども、このような規律は改正後においても維持するということが予定をされているわけでございます。また、住民票やその除票についても戸籍の付票と同様の扱いがされておりまして、このような扱いは住民基本台帳法の改正後も引き続き維持することを予定されているというふうに私どもは伺っているところでございます。

横山委員 わかりました。

 それでは次に、第三者請求に関しまして、本法律案では、戸籍に記載のない第三者が戸籍の謄本等を交付請求できる場合を、自己の権利を行使し、または義務を履行するために必要がある場合、国または地方公共団体の機関に提出する必要がある場合等、戸籍の記載事項を確認するにつき正当な理由がある場合等に制限することとしております。

 しかし、戸籍の謄本等を請求する場合はさまざまであって、正当な理由があるにもかかわらず必要な戸籍の謄本が交付されないという事態が生じることがないよう、全国統一的かつ適切な判断基準による運用が図られるべきといった意見もございます。

 先ほど、大臣、最初に、通達によってその点しっかりやるということでしたけれども、通達によっても、市町村によって対応にばらつきが出る。例えば、前の市町村ではよかったけれども、引っ越した先の市町村ではもたもたしている、そういうことがないようにどういう措置を講じられるのか、大臣の御意見を伺いたいと思います。

長勢国務大臣 第三者請求の要件は、現行法では、拒否できる場合について、不当な目的によることが明らかというだけの要件でございましたから、そういう抽象的な要件ではなくて、今先生御指摘のように、より客観的、具体的な要件としておりますし、また、その要件認定のために交付請求者において明らかにすべき事項も法定をしておるわけであります。したがって、全国一律の明確な基準のもとで、要件の判断が今回の改正によって十分可能になるものと考えております。

 さらに、この法案が通れば、法務省令や通達等で実施の細目を定め、正当な理由があるにもかかわらず必要な戸籍の謄本が交付されない事態が生ずることのないように、きちんとした省令、通達等で担保し、一律の運用が実現できるように努めてまいりたいと考えております。

横山委員 わかりました。

 それでは、次の質問です。

 本法律案では、国または地方公共団体の機関には公用請求という例外措置を認めております。しかし、ついこの間まで国の機関だった独立行政法人は、この例外を認めないこととしました。独立行政法人にも公用請求に準ずる例外措置を認めるべきではないかという意見が出されていたとお聞きしますが、この点については、どういう御見解なのでしょうか。

寺田政府参考人 現行法では、実は、戸籍法の施行規則の中に別表がございまして、その別表第一に掲げられている法人の役員、職員が職務上戸籍謄本の交付請求をする場合には、公用請求として請求事由の明示を要しない、こういうぐあいになっているわけでございます。

 独立行政法人の中には、この規則の別表に掲げられているものもございます。例えば緑資源機構のようなもので、八つほどございますが、改正法のもとにおきましては、このようないわゆる別表法人に関する例外扱いを廃止いたしておりまして、これらの法人による交付請求は第三者請求という形で整理されているわけでございます。

 実は、戸籍法の見直しの途中で、審議の経過をまとめました中間試案をお示しいたしました。そのときは、別表法人のような公的な法人を公用請求に含めて今後取り扱うという考え方も示されたわけでございますけれども、実は、この独立行政法人のほかにも公的な法人がさまざまございまして、多く見れば、これはどんどん多数になっていくということで、これまでよりは一層、公用請求とその他の請求というもののコントラストがはっきりしている新しい制度のもとで公用請求に入るということは、濫用されるというような懸念がございます。

 したがいまして、個人情報保護の観点から公用請求の要件を制限するという趣旨からいたしますと、ここで独立行政法人をこれに含める、それに加えて、さらに似たような法人をどんどん加えていくということは適当でないという判断に最終的には至ったわけでございます。

 なお、この扱いをするにつきましては、現に別表法人に掲げられている方々を含めまして、法務省の方から御意見を伺ったわけでございますけれども、これに反対であるという御意見は基本的にはございませんでした。

横山委員 わかりました。

 では次に、本法律案では、弁護士等は、具体的事由及び依頼者の氏名を明らかにして戸籍の謄本等の交付請求をすることができるものとし、紛争解決手続の代理業務を遂行するために必要がある場合は、その代理する紛争解決手続の別、紛争の種類及び利用目的を明らかにすれば足りるものとされております。

 この点について、弁護士等が紛争解決手続の代理業務ではない業務を行っている場合においても、将来的に紛争解決手続の代理業務へと移行する場合があるので、要件に差を設ける理由が乏しいのではないかという意見もございました。この点については、どういう御見解なのでしょうか。

寺田政府参考人 弁護士等が戸籍謄本を請求する場合の取り扱いというものも、今回の見直しの一つの焦点でございました。受任事件に紛争性があるということを基準にしているわけでございます。弁護士につきましても、十条の二の三項で、依頼者の立場に立って請求することができる、ただ、手続だけは少し簡易な形で請求ができるということを認めているわけでございますけれども、しかし、それだけではどうしても、この弁護士を含めていろいろな士業の方々の、あるカテゴリーの方々にとっては非常に御不便があるという御主張が強くあったわけでございます。

 そこで、一般的には、先ほど申しました十条の二の第三項のような扱いをするとしても、さらに、よりその性質に即した規律の仕方ができないかということで検討された結果が、この十条の二の第四項、五項になるわけでございます。

 特に、今委員が御指摘になったのは四項にかかわるところでございますけれども、もともと受任事件に紛争性がある場合には、そもそも紛争の相手方に証拠を収集していることを知られたくないというのが、弁護士さんを初め紛争の代理に携わる方にとりましては非常に本質的な要請であるということを強く御指摘になられたわけでございます。

 私どもといたしましても、こういう場合には依頼者の権利行使の意思があることがはっきりしているわけでございますので、第三者請求における権利行使ということを殊さらに明らかにさせるということもないであろうということでございますし、争われている権利の実現のために、その権利の存在範囲をその相手方や事件に関係する第三者に係る戸籍の記載を利用して対外的に証明しなきゃならないというのも、この種の士業の専門家の方々にとっては常に類型的に存在する必要性だということになるわけでございます。

 しかも、弁護士の皆さんあるいはその他のこの四項に掲げてある皆さんは、そのような紛争性のある事件についてみずから裁判手続その他紛争処理の手続において依頼者を代理されるという場合には、その権利の実現のために適切な立証活動を行う必要があることから、ここで第三項の特則といたしまして、交付請求に際して明らかにすべき事項を第三項に比べましてかなり簡略なものとして足りることにした。一番は、何といっても、依頼者がだれかということを明らかにする必要が全くなくなったという点にあるわけでございます。

 そこで、委員の御指摘は、将来紛争性があることに移行する可能性があるので、今は紛争性がない事務についてもこういうことを認める必要もあるいはあるのではないかということだろうと思いますけれども、これは、先ほど申しましたような経緯からいいますと、そのような観点から紛争性のないものにまでこの特例を広げていきますと、結局のところ、一般の第三項で明らかにさせている原則というものが崩れてしまうことになってしまうわけでございます。もっと申し上げれば、普通の、弁護士さん以外の方々は、弁護士さんとは違って手続すらも相当いろいろなことを明らかにするということを求められているのに、弁護士さんはそれを省略されている、それに加えてさらに紛争性のないものまでということになりますと、これは少し拡大し過ぎである、こういう御議論になろうかと思います。

 したがいまして、そういう可能性があるということはもちろん否定できません。この紛争性のない事務を受任した場合でも、その準備あるいは調査を行う段階においてのさまざまな活動というのはこの紛争性と一体化しているものとして扱うことができるという解釈もできますので、やはり紛争性が広い意味で存在しているということを基準にすることは堅持しなきゃならないだろうなとここでは考えているところでございます。

横山委員 では、今の質問に関連してですが、各資格者別に請求の要件が異なると思われます。不正請求の防止あるいは正当な請求を拒否することがないよう、業務の必要性の判断についてはそれぞれの士業別の業務に照らして行われる必要があると思われますが、それについてはどのような方針を考えておられるのでしょうか。

寺田政府参考人 今申し上げました十条の二の第三項、第四項、第五項には、それぞれどういう事柄を明らかにして請求をしなきゃいけないかということが記載されているわけでございます。市町村の窓口では、基本的にはこの交付請求書に記載された内容に基づいて交付の可否を判断する、こういうことになろうかと思います。

 その業務が、それぞれの士業法、例えば弁護士でありますと弁護士法に規定されている業務に該当するかどうか、その業務を行うについて本当に必要かどうかということは、その交付請求書に記載された内容から個別に判断をすることになりますけれども、その内容を明らかにさせることで、市町村の窓口において、それぞれの資格者が職務上戸籍謄本が必要であるか否かについて形式的な判断が可能だろうというように考えているところでございます。

 すなわち、十条の二の第三項においては、依頼者についての具体的な権利行使の必要性について明らかにするということとしておりますので、その内容を見て、これは弁護士さんが行う業務として範囲内に入るかどうかというような判断をするわけでございます。特則であります四項と五項についても同じように、対象となる紛争解決手続代理業務、ADRの代理業務でございますが、これをそれぞれの士業ごとに、例えば司法書士であれば司法書士、土地家屋調査士であれば土地家屋調査士ごとに具体的に列挙しておりますので、これとの照合も比較的容易であると考えているところでございます。

 ただ、非常に細かいところももちろん出てくる可能性があるわけでございますので、今後、その想定をいたしまして、さまざまなパターンに類型化した通達というものを用意いたしまして、この施行に備えたいと考えているところでございます。

横山委員 先ほど中井先生の方から私にすっと回ってきた質問がありまして、したがって質問通告はないんですが、今のお答えと総合して、そうすると、先ほどの中井先生の御指摘、御懸念というのは、例えば、行政書士が何千という戸籍をとっている、窓口にやってきて、そこに親しくしている職員さんがいて、ああ、あなたならと言ってぽっと出すというようなことが行われているのではないかというような懸念を含む御質問だったと思うのですが、法務省の先ほどの御質問に対する御見解をここで聞かせていただければと思います。

寺田政府参考人 先ほどの中井委員の御質問は、もともと請求用紙に本籍というものが書かれていることが多いけれども、それはどのようにして知り得るのかということで、とりわけ、今おっしゃいましたある種の士業の方が大量に請求される場合というのはなかなか個別に知るということが想定しにくいので、一体どうなっているのか、こういう御趣旨だというふうに承りました。

 これについて包括的に御答弁申し上げるのはなかなか困難なところでございますけれども、まず、個別のケースについて申し上げますと、当事者の方々が戸籍謄本をおとりになるには、さまざまな理由があるわけでございます。しかし、多くは、結局のところ、親族関係を確認する、とりわけ相続における親族関係を確認するということが多いわけでございます。こういった場合には、もともとの亡くなった方の本籍というのを御存じで、それと同じであるお子さん、相続人の方々の本籍というものを想定しておとりになるということでございますので、こういったケースでは、調査に不正な手段が用いられる余地は余りないだろうと私どもは想像しているわけでございます。

 同じようなことは、さまざまな取引において本籍が記載されることがございますので、その取引の過程で記載された本籍を利用して、その確認のために戸籍謄本をおとりになる、こういうのは当然にあらかじめ本籍というのを御存じだということになるわけでございます。

 問題はそれ以外のケースで、中井委員は、典型的には士業の方が非常に数多くの謄本をおとりになるときのことをおっしゃったわけでございますけれども、私どもも、これは、実はやや危惧しているケースでございます。

 想像するに、多分、非常に多くの方々の本籍が載ったリストというものをこの請求される方がお持ちであろうというふうに想像しているわけでございまして、これは、そういう名簿の売買業者というものもおありになると伺っておりますし、あるいはそういう形で不正に入手されたデータであるという可能性は否定し切れないだろうと私どもは非常に懸念しているわけでございます。また、場合によりましては、住民票の写し等から本籍を探っていかれるというようなこともあり得るわけでございますし、この場合はそれほど多くないのかもしれませんけれども、やはりこれも余り正当な手段でないこともあり得るというふうに私どもは想像いたしております。

 こういったことが、今度の改正案のもとでは、少なくとも、紛争解決手続に関しない専門業者の方が大量に、多くの方の戸籍謄本をとるということがこれから現実的には不可能になりますので、その点でかなり抑止効果はあるだろうというように考えているところでございます。

横山委員 本籍名簿の売買業者があるそうです。一たんこれでよろしいでしょうか。

 では、次の質問に行きます。

 本法律案では、戸籍の謄本等の交付を求める者は、市町村長に対し、運転免許証を提示する方法その他の法務省令で定める方法により交付請求者本人であることを明らかにしなければならないとなっていますが、顔写真入りの身分証明書など何もないという人は大勢いると思います。この点で、全国統一的、適切な運用を図るための方策について、とりわけ、これから七十歳になって免許証を失効するという高齢者の方も大勢出てくると思いますけれども、そういう点での国民に安心を与えるような御答弁を、大臣、よろしくお願いいたします。

長勢国務大臣 戸籍謄本等の交付請求についての本人確認については、法務省令で定める方法によるということにしておりますけれども、具体的には、運転免許証、パスポート等国または地方公共団体が発行した身分証明書で写真を張りつけたものを提示することを原則とするということにしておりますが、この方法によることができない場合、今御指摘のようなことも起こると思いますが、その場合には、その他の書類、国民健康保険の被保険者証ですとか民間の法人が従業員に対して発行した身分証明書等をその性質により複数組み合わせて提示する方法とか、あるいは請求対象の戸籍の記載事項について市町村長の求めに応じて陳述する方法、あるいは市町村の職員と交付請求者との個人的な面識を利用することなども想定をして定めることとしたいと考えております。

 このように、顔写真入りの身分証明書を持たない方々に対しましても、本人確認が可能となる運用とするように考えておるところでございます。

横山委員 そうしますと、法務省の方に今の関連でお伺いしたいんですけれども、これまでは例えば保険証なら保険証一通でもよかったけれども、複数持ってくればいいよということでしょうか。

寺田政府参考人 実は、これまでもとおっしゃいますのは、確かに一部の市町村では、こういう本人確認を既に市町村独自の基準でされておられます。そういうところでは、おっしゃるように、必ずしも顔写真つきでないものでも一通持ってくれば、それで身分確認ができたということにされるところもあるかもしれません。

 ただ、今度の本人確認の方法は、これは全国統一に決めたいと思っております。今大臣が複数組み合わせてと申し上げましたが、具体的には、どういう組み合わせにするかというようなこともすべて類型化して基準を示す、これを全国統一的に通達の形でお示しするということにしたいと考えているところでございます。

横山委員 その点、今までのようなやり方で持っていったら追い返されてしまうようなことがないように、しっかりとそういう通達を行っていただけるよう、よろしくお願いいたします。

 もう一つ、ではそれに関連して。

 そうしますと、今度、市町村の事務負担はどう変化するんでしょうか。行革等々で人員削減がされる中、事務負担がより過重となっていかないような方策はあるのでしょうか、お尋ねいたします。

寺田政府参考人 これは、残念ながら、一定の事務負担はお願いせざるを得ないところでございます。むしろ、この問題につきましては、市町村の方から非常に、繰り返しでございますけれども、本人確認の方策を全国統一の形で法制化してほしいという御要望がございましたので、私どももそれにこたえているというつもりもあるわけでございます。

 ただ、もちろん事務負担の面を全く考えないわけではございませんので、先ほども申しました統一的な基準を定めるにつきましては、できるだけ、不必要なまでに重い本人確認の方法にならないように、この点の配慮も必要かと思っております。

 自治体の皆さんにも、この本人確認のやり方については、今までも本人確認をするかどうかについては御意見を伺っているところでございますけれども、これからもいろいろ御意見を伺いつつ、最終的にこの点を決めていきたいと考えております。

横山委員 それでは、先ほど中井先生の方からも御質問がありました点につきまして、改めて。

 第三者から戸籍の謄抄本の交付請求があった場合、この事実を戸籍に記載されている者に通知する制度を設けるという点につきまして、先ほどは総務省の御答弁をお聞きしましたけれども、本法律案で取り上げられなかった理由につきまして、私どもは、請求者の自己の情報は隠して他人の情報を得るという不公平の観点から問題にしているわけですけれども、法務省の御見解をお聞きしたいと思います。

寺田政府参考人 これは、先ほども大臣から御答弁申し上げましたとおり、幾つかのポイントがございますけれども、法制審でも議論があったところでございます。

 その議論の一つは、今回、戸籍情報そのものを、今までの公開の原則を非公開の原則に変えるというように、法律の上では原則と例外が逆転いたしておることは事実でございます。ただし、それは百八十度変わるというわけではございませんで、戸籍の公的な性格というのは、やはりあることはあるわけでございます。

 それで、その公的な性格の中で、しかし、今までの原則と例外を逆転させるわけでございますから、依然として、ある種の戸籍情報を国民の間で共有の財産として持っていて、それをどういう場合に公開できるかということは、その戸籍情報自体の価値の基礎のもとに決まるという性格がございます。

 これに対しまして、その戸籍の情報をだれが請求しているかということは、他の多くの個人情報と同じようにやはり個人情報保護の一般的な面が非常に強いので、それで今回は特に、特別の制度をつくらずに、それぞれの市町村の公開条例あるいは情報公開の何らかの規則によるということにさせていただくのが適当だろうということでございます。

 もう一つは、やはりこの種の公の情報をとるということ、いろいろな公の情報があるわけでございますが、そのとった者がだれかということを公の情報に係る対象者が知るかどうかということは、共通の側面があるわけでございます。今も現に、住民票と戸籍というものが同じか違うかというような議論もされたわけでございまして、共通の制度として、ほかの公の情報をとるときの、とる人の情報をとられる側がどう入手できるかという問題としてとらえていかなきゃならない面もございますので、戸籍だけで考えるというのも無理がある、こういう御議論もあったわけでございまして、結局のところ、賛成者もかなりおいでになったことは否定できないところでございますけれども、なお少し、ここで制度として組み立てるにはやや未熟ではないかというのが私どもの判断でございます。

倉田委員長代理 横山君、時間が終了しておりますので、簡潔に。

横山委員 ありがとうございました。

 それでは、今の件につきましては、導入についての検討を引き続き行っていただきたいと思います。

 私の質問を終わります。

倉田委員長代理 次に、保坂展人君。

保坂(展)委員 冒頭、昨日、原爆症の認定を求めた集団訴訟の東京地裁判決がございました。一部、九人の方は棄却ということになりましたが、これまで、大阪、広島、名古屋を初めとして、仙台、そして東京と、厚労省の認定基準に対して司法の場が、これは実態に合わせて見直すべきだという勝訴判決、基本的には昨日もそうだったというふうに思っております。

 その内容に踏み込んでではなくて、法務大臣に伺いたいのは、例えば、先日の中国残留孤児の皆さんの問題、そしてハンセン病の方々の訴訟、政治の判断で、非常にこれは、昨年やりましたけれども、皆さん高齢化されておりまして、三十人の東京の訴訟の原告の方も、もう十一人が亡くなっているんですね。二月にも六十代の方がお一人亡くなりました。大変時間を争う、そしてまた、こういう訴訟を多々やらなければいけないという被爆者の方たちの苦痛を思うときに、当事者の声をしっかり国の機関が聞いてほしいというふうに思うわけですが、法務大臣としてどうお考えになるのか、基本的な姿勢について。

 そういう当事者の方の声を聞くということは、残留孤児問題やハンセン病訴訟でも現にあったわけですよね。その点について、胸襟を開いて、この時期、国は皆さんの声を聞くべきではないかと私は思うんですが、いかがでしょうか。

    〔倉田委員長代理退席、委員長着席〕

長勢国務大臣 裁判中における法廷外における原告団に対する対応ということになりますので、これは所管官庁の大臣の御判断で適切に対応されるものと思いますので、私からはちょっと、所管大臣の御判断を待ちたいと思います。

保坂(展)委員 今、法廷外なので会わないようにしてほしい、こういうふうに言われたら大変だと思ったんですが、所管大臣の判断を待ちたいということでございます。

 厚労省から来ていただいていますので、昨日も被団協の方々が厚労省の担当官と会ったということも聞いておりますけれども、上告の期限までの間は誠意を持ってできるだけ声を聞いて、その上で判断をしていただきたいという一点に関して、審議官はいかがですか。

宮坂政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま先生の方からもお話がございましたが、昨日、厚生労働省におきましては、原告団からの御要望を受けまして、三月二十日に判決のございました仙台地裁の原告の方々、さらには、昨日判決のございました東京地裁の原告の方々と担当室長が直接お会いをいたしまして、御要請についてお話をお伺いしたところでございます。

 今後の対応でございますが、判決内容を精査いたしまして、関係省庁と協議をした上で決定することにしたいと考えております。

 以上でございます。

保坂(展)委員 これは、与野党各党の政治家からも基準を何とかするべきだという声が上がっていますので、我々も引き続き、残り少ない時間、頑張って働きかけをしたい、国はその争いを続けるべきではないというふうに思います。

 戸籍の話に移ります。

 先ほどの質問の中で、コンピューター化は現在進行形であるということがございました。電子政府化というかけ声のもとに、あらゆる事務手続をコンピューター化、オンライン化せよ、こういうことで進んでいると思います。

 私は、これは必ずしも賛成ではありません。例えば、四十八億円かけて外務省の旅券の電子申請が可能になりましたが、九月三十日をもって中止になりました。利用された人は四百人以下で、一人当たり三千万円が費やされたということで、こういう失敗をしてはならないと思いますが、この戸籍については、電子申請というようなことを視野に入れて検討しているのかどうか。いかがですか。

寺田政府参考人 実は、平成十六年四月一日に公布、施行されました戸籍法の施行規則の一部を改正する省令、これによりまして、市町村長はオンラインシステムを使用して戸籍事務を行うことができる、既に制度としてはそうなっております。

 この改正省令施行と同時に、戸籍事務の取り扱いについての通達、それからオンラインシステムに備えるべき仕様、条件を明らかにした、オンラインシステム構築のための標準仕様書、こういったものも示されております。したがって、制度上、設計図はあるというような段階でございます。

 しかし、市町村の側では、戸籍事務のコンピューター化の推進をされておりますけれども、現在はまだ戸籍事務のオンラインシステムというものを導入されたところは一つもございません。私どもは、もう少しコンピューター化が進み、さらにオンラインシステムが便利だということで導入されることについては、大いにこれを推奨したいと考えているところでございます。しかし、今はまだ一つもないということでございます。

保坂(展)委員 きょうは、民法七百七十二条の議論を戸籍の問題と絡めて進めていきたいと思います。

 まず大臣に伺いたいんですが、私たちは、本来的には民法の抜本改正が必要な時期だ、明治時代の家族法の民法がこのままずっと残っていること自体が本来はおかしいんだと思っています。しかし、各党の間、特に与党の皆さんからも、現在の、離婚後三百日までは前夫の子として戸籍に強制的に記載をされるということについては救済をするべきである、これは明らかに支障が起こっている、こういう声が上がり、世論も大きく、この点について報道もされていますし、声も上がっていると思います。

 今、大臣は、どのような姿勢でこの問題に臨んでいるんでしょうか。総論から言ってください。基本姿勢です。

長勢国務大臣 七百七十二条、いわゆる嫡出推定の御質問でございますが、この規定自体は、法律上の父子関係をどのように設定するかという身分法の根幹をなすものであり、また、子の福祉のために親子関係を早期に確定する、家庭の平和を尊重するという趣旨は、基本的に今日においても維持されるべきものと考えております。

 御案内のように、この嫡出推定を覆すには裁判、調停を要するわけでございますが、このことがケースによっては大変負担になるということもあり得るわけでございますので、そこら辺について、過度の負担を軽減するということができるかどうかということを今検討させておるところでございます。

保坂(展)委員 従来の答弁を読まれた上で、やはり何らかの救済が必要ではないかということを法務大臣はにじませて答弁をしていただいたのかなと思います。

 ところで、民事局長にお尋ねしますけれども、調査をするということになっておりますよね。例えば、この問題に取り組んできた市民団体などからヒアリングを行った、こういうふうに報道されていますけれども、ヒアリングを行ってどういう問題がわかったんでしょうか。新たに把握された問題などありましたら、幾つか教えてください。

寺田政府参考人 私どもは、今大臣が御説明申し上げましたとおり、現行法の基本的な枠組みというものの中で、しかし裁判というものが過重な負担になっているというおそれがあり得る、それを解消できる道はないかということで検討しているわけでございます。

 委員が今、いろいろな調査をしているはずだとおっしゃったわけでございますけれども、私どもも現に家庭裁判所で、一体、親子関係不存在の訴えあるいは調停、審判というのはどのような形で行われて、実態はどのようなものかということを最高裁にもお願いして調査をいたしておりますし、それを、戸籍の窓口、法務局の関係書類等からも、事の実態が少し浮き彫りになるようなものを探して調査をいたしております。さらに、今委員が御指摘になりました関係の三団体の方々から、一度陳情の席で詳しくお話を伺いましたし、さらに、日を改めまして伺ったわけでございます。

 これらの結果は、いずれ、ある程度まとまった形で明らかにさせていただきたいと考えておりますけれども、現在のところは、やはりこれらの方々にとって非常に、本来はもう少し、自分たちの気持ちとしては、当然父親はだれかということを知っておられるわけでございますので、それを裁判でなしに何とか戸籍の記載につなげてもらえる道はないだろうかということで、随分とお願いを私どもにされたというふうに私どもとしては受けとめております。

保坂(展)委員 戸籍制度は、日本社会におけるいわゆる身分関係の登録、公証、そして本人の権利義務を決定する重要な役割を果たすわけであって、いいかげんな記載や虚偽の記載は許されないというふうに理解をしています。

 しかしながら、DVで逃げ回って前の夫とようやくの思いで離婚をして、そして、例えば二百九十日目にお子さんが生まれた、しかし、何もしなければ自動的に虚偽の事実が記載されてしまう、そしてまた、そういう形で前の夫と、例えば裁判を通してかかわりを持ちたくないということで、戸籍がない状態でお子さんが成長される、大変著しい不利をこうむるわけです。

 民事局長に伺いますが、これは、子どもの権利条約の、子供の最善の利益を優先していこうという趣旨に明らかに反した実態ではないか、この点はいかがですか。

寺田政府参考人 これはなかなか難しいところがございます。

 先ほど申しましたように、当事者であられる母親あるいはお子さんのお立場から見れば、自分の父親は当然、自分の血がつながっている、母親を懐胎させたその人であるという意識があります。しかし、法律上は必ずしもそういうことを保障しているわけではございませんで、これは別に離婚後三百日の問題ではなくて、もともと民法の七百七十二条の第一項でも、夫の方から自分が父親ではないと言わない限りはその人が父親だ、そういう仕組みになっているわけでございますので、父親というのが本来的に自然発生的にあって、それを害するから子供の権利が害されているというのはなかなか難しいところがございます。

 しかし、おっしゃる趣旨はよくわかるところでございまして、もし、本来もう少しスピードを持って解決できる事項あるいはコストをかけずに解決できる事項がそうでない形で解決しているということになりますと、それが子どもの権利条約に反するかどうかは別といたしまして、甚だ不適当なところがある、これは私どもも否定できないところであると先ほどから大臣も申し上げているところでございますので、そういう意味での、権利と言えるかどうかわかりませんが、そういう利益は大事にしたい、こう考えているところでございます。

保坂(展)委員 法律の骨格が、そもそもそういう嫡出推定というふうになっているという説明だったと思います。

 戸籍に関していろいろな手続があって、例えば、裁判で努力をした結果、百五十万円もお金がかかってしまった。金銭的な損害もさることながら、精神的にもえらいストレスで、せっかく子供が生まれて、さあ、スタートだ、子育てはこれからだというときに、非常に不愉快な思いをし続ける。そういう中で、手続を経てようやく変えられるわけですよね。

 変えた場合にも、出生届を出すと前夫の子供としてしか受理をされなかった者に関して、今の親子関係不存在が確定した場合、その事実が戸籍にバツ印で残ってしまう。それからまた、裁判で前夫との親子関係がないんだということで確定する、そういうふうにやろうとすると、出生届を出すまでの間、戸籍、住民票がない状態が続いて、しかも、戸籍の中に前夫の名前がきちっと入って、嫡出子否認の裁判確定というのが残ってしまうんですね。

 これは、子供が戸籍を持ってこれから長い人生をスタートさせていくのに、何とかならないんですか。こういう扱いをやはり変えるべきじゃないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。

寺田政府参考人 これは、けさほど来申し上げておりますように、我が国の戸籍というのは非常に長い伝統があるわけでございますけれども、その子の今の身分関係というのを、それを見ればすべてわかるということが特徴になっているわけでございます。

 したがいまして、仮に、裁判が行われたにもかかわらず、その裁判が記載されずにいきなり別の父親が出てくるとすると、後で法律を見ると、どうも三百日以内に生まれて、前の夫の嫡出子のはずだ、それなのに別の者が父親として書いてある、これだけですと、これは間違いではないかということになるわけでございます。

 したがって、実際に裁判が行われて、その結果この者が父親、こういうことになったということになりますと、やはりそのこと自体を戸籍には書かざるを得ない。問題は、そのこと自体をどこまでプライバシーの面で保護してあげるかということになろうかと思います。

 ただ、もう一つの問題は、裁判をしないとそういう結果が得られないということにあるわけでございますから、これは先ほど来大臣の方から申し上げていますように、不当にそういう裁判の道を踏まなければこの問題として正しい解決に至らなかったということであっては困るので、そういう方向での検討というのはやはり必要ではないかということでまさに検討させていただいているところでございます。

保坂(展)委員 まさに後段、裁判をしないでもどうにかならないのかという検討を今しているということですが、民法七百七十二条の二項の一番最初は、「婚姻の成立の日から二百日を経過」、こういうふうにあるわけですけれども、いわゆるできちゃった婚の場合、最近多いわけですけれども、これは通達によって柔軟に解釈しているという実態があります。であれば、この三百日以内についても同様の措置がとれるのではないか、こういう意見もあるんですが、その点はいかがでしょうか。

寺田政府参考人 委員が最後におっしゃいました三百日以内も同様の措置がとれるのではないかというのは一つのお考えとしてあり得るお考えだとは思いますが、ただ、問題は、その二つは決してパラレルではないということです。

 改めて委員に詳しい説明をするまでもないことかもしれませんが、もともと二百日以内というのは何の推定も規定がないわけでございますので、いわば白紙の状態です。その白紙の状態は、非嫡出子とするのが正道ではありますけれども、しかし、そこを判例で嫡出子としてもいいという判断がなされれば、戸籍当局としてはそれは嫡出子としての扱いをするということにならざるを得ないわけでございますし、また、それが実際の実態にも合っているということは、これは正しい解決ではないかと私どもは思っておるわけでございます。

 これに対しまして、離婚後三百日の問題は推定がかかっている、真っ白と比較していわば黒い、別に黒が悪いというふうに申し上げるわけではありませんけれども、かかっているわけでございます。(発言する者あり)灰色でも結構でございますが、灰色がかかっているわけでございまして、その灰色をはぎ取らないともとへ戻らないということでございますので、戸籍当局としてそれを二百日以内の問題と同列に扱うというのは、やや乱暴な議論ではないかと思います。しかしながら、最初に申しましたように、そういう考えがおよそあり得ないかといえば、それは一つのお考えだというふうに感じております。

保坂(展)委員 大臣に伺いますが、ここを特例的に救済しようという議員立法を、与党で、この委員会にいらっしゃる早川議員などを中心に、大口先生もいらっしゃるのかな、検討されている、これは当然の動きだと思うんですね。大臣は、こういう与党の動き、我々野党はもちろん賛成ですけれども、どうなんですか、歓迎するんですか、議員立法の動きは。

長勢国務大臣 私自身で今考えておることは、先ほど御答弁申し上げたところでございます。与党においていろいろ御議論があるということも承知をしておりまして、与党の方々の御議論もまた見守っていきたいと思っております。

保坂(展)委員 この与党の議論の中で、女性の再婚禁止期間、これは民法の七百三十三条の百八十日から百日に短縮したらどうか、こういう話が始まっている。私たち社民党は、再婚禁止期間ということ自体が女性にだけ課せられるのは差別である、全廃した方がいいという意見ですが、百日に短縮すべきだという議論が与党内から上がっていることに対して、大臣はどう考えますか。

長勢国務大臣 それぞれの政党においていろいろな議論があることは当然でございますので、私としても与党の議論は議論として見守っていきたいと思います。

保坂(展)委員 この議論は、九六年の法制審答申が十年たなざらしになってしまっているということの結果として、何も進まなかったという中で起きている議論だと思います。

 もう一つ、この法制審の中で私が非常に重大だと思って何とかしなければいけないなと思っているのは、非嫡出子の相続差別の問題ですね。これは現行二分の一というふうになっていて、明らかに法のもとの平等に反するのではないか、こういうふうに思います。しかし、十年たなざらしになっているということについて、法務大臣、どういうふうに考えていますか。

長勢国務大臣 この問題は、婚姻制度や家族のあり方と関連する大変重要な問題であります。したがって、法制審の経過も知っておりますが、国民各層の意見を幅広く聞いて、また、各方面の御議論の推移を踏まえて考えなければならないと思っております。

 平成十八年の世論調査の結果によりますと、嫡出でない子の相続分について、現行の制度を変えない方がよいと答えた者の割合は四一・一%、相続できる割合を同じにすべきであると答えた者の割合は二四・五%となっている状況でありまして、この規定を改めるという方向で国民の意見がまとまりつつあるという状況にはまだないのではないかというふうに思っております。

保坂(展)委員 民事局長に伺いますが、民事分野の法制審答申が十年塩漬けになったという例は過去にありましたか。

寺田政府参考人 この問題を塩漬けと形容するのがいいかどうかということについてはちょっと留保させていただきますが、法制審答申が必ずしも実行されなかったというのは、民事部門ではこれのほかには例を見ないというふうに考えております。

保坂(展)委員 そこで、与党内の議論で、百日に短縮ということを持ち出すと、民法改正の選択的夫婦別姓も含んだ、今の議論も含んだ問題になってしまうのでやめた方がいいという意見もあるようですが、きょうは副大臣、政務官にもこの点について、特に非嫡出子の相続差別の問題、これは入っているわけですね、九六年の法制審答申に。政治家としてどう考えているか、それぞれ伺いたい。

水野副大臣 非嫡出子の相続二分の一というのが法のもとの平等に反するとか、同じ国民として生まれながらそこら辺はおかしいじゃないか、そういう議論があるということは十分わかっておりますけれども、世論調査や国民世論の動向その他いろいろな議論を踏まえながら考えていくべき問題だというふうに考えております。

奥野大臣政務官 今お問い合わせの財産分割の件に限定して物を言えば、私は、その件も家族制度とか婚姻制度に非常にリンクするものであって、日本には大変根強い潔癖な文化というのがあるような気がするんです。ですから、私自身がそれについてどう思うかと言われれば、極めて保守的な対応にならざるを得ない。

 しかしながら、世の中では、特にフランスだろうと思いますが、子供さんの権利を考えた場合には、もう少し子供さんの権利を考えて財産分割もイーブンにしたらどうだというような考え方もあり得るわけですから、多くの世界の潮流を見きわめながら判断をしていくというのが正しい立場かな、こういうふうに感じます。

保坂(展)委員 法務大臣に最後にお尋ねしますが、十年たって、世の中やはり進まなければいけないと思うんですね。九六年の法制審答申が出た直後に私も法務委員会の委員になりました。その当時はかなり活発に議論をしておりましたが、最近はこの問題について自民党の中でも余り議論がされていないというふうに聞いておりますけれども、今回、与党の方々が議員立法で緊急にこの三百日問題の救済を図るということについては、私は賛成です。それはもう何とかしなきゃいけない。困っている人がいる。しかし、緊急措置、特例救済や緊急立法をどんどん連発していくというのはやはり美しくないんじゃないか。やはり民法の抜本改正が必要じゃないか。

 児童虐待防止法の改正にも今与野党で取り組んでおりますけれども、例えば親権というものについて、例えばドイツなんかだと、段階的に停止をしていく、こういう制度があって、よって、児童虐待をしている家庭から切り離す措置というのも非常に明快になっているんですね。日本の場合は、親権の全面的な剥奪か、ゼロか一かしかないので、段階的にというのがないんですね。そのかわりに児童相談所長の命令によってという、またこれも緊急立法的な措置でしのいでいる。

 民法の家族法の抜本改正をもうしなきゃいけない時期なんですよ、大臣。それについて、少し長勢法務大臣としてリーダーシップをとって、踏み出していただけませんか。(発言する者あり)

長勢国務大臣 短いこともありますが、民法の改正ということになれば、それは先ほど来副大臣、政務官も答弁しておりますように、家族、婚姻制度、その他もろもろ、社会のあり方そのものにかかわる問題でございますから、いろいろ御議論があることは承知をしておりますが、しかし、多数の方々が賛成している制度もたくさんあるわけで、そういう世論動向を見ながら、各方面で御議論が行われていくということを見守っていきたいと思っております。

保坂(展)委員 見守らないで、一歩前に出ていただきたいということを重ねて申し上げて、終わります。

七条委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

七条委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、戸籍法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

七条委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

七条委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、上川陽子君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党及び社会民主党・市民連合の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。高山智司君。

高山委員 ただいま議題となりました附帯決議案について、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。

    戸籍法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。

 一 戸籍の制度が我が国の社会において重要な役割を果たしていることにかんがみ、本法による戸籍の制度の整備について周知徹底を図ること。

 二 第三者が戸籍の謄抄本を交付請求する場合において、正当な理由がある者の請求が拒まれ、又は正当な理由がない者の請求が認められることのないよう、全国統一的かつ適切な運用に努めること。

 三 弁護士、行政書士等の資格者が戸籍の謄抄本を交付請求する場合における業務上の必要性の判断については、各資格者の業務に照らし個別に行うこと。

 四 戸籍の謄抄本を交付請求する場合等における運転免許証等を有しない者の本人確認手続については、全国統一的かつ適切な運用に努めること。

 五 本法による戸籍制度の整備に伴い、市町村の事務負担が過重になることのないよう、必要な措置を講ずること。

 六 戸籍の公的な性格にかんがみ、コンピュータ化の完成時期に合わせて、個人情報の保護に留意しつつ、戸籍情報の社会的な性格の違いに応じた公開の在り方について検討を行うこと。

 七 本法の施行状況に照らし、虚偽の届出を行った者に対する制裁が実効的なものとなるよう、必要に応じて刑罰等につき見直しをすること。

 八 本法の施行状況及び他の関連制度における扱いに照らし、第三者が不正に戸籍の謄抄本を交付請求することを防止する更なる措置の導入の是非について検討を行うこと。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)

七条委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

七条委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。長勢法務大臣。

長勢国務大臣 ただいま可決されました戸籍法の一部を改正する法律案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

七条委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

七条委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

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七条委員長 第百六十四回国会、内閣提出、少年法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。長勢法務大臣。

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 少年法等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

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長勢国務大臣 少年法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 近年、少年人口に占める刑法犯の検挙人員の割合が増加し、強盗等の凶悪犯の検挙人員が高水準で推移している上、いわゆる触法少年による凶悪重大な事件も発生するなど、少年非行は深刻な状況にあります。

 このような現状を踏まえ、平成十五年十二月、青少年育成推進本部が策定した青少年育成施策大綱において、触法少年の事案について、警察の調査権限を明確化するための法整備を検討すること、触法少年についても、早期の矯正教育が必要かつ相当と認められる場合に少年院送致の保護処分を選択できるよう、少年院法の改正を検討すること、保護観察中の少年について、遵守事項の遵守を確保し、指導を一層効果的にするための制度的措置について検討することが示されたほか、同月、犯罪対策閣僚会議が策定した犯罪に強い社会の実現のための行動計画においても、非行少年の保護観察のあり方の見直し及び触法少年事案に関する調査権限等の明確化について検討することが取り上げられましたが、これらの検討事項は、いずれも、かねてから立法的手当てが必要と指摘されていたところでもあります。

 また、平成十四年三月に閣議決定された司法制度改革推進計画において、少年審判手続における公的付添人制度について積極的な検討を行うこととされました。

 そこで、この法律案は、少年非行の現状に適切に対処するとともに、国選付添人制度を整備するため、少年法、少年院法及び犯罪者予防更生法等を改正し、所要の法整備を行おうとするものであります。

 この法律案の要点を申し上げます。

 第一は、少年法を改正して、触法少年及びいわゆる虞犯少年に係る事件の調査手続を整備するものであります。

 すなわち、触法少年の事件について警察官による任意調査及び押収等の強制調査等の手続を、虞犯少年の事件について警察官による任意調査の手続をそれぞれ整備するとともに、警察官は、調査の結果、家庭裁判所の審判を相当とする一定の事由に該当する事件については児童相談所長に送致しなければならないこととし、児童相談所長等は、一定の重大事件に係る触法少年の事件については、原則として家庭裁判所送致の措置をとらなければならないこととしております。

 第二は、少年法及び少年院法を改正して、十四歳未満の少年の保護処分を多様化するものであります。

 すなわち、十四歳未満の少年についても、家庭裁判所が特に必要と認める場合には、少年院送致の保護処分をすることができることとしております。

 第三は、少年法、少年院法及び犯罪者予防更生法を改正して、保護観察に付された者に対する指導を一層効果的にするための措置等を整備するものであります。

 すなわち、遵守事項を遵守しなかった保護観察中の者に対し、保護観察所の長が警告を発することができることとした上、それにもかかわらず、なおその者が遵守事項を遵守せず、保護観察によってはその改善更生を図ることができないと認めるときは、家庭裁判所において少年院送致等の決定をすることができることとするほか、少年院及び保護観察所の長が保護処分中の少年の保護者に対し指導助言等をできることとしております。

 第四は、少年法及び総合法律支援法を改正して、国選付添人制度を整備するものであります。

 すなわち、一定の重大事件について、少年鑑別所送致の観護措置がとられている場合において、少年に弁護士である付添人がないときは、家庭裁判所が職権で少年に弁護士である付添人を付することができることとしております。

 その他所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、この法律案の趣旨であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。

七条委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る二十八日水曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十一分散会


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