衆議院

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第6号 平成20年4月4日(金曜日)

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平成二十年四月四日(金曜日)

    午前九時十七分開議

 出席委員

   委員長 下村 博文君

   理事 倉田 雅年君 理事 実川 幸夫君

   理事 柴山 昌彦君 理事 早川 忠孝君

   理事 水野 賢一君 理事 加藤 公一君

   理事 細川 律夫君 理事 大口 善徳君

      赤池 誠章君    稲田 朋美君

      近江屋信広君    後藤田正純君

      坂本 哲志君    清水鴻一郎君

      七条  明君    杉浦 正健君

      棚橋 泰文君    中森ふくよ君

      長勢 甚遠君    古川 禎久君

      馬渡 龍治君    武藤 容治君

      森山 眞弓君    矢野 隆司君

      保岡 興治君    柳本 卓治君

      石関 貴史君    枝野 幸男君

      河村たかし君    中井  洽君

      古本伸一郎君    神崎 武法君

      保坂 展人君    滝   実君

    …………………………………

   法務大臣         鳩山 邦夫君

   法務副大臣        河井 克行君

   法務大臣政務官      古川 禎久君

   最高裁判所事務総局総務局長            高橋 利文君

   最高裁判所事務総局刑事局長            小川 正持君

   政府参考人

   (内閣府犯罪被害者等施策推進室長)        殿川 一郎君

   政府参考人

   (警察庁長官官房長)   米村 敏朗君

   政府参考人

   (警察庁交通局長)    末井 誠史君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          深山 卓也君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    大野恒太郎君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           中尾 昭弘君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    中村 吉夫君

   法務委員会専門員     小菅 修一君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月四日

 辞任         補欠選任

  武田 良太君     坂本 哲志君

  棚橋 泰文君     中森ふくよ君

同日

 辞任         補欠選任

  坂本 哲志君     武田 良太君

  中森ふくよ君     棚橋 泰文君

    ―――――――――――――

四月二日

 選択的夫婦別姓制度導入及び婚外子相続差別撤廃の民法改正を求めることに関する請願(阿部知子君紹介)(第七六二号)

 同(重野安正君紹介)(第八一三号)

同月四日

 選択的夫婦別姓制度導入及び婚外子相続差別撤廃の民法改正を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第九四九号)

 同(石井郁子君紹介)(第九五〇号)

 同(笠井亮君紹介)(第九五一号)

 同(小宮山洋子君紹介)(第九五二号)

 同(郡和子君紹介)(第九五三号)

 同(穀田恵二君紹介)(第九五四号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第九五五号)

 同(志位和夫君紹介)(第九五六号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第九五七号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第九五八号)

 同(西村智奈美君紹介)(第九五九号)

 同(柚木道義君紹介)(第九六〇号)

 同(吉井英勝君紹介)(第九六一号)

 同(枝野幸男君紹介)(第一〇七三号)

 同(小宮山洋子君紹介)(第一〇七四号)

 同(郡和子君紹介)(第一〇七五号)

 同(西村智奈美君紹介)(第一〇七六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律及び総合法律支援法の一部を改正する法律案(内閣提出第三〇号)


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     ――――◇―――――

下村委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律及び総合法律支援法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣府犯罪被害者等施策推進室長殿川一郎君、警察庁長官官房長米村敏朗君、警察庁交通局長末井誠史君、法務省大臣官房司法法制部長深山卓也君、法務省刑事局長大野恒太郎君、厚生労働省大臣官房審議官中尾昭弘君、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長中村吉夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

下村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

下村委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局高橋総務局長及び小川刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

下村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

下村委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。赤池誠章君。

赤池委員 自由民主党の赤池誠章です。

 本日は、犯罪被害者、その家族や遺族の方々が刑事裁判に参加するのに資力が乏しいなどの場合、弁護士の費用を国から受けられるようにする、いわゆる国選被害者弁護士の制度の新設のための所要の法律の改正案について質問をさせていただきたいと思います。

 既に平成十六年に、犯罪被害者の方々の総合的な取り組みを求める声を受けまして基本法が議員立法で制定されまして、平成十七年より施行され、その基本法によって、政府によって基本計画が定められ、総合的な推進会議が設置され、五年間で二百五十八の具体的な施策が位置づけられ、実施をされてきているところでございます。

 五つの取り組みということで、損害回復、経済的支援、二つ目としては精神的、身体的被害の回復、防止、三つ目としては刑事手続への関与拡充、四つ目としては支援等のための体制整備、五つとしては国民の理解増進と配慮、協力の確保ということであります。

 その中の刑事手続への関与拡充への取り組みの一環として、昨年の六月に被害者の方々が刑事裁判に参加する制度が創設をされ、本年十二月から施行されるということになっております。本日は、その制度をさらに有効に機能させ得るべく、いわゆる国選被害者弁護士制度の創設に関して具体的に質問をさせていただきたいと思います。

 法案には、被害者参加弁護士の選定請求ができる被害者参加人の方々の資力要件というものが定められております。現行の被疑者や被告人の国選弁護士と比べて、資力要件というものがどのように定められているのか、法務当局の見解をお伺いいたします。

大野政府参考人 被害者参加人の方々の資力要件について、御説明申し上げます。

 考え方でございますけれども、被害者参加人に属します現金、預金等の資産の合計額から、負傷や疾病の療養に要する費用など犯罪行為を原因として請求の日から三カ月以内に支出することとなると認められる費用の額、これを控除いたします。そして、控除後の資産の額が基準額に満たないものであればその要件に当てはまるということになるわけでありますけれども、この基準額は、標準的な三カ月間の必要生計費を勘案いたしまして一般にそこから被害者参加弁護士の報酬等を賄うに足りる額として政令で定める額とされております。

 実際にこの基準額が幾らになるのかという点につきましては、この法律が成立した後、家計調査に関する各種の統計数値や、あるいは弁護士の報酬等に関する調査結果等を参考にいたしまして、政令で定めることとされているところでございます。

赤池委員 具体的に、現行の国選弁護人制度と比べてどのような形になっていますか。さらにお願いいたします。

大野政府参考人 現行の国選弁護制度におきましては、一カ月間の必要生計費それから弁護士の報酬等を賄うに足りる額ということで、やはり政令によってその基準額が定められておりますけれども、現行では、これは五十万円とされているところでございます。

赤池委員 具体的には今後政令ということなんですけれども、犯罪被害者、その家族や遺族の方々にとっては、どなたが犯罪に遭遇したかによって当然違いはあるにしても、現在の経済的な不安、そして特に将来への不安というものを考えたときには、ぜひ利用、活用しやすいように基準の緩和、そして具体的に予算の確保というものを十分お願いしたいと思います。

 次に、被害者参加弁護士の選定請求というのは、日本司法支援センター、いわゆる法テラスを経由しなければならないとされております。その場合の選定請求の手続が、犯罪被害者、家族、遺族の方々にとって利用しやすいかどうか、どのような配慮がなされているか、法務当局に御見解をお伺いいたします。

深山政府参考人 この法律案におきましては、裁判所に対する被害者参加弁護士の請求を今御指摘のとおり日本司法支援センターを経由して行っていただくこととしておりますが、日本司法支援センターにおいては、被害者参加人が選定請求の手続を利用しやすくするために、例えば被害者参加弁護士の選定を請求するための要件や、被害者参加弁護士に委託することができる行為といった、この制度の内容について十分な説明を行う、さらにこの法律で、被害者参加人が提出をする必要がある資力等を申告する書面に記載すべき内容についての御説明あるいはお持ちになった書面に記載の不備がある場合には、十分説明を聴取して、どう改めたらいいかということについて助言するといった配慮をすることを予定しております。

 なお、この法律案では、被害者参加人が資力等を申告する書面を提出するに当たって、資力等の額を疎明する資料、これは提出する必要がないものとされておりまして、この点も被害者参加人の負担を軽減することに配慮したものでございます。

赤池委員 具体的な様式は今後ということになるとは思うんですが、いわゆる資力要件ですから、添付書類とか、何か証明書をつけろとか、そういったことはなく、その場で十分説明して負担なくできるということでよろしいんでしょうか、もう一度確認をお願いいたします。

深山政府参考人 委員御指摘のとおり、証拠書類のたぐいのようなものをわざわざ集めて添付するといった必要はありませんし、書き方についても、今申し上げたとおり、法テラスの方で十分に説明をして助言するということになっております。

赤池委員 それでなくても、犯罪被害者、家族、遺族の方々にとって、犯罪そのものがもう本当に心理的、時間的、経済的な負担となっているわけでありますから、そういう面で、救済支援をする手続そのものに負担がかからないようさらなる配慮をお願いしたいと思います。

 続きまして、国選被害者参加弁護士の契約弁護士として、具体的に被害者等の支援に詳しい弁護士の先生方を十分法テラスを通じて確保できるのかという現実の問題もあると思います。この辺に関しまして、法務当局の御見解をお伺いしたいと思います。

深山政府参考人 日本司法支援センターでは、現在、各地の弁護士会から犯罪被害者等の援助に精通した弁護士の推薦を受けて、精通弁護士名簿というものを作成して、法的援助を必要とする犯罪被害者等に対して精通弁護士の紹介を行っているところでございまして、平成二十年三月一日現在で千二百六十一名の弁護士の方が精通弁護士名簿に登載されております。

 そこで、司法支援センターでは、この精通弁護士名簿に登載されている弁護士の方々を中心に被害者参加弁護士契約を締結していただけるよう協力を要請することを予定していると聞いております。

 また、日弁連等におきましては、犯罪被害者等の援助に精通した弁護士の必要性、重要性を踏まえまして、さまざまな研修を実施するなどの取り組みをされていると伺っておりまして、司法支援センターにおいては、このような日弁連の取り組みとも連携をしながら、犯罪被害者の援助に精通した契約弁護士のさらなる確保に努めるなど、体制の整備に取り組んでいくものと承知しております。

    〔委員長退席、倉田委員長代理着席〕

赤池委員 例えば、犯罪被害者の方がよく知っている弁護士の方が名簿になかったとか、また特に配慮を要する性犯罪のような場合、女性の方がいいとか、こういうところに詳しい人がいいとか、そういう場合は、十分犯罪被害者、家族、遺族の方々の意見を踏まえて選定ができる体制になっているんでしょうか、もう一度お願いいたします。

深山政府参考人 司法支援センターでは、できるだけ多くの方に契約弁護士になっていただくよう先ほど申し上げたとおり努めていくわけですけれども、多数の弁護士さんの中から、その犯罪被害者の方が、自分の犯罪や自分の御希望に応じていろいろな御要望を述べられることがあると思います。例えば、女性がいいですとか年配の方がいいとか、あるいは同年配の方がいいとか、そういった要望に契約していただいた弁護士の方々の中から一番適した人を選んで国選弁護人になっていただくということにしております。

赤池委員 ぜひ犯罪被害者の方々の要望をしっかり受けとめられて、それにこたえ得る体制整備を引き続きお願いしたいと思います。

 その質問に関連して、やはり何といっても弁護士の方々の質と量の問題というのがあると思うんですね。

 現在、法曹の養成について法務省は、司法試験合格者が多過ぎるのではないかという観点、法曹の質の確保、これは当然不可欠だという観点から、省内において法曹人口に関する勉強会を主催しているということを聞いております。

 また、司法制度改革審議会意見書及びそれを受けて閣議決定された司法制度改革推進計画では、「法科大学院を含む新たな法曹養成制度の整備の状況等を見定めながら、平成二十二年ころには司法試験の合格者数を年間三千人程度とすることを目指す。」とされております。

 そこで、担当の河井副大臣に、将来の法曹人口に関するお考え、仮に法曹養成制度の整備の状況に問題があるとなった場合、それでも三千人を達成するのかどうか、お伺いをしたいと思います。

河井副大臣 質問にお答えをさせていただきます。

 鳩山邦夫大臣の問題意識にのっとりまして、大臣の御指示により、二月二十日に省内の勉強会を発足いたしまして、先ほど委員御指摘の、さまざまな観点から法曹人口のあり方について勉強を積み重ねております。

 先生おっしゃるとおり、平成十四年三月十九日の閣議決定、法曹人口の拡大、これはあくまでも法曹人の質の確保ということが大前提で司法試験合格者数三千人程度を目指すということでありまして、これは大臣も繰り返し会見等で表明をしていらっしゃるとおりであります。

 ということですから、その質の確保ということが図られないで数だけふやしていくということは、私はあり得ないというふうに考えておりまして、忠実かつ誠実な閣議決定の遵守ということは、つまり質の確保をしながら数の増加を目指していくということにつながっていくと考えております。

 このことは、平成十三年の六月十二日の司法制度改革審議会の意見書におきましての、法曹の質、量を拡充することが不可欠であるという文言にも機縁しているというふうに考えております。

 以上です。

赤池委員 これは、法務省のみならず、法科大学院の問題、当然文科省の問題にもつながってくるということであります。

 各種国家試験などは、具体的に国家試験のいわゆる受験者、合格者数を公開して、マスコミにランキングが出たりするということもあるわけでありまして、そういう面では、学問の自治がございますから、中身に関して、これは文科省を除くといろいろなことが言えない部分があるにしても、やはり既に公開をされていると聞いておりますが、改めて、一体どんな形での合格率になっているかということも積極的に情報公開をした方がいいのではないかなというふうに思っております。

 そうした中で、いわゆるお金の問題だけを確保して教育内容が乏しいということでは何をか言わんやということになると思いますので、その辺は、法務省のみならず、関係省庁に要望させていただきたいと思います。

 今回、犯罪被害者という形の中での国選弁護士制度の創設ということであります。私たちというのは、残念ながら、いつ犯罪に巻き込まれて犯罪被害者やその家族になるかわかりません。そういう面から、犯罪被害者やその家族、遺族のための施策の充実というのは、私たちの住む日本、治安大国日本、世界一安全で、安心して、そして安定して暮らすということをつくるその基盤ではないのかなというふうに思っております。引き続き、私ども国会、そして法務省初め行政省庁、そして司法が一体、一丸となって施策の充実のために力を注いでいくということが大事ではないかなということを考え、私の質問とさせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。

倉田委員長代理 次に、大口善徳君。

大口委員 公明党の大口でございます。

 今回の法案につきまして、質疑をさせていただきたいと思います。

 昨年の六月に、犯罪被害者等基本法あるいは基本計画を受けまして、被害者参加制度、この法律ができたんです。そして、この十二月にもこれが実施されるということであります。

 これは、被害者等が参加の申し出をして裁判所がそれを許可する、そして証人尋問について言えば、情状についての証言の証明力を争うための尋問をすることができる、また被告人質問につきましては、意見陳述をするために必要な質問ができる、そして訴因の範囲内でありますが、事実または法律の適用について意見の陳述ができる、こういうことで、私ども、犯罪被害者の皆さんの要望に的確にこたえることのできる被害者参加制度である、こういうふうに思っております。

 いよいよそれがこの十二月に実施されるということでございまして、被害者参加制度の意義について、それから今後の取り組みについて、大臣にお伺いしたいと思います。

鳩山国務大臣 今大口先生がおっしゃられた事柄がまさに物事の本質だと思っておりますけれども、一言で申し上げて、日本の刑事司法手続とか裁判とか、いろいろと工夫を重ねて仕組みをつくってきたのでありましょうが、どちらかというと被害者の方々にお気の毒な場面が多過ぎたのではないのか、そういう反省の中から犯罪被害者等基本法というものが生まれ、政府でも計画をつくり、そしてこの基本法によって、刑事に関する手続への参加の機会を拡充する制度というものができ上がったわけであります。

 今まで傍聴しかできなかった被害者や遺族の方が傍聴ではなくて出席ができる、今先生おっしゃったように、もちろん証人尋問も、一定の範囲において、裁判所の許可された範囲内においてできる、被告人質問も同様だ、そして締めくくりの意見陳述、今までも意見陳述という制度はあったようでありますが、締めくくりの段階における意見の陳述もできる、こういうような刑事訴訟法の改正等もあったわけで、被害者の訴訟参加というものが創設をされたわけでございまして、私は大変意味のある大変革だというふうにとらえております。

 被害者の皆さんの、遺族の皆さんの心情とか意見というものが裁判には反映されるべきだ、それがまた適正な科刑にもつながっていくだろうと思いますし、あるいは名誉の問題というんでしょうか、やはり被害者御自身が直接裁判に参加して御自身の名誉の回復を図るとか、あるいは人生の立ち直りのきっかけをつくるというようなこともあり得ると思いまして、私は大変意味のある大きな転換をいたしたものと考えております。

    〔倉田委員長代理退席、委員長着席〕

大口委員 その昨年の刑訴法の改正に当たって、これはちょっと異例のことだと思うんですが、いろいろと審議もしました。

 その中で、やはり被害者の方には、被害者参加制度について、国選弁護士を付すべきである、こういうことで、政府の法案をさらに修正して、附則の中に「資力の乏しい被害者参加人も弁護士の法的援助を受けられるようにするため、必要な施策を講ずるよう努めるものとする。」という形で与党修正をさせていただきました。私も提案者でありまして、自民党の先生方と協議してこういうものを盛り込ませていただいたわけです。そういう点で、今回の法案については非常に感慨ひとしおのものがございます。

 さらに、この犯罪被害者等基本計画に基づいて経済的支援に関する検討会も行われて、昨年の九月に結論が出て、犯給法の金額を自賠責並みに倍額にするという法律が今回内閣委員会に出ております。それとともに、この被害者国選弁護士制度が法案として出されたということで、私も非常に意義深いものだと考えておりますけれども、中に、被害者参加人に国選弁護士をつけなくても検察官がサポートすれば十分だ、こういう意見、慎重論もあったというふうに聞いております。

 そこで、この被害者国選弁護士制度の意義について、改めて大臣から御所見をお伺いしたいと思います。

鳩山国務大臣 国選弁護は不要ではないかという意見があったこと、あるいは存在をしていることは私も知っております。

 というのは、民事事件のように被害者が原告で加害者が被告という形、それは歴史的には、大昔はそういう裁判もあったかもしれませんが、現在は、原告というのは国が、検察官が全部一括して行うということでありまして、検察官と犯罪被害者等は密接なコミュニケーションをとっていくわけだし、これから被害者参加人、参加制度の中で参加しようとする方に対しては適切なアドバイスを検察官も当然するだろう、こう思っております。

 ですが、先ほど申し上げましたように、被害者と検察官はかなり立場が違って、あくまでも公益、国を代表していますが、公益の代表者として、法と証拠に基づいて公訴を提起し公判活動を行うという使命。やはり、被害者参加人の尊厳の確保というようなことですと、直接検察官がその任務を負うわけでは全くないわけであります。したがって、検察官は法と証拠に基づいて公判を行っておりますから、当然ですが、被害者参加人の希望に沿うような形で物事を進めるとは全く限らない。

 そういう意味で、やはり被害者が検察官といろいろ話をする場合であれ、あるいは実際の意見陳述とかあるいは質問、尋問のときであれ、全く被害者に親身になって、同じ立場に立ってくれる弁護士さんというものが必要だろう。もちろん、自分自身が発言するのはためらってしまう、あるいは自分が法廷に行くのは嫌だという方は、当然弁護士さんに代理、代行をしてもらえる。そういう意味で、被害者参加には検察官だけでは足りないので、やはり弁護士あるいは国選弁護士が必要だ、こう考えるわけでございます。

大口委員 今大臣から、この意義についていろいろ深く考えられてのお考えをお伺いしました。

 とにかく、犯罪被害者の方は、大事な方を亡くされた遺族を含めまして、本当に精神的にも、あるいは経済的にも苦境に陥っておられる、そういう方々の尊厳を回復していく、名誉を回復していく、そのためにはやはりこの国選弁護士という制度は被害者参加制度を実質的に実効あらしめる不可欠のものである、こういうふうに考えておりまして、今大臣からこの制度に対する意義を確認させていただいて、非常に私どもも同感でございます。

 その上で、昨年もこの被害者参加制度についてはいろいろ議論がありました。野党の方から、例えば、法廷を私的闘争の場にするに等しいとか、被告人と直接対峙する被害者が感情的になるというような御懸念もありました。そういうことで、被害者が感情的な訴訟活動をすることにならないようにどうしていくかということでは、やはり検察官が適切に対処するということが必要であろう、こういうふうに思います。

 例えば、質問内容を事前に検察官と被害者、弁護士も入って話し合うとかいう形で感情的な質問は防いでいけると思うわけでありますが、あとの感情は当然出てくるわけでありますので、それまで遮ることはできないとは思うわけであります。

 そういう点で、この被害者参加制度の成否は検察官にかかっている部分が大きいと思うのです。法廷で、隣に被害者が座られる、多分国選弁護士ないし委任を受ける弁護士はその被害者のさらに隣に座ると思っておるのですけれども。いずれにしましても、検察官の役割が非常に大きいという点では、この被害者参加制度の導入に向けて現在検察庁としてどのような準備をされているのか、研修等を日弁連では行っているということでございますけれども、そういうことについてお伺いしたいと思います。

大野政府参考人 検察当局におきましては、犯罪被害者等基本法を受けまして、被害者の尊厳、その心情を十分重んじ尊重した検察活動に努めているわけでございますけれども、この被害者参加制度というのは全く新しい制度ということになるわけでございます。

 ただいま委員の方から御指摘がありましたように、この制度が円滑に運用されるためには、検察官と被害者参加人との間のコミュニケーションというのが大変重要視されているというように理解しております。

 そこで、現在、本検察当局といたしましては、検察官と被害者参加人あるいは今回被害者国選弁護制度が創設された場合には国選弁護人ということになりますけれども、被害者参加人の委託を受けた弁護士等との意思疎通のあり方等につきまして、一体どういう点に留意すべきなのか、またどうすれば円滑な訴訟運営と同時に被害者の正当な訴訟活動が行えるようになるのかという点について検討を進めているところであります。

 必要な留意事項等につきまして、現場の検察官に対する周知徹底を順次図っていくものというように承知しております。

大口委員 これは、ただ単にマニュアル等の書いたものだけで周知徹底ができるかどうかということでありますので、どう周知徹底させるか、研修等も含めたことをやはりよく検討していただきたいと思います。

 しかも、この被害者参加制度が十二月には実施されて、そして来年の五月には裁判員制度が実施される、こういうことで裁判員制度も半年ぐらいの間に続けて導入をされるということであります。

 そういうことから、前回、定員法のところで最高裁には見解をお伺いしたわけですけれども、最高裁としては、この被害者参加が行われる事件の模擬裁判で、法曹三者でこの運用についても実証的に検討することを予定している、こういう答弁がございました。これも、昨年のこの被害者参加制度の法案の、刑事訴訟法改正の質疑の中でも、被害者の参加により、被告人が不当に重い処罰を受けるおそれだとか、いろいろ混乱が生じるのではないかとか、いろいろなことが委員会でも指摘をされたわけであります。

 こういうことで、被害者参加制度自体も初めて、それから裁判員制度というのも、これは非常に大転換の、初めてのことであります。要するに、裁判員制度と被害者参加制度、この新しい制度、初めての制度が次から次へと出てくるわけでございますので、それについての対応、準備についてもお伺いしたいと思います。

大野政府参考人 今委員から御指摘がありましたように、刑事裁判の現場におきましては、裁判員制度それから被害者参加制度という非常に大きな二つの改革が時を接して行われるということになるわけでございます。

 衆議院法務委員会で、昨年の被害者参加制度創設の際の附帯決議におきましても、裁判員裁判に被害者等が参加する場合において、裁判員がこれらの制度の内容を十分に理解できるように努めることというような附帯決議もなされたところでございます。

 そこで、法務省といたしましては、今後、この両制度が調和して円滑に運用できるように、被害者が裁判員裁判に参加する場合も含めまして、その運用上の留意点につき、模擬裁判への参加等もあわせて関係機関と協議して検討を進めてまいりたいというように考えております。

 それから、被害者参加制度の方が先に実施されることになるわけでありますので、被害者参加制度が施行された後、その運用状況も十分に踏まえまして、これが来るべき裁判員制度の施行できちんと円滑に実施できるようにさらに検討したいというように考えているところでございます。

大口委員 次に、国選弁護士の選定の請求の要件についてお伺いしたいと思います。

 今も赤池先生から御質問がありましたけれども、資力が一定の要件を満たさない被害者参加人について、請求により国費で弁護士を付す、これは原則として費用の償還は不要であるということであります。被疑者、被告人の国選弁護制度においては、これは原則として全部または一部が被告人の負担となる、ただし、裁判所が審理の中で被告人の資力を判断して、訴訟費用の納付ができないことが明らかである場合には被告人の負担とならない。刑事訴訟費用法の第二条第三号ということでこういう取り扱いをしていることからいえば、被疑者、被告人国選弁護人制度よりも、費用の負担は原則として償還は求めないという点は、非常に被害者に配慮された設計になっている、私はこういうふうに評価をしておるわけであります。

 そしてもう一つ、この標準的な金額、政令で定める基準額の算定の中に、標準的な三カ月間の必要生計費を勘案して一般に弁護士の報酬及び費用を賄うに足りる額ということで、被疑者、被告人国選弁護では一カ月でありますけれども、それを三カ月ということにしたということも、要件の緩和をしているということで評価をしたい、こういうふうに考えております。

 さらに、被害者参加人の資力については、被害者参加人に属する現金、預金等の合計額から、請求の日より三カ月以内に支出することと認められる療養費等の額を差し引くということも、これは被害者の療養等が必要だというような今の状況も十分配慮した仕組みになっている、こういうことで評価をしたい、こう考えておるわけです。

 本法の五条第一項において、「手続への参加を許された刑事被告事件に係る犯罪行為により生じた負傷又は疾病の療養に要する費用その他の当該犯罪行為を原因として請求の日から三月以内に支出することとなると認められる費用の額」こういうふうになっておるわけでありますけれども、この療養費等の中には当然医療費が入ります。それから、被害者が通院するために必要な交通費、被害者の通院に付き添う者の付き添い費用あるいは被害者のリハビリ費用とか被害者を介護するための費用等も入ると思うんですね。それとともに、被害者の葬祭費用といいますか、これは本当に悲しいことでありますけれども、そういうことも選定の請求の日以後に支出される場合には入るというふうに考えておるわけでございますけれども、この私の解釈について御見解をお伺いしたいと思います。

大野政府参考人 現在の法律案で、資力から控除される、犯罪行為を原因として支出することとなると認められる費用と申しますのは、被告事件の訴因に掲げられた犯罪事実を原因とする不法行為に基づく損害賠償として認められる損害から慰謝料と消極損害を除いたいわゆる積極損害、つまり財産を積極的に減少させる損害ということになります。

 したがいまして、今委員から御指摘のありました、通院する際の交通費あるいは介護に必要な費用あるいは葬儀代、これらはいずれも基本的に積極損害に含まれると考えられますので、資力から控除される費用に当たるというように考えております。

大口委員 もう一つ、基準額についてお伺いをしたいと思うんですけれども、基準額は政令で定める、こういうことになっていますが、具体的にどれぐらいの額なのかということでございます。

 被疑者、被告人国選弁護の場合は、今も答弁がありました五十万ということでございますね。これは、一カ月の請求料二十五万、それから弁護士報酬費用というのが二十五万というふうに解されるのではないか。そうしますと、請求費が二十五万ということでありますと、三カ月分ですので七十五万、それに弁護士の報酬費用で百万程度となるのではないか、こういうふうに考えられるわけでありますが、この私の認識についてどう考えておられますか。

大野政府参考人 基本的な考え方につきましては、今委員から御指摘のあったようなことで計算をすることになるわけでありますけれども、実際には、家計調査に関する各種の統計数値あるいは弁護士の報酬等に関する調査結果等を参考にいたしまして、政令で具体的な額を定めるということになっております。

大口委員 それから、参加弁護士の候補者を指名するに当たっては、法テラスにおいて最適の人を選ぶということはしっかりやっていただきたい、こういうふうに思っております。被害者の置かれた大変厳しい境遇ということをやはり本当に理解して、その運用をしていただきたいと思うわけでございます。

 この選定請求が可能となる時期はいつなのか。そして、スウェーデン等は、被疑者の逮捕前といった捜査の初期の段階で被害者支援のために裁判所によって国選弁護士が選任されている、そういう制度もあるわけですね。その時期と、こういうスウェーデン等の制度があるわけですけれども、それとの関係についてちょっとお伺いしたいと思います。

大野政府参考人 被害者参加弁護士の選任請求のできる時期についてでありますけれども、まず、そのもとになります被害者参加の申し出は、被害に係る事件が起訴された後ということになるわけであります。起訴された後であれば第一回公判期日の前でもすることができるということになるわけでありますけれども、そのように被害者参加の申し出をいたしまして、それにつきまして裁判所から許可を受けた後であれば、これはいつでも被害者参加弁護士の選定の請求ができるということになるわけでございます。

大口委員 スウェーデンの例もあったわけでございますけれども、これについては、被害の直後から、犯罪被害者の相談、マスコミの対応、刑事告訴、法廷付き添い、訴訟記録の閲覧、謄写、意見陳述の助言等各種の支援について弁護士費用の援助を受ける制度、犯罪被害者等法律援助事業というのがありますね。やはりこれをもっとしっかり活用していくことが大事だ、こう思っておりますけれども、その点について、日本司法支援センターの取り組みについてお伺いしたいと思います。

深山政府参考人 今委員から御指摘があったように、日本司法支援センターでは、日本弁護士連合会からの委託を受けた事業として、被害者等に対する法律援助業務というのを昨年の十月一日から開始しておりまして、その内容は、日弁連の費用負担で、資力の乏しい犯罪被害者の方やその親族、遺族を対象として、告訴、告発であるとか、犯罪被害者等給付金の申請の代理であるとか、あるいは事情聴取への同行、法廷傍聴への随行といったさまざまな行為について弁護士費用を援助するという事業を行っております。

 また、法テラスでは、主要な業務の一つとして犯罪被害者支援業務を行っていまして、これは刑事手続への関与や損害の回復を図るための法制度のいろいろな情報提供、それから犯罪被害者等の支援を行っている相談窓口の御紹介、さらに犯罪被害者等の援助に精通している弁護士さんの紹介といったようなことも行っております。

大口委員 このほか、経済的支援に関する検討会では、昨年の法改正の中で損害賠償命令制度というのができました。今回の被害者国選弁護士に、それについても代理人として仕事をできるようにしてはどうかという意見もあったと思いますけれども、これについてはやはり法律扶助制度と本当に有機的な連携を図っていくべきであろう、こう思っております。これは答弁は求めません。

 最後に、予算でございます。

 本法律案の執行に要する経費として、平成二十年度予算には約一千八百万円が計上されていると承知しております。法務省にお伺いしますと、これも半年分百五十件掛ける十二万で一千八百万ということが算出根拠となっておりますが、もしこの額が不足した場合どのような措置を講じられるのか、これは大臣にお伺いしたいと思います。

鳩山国務大臣 被害者国選弁護を始めるわけですが、実際どの程度の数になるのかが全く予想がつきませんで、予算では、いわゆる法テラスの方で国選弁護関係九十億という予算を要求してつけてもらっています。これはもちろん、被告人国選、それからまだ拡大しておりません被疑者国選の分を全部含めた数字なわけで、事件数の予測が困難なんですが、多分、被害者国選という事件が二万弱ぐらいなのかなという推定をします。現在、意見陳述の制度がありますが、この要求が出てきているのが大体六%ぐらいということになりますと、千何百というオーダーなんじゃないか。その中で、先ほどから議論のあっている資力が問題で国選弁護をつけるというと年間で三百件ぐらいか、そんな推定をしておるわけでございます。

 今大口先生おっしゃったように、これを大きく超える、もっとはるかに大きな数になるというような場合になれば、かといってこれは打ち切ることの全くできない事柄でございますので、当然、財務省等にかけ合って、私がしっかりやらなければならぬことだと思っております。

大口委員 時間になりましたので、以上で終了させていただきます。ありがとうございました。

下村委員長 次に、加藤公一君。

加藤(公)委員 民主党の加藤公一でございます。おはようございます。

 法案そのものの質問に入ります前に、犯罪被害者の皆さんの支援施策について、少し大きなところから伺っていきたいと思います。

 平成十七年に内閣府に犯罪被害者等施策推進会議が設置をされて、そのもとに経済的支援検討委員会というのが設けられてきたと承知をしております。その検討委員会が昨年の九月に最終取りまとめというのを発表いたしておりますけれども、その取りまとめの中、委員会の検討事項のうち遺族給付金あるいは障害給付金については今国会に法案が提出をされております。

 それはそれで結構な話なんですが、それ以外の医療費及びカウンセリング費用についての支援、ここについては現状どのような支援がなされているのか、まずこの点から伺いたいと思います。

殿川政府参考人 お答え申し上げます。

 犯罪被害者等が再び平穏な生活を営めるようになるためには精神的、身体的被害の回復が重要であるということは十分承知しておりまして、御指摘の医療及びカウンセリングに要する費用についても、経済的支援に関する検討会において検討がなされ、昨年十一月、最終結論を得たところでございます。

 最終結論では、医療及びカウンセリングの重要性についての指摘がされ、長期療養を必要とする患者への適切なサービスの提供、PTSD等の精神的被害に有効とされる療法についての診療報酬の必要に応じた改定、臨床心理士、民間支援団体等におけるカウンセリング等の充実等が盛り込まれております。

 具体的な支援につきましては、この最終結論を踏まえまして、関係省庁において適切に実施されるものと承知をいたしております。

加藤(公)委員 適切に実施をされると承知しているというところで終わっちゃうと本当にできているかどうかわかりませんので、少し各論を伺いたいと思います。

 今の部分について言うと、厚生労働省が所管だと思いますが、実際どの程度進んでいらっしゃるのか、お話をお聞かせいただきたいと思います。

中村政府参考人 お答えいたします。

 犯罪被害に遭われた方を含め、事件や事故によりPTSDなど精神的に影響を受けた方の心のケアにつきましては、保健所、精神保健福祉センター、医療機関などを中心に継続的、体系的な支援が重要であると認識しております。このため、保健所や精神保健福祉センターにおいて、心の問題に関する相談を行うとともに、必要であれば医療機関への受診を勧めるといった取り組みが行われておるところでございます。

 また、こうした相談活動の質の向上を図るため、病院、精神保健福祉センターなどに勤務する医師、保健師等を対象といたしましたPTSD対策専門研修会を開催いたしまして、この中で犯罪被害者の心のケアに関する研修も行っておるところでございます。

 さらに、厚生労働科学研究によりまして、平成十七年度から十九年度にかけまして、犯罪被害者の精神状態についての実態とニーズの調査や、精神保健福祉センターなどの職員が犯罪被害者にかかわる場合のマニュアルづくりなどに関する研究を行いました。今年度からは、犯罪被害者に生じる外傷性ストレス反応を中心といたしました精神疾患の実態把握と治療方法に関する研究を行う予定としております。

 今後とも、犯罪被害に遭われた方の心のケアについて取り組んでまいりたいというふうに思っております。

加藤(公)委員 本当はもうちょっと深く伺いたいところも幾つかありますので、時間があれば後ほど聞きたいと思います。

 もう一つ、今回の法案のように、起訴された後の、裁判に犯罪被害者の方が参加をするときのサポートというのももちろん大事なのでありますが、その前段階で、実際にけがをされたり、あるいは心の傷を負われたりという犯罪の被害に遭われた直後、いわゆる早期の段階の支援というのも非常に重要だと思っております。

 その早期支援段階でのカウンセリングあるいは相談業務、これは私の知る限り、都道府県の警察の方で対応されているんじゃないかと思いますが、これが今どの程度体制が整っているのか、今後さらにその体制をどう充実させていこうとしているのか、あるいはそれに対する予算措置というのは十分になされているのか、これは警察の方に伺いたいと思います。

米村政府参考人 お答えをいたします。

 警察といたしましては、犯罪による被害のみならず、大規模災害、事故等々ございますけれども、そういった際に、いわば精神的な打撃を受けた方も多々おられるわけであります。そうした際の、事件直後あるいは災害の直後に一番最初に接触をするというのは私ども警察であるわけでありますが、この段階で被害者の方の精神的な被害の軽減に努めていく必要性があるということがございます。

 その際の対応といたしまして、私どもの方は、捜査員とはまた別に、いわゆる指定された警察職員、支援要員という者がおるわけでありまして、これは全国の本部あるいは署にいるわけでございます。そういった者が被害者から直接相談を受けたり、あるいは、そういった中にはカウンセラーとして心療士の資格を持った者等もございまして、それらが直接支援に当たっていくということがございます。

 なお、その早期支援団体等に対しましても、向こうの求めに応じて、被害者の同意を得て一定の情報を提供し、そこで、橋渡しをする中で、その後のカウンセリングとか、そういった相談も含めて対応させていただいているということでございます。

 現在、平成十九年四月現在でありますけれども、三十六都道府県警察におきまして、今申し上げました心理学等の専門的知識あるいはカウンセリング技術を有する職員、これは現時点では二百五名でございますが、全国の警察に配置をいたしております。今申し上げましたとおり、カウンセリング業務を早期支援団体等にも委嘱をするというような形で対応させていただいているということでございます。

 なお、予算的な措置でございますけれども、全体として、今回のこの種の協力業務に関する費用といたしましては、約一億二千万ほどを計上させていただいているということでございます。

 以上です。

加藤(公)委員 今の官房長のお話ですと、四十七都道府県警のうち三十六、どこかわかりませんから都道府県と言っていいのかどうかわかりませんが、三十六都道府県においては、心理専門職の方がその仕事に当たっていらっしゃる、こういう話でしたが、逆に言うと、十一都道府県警はまだいらっしゃらないということなんですね、その心理専門職の方が。

 もちろんそれぞれ地域によって実情も違うんでしょうけれども、残念ながら犯罪のない県というのはないわけでございまして、あるいは今のお話ですと、災害にも対応されるということですから、私としては、やはり四十七都道府県警それぞれに必要かつ十分な心理専門職の方を配置していただきたいというふうに思うんですが、官房長のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

米村政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、今申し上げました心理学等の専門的知識あるいはいわゆるカウンセラーとしてというのは、三十六都道府県警察で対応しているということでございます。それ以外のものにつきましても、すべての都道府県で、部外の、精神科医の方とか臨床心理士の方に対して相談をしたりとか、あるいは早期支援団体等と協力し合いながらケアしていくという対応をしておるわけでありますが、確かに、私どもの方に、この点についてさらに拡充を図っていくという必要性は十分にあろうかというふうに認識しております。

加藤(公)委員 先ほど冒頭、内閣府からもお話を伺いましたけれども、例えば今の早期支援の段階のカウンセリングや相談についても、警察の方も頑張っているけれどもまだ十分ではないということですが、内閣府として、現状を見て、被害者支援としてこのカウンセリングサポートが十分になされていると考えているかどうか、ちょっとこの考えを伺わせてください。

殿川政府参考人 犯罪被害者等が、経済的、身体的被害のみならず、深刻な精神的被害を受けるということも多いということは承知しておりまして、被害者支援における精神的ケアの重要性については、私ども十分認識いたしているところでございます。

 被害者等からの精神的ケアに対する支援の充実を求める切実な要望があったということで、基本計画におきましても、具体的被害と並んで、精神的な被害回復、防止を五つの重要課題の一つと位置づけ、被害者に係る専門的知識、理解を有する精神保健、医療関係者の要請など、各種の施策を盛り込んでおります。

 今後、引き続き関係省庁で、そういった計画に基づいて鋭意具体的な施策を推進していくというふうに承知しておりますけれども、十分かどうかということについては、そういった施策の推進状況を見ながら、内閣府に置かれております犯罪被害者等施策推進会議等の場におきまして、施策全体の実施状況に関する検証、評価、監視を実施することになっておりますので、そういう中で御議論いただくということになろうかと考えております。

加藤(公)委員 犯罪被害者等施策推進会議そのもので議論をしていただくのは結構なんですが、細かな議論はきょうは本題じゃないのでしませんけれども、ぜひ積極的に開催をしていただいて、今私が提起をした問題については前向きにお願いをしたい、これはお願いというレベルですけれども、申し上げておきたいと思います。

 問題意識としては、要するに、精神的な被害というのは外から見えにくいものですから、特に小さなお子さんが被害者になられた場合なんかですと、一生それが後を引きずるというケースもありますし、相当つらい思いを被害者の方が後々されるということになるわけであります。きちんとしたサポートがあれば回復できる部分ですので、だからこそやってほしいという思いでございますので、これはお願いをしておきたいと思います。

 それに関連をして、もう一方の視点から伺いたいと思いますが、警察内部にいらっしゃる職員の方は心配ないんですが、外部委託をされることもあるというお話が今ございました。例えば、臨床心理士の方とか犯罪被害相談員と呼ばれる方々に早期支援を、外部委託というんでしょうか、依頼をされる。そのときの報酬なり費用というんでしょうか、果たして十分な額が手当てされているのかどうか、ここが私は若干不安であります。

 大変重要な役割を担っていただくわけですから、財政が厳しい中、大盤振る舞いはできないでしょうけれども、それなりにその方々に適切なサポートをしていただけるぐらいの報酬は整えるべきだというふうに私は考えておりますが、この点、現状どうなっているか、そして今後どうしていくつもりか、お答えをいただきたいと思います。

殿川政府参考人 お答え申し上げます。

 臨床心理士あるいは犯罪被害相談員等によりますカウンセリング、相談につきましては、先ほども申し上げましたとおり、経済的支援に関する検討会においても議論がされ、昨年十一月、最終取りまとめが行われております。

 最終結論では、臨床心理士、犯罪被害相談員等による民間被害者支援団体等における早期支援段階でのカウンセリング等について、都道府県における予算措置が着実になされ、さらには、早期支援後も継続してカウンセリング等が受けられるような予算措置がなされていくように、国において啓発、情報提供等の取り組みを行うべきであるというふうにされておりまして、内閣府といたしましても、こうした取りまとめの趣旨を踏まえて、今後、各県の先進事例の紹介等を行い、啓発、情報提供等に努めてまいりたい、このように考えているところでございます。

加藤(公)委員 くしくも今答弁にあったように、各都道府県に情報提供するなり啓発するなり、大いにやっていただきたいんですけれども、あわせて、やはり予算措置がないと、地方自治体もそれぞれ財政に限りのあるところで、特に最近は非常に財政が厳しい自治体が多いと思いますので、どうしても後回しにされかねないと私は心配しております。

 そこで、もう一回伺いますけれども、その情報提供、啓発ももちろん結構ですし、どんどんやってほしいんですが、予算措置の方も内閣府として積極的に取り組むかどうか、この意思を伺いたいと思います。

殿川政府参考人 ただいまの点につきましては、先ほども答弁いたしましたように、この検討会におきましても予算措置について、やはり被害者支援団体等の近いところにいる都道府県なり自治体というところで具体的な実施がされるということでありまして、そういった取り組みが促進されるように私どもとしてはいろいろな啓発、情報提供ということに努力していきたいと考えておりますが、同時に、関係省庁においてもいろいろこういったカウンセリング等に係る予算措置も、仕組みも一部ございますので、そういった関係省庁とも連携を強化しまして対応してまいりたい、このように考えております。

加藤(公)委員 何せ内閣府が音頭をとって取りまとめをしていただかないと、いろいろな省庁にまたがる話ですから、いやこれはうちじゃありませんよとか、うちの仕事はここまでですよなんてやっていたら、進むものも進まなくなっちゃいますので、犯罪被害者等施策推進会議は内閣府のもとに置かれているわけですから、そこはぜひしっかり取りまとめをして、予算措置も含めて積極的にやっていただきたいとお願い申し上げておきたいと思います。

 最後に、この件ではもう一点だけ伺います。

 今申し上げてきたようなカウンセリングとか相談の業務でありますが、被害者本人に対して必要だというのはもちろんなんですけれども、御家族とか、あるいは最悪のケースですと御遺族ということになられる方もあるわけですが、御家族や御遺族に対するカウンセリングの充実というのも当然図られてしかるべきだ、こう考えておりますけれども、今後どのように対応されるおつもりか、その御認識を伺いたいと思います。

中村政府参考人 お答えいたします。

 犯罪被害者の家族や遺族の方に対しましても、被害者に対する支援と同様、保健所や精神保健福祉センターにおきまして、心の健康問題に関する相談を行うとともに、必要であれば医療機関への受診を勧めるといった取り組みを行っておるところでございます。

加藤(公)委員 この点も、ぜひ積極的にやっていただきたいということを申し上げておきたいと思います。

 私が多少仕入れた情報でありますと、犯罪被害者の皆さんがそういう不幸な場面に遭遇したときに、やはり自分がどうしていいかわからない、だれに相談をしていいかわからない、どこにどう頼ったらいいかわからないということで、大変お困りだという状況が見えてまいりますので、この点はぜひ積極的にお願いをしたいと改めて申し上げておきたいと思います。

 それでは、警察、厚労、内閣府の皆さんは、もう結構でございますので、お忙しいでしょうから、それぞれお仕事に戻っていただいて結構であります。

 では、法務大臣に伺ってまいりたいと思います。

 犯罪の被害に残念ながら遭ってしまわれた場合に、早い段階からいろいろな意味で支援が必要だと思います、今も申し上げてきたばかりですけれども。それは、今医療とか精神的なケアということを申し上げましたが、それ以外にも、例えば報道の対応であるとか、あるいは応急の生活支援の問題であるとか、あるいは今後の訴訟に向けた証拠保全をどうしたらいいのかとか、もう何もわからない、急に犯罪に巻き込まれるわけですから。その支援というものは、早い段階から専門家の方に担っていただく必要があると思います。

 その事件直後からの支援について、法務大臣として、現状、十分に対応できているというふうにお考えかどうか、まずこの認識から伺います。

鳩山国務大臣 まず、加藤公一先生の問題認識は全く正しいと思うんですね。では、十分できているかと言われれば、十分ではないから政府を挙げて取り組んでいるのだろうと思います。

 私も政府の会議に行きます。そうすると、変な話ですけれども、法務省が中心かと思うと決してそうではなくて、さまざまな役所が来て、今加藤先生が質問されたような形で、まず駆け込むのは警察でしょう、それから厚労省もあるでしょう、あるいは内閣府でしょう、あるいは地方自治体でしょうということで、これはとにかく総合的にやって、被害に遭った方を少しでも救っていかなければならない。だから、今この法律案は被害者の国選弁護ではありますけれども、そこまで来た方はきちんとやります。

 でも、そこに来るまでが被害者というのはすごく苦しみがあるんじゃないか。突然被害に遭ってどうしていいかわからない。そういう意味で、幅広くあるんでしょうけれども、私どもの立場からすれば、法テラスにお願いするようにして法テラスをつくりました。法テラスというものをつくった大きな柱の一つがそれだろう、こう思います。

 ちょっと読んで済みませんけれども、日本司法支援センター、法テラスの本体業務として、被害者支援をやっている。それは、刑事手続への適切な関与、損害、苦痛の回復、軽減を図るための法制度に関する情報提供、それから犯罪被害者等の支援を行っている被害者支援団体等の、いろいろな団体がありますから、相談窓口を紹介あるいは取り次いであげる、それから犯罪被害者等の援助に精通している、先ほどから出てくる精通弁護士の紹介というようなことが本体業務ですから、当然これは全部無料でやる。

 日弁連が費用を出してくださって法テラスに委託をしてくれている事業が幾つかございます。被害直後からの犯罪被害者相談、刑事告訴、法廷傍聴同行、マスコミ対応等の各種支援に関する事柄に関して、弁護士費用の援助は日弁連がやってくれている。

 だから、法テラスの本体業務と、日弁連が委託して、法テラスがやるけれども日弁連が払ってくれるもの、この二つ。法務省としては縄張り意識はありませんが、我々に与えられている任務としてはこれらに全力、こういう感じです。

加藤(公)委員 確かに、法テラスのいわば中心的な業務の一つだと私も認識していますが、法テラスにおける犯罪被害者の皆さんへの支援業務というのは十分に機能しているんだろうか。まだそれはスタートしたばかりだと言えばそのとおりではありますけれども、ずるずる先送りされるよりは常に検証していった方がいいんじゃないかと思います。

 今現在で、犯罪被害者の支援業務というのは、どの程度の量を実行されていて、果たしてそれが十分機能しているとお考えかどうか、大臣の御認識を伺います。

鳩山国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、どれで十分ということではないでしょうし、コールセンターにかかってきた電話の回数を考えて、これで十分なのか、あるいはまだまだ全然だめなのかというのは、ちょっと私は今判断しかねるというところなんです。

 例えば、コールセンターに犯罪被害者支援専用の犯罪被害者支援ダイヤルというのがあります。〇七九七一四「なくことないよ」という番号でございますが、犯罪被害者支援の知識、経験を持った担当者がいろいろ相談に応じている。平成十九年四月から二十年三月ですからちょうど一年間ですか、犯罪被害者支援ダイヤルの受電件数、受けた回数は六千三百件だというんですね。

 中身は、生命身体に被害が及んでいるもの、性被害、ストーカー、ドメスティック・バイオレンス、児童虐待、セクシュアルハラスメント、さまざまな被害に関する問い合わせがあっているようでございます。

 また、それと同時に、コールセンターというのは東京にあるわけですが、各都道府県に設置された地方事務所でも、犯罪被害者等の援助に精通する弁護士、精通弁護士の選定とか紹介とか、そうしたことを電話や面談によって行っているということでございまして、平成十九年四月から二十年三月、やはり同じ一年間の間に犯罪被害、刑事手続等に関する問い合わせが全国で八千三百件あっている、精通弁護士の紹介は五百九十件あっている。これが十分であるかどうかというのは、私は判断できません。

加藤(公)委員 もちろん被害者の方は少ない方がいいわけですから、法テラスの業務がやたらふえればいいとは私も思いません。そのとおりです。

 ただ、私が十分かと聞いたのは、要するに、万が一何かの被害に遭ったときに、法テラスがその仕事をしているのであれば、自分がそこに連絡をすれば何か助けてもらえるんだ、こういうことを国民の皆さんがどれだけ認識しているかだと思うんですね。多くの方がそれを知っていて、万が一のときには法テラスに連絡をすれば最低限のサポートは受けられるんだという状態であれば、後は、そこに連絡するもしないも御本人の判断ですから何も心配することはないと思いますが、そういうサポート体制があるということが知られていないとなると、これは機能しているとは言いがたいというのが私の考え方なんですね。何も、数が多ければいいとかなんとかという話ではもちろんありません。その意味で、果たして本当に法テラスが十分に現段階で機能しているんだろうかという問題意識があります、こういう意味です。

 そこで伺いますけれども、今回の法案は、資力の乏しい方に対して被害者国選の弁護士の方をつけましょう、こういう話なんですが、資力のあるなしを問わず、犯罪被害者の方に対するサポートというのは、だれかが、あるいはいずれかの組織が責任を持って支援していますよという体制が整っているんだということを国民の皆さんがよくよく御存じだという状態が望ましいと思うんですね。もちろん犯罪はないにこしたことはありませんが、万が一のときにはそうなんだということを認識している状態がいいと思うんですが、それは当然法テラスがそのサポートをしますよ、こういうことでいいわけですね。確認をさせていただきたいと思います。

鳩山国務大臣 そういうふうに御理解いただいていいと思います。

 私、最近口がかたくなったので、時々読みますけれども、法テラスは、犯罪被害者等支援に関する情報の提供、犯罪被害者等の援助に精通した弁護士、しつこいようですが、精通弁護士の紹介などの業務を行っておりますが、先ほども申し上げましたけれども、これらは無料でやっているわけですね。全国各地でもいろいろやっておりまして、犯罪被害者の支援を行っているいろいろな団体がいっぱいあるので、そういう方々と連携協力をして、あるいは被害者を紹介してあげる、それから各都道府県の被害者支援連絡協議会というのがありますが、そこにも法テラスとして積極参加をしているというようなことで、法テラスがありとあらゆる団体、もちろん他の役所も含めて、あるいは自治体も含めて、連絡をとり合ってやっていただけるもの、それを期待していただきたいし、我々も期待するんですが、やはり広報がまだうまくいっていないと思うんですね。

 ですから、これは裁判員制度も同じかもしれませんけれども、一一〇番とか一一九番というのは子供のころから知っている、もし犯罪の被害に遭ったときには法テラスだというのを何か学校教育等で徹底して教える方法はないか、宣伝、広報がうまくいかないと宝の持ち腐れというか、法テラスも頑張ろうと思っても案外知られていなくて依頼がない、そういう実態は現にある程度あるんじゃないでしょうか。

加藤(公)委員 おっしゃるとおり、広報、告知をすることは非常に重要だと思います。一一〇番、一一九番並みになるかどうかは別にして、いざというときには法テラスに連絡をすればサポートが受けられるんだというのは非常に重要だと思います。

 そこで、もちろん日常的にそれが認識されていればこれにこしたことはないんですが、仮にそうでなかったとしても、万が一犯罪の被害に遭ってしまったときに法テラスでサポートを受けられますよということを、例えば医療機関なり、あるいは警察なりですぐに被害者の方にお知らせするという体制があれば、ふだん知らなくてもいざというときにはすぐ使えるということになりますが、警察なり、あるいは医療機関なりで法テラスというものがサポートしているという情報はきちんと提供されているのかどうか。大臣、どうお考えですか。

鳩山国務大臣 これは当局答弁でないと正確なことは言えないかも知れませんが、私として言えることは、今加藤先生がおっしゃったように、被害に遭われて、けがであれば病院に運ばれますね、あるいは警察が当然出てきますね。今後刑事手続というのに移っていくわけだから、法テラスというものがその御援助をいたしますよということを徹底できるように、私どもが警察や厚労省を通してでしょうか、病院にお願いをこれからどんどんしなければならないな、今私はそう思います。それが、徹底してできているとは思っておりませんから。

加藤(公)委員 ぜひやってください。万が一のときに、すぐにこういうものがあるよと知れば役に立つわけですから。恐らく、今お話ししたように医療機関か警察、場合によっては消防というのはあるかもわかりませんが、そこには、これこそ大臣のお役目だと思いますので、被害に遭われた方がいらっしゃれば必ずその情報を提供してもらうということでお願いをしたい。

 では、お約束をいただいたところでありますから、お約束どおりにやっていただくように期待をしたいと思います。

 では、法案の細部にわたって幾つか少し伺いたいと思います。これは法務省、参考人で結構でありますので、お答えください。

 今回の法案で経済的な要件というものが課せられるわけですけれども、支援を受けられる要件というのはそれ以外には何かあるのかないのか。つまりは、例えば国籍であるとか国内居住だとか、そんな要件があるのかないのか。まず、この点を確認したいと思います。

大野政府参考人 国選の被害者参加弁護士ということでありますので、まずそもそもの前提といたしまして、被害者参加人となることが、犯罪の性質、被告人との関係、その他の事情を考慮して裁判所が相当と認めたときに認められる、これが前提になるわけであります。その上で、今委員御指摘のいわゆる資力要件があるわけでありますけれども、それに加えて、それでは日本国籍を有することが必要なのか、あるいは国内に居住することが求められるのかというと、これらは要件とされておらないのであります。

加藤(公)委員 その資力要件については、先ほど来幾つか議論が出ておりますけれども、恐らく被疑者国選あるいは被告人国選の弁護士をつけるという判断基準と横並びで検討されるんだろうと思いますが、今回の法案が仮に成立をした後、政令で定めることになっております支援のための資力要件、その基準、今現在どのようにお考えか、伺いたいと思います。

大野政府参考人 具体的な基準額は政令で定められることになるわけでありますけれども、法律の内容といたしまして、その際に考慮されます必要生計費は、被告側の国選弁護の一カ月間に対しまして、被害者参加弁護士の国選の方につきましては三カ月間ということになっているわけであります。これにあわせて、被害者参加弁護士の報酬、費用というものも考えるわけでございます。

 具体的には、このあたり、家計調査に関する各種の統計数値、それから弁護士の報酬等に関する調査結果等を参考にしながら政令で定めるということになるわけでございます。

加藤(公)委員 もう一つ、先ほどもこの質問も出ていましたけれども、今回の法案は当然予算が必要になってくるわけでありますので、どの程度の方の支援をするかという想定が必要なはずでありまして、現状でどう見込んでいらっしゃるのか、この点を伺いたいと思います。

深山政府参考人 先ほど大臣の御答弁にもありましたけれども、予算として見ると、正確に言えば、全体としての国選関係の業務は九十億八千万円ほど計上されていて、今回のこの被害者国選制度の実施についての費用というのは、一部は他の国選関係の業務と同じような事務経費の部分もあって、それと当該国選弁護人になられる方に対する報酬、費用というものと大きく分けられます。

 今のお尋ねは、それでは国選弁護人に払われる報酬、費用の予算上の積算の前提としてどれくらいの件数を見込んでいるかというお尋ねだと思います。

 先ほどもちょっと出ていましたけれども、これまでの被害者の意見陳述の実情などから推計をして、おおむね年間三百件から三百二十件程度、今年度については半年分を要求していますので、百五十から百六十件程度の利用が見込まれるという前提で積算をいたしております。

加藤(公)委員 これからやってみなきゃわからないというのはそのとおりですから、余り科学的に議論できる話ではないんですが、直感的に感じるところで申し上げると、そんなに少なくて済むのかなというのが正直な感覚なんですね。もう少し必要なのではなかろうかという気がしてなりません。

 それは、少ないからいけないという話ではもちろんないんですが、先ほども出ておりましたとおり、予算が必要な話であるからこそ、大幅に数がふえたときに、もちろん大臣の責任として、それは財政的には措置をしてもらわなきゃいけないのはそのとおりなんですが、余りにも最初から少なく見積もり過ぎているというのも決して望ましい話だとは思わないものですから、本当に一年間で三百あるいは三百五十程度という数で済むんだろうか、本当はもう少し数がふえて予算も必要になったりはしないんだろうかと、大変な危惧といいますか、ちょっと不安が私はあるんですが、大臣、もう一度伺いますけれども、この点はいかがお考えになりますか。

鳩山国務大臣 予算の件は、そもそも被害者が訴訟に参加をした中で、資力が乏しい、大体そういう方が二〇%ぐらいじゃないかとかなんとかと予想は立てていますが、それは予想しかできないわけです。

 問題は、被害者が訴訟に参加できる、出席できる、尋問もできる、質問もできる、締めくくりの意見も述べることができるということをやはり広く周知する、その広報はまだ全く不足していると思いますね。それは法テラスもやるでしょうし、それぞれの弁護士さんもいろいろ、日弁連もやってくださると思いますが、その辺で、被害者が参加する訴訟の数が、周知徹底するかどうかによって大きく変わってくるような気がしまして、これは多い方がいいとは言えないかもしれないけれども、できる限り周知徹底はしなくちゃいかぬと思います。

加藤(公)委員 私も、別にそれが多い方がいいと一概に言っているわけでは全然ありません。全然ありませんので、今回の予算も多ければいいとか、見込み人数が多ければいいということを言っているんではないのです。ただ、せっかく制度をつくる以上、年間この程度ですよと見込んだものが大幅に不足をしたということになると、それはもちろん大臣の責任で後々予算措置してもらうにしても、余り美しい話ではありませんので、大丈夫なんでしょうかということを伺ったわけです。

 一言だけ確認をとりますが、万が一数がふえたときには、法務大臣の責任として予算措置をきちんとされるということですね。

鳩山国務大臣 それはもう当然のことで、私の重大な責務として行わなければならない仕事になってきます。

加藤(公)委員 では、実際選任をされた弁護士の方々に対する報酬でありますが、当委員会にも実際弁護士資格を持っていらっしゃる委員の先生方はたくさんおみえですから、場合によっては将来当事者になられるかもしれない方々ですと聞きにくいと思いますので、私から聞きますけれども、報酬の算定と支払いはどういうルールになっているんでしょうか。

深山政府参考人 国選の被害者参加弁護士に対する報酬の算定それから支払いの方法につきましては、日本司法支援センターと被害者参加弁護士として契約していただいた弁護士さんとの契約内容によって定まることになります。

 この契約内容は、今後、日本司法支援センターにおいて定めることが予定されている国選被害者参加弁護士の事務に関する契約約款というものがございまして、この約款で具体的に定まることになります。これは、法律が成立していませんので、もちろんまだできておりません。

 そこで、御参考までに、現行の被告人の方の国選弁護人に支給する報酬の支払い方法について御説明いたしますが、国選弁護人の事務に関する契約約款、これは被告人国選の方ですけれども、今ある約款においては、国選弁護人の報酬の支払い時期や方法につきまして、国選弁護事件が終了して、その事件を担当した契約弁護士さんから支援センターの地方事務所に対して、これこれの報酬、費用がかかりましたという請求がまずされます。この請求がされた日から七日以内に報酬、費用を算定してその弁護士さんに通知をいたします。通知を受けた日からさらに七日以内に、この額はおかしいんではないかという不服があり得ますので、不服申し立ての期間がございまして、この七日間の不服申し立て期間内に不服申し立てがない場合には、その期間が経過した日に報酬額がそこで確定をいたします。確定をしたその日が属する月の翌月の二十日までに、弁護士さんが指定した口座に振り込みの方法で支払うというのが契約約款の内容です。

 これから、被害者参加国選弁護士に対する報酬の支払い算定の方法は約款で決めますけれども、基本的には、この被告人の国選弁護人と同様の内容になるものと思っております。

加藤(公)委員 仕組みは、もちろんそれで運用されてきているわけですから問題ないと思うんですが、若干気になっているのは、何も弁護士さんに大もうけしてもらおうとは思いませんけれども、そうはいってもやはり、最低限納得してその仕事に取り組んでいただけるだけの報酬は確保するべきだというふうに私は思っておりまして、数多くの弁護士の方が、いや、この仕事はちょっと割に合わないからやりたくないよとなっちゃうと、一番苦しんでいらっしゃる被害者の皆さんのサポートということにつながらないということになりかねませんので、その点だけ一言申し上げておきたいと思います。

 では、この制度の中で、かなり細かいところなんですが、幾つか確認をしていきます。

 まず、一つの事件で被害者の方が複数発生をしてしまうということは当然あり得るわけなんですが、その場合、この国選の弁護士の方というのは複数任命をされるということになるんでしょうか。ここはどうお考えですか。

大野政府参考人 お答えいたします。

 この制度におきましては、被害者参加弁護士の選定は、個々の刑事被告事件が係属する裁判所が行うということになっております。したがいまして、被害者参加弁護士が実際どのように選定されるのかというのは、個別具体的な事案における裁判所の判断によることとなるわけであります。

 ただ、法律上、法テラスが被害者参加弁護士の候補を指名して裁判所に通知することになっているわけですけれども、その際に、請求をしている被害者参加人の意見を聞くこととされておるわけであります。

 したがいまして、例えば一人の弁護士を選定してもらいたいというような被害者参加人の意見があれば、これは候補として一人の弁護士を通知し、裁判所がそれを受けて、通常は一人の参加弁護士を選定するというようなことにもなるのかなというふうに考えております。

加藤(公)委員 では、ある意味、それは被害者の皆さんのある程度の希望はかなえられる、こういう認識でいいのかと思います。

 では、逆に、被害者は一名だけれども、加害者、裁判でいえば被告人の側が複数、複数もかなり多数に上るというケースもあり得ると思います。その場合、被害者は一名でありますが、国選の弁護士の方が、お一人でその業務に全部対応できるのかどうかという疑問も出てまいります。こういうケースはどうされるんでしょうか。

大野政府参考人 確かに、一件の刑事裁判で被告人が複数存在するというケースがあるわけであります。そうした場合にも、一体何人の国選被害者参加弁護士を選定するのかということは、個別具体的な事案における裁判所の判断によるということになるわけでございます。

 ただ、本制度のもとにおきましても、被告人の場合と同様でありまして、事件の内容等を勘案して、特に必要があると認める場合には、一人の被害者参加人について複数の被害者参加弁護士を選定することが否定されているわけではないと考えております。

 ただ、通常は一人の被害者参加人には一人の被害者参加弁護士が選定されるのではないだろうかというふうに思われます。

加藤(公)委員 通常はもちろん一人に対して一人ということだと思いますが、何が起こるかわからないわけでありますので、ケースによってはそうでないこともあり得るということが確認をされれば、それで私の質問の趣旨としては了としたいと思います。

 時間が参りましたので、終わります。ありがとうございました。

下村委員長 次に、古本伸一郎君。

古本委員 民主党の古本伸一郎でございます。

 大臣におかれましては、連日の御対応、お疲れさまでございます。

 閣法三十号の審査ということでありますが、いわゆる被害者の皆様が裁判に参加していくという新しい仕組みだというふうに承知をいたしております。

 本件に関しましては、恐らく、先ほども先輩委員が御指摘になっておられましたように、裁判員制度とあわせて、文字どおり開かれた法廷といいますか、国民参加型という大きな流れの中の一つの仕組みだというふうに承知をいたしております。その意味では、裁判員制度も少し振り返りながら、お尋ねをさせていただきたいというふうに思っております。

 ただいま加藤理事が御質問なさっていた部分を少し引き取りたいと思うんですが、年間の予算、少なくとも二十年度計上されておられる数字の中で、一人当たり約十一万円から十二万円ぐらいの費用というふうに単価を見積もられておられるわけであります。技術的な部分は役所の方の答弁で結構でございますので、これは、対象となる犯罪の種類から想定して、大体何回ぐらい弁護士の先生に法廷に出廷をいただく前提で十一万円というふうに想定されておられますでしょうか。役所でいいですよ。

深山政府参考人 実は、先ほど御答弁申し上げたとおり、件数は半年間で百五十から百六十件ぐらいを予算積算上は想定したわけですけれども、それでは、一件当たりにどれくらいの労務量がある前提なのかというお尋ねだと思います。

 その際には、同じように法廷で活動する被告人の国選弁護の場合の標準的な業務量というものと比較して、今回の被害者参加人のための国選弁護人はどの程度の増減になるんだろうかということを試算いたしました。

 被告人国選の場合と比べますと、被告人の国選弁護人の場合には全公判期日に出廷をいたす、被害者の場合には必ずしもそうなるとは限らない、少し減る場合もあるという意味では、業務量が減る要素がそこにございます。

 一方では、被告人の国選弁護人の場合には接見という形で被告人本人と協議をするわけですけれども、被害者参加人の国選弁護人の場合には、身柄が拘束されておりませんので、じっくりと時間をかけて被害心情などを聴取して、それを十分理解した上で国選弁護業務を行うということで、ここでは接見時間と比べて相当ボリュームの大きな打ち合わせのための業務量があるだろう。

 この両方を勘案しまして、単価として、時間的には一件当たりの業務量がややふえるのではないか、被告人国選の場合よりも被害者参加人の国選弁護人の方がやや業務量がふえるのではないかということを考えました。

 これは時間数で計算していますので何回となかなか申し上げがたいんですけれども、一割五分ぐらいふえるのではないかという試算をして、先ほどの百五十から百六十件という半年間の想定件数に掛け合わせたものを積算して、予算要求しております。

古本委員 前提を確認しますけれども、この被害者が参加できる今回の制度の対象になっている犯罪は、現在、国選弁護人が選ばれる犯罪とイコールですか。これは基本的な話でしょう。犯罪の種類が違うじゃないですか。

大野政府参考人 今のお尋ねは、被害者参加弁護士の対象となる事件と被告人の国選弁護の対象となる事件、こういうことでございますね。

 被害者参加弁護士の対象となる事件の方が、はるかに限定されているわけでございます。つまり、基本的に生命身体等に……(古本委員「凶悪犯でしょう」と呼ぶ)はい。済みません。凶悪犯のみならず、例えば自動車過失致死傷等のようなものがございます。(古本委員「だから、致死傷、人をあやめた罪でしょう。それと比較しなきゃだめじゃないですか」と呼ぶ)はい。生命身体等に害悪が及んだ事件ということでありまして、例えば被疑者、被告人の国選弁護ですと窃盗等が対象にもなるわけでありますけれども、そういうものはなっていないということでございます。

古本委員 一度理事会にお諮りいただきたいと思いますけれども、実は、お二方の、一番の御承知されている責任者からの答弁でありましたけれども、大臣、そもそも被害者の弁護をするというこの罪の種類は限定されているんですよ。故意を持って致死に至らしめたとか、強姦致死傷とか、それに限ってなんです。

 一般的な国選弁護人のケースと比較したら大体何時間ぐらいですという、やはり同じ罪の事柄で比較しないと、数字の妥当性というのはにわかに判断しかねるんですね。

 ぜひ精査していただいて、きょうの場はいいですけれども、また別途出していただくようにお諮りをいただきたいと思います。

下村委員長 後ほど理事会で協議させていただきます。

古本委員 それで、その前提に立ちまして、他方、裁判員制度の対象になっている罪の種類と被害者参加型の国選弁護制度の罪の種類はイコールですか。

大野政府参考人 裁判員制度の対象事件は、死刑または無期懲役もしくは禁錮に当たる罪の事件、それから故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件ということになっておりますけれども、これは裁判員制度導入の趣旨にかんがみまして、国民の関心の高い重大な事件、社会的にも影響の大きい事件ということで選ばれたものでございます。

 これに対しまして、被害者参加が認められている事件、これはむしろ被害者の尊厳の回復という観点から認められておりますので、社会的意味における重大事件性といいますよりも、被害者の受けた特に心身等の被害、これに着目をして事件が選ばれているわけでございます。

 したがいまして、故意の犯罪行為で死傷の結果が生じた、このあたりは重なるわけでありますけれども、裁判員対象事件であっても被害者参加の対象にならない事件があります。例えば、通貨偽造であるとか営利目的の薬物の輸入罪、こういうものは被害者の観点がありませんので、社会的には重大な事件で裁判員の対象事件にはなるわけですけれども、被害者参加の対象にはなっていない。

 一方、被害者参加の対象になっていながら裁判員事件の対象になっていないものといたしましては、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、例えば自動車過失致死傷等は裁判員裁判の対象にはなっていませんけれども、被害者の立場からすればこれは大変重要な事件でありますので、被害者参加の対象になっている、こういうことでございます。

古本委員 大臣、ちなみに私はふだん財務金融委員会の方でいろいろやらせていただいておりまして、本当に法務は諸先生の御指導を仰ぎながらやらせていただいているんですが、これは最初に聞いて、直感的におかしいと思ったんです。

 ですから、少し私の私見を申し上げますと、仮に被害者が、なかなか勇気がある方で、法廷でさらに自分の意見といいますか証人に対する質問ができるわけですから、あなたはそう言ったけれども私はこう思うということをやれるわけでしょう。その心情をただすことができるわけでありまして、そういう場面というのはまだ経験したことがないんです。多分、初めてなんです。

 法廷で被害者自身がただすことができること、具体的には証人尋問と被告人質問と、それから論告求刑後の訴因の範囲内で事実または法律の適用について意見を陳述できる。大体三回ぐらい出て物が言えるというふうに承知しているんですが、これは初めてやるんです。したがって、どういう場面になるか全くわかりませんね。

 したがって、少しこれを実験的にといいますか試行的にやってみて、法廷がどういうふうになるかということを少しやってみた上で、次に裁判員制度に移行するために少し時間的なラグを設けているのかなと思って役所のみんなにお尋ねしたんですよ。そうしたら、これは先ほど局長がおっしゃったように、趣旨が二つとも違うので、そういう意味でずらしているだけであって、少し試行的な意味を持たせてずらしているわけではないという御説明だったんですね。逆に、私は残念に思いました。なぜならば、イコールになっている罪もありますでしょう。例えば、故意により人を死傷せしめた、これは殺人じゃないですか。これは裁判員制度の対象じゃないですか。なっていますね。

 そうすると、証人が出てきました、この被告人は、実は物すごくふだんは温厚でいい人だったんです、たまたまやったんですといろいろ証人が述べたとする。それに対し、情状について、その証言の証明力を争うために被害者が尋問できるわけですよ、しかも弁護士を立てずに。涙ながらに訴える人がいるかもしれない、表現力豊かに、事実に基づいて。そういうことを裁判員が今後、横で見ていくわけですね。違いますか。陪席している裁判員が今後、見るわけでしょう。それとも、その場面のときには裁判員はいないんですか。まず、ちょっとそこの技術的なところを確認したい。いなきゃいけないと思いますよ、せっかくこの制度を導入するんですから。

大野政府参考人 被害者参加人が尋問をする場面には、これはもちろん裁判員裁判においてでありますけれども、裁判員がいるわけであります。

 ただ、今委員から御指摘のありました、事実関係について被害者参加人は証人を尋問することはできないのであります。例えば、被害者参加人が尋問することができますのは、専ら情状に関する、そして犯罪事実に関しない証人の供述の証明力を争う、こういう場面でございますので、犯罪事実の有無について直接被害者参加人あるいは被害者参加人側が尋問するということはございません。

 それから、もう一つ、施行時期のずれについての御指摘がございましたけれども、これはそれぞれ新しい、非常に大きな制度改革でございます。それぞれに準備に必要な期間を見込みまして、その結果として、被害者参加の方は、法律自体は後で成立したわけでありますけれども、実施自体は裁判員裁判よりも先に実施される見通しである、こういうことでございます。

古本委員 御説明はよくよく拝聴いたしましたけれども、被害者本人が被告人の証人尋問、被告人に質問もすることができる、そういう場面を想像しますと、恐らく感情的にも情緒的にもいろいろなことが想定されますね。これは容易に想定されます。

 そういうことが起きたときに、同じく陪席をしている裁判員がどういうふうにそれを受けとめるのかというのは、裁判員が新たな裁判権を行使する、つまり有罪か無罪か、さらには量刑まで決めるわけでありますから、その際の心証を左右しないといったら、これはうそになります。だったならば、被害者側がその場にわざわざ出向いていって質問する意味がありませんから。

 だから、これを私は否定しているんじゃないんです。両方ともうまく走らせるためには、少し試行期間も含めて、新たに裁判員が陪席するという要素が加わる前に、やはり半年ぐらい前に前倒しで被害者側の質問ができるという仕組みがあるわけですから、ぜひそこを有効に活用していただきたいと思いますし、その際に出たいろいろな反省やらも恐らくあるでしょうから、来る裁判員制度の施行の際には生かしていただきたい、そういう趣旨から申し上げているんです。

 裁判員制度について、もう少しお尋ねしたいんです。

 かつての議論のときに当委員会で随分議論があったと承知していますが、裁判員の方の日当を改めてお尋ねいたしますと、日当たり一万円を上限とするということなんですね。例えば、法廷の居住地に住民票のある方の中から無作為で抽出するということになるんですが、東京都の法廷であれば当然離島の方々も、都民であるわけですから、対象になり得るわけですね。

 それで、大臣、ちなみに宿泊代を聞いてみましたら、東京二十三区内といいますか、要するに大体この辺に最高裁初め法廷があるわけですから、そうすると八千円ぐらいだという話なんですね。実費請求できる宿泊代の上限が八千七百円。他方、ここにいらっしゃる局長さんや裁判官殿、検事殿は、判事、検事職の大体指定職に並ぶポジションにある人は、東京、大阪、名古屋、神戸、いわゆる大都市圏の出張のときは一万四千八百円だそうなんです。

 たまたま当たって、出頭しなさいということで、伊豆大島から船に乗って、飛行機に乗ってきて御対応いただく方々に東京の中心部で八千七百円というのは、もちろんいろいろな選択肢はあるんでしょうけれども、なかなか厳しいですよ。他方、局長さんは一万四千八百円。これは何か、国民参加型というより、ちょっと負担を強いるという感じがいたします。これはまず宿泊費の話。

 それから、日当が一万円を上限ですけれども、何か働いた時間、参加していただいた時間によって変わるそうですので、これは上限ですから、必ずしも一日出て一万円とは限らないんです。

 ただ、これは一日仕事ですよ。出てきた以上は相当制約されますので、多分半日年休をとってくるなどというわけにいかないでしょう。その人にしてみれば、大変な準備もしてくるでしょう。

 そういうことを考えると、ちなみに判事、検事殿の日当は、三百六十五日休まず働いたという前提に立ちましょう、三百六十五で年収を割り戻したら日当たり幾らですか。その比較とあわせて、事務局にお尋ねしたいと思います。答えてください。

小川最高裁判所長官代理者 お答えします。

 まず、裁判員の日当の方でございますけれども、裁判員の日当は、出頭の雑費、それから出頭したことによる逸失利益を一定の限度内で補償するというものでございまして、今委員御指摘の裁判官とかその他公務員の法律とはちょっと性質が異なるものだというふうに考えております。

 今委員御指摘のように、裁判員の日当の上限額が一万円であるということにつきましては、今申し上げました裁判員の日当の性質というものを踏まえまして、国民の司法参加という点で共通しております検察審査員の日当の上限額が八千円でございますが、これを基本としまして、先ほど委員も御指摘がございましたけれども、検察審査員に比べまして職務のために拘束される時間が定型的に長いというようなことが考えられることなどを考慮して決めさせていただいたということでございます。

 それから、宿泊費は、先ほど委員御指摘のように、甲地、例えば東京二十三区は八千七百円というような裁判員の宿泊費でございます。

 裁判員に支給するこの宿泊料につきましても、日当についてお答えした答えと同様に、国民の司法参加という点で共通いたします検察審査員に支給する宿泊料と基本的に同じように考えるのが相当だろうということで、委員御指摘のような甲地については八千七百円……(古本委員「判事」と呼ぶ)判事ですか。判事は、先ほど御指摘の一万四千八百円ということです。ですから、甲地、東京二十三区につきましては、裁判員に支給する宿泊料については八千七百円というふうに定めております。

 この金額は、検察審査員に対する宿泊料の上限額と同じでございますし、刑事事件における証人に対する宿泊料とも同額でございまして、裁判所といたしましては、裁判員の宿泊料が低過ぎるというふうには考えてはおりません。

古本委員 日当が一万円を上限というのは、なるほど判事の、指定職級の仮に平均でとってもいいですよ、判事さんの年収といえばそれは随分だと思いますけれども、それを聞きましたけれども、答えてくれませんでした。百歩譲って三百六十五日休まず働いた前提で割り戻して日当たり幾らですかとお尋ねしましたけれども、答えてくれませんでした。もう一度聞きますけれども。

 その人と裁判員さんとを単純に比較しちゃいかぬと今やじも飛んでいましたけれども、さりとて、人を一日拘束して、出てきて、あなた、ここに座っておきなさい、しかも最後は量刑まで決めることに参加しなさいという意味においては、私は裁判権の行使という意味では何ら相違はないと思うんですよ。ただ、恐らく三百六十五日で割り戻せば一日一万円などということにはならないと思うんですね。もう一度聞きますよ、それは。

 その上で、大臣、今最高裁は上手に答えてくれましたけれども、百歩譲って、その人に対する報酬という概念といいましょうか、労役に対する報酬という意味では、なるほど、人に違いがあるとしましょう。その人の識見、さまざまなものに対して違いがあるとしましょう。だけれども、泊まるという行為には差はないわけでありますから、最後、三人の裁判官と六人の民間人の裁判員が合議をするんでしょう。向かい合って仮に雑談になったときに、きのうどこに泊まったんだ、こっちは帝国かオークラに泊まって、片や私はカプセルインです、それはおかしいじゃないですか。泊まるという行為においては差はあっちゃいけないでしょう。

 まず、日当たり幾らかという話と、それと大臣、やはりこれは、まだ期間がありますので、そういう意味では多少見直してもいいんじゃないかということを少しお尋ねしたいと思います。宿泊代八千七百円は安過ぎますよ。

鳩山国務大臣 感想を申し上げれば、例えば、保護司の先生がおられるでしょう。保護司の方々には更生保護のことをお任せしてお願いしている。しかし、これは、形はお願いをして委嘱しているわけでしょうが、自発的なボランティア精神で頑張っていただいているわけで、無報酬の公務員という形になっているんだろうと思うんですね。それと裁判員は違うと思うんです。

 裁判員は、いわば国民の権利義務の義務として、もちろん最終的には抽せんで選ぶようなことになるとは思うし、辞退理由もいっぱいあるけれども、とにかく国民の司法参加というのは、一種の義務として参加をしてやってもらうわけでありますから、やはりその裁判員の皆さんに対してはかなり温かくていいはずだなと。ボランティアで、進んで裁判員をやるぞといって出てきているわけではないですから、当然仕事に差し支える。交通費は頭打ちはないのかもしれないけれども。

 裁判員は裁判官と九人で合議するんだから、やはり裁判員である以上は、裁判官と同等に、近いものとして扱わせていただくのが正しいんだろう、実際には予算とかいろいろな制約があるのはわかるけれども、私はそう思います。

小川最高裁判所長官代理者 宿泊の点について、判事となぜ違うのかという御指摘でございますけれども……(古本委員「宿泊はもう聞いていませんよ」と呼ぶ)よろしいんですか。(古本委員「年俸を三百六十五で割ったら日当たり幾らですか」と呼ぶ)いえ、それはちょっと計算しておりませんので……(古本委員「きのう要求していますよ」と呼ぶ)

古本委員 では、検察官そして裁判官ともに日当たりの、年収というものを三百六十五日で割り戻すという概念は非常に粗っぽいですが、土日を除けば二百四十四日ですか、だから本来二百四十四で割ってもいいと思いますけれども、土日も分かたずいろいろなことに思いをはせているという前提に立てば、三百六十五で割り戻していただいて、それぞれ平均的に日当たり幾らかというのは改めて当委員会に出していただきたいと思います。委員長、理事会に諮ってもらえますか。

下村委員長 後ほど理事会で協議いたします。

古本委員 ありがとうございます。では、ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 宿泊代といいますけれども、やはり世の中、一宿一飯の何とかというのもあるぐらいですから、片や対面に座っている判事殿は一万四千八百円の宿に泊まって、自分は八千七百円かと聞くと、感じがいいか悪いかといったら、感じ悪いですよ。だから、ぜひ検討をしていただきたいと思います。

 さらに、今、検察審査会審査員の基準を適用して日当も決めているというお話がありましたが、検察審査会審査員というのはどういう業務内容なんですか。大体全国二百カ所というふうに教えてくださいました。地裁支部と連動しておる。選挙人名簿からまたこれも選ばれて、やる中身というのは随分違うんじゃないですか。十一人が出てきて、しかも、聞いたらびっくりですけれども、その日に来て、いきなり説明があって、それでいいか悪いかと言われたって、最後はどういう判断になっているかというのはこれ以上申し上げませんが。

 検察審査会審査員の基準と当該裁判員制度は、やはり最終的に量刑まで決める権能を持つということを考えれば、単純にその人たちの職務に対する報酬とは、日当と言った方がいいんでしょうか、比較は非常にしづらいんじゃなかろうかと思いますけれども、それを参考にしてこの一万円の上限も決めておられるそうです。そうなんですよ、大臣。制度導入に向けて、まだ時間はありますので、よりきめ細かな監視をしていただきたいというふうに思います。

 そして、新司法試験制度ともこれは恐らく絡んでくる、大きな司法制度の改革だというふうに承知をいたしております。新司法試験制度が導入された暁には、三千名程度に将来的にはふやしていく、平成二十二年合格では二千九百から三千名程度を目指しておられる、こういうことであるんですが、他方で、これは新聞報道ベースですけれども、司法試験に受かって修習課程を終えて晴れてバッジをつけようにも、弁護士会登録も含めて、就職難民といいますか、弁護士事務所を希望しても入れないという報道を少し目にいたしました。

 私は、もちろん司法試験に合格なさった方が法曹の中でどの道に進むかは個人の自由だと思うんですが、三千名にふやしていくというそのねらいの一つに、やはり裁判の迅速化、つまり裁判官の数をふやす、あるいは言われております冤罪初め、自白強要主義初め、さまざまなことを考えますと、今度は検事の数もふやさなければいけないんじゃないか。

 そういうことを考えますと、実はこの三千名は、大臣は少し減らしてもいいんじゃないかということをおっしゃっておられますけれども、事務局にお尋ねしますと、企業内弁護士とかそういったものを今後ふやしていく意図は持っているけれども、裁判官並びに検察官をふやそうというための三千名計画ではないんだという説明があったんです。それで正しいですか。まず、正しいかどうか、そこを聞かせてください。

鳩山国務大臣 司法試験の合格者の問題は司法制度改革の中で出てきたわけでありまして、先生おっしゃるとおり、平成二十二年ごろ三千人にというのは政府の計画でもある。だから、これを一時的には前倒しして三千人合格させろとか、その後、五千人、六千人、七千人、一万人を目指せなんという意見も随分あったものでありますから、私は、日本は訴訟社会という文化を持っているわけではないから、三千人にまでするのは構わないけれども、ずっとそのまま三千人合格させたら法曹過剰ということになりはしないかということを常々申し上げてきているわけでございます。

 今の古本先生の御質問は、確かに判事、検事はもっと多く必要だと思います。それは、考えている以上に、一人当たりの判検事が持っている事件の数というのはすごく多いんですね。そういう意味でいえば、今回も裁判所職員定員法はこの間ここで御可決をいただいたわけでありますけれども、検事の定数は、国家公務員の総定員法の中にある中で、治安ということなんでしょうか、多少ふやしていただくような措置をとっていただいているわけですが、検事だってもっともっとふやしたいんですよ。

 だから、今回のこの三千人という話は、判検事をふやすという話とはほとんどリンクしていないわけですが、判検事をふやすということについては、民主党さんの御協力もいただければ、定員、予算の季節に大幅増員を求めていきたいとは思っています。

古本委員 事務局にお尋ねしますけれども、判事、検事のそれぞれの年間の平均処理件数というのは何件ですか、それぞれから。

高橋最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 現時点で確認できる最新のデータに基づいて申し上げますと、例えば代表的な裁判所である東京地裁の民事部におきましては、平成十九年における事件数を見ますと、裁判官一人当たり、これは訴訟事件でございますが、約三百七十件程度でございます。

大野政府参考人 検事につきましては、検事によりまして担当している業務がさまざまでございます。しかも、事件数というふうに言われましても、例えばいわゆる特捜部がやる事件一件とそれから交通違反のような事件と、なかなか件数をならして申し上げにくいところがございます。

 したがいまして、なかなか平均的なところは申し上げかねるわけでございますけれども、捜査と公判を一貫して担当するいわゆる主任立会制をとっている地方の小規模な検察庁等におきましても、いわゆる身柄事件を常時十件前後は持っているのではないだろうかというふうに思われるわけでございます。

古本委員 ちなみに、局長、事務局から五百二件と来ていますよ。これは事件数が全国、東京からずっとあって、検察官の数があって、それぞれ単純平均で出ていますね。五百二件じゃないんですか。いや、それは結構なんですけれども、五百二件だそうです。

 わかってください。今まで一カ月、二カ月、三カ月、今平均で法廷は大体何日間ぐらい維持しているんですか。きのう、平均しますと大体半年ぐらいだと聞きましたよ。そうすると、裁判員制度を導入して半年間民間人を引っ張るわけにはいかないので、一日、二日で結審までするわけでしょう。そういうふうな制度になってくればなってくるほど、本当に過酷な業務になりますよ。

 したがって、数をふやした方がいいというふうに言っているんですから、隠さずにしんどいと言ってもらえばいいんですよ。だから、数をふやしてさしあげた方が僕はいいと思います。もちろん、党の考えはまた別にあるのかもしれませんが、私としてはそういうふうなことは思います。

 その上で、この三千名を、せっかく受かってきた人たちをそういうふうに誘導していくということも含めて、やはりある程度の判断がないと、なかなかできないと思うんですね。年間で五百件処理をしているというのは、一人の検事さんが、どんな取り調べをして、物を読んで、そして被疑者と接見してという、それにどんな苦労をしているかというのは、申しわけないです、私は法曹の体験がないのでわかりませんけれども、単純平均で五百件というのは、勢いきめ細かな捜査はできない、やはり機械的な処理をしてしまったということももしかしたらあるのかもしれない、その結果が一連のあの冤罪、自白強要事件じゃないですか。

 やはりそういうことを考えますと、私は、ぜひ三千名の将来の金の卵の人たちがそういうふうになればなと願っておる者の一人でございます。

 ですから、そういうことを事前にきのうもお尋ねしているわけでありますから、素直にいろいろ教えていただけた方がすごくよかったなとは思いますけれども、この件はそのくらいにしておきたいと思います。

 大臣、残りが五分となりましたので、名残惜しゅうございますが、一つこういう話があるんです。

 私は愛知県の豊田市というところの選出でいただいておりますが、実は、私の尊敬する友人の一人から先日電話がかかってきました。彼は私のことを代議士と呼んでいますけれども、代議士、実はうちの息子のことで相談があるんだと。実はその彼は、今春高校三年を卒業なさるわけでありますが、県下でも屈指の進学校にいらっしゃる御子息でいらっしゃいます。

 それで、その君は、大臣の同窓を目指しておったそうであります。現役合格を目指し、東京大学法学部を受験なさった。もちろんセンター試験をやって、大変な受験勉強をしたんだと思います。ところが、進路指導の先生のいろいろなこともあったんだと思いますけれども、そして本人も本当に熱意を持って勉強したんだと思いますが、桜は咲かなかったんです。

 そして、相談があったのが、俗に言う度胸試しといいますか、滑りどめで受けたところが受かっている、もちろんそこも法学部です、どういう進路に進めばいいだろうかと。法曹じゃない私に聞かれても困るんですけれども、要するに彼の目標は、将来法曹に進みたいそうなんですね。

 それで、実は先日、私はその彼に会ったんですよ。一度私が話を聞いてやるということで、会った。そうしたら、こういうことだったんですよ。何と、東京大学法学部の最終試験の前日に、お母さんが高熱があって、あの季節ですから多分インフルエンザなんでしょうね、率直に言って自分もうつったんですよ。三十九度の高熱だったんですよ。僕は、お母さんを恨んだねと言ったんです。そうしたら、彼は何と言ったと思いますか。今まで育ててもらって、そこまで受験できるというところまで来たことに自分はもう満足していると言ったんですよ。風邪をうつされてですよ。恐らく、血のにじむ努力をしてきたと思いますよ。そして、英語が得意だったそうですけれども、何と、英語のリスニング試験は全く白紙だったんですって。何でかと聞いたら、せき払いをしたら周りのみんなに迷惑をかけるので、ただひたすら口を押さえ耐え忍び、リスニングを受けたというんです、大臣。私は涙が出る思いでしたよ。

 その彼に、将来法曹に進んだら何を目指すんだと聞いたんです。裁判官になりたいと言ったんですよ。頼みますよ、将来、その節には。それで、なぜ裁判官になりたいんだと言ったら、私は正義を貫きたいんですと言っていた、十八の子がですよ。

 これはやはり日本の司法制度を、この国で今議論している裁判員制度しかり、被害者が裁判へ参加できるこの仕組みしかり、もっともっとそういう将来を思っている若人たちがいるという前提に立って、今から仕組みをつくっていくべきだと思うんです。

 だから、私は、その三千人が企業弁護士になってもちろんいろいろやっていくというのも一つの道だと思いますが、そういうことを誘導するために三千人だときのう事務局から説明があったんですよ。私はびっくりしましたよ。やはり将来、一人五百件処理している検察官がいる、一人数百件処理している裁判官がいる、勢いやっつけ仕事になり正義が貫けていないならば、私は、この東京大学法学部を志した彼に対して顔向けができません。

 さらには、有罪率九九%という話も彼に言ったんです。そして、その有罪率九九を維持しないとなかなか大変な仕事らしいよと申し上げましたけれども、正義を貫いた結果、無罪判決がふえるのなら私は望むところだと彼は申しましたよ。

 大臣の御感想を求めて、終わりたいと思います。

鳩山国務大臣 司法試験合格者数、つまり法曹の数ということでもあるわけですが、それは、能力もあり、人格もすばらしい方々に質の高い法曹になっていただくということが最大の課題でありまして、今の方は別の大学に入られたわけですか。そういう有為の青年が、優しい心を持った青年が裁判官を目指すというのは本当にうれしい話です。

 私も、文部大臣とか労働大臣はやった経験があるんです。いわゆる一般の国家公務員の中におって仕事をしました。河井副大臣、古川政務官とよく言うんですけれども、我々、役所に戻りますと、周りにみんな検事さんがいっぱいいて、判事さんもいるわけですね。やはりみんな、ちょっと違っているなと思う部分もあるんですよ。つまり、当たり前の生ぬるい人生観ではやはり判事とか検事というのは務まらないのかな、もちろん弁護士の先生もそうですけれども。だから、法曹になるということは、我が人生、適当に楽しもうという気持ちの人は法曹を目指すべきでないし、目指さないんだろう、そういうふうに思います。

 ですから、その青年にもぜひ優秀な裁判官になっていただいて、反面教師みたいな人たちもいますからそれは余り吸収しないで、教師的なものを吸収して、本当にいい裁判官、場合によっては検事になっていただいてもいいので、そういう方を養成して、大勢ちょうだいをして裁判官の数もふやす、検察官の数もふやすというのは我々の大目標なので、与野党を超えて御協力をお願いします。

古本委員 ありがとうございました。

 大事なことを言い忘れました。その彼は、東京大学という志を貫くよりも、裁判官になるという自分の志を一年早く貫くために大学に進学をされたというふうに聞いております。よろしくお願いします。ありがとうございました。

下村委員長 次に、保坂展人君。

保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。

 法案について、各委員から私が疑問に思っていた点も大分出ましたので、二点だけ、まとめて法務省の方にお聞きをしたいと思います。

 先ほど、被害者参加人が外国人の方であっても特段制約する要件はないんだ、そういうふうにおっしゃっていました。とすると、いろいろな言語の外国人の方がいるんですけれども、その場合の契約弁護人のいわば言葉の上での問題、どんな対応を考えていらっしゃるのかというのが一つ。

 続けて聞いていいですか。もう一つは、未成年の被害者参加人もあり得るんだということなんですけれども、未成年のといっても、年齢で区切るわけにはいかないんじゃないかと思うんですね。もしあれでしたら、答弁はお二人で分けてやっていただいてもいいですけれども、未成年の場合はどういうことを考えているのか。未成年の被害者参加人へのある種の配慮が必要ですよね、少年事件でそうであるように。

 では、順番にお願いします。

深山政府参考人 この法案による被害者参加人のための国選弁護制度におきましても、被告人等の国選弁護制度と同様に、必ずしも国選弁護士になられるその方御自身が外国語に堪能であることを要するものではないと思っておりまして、適宜、適切な通訳が付されることが肝要だと思っております。

 国選の被害者参加弁護士がどのような仕組みで通訳人に依頼するかということにつきましては今後検討されることになりますけれども、ちなみに、被疑者、被告人の要通訳事件につきまして、国選弁護人が迅速に通訳を確保できるように、日本司法支援センターの地方事務所におきまして弁護士会などから提供を受けた通訳人名簿を備えつけておりまして、国選弁護人に通訳人に関する、どこにどういう通訳人がおられるというような情報を提供しているものと承知しております。その名簿は、英語とか中国語、韓国語といった一般的な外国語だけじゃなくて、ペルシャ語とかベトナム語とか、そういうような少数言語についても相当対応した名簿になっていると承知しております。

 司法支援センターでは、このような形で、国選の被害者参加弁護士についても、適切な通訳人が確保される体制の整備に努められるものと思っております。

 引き続き、被害者参加人が未成年者である場合の特別な配慮が必要ではないかという御指摘についてですけれども、確かに、被害者参加人が弁護士による援助を受けて適切、効果的に刑事事件に参加するためには、まずは被害者参加弁護士が、被害者参加人から被害の内容であるとか被害感情といったものを十分に聴取して、それを十分理解するということが重要でありますから、参加人が未成年である場合には、被害の内容を弁護士さんに説明すること自体が相当精神的に負担になる場合であったり、あるいは弁護士さんの発言いかんによっては非常に傷ついてしまうといったことも考えられます。

 したがいまして、一般に被害者参加人が弁護士さんを選ぶ場合に自分のいろいろな要望を述べられるということを先ほども御答弁申し上げましたけれども、未成年者である場合には、司法支援センターの方で、その年齢あるいはどういう事件かというようなことを考慮して、通常の被害者参加人の場合以上に被害者参加人の意向というものを適切に見きわめる努力をして、未成年者である被害者の支援に精通した適切な弁護士を指名して通知するというように配慮することになると思っております。

保坂(展)委員 ぜひそうしていただきたいと思います。

 続いて、この制度もことし始まって、裁判員制度が間近に迫っているということで、各委員からも何度も出ている話だと思いますけれども、最高裁判所の裁判員制度に関する意識調査の報告書というのがまとまったわけですよね。

 これは最高裁の方に伺いますけれども、内閣府が調査をしたとき、参加したいという方が五・六%、これは〇六年十二月の内閣府の調査。今回の調査では、五・六%が四・四%に減ってしまっている。参加してもよいが、内閣府の調査一五・二が今回は一一・一にやはり低下してしまっている。余り参加したくないが義務なら参加せざるを得ないという人まで含めるとようやく六割という現状です。制度がだんだん迫ってくるにつれて、裁判員制度がもうすぐ始まる、こういう認知率は九〇%ということで、高くなってきているんだろうと思います。

 そこで、これらのことについて最高裁の見解を伺っていく前に、昨年、私は、予算委員会と法務委員会両方あわせまして、平成十七年から二年間、裁判員制度広報費二十七億円かけてキャンペーンを行った、しかし、その一つ一つが本当に適正だったのかということをお尋ねしました。そして、昨年、平成十九年度、約十四億円の予算要求があったかと思います。ところが、国会での議論も踏まえて、裁判員制度全国フォーラム、これはとりあえず小規模にしようということで、予算は減額補正で返しますよ、こういう話でした。

 これは幾ら返されたのかという点、それから裁判員制度の広報費で最高裁は幾ら今年度予算で要求したのかという点、お答えいただけますか。

小川最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 平成十九年度の裁判員広報予算の返納額についてお尋ねでございますが、裁判員フォーラムの関係で、約七千七百万円を補正予算の修正減少額に計上済みでございます。その他につきましては、年度終了後、出納整理期間中ということでもございまして、執行額が確定しておりませんので、現時点でははっきりしたことは申し上げられません。(保坂(展)委員「ことしは」と呼ぶ)

 ことしの予算額でございますが、平成二十年度の予算額は、一千万単位で申し上げますと、十三億九千万円でございます。

保坂(展)委員 細かくは言いませんけれども、契約書がなかったりとか日付が全部違っていたりということで、会計検査院が、これは異例のことでしょうけれども、この広報費について全部チェックしてみた。そうしたら、我々が国会で指摘した以上にずさんな実態だったという報告がなされていますね。

 最高裁判所では処分がされたと聞いておりますが、これは国会で指摘した事項なので、国民及び我々に対しても、何か反省をしているのであればその旨もしっかり述べて、どういう処分があったのかを教えてください。

小川最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 最高裁が締結した平成十七年度及び平成十八年度の裁判員制度広報関連の契約の一部について、いわゆるさかのぼり契約がございました。それで、該当時の経理局長二名、これは現在は事務総長と現職の経理局長でございますが、につきましては、適切に契約事務を処理し、かつ事務処理が適切になされるよう体制整備を図るべきであったのにこれを怠ったということで、それから、該当時の経理局用度課長一名、現在は経理局の参事官でございますが、については、契約事務処理の状況を把握し、適切な事務処理がなされるよう部下職員を指導すべきであったのにこれを怠ったということで、それから、これは現職でございますが、該当時の経理局監査課長一名につきましては、適切な事務処理がなされるよう監査すべきであったのにこれを怠ったとして、平成十九年十二月二十七日、それぞれ注意の措置をいたしたということでございます。

 今後こういうことのないように、適正な処理に努めてまいりたいというふうに考えております。

保坂(展)委員 法務省に伺いますが、裁判員制度の中で、裁判官と裁判員はいずれも同じ対等の立場で事件を審理して評議、評決に当たる、こう説明されてきたんですけれども、アンケートを見ても、生涯にわたる守秘義務、これは罰則もあるということについて知らなかった方もまだまだ多いんですが、裁判官の守秘義務と裁判員の守秘義務には、罰則の有無で明らかな違いがありますよね。これは、裁判員と裁判官は同じだ、対等、平等だという今までの説明とどういうふうに符合するんでしょうか。

深山政府参考人 御指摘のように、裁判員につきましては、罰則で担保された守秘義務が課されている。これに対して、裁判官につきましては、裁判所法上、評議の秘密を守るべき義務が課されておりますけれども、これに対する制裁としての罰則というものは設けられておりません。

 ただ、現職の裁判官につきましては、守秘義務違反があった場合には分限、弾劾といった形の制裁規定はもちろんございますけれども、罰則というものではございません。また、退官後になりますと、その分限あるいは弾劾の余地がなくなりますので、そういう制裁がない、そういう違いがございます。

 その根拠がどこにあるのかということですけれども、裁判官は特別職の公務員でございますので、国家公務員法上の守秘義務がそもそもかかっていない。これは裁判官だけに限りません、特別職はみんなそうですけれども。そういうことになっていますし、在任中はもとより、退官後につきましても厳しい職業倫理を守るということが期待されて、法律上の罰則といった形の制裁規定が設けられていないということで、結果的に裁判員とそこに差がついているということになっているんだと思います。

保坂(展)委員 私は、裁判官がみずからの担当した事件について率直に語り出していると思うんですね。きょうは死刑の話は余りやりませんけれども、永山判決で死刑を出した裁判官が、制度としての終身刑があればこれを選択した、こういうふうに述べていらっしゃいます。また、いろいろ苦悩についても述べておられます。

 他方で、裁判員の場合は生涯、どういう評決だったのか、あるいは、私はこの証拠は違うと思っていた、これは不当な評決だったなどというようなことを漏らした場合は、恐らく五十年後でも処罰対象になる。これは、極めて重い負荷を裁判員の候補者である国民全体に与えているんじゃないか。これについて、大臣、どう思われますか。

鳩山国務大臣 漏らしてはいけない秘密というのは、主に評議の内容だろうと思うんですね。自分がこういうふうに言ったときにだれだれさんは、例えば量刑でもいいんですが、こういう主張をしたというようなことが漏らされると大変大きな問題になりますから、そうしたことは生涯しゃべらないでいただきたいということと、もう一つは、やはり証拠調べ等をしていく中で、たまたまプライバシーに触れるものを知ってしまったような場合に秘密は守ってもらいたい。

 ただ、裁判自体は公開でございますから、そこでだれがだれにどう言ったと言うのは構わないし、自分がどう主張したということも構わないわけで、そういう意味では、それほど範囲が広くはないんですけれども、まだまだそのことが負担で裁判員になりたくないと思っている方が大勢おられるとするならば、誤解を解けるように広報宣伝に努めていかなければならないと思っております。

保坂(展)委員 実は、法務省もやっていますけれども、三年間で四十億円の広報費を最高裁だけで使っているんですね。日弁連も額は少ないですが、法曹三者でこれだけ宣伝して、九割の国民は知ったんですね。しかし、知れば知るほどやりたくないという結果では、これは国民の側の受けとめ方だけではなくて、やはり制度設計の中にもいろいろ考えていくべき点があるだろうと思います。その点について、また次の機会があればやりたいと思います。

 終わります。

下村委員長 次に、滝実君。

滝委員 無所属の滝実でございます。

 十五分間時間をいただきましたので、今回のこの法案について、具体的な例を挙げてお尋ねをしたいと思います。

 今から八年ほど前に、交通事故が原因で死亡した事件がございます。この相手方というか加害者は宅配業者で全国大手、被害者の方は国立高専の学生でございました。そして、事故発生から数日たったときに、実は加害者側からこの家族のもとに文書が来ました。会社名で、弁護士が連名をした文書で、お気の毒だけれども、お子さんは過失と思われる、こういうような文書が参りました。そこから家族は、今度は弁護士を探さないかぬというので走り回る、そして警察にも相談をしに行く、こういう事件でございました。

 その後、実はこの事件は、警察がいろいろ調べても、どうも事件性が乏しいということだったんでしょうか、なかなか手間取りまして、書類送検したのが事故発生から九カ月後でございました。その間、この家族はとにかく、子供の同級生、たまたま技術系の学校だったものですから、そういう子供たちの応援を得て、具体的に現場検証をするとか、あるいは自動車を借りてきてシミュレーションをするとか、こういうことをして、加害者側の車のスピードとか、それから実際どこの場所でぶつかったのかとか、そういうようなことをお金をかけて、時間をかけて、警察にそのデータを持ち込んで、ようやく九カ月後に警察に書類送検をしてもらった。

 それから、今度は地検の方も、実は書類送検を受けてから地検が起訴するまでに一年間かかっていますから、そういう意味では、決め手を欠くというか、なかなか難しい事件だったんだろうとは想像できるのでございますけれども、いずれにいたしましても、起訴までにこの家族が使ったお金というのは相当膨大なものだと私は考えているわけです。

 したがって、そういうような事件で亡くなった家族は、やはり本人の名誉といいますか、あなたは過失だと一方的に決めつけられることに対する家族としての耐えがたさというものが、この事件の背景にあるわけでございます。

 結局、起訴までに難航した事件でございますけれども、今度、実は公判も延びに延びて、地裁段階で五年間かかりました。そして、地裁は結論的には無罪、しかし、検察側が控訴をしてくれまして、控訴審では有罪判決、そして加害者側が最高裁に上告した結果、最高裁は上告棄却ということで、去年の十二月に決着をしたという事件でございます。

 こういうような警察側の捜査が難航している際に、特に交通事故の場合には、本人、犠牲者が亡くなるという事件があるものですから、一方的に加害者側の証言だけが先行するんじゃないかというのは、家族がいつもそういう不信を持つ事件だろうと思うんですね。

 こういう事件について、警察側はこういうような問題についてどういうふうな受けとめ方をしているのか、交通局長さんの方から御答弁いただきたいと思います。

末井政府参考人 交通事故の一方の当事者が死亡した場合に、初動捜査の段階において目撃者が得られないときには、なかなかその捜査が進展しないという状況、特に御遺族に対してまことに心苦しい状況もあり、御遺族みずから活動されることがあることは承知をしております。

 そこで、これまでの捜査の体制に変更を加え、本年三月、警察本部に交通事故事件捜査統括官、交通事故鑑識官の職を設けるよう都道府県警察に指示をしたところでございます。

 これは、ひき逃げ死亡事故、危険運転致死傷事件、事故原因の究明が困難な交通事故事件などにつきまして、正確で綿密な実況見分、鑑識活動など客観的な証拠の収集と具体的な捜査指揮や組織的な取り組みを一層推進するために、捜査の体制の質的な強化を目的としたものでございます。

 私ども、こういったことによりまして、交通事故の被害者、そしてその御遺族を初めとする国民の要請、求めに応じた的確な、緻密な捜査活動を推進してまいりたいと考えております。

滝委員 今交通局長から、警察の初動捜査についての通達を出された、こういうことでございますから、それに期待をしたいと思います。

 この事件のように、実は起訴をしてもらうまでに二年間かかっているんですよね。そうすると、今度のこの法案によって明らかなように、どうもすべての期間をカバーできるわけじゃない。しかし、遺族としては交通事故なら事故が起きたときから弁護士さんに相談しないと、相手方がいわば全国組織の企業であるし、弁護士がついている、ひ弱な個人では全く対応できないわけですよね。ですから、この辺のところは何とかしないといけないんじゃないかという感じがあるのでございます。

 昨年の九月に出された経済的支援の検討会ですか、ここでそういうことについてどのような議論があったのか。あるいは、今、起訴してからじゃないと被害者の参加がなかなか難しい、こういうことでございますけれども、その辺のところを少し説明していただきたいと思います。

大野政府参考人 被害者側に対する公費による弁護士支援の関係でございますけれども、平成十七年十二月に閣議決定されました犯罪被害者等基本計画では、犯罪被害者等のための公費による弁護士選任につきまして、「犯罪被害者等に対する経済的支援制度に関して設置する検討のための会において、社会保障・福祉制度全体の中における犯罪被害者等に対する経済的支援制度のあるべき姿や財源と併せて検討する。」とされたわけであります。これを受けまして、先ほど御指摘になりました経済的支援に関する検討会におきましては、被害直後から犯罪被害者等のために公費で弁護士を選任すべきかどうかというような点も含めて検討が行われたわけであります。

 ただ、資力に乏しい犯罪被害者が利用できる現行の制度といたしまして、既に日本司法支援センター、法テラスによる民事法律扶助がございます。また、日弁連から日本司法支援センターに委託された犯罪被害者法律援助事業もあるわけでございます。

 こうした既存の事業があることも踏まえまして、昨年九月のこの検討会の最終取りまとめにおきましては、被害直後につきましては、こうした事業等が適切に運用され、犯罪被害者等の支援のためにさらに充実が図られるよう努めることとされた上で、今回御審議をいただいております犯罪被害者参加制度が新たに導入されることとなったのを受けた、被害者参加制度に伴う公費による弁護士選任について、「できるだけ早期の制度導入に向けて検討を行うべきである。」というように結論が出されたものと承知しているわけでございます。

滝委員 今の刑事局長さんの御答弁によれば、とにかく事故発生直後から相談はできる、特に日弁連のシステムを活用できる、こういうような趣旨というふうに受けとめさせていただきました。

 しかし、それにいたしましても、弁護士の費用だけじゃなく、事件の真相を遺族の方が明らかにするためには膨大な金がかかるんですよね。例えば、事故車と同じものを持ってきてシミュレーションをやってみるとか、それからその事故について、世の中には事故鑑定人という専門家がいるわけですね、そういう人に依頼をして立ち会ってもらうとか、そういう経費を考えたら、弁護士費用だけじゃなくて、膨大なお金がかかる。それをやらないと、やはり警察だけではなかなか踏み切れないところが恐らくいろいろな事件にはあるんだろうと思うんです。

 ですから、警察の捜査を踏み切らせるためにも、むしろ被害者の方がかなり場合によっては動かないとなかなかうまくいかない。それは、先ほど交通局長さんが、いやいや、初動捜査を変えたんだ、こういうふうにおっしゃいますけれども、なかなかそこのところは難しいというふうに言わざるを得ない問題があろうと思うんです。

 しかも、今刑事局長さんのおっしゃるように、法務省側は司法支援センター、法テラスで一元化しているわけでございますけれども、具体的に被害者がどこへ行くかというと、最近は、各公安委員会が持っている犯罪被害者等早期援助団体というのが、この間改正した法律にあるわけですね。

 そういうようなことですから、被害者としてはどっちへ行くのかという問題もこれあり、恐らく法テラスへ行けばそういう各地域の警察所管の犯罪被害者等早期援助団体を紹介してくれるんだろうと思うのでございますけれども、問題は、被害者は、警察に相談しに行くのでも、普通の住民はなかなか足が警察の方へ向かないんですね。警察に行ったって、窓口がみんなそっけない顔をしていますから、だれに相談していいかということ自体もわからないのが実際の警察なんです。

 したがって、大阪にはNPO法人で、そういうときに被害者に付き添って警察に一緒に連れていってくれる支援団体とか、それから弁護士さんのところへ一緒についていくとか、そういうようなことをやっているNPO法人もあるのでございますけれども、やはりこの辺のところはもう少し何とかしないと、実際の救済は得られないんじゃないだろうか。

 そこで、先ほどもこの委員会で議論が出ていましたけれども、例えばスウェーデンの場合には、昔、法務省でやっていた犯罪被害者の救援事業をわざわざ分離して、犯罪者庁という特別なエージェンシーをつくっているわけですね。しかも、スウェーデンの場合には、事故の当初から、警察の被害者に対する事情聴取も、弁護士が立ち会いのもとに行っている。

 こういうようなことになってこないとなかなかうまくいかないんじゃないだろうかと思うのでございますけれども、法務大臣に、最後に御感想をいただきたいと思います。

鳩山国務大臣 先ほどの先生が引かれた交通事故で亡くなられた例でいいますと、まず、警察がなかなか事件性を認めていなかったのかもしれません。送致まで時間がかかっているんですね。送致されても起訴までまた一年かかるというので、非常に難しい事件だったんだろうと思います。

 そうなりますと、今先生方にお願いをしております被害者参加制度、参加した場合の国選弁護というのは大分後の段階であって、きょうも先ほどから御質問がありましたように、被害が発生した、あるいは犯罪や事故が発生した直後からさまざまな救いの手が被害者に伸びるようにしなければならない、こう考えております。当然、警察もあるいは厚労省も、地方自治体もあるいは各被害者を救済しようとする団体もこれから連携を深めていくこととは思いますが、さらに我々も知恵を絞って研究をしていかなければならないと思いますし、今滝先生がおっしゃったスウェーデンのような例は、まことに充実しているんだなと感心をいたした次第でございます。

滝委員 時間が参りましたので、終わります。ありがとうございました。

下村委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

下村委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律及び総合法律支援法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

下村委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

下村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

下村委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十二分散会


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