衆議院

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第7号 平成22年4月16日(金曜日)

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平成二十二年四月十六日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 滝   実君

   理事 阿知波吉信君 理事 石関 貴史君

   理事 辻   惠君 理事 樋高  剛君

   理事 山尾志桜里君 理事 稲田 朋美君

   理事 森  英介君 理事 大口 善徳君

      石森 久嗣君    加藤 公一君

      菊池長右ェ門君    熊谷 貞俊君

      桑原  功君    小室 寿明君

      斎藤やすのり君    坂口 岳洋君

      竹田 光明君    橘  秀徳君

      中島 政希君    永江 孝子君

      長島 一由君    野木  実君

      野田 国義君    畑  浩治君

      藤田 憲彦君    細野 豪志君

      牧野 聖修君    水野 智彦君

      森本 和義君    山口 和之君

      山崎  誠君    横粂 勝仁君

      和嶋 未希君    河井 克行君

      柴山 昌彦君    下村 博文君

      柳本 卓治君    山口 俊一君

      遠山 清彦君    城内  実君

    …………………………………

   法務大臣         千葉 景子君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 中井  洽君

   法務副大臣        加藤 公一君

   文部科学副大臣      鈴木  寛君

   法務大臣政務官      中村 哲治君

   外務大臣政務官      西村智奈美君

   文部科学大臣政務官    高井 美穂君

   政府特別補佐人

   (公正取引委員会委員長) 竹島 一彦君

   最高裁判所事務総局人事局長            大谷 直人君

   最高裁判所事務総局刑事局長            植村  稔君

   法務委員会専門員     生駒  守君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月六日

 委員神崎武法君が退職された。

同月八日

            補欠選任

             遠山 清彦君

同月十三日

 辞任

  福井  照君

同日

            補欠選任

             園田 博之君

同月十六日

 辞任         補欠選任

  石森 久嗣君     水野 智彦君

  熊谷 貞俊君     小室 寿明君

  永江 孝子君     野田 国義君

  細野 豪志君     和嶋 未希君

  山口 和之君     菊池長右ェ門君

  山崎  誠君     森本 和義君

  棚橋 泰文君     下村 博文君

同日

 辞任         補欠選任

  菊池長右ェ門君    山口 和之君

  小室 寿明君     熊谷 貞俊君

  野田 国義君     斎藤やすのり君

  水野 智彦君     石森 久嗣君

  森本 和義君     畑  浩治君

  和嶋 未希君     細野 豪志君

  下村 博文君     棚橋 泰文君

同日

 辞任         補欠選任

  斎藤やすのり君    永江 孝子君

  畑  浩治君     山崎  誠君

    ―――――――――――――

四月十四日

 刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案(内閣提出第五三号)(参議院送付)

同月八日

 選択的夫婦別姓制度を盛り込んだ民法改正反対に関する請願(村田吉隆君紹介)(第七六七号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 参考人出頭要求に関する件

 刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案(内閣提出第五三号)(参議院送付)

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

滝委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局大谷人事局長及び植村刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

滝委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

滝委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。永江孝子君。

永江委員 おはようございます。民主党の永江孝子でございます。

 きょうは貴重な質問の機会をちょうだいできましたことに、まずもって感謝を申し上げます。

 私は法律の専門家ではございません。ですから、かえって、大多数の国民の皆さんと同じような感覚で法律というものとつき合って暮らしてまいりました。その毎日の生活の中で感じてきたこと、お聞きしたく思っていたことをきょうは質問させていただきます。よろしくお願いをいたします。

 さて、平成八年に法制審議会が、これまでの夫婦同氏制度に加えて、夫婦が望む場合にはそれぞれの旧姓を名乗ることを認める選択制夫婦別氏制度の導入を進言してから十四年がたちました。世論調査でも、この間、二〇〇一年には、別姓に賛成するという方が四二・一%、通称使用も含めますと六五・一%の方が何らかの法改正に賛成の意を表されております。二〇〇九年の毎日新聞の調査を見てみますと、別姓賛成が五〇%を超えております。特に二十代、三十代の若い方、これから結婚してこの問題を自分の問題として向かい合う年代の方、賛成が多くなっております。

 実際、社会を見てみますと、結婚後も職場などで旧姓を通称として使い続ける方がふえております。私がもとおりました職場でも、既婚者はほとんどと言っていいくらい旧姓を通称として、旧姓で社内では通しておりました。ということは、実社会では、姓がある日突然変わると、周囲も不便、ちょっと迷惑を感じる、経済活動上、旧姓を使った方がメリットが大きいと会社自体が判断しているから旧姓使用を認めているわけでございます。言ってみれば、社会の方が先に、旧姓を使い続けることを認める、その方がメリットが大きいんだというふうな問題解決に動いていると言うことができると思います。この実社会の動きにやっと法整備の方が追いつく段階に来たのかな、機が熟してきたのかなというふうに私は感じております。

 実は、私の名前、永江孝子でございますが、結婚前も永江孝子でございました。ですから、うちの夫婦の場合は、夫が姓を変えました。詳しい事情は時間の都合もありますのできょうは省かせていただきますが、すんなりといったわけでは決してございません。夫もかなり抵抗いたしました。姓が変わった後も、やはり寂しかったんだと思います、よくぼやいておりまして、高校の同窓会名簿なんかが送られてきましたときには、それをしんみりとめくりながら、旧姓が括弧して書いてあるけれども、みんなおれやとわかるかな、もとの名前で書いてくれたらええのになとか、いろいろぼやいておりましたけれども、やはり、長年その名前で呼ばれてきた姓を変えるということは、不便というだけではなくて、自分のアイデンティティーにかかわる問題ですね。なくすと、やはり大きな喪失感があるようでございます。

 ですから、最高裁判所も、氏名民族読み訴訟の中で、「氏名は、」「人が個人として尊重される基礎であり、その個人の人格の象徴であつて、人格権の一内容を構成するもの」と認めておりますように、名前は自分という人間の大事な看板ですから、自分が愛着を持ってなじんで使えて、誇りを持てるものがいいんだと思います。

 話はかわりますが、一人の女性が生涯に産む子供の数、合計特殊出生率、これは二〇〇九年で一・三七となっております。一人っ子がふえているということが推測できるのではないかと思います。私ども夫婦のように、夫が妻の姓に変える夫婦というのを数字を見てみますと、昭和五十五年には全体の一・二二%ぐらいでございました。やはりこれは年々ふえておりまして、平成二十年には全体の三・七六%にふえてきております。やはり背景には少子化、一人っ子がふえてきているのであろうと思われます。ですから、本当に、一人息子と一人娘が恋をして、どっちの名前を継ぐかでもめて、結局泣く泣く別れたなんてことも少なくないことになるかもしれません。

 ですから、よくこの別姓の問題、ほとんど姓を変えるのは女性だから、女性の権利の問題というふうにも言われることもありますが、もうこれは女性の問題ではなくて、男女の問題だと思うのです。そして、これから結婚して子供を産んで育てようというこれからの日本をつくっていく若い皆さんが、将来、安心をして不安がないような、それから将来に明かりが感じられるような、そういう法整備を望みたいと思うのですが、千葉大臣、この夫婦別姓への御決意、改めてお聞かせいただけますでしょうか。

千葉国務大臣 永江委員に御質問いただいて、ありがとうございます。

 選択的夫婦別氏制度、この導入に向けて、私も大変多くの皆さんから御意見をちょうだいいたしてまいりました。そしてまた、もう御指摘がありましたように、法制審議会という、いろいろな立場からの御意見をまとめていただくこの法制審議会でも十分な御議論をいただいて、本当に十四年前に答申を出されている、こういう問題でございます。

 そして今、私は、大変永江委員の御指摘に共感をさせていただくところは、これは決して女性の問題ではない、女性と男性の問題である、こういう点、大変私も、今の時代背景を考えたときに、そのとおりだというふうに思う次第でございます。私のところにも、男性の方で、やはり氏を変えて、大変社会的にもつらい思い、おまえのところは養子か、何かしりに敷かれているか、そういうようなことをよく言われるんだ、こんなことも聞かせていただいた。

 そういうこともありまして、これは本当に、今の社会の中でぜひ多くの皆さんがそれぞれの生き方を生き生きと生きていただく、そして、本当によい家庭をつくっていただくということにつながっていくものだというふうに私は思っておりますので、ぜひこの国会で御提案をさせていただいて、皆さんに積極的な御議論をいただければと願っているところでございますので、どうぞまたよろしくお願いをする次第でございます。

永江委員 心強いお考えを伺えて大変うれしく存じます。

 あくまでこの法案、選択制でございますので、今困っている方々のために選択肢をふやしましょうということは、社会の懐が深くなるというのでしょうか、いろいろな生き方を認める社会の豊かさのあらわれだと思いますので、ぜひ前を向いて進んでいければいいなというふうにも思っております。

 夫婦別姓に反対の方は、よく、別姓を認めてしまうと家族のきずなが弱まるというお考えをお持ちのようにも聞いております。

 この懸念については、外国などで先にこの法改正に踏み切った例が参考になるかと思いますので、ぜひ教えていただきたいと思うのですが、最近、ドイツとタイの方で夫婦別姓を認めるよう法改正がされたと聞いております。その内容、それから、ぜひお伺いしたいのは、改正された後、例えば離婚がふえたとか、家庭紛争がふえたとか、何か問題が上がっておりますでしょうか。教えていただけますか。

千葉国務大臣 御指摘ございますように、近時、ドイツとタイで法改正が行われたというふうに承知をいたしております。

 ドイツでございますけれども、これまで日本と同じように夫婦同氏を法制度の上で採用しておりましたけれども、一九九三年、平成五年ですけれども、次のような改正がなされました。

 夫婦は、まず、共通の氏を夫婦いずれかの氏から決めなければならない。基本は同氏なんです。ただ、夫婦が共通の氏を定めなかった場合には、婚姻後においてもそれぞれの婚姻時において称していた氏を称する、こういうことですので、選択的に、同氏に決めてもいいし、決めなくてそのまま旧姓をそれぞれが使うということもできる、こういう制度と私は承知をいたしております。

 その結果、何か混乱が起きたとかそういうことは特段には承知はいたしておりません。

 それから、タイでございますけれども、これもかつては妻は夫の氏を称することとされていた、ここは、妻は夫の氏を称する、こういう形の同氏でございましたが、二〇〇五年、平成十七年に次のような改正、いわば選択制ということが導入をされております。これは、夫婦が夫また妻のいずれかの婚姻前の氏を称する、夫及び妻それぞれが婚姻前の氏を称する、どちらでもいい。夫及び妻の婚姻前の氏を掲げた氏を称する、結合氏、これも認めているというような制度と承知をいたしております。

 平成十七年ということになりますので、必ずしも定かではありませんけれども、これも特段その後の混乱とかは私も聞いたところではございませんので、それぞれの法整備、法制度のもとでスムーズに制度が使われているのではないかというふうに私は考えております。

永江委員 特段の混乱ですとか問題は上がってきていないようだということで、安心をいたしました。

 日本では、残念ながら、今現在、家族のきずな、しっかりしたものとは言えないような状態、揺らいできております。家族崩壊ということも言われております。これは、同じ氏を名乗るという現在起こっている問題でございますので、この原因は別姓とは別なところにあるのではないかと思われますし、この問題解決というのは、別姓だとか同姓だとかそういうのとは別の、また違うところに求めないといけない問題ではないかというふうに思っております。

 大臣は、夫婦別姓になると家族のきずなが弱まるのではないかという御意見について、どのようにお考えでしょうか。

千葉国務大臣 私も、家族のきずな、人間と人間との関係のつくり方というのは、氏によってということではなくして、本当にさまざまな、人間の心といいましょうか、そういうことなどを含めた問題だというふうに思います。決して氏によって家族のきずなが弱まるというようなことではないというふうに私は理解をいたしております。

 例えば世論調査、平成十八年ですけれども、家族の名字が違っても家族の一体感には影響がないだろうという方が五六%、家族の名字が違うと家族の一体感が弱まると思うという方が四〇%弱ということで、確かにそういうふうに感ずる方はいらっしゃるんだということはわかりますけれども、さて本当にそうだろうか、家族のきずなというのは本当にいろいろな形でつくっていくものだというふうに私は思います。

永江委員 児童虐待、高齢者虐待、ドメスティック・バイオレンス、少年非行、家庭の問題といいましょうか、家族の問題というのもいろいろとふえてきております。

 十年ほど前からよく使われるようになった、よく登場するようになった言葉の一つに、孤独な食事と書く孤食というものがあります。私は、この家族の問題というのは、家族の間に余裕というか、時間あるいは会話がなくなってきたことが原因ではないかなと思っております。ゆっくり話をする時間的な余裕、気持ちの余裕、一緒に座る食卓さえなくなってきている、孤食がふえてきたこと、これが家族のきずなの問題に大きくかかわっているように思います。ですから、きずなの再生というのは、同じ氏、同じ姓で一体感を持つということもいいんですが、まず一緒の時間を家族が過ごすこと、ここから始まるのではないかとも思っております。

 きょうぜひお聞きしたかったことの一つに、別の姓を選択した夫婦の子供の姓の問題がございます。

 政府案で出ておりますのが、子供の姓は兄弟姉妹統一する、それは結婚のときに決めておこうというものでございますが、もう一つ考え方としてはあろうかと思います。生まれたときに決めるという案。この案についての千葉大臣のお考えをお聞かせください。

千葉国務大臣 今御指摘をいただきました子の氏についてでございますけれども、これは幾つかの考え方、あるいはこれまでも検討をされてきた、こういうものがございます。

 法制審議会でこれもいろいろな角度から御議論をされまして、まとめられたのが、結婚のときに子供の氏を決めてそれを統一して使う、こういう考え方でございます。これも一つの大変有力な考え方であろうというふうに思いますし、それから、例えば、最初に決めておきませんと、夫婦間で協議が調わない、子供さんができた、そのときになかなか協議が調わないで、子供さんの氏を決める時間がどんどん過ぎてしまう、こういうようなことがあっても、子供さんの福祉に大変反するということにもなったりしますので、やはり最初に定めておくということも一つ安定した考え方だろう、こういうことで御提起をさせていただいております。

 ただ、やはり、例えば年齢的にもうお子さんは特段考えていらっしゃらないとか、あるいは不妊の問題で大変悩んでおられる、こういう方々もいらっしゃいます。そういうときに、結婚のときに子供の氏まで決めておくということは非常に酷ではないか、それから心情に反する、こういう御意見があることも十分承知をしておりまして、そういう意味では、子供さんが生まれたときに決めるというのも大変貴重な考え方ではないかなというふうに思っております。

 ただ、全体として安定的な氏の定め方ということになりますと、結婚のときに、婚姻のときに定めておくというのが今ベターな制度ではないかというふうに私は思いますので、まずはそういう形でスタートすることを私はぜひお願いしたいと思っております。

永江委員 私も、兄弟姉妹というか、これは統一しておいた方がよろしいのではないかと思っております。

 ただ、これを決めるのは生まれたときでもいいのではないかとも思っております。やはり望んでも恵まれないことがわかっている方に選択させるというのは酷な問題であろうとも思いますし、名前というのは、実際子供が生まれてから、この子が幸せな人生を送れますようにという祈りを込めてつけるものでございますので、氏と名前とあわせて考えた方が、より考え方が広がるといいましょうか、実感を持って決められるのではないかとも思っております。

 とにかく、この夫婦別姓の問題は、こうした具体的な詰めの議論も、また皆さんの御意見をいただきながら進めていかないといけない問題でもございますし、千葉大臣、御自分は必ずしも別姓にはしない、別姓が必要ではないけれども、この選択肢が広がることで、実際つらい思いをする人とか不便な思いをする人が少なくなるのであればいいんじゃないのとお考えの方は非常に多うございますので、ぜひとも先頭に立って進めていただければとお願いを申し上げて、次の質問に移らせていただきます。

 安全で安心な社会の実現、これは皆さんが望まれているところでございます。その観点から、きょうはもう一つ、更生保護施設について質問させていただきます。

 平成二十一年版の犯罪白書を見てみますと、一般刑法犯で検挙されたうち、再犯者の占める割合というのが上昇しておりまして、平成二十年の再犯者率は四一・五%となっております。ですから、安全で安心な社会をつくるには再犯をいかに抑えるかということが大事で、その意味でも、この更生保護施設の役割が非常に重要、期待されるところかと思います。

 平成十四年の更生保護事業法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議にも「更生保護施設のなお一層の改善・充実を図ること。」というのが決められておりますが、現状といいましょうか、更生保護施設の状況、どのようになっておりますでしょうか、教えてください。

千葉国務大臣 更生保護施設というのは、御指摘のとおり、刑務所出所者等の中で、頼るべき親族や住居がない、そういう方に対して、宿泊場所や食事を提供しながら、就職の援助等の指導を行ったり、その社会復帰を促進する民間の施設でございます。

 平成二十年までは全国で百一施設で推移をしてまいりました。これはいずれも更生保護事業法に基づく更生保護法人が設置していたものでございます。

 近年、身寄りのない刑務所出所者等が増加して、更生保護施設の収容能力を拡大する、増強するということが大変急務になっているところでございまして、このような中で、平成二十一年以降、社会福祉法人やNPO法人等が新たに更生保護施設を設置していただいておりまして、現在、百四施設というところまで至っております。

 ただ、まだまだこれで十分ということではありません。これは社会の多くの皆さんの御理解の中でつくっていただくということでございますけれども、私どももぜひ、そういう皆さんにこのような施設を提供いただける、こういうことができるように努めてまいりたいというふうに思っておりますし、そういうところにサポートできるような体制もより一層強化をしていかなければならないというふうに考えております。

永江委員 私の地元というのは愛媛県の松山市でございますが、更生保護施設が一カ所ございまして、先日、見せていただきに伺いましたときに話をお聞きしますと、更生保護施設に来られる方で、このところ、やはり高齢の方、高齢者、それから障害を負った方がふえているということでございますので、そういう意味では、今大臣がおっしゃいましたように、例えばNPO法人とかそれから社会福祉のノウハウを持った団体がこういうところの運営に新しく入ってくるというのは、そういう方々の、専門的な知識もお持ちでございますので、更生の道筋がより広がるかなという意味では大変心強く思っております。

 松山の更生保護施設は、建てかえられて五年ということですので、非常に清潔できれいな施設で、私が伺ったときは、収容人員は二十人、二十部屋ありましたけれども、うち十九部屋が埋まっておりました。平成十八年の入所率というのは七五・七%だそうでございます。了解をちょうだいいたしまして部屋も見せていただいたんですが、決して広くはない部屋なんですが、きれいに布団も畳まれておりまして、身の回りの品も整頓されておりまして、そのときは、仕事を探しに、話をいただいたところに面談に出かけておられるということだったんですが、仕事を見つけるということが大変大事、一番大事なことと言っていいかもしれません。

 平成二十年の統計で見ますと、保護観察対象者の再犯率、仕事についている人は七・四%であるのに対しまして、仕事についていない人、無職者は三四・五%と多くなっております。ですから、仕事につけるように支援することが本当に大事だと思いますが、こういう経済状態の中でございますので非常に難しくて、滞在日数も年々延びてきております。

 この就労支援のために、今後どのようなことをお考えでしょうか。お聞かせください。

加藤副大臣 永江先生御指摘のとおり、再犯防止の観点からも、就労支援というのは極めて重要でございます。

 したがいまして、保護観察所におきましては、地域の保護司の皆様と協力をいたしまして、いわゆる更生保護施設入所者の前歴を十分に御理解いただいた上で雇用をしていただける協力雇用主の皆さんの開拓に力を注いでございます。

 また、平成十八年からは、厚生労働省と連携をいたしまして、刑務所出所者等総合的就労支援対策というものを実施いたしておりまして、保護観察所と職業安定所による就労支援チームが、トライアル雇用制度とかあるいは身元保証制度などを活用いたしまして、就労支援に力を入れております。

 加えまして、これはNPO法人でありますけれども、全国就労支援事業者機構という組織で、これは全国と都道府県とございますが、これを民間の方々、経済界の方々にも御協力をいただいて設置いたしまして、同様に就労の確保に努めていただいているところであります。

 今後も、協力雇用主の皆様の拡大を図るとともに、また民間のお力もおかりをしながら、関係省庁とも協力をしながら、御指摘の施策について推進をしてまいりたいと思っております。

永江委員 一つ、現場の職員の方からの悩みとしていただいたお声をちょっと御紹介させていただきたいと思うんですが、仕事が決まる際に給与を振り込む口座をつくってくれという話になるんだそうです。ところが、入所されている方というのは、身元証明の手だて、運転免許証とか保険証とかそういうものを持っていない方が多いし、身元保証人がいない人が多いんだそうです。ですので、口座がつくれない。それだったらもう面倒くさいしというので、せっかく決まりかけた話がだめになることも少なくないと伺っておりますので、そこを何とか弾力的に、例えば刑務所長などの公的機関、あるいは更生保護会の理事長の保証で何とかなるようなことができたらうれしいんだけれどもというふうなことをおっしゃっていたんですが、このあたりはいかがでございましょうか。

加藤副大臣 現状では、保護観察所あるいは更生保護施設におきまして、住民登録であるとか社会保険の加入あるいは運転免許証の再発行、これらの手続につきまして指導助言というのをさせていただいております。ですから、この手続をとっていただきますと、住民票を持って銀行口座を開設するということもできるようになるんじゃないかというふうに思います。

 ただ、刑務所出所者の方、いろいろな御事情を抱えておいでですので、例えば多額の負債があったりして、なかなか今申し上げたような手続がスムーズに進まないというケースもあるというふうには聞いております。その場合につきましても、いわゆる法律相談の紹介、法テラスなどございますが、これらを紹介、案内するなどして、適切に対応させていただいております。

 もう一つは、実際、銀行口座がないがゆえにお仕事につけないということになりますと、これもまた、先ほど申し上げた就労支援というところからは後退をしてしまいますので、そのような場合には、雇用主の皆さんと保護観察所などで調整をしていただきまして、当面、現金でお給料をお支払いいただきたいというようなことも配意をしているところであります。

永江委員 何とか後押しをお願いしたいところでございます。

 職員の方の平均年齢を調べてみますと、六十・八歳、高齢化が進んでおります。実際、若い人にもっと入ってもらうといろいろな多方面の取り組みができるんだけれどもというふうにおっしゃっておりましたが、平均給与が月二十一万七千円でございますので、現実問題として、やはり年金などの給付を受けている方でないと続かないということが言えるかと思います。

 施設は、国からの委託費あるいは寄附などで運営されておりますが、厳しい経済状況ですから寄附も減り続けております。ですから、安定した収入が確保できればというところですが、この委託費についてどのようにしていこうとお考えでしょうか。

加藤副大臣 もう先生十分御理解と思いますが、もともと民間の御寄附に頼って運営をされていたところ、今、国から委託費という形で予算確保させていただいておりますが、その額を少し申し上げますと、平成十七年度から二十年度までは三十二億、三十三億円台で推移をいたしておりましたが、昨年度が四十一億八千七百万円、今年度につきましては四十五億二千六百万円ということで、必要に応じて適切に増加をさせております。

 今後も、なかなか厳しい財政状況のもとではありますけれども、この更生保護施設が安定的に運営できますように、委託費の確保には努めてまいりたいと思っております。

永江委員 ありがとうございます。

 職員の方初め保護会の方、それから協力雇用主の方、そして更生保護女性会の皆さんを中心とした地域のサポートチームの皆さんがボランティアで熱心に活動をされております。本当に頭の下がる思いがいたしました。

 安全で安心な社会の実現のために、この更生保護施設が地域の美しい窓となりますように、さらなる充実をお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

滝委員長 次に、竹田光明君。

竹田委員 おはようございます。民主党の竹田光明でございます。衆議院議員となりまして初めての委員会質問でございます。

 本日は、千葉景子法務大臣、加藤公一副大臣、中村哲治政務官におかれましては、質問の時間をいただきまして、まことに感謝申し上げます。

 実は私、加藤副大臣とは古くからおつき合いがありまして、東村山にあります私の法人の事務所がたまたま副大臣の事務所と隣同士だったという時期もございまして、本日、このように委員会で加藤副大臣と向き合うような形になりましたことは、個人的にも大変感慨深く思っております。

 さて、最初に、千葉法務大臣に質問させていただきます。最近報道をにぎわせている法務省所管の社団法人民事法情報センターの問題です。

 五十年以上続いた自民党を中心とする政権時代に築かれた利権の温床とも言われている公益法人の問題が、今大きく問われております。これまで、官僚の天下りや業界に対する不透明な縛りなど、さまざまな弊害について、国民の皆さんも、漠然とではありますが、感じてきたのではないかと思います。

 このたび、私と、同僚議員であります山尾志桜里議員が調査を行いました、この社団法人民事法情報センターについて質問させていただきます。

 公開されている資料などから事前にチェックをする中で、多少は問題があるかもしれないとの思いで現地調査に赴きましたところ、驚くべき実態を目の当たりにしまして、公益法人の実態はここまでひどかったのかと驚き、あきれ果てているところでございます。例えるならば、交通違反の取り締まりをしていたらいきなり殺人犯が出てきた、そのような気分でございます。現地調査を行い、疑問に感じた部分が明らかになると、公益法人という、一般企業に比べて恵まれた条件ながら十分な監視の目が届かない場所が利権の温床になっている、そういうことが問題だということがよくわかりました。

 そこで、昨年の総選挙で歴史的政権交代をなし遂げた今、民主党を中心とする連立政権の法務大臣でいらっしゃる千葉景子法務大臣に、このような惨たんたる実態に立ち向かっていく覚悟はおありなのか、今回の質問を通じてお伺いしたいと思っております。

 現地調査を行う前に、民事法情報センターのホームページから平成二十年度の決算報告書を手に入れて見たとき、私が最初に気になりましたのは、公益法人とは思えない金額や項目の数々です。まず、この法人の長期貸付金についてお聞きしたいと思います。

 決算報告書の貸借対照表の「資産の部」に「長期貸付金」という項目があり、一千五百万円を貸し付けております。この一千五百万円という巨額の貸し付けは、だれに対する貸付金なのでしょうか。法務大臣、お願いします。

千葉国務大臣 まず、調査を実施していただいたこと、心からその活動に敬意を表する次第でございます。

 まず、事実関係ということで答弁をさせていただきますが、一千五百万という長期貸付金、これは、香川理事長個人に対する貸付金でございます。

竹田委員 ありがとうございます。

 理事長個人への貸し付けということですね。自分がトップだからといって組織のお金を自由に使ってはいけない、こんなことは当たり前のことだと思います。

 法務省がこの長期貸付金の存在を把握したのはいつでしょうか。また、法務省がこの長期貸付金の存在を知ってどのような対応をしていたのか。千葉法務大臣、お願いいたします。

千葉国務大臣 平成二十年度の貸借対照表に計上されているということは、昨年の六月ころに決算が確定した後、その送付を受けて、同年七月ころに把握はしていたということでございます。

 また、長期貸付金の具体的な内容は、議員の調査、その御指摘を受けまして、今月七日に法人に確認して、把握をいたしました。

 また、公益法人が理事長に多額の貸し付けを行うことは、特定の理事に対して便宜を図っているかのような指摘を一般から受けかねないものでもございまして、公益法人として大変不相当だとまずは認識をしております。四月十三日に法人への臨時検査を指示いたしまして、翌十四日に臨時の検査をまず実施させていただいたところでございます。

竹田委員 適切な対応、ありがとうございます。

 しかし、言うまでもありませんが、私は、社団法人の監督を専門にしているわけでもありませんし、そんな私でも貸借対照表に「長期貸付金」という項目があるのは不自然だと気づきました。しかも、金額は一千五百万円という大金です。公益法人の貸借対照表に「長期貸付金」という項目があるのに、なぜ早く気づかなかったか、もっと早くチェックしてほしかったと今本当に思っております。

 この民事法情報センターは割合わかりやすいものだと思いますが、氷山の一角かもしれません。さらに巧妙な事例があるとも考えられます。千葉法務大臣には、同センターの例も踏まえて、これまでと違う、しっかりとしたチェックの体制をつくり上げていただきたいと思っております。

 さらに気になりますのは、現理事長にどのように貸し付けられたのか。私どもが行った調査ですと、長期貸付金一千五百万もの大金が理事長へ無利子無担保と常務理事から説明を受けましたが、これは事実でしょうか。

千葉国務大臣 当該貸し付けが無利子無担保であることは事実でございます。また、弁済期についての定めがないことも確認をさせていただきました。

竹田委員 一千五百万円もの大金が無利子無担保で貸し出されている。これは、私どもの感覚からすると、信じられない、あってはいけない話だと思います。理事長は、民事法情報センターのお金も自分のお金も日ごろから一緒になっているんじゃないか、そういうふうな印象を強く持ちました。

 また、これは新聞の報道なんですが、一千五百万円の貸し付けについて理事会に事後報告をしたとありますが、法人がこれだけの大金を貸し出すに当たって理事会の決議は必要ではないということは問題だと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

千葉国務大臣 確かにこれは定款の定めで行うものでございますので、法的には法令違反というようなことにはならないかと思いますけれども、やはり、公益法人が理事長に多額の貸し付けを行うこと自体、特定の理事に対して便宜を図っているのではないか、こういうようなことを当然受けとめられる、こういうことでもございますので、公益法人のあり方としては私は極めて遺憾であり、不相当だというふうに認識をいたしております。

竹田委員 そもそも、この理事会の構成メンバーなんですが、私の手元にある資料によりますと、地方法務局長、家裁所長、高裁総括判事など、天下りの法曹関係者ばかりなんですね。理事長、常務理事を含めて、これは本来であれば率先して法律を守るべき人たちが、このようなていたらくと言っては申しわけないですが、こういう状態であるのも、これは理事会の構成自体が問題だったのではないか、そのように感じております。

 要するに、民間企業と違ってさまざまな優遇措置のある公益法人の資産の一千五百万円が個人的に自由に使えた、こういう信じられない話があったということだと思います。

 続きまして、役員の報酬について伺いたいと思います。

 私どもの調査によりますと、理事長の報酬を月五十万円から百万円に、常務理事の報酬も五十万円から七十万円に引き上げられたことが判明しております。この引き上げのことも理事会の決議をしておりません。理事会の決議もなく、理事長と常務理事のお手盛りで役員の報酬が引き上げられる、こういうことはやはり問題じゃないかと私は思いますが、大臣、いかがでしょうか。

千葉国務大臣 委員おっしゃるとおりだと私も思っております。

 これもまた、確かに法違反ということではないとは思いますが、やはりどう考えても、お手盛りと言われても仕方がない、こういうことでもございますし、公益法人としてはやはりこれも極めて不相当だ、まずはガバナンスの体制もほとんど欠けていたということではないかというふうに思います。私は大変極めて遺憾なことだというふうに思います。

竹田委員 そもそも、この一千五百万円なんですが、調査をした際、返済等のことはお話しになったんでしょうか。大臣、よろしくお願いいたします。

千葉国務大臣 もちろん、当然のことではございますけれども、これをきちっと返済するようにということを要請いたしまして、昨日、四月十五日でございますけれども、法人に返還がされました。

竹田委員 ありがとうございます。

 調査が入って、昨日、一千五百万円返還されたということですが、そもそも、一日で一千五百万円を返済できるような資力のある人が、お金を借りる必要があったのか。これも非常に疑問に思います。借金をするというときは、節約をして節約をして、足らなかったら銀行なり金融機関に行き、審査を受けてやっとお金が借りられるんですね。これが普通の人間だと思うんですが、一千五百万円も借りて自由に使って、あっ、調査が入ったからこれはすぐ返しちゃうと。これはもうあきれ果てて、ちょっとびっくりしたのが、今の答弁をお聞きしまして、なおさらながら、びっくりいたしました。

 大臣、これはおわかりの範囲で結構なんですが、その場合、利息等はどうなったんでしょうか。

千葉国務大臣 先ほど申し上げましたように、無利息という形であったわけですけれども、今回の返済についても、利息等は受け取っておらないということでございます。

竹田委員 もうびっくりしただけで……。一千五百万円無利息で貸してくれるところ、いい法人があったんだなと、信じられない思いでございます。

 やはり、理事長にとりまして、その一千五百万円というのは、自分の貯金をおろすような感覚でセンターのお金を使っていた、そういうふうにしか思えないし、これはもう完全に私物化だったなというのがはっきりわかったと思います。

 同センターは、公益法人として税制上優遇されている、その上、自由にお金を使える、報酬もお手盛りで上げられる、なおかつ、常務理事の給料も上げて、何か常務理事に対する口どめ料みたいな印象まで持つ、極めて悪質だなとさらに感じました。

 続きまして、決算報告書の収支計算書にある「受取家賃」について伺いたいと思います。

 この項目を発見いたしたときも大きな疑問を感じました。平成二十年度の決算報告書には、「受取家賃」として、予算額三百六十万円、決算額三百四十二万八千五百八十円という数字が記載されております。

 決算書をさかのぼりますと、平成十八年度の予算には「受取家賃」という項目はありませんが、決算には二百八十五万七千百四十三円という数字が出ております。つまり、平成十八年度に受取家賃が入ってくるような変化があったんだなと推測されます。

 それでは、この家賃を払っているのはどのような法人なんでしょうか。法務省はこの受取家賃が存在することを把握したんでしょうか、把握したとすればいつごろでしょうか。大臣、お願いいたします。

千葉国務大臣 この家賃でございますけれども、当該法人理事長が複数の弁護士とともに経営する香川法律事務所、ここでございます。

 平成二十年度の収支計算書に計上されているということにつきましては、平成二十一年六月に決算が確定した後、その送付を受けて、同年七月ごろに法務省としては把握をしている、こう承知をいたしております。

竹田委員 つまり、センターの理事長がトップを務める法律事務所が、センターの中の一部に自分の法律事務所をつくっていたということになりますね。あきれ果てたと何回言っても足らないぐらいの状態であります。

 それでは、この現理事長をトップとする弁護士事務所が民事法情報センターの一部を間借りするようになったのは、今の理事長が理事長に就任する後なのか前なのか、就任した後先だけを教えてください。

千葉国務大臣 間借りといいますか、そうなったのが平成十八年六月からでございます。現理事長が理事長に就任したのは、その一年前の平成十七年六月。理事長に就任してからちょうど一年後ということになります。

竹田委員 一年たったから自分のところで使っちゃったという形がよくわかりました。先ほど、決算報告書からは平成十八年に受取家賃が発生したと読み取れると言いましたが、そのとおりだということが今確認できました。

 これは、私どもが現地調査へ行く前に、ホームページにある決算報告書から推測したものですが、これは別に、僕は経理の専門家でも何でもないんです。いきなり出てくれば、これは何かあったなとすぐ簡単にわかることなので、この法人が家賃を受け取っているということはだれでも気づくことだと思います。これにつきましても、今後、厳重なチェック体制を確立していただきたいと思います。

 この現理事長をトップとする弁護士事務所について、もう少しお伺いしたいと思います。

 もう一度、貸借対照表に戻ります。「資産の部」の中に「敷金・保証金」という項目がありまして、五百二十六万一千百六十円と記載しております。これは民事法情報センターが建物の家主に対して支払っている敷金、保証金に当たると思います。しかし、「負債の部」には「敷金・保証金」の記載がありません。

 これはどういうことかと申し上げますと、民事法情報センターはきちんと敷金、保証金を家主さんに支払っているんですね。だけれども、理事長の弁護士事務所は家主である民事法情報センターへ敷金、保証金を払っていないんじゃないか。それとも、もし払っているなら、またそれをどこかで使っちゃったのか。

 どういうことなのか、ちょっと御説明いただきたいと思います。

千葉国務大臣 調査をしたところでは、当該法人はこの法律事務所から敷金、保証金は受け取っていないということでございます。

竹田委員 そうしますと、民事法情報センターは通例の慣習どおりに家主に敷金、保証金を払っているのに、間借りをしている理事長の個人事務所は敷金、保証金も払わないで使っちゃった、こういう身勝手な話ということだと思います。

 そもそも、社団法人である民事法情報センターの敷地を、これは民間から借りていると思うんですが、その一部を又貸ししているというのは、これはどういうものなのか。本当に、あきれ、あきれ、あきれた事態だと思っております。

 また次の件をお伺いいたします。

 この民事法情報センターには四億円以上の内部留保があります。この巨額の内部留保も問題ではないかと私は思っております。社団法人は非営利であり、税制上優遇されていることも多いのですが、一般企業より有利になってしまう、そういう側面があります。内部留保があるならば、それは本来、社会貢献にどんどん使っていくべきだ、私はそう思います。

 読売新聞の記事からですが、取材に対して理事長は、センターは相当お金を持っている、それを有効に使わないといけない、そもそもこの発想はちょっとびっくりしたんですが、そう答えていらっしゃいます。お金がたくさんある、自分のお金のように使っていいかどうかは別の問題といたしまして、この法人の規模で内部留保の額が四億円以上、私は多過ぎると思います。

 現地調査の説明の中で、民事法情報センターの事業として注目いたしましたのが、住居表示地番対照住宅地図、いわゆるブルーマップの企画、刊行です。同センター、平成二十年度の決算報告の「収入の部」にある「その他事業収入」というのが、説明によりますと、このブルーマップ関連の収入だそうですが、一億一千四百八十万円とあります。そして、ブルーマップ製作にかかる費用、租税公課、これが決算額で二千七百万円、差し引き九千万近い利益を上げています。このブルーマップによる巨額の収入が、四億円以上に上る内部留保を生み出しているのではないかと考えられますが、私どもの調査では、平成十八年度までしかさかのぼることはできません。

 先ほどの大臣のお話では、法務省も先日、民事法情報センターの現地調査を行ったと聞いております。現在四億円以上に上る内部留保はどのように蓄積されているのか、内部留保の増加がブルーマップの発行状況と発行に伴う収益の増加に関連するのか、お答えいただきたいと思いますが、私どもの聞いている範囲によりますと、調査、企画は全部ゼンリンがやっていて、一部調査もエム・アール・シーという別会社がやっていて、これは実態としてやっていないんですね。しかも、常勤職員が二名しかいなくて、その二名とも法務局の天下り、職員も天下り。それでこの巨額の収益を上げる事業がどうして行われているのか。もし調査でおわかりのことがありましたら、教えていただきたいと思います。

千葉国務大臣 このブルーマップにつきましては、住居表示と重ね合わせることによって大変便利になるのではないかという、もともとそういう考え方を提供したのはこの情報センターと聞きました。確かに、そういうアイデアを出したということでございますけれども、それ以降はゼンリンが基本的には作成をしているということ、アイデア的な対価ということなのかもしれませんが、ブルーマップ事業での事業の収益というのが内部留保額の増加につながっているということは、私は基本的に明らかだというふうに思います。その他の、例えば出版事業などをやってはおりますけれども、このブルーマップ事業の収益、そのアイデアを提供した、それに基づいていわばロイヤリティーのようなものを得ている、こういうことがこの内部留保額の推移につながっているということではないかと私も理解をいたしているところでございます。

竹田委員 大分以前にいいアイデアがあって、それが引き継がれて収入が入ってきているということだと思うんですが、どうも、法務局中心のこういう天下りの法人と地図の会社というと、とかくいろいろなことを想像しがちな印象を私は持っております。

 これまでの質問で明らかになりましたように、民事法情報センターは、理事長個人への長期貸付金、お手盛りの報酬引き上げ、それを食いとめられない理事会、そして、理事長の個人事務所の設置、規模に比べて大き過ぎる内部留保。本当にこれは私と山尾議員が短時間で調査をしたことなんです。短時間の調査でこれだけ多くの問題が浮かんできた。これは本当にもう何回も申し上げますが、理事長は、自分のお財布と言ってはあれですが、もう完全に自分の持ち物として使っていた、そういうふうに思わざるを得ません。

 今後、法務省所管の公益法人に対してどのようにしていきたいか、どういうふうにお考えになっているのか、千葉法務大臣、加藤副大臣、中村政務官に、お考えと改革に向けた決意をお伺いしたいと思います。

千葉国務大臣 まずは、私どもも本当に気づかぬ点について、こういう状況にあったということ、大変私もおわびを申し上げなければならないというふうに思っております。委員の皆さんの御活動によってこういう状況を明らかにしていただいたということ、本当に心から敬意を表する次第でございます。

 まずは、先ほど申し上げましたように、立入検査をさせていただき、そしてまた、返還をすべき貸付金について返還をさせる、こういうところは直ちにやらせていただきましたが、そもそもこの法人のあり方ということが問われているものだというふうに思っております。

 そういう意味では、改めて実情を精査いたしまして、存続をした方がいいのか、あるいはもうそうではない法人なのか、その辺も改めてきちっと三役で検討させていただいて、必要な対応、そして策をしっかりと示してまいりたいというふうに思っております。

 そのほかの所管をする公益法人につきましても、今、順次、立入検査等を含めて、進めることを指示しておりまして、早急にこれも取り組みをスタートさせていきたいというふうに思っております。

加藤副大臣 まず、竹田委員そして山尾委員の調査には心から敬意を表したいと思います。また一方で、就任をさせていただいて半年でありますが、もっと早く我々も気がつかなければならなかったということで、その点は大変恥じ入っているところであります。

 問題が明らかになりました以上、可及的速やかに対処をしていきたいというのは大臣と同じ思いであります。その前提として、この民事法情報センターが、まさに理事長の公私混同、そして法人の私物化の疑いが極めて濃いということは、私自身大変大きな問題だと思っておりますし、また、そもそも、公益法人の趣旨からいって、本当に存在価値があるんだろうかという気持ちを抱いておりますので、さらに厳しく調査をするとともに、国民の皆様に御納得いただけるような対応をぜひとってまいりたいというふうに思っております。

中村大臣政務官 まずは、調査に感謝を申し上げます。

 私は、野党時代、NPO、公益法人改革の民主党の責任者をしておりました。その立場からすると、今回の件に関しては非常に恥じ入っております。三月の初めには、仕分けも始まるので、法務省所管の公益法人に関してはすべてきちっと見直すように指示をしていたところでございます。しかし、その中において、このようなことが、法務省の中で発見されるのではなく、外部の議員の指摘によって初めて発見されるということは非常に問題があったと思っております。

 その意味で、先ほど大臣から述べさせていただきましたように、徹底した内部調査の体制をさらにグレードを上げて取り組んでいく、そして、この法人だけではなくて、すべての法務省の所管の公益法人について取り組んでいく決意でございます。

竹田委員 ありがとうございました。三役のお考えと改革に向けた決意を十分感じることができました。

 多くの国民が、どこか怪しい、何かやっているんじゃないかと感じていた公益法人の天下り、私物化の一端が今回の質問で明らかになったわけですが、これは、先ほど申しましたように、非常にわかりやすい例ではないかと思います。たった一度の現地調査で簡単に問題が明らかになっているのは、不正を行った当事者がいかに油断をしていたかというか、不正をしているという意識がなかったんじゃないか、そのように思います。しっかり調査をすれば、まだまだ多くの問題があるのではないかと思います。

 これは私、決算報告書を見て気づいたものですが、あくまでも氷山の一角にすぎず、さらに巧妙に実態を隠している法人が多々あるような気がいたします。これまで表面に出てこなかったうみを出し切り、民主党中心の政権にかわって本当によかったと国民の皆様に思っていただけるように、目に見える形でぜひ成果を上げていただきたいと思っております。政務三役の皆様には、今後、このような利権の温床、公益法人の私物化を繰り返さないよう、しっかり対応していただきたいことを私から希望させていただきます。

 時間も迫りましたので、私の質問はここまでにしたいと思いますが、本当に同センターの問題は氷山の一角にすぎない、皆様に厳しく他の法人についても調査を願いたいと思います。そして、政務三役の皆様初め、法務省の皆様、最高裁判所、警察庁の皆様には、これまで以上に精力的にそれぞれの課題に取り組んでいただくことを私からのお願いといたしまして、質問を終えたいと思います。

 ありがとうございました。

滝委員長 次に、河井克行君。

河井委員 おはようございます。自由民主党の河井克行です。

 ここに一冊の本を持ってまいりました。題名が「司法の崩壊 新任弁護士の大量発生が日本を蝕む」、帯に「とんでもないことが法曹界で起きている 法曹人口の粗製濫造―「法科大学院」と「年間三千人増員計画」により大混乱する日本の司法」と書いてありまして、副題に「前法務副大臣が明かす」と書いてあります。この人は私でありまして、私が法務副大臣を退任した直後に出版をいたしました。

 私は、鳩山邦夫法務大臣のもとで十一カ月、平成十九年の八月から二十年の八月まで、今の加藤さんと同じ立場ですが、優秀なすばらしい大臣のもとで仕事をさせていただきました。

 日本は法治国家でありまして、国民だれしも法の支配に対して疑問を抱いている人はいませんし、そうであっては決してならない、そう考えております。さて、その法の支配、現場で執行、運用している法曹人、私は、この人たちがあくまでも優秀であらねばならない、そして、国民がこの優秀な法曹人というものに対して信頼と尊敬を持たなければ、日本の法の支配、法治国家という大前提は崩れていってしまう、そのように感じております。

 当時、鳩山大臣からいろいろと御指示をいただきまして、法曹養成、法科大学院を中心とする新たな制度、そして法曹人口の大増員計画。あの方は直観が大変鋭い方でいらっしゃいますので、何かお感じになったんでしょう、その御指示を受けて、いろいろと関係者と公式、非公式に会ったりとか勉強したり、現場の視察をしていろいろなことを学び、そして感じました。

 本来、役所にいた副大臣が退任直後にこういう本を出版するというのは禁じ手かもしれません。ただ、私は、どうしてもやむにやまれぬ気持ちでありまして、やはり制度設計した、夢を見てしまった学者の皆さん、そして現場感覚のない法務官僚、文部科学官僚、この人たちによって大切な大切な司法の一番の基礎が失われつつある、崩壊しつつあるという実感を抱き、できるだけ世に問いたいということで本にいたしました。

 案の定というか、ほとんど本は売れておりませんけれども、法務省の売店では発禁本になったかどうかわかりませんが、本論に入ります前に、法務大臣そして法務副大臣、私の拙著、存在自体御存じだったかどうかということも含めて、ごらんいただけたかどうか、所見も含めてお聞かせをください。

千葉国務大臣 委員の御著書については存じ上げております。

 ただ、なかなか内容を十分にきちっと読ませていただくというところまでには至っておりませず、どういうお考え方かということなぞを少し整理をして報告を受けているところでございますので、また時間をつくってゆっくり読ませていただくことができたらと思っております。

加藤副大臣 先輩副大臣の上梓された御著書でございますから、本来であれば真っ先に私が読ませていただかなければならないことは重々承知をしておるところでありますが、今、何分にも十分な時間がとれてございませんで、まだ直接拝見をしたのは表紙まででございまして、大変申しわけなく思ってございます。

 ただ、お書きになられた内容につきましては、事務方からも説明、報告は、概要でございますが聞いているところでありまして、今後も、私どもがさらに、先生の御示唆に富んだ御意見も踏まえながら勉強させていただきたい。ぜひ参考にさせていただきたいと思ってございます。

河井委員 今の答弁からも、恐らく役所内では危険書扱いをされているんだなということがうかがい知れました。政治家が時間のあるとき読みますと言うのは社交辞令ですから、時間があっても読まないと思いますので、きょうの私の質問をしっかりと聞いていただいて。

 これを出した後、もう一年六カ月以上時間が過ぎ去っております。恐らく、役所は、この本の内容を教えてくれと皆さんがお尋ねになると、いや、この部分はここが違っていますみたいなメモをちゃんと添えて持ってくると思いますので、一番大事なことは、本当に、やはり現場の声を聞いてほしいんです。役人の意見とかそういった人たちの意見ではなくて、現場で本当に苦しんでいる人たちの意見を聞いていただきたい。その一心で、きょうは、その後の司法の崩壊も含めて、いろいろな面から質問をいたします。

 まず初めに、千葉大臣には、所信で法曹養成についての問題を検証されるという発言をされました。私は、ただ、もう検証という段階ではないというふうに思っておりまして、また同時に、長期にという発言の部分もおありでしたけれども、法科大学院ができて六年、新しい司法試験ができて四年たっているんですね。検証ではなくて、もう問題点は明らかになっているわけです。それについて具体的な改善をしなきゃいけない。

 実は、私たちも自民党政権時代に、与党の中でさまざまな動きを行いました。そういった点でも、もう検証はし尽くしているというふうに私は考えておりますが、大臣御自身は今の法曹養成の仕組みについてどういう問題意識をお持ちなのか、お尋ねします。

千葉国務大臣 法曹養成制度が議論をされましたときには、従来の司法試験制度の弊害をなくし、そして線によって、法科大学院を中心として法曹を養成していこう、こういう一つの大きな流れをつくってよき法曹をつくっていこうということが、この法曹養成制度をつくったときの大きな基本的な考え方であっただろうというふうに思っております。

 私は、この法曹養成制度そのものについては大きな意味があるというふうに思っておりますけれども、では、その最初の理念、あるいは法曹養成についての基本的な考え方、理念、それと現状については、私はかなり乖離が出てきているというふうに思っております。

 今、早急に手直しをする必要があるということではございましたけれども、そういう意味で、今きちっと、当初の考えていた法曹養成のあり方とそして現状がどうなっているのかということを検証し、そして改めるべきところは改める、そして新しい、質の高い、多くの皆さんに信頼される法曹をどうやってつくっていくかということに大きくまた踏み出していかなければいけないものだという認識でいるところでございます。

河井委員 今、かなりな乖離が見られるという御発言でありました。

 私は、後でまた詳しく申し上げますが、もはや制度を小手先で、また新たな税金を投入したり、いろいろな人を配置したりして改善する段階ではない、制度自体の本質的な欠陥が明らかになってきている。

 先ほど、もう制度ができて六年と申し上げました。いろいろな結果が出てきているということですけれども、例えば、法科大学院の適性試験の受験者数の推移ですとかが激減しているんです。初年度の平成十五年度には、大学入試センター、三万五千人以上が適性試験を受けていた。それが、平成二十一年度では九千三百人余り。つまり、四分の一に減ってしまっているんですね。六年間で四分の一に志願者が減ってしまうような仕組みになってしまっているということなんです。これは私は、市場、マーケットのはんらんだと思いますし、志願者、受験生をお客様に例えれば、消費者がもうここに参入したくない、そう思っているわけですよ。

 大臣、副大臣、どちらでも結構ですが、まず、この適性試験、受験者が激減をしたということについてどういう御認識をお持ちでしょうか。

千葉国務大臣 適性試験の志願者が大変減少しているということは十分に承知をいたしております。

 その原因というのは、私も、必ずしもこれだということを、確たるものを申し上げることはできませんし、そして、まだ、何が原因しているかということをよくよく検討してみなければいけませんけれども、例えば、司法試験の合格率がかなり低下をしております。そういう意味では、それに対して挑戦をしよう、そういう意識が少なくなっている。それから、法曹人口が増加をすることによって、弁護士のいわば就職難というようなことも言われております。そういう意味では、やはりこれも、司法試験を受けてもきっと就職できないのではないかということが、こういうことに挑戦をする、あるいは試験を受ける意識を非常に低下させているということも言えるのではないかというふうに思います。ただ、それが確たる原因かどうかというのは、私も必ずしもそれですべてであろうというふうには思いませんけれども、そういうことも一つの原因ではないかというふうに思います。

 ただ、やはり、先生おっしゃったように、質の高い、そして信頼される法曹というのを生み出していくということは大変重要なことでございますので、この原因等ももう少しきちっと調査をして、そして、どのようにしてこのような法曹を目指していただくという人をふやしていく、あるいは生み出していくということを考えていかなければならないというふうに思います。

河井委員 今、大臣は、大きく分けて二つ理由が類推されるとおっしゃいました。一つは司法試験の合格率が余り上がっていないということ、もう一つは就職難だということなんですけれども、私は、前者は理由になっていないと思うんです。

 というのは、御承知のとおり、大臣は司法修習の三十四期ですよね。そのころ合格率は何%でしたでしょうか。もう覚えていらっしゃらない……(千葉国務大臣「数%」と呼ぶ)数%ですよね。それと比べますと、合格率はけた違いに高いわけですよ。

 私はむしろ、本質的な理由は、就職できない、資格を取っても就職できない。つまり、無用な法曹人口を国家が垂れ流しというか無理やりつくっているということに対して、若い人たちが、自分たちの一生をかける価値が果たしてあるだろうかという疑問を持っているんだと思うんですね。

 他方で、新しい仕組みのほかに旧来からの仕組みも残っておりまして、いわゆる旧司法試験なんですけれども、昨年は一万五千二百二十一人受けているんです。法科大学院の適性試験を受けた人が九千三百六十人ですから、一・六倍の人が、合格率が一%、〇・何%しかない旧司法試験であるにもかかわらず、これだけ大勢の人たちが受験をしているんです。法科大学院に行けないけれども法曹資格を得たいんだ、社会のために役に立ちたいんだということを願っている人たちがこれだけいるということなんですよ。

 平成十五年、最初制度が始まったときは、適性試験を受けた人と比べますと、一・三倍、旧司法試験が多かったんです。最初役所が想定したのは、旧司法試験はだんだん減っていくだろう、受験者は激減するだろうと。だから、私からいえば、いじめとしか思えないような、低い低い合格率にどんどんしてきているわけですよ。

 それから、これは余談になりますが、私は副大臣のときに、旧試験、新試験、短答、論文の試験会場を週末全部見て回りました。旧試験組はかわいそうなんですね。空調がきいていないんですよ、暑いときに大部屋で。試験の公平上もあって、それは当然後ろの席からしか僕は見ることはできません。新試験に行ったら、快適なクーラー。お台場の立派な借り上げした会場でやっている。何でそこまで、ついてきた方にいろいろと聞きましたけれども、よくわからないお答えでしたが、やはりそこまでしてまじめに頑張ろうとしている人たちが一方でいる。

 ただ、もう旧試験は基本的に廃止ですから、法曹になるためには法科大学院に行くことが義務づけられているんですよ。国家が強制しているんです。法科大学院を出ないと司法試験すら受験できませんと国家が強制しているにもかかわらず、旧試験、国家が強制していない方は受験者数が一・六倍いる。国家が強制しているはずの方、法務省と文科省が無理やり金を配分してやっている方が四分の一になってしまった。

 私は、結局、例の司法制度改革推進計画、閣議決定で、多様な人材を法曹にしなきゃいけないという高邁な理想がありましたね。これは全然多様な人材になっていないわけですよ。

 法科大学院というのは、お金もかかるし時間もかかります。未修の場合、大学を出てから三年間ですね。既修、大学で法学を勉強した場合でも早くて二年間かかってしまう。学部で四年間勉強した上に、さらに二年から三年、時間とお金をかけてしまう。しかも、ことしから司法研修所が給費制から貸与制に変わっていくということがあります。この間は当然お金を稼ぐことはできない。さらに、順調に合格しても、受験に半年、司法研修所に一年余り行きますから、最速でも、大学を出てから、未修者では四年九カ月もかかってしまう。既修者で三年九カ月かかってしまうんですね。この間、当然稼ぐことはできません。

 現場の意見を聞いていて私が一番心配したのは、結局、お金持ちの子弟、一部の人たちしか、社会的あるいは経済的な力を持っている裕福な人しかもはや法曹にはなれないのではないかという心配を強く抱いたんです。

 今、実際にどれくらいお金が必要か、御存じでしょうか。法科大学院の三年間で、学費と生活費、もちろん標準計算ですけれども、どれくらいか、御存じでしたらお答えをいただきたいと思います。

加藤副大臣 正確な数字を今持ち合わせてはおりませんが、今先生御指摘のように、学費だけではなく生活費も合わせてということになりますと、もちろん生活費ですから個人差も大きいとは思いますが、三年間丸々の学費プラス生活費、数百万円台後半にはかかるのではなかろうかというふうに思います。

河井委員 全くそんな金額じゃ済まないんですよ。私の本の百四十三ページを読んでくださいね。ざっと計算しますと、私立の場合、学費で四百十万円、それから生活費、普通、家賃が月六万五千円、生活費が七万二千円として、四百九十三万、合計して九百三万円なんですよ。

 それで、さっきも言ったけれども、三年間稼ぐことができませんから。二十代の会社員の平均給与が三百五十万と仮定して、逸失利益が一千万ぐらい。全部で三年間で二千万円の経済的な負担ができる人しか法科大学院に行けないんですよ。そうしたら文科省は必ず言いますよ。副大臣、お越しいただきましたけれども、奨学金があるじゃないかと。奨学金も基本的にはこれは返すお金ですから。しかも、繰り返しますけれども、司法研修所では給付制から貸与制にお金が変わっていく。

 千葉大臣、もし今千葉大臣が学部の四年生でいらっしゃったら、これだけの金額の負担をして、それでも法科大学院に行きたいと思われますか。

千葉国務大臣 私も、当時を振り返りますと、まずは法科大学院というのがないときでございましたので、学部を出て直接司法試験を受けるということになるわけです。しかも、貸与制ではなくて給費制ということでございましたので、一定の期間で頑張ることができれば、その後、修習を経て法曹の道を何とか得ることができるのではないかというふうには考えました。

 そういう意味で、もし法科大学院、そしてまた、給費制ではなくて貸与制であるというようなことが前提条件であるとすれば、本当に生活をどう立てていくか等々相当考えたものではないだろうかというふうには思います。ただ、振り返ってみると、わかりませんけれども、そういう条件であればなかなか大変ではあろうというふうに思います。

河井委員 この部屋にはほかにも法曹議員の方がいらっしゃいまして、同僚の稲田朋美さんは三十七期なんですね。あるいは、民主党の方でも辻先生が三十三期ということを聞いておりますけれども、いずれの皆さんもそれぞれ、こんなことを言ってはいけないけれども、別にそんな裕福な家ということじゃなくて、普通の健全な家庭で生まれ育って、それで一念発起して何年も苦労して司法試験に合格された方たちばかりだ、私はそう信じているんですよ。

 ところが、最近、法科大学院で教えている現場の教官の話を聞いてみると、明らかに昔と学生の質が変わってきたと。やはり金持ちの子弟がふえてきた、それから検事や判事の二世もふえてきたというふうな声。だから、副大臣、これは現場を歩けばすぐ聞ける話ですから、その辺はしっかりと把握をしていただきたいと思います。

 その上で、ではお金の負担ができない人はどうするかということなんですけれども、こういう方策を最近法科大学院はとり始めてきていまして、要するに、金をばらまくんですね。ばらまいたり無料にしてしまうということを今どんどんやってきていまして、要するに、いわゆる中下位校におきましては、成績優秀層の囲い込みが始まってきた。

 例えば、専修大学の法科大学院では、二年間にわたって全くのただ。それも、私が一番問題だと思っているのは、給付条件の中に所得要件がないんですよ。つまり、苦学生だから学費を支援するじゃなく、いっときの甲子園球児の特待生制度と同じような状況になっている。青学はさらにすごいんですね。去年から、法学既修者コースの入学者全員に、二年間ただ。既修者には全員ただにしているんです。では、だれが持つか。だから、それは当然未修者がその分までかぶらざるを得ない。白鴎大学の法科大学院に至っては、修了した翌年度の司法試験に合格した場合、祝い金三十万円が支給をされる。

 つまり、金に物を言わせて優秀な人を片っ端から集めてきている。だから、教育というよりも、教育というのは、できようができまいが、そういう子たちを集めて能力を高めることが自前の教育なんですけれども、そうではなくて、もう一定の水準に立った人をいろいろな経済的なことで引っ張ってくる、そういうふうな状態に今陥っているわけであります。

 次に、最近の司法試験の結果推移を見ていきたいんです。

 一番最近の、昨年の司法試験の結果、合格者は二千四十三人で、合格率は二八%です。大臣がまじめに合格されたときと比べると、けたが二つぐらい違う。そして、ひどいのは、七十四校も法科大学院が乱立しているんですけれども、この平均以上、二八%以上の合格率を出している学校が何校あるか。

 これは、普通、算数でいえば、大体半分の三十七校ぐらいは平均以上の合格率を出しているというふうに類推できるわけですけれども、実は、平均以上の合格率を出しているのは、わずか十七校にすぎない。つまり、残りの五十七校は平均以下。合格率の高い方から計算して、上位二十校で全体の七割を占めてしまっている。残りの五十四校で残りの三割を占めている。だから、この五十四校が全くなくなって法科大学院が二十校になったとしても、大体千四百人くらいの合格者は出ていくということなんですよ。

 では、極めて結果を出していない法科大学院に対して、国が、政府がどれくらいの国費を投じているか。文部科学副大臣、おわかりでしたらお答えをいただきたいと思います。

鈴木副大臣 お答えを申し上げます。

 まず、二十一年度ベースを参考に申し上げますと、私立の法科大学院を含む専門職大学院に対する経常費補助が四十五億円、それから国公私を通じた教育の取り組みに対する支援ということで五・六億円、それから国立大学法人における法科大学院に係る運営費交付金相当額ということで試算をいたしますと三十二億円、こういう状況でございます。

河井委員 全部合計しますと、毎年大体二百億円以上、国費が法科大学院に投じられている。

 副大臣、私の本を持ってきていただいて、ありがとうございます。

 それに加えて、先ほど言いましたように、個人が莫大な費用負担をしてきている。この実態をどう考えるかなんですよ。つまり、お金をたくさん無理やりかけて、子供たちに二年から三年間通いなさいよといって、その結果がこういうことですかということなんです。同じ法科大学院を出ても水準が違い過ぎるし、先ほど大臣がおっしゃいましたけれども、理念どおりには全くなってきていない。

 常識で考えて、七十四校で教えるだけの教員を日本国でそろえられるはずもないんですよ、それは。私が地方の私立法科大学院へ視察に行ったときは、もう本当に、首都圏もそうでしたけれども、七十以上の方々が、第二、第三の人生を押して現場で教えていらっしゃった。それでも足りなくて、一人の人が二つ、三つ大学院をかけ持ちしている、そういう状況なんです。

 そういったことに加えて、法科大学院はいろいろととんでもないことをやってくれているのですけれども、実は、去年の九月十一日の読売新聞の記事にこういうことが載っていました。愛知学院大学は、初の合格者四人を出した。昨年秋以降、弁護士の教授陣をふやし、学外の予備校に通う学生を経済的に支援するなど、試験合格に向けた支援体制を強化してきたという。

 法科大学院が受験予備校に通う金を出して、それで初めて四人出したんですよ。これはもうブラックジョークというか、もう完全に制度が破綻していますよ。

 だって、さっき大臣がおっしゃったけれども、私は、旧試験は決して悪いことばかりだったと思いませんよ。私は、千葉大臣とか同僚の稲田先生とか辻先生が、丸暗記で通ってきたばかりの人とかいうふうには全く思わない。すぐれた方だと思っています。ただ、中にはいろいろな弊害もあったかもしれない。ただ、それを直すために、予備校に頼らないために法科大学院をつくったはずなのに、受験予備校に通う金を援助している。これはもう、理念の放棄どころか、はなから理念を追求するつもりがなかったと受けとめられても仕方ない。

 これは事実関係を文部科学省で調査されたんでしょうか。もし結果が出れば教えていただきたいと思います。

鈴木副大臣 文部科学省におきましては、中教審の法科大学院特別委員会報告を踏まえまして、今御指摘の愛知学院大学についてはこのような所見をもらっております。「法科大学院として、改善の必要性が正しく認識されていないため、成績上位者による予備校の答案練習を組織的に支援するなど、受け入れた学生を自ら責任を持って教育しようという意識が希薄であり、法科大学院での教育を中心とした教育課程および学修指導体制を再構築する必要がある。」という指摘を受けておりますので、よく承知をいたしております。

河井委員 今のは一番わかりやすい例なんですね。ほかにも同じようなことは、現場の意見を聞けば幾らでもある。

 ちなみに、学生のうち、受験予備校に何割ぐらい通っていると思いますか。表向きは、法科大学院の教官は、予備校に通っちゃいけないと言い続けているんです。雑感でも結構ですから、大体何割ぐらいが現に通っているか、想像で結構ですからお示しください。

加藤副大臣 あくまでも想像の域を出ませんので、適切な数字かどうかわかりませんが、おおむね三〇%ぐらいでありましょうか、そんな感想を持っております。

河井委員 いや、そんなものじゃないんですよ。七割、八割ぐらいが通っているということを予備校の関係者から私は聞きました。中下位校はもちろん、上位校でも先生の目を盗んで行っているということであります。

 だから、繰り返しますけれども、三年間、二千万の金をかけて、国家も毎年二百億円以上かけて、派遣検事だって、何人でしたかね、優秀な人を数年間そこに配置して、裁判所からも教官を出して、それでやって、さらに何で予備校に通わなくちゃいけないのか。これはどう考えても、まじめに考えれば考えるほど眠れなくなるんですよ。

 法科大学院の志願者は六割減っているんですね。今、大体四〇%になった。司法試験は毎年大体二千人が合格しています。となると、二万人、三万人の志願者がいたときに二千人合格するのと、今では、九千人台に満たないところで二千人、去年だって二千四十三人。例の目安を随分下回ったんですよ。下回ったけれども、それでも二千人合格させた。これで果たして法曹の質が維持できていると思いますか。

 繰り返しますけれども、旧司法試験は、千五百人合格した当時、大体五万人が受けていました。法科大学院が始まって五年たったら、それが一万人になっている。法科大学院に行けない人は受験できないわけですから。法曹の質が担保されているかどうか、要するにこれが一番心配なんですよ、国民も含めて。御所見がありましたらお聞かせをください。

千葉国務大臣 あくまでも私の雑感でございますけれども、法曹の質、これは一体どのようなことをもってよい質かどうかということをはかるのかというのは、非常に難しいことだというふうに思います。

 我々が受験をした、そして法曹になった当時が法曹の質がそれなりによくて、今の法曹養成制度のもとの方が低いともなかなか言い切れないところもあろうと思いますし、当時も、私自身、自戒を込めて言えば、そんな質の高い法曹かな、こういうところもありますので、なかなかこれは、一概にその質をはかるというのは大変難しいことだというふうに思っております。

 ただ、少なくとも、質の高い、そして頼りになる、一人一人が信頼できる法曹が誕生してもらうということは、これはだれもが望むところだというふうに思いますので、それに向けて、やはりよりよい制度にしなければならないのではないかというふうには思います。

河井委員 今、大変大臣は奥ゆかしく謙虚におっしゃったんですけれども、現場の意見を聞いていますと、法曹の質は下がってきているんですね。

 その幾つかの資料をきょうは持ってきたんですけれども、ただ、大原則でいいますと、下がるなんというのは論外なんですよ。法科大学院制度の生みの親たち、設計した人たちは、質、量ともに増大させると言ったんです。約束したわけですよ。質がよくなるから、六年間で千二百億円以上の国費をかけ、子供たちにもお金と時間をかけてやらせている。それが、よくなって当たり前なのに、悪くなるなんということはおかしいんですよ。

 法務省のホームページに載っておりますが、新司法試験の考査委員ヒアリング、試験を実際に考査した人、試験官たちのヒアリングがこちらにあります。ある大臣は、国民の苦情は宝の山だと言っているそうですけれども、これこそまさに宝の山ですから、ぜひしっかりと目を通していただきたいと思います。

 平成十八年の、まず公法系からいいますと、これは考査委員です。私は、全体答案の四分の一に当たる四百二十通を採点したが、憲法の論文問題で問うている最も核心的な問題をきちんととらえ、論じている答案が一通もなかった。

 行政法。結果的には上の方のレベルの答案はほとんどなかった。下の方に関して言えば、一応書けているなというのがかなりあるという印象である。もちろん、それぐらいのレベルで果たしてよいかというのはまた別個の問題である。

 予想よりよかったとか、法科大学院教育の成果があらわれているといった肯定的な印象を述べた委員からも、問題点を把握してきちんと書いている答案はほんの一握りにすぎない、できのいい答案はそれほど多くないという指摘がなされていた。

 法学既修者については基礎的なことは学部段階でできているべきである。法科大学院の授業では、それを前提にして応用力を高めるという教育になってくると思われるが、実際に私どもの法科大学院でソクラテス・メソッドで授業をやっても、意外と基本的なことは知らないわけである。

 ソクラテス・メソッドという言葉が出てきましたけれども、御存じでしょうか。もうこれは、ソクラテスさんが聞いたら泣いて怒るような話ですね。つまり、古代ギリシャのあのソクラテスと弟子たちが行ったような問答を法科大学院でやります、そういう理想というか、現実離れした、それがソクラテス・メソッドなんですよ。それでやろうとしても、そこまでの基礎的な力が全くついていないという話であります。

 だから、これは司法試験の受験者ですから、法科大学院は当然修了しているわけです。基礎的なレベルを疑うような答案もかなりあった。これでよく論文まで来たなというのがあって、何よりも法科大学院の修了認定について厳格さを求めたいと思った。そういう意見がたくさん出てくるんですね。

 そうしましたら、こういう意見が出てくると思います。いや、中にはいい論文もあるじゃないか、優秀な子たちもいるじゃないかということが出てきますけれども、この理屈はおかしいんです。なぜならば、千葉大臣のように、学部を出て、旧制度のもとで自分で頑張って、何年勉強されたかは存じ上げませんが、御自分で頑張って独力で合格される、そういう優秀層は今でもいるんですよ。だから、その子たちは、別に法科大学院に行っても行かなくても司法試験に合格する。それが、繰り返しますけれども、国家によって三年間から二年間、義務で行かなくちゃいけない、そういう状況になってきているというのが私はおかしいのではないか。だから、優秀層がいるということは全く理由にならない。

 今のは平成十八年、十九年ですけれども、最近の二十年の公法系ではこんなことが言われているんですね。もう制度ができて時間がたっていますけれども、誤字脱字、判読不能な文字、意味のわからない文章などが多く見られた。法的な能力以前の問題として、他人に読まれる文章であることを意識して、客観的な立場で自分の文章を見て修正する習慣を身につける必要があると思う。この点は法律家、実務家として命の部分であり、そこがなぜできていないのかということを考えさせられたなんという指摘もあります。これはぜひごらんいただきたい。

 関連でいいますと、考査委員の採点実感というのは、極めて現場の意見なんですよ。これは当然ホームページで公開されます。ですから、本当はもっと言いたいんですよ。随分これは穏やかにしている。それが、実は平成二十一年から、今までのような意見を書き連ねるということから形式が変わりまして、役所が編さんするようになりまして、全然生きた意見が従来と比べて入ってこないようになってしまったというのは残念だということだけ指摘をさせていただきたいと思います。

 そういうふうな、質の担保、厳格な修了認定を前提に受験資格を独占してきたのに、その効果が全く上がってきていない。この点、今のヒアリング、採点実感、お聞きになっていて、何かお考えがありましたら、大臣、お聞かせいただきたいと思います。

千葉国務大臣 採点実感につきましては、私も、すべてではありませんけれども、指摘をされていることについて、いろいろと考えさせられるところがあるのは確かでございます。

 そういう状況も踏まえて、確かに、もう変えるときだというお話ではございますけれども、ほかにもいろいろな、当初の理念から乖離をしているような、そういう問題もございます。あるいは効果が非常に上がっているという部分もあるというふうに思います。

 そういうことも含めて、やはり早急に検証させていただいて、そして方向性を、きちっとした、政府全体として出していくということが必要になるのではないかというふうに思います。

河井委員 そういった法科大学院のもう寒くなるような教育の質の低下、何とかしなきゃいけないということで、文科省が中心となって、いわゆるコアカリキュラムなるものが中教審の場を中心として作成が進められています。

 このコアカリキュラムにつきましても私はいろいろな意見を持っておりまして、まず、コアカリキュラムというものは一体何なのか、その基本的な性格が、関係者間によっても意見が違うし、性格そのものが不明なので、いまだに議論が百出している。

 ぜひわかりやすく、鈴木副大臣、コアカリというのは一体何なのかということについてお答えください。

鈴木副大臣 お答えを申し上げます。

 委員御承知のように、コアカリキュラムというのは、法科大学院以外にももう既にいろいろ先行している部分がございます。

 端的に申し上げますと、要するに、法科大学院の場合では、すべての法科大学院において共通的に、かつ必要最小限のミニマムスタンダードということでありまして、これはもう最低限やってください、その上に、あとはそれぞれの法科大学院の理念あるいは創意工夫で充実をさせてほしい、こういうものがコアカリキュラムであるというふうに理解をし、そのように御説明をしているところでございます。

河井委員 ということは、コアカリキュラムというのは、いわば最低限の、学習指導要領的なものなんですか、それとも司法試験の出題範囲をそこで画するものなのか、あるいは司法試験も学校も縛らない、単なるお勧め、参考程度なのか。この三種類のいろいろな性格の意見があるわけですよ。

 今の副大臣のお答えだと、最低限度の、学習指導要領的なものだと受けとめてよろしいんでしょうか。

鈴木副大臣 学習指導要領的というものが何を指すかというのはいろいろな議論がありますが、今、現行学習指導要領も最低基準性が明確にされておりますので、繰り返しになりますけれども、最低必要なスタンダードということでございますので、今の分類で申し上げると、第一分類に近いのかなということでございます。

河井委員 この点は、僕は実は法科大学院制度の理念にかかわる重要な点だと思っていまして、コアカリを政府が総抱えでつくってあげなきゃいけないということ自体が、法科大学院の教員の皆さんが、自分たちの力で中身のある授業を行う力がありませんよと自白しているみたいなものだ、私はそのように思っているんですよ。

 というのは、このコアカリキュラムというのは、これは法科大学院の要領に載っていますけれども、法律知識だけではなくて、その考え方や使い方などにまで及ぶ高度な教育を行うところが法科大学院だと言われているんです。だからこそ、受験予備校ではなく法科大学院で教えるべきだという理屈なんですね。ところが、小学校の学習指導要領とまでは言いませんけれども、最低限の、学習指導要領的なことまで何で教えてあげなきゃいけないのか。

 これは大学院ですよ、大学院。学部を出て大学院。しかも、高邁な理想を持ってつくり上げるはずだった法科大学院が、数年たたないうちに、このコアカリキュラムができないと、これに沿わないと教えることができない。私は、これは理念の放棄である。だって、独自な法科大学院、独自性、多様性をつくりましょうということで、夢を見て法科大学院という仕組みはつくられたわけですね。

 私は、コアカリというのは、例えて言えば、もう家が完全に崩れつつあるのに、ちょっとした突っかい棒か何かをする、それでまたお金と時間をかけてやっていく。私は、役所のあしき発想だ、こう感じざるを得ません。副大臣としてのお考えがありましたら、お聞かせください。

鈴木副大臣 もちろん、コアカリキュラムに基づいてそれぞれの創意工夫をしていただくというのは当然なわけでありますが、私は、専門職の教育、それを担っている専門職大学院の教育については、モデル・コア・カリキュラム的なものがあってしかるべきだと思っております。

 現に、委員るる御指摘のように、一部の法科大学院においては相当問題があるわけでありまして、中教審においても、一月二十二日に、改善の努力の継続が必要なところが十二校、大幅な改善が必要なところが十四校、これは新政権になって私どものリーダーシップできちっと言わせていただきましたし、それから、法科大学院の定数も四千人台まで減らさせていただきました。

 そういうことはやるわけでありますが、モデル・コア・カリキュラムは、多くの専門職、例えば、まず医学、歯学、薬学についてこうしたものがつくられておりますし、それから、看護あるいは獣医、こういったところについても、そうしたライセンスを持って、かつ独占的に仕事をするという部分についてはモデル・コア・カリキュラムをつくっておりますので、それに準ずる扱いをすべきだと私は思っております。

 それ以外にも、工学とかITとかMOTとか会計とかいう部分についても、例えばMOTとか会計については策定をされておりますので、繰り返しになりますけれども、専門職についてはモデル・コア・カリキュラムをミニマムスタンダードとしてつくっていくという方向性、その中で法科大学院もとらえていってよいのではないかなというふうに思っております。

河井委員 コアカリキュラムは、もともとアメリカ生まれで、確かに副大臣おっしゃるとおり、日本では医学教育などで導入されている。

 ただ、医師と法曹を同列に論じること自体が、その求められる能力が私は全く違うと考えていまして、医師の国家試験というのは、基本的には、専らその人が持っているさまざまな医学的な知識を問う試験である。法曹の司法試験は違うんです。それは、基本的な知識に加えて、法の運用とか考え方そのものを今の司法試験では問うているわけでありまして、私は、その二つは同列ではない。

 またいろいろと議論する場もあると思いますので、それぐらいにしたいと思いますけれども、こういうさまざまな問題を抱えている法科大学院を中心としたこの養成制度、お金をかけないで一瞬にして改革できる道がある。

 これは、私が副大臣のときに何度言っても本当に、私は役所の中でははねっ返り副大臣だと思われたと思うんですけれども、要するに、受験資格制限を撤廃すればいいんです。だれでも司法試験を受けられるようにすればいい。そうしたら、お金がなくても、苦学生でも時間をかけなくて受けることができる。と言うと、予備試験がそうですよと恐らく言われるんでしょうけれども、今時点での予備試験の制度設計は、残念ながらそうはなっていない。

 私は、根本的には、国費をかけないでできるのは受験資格制限の撤廃。別に私は法科大学院が憎くて言っているんじゃなくて、法科大学院をぶっつぶせなんて言っているんじゃないんですよ。受験資格制限を撤廃して、だれでも受けられるようになって、それでも金をかけて生き残れる法科大学院は必ずあるわけです。そうでないところに無駄に、それこそ私は、民主党政権なんだから事業仕分けをもっとやってほしい、何でこの部分、もっと事業仕分けをしないんだと、いつも野党の片隅からそのように思っているんですけれども、私は、受験資格制限の撤廃が一番早いし、効果的だというふうに考えております。

 大臣の御所見がありましたらお聞かせをください。

千葉国務大臣 私も、先ほどから申し上げているように、法科大学院等々無関係なときでございましたので、全くそういう条件なしに司法試験を受けられる、そういう前提でなった人間でございますので、それも確かに一つのやり方かなというふうには感じたりはいたします。

 ただ、この法科大学院、法曹養成制度、これ自体が、やはりそのときも、長い間予備校に通ったり、そういうことの弊害ということをもって、そうではない法曹養成制度、こういうものとして確立をされたという経緯もございます。

 そういう意味では、この基本的なところをまずは大事にしながら、しかし、先ほどから御指摘があるような問題点をもう一度改めてきちっと検証しながら、これからの法曹養成制度というものに生かしていく、こういうことを私は考えていきたいというふうに思っております。

河井委員 ずっと議論をしてきました。きょうは人口のところまで立ち入ることが時間的にできませんでしたので、また別の機会にしたいと思うんです。

 私は、法曹養成も含めて、そもそも改革というのはよりよい社会を実現するための手段であって、それ自体が目的であってはいけない、改革自体が自己目的化することは本末転倒であり、よって、制度をつくり上げた時点で想像できなかった問題点が判明した場合には、それらを率直に認め、対処していくことが当然の義務であり、それがむしろ真の改革だと私は信じております、いい答弁だと思うんですけれども、自分で言うしかないんですけれども、おととしの五月二十三日、衆議院の法務委員会、河井副大臣の答弁、すばらしいと思いますね。だから、本来、法科大学院とはよりよい法曹を養成するために設立されたものであって、ゆめゆめ法科大学院を存続させること自体が司法制度改革の目的に陥ることのないように私たちは意識をしっかり持つべきである。

 やはり、私は政策の失敗を認めなきゃいけないと思います。そろそろ時間がないですから……(発言する者あり)それは幾らでも議論しますよ。だから、それは自分たちの政権のときのことも含めて、今私はあえて言っているわけですよ。政策の失敗をきちんと認めなきゃいけない。そして同時に、だから、今、実際責任を持って担っているのはあなたたちですから。改革は振り返りながらやればよくて、誤りは直ちに直さなきゃいけない。

 だから、最後に私は、大臣にぜひ約束してもらいたい。きょうは、ほんの司法制度改革のごくごく一部についてだけ申し上げました。約束してもらいたいのは、改革のための改革ではなくて、国民のためになる改革をこれからもやっていただきたい。いかがですか。

千葉国務大臣 当然のことだと思います。

 改革のための改革、それがそうであってはならないわけでして、私も国民の目線でしっかりと改革の道を進めてまいりたいと思っております。

河井委員 その言葉、しっかりと受けとめさせていただきましたので、実際の行動でぜひ国民にお示しをいただきたいと思います。

 最後になりますけれども、時間不足で聞けませんでしたが、両副大臣が主宰していらっしゃるワーキングチーム、できたら一度私を呼んでくださいね、いろいろな話をさせていただきますので。

 やはり、役所というのは、いいことしか政務には入れない傾向があります。法科大学院も、実際に十四校視察をいたしました。その行き先も全部私は自分で決めました。役所に任せていては、それは見たくないところは見たくない。やはり誤りをしっかり見詰める勇気が政治家には必要だ、これはユリウス・カエサルの言葉ですけれども、最後にそれを申し上げて、たっぷりと材料がありますので、またこれからも質問をさせていただきたいと存じます。

 ありがとうございます。

滝委員長 次に、下村博文君。

下村委員 自民党の下村博文です。

 きょうは、法務委員会で質問の時間をつくっていただきまして、ありがとうございます。感謝申し上げたいと思います。

 まず、千葉法務大臣に、死刑執行についてお聞きしたいというふうに思います。

 現在、死刑が確定している受刑者が百九人いるというふうに聞いておりますが、大臣、就任されてから約七カ月近くなりますね。死刑執行、サインを既にされておられるのでしょうか。お聞きします。

千葉国務大臣 この問題につきましては、かねてより申し上げておりますが、私も、みずからの職務、職責、十分に承知を、そして、それを重く受けとめて対処をしなければと考えているところでございます。

 この間、歴代にも、その執行について、事前にサインをした、しない、こういうことは申し上げるべきものではないということであったかというふうに思いますが、私も、そういう重い責務を負っているということをきちっと念頭に置きまして対処をする、これだけ申し上げたいと思います。

下村委員 いや、全然答弁になっていないですね。

 別のことからお聞きしたいと思うんですが、今回、中国政府が、麻薬密輸の罪によって死刑が確定した日本人四名、これをわずか四日間で執行したということでございます。

 これについて、法務大臣としてはどのような見解をお持ちなのか、お聞きしたいと思います。

千葉国務大臣 これは、それぞれの国が持っている制度でございます刑事司法制度ということになりますので、それについて私が論評するということは、いささかいかがかというふうに思っております。

 ただ、この間、制度といいましょうか、刑事手続、それから刑罰の範囲ですね、死刑適用の範囲、こういうものが、やはり多くの国際的な大体の形、あるいは日本の制度、こういうものとは大分違いがあるのではないかということは感じております。そういう意味では、日本であればそういうことがないけれども、中国という国の制度の中では大変幅広く死刑というものが適用される、こういうことを多くの皆さんが感じておられるのではないかというふうに思います。

 そういう意味で、大変、反発といいましょうか、そういうことの心情が私は多くの皆さんの中にあるのではないかなというふうに感じております。

下村委員 いや、私は千葉法務大臣の見解をお聞きしているんですよ、ほかの方がどう思っているかということじゃなくて。

 ちょっと千葉さん、法務大臣になってから発言が余りにも慎重過ぎて、先ほどの死刑執行のサインについても、千葉さんらしくない法務大臣としての御発言であるというふうに私は思いましたが、千葉法務大臣のお仲間でもあると思いますが、日弁連が、中国政府によるさらなる邦人三名に対する死刑執行に対するコメントというのを出しているんですね。この中で、

 当連合会は、本年三月末に中国政府から日本政府への死刑執行通告がなされて以降、死刑を未然に防ぐための明確な要望を行うよう、日本政府に対して求めてきた。そして、四月六日に一人目の死刑執行がなされた際には、重ねて、さらなる死刑執行を防ぐため明確な要望を行うよう、日本政府に強く要請を行ってきた。

 こうした度重なる要請にもかかわらず、日本政府は、日本国民の生命に対する権利を守るための明確な要望をついに行うことなく、四名の尊い人命が失われるに至ったことは、極めて遺憾である。

こういうコメントを出されているわけですね。

 さらに、私は、これ以降についてのコメントはもっともだというふうに、私もこのことについては共感を感じているんですが、こういうふうに続けてコメントをされています。

 本件のような薬物犯罪に対する死刑の適用が、国際人権法上認められないことは、先の声明で述べたとおりである。それに加えて、国連の拷問等に関する特別報告者は、中国に関する報告書において、死刑の適用範囲を縮小すること、すなわち経済犯罪や非暴力犯罪に対する死刑を廃止することを勧告している。また中国は、一九八八年に拷問等禁止条約を批准しているが、国連拷問禁止委員会は中国政府に対し、死刑の適用を制限するために法の見直しを行うべきであると勧告している。

 中国政府は、自ら加入する人権条約上の義務を果たしていないのであって、これに対する日本政府の意見表明が内政干渉にあたらないことは、国連人権理事会における普遍的定期的審査をみても明らかである。

これは、まさにこのとおりの見解だというふうに思うんですね。

 こういうふうなことの中で、私は、先ほどのコメント、日本政府の法務の責任者としての法務大臣のコメントとしてはいかがなものかと思いますが、日弁連のこの意見表明について、あるいは、国際人権法の中での、国連における拷問禁止委員会の中国政府に対する勧告について、どのようにお考えになりますか。

    〔委員長退席、樋高委員長代理着席〕

千葉国務大臣 国際機関が大変厳しい指摘をされるということは、私も承知をしておりますし、そして、それらの条約の観点から見て、国際社会から厳しく指摘がされるというのは、これは当然あり得ることだというふうに思います。

 正直申し上げまして、逆に日本にも、いろいろな問題について国際機関からも指摘がされているということは幾つかあるわけでございますので、私は、国際社会が監視をしていく、そして、さまざまな、国際的な流れからいっての指摘をしていくということは、ごく当然のことであろうというふうに思いますし、そこは、それぞれの国が真摯に受けとめて対処していくということが必要なのではないかというふうに思っております。

下村委員 いや、それも答弁がちょっと違うんじゃないですかね。

 これは今回、日本人なわけですよ。国連のスタンスというよりは、日本人が、麻薬密輸という、我が国においては死刑対象にならない罪、これによって死刑対象になったわけですから、日本国内においては死刑にならない。中国には中国の法があるでしょうけれども、しかし、我が国の邦人が死刑されたという点から、それは、その程度の答弁では、日本国の法務大臣としていかがなものですか。

千葉国務大臣 日本の邦人を、さまざまな形できちっと権利を守り、そして救済をするということは、これは当然のことだというふうに思っております。それは、国際的な基準にのっとり、あるいはそれぞれの持つ法制度にのっとって権利をきちっと守っていくということ、これは当然のことだというふうに思っております。

 逆に、日本の中でも、外国の皆さんに対するさまざまな法適用ということもございますので、それは、それぞれが、国際的な大きな基準といいましょうか、それに基づいて対応をするということであろうというふうに思います。

 それが、例えば法を逸脱しているというようなことになりますれば、それはもちろん、きちっとした抗議をする、あるいはまた、その違法をただすということは必要であろうというふうに思いますけれども、それぞれの持つ基本的な法制度にのっとっている、そういうことに対して、懸念を示す、あるいは何とかそれを回避してほしいということはお願いをさせていただくということになろうかというふうに思いますけれども、それを変えさせるというようなことにはなかなか、それぞれの国自体の問題でございますので、対処をするというのはなかなか難しいことだというふうに思います。

 ただ、申し上げますように、やはり、法にのっとって権利を行使し、そして自分の権利を守るということについてきちっと申し上げるというのは、当然のことだというふうに思います。

    〔樋高委員長代理退席、委員長着席〕

下村委員 菅副総理が、私とは大分立場は違うんですが、その私からすると、菅副総理でさえ、四月三日、北京に行ったときに、温家宝首相と会談しているんですね、このとき、この問題について、日本の基準からすると罰則が厳しいと思う人が多いと述べて、死刑執行の判断に異を唱えた。これは明確に温家宝首相に対しても伝えているんですね。これは、やはり日本国の法務大臣として、邦人がほかの国で処罰を受けるということについて、それは異を挟む云々ではありませんが、しかし、我が国の法基準とそれから国際的な基準からして、いかがなものかという程度のことをこれは発言していただかないと、邦人に対して日本国が守るときは徹底して守るというのが国家の役割ですから、私は、それが問われるのではないかというふうに思います。

 ただ、きょうはちょっとこれがメーンではありませんので、その問題提起をさせていただきたいと思います。

 きょうは、共同親権と面会交流について御質問させていただきたいと思います。

 これは、千葉法務大臣と一緒に超党派の国会議員の勉強会をずっとさせていただいている中、このことについては問題意識は共有をさせていただいているというふうに思いますので、これはぜひ前向きに、きょう、踏み込んだ答弁を私はぜひ期待を申し上げたいというふうに思います。

 私は、この共同親権と面会交流について、子供の視点から問題提起をさせていただきたいと思いまして、きょうはお手元に資料を配付させていただきました。

 この資料をごらんになっていただきたいというふうに思うんですが、まず資料一、これは「貧困率の国際比較」でありますけれども、我が国は、OECD三十カ国の中で、相対的貧困率が二十七番目。子供の貧困率は十九番目ですが、特に親が一人の家庭においては貧困率が五八・七で三十番、一番びりなわけですね。これは数年前のイメージからすると、本当にもう考えられないような我が国の状況であるというふうに思います。

 さらに、資料の二を見ていただきたいというふうに思うんですが、これは「母子世帯・父子世帯の状況」でありますが、一人親世帯といっても、実際は母子家庭が九割近くあるわけですね。この中で、母子世帯の場合には、常用雇用している母親はわずか四二・五%ですので、平均年間収入が二百十三万円。これは、全世帯の平均年収が五百六十四万、この全世帯の平均年収の半分以下が貧困世帯と言われますので、平均ではありますけれども、母子世帯はほぼ全世帯が貧困世帯ということになるわけで、結果的にこれが三十カ国の中で最下位、こういう数字になるわけです。

 それから、資料の三を見ていただきたいと思うんですが、これは「婚姻及び離婚件数・率の推移」。一九七五年から二〇〇八年までの中で、特に二〇〇〇年になってから、二〇〇〇年が婚姻件数が七十九万八千百三十八件で、離婚件数が二十六万四千二百四十六件。二〇〇五年にしても、直近の二〇〇八年、婚姻件数七十二万六千百六件のうち、離婚件数が二十五万一千百三十六件ということですね。三組に一組ぐらいが二〇〇〇年代に入ってから離婚をしている、こういう状況なわけです。

 さらに、この中で、離婚件数が約二十五万一千件あるわけですけれども、子供がある夫婦の離婚というのが、このデータには出ておりませんが、このうち十四万四千組あります。そのうち、子供の延べ数でいうと、二十四万五千人が子供の延べ数になります。ですから、子供のこのときの出生率が百九万人ですので、子供の四・五人に一人が成人するまでに親が離婚をしている、今こういう我が国の状況なわけですね。これがこの貧困問題とも深くかかわりを持っているというふうに思います。

 一方、この貧困問題のもう一つとして、我が国の養育費。大体、今の数字のように母子家庭が多いわけですね。ですから、別れた元夫といいますか、夫婦は別れたら赤の他人ですが、親子は永遠に親子なわけですね。ですから、父親からの養育費、子供が成人するまでは、これは子供からすれば受給をするのは当然なことだと思うんですが、残念ながら、直近のデータでは一九%。それが、アメリカでは五〇%、それからヨーロッパ諸国では五〇%から七五%ぐらいは養育費が支払われているということで、我が国においては一九%ですから、ほかの国に比べても大変厳しい、それがこの子供の家庭における貧困率を世界で最下位にしているという要因の一つにもなっているのではないかと思います。もちろん、その母親、女性の職場をどう確保するかという雇用の問題も大きな課題としてありますが、子供の立場から見ると、この養育費の問題があります。

 我が国において、この一九%をほかの国並みに上げる方法はないのかということがまずは問われると思うんですけれども、これは、なぜ日本が少ないのか、また、この養育費の受給を上げる方法というのは考えられないのか、これについて御意見をお聞きしたいと思います。

千葉国務大臣 先生御指摘のとおり、我が国では、子供に対して、監護していない親からの養育費の支払い、これが大変低いということ、大変残念ですし、子供にとっても大変つらい問題だというふうに思っております。

 なぜこういうことになっているかということ、これも一概にはなかなか言えませんけれども、よく指摘をされることは、養育費が支払われない理由として、まず、離婚の際、やはり非常に感情的な対立等があるものですから、養育費について十分にお互い冷静に取り決めたり、あるいは考えたりする、そういう状況がなかなかできない、こういう問題。それから、支払い能力。今、貧困率のお話がございましたけれども、離婚した後の親の側にもなかなかその支払い能力がない、こういう問題。それから、適切な養育費の支払いということが、子供の福祉、そしてまた、親にとっては、離婚をしようとも、直接監護者になっていないとしても、それが当然の責任なんだという認識、こういうことがまだまだ十分に理解をされていないということがあるのではないか、こういうふうに思います。

 ただ、本当に養育費が支払われないということは、私も大変心配をしていることでございます。

 これまでも、確かに、民事執行法の改正などによりまして、例えば、養育費に係る定期金債権について、弁済期の到来していない将来分の債権も一括して差し押さえをすることができるとか、あるいは、給料債権等の差し押さえ禁止の範囲が四分の三から二分の一に緩和をされたというようなこと、それから間接強制制度も使うことができる、こういうようなことはされているんですけれども、それだけで養育費の支払いはなかなか上がっていないというのが実情だというふうに思います。

 ぜひ私も、制度のあり方を含めて、養育費の取り決めをまずきちっと行う、履行の確保についても今のようなことも活用しながら促進をしていくということも当然していかなければいけませんが、さらに、いろいろな諸外国の制度なども十分に勉強しながら、養育費がきちっと子供のために支払われる、そして子供に大変厳しい貧困をもたらさない、やはりこういうことを考えていかなければならないというふうに思って、今勉強もさせていただいているところでございます。

下村委員 我が国は子供にとって幸せな社会システムになっているかというと、残念ながら、時代の大きな変化の中で、例えば家族制度なんかも、核家族化、あるいはその制度そのものが崩壊しつつある中で、それに対して離婚を禁止するということはできないわけですけれども、しかし、そういう家庭においても、新たな社会的なフォローアップをしながら、子供の福祉、子供の幸せ、子供を健全に育成していくような新たな社会システムを時代の変化に対応してどうつくっていくかということがやはり問われてくるというふうに思うんですね。

 ですから、今のお話も、養育費については確かにそれまでも履行率が大変低かったということで、平成十五年、それから十六年の民事執行法の改正によって、養育費についての強制執行の特例や間接強制制度を導入したわけです。しかし、にもかかわらず、今申し上げたように、平成十八年度において、離婚した父親から現在も養育費を受けている母子世帯の割合は一九・〇%。

 ですから、これは養育費だけの問題ではなくて、単独親権、養育をするのであれば、これは同時に、やはり永遠に親子は親子ですから、子供が成人するまでの間は精神的にも父親がフォローするという意味での例えば面談、それからあとは、ほかの国がほとんど取り入れられておりますけれども、共同親権とか、そういう時代の変化に対応して、各国がそのような法改正をしているわけですね。

 ですから、我が国においても、子供が健全に育つための対応として、やはり親はずっと親であってほしいという中で法律改正を考えていかなければならない、そういう時期に来ているのではないかというふうに思うんですね。

 その中で、今、国際的には、非常にその部分が日本はおくれているのではないかという批判がある中で、例えばハーグ条約というのがあるわけですけれども、これは、子を不法な連れ去りにより生ずる有害な効果から保護する、面接権の保障を確保する、つまり、国際的な子の連れ去りは親の監護権あるいは面会交流の侵害になるということで、このハーグ条約について、ほかの国において締結されているのにもかかわらず、日本は締結されていないというような問題もあります。

 そういう中で、ほかの国から見て、つまり、子供の問題というのは国際的な問題にも今なっているし、同時に、国内のそういう貧困の問題もあるわけですね。その国際的な問題がある中で、今、日本は、子供の連れ去りについて直近においてどんな問題があるというふうに外務省として認識されているのか、お聞きをしたいというふうに思います。

西村大臣政務官 お答えいたします。

 国際的な子供の親権の移動ということについてのお問い合わせでございますが、近年、国際結婚とその破綻がふえており、その中で、日本人女性が、外国からみずからの子を配偶者または元配偶者に無断で日本に連れ帰る事例が増加をしており、外国政府から問題提起をされているところでございます。また、日本から諸外国への子の連れ去りに関する事案についても、外務省に対する支援要請や問い合わせが増加しております。

 欧米諸国政府のハイレベルからは、子を移動前の居住国に返還するための仕組みを定めるハーグ条約の締結について申し入れがなされており、本件問題についてはアメリカ議会の関心も非常に高く、下院で、ハーグ条約を締結していない日本を含む各国に対して、その締結を求める決議が採択をされております。

 以上です。

下村委員 今、ハーグ条約を締結している国が八十二カ国ですね。日本は締結をしていない。これは現在なぜ締結をしていないのか、その理由についていかがですか。

西村大臣政務官 なぜということに対する直接的なお答えはないのでありますけれども、私ども、政権担当してまだ七カ月でございますので、今ようやく、この締結の可能性については真剣に検討してきているというところでございます。

 条約の締結に当たっては、さまざま検討を十分に行わなければならない課題がありますところ、外務省としては、それに対してできるだけ早く結論が出せるように、法務省を初めとする関係省庁とともに協力をして、この作業を加速化させていきたいと考えております。

下村委員 別に鳩山政権を責めているわけではなくて、我々の政権のときからの課題でもあって、これは我が国において不作為の作為であってはならないわけで、現実問題として、特に近年、国際結婚がふえていて、その中で破綻をしてしまったという夫婦もふえている中で、子供の連れ去り問題というのが、より国際的な大きな問題になっているというところから、早目に対応していく時期に今来ているのではないかと思うんですね。

 その中で、日本においてはほとんど意識されていないんですが、子の連れ去りが犯罪とされて刑罰刑が科せられる、そういう国があるというふうに聞いておりますけれども、どんな国があるか、また具体的にどういう刑罰刑があるのか、おわかりであればお答えいただきたいと思います。

西村大臣政務官 おっしゃるとおり、欧米諸国の中では、一方の親が他方の親に無断で子供を連れ去る行為が犯罪とされる可能性がある国があると承知をしております。

 具体的にどの国かということでありますけれども、例えばアメリカ、カナダにおいては、そういった可能性のある国であると申し上げることができると思います。

 そしてまた、その刑罰でありますけれども、これも各国の法制度、そしてその解釈、運用の問題でありますので、日本政府として一概にお答えをすることは困難でございます。

下村委員 一番典型的な国の事例、おわかりになりますか。

 これは外務省からいただいた、例えばカナダの事例ですけれども、領事情報として、在カナダ日本国大使館が出している資料があるんですね。この中に、

  カナダや米国の国内法では、父母のいずれもが親権または監護権を有する場合に、または、離婚後も子どもの親権を共同で保有する場合、一方の親が他方の親の同意を得ずに子どもを連れ去る行為は、重大な犯罪(実子誘拐罪)とされています。

  例えば、カナダに住んでいる日本人の親が、他方の親の同意を得ないで子どもを日本に一方的に連れて帰ると、たとえ実の親であってもカナダの刑法に違反することとなり、これらの国に再渡航した際に犯罪被疑者として逮捕される場合がありますし、実際に、逮捕されるケースが発生しています。

ということで、邦人に対してこのような領事情報を提供しているわけですね。

 ですから、犯罪を犯しているつもりはないけれども、結果的には、もし、またカナダに戻った場合には、我が子を誘拐したということでそこで逮捕されてしまう、そういうことがやはりあるわけですね。

 ですから、これは本人の問題というよりは、やはり国際ルールは国際ルールですから、先ほどの中国の例もそうですけれども、その国の法律が決まっているんだからそれはもうしようがないという話じゃなくて、特に邦人問題というのは、日本国政府としてどんなバックアップができるか、それが明らかに我が国から見たら不当であれば、もちろん、抗議をしながら改善を求めることは当然ですけれども、ただ、このような子供の親権については、ある意味では世界における共通コンセンサスが成り立ちつつある中で、日本だけがその部分の法的な整備がおくれているとしたら、それはそこの不幸に陥っている方々に対してどうフォローアップするかということこそが、やはり問われるのではないかというふうに思うんですね。

 その中で、今、外務省と法務省との間で、このハーグ条約の締結についての検討を議論しているというふうにお聞きしておりますが、どのような議論をしているのか、どのような点が問題となっているのか、具体的にお聞きしたいと思います。

西村大臣政務官 御指摘のとおり、今まさに外務省と法務省で議論をスタートさせているところでございますし、また、必要によって関係省庁交えての協議も必要になってくるかと思っております。

 この条約の締結に当たりましては、先ほど申し上げました、本当にいろいろ検討しなければならない項目がございまして、今その項目について両省の間で論点整理から始めているところであります。恐らく最も大きな問題は、例えば、我が国の家族関係の法制度との整合性、そしてまた中央当局の指定、こういったところが主たる争点でありますけれども、そもそもこのことからして、いろいろ、解釈上どういう解釈にするのかということも作業しながらでありますので、ここは協議を密にしてやってきているところでございます。

下村委員 今の答弁は、抽象的でよくわからないんですけれども。

 大臣、事ほどさように、実態がよくわからないという部分があると思います。しかし、先ほどの数字で申し上げましたように、毎年相当数の子供たちが、離婚によって、成人するまでそういうような境遇に陥っている。その中で、実際に、一たん離婚すると、日本は単独親権ですから、一緒に暮らしている親とはもちろん生活していますけれども、別々になった親とはほとんど会えないという子供がたくさんふえているんですね。それで、超党派の勉強会の中で、親子面談、面談交流が法的な整備を含めてできないかという方々との勉強会をしてきたわけですね。

 これは、恐らく百万人、二百万人ぐらいおられるのではないかと思います。しかし、それは今まで、離婚を含めて、個々の人たちの個人的な問題である、親子の交流ができない云々も自分が悪いというふうな、ある意味では自分自身に対する罪の意識等を持っている中で、なかなか外へ出して発言できなかった、表明できなかった。しかし、実はそういう人が、百万人、二百万人、子供の立場から見てもいるかもしれない、こういう我が国の状況があるのではないかと思うんですね。

 ですから、この辺、日本の現状は今どうなっているのか。会えないという訴えが実際にマジョリティーにはなっていないかもしれないけれども、しかし、潜在的には相当の数の方々が困っておられるのではないか。また、先ほどのように、外国との関係で、国際結婚して残念ながら離婚するということになって、そのときになって、実は子供を日本に連れて帰ったというのが犯罪だったということで大変な目に遭っている、あるいはそもそも子供にも会うことができないというような方々の事例というのは、これは枚挙にいとまなくあるわけですね。

 これを一度、日本政府としてきちっと実態調査をまずすべきではないかというふうに思いますが、これについてはいかがでしょうか。

千葉国務大臣 御指摘のとおりに、多分表にはなかなか出にくい、しかし、潜在的に、子供さんに会うことができないとか、国際結婚のもとで離婚等されて、それによって大変なトラブルや、あるいは法制度の違いによって先ほどのような犯罪扱いをされるというような事例、私もかなりの数に上るのではないかというふうに思います。

 いろいろな形で直接意見を聴取させていただいたり、あるいはちょうだいするということはできるのですけれども、実態調査というのを一体どういう形で、大変プライバシーにかかわることですし、それから、事実上の離婚状態とかあるいは法的な離婚、さまざまな実情があるというふうに思いますので、そういうものをどういう形で調査するかというのは、なかなかセンシティブなところもあるというふうに思います。そういう意味では、一般的に、そういう離婚された皆さんにどうですかと聞くわけにもなかなかいかないと思いますので。

 ただ、実情を把握するということはやはり大切なことなので、先生にもいろいろお知恵をもしおかしいただければ、そういうことも踏まえて、お声をできるだけ、潜んでいるものを聞かせていただく、あるいはどのようなお困りのことがあるのか、こういうことを私たちもしっかりと認識できるようなそういう姿勢を持って、ちょっと考えていかなければならないというふうに思っております。

下村委員 ちょっと違う角度から御質問させていただきたいと思いますが、お手元に資料四を用意していますのでごらんになっていただきたいと思います。

 これは「ハーグ条約と国際離婚 国内法整備についての対応表」という表でございます。

 例えば、連れ去りケースの中で、日本国籍の妻あるいは夫が子供をハーグ条約加盟国から連れ去る、八十二カ国が加盟しているわけですね、連れ去った場合、現状において日本それからロシアがこのハーグ条約は未批准ですけれども、もし現状のままだったら、日本政府は対応はできない。先ほどのカナダとかほかの国のように、連れ去った親は指名手配になるという国も中にはあるわけですね。

 それから、ハーグ条約を批准したということになると、返還と面会交流についての日本国内の法整備がないため対応できず、それから、条約批准と子の返還のための法改正、特別法をもしつくったら、これは子の返還のみ対応可、それから、条約批准と子の返還のための法整備、共同親権とか面会交流実現のための法整備が行われれば、対応可という表をとりあえずつくらせていただきました。

 この共同親権と面会交流という問題なんですが、これはほかの国においても、もともとは今の我が国のように単独親権だったわけですね。しかし、アメリカにおいては、一九八〇年にカリフォルニア州において共同監護法というものができて、そして、共同監護の法制化と、それから、共同親権、法的共同監護、この選択ができるようになってきた。それから、ドイツにおいては、一九八二年に単独親権そのものがドイツの基本法において違憲判決になり、一九九七年に親子関係改正法で原則共同親権に改正された。また、イギリスにおいても、一九八九年、親責任、親権ですね、これは、離婚とか別居によって消滅しない。

 こういうことで、一九八〇年代から、ほかの国々においても我が国以上に、当時、多分離婚が相当ふえてきたのではないかと思うんですね。先ほど申し上げたように、この中で、子供の立場から見て、やはり別れても親は親ですから、父親だったり母親だったりするわけですから、子供が成人するまではきちっと監護しよう、監護する場合においては、先ほどの養育費を含めた、あるいは精神的なフォローアップも含めて、面会交流もできるようにしよう、こういう法整備がされてきているところであるというふうに思います。

 もちろん、我が国においても、単独親権であっても、共同監護はできませんが、面会交流は可能ではあるわけですけれども、実際、今までの裁判の結果等を見ると、面会交流が実現されているというのは半分ぐらいしかない。それから、実際、裁判所において面会交流、つまり、別れた親と会うことができるというふうになったとしても、月に一回二時間ぐらいとか、それから、二カ月に一回が大体一般的であるけれども、しかし、なかなかそれも実際は実現されていないというのが我が国における今の状況です。外国における相当な面会というのは、隔週二泊三日で必ず監護権を持っていない親の方に子供が泊まるとか、日本から見たら、その辺についてかなり法的な強制力を持って親子交流ができるような形をとっているというところであります。

 その辺で、我が国の民法、第七百六十六条ですけれども、「離婚後の子の監護に関する事項の定め等」というものがありますね。これは、「父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者その他監護について必要な事項は、その協議で定める。」とありますが、この七百六十六条の中に面会交流というのも入れる時期に来ているのではないか、そういう法改正が問われてもいるのではないかというふうに思いますが、御見解をお聞きしたいと思います。

千葉国務大臣 御指摘のように、現行民法におきましても、離婚しても親子関係というのは決してそこで消滅するわけではございません。ただし、親権あるいは監護、実際に監護権は片方が行使をするということになります。

 ただ、今御指摘の七百六十六条第一項、子の監護について必要な事項というところに面会交流、こういうことも含まれているというふうに解釈をすることができますし、そういう定めをして面会交流を行っているという実情でございます。

 ここをもう明文化する時期ではないかという御指摘でございまして、実は今、先生にも別な面では御批判をいただいておるわけですけれども、今国会にぜひこれも含めて民法の改正というのを提案させていただければと考えておりまして、その中では、この民法七百六十六条、ここに、父または母と子との面会及びその他の交流、そして子の監護に要する費用の分担その他子の監護について必要な事項は協議で定めなければならない、こういう形で明確に面会交流が、当然、権利として子供には認められるべきなんだということをはっきりさせていきたいというふうに思っておりますので、ぜひこの面は御理解をいただければというふうに思います。

 そしてもう一つ。やはりこれを実効あらしめるためには、多分、そこをコーディネートするようなそういう体制というのも、やはり離婚後ということになりますので、なかなか親同士連絡をとってということも困難なところもあるかと思います。そういう社会的なコーディネートのような制度もあわせてやはりしっかりと組んでいかないと実効力のあるものにはならないのかな、こう思いますが、ぜひ、改正あるいは明確化させていただきたいと思いますので、よろしく御協力のほどお願いをしたいと思います。

下村委員 予算委員会で選択的夫婦別姓については意見を申し上げました。

 私は、今回の民法改正は切り分けたらいいのではないかと思うんですよ。

 まず、我が党でも、全部反対ではなくて、例えば婚姻、女性を十八歳に上げるとかというような、ほかの項目について賛成できるところが多々あるわけですね。ただ、選択的夫婦別姓については、これは明確に反対です。

 なぜかというと、先ほど申し上げたように、親子のきずなが、今、家族のきずながどんどん崩れつつあるということの中で、夫婦別姓というのは子供からすれば親子の姓が変わるということですから、自分の姓が、父親、母親、どちらかは違うということですから、あえて親子でそこまでする必要があるのかと。今、実際に困っている方々がおられれば、旧姓使用とか通称使用することによって、社会生活の中で、あるいは仕事をされる中で何ら問題点がないような形でのそういう法改正をすれば済む話であって、そもそも、本当に選択的に夫婦別姓を求めているというのは、平成十八年の内閣府の調査では七・七%の方しかおられないんですね。

 ですから、便宜的に通称使用することによって、実際お困りの方がおられるのであれば、クリアする部分ができるというふうに思います。それはちょっとまた別のとき、重要な問題ですから、きょうは時間がありませんのでこれ以上は議論は控えたいと思います。

 ただ、大臣、そもそも予算委員会のときでもそうでしたが、これは閣法はもう不可能ですよね、明確に亀井大臣は反対されているわけですから。ですから、今国会において閣法で出されるということは不可能なことなので、それにもかかわらず閣法で出されるということであれば、これは切り分けて、例えば今の七百六十六条の改正等を含めて、ほかの部分でコンセンサスの得られるところだけ出されたらどうですか。それは賛成できると思いますが、いかがですか。

千葉国務大臣 ありがとうございます。

 下村委員とも本当に共通して取り組みをさせていただいてきたという問題もあり、ぜひ一緒に実現すべきものを実現してまいりたいというふうに思います。

 民法については、今、最終的にもまだまだ努力をさせていただいているところでございますので、面会交流のことも含め、そして、確かに見解を異にするところは先生ともあるかもしれませんが、ぜひ、民法全体、これからの子供のために、あるいは、本当に家族、多様な、いろいろな形でみんなが幸せになれるような、そういう気持ちを込めて今まとめをしておるところでございますので、そういう中で、ぜひ、親子の面会交流も実現を目指して引き続いて頑張っていきたいというふうに思っております。

下村委員 何か、わかったような、わからないような答弁ですけれども、子供の視点から、子供にとっての社会福祉とは何か、子供にとってより幸せに生きるためのこの国の法改正は何かというスタンスからぜひ考えていっていただきたいというふうに思うんですね。

 ちょっと時間の関係で、また戻るかもしれませんが、次の項目に移りますが、あわせて、共同親権についてお聞きしたいと思います。

 共同親権は、我が国においては単独親権なわけですね。民法八百十九条、ここに、「父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。」とあるわけです。先ほど申し上げましたように、子の福祉から考えれば、中には、すべてがすべてうまくいくとは限りませんが、協議離婚の中で、やはり子供が成人するまではお互いにきちっと責任を持とうという方々は、我が国においても相当おられるんだろうというふうに私は思うんですよ。

 ですから、この単独親権のところに、「その一方を」じゃなくて、あるいは両方とか、つまり、我が国においても、単独親権も今までどおり認めるけれども共同親権も認める、つまり共同親権も可能である、まさにそれは選択ですね。そういうことをすることによって、子供が成人するまでは親はきちっと責任を持つということを民法改正として明確にすべきではないかと思いますが、いかがですか。

千葉国務大臣 今御指摘の、親が離婚をしたとしても、当然、成人をするまで責任があるのだ、こういうことは、現行法でも、これはある意味では当たり前といいますか、そういう責任があるということだというふうに思います。ただ、実質的に、その監護をする、離婚をしたということになりますので、どちらかが監護をするとか、あるいは、その生活については養育をどういう形で分担するかという、そういう形になろうかというふうに思います。

 共同親権という形をとりましても、これは確かに、責任というものが両方に引き続いてあるのだということを明確にするということにはつながると思いますが、例えば、その養育費、あるいはどうやって養育するか、あるいはまたどういう面会をするかということは、共同親権と形を整えたとしても、そこをどう具体化するかということについては、やはり現在の状況と同じような問題点は出てくるのだろうというふうに思っております。

 そういう意味で、私は、まずは実質的に、本当に面会交流が、それから、子供のためにきちっとした生活の保障ができるような、そういうことを、共同親権、あるいは面会交流の明確化、あるいは養育費の負担をどのように担保していくか、形よりも実質的なところで、できるだけ早く子供のためのきちっとした体制が整えられるようにまずは考えていくことがよいのではないかというふうに思っております。

 ただ、共同親権ということを全く否定するという考え方を私はとっているわけではございませんけれども、共同親権という形になると、法的に改めて精査をしなければいけないということにもなりますので、まずは実際的に、子供を救済する、そして子供の福祉を図るという現実的なところからできるだけ早く対応をしていくことの方が実益が大きいのではないかというふうに思います。

下村委員 これは何か千葉法務大臣らしくない発言ですね。これは、言われていることはそうかもしれませんけれども、では、現実問題としてどうやって解決できるのかというのは、この国において相当難しいですよ。

 一番最初に御指摘しましたように、子供の貧困率というのは世界で最下位なわけですね。これは、それだけ日本において、確かに格差社会が拡大していることは事実です。これをどう解決するかということは政治の課題であるというふうに思うんですね。

 しかし、それだけで解決できるかというと、そうではなくて、子供の貧困率の中でも、特に片親家庭ですね、母子家庭、ほとんどはそこが対象になる。これは職業の問題もあるし、それから、先ほどのようなフォローアップ体制というのが、母親たった一人でやるという部分で、それがある意味では日本の今までの流れだったかもしれませんが、しかし、それが本当に子供にとっていいのかという視点から考えてきたときに、一方で、別れた親はやはり子供に会いたい、しかし、逆に言えば単独親権という権利に守られて、会えるものも会えないとか、フォローするのもフォローできないという部分も一方で弊害としてある部分もあるわけですね。

 ですから、法律として、やはり子供が成人するまでは親が責任を持つという意味では、今の法制度でもあるわけですけれども、では、実際に養育費がどこまで履行されているかというと、ほかの国に比べても極端に少ないという事例があるわけです。ですから、そういうようなことの中で、同時にいろいろな法整備をしながら、子供にとってのより生きやすい日本における社会状況は何なのかということを、あらゆるレベルで考えていく必要があるんじゃないですか。その中で阻害要因があればそれを一つ一つクリアするというのは、これは立法府としての当然の責務だというふうに思うんですね。

 ですから、共同親権の問題においても、例えば何がマイナスなのか。私が申し上げているのは、単独親権を共同親権に全部変えるという話ではなくて、単独親権は単独親権で、それの方が子の養育上望ましいという家庭も確かにあると思います、DVの問題とかいろいろな問題がありますから。一方で、共同親権とすることによって、別れた元夫か、元妻かもしれませんが、やはり子供の養育に対してはきちっと責任を持ってもらうという意味で、そういう部分があったとしても、それがさらに民法改正で、八百十九条の改正でつけ加えられたとしても、何ら問題になることではないのではないかというふうに思うんですね。

 ですから、慎重に考えるということであれば、何が問題だと思われているのか、お聞きしたいと思います。

千葉国務大臣 慎重にというよりは、現在の制度をより一層生かす形でも、子供との面会交流あるいは養育費、こういうものをきちっと実現するということは決して否定することではありませんので、まずは現行法でも、やはりそれを十分に実効あらしめるということを考えていくことが大切なのではないかというふうに思います。

 先ほど申し上げましたように、決して共同親権という考え方を私も否定するというものではありませんし、これは大変新しい御指摘をいただいて、選択的共同親権という、なるほどと、こういうことも今私も先生から御指摘をいただきましたので、確かにそういうものも含めて検討することというのは全く否定するものではございません。

 ただ、現実に、やはり、今おっしゃったように、子供の福祉を最優先に、そして、できることをきちっとやっていくということをまずやらなければならないということを申し上げたところでございます。

下村委員 大臣、先ほど離婚数が増加しているという話を申し上げましたが、近年、この十年間ぐらい、子供の環境というのは本当に悪くなってきているんですね。例えば、先ほどの面会交流の紛争なんかも激増していまして、一九九八年、調停が千七百件、審判が二百九十件だったんですが、二〇〇八年には調停が六千二百六十件、審判が千件、ふえております。親権を失えば子供との交流ができなくなるのではないかというおそれから、親権を奪い合う親同士の紛争が一方で今非常にふえているということ、それから、裁判所での手続は現行法ではやはり時間がかかるため、親子関係の断絶が長期にわたり、親子関係の修復が困難になっているという、ある意味では社会病理現象的な部分がどんどんふえてきているんですね。

 ですから、現行法で対応できなくなっている状況がますます、十倍ぐらいにふえている中、やはり何らかの法整備というのは、これは対応していくことによって、今現在困っている方々に対していかに手を差し伸べるか。

 私は、子供の福祉という視点から、残念ながら親は離婚になったとしても、我が国における子供がより幸せに生きていくための社会的な、社会の変化に対応した、タイムリーな法整備も考えていかなければ、我々立法の立場として、不作為の作為が問われるという時期に今来ているということをぜひ認識していただいて、法務省の中においても、この共同親権も含めて、それから、先ほどの親子面談交流については、ぜひほかの民法改正と切り分けて考えていただきたいということをお願いしまして、質問を終わります。

 ありがとうございます。

滝委員長 次に、大口善徳君。

大口委員 公明党の大口でございます。

 きょうは、まず足利事件に関してお伺いをしたいと思います。

 三月二十六日、再審無罪判決で、本件確定審で主な証拠とされた二つの証拠について、本件DNA型鑑定には証拠能力が認められず、自白についても信用性が認められず虚偽のものであることが明らかになったのであるから、菅家氏が本件の犯人でないことはだれの目にも明らかになったというべきである、こういうことで無罪判決が言い渡されました。そして、さらに裁判長は、この言い渡しのときに、二度とこのようなことを起こしてはならないという思いを強くしていますと、異例のことですが、謝罪をされたわけでございます。

 私も法曹の一人として、この足利事件、十七年半、身柄を拘束されていたわけでございますけれども、重く重く受けとめなければならない、こういうふうに考えておる次第でございます。

 そういう中で、今回、検察庁そして警察庁におきましては、検証報告書というのをすぐ出されたわけでございます。ただ、裁判所につきましても、宇都宮地裁がこういう形では判決を出したわけでございますけれども、裁判所としてこの問題についてどうとらえていくのかということが私は大事であろうと思うんですね。本当に自白の評価についてどうであったのか。それから、DNA鑑定の、特にこれは押田日大教授のDNA再鑑定が出たわけですね。ところが、二〇〇〇年に上告は棄却されているということで、この押田再鑑定においては、それこそ、遺留物と菅家さんのDNAが一致せず、こういう形になっているわけです。そういう点で、私は、裁判所がこの件についてどう検証していくのかということは非常に大事なことだと思うわけであります。

 そして、このことにつきまして、昨年の総選挙の中で最高裁判所裁判官国民審査が行われて、九人の裁判官が、新聞各社から「「足利事件」は再審無罪が確実視されています。誤判となった理由について、どう検証すべきですか」、こういう問いに対して、例えば、竹崎博允長官は、「係属中の事件であり、詳細は控えたいが、刑事裁判の本質にかかわる問題として、真剣に検討すべきだと考える。できるだけ広い視点に立って、裁判と科学、技術のあり方全体について建設的な方策を検討することが必要だ。」こういうふうに足利事件について答えているわけです。

 あるいは、竹内行夫裁判官は、「誤判という結果が確定した場合に、何らかの形で検証する必要があり、検証作業への第三者の参加を得ることが望ましいと考える。」と、かなり具体的に検証の方法についてまで述べておられるわけであります。そのほか、田原睦夫裁判官は、「科学的な証拠の取り扱いとその評価について、内部で検討する必要がある」。あるいは、宮川裁判官は、「科学的証拠の評価の在り方などについて、司法研修所のような機関で、検討することが必要だ」と。そのほか、近藤裁判官は、「裁判所内で原因を検証することが必要だ」、こう述べているわけです。

 この新聞記事にそれぞれの裁判官の顔写真入りで、足利事件について検証に前向きな裁判官の意見、これを見て有権者の方は、これは信任が相当か、罷免が相当かということでありますから、このアンケートの回答の発言というのは非常に重いというふうに考えるわけであります。

 そこで、裁判所における誤判究明、原因の検証の必要性、検証を行う予定についてお伺いしたいと思います。

植村最高裁判所長官代理者 委員御指摘の足利事件につきましては、個別事件でございますので具体的なコメントはちょっと差し控えたいと思いますが、私どもといたしましても、まことに重大なことというふうに受けとめております。

 検証の関係でございますが、今委員からも御紹介があった最高裁裁判官の国民審査のときの御発言ぶりも、私ども当然のことながら承知しております。その中でも、何人かの裁判官の方は、事務当局として個々の事件そのものについて調査するということになりますと、やはり裁判官の職権行使の独立という点からの問題もあるので、そこは考えながらやるようにという御趣旨も述べられていたかと思います。

 私どもも、そのようなことも踏まえまして、今回のような事件から教訓を引き出すためには、ちょっと広い視点に立ちまして、今回はDNA鑑定が問題になったわけでございますが、裁判におきます科学的証拠というものにつきましてこの際検討することが必要だというふうに考えております。

 ただ、その具体的な方法でございますが、最高裁判事の御意見の中にもちょっと出てまいりましたけれども、裁判官の研究を所管している司法研修所というのもございますので、今そこといろいろ協議、検討中でございます。近々結論を得て、具体的な作業に着手したいと思っておるところでございます。

大口委員 当然、裁判官の独立というのはあるわけですからね。やはり素早く最高裁がこういう形で検証をやりますよということを、質問しないと答えられない、これはおかしいんですよ。あの判決が出たらすぐさまそういうことを発表する、それぐらいでないと、国民から最高裁が、裁判所が信頼されないと私は思っていますので、できるだけ早くそれは発表してください。

 今月中に発表できますね、どうぞ。

植村最高裁判所長官代理者 何とか今月中にめどをつけたいと考えております。

大口委員 この問題は、当然、弁護士の弁護活動についてもいろいろと研究をしているようでありますが、日弁連から、このことについて、やはり裁判所、検察庁、警察庁、当事者の検証では限界がある、ですから、これにつきましては、独立性が保障され、十分な権限、調査権限を含む、を付与された公的な第三者機関として誤判原因を究明する調査委員会を設置すべきだ、こういうことが提案をされているわけでございます。

 そして、足利事件、志布志事件、氷見事件、引野口事件の四事件、それから過去十年間の誤判事件、少年事件も含む、あるいは死刑再審四事件なども考察の対象とする、こういうことで、メンバーを、学者、それから法律実務家、報道関係者等の有識者、誤判事件の救援にかかわった市民等々、学者の中には心理学者とかこういう方々も入れるべきではないか、こういう提案がなされております。

 このことにつきまして、きょうは、法務大臣、そして中井大臣にも来ていただきました。こういうことに関する御所見をお伺いしたいと思います。

千葉国務大臣 日弁連からそのような委員会を設けることについての御提言があるということを、私も承知をいたしております。

 先ほどからもう既に指摘をいただいておりますように、これについては、司法の独立性ということともかかわりを持ちますので、そのあたりも十分に念頭にしながら、このような調査委員会というんでしょうか、検証すべき場を持つということは、決して無駄なことではないし、できればというふうに私は思います。

 ただ、どういう形でどういう場所に設けるのか、公平な形で検証できるようなそういう場所をどういう形でつくることが一番適切なんだろうか、こういうことをぜひまた国会の場でも御議論をいただければというふうに思いますし、行政が直接つくるというのも、第三者的な検証という意味ではどうなのかなというふうに思ったりいたしますので、そのあたりがこれから十分に検討されて、検証の機関が設けられることを私もぜひ期待をしたいというふうに思っております。

中井国務大臣 法務大臣の前半の御意見と一緒でございまして、裁判所の独立ということを、これありで、第三者機関というものを今直ちにつくるということについてはどうだろうか、私はこう思っております。

 ただ、私どもは、今回の事件の重要性というものを十分認識して、ああいう検証結果を発表いたし、これを国民の皆さん、特に国会を含めて司法関係者の皆さん方に徹底的に議論をいただく、御批判もいただく、御注意もいただく、そういう形の中で、反省を込めて、こういう事件が二度と起こらないようにしていきたい、こんな思いであることを申し伝えたいと思っています。

大口委員 裁判官の独立という問題はあるんですが、ただ、無駄ではないということじゃなくて、千葉法務大臣、これはやはり国の責任として、こういうことを繰り返さないようにどうすべきなのか。そのことは、だれかがやってくれるのかということじゃなくて、やはり法務大臣でございますから、例えば日弁連がこれを提案していますね、こういうことについて、そういう仕組みをつくればどういうことが具体的に可能なのか、だから、検証する必要性をお認めになったわけですから、どうすればそれが可能になるのかということを前向きに行動していただきたいんですよ。そういうことについて、どうですか。

千葉国務大臣 私も、大変申しわけなく、言葉が足らずというか、ちょっと違う言葉でございました。無駄ではないという意味ではなくて、やはりきちっと検証することは必要だというふうに私も思うということでございます。

 御指摘のように、どういう形でそれを進めていくことがいいのか、これは本当に国全体として、国会も含めて取り組まなければいけない、こういうことであろうというふうに思いますので、ぜひそういう方向で私も何か知恵を出し、そしてまた、いろいろな提起はさせていただきたいというふうに思います。

大口委員 特に今回はDNA鑑定のことが問題になりました。このDNA鑑定に対して理解が不足していたという反省もあり、それを前提として自白を強要したということがございました。

 そのほかに、これはことしの一月、神奈川県警が、誤って登録したDNA型データベースをもとに、事件とは無関係の男性の逮捕状をとった、こういう問題も発覚をしています。

 ですから、科学的な証拠の取り扱いとその評価について、最高裁も検証をするということを言っているわけでありますが、検察庁あるいは警察庁として、科学者や技術者も参加する形でこの問題についてはやはり検証し、誤判、誤起訴あるいは誤逮捕等を防いでいかなければならない、こういうふうに思っております。

 特に、公訴時効の廃止を含む刑法、刑事訴訟法の改正のこともあります。ですから、この点について、まず国家公安委員長、そしてその後、法務大臣にお伺いしたいと思います。

中井国務大臣 御指摘をいただきまして、重く受けとめて、今後、長期的な証拠の保存やあるいは鑑定に耐え得るような保管を心がけてまいらせます。

 ただ、今回の足利事件の結果につきましては、警察のまとめ以外に、科学警察研究所によるDNA型鑑定に関する検証結果というのも実は出してございます。この検証結果をさらに二人の専門家にごらんいただいて、そして御指摘を受けて、さらにそれをまとめた冊子を補足説明として三月十五日に出しております。

 今後、二度とこういうことが起こらないように頑張っていきたいと思います。

 ただ、当時の鑑定は、あの型式でいきますと、一千分の一・二という確率というんですか、そういう状況でございます。今のDNA鑑定は四兆分の一ぐらいの確率になっておりますので、大変科学性の高いものだと確信をいたしております。

 ところが、先生御指摘の神奈川のような、本当に恥ずかしいようなことをやりますと、何のためかわかりません。今、神奈川県警において原因を追求いたしておりますが、こういうことが起こらない、不注意で誤判定をすることのないような鑑定方式にまた新しく変えたりしながら対応をいたしているところでございます。

 科学は科学として十分活用できるような鑑定、そして保存に努めてまいります。

千葉国務大臣 最高検察庁におきましても、さきにこの足利事件についての検証を行い、そして発表させていただいたところでございます。

 この中で、DNA型鑑定の正確な理解や検討が不十分であったということを率直に反省しながら、やはりそれに頼った捜査だったのではないかということも改めて指摘をさせていただいているということでございます。

 そういう意味では、今後、検察官の研修などにおいても、科学的捜査に関する講義や検討会、こういうものを設置して、その意味とか科学的捜査の中身、そういうものをできるだけ十分に理解できるような、こういうことを進めていきたいというふうに思いますし、各地検では、警視庁や各都道府県警察の科学捜査研究所との協議会や実地研修なども行うなど、検察官が、その鑑定の意味、それから警察が捜査をしたそのものを十分に理解する、そして正確に理解をするように努めていくこと、このための環境整備を進めていくということでございます。

 いずれにしても、今回の問題につきましては、まだ不十分な理解のもとに鑑定に頼った判断をした、こういうところが問題だったのだというふうに私も理解をいたしております。

大口委員 次に、前回も取り上げさせていただきましたが、過払い金返還の問題についての、一部弁護士、司法書士と、依頼者である多重債務者のトラブルの問題につきましてお伺いをしたいと思います。

 とにかく広告を派手派手しく出して大量に仕事を受けて、そしてそれを処理しないまま放置するとか、あるいは、過払い金請求だけしか受けない、そして多重債務者の生活再建ということを全く考えない、多額の報酬を受ける。それから、これは非弁活動、犯罪でありますけれども、弁護士本人が直接面談をしないで全部事務所の職員任せにする。とんでもないことが行われているわけでございます。

 私は、日弁連、そして日本司法書士会連合会の方々からもヒアリングをさせていただきました。そして、日弁連も日司連も指針を今回出されたわけであります。日弁連は、二十一年七月十七日、債務整理事件処理に関する指針を定め、本年三月十八日にさらに同指針を改定し、直接かつ個別の面談の原則や、広告における弁護士費用の表示等の配慮事項を追加しました。また、日本司法書士会連合会も、平成二十一年十二月十六日、債務整理の事件に関する指針を策定しました。

 このような指針の策定自体が独禁法上問題になるのか、公取委員長からお伺いしたいと思います。

竹島政府特別補佐人 お答えいたします。

 今御指摘のことにつきましては、かねてから、公正取引委員会といたしましては、いわゆる士がつくような資格者の団体のガイドライン、それから、より広くは事業者団体のガイドライン、要は、その団体としての行動で必要があっても、独禁法の立場から見て、そういう枠組みなりそういう名目のもとで競争を制限する、各団体の構成員はそれぞれ、広告にしても報酬にしても、それを、耳なれない言葉かもしれませんが、競争手段として自分の判断で使うべきものでありまして、団体として一定のことを義務づけるということが、社会的ないしは常識的に正当化されることであればいいんですけれども、そうじゃないということが往々にしてあったものですから、そういうガイドラインで指導してきているというのが実態でございます。

 今御指摘の日弁連にしても日司連にしてもそういう経緯は十分御存じのはずでございまして、我々のガイドラインに基づいて、今御指摘の指針についてもお考えいただいているものと私どもは考えております。

 より具体的には、今申し上げたような内容の指針であれば、これはむしろ消費者または顧客の正しい選択に資するということでございまして、そういう意味のメリットが十分にあるだろう。逆に、そのために、それぞれの弁護士さんなり司法書士さんの活動が団体のこういう指針によって縛られて、競争が非常に制限されるというおそれはないだろうというふうに思っております。

大口委員 では、具体的に聞きます。

 日弁連も日司連も、この広告のことあるいは報酬のこと等について、会則でもって義務づけということを考えています。

 日弁連の場合の会則、それから日司連の場合は各単位の司法書士会の会則ということでありますが、例えば、日弁連の指針の中に「債務整理事件取扱いの広告」とあり、アで弁護士費用について表示、ウで受任弁護士による直接かつ個別の面談が必要となる旨の表示の努力規定があります。これを会則で広告規制として各表示を義務づけることが独禁法上どう評価されるのか。

 それともう一つ、日弁連や日司連、これは各単位司法書士会が、会則で、債務整理の事件の受任契約の際に、日弁連や日司連がホームページ上公表しています過去の報酬額の平均値の一覧ですとかあるいは報酬金額の分布を債務者に提示することを義務づけることは、独禁法上どう評価されますか。

竹島政府特別補佐人 指針から会則ということになりますと、会則に違反した場合にはそれなりの処罰があるんだろう、そういう意味で、より格が上がるということでございますが、内容的に先ほど申し上げたとおりのことであれば、そういう会則は、特に独禁法上問題にすべきではないだろうというふうに思っております。

 要は、競争を制限するのではなくて、消費者の適切な、正確な選択に資するというものであるかどうか。逆に言うと、そういう建前をとりながら、実は同じような報酬を取るとか、それから、より顧客を集めたいと思っている会員に対して、その活動を制限するとかいうことはいけません、こういうことでございますから、そういう基本的な問題意識に触れない限り、特に問題視すべきものではない。

 それから、従来から非常に問題であった報酬についてどうするんだということですが、報酬規定というものはもうやめていただくということになって今に至っているわけでございますが、今委員御指摘の、客観的にこういうふうに報酬額というのはばらつきがあるんですよというようなことが、いわば客観的に集められて、かつ統計的にきちんと処理されたものとして、ばらつきはこういうふうになっております、平均値はこうでございます、そういうことを既にホームページで発表しておられる。それを、お客様、消費者に見せて、それで、こうでございますよ、私は幾らですよということを示すことは、これは、消費者がその弁護士なり司法書士の要求する報酬が高いか低いかを客観的に判断できるということになりますから、その限りにおいては、私は問題ないと。

 ただ、上限とか標準額とかいって、結局は、そういうサービスは幾らですよということが、いわば極めてそこに集中しているような形で定められる場合には、私どもとしては、それは問題にせざるを得ないということでございます。

大口委員 そういうことで、広告規制の会則化、あるいは報酬等についてのこういう対応については、独禁法上問題ないということを今お伺いしました。

 その上で、今回、日弁連や日司連からいろいろと、きのうも宇都宮会長ともお会いしたんですけれども、相談に行くと思います。日弁連、日司連も、このことについては何としても、弁護士自治ということもありますから、しっかり自分たちでやっていこうということを考えていますので、よろしくお願いしたいと思います。

 時間ももうなくなってまいりましたので、予定していた質問の中で、きょうは文科省から政務官に来ていただいていますので。

 先ほども河井議員からも御質問がありました。いよいよ司法修習生の修習資金の給与制が貸与制に変わる、十一月になる。こういうことで非常に、修習専念義務もある、それから、司法修習生のアンケート調査によりますと、五三%の方が奨学金を利用していて、その金額が三百二十万から一千二百万。きょう、一部報道されておりました。それに貸与制で三百万。そうしますと、六百二十万から一千五百万ぐらいの借金を抱えて法曹になる、こういうことでございまして、千葉大臣も私も給与制でやってきたわけですけれども、また、河井議員からも、三年間で二千万必要だという話もありました。

 とにかく、多様なバックグラウンドを持った方々に広く法曹になってもらいたいという理念からすると、こういう現状についてどうなのか、大臣にお伺いするとともに、今、法科大学院につきましては、授業料の減免措置が行われております、それから奨学金の返還免除ということも行われていますけれども、これをもっと拡大していかなければならないのではないか。これについては文科政務官からお伺いしたいと思います。

 以上二点です。

千葉国務大臣 いよいよ給付制から貸与制に変わるということで、やはりそれによって財政的な負担というのがより一層重くなるのではないかということは、私も懸念をするところでもございます。

 ただ、法曹養成制度導入に当たっては、できるだけ法曹人口を拡大していく。そして、そういう中で、今度はその財政の負担をどうやっていくのかということを考えたときに、多くの方々の御意見の中で、やはり給付制というのは少し特典を与え過ぎることではないかというお話の中で、貸与制という方向が出されたものだと承知をしております。

 そういう意味では、しかしその負担というのは決して軽くないですので、奨学金のより一層の充実等を含めて、やはりその負担を軽減するということについてはできるだけ努力をしていく必要があるだろうというふうに承知をいたしております。

高井大臣政務官 大口委員、千葉大臣が今おっしゃったとおり、御指摘本当にごもっともだと我々も思っています。

 法科大学院、一般の大学院修士課程と比べるとやはり二十万以上入学金や授業料においても高いということがありますので、我々も、この授業料減免と奨学金の充実、またTA制度の活用など、経済的支援の充実は一層図っていかなくてはならないというふうに思っております。

 現在、平成二十二年度予算において、各大学が実施する授業料減免措置の拡大への支援、これは国立において百九十六億円を計上しておりまして、私立では四十億を計上いたしました。それから、無利子奨学金それから有利子奨学金の貸与人員の拡大等も今般図っております。二十一年度は百十五万人だったのをことしは百十八万人、全部でありますけれども、人員増を図りました。

 それから、優秀な大学院生に対するTA、RAの経費の確実な措置ということなどを盛り込んでおりまして、まずはこうした政策の実現に努力したいと思います。

 御指摘あったとおり、法科大学院生に対する奨学金の貸与額についても、一般の大学院生に対する有利子奨学金の上限が十五万であることに対して、十九万もしくは二十二万を選択できるというようなことも幅として持たせておりますが、より一層の拡大に向けて我々も努力をしていきたいと思います。

大口委員 時間になりましたけれども、授業料の免除ですとかあるいは奨学金の返還免除についても、やはりもう一度これはしっかり議論して、負担の軽減を図っていかないと大変なことになると思っております。またよろしくお願いしたいと思います。

 時間になりましたので、以上で終了いたします。ありがとうございました。

     ――――◇―――――

滝委員長 次に、内閣提出、参議院送付、刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。千葉法務大臣。

    ―――――――――――――

 刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

千葉国務大臣 刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 公訴時効制度については、近時、被害者の遺族の方々を中心として、殺人等の人を死亡させた犯罪について見直しを求める声が高まっており、この種事犯においては、時間の経過による処罰感情の希薄化等、公訴時効制度の趣旨が必ずしも当てはまらなくなっているとの指摘がなされております。

 このような御指摘を契機として、人の生命を奪った殺人などの犯罪については、時間の経過によって一律に犯人が処罰されなくなってしまうのは不当であり、より長期間にわたって刑事責任を追及することができるようにすべきであるという意識が国民の間で広く共有されるようになっているものと考えられます。

 そこで、この法律案は、これらの人を死亡させた犯罪をめぐる諸事情にかんがみ、これらの犯罪に対する適正な公訴権の範囲を確保するため、刑法及び刑事訴訟法を改正し、所要の法整備を行おうとするものであります。

 この法律案の要点を申し上げます。

 第一は、刑事訴訟法を改正して、人を死亡させた犯罪の公訴時効に関する規定を整備するものであり、人を死亡させた罪のうち、死刑に当たる罪を公訴時効の対象から除外するとともに、無期の懲役または禁錮に当たる罪については三十年に、長期二十年の懲役または禁錮に当たる罪については二十年に、その他の懲役または禁錮に当たる罪については十年に、それぞれ公訴時効の期間を延長するものでございます。また、この改正については、その施行前に犯した罪であって、その施行の際時効が完成していないものについても適用することといたしております。

 第二は、刑法を改正して、刑の時効に関する規定を整備するものであり、公訴時効の期間との均衡を考慮し、死刑を刑の時効の対象から除外するとともに、無期の懲役または禁錮については三十年に、十年以上の有期の懲役または禁錮については二十年に、それぞれ刑の時効の期間を延長するものでございます。

 このほか、所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。

滝委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

滝委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 ただいま議題となっております本案審査のため、来る二十三日金曜日午前九時三十分、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

滝委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る二十日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三十六分散会


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