衆議院

メインへスキップ



第10号 平成21年5月12日(火曜日)

会議録本文へ
平成二十一年五月十二日(火曜日)

    午後一時三十分開議

 出席委員

   委員長 山本 幸三君

   理事 大前 繁雄君 理事 桜井 郁三君

   理事 塩崎 恭久君 理事 棚橋 泰文君

   理事 谷畑  孝君 理事 加藤 公一君

   理事 細川 律夫君 理事 大口 善徳君

      赤池 誠章君    稲田 朋美君

      近江屋信広君    河井 克行君

      木村 隆秀君    北村 茂男君

      佐藤  錬君    清水鴻一郎君

      七条  明君    平  将明君

      高木  毅君    萩山 教嚴君

      早川 忠孝君    町村 信孝君

      武藤 容治君    矢野 隆司君

      石関 貴史君    中井  洽君

      古本伸一郎君    山田 正彦君

      神崎 武法君    谷口 隆義君

      保坂 展人君    滝   実君

    …………………………………

   法務大臣         森  英介君

   法務副大臣        佐藤 剛男君

   法務大臣政務官      早川 忠孝君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 園田 一裕君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    米田  壯君

   政府参考人

   (警察庁刑事局組織犯罪対策部長)         宮本 和夫君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 佐村 知子君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    倉吉  敬君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    大野恒太郎君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  西川 克行君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 北野  充君

   政府参考人

   (外務省中南米局長)   佐藤  悟君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           杉浦 信平君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           二川 一男君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長) 岡崎 淳一君

   法務委員会専門員     佐藤  治君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十二日

 辞任         補欠選任

  杉浦 正健君     佐藤  錬君

  長勢 甚遠君     高木  毅君

  森山 眞弓君     七条  明君

  神崎 武法君     谷口 隆義君

同日

 辞任         補欠選任

  佐藤  錬君     北村 茂男君

  七条  明君     森山 眞弓君

  高木  毅君     長勢 甚遠君

  谷口 隆義君     神崎 武法君

同日

 辞任         補欠選任

  北村 茂男君     杉浦 正健君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する等の法律案(内閣提出第五一号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

山本委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する等の法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房審議官園田一裕君、警察庁刑事局長米田壯君、警察庁刑事局組織犯罪対策部長宮本和夫君、総務省大臣官房審議官佐村知子君、法務省民事局長倉吉敬君、法務省刑事局長大野恒太郎君、法務省入国管理局長西川克行君、外務省大臣官房審議官北野充君、外務省中南米局長佐藤悟君、厚生労働省大臣官房審議官杉浦信平君、厚生労働省大臣官房審議官二川一男君、厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長岡崎淳一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。谷口隆義君。

谷口(隆)委員 公明党の谷口隆義でございます。本日はどうぞよろしくお願いいたしたいと思います。

 私は総務委員会の理事をいたしておりまして、本法案、入管法の改正法案と、また総務委員会で今やっております住基法案とは、いわば裏表の関係にある法律でございますので、本日、委員長また理事また委員の先生方のお許しをいただきまして、このように質問をさせていただく機会をいただきましたことを、まず感謝を申し上げます。

 まず初めに、本論に入る前に、一つ大臣にお尋ねをいたしたいことがあります。それは、ちょうどこの入管法の改正法案を党内においてもいろいろ検討しておったときに、ことしの一月の下旬に、大阪府内のある中小企業に、朝八時三十分でありましたけれども、入管職員が六名から七名、また警察職員が六名から七名、十五、六名の方が突然その中小企業に入ってこられまして、違法外国人がおるということで入ってきて、生産ラインをまずとめよということで生産ラインをとめさせて、不法入国外国人の捜査を始めたわけでございます。それで、三十分ほどしますと、全く違法な入国をした外国人はいないということで帰ったというんですが、これは後でその経営者の方から私のところに連絡が参りまして、もう腹が立って仕方ないということなんですね。それで、私も聞いて、その足で東京へ来て、入管局長にその状況をつまびらかに説明せよということでお聞きをしたわけでありますが、全く問題なかったんですね。

 私は、この案件で、不法入国外国人の問題というのは、日常どういう捜査が行われているのかわかりませんが、これはもうぜひ質問をさせていただかなければならないな、いわば国家権力の過剰介入の事案だというように思っているわけでございます。

 それで、令状を持ってきたといいますから、令状を持ってこられて、さっきも申し上げましたように、中小企業といえども、朝から生産ラインを動かして、これをとめるということはロスが出てまいるわけでございます。よっぽど確証を得て令状を入手して入るというのが当然の話でありますけれども、全く行き過ぎた捜査が行われた。

 こういうことで、一つは、このような事案は法務省入管局で多々あるのかどうか、御答弁をお願いいたしたいと思います。

森国務大臣 今委員から御指摘のあった事例でございますけれども、一般的に言えば、入国管理局においては、各種令状の請求について、事前に種々の調査を行った上で法令に基づき適正に行っていると思っております。

 ただ、委員御指摘の事案につきましては、結果的に摘発に入ったところが外国人全員が正規在留者であったという報告でございまして、関係者に多大な御迷惑をおかけしたわけでございまして、大変申しわけなく思っております。

 ただ、こういった事例がしばしばあるかというと、そんなにあるということは聞き及んでおりませんし、また、この事例を踏まえまして、入国管理局には、改めて、十分な調査を行った上で令状の請求や摘発を行うよう厳重に指示をいたしたところでございます。

谷口(隆)委員 今大臣がおっしゃったように、これは多々あったら困るわけで、これを受ける方の立場になると、経営者並びに従業員が受ける心理的な負担、これは大変なものだと思います。事によると倒れてしまうような経営者もおられると思うんです、これは突然入るわけでありますので。

 それで、このようなことは厳重に注意されたと大臣の方からも今おっしゃったわけでありますが、先ほども申し上げましたように、令状を持ってきたというんですね。では、令状を請求するのは、法務省入管局の方でその令状を裁判所に請求するんだろうと思いますが、どういうような請求ぶり、要求ぶりだったのか、それと、大臣には、今後このようなことに対してどのように対応されようとしておられるのか、お伺いをいたしたいと思います。

西川政府参考人 捜査というか調査の端緒というのはいろいろございまして、本件の事件につきましては匿名の投書ということでございました。匿名の投書に具体性があったということで、その後、入国管理局において、当該対象となっている会社についての稼働状況等を調査いたしましたり、それから付近の聞き込み的なものを実施いたしまして、間違いがないということで令状を請求したと聞いておりますが、結果としては、先ほど先生がおっしゃられたとおり、すべて正規滞在者だということで、確認が十分ではなかったというふうに反省しているところでございます。

森国務大臣 いずれにしても、先ほど申し上げましたけれども、ただいま局長から御答弁申し上げたとおり、やはり令状を請求するに当たっては、十分な調査あるいは確認が必要であると思いますので、その点、しっかりするように指示をしたところでございます。

谷口(隆)委員 まさに本日、当委員会で審議をしていらっしゃいます入管法の改正案は、国際社会になってまいりましたので、我が国にもやはり多数の外国人が来られるわけでございます。ほとんどの方は適法入国の外国人だろうと思いますけれども、中には不法な入国をされた外国人もおられるんだろうと思います。しかし、ほとんどそういうようなことが行われておらないという前提に立ったときに、今私が申し上げたような事案は、これは、大臣の方からは慎重に慎重にやるようにという指示を出されたということでございますが、体制の問題から、あらゆるところをもう一度見直していただきたいと思うんです。

 こんなことが頻繁に起こると、これは法務省全体の信頼が大きく失墜するということになりかねません。国際社会における信頼も失墜するということにもなりかねません。ですから、ぜひ、いろいろ口頭で注意されたんだろうと思いますが、そういう体質そのものをもう一度検討していただくようにお願いを申し上げたいと思いますが、大臣、ちょっと一言。

森国務大臣 今回の反省を踏まえまして、先生の御指摘をしっかりと受けとめて真摯に対処したいと思います。

谷口(隆)委員 ぜひお願いいたしたいと思います。

 それで、先ほども申し上げましたが、この入管法と、今総務委員会で審議しております住基法は、裏表の関係であります。この入管法というのは、先ほども申し上げましたように、不法入国の外国人を摘発するというところに大きな目的がございます。一方、住基法というのは、外国人住民の利便の増進及び市町村の行政の合理化を目的として住基台帳法の適用対象を拡大するというようなことで、いわば、入管法は性悪説に立っている、住基法は性善説の立場に立っておる法案だ、私はこのように解釈しておるわけでありますが、これは裏表の関係でございますので、しっかりと整合性をとっていかなければなりません。

 そこで、大臣に、非常に密接に関係したこの二つの法案について、性格は全く異なっておるわけでありますが、どのような形で整合性をとられようと考えておられるのか、御見解をお伺いいたしたいと思います。

森国務大臣 まさに、基本認識は委員が今おっしゃられたとおりだろうというふうに私も思います。

 近年、我が国の国際化が進展し、新規入国者数が著しく増加するとともに、我が国に居住する外国人の数も増加し、また、我が国に在留する外国人の構成も大きく変化をしてきております。そういうことから、現行制度上の問題が生じて、外国人の在留状況、とりわけ居住実態の正確な把握が困難になってきております。

 そこで、今回の改正によりまして、現行の入管法に基づいて行っている情報把握と、外国人登録法に基づいて市区町村を通して行っている情報把握の制度を改め、適法な在留資格をもって我が国に中長期に在留する外国人を対象として、法務大臣が在留管理に必要な情報を継続的に把握する制度の構築を図ろうとするものでございます。これにより、在留管理に必要な情報を正確に把握できるようになるわけでございます。

 今、委員が、入管法については性悪説というか、それは恐らく管理という面でそういうふうにおっしゃって、一方、住民基本台帳法については、行政サービスの向上の面という意味で性善説という分類をなすったんだろうと思いますけれども、いずれにしても、どっちが上に立つものじゃなくて、市区町村の力もかりて、そちらから住所等のデータを送っていただきますとともに、入管法の方からは在留資格等のデータを市区町村の方に送るという、いわば相互補完的な役割をすることになるのではないかというふうに思っております。

谷口(隆)委員 今大臣おっしゃったように、新規入国者数を比べますと、平成二年に二百九十三万人だったものが、平成十九年でありますが、七百七十二万人ということで、激増しておる。外国人登録者数も、平成十九年には二百十五万人という多数の外国人の方が入国をされて、外国人原票に記載された登録者数となっておられるわけであります。

 そこで、法務省の入管法の改正を見ますと、現状と問題点というのがありまして、外国人登録の情報につき法務相に調査権がないとか、また、法務相は、上陸、在留にかかわる許可の申請時に外国人からの情報を取得するのみである、外国人登録法上の申請義務違反が入管法上の処分と結びついていないとか、不法滞在者にも外国人登録証が交付され、在留継続を容易にしているということで、その結果、外国人の在留状況が正確に把握されていないから今回の改正を行うんだというようなことであります。

 そこを今、大臣の方は、この二つの法案はお互いに補完し合う法案だというようにおっしゃったんですが、今も私が申し上げた、入管法の改正案のそもそもの改正の端緒はそういうところにあるものですから、これはなかなか、補完し合うというよりも、やはり整合性をきちっと考えていかなければならないと思っておるわけでございます。

 それで、質問させていただくわけでありますが、現行法では市町村の行っている外国人登録原票というのがあります。外国人登録原票というのは、法務省の法定受託事務になっておるわけです。ですから、市町村においては、この登録原票の責任は法務相が持っていらっしゃるわけであります。

 今回の住基法の改正案、今、総務省でやっております住基法の改正案は、外国人であっても住民基本台帳に、今、我が国国民が記載されておる住民基本台帳に外国人も入れていこうと。その中に、当然ながら、追加的な情報は入れるわけでありますが、そのようなことをして、基本的な行政サービスを提供していこうというようなことであります。

 そこで、今審議をしております住基法は、今回、自治事務ということになりました。登録原票は法定受託事務だったわけです。このことを、自治事務になったということを、きょう、総務省からも来ていただいていると思いますが、まず確認をさせていただきたいと思います。

佐村政府参考人 今先生から御指摘賜りましたように、住基法改正案におきましては、外国人につきましても、日本人と同様に住民基本台帳法の適用対象に加えることとしてございます。

 日本人の住民に係る住民票の作成は、御指摘のとおり、また市町村の自治事務でございまして、外国人住民に係る住民票の作成事務につきましても、日本人の住民と同様に自治事務となるものでございます。

谷口(隆)委員 今回、住基法またこの入管法で、それぞれで、さっきも申し上げましたように、従来市町村で行われておった外国人登録原票が住民基本台帳ということに変わりますので、法定受託事務から自治事務に変わった。自治事務に変わるということは、法務省入管当局は、その情報をつまびらかに見るということはできません。この所管は自治体にあるわけでございます。

 そこで、今回のこの入管法の改正で、外国人登録情報について、現行法にはない調査権を整備したいというような、この法律の端緒をさっきも申し上げましたが、書いてありますが、この調査権とはいかなるものを指すのか、お伺いをいたしたいと思います。

西川政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の改正案にあります調査権は、入管法の第十九条の十九に規定されております。この規定により法務大臣が調査することができるのは、入管法により中長期在留者に関して法務大臣に届け出ることとされた事項、すなわち、氏名、生年月日、性別、国籍等、住居地、所属機関などについてだけであります。

 具体的には、これらの届け出事項について、外国人本人及び雇用先、学校、研修先などの所属機関からの情報を照合した結果、事実と異なる疑いがある場合には、あくまでも任意の方法でございますけれども、外国人その他関係者に質問をしたり、文書の提示を求めたり、公私の団体に照会するなどの方法により行うということにしております。

谷口(隆)委員 今、外国人登録原票ということでございますので、現行法ではそのあたりはつまびらかに把握できるわけですね、法務省入管当局は。ですから、ちょっと今おっしゃったのは何か違和感があるんですが、現行法でつまびらかにわかっておって、今回また住民基本台帳に切りかえて、これは自治事務になるわけでありますが、この調査権をもっと拡大したい、法務相に調査権がないので調査権を持ちたいというようなことと今おっしゃったこととの間の関係がはっきりわかりませんが、もう一度お聞きいたしたいと思います。

西川政府参考人 現在、確かに外国人登録制度において、登録事項についての情報は法務省にももたらされているということでございますが、この外国人登録制度による登録事項については、法務相には調査権というものは定められておりません。したがって、その真偽についての調査をすることはできないということでございました。

 それで、今回新たに導入したのは、あくまで在留管理上必要な情報について法務大臣が調査をするということでございまして、まず基本的には、在留管理と住民基本台帳制度とは、目的を異にする別個の制度でございます。それぞれの制度において、把握する情報の範囲も異なります。入国管理局としては、あくまで在留管理上必要な最低限度の情報を取得する、それについての調査を行う、こういうふうに考えております。

谷口(隆)委員 住基法改正で、先ほど申し上げましたように、これから外国人も住民基本台帳に記載されるわけでありますが、全く我が国国民と同様に、追加的な情報も一緒にその中に入ってくるわけであります。これは自治事務になりますから、自治事務ということは所管が市町村になるわけでありまして、先ほど何点か限定された項目について局長の方からおっしゃったんですが、これは、勝手にその情報をとることはできない、見たりすることはできないということになると思いますが、このことはどうお考えなのか。

 もう一つは、住居地情報は、先ほど何点かおっしゃったことなんだけれども、転入、転出の情報ですが、これは今回、法定受託事務になっております。法定受託事務になっておるので、今度は市町村の方は、そのことの情報を見せろといったときには拒絶はできないというように考えるわけでありますが、このことについてどのようにお考えなのか、お伺いいたしたいと思います。

西川政府参考人 委員御指摘のとおり、住民基本台帳の作成というのはあくまで市区町村の自治事務ということでございますので、法務大臣が外国人の住民基本台帳の内容を勝手に見るということは許されておりません。これは法律上もそうですし、今後構築されるであろうシステム上もそのようになるというふうに考えております。

 なお、入管法上、住居地情報については法務大臣も把握する必要がございます。市区町村においても、これを把握する必要があるということであろうというふうに思います。そこで、外国人の負担軽減を図る観点から、外国人の方から市区町村の窓口に届け出ていただくことにし、法務大臣は市区町村から住居地情報を通知していただくということになる、この部分に限りましては、市区町村の法定受託事務ということになります。

谷口(隆)委員 今お伺いいたしておりますのは、この両法案が成立をした暁に、自治体がどういう対応をとればいいのかといろいろ判断に迷うことのないように申し上げておりまして、そのような観点で今質問させていただいているということを御理解いただきたいと思います。

 それで次は、法務省入管局は正確な情報を市町村に適時適切に提供するということになっておりますが、正確な情報を適時適切に提供するということは具体的にどのようなことをおっしゃっておるのか、これも教えていただきたいと思います。

西川政府参考人 法務大臣は、外国人住民に係る住民票記載事項に変更等があったことを知ったときは、遅滞なく、その旨を市区町村へ通知しなければならないというふうにされております。

 具体的にどのような情報かと申し上げますと、外国人本人から氏名、生年月日、性別、国籍等について変更届け出があった場合や、在留資格の変更あるいは在留期間の更新の許可等によって、新たな在留資格や在留期間が決定された場合に、これらの情報を市区町村に通知することとしております。

谷口(隆)委員 今おっしゃった以外にはないんだということですね、局長。

西川政府参考人 今まで申し上げました住居の関係、それから入管の方からの正確な情報、それ以外に市区町村の方で、当該外国人の方が亡くなられた、あるいは生まれたということについての情報のやりとりがございますが、これが法律で定められている情報のやりとりということでございます。

 以上でございます。

谷口(隆)委員 冒頭お話をさせていただきました、何か国家権力の過剰介入事案というものが、私自身もその状況をつまびらかに聞いておると、これはやり過ぎだなというようなことがあったので、法務省入管局と市町村との間の関係、これを詳細に詰めていかないと、法務省は法務省で考えておることがある、また自治体は自治体で、市町村は市町村で考えていることがあるということになってまいると、どうもその整合性の問題で困ったことが出てくるかもしれません。

 そういうようなことを考えると、市町村においては、台帳の正確性を確保するということが非常に重要なのでございます。また、この入管法では、法務省入管局では市町村に適時情報を提供するということで、この正確性が確保されるわけでありますけれども、この権限、両者の間の権限と責任というのは一体どういうように調整をすればいいのかということがあるんだろうと思うんです。

 具体的にこの調整の方法といいますか、整合性を維持する方法というのはどういう方法があるのか、総務省に初めにお伺いをし、後、法務省、できましたら法務大臣の方から御答弁いただければというふうに思います。

佐村政府参考人 先生御指摘のとおり、住民基本台帳制度は、住民の方々の利便の増進と市町村等の行政の合理化を目的とする、そういう自治事務でございます。入国管理制度は在留管理を目的とする国の事務であって、この二つの制度はその目的を大きく違えております。

 しかしながら、またこれも御指摘ありましたけれども、情報の正確性を確保するとともに、外国人住民の方の届け出の負担軽減を図る、そういった観点も重要でございまして、そのために、把握している情報に変更があった場合には、行政機関の中で相互に必要最低限の通知を行うという仕組みが必要かと考えてございます。

 具体的には、先ほどからも出ておりますように、法務大臣の方から在留資格、在留期間等の変更情報を適切に市町村長に通知いただくとともに、住所情報等に変更があった場合には、市町村長が法務大臣に通知をする、そういうふうにしているものでございます。

森国務大臣 今まで申し上げているとおり、今総務省からもありましたけれども、市区町村にとっても、入国管理の方の在留期間の上限の伸長や再入国許可制度の見直しなど、その情報提供は、行政サービス上極めて有益だと思います。また、もちろん入管、在留管理にとっても市区町村からの情報提供は重要でありますので、お互いの整合性がとれて、かつ先生から再々御指摘があるように、行き過ぎになって、入管の方が立ち入り過ぎるようなことのないように、責任の区分をしっかりして運用をちゃんとしていきたいというふうに思っています。

谷口(隆)委員 現行法の外国人登録原票というのは、市町村からしますと法定受託事務でございます。ところが、先ほど申し上げましたように、これが自治事務に変わるということは、実は整理をしなければならないことでございます。

 ですから、先ほどからもう何回か申し上げておりますが、法務相の権限で個人の住民基本台帳をのぞき見ることはできない、局長の方からおっしゃったように、限定されたところだけできるわけでありまして、そのあたりのところをよく詰めていただかなければなりません。

 なぜ私がこういうことを言うかといいますと、私どもの党で、法務部会と総務部会との間の、この二つの法案をめぐる合同部会をやった。そのときに、どうも法務省と総務省との間の調整ができておるようには思えなかったことがあったわけです。そこを法務省の方は、あのときの部会で訂正されましたが、まだ詰まっていないのではないかと思われるような節がありましたので、ぜひ、先ほど申し上げましたような、両者間の、市町村とまた入管当局との間の調整をきちっと行っていただくということをお願い申し上げまして、時間が参りましたので、これで終わらせていただきたいと思います。

山本委員長 次に、稲田朋美君。

稲田委員 自由民主党の稲田朋美でございます。

 本日は入管法改正についてお伺いをいたしますが、その前に、先週報道されました足利事件について刑事局長にお伺いをしたいと思っております。

 この事件は、平成二年、幼女が殺害された事件で、その一年半後に逮捕されました菅家受刑者が、DNA鑑定の結果が決め手となって無期懲役判決が確定したんですけれども、今回、幼女の下着に付着していた精液のDNA再鑑定の結果、受刑者のものとは別人のものである可能性が極めて高いということが明らかになり、再審開始の公算が高まったと報道された事件であります。

 まだ審理中といいますか、再審開始が問題になっておりますので、具体的な答弁はできないかと思うんですけれども、この事件で浮き彫りになりましたDNA鑑定の問題点についてお伺いをいたしたいと思っております。

 DNA鑑定が議論された事案といたしましては、この委員会でも、国籍法の改正に伴って偽装認知を防ぐためにDNA鑑定を要件とすべきではないかという議論がございましたし、また、民法七百七十二条改正の問題でも、離婚後三百日以内に生まれたお子さんの前夫の推定を外すのに、DNA鑑定を要件として外すべきではないか、そういった議論がなされたこともございます。

 私は、いずれの問題についても、DNA鑑定を安易に民法の法制度の中に、また国籍法もそうですけれども、入れることは、日本の家族制度自体を変容させることになり妥当ではないんじゃないかということを申し上げてまいりました。

 それともう一つ、やはり、DNA鑑定というのが必ずしも完全なものなのか、また万能なものなのかという問題もあると思います。

 足利事件では、捜査の早い段階で行ったDNA鑑定と今回のDNA鑑定で全く正反対の結論が出たわけであります。菅家受刑者は、報道によりますと、一審の公判の途中から否認をされていたというわけですけれども、DNA鑑定が判決の有力な証拠になったことは間違いがないところだと思います。

 今回、捜査段階とは正反対の鑑定結果が出たわけです。DNA鑑定の精度が当初より随分高くなったということもあったと思いますけれども、DNA鑑定が一〇〇%ということでもない。また、反対に、DNA鑑定の精度が高いということは、かえってその結果を妄信する、そして他の証拠の評価がおろそかになるのではないかな、このようにも思います。

 また、検体が被疑者のものであるかどうか、それから検体の保存状態がどうだったかということも、結果に影響を及ぼすこともあると思います。今回の鑑定では、十九年前の検体の鑑定ということですから、その保存状態がどうだったのか、それによって正確な結果を果たして得ることができたのかということも議論になるのではないかと思っております。

 今回の事件を踏まえて、今後、捜査段階のDNA鑑定の取り扱いや、またDNA鑑定の信用力の問題について、刑事局長はどのようにお考えか、お伺いをいたします。

大野政府参考人 御指摘の足利事件につきましては、委員が述べられましたように、現在、再審請求の即時抗告審が係属中であり、検察当局におきましては、先ほど御紹介のありました鑑定の内容を現在十分に精査、検討している最中でございますので、具体的なことについてはお答えを差し控えさせていただきますけれども、DNA鑑定の扱いについてでございます。

 DNA型鑑定につきましては、平成に入ってからと申しましょうか、急速に技術的な、あるいは精度的な進歩が見られるところでありまして、科学的原理については理論的な正確性が認められるということでございますし、また、鑑定試料が微量であっても鑑定が可能であり、個人識別精度も最近は特に非常に高くなってきているということで、捜査に有用なツールであるというふうに認識しているわけでございます。

 ただ、今委員が御指摘になりましたように、DNA型鑑定の結果というものも、さまざまな条件のもとで正当な位置づけをした上で判断をしないといけないものでございます。

 したがいまして、捜査当局におきましては、単にDNA型鑑定の結果だけを取り上げるということではなく、被疑者と犯人の結びつきの立証という観点からは、そうした客観的な証拠を収集する、あるいは目撃者等第三者の供述、あるいは裏づけがとれ、秘密の暴露を含む信用性のある被疑者の供述を得るなどということで、そういう証拠の全体構造の中で、ほかの証拠との整合性についても十分に目配りをした上で、事案の真相解明に努めているというように承知しております。

 とりわけ、先ほどおっしゃられた鑑定試料の採取や保管の状況等につきましても、細心の注意を払わなければいけないことは当然であろうというように考えているところでございます。

稲田委員 もうすぐ裁判員制度も始まりまして、一般人が証拠の評価をしなければならなくなるわけですから、その意味からも、DNA鑑定の位置づけやその功罪についても検討して議論をしなければならないのではないかと思っております。

 また、今回の事件で、報道から私が感じる限りなんですが、弁護側は既に平成九年に、DNA鑑定について疑問だとする証拠を最高裁に提出していたわけであります。

 DNA鑑定に疑問があるという主張がなされた場合、再鑑定というのはもっと積極的に認めていいのではないか。仮に同じ結果だったらその補強になるわけですし、もしそれが違っていれば大変なことであるわけですから、なぜ早く再鑑定をしなかったのか、これも反省すべき点ではないか、このように考えております。

 それでは、入管法の改正の問題に移らせていただきます。

 今回、外国人登録制度を廃止して、新たな在留管理制度を導入し、在留カードと特別永住者証明書の制度に変更をするわけですが、これは今までの外国人在留管理制度を大きく変更する大改正だと思います。なぜ、今この改正なのか。

 そしてまた、今回の改正で、再入国許可の緩和ですとか在留期間の上限の伸長など、在留外国人の方々に対してさまざまな利便性が講ぜられるわけですが、こういった緩和措置というのは、不法入国ですとか不法の滞在というものは許さない、そういった厳格な管理制度があって初めて緩和制度というものがあると思うのですけれども、こういった点の法務大臣の所見をお伺いいたします。

森国務大臣 現行の制度では、法務大臣は、入管法に基づいて、外国人の入国時や在留期間の更新時等の各種許可に係る審査を行う際に、外国人から必要な情報を取得しております。一方、在留期間途中における事情の変更については、法定受託事務として市区町村が実施している外国人登録制度を通じて把握することといたしております。

 ところが、近年、我が国の国際化が著しく進展いたしまして、新規入国者数が急増するとともに、我が国に居住する外国人の数も増加し、また、我が国に在留する外国人の構成も大きく変化していることなどから、外国人の在留状況、とりわけ居住実態の正確な把握が困難になってきております。

 そこで、今回の改正により、現行の入管法に基づいて行っている情報把握と、外国人登録法に基づいて市区町村を通して行っている情報把握の制度を改め、適法な在留資格をもって我が国に中長期に在留する外国人を対象として、法務大臣が在留管理に必要な情報を継続的に把握する制度の構築を図ろうとするものであります。これにより、在留管理に必要な情報を正確に把握することができるようになります。

 一方、特別永住者の方々については、現行の外国人登録制度や在留管理制度において正確な情報把握の観点から大きな問題があると指摘されているわけではありませんので、新たな在留管理制度の対象とはいたしておりません。したがって、外国人登録制度の廃止に伴い、現在特別永住者の方々に交付されている外国人登録証明書が特別永住者証明書にかわることなどを除きますと、現行の制度を実質的に維持することといたしております。

 具体的に、特別永住者証明書の記載事項については、これを必要最小限にするとの観点から、外国人登録証明書の記載事項と比べて大幅に削減しておりますが、記載事項の変更や再交付などに係る手続は、従来どおり市区町村の窓口で行うこととしております。

 いろいろ申し上げましたけれども、要するに、今までの、ある点の把握から線の把握にして管理を的確にすると同時に、外国人に対するサービスもしやすくなるようにする改正でございます。

稲田委員 いろいろ具体的に大臣からお答えをいただいたんですけれども、今回は、厳格にきちんと管理をする、その上でさまざまな緩和措置を講ずるんだという趣旨であるというふうにお伺いをいたします。

 さて、何人かの委員からこの質疑の中でも質問がございましたが、今までの外国人登録証では、不法滞在者にも交付をされた、そのことにより不法滞在者の在留継続を容易にしていたという問題もありました。また、外国人登録証を見ても、一見して不法滞在かどうかということがわからないため、不法就労を助長する結果にもなっていたということであります。

 今回、外国人登録証にかわるものとして、中長期在留者については在留カード、また特別永住外国人については特別永住者証明書となったわけですが、いずれも常時携帯義務が定められております。その趣旨は何か。また、この常時携帯義務違反について、在留カードについては罰則で、また特別永住者証明書については過料で制裁が定められているわけですけれども、こういった罰則や過料を定めている趣旨についてもお伺いをいたします。

西川政府参考人 お答え申し上げます。

 まず在留カードの方ですけれども、これは、一般の外国人で我が国に中長期適法に在留する外国人にしか出さないということでございます。それを見れば、我が国で適法に在留していること自体もわかるし、就労等の資格についてもわかるということでございまして、今回の新たな在留管理制度の根幹をなすものということでございます。

 それで、不法入国者、不法残留者は相当数減りましたけれども、依然としてなお多数存在している、このような状況のもとで、外国人の身分関係、居住関係、それから在留資格の有無等を即時に把握するということが必要であるということで、また、現行法上、外登証や旅券の携帯義務違反の検挙件数は今なお相当数存在する、これは不法残留等の入管法違反の犯罪の解明につながっているということを考慮すれば、在留カードの常時携帯義務は必要かつ合理的なものであるというふうに考えております。

 在留カードに関しましては、罰金ということで刑事罰を付すということにしておりますが、これは、今の状況に加えまして、もし刑事罰に付さないということになれば、現場で現行犯逮捕ができなくなるということで、不法滞在対策上大きな支障を生じるという点もございますので、刑事罰ということにさせていただいているということでございます。

 他方、特別永住者でございますけれども、特別永住者は、歴史的経緯及び我が国における定住性にかんがみて特段の配慮が必要であることはもちろんでございますが、やはり日本人とはその法的地位が異なるため、その身分関係、居住関係を即時的に把握する必要がある場合もあり得ます。それで、現段階では、特別永住者証明書の携帯義務、これに違反した場合における行政罰を維持することが相当であるというふうに考えているということでございます。

稲田委員 ただいまの局長の答弁で、いずれにしても、両方ともやはり携帯をいただいて、即時にその資格を確認することにするために、罰則また行政罰を科しているんだという御説明でございました。

 ところが、この委員会の質問の中でも、特別永住外国人の方々の証明書の携帯義務違反について、大臣が答弁で、「特別永住者の常時携帯義務の罰則が過料となった平成十二年四月一日以降、過料を適用するため裁判所に通知を行った例はございません。」というふうに答弁をされているわけですが、なぜこの規定についてこういった謙抑的な運用をされているのか、お伺いをいたします。

西川政府参考人 今委員御指摘のとおり、平成十一年に改正されました外国人登録法の規定が施行された平成十二年四月一日以降、法務省入国管理局が特別永住者につき外国人登録証明書常時携帯義務違反による過料を適用するため裁判所に通知を行った例はございません。

 これについては、特別永住者についてはその歴史的経緯及び我が国における定住性にかんがみまして特段の配慮が必要であるということや、平成十一年外登法等の改正の国会審議において、特別永住者の外国人登録証常時携帯義務違反に対する罰則の適用に当たっては、改正により刑事罰の対象から除外された趣旨を踏まえ、違反者に対する行政罰について、その運用は抑制的であらねばならず、いやしくも濫用にわたることのないように努める旨の附帯決議がなされていること等から、特別永住者の外登証の常時携帯義務違反の運用については弾力的な運用を行っているということによるものであるというふうに考えております。

稲田委員 確かに、その附帯決議があって、濫用になっちゃいけないというのはそのとおりだと思いますけれども、今回の改正でも過料は維持をして、その必要性があるということでございます。

 私は、やはり、法律で決めている場合には、実際に運用はきちんと法を適用してもらわないと、それは濫用に当たらないような場合であっても行政の判断で適用しないというようなことをしているとすれば、それは行政権の裁量権を逸脱しているのではないかと思うわけであります。もちろん、運用が濫用になってはいけない、当たり前のことでありますけれども、適正に適用すべき、そういった場合には適用する、そうしないと、まさに不作為によって立法を行政がやっているのと同じことになるのではないかということを感じるわけでございます。

 この件に関連いたしまして、入管法ではなく国籍法の問題なんですけれども、法務大臣は、外国の国籍を有する日本国民が国籍を選択しなければならない時期になったにもかかわらず選択をしないときには、書面で催告ができるということになっています。ところが、この催告を一度もなさったことがないということを聞いて、私は驚いているわけであります。

 我が国は二重国籍を認めていないにもかかわらずこの催告制度を一度も行わないというのは、まさに行政の怠慢で、もっと言うと、不作為によって事実上二重国籍を認めているという、そんな運用をしていることになるのではないかと思いますけれども、民事局長の見解をお伺いいたします。

倉吉政府参考人 ただいま委員御指摘のとおり、法務大臣がこの法律に基づく国籍の選択をすべきことを催告した例というものは、これまでございません。

 これは、催告を行った場合は、催告を受けた日から一カ月以内に日本国籍を選択しなければ、自動的に日本国籍を喪失することとなるわけでありまして、このことが、重国籍者本人のみならず、その親族等関係者の生活その他全般にわたって極めて重大な影響を及ぼすものであることから、慎重に対処する必要があるからであります。

 国籍選択義務の履行は重国籍者の自発的な意思に基づいてされるのが望ましい、こう考えておりまして、法務省としては、催告をするまでもなく重国籍が解消されるよう、国籍選択制度の周知に努めているところであります。

 ただし、ただしでございますが、将来的に、重国籍の弊害が現実化し、我が国の国益が著しく損なわれるようなケース、このようなケースが生じた場合には、催告の必要性というものをきちっと検討していかなければならない、このように考えております。

稲田委員 重国籍の弊害が現実化して国益が侵害されるおそれがあるというのは、一体どういう場合を想定されているんでしょうか。

倉吉政府参考人 一つの典型としては、犯罪に利用されるというケースがあろうかと思います。

 例えば、ある外国で、Aという名前の旅券を使用して日本に入ってくる。日本に入ってきて、重国籍ですから、今度は日本の、例えば甲という名前を使って、重大な犯罪に関与する。そしてまた、外国のAという名前の旅券を使用して出国する。このようなことを繰り返していた者について、そのような行為が判明した、日本の裁判所で有罪の判決を受けた、このようなことがある場合には、その者について催告をして、法律上の手続を行うということが考えられると思っております。

稲田委員 犯罪に利用されない限り二重国籍は黙認をしているというように今の答弁では聞こえるわけでありまして、もしこの法律に問題があるのであれば、例えばそういった催告をして国籍を失うまでの期間を延長するとか、そういった議論をするならともかく、犯罪にならない限り全くこの規定を適用しないというのは、私はやはりおかしいんじゃないかなと思っております。

 私は、国会で議論して立法した法律を忠実に行うのが行政の役割であって、勝手なと言ったら失礼ですけれども、余りにも抑制をするというのはおかしいと思います。もし本当にその法律が時代に合わないとか問題があるというのであれば、もう一回国会で審議をして、そして改正するのが筋だと思っております。

 この外国人登録証に関連をいたしまして、先ほども住民基本台帳の問題などが質疑されておりましたが、一つ確認をしたいんですけれども、今までは、外国人の方々は住民票に該当するようなものがなくて、外国人登録事項証明書という形だったと思うんです。そのために、外国人登録証明書を取得できる人が非常に限られていて、例えば、裁判所で住所の証明が必要になった場合に、日本人の場合は債権者でも住民票がとれるのに、外国の方々については弁護士の職務上の請求をしないとその住所を証明できないということになり、外国の方々の方が日本人以上に結局保護されているという結果になったんですが、今回の改正により、日本人の住民票取得と同じ基準でとれるようになるのかどうか、その点、確認をしたいと思います。

西川政府参考人 お答えを申し上げます。

 住民基本台帳法の改正が予定されまして、外国人住民も住民基本台帳の対象ということにされます。外国人住民に係る住民票の閲覧、交付につきましても、日本人の場合と同じ扱いになるものというふうに承知をしております。

稲田委員 今回の改正で、在留資格の取り消しについて新設規定が幾つかございます。その中に、例えば、最近、アルゼンチン国籍の無職の女性が、妊娠した子供を日本人男性が認知すれば日本国籍を得られる胎児認知を悪用して、子供の日本国籍を不正に取得したという疑いで、認知した男性を逮捕したという事件がありました。このケースでは、子供が日本国籍を取れば、母親は養育名目で特別在留資格を得ることができると思ったというのが動機のようでございます。

 国籍法が改正されて、胎児認知だけでなく出生後認知も子供に日本国籍を与えるようになったわけですから、これからますます、母親が在留資格取得目的で偽装認知をするというような場合がふえる可能性があるわけですが、今回新設の取り消し事由で、こういった偽装認知事案に有効に対抗できるかどうか、その点についてお伺いをいたしたいと思います。

西川政府参考人 お答え申し上げます。

 今回新設した在留資格取り消し事由のうちの一つに、偽りその他不正の手段により在留特別許可を受けたことというものがございます。

 例えば、不法残留する外国人女性が、外国人との間で生まれた子供を、日本人男性との間に出生し、当人から認知を受けた実の子供であるというふうに偽りまして、当該子を監護養育していると装うことにより在留特別許可を受けたような、いわゆる偽装認知の事案につきましては、このような事実が判明したときには、在留資格の取り消しが可能となり、適切に対応できるものと考えております。

稲田委員 それから、あと、配偶者の身分を有する者としての活動を継続して三月以上行わないで在留していることを取り消しの事由に挙げています。

 これに対して、DVの被害者をどのように扱うのかとか、有責配偶者の場合をどうするのかという問題について、政府参考人から、他の在留資格への変更が可能である場合が多いということで、在留を認める方向で対処をされるかのような答弁をされているんですけれども、DVの被害者ですとか有責配偶者の被害者かどうかというのは、本来、裁判を通じてでないとなかなか明らかにならない事由でもあると思うんですけれども、こういった場合に特別扱いをするのかどうか。また、特別扱いをするのであれば、一体どういう基準で認定をするのか。その点についてお伺いしたいと思います。

西川政府参考人 まず、前提といたしまして、配偶者からのドメスティック・バイオレンスが原因で離婚したような事案、あるいは有責配偶者である日本人配偶者との間で婚姻の実態が存在しないような事案は、形式的には、配偶者の身分を有する者としての活動を継続して行わないで在留することの要件に該当することになりますが、このような事案に関しましては、申請があれば定住者等の在留資格への変更の許可が見込まれる場合があり、在留資格取り消し手続における意見聴取の際に、外国人に対して、在留資格変更申請を行う意思があるか否かを確認し、在留資格変更を許可するのが相当である場合には、在留資格取り消し手続を終了させ、外国人の在留資格は取り消せないことを考えております。

 もっとも、このような取り扱いには前提がございまして、当該外国人が真にドメスティック・バイオレンスの被害者である場合、日本人配偶者が有責配偶者である場合に、新たな資格該当性を踏まえて行われるというものでございますから、当然の前提として、当該外国人に認められる事情を適切かつ正確に把握する必要があるというふうに考えております。

 在留資格取り消し手続におきましては、当該外国人の意見を聴取することになりますし、事実の調査をすることができますので、これらの手続を通じて事実関係をきちんと把握して、その上で適切に対応してまいりたいというふうに考えております。

稲田委員 この要件の適用については、やはりできるだけ客観的に適用いただいて、その上で他の資格への変更が可能であるかどうかということをさらに判断するというふうに伺っておきます。

 今回の改正では、年々ふえ続ける在留外国人の方々の在留管理を適正にして不法滞在や不法な在留資格の取得を防ぎ、その上で、適法に在留しておられる外国人の方々に今まで以上に利便を享受いただこうというものであり、私は極めて有益な改正であると思いますので、速やかに成立することを願っております。

 出入国管理や在留資格の管理といった我が国の治安と国益に直結する行政については、安易に、目先の感情とか、ちょっと失礼な言い方かもしれませんが、茶の間の正義的な発想で行政を行われるのではなくて、厳正な在留資格管理を前提として緩和措置も行っていただきたい、このように感じておりますので、早急な法の成立とそして公平公正な法の実施を行政各位に望みまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

山本委員長 次に、細川律夫君。

細川委員 民主党の細川でございます。

 入管法の改正案についてお伺いをいたします。

 先週金曜日に、参考人に対する質疑をいたしました。この中で、いろいろな問題点が明らかとなってまいりました。

 一つは、今度の改正で在留管理が強化されることに伴いまして、不法滞在者などがますます地下に潜って、海外への送金などもアンダーグラウンドの金融を利用するなど、問題が多くなるという点でございます。これについては、私も、しっかり取り組んでいかないといけない、かえって状況が悪化をするのではないかというような危惧を持っているところでございます。

 現在は在留資格がなくても外国人登録証が取得できるのに対しまして、この改正では、在留資格がないと住民基本台帳に載せることができないということになっております。この点は、直接的には入管法の法案ではなくて住基法の改正案ということになろうというふうに思いますけれども、難民の申請中あるいは在留特別許可を申請中というような仮放免になっている外国人については、住基の方に参加できるようにすべきではないかと考えておりますけれども、これについて総務省にお伺いをいたします。

佐村政府参考人 今先生の御質問のございました難民認定申請中や在留特別許可申請中などの仮放免許可中の者についてでございますが、今回の住民基本台帳法の一部改正案によりまして新たにその適用対象とされるのは、観光目的で入国をした短期滞在者などを除く、適法に三カ月を超えて在留する外国人としてございます。

 仮放免とは、不法滞在者が退去手続のために入国管理局の施設に収容されているといった場合でございまして、出国準備などのために一時的に身体の拘束を仮に解くといった制度と承知しております。このために、仮放免となりましても不法滞在者であることは変わらず、退去強制されるべき地位にあることは変わりませんので、住民基本台帳法の適用対象とすることは適当でないと考えております。

細川委員 不法滞在者、在留資格がない者でもできるだけ住民基本台帳に載せる形で、そういう在留資格のない者も明るみに出していくのがやはり大事じゃないかというふうに私は思っております。ただ、それだけでは不法滞在者はなかなか表にあらわれてこないだろうというふうにも思います。現在の外登証を引き続き使えるような経過措置というものもやはり考慮すべきではないかということも考えているところでもございます。

 いずれにせよ、この改正法が施行されるまでの間に、いかに不法滞在者、この人たちを、どういうふうな対策を行って対応していくかということが大変大きな問題だ、課題だというふうに思います。

 我が国には在留特別許可という制度がありまして、最近は、例外とも言えるこの許可が非常に数もふえてきているわけでございます。私は、たとえ過去に不法があっても、長い間善良に日本で暮らして、そして日本の社会に溶け込んでいるような外国人については、この法律が施行されるまでの間にできるだけ正規の在留資格が取れるような措置がとれないものだろうか、いわゆるアムネスティーというようなことが実施ができないものだろうかというふうにも考えております。外国では、一挙に滞在許可を与えるというような例も聞いているところでもございます。

 仮に現在の在留特別許可制度で救おう、こういう場合でも、基準というものを明確にして、善良な外国人が名乗り出やすいようなそういう仕組みをつくって、この人たちがやみの世界に入らざるを得ないような事態は回避をすべきではないか、私はこのように考えております。その点、大臣、どのように考えておられるかというのを、御所見をお願いします。

森国務大臣 まさに細川委員の今の問題意識が、御可決いただいて施行されるまでの間の最大の課題であるというふうに認識をしております。

 確かに、諸外国で実際に行われているアムネスティーというような方法も選択肢の一つかというふうに思いますけれども、ただ、アムネスティーを実施した場合、新たな不法入国者等の増加を誘発する要因になりかねないという懸念もございますし、また、ひいては我が国の出入国管理体制に重大な支障を生じさせることにもなりかねないということも考えられますので、やはり慎重に対処しなきゃいけないんじゃないかというふうに思っております。

 これまで、在留特別許可については、個々の事案ごとに、在留を希望する理由、生活状況、人道的な配慮の必要性等、諸般の事情を総合的に勘案した上で判断しておりまして、その結果、在留を特別に許可するべき事情があると認められる場合には在留特別許可を付与しております。

 私としましては、在留特別許可の許否の判断における透明性を確保することが重要であると認識しておりまして、委員からの御指摘を受けとめまして、今後、公表事案のさらなる追加ですとか、それから、在留特別許可に係るガイドラインの内容などもいま一度吟味しなければいけないのではないかというふうに思っているところでございます。

細川委員 この問題は改正法の中でも大変大事で深刻な問題だというふうに考えております。そういう意味では、この問題をどう解決していく手法を考えるか、これは本当に大事なことだと思っておりますので、私は、この法案の審議の中でぜひそういう方向が出てくればいいのではないかというふうにも考えているところでございます。

 次に、在留カードあるいは特別永住者証明書の点についてお伺いをいたします。

 まず、在留カードであります。ICチップを搭載した在留カードについては、外国人の関係団体あるいは日弁連などからさまざまな批判があることは御承知のことだというふうに思います。

 第一に、このカードが外国人のプライバシー権あるいは情報コントロール権を侵害するという批判がございます。これらは、この間の参考人の中で強く主張される方もございました。カード番号をマスターキーとして、在留カードを使用した記録を名寄せいたしまして、コンピューターネットワークに結合することによって個人情報が流出する可能性がある、そういう懸念でございます。

 仮に在留カードの交付を認めるにいたしましても、券面に在留カードの番号を記載するのはいかがなものか。せめて、こうした番号は、簡単に他人に知られることのないように、住基カードと同様に、券面には記載せずに電磁的記録のみによって記録すべき事項、そういうふうにすべきではないかと考えております。

 そこで、大臣にお聞きいたしますけれども、とりわけ、券面へのカード番号の記載、これの是非を含めて、こうした情報流出防止へのどういうような配慮をしていくのか、そういう点について大臣にお伺いをいたします。

森国務大臣 在留カード番号の券面への記載について、その必要性についての御質問でございますけれども、まず、その前提として、氏名、生年月日、性別、国籍だけではなかなかアイデンティフィケーションが困難であろうという問題がございます。

 また、今回、外国人の負担を軽減するために、外国人の入管当局への各種申請や届け出を郵送やインターネットにより行うことを検討していますが、その場合に、外国人に、在留カードの券面に記載された在留カード番号を入管当局に通知してもらうことにより、簡易かつ確実に本人を特定することができるなど、外国人にとっても利便性の向上に資する面があるのではないかと考えております。

 一方、それが見えてしまうことによっていろいろな御懸念もあるわけでございますけれども、例えば、在留カード番号による名寄せについての御懸念があることは聞き及んでおりますが、新たな在留カードを交付する都度、在留カード番号を変更することを予定しておりまして、この運用によって、いわゆる名寄せの問題について大きな危惧が生じることがないようになると考えております。

 なお、この問題については、さらに配慮の必要性があるのであれば、皆様方の御意見を伺ってさらに工夫をしてまいりたいというふうに思っております。

細川委員 この点については、在留管理強化、こういう視点は別にいたしまして、こうした外国人の個人情報が在留管理以外に流用されるべきではない、こういうことは、個人情報保護の観点からいたしましてもこれは至極当然のことだというふうに思っております。

 私たちは、従来の法的枠組み以上にこの点についてはきちんと規定をいたしまして、いやしくも個人情報のリストが他の行政目的等に利用されることのないようにすべきだと考えておりますけれども、この点についてはいかがでしょうか。

森国務大臣 確かに、おっしゃるとおり、こういった在留管理に必要な情報の目的外利用ということは厳に戒めなければならないというふうに思いますが、これについては、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律の規定に従った厳格な運用を行うこととなりますので、御心配には及ばないというふうに思っております。

 このように、在留管理に必要な情報の目的外利用の可否については、さらに入管法において情報の目的外の利用そのものを禁止する規定を改めて設けるまでの必要は必ずしもないというふうに今のところ考えているところでございます。

細川委員 今、個人情報というのがいろいろな会社などからも漏れたり、あるいはその個人情報が売却されたりとか、非常に個人情報というのが問題になっておりまして、これを保護するということは、国民的な意識の中でも非常に高まっているところでございます。

 そうしますと、私は、単に個人情報保護法の趣旨を生かすというようなことではなくて、やはりこの入管法の中に、他の目的に使わないんだというような、そういうのをはっきり明記すべきではないかというふうに考えておりまして、これはぜひまたこの委員会の中での検討をしていただきたいというふうにも思っておるところでございます。

 次に、住民基本台帳法の中には、三十条の四十三、ここに「住民票コードの利用制限等」という規定がございまして、その三項で、民間の業者が住民票コードを含む情報をデータベース化することを禁止いたしております。

 そこで、この点について大臣にお伺いしますが、個人情報のデータベース化をさせないように、こうした規定をしっかりこの法案に明記すべきだ、入れる必要があるというふうに私は考えておりますけれども、大臣のお考えをお聞かせください。

森国務大臣 現行法上、民間事業者等が個人情報を取り扱う場合には個人情報保護に関する法律により規制の対象となっており、個人情報取扱事業者が、あらかじめ本人の同意を得ないで個人情報の利用目的の範囲外の情報を取り扱うことや、法令に基づく場合など同法によって許される場合以外に、個人データを第三者に提供することは許されておりません。

 個人情報取扱事業者がこれらの責務に違反した場合には、主務大臣は違反行為の中止等の必要な措置をとるべきことを命ずることができることとされておりまして、個人情報取扱事業者は、これらの命令に違反した場合には刑事罰に処することとされているわけでございます。

 このように、民間事業者等が、個人情報の利用目的の範囲外の情報の名寄せやデータベースの作成を行うなどした場合には、主務大臣による命令によりましてこれら違反行為が是正され、さらには刑事罰が科されることが規定されておりますので、屋上屋を重ねて、入管法においてこれら行為を禁止する規定を改めて設けるまでの必要性はないのではないかというふうに考えております。

細川委員 それでは次に、この法律案でも政令あるいは省令への委任が多いということで、そのことも批判の対象となっております。例えばその一つに、十九条の四の三項、ここにこういうふうになっています。「前二項に規定するもののほか、在留カードの様式、在留カードに表示すべきものその他在留カードについて必要な事項は、法務省令で定める。」このように規定をされております。

 そこで、その内容でありますけれども、今後、指紋のような生体情報が追加されるのではないか、こういうようなことで懸念もされているところでございます。

 したがって、御質問ですけれども、ここで言う「その他在留カードについて必要な事項」、これはどういうものを指すのか。そして、生体情報は含まない、あるいは、生体情報については法改正しなければできないんだというふうに考えていいのか、これについてお答えをいただきたいと思います。

西川政府参考人 お答えを申し上げます。

 まず、お尋ねの「その他在留カードについて必要な事項」としては、例えば、就労制限の有無について、在留資格の類型に応じた記載の方法等を定めるということになるというふうに思います。例えば、就労不可、就労するには資格外活動許可が必要という記載であるとか、就労制限なし、就労制限あり、在留資格で認められた就労活動のみ可とか、あるいは、資格外活動許可を受けている場合の許可条件等を記載するという可能性があるというふうに考えております。

 それから、指紋情報につきましては、在留カードの券面に表示することも、ICチップに記録することもありません。すなわち、ICチップに記録される情報は、在留カードに記載される事項及び表示されるものの全部または一部に限られている。指紋情報は、在留カードに記載される事項にも表示されるものにも該当しない以上、ICチップに記録されるということもないというふうに考えております。

細川委員 次に、在留カードの常時携帯義務についてお伺いをいたします。

 まず最初に、不携帯についての刑事罰を科すことについて伺いますが、在留カードを常時携帯をしなきゃいかぬ、こういうことについて私も全く理解できないわけではないんですけれども、罰則を科すということについてはどうか、こういう考えでございます。仮に、百歩譲って、刑罰といったものよりも、過料というような、そういう形での軽い制裁にする、そういうことでとどめるべきではないかというふうに考えますけれども、いかがでしょうか。

西川政府参考人 お答えを申し上げます。

 先ほども申し上げたとおり、在留カードについては、今回の新たな在留管理制度の根幹をなすというものでございます。

 現在、不法入国者や不法残留者が依然として多数存在する、さまざまな問題が発生しているという状況にあります。在留カードの常時携帯義務は必要かつ合理的なものであって、刑事罰をもって臨むことが必要であるというふうに考えております。

 現に、外登証や旅券の携帯義務違反の検挙件数は相当数存在している。これらが不法入国等の入管法違反の解明にもつながっております。したがって、新たな在留管理制度においても、在留カードも旅券も携帯しない外国人が逃走した場合等に、もし罰則の適用がないと、刑事罰の適用がないとという意味ですが、現行犯逮捕ができないということになりまして、不法滞在対策として極めて不十分ということになってしまうというふうに考えております。

細川委員 次に、特別永住者についてでございます。

 今回の改正で、特別永住者証明書、これを交付することになっておりますけれども、今後も、従前の外登証と同様に、特別永住者証明書の常時携帯を強制を続けることになっております。どうしてこういうふうになるのか、この間の参考人の御意見でも、もう十分委員の皆さん方も御理解をいただいたと思いますけれども、私は、この常時携帯は当然廃止をすべきだというふうに考えております。

 平成十一年の改正では、刑事罰の対象からは除外した。そこではいろいろな附帯決議もございました。私は、この際、特別永住者につきましては携帯義務を外す、廃止をするということが至極当然だというふうにも考えておりますけれども、これは、大臣、いかがでしょうか。

森国務大臣 特別永住者については、その歴史的経緯及び我が国における定住性にかんがみまして、一般外国人とは異なり、特段の配慮が必要であることはもちろんでございます。

 さはさりながら、現在の我が国を取り巻く環境や、特別永住者への成り済まし事案が発生する可能性などに照らしまして、政府としましては、特別永住者証明書の携帯義務及びこれに違反した場合における行政罰を維持することが適当であると考えて法案を提出した次第でございます。

 今もその気持ちに変わりはございませんけれども、このような考え方を十分にしんしゃくしていただきました上で、ぜひ、この委員会において本法案について十分に御審議をいただきたいと思っております。

細川委員 同様に、長年日本で安定した暮らしをしております永住者に対しても在留カードの常時携帯義務を課していることについても、これもまた私は疑問に思っております。

 例えば、特別永住者とならなかった大陸出身の中国人や、あるいは戦中から戦後にかけて朝鮮半島に一時帰省したために特別永住者にならなかった人とか、そういう、善良で、長い間、一定期間我が国に継続的に居住している永住者についても私は何らかの措置を講ずべきではないかというふうに考えますけれども、これは、大臣、いかがでしょうか。

森国務大臣 確かに、一般永住者の中には、戦前からずっとお住まいになっている外国人の方もおられるわけでございますけれども、多くは、新たに来日した外国人、いわゆるニューカマーでございまして、その歴史的経緯や定着性に関して、かつて日本人であった特別永住者と同様に論ずることはできないというふうに思っております。また、実際問題として、中には正確な情報把握の観点から大きな問題がある者も少なからず存在しております。

 このように、一般永住者については、法務大臣が在留管理に必要な情報を正確かつ継続的に把握する必要性が極めて高く、他の一般外国人に対する取り扱いとの間に差異を設けるまでの特段の事情はなく、新たな在留管理制度の対象として、在留カードの携帯義務を課す必要があると考えております。

 しかしながら、委員御指摘のとおり、先ほども申し上げましたように、永住者の中には、長期間我が国に在留され、その在留状況についても問題のない方々がおられることも確かでありまして、御指摘も踏まえ、このような方々について、我が国での在留の安定性に配慮するとの観点から、どのような取り扱いをしていくべきかについては今後の検討課題といたしたいと思っております。

細川委員 時間が来ましたので終わりますけれども、在留カードを常時携帯しなければいけないということについて、長い間日本で善良な生活をされている方にとっては大変御不満だというのがこの間の参考人の意見の中からも出ていたところでありまして、これはぜひ検討して、善処していただきたいというふうに思っているところでございます。

 そのほか、いろいろと質問もまだまだたくさんありますけれども、きょうはこれで終わりにしたいと思います。ありがとうございました。

山本委員長 次に、石関貴史君。

石関委員 民主党の石関貴史です。質問をさせていただきます。

 最初に、これは質問ではありませんが、五月十日日曜日の朝日新聞に法務省の関係の記事が出ていまして、名物司書、定年後の大仕事、法務省史料二万点を目録にしましたと。司法法制部の非常勤職員の高山京子さん、七十一歳、三十年以上図書館に勤めた最後の生き字引、この方と、元宮内庁職員の藤井祥子さん、七十八歳が、法務省の図書館に眠っていた史料二万点を十五冊の目録にまとめました。十年がかりで完成をさせたということですが、大臣、このことを御存じでしたか。

森国務大臣 この記事の範囲で存じております。

石関委員 大変な努力の成果だと思いますし、こういう公文書も整備をしてしっかり保存していこうということが進んでおりますが、法務省としても、これは大変なありがたい事業だと思います。会ったらぜひ褒めてやってもらいたいなということでございます。

 さて、まず最初に、取り調べの可視化、このことに関しての質問をさせていただきます。

 民主党が提出をしておりますこの法案、先月の二十四日に参議院の本会議で可決をされております。この法案についてどのようなお考えを持っておられるか、まず法務省の方に聞きますか、お願いします。

大野政府参考人 民主党、社民党がいわゆる議員提案ということで出されている法案につきまして、法務省は事務当局として意見を申し上げるのが妥当かどうか疑問なしといたしませんけれども、いわゆる取り調べの全面的な可視化につきまして、法務・検察当局の考え方を申し上げさせていただきたいと思うわけでございます。

 我が国の刑事司法手続におきましては、諸外国で認められているような刑事免責、司法取引等の強力な捜査手段等が認められていないわけでございます。したがいまして、我が国の手続の中では、現在、被疑者の取り調べが、真相を解明するために非常に重要な役割を果たしているわけでございます。仮にその全過程の録音、録画を義務づけるということになりますと、そうした取り調べを通じて事案の解明を図るという現在の捜査の機能を損なうおそれがあるのではないかというのが法務・検察当局の考え方でございます。

 もちろん検察当局におきましても、裁判員裁判における自白の任意性の立証を効果的、効率的に行うという観点から、現在基本的に、裁判員対象事件、自白している事件の全件につきまして録音、録画を実施しているわけでございますけれども、これは全部の録音、録画ということではございません。全部の録音、録画をするということは、例えば被疑者が警戒心あるいは羞恥心等から事案について供述することをためらう場面が出てくる、あるいは関係者のプライバシーや捜査の秘密にわたる取り調べを行うことが困難になる場合があるということでありまして、やはり取り調べの真相解明機能に問題を生ずるのではないかということでございます。

 なお、この関係でありますけれども、最高検察庁が本年の二月に、一年近くにわたって千六、七百件の事件につきまして録音、録画を行ったわけでございますけれども、これについての試行結果の取りまとめというのを行っております。この中でも、例えば、録音、録画をするということを告げた際に、被疑者の側から、そういうことであれば応じられないということで、録音、録画を拒否された事例も相当数あったというような報告もございまして、そうしたことからも、全面的に例外なく録音、録画を義務づけるということはやはり問題があるのではないかというふうに考えているところでございます。

石関委員 警察はどのようにお考えですか。もっと短目に。

米田政府参考人 基本的に法務省の御答弁と同じなんですが、若干具体的に申しますと、取り調べというのは、誤解を恐れずに申しますと、無駄な会話の積み重ねのようなところがございます。無駄というのは、最終的に立証に役立たない会話もいっぱいある。しかし、真相を解明するために大変必要なやりとりでありまして、その中には、例えば被害者の悪口であるとか、あるいは関係ない第三者、例えば犯人が過去につき合っていた女性だとか、いろいろなものが飛び出してくるわけです。そういったものが、録音、録画をしておりまして、そして、現在の司法制度改革によって強化されました証拠開示のもとでは公判廷に出され得るというような状況。

 あるいは、組織犯罪、暴力団犯罪なんかで、調書として証拠に出すのであればいいんですが、調書というのは、被疑者がやはり調書にするということを納得しなければ調書になりません。そうじゃない会話というのも多数ございまして、そういう中で、組の上層部の犯行への関与等々を述べるというようなこともあります。それをきっかけとして、別の証拠によって上層部の事件を固めていくということもございまして、そういった手法も非常にとりにくくなるというようなこともございまして、全過程を録音、録画されるということは、捜査にとりましてはなかなか苦しい面があるというように考えております。

石関委員 まあ、そういうものかなという一定の理解を私もいたします。

 しかし、アメリカとか諸外国で、全部録画をしておくということは、州によるかもしれませんし、いろいろあるかもしれませんけれども、諸外国でこの導入の状況というのは、先進国ではどうなっているんですか。

大野政府参考人 確かに、諸外国の中で、取り調べの全面的な録音、録画というのを導入している国もございます。ただ、先ほど申し上げたような捜査における真相解明のやり方が、そうした国々においては日本と全く異なるということを申し上げたいというふうに思うわけでございます。

 なお、これは誤解ではないかと思うのでありますけれども、諸外国の例の中で韓国が挙げられることがよくございます。韓国においても取り調べの全過程の録音、録画が義務づけられているというようなことをおっしゃる方がいるわけでありますけれども、これは事実に反します。韓国におきましては、今、日本の検察がやっているのと同じような形で、捜査側の裁量によって録音、録画が行われているわけでございます。したがいまして、基本的に、それは自白をした後の状況をいわば切り取った形で録音、録画をしているということでございます。

 それでは、全面的な録音、録画をしている国はどうかということでございますけれども、全面的な録音ということではイギリスを挙げることができるわけでございます。

 ただ、イギリスは日本と異なりまして、被疑者の取り調べというものに対して、真相解明機能においてほとんど役割が与えられておりません。逮捕されてから起訴するまでの間、取り調べというのは一回、それもせいぜい三十分くらい行われるだけであります。そこで被疑者が事実を否認するというような場合には、例えば矛盾する証拠を突きつけて事実はどうだったかという追及を行うこともありませんし、本当のことをしゃべりなさいということで説得を行うこともないわけであります。そして、起訴に持ち込んでしまうわけであります。

 何でそんなことができるのかということでありますけれども、これは、先ほど申し上げた、日本においては取り調べで丁寧に事実を調べていくわけでありますけれども、イギリスにおいては、例えば通信傍受であるとか、あるいは司法取引であるとか、刑事免責であるとか、日本においては認められていない、あるいは認められているとしても非常に幅の狭い、そうした真相の解明の手段が非常に強力に用いられているからであります。

 また、イギリスにおいては、弁解を求められて、それに対して供述を拒否する、つまり黙秘権を行使したことが事実認定上不利益に用いて構わないというような規定も置かれているわけであります。ある意味では、黙秘権の不利益推認を認める規定も設けられているわけであります。

 さらに、起訴基準自体も、我が国に比べましてはるかに緩やかでございます。公判となった事件のおよそ三分の一は無罪になるわけであります。そうした点で、全く我が国と状況が異なります。

 それからもう一つ、違う法系の国といたしまして、イタリアも、これは全面的に録音、録画が義務づけられているわけでございます。

 ただ、イタリアの場合には、マフィアの犯罪等があることからも容易にうかがわれるところでございますけれども、被疑者はなかなかしゃべらないわけであります。したがいまして、実際に捜査において取り調べが行われる件数というのは一〇%程度である、あとの九割は取り調べを行っていないわけであります。したがって、取り調べの録音、録画というのは、自白したケースにおいて、その自白状況をきちっと再現するというような趣旨になっておりまして、イギリスと同様に、説得であるとか、あるいは追及というものは行われません。

 では、それに対する捜査手段はどうかといいますと、通信、会話の傍受、おとり、潜入捜査、あるいは捜査に協力すると刑の減免を行うというような制度が認められているわけであります。もちろん、無罪率も非常に高い。起訴したうちの三〇%ぐらいは無罪になるということでございます。

 なお、イタリアは、通信傍受が最も活用されているわけでございまして、我が国におきましては、昨年、通信傍受は年間で二十二件でございました。イタリアの場合は数万件に達するわけでございます。

 つまり、そういう全く捜査状況といいましょうか構造が違う中で行われているわけでありまして、もちろん、それぞれについて問題があり長所があるわけでありますけれども、そうした捜査構造全体についての議論を抜きに、現在非常に大きな働きを果たしている取り調べの機能を損なうような全面的な録音、録画には問題があるんじゃないかというようなことを申し上げている趣旨でございます。

石関委員 今までこの関連で質問した中で一番詳細に御説明いただきましたので、そうかと、一定の理解が私も自分で得られたなというふうに思っております。

 とはいえ、一方で、実際に取り調べを受けた経験のある方々に聞くと、これは検察官も、警察でも取り調べを受けますけれども、取り調べ官によって随分態度が違うと。俗に言えば、大変威張られたり、強圧的に取り調べを受けたという方もいますし、相手によっては非常に穏やかにやってくれたという方もいます。

 しかし、こういう部分というのは、やはり何らかの可視化を導入して、こういった差異がないようにするとか、あるいは余りに不当な取り扱いを受けないようにする、こういうものを何か確保しておく必要は、これぐらいは最低あるんじゃないかなというふうに思いますが、これはどうですか。短くお願いします。

大野政府参考人 初めに申し上げたいことは、我が国におきまして取り調べというのは日常的に行われているわけでございます。今委員が御指摘になったような、問題のあるケースがあることを否定する趣旨ではございませんけれども、しかし、大多数のケースは問題がない形で行われているわけでございます。最高検が録音、録画を千七百件ばかりでしょうか、行ったわけでありますけれども、実際に取り調べが問題になって、それが公判で取り上げられたのはたしか十件前後だったかというふうに思うわけであります。それ以外の件は問題にされていないということでございます。

 まずそれを前提とした上で、しかし、去年の、問題とされました氷見事件、志布志事件等で、確かに問題が生ずることは私どもといたしましても重大な反省をしなければいけないということでございまして、最近、取り調べの適正化のさまざまな方策が取り入れられております。取り調べの書面による記録制度、公判前整理手続における証拠開示、それから被疑者国選弁護制度も裁判員制度導入とあわせて拡大しております。

 さらに、去年、さまざまな提言を受けまして、苦情に対する対応、接見に対する対応等、取り調べの適正確保方策を入れているところでございます。

石関委員 警察の方にももう一回お聞きしますけれども、これは、自白して調書というのをつくって、私がそのとおりですと言うらしいんだ。これもまた、取り調べを受けた方に聞くと、複数聞きましたけれども、皆さんが異口同音におっしゃるのが、言ったように書いてくれないんだ、それは違うとわずかな文言を変更するのにも大変な労力を使ったということをおっしゃっていましたけれども、こういうことはあるんですか。

米田政府参考人 それは、多数の取り調べをしておりますので、中には、取り調べ官と取り調べを受ける者との間の相性等々もありまして、必ずしも意思疎通がうまくいかないというようなことも、それは絶対ないとは言えないと思います。

 そこで、警察といたしましても、裁判員裁判対象事件を対象といたしまして、昨年の九月から録音、録画の試行に踏み切っております。ことしの四月からはすべての都道府県警察で試験実施をするということにしておりまして、これは、まさに調書を読み聞かせて、訂正があれば訂正の場面、署名押印して、その後幾つかのやりとりをするというところまでを映しますので、そういうことであれば、そういう御心配のようなことも余りないのではないかなというように考えております。

石関委員 いろいろな方がいますからね、取り調べを受ける方も。ただ、えらい根性があって、やっていないものはやっていないんだと、あるいは、今の取り調べ、供述等についても、どんなに強圧的にされても違いますよと言い切れる人というのは非常に限られていると私は思うんですね。

 普通の人が日常生活を営んでいて、何かのことで容疑者になってしまった、被疑者になってしまったという場面では、私は前半お聞きした説明も一定の納得がいくというふうに申し上げましたけれども、しかし、今の、否定されなかったですね、そういうこともあるかもしれないと。そういうこともあるぐらいじゃなくて、かなりの量があるというふうに私自身は認識をしておりますし、そういう話を私は聞いております。

 ですから、前半の御説明については一定の納得をいたしますけれども、とはいえ、今、後半それぞれにお聞きしたものを聞くと、やはり前半についても本当にそれでいいのかな、私はそういう思いをまた一方では強くしております。

 ですから、堂々と、こういう今申し上げたようなことが起こらないようにするために、やはり私は可視化というものをやっていかなきゃいけないというふうに強く思っておりますし、海外といろいろな条件が違うんだ、司法取引もできないし、これはいろいろ成り立ちが違いますから、それは確かにあるかもしれませんけれども、であれば、そういったものも含めて、取り調べが可視化をできる環境をつくるために、またそういった関連の周囲の環境についても考えていく必要があるというふうに私は思います。

 いや、条件が違うから可視化はだめよということではなしに、私は、そういったものにまた取り組んでもいきたいと思いますし、当局においても、こういったものについても前向きに御検討をぜひいただきたいというふうに思っております。

 そこで、これは通告はしなかったんですけれども、局長さんなら答えられると思いますが、東京拘置所においては、日曜と祝日の弁護士の接見は認められていない、しかし取り調べは行われるというふうに聞いております。これは事実ですか。

大野政府参考人 接見等については、ちょっと私、答弁できる立場じゃございませんけれども、東京拘置所で日曜、祭日等においても取り調べが行われることは事実でございます。

石関委員 実際接見を行っている弁護士に聞きましたら、取り調べは行われているけれども接見はできないということを言っていました。

 でも、大臣、これはおかしくないですかね、弁護士には会えないけれども取り調べは行われる。いかが思われますか。

森国務大臣 ちょっと私も、申しわけないけれども、事実関係がわかりませんので明快なことは申し上げられませんけれども、若干、もしそうであればどうかなという感じはいたしますね。

石関委員 これは事実だとすれば、私もそういうふうに承っていますので、そうだと思います。通告していないですからね。どうぞ。

大野政府参考人 先ほど申し上げたように、接見について申し上げる立場ではございませんけれども、取り調べという観点で申し上げますと、勾留の期間につきましては休日等を除外するということになっておりません。したがいまして、例えば休日が多数勾留期間に入ってしまうということになりますと、所要の取り調べ、捜査もできないということになっては困るわけでございます。その意味で、検察庁の職員は、日曜、休日にかかわりなく捜査活動を継続して、所定の期間内に事案の解明ができるように努力しているということでございます。

石関委員 今後また事実を確認して、こういった場面でまた御質問等していきたいと思いますけれども、事実であるとすれば、大変これは不公正なことでありますので、可視化と直接関係がない話ではないと思いますね。こういった取り調べを全部可視化する。接見をして心穏やかにまた取り調べに応じることができるということがなされていないとすれば大変な問題だと思いますので、事実確認もまた今後させていただいて、また御質問等させていただきたいというふうに思います。

 さて、次の質問ですけれども、草なぎさんという、SMAPというアイドルグループの方が、公然わいせつの容疑で四月二十三日の午前二時五十五分に現行犯逮捕されたということでありますが、警察官職務執行法第三条によると、泥酔者は保護しなければならないという定めがあるんですが、これは保護しないで公然わいせつで逮捕したということ、正確に、その前後というか、逮捕に至る経緯を教えてもらえますか。

園田政府参考人 お答え申し上げます。

 当時の状況を御説明いたしますと、御質問の事件につきましては、警視庁におきまして、本年四月二十三日の午前三時ごろ、東京都港区の公園におきまして大声を出して騒いでいる男がいる旨の付近の住民の方から一一〇番通報がございまして、これを受けて警察官が現場に到着いたしましたところ、本件の被疑者が不特定または多数の人が認識できる状態で全裸になって大声を出していた。また、警察官が注意したにもかかわらず、犯行をやめようとはしなかったということで、現場の警察官の判断によりまして、保護ではなく、公然わいせつ罪の被疑者として現行犯逮捕したものでございます。

石関委員 最高裁の判例、昭和三十二年のものによると、公然とは、不特定または多数の人が認識できる状態ということですが、これは、深夜、未明の公園で、現にそこに大勢人がいて、公然の状態でわいせつ行為を行ったということなのか。夜中にとてもそういう人がいたというふうに思えないし、そういう報道もされていないので、事実がどうかわかりませんが、もしかしたら公園に入ってくる可能性がある、こういうことも公然わいせつになるんですか。事実はどうなんですか。

園田政府参考人 公然わいせつでございますけれども、これは一般に、不特定または多数の人によってわいせつ行為が認識される可能性があれば足りるというふうに解されておりまして、深夜の公園とは申しましても、不特定または多数の人が入る可能性があった状況にあったものと承知しております。

石関委員 これは、先ほど申し上げた警察官職務執行法の第三条、泥酔者は保護しなければいけないですが、この場合は泥酔者として保護するという可能性はなかったんですか。

園田政府参考人 議員御指摘のとおり、警察官職務執行法第三条に基づきまして、泥酔者を保護するケースもございますけれども、本件におきましては、被疑者が現場の警察官の面前で公然とわいせつ行為を行っておりまして、警察官の注意に従わずに犯行をやめようとしなかったということでございまして、犯罪捜査の手続に従って現行犯逮捕したものでございます。

石関委員 同じように、深夜のほとんど人がいないだろうという公園の中で泥酔をしていて、いきなり逮捕されたという人はいますか。

園田政府参考人 現場で犯罪を現認されなくて、いきなり逮捕されることはないものと考えております。

石関委員 いや、私が申し上げているのは、同じような事件が過去にあったかということです。

園田政府参考人 過去においてこのような事件があったかどうか調査いたしましたが、警視庁によりますと、酒に酔って全裸になった者を公然わいせつ罪で現行犯逮捕した事件は、昨年の一月以降で、本件を除いて八件把握しておるということでございます。

石関委員 それは同じようなことですか。夜中に騒いで全裸になっていた、こういうことで八件ですか。

園田政府参考人 お答え申し上げます。

 詳細は承知しておりませんけれども、酒に酔って全裸で公共の場所にいたというようなことで、公然わいせつ罪で現行犯逮捕したものが八件ということでございます。

石関委員 もう一回。公園の中ですか、だれもいない深夜の公園。

園田政府参考人 場所は公園だけとは限りませんで、駅構内とか道路上、そういうものも含まれております。

石関委員 これは、駅構内と道路上と公園では全然違うじゃないですか。私が申し上げているのは、深夜の公園のようなところで、報道によるとほとんど人がいなかったということですけれども、そういうところと今の説明は全然違うじゃないですか、駅構内とか。

 こういう夜中の公園で泥酔して裸になっていて、いきなり逮捕されたということをお伺いしていますので、もう一回答えてください。

園田政府参考人 先ほど申し上げましたとおり、不特定多数の方が、公然わいせつを、わいせつな状況を認識することができる状況であったという場所でございます。

石関委員 大臣にお尋ねしますが、この件、大臣も御承知だと思いますけれども、メディア等で大変大きく取り上げられて、国民の皆さんの耳目を聳動した事件、国民の皆さんの関心も大変高いというふうに思いますが、この事件についてこれほど国民の皆さんの関心が高かった、今でも高いと思いますけれども、どうしてなんですかね。

森国務大臣 やはり非常によく知られた方だからじゃないでしょうか。

石関委員 過去に法務省で、SMAPというこのグループを何か広報とか宣伝にお願いしたことはありますか。

大野政府参考人 済みません、その点については、直ちにお答えできる資料を持っておりませんけれども、私の知る限りはないように思いますが、自信がございません。

石関委員 草なぎさんというのは、大臣も御承知かもしれませんけれども、何か大変韓国語が流暢で、韓国でも韓国読みの名前で大変有名だということで、民間の方ですから、民間として、ただ、日韓の交流には大変な功績を残しておられるというふうに言われておりますし、私もそうだなというふうに認識をしています。我が国にもある意味で一定の貢献をされている方だと思いますけれども、こういう方がこういう事件になって、これは大臣、どう思われますか。

森国務大臣 法務大臣としてというか、個人的に申し上げるならば、私も酒飲みなものですから、もって他山の石としなきゃいけないというふうに思っておりますけれども、やはりどんなに功績があっても、公共の場で酔っぱらって素っ裸になって、警官が来てなお抵抗するというのは余り、だから許されるというものではないというふうに私は思います。

石関委員 また警察の方に聞きますけれども、これは具体的に、今大臣は抵抗という言葉をたまたま使われましたけれども、どういうふうに暴れたりしたんですか。何か、殴ったりとか、そういうことをしたんですか。具体的にどういうことをしたので、これは大変なことだということで逮捕に至ったんですか。

園田政府参考人 先ほども申し上げましたけれども、被疑者が不特定また多数の方々が認識できる状態で全裸になっておりまして、そして大声を出して騒いでいた、警察官が注意して服を着るように言っても、大声を出してそれに抵抗していたというような状況でございます。

石関委員 抵抗というのは、物理的に何か襲いかかったとか、大臣がたまたま使った言葉ですけれども、そういうことではないわけですね。ただ裸で、着ろと言った服を着ずに、お酒に酔って大声を出してそのままでいた、こういうことですか。

園田政府参考人 警察官が被疑者を静めようということで手を押さえようとしたりしたら、手を振り払ったりとか、そういう状況であったということでございます。

石関委員 その程度だと、やはり逮捕しないといけない危険な状況ですか。公然わいせつで逮捕したということは承知していますけれども、手を振り払うという程度はどうなんですか。

園田政府参考人 被疑者を取り押さえようとして、手を振り払ったり暴れようとしたりしたということで、現場の警察官は逮捕の必要性があるというふうに判断したものでございます。

石関委員 これは世論にも両論あって、大臣もさっきおっしゃったとおり、立派な大人でこういうことをしたらしようがない、当然ではないか、こういう考えもあるでしょうし、深夜の公園で酔っぱらって騒いでいたということが、ここまでする必要があるのか、両方あります。これは、警察当局の判断というのも、私もそこまで本当にやるべきだったのかなと思ってこういう質問を申し上げておりますけれども。

 大臣、そこで、今までもこういった国民的にも大変な人気がある方ですし、反省も今しておられますし、そしてまた日韓交流にも大変な功績があるという方でありますので、草なぎさんの今後に人生の先輩として何かアドバイスを大臣からするとしたら、何かお言葉をいただけないでしょうか。

森国務大臣 私は、アドバイスとかできるほど立派な人間ではございません。

石関委員 大臣、立派な人間に法務大臣をやっていただかないと困りますので、ちょっと今の言葉は少し修正するなりしていただかないと、立派な人間じゃない人が法務大臣をやっているということになりますから、これはちょっともう一回御答弁いただきたいと思います。

森国務大臣 では、もうちょっと修正いたしますと、私も完全無欠な人間ではありませんので、こういう場面でもって偉そうに物を言う立場にないというふうに思っております。

 ただ、社会の規律だとか、守るべきことはやはり守らなきゃいけないというふうに思っております。

石関委員 もちろん、大臣も行政の皆さんも無謬だということはありませんけれども、だからこそ、さっきの可視化もそうですけれども、それを補完するようなものをやはり装置としてもしっかり導入しないといけないというふうに思いますし、立派でないという、これは大臣、法務省ですけれども、法務省の大臣、法務大臣ですけれども、立派じゃないという機関に逮捕されたり、立派じゃないという人をいただいている検察官僚の機関に取り調べを受けたりしたら、これはやってられないですよ。

 だから、大臣も謙虚だということでそういう発言をされたんでしょうけれども、ぜひ立派な大臣になっていただいて、間違った捜査や取り調べが行われないように、皆さんも頑張っていただきたいというふうに思います。

 随分長くなってしまいました。時間が九十分だったんですけれども、六十分になったので、時間がちょっと短くなっちゃいました。

 次に、けさの新聞ですけれども、これは通告はしていないんですけれども、小沢民主党代表の辞任表明についての記事を幾つか読みましたら、読売新聞の朝刊には、「検察幹部の一人は「いずれ辞任するだろうと思っていたので驚きはない。」云々と書いてあった。「法務省幹部は「政治資金に関して一点の曇りもないというなら、どうして辞めるのか」」と。

 あるいは、産経新聞には、「検察首脳は「検察は、こんなことでは一喜一憂しない。政局は関係ない」」さらに「ある検察幹部は「淡泊な印象があるので、いつかは辞めると思っていた」」また「別の幹部は「辞めるならば、もっと早く辞めるべきだったのでは」」法務省幹部は、秘書は裁判での自分の証言が党に与える影響を気にしていたと思うが、党首でなくなったので、こうした負担は少なくなろうと。

 何か随分べらべらしゃべっていますけれども、こういうことをしゃべっていいんですか。法務省に聞きます。

大野政府参考人 まず、新聞記事に、検察幹部等ということでそういう発言が報道されているわけでありますけれども、私どもといたしましては、実際にそういう発言がなされたかどうかを確認しているわけではございませんので、それが事実であるという前提で答弁することは差し控えたいというふうに思います。

 あとは、取材との関係でございますけれども、取材を受けた場合に、いわゆる捜査の秘密等にわたることについては、それによって生ずる弊害等の観点から、そのような秘密を述べるということは許されないことである、そしてまた、そのような秘密をしゃべることはないというふうに考えているところでございます。

石関委員 しかしこれは、確認していないということですけれども、産経新聞とか読売新聞、日本では立派な新聞だと言われている新聞にこんなにべらべら書いて、何か、見込みですよね、政局は関係ないとか、こんなことに一喜一憂しないとか、いつかはやめると思っていたと。これはしゃべっているんじゃないですか。どうですかね。

大野政府参考人 先ほども申し上げたように、そのような報道がなされているとしても、実際にそのようなことを検察幹部等が記者にしゃべったかどうか、私どもとしては確認しているわけではございませんので、それを前提の答弁は差し控えさせていただきたいということでございます。

石関委員 ただ、検察首脳とか検察幹部、別の幹部と、表現が違っていますから、政府でも首脳という言葉を使いますけれども、これはだれもしゃべっていないというふうには読んだ人は思わないでしょうし、今の御答弁を聞いていると、とても納得できないですね。

 それはそういうふうに言うしかない立場だと思いますけれども、そういう御答弁をされていらっしゃる限りは、さっきの可視化についても、今聞いていてまた思い出したので申し上げますけれども、密室で行われている取り調べが本当に信用に足るものかということが、またこれは疑わしくなってきますので、そのことだけ申し上げておきます。

 そこで、いっぱい御用意いただいたので、刑事共助条約。新聞の報道によると、プーチン首相がいらっしゃって刑事共助条約が締結をされるという報道がされておりましたが、これはまだ締結をされていない段階だというふうに思いますので、今、同じような条約がどの国と締結をされていて、それぞれの条約には何か違いがあるのか、このことを短く御答弁ください。

北野政府参考人 お答え申し上げます。

 刑事共助条約についての御質問を賜りました。

 これまで、我が国、米国、韓国、中国との間で刑事共助条約を締結してございます。それから、さらにそれに続くものといたしまして、香港との間の協定について署名をいたしまして、国会の承認をいただくべく、この国会に提出をしているというところでございます。

 今委員から御質問をいただきましたロシアとの関係につきましては、既に条約の内容について実質的な合意に達しておりまして、まさに本日でございますけれども、麻生総理とそれから来日中のプーチン首相立ち会いのもとで署名が行われる予定というふうになってございます。

 今御質問ございましたこれらの条約についての差異でございますけれども、その構成や内容においてほぼ同様であるというふうに言って差し支えないかと思います。主たる相違といたしましては、例えば日米のものにつきましては行政機関による犯則調査についての規定があるといった点はございますけれども、個々にわたる相違というのはあるものの、全体としては、構成、内容においてほぼ同内容であるということでございます。

石関委員 こういった条約はどんどん結んでいただいて、我が国で犯罪を犯した外国人というものの捜査に資する、ちゃんと処罰を与えるということで、どんどん頑張ってもらいたいというふうに思います。

 この条約が結ばれていないペルーとの間で、私の地元の群馬県ですけれども、太田市でペルー人が日本人の男性を殺害した。二〇〇一年の事件で、これはこの人はペルーに帰っちゃって、容疑者ですけれども、現地のテレビに出て何かべらべらいろいろなことをしゃべっているんですね。しかし、まだこの人は身柄も拘束されていないというふうに承知をしておりますけれども、今どういう状況になっているんですか。何度も私ここで質問をしているんですけれども、何か一向に進んでいないような感じを受けるんですが、もし進んでいるのであれば、どういう状況にあるのか、最大限の御答弁をいただきたいと思います。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生から御質問をいただきました事件は、大変痛ましい重大な犯罪だということで、政府としては、不処罰は許さないとの観点から、問題解決に向けて全力で取り組んでおります。在ペルー日本大使館におきましても、警察庁出身の館員を初めとして大使以下一丸となって取り組んでおります。昨年十一月にこの場で質問をいただきまして以降、ペルー関係当局との間で既に十回以上接触をして、本件の進展に向けて交渉しているところでございます。

 具体的内容につきましては、犯罪捜査の関係もありますので具体的に申し上げることはできませんが、ペルー国内法に基づく国外犯処罰規定の適用については、ペルー側からの積極的な協力が得られておるところでございまして、状況は着実に進展していると認識しております。

 時間はかかっておりますけれども、ぜひともこの問題を解決すべく、政府としても全力で取り組んでいきたいと考えております。

 以上でございます。

石関委員 進んでいるということでよろしいんですね。どんどん頑張ってください。私、当選してから何度も何度もこれは聞いているんですけれども、進んでいるとはおっしゃいながら、まだ実際はその身柄を拘束したりということまで至っていないですから、さらに頑張っていただきたいというふうに思います。遺族の方やいろいろな心情もありますので、よろしくお願いしたいと思います。

 それと、法案の関連ですけれども、外国人を受け入れて研修をするという研修制度、この関係で具体的な事件として、五月八日に報道されておりますが、私の地元の群馬県の桐生市内で受け入れをしていたということなんですが、この受け入れられていた二十六歳の中国人男性が、受け入れ団体の日中経済産業協同組合、東京に拠点があるというところでありますが、この組合と組合の理事長四十二歳を相手に、二百十五万円の損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こしているということであります。

 御説明を詳細にいただこうと思いましたけれども、時間もありますので、私の方で若干お話をして、事実関係が違っていたら答弁のところでお話をいただきたいというふうに思います。

 この理事長は、ほかの中国人実習生の賃金も着服していたということで、既に昨年、労働基準法違反の罪で有罪判決が確定しているということですが、このことは、ここで提訴されているのもこの組合ですし、その理事長ということなので、これは組合のあり方と理事長に問題があったという理解でよろしいんですか。

西川政府参考人 委員御指摘の事件というのは、日中経済産業協同組合が絡む事件ということであるというふうに理解しております。

 本件につきましては、入国管理局におきましても、技能実習生の申し立てあるいは栃木労働局からの通報を受けているところでございますが、中身的には技能実習に係る労働基準法違反、内容は、中間搾取、あるいは研修生について所定時間外の作業を行わせていたということが判明したということでございます。

 もちろん、受け入れ機関等につきまして、現在、入国管理局の実態調査をおおむね終了しておりまして、速やかに不正行為等の認定の判断を行う前の段階にあるということでございます。

 不適正な受け入れを行っている団体に対しては、研修生、技能実習生の受け入れ停止ということに入国管理局ではしておりますが、この種事案については、厳正かつ適切に対応したいと考えています。

石関委員 これは、今度の法改正が行われると、こういった組合というのもそれによって影響を受けますか。

西川政府参考人 現在の受け入れの枠組みというのは、御案内のとおりですが、第一次受け入れ団体と第二次受け入れ団体が分かれておりまして、第一次受け入れ団体の方は研修についてだけ責任を負う、技能実習については責任を負わないということですが、これは法律の改正によって、技能実習についても第一次受け入れ団体が監理の責任を負うということで、その点が変わります。

 また、不正行為について非常に数が多いものですから、この法改正に合わせまして、不正行為に対する制裁として受け入れを停止していますが、この期間を、これは法律ではございませんで下位法令のレベルですけれども、さらに伸長するということを考えているということでございます。

石関委員 ここは大臣、実際、研修制度のもとでありますけれども、現在も、また法改正されて、今御説明があったとおりですけれども、ただ、御承知だと思いますが、零細企業にとっては、やはり外国人を研修制度のもとでこうやって受け入れないとなかなか工場が成り立たないというところも大変あって、ただ、こういういいかげんな組合があると、そういった研修生も受け入れができなくなったり、いろいろな問題があると思います。

 労働力ということで今受け入れているわけではありませんが、実際、失業者の方が今の不況の中で大変ふえていて、ハローワークとかに行くとすごく人があふれているんですね。ちょっと求職を出すと、私の友人の企業なんかも、殺到してくるという状況にありますけれども、しかし一方で、こういった工場ではなかなか人材が確保できないということがありますので、今回法改正にこの部分も入っているものでありますけれども、日本の今後の労働力の確保等、あるいはこういう研修制度なり、あるいは将来労働力として受け入れるのかどうかということも含めて、今回の法改正の先まで読んで、大臣としてはどのようなお考えをお持ちですか。

森国務大臣 確かに外国人研修制度については、非常に微妙な制度でございますから、そこの間隙をついていろいろな問題があることも十分承知をしています。

 ただ、今委員おっしゃられたように、極めて日本の中小企業にとっても有意義な制度であり、またかつ、技術移転という大義名分もこれはしっかりと維持しつつ、やはりもうちょっと実態に即した制度にしなきゃいけないということで、今回は初年度から労働法制が適用されるようになるわけでございますから、そういう意味では、より実態に即した運用ができるんじゃないかというふうに思っております。

石関委員 こういった機関にしっかりと責任を持ってもらって、研修生として必要なところにはちゃんとそういった研修生が送り込まれるような、こういった制度をしっかりとつくっていただきたいと思います。

 次は、入管行政について幾つか御質問いたします。御説明いただいてと思いましたけれども、私の方で簡単にお話をして御答弁をいただきたいと思います。

 カルデロン・ノリコさん一家のことをお尋ねしようと思いましたけれども、何度もこれはここでも取り上げられております。ただ、これは先日、赤池議員だったと思いますけれども、赤池議員のところには、こういう不法滞在していた人を何か守るような、そういったものはいかがなものかといういろいろな電話等が殺到しているやにここで御発言をされておりました。

 これもこれで、確かにもともと不法なんだからどうなんだろうというふうにも思いますし、一方でしかし、日本にこれだけ長い間住んで、また、この娘さんについては学校でしっかりと勉強されてお友達もいっぱいいるということですから、これはなかなか、人情で考えると、まあ、いさせてやればいいじゃないかということですし、法律でいうと、そもそも違法にいるわけですから、これは大臣、今回のことについても大変悩まれたと思いますけれども、どのようなお考え、御判断をされたのか。大臣、大変だったと思いますけれども、いかがでしょうか。

森国務大臣 これもいろいろな場面で再々御説明申し上げておりますけれども、そもそもが偽造のパスポートで入国してきた相当悪質な事案でございます。かつ、日本でできた女の子はずっと十四年日本だけで育って、しかし結局のところ、また、摘発されてそれが発覚したわけでありますから、二重の意味で問題性があると考えるわけでございます。

 したがって、本来であれば家族そろって退去してもらうのが原則だというふうに思いますが、そうはいっても、まず女の子について、これだけ日本に定住しているし、加えて、この家族の場合というか、女の子の側からいうと、血を分けたおじさん、おばさんがすぐ近くに三人もいました。ということですから、最終的には、家族側の希望を聞きまして、では女の子だけ残るということを家族から申し出がありましたので、そのようにしたわけであります。

 またさらに、そんなことをいっても今からフィリピンに追い返されても両親が生きていけないじゃないかみたいなことを言う方もあるんですけれども、実は、もうずっと夫婦はフィリピンに送金をしていて、フィリピンにも十分まだ根拠があるわけですね。

 ですから、そういった総合的にさまざまな事情を勘案して判断したものでございまして、そうはいっても、両方からの御批判があるものですから大変苦渋の決断ということでございましたけれども、私なりの最良の判断をしたつもりでございます。

石関委員 立派な大臣の御判断だなと思って、お気持ちをお聞きしたかったものですからお尋ねをしたところです。

 次に、これは総務省ですか、今の外国人登録制度がどのようになっているのか。それから、今後、今回の法改正によって外国人の方というのは住民基本台帳に載るということですが、このことによって市町村の窓口の事務量が大変にふえてしまうのではないか、こういう懸念がある、私も地元の自治体からこんな御心配を聞いております。

 現在の外国人登録というものがどのようになっていて、例えば私が外国人だったら市町村の役場に行ってどういう手続を踏んで登録をされるのか、それから今後はどうなっていくのか、事務量についてはどのように考えておられるのかということについて、短い時間で答弁をお願いします。

西川政府参考人 では、簡単に御説明申し上げますが、現在の外国人登録事務、これは法務省が市区町村に法定受託事務ということで委託しているという関係にございます。

 三カ月以上の期間我が国に在留する外国人は、不法滞在者も含めて申請することができるということになっておって、現在は二十項目にわたりまして登録原票に登録をするほか、十六歳以上の外国人は写真の提出を求める、あるいは一年以上在留することとなる者については署名を求める、このような手続でやっている。それで、市区町村において登録原票が作成され、外国人登録証明書を別に交付する、こういう手続になっているということでございます。

 これが今後どうなっていくかということでございますが、基本的には外国人登録はなくなりますが、特別永住者の関係については、特別永住者証明書という形でほぼ同じようなシステムが残る。それから、あとは、基本的には、現在の一般の、中長期我が国に在留する外国人については、入国管理局の方で在留カード、これをお出しして、それで、ただ住所が決まった段階で市区町村の方に届け出をしていただく、市区町村の方は住民基本台帳の方に外国人の方も入れていただく、こういうようなシステムになっております。

 今後の事務量については、むしろ総務省さんの方で答えていただいた方がいいと思いますので、私はこの辺で。

佐村政府参考人 私どもの方から事務量についてお答え申し上げます。

 今御説明のありました現行制度、外国人登録制度があるもとでは、市町村は、住民基本台帳制度とともに、外国人登録制度に基づく事務を両方処理をしてございます。その両方の制度の間で事務処理の内容や方法は異なったものとなっております。

 今回の制度改正では、外国人登録制度が廃止をされて、外国人につきましても、外国人住民として住民基本台帳制度の適用の対象に加えられるということになります。

 これによりまして、結局、外国人については従来も事務をやっていないということではないので、それが住民基本台帳の対象となることによりまして、紙で管理をしていた外国人の登録原票が、磁気ディスク等で作成をすることが可能な住民票となって、これによって保管や情報のやりとりというのが非常にやりやすくなる。それから、複数国籍世帯のように外国人と日本人の世帯であっても、住民基本台帳で世帯ごとに把握ができる。それから、日本人と同様に、転入届等によって各種行政サービスの届け出との共通化、住民の方から見ればワンストップ化が図れることによって窓口事務の簡素化が行われるなど、全体で見ますと、事務の簡素効率化が図られると考えております。

 したがいまして、市町村におきましても、従来と比べると事務の大幅な軽減が図られると私ども期待しているところでございます。

石関委員 今、外国の方というのは、外国人登録をすると外国人登録証というのをもらえるわけですね、これを持っている。帰国しようといったときに、このカードは空港で返してくれということだというふうに事前に伺っておりますが、返してもらうと、これで外国人登録からその名前は抹消されるということになるんでしょうか。このことと、空港で飛行機に乗る前に、いや、おれ、そんなの持っていない、なくしてしまったとか、家に置いてきちゃったとか、あるいはもう廃棄してしまったとか、こういう場合にはどのような処理がなされているんですか。なければ、ちょっと待ってくれ、もう一回それを交付するからというわけにはいかないと思うんですけれども、実際の事務はどうなっていますか。

西川政府参考人 今委員御指摘のとおり、単純出国する場合については、外国人登録証明書については返納をいただく、こういう扱いにしておいて、それで、返納いただいた方については外国人の登録原票を閉鎖する、こういう扱いになっております。

 ただ、必ずしもこれがうまくいかない場合がございまして、これは、例えば、外国人から返納を受けましても、外国人が必ずしも新規登録や居住地変更登録についてきちんとやっていなかったということもあったり、あるいは市区町村の間の連絡が余りうまくいかなかったということで、宙に浮くという場合が結構ございます。

 今回の新しい制度ではこういう点も大幅に改善されるのではないかということで、期待をしているところでございます。

石関委員 残念ながら時間になってしまいました。

 私は草なぎさんのファンで、そこで随分時間をとられてしまったので、厚生労働省の皆さんとか、本当に多くの皆さんに御足労をいただいて大変申しわけありませんけれども、通告したものについては次回の機会に必ずやりますので、そのまま温めておいていただきたいというふうに思います。

 今回の法改正ですけれども、質問しようと思っていた中に、裁判になっていて判決が出る前に入管が強制退去にしてしまった中国人の方とか、こういうのがありますので、適正な入管行政が行われるようにということを私も大変願っております。皆さん、頑張ってください。立派な大臣も、よろしくお願いします。

山本委員長 次に、滝実君。

滝委員 無所属の滝実でございます。

 法案に関連いたしまして、主として研修・技能実習の問題を取り上げさせていただきたいと存じます。

 この研修あるいは技能実習の問題は、年代的には一九九〇年ぐらいでしょうか、経済界から、外国人労働力を日本にももっと全面から入れるべきだというような声の中で、そうはいかないというような批判の意見もこれあり、妥協の産物として出てきたと私は理解をいたしております。

 それだけに、この研修・技能実習を送り出す側、あるいは受け入れる側、それぞれ、本来の制度とは少しとり方が違うのが実態ではないでしょうか。したがって、今回、そういう中で少しばかり改正をしたというふうに受けとめさせていただいております。

 そこで、まず、その実態ということで確認をさせてもらう意味で、研修生の失踪者が多い、こういうようにも感じるものでございますから、その失踪者の状況について教えていただきたいと思います。

西川政府参考人 まず、研修生について申し上げますが、平成十八年の失踪者七百二十七人、平成十九年が一千百二十二人、平成二十年が九百四十六人という報告を受けております。

 次に、技能実習生についてでございますが、平成十八年が一千四百七十四人、平成十九年一千八百四十人、平成二十年は一千八百九十七人が失踪したとの報告を受けております。

滝委員 この失踪の原因は恐らく入管局としては余り分析はされていないんだろうと思うんですけれども、二つ考えられるんですね。一つは、日本に来てみたものの、周囲を見ればもう少し収入のよさそうなところがあるんじゃないかというのは、一つ当然考えられる点ですね。それからもう一つは、余りにも生活環境、労働環境が厳しいというようなことで、いわば逃げ出すという意味での失踪、こうあるわけだと思います。

 したがって、だからこそ、不正事件が毎年毎年入管局で発表されておりますけれども、旅券の取り上げとか、あるいは賃金の不払いとかという格好で逃げ出すのを防いできている点が入管局発表の不正事件としてあらわれているように思うのでございますけれども、こうした不正事件がしばしば刑事事件として、先ほども石関議員が問題にしたような事件が出てきている、こういうことではないかなと推測をいたしております。

 ということは、本来、制度の目的が、日本の技術を技術を持っていない国に技術移転するんだというのが大義名分であるはずが、実際問題として、送り出す側も受け入れる側も、それから本人そのものも技術移転なんということは全く考えていないから、こういうような失踪事件であるとか不正事件が常に話題を提供している、こういうことじゃないかと思うんです。

 こういった不正事件、旅券の取り上げであるとか、あるいは賃金を不払いにしておいて逃げられないようにしようとする、なかなか手の込んだ失踪防止策がいわば不正事件として指摘されているんだろうと思うんですけれども、この点について入管局はどういうふうにとらえているんでしょうか。

西川政府参考人 やはり不正行為の多発というのが非常に大きな問題になっておりまして、平成二十年の一年間での発生の総数が五百四十九件に及んでいるということでございます。

 そのうち、旅券の取り上げは、数として上がってくるのは一件だけでございますが、研修生、技能実習生に対する賃金不払いが百八十三件と、これもまた相当な数になっていて、そのほかの違反も相当の数に及んでいるということでございまして、入管局としては、この不正行為をとにかく少なくするというのが喫緊の課題であるというふうに受けとめております。

 今回の改正の趣旨も、研修の時代から労働法規を適用して労働関係法規による是正も図ろうということでございます。

滝委員 今の局長の答弁は、要するに、技術移転を前面に出した制度から、実態を反映した、何か労働力確保の方に実際問題として傾斜した制度に変えていく、こういうようなニュアンスの御答弁があったわけです。

 そこで、実際問題として、不正事件の中で出てきているのが所定時間外労働ですね。いわば、研修と称しながら深夜に仕事をさせるとか早朝に仕事をさせるとか、そういうようなことが不正事件として指摘されていると思うんですけれども、こうした技能実習に関連する所定外労働という問題について、入管としてはこの問題を集中的にどういうふうに見ていくのか、もう少しお示しをいただきたいと思うんです。

西川政府参考人 先ほどちょっと言葉が足りなかったというふうに思いますが、今回の法改正は研修・技能実習の技術移転という枠組みを変えるものではございません。

 ただ、研修の中にも、やはり就労しながら学ぶというものはあるわけで、就労という側面があるものについては労働関係法令を適用してその労働関係法令の規制も受けさせよう、こういう趣旨でございます。

 時間外労働等についてでございますが、技能実習生は、受け入れ機関との雇用契約に基づきまして、労働者として、より実践的な技能等を習得するための活動を行います。労働関係法令が適用されるため、技能実習制度の趣旨から逸脱しない範囲内で時間外労働等が認められております。

 本省入国管理局におきましては、平素より、労働関係法規の遵守について技能実習実施機関を指導しているところ、労働関係法令に違反するような受け入れを行っている悪質な機関に対しては、労働基準監督機関との連携のもと、地方入国管理局において積極的に実態調査を実施して、当該技能実習実施機関に対して不正行為の認定等を行っているということで是正を図ろうとしているということでございます。

滝委員 今、局長から、技術移転という本来の大義名分はいささかも変わっていない、こういうような改めての御答弁をいただきました。

 そこで、昨年、国際研修協力機構というんですか、これが、日本で研修した人たちが帰国してどうなっているかという調査をしましたね。それで見て、実際に技術移転というのが確認できるんでしょうか。その辺のところをお答えいただきたいと思います。

西川政府参考人 財団法人国際研修協力機構におきまして、平成十九年の九月から十二月に帰国した技能実習生約一万二千人を対象として、帰国後の就職状況等についての調査を実施したというふうに承知をしております。

 その調査によりますと、帰国後、研修等と同種の仕事であるもとの職場に復職した者が四千四百人、これに加えて、研修等と同種の仕事である別の職場に転職した者が約一千八百人であるという結果が報告されているということでございます。

 この調査結果からは、帰国した研修生、技能実習生の少なくとも半数以上が我が国で習得した技術等を本国で活用しているというふうに考えられまして、開発途上国への技術移転という研修・技能実習制度の本来の目的は失われていないというふうに考えています。

滝委員 私もその調査を見せてもらいましたけれども、問題があるんですね。

 確かに、研修生が帰国してもとの職場に復帰する、あるいは研修した業務内容と同じ職種についているという人たちは、平均すれば五割程度だと思いますけれども、中国が断然成績がいいんですね。タイとかミャンマーがそれに次ぐ。あとの国は、ほとんど本国にそれらしき職場がない、あるいは生かすところがないということが実態ではないのかなと。そういう意味では、その他の東南アジア、恐らく七、八カ国になると思いますけれども、技術移転になっているかどうかというのは判断しがたいですけれども、その仕事が必ずしも生かされているとは限らないということが言えるんじゃないかなと。

 そういう意味では、この国際研修協力機構の調査は何となく手前みそな感じがするわけでございますけれども、その辺のところはもうちょっと受け入れ側もきちんとする必要があるように思うんです。

 次に、この問題については、しばしば問題になるのが、研修生を送り出す方も受け入れる側も、本来、送り出し側、受け入れ側じゃなくて、もうちょっと別のあっせん機関があるように言われていますね。営利目的で仲を取り持って要するにお金を取るというのがありますし、インターネットを見ていても、受け入れ機関の法人を譲りますというような広告まで出ているわけでございます。

 今回の改正で、受け入れ団体等が費用を徴収する場合には、その金額それから費用の使い道を明示しなさいという規定があるんですけれども、いわば単純に受け入れ団体、送り出し団体だけじゃなくて、仲を取り持ってあっせんする団体なんかはどうやって規制するのか。今度の条文で規制ができるのかどうか、それについてお答えをいただきたいと思います。

西川政府参考人 確かに、一部の送り出し機関につきましては、不当な保証金の徴収、それから我が国の労働法規に違反する規定のある契約を研修生と締結した等、さまざまな事実が判明しております。

 そこで、今回の法改正の中でも、こういう不当な研修生、技能実習生のあっせん行為を行った外国人については退去強制事由に入れるなどの措置をとっておりますが、それ以外に、この法改正とあわせまして、これは下位法令で定めることになろうというふうに思いますが、不正行為に関与した者に対する制裁の強化でありますとか、それから外国の送り出し機関と研修生との契約書等の書類については、これを入国管理局に提出させるなどして確認をして、不当な中間搾取等がないようにしていこう、このような措置をとって、不当な送り出し機関あるいは受け入れ団体についてはできるだけこのシステムから排除していくという方向で努力しようというふうに思っております。

滝委員 やはり、そういうようなところがいわばピンはねをするということが、結局研修生のいわば待遇がそれだけ削り取られるということになるわけでございますから、当然もっと目を光らせる必要があるんだろうというふうに思いますので、そこのところは局長のおっしゃるように徹底をしていただきたいと思います。

 もう一つ、研修機関に関連して、国際研修協力機構に、関係省庁は法務省も入れまして五省庁あるんでしたかね、かなりの金額の政府支出金を出していると思うんですけれども、これは毎年ふえていくんですか、あるいは削減の方向にあるんでしょうか。とにかく、今の段階で見れば、大体五億円程度が五省庁から毎年出されていると思いますけれども、その辺のところはどういうふうに見ていらっしゃるのか、お聞きしたいと思うんです。

西川政府参考人 平成十九年度におけるJITCOの決算報告によりますと、国による支援は補助金と受託金等を合わせて約六億二千万円ということになっております。

 それで、十五年から十九年までを見ますと、若干のでこぼこはございますけれども、平成十五年が六億九千万円、若干減りながら六億二千万円になっている、このような状況であろうかというふうに思います。

滝委員 日本は今景気が悪い、したがって研修生を受け入れる余裕がないという前提に立てば、当然、今まで一本調子でふえてきた研修生がこれからふえるのか減るのか、微妙なところだろうと思うんですけれども、予算の方は少しばかり減っているように私には思えますので、その辺のところは、要するに、入管局がこれは決められるんじゃないんですね。実際の受け入れ団体は、本当は入管じゃなくて経済産業省なのか外務省なのか、よくわからないところでございますけれども、その辺の調整はちゃんとできているんでしょうか。そこが心配でございます。

 これは答弁をいただくと時間がかかりますから、次に移りたいと思います。

 まず、法案に即して何点かお聞きしておきたいと思います。

 一つは、今まで、非実務研修と言われるのが一年間、その後の実務研修が二年間ありましたね。それを今度は、最初の一年間の非実務研修は二カ月間だけに原則絞るんですか。そうすると、あとの十カ月は、いわば実務研修になると思うんです。

 まず一点は、そうすると、そのときの研修手当というのが二カ月間だけになるのか、あるいは一年間は相変わらず研修手当でいくのか。当然、労働法制を適用するということですから、最初の一年間でも、二カ月たった後は、十カ月間は研修手当をやめて、恐らく労働契約による報酬を定める、こういうことになるんだろうと思います。それでいいのかどうか。

 それから二点目は、関係者が心配しているのは、最初の二カ月を経た後の後半の十カ月、これは、労働契約による実態を反映した制度に切りかえるわけですから、当然、所定外の時間外労働も認められるだろう。そうすると、まず問題になってくるのは、三六協定は、だれとだれとが当事者になって決めるのか。そして、そのときの時間外労働は、後半二年間と同じように、ある程度自由に所定時間外労働を時間的に決めていけるのかどうか。その二点について、まずお答えをいただきたいと思います。

西川政府参考人 今回の入管法改正におきましては、かつて研修だった部分については、技能実習一ということで整理をいたしまして、実務研修を行う場合は、原則として雇用契約に基づいて技能習得活動を行うことを義務づける、したがって、労働基準法や最低賃金法等の労働関係法上の保護は受けられるようにする、これが眼目ということになっております。

 入国者数の多い団体監理型を例に説明しますと、入国後一定期間、これについてはまだ正式に決定はしていませんけれども、六分の一程度の二カ月ぐらいかなというふうに考えておりますが、受け入れ団体において、講義形式で実施する講習を実施し、その後、企業等との雇用契約を締結する、それで、技能等の習得活動に従事してもらうことを予定しております。したがって、雇用契約の締結後は、本邦での生活実費相当額と位置づけられていた従来の研修手当ではなくて、労働の対価としての賃金を支払っていただくということになりますので、最低賃金法の適用を受けるということになります。

 次に、企業等と雇用契約を締結して技能等の習得活動に従事する技能実習生につきましてでございますけれども、これは、全面的に労働関係法令の規定に従うということが前提となります。したがって、これはあくまで目的は技能習得でございますので、技能習得活動の趣旨を逸脱しない範囲という制約はかかりますが、その範囲内では残業も認められるということになりますし、三六協定等も含めて適用になるというふうに思います。

滝委員 みんなが心配しているのは、後半の二年間とその前の十カ月では、所定時間外労働に何か制約上違いが出てくるのかなという心配をいたしております。したがって、後からぎゃふんと言われないように、基準をつくるなら早目におつくりをいただきたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げたい。

 それから二番目に、この人たちは当然、国民健康保険にも入ることになるでしょうし、それから、住所地を定めれば当然、国民年金の加入にもなるわけですね。ところが、わずか二年とか三年ですから、国民年金に入るのはどうだろうかという考え方もあります。ありますけれども、実際に研修中、例えば将来とも回復できないような障害を受けることを考えたら、障害年金を将来もらうためには国民年金に入っていた方が得だということにもなるわけです。

 その辺のところも含めて、まず、いつの時点で国民健康保険あるいは国民年金に入れるのか。当然、住所を定めたときからだというふうには思いますけれども、改めて確認をさせてもらいたいのと、それから、国民年金の問題について説明をしていただきたいと思います。

二川政府参考人 外国人の方につきましての国民年金また国民健康保険の適用と、特にこの研修・技能実習につきましてのお尋ねかと思います。

 国民年金、国民健康保険いずれも、国内に住所を有する人を原則として適用するという形になってございます。したがいまして、現行法におきましては、外国人登録を行った時点から、これらの制度が適用されるということでございます。

 また、雇用契約がある常用の労働者といった方につきましては、国民年金、国民健康保険ということではなくて、厚生年金それから健康保険が適用されるといったことでございます。

 それからまた、こういった方々は長く日本に居住されるわけではございません、いずれ帰られるわけでございますけれども、そういった方々につきまして年金制度を適用するといったことの考え方でございますけれども、この点につきましては、ILOの条約等に基づきまして、国籍を問わず、そういった社会保障をすべき、こういった要請に基づくものでございますし、また、老齢に限らず、途中で不幸にして障害とかお亡くなりになる、こういった方につきましての所得保障の必要性、こういったところから適用がされているものというふうに考えているところでございます。

滝委員 ありがとうございました。

 そこでもう一遍、これは入管局長にお伺いしますけれども、先ほども御答弁いただきましたように、今度の改正で、中間搾取を排除するために、いろいろなごまかしをやるような人たちを排除したい、こういうことで、不正な研修あるいは技能実習活動のあっせんを行う者については国外退去をさせる、こういうようなことが改めて加わってきたわけでございます。

 それともう一つは、国外退去だけじゃなくて、先ほども局長から御答弁いただきましたように、規制を強化するということですから、当然、国内の関係者もペナルティーの対象になってくるんだろうと思うんですけれども、その際に考えなきゃならぬことは、関係の研修生が、世話役がおかしいからといって一緒に国外へ退去命令させられると、せっかくの玉のこしがどこかへ飛んじゃうんですね。そういうことを大変心配している向きがございます。したがって、あくまでもこういう中間搾取を排除するんだというような法律の条文の運用を心がけてもらいたいというのが、恐らく関係者ら、みんな心配するところではないだろうかなと思います。

 そういう点で、例えば事実と異なる在籍証明書とか雇用契約書等が見つかったらだめよ、こういう今度の条文ですけれども、送り出し側の方で、要するに海外でやられたときには、受け取り側の方はそれはわからないんですね。だから、そういう点も、国内の実際の受け入れ側がよくわからないのに、そのペナルティーを受け入れ側が受けるというようなことは何とか避けてもらいたいという思いがあるだろうと思いますけれども、この点について、局長の見解をお聞きしたいと思います。

西川政府参考人 委員御指摘のとおり、今回の研修・技能実習制度の見直しは、一部の受け入れ機関あるいは送り出し機関において制度本来の趣旨に反して不適正な受け入れが行われて、研修生、技能実習生が実質上低賃金労働者、時には過酷な待遇に置かれる、これを何とか防ごうということでございます。

 送り出し機関につきましては、委員もおっしゃられましたとおり、そもそも海外にあるということでなかなか情報収集が難しゅうございますが、まず、日本に実際に来る研修生、技能実習生からもきちんと事情を聞いて、実情はどうなのかというのをよく把握する、それから、場合によっては海外の機関あるいは海外の政府とも協力をして、そういう送り出し機関についてはとにかくこのシステムから排除していくということを真剣に検討して、かつ実施していかなければならないというふうに思っております。

 それから、もちろん管理は強化しなければならないというふうに思っておりますが、研修生、技能実習生について、日本に実際に来て、何ら落ち度がないにもかかわらずこのシステムから排除される、これはまたまことに気の毒な話ということになっておりまして、現在もやっておりますとおり、その場合については、似たような研修・技能実習機関について紹介をして、そこで継続させるとか、あるいは、すぐ見つからなければ、場合によっては、一定時期、別の在留資格を与えておいて探させるというような措置もしていますので、その辺は柔軟に対応していきたいなというふうに思っております。

滝委員 ありがとうございました。

 いずれにいたしましても、本音のところは、局長も御存じだと思いますけれども、こういう研修生は、三年間の間に二百五十万円から三百万円ぐらいはためられますよといって激励されて日本に派遣されてくるのが実態だろうと思います。だから、今回のこの制度改正で、最初の一年目にでも既に所定外労働が認められるということになれば、その口約束がますますかたいものになる、こういうような点もあるわけでございますから、研修生の利益にもなるように、そして受け入れ側の利益にもなるような運営をしていただきたいと思います。

 最後に、労働問題については法務大臣が一番詳しい経験をお持ちでございますから、この研修についての今の感想をお聞かせいただきたいと思います。

森国務大臣 滝委員が冒頭おっしゃいましたように、ある意味で妥協の産物のようなこの制度でございますけれども、これは日本にとっても、また研修生にとっても極めて有意義な制度であるということを確信しております。

 そうはいっても、さまざまな問題もはらんでおりますので、そういった問題が少しでも起こらないように運用に努め、それから、今回の改正によって随分実態に即した改正が成るわけでございますから、それに従って、かつ技術移転という旗を掲げて、これからしっかりこの制度が活用されるように私どもも努めたいと思っております。

 ありがとうございました。

滝委員 ありがとうございました。終わります。

山本委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時三十一分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.