衆議院

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第4号 平成19年11月6日(火曜日)

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平成十九年十一月六日(火曜日)

    午前九時三十二分開議

 出席委員

   委員長 下村 博文君

   理事 倉田 雅年君 理事 実川 幸夫君

   理事 柴山 昌彦君 理事 早川 忠孝君

   理事 水野 賢一君 理事 加藤 公一君

   理事 細川 律夫君 理事 大口 善徳君

      赤池 誠章君    稲田 朋美君

      上野賢一郎君    小里 泰弘君

      近江屋信広君    後藤田正純君

      佐藤ゆかり君    清水鴻一郎君

      七条  明君    杉浦 正健君

      武田 良太君    棚橋 泰文君

      長勢 甚遠君    古川 禎久君

      馬渡 龍治君    武藤 容治君

      森山 眞弓君  やまぎわ大志郎君

      矢野 隆司君    保岡 興治君

      柳本 卓治君    石関 貴史君

      枝野 幸男君    大串 博志君

      河村たかし君    中井  洽君

      古本伸一郎君    松木 謙公君

      村井 宗明君    西  博義君

      保坂 展人君    滝   実君

    …………………………………

   法務大臣         鳩山 邦夫君

   法務副大臣        河井 克行君

   法務大臣政務官      古川 禎久君

   最高裁判所事務総局総務局長            高橋 利文君

   最高裁判所事務総局人事局長            大谷 直人君

   最高裁判所事務総局経理局長            小池  裕君

   最高裁判所事務総局刑事局長            小川 正持君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    米田  壯君

   政府参考人

   (法務省大臣官房長)   池上 政幸君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          菊池 洋一君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    大野恒太郎君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    梶木  壽君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  稲見 敏夫君

   政府参考人

   (公安調査庁長官)    柳  俊夫君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           久保 公人君

   法務委員会専門員     小菅 修一君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月六日

 辞任         補欠選任

  赤池 誠章君     小里 泰弘君

  後藤田正純君     上野賢一郎君

  棚橋 泰文君     佐藤ゆかり君

  保岡 興治君     やまぎわ大志郎君

  枝野 幸男君     村井 宗明君

  河村たかし君     松木 謙公君

  中井  洽君     大串 博志君

  神崎 武法君     西  博義君

同日

 辞任         補欠選任

  上野賢一郎君     後藤田正純君

  小里 泰弘君     赤池 誠章君

  佐藤ゆかり君     棚橋 泰文君

  やまぎわ大志郎君   保岡 興治君

  大串 博志君     中井  洽君

  松木 謙公君     河村たかし君

  村井 宗明君     枝野 幸男君

  西  博義君     神崎 武法君

    ―――――――――――――

十一月五日

 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第八号)

 検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第九号)

同月二日

 国籍選択制度の廃止に関する請願(松木謙公君紹介)(第四一五号)

 同(近藤昭一君紹介)(第四三七号)

 成人の重国籍容認に関する請願(松木謙公君紹介)(第四一六号)

 同(近藤昭一君紹介)(第四三八号)

同月五日

 国籍選択制度の廃止に関する請願(渡辺周君紹介)(第四九七号)

 成人の重国籍容認に関する請願(渡辺周君紹介)(第四九八号)

 重国籍容認に関する請願(土肥隆一君紹介)(第六〇三号)

 民法七百六十六条・八百十九条改正及び非親権者と子の面会交流を促進するための特別立法に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第六〇四号)

 同(石井郁子君紹介)(第六〇五号)

 同(穀田恵二君紹介)(第六〇六号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第六〇七号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第六〇八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第八号)

 検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第九号)


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     ――――◇―――――

下村委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。鳩山法務大臣。

    ―――――――――――――

 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案

 検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

鳩山国務大臣 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を便宜一括して御説明いたします。

 政府においては、人事院勧告の趣旨等にかんがみ、一般の政府職員の給与を改定する必要を認め、今国会に一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案を提出いたしておりますが、裁判官及び検察官につきましても、一般の政府職員の例に準じて、その給与を改定する措置を講ずるため、この両法律案を提出した次第でありまして、改正の内容は、次のとおりであります。

 裁判官の報酬等に関する法律の別表に定める十一号以下の判事補の報酬及び十六号以下の簡易裁判所判事の報酬並びに検察官の俸給等に関する法律の別表に定める十九号以下の検事の俸給及び十四号以下の副検事の俸給につきまして、おおむねその額においてこれに対応する一般職の職員の給与に関する法律の適用を受ける職員の俸給の増額に準じて、いずれもこれを増額することといたしております。

 これらの給与の改定は、一般の政府職員の場合と同様に、平成十九年四月一日にさかのぼってこれを行うことといたしております。

 以上が、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案の趣旨であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。

下村委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

下村委員長 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として警察庁刑事局長米田壯君、法務省大臣官房長池上政幸君、法務省大臣官房司法法制部長菊池洋一君、法務省刑事局長大野恒太郎君、法務省矯正局長梶木壽君、法務省入国管理局長稲見敏夫君、公安調査庁長官柳俊夫君、文部科学省大臣官房審議官久保公人君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

下村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

下村委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局高橋総務局長、大谷人事局長、小池経理局長、小川刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

下村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

下村委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。近江屋信広君。

近江屋委員 ありがとうございます。自由民主党の近江屋信広であります。

 鳩山法務大臣は、大臣所信におきまして、和の文明、そして美と慈悲の文明という我が国固有の伝統、それを不易のものとして、世界一安全な国日本を復活させようと力強く述べられました。鳩山大臣独自のそうした思想、哲学に基づいて、法務行政において力強いリーダーシップを発揮していただきたいと存じております。

 また、法務大臣として、やはり世の中に対して問題提起をしていく、また、しっかりとした発信をしていくということも大事なことと思いますので、議論を引き起こすということを恐れずにぜひ頑張っていただきたいと存じておりますが、その点、法務大臣、いかがでございましょうか。

鳩山国務大臣 さまざまな問題提起をしていかなければならないと思いますし、また、司法制度改革ということもございますから、新しい仕組みの中で、例えば裁判員制度も始めるし、法テラスに頑張っていただくとか、さまざまな課題があると思っております。

 ただ、要は、私たちの目的、目標は日本を安全な国、幸せな国に導いていくことであって、日本人には本来そういう資質があるんだから、そのいい資質を引き出すのが犯罪をなくす幸せな国家への第一歩にあると思っております。

 そのことを私は、縄文以来の和をなす文明、和の文明と書きましたけれども、正確には和をなす文明、これの反対語というのは敵をつくる文明ということで、常に敵をつくっておいて発展してきた文明もありますので、美と慈悲の文明という言葉の反対語は力と闘争の文明というふうに学者さんは言っておるわけでございます。

 結局、この日本人のもともと和をたっとぶ精神は、聖徳太子の和をもってたっとしとなすということに始まるのではなくて、律令の時代よりも前の、もちろん大化の改新よりも前の、弥生時代よりも前の、縄文時代から発している。

 縄文文明というのは非常に平和な文明で、約一万年近く続いたと思われるわけです。まず、病気がほとんどなかった、インフルエンザも結核も何もなかったということも皆さん御承知であろうかと思いますが、そもそも戦うということがなかったので、武器というものをつくる発想さえ持たない文明がそこにあった。これは、ちょうど中国の長江文明に対応するわけでございまして、そのころからの非常にいいものを持っている。

 それが、例えばですが、現代において、日本人は和をなす文明、美と慈悲の文明を根本に持ちながらも、何か利潤とか効率性を第一とするような風潮、人の気持ちを顧みず、ただ自分だけがよければそれでいいというような空気、これが優しさに満ちあふれた日本人の姿を変質させてしまっているのではないか。

 それは、第二次世界大戦後の、伝統的な日本的価値観へ占領軍が疑問を持ってこれを破壊しようとしたと見ることができるだろう、こう思うわけです。例えば、海外からやってきて日本の中ではやっていくのがMアンドAだとかテークオーバービッド、TOBだとか、そういうものが経済や経営の社会であってはいけないとは言わないけれども、そういうものを第一義に考えて、利潤第一で狂奔する姿勢というのは、私は日本人の本来の姿ではないように思っております。

 そういった意味で、近江屋先生の御指導をいただきながら、もちろん、具体的に犯罪をなくす、そのために全力を挙げますけれども、日本文明のいいものを引き出すというのは、教育、文化すべて含めての大課題でございますので、お力添えをいただければありがたいと存じます。

近江屋委員 大臣の貴重な御教示をありがとうございました。

 さて、裁判官の報酬、検察官の俸給についてであります。

 今回、公務員一般に合わせて、裁判官と検察官についてもその給与を久々に引き上げる内容の法案が提出されましたことは、司法改革が進んでいる中で、司法の担い手の待遇を多少なりとも改善する意味を持つと思います。しかしながら、裁判官や検察官の待遇を全体として眺めたときに、これで本当に十分なのかということは考えていく必要があろうかと思います。

 例えば、MアンドAなど大規模なプロジェクトを担当する、それにかかわる弁護士は報酬が大変高額になっていく、そのような世情の中で、優秀な裁判官や検察官の人材をどう確保していくか、それを進めていかなければなりません。

 裁判官や検察官の報酬を全体として増額することも考えるべきだと思いますが、河井法務副大臣にその点のお考えをお尋ねいたしたいと存じます。

河井副大臣 裁判官及び検察官の給与制度は、給与の仕組みにおきまして、その職務と責任の特殊性を相当程度反映し、また給与水準において一般の行政官と比べてある程度の格差を保つように定められております。

 例えば、裁判官の報酬につきましては、憲法で相当額の報酬が保障されておりますし、検察官につきましても、司法権の発動を促し、その適正、円滑な運営を図る上で極めて重要な職責、原則として裁判官と同一の試験と養成方法を経るということもございますので、既にある程度の格差を保つようになっております。

 しかしながら、国家公務員として、現在の給与制度の考え方は、あくまで公務員全体の給与体系の中で、裁判官と検察官の給与も均衡のとれたものにするということが定められておりまして、合理性はあるというふうに考えております。

 もっとも、今、近江屋先生御指摘のとおり、司法がこれからも国民の期待にしっかりとこたえるためには、裁判官、検察官、すぐれた人材を数多く確保する必要があります。

 今、MアンドA等の弁護士の話をされましたが、大手の弁護士事務所、初任給が一千万を超えているというところもあるやに伺っておりますが、ただ、現状におきましては、すばらしい人材が、裁判官、検察官、集まっていると私たちは確信をしておりまして、お給与の額だけではなくて、使命感、そして仕事への本当のやりがい、それをしっかり持っていただいている人たちが集まっておりまして、このような観点も踏まえながら、これからも必要に応じて、今先生御指摘の点につきましては検討していきたいと考えております。

近江屋委員 ありがとうございました。

 続きまして、冤罪事件について御質問させていただきたいと思います。

 まず、本年二月、鹿児島県議選をめぐる選挙違反事件で、鹿児島地裁判決が、自白調書の信用性を明確に否定しまして、十二人の被告全員に無罪を言い渡したいわゆる志布志事件、それから、既に実刑判決が確定した事件に関して、別の真犯人の存在が明らかになったという、平成十四年に発生したいわゆる氷見事件、この二つの冤罪事件についてであります。

 この両事件につきましては、最高検察庁は平成十九年八月に、捜査、公判活動の問題点を検証した報告書を公表いたしました。その概要、特に再発防止の点にポイントを置きまして、検察庁から御説明をお願いしたいと思います。

大野政府参考人 お答えいたします。

 最高検察庁は、ただいま委員御指摘のとおり、ことしの八月、両事件におきます検察官の捜査、公判活動の問題点を中心に事件の経過を検証いたしまして、その問題点等を分析し、将来の教訓とすべき点を再発防止策として明らかにしております。

 その概要でございますけれども、まず捜査の問題点につきましては、一つは、例えば供述の信用性の吟味が十分でなかったこと、それから、アリバイなど、犯人による犯行の存在を疑わせるいわゆる消極証拠の検討が十分でなかったこと、さらに、警察捜査とのかかわりのあり方に対する配慮や検察としての捜査体制に関する合理的な検討が十分でなかったというようなことを述べております。

 また、公判につきましては、争点が十分に絞られずに公判が長期化したこと、あるいは検察官として身柄拘束期間の短縮を配慮すべきであったこと、今の二つは特に志布志事件の関係でございますけれども、そうしたことが指摘されております。

 その上で、二つの事件を通じた再発防止策として、次の六点を指摘しているわけでございます。

 第一点は、先ほども申し上げましたけれども、消極証拠を含めまして、収集した証拠を慎重に吟味するということでございます。つまり、犯人がその犯罪事実を犯したのではないかという積極方向の証拠に偏って評価するのではなしに、消極証拠も含めて、証拠を総合的に慎重に吟味、判断することということでございます。

 それから二つ目は、警察捜査との関係でございますけれども、警察から送致を受けた事件につきましても、検察官が早い段階から積極的に捜査に関与して、適切に警察との連携を図ること等が指摘されております。

 三つ目、四つ目は、むしろ検察の組織としての捜査のあり方に関する点でございます。

 三番目、決裁検察官、つまり主任検察官の上司に当たる検察官において、事件処理等につきまして、きめ細かな適切な指揮、指導を行うことということでございます。つまり、組織としてのチェック体制を働かせるということでございます。

 四点目は、これも決裁検察官、上司でありますけれども、上級庁等とも連携いたしまして、その事件の捜査処理にふさわしい適切な捜査体制を確立することということでございます。

 五番目、六番目、これは公判の関係でございます。

 五番目は、公判前整理手続を積極的に活用して、早期公判、公判の迅速化を実現するように努めることということでございます。公判前整理手続は、この二つの事件の段階ではまだ導入されていなかったわけでありますけれども、おととしから実施された手続でございますので、これを活用するということが提言されております。

 六つ目は、身柄拘束期間の適正化に留意するということでございますけれども、公判前整理手続の活用等によりまして、争点を意識しためり張りのある立証計画を立てることが可能になります。それによって無用に被告人の拘束を長引かせないというようなことについても、今後十分留意すべきであるというような提言をしているわけでございます。

 以上です。

近江屋委員 その再発防止策について今法務省からお伺いをいたしましたが、あわせて警察庁からも、防止策、どのような具体策を講じられようとしているのかをお伺いしたいと思います。

米田政府参考人 警察庁におきましても、氷見の事件あるいは鹿児島の志布志の事件を受けまして、三月八日に緊急の通達を発出いたしまして、全国に緻密かつ適正な捜査を指示いたしまして、さらにこれを徹底すべく、各種の会議はもとよりでございますけれども、刑事局の幹部を全都道府県警察に派遣いたしまして徹底いたしております。

 それから、適正な捜査に資するために、制度面では犯罪捜査規範を改正いたしまして、単に調書を読み聞けさせるだけではなくて閲覧をさせる、かつ、各ページにすべて被取り調べ者の押印を求めるというような制度もやっております。

 そのような緊急の対策を実施してまいりましたが、実は、先般、十一月一日に国家公安委員会におきまして、警察捜査の取り調べの適正化について決定がなされました。この二つの事件を受けて、非常に警察捜査に対する信頼が揺らいでいる、さらに再来年から裁判員裁判も実施される、そういう中で、裁判員にわかりやすく警察の捜査のことが理解されなければならないというような問題意識のもとに、取り調べに対する監督の強化等の四項目につきまして、これを早急に検討し、逐次実施していくようにというような御決定をいただきました。

 現在、その決定に基づきまして、私どもでは、具体的な問題点に沿って、そして実効ある方策を指針という形で年内をめどに取りまとめるべく、現在作業中でございます。

近江屋委員 法務当局から再発防止策をお伺いいたしました。この線に沿ってさらに具体化を進めていただきたいと存じます。

 また、警察庁については、国家公安委員会決定、十一月一日の警察捜査における取り調べの適正化についてという書面が出されておるということですが、これはまことに抽象的でありますので、十二月をめどに取りまとめるその具体策については、ぜひ国民の納得が得られるような具体的な方策、実効性ある方策を講じていただきたいと存じます。

 それから、今回の冤罪事件でありますが、やはり担当の警察官、検察官に対して何らかの処分があり得べきではないか、やはりどんな組織であっても違法、不当な事態が生じた場合は責任の明確化が求められるのは当然のことと存じますので、警察当局及び法務当局におかれてはどのような処分が行われたのか、それをお伺いいたしたいと存じます。

大野政府参考人 これらの事件につきましては、先ほども申し上げましたように、最高検察庁におきまして、どうしてこのような結果に立ち至ってしまったのか、その経緯を詳しく検証、調査したわけでございます。

 その結果、先ほども申し上げましたように、検察官の判断におきまして不十分な点があったことが明らかになったわけでありますけれども、それと同時に、検察組織として事件捜査の管理等におきまして、やはり適切でなかった、不十分であった点も同時に浮かび上がってきたわけでございます。そして、具体的な事件を担当しました検察官に対しましては、そうした検証の過程で、最高検察庁等から、厳しくと申しましょうか、種々の具体的な指導がなされております。ただ、判断、捜査活動等において不十分な点があったとはいえ、それが職務上の義務に違反したとまでは認められなかったことから、懲戒処分はしておりません。

 なお、先ほど、組織的な取り組みにも問題があったというふうに申し上げました。そうしたことから、検察におきましては、先ほど申し上げたような検証報告書を公開すると同時に、これを内部にも徹底いたしまして、いろいろな会議、研修等でこれを題材に、今後こうした事態の再発を防ぐための協議、検討をしております。また、検察の会同におきまして、たび重ねて、法務大臣あるいは検事総長から、これらの事件の問題点を教訓として今後一層適切な捜査の実施に努めなければならないというような訓示が行われているところでございます。

 こうしたことを踏まえて、今後、このような事態が再び起こることのないよう、組織として、全体として取り組んでおるということでございます。

米田政府参考人 警察におきましても、組織としてこれらの事件の判決等を重く受けとめまして再発防止策に取り組んでいることは、先ほど御答弁したとおりでございます。

 個人の責任につきましては、鹿児島の志布志事件のいわゆる踏み字事件というのがございまして、これに対しましては、本年二月二十一日、取り調べ官を懲戒処分、減給百分の十、三カ月といたしました。また、その取り調べ官に対する指導監督が不十分であったということで、その当時の上司二名について、本部長注意等をいたしたものでございます。

 他方、志布志事件の無罪事件を受けまして、本年三月八日、当時の鹿児島県警本部長に対し、警察庁長官から厳重な注意がなされ、また、当時捜査指揮に当たった幹部二名に対して、判決当時の鹿児島県警本部長から厳重な注意がなされたところでございます。

近江屋委員 警察庁の処分につきましては、それでは軽過ぎるのではないかというのが国民の偽らざる受けとめ方だと存じますので、その点は、やはりいろいろ懲戒処分に当たっての要件があろうかと存じますので、実態的にきちんとけじめがつくような、再発防止の実効策としてそういうけじめがつくような方策を講じていただきたいと存じます。

 取り調べの適正化を確保するためには、やはり捜査過程の可視化、見ることが可能な状態ということだと思いますが、それが必要であると私自身も思っております。特に、警察における初期捜査の段階において録画、録音などの手段によってしっかり記録をし、それを見聞きすることができる、そういうことが可能な状態にすることが求められていると存じます。

 当局は、これまで被疑者のプライバシーの保護などを盾にして捜査過程の可視化には消極的だったと存じます。しかし、真相解明のためには強制的に供述を得ていく必要があることは理解をいたしますが、密室での取り調べが冤罪を生むという指摘もあることは事実でありますので、これにきちんとこたえていくためには、やはり取り調べにおける全面的な録音、録画、その可視化を推進していかなければならないと存じます。

 検察当局は現在、取り調べの録音、録画の試行を始めたと聞いておりますが、範囲は非常に限定的じゃないか。今後、録音、録画を広く行うためには、やはり捜査の手法も抜本的に変えていくことも必要であろうかと存じます。

 また、日本の文化にもかかわることであろうと存じますので、アメリカやイギリスの手法も参考にしながら、総合的な視点に立って、また関係当事者の声、被害者の声とか、また弁護人の姿勢はあれでよかったのかどうかということも含めて、新しい時代の捜査手法の研究、検討を進めていただきたい。よろしくお願いいたしたいと存じます。

 ちなみに、我が党におきましては、新時代の捜査のあり方プロジェクトチーム、きょう会合を開きまして、その点今後も議論を深めていくということにいたしておりますので、法務当局、検察当局においても、そのような考え方に立って、ぜひよろしくお願いしたいと存じます。

 続きまして、今回の志布志事件、それから氷見事件のような既に実刑判決が確定した事件について冤罪が主張されて再審の請求がある最近の事件があるのかどうなのか、その点をちょっとお伺いしたいと存じます。

大野政府参考人 ただいまの委員の御質問の趣旨でございますけれども、有罪判決が確定してそれに対する再審請求があった事件があるかということでございます。

 正確にお答えすることはできませんけれども、有罪判決が確定したものに対して再審請求が行われるという例は間々ございます。ただ、実際にそうした再審請求が行われたからといって再審が認められる例というのもまた極めて少ないというように承知しております。

近江屋委員 聞くところによりますと、新聞報道ですが、京都における事件、やはり公選法にかかわる事件で、有罪判決が出た後に冤罪を主張して再審請求が行われたという類似の事件があったと報じられたと聞いておりますので、一般論として、その種の事件についても、最高検察庁が取りまとめられた報告の趣旨を踏まえて、そういう捜査なり公判活動に問題点はなかったかどうなのか、よく検証されることを期待するものであります。

 最後に、検察・法務当局は治安の維持を使命といたしておりまして、事件の真相解明を職責とするものであると存じております。しかし、真相解明というのは、やはり人権擁護とのバランスをしっかりとっていかなければならないということは言うまでもありません。そのバランスを失してしまって、冤罪事件を決して再発することがないように、先ほど申し上げました可視化や新しい捜査手法の導入を含めて、当局におかれましても各般の御努力をお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

下村委員長 次に、大口善徳君。

大口委員 公明党の大口でございます。

 まず、今回の二法案につきまして、裁判官、検察官、これは司法の担い手であります、そしてその地位にふさわしい適正な給与水準を保つことが大事であります、また、これから司法制度改革ということになりますと、ますますよりよい人材を確保していかなきゃならない、そういう点で、今回の改定がそれにふさわしいのかということはしっかり議論しなきゃいけないと思います。

 その上で、今回は若い人たちについて給与改定をするということであります。予算的に見ますと、本年度の採用の人数で計算すると、裁判官で大体百三十万、検察官で約百万の予算規模だと聞いております。それから、今回、期末特別手当、地域手当は指定職以上は見送る、こういうことでございます。

 それによりますと、裁判官の方は当初二億四千万ぐらいの経費を考えていたものが一億ぐらいになろう、だから一・四億円が見送り、それから検察官は当初一・九億円を見込んでいたものが一億ということで九千万は凍結、こういうことになる、こういうふうにお伺いしておりますが、このことについて確認をさせていただきたいと思います。

菊池政府参考人 ただいま御審議をお願いしております法律案で必要になる予算額は、ただいま委員御指摘のとおりでございます。

大口委員 次に、これから私はこの司法の担い手に関連することについてお伺いをさせていただきたいと思います。

 司法制度改革審議会におきまして、裁判官の増員についていろいろ議論されました。その中で、十年で五百人の増員、こういうことを考えている。審理の迅速化それから専門化、専門化というのは医療、建築関係、経済、知財、労働行政、倒産等々でございますが、この担い手を養成するということで約四百五十人、判事補の外部研修、いろいろな経験を積ませなきゃいけないということで外に出す、これは数十名、そして特例判事補制度の見直しということで六十名、こういうような内訳で考えているところでございます。

 それとともに、事件数の増加ということで、民事訴訟事件数が一・三倍になった場合は三百から四百の増員が必要。弁護士の人口が増加します。規制緩和の改革の影響もあります。一方、ADRの整備あるいは紛争予防法務の発展、こういうこともあります。ただ、事件数はこれからふえていくだろうと想像するわけでございます。そういうことで増員要因がある。また、裁判員制度がいよいよ二十一年五月までに行われるわけでございますから、この関係、そして法科大学院の実務家教員の派遣、こういうことで増員要因があるわけでございます。

 こういうことが司法制度改革審議会で方向づけされたわけでありますが、これまでのこの増員についての経過、今後の見通しについてお伺いしたいと思います。

高橋最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 裁判所は、司法制度改革審議会におきまして、委員御指摘のとおり、裁判の迅速化、専門化への対応のために十年間で裁判官約五百人の増員が必要であるという意見を述べたところでございます。

 司法制度改革審議会の意見書の趣旨にのっとって、平成十四年度から計画性を持って増員してきております。

 また、この増員に加えまして、その後の司法制度改革の実施によって新たに生じてきた要因への対応としまして、今委員御指摘のとおり、平成十六年度に、法科大学院への裁判官教官派遣のための増員、これを若干名行っているわけでございます。また、平成十七年度以降は、裁判員制度の導入に向けた体制整備を理由の一つに加えまして、増員を計画的に行ってきております。

 その結果としまして、平成十四年度以降平成十九年度までに合計約三百七十人、正確に申し上げますと三百六十七人でございますが、裁判官の増員を行ってきております。

 平成二十年度以降も、司法制度改革の実施に向けまして、裁判所に与えられた機能を十分に果たし、国民の期待にこたえることができるように、今後の事件数の動向を見ながら、計画性を持って必要な人的体制の充実を図っていきたいと考えております。

大口委員 これについて、最高裁判所の事務総局も、十三年四月十六日に「裁判所の人的体制の充実について」、こういうことで回答を寄せておられるわけでありますけれども、そこで、審理期間について、人証調べあり判決終局事件、これは二十・三カ月を十二カ月に、また平均期日間隔五十日を三十日に、合議率を五%から一〇%に、手持ちの担当事件数を百八十件から百三十から百四十件に、一カ月当たりの件数を二十三件から十五、六件に、うち人証調べあり判決終局事件は四件から二、三件に、こういう増員後の姿を示しているわけです。

 これはちょっと通告していないんですけれども、今どういう状況かということをお伺いしたいと思います。着実に進んでいるかどうかということだけでいいですから。

高橋最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたような増員を着実に認めていただいておりますことから、審理期間につきましては順調に減っております。特に、知財訴訟なんかにおきましては、極めて顕著に審理期間が短縮しております。

大口委員 先ほども申し上げましたが、司法制度改革において、特例判事補制度は計画的かつ段階的に解消すべきである、こういう議論がなされました。六年とか七年で単独事件をやっている、それを経験年数がもっとふえてから単独事件をやらせるようにする、こういうことについて、裁判所の取り組みについてお伺いしたいと思います。

大谷最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 今お尋ねのありました特例判事補制度の見直しにつきましては、現実的な視点に立って計画的、段階的に解消すべきであるとの認識のもとに、当面、特例判事補が単独訴訟事件を担当する時期を任官七年目ないし八年目にシフトすることを目標として、見直しを進めているところでございます。

 東京、大阪を初めとする大都市本庁におきましては、期の若い特例判事補に高裁、地裁の合議事件の陪席を担当させたり、あるいは各種非訟事件等を担当させるなどしまして、ほぼこの目標を達成することができる状況になってきたところでございます。

 ところで、特例判事補制度の見直しにつきましては、これを代替する判事の確保ということも大きな課題でございまして、そのためには優秀な弁護士任官者の確保が必要と考えられるところでございますが、弁護士任官が進んでいない現状にございましては、大都市以外の裁判所、特に支部についてまでこの見直しを進めていくことは実際問題としては困難な状況にあり、その意味でも弁護士任官の一層の推進と実績の向上が不可欠であるのではないか、このように考えております。

大口委員 そういうこともありますので、やはり報酬というものをしっかり見ていかなきゃいけないな、こういうふうに思っております。

 次に、法務省でございますけれども、司法制度改革審議会において、約千人の検事の増員が必要である、こういうふうに、当時は官房長でありましたが、今検事総長の但木検事総長が答えております。

 この千人ということを目指してやってきたと思いますが、特に、捜査体制の充実、裁判員制度の導入で八十人とか、裁判員制度導入に伴う公判体制の充実で二百人とか、こういう内訳も示しておられます。

 これについて、これまでの増員の経過と今後の見通しについてお伺いしたいと思います。

大野政府参考人 平成十三年度以降の検事の増員につきまして、お答え申し上げます。

 法務省では、現下の犯罪情勢、それから司法制度改革等に適切に対応していくために必要な体制の整備を行っており、検事につきましては、国民生活に密接した犯罪の処理体制の充実強化のための要員ということで百六十三人、刑事裁判の充実、迅速化のための体制の充実強化のための要員として六十八人、特捜、財政経済事犯検察の充実強化のための要員として六十二人の合計二百九十三人の増員が行われました。

 先ほど、司法制度改革審議会当時に、当時の法務当局から検事千人の増員が必要であるということを主張したという御指摘がございましたけれども、そうした問題意識を踏まえまして、毎年の事件数あるいは犯罪動向も考慮いたしまして、その時々の緊要性等を検討の上、増員を要求し、実現されてきているわけでございます。

 ただいま申し上げた二百九十三名といいますのは、先ほど司法制度改革審議会において必要と述べました千人の中に含まれているものでございまして、例えば委員御指摘の裁判員の関係について申し上げれば、ただいま私が、刑事裁判の充実、迅速化のための体制の充実強化に六十八名の増員が行われたというふうに申し上げましたけれども、これは基本的に裁判員制度への準備を想定した増員ということでございます。

大口委員 十年で千人ということだったわけですけれども、その割には増員が進んでいないな、こういうふうに思っています。

 その中で、最近問題となっています冤罪事件を担当した検察官は副検事である、こういうふうに報道されております。副検事さんも一生懸命やっておられますが、この冤罪事件については副検事である、こういうふうに報道されています。本来、地方事件のような重要な事件は、副検事ではなく、検事が担当すべきである、こういうことが言われておるわけであります。

 法務省は、平成十二年の司法制度改革審議会において、昭和四十三年には地方事件の六〇%を検事が扱っていたが、平成十二年当時は地方事件の二五%しか検事が扱っておらない、残りの七五%は副検事にゆだねている、また副検事が本来なら扱う区の事件は検察事務官が扱っている、こういうことで、肩がわり現象といいますか、こういうことが常態化しているということですね。

 ですから、これまで検事を増員して、現在、地方事件において副検事が担当している割合がどの程度改善されたのかということをお伺いします。

大野政府参考人 平成十八年の数字について申し上げますと、平成十八年でも、地方事件の約六八%の事件の処理が検事ではなく副検事によって行われているという状況がございます。

 先ほど申し上げましたように、この間、三百名に近い検事の増員をいただいたわけでございますけれども、やはり地方事件の重大性あるいは複雑困難なものがあるという質的な困難化によりまして、検事が地方事件全部を処理するところまで実際のところなかなか手が回らないという実情にございます。

大口委員 やはり検事は、捜査の適正の確保、被害者の言い分を十分聞く、あるいは被疑者の主張も十分聞く、こういうことをやっていかなきゃいけない。

 そういうことからいきますと、肩がわり現象については改善をしていかなきゃいけない、そう考えるわけですが、大臣、いかがでございましょうか。

鳩山国務大臣 気持ちの上では大口先生と全く同じでございまして、今、検事が千五百人ぐらい、若干千五百人を上回る程度で。私のように、法曹でなくて、そういった意味で、元素人でこの大臣の職についてみると、千五百七人というのは随分少ない数字だなというふうに思いました。率直にそう思った点が、今先生御指摘の肩がわり現象とやはり密接につながっている。

 刑事事件は、犯罪の件数は平成十四年がピークで少し減り始めているとはいいますが、事件数は決して減っているわけではない。そういう中で、この間の富山の事件が副検事だったという御指摘をいただいたわけですが、地検が扱う地方事件については、当然、検事がすべて取り扱うのが好ましいことでございまして、現実には副検事が六十数%扱っているという今刑事局長の答弁がありましたが、比較的軽微な暴行傷害事件、詐欺、業務上過失傷害事件等である、検察庁全体として合理的、効率的に職務を遂行していくという観点からは、今のところではやむを得ないというか、地方事件の一部、一部といってもこれが過半数を超えているところが問題なんでしょうけれども、副検事にゆだねるという形になっております。

 当然、重大あるいは複雑困難な事件は検事が中心となって対応をしていっていると思いますし、これからもそういう方向で参りますけれども、近年、組織犯罪とか、あるいは国際的な犯罪とか、そういう意味で、困難、比較的重大な事件にかかる時間が、検事さんが担当するのですが、長くなってきているものですから、余計肩がわり現象が進んでしまうという状況にある。

 私は、副検事の方も立派に頑張っておられるとは思いますが、肩がわり率が下がるように、検事の増員等、予算の点等は、また与党、野党も含めて先生方の御理解を得たいと思います。

大口委員 しっかり協力してやっていきたいと思います。

 次に、大臣が就任のあいさつにおきまして、司法試験の合格者数について、平成二十二年に三千人程度にすることを目指す、ここまではそうなんでございますが、その後の将来の法曹人口のあり方については、「我が国の経済社会の法曹に対するニーズの観点、法曹の質の確保の観点、三千人では多過ぎるのではないかという観点から検討すべき問題である」、こういうふうに御答弁されているわけでございます。

 非常に、この三千人では多過ぎるという御発言がいろいろなところに波紋を呼んでおります。もちろん、大臣の問題提起というのは、だからこそいろいろな議論が起こったということで、私はよかったのではないか、こう思っておるわけです。

 ただ、司法制度改革審議会の意見書では、司法試験の合格者数を平成二十二年ごろに三千人達成を目指すべきである、このような法曹人口増加の経過により、平成三十年ころまでには法曹人口は五万人規模に達することが見込まれるとしています。平成二十二年から三十年までの間は触れられていませんが、同審議会の会議録によりますと、合格者数三千人の達成後、その数を維持することによって平成三十年ごろに五万人規模に達することは同審議会のコンセンサスであった、こういうふうに見受けられます。

 一方、閣議決定された司法制度改革推進計画では、「平成二十二年ころには司法試験の合格者数を年間三千人程度とすることを目指す。」としておって、五万人のことには触れられていません。しかし、閣議決定では、同審議会の意見を最大限尊重するとしております。そういうことでありますから、平成三十年ごろまでに法曹人口五万人規模を実現することも当然ながら政府は尊重すべきである、こういうふうに考えておる次第でございます。

 いずれにしましても、この問題は、法曹人口問題ということで、極めて重大な問題でございます。もし、このことを検討するということでありましたら、これはやはり内閣官房にしかるべき審議会を設置して、そしてそこで多方面にわたる意見の吸い上げをする、こういうことが手続上必要ではないか、そして閣議決定するということが必要ではないか、こう思うわけでございます。

 そういうことで、大臣がそこまで考えておられるのか、考えておられるとしたら、そのスケジュールについてお伺いしたいと思うわけでございます。法科大学院関係者が非常に衝撃を受けた、あるいは法科大学院の在学者あるいは将来法曹を目指そうとする高校生や大学生、これも四年先のことですから、非常に人生を左右する切実な問題ということで、この推移を不安な気持ちで見守っていますので、具体的にお答えいただきたいと思います。

鳩山国務大臣 確かに、法科大学院に行こうかなと思っている、大学生でなくて高校生や中学生も存在していることを考えますと、余り法的安定性を著しく損なうようなやり方は問題があると私も認識はいたしておるわけでございます。

 私は、よく諸外国の法曹人口の話が出ますけれども、弁護士さんの数ということになりますと、日本と諸外国とで随分制度が違って、行政書士さん、司法書士さん、土地家屋調査士さん、弁理士さん、そういうような方々が今は弁護士的な扱いを受けているような国もあると思うわけでございます。

 司法制度改革審議会が内閣に設置されて、そこでお決めになった事柄に向かって進めていくわけですから、平成二十二年に三千人にするという方針は私も持っておるわけで、ことしが二千三百人ぐらいかな、新旧がまだ、合計の数なので、昔の三百人、五百人に比べればそれは大変大きな数でありまして、法科大学院と司法試験は有機的な連携をとるということでありますから、ここで三千人までいくことは問題ないと思っておるわけですが、この三千人がずっと続いて、残念ながら我が国が少子化社会に入ってまいりますと、このままでいくと人口七百人に一人法曹がいるというような形になってくる。

 これは余りにも多過ぎると思うし、こういうことを言ってはいけないんでしょうけれども、やはり私の知り合いでも、かなりの年齢になって、思い立って司法試験を受けて、旧試験を受けて、受かって、司法修習は終わったけれども、さて勤めるところがなかったというようなことで、今、法テラスなど紹介したりいたしておるわけです。ゼロワン地帯ということがあることもよく認識いたしておりますけれども、ただ、三千人がずっといくと多過ぎるのではないかという認識を持っているということなのです。

 ただ、先生おっしゃっているように、今の中学生や高校生が法科大学院に行こうかと考えていることを思うと、そうほうっておける問題ではないというふうに考えておりまして、これは私の一存で軽々しく物を言えることではないことは認識しております。というのは、司法制度改革審議会自体が内閣に置かれたわけですから、これをもし変更するとすれば、やはり内閣において判断しなくちゃいけないことだろう、そういう認識は持っております。

大口委員 わかりました。

 次に、新司法試験の合格率、これが非常に低いということでございます。

 平成十八年度の法科大学院の定員の合計数は、五千八百二十五ということになっております。そして、新司法試験合格数を直ちに三千人にしたところ、合格率七〇%に達していないわけであります。

 実際、平成十八年試験では四八・三%、平成十九年試験では、これは二年コース、三年コース総合で四〇・三%にとどまっているということでございまして、司法制度改革審議会の意見書で、法科大学院では、その課程を修了した者のうち相当程度、例えば約七、八割の者が新司法試験に合格できるようにということからすると、相当低合格率になっている、こう思うわけです。

 新司法試験が低合格率になるということになりますと、法曹志望者が減少するということになってきます。すそ野がだんだん狭まってくる。特に、社会人はなかなかリスクが大き過ぎるということで、社会の各層の優秀な人に入ってもらう、そして司法を強くするということが揺らいでくる。

 適性試験受験者の減少、これも半減あるいは六割減という数字も出ておるわけですね。そうなってきますと、今度は、文科系、理系を問わず、広く来てもらうということが、特に三年コース、法学部以外のコースは四分の一は修了していないという状況もあります、だから、法学部出身者の占める割合が大きくなっていくんじゃないか。そうなってきますと、多様性の後退、専門性の後退、国際性の後退、こういうことになってくるわけでございます。

 それとともに、こういうふうに合格率が低いと、必死になって法科大学院は合格率至上主義になります。そして、教育も、本来のあり方だと理論と実務のかけ橋、あるいはリーガルマインドを育てる教育、あるいは人間性を豊かにさせていくとか、いろいろな理想があるわけですけれども、そうではなくて受験指導的授業に傾斜していくんではないか。ですから、例の慶応問題がある。そして、受験科目の偏重、実務や臨床科目の低下、こういうことになってきまして、法科大学院を設立した理念なり構想というものが崩されるんじゃないか、そういう危機感を私は持っておるわけでございます。

 そこで、こういう場合、合格率を上げる場合の方法としては、一つは、法科大学院が自主的に定数、総数を削減していく。今の五千八百を四千ぐらいにしていく。あるいは、厳しい成績評価と修了認定を行う。これも、一たん入れておいてこれでふるい落とすということがどうなのかという問題がございます。あるいは、合格者数をふやす。いろいろな選択肢があると思うわけですね。これについては、文科省はどう考えておられるか。

 それともう一つ。やはり専門職大学院設置基準の五条二項で、法科大学院の専任教員については、平成二十五年までは三分の一の範囲内で他の学部の大学院の専任教員と併任できる、こうなっています。これは、平成二十五年からさらに延長を認めるべきではないと私は考えています。そして、余裕ある充実した教育の確保、これによってリーガルライティングですとか、あるいは基礎教育の充実も図っていかなきゃならない、こう考えておるわけでございますが、文科省のお考えをお伺いしたいと思います。

久保政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、法科大学院につきまして、その課程を修了した者のうち相当程度が新司法試験に合格できるようということにつきましては、私ども、法科大学院に対しましてしっかりした教育を行うべきだという努力目標、到達目標を提示されたものだと思っておりまして、それに向けて、各法科大学院は質的向上に向けて今努力しているところでございます。

 その中で、そういう意味で法学教育、司法試験、司法修習が有機的に連携したプロセスとしての法曹養成の仕組みが整う、その結果としていい法曹が生まれるという中でございますので、法科大学院で質の高い教育をする、質を向上すると同時に量的な拡充が図られるという中でいい法曹養成制度がつくられていく、今その段階だと思っております。

 その中で、今後その量的なものをどうするかということにつきましては、一つは、合格者の問題、量的な拡充もございますけれども、私ども、委員御指摘いただきましたように、まずは第三者評価でしっかりとチェックをするということが大事だと思っております。

 法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律五条の規定によりまして、専門職大学院の第三者評価の中でも法科大学院の評価につきましては、一般の第三者評価の仕組みに加えまして、法科大学院の評価基準を法曹養成の理念を踏まえたものとして、各法科大学院が、教育研究内容がその基準に適合しているか否かの認定、適合認定を受けるということに加えまして、各法科大学院における成績評価、修了認定の客観性、厳格性が確保されているかどうかという取り組みも必ず第三者評価を受けることになっております。第三者評価を受けてその結果が社会に公表されることを通じまして、厳格な成績評価についての各法科大学院の取り組み状況が問われていくことになると思っているところでございます。こういった制度はさらにしっかりと運営されていくように、私どもも意を用いていきたいと思っております。

 他方、法科大学院の設置につきましては、司法制度改革審議会意見書におきまして、関係者の自発的創意を基本としつつ、基準を満たしたものを認可することとし、広く参入を認める仕組みとすべきとの提言を受けまして、現在のところ、厳格な審査を行った上ではございますが、基準を満たしたものを認可した結果、先ほど委員御指摘のような数になってございます。今後、当面は、各法科大学院におきましては、その第三者評価を踏まえつつも、競争的な環境の中で切磋琢磨することによって、教育の一層の充実のための努力を続けていくことがまず必要だと思っているところでございます。

 もう一点でございますが、専任教員のカウントの問題でございます。

 一般的に、法科大学院教員も含めました専任教員につきましては、専門職大学院の専任教員につきましては、他の学部等の専任教員の必要数に算入しないものとされることになっておりますが、御指摘のように、制度発足時におきましては、他の学部におけます教育をうまくやっていかなければいけないというその関連性を考慮しまして、優秀な教員を確保するという観点から、十年間の経過期間、三分の一につきましてダブルカウントができるようになっているところでございます。

 現在、その設置から四年目を迎えたところでございまして、本年度、初めて未修者コースの修了者が司法試験を受験したという状況にございます。各法科大学院におきましては、もとより、司法制度改革の趣旨を踏まえた法曹養成の実現を図るために、試行錯誤しながらいい教育をどうやって行うか一生懸命取り組んでおりますものですから、その制度等の見直しにつきましては、今しばらく推移を見守っていく必要があると考えております。

 この取り扱いにつきましては、今後、各法科大学院におけます優秀な教員の確保の状況を十分見きわめながら、中央教育審議会での御議論を踏まえつつ適切に対応していきたい、こう思っているところでございます。

大口委員 時間が参りましたのでこれで終わりますけれども、法科大学院を修了しますと、法務博士ということになるんですね。この法務博士を、例えば、簡易裁判所の判事あるいは副検事等に活用する道もぜひとも考えていただきたい、こう思っております。

 以上で終了します。ありがとうございました。

下村委員長 次に、村井宗明君。

村井委員 民主党の村井宗明です。きょうは、鳩山法務大臣に、富山冤罪事件について、再発を防止するためのお願いをさせていただきたいと思っています。

 その富山冤罪事件について、どういう事件だったかということは、今こうやって各委員の皆さんに新聞記事を資料として配らせていただきました。簡単に言えば、任意同行で連れていかれて、その取り調べの間に心が折れて、すべてを認めてしまった。でも、判決を受けて、実態として後で見れば、別の真犯人が見つかった。そして、事実、冤罪だったことが発覚したという事件です。

 そんな中で、まず私は、任意同行の部分が一つのポイントだと思っています。任意同行であれば、当然逮捕状も何もないわけですから、強制的に連れていかれるはずはないし、帰りたいときに帰っていってもいいはずなんです。ところが、警察の方に強制的に連れていかれて、先日、私ども民主党も柳原さんからお話を聞いたんですが、帰っていいなどというふうには思ってもいなかったし、しかも、警察は三日にわたって取り調べをした、認めるまで帰らせてもらえないなんというふうに言われたそうです。

 そこで、まず刑事局長にお聞きしたいと思うんです。逮捕令状が出る前、任意の同行の時点では、一般的に法令実務として、任意同行は法令に従って適切になされているんでしょうか。そして、なおかつ、今回の富山冤罪事件を見て、これからも任意同行について適切に運用していくべきだと思うんですが、どうお考えでしょうか。

大野政府参考人 ただいま任意同行についてお尋ねがございました。任意同行といいますのは、法令上の用語ではございませんけれども、一般に、取り調べ等のために相手方の同意を得て警察署等へ同行することをいうものというように承知しております。

 その実際の方法や対応ということになりますと、千差万別、さまざまであろうというふうに思われます。常に任意であることを明示的に告げなければならないというものではないというふうに思いますけれども、しかし、相手方があくまで退去したいというような場合には、これをとどめることができないといいますのは、この任意という事柄の性質上から当然でございます。

 いずれにいたしましても、任意同行につきましては、あくまでもそれが任意である、任意捜査であるということを踏まえた上で行われるべきものでありまして、捜査当局におきましても、そうした観点から適切に対応しているものというように考えております。

村井委員 現実問題として、では実際、本当に任意か。認めるまで帰らせてもらえないということは、法令的にはおかしいんじゃないかと思います。最後に、そこは大臣の方に所感としてお聞きしたいと思うんです。

 さて、二つ目は弁護士の問題です。この任意の取り調べの間に当番弁護士さんに一度会って、否認したそうです。その後も、弁護士に何度も会いたい、相談したいと言ったところ、柳原さんの話では、知り合いの弁護士がいないと会えないんだよというふうに言われてしまったという。そして、何度も何度もそうやって認めろ認めろと言われているうちに、実際に本当は自分がした罪でないにもかかわらず、供述調書に自分がやりましたといってサインをしてしまったということになっています。もし何度も、この任意の取り調べの間に、そして供述調書にサインをする前に弁護士にちゃんと接見できたとするならば、いや、そんなものにサインしちゃだめだよと教えてもらえたはずだと思うんです。

 そんな中で、捜査実務として、一般的に、任意の取り調べの間、弁護士に接見することが法令的に認められていると思うんですが、それが適切に運用されているかどうかを刑事局長にお聞きし、なおかつ、今後さらに、どういうふうにしていけば富山冤罪事件のようなことがないようになるとお考えなのかをお聞きしたいと思います。

大野政府参考人 先ほども御答弁申し上げましたように、任意同行はあくまでも任意捜査ということで行われるものであります。

 したがいまして、相手方の方があくまでも弁護人と相談したいというふうに言われれば、これを捜査機関の側においてとめるということはできません。また、弁護人と相談した上でなければ調書に署名しないというふうに言われれば、その意に反して強制的に調書に署名させるというようなこともできないわけでございます。

 捜査当局におきましては、任意同行、そして任意同行に伴って行われます取り調べがあくまでも任意であることを踏まえた上で、適切に対応していくものというように考えております。

村井委員 さて、もう一つお話ししたいのが、きょうお配りした毎日新聞の記事にも出ているんですが、柳原さんが犯人でない証拠というのは、この記事にも出ているとおり、何個もありました。特に、一番決定的だったところはアリバイです。自宅の通話履歴が残っていたにもかかわらず、こういった被疑者に有利な証拠が裁判で事実上無視されたのではないかというふうになっています。

 一般的に、こういった被疑者に有利な捜査資料についてはどういうふうに扱っておられるのかを刑事局長にお聞きし、なおかつ、この富山冤罪事件を見て、どういうふうに対応していくとうまくいくと考えるのか、お聞きしたいと思います。

大野政府参考人 ただいま委員から御指摘のありました、いわゆる電話の履歴についてでございますけれども、氷見事件におきましては、二つの事件のうち、前の事件におきましては、犯人が犯行前に被害者方に電話をしていた事実が認められました。そこで、捜査当局は、被告人とされた方の固定電話等の電話の履歴を押収したわけでありますけれども、前の事件、当時の電話の状況につきましては、記録の保管期間が経過していたことから把握できなかったわけであります。

 ところが、この電話の記録の中に、実は、後の事件、二つ目の事件の犯行時間帯に、犯人とされた方の自宅固定電話から電話がかけられている、そうした通話履歴が記録されておりました。これは、本来であればアリバイの存在をうかがわせる証拠だったわけであります。ところが、捜査機関におきましては、この電話の記録を前の事件の犯行を裏づける積極証拠として、その角度からしか検討しなかったために、後の事件との関係に気づかずに、そのために、証拠として公判に提出するということもしなかったものでございます。ここに、先ほど来申し上げておりますような、証拠の検討不十分があったということでございます。

 一般論として申し上げますと、検察官は、被告人にとって有利な証拠も含めまして、証拠を総合的に評価し、その処分を決するものと承知しております。そして、弁護人に対する証拠開示につきましても、法に従って開示すべきでありまして、これに反して殊さらに不利な証拠を隠ぺいするというようなことは許されておりません。

 平成十七年の十一月から施行されております公判前整理手続でありますけれども、この手続の中で、検察官が取り調べを請求する証拠以外の証拠についても、広く弁護人に対して開示することになりました。例えば、被告人側からアリバイが主張されますと、その主張に関連する証拠について、開示の必要性や開示による弊害を考慮して、相当と認められるときにはこれは開示しなければいけないとされておりますし、検察官と弁護側の意見が合わない場合には、最終的に裁判所が裁定を行うことになっているわけでございます。

 したがって、今回の電話の記録のようなものも、この公判前整理手続の手続に乗れば、開示が行われるということになっておるわけでございます。

村井委員 さて、この三つのことについて刑事局長から説明をいただいた上で、鳩山法務大臣に私はお願いをしたいと思うんです。この富山冤罪事件を防ぐためのポイントは、今の三つだと思うんです。

 一つは、任意同行。任意の取り調べというものは、決して、自白するまで帰れないというものではない。つまり、その人の心が折れるまでずっと調べるんじゃなくて、ちゃんとその人の都合に合わせてどれだけの時間調べる、そして退去したいと言えば一たん退去を認める、また次の日、任意で取り調べをすればいいだけだと私は思うんです。心が折れるまで徹底的に任意で取り調べをするというのは、冤罪を生む今回のような要因だったということ。

 そして、二点目は弁護士です。任意の取り調べの間で供述調書にサインする前にも、やはりちゃんと弁護士に接見する権利を事実上確保する必要があると思うんです。その点について、鳩山法務大臣はどう考えているか。

 そして最後は、今言った、不利な証拠の開示について、富山冤罪事件についての鳩山法務大臣の所感をお伺いします。

鳩山国務大臣 今の証拠の件は、やはり消極的な証拠もきちんとできるだけ見る、そういうことの大事さをわかっていかなくちゃいけないな、そういうふうに思います。

 それから弁護士の件については、私も新聞を見たときに、柳原さんでしょうか、何か二回ぐらいしか会っていないということが書かれておって、これは今度被疑者の国選という話が、範囲が拡大されますけれども、また、国選弁護はやる気がしないとおっしゃる方のために、少しでも報酬が、報酬というんでしょうか費用がふえるように、これも検討しなくちゃならないというふうに思っております。

 あなたのおっしゃっていることはなかなかいい着眼点だと思います。反省点ですね、我々の立場からいえば。

 というのは、私が当選一回のときかなと思うんですが、ある朝七時に東京地検特捜部が来て、家から外へ出ないでください、あなたと奥さんはと言われました。その同時刻に連絡をとったら、母の家に来ています。女房の母の家にも来ました、同時刻に。全部、七時です。

 それは実は、ロッキード裁判の中である方が偽証したのではないかということで、私に任意の調査に見えたんだろうと思うんです。ところが、私は法律家ではありませんので、素人ですからやはりおたおたします。これは任意なのか、ひょっとしたら、令状は見せられていないんだけれども、これは強制なのかというのがわからない。

 そういうことであるならば、やはり任意同行は任意同行だということがある程度はわかっているようにしないと、私のような者ですら、法学部出身ですが、やはり素人でおたおたして、強制か任意かということで頭が回らなかったわけですから、そういう反省点は十分に踏まえていかなければならないなと思っております。

 先般どなたかから御質問をいただいた際にお答えをいたしましたが、私も富山に行く機会があったら、柳原さんにお会いをして率直におわびを申し上げたいと思っております。

村井委員 さてそこで、大臣も任意取り調べの間をきちんとしていかなければならないというふうにおっしゃっていただきました。一般的に捜査といえば、どうしても、そうやって逮捕令状が出て、その後のことを主に考えがちですが、今回の事件のように、任意取り調べの間で心が折れてしまうということがあってはならないし、任意取り調べの間に認めさせてしまう過酷な尋問があってはならないというふうに思うんです。

 そんな中で、ぜひ、今言っていただいた大臣の所見から、今後はどういうふうに、富山冤罪事件のようなことがないように、任意取り調べ、特に証拠がない今回のような事件においては、証拠があれば強制の令状が出るかもしれませんが、ない場合任意なんです、任意のときにこういった心が折れてしまうようなことがないように、そしてあくまで任意だと伝えるように指導するべきだと思うんですが、大臣、最後に対応策、そして所感をお願いします。

下村委員長 鳩山法務大臣、時間が過ぎていますので、簡略にお願いいたします。

鳩山国務大臣 先生御指摘のとおり、無辜の者が処罰されるようなことは決してあってはならないことでございますので、私は、今率直にお答え申し上げたように、そういう方向で指導できるものは指導していきたいと思っております。

村井委員 ありがとうございました。

下村委員長 次に、加藤公一君。

加藤(公)委員 民主党の加藤公一でございます。

 本題の閣法二法に入る前に、先週に続いて、鳩山法務大臣の御発言の問題について幾つか伺いたいと思います。

 まず、情報がいろいろ錯綜しておりますので整理をいたしますと、鳩山法務大臣が五年前、バリ島のクタの爆弾テロ事件の直後バリに行かれた。その段階で、ある昆虫標本商の方、Aさんとしましょう、Aさんがテロ組織にかかわりがあるようだという情報を得られた。日本に戻られてから防衛省、当時は防衛庁あるいは警察にその情報を伝えたけれども、どうも動きが悪かった。あるいは、その二年ないしは三年後に、そのAさん、アルカイダとおぼしきAさんという方が日本に二度三度と入国をしている、こんな話も聞いた。これは入管に伝えた。こういう話でありました。

 前回の質問のときに、では、本当に当時の鳩山邦夫議員が各省庁にその情報を渡して調査依頼をしたのかどうか、ぜひ御自身でお調べをいただきたいということを申し上げました。その結果について承りたいと思いますが、いかがでしょうか。

鳩山国務大臣 委員会終了後に、事務所の者に当時の記録がないか確認をいたしました。すると、平成十六年二月当時に入国管理局長から、交換した名刺、もらった名刺がありまして、日付も書き入れてありましたので、このときに入管局長と会ったことは間違いありません。

 先般お話ししたように、そのときに私は、今委員がおっしゃったいきさつは大体先般私が説明したいきさつと一緒でございまして、そういうことであるから、日本国内をそういう人物が平気で歩けるというのはどういうことだということを厳しく言ったわけであります。それも複数回入ってきているのではないかということを申し上げたわけでありますが、それは入管局長だったかそのおつきの人だかわかりませんが、パスポートの変造、偽造を見破るのは大変難しいし、名前がいつも同じであるかどうかもわからないので、ある意味では手の打ちようがなくて調べるのは大変だというような返事が数日後にあったんだろうかと記憶をいたしております。私は、そんなことで、そんな入管の体制で危険、不審人物をシャットアウトすることができるのかと相当厳しく叱責をした記憶が残っております。

 実は、警察とか防衛省についてはそうした名刺等が出てきませんので、だれにいつどうしたということが今のところはっきりしておりませんが、今後も事務所の過去の書類等はいろいろと調べてみようと思っております。

 ただ、私自身が当時、この間もお話ししたと思いますが、有事立法の事態特の委員長をいたしておりましたから、それはその前ですね。最初に、つまり不審人物、その標本商が入国したのはその後ですから、その前の段階のとき、私がバリ島へ行って、きょう委員会に提出させていただいたようないきさつで、身近にこういうことがあるんだなと驚いて帰ってきたときには私は事態特の委員長でございましたので、防衛省、当時の防衛庁の方々は毎日のように出入りをいたしておりますので、しかるべき方にいろいろ話をした記憶はございます。

加藤(公)委員 これは前回も私は申し上げましたが、大事なことは、そのアルカイダにつながり得る人物のかなり細かな情報を当時の鳩山邦夫議員あるいは委員長だったかもわかりませんが、議員が入手をされた。場合によっては、それは日本国がするかどうかは別にして、その特定の人物の身柄を確保することもできるかもしれないような情報であります。それを当時の政府に伝えて、もしも何も動いていなかったとするならば、これは大変ゆゆしき問題であって、国家の安全保障に直結することでありますから、だから私は、事実関係をはっきりさせるべきだという趣旨で、この前、調査をしてくださいということを申し上げました。

 今のお話ですと、その第二段階の方の入管の件は、その後の対応がいいかどうかは別にして、入管の方に大臣がお伝えになったということはわかりました。その前段階、一番最初の防衛庁なり警察なりに伝えたかどうか、御本人の記憶では伝えたということでありますからそれを信じたいとは思いますが、ぜひ今後もそれは調べていただきたいと思います。

 そしてあわせて、委員長にお願いしますが、これはもうここ数日理事会でも御協議いただいていますけれども、この事実関係を明らかにするためには、各省庁の方で持っている記録、これを明らかにしていただくほかに方法はないのではないかと思いますので、引き続き理事会で協議いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

下村委員長 後ほど理事会で協議させていただきます。

加藤(公)委員 この事実関係を明らかにした上で、私が申し上げたいのは、では、当時の政府がどれだけ緊張感を持ってこのテロ対策に当たっていたかということを検証することでありますし、同時にそれが、今の我が国が置かれている状況の中で、これからいかにしてテロを防止していくかという政策に直結するというふうに考えておりますので、これは何も、鳩山大臣がこういうことを言ったからいいんだ、悪いんだという話とは別のことでございますので、この前は大臣の御発言によって日本のイメージを悪化させたことは責任問題だとは申し上げましたが、それとは別の意味で極めて重要なことでありますから、ぜひ引き続いてお調べをいただきたいというふうに思います。

 続いて、きょうは極めて時間が限られておりますのでどんどんいきますが、前回、水戸少年刑務所の情報漏えい問題についても伺いました。これも前回の御答弁では、現在調査中だ、まだ詳細については明らかになっていない、こういうお話でありましたが、そもそも、情報が漏れたのはきのうきょうの話ではありません。発覚したのは十月の十六日でありますが、事が起きたのはもう半年以上も前のことであります。ほうっておけば、あるいは対処が遅くなれば、それだけ問題が大きくなったり、被害が拡大したりする可能性がございます。一刻の猶予もなく調査をまとめて、そして再発防止策をとる、責任ある方には処分を下すという対応が必要だと思いますが、この調査については今どこまで進んでいらっしゃるか、大臣から伺います。

鳩山国務大臣 この件については、現在、矯正局において調査を継続中ですが、流出した情報の対象者となる被収容者、職員等の正確な数の特定を調査中です。それから、流出した情報にかかわる文書の種類の分類についても調査中です。それから、流出した情報にかかわる個人情報の内容の特定等についても今調査中で、相当程度調査が進んでいるものと承知をいたしておりますが、まだ完了はいたしておりません。

加藤(公)委員 これは、実際には行政文書が漏えいをしているということだと思いますが、それは間違いないですね。

鳩山国務大臣 流出情報の対象者となる被収容者や職員の数の特定についてはおおむね調査は終わっているんですけれども、先ほど申し上げた、流出情報にかかわる文書の種類が何であるかということや、あるいは個人情報の内容の特定についてはさらに調査が必要だという段階で、そういう行政の情報が出て、要するに不利益をこうむる方が出てくる、つまり、不利益情報がどの程度あるかということについても鋭意調査をいたしております。

加藤(公)委員 これは、一々今、はしょりますから細かなことは言いませんが、もともとが、公用パソコンの中にあったデータがウィニーを通じて流出しているわけです、情報が漏えいした。ということは、その公用パソコンの中に入っていたデータは、本来、すぐにでも特定できるはずでありまして、流出してはならないような重要なデータであれば、バックアップをとっているのか、あるいは紙の書類に印字をしてあるのか、何がしかの方法でこれは確認できるはずだと私は思います。

 その意味においては、大分進んでいるとはおっしゃっていますが、調査します、調査しますで時間がかかっているのは決して望ましいことではないと私は思いますので、そろそろ、いつまでに調査をまとめて公表するのか、期限を切っていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

鳩山国務大臣 それはやはり、調査が終わるまであとどれくらいかかるかは、ちょっと私が今知り得ている状況ではありませんので、できるだけ急がせるということしか私は申し上げられません。

加藤(公)委員 大臣が知っているか知らないかではなくて、大臣が指示をすればいい話だと思います。最高責任者でいらっしゃるんですから、いつまでにやれと一言言っていただけば済む話でございまして、逆に言えば、これができるのは法務大臣しかいらっしゃらないわけであります。

 しかも、今回の件は、庶務課長が用度係長に指示をして結果的にこういう事件が発生しましたが、その庶務課長は、水戸少年刑務所のネットワーク管理者であります。つまり、システムの責任者です。その方が起こした問題でもあるということを少し頭の片隅に残していただいて、いついつまでに結果をまとめろと指示していただきたいと思いますが、いかがですか。

鳩山国務大臣 ですから、それは関係者と協議をして、できるだけ早く調査を終えるように言いますし、あとどれくらいかかるかということも、概算のものを聞けば、では、この辺までにやれという指示もできるかと思います。

加藤(公)委員 実際、法務省で三回目です、この情報漏えい事件というのは。初めてのことではありません。ほうっておけば、二度三度どころか四度五度発生する可能性があるわけです。だからこそ、私は、一刻も早く是正措置をとるなり、再発防止どころか、もうこれで三回も起きているんですから再発どころではありませんけれども、抜本的な制度の改正というものをしなきゃいけないという強い意識があります。だからこそこの点を強く申し上げているので、引き続きこれは次回以降の委員会でも私は議論をさせていただきたいと思います。余りずるずるやっていただいていると国民の皆さんからも見放されてしまうと思いますから、そろそろいいかげん期限を切っていただくようにお願いをしておきたいと思います。

 それからもう一つ、実は、前回の質疑の中で調査中だという御答弁がございました、京都地方法務局と財団法人民事法務協会の問題であります。労働者供給事業の問題でありますが、これは、元労働大臣でいらっしゃる鳩山邦夫法務大臣におかれては、いかに大きな問題かというのは容易に御理解をいただいているものと思います。職安法四十四条に違反をした状態が十二年間も続いていたという話です。

 この件については、いつ調査が仕上がって是正措置がとられるのか、期限はいつか、伺います。

鳩山国務大臣 前にもお話をしたかもしれませんが、短かったんですが、労働大臣というのをやったときに、要するに、昔の明治時代のいろいろな人身売買のようなことの説明を受けて、労働というものについては、労働者派遣だとか職業紹介とか非常に難しい問題があるんだ、こういうことでありました。これが、労働者派遣等も大分緩く、門戸は広がる。

 しかし、今回の問題は、あれは明らかに偽装請負と言わざるを得ないような状況が生じた、しかもそれが非常に複雑に、何カ所も経由した人に直接法務局が指示をするというような形で労働法規違反が起きているということでございますので、これは大阪労働局ですね、だから、これは是正をしろというふうに言われて、是正措置をとるように今指導している段階だと私は認識しているんですが。

加藤(公)委員 私が申し上げているのは、十二年間も違法状態が続いていた、だれも責任をとらなくていいという話ではございませんよねということを前回も今回も申し上げておりますし、もう一つ言えば、京都地方法務局だけではなくて、法務省所管の民事法務協会という財団法人、ここも職業安定法違反を犯していたわけです、同じ十二年間続けて。しかもここは、職員の三分の一が法務省からの天下りです。しかも、二百億円以上、毎年法務省から随意契約でお金が行っています。これは、前回も指摘をさせていただきました。その状態で、違法なことが十二年間続いていて、だれも責任とりませんというのはおかしいんじゃないですか、だから、早くこれは決着をつけて、それこそ二度と起きないようにするべきじゃないですかということを申し上げました。

 時間のようですから、最後にもう一回伺いますが、その責任の所在を明らかにして処分をするというのも大臣の重要なお仕事だと思いますが、いつ発表していただけますか。

鳩山国務大臣 いつとは今ここで申し上げられませんが、大阪労働局からの指導において、労働者当人の雇用の安定の措置を講ずること、まずそれが大事だと思いますが、この点については現在協議中でございまして、御本人の雇用の安定を確保した上で、関係者の処分について適切に対処したいと思います。

加藤(公)委員 この件も、結果がはっきりするまで引き続いて議論させていただきたいと思いますが、きょうは、時間でございますので、これで終わりたいと思います。ありがとうございました。

下村委員長 次に、古本伸一郎君。

古本委員 民主党の古本伸一郎でございます。

 大臣におかれましては、連日の御対応、大変お疲れさまでございます。

 閣法でございます報酬並びに俸給等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、冒頭、若干質問させていただきたいと思います。

 先ほど来、与党の先生方からも、いわゆる司法試験に受かって、社会的に信頼も地位も、そして所得においても高い評価が得られるであろう法曹界で働く方々が、弁護士にならずに検察官あるいは裁判官になるという道を選んだことによって、その処遇、所得面で本当に満たされる、やりがいだけでは、かすみを食っては生きていけませんので、適正になっているかという議論をする上で、一つの物差しとして、一人当たりの年間での事案の処理数という考え方があろうかと思うんです。

 それで、先ほど、役所の方に調べてもらいますと、東京、大阪ですと、民事、刑事があるんですが、一人の裁判官での処理件数が、例えば東京ですと三百六十四件、大阪ですと三百六十二件を処理している。他方、いただいた事例が、三重の松阪ということなんですが、民事が百五十五件、あるいは岐阜の御嵩であれば、民事が百四件。粗っぽい計算ではありますが、数倍の処理件数差があるわけですね、もちろん事案の難しさ、困難さ、いろいろなことはしんしゃくするといたしましても。

 これは、どこに配属になったかとかどういう事案を処理したかとか、こういう事柄にかかわらず、一律だれでも同じ報酬あるいは俸給ということに現状はなっているんですね。そのままで大臣はいいとお考えになりますか。

菊池政府参考人 大臣からお答え申し上げる前に、事務当局から数字について御説明いたします。

 東京、大阪の裁判官一人当たりの、民事なら民事に配属された裁判官の年間の処理件数は、委員御指摘のとおりでございます。

 松阪と岐阜の御嵩について御指摘がございまして、民事、松阪ですと百五十五件、御嵩ですと百四件という御指摘でございましたが、これは、お聞きいたしますと、松阪も御嵩も一人の裁判官がいろいろな事件を担当しておりまして、松阪ですと、民事百五十五件のほかに、刑事百二十三件、それから家事事件は一千件を超え、あと執行事件も五百五十件をお一人で全部担当している。それから岐阜の御嵩の場合も、民事百四件のほかに、刑事八十件、家事等その他事件がおよそ一千件、執行などの事件が六百二十件、これらの事件を一人の裁判官が担当し、処理をしたというふうにお聞きをいたしております。

鳩山国務大臣 とにかく、処理している件数は非常に多いなという印象があるし、ばらつきもまた大きいなというふうに思いますが、裁判官については、これは給与法ですが、私が口出しできることではないので、例えば検察官の場合どうかというふうに考えた場合、各検察庁によって、処理する事件の数もありますが、特徴等があるわけですね、難しいもの、比較的安易、軽微なもの。そういう意味でいうと、事件数だけで比較することは難しいかなという思いがあります。

古本委員 その点はそのとおりだと思うんですが、そうしますと、任官、登用されてから、いろいろな地方を回り、あるいは都市部の裁判所に来たり、検察庁に来たりというローテーションが当然あろうかと思うんですが、配属になって扱う事案が、傾向として非常に困難をきわめる事案が多い、そういう偏差のある地域にたまたま配属になった人が苦労し、そうじゃないところで、これは数だけじゃないとおっしゃると、中身の話になると、個々の、いわば案件ごとの働きぶりというのは、なかなかこれは機械的な物差しでははかれないと思うんですね。

 そういう意味では、一律の物差しで、前回、ちょうど二年前だったですか、この議論をしたときにも、そのときの会議録を拝読いたしますと、登用されてから二十年後に、同じ給与水準、所得水準、報酬水準であるように調整しながら上がっていくということなんだそうです。

 それでは、果たして、人間ですから、やりがいとか、あるいはおれもいつかトップを目指すぞというような思いにつながってくるかどうかという議論が必要だと思うんですね。

 そういう意味では、もちろん人勧もありますし、大臣のお考えですべてがかなうということではないとは思いますが、少なくとも現実にこの地域偏差、そして事案、事柄の質によって個々の裁判官あるいは検察官の皆様の負荷というものが異なるわけでありますので、きつい、忙しい、中身も難しいところに配属になったら次は楽なところに回してもらう、そういうことで済まされる話ではないと思いますので、こういう号俸表あるいは報酬表のよりきめ細かな運用が、ずばり言えば、これは査定幅、考課幅ということで必要になってくる段階に入っているのではなかろうかというふうに思うんですが、大臣の感想を伺います。

菊池政府参考人 委員御指摘のとおり、裁判官も検察官も、配属された任地それからその時期によりまして、担当する事件の量それから難易度も違っております。運がいいか悪いかという評価は別といたしまして、場合によったら、かなり多数の事件を抱え込むこともあり、また、数は少なくとも、相当労力のかかる事件を担当するということもあるのは事実でございます。

 私どもが承知しておりますところでは、裁判官も検察官も、ある程度の年限がたつと、異動ということで任地を変わるのが一般的でございまして、これはいろいろな理由があるかと思いますけれども、一つは、やはり人事の公平、特定の人が負担の重いところにずっといるといったことがないようにするといった配慮もあるだろうと思っております。

鳩山国務大臣 先生が提起されておられる問題は非常に重要だと思いますし、人間の労働と給与ということに関する大変本質の問題ですよね。だから、私も今自分で、どうしたらいいか、先生の意見を承ってから、何か動けることがあるかということは考えておりますけれども、例えば、いわゆる能力給とか実績給みたいなもの、これはどんな企業でもそうだと思うんですが、それと、一般にいわゆる皆横並びという場合、この両方のよしあしがある。

 昔、ホーソン工場の実験というのを大学で習いましたけれども、要するに、一つずつ全部すき間、塀をつくって一人ずつ人を置いて物をつくらせる、できた個数に応じて給料を払っていった、これが、全部すき間を取っ払うとお互いが何個できているのかがわかってしまう、そのことによって、いっぱいつくっていた人が、自分だけ多く給料をもらうと人間関係が悪化するので、生産量を落として、結局、そのホーソン工場は境を取っ払って競争させようとしたら生産量が半減したという、これは行政学の基本の原理で勉強させられたことがあるんですが、そういう面もありますから、どういうところまで今先生がおっしゃったようなことを取り入れていけるのか、非常に微妙ですが、いろいろ勉強してみます。

古本委員 実は、公務員でいらっしゃいますから、裁判官あるいは検察官の皆さんも、定年後の再就職の状況やら、そういう観点で見れば、在職中に得られた生涯賃金といいますか、生涯収入が自分の社会的地位なり、あるいは国家、社会に貢献したものに見合っていないという何とも言えない思いがどこかにあったりして、先日来のああいう公安調査庁の事案なんかにつながっているところも伏線としてあるんじゃなかろうかと思うんです。これは課題提起にとどめておきたいと思います。

 そういう意味では、その人が何十年歩んできた歩みをきちっと評価、考課する中で、差があっていいんじゃなかろうか。むしろ、そういう差を入れることによって、健全な、ある意味での法曹界における検察官、そして裁判官における労働市場が涵養されるんじゃなかろうか、そういう課題提起で申し上げた次第であります。

 もう一点だけ。初任給の調整手当というのがあるんですね。これは、司法試験に受かって裁判官、検察官に任用された方が、最初に、賃金の社会性を考慮した上で、恐らくある程度のインセンティブを与えるという幅なんだと思いますが、例えば裁判官であれば最高で八万七千八百円ついています。検察官であってもそうですね。等級によって、俸給表がありますけれども、ついています。

 これは、実は前回の見直しから大変年月を経ているようでありますが、昨今のさまざまな、前段で与党の先生方もおっしゃっておられた、いわゆるミリオネアのような弁護士、らつ腕弁護士等々と比較すると、本当に見合っているんだろうか等々も含めて、ここら辺の初任給調整手当の見直しを、大学の法学部を出て、右に行くか左に行くかでえらく違って、それで後は、先ほどの副大臣じゃないですけれども、かすみを食ってでも志高くやっていけばそれでいいんだなんていう人は、それは一部おられるかもしれませんが、私はエールを送っているつもりですよ、ここの見直しをかけていくという考え方があるかどうか、お尋ねをしたいと思います。

菊池政府参考人 初任給調整手当についてのお尋ねでございますけれども、これは、司法修習生の修習を終えた者の中から判事補、検事を採用するということが困難な状況になったことはございます。要するに、委員御指摘のとおり、弁護士さんの中で給料が高い方がいらっしゃるということが背景にあるんだろうと思います。

 そこで、判事補と検事の給与面での待遇を改善して、裁判官、検察官への任官希望者を増加させるという目的で、昭和四十六年四月に初任給調整手当という制度を設けたところでございます。その後、弁護士の給与と初任の判事補、検事の給与との格差が大きくなりましたので、日本弁護士連合会にお願いをいたしまして、弁護士さんの給与の実態調査をいたしまして、その結果を踏まえて、昭和六十一年と平成元年に初任給調整手当を増額したところでございます。

 そして、その増額の結果、ここ数年の任官者を見てみますと、毎年、司法修習生の中から、判事補については百十名前後、それから検事については八十名程度の任官者を得ることができておりまして、裁判官、検察官にふさわしい適材を確保することができているというふうに現時点では考えております。これは、初任給調整手当が任官者を確保するという効果を果たしているというふうに考えております。

 ただ、今後情勢がどうなるかわかりませんので、今後の任官者の状況等を見守っていくとともに、その支給額の改定を検討する際には、必要に応じて、また日弁連にお願いをいたしまして、弁護士さんの給与水準といったようなものを調査して、その結果を踏まえて対応してまいりたいというふうに考えているところでございます。

古本委員 何かドラマの見過ぎかもしれませんけれども、同期で同じ法曹に入った人で、よく法廷が終わった後に、御飯を食べたりすると、大体らつ腕弁護士の方がおごったりしているじゃないですか。ああいうところで、ある意味で寂しい思いをさせていいのだろうかという問題意識でありますので、対等に法廷で渡り合うその背景として、当然に懐のぐあいもあわせて処置するということは必要ではなかろうかという課題の提起を申し上げたいというふうに思っております。

 さて、先ほどの加藤委員に引き続きまして、テロリストの問題に触れざるを得ないものですから、少しお尋ねを大臣にしたいと思うんです。

 お地元入りなさって、お祭りなんでしょうか、日本にテロリストがうろうろしているということを再度おっしゃっておられるんですが、きょうは公安もお越しいただいていると思うんですが、日本にテロリストはうろうろしているんでしょうか。

柳政府参考人 お答えいたします。

 我が国におきますテロリストの脅威につきましては、アルカイダやその関連組織等が我が国を再三テロの対象に名指ししておりますし、実際、過去に国際テロ組織との関係が疑われる者が我が国に不法入国を繰り返しまして、相当期間滞在していたことが判明しております。一方で、我が国内には国際テロリストの隠れみのに利用されるおそれのあります外国人コミュニティーも多数形成されているという状況にございます。

 したがいまして、当庁といたしましては、我が国におきましても、テロリストの入国や滞在については十分な警戒が必要である、こういった認識でおります。

古本委員 うろうろの程度をお尋ねしたいんですが、どのくらいおるとうろうろということになるんでしょうか。

柳政府参考人 先ほど申し上げたような諸情勢にかんがみますと、我が国内に国際テロ組織とかかわりを持つ者が存在しているという可能性は否定できないということで、我が国としても十分な警戒が必要であるというふうに認識しております。

鳩山国務大臣 私が地元で申し上げたことは、やや演説調であったかと思いますけれども、要するに、テロリストにうろつかれては困るし、絶対うろつかない日本にしたい、そのために、外国人のお客さんには迷惑がかかるけれども、指紋をとる、これは相当外国人の方には嫌がられるかもしれないけれども、これをやらなければ、決してテロの脅威というものは物すごく遠いところにあるのではない、過去にうろついていたという者はありますよ、うろつかせちゃいけないんだという意味で、そんなにしつこく言ったわけじゃありませんが、さらりと言ったわけでございます。

 要するに、今答弁がありましたように、やはりそういう隠れみののようなものが多数あるということも事実だというふうに私もとらえておりますし、実際、何回も何回も入国を繰り返して、日本各地に。

 インテリジェンスの問題というのは非常に難しいので、私も全部教えてもらえる状況にはないわけですね。インテリジェンスの問題というのは、全部べらべら、我々が知ってあれしたら、逆に相手の思うつぼにはまってしまいますから、インテリジェンスというのは非常に微妙な問題だと思いますが、何回も何回も入国を繰り返していく中で途中から気がつくということもあったんだろうと思う中で、先ほど加藤公一先生の御質問にもありましたように、私自身は、先ほど先生にまとめていただいたようないきさつなんです、きょう理事会に提出したようないきさつなんですが、より驚いたのは、その人間が何度も入国している、会ったよ、会ったよという話を聞いてびっくりしたわけですから、そういう観点を強調して申し上げたものです。

古本委員 テロリストが我が国の領土、国内をうろうろしているんですと大臣がおっしゃるんですから、そうなんでしょう。公安も今是認されたというふうに受けとめました。

 そういう方々を捕まえる、あるいは何らかの形で追跡、尾行する、こういったことを担当するのはどこなんですか。これは、もちろん入管での水際ということもあるでしょうけれども、大臣おっしゃるように、ひげをつけたりとか、何かおっしゃっておられましたですね。あの手この手で入ってくるんでしょう。入ってこられた以降、所管、担当はどこになるんですか。

柳政府参考人 テロリズム、テロに対する取り組みにつきましては、政府全体として、その役割に応じて行われているというところでございます。

 当庁につきまして申し上げますと、当庁におきましては、テロの未然防止を図るために、国際テロ組織等の動向あるいは国内における不穏動向の把握等の観点から、破防法等に基づきまして、鋭意情報収集に努めているというところでございます。

古本委員 大臣、少なくとも、そういった者が国内をうろついているんだと法務大臣がおっしゃったことが、これだけ影響を大きくしていると思うんですね。当然、公安は法務大臣の配下ですよね。公安に今後しっかりやっていただくということなんでしょうけれども、当然、警察との連携もあるんでしょう。

 当時、バリ島の事件のときに、それほどまでに危惧し、身近にいた防衛省あるいは入管、聞いた事実を役所にいろいろ相談したんだけれども、具体的なアクションが得られなかったということを大臣は悔しがっておられましたが、今まさに、その権能と権限と予算とが大臣の手中にあるわけでありますので、うろうろしているとおっしゃられた、国際的に指名手配されているような、あるいはその筋では有名な者が我が国の領土をうろうろしていることについての具体的手だてを、大臣の在任中にどのように打っていかれるかということについて、決意はいいです、具体的に何を部下に指示なさるのか、お尋ねしたいと思います。

鳩山国務大臣 私は、先ほど申し上げましたように、そういう極めて危険な人物が平気で入国、出国を繰り返してきた事実を、私も知っているし、公安がとらえているものもある、またそういう隠れみのになりやすいところも存在しておるということで、これはもう先生御承知のように、どうやって国民や国の安全を守るかというその一点に集中して、懸命にやっていきたい。

 例えば、内閣には緊急テロ対策本部というのがあるんですよね。本部長は内閣総理大臣、副本部長が内閣官房長官。緊急テロ対策本部というものができたものですから、平成十三年十月十日、事務次官を本部長とする法務省緊急テロ対策本部というのも設置されているわけですね。それから、十六年十二月に決定されたテロの未然防止に関する行動計画というのもございまして、これで、国を挙げて、政府を挙げて取り組んでいこうという体制はある。

 その一環として今度のこの指紋をとるということもやったわけでございますが、上陸時に指紋をとるということは大変な効果があるとは思いますけれども、あるいは国際的な情報を得ておりますから、国際的な指名手配ということまではないと思いますが、そういう危険人物が入ってくればすぐわかるようにはなっていますけれども、それはそれだけで済む問題ではありませんから。

 また、密入国というんでしょうか、パスポートなしで船で来た場合には、これは全く別の対応になるわけですから、これは、ありとあらゆる関係省庁と連絡をとり合って、全力を尽くす。

 それは、この国をそういうテロから守るということが何よりも大事であって、私は、平和国家である、かなり治安のいい国であることは認めるけれども、その日本にだって現実にテロの脅威はあるんですよ、そういう人間が入ってきた実績はあるんですよということを申し上げて、警鐘を鳴らしたつもりであります。

古本委員 密入国で、漁船か何かで上陸してきた限りは指紋のとりようもありませんから、そういう御指摘だと思うんですが、それはまた、そういうやからがおるということを是認されていますか、そういう人がおるんだということを。

鳩山国務大臣 いえ、私は、可能性について、空から来て、あるいは入管を通った人についてはかなり強力な体制になる、強力な抑止効果というか、防御効果というか、もちろんそれは退去強制させるんでしょうけれども、そういう効果があるけれども、それ以外の密入国という手段だと、これはまた、日本の北海道から沖縄まで全部海岸を警備するのは入管ではありませんので、そういうときの対策も考えなくちゃいけないなということを申し上げただけです。

古本委員 そういう意味では、大臣の配下という意味では、きょうは入管も来ていただきましたので、最後に、バイオメトリックス、日本の入管はフィンガープリントでとるというのも結構なんですが、技術的に指紋というのはつくりかえることはできるんですか、できないんですか。

 さらに言えば、日本は、出入国のときのバイオメトリックスは顔の輪郭を採用していますね。先日、与党の先生も質問されていましたが、虹彩ですとか、あるいは静脈ですとか、世界的に日本がせっかくはぐくんできている先端技術を使うという意味でいえば、もう一歩踏み込んだ判断もあると思うんですね。

 大臣がそこまで懸念されていますので、その部下である入管局長の御見解をお伺いしたいと思います。それで終わります。

稲見政府参考人 お答えいたします。

 後段の方から先にお答えさせていただきますけれども、確かに、生体情報、指紋、顔認識情報、これで始まりますが、それ以外にも使えるものがあるのは承知しております。ただ、いわゆるブラックリスト、要するに問題のある方でございますが、そちらの方に現時点で指紋、顔認識情報以外のものがふんだんにあるというふうな情報は、我々は接しておりません。したがいまして、現時点では、指紋と顔認識情報、これで照合するのが一番有効だと考えている次第でございます。

 それから、指紋のつくりかえでございますか、これは、我々の口からは言えませんが、いろいろ対策は講じます。講じて対応していくつもりでございますが、一〇〇%かどうかはやってから、検証しながら進みますが、現時点では全力を尽くして対応しているというつもりでございます。

古本委員 大臣におかれましては、ぜひこのことでの御発言は今後はよくよくお考えになって御発言いただくことを、いたずらに国民を動揺させないように切に願うばかりでありますし、内閣を挙げて、うろうろしていないように対応していただくことをお願いして、終わります。

 ありがとうございました。

下村委員長 次に、保坂展人君。

保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。

 時間がないので簡潔に答弁をいただきたいんですが、まず、最高裁刑事局長に来ていただいていますが、ことし、裁判員制度全国フォーラムの過去の展開について、いささかずさんな点があったという指摘をいたしました。今年度になって、この予算を要求されていますが、実際にフォーラムは過去同様されていないというふうに聞いております。

 どういうふうに今、その三億四千万円ですか、使われているんでしょうか。端的にお答えいただきたいと思います。

小川最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 昨年度までの裁判員制度全国フォーラムは、裁判員制度の内容を周知することに関して相応の成果を上げたものと思われますが、今年度は、国民の具体的な関心、不安に応じた情報を提供できるような広報活動を行うという観点から、裁判員制度フォーラムのあり方を見直して、来場者との間で実質的に質疑、意見交換を行うことができる程度の小規模な企画を実施することにしております。

 これに伴い、予算執行についても、昨年度までのように中央で一括して業者に発注するという形式はとらないで、各地の実情に応じて個別に執行することとしております。

 具体的には、会場借料、音響映像機器のレンタル料、広告費等について、各地裁から予算上申を受けて、最高裁においてその相当性を吟味した上で、個別に示達することとしております。

保坂(展)委員 では、これは経理局長に答弁を求めませんが、小規模でしっかりやるということですから、予算が余ったら、どうぞ国庫に返納していただきたいというふうに指摘をしておきます。

 続いて、検察官適格審査会という余り知られていない組織がありますが、私、三回質問しているんですが、検察官の罷免もできるという大変な権能があるんですね。しかし、戦後五十年間、一回しかこの権能は発揮されなかった。広島県で、行方不明になった副検事の方が、ずっと行方がわからないので罷免をされたというのが平成四年に一件あったきりと聞いております。

 検察官のいわゆる職務に関してチェックをするというこの機関の年間予算が、平成十五年で十五万八千円、そして平成十七年は十五万七千円だった。ことしは幾らですか。

池上政府参考人 以前から委員からお尋ねを受けているところで、検察官適格審査会の予算の額を、ちょっととらえがたいところがあるということから若干申し上げさせていただきたいと思うんですが、検察官適格審査会の庶務については、大臣官房人事課が担当することになっております。したがって、その審査会の庶務的経費とか、あるいは人員の配置等については官房人事課の事務として処理されておりまして、審査会の予算としては計上されていないという関係になるんです。

 それで、平成十五年と十七年にお答え申し上げましたのは、審査会の委員への手当や委員が調査等を行う場合の旅費について、法務本省全体で計上されております、目、委員手当と目、委員等旅費の予算について、検察官適格審査会の活動に関するものとして積算上計算されている金額ということで、従来、十五万八千円と平成十五年にお答えし、平成十七年には十五万七千円……(保坂(展)委員「いえいえ、ことしは」と呼ぶ)ことしは、そういう積算をいたしますと、十五万一千円でございます。

 これは、実を言いますと、委員手当につきましては、国会議員の先生方については、過半数を占めておるんですが、支給しないというような関係もあり、こういう金額になっているということでございます。

保坂(展)委員 私は、これは形骸化していると思いますね。ぜひ見直しをしなければいけないと思いますが、ちょっと時間の関係で。

 鳩山法務大臣に、前回、死刑の問題についてお話をじっくりさせていただきたいということで、お話をする機会をつくっていただきましたけれども、残念ながら、お忙しい日で、余り長時間はできませんでした。

 そこで、私のみならず、例えばアムネスティなどのNGOであるとか、あるいは有識者、こういう方たちと一緒に大臣をお訪ねして、法務省の中で関係する矯正あるいは刑事局、こういう方々も交えて討論をさせていただく、そういう勉強会をぜひ開催していただきたい。いかがですか。

鳩山国務大臣 先般、私をお訪ねいただいて、いろいろと御教示いただきましたこと、心から感謝申し上げます。決して長時間ではありませんでしたが、やはり保坂展人先生からあのようなお話を承りますと、私の知らない話もございまして、ああ、なるほどなと思う点が当然幾つもございました。また、EUトロイカの方々とも話し合いをいたしました。

 したがいまして、前にもお約束いたしましたように、先生を代表とされて、アムネスティの方でも結構ですが、議連の方でも結構ですが、私の方から出張っていっても構いませんし、できれば何人かの局長とともにお話を承って議論もしたいと思っております。(保坂(展)委員「勉強会でよろしいですか」と呼ぶ)私どもがやっている勉強会で先生方、保坂先生の意見も承るという形をとりたいと思っております。

保坂(展)委員 続いて、同僚議員からお話が出ていた大臣の御発言について、私もちょっと心配をしているんですけれども、町村官房長官にあてられたメモでございますね。

 こちらのメモを見ていると、事実経過に関する説明ですか、ちょっと確認なんですが、インドネシア・アンボン島を中心に活躍している有名な昆虫標本商Aさん、バリ島にはBさんという日本人の有名な探検家、バタフライパークを経営していらっしゃる。このAさんとBさんというのは、実在の個人で、特定できますね。これはいかがでしょうか。

鳩山国務大臣 もちろんでございます。

保坂(展)委員 次に、この経過についてあるんですが、大臣が爆破事件の暮れにバリ島の日本人のBさんを訪ねたときに、Aからの連絡があった、クタには近づくなという話があって、時期は特定されなかったけれども爆発が起きたので驚いた、そしてそれ以降、連絡がとれない、アルカイダ系に走っているようだ、こういうことでありますけれども、その後、日本人Bさんが共同出資をされた、アルカイダではないかと大臣が言っていらっしゃるAさんと連絡をとったんでしょうか。これは五年前の時点の話ですけれども、その後はどうなんでしょうか。

鳩山国務大臣 そういうことは、私は全く聞いていないと思います。その後、バリ島に行ったかどうかも疑問でございますし、ただ、驚いたのは、その二年後でしょうか、そのAという人が日本国内に何度も入ってきたということを聞いてびっくりしたわけです。

 こう言ってはいけないんですが、インテリジェンスの問題というのは非常に微妙なので、私はそのことをいろいろな人に語りましたけれども、それは随分いろいろな方に、これは一つの調査のきっかけになるよということで言いましたけれども、まだバリ島のことなものですから、その情報はインテリジェンスとして吸い取られていくだけで、私には何の返答もなかったのかもしれませんけれども、その人物が日本に入国してきているということになって強い危機感を覚えたといういきさつでございまして、BさんはAとの連絡が随分前からとれなくなって、どんどんとれなくなっていって、しばらくして予告があった、こういうことでございまして、その後のことはほとんど聞いておりません。

保坂(展)委員 前回、もしこのAさんが、簡単に言うと白だった場合、疑いが生じるような外形的な状況はあったけれども実際には無関係だった場合は大変ですねという話をしました。

 これは日本国外の話なので我々はぴんとこなかったんですが、よく考えてみると、大臣は法務大臣でいらっしゃいます。つまり、一般の議員、有事の特別委員長のときとはちょっと立場が違うと思うんですね。そういうときに、例えば、日本国内の、別の事件でですよ、大量に人が死んだ事件で、埼玉県内の三十歳の家業の豆腐屋を手伝っている男性が関与濃厚なんということを記者会見することは通常あり得ないと思うんですね。つまり、個人が特定されるようなことを捜査あるいは裁判を通さずに大臣が示唆する、あるいは特定個人を示すというか、そういうことに対して、やはりそこはちょっと軽率だったのではないかと私は感じる。

 もう一つ言います。それから、彼が、もしこのAさんが黒だった場合にどうなのかというふうに考えると、黒だった場合にはどうでしょう。その人は本当に関与者だったという場合には、国内的にいえば、検察官が行う個々具体的な事件の捜査について影響がありますよね。国際的には、世界各国の捜査機関が捜査しているんでしょうから、そういう意味でも、海外プレスの前で、昆虫標本商というのは大変珍しい職業だと思うんですね、特定されてしまう人をアルカイダというふうに言ってしまうことも、これは、もし黒であるとすれば、またその影響も重大ではないかと思うんです。

 大臣が個々具体的な事件についてはいわば指図したりはしない。法務大臣としては、検事総長を通してのみ、検事総長の管理監督権をもってのみ、検察官、検察行政を統括するという位置にあるはずなので、そこはしっかり整理をして、ここでお答えいただきたいんですね。

 官房長官あての文書は、お二人が特定できるんです、大変珍しい職業ですから。その点で、日本人のBさんの身柄も、大臣も御心配なさっているように、本当だった場合にこれは危ない、こういうこともあります。だから、その点、どう整理されていますか。

鳩山国務大臣 私も、Bさんについて特定されてしまうことによってBさんの身の安全という問題があって、したがって、そういう意味では、こういう具体例を引いたことが適当であったか不適当であったかということについては、やはり非常に悩むところでございます。

 ですが、あのクタの事件というのは一般にジェマー・イスラミアの犯行というふうに言われておりまして、その当時、ジェマー・イスラミアとアルカイダは大変資金的にも密接なつながりがあったなどということで、アルカイダ系にアンボン島の標本商が走ってしまったということなんです。

 私は、そういう友人の身の安全等を考えると、特定できては困るわけで、いろいろ悩んでおりますけれども、ただ、説明をする都合上、また、前回もこの委員会である程度のことを申し上げましたので、あのような形に書かせていただいたわけです。

保坂(展)委員 外国人プレスという大変訴求力の高いというか、インターナショナルなプレスの場で、大臣は、私の友人の友人がバリ島の爆破事件に絡んでおりまして、こう御発言されているんですね。そのこと自体が余りにも個別具体的で、しかもその特定個人がわかる。

 そして、日本人のBさんが連絡がとれなくなったのが五年前で、それ以降また連絡がとれるようになったのか。共同出資しているから、お金の関係、仕事の関係もあるでしょう。そこはもう一度そのBさんと連絡をとって確認をされる必要があるんじゃないでしょうか。

鳩山国務大臣 ただ、このインテリジェンスの問題は非常に微妙なもので、それはしていいことかどうか、ちょっと迷うところがあります。

保坂(展)委員 時間になってしまいましたが、私は、法務大臣として個々具体的な事件に言及してはならないという点を、やはり鳩山大臣、少しそこがしっかり定立していないように感じます。事件が白だった場合は大迷惑です、この人に。黒だった場合も、もしかすると日本が捜査妨害をしたなんということになってはいけないわけですから、そこは引き続きちょっと議論をさせていただきたいと思います。

下村委員長 次に、滝実君。

滝委員 無所属の滝実でございます。

 当委員会の本日の議題とは少し離れますけれども、秋の叙勲が発表された直後でございますので、刑務官の叙勲につきまして見解をただしておきたいと思います。

 戦後しばらくの間、刑務官が非常に苦労したのは、いわば脱走事件ですね。収容者の脱走事件が大変多くなった時代があるわけでございます。当然、担当する刑務官は何らかの懲戒処分を受ける、中には懲戒免職を受けた刑務官もかなりおいでになると思うんです。そういう古い刑務官は、既に七十歳の叙勲というか、刑務官ですから少し早いと思うんですけれども、そういう通常の叙勲の時期を逸しているわけでございますけれども、しかし、叙勲には、春、秋の叙勲のほかに八十八歳叙勲もあるわけでございますので、そういう意味でお聞きしておきたいと思うんです。

 そういう社会的な情勢によっていろいろなトラブルがあった、したがって懲戒免職を受けた刑務官ですが、懲戒免職を受けたままですと、少なくとも法務省が叙勲に絡むことはないと思うんですけれども、当時は、事情が事情だけに、懲戒免職を受けた後、ほとぼりが冷めたときに、一年後か二年後かに、もう一遍刑務官として新たに採用されている刑務官がかなりおる。そういう人たちは、一たんは免職を受けているんですけれども、改めて採用されているわけですから、刑務官としての経歴はそこからまた始まるんですよね。

 ところが、昔の懲戒免職を理由として叙勲の対象から外されていると思うんですけれども、実際はどうなんでしょうか。完全に外されているんでしょうか、懲戒免職を受けて改めて採用された刑務官は。そこのところをちょっとまずお尋ねしておきたいと思います。

梶木政府参考人 今御指摘のように、刑事施設の職員は、春秋叙勲、そして危険業務従事者叙勲におきまして、矯正業務に対する功労によって叙勲の栄に浴しております。

 上申に当たりましては、刑事施設職員として総合的な功労を勘案するということにしておりまして、国家公務員としてふさわしくない非行があった場合など、在職中に懲戒処分を受けた者につきましては、その態様等を勘案いたしまして、内閣府賞勲局に上申するか否かを個別に判断しているという状況にございます。

滝委員 矯正局長さんは余り具体的にお答えにはなっていませんけれども、基本的に、懲戒免職を受けるということは、相当程度の高い非行があったというふうに判定されるんでしょうから、当然、叙勲から外されるというのは常識的なところだと思うんです。しかし、そういう職員でも、もう一遍改めて採用し直すということになれば、その前の経歴は当然無視されていいんじゃないだろうかな、私はこう思っているんです。

 というのは、国家公務員、地方公務員を問わず、いろいろ懲戒免職を受けた職員はかなりいます。しかし、その後、例えば市町村議員や県会議員あるいは国会議員になった方々は、改めてそこからまた評価をされて、叙勲の対象になっている人がたくさんいると思うんですね。だから、国民から見ると同じなんですよね。その人に非違行為があったということについては変わらないんですけれども、議員になると叙勲の対象になってしまうんです、それは今までのことが遮断されますから。

 しかし、それは、昔はそういう人たちもアウトだったんです。所管省庁、所管地方団体から上申するときに、非違行為があるということでその人たちも除外されておったんですけれども、今は、恐らく議員からの評価は別だということで第二の人生、第三の人生は別に評価されている。したがって、刑務官の場合でも、一たん懲戒免職を受けて退職を余儀なくされた人も、改めて採用されていれば、当然、それはそこから評価をし直すということがあってしかるべきだと私は思うんです。

 そうじゃありませんと、叙勲は何のためにあるかというと、やはり、自分としてはいろいろ努力もした、苦労もした、しかし、公務員の中ではなかなかそれを直接評価される機会はない、最後に叙勲という格好で、要するに、国家が認めてくれたということを一つのよりどころにして頑張るんだろうと思うんですね。したがって、一たんペケ印がついちゃった人は、頑張りようがないんですよね。

 私は、刑務官というのは、下積みで非常に苦労している、いつもリスクを負っている仕事、そういう人たちについては、矯正局として、あるいは法務省として、やはり賞勲局にそこら辺の見直しを申請すべきじゃないかと思うんですけれども、大臣、何か御見解があったら承っておきたいと思います。

鳩山国務大臣 実際の運用としては、一度懲戒処分を受けられた方にはかなり厳しくなっていると思いますけれども、先生がおっしゃるように、心を入れかえて懸命に努力した人間に温かく報いるというのも、ぬくもりのある政治の一つとして考えていいかと思います。

滝委員 これは、刑務官がその仕事に携わっている以上は、励みになる、そういうものを消してはいけないように私は思いますので、大臣のおっしゃるように、ぜひ御検討をお願いしたいと思います。

 次に、報酬に関連いたしまして申し上げたいと思うんです。

 裁判員制度については順調に準備が進められているところでございますけれども、裁判員の日当は、基本的には日額一万円ということで大体確定しているように思います。一万円といいますと、世間から見ると、随分高い日当だなというふうに見る方が圧倒的に多いと思うんです。一万円の日当はかなり高い、いわば時間給にしますと時給千三百円でございますから、かなり面倒見たということにはなるんだろうと思うんです。

 ところが、実際問題として、ほかの、例えば調停委員なんかと比べるとあるいはバランスがとれているのかもしれませんけれども、同じボランティアで出発した人でも、調停委員は、自分でなるならないという判断ができるんですよね。ところが、裁判員の場合には、ほとんど義務づけされているわけですよね。指名されると、特別な例外を除いて受けなきゃならぬ。そういう人たちに、全くボランティアで引き受ける人たちと同じような処遇でいいんだろうかというのが一つ。

 それからもう一つは、少なくとも重大事件の判決に携わる瞬間は、裁判官と同じ仕事をするわけですよね。単純に、ボランティアでございますから、日当一万円は高いんだからいいじゃないかというわけにはいかぬだろうと思う。

 判事補の報酬で一番下の人は、今度のこの改正で二千円上がりまして、報酬月額は二十二万七千円になりましたよね。ところが、二十二万七千円ですけれども、この人に、例えば地域手当、初任給調整手当、十二号というと期末・勤勉手当が支給されますから、合計すると四十七万七千円の月額になるんです。これを一月二十二日間で計算すると、一日の報酬は恐らく二万一千円ぐらいになると思うんです。そうすると、一万円の日当と比べると、一番低い判事補と比べて半分以下なんですよね。

 ただ、金額が多いとか少ないとか、それはなかなか難しいところがあると思うんですけれども、気分的に、世間から見ると一万円は高いんですけれども、どうも同じ仕事を瞬間的にやるにしては問題があるんじゃないかな、こう思うんですけれども、司法法制部長、どうでしょうか。

菊池政府参考人 まず、後段の点からお答えをいたします。

 裁判員の方につきましては、いわゆる裁判員法によりまして、「最高裁判所規則で定めるところにより、旅費、日当及び宿泊料を支給する。」という定めになっておりまして、これを受けまして、最高裁判所の規則で、御指摘のとおり、日当については最高一日一万円というふうに定められております。

 裁判員は、常勤の国家公務員である裁判官とは違いまして、一般の国民の中から選任をされて、一定の期間だけ裁判員として職務をしていただく、そういう意味で非常勤でございます。日当は、その裁判員の方々が職務を遂行することによって生ずる損失を一定の限度で補償するといった趣旨で支給されているものでございます。これに対しまして、裁判官の報酬は職務の対価として支払われるものでございまして、裁判員の方々の日当とは性質を異にしておりますので、必ずしも両者を比較するといったことが適切であるとは考えていないところでございます。

 前段の点でございますけれども、裁判員と、ボランティアという面では似ているものとして、検察審査員という方がいらっしゃいます。この検察審査員も、一般国民の司法参加といった点で裁判員と共通しておりまして、その検察審査員の方にお支払いしている日当の額等を総合的に考慮して、裁判員には一日最高一万円と決めたわけでございまして、これは、ボランティアの方の中では比較的高目の金額になっているところでございます。

滝委員 今司法法制部長がおっしゃるように、いろいろな横並びの議論をすれば、私はそのとおりだろうと思います。ただ、翻って考えますと、戦前ありました陪審制度、このときの待遇というのは物すごく高いんですね。日当も高い、旅費も高い、宿泊料金もべらぼうに高い。そういうことをして、裁判官とむしろ同等の仕事をするということの意思表示をしているんですね。

 私は、そういう意味で、先ほど一番最初に申し上げましたように、この日当そのもの、一万円そのものは高目だと思いますよ。高目だと思いますけれども、その高目であるということを前提にして、もうちょっときちんとした理論づけというか、横並びだというわけにはいかないんじゃないだろうかな、一つそういう思いがいたします。

 それからもう一つは、国家公務員や地方公務員の場合には、裁判員休暇を既につくっていますね。ところが、民間から見ると、一万円というのは高いものですから、有給休暇の中でこなしてもらいたいという意見もあるわけです。したがって、私がなぜここで持ち出したかというと、やはり裁判官と同等の処遇ということも考えなきゃいけないんじゃないかということが一つ。

 それからもう一つは、同じ一万円、もう金額が決まっているのならそれでしようがないかもしれませんけれども、これはやはり、民間の場合には、改めてその上に裁判員休暇を個々の事業所あるいは事業体ごとにやるというのはなかなか抵抗がある。そういう意味でも、もう一遍、この一万円の問題は、単純に数字の問題じゃなくて、どういう性格のものだということをやはり議論した方がいいと思うんです。検察審査会の委員が最高一万円だからそれに合わせましたというのは、私は物事が単純過ぎるように思うのでございますけれども、大臣、どうでしょうか。

鳩山国務大臣 先ほど御説明いたしましたように、裁判員の日当の考え方と裁判官の報酬の考え方というのは、先ほど御説明申し上げたような形で性質が違っておりますので、両者を比較するということはなじまないと思っておりますが、先ほどから滝先生のいろいろな御議論を聞いておりますと、いろいろ考えてみる価値のあることが多数含まれておりますので、私なりに役所の皆さんと一緒に考えてみたいと思います。

滝委員 時間が参りましたので、終わります。ありがとうございました。

下村委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

下村委員長 これより両案を一括して討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 まず、内閣提出、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

下村委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 次に、内閣提出、検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

下村委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

下村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

下村委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十三分散会


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