衆議院

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第8号 平成22年4月20日(火曜日)

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平成二十二年四月二十日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 滝   実君

   理事 阿知波吉信君 理事 石関 貴史君

   理事 辻   惠君 理事 樋高  剛君

   理事 山尾志桜里君 理事 稲田 朋美君

   理事 森  英介君 理事 大口 善徳君

      石井登志郎君    石森 久嗣君

      加藤 公一君    熊谷 貞俊君

      桑原  功君    坂口 岳洋君

      高橋 昭一君    竹田 光明君

      橘  秀徳君    中島 政希君

      永江 孝子君    長島 一由君

      野木  実君    花咲 宏基君

      藤田 憲彦君    細野 豪志君

      牧野 聖修君    皆吉 稲生君

      森山 浩行君    山口 和之君

      山崎  誠君    横粂 勝仁君

      河井 克行君    柴山 昌彦君

      馳   浩君    古川 禎久君

      柳本 卓治君    山口 俊一君

      遠山 清彦君    園田 博之君

      城内  実君

    …………………………………

   法務大臣         千葉 景子君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 中井  洽君

   法務副大臣        加藤 公一君

   法務大臣政務官      中村 哲治君

   最高裁判所事務総局経理局長            小池  裕君

   最高裁判所事務総局刑事局長            植村  稔君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    金高 雅仁君

   法務委員会専門員     生駒  守君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十日

 辞任         補欠選任

  藤田 憲彦君     花咲 宏基君

  細野 豪志君     石井登志郎君

  棚橋 泰文君     古川 禎久君

同日

 辞任         補欠選任

  石井登志郎君     細野 豪志君

  花咲 宏基君     高橋 昭一君

  古川 禎久君     棚橋 泰文君

同日

 辞任         補欠選任

  高橋 昭一君     皆吉 稲生君

同日

 辞任         補欠選任

  皆吉 稲生君     森山 浩行君

同日

 辞任         補欠選任

  森山 浩行君     藤田 憲彦君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案(内閣提出第五三号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――

滝委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、参議院送付、刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として警察庁刑事局長金高雅仁君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

滝委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

滝委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局小池経理局長及び植村刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

滝委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

滝委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。野木実君。

野木委員 おはようございます。民主党の野木でございます。よろしくお願いをいたします。

 公訴時効の見直しは、刑事司法のあり方に対する大変重要な問題であります。見直しに当たる議論は、多くの時間といろいろな方の参加をいただきながら、十分制度の趣旨を踏まえながら検討がされたと思います。一方では被害者や遺族の心情を十分に受けとめながら、また他方では、被疑者や被告の方に与える影響を十分考慮しながら検討が進められたと承知をいたしております。

 そこで、まず第一に、今回の改正においては、公訴時効を廃止する一部の犯罪を除き、基本的には公訴時効制度を維持することになっております。その意味では、今回の制度改革に当たって、公訴時効制度の存在の意義はあるわけでございまして、まず、この制度の意義あるいは趣旨について法務大臣から御見解を賜りたいと思います。

千葉国務大臣 まず、基本的な御質問でございました。公訴時効制度の趣旨、これは、処罰の必要性と法的安定性の調和を図ることというふうに解されているところでございます。

 すなわち、治安を守り、公共の福祉を維持するため、犯罪を犯した犯人を処罰することは必要でございますけれども、他方で、時の経過による法的安定を図る必要も認められる。この調和を図ろうということで、一般的には、その要素として、一つには、時の経過により証拠が散逸するということ、それから、被害者を含む社会一般の処罰感情が次第に希薄化していくのではないか、それから、犯罪後、犯人が処罰されることなく一定の期間が経過した場合には、そのような事実状態を尊重すべきではないか、こういう点が要素として挙げられています。

 そこで、刑事訴訟法第二百五十条は、犯罪の終了時点を起点として、一定の期間の経過により、原則として一律に公訴権を消滅させる公訴時効制度を設けているというふうに解されておりまして、私もそのように理解をさせていただいております。

野木委員 そうしますと、存在の意義その他はあるわけでありますが、では、今回の、殺人等の一部の犯罪の公訴時効を廃止しようということになった経緯、あるいは、今お話のありました趣旨との関係において今回の改正はどういう目的があるのか、この辺についての大臣の御見解を伺いたいと思います。

千葉国務大臣 今申し上げましたように、公訴時効制度の趣旨、これについては、当然のことながら、合理性があるということは当然でございます。今もそれは維持されているというふうに考えております。

 しかし一方で、特に人を死亡させたような犯罪の公訴時効については、やはり一定の特別の取り扱いをすることが必要ではないんだろうか、こういう意見が出てまいりました。

 一般に、生命が侵害された場合には、他の法益とは異なりまして、時間の経過とともに、これが少なくとも回復されるという余地はございません。そういう意味では、法益侵害による害悪とかあるいは影響が減少することなく長期にわたって残存する。処罰感情の希薄化ということも他の法益と比較して弱い。長期にわたって、時間経過しても、希薄化することはないのではないか。それから、事実状態の尊重の必要性というのも他の法益に比べると薄い。こういうことが言えるというふうに思います。

 また、殺人事件の、例えば凶器に付着した遺留物のDNA型鑑定、こういうものも近時技術が大変発達をしてきたということで、時の経過を経ても、証拠の散逸、こういう面でも大分証拠の保存ということが見込まれてくるような時代になってきた。

 こういうこともあわせ考え、基本的な時効制度の趣旨というのは維持をしながらも、このような、人の生命を奪った、そして死刑にも該当するというような犯罪については公訴時効を廃止するということを考えるべきではないか、こういうことでこのような今回の改正に至ったところでございます。

野木委員 今お話がありましたが、今回の改正に当たっては、一部、被害者の遺族の皆さんの声が非常に強くて、その辺の世論に引っ張られたんじゃないかという批判をする方もおりますが、この辺についての副大臣の御見解を。

加藤副大臣 今回の法改正に当たりまして、被害者の皆さんあるいは御遺族の皆様方から、殺人などの人を死亡させた犯罪の公訴時効制度について見直しを求めるという声が大変強く上がっていたことは事実でございますし、それが一つの議論のきっかけになった、契機になったということもまた間違いのないところだろうと思います。

 ただ、一方で、国民の皆さんの意識を各種調査などで私ども推しはかってみますと、例えば、昨年末に実施をいたしました、これは内閣府の調査でございますけれども、基本的法制度に関する世論調査であるとか、あるいは各種報道機関による公訴時効に関する世論調査あるいはアンケートなど、あるいは、法務省で実施をいたしましたけれども、意見募集の手続、さらには、法務大臣あてに提出をされてまいりました要望や陳情など、さまざまな国民の皆さんの御意見というものを承りますと、やはりその中では、人の生命を奪った殺人などの犯罪については、時が経過したからといって一律に処罰されなくなるというのは不当ではないかという声が大変強くなってきたこともまた事実でありますし、より長期間にわたって刑事責任を追及できるようにするべきだという考え方が広く国民の間で共有されるようになってきたということを私どもも認識をしたところでございます。

 したがいまして、今回の法改正に当たりましては、一部の被害者の皆さんの、あるいは御遺族の皆さんの御意見だけということではなく、こうした多くの国民の皆さんの意識のあり方とか、あるいはその意識の変化というものを踏まえて、法改正をさせていただこうというふうに考えたところでございます。

 もちろん、刑事司法にかかわる大変重要な課題でございますから、そうした多くの皆さんの意識や御意見というものだけではなく、さまざまな観点から、先生も御案内のとおり、政策会議等でも御意見をいただきましたし、また、法制審でも白紙の段階から十分に御議論をいただいて、その上で、幅広く多角的な見地から検討を加えまして最終的な決断を下したというところでございまして、決して一方の意見に引っ張られたということではないというふうに理解をいたしております。

野木委員 そうしますと、やはり国民の意識が変わって、死という厳然たる事実に対する処罰の場合には時効はなくていいんだということになったとすれば、逆に言うと、今度の対象になった犯罪の範囲が狭過ぎるのではないかという御意見もあります。

 例えば、ひき逃げ事件のようなものが今回の対象に何でならなかったのか。あるいは、目の前で事故が起きて、手を差し伸べれば助かるかもしれないけれども、それをほって逃げていく、こういう、人間の感情としては許せないというのも大変強い意思としてあるわけですから、この辺まで広げて今回の対象にするべきではないかという御意見もかなりあるように伺っております。なぜこれが今回の対象にならなかったのか。この辺について、副大臣、お願いします。

加藤副大臣 御指摘のような御意見があることは私も聞き及んでおりますし、お気持ちといいますか、心情としてはそんな御意見が出されることも十分に理解できるところでございます。

 ただ、今回の法改正に当たりましては、先ほども少し触れましたけれども、被害者や御遺族の皆さんを含め、多くの国民の皆さんの意識の変化なども踏まえまして、公訴時効を廃止する犯罪というのは、いわば刑事責任の追及に期限を設けないということでありますので、事案の真相をできる限り明らかにすることが強く要請されるほどの当罰性といいますか、悪質性といいますか、それを備えた犯罪とするべきだろうというふうに考えたところでありまして、では、それはどういう犯罪かということになりますと、やはり人を死亡させた犯罪のうちでも特に悪質なもの、法定刑として死刑に当たる罪が定められているもの、こう限るのが妥当なのではないかというふうに考えたところであります。

 それを前提といたしますと、今の御意見のひき逃げの部分でありますが、これは、いわゆる道路交通法上の救護義務違反の罪ということに当たります。この救護義務違反の結果として死亡させた場合について処罰するということになっているわけではございませんので、この部分だけ取り上げれば人を死亡させた罪には該当しないということになりますので、今回は救護義務違反だけを取り出して公訴時効の見直しということはいたしておりません。

 ただ、今回の法改正の中でも、御案内だと思いますけれども、危険運転致死罪の公訴時効期間はこれまでの十年を二十年に延長いたしますし、自動車運転過失致死罪の時効期間も現行の五年から十年に延長するという改正をお願いしておりますので、実際問題としては、ひき逃げによる交通事故死という不幸な事案が発生をした場合には、相当程度公訴時効期間が現実には延長されるものというふうに理解をいたしております。

野木委員 もう一つの問題点としましては、今度の改正で、時効が進行中の事件に関しても適用するということになっております。

 いわゆる遡及適用については、遡及処罰の禁止を定める憲法の三十九条に違反するのではないかという御指摘もあります。この辺についての見解を法務大臣にお伺いしたいと思います。

千葉国務大臣 今御指摘をいただきました憲法第三十九条にかかわる問題でございますが、憲法第三十九条というのは、司法手続においても大変基本となる重要な条項でございます。

 ただ、この三十九条が禁止しているというのがどういう守備範囲なのかということでございますが、これはまず、実行のときに適法だった行為を後から処罰する、あるいは刑罰を後から重くする、こういうことがこの三十九条が禁止している内容ではないかと解されております。

 それは、犯罪を犯した場合の刑罰に関して事前に告知をして、そして行為者の予測可能性を保障しよう、こういうものと考えられるところでございまして、公訴時効の定めはこのような場合には当たらないというふうに解するのがこの趣旨からいってできるのではないかというふうに思います。

 さらに、一定期間逃げ切れば処罰されなくなると考えているような、こういう者を保護する必要があるのか、あるいは、犯行後に時効完成を待つ犯人の期待といいましょうか、こういうことを法的な保護に値するものと解釈するのか、これもいささか、そういう趣旨を三十九条は求めているのではないだろう、こういうふうに思いますので、進行中のものについて遡及するということについては憲法三十九条に違反するものではないというふうに解しているところでございます。

野木委員 公訴時効が廃止されますと、事件が発生してからいつまでも捜査をし、訴追できるということになります。永遠に捜査をするのかということになるとこれは大変なことでございまして、今後の捜査のあり方はどういうふうになっていくんだろうかということと、特に、人的にどういうふうに捜査陣を投入していくのか、あるいはいろいろな証拠その他を残すためのコストはどうなるのかとか、人的あるいは物的コストを含めてこれからどういうふうになっていくのかについて、副大臣からお答えをいただきたいと思います。

加藤副大臣 御指摘のように、今回の法改正がなされまして、一部の犯罪について公訴時効制度が廃止をされたからといって、それに該当する事案すべてが、未来永劫、永久に捜査が続けられるということにはならないだろうと思います。

 一例を挙げれば、例えばかなり長期間、時が経過をして、真犯人がもう既に当然死亡しているだろうという段階になれば、これは公訴提起の可能性がなくなったということで捜査を終結する、不起訴処分にするということも当然あり得るものと思います。

 ただ、それまでの期間、では、限られた人的、物的資源をどう配分していくかというのは、これは捜査機関において今後さらに適切に考えられるものとは思いますけれども、やはりこの適正な配分に配慮するのと同時に、一方では、必要な証拠品などのこれまた適切な保管というものもしていかなければならないと考えておりまして、とりわけ、最近ではDNA型鑑定試料などの重要な証拠資料というものについて注目が集まってございますけれども、これらを今まで以上に適切に保管していくということがより重要になりますし、また必要な体制の整備も図っていかなければならないというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、捜査機関においては、負担が過重にならないように、しかし一方では適切に捜査を行うことができるように、実務上の工夫を重ねながら対応していただけるものと考えているところであります。

野木委員 そうしますと、捜査というのは永遠に継続するわけでないということになると、今回の改正で特に遺族の方が求めている気持ちというのは、少なくとも、犯人が捕まることであって、捜査がいつまでも続くということを期待しているわけではないと思うんですね。ですから、やはりこの改正によって最終的には検挙率をどれだけ上げていけるかということが相当大きな意味を逆に持ってくるのではないかというふうに思うんですが、この辺について、副大臣、どんなふうにお考えですか。

加藤副大臣 検挙率が少しでも高まればということは私ももちろん期待をするところでございますが、例えば殺人事件を例にとりますと、現状で検挙率というのが九六%前後、ちょっとデータのとり方とか年によって変動はありますけれども、九五から九七%ぐらいの間で変動いたしてございますので、今回の法改正によってこれがいきなり一〇〇になるとかいうことではないんだろうというふうには思います。

 ただ、今回の改正によりまして、例えば、時が経過をした後、確実な証拠がわかり、あるいは真犯人が特定をされというときに公訴を提起できなくなるということはなくなるわけでありますし、やはり国の姿勢として、人を死亡させた罪で死刑に当たるような凶悪な犯罪は許さないという態度を示すことは非常に重要なことではなかろうかというふうに思ってございます。

 また、私といたしましては、そういう法改正をすることによって、犯罪を犯した真犯人に対しましても、ある一定期間、時が過ぎれば逃げ切れるんだ、逃げ得になるんだというようなことはあり得ない、もう逃げられないんだという心理的プレッシャーを与えるということにも効果があるのではなかろうかと考えているところであります。

滝委員長 野木君、時間が参りましたので、簡潔にお願いいたします。

野木委員 時間が参りましたので、最後に、今回の法案の成立に向けて、あるいはこの効果について、大臣の決意を伺って、質問を終わりたいと思います。

千葉国務大臣 この法案につきましては、多くの国民の皆さんなどが大変期待をしていただいているということもございます。この委員会でも、それから、これまでも多角的ないろいろな御意見をちょうだいしながら取りまとめさせていただいてまいりました。ぜひこの委員会でも十分な御議論をいただいた上で、できるだけ早く成立をさせて、皆さんの御期待にこたえたいという思いでございますので、よろしくお願いいたします。

野木委員 どうもありがとうございました。

滝委員長 次に、山口和之君。

山口(和)委員 民主党の山口和之と申します。どうぞよろしくお願いいたします。おはようございます。

 私は、三十年近く、医療の中のリハビリテーションの世界におりました。その世界では、まず病気の再発予防、地域の中での健康管理、それから病院での治療と同時にリハビリテーションが開始されて、地域の中でさらに社会復帰を目指す、また疾病の予防を地域の中で行っていくという観点で、三十年近く仕事をさせていただいておりました。

 今回、刑法そのものが犯罪の抑止力となると考えておりまして、そのことから、時効がなくなることで防犯効果が急激に上がるとは思いませんが、ただ一方で、刑法が、そういう視点が必要だというふうにも考えております。

 配付いたしました資料の表の一を見ていただきますと、そういったリハビリテーションの観点から、今回は再犯防止について主に質問させていただきたいと思います。

 この表一を見ていただきますと、経済の悪化とともにという感じもないわけでもないんですけれども、再犯者の数がふえ、再犯者率もふえております。犯罪を犯さないようにするということは非常に重要なことだと思われます。

 そこで、次の表二を見ていただきたいんですけれども、この表二は刑務所でのプログラムなんですが、二〇〇六年の五月二十四日施行の刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律というところで、平成十八年に、そこでの矯正プログラム、いわゆる更生するためのプログラムが開始されたということであります。

 ちょっと驚いたんですけれども、それ以前は、刑務所では罪を償うということが主眼に置かれており、更生のプログラムは各刑務所でおのおの行われていた。ということは、罪を償うこと、もちろん監獄法ですからそういうことなんでしょうけれども、でも、普通で考えれば、病院で考えれば、病気になって治療して、同時に、もう一度病気にならないようなことをちゃんとやってこなきゃいけなかったわけだと思うんです。それが、平成十八年にようやくこういったプログラムができて、刑期に服している間にこういうプログラムが入ってきたということになります。

 千葉法務大臣さんには、各刑務所間でどういうプログラムが行われて、どこの刑務所が一番再犯率が少なくて、どういうプログラムが一番効果的なのかということを検証できないかというお話を一度したことが多分ございます。そのときには、そういうのはまだないようなことをお聞きしておりました。これは自分としては、医療系にずっとおったものですから、結構びっくりする内容でした。

 そこで、この改善プログラムというのは、いかに今後刑務所間でこのプログラムが効果的に行われるか、再犯率がどんどん下がっていくか、社会の中で最適化していくか、そういうことの検証を今後どうやっていくのかということを少しお聞きしたいと思います。よろしくお願いします。

加藤副大臣 先生御指摘のとおり、我が国の犯罪そのものを減らしていくために、再犯率を抑えていく、減少させていくということが極めて重要だということは論をまちません。私も全くそのとおりだと思います。

 その中で、御指摘をいただきました改善指導プログラムでありますけれども、現状で、その改善指導プログラムのうち、性犯罪再犯防止指導というものと薬物依存離脱指導という二つにつきましては、このプログラムを受講した上で出所した受刑者等についての再犯状況のデータというものを蓄積を始めているところであります。これが、法改正が平成十八年でございましたので、平成十九年度からデータの蓄積を始めたという状況にございます。今後、当然、そのデータが蓄えられてくれば、効果について分析をして、適切に対処をしていきたいというふうに考えてございます。

 その二つの指導プログラムを含めまして、他の改善指導プログラムを受講した受刑者につきましては、そのプログラムの受講前後における変化、本人の考え方の変化であるとか、あるいは不幸にも再入所してしまったときには前回どんな受講状況だったのかというようなことを聞き取りをいたしまして、いわゆる調査分析をいたしまして、今後の改善指導プログラムの効果検証に努めてまいりたいというふうに思っております。

山口(和)委員 ありがとうございます。

 プログラムが同一ですので比較するのはなかなか難しいとは思うんですけれども、恐らく、指導する側あるいは指導方法が若干違ったりして、刑務所間での効果の違い等々も調べることができるのかと思います。または、組み合わせのプログラム等々、検証していくことによって精度を上げていくことは可能ではないかと思われますので、ぜひともお願いしたいと思います。

 私は、リハビリテーションをずっとやっていまして一番効果的だなと思うのは、やはり、昔は集団的なプログラムが多い時代、ケアもそうなんですけれども、近年はパーソナルケア、個別のケア。つまり、犯罪者の背景であったり、どういう環境でどういうことで行われてきたのかということを深く掘り下げて、ケアマネジメントというんですけれども、ケアマネジメントの世界では深く掘り下げて、その人一人一人のパーソナルケアというものが非常に重要だと思われます。ぜひこの点についても推進していただきたいと思います。よろしくお願いします。

 次の質問に入りますけれども、刑務所を出た後、非常に重要になってくるのが保護司の役割だと思うんですね。日本においては保護司というボランティアの方がいらっしゃって、それで成り立っていたということですが、この方々が近年高齢化してきたり、なり手が少なくなってきているということを聞くんです。とてもいい制度ですし、リハビリテートするときにも、受刑者の方々が社会復帰をされるときにも、こういう方々のサポートがあって地域社会で生きていくということが重要になってくると思うんですね。

 そういったときに、なり手が少なくなって脆弱化していることについて、具体的な対策等がございますでしょうか。それをちょっとお聞きしたいと思います。お願いします。

加藤副大臣 御指摘のとおり、保護司の皆様、全国に約五万人いらっしゃいますけれども、それぞれの地域社会で、再犯防止の活動ということで大変な御貢献をいただいております。私も日々感謝をしているところでございます。

 近年、社会経済情勢が大きく変わり、また犯罪の状況も変化をしてまいりまして、保護司の皆さんの業務が大変困難になってきているということは私も聞いているところでございまして、個々の保護司の皆さんの活動というのを、地域社会全体で御協力をいただいて、組織的に支援をしていかなければいけないのではないかというふうに考えております。

 そんな状況のもとで、現在、保護司活動の充実を図るために、幾つかの施策を既に実施いたしております。

 一つは、保護司の適任者の方を確保するということのために、保護司候補者検討協議会というものを設置いたしました。今までの、どなたかおやめになったら、その方の人脈だけで探してくるというのでは限界があるということで、組織的な対応をしようということであります。

 それから、保護司個人の方の活動をバックアップするための保護司組織の機能強化、あるいは保護司会がその更生保護活動を推進するための拠点といたしまして、更生保護活動サポートセンターというものを全国に既に二十一カ所設置いたしております。

 今後とも、保護司の皆さんを中心といたしまして地域ネットワークづくりに努めて、犯罪や非行をした人の立ち直りを地域全体で支えていくという取り組みを進めてまいりたいと思っております。

山口(和)委員 ありがとうございます。力強いお話だったと思います。

 私が行っていたリハビリテーションも、地域全体で支える、一人では支えられない、地域があって初めて支えられるというのがあって、地域に溶け込んで、そこが元気になることで犯罪も少なくなり、あるいは明るい社会が築かれ、安心社会が築かれていくんだと思います。今のお話の中では、地域全体で支える、ネットワークをつくっていくというお話がありましたので、ぜひとも個人個人を大切に、地域全体で支えるようなシステムをつくっていただけると安心、安全な社会が築けるんだと思います。

 ましてや、民主党の成長戦略の中には、観光日本、観光を中心とした経済成長も計画されているところであり、犯罪のない国日本というのも一つの大きな視点になると思いますので、ぜひとも今の力強い御発言を実行していただきたいと思います。

 もう一つ、次の質問に入らせていただきます。

 表三の方を見ていただくと、一番下の表なんですが、一番下の覚せい剤取締法の同一罪名の再犯者なんですが、五七・一%という、これは、ほかの犯罪と比べて覚せい剤は全く違うんじゃないか。特異的な犯罪というんでしょうか、芸能人の方々でも再犯される方もたくさんいらっしゃった。どうも一般的なプログラムに乗って刑に服すだけでは足りないのではないかというふうに思います。

 他の犯罪とは違います。ですので、特別なプログラムが必要なのではないかと思われますが、先ほど御説明にありました特別プログラムの中に薬物依存症というのはありましたけれども、ぜひとも地域の中で行われるなり、いろいろな方法が必要かと思われますが、それについて御見解、御意見、取り組み等を紹介していただければと思います。

加藤副大臣 薬物依存の受刑者に対しましては、刑事施設の中と、それから社会、保護観察所などでの二つでさまざま取り組みをいたしております。

 刑事施設の中では、先生も御存じだと思いますが、ダルクというのがあります。ダルクなどの民間自助団体の協力をいただきまして、グループワークであるとか、あるいは講義、あるいは視聴覚教材、最近これは大分進んでいるようでありますが、視聴覚教材でお教えをしたり、あるいは個別面接を実施したりということで、薬物使用の影響であるとか、あるいは再使用防止のための方策であるとか、あるいは依存症についての知識を深めるとかいう薬物依存離脱指導というものを実施いたしております。

 その上で、先ほども御指摘ありましたが、覚せい剤の事犯者に対しましては、刑事施設の中での処遇状況も踏まえまして、保護観察所において専門的な処遇プログラムというのも実施をしているところでございます。

 テーマとしては、薬を断つ、断薬の意思の強化であるとかあるいは再使用しないための具体的な方法を学習させるというようなテーマにつきまして、認知行動療法などの心理学の理論を基礎とした五つの教育課程の履修と、あとは、本人の同意に基づきますけれども、簡易薬物検出検査というものをあわせて実施いたしまして、御本人が再び薬物に手を染めていないということを御本人もあるいは周囲の方々もきちんと確認できるような、そんなプログラムも実施をしているところであります。

 今後とも、覚せい剤事犯者に対する再犯防止ということのために指導を充実させてまいりたいと思っております。

山口(和)委員 ありがとうございます。

 恐らく、これは世界じゅうの問題でもあると思われます。ぜひとも今の効果検証を含めてエビデンスをつくっていただいて、再犯率が少なくなるように、あるいは犯罪に手を染めることのないように、ぜひ広げていっていただきたいと思います。

 ちなみに、どうもアメリカではドラッグコートというものがあって、それは、薬物依存というのは、一人で治せない、依存症から脱却できない病気、どちらかというと、犯罪というよりも病気としてとらえて、その治療を行うという考え方をしているとのことです。アメリカは薬物の犯罪の非常に多いところですので、こういった事例も含めて、ぜひ検討していただきたいなと思います。

 次に、今回の刑事訴訟法の施行時期について、通常であれば、周知の時間があった上にということなんですけれども、公布の日からということになっておるんですけれども、このことについて、特別な意義があるのかどうかを少し教えていただきたい。

加藤副大臣 御指摘のとおり、一般的に、法律が公布されますと、周知期間を置いてから施行という段取りでありますけれども、今回の改正につきましては、還付公告の部分を除きますと、周知の期間を置く必要がないのではないかということを考えておりまして、公布の日に施行するということにさせていただきました。

 多少説明をさせていただきますと、そもそも、この公訴時効期間というのは、犯罪行為をしようとする者が、その犯罪行為をしようという段階で通常予測する対象には含まれていないというふうに思いますし、また、そもそも、今回改正をいたしますと、その施行の日にまだ時効が完成をしていない犯罪事犯についても適用するということになってございますから、仮に国会において成立をさせていただくということであるならば、やはり一日でも早く施行するということが望まれるというふうに私ども考えている次第であります。

山口(和)委員 どうもありがとうございました。よくわかりました。

 私は、リハビリテーションの立場からきょう質問させていただきましたけれども、ぜひとも、再犯率が低下して、社会で元気で生活できる地域ができていったらいいな、日本が大きく変わってくるといいなというふうに思います。ぜひともよろしくお願いします。

 少し時間があるので、最後に一つだけ質問させていただきたいと思うんですが、ちょっと難しい質問なので、これは方向性だけでも結構なんです。

 死刑制度の問題があるんですが、それと同時に、終身刑という話も話題にのって、インデックスにも載って、国民的議論をしていかなきゃいけないということにはなっているんですが、例えば死刑も終身刑も両方あるということも考えられないかと思うんですけれども、これは急に答えろと言われてもなかなか難しいと思うんですけれども、何か御発言があればいただきたいなと思うんです。

千葉国務大臣 この間、終身刑の是非という議論があることは私も承知をしております。そして、御指摘のように、民主党のインデックスにも触れられているということでございます。

 特に、十年の服役の後、一定の期間がたつと仮釈放が認められる、懲役刑ですね。そうすると、無期刑といっても仮釈放が認められるものですから、それと死刑との間に非常に大きな隔たりがある。こういうことを考えるときに、仮釈放のない終身刑を導入したらどうだろうか、こういう御意見があることは私もよく承知をしておりますし、理解もできるところでございます。

 ただ一方で、やはりこの終身刑についても、社会復帰の望みはないわけですし、生涯拘禁をされるということで、大変精神的に、絶望感というんでしょうか、そういうことを抱かせる非常に過酷な刑罰ではないかという指摘もございます。それから、もう出ることもない長期間の拘禁、これによって人格的な破壊ということが予測をされるのではないか、こういうことも指摘をされていたりいたします。

 なかなか、刑罰のあり方といいますか、どういう刑罰を選択すべきかというのは大変難しい問題であろうというふうに思います。ただ、こういう御指摘あるいは御意見があるところでございますので、またできるだけ、国会も含めて議論がされていければと、私も真摯にそういう御議論を踏まえてまいりたいというふうに思っております。

山口(和)委員 どうもありがとうございました。

 望みがなくなるということも非常につらいことでもあることですし、ぜひしっかりとした議論で行っていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

滝委員長 次に、石森久嗣君。

石森委員 民主党の石森久嗣でございます。

 千葉法務大臣初め政務三役の皆様には、法務行政に携わる本当に今までの御努力に敬意を表する次第でございます。

 私は、脳外科医として、以前は東京拘置所の医務部で一年間勤務をしていました。そういう経験も踏まえて、本日、凶悪犯罪に係る公訴時効撤廃についての質問をさせていただきたいと思います。先ほどの野木委員と若干重なる部分はあると思いますけれども、御容赦いただきたいと思います。

 先ほど、この公訴時効撤廃、見直しについての趣旨、感情の希薄化とか、あるいは事実状態の尊重、証拠散逸の三点が挙げられました。しかし、平成十六年に改正されたばかりでありまして、また世論の感情を受けてここで改正することが、本当に正しい議論がされたのかどうか。強盗殺人の時効が以前は十五年間だった、それが十六年に改正して二十五年になりました。それからわずか五年足らずで、さらに時効が廃止されるようになっております。五年間で、検証できるほどの期間がないままに、撤廃が本当に正しかったのかどうか。後で再度短くしようとしても到底できることではないと思います。ぜひその点について、いま一度千葉大臣の御所見を伺いたいと思います。

千葉国務大臣 平成十六年に改正がなされました。この改正は、凶悪犯罪を中心とする重大犯罪に対して、事案の実態及び軽重に即した適正な対処を可能にすることを目的として、公訴時効制度というのは所与の前提としながら、法定刑をまず加重する、それによって、法定刑の重い犯罪について公訴時効の期間が延長される、こういう手直しだったというふうに承知をいたしております。

 これに対して、今回の法整備というのは、この改正がなされた後、やはり非常に重大な犯罪について、被害者の皆さんあるいは国民の間からも、公訴時効の廃止なりあるいはさらなる延長、そして、犯罪を犯して逃げ延びられる、こういうことを許してはならないのではないか、こういう意見が高まってきたということがございまして、こういうことを踏まえて今回の改正をさせていただくことになったということでございます。

 そういう意味では、平成十六年の改正というのは、これから先、こういうことをやるとこれだけ重い処罰をされるんだぞ、こういう将来に向けての効果的な刑事政策の実施を図る。今回の改正は、むしろ、これまで発生したものに対して的確な処罰を妨げない、的確な処罰をきちっと継続していく、こういうことに主眼があるということで、いささかその改正の趣旨というものが異なろうというふうに思いますので、十六年の改正、その後のさまざまな情勢の変化等も踏まえた措置ということで、決して時間が短い間に同じようなことを繰り返しているんだということではないというふうに理解をいたしたいと思います。

石森委員 ありがとうございます。

 二回の改正の中で、趣旨が違うということで理解をさせていただきたいと思います。

 ただ、前政権、昨年の一月からわずか一年半足らず、非常に短い期間での議論だったということで私も考えておりますが、この短い期間で本当に十分な議論がされたのかな。その辺も、ぜひ大臣のみずからの言葉でいただきたいと思います。

千葉国務大臣 これも御指摘をされることがございますし、ただ、なかなか、拙速なのかどうか、あるいはこれで十分なのかということの判断というのは大変難しいところはあろうかというふうに思います。

 私は、この間の前政権下での勉強、それからそれに対応して野党の時代の民主党の中でも活発な議論がされてきた、そういう中から、それから国民の間からも大変な改正を求める声が多々上がってきていた、こういう状況。そして、そういうことを踏まえさせていただいて、それだったら何とか早く、専門的な見地からの御議論もいただいて、そういう声にこたえていかなければいけないだろう、こういうことで、法制審議会にも御議論をいただきました。確かに、多少短い時間でございましたけれども、中身の濃い、大変活発な、回数を本当に重ねて御議論をいただいたというふうに承知をいたしております。

 また、その間で、世論調査であるとか、あるいはまた私のもとへも直接の御意見をちょうだいするなど、決して、内容的には拙速であるとか、あるいは何かをはしょっているというようなことはございませんで、相当な議論の中で、今回この法案をまとめさせていただいているということでございます。

 ある意味では、やはりスピーディーに物事に対応するということも当然必要でございます。ただ、それが粗雑になってはいけませんけれども、そういう意味では、時宜にかなって、私たちも多くの皆さんの期待にこたえたいということでこのような形になったということでございますので、どうぞよろしく御理解と、そして御協力をお願いしたいと思います。

石森委員 ありがとうございます。

 一年半足らずといっても十分な議論がされたということで理解をさせていただきたいと思います。

 続きまして、民主党のマニフェストにおいて、法定刑に死刑が含まれる重罪事案のうち特に悪質な事案について、検察官の請求によって裁判所が公訴時効の中断を認める制度を検討しますというふうにありました。しかし、事件ごとの事情によって時効期間を変える仕組みはなじまないという結論がなされたというふうに聞いております。

 果たして本当にそうなのでしょうか。逆に、拙速に結論を出すより、現段階では事件ごとの事情によって時効期間を変えられる、そんな仕組み等の改正、それでも本当になじまなければ、世論の動向も踏まえて期間を決めて結論づける方がよいのではないか、そういうような意見あるいは気が私もしておりますが、マニフェストを踏まえての大臣の御意見を伺いたいと思います。

加藤副大臣 私の方から御答弁をさせていただきたいと思います。

 マニフェストではなくて、民主党政策集インデックス二〇〇九というものの中に、今先生御指摘のアイデアを検討するということが書いてあったというふうに承知をいたしております。

 このインデックス案、インデックス案と呼ばせていただきますが、これは捜査機関の負担の増加というものをでき得る限り抑える一方で、また重大凶悪な事案については刑事責任を追及する機会をできるだけ確保しようという、その両者の均衡を図ったのではないかということで評価をさせていただいているところであります。

 しかし、先ほども少しお話をいたしましたけれども、世論調査の結果などを見ましても、殺人などの凶悪重大な犯罪については逃げ得は許してはならないんだという国民の意見というものが大変強くなっているということは、私ども理解をしているところでありますし、法改正をするに当たっては、そうした国民の皆さんの御意見というものも十分にそんたくをしていきたいと考えたところでございます。

 このインデックス案の場合には、当初、事件そのものが発覚をしていなかったケースを想定いたしますと、時効が完成した後にその事案そのものであるとかあるいは真犯人が発覚をしたというようなケースには、残念ながら対応できないことになってしまいまして、先ほど申し上げた国民の皆さんの声、逃げ得は許さないという声には、そういうケースではおこたえすることができないという問題があります。

 また、法制審を含めいろいろ御議論をいただく中で、例えば証拠が残っているかどうかという、いわばある種偶然に左右される事柄で、また検察官などの裁量によって公訴できるかどうかが決められるということが、被害者、当事者から見て不平等ではないかというような御意見があったり、あるいは、その証拠というものを厳密にチェックしていく、その確実な証拠があるということを前提要件とするならば、その時点で事実上有罪の心証が形成されてしまうのではないか、こんな御意見もございました。

 そうしたさまざまな御意見、御指摘も踏まえて、また世論調査を含めた国民の皆さんの声というものも十分に私ども理解をした上で、今回は、政策インデックス案ではなく、御提案申し上げているような改正案を取りまとめさせていただいたという経緯でございます。

石森委員 わかりました。ありがとうございます。

 若干時間も迫ってまいりました。

 時効が撤廃となる事案で、解決されないまま三十年、四十年と被害者の家族の皆さんがその区切りがつかない、ある意味、区切りがあることによって怒り、悲しみを解消できるのではないか、永遠に続く家族の皆さんの気持ち等、やはり家族の団体からも同じような意見があります。区切りがつかない、ずっとその悲しみを背負っていかなければいけないということもやはりあるのではないかなというふうに思います。

 その点について、大臣から何か御意見をいただければと思います。

千葉国務大臣 被害を受けられた皆さんあるいは御家族にとっての心情といいましょうか、これには本当に複雑なものがあろうかというふうに思います。

 多くの被害者の方は、時間の経過によって処罰されなくなるのはやはりおかしい、こう感じておられる、あるいは、時間が経過しても被害者としての気持ちというのは薄れないんだ、こういうふうにもおっしゃっております。ただ、一方、今御指摘のあるように、この公訴時効がやはりどこかで区切りをつける一つのきっかけになるんだ、そういう御意見があることも承知をいたしております。多分、両方が交錯するような、そういうことではないだろうかなというふうに思います。

 そういう意味では、やはり被害者の方が受けた被害、それは精神的にも経済的にも、こういうものを社会がきちっと受けとめる、そしてまたそれを救済していく、こういうことを十分に行うことがまず一番大事なことなのではないだろうかというふうに思っております。

 そういう意味では、犯罪被害者等基本計画などの中でも、やはり被害者救済ということをきちっとやるべし、こういうことが大きな課題になっておりますので、こういう心情、私も理解をしながら、ぜひ、そういう心情やあるいは精神的な負担をやはりみんなで軽減していくということにさらなる力を入れてまいりたいというふうに思います。

石森委員 ありがとうございます。

 もう一つ、同じ質問になりますけれども、私、栃木県から参りました。あの冤罪の判決を下してしまいました宇都宮地裁を抱える宇都宮から参りました。あの足利事件、十七年間、菅家さん、非常につらい思いをされて、今回無罪ということになりました。

 この時効撤廃によって、捜査が長期化する、あるいは証拠物件、証人の記憶の薄れから自白が強要されるのではないか、そういう懸念もあります。すなわち、冤罪の発生もふえる可能性があるのではないか、そういうこともあるのではないかと思います。

 そういう意味で、全面的な取り調べの可視化についても同時進行でやはり進めていくべきかというふうに思いますが、ぜひ、大臣の可視化についての御意見をいただきたいと思います。

千葉国務大臣 御指摘のとおり、いずれにいたしましても、無実の人が処罰をされるような、そういうことがあってはならない、これはもう当然のことだというふうに思います。

 この公訴時効の廃止ということによって、やはりどうしても防御権が事実上行使しにくくなるというようなことがあるということも事実としてあろうかというふうに思います。そういう意味では、公訴の提起に当たっては、そういうことをよくよく考えながら、自白に頼るようなことはなく、やはり客観的な証拠をできるだけ早期に収集して捜査を進めていくということが大事だろうというふうに思いますが、さらに、この冤罪をなくするという意味において、捜査の可視化ということは重要な課題でございます。

 今、これにつきましては、できるだけ早くこれが実現できますように、そして現実にどういう形でスタートすることが一番現実的なやり方なのかということも含めて、勉強、検討を重ねているところでございます。

 ぜひ、この検討結果を警察庁などとも十分に協議しながら、できるだけ早くまた皆さんにお示しすることができれば、こう考えて、精力的に行っておりますので、気持ちは必ず可視化を実現するということにございますので、よろしくお願いをしたいと思います。

石森委員 ありがとうございます。

 宇都宮地裁がテレビに出てくるたびに何か心が痛むばかりでございますので、今、大臣の強い、必ずというお言葉をいただきましたので、御期待を申し上げたいと思います。

 残すところもうわずかになってまいりました。ちょっと脱線をさせていただきまして、医療過誤についての司法の介入、医療関係者の刑事訴追について若干質問させていただきたいと思います。

 今、医療崩壊、いろいろ言われております。るる理由はあると思いますけれども、大きな原因の一つとして、やはり医療というのは不確実な行為であります。医療ミスが起こった、過誤が起こった、これまで家族の方々の心情から刑事介入は余儀なくされてまいりました。御家族あるいは患者さんの皆さんが警察に行くと、やはり警察は必ず捜査をしなければいけない。業務上過失があるのではないかということで、医師そして看護師の皆さんが、当然被疑者として逮捕されることも多くあります。

 記憶にまだあられるかと思いますけれども、二〇〇四年十二月、福島県大野病院で、加藤医師が前置胎盤の手術をすることによって、多量な出血をして、そして母体が亡くなってしまった。その結果、やはり業務上過失致死があるのではないかということで、その医師は逮捕され、そして長きにわたって留置をされ、最終的には、当時の医療水準から何も問題がなかったということで無実になりました。

 しかし、無実になったとしても、逮捕されたというその事実だけで、医療界だけではなく、本当に多くの皆さんが医療に対する不信を募らせた。特に、出産をされる産科の領域では、多くの産科の先生方が、もう出産はやめよう、こんなことで逮捕されるんだったらもうやめようということで、特に地方の中小の医療機関の産科は出産を取りやめるということが起きてしまいました。

 もちろん、この問題については、法務行政だけではなく、厚生労働行政にも携わる多くの方々と一緒に考えていかなければならないことだと思いますが、やはり、不確実な医療の中に刑事が入ってくる、刑事訴追をされてしまうということについて、私はそれはおかしいのではないかなと。やはり、民事の中で解決すべきことであって、人間が人間をつくったわけではない、それが人間を治療するに当たって業務上過失というものが問われることについて、私は大きな怒りを感じているわけであります。

 今回、民主党が政権をとったことによって、やはり医療の分野で、特に産科の分野では、もう既に昨年の一月から無過失補償ということができましたけれども、まだまだ十分ではないというふうに思います。

 そのような意見から、千葉法務大臣には、医療過誤等についての司法の介入等について、ぜひ御意見をいただきたいというふうに思います。厚生労働行政とのリンクもあると思いますけれども、法務行政としてどういうかかわりを持っていくべきなのか、御意見だけでも構いませんので、いただきたいと思います。

滝委員長 時間が参っておりますので、簡潔に答弁をお願いいたします。

千葉国務大臣 大変難しい問題提起をいただいたというふうに思います。

 今直ちに、医療事故等について、刑事手続、刑事処罰から全く除くというところまでなかなか言い切れないところはあろうかというふうに思いますけれども、やはり医療が萎縮をするというようなことがあってはなりませんし、これは、医療あるいは原因究明をどのような形でやっていくかとか、あるいは国民的な意識も含めて検討していくことが必要ではないかというふうに思います。

 ただ、非常にそういう御懸念の声があることは十分承知をいたしておりますので、医療関係者あるいは国民の声、あるいは刑事手続のあり方、原因究明のあり方、こういうことを総合的に今後検討していかなければならないことだというふうに理解しております。

石森委員 どうもありがとうございました。

滝委員長 次に、山尾志桜里君。

山尾委員 山尾志桜里です。よろしくお願いいたします。

 今回の時効の改正ですけれども、これは本当に刑事司法の大きな大きな変化をもたらすものだと思います。刑事司法というのは、百人が百人賛成ということはなかなか難しくて、真実発見と人権の保障、正確に言えば、真実を発見する過程と人権を保障する、このはざまで常に揺れ動いていて、その基盤を最低限支えているというのが国民からの司法への信頼ということだと私は感じております。

 今回の時効制度の改正についても、一方で、犯罪被害者、御遺族の方、本当にそのお気持ちに、犯罪が終わってしまった後とはいえ、少しでも司法がその気持ちに寄り添っていく、そういう姿勢を見せることができたという点で評価できるという面もあると思います。

 ただ一方で、やはり、被疑者の防御権の保障というような観点から不安の声も聞こえているところでございます。例えば、突然、捜査員が家にやってきて、三十年、四十年前のアリバイを聞かれて、答えに窮すると逮捕されるというようなことはないのかどうか。一般の方の感覚としては、そういう不安があってもおかしくないのではないかと思います。

 この点、時効延長、そして廃止ということであれば、数十年の時を超えても、捜査機関は真実発見に向けて公正な捜査をするんだ、あるいは裁判官も公正な判断をするんだ、こういう根本的な司法に対する信頼を国民の皆さんに向けて醸成していく、構築していくという努力が一層必要となると思いますけれども、最初に法務大臣にお伺いをしたいと思います。

 こういった司法に対する信頼の醸成に向けて、これから御努力をされていく点、いろいろと思いがおありだと思いますので、それをお聞かせ願えればというふうに思います。

千葉国務大臣 今御指摘がございましたように、この公訴時効の廃止、延長、こういうことによって、防御権の行使が非常に難しくなるケースが確かにふえるということは考えられようと思います。今でも、一定の時間が経過をしている、そういうようなときには、事実上、防御権の行使が大変困難だという事例はあるだろうというふうに思いますし、それがさらに長くなるということでございます。

 こういうことについて、本当に、おっしゃったように、捜査を的確にやるということと、処罰を的確にやるということと、手続の中で防御権を含めて人権の保障をきちっとやるということ、これが両方が貫徹されなければならないことだというふうに思っております。

 手続については、委員よく御承知のところですので多くを申し上げませんけれども、今後も、その両面の要請が満足されますように、それから司法の信頼というものが損なわれないように、ぜひ、さまざまな手続あるいは手だて、こういうものをきちっと講じていかなければいけないというふうに私も思っております。

 可視化というような問題も、そういうところに連なる大きな課題であろうというふうに思っておりますので、これらを含めて、ぜひこれからもしっかりと取り組んでまいりたいと思います。

山尾委員 ありがとうございます。

 司法に対する信頼という点でいえば、前回の委員会質疑で竹田委員が質問された民事法情報センターの問題、最高裁の裁判官OBによる公益法人の私物化とも言える件、複数、マスコミでも報道されまして、国民の皆さんに、えっ、裁判官OBがそういうことがあるのかというような点で信頼を揺らがした、その点でも非常に残念なことだったと思います。

 前回、政務三役の皆様方からは、法務省所管の公益法人について、当センターに限らず、しっかりと調査をする、こういう旨、御答弁をいただいております。

 そこで、私の方からは、きょうは、竹田委員とともに現地調査させていただいた法務省所管の、時間の都合もありますが、できれば二つの公益法人についてお伺いをしたいと思います。

 観点といたしましては、業務の目的と業務運営の実態にそごがないだろうか、そしてまた、天下り人事があるんだとすれば、それは本当に国民の皆さんが納得できる人事なのだろうか、説明がつくのだろうか、こういう観点からお伺いをしていきたいというふうに思っております。

 まず、司法協会という公益法人がございます。この司法協会の寄附行為を見ますと、「司法制度の適正、かつ、円滑な運営に寄与することを目的とする。」と書いてございます。

 司法協会さんが、東京の地裁、高裁、裁判所ですね、この中で事件記録をコピーするという事業を行っていると聞いております。平成二十一年に初めて公募が行われて、それまでどおり司法協会が落札したと伺っておりますが、白黒一枚幾らで落札されて、今、幾らでコピーをとらせているのか、教えてください。

加藤副大臣 落札といいますか、企画競争による公募というのを二十一年度から実施しているというふうに聞いておりますが、司法協会がその公募に応募をして選定された段階での謄写費用でありますが、対面式で一枚五十円、セルフ式で一枚二十円というふうに聞いております。

 ちなみに、対面式というのは、もう先生御案内だと思いますけれども、委任を受けてその司法協会の職員がコピーをする。セルフ式というのは、いわゆるコインベンダーの、自分でコピーをする。こういうことでございます。

山尾委員 それでは、それ以前、平成二十年度、十九年度、この時期は、公募ということではなくて、企画書の提案で司法協会がこの事業を受けていたというふうに伺っております。しかも、この時期におきましては、国選弁護人の謄写については、それ以外の事件と別に、安く設定されていたとも聞いております。

 この両年度は幾らでやっていたんでしょうか。お伺いできますでしょうか。

加藤副大臣 お尋ねのところでありますが、平成十八年の十月以前につきましては、司法協会がその謄写の業務をしておりまして、そのときには対面式のみということで、一律一枚四十円だったそうであります。その後、十八年の十月二日からいわゆる法テラスの業務が開始をされて、国選弁護人の報酬基準等が定められまして、弁護士の謄写費用として支給が認められる金額が一枚二十円になりましたので、司法協会はそれを前提にして、国選弁護人の謄写費用に限って一枚二十円に改めた、それ以外は一枚四十円にしていたということでございます。

山尾委員 ありがとうございます。

 それでは、裁判所の方にお伺いをしたいと思います。

 今の副大臣のお話ですと、平成十九年、二十年、ここの二年間に当たっては、少なくとも国選弁護人への考慮があって、国選弁護事件については安く設定されていた。ただ、平成二十一年になって公募が開始されると、国選弁護への考慮がなくなって一律になり、しかも五十円というふうに値段が高くなっている。この理由を教えてください。

小池最高裁判所長官代理者 お答えします。

 まず、この謄写にかかわって裁判所がどういう会計上の手続をとるかといいますと、事件記録の謄写に係るコピー機を設置いたします。そのコピー機の設置について、庁舎の一部を貸与するという手続になります。その貸与をする相手方を選定する。先ほど、透明性、公平性を担保するために公募の手続をとったと。

 それで、東京高裁、地裁におきましては、今先生からお話ありましたように、国選弁護人についてなるべく安くという話があったものですから、前は国選弁護だけだったんですが、まず、セルフ式による謄写によってコピー一枚当たり二十円以下にしてほしいということを公募の条件にいたしまして、対面式のものは人手もかかりますので、そこのところは特に条件を付さないという形で公募いたしました。

 この公募に対して司法協会のみが参加して、セルフ式二十円、これは弁護の者もそれ以外の者も皆セルフ式は二十円、そして対面式のものは五十円という提案がございましたので、これは公募の条件に合致しているということから、司法協会を選定した。

 そういう意味では、国選弁護人の謄写費用ということを念頭に置いた公募条件を設定したということでございます。

山尾委員 御回答につきましては、ありがとうございます。

 ただ、今のお話を聞かせていただきますと、セルフ式につきましては、出された条件の最上限、二十円でございます。そしてまた、対面式に至りましては、無条件でということでありましたということで、より、それまでよりも高く設定されているという、ここの事実は変わらないわけでございます。余りにも高いというのが率直な感想であります。

 裁判所によっては民間の印刷業者さんがこの業務をやっているところもあると聞いていますけれども、これは五十円より高いところというのは聞いたことないんですよね。コンビニでもコイン式で十円、大学のそばなんかに行けば、資料一式渡してコピーをお願いして、いわゆる対面式でも十円を切るところもざらにあるわけでございます。

 そういう中で、なぜ司法協会だけが、この条件に応募をし、そしてこの値段で落札できてしまうのか、やはりその仕組み自体に私は納得のいかないものを感じます。

 これがどういうことをもたらしているのかと申しますと、そもそも私が疑問を感じたのは、知り合いの弁護士で国選事件をたくさん持っている友達なんかが、まじめにやればやるほどコピー代がかかって持ち出しだと。それで、聞いたら一枚五十円ということを知りましたので、これはおかしいんじゃないかと思ったわけです。

 裁判所の中は、事件記録というのは持ち出し禁止でございますから、弁護士さんというのは裁判所の中でコピーをとらざるを得ない。そういう制約の中で、コピーの値段を高く設定してもそれで成り立ってしまうとしたら、これは非常に問題があると思います。

 問題というのをもう少し申しますと、実際に、国選弁護人の方というのは、経済的にゆとりがない、私選で弁護人をつけられない、そういう被疑者を弁護するという大変重要な責務を負っております。とりわけ、無罪を争うような事件であれば、弁護人の役割は非常に重要であるとともに、膨大な量の事件記録をコピーして闘いに備えなければいけない。そういう弁護人の活動を支えてこそ公益法人たる意義が見出せると私は思いますが、現実は一枚五十円、民間に比べたら論外の値段でございます。記録に秘密性があるということも聞きますけれども、裁判は公開されているわけですから、一部民間委託も実際に行われているわけですから、これは理由にならないと思うんですね。

 弁護人にとっての事件記録、真実は細部に宿ると言いますけれども、まじめな弁護士さんだけならともかく、どうしても、弁護士さんも今暮らしが結構大変な中で、コピー代を節約するために、そのコピーをやめた書類一枚、写真一枚、証言一言、そういう中に本当は被疑者を救うかぎが隠されている場合もあるんです。

 そこで、お伺いをいたしますけれども、この司法協会の常務理事さんと専務理事さんの元職、そしてまた、この協会の職員さんのうち、裁判所職員出身者の方の割合を教えていただきたいと思います。

加藤副大臣 調べましたところ、司法協会の現専務理事という方、常勤の方ですが、元東京簡易裁判所の判事である、それから、同じく常勤の常務理事の方でありますが、元長野地裁の事務局長であるというふうに聞いております。

 一般職員のうち、裁判所出身職員の占める割合が約八割だという報告でございます。

山尾委員 ありがとうございます。

 私は、公益法人に公務員のOBの方が勤めているということだけをもって天下りだ、すべて禁止だということは思いません。公務員のOBの方が、その知恵と経験を生かして、まさに公益目的のために良心的に働くのであれば頭が下がります。

 でも、このコピーの事例については、私は違うと思っております。裁判所で働いてきた方であれば、被疑者弁護にとって事件記録の持つ重要性というのは一般の方より知っていると思うんです。だったらこそ、一般より安くコピーできるように努力するならともかく、そういう視点がなくて、落札できる、あるいはその値段で事業を請け負うことができる、こういう視点で事業を運営されているのであれば、裁判所職員出身者あるいは裁判官の方がこの公益法人で働く意味はないんじゃないかと思います。全部民間でいいんじゃないでしょうか。もしかしたら、全部民間の方が安くなるんじゃないでしょうか。

 もう一度裁判所にお伺いをしたいと思います。この一枚五十円という状態、このまま放置しておかれるんでしょうか、検討をいただけるんでしょうか。

小池最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 先ほど申し上げましたように、公募の条件につきましては、国選弁護人等の謄写費用ということを考慮して、先ほど申し上げましたような、一枚二十円以下の料金で謄写が可能となる環境を整備するということを優先いたしました。対面式につきましては、人件費等のコストがかかるために、少し割高になることはやむを得ないかなと。

 それで、先ほど、十円という庁があるじゃないかと。民間業者が入ったのはありますが、これは……(山尾委員「十円という庁があるとは言っていないですよ」と呼ぶ)失礼いたしました。もう少し安い庁については、これは対面式ではございません。コインベンダーのものでございます。

 この条件は民間のものも皆開かれているんですが、民間の方では、人を使うというところでは、どうも、コピーの枚数等もございましょうが、参入してまいりませんでした。

 今後どうするかということですが、業者を公募で選定いたしました。これは、コピー機の設備投資もありますので、四回の更新が可能、要するに五年間を目途に公募で契約を結んでいくという形でございます。

 今、公募で業者を選定いたしましたので、現段階で裁判所からのその料金を引き下げることは困難であるということは、御理解いただきたいと存じます。

山尾委員 ただいま裁判所の方からは、できない理由をお聞かせいただきました。

 では、大臣にお伺いしたいと思います。

 大臣も、弁護士御出身でもございます。公益法人として司法協会が掲げている目的と今のコピー事業の運営のそごというのは私は明らかだと思いますし、人事の面でも、このままでは国民の理解を十分に得られるとは私は感じられないのですが、大臣、いかがでしょうか。

千葉国務大臣 今、所管に係る公益法人等については、その目的に沿った事業がなされているのか、あるいは、いろいろな、人事の面も含めまして、再度調査をさせていただいているということでございます。

 御指摘の点、大変ポイントの御指摘であろうというふうに思いますので、これらも踏まえて、改めてきちっとした対応をさせていただきたいというふうに思っております。

 また、謄写費用についても、私もやはり高いなという気が率直にいたしますが、これも、どのような形で謄写費用が低廉に抑えられるかということも、ぜひ皆さんからの御知恵も拝借しながら、法務省で、可能なことであるならば、また対応を、取り組みをしていきたいというふうに思います。

山尾委員 大臣、ありがとうございます。

 では、次に、矯正協会、こちらの公益法人の事業についてお伺いをしたいと思います。

 こちらも、竹田議員とともに現地に行きまして、調査をさせていただきました。

 矯正協会の主な事業に、刑務作業供給事業というのがございます。平たく言えば、刑務所に仕事の原材料を供給しまして、受刑者が刑務作業を行って、できた品物を販売する、こういう事業だと思います。

 少しこの事業に関して数字を聞かせていただきたいと思うんですが、年度を合わせるために、平成二十年度の実績で統一をしてお聞きをしたいと思います。

 平成二十年度、受刑者の作業報奨金、労賃として出所時にもらえる金額、これは時給換算で幾らでしょうか。そしてまた、実際に出所したときに手渡されるお金というのは平均幾らになるんでしょうか。ちょっと平均というと難しいかもわかりませんので、平均収容期間、大体二十一カ月ぐらいと聞いておりますが、こういう受刑者で考えると大体幾らになるのか、お聞かせください。

加藤副大臣 労賃ということではありませんけれども、この受刑者に支給する作業報奨金の一人一時間当たりの単価というものにつきましては、その作業の内容であるとか、あるいは作業の難易度、熟練度によって、十通りに区分をされております。最も低いものでありますと、一人一時間当たり五円九十銭。一番高い区分で、一人一時間当たり四十一円九十銭でございます。

 釈放されるときの平均支給額というものでありますが、これは二十年度の受刑者一人当たりの釈放時の平均支給額というデータでございますけれども、五万九千八百三十一円となっております。

山尾委員 それでは、同じ年度で、いわゆるこの事業における営業利益率、これを教えていただけますでしょうか。

加藤副大臣 矯正協会の中の刑務作業協力事業部の平成二十年度の営業利益率は〇・二%となっております。

山尾委員 私、調査の過程でこの数字を知りまして、最初に率直に疑問に思いましたのは、これだけいわゆる作業をする人に払うお金が低いのに、利益が全然出ていないのか、最初不思議に思ったんです。

 それで、協会の方にお尋ねをしました。そのお答えは、利益を出すことは考えておりませんというお答えでした。正直なお答えだったと思います。利益を出すことを考えていないからこそ、余り売れない品物を延々とつくり続けている。これが品物のパンフレットでございますけれども、これをぱっと見ますと、たくさん目につくのが、でっかいたんすなんです。今どき大きなたんすを買う御家庭というのは少ないんですね。ではなぜこういうものをつくっているのかとお尋ねしましたら、これが得意分野ですというお答えでございました。

 売れない品物を、ニーズがない物づくりを幾ら刑務所の中でやらせても、出所後の就職に余り役に立たないんじゃないでしょうかというのが、私の感想でございます。私は、ニーズのある品物をつくらせてこそ、出所後の就職に結びついて、本当の意味での矯正、矯正協会の矯正、ここに資すると思っております。そして、一定の利益を上げて、その利益をしっかり公益に還元させる。被害者支援に充てるとか、更生保護施設の運営に充てるとか、本人の生活再建の費用として出所時にもうちょっと持たせてやるとか、こういうことが本当の矯正のための刑務作業であると思うんです。

 ただ受刑者への仕事を漫然と供給するということでは、公益法人がこの事業を行う意味はないんじゃないかと私は感じておりますが、矯正協会がこの事業を請け負うに当たって、これは入札でしょうか、随意契約でしょうか。

加藤副大臣 これは入札でも随契でもなくて、つまり、国が何か仕事を発注するという立場ではないんですね。したがいまして、公募という形はとっているようであります。

 どういうことかというと、矯正協会の方から刑務作業に使う原材料を提供する。刑務所の中で、労務といいますか、役務といいますか、刑務作業をする。その作業の結果として、たんすがいいかどうかは別にして、完成したその製品はこの矯正協会が販売をして、その売り上げからまた次の原材料を用意して刑務作業に充てていく。こういうことでありまして、古くは、刑務作業用の原材料費を国がすべて国費で見ていたということでありますけれども、そのコストを削減するという趣旨から今申し上げたようなスキームになったというふうに聞いております。

 したがいまして、一般競争入札とか随意契約という枠組みではないということでございます。

山尾委員 今、刑務所の運営をPFI方式で民間がしているというところもありまして、こういったところでは、収容施設で民間の業者さんと受刑者の接点がある分、そのまま社会復帰後の就職につながるという例も見られるというようなことも聞いております。そうすると、本当に私は、この公益法人たる矯正協会が刑務所の中での仕事を供給する事業をやり続けるという意義が、どこまで見出せるのかなという疑問がございます。

 人事の面からお伺いをしますけれども、矯正協会の現在の会長の元職と報酬、常勤、非常勤の別、非常勤であれば、週に何回というふうに決まっているのかどうか、教えてください。

加藤副大臣 今の御質問の前に、先ほどの矯正協会が提供している刑務作業の比率でありますけれども、刑務所の中の仕事の一〇〇%ということでは決してございませんので、もう先生おわかりだと思いますが、おおむね、多分一五%ぐらいではなかろうかと。直接刑務所の方で民間から受けている仕事もあるということでありますので、ちょっと付言をさせていただきたいと思います。

 お尋ねの件でありますが、現在の矯正協会の会長の元職、退職時の役職は検事総長でございます。報酬額は、年額で、現在六百三十一万二千円というふうに聞いてございまして、扱いとしては非常勤でありますけれども、最低週一日は勤務をし、それ以外は必要に応じて出社をするようにということで決まっているということでございます。

山尾委員 今のお話、私も伺って、調査の過程で驚いたところでございます。

 さらに調べますと、この二十五年間で四人の元検事総長がこの会長職に、あえて申しますが、天下りをしております。指定席になっているという、これは典型的な例であると思います。私は、現状では税制上優遇されている公益法人に元検事総長が二十五年間指定席で天下っているということに国民の理解は得られないと感じております。

 そういう観点から、最後に法務大臣にお伺いをいたします。

 政権交代したからこそ、タブーなく切り込んでいただきたい。納得できない天下りは我々民主党は許さないんだということを私どもとともに国民の皆様にお示しをいただきたいというふうに私は切に思うところでございますが、大臣、御所見はいかがでしょうか。

千葉国務大臣 今、御指摘をいただきました。もちろんのこと、天下りは許さない、そして税金の無駄遣いなぞは決してあってはならない、これはもう基本でございますので、先ほど申し上げましたように、今、それぞれの管轄をきちっと調査させていただいて、御指摘に沿って、そしてまた、その我々の理念にかなうような対処をしなければならないと私も考えております。

山尾委員 ありがとうございます。

 最後に、この矯正協会について一言申しつけさせていただきます。

 この矯正協会が、利益を出すつもりがないのに、こういった役員の報酬をどこから払っているのかと、原資を考えましたところ、これは現職の矯正職員の方々が任意で加入している会費から多くの原資を賄っているということを聞いております。任意であるにもかかわらず、九八%の、今本当にまじめに必死で汗を流して働いている矯正職員の方が会費を支払っている。年俸の二百分の一という定額を払っている。もしこれが事実上の強制であって、今まさに現場で働いている一般の方の会費でそういった官僚のトップ中のトップの検事総長の報酬が賄われるとしたら、私はこれは許されないことだと思っておりますので、この観点も含めましての検討をお願いして、私からの御質問を終わりにしたいと思います。

 ありがとうございました。

滝委員長 次に、稲田朋美君。

稲田委員 おはようございます。自由民主党の稲田朋美です。

 けさからこの法案についての趣旨、それから成立に向けての大臣の力強い決意をお伺いいたしまして、私も全く異論はないんですけれども、まず、根本的なことについて疑問があります。それは、この法案の政策決定過程です。

 民主党は、昨年の衆議院選挙前の政策集において、公訴時効のあり方は、「法定刑に死刑が含まれる重罪事案のうち特に犯情悪質な事案について、検察官の請求によって裁判所が公訴時効の中断を認める制度を検討」するとしていたと思います。

 千葉大臣、その点は間違いがありませんか。はい、いいえで端的にお答えください。

千葉国務大臣 民主党の政策インデックス二〇〇九にはそのようになっております。

稲田委員 今回、内閣から提出されるこの法案は、その民主党の政策集に書かれていた方向性とは異なるものです。なぜ、民主党の政策集に書かれた方向性ではなくて今回の法案になったのか、その経緯についてお答えください。

千葉国務大臣 民主党のこのインデックスに記載をされている案、これは私は、捜査機関の負担、こういうものをある程度抑えながら、しかし重大な事案について刑事責任追及の機会の確保を図るということで、大変考えられた案だというふうに理解はいたしております。しかし一方で、御承知のとおり、もともとの、前政権のもとで、この公訴時効の問題について撤廃も含めて御議論がされてきたということも承知をしております。そういう意味では、国会の中でこぞってこの公訴時効について何とかしようという議論が大変強く沸き上がっていたということ、これは前提としてあるというふうに思います。

 そういうことですので、私が政権の一翼を担わせていただきましてから、この国会の御議論、それからまた国民の意識あるいは被害者の皆さんからの声、こういうものにどうやってこたえていくか。それには、民主党が掲げていた案、あるいは、これまで前政権のもとでいろいろ御議論されてきたものを合わせてもう一度ゼロからきちっと議論をし、専門的な機関でもある法制審議会にもお諮りをして、そして皆さんに納得いただけるそういう方向をきちっとまとめよう、こういう考え方でこの案をまとめさせていただいたということでございます。

 そういう意味では、基本的な部分、これは、公訴時効について、いずれにしても今のままではいかぬぞ、重大な犯罪について撤廃あるいは延長、こういうことも含めてやはり見直しを図ろうということがいずれにしてもスタートであろうというふうに思います。そこにのっとって、いろいろな御意見を踏まえて今回の法案の取りまとめに至ったという次第でございます。

稲田委員 この法案に象徴されるんですけれども、私はそれはおかしいと思うんですよ、白紙で臨むって。だって、民主党の政策集に書いてあることはそんなに軽いものなんですかね。

 マニフェストに書いてあることすらほとんどうそ八百ですから、政策集に書いてあることなど守らなくてもいいということなのかもわかりません。普天間にしろ、財源にしろ、ガソリン値下げにしろ、高速道路ただにしろ、無駄排除で九・一兆円、それから天下りをやめて十二・一兆円ですか。〇・一兆円単位までまことしやかに書かれていますけれども、そんなうそ八百を書いて、民意による政権交代だの、民に選ばれただの、おっしゃっていること自体が、もう白々しいというのを通り越して、私は不道徳だと思うんです。

 今の政権が支持率が落ちているのも、まさしくそういった民主党のいいかげんさに対して政治全体に対する信頼が失われている。この法案もその一つだと私は思っております。

 参議院の法務委員会で、参考人として来られた細井弁護士も、「民主党がインデックスであのようなのを書いておきながら、どこでどういう党議決定をされたか私分かりませんけれども、突然、私どもにすれば突然今のような案にまとまっていた」とおっしゃっております。

 また、参議院の御党の松野委員も、民主党が野党時代にまとめた案はネクストキャビネット閣議にかけて通ったものなのに一顧だにされなかったとおっしゃっているわけです。

 民主党では、自分たちが掲げて議論をしてネクストキャビネットの閣議決定で決めて政策集に載せたものを、いきなり白紙だとか変更する、そういった議論を一体どこでどうやって決めていらっしゃるのか、お伺いをしたいと思います。

千葉国務大臣 この間、私どもも野党のときに、ネクストキャビネット、そういうところで政策を最終的に決定していたということは事実でございます。しかし、政権がかわりまして、今回は、この法案も、民主党の中といいましょうか、委員で議論をしていただく政策会議などでも大変活発な、そしていろいろな角度からの御意見も出していただいて、そしてそれも念頭に置いて最終的な決断をさせていただいているということでございますので、決して全く一顧だにされないなぞということは私はなかったというふうに承知をいたしております。

稲田委員 しかし、松野委員は参議院で、「今度の通常国会に間に合わせるということで、正式にはまだ法制審の答申がなされる前から、法務省の政策会議でもう何か法案ができているみたいな話でいろいろと議論があったりして、ちょっとその辺もどうかなという気は正直しておりました。」先ほども言いましたように、「民主党が野党時代にまとめた案はどうも余り一顧だにされなかったなという率直な感想を持っておりまして、民主党は野党時代に刑罰のあり方検討プロジェクトチームというのをつくって、これは仙谷由人さんが座長で、私が事務局長として取りまとめさせていただいたんですが、」云々かんぬんと書かれておりまして、ネクストキャビネットで閣議決定をして政策集に掲げたものを何で白紙で検討されるんですか。その点、もう一度お伺いをしたいと思います。

千葉国務大臣 白紙でということは、これまで前政権で検討されていたそういう御議論もある、それから、民主党が政策インデックスに掲げているこういう考え方もある、こういうことも含めて、そういういろいろな議論、考え方、こういうものを全部合わせて検討いただく、こういうことでございまして、白紙というか、それを全く無視してということではございません。それも含めていろいろな角度からもう一度公訴時効のあり方を検討しよう、こういうことでございます。

 公訴時効について議論するということについては、全く共通なことではないかというふうに思います。

稲田委員 当たり前じゃないですか、公訴時効について議論するのは共通だなんて。そうじゃなくて、選挙前に政策として掲げていたマニフェストにしろ政策集にしろ、それを見て選挙民は投票をするわけですよ、それが実現されると思って。だから、そのためにマニフェストもあり政策集もあるのに、一顧だにしなかったと民主党の委員がおっしゃるような、そういう政策決定の仕方がおかしいと思っております。

 実は、今回の法案は、自民党政権時代に自公でまとめていた法案そのままなんですよ、驚いたことに。

 少し事実経過をお話ししますと、我が党と公明党が政権を担っていた折、法務省において、そこに座っておられる森大臣、佐藤副大臣、早川政務官らの精力的な検討の結果、一、人の生命という最も重要な個人的法益を奪った殺人罪などの重大な生命侵害犯について、その中で特に法定刑の重い罪の公訴時効を廃止し、それ以外の罪についても公訴時効の期間を延長する方向で見直すのが相当である、二、上記の見直し策を現に時効が進行中の事件について適用することは憲法上許されるものではないかと考えているという取りまとめをしたんです。今回の法案そのままなんですよ。

 その後、政権交代があり、森大臣から直接お聞きしましたけれども、政権交代があったからこの法律はもう実現しないと思われたそうです。当たり前ですよね。政権交代して、我が党の案と違う方向性を出していた、公訴時効は撤廃しないで、個別の事案について検察官が請求して裁判所で決めてもらって公訴時効を停止するという、全く違う方向を出している政党が政権をとったんですから、そう森先生が思われても当然だと私は思っているんです。

 ところが、今回の法案は自公の取りまとめそのものなんですね。ということは、民主党が政策集に掲げておられた「特に犯情悪質な事案について、検察官の請求によって裁判所が公訴時効の中断を認める」という案のどこが問題だったのか、どこが問題だから自公の案にしようと思われたのか、その点についてお伺いをしたいと思います。

千葉国務大臣 まず、御指摘の、自公の案そのもの、そのままだというお話でございますけれども、ちょっと説明をさせていただきたいと思いますけれども、今回の法改正というのは、殺人罪等について公訴時効を廃止する、その他の人を死亡させた犯罪について公訴時効期間を延長する、これは確かに、基本的には前政権で考えていただいたことと考え方を一つにするものでございます。

 しかし、取りまとめの段階では、公訴時効の廃止、延長の対象犯罪の範囲、あるいは延長する場合の具体的年数などの詳細とか、あるいは公訴時効の見直しの方策を既に時効が進行中の事件に適用することが政策的に妥当かどうか、あるいは公訴時効ではなくて刑の時効の見直しのあり方などについてはさらに検討が必要だというふうにされていたと私は承知をいたしております。

 そういうことを踏まえて、そしてまた、民主党インデックス案も念頭にしながら、それも含めて全体的にもう一度精査をさせていただいて、そして、先ほど申し上げましたように、政権交代後、政務三役、あるいは法制審議会へ諮問をする、両方の案などもきちっともう一度再検討してください、そういう意味で白紙でお願いをし、そしてそこで熱心な御議論をいただいて、今回のような案を取りまとめをさせていただいたということでございますので、全く丸ごとそれを引き継いだということではございません。

 また、民主党政策インデックス記載の考え方、これをとらなかったということでございますけれども、例えば、この案、捜査機関の負担を抑えながら、しかし重大な事案については刑事責任の追及の機会の確保を図っていこう、こういうことにおいては今回の案にも通ずるものでございます。決して相矛盾するものではないというふうに思います。

 しかし、例えば、政策集の案だとすると、当初事件そのものが発覚をしておらず、時効完成後に事実及び犯人が発覚したような事案については対応ができないということもございますので、こういうところはむしろこの案ではなくて、時効を撤廃した方がよろしいのではないかという議論に立ち至ったということでございますし、また、裁判をいつまで行うかという重要な問題について、例えば証拠があるかないかということで左右される、どうしても中断案というのはそういうことになりますが、それが裁量で行われるということが被害者から見て不平等にならないか、こういうことなどもさらに検討させていただいて、そして全体としていろいろな意見を含めて、今回の、提案をさせていただいている公訴時効の撤廃、延長の案にまとめさせていただいたということでございます。

稲田委員 恐縮ですけれども、ちょっとお答えが長いので、端的にお答えをいただきたいと思うんです。

 私は、民主党の政策集に掲げていた点について、どこに問題があったんですかという質問をしたんですね。私は、民主党の案もそれぞれに理由があります。そして、大きな違いは、公訴時効をある特定の犯罪について撤廃するというのが今回の案です。民主党は、公訴時効の撤廃はせずに、個別具体的に判断をしていくという考え方なんですね。その民主党の案について、どこに問題があるか。

 これは自公時代も取りまとめをしていて、例えば、個別事件の相違を捨象して、法定刑に応じた一律の取り扱いを定めている現行制度との不適合がある、これが第一点。第二点は、先ほど大臣もおっしゃったように、確実な証拠を残さない犯人の事案だとか、それから、時効完成前には証拠がなかったが完成後に犯人が判明した事案との不均衡。それから三つ目には、どのような事件について個別具体的に認めるのかというような、要件を明確に定めることができるのか疑問というような、そういう三つの問題点がありますけれども、その問題点があったということは大臣もお認めになるんでしょうか。

千葉国務大臣 あったというか、この議論の中で、私たちももう一度検討させていただき、いろいろな皆さんからの御指摘をいただいた中で、今御指摘のあるような、民主党の案だとそういうことが起こるね、こういうことは御指摘もいただきましたので、私は理解をいたしております。

稲田委員 ただ、今私が申し上げましたような問題点というのは、政権をとられてからあらわれた問題点ではなくて、そもそも、どちらの案を選ぶかというときに必ず検討しなきゃいけない問題点なわけですね。

 ということは、私が思いますのは、民主党の政策集に掲げた案にそもそも今申し上げたような疑問点があったのに、なぜそれを政策集に掲げて選挙をして、そして、ネクストキャビネットで閣議決定をしたにもかかわらず、それをいきなり変えられるのか。その程度の権威のものなんですか、野党時代の民主党のネクストキャビネットの閣議決定というのはその程度のものなんですかというところが疑問なんです。

 夫婦別姓もそうなんですよ。夫婦別姓を含む民法改正案、大臣が検討しておられるという案ですね、これも、政権をとられて大臣になられた途端、民主党案はやめて法制審議会案で法案を出されようとしていらっしゃるわけです。私は、これはおかしいと思うんですよ。法制審議会の答申に従って何でもかんでもやるんだったら政治家は要らないと私は思うんです。民主党のおっしゃっている政治主導というのは一体何なのかなと。

 大臣が大臣になられてから、政治家千葉景子の政治理念ですとか政治哲学というのを捨ててしまわれたのかなと思ってしまいます。一体何のために政治家になられたのかな。政治家千葉景子さんと、法務大臣千葉景子さん、これは違うもの、別物として使い分けて……(発言する者あり)ちょっと、うるさいんですよ。使い分けているかどうか、その点についてお伺いをしたいと思います。

    〔委員長退席、樋高委員長代理着席〕

千葉国務大臣 決して私は、基本的な姿勢といいましょうか、考え方が変わっているとは全く思いません。

 ただ、政策というのは、やはりいろいろな角度から、一度考えても、例えばまた御指摘をいただいてより一層よいものにするとか、あるいは、多くの皆さんから御理解をいただける、そういう案にまとめるということは当然のことではないでしょうか。一つのあれに全く固執をするということが、逆に言えば私はあってはならない。

 基本的な考え方、基本理念は、それはむやみに変更したり、揺らぐということは私もあってはならないというふうに思いますけれども、具体的な政策というのは、やはり、だれもがそれをきちっと実行でき、そしてまた多くの皆さんが納得できる、こういうものに理念に基づいて練り上げていくということはごく当たり前で、それからまた、行政のトップとしてあるいは取りまとめの責任者として当然やるべきことであるというふうに私は考えております。

稲田委員 もちろん、そんな一つの案に固執をしたりだれの意見も聞かないというのは、それは私もおかしいと思いますよ。

 ただ、今回の法案は、公訴時効をある犯罪については撤廃をするという全く新しい制度ですね。そして、民主党が考えられていたのは、そうではなくて、公訴時効を残すけれども、犯情の悪いものについては個別具体的に対応するという、基本的な考え方自体、公訴時効の趣旨に対する考え方自体が違って、先ほど私も言いました、大臣もおっしゃったような民主党の案の問題点というのは、今出てきたことじゃなくて、そもそもあることなのに、そういうことも議論した上でネクストキャビネットで閣議決定をして、それを政策集に掲げて選挙で勝って政権交代したのに、それをいきなり白紙、全然違う方向というのはいかがなものかというのが一点。

 それともう一つ、夫婦別姓については、私は大臣の書かれたものなどもよく読ませていただいているんですが、考え方は違っても、やはり理解はできます。そして、この夫婦別姓の問題なんというのは、大臣の本当に政治家としての核のようなものだと思うんですけれども、それを、政治主導というのであれば、御自分が法務行政のトップになられたわけですから、御自分の政治理念をやはり実現されるべきではないかと思っております。

 何が言いたいかといいますと、大臣は、選択的夫婦別姓の問題、前回も前々回も聞きましたけれども、大臣自体は人権侵害だと思っていらっしゃると思うんです。ここの中でも書かれていますし。

 なぜそのようなことをお尋ねするかといいますと、この委員会で民主党の坂口先生がこの間指摘されていました。世論は選択的夫婦別姓を大多数が欲しているというところまでは来ていない、五割にもまだ満たないんだから、やはり六割ぐらい世論が賛成するようになってからやるべきじゃないかと。全く私は同じ考え方なんですね。

 でも、それでも大臣はこれはやらなきゃいけないと思っていらっしゃるのは、このブックレットにも書かれているんですけれども、「普通国会は市民の意識、あるいは要求していることが多数になってきたからそれに対応して法律をつくる、という部分が多いと思うんです。ただ、この夫婦別姓とか人権にかかわる問題は、多数になったからやればいいという問題じゃないと思うんです。多数であろうが少数であろうが、人権をきちっと守るということは多数決原理だけでやってしまうわけにいかない。」ということを書かれているんです。

 ですから、世論がどうだとかそういうことではなくて、私は、この間もお聞きしましたけれども、大臣の政治信条として、この選択的夫婦別姓を認めないと女性の人権を侵害していることになるんだ、そういう考えでこの法案を通常国会で成立させたいという強い意欲を持っておられるんだと思うんですね。その点をきちんと述べていただかないと、国民はわからないんですよ。

 なぜこんなに大臣がこの問題を、夫婦別姓を通常国会で成立させたいと思っておられるか、その点をきちんともう一度御答弁いただきたいと思います。

千葉国務大臣 この問題は、御承知のとおり、これも申し上げておきたいというふうに思いますけれども、議論はかなり前にさかのぼり、そして、そういうものを受けて法制審議会でも議論があって、そして一定の方向が取りまとめられてきたということだというふうに思います。

 そして、決して強制をするものではなくて、必要な方が選択できる、こういう意味では、社会の非常に多様な生き方、こういうものを尊重していこうという考え方に基づいているものであって、これは決して突然始まった話ではないというふうに思っております。

 そういう意味では、私の信念とかそういうことではなくして、社会的な多様なニーズ、こういうこと、そしてそれを踏まえて法制審議会などでも一定の方向を出している問題ですので、私は、そういうものを実現していくということは、決して私の独自の何か信念を貫こうということだけで御提起をさせていただきたいと考えているわけではありません。多くの皆さんからぜひ実現をしてほしいという声があることも確かだというふうに思っています。

 ただ、先ほど御指摘があった、人権にかかわる問題とかあるいは一人一人の価値観にかかわる問題、こういうことについて、多数決原理でそれを奪うようなことはできないということを、私は、信念といいましょうか、考えております。

 ただ、それを制度化するときには、やはり国会というところで皆さんの賛同を得て、あるいは理解を得ていかなければいけないわけですので、できるだけ御理解をいただいて、人権を奪うとか、あるいはそれを損ねるような、そういうことがあれば、この国会に御提起をして、そういうことがないようにぜひしていきたい、こういうふうには私も考えております。

 ただ、この夫婦別姓の問題は、私は、もう既に多くの皆さんが、特に人生の中でこういう問題に直面をしている世代の皆さんなどからは、ぜひ実現をしてほしい、そういう政策を実現してほしいといって要請をされている、そういう問題であろうというふうに思っております。

    〔樋高委員長代理退席、委員長着席〕

稲田委員 ただ、平成十八年の世論調査の結果、選択的夫婦別姓を認めるべきだという人は三六%、反対が三五%、通称使用を認めるべきだという方がたしか二六%だと思います。その結果の後に、法務省が、まだ選択的夫婦別姓を導入するほど世論は高まっていないという結論を出されております。私は、世論はそんなに高まっていないと思うんです。

 私が先ほど大臣にお伺いをしたかったのは、この問題を人権侵害の問題だととらえておられるかどうか。この点について過去二回御質問いたしましたが、その点、最初は大変明確に、人権侵害の問題なんだ、そしてそのおそれがある問題なんだとお答えになりましたけれども、二回目はかなり不明確な形になりましたので、ですから、私は何も、大臣の政治理念を通してください、そういうことを言っているんじゃなくて、その点をきちんとおっしゃるということが、やはり私は政治主導ではないかなと思っております。

 話をちょっと戻しますが、今回の法案では、先ほども言いましたように、人を死亡させた罪で死刑に当たるものについては公訴時効自体は廃止をいたします。特定の犯罪について時効制度を撤廃するということで、全く新しいことなんですが、諸外国でどういう例になっているのか、お答えをいただきたいと思います。

千葉国務大臣 諸外国の公訴時効制度について、すべてではありませんけれども、若干御紹介をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、英国でございますけれども、一般的には我が国の公訴時効制度に該当するような制度はございません。ただ、略式起訴犯罪、いわば軽微な犯罪については、制定法上公訴時効の期間制限が定められておりまして、略式起訴犯罪に関する公訴提起の期間制限は原則として犯罪の実行から六カ月以内とされている。例えば、自動車乗り去りの罪などは犯罪の実行から三年が経過するまで、無免許運転等の罪については犯罪の実行から三年または検察官から見て十分な証拠がそろったときから六カ月のいずれか早い方が経過するまで、こういうような定め方がされているというふうに承知しております。

 米国でございますけれども、連邦においては、死刑に当たる罪については時効はございません。それ以外の罪については、原則として犯罪が行われてから五年以内に訴追を行う必要がある。例えば、重要な芸術作品の窃盗に係る罪については二十年、それから十八歳未満の児童に対する性的、身体的虐待や誘拐の罪については、被害児童の生命の存続する期間か十年のいずれか長い方が経過するまで、こういうようなことになっております。

 それから、ドイツですけれども、ドイツには訴追時効の制度がありますけれども、謀殺罪及び民族謀殺罪は、ジェノサイドのようなものですけれども、時効にかからないことになっている。それ以外の罪については、無期自由刑に当たる罪について三十年、長期十年を超える自由刑に当たる罪については二十年等々と定められております。

 フランスでございますが、フランスには公訴時効の制度はありますけれども、人道に対する重罪は公訴時効にかからないということとされております。それ以外については、重罪は十年、軽い罪については三年、違警罪については一年という形で時効にかかることになっておりますけれども、未成年者に対する強姦、拷問等の最中またはその後に伴う故殺または謀殺等の重罪については二十年ということに定められております。

 おおよそ、ちょっと頭に浮かぶ、それから、わかる範囲でございますけれども、外国の公訴時効制度について、この程度まず答弁させていただきたいと思います。

稲田委員 副大臣にお伺いをいたします。

 副大臣は、参議院の松野委員の、なぜ民主党案を一顧だにしなかったのかという質問に対して、足立区の小学校の女性の先生の殺害事件で時効完成後に真犯人が明らかになったという件を引き合いに出して、こういう場合、民主党のかつての案では対応できないというふうにおっしゃっております。今回の法案では、その足立区の小学校の女性の先生の殺害事件で時効完成後に真犯人が明らかになった場合には適用があるのかどうかという点が一点。

 それからもう一つ、先ほどもるる答弁がありましたけれども、時効が進行中の事件について遡及的に適用されることは憲法三十九条に違反しないんだということでありますけれども、では、時効が完成した事件について遡及的に適用することが憲法上問題があるのか、この点について副大臣の見解をお伺いいたします。

加藤副大臣 まず、足立の小学校の女性の先生が殺害をされた事件というのを参議院の法務委員会で例として挙げさせていただきました。

 例えば、あの事件のように、犯罪行為が行われたとき、あるいは、それから公訴時効が成立をする期間の間ではその事件があったことすらわからずに、時効が成立した後に事案そのものが発覚をしたり、あるいは真犯人が特定をされたりというケースがあったとするならば、それは現行の制度では訴追できないわけであります。

 今回、法改正をされると、殺人事件だとすれば公訴時効が廃止をされることになりますので、あの足立区の事件云々という意味ではなくて、一般論として言えば、今後は、仮にしばらく時間がたってから事案そのものが発覚をしたというケースでも、十分な証拠がそろって真犯人が明らかになれば、それは公訴を提起できるということになります。

 それから、二つ目のお尋ねでございますが、既に時効が完成している事件について、今回の改正法を適用しないのか、それは憲法上どうなのか、こういうお尋ねかと思います。

 これは、一たん時効が成立をしているという時点で、国家としての刑罰権が行使できなくなって処罰を逃れたということになるわけですけれども、遡及適用するということは、それを改めて処罰できるようにしようという話でありますので、これは、憲法三十九条との関係で法制審においても随分御議論があったというふうに聞いておりますし、また学説上もさまざまな、両論の御意見があるというふうに承っております。

 ただ、その専門家の皆さんの、あるいは学者の皆さんの御議論の中でも、三十九条に触れるのか触れないのかという議論以上に、そもそも今回の改正の中でそれはするべきではないだろうという御意見が圧倒的に多数だったというふうには聞いておりますし、これは国会においてもいろいろな先生方の御意見、御示唆をいただいて、あるいは大臣、私、政務官で議論をする中で、一度時効が完成したものについてさかのぼって適用する、時効が完成した事件についてもまた公訴が提起できるようにするということはやはり避けるべきではないかという判断をさせていただいたところであります。

稲田委員 ただ、今回の法案が成立しますと、例えばあと一カ月とかあと二日で時効が完成するというような犯人の期待は保護する必要がないんだ、真犯人の逃げ得を許すべきじゃないんだ、一定期間逃げ切れれば終わりだというような、そういう期待を保護すべきじゃないんだという趣旨だと思います。そうしたら、時効が完成してその二日後にこの法律が施行されますと、それもまた真犯人の逃げ得を許すことになるので、同じなのではないかと思うわけです。

 なぜ、今進行中の分については憲法三十九条に違反しなくて、そして時効が完成したら憲法三十九条に違反するのか、その点について法務副大臣の見解をお伺いいたします。

加藤副大臣 まず、これから時効の完成を迎えようとしているものについては、先生今御指摘になられましたように、その真犯人がいたとするならば、あとこれだけの期間逃げ通せば処罰されなくなるという勝手な期待を持っているにすぎませんから、その期待まで法律上保護する必要はないだろうという判断をさせていただいたのはそのとおりであります。

 一方、一度過去に時効が完成をしている事案については、先ほども申し上げましたように、法制審の刑事法部会などにおきましてもさまざまな御意見があって、両方の御意見があったところではありますけれども、つまり、学説的に何か一致した答えが出ているということではないというふうには理解いたしますが、しかし、その真犯人なり被疑者といいますか当事者からすれば、一たん時効が成立をして、もう自分は裁判にかけられることはないんだということにもう既になったものでありますので、それを、時がたった後に、後日改めて、いや、やはりあなたを罪に問うんだよという話になりますと、やはりその当該被疑者といいますか真犯人の社会的な地位というものを著しく不安定にするのではないかという御意見も多数であったというふうに考えております。

 また、憲法三十九条に触れるかどうかという議論は両論あるのはわかってはおりますけれども、やはりその趣旨からすると、ふさわしいというふうには言えないんじゃないかという判断をさせていただいたわけであります。

稲田委員 私は、時効が進行中の事案について遡及することが憲法三十九条に違反しないというのであれば、完成した分についても憲法上の問題は起きなくて、そこはやはり政策判断の問題なのかなと思いまして、お伺いをした次第でございます。

 中井大臣、ありがとうございます。お伺いをいたします。

 重い犯罪について公訴時効が廃止されるとなりますと、捜査機関においては、該当する事件についてはかなり長期間にわたって、捜査人員を維持し、捜査記録や証拠品を適正に保管することが求められてくると思うんです。ここは民主党案と違って、全部そうなると、かなり警察における人的、物的な体制についての負担がふえるのではないかと思いまして、その点はどうなのかという点が一点。

 続けて、もう一点もお伺いいたします。

 人間の生命は永遠ではありませんから、公訴時効が廃止されたからといって、ある程度の長期間が経過すれば、実際に犯人を起訴するということはできなくなると思います。当然のことながら、未来永劫にわたって一定の捜査体制を維持するということは現実的ではないと思っておるんですけれども、どれぐらいの期間が経過をしたら捜査を事実上中止すると思われているのか、その点についてお伺いをいたしたいと思います。

中井国務大臣 先生の御質疑は、私が野党時代、稲田さんが一年生議員で出てこられて、与党でさっそうと議論をされて、まあ、観点が違うときはありますが、本当に立派な御質問をされておると敬服をいたしてまいりました。

 私も長い経験ですので、一言だけ申し上げれば、うそ八百というのは言い過ぎだ、まことに申しわけないが。

 マニフェスト、あれは四年で実行するということでございます。したがいまして、財源の九兆円も、今年度は二兆円余りをつくり出しましたが、四年間であと七兆円をつくり出す、こういう思いで、あと三年の間でつくり出すということでやっておりますので、また御理解をいただきたいと思います。

 ただいまの御指摘の点は一番大事なところでございます。これから保管のふえる分、あるいは証拠が劣化しないようにどういうふうに保存をするか等々を十分検討していかなければなりません。

 特に、DNAの型、これをどう残していくかということについては、自公政権以来、少し予算化がされ、私どもになりましてから、急激に冷凍庫等をそろえて、今準備をいたしているところでございます。五十年で本当に劣化せずにもつのか、どういう低温でいけば何年もつのか、こういうことについても今実験を実は始めているところでございます。これらに基づいて、十分科学的対応が長年にわたってできるように頑張っていきたい。

 ただ、おっしゃるように、百年証拠を残して、それじゃ犯人はといったらもう死んでいるわけでありますから、ここら辺も、どういう御意見になるのか、幅広い御意見の中で警察として検討を続けていきたい、このように思っております。

 今の重大犯罪、捜査本部が置かれた事件の証拠は、そのままずっと百年積み重なったとして、東京ドームの半分ぐらいの広さが必要になるのかなという単純計算は法制審議会には出してございます。しかし、この法案が通った後、十分な検証をしてまいりたいと考えています。

稲田委員 マニフェストのうそ八百について御指摘をいただいたわけですけれども、でも、ガソリンの問題にしろ、高速道路の問題にしろ、財源の九・一兆円の問題にしろ、四年間でやられるとおっしゃっていますけれども、私はやはり、こういったマニフェストが全く実現されていないということが国民の政治に対する信頼を失っているし、また、政策集に掲げていることと全く違うことをされるということは、民主党とか自民党とかいうことではなくて、日本の政治に対する不信を招いているし、また、どうやってその政策をつくったかというか決定したかという議論を最高の言論の府である国会で尽くしていただきたいと思います。

 以上でございます。

滝委員長 次に、柴山昌彦君。

柴山委員 自由民主党の柴山昌彦です。

 まず、質問に先立ってお伺いしたいんですけれども、報道によりますと、民主党小沢幹事長の政治資金規正法違反に関する検察審査会の議決がきょう、あすじゅうにも出るのではないかということが言われておりますけれども、この検察審査会の議決におきまして、不起訴不当あるいは起訴相当の結論だった場合に、その結論というものは尊重されるんでしょうか。法務大臣にお伺いします。

千葉国務大臣 まだこれからどのような推移になるかは私も全く承知をいたしておりませんし、どのような御結論になるのかもわかりません。仮定に基づいたことについて、今私の方から答弁をさせていただくということは差し控えたいというふうに思います。

柴山委員 検察審査会の議決の効力に関しては改正も行われているところでもあります。しっかりと一般の方々の気持ちが刑事処分に反映されるようにという改正でございます。ぜひとも、検察当局あるいは法務省におかれましては、こういった法の改正の趣旨もしっかりと勘案して、適切な処分をしていただきたいというように思っております。

 そして、加えて、鳩山総理の公設秘書であった勝場啓二氏の判決公判、これも、あさって午後三時からだったかと思いますが、予定をされております。これを踏まえて、検察庁に提出されている資料についての説明をしっかりと行うようにということを、総理に対して閣僚として説得される御意思があるかどうか。きょうは閣僚が二人お見えでございますので、それぞれ質問をさせていただきたいと思います。

千葉国務大臣 総理も、この間、答弁を、御説明をされていることでもございますので、多分的確に対応をとられるものだというふうに思います。それに基づいて、必要なことはきちっと法務省、検察の対応としてとっていくように私からも指導したいというふうに思います。

中井国務大臣 近々判決が出るというのは、今初めて知りました。その後、被告人が控訴するのかどうかも含めて私どもは判断がつきかねます。

 しかし、いずれにいたしましても、裁判の判決文あるいは資料等は、弁護士を通じてきちっと処理されるんだろうと考えております。

 また、私個人といたしましては、一日も早く政治資金規正法に基づいて修正提出をしてほしいと考えております。

柴山委員 ちょっと質問の意味をよく理解していただかなかったのかなというように思いますが。

 千葉法務大臣、私は、鳩山総理が、以前おっしゃっていたように、最終処分が出た後に、検察庁に提出されている資料をしっかりと説明をする、あるいは国会の場に提出をするということがなされなかった場合に、それをするように閣僚として説得するかどうかということをお聞きしているのであって、それが出された場合に法務省として的確な対応をとるというのは当たり前のことでありますので、その点を再度お答えいただきたいと思います。

 それと、あと中井国家公安委員長の方にお伺いをしたいのは、これは自白事件なんですね。要するに、勝場秘書は罪体を争わない、全面自供をしているわけです。ですので、有罪をみずから認めておられるわけですから、実刑が出るのかあるいは執行猶予が出るのかわかりませんけれども、量刑不当ということで控訴をすることは、あり得ないことではないかもしれませんが、それは恐らく、御自分で判断をした上でこういう自白をされているんでしょうから、控訴ということは余り考えられないのかなというように思っているんです。

 そうなりますと、恐らく、あさっての判決の後、一定の期間の経過をもちまして判決が確定をするということになるわけですから、その場合におきまして、やはりしっかりとした処理が必要になってくるのではないかと思うんですが、その点、いかがお考えでしょうか。

中井国務大臣 総理が国会あるいは委員会等で国会議員の方々にお約束されたことは、それはそれで実行されるものだと考えております。

 また、裁判につきましては、先生は弁護士さんでいらっしゃるから方向づけ等がよくおわかりなんでしょうが、私どもは、やはり裁判中は余りいろいろなことを申し上げない方がいい、こういうふうに育っておりますので、失礼をいたします。

千葉国務大臣 先ほど申し上げましたように、この間の総理の説明あるいは国会での答弁等を含めて、一定の裁判ということがはっきりした段階で適切に対処するとおっしゃっているわけですので、適切に対処されるものだと私は考えております。

柴山委員 質問にお答えいただいていないので、再度お尋ねいたします。

 総理は適切に対応されると思うというようにお答えでしたけれども、私がお聞きしているのは、適切な対応がとられなかった場合に、とるように説得するかどうかということを大臣にお聞きしているんです。

中井国務大臣 仮定で、たらればの話にお答えするわけにはいきません。

千葉国務大臣 同じことで恐縮でございますけれども、的確な対応をとられるものと思います。それ以上、どういう事態になるかは、仮定の話になりますので、お答えはできません。

柴山委員 お二人の大臣のしっかりとした信頼に沿った行動を総理がとられることを期待申し上げて、質問に入らせていただきます。

 先ほども御質問があったかと思いますけれども、本時効延長に関する法律なんですが、民主党の政策集インデックス二〇〇九の十三ページ、こちらに書かれている文言としては、「公訴時効のあり方については、法定刑に死刑が含まれる重罪事案のうち特に犯情悪質な事案について、検察官の請求によって裁判所が公訴時効の中断を認める制度を検討します。」という文言となっているわけです。

 にもかかわらず、参議院法務委員会での質疑によると、この案は一顧だにされず否定され、政務三役が今回の時効などの一部撤廃法案を採用されたということですけれども、それはどういうことなんでしょうか。

千葉国務大臣 今、一顧だにされなかったという、それを引用をなさりましたけれども、決してそういうことはございません。公訴時効の見直しについては、いずれにしてもやらなければならないという方向性は、いずれもが持ち合わせていたわけでございます。このようなそれぞれの考え方、幾つかの考え方、これを合わせて、それから、多くの国民の皆さんの御意見、そして法制審議会で大変充実した議論をしていただいて、そういうことを経て、民主党のインデックス、公訴時効を見直そうということを踏まえつつ、今回の法案の取りまとめをさせていただいたところでございます。

 法制審議会でも、民主党の提起をした考え方、それから、これまで前政権のもとでいろいろ御議論をされてきた考え方等を合わせて、それから、いろいろな関係者の皆さんの御意見も聴取をいただいて、そして一定の方向をまとめていただいたということでございます。

 それを尊重しながら今回の法案の取りまとめをさせていただいたということでございますので、全く一顧だにしないなぞということはございません。

柴山委員 この問題に関しては、今御指摘のとおり、森英介前法務大臣のもとで法務省内で勉強会が設置されて、早川忠孝前政務官を座長とするワーキンググループで検討が進められてきた、そのとおりであります。

 ただ、その結果として昨年の七月十五日に取りまとめが行われておりますし、また、それに至る過程で中間状況に関する報道もたくさんありました。そして、それを大臣初めインデックス作成に関与されてきた民主党の方々は承知の上で、あえてインデックスにこうしたオプションを示されたわけなんですね。

 だから、当然のことながら、自民党政権下において取りまとめされた案とは、もちろん法制審では民主党さんのインデックスに従うオプションも示されて検討の対象とはなっていたんですけれども、あえてそちらの方を政権公約に伴うインデックスの方には書かれていたわけですから、これは民主党としての明確な意思がその時点であったというように私は解さざるを得ません。にもかかわらず、政権についた段階で、なぜみずからが否定された私たちの案の方に乗りかえたのか、そこのところをぜひお聞きしたいと思います。

千葉国務大臣 乗りかえるとか、あるいは全く同じものを採用したということではございません。いずれにしても、公訴時効を見直そうということについては方向性があったわけでございます。

 ただ、どういう形で公訴時効の見直しを行うか。しかも、御承知のとおり、やはり重い犯罪について逃げ得を許したり、あるいは刑罰権の行使を消滅させるというようなことを避けなければいけない。しかし反面、捜査の負担とかあるいは防御権の行使、こういうことにも配慮をしなければならない。その両方の配慮のもとで、幾つかの意見あるいは考え方、そういうものが出されていたものだというふうに思います。

 そういうことを全体としてもう一度精査をして、そして多角的な見地から法制審議会でも議論をいただき、私どもも、みずから出していた考え方あるいは前政権が出されていた考え方、そういうものをもう一度考えてみたところ、今回のような案がやはりそれぞれの考え方、意見を十分に盛り込みつつ納得いただける案であろうということで、このような案にまとめさせていただいたということでございます。

柴山委員 長々とした御答弁だったんですが、要は、まとめると、インデックスをつくるときには粗雑な検討しかしていなかった、だけれども、政権をとってからよくよく丁寧に検討したら、やはり自民党で検討された案の方がよかったということで、要するに、マニフェストというものあるいはインデックスというものは粗雑な検討の上でしか出されていなかったということをおっしゃりたかったんですね。確認です。

千葉国務大臣 インデックスで提起をされた案も、それからこれまで前政権下で、いろいろ自公で御議論をされてきた案と、それぞれ完璧なものということではないというふうに思っています。そのいろいろな案をもう一度議論をさせていただき、そしてまた専門的な見地やあるいは多くの国民的な意見、こういうものも含めて再度精査をさせていただいた、こういうことでございまして、どの案が粗雑で、あるいはどの案が完璧で、こういうことではない、いいものをできるだけ納得いただけるものにまとめて今回の案に至っているということでございます。

柴山委員 再度申し上げたいんですけれども、民主党のインデックスの案というのは、ずっと検討されていた法制審議会のC―2の案と同じなんですね。要するに、今回採用された案と並べて検討されているオプションの一つだったわけです。それぞれについてしっかりと検討され、そしてその上で昨年七月十五日に取りまとめが行われているわけですね。実際に選挙がなされたのは八月の三十日なわけですから。にもかかわらず、民主党がこのC―2のオプションの方を選択されたということは私は極めて重いというように思いますし、政権につく前は違うことを言って、政権についたら自民党の政策をぱくるというのは、有権者に対して極めて不誠実だと言わざるを得ません。

 ちなみに、大臣は、今度実施される参議院選挙ではマニフェストの大幅修正は行うべきだとお考えなんでしょうか。これは中井大臣にも、お二人にお聞きします。

千葉国務大臣 私は、マニフェストは、昨年の政権交代において、これから与えていただいた四年間で実現をしていく、こういうことを掲げさせていただいているものでございますので、そういう意味では、これが今回で極端に変わるというものであってはならないというふうに思っております。

中井国務大臣 先ほどもお答えしましたように、マニフェスト自体は四年で実行する、こういうことが大前提であります。今回の参議院選挙では、まだ一年目。御批判はたくさんいただくことは承知をいたしておりますが、私は、大きな修正なしで、マニフェストどおり選挙戦を戦って御評価をいただくべきだと考えています。

柴山委員 今の御答弁は議事録にもきちんと残りますので、私も、お二人の御答弁についてはしっかりと記憶のメモリーにたたき込みましたので、この後民主党がどのような形で政権をおつくりになるのか、それを確認した上で今後の国会質疑に臨ませていただくことを御理解賜れればと思っております。

 続きまして、平成十六年の刑訴法改正で、既に時効期間の延長というものはなされておりました。にもかかわらず、今回このような時効延長また撤廃の措置を行った趣旨、これは一体どういうところにあるんでしょうか。

千葉国務大臣 平成十六年の改正でございますけれども、これは、凶悪犯罪を中心とする重大犯罪に対して、事案の実態及び軽重に即した適正な対処を可能にすることを目的として、法定刑の重い犯罪について公訴時効の延長という手直しを図ったという内容でございます。すなわち、平成十六年の改正というのは、これから将来、重い犯罪についてきちっと処罰をしていこう、こういう方向性を持って行われたものでございます。

 今回の改正というのは、むしろこれまで生じた犯罪について、処罰の機会を失うような、消滅させるようなことをしない、処罰に対して厳しく対処をしていくということを目的としていると考えていただければというふうに思います。

 この間に、やはり逃げ得を許してはならない、それから、重大犯罪に対して厳しく処罰を求める、こういう国民的な意識やあるいは被害者の皆さんからの大変強い要望、こういうものが出てきていたということも事実でございますし、今申し上げましたような、十六年の改正は、法定刑を厳しくして、それに基づいて公訴時効も延長する、こういう、これから先のこと。そして今回については、もう既に起こっていることについて公訴時効という形で処罰の機会を消滅させるようなことをなくしていこう、こういうところに大きな趣旨があるということで、十六年改正とはいささか趣旨を異にするというふうに考えております。

柴山委員 いろいろな背景があったんだろうとは確かに思います。

 今、重罰化に伴う時効期間の延長というようにちょっととられかねない御答弁だったんですが、重罰化とは別に、時効期間そのものの延長も平成十六年改正法では内容としておりましたから、そこはやはり、その十六年改正の刑訴法で時効期間の延長ということがされたことはお認めをいただかなくてはいけないんだろうと思っておりますし、それでは不十分だった、今法務大臣が御指摘になられたように、過去について遡及をしない、また十五年から二十五年というような形の引き上げでは、必ずしも国民感情に沿った形とは十分言えなかったということはあるのかなと思います。

 もう一つ、私がつけ加えさせていただくとすれば、前政権のもとで、被害者に対するさまざまな配慮、被害者救済のための施策というものをこの数年間急速に進めてきたものですから、そういう方々がこれまで声なき声として虐げられてきた部分が表に出てきて、そういう方々の正義の声というものがやはり届く環境になってきたということも非常に大きな要因の一つだったのかなというようにも私は感じております。

 そしてその一方で、弁護士会からは、今回の法改正の結果、被告人に有利なアリバイ証言や情状証言などが得られる可能性が時の経過とともに低下をしてしまって、一方で、中井大臣が先ほど御指摘になったDNA鑑定などの客観証拠、これが偏重されるのではないかというような指摘をする声があるんですけれども、これについてはどのようにお答えになられますでしょうか。

加藤副大臣 柴山先生に御答弁申し上げるというのはもう釈迦に説法で、十分御理解の上での御質問だと思いますが、事案が発生してから長時間経過をしたことによって証拠が散逸をして、今おっしゃられたように、被告側が防御上不利になるのではないか、困難になるのではないか、こういう御指摘があることは私どもも承知をしておりますし、その可能性が一〇〇%全くないんだというところまではなかなか申し上げにくいだろうというふうにも思います。

 ただ、刑事訴訟の手続におきましては、御案内のとおり、検察官が挙証責任を負っているわけでございまして、犯罪の構成要件はもとより、違法性の阻却事由及び責任阻却事由のすべてについて、合理的な疑いを超える程度の立証をしなければならないということでありますから、あくまでも一般論でありますけれども、時間の経過によって証拠が散逸したといたしますと、被告の方だけに不利に働くということにはならずに、それを立証する検察官の方も難易度が高くなる、また、ある意味ではそちらが不利になるということも当然あり得るだろうというふうに思います。

 実際、刑事訴訟におきましては、もうこれも釈迦に説法でありますけれども、被告人の人権を保障して適正な裁判を行うというための仕組みもあるわけでございまして、検察官の挙証責任だけではなくて、証拠裁判主義、自由心証主義、自白法則、伝聞法則など、さまざまな制度も整えられておりますから、こういう仕組みが正しく機能する限りにおきましては刑事裁判も当然適正に行われる、疑わしきは被告人の利益にという原則で適正に行われるものというふうに理解をいたしております。

 多少付言をさせていただきますと、公訴時効の廃止、延長によって、その立証上、例えば証人の方が亡くなられるなんというケースも当然起こり得ると思いますから、それが有利、不利だということにつながらないように、不均衡にならないようにするという観点からも、客観証拠についてはやはり適正に保管をされてくるということは極めて重要だというふうに思ってございます。

 これは、きょう中井大臣お見えでございますから、本来なら国家公安委員長からお話しいただいた方がいいのかと思いますが、とりわけ、昨今注目を集めておりますDNA型鑑定試料の適正保管などについては、これまでもさまざまな取り組みをされておりますけれども、さらにより一層、今回の法改正に合わせまして、適正を確保していかなければいけないというふうに考えているところであります。

柴山委員 それでは、加藤副大臣の御指摘ですので、中井大臣の方にお伺いいたします。

 この法改正に伴う特に警察捜査の現場への影響、これがやはり非常に懸念されるわけでして、今のそのDNA等の客観証拠についてももちろんですけれども、先ほども御質問があったような、凶悪事件についての捜査体制ですね。例えば、捜査本部の解散時期、こういうようなこともやはり影響が出てくると思うんですね。単純な発想ですけれども、当然、時効が長引けばその分対象となる事件もふえてくるわけですから、そういうことに対して、人員等の確保また配置、そういうことが適正にできてくるのかどうかということをお伺いしたいと思います。

 またあわせて、法務省についても、捜査担当官庁の一環として、同じ質問をさせていただきたいと思います。

中井国務大臣 御承知だと思いますが、捜査本部は犯人検挙をしない限り解散することはありません。しかし、時効廃止に伴いまして、それでは人員配置をどういうふうにするのか、あるいは、今でしたら、時効五年前あるいは一年前、もう一度事件を見直そうじゃないか、こういうことでやっている本部も多いわけでございますが、今度は時効がなくなったらいつどの時点で見直しをやるのか、こういったことについても、法案成立後、改めて捜査本部体制のあり方といったものについて十分な対応をとっていかなければならない、このように考えています。

 なお、この機会に付言をさせていただければ、過般、海外でマスコミの方が騒動に巻き込まれて亡くなるという悲惨な事件がございました。この事件も、御遺体が日本に帰りまして、お住まいの警察署に本部を置くというので、僕は、それは違うだろう、こういう事件がこれから起こったときに、海外と連携をとるという意味ではそれは警視庁だろうということで、今回は警視庁に捜査本部を置く、そして、地元の署にも御遺族に十分対応できる体制もつくる、こういう新しい方向を打ち出したところでございます。

 これから、法案が成立後、時効がなくなるという事件を中心に、どういうふうに捜査本部体制をつくっていくか、そして、どのぐらいの期間本当に頑張り抜くか、こういったことを含めて体制をつくっていきたいと考えています。

加藤副大臣 警察での取り組みについては、今、中井大臣から御説明のあったとおりでございますけれども、今回の法改正で対象としておりますような凶悪重大事件につきましては、今の中井大臣の御発言にもございましたとおり、捜査の初期段階からの取り組みが非常に重要でございまして、検察当局といたしましても、その初期段階から警察との緊密な連携を図りまして、適正な捜査を進めていかなければならないというふうに考えてございます。

 そのために、検察といたしましては、今月最初でありますが、本年の四月一日付で、殺人などの凶悪重大事件のうち、警視総監または各道府県警察本部長が捜査本部を設置した事件などに関する事項を担当いたします本部係検事というのを全検察庁に配置することにいたしました。この本部係検事が捜査の初期段階から警察と緊密に連携をとりまして、捜査状況等を正確に把握するとともに、犯人が絞り込まれていくその過程も吟味をいたしまして、犯人の特定やその後の捜査に遺漏なきよう対応していくということを目指しているところでございます。

柴山委員 ぜひ積極的なお取り組みをお願いいたします。

 続きまして、先ほど来質問が出ていることでありますけれども、今回、時効期間の延長、廃止を、法施行時に既に実行されている犯罪についても遡及して行っていくということになっております。最初の質問は、繰り返しになりますので短く御答弁をいただきたいんですが、憲法三十九条、事後法禁止との関係での問題点ということについて、ぜひ御説明をいただきたいと思います。

千葉国務大臣 今回の、時効が進行中のものについて公訴時効、法改正を適用するということについては、憲法三十九条というのは、実行のときに適法だった行為を後から処罰するとか、あるいは刑罰を後から重くするということをこの三十九条が禁止することの趣旨であろうというふうに思いますので、進行しているということについては、この三十九条には違反をするものではないということで今回の改正をさせていただくということでございます。

柴山委員 それでは、先ほど稲田委員も御質問されていましたけれども、憲法三十九条の枠外に今回の法律があるということであれば、なぜ時効完成前の事件のみを対象として遡及することとしているのか。これは、理論上、かなり不徹底ではないかという指摘があり得ると思うんですが、いかがでしょうか。

千葉国務大臣 御指摘の点については、法制審議会でもかなり御議論があったところであるというふうに聞いているところでございます。

 この憲法議論について私が結論を出すなぞということにはなかなかできませんけれども、法制審の中でも、一たん公訴時効が完成したものということについて改めて改正を、時効がまた進行するというようなことになりますとこれは三十九条に違反をすることになるのではないか、こういう考え方もあるというふうに指摘をされています。ただ、かといって、そうではない、三十九条に違反しないという、そういう考え方も学説上はあるということです。

 ただ、法制審議会では、今回は立法政策上ここまで改正に盛り込むべきではないということが一致した取りまとめであったというふうに私も受けとめておりますので、明確に三十九条には違反しないだろうという御意見が多数であるものと、やはり三十九条に違反するのではないか、こういう危惧がかなり強く出されているものとは、やはり取り扱いにおいて差異を設けるというのは私は必要なことだろうというふうに思っております。

柴山委員 ごめんなさい、ちょっと私はまだよくわからなくて。

 加藤副大臣がさっき御答弁されていたんですけれども、時効が完成をしたということで、その後の犯人の社会的な地位ですとか、あるいはそのいろいろな期待というようなことをおっしゃっていましたけれども、まず、ちょっとわからなかったのは、もう少しで逃げおおせるんだという犯人の期待は一切保護しなくていいというふうにして、ああ、逃げおおせたなという犯人の期待は保護するということが、本当にその均衡上妥当なのか。

 それからまた、社会上の地位が変わるというふうに言われましたけれども、時効完成前の犯人の社会生活と時効完成後の犯人の社会生活というのは、そんなに変わるものなんですかね。しかも、これは、法施行が一日、二日ずれれば、要するに、それで対象となる犯人の範囲も変わってくるわけですね。

 そういうことも考えると、遺族間の公平ということについても、ちょっと私はなかなか腑に落ちない部分も残るんですけれども、これについて再度御答弁いただきたいと思います。

加藤副大臣 施行の日によってそこで差が生じてしまうというのは確かに起こり得ることでございまして、これは、この法律に限らず、どんな法案でも残念ながら発生する事案であります。

 今まで公訴時効が定められていたものを今回法改正によって一部廃止をしようということでございますから、その施行前後だけ見比べれば、どうしてその数日でこんなに違うんだということは確かに起こり得ることだとは思いますけれども、社会全体の大きな変化ということでいえば、十分に御納得いただける方向への改正だというふうには思ってございます。

 先ほどの御指摘でありますけれども、一度過去に公訴時効が完成をしていて、いわば国家として刑罰を与えない、刑罰権を行使できなくなったという事案について、つまり、犯人からすれば、もう一たん処罰を逃れたということが確定をしたものについて改めて事後的に処罰することに変更するんだということになりますと、先ほど稲田先生の御質問にもお答えしたとおり、憲法三十九条の問題ではさまざま両論の御意見があったことは承知はしておりますけれども、いわば一たん適法となった行為を後々さかのぼって処罰するに等しいではないかという指摘もあるところでありますし、また、法制審議会などでの議論でも、憲法がどうかということとは別に、判断として、それはとるべきではないのではないかということについては大多数の御意見だったというふうに聞いているところでありまして、これは三十九条云々ということではなく、判断として、それは相当ではないというふうに考えたところであります。

柴山委員 また別の質疑者からもこの点については質問があるかと思いますので、とりあえず、次の論点に移らせていただきます。

 今回の時効期間の延長によって、強盗殺人罪と強姦致死罪、この二つの構成要件の間でどのような違いが生じてくるんでしょうか。

千葉国務大臣 今回の法改正で公訴時効を廃止する犯罪というのは、刑事責任の追及に期限を設けず、事案の真相をできる限り明らかにすることが強く要請されるほどの当罰性を備えた犯罪とすべきだということで、人を死亡させた犯罪のうちでも最も悪質であり最も刑も重い、故意に人を殺害した殺人等を中心とした死刑に当たる罪に限るという形になっているところでございます。

 強姦致死罪については、確かに私も大変凶悪重大な犯罪だというふうに思います。ただ、法定刑として死刑が定められておりませんで、殺人罪や強盗殺人罪とは法定刑を異にしているということで、やはり公訴時効については一定の明確な基準に基づいて制度設計をしなければいけないということになりますが、今回は、人を死亡させ、それから死刑に当たる罪だということをもって定めさせていただいておりますので、強姦致死罪については、重大ではございますけれども、今回の公訴時効の廃止というところには該当しないということになるわけでございます。

柴山委員 今大臣が御指摘のとおり、強姦致死という犯罪は、やはり非常に憎むべき、犯情の重い構成要件だと思います。にもかかわらず、今大臣が御答弁のとおり、強盗殺人については死刑という法定刑が定められているのに対して、強姦致死については死刑というものが入っていないということであります。

 そもそも論ですけれども、なぜこの二つの構成要件にこのような法定刑の差ができているんでしょうか。

千葉国務大臣 これはもう委員御承知のところであろうというふうに思います。

 強盗殺人といいますか、強盗致死という個別類型は、強盗致死と、それから強盗殺人という故意犯も含めて構成をされております。それに対して、強姦致死というのは故意犯を含めていないということになります。

 ただ、例えば、殺意を持って強姦、そして致死の結果が起こったということになりますと、これも御承知のとおり、観念的競合という形で殺人罪も適用になりますので、そういうケースであれば、これは公訴時効廃止の適用があるということになろうというふうに思っております。

柴山委員 それでは、大臣、今の御指摘のとおり、強盗殺人、刑法第二百四十条については、人を殺すことについて、それを予期していた、認識、認容していた、故意があった場合と、それがなかった場合と、二つの類型があるということでありまして、そのとおりだと思うんですけれども、それでは、そういった死の結果についての認識、認容がないときの強盗致死、この場合についての公訴時効というのはどうなるんでしょうか。

千葉国務大臣 まず、法定刑を定める場合に考慮すべき要素としては、違法性の程度や責任の重さ等が法定刑を定めるに当たって一定の基準とされるものだというふうに思います。公訴時効期間を定めるに当たって、考慮すべき要素に影響を与える法定刑を基準として公訴時効期間を定めるということが、そういう意味では合理的なことではないかというふうに思っております。

 生命という究極の法益を犯したという、取り返しのつかない形で奪うものであるという特殊性にかんがみて、人を死亡させた犯罪について特別の取り扱いをするとしても、人を死亡させた犯罪の中で公訴時効の取り扱いを定めるに当たっては、法定刑に応じた取り扱いをすることがやはり適当であろうというふうに思います。

 現行法上だと、強盗致死罪の法定刑には死刑が含まれ、強姦致死罪の法定刑には死刑が含まれていないということになります。これは多分、この法定刑の中に、違法性それから責任の重さということが、ある意味では評価をされているということになりますので、これに基づいて公訴時効についても取り扱いに差が生ずるということになるというふうに理解をいたしているところでございます。

柴山委員 そもそも問題意識としては、今、強盗についてお話ししましたけれども、死の結果について認識、認容をしていなかったにもかかわらず生じてしまったという過失の形態と、あえて人の命を奪うんだということを認識、認容していた故意のある場合とで、同列に扱うべきなのかということなのであります。

 大臣にお伺いしたいのは、基本的な犯罪を犯して、その結果、致死の結果が生じてしまった、それについては、求めていなかったんだけれども、たまたま死の結果にまで至ってしまったという中で、強姦致死罪には死刑というものは選択される余地がないんですけれども、結果的加重犯というように講学上言いますが、そういった犯罪で死刑というものが定められている犯罪というものはどういうものがあって、それで、強姦致死とは一体何が本質的に違うんでしょうか。

千葉国務大臣 死刑に当たる罪、すなわち、当該犯罪の法定刑として死刑が定められている犯罪は十九ございます。

 このうち人を死亡させた罪に当たるものは十二ございまして、このうち死亡の結果について故意がない結果的加重犯は、御指摘をいただいた強盗致死のほか、例えば汽車転覆等致死罪、あるいは往来危険による汽車転覆等致死罪、水道毒物等混入致死罪、強盗強姦致死罪、あるいは航空機墜落等致死罪、航空機強取等致死罪などがございます。

柴山委員 質問の後段に答えていただきたいんですが、そういった犯罪と死刑の定めのない強姦致死罪とは、一体何が本質的に違うんでしょうか。

千葉国務大臣 このようなものと、それから死刑が定められている犯罪、これはやはり、その犯罪の態様において、違法性あるいは責任の重さ、こういうものがそこに盛り込まれて法定刑が定められているものだというふうに思います。

柴山委員 もちろん、テロに準ずる行為ということであれば、その行為の危険性ということが一つの大きなファクターになってくると思います。

 また、そもそも強姦致死の場合は、その反抗を抑圧するだけの暴行でなくても、相手が怖がって、要するに、被害に遭ってしまうというところから、その暴行の程度というものがそれほど強くなくても強姦致死罪というものが成立してしまう余地があるということも背景にあるというようにも思います。

 いずれにいたしましても、死の結果について認容していなかったにもかかわらず、その致死の結果が生じてしまったというところに、その時効の廃止というところまで持っていくというのは、一つの検討というものを加える余地があったのかなというようにも思います。

 そしてまた、過失犯についてでありますけれども、過失犯について死刑が選択されるということはないんですけれども、例えば業務上過失致死の類型におきましては、医療崩壊が叫ばれる中で、例えばお医者さんの致死事件の公訴時効を五年から十年に引き上げてしまうと、カルテの保存期間ですとか医師の業務上、心理上の負担に重大な影響を与えてしまうのではないかということが指摘されると思うんですが、この点、いかがでしょうか。

加藤副大臣 柴山先生御指摘のとおり、今回の改正案では、業務上過失致死罪の公訴時効期間につきましては、これまでの五年間を十年間に延長するということにいたしております。ただ、この公訴時効期間と医療界におけるカルテ等の保存というのは、必ずしもそこでリンクしているといいますか、一致しているものではございませんで、医師法等によってカルテの保存期間は五年というふうに定められているところであります。

 これはもちろん、カルテそのものが、何か医療過誤が起きた、あるいは起きることを前提にして保存されているというだけの趣旨ではございませんので、医師法等の法令によって作成、保存を義務づけられている書類の保存期間というのは、いわゆるその作成、保存が必要と考えられる趣旨とか、あるいはその文書等の性質等から、十分に検討の上、定められているというふうに思います。

 一方、私どもの今回の御提案の改正案でありますけれども、犯罪の公訴時効期間を定めるに当たりましては、処罰の必要性と法的安定性の調和を図るという公訴時効制度の趣旨に照らして、基本的にはその法定刑によって定められるというのが相当ではないかというふうに考えてございまして、それゆえ、今申し上げたとおり、確かに立証上重要な特定の書類の法定保存期間と公訴期間というものがずれることはあり得ますけれども、それは必ずしも、だからといって時効の長さを左右するということにはならないというふうに思ってございます。

 仮に医療過誤のようなケースで立証をしなきゃいけないということになった場合にも、そのカルテの保存期間内に捜査あるいは差し押さえ、あるいは証拠保全手続などがなされることも当然あり得るわけでございまして、保存期間が過ぎたからといって立証が完全に不可能になるというふうに、必ずしもそうなるとは限らないものというふうに思います。

 一方、医師の萎縮の問題というのが先ほど来指摘をされておりまして、これは私もそうあってはならないといいますか、日本の医療界全体にとって、それが蔓延するということは決してプラスだというふうには思っておりませんが、そもそも、医療技術の進歩に伴って注意義務の内容が変化をしていくというのは当然の可能性としてあるわけでございまして、過失の認定基準にその変化が影響を及ぼすんじゃないかということが心配をされているというのはよく聞く話であります。

 ただ、注意義務の基準というのは、あくまでも行為当時の医療水準に照らして判断をされるべきものでありますし、これまでもそのように運用されてきたというふうに考えてございますから、今の段階で、業務上過失致死の公訴時効期間が延びたからといって、それがそっくりそのまま医療行為の萎縮効果を招くというふうには考えてはいないところであります。

柴山委員 今おっしゃった過失の認定に必要な注意義務違反ですけれども、副大臣が御指摘のとおり、これはやはり行為時の基準で判断をするということになるんだろうと思います。

 ただ、さはさりながら、DNAのときもそうだったんですけれども、技術が確かに進展をしていくわけですね。そういう中で、行為当時の注意義務を的確に認定して、それに対して違反していたかどうかということを判断するというのはなかなか難しいんじゃないかなというようにも思うんですけれども、もう一度、そこの部分についての配慮ということについてお聞かせいただきたいと思います。

加藤副大臣 御指摘のとおり、あくまでも、注意義務の基準というのは、医療行為が行われたその当時の医療水準に照らして判断をされるべきものであるというのはもう本当にそのとおりでございます。また一方で、医療技術の進歩というものが昨今大変スピードアップをしているというのも事実でございまして、それゆえ、先ほど御指摘を申し上げたような不安感といいますか御意見が出ているものと思います。

 ただ、行為当時の医療水準がどの程度のものであったかというのを判断する場合には、医学的に高い識見を有する医師による鑑定なども実施をされると思いますし、また、当該医療分野の論文やあるいは文献資料などにも十分当たった上で立証されるわけでありますから、その立証の過程が余り粗雑になるということはもちろんあってはなりませんし、ないものと確信をいたしております。

 また、刑事事件のみならず民事上でも、病院や医師などに対する金銭賠償等を求める医療過誤訴訟というのが起きておりますけれども、こちらにおいても同様の認定がなされているというふうに承知をいたしております。

柴山委員 ぜひしっかりと配慮の行き届いた形での捜査ということをお願いしたいというように思っています。

 そもそも、業務上過失致死という類型の中には、百名を超える死者が出た福知山線の脱線事故のようなケースもあれば、今話をさせていただいている医療過誤、大変社会的に話題を呼んだ福島県大野病院事件のようなケースもあるわけで、こういった多様なケースが同列に扱われるというのがいかにも不合理だというようにも思われるんですが、例えば、これは構成要件を細分化するというようなことはできないんでしょうか。

加藤副大臣 簡単に言うと、業務上過失致死罪を小分けにして構成要件を分ける、こういう御意見かと思いますが、それはそれで一つの考え方としてはあり得るのではないだろうかというふうには思いますが、これまでのところ、もう先生もよく御案内のとおり、自動車運転による過失致死傷事犯というものを業務上過失致死傷の中から切り分けて別の構成要件にした、別の犯罪にしたという事例があります。

 そのときのことを振り返ってみますと、そもそも、その切り分けをする前の段階で法定刑や処断刑の上限近くで量刑される事案がふえていた、もう圧倒的に上限に近い判決がずっと続いていたということがございますし、また、国民の皆さんの規範意識としても、いや、これは少し切り分けて別の量刑にした方がいい、あるいは、はっきり言えばもう少し重い刑罰を与えた方がいいんじゃないか、こんないわゆる国民的な意識が広がってきたというような事情があったというふうに認識をいたしてございます。

 先生御指摘のように、例えば福知山線の事故、では、例えば鉄道の事故はどうかとか、飛行機の事故はどうかとか、医療過誤はどうかということが、今申し上げたような国民的な議論が沸き起こってくれば、また当然検討の余地のある話だろうとは思いますけれども、きょう現在で、何か業務上過失致死罪の中からこの部分だけ切り分けた方がいいというのが世論の大勢になっているとまでは言えないというふうに思いますので、今後の検討課題としてはあり得るものというふうに理解をいたしております。

柴山委員 もうそろそろ時間がなくなってきたので、あと二つだけお伺いしたいんです。

 さっきも少しお話が出ていましたが、ひき逃げ事件ですね。ひき逃げ事件で人が亡くなった場合の法定刑と公訴時効期間、これは今回の法改正で一体どのようになるんでしょうか。これは今までと逆で、過失形態でも悪質な事例、こういうものについてどうなるんだという声が出ていることから質問させていただきます。

加藤副大臣 もちろん、ひき逃げが悪質であることは言うまでもありませんし、私も全く同感でございますけれども、そのひき逃げという部分だけ取り出しますと、いわゆる道路交通法上の救護義務違反ということになりますので、その罪だけで考えれば今回の改正の対象にはならない、人を死亡させた罪ということにはならないというふうに理解をいたしております。

 ただ、これまでの経緯で、御案内のとおり、悪質な交通事犯については、平成十三年に危険運転致死傷罪が創設をされて、平成十六年にはその法定刑の上限が、致傷の場合には十五年以下の懲役に、それから致死罪の場合には二十年以下の懲役にということで引き上げられて、また、先ほど申し上げましたように、平成十九年の刑法の改正で自動車運転過失致死傷罪も創設をされたという経緯がございます。

 今回の御提案を申し上げている改正案で言えば、そのひき逃げの部分、つまり救護義務違反の部分だけ取り出せば法改正の対象にはなってはおりませんけれども、今申し上げたような危険運転致死罪であるとか自動車運転致死罪については公訴期間を延長するということになってございますので、一般的に言うと、その範疇で対応できるものというふうに考えております。

柴山委員 では、最後に一言だけお尋ねしたいんですけれども、法務省から出てきたこの関係資料を見ると、人を死亡させた犯罪のうち、主なものの時効完成数というものは、近年、特に殺人を中心として若干ふえる傾向にあるようにも思えるんです。社会の状況の変化ということにも関係してくるんだと思いますけれども、こういった迷宮入りした凶悪事件というものは、単に時効期間を延長、廃止したからといって劇的に解決事件がふえるわけではないと思うんですね。

 そういった場合には、やはり犯人検挙に向けて、これから捜査手法の再検討などを行っていくことが必要になってくるんじゃないかなというように私は思いますので、中井大臣、最後、この点をお伺いして、私の質疑を終わらせていただきます。

中井国務大臣 本年から、警視庁におきまして、そういういわゆる迷宮入りと言われるような事案に対して特別班をつくって対応するという試行を開始いたしたところであります。

 また、DNAの鑑定ということに関しましていろいろと言われておりますが、実は、検体そのものが六万しかまだ蓄積されていない。これをやかましく言いまして、今ようやく約八万台に乗った。これではもう全然足りません。ただ、国会の議論等を通じて人権問題もあります。

 だから、いろいろな形でDNA鑑定をして蓄積をさせていただける、こういうところと、その精度を高める、そして保存をする、こういう手法や科学的捜査手法、これらを着実に積み重ねる、こういうことによって、少しでも、一件でも迷宮入りというものをなくしていきたい、このように考えています。

柴山委員 終わります。

滝委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時二十一分休憩

     ――――◇―――――

    午後四時一分開議

滝委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。馳浩君。

馳委員 長い本会議の後、お疲れさまでございます。

 私は、一時間ほど与えていただきましたので、三つのテーマについて質問をさせていただきます。これまでの質問等と重なる点もありますが、よろしくお願いいたします。

 まず、公訴時効制度の趣旨との関係からお伺いをいたします。

 公訴時効を設けている理由として、一般に三つの理由がありますが、それについてまずお答えください。

千葉国務大臣 公訴時効制度の趣旨という御質問でございます。三つというお話、既に御指摘をいただきました。

 公訴時効制度の趣旨といたしましては、一般に次の三つの点が挙げられております。これは、一つには、時の経過によって証拠が散逸すること、二つには、被害者を含む社会一般の処罰感情が希薄化すること、そして三つ目に、犯罪後、犯人が処罰されることなく一定の期間が経過した場合には、そのような事実状態を尊重すべきということ、この三点が公訴時効を設けている理由だと、この間、解釈をされております。

馳委員 そこで、今回の法改正で、死刑がある刑法犯、特別法犯については時効が廃止されるわけですから、この限りにおいて事実状態の尊重という理由はなくなったと理解してよろしいでしょうか。

千葉国務大臣 公訴時効の趣旨というのは、先ほど三点申し上げました。これは、処罰の必要性と法的安定性の調和を図るということに基づいているものでございます。この法的安定を図る必要性の要素の一つとして事実状態の尊重ということが挙げられているわけでございます。

 犯罪が重大であればあるほど、その処罰を確保する必要は大きくなるということが言えると思います。そういう意味で、比較考量の結果としては、社会の法的安定を図る要請としての事実状態の尊重という趣旨は、比較すると弱くなってくるということは言えようかというふうに思いますけれども、この三点の公訴時効の趣旨そのものは決して、全く否定されるというものではないというふうに思っております。

 時の経過によっても、犯人が処罰を免れ続けているという事実状態を尊重して社会の法的安定を図るという要請が、先ほど申し上げましたように、犯人を処罰して社会秩序の維持、回復を図るという要請に比較して、比較、弱くなる、こういうことだというふうに解されております。

馳委員 そもそも論として、時効期間中、逃げている人に謝罪の気持ちはなく、また、野放し状態とは、逆に社会の安定性を害すると思われます。事実状態の尊重という理由は公訴時効制度の趣旨から排除すべきではないのかと思いますが、いかがでしょうか。

千葉国務大臣 これも少し重なる答弁になろうかというふうに思いますけれども、公訴時効制度の趣旨、これは、基本は処罰の必要性と法的安定性の調和ということになります。それで、その三点の問題が指摘をされているわけでございます。

 犯罪後、犯人が処罰されることなく一定の期間が経過した場合、そのような事実状態を尊重すべきということの要素は、まず、時の経過によって証拠が散逸をしていくということがどうしても多くなります。それから、被害者を含む社会一般の処罰感情が希薄化していくということ、これが法的安定を図る必要性の要素として挙げられているものでございます。

 このような公訴時効制度の趣旨については、一般的には合理性を有するというふうに解されておりまして、事実状態の尊重という要素が、確かに、公訴時効の趣旨を考えるに当たって、例えば重い犯罪になりますとそれがいささか希薄化していくということもありますし、それから、今回の公訴時効の見直しの対象とされていないような軽微な犯罪、こういう場合には、この事実状態の尊重、法的安定をそれによって図るということは、やはり現在でも十分に公訴時効の要素となるものだ。

 そういう意味では、全く撤廃をしてしまう、こういうことを外してしまうということには、やはり相当慎重な検討が必要なのではないかというふうに考えております。

馳委員 しつこく質問を続けます。

 一般犯罪や微罪について、事実状態の尊重を図るということにしても、公訴時効ではなく不起訴や刑の執行猶予、あるいは懲役ではなく罰金刑にするなどして配慮すればよいのではありませんか。そうであれば、事実状態の尊重という理由は公訴時効制度存続の理由にしてはならないと思いますが、再度見解をお伺いしたいと思います。

千葉国務大臣 例えば、検察官の事件処理あるいは裁判所による量刑、こういうことにおいて、犯罪発生後一定期間訴追されなかった事件、その間における被疑者、被告人の生活状況等、そういうことを考慮して、御指摘のように執行猶予にするとかあるいは罰金刑を選択するというようなことは、個々当然あるものだというふうに思います。

 しかし、公訴時効というのは、個別の事件の事情を考慮して取り扱う、そういう制度ではございませんで、ある一定の基準をやはり設けて、そして事実状態の尊重という趣旨を生かしていくということでありますので、個別の事件の処理においては、御指摘のようなさまざまな配慮がなされるということはございますが、公訴時効という制度そのものは、やはり個別の配慮とは別に、一定の法的な基準を設けて法的な安定を図る、そして処罰をきちっとしていく、この両面を実質的に担保していく制度だというふうに考えております。

馳委員 法制審議会では、今私が指摘したようなこういう議論はなされておりませんでしたでしょうか。

千葉国務大臣 法制審議会の刑事法部会においては、そもそも、事実状態の尊重が公訴時効制度の存在理由になっているかどうか自体疑問である、あるいは、窃盗罪を犯して逃亡したような者の事実状態の尊重と、殺人罪を犯して逃亡した者の事実状態の尊重とでは大分条件が違うのじゃないか、こういう意見が示されたということは承知をいたしております。

 しかしながら、事実状態の尊重を公訴時効制度の趣旨から除外すべきであるとの意見が大勢を占めたということではなかったと承知をいたしております。

 他方、御指摘のように、公訴時効を廃止しない罪について、事実状態の尊重を図る観点からは、公訴時効ではなく不起訴や刑の執行猶予、あるいは懲役ではなく罰金刑にするなどの配慮をすればよいのではないかとの意見は特段示されていないというふうに承知をしております。

馳委員 次に、処罰感情の希薄化という理由についてお伺いをいたします。

 ここで言う処罰感情の主体とはだれでしょうか。

千葉国務大臣 先ほど御答弁申し上げましたように、処罰感情の希薄化ということが公訴時効制度の一つの要素となっております。この必要要素としてなっている処罰感情の主体というのは、基本的には、被害者を含む社会一般のものだというふうに指しているものと理解をいたしております。

馳委員 今回の改正について、被害者団体や国民の声を最も重視しての改正と聞いております。被害者団体の要望はしっかり届いておりますが、社会一般、すなわち国民の声はどうなっているのか、どのような調査や立法事実をもとに国民の声を判断したのか、お伺いをいたします。

千葉国務大臣 私どもで把握しているところでは、公訴時効のあり方については、例えば、内閣府の世論調査、あるいは国民の皆さんからの意見募集の結果、また、報道機関などでも世論調査などをなさっておられます。また、被害者団体からのヒアリング、また、法務省に対してさまざまなところからちょうだいをする要望や陳情の内容、こういうものによって、さまざまな方々の、国民の皆さんの声というものを私どもも受けとめさせていただいているところでございます。

 こういうことの中で、人の生命を奪った殺人などの犯罪については、時間の経過によって一律に犯人が処罰されなくなってしまうのは不当ではないか、より長い期間にわたって刑事責任を追及することができるようにすべきである、こういう意識、これが国民の間で広く共有されているものではないかというふうに認識をさせていただいたところでございます。

馳委員 委員の皆さんのところに配られていると思いますが、衆議院調査局法務調査室の資料を私も拝見して質問を進めさせていただきますが、基本的法制度に関する内閣府世論調査の概要というのがありまして、ページ数でいえば資料の八十ページから大体八十七ページについて、私もちょっと見たんですが、これに基づいて質問いたします。

 この内閣府の世論調査について、殺人など最も重い犯罪の公訴時効期間について、全回答者の約五五%が短いと答え、その五五%のうち約四九%が公訴時効の廃止を提案しております。算数で計算すると、全体の約二八%しか重大犯罪の公訴時効廃止には賛成していない、こういう指摘もできます。

 こういう事実をもって国民の声と言えるんだろうかと思いますが、いかがでしょうか。

千葉国務大臣 今、算数というお話がございました。

 少しその詳細を御報告させていただきますと、平成二十一年十一月二十六日から十二月六日までの間、内閣府でこの世論調査が実施されました。

 調査の中で、公訴時効制度に関する国民の意識という項目が挙げられておりまして、まず一つは、殺人など死刑が科されることがある最も刑の重い犯罪の公訴時効期間が二十五年とされていることについて質問が立てられております。その結果、「短すぎる」または「どちらかといえば短すぎる」と回答した方が五四・九%、「これくらいでよい」「長すぎる」または「どちらかといえば長すぎる」という回答をした方が三二・五%でございます。公訴時効制度を知っている、そういう方について集計結果を見ると、「短すぎる」または「どちらかといえば短すぎる」と回答した方が合計で五九・三%ということになります。

 それから、時効期間の長短に関する世論調査の評価でございますけれども、現行法上、凶悪重大犯罪の公訴時効期間について短いと疑問視する意見がやはり多数を占めているのではないかと思われます。

 この世論調査なんですけれども、凶悪重大犯罪の公訴時効の見直し策について質問したときに、さっきの公訴時効期間の質問に対して「短すぎる」または「どちらかといえば短すぎる」と答えた方のうち、「死刑が科されることがある最も刑の重い犯罪の公訴時効制度を廃止する」を選択した方が四九・三%、「事情にかかわらず、時効になるまでの期間を二十五年よりも長くする」を選択した方が二二・一%、「一定の事情がある場合には、時効になるまでの期間を二十五年よりも長くできるようにする」を選択した方が二五・九%ということになります。

 現行法上、重大犯罪の公訴時効期間について短いと疑問視する意見の中では、見直し策として、公訴時効そのものを廃止する意見が広い支持を集めているものと考えております。

 ただ、この世論調査の結果からも、この世論調査だけではかれるものではありませんけれども、国民のかなり多くの方が、凶悪重大犯罪について、少なくとも事案の真相を明らかにして、刑事責任を追及する機会を広く確保する方向で見直しを求めているということが言えるのではないかと思います。

 なお、質問の仕方ですけれども、回答者に対して、公訴時効の見直し策として、「廃止」「延長」「個別取扱い」、どれか一つを選択するというやり方でございますので、そういう中で延長や個別的取り扱いを選択しているという方が、では、廃止に反対であるのかというと、必ずしもそこまでは明確には言えないのではないか。どれかを選ぶというやり方ですので、そういう意味で、先ほど算数ということで掛け算をしていただいたんですけれども、必ずしもそういう数字になるのかどうか、ちょっとこの設問の仕方とあわせて、ぜひ御理解をいただければというふうに思っております。

馳委員 大臣、私の次の質問まで今お答えになったんですよ。私は、どう質問を展開していいか今ちょっと迷っていたところであるんですが。

 まあ、ざっくばらんに私も言いますが、こういうのは設問の仕方ということで、それと、やはり法務省として社会の様子、感情を踏まえてどのように改正していくかという、これは難しい話だと思うんですよ。私も厳密に、こういう設問の仕方で改正するのはけしからぬと言うつもりはありません。だけれども、何か廃止の方向に誘導しようとするような法務省の資料の読み方ができるので、これは私の読み方かもしれませんが、こういう書き方はいかがかな。

 私たち政治家も、いろいろなマスコミ等からのアンケートが来て、何か設問が設定されているのが意図的であったりして、選ぶのに困ったりするときもありますが、この法務省がお示ししている資料をもとに今回の法改正に至ったという論拠はないのではないかと私は言おうとしたのであって、ただ、今、大臣がすべて私の心中をお察しして答弁されてしまいましたので、もうこの点について私はこれ以上追及しようとは思いません。

 次へ行きます。

 そこで、個人的には、重大犯罪の公訴時効の廃止について私は賛成です。しかし、法改正する以上はその裏づけとなる立法事実が不可欠であるということは、もうこれは釈迦に説法であります。今回の改正において、特に社会一般の処罰感情の変化というものについてはもうちょっとしっかり把握すべきではなかったのかと思います。

 ちなみに、法制審議会ではこの点について、法務省としてはどういう資料を提供して、また、私のような指摘はなかったんでしょうか。一応お伺いしておきます。

千葉国務大臣 法制審議会に提供された資料としては、資料というか、まず法制審議会では、被害者団体からのヒアリングが行われたほか、内閣府においての先ほどの公訴時効制度に対する世論調査の結果、これも資料として出されている。それから、法務省において二回にわたって実施した国民の皆さんからの意見募集、この結果も資料として配付をされていたということを承知いたしております。

 なお、世論調査の結果については、法務省の作成した調査結果の分析ペーパーだけではなくて、内閣府が作成した調査結果をまとめた書面も資料として配付されているというふうに承知をしております。また、意見募集の結果につきましては、その重要なポイント、概要のみならず、割と詳細な、具体的な、どういう意見だったかという書面も配付されていたというふうに承知をいたしております。

 そして、法制審議会におきましては、公訴時効見直しの必要性についてさまざまな角度から議論がなされて、その中で、国民の意識についてもやはり議論がなされたというふうに承知をしております。

 凶悪重大犯罪について、時間の経過によって犯人が処罰されなくなるのはおかしいのではないかなどという意識が、被害者の遺族の方々を含めた国民の間で広く共有されるようになっていることから、公訴時効制度見直しの必要があるとする意見が多く示された、そういう国民の意識だということが法制審議会の委員の中でも多く認識をされていたというふうに承知をいたしております。

馳委員 丁寧に御答弁いただいてありがとうございます。

 私は、公訴時効制度、今回、殺人とか死刑を対象にして廃止、また延長、見直ししていくのは、これは別に私はいちゃもんをつけているわけではなくて、随時というか、こういう議論を常にしながら見直しをしていく姿勢は必要だと思います。

 私も、大臣御存じのように、例の児童虐待防止法とか高齢者虐待防止法の見直しを、実はもう三年ごとに担当しておって、わかります。想像を絶する事件というのは次から次へと起こってくる。と同時に、その背景には、やはり社会関係の希薄化とか、知らない間に国民感情が徐々に徐々に、一言で言えば荒廃していく、家族のつながりとか規範意識が低下していくと指摘せざるを得ない状況というのはありますので、私は、今回、被害者感情に十分配慮してくださったなという部分と、それを取り巻く社会情勢というものを踏まえた適切な判断であったろうな、こういうふうに言わせていただきます。

 それで、では細かいことで、次のテーマ、公訴時効見直しの対象犯罪の範囲、また死刑存廃についてお伺いしたいと思います。

 今回、公訴時効が廃止されたのは、人の命を奪った犯罪で、かつ死刑がある犯罪のみであります。これはなぜでしょうか。無期懲役、禁錮に当たる犯罪も廃止の対象とすべきだったのではないでしょうか。こういう指摘もあったと思いますが、いかがでしょうか。

千葉国務大臣 この公訴時効を廃止する犯罪の範囲を定めるに当たって、刑事責任の追及に期限を設けず、事案の真相をできる限り明らかにすることが強く要請されるほどの当罰性を備えた、そのような犯罪について公訴時効を廃止すべきではないか、こういう基本的な考え方に立ち、そのような犯罪としては、やはり人を死亡させた犯罪、特にそのうちでも悪質で最も刑の重い、故意に人を殺害した殺人罪等を中心とした死刑に当たる罪に限るのが相当ではないか、基本的にはこういう判断をさせていただいたということでございます。

馳委員 鳩山内閣には、死刑廃止を明確に肯定する亀井大臣がいらっしゃいます。また、千葉大臣も慎重姿勢と伺っております。むしろ大臣は本音は廃止論者だと私は見ているが、どうでしょうか。

 今回の法改正は、死刑の存続を大前提にしての改正であります。そこで、千葉大臣は、今回の法改正によって、死刑存続を賛成したと明言できるのでしょうか。ちょっと意地悪な質問かもしれませんが。これはやはり、何となく、私も大臣のこれまでの姿勢を見ておりまして、この法案を提出して成立をお願いしますという以上は、死刑制度については存続は当然と思っておりますが、それでよろしいでしょうか。

千葉国務大臣 まず、今回の法整備につきましては、現行の刑罰体系を前提として行っているということでございます。

 そのときに、どういう刑の軽重とか、どういう種類の犯罪について公訴時効を廃止するかという一つの基準として、死刑という刑罰、それだけ重い評価がされているそういう犯罪について公訴時効を廃止する、こういう一つの基準として、死刑という刑罰に当たるものを選択させていただいたということでございます。

 ですから、そういう意味では、死刑の存置、あるいは存置論、廃止論、これと今回の改正というのが直接かかわるものではないというふうに私は理解をいたしております。

 そういう意味では、全く、死刑制度をこれによって存置するとか廃止するとか、この法律によってそれを決めるわけではございませんで、私自身は、死刑制度がこの日本の法制度の中できちっと定められている、こういうことを承知しております。それに基づいて職務も与えられているということで、それを念頭に置いて私も職務を遂行するということでございます。

馳委員 ちょっと死刑の問題に触れましたので、今回のこの改正案を提出するに当たって、亀井大臣、いわゆる閣内において、死刑廃止論者もいるという中で、死刑制度を前提としてもちろん出されたわけでありますから、死刑制度廃止論者である亀井さんは、今回の法案について特に御意見はお述べにならなかったのでしょうか。

千葉国務大臣 多分、わかりませんけれども、先ほど申し上げましたように、今回の法改正が、死刑の存廃に関する、これを何か議論をする、あるいはそれを定めるというようなことではございません、直接関係するものではございませんので、こういう改正だということを亀井大臣も多分御承知されているものだというふうに思っております。

 これは、当然のことながら、提案をさせていただくに当たっては閣議決定をさせていただいているわけでございますので、特段それに対して異論があったとかいうことはなく、閣内一致してこの案を決定させていただいて御提案をさせていただいたということでございます。

馳委員 先ほど私が申し上げた内閣府の調査においては、死刑存廃の調査も行われております。まず、その結果について報告をいただきたいと思います。あわせて、その調査結果に対する大臣の所見をお伺いいたします。

千葉国務大臣 内閣府の世論調査でございますけれども、死刑制度に対する国民の意識等を調査されておられます。その結果、死刑制度の存廃に関する質問の回答結果ですが、「場合によっては死刑もやむを得ない」という選択肢は八五・六%、それから、「どんな場合でも死刑は廃止すべきである」、これが五・七%、「わからない・一概に言えない」というのが八・六%でございます。

 これは設問にもよろうかというふうに思いますけれども、多くの国民の皆さんが、基本的には、死刑制度というものの存続について、やむを得ないといいますか、存続は是とするというような認識、意識でおられるというふうに受けとめております。

馳委員 死刑制度について、「場合によっては死刑もやむを得ない」八五・六%という、これも、世論調査の結果は、ここは重いですね。

 ところで、千葉大臣は死刑執行について大変慎重であると伺っておりますが、大臣に就任されてもう何カ月でしたっけ。(千葉国務大臣「七カ月」と呼ぶ)七カ月でありますが、この間、死刑執行命令書というんですか、同意書というんですか、サインされたでしょうか。

千葉国務大臣 サインをしたかしないか、あるいはするかどうかということについて、一般的に、お答えをするということは差し控えたいというふうに思っております。

 ただ、先ほどから申し上げておりますように、死刑制度、これは今、日本の刑法、刑事訴訟法、刑事手続の中で定められているものでございますし、今お話があったように、国民的にも、やむを得ない、そういう認識が大方だということを私も承知をして任務に当たっているということでございますので、それを踏まえて対処をしていくものだと考えております。

 ただ、死刑というのが、質的にほかの刑罰とは異なるほどの、やはり人の命を国の責任において奪うという大変重い刑罰でございます。そういう意味では、これは当然大変間違いがあってはなりませんし、さまざまな角度から慎重に判断をする必要があるということも常々指摘をされていることでございます。

 これもあわせまして、職務をしっかりと、きちっと的確に私も遂行させていただきたいと考えております。

馳委員 法務大臣就任後七カ月を経過して、あなたは死刑執行にサインはしていないと私は断言してよろしいですか。

千葉国務大臣 これは、しているかしていないか、あるいはするかしないかということは、私から申し上げるべきものではない、今の段階で申し上げるものではないというふうに考えております。

馳委員 死刑執行について極めて慎重姿勢を持っていると、私はあなたのことを指摘してよろしいですか。

千葉国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、基本的に、制度があり、そしてまた、私の職務の一つとしてこれをきちっと精査をして、そして、サインをするといいましょうか、執行についての責任をきちっととるということは当然でございます。

 ただ、先ほど言ったように、これが質的にほかの刑罰とは異なるような大変重い刑罰でございます。そういう意味で、やはり慎重に、誤りのないようにこれはきちっと精査をし、検討をしていかなければならない、こう考えているところでございますので、制度そしてその重さ、そういう意味では慎重に私も対処しなければならないと考えております。

馳委員 これはやはり、一参議院議員であった時代と、法務大臣という職責の重さからしてそういう答弁になるのは仕方ないのかなと思いながら、かつてのこういうふうな千葉法務大臣の国会における発言がありますので、ちょっと紹介しますね。

 平成十八年五月十七日、参議院本会議において、こういうふうにあなたはおっしゃっておられます。「ところで、杉浦法務大臣は、法務大臣に就任した昨年十月三十一日、初閣議後の記者会見で、死刑執行命令書にサインしないと表明されました。しかし、その一時間後には、個人としての心情を吐露したもので、法務大臣の職務執行について述べたものではなかったとの文書を発表し、事実上、発言を撤回されました。死刑制度に疑問をお持ちであれば、死刑制度廃止に向けた姿勢を貫くべきではなかったのでしょうか。」こういう突っ込みを入れておられるんですね。当然、このときは野党であり、また一議員として、素直に本会議において述べられたものと私は思っています。

 私は、もともとあなたは死刑制度については慎重な姿勢の方であろうと思っています。そこで、実際に、今回、大臣となられて執行したかどうかということを、私ちょっと意地が悪かったかもしれませんが、あえて聞いてみたんですね。

 そこで、実は私が本当に聞きたかったのは、この世論調査においても、死刑制度についての問いはありましたが、実は死刑執行についての世論調査というのはないんですよ。むしろここのあたりも私はやはり聞いてみる必要があるのではないかなと、千葉さんが大臣だからあえてこういう質問をしたいと思って、今、伏線を張ってきたんですよ。

 死刑制度がある、ない、これは今、法務大臣としておっしゃったとおりです。私もそれでいいと思いますが、死刑執行するかどうか、このことについての世論となると、私はまた事情が違ってくるんじゃないかなと思うんですね。そのことも含めて、死刑執行についての世論調査もあるべきだなと私は思うんですよ。大臣、どう思われますか。

千葉国務大臣 これまでも死刑制度ということについてのさまざまな世論調査というのは続けられてきたものだというふうに思いますが、今御指摘のような死刑執行という、こういう形での世論調査というのは、考えてみますと、なかったのではないかなというふうに思います。

 そういう意味では、どういう御意見を持っておられるかということ、委員が御指摘のような、そういうことをより国民の皆さんに御意見をちょうだいするということも一つの考え方かなというふうに、御提起として受けとめさせていただきたいというふうに思います。

馳委員 これは質問通告していなかったので、十分な答弁じゃなくても私は結構ですから、ここは政治家同士の議論として。

 では、終身刑を設けたらどうかという議論が必ず出てきますよね。大臣は終身刑ということを、私は検討に値すると思っているんですよ、大臣としてはどうお考えですか。

千葉国務大臣 終身刑の議論があることは私も承知をしております。これは、一つはやはり、日本の無期刑というのが、十年を経過した後、かなり仮釈放という形で釈放される。そうなりますと、この仮釈放がある無期刑と死刑と、こういうものの間が非常に何か距離がある。そういう意味では、刑を選択するに当たって、十年程度のもの、それと片方では死刑、こういう間にもっといろいろな選択できる刑罰があってもいいのではないか、こういう御議論があるというふうに私は承知をしております。一つの傾聴すべき議論だというふうに思っております。

 ただ、終身刑ということについては、また今度は逆に、むしろ拘置の施設から出られないということによって非常に精神的な圧迫になる、そういうことによって人格的な破壊のようなものが起こるのではないか、こういう指摘もあり、そういう意味では、大変極めてむしろ残虐な刑罰になるのではないか、また逆にこういう指摘もあるところでございまして、ぜひこれはまたいろいろな観点で議論をしてみなければいけないことではないかというふうに思います。

馳委員 これは、重大犯罪、凶悪犯罪の抑止力として、私は、検討するということも社会に与える影響はあると思って、検討したらいかがですかとあえて言ったんですね。

 何でかといったら、私はこの間もちょっと質問しましたが、裁判員制度が始まって一年、裁判員の方々、参加した人は大体おおむね参加して本当によかったという評価があるんですけれども、そんな中で死刑を、凶悪犯罪に当たって、裁判員として参加をし、一生懸命勉強し、検察官、弁護士等の意見も聞いて、さて死刑というところにぶち当たったときに、やはり必ず皆さん方、心の中に非常に、私がこんな判断を下していいんだろうかというものを持っておられるんですね。私は、そういう評価の新聞記事などを拝見いたしました。

 そうなってくると、そうはいっても、社会全体の犯罪の抑止力という観点からも、終身刑のあり方についても私はもう検討する時期じゃないのかなというふうに思って、あえて大臣に聞いてみたんです。何かコメントがありましたらどうぞ。

千葉国務大臣 今御指摘がございました、裁判員制度のもとで、やはり選択ができる刑罰が、ある意味では非常に限られている。そういうときに、本当に重大な、大変重い犯罪に対して、どういう刑を選択するかというのは多分大変悩ましい問題であろうというふうに思います。

 そういう意味で、裁判員制度ということも念頭に置きつつ、終身刑、あるいは、あとどういうものがあるかというのは私も知恵が余りありませんけれども、こういうこともあわせて、刑罰ということについてより一層議論を深めていくということは大切なことだというふうに思います。

馳委員 次の質問に移ります。

 被害者死亡のひき逃げ犯について、現実、どのような罪となっているのか、お聞きをします。

 今回の公訴時効の期間延長の対象である遺棄致死罪や危険運転致死罪として処罰される例は少ないのではないのでしょうか。少ないとするならば、その理由もお教えください。

千葉国務大臣 一般的に、被害者が死亡する形態でのひき逃げ犯については、刑法の自動車運転過失致死罪、それから道路交通法の救護義務違反の罪が成立し得るのではないかというふうに考えられます。

 また、負傷者を一たん車に乗せて保護しようとした、しかし、そういうことで保護をする責任があると認められるような場合に、それをきちっと最後までやらずして、その生存に必要な保護をせずに被害者を置いてきぼりにした、死亡させたというようなときには、保護責任者遺棄致死罪、これも成立し得るのではないかというふうに思います。

 それから、今度はアルコールの影響、こういうもので正常な運転が困難な状態で自動車を走行させ、そして被害者を死亡させたような場合には、先ほどの自動車運転過失致死罪ではなくて危険運転致死罪、これが設けられておりますので、これが成立し得ることになるのではないかというふうに思います。

 そういう意味では、被害者死亡のひき逃げ犯については保護責任者遺棄致死罪や危険運転致死罪を適用するということになろうかというふうに思いますけれども、そのような例について、統計的には把握がされておりません。

 したがって、ひき逃げ犯について逃げ得を許してはならないというのは当然でございますし、検察においても警察と連携してそれをきちっと適正な科刑をするようにしていかなければなりませんけれども、残念ながら、ちょっとそういう範疇をまとめた把握というのはされておりませんので、どのような事態になっているか、少ないのではないかという、必ずしもそうも言えないのかなというふうに思いますが、ただ、適切に対処をしていかなければいけない、ひき逃げを許すようなことがあってはならないということは当然だと思います。

馳委員 ひき逃げ犯、まず事故があったときに被害者救護を怠る、それから警察の通報義務も怠る、そして現場から離脱をする。故意か過失かを問わず、事故があった後にそういう行為をしてひき逃げ犯としてしまった場合には、まさしく犯罪を二度犯すような、被害者、被害者の家族からすれば、まさしく本当に悪質な行為と言わざるを得ない。したがって、本当に悪質なひき逃げ犯ほど逃げ得を許す結果になってしまっていると思います。これでは到底求められる公平性を担保できないと思います。

 したがって、ひき逃げ犯の公訴時効については、死刑や懲役などの法定刑のみの基準で公訴時効の期間延長を決める手法を捨てて期間延長をするか、もう一つ、犯罪の構成要件という実体法を改正すべきと考えますが、大臣としてはどういう方向性で考えておられるのでしょうか。あわせて、そもそも論として、ひき逃げ犯の実態について、何とかしなければとの認識がありますが、より立件しやすくなるような工夫をしていないんでしょうか。

 大臣も、実態調査がないというのは、確かに私もあれっと思ったんですね。こういったひき逃げ犯の事案については、できれば全国の統計をし、分析をし、そしてより悪質なひき逃げ犯についてどう対処すべきかということを、すべきだと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

千葉国務大臣 なかなかひき逃げ犯の態様もさまざまであろうというふうに思いますので、実態調査というのはどういう形で行うか、あるいはどういう集計の仕方をするかということ、難しいところはあろうと思いますけれども、いずれにしても、ひき逃げ犯を許す、取り逃がすというようなことをできるだけ避けなければならないということは、もう当然のことだというふうに思っております。

 公訴時効に絡めて考えますと、今回の公訴時効の廃止あるいは延長、これは、人を死亡させたという犯罪、こういうことに着目をして、そこを一つの基準にして公訴時効の廃止や延長という今回の見直しをさせていただいておりますので、道路交通法上の救護義務違反というのは、救護義務違反行為の結果として人を死亡させた場合について処罰をする、こういう構成ではありませんものですから、なかなか公訴時効の今回の改正にはのることができないということだというふうに思っております。

 ただ、交通事犯については、例えば死亡した場合に、今度の法律案でも危険運転致死罪の公訴時効は十年から二十年、それから自動車運転過失致死罪の公訴時効期間は現行の五年から十年に延長するという形にしておりますので、ある意味で、少しずつではありますけれども、できるだけ厳正に対処をするという方向にはあろうかというふうに思っております。

 なかなか公訴時効という、そこで切り分けるというのはちょっと難しいところがあろうかと思います。

馳委員 私は、この後、実は強姦致死の話も聞こうとしたんですが、やめます。つまり、個別の犯罪等々を考えると、いや、こんな犯罪も、あんな犯罪も公訴時効廃止の対象にならないのはおかしいんじゃないかという議論を始めたら切りがないんです。したがって、今回の法改正は、やはり私は一つのステップにするべきだなというふうに思っています。

 また、社会情勢の変化によって、やはり信じられないような犯罪というのは起こってきますね。先ほども申し上げましたが、泥縄ではもちろんいけないのではありますが、やはり常に見直しについては真摯に取り組む。そして法制審議会にも、期間がありますから、期間を持って諮問しますよというんじゃなくて、やはり常に注意を払っておくということは私は必要な姿勢ではないのかな。これは大臣だけじゃなく副大臣にも政務官にも、今回の法改正ですべて終わりではない、今後ともやはり、死亡させた事案、死刑に相当する事案というのではなくて、個別の事案も含めて検討が必要だという認識は持っていくべきではないのかなと思うんですね。

 では、これは、先ほどから大臣にばかり聞いていますから、加藤副大臣、いかがでしょうか。

加藤副大臣 御指摘の件は、恐らく公訴時効制度の問題に限らず、刑法の法定刑のあり方などについても御意見おありのことと思います。そこは私も、この立場ということではなく一人の人間として考えると、もう少しここはこうした方がいいんじゃないかと思う場面もなくはございませんし、恐らく馳先生も同じようにお感じの部分があるんだろうと思います。

 その意味では、今回は公訴時効の制度を見直すということで法改正の御提案をさせていただいておりますけれども、それもまた将来に向けて何か検討すべきことがあれば常に検証していかなければならないと思いますし、加えて、刑法そのものについてもさまざま、世間一般でも御議論のあるところでありますから、それは真摯に私どもも常に御意見を承って、研究は続けていかなければならないというふうに思ってございます。そこはまた、先生からもぜひ御指摘をいただきたいとお願い申し上げる次第であります。

馳委員 ありがとうございました。

 きょうは別に採決というわけではありませんので、今後また、議論を踏まえて、私もいろいろ指摘をさせていただきたいと思います。

 私の質問はこれで終わります。ありがとうございました。

滝委員長 次に、大口善徳君。

大口委員 公明党の大口善徳でございます。

 最後、聞かせていただきますが、かなり論点、同じようなことが聞かれております。ただ、私も公明党の代表として聞くべきところは聞いていかなければなりませんので、重複になるかもしれませんが、よろしくお願いしたいと思います。

 我が党も、法務部会で公訴時効に関する検討をいろいろさせていただきました。ヒアリングも、それこそ二〇〇九年の一月十六日から、もちろん、法務省からもそうでありますが、あすの会、全国犯罪被害者の会あるいは宙の会の方々、きょうは傍聴に小林代表幹事も来ておられましたが、あるいは全国交通事故遺族の会の方からもヒアリングをさせていただきました。また日本弁護士連合会から等々、お話を聞かせていただいたわけでございます。

 そういう中で、殺人罪で平成十一年から平成二十年までの公訴時効完成数が五百八、こういうことでございますので、被害者の方が本当に悔しい思いをされている。私どもは、被害者の会の方々から本当に切実な声を聞かせていただきました。そして、被害者の会の方々も冤罪なんというのは望んでいない、とにかく真犯人を捕まえてもらいたいんだと。ですから、冤罪が発生するというようなことを我々は望んでいないんだ、こういうお話もお伺いしたわけでございます。

 そういう状況の中で、東京八王子市内のスーパーにおける強盗殺人事件、女性三名の射殺、これが本年七月三十日に時効完成する。こういう状況の中で今回の法案というものが、それこそ、ある意味では、前政権から継続して精力的になされてこういう法案になった。そういう点では、私ども、これは参議院で先議であったわけでありますが、法案に賛成をさせていただいた、こういうことでございます。

 そこでまず、千葉大臣は、本法律案の提案理由説明において、被害者の遺族の方々を中心として、人を死亡させた犯罪について公訴時効の見直しを求める声が高まっている、また、国民の間でも、人の生命を奪った犯罪については、より長期間にわたって刑事責任を追及すべきとの意識が共有されてきた、こういう事情を挙げておられます。

 そこで、遺族の方々の声というものを具体的に大臣としてどのように把握、認識をされたのか、また、同じく国民の意識というものをどのように把握、認識されたのか、お伺いさせていただきたいとともに、それ以外に公訴時効見直しを必要とする事情、立法事実、こういうものについて具体的にどのようなものがあって確認されたのか、お伺いしたいと思います。

千葉国務大臣 公訴時効のあり方について、とりわけ被害者遺族の方々の御意見、これは例えば、被害者団体の皆さんからのヒアリングなど、法務省内の勉強会あるいは法制審議会などでも聞いていただいているということでございます。私も、直接いろいろな形で、この間、御意見を聞かせていただいてまいりました。また、そういう団体の方ばかりではなくて、法務省に対する要望や陳情、こういう形でも、国民の皆さんあるいは被害を受けられた皆さんからの声が寄せられているということもございます。

 国民の方々の意識につきましては、先ほど申し上げましたような世論調査とか、それから意見募集、あるいはまた報道機関などでのいろいろな調査もあると私も承知しておりますので、そういう中で、国民の意識というものを大体把握できてきているのではないかというふうに思っております。

 また、国民の意識以外に見直しを必要とするほかの事情でございますけれども、殺人事件などについて、犯人が明らかになったのに公訴時効の完成により処罰し得ない事態が現に生じている、こういうことが本当にそのままにされていていいのか。

 それから、民事上の損害賠償訴訟などにおいて、特段の事情があるときには、殺人の不法行為による損害賠償請求権に関する除斥期間の効果、これについても生じないものとされるなどの見直しというか、そういう扱いがされている、こういう事情もございます。そういう意味では、公訴時効についてもやはり見直しが必要なのではないか。

 それから、犯罪被害者等基本法が制定されまして、そういう中でも、被害者等の尊厳にふさわしい処遇、こういうことが求められている、こういう背景もございます。

 こういうことを踏まえながら、今回の改正ということを御提起させていただいたということでございます。

大口委員 公訴時効制度の趣旨との関係でございますけれども、公訴時効制度の趣旨は、もう何回も答弁されていますが、一般的に、時間の経過によって、有罪、無罪の証拠が散逸する、時間の経過によって、被害者及び社会の処罰感情が希薄化する、一定期間訴追されていないという事実を尊重する、こういうことでありますが、今回の法律案で、人を死亡させた犯罪のうち死刑に当たる罪については公訴時効を廃止する、こういうことでございますので、こういう類型の犯罪については、今述べました公訴時効の趣旨が妥当しない、すなわち、一、証拠散逸の問題がクリアされる、二、処罰感情も希薄化しない、三、事実状態を尊重する必要はないということで廃止にしたと理解してよろしいでしょうか。

千葉国務大臣 御指摘がございました証拠散逸の問題、それから処罰感情の希薄化、あるいは事実状態を尊重する必要もないということでございますけれども、ゼロになるということではないというふうに思います。ただ、それだけの重い犯罪、これについてはやはり必ず処罰をする、逃げ得を許さないんだという処罰の必要性、それに比較して、事実状態の安定を尊重する、こういうことを比較すると条件が弱くなる、そういうことであろうというふうに思います。

 この趣旨が全くなくなるということではありませんけれども、比較考量すると、大変その法的安定という部分は弱まるということが言えるのではないかというふうに思います。

大口委員 証拠の散逸の問題は、これは比較考量の問題なんですか。

千葉国務大臣 証拠の散逸については、近時、証拠の収集、あるいはまたDNA型鑑定のかなりの進歩、こういうこともございますので、そういう意味では、時間が経過をすることによって証拠の散逸ということもかなりクリアできるようになっているのではないかというふうに思われます。

 ただ、証拠というのはそれだけではございませんので、やはり全く証拠の散逸ということがゼロになるということではございませんけれども、証拠の散逸についても、科学的な捜査や、あるいは今のようなDNA型鑑定、こういうものの進展によりましてかなりこれをクリアできる、こういう条件は少しずつ強まっているというふうに言えると思います。

大口委員 これも聞かれているわけでありますけれども、民主党のインデックス二〇〇九、政策集において、「公訴時効のあり方については、法定刑に死刑が含まれる重罪事案のうち特に犯情悪質な事案について、検察官の請求によって裁判所が公訴時効の中断を認める制度」を提案していますと。

 このインデックスを読ませていただきますと、やはり公訴時効の問題については、当時の民主党さんは相当慎重であった。そして、「法定刑に死刑が含まれる重罪事案のうち特に犯情悪質な事案」ということで、かなり対象も絞られて、そして事案ごとにこの中断を求められていた。そういうことで、このインデックスを作成された当時の民主党さんの党内、大臣も含めて相当慎重であったのではないかな、こう思うわけです。

 そういうことからいたしますと、公訴時効の廃止ということに踏み切ったことは、かなり左からどんと右に、まあ右から左でもいいんですが、相当大移動をされたのではないかな。ですから、党内においてもいろいろ議論もあったし、また参議院における民主党の議員の先生方も、かなり慎重論も交えながら質問をされていた、こういうふうに思います。

 そこで、このことについて、かなり大きな政策転換をされたことについて御説明をいただきたいと思います。

千葉国務大臣 今、大きな政策転換という御評価でございますが、民主党政策インデックス、これに掲げられた考え方について、すべてその議論の経過というのを私もかかわっていたわけではございませんけれども、いろいろな議論が展開をされたということは事実だったというふうに承知をしております。

 やはり、公訴時効を廃止するという御意見もなかったわけではありませんし、しかし、捜査の負担ですね、そういうことをどうしたらいいのか。あるいは、確かに証拠の散逸などによって防御権が弱くなるのではないか、こういう懸念、こういうことも含めて、公訴時効の見直しは必要なんだけれども、その辺をどのようにクリアしようかということなぞを踏まえて、一つの問題取りまとめをしてきたのではないかというふうに承知をいたしております。そういう意味では、公訴時効を見直すということにおいては、共通な土台にのっとって議論をしてきたということでございます。

 そういう中で、改めて法制審議会などに、いろいろな考え方、これも全部網羅して、ゼロから議論をしていただくということなどを御提起させていただいて、結論を得て、諮問の答申をいただいて、法案に取りまとめさせていただいたということでございますので、公訴時効を何とか見直して、多くの皆さんの処罰感情、あるいは逃げ得を許さないということにこたえていこうと。しかし、その反面での幾つかの懸念ということもしっかりと、運用やあるいはこれからの捜査のあり方、こういうことを踏まえて、きちっとそれもクリアをできるようにしていこうという基本的な考え方に立っております。

大口委員 昨年の七月の段階ですから、もうすべての論点がある程度わかっておりました。その上でこれは判断をされたと思うんですね。違うところといえば、法制審議会の議論が入った、そのことがかなり影響されたのかなという感じもいたします。

 次に、これも公訴時効の見直しと対象範囲の問題でございます。

 これについて、今回こういう形の整理をされたわけでありますけれども、今後、これについていろいろな国民の声や被害者の声等を聞いて、将来また見直す可能性があるのかどうか、そこをまずお伺いしたいと思います。

千葉国務大臣 今回は、一つの基準を設けて、少なくとも命を奪う、そして死刑に該当するような重い、そういう基準に基づいて、多くの皆さんのニーズにこたえていこう、意識にこたえていこうということでございます。これは、これで固まってしまって、未来永劫全くこれから先がないということではないと私は感じております。

 特に、御指摘をいただいておりますのは、多分こういう問題ではないかと思われますけれども、例えば、性犯罪であるとか、ここまでいかなくても、強姦致死とか、こういう問題などについて、やはり何らかの対処をしなくていいのか、こういう意見などももう既にいただいているわけでございまして、どういう形でまた検討していくかということはございますけれども、今回のでもう全部終わりということではないというふうに私も理解をいたしております。

大口委員 そういう点では、今後この委員会でさらにいろいろと議論をさせていただいて、次に展開できるような形にしていきたいと思っています。

 特に、死刑に当たる罪のみを廃止の対象としているわけですが、無期刑に当たる罪も相当悪質でありますし、また、人を死亡させるという結果が出る場合は、これはやはり死刑だけにこだわらず、無期刑に当たるものについても対象とすべきだ、こういう意見もあったと思うんですが、今回死刑に限った理由をお伺いしたいと思います。

千葉国務大臣 これも繰り返しになってしまうかと思いますけれども、公訴時効を廃止するということでございますので、要請されるほど重い、当罰性が高い、やはりこういう基準をとるべきではないかということでございます。

 そういう意味で、人を死亡させた、しかも、最も重い死刑に当たる刑罰が科せられる、こういう法定刑が定められているというものにまずは基準をとらせていただくというのがまず第一歩ということではないかということで、今回はこのような基準で公訴時効を廃止させていただくという選択をいたしました。

大口委員 ただ、結果的加重犯、強盗致死、これにつきましても時効が廃止されているわけですね。これもやはり廃止の対象にすべきだ、こういう考え方があると思うんですね。それに対して、強姦致死、集団強姦等致死、それから強制わいせつ致死罪、こういうものについても、やはり死という結果を及ぼすものでありますし、まさしく女性の人格を根底的に破壊する行為なわけでありまして、こういうものについては、やはり廃止としても、これは国民の皆さんの感情からしましても、あるいはまた被害者の方にとってみれば、これはもう本当に一生、ある意味では、被害者の遺族の方、そういう形で亡くなったことに対する傷というものを一生負うわけであります。

 そういう点で、大臣は当罰性ということをおっしゃいましたが、当罰性ということに置けば、こういう性犯罪で死亡させた罪についても廃止すべきだ、私はこういうふうに思いますが、いかがですか。

千葉国務大臣 先ほど申し上げましたように、当罰性の高いものということで、その高いということを何をもってはかるか、基準にするかということ、今回は死刑という法定刑があるということをもって、その当罰性の高さという一つのメルクマールにさせていただいたということでございます。

 ただ、委員が御指摘の性犯罪、とりわけ強姦致死罪等による被害というのは、本当に心の殺人と言われるくらいの大変な重い被害であろう、これは私も本当に心痛く感じているところでございます。

 そういう意味で、ただ、例えば強盗致死は、強盗殺人という故意も含まれるということになります。強姦致死の場合には、重い結果について故意のない場合に適用される。仮に、重い結果である死について故意がある場合には、殺人罪との観念的競合になりますので、こちらで公訴時効の適用が排除される、こういうことは現在でもできるかというふうには思っております。

 ただ、いずれにしても、性犯罪ということについては、この公訴時効のみならず、さまざまな部分で今の制度とか救済が非常に弱い、その被害について軽く扱われているのではないかという御指摘があることは、もう本当に私も承知をいたしております。そういう意味では、公訴時効ということに限らず、やはり、この性犯罪に対する、おっしゃった、法定刑そのものの重さがこれでいいのかとか、あるいは救済の方法はどうすべきかということも含めて、私はぜひ検討をしなければいけない課題だというふうに認識しております。

大口委員 これも課題になると思いますけれども、殺人未遂事件においても、死亡という結果は生じなかったけれども、例えば植物状態になられる方、それからもう本当に重篤な後遺障害が残っておられる方、こういう方々は、被害者本人、家族の処罰感情は日々これは大きくなっていくのではないかな、こういうふうに思うわけであります。そういう点で、この重篤な後遺障害についても、もちろん、線引き等があって、どこまでがどうなのかという問題はあると思うんですけれども、今後の課題としてこれは考えていかなきゃいけない、こう思います。

 また、ひき逃げにつきましても、何回もいろいろな委員から御指摘がありました。毎日新聞の二十一年九月二十七日の報道によりますと、死亡ひき逃げ事件というのが平成十一年から十五年まで千五百十六件あった。それで、時効成立が、これは五年後になるわけですけれども、平成十六年から二十年で百五十一、時効成立していた。一〇%時効が成立していまして、これは殺人の二・五倍の時効成立の割合だ、こういうことが報道されているわけでございます。こういう死亡ひき逃げ事件というのは一つの類型だと思います。

 大臣は、自動車運転過失致死罪あるいは危険運転致死罪、これが延長されたから、これまでよりは改善されたのではないか、こうおっしゃることございますけれども、救護義務違反という卑劣な、悪質な故意を伴うものについては、やはりこれも延長等について検討すべきではないかな、こういうふうに指摘をしておきたいと思います。

 さて、時効が進行中の事件の取り扱いにつきまして、いわゆる遡及適用の可否、これもいろいろ議論がされております。大臣は、参議院で、いわゆる遡及適用の可否の問題について、憲法三十九条は、罪を犯した場合の刑罰に関して事前に告知し、行為者の予測可能性を保障する点にあるところ、公訴時効については、必ずしもこのようなことは直接かかわらないものであるし、しかも、一定期間逃げ切れば処罰されなくなるという犯人の期待は法的な保護に値しないため、憲法三十九条違反にはならない、こう答弁されています。

 これは平成十六年の改正の際に、附則において「なお従前の例による。」ということで、この平成十六年のときはいわゆる遡及適用はしなかったわけでありますが、その理由として、公訴時効制度の趣旨について、実体法説の考え方も有力に主張されていることに加え、過去に行われた犯罪行為について、事後的に公訴時効を延長することが被告人に不利益であることを考慮した、こういう説明がなされているわけであります。

 そういう点では、五年余りで、法適用の仕方について、説明の仕方がかなりがらっと変わっているのではないかな。このあたりについて御説明いただきたいと思います。

千葉国務大臣 十六年の改正の折でございますけれども、私が理解、承知をしているところでは、確かに実体法説の考え方もあり、この段階で公訴時効についての見直しを全体としてやるというところまでには至らなかったということだったようでございます。その折には、被害者の皆さん等からの声も、必ずしも提起をされておりませんでした。

 その後、犯罪被害者救済の基本計画等々、そういうものを踏まえながら、やはり被害者の皆さんが、みずからの置かれた立場あるいは心情、こういうものを積極的に表明されるということも多くなってきたというふうに思いますし、考え方として実体法説が必ずしも強い説であるということでもないということで、今回については、被害者の皆さんあるいは国民の意識、それから、公訴時効については、その趣旨からいっても憲法に抵触をするものではない、こういう考え方で今回は見直しをすることになったという経過でございます。

大口委員 法制審議会でもいろいろ法的な議論がなされたということも受けられてのことだと思います。また理論的な構築はしていかなきゃいけないと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 既に時効が完成した事件について、いわゆる遡及適用でございますけれども、これは、それこそ時効の完成が施行日の前か後かで、その事件についての時効が廃止されるかどうかといった結論が大きく異なってくるということで、既に時効が完成していた事件についていわゆる遡及適用を認めるかどうかというのは、極めて大きな問題でございます。

 これについては、学説等においては遡及適用を認めることには否定的な見解が多数を占めている、こう言われておりますけれども、ただ、三十九条の解釈は、予測可能性、それから、犯人の期待は保護に値しないということであれば、理論上は、既に時効が完成した事件について遡及適用を認めないというところまでは三十九条からは導き出せないのではないかな、こう思います。

 大臣は、四月六日の森まさこ参議院議員の質問に対して、「いったん処罰をすべき公訴権が消滅をしたという状況の中でそれを改めて時効を進行させるあるいは公訴時効をまた復活をするということは、先ほど申し上げましたように、憲法の三十九条等の趣旨からいってもいささか抵触をする、こういう私はやはり危惧があるのではないかというふうに思います。」こういうことなんです。

 そこで、大臣の憲法三十九条の解釈を、今回の、既に時効が完成した事件についてのいわゆる遡及適用についてもう一度説明をしていただきたい、こう思っています。

 そして、これは、公訴時効の完成によって、公訴権だけが消滅するのか、公訴権だけでなく刑罰権も消滅するのか、こういうことも理論的な問題があります。あわせてお答えください。

千葉国務大臣 憲法三十九条の趣旨は、行為時に犯罪でなかったものを犯罪にする、あるいは行為時の刑罰をその後に重くする、こういうことを禁ずる、これが三十九条の基本的には趣旨であろうというふうに思っております。

 そういう意味では、公訴時効そのものについては、公訴時効が今まだ継続をしている、時効が進行しているということについては、後から刑罰をつくるとか重くするということではございませんので、基本的には三十九条に違反するものではないというふうに私は理解をいたしております。

 公訴時効が完成をするということになりますと、一たんやはり刑罰権が行使できなくなるという状態になるというふうに思われますので、そういう意味では、一たん刑罰権がなくなった、それをまた改めて刑罰を科すということになりますと、これは、これまで続いてきたものをそのまま継続させるということではなくて、また新たな刑罰を発生させる、刑罰権を発生させるというようなことになるのではないかというふうに解釈できますので、こういう意味では、公訴時効が完成した後にまたこれを復活するというのは、三十九条に抵触をするというおそれが大なのではないかというふうに私は理解をいたします。

大口委員 次に、冤罪防止の措置についてということでございますが、何十年もたってから突然逮捕される被疑者、被告人にとって、アリバイの証明、正当防衛、緊急避難の立証など、防御をすることが困難になる、その結果、冤罪が発生するおそれがある、こういうことで、日弁連等、この冤罪防止等について危惧が示されているところでございます。大臣からも可視化のこと、あるいは中井大臣はDNA鑑定のこと、しっかりやっていく、こうおっしゃっているわけでございます。

 そこで、事件発生から何十年も経過して起訴された刑事事件の審理においては、証拠書類しか存在せず、証人などの人証が存在しない状態で裁判をしなければならない場合が多いのではないかと思うんですね。この場合は、例えば、証人がいても記憶が薄れていたり、証人が死亡してしまったときには、その者の供述調書等があったときは、刑事訴訟法第三百二十一条一項二号、三号により、その書面に証拠能力が認められる、さらに、実質的にその証明力が高いものとして取り扱われる可能性があるのではないか、こういう意見があるわけでございます。このような書面には被告人に有利な事情が何ら記載されていないため、しかも反対尋問の機会もない、被告人の防御に多大な困難をもたらすおそれがある、こういう指摘もあるわけであります。

 法制審議会の専門部会において、裁判官の幹事から、慎重に審理する、こういう発言がされているわけでございますけれども、具体的にどのような審理をするということを意味するのか、最高裁に問います。簡潔に答えていただきたいと思います。検察は立証をどう工夫されるのか、お願いしたいと思います。

植村最高裁判所長官代理者 委員御指摘のとおり、証人が死亡したり、記憶を喪失したような場合というのは、三百二十一条一項二号前段、それから三号の適用がございまして、供述調書そのものが証拠能力を持って法廷に出てくるということになると思います。一項二号前段と三号は若干要件が違うんですが、そこはちょっと飛ばしまして、いずれにしても反対尋問ができないということなので、反対尋問ができないというのは、その供述の信用性をチェックする機能が失われているということが大前提になります。

 そこで、慎重に審理するということでございますが、いずれにしても反対尋問による吟味を経ておりませんので、有罪認定をするにつきましては、そのほかの証拠、具体的にどんなものがあるかというのは事件によって違うわけでございますが、どんな証拠があるのかを丁寧に見まして、それに、弁護人も当然反証されると思いますので、弁護人の反証の状況、これも総合して考えて、果たして検察官が合理的な疑いを超える立証を尽くしたと言えるかどうか、きちんと吟味する必要がある、こういう趣旨だろうというふうに思っております。

千葉国務大臣 一般論とすれば、公訴の提起をした検察の方が確実な、完全な立証をしなければならないわけですので、そういう意味では、やはりきちっとした証拠とかあるいは裏づけ、こういうものを備えて立件をしなければならない。できるだけそういう運用といいましょうか、そういうことをすることになるのだろうというふうに思います。

 そのほかにも、制度的には、証拠裁判主義とか自由心証主義、自白法則等々ございます。必ずしも検察官に有利だということではございませんけれども、やはり基本的には、できる限り自白といいますか供述調書に頼らない、そういう証拠をきちっとそろえる、こういうことが一番重要なことではないかというふうに思っております。

 ぜひそういう姿勢で臨むべきだということを私もしっかりと強調しておきたいというふうに思っております。

大口委員 中井大臣、お待たせしました。

 こういうふうに公訴時効の廃止に伴って殺人事件などの捜査体制を見直す必要があると思うわけでありますけれども、その前提として、まず、現在の殺人事件などの捜査本部の体制がどのようなものになっているのかと。今後、公訴時効が廃止、延長された場合、警察の負担は大きくなります。初動捜査も極めて大事ですので、これにも力を入れていただかなきゃいけない。かつ、長期的な対応も必要である。限られた捜査資源をいかに有効に用いるか、そういう点でどのような捜査体制で臨むのかということをお聞かせ願いたいと思います。

中井国務大臣 いろいろと御心配を賜りまして、ありがとうございます。

 おっしゃるとおり、公訴の期限というものが廃止されましたら、何十年と証拠を残していく、初動において本当にきちっと捜査をして証拠を集め、それを科学的に、時間の長さにかかわらずいつでも鑑定できる、こういう形で残していく体制、これが必要であろうかと考えております。

 特に、こういう法案が出されるようになりました裏には、DNA鑑定に対する信頼というものが非常に大きくなってきた、このDNAの鑑定を何十年と保存し続けられる体制、既に、各県の科捜研にはマイナス八十度の冷凍庫で保存できる、そして、今回の予算で、千数百の警察署にマイナス二十度の温度で保管できる冷凍庫、こういったものを手配いたして、いろいろな長期化に備えていきたいと考えております。

 また同時に、今回のこの法案を早期に成立させていただければ、先生先ほどお話ありました八王子のスーパー、これが時効ということがなくなりますので、早速にもう一度洗い直しをするなど、時効をクリアできるいろいろな事件について督促をしてまいりたい。

 それから同時に、今までも捜査本部は、解決をしない限り捜査本部を解散するということはありません。これをどういう体制で持っていくか、そして何年に一度チェックしていくのかというようなことも議論を始めているところでございます。

 またいろいろと御指導いただきますよう、お願いいたします。

大口委員 今、DNA鑑定の件が出ましたので、では、そちらのお伺いをします。

 参議院で、マイナス二十度で冷凍保管した場合、どれぐらいもつのか、要するに、鑑定試料を劣化させないで保管できるのかということに対して、大臣が、「世界中DNA鑑定というものが出てきて二十年という状況でありますから、それは実証されたかと言われれば、たかだか二十年のことでございます。 しかし、冷凍保存をしてやっていけば、半永久的にDNA鑑定というものは証拠として十分価値があると私どもは判断をいたしているところであります。」こういう答弁をされております。

 これについて、科学的に答弁をしていただければなと思っています。

中井国務大臣 血液等水分をたくさん含んでいるものについては、やはりマイナス八十度という温度で保存をしなきゃならない。しかし、昨今行っておりますDNA鑑定のように乾燥型のものにつきましては、マイナス二十度の保存で十分ではないかと考えておりますが、先生方の御指摘に伴いまして、現在、科警研において実験を行っているところでございます。この実験結果が出れば、また公表をして、御批判をいただいていきたいと思っております。

大口委員 それで、法務省にちょっとお伺いをしたいんですけれども、殺人などの公訴時効が廃止される事件について、どの程度の期間が経過したら、検察として警察から事件の送致を受けるのか。また、そのように送検がなされた場合、検察としてその事件をどのように処分するのか。これまでは時効送致ということで不起訴処分にしていたわけですけれども、今度は新しい類型の不起訴処分とするのか、その場合は法改正が必要なのか、お伺いしたいと思います。

千葉国務大臣 現在でも、犯罪の捜査をしたときには、刑事訴訟法の二百四十六条によりまして、「速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。」こう規定をされております。これに基づいて行われているわけですけれども、今回、公訴時効が廃止をされたということになりますと、一体どういうときにこの二百四十六条に該当するのかということになろうかというふうに思います。

 個別具体的な証拠関係等にかかわりますので、なかなか一概に何年、こういうことにはならないというふうに思いますけれども、さはさりとて、では今度は、全く永久に事件送致ができないのかということになってしまいます。

 やはり捜査というのは、基本的に公訴の提起あるいは遂行のために行われるわけですので、例えば、個別具体的に、捜査、公訴をやる意味がなくなってしまうというような事態になれば、これは、一たんこれで捜査が終了したということで送致を受けるということになるのだろうというふうに思います。例えば、長期化して、犯人が、普通の年齢から考えると死亡と認められるような、そういうときに至っているというようなときには、公訴提起の可能性がなくなったということになりますので、事件を送致していただいて、そして、基本的には不起訴処分という形で捜査を終結するということになるのではないかというふうに思います。

 これをどういう形で、どういう時期に、それからどういう認定の仕方で事件を終局させるかということは、少し今後緻密に検討をしていく必要があるというふうに考えております。

大口委員 時間が来ましたので、これで終わります。

 ありがとうございました。

滝委員長 次回は、来る二十三日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三十九分散会


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