衆議院

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第19号 平成19年5月23日(水曜日)

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平成十九年五月二十三日(水曜日)

    午前九時三十七分開議

 出席委員

   委員長 七条  明君

   理事 上川 陽子君 理事 倉田 雅年君

   理事 武田 良太君 理事 棚橋 泰文君

   理事 早川 忠孝君 理事 高山 智司君

   理事 平岡 秀夫君 理事 大口 善徳君

      赤池 誠章君    稲田 朋美君

      今村 雅弘君    近江屋信広君

      奥野 信亮君    後藤田正純君

      笹川  堯君    清水鴻一郎君

      柴山 昌彦君    杉田 元司君

      鈴木 淳司君    三ッ林隆志君

      武藤 容治君    森山 眞弓君

      矢野 隆司君    保岡 興治君

      柳本 卓治君    山口 俊一君

      石関 貴史君    大串 博志君

      河村たかし君    中井  洽君

      横山 北斗君    神崎 武法君

      保坂 展人君    滝   実君

    …………………………………

   法務大臣         長勢 甚遠君

   法務大臣政務官      奥野 信亮君

   最高裁判所事務総局刑事局長            小川 正持君

   政府参考人

   (内閣府犯罪被害者等施策推進室長)        荒木 二郎君

   政府参考人

   (警察庁長官官房長)   安藤 隆春君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  片桐  裕君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    縄田  修君

   政府参考人

   (警察庁刑事局組織犯罪対策部長)         米田  壯君

   政府参考人

   (警察庁情報通信局長)  松田 正一君

   政府参考人

   (総務省情報通信政策局長)            鈴木 康雄君

   政府参考人

   (法務省大臣官房長)   池上 政幸君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          菊池 洋一君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    寺田 逸郎君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    小津 博司君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    梶木  壽君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    藤田 昇三君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  稲見 敏夫君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 佐渡島志郎君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           草野 隆彦君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           白石 順一君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長) 岡崎 淳一君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           立岡 恒良君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           小山 亮一君

   法務委員会専門員     小菅 修一君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十三日

 辞任         補欠選任

  杉浦 正健君     鈴木 淳司君

同日

 辞任         補欠選任

  鈴木 淳司君     杉田 元司君

同日

 辞任         補欠選任

  杉田 元司君     杉浦 正健君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案(内閣提出第七七号)

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

七条委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房長安藤隆春君、警察庁生活安全局長片桐裕君、警察庁刑事局長縄田修君、警察庁刑事局組織犯罪対策部長米田壯君、警察庁情報通信局長松田正一君、総務省情報通信政策局長鈴木康雄君、法務省大臣官房長池上政幸君、法務省大臣官房司法法制部長菊池洋一君、法務省刑事局長小津博司君、法務省矯正局長梶木壽君、法務省保護局長藤田昇三君、法務省入国管理局長稲見敏夫君、外務省大臣官房審議官佐渡島志郎君、厚生労働省大臣官房審議官草野隆彦君、厚生労働省大臣官房審議官白石順一君、厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長岡崎淳一君、経済産業省大臣官房審議官立岡恒良君、国土交通省大臣官房審議官小山亮一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

七条委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

七条委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。神崎武法君。

神崎委員 初めに、法テラスと国選弁護報酬等の問題につきまして、お尋ねをいたしたいと思います。

 昨年十月から法テラスが開始されました。コールセンターへの相談件数は当初予定の三割にとどまっておりまして、この制度の周知徹底が必要であるということを、さきに私がお尋ねしたときにも促したところでございますが、引き続き、関係当局の御努力をお願いいたしたいと思います。

 最近、法テラスに携わっている弁護士の皆さん、また、日本弁護士連合会の幹部の皆様と意見交換をする機会がございました。さまざまな要望をいただいておりますので、ぜひ、実現できるように、関係当局の皆さんにも御努力をいただきたいと思うわけであります。

 一つは、法テラスが利用者に明確な情報を提供できる体制を確立することが大事だという御意見でございまして、コールセンター法律アドバイザー、コールセンター内テレホンガイドの実施等、また、法テラスと弁護士会との連携の強化が必要だ、こういう御要望をいただきました。法務当局は、この御意見について、どういうふうにお考えでしょうか。

菊池政府参考人 日本司法支援センター、法テラスが、利用者の期待にこたえて、より多くの国民に利用される存在になるためには、利用者のニーズにこたえて、常に業務改善に向けた努力を怠らないということが大切であるというふうに考えております。

 ただいま委員からコールセンター法律アドバイザーなどの御指摘がございましたが、国民に最も身近な業務である情報提供業務におきましては、法的に正確な情報をできればその場で提供する、そういう体制をとることが必要であるというふうに私どもも認識しております。

 私ども法務省といたしましては、司法支援センターに対しまして中期目標というものをお示しいたしておりまして、その中で、情報提供業務をよりよいものにするために、情報提供の質、量の向上を図ること、また、日本弁護士連合会を初めとする、ほかにも日本司法書士会連合会等がございますけれども、関係機関との連携強化を図るといったようなことを定めているところでございます。

 法テラスにおきましては、情報提供業務を行っておりますオペレーターに対しまして研修を実施したり、あるいは、よくある質問と回答を集めたものや関係機関のデータベースなどを適宜見直すなどして、常に充実したものになるように情報の質の向上を図っているところでございます。

 また、オペレーターの法的な知識を補うという観点から、日弁連の御協力もいただきまして、コールセンターの中に弁護士を配置して、法的な情報の面で正確を期すという観点から、オペレーターの情報提供を支援するなど、さまざまな工夫を試みているというふうにお聞きをしております。

 法テラスは、業務を開始して七カ月ぐらいたちましたが、今後とも利用者のニーズに合うような業務運営をするように努めていくものと思いますし、法務省としてもそのような活動を支援してまいりたい、また、PRが足りないのではないかと委員から冒頭に御指摘がございましたが、法テラスにおきましても、また私どもにおきましても、地元に根差した周知徹底活動をさらに進めていきたいというふうに考えているところでございます。

神崎委員 法テラスにおきます情報提供体制の強化について、引き続き努力をお願いいたしたいと思います。

 それから次に、同じくこの法テラスの問題で、スタッフ弁護士の確保の問題でございますが、二〇〇九年までにスタッフ弁護士三百人体制を実現したい、日弁連の要請でございます。スタッフ弁護士のサポート体制も充実したい、スタッフ弁護士の処遇、執務環境の改善が必要だ、こういう要望を持っているところでございますが、この点について、法務当局、どのようにお考えになっているでしょうか。

菊池政府参考人 法テラスに常勤する弁護士、いわゆるスタッフ弁護士につきましては、司法過疎対策業務、民事法律扶助業務、国選弁護関連業務など、法テラスのさまざまな業務を円滑に行う上で、その充実ということが重要な課題になっているというふうに私どもも考えております。

 特に、国選弁護関係につきましては、平成二十一年から被疑者国選弁護の対象事件が拡大いたしますし、同時に裁判員裁判も開始されますので、これらに対応するためには、一般の契約弁護士の確保とともに、常勤弁護士の、スタッフ弁護士でございますが、さらなる確保が極めて重要であるというふうに考えております。

 法テラスにおきましては、日弁連や各地の単位弁護士会などの御協力をいただきまして常勤弁護士の採用活動を進めているところでございますが、それにあわせまして、常勤弁護士を確保するためのさまざまな方策を検討しているところでございまして、常勤弁護士の職務が魅力のあるものになるように、例えば、常勤弁護士の実力を養うためのサポートとして、適切な研修計画を立てて充実した研修を実施するとか、あるいは常勤弁護士の事務の効率化により事務処理の負担を軽減するといったような、執務環境の整備などを含めまして、いろいろ工夫を検討しているというふうにお聞きをしております。

 日弁連も、お聞きしているところでは、常勤弁護士を三百人にするために非常に努力をしていただいているということでございます。法テラスにおきましても、日弁連などの御協力をいただきながら、法テラスの業務の円滑な実施に必要な常勤弁護士の計画的な確保に努めているところでございます。

 法務省といたしましても、法テラスあるいは日弁連とも御協力をしながら、制度の趣旨をPRするなどして、常勤弁護士のさらなる確保に向けて協力をしてまいりたい、このように考えているところでございます。

神崎委員 新司法試験によりまして合格者もふえてまいりましたし、これから弁護士の数もふえてまいると思いますので、その意味でも、そういった新進気鋭の弁護士をこの法テラスのスタッフ弁護士として活用するんだということで、これから環境が整ってくると思いますので、ぜひ、スタッフ弁護士の充実等、環境整備に引き続き御努力をいただきたいと思います。

 次に、国選弁護報酬等の問題でありますけれども、現行の国選弁護報酬体系では支払いがなされていない費用、例えば、謄写費用が全額支払われないとか、私的鑑定費用が支払われないとか、調査費用が支払われないなどがありまして、超過費用は現実に弁護士の持ち出しになっているのが実情でございます。また、特別成果加算報酬がないなど、報酬関係にも問題点があります。

 これから裁判員制度が導入されますと、やはり一方の当事者としての弁護士の活動は大変重要になってくるわけでございます。その意味でも、国選弁護人の報酬の増額を当局としても中長期的に考えていくべきである、このように思いますけれども、いかがでしょうか。これは、大臣、よろしいでしょうか。

奥野大臣政務官 大臣が来たばかりで、まだ準備中でございますので、私から答弁させていただきます。

 国選弁護人に対する報酬及び費用については、平成十八年十月から、日本司法支援センターが定めた、国選弁護人に対する報酬及び費用の算定基準というものに基づいて算定しているところでありますが、この基準に対して、報酬、費用の増額を求める声がたくさんあるということは承知しております。

 この算定基準は、日本弁護士連合会ともいろいろと調整、協議した上で司法支援センターが作成したものでありまして、法務大臣が認可した後で財務大臣との調整を経て決定、認可されるというものでございます。もとより、司法支援センター、法テラスが実際に業務を遂行していく中で、国選弁護制度の運用の実態というのが、当初予想できなかったようなこともあり得ると思います。そういう意味で、報酬及び費用の算定基準を変更する必要性が生じるということもあり得るのではないかと思います。

 法務省としては、その変更の必要性について、国選弁護関連業務の適正な遂行を図る観点から、法テラスにおける検討に必要な支援をしてまいりたいという所存でございます。

神崎委員 ぜひ、実情を十分把握していただきまして、日弁連ともよく連携をとって、今後とも国選弁護というのが充実できますように御努力をいただきたいと思います。

 次に、取り調べの可視化についてお尋ねをいたします。

 二年後に裁判員制度が導入されますが、これからの大きな課題は二つあると私は思います。一つは、迅速な裁判をどのように実現するか。そういう角度からまた、部分判決にしても、さまざまな試みが行われているわけでございます。もう一つは、自白の任意性、これをどのように判断するのかという問題です。

 今までは、専門家同士で精密司法と言われるような議論が行われ、その中で裁判官も判断をしていたわけですけれども、これからは、いわゆる国民の皆さん、一般の素人が参加するわけです。その方々が、自白の任意性が本当にあるかどうかという判断もしなければならない。そうなりますと、検察側としてはそういう方々にもわかるような形で立証せざるを得なくなるだろう。

 その意味では、取り調べの可視化の問題というのは、裁判員制度の導入を前提に考えますと、これは検討を避けて通れない課題ではないか、このように私は思うわけでございます。私も昔検事をやったことがありますので、なかなかこの可視化の問題というのは捜査当局にとりまして悩ましい問題だと率直に思いますけれども、これまでのようにはいかなくなってくるんじゃないかな、こういう印象も持っております。

 取り調べの可視化以外の方法で自白の任意性を確保する手段として一体どういうものがあるのか。裁判員に判断してもらうのに、従来のように検察官等捜査関係者を証人として申請する、それで十分なのかどうか。法務・検察当局として、取り調べの可視化について総合的に検討しているということでございますけれども、可視化を入れないとするならばどういう他の手段があるというふうにお考えになっているのか、そういう点も含めて、総合的に御見解を伺いたいと思います。

小津政府参考人 被疑者の取り調べが適正を欠くものであってはならないということは当然でございまして、従来から検察当局におきましては、被疑者の人権の保障に十分留意して取り調べの適正さを確保するように努めているものと承知しているわけでございます。

 それでは、適正を図るための方策でございますが、この点につきましては、司法制度改革審議会におきましてもさまざまな角度から御議論がございまして、その中で、司法制度改革審議会の最終意見書におきまして、取り調べ過程、状況について、取り調べの都度、書面による記録を義務づける制度を導入すべきであるという御提言があったわけでございます。これを受けまして、平成十六年の四月から、身柄拘束中の被疑者、被告人の取り調べ過程、状況を記録するという制度が開始され、これを運用しているわけでございます。

 また、これは別の切り口でございますが、同じく司法制度改革審議会の御意見を受けまして、平成十八年十月からは、被疑者国選弁護制度が開始され、被疑者段階から国選弁護人の援助を受ける道が大きく開かれておりまして、このような制度の運用によって、取り調べの適正さが一層担保されることになるのではないかと考えておるわけでございます。

 また、特に裁判員制度ということを考えますと、自白の任意性をできるだけわかりやすく、迅速に立証するということが極めて重要でございます。検察当局におきましては、公判前整理手続の活用によりまして、具体的に争点を絞り込んだ上で、ただいま申し上げました取り調べ状況報告書等々の資料を積極的に活用したり、証人尋問、被告人質問等を的確に行うという方策を尽くすものと承知しております。

 また、検察当局におきましては、まさに委員御指摘のような問題意識から、任意性についても検察官が立証責任を負うわけでございますので、その判断と責任において、裁判員裁判対象事件のうち、被告人の自白の任意性を迅速かつ効果的に立証するために必要性が認められる事件につきまして、取り調べの機能を損なわない範囲内で相当と判断された部分の録音、録画を試行しているところであると承知しているところでございます。

神崎委員 外国では、取り調べを録音、録画する国もあれば、弁護人の立ち会いを認める国もあると言われておりますけれども、取り調べ状況を第三者がチェックできるようにする、これはもう世界の潮流じゃないか、こういう指摘もありますけれども、法務当局としては、こういった外国での動きというものをどういうふうに認識しておられるのでしょうか。

小津政府参考人 被疑者の取り調べが適正でなければいけないということは、これはもう各国共通の認識であると思います。したがいまして、被疑者の取り調べの適正さを何らかの方法によって確保する制度を有する国は少なくないわけでございます。その中には、取り調べの録音、録画や弁護人の立ち会いを義務づける制度もございますが、その内容もさまざまでございます。先ほど申し上げました我が国の取り調べ状況の記録制度も、同様な目的に基づくものであるわけでございます。

 なお、各国の刑事司法の制度、まさに全体としてさまざまでございまして、例えば、重大事件でありましても短時間しか取り調べを行わない一方、取り調べ以外の強力な捜査手段を有している国があるわけでございます。我が国におきましては、刑事司法において被疑者の取り調べが、事案の真相を解明するために不可欠な捜査手段として極めて重要な役目を果たしておるわけでございますので、諸外国と我が国とを比較いたします場合に、そのような観点も含めて、刑事手続全体について十分調査し検討していく必要があるのではないかと認識しております。

神崎委員 我が党の富田議員が、昨年六月十九日に、取り調べの録音、録画を実施しております韓国のソウル南部地方検察庁を視察いたしております。それによりますと、映像録画の手続の流れは、部屋に入る前に録画室であることを説明し、入室と同時に録画を開始する、録画に同意する意思の確認、それから陳述拒否権、弁護人選任権を告知する、調査開始時間の確認、調査、調査終了時間の確認、終了直後CDを二枚出力確認、専用の封筒に入れて封印する、こういう手続で行われていて、同地検では、二〇〇五年に映像録画調査を行った事件数は千二百九十五件、うち起訴した事件七百七十九件で、すべての録画映像を証拠として裁判所に提出しているということでございまして、スムーズに可視化の問題についての回答が得られているわけでございますけれども、法務・検察当局として、こういった他国の録音、録画等の取り調べの実情等を調査されたことがあるでしょうか。

小津政府参考人 法務省におきましては、これまでにも、欧米諸国あるいは韓国などの実情につきまして情報を収集してきているところでございまして、また今後とも、それらの実情について調査、検討を進めてまいりたいと考えているところでございます。

 その際、私どもが調査を進める観点につきましては、先ほど申し上げましたように、取り調べの録音、録画制度そのものだけではなくて、刑事司法制度全体の中でそれがどのような位置づけであるのか、あるいはより広く、例えば、どの程度の証拠があれば起訴していて有罪になっているのであろうかとか、取り調べの事実解明機能にどの程度の期待がされているのか等々につきましても、幅広い観点からの調査をいたしたいと思っているところでございます。

 委員御指摘の韓国における実情につきましても、私ども、これまで運用の実情につきましてそれなりの情報は得ておりますけれども、引き続き、お隣の国でもございますので、十分調査、検討してまいりたいと思っているところでございます。

神崎委員 各国の実情というものも十分把握をしていただきたいと思います。

 二年後に裁判員制度がいよいよ動き出すわけでございますが、それまでに取り調べの可視化の問題についても決着をつける必要があるというふうに考えます。余り時間がないと思いますけれども、法務・検察当局としてはいつまでに結論を出す予定なのか、大臣にお伺いをいたしたいと思います。

長勢国務大臣 裁判員制度の実施に当たっては、法曹専門家ではない裁判員の方々が適正な判断を行えるような仕組みをきちんとすることが大事であるということは御指摘のとおりだろうと思いますし、その観点から、この問題も今法曹三者で協議会を設けて議論をしておるところと承知をいたしております。

 自白の任意性というふうなことが大変大事な問題であると同時に、犯罪を犯した人が逃れられるということでも困りますし、また、犯罪を犯していない者が犯罪に追い込まれるというのも困るというところをどうするのかなというのは、専門家でない私としても非常に気にかかるところで、総合的な観点から、外国は外国でそれぞれ社会情勢も違いますから、それをそのまま日本でいいというわけにもなかなかいかないだろうと思いますし、きちんとした議論をしていただきたいなというのが率直な思いでございます。

 この問題については、国会での附帯決議もあるところでもございますので、裁判員制度があと二年で施行されるということを踏まえて、それを念頭に置いて検討を進めていただきたいというふうに考えております。

神崎委員 裁判員制度が施行される前に、自白の任意性を確保する手段について十分検討いただいて、取り調べの可視化も含めて、早期に結論を出していただきたいと思います。

 次に、変死体の解剖問題についてお伺いをいたします。

 二〇〇〇年八月に茨城県で起きました保険金殺人事件では、ウオツカなど強い酒を飲まされて殺されたとされる男性が、行き倒れの形で解剖されないまま病死と判断されて、被告人の一人が上申書で事件を告白するまで事件が表に発覚しなかった、こういうことがありました。

 また、読売新聞の調査によりますと、警察が一たん病死などと判断したものの、遺体の火葬後に他殺と判明したケースが過去十年間に少なくとも十三件あった、一方、検視で事件性なしと判断された変死体についても、行政解剖で死因を調べる監察医制度の充実した東京、大阪、神戸では、検視ミスによる殺人の見過ごしがこの十年間で十九件あったことが判明したという報道もされているところでございます。

 二〇〇五年に扱った変死体十三万四千九百五遺体のうち、司法解剖は四千九百四十二体、行政・承諾解剖は八千六百二十八体で総解剖数は一万三千五百七十体、解剖率は九%と言われております。欧米では、これも十分な資料があるわけではありませんけれども、解剖率が高い、イギリスでは六〇%ぐらいあるんじゃないか、あるいは米国では五〇%ぐらいあるんじゃないか、こういうことも言われているところでございます。

 まず、我が国の解剖率が低い原因をどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか、警察庁と厚生労働省にお伺いをいたします。

縄田政府参考人 お答え申し上げます。

 警察におきましては、委員御指摘になられましたけれども、犯罪をまさに見逃すことのないように、取り扱う死体につきましては、個別の事案ごとに、死体の状況、現場の状況、関係者の供述あるいは検案医の意見等も聞きながら慎重に検討いたしまして、犯罪性に多少なりとも疑いが残る場合には、これは法医学の教授に委託する場合が圧倒的に多いんですけれども、こういった先生方に対しまして鑑定嘱託をいたしまして、裁判官の発する鑑定処分許可状、これも疎明資料を沿えてお願いするわけですけれども、それで司法解剖を行っております。

 少しでも疑いのあるケースについては、これは解剖に付していくということで努めておるところでありますけれども、そういった一つの司法手続の流れの中で司法解剖が行われておるわけでございまして、解剖率がどうであるかといいますか、そういう評価をするのはなかなか難しいのではないかなというふうに理解をいたしております。

 いずれにしても、私どもとしては、何度も繰り返しますけれども、いささかも見逃さないようにということで、懸念のあるものについては司法解剖をする、さらに、そのような判断をしても司法解剖に付すことができないような死体につきましても、死因究明のために、慎重を期すために、必要があれば、死体解剖保存法に基づく行政解剖を行うということで、犯罪を見逃さないということで一線を指導しておるところでございます。

白石政府参考人 厚生労働省、行政あるいは承諾解剖の関係でございますけれども、関係者の間でよく指摘がありますのは、やはり御遺体を大切に扱う国民性というものがあって、概して御遺族の方から解剖の承諾をいただくというのが難しい傾向があるということが一つ、それから医療機関あるいは医療保険制度がありますので、生前の臨床経過を把握することでいろいろな死因を特定することができる場合が多い、こういったことが解剖、特に私どもの所管でいえば行政解剖、承諾解剖でございますが、そういった解剖が実施されていない要因だというふうに考えております。

神崎委員 専門家は、解剖率が低いと死因の判断ミスがふえ、犯罪が見逃される、伝染病などが見逃され、公衆衛生上の危険がある、死に至るメカニズムが解明されず、ガス器具による中毒事故の多発などが気づかれない、さまざまな問題があるということを指摘しているところであります。

 我が国として、こういった犯罪とか伝染病などの見逃しを防ぐために今後どのような取り組みをしていくのか、警察、厚生労働省にお伺いしたい。また、あわせて法務大臣の所感もお伺いしたいと思います。

縄田政府参考人 先ほども申し上げましたが、犯罪性に多少なりとも疑いが残る場合、これは積極的に司法解剖に持っていくということで指導をいたしております。

 この件につきましては、警察大学校におきまして二カ月以上の大学の教授等の研修も行い、また、司法解剖の実習等も一カ月以上にわたって行っております。

 この結果、十八年中に警察が取り扱った死体総数は十四万九千二百三十九、これは年々ふえております。このうち、変死体としていわゆる検視を行ったものが一万二千七百四十、このうち約四〇%に当たるものにつきまして司法解剖をいたしております。

 私どもといたしましては、さらに見逃さないようにということで、検視の際に外表からはなかなか判断できないようなこともございまして、CT検査あるいは薬物検査、こういったことで特定をいたしております。今年度からこれは予算化を一部いたしたところでございます。そういったことがあります。

 先ほども申し上げましたけれども、これは厚生労働省所管にもなりますけれども、私どもの立場といたしましても、死因の解明につきましては、行政解剖をできるだけお願いするということで対応してまいりたい、こういうふうに考えております。

白石政府参考人 お答えいたします。

 死因の特定というために、おっしゃられますように、監察医の行政解剖をふやすということも必要だというふうに考えております。また、それにあわせまして、先ほど申し上げましたような我が国の国民性等を考えますと、解剖しないでも検案能力が向上するということも必要でございますので、そういった観点から、死体検案の講習会を一昨年度から実施しております。そういったことを通じまして、また一般臨床医の検案能力の向上ということもあわせてやっていきたいと考えております。

長勢国務大臣 御指摘のように、検視や司法解剖が十分機能しないということで犯罪が見逃されるというようなことがあってはならないということは当然のことだと思います。

 今、警察また厚生労働省から御説明がありましたけれども、率がどうというだけの問題でもなかろうと思いますし、当然、犯罪の疑いのあるものは厳正な措置を講じて見過ごすことのないように適正に実施をしていかなきゃならない、その努力はされていると思いますが、同時にまた、社会のつながりだとか、あるいは医療の体制のあり方とか、いろいろなことも関連をしていると思いますので、もし今後検討すべき点があれば、十分連携をとって検討していきたいと思います。

神崎委員 終わります。どうもありがとうございました。

七条委員長 次に、清水鴻一郎君。

清水(鴻)委員 自由民主党の清水鴻一郎でございます。

 法務委員会に今国会から初めて所属をさせていただきました。そういうことで、きょうは法務委員会では初めての質問でございますので、ここは大変エキスパートの多い委員会でございますが、初心者として質問いたしますけれども、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず最初に、ちょっと今の神崎先生の質問にも関係があるんですけれども、きょうの朝刊各紙に出ていますが、これは昨日の読売新聞夕刊でございますけれども、「和歌山県立医大 呼吸器外し患者死亡 殺人容疑 医師を書類送検」ということでございます。和歌山県立医科大学附属病院紀北分院で、延命措置を中止する目的で八十歳代の女性患者の人工呼吸器を外して死亡させたとして、県警が五十歳代の男性医師を殺人容疑で書類送検したということがわかった。

 終末期医療をめぐってはいろいろな論議がありますけれども、これは、調べによりますと、男性医師は脳神経外科が専門で、県立医大の助教授だったということでございますけれども、二〇〇六年二月二十七日、脳内出血で同分院に運ばれてきた女性患者の緊急手術をした、しかし、患者さんは術後の経過が悪く、脳死状態になっていたため、家族が、かわいそうなので呼吸器を外してほしいと依頼、医師は二度にわたって断ったが、懇願されたために受け入れて人工呼吸器を外し、同二十八日に死亡、医師は翌日の三月一日に病院に報告したということでございます。そして、射水市民病院の問題がありましたので、病院の方は三月の末に、和歌山県警妙寺署に届け出た、捜査段階の鑑定では、呼吸器を外さなくても女性患者は二、三時間で死亡したと見られるが、県警は外したことで死期を早めたと判断して殺人容疑で書類送検したということでございます。

 これは担当者の方にお伺いしてもなかなか難しい問題で、政治の中でこういう死の定義あるいは尊厳死、自然死等も含めて今論議されていますけれども、これはきのう、きょうの話ですので通告もしていませんし、大臣も御存じかどうかわかりませんのであれですけれども、こういうことに対して政治家として前向きに取り組んでいきたいと思います。そうでないと、医療の中で終末期医療が、お医者さんがそのたびに殺人容疑で取り調べられるということになりますと大変な問題だと思いますので、急でありますからなければいいですけれども、大臣、もしお考えがありましたらちょっとお聞かせいただきたいと思います。

長勢国務大臣 今御指摘の事件を全部承知しているわけではございませんが、射水市は私の富山県の事件でありましたので、経過もある程度は存じ上げております。

 尊厳死についてのお尋ねでございますが、やはりまずもって尊厳死についての国民全体としての考え方を整理して、医療制度の中できちんとしていただくことが先決だろうと思います。我々刑事事件を扱う者としてはそれを踏まえた形で法的判断をせざるを得ない、このように思いますので、ぜひそういう議論が国民的に行われて方向がはっきりすることを期待いたしております。

清水(鴻)委員 どうもありがとうございます。

 やはりお医者さんが安心してそういう終末期医療に取り組めるように、そして患者さんあるいは家族の方の希望も含めて、終末期、二、三時間の延命治療中止ということで殺人容疑ということになりますと、終末期医療に取り組む医師にとっては大変大きな問題だと思いますので、前向きに検討していただきたいと思います。

 では、本題に入らせていただきます。医療事故における刑事訴追についてきょうはお伺いしたいと思います。

 きょうは、参考資料といたしまして、新聞記事をお配りしていますけれども、平成十六年、福島県の県立大野病院で帝王切開の手術が行われました。当時二十九歳の女性が死亡したという医療事故でございます。これで業務上過失致死、そして医師法二十一条違反という罪状で起訴された三十九歳の産婦人科のお医者さんの裁判のことがこれに載っております。

 医師が無罪を主張した、これはいろいろな医療の詳しい部分がありますけれども、胎盤剥離は適当な処置であると。その結果、今医療界では、困難な手術はなるべく避けたいということで、この記事の中に「リスク避ける医療界」とありますけれども、診療が萎縮する、業務上過失致死と医師法違反罪で医師が起訴された福島県立大野病院の妊産婦死亡事故では、日本産科婦人科学会など医療界が起訴を疑問視する異例の声明を発表したということで、だんだん危ない手術には手は出せないということが医者の間では大変問題になっている。

 と申しますのは、医師は良心に基づいてやったとしてもやはり病院に迷惑がかかる、あるいは家族にも大変負担がかかる、そうなるとリスクのある手術は避ける、結果として、今年度あるいは卒業した新しいお医者さん、研修を終わった人も、産婦人科や外科、訴訟率が非常に高い科には入局しないという現象が起こっていて、これから十年後には、日本では、なかなか出産することも難しくなるし、あるいは手術を受けることが難しくなって外国に行って手術をしなければならない、そういう事態も来るのじゃないかというふうな危惧もされているところでございます。この記事でもありますけれども、医師は精いっぱいやったということであります。

 そういうことの中で、ここで問題になっています一つは医師法二十一条でありますけれども、医師法二十一条というのは、「医師は、死体又は妊娠四月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは、二十四時間以内に所轄警察署に届け出なければならない。」と定め、三十三条の二で、違反者に対しては五十万円以下の罰金という刑罰を科すということで、十数年前までは、このことは医療事故を対象とするものとして全く注目されていなかったわけであります。

 と申しますのは、医師法二十一条というのは、実は明治からありまして、その立法趣旨というのは、医者が、死体を見る、異状を発見した場合に、犯罪に関連する場合が少なくない、犯罪発見を容易にするために届け出義務を定めたというのがもともとの趣旨であるというふうに聞いております。そういう趣旨でありますけれども、現在は、異状死というものの拡大解釈の中で、どんどん医師法二十一条違反ということが問われることが多くなっているわけであります。

 そこで、お伺いしたいわけでありますけれども、医療事故の際の医師法二十一条による警察への届け出のあり方等については、昨年の医療制度改革の際、衆議院、参議院での附帯決議あるいは日本医学会からの声明、日本学術会議からの提言等、その見直しに向けてさまざまな議論がなされているところでありますけれども、まず、医師法二十一条に基づく届け出件数、それから送検された件数等わかりましたら、年間何件ぐらいあるのか、また過去十年ぐらいの年次推移はどうなっているのかということをお伺いしたいと思います。

縄田政府参考人 お答え申し上げます。

 私どもで承知しておる限りで申し上げますと、平成九年から十一年にかけましては、警察に対しまして医療過誤の疑いがあるものとして届け出のあった件数は、大体二十数件から四十数件程度でございました。平成十二年には百二十四件と増加をいたしました。平成十五年が二百五十件、十六年には二百五十五件に上りました。以後、若干減少しておりまして、昨年は百九十件と承知をいたしております。

 送致、送付した件数につきましては、平成九年が三件、十年が九件でありましたが、以後、増加傾向にあります。平成十三年には五十一件、十六年には九十件を超えまして、昨年は九十八件でありました。

 若干補足して申し上げさせていただきますと、先ほど委員御指摘のありました和歌山の事案等ございますが、警察といたしましては、刑事訴訟法によりまして、これはまさに百八十九条で、「犯罪があると思料するときは、犯人及び証拠を捜査するものとする。」ということで、第一次捜査機関として、疑いがあれば捜査をするわけでございます。その捜査の結果につきましては、刑事訴訟法二百四十六条に基づきまして、「捜査をしたときは、」「速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。」こういうふうにされております。

 和歌山の事案につきましても、任意で送致したもので、詳細を申し上げるわけにもまいりませんが、刑事訴訟法に基づきまして警察の責務として捜査したものにつきまして、訴訟法に基づいて送致する、これは必ずしも警察は、これは厳罰に処すべきだ、あるいは刑事罰を確実に科すべきだというものがすべてではないということをひとつ御承知おきいただきたい、こういうふうに思っております。

清水(鴻)委員 ありがとうございます。

 やはりここ十年、特に二〇〇〇年あたりから急激に件数が二倍、三倍と伸びているわけでありますけれども、その理由についてはどんなふうに考えておりますか。

縄田政府参考人 私どもの方でこれを正確に申し上げるのは不可能だと思います。ただ、いろいろな社会情勢もあり、それから医師会等、先生方のお考えもあり、あるいは厚生労働省の御指導等もあり、いろいろな要素がかみ合ってのことだろうと私どもは認識をいたしておりますが、これが原因ということを確定的に申し上げるのは差し控えたい、こういうふうに思っております。

清水(鴻)委員 実は、二〇〇〇年の八月に、厚労省の国立病院部、リスクマネージメントスタンダードマニュアル作成委員会報告書で、医療過誤による死亡もしくは傷害が発生した場合またはその疑いがある場合には、施設長は、これは医師法では医師でありますけれども、速やかに所轄警察署に届け出を行うというルールを定めて、全国の国立病院、その後は、私立大学病院、大規模病院、特定機能病院等に拡大して、今や、すべての医療機関にそういう認識があるわけであります。

 これを機に、本来二十一条の果たしてきた犯罪防止あるいは犯罪を防止するために初期捜査を早くやらなきゃいけないので二十四時間以内に届け出なさいということに対して、いわば病死あるいは病気に伴う医療事故、過誤の疑い、そういうものも含めて施設長が届け出るということを厚労省から指示されたということでふえてきたということも考えられると思うんですけれども、これは厚生労働省はどういうふうにお考えでしょうか。

白石政府参考人 経緯から申し上げれば、確かに国立病院の方で二十一条の運用についてこのようにしようということがあり、また、いろいろな関係の団体の方からも、それに類する、あるいはそれを超えるようないろいろな申し合わせなり提言というのがなされるというふうな事態が、御指摘のころ、当時からあったと思います。一方で、医療関連の死亡に関しまして、報道ぶり、あるいはいろいろな御遺族からの意見なんかもありまして、医療側の方も一定のガイドラインを示そうというふうな一連の動きであったかというふうに理解しております。

 また、それを受けまして、幾つかの最高裁の判例も含めまして、判例上、それが支持されるに至ってきたというふうな経緯がございまして、今、委員御指摘のように、それはすべての医療機関において定着をしている考え方になっているというふうな実情はございます。

 ただ、その一方で、実はそういうふうな動きをして、医療関連の死亡というものが、司法なり、司法と申しますのは、刑事事件なり民事事件という形で処理をされるというふうな傾向があること自体が、果たして、患者さんの方にとっても、あるいは医療機関にとっても望ましい結果を得るかどうかということについて、最近、ほかのやり方は何かないのだろうかというふうなことが出てきている、大体こんな流れだというふうに理解しております。

清水(鴻)委員 ありがとうございます。

 では、次に行きます。

 医療事故があった際、医師法二十一条に基づく届け出が所轄の警察署に行きます。そのすべてのケースについて検視が行われ、事件性の有無が判断されるということでありますけれども、検視をまず行うのは警察官でございます。その警察官が検視で各疾患、特に先ほどのような犯罪性に関してはまた別かもしれませんけれども、病死あるいは医療事故、医療過誤などの場合、いろいろな経過を見なければいけないわけでありますけれども、各疾患や医療行為の内容についてどの程度教育を受けておられるのかということを警察にお伺いしたいと思います。

縄田政府参考人 こういった医療過誤の事案につきましては、委員御指摘のとおりでございまして、極めて専門的な知識に基づきまして、業務上過失致死傷等のいわゆる注意義務の関係等々、判断をしていく必要がございます。

 そういったものにつきましては、警察官といたしましては、個々のケースに基づきながら、こういった場合にはどういうケースがあったのか、こういう蓄積というのも一つございます。それから、問題は、その点、私が今申し上げましたような、いわゆる極めて重要な部分につきましては、これは知見のある専門医あるいは大学の教授等に意見を伺う、あるいは鑑定嘱託をして鑑定書を出していただく、そういった判断に基づきまして、私どもといたしましては、それが業務上過失致死傷として問えるような結論であったのかどうかというのを判断しながら送致をしていくということでございます。

 警察におきましては、いろいろ学校で専門的な教養も行っておりますけれども、学校で行う教養につきましては、医療過誤事件の医療のシステム、例えば麻酔医と医者との関係、あるいは輸血の流れというのはどんなものだろうかとか、あるいは看護師との関係はどうであろうかといったこと、あるいは、これは医療に限りませんけれども、それぞれ専門的な職種につきましては、どのような書類がそもそも備えられているものであるかとか、そういった基本的なことにつきましては十分教養もしつつ、冒頭申し上げましたけれども、いろいろな医療過誤事件を経験した捜査経験豊富な捜査員を招聘しての事例研究あるいは教授等からもいろいろ御教授をいただく、こういったことも積み重ねながら捜査を適正にやっていく、そういう基盤づくりをいたしておるところでございます。

 しつこいようでございますけれども、一番肝心な部分につきましては、常に専門医あるいは教授の鑑定、意見を参考にしておる、こういうことでございます。

清水(鴻)委員 行かれる方も一定の教育を受けて、かつ、医療との連携は十分行っているということであります。

 ただ、やはり一例一例大学の専門医を呼ぶとかいうことも大変難しい中で、一番前線にある、公衆衛生の部分で、伝染病等も含めてのことでありますけれども、異状死に対して保健所等との連携というのはどんなふうになっているのか。警察でも厚労省でも結構でありますけれども、連係プレーは全くないのか。一々大学に行って専門医を呼んでくるというのは現実的にはなかなか不可能ではないのかなと思うんですけれども、その辺のネットワークはあるんでしょうか。

縄田政府参考人 私の知る限りでは、業務上過失致死事件につきまして、保健所と連携をしていくという場面というのは余りないのではないかなというふうに理解をいたしております。

清水(鴻)委員 ただ、異状死で、業務上過失致死傷罪があるかないかとかだけを見に行っているわけでは全くない、検視というのは、異状死のときにまず警察に行くわけですよね、そこに一つ今問題があるんじゃないかと言われているわけですね。

 つまり、異状死というのは、犯罪に関係があるかもしれないけれども、いわゆる病死あるいは伝染病、いろいろなものを含んで異状死があるわけで、それがすべて今は警察にまず連絡されるわけですよ。だから、これはもしかしたら伝染病かもしれない、あるいは公衆衛生上問題があるかもしれないというような場合に、当然、保健所との連係プレーというのは前線では一番大切だと思うんですけれども、それでいいのでしょうか。

縄田政府参考人 お答え申し上げます。

 そのような御視点であれば、死体を取り扱う場合には警察官が当然臨場いたしますし、それから、警察医といいますか検案医ですね、この立ち合いを求めるということになっております。そういった状況も見ていただきながら、医者の立場から見て伝染病の可能性がある等々となれば、当然のことながら、責務として保健所とも連絡をとられるとか、そういうことになってこようかなと思っております。

清水(鴻)委員 厚労省の考え方はどうでしょうか。

白石政府参考人 基本的に、二十一条の届け出、異状死でございますので、犯罪性の有無というのが第一義的になろうかと思いますが、その中で、今御指摘ありましたように、例えば、これは何か重大な伝染病のおそれがある、あるいは何か食中毒の関係があるという、他法令によって何か処置すべきような事案というふうなことがあるならば、それは、医師の方から、あるいは所轄の警察の方から関係の行政機関等に連絡があるということになると思います。流れとしてはそうなると思っております。

清水(鴻)委員 今申し上げましたけれども、例えば先ほどの通達、いわゆる医療過誤による死亡もしくは傷害が発生した場合は施設長が届け出る、これも警察に届け出ることになるわけですね。

 やはりこの辺は少し整理をして、少なくとも、医療過誤、医療事故に関して、いわゆる医師が届け出る医師法二十一条ではなくて、施設長が届け出る、これは明らかに、警察というよりは、病死であるか否かということが問題になっているものに対してはむしろ保健所等に届け出るような制度が整備される方がもっと今の現状に合う。つまり、医師法二十一条が今拡大解釈されてきている中で、従来の犯罪性のあるものをという意味合いにおいて警察、だけれども、少なくとも施設長が届け出るようなケース、これは医療過誤あるいは医療事故に関することでありますから、むしろ保健所に届け出るという制度にした方がずっと効率的かつ専門的ではないかと思うんですけれども、厚労省はどうでしょうか。

白石政府参考人 今のような御指摘があることは承知しております。

 それを踏まえまして、私ども厚生労働省は、実は、法務省あるいは警察庁とも協力いたしまして、そういう診療行為に関連した死亡の死因究明というもののあり方に関しましては改善の余地があるという認識をしておりまして、その背景には、今委員のお話にもありましたように、医療というものは安全、安心だということが期待されます一方で、診療行為というものは体に対する侵襲行為でございますので、一定のリスクがあるというのが医療の偽らざる実情でございますので、そういう医療に伴いまして何か関連で死亡があったというふうなものについて、一義的に調査、どうしてこういうことが起きたんだろうかということを考えていくための仕組みというものは今のままでは十分ではないということで、今検討を始めているところでございます。

清水(鴻)委員 ありがとうございました。大変前向きな答弁をいただきました。

 確かに、医療が本来的に死亡や傷害のリスクを負うというのは、医療というのはリスクを伴ってやっているという事実があるわけでありますから、その辺のところをそういう方向で十分に考えていただきたい。

 ただ、当然そういうことに対しては法律の問題等もありますので、法務省はどんなふうにお考えでしょうか。

小津政府参考人 この問題についての前提となる事柄について、一点だけまず私の方から補足させていただきます。

 先ほど、警察の方から、いろいろな事情で相当たくさんの件数を医療事故について検察庁に送致しているというお話がございましたけれども、それでは、検察庁で実際に公判請求をしている件数がどれぐらいあるかということでございますが、これは実は大変少のうございます。全国的な統計はございませんが、東京地検の刑事部におきましては、平成十三年がゼロ、平成十四年が三、平成十五年が一、平成十六年、十七年ともゼロでございます。ちなみに、十六年と十七年は公判請求ではなくて略式請求で罰金を取ったというのが二、三件ございますので、そのような実情であるということを前提にしています。

清水(鴻)委員 今聞きましたのは、そういう今の届け出制、医師法二十一条の問題に関連して、むしろ今の実情に合った方向にしていただきたいということに対してどうお考えかということを聞いたわけで、これは大臣、どうでしょうか、今ちょっといろいろやりとりを聞いていただいて。

長勢国務大臣 御指摘のように、いわゆる異状死といいますか、こういうことについて、おっしゃるような保健衛生上あるいは医療上の観点からの早急な究明が必要ですし、一方、仮に犯罪にかかわる場合には初動の捜査ということも大変大事でございますので、そういうことも含めた体制がとられることが望ましいと思っております。

 厚生労働省では、今おっしゃったように、死因究明に関する検討を始めておられるそうでございますので、法務省においても十分それに御協力申し上げていきたいと思っております。

清水(鴻)委員 ありがとうございます。大臣の大変力強いお言葉をいただきましたので、これは前に行くと思いますので、よろしくお願いします。

 時間がちょっとなくなってきましたので、次に行きます。

 医師や看護師につきましては、業務上過失致死として刑事訴追をするか否かは、事故の結果の重大性や過失の程度において判断されていると思うわけでありますけれども、今もありましたが、例えば、全国的に統一基準みたいなものがなく、各都道府県による。それから、先ほどもありましたけれども、要するに、死体解剖できるのは、監察医務院がある東京と大阪と横浜でしたか、そういうふうに地域格差が大変あると思うんですね。

 その辺は、全国的な統一基準というのが事件処理でもないと思うんですが、医療関係者は大変不安を覚えているわけですけれども、いかがですか。

縄田政府参考人 医療に関する事故に伴う業務上過失致死傷事件の捜査ということになりますと、委員御案内のとおりかと思います。

 事案ごとにケース・バイ・ケースといいますか、いろいろなお医者さん、それから麻酔医あるいは看護師との関係もあれば、実際にどういう行為が行われたか、また医師の経験年数、それによっても判断が全然変わってまいりますし、諸要素を加味しながらの捜査ということになります。そういったことになりますと、一律の基準というのはなかなか設けづらいという結論になります。

 警察といたしましては、関係者からの詳細な事情聴取をするとともに、資料の収集、精査、それから、先ほども申し上げましたけれども、知見を有する専門医と大学教授の意見あるいは鑑定書の中身、これを中心にしながら判断していく、こういうことだろうと思っております。

清水(鴻)委員 ちょっと時間がなくなってきましたが、要するに、出産とか脳外科の手術、医療事故が起こった場合には、医療行為の妥当性の評価を警察官が行い、犯罪性の有無を判断し、送致することに限界があるのではないかな、このように判断するわけであります。特に、その判断には、医療の専門家を中心にして各界の方が入った、資料の二に添えておきましたけれども、医療版の事故調、事故調査委員会のようなものが当然必要だというふうに思います。先ほど大臣からもそういう方向について前向きな回答を得ましたので、ぜひ、こういう専門的な調査機関ができるように、警察、法務省、厚労省が力を合わせて、国民の安心につながるようにしていただきたいと思います。

 あとの質問につきましては、私も用意していましたけれども、先ほどほぼ神崎委員がされました。いわゆる「検視 殺人見逃し十三件」、これも各都道府県によって、先ほど申しましたように、大阪とか東京、横浜という監察医務院があるところは解剖してこういう見逃しを発見しているわけでありますけれども、ないところでは、恐らくかなりの殺人事件がそのまま火葬されて見逃されている可能性が高いという指摘もされておりました。

 そういうことでありますけれども、資料三、四、五は先ほどの神崎委員の質問とも重なりますので、時間が来ましたのでこれでやめますけれども、どうか、医師法二十一条については検討の余地が十分あるということで前向きに検討していただきたいということを、国民の安心からも、医療界の萎縮医療につながらないということも含めてお願いして、私の質問を終わりたいと思います。

 どうもありがとうございました。

七条委員長 次に、河村たかし君。

河村(た)委員 河村たかしでございます。

 まず第一問ですが、懸案となっております名古屋刑務所の革手錠の施用状況について、さらに確認をしっかりしていかないかぬということでお伺いしたいと思います。

 まず、私もここでやったんですけれども、施用の順序を聞いてみようかな、それより、ずばり聞きますか。要するに、ここでやったときは私は立ったまま施用したのですけれども、うつ伏せで施用、暴れているような場合はそうなるんですね、そのときには、いわゆる腕輪部分、腕輪の横に金属の角鉄と言われておる出っ張りがついておりますけれども、立ってやったときはそれが前に、こういうふうに、両手前といいますけれども、側部じゃなくて腹の前へ来てそれを締める格好になるんですけれども、うつ伏せで施用する場合は、革手錠のいわゆる腕輪と角鉄の位置、これはどこになるんでしょうか。

梶木政府参考人 ただいま委員が御指摘になったように、革手錠を施用する際には、施用する者、施用される者、いろいろな体勢といいますか、位置関係があろうかと思います。

 それで、まず施用される者がうつ伏せの場合ということでございますが、通常、両手首に腕輪を装着した後、先ほど先生がおっしゃった角鉄の部分、ベルトを通して締めていくわけです。したがいまして、そのベルトを通したときに両手の位置がどこにあるかということがまず問題でありましょうし、それから、ベルトを締める過程で体に動きがあったのかなかったのかというような問題もあろうかと思います。

 したがいまして、うつ伏せで体の横の部分に手があってベルトを通した場合に体の横の部分付近に革手錠の部分があるであろうということはあり得ることだろうと思いますが、正確に必ずそこにあるのかというのは、締めぐあいとかその後のお互いの位置関係によっていろいろあろうかというふうに思っております。

河村(た)委員 また、きのう夜お話ししていたのと違うんですけれども。だから、こういうふうにすぐ、無難なというか、検察寄りの昔に修正されると困るんだ。

 実際に施用して、下におって、これが前に来ると、角鉄部分が下にありますと見えないから、ベルトがまず入りません。それから、本人もぐるぐるしますから、本能的にというか、これは横になる、こういうふうに横の位置に。それで、通して施用する。施用が終わるまでですよ。施用が終わってからこういうふうに動かすということはあり得ます。だから、施用開始から施用終わりまでは横にあるんだ。大変な例外の場合は知りませんよ、そういう場合もひょっとしてあるかもわからぬけれども、通常の場合はほとんど、当然そうならなきゃ施用ができないんですよ。そこをはっきり言ってくださいよ。

梶木政府参考人 先ほど申しましたように、委員が今御指摘になったようなことが起きないと言っているわけではございません。しかし、ケース・バイ・ケース、お互いの体勢によって動き得るでありましょうということを申し上げたわけでございます。

河村(た)委員 ケース・バイ・ケースといっても、法務省矯正局も、ちょっといいかげんにしておいてもらわぬと。こんなのはわかり切ったことです。だれに聞いてもらってもいいし、では現実にここで今度やってくださいよ。

 うつ伏せにしておる人にどうやって革ベルトを通すんですか。横にあるんじゃないんですか。横に腕がないと、まず角鉄が、通るところが見えないじゃないですか。当然横に来るんだ。ごく例外でとんでもないこともあるかもわからぬけれども、どう考えたって、普通の施用なら、横のところに革ベルトを通す鉄の部分があるんですよ、そこを通して腹の下から通していかないかぬ。

 それでは、見えないところで、どうやって通すんですか。はっきり言ってくださいよ。きのう刑務官が言っていたでしょう、横だ、革手錠施用から完了までは角鉄部分は横にありますと。これは言っていた、後ろの方が。どうですか。

梶木政府参考人 重ねて申し上げますが、今委員がおっしゃったようなことが起きないと申し上げているわけではありません。当然、先ほど申しましたような順番で腕輪の部分にベルトを通して締めていくわけですから、その時点で仮に施用される者が完全にうつ伏せになっていて両手が横に出ていれば、ベルトを通した時点では体側の部分、体の横の部分に、角鉄と我々が呼んでいる部分もあるであろう。それは、私は別に否定しているわけではありません。ただ、すべてそうなのかと言われると、ケース・バイ・ケース、締めるときのお互いの位置関係等あるいは締め方があるので、すべてそうなりますというところまで私は自信を持って申し上げられないと申し上げておるわけでございます。

河村(た)委員 とにかく、ちゃんと現場の刑務官に聞いて、そんなわかり切ったことをこんなところで言わせないでくださいよ。

 要は、もっと後ろになるぐらいが多い、作業を早く進めなきゃいけないから。刑務官たちは角鉄に早くベルトを入れる必要があるわけですよ、暴れておるから。大変な場所なんですよ、修羅場。

 だから、なるべく早くやるためには、手の角鉄の位置がわかるように、中へ入らないように、横ないしは後ろになるぐらいもあるんだというのは、聞けばすぐわかりますよ。いいです、もう時間がないから。今度それをまたやります。こういうことですから、これは施用実験をやらないと本当にいけませんよ。

 では、きのう言っておきましたけれども、九月事案について、これはビデオに映っていますね。この問題については、これはもう四年になりますか、法務委員会の理事懇談会で、全員がこのビデオを見たんです。大林さんもお見えになりましたよ、そこに。私が野党の筆頭をやっておりましたので、それを見たんです、全員が。

 きのう言いましたけれども、何時何分何秒の画面を見てくれ、そこで受刑者の方の右手はどこの位置にあるか、体側に見えていますけれども、それを言ってくださいよ。

梶木政府参考人 今お尋ねの件、ビデオテープというのが刑事事件の証拠として法廷に出されております。お尋ねの点は、そのビデオテープに映っている映像についてどう評価するのかという意見を求めておられるんだろうと思います。

 ビデオテープの映像をめぐって、刑事の法廷におきまして、検察、弁護双方で主張し、立証しておられるわけでございますので、現時点で私からのお答えを差し控えさせていただきたいというふうに考えております。

河村(た)委員 では何で見せたんですか、この法務委員会の理事懇で、四年前ですけれども、全員。何か先入観を得させるためだけに見せたんですか。

 きょうは時間がないので、先ほど言いましたように、革手錠をうつ伏せで施用するときには、今回の場合は特に右手ですけれども、右手の位置はどこに来るのか、今度は一遍刑務官によく聞かれて、現場でやっておる人たちにですよ、その結果をまた報告してください。

梶木政府参考人 私も、矯正の現場のこういった戒具の使用等について責任を持っている立場でございますので、名古屋の事案について我々の調査がどうであったのかということにつきましては、これまでもそうでございましたし、これからも折に触れて職員から話も聞き、していくつもりでおります。

河村(た)委員 やってください。私とすれば、その点をよく聞いていただくということ。

 だから、横にあるのか、前にあるのか、決定的なんです、負傷部位の関係で。わき腹の下は筋肉ですけれども、CTを撮ればわかりますけれども、この下には負傷部位はないんです、実は。一応結論だけ言っておきますけれども、ちゃんと調査してくださいよ。何遍も言いますが、事故か故意犯かによって、皆さんの再発防止義務の対応が全く違いますからね。

 では、次に、今回、無罪が確定しました佐藤孝雄さん、この方は、中間報告で、一般に配られたものはあいうえおというふうになっておりますけれども、実名の入ったものもありまして、端的に言うと、その中間報告の二ページですか、今具体的な内容を言いますけれども、判決と違うんだけれども、中間報告をどうされるつもりかという質問です。

 一つは、きのうちょっとその場で言うのは忘れましたけれども、わかっておられるんだと思いますけれども、中間報告の二ページのところで、「犯行に加わった個々の職員の資質のみに帰せられるものではなく、」ということで、刑務官の資質が悪かったということを断定しております。

 それから、十七ページの下の方ですが、これはきのうちゃんとお話ししましたけれども、これはヌが佐藤さんなんですが、佐藤看守は、「副看守長が懲らしめのため革手錠のベルトを締め付けるよう指示してきたことを了解し、」こう書いてありますが、これは判決と明らかに違う。

 それから、その後、二行ありまして、「尾錠に最も近いベルトの穴(円周約五十九・八センチメートル)に尾錠の爪を入れて革手錠を固定した。」これも判決と違いますけれども、こういう決定的なところが違う報告を国会にされたということですね。

 こういう報告書をもとに、予算委員会や法務委員会で物すごい数の質疑がされたわけですけれども、この中間報告をどうされるおつもりですか。

梶木政府参考人 平成十五年の三月に、今御指摘のありました中間報告を公表させていただきました。これは、当時、法務省の行刑運営に関する調査検討委員会におきまして、刑事局からの報告あるいは矯正局の特別調査チームによる調査結果の報告等を受け、これらを検討した上で、名古屋事案について当時考えられるところを取りまとめて作成したものであります。

 一方、これを公表した後の平成十五年七月に問題点の整理というのを改めて公表させていただいております。これは、先ほど申しました中間報告につきまして、調査が不十分であるというような指摘あるいはこういった点も見るべきであるというような指摘を踏まえまして、さらに調査を実施するなどして、新たに取りまとめたものであると承知しております。

 この問題点の整理におきましては、今若干御指摘になりましたいわゆる五月事案、九月事案等につきましても、「どのような状態で革手錠の施用が行われたのか、受刑者の死傷の原因が何であったのかについても、裁判所による審理の結果を待たなければならない。」というような言い方で報告したものと承知いたしております。

 また、今委員が御指摘になりましたように、革手錠事案について無罪判決がございまして、それが確定いたしました。かいつまんで申しますと、客観的に違法な行為に加担したことは認められるものの、刑務官としての経験が浅く、革手錠施用の要件がなかったことの認識が不十分であった、あるいは他の被告人の懲らしめ目的を知らなかった可能性があることから、正当な職務行為と信じて行ったということにやむを得ない理由があると認められた、このために無罪判決となったというふうに承知をしております。ところが、その前提となります他の被告人につきましては、これは無罪を争い、現在、控訴審において係属中でございます。

 このように、名古屋事案、名古屋刑務所の事案につきましては、全体として刑事の法廷におきまして双方の主張、立証が繰り返されており、司法判断が確定したとは言えない状況にあると思います。したがいまして、中間報告の見直しにつきまして、現時点でコメントすることは差し控えたいというふうに考えております。

河村(た)委員 いろいろ言われましたけれども、革手錠の施用で、どの穴に入っておるかというのは決定的ですよね、実は。どの程度締めたのか。ピストルとか青酸カリと違うんですよ、革手錠は普通は正常な、適法な戒具ですから。当たり前ですけれども、そんなことは。だから、その穴が、皆さんの言っておったのと違うわけですよ、裁判所のと。僕が言っておるのも違いますけれども。

 そうしたら、大至急調査をして報告し直す、これは絶対必要なことだと思いますよ、客観的な要件が違っているんだから。私は、ほかの人に対しても、因果関係自体がないから全員無実だと言っていますけれども、それはそれとして、穴という客観的な、あなたたちが資質に問題があるとまで言い切った、その行為の一番客観的なものですよ。この場合はこれしかないんだから、どこの穴に入っているというこのことしか。それが違っているんですよ。

 委員長、きのうもちょっと連絡いただいた話ですけれども、こういう決定的な部分が違ったまま維持するというのは、もう四年前のことだから、何遍も言いますけれども、皆さんからするとちょっと別のことかもわからぬけれども、国会の法務委員会としてはこれが明らかに継続しておるんですね。

 ですから、そこをもう一回調査を命じられるか、やはり御本人に出てきてもらって、ここのところがどうだったのかということを、佐藤さん自身は、本当のことを言いたいから証人喚問してくれと言っておりますので、きょうの話を受けて、再度御協議をいただきたいと思います。

七条委員長 後日、理事会で協議をいたします。

河村(た)委員 それでは、次の話に移ります。

 法律による行政というのがありまして、特に国会が建物をつくるようなとき、手続違反というのはやはり許されぬと思いますよ。

 参議院の宿舎の問題です。きょう配ろうと思ったんだけれども、ちょっとやめておきましたが、紀尾井町まちづくり協議会陳情者名簿、平成十五年七月二日というのがありまして、ここに、これはNHKですね、千代田区紀尾井町一番一号、千代田放送会館、この方が陳情されている、参議院の議員宿舎をつくってほしいと。

 まず、NHKがこんなことをやってもいいんですか、ここにありますけれども。

鈴木政府参考人 今御指摘の件でございますけれども、NHKに問い合わせましたところ、千代田放送会館、千代田のところにあるわけですが、NHKが所有している建物でございまして、その管理はNHKの子会社に委託されております。そして、御指摘の陳情書に記名の人物は、当時、当該子会社の常務取締役であるとともに、千代田放送会館の館長を務めていた者であるというふうに聞いております。

 本件は、NHKとの委託契約により館長としての職務を務めていたというものでございまして、また、その行為はNHKが行います放送に直接関係するものではないということからしまして、放送法上の問題になるものとは考えておりません。

河村(た)委員 しかし、今回、問題になっておることは事実だと思います、参議院の議員宿舎も。それから、いろいろな建物が日照権等で問題になるときがよくあるじゃないですか。NHKは、不偏不党、公正な報道をせないかぬ。放送法の規定はどういうふうに書いてあったか、不偏不党はたしかあったと思いますけれども、政治的中立はあったかな、真実に即してですか、そういうような規定があったと思いますけれども、建物を建てるようなときに、自分が当事者になってしまって、そんなことでは、真実に即した報道がゆがめられることは当然あり得ると思いますよ。

 子会社ならいいんですか、はっきり言いまして。

鈴木政府参考人 ただいま申し上げましたとおり、これは放送そのものではございませんので、NHK本体であるか子会社であるかということにかかわらず、直接の放送の関係ではないというふうに考えております。

 なお、委員御指摘の点にございました放送の不偏不党云々について言いますと、放送法三条の二の一項にいわゆる番組準則というのがございますが、政治的公平、公序良俗、事実を曲げない、そしてもう一つ、一番わかりやすいのは、意見が対立している問題についてできるだけ多くの角度から論点を明らかにすることというのが当然規定されておりますので、こういった問題については、こういった規定に従いまして適切な放送を行うものと期待しております。

河村(た)委員 いや、問題は、それは放送そのもので一遍にだれが見てもぱっと偏るような、争っておるときに、この建物は建てていいとか、例えば日照権でもいいですよ、そういうのはだめですよ。だけれども、そういうふうにならぬように少なくとも考えないかぬじゃないですか。

 ここにありますが、名前はちょっと言えませんけれども、名前がずらっと並んでいて、千代田放送会館、これはNHKだとわかりますよ。こんなのが出ておったら、それこそ、いわゆるお墨つきを与えたように見えるじゃないですか、普通に見た場合。それでは、推進団体になった人が、もめた場合にはどうするんですか、一体。こんなことはいけませんよ、これはやめなきゃ。

 それと、子会社ならいいんですか、これをもう一回聞いておきます。

鈴木政府参考人 NHK本体及びその子会社も同様でございますけれども、本来、NHKの行うべき放送を公共放送としてきちんと行う必要があるわけで、その子会社の場合についてもその精神にのっとって行うことは当然必要でございますが、本件は、子会社がその関連業務を行うに当たりまして、その遵守すべき倫理あるいは行動規範と直接関係がないものと考えております。

河村(た)委員 何がないですか、そんなもの。冗談じゃないですよ、建物を建てるときに一方の当事者、推進委員になっておいて。

 では、この子会社というのはどのぐらいNHKが株式を持っておって、この方はNHKのOBかOBでないのか、どっちですか。全く他人ですか。名前を言うのはちょっとやめておきます、名前は出ておる人ですけれども。

鈴木政府参考人 当時はNHK総合ビジネスという会社でございましたが、現在は、合併いたしまして、NHK共同ビジネスという会社になっておりまして、その資本金のうちNHKの占める割合は七三・六%となっております。

 この署名をした当該本人がNHKのOBであったかどうかについては、現在、承知しておりません。

河村(た)委員 きのう、私はOBだと聞きましたよ。これはどうなったのかな。質問通告をちゃんとしましたから。OBですとちゃんと言ってくださいよ。

鈴木政府参考人 申しわけございません、私自身はちょっと確認をしておりませんので、今確認をした上で、後ほど御報告申し上げます。

河村(た)委員 通告しておるどころか、私は目の前で聞いたんです。

 では、確認をとってもらおうか。これは、悪いけれども、目の前で通告して、この人はOBですかと聞いたんですから、私。それで、OBですと。

 ちょっと時間をとってくださいよ。通告してある。通告というより、目の前で聞いたことと答弁が違うんですから。

七条委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

七条委員長 速記を起こしてください。

 もう一度答弁をいただいて、それでだめならば、時間を後でとろうと思いますから。

 では、鈴木局長、もう一度答弁をしてください。今の間にできるだけ努力をして情報を収集してみてください。

鈴木政府参考人 ただいますぐに確認をいたします。

河村(た)委員 それなら、ちょっととめておいてちょうだい、悪いけれども。

七条委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

七条委員長 速記を起こしてください。

 鈴木局長。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 当時の署名をいたした者は、NHKのOBでございます。

 委員長初め委員の皆様、時間をとりましてまことに申しわけございません。

河村(た)委員 OBでございました。したがって、七十数%の株主と本人もNHKということで、こういう中立性を要求されるようなときに、その主体になるということは許されぬと思いますよ、本当に。だから、もう一回ちょっとヒアリングして、どうなのか、やっていただきたいと思います。

 では、もう一問。

 風致地区規制というのがあるんですね、そこの場所、紀尾井町に。これは十五メーターですけれども、実は、計画を東京都に示されたときに、どうも計画より低い高さを示したということで許可に持っていこうとしておるのではないかということですけれども、こういうことは許されるんですか。

小山政府参考人 風致地区におきまして建築行為を行う場合には、条例に基づいて、定められた事項を記載した申請書を提出して、許可権者がそれを審査して許可を行うということになっております。あと、国の機関が行う行為につきましては、許可を受けることは要しないとされていますけれども、あらかじめ許可権者と協議を行う必要があるということでございます。

 参議院の議員宿舎につきましては、東京都の風致地区条例に基づきまして、現在、現時点の計画で、国土交通省の官庁営繕部と東京都の間で協議を行っている段階でございます。(河村(た)委員「何メーターですか」と呼ぶ)五十六メートルという計画でございます。

河村(た)委員 五十六メーターということですが、これは、ある方が情報公開請求をして出した書類ですけれども、これを出そうと思ったんだけれども、手持ちでやりますけれども、そこに、建築概要、新宿舎は十階建て以上で最高高さ三十メーターから四十メーターのタワー型を計画中であるとのことであるということですので、三十メーターから四十メーターと言っておったのが五十六メーター、下手をすると、一番下の三十メーターでいきますと倍近いというような、こんなことをやっていいんですか、こういう申請。どうなっておるんですか、これは。

小山政府参考人 手続を円滑に行うために、協議に先立って事前に照会や相談を行うという場合もございます。しかしながら、最終的にはあくまで正式な協議の内容に基づいて東京都が適切に判断をするというものでございまして、事前の照会あるいは相談に拘束されるということではございません。

河村(た)委員 そうすると、この書類はうそではないね。きのう、おたくに見せましたから。東京都の答えたもので、三十メーターから四十メーターのタワー型を計画、これはうそではないですね。

七条委員長 時間が過ぎておりますので、簡単明瞭に。

小山政府参考人 国土交通省あるいは参議院がどのように説明したかについては私は存じ上げておりませんが、東京都の方で何らかの形でこういう情報を確認されたのではないかというふうには考えております。

河村(た)委員 では、最後にします。

 とにかく、こういう実際と違う低い高さを示して、風致地区ですから高さというのはどえらい大きいんですよ、解除するんですから。許されませんよ、こういう手続違反は。特に、国会が建てる建物ですから、適正手続というのはどえらい重要だと思いますよ。インチキして建てたということになりますよ、手続を上手に導いて。

 だから、最後ですけれども、国交省、これを一遍ちゃんと調べて、どういう問題があったのか、ちゃんと報告してくださいよ。

小山政府参考人 国土交通省の官庁営繕部とも調整しました上で、また御報告をいたします。

河村(た)委員 終わります。

七条委員長 次に、大串博志君。

大串委員 民主党の大串博志でございます。

 きょうは、きのうに引き続きまして、一般質問の中で、きのう入り口のところの議論を始めさせていただきましたけれども、外国人労働者の受け入れ問題について、大臣のお考え、そして各省の検討状況等々について詰めてお伺いをさせていただきたいというふうに思います。

 さて、きのう外国人労働者の受け入れ問題を議論したところで、論点が少しずつ出てきているんだと思うんですね。今現在は研修・技能実習制度でございまして、これを中心として外国人労働者の皆さんの研修を行い実習を行うという形において、労働がそこで行われている面もある、そういうふうな実態になっている。研修・技能実習制度に関して、効果を発揮している面もこれあり、しかし問題な面もこれありということで、厚生労働省の方、そして経済産業省の方で改革案が今般取りまとめられている。そういう中で、法務大臣の方からも、きのう申し上げましたけれども、論点をきちんと指摘された。私はかなり細かく具体的に指示されているなというふうに理解していましたけれども、私案が示された、そういう状況でございました。

 きのうも、この研修・技能実習制度のプラス、マイナス、功罪いろいろな議論がございましたけれども、外国人労働者の受け入れ問題というのを議論する際に、今一つの論点としてあるのはこの研修・技能実習制度をどう評価するかということだと思うんですね。

 制度自体を所掌していらっしゃる厚生労働省の方に、いま一度お尋ねしたいと思います。

 現在の研修・技能実習制度は、プラスもありマイナスもあり、見直さなきゃならない点もあるから改革案も示したんだということをきのう指摘されていますけれども、外国人労働者を受け入れるか、受け入れないかというのが一つの論点に上っているわけですね。では、この論点において、研修・技能実習制度というものをなくしていくというような考え方に厚生労働省として立たれるのかどうか、これについて御所見をお述べください。

草野政府参考人 私どもの立場は、昨日も申し上げたとおり、研修・技能実習制度は、国際技能移転ということでございますが、東アジア地域との経済連携が深まる中で重要性を増していく、いろいろな問題があるわけですが、基本的にこれを維持した上で、いろいろ出ている問題、こういう問題については排除していくという方向で見直しをすべきという考え方でございます。

 ただ、法務大臣の御発言につきましては、あえて申せば、技能実習制度の見直しについて、制度の枠内の検討にとどまらず、その背後にある本質的問題をとらえ、幅広く検討する必要性について問題提起をされたというふうに理解しておりまして、厚生労働省としても、中間報告をベースとしつつも、幅広く意見交換をしてよりよい制度の構築を図ってまいりたいというふうに考えております。

大串委員 今法務大臣の発言に対してもクオートがありましたけれども、法務大臣にもお尋ねしてみたいんです。

 この研修・技能実習制度というものに関して、法務大臣はどう評価されているのか。法務大臣は、記者会見の中で極めて明らかにおっしゃっていますね。現在の両省の報告も技能実習制度を中心に書かれていて、いずれも現在の技能実習制度を維持するという考え方ですが、現在の受け入れの目的が国際技能移転ということになっているわけですけれども、私は、全部とは言いませんが、これは実態とほとんど合っていない、またこれが混乱のもとになっていると思いますというふうに述べていらっしゃいますね。

 これは、大臣の御認識ですか。

長勢国務大臣 記者会見での発言だとすれば、ほとんどと言ったかどうかちょっと正確に記憶しておりませんが、きちんとやっている部分がないわけではないということは認識をしておりますが、特に問題を起こしているところのほとんどは、その実態が国際技能移転という体をなしていないケースが多いというふうには認識しております。

大串委員 今の問題の大きさに関する御認識を、もう少し精緻にお伺いしたいんです。

 今、問題を起こしているケースに関しては、国際技能移転ということに関しての目的をほとんど果たしていないんだというふうな理解をしているということをおっしゃいました。最近、問題を生じている例も結構多くなってきているわけですね。

 そうすると、制度全体としてこれは見直すべきだというところまで来ているのか、あるいはその制度の枠を超えて議論しなきゃならぬというところまで来ているという御認識なのか、それとも悪い部分のところだけを見直せばいいというふうに考えていらっしゃるのか、そこはどの辺の考え方なんでしょうか。

長勢国務大臣 平成五年でしたか、もともとこの制度ができた時点においてもいろいろな問題が指摘されておる中で、一方、人手不足問題というのがあって、内外とも流入圧力が非常に高かったわけでございます。そういう中でこういう仕組みをつくったわけでありまして、この十何年間の施行の中で、それなりの機能を果たすというか、貢献をしてきた制度だと私は思っております。

 問題は、この制度がいい悪いだけではなくて、専門技術者の方々は自由に入れる国になっている、これ以下は基本的には日本で働いてはいけないことになっておる。それのすき間を縫うという表現が適切かどうかはわかりませんが、これだけでは不自由だというような御意見もあってこの制度をつくったわけですが、どうしても全体の制度がいまだに整備されていないというか、基本的には入れないという仕組みになっておるわけです。

 私も、今までそういう立場で議論してきましたし、私は、基本的に日本の産業は日本人が守るべきだと思っていますので、それは基本的に正しいと思っていますが、しかし世間には、これからの人口減少社会、グローバル化等々いろいろなことがあってこれを考えねばならないという意見もありますし、その中で今技能実習制度、先ほど言っているような問題もあって、全体としての制度になっていない中でいろいろな議論が行われておりますので、この際、全体的に見直す、整理したらどうかと。

 しかし、ただそう言っているだけでは議論になりませんので、とりあえずといいますか、私の申し上げたことを私案と新聞等で報道されたり、先生にもそういうふうにおっしゃっていただいていますが、また、制度設計をしていないということは書いておるわけで、むしろ、そういうことを一遍考えてみて、制度設計が本当にできるかどうかという議論をやはりやらないと、いつまでもごちゃごちゃした議論を続けていかなければいかぬということに私は問題提起をさせていただいたという思いであります。

大串委員 何でこれを聞いているかと申しますと、現在の研修・技能実習制度の全体をうまくいっていないと評価するのか、それとも一部がうまくいっていないのでここを見直すと評価するのかによって、やり方が少し変わってくると思うんですね。

 すなわち、どう変わってくるかと私の見るところで申し述べますと、大臣がおっしゃっているように、短期の就労を可能とするという考え方を仮にとったとしても、研修・技能実習制度全体が悪いわけじゃないんだという考え方に立てば、例えば技能実習制度の部分を残すということもあり得るんじゃないかと私は思うんです。その結果によって、相違が出てくるんだと思うんですよ。だから、全体を問題だと考えるのか、それとも一部がやはり問題だと考えるのか、この辺が非常に重要になってくると思うんです。

 この記者会見の中では、技能実習制度に関してはこれでなくなるんです、こういうふうにおっしゃっています。私は、一部が問題なんだという考え方に立てば、その問題である部分を是正していけば、技能実習制度は、これは一つに入国資格の問題の話ですから、技能を持っていない方が実習という形で入ってくるということの入国資格要件を残すということで、あり得る話なんじゃないかと思うんですね。その辺に関して、大臣の御所見はいかがですか。

長勢国務大臣 今の制度を全面的に廃止しなきゃならぬということを、特段明示的に私は申し上げているわけではないのです。厚生労働省、経産省は、今の制度を前提にして悪いところを直そうという大変御苦労された案を出されておる。しかし、これだけでうまくいくのかねと。むしろ、こっちから一遍考えてみて、うまく案ができるかどうか、その場合に、ようやくどっちがいいかということの本当の議論になるんじゃないか、あるいはこの議論をすれば、この直し方についてはまた別の案が出るかもしれない、こういうことを申し上げているわけです。

 今先生がおっしゃるように、今のを全部直すと思っておるのかおられないのかということを言われれば、今その判断は最終的にはしておりません。

大串委員 わかりました。大臣の記者会見の意図が少しずつわかってきたような気がします。

 そこで、私は、大臣の記者会見等々を見る限りにおいては、この研修・技能実習制度をがっぽり見直していこう、すっぱりなくすような勢いで見直していこうというふうに考えていらっしゃるのかなと理解していたものですから、先日、経済産業大臣が記者会見の中で、今の研修・技能実習制度はやはり残すべきなんだ、これを前提として考えるべきなんだというふうな旨の発言をおっしゃいまして、恐らくそういう立場なんだろうと思っておるんです。それを前提とすると、法務大臣の考え方と随分違うなというふうな印象を私は持ったんです。

 経済産業省の方、いかがですか。今の法務大臣の考え方を聞かれて、経済産業省としてはどういうふうにこの私案を見ていくのか、それについての御所見を伺わせてください。

立岡政府参考人 お答えいたします。

 私どもの本制度に対する評価は、昨日のこの場の御審議でお答えを申し上げたとおりでございまして、一定の成果を上げてきた、しかし、他方で、適正化の観点からは大いなる問題があるということだと思います。

 この制度についての評価は、大きく申し上げますと、やはり適正化はまずしっかりやらなきゃいけない。特に、来られた方がやや人道的な観点から問題があるといったところについてはしっかり対応していくということ、これは恐らく、皆さん異論はないところだと思います。

 それから、他方で、実際、中小企業の現場も含め、なかなか人材確保が困難だという中で、技能の移転を含めて実習していただいて、その中で、彼らがいることによって日本人の雇用も支えられるという面があるのも事実だというふうに思っております。この効果についても、多分異論はないと思っております。

 ただ、他方、もう一点議論があるのは、恐らく、この制度の本来の趣旨である国際貢献というところは、日本がアジアとともに生きていく中で、単に来て働いてもらうだけではなくて、やはり来てもらった中で技能を上げて、そして帰っていただいて、それで向こうの国でまた活動していただいてということで、ともに栄えていくという発想できた志があるんだというふうに理解をいたしておりまして、そこのところはやはり大事にしていくべきじゃないかと思っておりまして、そういう観点からも、国際貢献というところをやはり大事にすべきじゃないかと思っております。

 それから、何よりも大事なのは、やはりこういう問題はいろいろな考え方がございまして、日本の将来といいますか、あるいは国の形といいますか、例えば、入ってこられた結果、いろいろな自治体でいろいろな負担が起こったりとか、あるいは治安の問題等々が指摘されてもおります。そういったことを考えますと、やはり大局的な観点から考える必要があるということが恐らく法務大臣がおっしゃった御趣旨だと思います。

 そういった意味では、私どもとしては、そういったもろもろの要素をこの際しっかり議論していくという意味で、私どもの御提案したものがたたき台として議論の一つの材料になればというふうに思っているところでございます。

大串委員 ありがとうございます。

 それでは、少しずつ各論の方に入っていきたいというふうに思うんです。考え方が少しずつ見えてきました。

 今経済産業省の方から御答弁があったことも踏まえて、また後ほど、例えば国際貢献、国際技術移転みたいなことに関してどうするのかというような議論も再度詰めていきたいと思います。

 今般の大臣のこの議論の中の一番の大きな点は、短期の、いわゆる専門的な技術を持つ方じゃないんだけれども、かつ、研修でも実習でもないけれども、短期に労働することを許す制度としようという、そこが一番大きな肝でございます。そのために、受け入れ団体の許可を出して、それに対して枠を与え、それが枠の範囲内で日本企業と雇用契約を結ぶ、こういうふうな仕組みになっているわけでございます。

 きのう、厚生労働省の方から現在の研修・技能実習制度に関する問題点等々、るる指摘がありましたけれども、その中で私にとって非常に大きな問題点の一つと思われるのは、いわゆる一次受け入れ機関の、いろいろな協同組合等々に関して、それが実務に根差さないかもしれない、いわゆる異業種の協同組合というものが最近非常にふえてきて、そこが就労の管理、雇用の管理、そして在留の管理をきちっとやっていないケースが非常にふえてきている、ブローカー的になってきているんじゃないか、こういう問題が非常に大きかった。ここは、潜在的に社会全体として非常に大きな問題を抱える要素をはらんでいるんだと思うんですね。

 さて、今回、大臣が提案された私案においては、私が見るところでは、受け入れ団体というものの果たす役割は、この間厚生労働省の方がおっしゃった現状からすると極めて重要だと思うんですね。この受け入れ団体というのは、大臣、どういうイメージなのか。ぱっとこれを見ただけでよくイメージできなかったものですから、どういうイメージを大臣自身お持ちなのか、お聞かせ願えればというふうに思います。

長勢国務大臣 先生もそういうふうに御理解されているのかもしれませんが、私の案は、どうも、マスコミ等によれば、承知する限りでは、単純労働者を受け入れるのを私が容認する提言をしたということに評価が高いようでございまして、よって、私のところに来るメールもほとんどが反対でございます。それは、そういう理解に基づいて、けしからぬ大臣だという御指摘でございまして、そう言われれば確かにけしからぬ提案だろうと私自身が思っておるわけであります。

 私は、単純労働者を入れると書いておるのではなくて、入れ方を、専門技術者でない人の一連の一つの案を考えたらどうかと申し上げておるだけであります。かつ、私がその視点で申し上げておるように、定住は認めないようにしたらいいのではないかという観点。それから、今現在、国際貢献ということでやってはいますけれども、それをめぐって手続が物すごく煩瑣になって、かつ、それは本当に意味のある手続なのかどうかわからないことを行わざるを得ないというようなこともたびたび起きておるわけです。

 こういうことをどうしたらいいかということを考えますと、受け入れの責任体制を、今は最終的には役所がやっているわけですけれども、役所でそんなに目が届くわけではない、全く無意味な作業をさせられているということもよく考えないかぬ、そういうことにかわるものをどうやったら仕組めるか、かつ、日本の労働市場に影響させないようにしなきゃならぬ、それをどういう形でやれるかということを、今申し上げたような受け入れ団体と受け入れ企業との共同責任という形で考えることはできないだろうか。

 これは、ぜひ一遍、具体案をまだ正確には設計しておりませんけれども、私も考えたいと思いますし法務省にも検討させたいと思いますし、各省にも考えてもらいたい。また、いろいろ各方面で御議論いただいて、私も検討してみたけれどもやはりだめだったということにならないという保証はないわけでございますが、これはぜひみんなで考える一つの視点だと思います。

大串委員 大臣、私のこの問題に対する立場は、今、こういう提案をしてけしからぬ云々の話がありましたので、私がこの提案に対してどう思っているかを、まずスタンスを述べさせていただきますと、私自身は、この提案に関しては、今非常にニュートラルに考えています。研修・技能実習制度だけで外国人労働者の受け入れをしていかなければならないというふうに決めを打つ必要も私自身はないと思っていますし、状況によって、必要性なり、あるいは行政の可能性なんかも含めると、いわゆる専門技術者でない方が一定の法制度の中で労働者として日本の中に入っていらっしゃるという制度も私はあり得る話だろう、今の日本の現状を前提とするとあり得る話だと思っていますので、非常にニュートラルな目でこの案を見て、質問させていただいているわけでございます。

 その上で、今の受け入れ団体の話ですけれども、これから検討してみようということでしたけれども、私自身は、大臣、ここはやはりどうしても非常にこだわってしまうところであります。それはなぜかといいますと、現状があるからなんです。

 現状は、一次受け入れ機関というところでいろいろな協同組合の方々が受け入れ機関としての仕事をしていらっしゃった。ところが、最近において、いろいろな異業種の方々もふえてきて、管理がうまくいっていないケースもふえてきている。であるがゆえに、厚生労働省の方々は、新しい改革案においては、この一次受け入れ機関たる協同組合の方々が本来の業務をきちっと長くやっていらっしゃるということを前提に、この人たちは本当に業界の、単に受け入れをブローカー的にやることをなりわいとするのではなくて、もともと製造なりなんなりすることを前提としてやっていらっしゃる方だから大丈夫なんだ、管理できるはずなんだということをそこに制度として盛り込もうとされているという現実があるんだと思うんですね。

 この受け入れ団体のところを、何があるかよくわからないけれども考えてみようということであるとすると、私は非常に心配な気持ちになってしまいます。すなわち、受け入れ団体があるかないかが、こういうしっかりした受け入れ団体が存在するかどうかというのが非常にクルーシャルになってくるんだと思うんです。

 この受け入れ団体は、ここになり得るようなものが今何か存在するように考えていらっしゃいますか、そこを御答弁ください。

長勢国務大臣 両省のお考えになっておられることが、先生言われるように、実業的な意味での基礎がないとだめだという方向で御議論されているのかどうか、ちょっと私は正確にはわかりません。

 しかし、私は、受け入れの管理あるいは雇用の管理ということについて責任を持てるものであるということが必要であって、実業の基礎がない団体はだめだと固定的に考えることはないのではないかと私個人は思っています。

 今どういうことがイメージされているかということになると、余り具体的に申し上げるのは差し控えさせていただきますけれども、いずれにしても、雇用企業とともに外国人労働者の入国・在留管理、雇用管理にみずから責任を持つというものであることを前提に私は考えたいと思っていますので、その要件についてはいろいろな考え方があると思っています。組織の規模もあったり、あるいは財政的な規模があったり、いろいろ考えられることがあると思いますが、今現在、受け入れ団体としてあるものを前提に、その方々がすべてこれになるということは考えておりません。

大串委員 そうすると、確認なんですけれども、私自身の考え方としては、こういう受け入れ団体みたいなものをつくる、制度の中に盛り込んでいくときには、全く世の中に何もないところから、その業なり、これは多分業として行われるんだと思うんですね、法律としては業として書かれていくんだと思うんです、業としてやっていくときに、全く何もないところからふっと生まれてくるというのはちょっと考えづらい。

 だから、もちろん制度がないからそのものが今存在するわけではないにしても、例えばこういう業をやられている方々がその流れとして、あるいは子会社として、あるいは一セクションとして、あるいは新たなビジネスなり社会貢献なりの可能性として、あるいはニーズに応じて、この辺から出てき得るんじゃないかというぐらいのイメージは持っておかないと、検討するにしてもなかなか前に進まない可能性があるんじゃないかと思うんですね。私は、大臣自身はそういうふうな想定を何がしかお持ちでこれを考えていらっしゃるんじゃないかと思うので、そこをお尋ねしているんです。

 大臣、もうちょっと、この辺の業種の方があり得るんじゃないかぐらいのことがあったら。

長勢国務大臣 もちろん何もなしでということはございませんが、現在受け入れ団体として立派にやっておられる団体もあるでしょうし、職業紹介事業なりなんなりを立派にやっておられる団体もあるわけですし、それから、先生御指摘のように、実業をきちんとやっている団体があって、それがこういう事業についてもきちんとできるということも可能性としてはあるでしょうし、そのどれをどうするということを今申し上げる段階ではございませんけれども、全く世の中になかったものがぽかんと急にできるというようなことをもちろん考えておるわけじゃありません。

大串委員 今幾つかおっしゃいましたね。受け入れ団体、現在いろいろな外国人の受け入れをやっていらっしゃるようなところもあるだろうし、あと、職業紹介事業みたいなものをやっていらっしゃるところもあるでしょうし、職業紹介事業をやられているところは今でもたくさんありますね。それ以外にも、何がしかほかの実業をやっていらっしゃった方がその流れとしてやるということもあるでしょうしというような話が、今やや具体的にありました。

 何でこういうふうにお尋ねしているかというと、まさに先ほど申しましたように、これが非常に基礎となるということを私は認識しているのが一つと、これは許可でございますので、つまり許可制度を新しく創設するということなんですね。

 つまり、入国審査という法務省の方が持っていらっしゃる権限、これは法律に基づく審査権限ですね。これのほかに、受け入れ団体の許可を行うという許可権限を持つということになって、実はこの許可権限を持つということは、政府においては非常に重要な大きな意思決定でございます。許可権限を持つということになると、民間企業と役所のつながりが出てき、そこにいろいろな権利義務関係も出てきますし、いろいろな癒着関係すら出てくるかもしれない。そういうことも考え合わせると、本当にどういう方々がそこに出てき得る要素があって、本当にきちんと監督もできるのかということも考え合わせていかなきゃならないんだと思うんですね。

 では、ちょっと話を進めて、この許可制度ですけれども、受け入れ団体を許可するということを考えていらっしゃる、この許可というのは、これもイメージがちょっとよくわからないんですけれども、どういうふうなイメージで許可を与える、与えないの判断があるんだろうかなと思うんですね。先ほど組織の規模、財産の規模みたいなこともおっしゃいました。あと、ほかにどういうことがあるだろう。短期の外国人就労制度を支える受け入れ機関の許可ですから、あと、どういうふうな要件みたいなものがあるのかなというふうなことを考えちゃうんですね。

 かつ、もう一つお尋ねしたいのは、この許可制度、今私は暗黙の前提として、法務省の方が所管になられるというふうな前提で話しましたけれども、これは大臣のお考えでは、法務省がこの許可制度の所管になるというイメージですか。この二点に関してお答えください。

長勢国務大臣 私は政治家ですから、役所の縄張り争いをやっておるわけじゃありませんので、今のところはということは、当然制度設計ができれば自動的に決まってくるだろうと思います。それから許可とかいうことについての、今までもいろいろな議論がありますし、そういう問題をクリアできるかどうかがこれからの問題でございます。

 ただ、先ほど来申し上げておりますように、いろいろな問題をきちんとする仕組みとして、国の監督下にきちんとした仕事ができるシステムというものがこういう形で考えられないかなと私としては思っておる。

 どう考えるんだ、どう考えるんだとおっしゃられても、今答えられる範囲が決まっておりますし、私はこれから考えたいということでありますから、ぜひひとつ、どうした、どうしたとばかり言わないで、御提案をいただければ大変ありがたいと思いますし、先ほど来の御議論も、私が検討する上で大変参考になっている部分もありますので、感謝を申し上げます。

大串委員 私は、大臣がこれだけ提案されたもので、確認する余地が国会の中であるなと思ったものですから質問している次第でございます。質問をすることは、大いにあり得べしと私は思います。

 かつ、先ほど申しましたように、これは非常に重要な制度に私はなると思うんです。すなわち、新たな許可制度というものが政府に生じる、これは非常に大きな許可制度に私はなると思います。そして、許可を行う運用において、非常に難しいといいますか、悩ましい制度、特に現在の研修・技能実習制度における、先ほど私が申し上げたような異業種の協同組合の増加、管理の難しさ等々を前提とすると、非常に実はこれは運用として難しい制度になるんじゃないかというふうな気がするんですね。

 いろいろな許可業種になりたいという人も、受け入れ団体となりたいという人も、ひょっとしたら殺到されるかもしれない。その方々の功罪、よしあしをきちんと見抜いた上で許可を与えていかなきゃならないし、かつ、監督もしっかりしていかなきゃならない。強大な権限が政府に生じるわけです。だから、それに関しての制度設計を緻密にやっていくというのが非常に重要なものですから、私はお尋ねしているわけです。この新しい許可制度というのは、私は政府にとって非常に大きな許可制度になるというふうに見ております。

 ちょっと大臣から、どうだ、どうだとばかり聞くなというふうに言われましたから、では全体をちょっと聞きますけれども、一つここで苦情を申し上げておきたいと思います。

 この件を質問したくて、レクをお願いしました。レクをお願いして、大臣がこういうふうな記者会見をされたので、それについて教えてくださいということを、事務方の方に来ていただいたところ、いただいたものは大臣の記者会見でございました。ああ、なるほど、これしかないのねということで、それで話を聞かせていただいてあれしましたけれども、後からよくよく確認してみると、大臣、メモを配っていらっしゃるんですね、記者会見のときに。

 これは、私は同党のほかの議員さんから、いや、実は法務省からもらったよということで、記者会見のときに配られていたよというような言いぶりでメモをいただきました。実際、何だ何だということで、後から担当官の方に聞いたところ、ああ、実はそうでしたと後からいただきました。ぜひ、こういうことはなくしていただきたい。

 我々はレクに従ってきっちり詰めて、わざわざ国会審議を通じて聞かなくていいようなことはそこで終わらせて、必要なことだけをここで聞いているんです。こういうことが行われると、こういうことから一々行わなければなりません。このことに関して、恐らく担当官の方も、余りにもばたばたのことだったのでちょっと迷われたんだろうと思います。だからそこは同情を申し上げる点もあるんですが、ぜひ今後、こういうことがないようにしていただきたい。

 一つ、大臣にお伺いしておきます。

 大臣、これは配られたメモです。どうも、見るとこれは役所のメモではないんですね。役所の方もびっくりされたとおっしゃっていましたけれども、役所のメモではない。つづりの間違いなんかもありますけれども。大臣、これは大臣御自身がおつくりになられたものですか。だれがおつくりになられたものですか。

七条委員長 時間が過ぎておりますから、簡単明瞭に。

長勢国務大臣 これは、記者会見で私の発言を正確に理解してもらおうと思って、私がつくって配ったものでございますから、当然先生に隠す必要の全くないものでありますので、担当官が何か勘違いをしたんだろうと思いますので、おわびを申し上げますし、今申し上げたとおりでございます。

大串委員 大臣御自身が、自分でワープロを打たれておつくりになったという理解でよろしゅうございますか。

長勢国務大臣 そんな技術的なことはともかく、私が直接つくった文書であります。

大串委員 いやいや、大事なことなんです。

 これに関しては、許可制度をめぐっていろいろな関係者が存在し得ると私は思っているんです。そこにおいてきちっと監督していかなければならない、そういうふうな背景を持ち得ることだから聞いているんです。この点については、新たにこの事案が進展していくに従って、また議論をさせていただきたいというふうに思います。

 終わります。

七条委員長 次に、石関貴史君。

石関委員 民主党の石関貴史です。

 冒頭ちょっと委員長に申し上げたいんですけれども、少し委員の人数が足りないように思うんですが、大事な委員会ですけれども、こんな状況でまずよろしいのかどうかということで、委員長。

七条委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

七条委員長 速記を起こしてください。

 石関貴史君。

石関委員 それでは改めて、民主党の石関貴史です。

 各党いろいろ事情はあるのかもしれませんけれども、定足数が足りればいいというものでもなかろうと思います。質問させていただく私にとっても、余り閑散としたところは寂しいというような気持ちもございますし、基本的には、委員であれば委員会に出席をするというのが我々の職務だろうと思いますので、大勢出席の中で質問させていただきたいと思います。

 それでは、まず、前回も一度この関連の、まだ判決が出る前に質問させていただいたんですが、地元の問題でもあり、また、公務員に対してのいろいろな犯罪ということで最近議論になることも多いということもあり、改めて取り上げさせていただきたいと思います。

 群馬県に居住の埼玉県警に勤務をしていた警察官の事件であります。元巡査長が懲役十四年、前橋地裁でこの判決が下されました。この事件、事前に通告をしてありますので、簡単にこの事件の経緯について御説明をお願いします。簡単にお願いします。

安藤政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねの事案は、埼玉県警察の巡査長四十四歳が、これは平成十八年十一月八日でありますが、群馬県太田市所在の郵便局におきまして、局長等に包丁を突きつけて現金十二万七千円を強取したことによりまして、同年十一月十三日、群馬県警察に強盗罪で逮捕された事案であります。

 なお、同巡査長は、同年の六月五日と八月七日の二回にわたりましても、同県内の郵便局において強盗を行った事実が明らかとなりましたことから、それぞれの事実で再逮捕されまして、本年五月十七日、前橋地裁におきまして懲役十四年の実刑判決が言い渡されたものと承知しております。

石関委員 まだ一審の判決が出たという段階でありますが、この一審の懲役十四年という判決ですが、これについては警察としてはどのように受けとめていらっしゃいますか。

安藤政府参考人 多くの警察職員が職務に精励する中、法を執行する立場にあります警察官が、お尋ねのような事案を起こしたことにつきまして、まことにこれは言語道断であると考えておりますし、懲役十四年の実刑判決を受けたことは極めて遺憾であると考えております。

 法を執行する立場にある警察官がこのような事案を犯すことは、もう断じてあってはならないことであります。こういうことによりまして、警察に対する国民の信頼を大きく損なうということを十分我々も認識しておりますので、さらなる職員に対する指導というのを徹底してまいりたいと思っております。

石関委員 警察官のみならず、公務員の犯罪というと、我々政治家はもちろんですけれども、公共に奉仕をするという役割、また我々税金で報酬、給与等をもらっているということもあり、通常の民間で仕事をされている方、それより重い、もちろん社会的にも責任を持っているというのは言うまでもないことだと思いますが、特に治安を守る警察官がこういうことをしたということは、さらにさらに重く受けとめなければいけないということだと思います。

 この方は、前にもこちらで質問したときに申し上げたんですけれども、私の選挙区にお住まいであって、私の割と近所なんですね。こういうところにこういう方が住んでいたということも非常に恐るべきことでもありますし、何かあれば警察官の人に助けてもらおうという警察官が実は犯罪者だった、とんでもないことだと思います。

 そこで、いろいろ公務員の全般についても今ちょっと言及させていただきましたけれども、特に警察官について、犯罪がいろいろな面で、情報の流出等も含めて、犯罪的な行為を含めてよく報道されているように実感としてあるんですが、実際、ここ数年とか、経年で見たときに、警察官の犯罪というのはふえているんでしょうか。数字上はどうなっていますか、それを教えてください。実態ですね。あるいは、こういった事件が特に取り上げられるので、我々の感覚として何か警察官の不祥事がふえているような、そんな気持ちにさせられてしまっているのか、あるいは実数として確かにふえているとか変わらない、あるいは頑張っているから減っているんだ、このことについて確認をしたいので教えてください。

安藤政府参考人 お答えいたします。

 警察官の不祥事という場合、もちろん犯罪に至らないものもありますので、その犯罪の件数の暦年についてはちょっと今具体的な数字を持ち合わせておりませんけれども、平成十二年の警察改革、これは神奈川県の不祥事とか埼玉県の桶川事件とかそういうのがありまして、そこから警察改革というのを鋭意推進してまいったわけでありますが、そういう暦年で見ますと、やはり警察改革の効果といいますか、警察官の非違事案といいますか不祥事につきましては、総じて減少傾向にあるということは言えるわけであります。

 ただ、昨年のデータを見ますと、その前年に比べて約二十名ぐらい懲戒処分者数がふえているということと、国民の期待というのは、今委員御指摘のように、厳正、規律ある警察官、モラルの高い警察官ということでありますから、もっと激減をするべきだということは私どもよく認識しておりますので、これからさらにいろいろな手だてをしていく必要があるということで、そういう厳しい認識を持っております。

石関委員 これは、揚げ足をとるつもりでは全くありませんで、確認をしたいということなんですが、減少傾向にあるというふうにおっしゃいましたが、確かにこれは減少傾向にあるんでしょうか。何か内部的な規範に違反して懲戒をしたとかそういうことではなしに、警察官が現に犯罪を犯すという意味では減少傾向にあるというふうにとらえて本当によろしいんですか。

安藤政府参考人 先ほど申し上げました犯罪数、犯罪に限ってというところの具体的な数字についてはちょっと今はお答えできませんが、懲戒処分者数については、平成十二年からの推移を見れば、これは総じて減少傾向にあると言えるということを申し上げたわけでございます。

石関委員 それでは、先ほどもおっしゃられましたけれども、具体的なこういった再発防止、それから警察官全体に対する倫理の徹底、そういったものへの取り組み、これまでの取り組みでこういった効果があったと、大きな取り組みについてまずお尋ねをします。そして、こういった事件を機会として、どのような取り組みをまた新たにされているのか、またあるいは計画をされているのか、これについて教えてください。

安藤政府参考人 これまでの非違事案全般につきましての再発防止策について、三つの柱を中心に我々としてはこれまで施策を進めてきたわけであります。もちろん、非違事案個々につきましては、原因というのは必ずしも一般化できないものでありますけれども。

 一つは、やはり警察官個々の職員の倫理意識を高めるための職務倫理教養の充実、警察官の使命感とか誇りとか、これは当然でありますが、初心といいますか、そういうものを忘れさせないように、いかに随時教養していくかということを一つの大きな柱としてこれまでやってきました。

 二つ目は、特に私的な非違事案につきましては、これは身上把握とか指導というのはプライバシーに若干かかわるところがありますのでなかなか難しいところがありますけれども、そういう身上把握、指導の強化ということが二つ目の柱であります。

 三つ目は、仕事上といいますか業務上の非違事案防止を図るためにどうするかということでありますが、これは御案内のとおり、やはり仕事の管理ということをチェックする、つまり、幹部による指揮監督とか業務管理の徹底を行っていく、こういう形で進めてまいったわけであります。

 先ほど御指摘の、埼玉県警察官による強盗事件の原因、もちろんこれは、まず、職務倫理が徹底していないといいますか、本人にそういう警察官としての基本的なものがあれば当然やらないわけですが、もう一つ、やはり我々としては、今後の再発防止策の教訓といいますか、六千万以上の多額の借財があった、この借財について、我々当局がといいますか、幹部が個人の借財を把握できれば、もちろんその前に指導したり、未然防止のためにするわけですが、委員御案内のとおり、これは個人の問題でありますから、これを正確に把握することはどうしてもできない。この埼玉の事案というのも、そういう多額の借財を抱えていて、この返済に窮したということが最大の要因であった。

 とすれば、今回の事案を検証しますと、例えば車を何台も買いかえていたというようなことが事件が起きてからわかった、あるいは六千万以上の借財があったということも初めてわかったということがありますので、今後の反省点としては、この借財状況につきまして、より踏み込んだ身上把握、指導をしていく。もちろん、そういうプライバシーという観点から、どこまで踏み込めるかということはありますけれども。

 例えば、埼玉県の今回の再発防止策では、借財に関する聞き取りをより精緻なものにするとか、特に住宅ローンをセットするときにかなり生活設計を間違えるということがありますから、部内に、各所属にそういう生活相談のプロといいますか、借財に関しても的確なアドバイスをする、あるいは部外の専門家による生活相談といいますか、そういうようなことを再発防止策として、より踏み込んだものとしてやろうということで、今、課題は、もちろん依然として非違事案というのは発生してまことに遺憾なことでありますけれども、より踏み込んだ再発防止策をとるように、これから各県に鋭意指導してまいりたいと思います。

石関委員 今まさに御答弁いただいたような部分で、この事件後に、今判決が出ましたけれども、昨年十一月にこの被告が逮捕されたということですが、このときに警察庁の漆間長官が問題把握の重要性を強調されて、一例として警察官の家庭訪問というのを挙げられているんですね、御記憶にあろうと思いますが。しかし、現実には、今御答弁の中にも幾らかありましたけれども、なかなか難しい。訪問したり、個人の借財までちゃんと調べる、どこまで本当にやれるのか、やっていいのかという問題ももちろんあろうと思います。しかし、これは取材した記者にも確認をしましたが、この判決があった後も家庭訪問の実施に向けた検討はしていないということを県警の警務課ではコメントしているんですね。

 ですから、では、この漆間長官の発言と実際の県警のコメントというのはどういうふうにとらえたらいいのか。努力をするということであればまだ若干の理解はできるんですが、検討もしていないと。これでは、今御答弁のあったようなことも、実効性としては、本当にやってくれるのかな、そういった不安にも駆られるんですが、この漆間長官の発言、私はこの方向で進めるべきという立場で申し上げているんですが、実際現場ではできないと。この溝をどのように埋めていかれるおつもりでしょうか。

安藤政府参考人 家庭訪問の件でありますが、まず、警察官というのは法を執行する立場にあるわけでございますので、私生活においても高い倫理意識を求められるということでありますから、そうした職場において、やはり私生活のことが影響されないように、職員の私生活面にも我々としては関心を持って身上把握、指導を行う必要がある、こういう観点でやってまいったわけであります。他方、今委員の御指摘にもありましたが、これは個人のプライバシー等の問題から、把握、指導には限界がある、こういう中でどうするかということであります。

 先ほど、漆間警察庁長官の方から記者会見のときに家庭訪問の話が出たわけでありますが、これはあくまでもそういうことが望ましいのではないかということでありまして、あくまでこれは各県の、都道府県の判断でどういう形でやるか、それはやはりやり方というのはあるわけでありますし、もうこれまでも家庭訪問というのは各県で、多少ばらつきがありますが、必要に応じてやってきたというふうに承知しております。今、例えば埼玉県については、再発防止策の中でも一つの柱として家庭訪問の実施をするというふうに我々報告を受けておりますが、そういうバランスの中でどう実施していくかということだと思います。

石関委員 警察組織内で、警察の構成員、警察官を監視したり、何か非違行為があるのではないか、こういう仕組みというのは、具体的にどうなっているんでしょうか。例えばアメリカなんかだと、いろいろ地域にもよるんでしょうけれども、内務班というものがあってやるというのがあったりとか、警察内部で自己チェックをする部門と、それからその人員や、具体的にそういった方々が日々どのような活動を行っているのか。それがうまく働いて、こういった部分も、家庭訪問や借財というものも含めて、何かチェックできる仕組みが今現に警察にあるのか、あるいは全くそういうものがないとか、あるいはこういうものがあるんだけれども機能していないからこういうことになってしまったのか、そういう警察の内部のチェックの仕組み。例えば、軍隊でいえば憲兵というのがいて、ある程度そういうことも行う。どれだけ日々調査をしているのかわかりませんが、現在の自衛隊にもそういった部門があるということですが、警察はどうなっているんですか。

安藤政府参考人 警察の中では、各都道府県レベルで見ますと、都道府県警察の本部に監察部門というものがずっと歴史的にございまして、そこで、それぞれの県である程度の体制の差はありますけれども、もちろん非違事案といいますか、そういうものが明らかになれば、そこで調査して懲戒処分をする、あるいは捜査部門と協力して、犯罪であれば事件を送致するということをやるわけであります。

 そういうことに至らなくてもいろいろな、例えば各部門から情報が寄せられればそれを掘り下げて非違事案になるかどうかとか、そういうことを日々やって、この監察体制の強化というのは、先ほど申し上げました平成十二年の警察改革で、これは警察庁も管区警察局もそうですが、都道府県もかなり強化をされて、ここが健全に機能するということが最大の担保だと思っています。

石関委員 その監察部門なんですが、監察部門に配属された方々というのは、厳密に言えば何人というのを通告もしてありませんからそこを教えてもらいたいということじゃないんですが、いわゆる監察畑に行くと監察でずっと過ごす方が多いのか、あるいはかなり人事交流というか、異動ですけれども、監察に行ってまたほかの部門に行く、警務部に行ったりとか、うろうろするということになっているのか、傾向としてはどのような形になっていますか。おれは監察一本だという方が七割八割を占めているのか。キャリアは別ですよ、キャリアはいろいろなところに異動しますから。一般的にはどのような形になっていますか。

安藤政府参考人 一般的に申し上げると、これは事実でありますけれども、若いとき監察に登用されて、また昇任しまして、また次に警察署へ昇任で出て、また戻ってくる、こういう人もおりますけれども、基本的にいろいろ各分野の人材から非常に優秀な人材をとって、この部門は先ほど言いましたように優秀な集団でなきゃ機能しないと思いますので、例えば警務といいますか、そういう部門だけに限るんじゃなくて、事件の捜査ということもありますから捜査部門の優秀な者も監察にリクルートしたり、そういうことで、人材につきましては優秀な人材を各分野からとっているところでありますから、ずっと監察ということは原則としてございません。

石関委員 それぞれいいところ悪いところがあるんだと思うんですけれども、余り行ったり来たりしていると、また仲間のところに戻ったり、あるいはもとの仲間がいるからこれはこのぐらいにしておこうかとか、それもよろしくない。逆に、治安を守って悪い人間を捕まえようという人が内部の調査だけをやる監察だけにいるというのもモラールの面からどうかなというのもあろうと思うんですが、これも一考の余地があると思いますので、内部のチェック体制をしっかりやってもらいたいということ。

 それから、やる気をどう保つか。警察官になろうという人は犯罪を犯そうという人はいないというふうにもちろん信じておりますけれども、それでも入っていくうちにやる気がうせてきたりとか、それからまた、誤って犯罪に手を染めてしまうという方もいらっしゃるんだろうと思います。やる気をどう高めるか。

 今ここでお尋ねしても頑張れと言うしかないのかもしれませんけれども、実際、私、県議会のときに警察委員会にも所属をし、気やすくお話をしますと、いろいろ御不満もあり、警察官の方の処遇もしっかりして、やる気になってもらわなければいけない、あるいは、幹部の方は本部の方から、中央からやってきてどうせ一年か二年でいなくなっちゃうからよ、こういうのもあるし、これは今官僚全体の制度としても見直しを図られているところでありますが、警察組織内の意思疎通やそれから監察の制度、そういったものについて、こういった事件を機会としてしっかり取り組んでいただきたいというのを改めて申し上げたいと思います。

 そこで、最後にこの件に関しては法務大臣に御所見をお伺いしたいんですけれども、この判決、懲役十四年ということなんですが、被告の弁護人は、現職警察官で世間を騒がせたからといって通常の倍近い量刑で重過ぎる、このように言っているんですね。弁護人としては控訴をする方向だというふうに言っているんですが、今の警察の答弁も踏まえて、特に警察官あるいは一つの例でいえば、徴税をする立場の国税の人間が脱税をしていたとか、あるいは指南をしていた、こういった場合も公務員としては考えられますが、この場合、警察官がこういう犯罪を犯してこういう量刑になった、このことについて、法務大臣としてはどのように受けとめられますでしょうか。

長勢国務大臣 個別の事件のことですから具体的なことは申し上げかねますけれども、警察庁も御答弁がありましたように、治安を守るべき立場の警察官に沿った量刑というものを裁判所が御判断されるものと思います。

石関委員 ありがとうございます。警察官の話については以上にさせていただきます。

 そして次は、これも先日御質問申し上げて、少し足りない部分がありましたから詳しくお尋ねをしたいと思います。性犯罪者の再犯防止対策についてということでお尋ねをいたします。

 先日、前日の通告でもあり、時間もないしということで、それはそれで結構だったんですが、それからまた時間がありましたので、各国の性犯罪者の再犯防止対策について通告をしてありますので、この国はこのような防止策をとっているんだというようなことを簡明に御教示いただきたいと思います。

小津政府参考人 例えば、アメリカにおきましては、一定の性犯罪等を犯した者に対しまして、一定の期間、氏名、住所、顔写真、犯罪歴等の登録を義務づけまして、その登録情報が公開されることとされているものと承知しております。イギリスにおきましては、出所後において、性犯罪について有罪判決を受けた者について、住所等の届け出や子供と接触するような活動を禁止するなどの命令を出すことができるという制度があるものと承知しております。そのほか、ドイツ、フランスにつきましても、刑期を終えた性犯罪者等につきまして、その行状を監督することができる制度などが設けられていると承知しております。

 大略を申し上げれば、まずそのようなことでございます。

石関委員 それはこの前伺ったものなんですね。それじゃなくて、もっと知りたいということで今御質問申し上げているんです。

 それで、一つには、この前申し上げたホルモン注射を打って、どうしても性欲が抑えられない方はそういう防止策をとっている国もあるということですが、このことについてはどうか。アメリカではそういう例があるということまでの御答弁だったんですが、その後詳しく調べられていると思いますが、いかがですか。

小津政府参考人 それでは、アメリカにつきましてさらに詳しく把握していることを申し上げます。

 メーガン法という法律がございまして、こちらは犯罪者の情報を登録したり公開したりすることに関する法律でございます。年少者に対する犯罪や暴力的な性犯罪を犯した者に対して、一定期間、氏名、住所、身体的特徴、写真等の登録を義務づける、登録情報は一般市民に公開をするというようなことが内容でございます。

 次に、ジェシカ法と呼ばれている法律がございまして、これは性犯罪等を犯した者に対して、二十四時間、リアルタイムでアクティブGPSというものによる行動観察を実施しているというものでございまして、これはフロリダで行われていると承知しております。これの対象者は条件つきの仮釈放、保護観察、コミュニティーコントロールの対象となった性犯罪者でございます。

 それから、SVP法という法律がございまして、これは暴力的な性犯罪によって有罪判決を受けた者で、精神的な異常等によってさらに暴力的な性犯罪を行うおそれがある者につきまして、民事上の拘束を認める制度がある。

 アメリカについてはこのような情報を得ております。

石関委員 それをもっと踏み込んでちょっと私からもお願いをしたいし、研究をしてもらいたいなというのが、先日申し上げたホルモン注射をするとか、そういう形で性欲を抑えるということ。今度またやりますから、よく調べておいてください。きょうは、きょうの範囲で結構ですから。

 例えば、切りもないんですけれども、こういう例、これは雑誌の記事ですけれども、タイトルが「窒息王前上博が書いた「謝罪ゼロ!」の獄中手紙」。ちょっとここで読み上げるのも恐縮なような内容ですけれども、全然反省をしていないし、一般的に見れば病気なんだろうというふうにみなされる事案だと思います、わかりませんけれども、そういった論調でも書いてあるし。しかし、弁護する側は、障害者なんだ、アスペルガー障害だとか、いろいろ書いてあります。反論する側は、病気だからといってとか、同じ病気を持っていてもちゃんと生活している人もいますよと。こういうこともあり、死刑の判決が出たんですが、不服として控訴をしたというこの事案です。

 先日も御質問して答弁をいただきましたけれども、やはり、性犯罪の再犯率は非常に高いんですね。どうにもならないという部分もあろうと思いますし、今伺っても、別に、海外の例を調べたからといって、日本にそれがすぐ適用できるとか、風土的な問題や、我々自身の、日本国民の倫理観とか道徳観、人権の意識というものは違いますから、それがすぐ導入できるということを申し上げているんじゃありませんが、近年犯罪が増加している、日本の中で過去に比べて増加をしていて、それから、世界各国でテロがこういうふうに起こっているので、協力して日本の国内法も整備しよう、こういうことをこの法務委員会でも論じられてくる中で、こういった個々の問題について、海外のそれぞれの事情についてわかっていない、私はこれは非常に問題だと思うんですね。

 そういったことをしっかり把握をした上で、テロの防止についても、こういった性犯罪の問題についても、それからマネーロンダリングの問題についても、もっとやはり各国の事情もよく知った上で、国内がこういう状況だからこうやっていこうじゃないか、こういうふうに法案も提出をしてもらうなり、ここで議論をしないとなかなか我々自身が納得できない。答弁もまともに返ってこない、資料がないんです、こういったことでは、新しい法律をつくるとか改正をする土壌が整っていないという意味があって、特にこれは性犯罪の問題で私も絶対許しがたいという意味もあって取り上げているんですが、全般について、ぜひ各省庁でそういった取り組みをしっかりやってもらいたいということ。

 最後に、この事前のお話で、性犯罪者の再犯防止対策については、特に警察庁の方はよく調査をしていないというような答えをいただいているんですが、やはり警察、法務省それぞれ協力して、私がお尋ねしたようなものも含めて、しっかり調査をしていくべきだというふうに思いますが、警察、それから最後に法務大臣に、それについての私のお願いと、御答弁をお願いします。警察それから法務大臣、お願いします。

七条委員長 時間が過ぎておりますから、簡単明瞭にお願いいたします。

片桐政府参考人 私どももまだ本格的な調査はいたしておりませんけれども、今後どうするかについては、法務省とも御相談をいたしたいと思っております。

長勢国務大臣 性犯罪を中心にして再犯防止は大変大事な課題でございますので、外国のことで参考になることがあるかないか、連携しながら研究させていただきたいと思います。

石関委員 ぜひ、再度強くお願いをしたいと思います。

 実際、照会をかけるのは、大使館を通さなきゃいけないとかありますけれども、それはやっていて当然のことだと私は思いますね。ですから、質問される前に、ぜひ各省庁独自に鋭意取り組んでいただきたいというふうに思います。

 あと二点、大きな項目で事前に通告をさせていただきまして、おいでいただいた方には申しわけありませんが、また近々時間をいただいて質問させていただけるというふうに思っておりますので、その際にまた改めてお願いします。

 ありがとうございました。

     ――――◇―――――

七条委員長 次に、内閣提出、犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。長勢法務大臣。

    ―――――――――――――

 犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

長勢国務大臣 犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 犯罪によって傷ついた被害者やその遺族の方々の保護、支援を図っていくことは極めて重要であり、これまでもさまざまな取り組みが行われてきましたが、多くの犯罪被害者等にとって、その被害から回復して平穏な生活に戻るためには、依然としてさまざまな困難があることが指摘されています。

 このような現状を踏まえ、平成十六年十二月には、犯罪被害者等のための施策の基本理念や各種の基本的施策等を定めた犯罪被害者等基本法が成立し、これを受け、平成十七年十二月には、犯罪被害者等基本計画が閣議決定されたところ、この基本計画の中には、刑事手続または民事手続に関するもので立法的手当てが必要なものとして、犯罪被害者等が刑事裁判に直接関与することのできる制度、損害賠償請求に関し刑事手続の成果を利用する制度等についての検討及び施策の実施が掲げられております。

 そこで、この法律案は、犯罪被害者等基本計画を踏まえ、犯罪被害者等の権利利益の一層の保護を図るため、刑事訴訟法、民事訴訟法、犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律、その他の法律を改正し、所要の法整備を行おうとするものであります。

 この法律案の要点を申し上げます。

 第一は、刑事訴訟法を改正して、犯罪被害者等が刑事裁判に参加する制度を創設するものであります。

 すなわち、裁判所は、故意の犯罪行為により人を死傷させた罪、業務上過失致死傷の罪等の被害者等から被告事件の手続への参加の申し出がある場合において、相当と認めるときは、当該被害者等の参加を許すものとし、参加を許された者は、原則として公判期日に出席することができるとともに、一定の要件のもとで、証人の尋問、被告人に対する質問及び事実または法律の適用について意見の陳述をすることができることとしております。

 第二は、同じく刑事訴訟法を改正して、刑事手続において犯罪被害者等の氏名等の情報を保護するための制度を創設するものであります。

 すなわち、裁判所は、相当と認めるときは、性犯罪等の被害者の氏名等について、公開の法廷でこれを明らかにしない旨の決定をすることができることとし、この決定があったときは、起訴状の朗読等の訴訟手続は、被害者の氏名等を明らかにしない方法で行うこととしております。また、検察官は、いわゆる証拠開示の際に、被害者の氏名等が明らかにされることにより被害者等の名誉が害されるおそれ等があると認めるときは、弁護人に対し、被害者の氏名等が被告人その他の者に知られないようにすることを求めることができることとしております。

 第三は、民事訴訟法を改正して、民事訴訟におけるビデオリンク等の措置を導入するものであります。

 すなわち、民事訴訟においても、証人尋問及び当事者尋問の際に、付き添い、遮へい及びビデオリンクの各措置をとることを認めることとしております。

 第四は、犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律を改正して、損害賠償請求に関し刑事手続の成果を利用する制度を創設するものであります。

 すなわち、故意の犯罪行為により人を死傷させた罪等に係る被告事件の被害者等は、被告事件の係属する裁判所に対し、被告人に損害賠償を命ずる旨の申し立てをすることができることとし、当該裁判所は、被告事件について有罪の言い渡しをした後、最初の口頭弁論または審尋の期日において、被告事件の訴訟記録を取り調べた上、原則として四回以内の期日において審理を行い、決定によりその申し立てについての裁判をすることとしております。

 第五は、同じく犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律を改正して、公判記録の閲覧及び謄写の範囲を拡大するものであります。

 すなわち、刑事被告事件の被害者等には、原則として、公判記録の閲覧または謄写を認めることとし、また、いわゆる同種余罪の被害者等にも、損害賠償請求権の行使のため必要があると認められる場合であって、相当と認められるときは、公判記録の閲覧または謄写を認めることとしております。

 このほか、所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、この法律案の趣旨であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。

七条委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時二十九分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時三分開議

七条委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣府犯罪被害者等施策推進室長荒木二郎君、法務省民事局長寺田逸郎君、法務省刑事局長小津博司君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

七条委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

七条委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局小川刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

七条委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

七条委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大口善徳君。

大口委員 公明党の大口でございます。

 犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案について、質疑をしてまいりたいと思います。

 我が国における犯罪被害者施策は、新宿西口バス放火事件を契機に、昭和五十五年の犯罪被害者等給付法の制定によって始まり、平成十二年には犯罪被害者保護二法が制定され、同十六年十二月には、犯罪被害者等の強い声を受けて、議員立法により犯罪被害者等基本法が制定され、平成十七年十二月、犯罪被害者等基本計画が閣議決定され、これにより、省庁横断的な犯罪被害者等のための施策が着実に進み、これまで行われてきた犯罪被害者等への支援について、国が配慮するものから、被害者自身が有する尊厳が尊重され、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利として位置づけられたのであります。

 捜査や公訴提起は、公の秩序維持のために行うものであって、被害者のために行うものではないという平成二年二月の最高裁判決の刑訴法の考え方から見れば、画期的な転換であるとも考えております。

 我が党は、これまで一貫して、犯罪被害者等の権利利益の保護を図るため、被害者団体の方々を初め、現場の御意見を直接伺いながら、施策の実現に積極的に取り組んでまいりました。この基本計画の策定についても取り組んできたわけでございます。本法律案の柱である犯罪被害者等の刑事手続参加制度に関して、我々は、マニフェストにもこの制度の創設を掲げており、このたびの法案提出に当たり、感慨深く受けとめております。

 これまでの犯罪被害者支援の歴史を踏まえ、犯罪被害者等基本計画に明記されているように、捜査や刑事裁判等に対し、事件の当事者として、事件の真相を知りたい、善悪と責任を明らかにしてもらいたい、自己の、あるいは家族の名誉を回復してほしい等の犯罪被害者等の方々の思いを考えると、本法律案が成立すればこれまでの取り組みが一段と進むことになり、その意義は大きいと考えるわけでございますけれども、このような点についてどうお考えか、法務大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

長勢国務大臣 今お話しのとおり、かねてから大口先生を初め、被害者の権利利益の保護に大変御尽力をされてこられたことに対しまして、敬意を表するものでございます。

 今お話しのとおりでありまして、本法律案は、議員立法によりほぼ全会一致で平成十六年にできました犯罪被害者等基本法、それに基づいて平成十七年に犯罪被害者等基本計画が策定されて、それを受けて、被害者参加の制度や損害賠償命令の制度を設けることなどを内容とする法律案でございます。

 今回、この被害者参加の制度を設けることにより、被害者の方々が刑事裁判に適切に関与することができるようになりますので、被害者の方々の名誉の回復や被害からの立ち直りにも資するものであると考えております。

 また、刑事裁判が被害者の方々の心情や意見をも十分に踏まえた上でなされることがより明確となり、刑事司法に対する被害者を初めとする国民の信頼を一層確保するとともに、適正な科刑の実現にも資することになるものと考えております。

 このように、本法律案は、被害者の方々の権利利益の保護を一層図る上で非常に重要な意義を有するものと考えております。

大口委員 ドイツやフランスなどでも犯罪被害者が刑事裁判に直接関与することのできる制度があるわけでございますけれども、こういうドイツやフランスの運用の状況についてお伺いしたいと思います。

小津政府参考人 お答え申し上げます。

 諸外国における制度の運用状況につきましては、必ずしもその詳細を承知しているわけではございませんが、まずお尋ねのドイツにおきましては、強姦、傷害、監禁等の一定の犯罪の被害者や違法行為により死亡した者の遺族等について公訴参加が認められておりまして、二〇〇五年には一万件を超える事件について公訴参加が行われていると承知しております。

 フランスにおきましては、被害者は、私訴原告人となった場合、当事者として刑事裁判に関与することが認められておりまして、具体的な統計は見当たらないのでございますが、多くの事件において私訴原告人が刑事裁判に関与しているものと承知しております。

大口委員 本法律案の柱は、被害者等が刑事裁判に参加する制度の導入であるわけでございます。今大臣からもその意義についてお話があったわけでございますけれども、本制度は、事件の当事者である犯罪被害者等が直接刑事手続に参加するところに犯罪被害者等の権利利益の回復にとって重要な意義があるとの認識から、その導入を求める声が多く寄せられていたわけであります。

 また、被告事件について、公判廷に出席して直接意見を述べ、証人尋問、被告人質問等をすることができることにより、犯罪被害者等の生の声を刑事裁判に反映させることができ、刑事司法は犯罪被害者等のためにも存在することを明確にしたものであると賛同の声が寄せられているわけであります。

 椎橋隆幸中央大学教授が、毎日新聞の本年三月二十四日付で述べておられることを紹介します。事件の当事者である被害者等が事件の推移に関心を持ち、直接関与したいという気持ちは尊重すべきであり、適切な手続への関与が被害者等の名誉の回復や立ち直りに資すると言える、さらに、事件の利害関係者の意見をより反映した刑事裁判となり国民の信頼が増し、場合によっては被害者等の意見を直接聞くことにより被告の反省が深まり、その更生に資することもあり得る、こう述べておられるわけでございます。

 他方、犯罪被害者等によって感情的な訴訟活動がなされると、公平で公正な裁判を阻害することになるのではないかとの懸念も寄せられております。この点についてどのようにお考えか、法務大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

長勢国務大臣 裁判が感情的な形で混乱するということはあってはならないことだと思います。

 現在の刑事訴訟におきましても、被害者の方々が証人として証言することがあるわけでありますが、また、希望する場合には、処罰感情などの心情を中心とする意見を法廷で陳述することも認められておるわけでありますが、そのような際に、いたずらに感情的な言動がなされたり、訴訟手続に混乱が生じているわけではないというふうに承知をしております。

 その上で、今回、被害者参加の制度を設けるわけでございますので、そこにおいては、万が一にもそういう感情的といったような弊害が生ずることがないようにしなければなりません。

 そこで、例えば、被害者参加人は、被告人質問等を行おうとする場合には、あらかじめその内容を明らかにした上で、検察官を経由して申し出なければならないこととしているなど、被害者参加人がいたずらに感情的な訴訟活動を行うことがないよう、検察官があらかじめ適切に対処することができる仕組みとするなどのさまざまな措置を講じているわけでございまして、本制度のもとで被害者の方々が刑事裁判へ参加することを認めたからといって、いたずらに感情的な訴訟活動が行われて混乱するおそれはないものというふうに考えております。

大口委員 本制度の施行は、これが成立すれば、平成二十一年に始まる裁判員制度の導入の約半年前になると伺っております。裁判員制度は、国民が刑事裁判において裁判官とともに審理に参加する制度でありますが、裁判員が審理をする刑事裁判に犯罪被害者等が参加する場合、被害者等による感情的な質問や意見の陳述が裁判員の心証形成に多大な影響を及ぼすのではないか、裁判員は客観的な証拠と被害者の主張とを峻別できないのではないか、こういう懸念があると聞いておりますが、この点について法務大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

長勢国務大臣 感情的な質問や陳述が行えないようにするので、そういうおそれはないというふうに今申し上げたとおりでございます。

 裁判員制度は、広く国民の感覚を裁判の内容に反映させることにより、司法に対する国民の理解や支持を深めるために導入されるものでありますし、裁判員の感覚を刑事裁判に適切に反映させることこそが適正な裁判の実現につながるものと考えております。

 そして、被害者参加人等のする証人や被告人に対する質問自体や被害者参加人等による事実または法律の適用についての意見の陳述というものはいずれも証拠とはならないものですが、このような証拠とはならない質問や意見の陳述等と証拠とを峻別して裁判を行うべきことについては、お話しのとおりでありまして、評議等の場で裁判官が裁判員に十分説明して理解していただく、こういうことによって審理、判断の適正を確保することができるというふうに考えております。

 そういう次第でございますので、被害者参加制度を設けたからといって裁判員に不当な影響を及ぼすということにはならないというふうに考えております。

大口委員 犯罪被害者等に、被告人質問、それから証人尋問、求刑意見も含む広範な訴訟活動を容認することは、被害実態の解明に必要な資料の提供の役割を超えて、主体的にその応報感情に基づく処罰を求める地位に立たせることになり、理論的には国家刑罰権の一翼を担わせることになりはしないか、こういう指摘もありますが、この点についての法務大臣の御見解はいかがでございましょうか。

長勢国務大臣 刑事訴訟法では、刑罰権を私人が行使するということは認めていないわけで、被告人の有罪、無罪を決定する権限は裁判所が有しております。また、公訴を提起する権限や提起された公訴に基づいて主張、立証を行う権限は検察官のみが有しておるわけでありますけれども、本法律案による被害者参加の制度は、これらの点を何ら変更するものではございません。

 すなわち、本制度においては、被害者参加人等は、刑事裁判の審判の対象を設定することは許されておらないわけでありますし、公判請求権、訴因設定権、上訴権等は認められていませんし、このような権限に深くかかわる証拠調べ請求権も認められておりません。

 なお、被害者参加人等は、被告人質問等の一定の訴訟活動を行うことが認められるものの、これらは一定の要件のもとで裁判所が相当と認めて許可した場合に限って行い得ることになるものでございます。

 このように、被害者参加の制度は、現在の刑事訴訟法の基本的な構造を維持しつつ、これに抵触しない範囲内で被害者参加人等に一定の限定的な訴訟活動を行うことを認めるものでありますので、国家刑罰権の行使の一端を被害者に担わせるというものではないと考えます。

大口委員 ドイツのように公判請求権、訴因設定権、証拠調べ請求権、上訴権等の訴訟当事者が持つ権利が本法律案で規定されなかったわけですが、これについては非常に要望もあるわけでありますが、これを認めなかった理由についてお伺いしたいと思います。

小津政府参考人 まず、公判請求権につきましては、刑事訴訟法がいわゆる国家訴追主義を採用しておりますのは、公訴の提起が、法と証拠に基づき、客観的かつ公平に行われるようにするためであると考えられているところでございまして、その基本があるわけでございます。

 また、平成十六年には、検察官による起訴、不起訴の判断に民意を反映させるための制度といたしまして、検察審査会の起訴議決に拘束力を認める制度が新設されまして、平成二十一年までにこの制度が実施されるということとなっておるわけでございます。

 このような点を総合的に考えまして、この点を被害者の方に認めるのは相当ではないと考えられたところでございます。

 次に、訴因の設定権につきましては、仮に被害者の方に認めるとなりますと、実際には公判請求権を認めるのと同様になるわけでございます。また、争点や審理の対象がふえることによりまして刑事裁判が複雑化することも考えられる、このようなことも加わりまして、これを認めるのは相当ではないと考えられました。

 上訴権につきましては、被告人のほか、検察官にも上訴権が認められておりますが、その理由は、法と証拠に基づき、事実認定、法の適用、刑の量定等に関する原判決の誤りを是正するためであると考えられまして、公判請求権と同様に、客観的かつ公平に行われるべきものであると考えられるわけでございます。

 最後に、証拠調べ請求権でございます。これは、被害者等の方に認めることといたしますと、検察官と被害者等との間に主張、立証の抵触が生じることにより、真実の発見が困難になるということでございます。また、その反面として、被告人側が利益を得るということになる場合もあろうかとも思います。また、検察官や弁護人が取り調べの必要があるとは考えていない証人等の取り調べが行われますことは、証人等の負担や迅速な裁判の要請との関係でも問題がある、このように考えられたことから、これを認めるのは相当でないということになったわけでございます。

大口委員 被害者参加制度の対象でございますけれども、故意の犯罪行為により人を死傷させた罪、強制わいせつ及び強姦の罪、業務上過失致死傷等の罪、自動車運転過失致死傷罪も成立して含まれることになるわけですけれども、逮捕及び監禁の罪並びに略取、誘拐及び人身売買の罪等に係る被告事件に限定されているのは、どういう理由でありますか。

 また、財産犯を一律に対象犯罪から除外した理由、それこそ、老後の財産を一切だまされてとられてしまったというふうな方々もいらっしゃるわけでございますけれども、なぜか。

 さらに、将来的には、犯罪被害者等が刑事裁判に参加できる対象犯罪が拡張されることも考えられるのか。この三点についてお伺いしたいと思います。

小津政府参考人 犯罪被害者の方、それぞれの事件によっていろいろな被害を受けておられるわけでございます。その深刻さ等々、確かに、一律に罪種で考えられるかという問題があることは、私どもも承知しておるわけでございます。

 ただ、制度として構築いたしますときに、どのような考え方で今回そのように区切ったかということについて御説明申し上げます。

 被害者参加の制度は、「すべて犯罪被害者等は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有する。」という基本法が定める理念に基づくものでございます。個人の尊厳の根幹、これは何といいましても、人の生命身体、そして自由に害をこうむったということが最も根幹をなすものではないかと考えられまして、そのような事件の被害者の方々については広く対象とすることがその趣旨に合致するだろうと考えられました。

 また、本制度に対する被害者の方々のニーズを判断いたしますためには、現行法上の意見陳述制度の運用状況が参考になると考えられるわけでございますが、当局において行った調査の結果によりますと、意見陳述の申し出を行った方の約七割が遺族の方々でございます。また、被害者が死傷した事件のほか、強姦、強制わいせつ、逮捕監禁など、被害者等が身体活動等の自由または性的自由に害をこうむった事案について、やはり意見陳述の申し出の比率が比較的高いということが明らかになりました。

 そこで、本制度を設ける趣旨でございますとか被害者の方のニーズなどを総合的に考慮いたしまして、今申し上げましたような、本法律案の定めるところに限らせていただいたということでございます。

 以上でございます。

大口委員 今後、拡張されることも考えられるかということについては、今の段階ではちょっと答えられないということですね。

 次に、法律案の三百十六条の三十三の一項で、裁判所は、相当と認めるときは、被害者等の被告事件の手続への参加を許すものとする、こう規定しているわけでありますが、それでは、相当と認められない場合というのはどういうものを想定しているのか、お伺いしたいと思います。

小津政府参考人 被害者の方々から参加の申し出がありましたときに、裁判所は、犯罪の性質、被告人との関係その他の事情を考慮して、相当と認めるときに参加を許すということでございます。

 参加を許されない場合というのは、例えばどういうことが想定されるかということでございます。もちろん、個別の事情によるわけでございますが、例えば、暴力団の対立抗争の事件のように、被害者等が被告事件の手続に参加して訴訟活動を行うことを認めると法廷の秩序が乱されるようなおそれがある、こういう事件もあろうかと思います。あるいは、被告人と被害者の方がかねてから非常に険悪な間柄になっていて、いわば一触即発のような関係があるという場合もあるいはあるかもしれません。そのような、事件の内容あるいはその他もろもろの事情を考慮して、裁判所で判断されるということでございます。

大口委員 ただ、これはせっかく認められた権利でありますので、被害者の権利を狭めるようなことがあってはいけないと思っておりますので、ここら辺はやはり被害者の権利を最大限認める方向で考えていただきたいと思います。

 次に、被害者参加人は公判期日に出席することが認められているわけでありますが、具体的に法廷のどの席に座ることになるのか、それから、法廷のさく、バーの内側に座ることが想定されていると私は思っておりますけれども、例えば遺影等の持ち込みが許されることになるのか、お伺いしたいと思います。

小川最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 まず、座る場所でございますが、具体的に被害者参加人の方にどこに座っていただくかは、裁判体の訴訟指揮の問題でございます。

 ただ、法制審議会での議論を見ますと、例えば、被害者参加人が被告人に対して質問をするという制度については、質問が行われている間も検察官と被害者参加人が十分にコミュニケーションをとった上で、被害者参加人が質問の申し出をした事項について検察官がみずから質問をすることが適当であるとの結論に至った場合には、まずは検察官による質問の結果を見定めた上で、必要があれば再度申し出を行うことになるということであったと承知しております。

 そうだといたしますと、被害者参加人には、検察官との間でそのようなコミュニケーションがとれるような位置に座っていただくということになると考えております。

 それから、遺影の持ち込みの御質問でございますが、法制審議会の議論では、被害者が刑事裁判に参加する場合には、傍聴席で傍聴する場合とは異なりまして、被害者参加人として一定の立場で訴訟に関与するわけでございますので、バーの内側に遺影を持ち込むようなことについてもおのずから制約を受けるとの議論がなされたものと承知いたしております。

 あくまで裁判体の訴訟指揮の問題でございますが、将来、被害者参加人からバーの中に遺影を持ち込みたいとの要望があった場合には、このような法制審議会における議論も踏まえて、適切に判断されるものと考えております。

大口委員 これは三百十六条の三十四の四項でありますが、裁判所は、相当でないと認めるときは、公判期日への出席を許さないことができる、こういう規定がございますが、これはどのような場合を想定されておりますか。

小津政府参考人 これは、被害者参加が許された場合に、特定の公判期日についてだけ出席を許さない、こういうことでございますけれども、もちろんこれも個別の案件によりますけれども、例えば、被害者参加人が後に証人として出廷することが予定されている場合に、その証言の信用性を確保するために、そのことに関するほかの証人の尋問が実施されている間は公判期日に出席することが相当でないと判断されることがあるかもしれません。

 あるいは、多数の被害者参加人の方が、ある期日に皆さん全員が出席したいということで、これはできるだけ調整していただくわけでございますけれども、なかなか調整がつかない、他方で法廷の広さ等には限りがあるということで、これはその期日では相当ではないということもあるいはあるかもしれないというふうなことを念頭に置いております。

大口委員 特に御説明の後段の部分、これはやはり、裁判所の設備の問題もあるわけですけれども、できるだけ権利が認められるように、整備をよろしくお願いしたいなと思っております。

 次に、ことしの五月十七日、衆議院本会議で横山北斗議員から、公判前整理手続や期日間整理手続に被害者参加人が参加できるのかという質問がありました。これに対して、公判前整理手続や期日間整理手続は、基本的には、法律の専門家である裁判官、検察官及び弁護人による率直な意見交換を通じて争点を整理し、審理計画を策定する場であり、公判前整理手続等への被害者の方々の出席を認める制度とはいたしておりません、こういう答弁であったわけですね。

 それでは、例えば、被害者参加人から委託を受けた法律の専門家である弁護士、今の理由であれば、こういう人は、法律的な専門家でありますので、参加できるのではないかな、こう思うわけでございます。

 いずれにしましても、もう少し詳しく、犯罪被害者の方が参加できない理由は何なのか、そして、委託を受けた弁護士はどうなのかについてお伺いしたいと思います。

小津政府参考人 公判前整理手続や期日間整理手続に、被害者参加人も、その委託を受けた弁護士も参加できないという理由につきましては、委員御指摘のように、既に大臣から答弁させていただいたことが一つの基本的な理由でございます。

 繰り返しになりますが、その手続は、基本的には、法律の専門家である裁判官、検察官、弁護人が率直な意見交換をする、それを通じて審理計画を策定する場でございますから、被害者の方々が基本的に法律の専門家ではないということはございますけれども、それでは、その委託を受けた弁護士さんがその場にいるということが、そういう意味での率直な意見交換という観点からしてどうであろうかということもあるように思われます。

 それから、公判前整理手続に出席いたしますと、そこで検察官や被告人、弁護人の主張、それから、取り調べ請求予定の証拠そのものがその場で明らかにされることがあるわけでございます。そのようないろいろな情報に接するということが、仮にその後、被害者参加人の方が証人として証言するということになった場合、その信用性という問題も出てきはしないか、このような観点もあろうかと思います。

 そういうようなこともございまして、これらの手続には出席できないということにしたわけでございますが、他方、被害者参加人の方々から要望がある場合には、検察官が公判前整理手続等の状況や内容についても十分に説明をして、把握していただくことが適当ではないかと考えられております。

 ちなみに、こうした点も考慮いたしまして、検察におきましては、公判前整理手続、既に若干のケースについてやっておりますので、被害者の方々に対してもあらかじめいろいろと説明を行うなどの取り組みを始めているものと承知しております。

大口委員 次に、三百十六条の三十六の証人尋問についてお伺いをいたします。

 被害者参加人による証人尋問の対象となる事項を、犯罪事実に関するものを除く情状に関する事項、これは示談や謝罪の状況等だと聞いておりますが、これについて、証人の供述の証明力を争うために必要な事項に限定した趣旨は何でしょうか。

小津政府参考人 被害者参加人の方に証人尋問を認めるといたしましても、犯罪事実に関する検察官の主張、立証と矛盾するような内容が行われて真相の解明が困難となったり、被害者自身の証言の信用性が損なわれることになってはいけないということがございまして、やはりそのような観点からしますと、犯罪事実に関係しない情状に関する事項について尋問を限らせていただくというのが相当ではないかということでございます。

 また、証人の方の負担という点から考えましても、これを過度に重いものにしないようにする必要があるわけでございますが、証人が既に行った証言をいわば弾劾する事項について尋問を認めるということに限ることによって、その負担が過度に重いものになることを避けることができるのではないか、また、被害者の方々、さまざまな御要望はございますけれども、多くは、いわゆる情状証人の証言について納得できないので、自分の口からそれを弾劾したいという御意見が強いのではないかというふうにも認識しておるところでございまして、このような考え方でこの制度を立案いたしました。

大口委員 三百十六条の三十七の被告人質問についてお伺いしたいと思いますけれども、この法律の規定による意見の陳述をするために必要があると認める場合としているわけですが、この趣旨は何なのか。

 そして、法制審の刑事法部会で、被告人質問が認められる要件が厳し過ぎるのではないか、こういう指摘があるわけですが、その点についての見解。例えば、意見陳述のためというだけではなく、真相を究明するため、公訴事実を確かめたいという部分もあるし、名誉回復など、犯罪被害者等の尊厳を守りたいのでぜひとも聞いておきたい、こういう場合もあると思うんですね。これらの点についてお伺いしたいと思います。

小津政府参考人 まず、意見の陳述をするために必要があると認める場合という要件を設定いたしましたのは、どのような理由で被告人に質問するかということを、この新しい制度の手続の中で位置づけをはっきりさせた上で被告人に質問していただくということが相当ではないかと考えたわけでございます。

 今回の改正案の中には、現行法におきます意見陳述に加えまして、事実または法律の適用についての意見の陳述も別途行うことが認められるようになったわけでございますので、事実関係について確かめたいということにつきましては、今回、そのような点についても意見陳述ができるようになりますので、そのような質問をすることも可能になるということでございまして、これを考えますと、これが厳し過ぎる要件であるということにはならないのではないかと考えたわけでございます。

大口委員 次に、三百十六条の三十七でありますけれども、被害者参加人による被告人質問について、質問事項を明らかにして検察官に申し出をし、検察官は、意見を付して裁判所に通知するものとしたわけですが、その趣旨は何なのか。

 被害者参加人による被告人質問の申し出があった場合において、検察官が申し出があった事項のすべてについてみずから質問をした場合には、被害者等はみずから被告人質問をすることが一切許されないことになるのか、また、被害者参加人による証人尋問の申し出があった場合も同様の扱いになるのか、被害者参加人が結果として被告人質問や証人尋問ができなかった場合、検察官はどういうふうに対応するのかについてお伺いしたいと思います。

小津政府参考人 被告人質問につきましても、証人尋問につきましても、あらかじめ検察官の方に言っていただくということでございますけれども、これは、どのような内容について質問をするかということを明らかにしていただくことによりまして、法律上許されないような質問がなされるおそれはないだろうかとか、その他いろいろな点で支障が生じないか、また、検察官が、自分でやった方がいろいろな意味で適切かどうかということをまず判断し、また、参加人の方の申し出を伝える場合にも、適切な意見を裁判所に言うことができるというふうに考えるわけでございます。

 もちろん、あらかじめと申しますのは、その前日にということなどに限っているわけではございませんので、その場で必要が生じた場合には検察官に話をしていただいて打ち合わせをし、その打ち合わせがちょっと時間がかかるということであれば、本当にしばらくの間、ちょっと休廷してくださいということもあり得るかもしれませんけれども、いずれにしましても、そのことで被害者の方に過度の不都合にはならないと思っております。

 確かに、この制度上、被害者の方が聞きたいということについて聞いてみたら、結局、検察官が、では全部私がやりますよということになることはあり得ると思います。ただ、その例に至る過程で検察官が十分被害者の方とお話をして、納得をしていただいて、そういうふうになると思います。検察官がやってもいいけれども、ここはやはり心情等を考えればこの方にやっていただいた方がいいという場合には、やっていただくことになるのかなとも思いますので、そこは検察官が被害者と十分にコミュニケーションをとって運用していくということで解決していきたいと思っています。

大口委員 今の点は、権利として認められているわけですので、やはり検察官も十分被害者の権利というものを尊重していただきたいなと思っております。

 次に、被害者参加人等の弁論としての意見陳述は、これは三百十六条の三十八でありますが、訴因として特定された事実の範囲内で許されるということでありますが、例えば業務上過失致死、自動車運転過失致死罪の被告事件について、危険運転致死という罪名の異なる意見を述べることは許されないという理解でよいのか、また、傷害致死罪で起訴された事件において、この事件は殺人と同等であるとの意見を述べることはどうか、お伺いしたいと思います。

小津政府参考人 これは、訴因として特定された事実の範囲内ということでございますので、いわば法律論として、これは業過ではなくて危険運転致死傷罪だということを述べられることは許されないということになるわけでございます。

 ただ、委員御指摘の、例えば傷害致死について、自分としては殺人と同じようなものだ、そのような趣旨のことを述べられるのが、そういう気持ちであるという心情を述べておられるのか、法律的な、訴因を超えた意見を言っておられるのかということについて、その場で裁判所で判断されることになるのかなと思うわけでございます。

大口委員 被害者参加制度は、被害者から委託を受けた弁護士も刑事裁判に参加できることになっているわけですが、経済的余裕のない被害者は、公費で委託できなければ弁護士を依頼できず、被害者が一人で公判期日に出席しなければならないために、この制度が利用されにくくなると予想されるわけでございます。犯罪被害者の方々から、参加したくても心の傷を負っていて参加できない、次々と進む審理についていけるのか、みずからの立ち居振る舞いが裁判員の判断を左右してしまい、望む判決が得られなくなるのではないか、こういう不安の声も上がっているわけであります。

 公費による支援弁護士の制度、公的弁護人制度の準備状況はどうなっているのか。現在、ドイツ、イタリア、スウェーデンのように、一定の基準を設け、国費により被害者へ弁護士をつける制度を導入している国もあります。内閣府を中心に、経済的支援に関する検討会を設け、議論が行われていると伺っていますが、諸外国の事例を含めて、どのような検討を行っているのか、検討状況と見解をお伺いしたいと思います。

 また、被害者参加制度を真に被害者の権利利益の保護のための制度とするためには、公的弁護人制度の創設が重要であると私は考えております。そういう点で、法務大臣の見解もお伺いしたいと思います。簡潔にお願いします。

荒木政府参考人 お答えを申し上げます。

 昨年の四月、基本計画に基づきまして、被害者の方あるいは有識者、関係省庁から成ります経済的支援に関する検討会を設置いたしまして、御指摘の公的弁護人制度の導入の是非につきましても検討を進めてまいりました。

 来月、中間取りまとめを行いまして、国民からの意見募集を行いました上で最終取りまとめを行いたいと考えておりますけれども、その中で、公的弁護人制度の導入の是非につきましては、犯罪被害者等が刑事裁判に参加する制度、ただいま議論になっておりますこの制度に伴う公費による弁護士選任について、関連法案の国会審議状況等を注視しつつ、制度導入に向けて検討を行うべきであるとの取りまとめを行う方向で議論がなされているところでございます。

長勢国務大臣 被害者の方々に対して弁護士によって必要な法的支援が行われるということは、大変重要なことであると考えております。そういう意味で、御指摘のような、公費で支援を行うという制度を設けることについては、そういう要望も強いというふうに伺っておるところでございますが、今説明がありましたように、現在、検討会で検討中でございますので、法務省としても、その検討結果を踏まえて適切に対処してまいりたいと考えております。

大口委員 もう一つの柱である、損害賠償請求に関して刑事手続の成果を利用する附帯私訴の制度、これも非常に画期的な制度であり、今回、法律案に盛り込まれておるわけでございます。そしてまた、対象となる犯罪が限定されておりますので、この附帯私訴についてもいろいろ課題があるわけでございます。

 いろいろなことを考えますと、裁判員制度の法律について三年の見直し規定がありましたが、私は、この法律についても三年の見直し規定を設けるべきだと考えますが、大臣の御見解をお伺いします。

長勢国務大臣 私どもとしましては、できる限り早くこの法律案を成立させていただきたいとお願いしておりますし、成立して施行になった場合には、その運用には万全を期してまいりたいと考えておるわけでございますけれども、お尋ねの点につきましては、国会で今御論議中でございますが、その御意思を尊重してまいりたいというふうに考えております。

大口委員 これは内閣府にお伺いしますけれども、犯罪被害者等給付金について、昨年度は、遺族給付金の被害者一人当たりの支給額の平均は約四百二十五万円、障害給付金は同約二百六十万円で、最高支給額は遺族給付金の約一千五百万円であったと聞いております。若年層の重度後遺障害者や扶養者が多い遺族には手厚く支給すべきである、こういう声もあるわけですね。

 支給額の上限を自賠責保険と同等程度まで引き上げよう、こういう構想もあるようでありますが、支給額の引き上げを含めた犯罪被害給付制度の拡充についてお伺いしたいと思います。

荒木政府参考人 お答えを申し上げます。

 先ほど申し上げました経済的支援に関する検討会におきまして、被害者に対する給付水準の引き上げにつきまして、それをメーンに、かなり長い時間協議を行ってきております。

 その中で、委員御指摘がございましたように、現在、給付金の最高限度額、遺族の場合が一千五百万円余り、それから重度障害者の場合が一千八百万円余りとなっておりますけれども、これを、自賠責の上限であります、遺族については三千万円、それから重度障害者については四千万円にできるだけ近づけよう、それに伴いまして、最低額についても引き上げを図ろうということで議論が進められております。

 また、御指摘のありましたように、収入の少ない若い人が重度障害を負った場合は、現在の仕組みではどうしても非常に低額になってしまいますので、これをできるだけ配慮できるようにしよう、さらには、扶養の多い、子供さんの多い御遺族に対しては、これについてもできるだけの配慮をしようということで取りまとめを行っているところでございます。

大口委員 時間が参りましたので、以上で質問を終わります。ありがとうございました。

七条委員長 次に、上川陽子君。

上川委員 自由民主党の上川陽子でございます。

 本日から、法務委員会におきまして、刑事裁判における犯罪被害者の皆さんが参加する新たな制度が審議入りいたしました。これまで、長年にわたりまして犯罪被害者の皆さんとともにこの問題に取り組んでまいりました者の一人として、大変感慨深いものがございます。委員会におきまして審議を重ね、今国会において一日も早い法案の成立を強く望むものでございます。

 さて、今回審議される被害者参加制度は、長きにわたり慎重な議論が積み重ねられた結果、今回ようやく日の目を見ることになったわけでございますが、その発端は、被害に遭われた皆さんが勇気を持って声を上げたことでございます。

 これまで刑事裁判は、専ら裁判官そして検察官そして弁護人、被告人により進められており、被害者の皆さんは証拠品として扱われているにすぎなかった。被害者やその御遺族の皆さんは、最も切実な利害関係を有する事件の当事者であるにもかかわらず、刑事裁判においては、疑問に思ったことを被告人に直接問いただすこともできない、名誉を傷つけられても抗弁することもできない、法廷に着席することもできない、ひたすら傍聴席でみずからが被害に遭った事件の裁判の推移や結果をじっと黙って耐えて見守ることしかできませんでした。

 真実を知りたい、被害者やその遺族の方々の声は悲痛であります。真実を知ることによって、初めて被害から立ち直るきっかけをつかむことができる。しかし、その願いがかなわず、刑事手続の中で被害者の皆さんは新たな二次被害を受けて苦しまれておられます。被害者の皆さんの中には、真実を知るためにわざわざ民事裁判を起こす方もおられました。

 こうした被害者の方々の声を受けとめ、法務省がようやく重い腰を上げ、六十年余の歴史を有する刑事訴訟法を改正して、被害者参加の制度が設けられることになった。この制度によって、被害者の皆さんが被害者参加人として法廷の中に、バーの中に入る権利が認められることになるわけであり、大変画期的なことであるというふうに私は考えております。

 先ほど法務大臣から提案理由として説明された中でも触れられておりましたけれども、この法律案に盛り込まれた事項はいずれも、平成十六年十二月に成立した犯罪被害者等基本法に基づき、また翌十七年の十二月に政府が策定した犯罪被害者等基本計画によってその実施が認められているものでございます。

 犯罪被害者等基本法では、この件に関し、三条では、「すべて犯罪被害者等は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有する。」との基本理念を定めておりますし、十八条では、国は、「犯罪被害者等がその被害に係る刑事に関する手続に適切に関与することができるようにするため、」「刑事に関する手続への参加の機会を拡充するための制度の整備等必要な施策を講ずるものとする。」としており、刑事手続への参加という言葉とそして機会の拡充という言葉を使用しまして、新しく制度を整備すべき国の責務も定めているところでございます。

 この基本法は議員立法により立案したものですが、我が自民党におきましても、この基本法の立法に先立ちまして、平成十六年二月から、司法制度調査会等の場におきまして、犯罪被害者の皆さんから施策の充実について意見を賜り、また関係省庁、団体との意見交換も重ねつつ、慎重に議論を重ねてまいったその上での、まさに議論の積み重ねの結晶であるというふうに考えております。

 そして、先ほどちょっと触れました十七年十二月に基本法に基づく基本計画が作成されたわけでございますが、この中では、被害者参加の制度について、「法務省において、刑事裁判に犯罪被害者等の意見をより反映させるべく、公訴参加制度を含め、犯罪被害者等が刑事裁判手続に直接関与することのできる制度について、我が国にふさわしいものを新たに導入する方向で必要な検討を行い、二年以内を目途に結論を出し、その結論に従った施策を実施する。」ということでございまして、この基本計画において、新しい制度の導入という方向を明示した具体的な内容になっているところでございます。

 この基本計画の作成過程、非常に透明性を高くしてきたわけでございますが、基本計画がまずどのような経緯、議論を経て作成されてきたのか、とりわけ、今申し上げたようなこの犯罪被害者の参加制度にかかわる部分について、どういう議論が展開されたのか、内閣府にお伺いいたします。

荒木政府参考人 お答えを申し上げます。

 御指摘がございましたように、平成十七年の四月に基本法が施行されましたけれども、それと同時に、有識者、被害者の方、関係省庁等から成ります基本計画の検討会というものを設置いたしまして、十一回にわたる検討を行いまして、平成十七年の十二月に基本計画が閣議決定されたところであります。

 検討会におきましては、できるだけ被害者の方の声に耳を傾けて、被害者の方の視点に立った基本計画を策定しようということで、延べ六十八の犯罪被害者の団体、個人等からヒアリングを行いまして、またパブリックコメントを実施するなどによりまして、合わせて一千六十六の意見、要望が集まりました。その一千六十六の意見、要望の一つ一つについて、どのような施策が国として可能であるかを検討いたしまして、基本計画が策定されたところでございます。

 御指摘の犯罪被害者の刑事裁判への参加につきましては、その検討会の中で、検討会のメンバーでございます日弁連の代表の方から慎重論などもございましたけれども、今委員御指摘がございましたように、既に基本法の三条あるいは十八条におきまして、刑事に関する手続への参加の機会を拡充するための検討を進めて施策を講ずるとされておりますこと、それから、先ほど申し上げました被害者の方の意見、要望も大変強いものがあるということを踏まえまして、基本計画におきましては、刑事手続への関与拡充への取り組みという五つございます重点課題の一つとして掲げまして、犯罪被害者等が刑事裁判に直接関与することのできる制度を、我が国にふさわしいものを新たに導入する方向で必要な検討を行うというふうにされたものでございます。

上川委員 最終的に基本計画では二百五十八の施策について記述をしておりまして、その中の大きな柱として今回の制度があるというふうな御説明でございましたが、この参加制度については二年以内に検討するという日程が付記されているということ、そしてその中で、今回の制度につきましても、法務省の中で責任を持って取り組んできたというふうに理解しておるところでございます。

 基本法の制定は、議員立法で全会で決めたものでございますので、政治の側も、その責任の中でしっかりと、趣旨を生かしつつ成案に向けて努力すべきものであるというふうに考えておりまして、そういう中で与党としても対応すべきであるというふうに思っているところでございます。

 そこで、法務大臣にお伺いいたします。

 今回の法整備により、犯罪被害者参加の制度を創設することということでございますが、今申し上げたように、基本法、基本計画を受けてのことであるというふうに理解しております。具体的にどのような理由によるものなのか、改めて大臣の御意見等をお聞かせいただきたいと存じます。

長勢国務大臣 この問題にずっと中心的に取り組んでこられました上川先生の御努力に敬意を表したいと思います。

 今お尋ねでございますが、平成十六年十二月に成立した犯罪被害者等基本法の基本理念、今先生もおっしゃられましたが、「すべて犯罪被害者等は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有する。」というふうに規定しておりまして、被害者の方々が、その被害に係る刑事事件の裁判手続においても、その尊厳にふさわしい処遇を保障されることが重要であるというふうに考えられます。

 そして、被害者の方々が、みずからが被害を受けた事件の当事者として、その被害に係る刑事事件の裁判の推移や結果に重大な関心を持つことは当然のことでありまして、刑事裁判の推移や結果を見守るとともに、これに適切に関与したいとの心情は十分に尊重されるべきであると考えられます。

 また、被害者の方々が刑事裁判に適切に関与することは、その名誉の回復や立ち直りにも資するものと考えられます。

 そういうことで、今回、この法律案においては、被害者の方々が、一定の要件のもとに、裁判所の許可を得た上で、被害者参加人という地位に基づいて公判期日に出席するとともに、被告人質問等の一定の訴訟活動をみずから直接行うという被害者参加の制度を創設することとしたものでございます。

上川委員 そこで、法案の内容についてお伺いいたします。

 今回の法律案では、被害者の皆さんが被害者参加人として法廷に出席し、裁判所の許可のもとで、証人尋問、被告人質問、意見陳述を行うことが認められることになるわけでございます。しかし、起訴権限や訴因設定権、証拠調べ請求権等は認められておりませんし、また、被害者が上訴することも認められておりません。

 現在の刑事訴訟においては、検察官と被告人、弁護人という両当事者の主張や立証を公平中立な立場にある裁判所が聞いて判断するという、いわゆる当事者主義が採用されていると言われています。仮に、被害者が検察官とは別個に起訴をしたり、証拠調べを請求したりすることができるとすると、それは立場が全く異なる検察官が二人いて、全く異なる観点から被告人を攻撃するということになり、現在の刑事訴訟の枠組みを大きく変えることになってしまうわけでございます。

 今回の法律案では、現在の刑事訴訟の枠組みの中で、ぎりぎり被害者が参加できる権利は何かということを議論した上で、証人尋問、被告人質問、意見陳述といった一定の類型のものに限定するということにしたのではないかというふうに考えております。

 現在、一部の皆さんから、本制度は現行の刑事訴訟の構造を根底から覆すものではないかということで、問題も提起されているということでございます。私自身は、今申し上げたように、現行の枠組みの中で、ぎりぎりの訴訟参加の権利ということで検討していただいた末のものであるというふうに考えておりますけれども、この点につきましての法務省の見解をお伺いいたします。

小津政府参考人 ただいま委員御指摘のとおり、私どもも認識しているところでございます。

 この制度は、検察官が訴因を設定して、事実に関する主張、立証を行う一方で、被告人、弁護人がこれに対する防御を行い、これらを踏まえて公正中立な裁判所が判断を行うという現在の刑事訴訟法の基本的な構造を維持しつつ、その範囲内で被害者等が刑事裁判に参加することを認めるものでございまして、現行の刑事訴訟の基本的な構造を変えるものではないと認識しております。

上川委員 そういう中で、今回、被害者参加人が行うことができる個別の訴訟活動ということで、限定された場面ということで、先ほども大口委員の質問の中でもかなりきめ細かく御説明をいただいたわけでございますが、私からも幾つか質問させていただきたいというふうに思っております。

 今回の法改正によりまして、犯罪被害者参加人が、事実または法律の適用についての意見陳述をすることができるようになりました。既に現行法においても、刑事訴訟法の二百九十二条の二の規定によりまして、被害者等は心情等に関する意見陳述をすることができるものとされております。

 そこでまず、現行法の意見陳述が、この間、どの程度なされてきたのか。また、現行法の意見陳述と今回新たに設けられた意見陳述とは、同じ「意見を陳述」という文言になっておりますけれども、外形的には同じようにも見えるのですが、条件等についていろいろ違いがあるということでございます。両者にはどのような違いがあるのかということ、それぞれ最高裁判所と法務省にお伺いしたいと存じます。

小川最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 現行の意見陳述の制度が始まりましたのが平成十二年十一月でございますが、それ以降の数値を申し上げますと、公判期日で、心情その他の意見を陳述された方は、平成十二年が二十二名、平成十三年が二百三十二名、平成十四年が四百五十七名、平成十五年が五百八十五名、平成十六年が七百三十五名、平成十七年が七百七十四名、平成十八年が九百十七名、合計三千七百二十二名となってございます。

小津政府参考人 私の方からは、現行法の意見陳述と今回の意見陳述との違いということでございます。

 現行法で、被害者の方々が、被害に関する心情その他の被告事件に関する意見の陳述をすることが認められておりますが、これは、例えば被告人に対する処罰感情等の陳述など、被害に関する心情を中心とする意見に限ってのものでございまして、この意見の陳述は、被害者の方々から申し出がなされた場合には、原則としてこれを行うことが認められておりまして、それは被害者の方々の心情に関するものでございますので、量刑の資料とすることができるというものでございます。

 他方、今回新たに設けます意見の陳述は、訴因として特定された事実の範囲内との制約のもとで、被害者参加人等が事実や法律の適用についての意見を陳述することを認めるものでございます。裁判所が相当と認めて許可した場合に限ってこれを行うことができるということでございます。これは意見でございますので、証拠とはならないことが念のため法律上明記されております。

上川委員 ただいまの御説明ですと、被害者に関する心情については、現行法上意見陳述をすることができるけれども、新たな意見陳述ではそれはできないということでございましょうか。そして、訴因の範囲内では、事実と法律の適用について新たな制度では意見陳述をすることができる、そういう理解ということでよろしいですか。

小津政府参考人 現行法の意見陳述はそのまま残りますので、それに加えて新しい意見の陳述が認められることになる、こういうことでございます。

上川委員 それでは、続きまして、証人尋問と被告人質問ということでお伺いいたしたいと存じます。

 現行法上は、検察官、弁護人等の訴訟関係人が証人尋問や被告人質問を行うこととされていますが、今回新たに、犯罪被害者の参加人等もこれらを行うことができることとされています。

 そこで、現行法における検察官や弁護人が行う証人尋問や被告人質問と、今回新たに設けることとする被害者参加人が行う証人尋問や被告人質問、これにつきまして、要件がどのように異なっているのか、そして、その効果としてはどのような違いがあるのかということについて、お願いいたします。

小津政府参考人 検察官や弁護人等の証人尋問でございますが、これは現行法におきましてもこの改正後も同様でございますけれども、公訴を行う立場あるいは被告人を弁護する立場におきまして、その刑事裁判の審理に必要だと思われる証人の尋問を請求するわけでございます。それを認めるかどうかというのは裁判所の判断ではございますけれども、基本的にはそれぞれの当事者の申し出によってその証人尋問が行われるわけでございます。

 被害者参加人が尋問する場合でございますけれども、これはまず、尋問することができる事項が証人尋問については相当限定されておりまして、犯罪事実に関するものを除いた情状に関するもので証明力を争うために必要な事項に限られているわけでございます。また、被害者参加人等が行う被告人質問、これは参加人が意見を陳述するために必要であって、相当と認められて許可された場合に限って行うということでございます。その点では、現行法上、検察官や弁護人が行っている被告人質問との違いがあるということでございます。

上川委員 もし証人尋問等が認められない場合でございますが、検察官や弁護人は、現行法においては、刑事訴訟法第三百九条第一項の規定により異議申し立てができることとされております。

 この点、被害者参加人が証人尋問を認められなかった場合、不服の申し立てをすることができるかどうか、法務省にお伺いいたします。

小津政府参考人 被害者参加人等につきましては、そのような不服申し立ての制度が設けられておりません。

 これは、被害者参加人等が証拠調べ請求権の認められる検察官等とは異なる立場にあるということを前提にいたしまして、その不服申し立てを認めて手続が終了するまで審理を続けるということができないといたしますと、公判の遅延を招来しかねないと考えられましたことから、これを認めるのは適当でないと考えたところでございます。

上川委員 今回認められている被害者のさまざまな訴訟活動への参加権利ということについては、今非常に限られた質問でございますけれども、要件でありますとか、その内容とか、あるいはその手続にかかわること、そしてその効果等につきまして大変限定されたものであるというふうに考えております。

 刑事手続への関与拡充への取り組みということで基本計画で議論された折には、これは四十一ページに、この基本計画の書面にありますけれども、被害者団体からの御要望については、一番初めとして、「起訴への関与等」ということで、起訴への関与というのが一番大きく取り上げられているわけでございますが、まさにいろいろな議論を積み重ね、また、法制審議会での議論も重ねた上での、大変限定された中で、訴訟活動に名誉の回復とか、あるいはそれこそ真実の発見という形の中でこの制度を認めるという第一歩を踏み出された、私はそういうふうな認識をしているところでございます。

 そういう意味で、しっかりとこの制度が理解され、また、平成十二年から平成十八年の既にある意見陳述の実施状況もトータルとして三千七百二十二件、先ほどの諸外国の事例ということで、ドイツでしたでしょうか、一万件を超すというようなこともございますので、被害者の皆さんがこの制度をいい意味でしっかりと利用していくことができるようにぜひとも運用の面でも図っていただきたいというふうに思っているところでございます。

 次に、犯罪被害者の皆さんの訴訟参加の制度が二年後に導入を予定されている裁判員制度と時期的に重なるということもあって、この制度との関連での懸念が提起されているところでございます。

 一般の国民の皆さんが裁判に関与するということになりますと、裁判員の皆さんの判断に不当な影響を及ぼすのではないかということで問題ではないか、こういう御意見も一部に出されておりますが、このような御心配に対しましてどう考えているのか、法務省の見解をお願いします。

小津政府参考人 先ほど上川委員からいろいろと御質問いただき、お答えさせていただきましたように、犯罪被害者の方がいろいろできるとはいっても、いろいろな要件を課している。それにつきましては、できる限り被害者の方々の御要望に沿って、その尊厳にふさわしい役割を果たしていただきたいという気持ちと同時に、やはり新しいことでございますので、裁判員制度を含めた裁判への影響ということを心配される御意見も多かったということで、その手続だけを見ますと非常に限定的なように映るかもしれませんが、別の見方をしますと、そういうような慎重な手続をとってこの制度をスタートさせたいということでございます。基本的には、そのような中で、裁判員制度等への影響というものも心配のないようにやっていきたいということでございます。

 もう一点、被害者の方がいろいろやられるときに検察官に申し出ていただくということ、また、この条文で、十分に検察官がいろいろとお話を聞いて説明をするようにということも、いろいろ御心配になるような点もできる限り検察官の方で心配のないような運用をしろ、こういうような趣旨というふうに立案当局としても受けとめておりますので、そのようなことも含めまして、裁判員制度への影響ということについて、不当な影響を及ぼすようなことにはならないのではないかと認識しております。

上川委員 新しい二つの制度が十分にその機能を発揮できるように、さらなる御努力をよろしくお願いしたいというふうに思っております。

 次に、事実の真相解明との関係でお伺いをいたします。

 刑訴法では、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適正かつ迅速に適用実現することを目的としているわけでございます。この点につきましても、一部に、被害者が刑事裁判に参加すると事案の真相解明が妨げられるのではないかというような御意見もございます。

 私は、事件の被害を受けた被害者の皆さんが刑事裁判に参加することはむしろより客観的な事実の究明につながるのではないかということで、真相解明が妨げられるものではないというふうに思っておりますが、この点の心配に対して法務省はどのように思っていらっしゃるのでしょうか。

小津政府参考人 そのような弊害が生じないようにするために、この法案におきましては幾つかの規定を設けさせていただいております。

 例えば、被害者参加人の方が参加を認められても、ある特定の期日についてだけ御遠慮していただくというのも、先ほど御説明申し上げましたが、特定の期日に出廷していると、その被害者参加人の方が後で証人として呼ばれるときにいろいろ問題が生じて真相解明に影響が出てくることもあり得るであろう、そういう場合には御遠慮いただくことができるような仕組みをつくっておこうということが一つでございます。

 また、証人尋問につきましても、いろいろ御要望もございましたが、やはり情状についての弾劾に限らせていただいたというのもそのような観点があるわけでございます。

 被告人に対して一定の要件で直接の質問ができるわけでございますけれども、この点につきましては、もちろん現行法上も今後も、被告人はいつでも任意に供述することができるわけでございますし、弁護人の弁護を受けながら防御活動をするということでございます。

 このような観点からいたしましても、この制度が刑事裁判における真相の解明に問題を生じるものではない、このように考えております。

上川委員 幾つか不安の項目は、それぞれ制度をきめ細かく対応することによってそうした不安がないように担保されているというようなことでございます。

 もう一つの御指摘の中に、被害者の皆さんが刑事裁判に参加すると、刑事裁判が混乱したり、法廷が復讐の場になるおそれが生じるのではないか、こういう御指摘があるわけでございます。

 意見陳述の事例ということで、数千件ございますけれども、先ほどの御説明ですと、大口先生の御質問の中でも、そういった混乱を生じたりというようなことはないというような御指摘もございましたが、こうしたおそれに対しまして、法務省としてはどのような対応を考えていらっしゃるんでしょうか。

小津政府参考人 先ほど裁判員制度との関係で少し御説明申し上げましたけれども、今委員御指摘のようなおそれが現実に認められるというふうなことがもしあるといたしましたら、それは、そもそも裁判所が参加を許可する場合に慎重に判断をするということになろうかと思います。

 また、検察官に対して意見を述べて、必要な説明を受けることができるわけでございますけれども、そのような説明を受けつつ、参加人の方がやりたいと思うことについてあらかじめ検察官に話をしていただいて、その上でその権限を行使していただく、その過程で検察官が適切に対応するべきである、こういう法案になっておるわけでございます。

 さらに、制度といたしましては、個々の場面で、参加人の方がする尋問や質問が違法や不当な場合には裁判長がこれを制限することができる、裁判長の適切な訴訟指揮権の行使によって混乱を防止するという仕組みになっているわけでございます。

 さらに、これまでの被害者の方の意見陳述の制度の運用状況等からいたしましても、また、このような制度の仕組みからいたしましても、刑事裁判が混乱したり復讐の場になるようなおそれはないものと認識しているところでございます。

上川委員 いろいろな不安の問題が提起されている中に、被告人の権利が不当に侵害されるのではないか、こういう御指摘もございます。

 私自身、被害者の皆さんが刑事裁判に参加することにつきましては、冒頭申し上げたようなさまざまな必要性があり、またメリットがあるというふうに思っておりまして、その導入には大いに賛成をするところでございますが、しかし、制度の導入によって被告人自身の権利が不当に侵害されるということがあってはならないというふうに思っているところでございます。

 一部には、被害者が刑事裁判に参加すると、被告人の防御権を侵害するおそれがあったり、無罪推定の原則に反するのではないか、こういう御意見が寄せられているところでございますが、そのような心配が本当にあるのかどうか、また、それに対して、法務省として、制度の中でどのように対応を考えているのか、お願いいたします。

小津政府参考人 まず、無罪推定の原則でございますけれども、これは一般に、有罪の判決があるまでは被疑者、被告人は有罪ではないとされ、有罪とするための挙証責任は検察官等が負うものである、このような考え方だと解されています。この点につきましては、被害者の方々が参加する新しい制度になりましても全く変わるところはないわけでございますので、そのような意味で、本制度が無罪推定の原則に反するということはないと考えているわけでございます。

 被告人の防御権への影響でございますけれども、これにつきましては、被害者参加人の方が被告人に質問をするといたしましても、その質問に対しても供述を拒否することは可能でございますし、また、手続全般について弁護人の援助を受けつつ、被告人が防御活動をするわけでございます。また、参加人の方が新しい制度のもとでの意見を言うということがありますけれども、これは、弁護人による質問や最終陳述の際に、被告人、弁護人側の主張を述べる機会も現行法どおり十分に保障されているわけでございますので、そのような観点からも御心配はないのではないかと考えております。

上川委員 ありがとうございます。

 続きまして、被害者の皆さんの不安ということで、もう一つ御質問させていただきたいというふうに思うんです。

 冒頭にも述べましたとおり、被害者参加の制度につきましては、被害者やその御遺族の皆さんが、被害に遭った事件の刑事裁判にみずから参加したいという声を受けてということでございます。しかし、一部報道によりますと、一部の被害者の皆さんから、仮に刑事裁判に参加することを選択した場合、法廷で逆に被告人から攻撃されて二次被害をこうむるおそれがあること、また反対に、参加しない場合、被害感情が軽く見られるおそれがあって、そういう意味で、被害者参加の制度は真に被害者のためにならないというような不安が出されているということでございます。

 もちろんこの制度で、参加することによって被害者の皆さんがさらに傷つくようなことになれば、それは問題ですし、また、参加するか否かは被害者の皆さんが自由に決められるはずであるにもかかわらず、被害感情を軽く見られないために、参加を半ば強制されるようなことになるのであれば、それも問題であるというふうに思っているところでございます。

 こうした一部の被害者の皆さんの御主張に対しまして、法務省としてはどのように考えているのか、見解をお伺いいたします。

小津政府参考人 まず、この制度によりまして、被害者参加をされる方々がその場で非常に圧迫感を感じたり、極端な場合には二次的な被害と言われるようなことがないようにという点につきましては、この制度におきましても幾つかの手当てをしてございまして、一定の場合に、被告人から被害者が見えないようにするための遮へい措置をとることを可能にいたしましたり、また、被害者の方々に適当な方を付き添わせることを認める制度などを用意しているところでございます。

 それから、もちろん被害者の方々のお立場、心情はさまざまでございますので、このような制度ができても、利用されない方は多数おられると思います。この制度を利用しないことが不当に、処罰感情が強くないのではないかというふうに扱われることがあってはならないと思っております。

 それは、まずは法律関係者が、被害者の方々の心情、立場というのはいろいろなものがあるのだということを基本的に理解するということが大事だと思いますけれども、具体的な訴訟活動におきましては、検察官が、例えば被害者の方が参加されなかった場合に、その理由等につきましてもし何か御疑念を持たれるような状況がございましたら、論告その他で十分に裁判所に御説明するなどのことをすることによりまして、万が一にもそういうことにならないようにしたいということでございます。

上川委員 被害者の皆さんが本当に自由な発意によって参加することができるように、本当にそのことによって二次被害等のことがないように十分にそしゃくしながら、また、訴訟関係にかかわる方のみならず、国民全体、社会全体の取り組みの中で、この制度が十分に生かされるような基盤づくりについても大変大事だなということを感じているところでございます。よりよい制度になるように、また御議論いただきたいというふうに思っております。

 先ほども大口先生の御質問の中にございましたけれども、被害者の公的弁護制度のことにつきましてお尋ねをさせていただきたいというふうに思います。

 先ほど荒木室長の方から、内閣府に設置されました経済的支援に関する検討会におきまして、訴訟の参加の制度と並行する形で、その結論を見ながら、この制度の導入については検討する、こういう御指摘がございました。

 金銭的な余裕がなくて、参加したいけれどもできないということにつきましては、やはりその権利を保障されているということでございますので、その点、十分に前向きにその制度の導入に向けての検討を進めるべきだというふうに思っておりますが、その検討会の中間報告の見通しに至る議論の経過の中で、この点につきましてどのような議論が実際なされたのか、少し具体的にお話しいただければというふうに思います。

荒木政府参考人 お答えを申し上げます。

 資力のない被害者の方が弁護士を選任する際にその費用を負担する制度といたしまして、まず現行、民事法律扶助事業というものがございます。これは、加害者に対して損害賠償請求の法的手続をとる際に弁護士費用等について立てかえが行われるものでございます。それから、刑事告訴や、あるいは法廷への付き添い等につきまして弁護士費用の援助を受けることができます犯罪被害者法律援助事業というものがございます。

 これらの事業につきましては、日本司法支援センター、通称法テラスや、あるいは日弁連によって事業が行われているわけでございますけれども、検討会の中では、これらの事業の果たす役割が大変重要であるということで、まずこれらの事業が適切に運用されて被害者の支援のためにさらに充実が図られるように努めるべきであるという方向で今まとめられようといたしております。

 それから、先ほど大口委員にお答えいたしましたように、今議論されております法案が成立いたしました場合には、これは全く新しい制度でございますので、犯罪被害者等が刑事裁判に参加する制度を保障するためにも、公費による弁護士選任について制度導入に向けて検討を行うべきであるという方向で取りまとめが行われつつあるところでございます。

上川委員 中間報告の方向性と同時に、今この法案の審議の過程を通じて、制度の導入としっかりと対応するところで公的弁護制度そのものも検討された上でバックアップできる体制がとれればなというふうに思って、私自身も頑張っていきたいというふうに思っておりますが、どうぞよろしくお願いしたいというふうに思います。

 今回、被害者の参加の制度そのものは、被害者の皆さんの大変切実な声を反映して、被害者の方々の権利利益の保護を図るための施策として、大きな柱に位置づけられているということでございます。先ほど、さまざまな不安等、いろいろな形で工夫して制度づくりをしてきたなということで、この点につきましては、先ほど申し上げたように、基本計画の第一のところに、判決に対する上訴権というようなことも含めて、被害者の皆さんから要望があったわけでありますが、あくまで現行の体制の枠組みの中で法律に基づくぎりぎりの枠組みをつくられたということで、私は、一日も早くこの制度の成立をさせていただきたいということを切実に願っている者の一人でございます。

 今回の制度につきましては、先ほどの基本計画の中で二年以内の審議の上ということで、日時の規定がございます。また、基本計画そのものは五年間の日程ということで詰められているものでございまして、五年ということになりますと、平成二十二年度にはさらに新しい計画の見直しが図られるということでございます。

 特に、基本法をつくるときに、それこそ中に非常に透明性の高い組織をつくり、またそれを一元的に管理するという形でいろいろな皆さんに入っていただく、犯罪被害者基本法の施策推進会議というのをつくり、そして施策の進捗状況のチェックでありますとか、新しい制度の検証ということも織り込んだ形で基本法をつくっているということでございまして、この法律につきましても、一定の評価、時期を経てきちっと評価をして、そしてそれについて、私、今回の質問で指摘させていただきましたようなことにつきましての部分についてしっかりと検証していくということも大事ではないかというふうに思っております。

 その点の問題も含めまして、本当に今度の制度が一日も早く成立し、そしてその導入に向けて整備が整えられ、しっかりと犯罪被害者の皆様の声に向き合うことができるような運用がなされるよう、法務省の方にもまた法務大臣の方にもよろしくお願いしたいというふうに思っております。

 最後に、本制度の導入に向けた法務大臣の御決意ということをお伺いいたしまして、私の質問を終わらせていただきたいと存じます。

長勢国務大臣 本制度は、先ほど来いろいろな観点からの御議論をいただきましたが、犯罪被害者等基本法に基づく計画によって早期の実現が求められておるものでございます。先ほど来たくさんの議論がありましたけれども、いろいろな意見を十分に勘案してこの法案をつくらせていただいた経過もあるわけでございますし、いろいろな点もあるわけでありますが、被害者の方々からも早急に実現をしていただきたいという強い要望も承っておりますし、我々としても、今国会で早期にこの法案の成立を図っていただき、成立を待って円滑な運用に万全を期していきたい、このように考えておる次第でございますので、よろしくお願いをいたします。

上川委員 ありがとうございました。よろしくお願いいたします。

七条委員長 次に、近江屋信広君。

近江屋委員 自由民主党の近江屋信広と申します。

 御承知のように、犯罪被害者のための施策というのは最近に始まったわけではございませんで、古くは昭和四十九年に発生した三菱重工ビル爆破事件、これをきっかけにいたしまして犯罪被害者のために公的な補償制度をつくるべきだという声が高まって、そして昭和五十五年に犯罪被害者給付金支給法が制定されたというところであります。

 当時、私自身、自民党の法務部会を担当いたしまして、この給付金支給法案の策定に携わった者でありますが、その給付金支給法はでき上がった、しかし犯罪被害者の保護、救済というのはお金の問題だけじゃありませんね、さまざまな施策が必要であって、これは政府全体で取り組むべき問題ですねという皆さんの当時共通した認識でありました。

 その後、平成の時代になって、地下鉄サリン事件なども生じました。そして、小泉前総理の指示もありまして、先ほど質問に立ちました上川陽子衆議院議員を初めといたしまして、多くの皆様の御努力によりまして基本法が策定された、その基本法については各党の御理解も得て法律が制定された、そしてその基本法に基づいて基本計画がつくられたという経過であります。

 今回、基本計画に盛り込まれている項目のうち、犯罪被害者等が刑事裁判に参加する制度や、また、損害賠償請求に関して刑事手続の成果を利用する制度などはまことに画期的なものであります。これらが法務委員会において法案の形でこうして論議の俎上にのるに至ったということにつきまして、これまでの長い間の関係者の皆様の御努力に対しまして心から敬意と感謝を申し上げる次第であります。

 さて、質問でございますが、これまでの質問と極力重ならない点について御質問させていただきたいと存じます。

 まず、損害賠償命令制度についてであります。

 今回の法案においては、いわゆる犯罪被害者保護法を改正して、被害者の被告人に対する損害賠償請求のための新たな制度といたしまして損害賠償命令制度を導入するということにいたしておりますが、まず、そもそもどのような趣旨に基づいてこの制度を設けることといたしたのか、また具体的には本制度はどのような手続で進んでいくことになるのか、その概要について御説明をお願いしたいと存じます。

小津政府参考人 御指摘の基本法、それから基本計画で求められていることでございますが、多くの犯罪被害者等にとりましては、現行の制度のもとで損害賠償の請求をすることについては、高い費用と多くの労力、時間を要すること、独力では証拠が十分に得られないことなどのさまざまな困難があり、現在の損害賠償制度が犯罪被害者等のために十分に機能しているとは言いがたいとの指摘があるとされました上で、損害賠償の請求に関して刑事手続の成果を利用することにより、犯罪被害者等の労力を軽減し、簡易迅速な手続とすることのできる制度について、我が国にふさわしいものを新たに導入する方向で検討を行って施策を実施するように、こういうことでございます。

 そこで、そのような趣旨を踏まえまして、犯罪被害者等による損害賠償請求に係る紛争を刑事手続の成果を利用して簡易かつ迅速に解決するべく、損害賠償請求に係る裁判手続の特例として本制度を設けることにしたものでございます。

 手続の概要をごく簡単に申し上げます。

 まず、殺人、傷害等の故意の犯罪行為により人を死傷させた罪などに係る事件の被害者等は、刑事事件の刑事裁判所に対しまして、その弁論の終局までに、その刑事事件の訴因を原因とする不法行為に基づく被告人に対する損害賠償の請求、すなわち損害賠償命令の申し立てをすることができるわけでございます。この損害賠償命令の申し立てについての審理及び裁判は、刑事裁判中には行われず、原則として有罪の言い渡しがあった直後に最初の審理期日が開かれることになります。

 損害賠償命令の申し立てについての審理は簡便な任意的口頭弁論の手続によって行われ、裁判所は最初の審理期日において刑事事件の訴訟記録を取り調べなければならず、また、原則として四回以内の審理期日において審理を終結しなければならないとされております。

 審理に日時を要する、四回以内で終えることが困難であるというふうに認められますと、そこで損害賠償命令事件は終了しまして、通常の民事裁判所において審理が行われることになります。

 損害賠償命令の申し立てについての裁判は決定によるものといたしまして、これが確定した場合には確定判決と同一の効力を有することになります。しかし、異議が申し立てられました場合には、通常の民事裁判所における審理に移行する。

 これが、本制度の手続の概要でございます。

近江屋委員 今伺ったところによりますと、本制度は簡易迅速に紛争を解決するという点で被害者救済のための画期的な仕組みでありまして、大変結構なことだと思っております。

 その上で、一点、念のため確認しておきたいのでありますが、刑事裁判中に損害賠償命令の申し立てをさせるということにいたしますと、裁判官や裁判員に対して予断を与えるおそれがあるのではないかと懸念する向きがございますが、この点についてどのように考えておられるのか、お伺いいたします。

小津政府参考人 御指摘のような予断を排除いたしますために、この制度におきましては、裁判所が損害賠償命令の申し立てを受けましても、その申し立てに基づく民事の審理手続はあくまでも刑事被告事件が終了した後に行うわけでございます。申し立て書を受け取って見るわけでございますけれども、それは刑事被告事件の実態について裁判所の心証形成を目的とするわけではございませんので、そのような観点から、いわゆる予断排除の原則に反するものではないと考えているところでございます。

近江屋委員 予断排除の原則に則しているという御説明でありました。

 先ほどの手続に関する刑事局長の御説明によりますと、本制度における審理の回数につきましては、原則として四回以内の審理期日において審理を行うとされております。迅速に手続を行うという要請からは、余り審理の回数が多過ぎないということは十分理解できるところでありますが、どのような理由からこの回数を四回とされたのでしょうか。四回の審理期日で、通常はどんな審理を進めていくのか、どういうイメージになるのか、御説明をいただきたいと存じます。

小津政府参考人 本制度におきまして審理期日を四回以内といたしましたのは、本制度と同様に紛争の迅速な解決を図ることを目的としている労働審判手続が、原則として三回以内の期日において、審理を終結しなければならないとされておりまして、これを一つの参考にしたものでございますが、労働審判手続におきましては、当事者双方が相手方の主張、反論に対する十分な準備をした上で第一回期日を迎えて、いわば当事者双方の主張が出そろった状態で審理を始めるということが前提とされております。そのような中での三回でございます。

 これに対しまして、本制度におきましては、刑事判決の直後に最初の審理期日が開かれることを原則にしておりまして、それまでに当事者間でいろいろなやりとりを行うことを前提としておりませんので、いわば本手続の第二回目の審理期日が労働審判の最初の期日になると考えることもできますので、そこで、この手続においては四回以内としたものでございます。

 次に、具体的なイメージでございます。

 もとより、事案によって異なるわけでございますが、一つの例として申しますと、刑事判決の直後に最初の期日を開催して、申立人の主張の補充やそれに対する相手方である被告人の言い分を聞いた上で、第二回期日において当事者双方がさらに準備をして主張や反論を行って、第三回期日で証拠調べをして、第四回で補充的な証拠調べ等を行った上で審理を終わらせるということが一つのイメージとしてあるのではないかと考えております。

近江屋委員 四回以内としたのは、労働審判が三回以内である、そして、準備を含めたことを考えると四回以内というのが適切ではないかという点はよくわかりました。

 次に、被害者の情報の保護についてお伺いいたします。

 性犯罪等の被害者の氏名等を公開の法廷で明らかにしないことができるように刑事訴訟法を改正するとのことでございますが、確かに性犯罪等の事件の被害者の方々は、一般の傍聴人もおられる法廷でその氏名などが明らかになることは耐えがたいことじゃないかと思います。性犯罪については被害を受けても届け出ない方も多いと聞いていますが、こうした法廷で大っぴらになってしまうということも原因の一つではないかなと思います。

 これまで、これらの点について運用で努力がなされてきたということを聞いておりますが、こういったことはきちんと法律で規定した方が被害者の方々も安心できるのではないか、大変いいことだと思います。

 ただ、そうであるならば、あれこれ要件をつけずに、被害者の方々の希望がある場合には、すべての事件についてその氏名などを公開の法廷において明らかにしないようにすることはできないのかなと思われるのですが、その点どのように考えておられるのか、法改正の趣旨も含めてお伺いいたします。

小津政府参考人 改正の趣旨につきましては、委員も御指摘になられましたように、例えば性犯罪事件の場合のように、だれが被害者であるかが公開の法廷で明らかになることによって被害者等の名誉やプライバシーが著しく害されるようなおそれがある事件について、そういうことを明らかにしないようにするということが被害者保護の観点からは必要で相当だというふうに考えられることからでございます。

 現行法のもとにおきましても、検察官が弁護人や裁判所に被害者の氏名等を公判廷で明らかにしないことについての同意や協力を求めまして、その同意が得られた場合にはそれを秘匿するというような運用がなされてはいますが、しかし、これはやはり弁護人等の同意が前提となるわけでございます。

 また、今回、法律上明記するということによりまして、このような微妙な情報について訴訟関係者の注意を喚起して、被害者の名誉等が害されることを未然に防止したいということがあるわけでございますが、また、こういうような措置が可能であるということを法律に書くということ、それ自体によって被害者の方に安心感を与えて、被害の申告等あるいは十分な供述を得るということが可能になるのではないかと考えたわけでございます。

 他方、それではすべての事件についてそのようにしたらどうかということでございます。

 これはやはり、憲法は裁判を公開で行うということを原則にしておりまして、裁判の内容を国民に明らかにすることによって裁判の公正を制度的に担保すると同時に、国民の皆さんの信頼を確保するためである、このように解されております。また、公判手続におきましては、被害者の名前が全く明らかにならないと犯罪の証明や被告人の防御に実質的な不利益が生じる、そういう場合も考えられるところでございますので、すべての事件についてそのように取り扱うということにつきましては慎重な検討が必要ではないかと考えております。

近江屋委員 御説明で、本人の名誉やプライバシーを守って、そして安心感を与えて、そして十分な供述を得たい、公開制の趣旨からいってもこの案が適切だということがよくわかりました。

 次に、民事訴訟におけるビデオリンク等の措置の導入についてお伺いいたします。

 この法律案では、刑事訴訟だけではなくて民事訴訟においても犯罪被害者等の保護を図ることとされていますが、今回の民事訴訟法の改正では具体的にどのような保護の方策をとろうとされておられるのか、その理由を含めてお伺いいたします。

寺田政府参考人 既に刑事訴訟におきましては、この犯罪被害者等が証人尋問を受ける際に、その不安等を和らげるための措置といたしまして、適当な人を証人尋問中証人に付き添わせるという付き添いの制度、それから傍聴人と証人の間につい立てを置く、あるいは証人と被告人との間につい立てを置く遮へいの制度、それから証人を法廷外に在席させて、その別室と法廷とを回線で接続して、テレビモニターで証言等を聴取するというビデオリンクの制度、これらはいずれも法律上の制度として確立しているわけでございます。

 他方、民事訴訟におきましては、同じような必要性というものはある程度認められているところでございまして、現に、付き添い、遮へいにつきましては、裁判長の訴訟指揮の範囲内で行われているというところも一部ございます。

 他方、ビデオリンクにつきましては規定がありませんので、全く用いられていないというところでございますけれども、今回の犯罪被害者の総合政策、さまざまな見直しが行われる中で、基本計画上もこれらを法律上の制度にした方がいいのではないかという声が非常に強かったものですから、私どもも、この際、単なる裁判所の運用上の措置ではなくて、これを法律上の措置に高めようということで、新たに付き添いと遮へいにつきましては規定を置きます。さらに、今までは遠隔地にしか認められていなかったビデオリンクを、さらに証人の保護等のために新たに別室で証言させ、これを回線でつなぐという適用範囲の拡張を行ったわけでございます。

 私どもも、これが、犯罪被害者のみに限られるわけではございませんけれども、民事訴訟で大いに活用されるだろうというように思っているところでございます。

近江屋委員 今回導入することとしている措置は、犯罪被害者等の保護のために大変重要なものだと思います。今回の改正で民事訴訟においてもこれらの措置が十分に活用されることを期待いたします。

 次に、公判記録の閲覧、謄写の範囲の拡大についてお伺いいたします。

 そもそも公判記録につきましては、現行法においても一定の要件のもとで被害者等による閲覧、謄写が認められていると承知いたしております。そこで、今回の法改正によりまして、いわば原則と例外をひっくり返して、被害者の方々であれば原則として公判記録の閲覧、謄写を認めるということでございますが、このように要件を改めるということにした理由を簡単にお伺いいたします。

小津政府参考人 御指摘のように、現行法でも認められております公判記録の閲覧、謄写、この要件を原則と例外を逆にいたしまして、原則として認めるようにしたわけでございます。

 これは、被害者の方々がみずからが被害に遭った事件の内容を知りたいという心情から、その被害に係る刑事被告事件の公判記録の閲覧、謄写を望むということは、現行法では損害賠償請求権の行使のために必要というのを基本的な要件にしておるわけでありますけれども、そのような場合に限られないものであるということでございまして、そのようなお気持ちにこたえて法律上も十分尊重することにして、このような制度にしたわけでございます。

近江屋委員 よくわかりました。

 犯罪被害者等が刑事裁判に参加する制度や刑事裁判の成果を民事裁判に利用する制度など、これらは日本の刑事裁判の様相を一変させる画期的なものではないかと思っております。

 今回の法改正によりまして、日本の刑事司法が、秩序維持という公益を図ると同時に、被疑者、被告人の権利を守りつつも犯罪被害者の権利をしっかり守る、そのような基本的な考え方になったんだろうと思いますが、その点、いかがでしょうか。法務大臣にお伺いいたします。

長勢国務大臣 今回の法案は、犯罪被害者の方々がその尊厳にふさわしい処遇の一つとして、被害に係る刑事事件の裁判に適切に関与していただくとともに、被告人に対する損害賠償請求に係る紛争について、刑事手続の成果を利用して簡易迅速に解決するための制度を設けることとするなど、犯罪被害者の方々の権利利益の保護をより手厚いものとするものでございます。

 犯罪被害者の方々のための施策は今回の法案だけで尽きるわけではございませんけれども、今回の法案は、刑事司法手続について大変重要な意義のある改正を含んでおるものでございまして、犯罪被害者の方々の権利に可能な限り配慮していくという内容になっておると思っております。ぜひ、早急な成立をよろしくお願い申し上げたいと思います。

近江屋委員 法務大臣から、犯罪被害者の尊厳にふさわしい、手厚い処遇を求めておるんだという御説明でした。

 その犯罪被害者の尊厳にふさわしいという点では、自由民主党が取りまとめました新憲法草案の第二十五条の三には、実は、「犯罪被害者は、その尊厳にふさわしい処遇を受ける権利を有する。」と書いております。犯罪被害者の基本的人権を憲法に明記いたしまして、その権利を保障したいというのが私たちの立場であります。

 そのような立場に立ちますと、今回のいずれの改正内容も、犯罪被害者等基本計画において、二年以内を目途に結論を出しまして、その結論に従った施策を実施すべきとされているものでありまして、犯罪被害者の方々の権利利益の一層の保護を図るためのものでありますので、法務大臣がおっしゃるように、できるだけ早期にこの法案を成立させる必要があると私も考えております。

 そして、犯罪被害者の方々のための施策は、やはり大臣がおっしゃいましたとおり、この法案に盛り込まれたことに尽きるものではありません。引き続き、政府を挙げて各種施策に前向きに取り組んでいただくことが重要でありますので、この点について、改めて法務大臣の強い決意をお伺いいたします。

長勢国務大臣 今先生お話しのとおりでございまして、法案の成立を早期にお願いいたしますとともに、政府全体として、各般の問題、被害者救済の問題も含めまして、いろいろな観点からの議論を尽くし、その施策の充実に努めてまいりたいと思っておる次第でございます。

近江屋委員 法務大臣、どうぞよろしくお願いいたします。

 時間ですので、私の質問は終わらせていただきます。ありがとうございました。

    ―――――――――――――

七条委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 ただいま議題となっております本案審査のため、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

七条委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る二十五日金曜日午前十一時理事会、午前十一時二十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時二分散会


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