衆議院

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第3号 平成22年10月29日(金曜日)

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平成二十二年十月二十九日(金曜日)

    午前十時三十六分開議

 出席委員

   委員長 奥田  建君

   理事 京野 公子君 理事 階   猛君

   理事 滝   実君 理事 辻   惠君

   理事 本多 平直君 理事 稲田 朋美君

   理事 平沢 勝栄君 理事 大口 善徳君

      阿知波吉信君    相原 史乃君

      井戸まさえ君    小野塚勝俊君

      笠原多見子君    川島智太郎君

      工藤 仁美君    熊谷 貞俊君

      黒岩 宇洋君    桑原  功君

      小宮山泰子君    竹田 光明君

      橘  秀徳君    津島 恭一君

      中島 政希君    早川久美子君

      平山 泰朗君    牧野 聖修君

      湯原 俊二君    横粂 勝仁君

      渡辺 義彦君    河井 克行君

      北村 茂男君    柴山 昌彦君

      棚橋 泰文君    馳   浩君

      森  英介君    柳本 卓治君

      漆原 良夫君    城内  実君

    …………………………………

   法務大臣         柳田  稔君

   法務副大臣        小川 敏夫君

   外務副大臣        伴野  豊君

   厚生労働副大臣      小宮山洋子君

   国土交通副大臣      三井 辨雄君

   法務大臣政務官      黒岩 宇洋君

   政府参考人

   (内閣法制局第一部長)  横畠 裕介君

   政府参考人

   (警察庁長官官房総括審議官)           坂口 正芳君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    金高 雅仁君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    原   優君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    西川 克行君

   政府参考人

   (公安調査庁長官)    北田 幹直君

   政府参考人

   (海上保安庁長官)    鈴木 久泰君

   法務委員会専門員     生駒  守君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月二十九日

 辞任         補欠選任

  熊谷 貞俊君     渡辺 義彦君

  小宮山泰子君     笠原多見子君

  高邑  勉君     平山 泰朗君

  北村 茂男君     馳   浩君

同日

 辞任         補欠選任

  笠原多見子君     津島 恭一君

  平山 泰朗君     高邑  勉君

  渡辺 義彦君     工藤 仁美君

  馳   浩君     北村 茂男君

同日

 辞任         補欠選任

  工藤 仁美君     熊谷 貞俊君

  津島 恭一君     小宮山泰子君

    ―――――――――――――

十月二十六日

 民事訴訟法及び民事保全法の一部を改正する法律案(内閣提出第八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 民事訴訟法及び民事保全法の一部を改正する法律案(内閣提出第八号)

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

奥田委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として内閣法制局第一部長横畠裕介君、警察庁長官官房総括審議官坂口正芳君、警察庁刑事局長金高雅仁君、法務省民事局長原優君、法務省刑事局長西川克行君、公安調査庁長官北田幹直君、海上保安庁長官鈴木久泰君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

奥田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

奥田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。橘秀徳君。

橘(秀)委員 おはようございます。民主党の橘秀徳です。

 柳田法務大臣、小川法務副大臣、黒岩政務官、御就任おめでとうございます。そして、小宮山厚生労働副大臣におかれましては、御多忙中、御出席いただきまして、ありがとうございます。

 本日は、三点について、児童虐待の防止の問題、それから共同親権の問題について、さらに尖閣諸島の中国漁船衝突事案について御質問をさせていただきます。

 まず、冒頭であります。

 今、法制審議会の方で、部会で民法の親権規定の改正ということを審議されているところでありますが、中間試案が出されて、それにパブリックコメントを出されている段階であります。

 まず冒頭、柳田法務大臣に、こうした親権規定の改正を含めて、児童虐待防止に取り組む抱負あるいは意気込みについてお聞かせいただきたいと存じます。

柳田国務大臣 おはようございます。

 児童虐待、このことは深刻な社会問題となっており、その防止に取り組むことは重要な課題であると私も考えております。来月は児童虐待防止月間にもなっておりますので、いろいろと法務省としても考えること、やるべきことはやっていかなければならないと思っております。

 その中でも、法務省としては、民法の親権制度の見直しについて検討を行っているところでありまして、引き続き、児童虐待防止のために積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

橘(秀)委員 ありがとうございます。

 防止月間ということで、先ほど柳田法務大臣はポケットからオレンジリボンを出されておりました。小宮山副大臣、つけておられます。私もぜひ購入してつけたいと思っております。

 これまで、多くの現場関係者の方々の努力で児童虐待防止対策は前に進んできたところでありました。一九九九年に民主党は議員立法をつくっておりまして、このときに既に、親権の一部制限、停止について、特に小宮山先生を中心に前に進められてきたところでございました。やっと念願のこの親権の規定について、十年越しでこれがかなっていくということ、本当にうれしく思っているところでございます。それから、この問題については、超党派で、きょう質問に立たれる馳浩先生、それから公明党では池坊先生、共産党さんと、党派を超えて多くの先輩議員たちが取り組まれて、子供の命と未来を守る児童虐待防止法案をつくって改正を重ねてきたところであると思います。

 最近、報道各社さんについても、この問題、本当に真剣に取り組まれています。産経新聞さんの方では、江戸時代の日本の虐待の事例が出ていたり、さらに諸外国の法律の制度について事細かく今特集を組まれているところでございます。

 配付資料をごらんください。これは、朝日新聞と毎日新聞のおとついの記事でございます。埼玉新聞の児童虐待の問題をずっとやってこられた小宮純一さんという方が原作者で、余り名前を言ってどうかと思いますが、来週の週刊少年サンデーで連載が始まるというものでございます。主人公が若い児童福祉司の方で、その活躍を書かれて、実際に、この小宮さん、児童虐待の問題を本当に取材を尽くしてこられて、現場での実際の事件をもとに、今回の作品、フィクションではありますが、ノンフィクションにより近い作品だそうであります。これから子供たちを育てていく少年少女、特に中高生の皆さんが読者層なのでありますが、ぜひ皆さんごらんをいただければと思っております。

 なお、原作の小宮さんときのう電話でお話ししたんですが、小宮山洋子副大臣に実際に会われて、この連載について紹介させていただいたということでございました。小宮山副大臣の就任、大変喜んでおられて、物すごく期待をされておりました。その小宮山洋子副大臣にお伺いさせていただきます。

 平成二十三年度の予算、今、概算要求を各省出されているところで、児童虐待防止の関連予算については、社会的養護体制の充実に七億円の増額要求をされたということを伺いました。予算に児童虐待防止にかける思いをどう反映させていくのか、御答弁をいただきたいと存じます。

小宮山副大臣 橘委員には、児童虐待に大変関心を持っていただいてありがとうございます。

 ずっと超党派でこの法律をつくり、改正をしたところでございますが、御質問にお答えいたしますと、児童虐待への対応など要保護児童対策の充実につきまして、平成二十三年度の概算要求では、今お話にあったように、前年より七億円増の八百四十八億円の要求を行っております。

 このうち、社会的養護体制の充実については、虐待を受けた児童等が入所する児童養護施設や里親などについて受け入れ児童数の拡大を図ること、また、児童養護施設等での小規模グループケアの推進、児童家庭支援センターの箇所数の増加ということで百四カ所から百八カ所にいたします。また、心理療法担当職員の常勤化の推進などを盛り込んでおります。児童虐待の未然防止、早期発見、早期対応を図るためには、市町村や児童相談所の体制整備を図るなどの経費も必要で、これも盛り込んでおります。

 また、今年度の補正予算におきまして、安心こども基金の積み増し、延長をしておりますけれども、その中で、児童虐待防止対策、これまで十億だったんですけれども、百億にさせていただきまして、しっかり取り組みたいと思っているところです。

 御紹介いただいたように、来月は児童虐待防止月間で、私もここにオレンジリボンをつけておりますけれども、そのほかに、全国の児相につながる共通番号をつくっているんですね、ところが、その番号が余り知られていないので、これを知らせるためには、名刺大ぐらいのカードをつくって、NPOの方とかいろいろ関心を持っていらっしゃる方がたくさんいらっしゃるので、その方たちに使っていただくようにと私が提案いたしまして、月間の間にはそういうものをつくりますので、またお知り合いのグループなどで配っていただく方があれば教えていただきたいと思いますし、とにかく、番号がわかって、まずそれを通知してもらわないといけない。その後、児相の強化などでしっかり皆さんの御支援もいただいて、予算措置もしていきたい、そのように考えているところでございます。

橘(秀)委員 どうもありがとうございました。

 本当に頑張っていただいて予算の拡充を図られている、施策も充実をしてきているところと思います。

 ただ、私、かつて松下政経塾というところの現地の研修で、児童養護施設や情緒障害児短期治療施設を回ってまいりました。心理療法士の方も、専門職の方がいらっしゃるんですが、実際は、人手が足りなくて、この方が料理を運ばれたり掃除をされたり、本当に現場はまだまだ人員も予算も足りていないところであります。

 毎日新聞さんの方の記事、終わりの方をごらんいただきたいんですが、児童相談所にしても、児童福祉司の方一人が抱えている案件が大体百件を超えているというまだ状況であります。児童養護施設にしても、先ほど申し上げたとおり、本当に人員、予算も足りないところでありますので、一層の拡充を求めたいと存じます。

 それでは、小川敏夫副大臣にお尋ねさせていただきます。

 法制審議会児童虐待防止関連親権制度部会における現在の進み方のことについて一点。それから、あわせて、部会の中間試案、児童虐待防止のための親権制度の見直しに関してパブリックコメントを行ったところでありますが、この概要について、また、国民や関係機関のコメントをどう生かしていくのか。特に、懸念をされる部分というのは、十八歳から十九歳の児童養護施設を退所されたような後、親権者がアパートを借りるのに同意をしないとか就職の際に同意をしてくれない、あるいは、児童養護施設を出た後に、十八歳、十九歳の子に実際に親がつきまとったり徘回をしたりということ、これが今回の法改正できちんと防げていけるのかということを多くの関係者の方から不安をいただいているところであります。あわせて御答弁いただきたいと存じます。

小川副大臣 お答えします。

 本年八月、九月にパブリックコメントを募集しておりまして、そうした結果を受けまして、明年二月に答申を行って、そして来年の通常国会には法案を提出したい、そのようなことで臨んでおります。

 今御指摘の十八歳、十九歳の点につきましても、委員から御指摘いただいた点、私どもも問題意識を持っておりますので、適正に対応していきたいと思っております。

橘(秀)委員 ありがとうございます。

 私は、審議会の形式ということで非常に質問がしづらいところではあるんですが、やはり関係者の方が懸念されているのは、どうしても審議会というと実際には法務省の民事局さんの方で事務方をされて取り回されていく、どうしても意向が反映をされていく傾向にあると思います。

 例えば、裁判所で実務が膨大で仕事がやりづらくなるとか、そうしたこと、こっちを優先するんじゃなくて、子供の命を守ることと権利を守ること、あと親権の制限については必要なところだけやれるような形で、親子の再統合も含めて、これをぜひ優先していただきたいというのがお願いであります。仮に裁判所のマンパワーが足りなければ、それは増員をしていく、あるいは配置がえをしていく、そうしたことを政治主導で行っていただきたいということを要望させていただきます。

 十一時から厚生労働委員会、小宮山先生、済みません、質問いたします。

 八月五日の参議院の予算委員会で、辻泰弘委員の質問に、厚生労働大臣、法律の改正も含めてやらなければならないんじゃないかという答弁がありました。改正児童虐待防止法で、いわゆるかぎを壊して立ち入ることができる、これが可能になったわけでありますが、施行されてから、わずかに三件しかないという状況であります。

 長妻大臣の前向きな答弁から、大臣かわられましたが、これは継続をしていくのか、その方針についてお聞かせください。

小宮山副大臣 児童虐待防止法の二回目の改正は、先ほどお話にあった馳議員などと一緒に私どもしたわけですが、そこで、児童虐待されているおそれがあれば裁判所の許可状を持って入れるように法整備はもう既にしてあるんですね。それが今回うまく使われなかったのは、運用上の問題ではないかというふうに考えております。

 この大阪の件につきましては、居住者の特定ができなかったなどの事例だったということから、裁判官の許可状を得て解錠などを可能とするような臨検、捜索を積極的に活用するべきではないか、そういう御指摘を辻議員からもいただきました。

 この大阪市の事件を受けまして、厚生労働省では、事件後すぐに、全国の児童相談所に、安全確認の徹底及び安全確認ができていない事例の確認及び再検討、これを指示いたしまして、また、安全確認の実施状況の調査や、安全確認が困難な状況での工夫事例の収集などを行い、対応を検討してまいりました。

 そして、八月二十六日付で、臨検、捜索などについて保護者等の氏名が特定できなくても可能であるということを全国の児童相談所に通知をし、また、九月三十日付で、安全確認の実施状況の調査結果を公表するとともに、臨検、捜索の実務が円滑に行われるよう、その実例も記載をいたしました「虐待通告のあった児童の安全確認の手引き」を作成いたしまして、全国の児相に配っているところでございます。

 こうした取り組みの中で、法改正はできているので、その運用がしにくい面をしっかりとフォローしていきたい、そのように考えております。

橘(秀)委員 ぎりぎりまでありがとうございました。御退席をお願いいたします。ありがとうございました。

 それでは次に、順番を変えて、尖閣諸島中国漁船衝突事件について。今の児童虐待防止については、すばらしい、エールを送りたいという形だったのですが、ちょっと今回については厳し目に御質問をさせていただきたいと思います。

 実は、この法務委員会でも委員であります河井克行議員たちとともに、国家主権と国益を守るために行動する議員連盟というので活動を今いたしております。

 十月八日、九日には、尖閣と石垣の方への視察ということでお邪魔をしてまいりました。海上保安庁、海上自衛隊、飛行機、毎日飛んでおりますが、乗せてくれと言いましたが、だめですとばっさりとやられて、チャーター機、涙が出るほど高い値段でチャーターをして飛んだ次第でございました。

 実際、現地で、八重山漁協、石垣島の漁民の方々からお話を伺いました。マグロ漁の最盛期には、そうじゃなくても日本の船が十隻に対して他国の船が二百隻押し寄せてくる、それが領海侵犯を場合によってはする。尖閣の方に視察に伺ったときも、中国の漁船が近海に六十隻、今この海はこのような状況であります。

 実際に、漁師の方々は切なる願いで、若い漁師の方も、怖くて日本の領海であっても行けないと。これでは国民が犠牲になって、犠牲と妥協とか譲歩では、真の友好の外交関係など私は生まれないんじゃないかと思っています。

 まず、国家主権と国益を守っていくということ、このことは本当に大切なことであると思います。このことを踏まえて、御質問にお答えをいただきたいと存じます。

 那覇地検、おとつい、衆議院に、横路議長あてに要望書、ビデオ映像を提出されました。不可解なのは、これが六分五十秒に編集されているということと、さらに、公開は慎重に、範囲を狭めてください、こういう要望書がわざわざ那覇地検からつけられて、衆議院の議長あてに提出をされたそうであります。

 私の方で、昨日、法務省に対して資料要求を行いました。だめですと即座にお答えをいただきました。

 この要望書の内容について、まずは黒岩政務官にお伺いさせていただきたいと思います。それから、あわせて、法務委員会の委員の資料請求に応じられない理由についてもいただければと存じます。

黒岩大臣政務官 橘委員の御質問にお答えします。

 まず、この要望書の内容について私の方から申し上げますけれども、事件はいまだ処分をしていないこと、そして海上保安庁が海上警備・取り締まり活動の秘匿性への配慮が必要であるとしていること、そして、関係者の名誉、人権への配慮も必要であることを御勘案いただきまして、刑事訴訟法第四十七条の趣旨にかんがみまして、視聴される方々の範囲等を含め、極めて慎重に取り扱われるよう、特段の御配慮をお願いしたものと承知しております。

 そして、橘委員からの資料請求に対してこたえられないということについては、これはもともと予算委員会の決議によってということでございますので、要するに予算委員会という相手方がございますので、それについては、こちらの方からは直接はそれに今のところは応じないということだと承知をいたしております。

柳田国務大臣 お出しいただきたいと言ったのは、地検から衆議院に対して行った要望書のことですか。(橘(秀)委員「はい」と呼ぶ)

 これは、委員会でしっかりと議決していただければ、適切に対応をされると私は考えております。

橘(秀)委員 大臣からも後押しをいただきました。

 委員長、ぜひこの要望書の写しを法務委員会に提出していただきますよう、お取り計らいをお願いいたします。

奥田委員長 理事会において検討させていただきたいと思います。

橘(秀)委員 率直に申し上げて、この資料請求に応じられないということ、びっくりいたしたところであります。それから、要望書の中身についてもびっくりしたことであります。

 公開の仕方について、提出をした衆議院、特に、だれが見てよいのか、どういう方法でやるかについては、全国民の代表たる国会議員が集っている、それから国権の最高機関である国会が一義的に判断すべきことであると私は思います。これでは、検察当局が国会に指図をするような、そうしたありようだと私は考えるところであります。(発言する者あり)ありがとうございます。

 九月二十四日の那覇地検のプレスリリースもこうありました。引き続き容疑者の身柄を勾留したまま捜査を継続した場合の我が国国民への影響や今後の日中関係を考慮いたしますと、これ以上被疑者の身柄の拘束を継続して捜査を続けることは相当でないと判断した次第でありますとありました。ビデオ映像は六分五十秒に編集されている。こうした今回の一連の動きは、一行政庁の判断で外交が決まるという、政治主導の対極にあると私は思っています。

 きのうの参議院の法務委員会で、自民党の西田議員、編集は国権の最高機関の権利を侵害するとおっしゃっていましたが、まさにおっしゃるとおりだと思った次第であります。昨日の法務大臣の答弁は、海上保安庁の活動に支障が生じないようにしたいし、名誉、人権にかかわるところ、公益上の必要性を考えたときに、六分五十秒の映像を作成して出した方が妥当、そうした御答弁だったと思います。

 これは質問させていただきます。小川副大臣、お願いします。

 検察当局が被疑者の釈放方針を決定するに当たり、外交的判断を行う権限がそもそもあるのかということであります。

 また、今回のように、その要望書のことについても、国会が指図されるような事態について、副大臣、どうお考えになるでしょうか。

小川副大臣 まず、検察庁は、証拠品の管理に責任を持っておるわけでございまして、例外的に、公益上の必要があるときにはそれを公開、公表することができる。今回は、その例外的な措置として、衆議院、国会から要請があったということで特別に応じたわけでございますが、やはり、証拠品を管理する責任がある者の立場として、公表するけれどもそれに対して要望する、つまり、指示するわけじゃなくて、出した後の対応は、それは受け取った衆議院なり国会が決めるでしょうけれども、やはり、証拠品を管理する者の立場として要望をすることは、これはできるのではないかというふうに思っております。

 今の点で、ほかの点はいいですか。(発言する者あり)外交判断をしていいかということでございますね。

 これは、外交判断を行ったのではなくて、あくまでも、地検が釈放処分を行うに当たって考慮した事情の一つということでございますので、外交判断を行ったというわけではございません。

 ですから、外交を行う権限というのは、これはもちろん検察にはないわけでございますが、ただ、事件を処理する権限は、これは検察官にあるわけでございますので、事件を処理する権限の中で、事件を処理する判断とした、事象の一つとして考慮したということでございます。

橘(秀)委員 恐らく、小川副大臣、心から言っている御答弁ではないと存じます。正直、国民の方々が、今もし仮に映像を見ていたときには、やはりだれも納得しないんじゃないかというのを私は率直に申し上げたい次第であります。

 それから、先ほどの御答弁の中で、刑事訴訟法四十七条に関してのお話がございました。刑事訴訟法の四十七条というのは、確かにおっしゃるとおり、「訴訟に関する書類は、公判の開廷前には、これを公にしてはならない。」そうした規定でございます。ただし、条文には続きがございまして、ただし書きとして、「但し、公益上の必要その他の事由があつて、相当と認められる場合は、この限りでない。」という規定でございます。

 率直に申し上げて、こちらは法務委員会であります。法務委員会の所管、改めて調べ直しましたら、衆議院規則の九十二条、「法務省の所管に属する事項」及び「裁判所の司法行政に関する事項」であると。それから、国政調査事項については四事項、その中では、裁判所の司法行政に関する事項、法務行政及び検察行政に関する事項とございます。

 むしろ、ビデオの公開については、法務委員会にもぜひいただきたいというのが……(発言する者あり)済みません、何か応援が自民党の方からしかないというような、ありがとうございます、頑張ります。ぜひとも、この点についてもあわせて法務委員会にビデオの提出をしていただけないでしょうか。このことは、やはり検察の行政を所管するのはまさにここ法務委員会でございます。ぜひともこのことを委員長に要望させていただきます。

奥田委員長 ビデオの提出については、これまでも質疑の中で要求がされております。また、きょうも検討、協議がありましたけれども、引き続き理事会の中で協議、検討をさせていただきたいと思います。

橘(秀)委員 ありがとうございます。

 それから、私は個人的に考えております、党の方針とちょっと違うかもしれませんが、ビデオについては国民全体のものとして公開すべきじゃないかと私は考えるところであります。特に、八重山で実際に漁をされている方たち、もう何が何だかわからない状況、何が起こったのかを知らされていない状況にあると思っています。

 菅総理、十月一日の本会議の所信表明で述べられていたのは、国民の一人一人が自分の問題として考える主体的で能動的な外交を展開したいということをおっしゃっておられました。政権交代後に外務大臣が取り組まれたのは、密約文書の公開について、こうしたこともやられてきたところでありました。

 私は、この国民の知る権利と、それから、そもそも、もともとは国民が主役の民主党であります。ぜひDVDは国民に広く公開すべきではないかと私は考えるところでございますが、ぜひ柳田大臣の答弁をいただきたいと存じます。

柳田国務大臣 もう既に経過は御存じのように、衆議院の予算委員会で議決されて、衆議院の議長名で検察の方に提出の要望がございました。この要望を受けて、検察と海保の方でいろいろ議論をした。その議論の中に、こういう項目があるのでこの辺は御注意願いたいということで要望書にまとめて、ビデオとともに国会の方に提出したところでございます。

 我々としては、この要望を十分国会の方でも御理解いただきたい。その上で国会の方が御判断をされることになるんだろうと私は考えております。

橘(秀)委員 提出できない理由、訴訟法四十七条に基づいてということで、例えば、説明の中では、関係者の名誉、人権への配慮というのが三項目めにあったんですが、具体的にどうですかと刑事局の方に伺ったら、海上保安官の人権への配慮というんですが、私は、石垣の海上保安部で実際にお話を伺ってまいりました。もう中国の漁船がスピードを上げて突っ込んできたということは明々白々であります。むしろ、名誉、人権を守るためであるなら、きちんと白黒はっきりさせるためにも、ビデオを全国民に公表すべきということを重ねてお願いを申し上げて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

奥田委員長 次に、大口善徳君。

大口委員 公明党の大口でございます。質問の機会を与えていただきました。

 まず冒頭、きょう、岡崎国家公安委員長にも通告をさせていただきました。内閣委員会の方は十一時三十分まで岡崎国家公安委員長に対する通告はないんです。ですから、来ていただこうと思えば来られるわけですけれども、来ていただけない。

 可視化の問題、今回、大阪の事件で極めて大変な問題でございまして、どうしてここに国家公安委員長が時間があるにもかかわらず出席できないのか、私は強く抗議したい、こういうふうに思います。

 委員長、本当にしっかり受けとめていただきたいと思います。

奥田委員長 理事会で説明させていただいたとおり、大臣の拘束も御理解をいただきたいと思います。

大口委員 そして、今回の尖閣の問題につきまして、十月二十五日の参議院の予算委員会で、我が党の草川昭三議員も確認しているわけですが、国際関係への影響を考慮して刑事事件の処分を判断した前例は、法務省が知る限り、一件もない、こういうことでございます。

 本来、国際関係への影響を考慮するという外交判断、これはやはり政治がやるべきでありまして、あたかも、今回の政権はこういう大きな問題の処理を検察に押しつけたと言われてもこれは仕方がない、こういうふうに、政治が判断する問題を検察に押しつけるということは、今度は逆に、検察の準司法的な独立性というものが害されるんですよ。ですから、司法権の独立にも悪い影響を与えるわけですから、私は、こういう検察に押しつけるという態度に対しては厳しく指摘をしておきたい、こういうふうに思っております。

 さて、前回も質問させていただいたわけでございますけれども、二十二日の法務委員会の質疑で、中国人船長について、当初、接見禁止しなかった理由と、途中の九月二十二日から接見禁止とした理由を尋ねたところ、接見禁止としなかった理由については、罪証隠滅のおそれがないためとの答えがあったわけですが、途中の九月二十二日から接見禁止とした理由について、捜査中なのでということで、答えがなかったわけでございます。接見禁止としなかった理由について答え、釈放時にその理由を、極めて不十分でありますけれども述べているにもかかわらず、接見禁止とした理由について言えない、これは国会軽視であると私は西川局長に対して指摘をしたいと思います。

 この理由について、改めて答えていただきたい。そして、罪証隠滅のおそれがあったということについても、具体的に述べていただきたい。結局は、接見禁止をしなかったことが判断の誤りであったのではないか、これも指摘したいと思いますが、いかがでございましょうか。

西川政府参考人 お答え申し上げます。

 前回、捜査機関の活動にかかわる事柄でお答えを差し控えると申し上げたわけでございますが、その点については変わらないのですが、あくまで一般論ということで申し上げますと、例えば勾留の途中で被疑者に接見禁止が付される理由として、被疑者が勾留された後、外部からたくさんの手紙のやりとり、ないしは接見に訪れた者との会話などによって罪証を隠滅すると疑うに足りる理由が認められる、このような場合については改めて接見禁止を付すということがございますので、そのようにお答え申し上げます。

大口委員 当初から否認しているわけですから、そして、そういう手紙等が来ることも十分予想されていたわけですね。それにもかかわらず、当初から接見禁止をしなかった、非常に私はそこに政治的な判断といいますか、それが何らかの形で圧力として那覇地検に及んでいる、こうとしか考えられないわけでありまして、この点、指摘をしておきたいと思います。

 さて、昨日、那覇地検の鈴木次席検事が記者会見をしました。今回、二十七日、那覇地検から衆議院議長に対して、予算委員会から要求のあった中国漁船の衝突の撮影ビデオが提出されたことについて、六分五十秒、石垣海上保安部、福岡高検、最高検と協議して、提出するのが相当と判断した部分について提出をした、こういうことでありますが、これについて事実確認をしたいと思います。

 そしてさらに、海上保安庁が撮影したビデオの映像のすべてが那覇地検に提出されたのかどうか。それから、那覇地検が受け取ったビデオ映像の内訳、媒体、映像時間の長さはどれぐらいなのか。そして、那覇地検が衆議院議長に提出したDVDの長さが六分五十秒ということでありますが、それについての確認。さらに、今回衆議院に提出されたDVDが、海保、福岡高検、最高検と協議をして範囲を決めたということでありますが、この那覇地検の手持ちの映像をどのように抽出して作成したのか、抽出の基準はどういう基準であったのか。これについて明らかにしていただきたいと思います。

西川政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、那覇地検において提供を受けている、海上保安庁からでございますが、これは衆議院に提出したDVDと同一内容のDVDのほか、DVDの映像を含む一連の映像を記録したオリジナルな媒体、これも存在をいたします。

 それから次に、オリジナルの媒体の時間については、これは個別具体的な事件の証拠でございますので、お答えを差し控えさせていただきますが、衆議院に提出したビデオの時間については約六分五十秒ということで間違いがございません。

 それから、抽出の理由等でございますが、刑事訴訟法四十七条に基づき、衆議院からの提出要求に基づいて映像記録を提出することの公益上の必要性と、公にした場合の今後の海上保安庁の海上警備・取り締まり活動の秘匿性、それから、関係者の名誉、人権への配慮という種々の要素を総合考慮して、オリジナルの媒体から衆議院に提出するのが相当と認められる部分を抽出したDVDを作成したものということでございます。

 それから、その方法でございますけれども、那覇地検検察官立ち会いのもと、石垣海上保安部におきまして、オリジナルの媒体から衆議院に提出するのを相当と認めた部分をそのまま抽出しまして、その部分を切り取って作成したものというふうに承知をしております。

大口委員 一つは、では、その海上保安庁が撮影したビデオの映像すべてが那覇地検に行っているのか。これは、海保に確認しましたら、すべて行っていると言っているんですよ。これを答えてください。それから、よく抽出というお言葉を使うんですが、編集と今回抽出して作成した違いは何ですか。二点。

西川政府参考人 今回、衆議院に提出したDVDの映像を含む一連の映像を記録したオリジナルの媒体、これは現在、那覇地検石垣支部に送致を受けてそこにあります。

 それから、もう一点は何でしたっけ。(大口委員「編集と抽出」と呼ぶ)編集と抽出というのは、抽出というのは、あくまで、衝突の場面、それから海保の今後の検挙活動等に影響を与える等の理由で削除した部分を除きまして、衝突場面を中心に、二回衝突がございますけれども、その二回の衝突につきまして、その部分をそのまま切り取ったというものでございまして、一切、当然のことながら、改ざんであるとか脚色をしている、そのようなことはございませんので、編集という言葉はいかがかなと思いまして、抽出という言葉を使わせていただいたという次第でございます。

    ―――――――――――――

奥田委員長 議事の途中でありますけれども、ただいまジョゼフ・ダイス国連総会議長御一行が傍聴にお見えになっております。御紹介申し上げますとともに、どうか、法務委員会の皆様で歓迎の意を表していただければというふうに思います。

    〔起立、拍手〕

奥田委員長 御着席ください。

    ―――――――――――――

奥田委員長 議事を続行させていただきます。大口君。

大口委員 ジョゼフ・ダイス議長を初め皆さん、本当にきょうは歓迎を、国連の議長が来られるということは、我が法務委員会の大変名誉なことでございますので、心から敬意を表したいと思います。(拍手)

 さて、抽出、そして作成ということと、編集、これはどう違うんですか。

西川政府参考人 先ほども申し上げましたとおり、衝突の画像ということでございましたので、衝突二回ございます、その二回の衝突を含んで、海保の活動等に支障のない部分、これについて合計六分五十秒、これをそのまま落としたのが今回のDVDということでございます。

 編集と抽出はどう違うのかというと、編集といいますと、いかにもそれに対して何か加工したようなイメージがありますので、あえて抽出という言葉で説明させていただいた、こういうことでございます。

大口委員 いずれにしましても、改ざん等は一切していないということを、ちゃんと国際社会に対して誤ったメッセージがないようにしていただきたい。今の説明では私ははっきり納得できない、こう思います。

 そして、オリジナルが今那覇地検にある、全部映っている。相当の時間ですよね。それが六分五十秒ということになっているわけですから、これがどういう基準でどう抽出、作成されたのかということを、これは今後明らかにしていかなきゃいけない、こういうふうに思います。

 さらに、二十七日、新聞報道によりますと、総理と仙谷官房長官がこのビデオを見たと。仙谷官房長官は、国会に提出すべきかどうかの判断は内閣にある、こういう判断権は内閣にあるということを言っているわけです。刑訴法四十七条ただし書きで、那覇地検にこの判断権はあるのではないですか。このことは、要するに、政治介入しないと言って、政治的にこの問題を処理しようとするところが見え見えじゃないでしょうか。このビデオについて、国会に提出すべきかどうかの判断権はどちらにあるのか、お答えをいただきたいと思います。

西川政府参考人 今の発言については承知していませんが、刑事訴訟法四十七条の提出の可否ということになりますので、この判断権は証拠の保管者であります。したがって、検察庁ということになります。

大口委員 ですから、また仙谷官房長官、もしこれが事実だとしたら、法律の専門家といいながら、実は誤ってその話をしたということでございます。とんでもない話でございまして、ここはまた、今後、この法務委員会でもしっかり追及していきたい、こういうふうに思っております。

 法務大臣は今回のビデオを見ていますか。きのうの答弁では見ていないということでございます。治安の問題、刑事司法の責任者がなぜビデオを見ないんですか。理由をお答えください。

柳田国務大臣 今回、衆議院に提出したビデオは見ておりません。内容については、事務方の方から折々説明を受けておりますし、図面も、こういうふうな航路でこういうふうなのでと説明を受けました。私は、図面を見ればそれなりの状況が把握できるように大学で勉強してきましたので、その図面を見ればそれで十分だというふうに判断をした次第であります。

大口委員 今の大臣の答弁は科学的でないんです。目からの情報、耳からの情報というのは、人からの伝聞に比べると、図面等を見ても、はるかに違うんですよ。

 やはり、この問題の責任者である、しかも、これは検察の問題として今の政府はそこに閉じ込めているわけですから。そうなってきますと、その最高責任者は大臣なんですよ。なぜビデオを見ないんですか。今後、見る気はないんですか。

柳田国務大臣 私も、大学時代は造船の勉強をしてきましたので、当然、航路とかいろいろな話も聞いて勉強をしてまいりました。図面を見て事件の内容がわかったので、私は見ることをしませんでした。それだけです。

大口委員 今回、那覇地検検事正から要望があった、そしてまた官房長官からも予算委員長に要望があったと。

 この要望について大臣は関与されているのか、そしてまたDVDの国会提出について関与をされているのか、お伺いします。

柳田国務大臣 今回のDVDと要望書について報告を受けました。内容について、わかったということで、了解をさせていただきました。

大口委員 提出前に報告を受けたんですか、それとも提出後に報告を受けたんですか。要望書についても、要望書が提出された後ですか、前ですか。

柳田国務大臣 衆議院議長に届く前に、報告を受けました。

大口委員 それに対して、どういう判断をされたんですか。

柳田国務大臣 先ほども申しましたように、わかりましたというふうに申し上げました。

大口委員 ビデオも見ていないのに、そういう判断がよくできるなと。私は、本当に法務大臣としての自覚をもう一度再認識していただきたい、こういうふうに思っております。

 さて、今回、那覇地検から衆議院に提出されたDVDを、この法務委員会に提出されるよう求めます。

 と申しますのも、この問題、検察の判断だということで、刑事司法に閉じ込めているんですよ、今の政府は。そして、治安の維持ということについてはこの法務委員会の所管でございます。そういう点からいえば、ただ単に予算委員会だけではなくて、この法務委員会でも、やはりこのDVDを私どもは提出をしていただく権利がある、こういうふうに思っております。しかも、ただいま民主党の橘議員からも要求がありました。これで全会一致ですから、きょうのお昼にでも、委員長、どうか提案していただいて、やっていただきたい。

 その上で、六分五十秒のDVDを見て、ただ単に漁船が「みずき」に故意に衝突させたかどうかというだけじゃなくて、犯行の態様、その悪質性、「みずき」の航行への影響や、「みずき」の乗組員への危険性、計画性、常習性等について判断する場合、この六分五十秒のビデオで判断できるのかどうか。まず、このDVD、今の簡易版を見た上で、ビデオ全体についての提出も御検討いただきたいと思います。どうぞ。

奥田委員長 理事会にて引き続き検討をさせていただきたいと思います。

大口委員 次に、可視化の実現の前提として、新たな捜査手法の導入が不可欠と考えるのか。

 平成二十一年十一月十七日の当委員会で、当時の千葉法務大臣は、取り調べの可視化は新たな捜査手法導入を前提としない、リンクしないと答えているわけです。

 前回、当委員会で、柳田法務大臣の答弁は、本年六月の中間取りまとめを引き継いだということで、リンクする可能性もある、こういうふうな答えであったわけでありますが、この中間取りまとめでは、リンクするとかしないとか一切触れられていないんです。会議録はもう当然読んでいただいたと思います。

 そこで、それも踏まえて、法務大臣に、取り調べの可視化は新たな捜査手法導入を前提とするか否か、リンクするかどうか、そして、千葉前大臣の方針を変更するかどうか、答えていただきたいと思います。

柳田国務大臣 私が引き継いだのは、中間取りまとめでございます。

 その中間取りまとめにおいては、今後の調査等の過程において、可視化が捜査、公判に与える影響等についても吟味しつつ、必要に応じて新たな捜査手法の導入などについても検討することとしております。

 この結論をどうすべきかというお話もあるかもしれませんが、この辺は国家公安委員長との協議も進めつつ、中間取りまとめにおいて示された方針に沿ってこの問題に取り組んでいこう、そう考えております。

 なお、千葉前大臣のお話を変更するのかという御質問でございましたけれども、千葉前大臣の御答弁は、可視化の検討と新たな捜査手法の導入がリンクするとか、あるいは条件になるということは考えていない旨を述べられた上で、可視化についての調査検討の過程で、捜査手法などに関連してさまざまな議論あるいは調査検討が行われる可能性を否定するものではないというふうに述べられております。

 私も、この趣旨と同じでございまして、新たな手法の導入が必ずしも可視化の条件となるものではないと思っておりますけれども、必要に応じてこれから検討をしてまいる所存であります。

大口委員 しっかりそういうふうに答えていただければよかったんです。

 次に、柳田法務大臣は、もし、この大阪地検の問題について、一連の事件について、事件当時に大臣であった場合は監督責任はあったと考えられますか。これは仮定の話ですから。

柳田国務大臣 村木さんの事件が発生をして、逮捕された時点のことを。(大口委員「いえいえ、それから大阪地検の一連の事件も含めてです。検事三人が逮捕された件も含めて、その当時、もし大臣という立場であった場合です」と呼ぶ)はい、わかりました。

 ということになりましては、監督者を含め必要な処分等を私は行ったつもりですと、もう既に何回か答弁していますので、証拠隠滅及び隠避についての関係者についてはもう処分をしたというふうに認識をしております。

大口委員 ちょっと誤解をされているんですね。

 大臣が責任はないとおっしゃったのは、その当時、大臣の立場になかったから。もし仮に大臣の立場であった場合は、監督責任があるんですかということを聞いているんです。

柳田国務大臣 では、今、千葉前大臣の監督責任を問うかということですか。

大口委員 柳田法務大臣が、もしそういう立場、法務大臣であった場合はということを言っているんですよ。

柳田国務大臣 ですから、現実的には、私が、やめた千葉さんのことを処分するわけにはいきませんので。だから、一般論で言ったら、そういうことについて私はコメントするところではないと思っています。

大口委員 よく質問を聞いてください、時間が無駄ですから。今のは時間をカウントしないでくださいね。

 法務大臣は、今回の一連の大阪地検の事件については責任がないとおっしゃった。それは、その時点、大阪のいろいろな一連の事件当時、法務大臣でなかったから責任がないとおっしゃった。では、もし仮に法務大臣であったとしたらば、その場合は法務大臣の責任はあるのか、こういうことを聞いております。

柳田国務大臣 仮定の話について答えろということですか。(大口委員「そうです」と呼ぶ)

 では、仮定の話についてはお答えはできません。

大口委員 いや、これは一般論ですよ、聞いているのは。仮定の話じゃない。一般論として聞いているんです。

柳田国務大臣 済みません。仮定の話だと聞かれたので、仮定の話にはと言いましたけれども、一般論であれば、今回の一連の事件について処分をしたようにするのが普通だろうと思っています。

大口委員 何回も同じことを聞かせないでくださいよ。大臣の責任はどうなのかと聞いているんですよ。

小川副大臣 一般論のお話ですので、私から答えさせていただきます。

 法務大臣は、検察官の捜査処理、具体的な事件に関しての監督権がございません。ただ単に、一般的に検事総長を指揮することができるだけでございまして、個別の事件に対して監督権はございません。ですから、そういう意味で監督権はないのではないかというふうに思っております。

大口委員 そうすると、前回の委員会の大臣の答弁は変更されたことになるんですよ、副大臣に。要するに、大臣が今回の大阪の一連の事件について責任がない、それは自分が法務大臣でなかったからだ、こういうことをおっしゃったわけですよね。(柳田国務大臣「処理ができないんですよ」と呼ぶ)いやいや、では、無駄ですから、もう答えておられないということは明らかですので、もうこれ以上聞きません。

 その場合、千葉大臣についてですが、今回、検察のあり方検討会の座長に就任されたということでありますが、千葉大臣は、大坪元特捜部長による本年二月の犯人隠避当時、大臣であって、監督責任があったんです。これは前回の大臣の答弁からそういうふうに私は判断しているわけであります。

 そうなってきますと、こういうふうに、千葉大臣は私は監督責任がある、その監督責任があった千葉大臣が、こういう犯人隠避罪についても対象になるわけでありますから、その方が座長になるというのは不適ではないか、こういうふうに考えます。指名を撤回する考えはないんですか、大臣。

柳田国務大臣 私は、座長は千葉先生でいくつもりでございます。

大口委員 理由を答えてください。よく聞いてくださいよ。

柳田国務大臣 撤回をするつもりはありません。

 その理由は、何回もいろいろな場で申し上げていますけれども、弁護士であると同時に国会議員として長きにわたって活躍をされました。私は、千葉前大臣は人格、識見ともにすぐれた方である、そして前大臣として法務・検察の実情もよく御存じである、そういうことから座長としてお願いをいたしたところであります。

大口委員 大坪元特捜部長らが本年二月に犯人隠避罪を犯したわけですよね。そのときの大臣は千葉大臣でした。ですから利害関係があるんですよ。こういう人が、検察のあり方も、今回この問題も対象になるわけですけれども、座長にしていいんですかと聞いています。大臣、答えてください。

柳田国務大臣 ですから、座長にお願いし、これからも頑張っていただきたいと考えています。

大口委員 そうすると、この犯人隠避罪も含めた検察組織のあり方について、監督責任があって本来からいえば何らかの責任をとらなきゃいけない千葉大臣が、座長でこういうあり方について仕切ること自体、私は国民から不審に思われると思いますが、大臣、いかがですか。

柳田国務大臣 今回のことを考えますと、私は千葉前大臣の責任を問うことにはならないと考えております。

大口委員 本当にこれを聞いた国民の皆さんはあきれますよ。大臣は、前回の委員会で、この一連の事件について、大臣の身分がなかったのでその監督責任がなかったと。ということは、逆に言えば、これは大臣の身分があったら監督責任があるということを、こういうふうに認めていたわけですよね。

 だから、その論理に立てば、千葉大臣には監督責任があるわけですよ、あるいは少なくとも利害関係があるわけですよ。ある意味では、行政上の自分の部下、懲戒権者ですよね。懲戒権者は千葉大臣でしょう。その部下がこういう不祥事を起こしたということであるから、当然その関係性というのはあるわけですよ。利害関係のある人が座長をすることについて、検察のあり方検討会自身の信頼性がおかしくなるんじゃないですかということを指摘しているわけです。

 もう答弁は求めません。余りにもひどい答弁ですから、もう求めません。

 もう一つ。今回、最高検の検証チームの座長、これは伊藤次長検事です。今回、訓告の処分を受けました。その訓告の理由は、前田元検事による証拠隠滅事件及び大坪元特捜部長による犯人隠避事件について、次長検事として監督責任を怠った、だから訓告を受けているわけです。この監督責任を怠った方が最高検の検証チームの座長になるということ、これはおかしいんじゃないですか。どうぞ答えてください。

奥田委員長 質問時間が終了しておりますので、どうか最後の答弁という形でよろしくお願いしたいと思います。

柳田国務大臣 次長検事は、その私が行った処分を厳しく受けとめて、これまで以上に検察の再生のために徹底した検証を行うよう努力するものだと私は思っております。

大口委員 本当に今、検察に対する国民の信頼が大きく傷ついているんです。だから、座長になる人は、一点の曇りもない人が、また検察と利害関係のない人がきちっとやるというのが、これは法務大臣として当たり前のことでしょう。だから、法務大臣は今回の問題について全然深刻に考えていない。私は、そのことを指摘して、終了させていただきたいと思います。

奥田委員長 次に、城内実君。

城内委員 国益と国民の生活を守る会の城内実でございます。

 今回は、人権侵害救済機関について質問をしたいと思います。

 私自身、あらゆる差別をなくすこと、そして人権侵害を完全になくすことは、これは非常に重要だと思っています。日本人だろうが外国人だろうが、老若男女一人たりとも差別を受けてはならないし、それを放置してはいけないというふうに感じております。

 しかし、この人権侵害救済機関の設置については、いろいろと問題があるんです。大臣、どういった問題、懸念があるか御存じでしょうか。お答えいただきたいと思います。

柳田国務大臣 いろいろと問題点につきましては、政務官が中心になって担当していますので、政務官の方に答弁をお願いしたいと思うんですが、私は、この人権救済機関の設置は必要だという立場で今後も進めてまいりたいと考えております。

黒岩大臣政務官 城内委員の質問にお答えしますけれども、さまざまな観点からいろいろな課題が指摘されていることは承知しております。

 反対する主な意見としては、新たな人権救済機関の創設が必要なほどの人権侵害がないのではないかとか、救済の対象となる人権侵害の範囲があいまいであるのではないかとか、そのほか人権侵害の加害者とされた者の保護が不十分ではないのかとか、あと人権救済機関の権限が強大ではないのか、こういったような課題も指摘されておりますが、今、こういった課題等を総合的に踏まえながら検討しているところでございます。

城内委員 まさにこの問題について政務官から具体的に答弁していただきました。大臣もぜひ、法務省の立場は当然、人権擁護局があって、こういう人権委員会を使って予算と定員を要求する、そして肥大化させる、当たり前のことなんですね。しかし、私も人権を守ることについては人後に落ちないんですけれども、本当に必要なのかということについて、やはりよく検討していただきたいと思うんです。

 大臣は、十月十九日に法務委員会の所信で、新たな人権救済機関の創設について言及されました。本日も前向きな答弁をされましたけれども、これはやはり拙速に法案を提出するようなことをしていただきたくないんです。

 というのは、私は今は無所属ですが、自民党時代、平成十七年に自民党の法務部会で、これはけんけんがくがく議論したんです。私も当初はこれは当然設置すべきだと思っていたんですが、法案の中身を全部、逐条検討したところ、これは本当に大丈夫なのかなと、今政務官がおっしゃったような懸念事項が十分払拭されないんですね。

 この点について、大臣、この法案についてはどのタイミングでやるのかということを教えていただきたいと思います。

柳田国務大臣 確定的な時期というのは今申し上げられませんけれども、さまざまな意見を踏まえつつ検討は行ってまいりますけれども、早期の法案の提出を目指したいと考えております。

城内委員 いや、それは困るんですね。早期の法案じゃなくて、これは非常に危険な側面もあるんです。

 ですから、当委員会で十分議論していただくと同時に、国民の皆さんにも議論に参加していただかないと、これは国家行政組織法上の三条委員会なんですね、人権委員会というのは。公正取引委員会あるいは公害等調整委員会と一緒なんです。すごい権限があって、しかも大臣の指揮監督下に属さないで、自由な意思でもって証拠を押収したり、あるいは聞き取り調査をする。これを憲法違反だというような見方をする学者の方もいらっしゃるんです。

 しかも、自民党の時代の法案ですと、法務省の外局に置く。民主党の案は内閣府ですよ。内閣府のもとに置くというのは、官邸主導どころか内閣府主導で、これは人権侵害、これはマル・バツみたいなことができる非常に危険な要素をはらんでおりますから、ぜひ慎重に検討していただきたいと思います。

 そこで、今、民主党は事業仕分けをされております。これは私は、ある一定の評価をしますが、ちょっとやり過ぎだなという意味での否定的な見方もしております。まさに事業仕分けをしているわけですけれども、この人権委員会を設置することによって、当然、さっき言いましたように、予算措置、定員も必要になりますよね。幾らぐらいお金がかかるかぐらいは試算をしているはずだと思いますが、それについて御答弁いただきたいと思います。

黒岩大臣政務官 まず、今、城内委員の御指摘のさまざまな課題は認識しておりますけれども、我が国における、今二万件を超す人権侵犯事件が起きておるというような状況と、やはり国際的な要請が長年にわたってたびたび繰り返されているという状況で、この人権侵害救済機関については、私ども法務省としては、今真剣に検討せざるを得ない、そう考えております。

 費用の点については、今検討の段階におりまして、確かに具体的な検討をしておる、数値を出しておるというところではありませんけれども、当然、今後コスト面についても十分勘案していく、このことはお約束をさせていただきます。

城内委員 今、政務官から、年間二万件を超すという話がありましたけれども、実は、いろいろ調べてみましたら、その二万件を超す人権侵犯事案についての九九%が現行制度で解決されている。要するに、本当に重大な人権侵害の事案というのは年間たった数件である。これは私、法務省から聞いた話なんですけれども、この事実について、大臣、どうお考えですか。

柳田国務大臣 九九%と一くくりに言えないこともあるのではないのかなと私は思います。

 例えば、いじめとか。これは中には、余り大きくなっていないかもしれませんが、大きな事件も含まれているのではないか、そう思っていますので、私は、この人権機関は必要だろう、そういうふうに思っています。

城内委員 いや、そうじゃないんですよ。ですから、個別の法で、例えばDVだとか、児童虐待、あるいは高齢者に対する虐待、あるいは刑務所や入管に入っている方々について、個別に対応するということは可能なんですよ。

 これは、国民向けにわかりやすく言いますと、例えば、ネズミを捕まえるには殺鼠剤、ゴキブリはごきぶりホイホイ、そしてがんには抗がん剤を打つわけですけれども、ゴキブリとかネズミに火炎放射器とかミサイルを使っているようなものなんですよ、簡単に言うと。抗がん剤も、強く打ち過ぎては健康な体までおかしくなっちゃうんです。

 個別に対応すればいいのに、巨大な人権委員会というのをつくって、しかも憲法では令状主義が三十五条で保障されていますけれども、その三十五条に抵触するおそれのある形で、人権委員会という三条委員会が出頭を求めたり、特別調査をしたり、もう初めから、おまえ、人権侵害やっているんじゃみたいな感じになって、本当にこんなものをつくる必要性があるのかどうか。

 そして、人権侵害といったっていろいろあるわけですね。例えば、私の家庭でも、落選中、女房に、あんた、もっとしっかりしなさいと罵倒されていましたよね。私の家内に罵倒されるのと、ほかの人に罵倒されるのでは、人権侵害なのかどうなのか。あるいは、私の家庭では、子供と私では対応が差別的な待遇ですよね、子供の方が優遇されていますから。では、これが人権侵害なのか。これは冗談めいた話ですけれども、まさに、Aさんから言われたら人権侵害だけれども、Bさんから言われても平気だというようなことだってあるわけですよ。

 ですから、これは、人権侵害の定義も含めて慎重にやらないと、何でもかんでも人権侵害にされてしまうということがありますから、定義の問題、そしてこの人権委員会を設置するかしないかについては、本当に相当慎重にやらないと、私は、日本が、社会通念上認められていることまでも人権侵害だという烙印を押されて、ある人を抹殺することが可能な、非常に暗い、すさんだ社会になる可能性があるということを御指摘させていただきたいと思います。

 最後に、それについて、ですから慎重に対応していただけますね。大臣の答弁をいただきたいと思います。

柳田国務大臣 方針はさきに述べたとおりでございますけれども、城内委員の意見は意見として、十分頭に入れておきます。

城内委員 お願いします。ぜひ慎重に対応していただきたいというふうに思います。

 これで私の質問を終わります。

奥田委員長 次に、稲田朋美君。

稲田委員 自由民主党の稲田朋美です。

 本日は、二十七日に国会に提出されたビデオについてお伺いをいたします。

 今月十四日、衆議院議長から那覇地検検事正に対し、衆議院予算委員会全会一致の議決に基づき、今回の中国人漁船の衝突について映像記録の提出要求が出ました。それに基づき、二十七日、那覇地検から衆議院にビデオの提出がありました。

 ところが、驚くべきことに、ビデオが検察当局の独自の判断により意図的に六分五十秒に短くされて提出をされました。このことは、船長の釈放と同じく、まさしく検察の越権行為、もしくは検察への責任転嫁以外の何物でもありません。

 釈放時には、我が国国民への影響と日中関係という、まさしく国益そのもの、外交そのものの判断を検察にゆだね、もしくは責任をとらない政府。そして、今回もまた、国会への提出証拠物であるビデオを意図的に編集して出すという、国権の最高機関である国会を侮る越権行為、もしくはその責任をすべて検察に押しつけていると思います。

 まず、前提事実を明らかにするために、政府参考人にお伺いをいたします。

 衆議院議長からの要求は衝突映像記録の提出であったのに、その要求記録であるオリジナルビデオを検察で勝手に短く編集した理由、先ほどお答えになりましたけれども、いま一度、短くお答えください。

 また、いつ、だれが、ビデオをそのまま出さないで短く編集して国会に提出することに決めたのでしょうか。

 また、先ほどの御答弁では、オリジナルは地検にあるとお答えでしたけれども、昨日、法務省の説明では、オリジナルビデオは海保にあり、地検にはそのダビングをしたものがあると報告を受けておりますが、その点についてもお伺いをいたします。

 また、どの部分を国会に提出するかに当たり、大臣にその前後に報告をしたと法務省は説明しておりましたが、それは本当でしょうか。

 さらに、一体検察が、国政調査権に応じて証拠物件であるビデオを国会に提出するに当たり、検察独自の判断で編集することができる法的な根拠はどこにありますか。

 さらにもう一点、今回提出をされた六分五十秒のビデオと、逮捕前に長官や国交大臣が見られたビデオとは同じものなのか違うものなのか、お伺いをいたします。

奥田委員長 質問が多岐にわたりますけれども、また不足するところがあれば再指摘していただければと思います。

西川政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、今回、オリジナルの媒体の一部から抽出して衆議院に提出した理由でございますが、刑事訴訟法第四十七条に基づきまして、衆議院からの提出要求に基づいて映像記録を提出することの公益上の必要性と、公にした場合の今後の海上保安庁の海上警備・取り締まり活動の秘匿性や、関係者の名誉や人権への配慮という、種々の要素を総合考慮して、オリジナルの媒体から衆議院に提出するのが相当と認められる部分を抽出したDVDを作成したものと承知をしております。

 それから、だれが決めたということでございますが……(稲田委員「いつ」と呼ぶ)今回要請を受けたのは那覇地方検察庁でございますが、もともとは海上保安庁、石垣海上保安部で撮影したビデオでございますので、その保安部、さらには高検、それから最高検とも協議いたしまして、最終的な対応を決めたのは、提出の前日である二十六日に対応を決めたということでございます。(稲田委員「だれが」と呼ぶ)それは検察当局ということになろうというふうに思います。(発言する者あり)那覇地方検察庁が提出を決めましたが、それに対しては最高検までの了解を得ている、こういうふうに理解していただければというふうに思います。

 それから、大臣に対する報告関係でございますが、当然のことながら、衆議院議長から衝突映像記録の提出の要請があったということについては大臣に御報告を申し上げておりまして、検察庁においてどういう提出をするのかということにつきまして検討中であるという報告をされておりました。最終的には、提出する二十七日の前日の二十六日に私の方から、検察の方は先ほど申し述べたような方針であるということを大臣の方に報告を申し上げて、大臣の方は、わかりましたという返事でございました。そういうことでございます。

 それから、今回提出したビデオと、それから海上保安部において官房長官にお見せしたビデオ、もともとのオリジナルは同一だと思いますが、私は前のビデオについての作成関係の経過を知りませんので、ちょっと私の方からはお答えを控えさせていただきたいと思います。

稲田委員 あと、答弁漏れがあるんですが、オリジナルは海保にあると昨日法務省は説明をいたしておりましたが、その点はどうでしょうか。

西川政府参考人 大変失礼をいたしました。

 それは誤りでございまして、今現在は那覇地検にございます。

稲田委員 このビデオの編集経緯については昨日から大問題になっておりますけれども、法務省の説明と今の局長の説明が食い違っている部分もございます。また、だれがどのようにしてビデオを編集するか、いつ決めたかについても、昨日の法務省の説明では、今、調査、確認中であり、あすまでには答えられないという説明を受けておりました。

 委員長、ビデオ編集についての事実関係を明らかにするために、那覇地検検事正及び次席検事の参考人招致を求めます。

奥田委員長 理事会において、また検討をさせていただきたいと思います。

稲田委員 それでは、大臣にお伺いをいたします。

 刑訴法四十七条の公益上の必要の典型的事例が、両議院の国政調査権であります。国権の最高機関である国会が憲法六十二条に基づいて調査権を行使しているときに、検察が意図的に、提出要求されている証拠物であるビデオを編集もしくは抽出することは、私は憲法違反だと思います。国民の知る権利を侵害するもので、許されないことを検察は行ったと思っております。

 憲法に基づき、国権の最高機関である国会が国政調査権を行使している対象のビデオを、刑事訴訟法を根拠に検察が編集したことは憲法違反ではありませんか。法務大臣の御見解をお伺いいたします。

柳田国務大臣 編集と抽出の違いは先ほど説明がありましたけれども、我々はああいう意味では編集したつもりはないというふうに聞いています。

 オリジナルビデオはあります。衆議院からは衝突の映像というふうに、衝突事案の映像記録ということなので、いろいろ検討をして、そこの部分を、二回ぶつかったというふうに私は聞いていますので、そこのところを抽出して六分何十秒かになったんだというふうに聞いておりまして、地検が手を加えたとか、何かの意図が働いたとか、そういうふうなことはなかったと私は承知いたしております。ですから、そういう意味では、地検の何かの意図があって、我々政治家の意図があって、そうしたことではないというふうに御理解を願いたいと思っております。

 なお、さらに、なぜそういうふうなことにしたかというのは、るる説明があったかと思うんですけれども、刑事訴訟法第四十七条のこともありますし、まだ、公にした場合の今後の海保の活動、そういうものに影響してはならないということもありますし、それと人権の配慮というのもあるということで、いろいろ配慮した結果、そういう答えになったんだろうと私は理解しています。

稲田委員 私が言いたいのは、衆議院議長から那覇地検に要求があったのは、この事案についての映像記録なんです。そして、それにこたえるには映像記録すべてを出すのが私は当然であって、それを意図的であれ、改ざんがないであれ、とにかく短く編集をした、短く、抽出でもいいんです、どういう表現をしようと、映像記録すべてではなくて、検察がそれを短くしたことは、衆議院議長からの要求に対して短くしたということ自体が、私は憲法違反だと思っております。

 さらに、この国会に提出したビデオに対して、官房長官も那覇地検の検事正も、公開についての制限を要望してきております。

 官房長官は予算委員長に対する要望書で、公にするに当たって慎重を期すことが相当とされます、貴委員会の取り扱いにおきましては、視聴される方々の範囲、方法等を含め、極めて慎重な取り扱いに特段の御配慮方要望いたしますと、公開の制限ともとれる要求をなさっておりますし、検事正からも衆議院議長あてに同様の、極めて慎重に取り扱いしていただきたい旨要望する書面が出されています。

 ここまで慎重な取り扱いをする要望を出されるのであれば、なおのこと、国会に提出するビデオを事前に短くする必要はなかったのではありませんか。最初から、オリジナルのビデオから六分五十秒に削ってくること自体、国権の最高機関である国政調査権を軽視し、国民の代表である国会議員をまさに信用していないことになると思います。

 そもそも、国民の疑問は、なぜそこまでビデオの全面公開を拒むのかという一点なのです。ビデオを見られたら何か不都合なことがあるのではないかと憶測を呼んでおります。

 海上保安庁にお伺いをいたします。

 新聞報道その他によれば、海上保安庁の職員が海に投げ出され、もりで突き刺されたというような話も出回っておりますけれども、そのような事実、ないし、それに類するような事実があったのでしょうか。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 そのような事実はございません。今回の逮捕容疑は、巡視船に向こうのトロール漁船が故意にぶつけてきたことをもって、公務執行妨害の容疑で逮捕いたしました。突き落とされたとか、もりで突かれたということであれば、それも含めて逮捕容疑に加えるはずでありますので、そういう事実はございません。

稲田委員 ただ、このようなうわさが出るのも、ビデオを全面公開していないからだと思います。

 九月二十二日付の毎日新聞によりますと、中国の報道官は定例会見において、尖閣諸島での衝突事故について、中国漁船が日本の巡視船にぶつけられたと主張、日本側のビデオが何時間あり、最初から最後まで一部始終が公表されるかどうかはわからないと述べ、都合のいい部分だけを公表しないよう日本側を牽制したと報道をしております。まさに中国は、最初から最後までビデオを公開すべきである、公開できないのは都合が悪いからだと言わんばかりの言いぶりであります。

 ここで数時間のビデオを数分に編集したりすれば、まさに今の中国の主張を認めたことになります。衝突してきたのが紛れもなく中国漁船の方であり、中国漁船が被害者であるかの中国の主張は言いがかりそのものであることを世界に発信するためにも、ビデオの短縮、編集はやってはいけないことだと私は思っております。

 今回のビデオの編集は、国会の国政調査権を軽視した、ひいては国民の知る権利を侵害する憲法違反の行為であり、中国の不当な言い分を認め、世界から誤解される、政治的、外交的判断としても間違っていると私は思います。

 委員長、当委員会に対し、海上保安庁が撮影したオリジナルビデオのすべて、すなわち現在海上保安庁もしくは那覇地検が保管しているオリジナルビデオすべて、そして、国会に今回提出された六分五十秒のダイジェスト版、さらには、逮捕前に官房長官が見たダイジェスト版、すべてのビデオの提出を求めます。

奥田委員長 DVDの提出については、これまでも理事会で協議させていただいておりますけれども、ちょっと今、オリジナルということも含めて、協議の対象にさせていただきたいと思います。

稲田委員 海上保安庁にお伺いをいたします。

 中国側の漁船が体当たりでぶつかってきたという事案は、今回初めてのことであります。今回のことを将来に生かすために、今後、我が国が、国としてどのようなことをなすべきか。例えば巡視船の強度を増す、海上自衛隊の船を利用するなど、海上保安庁の職員の生命身体に危険が及ばず、しかも中国船の不法な行動を許さないためになすべきこと、検討すべきことは何か、お答えください。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 今回の事案につきましては、中国漁船が我が国の領海内で多数操業していたということで、私どもも巡視船を増強しましてこれの取り締まりに当たっておりました。

 現場で、領海から出ろという退去警告をしておったところ、突然相手方が走り出して私どもの巡視船に当たってきた。それから二度目は、並走して停船命令をかけていたところ、突然かじを切って当たってきたというものでありまして、こういう事態は、御指摘のとおり、初めての事態であります。

 したがいまして、私どもとしては、今後、取り締まりに当たっては、相手がそういう行動に出ることもあるということを十分想定しながら、しっかりと留意して取り締まりに当たるということにしたいと思っております。

稲田委員 それだけじゃなくて、今の巡視船の体制でいいのか、また強度はそれでいいのか、ぜひとも検討をしていただきたいと思います。

 今回の中国人船長の処分保留という不明瞭な形での突如の釈放も、きょう質問いたしましたビデオの編集にしましても、政府がすべて検察に責任を押しつけていることを私はおかしいと思います。そして、それこそが今の菅政権の抱えている問題そのものではないでしょうか。

 要するに、国益や外交や、そういった重大な政治決断をしない、もしくは、したとしても責任をとらない。無責任かつひきょうと言っても過言ではないと思います。政治不在、外交不在、一体民主党がおっしゃっていた政治主導とはどこに行ってしまったのかと思います。

 この問題を含め、今回の事案の真相究明を当委員会でこれからも続けていただきたいと思います。

 私の質問を終わります。

奥田委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

奥田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。馳浩君。

馳委員 自由民主党の馳浩です。

 私と奥田委員長は同じ選挙区で、ライバルでありまして、いつも、まあ、今のところ四回戦って二勝二敗ということでありますので。きょうのところは委員長には質問できませんが、どうぞお手やわらかによろしくお願いいたします。

 最初に、外務副大臣にお伺いいたしますが、ハーグ条約の問題です。

 報道もよくされておりまして、関係者も心配しております。早く批准をし、国内法を整備すべきではないかというのが私の考えです。今、外務省としてどういう判断、行動をされているか、まずお伺いいたします。

伴野副大臣 馳委員にお答えさせていただきたいと思います。

 ハーグ条約初め外交案件にも御関心をお持ちいただきまして、本当にありがとうございます。

 今御指摘いただきましたハーグ条約は、改めて申し上げるまでもなく、一方の親がもう一方の親の親権を侵害する形で国境を越えて子を移動させた場合に、子を移動前の居住国に戻すための国際協力の仕組みについて定めるものと承知しております。

 この条約につきまして検討すべき論点、多数あるわけでございますが、現在、締結の可能性を真剣に検討しておりまして、この作業に積極的に取り組んでいるという状況でございます。

馳委員 関係者から要請もいただいて、勉強会を開いておりまして、今から試案をちょっと申し上げます。これは私の案じゃなくて試みの案ということでお聞きいただきたいと思います。法律の仮の名前、親子の交流断絶の防止に関する法律ということで、資料をお配りいただいておりますので、それを見ながら聞いてください。

 目的は、夫婦の関係と親子の関係は別であり、婚姻中かどうかに関係なく、子供が両親から愛情と養育を受け続けること等が子供の健全な発達にとって好ましいことから、親子の関係が断絶することがないよう、親子の交流継続を確保するための手続等を定める。

 項目は三つございます。

 一つ、子供の連れ去りの禁止。

 両親の一方が、もう一方の親の同意なく、子供を連れ去ることを禁止する。同意なく子供を連れ去った場合には、まずは子供をもとの住居に戻し、その上で、早急に両親の間で子供の養育をどうすべきか話し合うこととする。

 一つ、親子の引き離しの禁止。

 親と子供の引き離しを禁止する。これは無断でというふうに修飾語を入れた方がいいかもしれないですね。児童虐待防止の観点からも、両親の一方が子供と離れている場合、必ずその親と子供が二週間に一度は、ここはあるいは定期的に、泊まりがけで会えることとする。

 一つ、子供の養育に関する取り決め、養育計画の作成義務化。

 両親が別居または離婚する場合には、子供の養育方法、子供をどちらの親が主として養育するか、養育親でない親と子供がどの程度の頻度で会うか、養育親でない親が子供の養育費をどの程度支払うか、こういうことの養育方法についての取り決めをする。どちらの親が養育すべきかを決定する際には、友好的な親、これはもう一方の親により多くの頻度で子供に会わせることを約束する親のことですが、に子供を養育させることとする。

 こういうふうな項目というのを国内法としても整備しておいたらいかがか。ハーグ条約を批准するに当たっての必要最大の条件というわけではありませんが、せめてこの程度の国内法の整備があった方がよいのではないかという、立法を検討すべき段階ではないか。

 もちろん、外務省と法務省が連携をいただいて、法務省の方でお進めいただければなおよい。けれども、我々も立法府に置く人間として、非常に多くの方の要請をいただいている立場として、僕はこの勉強会というのを本当に超党派の皆さん方に呼びかけて機運を盛り上げていきたいな、こういうふうに考えていて、きょうお示しをいたしました。

 できれば、法務省と外務省と両方からコメントをいただきたいと思います。

黒岩大臣政務官 馳議員の今の試案について、私どもの所感を申し上げたいと思います。

 子供の連れ去り等の禁止については、実際に法律に明記するかどうかは別にして、理由なく一方の親が他方の親の同意を得ずに子を連れ去ることは適切ではないと認識をしております。このような場合は、やはり夫婦間で子について話し合いがなされるべきと考えております。

 また、離婚後の親子の面会交流の確保については、離婚後の親子の面会交流は当然子供にとっても重要なものであると認識しております。面会交流の適切な実現のために、面会交流の意義について理解を深めてもらうことが重要であるとも認識をしております。

 そして、離婚後の子供の共同養育計画の義務づけでございますけれども、離婚の際に面会交流や養育費について適切に取り決められることが望ましいものと認識しております。もっとも、これを義務化するかについては、取り決めに時間を要する場合もあることから、取り決めができないままの状態で事実上の離婚状態となるような夫婦がふえる可能性なども思慮されることから、若干慎重な検討が必要かと思っております。

 ただ、いずれにせよ、ハーグ条約の重要性については当然法務省としても認識しております。条約の締結については外務省が判断することになると思いますけれども、関係省庁も含め、法務省として、今後も国内法整備等については検討を進めていきたいと考えておりますので、御理解いただきますようお願いいたします。

伴野副大臣 馳委員にお答えさせていただきたいと思います。試案までお示しいただきまして、本当にありがとうございます。

 さまざまな論点があると承知しておりますけれども、外務省といたしましては、できる限り早く結論が出せるように、法務省初め関係省庁とともに協力して検討を進めていきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

馳委員 きょう、私は試案を示させていただいてよかったなというふうに思います。ただ、法務省が最終的に法律を整備して出しましょうということを待っている状況ではないということは御理解ください。

 昭和四十年代で、親が離婚をしてしまったお子さんというのは大体八万人ぐらいなんですね。今現在の最新の数字では二十四万人を超えています。そうすると、やはりこういう社会状況、私、たまたま児童虐待のことを申し上げましたが、一方の親と会えない、会わせてもらえない、あるいは、自分の養育親の方から一方の親に対して一方的に悪口を言われたりするということは、子供の心理状態にとってやはりよくないですね。

 ただし、これはDVの問題もはらんでいるんですよ。だから法務省は慎重にというふうに考えておられるんだと私は思います。であるならば、DVの問題はDVの問題としてやりながらも、やはりハーグ条約を批准するに当たっての国内法整備については、作業をより前に進める必要があるというのが私の判断なんですね。

 だから、きょうおいでの、超党派、すべての国会議員の皆さんにこの問題を理解いただくためにも、まずはコアに勉強会を開いた上で認識を持っていただいて、議員立法として提出をし、法務省のしりをたたくと言うと失礼ですが、そういうふうな運動を進めていきたいと思っているんです。

 昭和四十年代で八万人、今現在は二十四万人。社会的な背景もあるでしょうが、まさしく家族のあり方が問われている問題とともに、両親が離婚をするということがあったとしても、子供に罪はない。その子供の生育に、養育に大変大きな悪影響を与えてしまう現状が放置されたままはやはりよくないな、こういう観点で私は今申し上げております。

 この説明を聞いておられる柳田大臣と、また伴野副大臣のコメントをいただいて、その後、伴野副大臣にはお帰りいただいて結構です。

柳田国務大臣 ハーグ条約につきまして、つい先日、ルース大使を初め十二カ国、法務省の大臣室にいらっしゃいまして、ハーグ条約の必要性をいろいろと説明を受けました。それに対して、いろいろと御意見を述べたわけではなくて、日本の状況というのも御理解をしていただければと申し上げましたらば、日本の状況はよく知っているというお話もいただきました。

 ただ、馳委員もおっしゃったように、DVとか、生活費がないとかといって帰ってくる人が実は多いですね。ある国によっては、例えば奥さんと子供がその国に行った途端に奥さんが逮捕されてしまうとか、子供と引き離されてしまうとかいう国もあったりして、いろいろ問題もあるなというふうな認識をいたしております。

 ただ、いろいろと海外からの要望も強いわけでありますので、いろいろ検討はさせてもらっておりますので、いろいろと意見交換をこれからもさせてもらえれば、そういうふうには思っております。

伴野副大臣 馳委員にお答えさせていただきたいと思います。

 馳委員はこの関係でもよく御案内かと思いますが、改めて申し上げるまでもなく、男親の立場、女親の立場、また、どことどこの国の国際結婚ということにおいても、本当にケース・バイ・ケースではないかと思われます。

 そういった中でも、論点が幾つかある中で検討を進めさせていただいて、実は昨日も、私どもの前原大臣とクリントン国務長官がこの件におきましてもお話をさせていただいて、いずれにしましても、前原大臣といたしましては、政府・与党一丸となってこの作業を進めていきたい、その旨答えております。どうぞよろしくお願いいたします。

馳委員 伴野副大臣、お帰りいただいて結構ですので。ありがとうございました。

 これは国際結婚だけの問題じゃないということは御理解いただいていると思います。と同時に、これは、私は法律の専門家ではないので僣越ではありますが、家裁における離婚の調停が長引く要件というのは、多分子供が絡んだ問題が一番多いと思うんですよ。小川さんもうなずきながら聞いておられますが。

 したがって、一定のルールを設ける、そして第三者、まさしく家裁あるいは調停するような機関、こういったものが入らないといつまででも解決していけない、その間にも子供はやはり成長する、このことを看過していてはいけない。だからこそ、我々はやはり国会議員として、議員立法というふうな形で、こういうのはいかがでしょうか、こういう論点はいかがでしょうかといったことをまさしく提示し続けていきたいと思いますし、最終的に皆さんの御意見がまとまれば、議員立法として委員長提案で提出できればベストだとも思っているんです。

 法務省は、多分、私どもの方に要請をいただく団体は、いわゆる共同親権を旗に掲げている方々も多くおられます。まさしく民法改正にかかわります。民法改正というと、私は十年間児童虐待の問題に取り組んでまいりましたから、親権の制限について、一時・一部制限の問題についてようやく動き始めて、来年にも方針が示されることになっているということも存じております。それほど、五年、十年かかる問題だということをわかっているがゆえに、我々が議員立法として、まさしく国民生活にかかわる大きな問題になっているということの認識を、まず政務三役の皆さんには御理解をいただきたいということです。

 この問題については、ここでひとまずおいておいて。

 それから、柳田大臣、拉致担当大臣も兼ねておられるということで、答弁できるかどうかは、判断はあなたにお任せしますが、実は私は、けさ十時から十一時まで文部科学委員会で高木文部科学大臣に質問をしておりました。

 高校無償化法に基づいての朝鮮高校に対する支援金を拠出するかどうかという最後の詰めの議論をしてまいりましたときに、高木大臣、あなたは柳田拉致担当大臣とこの問題について話し合いましたか、柳田さんは反対の意向を示しておられますよ、九月二十二日の拉致被害者家族会との意見交換会でも、私の主張をはっきり申し上げますと言っておられます、それについて意見交換されましたかと聞いたら、しましたとちゃんとはっきりおっしゃいました。柳田さんの意見も踏まえて、最終的に教育的な課題として私は判断する、こういうことでありました。同時に、最終的には、菅総理がやはり最終的な判断を下すことも当然でありますね。

 その上で、もし、今あなたの立場で、教科書の記述の問題、拉致問題を抱えておって、経済制裁について日本はちょっと緩めてきたんじゃないかという間違ったメッセージを北朝鮮本国に送りかねない、やはりこういうふうな懸念がされていて、民主党における部門会議においても留意事項がつけられているんですね、やはり教育内容については慎重にしなければいけないと。

 先ほど、高木大臣は改善を促すということをはっきりとおっしゃいました。こういう現状を踏まえて、大臣として今後どのようにこの問題に対応されますか。また、高木大臣の判断に最終的には従いますか。所見をお聞かせいただきたいと思います。

奥田委員長 拉致問題特別委員会が設置されておりますけれども、こちらは大臣の方の御意思があれば、どちらの大臣としての答弁になるかもありますけれども、御答弁いただければと思います。

柳田国務大臣 馳委員の思いはしっかりと受けとめました。

馳委員 特に、私はなぜあなたではなくて高木大臣に厳しく言ったかというと、我が国で初めて文部科学省が朝鮮学校に対して管理監督の権限を持つんですよ、この法案に基づいて。ここが重大な問題で、そして、今現在も各種学校として都道府県から大体九億円ぐらい出ているというのはそれは皆さんわかっているとおりですが、国費がダイレクトに投入をされる。したがって、教育の外形的な基準というものではなくて、教育イコール内容ではないかと。その内容について、柳田さんもおっしゃったように、看過できない内容があるんです。

 改めて言いますけれども、ほかの外国人学校はもう支援金は出ているんですよ。なぜかというと、みんな外交関係があるからですよ。本国においてその外国人学校がどういう教育機関として位置づけられているかということがもうわかっているんです。朝鮮学校だけがまさしくそれができないし、今まで文部科学省も権限がなかったんですね。そのことを踏まえての、まさしく政府一体としての最終的な判断をしていただきたいというのが私の要望ですので。大臣の厳粛な表情から私は大臣の決意を受け取りましたので、よろしくお願いします。

 続いて、足立区の新しい条例とオウム真理教対策の問題についてお伺いをいたします。

 十月二十二日に成立をいたしました足立区反社会的団体の規制に関する条例について、この条例の規制対象はどんな団体ですか。

北田政府参考人 お答え申し上げます。

 まず冒頭に、公安調査庁といたしましては、地方公共団体が制定されました条例の解釈を必要とする御質問についてはお答えできる立場にないということを申し上げて、御理解をお願いいたしたい、このように申し上げておきたいと思います。

 それで、今お尋ねの点でございますけれども、配付されております足立区反社会的団体の規制に関する条例、これの第三条を見てみますと、規制対象は「無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律第五条第一項に規定する観察処分を受けた団体をいう。」このように規定されているところと承知いたしております。

馳委員 つまり、オウム真理教の後継団体であるアレフとひかりの輪ですか、この二団体であるということが限定されているということです、現状では。

 では、次の質問をいたしますが、この足立区の条例の目的は何ですか。

北田政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの点につきましては、配付いただいております条例の第一条に規定されているところと承知いたしております。

 若干長くなりますが、その該当部分、第一条でありますけれども、引用させていただきますと、「この条例は、反社会的団体の足立区の区域内における活動及び反社会的団体の構成員の区への転入等により、区民の安全及び周辺住民の日常生活の平穏に対する脅威及び不安を除去するため、当該団体に対する調査、命令等、区が講ずべき措置を定めるとともに、当該脅威等を除去するために行う周辺住民の自主的な活動を支援し、もって区民の安全及び地域の平穏の確保を図ることを目的とする。」このように規定されているところと承知いたしております。

馳委員 とすると、団体規制法の目的と、この足立区の新しい条例の目的の違いというのは何でしょうか。

北田政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、団体規制法の目的でございますけれども、これは法律の第一条に規定されているところでございます。団体規制法、これは、簡単に引用させていただきますと、無差別大量殺人行為を行った団体の活動状況を明らかにし、当該行為の再発を防止するために必要な措置を定め、もって国民の生活の平穏を含む公共の安全確保に寄与するもの、このように規定しているところでございます。

 他方、条例につきましては、先ほど引用させていただいた内容ということでございます。

馳委員 ここで私ちょっと解説すれば、団体規制法の方は、まさしく再発防止のために、まずは観察処分を行い、観察処分によって明らかにこの団体というのは、再発防止のために、解散も含めるんでしょうか、処分が必要なときにはそのレベルを上げて行政権を行使するということであって、足立区の条例の目的というのは、住民の平穏、生活の平和、安全を守るということが目的になっているんですね。この理解でよろしいですね。

北田政府参考人 お答え申し上げます。

 条例の目的及び団体規制法の目的、これにつきましては先ほど引用させていただいたとおり、このように理解いたしております。

馳委員 条例の五条では、オウム真理教に対して報告義務を定めております。同条第二項で「当該団体の活動に関する事項のうち規則で定めるもの」と定めておりますが、ここでの規則とは具体的に何が報告対象となっておりますか。

北田政府参考人 お答え申し上げます。

 先生お尋ねの規則につきましては、まだ公布されていないようでございまして、私ども、いまだ把握しておらないところでございます。

馳委員 公安調査庁としては、できるだけ速やかにこの規則といったものについて情報を入手することをお勧めいたします。

 次の質問をいたしますが、団体規制法と比べて、この報告義務という部分の条文について、どこがどう違うんでしょうか。

北田政府参考人 報告義務についてのお尋ねでございますので、法律とそれから条例の規定についてお答え申し上げたい、このように思います。

 団体規制法におきましては、報告義務の内容に関しまして、団体の役職員及び構成員の氏名、住所、団体の活動の用に供されている土地それから建物の所在及び用途、団体の資産及び負債、こういったものを報告の対象といたしております。

 それから、条例の方の報告義務の対象、これはお配りいただいておりますところの五条第二項に規定されているようでございまして、団体の役職員、構成員の氏名、住所、団体の活動に関する事項のうち規則で定めるもの、こういったものを報告義務の対象と。したがいまして、規則を見てみないと、その詳細、つまびらかにならない点があるということでございます。

馳委員 では、私がわかりやすく違いを言いますよ。報告義務違反があるかないかなんですよ。これが一番大きいところなんですね。公安調査庁、多分おわかりだと思います。団体規制法には報告義務違反がないんですね。

 この条例でこういうふうになっているんですよ。第十条なんですが、「次の各号のいずれかに該当する場合において、反社会的団体及びその行為をした構成員は、五万円以下の過料に処する。」「正当な理由なく第五条第二項の報告を拒み、又は虚偽の報告をしたとき。」「正当な理由なく、第八条第一項及び第二項の調査に協力せず、同条第三項の規定による質問に対し、回答をせず、若しくは虚偽の陳述をし、又は文書の提示を拒み、妨げ、忌避し、若しくは虚偽の文書を提示したとき。」「第七条第二項、前条第二項及び第三項に基づく命令に従わないとき。」というふうになっておりまして、罰金まで科しているんですね。

 ちなみに、団体規制法で罰金まで科している報告義務違反というのはありますか。

北田政府参考人 お答え申し上げます。

 団体規制法によります報告義務、これに違反した場合に罰則を設けている規定はございません。

馳委員 おかしいと思いませんか。団体規制法になくて条例にあるんですよ。この現状をどう思いますかということを私は実は質問したいんですね。おかしいと思いませんか。また、報告義務違反、あった方がいいな、今私の指摘を受けてそう心が動きませんでしたか。

北田政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘の条例におきましては、報告義務違反に対しまして罰金ではなく過料が科されている。これは規定を読みますと明らかな点だと思います。

 公安調査庁といたしましては、条例にそういう規定が設けられたところでございますけれども、今後のその条例の運用の状況、それからそれに対しましてのオウム真理教の反応といいますか動向あるいは活動状況、こういったものを注視して適時適切に対処してまいりたい、このように考えております。

馳委員 私があなたに指摘しているのはこういうことなんですね。条例には過料があるんですね。罰金を私は訂正します。過料があるんです。私は公安調査庁の応援団のつもりで今質問しているんですよ。あなたたちも、観察処分になっているこの団体に対してこういうツールを持って、住民の求めにこたえるような活動ができるようになった方がいいんじゃないんですか、そのための法改正も視野に入れた方がいいんじゃないんですかということを私は指摘しているんです。

 次の質問に移ります。

 ことしの五月、足立区の土地建物の購入に当たってオウムは報告を怠り、報告義務違反を起こしましたが、その詳しい内容はいかがでしたか。

北田政府参考人 お答え申し上げます。

 オウム真理教は、東京都足立区入谷所在の土地建物、これは教団出家信徒が代表社員を務める合同会社宝樹社の名義で購入しまして、ことしの三月二十九日に同社名義への所有権移転登記を完了いたしている、これは承知しているところでございます。

 他方、教団は、団体規制法に基づく公安調査庁長官あてのことし五月十五日付の報告におきまして、今申し上げました土地建物、これを団体の資産としては報告しなかったということでございます。

馳委員 あなたにそういう報告をこの場でさせるというのは公安調査庁の恥をさらすようなもので、私も申しわけないなと思うんですが、法の限界があるから結局こうなっているんですよ。その穴埋めのために、足立区の住民の皆さん方、そして足立区区長、議会、皆さんの心配のもとにこの条例が十月二十二日に制定をされたんですよ。

 昨年の団体規制法見直しのときに、私は、住民団体の皆さんと一緒に、法務省また公安調査庁の皆さんに対して、団体規制法の見直し、法改正を強く強く要請をしましたが、そういう状況ではないということで、一応更新だけを認める判断をされました。そういう状況の中で、今回、足立区の不動産購入に対しての報告義務違反があって、それを黙って指をくわえて見ていたのが公安調査庁ですよ。

 そして、今回の足立区の条例を見て、全国の三十のオウム真理教後継団体のある施設、三十あるんですよ、その自治体の皆さん方は、うちもやろうかな、やるべきだと。とんでもないことだ、公安調査庁が動いてくれない、団体規制法の見直しについて法務省も腰が重い、また、そういう立法事実もないと言っている、けれども、実際こういうことが起きているじゃないかと。こういうことの中から、団体規制法を見直す機運というものがむしろ高まっているんじゃないのかなというふうに私は言わざるを得ないんです。

 先ほど平沢先輩にお伺いしましたら、この足立区の施設というのは、麻原彰晃、教祖ですね、収監されている東京拘置所のすぐそばだというじゃないですか。そうなんですよ。まさしくここが今全国の拠点になろうとしているということは、私が言うまでもなく、公安調査庁はわかり切っている話ですよ。

 この指摘を踏まえて、私は、これは公安調査庁にお伺いするよりも、法務省として、まずこの現状をどういうふうに認識をしておられるかということを小川副大臣にお伺いしたいと思います。

小川副大臣 確かに、オウム真理教の松本智津夫、今受刑者ですか、グループが起こした大変凶暴きわまりない事件が、社会を本当に恐怖に陥れたということは深く感じております。

 そうしたことから、なおその団体が同じような犯罪を決して起こさせてはならないということで、しっかり観察するということでこの団体規制法ができたわけでございます。しかし、刑事事件を起こした者は今処罰されているわけでございますが、刑事事件を起こしていない者が集まって宗教活動を行うということは、これは憲法で定めた信教の自由というものがございまして、これを合理的な理由がないまま制限するというのが、またこれは大変困難な状況がございます。

 しかし一方で、オウム真理教がまさに社会に恐怖感を植えつけたといいますか、こうした重大な事件を起こしたということを踏まえて、何もないままでいいのかということの社会的な要請もありましたわけでこの団体規制法になったわけでございますが、団体規制法の趣旨は、やはり、信教の自由という憲法で保障されているもの、これ自体を制限する、禁止するというものではなくて、その宗教活動、宗教団体が、過去行ったような刑事事件とか、そうした犯罪行為や反社会的行為をまた繰り返さない、繰り返させないための規制法でございます。

 そうした中で、やはり宗教活動そのものを全部禁止する、あるいはそれに準ずるような行為をするということは、憲法上の信教の自由というものに対する制約があるということの苦しさを、委員のお気持ちはわかるんですが、法治国家としての苦しさもあるということをぜひ御理解いただければと思っております。

馳委員 最後に。私の気持ちじゃないんです、住民団体が、自分たちの生活の平穏を守りたい、脅威を除去したいということから今回の条例に至っている。また、今後この条例は全国の自治体で議論をされることに恐らくなると思います。そうすると、団体規制法見直しの立法事実というものが高まってくる、こういう環境にあるということをお伝えし、私は、また折に触れて、時間をいただきながら、この問題を追及します。

 なぜか。私だってこんな質問を国会で余りしたくないんですよ、家族がいますから。物すごくやはり私は恐怖と闘っているんですよ。オウム真理教の団体が、この問題が明るみになったときに、放送局に対して、あるいは自治体等の関係者等に対して、弁護士に対して何をしたかということを考えると、私だって怖いですよ。でも、同じような恐怖感を住民団体の皆さんが皆さん持っておられるし、それを守るのは、やはり公安調査庁、警察の皆さん、国家の役割ではないですか。このことを申し上げて、また時間をいただいてこの問題について質問させていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

奥田委員長 次に、河井克行君。

河井委員 自由民主党の河井克行です。

 今週、国会は、海上保安庁が撮影いたしましたビデオの公開問題で揺れております。同僚議員が既に申し上げておりますが、私からも、重ねて、那覇地検にあるオリジナルのビデオ、そして、今回提出された短縮版のビデオ、また、官房長官、国交大臣等が見たと言われている別の短縮版のビデオ等の本委員会への提出を、委員長、求めたいと思います。

奥田委員長 理事会にて協議させていただきます。また、理事さんからの御報告を受けていただければと思います。

河井委員 その上で、国交副大臣、きょうまたお越しをいただきました。

 私は、今回の事件について、また別のビデオが存在するのではないかと言われる情報が、今週月曜日、もたらされました、そのことについてお尋ねをいたしたい。

 それは、港に中国人乗組員たちが引っ張っていかれて、係留されている、そのときに、中国人乗組員が最新式の小型ビデオカメラを持っているのを見たという情報なんです。彼らのいでたちですとか、古ぼけた船体からは明らかにふつり合いなほどの超小型のカメラを構えていた。撮影をしていた可能性もあります。それも、私に情報を出していただいた方によると、わずか二十メートルから三十メートルの距離で、その人たちは全部で五人、全員が見ております。借り上げた船の上から、そのときは報道などで大変騒がれておりましたので、その漁船だということで、みんなで見ていた。カメラを構えていた。撮影もした。その彼らのカメラに向かって、いわば撮り返すような姿勢で撮ってきた。そういう情報なんです。

 その人たちは、民間人でありますので、きょうこの委員会の場でいろいろなことについて申し上げることは差し控えますけれども、私にうそをつく動機もなければ、私にうそをついて得る利益も全くない、社会的に尊敬される立派な仕事をしていらっしゃる、そういった方々のグループなんです。

 そこで、副大臣に確認をいたします。中国漁船にビデオは積まれていたのか、乗組員は持っていなかったのか、教えてください。

三井副大臣 私は、先般も委員から御質問を賜りました。今私が聞いている海上保安庁においては、現場からそのような報告を受けていないということを聞いております。

河井委員 誤解のないように言いますと、きょうこの質問は初めてですから、副大臣。前回はまた違う質問でしたので。

 実は、中国側がカメラを構えていたという情報はほかにもあるんですよ。ほかにもまた複数人、別のグループがそれを目撃しています。

 せんだって、私たちは、民主党の原口一博前総務大臣らと一緒になりまして、超党派で議連をつくり、石垣そして尖閣上空にも行ってきました。十月九日土曜日、超党派の議連で石垣海上保安部長をお訪ねして、私が直接聞いたんです。そうしたら、今の副大臣と同じ回答だった。

 私は、まあそういう話もあるのかなぐらいに思っていた。ところが、また今週月曜日になって、違うところからそういう情報がもたらされてきた。結構多い人数が、日本人ですよ、中国側がカメラを持っていたという目撃をしているんです。

 私は、もし、きょう以降、中国側から、彼らが撮影したとされるビデオテープが出てきたらどうするか。これまでの中国側の対応を見ておりますと、自分たちに都合のよいように改ざんをして、国際社会に宣伝活動を繰り広げる可能性があります。捜査の過程で本当にきっちり調べたんですか、副大臣。ちゃんと船の中を全部引っぱがして、乗組員の身の回りも含めて、捜索させてもらえなかったんじゃないですか。お答えください。

三井副大臣 私が聞いている限りでは、中国漁船の船内には、ビデオ機材があったという報告は全く受けておりません。

河井委員 今、国会でいろいろと私たちも議論をしておりますけれども、これからまさに国会でビデオを公開しようとしているこの時期に、中国側から別のビデオをぶつけられて、泥仕合になってしまうようなことがないのか心配だから聞いているんです、副大臣。

 私は、今回の議連をつくるに当たっても考えましたが、国難を前にしては与党も野党も全然関係ない、そのように考えております。中国がおのれに都合のよいビデオを公表する危険性にあなたたち政府側が気づいていないのか、それを問いたい。だからこそ、今、きょうこうしてその危険性と可能性を指摘させていただいているんです。

 この問題、副大臣、指導性を発揮していただいて、さらに捜査を進めていただけますでしょうか。

三井副大臣 委員には、石垣島にも行ってこられました、海上保安庁にも大変激励をしていただきました。そういう中で、この事実関係についても、委員は恐らくいろいろ話は聞かれたと思います。今の中で、海上保安庁の彼らは、本当に私は一生懸命やっていると思います。これは別にして聞いてください。

 それで、いずれにしましても、この問題については、海上保安庁の皆さんは、当然、尖閣諸島の問題については真剣に、そのことはもうおわかりになったと思うんですけれども、それだけ厳しく、きちっと捜査をしておりますし、当然、今、警戒も慎重に、なおかつ厳しくやっていると思います。

 ですから、今委員のお話があったように、ビデオ機材があったという報告は、何度も私確認しましたけれども、全く受けていません。

河井委員 私も、現場の尖閣の上空から二隻の海上保安庁の巡視船を確認いたしました。海原に、白い船体にジャパン・コースト・ガードという青い文字が書いてあるあの姿を見た瞬間、胸が熱くなりましたよ。その思いは副大臣と共通だ。だからこそ言っているんです。それで、出てきたらどうしますか、向こうから。

三井副大臣 私が報告を受けているのは、いずれにしましても、ビデオ機材があったという報告は聞いておりません。

河井委員 ですから、それは報告は受けていないという答弁を承りましたけれども、その上で、もし向こう側から出てきた場合は、政府としてどうするおつもりですかということをお聞きしたいんです。

三井副大臣 何度も申し上げますけれども、あくまでも仮定の質問でございますので、今ここで、出てきたらどうするかということには、私はお答えできないと思っております。

河井委員 何を恐れていらっしゃるのかよくわからないんですが、かなりな人数が見ている。私、この問題はこれからも引き続き調べていきますので、こういうことが起こるからこそ、法務大臣、勾留期限の前に人間も船体も解放するなんというのは愚の骨頂だということを私は申し上げたい。

 その上で、今回の那覇地検の決定について、法務大臣といろいろと議論、質問をさせていただきたいと存じます。

 九月二十四日、那覇地検次席検事が読み上げた文章に、もう何度も引用されておりますが、引き続き被疑者の身柄を勾留したまま捜査を継続した場合の我が国国民への影響や今後の日中関係を考慮いたしますと、捜査を続けることは相当でないと判断したという文章があります。

 これまで、外交的な配慮で検察が処分、判断したことはあるでしょうか。大臣、お答えをください。

柳田国務大臣 ないと思います。

河井委員 法務大臣として、この那覇地検のプレスリリース、この内容は事前に御存じだったでしょうか。お答えください。

柳田国務大臣 内容そのものを見てはおりません。概略を刑事局長から報告をいただきました。

河井委員 その概略の中に、日中関係の考慮ということは報告に入っておりましたでしょうか、大臣。

柳田国務大臣 聞いたのは、引き続き被疑者の身柄を勾留したまま捜査を継続した場合の我が国国民への影響や今後の日中関係を考慮いたしております、そういうふうな内容であったと思います。

河井委員 限られた質疑時間でありますので、特にこれは今回のこの事案の根幹にかかわる重要なところですよ。刑事局長からどういう表現でどういうものを聞いたかということを後ろから紙を差し出されないと御記憶にないということ自体、私は、法務大臣として、しっかりとした対応ができていなかった一つの証左ではないか、今のお姿を拝見しながら、そのように感じました。

 同じ広島県人でありますから、今たった一人の閣僚職ということで頑張っていただきたい。頑張っていただきたい気持ちはありますけれども、今回のこの未曾有の国難に当たって、あなたがしてきた事柄、官房長官や那覇地検の皆さんの言うことが正しいとすれば、私は人間が素直ですからすぐ信じるんですけれども、国民の九割以上は信用していないというふうにいろいろな世論調査で出ておりますが、彼らの言い分が正しいとすると、事は、政治権力が検察権力に介入したということではなくて、検察権力が政治権力に介入をしてきた、その証拠がこの那覇地検のプレスリリースなんです。

 誤った検察の判断を法務大臣としてとめることができなかった。なぜ、日中関係を考慮しますというこの文言を見て、あるいは報告を聞いて、法務大臣として何もお考えにならなかったんでしょうか。

 検察というのは、法と証拠以外のものによっては判断するべきじゃないというのが徹底した鉄則であるはずなんです。それ以外の点について、刑事局長が持ってきたときに、大臣として、この点について何も御意見をおっしゃらなかったか、確認をいたします。

柳田国務大臣 繰り返すことになるかと思いますけれども、刑事訴訟法二百四十八条は、起訴、不起訴の判断に当たって考慮すべき諸事情として、犯罪や被疑者に関する情状に加え、犯罪後の情況を定めているところでございます。これには、社会一般の状況の変化や起訴、不起訴等の処分が社会に与える影響が含まれているものと考えられます。

 本件においても、検察当局は、被疑者の釈放に当たって、犯罪や被疑者に関する情状に加え、社会一般の状況の変化や社会に与える影響として……(発言する者あり)

奥田委員長 御静粛にお願いいたします。

柳田国務大臣 被疑者の身柄を勾留したまま捜査を継続した場合の我が国国民への影響や今後の日中関係等を考慮して、ああいう報告になったものと考えております。

 よって、刑事局長の報告を聞いた際に、わかりましたというふうに答えました。

河井委員 長々と読んでいただく必要はありません。その場で何もおっしゃらなかったのか、イエスかノーかでお答えをください。刑事局長の説明についてどういうふうなお答えのされ方をしたのか、確認をいたします。

柳田国務大臣 わかりましたと答えました。

河井委員 私は、これは国家の統治にかかわる極めて重要な案件ですから、一つ一つ詰めて今お尋ねをさせていただいているんです。

 しからば、国民生活への影響とか社会的な影響と先ほど朗読されましたけれども、現場の石垣の市民、長い間、中国船や台湾船のそういったいろいろな漁業者のろうぜきぶりで困り果ててきた現場の漁業者、そういった人たちの苦しみとか思い、それも私は同じ社会的な影響、国民生活への影響だというふうに考えます。その人たちは日本国民じゃないんですか、大臣。

柳田国務大臣 日本人は日本人でございます。当たり前のことでございます。

河井委員 そういう言葉じゃないんですよね。当然、御立派な法務大臣なんですから、いろいろなことをお考えになったに違いないと私はそんたくをしているんです。

 一方では、現場の沖縄県民、そして石垣市民、そういった人たち、その人たちも国境の最前線でいろいろな不安を抱えて生きている。あなた、実際に行っていらっしゃい、石垣に。そして、現場にぜひ行っていただきたい。その人たちも立派な日本人ですよ。

 そういう総合的なことを考えて判断をしたのか、あるいは、その場で即、刑事局長に、はい、わかりましたとおっしゃったのか、お尋ねをいたします。

柳田国務大臣 何回も繰り返していますけれども、前日の日に外務省の職員の方に来ていただいて、お話を聞いて、それをもとにして、こういう判断が加わったものと私は承知いたしております。

 個々の件について詳細にわたって報告することは控えさせていただきます。

河井委員 今もずっと与えられた文章を読み上げていらっしゃる。

 私は、九月二十四日の夕刻に法務省の会見室で用意された文書を読み上げているあなたの姿を見て、愕然といたしました。あれでは単なる検察庁の報道官じゃないですか、大臣が。法務大臣として一体何をしたのか。

 繰り返しますけれども、あなたは、さっき外交的配慮は今回初めてだとおっしゃった。検察有史史上初めての判断にあなたは立ち会ったんです。しかも、それが間違った判断だった。

 法務大臣として、あなたはこの間、この決定、そしてその前後、大臣として何をしたのか、読み上げ文書を読んだ以外の一体何をしたのかということを重ねてお尋ねをいたします。

柳田国務大臣 質問の趣旨を少し理解しかねているかもしれませんが、ということは、その報告を聞いたときに、指揮権を使えというふうなことにとらえてよろしいんでしょうか、質問の内容は。

奥田委員長 逆質問ですけれども、よろしいですか。河井君。

河井委員 逆質問は委員会では認められていないと思いますので、委員長、整理してください。

奥田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

奥田委員長 速記を起こしてください。

河井委員 何で、そうすぐ指揮権発動に話が飛んじゃうんでしょうか。

 私は、刑事局長から報告が来たときに、法務大臣としての判断があったのか、なかったのかと聞いているんです。

柳田国務大臣 報告を聞いて、わかりましたと答えました。その前にいろいろ考えたことはありますけれども、それについて、私の個人的な思いもありましたので、ここでお話しすることは控えさせていただきます。

河井委員 委員会で、個人的な思いもありましたがまで言っているんですから、これは大事なことなんですよ。

 もう一度言いますけれども、国の統治のあり方にかかわる、政治権力と、そして検察・法務とのかかわりに関する大事な話ですから、また同じことが起こったらどうするんですかということなんですよ。同じような案件が起こったらどうするんですか。それが、しかも、柳田大臣のときに起こったらどうするんですか。

 大事なことだから、もう一回聞きます。個人的な思いも含めて、お答えをいただきたい。

柳田国務大臣 ですから、いろいろと考えたことはありました。その際にお答えしたのは、わかりましたと申し上げて、私の判断はそういうことであります。わかりましたという判断でございます。

河井委員 私は、今のお答えを聞きながら、自動的に、刑事局長が言ってきたことを、検察史上初めてのこと、私は、本当にこれは後世に禍根を残す法務大臣としての判断だったというふうに考えておりますが、同じことは、千葉景子前法務大臣、検察の在り方検討会議の座長に起用する、そのニュースに接しまして、私は同じように愕然としました。

 大阪地検特捜部の前田元検事の事件は、大臣、いつですか。前田元検事の事件はいつ発覚したのか。

柳田国務大臣 九月二十一日だったと思います。

河井委員 改ざんはいつ行われたとされていますか。

柳田国務大臣 去年の七月中旬だったかと思っております。

河井委員 まさに改ざんが行われて発覚する間、千葉大臣の在任中に起こった事柄でありまして、私は、千葉さんはいわば利害関係人だと。こういう人に中立的、第三者的な、今後の新しい検察のあり方を検討する、その取りまとめなんかできっこない。どうやって自分の在任中に起こった不始末、出来事を公平に裁くことができるんでしょうか、大臣にお答えをいただきたい。

柳田国務大臣 政権交代が行われて、前大臣の千葉さんが法務大臣になったのは九月でございます。事件が起きた当時の大臣は自民党の大臣でございますので、一部質問の中に誤解がありましたから指摘をさせてもらいます。

 ちなみに、千葉大臣は今回の件について、大臣をおやめになった後、いろいろなところで談話を発表していますが、検察に対する厳しい御意見をお持ちでした。私は、この千葉大臣のお考えが検察を抜本的にいろいろな面で見直していただける、そういう確信を得ましたので、千葉さんにお願いすることにしました。

河井委員 さっき、冒頭に言われたのは言いがかりに近い話でして、自民党政権時代に改ざんはされたかもしれませんけれども、その後ずっと一貫して千葉さんが法務大臣の仕事をやっているわけですよ。全く違う土俵の話を今この場で答弁にかこつけて言っていただきたくない。

 厳しい考えを言っていれば、検察のあり方を考える会の座長をすることができるのか。もう一つの名答弁を今聞いた思いがいたしました。

 今回さまざまな処分が行われていますね。例えば、大阪地検検事正として監督責任を追及された三浦正晴現福岡高検検事長、監督責任を問われて、処分後、辞職の予定であります。この人は前田さんの一件と直接の関係があったんでしょうか、お尋ねをさせていただきます。

柳田国務大臣 監督責任があったと考えております。

河井委員 直接のかかわりはこの人はなかったんです。

 大阪高検次席検事として処分された太田茂京都地検検事正はいかがですか。

柳田国務大臣 監督責任でございます。

河井委員 現次長検事の伊藤鉄男さん、前田元検事と直接のかかわりはあったんでしょうか、お答えください。

柳田国務大臣 次長検事につきましては監督責任等を問うたものと承知いたしております。

河井委員 つまり、すべて直接のかかわりはないんですよ。今回処分された中で、直属の上司もいらっしゃるけれども、全く直接のかかわりがない人たちが上司だということで監督責任を問われて、処分あるいは処分後辞職予定になっている。

 しからば、法務・検察組織の最高責任者は一体だれですか。検事総長を指揮することができる人はただ一人しかいない。お答えください。

柳田国務大臣 私は、今回の行為者の地位等にかんがみると、法務大臣まで責任を問われることはないというふうに判断をいたしております。

河井委員 委員長、質問に答えさせてください。

 法務・検察組織の一番の責任者、検事総長を指揮できる人は一体だれですかと聞いているんですよ。監督責任です。一体だれですか。

柳田国務大臣 法務大臣です。

河井委員 つまり、すべて、法務・検察に起こっていることは、最終的な責任は、政治責任も当然含めて法務大臣の職にあるわけです。先ほど言いましたように、大阪地検の三浦さん、大阪高検だった太田さん、そして現次長検事の伊藤さん、全く直接の責任はない、でも監督責任だと。なぜその最高責任者である千葉景子前法務大臣、当時の法務大臣、この人が座長に起用されるのか、監督責任ということで私は変わりはないというふうに考えております。

 結局は、先ほど刑事局長から、尖閣諸島の問題で、はい、わかりましたと答えましたとおっしゃいましたけれども、法務官僚の言いなりになっている、いいように操縦されているだけじゃないか、そういう疑念を私は強く抱かざるを得ない。

 千葉景子さんの起用について、重ねて大臣の御認識、御所見を、以上の私の質問を踏まえてお答えをいただきたいと思います。

柳田国務大臣 千葉前大臣はしっかりと今回の事態をとらえて、国民の信頼に足り得る検察に変えていただけると私は信じております。

河井委員 大臣在任中のほとんどの時期にこの事件がずっと起こっていたわけですから、繰り返しますが、利害関係人、いわば被告席に座るような立場の人が裁判長を務めるみたいなものだ、この人事には全く本当に納得がいかないし、本気であなたが、国民にあるべき、そして国家にあるべき検察の新しい姿をつくろうとしているのか、私はもうこの座長の人事を見て、がっくりと、残念に思った次第であります。

 外務副大臣、お越しをいただいておりますので、短い時間になりましたけれども。

 この前も外務委員会で質問をさせていただきました。今回の私たち超党派議連の尖閣諸島の上空からの視察行動に対して、岡田克也現民主党幹事長が電話をしてきた、圧力をかけてきたという話でありまして、これは報道によると、認めちゃったんですね、岡田さんが。連絡したことを認めたということでありました。

 事実関係だけ言うと、私たちが石垣空港を出発したのは十一時過ぎ。十三時過ぎには帰ってきた。岡田さんがいろいろと言っていたフジタの社員の解放通報は十五時半。つまり、私たちが行っている間か、既にその前に解放に向けた中国側の作業は進んでいたはずなんです。私たちの尖閣の視察とフジタの社員の解放、拘束には何の因果関係もないことがこの時系列でも立証されたと考えております。

 前原外務大臣は、このフジタの最後の社員は人質だという認識を言っておりましたでしょうか。副大臣に確認をさせていただきます。

伴野副大臣 河井委員にお答えさせていただきます。

 御指摘のお話でございますが、私どもはそのようには承知しておりません。

河井委員 中国政府は、人質だと言っていたんですか、この件で。

伴野副大臣 河井委員にお答えいたします。

 中国政府からそのような報告が、あるいは報道があったというふうには承知しておりません。

河井委員 それなのに、岡田幹事長は事実上の人質との認識を抱いた。前外務大臣といっても、直前の、この前までの外務大臣。私は本当に見識を疑います。

 そこでお尋ねしたいのが、今、中国には邦人が何人いるか。留学生、訪問客を含めて数字をお示しいただきたい。

伴野副大臣 河井委員にお答えいたします。

 手元に正確な資料がございませんので、追って、すぐ調べて御報告いたします。

河井委員 これは私、きのう通告していますよ。

 時間がないから、いいです、私が言いますよ。これはきのう外務省が持ってきたんです。中国における在留邦人は香港も含めて十二万七千二百八十二人。留学生は一万八千六百四十人。人的往来、日本から中国に年間約三百三十二万人が行っているんです。このうちの一人でも中国当局に拘束されたら、人質として使えるということを直前の外務大臣が世界じゅうに自白したんだ、私はそのように思っているんですよ。いろいろな諸外国の外交当局者ともこの間議論したけれども、みんなあきれていた。

 しかも、このフジタの社員は、中国の国内法を犯した容疑で居住監視中だったんです。本当に犯したかどうかということはこれから明らかにしなきゃいけない。でも、少なくともその疑いがかけられていた人。上海万博の日本館の前でアイスクリームをただ単になめていた普通の日本の女子大生が捕まったのとはわけが違うんです。個人的な犯罪によって領土や国家の主権が損なわれる、一国の外交が揺らぐなんということは断じて許されない。

 それとも、あれですか、前原大臣が岡田さんに、あいつらが尖閣に行ってくれるなと言って頼んだという事実があるんですか。外務省の事務当局が頼んだという事実があるんですか。お答えください。

伴野副大臣 河井委員にお答えさせていただきます。

 そのような事実は全くございません。

河井委員 それとも、あれですか、何か外務省や政府がこのフジタの社員たちに特別頼み込んで行ってもらったという事実があるんですか。

伴野副大臣 河井委員に改めてお答えさせていただきますが、そのような事実も全くございません。

河井委員 つまり、自国の領土の上空を超党派の国会議員団が、しかも自前で借り上げて、この前、結構、余り安くない請求書が来ましたよ、それに乗って、民間機に乗って視察しようとしたことをとめるなんというのは、さっきその辺から自民党時代じゃないかと言ったけれども、これはまさにあなたたちが批判している自民党時代の事なかれ外交そのままじゃないですか。こういう政治家がよくもまあついこの前まで一国の外交の最高責任者にいたものだなと、今回の一件を受けてつくづく残念に感じました。

 外務副大臣、御所見をお聞かせください。

奥田委員長 質疑時間が終了しておりますので、最後の質問とさせていただきたいと思います。

伴野副大臣 河井委員に謹んでお答えをさせていただきたいと思いますが、河井委員の、国難に接するに当たり与野党もないというお立場あるいは御姿勢には心から敬意を表したいと思いますが、岡田幹事長がその時点においてどういうふうにおもんぱかられたのか、お答えする立場にございません。

 以上です。

河井委員 終わります。

     ――――◇―――――

奥田委員長 次に、内閣提出、民事訴訟法及び民事保全法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。柳田法務大臣。

    ―――――――――――――

 民事訴訟法及び民事保全法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

柳田国務大臣 民事訴訟法及び民事保全法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 この法律案は、国際的な経済活動に伴う民事紛争の適正かつ迅速な解決を図るため、国際的な要素を有する財産権上の訴え及び保全命令事件に関して日本の裁判所が管轄権を有する場合等について定めることを主な内容とするものであります。

 現在、経済活動の国際化の進展に伴い、多岐にわたる国際的な民事紛争が生じておりますが、現行の民事訴訟法には、いかなる場合に日本の裁判所が管轄権を有するかについての明文の規定は存在しません。そこで、その基準を明確にし、当事者の予測可能性及び法的安定性を担保する必要があります。

 この法律案は、契約上の債務に関する訴えや不法行為に関する訴えなど、具体的な訴えの類型ごとに日本の裁判所が管轄権を有する場合等を定めるものであり、国際的な民事紛争の適正かつ迅速な解決に寄与するものと考えております。

 その要点は、次のとおりであります。

 第一に、この法律案は、民事訴訟法の一部を改正して、財産権上の訴えについて日本の裁判所が管轄権を有する場合等を定めることとしております。

 具体的には、まず、被告の住所、主たる営業所等が日本国内にある場合には、日本の裁判所が管轄権を有するものとしております。

 次に、契約上の債務に関する訴え、事務所または営業所を有する者に対する訴え、不法行為に関する訴えなどについて、訴えの類型ごとに日本の裁判所に訴えを提起することができる場合を定めることとしております。

 また、消費者契約及び労働関係に関する訴えについて、消費者及び労働者の権利保護に配慮して、日本の裁判所に訴えを提起することができる場合についての特則を設けることとしております。

 さらに、管轄権に関する合意の効力及び方式について定めることとしております。

 そのほか、日本の裁判所が管轄権を有することとなる場合においても、事案の性質、応訴による被告の負担の程度等の事情を考慮し、当事者間の衡平を害し、または適正かつ迅速な審理を妨げることとなる特別の事情があるときは、訴えを却下することができるとの規定を設けることとしております。

 第二に、民事保全法の一部を改正して、保全命令事件について、日本の裁判所が管轄権を有する場合を定めることとしております。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに可決していただきますようお願いいたします。

奥田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時十七分散会


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