衆議院

メインへスキップ



第2号 平成21年3月11日(水曜日)

会議録本文へ
平成二十一年三月十一日(水曜日)

    午前九時五分開議

 出席委員

   委員長 山本 幸三君

   理事 大前 繁雄君 理事 桜井 郁三君

   理事 塩崎 恭久君 理事 棚橋 泰文君

   理事 加藤 公一君 理事 細川 律夫君

   理事 大口 善徳君

      赤池 誠章君    稲田 朋美君

      近江屋信広君    河井 克行君

      木村 隆秀君    笹川  堯君

      清水鴻一郎君    杉浦 正健君

      平  将明君    長勢 甚遠君

      萩山 教嚴君    早川 忠孝君

      武藤 容治君    森山 眞弓君

      矢野 隆司君   山本ともひろ君

      石関 貴史君    河村たかし君

      中井  洽君    古本伸一郎君

      山田 正彦君    神崎 武法君

      保坂 展人君    滝   実君

    …………………………………

   法務大臣         森  英介君

   法務副大臣        佐藤 剛男君

   文部科学副大臣      山内 俊夫君

   法務大臣政務官      早川 忠孝君

   最高裁判所事務総局人事局長            大谷 直人君

   最高裁判所事務総局民事局長            小泉 博嗣君

   最高裁判所事務総局刑事局長            小川 正持君

   最高裁判所事務総局家庭局長            二本松利忠君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  河合  潔君

   政府参考人

   (警察庁刑事局組織犯罪対策部長)         宮本 和夫君

   政府参考人

   (警察庁交通局長)    東川  一君

   政府参考人

   (総務省情報流通行政局郵政行政部長)       吉良 裕臣君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          深山 卓也君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    倉吉  敬君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    大野恒太郎君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    尾崎 道明君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    坂井 文雄君

   政府参考人

   (法務省人権擁護局長)  富田 善範君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  西川 克行君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 石井 正文君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 道盛大志郎君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           前川 喜平君

   政府参考人

   (文化庁文化財部長)   高杉 重夫君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           中尾 昭弘君

   政府参考人

   (防衛省防衛参事官)   枡田 一彦君

   参考人

   (日本郵政株式会社専務執行役)          米澤 友宏君

   参考人

   (日本郵政株式会社執行役)            清水 弘之君

   法務委員会専門員     佐藤  治君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十一日

 辞任         補欠選任

  柳本 卓治君     山本ともひろ君

同日

 辞任         補欠選任

  山本ともひろ君    柳本 卓治君

    ―――――――――――――

三月十一日

 国籍選択制度の廃止に関する請願(丸谷佳織君紹介)(第八九二号)

 成人の重国籍容認に関する請願(丸谷佳織君紹介)(第八九三号)

 離婚後の共同親権・両親による共同での養育を実現する法整備に関する請願(下村博文君紹介)(第八九四号)

 同(泉健太君紹介)(第九〇八号)

 同(枝野幸男君紹介)(第九四二号)

 同(市村浩一郎君紹介)(第九七三号)

 同(小沢鋭仁君紹介)(第九七四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内閣提出第一七号)

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

山本委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、参考人として日本郵政株式会社専務執行役米澤友宏君、日本郵政株式会社執行役清水弘之君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣官房内閣参事官河合潔君、警察庁刑事局組織犯罪対策部長宮本和夫君、警察庁交通局長東川一君、総務省情報流通行政局郵政行政部長吉良裕臣君、法務省大臣官房司法法制部長深山卓也君、法務省民事局長倉吉敬君、法務省刑事局長大野恒太郎君、法務省矯正局長尾崎道明君、法務省保護局長坂井文雄君、法務省人権擁護局長富田善範君、法務省入国管理局長西川克行君、外務省大臣官房参事官石井正文君、財務省大臣官房審議官道盛大志郎君、文部科学省大臣官房審議官前川喜平君、文化庁文化財部長高杉重夫君、厚生労働省大臣官房審議官中尾昭弘君、防衛省防衛参事官枡田一彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山本委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局大谷人事局長、小泉民事局長、小川刑事局長及び二本松家庭局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。赤池誠章君。

赤池委員 自由民主党の赤池誠章です。

 法務行政は、共同体としての秩序を維持していくという、国家国民にとって大変重要な職務であります。

 昨日、森法務大臣は所信表明の中で、「司法は常に国民の視点に立って、その常識とともになければならない」「常識の通用する法務行政を着実に行っていく」との覚悟を表明なさいました。まさに至言、そのとおりであり、立法府の一員として、私も微力ではありますが力を尽くしてまいりたいと存じます。

 そのような中で、国民の視点、常識が通用する、そんな法務行政の中で、きょうは幾つかの懸念について御質問をさせていただきたいと思います。

 その懸念に共通しているというのは、世界百九十三カ国の多くの国々の中で、私たちのこの日本というのは、一番歴史が古くて長く続いた国であります。しかし、残念ながら、自分さえよければいいとか、今さえよければいいとか、人様にわからなければいいというような考え方が横行をしてしまっているのではないかということであります。

 特に、私たち政治家というものは、国民代表として法律をつくり、そして国家を守る中心的な役割を担っているわけであります。だからこそ、法をつくる者、法を犯すべからずと言われており、まさに法治国家の大前提となっているわけであります。

 その一方で、絶対権力は絶対腐敗するとも言われており、戦後、幾つかの疑獄事件が起こるたびに国民の政治不信が広がり、そのたびごとに政治改革が実行されてきたわけであります。その一連の改革を主導した中心人物が小沢一郎現民主党代表でありました。

 東京地検特捜部は、平成二十一年三月三日に、小沢一郎民主党代表公設秘書らを政治資金規正法違反で逮捕いたしました。これに対して、小沢民主党代表は記者会見の場で、このようなこの種の問題で今まで逮捕、強制捜査というやり方をした例は全くなかった、今回の検察の強制捜査は異常な手法と言い、衆議院選挙前のこの時期での逮捕は不公正な国家権力、検察権力の行使と、記者会見で批判を展開しております。

 それに対して、森法務大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

森国務大臣 検察当局においては、常に法と証拠に基づいて、不偏不党かつ厳正公平を旨として、その捜査の対象がどなたであっても、刑事事件として取り上げるべきものがあればこれを取り上げて、適切に対処するものと承知しております。

 いろいろなお話もあったようでございますけれども、法務大臣たる私といたしましては、検察に全幅の信頼を置いておりまして、個別の事件の捜査や処理について検察を指揮することは毛頭考えておりません。今回の事件に関しても、指揮権を行使したことは一切ないということを断言申し上げます。

赤池委員 小沢民主党代表が言っているように、今まで政治資金規正法で逮捕や強制捜査がなかったんでしょうか。その有無、そして、あれば、具体的な事例が挙げられるのであれば教えていただきたいと思いますし、選挙前であるから政治的意図を持って検察が独自捜査を展開するものかどうか、改めて法務当局の見解をお伺いしたいと思います。

大野政府参考人 政治資金規正法違反事件についてのお尋ねでありますけれども、法務省が把握している事例の中でも、これまで、収支報告書の虚偽記入の罪等で被疑者が逮捕され、起訴がなされた事案が複数ございます。

 例えば、政党支部の会計責任者が、市長らと共謀の上、実際には市長の資金管理団体において会社からの寄附の受領の禁止に違反して会社から寄附を受けたにもかかわらず、市長の資金管理団体の収支報告書にはその寄附を除外するなど虚偽記入し、一方で、政党支部の収支報告書に会社からの寄附があった旨虚偽記入するというような事件がございました。あるいは、市長の政治団体の会計責任者が収支報告書に虚偽の記入をしたという事件もございます。県会議員の政治団体の会計責任者が、ほかの者と共謀の上、収支報告書に虚偽の記入をしたという事件もございます。さらに、知事の政治団体の資金管理を統括する者が収支報告書に虚偽の記入をしたという事実もございます。

 こうした今申し上げた事例におきましては、いずれも、その会計責任者等が逮捕され、その後有罪が確定したものと承知しております。

赤池委員 今、大臣また法務当局からの御見解、お話を聞かせていただきました。そういう面では、小沢民主党代表の発言がいかに間違っていたかということがよくわかったわけであります。

 小沢民主党代表初め民主党執行部の批判の根拠となっているのは、検察への基本的な認識だと思うんですね。それは、検察というのは行政組織の一つであり、時の内閣や政権与党の意向、つまり都合によってどうとでもなるものであるという考えだと思うんですね。

 そういう面では、検察庁とはそもそもどういう組織であるのか、検察の独立性、特に特捜部というものが今回タッチをしているわけでありますが、改めて法務当局の見解をお伺いしたいと思います。

大野政府参考人 最初に、検察庁の位置づけにつきまして御説明を申し上げます。

 検察庁は、検察庁法一条によりまして、検察官の事務を統括するところと規定されております。各省を初めとする一般の行政機関の場合には、基本的にその長たる大臣が所掌事務に関して有する権限をその職員が分掌し、あるいは補助していると言われておりますのに対しまして、検察庁の場合は、個々の検察官が法により定められた事務を取り扱う権限を有する、いわゆる独任制の官庁とされておりまして、検察庁は、そうした権限を有する個々の検察官が行う事務を統括するところとされているわけであります。そして、国家行政組織法上は、同法八条の三の規定する特別の機関として法務省に置かれることとされております。

 このように、検察庁につきましてほかの行政機関と異なる位置づけがされておりますのは、検察官が有する権限であります検察権は、その行使が司法権行使の前提となるために、司法権と密接不可分な関係にあり、司法権の独立を確保し、刑事司法の公正を期するためには、検察権の独立についても配慮を要すると考えられたからであると認識しております。

 この関係で重要なのが、法務大臣の指揮権との関係であります。検察はもとより行政機関でありますから、法務大臣の管理のもとにあるわけであります。しかし、検察庁法十四条は、検察権行使に関する法務大臣の一般的な指揮監督権は規定しているわけでありますけれども、同時に、個々の事件の取り調べや処分については検事総長のみを指揮することができるというように定めているわけであります。

 その趣旨は、具体的な事件の処理に関する検察権行使のあり方が、先ほど申し上げましたような司法権の独立や刑事司法の公正と密接に関係していることにかんがみまして、法務大臣の指揮権に一定の制約を加え、個々の検察官に対して直接の指揮はなし得ないという仕組みにしたものでございます。

 このような仕組みにおきまして、検察権が行政権に属することによる法務大臣の責任と検察権の独立性の要請との調和が図られているというように理解しているところでございます。

 委員の御質問の中にございました特別捜査部、特捜部でありますけれども、これは、法務省訓令であります検察庁事務章程によりまして、東京、大阪、名古屋の三つの地方検察庁に特別捜査部が置かれております。そして、財政経済関係事件それから検事正があらかじめ指定する事件等につきまして、その捜査や処分の決定に関する事務を所管することとされておりまして、いわゆる独自捜査等によって汚職、企業犯罪、脱税事件等の捜査を行っているものと承知しております。

赤池委員 戦前は、いわゆる検事局というのが、裁判所の一部局ではないということなんですが、裁判所に附置されていたということでもありまして、今法務当局の説明があったとおり、そういう面での司法と行政の中間、まさに独立性があればこそ公益の代表者としての役割を担っているということではないかということであります。そういう面では、今回の小沢民主党代表の批判というのは全くそういった認識を欠いているということで不穏当きわまりないものでありますし、野党の中には、検事総長を喚問するという、司法府へのとんでもない挑戦ということではないのかなというふうに感じております。

 そういう面では、今回の一連の事件というのは、すべての検察官の正当な行為がどうかというのは、これは最終的には裁判所で判断されることでありますが、私たち政治家が考えなければならないのは、私自身、個人の法的な正当性という意味ではなくて、国民さらに国家に対しての影響、いわゆる政治責任ではないかというふうに思っております。

 世界的な大不況の中で多くの国民が苦境に陥っているときに、国民代表である政治家が違法行為をしたのかどうか、その中で、法律や予算、最も大事なものを議論せずに一体何をやっているのかというような国民からの視点、常識からの批判というものは大変大きいものがあるのではないかというふうに感じております。これは与野党、党派を超えて深刻に受けとめなければならない点だと思っておりますし、そういう面では、今回は、リーダーである政治家が腐敗し信頼されなくなったらまさに国家そのものが崩壊しかねない、そのことを、私自身、政治家の一人として自戒とともに恐れるものであります。

 次の質問に移りたいと思いますが、前回も質問をさせていただきました裁判員制度の点であります。

 今回、司法制度改革の大きな柱の一つということで、五年間の周知期間を経ていよいよ本年五月二十一日から始まるわけでありますが、昨年末には、全国各地約三十万人の方々に裁判員の候補者通知が行われております。最高裁のコールセンターには問い合わせが多数寄せられているということでありますので、候補者になった国民からの反応について、最高裁の方から教えていただきたいと思います。

小川最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 昨年十一月の二十八日でございますが、全国で二十九万五千二十七人の方に裁判員名簿記載通知を送付させていただいたところでございます。名簿に登録された方からのお問い合わせに対しましては、十一月の二十九日から本年の一月三十一日までの間、最高裁の専用のコールセンターを設置して対応をさせていただいたところでございます。

 コールセンターの運用状況の概要を御紹介いたしますと、総受電数は約三万三千九百四十本でございました。これは、名簿記載通知を発送させていただいた方の約一一・五%の方からコールセンターにお電話をいただいたということになります。

 この内訳ですが、九八%、約三万三千二百十本の電話が相談と問い合わせです。それから、二%、約七百三十本、これが苦情その他となっております。

 相談、問い合わせの内容でございますが、おおよそ半数が辞退事由に関するもので、具体的には、どのような場合に辞退することができるのかという相談等が最も多く寄せられました。これに続くものとしては、個別的な辞退事由に関する相談等が多数寄せられましたが、中でも、法律上、辞退を希望すれば必ず認められる七十歳以上であることを理由とする辞退事由に関する質問が多数を占めました。

 また、お寄せいただいた苦情の内容としましては、この制度には反対であるとか、あるいは勝手に選ばないでほしいといった、制度そのものに対するものもございましたけれども、これは総受電数に占める割合としましては、それぞれ約〇・五%、約〇・三%程度にとどまったものでございます。

 コールセンターの照会状況から見ますと、候補者の方々の反応は比較的冷静なものであったように思っております。

 以上でございます。

赤池委員 最高裁は冷静な対応だったというふうな認識なんですが、私自身としては、国民の不安というのは払拭した、周知が進んでいるというのは現状においても大変言いがたいのではないかということで、大変心配をしているところであります。

 森法務大臣も、所信表明の中で、より多くの国民の方々に、裁判員制度の意義を十分御理解いただいて、不安なく裁判員として参加していただくことができるよう、広報啓発活動を積極的に行うなど、引き続き全力を尽くすとおっしゃっているわけでありますが、ずっと私自身が気になっているのは裁判員制度の意義であります。

 国民は、意義あることであれば、多少の不満や不平があったとしても参加をしてくれるというふうに思っておりますが、意義自体に問題があれば、幾ら広報しても啓発しても、国民の理解は深まるどころか、逆に不満や不平、さらに不安が広がるばかりではないかというふうに思っております。

 前回も聞いたわけでありますが、改めて、裁判員制度の意義をどう国民に説明するのか、法務当局から再度御見解をいただきたいと思います。

大野政府参考人 裁判員制度は、広く国民が裁判の過程に参加し、その感覚が裁判の内容に反映されることにより、司法に対する国民の理解や支持が深まり、司法がより強固な国民基盤を得ることができるようになるという重要な意義があるものと考えております。加えまして、裁判が迅速に行われるようになるとともに、裁判の手続や判決が国民にとってわかりやすいものになることも期待されるわけであります。

 この点、もう少し具体的に申し上げますと、我が国の現在の刑事裁判は、基本的には国民の信頼を得ているものと認識しております。そして、刑事裁判の運営に当たる裁判官、検察官、弁護士の法曹三者におきましても、これまで国民の信頼を得るべく努力を重ねてきたわけでありますけれども、それでも、国民の意識、価値観が多様化し、社会が急速に変化する中で、裁判に時間がかかり過ぎる、あるいは時として裁判が国民の感覚に合わない、あるいは裁判の手続や内容がわかりにくいというような指摘がなされることがあるわけであります。

 そこで、今回、裁判員制度を導入することによりまして、国民の方々に裁判官とともに司法を担っていただくという重要な役割をお願いいたしまして、国民の良識や感覚を裁判に反映させることにより、司法に対する国民の理解や支持をより一層深めてもらえるのではないかと考えているわけであります。それによりまして、新しい時代に期待される、司法に期待される役割、身近で頼りがいのある司法を実現するというような大きな目的に資するところがあると考えるわけであります。

 また、職業や家庭を持つ国民の方々に裁判に参加していただくことができるようにするため、裁判が迅速に行われるようになり、また、裁判の手続、判決の内容が裁判員の方々にとってわかりやすいものとしなければいけないということから、国民にとってわかりやすい裁判が実現されることになるわけであります。

 さらに、裁判員制度の導入は、社会秩序や治安、あるいは犯罪の被害や人権というような問題につきまして、国民一人一人にかかわりのある問題としてお考えをいただく契機にもなるものと考えております。

 国民一人一人が、自分を取り巻く社会について、他人事ではなく自分たちのことだというように考えることにつながり、先ほど委員が御指摘されましたように、自分のことだけではなしに、社会全体がよりよいものになっていく、その足がかりになることが期待されているというように考えるわけでございます。

赤池委員 司法を国民により身近で頼りがいのあるものにしたい、そのことに関してはどなたも異論がないことでありますが、問題はその中身だということだと思うんですね。

 国民の常識からいえば、司法を身近にする、頼りがいのあるものにする中身というのは、先ほど法務当局が言ったとおり、裁判を、よりわかりやすくて、早くて、国民感情に沿って執行してほしいというのはもちろんそのとおりだと思っています。しかし、そのために、裁判自体になぜ国民がみずから参加しなければそのことが実現できないかということに関して、ここに疑念が生じているのではないかと思っています。

 その根底には、私が考えるところ、間接民主主義より直接民主主義の方がよくて、アマチュアの方がプロよりも良識を発揮しやすいのではないか、そんな信仰があるような気がしてならないわけであります。特に、これだけ巨大化して複雑化して情報化が進んだこの現代国家の中で、直接民主主義やアマチュアが逆に弊害をもたらすということも指摘をされているところであります。

 そういう面では、これはもう五月ということに迫っているわけでありますが、私自身は、治安大国と言われる日本の中で国民の常識にはないことをさせようとしているこの裁判員制度導入というのは、世界的な不況の中で、改めて考え直して、これは一時的でも凍結も含めて検討する余地がまだまだあるのではないかということを考えております。

 続いて、時間がございませんが、国籍法の問題についても触れさせていただきたいと思っております。

 御承知のとおり、昨年、国籍法が改正をされまして、ことし一月から施行されているわけであります。そういう面で、現行の施行状況に関して法務当局からお伺いをしたいと思います。

倉吉政府参考人 御指摘の改正国籍法、本年一月一日から施行されております。施行から二カ月が経過した二月末現在の数字でございますが、百十九件の届け出がありました。そのうち約半数の六十二件が、改正により新たに届け出が可能となった、父母が婚姻していない方であります。

 それから、既済、未済の関係ですが、二月末現在で四十一件が既済となっておりまして、これはいずれも国籍取得証明書を発行したというものであります。不受理のものは今のところない、残りが審査中という状況でございます。

 なお、この国籍取得届の届け出状況につきましては、月に一回、法務省のホームページに掲載することとしております。

赤池委員 二カ月で申請が百十件を超えて、その半数が今回の改正国籍法に伴う結婚のない認知だということでありまして、大変多いということには驚いたわけであります。

 毎月公開されるということには、法務当局の御努力には大変敬意を表しますけれども、昨年にも中国人ブローカーによる偽装認知も起きております。不正認知防止のために、窓口となる法務局での審査の厳格化、警察や入管との連携強化が実施されているということではありますが、偽装認知を一件たりとも見過ごさない、見過ごすことがあるようであれば、改めてもう一度、国籍法の再改正も含めて考えていくべきだというふうに思っておりますし、DNA型鑑定の導入の検討も附帯決議に盛られているわけでありますから、その施行状況を見ながらしっかり検討をお願いしたいというふうに思っております。

 そして、重国籍者が現在五十三万人もいるという状況の中で、この重国籍者に対する対応ということも喫緊の課題ではないかというふうに思っております。重国籍者に対して、これは法務当局として、自主的な啓発のみならず、個別のアプローチ、手紙を出すとか、改めて催告という制度の中で選択を求める、つまり違法状態をそのまま法務省が放置しているということがないように、ぜひ引き続き強い措置をお願いしたいというふうに思います。

 最後に、駆け足になりましたが、人権擁護法のことに関しましてもお伺いをしたいというふうに思います。

 一点、本通常国会において人権擁護法案を提出するかどうか、大臣の所見をお伺いしたいと思います。

森国務大臣 人権侵害による被害者の実効的救済を図ることなどを目的とする人権擁護法案については、人権擁護推進審議会の答申を踏まえたものでございますが、同答申を最大限に尊重すべきとした人権擁護施策推進法の附帯決議の趣旨に照らし、かかる目的を実現すべき法案の国会への提出を目指すべきものと考えております。

 しかしながら、法案の国会への提出については、与党内においてもさまざまな御意見があることから、その御議論を踏まえつつ、各般の御意見を承りながら真摯に検討を進めてまいりたいと思っております。

赤池委員 ありがとうございました。十分な検討を与党の中でもしたいと思いますし、慎重な対応をお願いしたいと思います。

 以上、駆け足で質問をさせていただきましたが、改めて、先人たちから受け継がれたこのかけがえのない日本国をこれから生まれてくる子供たちに渡していくために、精いっぱい法務行政の中で御努力をお願いしたいと思いますし、私自身も頑張ってまいりたいと存じます。

 きょうはありがとうございました。

山本委員長 次に、矢野隆司君。

矢野委員 おはようございます。自由民主党の矢野隆司でございます。

 昨年の十一月に続きまして、森法務大臣の所信に対する質疑をさせていただきます。また、佐藤剛男副大臣、そして早川忠孝大臣政務官にもよろしくお願いしたいと存じます。

 まず最初に、この国会に提出をされております在留管理制度の新設についてお尋ねをしたいと思います。

 過日の大臣の所信の中にも盛り込まれておりましたけれども、二十二万人いた不法残留外国人が、大臣の所信では本年一月には十一万三千人まで削減したということでございました。

 そこで、おさらいをするようで大変恐縮ですが、そもそも論ということで、これまでよく、不法滞在である外国人家族が入管法の違反などに問われると、公立学校に通うその御家族の子供さんの教育のためなどの理由で、法務大臣に対し在留特別許可を申し立てる事案が少なからずございました。今週もたまさか同じような事案があり、報道された次第でございますが、そもそもなぜ不法滞在の一家のお子さんが公立学校に通えるのか、その仕組みを教えていただきたいと思います。

前川政府参考人 外国人につきましては、その保護する子を公立の小中学校へ就学させることを希望する場合におきましては、国際人権規約等の規定によりまして、保護者もしくは本人の在留資格の有無のいかんを問わず無償で受け入れるということになっているわけでございます。

矢野委員 大変簡潔に、わかりやすい御説明をありがとうございました。

 要は、国際人権規約という大原則があるということでございますが、さらに言えば、「在留の資格なし」という文言が明記された外国人登録証でも、学校に入学する就学時の居住地確認の際にはそれを地域の教育委員会等で確認のために提出して、提出するのか見せるのかいろいろあるんでしょうけれども、通用するというのがあるんだろうと思います。

 そこで、不法滞在を一方では取り締まる法務省が、不法残留外国人、正確には法では在留の法的根拠がない外国人と言うそうですが、こういった方々にも外国人登録を認めてきたからでありまして、これは昭和二十七年以来の外国人登録法第三条に、簡単に言えば、日本の土地を踏んでおる外国人は一定の期間のうちに外国人登録の申請をしなければならない、そして第五条で、市町村の長は登録した外国人には登録証を交付しなければならないと法で定めているからでございます。

 極論すれば、密入国であろうが不法残留であろうが、在留資格のいかんを問わずに外国人登録の申請が義務づけられているということに起因するのだろうと私は思っておりますけれども、しかも、この外国人登録法上の居住地というのは、私もきのういろいろ教えていただいたんですが、住居を示す言葉ではないので、これも極論すれば、極端な話、公園でも構わないという実態というか解釈もあるそうでございます。

 そこで、不法滞在が長期化しているがゆえに、こういった学校の問題とかさまざまな行政サービスでの問題、そういったことが起きているのだと思いますけれども、今回のこの在留管理制度の新設に絡む法案、この法案はこれらの問題を解消する仕組みをつくるものと理解をいたしますけれども、その辺のことを御説明いただきたいと思います。

森国務大臣 矢野委員御指摘のとおりでございまして、新たな在留管理制度は、外国人の公正な管理を行うため、外国人の在留状況に関し必要な情報を継続的に把握するとともに、在留期間の伸長等、適法に在留する外国人の利便性を向上させるための措置を講ずるものでございます。

 現在は不法滞在者にも外国人登録証明書が御指摘のとおり交付されておりますが、今後は、基本的身分事項、在留資格、在留期間等を記載した在留カードを、在留資格を持って我が国に中長期間適法に在留する外国人に交付することといたしております。

 また、これらの外国人の在留状況に関する情報を必要な範囲で住民行政を担当する市区町村に提供することによりまして、正規に在留する外国人が行政サービスを受ける機会を確保するとともに、これら外国人に、在留資格に応じて、身分関係等に変動があったときには入国管理局にその事実を届け出てもらうことといたしております。

 一言で言いますならば、適正に在住している外国人には便利に快適に暮らしていただく、一方、不法に滞在している方にはとにかくなるべく早く出ていってもらうということを明らかにするための法改正でございまして、これらの諸方策を通じて、不法滞在の発生や長期化の防止を図ってまいりたいと考えております。

矢野委員 適正に在留しておられる外国人の方には、今大臣のお言葉では、便利に快適に過ごしていただくための仕組みづくりでもある、こういうことで、外国人登録証を廃止して在留カードに一元化するということだと思いますが、これは先ほど大臣の御答弁にもありましたが、何も管理することだけがねらいではない。

 たまさかといいますか、いみじくもといいますか、政府の犯罪対策会議が昨年十二月にまとめた犯罪に強い社会の実現のための行動計画二〇〇八では、外国人に対する生活支援の一つとして「ワンストップ型の総合相談窓口を設置する。」と書かれております。在留外国人に対し利便性向上が見込まれるということですが、その総合相談窓口等についての具体的な内容を教えていただきたいと思います。

森国務大臣 ワンストップ型の総合窓口のイメージでございますけれども、これは、入国管理局が外国人が集住する地方公共団体等と連携し、入国、在留手続等の入管手続のほか、生活に関する相談、情報提供を一つの窓口で行うことを予定しているものであります。

 この相談窓口は、平成二十一年度において、三つの自治体、すなわち東京都、埼玉県及び浜松市において開設予定でございます。

 その業務の実施については、外部への委託を予定しております。

 この総合相談窓口の開設により、外国人が在留するために必要とする各種情報の入手及び相談を一カ所で行うことが可能になり、定住する外国人の利便性の向上が図られるとともに、外国人が各種情報を得やすくなることなどによって、我が国での在留が安定化し、適正化が図られることを期待しております。

矢野委員 済みません、通告外の質問になりますが、今大臣の方から東京、埼玉、浜松という地名が挙げられたんですが、関西というか西日本ではそういう窓口を設けるというお考えというか計画というのはないんでしょうか。

西川政府参考人 お答え申し上げます。

 本年度の予算要求において開設場所と申請いたしましたのが東京、埼玉、浜松市ということでございまして、この運用の状況を見ながら、必要があれば、必要な地域にさらに拡大することを考えてまいりたいというふうに考えております。

矢野委員 西日本にもいろいろそういうところがあると思いますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 最後に、この関連の質問ですが、観光目的で来日して、九十日という短期の滞在期間の間に外国人登録証を申請して、きのう教えていただいたんですが、外登証というのは申請から交付まで約十日間で手に入るということだそうですが、いわば、九十日間の滞在の間に先取りした形で外登証を取得した後に不法残留するという事例も過去にはあったということをちょっと伺いました。

 在留カードが今度できるということなんですが、これにより在留管理が一元化されるということも理解したわけですが、私としては、これにより、不法残留者というのが大体大きく分けて三つに分類されるんじゃないかと思っております。一つは、出頭により退去強制等の法的措置を受ける者、それから、その上で在留特別許可を申し出る者、あるいは、文字どおりやみに消えてしまうような外国人がおるんじゃないかと思います。

 かつて、暴対法、暴力団対策法を強化した際に、暴力団が組織の実態を隠すためいろいろと手段を講じて、その後、組織構成員の把握等で大変警察庁が困られたということを見聞きしておりますけれども、この新法でも同種の悩ましい問題が起きるんじゃないかと私はいささか気になるところであります。一方で、在留特別許可を申し出る外国の方もそれなりの数に上がるんじゃないかなと思ったりしております。

 そこで、在留特別許可に当たって、その判断あるいは運用、こういったものについて、改めて法務大臣の方からその方針、御見解を伺いたいと思います。

森国務大臣 不法滞在者対策につきましては、これまで不法滞在者半減計画により、五年間で不法残留者数を四八・五%まで減少させることができました。国民が安心して暮らせる社会の実現に貢献することができたものと自負をしております。

 他方、依然として不法残留者は約十一万人おりますので、今後も不法滞在者に対して入国管理局への出頭を促すとともに、積極的な摘発を行い、引き続きその削減に努めることといたしております。

 御指摘のとおり、新たな在留管理制度が施行された暁には、それを契機として不法残留者が出頭することも考えられますが、出頭しあるいは摘発された不法滞在者のうち在留特別許可を希望する者については、これまでの運用方針と変わることなく、退去強制すべき者は退去強制し、我が国に在留することを特に配慮すべき事由のある者に対しては在留特別許可を付与する方針で臨む所存であります。

 いずれにしても、委員が御指摘になられましたこの制度変更に際しては、幾つかの懸念があることは事実でございますので、そういった事態に備えて、その対応策をしっかりと検討してまいりたいと思っております。

矢野委員 よろしくお願いしたいということだけしか私は申し上げられないと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 ところで、この法務委員会で私も審議にかかわりました入国審査時のバイオメトリックス、生体認証に関する質問をさせていただきたいと思います。

 日本入国時の生体認証審査において、テープのようなものを使った変造指紋で生体認証審査をくぐり抜けていたという事案が、お隣の韓国で発覚したというか、韓国発で知らされたということがあったと思いますが、私自身としては、まさかこんなに早く最新の装備が破られるとはなという思いでございますが、その後の対応策といったものをまとめて教えていただければと思います。

森国務大臣 委員御指摘の事案は、昨年の四月に青森空港から入国した韓国人に係るものでございますが、同人が、上陸拒否期間中に氏名及び生年月日が異なる旅券を行使して入国した事案です。後日、東京入国管理局が同人を摘発して入国の経緯を追及したところ、指にテープのようなものをつけて入国審査を通過した旨供述いたしました。

 法務省としては、この案件の発生を踏まえ、指紋の状態をブースにいる入国審査官がディスプレー上で確認できるようにするとともに、提供された指紋の品質値について厳格な基準を設け、それが一定程度以下の場合には、入国審査官が指の状態を目視の上、指紋に偽装がないか確実に確認することといたしました。さらに、警察等関係機関や韓国当局とも緊密な連携をとり、新たな手口にも適切に対処してまいりたいと考えております。

矢野委員 これは入管局長に伺いたいんですが、おおむね、成田空港というのは入国審査のブースの台というかカウンターが低くて、中部やら関空はどちらかというと高くて、別にそんな意図はないんでしょうけれども、見おろされるような感覚の、高いブースが多いんですけれども、いずれにせよ、今回の事案を受けてというか受けなくとも、生体認証のときの指は従来からも目視でちゃんと確認はできておったということでいいんでしょうか。

西川政府参考人 委員御指摘のとおり、空港のブースによりまして、手がすぐ見れる構造の場所とそうでない場所がございます。それで、そうでない場所につきましては、指紋を採取した段階で指紋の品質が出る、それが低い場合については確認しろということを今徹底しておりますが、さらに、システムを改善して、システム上、指先が見えるようなことも今検討しているという最中でございます。

矢野委員 このことは、余り伺うと、敵に手のうちをさらすようなものですから、もうこれ以上伺いません。

 次に、矯正関係の質問に行きたいと思います。

 今国会、法務省からではないんですが、内閣府の提出法案、構造改革特別区域法及び競争の導入による公共サービスの改革に関する法律の一部改正法案という法律案ですが、そこに、全国の刑事施設において業務の民間委託などを可能とする改正案が盛り込まれております。恐らく、先にスタートしたPFI刑務所四施設、これがそれなりに成功をおさめたからなのかなと思っておりますけれども、この四施設についての運用面等での成果というか評価というか、そういったことを取りまとめて教えていただきたいと思います。

森国務大臣 法務省では、過剰収容対策の一環といたしまして、四つの刑務所でPFI事業を進めてまいりました。PFI手法の活用に当たっては、官民協働による運営や地域との共生により、国民に理解され、支えられる刑務所を実現することを目指しております。

 具体的には、矯正の経験を踏まえまして、民間事業者のノウハウを活用するとともに、加えて、地域からのさまざまな御協力をいただきながら、受刑者に対して矯正教育や職業訓練を実施し、再犯防止に資する刑務所運営を行っていく方針といたしております。

 いずれの施設につきましても、官民協働体制のもと、逃走などの重大な事故が発生することもなく、おおむね順調に運営を行っておりまして、受刑者の収容を開始してまだ日が浅いところではございますけれども、所期の運営方針の達成に向けて着実に進みつつあるものと受けとめております。

矢野委員 これも通告にない質問で恐縮ですが、今の関連で、この内閣府提出の法案で、全国の刑事施設において業務の民間委託などを可能とするという中で、これは、民間委託色の濃い刑務所を新設するという意味も入っているんでしょうか。それとも、いやいや、既存の施設をこういう形でもできるようにしますよというのか、その辺をちょっと教えていただきたいと思います。

尾崎政府参考人 現在提出されております公共サービス改革法についてのお尋ねというふうに御理解申し上げますが、公共サービス改革法による民間委託につきましては、新たに新設するものもありますし、あるいは既存の施設の業務の一部を委託する、そういうことも可能でございます。法制上は両方可能でございます。

 刑務所を新設していくかどうかにつきましては、今後の収容者の数の動向を見ながら考えていくということになろうかと思います。

矢野委員 ありがとうございました。

 矯正関係、あと一問ほどお願いしたいんですが、大変伺いにくい質問でございますが、本年二月に公表されました、大阪刑務所での刑務官懲戒免職事案について伺いたいと思います。

 詳しいことは控えますけれども、刑務官にさまざまな要求を行い、格別の便宜を図ってもらった上、お金まで、四百万円ほど、借用という形で差し入れさせておった受刑者がおりますが、これは、一方の当事者でもあるわけですけれども、実はこの受刑者は、過去においても別の刑務官を処分に追い込むような事件を刑務所内で起こしておったと聞いておりますけれども、事実でしょうか、教えてください。

尾崎政府参考人 委員御指摘の受刑者につきましては、ほかにも刑務官を巻き込んだ事案を起こしておりまして、他の受刑者との接触が禁止されているにもかかわらず、今回の職員とは別の職員に対しまして、他の受刑者と面談をさせてくれ、こういったことなどを執拗に要求いたしまして、職員の方は、受刑者の求めに応ずれば今後その受刑者の処遇が容易になるのではないかというふうに考えまして、他の受刑者と不正に面談させるなどしております。

 この事案につきましては、この職員を平成二十年二月に減給処分に処しております。

矢野委員 不祥事の根絶ということで、さらなる工夫を凝らした取り組みをぜひとも矯正局にはお願いしたいと思います。

 残り五分ということで、最後に、大臣の所信にはそのものずばりの文言はなかったのでございますが、現在法務省内で検討会を開始したという時効問題について伺いたいと思います。

 昨年だったか一昨年だったか、ちょっと記憶にございませんが、女性教諭を殺害し自宅に埋めていた学校の校務員が、その自宅が区画整理にかかるというので、自宅の庭に埋めておったその遺体が発覚するということを懸念して、時効完成後にみずから私がやったと名乗り出たというケースがございました。もちろん、時効完成後ですから、この人は何の罪にも問われなかったということでありますけれども。

 これとは別で、例えば、時効の寸前に逮捕、起訴をしたけれども、起訴事実より量刑の軽い判断が示され、無罪となった事例というのもございます。

 九歳の子供を身の代金目的に誘い出して殺したという容疑で、殺人罪の時効二カ月前に容疑者を逮捕。ところが、公判では、重大な犯罪により死亡させた疑いは強いけれども殺意の認定には疑問が残るという判断で、傷害致死を示唆しつつ、結局判決は無罪。要するに、傷害致死に訴因変更したいけれども既に傷害致死の時効は完成しておるということで、もう殺人罪については殺意は認定できないから無罪だという裁判が二〇〇二年に実際に札幌でございました。殺人の時効は二十五年で、傷害致死は十年です。結局、傷害致死の時効が完成していたがゆえに、繰り返しになりますが、文字どおり無罪放免になったケースだと思います。

 まさに、被害者や遺族の処罰感情が残る、あるいは消えない事例だと私は思うんですけれども、時効問題にはこういったさまざまな視点からのアプローチも必要じゃないかと私は思うんです。

 最後に、この時効問題について、どういう経緯で始められて、そして今現在、何回ぐらいされて、どういった検討状況なのか、あるいはこれからの見通し、そういったものを取りまぜて、法務大臣からいろいろと教えていただきたいと思います。

森国務大臣 ただいま矢野委員が引き合いに出されました事案についても、記録を読ませていただきましたけれども、確かに私も釈然としない思いでございますし、また、そういう事例がほかにもあることと思います。

 公訴時効制度については、被害者の方々を中心として、殺人などの凶悪重大な犯罪について見直しを求める声が多く寄せられているところでございますし、また、時代につれて科学技術の進歩も目覚ましいということなどから、法務省においては、この点に関するさまざまな御意見を参考にしながら、省内勉強会を開催して、殺人等の凶悪重大な犯罪に関する公訴時効制度のあり方について検討しているところでございます。

 省内の勉強会でありますので、検討状況の詳細は差し控えさせていただきたいと思いますが、この勉強会においては、基本的な制度趣旨の理解や公訴時効に関連する事件の実情等について確認、調査をいたしまして、また、論点の洗い直しをとりあえず目指して検討を行っているところでございます。

 現時点においては検討の方向性について具体的に決めているわけではありませんけれども、本年度末までに何らかのアウトプットを出したいという思いでもって続けているところでございます。

矢野委員 裁判員制度のスタートもいよいよ目前に控えておるわけで、いろいろなケースの事案を裁判員の方々も取り扱うんだろうなと思います。そういう中で、この時効問題というのも大変大事な問題だろうと思いますので、ぜひしっかり検討していただきたいと思います。

 では、これできょうは終わります。ありがとうございました。

山本委員長 次に、稲田朋美君。

稲田委員 自民党の稲田朋美でございます。

 冒頭、森大臣にお伺いをいたしたいのが、民主党小沢党首の秘書の逮捕に関連をする民主党幹部等の発言などについてなんですけれども、民主党党首は、政治的にも法律的にも不公正な国家権力、検察権力の行使である、この種のことで逮捕、強制捜査というやり方は大変民主主義を危うくするとおっしゃっております。また、このところ使われている言葉として、検察に対する批判、国策捜査であるというような言葉が飛び交っております。

 この国策捜査の中身、定義が、全く法律的にもある言葉ではない、造語であるにもかかわらず、あいまいなまま、検察を批判するために使われております。

 私は、検察の捜査というのは、法の支配によって国家の正義を実現するものである以上、ある意味すべて国策捜査とも言えるのではないかと思っておりますし、反対に、私の正義感を実現するために検察が捜査に入るようなことがあっては困るわけでありますから、そういった意味で、国策捜査という、定義があいまいなまま批判の言葉として使われていることに大変危惧をいたしております。

 また、民主党では、検事総長を証人喚問するというようなことも言われておりますが、法務行政のトップとして、また検事総長を指揮される法務大臣の立場として、こういった一連の発言について一体どのようにお考えであるか、お聞かせいただきたいと思います。

森国務大臣 私は、法務大臣に就任以来、個別の事件についての指揮権の行使というようなことはすべきでない、よくよく慎重であるべきだというふうに思ってまいりまして、検察に全幅の信頼を置いて今日まで法務行政に携わってまいりました。

 また、御指摘の国策捜査につきましては、法令上の用語ではなくて、今委員の御質問にもありましたように、どのように解釈していいのかわからないというふうにも思います。そういったあいまいな表現でもってあのようなさまざまな御発言がなされたということについては、私といたしましては、まことに心外に思っているところでございます。

 個別具体的事件についてのお答えは差し控えますが、検察当局は、再々申し上げておりますとおり、常に法と証拠に基づいて、不偏不党かつ厳正公平を旨として、その捜査の対象がどなたであっても、刑事事件として取り上げるべきものがあればこれを取り上げて、適切に対処してきたものであり、検察が何らかの政治的意図を持って捜査を行うことはあり得ないと確信をしているところでございます。

稲田委員 私も、何の根拠も示さずに今回の捜査について政治的、法律的に不公正であるとか民主主義を危うくするなどと言われることは、ある意味大変な誹謗中傷であると思っておりますし、反対に、このような時期であるということを配慮したり、また次期政権奪取を担っている民主党の党首だからということを仮に配慮して捜査に入らないというような不作為があるとすれば、私は、それこそ政治的にも法律的にも不公正な国家権力、検察権力の不行使であり、不作為による不正であるというふうに認識をしておりますので、しっかりやっていただきたいと思っております。

 これに関連をいたしまして、同じように、行政の不作為によって国の安全保障が危うくなっているのではないかと思うことがありますので、その点についてお伺いをいたしたいと思います。

 予算委員会やさまざまな委員会でも話題になっておりました、韓国人資本家による対馬の土地買収問題であります。

 海上自衛隊のレーダー基地に隣接する広大な土地が韓国企業に買収をされて、韓国人観光客向けのホテルが建てられていると言われております。この問題については、我が国の防衛政策上大丈夫かという観点から報道でも取り上げられておりますけれども、安全保障の観点から外国資本による不動産買収を規制するためには外国人土地法という立派な法律が今も生きているわけですけれども、この法律、特に四条の趣旨と、またこの法律が今まで適用された例について、戦前も含めて法務当局にお伺いいたします。

倉吉政府参考人 御指摘の外国人土地法は大正十四年にできた法律でございますが、その第四条は、国防上必要な地区においては政令によって外国人の土地に関する権利の取得につき禁止をし、または条件もしくは制限を付することができる、こう定めております。

 民法の原則はどうなっているかということですが、民法上は、民法第三条に規定がございますが、外国人も日本人と同様に私権を享有することとされております。ただ、これには例外が定めてありまして、「法令又は条約の規定により禁止される場合を除き、」となっているわけであります。

 そういうわけで、ここの外国人土地法第四条は、この民法三条に言う法令の一つとして、国防上の必要性がある場合には外国人による土地の取得を制限することができるんだということを言っている、これがその立法趣旨だということになります。

 適用の事例については、この外国人土地法第四条の政令自体が、戦前に一度制定されたことがございますが、戦後の昭和二十年十月二十四日に廃止されておりまして、以後は制定されたことがないということでございます。

稲田委員 戦前は、勅令でこの対馬も全島指定されたかに聞いているんですけれども、現在指定されていないのはどうしてでしょうか。

倉吉政府参考人 これは主として国防上の必要ということにかかわりますので、いわゆる私法を所管している法務省だけで判断できることではございませんけれども、現在のところ、その政令を定めなければならないという必要性はないという判断がされておりまして、新たに戦後また制定するということはされていないというところでございます。

稲田委員 それでは防衛省にお伺いをいたしますが、戦前この対馬が勅令で全島指定されていたのに、現在指定されていないのはなぜか。また、今、この自衛隊の周りが韓国資本によって購入されていることについて大変危惧の念がわき上がっているわけですけれども、今後、そういったことを考慮して、この法律を適用して政令で指定する可能性を検討されているかどうかも含めて、答弁いただきたいと思います。

枡田政府参考人 お答えいたします。

 対馬につきましてでございますが、対馬につきましては現に自衛隊施設が存在しております。これにつきましては、これまで累次官房長官が国会で答弁をされているように、基地の警備を含め部隊の運営についてはその地域の特性に合わせまして適切に実施してきており、現時点では、外国人等による自衛隊基地周辺の土地の買収が部隊の運営に直接の影響を及ぼしているとは認識しておりません。現時点で、外国人等による対馬の土地の取得を制限する必要性のある事態は生じていないものと認識しております。

 あと、御指摘の、土地取得の規制につきましては、安全保障上の必要性や個人の財産権の観点も踏まえた慎重な検討が必要であるとは認識しておりますが、いずれにしても、防衛省としましては、対馬とか尖閣諸島の地域的な重要性も踏まえつつ、関係省庁とよく連携して対応するものであるとは考えております。

稲田委員 今の答弁を聞いても、また今までの委員会の官房長官のお答えや防衛大臣のお答えも読んでおりますけれども、なぜ安全保障上必要ないと判断されているのか、その根拠が、またどのような調査でもって安全保障上必要ないと判断をされているのか、全く私には納得ができないわけであります。

 また、尖閣諸島はまだ聞いていないんですけれども答弁されていますけれども、尖閣諸島も、魚釣島を初めほとんどが、日本人の一個人が所有をされているようであります。私は、この尖閣諸島こそ外国人土地法の政令指定をなぜやらないのか全くわからないんですけれども、この尖閣諸島に指定しない理由と、直ちに指定すべきではないかと考えておりますが、その点、今の答弁の中に尖閣諸島云々と入っていたんですけれども、同じ答弁だったら答えていただく必要はありませんが、何かつけ加えることがあればお答えください。

枡田政府参考人 尖閣につきましては、対馬と異なりまして、現在防衛施設は存在しておらないわけでございます。

 あと、土地取得の規制につきましては、先ほど答弁したものと同じでございます。

稲田委員 こういう防衛省の答弁等を聞いておりますと、この国の安全、危機感といいますか、この国を守るという気概が一体あるのかどうか、防衛省にもまた政権にもそういった意識があるのかどうか非常に疑問であります。

 今、防人の島新法というのをつくろうということで議連で検討もいたしておりますけれども、いかに立派な法律をつくったところで、それをきちんと運用しなければ何もならないわけであります。現在だって、今ある法律の外国人土地法というこの法律ですら全く運用できない現状において、この国を守ることができるのか、全く私は危惧をいたしているということだけを申し述べて、次の質問に入りたいと思います。

 さきの国会において国籍法が改正されたときに、私はこの法務委員会でも質問をさせていただきました。また、日本の国籍や在留資格が外国人によって違法にだまし取られることがないように、警察、検察、入国管理局を含めてきちんとした対策をとっていただきたいということも強く要請をいたしました。

 しかしながら、最近も、日本人脱北者の家族だと偽って我が国に不法に入国した中国人が摘発されたという報道がされたばかりでもあります。今後、国際化に伴い、こういった事件はますますふえていくと思いますが、日本の国籍や在留資格が外国人によって違法にだまし取られることがないように、日本の国籍取得等に対する厳格なチェックや刑罰の厳格化のさらなる政策が必要だと思っておりますが、その点について法務大臣の御所見を伺いたいと思います。

森国務大臣 国籍取得の場面や入国審査の場面などにおいては、その申請等が法律上の要件を備えた適法なものであるかについて慎重かつ適正に審査する必要があることは、御指摘のとおりでございます。

 関係部署においては、個別の事案に応じ、関係機関との連携を密にしつつ必要な調査を行うなど、厳格な審査に努めているところでありますが、今後とも慎重な審査を行ってまいりたいと存じます。また、不正な申請の防止を図るため、刑罰の厳格化とさらなる対応策の必要についても、実態を踏まえまして適切に検討してまいりたいと考えております。

 脱北者の点については、先般の国籍法にかかわる国籍の取得等とまたちょっと違った問題があって、これについては、やはり関係省庁とも連携して適切に対処してまいりたいと思います。

稲田委員 ぜひよろしくお願いいたします。

 それから、DNA鑑定に関連いたしまして、私はDNA鑑定を安易に取り入れるべきではないという立場に立っておりますが、附帯決議の中でもこの検討を盛り込んだわけであります。

 ちょっと民事局長にお聞きいたしたいんですけれども、国籍取得の前提、国籍法の中にDNA鑑定を仮に取り入れるといたしまして、今回改正になったような出生後認知の場合にDNA鑑定をもし要件として取り入れるとすれば、胎児認知における場合、それから準正の場合、さらには嫡出子の場合にも、母親が外国人であれば、すべてDNA鑑定を要件としなければ法制度として整合性がないと思うのですけれども、この点について民事局長の見解を伺います。

倉吉政府参考人 御指摘の問題、ちょっと前提の方から申し上げますと、今委員お話があったとおりですが、衆議院及び参議院の法務委員会の附帯決議におきまして、「本法の施行後の状況を踏まえ、」DNA鑑定導入の「要否及び当否について」、DNA鑑定とは書いておりません、科学的父子鑑定の方法と書いてありますが、その「要否及び当否について検討すること。」とされております。したがって、宿題を預かっているという思いはございますが、まだ、いましばらく事例の集積を待って検討する必要があるだろうと考えております。

 その上で、今委員の御指摘のございましたDNA鑑定を導入するといたしました場合には、確かに胎児認知の場合も同じ問題でございます。真の父子関係があるのかということは同じ問題でありますし、準正、嫡出子の場合も同じ問題だということになりますので、当然、他の制度との整合性も踏まえて検討しなければならない、これはもうそのとおり考えております。

稲田委員 また、DNA鑑定に関連をいたしまして、民法七百七十二条のことについてお伺いをいたします。

 無戸籍児というのが大変な問題になりましたが、私は、無戸籍児という言葉の使い方自体が正確ではなくて、本来であれば、未届け児という言葉を使うべきだと思っております。

 離婚後三百日以内に生まれた子に対して、前夫の嫡出推定を外すことができる方法について、現行法を前提にして、民事局長から説明をいただきたいと思います。

倉吉政府参考人 民法七百七十二条の規定でございますが、妻が婚姻中に懐胎した子供は夫の子供と推定するといたしまして、その上で、離婚後三百日以内に生まれた子供は婚姻中に懐胎したものと推定する、こういう二重の推定の規定を置いているわけでございます。

 どういう方法があるかということですが、まず、離婚後三百日以内に生まれた子でありましても、離婚後の懐胎であるという場合がございます。いわゆる早産なんかがその典型になりますが、こうした場合には、そもそも婚姻中の懐胎ではないということになりますので、戸籍の窓口におきまして、離婚後の懐胎であるということを証明する医師の証明書を提出してもらう。その提出があれば、前の夫を父としない出生の届け出、これを受理する取り扱いを認めるという通達を既に発出したところであります。

 問題は、離婚前に懐胎したという事案でございますが、この事案につきましては、家庭裁判所におきまして、前の夫を相手方として親子関係不存在確認の調停等の手続をとる。あるいは、現在の夫、もしくは、実は、実のお父さんはこの人なのよとそのお母さんが主張される方を相手方として認知の調停等の手続をとる。そして嫡出推定が及ばないような事情の存在を認定してもらう。そうした認定を含む審判や判決を受けまして、その裁判書の謄本等を戸籍窓口に提出することにより、前の夫の子ではないという扱いをすることができます。

 ここで申し上げました嫡出推定が及ばないような事情というのは、これまで累次の最高裁の判決で指摘されているところでありますが、既に夫婦が事実上の離婚をして夫婦の実態が失われ、または遠隔地に居住して、夫婦間に性的関係を持つ機会がなかったことが明らかであるというような事情が存在する、こういう場合でございます。

稲田委員 ことしに入ってから、この民法七百七十二条に関連して違憲訴訟が起きております。そして、そこの原告が住んでいる市の市長が大臣に面会をされて、法改正を求められたという報道を見ました。

 ただ、私は、民法七百七十二条の改正の問題につきましては、やはり我が国が、妻が婚姻中に懐胎をして生まれた子供は夫の子供と強く推定することによって、家庭の平和も守り、また、単にDNA鑑定とか血のつながり、事実上のつながりだけで親子関係を決めるのではないといった民法の精神があるわけでありますから、それは合理性がある、このように考えております。

 したがいまして、婚姻中に妻が妊娠した子を夫の子と推定して、夫の子としてのみ出生届を受理するという現在の取り扱いが、違憲訴訟の中で言われている法の平等に反するものではなく、合理的なものであると私は認識をいたしておりますが、そういった点も含めて、この規定の改正の必要性について大臣がどのようにお考えか、お伺いいたしたいと思います。

森国務大臣 私も、民法第七百七十二条の規定には合理性があり、このような嫡出推定制度の趣旨は今日においても基本的に維持されるべきものと考えております。

稲田委員 ありがとうございます。

 次に、法整備支援についてお伺いをいたしたいと思います。

 何度かこの委員会でも法整備支援について質問をしてきたところですけれども、我が国は、これまで諸外国の法制度を学んで、日本の伝統に合致するよう工夫をして受け入れつつ発展させてきたという貴重な経験を持っております。この法整備支援というのが、我が国にとって、戦略的に使うことにより、安全保障上も、また価値観を共有する国をつくる上でも非常に重要な政策ではないかと思っております。

 佐藤副大臣は、この法整備支援について今までも非常に精力的に取り組んでおられた立場から、法整備支援に対する政府の戦略的取り組みの現状と今後の対応についてどのようにお考えか、お伺いをいたしたいと思います。

佐藤副大臣 先生御指摘のように、法制度の整備支援につきましては、戦略的な取り組みというものが必要である。特に、アジアの諸国におきましてはかようなことではないかと思っております。

 先生が今御指摘いただきましたのは、私、党の国際化小委員長をやった立場で、これにつきまして、積極的な政策ビジョンというものを、提言を取りまとめまして、そしてこれで内閣に提出いたしました。ちょうど塩崎官房長官のころでございますが、これで一つの方向を、官邸の方で場をつくっていただきまして、ちょうど昨年の一月でございましたが、海外経済協力会議という中に法務省が入っていくという形態で、そこで法制度支援につきまして司令塔のような形を担っていくということでございまして、政府一体となった支援が図れることとなったわけでございます。

 これまでの間、その後でございますが、法制度支援に関しました基本計画の策定ができまして、法務省を含む関係省庁において協議が行われています。近くこれを取りまとめる予定であると承っているわけでございます。

 この間において、モンゴルとかラオスとかあるいはティモールとか、国々に検事を派遣するなどしまして、相手国の最新のニーズを把握するとともに、新たな取り組みについて積極的な検討を行ってまいったところでございます。これが私どもの戦略的な対応でございます。

 法務省の基本的スタンスというのは、押しつけでない支援、これが基本理念でございますが、これを維持しながら、柔軟でバランスのよい支援を心がけて、関係省庁との連携を緊密にしながら進めてまいりたい。法律、例えば、商法なら商法というものは共同の、あるいは知財というものは共同のものであるという大きな理想を掲げながら、ひとつそういう形で進めていくということも必要であろうと思っております。

 また、日本の法制というのを英訳しまして、そして広くアクセスできるようにするということが重要であるということで、これも基本的に、翻訳がもう百七十を超えました。それで、今進んで完了いたしております。

 そのような面で、先生の御指摘の点については存分に進めてまいりたいと思っておりますので、申し添えます。ありがとうございました。

稲田委員 ぜひ国益の立場から戦略的に推し進めていただきたいと思います。

 私の質問を終わります。以上です。

山本委員長 次に、神崎武法君。

神崎委員 私は、昨年十一月十四日、当委員会におきまして、重大事件について公訴時効の廃止を検討してはどうか、こういう問題提起をいたしました。世田谷一家殺害事件あるいは上智大生殺害事件の被害者の遺族の皆さん方が、公訴時効の撤廃または公訴時効の停止を求める運動を展開いたしておりますし、この問題に関する国民の関心も高くなっていると思っております。

 法務大臣のもとで私的な勉強会が行われていると承知しておりますが、先ほどの御答弁でも、まだ方向性は出ていないということですけれども、どういう論点についてどういう議論がなされているのか、教えていただきたいと思います。

森国務大臣 先ほども御答弁申し上げましたけれども、今そういった公訴時効の撤廃を求める声が大変強い高まりを見せておりますし、また、科学技術の進歩もあり、やはりこういった問題を真摯に考えていかなければならないと思って、省内の勉強会を始めました。私が全体の座長をしておりますけれども、ワーキンググループは早川政務官が長となって、精力的に検討を進めておりまして、既にさまざまな論点が明らかになってきております。

 ただ、今まだこの場で申し上げるほどの熟度ではございませんけれども、その中でも、やはりなかなか一筋縄ではいかない問題であるということも一方で私自身感じておりますが、いずれにしても、先生が長く御指摘のように、極めて大きなテーマであるというふうに思っておりますので、これからも引き続き精力的に検討を続けまして、何らかのアウトプットを出したいというふうに思っております。

神崎委員 どういう論点で議論をされているのか本当は知りたいところなんですけれども、言われないのであれば、ぜひあらゆる角度から御議論をいただきたいと思います。

 入国審査の問題でありますけれども、日本から強制送還された韓国人女性が、昨年四月、指紋照合で身元を確認するバイオ審査をくぐり抜けて日本に再入国する事件が発生をいたしました。この事件では、昨年八月、女性を東京入管が発見、摘発をいたしましたけれども、警察に通報することなく女性は韓国に強制送還されたわけであります。その後、警察庁がこの女性の身元確認を韓国警察に連絡し、この女性が旅券偽造容疑で逮捕され、その結果、この女性は指に特殊テープを張りつけて指紋を偽造したということが判明したということでございますが、これが報道されておりますが、事実関係はこのとおりなのかどうか。それから、東京入管は、なぜこの指紋の偽造問題について警察と連携して解明することなく韓国に強制送還したのか、この点についてお伺いをいたします。

西川政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、事実関係については今委員御指摘のとおりでございまして、平成十九年の七月、我が国から退去強制された韓国人が、上陸拒否期間中の平成二十年四月、青森空港から入国しているということでございます。この者は、同年八月に東京入国管理局が摘発をいたしました。

 その際、同人は、指紋を活用した入国審査を通過して入国していることから、入国の手口について追及されまして、氏名及び生年月日が異なる旅券を行使した上、我が国の個人識別情報を活用した入国審査により過去の退去強制歴が発覚するのを避けるため、指紋にブローカーが用意したテープ様のものを張りつけて入国審査を通過したという旨を供述いたしております。

 なお、同人が入国時に使用したテープは捨ててしまったということで、そのテープ自体は発見をされておりません。同人については、不法入国容疑で同年九月に退去強制をしております。

 さてそれで、警察に通報せず退去強制した理由ということでございますが、従前から、入国管理局においては、入管法違反事件の調査に当たって、長期不法残留や偽変造旅券等行使事案、偽装結婚等悪質事案については、証拠収集に努めた上で、警察機関に通報、告発して刑事処分を求めるという扱いになっております。

 本件につきましては、調査を行った結果、容疑者から、指紋を偽装して我が国に不法入国した旨供述を得ることができ、ブローカーの介在も疑われたものではありますが、指紋偽装による不法入国の決定的な証拠物となるテープ様のものを発見、収集するまでに至らなかったということで、やむなく警察機関への通報を見送ったというものであります。

 しかしながら、本件は偽装指紋という特殊な手口での不法入国を自供していたという事案であって、警察に通報、告発するなどしてさらに事案の解明を図るべきであった、その方がよりよい措置であったというふうに考えております。

神崎委員 この事件の反省から、法務省と警察では、このような外国人について直ちに強制送還をしないで、各地の入管が警察に通報して逮捕するなど刑事処分の手続をとることで合意したというふうに言われておりますけれども、この警察との連携、これは今うまくいっているんでしょうか。

西川政府参考人 お答えを申し上げます。

 指紋を偽装して入国をはかろうとする事案については、入国管理局が退去強制手続をとるだけではなく、刑事処分を含めて厳格に対応する必要があるというふうに考えられたことから、入国審査時において発見された指紋偽装の不法入国事案や、摘発した不法残留者等が入国審査時に指紋を偽装していることが判明した事案等については、原則としてすべて警察等捜査機関へ通報または告発を行うということで、警察機関との間で合意をいたしております。

 今後、警察機関と協力をして、この種事犯の防止に努めてまいりたいというふうに考えております。

神崎委員 しっかり連携をとっていただきたいと思います。

 それから、今回はシリコン樹脂を使ったテープに指紋の模様をつけて偽装したというものでありますけれども、不法入国あっせん組織があって、こういう偽装を組織的にやっているということも言われておりますけれども、こういったにせの指紋、これは入国審査の際きちんとチェックできる体制をぜひとってもらいたいと思いますが、どうでしょうか。

森国務大臣 この案件の発生を踏まえて講じた対応策をちょっと申し上げます。

 詳細は事柄の性質上申し上げられませんけれども、ブースにいる入国審査官が指紋の状態をディスプレー上で確認するように改善をいたしました。逆に言うと、今までできなかったわけでございます。また、提供された指紋の品質値についてより厳格な基準を設けまして、それが一定程度以下の場合には、入国審査官が指の状態を目視の上、指紋に偽装がないか確実に確認することといたしました。

 ただ、いずれにしても、こういったことをいろいろイタチごっこのようにまた抜けようとするやからもいるわけでございますので、常に怠りなく、しっかりとチェックができるような体制をつくっていきたいというふうに思っております。

神崎委員 大臣がお答えになったように、向こうもいろいろな新たな手口を考えてくると思いますので、せっかくこういう制度をつくって、まじめな人たちが時間をとられるだけで、本当に捕まえなきゃいけない人がすうすう入ってくるんじゃ、これはとんでもない話ですので、ぜひ厳格なチェックができる体制をとっていただきたいと思います。

 それから、空港でバイオ審査が導入されますと、非常に厳しくなるわけですから、それを逃れようとして海から密入国するケースがやはりふえるだろうというふうに思います。入管としても特捜チームを発足させるということも聞いておりますけれども、今の二カ所の拠点だけでは十分でないように思います。しっかり体制をとっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

西川政府参考人 お答えを申し上げます。

 船舶による不法入国事案は、かつてのように続発というような様相はまだ呈しておりませんけれども、依然として、九州地方を初めとして各地で発生をしております。また、委員御指摘のとおり、空港における入国審査の厳格化に伴って今後増加するということも懸念されるところでございます。また、昨年十二月、犯罪対策閣僚会議において決定されました犯罪に強い社会の実現のための行動計画二〇〇八におきましても、水際での不法出入国対策を強化することとされております。

 これらの状況を踏まえまして、関係機関と連携し、また情報を収集、分析し、沿岸でのパトロールや密入国等が疑われる船舶への立入検査等を強化するため、平成二十一年度中に、北日本地域及び西日本地域における不法出入国対策のための体制整備を考えております。この新たな体制を十分に活用し、船舶による密入国の不正な出入国事案の防圧に努めてまいりたいというふうに考えております。

神崎委員 よりしっかりした体制をぜひとっていただきたいと思います。

 次に、裁判員制度についてお伺いをいたします。

 本年五月二十一日からいよいよこの制度がスタートをすることになりました。私は、総括的に、この制度に対する批判の御意見もありますので、当局の考え方を整理してお伺いいたしたいと思います。

 そもそもこの制度は、平成十一年七月に内閣に設置されました司法制度改革審議会、これが平成十三年六月に裁判員制度の導入を提言いたしました。意見書は、司法制度改革の三本柱の一つとして国民の司法参加を掲げ、その中核として裁判員制度を位置づけたものであります。制度導入の意義につきましては、「一般の国民が、裁判の過程に参加し、裁判内容に国民の健全な社会常識がより反映されるようになることによって、国民の司法に対する理解・支持が深まり、司法はより強固な国民的基盤を得ることができるようになる。」と指摘しているところであります。

 この意見書を受けまして、司法制度改革推進法が成立し、平成十三年十二月、内閣に司法制度改革推進本部が設置されました。平成十六年三月、裁判員法が国会に提出され、五月二十一日に成立をした、こういうことでございます。

 現在においても、この制度に対して反対する意見、時期尚早として延期すべしという意見があります。私は、この制度は、ただいま申し上げましたように、長い年月をかけ、多くの有識者の意見を徴して実現した制度でありまして、粛々実施すべきものと考えております。

 法務大臣、最高裁判所の、裁判員制度実施に向けての御決意をお伺いいたしたいと思います。

森国務大臣 昨日の所信表明でも申し上げましたとおり、裁判員制度は司法制度改革の柱となる重要な制度であり、国民が刑事裁判に参加し、その健全な良識を裁判に反映させることによって、司法に対する国民の支持、信頼が一層深まり、司法がより強固な国民的基盤を得ることができるようになるという重要な意義があります。また、私も、法務大臣就任に当たり、麻生総理から二点の御指示をいただきましたけれども、第一点が、裁判員制度の円滑な導入ということでございました。

 法曹三者においては、裁判員制度を円滑に実施するため、迅速でわかりやすい裁判の実現など、裁判員の負担の少ない運用に向けたさまざまな取り組みを積極的に行ってまいりました。また、より多くの国民の方々に安心して参加していただけるよう、法務省においては、関係省庁や最高裁判所等と連携し、裁判員制度の広報活動や、国民が参加しやすい環境の整備を行ってまいりました。

 裁判員制度の実施まで残すところ二カ月余りとなりましたが、今後とも、より多くの国民の方々に不安なく参加していただけますように、広報活動を積極的に行うなどいたしまして、裁判員制度の円滑な実施に向け、最大限の努力をしてまいりたいと存じます。

小川最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、裁判員制度に反対する意見、あるいは延期すべきだというような意見があるということは承知しておりますけれども、裁判所といたしましては、裁判員制度を適正に運営していく、こういう立場から、国民のさまざまな疑問や不安に応じたきめ細かい情報を提供する広報活動を行うとともに、国民にわかりやすい刑事裁判の実現、それから国民の負担に配慮した選任手続の構築等に向けて準備を重ねてきたところでございます。

 今後も、御質問の趣旨を踏まえまして、円滑で安定的な制度の運用に努めてまいりたいというふうに考えております。

神崎委員 裁判員制度に反対もしくは実施の延期を求める意見に対します法務当局、最高裁の考え方を一つ一つお伺いしたいと思います。

 一つは、各種世論調査によると、国民の八割は裁判員制度に対して参加したくないという気持ちを抱いている、こういう状況下で、本来司法制度改革が理想としていた国民による裁判は不可能だとして反対する意見があります。

 私は、裁判員制度に対する国民の理解を求めるさらなる努力が必要と考えますし、実際に裁判員制度を運用していく中で国民の理解を得るしかないのかな、このように考えておりますけれども、こういった反対意見に対してどう対処されるのか、これは最高裁にお伺いします。

小川最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 多くの国民の方々に裁判員制度を理解していただくことが重要であるということは、委員御指摘のとおりでございます。

 最高裁が実施しました意識調査によりますと、裁判員制度についての認知事項が多いほど、参加意向が高い、また心配及び支障を有する割合が低いということが認められます。

 したがいまして、裁判所といたしましては、引き続き、国民のさまざまな疑問や不安に応じたきめ細かい情報を提供する広報活動を行いたい、また、国民が参加しやすい裁判を実現するため、迅速でわかりやすい裁判の実現と、国民の負担に配慮した選任手続の運用に取り組んでまいりたいと考えております。

 また、裁判員制度の実施後におきましても、裁判員制度を適正かつ円滑に運用することで、国民の皆様に制度の意義を十分理解していただけるようにしてまいりたいと考えておりますし、そういうことによって意義を感じていただいた、実感していただいた裁判員の経験者を通じても、国民の皆様に制度に対する理解が深まっていくということを期待しております。

神崎委員 二点目の批判は、裁判員制度は憲法違反の疑いがあることを理由とする反対意見であります。

 憲法八十条一項などの憲法の司法の規定に違反する、憲法三十七条一項の公平な裁判所の保障に違反する、憲法七十六条三項の裁判官の独立の規定に違反する、憲法十三条、十八条、十九条等の裁判員候補者及び裁判員の基本的人権の侵害がある、裁判員の交代を認めるのは憲法三十七条一項に違反する等々、さまざまな論拠を指摘しているところであります。

 私は、憲法が要請しているのは、独立して職権を行使する公平な裁判所が法と証拠に基づいて裁判を行うことと、そのような裁判を受ける権利を保障することでありまして、裁判員制度は憲法のこの要請を十分満たしているので何ら違憲の疑いはないと考えております。

 法務当局は、この点についてどうお考えでございましょうか。

大野政府参考人 裁判員制度について、一部に憲法違反ではないかというような御意見があることは承知しておりますけれども、裁判員法は、そのような御意見も聞きながら、憲法との関係も含めて十分な検討を経た上で立案され、国会での御審議を経て成立したものでありまして、憲法上の問題はないというように考えております。

 具体的に申し上げます。

 初めに、憲法の裁判所に関する規定との関係であります。

 憲法は、司法権に関する第七十六条以下の規定におきまして、裁判官の職権の独立やその身分保障を定めるとともに、第三十二条の裁判所における裁判を受ける権利、それから第三十条の公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利の規定を置いているわけであります。こうした規定で憲法が求めております裁判所といいますのは、先ほど委員の御質問の中にもございましたように、独立して職権を行使する公平な裁判所によって法による裁判が行われることであるというように解されるわけであります。

 今回の裁判員法は、裁判員の資格やその職権行使の独立性等につきまして規定を置き、手当てをしております。また、裁判員と裁判官が十分な評議をして適正な結論に達することが求められております。さらに、法令解釈については裁判官のみに権限が与えられております。そして、判断におきましては、裁判員と裁判官双方が権限を有する事項についての判断につきましては、裁判官と裁判員それぞれの意見を含む合議体の過半数によって決せられるとされているわけであります。

 こうした具体的な制度設計を講じることによりまして、裁判員制度は、先ほど申し上げたような、憲法の要請する裁判所による裁判を確保する憲法の趣旨に沿ったものであるというように考えております。

 次に、憲法十八条が意に反する苦役に服させないと規定していることとの関係でございます。

 済みません、先ほど私、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利につきまして、三十条とあるいは申し上げたかもしれませんが、三十七条でございます。訂正させていただきます。

 憲法十八条の苦役に服させないというその関係につきまして申し上げますと、裁判員制度は、広く国民の司法参加を求めるという趣旨に加えまして、実際に相当多数の国民の参加を得る必要があることや、国民の間の負担の公平を図らなければいけないということから、裁判員になることを法律上の義務にしているわけであります。

 その上で、裁判員となる義務の履行を担保するための手段につきましては、刑事罰や直接的な強制の措置によることなく、過料を科すことにとどめております。また、一定のやむを得ない事由がある場合には裁判員となることを辞退する制度を設けまして、適切に義務の免除が認められるようにしております。さらに、迅速な裁判を実現するための刑事訴訟法の改正や、出頭した裁判員に対する旅費、日当等の支給等の、国民の負担を軽減するため、さまざまな手当てが行われております。

 こうした点を考慮いたしますと、裁判員法における裁判員となることの義務づけは、裁判員制度の実施のための必要最小限のものであると言うことができますので、憲法十八条、その意に反する苦役を強制するものではないと考えます。

 最後に、憲法十九条の思想、良心の自由との関係について申し上げます。

 裁判員としての職務を行う義務は、裁判員として選任された者に一定の思想や信条を強制するものではありません。したがって、裁判制度や刑罰について一定の考え方を持っている方に裁判員としての職務を行う義務を課すとしても、直ちに思想、信条の自由を侵害するとは言えないと考えております。

 そして、裁判員の候補となられた方が、裁判員としての業務をその思想、信条に反して行うとすると精神的な矛盾や葛藤を抱えることになり、裁判員としての職務を行うことが困難になる場合には、辞退事由を定める政令六号の事項、精神上の重大な不利益が生ずる場合に該当し、辞退が認め得ると考えられるわけであります。したがいまして、裁判員として職務を行っていただくことにより思想、信条の自由を侵害するようなこともないというように考えます。

 以上、申し上げたような次第で、裁判員制度は憲法に違反しておらない、憲法に合致したものであると考える次第でございます。

神崎委員 三点目の批判は、裁判員制度の対象事件が殺人などの重大事件に限っているのはおかしい、こういう批判があります。

 制度設計に当たりまして、国民の司法に対する理解を増進し、裁判の正当性に対する国民の理解を高め、よりよい社会をつくり出すことを目的とするのであれば、軽微な事件から始めて、運用が定まるにつれてその範囲を広げていく、こういう選択肢もあったんだろうというふうに思いますけれども、あえてこういう殺人などの重大事犯から始めることとしたわけでございますが、これはどういう理由からでしょうか。

大野政府参考人 裁判員制度の対象事件を重大事件に限った理由でありますけれども、一つは、裁判員制度の円滑な導入のためには、現実問題といたしまして、対象事件を限定する必要があると考えられたことがあります。

 それから、裁判員制度の趣旨でありますけれども、国民の感情を裁判の内容に反映させ、司法に対する国民の理解と支持を深めるという趣旨にかんがみますと、国民の関心が高く、社会的にも影響の大きい重大事件をその対象とすることが相当であると考えられたからであります。

 国民が裁判に参加し、通常の合議体よりも多い人数による裁判体によって裁判を行う、いわば手厚い体制をもって裁判を行うということからいたしますと、これが軽い犯罪ではなしに重大な犯罪を対象とするということは、ある意味で自然であると考えられます。

 刑事裁判への国民参加を制度化している諸外国におきましては、いずれも重大な犯罪について国民参加を導入しているというように承知しております。

神崎委員 四点目の批判ですけれども、裁判員制度は、一審の裁判のみ国民参加を義務づけております。国民による司法参加を実現するのであれば、少なくとも高裁にも裁判員制度を導入すべきである、こういう批判があります。

 一審のみ裁判員制度を導入した理由についてお答えをいただきたい。

大野政府参考人 我が国の裁判制度のもとでは、控訴審、いわゆる第二審におきましては、みずから事実認定や量刑を新たにやり直すのではなく、第一審の判決を前提として、その当否を事後的にチェックする形で審理が行われているわけであります。

 そういたしますと、職業裁判官のみで構成される控訴審が、裁判員が加わった第一審の判決の誤りの有無を判断するとしても、裁判に一般の方の感覚を反映するという裁判員制度の趣旨に反するものではないと考えられます。

 控訴審におきましては、主に書面から成る公判記録によりまして、第一審に提出された証拠や主張、審理経過を精査して、第一審の判断の誤りの有無を審査することを職務内容とするわけでありますけれども、そうした業務の内容は、いわばアマチュアであります裁判員が本来の力を発揮できる場面とは考えにくいわけでありますし、また、その負担も、第一審に参加する場合に比べて相当重くなるというようにも考えられます。

 そうしたことなどを踏まえまして、控訴審につきましては、現行どおり裁判官のみで構成されるものとし、裁判員が参加するのは第一審のみとすることが適当と考えられたわけでございます。

神崎委員 五点目の批判といたしましては、裁判員制度の運用として、地裁では審理の短縮ばかりに目が行き、被告人の生活歴、動機の深い部分、犯行状況の詳細な点などが、すべて証拠請求が却下され、真実の探求という刑事裁判の基本から遊離することになるのではないか、こういう批判があります。

 最近の事例を見ますと、広島の小学一年生の女の子の殺害事件につきまして、第一審は五月に始まる裁判員制度を想定した審理の形式をとったところでございますけれども、第一審の判決に対し広島高裁は、審理が尽くされていないとしてこれを破棄し、審理を差し戻しているわけであります。

 真相解明という刑事裁判の重大な使命を裁判員裁判でもおろそかにしてはならないという警鐘だろうと思いますけれども、真相解明と迅速な審理、これを実際の法廷でどのようにバランスをとっていかれるのか、これは最高裁にお尋ねをしたい。

小川最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 一般的に申し上げますと、裁判所としましては、事案の真相を明らかにする、それから被告人の権利を保護する、これが刑事裁判の基本でございますから、これは裁判員裁判においても同じように実現、全うしなければいけないというふうに考えておりますし、それとあわせまして、裁判員として参加する国民が審理の内容を理解して意見を述べることができるということも実現しなければいけません。それから、合理的な期間内に審理を終えて、参加する国民の生活、経済面、精神面での負担をできるだけ少ないものにすること、これらを実現しなければいけませんものですから、審理に当たっての公判前整理手続での審理の工夫、それから審理計画を立てる、それから、先ほど申し上げましたが、選任手続についても、適切な選任手続を運用していく、そういうことを心がけてまいりたいと思っております。

神崎委員 六点目の批判は、裁判員制度のもとでは、構造的に従来より無罪判決が出やすくなると見られる。これまでより検察官に訴訟当事者としての意識が強くなり、その結果、検察官に公益の代表という伝統が弱まるのではないか、こういう批判がありますが、どうでしょうか。これは法務当局にお伺いをいたします。

大野政府参考人 我が国の刑事裁判におきまして、これまで、検察官は公訴官として誠実、公平かつ積極的な公判活動を通じて実体的な真実の解明に努めてまいりました。検察官が公益の代表者として果たすこのような役割は、裁判員裁判におきまして当事者主義、当事者追行主義が重視されることになっても、何ら変わるところはないと考えております。

 むしろ、裁判員裁判におきましては、刑事裁判に従事した経験のない一般の国民から選任された裁判員が公判審理と評議に加わるわけであります。検察官といたしましては、より一層、そのフェアネスといいましょうか、フェアで、そして公益の代表者として果たすべき役割はますます大きくなってくるのだろうというふうに考えております。

神崎委員 七点目は、少年の刑事事件の取り扱いに関しての批判でありますけれども、裁判員裁判において、膨大な社会記録を果たして取り調べることができるか。社会記録の内容を削減すれば少年法の理念は没却されるし、社会記録を全文朗読すればプライバシーを侵害することになる、こういう批判があります。

 実際に、少年事件をテーマにした模擬裁判では、少年の生育歴などの調査を通じて家裁調査官が作成する社会記録の中の調査票の記載のあり方が問題になっております。日弁連は、調査記録を証拠として制限しないよう求める意見書を提出いたしております。

 少年の刑事事件における社会記録の取り扱い、これはどうなるのでしょうか、裁判所にお伺いします。

小川最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、社会記録を取り調べるということになりますと、その場合は、少年やその他の関係者のプライバシーに十分配慮する必要がございます。その一方で、刑事裁判は公開が原則でありますし、口頭主義、公判中心主義の原則もございます。

 裁判員裁判では、裁判員の方の負担を軽減し、充実した評議を実現するためには、法廷で心証を形成することができるような、目で見て耳で聞いてわかる、こういう審理が行われることになります。

 平成二十年十一月に公表されました司法研修所における司法研究の骨子の中では、裁判員裁判における少年法五十五条の保護処分相当性に関する主張、立証のあり方につきましては、刑事処分以外の措置をとる特段の事情の有無については、「通常は一般の刑事裁判と同様の証拠で判断し得る。社会記録が必要になる場合でも、基本的に少年調査票の「調査官の意見」欄で証拠としては足りる。」「「調査官の意見」について弾劾的な主張・立証を行う当事者は、少年等のプライバシーに配慮した上で、社会記録を含めて開示された記録の中から公判での朗読に適した部分を抜粋し、それを証拠化するべく努めるべきである。」とされております。

 裁判所といたしましては、裁判員制度の導入によって社会記録の内容や少年調査票の記載のあり方を変更することは考えていないところでございまして、司法研究は、それを前提とした上で、裁判員裁判における少年事件の審理のあり方について一つの方法論を示したものと考えることができます。

 いずれにいたしましても、この司法研究は最高裁として何らかの指針を示したというものではございませんけれども、この司法研究を踏まえて、少年法の趣旨を尊重しつつも、裁判員の方にわかりやすい審理のあり方についての検討をさらに深めるための取り組みがされているところでございます。

 裁判所といたしましては、今後とも、検察庁や弁護士会とも連携して、少年等のプライバシーにも配慮しつつ、裁判員にわかりやすい審理のあり方について議論を深めていただくことが必要と考えております。

神崎委員 八点目の批判は、責任能力に関する鑑定手続のあり方であります。

 裁判員法によりますと、裁判所は公判前の整理手続において鑑定の手続を行う旨の決定をすることができることになっております。

 平成十九年度司法研究報告書の骨子によりますと、「公判審理前に実施した鑑定を最大限有効に活用する方策を推し進める必要がある。」このようにしております。

 これらは予断排除原則との関係で問題がないのかどうか、この点についてお伺いをいたします。

小川最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、裁判員法五十条では第一回の公判期日前の鑑定について定められておりますが、公判前整理手続では、審理計画を立てることを目的として、鑑定の経過及び結果の報告の準備行為がされるだけでございますので、裁判所において心証を形成するようなことはございません。

 したがって、第一回の公判期日前の鑑定が予断排除原則に抵触するようなことはないと思われます。

 この点について、裁判官の研究会でも、例えば公判前整理手続において精神鑑定の請求がなされた場合に、その必要性について捜査段階の鑑定の内容をもとに当事者双方と意見交換をする際には、心証形成が目的でないことについて当事者の理解を得ることが必要であるとの議論がされているところでございます。

 裁判所といたしましては、今後とも、検察庁や弁護士会とも十分意見交換を行い、公正適切な鑑定手続のあり方の検討を深めてまいりたいと考えております。

神崎委員 以上、裁判員制度について反対もしくは延期をすべしという意見、網羅的にこの意見についての当局の御意見というものを伺った次第でございますけれども、いろいろな問題点についてきちんと対応をされているというふうに考えますので、粛々と実施をしていただきたい、このように思います。

 もう一点だけ、裁判員制度によると控訴審の構造に変化が生ずるのかどうか、この点についてお伺いをしたいと思います。

 さきの司法研究所の骨子によりますと、事実認定についての「国民の視点、感覚等が反映された結果をできる限り尊重しつつ審査に当たる必要がある。」としております。量刑不当についても、「よほど不合理であることが明らかな場合を除き、第一審の判断を尊重するという方向性をもったものと考えてよい」としているところでございます。

 そうしますと、裁判員制度を採用したことによって、特に事実認定及び量刑の面で控訴審の構造に従来と比べて変化が生ずると考えていいのかどうか、この点についてお伺いをいたします。

小川最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 今委員が御指摘になられました平成二十年十一月に公表された司法研究の骨子でございますが、「第一審の判断は、その経験則・論理法則に裁判員の知識・経験等が反映されたものであるとすれば、控訴審は、例えば、客観的な証拠により認められる事実を見落とすなどして、経験則・論理法則上あり得ない不合理な結論に至っている場合などを除いて、基本的にこれを尊重するという姿勢で臨むべきであろう。」などとしております。

 また、量刑判断につきましても、委員御指摘のとおり、「量刑審査に関する基本的な姿勢としては、国民の健全な社会常識を反映させようという裁判員制度の趣旨からすれば、よほど不合理であることが明らかな場合を除き、第一審の判断を尊重するという方向性をもったものと考えてよいのではないか。」としております。

 この司法研究は、先ほども申し上げましたが、最高裁として何らかの指針を示したというものではございませんし、司法研究におきましても、「控訴審の在り方に関しては、実際に制度の運用が開始され、第一審の裁判が国民にどのように受け止められるかによって影響を受けるのではないか、といった流動的側面があり得る」というふうにしております。

 ただ、いずれにしましても、裁判所といたしましては、この司法研究も踏まえまして、裁判員裁判における控訴審のあり方についての検討をさらに深めていく必要があると考えているところでございます。

神崎委員 別件でもう一点。

 外国人対策でありますけれども、覚せい剤取締法違反事件などで起訴されましたスイス人女性が一審千葉地裁で無罪判決を受けたにもかかわらず、控訴した検察官は勾留請求し、東京高裁が勾留を認めました。これに対して被告人側から異議申し立てがなされましたが棄却され、特別抗告がなされましたが、最高裁は抗告を棄却しております。その後、覚せい剤取締法違反事件等については、東京高裁は検察側の控訴を棄却する判決を言い渡したところでございます。

 日本人の場合は、通常、一審で無罪判決が出ますと刑訴法の規定により釈放されますが、外国人については、一たん国外退去になれば、控訴審の審理において被告人質問が必要になってもこれを行うことができず、かつ、勾引によってはその出頭を確保することが困難であると認められるとして、勾留の必要性があると解されているわけであります。

 ただ、私は、日本人と外国人とで取り扱いが異なることは、やはり何となくこれは釈然としないわけであります。

 最高裁の決定には補足意見があります。退去強制手続と刑事訴訟手続の調整規定を設けて、退去強制の一時停止を可能にするなどの法整備の必要性があると指摘しているところであります。

 刑訴法の手続と出入国管理法の手続に不備があるのであれば改正すべきではないか、このように考えますが、いかがでしょうか。

森国務大臣 委員御指摘のとおり、平成十九年十二月十三日の最高裁決定において補足意見が付されたことは聞き及んでおります。

 このような事例において、検察においては、退去強制の実施により控訴審における刑事訴訟手続に支障が生じ得ることを想定し、必要性が認められる場合には早急に裁判所の職権発動による勾留を求めるなど、適切な対応に努めているものと承知しております。

 いずれにいたしましても、御指摘のような場合に、控訴審における審理の適正を確保するに当たって、被告人の退去強制との関係で生じ得る問題については、今後新たな措置を講ずる必要があるかどうか、そういった必要性も含めまして検討してまいりたいと存じます。

神崎委員 終わります。

山本委員長 次に、細川律夫君。

細川委員 民主党の細川律夫でございます。

 きょうのこれまでの委員からの質問の中でも出ておりましたので、大臣に対する質問に入る前に、我が党の小沢代表の秘書が政治資金規正法違反の容疑で逮捕された事件について若干触れておきたいというふうに思います。

 私は、個別事案で検察の捜査に対して本委員会で意見を述べるというような筋合いではないということは十分承知をしております。しかし、一部ではちょっと見逃せないような報道が多々ありますので、この点について申し上げておきたいというふうに思います。

 例えば、報道の一部では、三月の五日、これは朝日新聞の記事をちょっと例にとって申し上げますけれども、この記事にはこういうふうに書かれております。

 法務・検察の関係者の一人は、大久保秘書が公共工事に影響力を及ぼしていた実態を金丸時代とは何も変わっていないと指摘。別の検察幹部もこう言った。小沢氏の議員生活は自民党が長いんだから、そういう体質なんだよ。詳しくは言えないが、今回は献金という客観的な事実に加え、その理由もある。そういう記事となっております。

 本当に法務の、あるいは検察の幹部職員がマスコミの関係者にこういうことを言ったとしたら、私は大問題だと思うんですよ。こういう発言自体、捜査上の秘密を漏らすとか、これは公務員法上の守秘義務違反でもあるでしょう。あたかも収賄事件に関係するがごときの表現を用いるということは、これは政治的な意味合いを考えますと、検察権力の濫用という懸念も大変強いわけですよ。私は、こういう懸念が持たれるようなことは、検察そして法務幹部の職員は絶対慎んでもらいたい、厳にこのことを申し上げておきたいというふうに思います。これは私の考えでありますから、あえて答弁は求めません。答弁を求めたとしても、これはもう言うことは決まっておると思いますから、答えは。

 それでは次に、これも一昨日の報道であったんですけれども、フィリピン人のカルデロンさん一家の親子の問題でございます。これは私の地元のことでもありますけれども、この一家が退去強制命令を受けて、東京の入国管理局に出頭して、夫のアランさんが収容されました。この件は、両親が不法に入国して、妻のサラさんが入国管理法で逮捕されて、一家は退去強制命令を受けまして、最高裁で敗訴が確定をした後に、在留特別許可を求めてきていたものでございます。中学一年生のノリコさんが日本で育って、日本語しかできない、そういう人道上の事情もありまして注意を集めてきたところでございます。私も、個人的にはその一家の三人が引き続きこの日本で生活ができたらなというふうにも思っておりますけれども。

 そこで、在留特別許可という制度についてお聞きをいたしますけれども、これについては大臣が個々の事情を勘案して決定するものだというふうに聞いております。元来、不法の者に特別に許可を与えるものでありまして、例外的な規定であるというふうに承知をしておりますけれども、それでもある種の基準があるのではないか、また、ある程度は基準がないと恣意的になるのではないかというようなことも心配されるわけであります。

 そこで、大臣にお伺いいたしますけれども、在留特別許可、この制度について大臣はどのような認識をお持ちなのか、また、その一定の基準があるのかどうか、子供の養育等、あるいはまた人道上の配慮、こういうことについては大臣はどのようにお考えになっているのか、お聞かせをいただきたいと思います。

森国務大臣 御答弁を申し上げる前に、先ほどの御指摘でございますけれども、ちょっと一言言わせていただきたいと思います。

 マスコミあるいは報道の一つ一つの記事について論評するのは差し控えたいと思いますが、検察当局においては、従来から捜査上の秘密の保持について格別の配慮を払ってきたものでございまして、捜査情報や捜査方針を外部に漏らすようなことはあり得ないものと確信をしております。

 さて、今の御質問の件ですが、外国人の我が国への出入国は、国民生活や我が国の産業等に重大な影響を与えているものであり、退去強制手続において在留特別許可を付与するか否かを決定することは、法務大臣に与えられた重要な権限であると認識しております。

 また、委員御指摘の在留特別許可の基準につきましては、個々の事案ごとに事情は異なり、種々の事情を総合的に考慮する必要があることから、在留特別許可について一義的な基準を作成することは困難でありますので、このような基準は設けておりません。

 一般論で申し上げれば、在留特別許可の判断に当たっては、当該外国人の本邦在留を希望する理由、生活状況、家族状況等の個人的事情、人道的な配慮の必要性のほか、我が国における不法滞在者に与える影響等を総合的に勘案して判断しておりますが、子供につきましては、可塑性や扶養状況、両親とともに生活することが福祉にかなうか否かの判断等、人道的観点に十分に留意した上で、先ほど述べた諸般の事情を総合的に勘案して判断することといたしております。

 この一家に対しても、以上のような観点から検討したところ、両親の在留は認めがたく、したがって、三人での在留は認められないとの結論に達しましたが、長女については、永住者等の在留資格で在留している三人のおじさん、おばさんなどがすぐ近所におられますことから、適切な監督保護、養育者のもとで学業を続けさせたいとの理由から在留を希望するのであれば、在留特別許可をしてもいいと考えておりまして、その旨伝えております。

 また、長女の在留が特別に許可された場合には、両親についても、一定の期間が経過した後、長女と面会の目的で日本を訪れる場合には、短期間であれば上陸特別許可を付与してもいいと考えております。また、その旨伝えているところでございます。

細川委員 次に、先ほど神崎委員の方からも質問がありました裁判員制度について御質問いたします。

 大臣は、所信の中で真っ先に裁判員制度の実施を取り上げまして、司法制度の現状を考える際にこの裁判員制度は最も大切な事項であるという点については、私も同感でございます。いよいよ五月二十一日の実施ということで、二カ月余りに迫ってきているところでございます。

 私は、司法制度改革が議論になった当初から、真の国民主権を実現する上では国民の司法参加というのは本当に必要不可欠であるというふうに一貫して主張もしてまいりましたし、この制度の導入には支持をしてきたところでございます。制度が開始される前にいろいろな議論が蒸し返されておりまして、延期論とか、あるいは廃止論もありますけれども、私どもは、まずはこの制度の実施を前提に、批判のある国民の不安や負担を少しでも軽減しつつ、円滑に制度の実施を実現していかなければならないということで議論をしてまいりました。それを前提に、一、二、伺いたいと思います。

 裁判員制度を批判する論調の中には、拙速な審理がなされる危険を指摘するものが多うございます。裁判員裁判は通常三日から五日程度の審理期間になる、このように言われておりまして、この点は既に公判前整理手続において迅速審理のための方策が実施をされているところでございます。

 先ほども神崎委員の質問の中で出ておりましたけれども、昨年十二月九日の広島高裁、二〇〇五年十一月に起きました幼女殺害事件の判決で、一審判決を破棄、差し戻しを言い渡した。これは、高裁が、検察官調書の審理をせずに犯行現場を誤認したり、手続上の法令違反は明らかとして、地裁で行った公判前整理手続が十分に行われないまま終結されたことを理由として、同時に、検察側の立証の仕方も問題視しているものでございます。

 この例は、公判前整理手続自体が拙速であったということを指摘したものでありますけれども、裁判員裁判で行われる公判前整理について慎重な審理を求めた点で、その影響は大変大きいものがあるというふうに私には思われます。この点について、高裁判決によって批判された検察当局はどういうふうに考えておるのか、法務省にお尋ねをいたします。

大野政府参考人 今御指摘の判決につきましては私どもも承知しておりますが、個別事件の個別判決の内容につきまして所見を述べるということは差し控えたいと思います。

 一般論ということになるわけでありますけれども、裁判員制度のもとにおきましても、実体的真実を解明して適正な事実認定と量刑を実現するという刑事訴訟の目的には変わりがないはずであります。そのためには、裁判員が参加されるということでいたずらに拙速に流れて、それによって真実の解明が行われない、あるいは適正な量刑が実現できないということになれば、これはおかしなことであります。

 そうしたことから、検察といたしましても、裁判員制度のもとにおいて、先ほども申し述べたような刑事訴訟の目的を達成するために、公判前整理手続の運用のあり方についての検討も含めて、迅速でわかりやすく、しかも適正な審理の実現に努めているというように承知しております。

 先般、最高検察庁から、裁判員裁判における検察の基本方針について公表がなされております。この中におきましても、検察官は、事案の立証構造を明解に提示して、簡潔な立証で足りる部分については簡潔なものとするけれども、公訴事実と重要情状事実、とりわけ、争点とその事案の柱となる事実については手厚く、遺漏のない効果的な立証を行わなければならないとしているところであります。

細川委員 公判前整理を拙速に行いますと事実の究明そのものが危うくなるということは、この判決が示しているというふうに言えると思います。

 一方、公判前整理が公判廷における新たな主張の制限あるいは争点の過剰な絞り込みなどにつながって、被告人の権利を侵害することにもなりかねないという批判もございます。幾ら公判前に争点を決めたとしても、公判の中でまた新たな論点が出ることも予想されます。その点、慎重な運用がなされないと被告人の弁護権が侵されるというおそれもあると考えますが、この点、最高裁はどのように考えておられるか、お聞かせください。

小川最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 真相を明らかにすること、それから被告人の権利を保護すること、これは刑事裁判の基本でございますので、裁判員裁判においても同様の要請は満たされなければいけないというふうに考えております。

 裁判官の研究会でも、事案の真相解明のために審理を尽くすべきことは裁判員裁判のもとにおいても異なることはなく、必要な証拠は採用されなければならない、この点を前提として、公判前整理手続における証拠の厳選に当たっては、証拠の数を減らすことのみに注力するのではなく、本事案の真相の解明に必要不可欠な証拠は何かをまずよく考え、その上で、どのような証拠方法を用いれば裁判員に的確に心証をとってもらうことができるかなどといった観点から、証拠を整理することが肝要であるといった議論がされているところでございます。

 また、刑事訴訟法三百十六条の三十二第一項によれば、やむを得ない事由によって公判前整理手続において請求することができなかった証拠については、公判前整理手続終了後でも証拠調べを請求することができるということになっております。裁判所といたしましても、やむを得ない事由があると認められる場合には、当然、新たな証拠調べ請求を認めることとなります。

 裁判員裁判では、事案の真相の解明や被告人の権利の保護、それから、わかりやすい審理、裁判員として参加する国民が審理の内容を理解し意見を述べることができる、それから、合理的な期間内に審理を終え、参加する国民の生活、経済面、精神面での負担をできるだけ少ないものにする、こうした要請を満たす、そういうことを実現していくことが大事だと思っております。

細川委員 裁判員裁判は、公判は大体三日から五日で行われるというふうに言われております。しかし、事件によっては、本人は、被告人は否認をしている、あるいは複雑で大変重大な事件、こういうような事件については、多分五日ぐらいでは終わらないだろうということも当然予測をされます。しかしまた、拙速な公判というのは、これもまた避けなければならない。

 こういうことになりますと、重大な事件で、一体どれぐらいの、裁判員裁判で日数が最大かかるような事件はどの程度と予想しているのか、ちょっと最高裁の方にお答えいただきたいと思います。

小川最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、私どもとしましては、これまでの実際にかかった時間をもとにして、多くの事件が五日以内に終わるであろうという見込みを持っておりますけれども、確かに、それを超えて、ある程度長い期間がかかる事件はあると思います。

 ただ、複雑困難な事件が最長でどのぐらいかかるだろうかということを今申し上げるのは、これは事件の内容にもよりますので、一概に申し上げることはなかなか難しいかというふうに考えております。

 ただ、平成十八年の司法研究では、これまでに一年を超えて数年をかけて判決に至っていた事件について検討しましたところ、公判前整理手続を適切に活用することなどによって、四期日から十二期日におさめることが可能だというような研究結果も報告されてはいるところでございます。

細川委員 ちょっと明確な答えがいただけなかったので、この点については今後また議論もしていかなければいけない問題だというふうに思っております。実施、二カ月に迫っておりますので、まだまだ詰めなければならない問題もあるかと思います。

 そこで、大臣にお聞きをいたしますけれども、大臣は所信の中で、より多くの国民の方々に、裁判員制度の意義を十分理解していただき、不安なく裁判員として参加していただくことができるよう、引き続き全力を尽くしてまいりますというふうに言っておられますけれども、では、大臣の実施に向けた決意を簡単にお願いします。

森国務大臣 細川委員には、この裁判員制度の意義につきまして深い御理解をいただいて、また、さまざまな御協力をいただいておりますことに心からの敬意を表したいと思います。

 今、いろいろな本質的な御指摘がございました。法曹三者においては、裁判員制度の実施に向けまして、迅速でわかりやすく適正な裁判の実現を目指して、公判前整理手続の運用のあり方についての検討を初め、さまざまな取り組みをこれまでも積極的に行ってまいりました。

 しかし、ただいまの専門家たる細川委員の御指摘は極めて傾聴すべき御意見であると思いますので、もういよいよ時日も迫りましたけれども、これから積極的に、国民の皆様方の不安が解消され、そしてまた、きちんとした裁判ができるような体制づくりのために、私の置かれた立場で全力で頑張ってまいりたいと思いますし、また関係者のさらなる御努力を期待したいと思っております。

細川委員 時間もありませんから、私、最高裁判所にお聞きをいたしますけれども、このところ、裁判所の書記官あるいは裁判官、不祥事が余りにも続いている、このことについて非常に遺憾に思っております。

 昨年は、宇都宮地裁の元裁判官がストーカー事件によって弾劾裁判があったばかりでありますし、今度は、京都の家庭裁判所の元書記官が公文書偽造とかあるいは詐欺罪、たくさんの事件を起こしまして、国民の皆さんが裁判所からの書類を信頼しなくなるんじゃないかという、信頼を損ねる、大変大きな事件が起こりました。

 今度はまた、福岡高裁宮崎支部の裁判官が準強制わいせつ事件でこれまた逮捕されて起訴された、こんな事件が起こっている。まさに言語道断であり、国民の皆さんが、裁判官あるいは裁判所の職員に対する大変な今までの尊敬の念が崩れていくような、そんな事件が多発をいたしております。

 したがって、この点について一体最高裁はどのように考え、どのような再発防止を考えているか、お答えをいただきたいと思います。

大谷最高裁判所長官代理者 御指摘のとおり、京都家裁の元書記官が起訴され、さらに引き続きまして、福岡高裁宮崎支部の判事が逮捕、起訴されたという事件がございました。私どもとしては、まことに遺憾に存じております。

 裁判官について申し上げますと、この宮崎支部所属の裁判官につきましては、二月二十七日に起訴されまして、最高裁としては、本件について厳正に対処すべきであるという判断をし、三月九日に、裁判官訴追委員会に対して、この判事の罷免の訴追を求めたところでございます。

 今御指摘もありましたとおり、昨年、ストーカー行為規制法違反で現職の裁判官が有罪の判決を受け、さらに弾劾裁判によって罷免されたということに加えまして、またしても現職の裁判官によりまして、裁判官あるいはひいては司法に対する信頼を大きく傷つける事態が引き起こされたということについては、まことに遺憾であり、深くおわび申し上げます。

 昨年の件も本件も、突き詰めれば裁判官個人の基本的な自覚の問題ということになると思われ、最高裁としては、昨年の件を教訓として対応を講じてきたところでありますが、それが十分に生かされていないではないかという批判を受ければ、それは弁解のしようもないところでございます。

 今後は、こういった反省も踏まえまして、信頼回復のための方策をさらに検討して、万全を期してまいりたいと存じます。

細川委員 ぜひ裁判官に対する信頼回復に努力をしていただきたいというふうに思います。

 最後の質問になりますけれども、死因究明の問題でございます。

 これまで、私ども民主党からは、死因究明二法案をこの委員会に提案をしてきているところでございます。また、委員会では委員長主宰の勉強会も行ってまいりましたし、また、委員の海外派遣では、その調査の結果も提言もいたしておるところでございます。

 私は、大臣の所信表明の中で死因究明の問題について一言も触れられなかったということは、まことに、まことに残念であります。ぜひとも、大臣におかれましては、この死因究明に積極的に取り組んでいただきたいと思いますし、また、前回は早川政務官にも御質問をし、早川政務官の方からも、しっかりやっていくというような答弁もいただきました。

 この死因究明に対しての大臣の考え、これからの取り組みの考え、また早川政務官にも、どのようにお考えになっているかを聞きまして、私の質問を終わりたいと思います。

森国務大臣 かねてから細川委員より御要請をいただいている案件でございまして、また、私自身もその意義については十分認識をしております。

 現在、内閣官房主導のもとで、関係省庁による死因究明の検討会が開催されておりまして、法務省といたしましては、関係省庁と連携協力しつつ、引き続き真摯な検討を続けてまいりたいと思っております。

早川大臣政務官 ただいま大臣から御答弁がありましたけれども、大臣から特に私に対しても、この問題に取り組むようにということで、検討作業をさせていただきました。

 しかしながら、これは犯罪死のみならず、公衆衛生等の観点からの検討が必要である、他省庁の所管にも及ぶものであるということで、関係省庁と連携協力をしなければならないということから、結果的には、自民党、公明党の与党の中で、二月の十九日に異状死に関する議員連盟を立ち上げさせていただいて、その際に、それまでの法務省内で検討したこと等を踏まえて、私個人の意見を表明させていただきました。今後は、その議連を通じて、各省庁横断的な取り組みを進めていただくことになろうかと思っております。

 以上であります。

細川委員 どうもありがとうございました。

山本委員長 次に、山田正彦君。

山田委員 民主党の山田正彦です。

 先ほど細川委員から法務と検察のいわゆる不見識な発言についてお話がありましたが、そのことについてちょっとお聞きしたいと思っております。

 刑事局長、お答えいただければと思うんですが、私も、法務省は課長以上は検察官、いわゆる検事さんだというふうにお聞きしておるんですが、刑事局長も検察官、検事さんをやった御経験もおありだろうと思います。

 法務と検察の関係、検察の現場に行って法務に戻ってくるとか、そういうふうに非常に一体となっているのかどうか、その辺はどうでしょうか。

大野政府参考人 私は刑事局長でございますので、刑事局の関係について申し上げますと、刑事局の所掌事務は刑事法関係が中心でございます。それと同時にまた、検察庁の行政的な部分にわたるところもございます。そうしたことから、刑事局の中には検事も配置されております。

 ただ、刑事局に勤務する検事はあくまでも法務大臣の部下でございまして、検察庁で勤務する検事とは当然、仕事の上でもけじめといいましょうか、があるものだというふうに考えております。したがいまして、検察の捜査につきましては、これはあくまでも検察庁がその責任において行っているということでございます。

 私どもは、検察の捜査につきまして、国会から説明を求められた際に、法務大臣がこれを説明するのを補助している、そのような立場でございます。

山田委員 これは、国会でもって、刑事局長に時々、事件のことについて、個別の案件について聞くことはある。しかし、なぜ聞くかというと、刑事局長が検察側と捜査の内容を共有している、よく知っているから聞くのであって、刑事局長と検察との間にはいろいろな捜査についての情報の交換は十分なされている、そういうお考えが当然なんじゃないですか。

大野政府参考人 刑事局は、申すまでもないことでございますけれども、先ほども申し上げたように、法務省の一部局でありまして、刑事局長は大臣の部下として大臣を支える立場にございます。刑事局が独自に検察庁に対して何らかの指揮権あるいは指示を行うということはあり得ないことでございます。

山田委員 私が聞いているのは、指揮している、指揮していないの問題じゃない。刑事局長と検察庁との間に、事件について当然打ち合わせはなされているんじゃないかと。なされていなかったのか、今回のいわゆる政治資金規正法違反事件については。全く打ち合わされていなかったのかどうか、それをはっきりお答えいただきたい。

大野政府参考人 法務当局が具体的な事件につきまして検察当局からどのような報告を受けているのか、あるいはどの時期に受けているのかということにつきましては、捜査機関の活動内容にも密接にかかわることでございますので、具体的な答弁は差し控えさせていただきたいと思います。

 ただ、先ほども申し上げましたように、検察の活動につきましては、国会に対しては、法務省、したがいまして法務大臣、あるいはそれを補佐する刑事局が御説明をする立場にあるわけでございます。そうしたことで、検察当局から報告を受けることがあるということを申し上げたいと思います。

山田委員 どの時期に検察庁から受けたかどうかは別としても、事件について、今回の政治資金規正法違反の小沢事務所に対する捜査についても、検察側からその事件についての報告というか連絡というか、そういうことがあったことは、その時期、その内容については明らかにできないのはわかりますが、あったことは間違いないですね。

大野政府参考人 もちろん、どういう報告かということにもよるわけでございますけれども、詳細は申し上げられないにしましても、検察当局から法務当局に一定の報告はございます。

 これは、先ほど具体的に説明申し上げませんでしたけれども、検察当局から法務省、法務大臣への報告というのは、一定の事件については、これは例えば破防法の事件等につきましては大臣の指揮を受けるということにされておりますし、重要な事件については大臣に報告をするということになっておりまして、そうしたいわば枠組みの中で報告がなされるということでございます。

山田委員 大臣、刑事局長は大臣の部下であると。刑事局長そのものに検察の方から今回の捜査についても話はあっていると。

 そうしたら、部下が上司にそのことを報告するのは当然ですね。大臣も報告を受けた、いかがですか。

森国務大臣 委員が報告の内容についてどういうことをおっしゃっているのかわかりませんけれども、その報告の内容というか、どういう事項についてですね。ただ、内容については、私はその直前まで全く存じませんし、特にこの案件にかかわらず、検察の捜査活動についての内容については報告を受けておりません。

山田委員 直前まで知らなかったと言われましたね。では、直前に報告は受けたんでしょう。うそを言っては困りますよ。

森国務大臣 逮捕するということについての報告は受けました、事前に。

山田委員 いつの時点で、どのように受けましたか。

森国務大臣 今回の事案について、三月三日の四時半に、刑事局を通じまして、検察当局からの報告ということで、五時に逮捕するという事前の報告を受けました。結果的には五時十分に逮捕となっております。

山田委員 どうも信じがたい話ですね。まあいいでしょう。いずれにしても、これが真実だとは思えない。(発言する者あり)

山本委員長 御静粛に願います。

山田委員 私にとっては信じがたい話だと言っているんだ。

 それで、大臣としては、そのことを官邸に報告はしなかったのですか。

森国務大臣 しておりません。事後聞いたところによれば、逮捕後に法務省を通じて報告をしているということでございます。

山田委員 大臣からは、あるいは検察庁からは、官邸に事前にこれだけの案件が全く相談なされなかった、報告なされなかったと。それで、大臣、今はっきりそう明確に答弁されていいんですか。後日それが明らかになったときはどうされますか。

森国務大臣 法務省の最高責任者は私でございます。

山田委員 私の持ち時間は少なくて、きょうはほかのことを聞こうと思って準備しておったんですが、続けてやりましょう。

 もう一つは、新聞、捜査上に、いろいろなことが載っていますが、特に漆間氏の発言、自民党には及ばないと。これは、各紙、自民党は絶対捜査が行くことはないと。漆間官房副長官といえば、まさに各省庁の官僚を束ねる、いわゆる官邸における次官会議のトップですね、しかも警察庁長官を歴任している、一番大事な立場にある。その漆間官房副長官がそういうことを言う。記憶にないと今言っておるようですが、記憶にないということはね。

 いずれにしても、それについて、法務大臣もしくは刑事局、検察庁、いずれかが漆間官房副長官にそのようなことを話さないと、そういう発言が各紙全部に報道されるということはあり得ない。そういうこと、あり得ないことがあり得ているということについて、刑事局長、語っていないのかどうか、検察と含めて、大臣にも。まず刑事局長にお答え願いたい。

大野政府参考人 先ほど大臣からも御答弁申し上げましたように、法務・検察庁といわゆる首相官邸あるいは漆間官房副長官との間に、本件の逮捕について事前にやりとりがあったという事実は全くありません。断言できます。

山田委員 刑事局長はないかもしれない。しかし、だれかが言わなければ漆間さんがあんなことを言うはずはないでしょう。各紙がすべて書いたことを、それは証拠がないとかという、これは民主国家じゃない。

 そのことでもう一つ。

 これは一つのリーク。いろいろなことが、先ほど細川委員が言っておられたけれども、朝日新聞に、検察の幹部が、金丸のときと全く変わらないじゃないかと言ったことが報道された。それ以外にも、捜査機関じゃないと知り得ないような事実が次々と新聞に報道される。西松側に大久保秘書が請求をしたとか、そういったもっともっといろいろなことが、先ほどの話でもあるように、西松側にとっては、西松側でしか言えないような、検察でないと言えないような、西松側としては、小沢側に献金をしたおかげでこういう仕事がとれたんじゃないかというようなことの発言まで、検察側じゃないとわからないような捜査事実がどんどん漏れているという事実は、刑事局長、認めるか認めないか。

大野政府参考人 個別の報道につきましては、一々コメントすることは避けさせていただきたいと思います。

 社会の耳目を集める事件ということになりますと、マスコミは、大変広く、あるいは深く、さまざまな取材活動を行われるわけでありまして、それに基づいてさまざまな報道が行われるわけでございます。ただ、検察といたしましては、いわゆる捜査の秘密を守らなければ、捜査に支障を生じ、関係者のプライバシー等に影響があり、あるいは関係者の協力が得られなくなるというようなことから、従来からそうした捜査の秘密の保持には格別の配慮を払ってきたものというように承知しております。

山田委員 私が聞いているのは、そのような新聞等で報道されているのは捜査機関しか知り得ない事実じゃないか、それについて刑事局長として認められるか認められないかということを聞いているんだ。認められないというのなら認められないと答えていただきたい。

大野政府参考人 先ほども申し上げましたけれども、こうした社会の耳目を集める事件につきましては、さまざまな報道が行われるわけであります。いろいろな取材に基づいてさまざまな報道が行われるわけでありますけれども、そうしたことの一々について、これがどうだというような、事実かどうかというようなことについてコメントすることは避けさせていただきたいということでございます。

山田委員 我々、一般に考えて、検察庁がリークしているんじゃないか、いわゆる捜査機関がリークしているんじゃないか、いろいろな事実について。そのリークの内容によっては重大な影響、予断を与える。

 今度の裁判員制度、これについて、国民が裁判に参加する、そのときに、あらぬいろいろなリークが事前に裁判外でなされるということは、これは大変ゆゆしき問題で、公務員の守秘義務以上に大変な問題だと思う。それについて、大臣、法務の責任者としてどう思うか。

森国務大臣 検察当局においては、先ほども申し上げましたとおり、秘密の保持については細心の注意を払っていることと認識しております。

 ただ、報道機関のさまざまな取材努力によってさまざまな報道がなされているわけでございまして、その一々について私がコメントすることは差し控えたいと思います。

山田委員 いろいろな報道がなされているからコメントを避けるということを聞いているんじゃない。こういうあり方について法務大臣としてどういうお考えかと聞いている。

森国務大臣 検察当局においては、秘密の保持についてはこれまでも万全の注意を払っているということを信じております。

山田委員 法務大臣としての責任ある答弁とは思えない。

 しかしながら、もう一つ僕は聞いておきたいことがある。今、西松側のいろいろなことがいろいろ問題になっております。そうすると、私も弁護士をやってきた、刑事事件も何回も弁護した、その中で、やはり調書をとるときに、相手方、例えば窃盗だったら被害者の調書をとる、それによって逮捕したりしていく。いろいろな形で被害者側、あるいは今回の場合には西松側の調書をとって、あるいはその調書のとり方もいろいろな問題がある。

 いわゆる冤罪事件はいっぱいある。この前の鹿児島の県会議員の公職選挙法違反も、実際には無罪だった。そういった取り調べにおいて、本当にそれが適正になされているのか。いわゆる意図的に誘導して調査がなされるということは多い、私の弁護士の経験からして。その調書をもとにして逮捕したり、調書をもとにして起訴をする。その結果、あらゆる人が抹殺され、鹿児島の場合にも政治的生命を失われた。これは大変重大な問題なんだ。

 そうすれば、何としてもここは、まさに単なる被害者の、あるいはそういった関係者の調書を集めて起訴するというのじゃなく、調書そのものの信用性という意味からいっても、取り調べにおいてビデオカメラを必ず回さなければいけないとか、いわゆる取り調べ可視化法案、これが必ず必要だと思うが、そうでない限り起訴においては我々国民は信用できない、そう思うが、刑事局長はどう思われるか。

大野政府参考人 いわゆる取り調べの可視化につきましては、従来も答弁を申し上げているわけでありますけれども、それによって取り調べの真相解明機能を損なう場合があり得るということで、その全面的な義務づけには問題があるという立場をとっております。

 ただ、今委員が御指摘になりました不適切な取り調べで真実でない供述が出てくる、これはあってはならないことでありますので、取り調べの適正を担保しなければいけないということで、従来からもいろいろと努力してまいりましたけれども、いわゆる無罪事件等の経験も踏まえまして、昨年からさらにそうした取り組みを強化しております。

 例えば、弁護人との接見につきまして、その申し出があった場合、きちっと記録をすると同時に、それを速やかに伝えるという取り組み、あるいは、取り調べに不満がある場合にも、これを記録化して、上司において把握して対応するというような取り組み等々、かなり取り調べの適正化についての取り組みを進めているところであります。

 最後に、いろいろな形で捜査をして、起訴という判断になった場合には裁判所に行くわけでありますけれども、例えば、参考人の供述等は公判廷における証人尋問を通じて吟味されることになるということでございます。

山田委員 我々民主党は、可視化法案を参議院で多数決で通した。これからいよいよ衆議院でその法案を通さなきゃいけないと思っているんですが、刑事局長としては、この可視化法案には疑問がある、反対である、そう考えて……(発言する者あり)廃案になっているんだが、この可視化法案に対しては刑事局長としては反対なのかどうか、それをお聞きしたい。

大野政府参考人 国会に議員提案ということで出されている法案につきまして事務当局からコメントをすることは適当でないというふうに考えております。

 ただ、先ほども申し上げましたように、取り調べの全面的な可視化を義務づけるということにつきましては、先ほど申し上げたような問題があるんじゃないだろうかということを指摘したものでございます。

山田委員 先ほど、疑問はあるというようなことを言っておられたので、そのほかに、適正にという話をるるされておったから、いわゆる可視化法案に刑事局長は賛成じゃないということはよく私としては理解したつもりです。

 きょう本当に聞きたかったことを最後に聞いておきたいと思っております。

 実は、中国人の強制連行事件、これは、おととい福岡高裁で判決が出ました。その前に、やはりこれは西松建設が上告人で最高裁から判決が出ております。

 これは、一般に言って、中国人が戦争直前に約四万人ぐらい連行されて、そして西松建設、鹿島建設、大成建設あるいは三井鉱山とか、いろいろなところで働かされた。四万人のうち七千人が、たった二、三年の間に過酷な労働の中で亡くなった。

 この事案ですが、これについて、西松が上告のときの事案で、いわゆる日中共同声明でもって、不法行為による損害賠償請求はできるけれども、訴権がない。いわゆる請求権はあるけれども、訴えてそれを求める、賠償を求める権利はないんだという、私もこの判決を読ませていただきましたが、そうなっているようです。

 ところが、この中に西松事件で付言がなされております。最高裁の提言です。

 これは大変珍しいんですが、「本件被害者らの被った精神的・肉体的苦痛が極めて大きかった一方、上告人(西松建設)は前述したような勤務条件で中国人労働者らを強制労働に従事させて相応の利益を受け、さらに前記の補償金」、この補償金というのは、当時七千万円ですが、今のお金にしたら六百億円もらっているんですが、当時、そういう働かせた人たちの、赤字だったからといって国に求めたお金です。補償金ももらいながら、「諸般の事情にかんがみると、」何にもしていない「上告人を含む関係者において、本件被害者らの被害の救済に向けた努力をすることが期待される」、最高裁の判決の中にそう書いております。

 いわゆる関係者、国もそして企業も含めて。きのう、いわゆる強制連行されて働かされた中国人がよぼよぼとつえをつきながら私の部屋に来たんですが、私はその人たちのお話も聞いてみましたが、実にこれは社会的、国家的責任であると。

 これについて、私の持ち時間もなくなりましたので、法務大臣、ILOからもこの三月の六日に勧告がなされています。まだ生存者が生きている間に日本政府は速やかにその補償を行うようにと。これについてはどう思われるか、お聞きしたい。

森国務大臣 委員御指摘の判決があることは承知しておりますが、御指摘の判決は国を当事者とする判決ではないというふうに認識をしております。

 最高裁判所、同日に言い渡された国を当事者とする判決では、日中共同声明五項によって裁判上訴求する権能を失ったとする判示がなされていますが、御指摘のような付言はなかったと承知しております。

 国が和解の席に着くかどうかについては、控訴人らの国に対する請求が認められないことが既に司法の場で決着済みであることを踏まえた上で判断したものでございます。

山田委員 国としては一切責任はないし、これからもこの問題はそのままにしておく、そういう趣旨なのかどうか、明確に答えていただきたい。

森国務大臣 以上申し上げた判断を踏まえたものでございます。

山田委員 答えになっていない。それは判決を読み上げただけじゃないですか。法務大臣としての見解を最後に聞いているのです。

森国務大臣 ですから、現時点においてはそういう判断でございます。

山田委員 終わります。

山本委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

山本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。河村たかし君。

河村(た)委員 河村たかしでございます。

 きょうは、まずこれは大臣、ちょっとどてっぱつで申しわけないけれども、きょう自民党の方の質問を聞いておったけれども、所信表明の中に太政官の話が出てきて、「その常識とともになければならないとされています。」「常識の通用する法務行政」と。なかなかこれは、今まで見ておるけれども、こういう言葉を使ったのは初めてだと思うので、大臣が自分で書いたと思われますけれども、どうですか。

森国務大臣 これは、この前後は私の言葉なんだけれども、この引用してある文章は、まことに私のポリシーを的確に酌んだ私の部下がどこかから見つけてきた言葉でございまして、大変私の気持ちをあらわしてくれている文章で、うれしく思っているところであります。

河村(た)委員 非常に正直で結構です。人格があらわれておりますけれども。この「常識とともに」というのは、これはなかなか本当に今までは余りなかったんです。そういう観点から、ちょっと常識外れの今の二つのことについて。

 きのうは、刑務所のことはずっと通告してありますけれども、後の部分は、今の東京の中央郵便局の保存問題をちょっとやりますけれども、ずっと聞いていていただいて、最後に感想だけ聞きます。

 いわゆる重要文化財とされるような建築物を何か私有財産のようなことを言って壊してしまう、こういうことが、全体的に見るとそれは文化庁の話かもしれませんし、国土交通省かもわかりませんけれども、日本の法秩序全体からして常識外れでとんでもないという観点で言いますので、ぜひ法務大臣も、今、官房長官とか鳩山総務大臣、それから国土交通大臣も重要文化財にすることに熱心だと聞いておりますし、きょうは山内副大臣も大変熱心な方でございますので、ぜひそういう狂ったようなことが日本で行われないようにということで、一番最後に聞きますからお願いします。

 それでは、まず法務省の方からいきますけれども、午前中もちょっと聞いておりましたけれども、例の検察関係者によるととかいうものですね、要するに。事件が出る前に新聞に出ておるという話です。

 これは、名古屋の刑務所の事案もそうです。はっきり言って新聞の方が先なんです。抽象的な話はいいですけれども、ちょうど刑事局長来てみえますので、これは、今までは、こういうことをしゃべった体験はありますか。

大野政府参考人 私は現在刑事局長の立場にあるものですから、私が検察庁に勤務していた当時のことについてお答えするのが適切かどうかよくわかりませんけれども、あえて誤解を避けるために申し上げれば、そのような捜査情報をマスコミ等に漏らしたというようなことはございません。

河村(た)委員 そういうふうに念仏みたいに皆さん言われるんだけれども、これは必ずこうなるんですけれども、僕が聞いたところによると、自宅へ帰られる入り口に新聞記者が一人とか二人おって、ちょろちょろと話すというふうに聞いております。検察庁と特に仲のいいマスコミもあるそうでございますけれども。

 だから、大野さん、そういうのがあるんじゃないですか、御体験は。

大野政府参考人 ただいま御答弁申し上げたとおりであります。

河村(た)委員 ということでございますので、これは本当になぞですね。これは必ず、検察関係者によるとと、関係者が語ったと、こうなるんでして、こんなことを言っておってもしようがないですけれども、私が聞くところによると、そういうふうに帰っていくところに記者殿が夜待っておって聞くということでございますけれども、これは本当に失敗はされぬようにしてくださいよ、刑務所問題みたいに。正しいものはいいですけれども、後で聞きますけれども、失敗されて、本当に塗炭の苦しみを人間に遭わせる、それで後は知らぬ顔にならぬようにということでございます。

 それともう一つ、よくあるのは、これはずっと私も質問してきましたけれども、いろいろなことを話をすると、特に刑務所問題で、これは捜査中だからといって終わってしまうんですね、ここで幾ら質問しても。これは、捜査中というのは何か免罪符なんですか。だから、行政は行政で、何遍も言っておりますけれども、刑務所の話だったら再発防止義務があるわけです、同じような事故等そういうものが起こらぬようにと。そのために、真相がわからぬとわからぬでしょう、これは。何か事故か何かが起きたときに、原因の真相解明がされていないのに再発防止策なんかとれるわけないですよ。だけれども、一方、それを聞いても、反対に、ころっと変わって、いや、それは捜査中ですからと言ったら、これはそもそも法務行政はやれないですから。

 こういう慣習はいつから始まったんですか。

大野政府参考人 事件の捜査等につきまして国会の方で御質問を受けることがございます。

 法務省といたしましては、国政調査権の行使等に関しましては、かねてから法令の許す範囲内でできる限り協力すべきものというように考えておりまして、そうした観点から、公訴事実の概要等についてお答えしておりまして、決して一切の答弁を拒否しているというわけではございません。

 ただ、捜査中の案件につきましては、その事件が起訴された場合には、その立証に必要な範囲で公判において明らかにされることになるわけであります。それを待たずして捜査段階で明らかにするということになりますと、他人の名誉やプライバシーの観点から問題があるばかりか、証拠隠滅活動を招いたり、裁判所に予断を与えたり、あるいは関係者の御協力を得ることが困難になるなど、今後の捜査、公判に重大な支障が生じかねないわけであります。そうしたことで、刑事訴訟法四十七条も、捜査関係の書類の公判前の公開を基本的に禁じているわけであります。

 また、公判係属中の刑事事件に関しましても、その具体的な事実関係や証拠関係につきましては、まさに当該公判において審理されるべき事柄でございます。これを法務当局として国会に逐一御報告しなければならないということになりますと、これは検察の立証活動に制約を与えたり、あるいは裁判所公判で、進行している公判に不当な影響を与えたりするおそれがあるということで、お答えいたしかねる部分があるということを御理解いただきたいというように思います。

河村(た)委員 何遍聞いておったってどうしようもならぬ話ですけれども。

 では、一つ具体的に聞きますと、この間ちょっと尾崎さんに言いましたけれども、刑務所の中に申し送り簿というのがあるんですよ。いろいろなことがあると、次の人に申し送り。そこに、例のホース事案ですね、もう大分なりますけれども。

 そこで、焦点は、検察側は、水をかけておしりの括約筋が破れて、中の直腸が切れて死んだ、こうなっていますけれども、そんなものはあり得ないことです。これは水道の水だったんですよ。大臣、肛門に突っ込んだんじゃないからね。一・五メーターの距離から水道の水をしりにかけて、括約筋が切れて、それで後で死んだというんですよ。

 これは後で言いますけれども、日本じゅうでただ一個も事故がない。これは、水道局、全部確認しました。当該ポンプでも一個もない。それは名古屋刑務所だけで起こったというので、これはあり得ないけれども、国会はみんなそうやって、リークによってこうなっちゃった。全国会議員は、私も含めて、刑務官、とんでもないとやったんだけれども、これは実はうそだというんだ。

 真相は何かといったら、多分、中にペットボトルのかたいようなのが入っていて、それをパーンと割って、それを自分で肛門に挿入した、自傷行為であっただろうということになると、そういうプラスチックボトルがあったかなかったかは非常に重要なんです。これは裁判とは別です。司法行政においても保護房内の事故を防がないかぬから、いろいろな対応を。だから、どういうものを入れていいとか、どういう処遇をするかというのはどえらい重要なんです。

 だから、平成十三年十一月二十四日の申し送り簿の記述の中に、本人いわく、プラスチックのポットを折って捨てていると言っていました、こういう記述はありましたか。

尾崎政府参考人 議員御指摘の申し送り簿につきましては、既にその提出を議員から求められておりまして、現在公判係属中の刑事事件に関するものであって、必要があればその刑事手続内において入手されるべきものであるということを理由に、その写しの提出を差し控えさせていただいております。

 今委員はその内容についてのお尋ねでございますが、同様に、係属中の刑事事件にかかわる事柄でありますので、答弁を差し控えさせていただきます。

河村(た)委員 こういうことで、先ほどの一般論もそうなんだけれども、自傷行為に使えるものがあったかなかったかということは裁判でも決定的な意味がありますけれども、要するに、今後、保護房内で受刑者がみずから自傷行為をせぬように防止する義務はありますね。一応確認をとっておきましょうか。ありますでしょう。

尾崎政府参考人 一般論を申し上げれば、自傷事故を防止するためにいろいろな方策を講じなければいけないということは事実でございます。そのための調査も必要だと考えております。

河村(た)委員 そのための調査は国会でもやらないかぬと思います。これは法務省がやるんだけれども、法務省のいろいろなあれを受けて国会でも審議せないかぬ。だから、そういうときに、本当にプラスチックボトルなんかが割れたものを捨てていたかどうか、これをここで言わないことには後がわからないじゃないですか。

 これはどうなんですか、局長。

尾崎政府参考人 事故防止のために行政調査を行うということは、委員御指摘のとおり、当然のことだと思いますけれども、ただし、その結果、判明した事項につきまして、その具体的内容を申し上げることが係属中の刑事事件に影響を与えるというような場合には、これを申し上げるのは適当ではないと考えております。

河村(た)委員 では、具体的と今言いましたから、一般的に、そういう水筒のようなものを入れて自分で傷つけたり、そういう危険性というのは、やはりそのときはあった、そういう考えでいいですか。

尾崎政府参考人 現在公判係属中の個別の事件におきまして、どういう事実があったかということにつきまして申し上げるのは適当ではないと考えております。

河村(た)委員 では、それはなかったんですか。

尾崎政府参考人 今申し上げたとおりでございます。

河村(た)委員 だから、本当に国会の審議というのは危ないですよ。これは、一たんこうだこうだと言っていたら、それで裁判になっちゃったら、もう後は何にも出てこないんだもの。

 それで、みんな偉い人はこうやって偉い人に、ずっと偉い様になって隠している。今の検事総長さんもそのときにちょうど刑事局長だった。よく覚えています、樋渡さん。それから、大林さん、官房長だって、よくやってきましたよ。みんな超トップに上り詰めておるけれども、実際にそのときにぼろかすに言われた刑務官たちはみんな地獄の苦労をしておる。だから、真相が全然解明されない、裁判だ、裁判だと言って。国会の責任は一体どうなるんだよ、法務省の。

 大臣、これはどう思う、とりあえずここのところで。

森国務大臣 私は、やはり三権分立それから法務行政の中における検察の独立性というのは極めて重要なことであって、いかに国会審議の中でもやはり触れられないことがあるというふうに思います。

河村(た)委員 触れられないって、むちゃくちゃ触れてきたですよ。むちゃくちゃみんなで触れたものが、むしろこの問題というのは国会から始まったんです。国会でわあわあやっておったのが、やはり事実と違うじゃないかというときに、裁判に行っておるから、後はそれからもう一切真実がわからない。言っておるのはこういう問題ですよ。そこをちょっと覚えておいてよ。何にもないのに突然国会で何かこれじゃないかというものじゃないんですよ、この場合は。後でまた言いますけれども。

 そういうことで、全くけしからぬ。国会では真相はわからない。これはどうしようもない。こんな決定的な書類があるというんです。これが出せないというのなら、はっきり言って、後、何にも審議のしようがないですよ。裁判だけですか。裁判を間違えたらどうするんですか。国会の審議は裁判に行ったらもう免罪符になるんですか。それこそ三権分立に反しますよ、これは。これは国会の権限の放棄というか丸投げですよ、大臣。だから、それは違う。独立というのはそれぞれがちゃんとやらないかぬのですよ、お互いに気を使うことはあってもいいと思うけれども。そんなことは当たり前だということ。

 それから、この間、名古屋の刑務所の、名前を言うのはちょっと差し控えますが、ある刑務官が、実はいわゆる放水前に出血していたであろうということを私に話してくれましたので、調査をしたと思いますけれども、その後、今の出血に関してはどういうような話でしたか。

尾崎政府参考人 委員御指摘の人につきましては、本年の二月十九日、矯正局におきまして、行政調査として局付法務事務官が事情聴取を行っております。ただし、その内容につきましては、今委員からお尋ねがありましたけれども、まさに係属中の刑事事件で争点となっている事項に関することでございますので、具体的な内容は答弁を差し控えさせていただきたいと思います。

河村(た)委員 またこれだ。

 そのときに三井刑務官さんが来まして、要するに放水の前に既に出血していたということを証言していますね。この方は二人目なんです。それで、一方、法務省が出した中間報告、ここには放水による自傷であると。これははっきり言って矛盾している。その後何もしないんですか、ここで何にも言わないんですか。

尾崎政府参考人 事情聴取の結果、現在のところ、中間報告を含めまして、これまでの調査結果を見直す必要はないというふうに考えております。

河村(た)委員 ない、本当ですか、それは。これは大丈夫かな、一体。これは本当に職権濫用罪になりますよ、尾崎さん。これは幾ら何でもいかぬ。

 ここで刑務官が証言したことが一つあるんですよ。それから、もう一人うちに来て、お見せしましたが、DVDにちゃんと撮りまして、ちょっと忘れるといかぬから、その刑務官の名前を言うのはやめておきますけれども、お願いしたいけれども、物すごい勇気を持ってしゃべっていますので、これは当時そこにいなかったとされた人です。ですから、絶対彼に不利益処分をしないということはいいですね。

尾崎政府参考人 個別の行政調査におきましてどういう話をしたかということ自体につきまして、不利益な処分をするということは考えておりません。

河村(た)委員 それだけはとにかく頼みます。

 ということで、大臣、こういうふうになってくると、国会の国政調査というのは本当に問題があるね。真相が明らかになるどころか、一方が進んじゃって、裁判に丸投げで、後はこっちではもう何とも返せない。

 今、局長なんかは、うそだと丸わかりなのに、見直す必要はないと。二人の人がはっきり放水の前に出血の跡があるときちっと証言したのに、見直すことはないと。そんなばかな。うそのものを出しておいて、百歩下がって言えば、うそという認識はなかったかもわからぬとしても、途中でこれはおかしいんじゃないかの一言も言えないんですか。

尾崎政府参考人 委員御指摘の方につきましては、平成十五年当時も行政調査として複数回にわたり事情聴取を行っております。

 今回の事情聴取における供述内容につきましては、その当時の供述内容とも比較しつつ、信用性を慎重に検討しなければならないというふうに考えております。

河村(た)委員 違うでしょう、話が。違っておったわけでしょう、その前のときと。

尾崎政府参考人 十五年当時の話とは相違しております。

河村(た)委員 そういうことなんです。これは恐ろしいもので、そうなると、本当のことを言わないようになるんですね。今回は本当に勇気を持って言ってくれたんです。ということで、この問題はこういうこと。

 それから、これは尾崎さんが何遍も言っています、例の事件となった放水ですね。これは何遍も聞いておりますけれども、いわゆる高圧放水の消防用の放水じゃなくて、通常の刑務所内の生活で使われていた、平たく言うと水道と同じ水圧というか、水道からとった放水である、加圧していない放水である、そういうことで結構ですね。一応確認です。

尾崎政府参考人 名古屋刑務所内の各所に給水される給水配管、これに接続されていたということでございます。

河村(た)委員 ということです。

 お手元に参考資料をちょっとつけておきましたので、ぜひ見ていただきますと、まず一枚目。「名古屋市の水道の利用で負傷した事例はあるか。」回答、名古屋市の水道管の水圧は全市平均でおおむね四キロパー平方センチ弱、また蛇口の水圧は〇・五から〇・六キロ程度であり、通常の水道の利用により負傷した事例は一件もありません。なお、口径六十五ミリのホースを使用した場合は、水量が毎分約二百リッターになります。平成二十年十二月十九日、名古屋市上下水道局配水課。

 この公文書をつくってもらいましたけれども、これと大体同じ水圧ですね。〇・六キロでしたね、局長、例のね。〇・六キロであり、水量も一分間約二百リッターであるということでしたね。

尾崎政府参考人 これまでのその事件の判決では、委員御指摘のとおり、〇・六キログラムであると認定されております。(河村(た)委員「二百リッターも教えてください。これもそうでしょう」と呼ぶ)ちょっとその点は、今、現時点ではまだ詳細に承知しておりませんので……(河村(た)委員「いや、そのとおりだと言っておいてくださいよ。そのとおり」と呼ぶ)ちょっと後ほど、また御質問があった際にあわせて答弁いたします。

河村(た)委員 それでは調べておいてよ、二百リッター程度と。そのとおりで、負傷した事例は名古屋市においては一件もありません。

 それから、次のページを見てください。「水道の水圧等について 厚生労働省健康局水道課」これは日本じゅう。日本じゅうだといっても物すごくありますので、厚労省が調べるだけ調べてくれました。

 これで見まして、真ん中にありますけれども、蛇口のところで、〇・五とか〇・五、一キロといろいろ書いてあります。当該刑務所の事件の話は〇・六キロですから、この水道で「二、各都市とも、通常の水道の使用において、負傷等の事例を承知していません。」日本じゅうで一件もない。こんなばからしいことを何で聞かないかぬかと私は思いますけれども、出ていって、そこの水道をひねったら手が切れるかという話ですよ、本当に。

 それからもう一つ。これは荏原製作所。これは当該刑務所にあったポンプのメーカーです。これがその当時の本物です。そこに聞きました。四キロに設定された給水ポンプから、蛇口〇・六キロの水道、井戸水の利用で負傷した事例はあるか。ずっと行きまして、回答一、ここに当該刑務所で使われていたポンプが書いてあります。このような水道の通常状態で負傷した事例は発売以来一件も報告されていない見解である、販売累計台数約五万台。他社の給水装置、ポンプにおいても、このような水道の通常状態において負傷した事例は発売以来一件も報告されていない見解である、販売累計台数一千五百万台。こういうことです。

 これは何で刑務所で事故が起きたんですか。これはどういうことなんですか。

尾崎政府参考人 先ほどから申し上げておりますけれども、これは公判係属中の事件で、控訴審判決でそういう委員御指摘のような因果関係等を認める認定がされているわけでございますけれども、今は上告中でございます。この判決の当否を含めて、この事件について、今の御指摘の点についてお答えするのは差し控えさせていただきたいと思います。

河村(た)委員 大臣、こういうことです。

 これは普通の水道だったんです。日本じゅう一件も事故がない、一件も。これは書いてくれましたよ、当該ポンプメーカーも、名古屋市も、厚生労働省も。当たり前だ、そんなこと。

 これは大臣はどう思いますか。

森国務大臣 河村委員の大変な正義感と情熱、また事を明らかにしようとするその意気込みは心から多とするものでございますけれども、再々申し上げているとおり、現在、公判係属中の事件について法務大臣として言及するのは避けたいと思います。

河村(た)委員 では、大臣ですから、悪いけれども、所信で「常識の通用する法務行政」。通常の水道水を一・五メーターからしりにかけて、常識からいって、全国で一個も事故がないのに、括約筋が切れると思いますか。常識で答えてください。

森国務大臣 私はウォシュレットの愛好者でございますけれども、私はいろいろと、多少その水量については気をつけております。

河村(た)委員 では、言いましょうか。

 今言いました荏原のものをちょっと大臣、見てくれる。先ほどの荏原さんのグラフがついておるでしょう。三枚目の一番下です。シャワーというのがありますね、僕は矢印をつけておきましたけれども。シャワーの水圧は〇・七キロです。今回の放水は〇・六キロだったんです。これより低かったんですよ。大臣、ウォシュレットは〇・七とあるんですけれども、これはたまたまウォシュレットと書いていないもので、シャワー。これを常識からいってどう思いますか。シャワーより低かったんだよ。

森国務大臣 そういった、現在係属中の事件の判決での事実認定に対する評価にかかわる事柄ですので、コメントは差し控えます。

河村(た)委員 大臣、そういうときに、そういうのは後ろから言っておるけれども、よく考えると常識から考えたときには私としてはおかしいと思うぐらいのことを言うのが、あなたの所信の「常識の通用する法務行政」ですよ。

 河村さん、あなたの言っていることは本当なのか、やはりおかしいんじゃないかと言うのが、この常識の通用する行政ですよ。どうですか。

森国務大臣 私は、元来科学者でございますので、本当の事実に基づいてしか論評は差し控えます。

河村(た)委員 では、事実といったらこれが事実ですけれども、今言っていたのが事実。これは数字も明らかになっていますから、水量まで。水圧と水量がわかれば、その力というか、水圧だけなんですけれども、それでわかりますからね。

 それでは、全部来ていただいておるので、大野さんにも聞こうか。

 通常の水道を一・五メーターからおしりにかけて、しりの肛門括約筋が切れたと。これはどう思われますか。

大野政府参考人 名古屋刑務所放水事件につきましては、現在上告審係属中でありますけれども、その第一審判決では、水圧について一平方センチメートル当たり〇・六キログラム近いというような認定が行われ、控訴審判決においてもほぼ同様の認定が行われているというように承知しております。

 ただいまのお尋ねは、水道水を手で受ける場合というんでしょうか、あるいはウォシュレットを使用する場合と、それから、この判決で認定されたような消防用ホースで引き込んだ水を消防用の筒先から噴出させて直接当てた場合とで、人体に与える影響が違うのか、違うとすればどれぐらい違うのかというような点についてのお尋ねだというように思うわけでありますけれども、これはまさに、現在公判係属中の個別具体の事案における証拠の評価にかかわる事柄だというふうに考えております。したがいまして、コメントは差し控えさせていただきます。

河村(た)委員 同じ水道でも、では、そこからとってきて消防用ホースでかけたら、突然凶器になるんですか。全然違いますよ。当たり前だ、こんな話は。まあいいです、そんなにもう時間もないですから。

 きょうはどっちからいこうか。一番やはり肝心なのは尾崎さんだわな、今あなたの部下だから。まだ革手錠の人もみえるけれども。

 この放水で、二人、今現に生活をめちゃくちゃに破壊されて、地獄の苦労をしてみえる。この人たちに対して、何か行動しないんですか。

尾崎政府参考人 放水事案は上告審係属中、それから革手錠事案は一部控訴審係属中というふうに聞いておりますけれども、いずれにいたしましても、その刑事事件がどのような結論になるのか、この推移を見守りつつ、適切に対処したいと考えております。

河村(た)委員 若干微妙なことを言われたけれども。

 大野さんにも聞いておこうかな。

 同じ法務省の仲間がこれだけ、だれが見ても非常識な有罪判決を受けて、いまだに控訴係属している。このときに、仲間として何か助けようとか、例えば自宅へ一遍行って謝罪して励ましてくるとか、そういう行動をしないんですか。

大野政府参考人 刑事局長として申し上げられることは、本件名古屋刑務所放水事件につきましては、第一審で一名につき有罪判決が確定している。それから、二名につきましては、一審、控訴審で有罪判決がなされ、現在被告側の上訴により上告審に係属しているということでございます。

 それ以上のコメントは差し控えさせていただきたいと思います。

河村(た)委員 行動されない。正義の府が、デパートメント・オブ・ジャスティスが、一切。部下だからね、言っておきますけれども。

 もう一回、尾崎さん、ちょっと先ほど微妙な表現をされましたけれども。これは本当に職権濫用罪になるんじゃないかと思いますよ。公務員職権を濫用して不利益な処分を続行したと。ここまで常識的にわかった、調査もしない。水道でしりにかけてみればいいじゃないですか。では、今大野さんが言ったように、水道の蛇口で、消防用ホースと筒先が変わったら変わるかわからへんと言われた。変えてみればいいじゃないですか。起こるわけないでしょう、そんなばかな話が。これをせずに、刑務官をいたずらに苦しめるというのは、あなた、職権があるから、任命権者だから。これは申しわけないけれども。

 私も、今度名古屋で奉公することになったので、これだけは本当に気がかりなんです。これは大変なんだけれども、なぜかといったら、僕らがやってきた。塩崎さんがおるから、ちょうどいいんですよ。ちょうど塩崎さんが法務委員会におったときです。自分のやった責任はちゃんと解決していかにゃいかぬということでやっておるので、これをぜひきちっと引き継いでほしいんですよ。どうですか。

尾崎政府参考人 ただいまの刑事局長が申し上げたとおり、放水事案については上告審係属中の者がおり、また革手錠事案については控訴審係属中の者がいるという状況にございます。

 我々といたしましては、この事件の推移を見守りつつ、適切に対応したいというふうに考えております。

河村(た)委員 まあ冷たいことだわね。本当に、こんなことでは、上司として……。これは部下ではまったら一体どうなるんですか。

 大臣、最後に聞きますけれども、お立場があることはわかっておるけれども、あなたがその気になれば真相は明らかになるんですよ。放水で言えば、この二名の物すごい苦しみを解放できるんですよ。いわゆる指揮権発動の話もあるけれども。これは明らかに、こんなにあほらしいのは、無罪の論告をせにゃいかぬですよ。だから、少なくとも、今度ちょっと時間をとっていただいて、またお話ししていきますけれども、やはりもう一遍真相を研究してみるぐらい言ったらどうですか。大臣。

森国務大臣 法務大臣としての私の立場では、コメントを差し控えます。

河村(た)委員 何かよくわからないけれども、とにかく部下だということだけ覚えておいてくださいね。全く関係ない人のことだったら別だけれども。矯正局長が一番直接で、その下に刑務所長がいますけれども。

 あなたの部下が、水道の水を一・五メーターからおしりにかけて、それで肛門括約筋が切れ、直腸が切れ、それで死亡したということで、延々地獄の苦しみを味わっておるわけですよ。それをただそうとしない人が、ちょっときついことを言って申しわけないけれども、本当に「常識の通用する法務行政」と言えるのかと思いますよ。それと、「法律ハ人情ニ悖ラズ」と。人情を裏切っちゃいけないんですよ、人の情を。こういうときに、ああかわいそうだと思わないんですか、あなた。どうですか。

森国務大臣 私も、私の今置かれた立場がございますので、その職責を粛々と果たしたいと思います。

河村(た)委員 その職責の中ですよ、言っておきますけれども。その職責の中の一つ。あなたが判決を下すわけじゃないけれども。

 最近来たからわからない話ですけれども、塩崎さんに聞いてもらえればわかります。もう本当に四年、五年になりますものね。委員会でやったことだから、僕はこれを言っているんですよ。そこに僕も二回か三回、報道しか信じられないから、刑務官が暴行したと質問し合ったから、その趣旨で。だから、こういう罪償いをしておるということです。ぜひしっかりやってくださいね。お願いします。

 では、次は、郵便局の話に移りたいと思います。

 まず、これも大臣、一番最後にちょっと聞きますからね。これはいわゆる重要文化財、丸の内をおりられるとわかりますけれども、今東京駅は赤れんがで、あれは今工事をやっています。あれは何かといったら、あそこに爆弾が落ちまして、三階部分は爆破を受けて、今その復元をしているんです、昔のままに。あれは大正時代の建物。

 すぐ横に、白い、ぱっと見ると非常にシンプルな建物なんですけれども、これが日本官庁のオリジナル建築だと言われておりまして、官庁建築というのは、お堀端に明治生命ビルというのがありますけれども、ああいうちょっとゴージャスなものは洋式建築といいまして、あれはどっちかというとヨーロッパの物まねと言うと怒られますけれども、日本の郵政のは、郵政の内部の吉田さんという人がつくられた、日本の官庁の、いわゆる日本流の親しまれる郵政というもの、モダニズムの典型的な第一号の建築だと言われています。

 それで、ちょうど副大臣がみえるので、非常に熱心で、お力をいただいておるようで、これはちょっと最後の話になってきますけれども。

 これはやはり常識外ではないかと。文化庁の話をしていないですけれども、文化庁は、これは重要文化財になる建物だと明言しています。国会で答弁している。残してほしい、残すために努力もしてきている、指定に値すると。判を押せば、そのまま重要文化財になります。

 その建物について、どうですか。副大臣。

山内副大臣 河村委員の質問にお答えいたします。

 先日、東京中央郵便局を重要文化財にする会のメンバーの方々がお越しになりまして、懇談をいたしました。

 東京中央郵便局舎は、昭和六年に竣工した日本の現代建築につながるモダニズム建築の典型作でありまして、日本建築学会においても高い評価をいただいている建造物であるということは十分承知しております。この建物について、重要文化財としての指定を検討する価値は当然有しております。そのように認識をいたしておりまして、文化庁といたしましても、日本郵政株式会社に対しまして、局舎の保存を図りながら再整備を図る方法の提案を行う等、文化財として局舎の保存が可能となるよう働きかけてはきております。

 しかし、現計画では、局舎の大半が失われるということにおいて、文化財としての評価をすることはなかなか難しくなってきます。そして現在、日本郵政株式会社において、計画の見直しを検討しているということは承知をいたしております。

 今後、日本郵政株式会社において、計画を見直し、保存に向けての具体的な変更案が示されるのであれば、文化財建造物としての価値づけを検討してまいりたい、このように考えております。

河村(た)委員 検討というのはいろいろありますけれども、新聞によると、いわゆる登録の上下というものじゃないですけれども、重文の下と言ってもいいかわからぬけれども、登録文化財というのがあるんですよ。そこで保存するという考えですけれども、私どもは、どうせ残すならちゃんと重要文化財として、あそこはやはりシンボルですからね。私は東京が日本の中心だとは言いたくないけれども、まあ、しようがないのであれですけれども、少なくとも、東京駅をおりたところにある、東京駅、中央郵便局、それからもうちょっと行くと三菱一号館とあって、壊しちゃったのを今完全復元しました。

 そういう状況下においては、そんな裏にどでかいものをつくって、そういうものじゃなくて、副大臣は、やはり重要文化財として保存すべきと思われぬですか。

山内副大臣 文化庁といたしましては、この日本郵政株式会社の局舎の保存を図りながら再整備をするということについて、文化財として局舎の保存が可能となるように働きかけてはいきたいと思っておりますし、現在もそのように働きかけております。

 ただ、これを例えば重要文化財の指定に当たりましては、やはり持ち主のいろいろな意味での許可が要るということなんですね。許可が要るということは、法律的には指定はできるんですが、結果的には、文化財としての認定をする場合、図面から始まって、あらゆるところを調査しないといけません。調査するためには、持ち主の許可がなければ、なかなかそういった前提条件が満たされませんでしたが、結果的には、同意を得られなければいけないというのが現状でありまして、我々も、できればそういった経緯を経て保存をしていきたいな、そのように考えております。

河村(た)委員 それはできればいいんだけれども、重文として保存したいと言っておいてくださいよ、保存活用です。

山内副大臣 実は、この経緯の中で、各新聞社もいろいろ発表いたしておりますけれども、もう既に二十年の段階でその経緯は済んでいるじゃないか、いきなり今何だというようなコメントも随分出ております。けれども、我々は、それは十分今まで検討してきていると認識はしておりません。

 例えば、文化庁が、これはもう少し検討したらどうでしょうかと言っても、なかなか振り向いてくれていなかったのが現状でありまして、今ようやく、この前鳩山大臣がかなり発言をした関係で、少し振り向いてはくれました。でも、体はこちらへ向けておりません。少し首だけ後ろを振り向いたということでございますので。

 ただ、そのときに何を言ったかといいますと、有形保存建物、文化財建物という形でどうだろうか、こういう提案はされておりますけれども、これはまだ具体的な提案が我々に対して提案されておりませんから、まだここの段階ではコメントする立場ではないし、気持ちは我々も前向きなんですけれども、現段階では、まだ今のところは、重要文化財か指定文化財か登録文化財かということについては、まだコメントできる立場ではないと思います。御了解をいただきたいと思います。

河村(た)委員 これはまだ危険ですね。

 これは郵政。まず、これは自分の建物なんですか。

米澤参考人 東京中央郵便局の建物、土地につきましては、郵便局会社の所有となっております。

河村(た)委員 郵便局会社の株主はだれですか。

米澤参考人 お答えいたします。

 日本郵政株式会社が株主となっております。

河村(た)委員 日本郵政株式会社の株主はだれですか。

米澤参考人 政府が株主となっていただいております。

河村(た)委員 そういうことですね。郵政が自分で苦労して、金をもうけてつくった建物じゃないんですよ、全然。

 財務省、これは財務大臣、すなわち国民のものだということですね。

道盛政府参考人 日本郵政株式会社の株式は一般会計などに所属しておりまして、財務大臣がその管理、処分を担当するということになっておりまして、財務大臣が株主となっております。(河村(た)委員「では、国民のものじゃないの」と呼ぶ)国が持っております。(河村(た)委員「国民のものじゃないの」と呼ぶ)

山本委員長 挙手をして質問してください。

 河村君。

河村(た)委員 国民のものじゃないんですか、それは。

道盛政府参考人 国が持っておりまして、財務大臣がその管理、処分を担当しているということでございます。

河村(た)委員 リップサービスでも言ってみや、本当に。最低だよ、そんなもの。国民のものに決まっているじゃないですか。財務大臣の私有財産と違いますよ。本当にさえぬなあ。

 それでは、今ちょっと副大臣言われたけれども、郵政はまだ中の調査とかそういうのを本格的に協力しないの。

清水参考人 お答え申し上げます。

 ただいまさまざまな検討、協議を行っているところでございます。

河村(た)委員 では、副大臣、十分なんですか、今の協力ぐあいは。

山内副大臣 我々といたしましては極力残したいという気持ちは変わりありません。けれども、やはり持ち主の了解が得られなければというのが、先ほども申し上げましたとおりなんですが、細かい調査がやれないということでございますので、その了解を得れば我々はいつでも調査に入らせていただきたい、このように思っております。

河村(た)委員 では、郵政、了解しなさいよ、ここで。答弁してくださいよ。了解が得られればと言っているじゃないですか。了解しますと言ってくださいよ。

清水参考人 お答えいたします。

 調査も含め協議をさせていただきたいと思っております。

 以上でございます。

河村(た)委員 協議って何ですか。ここで調査を了解すると言ってくださいよ。もう一回答えてください。

清水参考人 繰り返しになりますけれども、協議も含め検討させていただきたいと思っております。

河村(た)委員 そうしたら、財務省、株主として取締役の解任というのがありますね、財務大臣に。どうですか。

道盛政府参考人 財務大臣が株主でございまして、株主としての権利を行使することができます。

 ただ、日本郵政株式会社の取締役というのは、総務大臣の認可を受けなければその効力を生じないというふうに日本郵政株式会社法で定められておりまして、結局、総務大臣、総務省がどのような御判断をするか、あるいは、その前に総務省と日本郵政株式会社との間でどのような協議が行われるかによってくると思っておりまして、その結果を待つ必要があるというふうに考えております。

河村(た)委員 この場合は普通の建物と違いまして、いわゆる文化財になる。この間の答弁で、文化財保護法二条の文化財になるとはっきり文化庁が答弁しましたね。そういう場合は、役所なんかは保存のために周到な注意を払わないかぬ、そういう義務がありますね。いいですか。文化庁、来てみえれば。

高杉政府参考人 委員御指摘のとおりに、歴史的建造物の保存、今、その保存と開発のかかわりというのはさまざまな議論がされていると思っております。私ども、開発によって、我が国の歴史、伝統、文化を理解する上で欠くことのできない貴重な文化財が失われるということがあれば、まことに残念なことだと思っております。

 国民の貴重な財産である文化財が、将来にわたりまして適切に保存、活用されるためには、広く社会一般において文化財を守り生かしていくという機運を醸成していくということが、法三条にもございますように重要だと思っております。私ども、文部科学省としても、文化庁といたしましても、文化財保護法第三条で定める政府の任務というものについて引き続き認識して、保護に努めていきたいと思っております。(河村(た)委員「周到な注意義務があることを言ってください」と呼ぶ)

山本委員長 指名されてから発言してください。

高杉政府参考人 議員御指摘のように、文化財保護法第三条におきましては、「周到の注意をもつてこの法律の趣旨の徹底に努めなければならない。」という規定がございます。

河村(た)委員 そういうことですよ。それになるんです、これは。

 これは郵政は周到な注意をしたんですか、前から、公社のころから。

米澤参考人 お答え申し上げます。

 この中央郵便局の開発、利用につきましては、日本郵政グループとしましては、民営化に伴いまして郵便局会社の経営基盤の強化を図ることが喫緊の課題ということで、その活用の可能性について鋭意検討をしてまいりました。

 また、再整備計画の策定に先立ちまして、東京中央郵便局の建物について建築家団体等から保存の御要望がございましたために、平成十九年七月に東京中央郵便局歴史検討委員会を設置いたしまして、その歴史的な価値等についての議論の結果、保存に関する提言をいただいたところでございます。

 私どもといたしましては、有識者会議の提言及び行政等との協議、技術的な検討を踏まえまして、私どもの経営判断として今回の再整備計画として取りまとめたものでございます。しかしながら、総務大臣の御指摘もございますので、現在、検討を行っているというところでございます。

河村(た)委員 それから、結局、ああいうところだから高いものを建てていいと思うかわからぬけれども、あれは特別の制度がありまして、上は容積率を売れるようになっているんです。だから、全然損害はないんですよ。では、東京駅だってもっとどえらいのをつくればいいじゃないですか。あそこが一番はやりますよ、だれが考えたって。郵政よりあそこの方がはやるに決まっています、駅の上につくれば。それをなぜやらないんですか。そんなことばかり言うのなら、郵政みたいなことを言うんだったら。なぜやらないか。それは重要文化財で残すからですよ。それで、上は容積率を売れるという制度を持っているからですよ。これは法務大臣の言った常識が通用することをやったからですよ。

 これはちょっと法務省に聞いておいてもらわないといかぬけれども、これは入札疑惑があるんですよ。これはこの間言いましたけれども、疑惑にとどめておきます、間違うといかぬものですから。会社名は言ってもいいですけれども。

 これは、三菱地所設計というところに発注しておりますけれども、実は、そこの親会社の三菱地所から日本郵政の不動産企画部に出向している人がいる。発注者のところに受注者が出向しておるのです。

 これは、何人出向していますか。

米澤参考人 お答え申し上げます。

 現在、四名が出向しております。

河村(た)委員 こういうのは大丈夫ですか。はっきり言いまして、八百長というのがあるけれども、これは、発注するところへ受注するところから四名も出向しておるんですよ。この日本郵政の不動産企画部というのは、ここの開発のいろいろなことを企画するところですね、あそこの丸の内の建物。そうですね。

米澤参考人 さようでございます。

河村(た)委員 いいですか、これはちょっと理事会で協議してください。ここでないかもしれない、これはやはり法律的な問題があるから。いいですか、普通ないですよ、当たり前ですけれども。(発言する者あり)利害関係人どころか、注文を受けた人の親会社の、それも開発の担当部署に四人もいたという。自分が自分に注文を出したということですよ。だから、ちょっと理事会で協議してください。これは法務の問題になりますから、刑法の問題になる可能性がある。

米澤参考人 三菱地所設計への設計業務発注についてでございますけれども、これは、平成十九年五月から八月にかけまして、日本郵政公社において、政府調達協定に基づく公募型プロポーザル方式の手続により選定手続を実施し発注したものでございます。

 選定の当時、準備企画会社でありました日本郵政株式会社において三菱地所株式会社出身者で社員として採用した者はおりましたけれども、当該社員につきましては、先ほど申し上げましたように、発注を行いましたのは日本郵政公社でございましたので、この当該社員につきましては、本件設計業務の発注には携わってはいないということでございます。

河村(た)委員 しかし、やはり疑惑はありますよ。これはちょっと理事会で考えておいてください。刑法の関係が出てくるかもしれないということです。どうですか。

山本委員長 当委員会で扱うべき事項かを含めて理事会で協議いたします。

河村(た)委員 まあ、そういうことですよ。マスコミの人がみえたら、ぜひしっかりこれは取材してほしいところです。

 それから、これは上の容積率が足らぬからといって、これは、自民党は平沢さんが中心になって、それから民主は松木謙公さん、あれは切手のマニアなものだから、それから共産党の佐々木憲昭さんも含め超党派で何百人という数で保存運動をやっていたんです。そこで、上がそういう経済性がどうのこうのということで、それをどれだけ売れるかということをいろいろ検討しておったときに、実は東京駅から容積率をもう買う準備をしておった可能性があるということです。ということになると、あそこから買うということは、もう既に、全部ぶっ壊して新しいものをつくるありきだったんだ。

 これは、いつ交渉しましたか。

米澤参考人 お答え申し上げます。

 特例容積率制度に基づきます東京駅の容積利用権、いわゆる東京駅の容積率の購入につきましては、日本郵政及び郵便局会社において平成二十年十一月に決定している次第でございます。

河村(た)委員 一番最初に話を出したのはいつごろですか。

清水参考人 お答えいたします。

 その件につきましては、平成十九年十一月という記録が残ってございます。

 以上です。

河村(た)委員 十九年十一月ですね。これはJRの方にも一遍確認しておりますけれども。これは、みんなで努力しておるときに既に、もうそんなもの関係なしということで取り壊しのことを決めておったんじゃないかという問題です。

 それから、これは一千億に近い建物ですけれども、年百億の利益だと言っておるんですが、これは本当にお客さんが入るんですか、どうなっておるんですか、この不景気に。

米澤参考人 お答え申し上げます。

 本敷地は日本でも最高レベルの立地でありますことから、近年、いろいろ経済情勢が大きく変動はしておりますけれども、今後も一定の収支は期待できるものと考えているところでございます。

河村(た)委員 では、収益予想表とか出してくださいよ。

米澤参考人 不動産事業の収益のシミュレーションでございますけれども、営業利益ベースで約百億円を見込んでいるところでございますが、これは、収入が約二百二十億円、費用の方は百二十数億円でございまして、差し引き、営業利益ベースで百億円を見込んでいるところでございます。

 この前提条件といたしましては、過去の賃料変動を織り込みまして、周辺の成約賃料事例に安全率を加味したり、高目の空室率を設定して計算するなど、リスクを考慮したものとなっているところでございます。

河村(た)委員 最後に、大臣、いろいろ聞いていただいたと思うけれども、大臣も、大抵、こういう歴史とか文化とか非常に大事にされる、そういう雰囲気ですので、そうだと思いますけれども、いみじくも日本の最高の立地でありまして、あそこの土地。ああいうところで、重要文化財になるから残してくれということを山内副大臣もはっきり明言されておる。そういう建物を調査にも十分に協力せずにこのまま取り壊していく、これは本当に日本人の常識にかなったことですかね。

森国務大臣 この件についての事実関係とか経緯とかというのは私はつまびらかに承知しておりませんので、余り論評する資格はございませんし、また、所轄も違いますが、一般論として言うならば、私は、経済合理性のみを追求する姿勢とか世の中とかいうのは、余り好ましいとは思っておりません。

河村(た)委員 では、これで最後にしますけれども、私もいろいろ見ておって、僕は商売をやってきましたけれども、経済人は何か悪人のようなことを言われますけれども、冗談じゃないですよ。本当の民営の会社だったら絶対壊さぬですよ。そんな恥ずかしいことできますか、世間様に。おてんとうさまが見ていますよ。役人みたいなわけのわからぬ、だれが所有者か、わけのわからぬ、責任も何にもない、失敗したって転勤できる、そういうことだから、こんな重要文化財になるようなものを壊すんですよ。経済合理性のある、本当に商売で苦労しておる人だったら、絶対壊しません。

 その面から見ても、この郵政の計画は絶対いかぬ。これは直ちにとめて、重要文化財の指定を申請するようにお願いしておきます。

 終わります。

山本委員長 次に、加藤公一君。

加藤(公)委員 民主党の加藤公一でございます。

 きょうは、時間が限られておりますので、法務大臣に一つのテーマと、早川政務官に一つのテーマと絞ってお話を伺いたいと思います。

 まず、森法務大臣にお伺いをいたしますのは、資格者法人の問題であります。

 基本的な議論の前提をそろえておきたいと思いますので、簡単なところから伺いますけれども、現在設立が認められている資格者法人にはどんなものがあるか、ここからお答えをいただきたいと思います。

森国務大臣 法務省主管の資格者法人の種類といたしましては、弁護士法人、司法書士法人及び土地家屋調査士法人がございます。

加藤(公)委員 法務省所管ではおっしゃるとおりでありまして、もちろんそれ以外にも、他省庁の所管ということであれば、税理士さんとか公認会計士さんとか弁理士さんとか社労士さんとか、いろいろあるところであります。

 ほかの委員会の件はきょうは触れませんので、その法務省所管の三つの資格者法人について議論をさせていただきたいと思いますが、今お話をいただいた三つの資格者法人について、その資格者法人を設立するのに必要な資格を有する社員はそれぞれ何名でしょうか。

森国務大臣 弁護士法人については、一人以上の弁護士により設立できますが、司法書士法人及び土地家屋調査士法人については、二人以上の資格者が共同して設立する必要があります。

加藤(公)委員 そうなんですね。今、大臣おっしゃっていただいたとおりです。

 きょうは他省庁のことまでは触れませんけれども、ほかの資格者法人も実は二名以上、こういうことになっていまして、弁護士法人だけが資格を有する社員が一名でも法人化できる、こういうルールです。

 何で、弁護士法人だけが一名で設立できて、ほかの資格者法人は資格を有する社員が二名以上いないといけないんでしょうか。わかりやすくお答えをいただけますでしょうか。

森国務大臣 弁護士法人が社員一名でも設立が可能とされているのは、弁護士事務所の中には、一人の経営者である弁護士が、勤務弁護士を、いわゆるいそ弁を雇用する形態が相当数あるという実情を踏まえたものと聞いております。

 一方、司法書士や土地家屋調査士その他の事務所については、いろいろな理由、もし必要があれば申し述べますが、少なくとも、社員一名でも法人の設立を認める必要性にこれまで乏しかった、そういうことから二人以上ということになっていたというふうに認識をしております。

加藤(公)委員 今のお答えですと、弁護士法人は、弁護士さんの場合は、親弁、いそ弁の関係があるから一人でも法人設立を認めた、こういう話なんですが、そのこと自体、私にはなかなか理解しがたくて、親弁、いそ弁という弁護士さんの関係でなくても、ほかの資格者の方であっても、資格を取得した後、既に開業していらっしゃる資格者、先生のところで現場の修業を積むというケースは大いにあるわけでありまして、弁護士法人だけが一人で設立できて、ほかの資格者法人が資格を有する社員二名以上必要だという理由にはならないのではないかと思うんですが、大臣、いかがですか。

森国務大臣 今申し上げた司法書士法人及び土地家屋調査士法人については、むしろ複数の資格者が集まって法人化するメリットの方をどちらかというと強く踏まえておりまして、まず業務の共同化が図られ、その結果、業務の分業化、専門化が進み、利用者に質の高いサービスを提供することが可能となること、次に、仮に担当者に病気や事故等の事由が生じても、他の社員に担当を交代することにより対応することができること、また、事務所の賠償能力が強化され、信用を増すことなどのメリットが挙げられ、利用者である国民の利便性を向上するために二人以上が共同して設立することとされていたというふうに認識をしております。

加藤(公)委員 大臣も御出身が工学系でいらっしゃいますし、私もそうでありますから、同じ思考回路を持っていらっしゃるんじゃないかと期待をしてきょうは質問させていただくんですが、今お答えをいただいた理由は、弁護士法人以外の資格者法人について、二名以上で設立するとこんなメリットがありますよという説明なんですね。

 今の、例えば業務が分業化できるとか、専門化が進んで利用者に質の高いサービスを提供することができる、これは、二名以上の資格者で法人化するとこういうメリットがありますということですね。あるいは、担当者に病気や事故などの事由が生じても、他の社員に担当を交代することができる、これも、二名以上だとこういうメリットがありますよということですね。それから、三つ目におっしゃった、事務所の賠償能力が強化されて信用が増すというのも、二名以上で設立するとこういうメリットがありますよということですね。

 それはよくわかります。しかし、二名以上で資格者法人が設立できるメリットがこれこれこうですという理由があったからといって、資格者一名で法人を設立してはならないという理由にはならないんじゃないですか。大臣、いかがでしょうか。

森国務大臣 思いますに、これは、すぐれてこれまでの歴史的経緯というか成り行きによるところが大きいんじゃないかと思いますが、弁護士法人制度の導入が検討された当時は、法律事務所の相当数が、一人の経営弁護士がいそ弁を雇用する、いわゆる親弁型弁護士事務所であったとのことでございます。

 このような親弁型弁護士事務所においても法人化の要望が非常に強かったことから、弁護士業務の実情等を考慮しつつ、法人化により弁護士個人と事務所の資産の区別を図るとともに、弁護士業務の一層の共同化を可能とする道を開きまして、その業務提供基盤の拡大強化を図ることができるように一人法人の設立を認めることにしたというふうに聞いております。

加藤(公)委員 今、弁護士法人の設立を認めることにしたときに、親弁、いそ弁型の事務所が多かったというお話でしたが、では伺いますけれども、弁護士法人で、いや、法律事務所でと言いましょう、法人化していない場合もありますでしょうから。その親弁、いそ弁の関係で、いわゆる親弁型事務所を経営していらっしゃる、こういう事務所が、法律事務所のうち、全体でどれぐらいおありになるんでしょうか。

森国務大臣 平成二十年三月現在の法律事務所約一万千九百のうち、複数の弁護士が所属する弁護士事務所は約四千ございますが、お尋ねの、一人の経営弁護士と勤務弁護士によって構成される法律事務所が占める割合については、把握がされておりません。

 もっとも、弁護士法人制度の導入に先立つ平成十一年に日本弁護士連合会がアンケート調査を実施したところ、当時の法律事務所約一万六百のうち、複数の弁護士が所属する事務所は約二千七百、また、アンケートに回答した複数弁護士事務所のうち約四五%の事務所が、お尋ねのいわゆる親弁型事務所であったとのことでございます。

加藤(公)委員 弁護士事務所がそうであったから弁護士だけ一人資格者で法人の設立を認めたという話ですけれども、そうなると、司法書士事務所とか土地家屋調査士事務所は、それよりもうんと比率が低かったということが証明されていないといけないと思うんですが、司法書士さんあるいは土地家屋調査士さんの事務所の経営形態、つまり一人、弁護士でいうと親弁型事務所といいますけれども、同様の経営形態の事務所の比率というのは把握されていますか。

森国務大臣 司法書士事務所のうちに、そのような形態のものが占める割合については把握をしておりません。なお、司法書士の登録事務を取り扱う日本司法書士会連合会においても把握していないとのことでございます。

加藤(公)委員 土地家屋調査士事務所についてはいかがですか。

森国務大臣 土地家屋調査士事務所につきましても、お尋ねの形態のものが占める割合については把握しておりません。土地家屋調査士の登録事務を取り扱う日本土地家屋調査士会連合会において把握していないのも同様でございます。

加藤(公)委員 ここまでやりとりさせていただいただけでも、もう大臣おわかりいただいていると思うんですが、弁護士法人は有資格者の社員一名で設立できます、司法書士、土地家屋調査士は、資格を有する社員二名以上じゃなきゃ設立できませんというこのルール、合理性がないと私は思うんです。

 先ほど大臣が御答弁いただいた理由、つまり司法書士、土地家屋調査士の法人については二名以上の社員が必要だという理由は、二名以上で設立するとそれだけのメリットがありますという説明でしかなくて、一人の資格者で法人化することを認めない理由にはなっていないと思いますし、弁護士さんだけが特別だとおっしゃったけれども、実はデータを把握されていないし、論拠がないと思うんですね。

 実際、司法書士あるいは土地家屋調査士の皆さんの法人を、資格を有する社員一名で認めたからといって、何かデメリットがあるとは私には思えないのでありますが、このルールを改正するというおつもりはございませんでしょうか。もうこれは大臣として御決断をいただければ法律の改正もできるでありましょうから、御決断をいただきたいと思って御質問をしますが、いかがですか。

森国務大臣 委員には、もう釈迦に説法でございますけれども、土地家屋調査士については、実態的な話を申し上げますと、日本土地家屋調査士会連合会によれば、一人の土地家屋調査士が他の土地家屋調査士を雇用する形態というのはほとんどないというふうに聞いております。

 さはさりながら、法務省としては、土地家屋調査士会連合会あるいは司法書士会連合会、両連合会から業務の実態を聴取するなど、事務所の現状について把握するように努めてまいりたいというふうに思っております。

加藤(公)委員 別の観点から伺いますけれども、政府の規制改革会議がございますが、昨年の十二月二十二日の第三次答申というのがありまして、この中でも、一人法人制度の創設について、「可能な限り早期に結論を得るべきである。」ということが答申をされてございます、今細かいところは読みませんけれども。

 本当は、その前の七月の中間取りまとめではもう少し踏み込んで書いてあって、「一人法人制度の創設を行うべきである。」と書いていたものが、五カ月たったら大分トーンダウンしていますけれども、いずれにしても、規制改革会議の中では、一人法人の設立について早く結論を出しなさい、こういうことが言われているわけですね。

 もちろん、一朝一夕にできる話ではないとはいっても、この答申が出たのが昨年十二月二十二日です。ほぼ三カ月近く経過していますし、きょう決めろとは言いませんけれども、大臣にぜひ前向きに検討していただいてもいいのではないかと私は思っているんですが、そのお考えを改めてお聞かせいただけますでしょうか。

森国務大臣 現行制度の合理性につきましては、委員の御指摘も十分理解できる面もあるわけでございますけれども、やはり十分にそのメリット、デメリットを勘案しながら検討すべきものであるというふうに考えております。

 したがいまして、先ほど申し上げましたけれども、日本司法書士会連合会及び日本土地家屋調査士会連合会などから、その業務の実態を十分に聴取いたしまして、検討をさせていただきたいと思います。

加藤(公)委員 ぜひこの規制改革会議の答申どおり、「可能な限り早期に結論を得るべきである。」というのが答申でありますから、可及的速やかにという表現がいいかどうかわかりませんが、とにかく急いで結論をぜひ出していただきたいと思います。

 さっき申し上げたとおり、これは大臣がお答えになったことですけれども、別に弁護士さんに僕は恨みつらみがあって言っているわけじゃないんですよ。弁護士法人を一人で設立していただいて大いに結構なんだけれども、ほかの資格者法人についても、資格を有する社員一名で法人化したいというニーズがあるのであれば、別に認めてあげてもいいじゃないですか、デメリットはそう多いとは私には思えませんよ、こういう話です。それを認めない理由というのは、さっきの御答弁では決して論理的なお答えだと私には思えませんので、ぜひ前向きに御検討をお願いしたい、このことだけ申し上げておきたいと思います。

 では、後半戦は、早川大臣政務官にお話をたっぷりとお聞かせいただきたいと思っております。

 もうテーマはおわかりだと思いますが、二月の九日でありますね、早川先生のブログに大変衝撃的な御発言が載ってございまして、これまでも一緒にお仕事をさせていただいてまいりましたから、これはやはり真意を伺っておかなければいけない、こういう思いできょうは質問をさせていただきます。

 ブログで御発言された中身は、ポイントだけまず確認をして伺いますと、「予算が成立して私の責任を果たしたら、その時点で大臣政務官を辞任させていただくつもりだ」と、大変衝撃的な内容でありました。

 どういう理由で辞任を決意するに至ったのか、そして辞任をして何がしたかったのか、お聞かせください。

早川大臣政務官 その時々にいろいろな思いが経めぐっているところであります。

 私は、昨年の八月の福田内閣の改造で法務大臣の政務官を拝命いたしました。それまで、自民党の方では法務部会の部会長代理とか、あるいは法務委員会では理事等を務めさせていただきました。やはり国会議員の一番大事な役割は立法の場でいろいろな仕事をさせていただくということで、特に私にとって大事な話であったのは、オウム被害者救済立法を立案し、それが通常国会で成立をしたということであります。

 それで、二回生ということでありまして、法務大臣の政務官ということで選任をちょうだいいたしました。その状況の中で、一度政府の中での仕事も当然経験はしなきゃいけない、これが一つのルールだというふうに思っておりました。

 ただ、やはり大臣の政務官という立場でできるものは非常に限界があるものでありまして、党の方で仕事をさせていただくことで一番立法の作業の中で役に立つ部分がたくさんあるということに気がつきました。

 そういう状況の中で、二月の段階までの間に、実は、何度も衆議院の解散・総選挙があるという状況の中で、なかなか本格的に法務行政に取り組むことができないような状況がありました。

 ただ、その状況の中でも、例えば死因究明制度等について、これに取り組むべしということで、当時は法務委員会の理事として海外調査をして、その報告書を提出する議員団の一員として提言をさせていただきましたけれども、今度は法務省の中で法務大臣政務官としてそれを受けとめて、私自身がそれを進めるという立場をちょうだいし、また細川理事等から強くそれを求められてまいりました。

 しかし、法務省の中だけではそれを全部推進する立場にない。要するに、各省庁横断的に取り組まなきゃいけないものは、むしろ党の中で検討をしなければなかなか前へ進まないということがありました。

 さらには、非常に課題がある中で、一応衆議院の解散・総選挙も先送りになったので、ある程度仕事ができるだろうけれども、しかし、予算が成立をするまでが一つのめどではないだろうか、それが終わったら早くフリーにさせていただきたいということは、実は昨年の十月ごろからずっと申し上げていたことであります。

 十二月あるいは一月、そしていよいよ二月の声を聞いて、さて、第二次の補正予算と来年度の予算が成立をして、当然予算関連の法案も成立をして、自分自身の役割を終えたら、今度は早く党の方に戻してもらいたい、そういうことを表明させてもらいたい。これはブログですので、私自身のそのときの思いを正直に書いているだけであります。

 ただ、その段階で、自分の責任を果たしたいということの中で一番念頭にあったのが、実は公訴時効の廃止、あるいは私自身は公訴時効の進行を停止する請求制度についての提言をしておきたいなというふうに思っておりました。これの取りまとめが三月の末ということを一応目標にしておりましたので、まずは勉強会あるいはその中のワーキングチームの座長としての役割は三月の末を一つのめどにしておきたい。

 それから、再犯防止のプロジェクトチーム、これも私が政務官として、座長としての役割を与えられておりました。これも来年度の骨太方針等の中にも織り込まなきゃいけない大事な話だと思っておりましたので、三月の末までに一定の結論を出しておきたいというふうに思っておりました。

 さらには、法務省の中の史料室のあの赤れんが、国民的な財産であるのでこれを活用する、そういったことについての一定の、広報についての提言をする、これも三月の末を考えている。あるいは、成年後見制度等について、これまたいろいろな問題点があるので、何らかの問題点も整理をしておきたい、これも年度末、三月の末までを考えておりました。

 そういったことを考えて、弁護士出身の国会議員として、しかも自民党の中での法務部会あるいは法務委員会の理事等を務めさせていただいた、その延長上で法務大臣の政務官を拝命した。大変ありがたいことでありますけれども、仕事をしっかりさせていただきたいというふうに思っておりましたので、仕事を余りすることがないような段階になったときには早くフリーにしていただきたい、そういうことで、予算が仕上がって、自分の責任を果たしたらフリーにさせていただきたいというのを正直に書いたわけであります。

 ただ、その当時、やはり、これからの日本の政治のあり方、どうすべきかということを考えたときに、自分自身で制限なく物を言えるような立場を早くちょうだいしたい、こういうものがありました。そういうことで、内閣の一員としては発言をしてはならないことがたくさんあるという状況の中で、自由な立場を早く獲得したいというものも当然こういう表現の中に入ったわけであります。

 以上です。

加藤(公)委員 突っ込みどころ満載の御答弁をいただいたので、本当はたっぷり時間が欲しいんですけれども、きょうは時間が限られていますから一個だけ聞きます。

 今の早川先生のお話だと、言いたいことが言えないから、予算が通ったらやめさせてくれ、こう聞こえるんですけれども、そういうことですか。

早川大臣政務官 法務大臣政務官として言うべきことは、自分の担当する職務については何も言えない、要するに進行中のことについては何も言えないということがあります。昨年の国籍法の改正問題あるいは児童ポルノ等についてのいろいろな議員立法、当然私個人のいろいろな意見があるわけであります。あるいは民法七百七十二条問題についても意見があります。しかし、これが言えないのであります。そういう言えない立場というつらさを御理解賜りたいということであります。

加藤(公)委員 議事録を見ながら改めてどこかで僕はじっくり議論をさせていただきたいと思います。

 大臣政務官ですからね、我々一議員がブログで発言するのとは全く意味が違うわけで、予算が通ったらやめますよというのは、これは正直言いますけれども、やはり、政府の要職にある方として無責任なんですよ。

 さらに申し上げると、そのブログの中で、「衆議院の解散総選挙の前後の政界再編のために、新党の設立も視野に入れて、それぞれ自立の道を歩まなければならない、」こう明言されているんですよ。ちょっと反省された方がいいと思いますけれども、いかがですか。

早川大臣政務官 政治家個人としての信条と法務大臣の政務官という内閣の一部を担っている立場とは、おのずから区別をしなければならないというふうに思っております。

 そういう意味で、いろいろと軽率に発言をしてしまってというか、ある意味で、ブログでのことだったんですけれども、そういう受けとめ方をされてしまうような状況であったということについては、これは撤回をさせていただいて、特に法務大臣から、まだ私自身に託されている仕事も終わるわけではない、仕事をともにしていこうじゃないか、こういう温かいお話もちょうだいをいたしました。

 そういうことで、軽率な発言であったことについて、これを撤回させていただいた次第であります。

加藤(公)委員 大臣もお気の毒な話で、お人柄がいいから慰留をして、撤回をされた、踏みとどまったという話なんでしょうが、それは、この発言は、僕は幾ら何でも政府の要人としてしちゃいかぬことだと思いますから、相当厳しくみずからを律していただきたいということだけ、きょうのところは申し上げておきます。

 最後に一点。同じブログの中で、「もう特定の人の言いなりにはなりません。自分の頭で政策を練り上げていきます。」こう書いてあるんですよ。ブログというのはだれかが解釈をして原稿を書いているわけじゃなくて、御自身で書かれているんだから、これを読むと、政務官御自身が、自分の頭で政策を考えてきませんでした、だれかの言いなりでしたと言っているのと一緒なんですよ。だれの言いなりだったんですか。

早川大臣政務官 いや、それは読み方の違いでありまして、だれか特定の個人が右へ行ったら右へ行く、左へ行ったら左へ行く、そういったことは、自立すべき国会議員のあり方としてはいかがでしょうか、こういう趣旨でありまして、自分の頭でしっかりと政策はつくっていって、しかも政策本位でなければいけない、そういう趣旨であります。

加藤(公)委員 政策本位じゃなきゃいけないし、自分の頭で考えて決断をしてもらわなければいけないのはそのとおりでありまして、何も私から一々申し上げるまでもないことですが、御自身で書かれたブログだということは決してお忘れのなきように、厳しく御忠告を申し上げておきたいと思います。

 最後、大臣、さっきの件、ぜひ前向きに検討してください。場合によってはまた後日議論させていただきたいと思いますので。

 終わります。

山本委員長 次に、保坂展人君。

保坂委員 社民党の保坂展人です。

 きょうは、森法務大臣及び法務省の皆さんに、まず死刑について議論していきたいと思います。

 お手元に今資料を配っていただいているところですが、森大臣も、先日伺いましたけれども、東京拘置所の刑場をごらんになったということですが、私も二〇〇三年、七年と、二回にわたって死刑の刑場というものを見ております。

 きょうは、裁判員制度がやはりここに迫っている、私たちは非常に議論が不足しているというふうに感じていますけれども、衆議院議員選挙の名簿で、くじで選ばれた国民が、短期間の審理の中で死刑か否かという究極の判断を迫られるということは、これは、死刑存置だという方、あるいは私たちのように廃止をしていくべきだ、双方の立場をたがわず、いろいろ意見が出ているところでございます。

 ところで、昨年、この法務委員会の質疑で、死刑は絞首刑をもって行うという法令上の根拠は何なのか、刑法だということが刑事局長からあったんですが、実は、その執行方法については、今資料にお配りをした二ページ目をごらんいただくと、明治六年太政官布告第六十五号、明治六年の二月二十日に布告をされたものというのが、これは最高裁の判例でも、これが生きている、現状、これを根拠に行われているということのようなんです。

 大変申しわけないんですが、事前にお願いをしておきまして、この明治六年の太政官布告の主な部分をちょっと読み上げていただけないかと思います。

森国務大臣 大変御親切に、事前に通告していただきましたので、ルビを振ったものを用意いたしております。朗読させていただきます。

 本図死囚二人ヲ絞ス可キ装構ナリト雖モ其三人以上ノ処刑ニ用ルモ亦之ニ模倣シテ作リ渋墨ヲ以テ全ク塗ル可シ

 凡絞刑ヲ行フニハ先ツ両手ヲ背ニ縛シ紙ニテ面ヲ掩ヒ引テ絞架ニ登セ踏板上ニ立シメ次ニ両足ヲ縛シ次ニ絞縄ヲ首領ニ施シ其咽喉ニ当ラシメ縄ヲ穿ツトコロノ鉄鐶ヲ頂後ニ及ホシ之ヲ緊縮ス次ニ機車ノ柄ヲ挽ケハ踏板忽チ開落シテ囚身地ヲ離ル凡一尺空ニ懸ル凡二分時死相ヲ験シテ解下ス

保坂委員 次のページをめくっていただくと、これは今にも生きている明治六年段階の、俗に言うポンチ絵というものを法務省矯正局からいただきました。

 この絵を見ると、当時は二人の死刑囚を同時に処刑するということだったんでしょうね。それで、布告を見ると、三人一遍にというのもこれに準じてつくりなさい、こういうふうに書いてあるということでございます。そして、後のページの図を見ても、踏み板の部分、上から見たところ、裏から見たところ、非常に生々しく、そして、かすがいのようになっているこの踏み板をレバーで外すと、かすがいが外れて落ちる、こういう構造かと思いますけれども、このポンチ絵について、矯正局長、ちょっと簡単に、どういう構造なのか。

尾崎政府参考人 図示されたものにつきまして詳細に御説明することはなかなか難しいのでございますが、基本的構造を申し上げますと、階段のついたやぐら状の台を設けまして、その上部に渡したはりから縄をつるし、台の中央部に設けた踏み板が開く仕組みになっておりまして、開いた場合には死刑確定者の自重により首が絞められる、こういう構造になっているものと承知しております。

保坂委員 今も生きているのかだけ。

尾崎政府参考人 昭和三十六年の最高裁大法廷判決によりまして、この絞罪器械図式に定められた基本的な事項につきましては法律としての効力を有すると判断されております。

保坂委員 続いて局長に伺っていきますが、では、この一ページ目は、私も二回、参議院の方でも行っているようですけれども、私の記憶をもとに再現したイラストでありまして、細部は違っている可能性があります。

 ここにある、教誨師が死刑囚と会う場所というところで、東京拘置所では拘置所長が死刑の宣告をすると。私たちは何か、多分映画かテレビかわかりませんけれども、この部屋で観音像を前に最後に死刑囚が辞世の句を詠んだり、あるいはお菓子を食べたりお茶を飲んだりするというようなことを、ちょっとそんなイメージがあったものですから、そういうことはあるんですかと聞いたら、いや、この部屋ではそういうことはない、割とその宣告をしてから余り間髪を置かずに処刑は行われるんだ、こう聞いたんですが、この部屋には、拘置所長以外に、職務命令を受けた刑務官以外にどんな方が入られるんでしょうか。

尾崎政府参考人 個々具体的な場面において異なるものではありますけれども、一般的には、刑事訴訟法第四百七十七条に基づきまして、検察官、検察事務官及び刑事施設の長または施設長の代理者、また刑の執行を監督する立場にある処遇部長等の幹部職員、刑事施設の医師、執行に当たる刑務官などがその場に立ち会うというふうに聞いております。

 先ほど教誨関係についてもちょっとお尋ねがございましたけれども、私が承知している限りでは、この図にある場所かどうかは別といたしまして、死刑執行の旨を死刑確定者に告知した後、希望があれば教誨師が面接して話をするという手続がとられているというふうに承知しております。

保坂委員 東京拘置所で私どもが聞いたお話では、この教誨師が死刑囚と会う場所で拘置所長が宣告をするというふうに聞いたんですね、これから行うと。そのときに希望があれば、教誨師さんとその後でお話しされるんですかね。その現場で聞いた話では、教誨師さんとのお話は別の部屋で、ここに来る前に行われています、ここでは、命令があってから割と、ほどなくというか数分で執行に至るんですと聞いたんですが、その点どうでしょうか。

尾崎政府参考人 委員のお話によりますと、死刑を執行するという告知をする前に教誨師と面接されると委員御認識であるというふうにお聞きいたしましたけれども、私の認識している限りでは、死刑執行の旨を告知した後、希望があれば教誨師と面接して、その後執行を行うという順序になるというふうに承知しております。

保坂委員 当時の東京拘置所長は、私も何度もお会いした方で、割とこれは数分ですよというふうにおっしゃったんですね。私もそういうふうに、今局長が答えたように認識していたので、ここでいろいろお話しされるんだろうなと。実態は違うことを言われていたので、それは後で確かめていただきたいと思います。

 もう一点なんですが、刑事訴訟法で立会人ということで言われた職分の方たちを今挙げられましたけれども、検察官らが立ち会う場所という階段の上のバルコニーのところで、上と下を同時に見渡せる場所がございますけれども、この両方に今言われた方たちが立ち会われるということなんでしょうか。

 おわかりでしょうか。検察官らが立ち会う場所に入る方と、教誨師が死刑囚と会う場所、入り口のところですね、そこに入られる方、同じ人たちが両方にまたがって立ち会うんでしょうか。おおむね何人くらいなんでしょうか。

尾崎政府参考人 実際の執行にかかわる者以外は、この検察官らが立ち会う場所という場所で執行の様子を見届けるというふうに承知しております。(保坂委員「何人ぐらい」と呼ぶ)それは場合場合によって違うと思いますけれども、少なくとも検察官は含まれております。

保坂委員 森法務大臣もごらんになったと思いますけれども、これらの構造、私は記憶で再現しているので違う部分もあるかもしれませんけれども、おおむねこのような状況でしたでしょうか。

森国務大臣 大変よく再現されていると思いますけれども、下の図の、観音像なんかのあった部屋には執行ボタンはなかったように記憶していますけれども。これは裏だよね。

保坂委員 会議録を読んでいる人はまるでわからないと思うんですが、これはいわゆる吹き出しなんですね。これは、下にあるんじゃなくて、上の部屋の横にあるんです。上の部屋の横についているというのをイラスト的に、立体的にあらわしているので、下にあるわけではないんです。

森国務大臣 これは観音像のある部屋というのと別ですね。すぐ隣接する……(保坂委員「はい、違うんです」と呼ぶ)

 では、全くこのとおりだったと思います。

保坂委員 矯正局長、刑事訴訟法には、この立ち会いをする人について、監獄の長、今、刑事施設の長となりましたでしょうか、その方が認めた人、許諾をした人ということになりますね。

 例えば、大臣、非常に聞きづらい質問で申しわけないんですが、もし法務大臣が、死刑の指揮、執行命令の最後まで見届けたいとおっしゃった場合には、それは、監獄の長、刑事施設の長は認めるということになりますでしょうか。

大野政府参考人 死刑執行の際の立ち会いの関係でありますけれども、法律上、法務大臣の執行命令に基づく検察官の指揮により刑事施設内で行うこととされているわけですけれども、その際には検察官と検察事務官が立ち会うこととされております。そのような法律の趣旨に基づきまして、検察官等が適切に立ち会いを行っているというように考えます。

保坂委員 死刑についてはいろいろな議論があります。大臣、私は、これは恐らく、法務大臣が最後まで見届けると言えば、それを阻むことは何らないんだと思います。要するに、東京拘置所の所長がこれを可とすれば見られるんだと思います。

 これから、実は、絞首刑という方法が本当に残虐な刑罰に当たらないという最高裁の、昭和二十六年ですか、この判例が本当にこれでいいのかという議論もしていきたいと思いますので、この死刑の刑場のあり方について一定程度情報公開を、議員に見せたということはある意味で情報公開だったんですけれども、しっかり事実をまず出していただき、それから議論を進めていただきたいと思います。大臣、いかがでしょうか、死刑の最後の質問なので。

森国務大臣 今の御質問は、刑場を公開する……

保坂委員 いや、そういう意味じゃなくて、刑場の公開も一つの選択肢かと思いますが、それをイエスかノーか、どうですかということではなくて、今みたいな議論というのはほとんどこれまでされてこなかったんですね。だって、太政官布告ですから。このポンチ絵と刑場も大分違うわけですよ。ですから、そういうことについてしっかり事実を踏みながら死刑の問題について私は議論をしていきたい、大臣、いかがですかという意味なんです。

森国務大臣 それは真摯に受けとめて、私も対応させていただきたいと思います。

保坂委員 次に、きょうは、細川先生、山田先生からもお話がありました、捜査情報の問題について森大臣にちょっと伺いたいんです。

 これは古くて新しい議論でございまして、例えば、現場の検察官がしゃべるのは国家公務員の守秘義務違反である、これはAさんという方。それから、Bさんという方は、リークというのは公務上知り得た捜査上の秘密を漏らすことです、職務上知り得た事実を漏らした者は厳重に処罰されることになっております、これはBさんという方です。実は、このAさんという方は与謝野さんなんですね。ちょうど、一九九八年の六月六日、自民党の広報本部長をされていて、Bさんという方は杉浦正健元大臣なんですね。

 実は、当時自民党では役員連絡会で、これは九八年六月六日の新聞ですが、検察の捜査情報の漏えいで国会議員の名誉が傷つけられているのは問題だとして、検察の情報管理のあり方を検討する調査会を党内に設置することを決めた、起訴されるかどうかがはっきりしない段階での国会議員の疑惑が報道されることへの反発が強く、問題点の整理や国会での監視のあり方を論議していく方針だということなんですが、当時どのような議論をされたか、大臣、覚えていらっしゃるでしょうか。

森国務大臣 私は、はっきり記憶しておりません。

保坂委員 それでは、佐藤剛男副大臣、どうでしょうか。この分野でいろいろ、法務委員会も長かったと思うんですが、このときの議論ですね。九八年、当時、大蔵汚職とかたくさんの事件があって、日本も相当不況に陥った。このリークをめぐって自民党で調査会が持たれた。どんな議論が当時党内でされたのかというのを御記憶の範囲でお願いしたいと思います。

佐藤副大臣 当時の事情は定かでございません。

保坂委員 あれはまだ十年前のことなので、お二人とも御活躍されていた当時なので……(発言する者あり)こちらの笹川先生はよく覚えていらっしゃるみたいですが。とにかく、ちょっと攻守所が変わったなという印象を持つんですね、いろいろ資料を見ると。昔、検察のことで、リークだ、いかぬと言っていたのは主に自民党なんです。この三年ぐらいは野党なんですね、どっちかというと。

 それで、伺っていきたいんですけれども、実は、今度は二十年前になりますが、当時、リクルート事件で、亡くなった新井将敬さんが当時の高辻法務大臣に聞いているんです。

 高辻法務大臣は、実はこれもいろいろリーク報道の問題とか、リクルート事件でも自民党側からも声が上がっているんですが、そんなことはないと思うというふうに委員会で答えながら、こんなことをおっしゃっているんですね。要するに、検察が検察権を行使しない場合、それからもう一つは、検察ファッショと言われるような場合にはいわゆる指揮権の発動も考えるということを、これは八九年、今から二十年前の四月の予算委員会で述べていらっしゃいます。

 亡くなった新井委員が、「検察というものが、民主的な、行政的な手続を経ないで、直接的に例えばマスコミに働きかけたり、そういう形で裁きあるいは自分たちの目的を有効に持っていこう、そういう状態を検察ファッショというふうに理解してよろしいでしょうか。」と言うのに対して、高辻大臣は、「特定の政治目的のために検察権が乱用されたときというのは、御指摘のような場合がまさにそれに当たると思います。」と言って、こういう場合には指揮権の発動を促すことに結果としてなるというふうにおっしゃっているんですが、この二十年前の法務大臣の見解と今の森大臣の見解はどうでしょうか、変わりありませんか。

森国務大臣 そういうことだろうと思いますけれども、私は、やはり原則として、指揮権の行使というのはよくよく慎重であるべきであって、個別の事案について私は考えたこともありませんし、これまで一切行使しようと思ったこともありません。

保坂委員 ぜひ大臣、副大臣、政務官も、自民党で十年前にこの調査会がつくられて、どういう議論だったか、お二人ともちょっと記憶にないということなんですけれども、ぜひ思い出していただいて、どういう議論だったか、次の機会に聞かせていただきたいと思います。

 では、この点についてはこれで終わります。

 三点目に、先ほど細川先生からも議論があったカルデロン・ノリコさんの件で、新聞報道でも盛んに言われております。

 外務省に来ていただいていますけれども、日本は国連人権理事会の理事国なんですね。日本は、一般的に、国際人権の分野でどういう活動をどういうスタンスで行うためにこの理事国になっているんでしょうか。

石井政府参考人 お答えいたします。

 今委員がおっしゃいましたとおり、日本は、二〇〇六年の人権理事会設立当初からの理事国でございます。日本は、理事国といたしまして、国際社会における人権の擁護、促進に向けて、国際的な人権規範の発展や促進、それを初めとしまして、国際社会の人権状況の改善に貢献してきておると自負しております。

 今後も引き続き、人権理事会の活動を通じて、世界の人権の保護、促進に建設的な役割を果たしてまいる所存でございます。

保坂委員 このノリコさんの件は盛んに報道されて、中学一年生だ、学校名も挙げられている。

 文科省に来ていただいていますけれども、これは、まず国連からは、彼女の教育の権利はどういうふうに保障されているのかということが問われていますが、同時に、どうもインターネットなんかを見ると、心ない書き込みなんかが相当あふれているように思いまして、いわば、珍しいケースだと思うんですが、子供さんなんだけれども、写真も出て、どこの学校かというのも出ていてということで、心ない、あるいは悪意の出来事などが起きてはいけない、学校内の混乱もあってはいけないと思うんですが、このあたりはどういうふうに配慮されているのか、報告を受けているのか、お願いします。

前川政府参考人 御指摘のカルデロン・ノリコさんの件でございますけれども、現在通学している中学校におけるケアの状況について確認したところでございます。

 これは蕨市の市立の中学校でございますが、現時点で校内における本人に対する誹謗中傷あるいはからかいといったような行為は発生していない、しかし、そのような行為が仮に認められた場合には速やかに校長に連絡するよう教職員に指示している、こういうことでございます。

 また、本人の状況でございますけれども、現時点では落ちついていることから、特別なカウンセリングあるいは教育相談のようなものは実施していないけれども、いつでも相談できる態勢を整備している、こういう状況であるというふうに聞いておるところでございます。

保坂委員 森大臣に伺っていきたいんですけれども、この件に関しては、もう刻々と時間が迫っているわけですね。金曜日でしょうか、これが回答期限ということで、お母さんの方の回答をお待ちになっていると。その回答が拒否回答であった場合には週明けにも送還の手続をとるというふうに、当局から私も昨日聞いているんですけれども。

 さて、国連がずっと、先ほどの外務省に答えていただいた人権理事会から、要するに日本政府に答えてほしいという角度は、実は、子供の、ノリコさん自身の立場に立ったときにどうなのかということを日本政府はどこまで考えているんですかと。

 それは、子どもの権利条約、児童の権利条約の中に、第三条に、子供の最善の利益、我々大人は、子供にとって一番いいことを、基本的にそれを実現していくということで子供に対処していこうということ。あるいは父母からの分離の禁止とか、こういうのがございます。

 特に、先ほど学校内の状況も文科省に答えていただきましたけれども、お友達の方、周りの同世代の子供たちも非常に注目している事案ですので、やはり教育上の配慮というのも欠かせないことでしょうし、特に、子どもの権利条約には意見表明権というのがあります、十二条なんですけれどもね。

 ですから、入管のお話を聞いていくと、どうもお母さんに代理して聞いてということでずっとおっしゃるんですが、お子さん自身の意思というのを最終的には懇切丁寧に確かめる必要はないだろうか。子どもの権利条約によれば、それは確かにあるんですね。自分の身の上に襲いかかってくる大きな事柄について、それは発達段階に応じてですが、意見を表明することができるというのが、我が国が批准している子どもの権利条約。

 この点について、大臣、いかがでしょうか。

森国務大臣 子供からの意見表明については、今回の件については、本人からの直筆の陳述書ですとか、それから、子供が登場して意見を述べているDVDが提出されておりますし、また、法定代理人たる親からも、子供の意見がどういうものであるかを聴取いたしまして、さらに、代理人たる弁護士からも子供の意見を記載した書面等が提出されているところであって、子供の意見は十分に聴取し、把握しているというふうに思っております。

保坂委員 ちょっと大臣の答弁で、では、局長にもあと一問聞きたいので、前半にお聞きした子どもの権利条約の、最善の利益とか父母との分離の禁止というところについてはいかがでしょうか。

森国務大臣 まず、確かに、両親は他人名義のパスポート、いわゆる偽造パスポートで入国して、相当悪質な事案でございますから、やはり退去していただかなきゃならないと思います。したがって、家族一体の原則がありますし、また、事案が発覚したのは小学校のときですので、これは基本的に家族そろって母国に帰っていただくというのが本来の措置だろうというふうに思います。

 しかしながら、このカルデロン家の長女の場合は、ずっと日本で育って、日本で学び、そういうことで、どうしても日本で学業を続けたいという希望があるようでございますし、また加えて、本人の血を分けたおじさん、おばさんがすぐ近くにいるということですから、そういった身内の、あるいはごく親しい人たちの監督あるいは養育の環境が整うならば、娘さんだけには在留特別許可を出そうというふうに既に通告しているところでございまして、私どもとしては、この事案についての事情をしんしゃくして、最大限の配慮をしたつもりでございます。ただ、もちろん原則としては、三人で退去していただくという選択肢もあるわけでございます。

保坂委員 では最後に、入管局長に。今、大臣がかなりお話をいただきましたので。

 私たちは、特在ということで考えていただければいいのになという思いはありますけれども、日が迫っているという中で一番恐れるのは、十三歳という年齢は非常に多感であって、またうまく言えない部分もあるんですね、自分の気持ちというのを。子供ですから。言ったことと本心が違う場合もあったりするわけですね。

 ですから、これは入管の方が最終的には意思確認されるのかということも聞きたいんですけれども、その場合に、今回、非常に懇切丁寧に、そしてまた教育の場ということに対する影響もかんがみて、御本人の気持ちということを、一通り聞くというのではなくて、しっかり押さえていただけないかということを、いかがでしょうか、局長。

西川政府参考人 まず、お子さんの意思の確認ということにつきまして、今までの手続において、代理人を通し、あるいは本人の陳述書、あるいは本人の意見を陳述しているDVD等で十分聴取している、これはそのように思っております。

 それから、先ほど大臣がおっしゃいましたとおり、一家について、三人の在留は認められないけれども、長女については、例えばおじさん、おばさんであるとか、適切な監護養育者のもとで学業を続けたい、こういう意思がかたければ在留特別許可をしてもよいという大臣の意向がございます。この意向については、既に御両親にも、それから御両親を通じてお子さんの方にも伝えておるということでございますので、意図は十分わかっていただけると思っております。

 その上で、家族、あるいは監督者の候補がおられると聞いておりますので、その監督者の候補ともよく相談をしていただいて、それでお子様の意に沿うような形で、三月十三日の日に、それが一応期限ということで切らせていただきましたので、回答をいただきたいというふうに思っております。

 入管の方からは、既に十分な説明を申し上げているというふうに思っております。

保坂委員 最後の最後の場面で非常に重要な意思表示がやはりあると思うので、もう聞いているからわかっているということではなくて、ぜひ丁寧に聞いていただきたいということを大臣にも申し上げて、終わりたいと思います。

 どうもありがとうございました。

     ――――◇―――――

山本委員長 次に、内閣提出、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。森法務大臣。

    ―――――――――――――

 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

森国務大臣 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。

 この法律案は、下級裁判所における事件の適正かつ迅速な処理を図るため、裁判所の職員の員数を増加しようとするものでありまして、以下、その要点を申し上げます。

 第一点は、裁判官につき、判事の員数を四十人及び判事補の員数を三十五人増加しようとするものであります。これは、民事訴訟事件及び刑事訴訟事件の適正かつ迅速な処理を図るとともに、裁判員制度導入の態勢整備を図る等のため、裁判官の員数を増加しようとするものであります。

 第二点は、裁判官以外の裁判所の職員の員数を三人増加しようとするものであります。これは、民事訴訟事件、刑事訴訟事件及び家庭事件の適正かつ迅速な処理を図るとともに、裁判員制度導入の態勢整備を図る等のため、裁判所書記官等を百三十人増員するとともに、他方において、裁判所の事務を簡素化、合理化、効率化すること等に伴い、技能労務職員等を百二十七人減員し、以上の増減を通じて、裁判官以外の裁判所の職員の員数を三人増加しようとするものであります。

 以上が、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案の趣旨であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。

山本委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る十七日火曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時四分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.