衆議院

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第20号 平成19年5月25日(金曜日)

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平成十九年五月二十五日(金曜日)

    午前十一時二十七分開議

 出席委員

   委員長 七条  明君

   理事 上川 陽子君 理事 倉田 雅年君

   理事 武田 良太君 理事 棚橋 泰文君

   理事 早川 忠孝君 理事 高山 智司君

   理事 平岡 秀夫君 理事 大口 善徳君

      赤池 誠章君    稲田 朋美君

      今村 雅弘君    近江屋信広君

      奥野 信亮君    後藤田正純君

      笹川  堯君    清水鴻一郎君

      柴山 昌彦君    杉浦 正健君

      保坂  武君    三ッ林隆志君

      武藤 容治君    森山 眞弓君

      矢野 隆司君    保岡 興治君

      柳本 卓治君    山口 俊一君

      石関 貴史君    大串 博志君

      河村たかし君    中井  洽君

      横山 北斗君    神崎 武法君

      保坂 展人君    滝   実君

    …………………………………

   法務大臣         長勢 甚遠君

   内閣府副大臣       平沢 勝栄君

   法務大臣政務官      奥野 信亮君

   外務大臣政務官      松島みどり君

   最高裁判所事務総局刑事局長            小川 正持君

   政府参考人

   (内閣府犯罪被害者等施策推進室長)        荒木 二郎君

   政府参考人

   (警察庁長官官房長)   安藤 隆春君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  片桐  裕君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    縄田  修君

   政府参考人

   (警察庁刑事局組織犯罪対策部長)         米田  壯君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    小津 博司君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    梶木  壽君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 木寺 昌人君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    谷崎 泰明君

   政府参考人

   (財務省大臣官房参事官) 森川 卓也君

   政府参考人

   (水産庁資源管理部長)  山下  潤君

   政府参考人

   (経済産業省貿易経済協力局貿易管理部長)     押田  努君

   政府参考人

   (海上保安庁警備救難監) 冨賀見栄一君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 黒田大三郎君

   法務委員会専門員     小菅 修一君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十五日

 辞任         補欠選任

  山口 俊一君     保坂  武君

同日

 辞任         補欠選任

  保坂  武君     山口 俊一君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案(内閣提出第七七号)


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     ――――◇―――――

七条委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣府犯罪被害者等施策推進室長荒木二郎君、警察庁長官官房長安藤隆春君、警察庁生活安全局長片桐裕君、警察庁刑事局長縄田修君、警察庁刑事局組織犯罪対策部長米田壯君、法務省刑事局長小津博司君、法務省矯正局長梶木壽君、外務省大臣官房審議官木寺昌人君、外務省領事局長谷崎泰明君、財務省大臣官房参事官森川卓也君、水産庁資源管理部長山下潤君、経済産業省貿易経済協力局貿易管理部長押田努君、海上保安庁警備救難監冨賀見栄一君、環境省大臣官房審議官黒田大三郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

七条委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

七条委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局小川刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

七条委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

七条委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高山智司君。

高山委員 民主党の高山智司でございます。

 犯罪被害者の権利保護を図るために訴訟参加ができるという法案の審議、我々民主党もきょうから始めるわけなんですけれども、そもそも犯罪被害者に対する政府の配慮、対策というよりは、自分が何の過失もないのに犯罪被害に遭ってしまった人たちにどういう配慮をやはり政府としてしていくべきなのかということを、我が党でいえば細川律夫議員などを中心に、犯罪被害者、そしてその家族に対して、民主党は早くから基本法案を提出するなど、積極的にかかわってきた経緯があります。

 これは〇五年に策定された犯罪被害者等基本計画を踏まえて、今回のこの法案が出てきたわけでございますけれども、おおむね、その内容は犯罪被害者の気持ちを酌み取った、いい内容のものだなというふうに思っております。

 ただし、犯罪被害者の方の中も、積極論から消極論までやはり幅広い。つまり、これはやはり犯罪被害者の方の気持ちをかなり考えている面が大きいので、本当に積極的にやってほしい、いや、余りやらないでほしい、随分割れている、悩ましい選択をしなければいけないものなんだなというふうに考えております。

 ですから、私たち民主党も、これからの審議、そしてまた参考人の方の意見もしっかり踏まえた上で、必要があれば修正案を出さなければいけないだろうし、ただ、おおむね方向は賛成できるものですから、どうなのかなと悩みながらのものではあるんですけれども、やっていかなければいけないなと思っております。

 それで、今回、犯罪被害者が訴訟参加できるようになったということですけれども、それ以外にも、実は、犯罪被害者に対して、ただ訴訟参加するだけではなくて、きちんとそれによって、犯罪に遭ってけがをしてしまったから仕事を失ってしまったとか、いろいろな生活保障や、また救済措置というのを政府は当然やらなければいけないわけなんですけれども、それにも増して、ちょっと考えなければいけないのは、そもそもやはり犯罪の被害者というものを減らさなければいけないんだというふうに思います。

 当たり前のことなんですけれども、この被害者をなくす。特に、最近は政治家に対する銃撃事件であるとか、いわゆる銃を使った犯罪というのが非常にふえております。この銃というのは、普通に生活している中ではほとんど我々は使わない、むしろ、そういう犯罪であったり人を傷つけたりするのに専門に使われると言ってもいいようなものだと私は思うんです。

 ですから、我が国は比較的、本当に何年も前からというか、もう戦国時代の後に、刀狩りもあって、みんなが武器を持たないで平和に暮らしてきたわけですけれども、最近また銃器犯罪がふえているということが指摘できると思うんです。

 そもそもやはり被害者をつくらないためには、まず銃器対策、こういう危険な凶器をどんどん取り締まっていく必要があると私は思うんですけれども、きょうはまず、銃器対策推進本部、これは官房長官が座長を務められているということですけれども、政府全体としてどのような取り組みを今しているのか、これを平沢副大臣に伺いたいと思います。

平沢副大臣 御指摘の銃器対策についてでございますけれども、これにつきましては、内閣官房長官を本部長とする銃器対策推進本部というのがございまして、ここでは、銃器摘発体制の強化あるいは取り締まり機関との連携の緊密化、水際対策の的確な推進、国内に潜在する銃器の摘発、国際協力の推進等々、諸施策を内容とする銃器対策推進計画を毎年策定しまして、政府を挙げて強力な銃器対策を推進しているところでございます。

 今、委員御指摘のとおり、最近の長崎市長に対する殺人事件あるいは愛知県で発生しました立てこもり事件など、こうした銃器事件の発生を踏まえまして、一歩踏み込んだ対策についての検討を進めるため、関係省庁から成るプロジェクトチームを立ち上げまして、銃器議定書締結のための国内担保法の整備あるいは銃刀法の罰則強化等の法令の見直し、水際対策の一層の強化、こういったことについての検討を現在行っているところでございます。

 これらにつきましては、七月初めを目途に取りまとめを行うこととしておりまして、銃器犯罪の根絶のため政府一体となった取り組みを一層強化してまいりたいと考えております。

高山委員 ちょっと細かいことなんですけれども、議論の前提となりますので、これは政府参考人の方で結構ですけれども、まず、今、銃を使った犯罪というのが実際ふえてきているのか、どのぐらいの件数があるのかということと、もう一つは、日本の国内で、犯罪に使われている銃というのはほとんど密輸だったり何か違法なものだと私は思うんですけれども、合法で銃も買える部分もあるというふうに聞いております。そういう部分はどういう管理の方法がとられているのかということ、二つ、伺いたいと思います。これは担当の局長の方で結構です。

米田政府参考人 まず、銃の犯罪でございますが、銃器発砲事件の経年の推移を申し上げます。

 平成十四年には、総数百五十八件の発砲がございました。これはさまざまな、銃刀法の重罰化あるいは取り締まり手法、それから対立抗争の抑止策というのがかなり効果を上げていると思われますけれども、年々減少いたしまして、昨年は五十三件でございました。

 ただ、ことしに入りまして、またちょっと上昇に転じておりまして、これは五月二十二日現在でございますが、二十九件、昨年比プラス十一件というように、少し増加をしているというところでございます。

 なお、合法銃につきましては生活安全局長から答弁をさせていただきます。

片桐政府参考人 お答え申し上げます。

 現在の銃器の規制でございますが、銃砲刀剣類所持等取締法に基づいて、法令に基づいて、例えば警察官等が所持する場合とか一定の場合のほか、狩猟とか有害鳥獣駆除のために許可を受けて所持をすることができるという形になっております。

 その許可数をちょっと申し上げますと、平成十八年で三十七万四千六百十五丁が現在許可をされておりますけれども、この許可された銃砲については、例えば堅牢なロッカーの中に保管しなければならないとか、厳格な保管に関する定めが定められております。

高山委員 思ったより多い数の合法銃というのがあるんだなというふうに今私は思ったんですけれども、これは許可する基準といいますか、どういうような手続で申請があって、例えば私なんかがそういうものを手にすることができるのか、どういう手続で、一体どういうところで買えばいいのか、これをちょっと詳しく教えてください。

片桐政府参考人 許可は非常に複雑になっておりますけれども、まず、許可を受けたい方が申請書を提出いたします。それを受けて、まず講習を受けなければいけませんから、いついつこういった講習を受けてくださいというような話をいたします。その上で、今度は講習を受けるための資格の認定をいたします。このときには、銃刀法で定められている一定の欠格事由に該当しているかどうかということを調べて、該当していなければその認定を出すということになります。

 そうすると、認定を受けて、今度は銃砲店に行って弾を買ってまいりまして、その弾を持って、一つの方法は、指定教習射撃場というところに行って、そこの銃砲で教習を受ける、またもう一方は、公安委員会に行って直接検定を受けるという形になります。これが合格いたしますと、再度、今度は所持許可申請というのが出まして、ここで、もう一度その欠格事由に該当するかどうか等といった審査を行います。該当しない、許可することが適当と認められれば許可がされて、それを受けて銃砲店に行って銃砲を買うという形になります。

高山委員 今の御答弁によりますとかなり厳格な手続で、銃を入手するまでにかかるなという印象を持つんですけれども、これは警察の方に伺いたいんです。

 警察は、これは何か実質的審査権があるんですか、それとも形式的な、その欠格事由に当たっているかどうかという形式的審査権だけなんでしょうか。どちらですか。

片桐政府参考人 お答え申し上げます。

 欠格事由に関する審査についてのお尋ね……(高山委員「いや、まずトータルでね。トータルで許可が出るまで」と呼ぶ)

 中心になるのはやはり欠格事由の審査、この方に持たせていいかどうかという審査と、もう一つは、許可を受けようとする銃砲がきちんとした銃砲であるかどうか。物的な部分と人的な部分とやりますけれども、主に人的な部分の調査についてが中心になろうかということでございますけれども、その点については、許可を受けて所持させることについての危険性があるかどうかについて相当踏み込んだ調査をするということになっております。

高山委員 そうしますと、今の御答弁ですと、実質的な審査権もあるのかなという今印象を受けたんですけれども。

 これはきのうの新聞でございますけれども、今皆さんにお配りしております。宇都宮で二人の方の殺傷事件がありました。「猟銃許可 警察に過失」というふうに出ているんです。これは私もびっくりしたんですけれども、近所のトラブルがあって、トラブルが悪化している中でこの犯人の方が猟銃の申請をしてきた。恐ろしい国ですよね。御近所トラブルになったら、近所の人が猟銃の購入を申請してきて、しかも、もうこれは実際に犯罪に使われてしまった。二人の方が、もう殺傷されているということでございます。

 この件に関して、まずこれは平沢副大臣に伺いたいんですけれども、警察はどういう落ち度があったんでしょうか。今の実質的審査権の部分で問題があったのか、それとも、これは犯罪を防ぎ得なかったということで問題があったのか。一体、これはどういうところに一番問題があったと副大臣は今認識されているかということを伺えますか。

平沢副大臣 私も、これは新聞報道を今見せていただいたばかりでございます。私自身も、かつて警察で猟銃の許可を担当する責任者でいたことがありますけれども、猟銃の許可は、確かに三十万以上許可しているわけですけれども、極めて厳格にやっているわけでございまして、この報道がそのとおりだとすれば、私自身は、なぜこのようなケースについて猟銃の許可が出たんだろうと。

 実際に現場で調査した方は、許可を与えることについていわば熟慮する必要があるんじゃないかという意見書を出しているわけですから、警察の段階でその辺がきちんと考慮されなかったということにもなるわけでございまして、いわば猟銃という危険物の許可を与えるわけですから、もっと慎重に私は許可すべきではなかったかなと。

 この点については、私自身は、警察は一生懸命やったと思いますけれども、その辺の意思の疎通も含めて警察はこういった結果についてはしっかりと反省してもらいたいなと思っております。

高山委員 副大臣、これは報道というよりは地裁判決なんですよね。もうこれは判決が出ている話でございます。今、いみじくも平沢副大臣の方から銃器の責任者もやられたことがあるということでしたけれども、ひょっとすると、この許可を出すやり方が形骸化しているんじゃないでしょうか。

 報告書も出ていたのに何かそれが放置されてしまっているであるとか、これはちょっと形骸化しちゃっている部分があるんではないのかなというふうに私は思うんですけれども、まさに責任者も務められたことのある平沢副大臣、現行の許可制度、どこが問題だと思いますか。

平沢副大臣 私の経験では、現在この猟銃の許可というのは極めて厳格にやっていますので、先ほど警察庁の方からお話がありましたように、普通恐らく、犯罪に使われるおそれがある、あるいは今トラブル等に巻き込まれていて、このまま与えれば犯罪に万が一使われるんではないか、その可能性があるというようなケースについては、きちんとした身元調査というか近隣の調査もやりますので、こうした猟銃の許可が与えられるということはないはずでございます。

 今回のケースについて、なぜこういったケースについて、しかもトラブルが近隣の方とあったわけでございまして、そういう中で与えてしまったのかというのは、私自身は、これは本当に例外中の例外というふうに思いますけれども、いずれにしましても、結果としてこういうことになったのは大変に遺憾でございます。

 この点については警察の方でしっかりと反省して、二度とこういうことがないようにしてもらいたいと思いますけれども、今の制度自体は極めて厳格に規定されておりまして、今の制度をそのまま適用すれば、私はこういったケースについて猟銃の許可が出るということはないんじゃないかなと思っています。

高山委員 どうでしょうか。あっさり、トラブルがある中でというように今言いましたけれども、判決によると、この被害に遭われた方は、事件の数年前からこの隣人の男から執拗な嫌がらせを受けていて、この犯人の男から車ではねられそうになったことがあるなど、二十回以上警察署に相談に行っているんですよね。

 それが、この男は事件の一カ月前にもう猟銃の許可をもらって、だからこれはある意味、わかりませんよ、犯人の気持ちはわかりませんけれども、やはりその隣の人を撃つつもりで猟銃の申請を出して、一カ月後に実際に犯行に及んでしまったんではないかなと思わせる面がかなり多いと私は思うんですね。

 今、平沢副大臣の方で、猟銃の許可制度は現行のままで全く問題ないんだというようなお話でしたけれども、これだけ執拗な嫌がらせがあって、車でひきそうになっているような人が、危険な人物が隣人でいるんだという情報が、警察署の署内は縦割りですか、そういうものの相談が行く場所と銃器対策をやっている場所が全く縦割りで、書類審査で出されているんでしょうか。そうすると、一市民がもう警察に行ったから安心だというようなことが、また年金記録を持ち出すまでもなく、役所を疑ってかからなきゃならないということになりかねない。

 どうして、この情報が伝わっていなかったのか。まさに警察出身でもあられる副大臣は、今警察にどういう弊害があって、どう改善していけばいいというふうにお考えなのか、答弁願います。

平沢副大臣 要するに、この種のものは、実際にこの人物が猟銃許可を与えて大丈夫かどうかというのは、この報道にも書いてありますけれども、地域課の警察官が調べるわけですね。その報告書が本署に上がってくるわけです。本署でその報告書の内容についてきちんとした的確ないわば判断ができなかった、これが私は今回のミスにつながったんではないかなと。

 だから、一言で言えば、本署の限られた数の人たちが、猟銃の許可申請というのは数が多いですから、直接調査するわけじゃないですから、いわば地域課の警察官、地域に密着した活動をしている警察官が調べて報告書を書いて、それを上げてくるわけですから、その報告書をしっかりと読んで、そしてその中に例えば疑わしい点があれば本署の方で、もうちょっとここを詳しく調べろ、これは問題があるかどうかということで打ち返して、果たしてこの人に与えていいのかどうかというのを実際に調査に当たった地域課の警察官に聞いてみる。

 こういった措置をとっていればこれは問題なかったと思いますし、現実にはそういった措置はとられているはずでございますけれども、私は、今回のこのケースに限っていえばそういった措置がとられなかったんではないか、その辺が今回こういったいわば痛ましい結果につながってしまったんではないかなと思っておりまして、この辺は、何度も申し上げますけれども、警察としてはしっかりと反省してもらいたいなと思っております。

高山委員 今、いみじくも副大臣の御答弁の中に、本署の許可を出す方というのは、申請に比してすごく人数が少ないんだというお話がありました。だから、実際に自分たちの目で見るのではなくて、地域に密着した警察官からいろいろ情報を仕入れてということでしたけれども、書類審査といいますか、本当に書類の上だけで、形式的な審査にこれはとどまってしまうような私は気がいたします。

 アメリカなどでは、IDを見せればもうスーパーマーケットでもすぐ拳銃を買えるなんていう州もあるようですけれども、そういうふうに気軽に危険な凶器が買えるというのはふさわしくないといいますか、より被害者をふやしていくような私は気がいたしますので、本当にこれは襟を正してしっかりとやっていただきたい。これは、ただそういう空虚なことだけではなくて、制度の見直しも含めて、そもそもこの日本の国内でそういうふうに猟銃を保持する必要というのが本当にあるんだろうかということの議論も含めて、私は銃器対策本部の方でやっていただきたいなというふうに思います。

 もう一つなんですけれども、銃器以外に、最近またいろいろ新聞を見ておりますと、悪質な強盗、強姦事件、こういうのがどんどん起きています。こういうのを見ていますと、手口が、スタンガンや催涙スプレーといったものを使って犯罪が行われているというのが随分多いわけなんですね。

 それで、大臣、私もどういうものなのかなと思ってインターネットで検索すると、スタンガン格安とかどんどん出てくるんですよ。一万円ぐらいで通信販売で買える。特に身元の確認もなく小包でどんどん送ってくる、通信販売で気軽に買えてしまう。それで、護身用と一応大きく書いているわけなんですけれども、私の周辺のいろいろな方に聞いただけでも、女性の方で、本当にこんなものを、護身用にスタンガンであるとか催涙スプレーをかばんの中に入れて持ち歩いているというような人もなかなかいないんですね。だから、実際にはこれはどういう使われ方をしているのか、私はこれは非常に気になるところなんです。

 警察庁に伺いたいんですけれども、まず、このスタンガンというものが、今どのぐらい市場に出回っていてというか、日本の国内にあって、どういう管理体制といいますか、売るときには例えば身分証明書が要るとか、今携帯電話を買うときですら身分証明書を見せて本人確認をするということが義務づけられていますけれども、スタンガンであるとか催涙スプレー、こういったものがどういうふうに今買えるようになっているのか。

 あとは、こういったスタンガンや催涙スプレーのようなものを使った犯罪が近年何件ぐらい起きているのかという実態をどういうふうに把握されているか、これは細かい話なので、事務方の方から答弁をお願いします。

片桐政府参考人 お答え申し上げます。

 警察庁としてこのスタンガンの販売の実態の調査は行っておりませんけれども、各都道府県警察では、ある程度の販売の状況、販売店とかいうものは把握をしていると承知しています。

 例えば、幾つかの県に聞いてみたんですけれども、防犯グッズを売っている店、または防犯グッズのコーナー、そこにはスタンガンとか今御指摘のあった催涙スプレーが置かれているようであります。あと、アーミーショップとか言われるような店でも売られている、それから、御指摘のあったように、インターネット上で販売もされているというふうなことのようでございます。

 これについては、今のところ販売についての規制というのはございませんので、買うときには、格別の身分を証明するものとかいうものの提出は求められていないと私は承知しております。

 なお、もう一つ、販売量等は私ども現在のところは把握をしておりません。

米田政府参考人 スタンガン、催涙スプレー等を使用した犯罪でございますが、催涙スプレーにつきましては、スプレーという統計はございますが、催涙スプレーという限定したものはございません。スタンガンにつきましては、これは検挙ベースでございますが、昨年は八十二件でございました。この十年間を見ますと、最低で四十九件、最高の年で百十二件というように推移をしています。

高山委員 これは、まず銃器対策本部の平沢副大臣に、これは銃器ではないわけですけれども、こういうものをどういう扱いにしたらいいかということも伺った上で、後で長勢大臣にも伺います。

 まず、平沢副大臣に伺いたいんです。

 このスタンガンというのは銃ではないわけですけれども、これは私の思い込みかもしれませんけれども、護身用と銘を打ってはいますけれども、実際には、むしろ犯罪に使われることの方が多いような印象を私は持ちますね。防犯グッズの店で売っていると言いますけれども、これは本当に被害に遭いそうな人が使うというよりは、むしろ加害者になり得るような人が持っているのではないかな、人をおどす武器に使っているのではないかというふうに私は思います。

 その点、まず、政府の銃器対策本部では、モデルガンなんかは少し配慮されているようですけれども、こういうスタンガンや催涙スプレーといったもの、あるいは今もアーミーショップという話が出ましたけれども、刃渡りがこんな何センチ以上のナイフとかありますよね、これは普通の生活で使わないわけですよね、そういうものをどういうふうに今規制しているのか、あるいは規制をしていないのであれば、どういうことを今考えているのかということをまず教えてください。

平沢副大臣 スタンガンそれから催涙ガス、それからそのほか日常生活で使われている包丁とかナイフとか、こういったものもそうですけれども、非常に社会に役に立つ面もありますし、同時に犯罪に使われる面もある、裏表のようなところがあるわけでございまして、今、委員の御指摘は、犯罪に使われる可能性の方が極めて高いんじゃないか、むしろ社会生活上有益な側面というのが余りないんじゃないか、こういうことではないかなと思います。

 その辺については、今まで、ではどの程度こういった問題が起こっているのか、犯罪に使われて問題が起こっているのか、それについてどういう規制をやったらいいのかということについては、これは警察の方でもやっていたと思いますけれども、内閣府の方でもこれからしっかり、銃器対策本部等でこの点についてしっかりと検討しまして、そしてこうした、社会に有用な側面もありますけれども、犯罪に使われる側面が極めて大きいようなグッズにつきましては、しっかりした規制を考えていきたい、このように考えております。

高山委員 長勢大臣にもこれは伺いたいんですけれども、有用な側面もあるけれども犯罪に使われるかもしれないというような話でございました。

 それで、つい先週、我々は刑法改正で自動車の飲酒運転の話を随分したと思うんですけれども、その際にも、お酒を飲む行為そのものが何か悪い行為だとか、あるいはお酒を人に勧める行為そのものが悪い行為かといえば、別にそれは皆さんもやられているし、当然私もやっている普通の行為だと思うんです、お酒を飲むということ、ただそのものは。けれども、お酒を飲んでそれで車を運転してしまうと、また重大な結果が生じてしまう。それで、その結果の重大性にかんがみ、お酒を出すレストランの例えば主人とかまで本犯として今度犯罪化したわけですよね。

 このスタンガンであるとか催涙スプレーの有用な側面というのが、どういうところで使われているのかというのは、なかなか私はわかりかねるんですけれども、もうむしろこれは犯罪に使われている方が私は多いと思っています。だから、そういうことを考えると、こういうものこそまず規制しなきゃいけないんじゃないかと私は思っていますけれども、まず大臣のお考えを伺えますか。これはもう本当に価値判断の問題ですので、大臣の考えを教えてください。

長勢国務大臣 現在、こういうスタンガンだとか催涙スプレーとかがどういう形になっておって、それがどういう犯罪等に使われているかという実態も含めて、政府全体の中で検討されるべきことだろうと思います。

 個人の意見ということであれば、昨今、何かほんのちょっといいことがあるとか、趣味だとか、何とかだといって、自由を守らなきゃいけないといって、ほかの悪いことを全く考えないという風潮が強くなっていることを厳しくやらないとこういう規制はなかなか難しいんじゃないかということを危惧します。

高山委員 大臣からも、やはりこういうのは厳しくというような御答弁もいただきました。

 きょうは、本当にこれから議論しなきゃいけないこの犯罪被害者の訴訟参加でございますけれども、確かにそれは犯人が一番悪いですよ。けれども、こういう銃器であるとか、あるいは銃器に準ずるような危険なものが、本当にそこらじゅうにあふれていて手軽に買えてしまうというのは、やはり恐ろしい事態だなというふうに思います。そういうものを規制していくことこそ政府の役割であって、ある意味、今回のこの犯罪被害者の訴訟参加ということですけれども、これは被害者の気持ちを考えて、訴訟参加をした方が気持ちがいやされる、あるいは正義が貫徹されたということであれば、私はこれはいいことだとは思いますけれども、本当に犯罪被害者対策といいますか、配慮ですね、全部を考えたときに、訴訟参加というのは本当にごく一部のことですよね。ですから、本当にそれに至る以前の、被害者をつくらないという意味で、こういう危険な銃器であるとか、こういう凶器対策はしっかりやっていただきたいなというふうに思います。

 それでは、この被害者の訴訟参加ということについてちょっと伺っていきたいんです。

 これは、少年法との関係もあると思うんです。先般、少年法の質疑もいろいろやりましたけれども、これは被告人が少年の場合なんですけれども、この犯罪被害者の訴訟参加ということで、何か普通の刑事裁判と変わるところがあるのか、どういう配慮が必要なのかということをまず大臣に伺います。

長勢国務大臣 被告人が少年の場合はどういうことかという御質問でございますが、家庭裁判所から検察官に逆送されて、刑事裁判を受けることとなった少年については、少年の健全育成の観点から、その処遇を判断する家庭裁判所により、保護処分ではなく刑事処分を行うべきであるとされ、その意味で、成人と同様の取り扱いが相当であると判断されたものであります。

 そういうことですから、本法律案では、そのような少年の刑事事件については、成人の刑事事件と同様に、被害者参加の対象とすることにいたしております。

 少年である被告人についても黙秘権が認められており、被害者参加人の質問に対しても供述を拒否することができます。また、少年である被告人も、刑事手続において弁護人の援助を受けることができる。実際の刑事裁判の場においては、主として弁護人が被告人にかわって防御活動を行っているのが実態であると承知をしておりますし、さらに、仮に被害者参加人からの直接の質問に対して供述することがためらわれることがあったとしても、被告人は、いつでもそれ以外の場で任意に供述をすることができますし、弁護人による質問や最終陳述の際など、みずからの主張を述べる機会も十分に与えられております。加えて、仮に被害者参加人が違法、不当な質問をする場合には、裁判長がこれを制限することができます。

 したがって、被害者参加人に少年である被告人に対する質問をするということを認めたとしても、特段被告人の防御権が不当に害されるということはないというふうに考えております。よって、少年も同じような対象ということにいたしております。

高山委員 今大臣が御答弁された被告人の権利というものは、大人一般といいますか、刑事訴訟法上の当然の権利だと思うんですけれども、私が伺いたいのは、やはり少年ということであれば、精神的にもいろいろ未熟な面もありましょうし、本当に裁判の場で、特に被害者の人からわあっと言われることがどういう影響を及ぼすのか、いや、少年だって大人同様でいいんだというのであれば、それはそもそも少年法は要らないという議論ですから、日本には少年法があるわけですから、そういうことを踏まえて、何か配慮をする必要があると大臣はお考えか、それとも、いや、これは大人同様の裁判で構わないということなのか。大臣の見解と本法案の扱い、もう一回教えてください。

長勢国務大臣 逆送されて刑事裁判にかかる少年は、少年である被告人ですけれども、それは家庭裁判所において成人と同様の取り扱いが相当であると判断をされたものでありますから、今言ったように、かつ、成人と同様にいろいろな防御権が与えられているわけでございますので、御指摘のような弊害が生ずるおそれはないというふうに考えております。

高山委員 また、もう一つ伺います。これは、少年とは関係ないところなんですけれども。

 今裁判員制度ということが同時に進められているわけですけれども、今まで司法の世界というのは、余り世論の影響を強く受けたりだとか、感情に流されないように、法律の専門家で冷静に判断をして裁いていこうじゃないですかということでやってきたわけですね。もちろん、その弊害も多く見られるところではありましたけれども、今この時期に、裁判員制度ということで、まさに判決の内容にまで一般の市民もかかわるようになってきた。これは、プラスの面もありましょうけれども、マイナスの面もあるのではないかというのは数々指摘されているところでございます。また、その中で、今度、犯罪被害者も訴訟参加できるようになってきた。

 検察官というのは、何のためにあるんだろう。私的な復讐だけではなくて、話をきちんと整理して、本当に適切に罪を犯人が償うためにはこういう方法が適切だということを整理してやられるようなお立場かと思いますけれども、こういう法律の専門家でない人たちがどんどん裁判の場に入ってくるわけなんです。それは、私は随分プラスの面はあると思いますけれども、やはり裁判というのも、結局は、当事者を含む国民全体が納得できるものが一番いいわけですから、なるべく開かれて、いろいろな人が入ってくるというのはプラスの方向があるとは思います。

 まず、大臣に伺いますのは、犯罪被害者の訴訟参加ということで、法律の専門家以外の人が裁判にかかわってくる、また裁判員も法律の専門家以外の人が裁判にかかわってくるということで、大きく今までの裁判制度が変わっていくと思うんですけれども、大臣は、どのような影響を想定されているのか、また、本当にこのままずっといって、やはりちょっとこれは見直しておけばよかったなというようなことが考えられるのか。これは、きのうも与党の議員から質問がありましたけれども、何か見直しの必要などがあるのではないか。

 こういった点に関して、どのように現時点で大臣が考えられているかということを答弁願います。

長勢国務大臣 裁判員制度の話、また被害者参加の制度、確かに従来なかった制度でございますから、従来の裁判に変容をもたらす可能性があるだろうということは、それはそういうことはあると思いますし、また、そういうことの懸念から、いずれの制度も、いろいろな議論が各方面からあったところだろうと思っております。

 ただ、この二つの制度は、そういう意味では、一方の制度も、別の観点からの議論があっただろうと思っております。裁判員制度も今施行二年という時期に来ておりますが、なおいろいろな議論もあるところでもありますし、被害者参加制度についても今議論いただいておるわけでございますが、御批判がある方々もおられるというふうには聞いております。

 そういう意味で、これが施行されて、その後どういう国民の皆さんの御判断になっていくかということは、将来的には、議論の余地は絶対ないということはないと思いますけれども、現段階では、関係各方面の御意見を踏まえて今御提案している制度あるいは裁判員制度がいいということで我々は提案を申し上げておるわけでありまして、ぜひ御理解を賜りたいと思っております。

高山委員 大臣、今、この裁判員制度と被害者の訴訟なんかは別の制度できたというお話もありましたけれども、実際に裁判の場になったときに、裁判員制度であり、かつ、被害者も訴訟参加している。裁判が劇場型にもしなってきたときに、本当にどういう形で正義が貫徹されていくのか。これはシミュレーションというと変ですけれども、省内なり、あるいは裁判所の中で、いろいろな今模擬裁判であるとか裁判員制度のフォーラムとか、やらせじゃないものですよ、きちんとやられているのもあると思うんですけれども、そういう中でこれは検討すべきじゃないですか。被害者の訴訟参加の制度と裁判員制度と両方が同時に施行されてきた場合に、どういう影響が出てくるのか。今検討していますか。

長勢国務大臣 今回の被害者参加の制度を御提案申し上げる段階で、当然、裁判員制度が二年後に施行になるということを前提にして、どういう関係になるか、影響があるかということも踏まえて議論が行われてきた、そして、今回の結論になっておるというふうに承知をいたしております。

 また、今おっしゃるように、そういう観点から、いろいろ被害者参加制度についても、劇場型というか感情的な場面ができないように、いろいろな工夫をして御提案を申し上げているところでございますし、また、この裁判員制度についても、そういう観点からの配慮をしながら制度を設計してきたというふうに思っております。

高山委員 きょうは、委員長からも理事会で御指摘いただきましたように、時間も守らなければいけないということもありますし、定足数もきちんとそろえていただきたいと委員長から御指摘もあったところではございますけれども、どうも与党の方々が、被害者の訴訟参加、熱心なのか熱心じゃないのか私もよくわかりませんけれども、参加されている委員の方そのものがちょっと少ないような気もいたしますけれども、時間が来ましたので、私の質問は終わります。

七条委員長 本会議散会後直ちに委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。

    午後零時九分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時二十分開議

七条委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。平岡秀夫君。

平岡委員 民主党の平岡秀夫でございます。

 犯罪被害者の方々の権利利益を保護する、あるいはそうしたものを拡充していくということにつきましては、私、今から思い出すと、初当選した二〇〇〇年に、私は民主党で当選したわけでありますけれども、そのときに、くしくもこの法務委員会に初めて所属させていただきまして、犯罪被害者基本法案というものを民主党が出しているということで、早くから民主党が犯罪被害者の方々についての権利利益の保護、拡充の問題について取り組んでいるということを初めて知ったわけであります。

 そのときもなかなか委員会で審議してもらえないという状態が、前からずっと私も申し上げているように、与党多数の中で、何を審議するかしないかということは与党が自分たちの力で決めてしまうという、まさに我々は審議拒否を受けておったわけでありますけれども、何とかその後、二〇〇四年に至りまして、全会一致で犯罪被害者等基本法が制定されるという運びになったということで、本当に我々の努力も実った、あるいは犯罪被害者の方々の思いも実ったということで、私はこれ自体、本当に画期的なことであったというふうには思っております。

 そして、きょうの審議に立たせていただいたわけでありますけれども、今回まとめられている法案については、ちょっと私も、果たしてここまで今の段階で進んでもいいものなんだろうかというふうに悩むこともあるということでございまして、しっかりと議論をさせていただきたいというふうに思っております。

 そこで、まず最初に、この法案を提案するに至った経緯について質問させていただきたいと思います。

 実は、この法案については、いろいろな方々がおられまして、法制審での審議のあり方もちょっと一方的ではなかったんだろうかというような指摘をされる方もおられます。私も、法制審自体見ているわけではありませんので、そういう批判があるということでございますので、その批判が本当に的を射ているのかどうか、我々として、今回の審議に当たってしっかりとその点を検証しておかなければならないのではないかという思いで質問させていただきます。

 例えば、法制審での審議においては、一部の被害者団体の方が委員として参加して、その団体が作成した要綱案をもとに議論がされたということで、被害者団体の方々もいろいろな方々がおられる、聞くところによりますと、昨年の三月に、法務省が犯罪被害者等基本計画をつくった後にヒアリングしたときには、三十団体ぐらいの被害者団体の方々からもヒアリングをしたというようなことも聞いております。

 そういう中で、一部の方が委員という形で参加して、さらに要綱案を提出して、それをもとに審議が進められたということについて若干の懸念を表明される方々もおられるということなので、法制審の審議が本当に幅広い意見を踏まえて行われていたのかどうか、この点について大臣の方からお答えいただきたいと思います。

長勢国務大臣 法制審、具体的には刑事法部会において議論されて、極めて慎重な、公平な議論が行われたものと承知をしております。その構成員として、複数の犯罪被害者関係団体の方々や、犯罪被害者の方々を支援する活動をされている弁護士の方々にも加わっていただいたというふうに承知をしております。

 また、この部会においては、事務当局が当初から具体的な案を示して審議を進めるというものではなくて、我が国にふさわしい制度としてどのようなものが考えられるかについて、幅広い観点から議論を行って具体的な案を組み立てていくという方法で審議、検討が行われたというふうに聞いております。

 その際、御指摘のように、部会の構成員が所属する被害者関係団体が既に具体的な案を作成して公表しておられたことから、この案についても部会で紹介していただきましたが、これに加えて、部会においては、犯罪被害者等基本計画を策定する過程で内閣府が実施した犯罪被害者団体等からのヒアリングの結果や、法務省が平成十八年の二月と三月に実施した犯罪被害者団体の方々からのヒアリングの結果、あるいは同年十月から十一月までの間に実施したパブリックコメントの結果も紹介されており、これらの資料を参考としつつ議論がなされたわけでございます。

 このように、法制審議会においては、多種多様な被害者の方々の御意見、御要望等をも踏まえた上で、多岐にわたる論点について活発な議論がなされた結果、本法律案のもととなった要綱を決定したものであり、被害者の中の一部の人たちの意見しか聞いていないという御指摘は当たらないものと考えております。

平岡委員 今大臣はパブリックコメントにも付したというお話でありましたけれども、どうも法制審なんかが審議する場合のパブリックコメントのタイミングというのが、私はちょっと普通のパブリックコメントとは違うんじゃないかなという気がするんですよね。

 このパブリックコメントをやったのは、今のお話だと去年の十月から十一月ぐらいというお話だったと思いますけれども、その段階では、具体的な制度設計というものについてはほとんどわからない状態のもとでコメントを求められる。具体的にどういう形で求められているのかというのはちょっときょうは調べてきておりませんけれども、そういう段階でパブリックコメントを求めると、制度を抜本的に変えていきたいという人たちの声というのはやはり相当強く出る、余り大きく変えたいと思っていない人はそれほど出てこないというのが一般的な傾向ではないだろうか。そういうような状況で出てきた意見というものを踏まえて法制審で議論をされたと。

 パブリックコメントというのは、大体、そこでほぼ七割、八割方ぐらいの意見がまとまったものがパブリックコメントに付されて、いろいろな意見を聞いた上でさらによりよいものにしていくというのが普通ですけれども、この法制審の要綱なりができてから後というのは、そういうパブリックコメントというようなことは求めていないんだろうと思うんですね。だから、法制審が行われるに当たってのパブリックコメントを求めるタイミングというのが、私はどうも余りいいタイミングじゃないんじゃないかというふうに思うんですね。

 そういう意味では、大臣が一部の被害者の方々の意見だけしか聞いていないという批判は当たらないんだというような答弁をされましたけれども、私は、この要綱の作成のタイミングからすると、どうもパブリックコメントのタイミングもちょっと早過ぎた、まあ早くてもいいんですけれども、やはり要綱がある程度できる段階で、その中身を示してパブリックコメントを求めるべきではなかったかというふうに思うんですけれども、どうでしょうか。

長勢国務大臣 パブリックコメントを出す内容あるいはタイミングというのは、事案、事案によっていろいろなことを検討しながらやるんだろうと思うのでございます。

 この法案についての出し方、時期について、先生のような御意見もあるかと思います。ちょっとその経過、考え方は必要であれば事務当局から答弁させますけれども、先ほど答弁いたしましたように、全体として各方面の御意見は十分伺った上で、それを踏まえて法制審で議論が行われて、この結論になってきたものと承知をしておる次第でございます。

 必要であれば答弁させますけれども。

平岡委員 今ここでそこを深く議論しても余り益のある話ではないので、これ以上しませんけれども、私は、ぜひ法制審の審議の問題についても、パブリックコメントをどの段階で、どういう内容で求めるのかについては、もう一度よく政府部内でも検討していただくということを要請させていただきたいというふうに思います。

 そこで、今回の法案の中身に入らせていただきますけれども、今回、大きな項目は幾つかあるわけでありますけれども、きょうはそのうちの二つの点について聞いてみたいというふうに思います。

 まず最初は、いわゆる附帯私訴と言われているものでありますけれども、これについて言えば、いろいろな指摘があります。その指摘の中から、そうかもしれないな、あるいは、これはどういうふうに考えたらいいのかやはり整理する必要があるなというふうに私が思っていることの一つとして言われているのが、こういう仕組みを設けますと、刑事裁判の中で被告人が損害賠償請求というのを強く意識して、刑事訴訟そのものが長期化するのではないかというふうに心配している向きもあるわけであります。

 この点について、今回法案を提出するに当たってどういうお考えを持っておられたのか、御答弁いただきたいと思います。

長勢国務大臣 今回提案している制度においては、刑事裁判中は民事に関する審理を一切行わず、刑事判決の後に民事に関する審理を行うということにしております。

 このように、刑事と民事の審理を分断することにより、刑事に関する審理においては、これまでの刑事裁判と同様に刑事の観点から必要なもののみが審理の対象となり、その中に民事に関する争いは持ち込まれないものと考えております。

 また、本制度においては、刑事判決に法的拘束力を認めておらず、民事上の争点については、損害賠償命令事件の審理等において十分主張、立証していくことができます。したがって、本制度が導入されることによって刑事訴訟が長期化するおそれはないものと考えております。

平岡委員 私が今指摘したような問題点について言うと、今回の制度を設計するに当たって、例えばどういうものが、損害賠償請求を刑事事件の判決後に申し立てができるのかというようなところについてもある程度の考慮がなされているというふうに思うんですけれども、大臣は今ちょっと触れられなかったように思うんですけれども、そういう制度的な手当てというのも何かなされているんじゃないですか。

小津政府参考人 民事上の争点が刑事裁判に持ち込まれる一つの典型例といたしましては、過失割合が問題になる、刑事でいいますと業務上過失致死傷事件があるのではないかなと思いますけれども、今回御提案申し上げております制度におきましては、その業務上過失致死傷罪は対象犯罪から外されております。

平岡委員 そういう外されておりますというような、いや、外していないじゃないかということを聞いているのじゃなくて、そういう刑事事件として訴訟が長期化するというようなことが発生しやすいようなものについては対象にしておりませんとか、そういう答弁の仕方をしてもらわないと、私は別にやらせの質問をしているわけじゃないんですけれども、政府として本当にこういう問題を心配しているのかどうかということが何か怪しくなってしまうような気がしますので、よく質問の趣旨をとらえて答弁をしていただければというふうに思います。

 そこで、次の指摘としては、この仕組みだけではないのかもしれませんけれども、こういう仕組みをとったときには、本当に被告人になった人たち、有罪判決が出た後でありますから、被告人よりももうちょっと立場としては弱い立場に至っているというふうに思うわけですけれども、基本的には拘束されているという状況が多いんだろうというふうにも思いますが、そういう人たちの損害賠償請求の審理への出頭はなかなか難しいという現状からいうと、被告人の防御権が保障されなくなるおそれがあるのではないかというふうに指摘する向きがあるんですけれども、この点についてはどういうふうに今回考えておられるんでしょうか。

長勢国務大臣 身柄が拘束されている被告人の出頭は困難ではないかという問題についての御質問だというふうに伺います。

 こういう問題は、実を言うと現在の民事訴訟においても生じ得る問題でありますので、本制度が導入されることによって殊さらに生ずるものではないものと考えられますが、特に本制度においては、当事者が出頭しなくても、主張を記載した書面を提出しさえすればその主張が裁判資料となるため、より柔軟に審理を進めていくことができるようになっております。

 以上からいたしまして、本手続における被告人の防御権の保障について、そういうおそれはないのではないのかなというふうに考えております。

平岡委員 今大臣が言われたように、私もちょっとこれはよくわからなくて、今の制度でも、刑事事件の裁判が終わった後に民事訴訟が提起されて裁判が行われるというようなケースの場合には、そういう被告人であった人あるいは判決が確定している場合も確定していない場合もあるでしょうけれども、そういう人たちにとっては、民事訴訟における防御権といいますか、訴訟がしっかりできるんだろうかということについての一般的な疑問があるんですけれども、その点については、ある意味では、これは刑務所なり拘置所なりを所管している立場としての法務省がどう考えるかという問題なのかもしれませんけれども、その点についてはどういうふうな今運用なり配慮なりがされているのか、ちょっと教えていただきたいと思います。

長勢国務大臣 必要があれば細部は担当局長から答弁させますけれども、どうしても代理人ではだめで本人が出なきゃならないか、その必要性があるかどうかとか、あるいは出廷させることによる拘禁目的への影響、程度、また出廷させるための戒護職員等の確保等々を総合的に勘案して、出廷させるかどうかを決めておるものというふうに承知をいたしております。

平岡委員 きょうは事務当局というのはいるんですかね。

 では、今の答弁だと、そういうつもりでやっていますということはわかったんですけれども、それがどこまで本当にできているのかということがよくわからないので、質問の機会はまだ何日もありますから、後日また聞かせていただきたいというふうに思います。

 そこで、さらにこの問題をやっていくと、いろいろな人たちが心配しているのは、確かにこういう形で損害賠償請求はできる、そして裁判も迅速に行われるということがあったとしても、結局、有罪になった人から実際に損害賠償を求める、債権を回収というか取り立てていくというようなことというのは実際は非常に難しい。本当に犯罪被害者の方々の救済という面からいったら、実効性のある犯罪被害者補償制度、例えば国が被害者に対して十分な補償を加害者にかわって行い、そして加害者に対しては国が求償していくといったような形のものが必要ではないかということも言われているわけであります。

 この点については、今政府としてはどういうふうなお考えを持ち、またどういう検討を進めておられるのか、御答弁いただきたいと思います。

平沢副大臣 今御指摘の点につきましては、一昨年の暮れ閣議決定されました犯罪被害者等基本計画におきまして、経済的支援を手厚くするための制度のあるべき姿及び財源に関する検討の実施、こういったことが盛り込まれまして、昨年の四月、官房長官を会長とする犯罪被害者等施策推進会議のもとで、関係省庁と有識者から成る経済的支援に関する検討会を設置しまして、犯罪被害者等のための経済的支援制度を実効あるものにするための検討を進めてきたところでございます。

 この検討会におきまして、来月、中間取りまとめを行いまして、国民からの意見をお聞きした上で最終取りまとめを行う予定でございます。

 犯罪被害者等に対する新たな経済的支援につきましては、犯罪被害者等に対する給付の抜本的な拡充等を図るべきとして、犯罪被害者等給付金の最高額を自動車損害賠償責任保険並みの金額に近づけ、最低額についても引き上げるとか、あるいは収入の低い若年層の重度後遺障害者あるいは扶養の負担の多い御遺族に配慮する、こういった内容の中間取りまとめを行う方向で議論がされているわけでございます。

 いずれにしましても、おっしゃるように、本来はこれは加害者がやることなんですけれども、国としても最大限、実効性があるような形でやっていきたいという方向で検討を進めているところでございます。

平岡委員 犯罪被害者等給付金の制度を充実させていくということは、それはそれとして大切なことだと思いますけれども、ただ、それだけでも多分十分でないという部分があって、先ほど私が申し上げたような仕組みというのが、ある意味では必要ではないかという気もするんですけれども、今の答弁でいくと、そういう私が申し上げたような制度というのは、特に検討は行われていないという状況にあるというふうに理解していいんですか。

平沢副大臣 そういう御意見もございますけれども、基本的には、これは加害者が本来はやるべきことなんですけれども、加害者が、おっしゃるように実際には資力がないということで、あるいは加害者の方の責任で被害者に対してのいわば補償というのがなかなかできないというような事情にかんがみまして、そこは国の方でできる限りのバックアップをする、こういうことで今検討を進めているところでございます。

平岡委員 私が聞いているのは、バックアップの具体的な中身として犯罪被害者補償制度というものを申し上げているわけでありますけれども、先ほど、とりあえず来月、中間取りまとめをして意見を求めるということだったので、多分パブリックコメントみたいなことをされるのかもしれません。その過程の中で、またどういうものが中間的に取りまとめられたのか、そして、それで不足している部分、不十分な部分はどういうものがあるのかということを、多くの国民の皆さんからの声を求めていただいて、さらによりよい最終報告に向けて取りまとめをしていただきたいということをお願い申し上げたいと思います。

 そこで、一番大きな問題であります、第二の点でありますけれども、被害者参加人制度の問題であります。

 今回の法案を見ますと、犯罪被害者の方々が法廷の場面で直接的に発言をする、行動をするというようなことがいろいろな場面で認められるような形になっているようでありますけれども、そういう形になること自体が、ちょっとやはり私にはまだ違和感がある、私がまだ古いのかもしれませんけれども、そういう意味でいろいろ確認をさせていただきたいということがあるわけであります。

 その大前提として、私の理解しているところでは、刑事裁判というものは、近代国家になればなるほど、それまでの復讐であるとかかたき討ちであるとか、そういう私的なものをどんどん昇華させていって、国あるいは社会の秩序を維持しながら、ある意味では犯罪者の発生を防いでいく、そういうような非常に社会性を帯びたものになってきているというふうにも思うわけでありますけれども、今回の制度設計をするに当たって、近代国家における刑事裁判の本質というものをどのように考えて、どのような前提に立ってこの制度が検討されているのかという点について、まず御答弁をいただきたいと思います。

長勢国務大臣 先生のお説のとおりに考えております。

 近代国家においては、一般に国家が刑罰権を有しており、法律で定められた刑罰と手続により裁判が行われ、有罪とされた者に対して国がその刑罰を執行するというふうに考えております。

 ただ、訴追権については、国の機関が独占的に行うという法制をとっておる国と、私人による訴追も認めるという法制の国があるというふうに承知しておりますが、我が国においては、公訴を提起する権限や提起された公訴に基づいて主張、立証を行う権限は検察官のみに認め、被告人の有罪、無罪及び量刑は裁判所が決定をし、国がその刑罰を執行する、こういう法制をとっておるわけでございます。

平岡委員 具体的な手続を述べられるだけでは、本当に本質が何なのかということがちょっとわかりにくい点もありますけれども、ここはまたおいおい議論の過程の中で確認をしていきたいというふうに思います。

 もう一つ、今回の制度設計に当たって私が感じるのは、今までの刑事裁判、特に検察官の行動に対して、被害者の方々が非常に不満を感じているのではないかということが背景にあるんじゃないかなというふうに思うんですね。

 よく言われることでありますけれども、これまでは、検察官から犯罪被害者等の皆さんに適切な情報提供が行われていないということがあったりとか、あるいは、犯罪被害者の方々がいろいろ、こうしてほしい、ああしてほしい、あるいはこれはどうなっているんだろうかというようなことで意見とか説明を求めるというようなことがある場合でも、なかなか検察官がそれを聞いてくれないというようなことが、犯罪被害者の人たちにとってみれば非常に不満を感じる大きな要因ではなかったのかというふうに私は思うんですけれども、この点について、検察当局としてはどういうふうに考えておられるのか、大臣から整理した上で御答弁いただきたいと思います。

長勢国務大臣 これまでも検察においては、例えば被害者等通知制度により、被害者の方々の希望に応じ、事件の処理結果、裁判結果等の情報を提供する、あるいは全国の地方検察庁本庁に配置した被害者支援員が被害者の方々からの相談に応ずるなど、被害者の方々の支援に努めてきたものと承知をしております。

 しかし、先生御指摘のような御意見、御不満もなかったわけではございませんで、現状について、被害者の方々から、被害者の権利は非常に貧弱だ、十分な情報も与えられず疎外されているというような御批判、あるいは、被害者は証拠として扱われているにすぎず、事件の当事者にふさわしい扱いを受けていないという声も聞いておるのは事実でございます。

 そこで、このような現状認識を踏まえて、基本法において、「刑事に関する手続への参加の機会を拡充するための制度の整備等必要な施策を講ずるものとする。」とされたものと承知をいたしております。

 法務省としても、このような御指摘を真摯に受けとめ、引き続き、検察官と被害者の方々とのコミュニケーションを一層充実させるよう努めてまいりたいと考えております。

平岡委員 端的に反省の弁を述べていただいたということで、私は、その反省に立ってみて、検察官が犯罪被害者等の皆さんの望んでいることをしっかりと踏まえた活動をするということをまずはやってみるということが大事ではないのかなというふうにも思います。この点については、また後ほど触れていきたいというふうに思います。

 今回の制度設計に当たっては、これは私も説明として聞いたわけでありますけれども、ドイツの制度を参考にして提案を考えたというようなことも漏れ聞いております。

 そういう状況の中で考えますと、似たような仕組みというのは、犯罪被害者の方々が公判廷の場でいろいろな発言をしたり行動したりするという仕組みとしては、ドイツとかフランスに似たような例があるということでよく指摘されるわけでありますけれども、ある方は、これらの国の刑事裁判の仕組みというのは、裁判長が主導権を握って実行していくという職権主義の国だというふうに位置づけられる、それに対して、我が国は当事者主義というものが中心になっている、同じように当事者主義をとっているアメリカとかイギリスでは、犯罪被害者の方々の裁判における位置づけというものについては、やはり当事者主義に応じた限定した状況になっているのではないかというような指摘がされているわけであります。

 この点について、アメリカとかイギリスというようなところが、被害者の方々の訴訟参加についてはどういう仕組みになっているのかについて、端的に御答弁いただきたいと思います。

長勢国務大臣 相当専門的なお話ですので、後ほど担当局長から詳しく説明させますが、私が聞いておるところでは、おっしゃいましたように、アメリカ、英国では、直接参加をするという制度はないようでありますが、できるだけ被害者の御意見等も反映できるような仕組みはつくっておるようでございます。ドイツやフランスは、裁判制度そのものが日本と違ったところもありますけれども、御案内のように、被害者参加制度があるというふうに聞いております。

 また一方、ドイツ、フランス、いわゆる職権主義ということのようでございますが、イタリアでは、アメリカのようないわゆる当事者主義を採用しておる中で、参加をする制度を導入しておるというふうに聞いております。

 ちょっと舌足らずのところもありますので、担当局長から説明させます。

平岡委員 イタリアの話は寡聞にして私もよく知らなかったんですけれども、ここで説明をされてもちょっと困りますので、イタリアのケースについては、どういう仕組みになっているのか、後で資料をいただくことをお願いしておきたいと思います。

 いずれにしても、今御答弁があったように、アメリカ等について言えば、当事者主義ということで、被害者の方が直接裁判所で何かをするという場面がないわけではないですけれども、非常に限られた状況であるということを私も聞いております。同じようにそういう当事者主義をとっている国において行われているということもやはりしっかりと見きわめて今回の制度を考えていかなければいけないということをまず私は申し上げさせていただきたいというふうに思います。

 それで、私も、今回の制度設計に当たっては、今回の制度を認めてほしい、あるいは認めるべきだという人たちの説明ぶりというのもいろいろと聞かせていただいておりまして、いろいろ心配するのは、例えば刑事裁判の法廷の場が復讐の場になってしまったり、あるいは被害者感情が裁判所に蔓延してしまうというようなことになったりするのではないかとか、いろいろそういう面での指摘もあるわけですね。

 そうこう考えておると、例えば、先ほど来から議論しているように、犯罪被害者の方々が検察官としっかりと意見交換をし、意思疎通を図った上で、検察官が法廷で犯罪被害者の方々の考え方をしっかり踏まえた発言、尋問したり、あるいは質問したりするということと、被害者の方々が直接自分の口で尋問したり、あるいは質問したりするということとはどういうふうに違うのか、この点がどうも、理論的というか、理屈の上ではよく納得できなくて、結局、犯罪被害者の方々が直接発言をするということは、やはりそこに何らかの、先ほど来から申し上げているような、裁判の場が少し変わってきてしまうのではないか、本来考えているものと違ってきてしまうのではないかという疑問がどうしても解けないんですね。

 その点についてどういうふうにお考えになっているか、大臣からお答えいただきたいと思います。

長勢国務大臣 従来、被害者の方々のお話も含めて検察官が対応するという形できたわけでございますが、被害者の方々からは、刑事裁判の現状について、被害者は証拠として扱われているにすぎず、事件の当事者にふさわしい扱いを受けていないという御批判があり、刑事裁判に参加する権利を認めるよう要望する多くの声が示されてきたわけであります。

 この点、法廷において被害者にかわって検察官が発言するというのではなくて、被害者の方々が自分の言葉で直接発言することを認めることが、被害者の方々の名誉の回復や被害からの立ち直りにより資する場合もあるものと考えられますし、また、事案によっては、被害者の方々がみずから直接被告人に質問し、これに対する被告人の応答の状況をも踏まえて裁判所に意見を述べる方が、より実効性のある意見の陳述がなされ、裁判が被害者の意見をより踏まえたものとなることにつながるというふうに考えられるわけでございます。

 このように、被害者の方々が法廷で直接発言できるということは、多くの被害者の方々が求めているものであり、また、被害者の方々のみならず、刑事訴訟にとっても大きな意義があるものというふうに考えております。

平岡委員 今の答弁を聞いていると、やはり刑事裁判そのものが、今まで我々が考えてきた刑事裁判ではなくて、別の役割を果たしていくというような印象があるんですよね。

 先ほど、被害者の方々の名誉の回復を刑事裁判の法廷で図っていくとか、あるいは被害者の方々の立ち直りを裁判所において図っていくとか、そういう役割を公判廷に求めていくというのは、やはり裁判そのものの考え方について、一番最初、冒頭に申し上げましたように、近代国家における刑事裁判の本質というのは一体何なんですかというところにどうもかかわってくるような気が私はするんです。

 これについては、何か今答弁が用意されたようなので、重ねて聞こうとは思っていませんでしたけれども、私のその疑問に対して的確に答えられる答弁が用意されているのなら、答弁を求めたいと思います。

長勢国務大臣 事務の者がよこしましたので、的確な答弁かどうかわかりませんが。

 我が国の刑事訴訟法は、刑事事件につき、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適正かつ迅速に適用実現することを目的としております。この点、被害者参加の制度により、被害者の方々が、一定の要件のもと、裁判所の許可を得て被告人質問等の一定の訴訟活動を行うことが認められれば、刑事裁判が被害者の心情や意見も十分に踏まえた上でなされることがより明確となり、刑事司法に対する被害者を初めとする国民の信頼を一層確保するとともに、刑事訴訟法の目的である刑罰法令の適正な適用実現に資することになるものと考えられます。このように、被害者参加制度は刑事訴訟法の目的とも整合するものであると考えております。

 真相究明なり、裁判の目的である社会正義の実現に参加制度を入れるということが役に立つという趣旨のことだろうというふうに理解をいたしております。

平岡委員 今、社会正義の実現とか、あるいは真相究明とか、それからその前の答弁の中では、実効性のある訴訟遂行みたいなことも言われましたけれども、本当にそうだろうか。やはり被害に遭った方々にとってみれば、ある意味では、被害者感情が非常にある中で、本当に今言われたようなことが公判廷で実現できるのか。私は、逆の面の方が心配されるんじゃないか、訴訟遂行もそんなに円滑にいかないで、むしろ別の論点の方に行ってしまったりとかいうようなこともあるでしょうし、弊害の方がむしろ心配されるんじゃないかというような気もします。そこは、またこれから具体的な点を指摘しながら検討していきたいというふうに思います。

 今の答弁は必ずしも納得のいく答弁ではなかったということで、次の具体的な質問に入っていきたいと思います。

 先日、公明党の大口理事が、今ちょっとおられないようでありますけれども、質問された中に、この手続の中では被害者の方々はどこに座られることになるのかということで、検察官の隣みたいなことを念頭に置かれたようなやりとりがあったというふうに思います。

 検察官というのは、公権力を行使する立場で訴追をしているわけですね。そこの横に被害者の方が座って、被告人と相まみえるといいますか、相対する、こういう状況になったときは、今の我々の刑訴法の世界では、被告人というのは無罪の推定を受けるということでありますから、裁判が確定するまでは、そういう加害者と被害者という立場で相対する形というのは、無罪推定の原則を崩してしまうことになりはしないかというふうな気もしますし、公権力を持った人と隣り合わせに座っているということは、結局、被告人に対して何か報復をするというようなイメージが出てきてしまうような気がするんですね。

 そういう立場で裁判をして、仮に被告人の方が有罪になり、あるいは被害者の方が出ていることによって、それが裁判官あるいは裁判員制度が進んでいけば裁判員の方々に非常に大きな影響を与えて重い罪になったというような、客観的にそうかどうかわかりませんけれども、重い罪になったのではないかというふうにその被告人の人が受けとめたりすると、あいつがあんなところであんなことを言ったからこんなことになったんだといって、また今度、報復をまた報復で返していくという、報復の連鎖みたいな心情が出てくるんじゃないかということをちょっと心配するんですね。

 そういう心配は、どうですか、大臣、お持ちじゃないでしょうか。

長勢国務大臣 本法律案においても、犯罪被害者等に対して、被告人に優越する立場を認めるということにしておるものではございません。無罪推定の原則というのは、一般に有罪の判決があるまでは被疑者、被告人は有罪でないとされ、有罪とするための挙証責任は検察官等が負うものとすると解されておりますが、本制度のもとでも、被害者の方々が刑事裁判に参加したとしても、これによって被告人が有罪と推定されたり、挙証責任が転換されることとなるわけではありませんので、無罪推定の原則に反するという御指摘は当たらないものと考えております。

 次に、報復の連鎖を起こすという御心配でございますが、現在の刑事訴訟においても、被害者の方々が証人として証言することがあり、また、処罰感情などの心情を中心とする意見を法廷で陳述することも認められておりますが、これにより報復の連鎖が生じているわけではないと承知しておりますし、本制度においても、被害者参加人等が法廷で被告人に報復するための手段として訴訟活動をするという事態が生ずることのないよう、さまざまな措置を講ずるところでございます。

 ということでありますが、特に位置の問題を今おっしゃいましたが、先生御心配のようなことが起こることはあってはならないことでありますので、現実にも今申しましたような措置も講じておりますが、裁判進行に当たって、裁判所におかれましても、そういうことは、本法律案を踏まえて適切に対応されるものと考えております。

平岡委員 大臣、今、自分で答弁を読まれていて、今でもある被害者の意見陳述、それは、特に被告人に対して、あなた、どうですかとかといって、別に被告人と直接やり合うわけじゃないんですね。だから、そういう意味では、今回の仕組みというのは、尋問したり、あるいは質問したりという形で、被告人と相対して、ちょうちょうはっしで場合によってはやり合うという場面が想定されるわけですね。大臣、想定されませんか。そういう場面が法廷の中で行われているということがお互いの感情をどういうふうに動かすかというのは、単なる被害者が意見陳述をする場合と比べて、私は質的に違ってくるんじゃないかというふうに思うんですけれども、大臣はそんな心配はされませんか。

長勢国務大臣 裁判の実務は先生の方が詳しいでしょうけれども、当然、そういう感情的な場にならないようにするために裁判官も考えていただかなきゃなりませんし、その発言等については検事を通じて告知することになっておりますから、現実にもそういうことにならないような運用がきちんとできるものと思っております。

平岡委員 全く、自分はこう思うというだけの話で、私もこう思うと同じことを言っていますから、人のことを言えないかもしれませんけれども、どうも心配が共有できないというところに私はさらに心配があるということでありまして、もうちょっとしっかりと、こういう制度ができたときにはどんなことが起こり得るのかという想像力を働かせていただかないと、私は、将来、導入してしまった後に、こんなことになるのは想像もしなかったというようなことに至らないようにしていかなければいけないというふうに思います。

 たくさんの質問があるので、とりあえず次へ移ります。

 被害者の方々の中には、ある意味では別の心配をされる方もおられるんですね。私が今心配した報復のような問題もあるわけですけれども、例えば、こういう制度ができても、やはり私はそういう場に出ていくのはちょっとためらわれるなとか、あるいは、いろいろな事情で、出ていきたいけれども出られないというような犯罪被害者の方々がいたときに、その出ていないということ自体が、裁判官なり裁判員の皆さんから、この被害者の方々は大した被害感情を持っておられないね、そう大した事件じゃなかったんじゃないのというふうに見られるのではないかという心配をしているわけですね。

 特に、専門家である裁判官の場合には、いや、この制度はこういうものだから、犯罪被害者の方が出ていようが出ていなかろうが、判決の中身に影響を及ぼすものではないということをちゃんと理性的にもわきまえて、感情的にもちゃんとコントロールできて整理することができるかもしれませんけれども、よく指摘されているように、この制度というのは、ある意味では、半年ぐらいの違いはありますけれども、裁判員制度の導入とほぼ時を同じくして導入されるというようなことになると、裁判員の方々というのは、理屈ではわかっていても、その理屈というものですべて判断できるという状況ではない、そういう状況に置かれたときに、私が先ほど申し上げたような心配というのはやはりあるのではないかというふうに思うんですね。

 大臣は、この点について、どういうふうに思われますか。

長勢国務大臣 当然、被害者参加制度をつくったからといって、みんな、出るか出ないかは自由なわけでございます。当然、出られない場合には、検察官が、参加できない事情も含めて、その心情等を十分に把握して主張、立証するということになります。

 裁判員の方々が参加されるときが特に心配ではないかということでございますが、この制度は、検察官の今言った主張、立証の中で、被害感情が過小に評価されるということのないように十分できるものと考えております。

 この点、現行法上認められている心情を中心とする意見陳述を行わない被害者の方々の場合も同じような問題があり得るわけでございますし、そういう意味で、今申しましたようなことで十分に対応できるものと考えておるところでございます。

平岡委員 被害者の意見陳述の話が出ましたから、ちょっと私もこの新しく導入される制度とどう比較していいのかわからない点もありますけれども、犯罪被害者の方の意見陳述制度について言えば、常に意見陳述するわけじゃないわけですね、法廷が開かれる、あるタイミングのときに、最も効果的なときなんだろうと思いますけれども、そこで意見陳述をする、それはたびたび行われるわけじゃない。

 しかし、今回の制度は、たびたび、ずっと法廷につきっきりになっていて、随時行うということになると、犯罪被害者の方々の負担というのは非常に大きいわけですね、訴訟に参加し続けることの負担は大きい。それができる人というのは、やはり限られた人たちではないかというふうに思うんですね。

 そういう意味でいくと、単純に、被害者の方々の意見陳述制度があるから、それと同じようなものだというふうに割り切ってしまう説明というのは、やはりちょっとおかしいのではないかというふうに思います。

 これからまた具体的な制度の問題について、その問題点を審議していきたいと思うんですけれども、具体的な問題に入る前に、これは大臣に対する質問じゃなくて、実際に検察官として裁判の場に立って訴訟遂行していかなければならない検察官を統括しているところの法務省の刑事局長と、そして、その裁判を指揮権を持って進めていかなければならない裁判所については最高裁から、それぞれ、この制度が導入されたときにはどんなことが起こりそうだという心配があるのか、あるいは困ることが生じそうだと考えているのか、その点をちょっと説明していただきたいと思うんです。

 ただ、こういう質問をすると、提案している立場にいる人間として、あるいは政府に気を使わなければならない立場の人として、いや、困ることはありませんとか、何も心配ありませんというようなことになるのかもしれませんから、表現ぶりは課題というような表現でも結構でありますから、こういう制度でやればこんなことがいろいろな工夫を要する話ではないかというようなことも含めて、率直かつ簡潔に、この話をやったら一時間もかかってしまうというのではなくて、簡潔に私に教えていただけますでしょうか。

小津政府参考人 制度的ないろいろな手当てにつきましては大臣からも御答弁申し上げたわけでございますが、この制度の中におきましても、検察官と被害者参加人等との間のコミュニケーションが重要であるわけでございますので、検察官がこのようなコミュニケーションを図って、被害者参加人の要望等を十分に把握したり、あるいは必要な説明を適時適切に行うということが、今後の非常に重要な課題であると考えているわけでございます。

 そのため、この法律が成立しました場合には、施行までの間に、例えば、被害者参加人等に対する証拠内容の説明でございますとか、法廷内におけるコミュニケーションの確保等のあり方等につきまして、検察部内でも、また私どもも、鋭意検討して実施していく必要があると考えているところでございます。

小川最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 被害者参加の制度が導入されました場合には、その制度趣旨を踏まえつつ、被告人の防御権の確保等にも十分に配慮して、適切な運用に努めることが必要と考えています。

 具体的には、参加を認めるのかどうか、質問を認めるかどうかといった各場面において、法律の要件を踏まえて適正な判断を行い、適切な訴訟指揮をすることが必要と考えております。

平岡委員 予想どおり、困ることは特になくて、こういうことが大事かな、こういうことが必要かなというふうなことで、そのことをしっかりやっていきたいというような決意表明みたいなことしかなくて、立場的に言えないのかもしれませんけれども、これから具体的に問題を指摘する中で、また突っ込んだ議論をしていきたいというふうに思います。

 そこで、今回の制度を見ますと、訴訟参加人としての地位が認められるというのは、これは三百十六条の三十三のところで、裁判所が参加を許すという仕組みの中で参加を認めるわけですけれども、そもそもとして、その地位が認められるのは、一定の対象犯罪の犯罪被害者等の方々に限定されているんですね。ある意味では、犯罪被害者の方々というのは、こういう対象犯罪だけじゃなくて、幅広く存在をしているわけでありますし、あるいは、対象犯罪以外の方でも、自分はやはりこういう訴訟参加をするという機会を認めてほしいという人もいるだろうというふうにも思うんですね。

 そういう意味でいうと、今回、対象犯罪以外の犯罪被害者の方々について訴訟参加を認めないという仕組みにしたのは一体どういう理由なんでしょうか。

長勢国務大臣 被害者参加の制度は、犯罪被害者等基本法を基本とするものでございますが、そこの基本理念では、「すべて犯罪被害者等は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有する。」というふうに規定されておるわけでありまして、個人の尊厳の根幹をなす、人の生命身体または自由に害をこうむった被害者等を対象とすることが、この基本法の趣旨に合っているというふうに考えられます。

 また、本制度、いろいろな方が、参加したいという方もおられると思いますけれども、被害者の方々のニーズを判断する上で、現行法の意見陳述の運用状況が参考になるというふうに考えまして調査をいたしたところ、その結果によれば、意見陳述の申し出を行った者の約七割が遺族、また、被害者が死傷した事件のほか、強姦、強制わいせつ、逮捕監禁など、被害者等が身体活動等の自由または性的自由に害をこうむった事案について、この比率が高いということが明らかになったわけであります。

 そこで、本制度を設ける趣旨や被害者の方々のニーズ等を総合的に考慮した結果、対象犯罪を故意の犯罪等により人を死傷させた罪等に限定するということにしたところでございます。

平岡委員 今また犯罪被害者の意見陳述の話が出て、その意見陳述をした人たちの七割が今回の対象犯罪に関係する方々であった、こういう話だったんです。

 ちょっとこれは別のところで質問する予定ではありましたけれども、逆に、犯罪被害者の方々の意見陳述というのは一体どの程度行われているのかというところも、私は、制度設計するに当たって、やはりちゃんと見きわめておかなければいけなかったんじゃないかというふうには思うんですね。私が知る限りにおいては、犯罪被害者の方々の意見陳述というものが行われているケースというのはそれほど多くないというふうに聞いておるわけであります。

 これは最高裁にお尋ねいたしたいと思いますけれども、現行の犯罪被害者の方々の意見陳述制度はどの程度利用されているのかということについて、特に、対象犯罪の犯罪被害者等でも利用していない人が多く存在しているというふうにも聞いているんですけれども、どういう利用状況になっていますか。

小川最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 意見陳述をした被害者の方の罪名別の人数については統計をとっておりませんので、平成十八年の一月から六月までについて手作業で集計した結果に基づいてお答えしますと、この期間における地方裁判所通常第一審の終局人員は三万六千九百九十五人でございます。このうち意見陳述をした被害者の数は五百五十七人、その割合は一・五%となります。

 被害者参加制度の対象事件について見ますと、同期間の地方裁判所通常第一審の終局人員は八千七百五十二人であり、このうち意見陳述をした被害者の数は五百二十三人、その割合は六・〇%。罪名別に申し上げますと、故意の犯罪行為により人を死傷させた罪が四・〇%、強制わいせつ及び強姦の罪が三・七%、業務上過失致死傷等の罪が八・三%、逮捕監禁、略取、誘拐及び人身売買の罪が二・〇%となります。

平岡委員 今答弁があったように、対象犯罪において被害者の意見陳述制度というものを利用された方というのは、罪の種類によってもいろいろ違うのかもしれませんけれども、二%から八%ぐらいというような状況になっている中で、今大臣が答弁されたように、犯罪被害者の方々の意見陳述の約七割が対象犯罪だから、今回の対象犯罪をそこに限定していいんだという説明というのは、ちょっと私は、余り論理的でないというか、整合性がとれていないような気がするんですね。

 非常に少ない中での議論をしているだけの話であるということであって、どっちみち少ないのであれば少ないなりに、ほかの犯罪の方々だってやはりこういう訴訟参加を認める、犯罪被害者の意見陳述だってやっている方はいるわけでありますから、それを認めたって別にいいんじゃないかというふうにも思うんですよね。そういう意味で、私は答弁としては余り論理性がないというふうには思います。

 一つは、対象犯罪を限定していることの趣旨というのがどうも私にはよく納得がいかないということをまず申し上げたいと思います。

 その関係でいくと、現在の検察審査会法の中でも、犯罪被害者の方々について言うと、これはどういう犯罪の種類かということにはかかわりなく、第二条の第二項で、犯罪被害者等の方々の申し立てがある場合には、検察審査会の審査が義務づけられているという制度があるんですよね。

 これは、犯罪被害者の方々の対象犯罪を限定しているわけではないという形で、他方では、そういうふうに犯罪被害者の方々について区別することなく、そういう権利といいますか、申し立てればこういうことがしてもらえるというような形の制度ができているにもかかわらず、今回こういうふうに対象犯罪というものを限定していくということについては、私はちょっと整合性がとれていないんじゃないかというふうに思うんですけれども、その点については、検察審査会法との関係ではどういうふうにお考えになりますでしょうか。

長勢国務大臣 検察審査会制度の趣旨は、公訴権の実行に関して民意を反映させてその適正を図るということでありますので、この趣旨を実現するためには、いかなる犯罪であれ、一般に被害者の方々は訴追権の適正な行使に高い関心を有しているものと考えられることから、この対象犯罪を限定しないということにしておるわけでございます。

 しかし、これに対しまして、被害者参加の制度は、先ほども申し上げましたとおり、被害者等の尊厳にふさわしい処遇を保障するために刑事裁判に参加することを認めるという制度の趣旨、また先生若干御懸念がありますようですが、ニーズをも総合的に考慮した結果として限定をしたわけでございまして、両制度はその趣旨が異なるわけでありますので、同様に考えるということは必ずしも必要ではないというふうに考えております。

平岡委員 今回の制度で、訴訟参加人という形での地位が認められるということは制度としてはできるわけでありますけれども、しかし、実際にこの制度を利用して公判廷に出かけていってそれなりに活動できる人というのは、ある意味では非常に限られているんじゃないか。時間的にも余裕があり、経済的にも余裕があり、そして精神的にもある程度のそういう強いものを持っている人に限られるのではないかというふうに思うんですよね。

 そうだとすると、いろいろな方々が犯罪被害者の方々にはおられるわけであって、そういう個々の実情というものが全然考慮されないでつくられてしまっているこの制度について言えば、犯罪被害者の方々にとってみれば不公平な制度になっているとも私は言えるんだろうというふうに思うんですけれども、この点については大臣はどういうふうにお考えですか。

長勢国務大臣 当然、行くのが恐ろしいとか、余裕がない、経済的にも余裕がないという方が絶対生じないということはないわけでございますが、だからといって、この制度をつくる必要がないということにはならないのではないでしょうか。

 かつ、どうしても出られない方々についても、先ほど御説明いたしましたように、判決結果に不公平が生じないようにする手当てをしておるわけでございますし、また、今後の検討課題かもしれませんが、経済的な場合には、それに対する援助の方法というものも将来検討の対象になるのではないかというふうに考えますので、ぜひこの訴訟参加制度を今設ける時期に来ておるというふうに考えております。

平岡委員 形の上ではだれでも利用できるけれども、実際には、そういう私が先ほど来申し上げているような経済的余裕、時間的余裕あるいは精神的余裕がある人しかできないような仕組みをつくるということ自体は、私は、これは形式的には平等かもしれませんけれども、実質的には不平等な制度だというふうに思いますね。この点がしっかりと解決できない限りは、この制度の導入に当たってはもっと慎重な配慮が必要だというふうに私は思います。

 その点でよく指摘されているのが、特に経済的な余裕がない方についてなんですけれども、これはせっかく内閣府の方も来ておられて、検討されておられるというふうにも聞いていますので、御答弁をいただきたいというふうに思います。

 先ほど来から言っているように、訴訟参加人として参加した場合に公判廷でいろいろな活動をするわけですけれども、当然、法律の専門家である弁護人、弁護士というものがついていなければ適切な活動ができないというようなことが予想されるわけであります。そういうことであるならば、経済的に余裕のない犯罪被害者等の人でも参加できる仕組みとして、公費による支援弁護士制度というものがあわせて提案されていなければいけないというふうに私は思うんですね。

 まず、法務大臣には、そういう制度がどうして今回あわせて提案されていないのかということと、そういう制度について、内閣府で今いろいろな検討をされている中でどういうふうに受けとめておられるのか、この点について大臣から、なぜそういうのが提案されていないのかという点について答弁していただいて、その後、内閣府副大臣の方から答弁いただきたいと思います。

長勢国務大臣 御指摘のような公的な支援制度というものについては、犯罪被害者等基本計画においても、経済的支援に関する検討会において検討することとされておりますので、まずは、この検討会における検討結果を待つことが適当であるというふうに考えておるところであります。

平沢副大臣 先ほど申し上げましたように、昨年の四月、官房長官を会長とする犯罪被害者等施策推進会議のもと、有識者と関係省庁から成る経済的支援に関する検討会を設置しまして、今御指摘がございました公的弁護人制度の導入の是非についてもこの検討会において検討を進めてきたところでございまして、これにつきましては、来月、中間取りまとめを行いまして、その上で、国民の皆さんの意見を聞いた上で最終取りまとめを行う予定でございます。

 御指摘の公的弁護人制度の導入の是非につきましては、犯罪被害者等が刑事裁判に参加する制度に伴う公費による弁護士選任について、関連法案の国会審議状況等を注視しつつ、制度導入に向けて検討を行うべきである、こういった中間取りまとめを行う方向で現在検討を進めているところでございます。

平岡委員 今の答弁は比較的前向きな答弁だったとは思いますけれども、本来であれば、やはりこういう制度を提案するときにあわせて提案されていなければいけない。先ほど言ったように、形の上では平等かもしれないけれども、実質的には非常に不平等な仕組みになっているというのは、制度を提案する人としてはちょっと無責任だというふうに私は思いますね。そういう意味では、検討がどうなるかというのをまた見させていただきたいというふうには思います。

 ちょっと時間がなくなったので、三百十六条の三十五から三十九までの条文に応じた質問は次回しっかりとやらせていただくということにして、最後に質問をさせていただきたいのは、裁判員制度の導入との関係なんです。

 せんだって二十三日に、最高裁刑事規則制定諮問委員会の方で、裁判員制度に関して規則の要綱案というのが示されましたけれども、私も読んでみましたけれども、被害者参加人制度というものがどのようにこの中で位置づけられているのかというのは、当然のことながら、何も触れていないということなんですよね。多分、こういう仕組みが入ってきたら、私は、最高裁がどうやって運用していくかについては非常に大きな影響を与えてくるんだろうというふうに思うんですよね。

 そういう意味でいくと、被害者参加人制度が導入された場合、規則なり、あるいはその運用なりにどのように影響を与えると考えておられるか、その点だけまずお答えいただきたいと思います。

小川最高裁判所長官代理者 お答えします。

 規則につきましては、法律が成立した後にその内容を踏まえて検討することになりますので、現段階でどのような規則を制定し、あるいは既存の規則を改正する必要があるか、こういうことを詰めた検討をしているわけではございませんけれども、被害者参加の制度が導入された場合には、裁判員裁判における被害者参加の制度の具体的な運用のあり方についても十分検討した上で、必要な対応を行うことになると考えております。

平岡委員 時間がないので、その点はまたにしますけれども、最後に法務大臣にお聞かせいただきたいと思います。

 再来年に導入される裁判員制度は、当然のことながら、裁判員の方々は一般の国民でありますから、裁判になれていない、そういう方々が、犯罪被害者の方々が訴訟参加人という形で法廷に出てきていろいろな発言をしたり行動をされれば、当然、専門家である裁判官とは違って大きな影響を受けるんじゃないかというふうにも私は思うわけであります。

 そういう意味では、やはり裁判員制度がある程度落ちついた段階でこういう制度を考えるべきじゃないかという声もあるんですけれども、大臣としては、その点についてはどういうふうにお考えでしょうか。

長勢国務大臣 被害者参加制度をずっと御検討いただいてきたわけでございますが、その検討の中で、当然、二年後から裁判員制度が導入されるということを前提にして、それも考慮に入れて御検討いただいてきたものと思っております。

 今おっしゃるように、裁判員制度が施行されてからといっても、裁判員になられる方はその都度かわっていくわけでございますし、私は、もちろん断言的に申し上げるわけではありませんけれども、むしろ一緒に今度新しい裁判制度の方で裁判員制度が始まるというのも一つの新しい制度になれていくいい方法かなというふうに思います。

平岡委員 今、最後の方、声が小さくて聞き取れなかったので、議事録を精査した上で、大臣がどういうお考えなのかということについてさらに検証を深めていきたいというふうに思います。

 終わります。

七条委員長 次に、横山北斗君。

横山委員 民主党の横山北斗です。

 私は、この法律案をめぐる各方面からの意見を紹介しながら、それに対して、大臣、法務当局等の御見解を伺う形で質問を進めてまいりたいと思います。

 まず、これまで犯罪被害者は、事件の当事者でありながら、捜査、公判を通じた刑事手続の蚊帳の外に置かれて情報から遮断され、また、医療、精神的ケアの面や経済的補償の面でも十分な支援を受けられずにきた、こういう指摘があります。

 こうした状況を踏まえまして、犯罪被害者等基本法の制定を初め、各種犯罪被害者等の支援策が講じられるようになったわけですけれども、この点で、まず、基本法制定前における犯罪被害者の置かれていた状況及びこの基本法制定前の我が国の犯罪被害者等のための取り組みの推移について御説明を願いたいとともに、また、この基本法が制定されたことで、その後どういう変化が生じてきたのかということについて御説明を願います。

荒木政府参考人 お答えを申し上げます。

 委員御指摘がございましたように、犯罪被害者等の多くの方々が、犯罪等によりまして、精神的、肉体的に被害をこうむるのみならず、経済的に困窮をし、また捜査や裁判の過程においても望むような関与ができなかった、さらには、その名誉あるいは生活の平穏が害されるといったような二次的な被害が生じた例もあったわけでございます。

 このような状況に対処いたしますために、昭和五十五年に犯罪被害者の方に対する給付金の支給法が制定をされまして、逐次拡充をされてまいりました。また、平成八年には、警察庁におきまして被害者対策要綱が策定されまして、捜査過程でのいわゆる二次的被害の軽減等の留意事項が示されたところでございます。それから、平成十二年には、いわゆる犯罪被害者等保護二法が制定されまして、刑事手続の中で被害者等の心情に適切に対処するため、ビデオリンク等の措置がとられたところでございます。

 いろいろな取り組みがなされてきたわけでありますけれども、やはり犯罪被害者の方からは、なお経済的支援が足らない、あるいは刑事手続での扱いに満足していない、さらには民間を含めた支援体制が不十分であるといったような声が多く上がりまして、平成十六年に被害者等基本法が議員立法によりまして制定を見たところでございます。

 この基本法を受けまして、平成十七年、基本計画が閣議決定されたわけでありますけれども、この中では、犯罪被害者等の要望にこたえた二百五十八の施策が盛り込まれております。これまで、警察とか検察とか裁判所とか、いわゆる直接犯罪人を裁くような、そういうところはそれなりに努力してきたわけでありますけれども、この基本法、基本計画によりまして、例えば、医療、福祉関係者とか、あるいは住宅等を所管する国交省でありますとか、そういったところも含めて、府省庁横断的に、総合的かつ長期的な被害者に対する取り組みがなされるようになったということでございます。

 こういった基本計画が着実に進展するように、政府を挙げて充実に取り組んでいるところでございます。

横山委員 それでは、本法案が提出された意義についてお尋ねいたします。

 刑事裁判との関係では、事件内容や裁判手続等について十分な情報が提供されないため、なぜこうした事態に巻き込まれているのか知りたいという犯罪被害者の願いが満たされないというような批判や、あるいは、我が国にあっては、検察官が公益の代表者として訴追権を独占するものとされている結果、犯罪被害者あるいはその御親族から、裁判が自分たちの意図しない方向に進んでいるというような不満も寄せられてきました。

 こうした批判を受けとめる形で、二〇〇四年に犯罪被害者等基本法ができて、「犯罪被害者等がその被害に係る刑事に関する手続に適切に関与することができるようにする」と明記されたわけです。

 そして、犯罪被害者等基本法を受けて内閣府において犯罪被害者等基本計画が策定されて、本法律案の柱となる犯罪被害者等が刑事裁判に直接関与することのできる制度、損害賠償請求に関し刑事手続の成果を利用する制度等について二年以内をめどに結論を出して、その結論に従った施策を実施することとされたわけですけれども、この法律案の提出が犯罪被害者等の権利利益の保護にどういう意義を有するとお考えになっているのか、改めまして法務大臣の御所見をお聞かせください。

長勢国務大臣 本法律案の経過、内容、考え方は今御指摘のとおりでございます。

 今回、被害者参加の制度を設けることにより、被害者の方々が刑事裁判に適切に関与することができるようになるということでありまして、その名誉の回復や被害からの立ち直りにも資するものであると考えております。

 また、刑事裁判が、被害者の方々の心情や意見をも十分に踏まえた上でなされることがより明確となり、刑事司法に対する被害者を初めとする国民の信頼を一層確保するとともに、適正な科刑の実現にも資することになるというふうに考えます。

 また、損害賠償命令制度は、犯罪被害者等による損害賠償請求に係る紛争を刑事手続の成果を利用して簡易迅速に解決するために設けることとしたものであり、被害者の方々の損害の回復を容易にする手段を提供するものとして重要な意義を有すると考えております。

 このように、本法律案は、被害者の方々の権利利益の保護を一層図る上で重要な意義を有するものと考えております。

横山委員 それでは次に、これも多くの方から心配する声が出ておりますけれども、被害者参加制度の導入時期に関する懸念につきまして、本法律案に対しては、犯罪被害者の側から、反対あるいは慎重審議を求める声も出てきております。本法律案が、真に被害者等の権利利益を保護し、被害者等の刑事手続への関与の機会を実質的に拡大するものであるのかどうか、また、我が国の刑事裁判の基本構造と整合性がとれた仕組みになっているのかどうか。

 この点につきまして、まず、二〇〇九年から裁判員制度が始まりますが、刑事裁判に被害者等が参加する制度と裁判員制度の導入時期が重なるために混乱が生じるのではないか、また、裁判員制度の制度設計の際に被害者参加制度のことは考慮されておらず、裁判員制度が実施され定着する前に被害者参加制度を導入すべきじゃない、こういう意見があるんですけれども、大臣はこの点についてはいかにお考えでしょうか。

長勢国務大臣 この点、先ほども平岡委員から御質問のあった点でございます。被害者が参加することによる裁判の混乱ということがまず懸念の一つでございますが、そういうことのないようにさまざまな措置を講じておることは御説明しておるとおりでございまして、これは、裁判員が裁判に参加される場合の裁判の審理、判断についても同様なことであるというふうに考えております。

 また、本制度については、この立案、策定の段階から裁判員制度が導入されることも考慮に入れつつ、さまざまな議論が積み重ねられてきたというふうに承知をしておりますし、また、法制審議会においても、考慮すべき事項の一つとして裁判員制度との関係が明示されており、この点も含めた慎重な議論、検討がなされたところであります。このような検討の結果を踏まえて本制度が設けられ、その早期実現が目指されているものであります。

 そういうことでありますので、本法律案が成立した場合には、万が一にも裁判員制度の円滑な運用が阻害されることのないように十分な準備を行ってまいりたいと思いますし、また、一緒に施行することにも意義のある部分が出てくるのではないかというふうに思います。

横山委員 それでは、次に行きます。

 我が国の刑事訴訟は、訴追者たる検察官と防御する被告人の二当事者対立構造を前提に組み立てられて、裁判所の職権的介入の余地は限られてきました。そこに被害者という第三の独立の当事者が関与することになると、訴追側の攻撃内容が複雑化する、防御の対象も複雑化する、こうして刑事裁判の審理が非常に複雑化するという懸念があります。

 審理の複雑化の結果として、被告人の犯罪事実を適正、迅速、的確に認定して刑罰法令の具体的実現を図るという刑事裁判本来の機能が損なわれるのではないかというような懸念に対しまして、法務省の御見解をお伺いいたします。

小津政府参考人 お答え申し上げます。

 被害者参加人等は、検察官と異なりまして、公判請求権はもとより、訴因設定権、証拠調べ請求権、上訴権等は認められておりません。そのような点で、一般に刑事訴訟の当事者とされている検察官や弁護人、被告人とは異なるわけでございます。

 本制度のもとにおける審判の対象はあくまで検察官が設定した訴因でございまして、基本的にはこの訴因をめぐって攻撃、防御が行われるものでございますから、本制度のもとで被害者の方々が刑事裁判に参加したといたしましても、被告人の防御の対象が複雑化することにはならないものと考えられます。

 この点、訴因の範囲内においても、被害者参加人等が検察官から独立して訴訟活動を行うことにより、被告人の防御の対象が拡大したり複雑化したりすることになるのではないかという御指摘もございますけれども、本制度のもとにおきましては、まず、検察官と被害者参加人等とが密接なコミュニケーションを保ちつつ訴訟活動が行われるように、参加人等は検察官に対し、刑事訴訟法の規定による権限の行使に関して意見を述べ、説明を受けることができること、また、被害者参加人等による被告人質問等の申し出は、あらかじめその内容を明らかにして検察官を経由してしなければならないこと、仮に被害者参加人等が行う質問等が違法、不当な場合は、裁判長がこれを制限することもできることなどの規定を設けているところでございます。

 したがいまして、本制度が導入されましても、被告人が防御すべき対象が拡大したり、複雑になったり、あるいは迅速な裁判の要請に反することにはならないものと考えられます。

横山委員 改めての質問になるかもしれませんが、被害者参加制度の導入で、被害者参加人は、検察官の訴追活動とは異なる訴訟活動を行うことが可能となるわけです。ですから、被告人の防御すべき対象が拡大し、被告人の立場は非常に苦しいものとなる、また、被害者等が被告人と法廷で対峙し直接にその怒りや悲しみなどの感情に支えられた質問をするようになると、被告人は圧迫感や自責の念から萎縮し、弁解や反論が十分にできなくなるという声はあると思うんです。

 この被告人の防御権に不利益を及ぼす事態が生じるという指摘に対しては、審理の対象は検察官の設定した起訴事実だけに限定されるとか、被害者等が参加できる被告事件の罪のほとんどは公判前整理手続が行われる事件だから、ほとんどの事件はその整理手続で争点が決められているため、被告人の防御の負担がふえることはない、こういう意見も出ているわけですね。

 被害者参加制度の導入が被告人の防御活動に与える影響について、改めて、大臣、いかにお考えか、また、本法律案は、刑事裁判に参加する被害者等に対し、どういう役割を期待しているのかということについてもお聞かせ願えればと思います。

長勢国務大臣 今刑事局長から答弁したことと重複する部分もありますが、被害者参加制度においては、被害者参加人に対しては、訴因設定権、証拠調べ請求権等が認められるわけではなく、また、証人尋問、被告人質問等の具体的な訴訟活動についても、例えば事実または法律の適用についての意見の陳述は訴因の枠内でのみ認めることとしていることなど、一定の要件のもとで裁判所が相当と認めて許可した場合に限ってこれを行うことができることとしておりますので、本制度の導入によって被告人の防御すべき対象が拡大するということはないものと考えております。

 また、被告人の防御権という観点からいたしましても、本制度のもとにおいても黙秘権が認められておりますし、被害者参加人の質問に対しても供述を拒否することができることとなっております。そして、被告人は刑事手続において弁護人の援助を受けることができ、実際の刑事裁判の場においては、主として弁護人が被告人にかわって防御活動を行っているのが実態であると承知をしております。

 また、仮に、被害者参加人からの直接の質問に対して供述することがためらわれることがあったとしても、被告人はいつでも任意に供述することが許されており、弁護人による質問や最終陳述の際など、みずからの主張を述べる機会も十分に与えられております。

 したがって、被害者参加人に被告人に対して質問することを認めたとしても、防御権を不当に侵害するということにはならないというふうに考えております。

横山委員 今の質問の中で、この法律案ができることによって、今まで蚊帳の外に置かれていた被害者が救済されるというか満足するということは、それはそのとおりとして、刑事裁判がより適正なものになるというような方向から、この被害者の参加についてどういう役割を期待しているのかという点についてお答え願いたかったんですが、その点については。

長勢国務大臣 今おっしゃるように、被害者の権利の保護という面と、それから刑事裁判における真相究明あるいは科刑の適正化ということにも資するものと考えております。

横山委員 わかりました。

 では、次の質問に移ります。

 犯罪被害者や遺族の報復感情が被害者参加という形でそのまま刑事裁判の法廷に持ち込まれると、冷静さを欠く尋問や意見が飛び出すなど、法廷が混乱する事態も予想され、証拠に基づく冷静な事実審理や適正で公平な量刑が困難となる、それから、よく言われるとおり、復讐裁判と化すおそれがある、こういった懸念が出ております。

 他方、この懸念に対しては、裁判で被害者等が質問するには、検察官を経て裁判所の許可があって初めて可能となるなどの厳格な要件が付されていることから、裁判を混乱させることはない、法廷で質問することは復讐ではないという意見、賛否両論が出ているわけですけれども、こうした意見全体を踏まえまして、法務大臣はいかにお考えか、御所見をお聞かせください。

長勢国務大臣 そもそも現在の刑事訴訟においても、被害者の方々が証人として証言する際あるいは心情を中心とする意見を陳述する際、そういうときの状況あるいは現在の民事訴訟における当事者としての訴訟活動の状況を見ましても、被害者の方々が刑事裁判に参加することにより、感情的な訴訟活動がなされたり、証拠に基づく冷静な事実審理や適正で公平な量刑が妨げられるというわけではないと考えております。

 そういう前提に立って、その上でなお本制度においては、万が一にもおっしゃるような復讐裁判といったような弊害が生ずることのないようにさまざまな措置を講じていることは、最前来御説明したとおりでございます。

 したがって、本制度のもとに、いたずらに感情的な訴訟活動が行われて冷静な事実審理や適正で公平な量刑が困難となる、また法廷が復讐の場になる、そういうようなおそれはないというふうに考えております。

横山委員 大臣のお考え、お立場の方はよく理解いたしました。

 では、続いての質問になります。

 近代刑事法は、私的復讐を公的刑罰に昇華させ、加害者を国家が処罰することにより、被害者は加害者からの再復讐から守られ、被害者と加害者との報復の連鎖を防いで社会秩序の安定を図るという考え方に立っているわけです。そのため、刑事訴訟においては、事件の当事者である被害者を訴訟の当事者とすることなく、被害者等の意見や処罰感情について、公益の代表者たる検察官を通じて理性的に訴訟手続に反映させるということにしてきたわけです。

 しかし、被害者等を裁判に参加させて被告人と対峙させるということになれば、被告人や被告人の家族に対する被害者等の言動が被告人の反発を招くこともあるんじゃないか、被告人の中には、被害者等の訴訟活動により自分が有罪とされ、重く処罰されたと考えて、逆恨み、報復感情を抱く可能性がないとは言えない、その場合、参加した被害者等が被告人からの反発や報復感情におびえてしまって、むしろこの参加制度の趣旨が無意味なものとなる可能性も出てくるんじゃないか、こういう指摘がございますけれども、法務省としてはどのようにお考えでしょうか。

長勢国務大臣 近代刑法の考え方はおっしゃるとおりで、そういう形で今まで発展してきたものと承知をしております。

 本制度の導入後も、そういう逆恨み、報復感情を抱くことが許されないのは当然でございますし、検察官を中心にしてやるという構造は基本的には変わらない形で設計をしておりますので、実際にこの制度が運用される場合にも、そういう趣旨に沿った適切な裁判運営がなされるものと考えております。

横山委員 それでは次に、裁判員制度導入後のことについてお尋ねいたします。

 被害者参加制度の施行が、二〇〇九年に始まります裁判員制度の導入と半年間違うという中で、この裁判員制度のもとにおいては、市民である裁判員が職業裁判官と同等の立場で犯罪事実の認定と量刑を判断することになりますが、裁判員が審理する刑事裁判に犯罪被害者等が参加する場合に、証拠に基づかない被害者等の感情的な発言や態度、そういう感情面からあらわれた意見の表明に対して、法律の専門家でない裁判員がそれに戸惑い、その影響を過度に受けて、量刑において重罰化に傾くおそれがあるという指摘もあります。

 他方、被害者等が感情的な振る舞いや不合理な主張をしてしまった場合に、それがかえって裁判員の心証を悪くしかねない、裁判員の判断の傾向を見きわめた上で、被害者参加制度のあり方を慎重に検討すべきであるという指摘もあります。

 この異なる立場からの指摘につきましての法務大臣の御所見はいかがでしょうか、改めてお聞かせください。

長勢国務大臣 被害者の方々のいろいろな行動がそういう感情的あるいは不合理なことにつながることはないのかということは、現行制度のもとでも、被害者の方々が証言や意見陳述という形で関与されるわけで、そういう意味では、根本的に似たような状況にあるものだと思います。

 その上で、今回、さらに直接顔を合わせるということになるわけでありますから、参加をする場合に、その質問や陳述等が不適切なものにならないようにさまざまな措置を講じているわけでございます。裁判員の心証に関しても、この関係は同じことだろうと思います。

 正直言いまして、そうだと思う人はそうだとずっと思うでしょうし、これはやってみたらどうという問題ではなくて、そう思う人はいつまでたってもそう思うし、そうでないと思う人はそう思うということであって、むしろそういうことが起きないように手当てを今しておりますし、裁判官、検事、弁護士さんもそういうことのないように注意してこの制度を運用してもらいたいものだと思っております。

横山委員 刑事裁判においては、客観的な証拠によって犯罪事実の存否や量刑が決められるものである。しかし、被害者参加人については、必ずしもこういう客観的な証拠、すべての証拠を把握しているわけではありませんし、当然、検察官とは情報量や立場が異なっているわけです。そういう点では、証拠に基づく訴訟活動を期待するということ自体に無理があるかもしれません。

 また、求刑についても、被害者参加人の立場からすれば、法定刑の上限、目いっぱい求刑するということも予想されますが、それは同じ事件の検察官の求刑とも異なる可能性がありますし、これまで起きた他の同種事件の求刑との均衡を失することにもなりはしないかという懸念もあるわけです。とりわけ、被害者参加人が求刑意見を陳述することもできるということですから、この点についてはどのようにお考えでしょうか、御見解をお聞かせ願います。

小津政府参考人 被害者参加人の方々が個々の事件でどのような御意見を陳述するかということについてはあらかじめお答えすることは困難でございますし、また、もちろん違法な陳述は許されないわけでございますので、訴因として特定された事実の範囲を超えるとか、あるいは法定刑を超える刑を求める意見は許されないということでございます。

 検察官が現在行っております意見、これを論告求刑と呼びならわしているわけでございます。このたび被害者参加人の方が述べられるようになる意見、これは意見という意味では検察官の意見と同じでございますが、ただ、検察官は公訴を行う者の立場で、その責任においてその意見を述べておりまして、そのことを論告求刑と呼びならわしているわけでございます。これはもちろん呼び名のことでございますので、いろいろな呼びようはあってしかるべきかと思います。

 いずれにいたしましても、検察官がそのような立場で行う求刑と、そしてまた被害者の方がそのお立場で述べられる意見、これが裁判で適切に判断されることになるのではないかと思っております。

横山委員 それでは、これも先ほどより出ている意見ですけれども、犯罪被害者等が刑事裁判に参加する場合、被害者の刑事裁判参加の実を上げるためにも公費による弁護士をつけてほしい、被害者団体からこういう声が上がっているわけです。

 公的弁護制度の創設に関連して、刑事裁判手続に関与する犯罪被害者が貧困等の理由によって弁護士に委託できないときは、裁判所がその請求により、関与する被害者が弁護士に委託するために必要な措置をとるものとする案も考えられるところです。

 政府では、既に重大事件の被害者を支援する公的弁護士の制度を議論していて、来月中にその中間報告を取りまとめるということですが、実効性ある運用を図るため、犯罪被害者等に対する公的弁護制度について、現在の検討状況についての御説明を願います。

荒木政府参考人 お答えいたします。

 昨年四月、経済的支援に関する検討会を設置いたしまして、御指摘のありました公的弁護人制度の導入の是非につきまして検討を進めているところでございます。来月、中間取りまとめを行いまして、意見募集を行った上で最終的な取りまとめを行うこととしております。

 現在のところ、公的弁護人制度の導入の是非につきましては、犯罪被害者等が刑事裁判に参加する制度に伴う公費による弁護士選任について、関連法案の国会審議状況等を注視しつつ、制度導入に向けて検討を行うべきであるという取りまとめを行う方向で議論されているところでございます。

横山委員 わかりました。

 それでは次に、被害者参加人による証人尋問や被告人質問についてお尋ねしていきます。

 本法律案は、一定の場合に、被害者参加人等による証人尋問、被告人質問を認めています。これらの制度は、犯罪被害者の側からの、直接問いたい、反論したいという切実な声に基づいて創設されたものと理解しておりますけれども、被害者参加人等による証人尋問の場合、その対象となる事項が、情状に関する事項、これは犯罪事実に関するものを除くということで、これについての証人の供述の証明力を争うために必要な事項となっています。

 それから、被告人質問の場合は、それが認められるための要件として、この法律の規定による意見の陳述をするために必要があると認める場合と規定されていて、それぞれ尋問等が行われる場合が限定されております。

 このように、被害者参加人等による尋問等が行われる場合を限定した趣旨はどこにあったのでしょうか。

小津政府参考人 証人尋問につきましては、被害者の方が自分の立場で直接行いたいと思う事柄の中心はどこであろうかというふうに伺いますと、いわゆる情状証人の証言の中で一般的な情状に関することであって、なおかつ、その情状証人の言っていることが違っているではないかということについて特に御要望も強いし、実際にその点については、被害者の方がいろいろな事情をよく知っているということがあろうかということがまずございました。

 他方、証人尋問につきましては、証人の方の御負担ということもございますし、また、事実関係についてすべて被害者の方が直接できるということになりますと、これは立証責任を負っております検察官の立証と矛盾する面も出てくるのではないか、このようなこともございましたので、そのように限定する案が相当であろうと考えたところでございます。

 被告人質問につきましては、犯罪被害者の方が行う被告人に対する質問を、直接、全体としての訴訟の経過の中ではっきりと位置づけることが相当であろうという考え方で、被害者の方が行う意見陳述の必要性と結びつけて要件を書かせていただいた、このようなことでございます。

横山委員 それでは次に、法務大臣に、被害者参加人等による証人尋問、被告人質問について、これにつきましても、要件が厳しく定められているけれども、運用の際には必要以上に間口を狭めないようにしていただきたいというような意見もある一方、被害者参加人等による被告人質問等は事実解明のためではない、被告人等に対してその感情をぶつける機会を与え、法廷を私的闘争の場にするに等しいものであるというような批判も出ております。

 こうした意見があることについて、法務大臣はいかにお考えでしょうか。

長勢国務大臣 先ほども答弁をさせていただいておりますが、被害者参加制度において、万が一にもそのような弊害が生ずることのないように、例えば、被害者参加人は、証人尋問や被告人質問等を行おうとする場合には、あらかじめその内容を明らかにした上で、検察官を経由して申し出なければならないこととしているなど、被害者参加人がいたずらに感情的な訴訟活動を行うことがないよう、検察官があらかじめ適切に対処することができる仕組みとしております。

 このように、さまざまな予防措置も講じていることから、本制度のもとで、被害者の方々が刑事裁判に参加することを認めたとしても、いたずらに感情的な訴訟活動が行われて、法廷が私的な復讐や闘争の場となるおそれはないというふうに考えております。

横山委員 被害者参加人等による証人尋問、被告人質問については、先ほど述べた批判以外にも弊害を指摘する声がありまして、尋問等は検察官と被害者との十分なコミュニケーションを前提として、検察官を通じて質問すれば足りるのではないかというような指摘もあるかと思います。

 そこで、限定的とはいえ、直接証人等に対し尋問等を認めるのではなくて、例えば、証人尋問の場合ならば、尋問事項を知る機会を与えられた被害者が、検察官に対して、その尋問事項に付加する尋問事項を申し出ることができ、検察官が申し出のあった尋問事項をみずから尋問しないときは、その理由を告知し、それに対し被害者は裁判所の裁定を求めることができるという案も考えられるのではないでしょうか、この点について法務当局の御意見をお聞かせください。

小津政府参考人 まず、御指摘のような案につきましては、犯罪被害者等基本法が求めている施策として十分かどうかという観点からの検討が必要であろうと思われます。

 それから、裁判所が裁定をして検察官が必ず尋問しなければならないということになりますと、検察官が公益の代表者として訴訟活動を行うこととの関係をどのように考えるのかというような点について慎重な検討が必要ではないかと考えております。

横山委員 それでは、続きまして、証拠調べ終了後の弁論としての意見陳述についてお尋ねいたします。

 本法律案では、証拠調べが終わった後に、訴因の範囲内で、事実または法律の適用について意見を陳述することができる旨定めております。この意見陳述は証拠とはならないとされているようですけれども、現行の心情等に関する被害者等の意見の陳述は、量刑に関する資料にはなるものと理解しております。

 この点、裁判員制度が導入された場合、裁判員が、被害者の意見陳述のうち、心情について述べたものは証拠にするが、弁論として述べたものは証拠にはならないというようなことが実際上区別できるのかどうか、やはり心情のみならず弁論としての意見陳述も含めて裁判員に大きな影響を与えてしまうことにはならないでしょうか、この点についての御意見をお聞かせください。

小津政府参考人 それぞれの制度の整理は委員御指摘のとおりでございます。

 実際に、その点について、裁判員の方に正確に理解していただくということにつきましては、その具体的な事件の評議の場で裁判官が裁判員に十分に御説明して理解をいただくということが重要であろうと考えております。

横山委員 それでは次に、参加が認められない被害者の扱いについてお尋ねいたします。

 本法律案にあっては、被害者参加が許される被告事件は、殺人、傷害等の故意の犯罪行為により人を死傷させた罪、業務上過失致死傷等の罪などに罪名が限定されています。

 この点について、被害者といってもごく少数の限られた被害者だけが想定されていて、不起訴処分となった事件なども含めて、犯罪被害者全体に開かれた制度ではないのではないかという意見が出されております。

 刑事裁判への参加が認められない事件の被害者については、裁判への直接の参加以外に、刑事手続への関与の機会をどのように拡大していこうとお考えなのかという点、そして、被害者が選別されて、参加できない被害者については従来どおりの蚊帳の外の立場でもいいのかどうか、この点について法務大臣の御所見をお聞かせください。

長勢国務大臣 被害者参加の対象とならない被害者の方々についても、その心情や要望が尊重されるべきものと考えております。

 現在でも、検察においては、必要に応じて被害者の方々に刑事裁判の推移や結果等の説明を行うなどをしているものと承知しており、引き続きこのような取り組みを進めていく必要があると考えております。また、本制度のもとにおいて参加の対象とならない被害者の方々の処罰感情等についても、検察官が被害者の方々からその心情や意見を伺うことによりこれを十分に把握し、また、現行の意見陳述制度の利用等も含めて、適切に裁判に反映されるよう努めていくべきものと考えております。

横山委員 それでは次に、犯罪被害者の検察官に対する質問や意見表明制度についてお尋ねいたします。

 被害者参加制度については、現行の刑事訴訟法の本質的な構造を根底から変容させ、被告人の防御に困難を来し、裁判員制度が円滑に機能しなくなるおそれなどが指摘されて、そういう意見も紹介しながらここまで質問もしてきたわけですし、刑事手続の現場を担う法曹三者の間からも、これまでの犯罪被害者の切実な声とは別に、この議論自体がまだ始まったばかりだという声もございます。

 さらには、当事者である犯罪被害者の側からも、被告に攻撃されて二次被害を受けるとか、被害者に公的に弁護士がつかない今の現状では負担が大きく、一般市民の参加は無理なんじゃないかというような意見もこれまで数多く聞いてまいりました。被害者の間からこの制度に対して逆に反対の声が上がっていることは、やはり重く受けとめなければならないのではないかと思います。

 犯罪被害者等の救済を進めるためには、公費による弁護士支援制度など、犯罪被害者等に対する精神的、経済的な支援体制を構築して、その効果を見きわめた上で、改めて被害者参加制度の導入の要否について検討すべきという意見があります。

 被害者参加制度を直ちに導入するのではなくて、今の段階では、犯罪被害者等と検察官との意思疎通を図るために、犯罪被害者等の検察官に対する質問、意見表明制度の導入を図った方がいいのではないかという意見に対しましては、法務大臣はどのようにお答えになりますでしょうか。

長勢国務大臣 今お話しのような御意見もあることは承知をいたしておりますが、まず、支援制度については、内閣府において今検討中でございますし、また、検察官との意思疎通というものも今まで以上に十分に行っていく必要があるということはそのとおりでございます。

 一方、できる限り早く被害者参加制度を導入していこうということが従来からの基本法の考え方でありますし、またそれについての要望も大変強いわけでございますし、ようやく各方面の御意見も踏まえてここまで来ましたので、早急に成立を図っていただくようにお願いを申し上げたいと思います。

横山委員 委員長、申しわけございませんが、定足数に足りておらず、与党の両筆頭理事も御不在で、質問ができないのですが、委員長の御判断をよろしくお願いいたします。

七条委員長 ただいま委員の出席を求めているところでございますので。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

七条委員長 速記を起こしてください。

 委員の皆さん方に申し上げますが、定足数に今達しておりますので、質疑を続行していただきたいと思いますし、理事の皆さん方は筆頭理事の方と調整をしてください。

 質疑を続行いたします。横山北斗君。

横山委員 本法律案のもう一つの柱であります、損害賠償請求に関して刑事手続の成果を利用する制度について質問をいたします。

 現在は、犯罪被害者等が加害者に対し損害賠償の請求をする場合、刑事裁判とは別に民事裁判を起こして、その被害の事実や相手の責任を被害者自身が立証しなければなりません。この制度は、刑事裁判における検察官の立証の成果をそのまま利用して損害賠償できるようにすることで、被害者等の立証の負担を軽減しようとするものと理解しております。

 しかし、本制度に対しては、被告人及び弁護人が民事上の不利益を回避するために、必ずしも刑事訴訟の争点ではない事項についても事実関係を争うなど、さまざまな問題点も指摘されております。

 先ほど、この点、大臣も御答弁されましたけれども、改めて御所見をお聞かせください。

長勢国務大臣 本制度においては、刑事裁判中は民事に関する審理を一切行わず、刑事判決の後に民事に関する審理を行うこととしております。このように、刑事と民事の審理を分断することにより、刑事に関する審理においては、これまでの刑事裁判と同様に、刑事の観点から必要なもののみが審理の対象となり、この中に民事に関する争いは持ち込まれないものと考えております。

 また、本制度においては、刑事判決に法的拘束力を認めておらず、民事上の争点については、損害賠償命令事件の審理等において十分に主張、立証していくことができます。したがって、本制度が導入されることによって刑事訴訟が長期化するおそれはないものと考えております。

横山委員 それでは、そのような形で早期に損害賠償請求が確定した場合でも、加害者に支払い能力がない場合はどうするのか、それから、先ほど、これも平岡委員が指摘されたことですが、国が十分な補償を行って、加害者に求償する制度を創設するということについても、改めて御答弁を願います。

長勢国務大臣 御指摘のような補償制度を含む被害者の方々への経済的支援につきましては、犯罪被害者等基本計画において、「経済的支援制度に関して設置する検討のための会において、社会保障・福祉制度全体の中における犯罪被害者に対する経済的支援制度のあるべき姿や財源と併せて検討する。」ということとされております。

 現在、内閣府に設けられた経済的支援に関する検討会において、犯罪被害者等に対する経済的支援制度を現状よりも手厚いものとするための制度のあり方についてさまざまな角度から検討が進められているものと承知をいたしております。

横山委員 この制度においては、損害賠償請求の申し立てを受けた刑事裁判所は、刑事事件について有罪を言い渡した後、刑事記録を取り調べた上で、原則として四回以内の審理により損害賠償請求についての決定をして、これに対して異議が申し立てられた場合には、通常の民事裁判所で審理を行うということになっております。

 この制度は、簡易迅速に被害回復を図るための制度ということですが、異議が申し立てられると、通常の民事裁判所に移行することになるわけですから、印紙の追納義務が生じるとか、被害者本人が申し立てた場合には、みずから訴訟追行の責任を負うなど、さまざまな負担が出てくることになろうかと思うんです。

 こういう簡易迅速な制度だと聞いて申し立てをしてみたけれども、実は、むしろ面倒な、重い手続負担の通常訴訟にまで引き込まれることになるのではないか、そうなると被害者のリスクはかえって大きいんじゃないかというような指摘が出ているんですけれども、こういう点につきましてはどのようにお考えでしょうか。

小津政府参考人 そもそも、損害賠償命令の申し立てについての審理を簡易迅速な審理方針により行うことといたします場合に、その裁判に対して不満がある場合には、原則に戻って、通常の民事訴訟において改めて審理を受けられることとするという必要があるわけでございます。

 そして、通常の民事訴訟手続に移行した場合でございましても、当該裁判所に刑事記録を含めた損害賠償命令事件の記録を送付することとしまして、民事訴訟手続においても当該記録を利用できるようにするなどして被害者の方々の負担を軽減することにしております。

 申し立て手数料の追納の問題につきましては、異議申し立てによって通常の民事訴訟手続に移行した場合は、これによって解決を求める被害者側が、その利益の程度に応じて同程度の手数料をまず支払うこととすべきでありまして、これは労働審判手続や支払い督促におきましても同様の仕組みとされてございます。

 加えまして、被害者の方々が経済的に困窮している場合におきましては、民事訴訟法上、裁判費用の支払いの猶予等が認められます訴訟上の救助の制度を利用することも可能だ、このようになっているところでございます。

横山委員 それでは、被害者等給付金の引き上げについてお聞きいたします。

 犯罪被害者等に対する経済的支援については、犯罪被害者等基本計画の中で、犯罪被害者等に対する経済的支援制度を現状よりも手厚いものとする必要があることを前提に、経済的支援制度のあるべき姿やその財源について検討する旨明記されておりますが、この点、政府が犯罪被害者等給付金の大幅な引き上げを図る方針を固めたという報道が出ていましたが、どういう概要なのかについての御説明を願います。

荒木政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のように、基本計画に、経済的支援をこれまでよりも手厚くする方向で検討するということが盛り込まれまして、昨年四月以来、一年余にわたりまして、経済支援に関する検討会におきまして検討を進めているところであります。

 来月、中間取りまとめを行いたいと考えておりますけれども、給付水準の引き上げにつきましては、犯罪被害者等に対する給付水準の抜本的な拡充を図るということにいたしまして、現在、犯罪被害者給付金で遺族給付金は一千五百万円余りが上限でございますけれども、これを自賠責の支払い限度額でございます三千万円にできるだけ近づけよう、それから障害給付金の最高額、今一千八百万円余りでありますけれども、これにつきましても、自賠責の重度後遺障害者の支払い限度額であります四千万円にできるだけ近づけようということで検討がなされております。

 また、収入が少ない障害者の方については、今の給付金のシステムではどうしても額が低くなりますので、その点については、重度障害者の方について、若くて収入が少なくても高くもらえるように配慮すべきである、あるいは御遺族の中で、お子さんがたくさんいらっしゃるとか、そういう扶養の負担の重い御遺族に対しては配慮が必要ではないかというような方向で議論されているところでございます。

横山委員 それでは、最後に、経済的支援以外の取り組みとして、被害者が一定の書式の質問票に被害の状況などを記入して関係機関に引き継ぐことを可能とするための犯罪被害申告票の作成、各地域で個々の被害者に最も適した支援メニューを助言できるコーディネーターを被害者支援団体が民間人の中から養成し認定する制度の導入も検討されているということですけれども、この制度についても、最後に簡単に御説明願えればと思います。

七条委員長 時間が過ぎておりますから、簡単明瞭にお願いします。

荒木政府参考人 お答えいたします。

 基本計画に基づきまして、昨年四月、被害者の代表の方、有識者等から成ります支援のための連携に関する検討会というのも経済支援とは別に立ち上げまして、被害者の方に途切れのない支援を行うための連携ネットワークの充実強化について検討を進めておりまして、来月、これにつきましても中間取りまとめを行うこととしております。

 被害者の方から、実は、支援を求めるたびに被害について説明をするというのが大変精神的に苦痛である、特に性犯罪被害のような場合に精神的に負担となるので、何とか被害の状況なんかを記載した被害者カードというものを発行してもらえないか、こういう御要望が寄せられておりました。

 検討会におきまして検討しておりますけれども、被害者カードを発行するということは、被害者に関する個人情報の管理、保護等の問題もございまして、大変困難であるということでありますけれども、被害者の方御自身が被害の概要あるいは支援に関する要望等について簡単に記載できるような被害の申告票というものを作成して、これを支援機関、団体等に提示することとしてはどうかという方向で議論が進められております。

 また、被害者支援を行う上で、民間の被害者支援団体の果たす役割というのは大変重要なものがございます。一定のレベル以上の支援を行うためには、民間の支援員の研修内容の統一でありますとか、あるいは資格の認定が必要であるという声も寄せられておりまして、全国被害者支援ネットワークにおいて支援員の研修あるいは資格の認定を行うということにいたしまして、特に支援全般をマネジメントできる能力、経験を有するいわば最上級の支援員の資格として、コーディネーターといった者の育成を図る方向で検討が進められているところでございます。

横山委員 以上で終わります。

七条委員長 次に、石関貴史君。

石関委員 民主党の石関貴史です。

 質問する前に、本法律案、改正案は、犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案という名称でありますが、今慌てたふうで公明党の理事さんがいらっしゃいましたが、与党の両筆頭理事がいない中で、そして先ほどまでは定足数も足りないというような状況でこの審議が進む、とてもこれは、委員会、委員長の権威、そういう問題ではなくて、犯罪被害者の方々のことを考えてこの法案をしっかり審議する、そういう体制ができていないということに対しては大変私は申しわけないという気持ちがいたしますので、そういった状況がまた現出するようであれば到底質問は続けられないということを申し上げて、委員長にもしっかり御理解をいただいて、質問に入らせていただきたいと思います。委員長も、そのことはしっかり御承知おきの上、委員会の運営をお願いしたいと思います。

 それでは、まず初めに、この法案、法改正の前段といいますか、この法改正に至る前に、二〇〇五年、内閣府において、犯罪被害者等基本法、この法律に基づく計画策定検討会というのが開かれたというふうに承知をしておりますが、報道によると、この検討会の中では大変な意見の対立があって具体案がまとまらなかった、一部の報道には、具体案もまとまらなかったので法務省にそのまま丸投げをしたというような報道もあります。

 実際には、この検討会の中でどのような議論が行われたのか、どういった意見がそれぞれ出されて、集約できなかったのか否か、少し詳しく、この検討会の経緯、そして、具体策については取りまとめに至らなかったということなんですが、実際そうであるのかどうか、そして、どの時点で判断をして法務省の方に、丸投げというのが適切かどうかわかりませんが、そういった状態になったのか、この検討会の経緯、内情について御教示をいただきたいと思います。

荒木政府参考人 委員御指摘のように、平成十七年の四月の基本法の施行と同時に、この基本法の八条におきまして、基本計画を政府は策定しなさいということになっておりまして、有識者等から成ります基本計画の検討会を設置いたしまして、十一回にわたる検討を行い、平成十七年十二月に基本計画が閣議決定をされたところであります。

 御指摘の犯罪被害者の刑事裁判への参加についてもかなりの時間をかけて検討がなされたところでありまして、日弁連の代表の方もこの検討会に入っておられるんですけれども、この中で、先ほど来議論になっておりますような、法廷が混乱するのではないかとか、あるいは被告人の方の防御権が害されるのではないかといったような慎重論がございました。日弁連の方でたしか理事会の決議みたいなものを出されたと思うんですけれども、そういったものも踏まえて検討いたしました。

 また、諸外国の制度でこういった参加の制度がありますというような御紹介もありましたけれども、これについても、外国であるからといって日本にそのまま持ち込むのはいかがなものかとか、そういった慎重論もございました。

 いずれにしても、この基本法の十八条において、先ほど来ありますように、「刑事に関する手続への参加の機会を拡充するための制度の整備等必要な施策を講ずる」ということが法律にまずありまして、それから、ヒアリング等におきましても、やはり被害者の方々から強い意見、要望がございました。

 そこで、検討会におきましては、この基本計画においては、慎重な検討を要するということは当然ございますけれども、先ほど来議論になっておりますように、大変大きな変革でもあると思いますので、刑事手続への関与拡充への取り組みということを基本計画の五本柱の一つとしてまず立てるということ。

 それから、その中身ですけれども、犯罪被害者等が刑事裁判に直接関与することのできる、我が国にふさわしい制度を新たに導入する方向で必要な検討を行う、そういった文言で施策が盛り込まれ、法務省において検討がなされてきたものと考えております。

石関委員 内閣府の対応については今わかりました。

 それでは、幾つかの犯罪被害者の方々の、あるいは遺族ですね、被害者に関係する方々の会というのがあって、この法案についてもいろいろ御意見を述べられた、また運動されてきたということでありますが、そのうちの全国犯罪被害者の会(あすの会)の代表幹事、弁護士の先生でいらっしゃる岡村さん、私も直接この方のお話を伺う機会もありました。今回の法案についてはもう少し踏み込んだいろいろな御意見をお持ちですけれども、今はここまでで実現をすることがまず先だ、こういったお気持ちを吐露されていらっしゃいました。

 しかし、この岡村弁護士がこのような被害者の会、あすの会というのを結成されて、こういった運動に大変熱心に取り組まれたその理由というのは、奥様が殺害をされたということだとおっしゃっておりましたが、具体的に、この岡村弁護士の奥様が殺害されたという事件はどういった事件だったのか、どういった状況でどういう理由からこの殺害事件が起こったのか、その事件について少し詳しく御教示ください。

小津政府参考人 御指摘の事件は、犯人と申しますか被告人が平成九年十月十日に、東京都小金井市内の弁護士方の、岡村弁護士でございますが、玄関先において、その方の妻に対して所携のサバイバルナイフでその胸腹部等を数回突き刺して同女を殺害したというものでございます。

 この事件につきましては、平成十一年九月六日に東京地裁において無期懲役の判決が言い渡されまして、十三年五月二十九日に東京高裁で控訴棄却になって確定したというものでございます。

 まず概略は、そのようなことでございます。

石関委員 その事件にかかわって、岡村弁護士御自身というのはその裁判等にはどのようなかかわりをされたんでしょうか。御自身が弁護士でいらっしゃるということですが、弁護士の方ですから、もちろん訴追をする方ではありませんが、この事件自体に関しては岡村弁護士というのは何か特別のかかわりとか、裁判の途中にも何かいろいろな場で意見を表明されるとか、そういう活動はされていたんですか。把握をされている限りで結構ですが。

小津政府参考人 私が承知しております範囲内では、その裁判を傍聴されたと承知しております。

石関委員 これだけの運動をするといった被害者のお気持ちについて、あらゆる機会をとらえて活動されてきた、よほどのお気持ちなんだろうなというふうに思います。

 それでは、被害者の方の代表のお一人というふうにとらえておりますけれども、これまでの二法の法改正、今論議をされているわけですが、犯罪被害者というのが、また、あるいはその関係者が裁判の過程で実際どのように扱われてきたのかということについてお尋ねをいたします。

 きょうは最高裁にはお願いをしてありませんが、法務省の関係で知っている限りでこの部分は結構です。かつては、傍聴席への遺影の持ち込みというのが拒否をされてトラブルになったというようなこともあったと聞いております。今は、持ち込める場合、持ち込めない場合というのがあるのかどうかということ、遺影の関係ですね。

 というのも、トラブルになったということが過去ありますし、被害者が法廷で意見を述べたいというふうに希望した場合に、今実際にはどのような対応がなされているかということも一般の方にもわかりやすく御説明をいただきたいということ。

 それから、被害者への裁判の日程についての連絡等は現状ではどうなっているのか。以前の法改正の前では、全くそういったものも知らされていなかったということがありますが、私もこれを知ったときに、そういうものなのかと驚きを禁じ得なかったのでありますが、現状ではこのことについてはどうなっているのか。現在の制度では被害者がどのように処遇をされているのか、この全般についてお尋ねをしたいと思います。

 それから、先ほどの被害者の方への裁判の日程等についての連絡というのは、具体的にはどのような手段でなされているのか。だれが、どのような手段で、被害者の方への裁判の日程等の連絡、通知というのはどのような手段でされているのか。だれかが行ってこうなっていますよと言うのか、だれかがこういった通知を郵便で送りつけているのか、そういった詳しいことについても教えてください。

小津政府参考人 まず、これまで犯罪被害者の方がどのようなお立場であったのかということと、その後どのようになったのか、両面で御答弁申し上げます。

 まず、犯罪被害者の方は、法廷で傍聴をするということ、それから、ほとんどの場合、検察側の情状証人として出廷されてその心情について述べる、もちろん、その事件を目撃する等しておられましたら、その観点でも証人になっておられましたけれども、そのようなことをしていた。検察側は、そのような証人出廷をしてほしい、あるいはその前に参考人として話を聞きたいというときには、被害者の方々に連絡をして来ていただいたりしておりました。

 そのほかにも、個々の事件で最大限配慮をしていたつもりではございましたけれども、やはりそこは犯罪被害者の方々から見れば、検察側が必要なときにだけ連絡をしてきているのではないかという御不満が大変に強くなってきたということを私どもも認識してきたわけでございます。

 そこで、検察サイドといたしましては、まず、裁判の結果等を被害者の方、これは御希望される方に通知していくという制度、これを少しずつやっていたところもございましたけれども、これを全国的に拡大するということをしたわけでございますけれども、それでももちろん、まだまだそれだけでは不十分だし、そういう運用上の改善だけでは全く不十分だということがございましたので、法制度上は犯罪被害者二法というものによりまして、例えば、犯罪被害者の方が直接法廷に来て、それは検察側が来てくださいと言わなくても、まさに犯罪被害者の方の権利として出ていって意見陳述をするという制度ができた、これは大変大きなところだと思います。

 その間、順次、犯罪被害者の方にいろいろな公判での記録でございますとか検察側の資料、これを提供する、これは法改正もございましたが、運用の改正もございまして、順次それを拡大してまいったということでございます。

 それから、委員御指摘の、被害者の方が傍聴席におられる場合に遺影等を持ち込むことにつきましては、個々の事案で裁判所の方の御判断で、それが認められたりそうでなかったりということがございまして、これはちょっと私から御答弁申し上げていいかどうかわかりませんが、被害者の方々からすれば、もっと認めてほしかったのにというケースもあるいはあったのかもしれないというふうに考えております。

 そのようなことで、現在では累次非常にたくさん、検察部内あるいは刑事局からも、全国検察庁に通達をいたしまして、運用上できるだけのことをやろうということでございます。

 例えば、公判期日等につきましても、これはあらかじめいろいろ被害者の方々と接触して御希望を伺った上でございますけれども、検察の方からお知らせをするという運用をしております。これは、被害者の方の中にはもうそんなものは全く聞きたくないという方もおられますので、そこはやはり御希望があればということで対応しているところでございます。

 それから、検察におきましては、検察庁に被害者支援員というのを置きまして、どんなことであっても、犯罪被害者の方、これは現に犯罪の被害を受けているという方から、あるいは、もう受けて刑事裁判になっているんだけれども、今自分はこういうふうにしたいんだという、ありとあらゆる御相談を受けるという体制を全国的につくりまして、今、もう相当年数がたっておりますけれども、その運用を強化している、これらのことをやってまいったということでございます。まだまだ不足している部分があると思いますので。

石関委員 ちょっと、今最後におっしゃった支援員ですか、その方がどういう方々なのかということをお尋ねしたい。

 それと、その前に御答弁をいただいた、検察の方で接触をして、被害者の方が知りたいという場合には裁判日程等をお知らせする、こういうことでよろしいのかどうか。

 あとは、これについては規則のようなもので一律に通知をするということではなしに、接触をした感触によって、どうしても知りたいという方にケース・バイ・ケースでいろいろな手段でお知らせをしているのか、ちょっとここも、もう少し詳しくお知らせをいただきたいと思います。

 今の御答弁で伺った理解では、どうしても教えてください、あるいは知りたいんだというふうが見えたら、それぞれの携わった検察の担当の方の判断でお知らせをしているというふうに、今御答弁を聞くとそういう理解になるんですが、それでいいのか。規則で一律にこういう手段によって通知をするということではない、個別によって判断をする、また、判断をした場合には、通知をする手段というのはどのようになっているのか、それぞれの担当に任されていて、ある者は電話でお知らせをし、ある者は会ったときにお知らせをする、ある者は手紙で知らせる、こういうことになっているのか、この二点についてお知らせください。

小津政府参考人 まず、被害者支援員でございますけれども、例外があるかどうかちょっと確認しておりませんが、基本的には検察庁の職員であった者で、それまで検察庁の仕事の中でも犯罪捜査や公判にかかわる事務に長年従事していた者が中心でございます。もちろん、大変に大事な、また被害者の方に話をしていただくための制度でございますので、その方のお人柄等々については十二分に吟味させていただいた上でお願いをしている、こういうことでございます。

 犯罪被害者等の方に対する通知制度でございますけれども、まず、通知の方法は口頭または文書、つまりこれはお手紙、はがき等でございますけれども、両方あり得るということでございます。

 先ほど申し上げましたように、その方が希望しない場合には通知しません。ですから、希望した方ということでございますけれども、事件を検察庁で処理いたします過程で、非常に頻繁にといいますか、被害者の方と接触をいたしますので、その際に、こういう制度があるんですけれども希望されますかということを伺って、それで、希望しますという方には、もちろん例外なく、漏れなくやっているということでございまして、たまたまどこかでちょっとこのことを知って教えてほしいという方にだけお知らせしているというような運用の実態ではございません。

 ちょっと今、手元に件数があるかどうかではございますけれども、非常にたくさんのケースについてお知らせしてございます。

石関委員 そうすると、もう忘れたいというか余り思い起こしたくないという方もいるということもありますし、私もそういう方もいらっしゃるだろうと思いますが、数としては知らせてほしいという方の方が、細かい数字は今お持ちでないかもしれませんが、圧倒的に多いんだ、こういう理解でよろしいんでしょうか。事前には数字まで出してくれというふうに申し上げてありませんが、わかる範囲で結構です。

小津政府参考人 詳細はまた次の機会に調べさせていただきますけれども、ほとんどの方が希望するというわけでもないし、ほとんどの方が希望しないわけでもないということは、私の経験からもそのように認識しておりますけれども、これが大体何割というところも、もう少し正確に確認してから、後の機会に御答弁させていただきます。

石関委員 法改正をして、制度として被害者が参加をする制度というのを導入しようというのがこの案ですが、数字は後で出していただきたいと思います、これは資料としてもいただきたいし、また機会があればこの審議の過程でまた御質問もしたいというふうに思います。

 今のように、実際のその心情として、裁判の日程等を知るということがどこまでの参加になるのかわかりませんが、やはりそういうお気持ちがある方がどれだけいらっしゃるのか、あるいは、ある意味でかかわりたくないと思われる方がどれだけいるのかということも、この被害者が参加をする制度を論ずるには、前提の一つとして押さえておくべき数字だと私は思いますので、そのことは後で数字を出していただきたいと思います。資料をお願いします。

 それでは、被害者の裁判への参加というものについては、海外の例を被害者の会の方も調べて日本に合った形で導入をという運動をされてきたというのを聞いておりますし、先ほどの検討会でもこのようなことが論じられたということでありますが、被害者が裁判に直接参加をするということは、世界の、特に先進国における趨勢になっているのか、あるいは、もともとそういう風土なり素地があって、今日本にそれを導入しようとしているのか。被害者が、直接参加をする、あるいはいろいろな間接にしろ、直接的に参加をするということが、世界的な今までの潮流であったのか、あるいはそれが加速をしてきているのか。

 ちょっとこの質問の準備をしておりまして、資料をいろいろ読んでおりましたら、もともと西欧には万人訴追主義という考え方がある、被害者、当事者が直接に訴追をするという考えがあるんだ、これについてもぜひ局長で結構ですので見識を御披露いただきたいと思います、しかし、直接それぞれの被害者が訴追をするというのも実態的になかなかできないので、検察がその代弁をしてかわりにやる、こういう法の思想というか、考え方があると、万人訴追主義という文言で、たしか読んだ資料の中にこういったのがあったんですが、そういうものも踏まえて、まず、それについての局長の御見識なり、検察制度というのが西欧においてはそういった考え方に基づいているのかということとあわせて、世界の趨勢というのが、特に先進各国において、このような直接参加をするというのがもともとあったのか、あるいはさらにそれが加速をされてきているのか、こういったことについてお答えください。

小津政府参考人 まず、委員が万人訴追主義という言葉で申された点ですけれども、この点は、先ほど大臣も御答弁申し上げましたように、果たしてそれがヨーロッパ特有のことであるのかどうかにつきましては現時点で確たることは私申し上げられませんが、私人も含めて訴追をしているということがかなり広く行われていたところ、だんだんそれを、訴追は国家がしていくというふうに流れてきたのではないか。

 例えば、イギリスにおきましては私人訴追の制度があるわけでございますけれども、そのイギリスにおきましても、比較的最近、検察という制度がかなり私どものイメージに近いものとして確立をしてきたというようにも聞いているわけでございます。

 そういうことを私がどのように考えるかという御質問がございました。それは、世界の趨勢が歴史的な流れでそのようになってきたということは、やはり人類のいろいろな経験の積み重ねの中から、それぞれの国でそのようになってきたのではないか。そういう意味で、我が国は訴追は全部国がやるというふうになってきておるわけでございますので、少なくとも、その点を今大きく変えるべきだと私が思っているかと申しますと、そのようには考えていないわけでございます。まず、その点はそうです。

 次に、被害者参加が世界的趨勢なのかということでございます。これも、各国いろいろなことがございますので、断定的にはもちろん申し上げられませんが、例えば、国連の犯罪及びパワー濫用の被害者のための司法の基本原則宣言というものがございまして、これにおきましては、被害者の個人的利益が影響を受ける場合には、被告人に不利益を与えることなく、また該当する国内の刑事司法制度に従って、彼らの意見や関心事を訴訟手続の適切な段階で表明させたり考慮したりすることなどが定められていると承知しております。

 それから、諸外国の状況につきましては、これまた概略を大臣から御答弁させていただきましたけれども、ドイツにおきましては、強姦、傷害、監禁等の一定の犯罪の被害者、違法行為により死亡した者の遺族、それから私人訴追の権利を有する者などは、提起された公訴に参加することができるものとされている。公訴参加いたしますと、質問権、証拠申請権、意見陳述権、上訴権等が認められていると承知しております。

 フランスにおきましては、被害者は私訴原告人となった場合に当事者として刑事裁判に関与することが認められて、出席権、弁護士の補佐を受ける権利、証拠提出権、証人に対する質問権、意見書を提出する権利、上訴申し立て権、ただ、これは民事上の利益に関してのみという限定があるそうでございますが、そのようになっております。

 アメリカ、イギリスにつきましても、それぞれ一定の範囲内で被害者の方がかかわる制度がございます。

 引き続き御説明申し上げてよろしいでしょうか。(石関委員「簡略に」と呼ぶ)簡単に申し上げます。

 アメリカにおいては、司法省その他の合衆国の行政機関の公務員や職員が、一定の場合を除いて、被害者が犯罪に係るすべての公開手続から排除されない権利を確実に付与されるよう、最善の努力を尽くさなければいけない、このようになっておりまして、被害者等には、釈放するかどうか、また量刑に関して地方裁判所において行われる公開の手続で意見聴取を受ける権利が認められていると承知しております。

 イギリスにおきましては、裁判手続でそのこうむった被害の影響を書面により陳述できる、また、裁判官が量刑を検討するための判決前調査報告書には被害の影響等について記載されると承知しております。さらに、イギリスにおきましては、比較的最近、中央も含めた一部の裁判所におきまして、より積極的な被害者参加の制度を試行しているという状況もございます。

 さらに、イタリアでは、最近いわゆる当事者主義的になってまいりましたけれども、被害者参加の制度はそのままあると申しますか、そういう意味では、イタリアでは現在、当事者主義的な手続だけれども、被害者参加の制度があると認識しております。

石関委員 それでは、この法案提出に至る経緯についてお尋ねをします。

 被害者にも、それはいろいろな立場の方、お考えの方がいらっしゃいます。一部の被害者の方あるいは団体からは、この法律案の内容について懸念や反対意見というのもあるし、もう少しやってもらいたいけれども、これぐらいだと、先ほどのような御意見もあるということですが、こういったいろいろな被害者の方々の御意見も酌み取った上での法改正作業が行われたというふうに思います。被害者や国民あるいは広くその他国民の皆さんの意見というのはどのように法案提出者としては聴取をして集約を図ったのか、それを教えてください。

小津政府参考人 私どもが行います前に、基本計画制定の過程でもやっておられるわけですけれども、法務省独自のものといたしましては、昨年の二月に合計十二の被害者関係団体の方々からヒアリングを行いました。また、同じ年、つまり昨年の十月の二十日から十一月三十日の間にパブリックコメントを行いました。犯罪被害者団体の方々からのヒアリングの結果もパブリックコメントの結果も、もちろんそのまま法制審議会の方に提出して、論議の用に供していただいたわけでございます。

石関委員 それでは、大臣にお尋ねをいたします。

 刑罰の本質というか、刑罰が何のためにあるかということについて大臣の見識をお尋ねしたいと思います。

 刑に処するということ、このことによって全体の社会秩序を保つんだ、こういう罪を犯すとこうなりますよ、こういった効果を感じさせるというのもあるでしょうし、こういった公益のためというのもあれば、他方、報復とかあだ討ちとか、こういった考え方もあるんだろうというふうに思いますが、大臣としては、刑罰の本質というのはどういうものにあるんだというふうにお考えでしょうか、お尋ねをします。

長勢国務大臣 刑罰の本質については、さまざまな考え方があるとは思います。

 一般に、いわゆる応報といいますか、過去の犯罪行為に対する報いという論理に基づくとする立場を前提として、犯罪を予防するということをも目的にしているものというのが一般的な考え方かなと思います。

 そして、犯罪の予防の目的としては、犯人に刑罰を科することによって一般社会人を威嚇し、警戒させて、その将来における犯罪を予防しようとする一般予防としての機能と、その犯人自身が将来再び犯罪に陥ることを予防しようとする特別予防としての機能があるというふうに言われていると承知をいたしております。

 これは一般的なことかなと思いますし、本人に、いわゆる個人的な応報というよりも社会的制裁という面と、社会的正義を貫徹することによって予防的効果を持つという面とがあろうかと思います。

石関委員 両面の効果はもちろんあろうというふうに思いますが、公益というのが今まで、秩序、威嚇効果とか、それで予防するという部分もありながら、今回、被害者が参加するということで、先ほど同僚の横山委員の質問にもありましたが、どうも、そもそも何のためにあるのかということの考え方に少し違いが出てくるのかな、こんな印象も持っているものですから、お尋ねをいたしました。

 例えば、少年法の、少年事件の関係ですけれども、ある本には、これは少年法の関係ですから更生ですけれども、更生というのは、彼ら被害者が、少年Aと書いてありますけれども、少年Aを許す気持ちになったときに言える言葉だ、これは少年法の関係で読んだ本のうちの一つですが、こういったことは、恐らく後者の報復とかあだ討ちとか、こういった観念の方に属するのかなと。被害者が参加するということで、こういった刑罰の考え方の転換がなされるのかどうか、あるいはまた、それが幅広く日本の法体系の中で変わり目にあるのかなという気持ちもあるので、お尋ねをいたしました。

 それでは、具体の被害者参加についてお尋ねをしますが、被害者が検察官の論告求刑と同様の意見の陳述を行うことができるということですが、こうなると、一般の市民の方から選ばれる裁判員の方々の考えというのに多大な影響を及ぼしてしまうのではないか、こういった懸念がある。感情も入り、そういった被害者の方の意見を聞いたときに、被告人が不当に重く処罰をされてしまうのではないか、このような懸念も出されておりますが、大臣はこのことについてはどうお考えになりますか。

長勢国務大臣 不当にと言われますと、なかなか難しい議論になるかと思いますが、少なくとも、感情的な判断が法廷を支配するというようなことはあってはならないと思いますし、そのための措置も講じておるというふうに思っております。

石関委員 あってはならないので、それを防止するというのは、この法案の中でどのように書き込まれているんですか。

長勢国務大臣 裁判に被害者の方が参加したときに、こういう意見を述べる場合には裁判官の許可が要る。また、その前に検事さんに申し出て、その指導のもとに行うことになっておりますし、意見の陳述の範囲も、先ほど来説明しているようなことで、それなりの合理的な範囲に制限をされております。

 また、当然、裁判官が法廷の指揮権を持っておられるわけで、感情的な場合には制止ができるということになるというふうに理解をしております。

石関委員 それでは、被害者の側に立った被害者の支援、被害者参加をするについて被害者の支援という観点から一つお尋ねをします。

 この被害者側の支援をする弁護士の費用もやはり公費で賄うべきだ、こういった強い意見もあるし、私もそのように考えますが、委託を受けた弁護士の費用は公費で持ってあげよう、こういった考えについて、大臣はどのように考えますか。やはりそれぐらいやってあげなきゃいかぬよな、こういうお気持ちはなくはないんではないかなと思うんですが、いかがでしょうか。

長勢国務大臣 必ず一律にやるべきことかどうかといえば、いろいろ議論があるんじゃないかと思います。

 弁護士だけではなくて、被害者の方々の一般的な経済的支援、そして訴訟活動の中の支援の仕方、いろいろなケースがあると思うんですけれども、こういうことを含めて今内閣府の方で御検討いただいておりますので、その検討に沿って法務省としても対応していきたいと思っております。

石関委員 ぜひ支援というのを制度として確立していただきたいと思いますので、大臣にこれは頑張っていただきたいと思います。

 あと、きょう外務省もお願いをしてありますが、同じ、被害者の支援という観点からお尋ねをします。

 邦人、日本国民が海外に行ったり、また短期で滞在している間に殺害をされる、こういった事件があります。ちょっと幾つか例をということを申し上げたんですが、時間もありませんから、それは結構です。

 そういうことがかなりあるということですが、海外で例えば家族が殺害をされた、犯人が捕まりました、こういったときに、では遺族は日本から、アメリカで事件があったらそこに行かなきゃいかぬ、渡航費用もかかりますし言葉もしゃべれない、しかしやはり、家族が殺されて、その裁判にも何かしらの手段で参加したい、弁護士も必要だ、こういった海外で起きた事件に対する被害者、遺族、こういったケースへの支援の制度というのは今どのようになっておりますか。

谷崎政府参考人 お答えいたします。

 海外における邦人事件でございますけれども、二〇〇五年で二十四件、昨年の二〇〇六年で十五件発生しております。外務省は邦人保護のために在外公館でいろいろな保護をいたしますけれども、今先生の方から御指摘のあったのは裁判になった段階の話であったように思いますけれども、基本はその前の段階でございますね、御遺族の方を受け入れるというようなことについていろいろな邦人保護をやっております。

 例えば、パスポートを持っておられないということも非常にありますので、それを緊急に発給する、あるいは現地に到着してから御帰国までの間、大使館員はずっと同行するということで、通訳等ももちろん行います。それからさらには、だびに付する、遺体の搬送等にも外務省の担当官が随時協力するということをやっております。

 具体の裁判になったときどうするのかということでございますけれども、これは我々としては、大使館としては、一番大事なのは、裁判の行方が非常に不都合にならないように常時よくモニターしていくということがございます。

 さらに、家族の方がそれに参加するということになった場合でございますけれども、これはまた同じような形で便宜供与を行いますが、そのために必要な渡航費というのは、制度として国が負担するという制度はございません。御本人の方で負担するという制度になっております。

 概略、そのような保護を行っております。

石関委員 今のパスポート発行等、これも当然のことだと思いますが、これはあれですか、最初に事件が起こったときの費用とか、その支援というのはないんですか。それはもう、邦人が殺されました、勝手に行ってください、こういうことですか。(発言する者あり)今までいなかったんだから、黙ってください。

七条委員長 一応時間が来ておりますけれども、一問だけ、ではどうぞ。今のを、簡単明瞭に。

谷崎政府参考人 当初の段階、裁判の前の段階で、渡航されるところの費用というのも、これは国、日本政府として負担するという制度はございません。本人の方が負担するということでございます。

石関委員 これは私が県会議員のときに、やはり親しい方の親戚が……(発言する者あり)さっきまでいなかったんだから黙りなさいよ。(発言する者あり)あなたに言っているんじゃないよ。(発言する者あり)後ろから騒ぐなよ、全く。(発言する者あり)騒いでいるじゃないか。静かに聞けよ。(発言する者あり)

七条委員長 お静かにお願いいたします。時間が過ぎておりますから。

石関委員 委員長、ばかやろうというのはいいんですか。この人、ばかやろうと言いましたけれども、いいんですか委員長、こういうのは。ばかやろうというのを言っていいんなら、いいんですか、これは。(発言する者あり)はいはいというのは何だ、それは。

七条委員長 お静かにお願いいたします。質疑時間が過ぎておりますから、どうぞ。

石関委員 それでは、こういうことについても、被害者という立場から、海外での事件に対するいろいろな支援ということも取り組んでいきたいというふうに思っておりますので。

 きょうは、時間については、今まで定足数も足りないし筆頭理事もいない中でそれでも進めてきたというのに、この場面になってから騒ぎ出すというのは、大変私はこれもふまじめな取り組みだということを改めて申し上げますが、これで私の質問はきょうは終わりにさせていただきます。

 ありがとうございました。

七条委員長 次に、保坂展人君。

保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。

 犯罪被害者の方の長年の思いを受けとめての法案審議で何やら大きな声が飛び交うというのは非常に不謹慎だというふうに思いますので、委員長もしっかり注意をして、法務委員会というのは品格がある委員会だったはずであります。

 私は……(発言する者あり)何ですか。

七条委員長 どうぞ、続投してください。質疑を続投してください。

保坂(展)委員 私の発言で、別に与党を非難した発言はありませんよ。品格を持った委員会だったんですというふうに言ったんですよ。(発言する者あり)

七条委員長 質疑を続投してください。

保坂(展)委員 いや、これは本当に恥ずかしい姿ですよ、こんなのは。

 十年前に片山隼君という小学生がひき逃げをされた。そして、懸命にお父さん、お母さんが目撃者を捜したんです。そして、その目撃者が出てきて、捜査ではわからなかったことがわかってきて、事件はどうなりましたかと言ったら、法務大臣、いいですか、当時の検察庁は、お子さんのことについて、教える立場にないんですよといって、何か不満があるんならどうぞといって検察審査会の用紙を出したんですよ。そんなことだったんです、十年前は。そして、当時の下稲葉法務大臣も、そういう扱いはいけないということで議論が始まったんです。そういう原点を踏まえていらっしゃいますか。

長勢国務大臣 細部は承知をしておりませんが、片山さんという名前も聞いたことがありますし、そういうことで、検察においてそういう対応があったということは承知しております。

保坂(展)委員 ですから、私は、犯罪被害者あるいは交通事故遺族の方も含めて、法廷や捜査、捜査から司法へのアクセスが全くなかったという事態から、このように政府案が提出をされてきた流れは、極めて必要なことだというふうに思っています。

 その内容についてこれから議論するわけなんですが、その前に、大臣に聞きますからね。日本も拷問等禁止の条約に入っておりますが、この国連の委員会から、五月二十一日に日本政府の報告書に対する最終見解が示されております。これは大変具体的で、法務省にとっても厳しいものが個々含まれておりますけれども、同委員会からの勧告について、一年以内に具体策をもって再度報告すべしという求めですが、法務大臣としてどのように受けとめていますか。

長勢国務大臣 詳細にまだあれはしておりませんが、日本の考え方というものを十分理解してもらいたいものだと思っております。

保坂(展)委員 理解してもらいたいものだということは、日本の状態が、これではいけないのではないか、こういう指摘が具体的にあるわけですが、その指摘は当たらないのではないかというふうに理解してもらいたいということですか。

長勢国務大臣 十分な理解の上に立ったものであってほしいということでありまして、理解がない点があれば残念なことだと思います。

保坂(展)委員 詳細を検討されていないのに、少し、ちょっとかたい態度かなというふうに思いますけれども。

 外務大臣政務官にも久しぶりに来ていただきました。今回、私、日弁連がつくった仮訳を皆さんのところにお配りしました、その中で重要なところを。外務省では本訳、仮訳、とりあえず仮訳ですね、していないんでしょうか。

 つまり、我々も、一応これは日弁連の訳なので、外務省がどういうふうに訳をして、政府部内でそれぞれ見ているのか、知りたいわけですね。

松島大臣政務官 お招きありがとうございます。

 これは、二十一日に最終報告が出されましたので、きょうは二十五日でございますが、今、訳をつくっているところでございます。仮訳という形では、まだ出していません。でき上がったら提出いたします。

保坂(展)委員 警察庁並びに法務省刑事局に、具体的に聞いていきたいと思います。

 いわゆる代用監獄についての指摘があります。この委員会でも何度もやりましたけれども、未決拘禁を国際的な最低基準にかなうものとするための効果的手段を講じるべし、こういう指摘。さらに、未決拘禁における警察留置場の使用を制限すべく、刑事被収容者処遇法の改正、こういうことも考えるべきではないか。その優先事項として、法を改正し、捜査と拘禁を完全に分離し、国際基準に適合するように、警察拘禁期間の、これが大事ですね、上限を設定しろ、日数的上限だと思いますけれども、こういうことを求めています。

 勧告によれば、この委員会で成立した刑事被収容者処遇法を改正して、勾留決定後の警察拘禁は認めない、こういうふうにすべきだというふうに受けとめられますが、警察と刑事局と両方お願いします。

安藤政府参考人 お答えいたします。

 勾留期間そのものにつきましては、基本的に刑事手続の問題でございまして、警察庁として公式にお答えすべき立場にはございません。

 今御指摘の点につきましては、まず、警察におきましては、御案内のとおり、被留置者の処遇を行う留置部門は、捜査部門から、組織上、運用上、分離され、留置部門が被留置者の人権に配慮して、適正な留置業務を遂行することをこれまで徹底してまいったということと、加えまして、被疑者の勾留場所につきましては、個々の事案ごとに、諸般の事情、具体的に申し上げますと、迅速かつ適正な捜査の遂行のための便宜あるいは被疑者、その家族、弁護人等の便宜とか、施設の所在地や施設の収容能力などを勘案して裁判官が決定しているということから、最終見解のように被留置者を留置施設へ留置する期間の上限を設けるのは、私どもとしては妥当ではないものと考えております。

 いずれにしましても、警察としては、留置施設において、被留置者が人権に配慮して適正に処遇されることが一番重要と考えておりますので、引き続き被留置者の適正な処遇に万全を期してまいりたい、あわせまして、国連の委員会に引き続き理解を求める努力をしてまいりたいと思います。

保坂(展)委員 ちょっとお願いですが、時間が限られていますので、前半の、今こういうふうになっていますというところは省いていただいて、後半、この勧告について、最終見解についてのコメントだけをお願いします。

 法務省刑事局長、お願いします。

小津政府参考人 御指摘が、勾留場所を、一定期間後は、代用刑事施設ではなく必ず拘置所にせよという趣旨であるとすれば、そもそも勾留場所は、拘置所と代用監獄とは、どちらが原則でどちらが例外という性質のものではございませんで、事案の性質、共犯関係、捜査の便宜、被疑者の防御上の便宜、施設のあきぐあい等、諸般の要素を具体的事案に即して考慮し、選定されるべきものと考えられますので、一律に、一定期間後は代用刑事施設から拘置所に被疑者の身柄を移すことの合理性は疑わしいのではないかと考えております。

保坂(展)委員 次に、これも警察と法務省に簡潔にお願いしたいんです。

 取り調べと自白の問題について、この委員会の最終見解は、警察拘禁中のすべての取り調べが、録画や弁護人の取り調べ立ち会いによって監視されるべきであること。そして、取り調べ時間について、違反への制裁、これを含む厳格な規制を即時に行うこと。さらには、条約に適合しない取り調べの結果得られたすべての自白の証拠からの排除、このために刑事訴訟法を改正することを求めている。

 取り調べの可視化、この委員会でも懸案になっております。きょうのニュースには何か、海外のものを採用したというような報道もありましたけれども、この最終見解をきっかけに、全面的な取り調べの録画、録音に踏み切るべきではないかという点について、簡潔に見解を、最終見解に対する見解を述べていただきたいと思います。

縄田政府参考人 取り調べの適正さを何らかの方法によりまして確保する制度を有する国は少なくないと思われますけれども、その内容はさまざまであろうと思います。

 我が国における被疑者、被告人の取り調べ過程、状況の記録制度もそれと同様の目的に基づくもの、こういうふうに認識をいたしております。我が国におきましては、取り調べの重要性というのは、るる私どもも申し上げておりますが、録音、録画を実施していくこと、これは取り調べ機能が大きく阻害される、そういうことから極めて慎重な検討が必要と考えておりまして、私どもといたしましても、引き続き、委員会に対しまして、日本の司法制度全体の理解と取り調べの機能等につきましても御説明を申していく必要がある、こういうふうに考えております。

小津政府参考人 取り調べの可視化の問題につきましては、ただいま警察庁の方からの御答弁どおりでございます。

 それから、拷問による自白について裁判の証拠とならないようにという御指摘があるように今承っておりますけれども、現行刑事訴訟法上も、拷問によるもの、その他任意によるものでない自白は証拠とされないわけでございます。この点につきましては、拷問禁止委員会の対日審査におきましても、日本側から御説明してきたところでございまして、引き続き、十分な御理解を得ていきたいと考えております。

保坂(展)委員 では、最後に死刑ですけれども、これは、矯正局、法務省に聞きますけれども、この委員会では、確定死刑囚の独居拘禁の原則と処刑について事前の告知がないという状態に懸念を表明して、国際基準にのっとった改善を行え、また、死刑執行のモラトリアム、即時停止と減刑、恩赦を含む手続的改善を検討しろ、あるいは、必要的な上訴制度を設けるべきである、執行までに時間を要している場合には減刑の可能性を確保する法制度をつくるべきなど、具体的な意見を最終見解に付していますが、これに対する見解はどうですか。

梶木政府参考人 死刑確定者の処遇について申し上げます。

 我々の方では、この死刑確定者について、身柄の厳格な確保のほかに、心情の安定について特に留意して行っておるつもりでございます。また、近く施行されます新法におきまして、死刑確定者の処遇についても新しいものを取り入れることとしております。(保坂(展)委員「これについてコメントしてください」と呼ぶ)

 勧告の中を見ますと、こういった我々の死刑確定者処遇の現状について十分な理解が得られなかったと思われる部分が多々あり、引き続き、この我が国の現状について、委員会の理解を得られるよう説明を尽くしていきたいというふうに考えております。

保坂(展)委員 では、松島大臣政務官にもう一問なんですが、今の関係局長の答弁を聞くと、この委員会というのは理解力に乏しいような印象を受けるんですね、日本の実情をわかってくれないと。(発言する者あり)いや、国連の委員会、法務委員会じゃありません。それは被害妄想だよ。

 国連の委員会が日本の実情をわかってくれないというようなことを今警察や法務省がおっしゃっているんですが、これは日本政府から何人の方が行かれたかわかりますか。

松島大臣政務官 これについて申し上げますと、日本からは十六名ですが、外務省、法務省、警察庁、厚生労働省、防衛省、海上保安庁からの出張者、そして、現地ジュネーブで藤崎代表部大使が最初の説明をしております。

保坂(展)委員 法務大臣、昨年来議論になっている、例えば組織犯罪防止条約について、条約上の要請があってということを法務省としてはずっと言っているわけですね。こちらの拷問禁止条約も我が国はもう批准をして締結国。締結国のこの条約に基づく委員会が最終意見を付してきたことについて、やはりこれは前向きに受け入れるべきところは受け入れ、法改正するところは法改正するというのは、これをよく吟味していただいての上ですけれども、一年という時間の中で、そこはしっかり受けとめていただきたいと思うんですね。わかってくれではなくて、受けとめる部分も必要じゃないかと思いますが、いかがですか。

長勢国務大臣 基本的には、我が国の主権の範囲内でいろいろなことを考えるのが基本であると思いますし、その中で、参考にすべき点があれば参考にしていきたいと思います。

保坂(展)委員 この議論はちょっと並行線になりそうなので。余り御機嫌がよろしくないみたいですね。

 日本の実情に合わせてということだったら、この組織犯罪防止条約も、立法の事実はないけれども条約の要請からなんですから、これはダブルスタンダードの議論はよくないということを申し上げておきたいと思います。

 では、本法案に入っていきますが、犯罪被害者について、先ほど平岡議員の質問の中で、当事者主義をとっている国の中で犯罪被害者の訴訟参加を認めている国があるのかというような質問があったかと思うんですが、そこでイタリアの例を挙げられたように聞こえたんですが、このイタリアは、一九八九年に刑訴法が改正されて、それ以前の旧刑訴法の予審制度があって糾問主義を採用していた職権主義からいわば転換をした、その当時からあった、いわゆる附帯私訴の部分を残した。

 そして、いろいろちょっと見てみると、いわゆる罪の当事者という言い方、これは犯罪被害者のことだと思いますけれども、そして、民事当事者という二つの立場があって、被害者は、手続主体ではあるけれども、その当事者とまでは認められていない。民事当事者は、裁判所への審判要求や立証権や証拠調べへの参加権や判決への上訴権などを持っているというふうに私はちょっと認識しているんですが、違いますか。

小津政府参考人 御指摘のとおりでございます。

保坂(展)委員 だから、そうすると……(発言する者あり)お静かに。当事者主義をとっているその国の中で、例えば典型的には米英で、被害者が当事者としての訴訟に参加することが認められなかったのは、あるいはこれは日本でもということでもいいんですけれども、犯罪被害者が当事者として訴訟参加することをこれまでアメリカやイギリスで認められなかったのは、簡潔に言うとどういう理由によって認められなかったんでしょうか。

小津政府参考人 ただいまの御質問に、今的確にお答え申し上げる準備ができておりませんが、当事者主義の国でどうかということについては、委員御指摘のとおりでございます。ドイツ、フランスは職権主義の国で、そこで被害者参加がかなり行われている。

 それでは、それがいわば必然的に結びつくものであろうかということにつきましては、必ずしもそうではないと申しますか、逆に申しますと、それとの関連について、私どもとして断定的なことを申し上げかねるわけでございます。

 これまで我が国は、一つには、もちろん国家が訴追いたしますし、裁判所、そして検察、弁護の当事者が訴訟、刑事裁判を支えてきたという伝統で参りまして、しかし、それに対して犯罪被害者の方が大変強い御不満を大変はっきりとおっしゃられるようになって、それを受けて考えてみると、やはり今回のようなものが必要だという経緯だ、このように思います。

保坂(展)委員 ちょっと、この辺はもっと掘り下げなきゃいけないと思うんですが、これは、東京大学の川出敏裕先生が、「犯罪被害者の刑事手続への参加」という論考の中で、犯罪被害者に手続の当事者としての地位を認めるべきだという見解は、被告人、弁護人と検察官との攻防によって事実を解明し、刑を決定するという現在の当事者主義では、事実の解明、適正な量刑、いずれも不十分であり、犯罪被害者が主体として加わることを求めていて、訴訟構造の変更が必要だ、こういうふうに受けとめられるべきではないか、こういうふうに指摘をされているんですが、これについてはどうですか、こういう指摘について。

小津政府参考人 ただいま十分なコメントはできませんけれども、伺った範囲内で、読み上げていただいたことについて、全くそのとおりだというふうには感じないで聞いておりました。

保坂(展)委員 つまり、簡単に言えば、小津刑事局長、日本では犯罪被害者に当事者性を認めてこなかったわけですね。その理由は何なんですかと聞いたんです。

 今度認めるということですね。しかも、当事者性を持って訴訟参加する。そこをきちっと区分けして言ってほしいんですね。では、何で今認めていないのか、これまで認めていなかったのかというのを的確に言えますか。

小津政府参考人 まず、当事者であるかと申しますと、我々としては、裁判官、検察官、弁護人、被告人というものと同じような意味で当事者であるとは考えていないわけでございます。

 ただ、そうはいっても、これまで被害者の方がこのような形で参加してこなかったわけでございます。その理由は、これまで被害者、被害を受けた事実、被害者の方の立場も、国の側が、直接的には検察官が最大限にそれを受けとめて、ただし、公益の代表者あるいは国の立場で訴追をしてきたわけでございます。これまでも、検察官は犯罪被害者の方の代理人ではございませんから、検察官と被害者の方の立場というのは異なっていたわけでございます。

 したがいまして、これまでにも犯罪被害者の方はいろいろと検察を含めた刑事裁判のあり方について御不満を持っておられたのではないかと思いますけれども、そのことがこのようにはっきりとした形で強く御主張され、それを我々法務当局も含めて受けとめて、制度改正が必要だというところまで認識するに至っていなかった、こういうことではないかと思います。

保坂(展)委員 では、法務大臣に伺いますが、推定無罪の原則について先ほど議論もありました。この推定無罪の原則から見ると、被害者の方が法廷のバーの中に入って被告人に相対して、証人に対する尋問をしたり、被告人に質問したりということについて、被害者の方にとって推定無罪の原則というのはどういうふうに法廷に働くのかということについて、見解を述べていただけますか。

長勢国務大臣 ちょっとどうお答えしていいのか、私の法律の能力では難しいのですけれども、当然判決が出るまでは無罪が推定されるというのは、被害者が参加されても一緒だというふうにしか思えませんけれども。どういう意味でしょうか。済みません。

保坂(展)委員 いや、法務大臣、これは私の見解なんですけれども、事実を全く争わない事件とやはり全面否認だという事件とございますでしょう、同じ結果でも。そして、事実を争っている場合には、まさに私はやっていないということを被告人は主張するわけですね。

 そのときに、つまり、結果が出るまでは、今大臣がおっしゃったような無罪推定の原則が働いているんだということの立場に立って、被害者の方がいろいろ発言されたり、お聞きをするというのは、少し制度設計として無理はなかろうか。事実を争わない事件についてこのようなことがされるというのであれば理解できる部分もあるんですが、その点について伺っているわけです。

長勢国務大臣 ちょっと大学のゼミか司法試験の試験みたいな感じになってよくわかりませんが、有罪だという前提でしゃべるであろうからおかしいとおっしゃっているわけですか、御質問は。何かよくわからないんですけれども。専門家、ちょっと来て。

小津政府参考人 委員の御指摘は、そこにいる被告人は有罪と決まったわけではございませんから、参加されている被害者は、その被告人から被害を受けたということはもちろん確定していないと申しますか、そういうことは立証されていないという前提で裁判は進む、それが無罪推定しているということでございます。ですから、被害者の方は、検察側の公訴の内容からして被害を受けた人であると認められた人であるということになると思います。

 したがって、実際の公判におきまして、被告人の方が事実を認めていれば、被告人の人がその行為をやったのだということが事実上の前提になってやりとりがなされると思いますけれども、それは今でも同じだと思いますけれども、自分が犯人ではないといって主張している案件においては、当然のことながら、その被害者の人に対して被告人は、いや、それは、幾らあなたがかわいそうな、つらい思いをしているといっても、それは私がやったことではありません、このように主張する、このような展開になると思います。

保坂(展)委員 今の点は非常に気になるところなんですが、ここに裁判員制度という制度が入ってくるわけですね。これは、法務大臣、裁判員制度とこの今回の被害者参加人の法廷への参加というのは、一応別の話としてスタートして、こうして法案として提出をされていますが、時期としては、こちらの方が早く、一応政府の予定で、施行予定でいえば始まるわけですね。その後に裁判員制度が始まるわけですから、殺人など重大な事件について、この今審議している内容が裁判員制度に組み込まれてスタートするということになりますね。

 ちょっと裁判所に聞いてみましょうか。

 この委員会でも、二十七億円かけて二年間で裁判員制度の映画をつくった、あるいはシンポジウムをやった、そこにちょっと契約上おかしなことがなかったのか、こういうことを追及しました。よく考えてみると、あの映画というのは全面的に変更しなきゃいけなくなりませんか。ことしもできましたけれども、「裁判員」とか、その前の「評議」とか。そこには被害者参加人という姿はないじゃないですか。これをどう考えていますか、最高裁。

小川最高裁判所長官代理者 お答えします。

 映画を二本つくっておりますけれども、この段階では当然こういう法案ができているわけではございませんので、全くそういうことは前提にして考えておりません。

 仮にそういう法案ができましたときに、それを参考にした、それを取り入れた映画をつくるかどうかというのは、この法案ができるかどうか、その後のことでございます。

保坂(展)委員 どうですかね、本当にこの裁判員制度という、まあ五十年ですか、少なくとも半世紀くらいの耐用性がなければならない大規模な改革が行われたわけですね。この中に、またこれまでの訴訟構造を一変させるようないわば被害者参加人の方の参加、こういうことがあるのであれば、本来は一緒に議論をして、一緒にこの司法制度改革全体の中で立法化し、制度化するべきではなかったかというふうに思いますけれども、これは順番がしっかりそろっていればよかったですね、大臣、どうですか。

長勢国務大臣 裁判員制度はもっと遅くすべきだという御意見でありますか。(保坂(展)委員「そういう意見もあります。大臣、どうですか」と呼ぶ)

 いろいろな御意見はあると思いますが、裁判員制度が施行されることを前提にして被害者参加制度が御議論になってきた経過は御存じのとおりでございますし、その中で、そういう問題のないようにいろいろな手当ても考え方も議論されておったわけでありますから、今後、この法案を早く成立させていただいて、裁判員制度の施行に問題がないように進めたいと思っております。

 一緒にやるべきかどうかというのは、いろいろな意見はあると思いますが、私どもは、そういう議論の経過でございますから、早急にこの法案を成立させていただきたいと思っております。

保坂(展)委員 何かやはり、大臣は裁判員制度に対してやや自信が、一部不安が拡大をしてきているのかなという印象を受けますよ。

 今度は、裁判所に聞きますね。というのは、きのう新聞に、裁判員制度の手続に関する要綱がまとまった、こういう記事が載っていました。

 そこで、これは口頭試問といいますか面接というか、いわゆる質問を裁判員についてするわけですが、この中に、捜査官証人、つまり警察官等が予定されている事件において、当事者の求めがある場合、裁判長は、口頭で、あなたには、警察等の捜査は特に信用できると思うような事情、あるいは逆に、特に信用できないと思うような事情がありますかと質問をし、いいえと回答した場合には、何も質問しない、はいと回答した場合には、それはどのような事情ですかと質問をする、その回答によって必要がある場合には、そのような事情があっても、警察官等の証言の内容を検討して公平に判断することができますかと質問をし、不公平な裁判をするおそれの有無を判断する。

 これはどういう意味ですか。我々は、志布志事件などで、警察の捜査もやはり相当行き過ぎがあるということを随分認識しています。例えば、裁判員候補者が、やはり警察の捜査も密室で行われるから時々行き過ぎはあると思いますよということを言うかもしれません。どういう意図でこの設問があるんですか。

小川最高裁判所長官代理者 お答えします。

 今のは、公判前整理手続をやっていくうちに捜査官証人が申請される、そういうものが予定される事件があるということがわかりましたときに、当事者の方から求めがあった場合に、その捜査官証人の証言の信用性について、不公平な裁判をするおそれがあるかないかという点を判断するために今委員の御指摘のような質問をさせていただく、一つの判断資料になろうかと。

 実際には裁判体が判断されますから、具体的にどうなるのかというのはまたその裁判体の判断でございます。

保坂(展)委員 これは法務省の刑事局長の方に聞きたいんですが、今のような、捜査官が証人として出てくる場合、恐らく、自白はしている、しかし、その後、否認に転じて自白調書の任意性に疑いがある場合、こういうことが多いんじゃないだろうかというふうに思うんですね。

 そして今、裁判所が設問していますね。警察官の捜査等にどれだけ信用性を置いているかどうか。いや、私は全然置いていないんだ、最近は相当密室でおかしいと思うというようなことを面接で言っていたら、検察官はこの裁判員候補者を忌避できるんですね。忌避する理由になりますか。

小津政府参考人 個々の事件で、検察官がどのような場合に理由を示さないでお断りしたいということを言うかどうかというのは、もちろん、まだ私どもで具体的に何も検討しているわけでもございませんし、結局は、個々の事件における検察官の判断ということになろうと思います。

保坂(展)委員 もう一点裁判所に伺いますけれども、死刑についてもやはり、法定刑を説明して、起訴されている罪について、死刑または無期、何年以上の懲役に処すると決められていますが、この法定刑で量刑を判断できますかという質問をするんですね。はいと答えた場合は、その後質問しない。他方で、異論が出た場合には、今回の事件の裁判で、証拠によってどのような事実が明らかになったとしても、評議においては絶対に死刑を選択しないと決めていますかという質問をして、いいえと回答した場合はもう質問しないけれども、はいと回答した場合には、回答に応じてさらに質問を行って、不公平な裁判をするおそれの有無を判断する。

 これは、どうしてこんな質問をするんですか。

小川最高裁判所長官代理者 今御指摘の点ですけれども、これは規則制定諮問委員会で検討したところでございますけれども、先ほども申し上げましたように、裁判員法十八条に言う不公平な裁判をするおそれを確認するための質問として、死刑の適用が問題となる事件について、当事者の求めがある場合に、法律に定められた刑を前提に量刑を判断できるかを確認するために、今委員の御指摘のような質問を順次していくというようなことでございます。

 これは、どのような質問を行うかというのは規則において定める事項ではございませんけれども、質問手続に関する規定を整備するための前提として、選任手続において行う質問内容についても、法曹三者においてイメージを共有化した上で規定を整備することが有益ではないかと考えられてこういったことを検討した、こういうことでございます。

保坂(展)委員 法務大臣に感想を聞きたいんですよ。

 裁判員というのはくじで選ばれるんですね、衆議院選挙の有権者名簿で。しかし、その中で、警察の捜査はちょっと私は信用できないですねと言った場合には、検察側からこの人、忌避というのは出るかもしれないですね。あるいは、死刑は私はちょっと踏み込めません、世界全体は死刑廃止じゃないでしょうかと言う人についても、これはちょっといかぬかなということで忌避される。

 前回は、私は、裁判員に選ばれた側の思想、信条の自由として、その辞退理由について、辞退の理由になるかどうか伺いましたけれども、忌避の対象になってくるとなると、これで本当に公平な国民全体の意見をいわば満遍なく酌み上げた制度になるのかどうかというのは、今の話、この質問票で私は大変不安になってきたんですね。この点、どうですか。

長勢国務大臣 裁判員制度を創設するとき、いろいろな御意見が当時あったことを思い出すんですけれども、結局、片一方は、こんなのが入るとみんな無罪になってしまうんじゃないか、片一方は、みんな重罪になるんじゃないかという議論があったことを思い出します。

 何か今の議論もそういうことに関連しているのかなと不安を感じますが、法曹三者において適切に、こういう余り重箱の隅をつつくような法律論ではなくて、一般の国民の常識が反映されるような裁判員制度にしてもらいたいと思います。

保坂(展)委員 もう終わりますけれども、重箱の隅をつつくような議論を私はしているつもりはありませんので、裁判員制度の中に被害者の方が参加されるトータルなパッケージとしての議論をしなければいけないということを申し上げているわけで、これをしっかり大臣踏まえて、本当にこの忌避ということも、今わかってきたことですけれども、しっかりトータルに議論したいと思います。

 終わります。

七条委員長 次回は、来る二十九日火曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時散会


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