衆議院

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第22号 平成19年5月30日(水曜日)

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平成十九年五月三十日(水曜日)

    午前九時四十九分開議

 出席委員

   委員長 七条  明君

   理事 上川 陽子君 理事 倉田 雅年君

   理事 棚橋 泰文君 理事 早川 忠孝君

   理事 高山 智司君 理事 平岡 秀夫君

   理事 大口 善徳君

      赤池 誠章君    稲田 朋美君

      今村 雅弘君    小川 友一君

      近江屋信広君    奥野 信亮君

      笹川  堯君    清水鴻一郎君

      柴山 昌彦君    杉浦 正健君

      三ッ林隆志君    武藤 容治君

      森山 眞弓君    矢野 隆司君

      保岡 興治君    柳本 卓治君

      山口 俊一君    石関 貴史君

      大串 博志君    中井  洽君

      松木 謙公君    横山 北斗君

      神崎 武法君    保坂 展人君

      滝   実君

    …………………………………

   法務大臣         長勢 甚遠君

   法務副大臣        水野 賢一君

   法務大臣政務官      奥野 信亮君

   最高裁判所事務総局経理局長            小池  裕君

   最高裁判所事務総局刑事局長            小川 正持君

   政府参考人

   (内閣府犯罪被害者等施策推進室長)        荒木 二郎君

   政府参考人

   (警察庁長官官房総括審議官)           巽  高英君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    縄田  修君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          菊池 洋一君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    寺田 逸郎君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    小津 博司君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    梶木  壽君

   法務委員会専門員     小菅 修一君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月三十日

 辞任         補欠選任

  稲田 朋美君     小川 友一君

  河村たかし君     松木 謙公君

同日

 辞任         補欠選任

  小川 友一君     稲田 朋美君

  松木 謙公君     河村たかし君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案(内閣提出第七七号)


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     ――――◇―――――

七条委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣府犯罪被害者等施策推進室長荒木二郎君、法務省刑事局長小津博司君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

七条委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

七条委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局小川刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

七条委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

七条委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。神崎武法君。

神崎委員 私は、今回の犯罪被害者が刑事手続に参加する制度などにつきましては、大変画期的なものだというふうに評価をいたしております。犯罪被害者、御遺族、御家族の皆様にとりましても、要望の大きな前進と評価されていることと思います。あとは、今内閣府で検討をいただいております犯罪被害者に対する補償問題、これに全力で政府としても取り組んでいただきたいと思います。

 それでは、質問に入ります。

 今回の犯罪被害者の刑事手続への参加でありますけれども、ヨーロッパ諸国ではおおむね採用されているようでありますけれども、アメリカでは採用されていないと承知しております。日本の訴訟構造もアメリカと同じように当事者訴訟構造になっているということでありますけれども、なぜアメリカで採用されていないのかという点をお伺いしたいと思います。

 それと、ヨーロッパでは、ドイツ、フランスの例を参考にされたというふうに伺っております。ドイツやフランスでは、犯罪被害者は被告人とほぼ同じ権利を持つことになっておりますけれども、これに比べますと、我が国の今回の被害者参加制度は、被害者の権利は弱いように思われます。いわゆる日本独自の制度となっておりますけれども、これはどういうことでこういう日本独自の制度にしたのか、その点についてあわせてお伺いをいたしたいと思います。

小津政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、アメリカのことでございますが、似たような事情がイギリスにもございますので、あわせて言及させていただきます。

 それぞれの国の刑事手続制度は、それぞれの国の歴史、法文化、社会情勢等々に基づいて形成されておりますので、ある制度があるとかないという理由を一義的に申し上げるのはもちろん困難でございますが、その前提で申し上げさせていただきますと、御指摘のとおり、現在、アメリカ、イギリスにおきましても、被害者が刑事裁判手続全般に参加する制度が一般的に導入されているわけではないものと承知しております。

 ただ、アメリカにおきましても、量刑手続においては被害者の意見陳述が認められておりまして、また、イギリスにおきましても、被害者がそのこうむった被害の影響を書面により陳述することができるなどとされておりますほか、イギリスの一部の裁判所におきましては、一定の重大事件の被害者の遺族が、有罪判決後、量刑判断前に意見を陳述することができる制度が試験的に運用されていると承知しております。

 また、イギリス、アメリカにおきましては、歴史的に私人訴追の制度がございましたり、州によっては、被害者の弁護人が検察官とは別に公判活動を行うことを認めているということもあるようでございます。

 このように、アメリカ、イギリスにおきましても、刑事被害者が刑事手続に参加する制度はおよそ取り得ないものではないというふうに認識しているわけでございます。

 次に、ドイツやフランスで認められていることにつきまして、本法案で入っていない理由でございます。

 まず、証拠調べ請求権でございますけれども、仮に被害者の方々にこれを認めるとなりますと、検察官と被害者等との間で主張、立証の抵触が生じることによりまして、真実の発見が困難となるということがあると思われます。また、検察官や弁護人が取り調べに必要があるとは考えていない証人尋問等の取り調べを行いますと、証人等への負担でございますとか、迅速な裁判の要請との関係でも問題になるのではないかと考えたところでございます。

 また、上訴権につきましては、被告人のほか、検察官にも上訴権が認められておりますのは、法と証拠に基づいて、事実認定、法の適用、刑の量定等に関する原判決の誤りを是正するためでありまして、その行使は客観的かつ公正に、公平に行われるべきものであると考えられますので、これを認めるのは相当ではないのではないかと考えて、本法案のような内容にした次第でございます。

神崎委員 この制度につきましては、日弁連、日本弁護士連合会は反対をいたしております。被害者等の検察官に対する質問、意見表明制度の導入、犯罪被害者等に対する公費による弁護士支援制度の導入をした上で、この被害者参加について改めて検討すべきだ、こういう見解でございますが、この日弁連の考え方をどういうふうに評価されておられますか、大臣にお伺いいたします。

長勢国務大臣 まず、御指摘の検察官に対する質問、意見表明の制度は、犯罪被害者が刑事裁判に参加をする制度を導入することを否定した上で、そのかわりに、検察官に対する質問や意見の表明に限って認められるべきであるという意見というふうに承知をいたしております。

 しかしながら、犯罪被害者等基本法においては、「刑事に関する手続への参加の機会を拡充するための制度の整備等必要な施策を講ずる」ということを定めておりますので、日弁連の御意見のように、被害者による手続への直接的な関与を否定するということが基本法の定める参加の機会の拡充として十分であるかというと大変疑問があると思いますし、また、検察官が被害者の求める尋問等を必ず行わなければならないものとするということになりますと、検察官が公益の代表者として訴訟活動を行うという考え方との関係も慎重に検討しなきゃならぬ、こういうふうに考えております。

 今回、被害者参加の制度により、被害者の方々が刑事裁判に直接関与することができるようになることは、多くの被害者の方々が求めてこられたことでありますし、その名誉の回復や被害からの立ち直りにも資するものであると考えております。また、本制度が導入されれば、刑事裁判が被害者の方々の心情や意見をも十分に踏まえた上でなされることがより明確となり、刑事司法に対する被害者を初めとする国民の信頼を一層確保するとともに、適正な科刑の実現にも資することになるというふうに考えておるわけであります。

 次に、御指摘の公費による弁護士支援制度についてでございますが、被害者の方々に対して弁護士による必要な法的支援が行われるということは大変重要なことであるというふうに考えております。しかしながら、本制度においては、検察官が被害者とコミュニケーションを図りつつ被害者に適切な助言等を行うことにより、被害者が必ずしも弁護士を依頼しなくても一定の訴訟活動を行うことができる制度といたしておりますので、弁護士による支援が不可欠というわけではないと思います。

 もっとも、この公費による弁護士支援制度の導入については、被害者の方々の要望も強いというふうに伺っておるわけでありまして、現在、基本計画に基づいて内閣府に設けられた経済的支援に関する検討会において鋭意検討されておりますので、法務省としても、その検討の状況を見ながら、適切に対処してまいりたいというふうに考えております。

神崎委員 被害者が参加する制度につきましてはいろいろな反対意見もあるところでございますが、昨日の参考人質疑を通しまして、十分説得力ある参考人の方の意見陳述もあったと思うわけでございますけれども、重ねて、法務当局としての見解を伺っておきたいと思います。

 まず一つは、被害者が参加すると、現行刑訴法の本質的構造である検察官と被告人、弁護人との二当事者の構造を根底から変容させてしまうんじゃないか、こういう批判についてはいかがでしょうか。

小津政府参考人 被害者参加の制度におきましては、被害者参加人等に対しては、公判請求権はもとより、訴因設定権、証拠調べ請求権、上訴権等が認められるわけではなく、また証人尋問、被告人質問等の具体的な訴訟活動につきましても、一定の要件のもとで裁判所が相当と認めて許可した場合に限ってこれを行うことができることとしております。

 このように本制度は、検察官が訴因を設定して事実に関する主張、立証を行う一方で、被告人、弁護人がこれに対する防御を行い、これらを踏まえて公正中立な裁判所が判断を行うという現在の刑事訴訟法の基本的な構造を維持しつつ、その範囲内で被害者の方々が刑事裁判に参加することを認めるものでございまして、現行の刑事訴訟の基本的な構造を変えるものではないと認識しております。

    〔委員長退席、早川委員長代理着席〕

神崎委員 次に、被害者が参加すると、被告人が自由に発言することが困難になり、防御権を十分行使できない事態となり、結果として真実の発見を困難にする、こういう批判についていかがでしょうか。

小津政府参考人 被害者参加の制度のもとにおきましても、被告人は刑事手続において弁護人の援助を受けることが可能でございまして、実際の刑事裁判の場においては、主として弁護人が被告人にかわって防御活動を行っているのが実態でございます。また、仮に被害者参加人等からの直接の質問に対して供述することがためらわれることがあったといたしましても、被告人はいつでも任意に供述をすることができるのでございまして、弁護人による質問や最終陳述の際など、みずからの主張を述べる機会も十分に与えられております。

 したがいまして、本制度のもとで被害者の方々が刑事裁判に参加することを認めたとしても、被告人が自由に発言できず、その結果、真実の発見が困難になることはないと考えております。

    〔早川委員長代理退席、委員長着席〕

神崎委員 次に、被害者が参加すると被告人の防御する対象が拡大し、検察官と異なる主張、立証も行われるから被告人の防御に困難を来すおそれがある、この批判についてはいかがでしょうか。

小津政府参考人 被害者参加人等につきまして、訴因設定権や証拠調べ請求権がないということ、また、証人尋問や被告人質問等の具体的な訴訟活動についても訴因の枠の中でのみ認められるということになっているわけでございますけれども、そういう基本的な制度の中身によりましても、被告人の防御する対象が拡大することはないと考えております。

 この点、訴因の範囲内におきましても、被害者参加人等が検察官から独立して訴訟活動を行うと、被告人の防御の対象が拡大したり、複雑化したりするのではないかという御指摘があるわけでございますけれども、本制度のもとにおきましては、まず検察官と被害者参加人等とが密接なコミュニケーションを保ちつつ訴訟活動が行われるように、被害者参加人等は、検察官に、その刑訴の権限行使に関して意見を述べて説明を受けることができるということになっているわけでございます。

 それから、被害者参加人等による被告人質問等の申し出は、あらかじめその内容を明らかにして、検察官を経由してしなければいけない。また、仮に被害者参加人等が行う質問等が違法、不当な場合には、裁判長がこれを制限することもできるわけでございまして、今申し上げましたような御心配もないのではないかと考えております。

神崎委員 次に、少年事件での問題でありますけれども、被害者が参加をすると、少年に対して極めて強い萎縮効果が生じてしまうのではないか、こういう批判についてはどうでしょうか。

小津政府参考人 もちろん、前提といたしまして、少年が刑事裁判所で裁かれるというのは、家庭裁判所が少年の健全育成の観点からその処遇を判断して、保護処分ではなくて刑事処分を行うべきである、そしてその刑事処分では、若干の例外が少年法等にございますけれども、基本的には刑事訴訟法が適用されるということであるわけでございます。

 そもそも、少年であれ成人であれ、今度の制度におきまして、もちろん、黙秘権が認められていることでございますとか、弁護人の防御活動が行われるということでございますとか、被害者参加人等の直接の質問に対しましては、また自分の主張ができる機会があるということもありますし、それから、被害者参加人等の質問の内容等につきましては、検察官等の間で十分な打ち合わせをしたり、また、不当なことがあったら裁判長がこれを制限するということでございます。

 もちろん、少年の刑事事件でございますので、少年の健全な育成という観点も非常に重要でございますので、先ほど申し上げました、この制度の中における裁判所や検察官の対応につきましても、その点も十分に念頭に置いてなされることが重要であると考えております。

神崎委員 次に、被害者が参加すると、被害者の意見や質問が過度に重視され、証拠に基づく事実認定や公平な量刑に強い影響を与えるとの批判がありますが、どうでしょうか。

小津政府参考人 現行法におきましても、被害者の方々は証人として出られて、あるいは心情を中心とする意見陳述を行う場合に法廷で直接発言をしておられるわけでございますが、これによりまして、証拠に基づく事実認定や公平な量刑が妨げられているという事態は生じていないものと認識しております。

 また、本制度におきましては、被害者参加人等による事実または法律の適用についての意見の陳述や、被害者参加人等のする証人や被告人に対する尋問や質問自体、これはいずれも証拠とはならないものでございますけれども、このような証拠とはならない意見の陳述や質問と証拠とを峻別して事実の認定、量刑を行うべきことにつきましては、これは検察官や弁護人が行う意見の陳述等々と同様でございます。

 したがいまして、被害者参加人について新しい制度ができましても、証拠に基づく事実認定や公平な量刑が損なわれるようなことはない、このように考えております。

神崎委員 二年後に裁判員制度が導入されます。この制度が導入されまして、被害者が参加をいたしますと、被害者の意見や質問が裁判員の情緒に強く働いて、裁判員制度が円滑に機能しなくなるのではないか、こういう批判がありますが、この点についてはいかがでしょうか。

小津政府参考人 被害者参加人の法廷での活動が不適切なものにならないようにするための仕組みは先ほど来御説明を申し上げているところでございますし、また、主張と証拠というものをはっきり区別するということは現行法でも重要なことでございますけれども、引き続き重要であるわけでございます。

 裁判員制度は、広く国民の感覚を裁判の内容に反映することによりまして、司法に対する国民の理解や支持を深めるために導入されるものでありまして、裁判員の感覚を刑事裁判に適切に反映させることが重要だということでございます。

 先ほども申し上げました、意見と証拠との違い等々につきましては、この裁判員制度を実際に運営するに当たりまして、評議等の場で裁判官が裁判員に十分に説明をして理解していただく、このことは、被害者参加人等の活動につきましても、弁護人、検察官等の活動に関することについても同様であろうと考えているところでございます。

神崎委員 次に、被害者が参加すると量刑が今より重くなってしまうんじゃないか、こういう批判がありますが、その点はいかがでしょうか。

小津政府参考人 新しい制度を導入しました結果、個々の事案における量刑の判断がどうなるかということを一概にお答えすることは困難でございますけれども、被害者の方々が刑事裁判に参加することが認められれば、刑事裁判が被害者の方々の心情や意見をも十分に踏まえた上でなされることがより明確になりまして、国民の方の信頼を確保するとともに適正な科刑の実現にも資すると考えております。

 現在でも被害者の方々の心情を述べる制度があるわけでございますが、これによって被告人に対する量刑が不当に重くなっているということはないものと承知しております。

    〔委員長退席、倉田委員長代理着席〕

神崎委員 被害者参加制度を導入するにしても、導入時期についてはこうすべきだといういろいろな意見があります。

 まず、裁判員制度が定着をしてから改めてこの被害者参加制度を導入すべきだという意見もありますし、裁判員制度導入の前にこの制度を導入するのであれば、一年ぐらい時間を置いて、十分この被害者参加制度が機能した上で裁判員制度を導入すべきではないか、こういう両面からの意見もあります。

 今回は、裁判員制度導入の半年前にこの被害者参加制度を導入することとしたわけでありますけれども、そのことによって混乱は生じないのかどうか、その点、法務当局はどういうふうに見ておられるのか、伺いたいと思います。

小津政府参考人 被害者参加制度につきましては、基本法や基本計画の立案、策定の段階から、裁判員制度が導入されることも考慮に入れつつ議論が積み重ねられてきたものと承知しておりますし、法制審議会におきましても、その点も十分に意識して議論を行ってまいりました。そのような検討を踏まえたものでございますので、その早期の実現に向けてぜひとも御理解を賜りたいと思っております。

 もちろん、本法律案が成立いたしました場合に万が一にも裁判員制度の円滑な運用が阻害されることのないように、私どもといたしましても十分な準備を行ってまいりたいと考えているところでございます。

神崎委員 ぜひ、これは十分な準備を行って実施をしていただきたいと思います。

 それから、被害者参加制度につきましては、被害者側からも一部反対の意見が出ております。被害者の負担が大き過ぎる、こういう意見もあります。また、刑事裁判を担当した裁判官が損害賠償命令の裁判をするとなると、被告人から被害者の過失や落ち度などを刑事の審理中追及され、二次被害のおそれがある、こういう意見。また、裁判終了後に被告人から報復される危険性がある、こういった御意見、心配の声もあるわけでありますけれども、この点についてどう反論をされますか。

    〔倉田委員長代理退席、委員長着席〕

小津政府参考人 本制度におきまして、御指摘のような二次的な被害等が生じることがないようにということで、例えば被害者の方々に適当な者を付き添わせることができるということでございますとか、被告人等から被害者が見えないようにするための措置を講ずることもできるようにしているわけでございます。

 また、損害賠償命令の制度につきましては、刑事裁判中は民事に関する審理を一切行わず、刑事判決の後に民事に関する審理を行うこととして、刑事と民事の審理を分断しております上に、刑事判決の拘束力を民事について及ぼすという制度ではございませんで、民事上の争点につきましてはまた民事の方で十分に主張し立証していくことができるとしておりますので、このような民事に関する争いで被害者の方に問題が生じるということもないのではないかと思います。

 もちろん、刑事裁判に参加した被害者の方々に対して、被告人等が逆恨みをして報復するというふうなことが許されないのは当然でございまして、本制度導入後も、これまでと同様に、関係当局において被害者の方々が万が一にも再度危害を加えられることがないよう適切な対応がなされることになると考えております。

神崎委員 被害者等の意見陳述制度が導入をされましたけれども、従来の被害者の意見の陳述とはどう違うのか、それから、従来の制度と新しい制度が併存することとなったのはどういうことなのか、この点についてお伺いをいたします。

小津政府参考人 現行法において被害者の方々に認められている意見陳述は、あくまでも、例えば被告人に対する処罰感情など、被害に関する被害者の方の心情を中心とする意見に限って陳述することが認められているわけでございまして、事実や法律の適用についての意見を述べることは認められていないわけでございまして、本制度の意見陳述はまさにそのような意見を述べることを認めるものでございます。

 また、現行の意見陳述は、被害者の方々から申し出がなされた場合には原則としてこれを行うことが認められることとしておりますけれども、本制度の意見陳述は、一定の要件のもとで裁判所が許可した場合に限りこれを行うことができるものとされております。

 さらに、現行の意見陳述で述べられた意見は量刑の資料とすることができるわけでございますが、本制度の意見陳述において述べられた意見は証拠とならないということを法律上明記しているわけでございます。

 このように、両者の内容や効果が異なりますので、現行の意見陳述と新しい制度とを併存させることとしたわけでございます。

 また、被害者の方々からも、心情を中心とする現行の意見陳述に加えて、事実または法律の適用についての意見の陳述も認めてほしいという要望が示されておりまして、これを認めることは被害者の方々の名誉の回復や被害からの立ち直りにも資するというふうに考えておりまして、大きな意義があるのではないかと考えております。

神崎委員 被害者が重要参考人であるような事案の場合、被害者が尋問を行うということは刑事裁判に悪影響を及ぼすようなことがないのかどうか、その点についてお伺いします。

小津政府参考人 本制度におきまして、被害者参加人による証人尋問というのは、例えば示談や謝罪の状況など犯罪事実に関係しないいわゆる一般情状に関する事項についてのみこれを行うことが認められているわけでございまして、情状でも犯罪事実に関する事項、いわゆる犯情でございますけれども、これについては認められていないわけでございます。したがいまして、被害者参加人にこのような証人尋問を認めても、被害者参加人が同時に重要参考人である場合の信用性についての弊害を生じることはないのではないかと考えているところでございます。

 ただ、本制度におきましては、例えば被害者参加人が後に証人として出廷することが予定されている場合に、その証言の信用性を確保するためには、ほかの証人の尋問が実施される公判期日にその被害者の方が出席していることが相当ではないと裁判所が判断されるような場合には、被害者参加人の公判期日への出席を制限することもできる、このような制度にしているわけでございます。

神崎委員 今回、新たに損害賠償命令の制度が設けられたわけでありますけれども、この趣旨、これについて大臣にお伺いいたします。

長勢国務大臣 犯罪被害者等基本法においては、国の責務として、犯罪等による被害に係る損害賠償の請求の適切かつ円滑な実現を図るため、犯罪被害者等の行う損害賠償の請求について、その被害に係る刑事に関する手続との有機的な連携を図るための制度の拡充等必要な施策を講ずるということが求められております。

 また、多くの犯罪被害者等にとっては、現行の制度のもとで損害賠償の請求をすることについては、高い費用と多くの労力、時間を要する、また独力では証拠が十分に得られないなどのさまざまな困難がありますので、現在の損害賠償制度が犯罪被害者等のために十分に機能しているとは言いがたい、こういう指摘もあるわけであります。

 そこで、今回、犯罪被害者等による損害賠償請求に係る紛争を、刑事手続の成果を利用して、簡易かつ迅速に解決すべく、この制度を設けることとしたものでございます。

神崎委員 今回の一連の制度が円滑に遂行できますように、ぜひ万全の準備を行っていただきたいと思います。

 以上で、質問を終わります。

七条委員長 委員各位に申し上げます。

 本来ならば今から武藤君の質問に入るわけでありますけれども、現在、定足数に達しておりません。定足数確保のために御協力をいただきまして、やむを得ず欠席、中座をされる場合には、委員の差しかえの御協力をお願い申し上げます。

 定足数の確保のために御理解をいただいて、それまでの間、休憩をさせていただきます。

 暫時休憩します。

    午前十時二十一分休憩

     ――――◇―――――

    午前十時二十五分開議

七条委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。武藤容治君。

武藤委員 おはようございます。自由民主党の武藤容治でございます。

 昨年の臨時国会からこの法務委員会に所属させていただきまして、今通常国会、立て続けに参考人質疑あるいはこのような法案質疑に立たせていただく機会を賜りまして、まことに議員冥利に尽きるのではないかというふうに思っております。私は隣の委員会にずっと前から所属しておりましたけれども、あそこは一つの国会に一回質問させていただければいい方でございまして、我が党における時間の配分が非常に厳しい中で、法務委員会に所属させていただいて、大変感謝申し上げます。

 また、本法案は、今回、裁判に被害者が参加できる制度づくりをするということで、昨日の参考人の方々からもいろいろな意見がございましたけれども、国民の喫緊の課題でございまして、慎重に審議をして、一刻も早く法案成立に向けて我々議員としてはやはり頑張らなきゃいけないという思いでございます。

 残念ながら、きょう、たくさんの議員の方、特に野党の方を中心に御出席いただいていない状況の中で、私の質問も聞いていただけないのは甚だ残念でございますけれども、ぜひまた早急に加わっていただきながら審議を進めていただきたいという思いでございます。

 先ほど神崎先生から、細部にわたりまして、大先輩ならではの大変理にかなった御質問をいただきましたが、私はまだ新人でもございますし、また専門家でもございませんので、一般の国民の目で御質問できればというふうに思っております。

 昨日の質疑の中で、我が自民党の議員からも、いわゆる応報の必要性について御意見がありました。私も、応報の観点というのは一般の国民の中からするとやはり大変強いものがあるのではないかと思っておりますけれども、これは基本法からきている形の中で、果たして法案の中に応報の概念というものが含まれているのかどうか、まず、それについてお問い合わせをさせていただきたいと思います。

小津政府参考人 お答え申し上げます。

 刑罰の本質につきましてはさまざまな考え方があると思われますけれども、一般的には、応報の原理、すなわち、過去の犯罪行為に対する報いの論理に基づくものだと解する立場を前提としつつ、犯罪を予防することも目的とするというように解されているものと承知しているわけでございます。

 他方、この法律案でございますけれども、この法律案でこのような刑罰の本質それ自体を変更しようとしているものではございませんけれども、この法律案により創設する被害者参加の制度が、被害者参加人の方々による応報や復讐のために設けるのかと申しますと、そのような趣旨で設けるものではないわけでございます。

 すなわち、平成十六年十二月に成立した犯罪被害者等基本法は、その基本理念といたしまして、「すべて犯罪被害者等は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有する。」と規定しておりまして、被害者の方々が、その被害に係る刑事事件の裁判手続におきましても、その尊厳にふさわしい処遇を保障されることが重要であると考えられるわけでございます。

 そして、被害者の方々が、みずから被害を受けた事件の当事者として、その被害に係る刑事事件の裁判の推移や結果に重大な関心を持つことは当然のことでございまして、刑事裁判の推移や結果を見守るとともに、これに適切に関与したいという心情は十分に尊重されるべきであると考えられるわけでございます。また、被害者の方々が刑事裁判に適切に関与するということは、その名誉の回復や立ち直りにも資するものと考えられるわけでございます。

 このような趣旨から、被害者参加の制度を創設するということにしたものでございます。

武藤委員 ありがとうございます。

 いわゆる復讐、応報の概念というのが余り表に出過ぎますと、やはりいろいろな御批判も受けるんだろう。今局長おっしゃられたような、被害者の方の当然の権利だということが今回の法改正の中に盛り込まれた、今までにはない法改正になろうかと思っています。そういう意味では、当然の権利がやっと認められたという基本的認識を持ってこの法改正に当たっていらっしゃるんだというふうに思っております。

 ただ、先ほどの応報の概念からしても、きのうの参考人の方にもありましたけれども、やはり復讐だけじゃないよ、真実を知りたい、あるいは亡くなった家族の名誉を挽回したい、ほかにもいろいろなお願いがあるというふうに思っております。

 事件によって経済的困難に陥った方々の救済措置ですとか、さまざまなことを今内閣府の方で御検討いただいているのではないかというふうに思っておりますけれども、きのうの御質問にもあったお答えもこの場ではっきりしておいた方がいいと思いますので、今の検討状況をお聞かせいただければと思います。

荒木政府参考人 お答えを申し上げます。

 犯罪によりまして一家の大黒柱を失い、または障害を負われたために職を失うということがございます。さらに、加害者からの損害賠償というのは期待できないことが大変多いわけでございます。

 昨年の四月に経済的支援に関する検討会を立ち上げまして、来月中間取りまとめを行うこととしておりますけれども、その中において、犯罪被害者等に対する給付を抜本的に拡充しようということで、現在の犯罪被害者給付金の最高額、遺族に対しては一千五百万円余りでありますけれども、これを自賠責の支払い限度額であります三千万円にできるだけ近づけようではないか、それに伴って最低額についても引き上げるということで検討がなされております。また、特に若い人で収入の少ない人が重度障害を負ったような場合も、一般的には収入が少ないので今の制度では給付額が減っちゃうんですけれども、そういうことがないように配慮すべきである、さらには、御遺族の方で子供さんがたくさんおられるような場合には、それにも配慮した給付額となるような方向で議論が進められております。

 また、犯罪そのものによる精神的被害やその後の悩みやストレスによる精神的障害に対しても特段の配慮をしようということになっておりまして、民間の被害者団体におけるカウンセリングや相談の充実、さらには精神科の医療においてより適切な医療が受けられるような措置を講ずるべきであるということで検討を進めているところでございます。

武藤委員 本当にそういう形でさまざまなフォロー体制がとれる、これをもってやはり実行できるような形になろうかというふうに思っております。ぜひ前向きな御検討をいただいて、実行できるように措置の方をよろしくお願いしたいと思います。

 次の質問に移らせていただきます。

 先ほど神崎先生からもお話がございましたが、昨日午後から東京地裁の法廷を見学させていただきまして、二度と座れないであろう今度の裁判員制度の新しい法廷の裁判員の席へ座らせていただきました。今ある、現状の被害者の意見陳述もお聞きいたしました。

 裁判員制度が導入されたとき、その意見陳述というものに対して、私は今まで何回か地元で裁判の傍聴席に座っているんですけれども、裁判員は正対して見られる中で意見陳述を伺うということになると、先ほど神崎先生も御心配されておりましたけれども、やはりその意見陳述から受ける心情の変化というのは、私はそれなりに相当大きな影響があろうかと思っています。

 先ほど小津局長から、意見陳述の内容も、二つ併存の中でのそれぞれの意味もお聞きしましたけれども、やはり裁判員の受ける印象というのは、あの席へ座ると実際よくわかったものですから、ひとつそのことだけは局長に、局長は残念ながらきのうあそこには座られなかったのですけれども、やはりあそこへ座ると変わるということで、ちょっと御意見をいただきたいなと思います。

    〔委員長退席、倉田委員長代理着席〕

小津政府参考人 裁判員制度が始まりまして、裁判員の席に座られる方は、その席から検察官、被告人、弁護人、そしてそれぞれの方から申請がありました証人といわば直接向き合うことになるわけでございます。また、被害者参加制度によりまして被害者等が参加されました場合には、その方もそのバーの中にいるわけでございます。

 そのそれぞれが述べる意見あるいは事実についての話をきちんと評価して適正な裁判をするということが重要でございますので、これにつきましては、被害者参加人の活動も含めて、評議等の場で裁判官がわかりやすく裁判員の方々に説明をして、適正な結論を期するということが重要であろうと考えております。

武藤委員 局長のおっしゃられるのはよくわかります。ただ、まだ実施まで二年ありますので、先ほど神崎先生おっしゃられたような量刑の問題、それから少年事件、場合によっては知的障害の疑いのある方々、そういういろいろなケースがおありになるでしょうから、そういう中でしっかりとした判断ができるように、裁判員制度実行に当たって、これからも加味していただければ、よく御検討していただければという思いでございますので、ぜひよろしくお願いいたします。

 それから、きょうは本当に時間が少ないものであっという間になくなってしまうわけですけれども、たまには地元のこともお話ししておかなきゃいけないなと思いますので。

 岐阜地裁へ時たま顔を出して裁判傍聴をさせていただいておりますけれども、裁判員制度への庁舎の改修、それから、昨日見せていただいたビデオリンク、あれは大変有効な制度体系というか施設だというふうに思っておりますが、そういう形で、やはりこれは全国同じ制度の中で進められるべきものでございますので、バランスのいい体制を、予算づけの問題は非常に厳しい中ですけれども、ぜひ整えていただきたい。

 私のところの岐阜地裁の状況について、状況をお伺いすることを事前通告してありますので、お伺いいたします。

小川最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 まず、ビデオリンクの方でございますが、岐阜地裁本庁には、平成十三年六月にビデオリンクシステム機器一式が整備されてございます。

 また、岐阜地裁では、平成十八年度に二つの法廷の改修工事を完了しておりまして、裁判員法廷として整備されております。

武藤委員 どうもありがとうございます。

 ビデオリンクが一つで、裁判員が二つでございますね。ありがとうございます。またよろしくお願いいたします。

 それでは、最後になろうかと思いますけれども、昨日の参考人の中で私が一番印象に残ったのは、岡村さんという方の意見でございました。刑事司法は公の秩序維持のためにあるという最高裁判例を挙げておられましたけれども、やはり被害者の気持ちは加害者を罰してほしいからという概念だというお話がございました。大変心に感銘を受けたお言葉でございます。また、岡村さんがおっしゃられていましたけれども、すべての人が潜在的被害者の可能性があるんだ、それを踏まえて国会の中で審議を進めていただきたいというお話がございました。大変そのとおりだというふうに思っております。

 私どもは、やはりそういう社会にならないように、これを先に進めていくのが国会、政治家の役目だというふうに思っておりますけれども、罪を犯した者を適切に罰し、また、矯正する中で、従前、陰にあった被害者の方々の権利を、そこに日を照らすということが今回の法律では大変大事なことだというふうに思っております。

 一刻も早くこの法案を成立させて、日本が安全、安心に暮らせる、安倍総理がおっしゃられるような美しい国、まさにその一つになろうかというふうに思っておりますので、皆さん方の御賛同を得ながら、慎重審議かつ迅速な議決を得たいと思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。

 大臣、いろいろと御苦労が多いようでございますけれども、ぜひ、その辺についての御協力、御指導をお願い申し上げまして、時間が参りましたので終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

倉田委員長代理 次に、矢野隆司君。

矢野委員 自由民主党の矢野隆司でございます。

 犯罪被害者の皆さんが刑事裁判に参画するための制度を盛り込んだ今回の刑事訴訟法の改正審議でございますが、昨日、参考人の皆様がお見えになって種々意見を陳述されました。犯罪被害に遭われた遺族でもある参考人のお話には悲痛な叫びがございまして、私も大変胸を打たれた次第でございます。また、その後、夕方からは東京地裁の方へ、先ほどの武藤容治委員初め同僚の皆さんと一緒に見学に参りましたけれども、そこで初めて私も実際に、いわゆるビデオリンクというものの専用法廷を視察することができた次第です。

 そこで、まず、今回のこの改正に当たりまして、法整備の中で懸念をされている部分、わけても、法廷を復讐の場にしないという観点から、日弁連初めいろいろと意見が出ておるようですけれども、これまでも犯罪被害者の方というのは法廷で心情や意見を述べることができたわけですが、今回の改正では、被告人や証人に被害者の方も直接質問等ができるということになっております。

 そこで、例えば、犯罪被害者の方が、ようやく被告人と直接対峙できるという中で、感情が高ぶったりすることもあると思うんですけれども、中には確信犯的に、言葉は悪いですが、暴走して意見を述べたり、予想外の発言をされたりすることも考えられなくはないと思うんですけれども、その場合の手当てといいますか、そういったときは、どういうふうにして法廷を収拾していくのか、そしてまた、言われた側、いわゆる被告人側の反論権といいますか、そういったものはどういうふうにして担保されていくのかということをまず伺いたいと思います。

小津政府参考人 まず、委員御指摘のように、現行の刑事訴訟法におきましても意見陳述の制度がございまして、その運用の実情等から見ましても、いたずらに感情的な言動をするということは考えがたいとは思われますし、また、被害者参加人による被告人質問は、訴因の範囲内で意見陳述のために必要な場合にのみ認められるわけでございまして、制度の趣旨からして、被告人を面罵するというようなことなどのために認められるものではもちろんないわけでございます。

 さらに、被害者参加人による被告人質問等の申し出につきましては、その内容を明らかにした上で、検察官を経由してしなければならないこととしておりますなど、検察官と参加人のコミュニケーションを確保することができる仕組みとなっておりまして、あらかじめ検察官等において適切に対処することが可能でございます。

 しかしながら、それでも、委員御指摘のように、万が一、不適当な、あるいは違法な質問がなされた場合には、これは、裁判長の適切な訴訟指揮権の行使により、その質問等が、発言が制限されるということになるわけでございまして、そのようなことはないと思いますが、さらに混乱が続くというふうなことになりますと、現行の刑事訴訟法で、裁判長の方で参加人の方を退廷させることもできるということにはなっておるわけでございます。

 それから、本法案では、被害者参加人の参加を認めることが相当ではないと認めるに至った場合には、裁判所が参加の許可の決定を取り消さなければならない、こういうふうな仕組みもあるわけでございます。

 また、被告人でございますけれども、もちろん、被害者参加人からの直接の質問に対して供述して反論することもできるわけでございますが、それがその場ではためらわれるという場合でございましても、弁護人による質問の際や最終陳述の際など、みずからの主張を述べる機会も十分に与えられている、こういう仕組みになっております。

矢野委員 ありがとうございます。

 次に、ちょっと細部にわたる質問で恐縮ですが、刑事事件の被害者等については、今回の法改正で、原則、公判記録の閲覧、謄写が認められることになるということでございますが、いわゆるこの謄写という言葉ですが、謄写の方法に制限はあるのかということをお尋ねしたいと思います。

 といいますのは、先ほどのビデオリンクの話じゃございませんが、双方向の装置で最新の機器を導入しているということで、私、先ほどもびっくりしたという言葉を使いましたけれども、一方で、今、我々の社会ではデジタルカメラというものが大変普及をしております。

 例えば、デジタルカメラを使えば、簡易にといいますか、非常にスピーディーに謄写ができると思いますし、写真等の資料についても鮮明に記録できるというふうに私は思うんですが、一方で、きのう東京地裁へ行きますと、一階のロビーのところに、録音機、写真機の持ち込みはできないというような掲示もあったわけでして、そのあたりをちょっと刑事局長から伺えればと思います。

小津政府参考人 公判記録の謄写の方法につきましては、関係法令上は、記録の破棄その他不法な行為を防ぐため必要があると認めるときは、裁判所書記官等を立ち会わせなければいけないなどの制限はございますけれども、謄写の方法自体については特段の制限はないわけでございます。

 したがいまして、お尋ねのデジタルカメラによる複写につきましては、デジタルカメラを使ったから記録が毀損されるということもなかなか考えにくいわけでございますし、一般的に、そのような申し出があった場合には許可されているものと承知しております。

 裁判所構内の掲示につきましては、ちょっと私、所管外でございますが、恐らく、このような場合とは関係のないことではないかと推測しております。

矢野委員 ありがとうございます。

 ビデオリンク、東京地裁は昨年五十回使用して、全国では昨年二百三十八回使用されているということで、大変有効にこの機能が活用されているのだな、こう思っております。

 ここで、二つだけ、私、意見といいますか、今回の法改正というのはあくまでも被害者の皆さんにとっての第一歩であって、これからやはり第二歩、第三歩があるのかな、あるいはなければならないと思うのでございます。

 その中で私が思うことは、かつて新聞記者をしておりましたときに、裁判所の司法担当記者をしていたことがございます。余り細かいことを言いますとどの事件かわかりますから言いませんが、身の代金目的誘拐事件がございまして、その公判の中で、被害者の女性が監禁中に強姦未遂に遭っておったという事実が検察側から暴露といいますか、悪情状として披露されたケースがありました。記者席の新聞記者は一同に、私も含めて大変驚いたと同時に、大変被害者にとってお気の毒なことがあったんだなということで、まさしく良識の範囲で、そのとき居合わせた記者の面々は、これは新聞に書かないでおこう、誘拐事件と関係ないということで報道をしなかった記憶がございます。

 ところが、昨今は、お笑いのタレントあるいは素人のいわゆる法廷マニアという人たちが存在をしておりまして、いろいろとおもしろおかしく本を書いておられます。きょうも一冊これを持ってきましたけれども、書名なんかは言いません、宣伝になりますから。ただ、この中に例えば、傍聴人が多ければ裁判官や弁護人も張り切るのが人情、ましてかわいい学生が来ているとなれば気合いも入るからだ、帯には、おもしろ過ぎ、こう書いてあります。

 こういった傍聴人、裁判は公開が原則でございますから制限することもできませんけれども、こういったアマチュアの、セミプロといいますか、そういった人たちが傍聴席に紛れ込んでいるということになりますと、犯罪被害者の方々に与える心理的なプレッシャーというものも少なからずあるんじゃないかと私は思っております。

 これは今ここでどうこうという問題ではないと思いますけれども、やはり書く側の方も、被害者の方の思いを十分に酌み取ってこういったものを書いていただきたいと思いますし、また裁判所の方も、いろいろな事態があるということを認識して裁判所の中の管理というものをしていただきたいな、こう私は思っております。

 それともう一点、これは最近あった事件のことを言うわけじゃありませんが、刑事被告人本人は、いわゆる犯人の方ですね、刑事被告人は罪状を受け入れていわゆる極刑も覚悟していながら、弁護人がその政治的信条から公判を利用し、いたずらに一方的な弁論を繰り返し展開する場合があります。犯罪被害者あるいはその御遺族の方々の心情を察するに余りあるものがあると私は思いますが、こういった場合、犯罪被害者の皆さんがその弁護人に対して意見を述べたり、あるいは質問ができるようになるような仕組みも、何も全面的に取り入れろという意味ではありませんけれども、これからはケース・バイ・ケースでそういうことがあってもいいのではないか、私はそういうふうに思いながら、きょうの質問に立たせていただいている次第でございます。

 最後の質問に入りたいと思います。

 先ほど神崎武法先生からも質問がございましたし、何度もこの国会で繰り返し質疑がなされておりますけれども、いわゆる二次被害、日弁連等では、私、きょうは大阪弁護士会の資料を持ってきましたけれども、要するに、裁判にかかわりたくない、もう二度と思い出したくもない、そういった人たち、犯罪被害者の皆さんも確かにいるわけでございまして、こういう二度とかかわりたくないというような皆さんに対して、この法案は法整備の中でどういった手当てというか対応をしているのか、最後に刑事局長に伺いたいと思います。

    〔倉田委員長代理退席、委員長着席〕

小津政府参考人 この法律案は、もちろん刑事裁判に参加するか否かは被害者の方々の自由な意思にゆだねておりまして、もう二度とかかわりたくないと考えている方々を含めて、被害者の方々に対して参加を義務づけたり強制したりしているわけではないわけでございます。

 もとより、さまざまな事情により参加できない被害者の方々の処罰感情等につきましても、適切に裁判に反映させる必要があると考えておりまして、そのような場合には、検察官がそのような事情等を含めまして被害者の方の心情を十分に把握して、これが適切に裁判に反映されるように主張、立証に努めることになるということでございます。

 また、被害者の方々の心情が記載された供述調書というのがございましたならば、それを証拠調べ請求をいたしますとか、現行法上の心情を中心とする意見陳述があります、もちろん、それなら出てもいいという方がおられれば結構なんでございますけれども、それも難しいけれども書面なら出せるということでございましたら、現行法上の意見陳述につきましては、意見を記載した書面を提出するという方法が認められておりますので、それを活用することもあろうかと思います。

 いずれにしましても、そのような被害者の方々の被害感情が過小に評価されることのないように適切に対応する必要があると思いますし、それは可能であると考えております。

矢野委員 ありがとうございます。

 とにかく、この法案は、犯罪被害者の皆さんにとって、ある意味、言葉が正しいかどうかわかりませんが、救済の第一歩ではないかと思っております。

 本日、この大切な審議に野党の委員の方々全員の姿が見えません。いかなる御用があるのかわかりませんが、犯罪被害者救済ということはどうでもいいのかと私は国民の一人として強い憤りを持って、質疑を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

七条委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

七条委員長 速記を起こしてください。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人の出席を求め、説明を聴取することとし、さきに決定いたしました者以外の人選につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

七条委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

七条委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局小池経理局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

七条委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

七条委員長 次に、平岡秀夫君。

平岡委員 民主党の平岡秀夫でございます。

 きょうの委員会、私は、大変重要な法案を審議するということの中で、こうした委員長職権で委員会が開会されるというような事態に至っているということについて、極めて遺憾であるというふうに思っております。いろいろな理由があるのかもしれませんけれども、まだこの衆議院で審議する時間的余裕は、参議院の審議を踏まえてみても十分にあるということでありますから、正常に審議される状況の中で、しっかりと慎重に審議していくべきだということを私は申し上げたいと思います。

 そういうことをまず申し上げまして、大変重要な法案ではありますけれども、法務行政に関する話で、極めて重要なことがありましたので、法案の前にちょっと質問をさせていただきたいというふうに思います。

 松岡農水相に対する捜査に関しまして、二十九日の読売新聞の夕刊に出たのでありますけれども、長勢大臣は、検察による松岡氏への直接の捜査があったという話は聞いていないと語ったというふうに報じられているんですけれども、この意味は、まず、どういうことなんでしょうか。捜査の話は何も聞いていないということなのか、それとも捜査はなかったという話を聞いているということなのか、どういう意味なのか、まず明確にしていただきたいと思います。

長勢国務大臣 その発言がどの時点であったのか、ちょっと私も正確にはわかりませんが、事件が起きたとき、その瞬間といいますかその時点では、捜査の内容は知っておりません。その後、検察庁において記者の質問にお答えがあったということは報告を受けましたので、その時点で、そういうことはないというふうに報告を聞いております。

平岡委員 私の質問にちゃんと答えてください。そういうことというのはどういうことなのか。直接の捜査があったという話は聞いていないということは、捜査の話は何も聞いていないということなのか、それとも捜査はなかったという話を聞いているのか、どっちですか。

長勢国務大臣 松岡先生本人ないしその御自宅等に対する捜査という話だったと思いますが、そのことは、当初はそういう捜査の状況を知りませんでしたから、あったかなかったかもわかりません。その後、検察庁の方で、記者の御質問に対して、今申しましたような、本人なり自宅の捜査はしていないというコメントがあったという報告は聞きました。

平岡委員 大臣は、記者に対して検察庁が説明したことを、間接的に検察庁はこういう説明をしたというふうに聞いただけということですか。どういうことですか。私は大臣が何を聞いたのかを聞いているんです。

長勢国務大臣 ちょっと時間的な経過のことを申し上げて、失礼しました。

 二十八日に事件があったので、その後、検察庁において、記者の質問にお答えになって、本人ないし御自宅等に対する捜査はしていないというコメントがあったという報告を私が受けましたので、その後においては、そういう、本人ないし自宅についての捜査を行っていたという話は聞いていないという御答弁を申し上げたということであります。

平岡委員 大臣とのやりとりはもうこれ以上やりませんけれども、大臣がそういうコメントを出すこと自体が非常に異例なことであって、捜査の状況がどうなっているのかというような話を大臣が言うこと自体が極めて異例なことだというふうに私は思います。そういう意味では、大臣はもう少しこの問題については慎重であるべきだということをまず申し上げて、これからは刑事局長にお聞かせいただきたいと思います。

 松岡農水大臣に対する捜査に関して、これは各紙に報道されているところでありますけれども、安倍総理が首相官邸で記者団に語ったところによりますと、御本人の名誉のために申し上げるが、緑資源機構に関しては捜査当局から松岡大臣や関係者の取り調べを行っていた事実もないし、行う予定もないという発言があったと聞いているというふうに語ったということが報道されています。

 安倍総理にはだれがこの話を伝えたんですか。

小津政府参考人 東京地検におきまして、報道関係者に対してそのような趣旨の説明をしたという報告を検察の方から私どもが受けましたので、そのことを大臣に御報告するとともに、官邸の方にお伝えしたということでございます。

平岡委員 安倍総理に伝えたのは、官邸に伝えたことによって安倍総理に伝わったという意味ですか。ちょっと今、時系列がよくわからなかったんですけれども。

小津政府参考人 私どもが今御指摘の情報をどのように伝達したかということについては今申し上げたとおりでございますので、私どもとしては、官邸の方にそのような情報をお伝えしたということを承知しております。

平岡委員 結局は、それは官邸から総理に伝わったということなのかもしれませんけれども。

 だから、検察当局は、官邸に伝えたまでが検察当局の仕事で、そこから先は官邸がやった話だからもう自分たちは知らない、そういうことですか。

小津政府参考人 検察当局といたしましては法務本省の方に伝えたということでございまして、後は、私どもと申しますのは、法務本省の方で官邸の方にお伝えしたということでございます。

平岡委員 総理がこういう事件に関してこういう発言をするというのも極めて異例だと私は思いますね。総理としての見識を疑うということもあるわけですけれども、もしそれが許されるとするならば、あえて私もここで聞きたいと思います。

 御本人の名誉のために申し上げるが、緑資源機構についてはこうだと言うのであれば、私は松岡農水相の御本人の名誉のために検察当局に言っていただきたい。

 例えば、大阪府のハンナンが制度の対象外の牛肉を購入して助成金をだまし取った事件がありましたけれども、これについては捜査は行ったんですか、あるいは行う予定があるんですか、どうですか。

小津政府参考人 今御指摘の個別の案件について法務当局の方からコメントすることは差し控えさせていただきます。

平岡委員 だから、基準としては、こういう委員会で聞かれたときは個別の話として答えられないけれども、官邸には個別の案件でも上げる、そして官邸でそれを対外的に公表したり発言したりすることは、それは官邸の責任であって、検察当局のあずかり知らぬところである、こういうことですか。

小津政府参考人 東京地検におきまして、先ほど来御指摘がありますようなコメントを報道機関にしたという事実を東京地検から私どもは聞き、その限度において官邸にお伝えしたということでございます。

平岡委員 これは、昨年の二月のにせメール事件のときにも、東京地検はわざわざ記者会見で、このメールの存在というのは認識していないとかというようなことを出して、非常にある意味では政治的な動きをしたわけでありますけれども、今回、検察当局がそういうことを発表するということについては、刑事局長として、これはどういうふうに認識していますか。そういうことをすべきである、すべきでないという点について言えば、どう認識していますか。逆に言うと、どういう基準でこういうことは公表する、公表しないということをしているんですか、まずそれを答えてください。

小津政府参考人 これは、それぞれの事案とそれぞれの状況に応じて検察当局が判断するわけでございますけれども、一般的に申し上げれば、捜査にかかわる情報を秘匿しておく必要性、これは一般的にはその必要があるわけでございますけれども、その情報ないしその情報の一部を、例えば報道機関が大変強い関心を持っていて、問い合わせを受けたときに、全くコメントしないという応答をしたときの弊害と、あるいはそれについてそういう事実はあったとかなかったとかという応答をした場合の弊害等を総合的に考慮して判断するということになるのであろうと考えておりまして、今回、東京地検において、報道機関の方が強い関心を持って問い合わせをされ、そのことについて一切コメントをしないということは適当ではないと判断したものと思われますので、そのような判断がされたものであるというように理解をしております。

平岡委員 これは非常に不透明ですよね。今のは、報道機関から強い問い合わせがあれば答えるけれども、例えば国会で審議しているときに、国会から強い疑念が提示されたときは答えない、そういう基準というのはやはりおかしいんじゃないですか。

 私は、今回の件についても、にせメール事件の件についても、検察当局は極めて政治的な動きをしているというふうに言わざるを得ないですよ。こんなことを許していたのでは、検察当局が本当に政治の手下になって、手先になって活動するということになってしまうんじゃないですか。刑事局長、どうですか。

小津政府参考人 私が御答弁申し上げております趣旨は、報道機関が聞いたから答える、それ以外のところが聞いたら答えないということでは全くございません。報道機関のお立場でその直後にそのような問い合わせがあったときに、検察当局としてはそのときの対応が迫られるわけでございまして、そのときに、一切コメントしないというコメントをした場合の影響あるいは捜査に対する支障等について判断をして対応するということでございます。

平岡委員 本当に場当たり的ですよね。そういう対応をしていること自体に対して、きょうは時間が限られていますからこれ以上言いませんけれども、刑事当局、検察当局に対しては、やはりしっかりと基準を示して、その基準に従ってやるべきであるということを重ねて申し入れさせていただきたいというふうに思います。

 それでは、法案の話に入ります。

 今回の法案を見てみますと、三百十六条の三十五というのがあって、検察官と犯罪被害者の方々との間の意思疎通をしっかりと図るべき規定というのが置かれているわけでありますけれども、三百十六条の三十六から三十八までの規定には、場面場面において、犯罪被害者の方々、今回は被害者参加人という位置づけになっているわけですけれども、被害者参加人の方々との間の具体的なことが定めてあるという条項になっています。

 この三百十六条の三十五と三百十六条の三十六から三十八までの規定というのは、一体どういう関係に立っている規定なのか。これは前回質問し残したところでありますので、もう既に答弁を用意されていると思いますから、大臣からお答えいただきたいと思います。

長勢国務大臣 三百十六条の三十六から三十八までの規定は、被害者参加人等が、一定の要件のもとで、裁判所の許可を得て、証人尋問、被告人質問及び事実または法律の適用に関する意見の陳述を行うことができるということを定めておるものでございます。こういう被害者参加人等の訴訟活動というのは、当然、検察官との間のコミュニケーションに基づき、検察官の訴訟活動の意味、内容を十分に理解した上で、相互に協力しながら行われることが重要であると考えられます。

 それで、そのような協力関係が確保されるように、三百十六条の三十五において、被害者参加人等は、検察官に対して意見を述べ、必要な説明を受けることができるということを規定することにしたところでございます。(平岡委員「三百十六条の三十五との関係は」と呼ぶ)

 そのために、今おっしゃいましたように、三百十六条の三十五において、検察官と被害者参加人等との関係が緊密に行われるように、被害者参加人等は、検察官に対して意見を述べ、必要な説明を受けることができるということを規定したということでございます。

平岡委員 大臣、私が聞いたのは、三百十六条の三十五と三百十六条の三十六から三十八までの規定はどういう関係に立っているのか、それを聞いているんですよ。何が書いてあるかを聞いているんじゃないんですから、ちゃんと聞いたことに答えてください。

長勢国務大臣 三十六から三十八までに証人尋問をするとかということを書いてあるわけで、それを円滑に行わせるためには、被害者参加人等と検察官が十分なコミュニケーションをとる必要がありますので、三十六から三十八までのことを円滑に行わせるために必要な制度として三十五を規定しておるというふうに御説明申し上げたつもりであります。

平岡委員 ちょっと条文の細かい文章はやめますけれども、三百十六条の三十五というのは必ずしもなくても、三百十六条の三十六から三十八までの規定というのは動くんですよね。そうだとすると、私はよくわからないんですけれども、三百十六条の三十五という規定は、何も被害者参加人の方々だけにこういう規定があればいいというのじゃなくて、むしろ犯罪被害者の方々全体について、検察官はしっかりと意見を聞いて、必要に応じてその意見に対して説明するということを義務づけるべきだというふうに思うんですよね。被害者参加人だけに限定したという趣旨が私にはよくわからない。

 そういう意味においては、この三百十六条の三十五の対象となる人を、被害者参加人だけではなくて犯罪被害者の方々にもっともっと拡大して考えるべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

長勢国務大臣 被害者の方々が検察官にいろいろな意見を申し上げることができるということは現行法でも認められているわけでありまして、これを今回、この被害者参加人についてだけ規定をしたということについて御懸念をおっしゃっているんだろうと思います。

 今回のものは、訴訟活動の中でどうしても検察官と被害者参加人は緊密な関係をとることがあるということに着目をして、そのことを明記する必要があるからこの規定を置いたものでございまして、被害者の方々が従来やっておられる検察官との意見陳述と若干性格が違うと私は思いますし、また、この規定を置くことによって、そのことに何ら支障を来すものでもないというふうに思っています。

平岡委員 ある意味では、三百十六条の三十五の規定があることによって、逆に、被害者参加人以外の人たちにとってみれば、いろいろなことについて検察官に対して意見を述べたり、あるいはそれに対して検察官がちゃんと理由を説明する、検察官の権限の行使あるいは不行使について理由を説明するというふうなことはしなくてもいいというふうに逆読みをされてしまうという可能性があると私は思いますね。そういう意味では、私は、この三百十六条の三十五は、被害者参加人に限定することなく、もっと犯罪被害者一般に拡大していくべきだということを申し上げたいというふうに思います。

 そこで、三百十六条の三十六の規定に入りますけれども、私自身も、時間があれば、どういうふうに証人尋問がこの規定によって運用されていくのかということのイメージをつかみたいというふうに思うので、また後日、時間をしっかりとって質問させていただきたいというふうに思いますけれども、きょうは時間が限られているので、概括的な質問としてさせていただきたいと思います。

 今回の三百十六条の三十六は、証人尋問に関する尋問事項について、被害者参加人が申し出ることができる対象が、情状に関する事項、情状に関する事項でも犯罪事実に関するものは除かれるということでありますけれども、情状に関する事項についての証人の供述の証明力を争うために必要な事項についてだけということになっているんですよね。私は、これだけでは何か非常に限られた範囲でしか被害者の方々が思っていることが伝えられないという問題点、それから、逆に、この事項については、その後の話としては、直接法廷で被害者の方々が発言をするというようなことで、今までの審議の中でもいろいろと懸念されていた事態が発生するのではないかという問題がまだ残されている。

 そういう意味からいったら、この証人尋問について、私は、尋問事項の範囲を限定することなく、犯罪被害者等の方々が検察官に意見を述べ、そして検察官から尋問してもらうという制度設計にすべきではないかというふうに思うんですけれども、この点について大臣はどのようにお考えでしょうか。

長勢国務大臣 犯罪被害者等基本法は、刑事に関する手続への参加の機会を拡充するための制度の整備を求めているものでございますが、これに対して、被害者が求める尋問事項について検察官がかわって尋問するという制度は、被害者の手続への直接的な関与を否定するものでありますので、基本法の求める参加の機会の拡充としては極めて不十分ではないかというふうに考えております。

 被害者が検察官に対し尋問を求めるだけであれば現行法上も可能でありますが、検察官がその尋問等を行わない場合は、被害者はそれ以上何もできないことになります。他方、被害者の求める尋問事項を検察官が必ず尋問しなければならないものとすると、検察官が公益の代表者として訴訟活動を行うという刑事訴訟の基本的な考え方を変更するおそれがあると考えられます。

 被害者の方々からは、例えば情状に関する証人の証言の内容が納得できない場合に、直接これを弾劾するためにみずから証人に尋問を行うことを認めてもらいたいとの要望が示されております。このような心情は十分尊重に値しますし、このような場合に、検察官がかわって尋問するよりも、直接尋問することを認めた方が被害者の方々の名誉の回復や被害からの立ち直りにより資することになる、基本法の趣旨にも合致するというふうに考えております。

 そこで、本法律案においては、一定の要件のもとに、裁判所の許可を得た場合には、参加人が証人を直接尋問することを認めるということとしたものでございます。

 そういう意味で、御指摘の意見よりも今回のような制度設計の方がよろしいというふうに思っております。

平岡委員 ちょっと質問の仕方を変えてみますと、法律に書かれている、情状に関する事項についての証人の供述の証明力を争うために必要な事項以外のことで証人に尋問してほしいということが被害者参加人の人にあった場合はどうしたらいいんですか。何もできないんですか。

長勢国務大臣 少し難しいところがありますので、細部は刑事局長から答弁させますが、そのようなことは、検察官を通じて、検察官がその内容をかわってやる、訴訟活動を行うということになると思います。

平岡委員 ちょっと、長勢大臣、自信がないのかもしれないけれども、ごにょごにょと口ごもって答弁されるのはやめてほしいんですね。私がちゃんと次の質問ができないんですよね。

 今の話は、申し出があるときはという形で、申し出をすること自体が限定されているんですよね、この規定は。そうだとすると、犯罪被害者の人たちはもっともっといろいろなところについて疑問を思う、これはもっとしてほしいというときには一体どうしたらいいのかというのはこの規定の中ではよくわからない、どうなっているんですかという話ですよね。

 刑事局長に答えてもらいたいと言うなら、大臣はよく理解されていないということは大変私としては残念なことでありますけれども、刑事局長に……(発言する者あり)いや、細部じゃないでしょう、こんなの。そういうことがあったときはどうするんですかというのはそんな細部の話じゃないですよ。基本的な話じゃないですか。そんなやじを飛ばして質問を遮るようなことはやめてほしい。

 刑事局長、とりあえず刑事局長で結構ですから、まず答えてください。

小津政府参考人 この法案で、被害者参加人が聞くことのできる内容、例えば証人についてでございますけれども、それについて検察官に申し出があれば問題はないわけでございますけれども、その範囲を超えたことについて被害者参加人の方から申し出があった場合についてのお尋ねと理解いたしました。

 その場合には、もちろん検察官としては、それはこの制度のもとではできないのでということを前提に、できる限り被害者の方のお話を酌んで、検察官が自分で行うようにするという道が一つあるわけでございます。

 もう一つは、被害者の方が、いやいや、自分はそういうことでは納得できない、本制度のもとでできるはずだというふうに言われましたならば、いわばそのお申し出を検察官限りで、外に出さないということではなくて、検察官としてはこれは法律上許されないものだと思うけれどもという意見を付して、裁判所の方の判断を仰ぐということになると考えております。

平岡委員 できる限り酌んでやるというようなことがこの三百十六条の三十六の規定では全く示されていないですよね。私は、そういう意味でも、ここのところはもっと明確に書かなければいけないというふうに思いますけれども、先ほど来から私が申し上げているように、尋問事項の範囲を限定しなければいけなくなってしまうという一つの弊害がなぜ起こったかを考えれば、やはり被害者の人たちに直接法廷で発言させるという仕組みをつくることで、こういう限定を付しているんじゃないかというふうに思います。

 先ほど大臣の答弁の中で、現在が極めて不十分だということをちょっと触れておられましたけれども、確かに現在が極めて不十分なことは、我々もそういう認識に立って、私が先ほど提案したような形での、犯罪被害者の方々の訴訟の関与のあり方として、幅広くもっととらえよう、ただ、できる行為についてはある程度状況を見ながら進めていかなければいけないということではないか、いろいろな方々がいろいろな心配をしておられるわけですから、そういうことを踏まえて制度をつくり上げていくべきじゃないか、こういうことから質問させていただいているわけであります。

 そういう意味で、先ほどの刑事局長の答弁には納得がいかないところがありますけれども、ちょっと時間的なものがあるので。

 次に、同じような問題が、被告人質問、三百十六条の三十七についてもあるわけであります。

 今回の仕組みでは、被害者参加人が被告人に対して質問できる事項も非常に限定されています。この法律の規定による意見の陳述をするために必要があると認めるものというような形で、云々と限定がありますけれども、そういうものに限定されているということだと、もっともっと被告人にこういうことを質問してほしいんだというようなことをちゃんと検察官に対して申し出ができることにならない、こういうこともやはり不十分だというふうに私は思います。

 被告人に対してする質問は、もっともっと幅広い範囲で、質問事項の範囲を限定することなく犯罪被害者の方々が検察官に意見を述べて、それを踏まえて検察官から質問してもらうという制度設計が必要ではないか。

 先ほどちょっと大臣に尋問のところで聞いたときに、大臣は非常に極端な制度の仕組みを、こっちだったらこうだ、こっちだったらこうだという両極端だったんですよ。我々はそんな両極端なことを言っているわけじゃないんですよね。例えば、意見を言って検察官が受け入れないときには、さらにその検察官から裁判官に対して、こういうことを被告人に言いたい、質問してほしい、尋問してほしいというふうに言っているけれども、我々としてはこれは取り上げられない、ついては裁判官、どうしたらいいでしょうかという形で裁判官の判断をその時点で求めるということだって、制度の仕組み方としてはいろいろあると思うんですよね。

 それを両極端なところで答弁をして、こうだったらこういう問題がある、こうだったらこういう問題があると。それは確かにそういう問題があるでしょう。そういう問題があるからこそ、そういう問題ができるだけないようにした形での中間的な、中間的というか、いろいろなケースを想定した補助的な仕組みというものも設けるということを前提として、基本的な制度としてそういう仕組みはとれないかということなんですね。

 重ねてちょっと質問だけ明確にさせていただくと、被告人質問について、質問事項の範囲の限定をすることなく犯罪被害者等の方々が検察官に意見を述べ、その意見を踏まえて検察官から質問してもらうという制度設計はとれないんでしょうか、どうでしょう。

長勢国務大臣 おっしゃる御趣旨が、被害者参加人が直接質問するのではなくて検察官から質問させるという仕組みにするという部分があるような気がしますし、また一方で、あらゆる問題、関心事項について、質問の範囲を限定しないようにしてほしいという御意見と、先生のお話は二つあったような気がいたします。

 一つは、質問事項の範囲は、検察官の方で必要な事項を限定しているわけでございますけれども、これ以外の事項については、参加人が検察官にその質問を行ってほしいという旨の意見を述べることは当然できるわけでありますし、そういうことを前提にいたしますと、被害者が直接質問しないで検察官から質問するという仕組みにすることについては、先ほど言ったようないろいろ考えなければならぬ問題点があるということで、今回このような仕組みを提案させていただいているところでございます。(発言する者あり)

平岡委員 与党の方から大臣に対して、局長に答えさせた方がいいんじゃないかというようなやじが飛んでいますけれども、そんなことは気にしないで堂々と答弁していただきたいというふうに思います。

 我々としては、こういう仕組みにのっとった修正案というものを提示させていただいて、また修正協議の中で、あるいは修正案を出させていただいた後の委員会審議の中で、もっと掘り下げた議論をさせていただきたいというふうに今思っております。

 大臣が御懸念されていたような極端なケースであるならば、確かにそういう御心配もあるかもしれませんけれども、決してそういう極端な仕組みではなくて、いろいろなケースに対応して、犯罪被害者の方々の考えていることが幅広く裁判の中に反映されていく、そういう仕組みとして考えていきたいというふうに思っておりますので、それは修正案を踏まえてまた議論させていただきたいというふうに思います。

 それから、次は三百十六条の三十八なんですけれども、弁論としての意見陳述制度のところであります。

 現行法で、二百九十二条の二において被害者の意見陳述制度というものが設けられているわけでありますけれども、これは現行の話としてまず教えていただきたいと思いますけれども、意見陳述が認められる犯罪被害者の方々についてはこの範囲がどういうふうに限定されているのか、それからもう一つは、意見陳述の内容についてはどういう限定があるのか、この点について、まず御答弁いただきたいと思います。

長勢国務大臣 専門的なお話が多いので、不足の点があったらおわびをいたしますが。

 御質問でございますが、現行の刑事訴訟法第二百九十二条の二に規定されている意見陳述の制度においては、陳述が認められる者の範囲は、被害者またはその法定代理人、被害者が死亡した場合においては、その配偶者、直系の親族または兄弟姉妹とされております。また、陳述することができる内容は、被害に関する心情その他の被告事件に関する意見ということにされておると承知をいたしております。

平岡委員 今法律を読み上げただけなので、実態としてのイメージが余りわいてこないような気もしますけれども。

 ちょっと質問の趣旨を変えますと、こういう被害者の意見陳述制度というものがあるにもかかわらず、今回、弁論としての意見陳述制度というものを新たにまた追加的に設けようということになったわけですよね。なぜこれを認めなければいけないのか、既に被害者の意見陳述制度というものがあるにもかかわらず、弁論としての意見陳述制度を認めなければいけない理由は一体何なのか、このことを大臣にお聞かせいただきたいと思います。

長勢国務大臣 現行法において、被害者の方々は被害に関する心情その他の被告事件に関する意見の陳述をするということが認められておるわけでございますが、この意見の陳述は、あくまで、例えば被告人に対する処罰感情など、被害に関する心情を中心とする意見に限って陳述することが認められているものであり、事実に関する意見等を述べることは認められておりません。

 しかしながら、被害者の方々の中には、このような意見に加えて、例えば証拠上認められる事実や法律を適用した結果としての犯罪の成否等についての意見も述べたいと望んでおられる方もおり、そのような心情は十分尊重されるべきであり、また、これを認めることは被害者の方々の名誉の回復や被害からの立ち直りにも資するものと考えられますので、本法律案では、心情を中心とする意見の陳述とは別に、事実または法律の適用についての意見の陳述を行うことを認めることとしたものでございます。

平岡委員 今大臣が、法律の適用の結果なんかについての意見も述べたい、こういうふうに言われたんですけれども、それは今の犯罪被害者の意見陳述制度、二百九十二条の二では言えないんですか。例えば、これだけのことをした人は極刑に処していただきたいと思いますとか、法律で定められた最高刑を処してほしいと思いますとかというようなことは言えないんですか、今の制度では。

長勢国務大臣 今御説明申し上げましたように、現行法上の意見陳述は、あくまで、例えば被告人に対する処罰感情など、被害に関する心情を中心とする意見に限って陳述することが認められているものであり、事実に関する意見を陳述することは認められていないというふうに承知をしております。

 また、被告人に対する処罰の希望を心情として述べることはできますけれども、法律を適用した結果としての犯罪の成否等についての意見を含め、法律の適用についての意見を陳述することは認められていないというふうに承知をしております。

平岡委員 いや、それは、弁論としての意見陳述制度にどういう意味を見出すか、どういう効果を与えるかによって確かに違ってくるかもしれません。

 そういう意味で、私は改めて聞きたいと思いますけれども、検察官によるいわゆる論告求刑のほかに、犯罪被害者、今回でいえば被害者参加人になった人について、弁論としての意見陳述の中で法律の適用についての意見を述べさせることができるというのは、なぜそういうのが必要なんですか、この点についてお答えいただきたいと思います。

長勢国務大臣 これは、今度の法律案において、心情を中心とする意見に加えて、事実または法律の適用についての意見の陳述を認めてほしい、そういう被害者の方々からの御要望を受けて、これを認めることにしたということは、今御説明申し上げたとおりでございます。

平岡委員 私はその効果がよくわからないんですよね。被害者の意見陳述制度の中でも、被害者の気持ちとしては、この人をこういうふうな処罰にしてほしいんだということは当然言える話だし、言ってもいいんだろうと思いますね。それに加えて、今度は検察官の論告求刑とは別に被害者の人たちにそういうものを認めるという趣旨が一体何なのか。

 逆に言えば、例えば被害者の方々が弁論としての意見陳述で言った、こういう刑に処してほしいということが仮にそうならなかったときは、例えば、検察官が懲役二十年と言い、被害者の方が極刑ということで死刑と言い、そうしたら裁判として懲役二十年が検察官の主張どおり認められた、そのときに犯罪被害者の方々は上訴できる仕組みになっていないと何か趣旨が一貫しないように思うんですけれども、どうですか、そういう効果はこの法律で持たせていますか。

長勢国務大臣 被害者参加人の方々は、公判に出席をして、裁判所の許可を得て被告人質問や証人尋問を行うことができるわけでありますが、そのようなみずからの訴訟活動の結果を踏まえて、その締めくくりとして参加人が事実または法律の適用についての意見の陳述を行うということも、大きな意義があるものと考えております。おっしゃるように、だから上訴権を与えなきゃならぬということにはならないんじゃないでしょうか。

平岡委員 まさに、これは趣旨が一貫しないといいますか、制度の趣旨がしっかりと整理されていないように思いますね、この訴訟参加人の弁論としての意見陳述の制度については。

 もう一つ聞いてみたいと思うんですけれども、これは、せんだって質問通告していないので刑事局長でも結構でありますけれども、例えば併合事件というのがありますよね、裁判員制度が入ってきたときに、幾つかの事件がありました、被害者が全然別ですというときに、この弁論としての意見陳述というのは、A、B、Cと三つ部分判決が行われるような局面があったときに、Cで最後に併合した形で有罪、無罪あるいは量刑が決まるというときに、A、Bについては被害者の弁論としての意見陳述というのはどういうふうに行われることになるんですか。

小津政府参考人 部分判決制度におきまして、委員御指摘のように、A、B、Cとあった場合のA、Bについては、検察官がいわゆる論告で言える範囲が法律上限られているわけでございますけれども、その範囲と同じ範囲で被害者の方も意見を陳述することができるわけでございます。

平岡委員 部分判決のときは、検察官は、そのA、Bのときに、この人をこういうふうに懲役二十年の刑に処してほしいとかと言えるんですか。

小津政府参考人 それは、検察官は言えません、最後の併合審理の審理の中で言うわけでございますので。

平岡委員 では、その場合、そのAの判定では、犯罪被害者の人たちはどこまでが言えるんですか、弁論としての意見陳述としては。

小津政府参考人 検察官と同じでございますので、その区分審理をしている審理の中で行われるべき事実の認定、法律の当てはめについては意見が言えるわけでございます。全体的な一般情状については、最後の審理で行い、検察官も意見を言うわけでございますので、被害者参加人の方も、懲役何年にするべきだという意見はその区分審理の中では言えないということでございます。

平岡委員 今指摘したような問題を含めて考えると、犯罪被害者の方が意見陳述の中で論告求刑に相当するようなことを言うというのは、やはり今の刑事法制の中では私はちょっと趣旨が違うんじゃないかという気がするんですよね。その点、ちょっと時間がないので、また改めてしっかりと検討していただいた上で議論をしたいと思います。

 きょうは最高裁からも来ていただいているので、ちょっと質問させていただきますけれども、先日来、部分判決についての新しい法律を審議したり、あるいは今回も訴訟参加といったような形での審議をしたりということで、これまで裁判員制度フォーラムをいろいろやって国民に周知してきたことと何か全く違う状況が出てきていて、せっかく今までやってきたことが無駄になってしまうんじゃないかというふうに私は思うんですけれども、これからどうしようとされておられるのか、この点についてお聞かせいただきたいと思います。

小川最高裁判所長官代理者 被害者参加の関係は、今法案審議中でございますから、これは、成立した場合には、その後にその点についても広報の関係では考えてまいりたいと思っております。

 部分判決のところは、これはまた取り入れるなどして具体的に検討してまいりたいと思っております。

平岡委員 せっかく、裁判員制度の話、いろいろとPRといいますか、国民の皆さんに知っていただくための努力をしてきているものが、その途中でと言うと変ですけれども、いろいろとPRしていることが、裁判員制度ができる前にどんどん変わってしまうということは、国民の皆さんに対して裁判員制度を理解してもらうためにも誤解が生じるといいますか、十分な理解が深まらないんじゃないかという懸念もあります。

 それから、さらに言えば、裁判所の方でこういう部分判決とか被害者の訴訟参加といったようなことについての体制整備というのがどの程度必要になってくるのかというのもよくわからないんですよね。

 最高裁としては、この部分判決とそれから被害者参加人というものができたときには、一体、これまでの体制整備に加えて何が必要で、これからどうしていかなければいけないというふうに思っておられるか、このことを答弁してもらいたいと思います。

小川最高裁判所長官代理者 お答えを申し上げます。

 部分判決の関係は、前回……(平岡委員「両方あわせてですよ」と呼ぶ)ええ。いずれにしても、どの程度体制整備がさらに必要になるかどうかというのは、今後、具体的に検討してまいりたいと思っております。

平岡委員 普通は、こういう法案を出すときは、役所の定員とか機構もそうなんですけれども、大体、あわせて要求するんですよね。

 だから、普通は、こういう制度をつくるときには、裁判所は、ちゃんとした対応が制度的にも人員的にも設備的にもできるのかというようなことをちゃんと検証した上で出してきて、ここで通るときは、これから検討したいではなくて、こういうふうにやることを我々としては準備を考えていますから、全く問題はありませんという答弁でなければ、本来であれば、我々も怖くて、こんな法案をすぐに採決するような事態には至れないと思いますね。

 その辺も、どういう問題があるのか、しっかりと整理して、どういう対応をしようとしているのかということを提出していただくように要請をしておきたいと思います。

 委員長、よろしいでしょうか。(発言する者あり)

七条委員長 よろしゅうございますか。今の、最高裁の方から提出できますか。精査をすることはできますか。

平岡委員 隣の方からまたやじが飛んでおりまして、質問の趣旨がよくわからないという、わかりたくない人にはわからないかもしれませんけれども。

 もし最高裁の方でわからないというのなら、また後で私のところに来ていただいて、こういうことを教えてほしいということで私が伝えたいと思いますけれども、最高裁の方は、わからなければいけないという立場に立って質問を聞いておられたので大体おわかりだと思いますので、ぜひ、私がお願いしたことをちゃんとしていただきたいというふうに思います。

七条委員長 では、さようにさせていただきます。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時四分開議

七条委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。保坂展人君。

保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。

 警察庁刑事局長にお聞きしますが、大阪で警察官が談合に関与して問題化しているという報道がありますが、どういうことでしょうか。

縄田政府参考人 昨日、大阪府警察の捜査二課の捜査員が大阪地検の方に逮捕された、そのような報告を聞いております。捜査は大阪地検の方でなされておるわけでございまして、私どもといたしましては、どのようなかかわりでどのような行為をしたのかということについて十分承知をしていないところでございます。

 捜査の結果を十分踏まえまして、私どもとしては、いかなる原因があったのか等々につきまして十分調査の上、適切に対応してまいりたい、こういうふうに思っております。

保坂(展)委員 この件は、不正摘発にかかわる警察官がまさにその不正のシステムに組み込まれたのではないかという容疑かと思いますので、これからちょっと注目をしていきたいと思います。

 先般、拷問禁止条約に基づく日本政府の報告書に対する最終意見が国連の委員会でまとまった、松島大臣政務官にも来ていただいて、これをお聞きしました。その際の議事録を何度か読みましたけれども、まず警察庁に伺います。

 例えば捜査の可視化の問題で、取り調べ時間についての違反への制裁を付与せよとか、あるいは、そもそも条約違反、長時間の、あるいはもろもろの、条約に違反した自白を証拠から排除せよというようなことが書かれていることについて、日本の捜査の現状をるるお答えになったんですが、きょうは端的に、そのことをもう一回繰り返していただくのではなくて、この見解に対して、警察庁として何か努力すること、調査すること、検討することがあるのかないのか、ここを明快にお答えいただきたいと思います。

縄田政府参考人 委員御指摘のとおり、取り調べ時間等につきましていろいろ勧告がなされたことは承知をいたしております。私どもといたしましても、警察方の活動においては人権保護に十分万全を期していかなきゃいかぬということは重く受けとめております。

 取り調べ時間の関係で申しますと、ここで許容される範囲というのは、事案の内容とか容疑の程度によりまして異なるものでありまして、個別に具体的に判断される、こういうことだろうと思います。一概にこういったものの期限を定めるということにつきましては、困難と考えております。

 取り調べにおきましては、委員御案内のとおりかと思いますけれども、犯罪捜査規範におきまして基本的な物の考え方というのは示されております。それにのっとって適切になされるようにこれまでも指導しておるところでございますし、今後もしっかりと対応してまいりたい、こういうふうに思っています。

 また、取り調べの時間の管理等に関しましては、平成十六年四月から取り調べ状況報告書というのを常に拘束被疑者につきまして作成することになっておりまして、こういった報告書も提出をさせていただいております。

 捜査幹部において、十分適正になされるように、先般、いろいろ取り調べをめぐっての御指摘をいただくような事案もございました、そういったものにつきましては、会議あるいは検討会等でも十分指導しております。今後も遺漏のないように、適正な捜査が行われるように指導してまいりたい、こういうふうに思っています。

保坂(展)委員 警察庁に伺いますが、今お話しいただいたことは前回の議事録にもおおよそ載っていることでございます。簡潔にお聞きしますので、もう一度そこに絞って答弁をいただきたいんですが、よろしいでしょうか。

 今回の最終意見を受けて、警察庁として何か検討したり調査したりすることを行うのか。あるいはもう現状で、今説明なさったとおり、今の答弁だと、きちっとやっています、問題はあるけれども、いわゆる自助努力をしているんだというふうに聞こえるんですね。ただ、この最終意見について、警察庁は受けとめて何か新しくやるのかやらないのか、ここをはっきり。

縄田政府参考人 私どもといたしましては、勧告の状況につきましては、前も御答弁申し上げましたけれども、私どもの警察捜査の状況につきましては十分御説明をしなきゃいかぬ部分もあるということは一つございますが、さらに、捜査の適正といいますか任意性の確保という視点から、被疑者に対して、調書の各葉指印でございますが、今現在、各都道府県警察におきまして数署選定をしまして、被疑者に一葉一葉読み聞かせをし、かつ、閲覧をさせて、一枚一枚指印を押してもらうということを試行いたしております。こういった面につきましても、拡充の方向で現在検討しておるところでございます。

保坂(展)委員 ちょっと答弁になっていないんですけれども、刑事局長にもう一回伺います。この最終意見を警察庁として受けとめ、吟味、検討するのかしないのか、どちらですか。

縄田政府参考人 御提言、勧告をいただきました趣旨といいますか、そういった中身につきまして、私どもとしては十分吟味をいたしまして、やるべきことがあればやっていきたいとは思っておりますが、先ほど申し上げましたように、現時点でいろいろ検討していることは、先ほど答弁したとおりでございます。

保坂(展)委員 今、最後に、やるべきことはやる、受けとめ、吟味すると。吟味するということは、受けとめるから吟味するんでしょうから。

 ここは法務省刑事局長に同じ点を伺いますけれども、さきの国連の委員会の最終意見について、例えば、代用監獄での警察勾留期間の上限の設定であるとか捜査の可視化について述べられています。前回答弁されたことではなく、前回の答弁に何か加える部分はございますか。つまり、ちゃんとやっていますという話ではなくて、こういう意見が出たことについて、法務省としては、刑事局としてはどうするのか。

小津政府参考人 拷問禁止委員会による我が国の政府報告書の審査の際には、政府代表団の方から必要な情報を提供し、我が国における条約の実施状況等について誠意を持って説明を行いましたが、我が国の司法制度や実情について必ずしも十分な理解を得られなかった点があることは残念に思っております。

 本件最終見解につきましては、法的拘束力を有するものではないとされていると承知しておりますが、今後の対応につきましては、最終見解の内容を十分に精査した上、適切に対処してまいりたいと考えております。

保坂(展)委員 法務大臣は、前回、我が国の主権の範囲内でいろいろなことを考える、参考にするべきことは参考にすると、わかったような具体的にはわからない答弁なんですよ。こういう国連の委員会から、我が国の捜査について、刑事司法について意見が出たということについて、やはり法務大臣として、これは受けとめますと受けとめて、きっちり検討して、一年以内に政府報告をさらに出すんでしょうから、その決意というか基本的な姿勢はございますか。それとも、余りこういうものに、今言われました、法的拘束力がないというようなことで、参考意見程度かなというようなことなのか、そこをはっきりお願いします。

長勢国務大臣 今刑事局長が答弁をいたしましたが、もちろん、国連のしかるべき委員会の最終見解でございますから、これは我が国として、精査をして、どう対応すべきか、これからきちんと対応すべきものはしなきゃならぬと思います。

 ただ、政府としての説明が十分理解を得られなかったのかなと思う点もあるわけでありますし、また、我が国は我が国で、今までいろいろな経過の中で、国会での議論も踏まえて対応した部分もあります。

 いずれにしても、拷問禁止条約がねらっておる問題は、我が国もそういう方向で進めようということでおるわけですから、問題のある点がもしあれば、直していくべきものがあれば十分直さなきゃならぬと思います。

保坂(展)委員 これは確認なんですが、大臣は、余り他の国から、我が国の刑事司法の細かい、例えば刑訴法をこういうふうに改正せよとかいうところまでかなり踏み込んで今回の最終意見は出されていますので、日本のことをわかってもらえていない、法務省としても大変残念だと、この条約を脱退するということは可能性としてありますか。

長勢国務大臣 今、そういうことは全く考えておりません。

保坂(展)委員 では、次に、法案内容に入っていきたいと思います。

 刑事局長に前回お尋ねしましたが、英米でなぜ犯罪被害者が訴訟に参加できないのかということについて伺いました。簡潔にお願いします。

小津政府参考人 各国の刑事裁判手続は、固有の歴史、法文化、社会情勢等々で形成されておりますので、ある制度が採用され、採用されていないことについて、これを一義的に述べるのは困難でございます。

 その前提で申し上げますが、御指摘のとおり、現在、アメリカやイギリスにおいては、被害者が刑事裁判手続全般に参加する制度が一般的に導入されているわけではないものと承知しております。

 ただ、アメリカにおきましても、量刑手続においては被害者の意見陳述が認められておりまして、また、イギリスにおいても、被害者がそのこうむった被害の影響を書面により陳述することができるなどとされておりますほか、最近、一部の裁判所において、一定の重大事件の被害者の遺族が、有罪判決後、量刑判断前に意見を陳述することができる制度が試験的に運用されているものと承知しております。

 また、イギリスにおける私人訴追制度、それから、アメリカにおいて、被害者等の弁護人が検察官とは別に公判活動を行うことを認めているところもある等々のことを考えますと、アメリカやイギリスの刑事手続でも、犯罪被害者が刑事手続に参加する制度がとられ得ないものではないというふうに考えております。

保坂(展)委員 職権主義の国と当事者主義の国との相違ということが根底にあってこの違いが生まれていると私は理解しているんですが、刑事局長に続けてお尋ねします。

 今まで司法の外側に置かれていた犯罪被害者の当事者の皆さんが、これは当事者とは言っていないんですけれども、しかし、単なる陪席者でもない、しっかり法廷のバーの中に入るということが法務省提案の今の法案の中にはございますよね。

 私はあえてお聞きしますけれども、被害者参加人が求刑をするという趣旨はどこにあるのか。これは、そもそも、検察官が求刑をするということとまた別に求刑をするという制度設計のようです。検察官の求刑内容と被害者参加人の求刑内容を同一にそろえるという仕組みはないですよね。したがって、これから始まる裁判員制度を想定すると、二つの求刑が裁判員の前に提出をされる、こういうことにならないだろうか。これは、検察官と緻密なコミュニケーションをとって、少なくても求刑については被害者の意見も十分酌み入れた上で検察官が求刑をするというふうにそろえるのが相当じゃないかというふうに思います。いかがですか。

小津政府参考人 現行法上、公訴は検察官が行うとなっておりまして、その立場で検察官が通常は審理の最終の段階で事実と法律の適用について意見を言う、こういうことになっておりまして、その内容として、裁判所において言い渡されるべきだと検察官が考える刑の内容を言っております。これを求刑というふうに言いならわしておるわけでございます。

 このたび被害者参加人の方が、繰り返しはいたしませんけれども、この法律制度の趣旨に基づいて、そういう事実関係や法律の適用についてもその立場で意見を言うことができるということでございまして、もちろん検察官がその立場で行うものと被害者参加人が行うものとでは、今私が申し上げたような意味での違いはある、もちろんどちらも意見でございますから、その意味では同じだ、こういうことでございます。

 そういう二つのものが出るということをどう考えるかということだと思いますけれども、これは結局のところ、そういう意見を言っていただくことが相当かどうかということに帰するだろうと思います。私どもとしては、この場では繰り返しませんけれども、そういう必要があると考えて、そういう制度を御提案申し上げている、こういうことでございます。

保坂(展)委員 法務大臣、どうですか。この制度、最後に検察官が求刑をする、そして同時に被害者が意見陳述の中で求刑をする。この内容は同じこともあるだろうし、やはり違うこともあるでしょう。これは、大臣、どうでしょう。裁判員としてくじで選ばれてにわかに法廷にいる裁判員にとって、やはり被害の当事者の意見、そして検察官の意見、どういうふうに立体的にとらえて判断するか、非常に迷いが生じるところじゃないでしょうか。あるいは、被害者参加人の方の求刑ということの方を重く受けとめるというのが多くの人ではないでしょうか。

長勢国務大臣 裁判によってどういうことになるかというのはその場になってみないとわかりませんけれども、今刑事局長が言ったように、被害者の方々の意見を直接聞いてもらうということが、今まで申し上げましたことから適当であるということで御提案申し上げておるわけでありまして、それらを踏まえて、裁判官、裁判員において御判断はいろいろあろうかと思います。

保坂(展)委員 私は、くじで選ばれた市民が、あるいは衆議院議員選挙の有権者が、生まれて初めて判断をするのに二つの求刑が出てくるというのは非常に難しい判断を迫られるなというところを指摘しておきたいと思います。

 続いて、先般から他の委員の質疑の中で、これは刑事局長、法務省にお聞きしますけれども、例えば被害者参加人が証人に尋問するときに情状の部分に限られるんだ、こういう制限があるということなんですが、その情状の部分をはみ出して、これは本法案で規制するところのいわゆる言えるところと言えないところの、言えないところの部分に差しかかるというのは具体的にどういう内容なのか、具体的に例を挙げてお話しいただけますか。

 証人に対する尋問の中で、ここまでは言えるんだけれどもここからはちょっといかぬという規制があるわけですね、法案の中に。例えば、どういうことを具体的に言ってはいけないのか。

小津政府参考人 わかりやすい例にするために、一人の証人が犯罪事実の立証についても証言をし、あわせていわゆる情状についても証言をしたというふうにいたします。

 被害者の方は、あくまでもその情状の部分で、なおかつ、犯情と言われているもの、非常にむごい殺し方をしたとか、そういうことではなくて、被告人がどんな人間であるとか、弁償したかとか、いわゆる一般情状の部分に関してだけ弾劾の目的で聞くことができるわけであります。その目的で被害者参加人が質問をして、その話の延長として、さっき犯罪事実についてあなたはこういう証言をしたけれどもそのこともやはりおかしいではないかというところに及んできましたら、それは被害者参加人として許される質問ではないということになるわけでございます。

保坂(展)委員 具体的に言うとどういうことになるのかなということが質問だったんですが、本当に裁判長がそこで注意をしたり制止をしたりということがあるんだろうかということを少し疑問に思っているということを申し上げた上で、前回の委員会で、最高裁判所が規則を発表されて、そこに伴う裁判員の候補者に対する質問事項ですかね、これの文例というものの紹介を、きょう皆さんにも配っていただいていますが、この二枚目の五のところ、警察官の捜査、これは捜査官証人が出てくるという場合ですね。

 当事者、多分検察側の求めによってこういう質問を裁判長がするということだと思いますが、あなたは警察等の捜査は特に信用できると思うような事情、あるいは逆に、特に信用できないと思う事情がありますかということなんですが、前段の、警察等の捜査は特に信用できると思うような事情がある人というのは、どういう人なんでしょうか。最高裁、どうですか。

小川最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 これは、個々の裁判体が実際に質問をするときにどういうことが出てくるかということでございますが、いろいろ準備会などで検討された中には、前段ですよね、例えば何かの事件で被害に遭って非常に捜査官にお世話になった、大変信頼しているとかいうような事情があったとか、例えばです、それは何ともわかりませんので。そういうことです。

保坂(展)委員 それに対して後段の、警察等の捜査が特に信用できないと思う事情がありますかということに関してなんですが、先ほど警察庁の刑事局長にもお聞きをしていたんですが、例えば、いやそれはあるんですよ、ではどういう事情ですかというふうに裁判長が質問して、逮捕後も長時間警察の留置場に身柄を拘束されて、取り調べも長時間で、代用監獄というのは世界じゅう例がないと聞いています、あるいは取り調べが可視化されていない、かなり強圧的な取り調べが行われているという映画を見ましたとか、あるいは志布志事件など具体的な例を挙げた場合に、この方は信用していないということをここで語るわけなんですけれども、刑事局長、前回も聞きましたけれども、こういう方は、これは個々の検察官の判断いかんですが、理由を示さない忌避の対象になる場合もあると考えていいですか。

小津政府参考人 これは、検察官が個々のケースにおきましてどのような場合に理由を示さない忌避をするかということでございますので、ただいまの例でどうかということにつきまして、今私の方からお答え申し上げることは難しいということを御理解いただきたいと思います。

    〔委員長退席、倉田委員長代理着席〕

保坂(展)委員 これは司法制度改革推進本部のつくった議事録で、裁判員制度・刑事検討会などで、この専断的忌避というのはまずいんじゃないかというような議論がされていますよね。これについて何かお答えできますか、どういう議論があったか。

小津政府参考人 恐縮でございます。ただいま手元にはその議事録がございませんので、その議事録そのものでどのような記載があったか、あるいはその記載があったということを前提にしてのことを、今ちょっといたしかねるのでございます。申しわけありません。

保坂(展)委員 では、紹介しますけれども、これは平良木さんですね、専断的忌避というのは、やはりどんなにきれいなことを言っても、例えば自分たちに有利な者を残して不利な者を外そう、こう考えてしまうんですね、そのことは否定できない、こうおっしゃっている。

 これは法務省だと思いますが、辻参事官は、アメリカの陪審の運用ということを十分に承知しているわけではないけれども、アメリカでは、ややもすると当事者が自分に有利な人を選ぶという面があると思います、それは多分、双方とも同じだと思いますと。

 それで、井上座長が、今の点は考えなければならないですね、きれいごとでは済まないところがあって、現にイギリスで専断的忌避の制度を廃止したのは、それが余りにも戦略的、戦術的に使われ過ぎて混乱をしたというふうに承知していますと言っているんですね。

 イギリスも、理由を示さないで忌避するという制度があって、これは廃止されたとこの井上座長が言っているんですが、この理由は何でしたでしょうか。

小津政府参考人 イギリスにおきましては、かつては被告人側のみが専断的忌避の申し立てをすることができるとされておりましたけれども、忌避の申し立てができる人数について段階的に縮小されて、一九八八年の立法によって専断的忌避の申し立ての制度そのものが廃止されたものと承知しております。

 その理由につきましては、現時点では資料が手元にございませんけれども、一部の事件で被告人側が非常に恣意的な専断的忌避の申し立てをしたのではないかという指摘がされたこともあると承知しております。

保坂(展)委員 刑事局長にお尋ねしますけれども、今、捜査の可視化の問題も前半議論しました。捜査の可視化が導入されないで、刑事訴訟に市民が参加するシステムを有している国はありますでしょうか。

小津政府参考人 陪審または参審制度をとる国における取り調べに関する法制のすべてを承知しているわけではございませんけれども、例えば、参審制をとっておりますドイツにおきましては、被疑者の取り調べ状況の録音、録画は義務づけられておらず、捜査検察官による被疑者の尋問、取り調べを行うためには、尋問等の期日を弁護人に通知することは必要でございますけれども、弁護人の立ち会いは取り調べを行うための要件とされていないものと承知しております。

 参審をとっているフランスにおきましては、予審判事による被疑者の尋問について録音、録画が義務づけられておらず、被疑者の尋問を行うためには、弁護人にその尋問に立ち会う機会を与えれば足り、立ち会いは尋問の要件とされていないというふうに承知しております。

保坂(展)委員 この可視化の問題と今の忌避の問題は非常に絡んでいると思うんですが、ちょっと時間も迫ってきましたので、刑事局長、この裁判員制度の仕組みでは、例えば、あなたは警察官の捜査を信用できますかと聞かれて、本当は余り信用していないんだけれども、信用していないと言うと忌避されるかもしれないなと思って、いや、大体信用していますと言うと、何か罰則とかありますか。これは虚偽の陳述だというふうに断定されたときに、過料を科されるということはありますか。

小津政府参考人 虚偽の陳述をしてはいけないということになっておりまして、それについて若干の制裁がございますが、まさに御指摘の点がその虚偽の陳述に当たるとされるかどうかという問題であろうと思います。(保坂(展)委員「罰則の内容を言ってないです」と呼ぶ)三十万円以下の過料となっております。

保坂(展)委員 最後に法務大臣、警察官の捜査を信用していますかということを裁判員の候補者が尋ねられて答える、それは、今言ったように、虚偽の陳述をしたら三十万円以下の刑罰もかかわっているという中で、これを開陳しなければいけない、内心を明かさなければいけないというのは憲法違反ではないですか。どう思いますか、この内心の自由との関係をどう整理しますか。

倉田委員長代理 時間が終了しておりますので、簡潔にお答えください。

長勢国務大臣 裁判官の方の質問の仕方にもよるのかもしれませんけれども、公平な裁判をするための裁判員を選任するときに、そういうようなことを聞くことを排除するという必要もないのではないかというふうに思います。

保坂(展)委員 質問は終わりますけれども、公平な裁判というのは、警察をよく信用している人もかなり疑っている人も含めて、トータルの中からくじで選ぶということじゃないかなと思いますね。そこのところを、これは被害者の法廷参加も入ってくる中で、トータルな議論を当委員会でも進めなければいけないんじゃないでしょうか。

 終わります。

倉田委員長代理 次に、大串博志君。

大串委員 民主党の大串博志でございます。

 犯罪被害者等の権利利益を守るための刑訴法の改正のための法律案、これは非常に重要な法律でございます。犯罪被害者の方々の権利を守り、かつ、社会の中で公平公正に位置づけるという意味において、この審議、非常に大切にしていきたいというふうに思い、早速質疑に入らせていただきたいというふうに思うわけでございます。

 さて、今般の法改正、社会の中の各般から非常に注目も浴びておりまして、いろいろな意見のあるところでございます。被害者の方々の中でも、非常につらい体験をした中から、今回提出されているような法律に関してぜひ進めてほしいという意見、そして、もっと慎重に議論してほしいという意見、いろいろある中での審議でございますので、我々も非常に神経を研ぎ澄ませた上で、事実関係を確認し、質疑を進めていかなければならないというふうに思う次第でございます。

 まず、これは事務方の方で結構でございますけれども、今般の犯罪被害者等の権利利益を守るための刑訴法の改正なんですけれども、今般の改正案に至る議論の経過について簡潔に御説明いただければと思います。

小津政府参考人 犯罪被害者の保護、支援につきましては、平成十二年の犯罪被害者等保護二法によりまして、証人尋問の際の付き添い、遮へい等の措置でありますとか、被害者等による心情を中心とする意見陳述制度の導入がされるなど、さまざまな法整備が行われてきましたが、その後も、犯罪被害者の方々からは、被害からの回復には依然としてさまざまな困難があるということが指摘され、民事、刑事の裁判手続についてもいろいろな御指摘がなされ、改善が要望されてまいりました。

 そこで、このような状況を改善して犯罪被害者等の権利利益の保護を図るために、平成十六年十二月に犯罪被害者等基本法が成立し、基本的施策として、犯罪等による被害に係る損害賠償の請求について、その被害に係る刑事に関する手続の有機的な連携を図るための制度の拡充や、刑事に関する手続への参加の機会を拡充するための制度の整備等を行うべき国の責務が定められました。

 また、同法を受けて政府は、被害者団体等からのヒアリングやパブリックコメントにより得られた意見、要望等を参考にしながら検討を進めて、平成十七年十二月に犯罪被害者等基本計画を策定したわけでございますが、この基本計画におきましては、刑事手続に関するもので立法的な手当てが必要なものとして、損害賠償請求に関し刑事手続の成果を利用する制度、犯罪被害者等が刑事裁判に直接関与することのできる制度を導入する方向での検討及び施策の実施が明記されました。

 そこで、法務省では、平成十八年の二月と三月に合計十二の犯罪被害者の団体等からヒアリングを実施するなどしながら検討を進めてまいりました。

 この間、平成十八年の通常国会で、犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律等が全会一致で成立いたしました際に、衆参の各法務委員会におきまして、「犯罪被害者等基本計画に基づき政府において検討が進められている被害者が刑事裁判に直接関与することのできる制度の導入等について、できるだけ早期に結論を出し、その結論に従った施策を速やかに実施すること。」との附帯決議がなされました。

 このような検討等も踏まえまして、十八年の九月六日に、法務大臣から法制審議会に対して諮問がなされました。諮問の内容はちょっと省略いたします。

 また、その法制審での審議をやるのと並行いたしまして、平成十八年十月から十一月にかけまして、法務省がパブリックコメントを実施しまして、それらの結果も参考としつつ審議が行われ、十九年の二月七日に法制審議会から法務大臣に答申がなされ、十九年三月十三日に閣議決定をして本法律案を国会に提出させていただいた。

 以上が経緯でございます。

大串委員 今お話がありましたように、犯罪基本計画を踏まえての審議が行われてきたわけでございます。法制審において、去年の秋からことしの二月までの審議が行われていたわけでございます。八回ですか、この審議が行われた。

 今回、刑事訴訟手続において、今まで被告と検察という二者対立であった中に被害者が入るという、新たな参加者が入るという非常に大きな改正であるので、私としては非常にこれは慎重な議論をしていかなきゃならぬと思うんですけれども、この法制審における審議、法制審というのは、今いろいろな法律改正に関しての審議を諮問されています。これに関する審議、非常に重要なことをやっている審議会だと、当然皆さんもそう思うでしょうけれども、思われます。この審議のあり方がどうかということも、やはり一つ考えなきゃいかぬと思うんですね。

 ちなみに、この法制審の審議というのは公開なんでしょうか。

小津政府参考人 審議そのものは公開しておりませんけれども、議事録を公開しております。

大串委員 二つお聞かせください。

 審議そのものを公開しない理由と、議事録を公開されるというふうにおっしゃいましたけれども、議事録は、審議からどのくらいたってから公開されるんでしょうか。

小津政府参考人 法制審議会全般につきましては官房の方で所管しておりますけれども、それぞれの、これは刑事法部会でございますので、そこの審議についてどの程度公開するかということが議論になることがこれまでにもあったと承知しておりますけれども、基本的には、そこにおける自由闊達な意見交換、議論を確保するためである、そういう理由であったと承知しております。

 議事録につきましては、できるだけ早く公開するように努めているところでございます。

大串委員 では、また二つ質問します。

 公開しない理由が、自由闊達な議論を促進するため、妨げないためということでございますけれども、例えば、今回のような法律、まさに犯罪被害者となられて、体験された方々の御意見なんかも非常に重要な審議だっただろうと思うんですね。そういう中で、公開しない方が本当にいいのか。すなわち、公開することによって自由闊達な議論が阻害されるのか、そういう例というのはあるのかどうか、私はやや疑問なんです。

 本当にそういうものがあるのかどうか、ちょっと具体的にそこをお聞きしたいのが一つと、先ほど議事録をできるだけ早くとおっしゃっていますけれども、大体、通例、どのくらいかというのはあると思うので、それをちょっと教えてください。

小津政府参考人 公開の問題につきまして、具体的にどのような弊害があったのかという御質問であろうかと思いますが、公開をしていない中でそういうことがどの程度心配かということを法制審議会の中で御議論をして、そちらで決めていただいていることであるということでございます。

 一般的に、それからどれぐらいの時間で議事録ができるかということにつきましても、申しわけございませんが、その審議がどれぐらいのボリュームであったかにもよりますので、一般的にどれぐらいということも、今私の方でお答えする準備がございません。

大串委員 なぜ私がこれを聞いているかと申しますと、まず一つには、今回のような法改正の場合には、やはり関心を持たれる方が非常に多い。実体験をされた方々も含めて、そしていろいろな関係者も含めて多いんだと思うんですね。かつ、重要な法改正を議論している場なので、できる限り議論を公開して、いろいろな方々に知ってもらった上で議論を進めていくべきだろうと思うんですね。

 一つ聞きますけれども、例えば先ほどのパブリックコメント、十月から十一月にパブリックコメントを出されたとおっしゃいましたけれども、そのパブリックコメントをされる段階で、例えばそのパブリックコメント以前の法制審での審議の議事録はすべて周知の形になった上でパブリックコメントは行われたんでしょうか。

小津政府参考人 パブリックコメントに際しまして、法制審議会で提出した資料の中でも、どのような論点についてどのような考え方あるいは選択肢について議論をしているかという資料につきましては、これは資料でございますので、お出しすることが物理的にも可能でございましたので、皆さんに見ていただいて、それを踏まえてコメントいただきました。

 ただ、その段階で、まさにそれまでの議事録が全部そろっていて公開できていたかというと、必ずしもそうではないわけでございます。

大串委員 まさにその点なんですね。私たち、いろいろな方々から意見を聞く中で、今回、私の目から見ると、非常に急速にといいますか、審議が促進されることは悪いことではないんですが、非常に速いペースで議論が進められたという印象を私自身持っています。

 そういう中で、パブリックコメント等もやられる、これはいいことなんですけれども、必ずしも議論のそれまでの中身がつまびらかじゃない。先ほどおっしゃいました、パブリックコメントを出す前にすべての議事録が出ていたわけじゃなかったということはお認めになりましたけれども、そういう中で、どういう議論が行われているのかということがすべてつまびらかにはなっていない中でパブリックコメントをするというのは、やはりコメントをする大衆の側にしてもなかなか難しい面もあると思うんですね。

 ですから、私自身が思うには、やはりできるだけ、法制審の方々の意見もあるでしょう、法制審の方々が、先ほどおっしゃったように、自由闊達な議論を妨げるのですべてを公開したくないという意見もあるのかもしれませんけれども、基本的には公開を旨として、よほどのことでない限りは公開を旨としてやっていく、そして議事録についてもできるだけ早く出していく、パブリックコメントの際には資料をつけたとおっしゃいましたけれども、それもできるだけ議事録のある中でパブリックコメントをしていくというのが基本だろうと思うんですね。こういうところがありましたものですから、今指摘させていただきました。

 ちょっと時間をとってしまいましたけれども、ぜひ、この法律にかかわらず、法制審のあり方については大臣にもよろしく御検討いただきたいというふうに思う次第でございます。特にこの法律の問題なんか、非常に重要な問題だろうと私は思った次第でございます。

 さて、この法律の内容に少し入らせていただきたいと思いますけれども、この法律の基本的なそもそも論のところをちょっとお尋ねしたいと思います。

 日本の刑法及び刑事訴訟手続、これは、今の刑法の体系の中でほとんどありませんけれども、私の応報、つまり自分によって刑を何がしかの手段で注ぐということは許されていません。基本的には、公権力が刑法を管理し刑を執行するという力を独占する形で、今の日本の刑法、そして刑訴法はつくられています。それは一九九〇年に出された最高裁の判例でも、公の秩序のためにこの刑法あるいは刑訴法というのがあるんだということが言われている、そういうところにも認められていると思うんですね。

 今般の法律改正においては、被害を受けられた方が刑事訴訟手続の中の当事者として参加されることになるわけでございますけれども、これは大臣にお尋ねしたいんですが、目的としては、刑罰を科すのは公権力なんだ、刑事訴訟手続というのは基本的には何のためかというと、適切な刑を科すことによって公の秩序を守るためのものなんだ、あくまでも犯罪被害者の方々の権利利益を守るための一手段として、犯罪被害者の方に当事者として参加していただくんだという理解でよろしいのか。すなわち、刑事訴訟手続、基本的には、公の秩序を守るために適切な刑を科すためにあるんだというこの基本のところが変わっているのか、変わっていないのか、その基本論のところはいかがでしょうか。

長勢国務大臣 刑事訴訟の基本的な枠組みは変わっているわけではございません。ただ、その被害者の方々も直接そこに参加をして意見を述べる機会をつくるべきであるという意見が被害者の方々からもたくさんあり、そして基本法でもそういう方向が示されて今日の御提案になっているということは、先ほど御説明申し上げたとおりでございます。

大串委員 ありがとうございます。

 それでは、もう一回確認ですけれども、すなわち、刑法それから刑事訴訟手続というのは、基本的には公の秩序を守るために適正な刑が科される、このために存在するものであって、今回、刑事訴訟手続に犯罪被害者の方々が参加されるというのは、これはあくまでも犯罪被害者の方々の権利利益を守る、そういう観点からの参加である、つまり、そういう意味においては、刑事訴訟手続に新たな要素が入ってきている、そういう理解でよろしゅうございますか。

長勢国務大臣 そのとおりでございます。

大串委員 わかりました。

 今の点を踏まえて、すなわち、今回の法律の中では、いわゆる犯罪被害者の方々の応報、そういう趣旨はこの改正法案の中の趣旨としては入っていないという理解でよろしゅうございますね。

長勢国務大臣 刑罰そのものの意義の中に応報という部分も含まれておるというのは通説だろうと思いますけれども、今回、被害者の方々の応報のためにこれを入れるということではなくて、被害者の方々が直接意見を聞いていただく、そういうことによって被害者の立ち直りや名誉の回復、その他、権利の保護を図りたいという趣旨でございます。

大串委員 その点は、確認させていただきました。

 この今回の改正は、基本的には刑訴法の枠組みを変えるものではない、かつ、犯罪被害者の方々の権利利益を守るという新しい要素が刑事訴訟手続の中につけ加わってくるという意味で加えられている法律だということがわかりました。

 それで、その次に論を進めていきたいのですが、犯罪被害者の方々の権利利益を守っていくということを、我々は今国会の中でやっているわけでございます。政府の中でも努力されているわけでございます。犯罪被害者の方々の権利利益を守るために十分なことが行われているかどうかということもしっかり検討した上で、その十分なことが行われているのであれば、その十分なことが行われているかどうかということをしっかり確認しつつ、では、その今回提案されているような犯罪被害者の方々の刑事訴訟手続への参加は必要かどうかということは、バランスを持って考えていかなければならないと思うんですね。

 すなわち、犯罪被害者の方々の権利や利益を守るというのも、いろいろな方法がもちろんありますけれども、どこかの部分は全く進んでいなくて、どこだけ進んでいるということではいけないのであって、基本的にはいろいろな施策を通じてむしろ行っていくべきだろうと思われるわけですね。今回の法改正に関しても、やはり非常に難しい問題でもありますので、しかも大改正でもありますので、むしろその前に、犯罪被害者の方々の救済を図るためのもっといろいろな実務的な取り扱いを強化するということをもっとやっていくべきではないかという声もあるんだろうと思うんですね。

 そこで、内閣府の方にちょっと確認したいと思いますけれども、犯罪被害者等基本法は十六年につくられました。この中で、いろいろな施策が、全政府的な取り扱いが盛り込まれています。これを見せていただきますと、非常にレンジの広い施策がここに盛り込まれているわけですけれども、今、一体、この犯罪被害者の方々の被害を救済するというこの基本法に盛り込まれた手続はどのくらい進んでいるのか、十分進んでいるのか、これに対する検証はどう行われているのか。この点に関して、内閣府の方の御所見をお伺いしたいと思います。

荒木政府参考人 お答え申し上げます。

 犯罪被害者等の基本計画におきましては、被害者の方の権利利益を守るために二百五十八の施策を、被害者の方の声を聞きつつ、また慎重な検討会の検討を経て作成をいたしております。その中で、五本の柱が立っております。損害回復、経済支援、それから肉体的、精神的被害の回復、刑事手続への関与拡充、ただいま議論になっておりますけれども、それから支援のための体制の整備、それから国民の理解の増進といったことを五本柱といたしまして、現在政府を挙げて取り組んでいるところでございます。

 検討会の状況等につきましては、何度かこの委員会でもお答え申し上げておりますけれども、そういった経済的支援の拡充ということで抜本的に給付金の額を上げようとか、あるいは支援の体制というところでは連携ネットワークを効果的に構築していこうという検討、さらには、その連携ネットワークの中で大変重要な役割を果たします民間団体につきまして、その財政的な援助を拡充していこうというようなことで、全体の施策、検討会の状況はそういうことでございます。

 二百五十八のうち、一年以内に結論を得てやるものとか、それから二年以内に結論を得るとか、三年以内というのも幾つかございますけれども、いずれにしましても、その二百五十八の施策それぞれにつきまして、昨年も白書を御報告いたしましたけれども、その進捗状況について国会に御報告をさせていただいておりますし、それから、官房長官を会長とする推進会議がございますけれども、ここにおいて、施策の検証それから監視を行うということに法律でなっておりまして、そういったことを通じて、本当に被害者のためになる施策の充実に努めているところでございます。

大串委員 今御答弁がありました二百五十八の施策のうち、今期限を区切ってやっているということでございましたけれども、これは全体的にやはりきちんと進んでいかなければならないと思うんですね。先ほど申しましたように、非常にレンジの広い施策を通じて犯罪被害者の方々の権利利益を守っていくというのが今の仕組みになっていると思います。

 それで、幾つかの制度に関して、私、本当にこれはきちんと進んでいるのかなというところもありはするわけです。それは、そういう中で不均衡な進め方になっていないかというふうな思いがするところもあるんですね。例えば、犯罪被害給付制度がございまして、これはよく言われることですけれども、本当に十分使われているのか、本当に十分被害者の方々の救済に役立っている形になっているのかということをよく言われます。

 これは警察庁の方にお尋ねしたいと思いますけれども、現在、犯罪被害給付制度について、どのくらい利用されていて、どのくらいの救済になっているのか、具体的なところがわかりましたら御答弁ください。

巽政府参考人 お答えいたします。

 犯罪被害給付制度は、昭和五十六年の一月に施行されまして、通り魔殺人などの犯罪行為によって不慮の死を遂げた方の御遺族とか、あるいは重傷病を負った方あるいは障害が残った被害者の方々に対して、国が社会の連帯共助の精神に基づいて給付金を支給する制度ということでございます。この制度が発足いたしましてから本年の三月までの間、合計で八千二百五十八人の方々に対して給付金が支給されました。その合計は、百八十二億五千八百万円となっているところでございます。

大串委員 今おっしゃいましたね、百八十二億。これはトータルな額はグロスとしてわかりますけれども、一体全体の方々のどのくらいを占めているのか、一体かなりの部分を占めているのか、少しの部分しか占めていないのか、犯罪件数全体に占める割合はどのくらいなのか、その辺のことの相場観みたいなものはわかりますでしょうか。

巽政府参考人 必ずしも具体的な分析の結果を持っているわけではございませんけれども、一般的に申し上げると、まだまだこの制度自体が周知徹底されていないという部分もあるんではないだろうかと考えておりまして、私どもといたしましては、犯罪に遭われた方がいた場合には、こういった制度があるということをお知らせして、この制度の適用を受けられるようにということで、各県の警察を指導しているところでございます。

大串委員 この場で一つお願いしておきたいんですけれども、この犯罪被害給付制度は、やはり周知がまだ進んでいないと思うんですね。犯罪被害に遭われた後、非常にやはり苦しい立場になられる方々、おうちの方がたくさんいらっしゃると思うんです。これを周知されないがゆえに、それの恩恵に浴することができずに終わってしまっている方々はたくさんいらっしゃると思うので、この周知はできるだけしっかりお願いしたいと思います。

 そして、ちょっと時間もあれですけれども、もう一つだけきちんとお尋ねしておきたいのは、犯罪被害者の方々への支援の中でやはり非常に重要だと思うのは、弁護士の方々にどう支援していただくかということだと思うんですね。もちろん、加害者の被告人の方には弁護士がつく制度、国選弁護人も含めてつく制度があります。しかし、被害者の方々、被害に遭って、さあ、どうやって権利利益を守っていくかというときに、すぐに弁護士の方々の頼りを得ていくということはなかなか難しい状況だと思うんですね。

 そういう中で、少しずつ自分自身の努力の中で自分の権利利益を回復していかなければならない、守っていかなければならないということだと思う。それは、非常に難しい面もあると思うんですね。

 それで、この犯罪被害者等基本計画の中にも、公費による弁護士選任、国による損害賠償費用の補償等の是非についての検討という項目はあります。ここにおいて、公費による弁護士選任等々について、検討のための会において検討を進めるんだということが書かれています。

 先ほどおっしゃられた二百五十八項目の犯罪被害者等基本計画の中のいろいろな項目の中で、私は、ここは検討がおくれているんじゃないかと思うんですね。こういう面もしっかりしていかないと、今回の犯罪被害者の方々の訴訟参加の中でも、これが仮にできるようになったとしても、弁護士の方々の手助けを得ないで独自だけでやっていく、そんなに多くの方が弁護士の助力なしに刑事訴訟手続の中にどんどん入っていくというのは難しいんだと思うんですね。

 この公費による弁護士選任のサポート、支援のあり方についての検討、今どういう状況になっているのか、お知らせいただければと思います。

荒木政府参考人 お答えを申し上げます。

 公費による弁護士選任の問題でございますけれども、先ほど申し上げました経済支援の検討会の中であわせて検討することとされておりまして、検討を進めております。

 来月、中間取りまとめを行おうということで、ほぼ文言が固まりつつありますけれども、その中では、今回の議論されております犯罪被害者等が刑事裁判に参加する制度ができましたならばということですけれども、現在の提出されております関連法案の国会審議状況等を注視しつつ、制度導入に向けて検討を行うべきであるという方向で検討されているところでございます。

大串委員 ぜひ、その検討をたゆみなく続けていただきたいと思うんです。

 国会で犯罪被害者の刑事訴訟手続への参加の法律の議論はしております。これが実現化したときに、本当にいろいろな意見があるわけですね。被害者の方々が本当に参加できるかどうか。参加するがゆえに、かえって弱い立場に置かれてしまうのではないか。だから、参加できないんじゃないか。参加できないことが逆に不利益になるんじゃないか。いろいろな思いがある方もいらっしゃる。逆に、どんどん参加したいという方もいらっしゃる。

 この不均衡をならすためにも、こういうふうに、犯罪被害者の方々お一人お一人の違いを公費負担の弁護士の方々などの御努力で埋めていくということは非常に必要なことだろうというふうに思うんですね。ぜひぜひ、こういう点の検討は進めていただきたいというふうに思う次第でございます。

 さて、一つだけ論点を残して、またの機会があったら質問をきちんとしたいんですが、一つどうしてもこの法案を審議する際に悩ましい点は、また今後同僚議員も質問してくれると思いますけれども、この法案に関して、被害者の方々の中でもいろいろな意見がやはりあります。先ほど申し上げたとおり、参加したいとおっしゃる方もいらっしゃれば、参加はなかなかできないんじゃないかという声もあります。本当のところどうなんだろうというところがなかなか見えなくて、私たちも非常に悩ましい思いをしています。

 いろいろな報道によると、例えば、犯罪被害者の方々が刑事訴訟手続に参加するということに関して、慎重な考え方を持っていらっしゃる被害者の方々はいないんだとか、あるいはごく少数なんだとかいうふうな報道も見ますし、いやいや、これは多いんだという報道もあります。そういう中で、我々も非常に難しい判断があるんですけれども、大臣はこの法律を提出されてきました。

 ちょっと率直なところをお尋ねしたいんですけれども、この法律がこういうふうになることによって、これに対して非常に反対論といいますか慎重な考えを示していらっしゃる被害者の方々は本当に少ないんでしょうか、それとも多いんでしょうか。大臣は、どう見ていらっしゃるんでしょうか。

長勢国務大臣 もちろん統計的なものはございませんし、法制審等でも各方面の御意見をお聞きになって議論されたというふうに聞いておりますので、もちろんそういう御意見の方もおられることは承知をしておりますが、そんなに多い数ではないのではないかというふうに思っております。

大串委員 時間が来ましたので質問は終わりますけれども、今確認しますと、大臣自身は、統計的なものは持っていないけれども、慎重な御意見を持っていらっしゃる被害者の方々はそんなに多くはないんじゃないかというふうな思いを持っていらっしゃるということですね。その辺については、また機会があれば質疑の中でただしていきたいというふうに思います。

 以上です。終わります。

倉田委員長代理 次に、石関貴史君。

石関委員 民主党の石関貴史です。

 まず、今回、犯罪被害者の方が裁判に参加をする、こういった制度、そのための法改正についてこちらで審議を進めてきているわけですが、ここに至るまでいろいろな論議がされました。現行の二当事者対立構造、検察官と被告、弁護人、これらの当事者が対立をする構造というのを根本的に変えてしまうのではないか、こういった考えも示され、そのことについての審議も進められてまいりました。

 しかし今回、その構造が変わるかどうかは別にして、またそのことも含めて、やはりますます信頼される検察というのが必要とされているというのは言うまでもないというふうに思います。今回被害者の方が参加をされても、やはり検察は検察として、ますますその信用を高めていかなければいけないということだと思います。

 これに関して、この二十四日に、東京地検特捜部に所属をする特捜部長八木さん、それから検事正の栃木庄太郎さん、トップ以下七人の処分がされたということでありますが、この処分について事実かどうかということ、この処分はされたんでしょうか。七人ということですが、特捜部長以下七人の方が実際に処分をされたということでよろしいんですか。

水野副大臣 委員がおっしゃっているのは、恐らく、特捜部において公取から借りた資料を紛失した件のことだと思いますけれども、その件によって二十四日に処分を行ったというのは事実でございます。

石関委員 処分を行ったという事実を伺って、なぜ処分をされたかということで、今若干御説明をいただきましたが、それぞれどういう処分だったのか。七人ということなんですが、この事件に関しての七人であって、その七人がどういった処分を受けたのか。いろいろな段階の処分があると思いますが、そのことを詳しくお聞かせいただきたいと思います。

水野副大臣 証拠物の紛失ということでございましたので、本件の証拠物の管理の主任検察官に関しては戒告、これは懲戒処分のものでございまして、そのほかは、厳重注意、訓告などの処分がとられております。

石関委員 この種の証拠物を紛失したということで処分を受けたということなんですが、こういった理由による処分というのは多いんですか。それとも、めったにないということだけれども、今回たまたまこういうことがあったということなんでしょうか。いろいろな処分があると思いますが、いかがですか。

小津政府参考人 もちろんめったにあるわけではございませんけれども、これまで全く先例がなかったわけではございません。

石関委員 事前に何件と調べてくれと言っておりませんので、今すぐ出てくるということはなかろうかと思いますが、なくはないということですね。

 これは、大臣の名前で処分をするということなんですか。

長勢国務大臣 戒告は私の名前で処分します。あとは、検事長あるいは検事正で処分しております。

石関委員 戒告については大臣名でということでありますし、その他についても、法務大臣でありますから、この処分について、大臣も自分の所管する組織の中のことでありますから、いろいろな思いがあろうと思いますし、御自身も責任者としての反省のお気持ちも持たれているだろうというふうに思いますが、この処分に関しての大臣のお気持ちをお聞かせいただきたいと思います。

長勢国務大臣 お預かりしておった証拠物を紛失するということはあってはならないことでございまして、まことに申しわけないことだと思いますし、私としては、しっかりしてもらいたいという気持ちでいっぱいでございましたので、しかるべく処分をきちんとやるように指示をして今日に至ったと思っております。

石関委員 ある事件に関する証拠物だということなんですが、もちろん捜査中のものであれば、こちらで答弁できる範囲というのもあろうと思いますが、どういう経緯でこの証拠物を入手して、保管をし、それはどういった事件だったのか。入手のルートや、それから事件について、こちらで答弁できる最大限の範囲で御教示をお願いします。

小津政府参考人 不足がありましたらさらに追加して御答弁申し上げますけれども、入札談合事件に関しまして、公正取引委員会が入手して保管しておりました証拠品を東京地検が捜査の必要上借り受けて保管していたものでございまして、それを、公正取引委員会に返却をする際に、段ボール箱一箱分だけ返却をし忘れてと申しますか、そこにミスがございまして、その後、その段ボール箱を発見できないでいる間に焼却処分がなされてしまった、こういういきさつでございます。

石関委員 今の、談合事件ということですが、これはいわゆる緑資源機構の官製談合事件、こういう名前で報道されている事件ということでよろしいですか。

小津政府参考人 御指摘のとおりでございます。

石関委員 段ボール一箱ということだったんですが、全体でどれぐらいの資料があって、そのうちの段ボール一箱だった、全体はどれぐらいあって、そのうちの段ボール一箱がなくなったということなんでしょうか。

水野副大臣 公取からお預かりしたのが全体で約二百箱、そのうちの一箱ということでございまして、その中に証拠物二十六点が入っておったということでございます。

石関委員 では、二百箱のうち百九十九箱については、引き続き保管をしているのか、あるいはいずれかへ返却をした、公取ですか、ということなんでしょうか。あるいは、一部は返却し、一部は独自に持っているということですか。

小津政府参考人 残りについては、公取に返却しております。

石関委員 いろいろな報道によると、そのなくなった一箱というのが特に重要な証拠であった、今捜査中の事件であれば、そうだったとかそうでないかとここで言えるかどうかわかりませんが、こういった報道もされているということですし、二百箱あって、何か、半分なくなってしまったとか、三分の一とか、二箱、三箱というのは、どちらが理解しやすいかというとわかりませんが、二百箱で一箱だけというのも、中身によるのかもしれませんが、証拠がなくなるということがあるんですか。二百箱あって一箱だけなくなるとか、あるいは、ある事件に関する資料がそっくりなくなる。

 過去にも処分があったということなんですけれども、何か、二百箱のうち一箱だけなくなって、いろいろな報道の限りでは、この事件に関して大変これが重要な資料であったという報道もあるんですが、たまたま何だかわからない一箱なのか、あるいは特に重要度の高いものであったのか。何か、二百箱のうち一箱だけたまたまなくなって、それが重要だと言われると、本当なんだろうかと国民の皆さんも大いに疑問に、あるいは好奇心を持たれるところだと思うんですが、いかがですか。

小津政府参考人 まず、これまで全く例がないわけではないと申しました証拠品をなくしたケースで、何かの事件の証拠がごっそりなくなってしまったというふうなことは、少なくとも私の記憶しているところではございませんで、やはり、たくさんある証拠品を扱っているときに、何かに紛れてしまったということが、証拠品につきましても、その他の資料につきましても、過去にあったということでございます。

 本件につきまして、二百箱のうちの一箱でございます。この事例がどのようなものであったかとかいう詳細については、申しわけございませんが答弁を差し控えさせていただきますが、検察の方では、この一箱がなくなったことによって捜査に支障は生じていないというように私どもは報告を受けております。

石関委員 なくなっちゃったので、支障が生じているのかどうかというのはわかりませんし、何かコピーでもとってあったんですかね、わかりませんけれども、ただ、一箱なくなったということですが、検察そして法務省としては、どのような経路で紛失をしたというふうに推測をされているんでしょうか。忽然と消えたということなんですかね。でも、こういう経路でなくなったのではないかと推測ぐらいはされていて、またあるいは再発防止のためにそれはしっかり詰めておかなければいけないということだと思いますが、どのように把握をし、あるいは推測をされていますか。

小津政府参考人 今も御答弁申し上げました、二百箱分の証拠物を公正取引委員会に一括して返すことになりまして、本年の四月二十七日でございますけれども、これを車に積んで公正取引委員会の方に返したわけでございますが、その積み込む作業をしている際の、直接的には点検確認が不十分でございまして、そのうち一箱をその場に積み残してしまったわけでございます。

 その後、直ちに公正取引委員会の方から、証拠品が、返してもらったんだけれども足りないんだけれどもという御照会があったわけでございますが、その段階では検察庁は、組織として、一体そういうことが本当にあったのかどうか、そうだとするとどこに置いてしまったのかということを十分確認ができないままに数日間がたってしまいまして、その間に、その場に置いてありましたので、清掃作業員がそれがごみであるというふうに勘違いをして廃棄してしまったという事実関係が確認されております。

石関委員 ほかにも質問したいことがあるので、余りこれをいつまでもやるつもりはないんですが、それは、積み込みの場所と清掃員が勝手にというか、仕事のうちで回収して回る場所というのは近接した場所にあるんですか。間違ってしまうようなところなんでしょうか。

小津政府参考人 まさに、近接した場所でございました。

石関委員 これは、ただ文書等箱に入っていれば、清掃業者の方は回収してもいいということになっているのか、こういう形態で出してあったものを持っていく、あるいは文書については裁断したものなら持っていっていいとか、何かそういう規則みたいなものはないんですか。それとも、置いてあったら持っていってしまうんだ、そういった清掃人が回収する場所になっているんですか、システムになっているんですか。

小津政府参考人 今、東京地検の方で、清掃業者との間でどのような実質的な話をしているかということまでは承知をしておりませんけれども、少なくとも、裁断してあるものに限定してとかいうことはないと承知しております。

 本件、まさに清掃業者が見て、ここにあるものは捨ててもいいんだなと思うような、ちょうどそういう場所がたまたま積み込みをしていた場所であったということでございまして、清掃業者からすると、ここにある、業者から見たら、それを見ましても、何か要らなさそうなものだなというように見えるようなものだったのだと思いますけれども、それで廃棄してしまったということでございます。

石関委員 これまでも、ウィニーによる情報流出とか政府のいろいろな情報が流出をしてしまった、この委員会でも、また全政府でもこの再発防止に取り組んできているところであり、これも、今回裁判の制度が変わり、法改正をまさにしようとしているところで、被害者の情報をどう守ろうか、こういったことが盛り込まれている中、非常にこれはやはり検察の信頼を損なう、法務全般に、国民の皆さんが本当に大丈夫なんだろうかと、これは裁判所もかかわってくることでありますが、大変不安を催すような事件だというふうにも思います。

 再発防止についての方策というのは何かとられましたか。

小津政府参考人 まず、全般的にこういうことが起こったので、ともかく全国の検察庁で気をつけるようにということにつきましては、最高検の方から通知をたしか間もなく出すかというところでございます。

 もう一点、これまでは、検察庁の方で押収をした証拠品につきましては、正式にこれを検察庁に受け入れて管理をするルールがあるわけでございますけれども、他の捜査機関等から捜査の必要で預かってということにつきましては、そういう捜査の非常に微妙な段階で行われることであるということもあったのかもしれませんけれども、その点についての保管のルールと申しますか内規と申しますか、これが定めてございませんでした。そこで、これを機会に、そのようなものをお預かりした場合について間違いのないようにするためのルールというものをできるだけ早期につくりたいと思っているところでございます。

石関委員 いかなる入手の手段、ルートであっても、やはり証拠品、情報についてはしっかり管理する、当たり前のことでありますので、もし不備であったとすれば大変な問題であると思いますので、しっかりとした整備を早急に進めていただきたいと思います。

 それでは、法改正の今回の内容についてお尋ねしますが、被害者が法廷で被告人に対する処罰についての希望を述べる、こういうことは現行法でもできるということでありますが、今回は、心情を中心とする意見陳述と、これに加えて、被害者が事実または法律の適用に関する意見陳述を行うことができるようにするということでありますが、これを加える、新しくこういった法の適用に関しても被害者が直接に意見を述べられる、こうした理由を簡潔に教えてください。

小津政府参考人 基本的には、犯罪被害者等基本法にありますように、刑事手続においても犯罪被害者の尊厳にふさわしい処遇をするべきだということでございます。

 その場合に、個々のどのようなことをやっていただくのがいいかということにつきましては、これまでにも御答弁は申し上げておりますけれども、基本的には、現在の刑事司法制度の根幹のところは崩さないで、他方で、犯罪被害者の方が強く望んでおられることで、なおかつ、それをお認めすることによって、いろいろな工夫を合わせますと、法廷と申しますか裁判の進行あるいは被告人の権利利益の保護と申しますか防御等についても大きな問題がないと考えられる、そういう事柄について認めていったということでございますので、委員御指摘のそれぞれについても、また詳細が必要であれば御答弁申し上げますが、基本的にはそういう考え方でございます。

石関委員 そういった考え方に基づいて、被害者の方、関係の方が意見を述べられるということになるわけですけれども、意見を述べる被害者あるいは関係者にしても、私自身もそうですけれども、これは政治の仕事としてはこういった場で活動させてもらっていますけれども、自分自身が法廷に被告人あるいは被害者としてもちろん立ったこともありませんし、まして、本当に普通に生活をされている一般の国民の方がこういった場に出て、先日も被害者の会の方からお話がありました、裁判所に入るだけで吐き気がすると。それはいろいろな感情があり、そういうものだろうなというふうにも理解をいたします。我々であれば、少しぐらいやじが飛んできても、せこいやじを飛ばしているなとか小物だな、こういうふうに割り切って質疑を進めることができる、こういうことがありますけれども、やはり裁判というまた特異な場に行くと、なかなか一般の方ではそういうわけにもいかぬのではないかなというふうに思います。

 そこで、先日大臣にもこの関連のことをお尋ねしたんですが、被害者の方の質問や発言のルールというのは具体的にどうなっているんでしょうか。大変緊張してしまう、あるいは興奮してしまってその場で冷静に意見が陳述できなかったり、泣きわめいてしまうとか、あるいは相手に対して非常に激しい言葉を浴びせてしまうとか、いろいろなことが考えられると思うんですが、例えばそのことが裁判員の、これも一般の市民の方から選ばれる裁判員の方に対する影響ということで先日大臣にお尋ねをしたんです。

 実際このような場面になってしまったときに、あるいは事前に、こういった被害者の方には、この範囲でやるんですよ、あるいはこれから逸脱したらこのようになりますよ、出ていってもらうとか、現行法で、こういった心情を中心にした意見の陳述、こういった中においても、被害者の方のいろいろな行動にはこれまでも例があると思いますし、そのことも御紹介いただきながら、今回の法改正において、また一歩進んで意見の陳述というのを被害者が行う場合にそのルールはどのようになっているのか、御教示ください。

長勢国務大臣 細部は刑事局長から補足させますけれども、基本的に、検察官との関係のコミュニケーションの中で、当然内容等についてもコミュニケーションを保って、その範囲内でやることにしております。そしてまた、仮に万が一、今おっしゃるように混乱をするようなというか感情的なような言動がなされる場合には、裁判官においてそれを制止することができるという仕組みにしております。

 もう少し詳しく説明させます。

小津政府参考人 少し運用面も含めまして、御説明申し上げます。

 被害者の方が興奮したりしたときにどうするかということについても、もちろんいろいろな手当てはございますけれども、大事なことは、そういうふうにならないようにするということだと思います。この法律に書いてあることで申しますと、あらかじめ検察官の方でいろいろと質問を受けて丁寧に説明をするということでございますが、そのほかにと申しますか、それ以前にと申しますか、例えば検察庁には、被害者支援員というものを全国の検察庁に置いております。

 ですから、被害者の方に、そもそも刑事裁判というのはどういうものであって、裁判所というのはどういうところであって、そして、例えばそこは、当然被告人の方は無罪の推定があるわけでございますから、認めていない事件については自分が犯人ではないんだと言うんだとか、それから、弁護人の方は被告人を防御する役割であるからこういうことを言うのであるとかいうようなことをできる限り説明して、可能であれば、一度あらかじめ裁判所に来ていただくということもあるのかもしれません。そういうことで、刑事裁判の仕組みについていろいろ知っていただいたり、いろいろな意味でなれていただいて、並行して、検察官は検察官の立場でさらに立ち入って説明をする、ここのところが実は非常に重要なのではないかと思っております。

 被害者支援制度につきましては、私どもも、始めてから結構年数がたっておりまして、それ以来の経験もございます。さらにそこのところも充実させていきたい、このように考えております。

石関委員 事前にはこのようなことでいろいろ配慮されているということでありますし、そこをしっかり充実させてもらいたいということは申し上げておきたいと思います。

 これはあくまでも事前の取り決めなり御理解をいただくという努力であって、いわば通信教育で空手を習っているようなもので、実際に試合に出てみたら役に立たない、さんざん聞かされてきて、そうですねと聞いていますけれども、先ほど申し上げたように、いざ法廷に入っていったら全く雰囲気が違ってわからなくなってしまう、こういった例は、逆にむしろ多いぐらいではないかなというふうに思われます。

 では、現行はどのようになっているかを裁判所の方にお尋ねしたいと思います。

 意見陳述をする被害者の方が取り乱してしまったり、そういった例もあろうと思いますが、もし挙げられる例があれば挙げていただいて、そういった場合にはどのような対応をされているのか。先日も、大臣の御答弁の中で、当然裁判官が法廷の指揮権を持っているというわけで、感情的な場合には抑制ができるということでありますが、現状、例を挙げられれば挙げていただいて、どのような対応をしているか教えてください。

    〔倉田委員長代理退席、委員長着席〕

小川最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 被害者の方が、法廷に来られて、非常につらい思いをしてなかなか意見陳述もしにくいというような場合は、付き添いを置いたり、意見陳述の場合に被告人から見えないように遮へいをしたり、それからビデオリンクで意見陳述をされるというようなこともございます。

 それから、私どもとしては、特に、例えばこういう場合に大混乱が起きて大変だったというようなことはちょっと報告を受けておりませんので承知しておりませんし、どういう場合にどういうふうに裁判長が制止したかとかいうようなこともちょっと報告を受けておりませんので、その点は承知しておりません。

石関委員 被害者の会の方からもいろいろな御意見をこちらでもいただいておりますし、裁判の場に出ていこうと、傍聴であっても、そこまでに非常に大きな思い切りが必要だということもありますから、思い切って出られた方のその場での言動というのは一定のものがあるのかなというふうには思いますが、十分に御配意をいただかなければいけませんし、裁判所の中での、裁判所あるいは検察等の今後そういった場におけるいろいろなルールというのもしっかり決めていっていただきたいというふうに思います。

 そして、このように被害者の方が裁判に参加をするということになりますと、いろいろな懸念もあるわけです。

 私の地元の群馬弁護士会からも声明をいただいております。「犯罪被害者の刑事訴訟参加制度に関する声明」ということですが、結論としては、一定の理解を示している部分もありますが、反対であるというのがこの声明の内容なんですね。私もこれをじっくりと読ませていただきました。そのうちの反対の理由の一つが、犯罪被害者等の私的復讐の場を国家が提供してしまう、この危うさが否定できないんだということであります。被告人による犯罪被害者等に対する逆恨みを増幅させるなどの悪影響も十分に懸念されると。

 せんだっての審議の中で私は申し上げましたが、やはり公益の部分ですね。大臣からも御説明がありました、こういう罪を犯すとこうなりますよと、威嚇効果があったり秩序を保つ、こういった部分と、それから応報の部分と両面あろうかと思いますが、こうやって被害者が参加することで、いろいろな配慮もあろうと思いますけれども、面と向かってやることで加害者の方からさらにまた恨みを買ってしまって何らか法廷の外でまた被害を受けるということもあろうと思いますが、現行の中では、こういったいわゆる逆恨みの被害、二次被害と言っていいんでしょうか、これはどんなものがあるんでしょうか。

小津政府参考人 私どもで承知しております一つのケースについて申しますと、これは、犯罪被害者の方が加害者の逆恨みで被害に遭った事例でございます。

 平成二年の三月に東京地裁におきまして強姦致傷、窃盗等々の罪で懲役七年の刑に処せられて服役した者が、平成九年の二月に出所した後に、その事件の被害者が被害を警察に訴えたことを逆恨みいたしまして、その被害者の女性の方を殺害しようと企てて、団地のエレベーターホール内で包丁で突き刺して殺害し、その際、その方のハンドバッグをとったという痛ましい事件でございまして、この事件につきましては、その被告人に対し、平成十一年五月に無期懲役の判決が言い渡されましたが、平成十二年の二月に東京高裁において原判決を破棄して死刑にする判決が言い渡されて、十六年十月に上告が棄却されたものと承知しております。

石関委員 それでは、最後に、大臣に今のを受けてお尋ねをしますが、先ほど質問して答弁があったとおり、これからまた踏み込んで法の適用やそれから事実についての陳述も被害者の方ができるようになるということで、さらに、とんでもない話ですけれども、逆恨み、こういったような事件というのが、また逆恨みの感情というのを増幅させてしまうんではないか、私もこのような懸念を抱いているんです。

 このことについて、大臣、もしかしたらあるかもしれない、それについてはこのように守っていくんだとか、大臣のお気持ち、またあるいは決意を含めて、最後にお尋ねをしたいと思います。お願いします。

長勢国務大臣 御指摘のような二次被害といいますか、逆恨みはもとよりあってはならない、当然のことだと思います。また一方で、最前から申しておりますように、被害者の報復の場でもないわけでありますから、そういうことになれば二次被害の問題がまたさらに大きくなる。

 よって、法廷での活動がそういう問題から遮へいされるようにいろいろな措置を講じておるわけでございまして、被害者参加人が訴訟活動についても、先ほど来お話ししているように、混乱を生じることのないように措置を講じておりますし、また、参加した方々が被告人との関係でおかしなことが起きないような、顔を合わせないとか、いろいろな意味での考慮も今後十分に考えていかなきゃならないというふうに思います。

石関委員 ありがとうございました。

 大臣、今おっしゃったようなことをしっかり現実化して、確保するということをさらに御努力されることを御期待申し上げます。ありがとうございました。

七条委員長 次に、高山智司君。

高山委員 民主党の高山智司でございます。

 きょうは、大事な犯罪被害者の方のお気持ちを考えて慎重に審議をしなきゃいけないし、前回、きのうですか、参考人質疑をさせていただきまして、本当に気持ちの入ったというだけでなくて、我々が机上の空論で話していることが、実際にはこういうお気持ちで皆さんいるんだなということが改めてわかったわけでございます。

 それで、我々としても、この委員会の中で、裁判員が入ったときに、では、実際バーの中に入ったら被害者の人たちはどういう感じで質問していくのであるとか、あるいは、実際に今被害者の意見陳述の制度というのは、裁判所の中で、どういう待合室になっていて、どういうふうに行われているのかというのはなかなかわからないものですから、視察をしようじゃないかということで、昨日視察に行こうかと思っていたんですけれども、昨日、どういうことか本会議がなかなか開催されないで、視察にも行けなかったものですから、まず、予定していたこの視察についてちょっと伺いたいと思うんです。

 きのう、本会議があるにもかかわらず、何か与党の方だけで視察に、ちょっと行ってこようかぐらいの感じで行かれたということで、私としては、きちんと時間をとってしっかりとした視察をやらなければいい法案審議ができないなと思っておりまして、我々、この後、委員会質疑が終わりまして、ゆっくりと視察をさせていただく予定なんです。

 まず、これは最高裁に伺いたいと思うんですけれども、きのうの視察のことなんですけれども、どういうような視察を行ったのか、この内容について教えてください。理事会では、どういう視察に行くという案、本会議終了後九十分程度ということで配られているんですけれども、なかなか委員の皆さんわからないので、最高裁の方で説明してください。

小川最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 昨日の法務委員会の視察は、約一時間の日程で行われました。

 東京地裁から、東京地裁における被害者の意見陳述の実施状況について御説明をさせていただきました。そして、裁判員用の法廷、ビデオリンク設備の置かれている法廷、被害者待合室の三カ所の御視察をいただきました。裁判員用の法廷では、実際の事件を題材にした被害者の意見陳述を、現在の手続に従って、職員によって実演させていただいたものと承知しております。

高山委員 今最高裁の方で、約一時間というようなお話でしたけれども、もともとこれは理事会で九十分ぐらいということで視察の日程を組んでいたと思うんですけれども、なぜそんなに短くなったんですか。

小川最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 委員会の方からそのように申し出がございました。

高山委員 これはあえて今言いませんけれども、やはりばたばたした状態で行くとなかなか委員会日程もこなせないと思いますので、きょう我々の方でもう一度視察に行きますので、もし参加されたい先生方がいれば、きちんと手配をしてありますので、ぜひ一緒に行っていただきたいし、また、視察にきちんと行って、その場で、これだったら本当に被害者の方が圧迫を受けるんじゃないかなとか、そういうことをきちんと検証する必要があると思うんですね。

 我々は、条文だけ見て、ではこれでいいんじゃないのかな、被害者の訴訟参加ができたからもうこれで仕事は終わったんだ、あたかもそのような態度で本当にいいのだろうか。我々委員が真剣に、実際に法廷に行ってみたら、これは確かに被害者の人が加害者を目の前にして圧迫を受けるかもしれないから、こういうのを使ったらいいじゃないかとか、こういうことを現場に行ってきちんと考える機会というのを、やはりゆっくり時間をとってやらなければいけないなというふうに私は思っております。

 そこで、まず法務大臣と副大臣に伺いたいと思うんですけれども、要するに私が何を聞きたいかと言えば、今回、裁判員制度であるとか被害者の訴訟参加ということでございますけれども、実際、条文上で刑事訴訟法のこの部分だけ改正だということであると、なかなか実感がわかないと思うんです。また、この間の参考人のときには、政務官は委員でもありますのでいらっしゃいましたけれども、大臣、副大臣はいらっしゃらなかったと思います。

 そういった中で、大臣、副大臣、大臣から伺っていきますけれども、まず、実際の裁判員制度の模擬裁判というんですか、そういうのがどういうふうに行われているか、体験なりなんなりしたことがあるのでしょうか。

長勢国務大臣 裁判員制度の模擬裁判に私は参加したことはございません。

高山委員 では、副大臣に伺います。

 裁判員制度の模擬裁判というもの、これは今司法関係の中で一番のテーマだと思うんですけれども、こういったものに参加されたことはありますか。

水野副大臣 千葉で行われたもの、参加というのは何をもって参加というかということなんでしょうけれども、裁判員役ではなくて、そのやっているところを傍聴したことはございますし、実は、きょうから法曹三者で、きょう、あす、あさってだったと思いますけれども、そういうのを予定しておって、できれば傍聴したいなと思っていたんですが、これは国会日程と絡むことで、無理だったということでございます。

高山委員 水野副大臣、御熱心に傍聴もしていただいて非常にいいと思うんですけれども、きょう我々視察に行くのが、被害者の待合室ですとかビデオリンクの常設法廷とか、そういうところを見に行こうかなと思っているんですね。これはすごく大事なことだと思うんですよ。被害者の訴訟参加だ、これは犯罪被害者等基本計画に基づいて被害者に対する配慮の一環として始まったものだ、当然そうだと思うんです。

 またこれも大臣、副大臣に伺っていきたいと思うんですけれども、きのうの参考人のお話の中でも、本当に裁判所の中に行くだけでも気分が悪くなってしまうなんという方もいるらしい。実際私も、本当に犯罪被害に遭って裁判所の法廷の中に入っていくというのはちょっとイメージできないので、きょう見てこようと思っているんですけれども、大臣は、裁判所内の被害者の控室であるとか、こういうのはごらんになったことはありますか。

長勢国務大臣 そういう経験はございません。

高山委員 我々、きょう十六時からですけれども、見学に行きますので、本当に、よろしければ大臣にも見ていただきたいなというふうには思います。

 副大臣に同じ質問を伺いますけれども、副大臣は、この被害者の控室等は見学に行ったことはありますか。

水野副大臣 裁判の傍聴はございますけれども、控室ということを特に意識してということではなかったので、申しわけございません。

高山委員 これは被害者の訴訟参加ということで法案審議をしているわけでして、本当に、今の被害者がどういう状態なのか、そして、不備があるから、ではこういうふうに変えていくんだということで、ぜひ現場の見学に行っていただきたいなとは思います。

 また、ビデオリンクというのはどういうものなのか、そしてこのビデオリンクというもので見ると、それが実際、本当の現場のバーの中での裁判とどういうふうに異なるものなのか、これは私も見たことがありませんので、きょう見てくるわけです。

 法務大臣に伺いますけれども、まずビデオリンクというのがどういうものなのかということを理解されているかどうかということと、それを理解されている上で、実際にそういうものを見たことがあるのか、体験されたことがあるのか、教えてください。

長勢国務大臣 見たことはございません。法廷外で、様子が映像で見られる装置だろうと思っていますけれども。

高山委員 今大臣、ビデオリンクというのも見たことはない、理解は何となくはしているというような多分御答弁だったと思います。

 副大臣に伺います。ビデオリンクというのがどういうものだという御理解で、また、これを実際に体験なり、見たことがあるかどうか。

水野副大臣 大臣と同じでございまして、直接的に拝見をしたということはございませんので、イメージの中でということでございます。

高山委員 私、やはり視察はすごく重要だと思うんですよ。というのは、今大臣、副大臣の御答弁にもありましたように、やはり見たことがないわけですよね。

 それで、今、ではこの犯罪被害者の問題というのはどうだったんだろうということを考えてみますと、幸いといいますか、我々国会議員や先生方は、これはわかりませんけれども、私なんかもそうなんですけれども、物すごい犯罪の被害に遭ったことというのはまだ幸いないんです。ですから、本当に犯罪被害に遭った場合に実際自分がどういう状態に置かれるのか、例えば、世間様から、いや、おまえが悪かったんじゃないのかとか、いわれのないそういうことを言われたり、あるいは、加害者が裁判の場で現実的でない反論をしてきて本当に悔しい思いをする、こういうことがまだ結局私たちにはわからないわけです。

 現行法でも、被害者の意見陳述やら何やらいろいろ方法はあるわけですよね。それを改正して、さらに新しく、被害者に訴訟参加をさせるというのが実際どういうことなのか。少なくとも、現時点で被害者が裁判上どういう扱いをされているのかというのは、私は、大臣として、また副大臣として知っておいていただきたいなと本当に思います。ですから、きのうの視察も、本当は、与野党で、ゆっくりと時間をかけて、しっかりその現場で質問をしたかったなと思うんです。

 これも最高裁に伺いたいと思うんですけれども、予定を見ると、最後、質疑応答というようなことが書いてありますけれども、どういう質疑応答がなされたのか、教えてください。

小川最高裁判所長官代理者 最後に会議室に戻っての質疑応答はございませんが、それまでの過程で質疑応答はなされたものと承知しております。

高山委員 私が聞いておりますのでは、この最後、本会議が迫っているので質疑応答しないで帰ってきたということですけれども、本当に犯罪被害者の気持ちを理解しよう、あるいは犯罪被害者の立場に立って考えようというのであれば、もう少しきちんと時間をとってやられたらいかがだったのかなと思っておりますし、また、私たちがきょうたっぷり時間をとって伺いますので、ぜひそれにも参加していただきたいというふうに思っております。

 大臣はお時間があるようなので、もうこれで結構です。

 最後に、副大臣に伺います。

 副大臣、随分ごぶさただったんですけれども、どちらに行かれていたのでしょうか。法案審議にほとんど見えなかったものですから、どのような公務で行ってきて、どういう獲得があったのか、説明してください。

水野副大臣 五月の二十三日から二十五日まで、ドイツのミュンヘンにおいて、G8の司法閣僚と内務閣僚の関係閣僚会議がございまして、各国大臣が出席しておったんですけれども、国会の関係もございまして、長勢大臣の代理として私が出席してまいった、そういうことで先週、ごぶさたをいたしまして、失礼いたしました。

 この会議では、テロ対策とか知的財産権の保護とか児童の性的虐待対策などの意見交換を行ってきたというようなことでございます。また、来年、G8のサミットが日本で行われるということがございますので、この関係閣僚会議も東京で行われる予定でございますので、そうした招請などについても行ってまいったということでございます。

高山委員 大変大事な会議で、副大臣も御活躍だと思うんですけれども、来年の洞爺湖のサミットは環境がテーマだということですけれども、関係閣僚会議の法務といいますか司法関係、これは何がテーマになるんですか。

水野副大臣 テーマについては、当然、司法関係のさまざまな問題になると思いますし、今からいろいろな調整はしていくわけでしょうけれども、当然、例えば、テロ対策を初めとするさまざまな問題、もしくは、ことしなどは移民の問題とか入国管理行政なども大きいテーマでございましたから、そこはいろいろな各国との調整もあると思いますけれども、さまざまなものが取り上げられるのではないかな、そんなふうに思っております。

高山委員 来年は日本が議長国といいますか、リーダーシップをとってやられると思うんですけれども、ちょっと今のは余りにも漠然としているんですけれども、副大臣として、どういったことに取り組んでまいりたいということを考えているのか、議長国として、リーダーシップをどうとっていくのか、ちょっと教えてください。

水野副大臣 議長国の、来年の時点でその職にあるのかどうかわかりませんが、しかしながら、もちろん、継続的に大切なことというのは多くあると思いますけれども、個人としてというよりは、やはりことしのテロ対策、特にことしの議論の中でも、インターネットなどを使って、そういうようなものが悪用されるのではないかとか、さまざまな議論もございました。また、これはどちらかというと内務、司法と同時に内務関係、警察関係の閣僚の方も集まっておりましたので、そうした中では、アフガニスタンの麻薬問題とか、そういうような個別の問題でも、非常に世界各国において深刻に取り扱われている問題が取り上げられておりましたので、こうしたことに対しての取り組みも必要なのではないのかな、そんなふうに思っております。

高山委員 水野副大臣の方も、来年までその職にというのは、これはやはり七月の選挙前に内閣改造という情報が副大臣のところにも届いているのかもしれませんけれども、それはわかりません、私には。

 それで、副大臣に伺いたいんですけれども、これは関係閣僚会議ということで行かれて、次は東京でということですけれども、犯罪被害者対策は何か話題になりましたか。

水野副大臣 犯罪被害者対策に関しては全体的な会合の中で取り上げられたということはございませんでしたけれども、日独のバイラテラルな会談においては、ドイツにおいても、犯罪被害者の方が法廷で意見を述べたりすることができる、そういうような制度が先に導入されていたりするというようなこともございますので、こうしたことについて意見交換をさせていただいたということはございます。

高山委員 いろいろ意見交換を熱心にされたということですけれども、犯罪被害者に対する思いやりというか、配慮というんでしょうか、日本人の気遣いというか、そういうのは、世界に比べても随分リードしている部分というのがあると私は思うんですよね。そういった意味で副大臣は何か発言されましたか。

水野副大臣 私から申し上げたのは、日本においてこういうような法案というものが今まさに議論をされているところだ、それに対して、もちろんその中で賛成論、反対論が当然あるわけですけれども、一方で、法廷が報復の場になるとか復讐の場になるというような懸念も、一部というか、そういうような声も中にはあるというようなこと、それで、ドイツにおいて現実にそういうような問題はどうなんでしょうかというようなことをいろいろお伺いをして、意見交換などをさせていただいた、そういったようなことでございます。

高山委員 今、犯罪被害者に対する配慮の中で訴訟参加ということが法案として審議されていて、実現しそうな運びでございますけれども、これは、政務官にせっかくお座りいただいたので伺いますけれども、これで十分ですか。犯罪被害者の訴訟参加ということだけで犯罪被害者の方に対する配慮としては十分なのか、これをただ拡充しろというのではなくて、本質的なことでこれが足りていないというものが、もうお気づきの点が政務官はあると思いますので、教えてください。

奥野大臣政務官 いろいろ社会のルールを変えていくときには、我々の知恵を絞って、ベストと思われるアイデアを組み立てて、そこで実行に移してみて、足らないことがあれば、後からつけ加えるということもあろうかと思います。

 ただ、今、足らないかなというふうに私自身が個人的に考えていることは、まだこれを具体的にどうするかということではないと思います、今すぐやるということではないと思いますけれども、被害に遭った方というのはその後の生活保障というのが非常に難しい問題を抱えるんだろうなと私自身は思います。

 ですから、そういったことも含めて、実行した後で、直すべきことあるいは追加するべきことがあれば考えていくということがこれからの課題ではないかと思います。

高山委員 我々民主党も、今回の被害者の訴訟参加ということで、大きな一歩ではありますけれども、まだまだ足らざる点あるいは問題点が委員会の質疑によって明らかになってまいりましたので、本日、修正案を出させていただきたいと思っております。

 また、きょう視察に行って、きちんと現場を踏まえた上で、有益な提案をしてまいりますので、これは与党の方からも大いに修正協議をやろうじゃないかというお話をいただいておりますので、ぜひとも与野党一致して真摯な審議をして、いい成案ができればと思っております。

 政府の方は、なかなかお忙しいかとは思いますけれども、ぜひ、この後伺いますので、お時間がよろしければ一緒に御参加ください。

 終わります。

七条委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後二時五十九分休憩

     ――――◇―――――

    〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕


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