衆議院

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第11号 平成20年4月25日(金曜日)

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平成二十年四月二十五日(金曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 下村 博文君

   理事 倉田 雅年君 理事 実川 幸夫君

   理事 柴山 昌彦君 理事 早川 忠孝君

   理事 水野 賢一君 理事 加藤 公一君

   理事 細川 律夫君 理事 大口 善徳君

      赤池 誠章君    稲田 朋美君

      後藤田正純君    清水鴻一郎君

      七条  明君    篠田 陽介君

      杉浦 正健君    武田 良太君

      棚橋 泰文君    土屋 正忠君

      長勢 甚遠君    古川 禎久君

      馬渡 龍治君    武藤 容治君

      森山 眞弓君    矢野 隆司君

      保岡 興治君    柳本 卓治君

      石関 貴史君    枝野 幸男君

      鈴木 克昌君    中井  洽君

      古本伸一郎君    前田 雄吉君

      神崎 武法君    重野 安正君

      滝   実君

    …………………………………

   法務大臣         鳩山 邦夫君

   内閣府副大臣       山本 明彦君

   法務副大臣        河井 克行君

   法務大臣政務官      古川 禎久君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 小野 正博君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局審議官)            細溝 清史君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局参事官)            三村  亨君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    倉吉  敬君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    大野恒太郎君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 川北  力君

   政府参考人

   (国税庁課税部長)    荒井 英夫君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           中尾 昭弘君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           森山  寛君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           木内喜美男君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房政策評価審議官)       今井  敏君

   政府参考人

   (中小企業庁経営支援部長)            長尾 尚人君

   法務委員会専門員     小菅 修一君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十五日

 辞任         補欠選任

  近江屋信広君     土屋 正忠君

  棚橋 泰文君     篠田 陽介君

  河村たかし君     鈴木 克昌君

  保坂 展人君     重野 安正君

同日

 辞任         補欠選任

  篠田 陽介君     棚橋 泰文君

  土屋 正忠君     近江屋信広君

  鈴木 克昌君     前田 雄吉君

  重野 安正君     保坂 展人君

同日

 辞任         補欠選任

  前田 雄吉君     河村たかし君

    ―――――――――――――

四月二十四日

 自宅保護法制定を求めることに関する請願(横山北斗君紹介)(第二三八二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 保険法案(内閣提出第六五号)

 保険法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案(内閣提出第六六号)


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     ――――◇―――――

下村委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、保険法案及び保険法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房審議官小野正博君、金融庁総務企画局審議官細溝清史君、金融庁総務企画局参事官三村亨君、法務省民事局長倉吉敬君、法務省刑事局長大野恒太郎君、財務省大臣官房審議官川北力君、国税庁課税部長荒井英夫君、厚生労働省大臣官房審議官中尾昭弘君、厚生労働省大臣官房審議官森山寛君、厚生労働省大臣官房審議官木内喜美男君、農林水産省大臣官房政策評価審議官今井敏君、中小企業庁経営支援部長長尾尚人君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

下村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

下村委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。七条明君。

七条委員 法務委員会で久々にしゃべらせていただくことを感謝申し上げますが、十五分という短い間でございますので、簡単明瞭に御答弁賜りますことをまずお願い申し上げておきたいと思います。

 今議題となっております保険法、これは明治三十二年にできて、そして明治四十四年に一部改正をして以後、もう百年余りになるということでございます。そうなってくると、これは百年に一度の改正ですから、何とか現代風に、しかもそれが今の保険の、金融の後退にならないようにしていかなければならないという意味では、非常に難しいものがあってここまで来たのではないか、関係をされた皆さん方に敬意を表しておきたいと思うところでございますが、今回、与党、野党の皆さん方に随分いろいろ審議をいただいてこの法案審議が進んできたのではないかと思っております。

 その中で、大臣はこの間、たしか民主党の古本先生の答弁のときに、この保険法は、保険の基本的なルールを定める、モラルリスクをできるだけ少なくすることだ、あるいはもう一方では、保険契約者が有利になるように保険法として整備をしていかなければならない、こういうふうに言っておられたわけであります。

 まず、保険契約者に有利にするというのは、保険業法の精神もそういうふうになっていると思いますから、これはまさにそのとおりであろうと思うのでありますけれども、そこで、一つ疑問が起こってしまったことを申し上げるならば、保険契約者保護ということと、もう一つは、被害を受けた方が契約者でない場合が出てくるわけですね。

 例えて言うならば、保険契約において、保険契約者の保護だけではなく、自動車事故の被害者、そういう保険事故による被害者の保護も図ることが必要なんだろうと思いますが、この場合に、保険契約者の保護が優先されるのか、あるいは保険事故に遭われた被害者の保護も考えて、この辺のバランスをどういうふうに考えていかなければならないのか。

 今回、商法六百六十七条で、責任保険をどうするかという、責任保険の被害者の優先権とか特別の先取特権というのが付与されておりますけれども、このバランスをどう考えるかということをまずは大臣、御答弁いただければと思います。

鳩山国務大臣 そのバランスが大変重要であり、また難しい部分でもあろうと思いますし、残念ながら、モラルリスクの問題がありますので、さまざまな規定を置かなければならないということなんだろうと思っております。

 したがって、保険業法というのはあるんでしょうが、保険会社がいかにうまくやったらもうかるかという観点は絶対持ってはいけないわけでございまして、保険契約者あるいは被保険者あるいは受取人の方が、少しでも有利になるようにということで、例えば片面的強行規定も置いたりいたしておるわけでございます。

 特に、商法には責任保険という規定がないわけでございまして、今回の改正では、責任保険で加害者と被害者がいるような場合ですが、加害者が保険に入っておった、そして事故を起こした、その場合、被害者が他の債権者と全く同じ立場であるならば、なかなか被害の救済が図られないということで、他の債権者よりも有利な先取特権を被害者に認めたというのが一つだろうと思っております。

 ただ、先生が先ほどちょっとお触れになった商法六百六十七条の規定、つまり間借りをしている人が、例えば火事を出してしまって大家さんが被害をこうむったというようなケースについての規定を削除いたしましたのは、特に大きな意味があるんじゃなくて、もう現実的にはそういうことはほとんどなくて、実際には家主、大家さんが自分で火災保険を締結している場合がほとんどであり、また、間借りしている人が大家さんを被保険者として火災保険を締結するという方法が一般的になったので、この六百六十七条を置いておかなければならない具体的な意味はなくなったということで、それは今回削除いたしております。

七条委員 今、大臣が言われるとおり、削除することは一つの方法だろうと思いますが、問題は、このバランスをとるのが難しいと今大臣言われた、そこが一番難しいんだと言われたとおり、被害者保護は当然やらなければならないことだろうと思います。

 ただ、保険業法の中では、そこらまで書いてありませんものですから、どちらかというと、保険契約者保護あるいは消費者保護ということを中心に考えてきた。そこへもってきて昨今、被害者に対してどうするかということで、被害者保護をきちっとやらなければならない。これは一つは、保険法の中で考えて保険業法に落としていったり、例えば金融庁のようなところでは、監督指針の中へきちっと意識をしていかなければならないものだろうと思いますから、ここを意識していただいて、今大臣に答弁いただいたようなことが下まで徹底していくことを望んでおきたいし、バランスをとるのは難しいことだろうと思いますけれども、法務省として、保険法と保険業法との兼ね合わせを含めて御指導いただきたい。

 局長、もし何かあれば、御答弁いただけますか。

倉吉政府参考人 ただいま委員御指摘のとおりでして、今回の保険法案は保険の関係当事者の契約ルールを直接律するものではありますけれども、その過程で、いろいろな周りの人との利害考量というのもしていかなければなりません。

 ただいま、責任保険の被害者の利益をどのように守って、かつ、保険契約者、被保険者の利益をきちっと保持していくかということが大事だという御指摘がございました。そのとおりだと思います。

 法務省といたしましても、関係省庁それから保険業界の方々とも、今後とも連携をとりながら、保険業法もあわせて、着実な行政が行われるように注視してまいりたいと思っております。

七条委員 保険契約者が有利になるということだけではなくして、双方バランスをとっていただけるようにお願いをいたしておきます。

 金融庁の副大臣がお越しでございますから、金融庁の副大臣にも。

 今回、保険金の未払いの問題、不払いの問題が随分起こってまいりました。もともとはというと、告知義務違反だとか告知義務に対する問題で未払いが起こり、その未払いを調査していくのに、次に起こったことがさらに次の問題になって、この責任というか、請求主義に伴ってできてこない問題まで追及してきたのではないかと思うんですね。

 ですから、この辺も含めて不払いの問題について、この保険法から保険業法、監督指針あるいは政省令の中で、金融庁としてどういう形で百年に一度の改正を踏まえて未払いが防止ができるのか、あるいは、これからまだ起こってきそうなものの中には銀行の窓販がありますけれども、窓販の中でこれが圧力販売になったり優越的地位の濫用が起こったりしないようにするための指導監督がどうできていくのかということも含めて、山本副大臣、お願いできますか。

山本副大臣 七条先生の御質問にお答えをさせていただきます。

 もともと、不払いと支払い漏れがありますけれども、支払い漏れが起こった原因というのはやはり請求主義が最も大きな原因だったと思いますので、その請求主義を、基本的には請求主義でありますけれども、支払い漏れが起こらないように保険会社の方に徹底をしてもらうように、いろいろな意味で今改善をしていただいております。

 具体的なことをちょっと申し上げますと、請求から支払いまでの全事業工程をシステム化するとか、漏れなく請求書類を顧客へ案内できるよう請求案内システムをつくるとか、それから内部管理でありますけれども、商品開発から保険金支払いまで、業務全般に係る部門横断的な管理部署を設置する、こういうような改善を徐々にしておりまして、大分お金もかけてシステムを変えておるようでありますから、恐らく支払い漏れが激減をしていくというふうに私ども思っておりますし、これから保険会社に対して適切な指示をしていきたいというふうに思っております。

 それと、圧力販売という件についてでありますけれども、基本的には、今回の法改正によって保険業法を改正しようというふうにはならなかったものですから、保険業法自体は改正しておりませんけれども、十七年の第三次の保険の窓販の解禁におきまして弊害防止措置を取り入れました。

 これは簡単に言いますと、融資先への販売を規制するとか、担当者を分離して規制するとか、それから融資審査期間中の保険募集を禁止する、こういうような弊害防止措置を第三次のときに行っております。そして、圧力販売をした場合はどうかといいますと、これはやはり業務改善命令等を行っていくというような形で対処していきたいというふうに考えております。

 そして、銀行窓販における優越的地位の濫用に対して政省令や監督指針を見直したらどうかというお話もございますけれども、約款の見直しにつきましては、今回法改正によりまして、告知義務違反による解除への対応につきましては、各保険会社において今回の保険法の規定に対応するため、必要に応じて適切に約款の見直しをしていくことが重要であるというふうに考えております。

 また、銀行窓販における優越的地位の濫用の問題につきましては、昨年十二月に全面解禁になったわけでありますけれども、その際に銀行等の保険募集の実施状況について引き続きモニタリングをしていくというふうになっておりまして、そのモニタリングを受けまして、おおむね三年後には弊害防止措置の所要の見直しをしようというふうに今考えておるところであります。

七条委員 今、おおむね三年というのは、私もちょうど言ったときにそんなことを感じておったところでありますし、このことを踏まえて、保険法ができ、そして保険業法や監督指針の中でさらに厳格に、保険、金融が後退することのないように御指導いただきたいと思います。

 先ほどの請求主義というのは、本来は請求をしないでも保険会社が契約者に対して請求の案内をする、請求したらどうですかといって案内をしてさしあげるぐらいの誠意がある方がいいんだろうと私は思うんですね。

 もう一つは、今回、法の中で二年から三年に支払いの期限の時効を延ばしておりますけれども、ただ、時効が来たからといってもう知らないよというのではなくして、この間の参考人のときにもありましたけれども、もう少し保険会社が誠意を持って対応していくという姿ができてくることが、スムーズにいく、またそれが保険の信頼を取り戻していくということにつながっていくと思いますから、そういうことまで促していけるような法務省当局であってほしいし、金融庁であってほしいと思っておるところでございます。

 最後に法務省、もし保険関係で何かあればお伺いさせていただきたいと思います。

鳩山国務大臣 今回の法改正は、もちろん片仮名の文語体を平仮名の口語体にするというようなこともありますが、要は、商法から取り出して保険法という独立した法にするわけでございます。

 そこには実は大きな意味があるわけで、今後の社会の変化とか、あるいは実際問題としてもっとこうした方がいいとか、今、保険法案を審議しているときに私がこういうことを言うのはおかしいのかもしれませんが、法律というのは時代とともに変化して当然でございますので、独立した保険法をつくったのですから、国会のさまざまな御意見をちょうだいしてこれに今後改良を加えていって、保険契約者あるいは被保険者、場合によっては責任保険であれば被害者の方がより安心して暮らせるようにしていく。今後の改良を期待したい、こう思っております。

七条委員 今、大臣が言われたとおりだろうと思います。今回の法律案には、基本的なルールの中に、大臣も言っておられましたけれども、保険の定義というのが入っていない、もちろん共済の定義も入っていない。これは答弁は要らないんですけれども、こういうふうに大きなルールの幅を書かなかったということが恐らく今大臣が言われることなんだろうと思います。

 それはどういうことかといったら、第三分野の世界というのはまだまだこれから新商品がたくさん出てきますよ、そして保険もますます活性化をして新しい世界に入っていきますよ、そのときに範囲を書いてしまったら困ってしまう部分もあるんでしょう。ですから、そういう意味では定義を書かなかったことはいいことだろうと私は思いますし、当然、三十日のルールの問題も出てきますけれども、三十日以上かかってしまうような新しい商品がいっぱい出てくることがあるわけですから、これは三十日のルールも書かない方がいいということになっていくんだろう。今、大臣が言われたとおりだろうと思います。

 そのことも含めて、今後とも、法務行政あるいは金融行政の中でも切磋琢磨をして保護のために頑張っていただけるようお願いして、私からの質問を終わらせていただきます。

下村委員長 次に、神崎武法君。

神崎委員 公明党の神崎武法でございます。

 まず、他人の生命に掛ける保険の問題を取り上げたいと思います。

 現代社会におきましては、他人の生命に保険を掛けて保険金を得ようとする保険金殺人事件、これが多発をいたしております。夫婦間の保険金殺人事件もあれば、貸金業者が顧客を追い詰めて消費者信用団体生命保険で債権を回収する事例とか、あるいは被保険者の殺害を国際的に現地人に依頼をするという保険金殺人事件も起こっているところでございます。また、会社が従業員の生命に掛ける団体生命保険のトラブルも多発をしているところでございます。

 まず大臣に、他人の生命に掛ける保険につきまして、この法案ではどのようなルールを規定されているのか、お伺いをしたいと思います。

鳩山国務大臣 保険という、世の中にとって非常に重要なものの基本的なルールを定める保険法案なのですが、神崎先生御指摘のとおり、保険金詐欺とか保険金殺人というようなものが、残念ながら、横行しているとまでは言わなくても、先生おっしゃるように多発をしているということでございますから、やはりこのモラルリスクを防止するという観点をかなり書き込まなければいけない、こういうことでございます。

 まず、契約当事者以外の者を被保険者とする死亡保険契約は、その被保険者の同意がなければ効力が生じないというふうにいたしたわけでございます。被保険者の知らないところで保険が掛けられておったら、それはやはり怖いことであろうかと思います。現行法では、被保険者が保険金受取人である場合は同意は不要となっておったわけでありますが、この場合でも、今回は同意が必要だというふうにいたしました。

 それは、大変悲しいことでありますが、被保険者が保険金受取人である、保険金殺人で、殺してしまえばその相続人が受け取ることになる、嫌な話ですが、保険契約者と被保険者の配偶者とかお子さんが共謀するということもあり得ないことではありませんので、今回はそういうふうな形でリスク防止を強化いたしたわけでございます。

 それ以外にも、例えば保険契約者等が被保険者を故意に殺害しようとしたような場合、保険者による契約の解除を認める重大事由による解除の規定というようなこと、これは当たり前のことかもしれませんが、そういう規定を置いております。

 また、被保険者が同意をしたものの、契約締結後に同意の基礎となった事情が失われた、例えば仲がよかったものが非常に険悪な状態になったりすればやはり怖いわけですから、そういう場合に、被保険者、保険を掛けられた人がみずからの意思で契約関係から離脱することができるという規定も置いたわけでございます。

 これは従来からありますが、保険契約者や保険金受取人が被保険者を故意に殺害した場合を法定の免責事由、すなわち保険金を支払わないということ、そうしたようなことで、残念ながらモラルリスク防止の規定を置かざるを得なかったということでございます。

神崎委員 他人の生命に掛ける保険につきましては、ただいま大臣の御答弁にありましたように被保険者の同意を要することとしているわけでございますけれども、同意の撤回は認められるのかどうか、認められる場合はどういう場合なのか、お尋ねをいたします。

倉吉政府参考人 同意の撤回の問題ですが、被保険者が一たん同意をしたのにその同意の効力を後でいつでも自由に覆せるということになりますと、法律関係の安定性を損ねますのでこれはできない、基本的にはそういうことになっておりまして、現行商法の解釈としても、これを否定的に解するのが一般的です。

 しかしながら、他方で、被保険者が同意をするに当たって基礎とした事情が変更したとか、それから、被保険者の保険契約者や保険金受取人に対する信頼が失われた、こういった場合にまで被保険者の地位を免れられないんだということにしたのでは、死亡保険契約の締結に当たって被保険者の同意を要した趣旨、つまりモラルリスクの防止ということでございますが、これに反することになります。

 そこで、保険法案におきましては、今申し上げたような事由がある場合には、契約当事者ではない被保険者による死亡保険契約の解除請求というのを認めることとしております。

 条文で申し上げますと、五十八条一項の一号から三号までにそれぞれこの解除請求ができる場合を掲げておりますけれども、まず、保険契約者または保険金受取人が被保険者を殺そうとした場合や、保険金受取人が当該死亡保険契約の保険給付の請求について詐欺を行おうとした場合、それから、殺人未遂や保険金詐欺とまでは言わないけれども、これらに準ずるような事情、すなわち被保険者の保険契約者または保険金受取人に対する信頼関係を損ない、当該死亡保険契約の存続を困難とする重大な事由が発生した場合、さらに、例えば契約締結時には夫婦であったんだけれども、契約締結後に保険契約者と被保険者が離婚したというような場合があります。

 このような場合には、同意をするに至った基礎的な事情が著しく変更したということになろうかと思いますので、この場合にも解除請求を認める、こういうふうな手当てをしているわけでございます。

神崎委員 団体生命保険につきましては、欧米では団体保険法で会社が従業員の死亡保険金を受け取ることを禁止し、死亡保険金を遺族に渡すのが一般と言われております。我が国でも、団体生命保険がスタートした当初は、会社の保険金受取禁止と個々の従業員への被保険者証交付の義務づけがほとんどの保険約款に明記されていたところであります。その後、従業員の死亡による企業の損失を補てんする保険である、こういう解釈が広がりまして、団体生命保険の保険金を企業が受け取るように今日本ではなっている例が多いと思います。

 この会社の受取禁止や被保険者証の発行を義務化する団体保険法を我が国でも制定すべきと考えますけれども、この点はいかがでしょうか。

倉吉政府参考人 最後に御指摘のありましたところからお答えしたいと思いますが、まず、会社の保険金受取禁止規定の問題でございます。

 確かに、団体生命保険契約のうち、会社が保険契約者兼保険金受取人となり従業員を被保険者として締結するものに関しては、ただいま先生御指摘のとおり、会社が保険金受取人となること自体を禁止すべきではないかという御指摘がございます。しかしながら、例えば、遺族補償規定により死亡退職金を従業員の遺族に支払うことが定められている、その金額を超えない範囲で会社が保険金を受け取るという場合、このような場合にはおよそ会社に不当な利得が生じないわけでありまして、全く問題がない。したがって、このような契約まで一律に禁止してしまうというのは相当ではないとまず考えられます。

 次に、被保険者証という御指摘がございました。団体生命保険契約においては、被保険者証と呼ばれる契約の概要を記載した書面、これを個々の被保険者に対して交付する義務を定めるべきではないか、こういう御指摘がございます。

 しかしながら、保険法案では、より抜本的なというか基本的な方策として、契約当事者以外の者を被保険者とする死亡保険契約一般について、当該被保険者の同意がなければ効力を生じないことといたしました。したがって、団体生命保険契約の場合にも当然個々の従業員の同意が必要になる、こうなるわけでございます。

 この被保険者の同意があったと言えるためには、同意が真意に基づいたものでなければならない、これはもちろんでありますが、さらに、だれが保険契約者になっているのか、だれが受取人になっているのか、あるいは死亡保険金の額は幾らなのか、こういったことについても被保険者である従業員が正しく認識していることが必要であります。

 したがって、よく言われます契約の基本的な内容についての理解を欠いた漠然とした同意をさせられてしまったとか、会社と従業員という関係から、事実上強制的に同意を求められてしまった、このような場合には、そもそも被保険者の同意として真意に基づいたものとは言えませんので、同意があったとは言えない、こういうことになります。したがって、契約は効力を有しないということになるわけです。

 このように考えてまいりますと、被保険者証のような書面を常に交付しなければならないとするまでの必要性はなくて、むしろこれを一律に義務づけることは、団体生命保険契約の締結に要するコストの増加を招いて、ひいては保険料の上昇にもつながって相当ではないのではないか、こう考えているところでございます。

神崎委員 次に、保険金不払い問題につきましてお尋ねいたします。

 保険金の不払いは、一部の保険会社だけではなく、大手を含むほぼすべての会社で発生をいたしております。また、死亡保険、自動車保険、医療保険など、さまざまな分野で生じているところでございます。そのために、国民の間では、保険業界全体に対する不信が広がっているところであります。

 まず、不払い問題の背景、原因をどう当局は見ておられるのかということをお伺いいたしたいと思います。自由化による商品の複雑化、契約者無視の業界体質、販売部門のモラルの低下、金融庁の保険会社への監督の問題等が指摘されておりますが、どうでしょうか。

三村政府参考人 平成十七年以来、御指摘のように、各保険会社におきまして保険金等の不払いや支払い漏れといったような問題が明らかとなってきております。

 これまでに各保険会社において明らかとなってまいりました不払いや支払い漏れの大きな要因といたしましては、各保険会社が入り口である保険募集から出口でございます保険金支払いまで、商品の特性を踏まえた適切な管理体制等を整備しないまま、御指摘のような複雑な商品を開発、販売してきたといったようなことが考えられると思っております。

 金融庁といたしましては、これら不払い等が認められた保険会社に対して、業務改善命令等において保険金等の支払い管理体制の整備など、各種の再発防止策の策定、実施を求めてまいりましたほか、迅速かつ適切な顧客対応を求めてきたところでございます。このような業務改善命令等を受けまして、各保険会社とも、この問題に対する一連の対応の中で、保険金支払い管理体制等について業務改善が進みつつあるものと認識をしております。

 金融庁としましては、各社に対し、今後とも引き続き適切にフォローしていくとともに、必要に応じ、さらなる業務改善を促してまいりたいと考えております。

神崎委員 保険金支払いのあり方につきまして、金融審議会では引き続き検討を行うべきだとしておりますけれども、今後どういう点について議論し、いつまでに結論を出されるのか、お伺いをいたします。

細溝政府参考人 金融審議会についてお尋ねがございました。

 御指摘の金融審議会は、今般の保険法の改正に伴いまして保険業法で何か対応が必要かといった御議論をしておったわけでございますが、結論的には、実質的な保険業法改正は必要ないという結論をいただいております。ただ、その審議の過程で、昨今の不払い問題等も踏まえてだと思いますが、保険金の支払いでありますとか募集でありますとか、ないしは解約返戻金でありますとかについてさまざまな御意見が出ました。

 したがいまして、これらの論点につきまして、今後金融審議会においてさらに引き続き御議論していただくということになっておりますが、現段階で具体的な検討のスケジュール、時期、それからそれらの内容の詳細についてはまだ決まっておりません。ただ、今後、関係者ともよく相談しながら検討していきたいと思っております。

神崎委員 終わります。

下村委員長 次に、鈴木克昌君。

鈴木(克)委員 民主党の鈴木克昌でございます。

 百年ぶりの保険法の改正ということで、少し私も御質問をさせていただきたいというふうに思います。

 本来なら、金融ビッグバンがあった平成十年ころにこの法律は当然のごとく見直しをされなければならなかったというふうに思うんですが、結局、それをせずに今日に至った。したがって、その結果というとちょっと語弊があるかもしれませんけれども、いろいろな保険会社をめぐっての問題が多発してきたということだと思います。それに伴っての今回の改正ではないかなというふうに思うんです。

 最初に法務大臣にお伺いします。

 先ほど来からいろいろと御質問がありました保険金の不払いの問題でありますけれども、俗に言う峠を越えて現在は収束状況に向かっておる、このように私も理解をいたしておるわけでありますが、今回の保険法案はこの保険金の不払い問題についてどのような手当てと申しますか、対策といいますか、そういうものがあらわされておるのか、その辺のところをまず最初にお伺いしたいと思います。

鳩山国務大臣 保険法という保険に関する基本法を今回定めるわけでありまして、せっかく法を整備しても、不払いというものがあったのでは、それは法律の意味が全くなくなってしまうわけでありますから、いろいろ報道されてきた不払い問題というものについては、我々法務省は、業法とか監督の問題については触れませんけれども、重大な関心を払ってきたところでございます。

 一般に、保険金の不払いは、支払わなくちゃいけない、そういう支払い事由があるのに、該当していないといって支払わないケース、それから、よく問題になりますいわゆる告知義務違反による解除が認められないにもかかわらず、告知義務違反として保険金を支払わない、要するに、一般には保険の募集をする人が告知妨害行為をする、そんなことは告知しなくていいんだというようなことで、保険者が保険契約があっても支払わないというようなケースが多かったと思います。また、主たる保険金、車両保険なんかの場合は、車両保険金は払うんですが、付随する保険金、代車の費用等を払わない、いろいろなケースがあるんだろうと思っております。

 したがいまして、先ほど申し上げましたように、この保険法案では、保険契約締結時の告知について、いわば聞かれたことに答えればいいというふうに、責任の所在を逆転させた、消費者、保険契約者に有利なように転換をしたということと、保険募集人が告知の邪魔をするというか、告知妨害行為等があった場合は、保険会社は、それは告知義務違反として払わないということはできない、きちんと払わなければならないというふうにいたしました。

 また、先般この委員会で随分議論になりましたが、保険給付の履行期についてでございます。

 保険者が適正な保険金の支払いのための不可欠な調査を行うために客観的に必要な期間が経過した後は、保険者は遅滞の責任を負う。この規定をめぐっては、この間随分議論がありましたが、五日とか三十日とかという約款によくある数字を書き込まなかったのは、さまざまな保険があるものですから、これを一律に決めるというのは今回は見送ったところでございます。しかしながら、これは重要な規定で、遅滞をすればそれだけ余計保険会社は払わなければならないという規定を置いたところでございます。

 このようなことで、少しでも消費者が有利になるようにというふうに考えております。したがいまして、この保険法案の規定よりも保険契約者にとって、いわゆる消費者でしょうか、不利な内容の合意を無効とする、約款にそういうものがあってもこれは無効とするという、いわゆる片面的強行規定も置いたところでございます。

鈴木(克)委員 一言で言えば、従来の考え方を逆転させて、それによっていわゆる不払いのような問題が起きないように十分考えておる、こういうことに伺いました。

 そういう意味で、この不払いの問題は後ほどまたお伺いをいたしますけれども、これは本当に許されない問題だというふうに思っておりまして、そういうことも含めて、この法案できちっとやはりチェックしていかなくてはいけないなというふうに思っております。

 続いて、この前の参考人質疑で、自民党さんの柴山議員が聞かれておったことに若干私も関係するんですけれども、いわゆる保険契約者が保険契約を締結するに当たって、契約内容を理解している必要がある。これは当然のことでありますが、先ほどのお話にもありましたが、保険法案では、保険契約者に契約内容を理解させるための規定というものが何か置かれておるんでしょうか。もし置かれていないとするならば、保険者側に説明義務を課す規定を設けなかったというのはどこに理由があるのか、なぜなのかというところをひとつ御答弁いただきたいと思います。

倉吉政府参考人 まず、保険契約者に契約内容を理解させるための規定でございますが、これは結果的には置いておりません。ただいまから、その置かれなかった理由というのを審議の過程も踏まえましてお答えしたいと思います。

 まず、保険契約者が弱い立場にある消費者であるという場合を考えますと、保険契約の締結時にそれは保険会社が十分な説明をすべきではないか、これは非常によくわかる議論でございます。

 ただ、この保険法案といいますのは、保険契約者がだれであるかを問わず、広く保険契約一般に適用されるルールでございます。もちろん、いわゆる企業保険というのもあるわけでございまして、保険契約者がちゃんとした強い企業であるという場合もある。そういう場合についてまで保険者である保険会社側に一律に説明義務めいたものを課するというのは、ちょっと違うのかなという感じがするということがまずございます。

 また、一口に保険契約と申しましても、それにはさまざまな種類、さまざまな内容のものがございます。契約締結時に説明すべき事項も、その種類、内容に応じて非常に区々に、複雑に変わってくるわけでございます。そうすると、あらゆる保険契約に共通する一般的なルールとして、契約締結時にこれを説明すべきだということを定める、そういう事項を定めるというのが非常に難しいという技術的な問題が次にございます。

 さらに、保険法案は、当事者間の権利義務を定める法律でございますから、仮に保険者側に何らかの説明義務を課するとした場合には、その説明義務に反した場合にどういう法律効果を与えるんだ、これをきちっと書かないといけないということになります。しかし、十分な説明がされたとしても、それによって契約が成立するに至ったかどうか、それから契約が成立したとして、どのような内容の契約が成立したかということは一律には決められません。そうすると、保険者が契約内容の十分な説明をしなかったという一事をもって、保険契約を直ちに無効とするとか、それから保険者に一律に保険金相当額の損害賠償責任を負わせてしまうというのは、やはり相当ではないということになろうかと思います。

 また、保険契約の種類や契約締結時に説明すべき事情がさまざまであるということからすれば、あらゆる場合に適切な効果を法定するというのも、これまた技術的にも極めて困難ということになるわけでございます。そうすると、手がないのかということになるわけですが、これは現行法でも十分対応できるのではないかという問題がございます。

 すなわち、契約締結時に保険者が契約内容を十分説明しなかったために保険契約者が契約内容等を誤認していた、こういうことがあるんだという主張がさまざま訴訟なんかでもされたようでありますが、この場合には、民法の第九十五条の錯誤という規定がございますが、その錯誤の法理によりまして、保険契約が無効となるという場合は当然あり得るだろうと思われます。それから、事案によっては、信義則に基づく説明義務違反を理由に保険者に損害賠償責任が認められる余地もある、こう考えられるわけでございます。そうしたことから、個別の事案ごとに具体的な事情に即した解決を図ることもできるであろう。

 以上のような理由で、説明義務を定める規定というのは設けなかったという経緯でございます。

鈴木(克)委員 今るる御説明をいただいたわけでありますが、確かに技術的に難しいということはわかります。しかし、これは今後、やはり大きな課題になってくる案件だ、私はこのように思っております。おっしゃるように、現行法でも対応できるんだということかもしれません。しかし、これは少し今後の成り行きというか、動きを見ていく必要があると思います。私はやはり、技術的に難しいからこれはできないということだけでは済まされない問題ではないかな、このように思っております。

 次に、保険会社の質問に答えればいいということになったというのは、半歩前進というのか、一歩前進というのか、これは確かに前進をしたというふうに思いますけれども、これもいろいろと議論をされております。

 保険会社にしてみれば、いわゆる告知をしてもらう事項をかなり細かくしてもらわなきゃいかぬ、こういうことになるんではないかなというふうに思います。保険会社が告知を求める形をとっていれば、例えばどんな事項でも聞いていいんだろうか。また、告知義務の範囲をある程度明確にしておいた方が、保険会社にとっても、それから保険契約者にとってもわかりやすいんではないかというような意見もあるわけですが、保険法案では、告知義務が生ずる範囲を具体的に示さなかったわけですね。これはなぜなのかということを、少し御答弁いただきたいと思います。

倉吉政府参考人 細かくなるのではないかというお話がございましたので、そこから入りたいと思います。

 確かに、この保険法案では、告知義務を商法で言っていた自発的な申告義務から、保険者からの質問に応答する義務に改めました。これは合理的なものだと考えておりますが、それだけではございませんで、この告知事項について、危険に関する重要な事項、すなわち損害の発生や人の死亡等といった保険給付の要件となる事由の発生の可能性に関する重要な事項でなければならないというふうにしているわけでございます。

 したがって、保険契約における保険給付事由の発生可能性と関連しないような事項や重要とは言えない細かい事項、保険者がこのことについて告知を求めたとしても、これはまず告知義務の対象とはなりませんので、これらの事項について告知義務違反があったとして、保険者が契約を解除する、こういうこそくなことはできないということを確認しておきたいと思います。

 その上で、告知義務の対象となり得る事項を危険に関する重要な事項としたわけでありますが、では具体的にそれがどんな事項なのかということは明示しておりません。これは、どのような事実が危険に関して重要な事項となり得るかということが、個々の保険契約の内容によって千差万別でありまして、これを個別具体的な形で列挙することは困難である、それから契約ごとの違いを捨象して重要な事項を一律に掲げてしまうということになりますと、これまた大ざっぱ過ぎて難しいということでございまして、そのために具体的に書くということができなかったというふうな事情でございます。

鈴木(克)委員 ごめんなさい。ちょっと捨象してというところだけどういう意味か教えていただけますか。今、捨象をしてというふうにおっしゃったので。

倉吉政府参考人 個々の保険契約の内容が違うものですから、それごとに全部書き上げていくということになると、これは大変になって、およそ法律とは呼べないような大ざっぱなものになる。そうすると、ある程度共通な事項を拾い出して、例えば保険契約者に関する事項だとか病状に関する事項等、抽象的に拾い上げていく、これを捨象してと申し上げたわけですが、そうすることは考えられるわけですが、これを抽象化してしまうと、ほとんど書いていないのと同じようになってまた意味がない、そういうジレンマがあるということでございます。

鈴木(克)委員 では、質問を続けさせていただきます。

 実は、今回、質問をさせていただく上において、保険会社の生の声をやはり聞く必要があるということで、何人かの方にお尋ねをしてきたんですが、いわゆる法律と現実の間にかなりのずれがあるということをおっしゃるわけですね。その中の一つが自殺の問題なんですね。

 保険法では、自殺は保険の対象から外されておる。しかし、一般的に各保険会社では、保険加入後三年程度を経過したものについては、自殺であっても保険金の支払いが行われておるというのも事実だというふうに思います。

 いわゆる各保険会社の定款できちっと規定をしておけば十分だというお立場だというふうに思うんですけれども、この辺のところが、法制審議会で議論をされてくる過程で、生命保険契約について、契約締結から一定期間内に被保険者が自殺をした場合に限って保険者を免責するか否か、このことについてどのような議論がなされてきたのか、そのところをちょっとお示しいただきたいと思います。

倉吉政府参考人 委員御指摘の点は、いわゆる倫理の問題にかかわる非常に難しい問題だと思っておりますが、保険法案では被保険者の自殺をそのまま免責事由としております。これは、現行の商法の規定、六百八十条第一項第一号でありますが、それをそのまま現代語化したもの、商法の規定をいわば踏襲したわけでございます。

 この点に関しましては、法制審議会の保険法部会において、契約締結日から一定の期間内における被保険者の自殺に限定して免責とすべきではないか、つまり契約時から何年もたってから自殺した場合にはもう保険金を払っていいではないか、こういう議論でございます。これは実は、多くの生命保険の約款が、責任開始日から二年または三年以内の被保険者の自殺に限定して保険者を免責としている、こういう実情がございます。このことが、そういう議論の大きな支えになったわけであります。

 そこで、もちろん、議論の当初では賛成する意見も非常に多かったわけでありますけれども、その一方で、現行商法では、損害保険契約についても、被保険者の故意によって損害が生じたことが保険者の免責事由とされておりまして、いわゆる故意による事故招致ということですが、この被保険者の故意による事故招致が保険契約上の信義則に反するものであって、保険者を免責とすべき典型的な場合である、これはすべての保険契約に共通ではないか、では、自殺も同じ故意によるものとして一緒ではないかという一種の原則論がまずございました。

 それから、これは実際的な議論なんですが、保険者を免責とする期間の相当性については、その時々の社会情勢等に応じて異なる判断がされる可能性があるということでございます。これは、約款自体がそうなんですが、約款の自殺免責期間というのが、最初一年であったものが二年、三年と徐々に延長されてきている、こういう実態がございます。そういった実態にかんがみますと、それにもかかわらず基本法において一定の期間を決めてしまって、それを定めてしまうというのは適当ではないのではないかということから、期間を定めるということに慎重な意見があったわけでございます。

 それで、最終的には、この部会におきまして、契約締結日から一定の期間内に被保険者が自殺した場合に限定することはしないということになりまして、実はこれは全会一致の結論でございました。そういう経緯でございます。

鈴木(克)委員 経緯はわかったわけですが、全会一致ということのようでありますけれども、いずれにしても、これが法律と現実との間のずれというふうに業界では考えておるということを指摘しておきたいというふうに思います。

 同じ質問なんですが、金融庁にもお伺いしたいんです。

 このいわゆる法律と現実のずれについて、金融庁はどのように考えているのか、考え方をお示しいただきたいと思います。

三村政府参考人 御指摘のとおり、保険法案におきましては、被保険者が自殺をした場合には、保険者は保険給付を行う責任は負わない旨規定をされております。他方、生命保険契約におきましては、約款の規定により、契約後一定の期間が経過した後は、自殺免責を適用することなく死亡保険金を支払うという契約にしてございます。

 このように、自殺免責を適用することなく死亡保険金を支払うこととしておりますのは、一般的に申し上げますと、自殺の原因については配慮すべき場合が多く、遺族の生活保障も重視する必要があり、全保険期間にわたって免責とすることは酷ではないかといったような配慮からであると承知をしております。

 他方で、モラルリスクにどう対応するのかといったような問題もあり、一定の自殺免責期間を置くことで、生命保険の不適切な利用を防止するとともに、自殺の助長や誘引の防止等に一定の効果が期待をされておるところでございます。

 金融庁といたしましては、現在の約款につきまして、一つの現実的な対応ではないかなと考えているところでございます。

鈴木(克)委員 現実的な対応と考えておるということでありますが、くどくなりますけれども、いずれにしても、やはり法律と現実とのずれだというふうに私は指摘をしておきたいと思います。

 次に、不払いの問題を金融庁から伺っていきたいんですが、不払いについては、例えば生保が九百六十四億だとか、損保が三百八十一億だとか、第三分野が十六億だということについてはもうさんざん言われてきておるわけであります。

 私がここで金融庁にお伺いをしたいのは、いわゆる不払いの内容、金融庁がとったそれに対する対応、不払い問題を引き起こした保険会社の支払いの進捗状況、それから業務の改善の状況、そして今後の見通し、そういうところについて御説明をいただきたいと思います。

三村政府参考人 保険会社におきます保険金等の不払い等の事例と、これに対するこれまでの金融庁の対応についてお答えを申し上げます。

 まず、生命保険会社でございます。

 保険金等の不適切な不払い、これは事例といたしましては、例えば、生命保険募集人が被保険者に対して不告知を勧めていたにもかかわらず、虚偽の告知により保険金を詐取しようとしていたとして契約を無効とし、不払いとしたものなどでございます。それにつきましては、十七年の七月に全社に報告を求め、不適切な不払いが多数認められた一社に対しては、業務改善命令及び一部業務停止命令を発出いたしました。また、不払いの事案が認められたその他の社についても業務の改善を促してきたところでございます。

 次に、保険金等の支払い漏れでございます。

 これは事例といたしましては、例えば、給付金の請求に必要な診断書に入院と手術の記載があったけれども、手術欄ではなく経過欄に記載があったため手術名を見落とし、入院給付金のみを支払い、手術給付金を支払っていなかったといったような事例でございます。これにつきましては、十九年の二月に全社に報告を求め、昨年の十一月までに、全社が調査を完了し、各社から金融庁に報告が出てきているところでございます。

 次に、損保会社でございます。

 まず、付随的な保険金の支払い漏れでございますが、これは事例といたしましては、例えば、保険事故が発生をし主たる保険金の支払いは行われているにもかかわらず、見舞金、香典、代車費用といったような付随的な保険金について、契約者から請求がなかったため、本来支払われていなければならないものを支払っていなかったといったような事例でございます。これにつきましては、十七年の九月に全社に報告を求め、十七年の十一月に、支払い漏れが認められた二十六社に対し業務改善命令を発出したところでございます。

 次に、第三分野商品に係る不適切な不払いでございます。

 これの事例といたしましては、約款上、医師の診断により保険契約の始期前発病が認定された場合に保険会社の免責が適用されることとなっておりますが、社員が医師の判断に基づかず判定を行う等、免責が不適切に適用されたものなどでございます。これにつきましては、十八年の七月に全社に報告を求め、十九年の三月に十社に対して業務改善命令を発出し、さらに、うち六社に対しましては一部業務改善命令を発出するなど、業務の改善を促してきたところでございます。

 このような当庁におきます業務改善命令等を受けまして、各保険会社とも、この問題に関して、一連の対応の中で、保険金支払い管理体制等について業務の改善が進みつつあるものと認識をしております。

 また、不払いや支払い漏れとなっておりました保険金等の支払い状況でございますけれども、生保会社の支払い漏れにつきましては、十九年十一月末時点で、金額ベースで約八四%が既に支払われております。このほか、損保会社の支払い漏れや不適切な不払い等につきましては、おおむね支払いは完了したものと承知をしております。

 いずれにいたしましても、保険金の支払いは保険会社の基本的かつ重要な責務の一つであり、金融庁といたしましては、適時適切な保険金の支払いが行われるよう、引き続き、各保険会社に対し、再発防止策の策定実施など、業務改善に向けた取り組みを促してまいりたいと考えております。

鈴木(克)委員 時間も迫ってまいりましたので、保険料の取り過ぎについてちょっとお伺いをしたいんです。

 火災保険料の取り過ぎそれから地震保険料の取り過ぎ、こういうものがいろいろと問題になっておるわけですが、金融庁として、この取り過ぎについてどのような指導をし、そして現在保険料の返還はどんな状況になっておるのか、簡単で結構ですから、お示しください。

三村政府参考人 お答えいたします。

 十八年の十二月に、一部、火災保険契約におきまして、建物の耐火性に応じた保険料の算定がなされておらず、保険料を取り過ぎている事例が判明いたしております。

 これを受けまして、金融庁では、十八年の十二月二十日に、火災保険を取り扱う損害保険会社三十社に対しまして、適正な保険募集態勢を確認する観点から、点検及びその結果に基づく顧客への適切な対応を要請してまいったところでございます。

 各損害保険会社においては、現在、金融庁の要請を受けまして、火災保険契約の適正性に関する調査を行いますと同時に、地震保険も含め火災保険以外の保険商品全般についても同様の調査を行うことにいたしておりまして、各社みずから策定した調査方法や計画に基づき、その発生原因の分析を含めた調査を進めているものと承知しております。

 保険料の返還につきましては、金融庁としても、各社に対し、契約者の視点に立った適切な顧客対応を行うよう求めているところでございます。各社においても、みずから保有する契約書類のみならず、契約者等の保有する関係書類も参考に契約内容の調査を行うなど、速やかな返還に努めているものと承知をしております。

鈴木(克)委員 最後の質問は法務省にさせていただきたいんですが、共済についてお尋ねをいたします。

 共済は、御案内のように、JA共済のような非常に大がかりなものから小さな互助会のようなものまでさまざまな規模があるわけでありますが、一律に保険法案が適用されるのだろうか、そして保険法案が適用される共済契約の範囲について、御説明をいただきたいと思います。

倉吉政府参考人 保険法案では、最初の方の第二条第一号でございますが、その適用の対象となる保険契約について、保険契約、共済契約その他いかなる名称であるかを問わず、当事者の一方が一定の事由が生じたことを条件として財産上の給付を行うことを約し、相手方がこれに対して当該一定の事由の発生の可能性に応じたものとして保険料や共済掛金を支払うことを約する契約、このように定義しております。

 したがって、この定義の規定に当てはまるかどうかということがすべてでございまして、これに当たらない共済契約は、共済契約という名になっていたとしても、保険法が適用されないということになるわけであります。

 具体的に申し上げますと、よく共済で見舞金というものが給付されるということがありますが、この見舞金につきましては、それが団体内部の福利厚生の一環として、いわゆる保険の前提となる危険の測定やそれに応じた保険料の算定をせずに団体の構成員から一律の費用を徴収した資金を原資としてこれを配っている、こういうような場合には、そもそも保険契約には該当しない、こういうことになります。

 他方で、一定の事由が発生したことに対して慶弔見舞金といった名目で金銭の支払いがされているんだけれども、それは共済の制度の運営者の側で、その事由の発生の可能性の測定をし、それに応じた掛金の算定が行われているということであれば、保険契約に該当する可能性もあるということになります。

 いずれにしましても、共済の規模というものは、保険契約に該当するか否かとは直接にはかかわりのないことでありまして、あくまでも、危険を測定し当該危険に応じた掛金の算定がされているかどうか、これが決め手になるということでございます。

鈴木(克)委員 以上で、私の質問を終わります。ありがとうございました。

下村委員長 次に、細川律夫君。

細川委員 民主党の細川でございます。

 きょうは最後の審議の日程になっておりますから、重複をするところもあるかと思いますけれども、質問をさせていただきます。

 まず、共済契約についてお伺いをいたします。

 従来、商法で規定されておりました保険の規定では、共済契約は適用の対象とされていなかった。その共済契約が、この法案では初めて適用の対象となっているところでございます。それ自体、私は大変いいことだと評価いたしております。

 ただ、今まで審議の過程でもしばしば答弁がありましたように、保険契約と共済契約には相違点もたくさんございます。保険契約は商行為であり、会社は営利を目的としておりますけれども、共済の方はそもそも相互扶助を目的といたしておりまして、非営利で運営をされております。また、共済は、特定の団体の構成員の間で運営をされておりまして、共済契約締結に当たっては共済団体への出資とか運営への参加ということが伴うわけでありますけれども、保険の方は、株式会社が保険者でありまして、不特定多数の者が加入するために、保険契約締結の際、出資ということがないわけでございます。

 そこで、確認の意味も含めて御質問をいたしますが、先ほど私が申し上げた、共済と保険にはいろいろと相違がございますけれども、今回、この保険法案では共済契約もその適用の対象としたのはなぜか、また、これらの違いも踏まえて保険と共済は明確に区分されて、かつ、対等に扱われている、こういうふうに考えていいのかどうか、これについてお答えをいただきます。

    〔委員長退席、早川委員長代理着席〕

倉吉政府参考人 まず、共済契約も適用の対象とした理由から申し上げます。

 現在、保険契約については商法の中に契約のルールが定められている、しかし、共済契約については法律上の契約ルールは定められていないという状態になっております。

 しかし、共済契約の中には、商法が定める保険契約と実質的に同様のものが存在しておりまして、保険や共済に加入する者からすれば、こうした実質が同じ契約については同じ法律上の基本的なルールが定められているのが望ましいということになります。また、法律に基本的な契約ルールを定めることによりまして、契約上のトラブルを解決する際の指針が明確になるというメリットもございます。

 そのため、今回の保険法案では、共済契約のうち、実質的に保険契約と同様の実質を有するものをその適用の対象とした次第であります。

 それから、区別されているか、対等に扱っているかという御指摘がございましたが、保険法案では、保険契約の定義を規定した第二条第一号に書いてあるとおりでございまして、その適用の対象について、保険契約と共済契約を並べて書いてありまして、明確に区別して規定しております。

 また、第二条第一号において保険契約と共済契約を典型的なものとして併記しているわけでありまして、これはもちろん対等に取り扱っているというよすがになると思っております。

細川委員 次に、この法案で共済契約が適用の対象になることによりまして、共済の組織運営上の特質や、共済契約者である組合員としての地位や、あるいは権限について影響を受けるようなことはないか、また共済の独自性、存在意義を否定するようなことにはならないのか、そこのあたりを確認させていただきます。

倉吉政府参考人 保険法案は、保険に関する契約ルールを定めるものでありまして、保険契約の関係当事者の私法上の権利義務関係について定めるものであります。

 共済の場合には、契約締結の前提として、共済団体に出資したり運営への参画ということがあるわけでありますが、これらは共済団体内部の構成や内部での意思決定の問題でありまして、共済契約に保険法案が適用されるからといって、そういうことが変更されるということは一切ございません。したがって、組合員の地位や権限が影響を受けるということも一切ございません。

 また、保険法案は、共済団体の組織や運営、その監督規制等については何のルールも定めておりませんので、保険法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案というもう一つの法律案を出させていただいておりますが、そこにおきましても、共済団体に対する監督規制に関連する内容の改正は行われていないところであります。

 したがって、保険法案の制定が、組織法や監督法に影響を及ぼすものではないこと、そして相互扶助の理念に基づく共済の独自性や存在意義を否定するものでないことは明確に申し上げておきたいと思います。

細川委員 それでは次に、従来でもこの委員会の中で質疑がありまして、当局の方から答弁もありましたけれども、また確認のために質問をいたします。

 この保険法と業法との関係について伺っておきます。

 共済及び保険のいずれについても、保険業法や各協同組合法など組織法や監督法がありまして、それぞれの保険業界あるいは協同組合などの団体は、戦後、大変長い歴史の中で、それぞれの各省庁から指導あるいは監督を受けてきております。

 そこでお伺いいたしますが、私は、今後も引き続き当該所管する省庁がそれぞれの業法のもとで制度の特色に応じた監督を行っていくことが適当と考えておりますけれども、それぞれの省庁から、この保険法が成立した後の監督の考え方についてお伺いをしておきたいと思います。

 それでは、まず金融庁、この成立後の監督の考え方について御説明をお願いします。

山本副大臣 金融庁としてお答えさせていただきます。

 今回の保険法案は、保険や共済に係る契約に関する規律を定める、そういう法律であるというふうに承知をしております。

 したがいまして、今回の保険法の制定に当たりまして、共済組合などの組織法や監督法の一元化を考えているものではありません。

細川委員 そうしますと、一元化は考えていないということは監督あるいは組織の変更はない、こういうことでありますから、しっかりそのようにやっていただきたいと思います。

 それでは、農林水産省、その点についてお答えをお願いします。

今井政府参考人 農協の監督についてのお尋ねでございますけれども、農業協同組合法におきましては農協の組織や運営、監督体制等を定めておりますけれども、今回の保険法によりまして、この点は何ら変わることがないというふうに認識をいたしております。

 したがいまして、JA共済を実施いたします農協の監督は、従前どおり、農業協同組合法に基づきまして農林水産省がしっかりと行っていく考えでございます。

細川委員 それでは、中小企業庁、答えてください。

長尾政府参考人 お答えいたします。

 今回の法案につきましては、先ほど御答弁もありましたとおり、私法上の契約ルールを定めるものでありまして、共済団体の組織運営、監督規制等についてのルールを定めようというものではないというふうに承知しております。

 したがいまして、保険法の制定を契機として監督権限の一元化を図るものではないと認識しておりまして、中小企業庁といたしましては、中小企業等協同組合法に基づいて行っております共済事業の指導監督につきましては、従前どおり、しっかり対応してまいりたいというふうに考えております。

細川委員 では、次は厚生労働省、その点を答えてください。

木内政府参考人 消費生活協同組合におけます共済事業につきましても、相互扶助という精神に基づきまして、従来から、消費生活協同組合法に基づきまして組織運営、監督等を行ってきたところでございますが、今回の保険法案は私法上の契約ルールを定めたということでございますので、組織運営、監督等におきましては、引き続き消費生活協同組合法に基づきまして適切に行ってまいりたいと考えておるところでございます。

細川委員 それぞれの所管の官庁から、引き続きしっかり監督を続けていく旨の回答がございました。

 ただ、一部には、今回の保険法案が成立をいたしましたら、それを引き金といたしまして、組織法とか、あるいは監督法まで一元化すべきというような議論が出てくるのではないかという懸念があることも聞いております。

 そこで、法務大臣にお尋ねをいたしますけれども、そういう疑念があることに対して、法務大臣としてどういう考えをお持ちなのか、しっかりと見解をお聞かせ願いたいと思います。

鳩山国務大臣 細川先生の御質問に対して、今各省庁から答弁があったわけでございます。結論から申し上げまして、監督の一元化ということは全く懸念する必要がないというふうに申し上げたいと思っております。

 今回の保険法の改正は、先ほどから申し上げておりますように、商法の中から取り出して、保険法という基本法をここに制定するものでございまして、保険契約というものがある、あるいは実質上保険契約と同等の意味内容を持つ共済の契約というものの基本的なルールを定めようということでございまして、そもそもが、共済を取り込んだ形になっても、共済団体の組織や運営や監督というものについて定めようとか口を出そうとするものでは全くございません。

 私は、かつて東京が選挙区でありましたが、福岡に選挙区を変えまして、農協、JAの共済関係の皆様方とも親しくおつき合いをいたしますと、中身は生保であり損保であり傷害疾病の共済契約であっても、JAというものができたいきさつ、そしてJAが共済を始めたいきさつ、歴史等には格別の意味があるわけでございまして、それはやはり農水省がきちんと監督をしたり相談相手になるべきであるということで、従来からの監督についての変更をするということは今後もあり得ないことと思っております。

細川委員 では、次に移りたいと思います。

 生命保険の中で、団体定期保険などに見られます、契約者と被保険者が異なる保険についてお伺いをいたします。

 これまで商法でも、六百七十四条で、他人の死亡について保険金額の支払いをなすべきことを定むる保険契約についてはその者の同意あることを要す、こういうふうになっておりまして、被保険者の同意が必要でありました。今回の保険法も、第三十八条に「生命保険契約の当事者以外の者を被保険者とする死亡保険契約は、当該被保険者の同意がなければ、その効力を生じない。」ということになっておりまして、一見、言葉の定義というものは正確になっておりますけれども、中身が変わっているというふうには思えないところでございます。

 この団体定期保険の受け取りをめぐっては、大変多くの訴訟が起きております。

 そこで、先ほど神崎先生の御質問のときにもいろいろ議論がされておりましたけれども、被保険者の同意をめぐって、法務省の方は、しっかりやるということで大丈夫だということでございますし、契約のルールとしてはこれが精いっぱいのところだというようなことを前回の委員会でもおっしゃって、契約法として同意を明確にするんだから、その後はいわば監督官庁が業法として運用の中できちんとやってほしいというのが法務省のお考えだろうというふうに思います。

 そこで、きょうは金融庁の方にお尋ねをいたします。

 金融庁は、団体定期保険のいわゆるAグループと言われております保険につきまして、しっかりと従業員の福祉目的、つまりは弔慰金や死亡退職金制度として位置づけるように指導はしているというふうに聞いておりますけれども、その点、一体どうやっているのか。過去にあったように、弔慰金をはるかに超えるような大きな金額を会社が受け取るようなことはないのか、そういうことがしっかり言えるのか、金融庁にお聞きをいたします。

三村政府参考人 お答えいたします。

 旧団体定期保険につきましては、過去におきまして、委員御指摘のとおり、その保険目的、趣旨や保険金額の上限、被保険者同意のとり方等が不明確であったため、企業とその従業員の遺族との間で保険金支払いをめぐる訴訟が発生いたしましたことは承知をいたしております。

 このため、平成八年に、団体保険が本来の目的、趣旨に沿って適切な利用が行われるよう、商品内容につきまして、まず、死亡退職金等の支払い財源を保障する主契約と、従業員死亡による企業の経済的損失を補償するヒューマンバリュー特約に分離をし、保険目的、趣旨を明確にするよう、また二点目でございますが、特約の保険金額の上限につきまして一定の制限を設けるようにしたこと、それから三点目でございますが、主契約の加入及び特約の付保に当たりましては、被保険者である従業員の同意が必要であることを明確にいたしましたことなどを盛り込んだ新しい保険商品の認可が行われたところでございます。

 この商品性の変更により、本団体保険は、基本的にこの保険の本来の目的、趣旨に沿った利用が行われているものと考えており、保険契約の引き受けにつきましても、福利厚生制度で規定する弔慰金、死亡退職金等の範囲内の額となっているものと考えております。

 なお、当庁といたしましては、当該保険契約が従業員に対する企業の弔慰金、死亡退職金等の支払い財源を保障するといった目的に沿って適切な保険金額による引き受けが行われているか等に着目をして、保険会社の監督を行っているところでございます。

 今後とも、この取り扱いを確実に行うよう、保険会社を監督してまいりたいと考えております。

    〔早川委員長代理退席、委員長着席〕

細川委員 ヒューマンバリュー特約について、さらにお尋ねをいたします。

 このヒューマンバリュー特約については、本人だけでなく、遺族もこうした保険の存在と、そういう金額を会社が受け取ることの合理性というものをしっかり認識する必要があるんじゃないかと思っております。そうでないと、やはりまたトラブルが起こるのではないかというふうに私は懸念をいたしております。

 具体的には、契約時に本人から書面による同意をとりつけるということに加えて、遺族にも、そういう契約に加入をしている、そういう有無がわかるような、さっきも神崎先生のときに出ておりましたけれども、被保険者証を交付するようなことがやはり必要じゃないかというように思いますので、もう一度お尋ねをいたします。

三村政府参考人 ヒューマンバリュー特約について、お答えをいたします。

 当特約におきましては、主契約と同様に、従業員本人への説明と同意の取得を求めておりますけれども、被保険者証の交付を義務づけることにつきましては、例えばその作成、交付にコストがかかり、かえって保険料が高くなるといったようなことが考えられることなどの問題点も考えられますことから、慎重に検討する必要があるのではないかと考えております。

 なお、本特約の保険金支払いの際には、当該保険金の支払いを弔慰金受給者にお知らせすべきとし、遺族への周知を徹底するよう保険会社に対して監督を行ってきているところでございます。

 今後とも、保険金支払い時における遺族への周知を確実に行うよう、保険会社に対し適切に監督をしてまいりたいと考えております。

細川委員 御説明はいただきましたけれども、やはり遺族がしっかりその契約について認識をしているということが、トラブルも起こらない、それを予防することにもなると思いますので、また検討もお願いをしたいというふうに思っております。

 それでは、次に移ります。

 労災補償共済というものがございますので、これに関連してお伺いをいたします。

 この労災補償共済というのは、厚労省と国交省が共管をしている公益法人建設業福祉共済団が行っているものでありまして、建設業を対象に、労災事故の被害者補償を目的としているものでございます。今までは生命保険について話してきましたけれども、これは損害保険契約になるということでございます。

 この保険でも、被害者遺族のもとに共済金が渡されずに、受領した会社の運転資金になっていたということで、裁判になった事例がございます。この労災補償共済の目的からいたしまして、本来、その多くは被災者の遺族に当然渡るはずでございましたけれども、企業の方はこれを運転資金に使っておりました。こういうことはやはり許されないだろうと思いますけれども、ところが、規約にそういう記載がないために、裁判では被災者の遺族の方が敗訴する、こういうようなことがございました。

 この点、規約の改善はなされたのかどうか、このことについてお聞きをいたします。

森山政府参考人 お答えいたします。

 建設業福祉共済団の行う建設労災共済事業につきましては、今まさに委員の御指摘のとおり、その共済事業の規約において、共済契約者である事業主の雇用する労働者またはその遺族へ補償する規定がなかったものでございます。

 そこで、厚生労働省といたしましては、共済団に対し、被災労働者等への補償を目的とする制度の趣旨に適合するよう、改善を指導したところでございます。

 その結果、共済団は、被災者補償共済金の全額が労働者やその遺族に対し確実に支払われるよう規約を改正いたしまして、本年の四月から適用されているところでございます。

細川委員 この労災補償共済につきましては、業法がございません。主体は財団法人ということになっております。先ほど私が紹介したようなことが起こったのも、財団法人を所管している官庁の監督に問題があったからだというふうに思います。

 今回のこの保険法の制定によりまして、共済についても、契約については保険法が適用されることになると思いますけれども、業法がないこの共済の監督については今後どうなっていくのか、詳しく説明をしてください。

森山政府参考人 お答え申し上げます。

 公益法人の行う共済につきましては、改正保険業法附則第五条におきまして、改正法施行の際特定保険業を行っている民法三十四条の規定により設立された法人は、当分の間、引き続き特定保険業を行うことができるとされておりまして、この場合の法人の業務の監督は公益法人の主管官庁が行う旨規定されております。

 したがいまして、この経過措置によりまして、先ほどの建設業福祉共済団が行う建設労災補償共済につきましては、引き続き公益法人の主務官庁でございます厚生労働省及び国土交通省が行うことになります。

細川委員 その当分の間はやはりこんなことが起こらないように、しっかり監督をしていただきたいと思います。

 次に、いわゆるモラルリスクの問題の中でも最も典型的な保険金殺人についてお尋ねをしていきます。幾つかの例を挙げながらお尋ねをします。

 まず初めに、いわゆるさくら保険金殺人事件というのを御紹介して、質問をいたしたいと思います。

 この事件は、栃木県さくら市で昨年二月に起こった殺人事件でありまして、自動車販売修理会社の社長、これは小林広という者ですけれども、その者が、奥さんを保険金目的で殺害いたしました。逮捕されましたこの小林は、留置人面会室で昨年八月、自殺をいたしまして、ほかの二名の実行犯は、ことしになって宇都宮地裁でそれぞれ懲役十七年、二十年の判決を受けております。

 これからがあれなんですが、ところが、殺された奥さんの次男、これは連れ子だったんですけれども、この次男が二〇〇四年の二月、この奥さんが殺された三年前の二月に自宅ベランダから転落して死亡して、小林が実は八千万も共済金を取得しているということがわかりまして、その奥さんの遺族は、この死因を事故死とした県警に再調査を求めております。この事案が殺人であった可能性というのは大変高いんではないかというふうに考えられますけれども、そこは警察の初動捜査に問題が残ります。

 ここで、七歳の子供に八千万の保険金を掛けていた、果たしてこんなことが許されるかと思うんですけれども、この点について、上限の引き下げとかいうようなことは検討していると聞いております。しかし、そもそもこういう小さな子供に保険金を掛ける、被保険者として保険を掛けるということが許されていいのかどうか。これは先ほども問題になりましたけれども、大変問題だというふうに私は思います。

 法制審でもいろいろ議論があったようでございますけれども、保険法案の中には、未成年者の死亡保険には一定の制限を設ける、こういうことは盛り込まれなかったわけであります。この法制審の審議を踏まえて議論をいたしました金融審議会の中のワーキンググループでは、何らかの対応を図るべきだ、こういう意見が大勢であったと聞いております。

 そこでお尋ねをいたしますけれども、今、金融庁あるいは業界ではこういう未成年者の保険についてはどのような検討がなされているのか、お聞かせをいただきたいと思います。

細溝政府参考人 金融審議会での審議を御紹介いたしますが、金融審議会におきましては、被保険者の同意を得ることができない未成年者に対する死亡保険、それらのうちのモラルリスクの高いものにつきまして、効果的なモラルリスク対策を実施すべきではないかといった観点から御議論いただきました。

 その結果でございますが、まず、内閣府令におきまして、保険会社が引受限度額及び引き受けに関する社内規則を定めるといったことを規定する、それを受けまして、次に業界及び各社におきまして適切な引受限度額を定めて引き受け体制を整備するといった御提言が行われたところでございます。

 これを踏まえまして、今後、具体的にどのような対応策を講ずるかということについて金融審議会においてさらに御議論いただくことになっておりますが、金融庁といたしましては、こうした御議論を踏まえまして、被保険者の保護が図られるように適切に対応してまいりたいと考えております。

細川委員 それは大体いつごろ結論が出るような、そんな検討でございますか。

細溝政府参考人 引き続き検討となったのも、すぐには結論が出せなかったということでございまして、今後早急に検討を開始したいと思っておりますが、その中の御審議のスケジュールでございますので、現時点で確たることは申し上げられません。できるだけ早く結論をいただきたいというふうに思っております。

細川委員 それでは、もう一つ事例を申し上げたいと思います。もちろん保険金殺人でございます。

 これは上申書殺人事件と呼ばれているものでありまして、後藤良次という死刑判決を受けた上告中の者が、みずから、別件で三件の殺人を手がけた、こういう上申書を出したということで、大変話題にもなった事件でございます。

 その上申した三件のうち一件が、保険金殺人ということで立件をされました。茨城県阿見町の室内装飾会社の社長を家族が殺害を依頼いたしまして、その家族はもちろん刑が今確定をいたしておりまして、今申し上げましたその上申をした後藤などは、今裁判が係属中でございます。

 この事件も、殺された社長の家族の依頼を受けまして、社長に大変濃度の高いウオツカを多量に飲ませまして、そして殺して約一億円の保険金をだまし取ったということですけれども、これもまた、この後藤という者の上申書がなければこの事件は全く発覚しなかったような事件でございます。

 先ほどのさくら市の次男の件、そしてこの阿見町の事件、ともに司法解剖は行われておりませんし、いわゆる刑事調査官の臨場もなくて、所轄の警察官の判断でそれぞれ事故死、病死ということになっております。

 これは、私がかねがね申し上げております死因究明の問題でありまして、保険金殺人では私は以前からも死因究明の不備をずっと指摘してまいりましたけれども、この委員会でも、昨年の時津風部屋の傷害致死事件で死因究明問題が大変大きな話題となりまして、この改善を求めるというような動きにもなってきております。刑事調査官の不足とか、あるいは法医学者の不足といった問題も話題になっております。

 ここでちょっと聞いておきますけれども、警察庁においでいただいておりますから、この事件、完全に誤認の検視、そしてさくら市の事件については保険金殺人の疑いが相当濃い、こういったところの問題を踏まえまして、現在、警察庁として、検視体制をどう改善していくのか、司法解剖率をどう上げていくのかといった取り組みについて、簡単にちょっと説明をお願いいたします。

小野政府参考人 お答え申し上げます。

 今、二件のお話がございましたが、確かに茨城の事案につきましては、死者の病歴や入院歴、死体の状況、家族の供述等々から、当時六十七歳の男性の死因を病死と判断し、結果的に殺人事件を見逃した事案でございます。

 警察庁におきましては、死体の取り扱いに当たりまして、個別の事案ごとに、死体の状況、現場の状況、関係者の供述、検案医師の意見等を慎重に検討し、犯罪性に多少なりとも疑いが残る場合は司法解剖をするよう、都道府県警察に対し指導してきたところでございます。

 今後とも、犯罪を見逃さないよう、適正な死体の取り扱いについて都道府県警察を指導してまいりたいと考えております。

 ただ、この問題、今後の改善ということになりますと、検視の専門官でございます刑事調査官を増強するということが一つ重要な点であろうと考えておりまして、この点については努力をしております。今年度におきましては、昨年度に比べまして刑事調査官を十三名増強しておりまして、全国で百六十名になっております。

 また、犯罪を見逃さないようにするためには解剖率を高めるということが有効であると認識しておりまして、今後とも、関係省庁とも連携をとりまして、そのための方策を検討してまいりたいと考えております。

細川委員 死因究明がおろそかになりますと、保険金殺人というのが後を絶たないだろうというふうに思います。

 保険金殺人というのをいろいろ調べておりますと一つのことに気づくわけなんですけれども、それは、一回目は事故とかあるいは自殺ということにされまして、二度目、三度目で保険金殺人というのが発覚をする、こういうことが実に多いわけなんです。

 さくら市のさっきの事件も二度目ですし、茨城の上申書事件の後藤なんというのは何度やっているかわからない、そんな事件でもございます。後藤というのは、三件上申して、さらにまだやったと供述をしているというようなことも新聞に報道されておりまして、本当に、何回も何回も保険金殺人をやるというような非常に悪質な事例です。

 例えば、福岡県の久留米でも看護師四人が保険金殺人をやったんですけれども、これもやはり初めは気がつかないで二件目で気がつく。それから、和歌山のカレー事件なんかも、過去に何度も保険金を詐取していた。昨年の長崎県の大村市で起こった元保護司の事件も、十数年前に殺人をしたのではないか、妻が転落死というようなことになってたくさんもらっていて、それでまた二回目、子供を殺して保険金を取ろうとした。

 こういうように、何回も繰り返して初めて発覚するということで、本当に、こういうことをぜひとも少なくさせなければいけない。

 こういうことで、私はいろいろとこれまでも死因究明の方はやってきたんですけれども、本当に、保険金殺人が実際にありながらやみの数字になっている、暗数になっているのではないかというふうに思っておりまして、これについてはしっかりやっていかなければいけないと思います。

 そこで、法案に戻りますが、五十八条で、被保険者が当該死亡保険契約の当事者以外の者である場合において、保険契約者または保険受取人が保険給付を行わせることを目的として故意に被保険者を死亡させようとしたときなどに、被保険者は保険契約者に対して当該死亡保険契約を解除することを請求することができるというような規定が置かれておりまして、保険金目的で殺害される危険を察知した被保険者が解除請求をできる、こういうような規定がございます。

 しかし、例えば私の埼玉県で、九五年から九九年にかけて二人を殺して一人に重傷を負わせたという本庄市での保険金殺人事件があるんです、これは死刑判決を受けながらまだ最高裁で争っている事件なんですけれども。この事件なんかでは、被保険者ががっちり被告人のところに組み込まれていて、殺されそうだから、殺されそうになったから契約を解除するだとか、とてもとてもそんなことができるような状態ではない、そういう場合だったんですね、この本庄事件なんていうのは。

 そういうことになりますと、殺されそうになったから契約の解除を契約者に請求ができるという、これは一体どういう意味があるのか、あるいはどういう手続を想定してこういう条文を置いたのか、説明をお願いしたいと思います。

倉吉政府参考人 今の委員の御指摘を伺って、非常に難しい問題だと思いました。

 被保険者が、そもそも保険金殺人を行おうとしている者に取り込まれていて、自分がまさか殺されるというようなことを思っていない、そういう前提であるということですね。

 もしそういう前提であれば、五十八条が働く余地はないということになりまして、むしろ第五十七条の重大事由による解除、保険会社の方がそういうことを察知して、保険会社の方から解除していく、それでいくしかないと思いますが、そうではなくてですか。

細川委員 質問がちょっとあれだったと思いますが、被保険者の方は、殺されるかもわからない、殺されそうだと思って保険を解除したら、保険契約していないから殺されなくなるわけですね。そのために契約を解除したいと契約者に言っても、そういう支配関係にあるような場合は言えないじゃないかということで、そういうようなときには、では、どういうふうな手続、どういうことを想定してこの規定がなされたのかということをお伺いしているのです。

倉吉政府参考人 五十八条の被保険者による解除請求、まずこの規定についてちょっと申し上げたいと思います。

 これは、被保険者は契約の当事者ではありませんので、したがって解除を請求することができる、こういう規定のたてつけになっております。

 これは、被保険者が保険契約者に対し、この契約を解除しろという請求をするわけですが、保険契約者が応じなければ訴訟になります。その解除の意思表示をせよという例の、講学上、意思表示にかわる裁判というものですが、その訴訟の中でこの五十八条の要件があるかどうかということが争われて、そこで決着をする、こういうことになるわけでございます。

 制度としてはこうせざるを得ないところでございまして、被保険者と保険契約者との間でいろいろなおかしなことが起こっている、事情の変更が起こっている、あるいは自分が殺されそうだ、そういったような事情が本当にあるのかというその要件は保険会社にはわからないことなんですね。それで、被保険者と保険契約者との間で争われる、五十八条のようなたてつけにしているわけです。

 したがって、被保険者の方が、例えば保険契約者が怖くて訴訟も起こせない、あるいは言っていけないということになれば、何らかの形でそれを保険会社の方に伝えてもらえれば、保険会社の方が五十七条に基づきまして重大事由だということで解除をする、こういうことになる思います。

細川委員 とても実効性があるような規定ではないというふうに私は判断しております。保険金殺人を防止する、あるいは避ける、そうさせないためにはいろいろな方策があるかとは思うんですけれども、なかなか難しい問題だというふうに思います。

 最後に、大臣、こういうモラルリスクをどのようにして下げていったらいいか。保険金殺人という本当に最も極悪非道な事件が、暗数、表面に出てきていない数も大変多いというふうに思いますけれども、これをなくすために、大臣の考え、決意をちょっとお聞かせいただきたいと思います。

鳩山国務大臣 凶悪な事件、殺人事件を減らす、なくすことは、政府あるいはすべての政治家、あるいは社会のすべての大きな責任であると思うわけであります。そういう中で、統計的な数字はわかりませんが、すべての殺人事件の中に、かなりの数の保険金殺人というものが現に存在をしているということはまことに恐ろしいことでありますので、この保険法案においてもできる限りモラルリスクを防止できるように努めたところでありますけれども、今先生がおっしゃったような懸念というものは、なかなか完全にぬぐい切れない部分があろうかと思います。

 私が森村誠一さんの小説を昔読んだ中にも何かそういう、要するに山谷の浮浪者等を、ごちそうしてみんな自分の会社の社員にして次々と取り込んで、そして、同意は求めたんでしょうけれども、結局は殺害して、保険金殺人をやるというような、もうちょっと複雑なストーリーですけれども、そういう小説を読んだ記憶がございまして、現に力関係、優劣関係がありますとなかなか厳しいものがあるなというのは、先生の御指摘のとおりだろうと思っております。

 ですが、私が日ごろから細川律夫先生を特に尊敬申し上げておりますのは、やはり先生の死因究明にかける情熱でございまして、いまだ検視官とか法医学が発達しない、あるいは専門の解剖医がふえないということで、行政解剖にしても司法解剖にしても、刑事手続と行政手続が行ったり来たりすることもあるわけですが、いまだにこの点が充実をしない。

 そのことによって、先生おっしゃったように、一人殺して、保険金殺人で金が入る、これが結局、死因究明がされないからわからない、二人目、三人目で初めてわかるというのは、仮に死因究明の能力が格段に進歩すれば最初で見つかったかもしれない。やはり、殺人事件というものを全く見逃してしまって、殺人であるのにこれを事故死だ、自殺だ、病死だと誤るなどということは治安対策上最低のことだ、こう思っております。

 尊敬する細川先生にますます御活躍いただいて、そういう面からも保険金殺人が行われないように努力をしていきたい、こう考えております。

細川委員 大臣の決意をお聞きしましたので、ぜひその決意どおりこれからやっていただきたいということを申し上げまして、私の質問は終わります。

 ありがとうございました。

下村委員長 次に、古本伸一郎君。

古本委員 おはようございます。民主党の古本伸一郎でございます。

 政府におかれましては、連日の御対応、大変皆様お疲れさまでございます。

 先日、閣法審査に当たりまして、学界それから業界、さらには消費者を代表するお立場で日弁連、それぞれの参考人の皆様から各般にわたります意見を拝聴いたしました。

 その中で、大変興味深くお伺いした言葉の中に、業界の皆様からは、保険会社と言った方がいいんでしょうか、保険商品というのは非常に公共性の高いシステムであるということがございました。同時に、支払いの迅速性に努めなければならない、これは時代の要請であるし、一連の不払い事案の深い反省に立ってそういうお話もいただいた、こう思っております。つまり、早く確実に保険金を受け取りたいという消費者の需要にこたえていくんだ、こういった社会的な使命についても言及がございました。

 他方、消費者を代表するお立場でいらっしゃる日弁連の皆様からは、依然として国民生活センターへのいろいろな相談の事案があったり、あるいは免責条項を背景に不払いの理由にしている案件がいまだなくならないんだ等々。

 これは、今議論がありましたとおり、細川筆頭がおっしゃっておられたように、本当にモラルリスクのところを排除しない限りは、それこそ大航海時代あるいはロンドンの大火だったでしょうか、それを契機に私たちの生活を支えるまさに転ばぬ先のつえとしての保険がその使命を果たせなくなる。

 ですから、今回恐らく保険法の議論に求められる最大のポイントは、そういった消費者の立場に立ったニーズを担保しながら、同時にこういったモラルリスク事案も排除していくことを通じて、本来の、十七世紀ですかに産声を上げたという保険商品に対する、社会の公器としての役割をより確固たるものにしていく、こういうことかと思うんです。

 その意味から、先般日弁連の方々からいただいた観点の中に、私なりの理解で大きく三つほどあるんです。一つに支払い時期の話でございまして、二つに重大事由の解除、それから同意に関連してございましたが、きょうは時間の関係もありますし、また、ぜひ論点をより明確にしたいという思いで、先般に引き続きまして、支払いの時期について、履行期の問題について、少しおさらいをしながら議論を深めたいと思うんです。

 先般、参考資料でお配りをさせていただいた最高裁の判例なんですが、改めて議論になったポイントをおさらいします。もう一度読み上げます。

 「当会社は、保険契約者または被保険者が第十七条の規定による手続をした日から三〇日以内に、保険金を支払います。ただし、当会社が、この期間内に必要な調査を終えることができないときは、これを終えた後、遅滞なく、保険金を支払います。」。

 これに対し、改めて確認ですが、最高裁は三十日という日にちの絶対的水準を、絶対量を是認したのか、三十日以内に保険金を払うと明示したことについて妥当性があると言ったのか。

 これはもう何度も御確認していますが、実はずばり言えば、日弁連の皆様は三十日という水準を示したんだという御主張なんですよ。ですから、三十日ということで相場を示したのならば、これは明らかに、今回の保険法の議論をする中で三十日ということも具体的に、そもそも保険法で縛るかどうかは別にして、なるほど三十日は絶対的水準なんだということを最高裁があわせて判断したのであれば、これは日弁連の皆様の御主張も妥当性があると私は思うんです。

 この三十日以内に保険金を支払いますという文言が、これはどこから読んだって日本語のわかる人ならそう読めるので、そういうことだということだけを判断したのか。ここは、恐らくこの後議論は参議院にも移っていきますから、大変議論の分かれ目になろうかと思いますので、改めて確認しておきたいと思います。

倉吉政府参考人 前回の議論の前提を少し踏まえてお話ししたいと思います。

 御指摘の平成九年の最高裁判決によれば、調査のために通常必要とされる合理的な範囲内で、損害発生後遅滞なく損害のてん補を受けるという被保険者の利益が実質的に害されないものであれば履行期の定めとして有効である、こう考えられると思います。したがって、必要な調査のための合理的な期間を超えても、保険者が遅滞の責任を負わないとするような履行期の定めは認められないことになりますけれども、判決は三十日を超える履行期を定めることを否定しているわけではない、このように考えております。

 ここから委員の御指摘の結論部分になりますが、この判決におきましては、ただいま委員が読み上げました約款のうち、調査を終えた後に支払いますというただし書きの部分を、これは文言が極めて抽象的であることなどを理由に支払い時期の約定と認めなかったために、結果的に、残った本文、すなわち三十日以内に保険金を支払いますという部分だけが履行期の定めとして解釈されたにすぎないものでありまして、したがって、三十日を超えて履行期を定めることを否定しているわけではない、このように承知しております。

古本委員 ということは、そのただし書き以降が余りにもできが悪い、これは不明確なただし書きなのでそれをまず排除した、結果として残った数字が三十日なので三十日という数字に妥当性を見出した、こういうことでいいんでしょうか。

倉吉政府参考人 御指摘のとおりでございます。

古本委員 ということは、実は、この三十日という数字の水準、二十九日なのか、三十一日なのか、何日がいいのかというこの絶対的水準は、恐らく事案ごとによって変わるでしょうし、当然に必要とされる調査の期間というものは、千差万別の保険商品があるわけでありまして、必ずしも絶対的な水準として最高裁が示したわけではない、こういうことでいいでしょうか。

倉吉政府参考人 その点についても、御指摘のとおりと考えております。

古本委員 そういう議論に立ちまして、もう少し具体的な話をしたいと思うんですが、現在話題となっています生命保険あるいは損害保険商品、それぞれのシェアを少し調べていただきました。これは、ざっくり言いまして、生命保険に関しましては、要するに個人、保険会社と個人、この契約の比率というのが件数ベースで大体六五%ぐらいだそうであります。これは、業界の「インシュアランス」というものに出ている数字というふうに承っております。他方、団体保険、保険会社対企業、こういう形が残りの約三割強ということになっております。

 前回の参考人の質疑の中で、ずばり五日以内に支払えていない案件というのはどのくらいあるんだと聞いたわけなんです。そうしたところ、実はもう九〇%は五日以内に払っていますと。これは、逆に払わないと、本当に商品競争していますから、A生命、B生命とあって、どっちがいいかというと、あそこの払いは悪いよなんていううわさが広がりますから、彼らも当然商売ですから、迅速性という意味では、結果として、もう払わざるを得ないという。つまり、残り一割なんです。

 これはおもしろい話なんですが、累次にわたりまして、消費者の立場に立っておられる方からも拝聴しているんですが、企業対企業ならまだいいよ、法務部もあるでしょうし、彼らに対する論戦にも対峙できるし、企業対企業ならいいけれども、大保険会社対消費者ということになると、本当に立場が違うんだと。これは、私もうなずけるんです。

 シェアでいきますと、実に個人保険の割合が約六十数%、約六割強、そのうちの九〇%が五日以内に支払っているということであれば、ありていに言えば、文句はないわけですよ、五日以内に払われているわけですから。つまり、残りの一割ですから、六割の一割ですから、百分率でいけば、実に全体の五%以下がいわゆる五日を超えるような事案になっているということが類推できるわけでございます。そうしますと、残りの、モラルリスクも絡んだ、あるいは告知義務違反、かつてはそういうことでありましたが、今回はたてつけでそれを直していただきますけれども、本当にケースとしていよいよ絞られてくる場合になってくると思うんですね。

 私は、これまでの一連の議論の中で少し抜け落ちているところをきょうちょっとやっておきたいと思うんです。

 そのときに、そもそも挙証責任、つまり偶発性といいますか、偶然性というんでしょうか、それでその事案が発生したのか、故意であるか、つまりモラルリスク事案なのかどうなのか。これというのは、損保と生保によって、それは生命保険というのと損害保険というのとはそれぞれ商品特性が違いますから、どちら側に挙証責任があるんだろうか。つまり、自殺はだめですよということになったならば、これは排除できますよね、いわゆる例の、命と引きかえに借金返せ、ああいうものを排除することですね。他方、放火かどうかというのは、これはまさに、挙証責任は保険会社側にあるのか、被保険者である、保険金をもらいたいと思っている人側にあるのか。

 こういう議論があるわけでありまして、そういう部分を実は順序立てて詰めていきますと、本当にこの三十日、五日というところへのこだわりと、あるいはそういうことを明示しなければ最高裁の判例に後退するんだという法曹の皆様からの御懸念の話と実態の話が、たとえ数%でもそういうことはきちっと排除していくんだ、これはもちろんでありますけれども、完璧というものは物事にはないわけでありますので、ぜひ確認したいのは、挙証責任というのは一体どちら側にあるのか、これを教えていただけますか。

倉吉政府参考人 実は、挙証責任の問題は非常に難しい問題でございまして、基本的には、約款で定められておりますので、約款の決め方によって、判例もそれに応じた判断をしております。特に、生命保険等々になりますと、一定の偶然の事故によって起こったものであることというのが最初に要件として掲げられていて、そしてそれから、免責事由として、故意によって起こされた事故については保険者は払わない、こうなっている。

 ところが、ぎりぎり詰めて考えると、偶然の事故ということと故意によったものかどうかというのは、裏返しになっている可能性があるんですね。だから、偶然の事故であるということを保険契約者の方が仮に立証しなければならないということになったら、そこは外形的にある程度のことをいうんだ、しかし、それが保険契約者の故意によるものだった、まさにモラルリスクそのものであったという、免責事由そのものの要件はやはり保険会社の方で負担するんだ、こういったような議論がされているという状況にございます。

 あとは、保険法案を提出している政府の立場としてお答えしたいと思いますが、保険法案における保険者の免責の規定、これは保険者が保険給付を行う責任を負わないこととなる事由を免責事由として規定しているわけでございます。このような規定の仕方をすることによって、保険給付請求権の発生原因については保険給付の請求者側が証明責任を負うけれども、免責事由に該当することについては保険者側が証明責任を負うことを明らかにしている、このように考えております。

 だから、実際に裏返しになりそうな、やや重なりそうなところに微妙な問題がございまして、それは外形的にまず請求者側が立証するんだ、しかし、いよいよこれが免責になるよというところは保険会社の方が立証するんだ、こういうたてつけになるのではないかと思われます。

古本委員 つまり、調査に必要な相当な期間というところが、恐らく今後の議論、ハウスが変わっても引き続いての議論の一つになるかと思うんですが、これはどちら側に挙証責任があるのかによって随分話が変わると思うんです。

 当然、損保会社が、これは放火の疑いがある、それを立証しなきゃいけないんだとなったら、しゃにむにやらなければいけませんよね、それは疑いがあるんですから、仮に警察当局も入っていたとしたならば。まさに、前回の最高裁の事案はそうでしたよね。ですから、私は、一律にその相当なる期間を日数で定めていく、しかも、保険法という基本法になる部分でやっていくということについては、依然として強い懸念を持っています。

 と同時に、損保の方のシェアを見てみますと、実は、企業対企業のシェアと企業対個人のシェアというのは業界としても発表されていないということを事前に承っておりますが、商品のイメージでいきますと、大体四割が自動車保険なんですね。それで、その残りの一割強が自賠責、そして火災保険が二割弱、傷害が一割強、その他は新種なんですね。ざっくり言いますと、身近な世界にある、この私たちの生活の安心を担保する、転ばぬ先のつえである損保でいきますと、この間の参考人の御意見によりますと、平均で十日だそうです、十日で支払っているそうです。

 ですから、どちらに挙証責任があるのか。どういう商品の特性になっているのか。当然、個人でなくて、企業対企業であれば、さまざまな保険料の値引きを条件にいろいろなことを織り込んでいるかもしれない。個人といったって、例えばバイオリンに保険を掛けている人がいらっしゃるように、本当にさまざまな損害保険がございますよね。だから、一概に言えない。

 だから、これは本当に、いよいよこの法案が成立した暁には、別途、ガイドラインといいますか、本当にあとは、きょういらっしゃっていますが、金融庁を中心とする各監督官庁にてしっかりやっていただきたいということなんですけれども、同時に、これは施行までの間に、当局も含めてこの議論については改めてしっかりやっていく必要があるんだろうというふうに思っております。

 その際に、あわせて確認をしておきたいのですが、少なくとも生命保険に関してでも、約三割強は企業対企業の保険商品になっているという実態をかんがみますと、実は、消費者契約法、これは当然消費者契約に関する民事ルールです、消費者契約法という枠と、あわせて同時に、当然保険業法という業法がございます。これは、業法を背景にした認可権を各省庁が持っておられる。それとこの保険法。この三つのそれぞれの法律を視野に入れたときに、消費者の立場に立って保護していくんだという観点は一体何法を軸に考えていくのか。

 他方、言うならば企業も消費者でありますから、大企業ならもう何があっても耐え忍べというのはいわば暴論でありまして、保険会社対企業というのも当然サプライヤーとカスタマーという関係があるわけですから、それぞれの法律に期待する役割ということについて少し網羅的に整理をしてみたいと思うのです。

 改めて、この保険法で想定をする消費者の保護という観点と、別途、そういった消費者契約法あるいは保険業法という観点もあるわけでありますので、それぞれの役割分担といいますか、それぞれ、今回立法された際にどういったことを期待しながら提案なさっているかということを、少し網羅的にお尋ねをしたいと思います。

倉吉政府参考人 保険法案は、あくまでも契約の基本ルールでございます。そもそも商法の中に書かれていたものを、共済も取り込むという形で、単行法として出すということですので、民法の契約ルールを原則として、それについて保険について特殊なものを入れていく。

 ただ、今回、消費者側と今委員おっしゃいましたが、保険契約者、被保険者を保護する規定ということを明確に設けまして、片面的強行規定というものも設けました。その意味では、消費者契約法にやや近いところが出ているということは言えるかもしれません。

 ただ、より抽象的に、消費者を広く保護していくんだ、いろいろな場面で消費者がこういう場合には被害を受けやすいんだ、そういう場面に対処していくのは消費者契約法でありまして、保険法案というのは、あくまでも保険契約の場面で、保険契約に特有の問題についてどう対処していくかということを決めていく、さらに、業法はそれより上の保険業を営む方々の監督をどうやっていくかということを決めていくということで、一応そういう形で整理はされるんだろうと思っております。

古本委員 今、少し各般に広がりますお尋ねをいたしましたが、要するに、保険法という法律の中で一体どこまで、参考人からもいただいた、お客様の早く確実に保険金を受け取りたいんだという一番のニーズにこたえていきたいという業界のお立場、それから消費者の立場に立てば、これは免責事由を背景に依然として払い渋る、そういったのが排除できないんだという声が、互いに背反し合っているわけでありまして、そういう状況の中で、私はこの保険法にむしろ期待をしたいと思いますし、と同時に、最高裁の判例を大いにその糧にしていただいた立法措置であるというところに、改めてきょうの議論を通じまして、最後に近づいてまいりましたので、少しおさらいをしたいというふうに思うのです。

 これは、改めて、被保険者である保険金を受け取りたい方、そういった方々が期待をされる日数なり、あるいはそういう相場観ということでいえば、これは一日も早くということになるのは当然でございます。でも一方で、免責条項あるいは解除条項あるいは片面的強行規定、それぞれいろいろな条件が入ってまいります。契約事でありますから入ってまいります。そうしたことによって消費者の皆様が大変不安になるということのないように、これはもうすぐれて制度の運用ということで、その場面に期待をしていくし、きちっとそれは監督もしていただくということになろうかと思いますが、きょう金融庁それから厚労、農水と来ていただいておりますけれども、それぞれから改めて、この保険法の成立を受けて、その後の監督に関しての御決意を伺いたいと思います。

三村政府参考人 今回、保険法案が成立しました後、各保険会社におきまして、保険法の規定に対応するために、必要に応じて適切に約款の内容を見直していくことが重要であると考えております。

 金融庁といたしましても、各社の取り組みを促していくとともに、約款の審査等に当たりまして、保険法の趣旨を踏まえ適切に対応してまいりたいと考えております。

今井政府参考人 JA共済におきましても、今回の保険法に対応いたしまして、適切に約款の内容を見直していくことは非常に重要であると考えておりまして、関係省庁ともよく連絡をとりましてその取り組みを促してまいりたいと考えております。

 また、その約款の改定とは別に、従来以上に共済金の支払いの迅速化がなされるよう、その業務の指導についても行ってまいりたいと考えております。

木内政府参考人 お答え申し上げます。

 生協の行います共済事業につきましては、保険会社の約款に相当するもの、共済事業規約と称しております、これは行政庁の認可を受けるということになっておるわけでございますが、この中において、履行時期等を適切に記載するよう、引き続き指導に努めてまいりたいと考えております。

 また、常日ごろの指導でございますが、本年三月に、共済事業向けの総合的な監督指針というのも定めたところでございます。この中で、契約締結時に契約概要をきちんとお知らせするですとか、クーリングオフなどの注意喚起情報をきちんとお知らせするといったようなことを確認するように定めたところでございます。

 いずれにいたしましても、また、今回のこの保険法案の内容、趣旨を踏まえまして、こうしたことでその適正化に努めてまいりたいと考えておるところでございます。

古本委員 消費者という立場に立てばそういうことなんですけれども、他方、新しい分野に対する、企業がいろいろなことをやっていこうと思うと、当然保険会社とその事業に対するリスクをとってもらえる保険というのを開発していかなきゃいけないわけでありますので、そういう将来の新しい保険契約の登場、発展を妨げない内容の法案になっているかということ、それはそうなっていない、こういうふうにお見受けしますので、あわせて注意を払っていくということだと思っています。

 最後にお尋ねしたいんですが、三十六条、これは当委員会でもう既に議論になっておろうかと思いますが、企業を排除するという条項があります。原発の保険ですとか航海の保険です。要するに、リスクの高いところについては、その片面的強行規定を排除するというふうになっております。

 これは、大企業対大企業というイメージばかり想定をしがちなんですが、例えばそういうベンチャー企業を初め、新規分野をやっていこうという方々も当然リスクをとっていかなきゃいけないわけでありますので、そういった方々、小規模な事業者でもリスクが大きな場合があるわけでありまして、何か大企業だから法務部があってちゃんと闘えるんだみたいな単純なことではなくて、少し未来に夢の持てる話を最後にお伺いして終わりたいと思いますが、御答弁をお願いします。

倉吉政府参考人 保険法案の三十六条で、企業保険については片面的強行規定の適用はないんだ、こうしております。

 最初に原子力であるとか航空であるとか大きいのばかりが挙がっているから、大きいところだけは外されるのか、こう思われるかもしれませんが、これは決してそういうわけではありませんで、企業における、ある損害保険、責任保険も含めてですが、それについてのリスクの特殊性に着目した規定でございます。

 したがいまして、ちょっと結論を急ぎますが、今御指摘のあった小規模の事業者に絞りまして、仮に小規模の事業者でありましても、いわゆるベンチャービジネスなどでは、一たん事故が発生すると巨大な損害が起こるということになります。その場合には、そういう損害についての情報というのは、むしろ保険契約者側だけが持っている、だから、そちらに対して片面的強行規定というわけにはいかない。

 それから、またさらに、小規模な事業者でありましても、最先端の分野の事業というものがございます。こういうものについては、リスクに関する情報が最先端であるだけに、最初から保険者側、保険会社側にはないわけであります。そういうものについては、むしろ保険契約者の方から自発的な告知を求める必要性が高いということになります。

 こういったことも踏まえまして、いわゆる企業保険と言われるものについては片面的強行規定を排除しているということでございます。

古本委員 時間が参りましたので終わりますが、ぜひ御議論にこれまで上がってきた観点を踏まえました運用になりますことを期待申し上げて、終わりたいと思います。

 大臣、またの機会にお願いしたいと思います。ありがとうございました。

下村委員長 次に、滝実君。

滝委員 無所属の滝実でございます。

 保険法の最後の質問者としてお許しをいただきまして、まことにありがとうございます。

 大体大きく分けて、税金の問題それから現物給付に関連する問題、そういう点からお尋ねをしてまいりたいと思います。

 今回のこの保険法の新しい制定によって、所得税法等税金の点については今までの制度を何ら変える必要はない、これが税務当局の見解のようでございます。なぜならば、既に保険商品として実務の上では先行している問題でございますから改めて税制上の特別な配慮は要らない、こういうことだろうと思うのでございます。

 そこで、そうはいっても実際の税の扱いについてはかなりわかりにくい点がありますので、その点の確認を含めて、以下、質問をさせていただきたいと思います。

 まず、保険法では、生命保険、損害保険それから第三分野の保険、こういうふうに三分類されることになったわけでございますけれども、税制上、それぞれ分野ごとに特殊な考え方があるのか、あるいは三分野を通じて考え方としては全く一緒なのか、その点からお答えをいただきたいと思います。

川北政府参考人 お答え申し上げます。

 委員から御指摘ございましたように、所得税法におきましては既に、保険料、保険金についての取り扱いにつきまして規定がございます。

 特に、そのうち保険金について、税制上の違いについて申し上げますと、所得税法におきましては、生命保険か損害保険かにかかわらず、自己が保険料を負担した保険契約に基づき支払いを受ける保険金のうち、身体の傷害等に基因して支払いを受けるものは非課税、それ以外のもの、例えば満期一時金につきましては原則として課税関係が生じるというふうになっております。

 この点につきましては、生命保険か損害保険かということではなくて、保険金の性格に基づいて規定されているところでございます。

滝委員 ありがとうございました。

 なぜこういうことを申し上げるかといいますと、所得税法の九条第一項第十六号という規定がありますね。そこに出てくるのは、要するに損害保険契約に基づく保険金は非課税というように分類されているわけです。

 ところが、所得税法の九条一項十六号を受けた所得税法施行令を見ますと、そこに急に生命保険の支給金というのが出てくるわけでございます。もちろん、本法の所得税法の十六号には、損害保険金の中に括弧して「(これらに類するものを含む。)」というただし書きはあるのでございますけれども、別に生命保険という言葉が出てくるわけじゃない。ところが、施行令になるといきなりそこに生命保険支給金というのが出てくるものですから、少なくても所得税法及びその施行令を見る限り、損害保険の場合にはいわば非課税である、ところが、生命保険も施行令になってくると一部は非課税の部分があるな、こういうようなことになるわけでございます。

 したがって、今、川北審議官がおっしゃいましたように、生命保険、損害保険それから第三分野の保険ごとにあるわけじゃなくて、保険金、受取金の性格によるんだろう、こういうふうなこととして今理解をさせてもらいました。

 そこで、次に、それでは、実際の所得税の確定申告の様式を見るともう少し細かく規定されていますので、その違いを改めて確認させていただきたいと思うのです。

 まず、生命保険の満期の保険金がありますね。満期の保険金についてはどういうふうに扱っているかというと、基本的には、確定申告の手引によりますと、一時金に分類しろ、こういうふうに書かれております。ところが、それでも契約が五年以下の生命保険については源泉分離課税だということに実務ではなっておるのでございますけれども、実際の確定申告の手引にはそれは載っていないですね。その辺のところも、ちょっとはっきりと確認しておきたいと思います。

荒井政府参考人 お答えいたします。

 一般論として申し上げれば、自己が保険料を負担した生命保険契約または損害保険契約に基づき満期保険金を受け取った場合には、所得税の課税上、一時所得の総収入金額として取り扱うこととなっております。

 また、源泉分離課税につきましては、生命保険契約または損害保険契約等で保険料等を一時に支払ういわゆる一時払い養老保険契約のうち、保険契約が五年以下のもの、それから保険契約が五年超のものでその保険期間の初日から五年以内に解約されたものに基づきます差益につきましては、二〇%の税率による源泉徴収のみで課税関係が完結することとされているところでございます。

滝委員 要するに、短期の保険金については、金融商品としてこれは別だ、こういう考え方が今の御答弁だと思います。

 次に、今度は個人年金です。この個人年金は、当然のことながら、普通の公的年金と同じに合わせれば雑所得、こうなると思うのです。これについての計算方法というのは公的年金の場合とは違うと思うのですけれども、その辺のところを御答弁いただきたいと思います。

荒井政府参考人 お答えいたします。

 一般論として申し上げれば、自己が保険料を負担しました生命保険契約または損害保険契約に基づき年金を受け取った場合には、所得税の課税上、雑所得の総収入金額として取り扱うこととなっております。

滝委員 ただいまの雑所得それから一時所得、これはいずれも受け取った保険金の額からこれまで振り込んだ保険の掛金を引いたもの、一時所得の場合にはさらにそれから五十万円を引くのですけれども、雑所得の場合も五十万円さらに引くのでしょうか。

荒井政府参考人 お答えいたします。

 満期保険金を受け取った場合の一時所得の取り扱いですが、その場合には、満期保険金の総額から既に払い込まれた保険料を引きまして、その後にさらに特別控除の五十万円を引く、それが一時所得の金額という形になります。

 一方、先ほどお話ししました、年金として受け取った場合には、その年に支払いを受けた年金からその年金の額に対応する保険料または掛金を引いたものが雑所得の金額となります。

滝委員 とにかく、そういうことで、この二つの似たようなものを比較するだけでも少し違った扱いが出ているということだろうと思います。

 そこで、三番目ですけれども、それでは、介護年金あるいは介護一時金は所得税法九条の十六号によって非課税、こういうふうになるわけでございますけれども、無条件に非課税になるんでしょうか。

荒井政府参考人 お答えいたします。

 一般論として申し上げれば、損害保険契約に基づく保険金または生命保険契約に基づく給付金で、身体の傷害もしくは疾病等に基因して支払いを受けるものにつきましては所得税は課税されないこととなっております。これは所得税法の九条十六号の規定でございます。

 一定の要介護状態になった場合に、年金方式または一時金方式により保険金を受け取ったときについても、この規定に基づいて、所得税は課税されないということになります。

 ただし、介護保険契約に基づいて満期保険金や解約返戻金を受け取った場合には、所得税の課税上、先ほど申し上げましたように、原則、一時所得の総収入金額として取り扱われるという形になります。

滝委員 個別の問題で、最後、四番目に、傷害疾病定額保険の保険金、これも今の分類でいけば所得税法の九条十六号に該当しますので当然非課税、こうなるわけですね。

 そこで、問題になるのは、先ほど三番目に挙げました介護年金でございます。

 介護年金の実際の保険会社の宣伝の資料を見ますと、こういうふうに書いてあるんですね。公的な政府の介護保険制度ができたけれども、当然のことながら個人負担が一割ある。この一割の負担を捻出するためには、介護保険に全面的に頼るわけにいきませんから、介護年金に入ったらいいんですよ、こういうふうな趣旨の説明が大体なされていると思います。

 一割の介護負担というのはどのぐらいかかるかというと、大体月々三万円から五万円ぐらい、こういうふうに考えられるんですね。そのほかに食費を考えると、それも同じような額になるから、相当な額になります。したがって、一口幾ら、二口幾ら、こういうふうに普通は計算をしていると思います。

 そこで、介護保険料、政府の介護保険の一割負担の部分を介護年金という格好で裏づけるのはもっともだと思いますし、それに対して非課税措置を講じるのは、これは保険事故というか、そういうものとしてとらえた場合に非課税というのはわかるのですけれども、問題になるのは食費ですね。食費の部分までこの介護年金の計算対象にしているような保険の場合に、その介護年金を非課税とするというのは一体全体いかなる理由に基づくのかよくわからないのです。

 要するに、病気という保険事故のために特別なお金がかかるものについて保険で裏押しをする、それは非課税だというのはわかるのですけれども、食費になると完全な生計費なんですね。生計費、日常、病気にならなくても、介護としてケアを受けなくても、食費は負担しなきゃいかぬ。

 それについて、この保険でもって非課税措置をするというのは一体全体いかなる理由なのかということを御説明いただきたいと思います。

川北政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど来御指摘の所得税法の九条におきましては、所得のうち、政策的な要請によるもののほか、実費弁償的なものですとか損害賠償金等について非課税にしてございます。

 そこの損害賠償金と並びまして、損害保険契約に基づく保険金ですとか、生命保険契約に基づく給付金で、身体の傷害等に基づくものについて支払いを受けるものも非課税とするということになっていることは、先ほど御説明したとおりでございます。

 この非課税の趣旨につきましては、納税者の担税力に配慮する観点から非課税とするという取り扱いだというふうに理解しております。

滝委員 納税者の担税力に注目して非課税とするというのは、これはちょっと粗っぽい話ではないでしょうか。それはちょっと理屈にはならないと思うのです。

 もともと、この保険をめぐる税金の基本的な考え方というのは、これは教科書のどこにも書いていないわけでございますけれども、先ほど申しましたように、個人が単純に所得を確保するための保険金は、普通の税金と同じように扱いますから、一時所得なりあるいは雑所得でもって税法上扱いますよ、しかし、病気とかそういう事故に関連する部分は、これは新たに所得を得るのじゃなくていわば損害の補てんですから非課税なり特別な扱いをしますよ、恐らくそういう考え方が背景にあるんだろうと思うのですね。

 したがって、同じ介護年金でも、単純に食費の部分まで入り込むようなものについて非課税とするのは税金の考え方としては非常に粗っぽい。特に所得税とか地方税を通じてでございますけれども、かなり細かい配慮をしている税金にしては粗っぽいのじゃないだろうかな。ここのところは少し問題がある。

 それから、もう一つ大きな問題になるのは、例えば特約つき生命保険がありますね、死亡したときに一千万円の保険。ところが、これについて、仮にがんであるというふうに病理学的に認定された場合にはその段階で一千万円払います、あるいは重大な心臓病となった場合にも一千万円払います、脳梗塞を起こした場合にも一千万円払います、いわゆる日本に充満している三大疾病のうち一つでもそれが判定されれば一千万円を払いますというのは、これはどう見ても今の税制の建前では非課税だと思うのでございますけれども、その辺のところを仮に非課税とする理由というのはどういう理由なのかを御説明いただきたいと思います。

川北政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど来御説明させていただいておりますけれども、所得税法の九条に基づきまして非課税となっている保険金の取り扱いがございます。

 それにつきましては、保険事故を基因といたしまして支払われる保険金につきまして、そうした非課税の取り扱いをしているということでございます。

滝委員 私も実はこの保険に入っているものですから、これをぎりぎりやられると私は個人的に困るのですけれども、税制の立場からすると理屈がないように思うのです。無条件でこういうものを非課税に扱うというのは、いかがなものだろうか。

 何かほかの理由があるというならわかりますよ。例えば、保険でも、公的保険の給付は本来税金をかけるべきものなんです。例えば、医療保険、介護保険がありますね。その保険給付は本来、金銭に換算すれば、基本的に税金をかけていいんですよ。ただ、社会保険料ですから、いわば社会保険という格好で税金を免除しているというふうに理解するのが恐らく税金の考え方だろうと思うのですね。要するに、医療保険の医療給付それから介護保険の介護の給付、これは本来は、金銭に換算できるわけですから、当然税金をかけてもいい。ところが、それは政策上、税金の対象にしないというだけなんですね。

 ところが、今言ったように、がんというふうに認定されただけで一千万円が入るというのは、これはどう見てもよくわからない。仮に実際の治療費を計算して補てんをするなら、また話は別なんですよ。ただ、がんと病理学上認定しただけで一千万円の保険金を払うというのは、どうもよくわからない。

 その辺のところは、私は、こういう機会に、一般的に保険が広がっているだけに、もうちょっときめ細かく検討すべき課題だろうというふうに感じますので、その検討について御要望だけ申し上げておきたいと思います。

 次に、厚生省の審議官が来ておりますので、お尋ねしたいと思うのです。

 先ほど申しましたように、例えば介護年金の場合には、介護の一割は個人が負担をする、したがって、その一割分に着目して、介護年金という格好で用意しておくというふうな理屈があるわけでございます。そういうような格好で設定されている部分はいいんですけれども、例えば先ほど申しましたがん保険のような格好で、医療保険の対象になるかならないかは別として、がんだからといって一千万円出ちゃうということについて、厚生労働省として、医療福祉、厚生福祉という観点から見てどういうふうな感想をお持ちになるのか、お尋ねしておきたいと思います。

木内政府参考人 お答え申し上げます。

 民間保険でございます第三分野の保険、これについては保険料控除の対象となっておるわけでございますが、これは保険契約者の自助努力を支援するという考え方によるものであるというふうに承知しております。

 一方、公的保険でございます介護保険ですとか医療保険があるわけでございますが、先生御指摘のとおり、これは強制加入の社会保険制度ということでございまして、この社会保険制度、共助のシステムとして、国民の安心を支えるセーフティーネットの大きな柱であるというふうに考えております。

 したがいまして、こうした自助努力、それからまた共助、さらには措置などの公助、こういったものを組み合わせることによりまして、全体として国民の安心を支えるセーフティーネットとしての機能を果たしていくことが必要ではないかと考えております。

 したがいまして、民間保険でございます第三分野の保険も、そういった趣旨から、その存在意義というものを私どもは評価させていただいているところでございます。

滝委員 先ほど来申し上げておりますように、介護保険の個人負担の部分を保険で裏押しするというのは理屈が通っているし、通っていなくても保険としては成立すると思うのですね。

 ただ、問題になるのは、それを税制上どう扱うかというのはまた別問題ですが、厚生省として、こういうものが一般的な制度として存在することについて何も疑問を感じないというのも私は何かおかしな感じがするんです。要するに、片や介護保険の負担金が払えない、あるいは医療保険の負担金が払えない、そういう社会の中で、一般的に、いろいろな保険が片や成長産業としてあるということ自体が何となく不思議な感じがするものですから、今お尋ねをいたしました。

 最後に、法務省にお尋ねしたいと思うのです。

 先ごろの参考人質疑でも、山下先生が、現物給付は検討したけれどもなかなか難しい、こういうふうにおっしゃいました。おっしゃいましたけれども、現物給付をやっているのは医療保険、介護保険。公的保険は現物給付しているんですね。仮に民間がそういうものに倣って現物給付の民間保険をやった場合に、要するに介護保険や医療保険のすき間をねらってやるということはあり得ると思うのです、医療とか介護に限らず。

 ですから、法制審で、取り出し方、規制の仕方が難しいからやりませんというのは何となく理解に苦しむところがあるのでございますけれども、その辺のところはいかがなものでありましょうか。

 特に、今回共済保険を入れたんですね。共済は、もともとイギリスなんかでは何と言っているかというと、フレンドリーソサエティーなんですよ。要するに、極めて友好的な顔見知りの社会でもって成り立つのが共済なんですね。それを入れたんですから、当然、それは単純に金銭に換算せずに、サービスとしての保険給付があってもよさそうな感じはするんですけれども、その辺のところも含めてお答えをいただきたいと思います。

倉吉政府参考人 ただいま御指摘の問題は非常に難しい問題でございまして、最初に正直に申し上げますが、これは理屈の問題ではありませんで、現実論でございます。

 前回の参考人の質疑のときに山下保険法部会長が話しておりましたが、そのとおりでして、確かに今、高齢化社会でございます。この中で、生命保険や傷害疾病保険に、例えば介護サービスをするとか、老人ホームの入居条件をきちっと整備してそこに入れる、こういった現物給付を行うということは、まさに時代の要請に合ったものと言うことができるだろうと思います。

 したがいまして、保険法におきましても、こういったいわゆる現物給付を含むものとして規定すべきではないかという議論が法制審の保険法部会のときにもあったわけであります。現実にも、これが多様なニーズにこたえることになるし、何よりも、そういう類型について、保険契約者等を保護するための保険法の規律を及ぼすのが適当である、こういった積極論が相当数ございました。

 しかしながら、最終的には、保険契約者等の保護のための監督規制がこの分野では十分に整備されていないから見送るべきであるという慎重論が根強く、見送られた、こういう経緯でございます。

 委員の御指摘は非常によくわかるわけでありますけれども、何といっても、何十年か先、インフレもあります、その先で最初に契約をしていただけの介護施設がきちっと履行されるだろうかということは、確かに不安は残るわけであります。

 保険法の方でこれを取り込むことをやるとすれば、一般的なルールとせざるを得ません。一般的なルールを示すと、現在監督規制が十分でないものについて、いわばこれが解禁されたんだ、突然行えるようになったんだという誤ったアナウンス効果を与えないか、山下参考人もアナウンス効果という言葉を使っておりましたが、そういうところがどうしても危惧が残るということで、見送ったということでございます。

滝委員 これは通告してありませんけれども、最後に、法務大臣から御感想をいただきたいと思うのです。

 基本的に、公的な保険制度、あるいは民間保険制度も含めて、やはり保険というのは、これからもいろいろな新しいものが出てくるだろうと思うのですね。その中で、やはりそういうふうな金銭で処理できない分野があると思いますので、そういう点、あるいは今までの民間保険、公的保険を支えるものとして、現物給付的なサービス保険というものがあり得るというふうに私はヨーロッパの状況を見ていると感じるものですから、ぜひ法務大臣としてそういう問題について御検討いただくようにお願いを申し上げ、御感想をいただきたいと思います。

鳩山国務大臣 先ほど申し上げましたように、今回、商法から保険法を独立させて、保険に関する基本的な法律として存在を始めるわけでございますので、これは時代に合うように、また一般的に言えば消費者、保険契約者、被保険者に有利になるようにこれからもつくりかえていかなければならないと思うわけでございます。

 今の現物給付の問題については、民事局長が御答弁申し上げたところでございまして、今回の保険法では、生命保険契約や傷害疾病定額保険契約には、金銭の授受のみであって、現物給付を認めないといたしておりますが、それは決して現物給付を含む保険契約が無効だと言っているわけでもありませんし、禁じているわけでもありません。保険会社がそういう商品を売ることは一向に構わないわけでありましょう。

 将来、また社会の事情が変化していく中で、滝先生の御高説をこれから取り込んでいくことも十分にあろうかと思います。

滝委員 ありがとうございました。終わります。

下村委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

下村委員長 これより両案を一括して討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 まず、内閣提出、保険法案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

下村委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 次に、内閣提出、保険法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

下村委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

下村委員長 この際、ただいま議決いたしました両案に対し、倉田雅年君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党及び社会民主党・市民連合の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。倉田雅年君。

倉田委員 ただいま議題となりました附帯決議案について、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。

    保険法案及び保険法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案に対する附帯決議(案)

  政府及び関係者は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。

 一 保険契約が国民にとって公共性の高い重要な仕組みであることに鑑み、本法の立法趣旨や本法で新設された制度の内容について、保険契約者等の保護の視点から国民への周知徹底を図ること。

 二 本法が、保険契約、共済契約等の契約に関する規律を定める法であって、組織法や監督法の一元化を図るものではないことを確認すること。

 三 告知義務の質問応答義務への転換や告知妨害に関する規定の新設により、告知義務違反を理由とする不当な保険金の不払いの防止が期待されていることを踏まえ、改正の趣旨に反しないよう、保険契約者等に分かりやすく、必要事項を明確にした告知書の作成など、告知制度の一層の充実を図ること。

 四 保険給付の履行期については、保険給付を行うために必要な調査事項を例示するなどして確認を要する事項に関して調査が遅滞なく行われ、保険契約者等の保護に遺漏のないよう、約款の作成、認可等に当たり十分に留意すること。

 五 重大事由による解除については、保険者が解除権を濫用することのないよう、解除事由を明確にするなど約款の作成、認可等に当たり本法の趣旨に沿い十分に留意すること。

 六 未成年者を被保険者とする死亡保険契約については、未成年者の保護を図る観点から適切な保険契約の引受けがされるよう、特に配慮すること。

 七 雇用者が保険金受取人となる団体生命保険契約については、被保険者となる被用者からの同意の取得に際しては当該被用者が、また保険給付の履行を行うに際してはその家族が、保険金受取人や保険金の額等の契約の内容を認識できるよう努めること。

以上でございます。

 よろしくお願いいたします。

下村委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

下村委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。鳩山法務大臣。

鳩山国務大臣 ただいま可決されました附帯決議でございますが、私、七項目よく読ませていただいて、今また倉田先生の読み上げを聞かせていただいて、恐らく、保険法を可決いただきましたけれども、一から七番のことがもしいいかげんに扱われてきちんとできないということになりますと、この法律の存在理由の過半が失われるような思いがいたしますので、重く受けとめて、適切に対処してまいりたいと思います。

    ―――――――――――――

下村委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

下村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

下村委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時九分散会


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