衆議院

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第7号 平成23年4月19日(火曜日)

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平成二十三年四月十九日(火曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 奥田  建君

   理事 滝   実君 理事 辻   惠君

   理事 橋本 清仁君 理事 樋口 俊一君

   理事 牧野 聖修君 理事 平沢 勝栄君

   理事 大口 善徳君

      相原 史乃君    井戸まさえ君

      大泉ひろこ君    金子 健一君

      川越 孝洋君    京野 公子君

      熊谷 貞俊君    黒田  雄君

      桑原  功君    階   猛君

      橘  秀徳君    中島 政希君

      野木  実君    三輪 信昭君

      水野 智彦君    山崎 摩耶君

      横粂 勝仁君    あべ 俊子君

      河井 克行君    北村 茂男君

      柴山 昌彦君    馳   浩君

      森  英介君    柳本 卓治君

      漆原 良夫君    城内  実君

    …………………………………

   法務大臣         江田 五月君

   法務副大臣        小川 敏夫君

   厚生労働副大臣      小宮山洋子君

   最高裁判所事務総局家庭局長            豊澤 佳弘君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    原   優君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           篠田 幸昌君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           石井 淳子君

   法務委員会専門員     生駒  守君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十九日

 辞任         補欠選任

  水野 智彦君     金子 健一君

  北村 茂男君     あべ 俊子君

  棚橋 泰文君     馳   浩君

同日

 辞任         補欠選任

  金子 健一君     水野 智彦君

  あべ 俊子君     北村 茂男君

  馳   浩君     棚橋 泰文君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 民法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三一号)


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     ――――◇―――――

奥田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、民法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として法務省民事局長原優君、厚生労働省大臣官房審議官篠田幸昌君、厚生労働省大臣官房審議官石井淳子君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

奥田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

奥田委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局豊澤家庭局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

奥田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

奥田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。あべ俊子君。

あべ委員 こんにちは。自由民主党のあべ俊子でございます。

 今回の民法等の一部を改正する法律案、これは私は本当に賛成でございまして、特に、主な要点といたしまして、親権の停止制度、ここの部分は本当に現場からは必要とされたところでございます。また、未成年後見制度の見直しに関しまして、法人または複数の未成年後見人の許容、これに関しましても、民法上、非常に必要とされてきた部分であります。また、児童相談所、これからは児相というふうに略させていただきますが、この親権代行につきましての規定、さらにはまた離婚後の家庭の面会交流権、ここの部分は非常に賛成する部分でございます。

 特に、聖域とされました民法の親権制度の見直しに踏み切ったということは、私は非常に評価されるものだと思っております。現行法の規定が不十分だった部分が多くございまして、特に、親権の部分で施設長の監護に対する権限がどこまでなのか。これは、児童福祉法の四十七条二項のところでございますが、親権者と施設長、どちらが優先されるかということが、児童虐待の児童に対して非常にあいまいであったという部分が大きいと思っております。また、一時保護された児童に関しましては、児童相談所のその権限があいまいであった、こういう観点から、私は、今回の親権停止、二年を限度としてということでございますが、非常に重いものだと思っております。

 親権剥奪という形になってしまったときに、それはこれまで三十五年間で三十一件しか出てこなかったという問題がございます。大臣、これに関しては、なぜこんなに件数が少なかったというふうにお思いでいらっしゃいますか。

江田国務大臣 親権のあり方というのが大変な社会問題になって、親権者が親権を適切に行使しない、そういう事例が次から次へと本当に続いたわけですよね。しかし、親権の喪失となるとこれはもう完全に切れてしまうわけで、やはり、そこまで大きな喪失という効果をもたらす手続しか用意されていないということになると、どうしてもそこは、鶏頭を割くに牛刀をもってす、これではやはり牛刀は使いにくいということになって、これまで使われなかったんだと思っております。

 ということで、もう少し、あるいは大いに使いやすい制度をつくろうと、委員が本当に深い理解をしていただいていることに感謝を申し上げます。

あべ委員 大臣がおっしゃったように、親権喪失というのは余りに重過ぎて、しかしながら、親と引き離す必要があるのではないかという現場の声を受けて、また、親子の再生支援という観点からも、この停止については私は賛成するものでございます。

 特に、私は看護師でございますので、医療の現場で医療ネグレクトという場面にいろいろな場面で出会いました。大臣も御存じのように、報道で言われています、子供が中耳炎なのに治療を受けさせない、軽いものでは、インフルエンザの予防注射を拒否する、また、宗教上の理由で手術、輸血などを拒否するということをさまざま現場で見ていた中にありまして、親権の剥奪、親権停止を一時的にすべきであったという事例もあったわけであります。

 しかしながら、私が、親権停止に、また医療ネグレクトに関して、子供にとって、命を守るために親権停止が必要だというふうに判断した場合に、この停止を行ったとき、また手術費用に関しては、これはだれがどのように負担する形になるんでしょうか。

原政府参考人 民法八百二十条の規定は、「親権を行う者は、子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。」こう規定しているわけでございますが、この規定は、監護、教育の費用の負担まで定めたものではない、その費用の負担は子に対する親の扶養義務の履行の問題であると一般的に解されているところだと思います。

あべ委員 さらにはまた、例えば親権者の不当な主張などという例が幾つか出されているところでありますが、また、この親権停止に関連して、親権停止をしなければ、さまざまな、子供たちがやりたい、また行わなければいけないことに対して阻害をされているというケースが出されています。

 報道等では、特に、アルバイトで、一時親から引き離された子供たちが携帯電話を契約しようとしたら、親がそれを断り、携帯電話が持てなかった事例、また、進学をしてちゃんと勉強したいという思いがあったのに、親が子供の了解なしに、また親と一緒に今いない状況にあるにもかかわらず、勝手に退学届を出してしまった例、また、本人が、まだ未成年であるけれども、自分で住みたいと仕事をしながらアパート契約をしたにもかかわらず、親がその契約を打ち切った例などがございます。

 大臣、いわゆる本人が何をしたいかということに関して、この親権停止ではどういう影響が出ると思われていますか。

江田国務大臣 今、委員が電話の例とかあるいは学校の例とか借家の例とかをお挙げになりましたが、親権を停止しますと、これは親権者にかわる者がちゃんと指定をされる、未成年後見人、こういう者が親権者にかわって同意をして契約を結ぶことができるようになるということだと思います。

あべ委員 それは特に、さまざまな虐待がございますが、身体的な虐待、性的虐待、経済虐待、さらには、子供たちの思いを妨げてしまう精神的虐待みたいなさまざまなものがある中で、この親権停止に関しては、その子たちの将来を妨げるものではない、しかしながら、親にとっては非常につらい部分もかなりあると私は思っております。

 特に、親権者の不当な主張についてということがございますが、大臣、この不当な主張についてというのはどういうものがございますか。

江田国務大臣 これはさまざまあるわけで、先ほどからの医療ネグレクトについても、私なんかも子供のころに水泳ばかりやっていまして、しょっちゅう中耳炎をしていまして、中耳炎というのは、なりたてにすぐ、ケフラールでしたか、抗生物質を飲めば治るんですけれども、そこを逃すと、本当に慢性になったら大変なんですね。

 それなのに親権者が、それは、子供がお医者さんにかかるのを、どういう理由でもよろしい、いや、自分は親権者としてそういうことに同意をしないと。これはもう幾らでもあると思います。不当な親権の行使の主張をして、子供の利益に反する結果をつくり出す。例は、今私は医療ネグレクトのことしか挙げませんが、幾らでもあると思います。

あべ委員 本当に大臣のおっしゃるとおりでございまして、不当な介入ということに関しては議論がさまざま分かれるところでありまして、特に私がこれはどちらにとって大切なのかよくわからないことの一つに、例えば特別支援学級の例があります。

 自分の子供はそこまで障害がない、普通学級で学ばせたい、しかしながら、子供が軽い知的障害があったり発達障害があったりするときに、通常の学級ではパニックを起こしてしまう、どう考えても、きめの細かい、その子に合った対応が必要であるから、特別支援学級に入れた方がいいというふうに判断を例えば児童相談所などがしても、親はそうではないと言ったときに、子供にとっての児童の福祉ということが、本当にどちらが正しいかは非常に難しい部分があると思っています。これは今回の法案を可決することに妨げになるものではございませんが、この議論は私は続けていかなければいけないと思っております。

 大臣、これについてお願いいたします。

江田国務大臣 特別支援学級がいいのか、統合教育といいますか、一般の学級がいいのか、これは本当に難しいことで、一般論としては、障害を持った子供たちも一緒にみんなと同じクラスで学ぶことが普通の子供たちにとってもいいというような、そういう教育の場になっていけばいいと思うんですが、なかなか現実にそうならない場合と、それから障害が非常に重くて、先生にとっても周りの子供たちにとっても余りにも負担になり過ぎるというような場合もあるだろうと思います。

 そこの判断というのは、これは私がここでこっちがよろしいとかいうようなものではなくて、それぞれの現場現場でみんなで考えながら、悩みながら決めていくことだと思いますが、一番の基本は、やはり親が親権者ですから、その親が子供のために何がいいかというのを一生懸命考えて、そして判断をする。その親の判断が、子供のためよりも、むしろ逆に、自分のメンツのためとか、あるいはもっと違った理由によって子供の福祉につながらないような判断の場合にこれは介入をする必要が出てくるかと思いますが、一番はやはり親が本当に子供のことを考える、これが基本だと思います。

あべ委員 おっしゃるとおりでございまして、本当に子供にとって何が優先順位であるかということを判断していくことは非常に難しいけれども、継続的に考えていかなければいけないことだと私は思っております。

 また、今回の法案に関して非常に評価される部分が、未成年後見人の法人または複数改正であります。特に未成年後見人は、非常に役割が重過ぎるということで引き受け手が非常に確保が難しかったという観点や、引き受ける方々が負担や責任が余りにも重過ぎるということでなかなか確保ができなかったところでありますが、この法人、特に児童養護施設、NPO法人などが考えられますが、この未成年後見人の改正に関して、現場でどういう声が大臣のところに上がっていましたでしょうか。

江田国務大臣 申しわけないんですが、私自身のところに現場の声が上がっているというのは、私もついこの間就任したばかりなので届いていませんが、そうでなくて、歴代の法務大臣のところへ上がっているということでいえば、それは例えば、いろいろな社会福祉法人が営むさまざまな施設などから、十八歳、十九歳、これはまだ未成年、しかし施設には十八になったらもう入れておくわけにいかない、だけれども、やはりそれは社会にぽんとほうり出すのではなくて、自分のところで今まで見てきたし、気心もよく知っているし、彼も彼女も私たちを頼っている、そういうときにこういう法人が監護の、あるいは教育のお手伝いをさらに続けてやりたい、こういうような声はいっぱい上がってきているものと承知をしております。

あべ委員 ここの部分は、後見人制度が本当に機能をしていかなければいけないということを考えたときに、このような複数もしくは法人ということは、本当に望ましい形だと思っております。

 実は、今回、東日本震災のときにも、後見人の方々がお一人であったがゆえに、後見人の方々が被災に遭われたときに、例えば、その児童たちが次の道に進むときの障害になったということも聞いておりまして、そういう観点からも私は重要ではないかと思っております。

 そうした中にありまして、特に児童虐待、二〇〇七年の児童虐待防止法の改正案、これがしかれたことによりまして、さまざま、その虐待の報告数も上がってきたところであります。この児童虐待防止法施行の後に、平成二十一年の児童相談所の相談件数は何と四万四千近くになっておりまして、平成十二年度の施行のときより三・八倍にもなっているということを考えましたときに、また、警察庁から摘発されている児童虐待件数三百三十五件、被害の児童は三百四十七人というふうに聞いているところであります。

 しかしながら、虐待を受けている子供たちは、それが虐待であるということを認識していない場合もあります。特に小さな子供は、親に捨てられるんじゃないかという恐怖の余り隠し続ける、また、親に捨てられたくないから親の支配を逃れにくいという問題もあるわけであります。命がけで親とつながっていこうと子供たちが思っている中に、しかしながら、その子たちの命も守っていかなければいけないという中にありまして、この小児、児童虐待における親権停止、これは本当に大きな第一歩だと思っております。

 そうした中にありまして、この児童虐待そのものが親権停止だけで解決する問題ではないと私は思っております。この法案は大賛成でございますが、大臣として、これから先、この児童虐待、さらに議論を進めていかなければいけない部分でございますが、それに対しての思いをぜひ聞かせていただきたいと思います。

江田国務大臣 法務省としては、民法の改正で、親権の一時停止という枠組みを用意いたしました。これが大いに活用されて、そして、複数の未成年後見人の場合、あるいは法人による後見の場合なども用意をいたしましたので、こういうものが大いに活用されることを強く期待したいと思います。

 最近よく報道であるのが、例えば児童相談所へ行っても、全然あるいは本当に親身になってやってくれなかったとか、あるいは警察へ行っても、家庭のことは入らないんだとか言われたとか、そういうようなのが散見されるわけですが、私は、やはり、子供を育てていく、子供というのは社会の宝ですから、子供を育てていくというために役に立つ社会支援はすべて、こういう親権の一時停止という制度を用意していますから、これを活用して子供のために一生懸命に働いてほしいと本当にそういうふうに思っておりまして、これはもちろん、法務省だけの仕事ではありません、厚生労働省その他関係の皆さんにもよく協力をいただいて、子供の育ちというものを社会的に支援していきたいと思っております。

あべ委員 大臣おっしゃるとおりでございまして、私は、しかしながら、児童虐待に関して、今回の法律の第一歩は非常に大きいと思っております。二〇〇七年の改正児童虐待防止法案、これに強制調査権が入ったということは大きな一歩でありました。十年前、本当に少なかった、家庭訪問さえできなかった状態が、行政が立ち入ることができ、一時保護することで救える子供や家庭はふえたという中に、今回の親権停止も非常に大きな一歩だと思っております。

 しかしながら、心配されるのは、児相が、非常に人が少ない中で、これ以上の役割を負っていく体制になっているんだろうかということが、実は現場から上がっているところでございます。きょうは、政府参考人で厚生労働省の方から石井さんがいらしておりますので、ぜひ、この児相の体制を、しっかり小児虐待を防ぐために、もっともっと手厚くしなければいけないと思っておりますが、その点はいかがでしょうか。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 まさに、いみじくも先生がおっしゃられましたように、仮に今回の法案がうまく成立したとしましても、それをしっかり使いこなして、児童虐待防止、あるいは親子の再統合にしっかりつなげていくことが極めて肝要でありまして、そのためには、児童相談所の体制をしっかり整えていくというのは本当に肝要であるというふうに思っております。

 私どもも、その問題意識はしっかり持っておりまして、実は、児童福祉司というのが児童相談所の中で虐待の対応で中心的な役割を担うわけでございますが、この児童福祉司の増員ということについて、厚生労働省として、地方交付税措置について算入するように総務省に要望をいたしてきておりまして、平成二十三年度におきましては、標準団体で三十名から三十二名と、二名増員することといたしております。

 また、正規職員以外に、児童相談所の専門性を高めるためのさまざまなサポートの手段は必要でありますので、例えば、弁護士や医師などの外部の専門家の助言が得られるような体制整備を図るための費用を補助する、あるいは、虐待を行った保護者に対して、保護者指導支援員、これは、児童福祉司等と同等程度の知識をお持ちの方ではございますけれども、そういう方々を配置して指導を行うための費用を補助するとか、こういったような予算的な措置で児童相談所の体制強化にも努めているところでございます。

 また、二十二年度の補正予算におきましては、安心こども基金に、定額補助によりまして、児童虐待防止に係る緊急強化対策を新たに盛り込んでおりまして、虐待通告のあった児童の安全確保のための補助職員を、これは十分の十でございますが、配置できるような経費を盛り込みまして、虐待防止のための体制強化を図っているところでございます。

 今回の法改正によりまして、親権に関する児童相談所の業務も追加されるわけでございますので、今後とも、地方交付税措置の要求や、あるいは弁護士費用等の補助などを通じまして、体制の強化に一生懸命取り組んでまいりたいと考えております。

あべ委員 石井政府参考人がおっしゃったように、私は、法案は非常に大きな一歩だと思いますが、児童虐待に関しては、いかに予防していくかという環境が必要でありますし、学校教育、地域教育も必要だと思っております。

 私、看護教育を受けたのが、二十年前、アメリカで受けたわけでございますが、児童虐待をどうやってアセスメントするかということを詳細に教えてもらいました。例えば、子供に注射をしたとき、子供に治療をするときに、普通の子供は泣くわけでありますが、泣かずに我慢している子は児童虐待の可能性があるので、しっかりアセスメントをするようにということを聞きまして、また、そのアセスメントの評価表もかなりいろいろなツールがございまして、簡易版なども教わったわけであります。

 また、そういう授業の中で、もう一つありましたのは、児童虐待をしている親は、自分が虐待をされている可能性がある。すなわち、自分が虐待されて育ってきているので、自分の子供を育てるときに、子供というものの普通の育て方を知らない。まず、子供が生まれた段階で、子供というのはこうやって褒めてあげる、こうやって抱き締めてあげる、殴るんじゃないんだ、ののしるんじゃないんだということをゼロから教えてあげないといけないということも教わりました。そういう、虐待をされて育ったがゆえに虐待をすることでしか子供を育てることができない保護者の方々をどういうふうにしていくか、これは、石井政府参考人がおっしゃっていた保護者指導ということとまさに連動することであります。

 もう一つ、石井政府参考人にお聞きしたいんですが、親権停止の期間、二年で区切るわけでありますが、親権の回復後、どのような形で再び虐待が起きないのか、親をどう再生させていくかということに関してもこれからは重要だと思っておりますが、児相の方でもその体制をこれから先、整えられるということであれば、教えていただきたいというふうに思います。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 まさに親権停止をされている二年間、この間にいかに親子の再統合をきちっと図っていくかということが重要でございまして、まさにそのための親子再統合のプログラムの開発など、私ども一生懸命取り組んでいるところでございます。

 現在、多様なプログラムの実施状況とかその効果等について研究を行っておりまして、保護者指導に関する調査、検証の成果を踏まえまして、さらに児童相談所が保護者指導あるいは支援に適切に取り組めるように努めてまいりたいというふうに思っております。

あべ委員 ぜひともそこの部分はお願いしたいというふうに思います。

 最後の質問になりますが、離婚後の面会交流権に関してでございます。

 平成二十年、離婚の件数は二十五万一千百三十六、平成元年よりも十万件もふえまして、二分六秒に一組が離婚をするという状態であります。離婚時に未成年の子供がいる家庭が、何とその六割の十四万三千八百三十四であります。

 そうした中にありまして、司法統計年報によりますと、面会交流の調停の申し立てが、平成十年は千七百件、平成二十年には六千二百六十一件と四倍になっておりますが、認められたのは何と四九%であります。

 特にこの面会交流権、子供の側からしますと、離婚をした一緒に住んでいない親が自分のことをちゃんと思ってくれているという確認をしなければいけない。親離れの促進、またアイデンティティーの確立の点から必要だというふうに言われているところであります。

 ここに関して、大臣、この文言が一言入った、特にこの面会交流権の必要性を大臣はどのようにお考えでしょうか。

江田国務大臣 離婚の場合にどういう取り決めをするかということの規定が十分でなかった。しかし、実際には、面会交流にしても、費用の分担にしても、これは離婚するその親同士でちゃんと約束を決めるということが望ましいことには決まっているので、家庭裁判所でも、なるべくこれを決めさせよう、決めるようにということでいろいろな努力をした。しかし、なかなかそこに至らなかったということがあります。さらにまた、そうしたことが、父と母の間の駆け引きとか、そういうものに使われてしまうというようなことがあったのが実情だと思っております。

 そこで、今回、この面会交流とか費用の分担とかについてきっちり合意をしなさいよ、さらに、その合意は子の利益のためが第一なんですよ、このことを法律に書き込もうとしているわけでございます。

 私は、離婚といえども、父であること、母であること、これは変わらないので、子供のためを考えると、やはり、私のお父さんはあそこにいる、私のお母さんはあそこで見てくれている、これは大切なことなので、基本的には、いろいろな個別の事情はあると思いますよ、あると思うけれども、基本的には、やはり面会交流というのは子供の福祉にとっては大切なことだ、これを奪うというのはよほどのことがないとやっちゃいけないことだと思っております。

 家庭裁判所でそういう合意をつくるときに、家裁には調査官がいますから、調査官は、その親子の再統合というようなことまで考えていろいろなことをやりますから、私としては、家裁調査官の仕事に大いに期待をしたいし、さらにまた、その家裁調査官が、最後に離婚がきっちり成立する、あるいは調停の場合もあるでしょう、そういうときに、一応そのいろいろな記録をつくりますので、これは想定の中には何もないんですが、そうしたものが児相その他にちゃんと引き継がれるというようなこともあるいは考えた方がいいのかな、こんなことも思っております。

あべ委員 私は、子供にとっては本当に大切なことだと思っておりますが、離婚というのはそんなに簡単にされている方は余りいらっしゃらないんじゃないかということを考えたときに、元配偶者と子供が接触するということが母親の情緒的な部分に大きな影響を与えるということも実はあると思っておりまして、ここの部分のフォローも必要ではないか。また、子供が一緒に住んでいない親に面会交流をすることによっての中長期的なその影響というのは、私はしっかりフォローも教育もカウンセリングもして、これは法律を超えた形でやっていかなければいけないと思いますので、そちらの方の整備もぜひしていただきたいと思っております。

 最後に一言言わせていただきますが、実は、阪神大震災のときに、避難所において児童虐待の報告がかなりされております。私は、今回の東日本大震災、特に避難所生活が長くなる中、児童虐待にはしっかりと焦点を当てていただき、被害者がふえないように、本当にこれからも御配慮いただきたいというふうに思っております。

 時間になりましたので質問を終わります。ありがとうございました。

奥田委員長 次に、馳浩君。

馳委員 自由民主党の馳です。きょうもよろしくお願いいたします。

 今ほど、あべさんが最後におっしゃった阪神大震災のときの児童虐待の案件というのは、詳しく言うとこういうことなんです。いわゆる避難所等においての性的虐待が随分あったんですよ。改めて、今般の東日本大震災、避難所における子供の監護についての対応というものを、やはりしっかりと目を光らせていただきたいということをまず最初に申し上げておきたいと思います。

 では、質問に入ります。

 まず最初に、現行の親権規定が定められたのはいつのことでしょうか。

原政府参考人 明治三十一年に、いわゆる明治民法の第四編に親権に関する規定が設けられております。その後、戦後、新憲法が制定されまして、昭和二十二年に、新憲法の理念である個人の尊厳、男女平等の観点から改正が行われて、現行の民法の規定になっているという経緯でございます。

馳委員 現行の、現在の親権内容をお示しいただきながら、それ以前の親権の内容との違いをお示しください。

原政府参考人 現行の民法の第四編、親族編を見ますと、その第四章に親権という規定がございまして、第一節が総則、第二節が親権の効力、第三節が親権の喪失、こういう構成になっております。

 第一節の総則では、だれが親権を行使するかという親権行使の主体についての規定が置かれております。それから、第二節の親権の効力では、監護、教育の権利義務や財産管理などの親権の具体的内容についての規定が置かれております。それから、第三節、親権の喪失では、親権の喪失や管理権の喪失についての規定が置かれている、こういう体系になっております。

 明治民法と比較しますと、明治民法では、原則として、子と家を同じくする父親に親権があるものとされておりまして、母親に親権がある場合は制限されておりました。これは家制度の影響だろうと思います。戦後、先ほども申し上げましたが、新憲法が制定されまして、個人の尊厳や男女平等の観点からの改正が行われましたので、現行民法におきましては、親権は父母が婚姻中は共同で行使する、こういう規定になっております。それから、親権の効力や親権の喪失の規定は、現行民法と明治民法では基本的には同じ内容だと考えております。

馳委員 明治以降からの親権規定の流れを踏まえると、今回の改正は、子の利益を軸に、明治時代にはない、戦後認められた親権規定を再構成したものと言ってよいのではないかと思います。そういう意味での歴史的意義を感じますが、大臣、いかがでしょうか。

 あわせて、文言も、「子の利益のために」ではなくて、子の最善の利益のためにと、もっと明確に改正すべきではなかったのでしょうか。

江田国務大臣 今、政府参考人から説明がありましたが、明治憲法というのは基本的に家というのを家族の単位にしていまして、戸主がいて、そのもとにずうっと、おい、めいまで含めていろいろな人がそこへ入っていたわけですね。そうした家の一員としての子。したがって、例えば、明治民法の中には、未成年の子の兵役出願の許可、こんなものが親権者にあったり、あるいは母の親権の行使については親族会の同意といったものがあったりしたわけです。

 しかし、これは個人の尊厳や、あるいは男女の平等ということからしておかしいということで、戦後の改革で家制度をなくして、そして戸籍というのは夫婦と子供という単位にして今の制度になったわけで、基本的には、私は、その段階で親権というのは子供のために行使するんだということになっていると理解をしたいと思いますけれども、しかし、やはり戦前からの流れがずっとあって、なかなかそこは明確でなかった。

 しかし、今回、国連でもチルドレンファーストという原則を確立しています、子供というのは未来の夢であり希望であるので、やはり子育てあるいは子育ち、これを最重要にして、親権というのはそういうことのために行使するんだということを明確にしたいということで「子の利益」といたしました。

 子の最善の利益というのは、これはもう当たり前でありまして、最善と書かなくても、「子の利益」というのは最善の利益です。逆に、書けば、最善はこうだけれども次善はこうで三善はこうでとかなったら、それはかえって何か複雑になるだけなので、「子の利益」というのは最善の利益のことなんだ、こう御理解いただきたいと思います。

馳委員 わかりました。大臣の、やはり明治時代以来の親権についての社会的な背景を踏まえた流れが今日に至っているということの理解が本当によくあって、私はよかったと思います。

 実は、そうはいいながらも、平成十六年に児童虐待防止法を改正したときも、平成二十年に改正したときも、いずれも附則に、親権の一部・一時停止はすべきであると、これは議員立法で改正をしましたから、強く強く要請してきたにもかかわらず、それを抵抗してきたのは法務省なんですよ。何でこんなことになってしまったのかということを今さら言うつもりはありませんが、きょうの質問をさせていただきながら、前に向かった議論をさせていただきたいと思います。

 では、次に行きますが、本改正案の条文で面会と交流が区別して規定されているが、この両者の違いは何ですか。

原政府参考人 面会といいますのは、実際に父または母が子に会うことを意味しております。交流は、それ以外に、電話による会話とか手紙による意思疎通、こういうものも含む広い概念でございまして、面会を含む広いものとして交流という用語を使っているところでございます。

馳委員 交流の中にはメールも入りますね。

原政府参考人 入ると考えております。

馳委員 こういうところが時代の違いということだと思います。

 平成八年の法律案要綱では「面会及び交流」となっていました。本改正案は「面会及びその他の交流」と変わっておりますが、両者の違いは何ですか。「その他の」を盛り込んだ意図は何ですか。親子の接触にはその他の交流より面会が基本であると考えてよろしいでしょうか。

江田国務大臣 面会と交流の重なり部分と違う部分というのは今お答えしたとおりですが、確かに、平成八年の法律案要綱では「面会及び交流」となっていたけれども、これでは面会と交流は別物だという理解になってしまうので、面会が基本です。やはりそれは親子ですから、メールもいいですけれども、やはり顔と顔が見える関係というのがそれは一番大事。ということで、面会は基本ですが、しかし、面会だけじゃなくて、広く交流、メールもあるいは電話も手紙もいろいろある、そういう広く交流というものを大切にするんだということで、面会を基本に置きながら、その他の交流というように書き分けているので、ここは概念を正確に表示したということだと御理解ください。

馳委員 平成六年の要綱試案では「面接交渉」となっています。「面会及びその他の交流」と「面接交渉」とどう違うんですか。

江田国務大臣 面接交渉という言葉は以前から使われていまして、面接交渉権というようなことを言われていましたが、何かよくわからないんですね。面接に行くというと何か、会社の面接もあるし、弁護人の被疑者の面接もあるし、そういうものじゃなくて、もっと人間的な、血の通った関係を意味したいということで面会その他の交流という言葉を使ったので、両者の内容に違いはないと理解をしております。

馳委員 よりわかりやすい表現としたというふうに理解をいたします。

 本改正案の面会交流の規定は、平成六年の要綱試案の説明に示された内容を踏襲しておりますが、この要綱試案の説明には、「子の養育・健全な成長の面からも、一般的には、親との接触を継続することが望ましい。」と大変大事なことが明確に書いてありますが、この点も本改正案は踏襲しているということでよろしいですね。

江田国務大臣 委員御指摘のとおり、要綱試案にあります「子の養育・健全な成長の面からも、一般的には、親との接触を継続することが望ましい。」これは本当にそのとおりでございます。

 一般的にはというと、何か例外がいっぱいあるみたいに聞こえるかもしれませんが、例外は少ない方がいいので、よほど特殊な場合を除いては、いろいろな難問があろうとも、やはり親との接触というのは大事なことだと考えておりまして、この考え方を踏まえて今回の立法に至っております。

馳委員 これを踏まえて、今回の面会交流を特出しして明記した立法の趣旨をお伺いしたいと思います。

 一部流言がありますように、裁判実務で定着している面会交流を確認するというだけなら、これは断じて納得できません。海外と比べても不十分な面会交流を積極的に推進していくという立法趣旨でなければ、法務省が言う、子の成長に親との継続的接触が望ましいという理念も絵そらごとで終わってしまうからでありますが、いかがでしょうか。

江田国務大臣 もともと、民法第七百六十六条第一項の「監護について必要な事項」という中に面会交流が含まれていると解釈されていますし、家庭裁判所の実務もそういう理解には立っている。しかし、面会交流ということが明確に条文化されていない。そこで、どうしても、家庭裁判所でこの調整を行う場合に、当事者に条文にこう書いてあるのでというような言い方ができないものですから、ついつい、離婚をする際に明確な定めが行われない場合が出てきていたんですね。

 そこで、監護について必要な事項の具体例として条文の中に明示をする、このことによって、協議上の離婚をするに際して、当事者間でその取り決めをすることを促しているんだ、これが我々国会の意思なんだ、こういうことを家庭裁判所にもよくわかっていただいて、そうした家裁での運用、そして、その運用を通じて、一般に、協議離婚する場合にもやはりそこは取り決めが必要なんだ、そういう社会の常識をつくっていこうと考えているわけでございます。

 これが書かれていないことで、そこまでまだ尋ねられていませんね。(馳委員「どうぞどうぞ」と呼ぶ)これが書かれたことによって、面会交流とか費用分担とかが、別れようとする父親、母親の駆け引きの材料になったりいろいろな紛議のもとになったり、それは違いますよと。あくまでこれは、お父さん、お母さんが駆け引きの材料なんかに使うことではないんです、子供の利益のために考えることですというので、その後、子供の利益ということ、これもちゃんと法律上書かせていただいたということでございます。

馳委員 大臣、どんどんしゃべっていただいていいんですよ。なぜかというと、大臣の発言を明確に議事録にし、その議事録を最高裁にちゃんと読んでおいてほしいんですよ、私は。これまでどれほど、私もそうですが、御党の小宮山洋子さんあるいは公明党の富田茂之さんなどなど、何度も何度もこのことを言い続けながらもはね返されたのが最高裁の壁であったわけでありまして、思うところはどんどんしゃべっていただいて結構ですので、よろしくお願いいたします。

 そこで、裁判実務で、より面会交流が積極的になるようにするためにも、権利性を正面から規定して明文化した方が立法趣旨をもっと明確にできたのではないでしょうか。いかがですか。

江田国務大臣 これはなかなか難しいことで、それは人間と人間との関係は権利と義務の関係にきれいに整理ができるわけですが、しかし、なかなかきれいに整理をしてしまうと身もふたもないというようなこともまた実際にはございまして、子供の利益というのは権利義務とかいうことを超えた崇高な目的だ、そういうように私は考えております。

 面会交流というのは子の権利なのかあるいは親の権利なのか、その法的性質とは何ぞやと、いろいろ法律学者的には議論がありますが、そういう議論を超えて、やはり子の利益のために面会交流というのをしっかりやってください、こういう立法者としての願いがここにこもっているというふうに御理解いただきたいと思います。

馳委員 極めて現状肯定、現状追認的な答弁だったと思います。

 実は、各国の実情もいろいろ参考に見てみました。お隣の韓国でも権利としてしっかりうたってありますね。主要国では正面から権利性をうたっておりますし、我が国が批准をした児童権利条約でも同様です。つまり、我が国の国民認識が世界標準に追いついていないと言わざるを得ません。

 今回、正面から権利性を規定して、むしろ、国民に対して、子供の利益のために必要なんですよ、こういう発想を啓蒙するという趣旨での改正をすればよかったのではないでしょうか。そして、過度の権利主張を危ぶむのであるならば、児童権利条約のように子供の権利とすればかなり回避できるのではないでしょうか。この辺、いかがでしょうか。

江田国務大臣 なかなか痛いところをずばりずばりと追及されるので答弁に苦労するんですが、非監護親と子の面会交流について、それがだれの権利なのか、権利ではないのかということについて、これは本当に議論がいろいろありまして、なかなかまとまらなかったのが実情だと私は聞いております。

 そこの議論がまとまるまで待つわけにもいかないので、そこで、まずはこういう面会交流というものをきっちり法律に書き込もう、それは子の利益のためですよということも書き込もうということで書いていますので、今、私が、これは子供の権利でございますと答えると、やや、ここまで議論してくださった皆さん方の議論を踏み越えることになるので答えませんが、しかし、私の言いたいことは恐らく理解していただけると思っております。

 委員が今挙げられました子どもの権利条約その他、国際的ないろいろな水準、そういうものは私もよく承知をしているつもりでございます。

馳委員 前回の法務委員会の一般質疑のときに、あのときはハーグ条約の話でありましたが、私、こういうことを申し上げたと思うんですね。離婚をしたら夫婦の問題、離婚をしても、子供にとってお父さんはお父さん、お母さんはお母さん。私は、そういうふうな観点、まさしく子の利益を優先するという考え方に立って、もうちょっとその権利性を主張し、しかしながら、子の利益のためにも面会交流を制限することもあり得る、こういうふうにしていったらよかったんじゃないかなと思っているんですよ。

 次の質問に移ります。

 本改正案によれば、何が子の利益にかなうかの合理的判断は、第一次的には父母の協議によって行われることになります。つまり、父母こそが子の利益を判断するのに最適任者だという価値判断が根底にあると思いますが、いかがですか。

江田国務大臣 これは、やはり子供にとって親は親で、親にとって子供は子供で、その関係というのは社会の一番基礎的な家族関係なんですね。したがって、子供の利益というのは何だろうと考えるのは、それは第一はやはり御両親なんです。

 家庭裁判所で御両親がいがみ合っていても、そこは、先ほどの質問者にも答えましたが、家庭裁判所の調査官というのはいろいろなカウンセリング能力も持っているので、間に入って、そして本当に調整をしていく。これは、離婚しない結論に至る場合も、する結論に至る場合にも、ちゃんと調整をして、そして、人間関係のいろいろな、無用なもつれをなくして考えていくわけですが、家庭裁判所が入るに際しても、やはり第一義的に、あるいは第一次的に子供の利益を考えるのは父親、母親だ、この点は、世の中の父親、母親にはよく理解をしておいていただきたいと思います。

馳委員 しかし、父母の第一次的判断を尊重する余り、監護権のある親が面会交流に強く反対していると、後に家裁が介入することになっても、面会交流は基本的には認められないとの結論となりやすいんです。

 事実、そう明言している審判例があります。この審判例を紹介いたします。横浜家裁で平成八年四月三十日に出された判例でありますね。読みます。「親権者である親が非親権者である親による面接交渉に強く反対している場合においては、特別の事情が存在しない限り面接交渉を回避するのが相当である」、こういう判断基準を示しております。

 最高裁にお伺いしますが、まさか現在の実務においてこのような審判例がリーディングケースになっていないでしょうね。審判の結果はもちろん別として、このような判断基準、これは否定すべきではないでしょうか。いかがでしょうか。

豊澤最高裁判所長官代理者 面会交流の可否あるいはその態様等につきましては、個々の事案に応じて、家事審判官、裁判所が個別具体的に判断する事項でございます。

 御指摘の審判例につきましては、事務当局としては、個別の審判についての意見を申し述べることは差し控えさせていただきたいと思いますが、現時点、近時の一般的な実務の取り扱いという観点から申し上げますと、一般的には、子供の健やかな成長、発達のために双方の親との継続的な交流を保つのが望ましいという、子の福祉の観点から判断がされているものと考えており、子供への虐待がある、そういった面会交流を禁止あるいは制限すべき事情が見当たらない限り面会交流が認められ、その態様や回数等につきましては、双方の親の事情あるいは親と子供の関係、あるいは子供に関するさまざまな事情、こういったもろもろの事情を総合考慮した上で回数であるとか方法等について個別的に定められている、そういった実情にあるものと理解しております。

 以上です。

馳委員 最高裁の豊澤さんという人ですね、家庭局長。

 それなら、私が今紹介した横浜家裁の平成八年四月三十日のこの審判例というのは、極めて特異な例、個別の例であり、今現在は余り好ましくないというふうに考えてよいでしょうか。豊澤さんにお伺いしたいと思います。

豊澤最高裁判所長官代理者 平成八年の時点でこういった理由を付した審判が出ておることは、御指摘のとおりでございます。

 ただ、近時の審判例、二年ほど前に判例タイムズで取りまとめた、これまでの面会交流に関する審判例について調査分析した文献等、そこに引かれている裁判例等を見ましても、大勢は先ほど申し上げたような傾向にあるものというふうに理解しております。

馳委員 では、改めて私はもう一回言いますね。

 やはり、離婚をしても、夫婦はいたし方ない、子供にとっては非監護親と面会交流を定期的にすることがふさわしい。しかし、諸般の、それぞれいろいろな事情によって、面会交流はしない方がよいときもある。これはまさしく個別、特別な事情があってと。こういうふうな近時の判例だというふうに私は理解しようと思っているんですけれども、それでいいんですね、私の理解で。もう一回、豊澤さんにお伺いします。

豊澤最高裁判所長官代理者 近時の審判例、あるいは実務の状況、その判断の傾向というのは、先ほど私が申し上げましたとおりの傾向でございまして、今委員の御指摘のような方向にあるものと思います。

馳委員 だったら、大臣、面会交流権と明確にうたってもよかったんじゃないんですかと私も思っているんですよ。いかがでしょうか。改めてお伺いします。

江田国務大臣 重ねての御質問ですが、先ほど申し上げましたとおり、いろいろな皆さんの議論を集約してここへ至っているので、私の気持ちは気持ちとして、権利という言葉を使っていない、しかし、あくまで子の利益のために、これは、周辺の皆さんも皆、子の利益のために面会交流はできるだけできるように努力をする義務を負っているんですよという理解をぜひしていただきたいと思います。

 家裁の実務の扱いについてまで私がいろいろ言うことではありませんが、家裁の決定例というのが、リーディングケース、この方向でいくんだよといって登載される場合ばかりではないので、先ほどの横浜家裁の決定例というのは一つの事例だというように御理解いただければ、私としても大変幸いでございます。

馳委員 家裁の実務についてはまた後ほど詳しくお伺いいたします。

 そこで、最高裁に調査を依頼したいと思います。過去十年間の面会交流に関する家裁の審判で、面会交流の是非にかかわる判断基準を示した審判例をすべて書面により公表していただきたいと思います。

 これは、立法府から司法、裁判の独立を侵すとか圧力をかけるというものではもちろんありません。今後の立法に生かすための活動だというふうに御理解をいただいて、その調査をし、資料を出していただきたいと思いますが、大丈夫ですか。

豊澤最高裁判所長官代理者 この面会交流だけに限りませんが、家事事件と申しますのは、御承知のとおり、家庭内の問題や紛争に関するものでございまして、当事者のプライバシーに深くかかわるものでありますことから、その性質上、手続自体が非公開ということにされております。したがいまして、その結果として、その手続の中で出される判断でありますところの審判等につきましても、その調査、公表には、先ほどの観点からの慎重な配慮が必要であろうと思われます。

 このような観点からの配慮を行った上で、面会交流に関してこれまでに公表された調査研究というものの比較的新しいものとして、先ほどちょっと言及しましたが、平成二十一年に法律雑誌に掲載された、裁判官と家庭裁判所調査官が執筆したものがございます。これは、昭和三十九年から平成十八年までの面会交流に関する審判例五十九件について、その可否や頻度等についての考慮要素などを分析したものでございます。

 このほか、法務省が委託して、親子の面会交流を実現するための制度等に関する調査研究におきましては、家庭裁判所での面会交流事件の分析のほかに、民間の面会交流支援団体からのヒアリングや当事者からのアンケートが実施されており、現在その報告書が取りまとめ中であるというふうに聞いております。

 法務省の調査研究の結果等も踏まえ、今後とも、家事事件の非公開性に配慮した上での調査研究というものにつきましては、可能な検討を行ってまいりたいというふうに考えております。

馳委員 るる御紹介いただきまして、では私も参考にして勉強させていただきます。ありがとうございます。

 さて、そもそも離婚後の監護に関して高いストレス状態にある親に、子の利益を判断する冷静な判断能力があるのか。しかも、学問的に離婚後の親子の交流が一般論として子供の成長にプラスであるのに、それを知らない、認めることができない親が我が国にはいかに多いかということであります。

 であるならば、家裁が介入しなければならなくなった事案において、子の監護に関して高いストレス状態にある父母の意見に左右されることなく、何が子の最善の利益かを客観的に家裁が判断することが必要ではないでしょうか。これも本改正案の趣旨の一つだと明言していただきたいのですが、いかがでしょうか。

江田国務大臣 委員御指摘のとおり、父母の協議が成立せず家裁が介入しなければならなくなった事案というのは、これは子の監護に関しても父母の間に高いストレスがあるという場合が多いだろうと思います。

 その場合に、父母の方がこんなに子供についていらいら状態にあるのに面会だ、交流だなんてとんでもないというような判断をするのでなくて、やはり、そういう状況であっても親と子というのは大切な関係ですから、面会交流を子の福祉のため、子の利益のためにぜひ実現するように努力をしよう、例外はどんな場合でもありますが、努力をしようというのが家庭裁判所の調停または審判における努力の方向だ、そのことをこの法案は示している。これはぜひ、そういうふうに家裁でも理解をしていただいて、努力をしていただきたいと私は思っております。

馳委員 関連をして、一般論として、子が別居親と面会交流することが子の最善の利益にかなうわけですから、監護権のある親が面会交流に強く反対しても、特別な事情がない限り裁判所は面会交流を実現すべきだ、面会交流させることが子の利益と推定されるなどの価値判断が本改正案の趣旨としてあるということも明言できないでしょうか。いかがでしょうか。

江田国務大臣 そういう、委員が御指摘のような場合は、なかなか困難はあるかと思いますが、それでもやはり、可能な限り家庭裁判所は親子の面会交流ができるように努める、これはこの法律の意図するところだ、こう私は思っております。

 家庭裁判所の調停、審判で、より一層そうした方向で努力がなされることを期待しております。

馳委員 この問題の根底には、面会交流を家裁が命じても、強制力を家裁が持たないために、家裁の権威のために、命じたくても抑制が働くことに一番の問題があるのではないかと私は見ておりますが、いかがでしょうか。

江田国務大臣 私は、裁判官をしたことはございますが、かなり古い時代でございまして、しかも、家庭裁判所に勤務をしたこともあるんですが、すぐお隣の少年事件ばかりやっておりましたので、家裁でそういう傾向が一般的に働くということが言えるかどうかは存じ上げておりません。

 おりませんが、確かに、履行の勧告とかあるいは間接強制とかいろいろあるけれども、実際に、会わせるというのを、それこそ引きずっていって、それ会えといって会わせるのじゃやはりまずいので、そこはその気になって親子が会わなきゃいけないので、そういうその気になるというのはなかなか強制でできるものじゃないので、そういうあたりを考えながら、家庭裁判所というのは、粘り強く、余り行き過ぎてもいけませんが、当事者の心のひだに分け入って、心を解きほぐしながら、いい親子関係ができるように努力をするものだと期待をしております。

馳委員 ちょっと強烈なことを今から提案しますね。

 家裁の履行勧告に従わなかった場合に、民事執行法百七十二条の間接強制はできますが、現実には余り機能しておりません。そこで、履行勧告や間接強制を何回も無視したり等、ひどいケースに、児童虐待防止法の虐待事案と認定したり、人身保護法を適用して、人身保護命令を出して、罰則で担保したりすべきではないかと思いますが、いかがですか。

 関連して、不当な子供の連れ去りも虐待と言えるのではないでしょうか。ここは厚生労働省に聞いた方がいいですね、法務省に聞いてもあれですし。

 私なりにこうしたらどうかと思ってお伺いいたしますが、いかがでしょうか。

江田国務大臣 馳委員がそうして一生懸命に、履行勧告に従わなかった場合などの対応についてお考えいただくことは、大変大切だと思っております。

 確かに、残念ながら、面会交流をめぐって、父と母が対立して適切に実現されない事案があるのは事実でございます。ただ、監護親が面会交流を拒否する、これはやはりいろいろな理由もあって、面会交流の際に子を連れ去られるのではないかという不安があるとか、あるいは、離婚に至った経過の中で強いストレス、葛藤があって、もう顔も見たくもないというようなそういう気持ちもあって、たとえ子供といえども会わせたくもないというような気持ちも強くあったり、あるいはまた、親子の適切な面会交流が、たとえ別れた元夫、元妻との交流であってもやはり子の健全な育成のためには重要だということがなかなか理解されない、そうした事情があるのだと思います。

 ただ、こうした事情があるときに、それに強制力でもって臨むことが本当にいい人間関係をつくっていくのかというと、強制力というのはまたこれは一つのストレスになっていくわけでありまして、強制ではなくて説得で、やはりそこは納得でこの交流ができるようにしていくことが非常に重要だと思いますので、やはり、別れた後も父は父、母は母なんですよということの理解とか、あるいは、連れ去られるような心配はない、こういうやり方で会わせるんですからとか、そういうさまざまな説得の工夫は私はたくさんあると思うので、そうした努力を精いっぱいやることが大切だと思います。

 それから、人身保護も、人身保護というのはある人を拘束しているのを引き離して裁判所に連れてくるという制度で、監護親が子供を監護している状態が人身保護に言うところの拘束に当たるかというのは、大変判断は難しいだろうと思います。

 いずれにしても、納得が大切と思っております。

石井政府参考人 なかなか難しい御質問をいただきまして、また、かつて児童虐待防止法というのはまさに先生方がおつくりになった法律でございまして、そこにどう適用するかという御質問であるわけでございますが、一応、前提としまして、家裁の履行勧告に従わないというスタート地点がありますし、大変著しい、ひどい場合だという前提があるんだろうと思います。

 個別具体的なケースを見ていかないと、なかなか、本当にこれが児童虐待の定義に当てはまるのか、一概にこの判断は難しいところがございますが、ただ、先生御案内のとおり、児童虐待の定義のございます第二条、その第四号の中に、「児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、」そして「その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動」、これが児童虐待に該当するということでございますから、まさにこれに該当するような極めてひどいケースについては、当たり得るということだけは申し上げることができるかと思います。

馳委員 まさしく、定義の特出しということになると難しいんですね。実は我々も虐待防止法改正案をつくったときに、例えば、子供に対しての直接の虐待じゃないんだけれども、親同士が激しい争いをしているということを見せることは虐待に当たるよというふうな概念を定義の中に入れたんですよ。したがって、まさしく石井さんがおっしゃったように、議員同士の議論の中で、私が今申し上げているのはこういうことですね、一方に全く無断で勝手に連れ去って、会わせない、それが子供の利益にとってどういう影響を及ぼすのか、これはやはり虐待の事案の一つとして認めてもよいのではないかという議論が煮詰まれば、これはまた特出しの書き方を、あるいは改正をすることもあり得べしなのかなと私は思っているということを申し上げさせていただきます。

 ちなみに、平成二十年に児童虐待防止法を改正したときの附則、二つ、いろいろありましたよね。一つは親権の問題で、今回実現いたしました。もう一つの、社会的養護の問題を充実するということもあります。したがって、児童虐待防止法についても、時代背景を踏まえて三年ごとに改正していこうじゃないかと。

 我々の想像、理解を超えるような虐待事案というものが出てくる以上はそれには対応すべきではないかという議論は、これは超党派の勉強会の中でもされておりましたので、ぜひ厚生労働省としてもその辺の理解を進めておいていただきたいと、まずお願いを申し上げます。

 さて次に、面会交流を支援する民間団体の取り組みを公的に支援する体制をしっかりと構築すべきではないかと思います。面会交流を渋る同居親の気持ちに寄り添って、不安を取り除いたり、面会時の安全を確保したりすべきであると思いますが、いかがでしょうか。将来的には、全国の家裁がある地域にすべて公的な面会交流センターを設置して、専属の専門員を配置すべきと思いますが、いかがでしょうか。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 まさに、子の利益の観点から、離婚後も適切な親子の面会交流が行われることは極めて重要だというふうに認識をいたしているところでございます。

 厚生労働省では、平成十九年度から養育費相談支援センターを設置いたしまして、ここで養育費のみならず、面会交流の相談にも応じておるところでございます。その相談実績も、まだ数は少のうございますが、年々ふえてきている、そういう状況にございます。また、都道府県などを単位に設置をされました母子家庭等就業・自立支援センターにおきましても、ここでは専門の相談員を配置し、養育費や面会交流の相談支援に応じておりまして、ここも相談実績は上がってきております。

 今後とも、まだまだ専門の相談員を配置していない母子家庭等就業・自立支援センターがございますので、そこでの配置を進めるとともに、相談員の人材が大切でございます。その人材養成のための研修や関係機関との連携など、面会交流に関する相談支援体制の充実を図ってまいりたいというふうに考えております。

馳委員 わかりました。さらに進めていただきたいと思います。

 家裁の負担の軽減も重要です。例えば、最近、現役弁護士を家事調停などの非常勤裁判官として採用しておりますが、仕事がない弁護士の活用の点からも、より推進すべきではないかと思いますが、いかがですか。

江田国務大臣 最近、弁護士になっても就職先がないなどといういろいろな声があって、悲鳴も聞こえるんですが、こういう皆さんに仕事の場をもっとふやす努力、これを私どももしていく必要はあると思っております。

 今委員御指摘の家事調停官でございますが、これは、弁護士になっても仕事がないという者にすぐなってくれといっても、そうはいきません。というのは、弁護士で五年以上その職にあった者の中から日本弁護士連合会の推薦を受けて最高裁が任命する非常勤の裁判所職員ということでございますので、五年間は弁護士をやっていただかなきゃならぬわけです。しかし、そういう皆さんに、原則として週一日、所属裁判所で家事審判官と同等の権限で調停事件を処理していただいているというのが現状でございまして、この制度を活用することによって、裁判官の給源が多様化される、裁判官のなり手を多様化するとともに、調停手続の紛争解決機能を一層充実強化していくことはできると思っております。

 ただ、残念なことに、これが平成二十一年、再任を含んで十一人、平成二十二年、再任を含んで三十人。もっともっとふえてほしいと思っております。

馳委員 大臣、いい答弁をしていただきました。もっともっとふえてほしいと私も思いますし、弁護士になって五年たっても仕事のない弁護士というのはいっぱいいるんじゃないんですか。

江田国務大臣 仕事のないという、そのとらえ方ですけれども、私は、弁護士になって仕事がないなどと言うなと。世の中、いっぱい仕事は、それこそ今、被災の現場へ行ったって、法律相談に乗ってほしいと思っている人はいっぱいいるんですよ。なぜ避難所に行かないのか。いや、行っていますと弁護士さんはおっしゃるかもしれません。

 いずれにしても、そういう思いで、これは公務員も、中央でも地方でも、あるいは企業にもあります。いろいろな、スラムといいますか貧困の地帯もあります、田舎もあります。弁護士の仕事は本当に、実は掘り起こせば幾らでもあるので、五年たっても仕事がないなどと弁護士さんに言わないでほしいと思いますが、現実には、五年たってまだ仕事がないという弁護士さんもおられるかもしれません。

馳委員 この問題については、また別の機会にゆっくりと追及をさせていただきます。

 関連して、子供代理人制度の創設も提案をしたいと思います。

 離婚時の審判等で子供が親同士の紛争に巻き込まれた場合に子供の利益を代表する代理人を創設するものですが、いかがでしょうか。

 例えば、十五歳未満の子供が、本当は別居親と会いたがっていても、同居親に嫌われたくないから、会いたくないと調査官に話したりしております。このような場合に、しっかりと子供と寄り添って信頼を受け、その子供の本心を聞き出したり、何がその子供にとっての最善の利益かを考えて公的に表明してくれる人が必要だと思いますが、いかがですか。

江田国務大臣 重要な御指摘をいただいたと思います。

 両親が紛争の渦中にある、その場合には、子供の心情を思いやるゆとりがなくて、子供の心情、子供を取り巻く環境を酌み取る手だてがやはり必要だと思います。

 現状はどうなっているかといいますと、親権者の指定や面会交流等の審判をする場合に、家庭裁判所は、家裁調査官による調査などで子供の心情や子供の環境等を把握して、審判するに際して配慮しておりますが、しかし、今委員御指摘のような、子供自身が自分の利益を手続の中で主張するとか、あるいは子供の代理人の制度が、これはできておりません。

 しかし、ここから先が重要なんですが、今国会に家事事件手続法案というものを提出いたしました。きょうから参議院の委員会で審議を始めていただいているところですが、いずれ当委員会に来ると思っております。

 この法案では、家庭裁判所は、未成年者である子供がその結果により影響を受ける事件においては、これは、子供の陳述の聴取あるいは家庭裁判所調査官による調査その他の方法によって子供の意思を把握するように努めろ、そして、子供の年齢や発達の程度に応じて子の意思を考慮しなきゃいけないということにしておりまして、子供の意思を尊重する旨を明文で規定して、より子供の利益に配慮するということにいたしました。

 さらに、自分の気持ちや意思を的確に述べることができる子供については、親権者の指定や面会交流の審判の手続に参加をすることが可能になる、あるいはまた、裁判所は、親権者の指定あるいは面会交流などに子供を参加させた上で、弁護士を手続代理人に選任することも可能とする、こういう規定にしておりますので、こういう法制定ができましたら、委員御指摘の趣旨は実現されるものと思っております。

馳委員 法律の成立を望むものであります。

 さらに、離婚後の子供との交流断絶が子供に長期的にどのような影響を与えているかという学問的追跡調査が海外にはありますが、日本には余りにも少ないんです。ここはしっかりと公的支援をして調査をさせるべきではありませんか。いかがですか。

江田国務大臣 日本でも、最近、面会交流の子供への影響についての関心が高まってきており、活発に議論されるようになってきていると思っております。法務省としても、このような議論の推移を見守っていきたいのですが、見守るというだけでは、これはやはり、単に拱手傍観と言われても仕方がない。

 そこで、そうではなくて、親子の面会交流を実現するための制度等に関する調査研究、これを委託いたしまして、現在報告書が取りまとめられているところでございます。この調査研究では、家庭裁判所での面会交流事件の分析のほか、民間の面会交流支援団体からのヒアリングなど、あるいは当事者からのアンケートなども実施をいたしております。

馳委員 せっかく最高裁が来ておるので、聞きますね。

 裁判所が、監護、親権等、こういう決定をした後の子供の追跡調査に関する行政文書というものがありますか、ありませんか。

豊澤最高裁判所長官代理者 家庭裁判所で調停が成立し、あるいは審判が出されて、その後、それに従った形で履行がちゃんと当事者間でうまくいっているかどうかということに関して、履行勧告の申し立てがあれば、それらの件数については統計上把握はいたしておりますが、それ以外に、最終的に家庭裁判所での調停、審判の結果を受けて、その後当事者間でどういうふうに事態が推移しているかに関して、裁判所の方で把握しているということはないと思います。

馳委員 そうなんです。ないんです、大臣。これは私は、すごく大事なポイントかなと思っているんですよ。せっかく裁判所の方で監護について、親権についての審判が下った後の追跡調査ということについては、これは最高裁の仕事ではないとは私は思うんですが、これは研究の対象として、その動向を探り、そしてやはり、その審判が子の利益にとってよかったのかどうかという検証を含めた調査というのは必要なのではないかなと思いますが、いかがでしょうか。

江田国務大臣 これはなかなか難しいことで、裁判というのはあくまで受け身の国家機能でございまして、何か訴えられればそれに対して答えはする、しかし、答えをした後々、その答えがよかったかという追跡は、裁判所にやってもらうというのは大変困難だと思います。これが刑事事件ですと、有罪判決になった場合のことですが、刑務所でずっと後、見ていくとか、あるいは保護観察所で見ていくとか、一定程度のことはできますが、そうでない場合にはなかなか困難。

 ただ、私が思うのは、裁判所も、地裁は確かにそういうことですが、家庭裁判所というのは、手続においてもあるいは性格においても社会化されている営みなんです。社会の中に分け入っていろいろな紛争を解決していくようなところがあって、したがって調査官もいますし、いろいろなことをやるので、そして少年事件の場合も家事事件の場合も、そこに今のいろいろな病理現象のケースがいっぱいたまっていて、そこから現場へ行って初めて見出すいろいろな解決の種が、宝庫がそこにあるというのは事実だと思うんですね。

 したがって、もちろん個人のプライバシーいろいろございますから、そうした事件を全部事件ごと社会に明らかにするというのは大変困難ですが、いろいろな形でそうしたケースの累積の中にある宝物を探り出して、そしてすばらしい世の中をつくっていくための素材にしていくということは、何か私たち考えなきゃならぬと思っております。

馳委員 実は私も、この辺がすごく気になっているんですよ。我が国の家族法に関する法改正の歩みというのがちょっとやはり遅いというか、悪い言葉で言えば鈍感というか。

 私も国会に参りましてもう十七年目に入るんですが、ちょうど平成十年前後ぐらいからですか、DV防止法とか、そして児童福祉法の特出しとして児童虐待防止法、また私自身も、高齢者虐待防止法や、今現在、障害者虐待防止法などの立法にずっと取り組んでまいりました。何か社会的な、身も凍るような事件が起きた、それが相次いだ、その根源的なものは何だろうな、やはり家族のあり方が変わってきたよね、こんなこと昔はなかったよね、そういう事例が積み重なって、よっこいしょと重い腰を上げて国会が動いている、あるいは法務省が動いているというふうな印象を私も受けてまいりました。

 したがって、今大臣がおっしゃったことはすごく大事なことで、家裁の調査官の皆さんはいろいろな事案、事例に取り組んでおられます。確かに忙しいというのは私はよくわかっていますよ。しかしながら、私は、そういう意味では、調査研究、検証、分析、こういった業務もやはり重要な、日本社会を支える大事な業務なんじゃないかなと思っているんですね。それがまさしく立法に生かされたとしても、その立法が後追いになってしまっては余り意味がないんですけれども、でも、そういう体制は整えておく必要があるのではないかなと思って申し上げたんですが、改めてコメントを求めたいと思います。

江田国務大臣 立法が先に出ていかなきゃいけない、出ていくのがいい場合もございます。しかし、世の中というのは生き物ですから、この生き物の世の中が先に動いて、それを後から立法でしっかり定着させる、支えるといった立法もあるかと思います。

 我が国の家族についてのあり方が大きく変わってきておる。核家族というのが一般化し、最近は、もう核家族を離れて、シングルマザー、シングルファーザー、これも別に不思議じゃないというようなことになって、そうしたことに対する社会的なある種の道徳的、倫理的批判、非難というのが以前はあったと思いますが、もう最近はそんなことはないと思います。そういうように家族のあり方は変わってきていますので、私は、ここは、家族法についても、やはり、委員がいら立ちを覚えるような、その思いは私も共有をしていきたいと思います。

馳委員 たまたま私、ずっと議員立法を非常に使命感を持ってやってきたつもりなんですが、例えば、平成十三年か十四年に性同一性障害特別措置法、これも議員立法でやったんですね。資料を集めたり、いろいろな社会の声を聞いたりするときに結構力になってくださるのは、やはりマスコミの皆さんであったり、取材の一線にいる皆さんであったり、また、個別にいろいろな研究をしておられる大学の先生であったり、あるいはお医者さんであったり、内科医とか精神科医とか外科医の皆さんであったり、そういうのがそういう立法のときに非常にブレーンとなってくださったんですね。

 したがって、私は、家族に関するあるいは個人に関するような法律は後追いでもいいと思っているんですよ。ただやはり、その根拠となるような社会的な動静を把握できるような、まさしく家裁の調査官というのはそういう意味では非常に役割があるのではないかなと思っているんです。したがって、その家裁の調査官も、どんどん研究論文を書いて世の中に発表し、そういう活動もされればいいと私は思うんですよ。改めて、そういう意思を私自身持っておりまして、また、大臣にも御理解いただきたいなと思って申し上げました。

 さて、司法統計上は、面会交流について、月一回以上の統計しかありません。月一回以上の、つまり月二回とか月三回というさらなる内訳は、立法政策上不可欠です。最高裁にはもっと細かな統計資料を今後出すように強く強く要望をいたしますが、いかがですか。

豊澤最高裁判所長官代理者 委員御指摘のとおり、現在の司法統計の上では、月一回以上、これは、一カ月に複数回、あるいは月一回にプラスして長期休暇中にさらに面会を認める、こういったものを含んだもの、あるいはそれ以外の二、三カ月に一度だとか、そういったふうな刻み目で統計をとっておりまして、一カ月以上というものの具体的な内訳については、それ以上細かく詳細に把握するような仕組みにはなっておりません。

 最高裁判所といたしましても、事件処理の実情の把握という観点から、委員からいただきました御指摘も踏まえて、可能な対応を検討してまいりたいというふうに思っております。

 以上です。

馳委員 これは、豊澤さん、意外と自分のことに置きかえて考えると、月一回、例えば離婚をした子供に会いたい、会わせたくない、会いたいな。こういうふうな中で、月二回というのは二週間に大体一回ですよね、月一回でおれは我慢できるかな、毎日でも会いたいという親も、もしかしたら、これはほとんどかもしれません。

 ただ、我が国は単独親権でありますから、かなわないという中での監護権を持たない親の心情を踏まえて考えると、統計数字を見ると、月一回以上、平成二十二年で五三・二%ですね。半分以上が月一回以上。ということは、さらに月二回、三回、四回と面会交流できているわけですよね。やはりその辺の分析というものはもうちょっと丁寧にされた方がいいと思うんですが、先ほど前向きな答弁をいただいたので、これ以上は言いません。

 では、次の質問に移りたいと思います。

 さて、親権を停止された親へのフォロー、再教育が非常に大切です。親権が復活した後の親子再統合に非常に気を使っていく必要があると思いますが、そのためにどんな施策を用意しておりますか。これは厚生労働省に伺った方がいいんですね。お願いします。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 虐待により親権を停止された親に対する指導や支援、そして親子再統合への取り組みを適切に行っていく、これは極めて重要であると認識いたしております。

 そのため、保護者への援助に関する基本的ルールを定めた、児童虐待を行った保護者に対する援助ガイドライン、これは平成二十年三月に策定をし、その中におきまして、児童福祉司等による面接や、あるいは家庭訪問での指導、支援、関係機関が実施する親子の再統合に向けたプログラムへの参加の促進などをお示ししているところであります。

 また、予算面では、家族再統合のための保護者指導支援員、これは児童福祉司などと同等程度の知識を有する者でございますが、そういう方々や、あるいは精神科医などを児童相談所等で活用するための経費を補助いたしているところでございます。そして、家族再統合を目指して、ファミリーグループによるカンファレンスの実施や、親子による宿泊型プログラム等の実施によって要する費用も補助をいたしておりまして、そうしたことで児童相談所の体制強化にも努めているところでございます。

 このほか、これは何より人が行うものでございまして、その専門性、資質向上というのが何より肝要と考えておりまして、保護者指導、支援に関する研修を子どもの虹情報研修センターにおいて実施いたしております。現在、多様なプログラムの実施状況やその効果等についての研究を行っておりまして、その中で、保護者指導に関する調査、検証を行っているところでございます。そうした研究の成果を踏まえまして、またさらに全国の児童相談所が保護者指導、支援に適切に取り組めるように努めてまいりたいというふうに考えております。

 そして、親に対する指導、支援のあり方については、好事例をまとめてお示ししまして、これを地方自治体向けの各種会議あるいは研修などを通じて徹底を図ってまいりたいというふうに考えております。

馳委員 よろしくお願いします。

 親権停止の期間について伺います。

 最長の二年なのか、一年なのか、また半年なのか、この決定を現場の家裁に丸投げでは、家事事件が増加している現在、余りに家裁にとって酷であります。期間の設定についてどのような対策をおとりになるのでしょうか。

江田国務大臣 これは、二年を超えないということで、確かに委員おっしゃるとおり、二年がいいのか、一年がいいのか、一年半がいいのか、これはなかなか、ぴたっと、これが一番よろしいというのを決めるのは大変困難で、その点では、確かに家庭裁判所に負担がかかるということはあると思います。

 しかし、だからといって、今度は全部一律二年としてしまうということがいいのかとなりますと、これまた個々の事案ごとにいろいろ違っているわけで、親権停止の原因や、あるいは態様や、程度や、それが消滅すると見込まれる時期とか、個々の事案ごとに、裁判所に事案に応じて一番適切な期間を決めてもらうということにしたわけで、負担については、法制審議会でもいろいろな議論がございましたが、ここは、家庭裁判所で調査官なども活用しながら適切なものを決めていただくという、家庭裁判所の努力にひとつ期待をしたいと思います。

馳委員 実は私、ここは大臣に答弁を求めるよりも厚労省に求めた方がいいなと思って、さっきからずっと石井さんのことを見ているんですけれどもね。

 つまり、これは、児童虐待という事案が発見されました、そして、一時保護、そして養護施設に保護をいたしましたと。そうすると、親子を引き離した職員と、同時に、今後再統合のために親と話をする職員と、私はやはり二つの系統があった方がいいなと思っているんですよ。そして、後半の、親子の再統合をさせるために、児童相談所の、これは所長かもしれませんし、ベテランの児童福祉司かもしれません、子供を預かって、やはり親子をもとに戻す担当の人が家事審判の中で意見をお出しになって、一年相当ですね、二年相当ですねというふうな意見があれば、まさしく家裁もそんなに負担がかからなくていいんじゃないのかなと思うんですが、ちょっと私のこの提案を含めて、石井さん、いかがですか。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 突然の質問でちょっと戸惑っておりますけれども、まず非常にシンプルな事案として言えるのが医療ネグレクトなどの事案で、とにかく、宗教か何かの理由で輸血拒否をしている、その輸血をするために親権を停止するということであれば、これは一義的、かなり機械的に、医者との相談で大体どのくらいということで判断をして設定ができるのではないかと思います。

 そして、もっと一般的に、今先生がいみじくもおっしゃられました親子再統合の状況について、担当する人間の意見があれば家裁も判断がしやすいだろう、あるいは調査官の方が非常に参考になるだろうというのは、確かにそういうことはあるだろうなと思いまして、どこまでのことができるかわかりませんが、この辺は少し持ち帰って考えてみたいというふうに思います。

馳委員 その上で大臣に実は聞きたかったんですよ。

 まさしく、虐待の事案があった、一部始終、最初から事情というのをわかっているのは、やはり児童相談所であったりするわけですね。その児童福祉司の皆さん、職員さんから適切なアドバイスを受けながら、そして家裁の方で最終的に判断をしていただくというふうにしないと、対応する親も、もしかしたら子供も、同じことを二回、三回繰り返し聞かれて、傷口にさらに塩を塗るようなことになったりするんですね。特に性的虐待なんかというのは、本当にこれは親子再統合が難しい事案ですよ。

 いろいろな事案がある中で、同じことを何回も何回も繰り返し言わなきゃいけないということにならないように、この親権停止の期間をどう定めるかという工夫というのをしていただきたいと思って伺っているんですが、大臣、いかがですか。

江田国務大臣 御指摘は示唆に富んでおると思います。

 これは、最高裁の方でお答えいただけるのかどうかわかりませんが、私の感じでは、児童相談所が家裁の手続に参加をしていただいてというのが今の委員の問題提起かと思いますけれども、それも可能かもしれませんが、家裁の調査官がいますから、調査官はいろいろなことを調べることができる能力もありますし、権限もありますし、その調査官が、これまでの児童虐待の経過などについてきっちりと児童相談所その他から調査をして報告書にまとめて、そして家裁の手続の中にそれを生かしていくということが十分考えられるのではないかと、ちょっと法務大臣としては言い過ぎなのでございますが、そんなような感じがしております。

馳委員 大臣がそんなような感じをおっしゃいましたが、豊澤さん、いかがですか。多分これは大臣の経験からおっしゃったので、感じじゃないと私は思うんです。そういう流れで審判がされる、そして家裁の調査官と児相の職員の方々と十分連携がとれておるから、同じことを根掘り葉掘り子供や親に何回も言わせたり聞いたりすることのないようにできるんじゃないですか。いかがですか。

豊澤最高裁判所長官代理者 今のように、親子間の問題があるという比較的初期の段階から児童相談所の方がかかわりを持っていて、一時保護なりあるいは施設入所なり、そんなプロセスを踏んだ上で親権停止の審判の申し立てがなされる。この場合、申し立て権者は、親族の場合もありましょうが、今のようなケースでございますれば、児童相談所長からの申し立てというふうなこともあろうかと思います。

 いずれにいたしましても、児童相談所長からの申し立てがされるということでありますれば、それまでのかかわりの中で、児童相談所の方で蓄積されたさまざまな情報であるとか資料であるとか、そういったものを家庭裁判所の方に提出をしていただいて、それらを踏まえて、さらに必要な調査なりを加えて判断する、こういう流れになろうかというふうに思います。

 以上です。

馳委員 これは新しいシステム、制度ですよね。親権停止の期間を設定される。された方の親の立場になって考えるべきだと私は思っているんですよ。もちろん、子供の立場に立って私たちはこのシステムをつくったんですが、親の立場に立ってみたら、半年なのか一年なのか、本当に半年か一年たってちゃんと親権を回復してくれるんだろうか、そのために自分は何をしなければいけないんだろうか、私はそこまでの配慮が家裁にも必要なんだろうなと思うんです。そのときの必要な情報を集める努力をしていただければ結構なんですよ。以上です。

 次に、親権停止期間が経過すると、新たな停止の申し立てがなければ自動的に親権は復活しますが、どうして更新制度としなかったのですか。お伺いします。

江田国務大臣 停止期間満了して、何もなければ復活するということになりますが、復活が必ずしも妥当でない場合もあって、その場合には更新ということも制度としてはあり得ることでございます。

 ただ、更新の場合に、どういう更新がいいのかというのがいろいろと場合があって、それよりもむしろ、ちゃんとそこで一度チェックをするには再度の申し立てをしていただく。やはり自動更新というわけにもいきませんし、そうすると、どこかでだれかがアクションを起こすということになれば、更新というよりも、やはり再度の申し立てでもう一度ちゃんと調査をしてみる、その上で審判をするということの方がいいのではないかという判断から、更新制度ではなくて、ただ、これは、二年たったらもう後はできませんということじゃないですから、さらに申し立てをしていただくという制度にしたわけでございます。

馳委員 はい、わかりました。これはスタートした運用も含めて、やはり今後の課題だと思いますので、大臣の御説明でよくわかりました。

 次に参りますが、再度の親権停止の申し立てがあって、いまだ親権者の行状に変化がないときには、基本的には親権停止となるんですか、喪失という形になるんでしょうか。いかがでしょうか。

江田国務大臣 これは個々の事案ごとにさまざまだと思いますけれども、最初の停止のときと同じ事情であれば、それは喪失というところまではいかないということですから、しかし同じ事情でやはり停止が必要だという場合ですから、その場合は同じように停止になるということだと思います。

 ただ、あくまで個別の事案によるので、そこは個々の判断が必要だと思います。

馳委員 医療ネグレクトの場合に、緊急を要することがほとんどですが、どういう迅速な手続をとって親権停止まで進めていかれますか。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 現行法の扱いをまず申し上げますと、議員御案内のとおり、親権喪失の宣告を本案事案とした審判前の保全処分として、家庭裁判所が親権者の職務執行を停止した上で職務代行者を選任し、そして職務代行者が治療に同意する、こういう運用がなされている、大変込み入っているわけでございます。

 今回、児童福祉法の改正の中で、ある規定を設けております。その規定におきましては、児童相談所長は、一時保護を加えた児童の生命または身体の安全を確保するため緊急の必要があると認めるときは、その親権者等の意に反しても、当該児童の福祉のため必要な措置をとることができるとしているところでございます。

 したがいまして、緊急に手術等の治療の必要があるような場合におきましては、これは家庭裁判所での手続を経ることなく、児童相談所長が一時保護を加えた上で治療に同意することができるようになると考えております。

 一方で、こうした行政的対応が難しい事案もあるわけでございまして、あるいは、そのほかにも、緊急性がない、じわじわきいてくる、そういうふうなケースもございまして、それでその親権者の同意が必要な場合に、そこにおきましては親権の停止制度、これを用いていくことになるものだと考えております。

馳委員 ちょっと意地悪な質問をしますね。三十分、一時間でできるんですか、こういった手続は。

 答弁を考えている間に先にしゃべっていますからね。

 つまり、緊急とおっしゃいましたね。まさしく、輸血が必要だ、手術をしなければならない、事故に遭ったときなんかそうじゃないですか、しかし、親権者に、親に尋ねてもだめだめの一点張りと。本当に緊急を要する場合に、先ほど石井さんがおっしゃったような手続は、三十分、一時間でもできるということでいいんですねという確認です。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 まさにその緊急時で、瞬時の判断が必要な場合にこの規定が生きてくると思っております。

 例えば、親権者は反対しないとしても、なかなか連絡がとれない、だけれども、その場合に早く手術をしなきゃいけない、こういう場合にもこういう規定は威力を持ってくるというふうに考えております。

馳委員 それで、後から親から訴えを起こされても対応できますね。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 今回、明文規定が設けられることになれば、これは十分できるというふうに思っております。

馳委員 私は、大変重要な答弁だったと思います。

 親権停止の申し立ては、子供本人も申し立てできるようになりますが、その後の親子再統合のことを考えると、子供本人と親権者とを仲介したり子供の相談相手になったりする公的な支援体制は不可欠と思いますが、いかがでしょうか。

石井政府参考人 今回の改正案におきましては、親権の停止申し立ての請求権者に子供は加えられておりますけれども、基本的には、子供がそういったような状態に追い込まれることがないように、子の親族や児童相談所長等が親権停止の申し立てを行うべきとの考えで法制審議会の考えも一致していたところでございます。

 ただ、実際に子供がどうしてもそういうことが必要なケースがあるというのも事実でございまして、そのためにこういう規定を設けようということでございますので、結局、可能な限り児童相談所がかかわるべきでありますけれども、仮に今回の法律が成立した場合には、改めて児童相談所がサポートをするんだということについて周知を図りまして、適切に子供のサポートあるいは親子関係の調整など対応していく必要があると思っております。

馳委員 これは石井さん、私は児童相談所の司法的なバックアップ体制を十分とっておいた方がいいと思うんですよ。

 今現在、児童相談所は顧問弁護士とか顧問司法書士とか、いますか。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 まさにこうした場面が必要だということもありまして、弁護士などを雇い上げができるような補助制度というのを設けているところでございます。

馳委員 顧問弁護士というのはそんなにお金がかかるんですか。児童相談所に司法上のバックアップ体制をとっておくためにも、全国の児童相談所は、全部で幾つあるか私は存じておりませんが、こういう法的なバックアップ体制は公的な支援も含めてとっておく必要があると、大臣、思いませんか。

江田国務大臣 資格のある法律家が、すなわちこの場合は弁護士でございますが、顧問弁護士としてついて、日常的に法的サービスをいつでも提供するという体制を整えるというのはいろいろな場面で大切で、例えば企業など顧問弁護士を雇っている企業はたくさんございますし、また自治体でもございます。児童相談所の場合にも、今政府参考人の説明のとおり、そうしたことができるということになって、私はこれは大切なことだと思っております。

 その費用というのは、これはその弁護士と児相との顧問契約で決まっていくことでございまして、私も幾らがいいのかというのはよくわかりませんが、適切な費用でお雇いになったらいかがかと思います。

馳委員 お雇いになったらいいかと思いますという答弁はだめなんですよ。

 私は、これは今後、この親権の一時・一部停止制度を民法に、何十年ぶりかの改正で、親権の概念まで広げていくというふうな話でありますから、児童相談所に対する司法的なバックアップ体制、支援体制というのは本当に重要になってくると思っているんですが、石井さん、それから続いて大臣、改めてもう一回御答弁をお願いします。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 今回、新たに親権の停止といったような請求ができる権限を児童相談所長が得ることになれば、それを必要な場面で適切に使っていくということが可能な体制をつくる、当然だと思っております。

 ただ、現時点におきましても、児童福祉法に基づきます強制入所措置の二十八条の申し立てなどは、これはまさに裁判手続が必要となるものでございまして、現在、これを児童相談所は弁護士などの協力も得ながらやっているところでございますので、これをもっと深めていくということだろうと思います。

 いずれにしましても、今回、新しい手段がつけ加わりますれば、これが適切に行使できるようにバックアップをしっかり整えていきたいと思っております。

江田国務大臣 私の方は法務省でございまして、厚労省所管のところに差し出がましいことは言いたくないという意味で先ほど申し上げたので、ぎりぎりのところを申し上げておると御理解ください。

馳委員 これは前回の児童虐待防止法の改正のときにも、つきまといとか徘回とかを制限しましたよね。ところが、やはり児相の職員さんにとっては、どこから親がやってくるかわからないような不安の中で、何かあったときに、まさしく警察の援助であったり司法的な援助というものが常に与えられて、連絡する場所があって、そしてその顧問契約について、それは適正な価格だともちろん思うんですけれども、やはり法的なバックアップがちゃんとあるんですよということの安心感というのは違うと私は思うんですね。

 ここについて、これはやはり予算化もありますから、予算化になるとこれは政治の話かもしれませんが、その必要性についての理解、これは厚労省も法務省としてもぜひ御理解をいただきたいと思いますし、弁護士さんのお仕事がちょっとふえるかもしれませんが、これはやはり頑張ってやっていただきたいなというのが私の本音なんですよ。

 もう時間になりましたので最後の質問とさせていただきますが、平成十九年の児童虐待防止法の改正において、当時、毎日新聞の一面でも紹介をいただきましたが、親責任という概念、規定を私は盛り込みをいたしました。紹介します。第四条第六項「児童の親権を行う者は、児童を心身ともに健やかに育成することについて第一義的責任を有するものであって、親権を行うに当たっては、できる限り児童の利益を尊重するよう努めなければならない。」

 今回の改正案では、この親責任規定を踏まえて民法八百二十条は改正され、「子の利益のために」という文言が追加規定されたのでしょうか。お伺いをいたします。

江田国務大臣 親権というものを子の利益のために行使しなければならない、これは現行法でもそれが理念だと考えております。しかし、民法にこれを明確に示す規定がない、そのことが国民に誤解を与えて、親権というのは親の子に対する支配権であるような誤解というものがあって児童虐待を助長する結果となっている、そういう指摘もございました。

 それで、児童虐待防止等の観点から、身上監護に関する総則的な規定と言われる八百二十条に、子の監護、教育は子の利益のために行われるということを、これは確認的ですが、しかし、やはり書くということは意味が大変大きいわけで、書くことが適当だ、こう考えてこの規定を導入したわけでございます。

 馳委員が御努力をくださって、児童虐待防止法に今お読みになったような規定が入ったことなども、民法のこの規定を明文化するということの一助になっているものと思っております。

馳委員 本当に長きにわたり、ありがとうございました。まだ積み残した質問もございますが、あしたもやらせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

奥田委員長 次に、大口善徳君。

大口委員 公明党の大口でございます。

 民法の一部を改正する法律案につきまして、御質問させていただきたいと思います。

 今回の法改正、これはやはり、児童虐待の防止を図り、児童の権利利益を擁護する観点から、親権制度に大きく切り込み、また未成年後見制度を強化する、こういう内容であって、私は評価をすべきことであると思いますし、もう十年前からこの親権の停止については叫ばれていたことでございますので、これにつきましては早期の成立ということを私どもも望みたい、こう思っております。

 また、児童相談所における児童虐待相談対応件数が平成二十一年度で四万四千二百十一件と、十年前に比べて約四倍に増加している。

 それから、最近の児童虐待の事件も非常に痛ましいものでございます。昨年の七月、大阪市で発生した、二十三歳の母親が一歳と三歳の幼児に食事を与えずマンションに置き去りにして、約一カ月にわたって遊び歩き二人を餓死させてしまった、この二人の幼児は、猛暑の中、水も食べ物もない部屋で寄り添うようにして亡くなっていたという報道がございました。そのほか、福岡県の久留米市の五歳の女の子が、母親に手足を縛られて洗濯機に入れられるなどの虐待を受けて命を奪われる、あるいは横浜市で、母親らによって一歳二カ月の女の子が木箱に閉じ込められて窒息死した例など、本当に痛ましい限りでございます。

 児童虐待防止のために、本当に国を挙げて早急の対策が必要である、こういうふうに思っております。そういう点で、この法案につきましては早期の成立ということを求めてまいりたいと思います。

 そこで、今、馳委員からもお話がございましたが、この親権についての規定、これは現行法八百二十条では、「親権を行う者は、子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。」と定めてあったわけでございます。これは、未成年の子に対する親の権利義務の総称ということでありますけれども、今回の改正案で「子の利益のために」という文言が入った。これも極めて重要なことでございます。

 この点につきまして、例えばイギリスでは、日本の親権に近い概念、親責任という概念があります。これは、親の立場にある者の責任を強調する概念と言われておりまして、我が国においても、親の意義については、親権は子の利益のために行うということを重視する観点から、親権の中核は義務である、条文上明確にすべきである、こういう意見もございます。親権の意義について検討するときに、この親権という名称そのものについても、より適切な名称に変更すべきという意見もあったわけでございます。

 こういうことについて、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

江田国務大臣 委員御指摘のとおり、現在の民法においても親権というものに義務の側面があることは、これはもう明らかで、子の利益のために行使をしなければならないというものでございます。

 そして、本法律案は、それは明らかなんですが、やはり子の監護、教育は、子の利益のために行われるべきものである、こういうことを明確にして、児童虐待の、あるいは子供の利益を害する行為が強要されないことを明確にしようということで、中身においては全く同じなんですが、親権という言葉あるいは概念のとらえ方、これについてはやはりまださまざまな御意見があったと伺っておりまして、そうした動向を踏まえながら、今後とも適切に対応していきたいと思います。

 今回は、用語としては、今まで成熟した親権という言葉をそのまま踏襲したということで、中身を明確にしたということです。

大口委員 中身を明確にしたということは非常に大事なことでございますけれども、やはりここはさらにしっかり議論をしていかなきゃいけないと思います。

 親権の制限事由についてでございますけれども、親権喪失の場合について、現行民法は、八百三十四条で、「親権を濫用し、又は著しく不行跡」と規定しているのに対し、改正案では、「虐待又は悪意の遺棄があるときその他父又は母による親権の行使が著しく困難又は不適当であることにより子の利益を著しく害するとき」とされたわけであります。

 この現行法の規定は、親に対する非難可能性を要件としていると解釈できるわけでありますが、親権を制限する場面は必ずしも親を非難できる場合に限られない。例えば親が精神疾患や人格障害、宗教上または倫理上のこだわりがあるために、親権を適切に行使し得ない場合も考えられるわけであります。親権の制限事由が、親に対する非難や帰責性の要素を排除し、親権の制限事由は子供の福祉の観点から客観的なものとして再構成すべきだ、こういう考え方もあるわけでございます。

 今回の改正案の親権制限事由、その点、どのように理解したらいいかということをお伺いしたいと思います。

江田国務大臣 現行法は、親権喪失原因を、「父又は母が、親権を濫用し、又は著しく不行跡であるとき」という規定になっていますから、これは、父または母が濫用などをしなければいけないということでございますが、しかし、これは子の利益ですから、親が悪い、親に責めるべき点があるという場合でなくても、子の利益が害される場合はこれはございます。残念ながら、例えば、親が子の、非難可能性はないけれども著しく親権行使が困難になる病気などもあるでしょうし、いろいろな場合がございます。

 そうした場合に、「父又は母による虐待又は悪意の遺棄があるときその他父又は母による親権の行使が著しく困難又は不適当であることにより子の利益を著しく害するとき」、こういう定めにして、最近、現行法でも帰責性を要件としなくていい、そういう考え方も強くなってきていますので、そうした有力説に沿って、必ずしも帰責性というものを要件にしないということにいたしました。

大口委員 そういう点では、親権の喪失の事由というものを拡大した、より発動しやすいようにした、こういう理解でよろしいですか。

江田国務大臣 「虐待又は悪意の遺棄」、これは帰責性がもちろんあるわけですけれども、そうでなくて、「著しく困難又は不適当」という場合に帰責性を要件としておりませんから、その部分では拡大したと言えると思います。

大口委員 次に、親権喪失制度というのは重い効果があるということで非常に使いにくい、そういうこともありましたろうし、また、未成年後見人という受け皿をしっかりつくらなきゃいけない、それがなかなか手当てができないという点もあったと思うんですが、そこで、使いやすい親権停止制度の導入をした、これは評価するわけでございます。

 ただ、今回、親権の一部制限という制度、これも議論されたわけでございます。やはり子供の利益の尊重の観点から、きめ細かな対応を可能にするために親権の一部に限って制限し、その一部の権限のみを第三者にゆだねることも可能にすべきではないかという親権の一部制限制度を導入する考え方が強く主張されたわけでございます。

 実際の親子の関係というのは、日常生活の場面、教育に関する場面、医療に関する場面、宗教や倫理に関する場面、さまざまな場面において問題があるわけでありまして、日常生活の場面においては親として何ら適格性に問題がない場合でも、例えば、医療の面においては親が子供の福祉を害している場合も考えられるわけでございます。そういう点で、個別的な場面における親権行使に焦点を当てて検討することが望ましいのではないか、多様で複雑な親子関係という場面では、現場が事案に応じて活用できる柔軟性に富む制度、これを構築することが必要ではないか。

 また、家裁においても、親権を全部停止するよりも、子の福祉を確保する上で必要な限度で制限を付することができれば迅速な審判を行うことが可能ではないか、こういうふうに考えるわけでございますが、この親権の一部制限制度についてどうお考えなのか、見送られた理由は何なのか、お伺いしたいと思います。

江田国務大臣 大口委員御指摘のような考え方というのは当然あると思います。親権に対する制限というのは最小限にすべきだ、そうすると、期間を区切るといっても、一律その期間についてはすべて親権を停止してしまうというのではなくて、親権の一部分を制限するというような考え方も検討されたと聞いております。

 しかし、一部を制限しても、残った部分で子の利益に反するようなことを行われるということが繰り返されるというようなこともあり、やはり制度としてはそういう制度はちょっと不十分じゃないかとか、あるいは、国家による家庭への過度の介入を招くことになるんじゃないかとか、どの部分を制限するかということをめぐっていろいろ議論が紛糾して、かえって審理が長期化するというようなことがあるのではないかなどといういろいろな意見があって、答申では一部制限制度は設けないということになったと理解をしております。

 そういう答申を受けた私どもとしては、答申の趣旨に従って今回の法律改正をまとめたということでございまして、一部の制限という考え方も魅力的な考え方ではあるということだと思っております。

大口委員 要するに、一部というとそれ以外のところで心配な部分がある。それは、その部分に入れればいいだけのことですよね。家庭裁判所できちっとこの審理をしていただくわけで、これを国家の介入というのもおかしい話だと思いますし、また、二年間なら二年間丸々停止というよりも、部分的に制限するという方がむしろ出しやすいということからいくと、今大臣のおっしゃったことは、これは大臣も本気でそういうふうに思っておられない、非常に弱々しい答弁だったと思うんですが、いかがでございますか。

江田国務大臣 私どもだけでこの法案というものをまとめていくのではなくて、いろいろな皆さんの意見をいただきながらまとめることでございまして、法制審議会児童虐待防止関連親権制度部会というところで議論をされたわけで、そこでの議論というのを今紹介させていただきましたが、結論として、こういう答申になっているので、その答申を踏まえた立法措置ということにしたということで、ぜひ御理解ください。

大口委員 引き続き今後の検討課題になると思います。

 次に、親権者の同意にかわる裁判所の許可制度というものも導入が見送りになったわけでございます。現行民法では、未成年者がみずから契約を締結する等の法律行為をするには、原則として、その法定代理人の同意を得なければならない、民法第五条ということでございますが、しかし、未成年者が法律行為をしようとしても、親がこれに協力しないケースがあることが指摘されていて、このようなケースにおいて、家庭裁判所が、未成年者の特定の法律行為について、法定代理人の同意にかわる許可を与えることができる制度を導入すべきだ、こういう意見でございます。

 この制度については、親権の停止、喪失、未成年後見人の選任という一連の手続を、大げさなものをしなくても、こういう特定の法律行為について裁判所が親権者の同意にかわる許可をするという制度で、迅速かつ簡易に対応できるのではないか、こういうふうに考えるわけでございますが、この点については、大臣の御所見はいかがでございますか。

江田国務大臣 この点も、先ほどと同様でございますが、法制審議会の部会で検討は行われました。

 しかし、この同意にかわる家庭裁判所の許可によって、親権者の意に反して何らかの法律行為が行われた場合でも、親権者が今度、法定代理人としての地位に基づいてその法律行為の趣旨に反するような行為をすることも考えられるので、同意にかわる許可だけでは、これは、未成年者を契約等に関して不安定な状態に置いて、子の利益を保護するための制度としてはどうも不十分ではないかとか、あるいは、契約の相手方も、家裁の同意は得たけれども、今度、親権者が法定代理人として別のアクションをとるというような場合に不都合を強いることもある、さらに、家庭裁判所も、ふだんから未成年者の状況等を把握しているわけではないので、個別の法律行為の当否についてまで適切に判断するのは困難というような問題が指摘をされて、答申では、この同意にかわる許可という制度は設けないということになったと承知をしております。

大口委員 これも、法律行為を許可を得てやって、それをまた取り消すような事例がどれぐらいあるのか。そこまで行くと、今度はやはり親権の停止ですとかそういう手続に進んでいくということではないかな、いろいろなツールを用意しておくということが大事じゃないかな、こういうふうに思うわけでございます。

 次に、親権停止の期間でございますけれども、今回の改正では、親権停止の制度が新設されることとなっているわけでありますが、この親権停止の期間を二年を上限とすると。親権停止の期間については、またその考え方として、原則二年とした上で、特別の事情があるときには、それを超えない程度で、ある一定の期間を決める、こういう考え方もあるわけです。

 今回の規定は、二年を超えない範囲で親権を停止する期間を定める、こういうことで、それこそ、こういう規定ですと、三カ月なのか六カ月なのか、あるいは一年なのかということであるわけですね。そういう点で、原則というのを決めるということも一つあったと思うんですね。それをしなかった理由は何なのか。

 そして、二年というのは、強制入所の期間等を参考にされて二年ということだと思いますけれども、一定の期間を区切らないで、停止の期間を家庭裁判所に個々の事案に即して判断をさせるという考え方も一方であったと思います。

 この期間の考え方についてお伺いしたいと思います。

江田国務大臣 このあたりも、本当に甲論乙駁、いろいろな議論があると思います。

 どういう制度設計についても、それに対して、いや、こういうこともあるんじゃないかとかいろいろあると思うんですが、やはり事案ごとに、その親権者の親権の行使が適切でないという場合がさまざまでございますから、期間については、家庭裁判所が事案に応じて一番妥当な決め方ができるようにするということにして、最長はやはり二年ということで制度設計をいたしました。

 こうすることによって、二年を超えるような過剰な親権の制限を避ける、あるいは、事案ごとに一番適切な期間で、それを超えて過剰な制限をすることを避ける、さらに、一定の期間をそれでも決めて、その期間こういうことを努力すればまた再統合の道が開けてくるという、ある程度両者にとっての将来の見込みも持つことができる、そのようなことを考えてこういう仕組みにしたわけでございます。

大口委員 今回、親権喪失等の申し立て権者が、子本人、未成年後見人、未成年後見監督人、これが加えられたわけでございます。

 子本人による申し立てということについては、子に申し立て権の行使を期待するのは酷であるとか、親権をめぐる係争に子が巻き込まれるとか、子の申し立てにより親権が制限された場合にその後の親子の再統合が事実上不可能になってしまうとか、あるいは、一定の年齢制限を設けるべきだ、こういういろいろな議論があったわけでございます。

 子本人の申し立て権を認める、これも、とにかく、例えば性的虐待等があってなかなか相談できない、しかし、SOSを出されて、こういう申し立てを認める。そのときは、やはり、多分代理人は、弁護士が代理人になるんでしょう。ですからそういう申し立て権を認めたわけでありますが、それが実効的に、本当に希望すれば申し立てできるような環境整備が必要だろうと思いますし、また、むしろ、児童相談所長が適切にこの申し立てをする。これまでの親権喪失制度の場合は、必ずしも積極的ではなかったわけでございますけれども、やはり、タイムリーに、そして子供の状況を見てやっていくということで、こういう環境整備、バックアップ体制、これについてどのように考えておられるのか、お伺いしたいと思います。

小宮山副大臣 今回の改正案では、委員がおっしゃいますように、親権停止申し立ての請求権者に子供が加えられておりますけれども、法制審議会の議論でも、子供をそのような状況に追い込むことにならないようにすることが重要だ、基本的には子の親族や児童相談所長等が親権停止の申し立てを行うべきという考え方で一致をしていました。

 しかしながら、今、性的虐待の問題をおっしゃいましたけれども、例えば年長の未成年者を弁護士がサポートしているようなケースでは、児童相談所に改めて相談をして申し立てをするよりも子供自身が申し立てる道を開いておいた方がよいということで、制度上、申し立て権者に子供を加えることになりました。したがいまして、このような場合を除きましては、可能な限り児童相談所がかかわるべきだと考えています。

 この法律が成立いたしました際には、改めて児童相談所の機能についての周知を図ることによりまして、審判の対応を含め、子供のサポート、親子関係の調整など、適切に対応していきたいと考えています。

大口委員 現行法では、児童福祉法の二十八条の六項で、家庭裁判所が都道府県に対して親への指導措置をとるべき旨を勧告できる、こういうふうになっているわけでございますけれども、本来指導を受けるべきは親なのに、勧告の名あて人が都道府県であるというのはいかにも迂遠だと思います。

 平成二十二年五月に行われた全国児童相談所長会の親権制度に関するアンケート調査によれば、保護者指導への司法関与の方法について、家裁が保護者に児童相談所の指導を受けるよう命ずるという意見が五五・一%であったわけでございます。この親に対する指導に司法が直接関与する制度の創設、これについてはどう考えておられますか。

小宮山副大臣 御指摘のとおり、家庭裁判所から保護者に児童相談所の指導を受けるように命ずる制度などを望む意見が児童福祉の現場からありまして、親権の在り方に関する専門委員会でも御議論をいただいたところです。

 専門委員会でも制度を求める意見があった一方で、裁判所が行政の指導に従うように保護者に命令や勧告をするということは、行政作用を裁判所が行うことになりまして、司法と行政の役割分担の中で、法律的に難しいということもありました。

 しかし、そのニーズがあるものですから、家庭裁判所が入所措置の承認にあわせて都道府県に出す保護者指導を行う旨の勧告書を、都道府県の上申を受けて家庭裁判所から親権者に送付して勧告内容を事実上伝える運用が専門委員会から提言されていまして、こうしたことをしているところも一部ございます。そのような運用が各種の会議や研修などを通じましてしっかり全国の家庭裁判所に周知されるよう、最高裁判所にもお願いをしていきたいと考えています。

大口委員 次に、今回の児童福祉法の改正で、児童を一時保護中の児童相談所長や児童等の施設入所中または受託中の施設長や里親は、児童の生命または身体の安全を保全するため緊急の必要があると認められる措置については、その親権者や未成年後見人の意に反しても行うことができることとされた。これは児童福祉法三十三条の二第四項、同四十七条第五項であります。

 他方、児童相談所長、施設長等は、その保護する児童について、監護、教育及び懲戒に関し、その児童の福祉のために必要な措置をとることができると。これが同三十三条の二の二項、同四十七条の第三項でございます。それについて、親権者や未成年後見人は不当な妨げをしてはならないとされている。これが同三十三条の二第三項、同四十七条第四項ということでございます。

 これらの条文の解釈についてのお伺いをしたいと思います。

 すなわち、児童相談所長、施設長、里親が、この三十三条の二の第四項、四十七条第五項の措置、これの反対解釈をしますと、生命身体の安全確保のために緊急性がない場合については親権者の意に反してこういう必要な措置ができないのか、反対解釈からするとこういうふうに読めるんですね。それについてどうなのか。そしてまた、こういう緊急性がない場合であっても、この三十三条の二の第二項、四十七条三項の監護、教育、懲戒に関し、その児童の福祉のために必要な措置として、親権者等の意に反しても行うことができる場合があるのか。

 そして、今回、不当な妨げをしてはならないという規定も加わったわけでありますから、それによって従来よりさらに親権者等の意に反してもできることになるのか。

 ここら辺の法解釈、条文解釈をお願いしたいと思います。

小宮山副大臣 児童相談所長などが児童等の福祉のために監護等の措置をとることができるとされますけれども、親権者の意向に配慮すべき場合もあると考えられるので、親権者が明確に異を唱えている場合に、児童相談所長等の判断を優先させてよいかどうか、これは個別の事案によって判断されるべきものだと考えています。

 その中でも、児童等の生命または身体の安全を確保するため緊急の必要がある場合については、確実に親権者の意に反して措置をとることができるということが必要であり、必要性も高いことから、今回の改正法案の中で、法文上、明確にいたしました。

 したがいまして、これ以外の事案がすべて親権者の意に反して措置をとることができないというのではなくて、やはり個別の事案によりましてそれぞれ判断されるべきものと考えています。

大口委員 ただ、生命、身体の安全を確保するため緊急性のある場合ということは明確になったわけですけれども、それ以外の場合が非常に不明確ということが言えると思うんですね。

 例えば、予防接種法の、児童の予防接種について親権者や後見人の同意を必要とするわけでございます。例えばインフルエンザとかはしか等の予防接種を受けることについて親権者が強く反対しているような場合でも、緊急性がない場合でも、今回の必要な措置として、そしてまた不当な妨げはできないというようなことによって、本当にできるということになれば、これは非常に現場も助かるわけであります。

 あるいは、旅券法で、児童がパスポートを取得するような場合、これも法定代理人の同意が必要だと。例えば、今、海外旅行も安くなっています。児童が海外に修学旅行で行く、こういう場合に、親が反対しているような場合、どうなのか。

 こういう点について今回の改正でできるようになったということになると非常にわかりやすいわけですけれども、そこら辺をお伺いしたいと思います。

小宮山副大臣 児童の監護、教育及び懲戒に関しまして、親権者の親権に優先してとることができる必要な措置かどうか。これは、一義的には施設長等が判断することになりますけれども、御指摘のとおり、あらゆる問題について個別に施設で判断するというのは混乱や負担を生じさせるおそれもございます。

 このため、施設等で児童の処遇や親権者との調整が円滑に行われるよう、厚生労働省といたしましては、児童福祉や法律等の専門家や現場の御意見も伺いながら、具体的な事案を取り上げまして、どのような主張が不当と考えられ、また優先してとることが必要な措置と考えられるか、こうしたことを示すガイドラインを作成いたしまして、周知をしっかりと図っていきたいと考えています。

大口委員 本当に現場が混乱しますので、ぜひともこれが施行されるときにはきめ細かなガイドラインをやっていただかなきゃいけませんし、できるだけ、施設長ですとか児童相談所長が実務的にやりやすいように権限を拡大する方向で、各省庁に、国交省なら国交省とか、あるいは厚労省は厚労省、まあ副大臣でございますから、拡大をしていただく形で交渉していただきたいと思うんですが、いかがでございましょうか。

小宮山副大臣 それはやはり子供の利益のために今回こういう法改正をしますので、委員がおっしゃるとおりにできるように努力をしたいと思っております。

大口委員 次に、接近禁止命令の拡大についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 現行では、接近禁止命令というのは、これは児童福祉法第二十八条の承認を得て施設入所等の措置、強制入所措置をとっており、かつ、面会、通信を全部制限する行政処分がなされている場合に限定されているわけであります。

 しかしながら、同意入所等のように、この二十八条の承認を得ない場合でありますとか、あるいは子が一時保護されているような場合、民間シェルターに入っている子供たち、ひとり暮らしをしている人、また親族等々第三者とともに生活しているような場合、実際に深刻な虐待のケースもあるわけでございます。親の不当な干渉を避けるため、強制入所の場合と同様にやはり接近禁止命令が必要ではないか、こういうふうに思うわけでございます。

 ストーカー規制法とかDV法で保護命令を認められるような場合の対処もあるわけでございますけれども、そういうことの対象とならないケースについては、やはり接近禁止命令というものを可能な範囲を拡大すべきである、こう考えますが、いかがでございましょうか。

小宮山副大臣 先日も同様な御質問をいただいたかと思うんですけれども、接近禁止命令の適用範囲の拡大につきましては、同意入所等、一時保護の場合ですとか、それらの措置がとられていない場合で、例えば自立している年長のひとり暮らしの未成年者が自分で稼いだ収入を親が無心に来るような場合、こうしたものにも対象を拡大すべきとの御意見が社会保障審議会でございました。

 現在、接近禁止命令は児童福祉法第二十八条の強制入所等の場合のみが対象ですけれども、この接近禁止命令は罰則を伴うために慎重に検討すべきとの御意見もある中で、最も接近禁止命令を発出する必要性が高いと考えられる強制入所等の場合でも命令が発出された実例が今ないわけなので、同意入所等や一時保護の場合については、まずは面会、通信制限を適切に活用することとされました。

 その上で、親が面会、通信制限に従わない場合には、強制入所等の措置に切りかえた上でさらに接近禁止命令を発出することが可能であることにつきまして、周知徹底を図るべきとされました。

 また、自立している年長のひとり暮らしの未成年者のケースにつきましては、児童虐待防止法で対応することは難しいのではないか。民法など現行の制度の枠内で、妨害排除請求権または妨害予防請求権として、面談強要禁止を求める訴え、その仮処分等で対応することが可能で、その適切な利用が可能となるよう周知徹底を図るべきである。

 このようにケースを分けて、段階を踏んでやることと、ひとり暮らしの年長者の場合と、考えていきたいというふうに思っております。

大口委員 次に、親権制限をちゅうちょする大きな理由が、受け皿となるべき未成年後見人のなり手の確保が困難であるということでございます。

 今回、未成年後見人のなり手の確保ということで、法人や複数の後見人選任が認められることとされたわけであります。その背景には、やはりこういう引き受け手不足の実態があったのでこういうふうにしたということなわけでございます。法人や複数の後見人の選任を認める改正は評価できるわけでありますけれども、この未成年後見人になりやすくするような環境整備、これをしていくことが大事であるわけでございます。

 未成年後見人の報酬については子供の財産からということですが、子供の財産がないケースもたくさんあるわけですね。それから、例えば子供がけんかをして友達を傷つけたという場合に、未成年後見人の責任という問題もございます。ですから、これは社会養護事業という観点からも、このあたりについての手当てといいますか、これを考えるべきではないかと思いますが、いかがでございましょうか。

小宮山副大臣 子供たちが退所をした後に自立していくためには、やはり身上監護と財産管理を行う未成年後見人の存在というのは大変重要だと考えております。

 今委員がおっしゃいましたようなこと、そして、あとは報酬ですとか、子供が第三者にけがを負わせたり他人のものを壊してしまい未成年後見人に損害賠償責任が生じた場合の賠償責任保険の保険料負担が必要というような意見もございます。

 今回の制度改正で、法人や複数人が未成年後見人になれることになることから、子供の権利擁護の観点から、法人等が未成年後見人となる場合にどのような支援が可能なのか、これからしっかりと、急いで検討をしてまいりたいと思っております。

大口委員 今回、後見人については複数人でできるようになったということは、大きな前進であろうと思います。そして、未成年後見監督人は、従来から複数であったということであります。

 本改正案では、未成年後見人が数人ある場合に、各後見人の権限行使は共同であることを原則としているということでございますが、一方、現行の成年後見制度では、後見人が複数あるときは各自単独行使が原則とされているということでございまして、未成年後見制度と成年後見制度で権限行使について異なっているわけであります。これについてはどういうお考えなのかということと、未成年後見監督人については、複数選任された場合、これまで各自単独行使を原則としていたものを、今回の改正案で共同行使を原則とするという形に変えました。この理由についてお伺いしたいと思います。

江田国務大臣 成年後見人の権限というのは、主として財産管理権が多いと思われるので、これは単独で行使できるとした方が法的安定性にも資するということでございまして、例外的に家庭裁判所が共同行使または分掌の定めをする。これに対して、未成年後見人の後見事務の主要な内容というのは身上監護ということで、単独でということになりますと、それぞれが違った行使をしては困るので、安定的な監護を害するおそれがある。そこで、複数の未成年後見人がいる場合には、これが協議をして慎重に行うのを原則とするということにしたわけでございまして、成年後見人と未成年後見人とは、片方は財産管理権、片方は身上監護が中心というところで権限の大きな違いがあって、その違いによって原則と例外が異なるということになったわけでございます。(大口委員「後見監督人」と呼ぶ)

 後見監督人は、未成年後見の後見監督人の重要な職務、これも、未成年後見人の身上監護に関する後見事務の監督ということでございまして、単独で行使されますと、方針が異なるという事情で、やはり監護を害するおそれがあるので、数人後見監督人がいる場合には統一を図って慎重に監督するということにいたしました。

 未成年後見監督人は一定の場合にみずから未成年後見人の後見事務を行うという場合がございまして、この場合にも子供の安定的な監護の観点から共同行使ということにいたしました。

大口委員 それでは、今回、震災孤児のことについて、最後に確認させていただきたいと思います。

 三月十一日の東日本大震災で親を失った子が、いわゆる震災孤児として、四月十八日現在、百三名の方と伺っております。震災孤児に対してこれまでどのような対応をしてこられたのか、また、今後の対応についてお伺いしたいということが一点。

 それと、震災孤児に対しては、祖父母など三親等内の親族が養育する親族里親制度を積極的に活用することによって、身近な親族に育ててもらう、心に深い傷を負った孤児のケアにつなげてもらうことが大事だと考えています。

 厚生労働省が被災自治体などを通じて把握した震災孤児のほとんどが、現在、親族のもとに預けられているということでございます。親族が里親になる場合、里親手当七万二千円、これは支給されませんけれども、孤児の一般生活費、これは月四万七千六百八十円、それから入学支度費、年四万六千円、学用品費、月四千円、学習塾費や部活動の実費支給等もあります。国や都道府県から支払われているほか、震災孤児は両親の遺族年金も受けられることになっておりまして、この親族里親制度というものを積極的に活用し、周知徹底を図っていただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。

小宮山副大臣 おっしゃいますように、震災孤児の問題につきましては、震災後すぐに、現地の児童相談所の相談員と、それから全国から来た人たちが力を合わせまして、その把握に努め、おっしゃったように、現在百三人ということです。

 やはり、心に傷を負っているので、なるべく近い人がということで、その親族里親の制度をしっかりと活用できますように、今その周知徹底を図っておりまして、親族が現在は見ているけれども、それでもやはりどうしても無理だという場合には、なるべく複数の人数で里親とかファミリーホームで受け入れてもらえるようにというふうに今しようと思っております。

 こうした親族里親につきましては、児童相談所から親族の方に説明をしっかりとすると同時に、厚生労働省が今壁新聞で生活支援ニュースというものを各避難所などに配付をしているんですが、そのようないろいろな方法をとって広報に努め、子供たちにとってより身近な人に見てもらえるように、最大限努力をしてまいりたいと思っております。

大口委員 この親族里親制度は非常に有効だ、こういうふうに思っておりまして、ぜひとも周知徹底を図っていただきたい。百三名ということでございますけれども、個別にいろいろと対応していただきたいな、こういうように思います。

 それでは、時間が来ましたので、以上で質問とさせていただきます。ありがとうございました。

奥田委員長 次に、城内実君。

城内委員 城内実でございます。

 本日は、民法等の一部を改正する法律案について質問をさせていただきたいと思います。

 現在、少子高齢化が我が日本社会において進んでおりますが、そういった観点から、ますます子は宝ということが言えるのではないかと思います。その点で、後を絶たない児童虐待は極めて残念なことであり、虐待防止に向けて、国を挙げてその撲滅に向けて努めていかなければならないと思います。

 そこで、親権の喪失かあるいは親権の存続かという厳しい二者択一ではなくて、その中間のいわゆる親権の停止という制度ができることは、私は、虐待防止と子育て環境の改善にある程度資すると認めざるを得ないと思います。また、私は、基本的に今回の民法等の改正については積極的ではないんですが、やむを得ないというふうに考えております。しかしながら、若干慎重にやはり検討すべき事柄があることも指摘させていただきたいと思います。

 私は、人権侵害救済機関の設置につきまして、この機関が民主党案では強力な権限を持つ内閣府の外局と位置づけられること、そして人権侵害の定義がそもそもあいまいであることをこれまでたびたび指摘しましたが、今回の法改正についても、恣意的かつ必要以上に親権が制限されるとすれば、それは全く本末転倒ではないかなと考える次第でございます。

 しかも、児童虐待といっても、その定義が問題でありまして、民法第八百二十二条では親の懲戒権というものを認めています。これは恐らく家庭内の常識的な体罰を含めたしつけのことではないかと私は理解しているんですが、やはり、親として子供を善導する、導くために、どうしてもやむを得ない、軽いというか、体罰というのは、これは決して児童虐待と同一視してはいけないというふうに考えております。

 また、近年では、子供に食事を与えないとか、そういう、いわゆるネグレクトというものですが、はっきり言うと、親というよりも人として最低というか、まさに人権侵害的なことが非常に横行しておりますけれども、そういった極めて極端な例と通常の体罰というものをやはりきちんと峻別する必要があるのではないかなというふうに考える次第でございます。

 そこで、大臣に質問させていただきたいんですけれども、今回の民法改正につきまして、既に述べましたように、児童虐待に対して一定の効果はあると認めざるを得ませんが、しかし、これは、私は、あくまでも対症療法にすぎない、これによって児童虐待が飛躍的に解消するとは限らないのではないかと考えます。

 その意味で、現在、児童虐待の多発しておる状況におきまして、これを根治するためには、そもそも、行き過ぎた個人主義だとか、あるいは家族のあり方をもう一度考え直すとか、あるいは親に対する教育、そして家庭での対応、こういったものを基本的に考えるべきであると考えますが、大臣の御見解をお尋ねしたいと思います。

江田国務大臣 最近、本当に目に余る児童虐待の例が数え切れない。こういうものが次々起きてきている状況に対して、一体国としてどうするのか。いや、親権というのは喪失か、あるいはあるか、どちらかだということで、後は知らぬ顔でいいのか。

 親権があるからというよりも、むしろ、もともと、親権の有無にかかわらずいろいろな虐待などは起きてきているんだと思いますけれども、しかし、やはり法的には、親の子に対する親権というものがどう行使されるべきかということがあるので、そこで法的に、親権というのは子の利益のために行うものなんですよ、これを明確にしようということが一番の今回の眼目で、今までもそうであったということなんですが、やはり書いていないとわからないということがあって書き加えた。

 そして、その場合に、子の利益のために行使されていない親権の行使の仕方が散見されるので、これは、喪失までいかなくても、停止という制度で一定の目的を達することができる場合があるということで、現状にかんがみ、このような停止制度というものを設けた。

 その場合に、親の教育、これもやはり委員言われるとおり、いろいろな意味で重要だと思いますが、民法が親の教育にかかわるわけにいきませんので、今回は親権のところだけを手当てしたということでございます。

城内委員 それでは、親権停止の期間を上限を二年といたしたわけですけれども、先ほども大臣御答弁されたように、一律二年というわけにいかない、個々の事案ごとに家庭裁判所で決めてもらう必要があるのではないか、これは全くそのとおりだと思うんですが、ただ、この上限がなぜ二年であって一年ではない、あるいは三年ではないのかということについてお尋ねしたいと思います。

原政府参考人 お答え申し上げます。

 平成十六年に児童福祉法が改正されておりますが、そのときにいわゆる強制入所等の措置の期限に上限が設けられております。措置の期限は二年を超えてはならないというふうにされたわけでございますが、これは、児童の家庭復帰に向けて保護者指導を行うとともに、安定した生活を通じて児童の心身の改善を図るためにはおおむね二年程度が一つの目安になるという関係者の意見を考慮したものであるとされております。

 今回新設いたします親権停止制度も、期限つきで親権を停止いたしまして、親子の再統合を図ろうとするものでございますので、児童福祉法における二年という、この趣旨が妥当するであろうという考え方から、本法律案では上限を二年とした次第でございます。

城内委員 私、個人的には、二年はちょっと長いんじゃないかなと。これは、運用して実際やってみないとわからないということはあると思いますが、私は、二年親権を停止するというのはちょっと行き過ぎているんじゃないかと思って、一年が妥当じゃないかというのはあくまでも個人的な見解ですが、そこら辺は運用をしてみて、実態、いろいろな個別具体的なケースを踏まえて柔軟に対応して、場合によっては、やはり二年というのは長過ぎるというのであれば、一年あるいは一年半にするというふうにしていただきたいなというふうに思います。

 さらに、民事局長さんに質問ですけれども、親権というのは、具体的にはどのような権利によって構成されているんでしょうか。私は素人でよくわからないんですが、監護権とかあるいは養育権、先ほど申しました、しつけというものだと思われる懲戒権とか、あるいは教育をする権利とかいろいろあると思うんですが、具体的にはどういった権利なんでしょうか。

原政府参考人 親権につきましては、一般的には身上監護権と財産管理権というふうに大別されるというふうに言われております。

城内委員 基本的には、親権を停止するということについて、私はこれはやむを得ないと思っているんですが、ただ、場合によっては、親権の中の一部の権利のみを停止するというようなことはできないんでしょうか。

原政府参考人 親権に対する制限は最小限にすべきであるということなどの理由から、親権の一部だけを制限する制度を設けたらいいのではないかという御意見がございまして、法制審議会におきましても、家庭裁判所の審判で親権の一部を制限する制度が検討されました。

 具体的な制度設計としましては、親権のうちのいわゆる身上監護権のみを制限する制度と、事案ごとに必要な部分を特定して親権の一部を制限する制度、こういった二つの制度について検討が行われましたが、いずれの制度につきましてもいろいろ問題があるということで、こういった親権の一部を停止する制度は設けないという答申がされ、本法案におきましても、親権の一部制限の制度は設けないということになったわけでございます。

 まず、身上監護権のみを制限する制度につきましては、親権のうちの身上監護権だけを制限いたしますと、身上監護権のみを有する未成年後見人が選任されますが、当該未成年後見人においては契約等についての法定代理権や同意権を行使することができないということになりますので、身上監護権のみを制限することでは子の安定的な監護を全うすることができないのではないか、こういう問題がまず指摘されました。

 それから、現実的に考えましても、身上監護権は適切に行使することはできないけれども、財産管理権については適切に行使することができる親権者というのは余り想定されないのではないか、こういうことも指摘されたわけでございます。

 それから、二番目の、事案ごとに必要な部分を特定して親権の一部を制限する制度につきましては、一部だけ親権制限をしますので、残りの制限されていない部分について親権者が不当な親権行使を繰り返すことが想定されます。そうしますと、その都度親権停止をかけなきゃいけないということで、これでは子供の利益を保護する制度として不十分ではないかという問題が指摘されました。

 それから、個々の行為について親権の一部停止をしていくということになりますと、これは制度設計の仕方いかんにもよりますが、国家が家庭へ過度に介入することになるおそれもある、こういう指摘がされまして、今御説明した二つの制度についてはそれぞれいろいろ問題があるということで、親権の一部停止制度は設けないということになったわけでございます。

 親権の一部制限の制度が必要ではないかということが言われた背景には、医療ネグレクトの事案、あるいは、施設入所中や里親等へ委託中の児童について親権者が不当な主張を繰り返す事案、こういうものが想定されていたわけでございますが、これらの事案につきましては、今回新設いたします親権の停止制度での対応が考えられますし、今回の法律案の中で児童福祉法の改正が行われまして、施設長等の権限と親権との関係の調整規定が置かれておりますので、この児童福祉法の規定による対応もできるということで、十分な対応ができるのではないか、こういうことも考慮されたわけでございます。

城内委員 よくわかりました。

 そこで、ちょっとこれは質問通告していなかったんですが、民事局長に質問したいんですけれども、親権の喪失等の請求権者の見直しというところですが、今までは子の親族及び検察官とされていたのが、子そのもの、そして未成年後見人及び未成年後見監督人も、親権の喪失等について家庭裁判所へ請求権を有するとされたんですが、しかし、子が請求権を有するとしたら、親子の再統合というか、親子関係が復旧不能というか、これは無理なんじゃないかなと思うんですが、その点については議論はなかったんでしょうか。

原政府参考人 委員御指摘のように、子に親権喪失等の請求権を認めることについては、親子関係がそれで悪くなってしまって、せっかくの親子再統合をねらっている趣旨も台なしになるのではないか、そういう御指摘もございました。

 ただ、こういう御心配がありましたけれども、子供自身に請求権を認めることにいたしましたのは、事案によっては子自身に請求権を認めることの方が適切かつ迅速な子の利益を保護することができるような事案も具体的にある、こういう御指摘がありましたので子の請求権を認めたわけでございますが、子の請求権を認めることによって、子供に積極的に請求をしなさいというような、そういうことを期待するわけではございません。従来どおり、子の親族や児童相談所長が適切に親権喪失等を家庭裁判所に請求していくという対応をしていくことが期待されているところでございます。

城内委員 やはり、行き過ぎた親子関係の破壊ということにならないように、実態に即して法律をぜひ運用していただきたいと思います。

 時間がないので、最後の質問を大臣にさせていただきたいんですが、先ほど懲戒権という話をいたしました。これは私はやはりしつけというふうに理解しておりまして、ある程度の、常識の範囲内での体罰というのは必要ではないかと思うんですね。実際、ある学者などが言うには、常識的な範囲の体罰を受けた者と、全く放置して一切体罰を受けずに甘やかされて育った者とでは、逆に、甘やかされて体罰を受けずに育った者が急に切れてナイフで人を刺したりとかいう例が多い。これは一つの学者の説ですから十分検討する必要はあるかとは思いますが、私は多分それが真実に近いのではないかなと思うんです。

 この点について、子供を善導するための体罰について、大臣の忌憚のないお考えをお聞きしたいと思います。

江田国務大臣 親子の関係というのは千差万別、それぞれ個別でございまして、そこを、こういう親子関係といって何かモデルを決めるとかいう、そういう性質のものではないと思っております。

 子のしつけのために一定の体罰を加える、そういう信念を持った親がいてはいけないなどということは毛頭言えないわけですし、また適切な体罰もあるいはあるかもしれません。しかし、体罰が子供を育てるというわけでなくて、やはり体罰というのは子供に一定の心の傷を負わせるものだ、そういう信念を持っている親もいる。いていけないというわけでもないし、そこはもう本当にさまざまだと思います。

 私自身も、子供をこらと言って殴ったこともありますが、後で慌てて何かおもちゃを買ってやったりしたようなこともあって、なかなか難しいもので、まあ親子の関係はそういうことを超えた関係にありたいものでございます。

城内委員 大臣のお人柄あふれる御答弁、本当にありがとうございました。

 時間がないので、これで終わります。

奥田委員長 以上で本日の質疑は終了いたしました。

 次回は、明二十日水曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時三分散会


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