衆議院

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第15号 平成19年5月11日(金曜日)

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平成十九年五月十一日(金曜日)

    午前九時三十二分開議

 出席委員

   委員長 七条  明君

   理事 上川 陽子君 理事 倉田 雅年君

   理事 武田 良太君 理事 棚橋 泰文君

   理事 早川 忠孝君 理事 高山 智司君

   理事 平岡 秀夫君 理事 大口 善徳君

      赤池 誠章君    稲田 朋美君

      今村 雅弘君    小野 次郎君

      近江屋信広君    奥野 信亮君

      後藤田正純君    笹川  堯君

      清水鴻一郎君    柴山 昌彦君

      杉浦 正健君    中森ふくよ君

      馬渡 龍治君    牧原 秀樹君

      三ッ林隆志君    武藤 容治君

      森山 眞弓君    矢野 隆司君

      保岡 興治君    柳本 卓治君

      山口 俊一君    石関 貴史君

      大串 博志君    河村たかし君

      寺田  学君    中井  洽君

      横山 北斗君    神崎 武法君

      谷口 隆義君    保坂 展人君

      滝   実君

    …………………………………

   議員           鈴木 宗男君

   法務大臣         長勢 甚遠君

   法務副大臣        水野 賢一君

   法務大臣政務官      奥野 信亮君

   参議院管理部長      諸星 輝道君

   最高裁判所事務総局経理局長            小池  裕君

   最高裁判所事務総局刑事局長            小川 正持君

   政府参考人

   (内閣官房司法制度改革推進室長)         小林 昭彦君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 荒木 二郎君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    縄田  修君

   政府参考人

   (警察庁交通局長)    矢代 隆義君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局審議官)            細溝 清史君

   政府参考人

   (法務省大臣官房長)   池上 政幸君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          菊池 洋一君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    寺田 逸郎君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    小津 博司君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    梶木  壽君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  稲見 敏夫君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 杉田 伸樹君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           村木 厚子君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           立岡 恒良君

   政府参考人

   (経済産業省貿易経済協力局長)          石田  徹君

   政府参考人

   (国土交通省自動車交通局技術安全部長)      松本 和良君

   法務委員会専門員     小菅 修一君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十一日

 辞任         補欠選任

  稲田 朋美君     馬渡 龍治君

  近江屋信広君     小野 次郎君

  柳本 卓治君     中森ふくよ君

  河村たかし君     寺田  学君

  神崎 武法君     谷口 隆義君

同日

 辞任         補欠選任

  小野 次郎君     牧原 秀樹君

  中森ふくよ君     柳本 卓治君

  馬渡 龍治君     稲田 朋美君

  寺田  学君     河村たかし君

  谷口 隆義君     神崎 武法君

同日

 辞任         補欠選任

  牧原 秀樹君     近江屋信広君

    ―――――――――――――

五月十日

 刑法の一部を改正する法律案(内閣提出第八三号)(参議院送付)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 委員長不信任動議

 政府参考人出頭要求に関する件

 刑法の一部を改正する法律案(内閣提出第八三号)(参議院送付)

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

七条委員長 これより会議を開きます。

 ただいま、平岡秀夫君から、成規の賛成を得て、委員長の不信任に関する動議が提出されております。

 本動議は、私の一身上の問題でありますから、この際、本席を理事上川陽子君に譲ることといたします。

    〔委員長退席、上川委員長代理着席〕

上川委員長代理 委員長の指名により、私が委員長の職務を行います。

 平岡秀夫君提出、法務委員長七条明君不信任に関する動議を議題といたします。

 提出者の趣旨弁明を許します。平岡秀夫君。

平岡委員 本日、私は動議を提出いたしました。

 その内容は、

  本委員会は、委員長七条明君を信任せず。

という動議です。

 以下、その趣旨及び理由を申し述べます。

 昨年十月十三日の本委員会で、七条明委員長は、「委員各位の御指導、御協力を賜りまして、公正かつ円満な委員会の運営に努めてまいりたいと考えているところでございます。」とあいさつをしました。しかしながら、これから申し上げるように、その言に反する言語道断の委員会運営が行われたのであります。

 その第一は、少年法等の一部を改正する法律案の審議に関してであります。

 四月十八日水曜日に本委員会で強行採決された少年法等の一部改正法案は、一昨年の第百六十二回国会で提出され廃案となり、昨年の第百六十四回国会で再提出された後、第百六十五回国会で本会議での趣旨説明が行われ、今国会に審議継続されていたものでございます。このような経緯から明らかなように、本法案は、少年問題への対処のあり方をめぐって慎重審議が望まれていたものということは言うまでもありません。

 簡単に審議経過について振り返ってみますと、三月二十三日金曜日に提案理由説明が行われました。三月二十八日水曜日に六時間の質疑が行われ、統一地方選挙前半明けの四月十日火曜日には二時間半の質疑が行われ、さらに翌日の水曜日、栃木県の喜連川少年院、国立きぬ川学院、栃木県中央児童相談所において視察が行われ、十三日金曜日には四人の参考人に対する質疑、それから厚生労働委員会との連合審査、ここまでは、与野党間の協議に基づき真摯な審議、公正かつ円満な委員会運営が行われていたと私も評価をするところであります。しかしながら、急転直下、四月十八日水曜日には、委員長職権により委員会が開催され、強行採決が行われたのであります。

 非常に重要な法案であるにもかかわらず、審議時間の実績は、参考人質疑を含めてもわずか十六時間四十六分であります。二〇〇〇年、第百五十回国会で行われた前回の少年法改正でも、審議時間は二十五時間四十五分が使われているという状況に比べてみて、極めて少なくなっているという状況であります。

 しかも、与党修正案が野党に提示されたのは委員長職権による委員会開会があった当日の開会三時間前。与党修正案に対する審議も野党わずか二時間。与党修正案に関する質疑に対する答弁も、とても納得のいくものではありませんでした。

 その当時を振り返ってみますと、与野党間の修正協議はまだ始まったばかりでありました。我々は、四月十一日に民主党修正案の骨子を提示し、参考人質疑、連合審査会の終了時点であります四月十三日に民主党修正案を提出するなど、真摯な修正協議を目指していたところでありました。

 にもかかわらず、与党は、十七日火曜日夕刻、一時間半程度の協議に応じただけで、一方的に自分たちの見解を提示し、これ以上の修正協議は行わないと通告をしてきたが、我々は、修正協議は始まったばかりであり、問題の重要性にかんがみ修正協議を継続すべきであると強く要請したところでありました。

 そのような状況の中で、採決をちらつかせての委員長職権による委員会開会、そして、開会後は一方的な質疑打ち切りの動議の採決を強行し、さらに法案の採決を強行したのであります。これらのことは、委員長が委員長就任に当たり言明していた、公正かつ円満な委員会の運営に努めるという言葉に全く反するものであります。

 以上のような委員会運営については、国民からも多くの疑問の声が上がっておりますし、安倍政権批判意欲を持たない新聞を除く新聞各紙も次のような論評をしております。

 すなわち、四月二十日毎日新聞の社説では、遺憾なのは、子供の将来を左右する重要法案なのに審理が拙速と映ることだ。法務委員会で与党側が修正案の審理を一日で打ち切り、採決を強行したことは、禍根を残したと言わざるを得ない。参院では与野党が実りある議論を尽くし、少年の人権に配慮した改正法に修正することを期待したい。

 同日の毎日新聞の「余録」でも、論議すべきことはあるのだから与党側も採決を強行せずに、もっと悩んでほしかった。

 四月十九日付の北海道新聞の社説では、少年法は二〇〇〇年に、刑事罰に問う年齢を十六歳から十四歳以上に引き下げるなどの大改正をした。その効果が確かめられていない中で、与党が野党の反対を押し切って採決した。進め方が強引ではないか。民主党の案は練られた案だが、与党は耳をかさなかった。もっと協議してもよかった。政府・与党は、厳罰化さえすれば問題が解決すると考えていないだろうか。法改正を急ぐ必要はない。

 四月二十日付の神戸新聞社説でも、改正案が衆院を通過したが、なお議論すべき点は多い。まず必要なのは、安倍首相が言うような法改正のスピード感ではないだろう。幅広い議論や実践を踏まえ、更生の仕組みをじっくり再構築することである。

 四月二十日付の西日本新聞でも、与党側は野党側のこうした修正協議続行要求を振り切る形で与党修正案の衆院通過を図った。実態を追って少年法の対象を急激に低年齢化させることが果たしていいかどうか、なお疑問が残っている。参院では、さらに改正案の修正について議論を尽くすべきだ。

 四月二十日付の中国新聞の社説でも、前日の法務委員会では与野党の修正協議を打ち切って可決した。本当に犯罪抑止につながるのかといった異論もあるのに、そんなに急ぐ必要があるのか。参院ではもっと慎重に議論してほしい。

 五月四日付の朝日新聞社説でも、参院では、児童相談所や少年院など現場の声を十分聞いた上で、議論を尽くしてもらいたい。

 このように、多くの社説が参議院での議論に期待しているということについては、極めて残念であり、嘆かわしいことであります。本院及び本委員会の権威と信頼を失わせるような事態を招いた委員長の責任は、極めて大きいと考えます。

 その第二は、更生保護法案の審議に関してであります。

 四月十八日の少年法の一部改正法案についての強行採決のほとぼりがいまだ冷めやらぬ中、今度は、更生保護法案について、与野党理事間の協議が調わないうちに、委員長は、同月二十五日水曜日、職権で委員会を開催し、審議入りを強行いたしました。

 また、その日の委員長職権による委員会日程立ては、法案の提案理由説明聴取の当日には法案に対する質疑、特に野党質疑は行わないとする慣行をも無視して、野党質疑の実施を強制しようとするものでありました。

 さらに、その日には、野党議員不在のまま、参考人質疑について、与党単独で委員長一任の採決をとり、野党の意見を聞くこともなく参考人の選考を一方的に行った上で、委員長は、またしても、職権で、四月二十七日金曜日の参考人質疑の委員会開会を強行しました。そのため、二十七日金曜日の参考人質疑のための委員会は、野党が出席できない状況のもとで強行開催されるという、私もいまだかつて経験したことのない極めて異常な事態となってしまいました。

 二十七日当日は、与党が、数時間の質疑の後、質疑終局と採決を強行する姿勢を見せ、それに対し野党が猛烈に反対していたにもかかわらず、委員長は、委員会の続行を強行いたしました。

 事態の重要性にかんがみ、やむなく出席せざるを得なかった野党議員が、質疑において、委員長に対し、なぜこの更生保護法案の審議をこんなふうに職権ということで急いでやるのかお答えいただきたいと質問しても、明確な答弁はせず、さらに、本日の質疑が終わるあたりに質疑打ち切りと採決の動議が出たらどうされるかと質問しても、コメントを差し控えたいという、委員長として全く無責任きわまりない答弁を行い、委員会における異常な事態を収拾することを試みようともしませんでした。

 結局、更生保護法案は、新法制定の法案としては極めて異常な、わずか四時間しか質疑されていない状況で強行採決が行われるという事態に至ってしまったわけであります。

 このように、一方的な質疑打ち切りの動議の強行採決、法案の強行採決が前の週に引き続いて繰り返されたことは、権威ある委員長としての公正かつ円満な委員会の運営に努めるとの発言を全く食言におとしめるものと言わざるを得ません。

 この際、与党議員から、この不信任決議案への反対討論の中で、野党議員は審議拒否をしてけしからぬという主張がなされると予想されるので、あらかじめ反論しておきたいと思います。それは、最大の審議拒否をしているのは政府・与党であるということであります。

 野党は、国会や委員会で多数を握った与党が法案審議をやると言えば、どんなに問題がある法案でも、どんなに反対の法案でも、どんなに検討が不十分な状況にある法案でも、審議の場に引きずり込まれることになります。そのため、場合によっては、強引な委員会運営に抗議して、審議の場に出られなくなることもあります。

 しかしながら、政府・与党は、気に入らない法案ならば法案そのものを出さないとか、野党提出の法案は審議入りさせないとかといったような形で、審議することを拒否しているのであります。

 例えば、この法務委員会に関係する例を挙げれば、気に入らない法案を提出しないという例として、人権擁護法案があります。人権擁護法案は、二〇〇二年の百五十四回国会に政府が一たん国会に提出したものの、二〇〇三年に衆議院解散に伴い廃案となり、その後は、二〇〇五年に当時の安倍幹事長代理、現在の総理大臣でありますけれども、この安倍幹事長代理が、いいかげんな形で国会に提出し、成立させてはならないといったような発言をし、それ以来、野党が早期提出を促しても、政府・与党は法案の提出すら行っていないという状況にあるわけです。独立性の高い人権委員会の設置は、国際的にも要請されているにもかかわらずであります。

 また、野党提出の法案は審議入りをさせないという例として、民主党が昨年の百六十四回国会に提出して継続審議扱いとなっている、捜査の可視化のための刑事訴訟法の改正法案や、夫婦選択的別姓制度あるいは再婚待機期間短縮のための民法の改正法案があります。これらの法案は、長期間たなざらしにされたまま、全く審議の目途すら立っておりません。

 このような事例に見られるように、最大の審議拒否をしているのは政府・与党であるということを、私はここで皆さんにお訴え申し上げたいと思います。

 以上のような事態をもたらした七条委員長は、法務委員長として、その職務を遂行することは不適格であると判断した次第であり、我々は七条明委員長を信任することはできません。

 これが、本決議案を提出する理由であります。

 委員各位の御賛同をいただきますようお願い申し上げまして、趣旨の説明とさせていただきます。

上川委員長代理 これにて趣旨弁明は終わりました。

 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。武田良太君。

武田委員 武田良太でございます。

 私は、ただいま議題となりました平岡秀夫君提出の法務委員長七条明君不信任に関する動議に対し、自由民主党を代表して、断固反対の討論を行うものであります。

 今国会の本委員会は、継続審査とされた法案も含めて、多くの重要な法案の審査を行わなければならない状況にあります。国民の負託に誠実にこたえ、これらの法案について審査を進めることは、我々国会議員に課された責務であると考えております。

 四月十八日に本委員会において修正議決された少年法等の一部を改正する法律案は、近年、少年人口に占める刑法犯の検挙人員の割合が増加し、強盗等の凶悪犯の検挙人員が高水準で推移している上、いわゆる触法少年による凶悪重大な事件も発生しており、このような深刻な少年非行の現状に適切に対処するため、不可欠なものであります。

 この法律案につきましては、第百六十四回国会から継続審査となっていたものでありますが、少年院、児童自立支援施設等の視察、参考人からの意見聴取、厚生労働委員会との連合審査も行い、慎重に審議するとともに、委員会審議により明らかになりました政府原案の問題点を解決するため、与野党間において修正協議を行いました。

 最終的には、四月十三日、民主党・無所属クラブから修正案が提出され、四月十八日、自由民主党及び公明党の共同提案に係る修正案が提出され、政府原案及び修正案について質疑が行われたところであります。これにより約十七時間に及ぶ審議が行われたことになり、十分議論が尽くされたと考えております。

 したがいまして、委員長が、質疑終局動議を受けて、本委員会において政府原案及び修正案に対し採決を行ったことは、極めて妥当な措置であります。

 また、四月二十七日に本委員会において議決された更生保護法案は、社会及び犯罪の情勢が変化する中、更生保護の機能を充実強化するもので、極めて重要な法律案であります。

 民主党・無所属クラブは、この法律案の委員会審議に当たり、本委員会における少年法改正案の採決や憲法調査特別委員会におけるいわゆる国民投票法案の採決を理由に、新たな日程協議には応じられないとの不当な主張を繰り返したのであります。そして、野党は、四月二十五日の質疑、四月二十七日の参考人質疑を欠席するという無責任な行動をとったのであります。このような不当な審議引き延ばしの戦術に対し、委員長が、毅然とした態度をとり、粛々と法案審査を進め、質疑終局動議を受けて採決を行ったことは、極めて妥当な措置であります。

 野党は、委員会での更生保護法案の採決に抗議をしておきながら、本会議においては法案に賛成しております。このような理解しがたい無責任な行動こそ、責任政党としての意思決定に大きな問題があるとして批判されるべきものであります。

 国民の負託にこたえるため、議院から付託された法案の審査をすることは委員会の重要な任務であります。また、その法案の審査を進めることは委員長の重要な責務であります。

 したがいまして、今回の委員長がとられた少年法改正案及び更生保護法案の審査や採決のための一連の措置は当然のことであります。

 他の委員会がおおむね円満に運営されている中で、本委員会においては、自己の主張以外は是としたがらない硬直的な野党の姿勢こそが委員会の円満な運営を阻害する大きな要因となっているものと考えます。

 それにもかかわらず、民主党・無所属クラブ及び社会民主党・市民連合は、不当にも委員長の委員会の運営について異議を唱えているのであります。公正中立で円満な運営をされてきた七条委員長に対して不信任動議を突きつけるなどということは、許しがたい暴挙であります。

 私は、このような理不尽な不信任動議は断固否決されるべきであると考えるものであります。

 ここに、正義と良心をもって国民の負託にこたえんとする委員各位とともに、委員長不信任動議に反対の意見を表明し、私の反対討論といたします。(拍手)

上川委員長代理 次に、横山北斗君。

横山委員 民主党・無所属クラブの横山北斗でございます。

 私は、ただいま議題となりました法務委員長七条明君不信任動議について、賛成の立場から討論をいたします。

 去る四月十八日以来、七条明委員長の職権乱発によって、少年法等の一部を改正する法律案と更生保護法案が相次いで与党単独により強行採決されるという異常な事態が生まれております。七条委員長の委員会運営は、公正かつ円満な委員会の運営に努めるという就任時の公約とは異なるものと言わざるを得ません。

 そもそも、政府提出の少年法等改正案は、少年事件厳罰化の流れを一層推進しようとするものであり、これまでの少年法のあり方を根底から揺るがす重要な問題を含んでいます。

 このため、民主党は、慎重審議と修正協議の継続を求めてきました。しかも今回は、与党も政府案の問題点を認め、民主党の修正提案を一部取り入れて修正案を出しました。もう少し時間をかけて審議と修正協議を続ければ、政府案の問題点をさらに明らかにし、より抜本的な修正への道も開けたものと思われます。

 強行採決の後、委員会運営の正常化への努力の一環として行われた補充質疑の中で、少年院に小学生を収容した場合の学習環境の保障などをめぐって、政府の対応方針の不備が次々と明らかになり、答弁がしばしば中断する状況も見られました。参議院に送付する前によりよい法律をつくるという努力を衆議院は怠ったということになるのではないでしょうか。

 さらに驚くべきは、補充質疑などを通じて何とか委員会運営を正常化しようと努力しているまさにそのときに、七条委員長はさらに職権を乱発し、更生保護法案の審議入りを強行したということです。

 更生保護法案については、民主党としても、多少問題点はあるものの最後は賛成すべきものとの認識を持っておりました。七条委員長がみずからの非を認めさえすれば、その後の日程協議には応じるつもりでいたところ、再び職権で次々に委員会日程を決め、最後は、定例日は委員会を開くのが前提で、審議拒否をすることの方がおかしいと述べられたのです。

 職権で委員会を開催したり、強行採決をせざるを得ないと思うこともたまにはあるでしょう。しかし、そこで一たん立ちどまって、何とか正常化を図ろうと努力することが議会の良識と考えます。今回の更生保護法案のように、強行採決直後、再びの職権開催、しかも、提案理由説明から採決に至るすべての日程が職権で決められたというような例は近年ほかにあったでしょうか。

 七条委員長は、故河本敏夫先生や故三木武夫元総理を尊敬し、良識のある政治、バランスのとれた政治をモットーとされているとのことです。しかし、このたびの振る舞いは、良識やバランスのとれた委員会運営であると言うことはできないと思います。

 ここに、法務委員長七条明君不信任動議に賛成することを重ねて表明し、私の討論といたします。(拍手)

上川委員長代理 次に、大口善徳君。

大口委員 私は、ただいま議題となりました平岡秀夫君提出の法務委員長七条明君不信任に関する動議に対し、公明党を代表して、断固反対の討論を行うものであります。

 野党は、七条委員長に対して不信任動議を提出した主な理由として、少年法改正案及び更生保護法案の強行採決を挙げております。しかし、この主張には全く理由がありません。

 両法律案は、いずれも国民にとって重要な法案であります。

 少年法改正案は、近年、少年人口比の刑法犯の検挙人員の割合が増加し、強盗等の凶悪犯の検挙人員が高い水準で推移している上、社会に大きな衝撃を与える、いわゆる触法少年による凶悪重大な事件も発生しており、このような深刻な少年非行の現状に適切に対処するための法律案であります。

 また、更生保護法案は、社会及び犯罪の情勢が変化する中、更生保護現場の声を反映させ、更生保護の機能を充実強化する法律案であります。

 これらの法律案を審査することは、我々国会議員の使命であります。

 少年法改正案については、少年院、児童自立支援施設等の視察、参考人からの意見聴取、厚生労働委員会との連合審査も行い、慎重に審議するとともに、委員会審議により明らかになりました政府原案の問題点を解決するため、与野党間において修正協議が行われました。残念ながら与野党間の修正協議は調いませんでしたが、与党は、立法府の見識として、委員会審議の成果を反映した、虞犯少年に係る事件の調査に関する規定の削除、国選付添人の選任の失効に関する規定の削除、少年院収容年齢の下限の設定等の大幅修正を行いました。

 更生保護法案につきましても、参考人の意見聴取をするなど、慎重な審査を行っております。特に、更生保護の現場の最前線で苦労されている保護司を代表する参考人からは、法律案に対する強い期待が表明されました。

 両法律案の審査においては、野党にも十分に配慮して審査の日程を組んでおります。

 しかしながら、野党は、少年法改正案について、約十七時間に及ぶ審議が行われているにもかかわらず採決に反対し、また、更生保護法案についても、法律案の内容に賛成であるにもかかわらず採決に反対したのであります。

 採決を先送りするという野党の要求を受け入れるのは、いたずらに法律案の成立をおくらせるものであり、国民の負託にこたえる国会議員の職責を放棄するものであります。このような党利党略による審議の引き延ばしは、国民の支持が得られるものとは到底考えられません。

 特に、民主党・無所属クラブは、憲法調査特別委員会におけるいわゆる国民投票法案の採決を理由に、新たな日程協議には応じられないという、他の委員会の運営を理由にする理不尽な主張であります。

 公明党としましても、円満な委員会運営を目指して、十分協議するという姿勢を一貫してとってまいりました。しかし、野党は、日程協議を真摯に行おうとせず、時間だけが無駄に費やされる結果となりました。

 このような状況の中で、それぞれの法律案の審査において、質疑終局動議が提出されたのは当然のことであります。この動議を受けて、七条明委員長が両法律案について採決を行ったことは、極めて当然のことであり、何ら批判に値するものではございません。

 民主党・無所属クラブ及び社会民主党・市民連合は、不当にも委員長の委員会運営に異議を唱えて、七条委員長に対する不信任動議を突きつけたのであります。

 七条委員長は、常に委員会の公平中立で円満な運営を心がけ、与野党間の話し合いによる解決を目指して、忍耐強く意見調整を行ってきたのであります。このような仏のような委員長に対する不信任動議は、議会人としての良識に反するものであり、断固否決されるべきものであると考えます。

 ここに、政治家としての良心に従い、国民の負託に真摯にこたえようとする委員各位とともに、七条明委員長不信任動議に反対の意見を表明し、私の反対討論といたします。(拍手)

上川委員長代理 次に、保坂展人君。

保坂(展)委員 社会民主党の保坂展人です。

 七条明法務委員長に対して、平岡秀夫君から提出された委員長不信任動議に賛成の討論を行います。

 私が当法務委員会に参加をいたしましたのが一九九六年、時として激しい議論はあったものの、日程協議等については穏やかに行われる、これが常でした。

 この委員会で体験した……(発言する者あり)ちょっと待って、不正常事態は、九九年の盗聴法をめぐる与野党対立でしたが、当時の杉浦法務委員長の日程設定に対して、私たち野党は、厳重に抗議し、委員会、本会議採決を欠席したという経緯がございます。

 しかし、このときの法務委員会の状況は、何度となく理事会、理事懇を開催し、徹底的な議論を交わす中で……(発言する者あり)よく聞いてください、次第に対立の根が深くなってきたもので、いきなり衝突したり燃え上がった、こういうものでは全くない。

 また、与党理事の皆さん、与党の皆さんに、歴史的事実として……(発言する者あり)よろしいですか、二〇〇三年の刑務所問題の解明に果たした当法務委員会の役割について触れておきたいと思います。

 受刑者の死亡記録というものはない、こういう法務官僚の虚偽の報告について、実はファイルがあったということが判明をしてから、与野党ともに実態解明に乗り出し、千五百人分の死亡帳等が提出をされ、行刑のあり方について徹底的な議論が行われました。

 ここに記録を持ってきましたが、今から四年前の通常国会における法務委員会では、三十四回の委員会が開催された中で、実に十七回の一般質疑が集中して行われる。そして、この法務委員会における、行政を監督し、そして国政調査権をフルに発揮する、そういう役割をきちっと果たした時期があったということを申し上げておきたいと思います。

 しかし、当時に比べ、現在の法務委員会のあり方は大変不正常なものになっている。少年法については法務委員会らしい審議が行われてきたことは、私から見ても間違いありません。しかし、初めに採決ありきで、その採決の日程をめぐって強行されたということは、異常に尽きることであります。

 そして、先ほどから与党から出ています、野党も含めて賛成、全会一致でした、更生保護法案。我々は、この更生保護法について、しっかり議論をして、修正すべきところは修正して、法務委員会らしい議論をするべきだと思ってきましたが、先週、連休前の時点で採決をどうしてもしなければいけない事情がどうしてあったのか。この議論を尽くして、今週採決を正常にするということで、全く問題なかったんじゃないかというふうに思います。

 委員会の多数を占める与党の皆さんに特に申し上げたい。短くスピーディーな審議の究極の形は、審議省略ですよ。全くやらない。こういうふうにやれば、あらゆる法案はすぐ通過していきます。与党理事の中には、次世代のリーダーとして、改革の旗を振っていらっしゃる将来有望な方々がいらっしゃいます。よもや強行採決の連続の強硬路線が改革の姿だと勘違いしているのではないかと懸念します。

 性格温厚にして冷静、公平な運営を進めようと苦悩されてきた七条明委員長には……(発言する者あり)私は苦労されてきたと思いますよ。しかし、最後に委員長判断でブレーキを踏むべきだったと、本当に惜しまれてなりません。

 以上の理由をもって、法務委員長七条明君不信任の動議に賛成の討論といたします。(拍手)

上川委員長代理 これにて討論は終局いたしました。

 これより採決に入ります。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

上川委員長代理 起立少数。よって、本動議は否決されました。

 委員長の復席をお願いいたします。(拍手)

    〔上川委員長代理退席、委員長着席〕

七条委員長 ただいま委員各位から信任いただき、まことにありがとうございます。

     ――――◇―――――

七条委員長 内閣提出、参議院送付、刑法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。長勢法務大臣。

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 刑法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

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長勢国務大臣 刑法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 近時の自動車運転による死傷事故には、飲酒運転中などの悪質かつ危険な運転行為によるものや、多数の死傷者が出るなどの重大な結果を生ずるものがなお少なからず発生しており、そのような死傷事故に対する業務上過失致死傷罪による処罰について、量刑や法定刑が国民の規範意識に合致しないとして、罰則の整備を求める御意見が見られるようになっております。

 また、平成十四年以降の自動車運転による業務上過失致死傷罪の科刑状況を見ると、法定刑や処断刑の上限近くで量刑される事案が増加しており、特に飲酒運転等の悪質かつ危険な自動車運転により重大な結果が生じた事案等において、事案の実態に即した適正な科刑を実現することを可能とする必要があります。

 さらに、国会におきまして、平成十三年に成立した刑法の一部を改正する法律に関し、衆議院及び参議院の各法務委員会においてそれぞれ附帯決議がなされ、自動二輪車の運転者を危険運転致死傷罪の対象とする必要性につき、今後の事故の実態を踏まえ引き続き検討することが求められましたが、近時、二輪車による悪質かつ危険な運転行為による死傷事故が少なからず発生しております。

 そこで、この法律案は、このような状況を踏まえ、自動車運転による死傷事故に対し、事案の実態に即した適正な科刑を行うため、刑法を改正し、所要の法整備を行おうとするものであります。

 この法律案の要点を申し上げます。

 第一は、自動車の運転上必要な注意を怠り、人を死傷させた者を七年以下の懲役もしくは禁錮または百万円以下の罰金に処する旨の処罰規定を設けるものであります。

 第二は、現行の刑法第二百八条の二において、四輪以上の自動車とされている危険運転致死傷罪の対象を自動車と改めることにより、二輪車もその対象に含めるものであります。

 その他所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、この法律案の趣旨であります。

 何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。

七条委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

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七条委員長 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房審議官荒木二郎君、警察庁交通局長矢代隆義君、法務省刑事局長小津博司君、法務省矯正局長梶木壽君、国土交通省自動車交通局技術安全部長松本和良君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

七条委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

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七条委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局小川刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

七条委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

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七条委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大口善徳君。

大口委員 公明党の大口でございます。

 質問に入らせていただきます。

 近時、飲酒運転等による悪質かつ危険な自動車運転により重大な死傷事故が発生していることは記憶に新しいところであります。

 具体的には、例えば平成十八年八月に福岡市で発生した、飲酒運転中、時速八十キロ以上の高速度で追突して、母親の懸命の救出努力にもかかわらず、幼児三名が犠牲になった事件でございます。これは危険運転致死傷罪などで起訴されました。平成十八年九月に埼玉県川口市において、カセットテープレコーダーを操作中、歩道のない細い生活道路を通行していた保育園児の列にライトバンで突っ込み、三歳から五歳の園児四名を死亡させ、十七名を負傷させた事件、これは業務上過失致死傷罪、さいたま地裁で懲役五年の判決になっておるわけでございます。

 このように、非常に痛ましい人身事故が起こっておるわけでございます。

 そこで、まず、お伺いしたいと思います。

 検察に送致された自動車による人身事故の処理状況について、現状では、起訴されるのは一〇%未満、起訴されてもその九〇%以上は略式起訴の罰金刑で終わっている、こういう指摘がありますが、このような指摘は事実か、法務省、お願いします。

小津政府参考人 お答え申し上げます。

 統計によりますと、平成十八年における自動車による業務上過失致死傷罪の通常受理人員に対する起訴率は九・九七九%でございまして、その起訴した者のうち略式請求は九〇・八四三%となっております。平成十四年から十七年までを見てみましても、ほぼ同じような割合で推移しているという実情でございます。

大口委員 また、最近における自動車による人身事故に関する検察審査会への不服申し立て件数の推移はどうでしょうか、最高裁。

小川最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 平成十四年から平成十八年の五年間におけます業務上過失致死傷罪の申し立て件数についてでございますが、平成十四年は四百三十三件、平成十五年は四百五十三件、平成十六年は五百四十五件、平成十七年は四百十一件、平成十八年は四百三十五件でございます。

大口委員 このように、起訴される割合が低かったり、起訴されてもほとんどが略式請求で終わっている実情の中で、検察審査会における不服申し立て件数が四百から五百で推移している、こういうことについて、法務大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

長勢国務大臣 いわゆる交通事犯と言われるものには、傷害の程度が軽微で、特段悪質でもない、また、被害者の方も特に処罰は望まないというケースもありますし、また、一方、重大あるいは悪質というものも当然あるわけでございまして、さまざまなものがあると思います。

 警察としては、法と証拠に基づいて、事案の内容に応じた適正な処分をするように努めておるというふうに思っております。今先生のお話もありましたが、一層事案に即した適正な処分を行うように努力していきたいと思います。

大口委員 報道等によりますと、本来からいえば起訴すべき、あるいは本来からいえば公判請求すべき、こういうことに対して十分でない、こういう声もあります。ここは、証拠等の制約もありますので、適正に処理していただきたい、こういうふうに思います。

 そして、平成十三年の改正で、危険運転致死傷罪が改正されまして施行されているわけでございますが、この危険運転致死傷罪における検挙数及び起訴件数が少ないと言われております。その統計数値はどうなっているのか。そしてまた、平成十四年以降の危険運転致死傷罪に関する検察審査会への不服申し立て件数の推移はどうか。これは警察、法務、最高裁、お伺いしたいと思います。

矢代政府参考人 申し上げます。

 警察におきまして最終的に危険運転致死傷罪として立件しました事案の件数ですが、平成十四年中が三百二十二件でございます。以下、平成十五年が三百八件、平成十六年二百七十件、平成十七年二百七十九件、平成十八年三百七十九件でございます。

小津政府参考人 検察庁における処理の状況でございますが、平成十四年から平成十八年の危険運転致死傷罪による起訴件数でございます。平成十四年が三百十一人、平成十五年が三百三十二人、平成十六年が三百十六人、平成十七年が三百二人、平成十八年が三百七十六人となっております。

小川最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 平成十四年以降の危険運転致死傷罪に関する検察審査会への不服申し立ての件数でございますが、これは最高裁で把握している限りでは三件でございます。

大口委員 これも、例えば八十五万件の人身事故の中で、この検挙件数や起訴件数が実態より少ないのではないか、こういう指摘もございます。この危険運転致死傷罪について、警察庁、そしてまた法務大臣に、どのような対応をされているのか、お伺いしたいと思います。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 警察でございますが、警察では、交通事故、危険運転致死傷罪が成立する可能性がある事案につきましては、極力危険運転致死傷罪の立件を念頭に捜査を尽くしまして、事実関係を詳細に確認するようにしておりまして、その結果が先ほど申し上げましたような数字になっておるわけでございます。危険運転致死傷罪が悪質、危険な運転行為によって人を死傷させた者に対する厳重な処罰を求める国民の声を踏まえて創設されたものであることを強く認識した捜査を行っているところでございます。

長勢国務大臣 危険運転致死傷罪を適用すべき事案については、当然その努力をしなきゃならぬと思います。しかし、公判を維持していくという必要もあるわけでありますから、そのための証拠をきちんと整理するということがなければ起訴ということはなかなかしにくいという実情もあるわけでございますので、できる限り、鋭意証拠収集に努めて、厳正な事件処理、必要なものについては確実に起訴できるように努力をしていきたいと思っております。

 なお、受理をした件数の中には、危険運転致死傷罪でない形のものもあるわけでありますが、その後も警察と一緒になって協力をし、証拠収集に努めて、致死傷罪でないものも致死傷罪で起訴するというケースもあるというふうに理解をしております。

大口委員 認定がえをして危険致死傷罪でやるという場合もあるということですね。

 検察審査会の不服審査件数は、最高裁の掌握している限りは三件ということで、少ないのかなということでございます。一般の被害者の方の不満がないよう、厳正な対処をお願いしたいと思います。

 川口市の園児の死傷事故について、第一審のさいたま地裁の裁判長が判決理由の中で、異例のことですけれども、現行法の問題点として、多数が死亡するなど、過失や結果が重大なケースでは、業務上過失致死傷罪の法定刑の上限である懲役五年では罪を十分に評価できない状況にある、こう指摘しているわけですね。そういうこともあって、今回、それこそ法務省、警察庁においてスピーディーに対応し、法制審議会も精力的に開かれた結果、この法案がそれぞれ提出されたと思います。

 このような悪質、重大な死傷事故に厳正に対処する方法として、一つは、危険運転致死傷罪の構成要件の緩和があります。もう一つは、業務上過失致死傷罪全体の法定刑の引き上げという方法も考えられるわけでございますけれども、これらの方法をとらないで、自動車運転過失致死傷罪という新しい類型の罪を新設した、こういう方法をとった理由についてお伺いしたいと思います。

小津政府参考人 まず、危険運転致死傷罪の構成要件の緩和という方法をとらなかったことについてでございます。

 危険運転致死傷罪は、故意に危険な自動車の運転行為を行い、その結果人を死傷させた者を、暴行により人を死傷させた者に準じて処罰しようとするものでございまして、暴行の結果的加重犯である傷害罪、傷害致死罪に類似した犯罪類型でございます。したがいまして、危険運転致死傷罪に掲げられている危険運転行為は、悪質、危険な自動車運転行為のうち重大な死傷事犯となる危険が類型的に極めて高い運転行為であって、暴行の結果的加重犯である傷害、傷害致死に準じた重い法定刑により処罰すべきものと認められる類型に限定されているわけでございます。そのような同罪の罪質、法定刑等からいたしますと、その適用範囲となる行為を広げることには慎重な検討が必要であると考えたものでございます。

 次に、業務上過失致死傷罪全体の法定刑を引き上げる方法をとらなかったことについてでございます。

 業務上過失致死傷罪が適用される事案のうち飲酒運転中の死傷事故を初めとする悪質な自動車運転による過失致死傷事犯については、その量刑や法定刑が国民の規範意識に合致しないとして、罰則の強化を求める意見が見られるようになっておりますし、また、法定刑や処断刑の上限近くで量刑される事案が増加しているわけでございますけれども、自動車運転以外の業務上過失致死傷事犯については同様の状況は認められないのではないかと認識しているわけでございます。

 さらに、自動車をほかの車両、歩行者等が往来する道路等で運転するということは、自動車の性状、形状等からいたしますと、業務上過失致死傷罪が適用される業務の中でも人の生命身体を侵害する危険性が類型的に高い、また、自動車運転による過失致死傷事犯は、その発生を防止するためには基本的に運転者個人の注意力に依存するところが大きい、このようなことから、自動車の運転者には特に重い注意義務が課されていると言うことができるのではないかと考えたわけでございます。

 このようなことから、自動車運転による過失致死傷事犯についてだけこれを取り出して、罰則を強化することにしたという次第でございます。

大口委員 今回、自動車運転過失致死傷罪の新設を含む刑法の改正案、そして、道交法の改正案が出されて、これらの法整備によって、例えば、自動車運転過失致死傷罪の上限は、懲役、禁錮七年、従来適用されていた業過致死傷罪の上限を二年上回る、道交法改正と併合罪加重すると、酒酔いによる人身事故の上限は七年六月から十年六月に、酒気帯びによるものは六年から十年に、救護義務違反、ひき逃げを伴うものは七年六月から十五年に引き上げられる。危険運転致死は二十年、危険運転致傷は十五年が上限であるわけでございますけれども、こういう形でその整備をされているわけですね。

 そこで、これは交通事故被害者の方々から、自動車運転過失致死傷罪の法定刑の上限を十年あるいは十五年にすべきである、あるいは、いわゆる逃げ得等の悪質な交通事犯については故意犯と位置づけ根絶すべきである、こういう御意見が出されたり、飲酒運転による事故の防止なども世間の声として強くあるわけでございますけれども、このような声にこたえたことになるのか、法務大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

長勢国務大臣 交通事故の被害者の方々あるいは遺族の方々には、それぞれいろいろな御意見がある、やはり厳しくやってもらいたいという強い御意向もあるわけでございます。したがって、今先生おっしゃったように、もっともっときつい刑にしたらいいんじゃないかという御意見もあることも承知をいたしております。

 また、日本の法体系の中で、どういうふうにやるかということは、関係者それぞれ御苦労されてこの成案に至ったわけでございますが、やはり、日本において、刑法は過失犯と故意犯というものを峻別しておる中でございますので、過失について処罰する場合においても、その法定刑に相応の差異を設けているわけでありまして、本罪が、自動車を運転する多くの国民のだれもが日常生活の過程で犯す可能性のある犯罪であるということを考慮いたしますと、余りに重くするということについても慎重な検討が必要であるというふうにまた考えるわけでございます。

 また、自動車運転による過失致死傷事犯、今回、法案を出させていただいているわけでございますが、それ以外の業務上過失致死傷罪というのは依然として五年でありますけれども、この中には非常に悪質、重大というようなものもあるわけでありまして、こういうものとの均衡というものも考えていかなければならない、このようなことから、今回、七年以下ということで御提案を申し上げているわけでありますが、今先生も御指摘のように、併合罪等々考えますと、それなりに厳しい形で対応できるのではないかというふうに考えております。

大口委員 次に、現行刑法二百十一条第二項に、「傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。」という裁量的免除規定があるわけですね。平成十四年以降、この裁量的免除規定によって免除された件数はどの程度あるのか、最高裁にお伺いしたいと思います。

小川最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 最高裁で把握しております限りでは、平成十四年から平成十八年までの間に、罪名が業務上過失致死傷罪で刑の免除がなされた事件は二件でございます。

大口委員 わずか二件ということでございます。

 そこで、被害者の方々から、これは削除すべきである、そういう意見が述べられておりますが、今回は改正案第二百十一条二項ただし書きで、この裁量的免除規定を存続させております。その理由について、お伺いしたいと思います。

小津政府参考人 現行刑法二百十一条二項の刑の裁量的免除規定は、自動車運転による過失傷害事犯の中には、軽傷で情状もよく、明らかに刑の言い渡しを要しない軽微なものが少なくないことを踏まえまして、そのような軽微な事案については法律上刑の言い渡しをしないことができることを明らかにすることが適当と考えられましたことや、そのような免除が可能であることを明らかにすることによりまして事案の実態に即した事件処理を行う上での基本的な指針を法律上明らかにするという意義があると考えられましたことなどから、平成十三年の刑法の一部改正により新設されたものでございます。

 このような免除規定を置く必要性は、今回自動車運転による過失傷害事犯を対象とする本罪の新設後においても変わるところはないと考えられましたことから、この規定を維持することとしたものでございます。

大口委員 次に、本法律案において、また被害者団体の方からの御意見は、法定刑の下限の設定と罰金併科の廃止、これを求めておられるわけでございますけれども、そうしなかった理由についてはいかがでございましょうか。

小津政府参考人 交通事故の被害者や御遺族の方々等から、ただいま委員御指摘のような御意見もあるということを承知しておるわけでございます。

 しかしながら、平成十八年には、自動車運転による過失致死傷事犯を含めまして、業務上過失致死傷罪等のうち、特に死亡や重大な傷害が生じた事案についても罰金相当の事案があることを前提として、そのような事案に対してその内容に応じた適正な科刑を実現するために、罰金刑の上限額を五十万円から百万円に引き上げたところでございます。このような経緯からいたしますと、これまで業務上過失致死傷罪とされてきた事犯のうち、自動車運転によるものについて別途罰則を設けようとする自動車運転過失致死傷罪におきましても、平成十八年に引き上げられた業務上過失致死傷罪等のそれと同様の罰金刑を設けるのが相当であると考えたものでございます。

 実際、死亡や重傷害の結果が生じた過失致死傷事犯の場合でございましても、例えば加害者側の過失は軽微であるという事案もあり、また、円満な示談が成立して加害者側も宥恕しているという事案などが考えられるわけでございますので、それぞれの事案に応じた適正な処分を実現いたしますためには、選択刑として罰金刑を設けておく必要がございまして、同様に懲役、禁錮について刑の下限を設けることは相当ではないと考えたものでございます。

大口委員 また、本法律案における自動車運転過失致死傷罪は、業務上過失致死傷罪の成立要件であります業務性を成立要件としておりません。その理由、それからこの自動車運転過失致死傷罪における運転上必要な注意の定義について、お伺いしたいと思います。

小津政府参考人 まず、業務性の要件についてでございます。

 まず、本罪が業務上過失致死傷罪よりも重い法定刑により処断されますのは、自動車の運転が人の生命身体を侵害する危険性が類型的に高いこと、自動車運転による過失致死傷事犯防止のためには基本的に運転者個人の注意力に依存するところが大きいことから、この運転者には特に重い注意義務が課されていると考えられることにあるわけでございます。

 他方で、業務上過失致死傷罪における業務は、一般には社会生活上の地位に基づく行為であるということが一つ、二つ目には、反復継続して行う行為であるということ、三つ目には、人の生命身体に危険であるということを構成要素とするとされているわけでございます。

 このうち、反復継続して行う行為であるという点でございますけれども、仮に自動車の運転につきまして反復継続していない事案はどうかと考えますと、自動車運転の危険性の高さでありますとか、事故防止のための個人の注意力が必要だ、ここのところは変わらないわけでございますので、やはりこれも含めて同様に処罰をするのが相当ではないかと考えられますので、そのような反復継続性の要件を必要とする業務という要件を越えなかった、このような考えでございます。

 次に、運転上必要な注意の意義でございます。

 これは、自動車の運転者が自動車の各種装置を操作して、そのコントロールのもとにおいて自動車を動かす上で必要とされる注意義務を意味すると考えております。具体的内容は個別の事案に即して認定されることになりますけれども、これまで自動車運転による過失致死傷事犯として業務上過失致死傷罪で処理されてきたものは一般的にこれに当たると基本的には考えているところでございます。

大口委員 時間もだんだん押し詰まってまいりました。

 今回の法制審議会の刑事法部会におけるヒアリングにおいても、交通事故被害者団体からもこの自動車運転過失致死傷罪の新設に対して早期の実施を期待する旨の意見が示されております。自動車運転過失致死傷罪の運用に当たっては、運転行為の悪質性、危険性、また発生した結果の重大性など、事案の実態に即した厳正な処理が行われるべきと考えますが、法務大臣のこれに対する決意をお伺いしたいと思います。

長勢国務大臣 非常に痛ましい事故が多発しておるわけでありますし、その原因も非常に、被害者から見ても、また国民から見ても、どうにかならないのかと思うものも多いわけでございますから、これに対して厳正に対処していくことがこれから非常に大事だと思っております。

 今回の改正、また危険運転致死傷罪の運用も含めて、先ほど来申しておりますように、きちんとした証拠集めをし、それに基づいて適正な法の執行に当たるように全力を挙げていきたいというふうに考えております。

大口委員 厳罰化、これは国民の声でもあるわけでございますけれども、やはり総合的な安全対策も必要だ、こう思っております。

 内閣府を中心に今交通安全対策本部でいろいろと諸施策を推進しておる、こういうことでありますが、やはり最近の飲酒運転、また飲酒運転による交通事故の死傷者は減ってはいるというものの依然高い水準でございます。そういう点でやはりしっかりと、特に飲酒運転の根絶、これに内閣を挙げて取り組んでいただかなきゃいけませんし、また、刑務所において飲酒運転が原因で受刑されている方がしっかりと再犯防止プログラム等を受けて再犯のないようにしていかなければいけません。

 また、アルコールインターロックについてアメリカやまたスウェーデンにも新しい動きがありますけれども、日本においても、このことについて我が公明党の部会でもいろいろ議論がありました。アルコールインターロックについて、やはりしっかりこれも推進していかなきゃいけないな、こう考えております。

 時間が参りましたので、以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

七条委員長 次に、柴山昌彦君。

柴山委員 自民党の柴山昌彦でございます。

 折しも、きょうから春の全国交通安全運動が始まったわけでございます。まさしくタイムリーなこの委員会質問であると思っておりますので、ぜひ国民の関心が高まる形で委員会運営をしていきたいというように思っております。

 さて、今回の改正法案は二つの大きな柱があるわけですけれども、その一つに、危険運転致死傷罪の対象に二輪車を含めることとしたことが挙げられると思います。これについて、平成十三年の改正以降、一体どのような必要が生じたのかということについて、まずお伺いしたいと思います。

小津政府参考人 お答え申し上げます。

 平成十三年に危険運転致死傷罪が新設されました際に、衆参両法務委員会におきまして、自動二輪車の運転者を同罪の対象とする必要性につき、今後の事故の実態を踏まえ、引き続き検討すべき旨の附帯決議がなされたわけでございまして、これを受け、同罪の新設後に発生した二輪車の運転者による業務上過失致死傷事犯を調査いたしましたところ、その中には、酒酔い運転によるもの、赤信号無視によるもの、著しい速度超過によるものなど、危険かつ悪質な運転行為によって被害者を死亡させ、または被害者に加療期間一カ月以上の重傷を負わせるなどの重大な結果を生じる死傷事故が少なからず発生している状況にあるということが明らかになったわけでございます。

 また、二輪車による事故の被害者、遺族などから、危険運転致死傷罪の対象が四輪以上に限定されていることを疑問とし、その対象を二輪車にも拡大することを求める声が見られるようになっているところでございます。

 そこで、二輪車の悪質かつ危険な運転行為による重大な死傷事故の事案の実態に即した適正な科刑を行うため、今回の法整備が必要になったと認識しております。

柴山委員 確認なんですけれども、十三年の法改正以降に二輪車の事故がふえるというような事実があったのか、それとも、十三年の法改正以降調査をしたらそういうような事案もあったということなのか、そのいずれかということです。もし後者であれば、十三年の法改正時点できちんとした調査を行っていれば、二輪車の部分も含めてきちんと対象とすることが可能であったというような意見も当然出てくるところだろうと思うんですが、それは一体どちらなんでしょうか。

小津政府参考人 ただいま私も施行された後の数字だけ申し上げたわけでございまして、まさに、施行された後の実情を調査したらそのようなことであったということでございます。したがいまして、施行された後、例えばその数字が前と比べて飛躍的に伸びたということを申し上げているわけではございません。

 それでは、当時、なぜ二輪車まで含めなかったのか、こういうことになろうかと思います。そこはいろいろな御議論があり、まさにその中で両法務委員会の附帯決議もいただいたわけでございますけれども、当時、立案当局といたしましては、業務上過失致死傷罪としてそれまでは扱われることが多かった事案につきまして、新たに危険運転致死傷罪という大変に重い法定刑のものを設けるに当たりまして、その適用範囲について慎重に考えたものと理解しております。

柴山委員 ありがとうございます。

 それでは、今回の改正法の二番目の柱であります自動車運転過失致死傷罪の創設についての質問に移らせていただきたいと思います。

 先ほど、大口先生の方からも御質問がありましたけれども、今回なぜ自動車を特別扱いにするのかという問題意識は当然あり得るところだとは思います。先ほど、法務大臣の趣旨説明の中で、多数の死傷者が出るなどの重大な結果を生じるものがあるんだというお話がありましたが、当然、JR福知山線の脱線事故等を見ても明らかなとおり、頻発する列車事故では非常に多くの方が亡くなる事例が多々あるわけです。

 また、先ほど御答弁の中で、運転者の注意義務違反についてお触れになっていたと思うんですが、例えば、爆発物の取り扱いですとか、あるいは放射線を取り扱っているような施設においては、その注意義務違反の程度が非常に重いからこそ生じる死傷の結果ということもあるわけです。これ以外にも、食品衛生の取り扱い、あるいは製薬業務等の部分において、自動車だけを特別扱いすることの合理性ということをもう一度ちょっと御説明いただければと思うんです。

小津政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、国民の皆様の規範意識あるいは量刑の実情という観点から申し上げますと、業務上過失致死傷罪が適用される事犯のうち、飲酒運転中の死傷事故を初めとする悪質な自動車運転による過失致死傷事犯につきまして、その量刑や法定刑が国民の規範意識に合致しないとして、罰則の強化を求める意見がこの点については見られる。また、法定刑や処断刑の上限近くで量刑される事案も、悪質な自動車運転による過失致死傷事犯については近年特に認められるようになってきたわけでございますが、それ以外の業務上過失致死傷事犯についてはそのような状況が認められないということがまず一つございます。

 次に、自動車を他の車両や歩行者等が往来する道路等において運転するということ、これは自動車の性状、形状等からすると、いわゆる業過傷が適用される業務の中でも人の生命身体を侵害する危険性が類型的に高い。

 また、もう一つ、自動車の運転による過失致死傷事犯は、その発生を防止するためには、基本的に運転者個人の注意力に依存するところが大きいというところが大変大きな特徴でございます。大変大きな危ないものを扱っている業務はほかにもあるわけでございますけれども、そのような業務について、事故の発生を防止するためには、いろいろと業務を取り扱っている組織、企業等のシステムの中でその防止が図られる面が大きいというものもあろうかと思いますが、自動車については、もちろん道路の状況を整備する等々はございますけれども、やはり基本的には個人の注意力ということになってくるということでございます。

 そのような特徴に着目すれば、単にこの部分だけを重くすればいいということだけではなくて、そのような類型化という点からも、これを取り出してその部分の罰則を強化するということに合理性があると考えたものでございます。

柴山委員 ありがとうございました。

 また、これも大口先生から先ほど御質問があったところなんですけれども、危険運転致死傷罪の対象を拡大すればよいのではないかという問題意識がありました。これについては御答弁がありましたのでここでは繰り返しませんけれども、特にアルコールあるいは薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる事案、なかんずく飲酒運転ですね、この部分については、やはりこの構成要件ですと、先ほど暴行類似というようなお話もありましたが、アルコールの影響があること、そしてそれを認識していることというところが要件となってきますので、非常に狭い類型なのではないかという批判はあろうかと思います。

 私は、早川理事が事務局長をされている自民党飲酒運転根絶プロジェクトチームの一員として、飲酒運転の適切な処分については特に関心を持って取り組んできた者の一人なんですけれども、特にこの飲酒運転の部分について、危険運転致死傷の対象とする部分が狭いんじゃないかというところについて、ごく短く御答弁をいただけたらと思います。

小津政府参考人 飲酒運転中の事故というのが危険運転致死傷罪の一つの典型的な事例であることは間違いありませんし、また、委員御指摘のように、現行法では、その影響によって正常な運転が困難な状態での走行行為ということにはなっております。さらに、これは故意犯でございますので、その認識が必要であるということでございます。

 それから、そのうち後者の点につきましては、やはりこれは、故意犯であるということでここまで重い法定刑でございますので、ここのところを緩めるのも困難ではなかろうかと思いますし、また、危険運転致死傷罪全般につきまして、先ほど申し上げたような事情がございますので、今回の改正では、ここのところを広げると申しますか、緩める改正はしなかったということでございます。

柴山委員 ということで、適切な処分ができないということで、道交法において、酒酔い運転あるいは酒気帯び運転の処罰の強化というところが次に想定されるところだと思います。

 そこで、これは道交法の方になりますけれども、現在、法改正がまさしく議論されているところだと思います。道交法における酒酔い運転あるいは酒気帯び運転の擬律がどうなるのかということについて、御説明をいただきたいと思います。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 今回、道路交通法改正を御提案申し上げているわけでございますが、まず、飲酒運転に対する罰則、酒気帯び運転が現在、一年以下の懲役または三十万円以下の罰金になっておりますが、これを三年以下の懲役または五十万円以下の罰金にということでお願いしております。また、酒酔い運転につきましては、三年以下の懲役または五十万円以下の罰金となっておりますが、これを五年以下の懲役または百万円以下の罰金ということで、それぞれ引き上げるものでございます。

柴山委員 となると、酒気帯び運転、酒酔い運転で人をひいてしまった場合にはそれぞれどのような処分になるのか、懲役刑の上限で説明をしていただきたいと思います。

小津政府参考人 危険運転致死傷罪ではなく業務上過失致死傷罪が成立したということを前提にして御説明申し上げますが、道路交通法の改正が行われて刑法が現在のままであったということを前提にして御説明申し上げますと、酒気帯び運転の罪と業過致死傷罪の併合罪となりますと、道交法が現在のままだと六年以下の懲役でございますが、道路交通法改正後、刑法は現在のままだといたしますと、両罪の併合罪として七年六月以下の懲役ということになります。

 次に、酒酔い運転の場合でございますが、これは、現行法では、同じく道交法が現在のままだと七年六月以下の懲役でございますが、この部分につきましては、道交法の改正が実現いたしましても、やはり併合罪加重の結果として七年六月以下の懲役になる、こういうことでございます。

柴山委員 当然のことながら、ともに重く処罰されることになる。ただし、酒気帯びの場合であっても、酒酔い運転であっても、業過の刑が重いがために、その一・五倍ということで、七年六月で両方とも同じ刑になってしまうということになるんだろうと思っております。

 ただ、今回、酒気帯び、酒酔い運転を重く処罰する道交法改正が実現をするとなれば、酔いをさまして出頭する行為を誘発するのではないかという疑問が出てくるところだろうと思いますし、あるいは、その直後に飲み直しをする、それによってそういった運転であることを隠そうとする動きが出てくるのではないかという疑問も指摘をされるところだろうと思います。

 これは、実は、危険運転致死傷罪が設けられた当初もこういった懸念の声があったと思いますし、また現に遺族の皆様からも、飲酒運転根絶プロジェクトチーム、自民党の中で設けられた会の中で、そういった事案を何とかなくしてほしいという悲痛な訴えもあったところでもございますので、これについてどういうようなお考えをお持ちかということについてお伺いしたいと思います。

小津政府参考人 まず、危険運転致死傷罪が本来適用されるべき事案につきまして、委員御指摘のようなことでその罪を免れるということがあってはなりませんので、捜査当局といたしましては、仮に、その事故を起こした者が事故直後に現場を離れた場合でありましても、また何か、飲酒の状況をごまかすような行為をした場合でありましても、その者が実際にどのように飲酒をしたのかということをいろいろな方法で捜査いたしまして、それが運転行為中にどのような影響を及ぼすものであったのかということについて鋭意捜査を尽くしているわけでございまして、現にいろいろな事案で、委員御指摘のような事案につきましても危険運転致死傷罪で処罰をしているということでございます。

 もう一点につきましては、ひき逃げそのものにつきまして、道路交通法の世界でどのような手当てをするべきか。また、これについては、引き上げる方向で検討されていると承知しておるところでございます。

矢代政府参考人 あわせて御説明を申し上げます。

 事故を起こしまして逃げるということはあるわけでございまして、ひき逃げでございますが、確かに、酒を飲んでおったために逃げたというのが、捕まえてみますと、大体二割ぐらいがそのようなケースでございます。

 それで、この捕まえた後のことなんですが、捕まえますと、ひき逃げの事故でございますので、実は、その車がどこから来てどこに行ったかという経路を特定する必要があるんです。そういうわけで、前足、後足を含めまして、その前後の行動を捜査いたしまして、そのひき逃げの事案自体を確定しますとともに、どのような状況であったのかということをつまびらかにしてまいるわけでございますが、そこで、その事故の原因が飲酒運転によると疑われる場合には、その事故前の飲酒運転の状況等を捜査いたしまして、これを結果にあらわしていく、こういうことをやるわけでございます。

 それから、今、法務省刑事局長からもお話がありましたが、今回の道路交通法改正では、あわせて、ひき逃げ事件につきまして、現在、五年以下の懲役または五十万円以下の罰金となっていますが、これを、十年以下の懲役または百万円以下の罰金への引き上げをお願いしているわけでございまして、そうしますと、事故を起こしてひき逃げということになりますと、十五年まで引き上がります。そういうわけで、大幅な制裁の強化になりますので、これはひき逃げを抑制する方向に働く要素にはなるかと考えております。

柴山委員 最後の御答弁ですけれども、要は、お酒を飲んで酔ったことを隠して逃げた場合には、救護義務違反と、仮に今回刑法を改正しなかった場合には業務上過失致死傷で処断ができるので、十年、それから五年、一・五倍の計算によっても、単純加算の計算によっても、十五年以下ということで処断をされる。先ほど御説明があったとおり、酒気帯び、酒酔い運転で致死傷をした場合には、両方とも七年六月の上限ですから、逃げたらかえって損をする、上限が七年六月ではなくて十五年以下となってしまうということで、逃げるモチベーションがなくなるという理解でよろしいわけですか。

矢代政府参考人 御指摘のとおりでございます。

柴山委員 ということであれば、今回の自動車運転過失致死傷罪を創設しなくても、ある程度適正な処罰がなされるようにも思われるのですが、それでも今回の法改正が必要な理由を御説明いただきたいと思います。

小津政府参考人 確かに、道路交通法の改正が実現いたしますと、道路交通法違反のうち、特に酒気帯び、酒酔いを伴うもの、あるいは救護義務違反を伴うものにつきましては、相当に重く処罰されるということになるわけでございます。ただ、幾つかの点でそれで十分であろうかということでございます。

 基本的には、非常に悪質で大変重大な結果を生じている事案のすべてが、それではお酒を伴うもの、あるいは逃げたものかというと、決してそうではないわけでございますので、やはり、基本法であります刑法の世界における、これまでは業務上過失致死傷でございますけれども、飲酒運転による今回の構成要件、そこの世界できちんと評価をするということが考え方としても大事でございますし、実際の運用上も重要ではないかと思うわけでございます。

 また、具体的ないろいろな面を見ていきますと、先ほど委員も御指摘になられましたように、道交法の改正が実現して、刑法の方をいじりませんと酒気帯びでも飲酒運転でも七年六月になってしまう等々の問題もあるわけでございますけれども、基本的には、私が先ほど申し上げましたような考え方で、やはり刑法の方の改正が必要であると認識しておるものでございます。

柴山委員 確かに、おっしゃるとおり、今回、刑法をいじらなければ酒気帯びでも酒酔いでも七年六月が上限ですが、今回、こちらの刑法を改正することになれば、先ほど御答弁いただいたとおり、酒気帯びが十年、そして酒酔い運転であれば十年六月ということで差が出てくるし、当然のことながら、より重く罰せられるという部分はあるかと思います。そして、それプラスアルファで、やはり自動車事故に対する世論の厳しい目、また抑止の必要性ということに関しては一定の理解はいただけるものと私も考えております。

 ただ、飲酒運転撲滅に向けた取り組みは、厳罰化だけで足りるというものではないと私は思うんですね。やはり総合的な取り組みをしていかなければ、こういった悲惨な事案、特に、先ほど川口の事故について大口先生も御指摘をされていましたけれども、去年、非常に大きなきっかけとなったのが、福岡の幼児三人がお亡くなりになった大変痛ましい事故だったわけですが、こうした事案の再発ということは十分防止できないのではないかと思っております。

 そこで、ほかにどういう取り組みがなされているのかについて、ぜひお聞かせをいただきたいというように思っております。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 飲酒運転でございますが、このたびの道交法改正案におきましては、飲酒運転本人の制裁の強化にあわせまして飲酒運転の周辺者に対する制裁強化、つまり車両の提供ですとか酒類の提供あるいは同乗、一定の条項についてこれを厳罰化するということで、周辺者対策を入れております。

 この制裁強化も、つまるところ、飲酒運転をしない、あるいはさせないという意識を確立するというわけでございますので、取り締まりを強化するほかに、運転者等の教育、さまざまな機会がございますが、これを警察あるいは他の機関と協力してやる場合もありますが、これを徹底するということでございます。飲酒運転の危険性を周知する必要があります。

 それから、各企業において従業員についての安全管理をやっておりますが、そのような体制、あるいは飲食店などでは自主的に飲酒運転防止に取り組んでいただいておりまして、このようなさまざまな局面での飲酒運転をさせない、あるいは許さない環境づくりが重要でございまして、これは内閣府ともども、私ども、あちこちお願いいたしまして、取り組みを推進しているところでございます。

 それから、自動車運転代行業でございますが、これは、営業が適正に営まれれば飲酒運転の防止には確実に資するものでございますので、国土交通省と私ども一緒にやっておりますが、連携しながら、業者に対します指導監督、一定の場合には取り締まりも行いまして、これが国民に広く利用されるように業務の適正化を図っていきたいと考えております。

松本政府参考人 私ども、飲酒運転の根絶対策の一環といたしまして、技術を活用した対策を実施していくということも大変重要であると考えております。

 このため、飲酒している場合には、その状態を自動的に検知してエンジンが始動しないようにする装置、アルコールインターロック装置と呼びならわしておりますけれども、この開発、実用化につきまして検討するために、一月三十日に警察庁あるいは法務省とも一緒に、さらには自動車メーカーの専門家にも入っていただきまして、技術課題検討会を立ち上げたところでございます。

 現状の技術といたしましては、欧米におきまして、呼気、呼吸の中のアルコールを検知するという方法が一部実用化されております。具体的には、飲酒運転違反者への制裁として、運転する場合にはアルコールインターロックつきの車しか運転してはいけない、こういう形で運用されていると聞いておりますけれども、本人確認が難しい、つまり成り済ましがやりやすいとか、耐久性が十分でないなどの課題があることが判明しております。現在、これらの課題への技術的対応について議論を進めているところでございます。

 これらを踏まえまして、年内に、現状の技術をベースにした場合に、飲酒運転常習者への活用を念頭に置いた技術的要件の整理をしたいと考えております。

 それから、将来的な技術でございますけれども、まだメーカーにおいても調査研究段階でございますが、技術課題の明確化の検討を進めまして、今後の技術開発を促進してまいりたいと思っているところでございます。

荒木政府参考人 内閣府でございます。

 昨年九月に、交通対策本部におきまして、「飲酒運転の根絶について」を決定いたしまして、政府を挙げて飲酒運転根絶に向けた取り組みを推進しているところでございます。

 指導取り締まりを徹底するのはもちろんでありますけれども、飲酒運転を絶対にしない、させないという国民の意識改革を図るために、集中的、継続的な政府広報を行いました。また、関係省庁から業界に対しまして、運転者に対してお酒を提供しないように協力依頼を行ってきております。

 先ほど警察庁の方からもありましたけれども、飲食店等におきまして、最寄りの駅からの無料送迎を行ったり、あるいはタクシーや代行運転の割引券を配布したりというような取り組みがふえてきております。また、運輸業者、運送業者においても、就業時に必ずアルコール検知を行うというような業者がふえてきていると認識をいたしております。そういった官民挙げての取り組みによりまして、ことしに入って、飲酒の死亡事故が昨年に比べ約四割ほど減少を見ているところであります。

 飲酒運転追放の機運が高まっておりますこの時期をとらえまして、引き続き飲酒運転根絶に向けた広報啓発に強力に取り組むこととしておりまして、先ほど御指摘のございました、本日から始まります春の全国交通安全運動におきましても、飲酒運転の根絶を全国重点として取り組みを強化してまいりたいと考えております。

 さらに、アルコール依存症等の常習的な飲酒運転対策につきまして有識者の意見を聞きながら検討を進めることといたしまして、先日、常習飲酒運転者対策推進会議を関係省庁とともに立ち上げさせていただきました。

 以上でございます。

柴山委員 特に、最後のアルコール常習者の対策は、日本はアメリカ等に比べて大分おくれているというような指摘もあるところですので、しっかりと検討をお願いしたいと思います。

 時間が終わりましたけれども、最後に、こうした飲酒運転等悪質な交通事故の根絶に向けた法務大臣の決意を、ぜひ一言お伺いしたいと思います。

長勢国務大臣 今るる内閣府等からも御説明があったとおりでありまして、政府を挙げてこの飲酒運転等重大な交通事犯に対する対応措置を強化していきたいと考えております。そういう中で、今回、法案を通していただければ、何よりもやはり国民の皆さんの意識がきちんとすることが基本になると思いますので、こういうことも含めてお役に立てればいいのではないかというふうに思っております。

柴山委員 ありがとうございました。以上で終わります。

     ――――◇―――――

七条委員長 次に、裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房司法制度改革推進室長小林昭彦君、警察庁刑事局長縄田修君、警察庁交通局長矢代隆義君、金融庁総務企画局審議官細溝清史君、法務省大臣官房長池上政幸君、法務省大臣官房司法法制部長菊池洋一君、法務省民事局長寺田逸郎君、法務省刑事局長小津博司君、法務省矯正局長梶木壽君、法務省入国管理局長稲見敏夫君、外務省大臣官房審議官杉田伸樹君、厚生労働省大臣官房審議官村木厚子君、経済産業省大臣官房審議官立岡恒良君、経済産業省貿易経済協力局長石田徹君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

七条委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

七条委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局小池経理局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

七条委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

七条委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。早川忠孝君。

早川委員 自由民主党の早川忠孝でございます。

 法務大臣のお顔を拝見いたしまして、まず法務大臣に質問させていただくのが自然であるかと思いましたので、事前の質問通告と若干順序、内容を変更して質問させていただきます。

 法務大臣に就任されてから既に七カ月が経過をいたしました。この間、着実に我が国の法務行政は進展を続けてきたと高く評価をしております。また、あわせまして、歴代の法務大臣が司法制度の改革に誠実に取り組んでこられたというその大きな成果の上に新たな改革を積み上げてこられているということで、改革の後退が一切ないということに心から感謝をしております。また、私は、歴代の法務大臣が大臣を終えられてからも我が国の司法制度の発展のためにそれぞれのお立場で貢献をされている姿に、後進の政治家として深い感動を覚えていることを冒頭申し上げておきたいと思います。

 さて、長勢法務大臣にお伺いいたします。

 大臣は、大臣の就任に当たられてどんな課題に取り組もうと決意されていたのか、そして現在までの七カ月間にどのような進展があったと考えておられるかについて、簡単に御所見を御披瀝いただきたいと思います。

 それから、大臣に就任された後に、新たな法務行政の課題が明らかになってきております。第一は、富山あるいは鹿児島における冤罪事件の発覚であります。第二は、つい先月ありましたけん銃を使用しての暴力団員による長崎市長襲撃射殺事件であります。法務省として、冤罪事件の根絶やテロ、組織犯罪暴力の根絶のための新たな取り組みが必要とされているのではないかと私は考えておりますけれども、この点について大臣の御所見をお伺いいたします。

 さらに、一括して申し上げますと、国民投票法の成立によりまして我が国の基本法体系に大胆な見直しが必要になってきたと考えております。伺いますところ、本日の参議院の憲法調査特別委員会で採決される国民投票法案では、投票権者が十八歳以上の男女となるということで、附則によって、これに伴い、公職選挙法の有権者を現在の成人年齢の二十歳から十八歳に変更するとともに、民法の成人年齢そのものを十八歳にするとの検討を開始することになるというふうに承知をしております。国際社会の動向を踏まえての我が国の基本法制の大変革が目前に迫っているのではないかと考えております。

 さらに、最後にお聞きいたしますのは、民法の七百七十二条問題がございます。女性が離婚後再婚し、前婚の離婚後三百日以内に出生した子供について、前婚の夫を父親とする出生届しか受け付けられないという問題が明らかになったところであります。こういった現行制度の不備あるいは欠陥が明らかになったときに行政庁である法務省がどう対処できるかについて、法務大臣の御所見をお伺いしたいところであります。

 私は、法務省は、単なる戸籍事務等を所管する行政庁ではなく、法務、司法行政全般についての制度のあり方を提言する企画官庁でもあると考えております。立法機能は国会に専属いたしますけれども、企画官庁である法務省が、立法の内容について深く関与し、必要な立法提言を取りまとめることは極めて重要である。そういう意味では、我が国の行政が立法作用の重要部分を担っていることは私も認めるところであります。

 しかしながら、こういった新たな法務行政上、司法行政上の課題について、立法的に対処しなければならない時期になっているのではないか、行政の対応ではいささか及ばないのではないかというふうに私は考えているところであります。そういう意味で、こういった諸般の新しい法務、司法行政上の課題について、これまでどのように対処されてきたのか、あるいは今後どのように対処すべきであると考えているのか。

 大変広範な内容にわたりますけれども、冒頭、大臣の御所見をお聞かせ願いたいと存じます。

長勢国務大臣 大変たくさんの御質問をいただきましたので、うまく、答弁漏れがないように一生懸命答弁させていただきたいと思います。

 大臣に就任させていただいて、治安の整った日本の国の復活ということが国民の御期待である、それにこたえていかなきゃならぬということをまず思っておりますが、そういった点でもいろいろな事件が起きました。

 もう一つ、この七カ月間務めさせていただいて感じておりますことは、人間関係、いろいろなことがあります、犯罪もあれば、親子関係もあれば、いろいろなことがありますが、なかなか法律だけではない、非常に深刻な問題が世の中にたくさんあるんだなということをつくづく感じております。といっても、社会全体の秩序を守る中で、それを一つ一つ全部どうするということもなかなか難しい。そこをどういうふうに処理していくかということが、いろいろな面で、時代の流れに合わせればいいというだけでもないし、合わせないというわけにもいかない、そういうことを考えなきゃいかぬなということをつくづく感じておる昨今でございます。

 治安を守っていく上で、その基本は、やはり検察、警察の信頼が高まるということがその基盤の一つだろうと思っております。そういう意味で、今御指摘の冤罪事件あるいは冤罪事件ではありませんけれども捜査、検察のあり方が問われるような事件が起きたことはまことに遺憾なことだと思っておりますし、ぜひこれは、その事態を深刻に受けとめて対応して信頼を取り戻すということが一番大事だと思っておりますので、先般も、検事長会同において、私から強くそのことを要請申し上げたところであります。

 また、長崎事件のお話もございましたが、このような事件はあってはならないことでございます。皆さんと同様、私も非常に許しがたいものだというふうに考えておるわけであります。内容につきましては、今捜査段階でございますので、これ以上申し上げることは差し控えさせていただきますけれども、こういうことのないように、いろいろな面で考えていくことは多いだろうというふうに考えております。

 国民投票の問題についても御質問がございました。

 国民投票法案の状況は今先生御説明のとおりでございまして、現在の与党修正案が成立をするということになれば、その附則に基づいて、民法、少年法等の検討をするということが法律上の要請になろうかと思います。どういう形でどういうふうに議論をしていくかということは、法案の成立の経過等も踏まえ、内閣全体でも議論があるんだろうと思いますが、この法案の趣旨に沿って、また、民法、少年法それぞれの役割も踏まえて議論を進めさせていただきたいというふうに思っております。

 七百七十二条問題につきましては、早川先生、本当に御苦労をされてこられまして、敬意を表しておりますし、しかし、私と先生で必ずしも意見が一致していない部分があるわけでありますが、こういう形で国民の前できちんと議論ができるようになったことは大変よかったのではないか。そういう意味でも、先生初め皆さん方の御苦労に対しまして敬意を表する次第でございます。

 先般、法務省としても通達を出させていただきました。御案内のように、嫡出推定に関する七百七十二条の規定そのものは、私どもは、父子関係を早期に確定し、家庭の平和を尊重するという趣旨の法制でございまして、そういう意味での身分法の根幹をなすものとして、今後とも基本的には維持されるべきものであるというふうに思っております。

 しかし、医学の発達あるいはいろいろな事情の変化ということも起きておるわけでありますし、現実に深刻に考えざるを得ないという方もおられることも事実でありますので、そういうことをいろいろ私どもも考えました。

 今回、意外と国民の皆さん御存じないのは、三百日以内にお生まれになった子供を前夫の子供以外の戸籍に入れることについては、調停、裁判手続を経ればそれはできるんだということをほとんどの方は御存じない。そういうことになっているんだけれども、それをしたくないという方がおられるのでこういう問題になっているんだという説明をしますと、比較的、ああ、そうなっているのという人が割と多いことに最近気がついてまいりました。

 そういうことも含めてこれからも議論をしなきゃなりませんが、私は、現行の嫡出推定の規定、七百七十二条一項の規定を前提にすれば、少なくとも、三百日以内であっても、離婚後の懐胎については婚姻中の懐胎ではありませんから、法の趣旨の中で対応できるのではないかという考えに基づいて、今回、離婚後に懐胎したことが医師によって証明される場合には、調停、裁判の手続を経なくても、窓口で、前夫以外の、嫡出推定が及ばない形での処理ができるようにするという取り扱いを通達したところでございます。

 残っている問題は、離婚前に懐胎をした方々についてどう考えるかということが残るという意見があるわけであります。私の考えは、基本的には現行規定を維持するということではございますけれども、与党においてもいろいろ、民法の原則の範囲内で、社会通念上やむを得ないような場合、子供のことも十分考えた上で議論していこうということでございまして、いろいろなケースはあると思いますので、私は与党の方々で検討されることについて非常に期待もしておりますし、法務省としてもできる限りの御協力を申し上げていきたい、このように思っておる次第でございます。

 今後ともよろしくお願いいたします。

早川委員 ありがとうございました。最後の七百七十二条問題については、またもう一度御質問をさせていただきます。

 それで、司法の国際化という観点から、日本法の海外発信と法整備の支援についてお伺いをいたします。

 発展途上国に対する法制度整備支援は、支援相手国の基本的な法制度をつくり上げ、日本企業の進出しやすい環境を整備する取り組みでありまして、日本の法制度を海外に輸出するという極めて重要な取り組みだと考えています。

 現在、外務省やJICAが中心になってODAの一環として進めておられますけれども、現状を聞いておりますと、将来的に拡充していくものになるか、いささか心もとなく思っているところでございます。弁護士会や大学のボランティア的な協力に頼っている部分も大きいようですし、そもそも、国家として、法整備支援の拡充のために、どのような戦略で海外に支援を展開していくのかのグランドデザインが必ずしも見えてこないように思います。ODAについて国民の関心が高まっている中で、とりわけ法整備支援をODAの中核と位置づけ、中長期的な戦略を策定するよう、省庁横断的な司令塔的組織が必要ではないかと私は考えております。

 そこで、法整備支援を中心に担当される外務省では、法整備支援の今後の推進に関する戦略と、その戦略を立てるための司令塔機能のあり方について、どのように考えておられるのか、外務省の担当者にお伺いをいたします。

杉田政府参考人 法制度整備でございますけれども、グッドガバナンスに基づく自助努力を通じた国の発展の基礎となるという観点あるいは人間の安全保障を推進し、一人一人の人間がその持てる能力を発揮できるような社会を形成していくという観点からも非常に重要でございます。

 そうした観点から、我が国ODA大綱に基づいて、法の支配の確立、市場経済への移行のニーズが大きな地域、例えばインドシナ地域でございますけれども、そういった地域に対して、ODAを通じた法制度整備の支援というのを実施してきております。

 さらに、今後、我が国として、普遍的価値を重視しつつ、自由と繁栄の弧を形成するという上でも、あるいは経済連携強化、途上国の貿易投資環境整備、そういう面でも、途上国に対する法制度整備の支援というのが重要な手段となるというふうに考えております。

 外務省といたしましては、このような考え方に基づきまして、法務省を初めとする関係省庁等と協議しつつ、法制度整備支援の今後の取り組みにつき検討し、実施してまいりたい、このように考えております。

早川委員 次に、日本法の外国語訳整備についてお伺いをいたします。

 これまで我が国は正確に翻訳された日本法がなく、外国から見ると、日本法はブラックボックスという批判を受ける状況にあったと理解をしております。

 そこで、自民党では、法の国際発信という課題を精力的に検討し、本年の二月には、私も含めた自民党の関係議員で、塩崎内閣官房長官に対して、日本法の国際化、特に日本法の国際発信について申し入れを行ったところであります。

 政府では、平成二十一年三月までに、二百本以上の日本法を英訳して無償で公開するというプロジェクトを開始されておりますけれども、まだまだ翻訳整備にスピード感が足りないのではないかと思っております。政府には、経済界のニーズにこたえて高品質の翻訳を迅速に進めていただきたいし、その翻訳を広く海外に発信することで、日本法が国際的に正しく理解されるようにしていただきたいと思っております。そのために、政府にはぜひ、翻訳整備のための予算措置も十分に確保していただき、良質で国際的に誇れる翻訳を発信していただきたいと思っております。

 政府内で日本法の外国語訳整備を担当している内閣官房の司法制度改革推進室では、今後、どのような戦略で政府一体として良質な翻訳を推進し、そのために十分な予算措置をどのように確保していく決意でおられるのか、内閣官房司法制度改革推進室長にお伺いをいたします。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、国際取引の円滑化、対日投資の促進、それから法整備支援の推進等の見地から、日本法令の外国語訳整備は極めて重要であり、政府として積極的に取り組む必要があると考えております。

 そこで、現在までの状況を申し上げますと、平成十七年度以降、内閣に関係省庁連絡会議を設置いたしまして、取り組みを続けております。

 その具体的な成果としては、統一的な質の高い翻訳を進めるための標準対訳辞書、これは専門家の方々にも参加していただき作成いたしました。それをもとにして、平成十八年度から、三カ年の翻訳整備計画に従って、現在翻訳を迅速に進めているところでございます。現在までに、民法、刑法あるいは知的財産関係の法律など、約八十本の法令を既に翻訳いたしました。今後も、この計画に従って翻訳を進め、最終的には、平成二十年度までに約二百五十本のニーズの高い法令について翻訳をする予定にしております。

 あわせて、その辞書、これも毎年改訂しておりますけれども、辞書や翻訳につきましては、順次内閣官房のホームページに掲載して、もちろん無償で公開しているところでございます。海外からもアクセスをしていただいておりまして、非常に好評な状況でございます。

 今後につきましては、今申し上げましたとおり、平成二十年度までは三カ年計画ということで行ってまいります。その後も、一年ごと、新規立法の対応もございますし、法改正があったときにそれに対応する必要もございますので、基本的には、連絡会議を引き続き内閣に置きまして、翻訳整備を推進していきたいというふうに考えております。

 それから、平成二十一年度以降は、これは昨年の十二月の関係省庁連絡会議の決定ですけれども、辞書の改訂あるいは翻訳の公開等の作業は法務省に担当していただくということの決定がなされたところでございます。先生御指摘の予算措置も含めまして、今後とも、政府一体となって、日本法令の外国語訳の推進に積極的に取り組んでまいりたいというふうに考えております。

早川委員 本当に頑張っていただかなきゃいけないと思います。

 東アジアに対する法整備支援の推進の関係について、法務省にお伺いいたします。

 政府がこれまで取り組んでこられた法整備支援のうち、法律家が重要な役割を果たして立法を実現した成功例として、カンボジアに対する法整備支援があると思います。学者と法務省でチームをつくって、民法あるいは民事訴訟法の立法を支援し、さらには、立法支援にとどまらない、人材育成等の支援にも取り組んでおられると伺います。このような中長期的な支援が成功いたしますと、相手国と日本との間の経済的な関係も深まり、ODAの目的とするところが非常に効率的に実現されるのではないかと考えます。

 そこで、法務省がカンボジアにおいて取り組んできた法整備支援の成果と、今後の取り組みに向けた方針についてお伺いをいたします。

池上政府参考人 対象国に対します法整備支援は、先ほど外務省御当局からも御答弁がありましたように、国内の基本法制の整備を主要な任務といたします法務省にとっても、非常に大事なことであると考えております。

 そうした観点から、お尋ねのカンボジアに対する基本法令等に関する法整備支援につきましては、平成十一年、一九九九年以降、当時の国際協力事業団あるいは外務省等の御指導を得ながら、JICAの技術協力プロジェクトとして実施されてきたカンボジアに対する民法、民事訴訟法などの基本法令の起草支援などの法整備支援に法務省の立場から積極的に御協力申し上げてきたところでございます。

 その成果といたしましては、民事訴訟法につきまして、昨年、二〇〇六年、平成十八年でございますが、カンボジアの国会で可決、成立して公布されたところでございますし、本年七月から実際に適用される予定であると聞いております。

 また、民法につきましては、平成十五年、二〇〇三年三月の段階で一応起草は終了しておりましたが、国内事情等もありまして、カンボジア国会における御審議がおくれていたように聞いていますが、現在審議がなされており、それほど遠くない時期に成立する見込みだと聞いております。

 私どもといたしましては、今後とも、関係御当局等と協力しながら、関連附属法令の整備、法律の普及に向けた支援や法曹養成への支援などについて努力をしてまいりたいと考えております。

早川委員 そこでお伺いいたしますけれども、日本政府が支援いたしましたカンボジアの民法法案には、我が国の民法七百七十二条と同一の原則が規定されているけれども、同法案では、女性が離婚後既に再婚していれば、三百日以内に出産した子でも再婚後の夫の子とみなす例外規定があるとの新聞記事に接しました。この記事の内容が事実であるか、法務当局にお伺いをいたします。

池上政府参考人 私ども法整備支援を担当する者からお答えするのが適当かどうかはわかりませんが、カンボジアの法整備支援の関係で、一応手元に資料がありますので、お答え申し上げます。

 現在、カンボジア国会で御審議中のカンボジア民法草案第九百八十八条には、第一項で、妻が婚姻中に懐胎した子は夫の子と推定すると規定され、第二項で、婚姻成立の日から百八十日後、または婚姻の解消もしくは取り消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定するとの規定が置かれております。これは、一九八九年に定められた同国の婚姻家族法八十二条をそのまま引き継いだものと承知しております。

 それを受けまして、第三項におきまして、第九百五十条、これは再婚禁止期間、百二十日間と定められておりますが、その規定に違反して再婚した女が子を分娩した場合において、第一項及び第二項の規定によってその子の父を定めることができないときは、子は後婚の夫の子と推定するという規定が設けられたと承知しております。

 このカンボジア民法起草を実際に支援したのは、JICAが設置した、我が国の民法の研究者や実務家で構成されるカンボジア民法作業部会でありまして、特に家族法の分野における起草に当たりましては、婚姻制度や家族制度がカンボジアの文化や伝統に根差したものでありますことから、現行のカンボジア婚姻家族法の規定を承継するなど、そういった観点からの議論を経た上で定められたものであると聞いております。

早川委員 ほかにもたくさんお伺いしたいことがあるのでありますけれども、どんどん世界が狭くなっているということの中で、いわゆる法制度の共通化というのがどうしても必要になってくるだろうと思います。これは、民法、刑法、商法、さまざまな基本法についてのいわゆる共通化ということを視野に入れながら検討しなきゃいけないのではないかと思います。

 そういう意味では、法務大臣は法務大臣の御所見があることは十分承知しておりますけれども、これからの政治を担っていく若い世代、特に副大臣に、こういった日本法の国際発信とか、あるいは国際化時代における法制度整備のあり方等について、どんなふうなお考えを持っておられるか、御所見を伺いたいと思います。

水野副大臣 日本の法制度というものを国際発信していくということは、先ほど委員がおっしゃられたように、例えば、法律の外国語訳とかを推進していく、それによって外国の方々にも容易に、また正確に日本の法制度というものを理解していただくというのは大切なことだというふうに思っております。

 また、その話とは直接関係あるのかどうかわかりませんけれども、今おっしゃられたような、諸外国の、例えば民法の規定とかそういうことになりますと、多々、その国その国のいろいろな国民的な、民法などは国民生活にも大きくかかわるものでございますから、やはりその国の国民の、日本であれば日本の国民の合意形成ということが必要だというふうにも、法改正などになれば、そういうようなことが必要でありますし、大いに議論をしていかなきゃいけないのかな、そんなふうに考えております。

早川委員 経済界の出身者であります法務大臣政務官にお伺いをしたいのでありますけれども、日本の相続法制等について、事業承継の観点からいって、やはりさまざまな障害が指摘されているのではないかと思います。特に経営者の立場から考えて、同族経営の中小企業がたくさんあって、相続が発生した場合、経営の承継ができない、結果的には事業のための財産の売却等を余儀なくされるとかいう問題があるわけであります。それから、生前贈与等を利用しても、例えば遺留分制度があるために、遺留分減殺請求で、結果的には安定的な事業承継が実現できない。

 こういった事案について、法務大臣政務官としてどのような認識を持っておられるか、あるいは法務当局としてはこれに対してどうこれから対処するのが適切というふうにお考えか、政治家としての御所見を賜りたいと思います。

奥野大臣政務官 政治家としての認識というか見識をしゃべれ、こういうことでありますから、少し自由にお話をさせていただきます。(発言する者あり)なるべく短くやります。

 事業承継制度というのは、いろいろな意味でうまくいかないという事実があるということは知っております。ただし、それも、いろいろな理由があってうまくいかないわけですが、第一は、本来経営ができない人が後を継いでうまくいかないケースが多いのではないか、こういう気がします。それは、私が実際に社長をやってみてそういう感覚を持っているんです。

 ですから、経営者としてうまくやれる人がついて事業承継をしてもうまくいかなかったケースをひもといてみると、相続法の問題とか会社法の問題とか税制の問題とか、いろいろな原因が出てくるんだろうと思います。

 今現在でも、中小企業基盤整備機構あるいは自民党、それぞれ、いろいろな団体でこの問題が議論されていることも承知しております。そういった意味……(発言する者あり)民主党でもそうですか。そういったことで、私は、法務省ともう少しこの件を、私なりの経歴も持っているし知識も持っていますから、少し、具体的に何をどう直せばいいのか、今さっき申し上げた相続法なのか会社法なのか税制なのか。一番私がいかぬと思っているのは、事業承継するために税金をまけてくれというような発想でこれに取り組まれては困るんだ。やはりしっかりとした後継者を探して、しっかりと、隆々と育ってもらえるような会社として相続していかせることが一番のポイントではないかと思います。

 いずれにしろ、法務省当局も含めて、私は、自分なりに進めてみたいな、こう思っている次第であります。

 以上です。

七条委員長 時間が来ておりますから。

早川委員 ありがとうございます。

 いずれにしても、既存の法制度を所与のものとするというのではなくて、やはり時代の変化に合わせ、あるいは国際化の流れの中でしっかりと、日本が国際的にも最もすぐれた法治国家である、こういうことが具体的にわかるような制度改正を法務省全体でも取り組んでいただきたいということを要請して、私の質問を終了させていただきます。

 ありがとうございました。

七条委員長 本会議散会後直ちに委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。

    午前十一時四十五分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時二分開議

七条委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。谷口隆義君。

谷口(隆)委員 公明党の谷口隆義でございます。

 差しかえをしていただいて、本日、三角合併についてお伺いをいたしたいと思います。

 長勢大臣には、この二月でしたか、私どもの企業法制プロジェクトチームというのがありまして、三角合併に関する提言を差し上げたところでございます。

 御存じのとおり、会社法の施行はもう既に昨年の五月にスタートをいたしておりますが、本年の五月から、一年おくれで三角合併がスタートということでございます。御存じのとおり、この三角合併というのは、合併を行う際に消滅会社の株主に親会社の株を交付してもいい、いわゆる合併対価の柔軟化ということで、従来は現金交付であったわけでございますが、そのようなことができるというところで、海外企業が我が国の企業を買収する、いわば黒船来るというような非常に戦々恐々としておる企業もどうもあるようでございます。

 そもそも、この淵源をたどりますと、橋本内閣の折に金融ビッグバンというものをスタートいたしまして、有識者によりますと、今回のこの三角合併で一連のスケジュールがほぼ終わる、こういうようなとらえ方をされている方もいらっしゃるわけでございます。

 それで、この三角合併についてお伺いをいたしたいわけでありますが、まず初めに、先日の日経新聞のアンケートを見ますと、三角合併について、買収をされる可能性があるという企業は約三割あるというようなアンケートが出ておるわけでございます。

 それで、一年延期をしたわけでございますが、一年延期の中で、既に上場企業二百二十九社が買収防衛策を講じているというように発表されておられるわけでございます。やはり上場企業に関しては、大変関心を持ってやっていらっしゃる企業が多いというような状況の中で、この五月からスタートする三角合併について法務省の省令が出たわけでございます。

 まず初めに、その省令についてお伺いをいたしたいと思います。

 いわゆる項目を定めておられて、今回の省令はその判断に必要となる適切な情報が開示されることになるよう改正されたものであるということであるが、上場企業のように市場価格のあるものはいいわけですね。市場価格のあるものについては価格に関する事項を開示するというようなことになっておるわけでありますが、非上場の株式の場合に、消滅会社の株主に交付された場合に事前開示事項は定められておらないわけでありますが、これについてはどのようにお考えなのか、お伺いをいたしたいと思います。

寺田政府参考人 御指摘のとおり、合併対価の柔軟化に当たりまして、対価が一体どういうものかということを、当然合併をするかどうかの御判断に対しまして重要な事項として考慮されるわけでございますので、その点について、省令ではいろいろな手当てを今回させていただきまして、その中心が今おっしゃいました事前の開示情報ということになるわけでございます。

 会社法の施行規則の一部改正省令による改正後の会社法の施行規則の百八十二条に、合併対価の相当性に関する事項あるいは合併対価について参考となるべき事項、これを吸収合併の際の消滅会社等における事前開示書類の記載事項、こう定めているわけでございます。

 今もおっしゃったとおり、市場価格があるときはこの価格に関する事項を合併対価についての参考となるべき事項、こうしているわけでございます。これは今の条文の第四項の第二号のリあるいは第一号のハに当たるわけでございます。

 これに対しまして、上場されていない株式の場合で市場価格というものがなかなか考えにくい場合には、合併対価の相当性に関する事項、つまり、これが消滅する株式の対価として相当かどうかということを判断する材料を考慮のための記載事項としておりますので、その中でこの非上場株式が一体どのぐらいの価値と見積もって、大きく言えば合併比率が決まったのかというようなことを明らかにさせる、こういう措置をとっているわけでございます。

 しかし、具体的に市場価格はございませんので、例えば、どのぐらい配当があるかということから逆算いたしまして、一体その株式でどのぐらいの値打ちがあるのかということでございますとか、あるいは市場価格そのものはないけれども売買の例がある、それにはどのぐらいの値打ちがついたかというようなことを参考事項として記載する、こういうことになろうかと思います。

谷口(隆)委員 非上場株式ですから、所有不動産の評価だとか技術力の評価だとか、こういうものが一般的に入ってくるんだろうと思うんですね。ですから、上場企業のみならず、非上場企業が三角合併の対象になるといった場合も、今局長がおっしゃったことは非常に抽象的な言いぶりだったんですが、もう少し何らかの形ではっきりわかるような開示をしていただけるような方法を、あれば考えていただければと思う次第でございます。いわゆる閉鎖会社というのは、いろいろな評価の仕方がありますよね。そういう意味で、当然ながら非上場の株式を交付されるということはあるわけでございますので、そういうこともぜひやっていただきたい。

 それと、もう一つは、当該株式等の換価の方法に関する事項というのがありますが、三角合併で受け取った海外株式がある、この海外株式をすぐに売ってしまうと、一挙に売ってしまうと、当然ながら株が下落するわけで、いわゆるフローバックと言われておるようでございますが、このようなことになりかねない。だから、少々時間がおくれてしまうと開示された価格で売れないというような場合も想定されるわけであります。そのような場合、これを回避するようなことまで考えていらっしゃるのかどうか、お伺いいたしたいと思います。

寺田政府参考人 これは、なかなか当該会社の事前の開示事項とは性格上しにくい事項でございます。

 おっしゃるとおり、今回合併対価を柔軟化していわゆる三角合併が可能になるといいましても、そこにはおのずからいろいろな制約があるわけでございまして、今委員が御指摘になったこともその大きな一つでございます。

 すなわち、この株式を得てもこれを持っている値打ちが一体どのぐらいあるのかということは、いろいろな判断がございまして、どうも余り持っている値打ちがなさそうだ、あるいは将来売りにくそうだということになると、もう売れるときに売ってしまうというようなことになりかねないわけでございまして、その結果、さっきおっしゃったフローバックのような現象が生じるわけでございます。

 やはりこれは、全体的に三角合併をするかどうかということの合併側の会社の御判断の一つの材料になるわけでございまして、そのこと自体は株式をお持ちになる方について事前に情報として提供するのはなかなか難しいところでございます。

 そういう全体の対価として与える株式の取り扱いの予想まで含めた上で三角合併として当該会社の株式を与えるかどうかという判断をなさるということ自体が、合併に当たっても非常に重要な判断ということに逆になろうかと思っております。

谷口(隆)委員 そもそも、この三角合併は、後でまた質問させていただきますけれども、大臣の方にも御提言しましたけれども、アメリカにおいては、会社を物のごとく売買するといった傾向もなきにしもあらず。そういう状況になれておらない我が国企業が買収されて後に大量に解雇され、国民の不安を生じせしめるというようなことのないように考えていくというのは、これは政治の役目でありますし、我々が考えていかなきゃいかぬのは、国民の安心、安寧を保つのにどうしたらいいのか、しかし一方で、このグローバル化という状況の中でどう対応したらいいのか、こういうようなことになるんだろうと思うわけであります。

 そこで、一つお聞きしたいことがありまして、情報開示をしてから株主総会に至るまでの期間はどの程度今回はなっておるわけでありましょうか。

寺田政府参考人 吸収合併における消滅会社の側を見ますと、合併契約の承認を受ける株主総会の日から少なくとも二週間前の日に、株主等に対しまして、今おっしゃいました、事前開示書類を本店に備え置くという措置が要求されているところでございます。

谷口(隆)委員 そのように、二週間であります。海外企業の株をもらった場合に、名前も知らぬ企業の株を消滅会社の株主は交付されるわけでありますけれども、この二週間の間で判断できるかどうかということがあるんだろうと思うんですね。国内企業であればある程度の情報も整っておるわけでありますが、そういう観点で、この二週間ということについて短いというようには感じられないのかどうか、お伺いをいたしたいと思います。

寺田政府参考人 法律上の規制といたしましては、少なくとも二週間置くという規制になっているわけでございます。

 今おっしゃいましたように、確かに、ある種の会社の株式の判断においてはもう少し時間を要する、慎重な判断を要するというような場合もあるわけでございまして、そういったものについて、仮に二週間ぎりぎりの開示が行われるとしますと、これは株主の側でこの株主総会での態度決定においてむしろマイナスに働くというようなことになろうかというふうに思うわけでございまして、むしろ、会社の側でこの株主の賛成を得られるにはどのぐらいの事前の開示が必要かということを御判断になって二週間以上の日を設定されるべきものでありまして、そういう意味で、二週間はあくまで最低のライン、会社の側でより慎重な判断を要するという御判断であればそれはもっと長い期間を設定されるべきところだ、そういうことになるわけでございます。

谷口(隆)委員 会社からしますと、二週間でやれば会社側に瑕疵がないということになるわけで、それはまた、今局長がおっしゃった、十分な情報を提供しなければこの総会で承認されないというようなことでありますが、一般的に想定されておるのは、二段階で三角合併をする、一般的には、敵対的TOBか何かをかけて、それで現金で一応過半数を取得して、その段階で三角合併を承認するといったようなやり方が行われるのではないかと言われておるわけで、そういう場合には、今おっしゃったような自浄作用といいますか、牽制作用といいますか、なかなか働かないようなケースもあるということでありますので、これはスタートしたところでございますので、今後の状況を見ながらやはり検討する必要もあるのかなというように思う次第でございます。

 では、三角合併は海外ではどういう状況なのかということでありますが、アメリカでは、当然ながら三角合併は認められて、逆三角合併も認められているというような状況でございます。しかし、ヨーロッパ、欧州では原則として三角合併が不可能でありまして、現金でのみ買い取りが行われておるというような現状があるわけです。むしろ、ヨーロッパではより一層規制を強化しようというような動きもあると聞いております。

 一方、アメリカの方は、現行三角合併が行い得るわけでございますが、しかし、その場合にもエクソン・フロリオ条項という条項がありまして、包括的に規制をする法律を持っておるわけでございます。アメリカでは、一九六七年、デラウェア州で三角合併が解禁をされ、国際的企業再編の有力な手段になっている。しかし一方で、企業再編に厳しい歯どめも用意をいたしておる。国防上、経済上、安全保障の観点から、外資による国内企業の買い取りを包括的に規制をするエクソン・フロリオ条項というものがあるということであります。そもそもこのエクソン・フロリオ条項というのは、一九八六年に我が国の富士通による半導体製造のフェアチャイルド社買収計画を機にして、それがきっかけでアメリカでこのエクソン・フロリオ条項というものができたというようにお聞きいたしておるわけでございます。

 では、日本は一体どういう状況なのかといいますと、外為法で外資の規制をするというようなことがあります。また、放送・通信、エネルギーといったところで、個別法で、業法で外資規制を行うというようなことがあるわけでございますが、これだと縦割りになっておりますから、ニッチといいますかすき間でやられてしまうと、どうもそういう外資企業にはきかないということも想定し得るということで、私はやはり横ぐしを刺すような横断的な外資規制の法律をつくっていく必要があるのではないかというように言っておりましたが、ここへ来て、五月にもう三角合併がスタートしましたので、今後は、先ほど申し上げましたが、三角合併の状況を見ながら、日本版エクソン・フロリオ条項というものを策定する必要があるのではないか。

 経団連なんかが言っておりますMアンドA法制、こういうことも念頭に入れておっしゃっているんだろうと思いますが、このようなことについて経済産業省は一体どのようにお考えなのか、お伺いをいたしたいと思います。

石田政府参考人 お答え申し上げます。

 まさに先生おっしゃられたとおり、アメリカではエクソン・フロリオ条項というものがございまして、すべての業種を網羅的に対象としながら安全保障の観点から投資規制を講ずる、こういう体系になっております。

 それに対しまして、我が方でございますけれども、国際的なルールの枠内で外為法あるいは個別業法に基づいて一部業種に限定して投資規制を行っているというのは、まさに御指摘のとおりでございます。

 この中で、外為法に基づきます投資規制でございますけれども、既に十五年以上見直しをしてこなかったということで、その間の安全保障環境の変化でありますとか産業実態の変化等に十分対応していないおそれもあるということで、昨年の十二月に、経済産業省として、有識者から成る研究会を立ち上げて検討してまいりまして、先月、中間取りまとめを公表させていただきました。

 この中では、安全保障上重要な技術の流出を適切に防止するという観点から、届け出対象に軍事転用の蓋然性の高い汎用品を追加するなど、見直しの方向性について提言をいただいたところでございます。

 この研究会の中で、アメリカのエクソン・フロリオ条項的な包括的な投資規制の是非というものについても検討を行ったわけでございますが、この方式につきましては、やはり介入基準が不明確になって投資家の予見可能性が非常に低くなるのではないかといったこととか、あるいは既に完了した投資についても規制の対象にするということで関係者に不測の損害を与えるおそれが強いといった問題がございまして、その導入の是非については引き続き慎重に検討すべきという指摘が行われたところでございます。

 特に、先生も御案内のように、我が国に対する対内直接投資といいますのは諸外国に比べますとまだまだ非常に低いレベルであるという現状を踏まえますと、対内直接投資を過度に阻害する規制方式というのは基本的に望ましくないのではないか、現時点では、現行のリスト方式による事前届け出制を維持しながら必要な見直しを行っていく必要があるのではないかと考えておる次第でございます。

 早急に対応したいと思っております。

谷口(隆)委員 先ほど申し上げましたが、もう既にスタートしておるわけでありますから、その状況を見ながら、そういうことも含めて考えていく必要があるのではないかと私個人的には思っておりますので、また与党間でもぜひ協議をさせていただければと思っておる次第でございます。

 それで、これは長勢大臣にお出しした提言にも入れておったんですが、三角合併は、海外で上場しておる親会社の株を国内の子会社を通じて消滅会社の株主に外国株を交付する。

 ところが、その海外の取引所というのは千差万別。私たちはある程度の、東京の取引所だとかニューヨークだとかロンドンだとかいうのを想定するんですけれども、必ずしもそうではないわけですね。いわば、閉鎖性の程度の差がある。

 上場基準にも違いがございます。あえて、どこの国がどうだ、こういうことは言いませんが、私は、一定程度の国際的な基準を下回るような取引所の上場しておる株については、例えば日本の取引所に上場していただくというようなこと、このくらいはやってもいいんじゃないか、このように思っておるわけでございます。

 きょうは、金融庁から来ていただいておりますけれども、金融庁、このようなことについてどのようにお考えなのか、お伺いをいたしたいと思います。

細溝政府参考人 外国で上場されている株式、日本で上場されていない、これは先ほど法務省からも御説明がありましたとおり、国内でも非上場の株式を合併対価にするということも認められておりますので、国内外問わず、そういった対価についての会社法上の制約はないというところでございます。

 したがって、開示されていない株券を対価としてもらう消滅会社の株主に対して情報開示をどうするか、これは会社法上もいろいろ工夫はされていますが、金融商品取引法上も、そういった消滅会社の株主に交付するような場合には、その発行者に日本で有価証券届け出書の提出を求めるといった形で情報開示を行うように制度的な手当てをやっております。そういった意味において、株主の、投資家の保護の観点から、金融商品取引法上の制度上の手当てをしたところでございます。

谷口(隆)委員 例えば、上場基準というのがありますね。上場基準の中に浮動株基準というのがありまして、一定程度の売り買いがないと上場廃止の一つの原因になるということがあるんですね。それはなぜかといいますと、少々の取引で株がぱっと上がっちゃったら、要するに力ずくで株が上がるわけですから、公正な価格形成、株価形成にならない、こういうところがあるわけですね。

 そういうような、仮に公正な価格形成をされておらないような取引所で上場しているものを交付されても、これは先ほど申し上げましたフローバックじゃありませんけれども、売ろうと思えばばっと落ちてしまうというようなことも考えられないこともないということで私は申し上げたわけでございまして、このこともぜひ、金融庁なり法務省なりも念頭に入れていただきたいというように思う次第でございます。

 それと、いろいろなケースが考えられますけれども、ただ私よく言っておりますのは、ある基幹産業があって、その同族、グループ内の資本関係がないんですけれども非常に技術力があって部材提供している中堅中小企業、この中堅中小企業を海外の会社が買い取る、三角合併するといったことが十分考えられるわけです。

 我が国の企業というのは、そういう意味では、リスク分散をするというようなことをやっておりませんから、非常に技術的に優秀な部材提供会社をやられてしまうと大変困るということがございます。それで、そのときに基幹産業側は一体どういうように考えられるのか。

 また、その株の評価のこと。株の評価というのは、閉鎖会社であれば、先ほども申し上げましたように、不動産の評価だとか技術力だとか超過収益力だとか、こういう評価基準があって株価が決まるわけですけれども、ある一定の、基幹産業がそこでしか買えないというような部材提供会社の場合は、その価値以上に大変高い価値を持っている。

 こういうような場合、一体どうしたらいいのかということがあるんですが、これについてお伺いをいたしたいと思います。

立岡政府参考人 お答えいたします。

 今委員御指摘されましたように、部材産業のうち日本の製造業の競争力の源泉になっているものが多々ある、御指摘のとおりというふうに思います。

 それで、今恐らく、その中でも特に非上場の企業で中堅、同族でというようなものはどうなのかという御質問かと思うんですけれども、確かに、上場をしておりませんのでその企業価値についての市場価格というのはないわけでございますが、ただ、買収という面から見ますと、当然、上場していないわけでございますから、上場企業のように資金力を背景に買い尽くされるというリスクもないわけでございますし、また、そういう非公開会社の場合には、往々にして株式について定款で譲渡制限をかけたりしていますので、そういった意味では買収リスク自体は低いのかなというふうには思ってございます。

 値づけのところにつきましては、これは組織再編、三角合併を含めまして、商法の手続があるわけでございますけれども、やはり経営陣同士が話をし、合併条件を詰め、時にはアドバイザーの意見も求め、その情報を株主に開示し、それで最終判断を仰ぐというプロセスがあるわけでございますので、経営陣あるいは株主が合理的な判断をしていくという中で処理されるのではないかというふうに考えてございます。

谷口(隆)委員 いずれにしても、そういう具体的な課題が出てきた場合にはどういうように対応するのかということも、経済産業省においても御検討いただければと思います。

 最後に、ちょっと商法全体の流れのことを申し上げたいんですけれども、商法も制定されて百年以上たちます。今回、会社法という形に衣がえをしてスタートしたわけであります。

 従来、我が国の商法は、淵源はフランス、ドイツあたりから来た大陸法、それがどんどん英米法、判例法に近づいておる、このようなことがよく言われておるわけであります。

 従来の商法では、例えば株主平等の原則、これに対して、現行の商法、会社法は、例えば種類株が出てきたり、非常に複雑な形になってきている。また、債権者保護という立場が商法の根幹にあるわけですけれども、この債権者保護も、法体系からすると、どうもそういう立場が薄れてきている。また、資本充実の原則というのがありますけれども、これも、今回一円で設立できるということになりましたから、資本充実というのは一体どこへ行ったんだ、こういうことになるわけです。

 このような、従来の我が国の持っておったプリンシプルが、どんどん英米法に近づくにつれてどうも変わってきたんじゃないか。従来は、大陸法の中で育った商法は、いわば我が国の企業観、株主、経営者、従業員、またその会社を取り巻く利害関係者が一体となった社会的存在だというような見方をしておったのが、どうも株主さえオーケーと言えば何でもできるというような形の商法に今なりつつあるわけです。

 冒頭お話ししましたように、やはりこの商法の規定においても、国民の安心、安寧を保つということに非常に力を注がなければなりませんし、そのような商法が英米法に近づいておる状況について、大臣にちょっと御所見をお伺いいたしたいと思います。

長勢国務大臣 こういう問題につきましては、先生は大変お詳しいので私が余り申し上げるほどのこともないわけでございますが、法律レベルの話だけではなくて、ややもすると株主優先ということだけが先行して、おっしゃられるように、企業としてのあり方とか、従業員あるいは地域社会の中における企業の役割というものがないがしろにされるのではないかという雰囲気を感ずることはないわけではありません。

 しかし、これはやはり、株主だけではなくて、会社の経営は取締役の方々が大きな役割を果たさなければならないわけでありまして、日本の文化、伝統に沿った中での経営であってこそ世界にも通用するし日本でも発達していくものだろう、ぜひそういう意識を持って日本における企業の機能というものを十分に果たしていただきたいものだと私は考えております。

谷口(隆)委員 あと、法務省で補足することはありませんか。いいですか。

 今大臣がおっしゃっていただきましたように、やはり重要なのは、グローバル化、グローバル化といって合わせていくという国際協調も非常に重要なのでありますが、一方で、それによって我が国国民が痛みを感ずるというようなことになれば、これは大変悲しいことであります。

 ぜひそういう観点で、今回の商法、会社法も、もう既に一年間スタートしてきておるわけでございますが、三角合併が始まっていよいよ会社法は全般的にこれから動くわけでございます。そのスタートした直後というのはいろいろな変化もございますので、ぜひよく見ていただいて、私も従来からこの商法の改正については議員立法を含めてかかわってまいりましたけれども、与党の間でもまたいろいろな検討もさせていただいて、万端問題なく進んでいき、かつ、国際競争力を企業に持っていただくということも念頭に入れた対応ができるように、私も頑張ってまいりたいというふうに思っておりますけれども、ぜひよろしくお願い申し上げたいと思います。

 時間が参りましたので、これで終わらせていただきます。

七条委員長 この際、議員鈴木宗男君から委員外の発言を求められておりますが、これを許可するに御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

七条委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 鈴木宗男君。

鈴木(宗)議員 七条委員長初め委員の皆さん方に質問の機会を与えていただいたことに心から感謝申し上げます。質問をよしと思わなかった人たちもいるようでありますけれども、お許しをいただきたい、こう思っております。

 最初に、私は、昨年十二月の衆議院の決算行政監視委員会でも質問したんですけれども、拘置所や刑務所の実態、今非常に定員をオーバーしているということで、環境が著しく悪化しているということを聞いたものですから、それに対する予算措置、なかんずく刑務官の増員等を私は尾身財務大臣にもお願いし、そのときは矯正局長さんにも出てもらって現状等も答弁をいただいたんですけれども、予算も通りまして、事務的にはもう既に来年度予算の概算要求の時期に入ってきておりますね。

 そういった意味で、拘置所の予算措置あるいは刑務所の予算関係、職員の定員について、何ぼふえて、純増何ぼで、純減がいかほどであったか。同時に、来年度予算に向けても、せっかくやる気のある長勢大臣ですから、いわゆる公務員の一律削減を言っておりますけれども、思い切って必要なものは伸ばすべきだと私は思っているんです、国民生活の安全だとか安心にかかわるものは一律にカットすべきでないと私は思っていますから、そういったことを踏まえて、現状と大臣の決意をお答えいただきたいと思います。

梶木政府参考人 まず、現状について御説明をさせていただきます。

 御指摘のように、刑務所等の収容人員、平成十年以降急激に増加しております。平成十八年末で八万一千二百五十五人ということで、五年間で二四%増加しております。特に、受刑者等の既決被収容者でございますが、平成十九年三月末の数字で約七万二千二百人ということで、収容率一一六%に上っております。

 こういった過剰収容の解決のために、収容棟の増築、それからPFIを活用した刑務所の新設ということを進めております。十九年度末までに七千五百人、二十年度末までに二千人の収容増を図るということで計画を進めております。これが完成いたしますと七万二千人程度の定員にまで追いついていくということで、期待をしておるところでございます。

 予算につきましては、十九年度予算、今委員御指摘のような観点から要求をさせていただきました。十八年度の予算と比べまして、五十一億一千百万円増、一〇二・八%ということでございますが、金額千八百八十九億一千二百万円の手当てをいただきました。

 次に、増員の関係を御説明させていただきます。今申しました収容増等を踏まえまして、平成十九年度予算におきましては、新設刑務所の運営あるいは矯正処遇の充実強化ということで、刑務官等につきまして六百二十四名の増員を認めていただきました。今御指摘のように、合理化減というのがございますので、純増で申しますと、三百十四名純増ということで随分な手当てをいただきました。

 さらに、今後の予算あるいは増員の方法につきまして、我々も研究を進めて必要なものを要求していこうということで考えております。

長勢国務大臣 決意ということでございますので。

 法務大臣になる前からも、ずっとこの問題に私も取り組んでまいりました。施設、人員ともに、これからの過剰収容に対応していくためには大変大事な問題だと思っておりますので、今後も全力を挙げて取り組んでまいる決意であります。

鈴木(宗)議員 これは、去年、私が質問した際も、たまたま私の友人の松山千春さんが府中の刑務所に慰問に行った、そのとき、小林所長さんからも現状を聞いた、あるいは前の年に八王子の刑務所にも慰問に行って、やはり同じような説明を受けたということを聞いて、私も北海道で、たまたま帯広だとか網走なんかを見に行ったり、視察した際の経験とも一致したものですから、このことを強くお願いしたんです。

 同時に、私自身の経験として、私は、四百三十七日、東京拘置所でお世話になってきました。刑務官の姿には、今でも目に浮かびますけれども、頭の下がる思いですよ。よくやっています。特に、今外国人犯罪者が多い。そんな中で、本当に体を使って一生懸命やっている。彼らに必要なのは、やはりより勇気や誇りを与えることですよ。同時に、評価してやることです。そのための待遇だとかしかるべき定員、これはぜひとも私は大臣に頑張っていただきたい、こういうことを強くお願いしておきたい、こう思っています。

 大臣、あわせて、検事、さらには検察事務官の定員もふやしてやった方がいいと思っています。なぜかというと、これは私の経験からして、検事は足がないんです。手足がない。自分で捜査していませんよ。ですから、投書だとか、一方的な世論の反応なんかを見ながら動いている例があります。

 そういった意味でも、やはり、本当にしっかりした事件をつくり上げる、それはやはり最低マンパワーが必要ですよ。だから、私は、検事や検察事務官の増員もあわせてそれは考えていただきたいな、こう思っております。

 なぜかというと、私はこれは実名を挙げて言いますけれども、私を調べた谷川という当時東京地検の副部長、今東京高検の刑事部長をやっていますよ、この人なんかは、週刊誌を積んで、先生、この疑惑はどうですかと聞いてくるんですから。実態はその程度ですよ。大臣、信じられないような話ですよ。

 言ってみれば、要は、世論動向でつくって、あるいはマスコミにリークして、そのリークの反応を見て、また次の事件に行きますよ。これは皆さん方も知っているとおり、田原総一朗さんがテレビで言っているじゃないですか。検察はリークする、リークして、書いた記事はスクープになる、事件になったら、書いた記者は出世する、担当する検事もまた出世する、その繰り返しだと、皆さん方御案内の田原総一朗さんがそう言っていますよ。これは、やはり私は人がいないからだと思っているんですよ。

 同時に、冤罪という言葉がありますね。冤罪を考える上でも、私はやはり人が必要だ、こう思っていますね。

 そこで、大臣、冤罪についてどのような認識を持っているか、お尋ねしたいと思います。

長勢国務大臣 冤罪という言葉は、いろいろな意味で使われるのかもしれませんが、有罪になった方が実は無罪であったというケースが一般的に冤罪と言われているのではないかと思います。

 そういうことはあってはならないことでありまして、先生から、検事の人手不足のお話もございましたが、法と証拠に基づいて、きちんとした捜査に基づいて、きちんとした起訴ができて、裁判がきちんと行われるように、これからも全力を挙げていきたいと思います。

鈴木(宗)議員 大臣、有罪が無罪になったのが冤罪だという言い方ですけれども、判決が出ない件で、第一審で無罪になったのは、では冤罪に当たらないんですか。

 例えば、わかりやすく言えば鹿児島の選挙違反がいい例ですよ。これは一審判決ですよ。一審判決は有罪じゃないんですよ。そして、これは地検と口裏合わせと出ていますよね、どの報道でも、鹿児島は。これは、全くの冤罪でないんですか。

長勢国務大臣 言葉の使い方だと思いますが、私は、一般的には冤罪というのは先ほど言ったようなことかなと思っておりますが、鹿児島の件は無罪という結論でありますから。ただ、起訴をされているという段階では被告人であったわけですね。被告人が無罪になったときも冤罪と言うのは、一般的ではないのではないかと私は思っておったということを申し上げました。

鈴木(宗)議員 ちょっと今の大臣の答弁は、適切でないと思いますよ。なぜか。判決が出るまでは推定無罪ですよ、日本の法律として。これは法治国家はみんなそうじゃないですか、推定無罪。被告人だからそれは有罪だという今の大臣の認識はちょっと間違っていると思うし、被告人であったとしても、判決は出ていないんですからね。この点ちょっと、この議論はしないけれども、そこは大臣ちゃんと正確に考えてください。

 そこで、私は言いたいんですよ、これは委員の皆さん方にも。鹿児島の事件なんかは、警察と地検が口裏合わせまでしたということが明確になっている。これは重大な瑕疵であって、検察は処分されるべきですよ。どんな処分をしましたか。

 同時に大臣、あわせて、今までの、例えば、大臣は富山ですね、富山の例の強姦事件で、二年も服役して、出てきたら真犯人がおった。無罪ですよ。あるいは、痴漢、今映画でやっていますね、「それでもボクはやってない」これなんかも無罪になった。起訴したのは検察の責任ですよね。当然、処分があってしかるべきじゃないですか。

 我々政治家は、選挙という大きな民主的手続での判断がされるんですよ。政策決定を間違ったら、消費税のときでも、米の自由化でも、落選した者はたくさんいますよ。間違いなく、検察は職務遂行の上で間違った判断をしたんですよ。何がしかの罰則、ペナルティーがあって当然じゃないですか。一切、今までのこういう冤罪で、検察は責任を負っていない。私は法治国家の体をなしていないと思いますけれども、大臣、どうですか。

長勢国務大臣 検察は、法と証拠に基づいて、有罪と、犯罪ありと思料するものを起訴するのが役目であります。当然、その結果は裁判において判断をされるわけで、その結果として、無罪になることはないわけではありません。今先生御指摘の、鹿児島のような件もそのとおりであります。

 しかし、起訴に当たって、その証拠に基づいての判断が全く不合理であったということでない限りは、やはりその職責上、合理的な判断のもとに起訴をしておるわけでございますので、それは、職責の怠慢があったとか、間違いがあったとかという評価は必ずしも適当じゃないというふうに考えております。

鈴木(宗)議員 大臣、判断のミスは結果として出てきましたよね。同時に、その判断をする過程で、警察と地検が口裏合わせしている。これは犯罪じゃないですか。これはきちっと、大臣、申しわけなかった、間違った判断をしましたと言うのが、正しい日本語であるし、正しい人間としての、検事や検察官である前に人間であるべきじゃないですか、私は今それが欠けていると思いますよ。

 大臣、その役人のペーパーじゃなくて、人間長勢としての答弁をしてください。冤罪にかかわってどんな思いで生活をしておったかということ。親戚もいれば家族もいるんですよ。そういった立場にあった人のことを考えて、大臣、答弁をしてくださいよ。人間としての答弁を、今私は求めているんです。

長勢国務大臣 先ほど答弁申し上げましたのは、処分はどうしたかという御質問に対して、私の考えを申し上げました。もちろん、処分云々とは別に、起訴をされ裁判を受けるということは、非常に厳しい状況に置かれておられるわけで、結果としてそうなったことについては、捜査あるいは起訴に当たった者は、申しわけないと思っておるべきでありますし、そういうことのないように、適正な証拠に基づいた、きちんとした捜査、起訴を行うべきものということを常に忘れてはならないというふうに考えております。

鈴木(宗)議員 この口裏合わせなんというのは、私は犯罪だと思うんですよ。どうでしょう、委員の先生方も。この点は、大臣、何がしかの処分をすべきじゃないでしょうか。それが公正公平じゃないでしょうか。黙っていていいんですか。口裏合わせしてまで、言ってみれば事件をつくってしまったんですよ。結果は出たんですよ。それなのに、なぜ検察は控訴しなかったんですか。検察みずから控訴を断念しておきながら何もしないというのは、逆に、法律を守る側にいる人としておかしいんじゃないですか、監督する側にいる人としては。どうですか。

長勢国務大臣 口裏合わせという報道があったようでございますけれども、これは捜査の内容にかかわることでございますから、ここで具体的に申し上げることはできません。

 そして、そういうことでございますから、今、捜査の過程でいろいろなことがあったといたしましても、公訴そのものが全く許されないものであったということでない限りは、もちろん結果において御迷惑をかけたという点はおわびをしなきゃならぬことは間違いないと思いますけれども、処分というか、そういうことについては、今申し上げたとおりでございます。

鈴木(宗)議員 大臣、これは国民に、きちっと明確に、今の大臣がおわびをしなければいけないということを堂々と、情報開示の上からもした方が、私は、逆に、検察側の信頼も回復するし、法務省の立場も理解される、こう思いますよ。ぜひともそれを、今お話があったように、再発をなくすためにもきちっとしてもらいたい。

 そこで、私、この冤罪をなくすために、やはり可視化が必要だと思いますよ。録音だとかビデオ。これは大臣、それはビデオがあるから本当のことを言わないだとか心配することはあるかもしれません。しかし、私は、自然体で淡々とやった方がいいと思いますよ。そういった意味では、可視化の問題をぜひともやっていただきたい。これはまた、一つの国際的なスタンダードだと思いますよ。この点、大臣のお考えはどうでしょうか。

長勢国務大臣 捜査の可視化の問題は、随分長く議論が各方面ではされているところでございます。日本のやはり、ここでもたびたび議論をいただいておりますが、どうしても自白に頼らざるを得ないという刑事手続になっておることは事実かなという感じがいたします。そのことが、今、捜査の可視化の大きな原因になっているわけですけれども、むしろ、可視化の話だけではなくて、刑事手続全般として、真相究明のためにどういう方策があるか。

 例えば、外国では日本とはまた別の捜査の手法が認められているケースもあるわけで、そういうことが行われれば、自白に頼る程度も減っていく。そういう中できちんとした真相究明が行われるということも含めて、今、関係方面で議論されているところでございますので、そこできちんと議論していただきたいと思っています。

鈴木(宗)議員 関係方面の議論もいいんですけれども、大臣、せっかく長勢大臣のときに、新しい捜査のあり方だとか、鹿児島事件だとか富山事件の反省を踏まえて、新しい長勢ドクトリンをつくったと言われるぐらいのことをやってくださいよ。それが可視化だと思いますけれども、どうですか、委員の先生方。ぜひとも、私は、これはやっていただきたい、こう思います。同時に、弁護士を入れるのも一つの手ですよ。いろいろな方法があると思いますからね。私は、やはり新しい公明正大な捜査の仕方というものをお願いしたいと思います。

 なぜ私がこういうことを言うかというと、私も調べられて、全部誘導されますよ。気の弱い人はもちません。私なんか、若干、声が小さくて、気が弱くて捕まったと思っていますけれども、これは本当に、一般の人はもちませんよ、密室でのやり方というのは。だから、みんな流れちゃうんですから。

 それで、時間がありませんから、大臣、国策捜査という言葉がよく今使われます。例えば、今回、大宅壮一賞をもらった佐藤優さんの「国家の罠」という本に書かれている。この「国家の罠」という本は、新潮ドキュメント賞もとった本ですよ。その中に国策捜査という言葉が出ているんですが、国策捜査について、大臣の認識はどうでしょうか。

長勢国務大臣 国策捜査という言葉がどこかに使われているという話は聞いたことはありますけれども、具体的にその定義はよくわかりません。何らかの目的でやるような捜査のことを言うのかなという程度の知識でございます。

鈴木(宗)議員 大臣、これは大臣の部下が言っているんです。「国家の罠」という佐藤さんの書いた本の二百八十六ページから二百八十九ページに出ていますね。

 「これは国策捜査なんだから。あなたが捕まった理由は簡単。あなたと鈴木宗男をつなげる事件を作るため。国策捜査は「時代のけじめ」をつけるために必要なんです。時代を転換するために、何か象徴的な事件を作り出して、それを断罪するのです」「見事僕はそれに当たってしまったわけだ」「そういうこと。運が悪かったとしかいえない」これは、西村という現職の検事ですよ、こう言っているんですよ。

 こういう本が書かれていること、法務省、確認していますね。確認しているかどうかだけで結構ですよ。

 確認している。大臣、確認しているんです。現職の検事が言っている。

 では、この表現について、法務省は抗議したり、何かクレームをつけたことはありますか。

小津政府参考人 その著作の中にそのような趣旨のことが書かれているということは承知しておりますけれども、中身は捜査の過程でそういうことがあったのかなかったのかという内容でございますので、もちろんコメントは控えさせていただきますが、それについて何か法務当局が対応をしたか、その本を書かれた方に対してですね……(鈴木(宗)議員「いや、検事に対して。西村さんに確認しましたかということ」と呼ぶ)法務当局として、それについて何か対応したかということについて申し上げれば、特段のことはございません。(鈴木(宗)議員「いや、西村さんに聞いたかと聞いているんですよ」と呼ぶ)ですから、その点について、法務当局として何かの対応をしたかということであれば、特段の対応はしておりません。

鈴木(宗)議員 大臣、ということは、これは事実だということですよ。何か問題があれば抗議するわけですから、クレームをつけるわけですから、組織として。西村さんが言ったことは間違いないんです。まあ、それはいいですよ。

 同じく、これは「オフレコ!」という雑誌、これは田原総一朗さんが出している本ですよ。ここで、村上正邦さんを調べた検事がこう言っていますよ。

 「村上 実際調べられていると、取り調べ検事が森喜朗前総理に対して――ときの総理大臣ですよ、「あれはバカだ」」と言ったそうです。(発言する者あり)この尾形という検事は、あれはばかだと。「行政官が行政官の長に対してバカだとはなにごとだと。」そうしたら、村上さんに、「村上さん、あんたなあ、参議院なんていうのは県議会からあがってきた連中や、役所ではもう一丁あがりの連中だ。そういう連中をあなたのハッタリと目クソのなに(カネ)を配ってだね、手のひらに乗せて振りまわすくらい簡単なことだね」こう言ったというんですよ。

 そして、今度、宮本雅史さんという、これは産経新聞の今でも現役の記者の書いている「真実無罪」という本がありますよ。この中でも、検事が言ったというんですね。

 「お前、殴り倒すぞ。張り倒すぞ。村上正邦、見苦しいぞ、お前を先生と呼ぶ価値はない。おい、村上だ」と、罵声を浴びせかけてきた。」と。「「お前、村上、きさま、チンピラやくざよりまだ悪いな。チンピラやくざよりも劣るよ」「お前は国会の証人喚問で「腹を切る」と言ったよな。いま、私の目の前で腹を切ってみろ。切れるものなら切ってみろ」と検事が言ったというんですよ。

 これも本になっているから、もしうそならば、これは検事の名前もはっきりしているわけですから、ゆゆしいことですよ。しかし、これは、皆さん、実際密室ではこういった取り調べであるということを、大臣、いいですか、わかってください。村上正邦さんも、そんなに声も小さく気の弱い人じゃないですよ。その人に向かって、特に皆さん、さっき、森喜朗さんをばかだと言ったら、そうだと言った人がいるけれども、それは間違いですよ。少なくとも皆さん方が選んだんですから、これは衆議院本会議において。いいですか。一国の内閣総理大臣を一検事がばかだと言うこの風潮あるいは見解というのは、私は問題だ、こう思っているんです。

 大臣、法務省の人事は全部検事人事ですよ。法務省だけですよ、国家公務員の上級職で行っても局長にすらなれないのは。全部司法試験に受かった者しかなっていない。私は、人事のツケなんか回ると思っています。私は、このままいったら、国策捜査、気に食わなかったら、ねらった者はやる、それは私を調べた谷川という副部長も言いましたよ。権力を背景にしてやっていますから、国策捜査と言われたらそのとおりですと悠然と言いましたよ。今この男は、東京高検の刑事部長ですよ。私は、恐ろしい認識だなと思いましたよ。何様だという気もしましたね。

 どうか大臣、検察の実態だとか、あるいは国民の目線から見てどうか、本当に正義という言葉が使われているのかどうか。例えば調活費問題で、判決は調活費があったということを認めていますよ。それで三井環さんは捕まった。これなんかも、では調活費をどう使ったかも明らかになっていない、国民に。ここなんかは、ぜひとも長勢大臣にお考えおきをいただきたい。

 そして大臣、私は、この国策捜査で問題にしたいのは、私の秘書に佐藤玲子というのがいました。これは平成十四年の七月二十三日に逮捕されたんですよ。うちの一事務員です。逮捕したって起訴できませんよ、はっきり言って、一事務員ですから。それを、検察に都合のいい調書をつくるために身柄をとるわけですよ。大臣、普通、逃亡のおそれあり、罪証隠滅のおそれがあるから逮捕じゃないですか。家宅捜索をもう二回もやって、持っていくものは何もないぐらいのことで、隠すものはない。

 しかも、この佐藤玲子というのは、かわいそうに、四月、連休前に子宮がんの手術をやった。その七年前には乳がんの大手術をやっている。放射線治療を浴びているときに逮捕していくんですよ。逃げ隠れできない女性ですよ。私は、東京拘置所にいながら、ああ、やはり国家権力はここまでやるかと思って、愕然としましたよ。かわいそうに、その佐藤玲子さんは死んでしまいました、転移で。

 私がこの国策捜査や冤罪で言いたいのは、検察の行け行けどんどんのやり方は人の命まで失ってしまうんですよ。このことをよく与党の先生方も考えてくださいよ。人の命を奪うまでの捜査は必要でないと私は思っていますよ。本当に罪証隠滅や逃亡のおそれがあるならば、身柄をとってもいいですよ。子宮がんで病院に行っている、入院しているときでも事情聴取に行く。さらに、退院しても呼び出して事情聴取する。挙げ句に、自分たちの気に入らない言い方をすると、身柄をとって調べる。結果は不起訴ですよ。こんなの当たり前ですよ、不起訴は。一事務員ですから、起訴できませんよ、権限がないんですから。

 そこまで検察はやるし、国策捜査というのは、大臣、まずは人ありきでつくられていくということを、これは皆さん、皆さん方だってねらわれたら、あすは我が身ですよ、はっきり言って。これはもう与党、野党問わず、ねらわれたらどうにもなりません。

 私自身は堂々と信念を持って闘っていきますけれども、私の裁判ではこうして命を落としている者がいるんですよ。あるいはもう一人、真実を言ったら、また検察から話が違うと言われて、締め上げられて、脳梗塞で倒れた人がいますよ。島田さんという人ですよ。かわいそうに。だから、私は、そんなことがあってはいけないし、もっと明朗なやり方をする、それは可視化しかないということを大臣に強く言っているんです。

 最後に大臣、検察は、例えば、私を逮捕しました、勾留しました、検察側証人尋問が終わるまで私を保釈しませんでしたよ。四百三十七日です。どう考えても、何で鈴木が四百三十七日、辻元清美さんなんというのは二千五百万円も国民の税金を詐欺して、ちゃんと二十日で話し合いして出てきていますよ。私は、賄賂をもらっていないから堂々と闘ったんですよ。正直に物を言えば、自分らの言うことを聞かぬといって、否認だといって長期勾留ですよ。家族との接見もだめですよ。それが今の検察の実態であるということも、ぜひとも大臣、よくわかってください。自分たちの聴取に合わせたら、はい、保釈します。自分たちが気に食わなければ、自分たちの証人尋問が終わるまで引っ張るというやり方。

 私は、四百三十七日、堂々と頑張って、正直に。私は、賄賂をもらっておったらバッジも外せば、やめますから。同時に、大臣、私が逮捕されて二カ月目ですよ、取り調べ検事はこう言いましたよ。バッジを外しなさい、政治家もやめなさいと言うんですよ。検事にそう言う資格がありますか。あなたの後援者は三分の一しかもう離れていませんだとか、選挙に出ても絶対当選できません、ここまで言ってきますよ、皆さん。そういうことを言わせていいんですか。

 もっと、検察の実態、これを大臣、せっかく私は、長勢大臣は久々に見るしっかり者の法務大臣だ、こう思っていますので、大臣にそういった意味では期待したい。

 同時に、大臣、国策捜査についてのやはりきちっとした大臣なりの受けとめを私はしてもらいたい。今私がここで言っていることはうそじゃありませんから。私は何も、今裁判をやっているものですから、私がここでうそを言ったら、私自身がリスクを負う話ですから。私は、これは正直に言っておりますので。同時に、私は実名を挙げて言っておりますから。刑事局長は、私を調べた担当者に聞けばいいわけですから、鈴木はこう言っておったけれどもということで。私は、どこででも相対しても構いませんし、また、証言を求められればお話をしますので、ぜひともこれは、真の法治国家として、真の公正公平な日本の社会をつくるためにも、権力の横暴はいけないし、特に国策捜査はあってはならぬ。

 同時に、冤罪はもってのほかだという意味で、最後に大臣、やはり可視化についての取り組みの大臣の決意を伺いたい、こう思います。

長勢国務大臣 久しぶりに鈴木先生の力強い話を聞かせていただきまして、勉強になりましたが、私もこういう立場で、御答弁申し上げる立場ですので、事は公判中でございますので、具体的には申し上げかねるわけでございますが、いずれにいたしましても、検察、警察が公正なものとして国民の信頼を得るということでなければ、法治国家としてはうまくいかないわけでありますので、そういう観点から、きちんとした検察、警察のあり方について、今後とも一層努力をしてまいりたいと思っております。

 可視化につきましては、先ほど御答弁申し上げましたので、今後とも各方面での御議論を待ちたいと思います。

鈴木(宗)議員 ありがとうございました。

七条委員長 次に、河村たかし君。

河村(た)委員 河村たかしです。

 今の鈴木宗男さんのと非常にある意味では似ておるんですけれども、今回は大臣に聞きます。

 今、刑務官の話が出ましたけれども、私の認識は、名古屋刑務所の刑務官が人柱になって、過剰収容が強調されて、予算がついて刑務官の人数がふえていったというまことに痛ましい、これこそいわゆる国策捜査ですね。

 それで、大臣に聞きますけれども、ちょっと皆さん、自民党も聞いておいてちょうだいよ。裁判とは別に矯正局、長勢さんは法務行政の最高責任者ですか、再発防止、あれは保護房の中で二人亡くなって一人けがをしたということですが、そういうことが起きないようにする義務はありますね。

長勢国務大臣 再発防止義務があるのかという御質問だけだったですか。(河村(た)委員「はい」と呼ぶ)そうですか。それは当然、私どもとしては、あの事件を踏まえて、再発防止のために具体的な方策も講じてきたところでございます。(河村(た)委員「再発防止義務はあるとちゃんと言ってください」と呼ぶ)はい、あります。

河村(た)委員 では、そのために何をなすべきですか。

長勢国務大臣 名古屋刑務所の一連の事案を踏まえまして、今までとってきた再発防止策を申し上げますと、一つは、革手錠の廃止、一つは、新設の保護室前室へのシャワー室の設置、それから人権研修の実施ということをいたしました。それに加えて、保護室収容事案については、全件、収容開始から収容を中止するまでビデオ録画して一定期間保存し、その状況を事後的に検証する措置を講じたところでございます。

河村(た)委員 何か言いましたけれども、まず、一番最初に真相解明義務があるんじゃないですか。何で二人亡くなって、一人傷ついたのか、なぜなのか、これを明らかにする務めがまず最初にあるんじゃないですか。それをやらないと後の対策なんてとれるわけがないでしょう、大臣。

長勢国務大臣 この事件が起きましてから、法務省の中で対策を調査し、それを踏まえてこのような方策を講じてきたというふうに承知をいたしております。

河村(た)委員 もう一回言いますけれども、真相を解明しないと。要するに、保護房の中で傷ついたり亡くなってはいかぬわけでしょう。むしろそういうために入れるわけですよ、あれは。暴れる方もみえるけれども、自傷のおそれがある場合は入ってもらうわけですよ。

 だから、そういうことがないように、なぜ亡くなったのか、なぜなんだ、原因は何なんだろうか、それをまず究明せないかぬでしょう。それを言ってくださいよ。当然のことを私は聞いておるだけですよ。

長勢国務大臣 そのことは、当時調査をして報告書をつくっておるというふうに承知をしております。

河村(た)委員 では、一番最初に何をやるべきですか。実地検証はやらなくていいのか。現場に行ってできる限り再現をしてみる。それはビデオに映っていましたね。普通現場にはビデオはないのですが、今回、ビデオがあったんですよ。なおかつ、ビデオに撮られていたのを刑務官たちはみんな知っていたんですよ。その人たちをみんな逮捕してしまったんだ。そうでしょう。

 実地検証をやらなきゃいかぬじゃないですか。それともやったんですか。

梶木政府参考人 事実関係についてお話をいたしますと……(河村(た)委員「実地検証をやったかどうかだけ言ってください」と呼ぶ)実地検証とおっしゃるのがどの部分のことをおっしゃっているのかという問題があるわけですけれども……(河村(た)委員「では、やめてください」と呼ぶ)

河村(た)委員 それではどの部分かちゃんと言います。ちゃんとビデオに映っていますから。上から全員映っていますから。だから、同じような広さのところをつくって、同じように革手錠を施用して、それを引いてみる、それを実地検証というんじゃないですか。それをやられましたか。再現検証ですよ、言ってみれば。

梶木政府参考人 当時、関係者の人たち、職員から話を聞くとか、あるいは革手錠の施用状況等について調査をするとか、あるいは現場を見に行くとか、今委員が御指摘になりました、残っていたビデオについてチェックする、中身を検討するというようなことはしておりますが、今言われたように、ビデオに映ったのと同じ形で実験をしてみたのかということであれば、それはしておらないということでございます。

河村(た)委員 何かようけ聞いたようにみえますけれども。

 それでは、具体的に言いますけれども、無罪になった佐藤孝雄さんには、ほかもそうですけれども、そのとき事情を聞きましたか。

梶木政府参考人 当時、周辺の職員あるいは関係職員から聞いておるのは事実なんですが、今おっしゃった佐藤職員から直接だれが聞いたかというのは、ちょっと今、情報を手元に持っておりません。

河村(た)委員 持っておらないじゃなくて、聞いていない、前に何遍かやったじゃないですか。後ろの、何という方かちょっと名前を忘れてしまったけれども、それはもう何遍かやって、聞いておりませんよ、全然。ここで指摘を受けて、邊野喜さんという前の方が行って初めて聞かれた。その当時、聞いておりませんよ、彼を立件する前は。そうでしょう。まあええわ、覚えておらぬようならしようがない。こっちもかわるものだから、どうしようもないですよ。

 それでは、大臣、ここに亡くなった方がある、これは本当に刑務官が暴行してそうなったのか、それとも、転倒してそういう事故が起きたのか、それから、放水を、水を臀部にかけて死んだのか、それとも、中にかたいプラスチック片が入って、それで自傷事故で死んだのか。

 では、革手錠でいきますと、転倒して事故で亡くなった場合と刑務官の暴行の場合で、後の法務省の対応は違いますね、どちらが原因かで。

長勢国務大臣 当然、責任が違う範囲で違うと思います。

河村(た)委員 そうなんです。全然違うんですよ、後の再発防止の対応が。当然だわな。事故だったら、事故が起きぬように、いろいろなそういう危険、事故が起きるような状況がないかどうかチェックせないかぬ。もし暴行だったら、それこそ、職員研修を熱心にやらないかぬ。だから、とにかく、できる限りの手を使って突きとめる責任があるんじゃないの、法務省には。大臣、抽象論ですから、一般論として答えられると思いますよ。

長勢国務大臣 もちろん、そういう判断に立って今まで対応してきていると思います。

河村(た)委員 何が立ってですか。鉄道事故があったときに、何をやるんですか、大体。福知山線でありましたね。現場へ行って物すごい現場検証をやっているじゃないですか。あれが本当に運転手の責任なのか、保線の問題なのか、車両の問題なのか、ああいうことは、実地に行ってやってみなきゃわからぬじゃないですか。

 だから、実際、あの状況で手錠を本当に引いてみないと、引いたことによって、本当に傷つくかどうかすぐわかるじゃないですか。なぜ、やらなくて、突然、暴行だとわかったんですか。どうしてですか。

 では、ちょっとこれは矯正局長に聞こうか。どうしてわかったんですか、故意犯だってなぜわかったんですか。

梶木政府参考人 どういう態様で、だれがどういう意思のもとにやったのかというのは、最終的に、刑事の法廷の中で、相互に証拠を出されて、その上で認定されるべき事柄だろうというふうに思っております。

河村(た)委員 それは時系列が違うからだめですよ。刑事になったのは大分後ですよ。こちらの方が早いんですよ、国会での中間報告、おたくが報告を出した方が。刑務官の資質に問題があるとよく言いましたね、客観的に実地検証もせずに。矯正局長、もしきちっと確かめもせずに自分の資質に問題があると言われたら、どういう気持ちがしますか。

 故意犯というと刑事の用語になるけれども、刑務官の暴行によってこうなったとあなたたちが認定したのはもっと前ですよ。どうやって認定したんですか。

梶木政府参考人 先ほど途中まで申し上げましたが、認定というのは、先ほど申し上げたように、証拠によって事実の有無、ありようを認定するということであろうと思っております。委員が今おっしゃっておられるのは、恐らく、なぜ告発したのかということではなかろうかと思うんですが……(河村(た)委員「告発もそうですが、告発の前からやっているじゃないですか」と呼ぶ)

 当時、事件が起きた直後から、矯正局の中に調査チームをつくりまして、人から話を聞いたり、さまざまな調査をしてきたわけでございます。また、管区長において、捜査をしている検察庁の方からの事情も聞いて、そういうものを総合して告発をしたというふうに聞いております。

河村(た)委員 だれから事情を聞いたと言ったかな、ぱっと飛ばしてしまったので申しわけないけれども。

 時間がないものですから、それではもう一回、多分一遍もらいましたけれども、あなたたちが中間報告を出すに至る、本当に何をどう調べたのか、だれからどう聞いたのか。なぜかというと、これは今でも、事故か故意なのか、はっきりしないと今後の受刑者のためになりませんよ、はっきり言いまして。裁判が確定するまでだといったら、最高裁まで行ったら、最高裁で確定するまでこの原因がわからぬのですか。それなら、刑務所の保護房に入る人はどうなるんですか、一体。そうでしょう。

 それは自分のところの職務放棄ですよ、大臣。ちゃんと大臣、どうやって、刑事は関係ないですよ、その前にやっているから、ここで。この委員会でもしょっちゅうやっておったわけです。それをどういう段取りで認定していったか。そのためには、刑事でもやりますね、証拠の標目というのを全部出しますよ、ああいうような格好でちゃんと出してもらう。それで、実地検証というか再現検証ですね、これをやってもらえるかどうか、もう一回ちょっと。

 大臣、自分の気持ちをちゃんと言ってくださいよ。この間、裁判は関係ないというのはわからないと言っていたけれども、今でも事故防止の義務があなたにはあるんですよ。

長勢国務大臣 当時の調査の結果は国会にも報告を申し上げておるというふうに承知をいたしております。その中身……(河村(た)委員「いや、結論だけですよ、結論だけ」と呼ぶ)調査の仕方も当然書いてあったと思いますが、その範囲について先生はもっとという御指摘かもしれませんけれども、そこで御報告しておったというふうに理解をしております。

 また、実地検証ということでございますけれども、現在公判中でございますし、必要に応じて、必要なものがあれば考えなきゃならぬとは思いますけれども、従来の報告を踏まえて今対応しておる。そして、先ほど申しましたように、仮に故意であろうがなかろうが、一連の反省を踏まえて、こういう重大な事件が起きないように対応しておるということを先ほど御説明申し上げたとおりでございます。

河村(た)委員 とにかく、実際は何であったか自分で決めずに、裁判だって、最高裁まで事故か何かわからないといったらどうするんですか、一体。

 何遍も言っておきますが、この場合は非常に珍しい例で、現場のビデオがあるんですよ。普通はないですよ。ほとんど、ありとあらゆる事件で現場のビデオなんてないと私は思いますよ。今度はまともに映っている。そのとおりやってもいいじゃないですか。革手錠も現物があるじゃないですか。

 では、大臣、あれは足で若干押さえていますけれども、大臣は何キロあるか知らぬけれども、九十キロぐらいですか、八十キロですか。(発言する者あり)七十三ですか。(長勢国務大臣「もっと少ない」と呼ぶ)もっと少ない、六十ですか。(長勢国務大臣「七十かな」と呼ぶ)七十ですか。では、七十キロ以上で、大臣の体にベルトを巻きつけて引っ張ったら、どうなりますか。ベルトは締まりますか。大臣が寝ておるところを、七十キロ以上で、二人で引っ張れば引っ張れますね、一人でも引っ張れますけれども。どうなりますか。締まりますか。どうなると思う。(発言する者あり)やってみましょう。答弁してくださいよ。ここは重要なところなんですよ。どえらい重要なんですよ、これは。

長勢国務大臣 ちょっと責任を持って答弁できませんけれども、締まるんじゃないんですか。締まらないんですか。

河村(た)委員 要するに、体重以上の力をかけて引っ張ると体が動くんですよ。そう思うでしょう。締まる部分もあるけれども、体が必ず動きますよ、七十キロ以上の力で引くと。そうでしょう。そう思わないですか。

 だから、やってみたらどうですか。ビデオはそうなっているんだから。ビデオに映っている受刑者の人の体重も全部わかっていますよ。だから、それで引っ張ればいいじゃないですか。それは物すごくわかりやすいですよ。

 これは裁判中じゃなくて、こういうことだとやはり転倒事故だ、そういう転倒事故が起きないような対策を今からでも刑務所はとってもらわないかぬ、全体に。まだ事故が起こることはたくさんあるんですよ。だから、保護房のクッション化も若干やっているけれども、もっと一気にやらないかぬですよ、倒れるといかぬから。そういうことなんですよ。

 それから、病気の人が移送されてきたときはきちっと連絡するように、そういう対策も要るんですよ。例えばてんかんを持っておる方とか、それから飯を十何食、二十食食べていない人もおるわけですが、そういう人はきちっと連絡しないと、異常事態で倒れたりするんですよ。そういうことの伝達をきちっとやるとか、事故かどうかで全然対応が違うんですよ、言っておきますけれども。矯正局長、どうですか。

 時間がないので、ちょっと質問し直します。

 では、とにかく、今のようなことで、大臣に一遍言っておきますけれども、再現実験をできる限りやらないと、これは法務行政を尽くしたことになりません、事故かどうかわからないから。簡単にできます。なぜしないのかだけ一言、言ってください。なぜ再現実験をしないのか。再現実験をしてください。

長勢国務大臣 最前来御説明しておりますように、当時のいろいろな状況の中で判断をしておるわけでありますので、改めてする必要がなく事実認定をしておるということだと思います。

河村(た)委員 またこれはちょっと、きょうの話じゃないけれども、いいかげんにしておかないかぬよ、本当に。これは一人無罪になっていますけれども、今の鈴木さんの話じゃないけれども、刑務官の皆さん、地獄の思いですよ。それと、今後、刑務所の中の方にもまことに都合が悪い。今言ったように、事故なら事故で再発防止策をとらないかぬですよ、刑務所内で事故が起きぬように。

 反対に、無事故表彰制度なんてやっておるのがいいかどうか。無事故表彰制度があるものだから、みんな事故を隠そうとするわけですよ。そういうこともいいかどうかとか、もっと法務行政はやらないかぬことが幾らでもある、刑務所行政は。原因をこんな故意犯にしちゃったから、とんでもない方に行ってしまうということですよ。

 また今度聞きますけれども、実験をやらずに人を告発して、それと、何と国会で大臣までもが資質に問題があるということを言ったこと、これは私は刑事責任があると思いますよ、本当に。これだけ言ってもやらない。ばかにしておるのかということですよ。前の幹事長の息子さんだったら、議員は辞職したわな、うそのことを言ったとして。名もない刑務官ならいいんですか、人権侵害があった可能性をこれだけ言っているのに。

 テストですぐわかるんだ。すぐわかる、体が動くから。二人で引っ張ればすぐ動きますよ。こんなことでは締まらない、では、なぜ傷ついたんだと。ちょうど革手錠の、角鉄といいますが、金属部位ですね、これはここになっておって、倒れると、その真下が切れておるじゃないですか、ここのところ。締めるところは横なんですよ。すぐわかるんだ。

 名もない刑務官は犠牲になってもいいんですか。どうですか、大臣。

長勢国務大臣 先生からはたびたびこの問題で本当に厳しくお話をいただいておるわけでありますが、裁判では有罪になっておるということも含めて考えれば、ここで私どもがまるで間違っておってやり直さなきゃならぬということだけではないんじゃないかと思います。

 私は、やはり、これからまだいろいろな展開もあるかもしれませんけれども、その問題と、刑務所内でいろいろな問題が起きないようにしなきゃならぬということとは、もちろんそれは当然のことでありまして、この問題の究明がどうだからというだけの問題ではないんだろうというふうに思っています。

河村(た)委員 めちゃくちゃですね、これは。何か結果が起きたときに事故であったかどうかをきわめないかぬじゃないですか。これは明らかにあなたの職務違反ですよ、悪いけれども。刑務所内で事故が起きないようにするために、なぜ二人亡くなって、なぜ一人けがしたのか。

 次に行きますが、それでは、今度は警察の方に、時間がないものだから、これは、私は、本人というかたまたま車に乗っておったんですけれども、千葉県である方がシートベルトをつけていなかった、そこでお巡りさんに呼びとめられて、私は後ろに乗っておったんですけれども、そのお巡りさんが、本人もずっと認めて書いたんですが、指紋を押してくれ、こう言われた。まあいろいろ知っておることもあって、いや、それは任意でしょうと言ったら、いや、決まりだからねと言ったんです、お巡りさんが。この事実は本当ですね。私が体験していますけれども、一応確認しておきましょう。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 今のお話は符合する事案がございまして、御指摘の点は、三月四日に千葉市の花見川区内におきまして、千葉県警の警察官がシートベルトの着装義務違反を取り締まった際のことであろうと承知しております。

 状況につきましては、御指摘のように、これはシートベルトの着装義務違反でございますので、点数切符を作成しようということで、違反者に署名と、それから最初は押印を求めましたが、印鑑はありませんので、かわりに指印を求めたということですが、断られたので、指印のない、署名のみで切符を処理したということですが、その際に印鑑はありますかと尋ねたところ、ありませんということでありましたので、決まりですから指印をお願いしますという、正確でないかもしれませんが、そういう内容のやりとりをしておるということでございます。

河村(た)委員 なかなか正直で結構でございます。そのとおりでございます。

 ところで、これは決まりでというのはどういう決まりですか。何の決まりですか。決まりだと言われたんですけれども、お巡りさんに。私は耳で聞いておりましたけれども、何の決まりですか、これは。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 切符の処理につきまして、三種類ほど切符はございますが、それぞれにつきまして切符の作成要領を定めておりまして、これは警察庁の通達に基づきましてその要領を定めておりますが、その中で、署名のほかに押印または指印を求める、こうなっておりますので、これに従って警察官は職務執行したということで、そのことを言っていると思います。

河村(た)委員 しかし、これは刑訴法にあると思いますけれども、記名押印を求めることができる。まず、任意ですからときのう言われましたけれども、そこをちょっと確認させてください。

矢代政府参考人 切符の自認書のところに署名、それから押印または指印を求めますが、当然これは任意でございます。

河村(た)委員 では、きょう朝いただいたんですが、通達に、署名を求めるものとするというのがあるんですね。これはちょっと書き過ぎじゃないですか。これは、刑訴法に準じて、求めることができるというふうに変えるべきじゃないですか。

矢代政府参考人 通達にもございますように、自認書に署名を求めること自体が任意、こういうふうに書いておりまして、したがって、任意で署名を求める、その際に押印または指印を求める、こういうことでございます。

河村(た)委員 何かさっぱりようわからぬ。ようわからぬけれども、ここのところはちょっと申し上げておいて、要するに任意は任意なんだ、断ってもいいんですね。

矢代政府参考人 通達にも示してありますし、それから当然、これは書くまでもなく任意でございます。

河村(た)委員 では、断ってもいいんですね。

矢代政府参考人 お答えします。

 断っても結構でございます。

河村(た)委員 では、これはこのぐらいにしますが、その場合には、私は、通達は直すべきだと思います。求めるものとするとなっていますから、現場でそういう実務が行われておるわけです。私、本人が見聞きしていますから。これは決まりだからとみんなやるわけですよ。やはりうそはいかぬということです。

 最後に、私は議員宿舎の問題をずっと取り上げておりますが、これは、安い家賃で入るというのは、実は民間がやるとフリンジベネフィット課税で課税されるんですよ、その分。だから、これは法の平等に反するということです。公務員の方も課税されませんけれども、民間の方が十分の一の家賃で入ると、十分の九は所得とみなされて課税されるんです。そういうことで、私はこんなのは憲法問題だと言っております。

 それで、参議院の方の、衆議院の方の話もしておりますけれども、それはそれでまたやりますが、今度は参議院の宿舎をつくるについて、これはこれで別に自律性に反するわけじゃない、予算の執行の、私は国民の税金がどう使われるかをチェックする義務があるので、それで言っておるんですが、今度の宿舎について、今までの入居状況と、それでいくとどのくらい空き室が出る予定になりますかね。

諸星参議院参事 お答えを申し上げます。

 参議院の議員宿舎は、現在、麹町議員宿舎百四十六戸と清水谷議員宿舎五十八戸、計二百四戸が整備されているところでございます。

 現在の空き室でございますが、麹町議員宿舎において二戸、清水谷議員宿舎において十一戸、計十三戸でございます。

 新たに整備いたします新清水谷議員宿舎でございますが、こちらの方には世帯用宿舎八十戸を整備するところでございます。

河村(た)委員 今でも余っておるのに空き室がふえるわけですね。そういうことですね。

諸星参議院参事 新清水谷議員宿舎の整備につきましては、現在の清水谷議員宿舎の老朽化に伴うものでございますが、この老朽化につきましては、清水谷議員宿舎が三十二平米と大変狭うございます。ふろがないとかそういったふうなことの中で、新たに七十九平米を整備させていただくものでございますが、より世帯用として、先生方の家族構成とかいろいろあると思いますが、事務局といたしましては、新たに整備した戸数二百二十六戸、議員定数二百四十二の九三%程度になりますが、お入りいただけるものと考えております。

河村(た)委員 それから、最後にしますが、議員の入るところ以外に、何かほとんど、かなりまあまあの規模の部屋を職員さんが使っておられる。これはどうも衆議院にもあるようなんですけれども。(発言する者あり)本当なんです、これ。

 この新清水谷、ここは八十戸ですけれども、ここはそういうのはあるんですか、職員用のところは。

七条委員長 時間が来ていますから、簡単明瞭に。

諸星参議院参事 新清水谷議員宿舎に、いわゆる議員の宿舎に職員が入るということはございません。

 今、河村先生がおっしゃった、職員が宿舎にということでございますが、議員宿舎は議員活動を行うための施設であり、今申し上げましたように、職員が居住したことはございません。また、ただいま整備中の清水谷につきましても同様でございます。

 なお、麹町、清水谷の両議員宿舎における機械設備でございますとか電気設備のふぐあい、急病人など、夜間あるいは休日における議員宿舎の緊急的な事故に対応するため、麹町議員宿舎に附属する形でその職員の宿舎を三戸設けているところでございます。これはあくまでも……(河村(た)委員「新清水谷」と呼ぶ)新清水谷につきましては整備する予定はございません。

河村(た)委員 では、これで終わりますが、なかなか大変優雅なことでございまして、私は要らぬという立場ですけれども。議員は国民と同じ立場に立て。議員が質素に暮らすというのは、古今東西の優秀な政治家の最も基礎的なことです。

 以上で終わります。

七条委員長 次に、大串博志君。

大串委員 ありがとうございます。民主党の大串博志でございます。

 きょうは、一般質問の時間をいただきましたので、時間の範囲内で、法務行政一般についていろいろ議論させていただきたいと思います。

 まず初めに、きょう早川委員の方からも議論がなされましたが、嫡出推定、民法七百七十二条の問題ですね。

 今月初めに法務省の方から、この問題に関してはかねてからその方針が示されていましたように、通達が出されました。その内容に関しては、大ざっぱに言いますと、婚姻が終了した後の懐妊であるということが医師の証明書で証明できる場合には、三百日の推定のらち外とする、こういうふうな通達でございます。

 この通達に関して、きょうも議論になっていましたけれども、この場合は、離婚が成立する、つまり婚姻が解消するという時点の後に懐妊したということを医師が証明できれば、三百日の推定規定のところは推定ではなくなるということでございまして、いろいろな意見が出ている中では、実際は、離婚の時点より前に婚姻関係がほぼ実態上は終了して存在しないにもかかわらず、そういう状態の中で懐妊したもの、これが救えないというふうな意見がございます。

 実際、法務省の民事局の中において実態調査をされていて、注目されているのはこの一文だと思うんですね。「家庭裁判所における親子関係事件の調査によれば、離婚後三百日以内に出生した子の事案のうち、多くは離婚前に懐胎したと認められる事案であり、離婚後に懐胎したと認められる事案は一割程度である。」ですから、救われる事案が少ないのではないかという声があります。

 そこで、大臣にお尋ねしたいんですが、なぜ離婚が成立したかどうかというところでこれだけ高いバーをつくられたのか、なぜそこの前後でこういう違う取り扱いをつくられたのか、なぜ、離婚以前に事実上婚姻状態がほぼなくなっているような場合、これを救おうというふうな結果にならなかったのか、そこについて大臣の御所見をいま一度お伺いしておきたいと思います。

長勢国務大臣 民法七百七十二条、嫡出推定という制度は、身分法の根幹にかかわる制度でありますし、そしてまた、子の福祉のために親子関係を早期に確定する、家庭の平和を尊重するという趣旨からしても、何か、古い法律という表現をされる方もおられますが、今日においても基本的には維持されるべきものと私は考えております。したがいまして、この枠組みの中でまず考えたいと思ったわけでございます。

 それから、よく、救う救わないという言葉がございますけれども、本来、仮に嫡出推定をすることが困るというか都合が悪いという方は、裁判、調停手続によって救われるというか救済されるという仕組みがあるわけでありますので、問題は、救う救わないじゃなくて、裁判あるいは調停に行きたくない、行かなくていいようにしろというだけの議論だということを、まず国民の皆さんには理解をしておいてもらわなきゃいかぬと思うんです。

 そういう意味におきまして、離婚後で出生をしたということであれば、婚姻中に出生したわけではございませんので、これは嫡出推定の枠内で、枠を維持した中で解決できる範囲だろうと私としては考えておりますので、それで、離婚後に懐胎をしたということが証明される場合には、今の現行法の中で嫡出推定は及ばないという取り扱いをすることが可能であると思っております。

 離婚前の話になりますと、これが前であるかどうかということを窓口で判断するということは窓口を極めて混乱させますし、まして、今先生がおっしゃったような事案において、これがそうであるかどうかということを窓口で判断するということは極めて困難でありますので、これはやはり、基本的には裁判、調停の手続をとるべきことと思っておる次第であります。

大串委員 今大臣がおっしゃったのは、離婚前に懐胎された方を救う救わないという言葉があるけれども、その救う救わないということからすると、裁判、調停手続を経ていただければ救済の道はあるんだということをおっしゃいましたけれども、いろいろな御家庭の事情等々から裁判、調停の過程になかなかいきにくいという方もいらっしゃるのもこれまた事実でございます。しかも、先ほど来指摘しましたように、法務省の調査においても、この問題を抱える方の中では、ほぼ九割方の方々が離婚前に懐胎されているということ。

 その現実を踏まえると、今、現行法制は維持したいというふうなことをおっしゃいましたけれども、その考えを踏まえながらも、あるいはその考えをもう一度ただしていただいて、確かに、窓口で一個一個離婚前の懐胎のケースに関して精査したときに混乱するということはあろうかと思うんです。だから、法のあり方も含めて考えていくということはやはり必要なんじゃないかと思うんですね。

 大臣、私、一つお尋ねしたいんですけれども、離婚前に懐胎されたというふうに今状況がなっていらっしゃる方々に関しては、裁判、調停プロセスでいけばいいじゃないかという、本当にそれだけで済むというふうにお思いでしょうか。私は、それは多くの方々には非常に酷な結果をもたらすような気がするんですけれども、大臣、そこの点についてもう一度所感をいただきたいと思います。

長勢国務大臣 いろいろなケースがあるということは、そのとおりだと思います。これはやむを得ない事情があるな、社会通念上も法律一点張りだけじゃちょっとまずいんじゃないかというケースは、ないわけではありません。しかし、その逆を言えば、社会通念上助けてあげたくないなという人が救われるということもいいかどうかということは、やはり十分考えなきゃならぬ問題だというふうに私は考えます。

 そういう意味で、私は、基本的に現在の制度は維持すべきものと考えておりますが、しかし、今言いましたように、社会通念上いろいろな関係もあって、考えなきゃならない方が全くおられないということは、私は今責任を持って言えません。与党においても、そういうことを踏まえて、民法の枠内で、立法措置も含めて、考えられるものがあったら考えようというお取り扱いになったようでありますし、そのことについては、法務省においても御協力すべき点はしていきたいと思っております。

大串委員 今、ある一定の含みを持って発言いただいたんだと私は理解しました。すなわち、社会通念上何がしかの手当てといいますか対応が必要だという方もいらっしゃるんじゃないかという御認識の上で、それも踏まえた上で、現行法の枠内でとはおっしゃいましたけれども、立法措置も含めていろいろなことを考えていくということも認めておっしゃいました。そこに、今、ある一定の可能性といいますか含みを持たせて言われたというふうに私は理解しましたが、ぜひこの調査結果も踏まえて、救わなければならないという言い方もよくないのかもしれませんけれども、対応しなければならない方々が多くいらっしゃるという現実も踏まえて、個々人の方々の事情は、やはり非常に大変な御事情もあられる方もいらっしゃるように報道等でも見聞されております。ですから、ぜひそこはしっかりと検討を続けていただきたいというふうに私は思います。

 次の論点に参らせていただきたいと思います。

 次の論点は、少年法でございます。またかというふうに思われるかもしれませんけれども、少年法、議論はさせていただきました。そして、途中で審議が強行採決によって打ち切られて、私は補充質疑もさせていただきましたけれども、この少年法の問題、きちんと検討すればするほど論点は、この場でも私は申し上げさせていただきましたけれども、たくさんあります。時間もいただいて、私も複数回質問いたしましたけれども、それでも覆い尽くせなかった論点があります。

 まだまだたくさんあるんですが、きょうはちょっと時間の関係もありますので、一点だけ、どうしてもこれだけは問わせておいていただきたかった点について質問させていただきたいと思います。

 この点は、少年法の議論の中でも私は何度か申し上げたことですけれども、少年の処遇、改善更生を図るにおいては、法務省そして厚生労働省あるいは文科省等も含めた全体の政治制度の中で対応していかなければならないという論点でございます。これに関しては、大臣も、少年に対する処遇というのは、基本的に厳罰化一本やりではないんだ、社会内処遇も含めてという方向になるんだということは認めていらっしゃいました。

 そこで、そういう目で、いろいろ少年法の今回の改正の内容をきちっと調査してみると、やはりまだまだ疑問な点が私にはあるんですね。

 例えば、家庭裁判所に送られた子供たち、家庭裁判所での判断は三種類になるわけですね。一つは保護観察処分、もう一つは児童自立支援施設等々の処遇、三番目に少年院送致。この三つが、どれが一番少年のためにいいかという観点から並び立っている、これが少年の処遇の基本ラインだと思うんです。こういう目で、今回の少年法等の改正を見ていきます。

 そして、今回の少年法等改正の中には、非常にいい論点もありまして、家庭が非常に重要なんだという論点がありました。そういう論点、私は非常にいい論点だと思うんです。家庭がやはり非常に重要です。

 そういう点から、今回、改正の内容が含まれておりまして、一つは、「少年院の長は、必要があると認めるときは、少年である在院者の保護者に対し、その在院者の監護に関する責任を自覚させ、矯正教育の実効を上げるため、指導、助言その他の適当な措置をとることができる。」というふうに、少年院の長が家庭に対して指導助言を行うことができるんだということを明確にした。

 もう一つございます。「保護観察所の長は、必要があると認めるときは、」全く同じ文章なんですね、「保護観察に付されている少年の保護者に対し、その少年の監護に関する責任を自覚させ、その更生に資するため、指導、助言その他の適当な措置をとることができる。」ほぼ同じ文章です。

 私、ふと思ったのですけれども、この間に、処遇としては児童自立支援施設や児童養護施設における処遇があるわけです。ところが、今回のこの法案においては、児童自立支援施設や児童養護施設で処遇を受けている子供たちに対して、同じように、そこの施設の長なりが、家庭の親等に対して指導助言等適当な措置をとることができるという文言はどこにもないんです。すっぽり抜け落ちているんですよ。

 なぜだろうか。家庭裁判所における処遇においては三つ並び立って、それが三本の矢のように、どれが一番いいかということがメニューのように選べるようになっているにもかかわらず、今回の法律では、保護観察所、そして少年院、この両端の部分についてのみ家庭に対して指導助言ができるという規定が入っていて、なぜ真ん中のところはすぽっと落ちているのか、不思議でならないんです。

 大臣、これは何で入らなかったんですか。

長勢国務大臣 保護者に対する効果的な指導が必要だということは、少年院、保護観察処分においても児童福祉行政においても全く同じだろうと思います。

 これは厚生労働省から正確にお聞き取りいただいた方がいいのかもしれませんが、児童福祉法においては、児童相談所長が児童の保護者を児童福祉司等に指導させることができるというふうに規定されており、また、児童自立支援施設に入所した場合にもそういう指導助言が行われているというふうに聞いておりますので、そういうこともあって、今おっしゃったようなことになったのかなと思います。

 考え方は同じだろうということは、これを審議しました法制審議会においても両省一致した意見だったというふうに伺っております。

大串委員 私、何でこれを申し上げているかと申しますと、皆さんお気づきになっていると思いますけれども、やはり少年の処遇のために全省庁一丸となって対応していかなければならないときに、どうしても省庁の縦割りがあって、いろいろなものを検討していくときに、ある一定のぽてんヒット的なものが出てきがちなんじゃないかというおそれ、懸念を持っているわけです。

 今回のことも、少年院という制度、これは法務省の管轄、そして保護観察所の所管、これも法務省の管轄。ところが、真ん中の、真ん中のという言い方はおかしいですけれども、真ん中に書かれている児童自立支援施設や児童養護施設に関する管轄は厚生労働省。こういうふうに省庁が分かれているがゆえに、ぽろっと、ある一定、法律をつくる際に、全体像としてならなかったんじゃないかという気がしてならないわけです。

 私は、法案をつくられていく中において、十分な議論があった上で、児童自立支援施設や児童養護施設に関しては、少年院と保護観察所の長に関してはほとんど同じ書きぶりなので、同じような書きぶりは要らないんだということがきちんと検討された上でやられているのならいいんですけれども、どうもこれまでの議論を聞いてみると、今大臣も、厚生労働省の方に聞いていただいた方がいいかもしれませんがとおっしゃいましたが、法案の提出者は大臣でいらっしゃいますから、完全な像をつくっていかれるのは法務省が主導してやられていかなきゃならないんじゃないかと思うんですね。

 大臣、その点に関しても、いま一度、どうですか。これは、きちんと検討された上で、この点は要らないんだというふうな判断だったんでしょうか、ぜひもう一度お聞かせください。

長勢国務大臣 当時の立案のプロセスは、具体的に細かく存じ上げませんので間違っておるかもしれませんが、おっしゃるように、いろいろな問題で、私は役人上がりですから、各省の縦割りは、悪いことばかりではありませんけれども、悪いこともあるということはそのとおりでありまして、恐らく、今先生の御希望どおりにしようとすれば厚労省所管の法律を附則で改正するということになるんでしょうけれども、これは事実ではないかもしれませんから、ここだけというわけにいきませんけれども、間違ったらごめんなさいで申し上げますと、面倒だからやらなかったのか必要がなかったのか、どういう議論をしたのか、私は、そういう点、正確には承知をいたしておりません。

 ただ、先ほど言いましたように、法制審議会等でも、御指摘いただいた厚生労働省の担当官の方々も、保護者に対する指導が大事だということはきちんと共通認識でこの立法に御協力いただいてまいったということは事実でございます。

大串委員 私、次に項目として外国人労働者の受け入れの問題等々もお尋ねさせていただこうと思うんですけれども、法務省で管轄されている案件というのは、法務省だけで完結する案件ではない案件がたくさんあると思うんですね。

 ですから、法務省で法律改正などを考えられる際には、他省庁も十分巻き込んだ上で、考えを盛り込んで、必要に応じて他省庁の法律も一緒に変えていくということもしっかりやった上で全体像をつくっていかなきゃならない例というのは、実はたくさんあるんだと思うんですよ。

 今、法制審議会の話をされました。法制審議会にいろいろ他省庁の方も来ていただいて議論されているんだと思います。本当に、その器の中で他省庁の意見もきちんと取り込まれて、取り込もうと努力はされているんでしょうが、取り込まれた上で、必要な改正、他省庁法案に関しても必要なものはどうかということもきっちり検討された上でやられているのかどうかというのが、私、ちょっと疑問なところであります。

 ぜひ、これからいろいろな法律改正も起こるでしょうから、そういうときには各省の法律改正事項に関しても十分に、法務省の検討の中、法制審議会でもいいんですけれども、法制審議会でもどういう場でも、他省庁の検討項目というのは本当に必要なのかどうかということはやはり取り入れていただくようにしていただかないといけないと思うんですね。

 そこで、厚生労働省の方にお尋ねしますけれども、では、このときに、児童自立支援施設、児童養護施設に処遇されている子供たちに対して、ここに書かれているような、少年院もしくは保護観察所の親、家庭に対する指導助言、これと全く同じような条文が必要ないと判断されたことを、どういうふうに法案策定作業の中で盛り込まれていったのか、その過程についてどういう関与があったのかについてお答えください。

村木政府参考人 今お尋ねの件でございますが、児童自立支援施設でございますとか養護施設に入所する児童につきましては、少年法の改正以前から、もともと児童福祉法の第二十七条に、児童相談所、実際には児童福祉司がやることが多いんですが、これが保護者の指導をすることができるという規定がございます。そういう意味では、もともと規定がきちんと整備をされていたということでございます。

 また、特に施設に入所中の児童につきましては、この施設そのものが、児童福祉法の四十四条、児童自立支援施設は四十四条に基づくものですが、この施設の最低基準というのが省令で定めてございます。その中にも規定がございまして、施設長が、児童の家庭の状況に応じて、保護者の指導等を含めて家庭環境の調整を行うというのがむしろ施設の機能そのものになっておりますので、そういったことでやっておりました。

 そういう意味では、今回、少年法の改正に合わせて法改正をする必要がなかったということでございまして、むしろ、こういうことの必要性については、私ども厚生労働省も、当時は担当課長だったと思いますが、法制審の議論にも参加をさせていただいて、その重要性について述べさせていただいたところでございます。

大串委員 今、そもそも先行してやっていたというふうな意見がありましたけれども、少年法の中には、家庭裁判所、保護者に対する措置という条項ももともと入っていたりするんですね。それに対して、重ねて、今回、少年院と保護観察所に対しては、ダブルで、家庭に対する指導助言というのをあわせて、全く同じ条文でやっているんですよ。いろいろな条文でもうやられていたということかもしれませんけれども、少なくとも検討として、では、同じような横並びのことをやっていかなきゃいけないんじゃないかというふうなきちんとした検討をやはりやっていただきたかったなという感じが私はするんですね。

 これをなぜ申し上げているかというと、私も昔は役人でありましたから、財務省時代に、金融をめぐる関係の法制に関して法務省の方々といろいろ議論する機会がありました。実感として感じるのは、それは両省の責任ではあると思うんですけれども、うまく連携がとり得ていないなと思うことがやはり実体験としてあるからなんですね。もう少しうまく連携がとれれば、これは両省の責任だと思いますけれども、うまく連携がとれればもう少しいい法律体系がつくれるのになと思ったことは多々あります。

 こういう実体験もあるものですから、あえて今回、少年法の多々ある残された論点の中で、一つこれだけは今回議論させていただいたわけでございます。こういう他省庁との連携の件については、これからも一般質疑で質問させていただく中で幾つか出てくると思いますけれども、繰り返しまた指摘させていただきたいというふうに思います。

 それで、時間もありませんので、次の質問に移らせていただきますけれども、外国人労働者の受け入れ、そして入国管理の問題に関して、私は、きょう問いを起こさせていただきたいと思います。

 これは最近、経済財政諮問会議などでも、少子高齢化の時代、労働者不足の時代、経済成長をどう考えていくのかという観点からも非常に大きな論点となっています。特に、人口減少時代を迎えて、労働者がどうしてもパイとして少なくなっていく。こういう中で、外国人労働者の受け入れというのは非常に重要な論点になっていくと思うんですね。

 ところが、外国人労働者の受け入れということを考える際にいろいろな副次的効果もあります。治安の問題とか、あるいは文化の問題や、いろいろな問題があると思います。経済社会全体にわたり得る問題。ですから、先ほど大臣に私が申し上げたように、法務省だけで考えられるマターかというと、本当に政府全体を含む広いマターだと思うんですね。

 この点について、今、人口減少時代を迎えて外国人労働者の受け入れが必要になってきているという意見が強くなってきている状況にあるんだと思うんですね。こういう状況を踏まえて、大臣としてはどういう御所見をお持ちなのか、お聞かせいただけたらと思います。

長勢国務大臣 入管行政を預かる立場ではありますけれども、若干私の個人的な感覚を申し上げさせていただきますと、人口減少社会だから外国人労働者をという視点で物を考えるだけというのはいささかいかがかと思っております。

 まず、日本の経済力は日本人で守るのが基本であり、例えば高度な専門知識等々について国際社会の中でいろいろな方々に協力してもらうというか、来ていただいて一緒にやるということは必要でありますけれども、労働力そのものを他国に依存していこうという発想自体はいささかいかがかと思います。

 むしろ、今、若年の方々を典型的に言われておりますけれども、職業に対する意欲、意識というものが変わってきているんじゃないかということをどう考えるかということも含めて、人口減少社会における労働力の確保というのは考えなきゃいかぬ、私は基本的にはそう思っております。

 しかし、さはさりながら、現実にはどうも、すべてではありませんけれども、一部には、日本人がいないからではなくて、日本人は働かないから外国の労働者を雇いたいという方もおられる。また、そういう方々がいないと、仮にそこに、近場に日本人の失業者がおられても経営が成り立たない、来ないし働かないという人もおられるわけで、そういう実態も踏まえて考えるべきことは考えなきゃならぬかなとは思っております。

 この問題についていろいろ各方面で御議論があることは承知をいたしておりますが、受け入れをどうするこうするの前に、まず受け入れた場合、現在もある意味では研修・技能実習生等々、受け入れ制度があるわけで、その方々の入国、在留の管理の仕組みをきちんとするということが大前提で、それがあってこそ次の議論になるんだろう。それは、それなりにいろいろな議論を踏まえて結論を出していかなきゃならぬ時期かなというふうに思っております。

大串委員 もうちょっとクリアカットに私はお尋ねしていきたいんですけれども、思想あるいは物の考え方、社会に対する態度というのは、非常に重要な価値観みたいなものが反映される政策分野だと思うんですね。

 今、大臣は自分の考えも含めて申し上げればというふうにおっしゃいました。まず総体の御意見を聞かせていただきましたけれども、あれっと私が思ったのは、出入国管理基本計画の第三次のものの中には「人口減少時代への対応」という項目が一項きちっと立てられています。これは初めて「人口減少時代への対応」ということで一項新しく立てられた項目であります。三次の計画の中で初めてです。

 その中には、少子高齢化に伴う人口減少時代への対応は、少子化対策等とあわせて検討されるべき問題であるが、出入国管理行政としても、人口減少時代における外国人労働者受け入れのあり方を検討すべき時期に来ていると考えられるというふうに、今大臣がおっしゃったこととは全く逆のことがここに書かれています。さらに、これを踏まえて、先ほど専門分野の方々というふうなことをおっしゃいましたけれども、実は、この中には、その今の論を引っ張った上で、現在では専門的、技術的分野に該当するとは評価されていない分野における外国人労働者の受け入れについて着実に検討していくという方向まで打ち出されているんです。

 どうですか、大臣。大臣の物の考え方、どういうふうな検討をこれから法務省においてされていこうとされているのかということをきちんと知るためにも、今の大臣の御答弁とここに書かれていることはちょっと違うような気がするんですけれども、いかがでしょうか。

長勢国務大臣 今、そこに書かれておるようなことだけで議論するのはいかがかなということを申し上げたわけで、当然、人口減少社会になっていくことが社会の背景にあって、そのことが、私が先ほど申し上げた観点にも大きな影響を持っていることも事実でありますし、そのときに問題になるのが、検討するべきところは、高度専門分野についてはもう世界に冠たるオープンな国でありますから、検討する分野というのはそれ以外のところしかないわけで、それを検討しないとなったら何もしなくなるわけで、それを検討するということを書いてあるわけでありまして、そのときにどういう観点から議論していくかというのはいろいろな御意見があります。

 私が今申し上げましたようなことだけとは、私も自分の言ったことだけとは申し上げませんけれども、世間の議論では意外とそういう観点が抜けているんじゃないかなという気がいたしておりましたので、申し上げました。

七条委員長 大串君、時間が過ぎておりますから。

大串委員 大臣の御意見は今の発言の中でよくわかりました。ですから、そういう御意見も踏まえた上で、私、ちょっと全部きょうは聞き切れませんでしたけれども、先ほどおっしゃいました外国人労働者の問題というのは他省庁も非常に大きく含む、技術的な問題だけじゃなくて、かつ、思想的、社会的なことも含む大きな問題ですよね。そういうふうなことを検討する体制が政府としてできているのかという点も含めて、今後また一般質疑の中で議論をさせていただきたいというふうに思います。

 ありがとうございました。

七条委員長 次に、保坂展人君。

保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。

 長勢大臣にまず一般論でお聞きをしていきたいんですが、このところ、規範意識だとか道徳心ということをめぐって、衆議院の教育三法をめぐる特別委員会で議論をしています。

 タクシーに乗られることはあると思うんですけれども、例えば、羽田空港でタクシーに乗った、いろいろ電話がかかってきて電話をしていた、お金を払っておりた、そうこうやっているうちにその電話を忘れてしまったというお客さんがいて、そのことに運転手さんが気づいて、お客さんを追いかけて、お客さん、忘れていますよとお渡しをする、あるいはタクシーに乗る方で障害を持っている方がいらっしゃいますよね、では、どこまで来てくれというときに、ちょっと悪いけれどもそこの入り口のところまで手をかしてくれませんかといって、一種、障害を持っている方を介助して、運転手さんがそちらに行かれるというようなことを大臣はどう思われますか。

長勢国務大臣 非常に日本人らしい優しい心根だと思います。

保坂(展)委員 いや、ところが、この二つのケースとも、羽田空港で、お客さん、ありがとう運転手さんといって受け取って、いい気持ちでタクシーに帰ってきたら、デジカメで撮られていた。いわゆる駐車違反ですね。ということで、ここは取り締まりの対象になる。

 それから、やはり身体に障害のある方を入り口まで介助して、いわば送り届けるというときにも、また撮影をされて、これは違反ということになっているというような件で、実は、昨年、この委員会でも、この制度が導入されることについて懸念を幾つか述べてきたんですが、きょう、警察庁に来ていただいていますので、いわゆる違反として挙げられた車両がこの一年間ぐらいで、昨年六月から始まっていますね、例えばこの間、全国でどのぐらいなのか、そのうち、例えば、タクシーが占める割合などはわかりますか。

矢代政府参考人 申し上げます。

 新制度施行の昨年六月からことし三月までのこれは十カ月間ということになりますが、全国の放置車両確認標章取りつけ件数、総数が二百三十万八千四百八十九件でございまして、一日当たりにしますと、約七千六百件でございます。

 それから、新制度施行後におきます放置車両確認標章取りつけ件数のうち、タクシーに係るものですが、これは営業用の普通乗用車ということで把握しますと、ハイヤーなども入りますが、おおむねタクシーということで見ていきますと、七千九百六十二件でございます。

保坂(展)委員 今のようなケース、法務大臣にちょっと考えていただいたようなケースについて、弁明ができるというんですけれども、この弁明が認められる場合、これは取り締まりに値しないなという場合は、どういう場合があるんでしょうか。

矢代政府参考人 申し上げます。

 これは、弁明と申しますのは、確認標章を取りつけた後で、放置違反金の納付命令を行うわけでございますが、それに先立って、弁明の申し立ての文書を送ってもらうということになりますが、一つには、放置駐車違反に係る何らかの事実誤認によりまして放置違反自体が成立しない場合でございまして、これは例えば駐車禁止の除外車両であったということで、駐車できるということであります。そういうものがございます。

 それからもう一つは、車の実質的な使用者でなかったということでございまして、車の売買により持ち主がかわったのに、まだ変更届をしていないような場合がありまして、そうしますと、違反日時におきましてはその車両の名義人が既に実質の使用者でなくなっていたというようなことで、これは最も多いケースでございまして、あと、似たようなものでは、盗難車であったものでございます。

 それから三つ目が、不可抗力によるなど、その放置駐車違反を使用者の責めに帰すことが社会的に見て相当性を欠くということで、これはケースはごく少ないと思いますが、私ども承知しておりますのは、運転者が運転中に体調不良となり、車両を放置して救急車で病院に運ばれた、そのまま入院してしまったというような事例でございます。

保坂(展)委員 今ちょっと長い答弁がありましたけれども、私が指摘したようなケースというのは、運転者がぐあいが悪くなってではなくて、ぐあいが悪くなった人がタクシーに乗って、タクシーの中でさらに余り容体がよくなくて、運転手さん、ちょっと肩をかしてくださいといって、ではマンションの何階かまで行ったというときに、ぱちっとやられた。これが除外できないということはとてもおかしいんじゃないかという議論を、実は警察庁ともこの間ちょっとしているんですね。

 そういった指摘の中で、これまで、障害を持っている方が、その運転をする車両に与えられていた標識ですか、これを障害を持っている方が自分で携行できる、自分で持てるというふうになったそうです。

 ですから、こういうことですよ。要するに、障害のある人を乗せていますよということを、タクシーにその札を張っておけば、肩をかしてマンションの出口までお届けをしても大丈夫。そのときに、家の人が一緒に、運転手さんありがとうございますねと来て、標識をその方に返せば、それでいいわけですね。そうですね、警察庁。ところで、家の人がだれもいなかったという場合はどうなるかというと、家の人がだれもいないと、運転手さんがそれを持ってまた届けに行かないといけないわけです。

 これはどうですかね、法務大臣。美しい国を目指している内閣ですけれども、日本人の美徳というか助け合いなり、特に、これは高齢化社会の中で、障害のある方などに手をかしたり肩をかすということは、合理的な理由として、今後考えてみたらどうかと思いますよ。いかがですか。これは規範意識とか法秩序以前の問題かなと思います。

長勢国務大臣 おっしゃるとおりだと思いますね。

 最近、自分だけいいとか、もうかればいいというやつばかりになって、日本人らしい美しさが失われてきたことが今言ったような制度を生んでいるのかなとさえ思うくらいでございまして、やはりそういう人を思いやる心を大事にする社会にしたいものだと思います。

保坂(展)委員 法務大臣の非常にわかりやすい答弁をいただいたと思います。

 警察庁、例えば子ども一一〇番とかやっているんですね、タクシーでも。いわゆる、いろいろな不審者が、声かけ事案とかがあって、やはり警察官だけでは目が届かないというときに、例えばタクシーのドライバーが、これはちょっと危ないなとタクシーをおりて、ちょっと、何やっているんですかといって注意をして、子供からその人は去って保護するというようなことを後で報告する、そういう役割を果たしたとしますね。それでも民間監視員は撮っちゃうんですね、わからないから。ガイドラインがないんですね。これは、今の法務大臣の答弁を受けて、よく相談してもらえませんか。

矢代政府参考人 申し上げます。

 手順といたしましては、放置違反金納付命令を出す前に弁明書を出してもらうわけですが、これは、実は、放置違反金の納付命令などは、行政手続法でいきますと、事前手続の要らないものでございまして、それで、納付命令をした後で、異論があれば申し立てを受けられることでございます。

 したがいまして、納付命令をするに当たりまして、さっき申し上げましたような事実誤認、それから、名義人が違っておったというか、明らかな、これを排除せぬといかぬ、そういうものについて、事務の適正を期すために、その段階でやっているものでございます。

 したがいまして、その後、放置違反金納付命令を課して、実際取るかどうかというときに、その判断になりますと、それは……

七条委員長 矢代局長、大臣の答弁を受けてということですから。

矢代政府参考人 ということでございます。

保坂(展)委員 法務大臣は、まさに社会的な常識の範囲、例えば、この制度で取り締まりを受けた車両の中で、霊柩車はないということなんですね。霊柩車はさすがにないんですね。

 例えば、交通事故が目の前であって、ちょっと笑い事じゃない、要するに、かなりけがをしたり、危ない状態でひっくり返った自転車のおばあさんか何かを見た。そうしたら、救護をしますよね。これをやっているうち、いろいろ電話したり何だというとき、これを違反にするというのは、通常、社会通念上あり得ないことなんですね。

 ですから、私は、羽田空港で、お客さんの携帯があったけれども、これを持って走っていくと、十メートル以上、十五メートル走るとデジカメでやられるなというような社会をつくっちゃいけないんじゃないかと思うんですね。

 今、警察庁は、手続の中でいろいろ異議申し立てできますよということをおっしゃいました。ただ、大変らしいんですね、実際に警察署に何回も行ったりして。ですから、お客さん、忘れ物というふうに渡したり、障害を持っている方に肩をかしたりということが、民間監視員の現場レベルで、それこそいい社会にしていくためにお互い助け合うという気風を育てようじゃないかということを、ちょっと大臣から、少し警察庁と相談してください。

長勢国務大臣 所管外でございますけれども、おっしゃっておられることはよく理解できることであります。

 具体的にどういうふうなやり方があるのかは、それはもう警察庁に考えてもらうしかありません。そういうことで、なるべく優しい世の中にしていくのがいいことだと思います。

矢代政府参考人 警察も、優しい社会を目指し、それを支えている立場でございます。

 したがいまして、その御趣旨のところは、私ども十分にわかるわけでございますが、ただ、それがどのようにできるかにつきましては……(保坂(展)委員「それ以降はいい。相談してください」と呼ぶ)はい。それはまた、御意見をちょうだいしたということにしたいと思います。

保坂(展)委員 では、ぜひ実のある話し合いをして、障害を持っている方、急病人の方をタクシードライバーが心置きなく助けることができるというふうにしていただきたいと思います。

 次に、ちょっと最高裁の経理局長に来ていただきましたが、私、実は民事裁判を十六年やったという経験がございまして、知る人ぞ知るなんですが、内申書裁判という裁判をやりました。

 そちらの代理人の方から、東京高裁の裁判長をされた石川義夫さんという方が、「思い出すまま」という本をれんが書房新社というところから出されているという話を聞きまして、最近取り寄せて読んでみたところ、非常におもしろかったのは、これは、判決、私は負けたんですね、見事に。負けまして、その後、激励の声が相次いだ、その激励の声はというと、年長者、戦中派の人たちからだった、娘さんとか娘婿さんからは、生徒が生徒の内申書の中身についてきちっと知る権利というのはやはりあるべきじゃないかという声があり、報道なども、ちょっと判決を批判するようなトーンのものもあって、いろいろ考えたと書いてあるんですね。ジェネレーションギャップの大きさに驚いて、自分がいずれ去るべき老兵なのかなということを実感させられたと。これを読んで、法廷では決してあり得ない、二十数年前の裁判長の印象を思い浮かべていたんです。

 この本の中で、ちょっとそういう裁判官の人間的な面みたいなことを感じたんですけれども、このところ、二月から、裁判所の予算執行についてお尋ねをしていましたけれども、いわゆる裏金というようなものが、裁判所には、かつてもなかったし、今もないということでよろしいんでしょうかね。

小池最高裁判所長官代理者 突然のお尋ねでございまして、昔のことは何とも承知いたしませんが、現時点でそういうことはないということは誓って申し上げられます。

保坂(展)委員 これは、昭和三十七年、一九六二年に、この石川義夫さんは、最高裁の経理局主計課長、今もいらっしゃいます、元ですかね、主計課長ですか、されたんですね。経理局時代という思い出が書いてあるんですよ。

 当時の経理局長は栗本一夫さん、これは最高裁判事にその後なられる方です。石川君、ちょいとつき合え、銀座の某クラブ、三原橋のすし屋などで放歌高吟するという毎日で、そのツケは主計課に回ってくるのである、ツケは会議費ということで処理されたが、私も国民の血税がそのように無駄遣いされるのに耐えられず、先輩の矢口元課長に相談した、そのような経理局長室での習慣は矢口氏の経理局課長時代に始まっていたと思ったからだと書いてあるんですね。矢口氏は、自分の営繕課長時代に大幅な営繕費の増額があって、予算は十分あるから心配するなということであったと。

 この矢口さんというのは御高名な方だという記憶があるんですが、どういう方ですか。

小池最高裁判所長官代理者 これも突然のお尋ねでございますが、かつて営繕課長をやった裁判官ということになりますと、その後、最高裁の長官をしました矢口洪一であろうと考えます。

保坂(展)委員 この矢口洪一さんは、昨年、惜しくも亡くなられたということですけれども、裁判官生活の三分の二を背広で過ごし、最高裁の七局中五局までを経験、いわばミスター最高裁というふうに言っていい方だと思います。

 さらに思い出の回顧録は続いて、経理局の人間が大蔵省主計局の予算担当の主計官、主査、事務官のもてなしをするのはしばしば、事務総長以下の総局幹部が大蔵省主計局幹部や自民党法務部会の会員など国会関係者をもてなす場があった、築地の一流料亭から銀座のキャバレーなど各所に及んだ、こう書いてありますね。かなり前ですね、かなり前。

 感想はどうですか、経理局長。

小池最高裁判所長官代理者 私、その本もまだ拝読いたしておりませんので、今そのお話が事実かどうかもわかりませんが、そういうことがあったなら、それは何とも今の価値の尺度からいえばまことに遺憾なことであると考える次第でございます。

保坂(展)委員 もう一点、二百十四ページに、かなり経理局が長くて、今の最高裁の建物を建てるのにも非常に活躍されたそうですね、石川さんは。そして、経理局の勤務を、最高裁の建物を建てる大事業もやって、山形地裁の所長になります。これは昭和五十年ですね。そのときの思い出があるんですね。これをちょっと御紹介します。

 さらにある日、地裁事務局長が一冊の大学ノートを抱えて私の前にあらわれた、そのノートは職員の空出張によって蓄えた裏金の出納を記載したもので、それに私の承認印を求めたのである、びっくりして、すぐに事務局長に対し、即時そのノートを焼却すること、その金は君を信用して君に任せるから、私の承認をとるに及ばない、今後空出張はできる限りさせないこと、各方面との交際はできるだけ地味にすること、今後毎月自分のポケットから交際費に充てるため金一万円を拠出する旨を伝えた。そういう、焼却しろというあたりですかね。

 その後があります。各省庁の出先や弁護士会、調停協会などとの交際に裏金で補っていたのは事務局長の立場からはやむを得なかったんだろう、月一万円も焼け石に水だったかもしれないが、野方図な裏金づくりにブレーキをかける効き目はあったのではなかろうか、こうあるんですね。

 いつごろまでこういったことが続いていたんでしょうか。どうでしょう。

小池最高裁判所長官代理者 突然のお尋ねでございますので、正確なことは申し上げられませんが、私も裁判所に身を置いておりまして、今から十数年前、いわゆる旅費問題というものが裁判所にございました。今委員御指摘のような、出張をしていないのに出張命令の判を押して、そのお金を今おっしゃったようなものに使ったのかもしれません。私、詳しくは存じませんが。

 ただ、それは各所でも大変指弾をされて、それは裁判所、そのときにすべてこの問題は是正して、以後はそういうことは一切ない、現時点においてもないということでございます。

保坂(展)委員 私は、ことしの予算委員会からこの法務委員会にかけて、広報費の問題をずっとお聞きしました。少なくとも最高裁判所については、厳格な上にも厳格にやっているに違いないというふうに非常に信頼をしていましたので、極めて意外だったり、契約の内容はおかしいんじゃないかということをるる申し上げました。

 もう時間がありませんけれども、株式会社電通に対して、契約が第三者丸投げじゃなかったのかということで、地域力活性化研究室、こちらの方が電通からさらに仕事をとっている状態であるということについて、四月十日付で株式会社電通からお答え状というのが来たということで、もらいました。

 これによると、株式会社電通と地活研の協力を得てイベント運営に必要な実務作業を行っていますが、この作業について弊社と地活研は連合会事務局の一部として機能していますので、契約書に違反する第三者への委託、下請には該当しないというふうに書いてあるんですけれども、契約を結んでいるのは株式会社電通であって、細かく指摘しませんが、非常に苦心されてつくられた文章だと思いますが、私はちょっといろいろ矛盾を感じております。最高裁としては、これでいいと思っているのか。

 これは二年目の平成十八年度ですかね、こちらの予算執行については、この内容も含めて、今請求書は来ているのか、そのとおり払うのか、その点について伺います。

小池最高裁判所長官代理者 裁判所といたしましては、裁判所と電通とで請負契約を結びましたが、それの成果物は適正に納められているということで、請負債務は履行されている、こう考えております。

 そういう前提に立って、私どもも四月十日付で電通から契約金額と同額の請求書を受け取りました。それを受けまして、請求金額どおり、四月十七日に支払い手続を結了しまして、支払いを終えた次第でございます。

保坂(展)委員 ということは、その請求書並びにそういった内訳の書類も提出をしていただきたいし、この言い分を了としたということで確認してよろしいですか。

小池最高裁判所長官代理者 まず、この回答書は、電通と地活研それから連合会事務局とのいわば三者の関係のところに触れているものでございます。そこは三者の内容、中身のことでございますので、そこはそういう事実として承る。

 私ども、請負契約は裁判所と電通とで結んでおりまして、電通が、連合会及びそれに実際関与しました地活研とかそういうところと協力して事業をなし、債務を履行したということで、私どもとしては、裁判所と電通との契約関係においては、きちんと債務が履行されたので、それをもって私どもは、これは適正な支払いが可能であるという判断に立って支払いの手続に入ったということでございます。

保坂(展)委員 きょうは、私にも思い出深い石川元裁判長の本を引いてお話をいろいろ聞いたというのは、この中で、最高裁長官まで務められた矢口さんが、私が営繕費をふやしたんだ、だから大丈夫だ、こういう仕切りを、非常に古い話ですけれども、当時はされていたということと、それから、今回、裁判員制度広報費、二年間、翌年度も含めて二十七億円、一年目は二億円余っている、二年目は一億三千万円余っている、しかしそれは、ある程度は国庫に返納したけれども、ある程度は目の中で流用した、こういう話なんです。

 裁判所の経理というのは、私が信じていたほどどうも厳密ではなかったし、いや、かつてはもっといわば幅広で、今は厳密になってきているのかどうなのか、そのあたりが連続線上にあるのかないのかということを知りたいんですよ。これは古い本ですけれども、一体どういうことだったのか、一度しっかり検証していただいて、そこはもうここの段階で断ち切れている、先ほど裏金の問題をちょっと言われましたけれども、検証していただけませんか。

小池最高裁判所長官代理者 委員御指摘の石川義夫氏が書かれている事柄というのは、恐らく昭和三十五年前後のことでございましょうから、今それを検証するよすがというのはなかなかないかと思います。ただ、今委員がお持ちの本は、私も今後拝読させていただきまして、考えなきゃいけない事柄かどうか検討したいと思います。

 それから、現時点、広報予算の関係につきましては、多数回にわたりまして御質問をちょうだいいたしましたが、私どもとしましては、執行差額というものは目という中で運用しておりますので、それは財政法上許された事柄であると思っております。

 委員御指摘の会議費云々の問題は、これは御指摘をまつまでもなく、事実ならば、適正なことであるとは思われません。ただ、その点につきましては、先ほど申し上げましたように、雑駁な記憶で申しわけありませんが、裁判所にとっては非常に衝撃的な出来事であった旅費問題、その機会に大変な見直しをいたしまして、それ以後、そういうことは、手前勝手な言い方ですが、裁判所らしい潔癖さを持ってそこのところは見直したと私は考えております。

保坂(展)委員 答弁は要りませんけれども、私はことしも予算委員会でいろいろ、与党からもこれはおかしいじゃないかという声が出ましたけれども、十四億円ついているんですね。それについても、過去と同じように、幾ら使ったのか使わないのか、余った分はどこに行っちゃったのかどうなのか、予算の構成上わからない状態ですと聞いているんですよ。やはり、それはまずい。それこそ、血税ですよね、その血税を、幾ら余したのか、国庫にどれだけ返納したのか、どの項目にどういうふうに流用したのか、しっかり委員会で答えられるようにことしはやってください。それを強く委員長にも要望したい。

小池最高裁判所長官代理者 委員の御指摘を踏まえまして、従来答弁しておりましたのは、予算の仕組みからして、余ったお金はその目の中に、大きな財布に戻りますので、一対一での対応を詳細に申し上げることはできないと申し上げました。ただ、いわば大数観察的にそれがどういうふうに動いたという、それはアバウトな話かもしれませんが、そういうものをこういった場で御説明を求められましたときには、私どももわかりやすい形で御説明できるような努力をしてまいりたいと存じます。

保坂(展)委員 終わります。ありがとうございました。

七条委員長 次回は、来る十六日水曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時四十三分散会


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