衆議院

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第2号 平成23年10月25日(火曜日)

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平成二十三年十月二十五日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 小林 興起君

   理事 熊谷 貞俊君 理事 黒岩 宇洋君

   理事 階   猛君 理事 辻   惠君

   理事 樋口 俊一君 理事 稲田 朋美君

   理事 棚橋 泰文君 理事 大口 善徳君

      井戸まさえ君    石井登志郎君

      石原洋三郎君    大谷  啓君

      大西 孝典君    加藤  学君

      勝又恒一郎君    川島智太郎君

      木村たけつか君    岸本 周平君

      京野 公子君    桑原  功君

      小室 寿明君    小山 展弘君

      瑞慶覧長敏君    杉本かずみ君

      高松 和夫君    滝   実君

      橘  秀徳君    玉置 公良君

      中島 政希君    中屋 大介君

      浜本  宏君    平山 泰朗君

      藤田 大助君    三輪 信昭君

      皆吉 稲生君    河井 克行君

      北村 茂男君    柴山 昌彦君

      永岡 桂子君    平沢 勝栄君

      森  英介君    柳本 卓治君

      城内  実君    横粂 勝仁君

    …………………………………

   法務大臣         平岡 秀夫君

   総務副大臣        松崎 公昭君

   法務副大臣        滝   実君

   法務大臣政務官      谷  博之君

   最高裁判所事務総局人事局長            安浪 亮介君

   最高裁判所事務総局民事局長

   兼最高裁判所事務総局行政局長           永野 厚郎君

   最高裁判所事務総局家庭局長            豊澤 佳弘君

   政府参考人

   (法務省大臣官房訟務総括審議官)         青野 洋士君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          後藤  博君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    稲田 伸夫君

   政府参考人

   (法務省人権擁護局長)  石井 忠雄君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           金谷 裕弘君

   法務委員会専門員     岡本  修君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月二十五日

 辞任         補欠選任

  井戸まさえ君     杉本かずみ君

  大西 孝典君     石井登志郎君

  京野 公子君     高松 和夫君

  玉置 公良君     藤田 大助君

  中屋 大介君     石原洋三郎君

  北村 茂男君     永岡 桂子君

同日

 辞任         補欠選任

  石井登志郎君     木村たけつか君

  石原洋三郎君     浜本  宏君

  杉本かずみ君     瑞慶覧長敏君

  高松 和夫君     小山 展弘君

  藤田 大助君     岸本 周平君

  永岡 桂子君     北村 茂男君

同日

 辞任         補欠選任

  木村たけつか君    大西 孝典君

  岸本 周平君     玉置 公良君

  小山 展弘君     川島智太郎君

  瑞慶覧長敏君     井戸まさえ君

  浜本  宏君     中屋 大介君

同日

 辞任         補欠選任

  川島智太郎君     京野 公子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

小林委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として法務省大臣官房訟務総括審議官青野洋士君、法務省大臣官房司法法制部長後藤博君、法務省刑事局長稲田伸夫君、法務省人権擁護局長石井忠雄君、厚生労働省大臣官房審議官金谷裕弘君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小林委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局安浪人事局長、永野民事局長兼行政局長及び豊澤家庭局長からの出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定しました。

    ―――――――――――――

小林委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。階猛君。

階委員 おはようございます。民主党の階猛でございます。

 本日は、平岡法務大臣を初め政務三役の皆さん、この委員会では初の質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。先回の委員会で大臣がごあいさつされた中に、検察改革、そして法曹養成制度の検討ということがございました。きょうはその二点についてお聞かせ願えればと思っております。

 最初に、検察改革でございます。

 資料をお配りしておりますが、一枚目をごらんになってください。

 これは毎日新聞のホームページからコピーをしたものでございますが、「郵便不正事件 国賠三千七百七十万円認める 村木元局長請求」という見出しになっております。国家賠償請求ということで、村木さんが無罪になった判決について、国の側で不当な逮捕や起訴、公判立証を行ったことで精神的苦痛を受けたということで四千百万円の賠償を求めた、そのうち、三千七百七十万円については全く事実関係の認否もしないまま国側が認諾したということで、私は、この請求の認諾というのは余り例がないことではないかと思っております。

 そこで、まず事務方で結構なんですが、冤罪の被害者が国賠請求した事案と、当該事案のうち、国が請求の全部ないし一部を認諾した事案、過去十年でそれぞれ何件ずつあるか、端的にお答えください。

青野政府参考人 それでは、お答えいたします。

 過去十年間に、無罪判決を受けた刑事被告人が検察官の公訴提起が違法であるとして国家賠償法一条一項に基づき国に対し損害賠償を請求した訴訟の件数については、統計をとっていないため確認することができません。

 しかし、保存期間内にある事件記録及び現在進行中の事件記録を取り急ぎ調査したところ、平成二十年一月以降に判決が確定した事件、これは十二件あります。そして、現在係属中の事件が十五件あります。

 次に、無罪判決を受けた元刑事被告人が検察官の公訴提起が違法であるとして国家賠償法一条一項に基づき国に対し損害賠償を請求する訴訟において、国が請求の全部ないし一部を認諾した事案は、元厚生労働省局長の村木氏が提訴していた事案を除いては把握しておりません。

 以上です。

階委員 やはり極めて異例、過去には把握している限りではゼロだということでございました。

 そこで、お聞かせ願いたいと思います。

 村木事件でのこの国賠請求に対し、訴状に記載された事実関係の認否を留保したままで請求を認諾したのはなぜなのか、この点についてお答えください。

平岡国務大臣 お答えいたします。

 本件については、主任検事が刑事事件の重要な証拠であるフロッピーディスクを改ざんする行為に及ぶという重大な犯罪行為が行われたということでございまして、このような本件事件の特殊性にかんがみて認諾をしたということでございます。

 なお、委員も御案内だと思いますけれども、民事訴訟法上の取り扱いとしては、請求の趣旨に対する認諾は、損害賠償義務の存在を認めるものであって、請求原因として主張された個々の違法原因を認めるものとはされていないということでございます。

階委員 おかしいと思うのは、フロッピーディスクの改ざんという特殊事情があったから請求を認諾するというのであれば、そもそも刑事事件のときにフロッピーディスク改ざんはわかっていたわけですよ。その刑事裁判は最後まで係属して被告人の立場に村木さんを置きながら、何で国賠請求だけは認諾して、その事実関係をうやむやにしたまま終わらせるのか、ここは理解できないんですよ。

 今の説明では納得できないので、本当にそれでいいんですか。

平岡国務大臣 刑事事件の方は、確かにフロッピーディスクの改ざんという事実関係というのは判明したわけでありますけれども、他のいろいろな証拠等に照らしてみて、訴追を続けていくということについての正当性というものは検察当局でも考えたというふうに報告を受けているところでございます。

階委員 余り納得できる答弁ではございませんでしたが、とにもかくにも、この三千八百万円近くの金額、既に払ったというふうにもお聞きしておりますけれども、この金額は税金の中から、国民の血税の中から払われるわけです。

 一方で、国賠法の一条二項で、行為者に故意または重過失があれば、その賠償額については行為者に対して求償、すなわち、あなたが支払えということを要求できるということが定められております。

 今回の場合、刑事裁判で、国側は、検察側は、前田元検事や大坪元特捜部長、それに佐賀副部長らに、故意犯だということで訴追しているわけでございますから、当然求償権は行使されるという理解でよろしいかどうか、確認までにお聞かせ願います。

平岡国務大臣 本件については、委員が御指摘されたように、国賠法の一条の第二項で「求償権を有する。」ということが書いてある規定があるわけでありますけれども、我々としては、この要件に該当するか検討した上で適切に対処してまいりたいと考えています。

階委員 またあいまいなお話だったと思うんですが、故意犯だということで訴追しているわけですから、故意があるというのが国の立場なわけですよ。だったらば、一条二項の要件は当然満たすと思います。

 そういう前提でお聞きしますけれども、仮に求償権を行使するとしても、先ほど申し上げたように、請求は認諾しております。国側が争うことなく、その請求部分について。

 実は、請求は二つといいますか、請求原因は二つあって、一方の部分については全額を認諾したということなのですが、事実関係を争わないで認諾したということになりますと、当然、求償される側が納得できないということで求償額を争うということはあり得るわけでございます。三千八百万円近くの求償を受けたときに、いやいや、私はそんなに求償される筋合いではないというふうになると思うんですが、果たして、請求認諾の場合でも全額求償できるというふうに考えていらっしゃるのかどうか、この点についてお聞かせ願います。

青野政府参考人 お答えいたします。

 まず、一般的に申し上げれば、国家賠償訴訟において、その請求を国が認諾し、認諾額を支払った場合は、国家賠償法一条二項により、違法を犯した公務員に故意または重大な過失があったときは、国はその公務員に対して求償することができることとなっております。(階委員「だから、それはわかっています。結論を言ってください」と呼ぶ)それは、求償額の中身が違法を犯した公務員の違法行為との関係でいわゆる相当因果関係があるという判断を最終的には裁判所はされるということになると思いますが、まずは国側の請求としては、認諾した額がまさに相当因果関係がある損害だ、損害というか求償額の対象だということで請求するというのが一般的な対応だろうと考えております。

階委員 少なくとも、この血税から払った三千八百万円、これは国民には何ら責任はないのに払ったお金でございます、検察の失態で払ったお金でございますから、しっかりこれは取り戻していただきたいと思っております。

 それから、この訴訟で、この新聞の記事にも書いていますけれども、原告の村木さんは、早期賠償よりも事案の真相解明を求めていたはずです。そして村木さんは、実は刑事司法制度改革を目指す法制審議会の委員を務めていて、まさに検察に対して物を申す立場です。そうした方に訴訟で争わないでお金をばんと払ってしまうと、言葉は悪いですけれども、あたかもお金でもって口封じをしたというふうにも世の中から受けとめられかねないと思っております。

 そういったことを踏まえますと、大臣はこの間、検察改革ということを言っておられますけれども、果たして検察改革に本気で取り組む意思があるのかどうか疑わしいというふうに推認されると思います。この点について、私は問題だと思いますが、大臣の見解をお願いします。

平岡国務大臣 村木さんについては、国家賠償請求訴訟の帰趨にかかわらず、法制審議会の新時代の刑事司法制度特別部会の委員という立場でしっかりと経験とかあるいは見識に基づいた御意見を述べていただけるというふうに思っております。

 なお、委員が指摘された事案の真相解明というような点について言えば、御案内のように、昨年の十二月の二十四日に最高検察庁の方で検証結果報告書というものを出しております。その中で、今回のこの事案についてどういうことが問題であったのかというところについては指摘もされているところでございまして、我々としては、その検証結果を踏まえ、さらには、先ほど言いました新時代の刑事司法制度特別部会で行われる議論というものも踏まえて、検察改革ということについて取り組んでまいりたい、このように思っております。

階委員 ぜひ、検察改革に消極的だというふうな見方がされないように、しっかり村木さんの事案についても真相解明をし、検察改革に取り組んでいただきたいと思います。

 そこで、村木事件とはちょっと離れますけれども、実はその後も特捜部の失態がありまして、先月、粉飾決算の事件で日債銀の役員さんに対する無罪判決が確定したというのがありました。私は日債銀ではなく長銀という銀行の出身なんですが、その逆転無罪、最高裁で判決が出たのが二〇〇八年の七月です。それ以降、毎年のように、東京、名古屋、大阪の各特捜部で無罪判決が相次いでいます。

 七月に特捜部の改革案が公表されて、独自捜査の部隊を縮小するというようなことが出ておりますけれども、私はそれでは中途半端だと思っていまして、たしか検事総長も検討するとおっしゃっていた、起訴権限を分離する、特捜部の案件については特捜部が捜査して起訴するのではなくて別の担当が起訴する、あるいは、我々民主党の方でも提案しております、検察直受事件の可視化を試行ではなくしっかり法制度化する、こういった抜本的改革をしない限りは、失態は続く、そして特捜部というのは廃止に追い込まれる、それは当然の流れではないかと思うわけです。

 この点についていかがでしょうか。

平岡国務大臣 検察改革の中で、特捜部のあり方というものについても我々としてはこれまでも重大な関心を持って検討もしてきているところでございますけれども、委員が御指摘の、まず捜査権限と起訴権限の分離の問題について言えば、検察の在り方検討会議の議論においても、一部の委員から委員と同様の御指摘もあったということでございます。

 この点に関して言えば、起訴に責任を負いつつ捜査を行うことの重要性を指摘する意見もございまして、最終的には、議論の結果として、公判部に総括審査検察官制度というものを設けまして、特捜部の捜査に対する横からのチェックをしっかりと行っていくということにしたところであり、その運用に十全を期していくべきだというふうに考えているところでございます。

 もう一つの、検察官直受事件における被疑者取り調べの可視化の問題については、現在、取り調べの可視化の導入も含めて、法制審議会の中で新たな刑事司法制度の構築について審議が行われているということで、委員も御案内のように、特捜部等の独自捜査事件について実施している全過程を含めた被疑者取り調べの録音、録画の試行というものが今行われておりまして、この検証結果を踏まえて法制審議会における実証的かつ総合的な審議検討を行ってもらいたいというふうに考えております。私自身も、取り調べの可視化についてはぜひ進めていかなければならない課題であるというふうに考えておりますので、しっかりと取り組んでいきたいというふうに思っております。

 その上で、特捜部のあり方については、やはり、ある意味では自白、取り調べ中心の捜査であったような問題点、あるいは横からのチェックがなかったような点、そういうこともいろいろ踏まえて、捜査能力の向上、あるいはチェック機能の強化というものを図っていくということで、今いろいろな対応を図ってもらっているというところでございます。

階委員 平岡大臣は人権派というふうによく言われますけれども、特捜部が過去にどれだけ人権を侵害してきたか。冤罪を生み出し、私の尊敬する銀行の先輩は、特捜部の取り調べを苦にして自殺もされました。そういうことも踏まえて、特捜部の改革には全力で取り組んでいただきたいと思っております。

 検察の関係、最後に、九月の末に公表された「検察の理念」という二枚紙がありますけれども、これについてお尋ねします。

 この「検察の理念」では、一枚目に前文みたいなものがありまして、二枚目に、済みません、資料はお配りしておりません、私の手元にあるものをちょっと見ておりますけれども、二枚紙で、二枚目の方に十項目の遵守事項といいますか、書かれております。問題は、この遵守事項に違反した場合にどういった効果が生じるのか。

 例えば、四番目には「被疑者・被告人等の主張に耳を傾け、積極・消極を問わず十分な証拠の収集・把握に努め、冷静かつ多角的にその評価を行う。」とか、五番目としては、「取調べにおいては、供述の任意性の確保その他必要な配慮をして、真実の供述が得られるよう努める。」。また、七番目は、「関係者の名誉を不当に害し、あるいは、捜査・公判の遂行に支障を及ぼすことのないよう、証拠・情報を適正に管理するとともに、秘密を厳格に保持する。」等々あるわけです。これに違反した場合の効果を端的にお願いします。

平岡国務大臣 違反した事実関係、態様等にもよろうかと思いますけれども、今委員が読み上げられたものの中にも、例えば「秘密を厳格に保持する。」というようなところが仮に違反されているということになれば、それは守秘義務等の問題もあるというふうにも思います。物によっては、懲戒処分の中で、国家公務員法八十二条各号に掲げられた懲戒処分の事由に当たる場合には、その処分の対象になり得るかというふうに思いますけれども、この「検察の理念」そのものは、一般的な検察の精神、そして基本姿勢を示すもので、具体的な行為規範を定めているものではないというふうに承知をしているところでございます。

階委員 やはり、抽象的な理念というか、遵守されない場合の効果がはっきりしないようなもので果たして実効性が上がるのかどうか、それは疑問があります。ぜひ、これにとどまらず、しっかりと検察が行動を改めるような、そういう制度をつくっていただきたいと思っておりまして、この「検察の理念」というものについては、私もこれからちゃんと検証して、果たしてこれでいいのかどうか、もっとやるべきことがあるのではないか、識者の方には法制度化すべきという話も出ておりますので、その点も踏まえて、また意見を申し上げたいと思います。

 もう一点の法曹養成制度に話を進めます。

 資料の二枚目、資料の二を見ていただきたいんですが、「法曹養成制度についての問題」という見出しがついております。これは、私が総務省の政務官で行政評価局というところを担当していたときに、法科大学院の評価に関する研究会というのを立ち上げて、そこでまとめた平成二十二年十二月のものです。

 丸が三つほどあって、問題点を指摘しております。「法曹人口の拡大を目指すとしているが、法曹志願者は大幅に減少。また、司法試験合格者数年間三千人目標は未達成」。二つ目の丸として、「法科大学院修了者の相当程度(例えば約七〜八割)が新司法試験に合格するよう努めるとしているが、毎年の合格率は減少傾向で平成二十二年は二五・四%、また、修了者の累積合格率は」云々かんぬん。さらに三つ目として、「多様な人材を多数法曹に受け入れる(法科大学院入学者の三割以上)としているが、平成二十二年(度)の法学部以外の学部出身者の割合は、法科大学院入学者の二一・一%、新司法試験合格者の一九・〇%」というのがその当時のまとめでございました。

 そこで、次のページ、また同じような紙をカラーでつけておりますけれども、一年たってこの数字がどう変わってきたのかということで、わかりやすいように新しい数値を赤で記しております。数字を一々申し上げませんが、前年よりもさらに数値は悪化しておりまして、問題は深まる一方、こういうことでございます。

 今、給費制か貸与制かという議論が大詰めを迎えているということでございますけれども、法曹養成制度全体が抱えるさまざまな問題の中では、どちらかというと枝葉にすぎないと私は思っています。

 まず第一として、年間三千人目標、このペーパーにもありますように、未達成どころか、まだ二千人程度です。その二千人でも、弁護士の未登録者が、昨年であれば二百人も出ている。二回試験に受かって、弁護士になろうと思えばすぐにでもなれるのに、就職ができない、仕事がないので未登録だというのが当時二百人ぐらいいた。その後、減ってきているかもしれませんけれども。

 そういうことを考えれば、三千人という数字はもう実現不可能だ、その目標を目指すべきでもないというふうに思っています。閣議決定は早急に取り消して、現実的な目標に改めるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

平岡国務大臣 委員の御指摘になっている事実関係というのは、我々も、今の法曹養成制度において、進めようとしていた当時に比べてみるとちょっと状況が違ってきているという問題として、これはどう受けとめたらいいのかということを真剣に考えなければいけない問題だというふうに思っています。

 昨年の十月でしたか、例の給費制、貸与制の問題をめぐっていろいろな御議論があったというふうに承知しておりますけれども、その際、衆議院の法務委員会でも、修習資金のあり方についての検討を早急に行うべしということとあわせて、法曹養成制度の全体の問題についても検討すべしというような決議がされているわけでございます。

 その決議を受けた形で、現在、法務省、ある意味では中心となっておりますけれども、形の上では内閣官房、総務省、財務省、文部科学省、そして経済産業省と共同して法曹の養成に関するフォーラムというものを開催しておりまして、そこでさまざまな議論をしていただくということになっているわけでございます。

 第一次取りまとめというのが八月に出て、その修習資金のあり方についての考え方をお示ししていただいたということでございますけれども、その取りまとめの後の課題として、まさに委員が御指摘になったさまざまな問題点、課題についても、これから鋭意取り組んでいくというようなことで進めていくというふうに我々としても考えているところでございます。

階委員 問題は見直しのスピードで、先ほど申し上げたように、この一年間でもさらに問題は深まっているということですから、早急にやらなくてはいけないと思います。

 二つ目の問題として指摘したいのは、いわゆる三振制、ロースクール卒業後、五年間で三回受験に失敗すれば受験資格を失うという問題ですが、三振制で受験資格を失ったロースクール卒業生の処遇という問題です。

 七、八割合格というはずだったのが、平成十八年度修了者が結局五割の方しか合格せず、残り五割は失権するということが、今回の平成二十三年の試験をもって確定しました。五割の方、人数でいうと二千二百二十七人です。ほかの年度も合わせると、既に四千二百四十九人の方が失権しております。受験資格を失っております。

 そこで提案ですが、三振制は速やかになくすか、あるいは予備試験の口述試験だけ受かれば新司法試験を受けられるようにする、そういった早急な手当てが必要だと思いますが、その点いかがでしょうか。

平岡国務大臣 答弁をする前に、先ほど、昨年の十月だったかというふうに申し上げましたけれども、十一月の二十四日の決議ということでございましたので、ちょっと訂正をさせていただきたいというふうに思います。

 それで、今御質問のあった件でございますけれども、旧司法試験の仕組みから新しい司法試験の仕組みに変わったということの考え方については、もう既に委員が十分御案内のとおりだというふうに思います。

 三振制の話について言えば、もともとの経緯が、司法制度改革審議会の意見の中で、三回程度の受験回数制限を課すべきであるということで、三年間三回というのを念頭に置いていたわけですけれども、例えば病気で受験できなかったというようなケースも考えると、五年間で三回というふうに、そっちの方を、期間を延ばしたわけですね。そういうことをすると、今度は逆にまた、ことし受けるべきだろうかどうだろうかというふうな問題も生じたりとか、別の問題も生じてきているということでありますので、我々としても、この問題については、そういう問題が生じてきているということを踏まえた対応を、これもまたフォーラムの中でも議論していただきたいというふうに思っております。

 それともう一つ、予備試験の関係で、法科大学院卒業生については口述試験だけ受ければいいようにすべきじゃないかという御提案でございますけれども、今私たちの考えている話としては、先ほど言われていたように、もう受験ができなくなって、大学院修了生としての受験ができなくなった場合でも、当然、予備試験を経て試験に臨んでいただくということは可能でありますけれども、その時点、そのときの考え方としては、その試験の時点において法科大学院の修了者と同程度の能力を有するかどうかを判定するために行っているという位置づけになっているということでございます。そういう意味で、修了したから口述試験だけでいいのかという点については、我々としては、もう少し検討しなければいけない話じゃないかというふうに思います。

 その点も含めて、フォーラムの中でも検討してもらいたいというふうに考えているところです。

階委員 今、失権して苦しんでいる人が四千二百四十九人いるということをしっかり認識した上で、早急に手当てをしてください。

 最後に、多様な人材の受け入れが果たされていないのではないか。法学部以外の方や社会人の志願者、合格者が激減している傾向があります。これに歯どめをかけなくてはなりません。

 社会人が職についたまま通えるロースクール、大宮の夜間部というのがありまして、私の銀行時代の後輩が、大変優秀な人材ですが、そこに通って仕事をしながら合格しました。しかし、その人に話を聞きますと、未修者がロースクール三年で合格レベルに達するのはほとんど困難だし、社会人が仕事をしながらロースクールに通って最終合格をするのは難しいので、大抵の人はみんな途中で仕事をやめるんだ、こういうお話でした。

 一方で、ではロースクールに通わずに司法試験に受かれるかというと、予備試験というのも大変狭き門だということが今回、資料の四につけておりますけれども、予備試験の結果、論文試験まで終わったところですけれども、明らかになっております。実際に受験した六千四百七十七人のうち、論文試験まで受かったのはわずか百二十三人、合格率でいいますと一・九%にしかすぎません。これでは、昔の司法試験よりも仕事を持って受験をするということが難しくなっています。

 私が思いますに、多様な人材に法曹になってもらいたいというのであれば、ロースクール卒業を受験要件としないで、予備試験の合格者をもっとふやすべきではないかと思います。この点についていかがでしょうか。

平岡国務大臣 先ほどちょっと冒頭申し上げましたけれども、昔の司法試験の問題点というものがあったわけでございまして、その問題を克服するために、新しい司法試験と法科大学院制度あるいは司法修習というものが組み合わさってできているのが現在の仕組みということでございます。予備試験について改善を加える場合には、そういう全体的な見直しの仕組みの中でどう位置づけるかという、まさに全体的な問題として取り上げなければならないというふうにも思います。

 そういう意味で、繰り返しになりますけれども、現在つくられている法曹の養成に関するフォーラムの中でも、この問題もしっかりと検討していただきたいというふうに考えております。

階委員 党の中でも、この問題、しっかり検討して皆様に提言していきますので、真摯に受けとめていただければと思います。

 きょうはありがとうございました。

小林委員長 次に、大口善徳君。

大口委員 おはようございます。

 平岡大臣とは法務委員会で、私どもその当時は与党でございまして、平岡野党筆頭理事のために最大限協力をさせていただきました。今度は逆になったわけでございますけれども、この法務委員会の運営につきましても、野党の、この委員会、また時間の要求については最大限御協力いただきたい、こういうふうに思っておるところでございます。

 さて、まず、大臣がかわるたびに、私ども、この取り調べの録音、録画、可視化についてお伺いをさせていただいております。

 平岡大臣、このことについても記者会見等でも積極的に発言をされております。目指すべきところは全過程であり全事件だ、こういうふうに九月二日、初登庁の記者会見でおっしゃっております。そしてまた、これは産経新聞の九月十五日付に出ておりました。そこで、「冤罪の可能性をできるだけなくすという意味において、全事件、全過程の実施が理想。その上で、こういうものは外すべきだという形で、消去法で減らしていく考え方が望ましい。できるだけ早く実現したい」、こういうふうに述べておられます。

 この取り調べの可視化についての大臣のお考え、そして現在試行している裁判員裁判対象事件をそれ以外の事件に拡大することについてお伺いしたいと思います。

 ちなみに、私ども、知的障害によりコミュニケーション能力の問題がある被疑者の取り調べの録音、録画については、これは九月二十日付で、十月一日から取り調べの全過程を含む広範囲な録音、録画を行うなど、さまざまな試行を実施する、全庁でやる、これは評価をしたいと思います。

 では、よろしくお願いします。

平岡国務大臣 この法務委員会での審議は、私も本当に国会議員としての活動の中で大きなウエートを占めていた委員会でございますので、ぜひ積極的な議論をしていくということに協力したいというふうに思いますけれども、基本的には、委員会の運営ということでございますので、委員会の理事会等で運営についてはまずお決めいただくのが筋ではないかなというふうには思います。

 その上で、今委員御指摘の取り調べの可視化の問題についてでありますけれども、私が記者会見あるいはインタビューに答えた気持ちというものは、まさに大口委員が紹介していただいたものということでございます。

 ただ、この問題についても、今までの法務省の中での検討、あるいは現在は法制審議会にもかかっているという状況にある中で、着実に進めていこうということが法務省で行われているということでございますので、私としても、その作業というものをしっかりとやっていただく、スピード感を持ってやっていただくということが大事だというふうに思っておりますので、ぜひ法制審議会においても、あるいは検察当局においても、そういう気持ちを持って取り組んでいただきたいというふうに思います。

 試行の拡大という点についてもちょっとお話がございましたけれども、これまでも江田前法務大臣のときにも、委員が御指摘になった知的障害によるコミュニケーション能力に問題がある被疑者についての拡大ということもやってまいりましたけれども、裁判員制度対象事件についても、自白事件だけじゃなくて、否認事件等も含めてその対象範囲を拡大するというようなこともしてきているというふうに承知をしているところでございます。

 この検証というのは、一年後をめどとしてその結果が公表されるということを目標としておるところでございますので、その状況を見ながら的確に判断していってほしいというふうに思っているところでございます。

大口委員 新聞記事や記者会見では、かなり明確に消去法だというような形でおっしゃったのですけれども、委員会で全然、抽象的なことに終始されている。これは国会軽視じゃないですか。やはりもっと明確に、産経新聞の記事のとおりだとおっしゃっていただきたいと思います。

平岡国務大臣 そこは私の気持ちを申し上げたことで、その気持ちは変わっているわけではございません。

 ただ、今も答弁申し上げたように、今現在、法務省の中で、あるいは法制審議会の中でずっと積み重ねでやってきているという事実関係というものも、これは尊重しなければいけないというふうに思っています。ただ、その事実関係を踏まえてどういう結論を出していくのかというときには、私が申し上げたような考え方をぜひ尊重してやっていただきたいというふうに思っています。

大口委員 消去法という考え方を尊重してもらいたいという答弁があったと思います。

 法制審議会で議論されていても、大臣は大臣として発言されればいいんですよ。それを採用するかどうかは法制審議会の委員が考えることでありますから、積極的にこの委員会で発言をしていただきたい、こういうふうに思います。

 次に、少年事件については、もう少年法の改正で大臣とはいろいろやらせていただきました。検察の在り方検討会議の提言でも、「少年を被疑者とする事件についても、事案に応じて、検察の運用により、被疑者取調べの録音・録画の試行の対象とするべきであるとの意見もあり、今後の課題として、少年事件における成人の刑事事件との手続の相違等をも踏まえつつ、検討されることが望ましい。」こういうふうになっているわけであります。

 これについて平岡大臣は、平成十九年三月二十八日に、少年事件の取り調べの可視化について、当委員会の少年法改正の質疑で発言されています。

 その発言内容は、「少年に対する取り調べの問題として指摘されている話としては、二〇〇〇年にフランスの刑事訴訟法の改正では、少年に対する取り調べをビデオ録画するということが法制化されているようであります」飛びまして、「とりわけ少年についてもこの必要性というのは高いのではないか。」「少年の場合には、いろいろと大人に誘導されて、あるいは大人の言うことを聞かなければいけないという、そっちに迎合するという意識、そういうものが一般的にあるというふうに言われているわけでありますから、そういう必要性が高いのではないかというふうに思うんです。」と。少年に対する取り調べの可視化をすべきという発言であります。

 ぜひ、少年を被疑者とする刑事事件も可視化の試行の対象に加えるべきではないか、全過程を含めてそういう形にすべきではないかと思いますが、いかがでございますか。

平岡国務大臣 今委員御指摘の意見は、私も一度質問したことがございますし、検察の在り方検討会議においても、一部の委員の中から出されているというふうに承知しております。まさに、その意見というものについてもしっかりと検討してほしいというふうに私は思っています。

 ただ、少年事件の取り扱いと一般の刑事事件の取り扱いというものが違っているということも事実でありますので、その辺の違いをどう評価するのかという問題はあろうかというふうに思いますけれども、現在、検察当局においていろいろな取り調べの録音、録画を行っているものについて言えば、特に少年の場合を排除してやっているということではなくて、少年であったとしても、それが裁判員裁判対象事件であるとか、特捜部の独自捜査事件であるとか、あるいは知的障害によりコミュニケーション能力に問題がある被疑者等に係る事件であるとか、そういうものに少年が含まれている場合でも、当然対象になるということでございます。そういう意味では、ある程度の経験というものが生まれて、また検証できるのではないかというふうにも思っております。

 いずれにしても、法制審議会においては、いかなる事件を対象事件とするかを含めて取り調べの可視化の具体的な制度設計については審議をされるということになっておりますので、我々としても、私としても、そういう場面で少年事件の取り扱いについてどう考えるのか、むしろ取り上げるべき方向で検討すべきではないかということについては、私なりの考え方としてメッセージを発していきたいというふうに思います。

小林委員長 なお、携帯電話等は音が出ないように気をつけてください。

大口委員 大臣、何のために法務大臣になったのか。やはり、これまでの主張を実現するためですから、リーダーシップを発揮していただかなきゃいけないですね。ちょっと歯切れが悪いですよ。いつも歯切れがよかった平岡大臣が、どうなっているんですか、きょうの答弁は。そう思いますね。

 次に、これも産経新聞の九月十五日のインタビュー記事で、新たな捜査手法の導入が可視化実現の前提条件ではない、可視化すると司法取引やおとり捜査をしないと社会の安定が保てないという議論があるが、必ずしもそうかなと思う、こう発言されています。

 江田前法務大臣も、新たな捜査手法とセットでなければ可視化は導入できないという立場に立っていないと答弁しているわけでありますが、今、法制審議会特別部会でこの件については議論されています。そして、警察庁出身の委員もいらっしゃいます。この件について御答弁いただきたいと思います。

平岡国務大臣 現在、法制審議会に諮問している中身といいますか、審議していただきたい事項ということで伝えられています内容は、取り調べ及び供述調書に過度に依存した捜査、公判のあり方の見直し、そして、被疑者の取り調べ状況を録音、録画の方法により記録する制度の導入という形で諮問がされているわけでございます。

 委員の御指摘の、新たな捜査手法の導入が必ずしも可視化実現の前提条件となるものではないと私も考えておりますけれども、法制審議会においては、時代に即した新たな刑事司法制度のあり方を構築するためにどのようなものが必要になってくるかについて、幅広い視点から十分な調査審議を尽くしていただくということが必要であるというふうに思っています。

 特に、今、警察庁、国家公安委員会の方でこういう問題についても取り組んでいるというふうにも聞いておりますので、そちらの方の検討状況というものもしっかりと踏まえなければいけないというふうに思いますけれども、繰り返しになりますけれども、新たな捜査手法の導入が必ずしも可視化実現の前提条件となるものではないというふうに私は考えております。

大口委員 次に、少し前、交際している女性が交際相手の男性のスマートフォンにアプリをインストールしますと、GPSによる位置情報などが交際している女性に送信されるというカレログというアプリが話題になっております。GPSによる位置情報というのはピンポイントなんですね。これが他人に知られることについての国民の関心が高まっているということでございます。

 本年八月二日から三十一日まで、電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン及び解説の改正案に対する意見募集がなされました。ここで、このガイドラインの二十六条に新たに三項を付加して、当該位置情報が取得されていることを利用者が知ることができるときであって、裁判官の発付した令状に従うときに限り、電気通信事業者がGPSによる位置情報を取得することを認めるもので、そのようにして取得した情報は捜査機関に提供されることが予定されているようだが、まだこれについては改正はされていないようでございます。

 従来、携帯電話については、携帯電話会社が保有する基地局による位置情報というものがありました。それを捜査当局が、裁判官が発する検証許可状によって取得してきた。従来の基地局による位置情報は、都市部で半径約五百メートルの範囲にその携帯電話があるということしかわからないということに対して、GPSによる位置情報というのは、多少の誤差はありますけれども、ほぼピンポイントでその携帯電話の場所を特定できるということのようであります。

 この意見募集は大臣が総務副大臣の当時になされたものであって、その内容について十分御存じと思うわけです。

 今回、このガイドラインの改正をすることになったわけでありますが、携帯電話のGPS機能を利用して、GPSによる位置情報を捜査機関が裁判官の発する令状によって取得することができるようにするための改正であると考えてよろしいでしょうか。

平岡国務大臣 何のための改正かという点については、当時は警察庁と総務省との間でやりとりされていた話なのでちょっと定かな記憶はないわけでありますけれども、そのときの私が受けた説明は、現在の刑事訴訟法に基づいてもできる話だという法解釈というものがあって、その上でどういうふうに運用していくということが望まれるのか、必要なのかというような視点で議論をさせていただいたという経緯がありました。

 委員が御指摘ありましたように、今回のこのガイドラインの改正では、裁判官が発付した令状に従うということに加えて、利用者が知ることができるという要件が加わっているということでありますけれども、まさに、全く本人が知らないままにそういった情報がとられるということについて、私が個人的にというか総務副大臣として、それは非常に問題があるということなので、この要件をやはり加えなければいけないんじゃないかというような指摘に基づいてこのガイドラインがつくられ、そしてパブリックコメントに付されたというふうに記憶をしておるところでございます。

大口委員 きょうは松崎総務副大臣にも来ていただきました。

 今回の二十六条の三項で、当該位置情報が取得されることを利用者が知ることができるときであって、裁判官の発した令状に従うときに限り、当該位置情報を取得するものとする、こうなっているわけでありますけれども、この当該位置情報が取得されることを利用者が知ることができるときであってという要件について、現在は、携帯電話の仕様では、携帯電話会社がGPSによる位置情報を取得する際には、携帯電話の端末の画面にその旨表示がされることになっている、そういうことを指していると考えられます。

 将来、携帯電話の仕様が変更されて、GPSによる位置情報が取得される際に、携帯電話の端末の画面にその旨表示がされないような仕様に変更になったような場合は、この要件を満たさないということで、検証の許可状があってもこの携帯電話はGPSによる位置情報を取得することはできなくなる、こういうふうに考えてよろしいですか。

松崎副大臣 おはようございます。副大臣の松崎でございます。

 大口先生にお答えをいたします。

 今回のガイドラインの改正では、電気通信事業者が捜査機関からの要請によりGPS位置情報を取得する場合において、裁判官が発付した令状に従うときという要件とともに、利用者が知ることができるという要件も規定をしております。これは、位置情報がプライバシー保護の観点から非常に重要なものである、そしてまた、その利用に当たっては端末の所有者が認識できるようにする必要があると考えられるためであります。

 現在の仕組みにおいては、GPS位置情報を取得する際にはその旨の表示がなされております。今後、仮に携帯電話の仕様の変更等により表示がされなくなる場合があれば、今回の改正が利用者が知ることができるときを要件としている趣旨にかんがみまして、別途検討を要するものと認識をしております。

 以上であります。

大口委員 では、副大臣、御退席ください。

 法務大臣、刑事訴訟法上問題がないということでございますけれども、この点につきまして、日弁連は、ことしの八月二十六日の意見書の中で、公道上の位置だけでなく、被疑者の私有地の中や、被疑者が現に居住する建物の中にいたとしても、その位置情報が克明に明らかになるという点では、憲法十三条、三十五条、国際人権規約十七条が保障するプライバシーを侵害するものである。

 GPSによる位置情報を取得するための要件としては、刑訴法二百十八条一項の一般的な要件に従うことになるけれども、これは余りにも無限定である、捜査機関によってGPSによる位置情報が容易に取得されて監視されてしまうようなことになれば、市民のプライバシーが侵害されるという重大な事態が発生するおそれが否定できないということで、そのような事態となることを防止するために、GPSによる位置探索のための検証につき、被疑事件の重大性、その携帯電話の所持者が被疑事件を犯したことを疑うに足りる相当な理由の存在、GPSの位置情報を取得しなければ捜査の目的が達成できないという補充性、実施後に本人に告知されるべきことなど、この捜査手法の濫用の歯どめとなるべき要件について、ちゃんと国会において国民的議論をして慎重に検討された上で、刑事訴訟法上、新たな強制処分として明確に規定される必要があるのではないか。

 GPSによる位置探索とその情報の携帯電話会社からの捜査機関への提供という新たな捜査手法の導入というのは、総務省のガイドラインや解説の改正だけではやるべきじゃない。

 こういう趣旨のことを言っているわけでございますが、この点について、大臣は、新たな捜査手法だということで、GPSによる位置情報の取得について、一般の検証の要件としてより厳格な要件を定める刑事訴訟法の改正についてどう考えるのか、お伺いしたいと思います。

平岡国務大臣 刑事訴訟法の二百十八条の解釈として今回のケースをちょっと当てはめてみますと、携帯電話端末から携帯電話会社のコンピューターシステムにもたらされる当該位置情報を五官の作用により認識するものということであって、その性質は現行法、刑事訴訟法第二百十八条の検証に当たるということなので、裁判官の発する検証許可状により行うことができるというふうに私も説明は受けております。

 ただ、しかしながら、委員が御指摘のように、この問題について言えば、いろいろな問題があることも事実だというふうに私は思います。

 例えていいのかどうかわかりませんけれども、通信傍受の法律がございますけれども、その通信傍受についても、あの法律ができる前には裁判官の令状があれば実施できるんだというような考え方もあったというふうに聞いております。ただ、やはり事の重要性にかんがみれば、別途の法律をしっかりと手当てする、その過程の中で国民的な議論をするという過程を経て成立したのが通信傍受法だというふうに思います。まさにそれと似たような話として、こういう位置情報を自分が知らないときに取得するというような事態に至るときには、もっとしっかりと国民的な議論が行われてしかるべきではないかというふうに私は思います。

 そういう意味で、刑事訴訟法の改正なりあるいは新たな立法なりということの必要性については、やはり慎重に議論をしていってほしいというふうに思っています。

大口委員 今、ガイドライン及び解説の改正はまだ実際には発動されていないわけですけれども、今の大臣の意見というものはしっかり総務大臣にもお示しいただきたい、こういうふうに思います。

 次に、検察改革についてお伺いしたいと思います。

 一連の大阪地検特捜部の証拠改ざん事件がございました。それで、いろいろと検察も、また法務省も大臣以下対応されているわけであります。

 そういう中で、九月二十八日に最高検が、これはようやくですよ、ようやく、十項目から成る基本規程「検察の理念」、これを制定したわけであります。

 これは、その前に、三月三十一日の検察の在り方検討会議の提言で、九項目にわたってこの趣旨が書かれているわけです。この検察の在り方検討会議では、基本規程の中核的な事項及びこの具体化としての九項目は、主体が、「検察官の使命は、」とか「検察官は、」ということで、検察官が主語になっているわけです。

 当然、私ども、この「検察の理念」についても、主体を明確にすべきであるな、こういうふうに考えていたわけでありますけれども、今回のこの十項目の遵守事項を含めたものについて、この「検察の理念」では、検察の職員が規程の検討主体になっていて、検察官という文言が全くない。それぞれの項目には主語もない。人を守るべき主体は検察官の職員全体であるのか、一般の公務員以上に高い倫理性、廉潔性が求められる検察官個々人なのか、不明確ではないかと思うわけです。

 また、この検察の在り方検討会議の提言では、「検察官は、被告人の利益に十分配慮し、法令の定め・判例とそれらの趣旨に従い、誠実に証拠を開示するべきであることなどを盛り込むことが考えられる。」ということで、証拠を開示すべきことが書かれているわけですが、「検察の理念」では、この検察官の手持ち証拠の開示について触れられていない。今回の証拠の扱いが、偽造されたフロッピーディスク等の問題があったわけでございますし、この証拠の開示について触れられていないのはなぜなのか、お伺いしたいと思います。

平岡国務大臣 幾つか御質問をいただきましたけれども、まず、「検察の理念」の中で検察の職員が規程の検討対象になっているという点についてでありますけれども、検察官が検察の業務において中心的役割を果たすということは、まさに委員が御指摘のとおりでありますけれども、当然、検察権の適正な行使を行うに当たっては、検察官はもとより、検察事務官もその重要な役割を担っているということでございますし、検察官と検察事務官が一体となって改革に取り組むべきであるということで、検察の職員全体としたということだというふうに承知しております。

 しかしながら、検察の職員として最も主体的かつ中心的に行動しなければならない検察官がこの「検察の理念」の精神を忠実に実践していくことは当然であるというふうに考えているところでございますので、御理解を賜りたいというふうに思います。

 なお、この点については、検察の在り方検討会議の提言の中でも、主体は検察官だけでなく検察事務官を含める趣旨で検察とすべきという意見が相当数あったというような経緯もあったということでございます。

 それから、次に御質問のあった検察官の手持ち証拠の開示について触れられていないという点についてですけれども、実は私も、最初にこの「検察の理念」の案といいますか、これから検察庁としてこれを決めていこうというときに見せていただきました。そのときに、委員が持たれた疑問とまさに同じような疑問を持ちましたので、その点についてもどう考えるべきなのかということについて説明を求め、そして私なりに整理をさせていただいたということでございます。

 この「検察の理念」について言えば、先ほどもちょっとありましたように、検察官の個別の訴訟行為について具体的な行為規範を定めたものではありませんけれども、証拠開示については、被疑者と弁護人との関係に配慮し、法令の定めに従って証拠開示を行うことを含む趣旨で、法令を遵守しという言葉、文言、公正誠実に職務を行うという文言、裁判官及び弁護人の果たすべき役割を十分理解しつつという文言、あるいは職責を果たすという文言の中で、証拠開示を含む弁護人への対応等が適切なものとなるようにする趣旨が盛り込まれているものであるというふうに理解がされているということでございます。

 また、適切な証拠開示への対応の前提となる消極証拠を含む十分な証拠の収集、把握という事柄もこの理念の中に盛り込まれていることでありまして、総合的に言えば、手持ち証拠の開示についてもそういう規定の中で対応されているというふうに理解しているところでございます。

大口委員 大臣も、これは抜けているな、こう思われているわけですよね。

 やはり証拠の開示というのは、これまでの立法等によってできるだけやっていると検察は言うわけですが、弁護士の皆さんに聞いてみると、皆、不十分であると。これから、供述調書に頼らない捜査、そして、裁判員裁判制度等もあって、公判による供述も重視する、そして客観的な証拠をしっかり重視していく、こういうことでありますので、そういうところがないがしろにされていたから、今回、こういう不祥事が生じたわけであります。

 そういう点では、この証拠の開示というのは極めて重要であって、このことは、証拠の扱いも含めて大事にしていかなきゃいけないことではないかな。そういう点で、追加して入れるべきではないかと思いますが、いかがですか。

平岡国務大臣 先ほどのちょっと訂正ですけれども、検察官だけでなく検察事務官も含める趣旨で検察とすべきという意見、検察の在り方検討会議の中でというふうに申し上げましたけれども、これは検察庁の中での意見としてそういうものがあったということでございます。

 今御質問があった件について言えば、証拠開示に関する法律上の制度がどうなっているかということをまず申し上げれば、刑訴法の中で、検察官請求証拠、類型証拠、主張関連証拠についての開示要件が定められておりまして、弁護人に不服があれば裁判所に裁定請求を行うことも可能な仕組みになっているということでございます。さらに、聞きますれば、実務上は検察官は法律の要件に該当しない場合でも柔軟に証拠開示に応じているということでございます。

 そうした法律上の制度の中で証拠開示というものがしっかりと位置づけられているということでありますので、先ほどの私の説明の中にありましたように、法令を遵守していくあるいは職責を果たしていくということでこの証拠の問題についてもカバーがされているというふうに理解をしているところです。

大口委員 納得できないですね。こういうところに本当にリーダーシップを発揮していただきたいと思うんですよ。そこが平岡大臣たるあれじゃないですか。これまでの人権派としての面目躍如をするところじゃないですか。ですから、全くどうなってしまったのかなと思うんですね。今、非常に歯切れの悪い、私が法務省から説明を受けたそのとおりのことを答弁されていますので、非常に残念でなりません。

 次に、国選付添人制度の拡充でございます。

 現行の国選付添人制度につきましては、少年事件について導入が、二〇〇七年十一月一日施行されました。これにつきましても、いろいろと法務委員会でも議論をさせていただいて、懐かしく思っているところであります。

 私どもはその当時与党であったわけでございますけれども、そういう点では、これは私どもにも十分検討しなきゃならなかったという面はあったと思うんですが、対象事件の範囲が狭過ぎる。殺人、傷害致死、強盗罪等の重大事件で、かつ、家庭裁判所の裁量的な選任である。それから、検察官が関与する事件、被害者が傍聴する事件、こういうものになっていますので、非常に対象が狭いということで、選任数が、二〇〇九年、五百十六人、二〇一〇年、三百四十二人。少年鑑別所収容少年の二〇〇九年は四・六%、二〇一〇年は三・二%ということでございます。

 そしてまた、二〇〇九年五月二十一日に被疑者国選弁護制度の対象事件が必要的弁護事件に拡大したわけであります。ところが、国選付添人制度の対象事件は拡大されなかったということで、被疑者段階では国選弁護人制度により弁護士の援助を受けられる少年の大多数が、家庭裁判所送致後、国選付添人制度による援助を受けられず、弁護士費用が負担できなくて弁護士付添人を選任できない事態に至っているわけでございます。

 そういう点で、成人の刑事事件の被告人はほぼ一〇〇%に弁護士が選任されているのに比べますと、少年審判を受ける少年の弁護士付添人選任率は低いということで、二〇〇九年、四九・五%ですから、これは少年鑑別所に送致された少年についてでございますけれども、そのうちの弁護士付添人選任少年の割合でありますが、二〇〇九年、四九・五%、二〇一〇年、六二%という状況で、日弁連も、少年保護事件付添援助の制度、少年当番弁護士制度、これを実施しているわけでございます。

 国選付添人制度の対象事件を少なくとも少年鑑別所での身柄拘束を受けたすべての少年に拡大する必要がある、こういうふうに考えます。平岡法務大臣は、これまで少年の権利の保障についてとても熱心に活動されておりまして、法務委員会でも少年法改正等で大変そういう点では強力に政策を推進された方でございますので、この国選付添人制度の対象事件を少なくとも少年鑑別所での身柄拘束を受けたすべての少年に拡大するということについて、前向きな答弁をお伺いしたいと思います。

平岡国務大臣 大口委員が与党の時代にもいろいろ問題提起をされておられて、私が当時野党の一員として主張していたことにも御理解を示していただいていたということで、大変心強く思っております。

 今の問題について言えば、私もこの法務省の中で、なぜここは抜けているのかということについての説明もしっかり受けました。制度的に矛盾はないんだと。確かにそうかもしれません。

 ただ、私自身が思うのは、制度に矛盾はなくても、やはり実際の動きを見たときには、被疑者段階のときはついているけれども、そうでなくなったときになくなってしまうというのはやはり実務的にも問題があるんじゃないだろうか、この点についてはしっかりと検討してほしいということで、実はこれは予算を伴う話でございますので、そして法律改正を伴う話でございますので、ちょっと時間的にはすぐというわけにはいきませんけれども、そういう問題意識を持ってこれから法務省の中でしっかりと取り組んでいくように、リーダーシップというほどのことではないかもしれませんけれども、私なりの姿勢を示していきたいというふうに考えているところでございます。

大口委員 来年の通常国会には法案を出されるんですか。

平岡国務大臣 いや、それはちょっといろいろとありますので、まだ難しいというふうに思います。

大口委員 そこで、せっかく前向きの答弁のようであったんですが、来年の通常国会に間に合うかどうか難しい、こうおっしゃっているわけですけれども、これは、やはり少年の人権がかかっていることですね。大臣がこの少年の人権について、本当に私ども、痛いほどそういう熱意を、大臣が野党時代、法務委員会の筆頭理事のときに感じておったわけであります。

 ですから、この問題は、もちろん予算を伴うものでありますけれども、大臣のこれまでの少年の人権に対する姿勢からいきますと、やはりおくれればそれだけ少年の人権が今、日々ある意味では侵害をされているという部分もあるわけでありますから、これは待ったなしじゃないでしょうか。そこは、やはり平岡法務大臣が法務大臣となったときの、ここが変わった、こういうふうに迅速にされたということの私は大きなメルクマールになるんじゃないかな、こう思うわけですよ。

 今、一年で法務大臣がころころかわるんですよ。だから、来年の通常国会で約束できないということになると、結局またどうなるかわからない。やはり今、大臣として就任された以上は、これについては絶対やるということをはっきり表明していただきたいと私は思うんです。いかがでございましょう。

平岡国務大臣 私が来年の通常国会は難しいなと思ったのは、まさに委員が言われたように、予算を伴うものであるということでありますけれども、もう一つの背景としては、弁護士会の方で、すべてがカバーできているとは私も申し上げませんけれども、かなりの程度カバーできているというような事実関係の問題、これを含めて私なりにいつごろになるだろうかということを考えさせていただいたということでございます。

 できる限り前広にというか、私なりにスピード感を持ってできるように努力してまいりたいというふうに思います。

大口委員 これは、弁護士会も十億ぐらい負担をしているわけですが、本来国がやるべきことですよ。よくお考えになっていただきたいと思います。

 それから、法曹養成制度のあり方につきましては、階議員からも質問がございました。司法制度改革推進計画において、平成二十二年ごろに司法試験の合格者数を年間三千人程度とすることを目指すこととされたということであるわけでございます。

 これについては、本当に今いろいろな問題が提起をされているわけですね。法曹の質の低下が取りざたされ、法曹有資格者の就職難という問題が生じているということから、この法曹人口の増加目標の見直し、つまり、司法試験の合格者数を減らすべきだ、こういう意見もあるわけです。

 他方では、法曹の増員の見直しを行うことは、国民があまねく司法サービスを受けられるようにするという司法制度改革の目標を放棄することであり、懸命に勉学に励んでいる全国の法科大学院生を裏切り、現場に無用の混乱をもたらし、多様な人材が法曹の道を選ぼうとする意欲を減殺するものである、こういう指摘もあるわけでございます。

 いずれにしましても、法曹の質もまた量も適正に保たれるような状況が望ましいと思うわけでありますけれども、やはり今その新たな法曹制度全体が悪循環に陥りつつある、こういう指摘もされているということでございます。原因がどこにあるのか、そしてどのように対処をするつもりであるのか。これは閣議決定で三千人と決まっているわけでありますけれども、フォーラムにその議論をゆだねるということではなくて、ゆだねていることではあるけれども、大臣としての基本的なお考えをお伺いしたいと思います。

平岡国務大臣 まさに、大口委員が御指摘になったような問題点が指摘されているということだと私も承知しております。

 今お話がありました法曹養成に関するフォーラムでも、そういう問題意識を持って検討を進めていただいているというふうに思いますし、既に昨年の七月に、法務省、文部科学省合同で開催いたしました法曹養成制度に関する検討ワーキングチームにおいても、いろいろな問題点が指摘をされているということでございます。

 その問題点が発生している原因は何なのかということを、これは私たちも法務省内でもいろいろと議論をしているところでございます。

 ある意味では個人的な意見にすぎない段階かもしれませんけれども、私自身は、やはり、当時司法制度改革をやろうとしていたときに予定していた法曹に対するニーズというものがなかなかふえてこないというところが一番の問題の根幹ではないだろうかという意見を出しました。

 そうしたら、また別の方は、いや、そうではなくて、やはり、法曹資格を持った人の処遇といいますか待遇というものが余りにもよ過ぎて、みんなが使おうとしない、使えないというところにまた根源があるんじゃないかというような意見もありました。

 事さように、根源にさかのぼっていくと、本当にどこにたどり着くのか、またぐるぐる回ってしまうんじゃないか、そういう点もあろうかというふうに思います。

 そういう法曹のニーズが高まっていないこと、そして、そのためにせっかく法曹資格を得ても仕事が十分にない、それを見たら法曹になるということについて意欲を失ってしまう、そのことによって今度は優秀な人が来ない、そのことによってまた合格者が減ってくる。いろいろなことが絡み合って発生している問題だろうというふうに思いますので、やはり総合的にこの点については、今現在はフォーラムで検討していただいておりますけれども、そういう場を通じてしっかりと原因そして対応策についても議論していただきたいと思いますし、我々もその場には法務副大臣あるいは関係する各省庁の副大臣、大臣政務官というものも参加しておりますので、しっかりと問題提起、そして検討していただきたいというふうに思っています。

大口委員 そのほか、ことしから予備試験が始まった。予備試験と、それから新しい法曹養成制度の法科大学院を中核としたプロセスとしての法曹養成の理念との関係がどうなのか。

 あるいは、司法試験の回数制限の見直し、階議員からもありましたけれども、三振制。これも、七、八割合格という時代であったわけですが、二三・五%ですね。ですから、このあたりも見直しを図っていかなきゃならない。

 法科大学院につきましても、ことしの、二十三年度の二三・五%の合格率ということでありますけれども、七十四の法科大学院のうち、修了者の合格率が一けたの法科大学院が二十七、ゼロの法科大学院も一つあるということでございますので、本当に法科大学院のあり方、また受験の方に偏っている、こういうこともありますので、法曹養成についてはさまざまな見直しをしていかなければならない、こう思うわけでございます。

 そういう点で、今、法曹養成に関するフォーラムで議論されているんですが、八月三十一日、法曹養成に関するフォーラムの第一次取りまとめを行ったわけであります。司法修習生の経済的支援について、貸与制を基本とした上で、十分な資力を有しない者に対する負担軽減措置として、最長五年の返還猶予期間を設ける等の措置が提案されたわけであります。

 この給費制から貸与制への移行に対しては、多くの法曹志望者が法科大学院在学時に多額の借金を負っている現状にあることからも、法科大学院生への経済的支援の充実がなされることなく司法修習生への給費制が廃止されるならば経済的な事情から法曹志望者がさらに減少する、こういう指摘もあるわけでございます。

 本年五月にこのフォーラムの開催が決定されて八月末に第一次取りまとめと、極めて短期間で検討がされ、法曹養成制度全体の、今いろいろ申し上げましたが、その議論が不十分なまま給費制を打ち切り、貸与制とする結論を出すというのは、非常に性急な話ではないかなと私は思うわけでございます。

 まず、法曹養成制度の本質的な課題、すなわち法科大学院制度のあり方、そして司法試験合格率、法曹有資格者の社会進出が進んでいない現状、それに対する対策、法曹養成全般の抜本的な検証、検討が必要である。それを真剣に議論していただくということがまず最初だろう。どうも議論が、貸与制か給費制かというところで第一次取りまとめが行われていることをおかしいなと思うわけですが、大臣の御所見をお願いいたします。

平岡国務大臣 今の給費制、貸与制の議論が本来の議論とは逆になっているんじゃないかという御指摘でございましたけれども、この点については、これは委員も御案内のとおりでございますけれども、昨年の十一月の二十四日、先ほど私も触れましたけれども、衆議院の法務委員会の決議というのが出ております。

 二項目に分かれていますけれども、一項目めが修習資金の問題ということで、これは、そのときでいえば翌年の十月末ということですけれども、現在でいえばことしの十月末までに「個々の司法修習終了者の経済的な状況等を勘案した措置の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずること。」というのがあり、二項目めに「法曹の養成に関する制度の在り方全体について速やかに検討を加え、その結果に基づいて順次必要な措置を講ずること。」こういうふうになっています。

 まさに、政府の方ではこの御要請に基づいて検討してきたということでございます。五月になってしまったのは東日本大震災の影響等もあったというふうに聞いておりますけれども、非常に短期間になってしまったということ、それはある意味ではそういう御指摘もあろうかとは思いますけれども、先ほど申し上げた法務委員会の決議というものを我々としてもできる限り尊重して取り組んだ結果として、今回、給費制の問題についての考え方を、この第一次取りまとめに基づいて、政府としては法案を提出したいというふうに考えてきているところでございます。

 そのときの経緯からいえば、給費制を打ち切るという表現を委員が使われましたけれども、こう言ってはなんですけれども、司法制度改革をやったときに既に給費制を貸与制に変えていくということが法律的にも成り立っており、その施行が既に去年来ていたということで、一時それをストップして、一年間の検討期間というもので、先ほど申し上げたように、個々の司法修習終了者の経済的な状況等を勘案した措置のあり方ということを踏まえて検討しようということだったというふうに考えております。

 ただ、そうはいいましても、委員が御指摘になっている話、つまり、法曹養成全体の問題をしっかりと議論しなければいけないという問題については、私も共通の認識を持っているところでございます。現在、その問題については、法曹の養成に関するフォーラムをしっかりと運用する中で検討していっていただきたいというふうに思っておりますので、フォーラムに法務省含めて関係する省庁も参加するとともに、有識者の皆さん方の御意見もしっかりと賜ってまいりたいというふうに考えているところでございます。

大口委員 東日本大震災、三・一一だったわけですが、本来、昨年こういう法務委員会等の附帯決議が決まったわけでありますから、それから直ちに本当は発足すべきだったんですよ。だから、本当に意図的なものを感じます。

 それはそれとしまして、次に、第百七十七通常国会で、三・一一の東日本大震災の被災された方々の生活再建策の一つとして、被災者生活再建支援金それから災害弔慰金、災害障害見舞金、義援金、これが差し押さえ禁止になったわけでございます。

 それで、この趣旨からいきますと、今二重ローンで苦しんでおられる方々がいらっしゃるわけです。そして、今住宅ローンを抱えた方について個人向けの私的整理ガイドライン、全銀協がそういうガイドラインを策定して、運営委員会が設置されて、そこへ持ち込むことによって、これは国も十億七千万円をかけて、派遣の弁護士等は国が持つという形でやっているわけでございます。そういう中で、手持ちの財産をどこまで確保できるのかということが問題になっておりまして、それで、破産手続とパラレルに考えているわけであります。

 そういう点で、この私的整理ガイドラインの利用件数が非常に低迷している、千件以上の照会があったけれども三十二件しか申し出がないということで、最近私ども、被災地の岩手県弁護士会、仙台弁護士会の弁護士さんたちと意見交換しました。その中で、地震保険などの生活再建に必要な資産が処分される可能性があるということが指摘されているわけです。

 この地震保険の保険金について、被災者の生活再建のために必要とするお金であるということだと思うんですが、破産手続の場合、支援金、弔慰金、見舞金、義援金と同様の扱いとすべきではないか。自由財産として認められる明確な基準というものがないと、どこまで手持ちとして手元に置いておけるのかがわからないと破産の申し立てもできない、あるいは個人向けの私的整理ガイドラインの申し出もできないということになっております。最高裁の見解をお伺いしたいと思います。

永野最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 地震保険契約の保険金請求権につきましては、性質上の差し押さえ禁止債権に当たらないというふうに考えられておりますので、今般の立法によりまして差し押さえ禁止債権とされました弔慰金、義援金等とはやはり倒産手続の中で扱いを異にするという側面はあろうかと思います。

 ただ、被災地の裁判所におきましては、今回の震災が被災者の生活基盤に対して甚大な影響を及ぼしているということ、それから破産者の個別事情を十分踏まえた上で、この地震保険の保険金につきましても、自由財産の拡張の運用について適切な対応をしているというふうに伺っております。

 基準等につきまして委員から御指摘のあったところでございますが、地震保険の給付金、これを自由財産の拡張においてどのように取り扱うかという問題につきましては、保険金が居住用建物に対するものであるかどうか、あるいは生活用動産に対するものであるかどうかといった点のみならず、やはり給付金の多寡でありますとか、あるいは破産者の震災被害の状況、それから現在の生活状況、また今後の生活見通しといったような個別の事情に応じた判断が求められるところでございますので、やはり一般的な基準を策定するということがなかなか困難な性格のものであるということは御理解いただきたいと思います。

 もっとも、被災地の裁判所におきましては、既に地震保険金についての取り扱いが問題となる事例も出てきておりますので、こういった事例の積み重ねと、それから、被災地におきましても運用事例の紹介に努めておりますので、こういったことを私的整理ガイドラインの運用においても御参考にしていただけるのではないかというふうに考えております。

大口委員 ですから、それをちゃんと、ある程度算定できるように、事例研究の結果、算定できるようにしたいんですよ。そうしないと、手元にどれだけ残るかわからないと申し立てができない可能性があるので、それを言っているんです。

 最高裁、検討してください、それは。どうですか。

永野最高裁判所長官代理者 非常に個別的な事例、事案ごとの判断になりますので、なかなか一般的な基準の策定というのは難しいだろうと思っています。そういう意味では、被災地の裁判所におきまして、今どんどん個別の事例が出てきておりますから、そういったものの事例の紹介をしていくというような形でこういう運用の参考にしていただくというような形が最もふさわしい形ではないかというふうに考えております。

大口委員 では、ホームページでそれを紹介してください。どうですか。

永野最高裁判所長官代理者 ホームページという形がどうかというのはあると思いますけれども、既に被災地の裁判所におきまして、損害保険の取り扱いについての一般的な考え方等について雑誌等に紹介したりしていることがございます。そういう意味では、個別事例といいましても、やはりこれは非訟事件でございますので、非公開であるという前提のもとでの話になってまいりますので、どのような形が適切かは別といたしまして、こういう、せっかく被災地の方で集積されております事例が何らかの形で、そういう活用に資するような形で使っていただけるというふうなことは考えてまいりたいと思っております。

大口委員 あと、今回、成年後見制度の支援信託の導入というのが始まりました。この後見制度支援信託というのは、被後見人の財産のうち、日常的な支払いをするのに十分な金銭は預貯金として後見人が管理し、日々の生活に必要な支払いを柔軟に行うようにした上で、通常使用しない部分を信託銀行に信託するという仕組みであるわけであります。

 これについて、けさもNHKで報道されていました。親族後見人等による不祥事がどの程度あるのかということについては、十八億六千万円。これは、最近十カ月、昨年六月から本年三月で十八億六千万円。百八十四件のうち、百八十二件が親族の後見人だということであります。

 それで、こういう後見制度の支援信託を導入することは私も理解をしているわけでありますけれども、やはり親族後見人の不祥事を防止するためには、成年後見制度をつかさどる家庭裁判所におけるしっかりとした後見人の選任と教育、そして充実した後見監督を行うことが第一義的に重要である、それが本来の責務である、こう考えるわけであります。

 国民のための司法制度、サービスの充実という観点から、この十年で大幅に増加している後見申し立て数に対応できる家庭裁判所の体制づくりを早急にすべきである、こう思いますが、いかがでございましょうか。

豊澤最高裁判所長官代理者 委員御指摘のとおり、成年後見関係事件の開始の申し立て件数は、ここ十年、制度開始以来、非常な勢いで増加してきております。

 裁判所におきましては、これまでも、例えば東京や大阪といった大規模の庁におきまして、成年後見関係事件の適正、迅速な処理を行うことを目的として、後見事件を専門的に取り扱う後見センターというものを設置するなど、各家庭裁判所の実情に応じた体制面の整備に努めてきております。

 また、家事事件への対応を充実強化するため、成年後見の事件におきまして、裁判官の命を受けて書類の点検を行ったり手続案内を行ったりする裁判所書記官を相当数増員するといった人的体制の整備も図ってきているところでございます。

 裁判所といたしましては、今後とも増加する成年後見事件等に適切に対応することができるよう、事件処理体制の整備、家庭裁判所の人的体制の強化に努めてまいりたいというふうに考えております。

 以上でございます。

大口委員 しっかり家庭裁判所、最高裁、対応していただきたいと思います。

 時間が来ましたので、これで終わります。ありがとうございました。

小林委員長 次に、柴山昌彦君。

柴山委員 柴山昌彦です。

 このたび、自由民主党、影の法務大臣を拝命しましたので、平岡大臣とはさまざまな議論をさせていただくことになろうかと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、米軍再編に絡み、大臣の政治姿勢についてお伺いします。

 今の政権が厚木基地からの空母艦載機五十九機の御地元岩国基地への移設を進めている理由は何でしょうか。

平岡国務大臣 米軍再編というのは、委員も御案内のとおり、抑止力の維持、そして地元負担の軽減ということであるというふうに理解しております。

 その中で、特に私なりに理解しているのは、空母艦載機が厚木にあるべきなのか岩国にあるべきなのかについて言うと、抑止力の維持という観点からするならば、私は、余り大きな違いはないのではないだろうかと。むしろ、厚木基地周辺における地元負担というものを、岩国の方が、どちらかといえば飛行場が海に面しているわけでありますから、負担が小さいというような視点で行われたのではないかというふうに私としては認識をしているところでございます。

柴山委員 余り違いはないけれども、どちらかというとと。負担の違いということで岩国基地への移設を進めているというような御説明だったかと思います。

 それで、ことし九月二十七日の衆議院予算委員会における我が党河井議員の質問に対して、大臣はこの件について、「賛成とは申し上げませんけれども、閣議で決まったことについては従っていく所存でございます。」と答弁をされました。間違いありませんか。

平岡国務大臣 一言一句は覚えておりませんけれども、たしか、委員が今御指摘になられたような趣旨のことは申し上げたというふうに記憶しております。

柴山委員 これまで大臣は、この米軍基地再編あるいは空母艦載機移転の反対派の集会に出席をされ、この問題について反対の意見を繰り返し表明されてきたというように考えておりますけれども、閣僚に入ったら、それについては閣議決定すれば従う、そういうことでよろしいのですか。

平岡国務大臣 委員も御案内だとは思いますけれども、一政治家としての発言あるいは一政党人としての発言というものと閣僚としての閣内不一致の問題等については、既に政府見解というものが出されておりまして、その政府見解によれば、閣僚の一人が一政党人、一政治家として自分の意見を述べることは、それはそれで差し支えないけれども、閣議で決定したことあるいは閣内で統一して実施することについて従うということがあくまでも前提となっての話であるというような、これも細かい表現ぶりは覚えておりませんけれども、たしか平成五年、当時の統一見解として示されているというふうに記憶しております。その範囲内で私も行動してきているつもりでございます。

柴山委員 それでは、滝法務副大臣にお伺いします。

 副大臣は、平成十七年の七月、時の小泉内閣において法務副大臣をされておりました。私が副大臣に何度か郵政民営化法案について質問をさせていただきましたね。大臣は、この法案に反対を貫かれるためにどういう行動をとられましたか。

滝副大臣 どういう行動かということでございますけれども、さかのぼれば大変長い昔にさかのぼるものですから一つ一つ覚えておりませんけれども、基本的には、郵政民営化そのものに対しては大変危惧を持っておりましたので、これを何とか郵政事業全体として立ち行くようなシステムに修正すべきだ、こういう観点から常に行動をしてまいりました。

柴山委員 平成十七年七月の四日、どういう行動をとられましたか。

滝副大臣 七月五日に衆議院の本会議でいよいよ採決がある、こういうことになりましたので、それまで、何とか郵政事業が事業として成り立つように修正をしてもらいたい、そういう行動をとってまいりましたけれども、いよいよその修正もだめになる、こういうことでございましたので、私は、七月四日の午後三時ぐらいでございますか、当時の法務大臣に法務副大臣としての辞表を提出させていただきました。

柴山委員 そうなんです。副大臣は、小林委員長と同じように、この郵政民営化法案に対して反対の意向でありました。当然のことながら、政治家としての意思とそして閣内の一員としての行動というものは別だ、平岡大臣おっしゃったとおりかもしれません。しかし、そこで滝副大臣は、南野知恵子法務大臣に対して辞表を提出されたんです。

 再度確認しますが、平岡大臣、平岡大臣は、米軍基地再編に反対して閣僚を辞任することなく、閣議決定を進める立場だということでよろしいわけですね。

平岡国務大臣 予算委員会の場でも申し上げましたけれども、今私がすべき最も重要なことは、私の地元の中にさまざまな声がある、その声をしっかりと政権、内閣に伝えることであるというふうに考えております。そういう認識のもとに、しっかりと活動してまいりたいというふうに思っております。

柴山委員 私の質問に答えていただいておりません。

 再度お伺いします。

 大臣は、米軍基地再編に反対して閣僚を辞任することなく、閣議決定を進める立場だということで間違いないわけですね。

平岡国務大臣 閣議決定を進めるというのが、私の与えられた法務大臣という職責の中で何か具体的なことがあるかどうか、私はわかりませんけれども、閣議決定されたことについては、閣僚の一員としてそれには従ってまいります。

柴山委員 いや、その閣議における決定、閣議というのは全会一致が旨とされておりますけれども、賛成の意思を表じられる、サインをされるということで間違いないですねということを申し上げているんです。

平岡国務大臣 これから行われるべき閣議決定というのがどういう内容になるかということをあらかじめ想定しての発言にはしたくないと思います。

 閣議決定をされることがあるのであれば、そのときに、どういう閣議決定であるべきかについてはしっかりと意見を述べていきたい。その結果として、閣内で、みんながこういう認識でいこうということであるならば、それはそれで私も従ってまいります。

柴山委員 今大臣がおっしゃいました、閣議の中でみずからの意見については申し上げたい、そして議論をしたい、そのかわり、議論をした結果には従う、そういうように私は受けとめさせていただきました。

 では、お伺いします。

 そのようなプロセスを経て、納得してサインをされたら、大臣は、今後大臣を退かれた後でも空母艦載機の移設に反対するのか、それとも賛成をするのか、どちらでしょうか。

平岡国務大臣 今の仮定の話は、私が大臣を退いたらということだけではなくて、民主党が、あるいは民主党政権がこれからの米軍とのかかわりをどう持っていくのかについては、その時々の国際的な情勢あるいは国内情勢によって変わってくるというふうに思いますので、内容をあらかじめこれというふうに想定して、どうするのかということについてはお答えしかねます。

柴山委員 私の質問を御理解していただいていないようなので、再度質問をさせていただきます。

 どのような閣議が行われるか、それは不明確だ、そのとおりです。私は何も、将来行われるべき閣議のプロセスを今ここで予言しろとか、どういう結論が出るかとか、そういうことを平岡大臣にお尋ねしているのではありません。私が平岡大臣にお尋ねしているのは、先ほど大臣みずからお述べになったように、閣議でみずからが参加をし議論をして決まった結論について、それに従うとおっしゃいましたけれども、その将来出た結論については、内閣を離れた後についてもその方針を堅持されるということで間違いないんですか、そういうふうにお伺いしているんです。

平岡国務大臣 質問の趣旨が私にはよく理解できないところがあるのかもしれませんけれども、閣議決定をしたときの情勢というものと、その後の時を経て起こっている状況というのは違うわけですよね。ですから、あるときにこういうふうに閣議決定しました、だからそれを未来永劫守っていかなければいけないというふうな立場には多分立たなくて、やはり閣僚として、その内閣が続いている限り、その閣議決定したことが新たに変更しない限りはそれは生きているということでいいと思いますけれども、閣僚でなくなった後にかつての閣議決定の中身に従うのかということについては、一概には私は申し上げられないというふうに思います。

柴山委員 繰り返しになりますけれども、今、平岡大臣は、閣議決定が行われ、そしてその後、閣僚の一員たる地位をやめられた後の事情の変化というものがあるだろうというようにおっしゃいました。そのとおりだと思います。事情の変化があれば、それに対して政治も動きます。

 ただ、当該時点の判断については、これに参加をし、そしてその決定に加わったということについて、それをひっくり返すというようなことを御地元でされることはいたしませんねということを私は聞いております。

平岡国務大臣 今のお話は、閣僚時代に閣議に参加して決定したことについては、閣僚でなくなっても、それを地元との関係では守っていくのかという御質問だったのかなというふうに思いますけれども、それは、先ほども申し上げたように、その時々の情勢についてはいろいろ変化がございますから、その変化を見ながら、閣議決定した当時の状況というものを踏まえて、なおかつ維持しなければならないものであれば維持していきたいと思いますし、維持するという状況ではなくなっていると思えば、それは政治家の一人として、自分の考え方を、その時点における考え方を主張していくということになろうかというふうに思います。

柴山委員 この質疑の様子は、当然のことながら議事録にしっかりと記載されるわけです。

 今、大臣は、みずからお話しになったように、閣議決定後、みずからが閣僚たる地位を離れた後、事情の変化があれば、それについては考慮するということをおっしゃいましたけれども、少なくとも、その時点において決断したことについて、その時点での判断について、御地元でこれをひっくり返して、いやいや、あのとき私は反対だったんだというようなことはおっしゃらないということを今ここで明言されたということでよろしいわけですね。

平岡国務大臣 閣議決定をする前の、閣議でのいろいろな意見交換といいますか議論の中では、閣議決定とは異なる意見を述べているかもしれません。その事実を私は否定するものではありません。

 私はこういう主張をしたけれども、閣議の中では多くの皆さんの意見がこういうことであり、私も、全体的な流れの中で、それは自分としても受け入れざるを得ないということであったというような事実関係の説明は当然あってしかるべきだというふうに思いますけれども、私が参加した閣議決定において、私はその閣議決定に反対だったというふうなことを言うということ自体は、私にはちょっと想像がつかないところでございます。

柴山委員 それは賛成をするということですよ。署名をするということは、それはいろいろと議論はあったかもしれないけれども、賛成すると。

 滝法務副大臣が辞任をされたように、政治家としての立場と閣僚としての立場は確かに一致はしません。だからこそ、滝副大臣は辞任をした。そして、小林委員長、今、後ろにいらっしゃいませんけれども城内実委員は、自民党の決定に賛成できないということで党を離れられているわけですね。私は、立場は違いますけれども、そういった滝先生、小林先生、城内先生の行動自体は敬意を持って受けとめております。

 先ほど大口委員が平岡大臣にいろいろと質疑をされて、平岡大臣は別人みたいだというふうにおっしゃったんですよ。私もそう思いますよ。

 だって、平岡大臣のこれまでのさまざまな活動や、あるいはいろいろと培ってきた政治的な実績に平岡大臣の御地元の有権者は信頼をし、そして一票を平岡大臣に投じておられると思うんですね。だけれども、立場が違って、いや、これまでは移設に反対だったんだけれども、大臣になったから進めます、あるいは、大臣じゃなくなったからまたもとに戻って反対しますということでは、有権者は一体何を信じて投票すればいいんですか。

 もう一度お答えください。

平岡国務大臣 有権者の皆さんには、私の主張なり意見なりというものは、私の責任においてしっかりと説明してまいりたいというふうに思います。

 私が別人のようだというお話がありましたけれども、別人ということではなくて、今までも、野党時代を含めていろいろなことを考えながら、そのときにおいて最も主張すべきことを主張してきたというふうに考えております。

柴山委員 それぞれの議員が地元で、私は反対だったんです、でも政府が私の言うことを聞かないんです、皆さんの思いを実現するために、私を次も、またその次も当選させていただいて、ポストにつけるようにしてください、そう言って選挙活動をされていらっしゃる方がかなり多いんじゃないかなと思うんですよ。実際、ポストにつくと、役所の決定、閣議の決定に従いますと。こういうのを詐欺というんじゃないんですか。違うんですか。

平岡国務大臣 どういうふうに呼ぶかというのは、私も、ちょっと適当な言葉が見つかりませんので、そういうふうにいうんじゃないですかと言われても、そうですと言えるような見識は持ち合わせておりません。

柴山委員 見識を持ち合わせていないということをお答えになったことに失望を感じざるを得ません。

 次の質問に移ります。

 大臣は先日の就任あいさつで、「国民が安心して生活することができるよう、社会の法的基盤を整えることが、法務省の大きな役割である」とされています。一方、いわゆる共謀罪や死刑の問題については一言の言及もありませんでした。その理由をお聞かせください。

平岡国務大臣 どの場面のお話をされているのかというのも私にはちょっとよくわかりませんでしたけれども、死刑の問題についてはいろいろなところでいろいろな質問等がありまして、所信ですか、失礼いたしました。今、私が述べたところというのは、所信、あいさつのことであったというふうにちょっと指摘がありました。その中には特に触れられていませんけれども、その問題について言えば、私にとってみれば、共謀罪の問題は既に私たちの考え方として整理されている問題であるというふうに思いましたので、特に入っていなかったかというふうに思います。

 死刑の問題については、私なりの考え方を整理しなければいけないということでありますので、ここで所信として述べるほど固まった考え方は今持ち合わせていないということでございます。

柴山委員 共謀罪の関係は、今後、もしかすると別の議員からも質問があるかと思いますが、それでは、死刑の問題についてお伺いします。

 千葉景子元法務大臣が法務省内に設置した勉強会について、大臣は就任会見において、ここで御自分の考えを、今おっしゃったように、整理をするとした上で、考えている間は当然死刑執行の判断はできないとお話しになりました。間違いありませんね。

平岡国務大臣 前後の脈絡があろうかと思いますけれども、その部分だけ取り上げれば、確かにそのように申し上げたと思います。

柴山委員 その御発言の当否はともかく、では、いつになったらその死刑執行の判断というものをされるんですか。

平岡国務大臣 その問題については、今ここで具体的に申し上げられるような状況ではございません。コメントは差し控えさせていただきたいと思います。

柴山委員 それはおかしいですね。当然、勉強会というわけですから、成果が出るはずであります。お勉強ばかりずっとやっているというわけじゃないと思います。具体的な時期をまず当然お答えいただきたいんですけれども、それに加えて、今言ったような勉強会がどのような段階になったら判断できる段階だと言えるのかということをお聞きしたいと思います。

平岡国務大臣 委員御指摘の勉強会については、先日も新しい政務三役になったところで初めての開催をさせていただいたところでございます。

 その勉強会では、これまでの勉強会がどういうことをやってきたのかということについて総括的なおさらいをするということでございました。さらに、これまでの勉強会がやってきたことについて同じような問題意識を持って取り組んでいくということについても合意をさせていただきました。

 今後の取り進め方については、法務省の政務三役を初めとして、この勉強会に参加しているみんなと協議しながら考えていきたいというふうに考えているところでございます。

柴山委員 繰り返しになりますけれども、そうすると、具体的な時期のみならず、その勉強会の検討状況がどのような段階になったら死刑執行をするかしないかを判断するようになるのかということも、今この段階で、大臣になった、しかも勉強会のレクチャーを受けた、その段階にあってもお話しすることができない、そういうことでよろしいですか。

平岡国務大臣 今の段階では申し上げることはできません。

柴山委員 死刑制度が法律上明定され、刑事訴訟法四百七十五条一項に、これが大臣の判断、職責であるというように定められているということは御存じでしょうか。

平岡国務大臣 刑事訴訟法第四百七十五条に死刑の執行についての規定がございます。第一項が「死刑の執行は、法務大臣の命令による。」、第二項は「前項の命令は、判決確定の日から六箇月以内にこれをしなければならない。但し、上訴権回復若しくは再審の請求、非常上告又は恩赦の出願若しくは申出がされその手続が終了するまでの期間及び共同被告人であつた者に対する判決が確定するまでの期間は、これをその期間に算入しない。」というふうに規定してあるということについては承知しておるところでございます。(発言する者あり)

柴山委員 今、棚橋筆頭理事の方からもあったように、四百七十五条二項には、死刑の判決確定の日から六カ月以内に、今おっしゃった再審請求とか、さまざまな特段の事情がなければ、法務大臣は死刑執行の判断をしなければいけないと明確に書かれているわけなんですよ。

 今、勉強会でいろいろと議論をされていることはともかくとして、既にこういう法律がある以上、民主党政権になってから千葉法務大臣のもとで二件だけ死刑は執行されましたけれども、これに反してずるずると滞留をさせているということは職務の懈怠じゃないですか。いかがですか。

平岡国務大臣 死刑の執行については、大変重い刑罰でございますから、その執行に際しては慎重な態度で臨む必要があるというふうに考えております。

 それに加えて、私が一つの問題意識として持っておりますのは、現在、国際的な状況を見たときに、OECD三十四カ国の中で死刑制度が維持されているのは三カ国、その中の一つである韓国は過去十年間死刑が執行されていないということで、国連の事務総長の発表によれば事実上の死刑廃止国、そしてもう一つ、アメリカ合衆国は五十州ある中で十六州は死刑を廃止している、こういう状況にあって、いろいろな国際機関からも、あるいは特にヨーロッパ諸国からも、日本の死刑制度についての問題提起というのがされているという状況にあるわけです。

 そういう状況もやはりしっかりと我々としては踏まえて、死刑制度のあり方をどうするのかということを考えなければいけない時期に今来ているのではないか、こういう問題意識も私の中にはあるということも、あわせて御理解いただきたいというふうに思います。

柴山委員 さまざまな国際的な潮流ですとか、あるいは諸機関からの指摘というようなお話がありましたけれども、私たちは、当然、日本国憲法のもとで法制定、そして法運営をしているわけですね。現在の死刑制度は、憲法に反しているんですか。

平岡国務大臣 憲法解釈を私がする立場ではございませんけれども、私が承知している限りにおいては、最高裁の判決でも、日本の死刑あるいは死刑の執行の仕方については、違憲という判決が出たことはないというふうに承知しております。

柴山委員 非常に正確な御答弁、ありがとうございました。

 おっしゃるとおり、我が国の死刑制度、そしてその死刑のやり方も含めて、最高裁の判決で憲法に反してはいないということが明確に判示され、そしてそれは現時点でも変更されておりません。何度かこれについては争われていますけれども、判例は変更されておりません。

 とすれば、先ほど大臣みずからが御指摘のとおり、現在の刑事訴訟法四百七十五条のもとでは、法務大臣は、少なくとも、どのような確定事案があり、そして死刑執行を判断するべきかどうかということを精査した上で、職務執行を行うべきと考えるのですが、違いますか。

平岡国務大臣 私も、私の職務は適切に執行してまいりたいというふうに思っております。その中で、さまざまな要素を考えながら、何が今の時点で最も適切なのか、このことについても判断をしてまいりたい、このように考えています。

柴山委員 私の質問に答えられていないんですけれども。今の憲法そして憲法解釈、そして刑事訴訟法のもとで、今の平岡大臣のスタンスというものが違法状態になるのではないかということをお聞きしているんです。

平岡国務大臣 これも、かつての判例でございますけれども、地方裁判所段階での判例ですけれども、刑訴法四百七十五条二項の規定についての判断が示されております。先ほどの六カ月以内に執行するということについてでありますけれども、こういうふうに述べております。

 第二項の趣旨というのは、第一項の規定を受け、死刑という重大な刑罰の執行に慎重な上にも慎重を期すべき要請と、確定判決を適正かつ迅速に執行すべき要請とを調和する観点から、法務大臣に対し、死刑判決に対する十分な検討を行い、管下の執行機関に死刑執行の準備をさせるために必要な期間として六カ月という一応の期限を設定し、その期間内に死刑執行を命ずべき職務上の義務を課したものと解される。したがって、同条第二項は、それに反したからといって特に違法の問題が生じない規定、すなわち法的拘束力のない訓示規定であると解するのが相当である、このような判例も出ているということを御紹介申し上げたいというふうに思います。

柴山委員 今、この六カ月は訓示規定だという下級審の判断があるということをおっしゃいました。私もその判例についてはよく存じております。

 しかし、今まさしく御答弁になったとおりに、それは、法務大臣がそれぞれの事件について慎重な検討をすることを前提として判断されているわけですね。大臣は、今、滞留件数百二十件と言われていますけれども、この確定死刑案件について、そういった十分な検討をされているんですか。

平岡国務大臣 ちょっと質問の趣旨が明確に私には把握できていないことがあるかもしれませんけれども、死刑執行の問題については、いろいろな影響を生じさせる問題であるので、従来から、検討しているのかどうかについてはコメントは差し控えるというふうに、これまでも対応してきたところでございます。(発言する者あり)

小林委員長 それでは、まず質問者からもう一度。

 柴山君。

柴山委員 一言で再度お伺いします。

 滞留されている、百二十件を超えると言われている確定死刑判決の案件について、平岡大臣は、その職務執行、つまり死刑の執行のための検討を行ったんですか、行っていないんですか。

平岡国務大臣 死刑については、先ほど来から申し上げているように、人の生命を絶つ極めて重大な刑罰であって……(発言する者あり)ちょっと待ってください。最後まで聞いてから。

 事務方から死刑執行のために具体的な案件が上がっているか否かを含め、死刑執行の検討を行っているか否か等、その執行の判断にかかわることについて大臣である私から発言すること自体で、死刑の執行を待つ立場にある死刑確定者の心情の安定を害するおそれがあるものと考えられており、従来から、死刑執行の検討を行っているか否かについてはお答えを差し控えさせていただくということとさせていただいております。

柴山委員 先日、九月二十七日のテレビ中継入り予算委員会において、我が党の河井委員が、百二十人の経歴、事件、読んだのかというように質問されたとき、平岡大臣は「その資料はまだ見ておりません。」というふうにちゃんと答えているんですよ。違いますか。

平岡国務大臣 そのときは確かにそう申し上げましたけれども、その時点では、まだ私が法務大臣に就任して間がない時期であったので、当然そういうことが想定されるということで申し上げたところでございます。

柴山委員 想定というのは何ですか。

平岡国務大臣 一般的には、就任して間がないときに、どれだけのことがどれだけできるのかというのはある程度想定できるというふうに思います。そういう意味で、就任して間がないときなのでそこまでは手が回っていないということで、そういうふうに申し上げたということでございます。

柴山委員 九月二十七日の予算委員会の質問のときから、きょうは十月二十五日、一カ月近くたっておりますけれども、それこそ、先ほどちらっとお話があったような時間の経過、事情の変化があったということをおっしゃっていると善意に解釈をさせていただきました。

 次の質問に行きたいと思います。

 大臣は、覚えておられるでしょうか、四年前に出演された「太田光の私が総理大臣になったら」という番組で、息子を少年のリンチで殺害された被害者の母親の眼前で、目の前で、加害者にもそれなりの事情があった、子供たちにどうなってもらいたいのと発言し、猛烈な批判を浴びています。

 あなたは犯罪被害者の気持ちというものについてどう考えておられるんですか。

平岡国務大臣 あのときの状況については、私が言った発言そのものの是非がどうかということではなくて、犯罪によってお子さんを亡くされた方に対して質問をする、あるいは私の言葉で物を申し上げるということについて、被害者の御遺族への配慮に欠けていた部分があるということで、その当時もおわびの気持ちを明らかにさせていただいたところでございます。

 ただ、被害者の皆さん方の問題については、実はあのテレビは、放映されたのは多分五十分程度だろうと思いますけれども、二時間半ぐらいにわたって議論をしまして、被害者の方々に対するいろいろな支援なりあるいは救済なりというようなことについてもしっかりと議論したんですよ。そのことについて、みんながやはり被害者の皆さんに対する支援なり救済なりというものはしっかりやらなきゃいけない、どうやったらいいんだろうかというふうなことについてもしっかりと議論しました。

 しかし、その部分については一切放映されていないという状況の中で、あの部分だけが取り上げられていましたから、そういう意味では、私が被害者に対して何の温かい気持ちもないというふうに受けとめられるような状況になっていたのではないかということで、その点については、私は大変に申しわけなく思うとともに、残念に思っているところでございます。

柴山委員 犯罪被害者の問題について、オンエアされなかった時間帯について、しっかりと関心を持って議論をされたという大臣のお言葉ですから、それでは大臣、現在法務省で進められている犯罪被害者権利強化の方策はどのようなものがありますか。御自分で把握されているものを事務方に聞かずにこの場で説明してください。

平岡国務大臣 犯罪被害者の問題について言えば、犯罪被害者給付金という仕組みも随分前に出てきておりますけれども、果たしてそれで十分なのかどうかというような問題、あるいはメンタルケアについて、どういうふうな形で支援していったらいいのか、さまざまな取り組みをしているところでございます。

柴山委員 メンタルケアと給付金の問題、二つだけお答えになりましたけれども、被害者の問題について二時間検討されたという割には随分あっさりとしたお答えじゃなかったかなと思います。

 これ以外にも、当然のことながら、裁判の結果を遺族の方々に通知する、あるいはそういった方々に陪席をしていただく、あるいは、今メンタルケアというお話がありましたけれども、さまざまなカウンセリングの制度を充実していくというのは当然のこととして、あとは、やはり今、例えば振り込め詐欺などで各金融機関に滞留しているお金をこういった犯罪被害者の御遺族の方々、そういう方々に支給をしていく、本当にさまざまな方策がとられているわけです。

 犯罪被害者基本法に基づいて、犯罪被害者あるいはその御家族に対してさまざまな政策をもっともっと私たちは幅広くとらなければいけないということを訴えさせていただいているので、大臣、そういうことについても、ぜひしっかりと温かい心を持って進めていただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

平岡国務大臣 まさに柴山委員が言われたように、犯罪被害者に対するいろいろな支援、救済、あるいは生活設計等についてもできる限りの支援をするということが大事だと思います。

 先ほど私が、裁判における犯罪被害者の方々の関与の問題とか、あるいは委員が御指摘になった振り込め詐欺等の被害の救済の話については、既にある程度の法律も整備されているということでございますので、今それについて特に具体的な検討をしているということではないという意味で申し上げませんでしたけれども、裁判制度の問題、あるいは犯罪による被害の復活、そうした点についても当然取り組んでいかなければならない課題であるというふうに考えています。

柴山委員 死刑の問題についてもう一つお伺いします。

 大臣は、御地元の山口県光市の母子殺害事件の死刑判決について、御自分の山口二区補欠選挙でどのように説明をされていましたか。

平岡国務大臣 私は、補欠選挙でこの問題について何か訴えたという記憶はございません。

 先ほどの私のテレビでの発言というのも、タイミング的にいうと、判決が出る前に収録をされ、そして判決が出た後に放映されたというような時間的関係の中で取り扱われていたというふうに承知をしているところでございます。

柴山委員 死刑の判決が出て、その後、先ほどのテレビ放映があって、そしてその後、まさにあの山口二区の平岡さんの補欠選挙があったのですね。当然のことながら、しかも地元の問題ですから、特に平岡さんというのは法務行政に明るい方ですから、死刑制度のあり方ですとか、あるいは治安の根本をどう考えるかとか、そういうことは訴えてしかるべきじゃなかったかなというように思うんですけれども、そういうことが全く、街頭演説とかあるいは議論をなさらなかったということでよろしいわけですか。

平岡国務大臣 あのときの選挙をちょっと思い起こしてみますと、当時の与党の大物政治家の方が来られて、私のテレビにおける発言と光市における事件とを結びつけて私を批判するような場面があったというふうに私としては承知しておりますが、私自身は、光の事件について言えば、これは司法で裁かれている問題でもございますので、私からこの問題についてとりたてて何か主張するといったようなことはなかったというふうに記憶をしております。

柴山委員 繰り返しになりますけれども、法務行政に通じ、そして先ほど来お話があるように、この法務委員会で筆頭理事として治安の問題、死刑の問題についてずっと議論をされてきた平岡議員が、この選挙においてこういうことについて一切口を封じていたというのは、私は全く納得ができない部分があるかと思います。

 時間がもう間もなく経過をしてしまいますので、後で私の持ち時間はもうワンピリオドありますので、残りの質疑はそちらの方にゆだねたいと思いますが、給費制の問題についてお伺いしたいと思います。

 法曹の卵、司法修習生への給費なわけですけれども、従来、国が司法修習生の生活資金を公費の給費で賄っていたところ、平成二十二年の十一月から無利息の貸与制となるはずだった。しかしながら、さまざまな考慮の結果、議員立法によって一年間の給費制の延長ということになっていたわけです。

 先ほどちょっとお話がありましたが、衆議院の法務委員会では、平成二十三年の十月三十一日までに、所要の検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずることという附帯決議をされています。

 きょうは十月二十五日、十月三十一日まであと六日間であります。法務省としてどのような検討をされたのか、お伺いしたいと思います。

平岡国務大臣 先ほど来からいろいろとお話が出ておりますけれども、法務省の中では、法曹の養成に関するフォーラムというところで、まさにこの法務委員会の決議をしっかりと受けとめるための議論を積み重ねてまいりました。八月にそのフォーラムで第一次取りまとめというものが出ました。

 そこの中身は、貸与制は貸与制でありますけれども、法務委員会の決議の中にも示されているように、司法修習が終わった方々の経済的状況というものをしっかりと踏まえた制度にすべきであるということで、司法修習終了後五年たったところで返済が開始されるわけでありますけれども、そのときのその人の経済状況というものをしっかりと踏まえた制度であるべきだということで、そのために必要な法案の提出の準備を今させていただいているというところでございます。

柴山委員 先ほども少し大口委員の方からもお話があったんですけれども、余りにも枝葉末節、びほう的な検討に歪曲化、矮小化されているんじゃないかというように言わざるを得ません。

 この法曹養成フォーラムは、今、給費制、貸与制の問題というものは法曹養成トータルパッケージの一局面として、総合的な検討を加えるという形で発足をしているはずなんです。にもかかわらず、この期限間際になって貸与制の経済的な困窮の状況についてちょこちょこっと検討して、それで今回法案を出そうとしている。

 この法案にも私はいろいろな議論すべき論点があると思っていますよ。それについてはこの後の質疑で突っ込ませていただきたいと思いますので、私の持ち時間は過ぎましたので、ひとまずここで終了とさせていただきます。

 ありがとうございました。

小林委員長 次に、平沢勝栄君。

平沢委員 自由民主党の平沢勝栄でございます。

 今、柴山議員からいろいろ質問がありましたけれども、ダブりますけれども、大臣にお聞きしたいと思います。

 最初に、滋賀県大津で二〇〇一年に少年がリンチで殺害されたという、本当に痛ましい、むごい、悲しい事件なんですけれども、この事件について、四年前、大臣はテレビに出られて被害者のお母さんと一緒になられたわけです。

 この事件について簡単に見てみますと、余りにもむごくて、残酷で、読むにたえないような事件なんです。被害者の方は、交通事故で体がちょっと不自由な高校生なんです。それで、定時制に通っていた。ところが、勉強して、今度全日制に移ることになった。それで、非常に喜んでいたと。そこで、仲間の二人が、では全日制に受かったんだからお祝いの会をしてやるというのでその被害者の方を呼び出して、それからどういうことをしたかというと、要するに、障害者のくせに全日制に行くのは生意気だと言って、それから、顔、頭、足、腹、所構わず無抵抗の被害者を七十回以上殴った。それで、被害者のあごは外れ、顔はたちまち原形をとどめないほど膨れ上がった。意識を失いかけた被害者をこの二人の少年は高さ六十センチほどもあるコンクリート台からプロレス技のバックドロップで頭から地面にたたきつけた。さらに、別の場所に移動し、二回バックドロップを繰り返した。失禁して泡を噴いた被害者をさらに一メートルほどの高さからコンクリートに頭を打ちつけた。そして、障害者だから助ける価値がないとか、こういうことをいろいろ言っていた。そう言って、この二人の少年は実際に被害者に水をぶっかけて、そして、この暴行は一時間半も続いたというんです。むごたらしいったらありゃしない。

 その被害者のお母さんと大臣はテレビ番組で一緒になられました。被害者のお母さんに何と言われたんですか。ここでもう一回言ってください。

平岡国務大臣 今、平沢委員の方から、その事件の詳細についてお話がございました。

 実は、あのとき、番組のタイトルは、少年法を廃止すべしということのマニフェストに賛成か反対かということの議論をする、討論をする、そういう番組だったんです。それで、私は、当然、少年法の重要性というものがありましたので、少年法は維持すべしであるという立場に立って議論をさせていただきました。

 ただ、そのときに、平沢委員が今御指摘になった事件というものについては全く予備情報は持っておりませんでしたし、まさにその被害者のお母さんが出てこられることも、我々には一切何も、事前の通知もありませんでした。番組がそろそろ終わりのころになってきて出てこられて、息子さんが本当にひどい目に遭ったということについてお話をされ、そして、その状況について、少年法は廃止すべしだというふうに言われたものですから、私としては、少年法は廃止するということではなくて、やはり可塑性に富む少年の更生とかなんとかが必要だというつもりで申し上げました。

 今の、何と言ったんですかということについては、私も手元にちょっと持っておりますので、関係箇所だけですけれども、改めて読み上げたいというふうに思います。

 むしろそういう悪いことをした子供たちは、それなりの事情があってそういうことになったんだろうと思いますけれどもと私が言ったところで、お母さんが、事情って何ですかという問いかけがありまして、いやいや、事情というのは、要するに彼らがどういう環境の中で育ってきたとか、どういうふうにその大人とか親とかの関係であったとか、まあ、いろいろなことがあったわけで、それはとにかくおいておいて、その加害者であった子供たちにどうなってもらいたいのか、その子供たちが自分を反省し、これからの人生を歩んでくれるということについては、そういうようなことというのはもういいから、とにかく死の恐怖を味わわせてやりたいということですかというふうに言いました。

 ただ、この場合の死の恐怖を味わわせてやりたいという言葉は、これは私が使った言葉ではないんです。私も、あえて申し上げれば、お母さんが言われたものですから、本当にそういう気持ちでいいんでしょうかということを私として申し上げたということでございます。

平沢委員 ちょっと大臣の答弁、長いから、私の聞いたことだけ簡潔に答えてください。

 大臣は、このむごたらしい犯罪の被害者のお母さんに、犯人を擁護するような発言をしているんですよ、犯罪を犯した少年にはそれなりの事情があったでしょうと。それは、事情はいろいろあるでしょう。だけれども、こんな犯罪は絶対許せないわけですよ。にもかかわらず、犯罪の被害者じゃなくて、加害者に同情するような発言をされたんじゃないですか。もう一回答えてください。

平岡国務大臣 その私の発言については、当時、被害者の御遺族への配慮に欠けていた部分があったということで、おわびの気持ちを明らかにさせていただいたところでございますけれども、あくまでも、少年法の議論をしている中でございましたので、加害者だった少年たちをどう取り扱っていくべきなのか、この議論をしていたというふうに私としては認識をしておるところでございます。

平沢委員 今、被害者のお母さんにおわびの気持ちを示したというような話がありましたけれども、では、具体的にどういう形でおわびをされたんですか。

平岡国務大臣 当時、私のおわびに関する文書をホームページに掲載させていただくとともに、お母さんに対して電話をさせていただいて、私の気持ちを伝えさせていただいたということでございます。

平沢委員 被害者のお母さん、きのうもちょっと電話でいろいろ話しましたけれども、まだ大臣にえらい怒っていますよ。きのう、私は、被害者のお母さんと話して、これを質問してもいいですかと、もういろいろなお話を伺いました。これを質問してもいいですかと言ったら、怒っているということを言ってもいいですかと言ったら、怒っているんですから、言ってもらっても結構ですと。だから、言うんです。大臣、まだ、被害者のお母さんは大臣に対して怒っているんですよ。まだ、あの発言に対する怒りを忘れていないんですよ。

 大臣のこのホームページ、ここにありますよ。確かに、配慮に欠いた質問をしたことを申しわけなく思い、深くおわび申し上げたいと思います、こう言っています。大臣は、ホームページで先におわびしたんでしょう。要するに、このテレビが流れて、世論が沸騰して、ネットが沸騰したものだから、大臣は、まずホームページでおわびして、それから大臣は新幹線の中から電話したんじゃないですか。そうじゃないですか。

平岡国務大臣 当時の記憶をたどってみますと、連絡先というのは、当然、個人情報でございますからなかなか教えてもらえないという状況の中で、ようやく携帯電話番号というものを把握できたということでございましたので、その時点で電話をかけさせていただいたと。

 確かに私、新幹線の中で話した記憶はありますけれども、その前にも何度か電話をさせていただいていて、なかなか通じなかったというような記憶もございます。

平沢委員 もう一回確認しますけれども、被害者のお母さんの方にまずはおわびすべきじゃないですか、ホームページに載せる前に。順番としてはどっちが先だったんですか。

平岡国務大臣 今、平沢委員が言われたように、順番として、そういう順番であるべきだったのかもしれません。ただ、先ほど申し上げたように、私としても、何度か電話を差し上げたけれども通じなかったという事情もあったので、その辺の前後関係がどのようであったのかについては定かな記憶はございません。

平沢委員 これは被害者のお母さんの心をいたく傷つけただけじゃないんです。もちろん今も傷つけているんですよ、被害者のお母さんを。亡くなられた少年、少年の人間性、それから尊厳を著しく冒涜していると私は思いますよ。

 そこで大臣、大臣はお母さんに電話されたらしい。だけれども、その亡くなられた少年に対してはどういうおわびを示されたんですか。

平岡国務大臣 亡くなられた少年を冒涜しているという表現は、ちょっと私には納得がいきません。私は全くそんな気持ちは持っておりません。

 ただ、繰り返しになりますけれども、そのときの議論というのは、少年法を廃止するか廃止しないかという問題についての議論でございましたので、私は加害者の少年の問題について議論をさせていただいたというふうに考えております。

平沢委員 被害者、亡くなった少年の人間性、尊厳を冒涜していないですかということを言っているんです。

 あなたは、テレビで被害者のお母さんに向かって何と言ったんですか。加害者にも、こんなむごたらしい犯罪を犯した加害者にもそれなりの事情があったんだと思いますと、むしろ、そのむごたらしい犯罪、犯行を是認するようなことを言っておいて、それでお母さんは今でも怒っている。にもかかわらず、あなたは何ですか。被害者、亡くなられた少年、悔しいでしょう、残念でしょう、その被害者に対してはどうやっておわびするんですか。

平岡国務大臣 私が被害者の少年を冒涜しているとか、さっきも言いましたけれども、当時、我々はこの事件については、事前には全く何も知らされていなかったんです。平沢委員が御指摘になったような事実関係も全く示されない状態でありました。まさに我々が議論していたのは、加害者の少年に対してどう向き合うべきなのかという議論をしている中でありましたので、私は少年法の問題として発言をさせていただいたというふうに思っています。

 被害者の少年を冒涜するという気持ちはそのときも今も含めて全くございませんし、私は、委員の御指摘についてはちょっと、どうしてそういう御指摘になるのかということについてはわからないところがございます。

平沢委員 この番組に一緒に出ておられた大村秀章さん、今愛知県の知事になられていますけれども、あの方は直接被害者のお母さんの感情を傷つけたわけでも何でもない。だけれども、この話を聞いて、余りにもむごたらしい犯罪だ、被害者の少年がかわいそうだということで、大村秀章さんはその後、大津まで行って、お線香を上げてきたらしいんですよ。

 大臣は何をされたかと聞いているんです。同席していたでしょう、大村さんもそこの場に。その大村さんは、被害者のお母さんはともかく、これだけむごたらしい犯罪で少年がかわいそうだということで、亡くなった少年がかわいそうだということで、被害者の御自宅にお伺いして、お線香を上げに行ってこられているんです。

 被害者のお母さんを傷つけた、そして亡くなられた被害者も無念な思いでしょう。その被害者、そしてお母さんに対して大臣は、何ですか、新幹線から電話一本かけた、それで終わりなんですか。

平岡国務大臣 具体的にどういう行動をとったかという点について言えば、被害者の少年に対して私が特に何かしたということはございません。

 ただ、先ほど、電話一本でおしまいかということについて言えば、私は、先ほど申し上げたように、被害者の御遺族への配慮に欠けていた部分があるということについては十分に誠意を込めておわびをさせていただいたというふうに思っております。

 なお、つけ加えさせていただくと、この事件については、実は少年法に詳しい弁護士の方も出ておられていろいろ発言をされておられたんですけれども、この事件がこの番組で取り上げられるということは一切事前の情報がなかったということで、その弁護士の方は、その番組に出ていたということは、名前も出さないでほしい、自分の発言も放映しないでほしいという形で申し入れたというようなことがございまして、私としても、この事件がもし番組の中で取り上げられるのであれば事前に十分に勉強していかなければならなかったと思います。

 実は、お母さんもその事件について説明する資料を持ってこられたんですね。それで、出演者の方々に事前にこれをお渡ししてほしいというふうに依頼されたんですけれども、テレビ局の制作担当が、これは事前には渡すことはできない、終わった後に渡しますからというふうに言われたそうです。しかし、終わった後にも私たちにはその資料は一切渡されなかったというようなこともございました。そういう状況の中で起こった話であるということも御理解をいただきたいというふうに思います。(平沢委員「私の質問に答えてください。ちょっと無駄が多過ぎる。ちょっと委員長、注意してください。ちょっと余計なことを言い過ぎる。ちょっと注意して」と呼ぶ)

小林委員長 では、大臣、改めて短く簡潔に今の平沢さんの質問に対して。

 もう一度、平沢さん。

平沢委員 もう一回言いますよ。

 被害者のお母さん、本当にしっかりした普通のお母さんですよ。今でも怒っているんですよ、大臣に。大臣、大臣になられたら、そんな可視化とかなんとかという前に、被害者のお母さんのところに行かれて、そして謝ってお線香を上げてこられるのがまず先じゃないですか、法務大臣として。まだ怒っておられるんですよ、あの大臣の発言で。大臣、どうですか、行かれるおつもりはないですか。

 今、法務大臣としていろいろやっているでしょう。しかし、政治に最も大事なのは何なんですか。情とか人間性じゃないですか。理屈とか理論とか、何かさっきも外国の死刑制度がどうのこうのとかと理屈をいろいろ言っていましたけれども、そんなことじゃなくて、政治に最も重要なのは情とか人間性じゃないですか。大臣にはそれがないんですよ。だったらば、滋賀県に行かれて、そして大村秀章さんのようにお線香を上げてこられたらどうですか。そして、お母さんにおわびしてこられたらどうですか。もう一回答えてください。

平岡国務大臣 お母さんの方がお許しをいただけるのであれば、平沢委員の御指摘になったように、しっかりとしたおわびを申し上げてきたいというふうに思います。

平沢委員 では、大臣、滋賀県大津まで行かれる、そしてちゃんとお母さんに、そして亡くなられた被害者の墓前におわびされるということでよろしいですね。もう一回確認させてください。

平岡国務大臣 お母さんの方がお許しをいただけるのであれば、そうしたいというふうに思います。

平沢委員 お母さんはやはり怒っておられますから、私自身もそれは、大臣をお母さんが受け入れられるかどうかというのはわかりません。わかりませんけれども、やはり法務大臣として一番大事じゃないですか。やはり、そうした傷ついた、これだけむごたらしい被害を受けた少年のお母さん、まだ傷ついておられる。そして、大臣の発言でまだ傷ついておられる。そのお母さんにまずはきちんとおわびして、そして亡くなられた少年にぜひおわびしていただきたいなと思います。

 では、次の問題に移りますけれども、大臣の政務秘書官ですね。長崎県の児童養護施設に勤めていたときに、県の補助金の申請について虚偽の申請をして、不正の受給をして逮捕、起訴されて、二〇〇六年に懲役一年六月、執行猶予三年の判決が下っていると。その人が、その人物が大臣の政務秘書官として勤務されていた。これは間違いないですか。

平岡国務大臣 事実としては、そのとおりだと思います。

平沢委員 特別職ですからね、大臣秘書官は。それは法には触れないでしょう。しかし、大臣の秘書官というのはしかも法務省の大臣の秘書官というのは、法務省の中枢にいるわけですよ。いろいろな機密情報にも接するんですよ。

 大臣、大臣のその秘書官の採用というのはどうなっているんですか。どういう形でスクリーニングをかけているんですか。

平岡国務大臣 今御指摘の秘書官については、私の公設秘書から採用したということでございますけれども、その公設秘書の採用に当たっては、当時、政策秘書認定の推薦を受けて、政策秘書としての試験を受けており、今月の二十四日にでもその発表があるというような状況の人として、八月に面接もさせていただいてお話を伺い、そして、何人かの候補者の方と面接をさせていただきましたけれども、その中で、経験とか性格とかあるいは能力といったものを総合的に判断して、公設秘書として採用させていただいたということでございます。

 その後に、大臣秘書官を選任するに当たって、ほかにいい人が見つかりませんでしたので、彼に法務大臣秘書官ということで任命をするということをさせていただいたということでございます。

平沢委員 先ほど言いましたように、法務省の大臣秘書官は、いろいろな機密情報に接する機会があるわけですよ。大臣、今回、こういう犯罪歴のある、しかもかなり直近の犯罪歴のあることを全く知らないで、要するに、今言われた能力とかそんなことで採用されたということですよね、今の大臣のお話だと。そうだとすると、テロリストだとか極左だとか、こういう人がもし入ってきて、そして、今のような形だったら、そのまま採用されることだってあり得るじゃないですか。

 だから、それは、法では恐らく大臣の見識に任せているんでしょうけれども、慎重にも慎重に、まさかそういう、間違っても問題のある人物は採用されないだろうという前提で恐らく法ができているんだと思うんです。

 大臣、今のようなやり方で大丈夫なんですか。

平岡国務大臣 平沢委員御指摘のように、そういう事実関係があるということについては、私が採用するに当たっては、全く私に告げられていませんでしたので、今回、そのけじめをつけさせていただくということで、法務大臣秘書官は辞任をしてもらいました。

 ただ、採用に当たって何もしていなかったということではございません。この方について言えば、その前には自民党の参議院議員の公設秘書を務め、そして政策秘書資格の推薦においては自民党の大物議員の方が推薦をされているというような状況を踏まえて、私としては、それなりにちゃんとした仕事をしてこられた人だなと。もともとは、もっとさかのぼれば、非常に大物の自民党の先生の秘書をやっておられたというような経緯もございまして……(発言する者あり)いや、だから、自民党を信頼しているということをちょっと申し上げているわけであります。そういうようなことを踏まえて私としては採用を判断させていただいたということでございます。

平沢委員 今、自民党、自民党と言っていますけれども、我々の秘書も大事ですよ、だけれども、大臣秘書官となったら役所の情報が全部入ってくるんですよ。だから、もう全然違うんですよ、大臣秘書官というのは。大臣は、それはあれでしょう、一議員の秘書もそれは大事ですよ、もちろん。だけれども、一議員のところに来る情報と大臣の秘書官のところに来る情報は全然違うんですよ。機密情報も全部来るんですよ。だから、念には念を入れてチェックしなければおかしいじゃないですかということを言っているんですよ。もう一回答えてください。

平岡国務大臣 確かに、採用するに当たっては念には念を入れてということは、まさにおっしゃるとおりだというふうに私も思います。

 ただ、調査をする能力といいますか、私自身のツールといいますか手段といいますか、そういうものもある意味では限られたものであるということでございますので、若干、その点において、今回のようなことが起こってしまったということについては私自身も残念に思っているところでございます。

平沢委員 では、次の質問に移りますけれども、先ほど柴山議員にもありましたけれども、死刑の問題ですね。

 大臣は、この前の予算委員会でも、勉強している、勉強している間は執行することは考えないと。先ほど柴山議員がこの勉強というのは何の勉強だということを言っていましたけれども、民主党政権になって、今大臣は何人目だかわかりますか。五人目ですよ。ということは、勉強している間に大臣はかわると思った方がいいですよ。そうでしょう。

 これは、勉強するものなんですか。財務大臣になってから今から財務というのは勉強するものなんですか。外務大臣になってから今から外交を勉強するというものなんですか、これは。

 だから、制度として勉強するのはこれは当たり前ですよ、死刑制度として。しかし、今、法としてあるなら法を粛々とやる、これが当然じゃないですか。もう一回答えてください。

平岡国務大臣 先ほど来から累次お答えしているように、今、法務省に死刑の在り方についての勉強会というものがつくられており、これまでも勉強を重ねてきているということでございます。

 私は、今大臣が、言われたように、民主党においては五人目の法務大臣だと思いますけれども、その勉強会を私は引き継いでいくという立場にもあるわけでございまして、しっかりと勉強もしていかなければならない。

 それと加えて、先ほど来から私も申し上げていますけれども、今の国際的な動向、OECD三十四カ国の中で死刑制度が維持されているのは三カ国、そのうち韓国は事実上の死刑廃止国、アメリカでも十六州廃止、そういう状況の中で、この死刑制度をどう考えるかということについても重要な課題であるというふうに考えているということでございます。

平沢委員 大臣、私の言った質問に答えてくれればいいんです。そんな余計なことを言わないでください。私は制度論を聞いているんじゃないんです。そんなことは私だって知っていますよ、それは。だけれども、今、法律としてあるんですよ。法治国家なんですよ。ですから、その法を守らなくていいんですかということを聞いているんです。

 ちなみに、法務大臣をやられた大臣の中に後藤田正晴さんという方がおられます。私も官房長官のときに秘書官としてお仕えしましたけれども、その後藤田さんが「情と理」という本の中に死刑制度について非常にいろいろ書いておられます。死刑制度があるんだったら、私はやはりこれは執行しないわけにはいかない、団藤重光先生という方が死刑廃止の本を送ってくれた、私もこれを熟読した、しかし、それでも私の考え方は変わらないと。

 そこで、ちょっと大臣にお聞きしますけれども、後藤田先生はこう言っています。少なくとも今、死刑制度がある以上、裁判官だって現行制度をきちんと守って判決をしなければならないと思って、あえて判決をしているわけです、それを行政の長官である法務大臣が執行命令に判を押さない、こんなことがあり得るのか、それはおかしい、こういうことを後藤田正晴先生は書いておられますけれども、これについてはどう思われますか。最高裁の判決を覆すことになりませんか。

平岡国務大臣 後藤田先生の今読み上げられた見識というのは、私もすばらしい見識だというふうに思います。

 さはさりながら、今の我が国が置かれている状況あるいは死刑に対する国民の皆さんの受けとめ方、そういうものもしっかりと踏まえて私としては行動してまいりたいというふうに思っております。

平沢委員 要するに、しっかりと行動するということは、死刑を執行しないということでしょう。死刑を執行しないということでしょう。もう一回答えてください。

平岡国務大臣 ここで、今の段階で、執行する、執行しないということについて私から申し上げることは適当でないと思いますので、控えさせていただきたいと思います。

平沢委員 ですから、死刑を執行するのかしないのかと聞いている。しないのかということ。

平岡国務大臣 死刑を執行するしないについては、現段階では申し上げられません。

平沢委員 申し上げられないというけれども、法があるんですよ。法があって、最高裁が判決を下しているんですよ。その判決を行政の長が覆していいのかということを後藤田先生は言っているんですよ。では、覆してもいいんですか。

平岡国務大臣 私としては、覆すというような気持ちはございません。

平沢委員 では、後藤田先生は別のところでこういうふうにも言っています。あだおろそかな手続で、判決が済んだからといって事務的に決裁しているんじゃないですよ、慎重の上にも慎重にやっている、もちろん、制度論として死刑に賛成するか廃止するかは別です、しかし、死刑の判決を出しておいて、保留になって、いつ肩たたきに遭うかびくびくして何十年も置かれるということぐらい残酷なことはない、だから死刑判決があったものはきちんと執行する、こういうふうに言っておられます。これについてはどう考えられますか。

平岡国務大臣 そのことも、まさにそういう御指摘があり得るというふうに思いますし、一つの見識だと思います。

 逆に、平沢議員も御存じだと思いますけれども、死刑の執行を、先ほどの期間の算定の中で、期間に数えないというために再審の請求とかいろいろな行動をとられている方々もいるということもまた事実だというふうに思います。

平沢委員 いやいや、半年というのは決まっているでしょう。法律に書いてあるでしょう。半年というのは、法務省からもらった刑事訴訟法のあれの中では何て書いてあるかというと、いつまでも執行されないままで置かれてはならないから六カ月と書いてある、こう言っているんですよ。そうしたら、やはり、それは六カ月過ぎたからといって罰則があるわけでも何でもないけれども、できるだけ早くやるのが筋じゃないですか、法務大臣。

平岡国務大臣 先ほど来から御説明しているように、死刑というのが非常に厳しい刑罰であるということでありますから、慎重に判断してまいりたいというふうに思います。

平沢委員 後藤田先生はこういうことも書いておられます。死刑の問題というのは、人生観から宗教から、いろいろな見方がある、だから、自分としては執行命令に軽々に判こを押したつもりはない、しかし、これをしなければ法秩序が死んでしまう、改めるならば制度論でする、こう言っているんです。

 ですから、制度論として議論する。先ほど来大臣は、聞いてもいないのに、外国がどうのこうのという制度論のことを言っています。これはまた別なんです。後藤田先生が、これをやらなければ法秩序が死んでしまう、こう言っておられる。これについてどう思いますか。

平岡国務大臣 一つの見識だというふうに思っております。

平沢委員 見識だったらば、大臣もそういう考えに立ちますか。

平岡国務大臣 今この段階でその見識に立つかどうかということについては、私としては判断しかねます。

平沢委員 何を言っているかよくわかりませんけれども、検事総長をやられた但木敬一さんが読売新聞にこういうふうに書いています。新政権として死刑執行が好ましくないと判断するならば、政治責任をかけて国民にその考えを表明すべきだと。私はそのとおりだと思いますよ。そうでない限り、死刑の執行は法務大臣の法的義務であることを忘れないでほしい、こういうふうに但木さんは読売新聞に書いています。

 大臣、まあいいですよ、大臣が外国のとか何かいろいろ言っていました。制度としていろいろある、それで今勉強会をやっている。だから、国民の皆さんに向かって、大臣、この勉強会、こういう理由で私は死刑をやるつもりはないとはっきり言われたらどうですか。今勉強しているからどうのこうのとかとわけのわからない、これは勉強することじゃないでしょう、制度としてあるんだから。勉強するのは、先ほど来何度も出ていますように、あくまでも判決が出た百二十人の書類を読むのが勉強でしょう。制度はまた別にやることじゃないですか。それについて、大臣、どう思われますか。

平岡国務大臣 先ほど韓国の例で、十年間死刑執行が停止されているということを申し上げました。死刑制度がなくなっているわけではないんですね。

 ですから、この問題については、私としては、就任当時のインタビューの中でも、私もずっと悩んできた問題である、この問題について、私もこういう立場に立った以上は、しっかりと勉強会を通じて勉強させていただいて、私なりの結論を出していきたい、このように申し上げさせていただいているというところでございます。ということで御理解いただきたいと思います。

平沢委員 全然わかりませんけれども。勉強会をやっていて、その勉強というのは、要するに百二十人がどういう犯罪を犯したか、この判決には間違いがないかどうか。これは後藤田さんもいろいろ書いていますよ、いろいろそういうところはチェックしたと。一審でどういう判決があった、それを二審でどういう判決があった、いろいろと調べて、そして間違いないか、間違いないか、間違いないかということで、最終的に法務省の担当者が集まって、そこで判こを押したということを書いていますよ。大臣、それをやるのが大臣の勉強じゃないですか。あと、制度はまた別なところでやるべきじゃないですか。

 今大臣が言っている勉強というのは、要するに死刑制度をどうするかということを言っているんじゃないですか。そうじゃなくて、今、日本に死刑制度はあるんですよ。死刑制度は死刑制度としてあるんだから、法治国家なんだから、法に基づいて粛々とやるべきじゃないですか。それで、死刑を今後どうするかというのはまた別のところで議論すればいいわけで、それを何か一緒にして大臣は言っているからおかしくなっちゃう。

 大臣、大臣の勉強というのはどっちなんですか。その百二十人の書類を精査すること、それが勉強なんですか、それとも死刑制度のあり方を議論するのが勉強なんですか。どっちなんですか。

平岡国務大臣 私の勉強とか、あるいは法務省の死刑の在り方についての勉強会での勉強というものについて言えば、基本的には制度の問題が含まれているというふうに思っています。

平沢委員 含まれているんじゃなくて、それだけでしょう。

 要するに、大臣だったらば、百二十人の今たまっている死刑囚について、これについて本当にこの死刑は執行して大丈夫か、間違いないかどうか、再審が出ているのか、出ていないのか、そういったことを徹底的に調べるのが大臣の仕事じゃないですかと聞いているんです。もう一度お答えください。

平岡国務大臣 この死刑の在り方についての勉強会については、設定当初から検討テーマというものがございまして、それを先日開かれた勉強会においても維持したわけでありますけれども、その勉強会の検討テーマというのは、死刑制度の存廃についての考え方、執行の告知のあり方を含めた執行にかかわる問題、執行に関する情報提供のあり方というふうなものを勉強していくというふうに決められているところでございます。

平沢委員 そんなことを聞いているんじゃないんです。そういう制度は制度として勉強するのはいいでしょう。だけれども、今、法治国家ですよ、法にあるんですよ、最高裁の判決があるんですよ。だったらば、その判決書を取り寄せて、そして本当に間違いないかどうか大臣の目でしっかりチェックする、これが勉強じゃないですかということを言っているんです。それをやっていますかということ。

平岡国務大臣 それも勉強だと思いますけれども、先ほどの御質問にもありましたように、今、個々具体的なものについて検討、勉強しているかについては、これは先ほど来申し上げているような理由によりまして、私から発言することは差し控えさせていただきたいと思います。

平沢委員 やっていないということを、先ほど予算委員会に出たということをあれしましたけれども、大臣、勉強会、制度論のことを先ほどから盛んに言っていますけれども、制度論をいろいろと勉強するのは、これは別のところでやればいいことであって、大臣としての、後藤田先生が言われるように、あるいは但木さんが言われるように、これはやはり大臣の責任なんですよ、責務なんですよ、義務なんですよ。

 大臣は、やはり百二十人の方、それで大臣が見て、これはやはり本当におかしいなと思ったら押さなければいいわけで、それを勉強するのが大臣の仕事じゃないですか。もう一回答えてください。

平岡国務大臣 勉強というものの中に平沢委員が言っておられることも含まれるというふうに私も思いますけれども、先ほど来から言っているように、個々具体的に事案について検討しているとか勉強しているとかということについては、答弁は差し控えさせていただきたい。それは、先ほど来から申し上げているように、死刑執行を待っている人たちに対するいろいろな心理的影響等もございますので、従来からその件については発言は控えさせていただいてきたという経緯があるということでございます。

平沢委員 心理的影響というのなら、刑事訴訟法四百七十五条の方がよほど心理的影響を与えるじゃないですか。だったら大臣、四百七十五条、心理的影響なんというんだったら、削除したらどうですか。そこをやるのが大臣の仕事じゃないですか。削除したらどうですか。削除するつもりはあるんですか、四百七十五条。改正するつもりはあるんですか。

 だって、心理的影響と今言われたでしょう。あの規定、恐らく、死刑確定判決を受けた人はみんな知っているでしょう。そっちの方がよっぽど心理的影響があるじゃないですか。それで、今、勉強しているかどうかは言えない、その判決書を大臣が見ているかどうかは言えない、心理的影響を与えるからと。これは、おかしくありませんか。大臣、では、もしそう言うなら四百七十五条を改めたらどうですか。

平岡国務大臣 ちょっと平沢委員の質問の趣旨が、私、今十分に理解できていないのかもしれませんけれども、改めたらどうかという御提案があるのであれば、それもまた我々の勉強会の中でしっかりと検討していきたいというふうに思います。

平沢委員 そういうことを言っているんじゃなくて、やはり今の四百七十五条の方がよほど心理的に大きな負担をかけているんじゃないですかということなんです。だから、それがあるにもかかわらず、何で死刑の確定判決書を大臣が見ているなんということが言えないんですかということを言っているわけです。おかしくありませんか。だって、半年以内に執行しなきゃならないと法にあるんだから、そっちの方がよっぽど死刑囚には負担になっているじゃないですか。

 だから、確定判決が出ているんだったら、見たって当たり前じゃないですか。その当たり前のことがなぜ言えないんですかと聞いているわけです。

平岡国務大臣 繰り返しの答弁になりますけれども、従来からこのような問題については答弁を差し控えさせていただく、このような問題というのは、具体的に勉強しているとか検討しているとかというようなことをやっているかやっていないかということについては答弁を差し控えさせていただくということで来ておりますので、その点は御了解いただきたいというふうに思います。

平沢委員 私が聞いているのは、四百七十五条があります。四百七十五条の方が死刑の確定判決者に大きな大きな心理的な負担を与えているんじゃないですか。だったらば、その規定があるんだったら、確定判決書を大臣が見るのは当たり前じゃないですか、あの規定があるんだからということを言っているんです。それが、確定判決を見ることが何でその死刑囚に大きな負担を与えるんですかと聞いているんです。全然答えていない。もう一回答えてください。(発言する者あり)

小林委員長 では、大臣、最後にしっかりとお答えください。

平岡国務大臣 まず、その法律改正を政府が提案するのかという点について言えば、先ほども答えさせていただきましたけれども、今勉強会でもいろいろな角度から勉強させていただいておりますので、一つの御提案があったものとして、検討をといいますか、勉強させていただきたいというふうに思います。

 多分、御質問の趣旨はそういうことではないとは思いますけれども、その点について言えば……

平沢委員 だから、何で言えないかということですよ。何で今勉強しているということが言えないかということを聞いているんです。(発言する者あり)いや、時間が来たけれども、きちっと答えてください。何で答えられないのかと。そんな心理的負担だ何だと、何で答えられないの。

平岡国務大臣 先ほど私が冒頭で答えたのは、筆頭理事の方がそういうふうに、答えなさいというふうに言われたので答えさせていただいたということでありますので、御容赦いただきたいというふうに思います。

 先ほどの委員の御質問について言えば、従来から、現時点で死刑確定事件の資料を検討しているか否かを含め、死刑執行の検討を行っているか否か等、その執行の判断にかかわることについて、大臣から発言すること自体で、死刑の執行を待つ立場にある死刑確定者の心情の安定を害するおそれがあるものと考えることから、お答えすることは適当でないというふうに答えさせていただいているところでございます。

平沢委員 では、時間が来たので終わりますけれども、心情の安定がどうのこうのというんだったら、四百七十五条がある以上、そんなことは理由になりませんよということを言っているんです。ですから、そこは大臣、そういう今までのあれがあるなら、それは改めて答えてください、今度また質問しますから。

 では、質問を終わります。

小林委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

小林委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。稲田朋美君。

稲田委員 自由民主党の稲田朋美です。

 大臣、私、大臣のきょうの午前中の質疑を聞いておりまして、どうしてそんなに歯切れが悪く小さなお声で、官僚の答弁を繰り返し述べて逃げていらっしゃるのか。大臣らしくない。大臣は、こちらの場で、野党として大臣を追及する立場の方が似合っていて、そちらの答弁する方にはやはりふさわしくないんじゃないかと思うんですけれども、いかがですか。

平岡国務大臣 稲田議員ともこの法務委員会でかなり御一緒させていただいて、そういうふうにお感じになったということは率直に受けとめたいというふうに思いますが、もう少し状況が把握できれば、いろいろなテーマについて私なりのメッセージが発せられるようなことができるのではないかなというふうには思います。そういう何かおとなしくなったという印象を与えたとすれば、大変私も残念な気がいたしますので、もっとしっかりと頑張ってまいりたいというふうに思います。

稲田委員 今の答弁自体がもう大臣にふさわしくないんじゃないですか。なれてくれば、状況が変われば自分の意見を発信できると。今……(平岡国務大臣「状況を把握できれば」と呼ぶ)状況を把握できればということは、今は状況が把握できていないとみずから認めていらっしゃるんですけれども、大臣は今、自分で自分がふさわしくないということをお認めになったと理解してよろしいですか。

平岡国務大臣 そういうつもりで申し上げたわけではございません。これからしっかりと努力をしてまいりたいというふうに思います。

稲田委員 努力じゃ困るんです。

 質問をかえます。

 法務大臣といえば法治国家の、本当に総理大臣に次ぐ重要な閣僚ですよ。そして、総理は憲法六十八条に基づいて平岡大臣を法務大臣に任命をされたんです。別に大臣は国会議員である必要はなくて、民間人でもいいんです。

 大臣、大臣には、今のこの国の中で自分が最も法務大臣にふさわしいと自負しておられますか。

平岡国務大臣 最もふさわしいかどうかというのはちょっと私では判断できませんけれども、私は私なりにこれまでの経験を生かした法務大臣としての職責を果たしてまいりたい、このように考えております。

稲田委員 その答え自体がもう既に大臣として不適格なんですよ。状況を把握すればとか、自分がふさわしくなりたいとか、そういうことではなくて、やはり自分がこの国の法務行政を担っているという自覚を持って当たっていただきたい、その自覚が余りにも大臣にはないと思うんです。

 また、大臣は、所信表明の中で「国民の皆さまの常識というものを忘れることなく、」とおっしゃったので、私は驚いたんです。今までの、そしてきょうの午前中の数々の大臣の非常識な言動を見ておりますと、国民の皆様の常識からかけ離れているのが大臣ではないかなと思っております。

 大臣のような方が治安のトップにいらっしゃること、非常に不安を覚えます。きょうの午前中の質疑に補足する部分もありますけれども、質問してまいります。

 平岡大臣の秘書官が、平成十八年二月に、長崎地裁で児童養護施設の補助金をだまし取ったとして、詐欺罪で有罪判決を受けていたということがわかりました。大臣は、この人をいつ御自分の公設秘書として採用し、いつ法務大臣秘書官に採用されたんですか。

平岡国務大臣 公設秘書として採用したのは九月一日であります。大臣秘書官として採用したのは九月二日でございます。

稲田委員 その採用の仕方が非常に不思議だなと思うのは、普通は、自分が法務大臣になれば、ずっと自分が信頼をしている人とかよく知っている人、その人を秘書官に採用すると思うんですけれども、なぜ九月一日に公設秘書に採用し、翌日に法務大臣秘書官に採用されたんですか。

平岡国務大臣 これは、もともと私の政策秘書というのがおりましたけれども、一身上の都合でやめるという事態に至るということが、九月の一日時点からいうと約二カ月ぐらい前にお話がありまして、二カ月ぐらいかけて公設秘書、特に政策秘書としてふさわしい人間を探していたというような状況の中で、いろいろな方々とも面接をさせていただきましたけれども、その中の一人が、今御指摘になっている公設秘書であり法務大臣秘書官であったということでございます。

稲田委員 ということは、きのう自分の公設秘書として採用した人を次の日に法務大臣秘書官に採用するというのは余りにも軽率だと思いませんか。

平岡国務大臣 大臣秘書官については、ほかに弁護士経験等の法曹に明るい人、どなたかいないかということでいろいろ探してみましたけれども、適当な人材が見つからないというような状況であったので、公設秘書であった彼を大臣秘書官にするというふうな判断に至った次第でございます。

稲田委員 そういう安易な秘書官の採用の仕方自体が、御自分の法務大臣という職責の重さを自覚されていない証拠だと思います。

 そして、先ほど、前科があることを告げられていなかったから辞任してもらったとおっしゃったんですけれども、大臣が罷免をされたのか、それとも秘書官の方がその報道を受けて辞任の申し入れをされたのか、どちらですか。

平岡国務大臣 辞任をしたのは、先ほどお話がありましたように、採用するときに本来告げられてしかるべきことが告げられていなかったということで、そのけじめをつけるという意味で辞任に至ったわけでありますけれども、その辞任に際しては、私と秘書官との間でお互いの認識をよく確認し合い、あくまでも秘書官の願いにより辞職という形になっております。

稲田委員 いや、形じゃなくて、あなたが、大臣がけじめをつけなさいということで秘書官にやめてもらったということでよろしいか。

平岡国務大臣 お互いの話し合いの結果でございます。

稲田委員 先ほど事前に告げられていなかったということが問題なのだとおっしゃいましたけれども、有罪判決を受けていたこと自体は問題ではないんですか。

平岡国務大臣 有罪判決を受けていたこと自体は、例えば、刑の執行猶予の期間が満了いたしますと、刑の言い渡しについての効力を失うということであり、特別職ではなくて一般の国家公務員でも別に欠格事由になっているわけではない、特別職の国家公務員でも欠格事由になっているわけではないということでございますから、多分、どういう中身の話であったのかということになっていくと思いますけれども、その中身については、個人のプライバシーにもかかわる話なので、ここでは差し控えさせていただきたいというふうに思います。

稲田委員 いや、私の質問は、事前に言っていなかったからやめさせたのか、それとも有罪判決を受けていたことが問題だったのか、どちらですかという質問です。

平岡国務大臣 その御質問であれば、前者でございます。

稲田委員 前者ということは、告げていなかったことが問題だということですね。

 前者がちょっとわからなかった。前者とは何ですか。

平岡国務大臣 繰り返しになりますけれども、本来、採用時において告げられてしかるべきであったことが告げられていなかったということについてけじめをつけるということであったということです。

稲田委員 もちろんそれは法的にはそうかもわかりませんけれども、大臣、やはりそれが国民常識から外れていると思うんです。大臣は法務大臣という立場ですから、詐欺で有罪判決をとられた方を法務大臣秘書官に採用するというのは、私は、法務大臣として、国民の目から見てやはり常識に反していることだと思います。

 大臣、けじめをつけるのは秘書官だけでいいんですか。あなたのけじめはどうなるんですか。

平岡国務大臣 私自身は、採用に当たって、特に何か告げるべきことを告げていなかったとかいうような事実はございませんので、私がけじめをつけるというような筋合いのものではないというふうに思います。

稲田委員 しかし、先ほどの午前中の質問で、大臣は、調査する能力にも限りがあった、自分も聞いていなかったと。そして、今、大臣のお話では、きのう公設秘書に採用した人をきょう法務大臣秘書官に採用する、余りにも軽率だと思います。

 秘書官にけじめをつけろとおっしゃるのであれば、御自身も、前科のある方を採用してしまったことも含めて、軽率な採用の仕方についてけじめをつけられるべきではありませんか。

平岡国務大臣 今の御質問については、我々が秘書を採用する、あるいは秘書官を採用するというときに、どこまで調べられるのか、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、そういうツールというものがどれだけあるのかということについては限られているというふうに思います。

 私が彼を信頼できる人である、能力がある、仕事ができる、誠実である、こういう判断をさせていただいたのは、面接をしたときの彼のいろいろな言動であり、先ほども申し上げましたけれども、彼のこれまでの経歴の中で示されたものの中には、公設秘書経験があったり、あるいは政策秘書資格を取得するための推薦を著名な政治家から受けていたりというようなことをあわせて判断させていただいたということでございまして、結果的には、そういう情報がわからなかったということについての私の力不足というのもあったと思いますけれども、そのこと自体がけじめをつけなければならないことだというふうには認識はしておりません。

稲田委員 いや、法務大臣の職責及び秘書官の職責を考えますと、公安情報にも触れることができる大変重要なポストですね。そこを、面接したときの態度がよかったから、言動がよかったから信頼できると考えて、きょう公設秘書に採用して、あす、法務大臣、まさしく法治国家の重要閣僚の法務大臣の秘書官に採用したこと、これは軽率きわまりなくて、大臣がけじめをつけられるべきだと思いますけれども、いかがですか。

平岡国務大臣 きょう、あすという言葉でいくとちょっと違いがあるんですけれども、そうはいったって、一週間、十日の違いでございますから、その一週間、十日の間にどれだけのことがその人物について判断できるのかということについては、やはり限りがあろうかというふうに思います。

 できますれば、やはりこれまで支えていただいた方々、公設の秘書であったり、そうでない人もあるかもしれませんけれども、そういう人の中から得られればよかったというふうに思いますけれども、先ほども申し上げましたように、そういう人の中には適切な人がいなかったというような事情を踏まえて、彼を選任させていただいたということでございます。

稲田委員 秘書官にけじめをつけろとおっしゃるのであれば、今反省の弁を述べられた自分が軽率だったということのけじめもおつけになるべきだと思います。

 先ほど、平沢議員からの質問にお答えになって、リンチ殺害された息子さんのお母さんのところにおわびに行くことをこの委員会で約束をされましたけれども、いつ行かれるんですか。

平岡国務大臣 まず、これはこれから先方と連絡をとらせていただいて決まる話でございますので、今ここでいつになるかということについては申し上げられるような状況ではないと思います。

稲田委員 何も私はあしたとかあさってとか聞いているんじゃなくて、一カ月以内とか年内とか、そういうめどをお知らせください。

平岡国務大臣 あくまでも、また先方の御了解といいますか、御都合にもよろうかと思いますけれども、今稲田委員が言われた期間内であれば私は可能ではないかというふうに思っています。

稲田委員 ということは、今月内ということなのでしょうか。それとも、一カ月以内ということなのか、年内ということなのか、どちらを指しておっしゃったんですか。

平岡国務大臣 稲田委員がおっしゃった範囲内で可能ではないかというふうに申し上げたのは、稲田委員の方で年内というふうに言われたので、年内なら何とかなるのではないかというふうに考えた次第でございます。

稲田委員 おわびに行かれても、その内容によってはさらに傷つけるということもあるんじゃないかなと大臣の答弁を聞きながら私は思ったんです。

 それで、大臣は一体、番組に出られた大臣の発言の中でどこが被害者のお母さんに対して配慮に欠けていて、どこをおわびしよう、そのように認識をされてお母さんのところへ行かれるんですか。

平岡国務大臣 私なりに考えてみますと、一つは、加害者の子供たちにもいろいろな事情があってというふうに申し上げたところが、被害者の方の心情を察することなく申し上げたというところが一番やはり被害者の御遺族の方に配慮に欠いた発言であったというふうに思っております。

稲田委員 それだけですか。お母さんが死んでもらいたいぐらいに思っていると言ったことについて、大臣が、本当にそれで納得するんですか、そして、加害者にとにかく死の恐怖を味わわせてやりたいということですか、そういう発言をされたことを、私、自分も息子の母親として、もし息子が先ほど平沢先生がおっしゃったような虐殺に遭ったら、死んでもらいたいと思うのは母親の情だと思うんです。そこを大臣が批判されているということは非常にお母さんの感情を害していると私は思いますけれども、いかがですか。

平岡国務大臣 私は、そのとき、お母さんを非難するつもりで言ったつもりではありません。むしろ、本当に被害者という立場に立ったときに、どういう状況に至れば自分の心というものがある意味では休まるのか、そういうことを考えたときに、私の頭の中にあったのは、やはり加害者であった人が、自分が犯した罪というものをしっかりと受けとめ、そして二度とそういう悪いことはしないという改悛の情、そして何とか被害を受けた方に対して償いをしていこう、そういう気持ちを持って生きていかれるということが被害を受けた方にとってみてそれなりの納得感があるのではないか、そういう思いがあったものですからそういう発言になったということでございまして、決して被害者の方をないがしろにするようなつもりで言ったことではございません。

稲田委員 大臣、答弁が長いんです。端的に答えていただいたら結構ですから。

 今大臣がるる述べられたその態度でおわびに行かれたら、必ず、さらに怒りを増すことになりますよ。

 大臣、お伺いしますけれども、先ほど平沢委員が犯罪事実を述べられて、その事情を知らなかったとおっしゃいました。もし知っていたらこのような発言はしなかったという意味でお答えになったんですか。

平岡国務大臣 先ほどもちょっと申し上げましたけれども、この被害者のお母さんが最初から出ていたわけではないんですね。最後の場面で、まさにこれから採決しようというような場面で出てこられて発言をされたということで、私にとってみれば全くの意外であったという状況の中での話でございます。

 ですから、そういう、中身を知っていればどうだったのかというような話については、私にとってみれば、今、あの時点でどうであったかということについては、とても想像できるような状況ではなかったというふうに思います。

稲田委員 質問に答えてください、大臣。時間がないんですから。

 私がお伺いをしているのは、先ほど平沢委員が述べられた大変むごたらしいリンチ殺人、そして、そこの被害者のお母さんもお見えになっている、そのことを知っていたら、例えば、それなりの事情があってそうだったんだろうとか、死んでもらったからといってそれで幸せですかとか、そういう受け答えはお母さんに対してしなかったという趣旨ですかと聞いているんです。知っていてもその発言はしたんですかと。

平岡国務大臣 知っていてどういう発言になったかということについては、今の私にはちょっとわかりません。

稲田委員 だから私は、大臣は情がないと思うんですよ。知っていたらこんな発言は絶対できませんよ。そして、知らなかったとしても、犯罪被害者、息子が殺されたお母さんの気持ちはどうなのかということを想像して自分の身になれる人でないと、死刑の問題を論じたり、そして少年犯罪の問題を論じたり、まして法務大臣である資格はないと私は思いますよ。

 死刑についてお伺いをいたします。

 先ほどの質問の中で、考えているんだと。考えて結論が出ない間、死刑は執行しないんですか。それとも、考えて結論が出ない間、死刑は執行することもあるんですか。どちらですか。

平岡国務大臣 一律にどうだというふうに申し上げるつもりはございませんけれども、死刑の執行の問題については、いろいろありますように、非常に重大な厳しい刑罰でありますから、慎重に考えてまいりたいというふうに思います。

稲田委員 私は質問しているんですよ。大臣は、考えているんだと。考えて結論が出ない間、死刑は執行しないんですか。それとも、考えている間に死刑を執行することもあるんですか。どちらですかと聞いてるんです。(発言する者あり)

小林委員長 では、大臣、簡潔に答えてください。

平岡国務大臣 両者は私の頭の中では区分されていますので、死刑制度の問題についての考え方と死刑執行の問題については区分して考えております。

 そういう中で、死刑の執行については、先ほども言いましたように、非常に重大な刑罰であるので慎重に考えてまいりたいというふうに考えています。

稲田委員 答えていないんです。私の質問の時間を無駄な逃げの答弁で侵害しないでくださいよ。

 大臣が今、勉強会で死刑の制度について勉強されて、考えているんですね。その考えて結論が出るまでの間に、死刑は執行しないのか。それとも、考えて結論が出ない間でも死刑を執行するのか。どちらですか。

平岡国務大臣 私の答弁の流れからいえば、後者になると思います。(稲田委員「後者は」と呼ぶ)

小林委員長 後者というのは、死刑執行をすることもあり得るということですかね。

 稲田さん。

稲田委員 それだとすると、予算委員会のときの答弁と違うじゃないですか。予算委員会は、河井委員の質問に答えて、考えて結論が出るまでは死刑は執行しないとおっしゃったんです。これ、予算委員会ですから、一カ月もないですよ。何で答弁、変えるんですか。どうして予算委員会で言ったことと今法務委員会で言っていることが矛盾するんですか。そんないいかげんなことで法務大臣、務まるんですか。

平岡国務大臣 予算委員会での答弁の一つ一つは覚えておりませんけれども、考えている間は執行できないんじゃないかと思っているというか考えているというか、そういうような答弁だったというふうに思います。

 その答弁との関連で言えば、いろいろと今勉強を続けているところでございますけれども、その中で、死刑制度の問題と執行の問題というものについて言えば、分けて考えるべきだというふうに考えておりますから、先ほどの答弁になったということでございます。

稲田委員 答えていません。私がお伺いしているのは、予算委員会では、自分で考えている間は、執行ということは考えていないと答えているんです。

 今大臣に、考えて結論が出ない間、死刑は執行しないのか、それとも死刑を執行するのかと聞いたら、後者だ、考えている間でも死刑は執行するんだと。全く反対のことをおっしゃっているんですけれども、どちらが正しくて、そして何で、予算委員会と法務委員会とでこんな重要な、本当に大臣の政治理念ともいうべき死刑の問題について、そして法務大臣の重要な職責である死刑執行について、全く百八十度違う答えをするんですか。

平岡国務大臣 私自身は百八十度違うというふうには思っておりませんけれども、先ほど来から申し上げているように、死刑制度をどうするかという問題についてこれからしっかりと勉強会の中でも考えていきたいという思いと、死刑執行を具体的にどうするのかということについては、それぞれの趣旨に基づいて考えていきたいということでございます。(発言する者あり)

小林委員長 予算委員会での答弁と今答弁されたことの間に矛盾があるということを発言する方は言っていらっしゃるわけですけれども、それに対して、矛盾があるのかないのか、もし矛盾があるのであれば、答弁を変えたのか、簡潔にお答えください。

平岡国務大臣 今手元に予算委員会での私の答弁というものが手に入りましたので、ちょっと見てみましたら、私が言っているのは、自分で考えている間は、執行ということは考えていないということであって、一律に執行を停止するとか、いつになったらどうするかということについて申し上げたことではございませんというふうに私の方では答弁をさせていただいているところでございます。

稲田委員 だから、矛盾しているじゃないですか。

 予算委員会では、私が考えている間は執行ということは考えていないと答弁しているんです。きょう、私の質問に答えられて、考えて、結論が出ない間でも死刑は執行すると答えられたんです。矛盾していますし、どちらが正しくて、どうして考えを変えられたかを聞いております。

平岡国務大臣 ですから、私の答弁は、一律に執行を停止するとか、いつになったらどうするかということについては申し上げていないという前提で、今のお話を、答弁をさせていただいたということです。

稲田委員 詭弁ですね、大臣。

 大臣は予算委員会で、自分は考えている間は、執行しないと。だから、一律に執行しないということじゃないんだ、今考えているんだ、結論を出すまで待ってください、そういう答弁しているんじゃないですか。きょうは、考えて結論が出ていない間でも死刑を執行しますと答弁したんじゃないですか。矛盾しているじゃないですか。

 どちらが正しくて、どうして矛盾しているかを聞いているんです、さっきから。答えてください。

平岡国務大臣 この問題については、るる申し上げているように、制度としてどうあるべきかという問題と、個々の死刑の執行についてどうするかという問題というのが二つあるということは、これは平沢委員からの御指摘の中にもございました。

 そういう意味で、私は、自分で考えている間は、執行ということは考えていないということについては、一律に死刑執行を停止するといったような趣旨で申し上げたことではないというふうに予算委員会でも答弁を申し上げたところでございます。

稲田委員 こんなことで質問時間をとりたくないんですけれども、大臣は予算委員会で、考えている間は執行ということは考えていないと。一律に執行停止するんじゃなくて、考えている間は執行をやらないと答えたんですよ。ところが今は、考えている間でも死刑は執行するという答弁に変えられたんですよ。どっちが正しいんですか。そして何で変えたんですか。同じ質問を繰り返させないでください。

小林委員長 では、まず今の、現在の大臣の立場を発言していただいて、それからこの発言と予算委員会の発言をもう一度照らし合わせて、それについて説明することがあれば説明するという形にしてください。

平岡国務大臣 私は、自分で考えている間は、執行ということは考えていないというふうに申し上げましたけれども、その趣旨は、一律に執行を停止するという趣旨で申し上げたのではないということでございます。

稲田委員 委員長の質問にも答えないじゃないですか。現在はどっちなんだと。考えて結論が出ない間も死刑を執行するということが結論でいいんですか。それと、予算委員会との間が矛盾しているでしょうということで、矛盾しないというんだったら、何で矛盾しないんですかと。どうして委員長の質問にも答えないんですか。

平岡国務大臣 一律に執行を停止するということでないということでございますから、私の、個々に考えていきたいということでございます。(発言する者あり)

小林委員長 だから、今、大臣の説明は、死刑執行することもあり得るということを今述べたわけですよね、一律じゃないんですから、あり得ると。それで、その前の予算委員会の答弁は、丁寧に説明すると、執行することもあり得ると言っているので矛盾していないというふうに大臣は今思っているということを答えました。

 それを踏まえてどうぞ発言してください。

稲田委員 お言葉ですけれども、委員長、善解のし過ぎです、それは。予算委員会では、考えている間は執行しない、一律に執行しないじゃなくて、考えている間は執行しないというのが予算委員会のお答え。きょうの大臣のお答えは、考えて結論が出ない間でも死刑を執行することもありますとおっしゃったわけです。そこは矛盾していますけれども、委員長がそうおっしゃるので、次へ進みます。

 では、一体いつ結論を出すのか。また、結論が出ない間に死刑執行することもあるとおっしゃるのであれば、個々の記録を、予算委員会のときは勉強していないとおっしゃっている記録を今勉強しているんですか。

平岡国務大臣 その話も、先ほど来の質問の中にございましたけれども、個々の事案について今検討しているとか考えているとかということを申し上げることは、いろいろな影響がございますので、従来から答弁を差し控えさせていただいているということでございますので、答弁は差し控えさせていただきたいと思います。

稲田委員 予算委員会では検討していないと答えたんです。そのときはきっちり答えたんです。(平岡国務大臣「勉強をしていない」と呼ぶ)勉強していないと答えたんですよ。今はお答えできないと。これまた答弁に矛盾がありますね。しかも、個々の、Aという事件について検討していますか、Bという事件について検討していますかという質問ではなくて、一般に、死刑判決が出た事案について検討するのが大臣の責務だから、その責務を果たしていらっしゃいますかという意味で検討していますかと質問しております。

平岡国務大臣 具体的な検討をしているかということについても、これは影響があることなので申し上げられないということを申し上げているところでございます。

稲田委員 もうあきれましたね。しかもその理由が、従前どおりそうなっていた。何のために政権交代をしたんですか。御自分の言葉で答えられないんだったら、何のために政権交代をしたんですか。

 それから、大臣、考えているんだったら法務大臣になるべきではないと思います。死刑が正しいかどうか考えている人が法務大臣にならないでいただきたい。自分の法務大臣としての職責が果たせないことをわかっていながら、死刑執行できないことをわかっていながら法務大臣になることは私は無責任だと思いますので、考えている間は法務大臣の職をやめられたらいかがですか。

平岡国務大臣 これも先ほど来の答弁の中でも申し上げましたけれども、死刑の問題について言えば、その制度の存廃についてもこの勉強会で検討をしているということでありますし、世界的な情勢の中で日本がどういうふうにあるべきかということについて検討するのも私は法務大臣の職責の一つであるというふうに考えておりますので、その検討をすること自体を私自身としてはしっかりと進めていきたいというふうにも思っております。

稲田委員 ですから、そういう態度自体が法務大臣にはふさわしくないと私は思うんです。

 大臣は、平成十八年十一月十日、朝鮮大学校創立五十周年記念祝賀会で、ただ一人日本の国会議員として出席をして、祝辞を述べられました。このことは予算委員会でもお答えになっておりますけれども、もう一度お伺いいたします。

 このような国民の常識からかけ離れた行動をなぜとられたのか、その理由についてお伺いいたします。

平岡国務大臣 予算委員会でもお答え申し上げましたけれども、朝鮮大学校について言えば、私の母校である岩国高校の大先輩である民法学者の末川博先生が朝鮮大学校に対していろいろな御支援、協力もされてきたというような経緯もありましたので、私も出席をさせていただいたということでございます。

 あいさつについては、もともとあいさつを求められていたわけではございませんけれども、その場で、ちょっと名前は忘れてしまいましたけれども、各大学の著名な先生方があいさつをされた後に、私も勧められてあいさつをさせていただきましたけれども、その中のあいさつは、あくまでも末川先生が朝鮮大学校に対してどういう思いでおられたのかというようなことについて話をさせていただいたというふうに記憶をしております。

稲田委員 今のお答えで、大臣は、法務大臣だけでなくて、日本の国会議員としても資格がないと思いますよ。そんな個人的なことは関係ないんですよ。

 朝鮮大学校というところは、北朝鮮に役立つ人材を育てる学校で、公安の調査の対象になっているんです。それで北朝鮮は、御承知のとおり、我が国の同胞を多数拉致していって返さない、ならず者、不法国家ですよ。そんなところに日本の国会議員がのこのこ出ていって祝辞を述べることが、いかに誤ったメッセージを北朝鮮に対して与えることかがわからないんですか。

 大臣、今大臣となられて、御自分の過去のその軽率な行動について、拉致被害者及び国民に対して謝罪してください。

平岡国務大臣 私自身も拉致問題の重大性というものについてはしっかりと認識しているつもりであり、拉致問題の解決に向けて私なりに鋭意努力をしてきているつもりでございます。

 その中で、若干の路線の違いといいますか、対応の仕方の違いがあるのはこれは当然のことだとある意味では思います。今、稲田委員を初めとして取り組んでおられることも、私は、拉致問題解決に向けての一つの大きな努力であろうかというふうに思いますけれども、私自身が重ねてきた努力、活動というものも、拉致問題の解決に向けて必ず大きな役割を果たしていくというふうに思っております。

 そういう中での行動ということでございまして、目的は一緒ということでございますので、その点はぜひ御理解をいただきたいというふうに思います。

稲田委員 驚きましたね。大臣の今の答弁は、御自分が朝鮮大学校に出席したことが拉致問題の解決のための行動だ、そうおっしゃったんですか。

平岡国務大臣 朝鮮大学校の五十周年に出席したこと自体が拉致問題に、直接その解決になるというふうには思いませんけれども、そのことが、私は、北朝鮮との関係において、我々がいろいろな信頼関係を築いていく、あるいは北朝鮮との関係で何らかのこれからの交渉のきっかけをつくっていく、そういうことにもつながるのではないかというふうにも思います。

 ただ、その見解が稲田委員とは違うということも私としては認識しております。稲田委員が活動されておられることに対して私が批判するつもりもございませんし、ぜひ稲田委員は稲田委員の考え方に基づいた活動をしていただきたいというふうに思いますが、私が当時野党の一議員という立場で行動したこと自体が、私は、北朝鮮の拉致問題の解決にマイナスになるということではなくて、むしろそのために一助となるというふうなことに結びついていくというふうに考えているところでございます。

稲田委員 もう全くあきれて物が言えません。これは、路線の対立とか価値観の違いとかそんな問題じゃなくて、日本の国会議員が朝鮮大学校、北朝鮮に貢献する人を育てているあの大学校に、たった一人ですよ、のこのこ出かけていって祝辞を述べるということがいかに誤ったメッセージを北朝鮮に与えるかということを大臣が認識されていないということがわかりましたので、その意味からも、大臣は、この国の治安、そして人権擁護の法務大臣としては全くふさわしくないと確信をいたしました。

 後ほどまた質問いたします。終わります。

小林委員長 次に、城内実君。

城内委員 城内実でございます。

 本日は、平岡大臣に、人権侵害救済機関の設置の問題について、そして、時間がありましたら、司法修習生の給費制の存続の問題について質問させていただきたいと思います。

 私は、平成十七年、自民党の国会議員でありまして、その年の三月十日に自民党法務部会・人権問題等調査会合同会議に出席しました。反対の立場で私は発言をいたしました。その後、平沼赳夫先生とともに真の人権擁護を考える懇談会を創設いたしまして、その事務局長として本件に携わってまいりました。

 これまで人権救済機関設置に係るさまざまな問題について、昨年来、千葉大臣、柳田大臣、江田大臣と同じ質問を繰り返ししてまいりましたが、いまだに明確な答弁をいただいておりません。平岡大臣は人権派の弁護士でいらっしゃるわけですから、当然、きょうは明確な答弁をいただけると確信しております。

 では、大臣、私のような慎重派、反対派が、どういった立場から、あるいはどういった懸念を持って反対なのか、慎重なのか、まずお答えしていただきたいと思います。

平岡国務大臣 いろいろあろうかとは思いますけれども、当時議論されていたところから、また今まで議論されているところまでいくと、それが我々が今提案しようとしているものと必ずしも一致するものではありませんけれども、例えば、人権委員会の委員あるいは人権擁護委員の方々に外国籍の方が入るのではないかというようなこととか、あるいは人権委員会の権限が強過ぎるのではないかとか、あるいは人権侵害というものの定義といいますか考え方自体が、これはちゃんとしたものではなくて、過大な行政権の介入になるのではないかとか、あるいは人権委員会が行う行為というものが表現の自由等に対して影響を与えるのではないかとか、そのようなさまざまな御指摘があったというふうに私としては承知しておるところでございます。

城内委員 今大臣御指摘したとおりでありますし、さらに、人権侵害したとされる加害者の人権の保護が不十分という点もあります。先ほど平沢議員そして稲田朋美議員が、大臣が太田総理という番組で被害者よりも加害者の方に同情的な発言をされましたが、それは論外として、それにしても、人権を侵害された、私が被害者ですという人の救済措置はあるにもかかわらず、人権侵害をしたとされている者についての救済措置がないという非常に不平等な、そういう制度なんですね。

 もう一つ質問したいと思いますが、大臣、私は保守派ですが、いわゆるリベラルな日本共産党はどういう立場であるか御存じですか。わからなかったら私が答えますよ。

平岡国務大臣 ちょっと、私自身は、具体的な共産党の主張については存じ上げておりません。

城内委員 日本共産党は、部落解放同盟の利権の維持になる、だから反対、二つ目、法務省の外局で人権救済機関をつくるということは権限が強過ぎるので反対、三つ目、差別の定義があいまいであり、表現の自由を侵害する。日本共産党ですら反対なんですよ。

 平岡大臣は、どうしてこの人権救済機関をつくるんですか。どういう理由か、ちょっと私に納得いく説明をしていただきたい。

平岡国務大臣 共産党さんが反対しておられるということについては御指摘のとおりかとは思います。

 人権擁護の問題について言えば、法務省にも人権擁護局というのがある、人権問題についてこれまでも取り組んできたということでございますけれども、国際的な動向からすると、こうした人権擁護局のような、ある意味では一人の政治家の指揮下にあるというような形で人権問題を考えていくのではなくて、政府から独立性の高い組織が中立的あるいは公平に人権問題について取り組んでいくべきであるというような基本的な考え方に基づいて、今の我々の行おうとしている提案というものがあるというふうに考えているところでございます。

城内委員 しかし、今、中立、独立の機関とおっしゃいましたけれども、法務省の外局に置くわけですよね。刑務官による人権侵害の問題もありますし、また、人権委員会のメンバーは国会の同意人事ですから、もし衆参でねじれていなければ、民主党さんが国会同意人事で自分たちの都合のよい、民主党寄りの人権派の学者や弁護士さんを委員に指名することができるじゃないですか。どこが中立で独立なんですか。

平岡国務大臣 法務省の中にというか、法務省の外局として委員会を置くということではありますけれども、これはあくまでも委員会制度で合議制の組織としてやるわけでありますから、法務大臣の指揮命令下で行うということではございません。したがって、矯正施設等において行われているような人権侵害問題について、法務省の中にあるから影響を受けるのではないかということは当たらないというふうに思います。

 それから、国会同意人事について言えば、我が国には国会同意人事の仕組みはたくさんございます。今はたまたま民主党政権ということでございますけれども、参議院では、ある意味では与野党ねじれといいますか、必ずしも与党だけで多数を占めているわけでもない、こういう状況もございます。

 そういう中で、私は、今までの国会同意人事というものが、一党一派に偏した形で同意が行われてきたというふうには思っておりません。政府が提案する人事については、与党に対しても野党に対しても、私は、できる限りの同意が得られるような、そういう人材を選んでくる努力をしてきているというふうに承知しているところでございます。

城内委員 例えばアメリカの場合は、そういった機関に、与党と野党で三対二とか、野党からもそういったメンバーを送れるような仕組みがあるというふうに聞いておりますけれども、実際、国会同意人事だったとしても、民主党が与党であれば、与党寄りの人間が委員に選ばれる、その結果、場合によっては不当な、表現の自由が侵害されるようなケースが起きてくるんじゃないかと私は思います。

 もう一つ質問ですけれども、では、大臣、人権侵害救済機関を設置しないと救済できない人権侵害事案の具体例を挙げていただきたいんです。私、一生懸命探しているんですけれども、なかなかないんですよね。どうか具体的に挙げてください、大臣は法務大臣なんですから。

平岡国務大臣 一つの答弁のあり方として、今、個別法による救済というものが行われているものと、そういう個別法がないものとがあるという状況があろうかというふうに思います。そういう意味では、個別法による救済制度はそれはそれとして機能させていくわけでありますけれども、そういう個別法による救済制度が整備されていない分野、例えば雇用の場面以外の差別であるとか、あるいは学校における体罰、いじめとか、そういうような問題については、こうした人権救済制度というものがあるということが望ましいというふうに思います。

 その上に立って、それをどういう仕組みで行うのかという組織論的な問題、権限の所在の問題について言えば、先ほど来から申し上げているように、委員会制度という形でやることが中立性あるいは公平性といったようなものに適しているというふうに私は思っていまして、これが一つの国際的な原則のもとになっているというふうに考えています。

城内委員 今、大臣、学校におけるいじめの問題と。では、そういう個別法をまたつくればいいじゃないですか。実際、個別法をつくって対応するというのが一番きめ細かくていいんですよ、お金もかかりませんし。私も何度もこの場で申し上げているように、ネズミはネズミ取り、ゴキブリはネズミ取りじゃなくて、ゴキブリはごきぶりホイホイとか、そうやって個別具体的にきめ細かく対応していけばいいわけであって、そんな人権委員会というお化けみたいな、下手すると暴走しかねないそういう機関をつくる必要はあるんでしょうか。

 では、もう一つ質問させていただきたいんですけれども、国際的な要請、国際的な要請といいますけれども、大臣がつくろうとしている巨大な権限を持った人権救済機関を持っている国を先進国の中で挙げていただきたい。どこの国が持っているんですか。

平岡国務大臣 先ほどの個別法による対応の問題でありますけれども、これは、いろいろな人権侵害については、新しい態様の人権侵害というものが出てくるわけで、その都度、個別法による対応ということであるとするならば、迅速な対応が不可能であるという問題もあろうかというふうに思います。

 さらに、個別法で対応するという形にした場合は、それぞれに個別の救済機関みたいなものをつくらなければいけないといったような課題もあろうかというふうに思います。そういう意味での行政のスリム化というような問題もあろうかというふうに思います。

 各国のものについては、ちょっと持ち合わせがないので、調べてまた御答弁申し上げます。

城内委員 今、大臣、行政のスリム化とおっしゃいましたけれども、人権委員会をつくることが逆行しているんですよ。今まさに民主党さんは事業仕分けをしているわけですよね。

 これは、例えば公正取引委員会はいわゆる三条委員会、今、政府・民主党、与党民主党がつくろうとしている人権救済機関も三条委員会ということですが、例えば公正取引委員会は予算が年間どれだけかかるか御存じですか。答えられなきゃ私がお答えしますよ。約八十億円です。

 では、今まさに事業仕分けなどをやって無駄を排している政権与党が、人権委員会を設置した場合にかかる予算、経費、人員について、私は当然、計算して準備して制度設計していると思いますが、その具体的な数字、大まかで結構ですから教えていただきたいと思います。

平岡国務大臣 コストについては、現在、制度設計の詳細を詰めているところなので、具体的な費用の検討までには至っていないというふうに報告を受けているところでありますけれども、今、法務省の人権擁護局で行っている人権擁護施策について言えば、人件費を除いたところで約三十億円の費用がかかっているというふうに承知しているところでございます。

城内委員 私は、法務省の人権擁護局、人権啓発等の活動で、まさに地方の法務局や地域でボランティアで頑張っていらっしゃる人権擁護委員の草の根の活動で、関係者は本当に頑張っていると思うんですよ。ですから、むしろ、そういった人権啓発に予算を振り向けたり、あるいは人権擁護委員の方々が、無給ではありますけれども、人権問題を解決するに際してのいろいろな経費を負担するとか、それをまずやるべきであって、何か巨大な組織をつくって、それをつくったことによって一体どれだけの効果があるのか、大臣だってお答えできていないじゃないですか。それは、何か最初から結論ありきで、おかしいと思いませんか、大臣。どうですか。

平岡国務大臣 今、巨大な組織という表現をされましたけれども、我々としては、基本的には、法務省にある既存の人員といったようなものを活用するということを考えておりますので、今回、委員会制度になったからといって、巨大な組織になるというような認識は持っていないところでございます。

 先ほど、ほかの国で人権委員会制度を持っているのはどこかという御質問がありましたけれども、イギリス、カナダ、フランスといったような国がこういう人権委員会の仕組みを持っているというふうに承知しております。

城内委員 いや、巨大な組織ではないとおっしゃいましたけれども、現にいわゆる三条委員会でありますし、独立、中立の機関をつくるわけですから、当然やはり人的な措置が、では、法務省の中につくるんですか、そういうことも含めて、いろいろな意味でお金と人員がかかるわけですから、私はそれは、特に権限も入れれば本当に巨大な組織になるというふうに確信しております。

 そして、今、大臣、カナダとかアメリカ、フランスの例を挙げましたが、私の手元の資料には、確かにあるんですよ、例えばアメリカには、雇用機会均等委員会あるいは司法省公民権局。ただし、これはあくまでも、雇用の場で差別されない、いわゆる人種や皮膚の色、出身国、性別、宗教によって差別されない、あるいは、公共施設、住宅等において、皮膚の色や人種、宗教等で差別されない、そういう具体的な事案に対応する機関であって、今大臣がつくろうとしている、何でもかんでものみ込めるようなそういう機関を持っている国というのは、先進国では、ないんですよ。

 カナダだって、人権委員会、審判所、同じですよ。イギリスだって、例えば障害者権利委員会、障害者の差別をしてはならないということを監視する、あるいは人権平等委員会、同じく、アメリカ、カナダのように、人種、皮膚の色、出身国、宗教、国籍などによって、雇用等で差別されない。機会均等委員会というのもイギリスにありますけれども、これも雇用の機会と。

 そうやってピンポイントで委員会がつくられていて、もう何でも、それこそドメスティック・バイオレンスでも、高齢者虐待でも、刑務官の人権侵害でも、何でもかんでも対象になるなんという機関を持っている国というのは、私が調べた限り、先進国の中ではないんですよ。にもかかわらず、なぜそのような機関を日本だけがつくる必要があるんですか。明確な御答弁をいただきたいです。

平岡国務大臣 個別法による対応の問題点というのは先ほども御説明申し上げましたけれども、さらにつけ加えて言うならば、やはり、国民にとって、見てわかりやすいといいますか窓口が一本化されている、ここに駆け込めば人権問題についてはとりあえず窓口となってくれるというところがあることの利便性というのもあるだろうというふうに思っております。

城内委員 いや、窓口というのは、それは各市町村にもそういった人権関係の部署もありますし、人権擁護委員が全国に人権擁護委員という札を掲げて、もう身近な存在として存在しているんですよ。窓口といいますけれども、では、東京まで北海道や沖縄の人が出てくるんですか。そういう、何か詭弁を弄さないでいただきたい。

 そして、人権というと、むしろ、中国のチベットやウイグルといった少数民族、あるいは、きょうも議員会館の前で法輪功の皆さんが中国当局による虐待、拷問について訴えておられましたけれども、そういったものがまさに差し迫った喫緊の課題でありますよ。そして、北朝鮮による拉致被害者なんて、これなんか誘拐されているんですよ。これは人権侵害の最たるものですよね。こういったことにまさに国として限られた予算と人員を充てるべきではないかと思いますけれども、大臣はどう考えていらっしゃるんですか。

平岡国務大臣 人権擁護委員の話をされましたけれども、人権擁護委員について言えば、我々の人権救済機関、人権委員会のようなものをつくるときには、この人権擁護委員の方々にもその組織の一つの重要な役割を担う方々として活動していただくということを考えていますので、既存の組織あるいは人員については十分に活用した中での窓口というようなイメージを持っていただければというふうに思います。

 それから、委員から御指摘のあった国際的なというよりはむしろそれぞれの諸国における人権侵害問題、あるいは国際的な人権侵害の問題については、我が国としても、それは国際的ないろいろな場面がございますので、そういう場面でしっかりと人権が救済されるような、人権が擁護されるような活動をしていくことは当然のことだというふうに思っておりますけれども、まずはこの人権侵害救済機関、人権擁護機関というようなものについては、国内に目を当てて、国内でしっかりと対応しようというところで今やっているということで、それと先ほど御指摘になった国際的な問題というものは、ちょっと分けて考えていただくということも必要ではないかというふうに思います。

城内委員 いや、私は、人権侵害には日本人も中国の方も関係ないと思うんですよね。やはりこれは国籍を超えて、現に拷問を受けたり、虐待している人がいたら、それを助けてあげたりするのが人としての務めだと私は思いますから。何でそういった人たちにもっと目を向けないで、一生懸命人権侵害事案をつくり出すかのような、そういう機関をつくる必要があるのか。私は、本当に甚だ疑問でなりません。

 そこで、もう一つ質問ですけれども、例えば、私が国会議員としてこういった委員会の場で平岡大臣に、平岡大臣はもしかしたら部落解放同盟の回し者じゃないかと、回し者みたいなこういう表現、これは差別的表現と言えるんじゃないですか。これが差別的表現として、あるいは著しく不快になる人権侵害として、私のこの発言が将来人権委員会ができたときに問題とされる可能性があるのかないのか、ないとしたらその根拠はどこにあるのか、教えていただきたい。

平岡国務大臣 個々の事案について、それが人権侵害に当たるか否かについては、やはり具体的な状況等がございますので、私がここで一概にそれが当たるとか当たらないとかというようなことを申し上げることは適当でないというふうに思います。

 ただ、一般論的に言いますと、例えば議会、委員会においての発言については、院外あるいは国会外で責任を問われることはないというようないろいろなルールがありますから、そういうようなルールに照らして今の御指摘の問題については考えていくということも必要ではないかというふうに思います。

城内委員 いや、それはおかしいじゃないですか。国会議員と、あるいはメディア条項がないということですからメディアはよくて、一善良な市民がちょっと口が滑って、今私が申し上げたようなことを、根も葉もないうわさかもしれませんけれども発言して、それを著しく不快あるいは差別的言動である、そういうことを主張して、まさに合法的な恐喝、ゆすり、たかりをしたり、あるいは、本当に人権委員会にこの問題を取り上げてもらったりして、それが報道されたりすると、その人はもうおしまいですよね。

 だから、アメリカやカナダやイギリスですら、雇用とかあるいは住居の貸し借りとか、そういったものに限定して機関をつくっているにもかかわらず、何でもありですよ。これだったら、ちょっとしたさじかげんで、これは人権侵害、この人はそうじゃないとか、基準、定義が甚だあいまいですよ。この点についてどう思いますか。

平岡国務大臣 個別の事案についての当てはめの問題については、先ほど言いましたように、それぞれ具体的状況が不明でありますから答えることは困難でありますけれども、基本的な考え方というふうな視点で申し上げれば、憲法の人権規定に抵触する公権力による人権侵害のほか、私人間においては、民法、刑法、その他の人権にかかわる法令の規定に照らして違法とされる行為というふうに我々としては考えているところでございます。

 したがいまして、この人権救済機関で取り扱う話としては、司法救済を補完するものとして位置づけられますことから、救済の対象は司法手続においても違法と評価される行為であることを前提としているということでございます。

城内委員 いや、それでもやはりあいまいですから、まず、ぜひ、ちゃんとリストをつくって、具体的な事例を挙げて、それをまさに国民とともに、法務委員会のみならず、やはり国民の理解をいただいた上で進めていただきたいと私は思います。もしそれを進めれば、国民は、こんな機関は必要ない、そういう結論を必ず下すと私は思います。

 何か政務三役が密室でいろいろと法務省の官僚の皆さんと議論してやっていたみたいですけれども、これは、公正取引委員会や公害等調整委員会のように特定の企業あるいは団体を対象にしているんじゃなくて、日本に住んでいるすべての日本国民及び外国人が対象となる極めて重要な機関でありますから、なおさら、そういった定義をきちっとつくる、限定的に適用するといったことをやっていただかないと、将来、独裁的な政権が誕生した場合に、この人権救済機関を使って、こいつは人権侵害だといって政治的にその人を抹殺することが容易にできる。

 私はドイツで十年生活しておりましたけれども、ドイツはナチスの経験がありますから、闘う民主主義ということで、何でもかんでも自由に認めるんじゃなくて、やはりそういった、特に人権という問題については非常に定義をはっきりとさせてやっておりますので、そこら辺はやはりきちっとやっていただきたいと思います。

 もう時間が余りありませんので、この人権侵害救済機関については、私は質問したいことがまだたくさん残っているので、ぜひ次回は、大ざっぱでいいですから、どれだけ人員と予算がかかるのかというのをお答えしていただきたいと思います。

 最後に、給費制の存続の問題ですけれども、私は給費制存続の立場であります。大臣も弁護士出身ですから、この法務委員会のメンバーの多くの方が給費制が存続すべきであると考えておりまして、また昨年も、貸与制ではなくて給費制を一年延長するということで全員が賛成したわけであります。

 他方、現在、民主党の有志の皆さんが、貸与制は暫定措置ということで、今後も給費制の再開をなお検討いただくという方向になったという報道があったんですが、私は半分評価しますけれども、暫定というのはいかにも妥協的ですよね。貸与制は暫定措置であると。ここではっきりと、給費制に戻す、そういうふうにもう決めたらどうですか。どうですか、大臣。

平岡国務大臣 今の報道については、ちょっと私も正確に存じ上げてはおりませんけれども、これまで法曹の養成に関するフォーラムでもこの給費制と貸与制の問題については議論をしてきていただいておりました。その議論の結果として、第一次取りまとめというものが出まして、返済をする司法修習終了者の経済状況もしっかりと踏まえた貸与制ということで御提言をいただいて、我々として、政府としてはその提言を最大限に尊重して法案を提出したいというふうに考えているところでございます。

 そのフォーラムの中における議論をいろいろ見てみますと、給費制にしても貸与制にしても、やはり一般の国民の皆さんにちゃんと支持してもらえる制度であるのかどうか、そういう視点というものがかなり強く出ていたように思います。今後の議論の中でも、そういう視点をしっかりと踏まえた議論が行われていくことを私としては期待しているところでございます。

城内委員 私も、当初は貸与制でいいんじゃないかと思っていたんです。しかし、いろいろな司法修習生の皆さんの切実な声を聞いているうちに転向したんですよ。だって、彼らは法科大学へ行って一生懸命勉強しなきゃいけないわけですよね。そして、司法修習生になって。借金を抱えている人だっているわけですよ。そして、さらに借金をふやさなきゃいけない。そうすると、金持ちしか弁護士や裁判官や検察官になれないか、そういう話になってくるわけですよね。

 私はやはり、社会のあらゆる階層から、お金がなくても法曹界に飛び込んで、金もうけのためではなくて社会正義を実現するために弁護士になるんだという人がもっともっと出てきてほしいんですよ。ですから、そういう切実な声、だったらもう司法の道に行くのをあきらめるという人だって本当にいるんです。私はびっくりしましたよ。その声を聞いて私は転向して、これは数をふやしたからお金がかかるから貸与制にします、こんなのは財務省の論理でしょう。

 大臣は財務官僚だったみたいですけれども、今は法務大臣なんだから、もうちょっと司法修習生の立場に立って、これはもう私が責任を持ってやりますと財務大臣を打ち負かすぐらいのことをやっていただきたいんですけれども、どうですか。

平岡国務大臣 私も、給費制が果たしてきた役割というのは大きなものがあったというふうに思います。

 ただ、先ほどから申し上げているように、法務委員会の、この委員会の昨年の決議に基づいて法曹の養成に関するフォーラムというところで検討してきた、そういう経緯もございます。その中で、法務副大臣を含め、関係する省庁の副大臣あるいは大臣政務官も入り、有識者も入って、国民の皆さんに納得してもらえるといいますか、支持してもらえる仕組みはどうなんだろうかということで出してきた結論が、先ほどの返済の経済的な負担というものを考慮した貸与制ということになったわけでございます。

 ただ、委員が御指摘のように、給費制か貸与制かというだけの問題では実はなくなっていまして、例えば、法科大学院においても大変な費用がかかる、あるいは、法科大学院を受験する人たちが、その後の負担を考えると受験がしにくいというような状況とか、いろいろな、さまざまな状況が生じてきていますので、その点はやはり、法曹の養成に関するフォーラムも含めて、全体的な検討ということも必要であるというふうに私としては認識をしております。

城内委員 時間がないのでこれでおしまいにしますけれども、フォーラムの取りまとめはそれはそれとして尊重して、私は、やはり大臣が御自身の立場で、政治主導で、給費制存続という大いなる決断をぜひ下していただきたいと思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

小林委員長 次に、棚橋泰文君。

棚橋委員 自由民主党の棚橋泰文です。

 平岡法務大臣に、まず、政策的な課題、特に治安に関連して質問をする予定でしたが、先ほどの同僚議員、稲田議員に対する答弁が余りにもひどかったので、再度お伺いいたします。

 大臣、ちょっと聞いていただけますか。これは、大臣が衆議院の予算委員会でお話しされた速記録をそのまま読み上げます。「法務省の中に死刑の在り方についての勉強会というのがあって今勉強をしているということで、それは引き継いでいきたいということで、その勉強会のこれまでの経緯というものを自分なりにおさらいをしてみたいと。自分で考えている間は、執行ということには考えていないということであって、」つまり死刑を執行しないとしか理解できませんが、先ほどの答弁とこれはどうやって整合するんでしょうか。お答えください。

平岡国務大臣 その答弁の後ろに、「一律に執行を停止するとか、いつになったらどうするかということについて申し上げたことではございません。」というふうに答弁をさせていただいているところでございまして、個々の問題については、先ほど来から申し上げているように、非常に重大な刑罰でございますので、慎重に考えていきたいということでございます。

棚橋委員 この答弁をそのまま日本語として理解する限り、「自分で考えている間は、執行ということには考えていないということであって、一律に執行を停止するとか、いつになったらどうするかということについて申し上げたことではございません。」という趣旨の答弁はありますが、その前に、「自分で考えている間は、執行ということには考えていないということであって、」とまずあるんです。

 そうすると、日本語が少し怪しいですけれども、合理的に解釈すると、一律に執行を停止するとか、いつになったら執行を始めるとか、そういうことは申し上げていないけれども、「自分で考えている間は、執行ということには考えていない」というわけだから、個別にすべて執行はしないとしか合理的に読めないじゃないですか。

 もし後者の方が正しいのであれば、前者の方がうそであって、これはまさに矛盾する二枚舌答弁であって、前者の部分を予算委員会で取り消してもらわなければいけないのではないでしょうか。大臣、お答えください。

平岡国務大臣 ここは、大変難しい問題であるということは委員も御理解していただいているというふうに思います。

 ここで、「自分で考えている間は、」というのは、勉強会というものもあり、そして、その勉強会では自分なりにおさらいをしているということでございまして、この「自分で考えている間」というものがどういう期間なのかということについては、今私が具体的に申し上げられる状況ではなっていないということでございまして、この私が言った趣旨が、一律に執行を停止するというような意味で言ったわけではないということは、ここに答弁で申し上げさせていただいたとおりでございます。

棚橋委員 決して難しい問題ではありません。難しいとしたら、平岡大臣の日本語能力が難しいだけでございます。

 それでは、改めてお伺いいたしますが、この予算委員会の答弁を修正なさって、それは答えなくて結構です、あるいは、死刑の執行を停止するということではないわけですね。執行はあり得べしというふうに今お考えになっているという理解でよろしいんですね。

平岡国務大臣 今、私がこの時点で死刑を一律に執行を停止するということを考えているわけではございません。

棚橋委員 この問題については、さらにこの後の質疑、さらには参議院、そして予算委員会、特に予算委員会でこのような答弁をなさりながら、今のように食言をなさっているわけですから、厳しく追及してまいりたいと思います。

 私は、まず大臣に政策的なテーマからお伺いをしたいと思いますが、平成十九年に当法務委員会でも審議をされた更生保護法案、これは大臣、あなたはたしかこの委員会での野党側の筆頭理事でしたが、賛成されましたか、反対されましたか。

平岡国務大臣 当時の更生保護法案の中身について、ちょっと私自身も今明確に覚えていませんので、賛成したか反対したかについても、ちょっと今記憶としては定かではございません。

棚橋委員 少なくとも記録には賛成という記録がございませんし、私が記録している限り、採決のときにこの法務委員会に平岡大臣はいらっしゃいませんでした。

 大臣の所信では、更生保護に関して力を注いでいくと。特に保護司の先生方を中心とした保護行政にきっちりと力点を置いていく、そういう趣旨の所信があると思いますが、では、あのときなぜ更生保護法案に賛成できなかったんでしょうか。

平岡国務大臣 今答弁で申し上げたように、そのときの更生保護法の改正法案の中身がどういうものであったかについて、今ちょっと私自身、よく覚えていないので、賛成であったか反対であったかということはちょっと覚えていませんというふうに申し上げました。

 更生保護法の内容についても、それは更生保護の重要性ということは私もしっかりと認識しているつもりでございます。それはこれまでのいろいろな答弁の中でもおわかりいただけるというふうに思いますけれども、その更生保護法の一部改正の中身というものがどういうものであったかによって、私はその賛成、反対の態度は決まっていたんではないかというふうに思いますし、当時、委員が御指摘のように、欠席していたとすれば、それは別の要因でそういう事態が発生していたのではないかというふうに私としては思います。

棚橋委員 それでは、大臣が更生保護法について勉強する間、時計をとめて、その勉強が終わってから委員会を再開してください。

 といいますのは、まず、これは私の方から通告してあります、更生保護のあり方について。そして、大臣が所信の中で、自分は更生保護に関してきちんと頑張っていくという趣旨のお話をなさったわけですよ。そして、直近の平成十九年の大きな法律の中身ですよ。それを自分は、しかも審議の場にいて、野党側の筆頭でありながら、どうだったか覚えていないから何とも言えないという。これでは、申しわけないし、質疑ができないじゃないですか。私、ちゃんと通告しているんです。

 ですから、委員長、ここは、もしそうおっしゃるのであれば、法務省に確認していただいて結構ですから、これはきちんとした答弁をいただきたいから、一回時計をとめてください。

平岡国務大臣 棚橋委員から通告をいただいたのは、更生保護のあり方についてという項目でございますけれども、私としては、現在ある更生保護法に基づいて行われる更生保護については、しっかりと更生保護の理念に基づいて取り組んでいきたいということを申し上げたのであって、一つ一つの改正の中身についてどうであるかということについて所信で申し上げたというつもりではございません。

棚橋委員 これは、更生保護法というすごく大きな改正であって、なおかつ、平成十九年ですよ。何十年も前の話じゃないんですよ。この更生保護法に従って大臣はしっかりやっていくとおっしゃったわけじゃないですか。ところが、自分は委員だったとき、反対しているわけじゃないですか。なのに、なぜ賛成に回ったのか。

 あなたは自分が賛成したか反対したか、欠席していたかも覚えていないんですか。どちらなんです。欠席したんですか、反対したんですか。

 まず、こういう重要な法案に関して、更生保護をきちんとするといいながら、しかもこれは、二十年前の法律ならわかりますよ。平成十九年ですよ。そのときどうだったかわからないけれども、とにかく法律で決まったからしっかりやっていくと。しかし、そのとき自分は反対かもしれない。これは政治家としてあるべき態度でしょうか。こういうのは二枚舌と言われてもしようがないんでしょうか。

 もう一度お伺いしますが、この法案に大臣は賛成なさった記憶がございますか。

平岡国務大臣 冒頭申し上げましたように、その法案について賛成したか反対したか、記憶は定かではございません。

棚橋委員 これでは質疑になりません。一度時計をとめて確認していただいて、それから答弁いただけませんか。まず、時計をとめていただけませんか。

 だって、これでは答弁にならないじゃないですか。更生保護に関して、大臣の方が所信で、一生懸命やっていくと所信を述べられたわけです。私の方は、それに対して、一番重要な法案に関して、このとおりやられるということですから、じゃ、そもそも平成十九年のとき、大臣の政治的スタンスはどうだったんですかと。

 一番大事な法律ですよ、これは。保護観察も含めて、保護司の方々のリーダーシップのあり方も含めて。それが、覚えていないから、わからないから答弁できないでは議論にならないじゃないですか。

 まず、そこを確認していただかないと議論になりませんから、委員長、ここはやはり時計をとめてください。それで、もう一度、時計をとめて、大臣が思い出してから答弁してもらわないと困ります。お願いいたします。

小林委員長 ちょっと整理をさせていただきます。

 大臣としては、そのときのことについては覚えていないと。しかし、現在出ていることについてはこのように考えるということで、過去のことについての責任は今自分は負うつもりがないけれども、今日は、今はこうであるというふうに答えている、そういうことを踏まえて質問してください。

棚橋委員 今の委員長の御説明では、過去、自分が反対したか賛成したかわからないけれども、大臣になった以上はその法律どおりやると。つまり、政治家として信念が全くないわけですよね。自分が反対した法案であっても、大臣になりたいためであれば、なるためであれば、その法案を執行すると。

 自分は政治生命をかけて、命をかけて、この法案はおかしいと思うから、大臣になった以上は改正する、そういう話に本来なるんじゃないですか。だからこそ、賛成か反対か欠席かは大事なのに、今の委員長のお話だったら、大臣になるためだったら、過去、自分がどういう言動をしようが、何でもいいことになっちゃうじゃないですか。(発言する者あり)静かにしてください。

平岡国務大臣 今の棚橋議員の御質問で、命をかけてでも反対したものというふうな話がありましたけれども、この更生保護法案について言えば、私は、命をかけて反対するような法案であったというふうには思っていません。いろいろなところで、修正が必要である、あるいは補完が必要であるというようなことは多分申し上げているとは思いますけれども、命をかけて反対しなければならない法案であったという記憶は私にはありません。

棚橋委員 残念ながら議論になりませんので、私の質疑時間は夕方にもう一度回ってまいります。それまでに、まず、大臣が今の法案についてどういう理由でどういう態度をとったのかを、事務方でも結構ですが、秘書さんでも結構ですが、調べて、夕方の質疑時間に必ず御答弁いただくよう、委員長からまずお願いできませんか。

 委員長、お願いいたします。

小林委員長 整理させていただきます。

 大臣としては、過去の態度にとらわれずに、今はこうであるということをお話しされましたけれども、しかし、質問者としては、過去のことも踏まえろということがあって、それは調べることができることでありますから、次の質疑時間までに事務的に調べて、それを踏まえて、同じように大臣が発言されるか、それとも、それを見た結果、答えが少し変わるのかということを見定めるということにしたいと思います。

棚橋委員 では、委員長、次の質疑時間で必ず責任を持って答弁させてください。

小林委員長 はい。

棚橋委員 ちなみに、今の平岡大臣の御答弁でよくわかりました。あなたは、野党時代、よく反対をされましたが、命をかけて反対するようなことはなかったということは、政治生命をかけて反対するようなことはなかったということは非常によくわかりました。(発言する者あり)静かにしてください。

 次の質問をいたします。

 入管法。大臣、バイオメトリクスというのは、大臣の所信にもございまして、こういったものを生かしながら、適正な入国管理、最終的には、不法出入国、治安の悪化、こういったものに対処していきたい、大臣の所信にございますね。

 入管法の改正が平成十八年に行われておりますが、これはどういう中身の重立った改正で、そのとき大臣は賛成されたか反対されたか、御存じですか。

平岡国務大臣 大きな論点だったのは、生体認識情報を使って入国管理をしていくということであったというふうに思います。この件については、反対をしたという記憶はあります。

 ただ、そのときに私たちが問題提起をしていたのは、個人情報管理がしっかりできないのではないか、あるいは、この情報が日本国内だけじゃなくて外国にも流出してしまうのではないか、そういう問題提起をさせていただいたものとして反対をしたというふうに記憶をしているところでございます。

棚橋委員 それでは、個人情報管理がしっかりできないのではないかと反対したけれども、今、バイオメトリクス等を活用しながら出入国管理を適正にやっていくということは、民主党政権になった途端、個人情報管理がしっかりできるようになったんですね。

平岡国務大臣 民主党政権になったからできるようになったというふうには思っていませんけれども、我々が問題提起をしたことを踏まえて、当時の政権から、そうした個人情報管理の適正さの確保といったようなことについても十分注意をしながら取り進めてこられてきたというふうに私は認識しております。

棚橋委員 次に、空母艦載機の岩国基地への配備についてお伺いいたします。

 これは、国務大臣でもいらっしゃいますし、しばしば御発言をしていらっしゃいますので、平岡大臣に伺いますが、端的に言って、賛成ですか、反対ですか。政治家としてお答えください。

平岡国務大臣 基本的には、いろいろな問題があるというふうに思っております。そういう意味で、私としては、ぜひともこれは避けてほしいという部分があるということは、これは事実ではございます。

棚橋委員 ということは、反対ですね。

 ということは、今の内閣の中で、当然、岩国に空母艦載機は要らないという声を上げ、なおかつ、それが入れられなければ、あなたは内閣、合議体の一員である国務大臣ですから、信念を通しておやめになるんですね。

平岡国務大臣 そこは、るる申し上げておりますけれども、一政治家、一党人としてどういう考え方を持っているのかということは、これは一つの考え方として是認されるけれども、閣議決定されたというようなことについては従っていくということであれば、閣内不一致という問題はないというのが政府の統一的な見解として示されているわけでありまして、私自身は、これはもう予算委員会で答弁申し上げましたけれども、今私がなすべきことは、地元の住民の皆さんが持っておられるさまざまな意見というものをしっかりと政府、内閣に伝え、そして、それが少しでも反映されることに自分の努力をしていくということであると考えております。

棚橋委員 では、まず基礎的なことを伺いますが、これから野田内閣において、岩国における空母艦載機の配備について閣議決定が新たになされるということですか。

平岡国務大臣 基本的には、閣議決定がなされることは余り私としても想定するものはございませんけれども、今、岩国では大きな問題が当然ございます。例えば、夜間離発着訓練施設をどこに設けるのかというようなことも、これは岩国が非常にかかわってくる問題でありますし、基地の沖合移設のために開発された愛宕山の処理をどうするのかというようなことも、大変重要な問題であるというふうに考えています。

棚橋委員 いや、そうじゃなくて、質問の趣旨は、平成十八年に再編実施のための日米のロードマップ、ここで岩国に対する艦載機の問題も結論が出ているんですよ。ですから、まず、今の内閣のもとでもその方針を引き継いで、岩国には空母艦載機を配備せざるを得ないんじゃないですか。それとも、それは私の間違いで、これから野田内閣として閣議決定なりをし、それなりにそれに類するものがなされる、そうしないと岩国には配備されない、そういう御認識ですか。

平岡国務大臣 そこは、私も、必ずしも明確にこれから野田内閣で何を決定していかなければいけないのかということをわかっているわけではございませんけれども、少なくとも、当時の閣議決定された文書の中には、夜間離発着訓練施設については、たしか平成二十一年だったかまでには、遅くともそこまでには何か決めていくというようなことがありましたけれども、いまだにそれが実現されていないということでございますから、その閣議決定された文書の中でも実現されていないことがあって、それをどうしていくのかということについては、しっかりと協議していかなければならない課題も残っているというふうに思っています。

棚橋委員 残念ながら、正面切ってお答えをいただけませんので、では、質問をかえます。

 あなたは、国務大臣になってから、岩国への艦載機の移転は問題がある、賛成できないというような趣旨を閣議もしくは閣僚懇談会で発言なさったことはございますか。

平岡国務大臣 具体的にそういう場があったわけでもありませんし、発言したこともありません。

棚橋委員 閣僚懇談会というのは、これは大臣御承知のように、閣議後の閣僚が自由に発言できるところであり、なおかつ、閣内不統一を避けるためにも自由な意見交換が必要であって、あなたが政治家として岩国のこの艦載機の問題がおかしいというのであれば、まず閣僚懇できちんと発言をして、その上で最終的に内閣としてどう決まるかというのはわかりますが、今まで選挙区向けには岩国へのこの艦載機の問題は反対だといいながら、閣僚になった途端一切発言をしないというのはどういうことなのでしょうか。なぜ閣僚懇談会で発言できないんですか。今申し上げたように、閣僚懇談会は基本的に発言できるんですよ。

平岡国務大臣 それは、いろいろな局面というのはこれからもあろうかというふうに思います。そういう局面の中で、先ほども申し上げたように、できる限り地元の皆さんの声をしっかりと閣内の意見に反映されるようにしていくのが私の役割だというふうに思っていますので、そういうタイミング等を見ながら、私も、地元の声が伝わるようにしていきたいというふうに思います。

棚橋委員 でも、今まで発言していないわけでしょう。

 そうすると、まず第一に、閣議ないし閣僚懇談会で、自分としては賛成できないという発言を必ずするんですか。また、いつまでにするんですか。

 そもそも、民主党内閣は、総理も含めて閣僚、法務大臣は何人目でしたっけ、ころころかわりますから、この平成十八年のロードマップで岩国への艦載機の問題はある程度の道筋が示されている中で、あなたが何も発言しなければ、そのまま進んでいっちゃうんじゃないですか。逆に言えば、あなたがもし本当に岩国に対するこの艦載機の問題を政治家として非常に問題があると考えているならば、最初の閣僚懇談会で、やはりこれは問題があると私は考えていると言うのが普通ではないでしょうか。なのに、なぜそんなに遠慮をなさるんですか。

平岡国務大臣 岩国の問題は、いろいろな問題があるんですけれども、閣僚懇談会で発言する場面というよりは、防衛省なりとの間で話をして、それがどれだけ地元の意見として反映されるのかというような次元の問題もたくさんあるわけでございまして、そういう場面においては、適宜防衛大臣等にもお話をさせていただいているということでございます。何もしていないということではございませんけれども、閣僚懇談会という場で皆さんとしなければならないというような状況の今、話をしているという状況ではありません。

棚橋委員 私には大臣のお話の意味がわからないんですが。

 まさに、先ほどの更生保護法案で、政治生命をかけてまで反対するようなものではない、こういうお話がございました。入管法に関しては、当時は反対だったけれども、状況が変わった、こういうお話でした。岩国に関しては、賛成できないけれども、大臣なんだから従わざるを得ないと。

 しかし、閣議というのは、内閣総理大臣が命令するものではなくて、平岡大臣も含めて、大臣が合議して決めるものなんですよ。そしてまさに、お話にあったように、基本的には、慣例上は全会一致なんです。だから、あなたが賛成しないと言えばまとまらないんですよ。

 私はあなたの考えとは違いますけれども、政治家のあり方として、岩国への艦載機の問題が許せないというのであれば、国務大臣として最後まで反対するのが筋ではありませんか。それとも、国務大臣の職を失ってまで反対するほどのものではない、そういうことですか。

平岡国務大臣 これも予算委員会でも申し上げましたけれども、最も問題が大きかったのは、空母艦載機の移駐をめぐって、当時の岩国市長がそれを受け入れることはできないという行動をとったときに、当時の防衛省が、既に決められていた市役所建てかえ補助金、全体で四十五億、残っていたのが三十五億だったというふうに記憶していますけれども、これを強引にカットしてしまったということに対して、私は大きな怒りを感じ、それをいろいろな場面で、委員会でも質問をさせていただいたということでございます。

 それは、民主党政権になって、さすがに民主党政権の中では、当時のあの行為は地元にいろいろな混乱をもたらしたということで、遺憾であったという謝罪の文書もいただいたということでございまして、ある意味では、私が最も問題にしていた部分については一つは解消された。

 ただ、それだからといって、まだ問題がいろいろあるということでございますから、その点は地元の意見をしっかりと政府・与党に反映させていけるようにこれまでも努力してきたということでございまして、今、私自身が個人的に空母艦載機の移駐については反対だということは、それはあくまでも個人的な話であって、それを主張したからといって実現できるという状況にあるというふうにも認識しておりません。そういう状況の中で、地元の皆さんが要望していること、望んでいること、困っていること、こういうことをしっかりと伝えて政策に反映していくのが今私が果たさなければならない役割であると思って行動をとっているということでございます。

棚橋委員 話が大変長いので理解に苦しみますが、簡単に理解すると、まず、岩国に対してお金を削られたのがけしからぬと。そのお金の問題は解決したから怒りはおさまったと。その上で、今、自分の力では何ともならないからしようがないと。こういうことですか。

 大臣がこの問題に関して、私は考えは違いますけれども、空母艦載機の問題に関して一生懸命頑張ってくれると思って大臣を応援していた方々は、今、大臣の答弁を見てどう思っていらっしゃるかと考えると、残念でございます。残念なことに、お話ししたいこと、お聞きしたいこと、たくさんございますから。

 尖閣諸島、昨年、御存じですね、大臣。中国人船長が公務執行妨害、身柄を拘束、逮捕、勾留されましたが、最終的に起訴されませんでした。これは那覇地検の判断だと御理解されていらっしゃいますか。

平岡国務大臣 私が法務大臣に就任してからいろいろな引き継ぎ事項ということで説明を受けさせていただきましたけれども、その中では、今、委員が御指摘になったように、那覇地検が検察当局の中の協議をもとに判断したというふうに私としては引き継ぎを受けているところでございます。

棚橋委員 そういう引き継ぎを受けていらっしゃるのであれば質問がしやすいんですが、では、これはなぜ起訴しなかったんですか。起訴しないにも幾つかのケースがありますね。嫌疑がない、嫌疑不十分、起訴猶予。どういう理由で起訴しないと引き継ぎを受けておりますか。

平岡国務大臣 そこは、当時、那覇地検の方で具体的に記者発表をされておりますので、正確を期するために、その発表文で説明させていただきたいというふうに思いますけれども、今ちょっと手元にないので、ちょっと待っていただきたいと思います。

棚橋委員 では、委員長、その間、時間をとめてください。速記をとめてください。お願いします。

小林委員長 では、速記をとめてください。

    〔速記中止〕

小林委員長 速記を起こしてください。

 大臣。

平岡国務大臣 当時、不起訴の話は、刑事訴訟法第二百四十八条の中で、公訴を提起しないことができるという起訴便宜主義の規定が書いてありますけれども、その中に、「犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。」というこの規定に基づいて、総合的に判断をされたものだというふうに承知しております。

棚橋委員 申しわけございません。先ほど大臣は、これは正確を期さなければいけないので、その当時の那覇地検の発表文を今手に入れて、それを読むから待ってくれとおっしゃったんです。今、六法をお読みになりましたが、私ども待っておりましたのは、那覇地検の発表文でございます。

 もう一度速記をとめて、それを読んでいただいた後、質疑をさせてください。大臣がそうおっしゃったわけですから。委員長、速記をとめてください。

小林委員長 では、速記をとめて。

    〔速記中止〕

小林委員長 速記を起こしてください。

 大臣。

平岡国務大臣 不起訴にした理由でございますけれども、日本側の船に現実に発生した損傷というのは航行に支障が生じる程度のものではない、あるいは、その乗組員が負傷するなどの被害の発生はない、あるいは、犯意は未必的なものにとどまっていること、追跡を免れるためとっさにとった行動であって計画性がない、被疑者には我が国における前科等はない、こういったような、あと、本件後、尖閣諸島付近海域では操業する中国漁船が激減し、昨年十一月以降、中国漁船は確認されていない状況にある上、今後、海上保安庁の体制の充実強化等、同種事案の再発防止に向けた取り組みを期待しているというような理由で不起訴にされたというふうに承知しております。

棚橋委員 その不起訴理由の中に、外交的配慮という言葉は一切ないんですね。

平岡国務大臣 船長を釈放したときの判断として、引き続き被疑者の身柄を勾留したまま捜査を継続した場合の我が国国民への影響や今後の日中関係などの事情を考慮し、国内法と証拠に基づき判断を行った結果というふうに承知しているところでございます。

棚橋委員 もう一度今の答弁をお願いいたします。再度確認させてください。今お答えになったことをもう一度お願いいたします。

平岡国務大臣 中国人船長の釈放については、検察当局がいろいろな事情を述べておりますけれども、その中の一つに、引き続き被疑者の身柄を勾留したまま捜査を継続した場合の我が国国民への影響や今後の日中関係などの事情を考慮し、国内法と証拠に基づき判断を行った結果ということであると承知しているところでございます。

棚橋委員 それは身柄の拘束に関するものでございますね。(平岡国務大臣「釈放」と呼ぶ)釈放に関するものですね。

 これは、どういう法律に基づいて、日中関係を配慮して、現場の地検ないし捜査機関が外交的配慮、日中関係を判断に入れた上で釈放できるんでしょうか。その法的根拠をお示しください。

平岡国務大臣 刑訴法二百四十八条が根拠になっておりますけれども、これは、起訴、不起訴の判断に当たって考慮すべき諸事情として、犯罪や被疑者に関する情状に加え、犯罪後の情況を定めておりまして、これには、社会一般の状況の変化、あるいは起訴、不起訴等の処分が社会に与える影響が含まれるものと考えられているということでございます。

棚橋委員 今の条文には、外交的配慮で釈放してよい、そういうふうに理解されるというふうに、大臣、理解してよろしいですか。

平岡国務大臣 この件についても、被疑者の釈放に当たって、犯罪や被疑者に関する情状に加え、社会一般の状況の変化や社会に与える影響等という部分において、被疑者の身柄を勾留したまま捜査を継続した場合の我が国国民への影響や今後の日中関係等を考慮したものというふうに承知しているところでございます。

棚橋委員 再確認ですが、内閣総理大臣ないし法務大臣あるいは官房長官といった政治的責任をとれる人間ではなくて、この条文に基づいて、捜査機関が外交的配慮で釈放することができるというふうに今大臣はおっしゃったと理解いたしますが、よろしいですね。

平岡国務大臣 先ほど来から御答弁を申し上げているように、刑訴法二百四十八条の解釈として、このような事案にも当てはまるということとして検察当局で判断したというふうに承知しているところです。

棚橋委員 再確認いたします。

 那覇地検は外交的配慮で釈放する権限が刑訴法によって与えられているという御答弁だということでよろしゅうございますね。

平岡国務大臣 外交的配慮ということではなくて、先ほど来から申し上げているように、起訴、不起訴等の処分が社会に与える影響というものとして、被疑者の身柄を勾留したまま捜査を継続した場合の我が国国民への影響や今後の日中関係等が考慮されたということでございます。

棚橋委員 今後の日中関係に対する考慮というのは外交的配慮ではないんですか。違いを教えてください。

平岡国務大臣 外交的配慮という言葉がどういう意味で使われているかというのがちょっと定かではございませんけれども、外交というのは国と国との間で行われるという話だろうというふうに思いますけれども、今後の日中関係というのは、国と国との間で行われる外交の問題とはちょっと別次元の問題だというふうに思います。

棚橋委員 もう一度確認いたします。

 まず第一に、刑事訴訟法によって、日中関係を一つの考慮要素として釈放したということでよろしいですね、大臣。刑事訴訟法に基づき、日中関係を一つの考慮要素として釈放した、これはまず、大臣、お認めになりますから、よろしいですね。

平岡国務大臣 刑訴法二百四十八条の中に、考慮すべき事情としての社会一般の状況の変化や社会に与える影響というものの中に、今後の日中関係というものが含まれているということでございます。

棚橋委員 次に、今後の日中関係についての考慮と外交的配慮とはどう違うんですか。先ほど少し違うとおっしゃいましたが、今後の日中関係というのはまさに外交的配慮だと思いますが、こういった判断要素を出先の捜査機関がしてよろしいというふうに刑事訴訟法は規定していると大臣は解釈なさっているわけですね。

平岡国務大臣 あくまでも、社会一般の状況の変化や社会に与える影響ということが基本でありまして、その中の一要素としての日中関係というものを申し上げたのであって、この社会一般の状況の変化や社会に与える影響ということには、委員が今御指摘されている外交関係というような次元の話というのは、この中では位置づけられていないのではないかというふうに思います。

棚橋委員 今後の日中関係のあり方、位置づけと外交的配慮がどう違うのか、明確にお答えください。

 まさに今後の日中関係というのは外交的配慮じゃないですか。違いませんか。大臣の御説明では全く理解ができません。外交的配慮と今後の日中関係のあり方についての配慮とどう違うのか、もう一度わかりやすく御答弁ください。

平岡国務大臣 委員が使われている外交関係という言葉が……(棚橋委員「外交的配慮」と呼ぶ)外交的配慮という言葉の定義が必ずしも私にははっきりいたしませんけれども、外交というのは、国と国との間で基本的には行われる交わりということなんだろうというふうに思います。国の場合は、基本的には政府と政府の間の交わりということなんだろうというふうに思いますけれども。

 あくまでも、刑事訴訟法の二百四十八条で、考慮すべき諸事情というのは、社会一般の状況の変化や社会に与える影響という枠組みの中で判断されているものだというふうに御理解いただきたいと思います。

棚橋委員 今後、この問題に関してはさらに何度もお聞きすることになると思いますが、もう一度確認いたします。

 今後の日中関係のあり方を、身柄を拘束するかしないか、釈放するかにおいて、捜査機関が刑事訴訟法上の規定により判断要素に入れることができ、そのことによって釈放するかしないかが変わることもあり得るということですね、今のお話では。それだけ確認させてください、次の質問に移りますから。

平岡国務大臣 先ほども御答弁申し上げたように、あくまでも、いろいろな犯罪や被疑者に関する情状というようなものもすべてあるわけですね。そういうものを総合的に判断する中の一つとして、先ほど私が申し上げたように、社会一般の状況の変化や社会に与える影響というものがあるということでございます。

 あくまでも、検察当局としては、法と証拠に基づく判断としてこの判断を行ったものであって、外交的見地から行ったということではございません。

棚橋委員 答弁が変わっております。法と証拠に基づいて行った判断と、今後の日中関係についての判断を加味したものというのは、これは法と証拠に基づいているんですか、今後の日中関係に対する配慮というのは。法と証拠じゃないでしょう。

平岡国務大臣 法というのは、刑事訴訟法二百四十八条も法でございます。先ほど来から申し上げるように、二百四十八条で、起訴、不起訴の判断に当たって考慮すべき諸事情というものの中に、犯罪や被疑者に関する情状あるいは犯罪後の情況を定めていて、その中には社会一般の状況の変化や社会に与える影響ということもあるということでございまして、あくまでも先ほどの判断の根拠になっているのは、刑事訴訟法二百四十八条の法でございます。

棚橋委員 私は、総合的な国益を考えて、内閣総理大臣あるいは国務大臣が、そういった被疑者の身柄をどうするかということを国民に責任を負う形の中で判断するのは一つの判断だと思います。しかし、日中関係が問題になるから釈放しなきゃいけないと那覇地検が判断し、では、日本と余り外交関係も含めて近くない国であれば釈放しなくてもいい、今のお話だったらそうなるじゃないですか。その判断を、大局的な外交的配慮ではなくて、出先の捜査機関がしてもいいと刑事訴訟法は規定している、そう大臣はおっしゃっているわけですが、それでいいんですか。その解釈でよろしいんですか。

平岡国務大臣 委員が出先の機関がというような言い方をされましたけれども、これは検察当局においては検察当局全体の問題として考えたということでございまして、それはあくまでも判断としては刑事訴訟法二百四十八条に基づく判断として適切であるかどうかということに基づいて行われた判断だというふうに承知しております。

棚橋委員 そうすると、昨年の尖閣諸島における中国人船長の釈放問題に関しては、今、検察全体の御判断というお話がありましたが、那覇地検の独断ではないんですね。あくまで検察庁全体の判断だと法務大臣は今おっしゃったわけですよね。今おっしゃいましたが、よろしいですね。

平岡国務大臣 検察当局全体です。

棚橋委員 ということは、検事総長も判断している、そういう理解でよろしいんですね。

平岡国務大臣 我々としては、最高検察庁とも協議の上で判断したというふうに報告を受けておりますので、多分その中には検事総長も入っている。そこは意思決定の権限の配置によってだれがなるのかというのはちょっと私も今承知していませんけれども、最高検察庁も含めての判断であるということでございます。

棚橋委員 何か不自然じゃありませんか。今、検事総長の判断も含めてということですが、例えば那覇地検の事件、東京地検の事件、大阪地検の事件、検察が全体として一体だからといって、身柄を確保したままにするかどうか、釈放するかどうか、全部検事総長に上がっていくんですか。そんなことはあり得ないでしょう。

 今のお話ですと検事総長まで判断したということですが、では、なぜこの那覇地検の事件だけは検事総長まで判断しと。御説明できますか。

平岡国務大臣 それは、全部が最高検察庁まで上がって判断されるものではないというのは組織におられた棚橋委員であればおわかりになるかと思いますけれども、その事の重要性いかんによって、最高検察庁と協議することもあれば、高等検察庁と協議することもあれば、地方検察庁の中だけで判断することもあるというふうに思っています。

 この問題については、事実として最高検察庁と協議の上で判断をされたというふうに私としては報告を受けているところでございます。

棚橋委員 この問題、少しきちんと、今後さらに質疑を重ねてまいります。

 私どもは、昨年、大変残念なことに、当時の総理大臣だった菅さんは、この問題に関して、那覇地検が勝手に判断したんだ、こういうような趣旨の発言をされました。外交的な判断で大局的に物を考える、それが、政治家が政治的責任を負って、内閣総理大臣ならばわかりますが、そういう捜査機関にそういったものを押しつけるようなやり方をして、それで果たしてこの国の治安が保てるのか、私は大いに疑問を持っておりますので、改めてこの問題はさらに追及してまいりたいと思います。

 まだ持ち時間がございますので、次の質問に入らせていただきます。

 大臣秘書官、唐津さんとおっしゃるんですかね、松本さんでしたかね、唐津さんでしたかね、おやめになった大臣秘書官、この方は、いつ詐欺事件が平岡大臣に発覚し、いつおやめいただいたんですか。

平岡国務大臣 発覚といいますか、この問題があるということがわかったのは、雑誌社の取材が彼に入ったところで彼から報告があったということでございますけれども、その具体的な日付というのは、ちょっと私も定かではございません。たしか九月の中下旬あたりではなかったのかなというふうには記憶しておるところでございます。

 やめたのは、十月の十九日ですかね。

棚橋委員 今のお話ですと、九月の中下旬から十月の中旬に退職するまでに約一カ月もかかっておりますが。詐欺の前科があり、なおかつそれを隠して大臣秘書官になったということが判明しながら、なぜ一カ月もそのままにしていたんですか。

平岡国務大臣 これは、私としても、そういう取材があったところで、具体的な事実関係がわかるわけではございませんので、彼にどういうことがあったのか、その事情はどうであったのか、そういうふうなこともいろいろと自分なりに調べなければいけないというようなことがありましたので、いろいろ書類等も取り寄せて自分なりに調査をし、そして自分なりに考え方をまとめていくというところで時間が少し必要であったということでございます。

棚橋委員 まず本人に聞けばすぐわかることじゃないですか、本人がうそをついていれば別にして。本人は認めたんでしょう。それなのに、なぜ一カ月もそんな温情ある措置をとるんですか。

 ちなみに、民間の用語で言うと、この秘書官は辞職ですか、解雇ですか。いわゆる辞表を出して自分がやめたのか、免官、懲戒免職ですか、どちらでしょう。お答えください。

平岡国務大臣 たしか、願いにより職を辞するということでございますので、委員が使われている言葉で言えば辞職ということではないかというふうに思います。

棚橋委員 詐欺の前科があり、しかも、それがいわゆる地方自治体からの公金詐欺であり、そのことを隠して、法務大臣秘書官という機密をつかさどる秘書官に採用された。そのことがわかっても、懲戒免職事由にはならない、そう大臣はお考えだったんですか。

平岡国務大臣 委員が言われていることは、過去の事案というものがどういう事案であったのかによって、その時点で、採用後の時点で懲戒免職とか懲戒処分というのをすべきだというふうに質問されたんでしょうか。ちょっとそこのところがよくわからなかったんですけれども。

棚橋委員 過去、公金詐欺で、執行猶予がついているとはいえ、たしか一年六月の判決が出た。そのことを隠して大臣秘書官に採用され、機密をつかさどる大臣秘書官でありながら、そのことが発覚したにもかかわらず、なぜ懲戒免職、免官にしなかったのか、なぜ民間で言うと辞職にしたのか。これはすごくゆゆしき問題ではありませんか。

 公金詐欺のような前科があり、なおかつそれを隠して大臣秘書官に採用され、しかも、大臣秘書官というのは、大臣秘書官の規定にあるように、法務大臣の機密をつかさどるような非常に信頼度の高い職にありながら、それでいて、それが発覚したにもかかわらず、なぜ免官、懲戒免職にしないんですか。大臣は弁護士でもありますから、懲戒免職にしたら、この元秘書官から訴えられたら、懲戒免職事由がないということで裁判に負けるとでもお考えでしたか。

小林委員長 棚橋委員に申し上げますが、質疑時間が一応来ておりますので、次にまた質問の機会がありますので、この大事なところについて、次に大臣が答えるところから次のときにスタートするということでいかがですか。

棚橋委員 私はいたずらに質問時間を延ばすつもりはございませんが、大臣の御答弁を聞いて、委員長と相談させてください。

小林委員長 はい。

 では、大臣、答えてください。

平岡国務大臣 基本的には、国務大臣秘書官の懲戒処分について規定した法令はないということがありますけれども、ただ、今回、これが規定がないからといって懲戒処分にしなかったということではなくて、私は私なりに、いろいろな事実関係をお聞きしたところで、これは辞職相当であるというふうに思いました。ということで、それは両者で話し合ってこういうふうな対応を決めさせていただいたということでございます。

 委員が公金詐欺というふうに言われていますけれども、私も判決とかあるいは供述調書とか、すべて読ませていただきましたけれども、事案の中身からすれば、ある意味では、彼にとって大変厳しいものであったというふうに思いますけれども、彼が、更生をしていきたい、社会復帰をしていきたいという、その思いというものが非常に強いということが私にはうかがいとれたというふうに思っています。

棚橋委員 後ほどの時間で再度質問させていただきますが、今の大臣の御答弁でしたら、公金詐欺というのは大した罪ではないんですか。それはすごく大きな罪ですよ。

 そして、大臣がおっしゃっていたように、これを隠して大臣秘書官に採用されたんですよ。大臣秘書官というのは法務省の機密を全部知る立場にあるんですよ。その人間が公金詐欺という罪を犯して、それでいて隠して採用されたにもかかわらず、辞職でいい、懲戒免職にすべきほどの事由には当たらない、こういう感覚の方が法務大臣で、この国の法秩序は保てるんですか。

 後ほどの質問の中で改めて聞かせていただきますが、どうかそこは、もし大臣、お考えがあるようであれば、次の質問までに反省して、一度この件に関しては御態度を変えていただきたい。そうでなければ、この国の法秩序の執行に私ども大きな疑問を抱かざるを得ません。

 とりあえずこの時間での質疑は終わります。

小林委員長 次に、柴山昌彦君。

柴山委員 柴山昌彦です。二度目の質問をさせていただきます。

 今の棚橋委員の質問を引き継ぎますけれども、法務大臣の政務秘書官が公金詐欺で有罪判決を受けていたことが採用後発覚した。そして、それに基づいて、今月の十九日付で辞任の申し出があり、平岡大臣は自発的な辞職という形で処理をされたという御説明があったんですけれども、繰り返しの質問になりますけれども、九月の下旬に発覚しながら、なぜ十月十九日に辞表を受理するという扱いになったんですか。(発言する者あり)

小林委員長 ちょっと速記をとめて。

    〔速記中止〕

小林委員長 定足数になりましたので、では、速記を起こしてください。再開します。

平岡国務大臣 委員の御質問について言いますれば、本人からこういう事件で取材を受けているという報告があり、その中身について私なりに確認する必要があるということであったので、先ほども御答弁申し上げましたように、判決文あるいは関係者の供述調書といったようなものについて本人から提出を受け、さらに本人からもいろいろな事情を聞いたというような作業をしておりまして、自分なりに調査をし、その調査を踏まえた判断をするということに少し時間を必要としたということでございます。

柴山委員 今おっしゃったんですけれども、もうかなり前の事件なんですね。一件記録を読み、そして本人から事情を聞くのに一カ月必要だったとは到底思えません。十月二十日からこの臨時国会が始まり、そして、当然のことながら、この問題について法務委員会で追及される。

 ちなみに、この政務秘書官は、最後のお給料はいつもらったんですか。

平岡国務大臣 私としては、十九日付で退職したということ以上に今おっしゃったことについての情報は持ち合わせていません。

柴山委員 簡単なことですので、ここで確認をしてください。

平岡国務大臣 具体的な通告もございませんでしたので、後刻御報告をさせていただきたいと思います。(柴山委員「今すぐわかるでしょう」と呼ぶ)

小林委員長 特別な措置を講ずることがなければ、何日にやめると給料がどうなるかということは自動的に決まっていますので、多分、多分というか、自動的に決まったはずだというふうに大臣が申している。それを踏まえて質問してください。(発言する者あり)

柴山委員 まず速記をとめてください。

小林委員長 では、速記をとめて。

    〔速記中止〕

小林委員長 それでは、速記を起こしてください。再開します。

 では、大臣、回答を。

平岡国務大臣 今報告がありましたので、お答えいたします。

 九月二日から九月末日までのものについては九月十六日に支給をされた、十月一日から十月の十九については十月の十七日に全額支払われたけれども、勤務をしていない部分についてはこの後戻入するというのがルールになっているというふうに聞いております。

柴山委員 今御答弁のとおり、要するに、給与日をまたぐために辞任の時期をおくらせたんじゃないかという疑いが極めて濃厚なんですよ。要するに、給料泥棒ということで、事実が発覚をしていたのに、そういうことが非常に疑われるわけです。しかも、この政務秘書官は、公設秘書は辞任されているんですか、していないんですか。

平岡国務大臣 公設秘書も辞職をしております。

柴山委員 公設秘書の給料日はいつですか。

平岡国務大臣 公設秘書については、先ほどの説明にもありましたけれども、九月一日に公設秘書になって、九月二日に大臣秘書官になりましたので、九月の二日には公設秘書は辞職をしております。

柴山委員 要は、公設秘書に採用されたことによって、兼職の禁止ということで、公設秘書は自動的にやめた、そういうことでよろしいわけですか。失礼しました。

 それでは、ちょっと棚橋委員からの質問の補足ですけれども、これは、懲戒解雇相当ではないということで、退職金が支払われる扱いになるはずですけれども、退職金の額は幾らですか。

平岡国務大臣 退職金はなしというふうに聞いております。

柴山委員 それは、在職期間が短いからということでよろしいでしょうか。

平岡国務大臣 そのとおりであります。

柴山委員 いずれにいたしましても、先ほどお話があったように、極めて一般感覚からしておかしい処分ではなかったかなと。また、給与の問題も含めて、極めて不透明であるということを指摘せざるを得ません。

 次の質問に移らせていただきます。

 大臣、ことしの五月、今席をお立ちになっている黒岩宇洋前政務官にも質問をした、市民の党についてお伺いします。

 横浜市議会を国旗引きずりおろしという理由で除名された井上桜氏や、拉致犯で国際指名手配中の森容疑者及びよど号ハイジャック犯故田宮容疑者の子供で、三鷹市議選に立候補した森大志氏などが所属する市民の党、そして、その関係団体が菅直人前総理や民主党と資金面、活動面で密接な関係にあることについて、これを望ましいことと考えていますか。

平岡国務大臣 望ましいというふうには別に思いませんけれども、そこは私が論評することではないというふうに思います。

柴山委員 私が論評することではないというふうにおっしゃいましたけれども、政権与党の資金関係について、今言ったように、北朝鮮等との関係も疑われる団体との関係について、論評をするべきではないというふうに大臣はおっしゃったんですけれども、それでいいんですか。

平岡国務大臣 望ましいという言葉が何を意味しているのかというのは私もちょっとよくわからないんですけれども、個別の事案について、私の立場で、これがどういう法的評価を受けるかというふうなことも含めて、論評するのは適当でないというふうに思っております。

柴山委員 法務大臣は公安調査庁の責任者でもありますが、これについて全く情報を入手されていないんですか。

平岡国務大臣 私としては、特に報告は受けておりません。

柴山委員 既に同僚議員からさまざまな場面で問題提起がされ、そして何度も報道でも明らかになっているとおり、この市民の党については、責任者斎藤まさし、本名酒井剛氏がさまざまなセクトの活動をし、問題とされている。特に、この人物は北朝鮮、そして日本赤軍関係者らとの面会も認めている。そして、今申し上げたような形で、所属する構成員が横浜市議会やあるいは身内の関係者にそういう犯罪を犯したとされる方々がいらっしゃる。そういうような、極めて日本の治安で問題となり、そしてメディアでも報道されているということは、もうこれは公知の事実だと思います。そういった方々が民主党の議員に多額の寄附をし、そして関連団体は前総理の菅直人さんの資金管理団体に六千万円を超える寄附をしている。

 こういうようなことについて、私は論評する立場でないということを現職の法務大臣でおっしゃって、本当にいいんですか。

平岡国務大臣 お尋ねの政治資金の流れの詳細については私自身も承知しておりませんし、前提となる事実関係についても承知しておりませんので、よろしくお願い申し上げます。

柴山委員 では、今後調べるつもりはおありですか。現在活動している団体について、これについて関心を持つということはないんですか、あるんですか。

平岡国務大臣 捜査に関する話であれば、捜査当局が法と証拠に照らして適切に対応するというふうに思います。

柴山委員 繰り返しになりますけれども、日本の治安にかなり大きな影響が出てくるのではないかというように考えられ、報道されている団体についての活動に、公安調査庁の責任者である法務大臣として関心を寄せないということでいいんですか、今後。

平岡国務大臣 公安調査庁が何をするのかということについては、一義的には公安調査庁が判断していくということだろうというふうに思います。

 私自身としては、御指摘のあった団体については現時点では承知していないので、どうすべきかということについてコメントすることはできません。

柴山委員 大臣は、山口二区の補欠選挙で、市民の党のメンバーの選挙応援を受けていましたね。

平岡国務大臣 市民の党というふうには承知しておりませんけれども、いろんな方々からの支援をいただいておりましたので、その中にはおられたのかもしれません。

柴山委員 把握をしているところによりますと、ざま市民の党、沖永明久市議会議員のホームページからの引用ですけれども、「衆院山口二区補欠選挙の結果から」、これは二〇〇八年四月二十八日月曜日、選挙の恐らく翌日ではないかと思いますけれども、衆院山口二区補欠選挙で民主党平岡さんの応援にこの間はほぼ集中と。「今後の政治の流れを決める重要な選挙でしたが、見事に平岡さんが当選。「死に体」の福田政権をさらに追い詰める結果となりました。」このように書かれております。

 また、市民運動家の方の、Dといいますけれども、Dという方のホームページからの抜粋ですけれども、衆議院山口二区補欠選挙の最終日、午前中は岩国の平岡事務所で電話かけをしました、電話かけを終えて、応援に来ていた市民の党の面々と一緒に平岡事務所を出ようとしたら、民主党の人たちが最敬礼で見送りしました、私は何だと思ってしまいました、こういうような記載があるわけですね。(発言する者あり)

 こうした団体、今、辻理事の方から政治活動の自由というふうに言われたわけですけれども、このように問題が指摘をされている団体からの応援をもって選挙戦を戦ったということについて、何らの痛痒も感じないということでよろしいでしょうか。

平岡国務大臣 委員がホームページ等でお調べになったことなので、多分応援に来ていただいていたのではないかというふうに思いますけれども、私自身は、市民の党であるかどうかということについては認識はございませんし、応援に来てくれた方々に対して最敬礼でお見送りというような形での感謝の気持ちを伝えるというようなことも、選挙ではそんなに不思議なことでもないような気がいたします。

柴山委員 私は、もう一度質問させていただきますけれども、問題のある方々が、団体の構成員、例えば私だったら、自分の選挙事務所に、いかに厳しい選挙だからといってですよ、言い方は大変失礼になるかもしれませんけれども、反社会的な団体の構成員が応援に来ているということがわかったら、即座に来るのをやめてくださいと言いますよ。それは私は、政治に携わる人間のモラルとして当然のことだと思うんです。

 今こういう形で私の方から問題点を指摘させていただいたので、今後大臣が御自分の選挙で、そういう方々からの応援の申し出があった場合、あるいはそのお申し出がなくても、今後選挙を戦われる場合に、そういう方々の応援は御遠慮したいということをきちんとおっしゃっていかれるかどうかということについてお伺いしております。

平岡国務大臣 反社会的団体であるのかどうかということの仕分けというものをどこでするのかということもあろうかというふうに思いますけれども、仮にそういう位置づけの団体であるということが客観的にも明白であるならば、それはお断りするということになるというふうに私も思います。

 ただ、その人がどういう団体に所属しているのかということについては、すぐに一見して判断がつくということでもないだろうというふうに思いますので、その辺は注意しながら対応しなければいけないことではないかというふうにも思います。

柴山委員 条件つき、すなわち、この団体が反社会的な団体であるかどうか明確になればという条件つきではありましたけれども、そのように判明した暁にはこうした団体からの応援は受けないということを今この委員会の場で明言されたということについて銘記したいと思います。

 次の質問に移らせていただきます。

 先ほども質問がありましたけれども、郵便不正事件の国家賠償訴訟についての質問であります。

 大阪地検特捜部の担当検事が不当な形で自白を引き出し、冤罪ということで精神的な苦痛を受けたということで、村木元厚生労働省の局長から国家賠償請求があり、これに対して国側、国側というのは要するに法務大臣が被告となるわけですけれども、全面的に認諾をし、約三千七百七十万円を賠償するということになったわけでございます。

 ただ、これも先ほど質問にありましたけれども、この事件についての故意が当該取り調べの前田検事等の検事にあったということであれば、当然、こうした責任のある検事たちに求償していくということになろうかと思いますが、間違いありませんか。

平岡国務大臣 求償の問題については、先ほどの階議員とのやりとりの中でも申し上げたというふうに思いますけれども、あくまでも、国家賠償法第一条の第二項の要件に該当するかどうか検討した上で適切に対応してまいりたい、このように考えております。

柴山委員 大変重要な今の御指摘であったと思います。

 というのは、当該検事が、みずからが不法行為を行ったというように、国と同じように認めてくれればいいんですよ。だけれども、国からの求償訴訟でこの事実関係ないし法律関係を争ったことによって、国が求償債権を取りはぐれるという可能性があるわけなんですね。

 この取りはぐれるかどうかということを防ぐためには、例えば、元検事らとの一体的な判決を求めるというようなことをするべきではなかったかと思いますし、また、担当検事がどういうスタンスをとるかということについて事前に確認をする、あるいは訴訟告知をするというようなことも考えられたかと思います。

 こういうような、いわば国の大切なお金をしっかりと無駄にしないで確保するための方策というものを法務大臣はおとりになったんでしょうか。

平岡国務大臣 今言われたような措置はとってきていなかったというふうに承知しておりますけれども、これも先ほどの階議員の質問に答えました、今回のこの国家賠償請求について言えば、刑事事件の重要な証拠であるフロッピーディスクを改ざんする行為に及ぶという重大な犯罪行為が行われているという本件事案の特殊性にかんがみて認諾をしたというふうに承知しているところでございます。

柴山委員 改ざんをされたということは事実かもしれないけれども、それが国家賠償法上しっかりと請求を基礎づけるものであるかどうかというものは、ある程度訴訟が進行しないと見えてこないのが実態だと思うんですね。

 特に、前田検事等が全面的に否認をしているわけですね。全面的に刑事事件で否認をし、当然のことながら、そういった関連の求償事件についても争ってくるだろうということが明確な中で、事実関係をしっかりと法的な評価の裏づけをもって明らかにしない段階でこれを認諾するというのは、まさしく、先ほど来問題となっている検察改革に対して法務省として後ろ向きにしか取り組んでいないんじゃないか、結局事実隠ぺい体質というものが改まっていないんじゃないかという疑念を持たざるを得ないんですけれども、いかがでしょうか。

平岡国務大臣 本件については、認諾に当たりまして、私にも事前に説明があり、私も了承したという経緯がございますけれども、その説明の中には、この損害賠償請求事案の中身について、請求の趣旨に対する認諾というのは損害賠償義務の存在を認めるものという枠組みの中で、これは認諾せざるを得ない、認諾することが適当であるというような事案であるというふうに私としても判断をしたところでございます。

柴山委員 要するに、法務大臣がこの判断についての責任を負うということなんですよ。事務方から説明が上がってきて、私が申し上げたように、将来それが国の、国庫の損失になり得るかもしれないという事情の中で、いわば法務省の人たち、事務方からの言い分をうのみにして、大臣御自分がその認諾をする。要するに、原告、村木元局長の言っていることを認めて争わないという判断をしたということですから、これが将来、もし求償債権が取りはぐれるということになった場合、これは大臣御身の責任になるということで間違いないですね。

平岡国務大臣 責任という言葉がどこまでのことを含めて考えるのかということはあろうかと思いますけれども、何がしかの責任というものは、それぞれ物事を判断するときには私はあるというふうに承知しております。

柴山委員 今ここで御自分の責任について言及をされましたので、次の質問に移らせていただきます。

 先ほどもお話がありました取り調べの可視化についてでございます。

 私も、この委員会で再三にわたり取り調べの可視化については質問をさせていただいておりますし、これを進めるということについては、基本的には大臣と意見、認識を共有しているというように考えております。

 ただ、その中でぜひお伺いしたいのは、冤罪を防止することももちろん大事なんだけれども、結局、うそをつけば逃げられると。要するに、取り調べが甘くなって、本来であれば、これまでのような取り調べであればしっかりと本人が自白をしたにもかかわらず、今後は、取り調べ官が萎縮をしたり、あるいは関係者のプライバシーですとか、それこそ反社会的勢力の構成員からの報復を恐れるなどして取り調べの実が上がらないというようなことになってしまってもこれは困るわけでして、どのようにこの可視化に伴う治安確保に対する悪影響というものを防止するのか、これについて大臣の御所見をお伺いします。

平岡国務大臣 ただいま柴山委員が御指摘になった話というのは、取り調べの可視化を図る中でも、特定の事案については、可視化をすることによっていろいろな別の問題と申しますか、犯罪を摘発したり、あるいは犯罪の手がかりをつかんだりというようなところに問題があるんではないかという御指摘だというふうに思いますけれども、その点については、十分にそういう問題を認識しながら可視化について検討していくべきであるというふうに私も思っております。

柴山委員 というふうに口ではおっしゃっているんですけれども、ただ、先ほど大臣は、新たな捜査手法の導入が可視化の条件ではないというようにおっしゃっているんですね。

 先ほど、GPS位置情報の獲得ということにはいろいろと副作用があるというような御質問もありました。それ以外にも、盗聴ですとか、あるいはおとり捜査、司法取引、先進国では当たり前のように導入されている捜査手法で、日本で取り入れられていない、あるいは不十分なものもあります。それを導入することが今後の自白に頼らない裁判というものに非常に重要なウエートを持ってくるのではないかと思うんですけれども、先ほどの大臣の新捜査手法の導入に対するいわば消極とも言える姿勢ということについては、私は非常にバランスを欠いたものがあるんじゃないかなと思うんですが、いかがでしょうか。

平岡国務大臣 先ほどの私の答弁では、新たな捜査手法の導入が必ずしも可視化の実現の前提条件となるものではないと考えているというふうに申し上げたところを今御指摘されたというふうに思いますけれども、現在、これは国家公安委員会の方でも研究会をつくっていろいろ検討されているということでもありますし、また、法制審議会の中でもそういう検討結果というものも踏まえながらこれから検討をしていくということでございますので、私としては、その検討で大いにいろいろな問題点を議論していただきたい、このように思っているところでございます。

柴山委員 しっかりと国家公安委員会とも連携をして、こうした問題点について検討してもらいたいと思います。

 一方、国家公安委員会とは違いますが、先ほど申し上げたとおり、法務大臣は公安調査庁の責任者でもあるわけですから、くれぐれもこういったさまざまな情報収集についてのバランスを逸することのないような形での法務行政というものをぜひ心がけていただきたいというように思います。

 先ほどリーダーシップが見えないというお話がありましたけれども、こういう問題でこそ、やはりさまざまな機関での検討を踏まえてリーダーシップを最終的には大臣に発揮していただかなくてはいけないと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 もう質問時間があとわずかとなりましたので、最後に、城内委員からも質問があった人権救済法案についてお伺いしたいと思います。

 大臣は、記者意見で、遅くても来年の通常国会までにはこの人権救済法案を提出したいというように言われているわけですけれども、法務省の中の検討状況はそういうことでよろしいんでしょうか。

平岡国務大臣 部内の検討状況についても逐次報告を受けているところでございますけれども、この事務方からの説明の中では、法案提出の時期についてはいろいろな調整等もあって確定的なことは申し上げられないというふうに聞いておりますけれども、私としては、できる限り来年の通常国会には出せるように、私自身もいろいろな調整に取り組んでまいりたいというふうに思いますし、事務方にも督励をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。

柴山委員 そこまで急ぐ立法事実というのは一体何なんですか。先ほどの質問にもあったように、各国に確かに人権救済機関というものはありますけれども、今、日本で検討されているような網羅的な人権委員会という、三条委員会で、さまざまな調査権限もあるようなものをどんと据えるような仕組みを持っている国というのはないと私も理解をしております。これの成立を急がなければ日本の人権が侵されてしまうというような立法事実があるのか、ぜひお伺いしたいと思います。

平岡国務大臣 委員御案内のように、もともと、平成十三年の五月に人権擁護推進審議会が政府から独立性を有する新たな人権救済制度の創設を提言されたという過去の経緯というものがございます。その後、いろいろな議論がなされてきておりますけれども、先ほども申し上げましたように、国連の各種人権条約に基づく委員会も我が国に対してこうした人権機構の整備の必要性についてたびたび言及しておりますし、先ほども申し上げましたけれども、新たな人権侵害事態に対して対応するというのに個別的な対応をとっていくということでは迅速さに欠けるというようなこともございますので、我々としては、早急に、できるだけ早く政府からの独立性を有する人権救済機関を創設することが必要であるというふうに考えて行動しているところでございます。

柴山委員 個別の機関では救済がおくれるとおっしゃいますけれども、それは個別の機関のネットワークがしっかりしていないからたらい回しが起きるというだけのことなんです。

 それで、窓口をそんな世界に全く例の見ないような人権委員会という強大なものに一元化をしなければ救済の迅速性が図られないということは、諸外国の例から見てもあり得ないですよ。そんなものに意を注ぐぐらいでしたら、例えば法律扶助ですとかADRとか駆け込み寺の充実ですとか、そういうことをもっとしっかりとやっていくべきではないんですか。

 今度の第三次補正予算でも、例えば福島で放射能のいわれなき中傷を受けた人たち、あるいは、さまざまな原子力による損害を風評被害も含めて受けた人たちの権利の救済ということに対する法律扶助の予算というものが計上されていないじゃないですか。そういう身近な、本当に必要な施策を充実させずに、みずからの既得権益の拡大につながるような、そんな機関を設置することについては極めて疑問が大きいということをこの場で申し上げさせていただいて、時間ですので質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

小林委員長 次に、稲田朋美君。

稲田委員 自由民主党の稲田朋美です。

 先ほどから平岡大臣の答弁をずっと聞いておりまして、野党時代のあの生き生きとした平岡大臣は一体どこに行ってしまったんですか。もう別人、はぐらかしたり、逃げたり。きちんと答えていただきたい、誠実に答えていただきたいと思います。

 先ほど私の質問の中で、予算委員会における大臣の死刑に対する答弁と、きょうの委員会での答弁が矛盾していますねと指摘をいたしましたら、矛盾していないと強弁をされました。委員長も大臣の助けをされましたので、私、一たんは引き下がりましたけれども、でも、大臣は就任のときの記者会見でも次のようにおっしゃっているんです。勉強会で考えている間は死刑執行をしないのかという点については、勉強会そのものが結論を出すという性格のものでないということであるとするならば、考えている間は当然判断ができないだろうと思いますと。大臣自身が考えている間は死刑を判断できない、死刑執行を判断できないと、明確に当然という形容詞をつけてお答えになっております。予算委員会でも、自分で考えている間に執行ということは考えていないと、ここでも明確にお答えになっています。

 そして、きょう、私の質問に対して、考えて結論が出るまでであっても死刑執行する場合があるというふうに答弁を変えられたんですよ。その点、答弁を変えられたことを認められるかどうか。

平岡国務大臣 私の答弁の趣旨は、今るる稲田議員が時系列的に言われましたけれども、私が当初答えていたことを踏まえながら、私なりに整理をしてきたというのがこの予算委員会の答弁でありまして、自分で考えている間は、執行ということは考えていないということであって、一律に執行を停止するとか、いつになったらどうするかということについて申し上げたということではありませんということでございます。これが私の答弁の趣旨ということでございますので、御理解いただきたいと思います。

稲田委員 大臣、答えていないんですよ。

 だから、考えている間は死刑執行はしない、それはずっと一貫しているんです、きょうまでは。きょう、現時点、大臣は考えているんだから死刑執行しないんですよ。ところが、きょうの質問に対して、考えている間でも、結論が出ていなくても死刑執行する場合もあるというふうに答弁を変えられたのはなぜですかと聞いているんです。

平岡国務大臣 ここの自分で考えている間というのは、死刑制度のあり方について考えているということと、それから個別の事案についてどうするかということと、ちょっと二つの側面があろうかというふうに思います。非常に難しい問題でありますので、執行自体については、非常に重大な刑罰であるということを踏まえて、慎重に考えていきたいというふうに思っているということをここでも申し上げているということもあろうかというふうに思います。

稲田委員 全く違う答弁になっているじゃないですか。大臣は、勉強会で死刑のあり方などを勉強して、その中で自分が考えている間は死刑は執行しないと一貫して言ってこられたんです。ところが、きょうになって、考えている間だけれども死刑を執行する場合もあるというふうに変えられたんですよ。その点を私は指摘しているんです。

 現在、大臣は考えているんですよね。勉強しながら考えている。考えている今現在で死刑執行するつもりはないんでしょう。お答えください。

平岡国務大臣 今の稲田議員の御指摘を踏まえて私なりにちょっと整理をしてみますと、死刑制度のあり方についてどう考えるかという問題については勉強会でも議論しています。それから、死刑執行のあり方についてもこの勉強会で議論をしています。

 そういう意味で、考えるべきことというのは幾つかあろうかというふうに思いますけれども、死刑執行の問題についての話について言えば、慎重に考えていきたいということでございます。別途、死刑制度の存廃についても、考えていかなければならない大きな課題であるというふうに考えているということでございます。

稲田委員 もうむちゃくちゃになってきていると思いますよ、大臣の答弁。答弁すればするほど離れていっているんです。

 きょうの私の端的な質問は、ずっと大臣は、勉強会で自分が考えている間、死刑は執行しないと明確におっしゃっていたんです。就任時は、当然しないと。予算委員会でも、しないと考えていると。きょうになって、勉強中、考えている間でも死刑執行するとおっしゃったので、答弁が変わりましたねという質問なんですよ。お答えになりますか。

小林委員長 大臣、端的に。

平岡国務大臣 予算委員会でも申し上げているように、私は一律に執行を停止するというふうに考えているわけではないと申し上げたわけでありまして、そういう意味において、個別の問題についてどうするかというのはまた別途慎重に考えてまいりたい、こういう趣旨でございます。

稲田委員 そういうのをごまかしというんですよ。これ以上言いませんけれども、予算委員会では、一律にやらないというのは、自分が結論を出すまでやらない、結論を出したらやる。だから、結論で、やるとなったらやりますという意味で一律じゃないということをおっしゃっているだけで、自分が勉強している間は、結論を出すまでは死刑は執行しません、当然と最初はおっしゃり、予算委員会でもきっぱりおっしゃり、きょうになって、考えている間だけれども死刑執行する場合もあるというふうに答弁を変えられたんです。その点を指摘しておきます。

 先ほど、最後の私の質問で、大臣は、朝鮮大学校の記念祝賀会に日本の国会議員としてただ一人出席したことについて、問題はなかったんだ、そして、私、稲田と大臣との間には、路線は違うけれども拉致問題を解決したいという目標は一致しているんだとおっしゃいました。

 大臣、どうして問題はないのか、そして、路線が違うというんだったら、どういう路線で大臣は拉致問題を解決しようと思っていらっしゃるんですか。

平岡国務大臣 私自身は、いろいろな交渉をしていかなければならないときに何をまずすべきかといえば、できる限りお互いを知り、お互いの信頼関係を築いていくということが大事だというふうに思っておりまして、そういう考え方に基づいて、できる範囲で私なりにそういう関係が築けるような努力をしてきたということでございます。

稲田委員 では、今、法務大臣になられても、法務大臣という立場になられても、朝鮮大学校創立五十周年記念祝賀会で、ただ一人日本の国会議員として祝辞を述べたことについて、問題はなかった、反省するところはないという認識ですか。

平岡国務大臣 今の御質問は、法務大臣になったから反省するということでは多分ないんだろうというふうに思います。当時の問題として、当時の行動について当時どう考えるべきかという問題について言えば、私自身は、当時、私の行動について言えば、私のこれから目指していくべきもののために役に立つという判断がそれは当然あったというふうに思います。

 ただ、法務大臣になって、先ほど来から御指摘があるように、公安調査庁という組織がいろいろな活動をしている中で調査の対象として考えている組織との関係をどうみずから律していくのかという点について言えば、慎重でなければいけないというふうにも思っています。

稲田委員 大臣は信頼関係とおっしゃいましたけれども、公安調査の対象になって、北朝鮮の大きな影響下にあり、そして北朝鮮に貢献する人材を育てるための朝鮮大学校に、日本の国会議員が出かけていって祝辞を述べるということは、私は北朝鮮に対して誤ったメッセージを与えることだと思い、大臣として反省をしていただきたいと思いますけれども、反省はないようであります。反省しないこと自体が大臣としての適格性を疑います。

 さらに、大臣は、平成十九年十月にも、対北朝鮮制裁の解除を強く求める緊急集会、東アジアの平和と日朝国交正常化、制裁をやめ対話と人道支援へという緊急集会に出席をされて、来賓として招かれて、あいさつをされました。これは一体どういう集会で、あなたはなぜ来賓として招かれ、どのようなあいさつをされたんですか。

平岡国務大臣 ちょっと今手元にその集会の資料を持っておりませんけれども、多分その集会には国会議員としてはほかの方々も数人おったように記憶しております。その集会そのものは、北朝鮮で起こった大洪水のために人道的な支援を日本から差し伸べるべきではないかというようなことを取り上げる集会であったというふうに思います。

 私としては、人道問題というのは、やはり、困っている人がいれば、そこにどういう理由があるにせよ、しっかりと手を差し伸べていくということが大切ではないだろうかと。かつて人権侵害的なことがあったから人道支援をしないということではなくて、今現実に困っている人がいるのならばちゃんと手を差し伸べるべきではないかというような趣旨のことを申し上げたような記憶がございます。

稲田委員 かつての人権侵害じゃないんですよ。拉致の人権侵害は現在進行形なんです。過去の人権侵害じゃないんですよ。訂正してください。

平岡国務大臣 現在も続いているという意味では、その問題も、当然、拉致の問題もあると思うんですけれども、それ以外の問題も含めてということだったので。確かに、現在進行形ということもあろうかと思います。

 私が言いたかったのは、今そういう人権侵害問題がこちらで起こっているから、では、こちらの方の人道的な問題についてはやらないんだということにはならないのではないかという話として今答弁させていただいたつもりでございます。

稲田委員 拉致問題は過去の人権侵害じゃないどころか、現在進行形の重大な人権侵害であり、人権侵害だけでなくて国家主権の侵害でもありますよ。

 大臣は、この集会の趣旨に賛同して、来賓として祝辞を述べられたんですね。

平岡国務大臣 来賓として祝辞を述べたということではなかったと思うんですけれども、出席者の一人として発言を求められたというような流れだったというふうにちょっと自分としては記憶をしておりますけれども。祝辞というよりは、むしろ、北朝鮮で起こっている大洪水に対する人道的支援というのは、やはり、困っている人たちを助けるという意味で、日本としてもやるべきじゃないかというようなお話をさせていただいたというふうに記憶しております。

稲田委員 ですから、趣旨に賛同されたんですねという質問です。端的にお答えください。

平岡国務大臣 北朝鮮の大洪水に対する被害に対して人道的支援をすべきであるという趣旨には賛同しておったというふうに思います。

稲田委員 この大会は、対朝鮮制裁の解除などを強く求める集会だったんです。そこで主催者を代表してあいさつされたのは、清水澄子さんという元参議院議員でいらっしゃいまして、この方は、謝罪と補償による日朝正常化を訴えられている方なんです。この大会でも日朝正常化を訴えていらっしゃいます。趣旨に賛同されますか。

平岡国務大臣 私としては、その部分について特に言及したこともございませんし、その部分については私として賛同するということでもございません。

 先ほど申し上げましたように、私は、あくまでも大洪水による被害に対して人道的支援を行うべきであるということについて賛同し、意見を述べさせていただいたということでございます。

稲田委員 この新聞報道によりますと、洪水のことは何も書いていないんです。朝日国交正常化交渉を本格的に再開して、対朝鮮制裁の解除を強く求める、そういう大会なんですが、朝日国交正常化交渉、対朝鮮制裁の解除について大臣は同意されますか。

平岡国務大臣 今の質問に関して、ちょっと私も今同じ資料を手にしましたけれども、二ページ目の最後の二行目のところに朝鮮の人々への水害支援というのが書いてありますので、この集会の中には、一番先に書いてありますからある意味では最も大きなテーマであったというふうに私は思います。

 制裁措置の解除の問題について言えば、状況を見て、どういう状況なら解除ができるのかということはしっかりと見きわめながら対応していくべき問題であるというふうに思っています。

稲田委員 しかも、この中で和田春樹東京大学名誉教授が発言をされておりますけれども、この方は、植民地支配の反省から竹島を韓国領土と認めよとか、横田めぐみさんの拉致は疑問であるとか、また、日韓併合は無効であったということを昨年の夏にも官邸に申し入れに行かれた方なんですけれども、この方の発言に対して大臣は賛同されますか。

平岡国務大臣 今、和田春樹名誉教授が発言された中身というのは、昨年の夏ということでございましたけれども、この二〇〇七年当時に私は和田春樹教授が具体的にどういうことを言っておられたのかということについては承知をしておりませんので、そのことについて賛同するとかしないとかというようなことも、私としては何も自分なりの気持ちは持ち合わせていないということでございます。

稲田委員 驚きましたね。賛同するかしないか、自分の考えを持ち合わせていない。植民地支配の反省で竹島の韓国の領有を認めるべきである、それから、韓国併合は無効である、そんなことについて、自分が賛同するかどうかの考えを持ち合わせていないというのはどういう意味ですか、それは。大臣。

平岡国務大臣 いや、私が申し上げたのは、先ほどの和田春樹教授の発言というか考え方というのが去年の夏だということだったので、私がここの集会に出たのは二〇〇七年ということなので、二〇〇七年当時に和田春樹教授がどういうことを言っておられたのかということについては私としては情報を持っていなかったので、私としては何とも言いようがございませんということを言ったのであって、昨年の夏の和田春樹教授の見解についてということであるならば、それは、稲田さんが御指摘のあった点について、私としてもそれなりの考え方をしっかりと申し上げるという立場かもしれませんけれども、私が申し上げたのは、あくまでも二〇〇七年のこの集会に参加したときの話として、和田さんの話については私は何も情報を持っていません、だから二〇〇七年当時の話については何とも言えませんということを申し上げたんです。

稲田委員 では、現在の大臣の見解でいいです。竹島の領有に関して大臣がどう思っておられるか。また、あなたと同じこの集会に出席された和田春樹教授の、植民地支配の反省のために韓国の領有を認めるべきだという考え方、日韓併合は無効であるという考え方について、大臣の見解をお示しください。

平岡国務大臣 私としては、現在、野田内閣の一員ということでございまして、我が国がとってきた立場については、私も同じくするものでございます。

稲田委員 いや、だから、どういう考え方なのか。そして、和田さんがおっしゃった植民地支配の反省のために韓国に竹島の領有を認めるべきだという考え方について大臣がどう思うか、韓国併合は無効であると主張されている和田教授の考え方をどう思われるか、その認識をお伺いしているんです。はっきり御自分のお言葉で答えてくださいよ、政治主導なんだから。官僚の答弁を読まずに。

平岡国務大臣 私も、竹島問題については、我が国がこれまで領有権を一貫して主張してきており、それを韓国政府に対しても伝えてきているということで、竹島問題の平和的解決を図るために粘り強く外交努力を行っていくべきだというふうに考えております。

 日韓併合問題が無効だということについては、私はそういう考え方を今までとったこともございませんし、それに賛同するということもございません。

稲田委員 法律家なんだから、有効か無効かはっきり答えてください。

平岡国務大臣 和田春樹教授が無効と言っておられるその意味が私には明確に把握できていませんから、その限りにおいてどうだということは言えませんけれども、日韓併合の条約というものが存在したということについては、私もそれを否定するものではございません。

稲田委員 存在したじゃないです、有効か無効かの話を聞いているんですから、端的に有効なら有効とおっしゃってくださいよ。

平岡国務大臣 その無効という意味がちょっと私にはよく、和田教授が言っている無効というのがよくわかりませんけれども、日韓併合条約というものがかつて存在し、それが効果を持っていた、有効であったということについては何の異論もございません。

稲田委員 では、竹島は日本固有の領土ですけれども韓国が不法占拠している、それでよろしいですか。

平岡国務大臣 そこの、竹島が我が国の領土である、また我が国が領有権を有しているということの立場は一貫しておりますけれども、その韓国の今の状況についてどう評価するかということについては、ちょっと私自身、今ここで明確に申し上げられる状況ではございません。

稲田委員 大臣、竹島は日本固有の領土であります。そして今、韓国が事実上占有していますが、これは我が国固有の領土を韓国が不法占拠している、それでよろしいねという質問です。

平岡国務大臣 法務大臣としてお答えすべき話だとは思いませんけれども、不法占拠ということ自体が、ある意味では非常に政治的な意味合いを持った言葉でございますので、私自身がここでその問題についてこうだというふうに申し上げるのは適当でないというふうに思います。

稲田委員 いや、驚きましたね、大臣。大臣は日本の閣僚なんですよ。日本の国益を守るんですよ。日本の国益といったら日本の領土を守ることが入っている、当たり前のことですよ。我が国固有の領土、そして他国に不法占拠されている固有の領土ですよ。どうして我が国固有の領土を韓国が不法占拠していると日本の閣僚が言えないんですか。もう一度答弁を求めます。

平岡国務大臣 日本国政府として、竹島の領有権については、韓国政府に対して、我が国の領土であるということはしっかりと伝えてきているということで、竹島問題の平和的な解決を図るために外交的努力を粘り強く行っているというふうに私としては承知しているということでございますので、その立場で私も理解をしているところでございます。

稲田委員 委員長、答えさせてください。

 大臣、外務省の資料によれば、竹島は日本固有の領土であり、韓国が不法占拠していると書いてありますよ。これは政府の見解なんです。どうして法務大臣が、韓国が不法占拠していると言えないんですか。

平岡国務大臣 外務省のホームページに載っているというふうにお話がありましたけれども、その問題については外務省が責任を持ってお答えする立場だというふうに思いますので、私からはこれ以上のことは申し上げるつもりはございません。

稲田委員 何を言うんですか。そんなことないでしょう。法務大臣なんだから、不法か合法か判断できるでしょう。不法占拠ですか、合法な占拠ですか。

平岡国務大臣 そこは外務省において整理されておられる問題でありますので、外務省が責任を持って答えられるべき問題であるというふうに思います。

稲田委員 答えになっていないですよ。

 大臣、大臣は、法務大臣だけじゃなくて、日本の国会議員としての資格を疑いますよ。我が国固有の領土を他国が占有している、それは不法占拠でしょう。秘書から紙を回してもらわないとそんなこと、答えられないんですか。

平岡国務大臣 繰り返しになりますけれども、外務省において、外務省がどういうふうに言い続けているかということについてのホームページがあるということで、外務省が責任を持ってこの問題については答えるべきだと思いますけれども、法務大臣というよりは国務大臣という立場で今御質問をされているというふうにも承知しますけれども、国務大臣という立場に立ってこの問題について言えば、外務省の見解、政府の見解ということで、私も特に異論はございません。

稲田委員 この問題で私の時間を全部使うのは嫌なんですけれども、もう一度聞きます。我が国固有の領土である竹島を……(発言する者あり)何を教えているんですか、筆頭。何ですか、それ。大臣の見解を聞いているんですよ。日本の大臣だったら、それぐらい、自分の言葉で答えられるでしょう。

 竹島は日本固有の領土であり、韓国が不法占拠している、これでよろしいですか。

平岡国務大臣 不法占拠の部分については、外務省が自分のホームページで述べていることであり、外務大臣あるいは外務省が責任を持ってお答えする立場である、私は、国務大臣という立場から、政府の見解と一にするものでありますということを申し上げております。(発言する者あり)

稲田委員 では、質問をかえます。

 韓国の占有に法的な根拠はあるんですか。

平岡国務大臣 その点についても、先ほどの外務省のホームページにも書かれているようでありますけれども、外務省あるいは外務大臣が責任を持ってお答えするべき話であって、私は国務大臣の一人として、政府の見解に従った考え方を持っているということでございます。

稲田委員 答えていません。

 もう一度聞きます。法的根拠なく韓国は占有している、これでよろしいか。

平岡国務大臣 その問題について責任を持って答えるべきは外務大臣、外務省というふうに認識をしております。私としては、政府の見解に従った考え方をとっているということでございます。

稲田委員 平岡大臣、本当にひどいですよ。少なくとも江田五月大臣は、法的根拠なく占有しているということはおっしゃったんです。それはすなわち不法占拠と同じ意味なんだけれども、民主党政権になってから、なぜか不法占拠という言葉を使いたくないんですよ、弱腰だから。だから法的根拠なくという表現に変えられたんですよ。しかし、江田大臣ですらと言うと失礼ですけれども、法的根拠なくということは認められたんですよ。それすら認められないあなたに法務大臣の資格は全くありません。

 次に行きます。

 大臣は先ほど、岩国の基地への移転の問題についての御自身の考え方についてごちゃごちゃおっしゃいましたけれども、結局、岩国移転については反対でいらっしゃるんですね。

平岡国務大臣 政治家一人の考え方として、空母艦載機の岩国移駐については私は反対であります。しかしながら、これはもう繰り返し申し上げておりますけれども、内閣で決まったことについては従っていくということを申し上げているところでございます。(発言する者あり)

 今、決まっているじゃないかというふうに言われますけれども、空母艦載機の移駐の問題というのは、ただ単に空母艦載機が岩国に移るということだけじゃなくて、岩国を基点にしてどういう活動をするのか。例えば、先ほども言いましたように、夜間離発着訓練をどこでやるのか、これもまだ決まっているわけではありません。さらに、必要となる米軍住宅をどのようにつくっていくのかということについてもまだ決まったわけじゃありません。

 そういう意味において、地元住民の皆さんの声が、そうした種々の地元が抱える問題についてしっかりと政策に声が反映されるように私としては努力をしていきたいということをるる申し上げてきているということでございます。

稲田委員 平成二十三年九月十七日、大臣就任後ですけれども、岩国市、山口市の会見で、米軍再編に伴う厚木基地から岩国基地への空母艦載機移転について、米軍家族住宅建設を含めて反対と表明されておりますが、今もその御意見には変わりありませんね。

平岡国務大臣 そのときも申し上げておりますけれども、一政治家として私の考え方は反対であるということを申し上げましたけれども、また繰り返しになりますけれども、この問題については、地元の皆さんの声をしっかりと政策に、政府に、内閣に伝えていくのが私の役割であるということを踏まえて行動してまいりたいということもその記事の中に多分書いてあるんじゃないかというふうに思います。

稲田委員 大臣は、政治家個人としては岩国への移転について反対であるけれども、大臣という立場としては反対しない、そういうことですか。

平岡国務大臣 大臣としては閣議で決まったことについては従っていくということを申し上げているところでございます。

稲田委員 もう既に閣議で決まっているじゃないですか。もう既に閣議で決まっていて、あなたがこの就任後の御地元の記者会見で岩国基地への空母艦載機移転反対だと言っているときに、もう既に政府の方針は閣議決定されているんじゃないんですか。

平岡国務大臣 そこは、先ほども申し上げましたように、空母艦載機の移駐というのは、ただ単に厚木から岩国に移るというだけの話じゃなくて、さらに移った後に、例えば夜間離発着訓練をどこでどういうふうにやるのかとか、米軍の住宅をどこにどういうふうにつくっていくのか、そういうものを全部ひっくるめてこの空母艦載機の移駐問題というのがあるわけでありまして、閣議で決まっている部分もそれは当然ありますけれども、閣議で決まっていても、いまだにまだ実現ができない、あるいはいまだにまだ地元との交渉中の問題、そういうものもたくさんあるわけでありますから、そういう問題について、私が地元の皆さんの声を国に伝えていくということをしっかりと果たしてまいりたいというのが私の言っている趣旨でございますので、御理解をいただきたいというふうに思います。

稲田委員 私はそんな細かいことを言っているんじゃないんです。大きなところですよ。大きなところ。

 マニフェストで民主党は、米軍再編の見直し、それから普天間の最低でも県外、国外、これを公約として、沖縄の人たちの心をつかんで、そして政権交代されたんですよ。しかし、現在、その公約はもう捨てられたんですよ。やめて、自民党の日米合意に戻られたんですよ。それはもう閣議決定されているんです。ですから、今さら岩国移転について反対なんという閣議は出ませんから、もう岩国移転自体は決まっているんです。

 それについて、大臣は今、賛成なんですか、反対なんですか。

平岡国務大臣 稲田議員が、空母艦載機の移駐問題について、今さら変わらないんだと。確かに、移ること自体は変わらないという認識は、私も多分正しいんだろうなというふうに思っています。そういうことを前提にして、これから私が何をなすべきかということについてしっかりと考えて、そして行動してまいりたい。

 その一つが、先ほど来申し上げているように、空母艦載機の移駐というのは、ただ単に空母艦載機が岩国に行くというだけじゃなくて、どこでどういう訓練をするのかとか、どこにどういう施設をつくるのか、そういう問題が全部ひっくるめてあるわけでございます。閣議決定されたという大まかなところはありますけれども、細かいところはまだ、これから決めていくべきことでございますから、それを閣議でやるのか、閣僚懇談会でやるのか、あるいは一つの省が関係省庁と協議しながらやるのか、いろいろなレベルはあろうかというふうに思いますけれども、私としては、できる限り地元の声をしっかりと政府に伝えていくという役割をしていきたい、こういうことでございます。

稲田委員 大臣、そういうのをごまかし答弁というんですよ。大臣は、大臣に就任してから御地元で、岩国移転について反対だということをおっしゃっているんですよ。でも、もう既に移転は決まっているんです、閣議で。予算委員会でも、きょうの同僚議員の質問でも、閣議で決まったらそれに従う。もう決まっているんですよ、既に。もう決まっちゃっているんですよ。ですから、大臣は、自分の政治家の信念をもう捨てられたんですよ、大臣になられて。違いますか。

平岡国務大臣 私自身は捨てたとは思っておりません。これから国際情勢もいろいろ変わってくることがあるでしょう。国内情勢もいろいろ変わってくることがあるでしょう。そのときには私自身も、基本的な気持ちというもの、考え方というものを踏まえて、自分なりにいろいろ判断をしていきたいということでございます。

 しかし、現在、この状況の中で空母艦載機の移駐そのものについて反対と言ってみたところで、それが実現できないことであるというのは、稲田委員がまさに述べられたとおりだと私も思います。そういう事実関係の認識を持った上で、今何をなすべきかということを考えながら私は行動しているというふうに御理解いただきたいというふうに思います。

稲田委員 大臣は信念を捨てられたんです。一体いつ岩国移転を納得されたんですか。

 平成二十二年、昨年五月、岩国で空母艦載機の移駐に反対する大集会が開催されました。四千人の大集会が雨の中開催されて、あなたは出席をされたんです。そして、鳩山総理が普天間の移設を辺野古にお願いしなければならないと公約違反を明言されたことに対して、怒りの大集会だったんです。そこで、あなたも出席されて、全国で我々の苦しみを理解している人がどれほどいるだろうか、北朝鮮や中国の脅威は声高に叫ばれているが、北東アジアの緊張緩和の方向へ持っていくべきだ、基地の負担を少なくするように全国の皆さんにお願いしたいと発言されて、翌日のブログでは、沖縄県内に引き続き移設地を求める根拠が釈然としないといって、普天間を辺野古に戻すという鳩山さんの公約違反を批判されていらっしゃるんです。

 一体、昨年の五月から今までの間、いつ納得されたんですか。政府の方向転換、公約違反、辺野古移転と岩国への移駐について、大臣はいつ納得されたんですか。

平岡国務大臣 昨年の五月ということは、まだ私が政府に入ってくる前の与党の時代だったというふうに思いますけれども、そのときの気持ちは別にうそ偽りはございません。

 いつ変わったのかというふうな質問について言えば、それは、いつ大決心したということではなくて、いろいろな状況を見ながら自分なりに考えて、何を今すべきかということを考えながら現在に至っているということでございます。

稲田委員 私はがっかりしました。大臣、私は、野党時代は信念を貫かれる方だと思いましたよ。こんな岩国の御地元の基地への移転の問題、米軍再編の問題、大きな、日本の安全保障、外交の問題ですよ。自分の、政治家の信念にかかわる問題ですよ。それを、大臣になるからといって百八十度転換して政府の方針に納得する。信念を捨てて大臣の座に居座りたいとだけしか私には思われません。御地元の方が、あなたを応援して岩国への移転に反対をして、あなたを応援して一生懸命あなたを当選させた地元の方々に対して、私は本当にお気の毒だと思います。

 終わります。

小林委員長 次に、棚橋泰文君。

棚橋委員 平岡大臣に伺います。

 入管法に関してですが、北方領土、大臣、おわかりですか、聞いていらっしゃいますか、大臣。北方領土に我が国入管当局の許可なくロシア人が例えば出入りした場合は、これは入管法違反になるでしょうか。

平岡国務大臣 そういう問題提起は、ちょっと私自身、今まで検討したことがないので定かではございませんけれども、入管当局が北方領土には存在していないということも、また事実であろうかというふうに思います。

棚橋委員 質問しているのは、違法か違法でないかです。北方領土に我が国入管当局の合法的な許可なくロシア人が出入りしたら、違法でしょうか、合法でしょうか。日本国法に照らして。

平岡国務大臣 基本的には、本邦に上陸する目的で上陸の許可等を受けずに我が国の領域に立ち入ることは不法入国であるというふうになっておりますけれども、領土問題の存在を理由として、何人に対しても出入国管理及び難民認定法に定める出入国手続の履行を要求できない状況にある北方領土については、この入管法の適用の前提を欠いているというふうに考えているところでございます。

棚橋委員 では、我が国の領土であるが入管法関連の法律は適用されない、そういう理解でよろしいですか、大臣。

平岡国務大臣 我が国固有の領土であるということを我が国が主張していることはまた事実でありますし、先ほど申し上げたのは、領土問題の存在を理由として出入国手続の履行を要求できない状況にある北方領土について、同法の適用の前提を欠いているというふうに考えています。

棚橋委員 いや、私が聞いているのは、現実に法が適用できるかどうかではなくて、違法か合法か。日本国法、日本国の出入国管理に関連する法律に従って、違法行為なのですか、それとも違法行為ではないのですか。イエス、ノーでお答えください。

平岡国務大臣 本邦であっても、領土問題の存在を理由として、何人に対しても同法に定める出入国手続の履行を要求できない状況にある地域については、同法適用の前提を欠いていると言え、同法違反は観念しがたい。

 これは先ほど来から御答弁していることでございますけれども、そう考えますと、外国人が上陸許可等を受けないで本邦に上陸する目的で、領土問題が存在し我が国の統治権が及んでいない状況にある北方領土に来た場合には、不法入国罪は成立しないという考え方で整理されているというふうに承知しています。

棚橋委員 今、観念されないという部分がちょっと聞こえませんでしたので、もう一度お願いいたします。

平岡国務大臣 本邦であっても、領土問題の存在を理由として、何人に対しても同法に定める出入国手続の履行を要求できない状況にある地域については、同法適用の前提を欠いていると言え、同法違反は観念しがたいということです。

棚橋委員 今、出入国管理に関連する法令を担当する大臣として北方領土についてお答えをいただきましたが、しかし、これは現ロシアの不法占拠であることは、これは大臣はお認めになるわけですよね。

平岡国務大臣 ロシアの、北方領土との関係について言えば、ロシアによる事実上の支配が行われているというふうに考えています。

棚橋委員 ですから、入管法を管轄する法務大臣として、それは不法占拠なのか、そうでないのか。不法占拠かどうかだけお答えください。占拠されている事実はわかっております。

平岡国務大臣 北方領土については、ロシアによる事実上の支配が行われているというふうに考えております。

棚橋委員 それを不法占拠と言うか言わないのかと聞いております。イエスかノーかで答えてください。

 同じ質問に関してお答えがないですよ、委員長。ひどいですよ。

 不法占拠と言うんですか。言わないんですか。

平岡国務大臣 この問題については、非常に政治的な問題でもあるということは、棚橋委員も御存じのとおりだというふうに思います。

 現在、私の立場からいえば、ロシアは北方領土について事実上の支配をしているというふうに認識しているというふうに申し上げたいと思います。

棚橋委員 ちょっとひどいですよ。質問に答えていないです。

 入管法を所管している大臣なんでしょう。出入国管理なんでしょう。領土に関するものはまさに出入国管理。そして、占拠状態、それが合法か不法か、そういう大事な問題じゃないですか。

 北方領土は、我が国の固有の領土として、ロシアに不法占拠されているのかいないのか、それだけお答えください。

 委員長、これは全くお答えがないです。ひどいです、これは。イエス、ノー、どっちかだけなんです。

平岡国務大臣 繰り返しになりますけれども、ロシアと我が国との間には領土問題が存在をしているということであり、北方領土についてはロシアが事実上の支配をしているというふうに認識をしています。

棚橋委員 法務大臣、よくおわかりですね。なぜそこで不法占拠と言わないか。相変わらずそういうところはいい勘をされていると思いますが。

 では、入管法を所管する大臣にお伺いいたしますが、竹島は不法占拠されていますか。

平岡国務大臣 これも先ほど来、稲田議員との間でるる議論をさせていただきましたけれども、不法占拠かどうかということについては、私が申し上げる立場でなくて、外務大臣あるいは外務省において権限を持って表現をしていただきたいというふうに思いますし、私としては、その政府の見解に考え方を一にするものでございます。

棚橋委員 要は、こういうことですか。不法占拠とは言えないんですね。竹島は韓国に不法占拠されているとあなたは言えないんですね。そういう理解でよろしいですな。

平岡国務大臣 言えないということの位置づけの問題ですけれども、これについては、外務省、外務大臣のところで権限を持って表現をしていただきたいというふうに思っています。

棚橋委員 では、もう少しお伺いいたしましょう。

 在日韓国人を初めとする永住外国人住民の法的地位の向上を推進する議員連盟、これは平岡大臣もお入りになっているようですが、まず、その点について御記憶があるか、そして、永住外国人に対する法的地位の向上、特に地方参政権に関して平岡大臣はどのようなお考えをお持ちなのか、この二点をお答えください。

平岡国務大臣 その議員連盟については、私も入っていたような記憶はありますけれども、ほとんど活動はしておりませんので、余り実績はなかったというふうに思います。

 地方参政権の問題については、私は、基本的には、地方参政権の問題は進めていくべき問題であるというふうに自分自身は考えておりますけれども、これも、本来考えるべき権限というか、考えるべき役所というのは総務省ということであろうかというふうに思いますので、私からはこれ以上のことは申し上げるつもりはございません。

棚橋委員 今、野田内閣の一員である平岡大臣から、外国人の地方参政権は前向きに進めていくべきだという御答弁がありましたが、その理解でよろしいですか。再度確認させてください。

平岡国務大臣 私が政治家個人としてどういう考え方を持っているかというのは今申し上げたとおりでありますけれども、いずれにしても、この問題についてはさまざまな意見があるというふうにも思っています。各党各派がしっかりと議論をして結論を出していっていかれるという問題だというふうにも認識をしております。

棚橋委員 先ほど稲田議員が質問された北朝鮮に対する人道的見地からの食糧援助に関して、大臣は、主導的、積極的なお考えで活動されたという御答弁でしたが、それでよろしいですか。

平岡国務大臣 私自身は、積極的に活動したということが何を意味するかは別として、人道的支援というのは、困っている人がいるのならば、それはできる限りすべきであるということであって、北朝鮮で起こった大洪水に対しての人道的支援というのも私は行ってしかるべきだというふうに考えております。

棚橋委員 困っていらっしゃるのは拉致の被害者であり、家族ではないですか。また、北朝鮮の洪水で困っていらっしゃる方が多いとおっしゃいますが、現実的に考えたときに、日本が例えば食糧支援をしたら、彼らに渡ると思っているんですか。もしそうだとしたら、政治家としては全く失格ですよ。どう食糧支援しても、渡るのは支配階級に渡るだけであって、私どもの食糧支援なんかは、むしろ金正日体制の締めつけに使われるだけじゃないですか。それぐらいの発想がないんですか、大臣は。

平岡国務大臣 そういう問題意識がないわけではありません。だからこそ、しっかりと、本当に困っている人のところに行くためにはどうしたらいいのかということもあわせて考えなければいけない問題であるというふうに思います。

棚橋委員 では、どうやったら本当に困っている方に食糧が行くんですか、お教えください。

平岡国務大臣 それは、私が具体的に策を持ち合わせているわけではありませんけれども、支援をしようということになれば、それなりの手続、交渉の中で決めていけるべき問題だというふうに思っております。

棚橋委員 百歩譲っても、北朝鮮で困窮している人民に配られる方策があるというのならともかく、そのような策はないけれども、とりあえず北朝鮮に食糧支援をすべきだということを法務大臣が言う。私は全く理解ができません。

 その上で、さらにもう少し伺いますが、大臣、朝鮮半島問題研究会、これは所属されていらっしゃいますか。議員連盟ですが。

平岡国務大臣 これももう随分前の話だったというふうに記憶していますけれども、たしかそういう議員連盟があって、私も数回勉強会には出席したような気がしますけれども、そんなに定かな記憶があるわけではございません。

棚橋委員 この勉強会の主目的は何か、大臣、おわかりですか。私は参加していないのでわかりませんので、お教えください。

平岡国務大臣 私も大分前の話なので定かな記憶はございませんけれども、日本と朝鮮半島全体との交流といいますか、友好関係といいますか、それを促進していこう、そういう趣旨であったかというふうに、うろ覚えでありますけれども、理解をしています。

棚橋委員 この研究会に所属する議員が、私どもにとって決して許すことのできない拉致問題を軽視したり、あるいは北朝鮮との我が国の国益を損なう形での国交正常化を目指す、そのようなことはないと、大臣、断言できますか。

平岡国務大臣 その研究会でしたかについては、大分前の話なので、今続いているかどうかということも私は承知しておりませんし、最近は出たこともございませんので、今どういう活動をしているのかということについてはわかりませんので、私から何かこの研究会に対してどうこうということを言うのは差し控えさせていただきたいというふうに思います。

棚橋委員 大臣は、再三の質問の中で、北朝鮮の実質的影響下、支配下にあると言ってもいい朝鮮大学校の創立五十周年に国会議員として唯一招かれて祝辞を述べたとのことですが、その事実は間違いございませんか。

平岡国務大臣 招かれたというか、案内があって、先ほど申し上げたような末川博先生との関係もあったので出席をさせていただいた。出席をしたところで、いろいろな方々がごあいさつをされた際に私も促されてあいさつをしたという事実はございます。

棚橋委員 そのあいさつの中で朝鮮大学校創立五十周年をお祝いする言葉はなかったんですね。北朝鮮の支配下に事実上はあるような大学校を、日本国の、まして今法務大臣を務めているような方が、公安調査庁の監視下にあるような大学校の創立五十周年をお祝いするような言葉をまさか祝辞の中でおっしゃっていませんよね。

平岡国務大臣 祝辞といいますか、あいさつの中で具体的にどういう言葉を使ったかというのはもう覚えておりませんけれども、私自身は、朝鮮大学校と私の母校の大先輩である末川博先生との成り合い、かかわり合いについてお話をさせていただいたというふうに記憶をしております。

棚橋委員 質問に答えてください。

 公安調査庁、これは一応、形式上あなたの部下ですよね。この公安調査庁が、この国の国益を、国民の生命財産を守るために、簡単に言うと、監視下に置いている朝鮮大学校。この五十周年の式典に、あなたは、日本国の国会議員としてただ一人招かれ、そこで、公安調査庁の監視下にあるような団体の創立五十周年をお祝いするようなあいさつはされましたか、されませんでしたか。イエス、ノーだけで答えていただいて結構です。そのようなあいさつはしていない、したかもしれない、した、どうですか。

平岡国務大臣 先ほども申し上げましたように、具体的にどういう言葉を使ったのかということについては、私、申しわけないけれども覚えておりません。

 それから、公安調査庁の監視下という言葉がありますけれども、私の理解では、調査対象になっているということであって、監視という言葉が適切であるのかわかりませんけれども、ただ、そこに行ったときは、私はあくまでも野党の一国会議員という立場で出ておりますので、公安調査庁と朝鮮大学校との関係がどういう関係にあるのかということについてつぶさに承知しているわけでもございませんし、特に問題があったというふうにも考えておりません。

棚橋委員 ちょっと驚きました。与党であろうと野党であろうと、我が国の国益、まして、我々としては絶対許すべからざる拉致問題等があるわけですから、北朝鮮のような国の支配下、監視下、コントロール下にある団体かどうかぐらいは、普通はわかるんじゃないですか。まして、なぜ、あなたの選挙区でもない、わざわざそこにあなた一人が創立五十周年のお祝いの会に行って祝辞を述べているんですか。常識から考えると、物すごく不自然じゃありませんか。

 もう一度伺いますが、そこで五十周年をお祝いされたのか、それとも、五十周年の祝賀会に招かれながらも、五十周年おめでとうという言葉は一切言っていないのか。そこはちゃんと、その団体の性質をわかっていてそういう言葉は避けたのか。この点をお答えください。

平岡国務大臣 繰り返しになりますけれども、私がその場でどういう言葉を使ったのかということについては、もう記憶がないということでございます。その点は御理解をいただきたいというふうに思います。

 私が一人で行っていたということについて言えば、私は、ほかの議員の人たちにも案内があっただろうし、その中でだれか来る人もいるだろう、それぐらいの気持ちで行っておりましたので、私がわざわざ一人だけ選ばれて、何か大きな役割を担わされて行くというような気持ちも当時は持ってはいませんでした。

棚橋委員 同じ質問を何度もさせないでください。

 公安調査庁の監視下にある、北朝鮮の影響下にある朝鮮大学校創立五十周年で、五十周年おめでとうと祝辞を述べたのか、述べていないのか。もう一度お答えください。

平岡国務大臣 繰り返しになりますけれども、覚えているか覚えていないかという問題ですから、覚えていないとしか言いようがないというふうに思います。

棚橋委員 否定はできないわけですね。

 普通、お祝いの席に、特に何十周年というようなお祝いの席に招かれたら、まず、まくら言葉で○○学校何十周年おめでとうございますと言うのが常識だと思いますが、大臣はそういう常識は余りお持ちではございませんか。

平岡国務大臣 普通はそういうあいさつをされるだろうと思いますけれども、さっきから言っているように、どういう言葉を使ったかということは覚えていないというふうに申し上げているところです。

棚橋委員 私は、一言一句、一言も間違えることなく言ってくれと言っているわけじゃないんです。創立五十周年おめでとうという趣旨のことを言っているかどうかですよ。

 そうすると、常識的には、平岡大臣、あなた自身があなた自身の行動あるいは人格を御存じでしょうが、創立五十周年の会に招かれて、まずまくら言葉に創立五十周年おめでとうと言うような人なのか、人でないのか、それはあなたが一番よく御存じじゃないですか、自分自身のことを。どっちなんですか。

 逆に、創立五十周年で招かれて言っていないということは、逆に言うと、この団体は非常に危険な団体で、そういうことを言ってはいけないという、ある意味では非常にわきのかたい大臣だったということなりますが、どっちですか。

平岡国務大臣 棚橋さんの言っておられることもわからないではないですけれども、覚えていないということが私の正直なところでございますので、それ以上申し上げるのはちょっと差し控えたいと思います。

棚橋委員 もう一点だけ伺いますが、民主党娯楽産業健全育成研究会というもの、どうもこれはパチンコのようですが、ここに所属されていた記憶はございますか。

平岡国務大臣 これも、もう大分前の話になろうかというふうに思いますので、たしか、どなたか同僚議員から誘われて、出た記憶はあります。ただ、もう随分昔の話でありますし、その議員連盟で活動したというようなこともほとんどなかったのではないかというふうに記憶しております。

棚橋委員 ちなみに、私の入手した資料によれば、こう書いてありますが、もし間違っておれば、大臣、訂正してください。

 この議連の主目的は、パチンコ店内での換金を認めることを法律上に明記する。パチンコの、これはくぎ調整というんですか、パチンコ店の自由裁量として、警察の指導対象から除外する。所管を警察庁から経済産業省に移す。警察による調査を簡略化する。一部店舗の営業許可取り消しの罰則がその法人すべての店舗に波及する規定は削除する。見逃せということですね。パチンコ店新規出店の障害になっている保護対象施設の対象を絞り、出店可能地域を広げる。

 これは、私の得たこの情報は間違っておりますでしょうか。もし間違っておるようであれば、大臣、訂正してください。

平岡国務大臣 私の認識の中では、そういうことをやっていたという記憶は全くございません。したがって、それが正しいのか正しくないのかということについても、私は申し上げる情報を持ち合わせておりません。

棚橋委員 では、大臣の、法務大臣としての個人的感想を伺わせていただければ結構ですが、例えば、パチンコ店の所管を警察庁から外すとか、あるいは、くぎ調整というんですか、これを警察の指導対象から除外するとか、これは適切なことだと思いますか。

平岡国務大臣 所管外のことなので、発言は差し控えさせていただきたいと思います。

棚橋委員 それでは、もう十分大臣に対する国民の評価はこの委員会でも下されていると思いますので、当初の質問の残りを質問させていただきます。

 まず、大臣秘書官の問題ですが、改めて伺いますが、九月一日に公設秘書として採用されて、九月二日に大臣秘書官になった、そういう理解でよろしいですね。

平岡国務大臣 採用日ということでいえば、九月一日に公設の秘書、九月二日に法務大臣秘書官ということになっているというふうに承知しています。

棚橋委員 そうすると、先ほど同僚議員の柴山議員から質問がありましたので、これは間違いないと思いますし、信用しておりますが、念のため確認いたしますと、この公設秘書の方、松本さんというんですか、唐津さんというんですか、は、衆議院議員の公設秘書としては一日分の給料をもらい、九月二日以降は大臣秘書官としての給料をもらい、ですから、逆に言うと、衆議院議員の公設秘書としての給料は一日しかもらっていないんですね。

平岡国務大臣 申しわけありませんけれども、その辺のことについては、ちょっと私、情報を持ち合わせておりません。

棚橋委員 ただ、これは大臣の公設秘書ですよね、この方。ほかの議員、例えば民主党所属のほかの議員の公設秘書さんが給与がどうだったかという話であれば、今の答弁でもわかるんですが、大臣の秘書さんですよね。今すぐお答えいただくわけにはいきませんか。多少待ちますが、速記をとめていただければ。

平岡国務大臣 これ自身は、先ほどもちょっとお答えしましたけれども、大臣秘書官の給与の取り扱いについては、先ほど御答弁申し上げたとおりでございます。

 なお、公設秘書については、今聞いたところでは、九月に一日勤務をし一カ月分の支給は受けているということでありますけれども、これについては、先ほどの秘書官と同様、いろいろな調整があるのではないかというふうに思っています。

棚橋委員 九月の一日だけ勤務をして一カ月分の給料をとりあえず受けたという理解でよろしいんですか。それとも一日分しか受け取っていないということですか。お答えください。

平岡国務大臣 この給与の取り扱いについては、私が決めるということではなくて、衆議院の方で決めていることでございますので、そこは衆議院がどう考えているのかということをお聞きいただきたいというふうに思いますけれども、事実として私が聞いているのは、九月の一日勤務について一カ月の支給が行われているということでございます。

棚橋委員 おかしいじゃないですか。二重取りでしょう、それでは。九月は一日しか勤務しなくて、一日(ついたち)一日しか勤務しないで、一カ月分の給料を衆議院とはいえ国からもらい、九月二日からは法務大臣秘書官としての給料を国からもらっていた、そういうことなんですか。今の大臣の御答弁だとそうなりますが、まさかそんなことはないですよね。

平岡国務大臣 これは衆議院の方で確認をしてもらわなければなりませんけれども、この公設秘書の一カ月分の給料については、戻入しているかどうかということについては、私自身、情報を持ち合わせておりません。

棚橋委員 この公設秘書さんというか大臣秘書官の件は、これだけ問題になり、大臣自身も、まずマスメディア、そして予算委員会等も含めて、今この委員会でもこれだけ聞かれているわけですよ。その秘書官、秘書さんの給料が、しかも、もと詐欺をした人でしょう。その人が、まさか、九月は一日だけ勤務して衆議院から公設秘書の給料を一カ月分受け取り、それと同じ時期、九月二日から九月末まで大臣秘書官の給料を二重に取る、これはまさに詐欺じゃないですか。そんなことはないんでしょう、もちろん。

 私は、これはないという返事が来るものと思って質問したんですが、今の御答弁だとまるであるように聞こえますが、ないですね、これは。

平岡国務大臣 これ自体は、先ほど来から申し上げているように、衆議院の方で決めていることなので、私がどうこうするというような性格のものではないので、答弁はこれぐらいの情報しか持ち合わせていないということでございます。

 先ほどちょっと予算委員会でも取り上げられたというふうにお話がありましたけれども、秘書官の問題は予算委員会では取り上げられていなかったというふうに私の記憶ではございます。

棚橋委員 これは衆議院のルールとは別に、公設秘書さんは議員の指揮下にあるわけですね、そうですね。その方が、まさか給料の二重取り、いや、僕はこの質問はまさかそんなことはないという前提で今聞こうと思ったんですが、大臣からの御答弁を聞いている限り、もしかして九月の二日から九月の末までは大臣秘書官の給与と衆議院議員の公設秘書の給与と二重取りしていた可能性があるというような御答弁があったので、今驚いているんですよ。

 当然そのようなことはない、九月一日の一日分だけは公設秘書として受け取らせたが、残りは返納手続をとらせているから問題がないという御答弁があると思ったんですが、違うんですか。

平岡国務大臣 私自身も、今委員が指摘された事実関係については十分に把握はできておりませんでしたので、そういう問題があるのかないのか、自分なりにまた確認をしてみたいというふうに思います。

棚橋委員 残念なことに、これではもうとても、答弁がございませんので、理事会が今休憩になっておりますので、この委員会後、理事会を再開し、少なくとも、この話はきちんと速やかに、次の参議院の法務委員会の前にはお返事をいただきとうございますから、理事会に報告していただくように、委員長、お取り計らいをお願いいたします。

小林委員長 後刻理事会にきちっと報告させるようにします。

棚橋委員 後刻、この直後でよろしいですね。きょう、あすということでよろしいですね。これは簡単な確認ですから、まさかそんなことはないでしょうから、きょう、あす、あすまでに理事会ないし理事にお返事があるということでよろしいですね。

小林委員長 はい。

棚橋委員 委員長、よろしいですね。ありがとうございます。

 次に、品川美容外科についてお聞きをいたします。

 三百万円をお受け取りのようですが、お返しになったんですよね、大臣。

平岡国務大臣 返却いたしました。

棚橋委員 いつ、どのようにして返却したか、覚えていらっしゃいますでしょうか。

平岡国務大臣 具体的な日にちは、もしかしたら間違っているかもしれませんけれども、たしか九月の中旬だったというふうに思います。返却の方法は、銀行振り込みで行ったというふうに報告を受けております。

棚橋委員 この品川美容外科の件に関しては、まだ捜査中とはいえ、今公開されている情報では、大変残念なことに患者さんが一人亡くなっている、その捜査の過程において捜査関係の資料の漏えいの疑惑がある、そして、そこから野田総理と平岡大臣に三百万円ずつの献金が行われている。こういう理解で私はおりますが、大臣、何か間違っている点があれば御訂正ください。

平岡国務大臣 手元に資料がないので、具体的な日にちはちょっと間違っているかもしれませんけれども、私が献金を受けたのは、今棚橋議員が指摘された事故あるいは事件というものが起こる前でございます。

 そういう意味で、そういう刑事事件に発展するようなことがあったということについては、全く私としては存じ上げない状況の中で献金を受けさせていただいたということでございますけれども、私がこういう法務大臣という立場に立ち、刑事事件については一定のかかわりがあるという立場に立ちましたものですから、李下に冠を正さずというつもりで返却を申し出、そして受けていただいたということでございます。

棚橋委員 三百万円というと大変大きな金額ですし、なぜ野田総理と平岡大臣だけなのかというのもちょっと不思議なんですが、この献金の経緯について、まさか平岡大臣は見ず知らずの方から三百万円も受け取るような方ではないでしょうから、どういうお知り合いで、どういう経緯で三百万円をお受け取りになったのか、それはまた、一年なのか、数年に分けたのか、簡潔に御説明をいただければと思います。

平岡国務大臣 献金をしていただいたのは平成二十年から二十二年までの三年間で、各年百万円ということでございます。最初の献金というのが平成二十年十二月の十九日ということで、委員が御指摘になった、業務上過失致死罪で逮捕されたのがことしの四月二十日ということでございまして、いずれの献金のときも、こういう事実関係があったということについては、私の方では事故、事件があったということについては把握ができていないという状況でございます。

 献金をいただいた経緯について言えば、もともと旧知の方から御紹介があって、政治活動について支援をしてあげたいという方がおられるということでございましたので、私自身、御本人ともお会いさせていただいて、お話を伺った上で、献金を受けさせていただくというふうに決めさせていただいたという経緯がございます。

棚橋委員 その旧知の方というのはどういう方で、お名前をまず、お名前がお話しできないようであれば、どのようなバックグラウンドで、どのような職業の方か、お話しいただけませんでしょうか。

平岡国務大臣 これはプライバシーにかかわる話でもございますので、私の方から発言することは控えさせていただきたいというふうに思います。

棚橋委員 しかし、旧知の方というだけでは、ちょっとこれは余りにも不自然ですよね。せめて、お名前を挙げろとまでは言いませんが、バックグラウンドとか、あるいはどういう職業の方とか、今まで平岡大臣とどういう、例えば故郷が一緒だったとか、そういうことぐらいお話しいただけませんか。

平岡国務大臣 これは献金をしていただいた方と献金を受けた私とで最終的に決めさせていただいた話でございまして、まさにその二人が収支報告等の中でも登場してきておるということでございますので、どういう方に紹介していただいたかについては、私としては答弁を差し控えさせていただきたいというふうに思います。

棚橋委員 では、その旧知の方からは献金をお受け取りになっていないんですね。パーティー券等も買っていただいていないんですね。

平岡国務大臣 これも答えるべきかどうかはありますけれども、全くございません。

棚橋委員 終わります。

小林委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十六分散会


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