衆議院

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第11号 平成24年8月3日(金曜日)

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平成二十四年八月三日(金曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 鉢呂 吉雄君

   理事 勝又恒一郎君 理事 黒岩 宇洋君

   理事 辻   惠君 理事 樋口 俊一君

   理事 稲田 朋美君 理事 棚橋 泰文君

   理事 熊谷 貞俊君 理事 大口 善徳君

      井戸まさえ君    大西 孝典君

      川口  浩君    桑原  功君

      田中美絵子君    橘  秀徳君

      玉置 公良君    中屋 大介君

      橋本  勉君    藤田 大助君

      皆吉 稲生君    山尾志桜里君

      山口 和之君    湯原 俊二君

      吉川 政重君    河井 克行君

      城内  実君    北村 茂男君

      柴山 昌彦君    平沢 勝栄君

      森  英介君    柳本 卓治君

      相原 史乃君    京野 公子君

      樋高  剛君    中島 政希君

      横粂 勝仁君

    …………………………………

   法務大臣         滝   実君

   法務副大臣        谷  博之君

   法務大臣政務官      松野 信夫君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 田中 法昌君

   政府参考人

   (警察庁交通局長)    石井 隆之君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    稲田 伸夫君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    青沼 隆之君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  高宅  茂君

   政府参考人

   (公安調査庁長官)    尾崎 道明君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           高橋 道和君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           坂   明君

   法務委員会専門員     岡本  修君

    ―――――――――――――

委員の異動

八月三日

 辞任         補欠選任

  小室 寿明君     湯原 俊二君

  玉置 公良君     田中美絵子君

  相原 史乃君     京野 公子君

同日

 辞任         補欠選任

  田中美絵子君     山口 和之君

  湯原 俊二君     小室 寿明君

  京野 公子君     相原 史乃君

同日

 辞任         補欠選任

  山口 和之君     玉置 公良君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 刑法等の一部を改正する法律案(第百七十九回国会内閣提出第一三号、参議院送付)

 薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律案(第百七十九回国会内閣提出第一四号、参議院送付)

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

鉢呂委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房審議官田中法昌君、警察庁交通局長石井隆之君、法務省刑事局長稲田伸夫君、法務省入国管理局長高宅茂君、公安調査庁長官尾崎道明君、文部科学省大臣官房審議官高橋道和君、国土交通省大臣官房審議官坂明君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鉢呂委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鉢呂委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大口善徳君。

大口委員 公明党の大口でございます。

 質問をさせていただきます。

 悪質な運転の結果、重大な結果が発生した事例について、危険運転致死傷罪が適用できないケースが目立っております。

 平成二十三年十月の愛知県、無免許で飲酒ひき逃げ事件。これは、無免許のブラジル人が飲酒運転をする車が一方通行を逆走し、自転車で横断歩道を渡ろうとしていた男性をはね、死なせる。運転手は衝突後、車のヘッドライトを消して逃走した。それで、自動車運転過失致死罪、道路交通法違反、救護義務違反で公訴提起され、求刑は懲役十年、判決は七年でございました。

 また、本年四月の京都・亀岡暴走事故。無免許運転の少年が軽自動車の運転中に居眠り運転をし、車が集団登校中の小学生らの列に突っ込む。登校中の児童ら十人がはねられ、三人が死亡した。死亡した保護者は妊娠中で、胎内に胎児がいて、あと数カ月で生をうけるはずであった。

 これに対し、事故で死傷した遺族らは、危険運転致死傷罪での起訴を訴え、署名活動を展開して、六月十二日に約二十二万の署名を京都地検に提出した。京都地検は、少年が無免許運転を繰り返しており、事故の直前も無事故で長時間運転していたことから運転技術はあると判断し、自動車運転過失致死傷罪で起訴を行った、こういうことでございます。

 今、そういう状況の中で、このような悪質な運転を行い、重大な結果を引き起こした事例に危険運転致死傷罪を適用できないかということについて疑問を感じるわけでございます。

 特に、無免許運転を行っていながら、危険運転致死傷罪に言う自動車の進行を制御する技能を有しないという構成要件に該当しないということについて、被害者を初めとする国民の疑問が強く提起されているわけであります。無免許運転を続ければ続けるほど技能があることを裏づけることになる、こういうことはおかしいのではないかということでございます。危険運転致死傷罪の適用範囲を拡大するということを被害者の遺族の方々は求めておられます。無免許運転も危険運転致死傷罪の構成要件に加えるべきだ、こういう要望でございます。

 こういうことについての法改正を行うことについて、大臣の見解をお伺いしたいと思います。法務省でどのような検討がされているのか、そして近々法改正を行う可能性があるのか、お伺いします。

滝国務大臣 このところ続けざまに危険運転による事故が続いている、こういうこともあり、法務省としても、この問題ついては関係方面からいろいろな要請を受けているところでございます。

 そういう中で、前大臣のときから、何とかこの問題については省は省として検討を進めていく必要がある、こういうようなことでずっとやってまいりました。そういう意味では、私にとりましても、これは前大臣のときからの懸案事項でございますから、引き続きどうするかということで検討をしているところでございます。

 それにいたしましても、やはり、最初の危険運転致死傷罪をつくり上げたときの当委員会における議論というもの、これも念頭に置いた検討を進めなければいけないということでもございまして、なかなか簡単にはいかないと思いますけれども、しかし、乱暴な運転をしていても法律のすき間があるよというようなメッセージが世間に出ているというのは大変好ましいことではありませんので、何とかそのすき間を埋めるような方策は、法務省としても、法案改正という格好でできれば望ましいという態度を今とって検討しているところでございます。

大口委員 今大臣から、法改正に向けてということでございます。

 そうしますと、法制審議会等を経て、来年の通常国会、そういうような予定でいらっしゃるんですか。

滝国務大臣 できれば、八月中ぐらいには法制審に諮問をするというようなスケジュールで作業を進めていきたいと思います。したがって、その後の法律改正になると、法制審も、こういう限定された事項ですから、そんなに長時間かかるとは思われませんけれども、法制審の審議の状況を見て、法案作成に取りかかる、こういう段取りだと思います。

大口委員 できれば臨時国会で出せれば一番いいわけであります。引き続き、大臣、御検討をよろしくお願いします。

 大臣から、法改正に向けてやるということでございます。その点を私は大変評価をしたいと思います。

 これについて、当初、この危険運転致死傷罪というのが、故意に危険な運転行為をした結果、人を死傷させた者を暴行により人を死傷させた者に準じて処罰しようとするものということで、このような運転行為は、人の死傷の結果を生じさせる実質的な危険性の点において、人に対する有形力の行使であるところの暴行に準ずるものと評価されるということが、法制審議会でその考え方が指摘されているわけであります。

 そして、事故になれば重大な結果が生じやすいという高い危険性があり、その行為自体が、酒酔い、著しい高速度など、極めて反社会性が強いものを選んだ、こういう理論構成になるわけでございます。

 ですから、今回のように、無免許であるけれども、繰り返し繰り返し無免許をやって運転技能上の問題をクリアするということで構成要件に該当しないということは、いかにも、やはり社会通念を形成する一般国民から大きな違和感を感じられているわけでございます。

 そういう点で、やはり、危険運転致死傷罪は国民の感覚から大きく外れる部分がありますので、その理論構成、たてつけを根本的に見直す必要があるのではないか、こう思うわけです。

 きょう、平沢先生もいらっしゃいますけれども、危険運転致死傷罪を考える超党派の会という勉強会を開いておりまして、大畠先生や平沢先生とともにやっておるわけですが、こういう今の見直し、要するに、理論構成、たてつけからの根本的な見直し、これについてどうお考えでしょうか。

滝国務大臣 今委員が御指摘のとおり、現行法をつくるときも、法制審で専門的な立場からいろいろな意見を頂戴いたしました。委員は、その中で、もう一遍たてつけそのものも見直す必要がある、こういう御指摘だろうと思います。

 確かに、危険運転致死傷罪とそれから過失致死傷罪、基本的な立て方が違う。なぜ違うかというと、やはり過失の方は業務上過失という問題が根っこにあるものですから、それとのバランスでなかなか、例えば量刑を決めるときも、それにいわばバランスをとった格好でやらなきゃいけません。特に、業務上過失罪というのは最長五年というような期間が設定されているものですから、それとのバランスの中でこの問題も考えていくという意味では、たてつけそのものを全面的に見直せるかどうかというのは、これからの議論にまつところがあるんじゃないだろうかなという感じはいたします。

大口委員 危険運転致死罪でありますと、法定刑の上限が懲役二十年ですね。一年以上の有期懲役ということですから。これに問えない場合、最高懲役七年の自動車運転致死傷罪が問われる。

 しかし、自動車運転致死傷罪で処罰する場合、仮に道交法違反との併合罪を考慮するとしましても、例えば酒酔い運転の場合は懲役五年ですが、併合罪の上限が懲役十年六月ですね。そしてまた、無免許運転の場合は法定刑は懲役一年ですから、併合罪加重しても懲役八年ということでございまして、悪質な交通事故事犯で、危険運転致死とのギャップが大きいわけですね。やはりこのギャップを小さくする法改正を考えるということであれば、自動車運転致死傷罪の法定刑を上げる、例えば七年を十年にするとかいうことが考えられるわけです。

 もう一つは、自動車運転致死傷罪を致死罪と致傷罪に法定刑を分けて、致死罪の方を引き上げる、こういう考えも出されているわけです。これは、いろいろなバランスの問題といいますか、自動車運転過失致死傷罪の法定刑の上限を懲役十年とした場合、酒酔い運転あるいは薬物使用運転との併合罪加重とすると、懲役の上限が十五年となって、危険運転致死罪と同じになる、こういうことがあって、致死罪と致傷罪を分ける、こういう考え方も有力にあるわけです。

 この法定刑の引き上げについて、お考えをお伺いしたいと思います。

滝国務大臣 今委員が具体的に刑期の問題についても御指摘いただきました。

 基本的には、先ほど申しましたように、業務上過失罪が五年ということでございますから、それがやはり根っこにあるということは否定できないところでございますね。

 したがって、この辺は、法務省としても、どういう形で委員が御指摘されているような立て方を変えていくかというのは、相当バランスを考えた議論をしていかなければいけない。しかし、余りすき間が出るようでは改正する意味はない。そういうようなことで取り組んでいるというのが今の実態でございます。

大口委員 もう一つ、無免許運転に対する罰則の引き上げについて、これは警察庁にお伺いしたいと思うんです。

 悪質な運転の処罰に関する道交法改正の経緯を見ますと、酒酔い運転は、平成十三年に二年から三年、十九年にさらに五年、過労運転は、十三年に六月から一年、そして十九年に一年以下から三年以下と引き上げられたわけです。ところが、無免許運転については、平成十三年に六月以下から一年以下に引き上げられて以降、平成十九年の改正でも行われなかった、こういうことであります。

 先ほどの事例でも見ましたように、無免許運転の悪質な事例があるわけでありますし、また、自動車運転過失致死傷罪と併合罪加重した場合の処断刑と危険運転致死傷罪の刑の上限とのギャップを埋めるという意味からも、無免許運転に対する罰則を引き上げる必要がある、こういうふうに考えるわけです。

 松原国家公安委員長も、ことしの七月二十四日、閣議後の記者会見で、無免許運転に対する罰則の引き上げの検討を事務方に指示した、こう報じられているわけであります。

 警察庁において、この刑の引き上げの検討、例えば一年から三年以下に引き上げるとかいうことの検討はなされているのか。仮に、閣法で法案を提出する場合、やはりこれはすぐにやった方がいいと思いますので、臨時国会に出すべきと考えますが、いかがでございましょうか。

石井政府参考人 無免許運転の厳罰化につきましては、先日、亀岡市における児童等多数死傷事故の御遺族及び名古屋市におけるブラジル人による死亡ひき逃げ事件の御遺族と松原国家公安委員会委員長が面会し、その罰則の引き上げ等の要望書の提出をいただいたところでございます。

 無免許運転の罰則の引き上げ等につきましては、こうした御遺族の御要望を重く受けとめ、国家公安委員会におきましても御議論を願っているとともに、警察庁におきましても、他の刑罰との権衡等も勘案しつつ、現在検討を進めているところでございます。

 なお、道交法の改正につきましては、昨年四月、栃木県鹿沼市で発生をいたしましたクレーン車による事故を踏まえ、一定の病気等に係る運転免許制度の改正につきましても、現在、あわせて検討作業を行っているところでございます。

 いずれにしましても、速やかに改正案を取りまとめることができるよう、引き続き作業を進めてまいりたいと考えております。

大口委員 勉強会でも、議員立法ということも考えておりまして、とにかく政府としてしっかりとした対応をしていただきたい、こう思います。

 次に、本年七月四日、最高検で、検察における取り調べの録音、録画についての検証として、特捜、特刑における被疑者取り調べの録音、録画の試行について、それから裁判員裁判対象事件における被疑者取り調べの録音、録画の試行的拡大について、知的障害によりコミュニケーション能力に問題がある被疑者等に対する取り調べの録音、録画について、この三つの検証結果が発表されたわけでございます。

 これを見ますと、取り調べの全過程の録音、録画の実施というのは、特捜、特刑におけるものは九十一件中三十九件、約四二・九%、裁判員裁判対象事件においては千九百六件中三百九十九件、約二〇・九%、知的障害によりコミュニケーション能力に問題がある被疑者等に対するものについては五百四十件中百九十四件、約三五・九%ということでございます。

 取り調べの全過程の録音、録画のケースがまだ少な過ぎるように思います。この程度の割合にとどまったのはどうしてなのか。あるいは、数値目標を掲げて全過程の実施率を引き上げるべきである、こう考えますが、大臣、いかがでございましょうか。

滝国務大臣 今委員から御指摘ございましたように、全過程の録音、録画はそのような数字にとどまっているということだろうと思います。ただ、全体としての録音、録画の対象件数というのは、既に九割を超えている。

 こういう中で、できるだけ全過程を進めるようにというのが、本来、最高検の基本的な考え方として出ているわけでございまして、これからどれだけそれを実績として上げていくかということが問われているというのは、御指摘のとおりだと思います。

大口委員 大臣、大いにこれは最高検に督励していただきたい、こういうふうに思います。

 次に、これまでは、自白調書の任意性立証を念頭に置いているために、レビュー方式あるいは読み聞かせレビュー方式ということで、供述調書を前提に録音、録画していたわけですが、今回、試行拡大以降、これまでなかったライブ方式、すなわち、被疑者の供述を録取した供述調書の存在を前提とせずに、犯行に至る経緯、犯行状況、犯行後の行動等について質問し、被疑者が応答する場面をそのまま録音、録画する方式を実施したということであります。これが本来取り調べ可視化にとってなされるべき録音、録画の形態だと思われます。

 例えば、裁判員裁判対象事件について言いますと、四千七百二件中、ライブ方式で、被疑者に発問し供述を得ている場面を録音、録画したものが千二百九十八件、それから、供述を得ている場面から供述調書の署名、指印場面までの録音、録画をしたものが千四百四十七回、それから、供述を得ている場面から供述調書の署名、指印に至る場面に加えて、それまでの取り調べ状況について確認するなどした場面まで録音、録画したものが千二十四回ということで、かなりライブ方式を導入されているということでございます。

 このライブ方式の録音、録画は、本来の取り調べの可視化という観点から、今後も拡大を図っていただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。

滝国務大臣 委員は、ライブ方式、こういうふうにおっしゃいました。要するに、生々しい実際の取り調べの姿をそのまま録音、録画する、こういうことだろうと思いますけれども、当然、国民の皆さん方の感覚は、そういうことが録音、録画の目的、こういうふうに理解をしていらっしゃると思います。そういう意味では、単なる調書の読み上げの部分だけを録画するんじゃなくて、生々しい実際の取り調べの過程をどこまで録音、録画でできるかというのが当初からの懸案事項だと思います。

 そういうためには、ただ単にやれといってもなかなか難しい問題があります。これはやはり、取り調べの技術というか、担当される検察官がどこまで実際に録音、録画されているということを意識せずに、ごく自然に取り調べができるかという、その取り調べの技術という問題もあるように思います。

 最高検とされては、そういうことも含めて、これから取りかかっていくんだ、こういうことを報告書で申されておりますので、そういう方向というのは目指すべき方向というふうに理解をいたしております。

大口委員 今回の検証の結果、録音、録画の有効性について発表されているわけですね。それから、問題点についても発表されているわけです。そのあたりを簡潔に御紹介いただけますでしょうか。

滝国務大臣 まず、検証結果によって何に効果があるかというのを三点ほど最高検は挙げていると思います。

 一つは、取り調べの適正確保に役に立つ。適正である、こういうようなことの一つのあかしになる。それから、供述の任意性、信用性の判断が、そのとおりだ、こういうふうに受け取ってもらえること。それから、被疑者の供述が客観的に、そのまま記録される、こういうことが大きな目的だ、こういうふうに検証結果は出ているわけでございます。

 ただ、もう一方、委員の御質問にございましたように、何が問題かというのも三点ほど挙げれば、緊張や羞恥心、自尊心、そういった心理的な影響、あるいは、プライバシーの関係で自由な供述を取り調べられる方がしづらくなる、こういうことが第一点。

 それから、先ほど申しましたように、その反面、取り調べに当たる方も、録音、録画を意識して、十分な説得、追及ということが今までのようにはいかなくなる、こういうのが二点目。

 それから、三番目には、これは頭の中で考えている話でございますけれども、録音、録画の内容が開示された場合には、関係者の名前や何かがそのまま出ますので、そういうようなときにはやはりプライバシーの侵害、害することになるんじゃないか、こういうようなことが一つの懸念事項として、合計すると三つある、こういうようなことだろうと思います。

大口委員 今、録音、録画の有効性と問題点について簡潔に御答弁いただいたわけでありますけれども、有効性は、一部の過程よりも全過程を録音、録画をした方がより有効性が高まる、こういうふうに思います。それから、問題点につきましては、いろいろ取り調べの方法等を工夫すればクリアできると思うんですね。

 そういう点では、大臣、やはり全過程の録音、録画という方向に向けて進んでいくべきである、こう考えますが、いかがでございましょうか。

滝国務大臣 最高検が目指しているところと私どもが考えていることとは、それほどの大きな違いはないと思います。

 ただ、今申しましたように、問題点が三点ばかり挙がっておりますので、その中で、やはり検察官がどれだけ自由に、今までと同じような意識でもって取り調べができるかどうか。そういうためには、やはり取り調べの技術というものをお互いに切磋琢磨して、レベルをアップしていくということが当面の問題、それによって全面的な録音、録画に少しでも近づく、こういうことだろうと考えております。

大口委員 取り調べの録音、録画について、被疑者の方で拒否する理由として、取り調べを受けている姿を他人に見られたくない、こういう理由が指摘されているわけですね。

 これは、肖像権は憲法で保障されているわけでございます。取り調べの状況を録画されて、場合によっては法廷で上映されることもあり得るということは理解できないわけではないわけでありますけれども、ただ、録画しないで録音だけするという方法も考えられるわけですね。

 そういうことで、ここら辺はいろいろ工夫をすべきじゃないかと思いますが、いかがでございますか。

滝国務大臣 確かに、御指摘のように、録画じゃなくて録音だけでもそれなりの効果はある、こういう御指摘のようでございます。それも一つの方法として配慮すべき事項かなとは思いますけれども、せっかく、録画があった方がやはり何となく信憑性が高まる、こういうことで出発しているところでございますから、その辺のところは、どうやって録音だけを取り込むかというのも一つの課題として認識をさせていただきたいと思います。

大口委員 裁判員裁判対象事件の被疑者取り調べの録音、録画の試行拡大についての検証結果の中で、DVDの公判段階における使用について、実質証拠として請求した事例が一例あるわけですね。これは、覚醒剤密輸事件で、自白供述を内容とするDVDを、犯意等を含めた犯行状況の立証のために使うと。これは供述調書が得られなかった事例です。そういう場合に実質証拠として請求した事例となっているようです。

 あるいはそれ以外でも、公判前整理手続が進行中であるなどの理由で、報告に至っていないものも含めて、録音、録画のDVDを実質証拠として請求した事例があるということでありますが、取り調べの録音、録画したものを実質証拠として請求する、すなわち有罪、無罪の証拠として請求することについて、検察庁として今後も積極的にこれを請求する方針なのか、これが一点でございます。

 もう一点。検察庁が取り調べの録音、録画を開始した際の説明として、被疑者取り調べによる供述の任意性、信用性を担保するためということを掲げていたと理解しているわけでありますが、録画媒体を実質証拠として請求することは、その説明と矛盾する可能性はどうなのか。実質証拠として利用されるようになると、公判中心主義との関係での疑義が生じる、あるいは、被疑者が黙秘したり、録音、録画を拒否する事例がふえて、結局、取り調べの録音、録画の意味が減殺される、こういう指摘もあるわけであります。実質証拠として請求することについてどう考えているのか、お願いしたいと思います。

滝国務大臣 委員が挙げられました、実質証拠として利用している件が確かにあると思います。それは恐らくは、供述調書を被疑者が拒否する、こういうときに、この問題を実質証拠として使った、こういうことだろうと思います。それはそれなりに意味があったんだろうと思いますけれども、しかし、今おっしゃるように、公判主義との問題からすると、それでいいのかというようなことに突き進む、そういう懸念もないわけではありません。

 したがって、それは、取り調べに当たる検察官が個別的にその事件事件で判断すべき問題として委ねるというようなことではないだろうかなというふうに受けとめさせていただいております。

大口委員 法制審議会でも議論されているようですけれども、ここら辺は議論を深めていかなきゃいけないと思っています。

 あと、少年事件の被疑者についても録音、録画の試行の対象にしていくということでありますが、それを検討していくということでありますが、少年事件の被疑者については、私は早急にやるべきだと思います。大臣、いかがでございますか。

滝国務大臣 外国の例を見ると、少年事件こそ録音、録画で取り調べるべきだ、こういうような意見もあります。しかし、そうでもない意見もございます。録音、録画することになると、子供がやはりそれだけの緊張感を持たざるを得ない、こんなこともあるんだろうと思いますけれども。

 いずれにいたしましても、子供は子供としての録音、録画の方式というものも試行の中でやはり検証していく、その結果をまちたいと思っております。

大口委員 これからさらに、取り調べについて、新しい時代の取り調べのあり方ということで検討されるようでありますが、どういうことをやろうと考えておられますか。

滝国務大臣 基本的には、今の段階では内部的な検討にとどまっているということでございますけれども、検察当局も、最高検に外部参与というものも昨年来設置をいたしておりますので、外部の意見も直接聞きながら、この問題を一つの確立されたルールとしてどこまで徹底するかを見きわめていきたいと思っております。

大口委員 前回も委員会でも指摘しましたけれども、今回の検証は最高検だけでやられた。やはり、供述心理学とかあるいは第三者の有識者、こういう方も交えた検証ということを、大臣、もう一度考えていただきたいと思うんですけれども、いかがでございますか。

滝国務大臣 直接的な取り調べの中身に議論をする話でございますから、なかなか外部の第三者というのは少し抵抗があるかもしれませんけれども、その辺のところも一つの課題として受けとめさせていただきます。

大口委員 時間が参りました。これで終わりにしたいと思います。

 ありがとうございました。

鉢呂委員長 次に、北村茂男君。

北村(茂)委員 自由民主党・無所属の会の北村茂男でございます。

 法務行政等に関する一般質疑を行いたいと思います。

 まず初めに、大津市で昨年十月、市立中学二年生、当時十三歳の男子生徒が飛びおり自殺をした問題に関して質問をさせていただきたいと思います。

 将来、前途有為な中学生がみずから思い悩み、さらに苦しんだ後、とうとい命を絶つという非常に痛ましい事件でありました。いわゆるいじめに起因すると言われているこのような事件が二度と起こることがないよう、国においてもいじめ問題にしっかりと取り組んでいかなければならないと考えております。

 そこで、まず法務省に伺いますが、いじめに対する子供の人権擁護の観点から、法務省によるいじめ問題に対する取り組みの現状と今後のいじめ対策の強化について、まず大臣の決意を伺いたいと思います。

滝国務大臣 まず、いじめについての法務省としてのかかわり合いは、地方における人権擁護委員を通じていじめの情報が入ってくる、そういう段階から法務省としての取り組みが始まるわけでございますけれども、そのためには何をやるかというと、学校を通じて、いじめ子供一一〇番、要するに、用紙を配って、子供一人一人がそういうような体験をした、あるいはそういう場面を見た、そのときには手紙を書いて郵便ポストに入れてもらう、こういういじめ一一〇番という制度を毎年キャンペーンとして取り組んでまいりました。それから、そのほかに、直接電話で法務局に通じるように、直通ダイヤルを案内して、それも宣伝をしてまいりました。

 そういうことを通じて子供から直接地方の法務局にいじめの状況が入る仕組みはとりあえずはつくっているわけでございますけれども、やはり、一般的にやるよりも、学校を通じてそういうものを配付するということでございますから、少し間延びはするところがございますけれども、学校を抜きにしてはなかなか難しいものですから、そういう格好でずっと取り組んできたというのが実態でございます。

北村(茂)委員 確かに、私も伺いますと、法務省においてはこれまで、大臣のお話のように、子どもの人権一一〇番や子どもの人権SOSミニレターなど、相談窓口の設置による子供の人権擁護に対する取り組みがなされてきたということでありますが、いわば、ここに寄せられる子供の声は、政府といいますか、ある意味大人といいますか、子供たちの助けてほしいというシグナルとも言えると思います。

 それぞれ具体的にどれぐらいの相談件数が寄せられて、また、その傾向はどのような状況になっているのか。増加傾向なのか減少傾向なのか。あるいは、このような子供のシグナルに対してどのように対応をしようとしているのか、あるいはしているのか。非常に重要な問題であると考えますが、その具体的な取り組みを御説明いただきたいということが一点。

 いま一点は、私は、人権擁護という立場からはそれ以上のことは法務省として、法務当局としてできるには限界があろうかと思いますが、いじめというのと刑法に係る事件というのとは若干問題を異にしている。いじめの段階から、いじめという言葉に包括されておるようでありますけれども、いじめと事件とは、おのずと違うのではないかというようなことを考えるわけであります。ある意味、そういう意味での法務省の、法務当局の取り組み、もちろん学校当局である文部科学省の取り組みは当然でありますけれども、そういう意味での法務省の認識はいかがでしょうか。伺っておきたいと思います。

滝国務大臣 二点についての、まず最初の、学校を通じての子どもの人権SOSミニレターあるいは一一〇番、件数からいうと、ミニレターの方は、年間九千件程度のものをいじめという格好で法務局で受け取っております。それから、子供一一〇番の方は、大体三千件から四千件ぐらいの範囲で受け取っているところでございます。

 それから、最近のいわば事件についてどう考えているか、こういうことでございます。

 確かに、いじめの度を越して、いわば自殺をするというような事件、あるいはお金を巻き上げられる、こういうようなことも報道としては承知をいたしておりますから、そういう意味では、単なるいじめというよりも刑事事件に扱うべきだというような程度までいわば発展してしまっている事態がないわけではない、こういうふうに認識をいたしております。

北村(茂)委員 今のお答えですと、一一〇番でも三千件から四千件、ミニレターに至っては九千件ということであります。これは、いじめやあるいは被害を受けている人たちの、こういう行動に出ている人たちはごくごく一部にすぎないであろう。したがって、その総数たるやもう想像を絶するところに来ているのではないか、立ち至っているのではないかというふうに私は推測をいたします。

 したがって、これからのいじめ問題やあるいは学校における暴力問題については、ここまでが法務省でここまでが文部科学省だというような時代を超えて、もう政府、中央政府はもちろんですけれども、地方政府含めて、これは挙げて取り組まなければ、大変深刻な事態に立ち至っているという認識をいたしております。

 そこで、その前提で、次に文部科学省にお伺いをいたします。

 今回の大津いじめ自殺事件について、学校や教育委員会による問題への対応のおくれや、責任の所在が極めて曖昧であることなどについて、多くの批判があります。また、生徒の自殺という重大な問題であるにもかかわらず、教育委員会が事実上機能していなかったことや、学校や教育委員会の隠蔽体質の問題などが指摘をされております。

 文部科学省は、いじめ問題で教育委員会や学校を支援する子ども安全対策支援室を八月一日、一昨日に発足させたところであると聞いておりますが、一体、この支援チームはどのような権限を有しているのか。単なる全国の数字やデータを集めて処理するだけなのか。どのような権限を行使できる組織であるのか。また、学校や教育委員会に助言を行い、単にその推移を見守る程度のものなのかどうか。学校や教育委員会に対して主導権を持ちながら指導できる組織なのかどうか。新たな支援チームを設置されたようでありますが、その役割と今後の取り組みについて伺いたいと思います。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 文部科学省におきましては、八月一日に、大臣決定により、子ども安全対策支援室を大臣官房に設置いたしました。

 この子ども安全対策支援室の任務は、全国の学校において、いじめを背景とする自殺など、子供の生命、安全が損なわれるような重大な事件、事故が発生し、あるいは、そのような事件、事故に至る危険性が高い重大な事態が発生した場合に、学校や教育委員会が迅速に効果的な対応が行えるよう支援することであります。

 文部科学大臣は、地方教育行政法の規定に基づいて、学校管理、学校安全、学習指導、生徒指導など、広範な教育事務に関し地方公共団体に対して指導、助言、援助を行う等の権限を有しており、この子ども安全対策室は、これらの規定に基づいて、関係課と連携しつつ、各教育委員会に対して指導、助言、援助等を行うこととしております。

 文部科学省といたしましては、子ども安全対策支援室の設置を契機といたしまして、いじめ問題への取り組みをこれまで以上に徹底してまいりたいと思っております。

北村(茂)委員 お答えのとおりであれば、なお一層しっかりとその役割を果たしてほしいということを申し上げておきたいと思いますし、何よりもこの問題については学校現場の対応が一番大事だと思うんですね、現場の対応が。

 今回の大津の問題にしても、いじめが、実際に見たという人も、実態もわかっていたという人も生徒や先生の中にはおられるようでありますし、あるいは、実際に見ていなくても、校内の話として、あるいは聞こえる情報の中でわからないわけがない。私は、見て見ぬふり、知って知らぬふりというものが必ずあったのではないかと疑っているのは私一人ではないと思います。

 したがって、何よりも大切なのは現場対応だ。あるいは、逆に言うと、現場対応をどのように指揮できるかということに尽きるのではないか。今回、もしも見て見ぬふり、知って知らぬふりをしておった教師等がおったとするなら、私は厳罰に処すべきだ。当然だと思う。それぐらいの指揮権がなくて、あるいは指揮ができなくて、学校現場などコントロール、管理することができるわけがありません。

 ぜひ、文部科学省の毅然とした対応と同時に、現場がしっかり対応できるような指揮系統の強化を図っていっていただきたいというふうに思っております。

 それでは、この問題について、警察庁に次に伺いたいと思います。

 今回の事件において、いじめに遭っていた男子生徒が同級生から暴行を受けていたとして、父親が、事件後でありますけれども、滋賀県警大津署に被害届を提出しようとして三回も訪れ、どのようにすればいいのか、被害届を出したい、こう言っておられたようでありますが、三回とも受理を断られたという報道であります。

 その後、滋賀県警は、一転して、七月十一日になって、同級生だった同校三年の三人が男子生徒に暴力行為をしたとして、暴行容疑で市役所と中学校を家宅捜索、関係資料を押収し、捜査を開始したと言われております。男子生徒の死亡から九カ月も経過してからの捜査開始でありました。

 生徒らへの事情聴取などにより、夏休みを楽しみにしていたはずの子供たちの動揺を懸念する声もある一方、もっと早い段階から積極的な捜査を行うべきであったのではないかという声がしきりであります。

 今回の捜査対応のおくれなど、これら各方面からの批判に対し、警察庁はこれにどのようにお応えになられるのでしょうか。お答えいただきたいと思います。

田中政府参考人 御指摘の事案についての対応でございますけれども、昨年十月十一日に男子生徒が亡くなられた後、御遺族から大津警察署に相談がありまして、この相談に基づき、十月下旬以降、学校関係者などから事情聴取するなどの対応を行っていたところでございます。

 その後、新たな事実等が判明いたしましたところから、事実関係をさらに明らかにするため、先月十一日に学校及び市教育委員会に対する捜索を実施いたしまして、十八日には御遺族からの告訴を受理したところでございます。

 滋賀県警におきましては、本件事案の解明に必要と判断をいたしまして、現在、法と証拠に基づき、事実関係の解明に向け、鋭意捜査を進めていると承知をしております。

北村(茂)委員 事件後、父親が三回にわたって相談に行ったけれども、調べて、捜査をしておったが、新たな事実が判明したので、七月十一日から捜査を開始した、こういうお答えであります。

 では、事件後、協議に行ったのは、三回相談に行った時期はいつごろですか。具体的にお答えください。

田中政府参考人 お答えします。

 父親の方から御訪問を受けましたのは、二十三年の十月十八日でございます。この時点で、けんかした相手について何か事件として訴えることができるんだろうか、こういう御質問でございました。そこで、現状ではなかなか事実がわかりませんというお答えをしておったわけであります。

 その後、十月二十七日及び十一月一日に、学校関係者及び市教育委員会から事情聴取をいたしましたけれども、この時点ではなかなかまだ犯罪として検挙するには至らないという状況でございました。

 その後、第一回目のアンケート調査の結果であるとか、あるいは、そもそも第二回目のアンケート調査が行われたというような事実が判明いたしまして、そこで、強制捜査、捜索、差し押さえに踏み切った、こういう状況でございます。

北村(茂)委員 いやしくも、将来ある若者が命を絶ったんですよ、父親にすれば、どうして相談に乗ってくれないんですかというときに、事実がわからないから受理できない、帰ってくださいなんというのは、警察としてあるべき姿ではない。少なくとも、捜査にかかったのは約九カ月後の七月でしょう。私は常識としてあり得ないと思います。

 これは今ここで押し問答していても結論が出るとは思えませんが、しかし、この問題は、私は警察のあり方として根は深い。したがって、これからもこの真実を明らかにするための議論はずっと続けなければいけないというふうに思います。

鉢呂委員長 北村君、質疑途中ですが、副大臣と政務官は、本会議が参議院でありますので退席をさせます。

 どうぞ、北村さん。

北村(茂)委員 ぜひ、警察庁におかれては、全国の警察を指揮して、今大臣からお答えがありましたように、一一〇番やミニレターだけでも数千本の人たちがかけてくる、手紙を送ってくる、それはもう全国の中ではごくごく一部にしかすぎない。いじめられている人で手紙を出せない人、電話をかけることをわからない人を含めれば、どれぐらいあるかもわからない。したがって、政府を挙げて取り組まなきゃいけないといったところで、警察庁は、全国の警察の中で滋賀県警の立場を擁護しているなんということは、私はあってはならない。毅然と、本部長以下の指揮系統を刷新するぐらいの行為を起こすべきだということを私は申し上げておきたいと思います。

 時間の関係もありますので、次の質問に移ります。

 交通事故対策について伺いたいと思います。

 最近、悪質な運転による交通事故が頻発をしております。昨年四月には、栃木県鹿沼市での運転免許不正取得者による事故が発生いたしました。また、昨年十月には、名古屋市での無免許運転による飲酒ひき逃げ事故が発生、さらには、本年四月、京都府亀岡市で、登校児童らに無免許運転の車が突っ込み、十人が死傷した事故が発生するなど、悪質な運転による悲惨な交通事故が相次いでおります。

 これらの事故に共通するのは、非常に悪質な運転による死亡事故にもかかわらず、危険運転致死傷罪の適用範囲が狭いためそれが適用されず、より刑の軽い自動車運転過失致死傷罪などで起訴されていることであります。これは、被害者、遺族にとっても、大変、納得のいかないという声があちこちで起こっていることはもう御案内のとおりであります。

 交通事故の被害者、遺族らでつくる、TAV、交通死被害者の会は、七月三日、滝法務大臣と面談をし、危険運転致死傷罪の適用拡大などを要望されたと伺っております。滝大臣からは、重大事故が起きており、今のまま放っておくわけにはいかないと思っていると応じたと報道から知りました。

 まず、刑法関係について、無免許や過労運転を同罪の対象に加えることや、飲酒や速度超過で客観的な立件基準数値を定めることや、最終的には自動車運転過失致死傷罪と一本化し、結果の重大性を重んじて処罰することなどに関し、法務省の所見と今後の考え方について伺いたいと思います。

 また、無免許運転に対する罰則強化などについては、道路交通法の範囲となりますが、松原国家公安委員長がその厳罰化の検討を警察庁に指示したと七月二十四日の記者会見で述べておられますが、警察庁はどのように検討していくのか、伺いたいと思います。

滝国務大臣 危険運転致死傷罪ができ上がってから、相変わらず重大事故が後を絶たない。そんな中で、今回も、名古屋あるいは京都、こういうところで事故が連続してまいりました。

 やはりこれは、今までの致死傷罪の条件である、四つの分類というか条件が設定されているわけでございますけれども、その四つの条件に少しだけどうも該当しないからだめだ、こういうようなことでこの致死傷罪が適用をされてこなかった。それが逆に、こういう法律がありながら、危険運転に対しては何かすき間がある、そんなに重いことにならないというようなメッセージを与えてきたとすれば、それは大問題。こんな観点から、前大臣のときから、何とかこれは省内で検討しなきゃいかぬ、こういうことでございました。

 そして、名古屋あるいは京都の亀岡の皆さん方がおいでになったときに、私の方から、法律のすき間があるというようなことがたびたびの重大事故を通じて国民にメッセージとして発信されるようでは、これは法律としての意味がない、何とかこれを、皆さん方の御意向を一つのきっかけとして、何とかするんだというメッセージはとりあえず発信しておきたい、こういうことで、新聞のような格好で掲載されたというふうに理解をいたします。

 私どもは、前々から実は検討しているのでございますけれども、なかなかその検討が進まなかったということも事実でございます。したがって、八月中には省内で何とか取りまとめをして、それで法制審に諮問をする、そういう段取りでまいりたいと考えているわけでございます。

石井政府参考人 無免許運転の厳罰化につきましては、先日、亀岡市における児童等多数死傷事故の御遺族及び名古屋市におけるブラジル人による死亡ひき逃げ事件の御遺族と松原国家公安委員長が面会し、その罰則の引き上げ等を求める要望書の提出を頂戴したところでございます。

 無免許運転の罰則の引き上げ等につきましては、こうした御遺族の御要望を重く受けとめ、国家公安委員会において御議論いただくとともに、警察庁におきましても、他の刑罰との権衡等も勘案しつつ、現在検討を進めているところでございます。

北村(茂)委員 大臣からは前向きな答弁をいただきまして、鋭意進めていただきたいということを申し上げておきたいと思います。

 時間が迫ってまいりましたので、順次行きます。

 続いて、ツアーバス事故について伺おうと思っておりましたら、きのうきょう、東北自動車道でもツアーバスがトラックに追突するような事故が起こっているようでありますが、私は、さきに起こりました関越ツアーバス事故について国土交通省にお伺いをいたしたいと思います。

 この四月に関越自動車道で起きた高速バス事故を受け、国土交通省が高速ツアーバスを運行する二百九十八の事業者に対して重点監査を行ったところ、約八割を超える事業者から乗務時間を守らないなどの法令違反が見つかったとの公表がありました。今回の事故による被害者に、実は、金沢始発でありましただけに、私の周辺というか関係者も、何人も被災を受けました。それだけに、人ごとには思えないという思いが強くございます。大変な怒りを感じていることも申し上げておきたいと思います。

 そこで、法令違反が約八割を超えたことに対する国土交通省の所見をまず伺いたいと思います。また、関越道のバス事故を受け、国土交通省は、高速ツアーバスと高速乗り合いバスの制度を一本化させ、新しいバス制度を七月三十一日からスタートさせたということでありますが、この新たな制度を含め、今後の再発防止に向けた取り組みを伺おうと思うんですけれども、東北の話はさておいて、お答えいただきたいと思います、時間がありませんので。

坂政府参考人 今次の高速ツアーバス運行事業者への緊急重点監査において多数の事業者に法令違反の指摘があったことにつきましては、公共交通の安全確保を担当する者といたしまして、極めて遺憾に存じております。公共交通機関において安全確保は全てに優先されるべきものであるとの認識のもと、改めて安全確保の徹底を図る必要があると存じております。

 国土交通省といたしましては、今回の監査内容を精査の上、厳正に対処してまいりたいと思いますし、また、違反が繰り返されないように是正を指導してまいりたいと存じております。

 また……

鉢呂委員長 坂さん、もう少し大きい声で。早口というか、小さい声です。もう少しゆっくり。

坂政府参考人 申しわけございません。

 それから、夏でございますけれども、この夏の多客期の安全確保のための緊急対策といたしまして、緊急重点監査の実施や過労防止対策の強化などを実施したところでございます。

 また、先月末には、高速ツアーバスの新高速乗り合いバスへの移行について新制度を定めたところでございまして、今後一年以内の一本化に向け、しっかりと取り組んでいく所存でございます。

 このほか、参入規制のあり方、運賃……

鉢呂委員長 ちょっと聞きにくいというか、早口なのか、少しゆっくり目に。

坂政府参考人 わかりました。大変失礼しました。

 また、先月末には、高速ツアーバスの新高速乗り合いバスへの移行について新制度を定めたところでございまして、今後一年以内の一本化に向け、しっかりと取り組んでいく所存でございます。

 このほか、参入規制のあり方、運賃・料金のあり方、監査体制の強化、処分の厳格化などを検討することとしておりまして、バスの安全、安心の確保にしっかりと取り組んでまいりたいと存じます。

北村(茂)委員 次の質問に移ります。新しい在留管理制度についてお伺いをいたします。

 改正出入国管理法の施行により、七月九日から新しい外国人の在留管理制度がスタートいたしました。これまでは、法務省入管局が入国や在留更新の手続を担い、市町村など自治体が外国人登録証を交付して住所や世帯状況を把握してきたのであります。九日からは、外国人登録証の発行が廃止され、法務省が正規滞在者だけに新たな身分証である在留カードを順次交付するシステムであると承知いたしております。

 その新たな制度が始まった初日に、在留カードの発行システムによるトラブルが発生したというふうに伺っております。カードのICチップに電子署名を記録する過程にふぐあいがあったとの原因が発表されましたが、電子署名を記録しないで作業したところ、発行はできるようになったとのことであります。その後、システムはいつ完全復旧したのか。また、その後、その他のトラブルなど、制度開始後の問題はないのか、伺いたいと思います。

 同時に、もう一点、時間の関係で、引き続き同じ在留制度について伺います。

 正規の在留資格を持たない外国人に対する人道的問題が指摘されております。不法滞在者は本年一月一日時点において六万七千人以上いると言われておりますが、大半は、正規入国後、滞在期間が過ぎて、いわゆるオーバーステイになった人たちのようであります。この人たちが医療や教育など最低限の行政サービスなどから排除されるおそれがあり、人道的配慮が必要ではないかとの意見もあるのでありますが、これに対する法務省の見解を伺いたいと思います。

高宅政府参考人 お答えいたします。

 御迷惑をおかけいたしておりますシステムのふぐあいでございますが、まず経過について申し上げます。

 新しい在留管理制度の開始初日である七月九日に、在留カードの発行を空港から開始したわけでございます。当初は円滑にカードが発行されていたのですが、徐々に発行までに時間を要するようになった。そして、七月九日の午前中のうちに発行スピードがさらに落ちたことから、開発した会社に対しまして原因調査を指示しましたところ、電子署名が関係しているということが判明いたしました。そこで、電子署名を記録せずにカードを発行するとの応急措置をとりまして、発行スピードは原状に復したわけでございます。しかし、このため現在も、空港、在留審査等において発行しております在留カードにつきましては、電子署名がない形で発行しております。

 電子署名は偽変造防止のための措置の一つでありますが、電子署名がなくても、その他の部分に高度な偽変造対策が多数実施されておりますので、偽変造が直ちに容易になるというものではございませんし、また、ICチップに電子署名が記録されていなくても、在留カードそのものの法的有効性に問題ということはございません。しかしながら、電子署名は今ついておりません。

 また、他のトラブルというお尋ねでございますが、実際に起きましたのは、ICチップへの誤記載と市町村への誤通知が発生しましたが、これらにつきましては、必要なシステム上の対応は、判明の都度、速やかにできております。

 ただ、電子署名に関しましては、現在システムのふぐあいにつきまして鋭意検証作業を進めているところでございますが、まだ完全な解明はできておりません。ただ、ある程度原因が特定されてきておりますので、見込みでございますが、結果が出るまでにさらに長期間を要するということはないと考えております。

 いずれにいたしましても、発生したトラブルにつきましては、可能な限り、外国人の方に御迷惑が生じないよう、今後の対応に努めていきたいと考えております。

 次に、不法滞在者の在留カードの問題でございますが、不法滞在者を含む外国人住民に対する各種行政サービスの対象、これはそれぞれの制度の目的から、所管する行政機関において定めているところでございますので、この新しい在留管理制度につきましては、その対象範囲を変更するものではございません。

 ただ、この点につきまして、改正後の住民基本台帳制度の対象とならない不法滞在者のうち、当局が把握している仮放免された方、特に長期の方につきましては、本人が同意した場合につきましては、身分事項や住居等を入国管理局から市区町村に通知しております。

北村(茂)委員 時間が迫ってまいりましたので、最後の一問にしたいと思います。

 オウム真理教に関する問題について伺いたいと思います。

 本年に入り、平田被告に続いて菊地容疑者、高橋容疑者の特別手配犯が逮捕されました。これら特別手配犯が今後裁判となっていくわけでありますが、この裁判を進めていくことを踏まえて、いわゆるオウム真理教が、既に死刑確定犯として、死刑執行について、死刑が待たれているわけでありますが、これら裁判が始まることと死刑執行とのかかわりについては影響があるのかないのか。あってはならないと思う立場でありますが、これについての見解を伺いたいと思います。

 実は、私の石川県金沢市にもオウム真理教の関連の道場がありまして、周辺住民等に大変不安が生じております。周囲の人たちも、対策協議会をつくるなどして、日々恐怖におののいているわけであります。一日も早くこれら施設が撤去されることを望んでいる地域の人たちの立場からいえば、地下鉄サリン事件などの過去の事件をよく知らない若者などが最近ふえているということも言われておりまして、地域住民は大変不安におののいております。

 国として、これらの対応についてどのように考えているのか、あるいは取り組んでいるのか、伺いたいと思います。

滝国務大臣 死刑執行の問題についてのお尋ねでございましたけれども、いわゆる個別的な問題でございます。個別的な死刑執行の問題でございますから、それが影響あるのかどうかも含めて、お答えするのは差し控えさせていただきたいと思います。

尾崎政府参考人 オウム真理教に対しまして、特に教団施設の周辺の住民の方々が強い不安や警戒感を抱いているということは十分理解いたしております。

 公安調査庁といたしましては、観察処分を適正かつ厳格に実施し、教団施設に対する立入検査等を通じて、その活動状況を明らかにしているところでございます。

 御指摘のありました金沢施設に対しましても、計十三回にわたり立入検査を実施して、その結果を金沢市に提供するなどしているところでございます。また、住民の方々との意見交換会等も頻繁に開催いたしておりまして、住民の方々の不安解消、軽減に努めているところでございます。

北村(茂)委員 以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。

鉢呂委員長 次に、稲田朋美さん。

稲田委員 おはようございます。自由民主党の稲田朋美です。よろしくお願いいたします。

 ただいまの北村委員の質問に関連をいたしまして、警察庁にお伺いをいたします。

 大津市の中学生の自殺に関連をして、十月十一日に中学生の自殺があり、そしてそのお父さんが、十月十八日、十月二十日、十二月一日と三回にわたって被害届を警察に提出しようとして受理されなかったということでございますが、被害者の遺族から被害届を出されたときに、それを受理しないという選択があるんでしょうか。

田中政府参考人 被害者の方が被害を申告された場合につきましては、被害者、国民の立場に立って対応するということがもちろん基本でございますし当然でありますので、その点につきまして、滋賀県警で、現在、御遺族からの相談時の具体的なやりとりなどにつきまして調査中でございます。

 今後、同県警におきまして、その結果を踏まえ、適切に対応することにしておりまして、さらに、これとあわせて引き続き事実関係の解明を進めていく、こう考えております。

稲田委員 審議官、私の質問にお答えください。

 私の質問は、この事件、被害者は亡くなっているんです、自殺されているんです。そしてお父さんが、学校内のいじめ、犯罪が強く疑われるような事実について警察に被害届を出しに来て、被害届を受理しないという選択があるんですかという質問です。

田中政府参考人 被害の申告をされた場合につきましては、被害者の立場に立ちまして、被害届を受理するのが基本である、このように考えております。

稲田委員 では、どうして被害届を受理しなかったのか、また、それから九カ月もたって、ことしの七月十一日に至って初めて受理したのはなぜなのか、お伺いいたします。

田中政府参考人 その点の事情につきましては、現在、滋賀県警察におきまして、当時の警察署における具体的なやりとり等について詳細に調査中でありまして、それを受けて判断する形になると考えております。

 それから、ことしになって捜査を開始したのではないかということですが、その間も基本的には捜査は継続しておりましたが、新たな事実が判明したことから、事実関係のさらなる解明のために強制捜査、捜索、差し押さえが必要であると判断した、このように承知をしております。

稲田委員 ただいまの答弁では、被害届を受理する義務が警察にはあったけれども、受理しなかった理由を今調べている、そして、七月に受理した理由は、新たな事実が判明したということですが、どのような新たな事実が判明したんでしょうか。

田中政府参考人 これは報道等にもございますけれども、学校あるいは教育委員会において生徒にアンケートをとっておった、二回にわたってアンケートをとっておった、その中にいじめを示唆するような発言といいましょうかアンケート結果が出ておった、このような点でございます。

稲田委員 おかしいですよ。被害届は受理してもらえない。そして、警察に調べてもらおうと思えば、お父さんが裁判を起こして、そして大騒ぎになって報道されて初めて警察が動いてくれる。これは反対じゃないんですか。報道されなくても、訴訟が起こされなくても、被害届が出たら、それがあるかないか調べるのが警察じゃないんですか。根本的に間違っていると思いますが、いかがですか。

田中政府参考人 学校におけるいじめ等の問題につきましては、基本的にはやはり教育現場における対応を尊重するということでありますけれども、今回のような犯罪等の違法行為があるという疑いのある場合には、これはもちろん、保護者の意向あるいは学校の動向を踏まえて警察として必要な対応をとるべきでありまして、その点についても現在調査中であるということでございます。

稲田委員 調査中と、もう明らかじゃないですか。今回の事件、学校現場の教育で解決できる範囲を超えていて、被害者が自殺をして、お父さんは警察にその被害の状況を訴えてきているんです。その時点で犯罪の疑いがあるわけです。そこで捜査を開始しなかったことに誤りがあるということを認めていただけますか。

田中政府参考人 被害届の受理及び捜査の状況の実態につきましては、現在、滋賀県警において調査中でございますので、それを受けまして、私どもも必要な指導助言をしてまいりたいと考えております。

稲田委員 もうこれは問題になってから随分たっております。三回の被害届を受理しなかった状況、そして、七月十一日になぜ受理したのか、この間のことぐらいすぐに調査できるはずです、事実関係ですから。

 いつまでに調査するんですか、そして、それをどのような形で報告されるんですか。

田中政府参考人 現在、生徒の聴取も含め、関係者から詳細な事情聴取をしております。いじめ事案の問題につきましては、事実関係の確定というのが、少年あるいは触法少年が対象でございまして、なかなか微妙なところもございますので、今、警察が捜査をしている、あるいは調査をやっております、これが一定の段階に来て初めて全体がわかるということでございます。いましばらくお待ちいただければと思います。

稲田委員 素朴な正義感の問題なんです。皆さんも人の親だったら、自分の息子がこんな目に遭ったらそんな冷静なことを言っていられないと思いますし、被害届を受理されなかったらどんな気持ちになるんですか。

 まず、犯罪の疑いがあるこのような事案で、被害届を受理しなかったことが間違っているということをなぜ認められないんですか。そして、なぜ受理しなかったか、なぜ七月に受理したかということは、犯罪の全体像がどうのこうのということではなくて、警察の内部で調査して、すぐにその結果を報告できることだと思いますが、いつまでに報告するんですか。

田中政府参考人 まことに申しわけございませんけれども、現在、そういう点につきましても捜査中でございまして、これを受けて、早急にその点についても解明するように努力してまいりたいと思っております。

鉢呂委員長 警察庁の田中審議官、事件の中身ではなくて、警察の捜査、被害届から捜査に至るその間の警察の経緯、これについて、いつまでに調査を終えるのか、そういう質問だと思いますから、事件の中身ではなくて、捜査、警察のあり方、そこの点について、もう少し明確に、具体的に答えてください。

田中政府参考人 申しわけございませんけれども、今、何分、滋賀県警においてやっている事案でございます。

 私どもからも、この委員会の御趣旨を踏まえまして、強力に指導していきたいと思いますけれども、今の時点で、私の方から何日までというのはなかなか確定的なことは申し上げられないのは、本当におわびを申し上げます。

稲田委員 簡単な事実関係の調査なんです。先ほど早急にとおっしゃったんですね。早急にということは、一週間以内ということでよろしいですか。

田中政府参考人 今、徹底して捜査をやっておりまして……(稲田委員「事件のことを聞いているのではなくて、警察の対応のことを聞いているんです」と呼ぶ)わかりました。

 告訴されたときの対応状況ということにつきまして……(稲田委員「それと新たな事実を把握、受理したときの」と呼ぶ)新たな事実云々は、これは、現在の捜査状況と密接に関連すると思いますので、告訴受理時の対応ということでございましたら、これはもう……(発言する者あり)厳しいかと思いますが、わかりました、とにかく早急に、今から帰ってから、すぐ県警と連携をとりたいと考えております。

稲田委員 国会が順調であれば、来週の火曜日の午前中に当委員会でまた質疑が予定をされております。月曜日までに書面で、今申し上げた点について調査報告を出していただけるのかどうか、もう一度答弁を求めます。

田中政府参考人 そのように努力をさせていただきます。

稲田委員 では、その月曜日の報告書を待って、火曜日に、また一般質疑の中で質問をしていきたいと思います。

 大臣、先ほどの答弁の中で人権擁護委員が動いているというような話もありましたけれども、今回のような、自殺を伴うような重大な事件、これは、私は、暴行、そして傷害、恐喝といった刑事犯罪に該当するものとして処理をすべきだと思いますが、いかがですか。

滝国務大臣 基本的には警察当局がどう判断するかの問題でございますけれども、当然、捜査当局は、今委員が御指摘のような観点からも関心を持って当たっているとは信じております。

稲田委員 いや、信じているかどうかじゃなくて、法務大臣として、こういった重大な結果を生じるような問題について、事件について、たとえ学校内で起きたとしても、それを教育現場のものだからといって治外法権にするのではなくて、犯罪事実、犯罪の成立という意味から私は捜査すべきだと思いますが、法務大臣としての見解をお伺いいたします。

滝国務大臣 今委員は一般論、こういうことでございますので、そういう意味では、どこの場所であっても、刑事事件になるようなものが発生すれば、それは刑事事件として捜査、結論を得るというのが当然の話だと思います。

稲田委員 一般論としてお伺いをいたしますが、今回のように重大な、暴行だとか恐喝だとか、また自殺に追いやられるぐらいの精神的な損害を受けて、そしてその結果、因果関係が立証されるような場合、因果関係が立証されて本人が自殺するような場合は、傷害致死が成立する場合もあるんじゃないんですか。

滝国務大臣 一般論といっても具体的なイメージになってしまいますけれども、当然そういうような、捜査の結果、そういう事実関係が判明すれば、刑事事件としてそれなりの刑の当てはめをしていく、こういうことは当然のことだと思います。

稲田委員 私の質問は、いじめが傷害に該当して、その結果、自殺をして亡くなったというような場合には、因果関係が立証されれば傷害致死が成立するような場合もあり得るのではありませんかという質問です。

滝国務大臣 法律に従って捜査し、刑を当てはめた結果、そういうものに該当すれば、当然それはあり得る話だと思っております。

稲田委員 また一般論としてお伺いをいたしますが、自殺しても構わない、死んでも構わないんだということで執拗な傷害を繰り返し、暴行を繰り返し、そして死に至らしめた場合、未必の故意による殺人が成立する場合もあるんじゃないですか。

滝国務大臣 そこになってきますと、事実関係がはっきりしませんけれども、恐らくそういうことも法的にはあり得るというふうには理解をいたします。

稲田委員 警察にお伺いをいたします。

 こういう、生徒が亡くなったような場合、今の法務大臣の答弁でも、場合によっては、因果関係が立証されれば傷害致死に該当するような重大な事件であるにもかかわらず、私は、その疑いを、被害届を出された場合には、被害届を受理してすぐさま捜査を開始すべき警察の責務があると思いますが、いかがですか。

田中政府参考人 おっしゃるとおり重大な事案が生じた場合につきましては、刑事事件として立件する場合があります。

 現実に、例えば平成二十二年の神奈川における中学三年生の男子の自殺事案におきましては、同級生三人を暴力行為等処罰法違反で書類送致、一人を児童相談所通告したというような例もございますし、平成二十二年中にも二百七十八人をいじめ事件に関連して事件として捜査をしております。

稲田委員 にもかかわらず捜査を開始しなかったことは、明らかに今現時点でも私は警察の対応に問題があったと思いますが、その点も含めて調査結果をきちんと出していただけるよう、お願いを申し上げます。

 さて、大臣、外国人地方参政権についての大臣の見解をお伺いいたします。

滝国務大臣 法務大臣としては、今の日本の法制上、そういうことにはなっておりませんから、否定しなければいけませんけれども、個人的にも、前回、この委員会でも申し上げましたように、いいのか悪いのか、そういうことも含めて、大臣として発言は控えさせてもらった方がいいんじゃないだろうかな、こう思います。

 ただ、誤解を招くといけませんから、今までの経緯について申し上げます。

 私は、もう今から二十年前になりますけれども、海部・盧泰愚会談の際のテーマをどうするかというときに、事務的な折衝の一つの窓口になりました。それは、地方公務員に対して在日外国人がなれるかどうかという一つのテーマ、もう一つが在日外国人に地方参政権を与えるかどうか、この二つのテーマの事務的な折衝の窓口になりました。これは当日の朝までかかって、韓国側がこれをテーマから外すというときの折衝の責任者でございました。

 それからもう一つは、自民党の副幹事長の時代に、党としても、この問題を、やはり意見を集約していく必要がある、それで筆頭幹事長と副幹事長で議論をいたしましたけれども、そのときも議論はつかずに終わりになりました。

 以来、私は、この問題については、関心は持っておりますけれども、今の段階では外国人参政権を認めるべしという結論には至っておりません。

稲田委員 長々と答弁をいただく必要はないんです。私が聞きたいのは、外国人地方参政権、現在与えていないことは私でも知っております。外国人地方参政権を与えるべしというのが民主党のインデックスの政策の中に入っておりましたので、法務大臣として、外国人に地方参政権を与えることについての見解を問うておりますので、それについて端的にお答えください。

滝国務大臣 今までのことを申し上げた上で、私は、地方参政権について賛成をいたしておりません。

稲田委員 ということは、反対であるとお伺いしていいですか。

滝国務大臣 法務大臣として賛成とか反対の立場になっていないものですから、法務大臣としては申しかねますけれども、個人的には賛成をいたしておりません。

稲田委員 個人的には反対だということですか。

滝国務大臣 回りくどいようですけれども、結論的にはそういうことと私は認識をいたしております。

稲田委員 小川大臣もそうだったんですけれども、個人的にはとか法務大臣としてはというのは、私はこれはあり得ないと思うんですよ。

 そして、今の総理、財務大臣だったときに私は質問いたしまして、外国人地方参政権付与に反対であると明確に答弁をされました。総理大臣になられてから予算委員会でこのことを質問いたしましたら、憲法上疑義があるというふうにおっしゃいました。

 法務大臣として、外国人に地方参政権を与えること、憲法上にどのような疑義がありますか。

滝国務大臣 基本的に私は賛成をいたしておりませんから、憲法上の疑義についてまで触れる必要はないかもしれませんけれども、少なくとも、そういう憲法上の問題も兼ねて議論をすべき課題ではあるということは認識をいたしております。

稲田委員 法務行政をつかさどる法務大臣として、私は、憲法上の疑義について、法務大臣の立場を明確に述べられるべきだと思います。憲法上、どのような疑義がありますか。

滝国務大臣 基本的には、日本国憲法というのは国民の福祉、厚生のための憲法でございますから、当然、外国人にまでそのような権限、基本的な政治権限を与えるというところまで憲法が予想していないという意味で疑義があると思っています。

稲田委員 いやいや、法務大臣なんですから、憲法十五条と憲法九十三条二項の解釈について述べてください。

滝国務大臣 基本的に、憲法九十三条二項に「住民」、こういうふうに言うておりますので、そういう意味からも疑義がある、こういうふうに考えております。

稲田委員 ちょっと情けないですね、法務大臣。

 今のお答えは答えになっていないんです。憲法十五条の問題としてこれは議論をされているんです。もう一度答弁してください。

滝国務大臣 もちろん、憲法十五条の公務員の問題ではありますけれども、特に地方参政権ですから、憲法の九十三条ですか、それを今は申し上げたところでございます。

稲田委員 憲法十五条で、公務員選定、罷免は国民固有の権利であると書いてあります。この趣旨は何ですか。

滝国務大臣 いわば、国家というのは国民が当然構成するものでございますし、公務員を選ぶ権利は国民にのみ存在する、こういうことを宣言した条文だと思っております。

稲田委員 法務大臣、だから、何で公務員選定、罷免が国民固有の権利なんですかという本質的な問題なんですよ。この外国人地方参政権を議論する場合に、なぜ憲法十五条で公務員選定、罷免権が国民固有の権利であるのかというところは大変重要で、だから憲法上疑義があるということになるんです。もう一度答弁してください。

滝国務大臣 当然、現行憲法を前提にすればそういう結論になるだろう、そういうふうに思います。

 ただ、地方参政権の場合には、これからの議論という、そういう幅を持った状況の中で出てきた話でございますから、だから、憲法から直ちに出てくるのは、地方参政権も問題がある、こういうことですけれども、あのときの地方参政権の問題は、少し先の話、そういうような幅を持った議論として当時出発したように思います。

稲田委員 ちょっと秘書官、渡す必要ないですですよ、こんなことを答えられなかったら法務大臣と言えないんですから。

 しかも、外国人地方参政権を与えるかどうか、憲法十五条の解釈を、どういう趣旨と捉えるか。そして、九十三条の二項の「住民」を国籍を要件とするかどうか。最高裁の判決もあるし、これは大変な議論があって、法務大臣も先ほど反対だとおっしゃったんです。ですから、なぜ反対なのか、そして、憲法十五条の趣旨からどうして外国人に地方参政権を与えたらいけないと考えておられるのか、その点についてお伺いをしているんです。しっかりと答弁してください。

滝国務大臣 今まで申し上げたことに尽きると思います。

稲田委員 答えていないんですよ、大臣。私、本当に情けないです。

 憲法十五条というのは、公務員選定、罷免は国民固有の権利であると書いてあります。これは、国民主権をあらわしたものだと一般的に解釈をされております。日本は主権国家ですから、自分の国のことはやはり自分で決めるんです。そして、自分の国のことを自分で決めるその中に、もちろん国会議員もある、地方議員もある。そういった人たちを国民が選ばないと、政治に対して、この国の行き先を決める政治について、外国人の勢力、外国人の影響を受けてはならないという国民主権、そして主権国家であるということから、外国人に地方参政権を与えることは憲法上疑義があると思いますが、大臣、いかがですか。

滝国務大臣 私もそう思っております。

稲田委員 では、そのことをもう一度明確に答弁ください。

滝国務大臣 基本的には、外国人に選挙権を与えるということは、それは憲法上認めていないということですから。ただ、議論としてありましたのは、これは遠い将来のことで議論があったと思いますけれども、少なくとも現行憲法のもとでは外国人に参政権はない、こういうことは当然のこととして理解をいたしております。

稲田委員 いや、私が言ったことに対してそうだと思いますとおっしゃるのであれば、遠い将来であろうが近い将来であろうが、外国人に地方参政権を与えるべきではないという解釈になると思いますが、いかがですか。

滝国務大臣 私もそういうような観点から申し上げました。

稲田委員 本当に通告無視ですよ。今まで何回も議論になっていますし、法務大臣なんですから、憲法解釈について、また最高裁についての質問があることは十分予想されるわけですから、きちんと見解を発信をいただきたいと私は思います。

 何ですか、秘書、何を渡すんですか。何を答えさせるんですか。法務大臣なんですよ。こんな基本的なことについて、法務大臣にお任せになったらいいんじゃないんですか。

 何かおっしゃることはありますか。

滝国務大臣 今までの私のここでの発言について、私はそのとおり逐一申し上げましたから、それ以上のことは申し上げる必要がないと思っています。

稲田委員 ずっと、ただいまの法務大臣の答弁を前提にいたしますと、近い将来であれ遠い将来であれ、地方参政権を外国人に与えるということは憲法上できないという結論になると思いますが、それでよろしいか。

滝国務大臣 いろいろな解釈論としてはあるんですけれども、私はそういうふうに思っています。

稲田委員 わかりました。では、法務大臣としては、地方参政権は将来にわたっても与えることはできないという意見だというふうに受けとめました。

 次に、民法七七二の問題についてお伺いをいたします。

 民法は、一夫一婦制の婚姻秩序維持のために、法律婚、すなわち婚姻届を出した夫婦を法的に保護すべき正当な婚姻としております。その帰結として、法律婚の婚姻関係が継続中に妻が懐胎した子を夫の子として推定をいたしております。この民法七七二の趣旨、存在意義、そして現在なおこの規定に意味があると思われるのか、大臣の見解をお伺いいたします。

滝国務大臣 家族の根幹を定めた条文だというふうには理解をいたしております。

稲田委員 大臣、私は、質問通告もしておりますし、本当に基本的なことを大臣に答弁していただきたいんです、事務方じゃなくて。

 そして、私の質問は、民法七七二、法律婚を正式な婚姻として認めてそれを保護するという立場から、婚姻が継続中に妻が懐胎した子は夫の子と強く推定するというこの七七二の規定、現在もその存在意義があると思っておられるのかどうなのか、その点について法務大臣の見解を伺います。

滝国務大臣 七百七十二条というのは、要するに家族、夫婦の基本を定めた法律でございますから、当然今もその意義は存続している、ずっと続いているというふうに理解をいたしております。

稲田委員 七七二は、婚姻継続中に妻が懐胎した場合には夫の子であるということを強く推定するんです。

 これはまさしく、父子関係というのは、DNAで決める血縁だけではなくて、そういう問題も基礎にはありますけれども、そうではなくて、父子だということでずっと家庭生活を築いていく、そして、父と子としてずっと生活をしているその平穏な家庭を壊すことはできない、そして誰も、DNA鑑定を持ってきて、あなたはこの子の親ではありませんよということを言えないようにしているんです。それが今の民法の七七二の根底にある精神ですが、それについての大臣の見解をお伺いいたします。

滝国務大臣 当然、今御指摘のように、強い推定規定が働く、推定が働くということはおっしゃるとおりだと私も思っております。

稲田委員 私が聞きたいのは、その趣旨に法務大臣として賛同するかどうなのかなんです、いろいろな考え方があるから。私は、政治主導というんだったら、そういうことをこそ法務大臣はお答えになるべきだと思っているんです。

 民法七七二は、父子関係について早期に確定をして子の身分関係を安定的に確立することが子供の保護になる、また、不必要に家庭内のプライバシーに立ち入らせないことによって家庭の平和を守るというのが法の趣旨なんです。こういうことを私は大臣に答えてほしいんですよ。ですから、安易にこの法制度の中にDNA鑑定を持ち込んで父子関係の推定を外してしまうということについては慎重であるべきだと私は思いますが、この点について大臣の見解をお伺いいたします。

滝国務大臣 いろいろな事情がおありになりますから、それはそれなりにいろいろな意見が出てくると思います。

 基本は、夫婦間の結びつきというものを安定的に、そして子供にとってもそれの混乱がないようにという意味での強い推定が働く、こういうような観点からこの七百七十二条は考えるべきだというのは、私も御指摘のとおりだと思っています。

稲田委員 私の質問は、父子関係を確定するときに安易にDNAを持ち込むべきではないと。七七二というのは、父子関係というのは血縁関係だけではなくて、法律的に父と子であるということで平穏に家庭を営んでいれば、それを誰も尊重すべきだという法制度なんですから、生物学的なDNA鑑定というものを安易に持ち込むべきではないと私は考えております。その点についての大臣の見解をお伺いします。

滝国務大臣 委員がおっしゃるように、当然、強い推定を働かせるべきだというのは御指摘のとおりだと思います。

 ただ、夫婦間には、それが破綻している場合もあるわけでございますから、そのときにどうするかという第二段階目のいろいろな判例、あるいはそれに対する手続、そういうものも、それは付加的に必要な場合があり得る、こういうふうには法の解釈としてあり得るんじゃないでしょうか。

稲田委員 ということは、今の大臣の御答弁は、婚姻関係、法律的な法律婚は継続していても、夫婦関係が破綻をしておれば父の推定を外すということも認めるべきだ、そういう御趣旨でしょうか。

滝国務大臣 破綻をしていて、別居を長い間しているというときに、いろいろな法律問題が裁判所にも持ち込まれているわけでございますから、それはそのときの判断で、裁判所がどう判断するかという問題はあり得るのではないかというふうに思っております。

稲田委員 最高裁は、推定を外すのに、外観的に夫婦関係が存在しない場合と。客観的に見て、例えば刑務所に入っているとか、海外に行っているとか、外形的に見て夫婦関係が存在しないという要件を課しておりますけれども、大臣、単に破綻している、家庭内別居も含め破綻して夫婦関係がない、そういう場合にも推定を外すべきだというふうにお考えですか。

滝国務大臣 個別の問題は、基本的には訴訟によって決められることが多いと思いますから、その訴訟で決められたことを、いや、そうじゃないというのは少し行き過ぎのように思いますから、裁判所が認定したことは、それは法律の精神、趣旨の中で認めるということではないかと思います。

稲田委員 夫の嫡出推定を外すための認知調停、親子関係不存在は、婚姻が継続している場合にもできますか。

滝国務大臣 婚姻は形式主義ですから、婚姻が継続しておっても、裁判所が、事実上別居していて、もう本当の夫婦じゃないということであれば、それは、形は婚姻が継続していてもあり得るというふうな理解をいたしております。

稲田委員 そうしますと、今、よく離婚後三百日以内に生まれた子供の前夫の嫡出推定を外す方法について議論がされておりますけれども、これは、婚姻中に嫡出推定を外すような場合にも適用をして、そして、婚姻中も、嫡出を推定してほかの男性の子供というふうに認定する場合もあるということですか。

滝国務大臣 それは、裁判所がそういうふうに認定すればあり得るということだと思います。

稲田委員 私は、そこはやはり大臣が見解をおっしゃるべきだと思いますよ。これは、離婚後三百日以内の問題に限られず、婚姻中でも全く同じ問題が生じるわけです。そういった場合にも、この推定を外すのに、最高裁は、外観的に夫婦関係が存在しない場合、そして下級裁ではもう少し緩やかに解釈している場合もありますが、婚姻中でもその問題は同じように解釈するということでよろしいか。

滝国務大臣 私は、具体的な事件の裁判官になったときのことを考えるわけにはいきませんから、今までの判例から考えると、そういうことになるんだろうというふうに考えております。

稲田委員 では、大臣、今の民法七七二、三百日以内の問題も含めて、どこが問題で、どのように改正すべきだと思われていますか。

滝国務大臣 基本的には、判例は判例としてあるわけですけれども、その判例に従って、例えば戸籍を扱う役所がその判例に従った対応がどこまでできるかどうか、そういう事務的な手続との関係が必ずしも一般には理解されていない、そこに問題があると思います。

稲田委員 外国人地方参政権もそうなんです。今のこの民法七七二の問題も、法制度としての家族制度をどうするか、また、法律婚、一夫一婦制における法律婚を法としてどう守っていくかという非常に根本的な問題なんです。この問題について、私は質問通告もいたしておりますし、大臣に法務大臣としてのきちんとした見識を示していただきたかったと思います。

 また次回に質問をしたいと思います。ありがとうございます。

鉢呂委員長 次に、樋高剛君。

樋高委員 国民の生活が第一の樋高剛でございます。

 まず、改めまして、おくればせながらでありますけれども、滝実法務大臣、御就任まことにおめでとうございます。二年前でございますけれども、滝先生が委員長でいらっしゃったときに私は理事をさせていただいて、委員会の進行等、お手伝いもさせていただいて、御指導いただいてきたということでございますけれども、ぜひ御活躍をお祈り申し上げさせていただきたいというふうに思っています。

 きょうは、環境という視点からディスカッションをさせていただきたいというふうに思ってございます。

 一見、法務行政と環境行政というのは全く関係のないことのように感ずるわけでありますけれども、私も、昨年九月まで、力不足でありましたけれども、環境大臣政務官として日本の環境政策を力強く進めるということに取り組みをさせていただいたわけでございます。

 一昔前であれば、環境問題といえば公害問題ぐらいだったわけでありますけれども、今は、例えば、地球温暖化などの国際問題、あるいは生態系や生物多様性の保全、また一方で循環型社会の構築。そして今、復興にあっては、いわゆる被災地の瓦れきの撤去、あるいは環境モニタリング、動物愛護などの大変多岐にわたっているわけであります。

 私自身は、当時、去年の今ごろでありましたけれども、法務大臣と環境大臣が江田五月先生、兼務でいらっしゃったという流れの中で、やはり法務と環境の融合というのも追求をさせていただいたテーマでございました。それに従いまして、ちょっときょうは議論させていただきたいと思っております。

 まず、環境に関する専門的知識を有する法曹の養成についてということでございます。

 二十二年の二月の二十四日、当法務委員会におきまして、実は、環境系の案件を専門とする裁判官が果たしてどのぐらいいるんだろうかということをお尋ねしましたところ、環境系を専門に扱っている裁判官はいないというお答えでありました。

 一方で、今申し上げましたとおり、やはり、環境のことをしっかりと理解している法曹を養成するということは、私はとても大切なことであろうというふうに思っておりまして、いわゆる環境に対する幅広い見識あるいは司法の立場で適切に対処できる能力を兼ね備えた人材が今後多く必要になってくるというふうに当時の千葉景子法務大臣にお尋ねをしましたところ、前向きな答弁をいただきまして、「環境を基本に考えられる、そういう人材を育成していく、養成していくということは私も大変大事なことだというふうに理解をいたしております。」というお答えがございました。

 あれから二年半がたったわけでありますけれども、こういった環境に関する専門的知識を有する法曹の養成状況はどのような進展があったのか、大臣の御答弁を求めます。

滝国務大臣 現実には、法科大学院において環境法という格好で取り上げているということでもございますし、また、司法試験においても環境法を選択科目の一つにしている、こういうようなことで、着々として環境問題が法的な場面で登場しているというのが最近の実態でございます。

樋高委員 続いて大臣に伺いますけれども、まさしくそういう現状の中で、私は、繰り返しになりますけれども、環境分野をしっかりと理解する人材をやはり大臣のリーダーシップで進めていただきたいと思うのでありますけれども、御決意のほどを伺いたいと思います。

滝国務大臣 もともと環境問題というのは、何はともあれ日本がいわばリーディング国家としてやってきた分野でございます。それだけに、環境問題というものを法的な立場からサポートしていくというのは、法務省の一つの守備範囲というふうには考えております。

樋高委員 では、具体的に伺ってまいりたいと思います。政務官にもお尋ねをさせていただきたいと思います。

 いわゆる矯正施設の環境対策、グリーン化についてでございます。

 刑務所あるいは少年院などの矯正施設は全国各地にございますけれども、受刑者の方々が起居をしている、生活をしている、いわゆる生活に伴うエネルギー消費、あるいは二酸化炭素排出も少なくないと思われるわけであります。それらの施設について、例えば、太陽光パネルを設置するですとか、あるいは建物の断熱化を行うなどといういわゆる環境対策、グリーン化が重要であるというふうに考えておりますけれども、現在、どのような方針でどのように取り組まれているのかということが一点。

 あともう一点、いわゆるエネルギー使用抑制などを通じた地球温暖化対策、これはまさしく国際的な要請もますます高まっていくということでございまして、我が国のあらゆる場において対策を進めていくことが求められているわけでありまして、今後、これから一層取り組みを充実させていくべきであると考えておりますけれども、いかがでしょう。

松野大臣政務官 さすが、樋高委員は環境政務官もお務めされたということで、非常に環境に配慮した法務の扱い方についても、いい御質問をいただいたと思っております。

 それで、矯正施設については、今委員も御指摘ありましたように、環境負荷の低減に配慮した施設整備を推進するということで、とりわけ新しく整備をする刑務所、少年院等々については、原則として、屋上の緑化、あるいは太陽光パネルを庁舎内に設置するということ、また、屋根や外壁に断熱材を入れるということでの各居室の断熱化を図っているところでございます。

 これは、もともとは、官庁については、官庁施設の環境保全性基準というものが成立しておりますので、それに基づいて、そうした方針のもとに取り組んでいるわけであります。

 例えば、新しいところで申し上げますと、太陽光パネルを設置しておりますのは、市原刑務所とか立川拘置所とかあるいは美祢社会復帰促進センターとかそうしたところで、全部で約四十庁設置をしております。また、屋上緑化については、北九州医療刑務所等々、約二十庁整備をしているということであります。

 また、こうした整備は、やはりグリーン化をより推進していくということが大変重要なことだということを認識しておりますので、こうした矯正施設の新営設備におきましてはぜひグリーン化をより一層進めたい、このように思っております。

樋高委員 政務三役、政治主導において、現状がどうであるのかということをぜひ具体的に改めて検証していただいて、それの進捗状況をしっかりとやはり政治の立場からチェックしていく、背中を押していくということをお願いいたしたいと思っております。

 さらに具体的にお伺いします。

 大臣にお尋ねをいたしますけれども、刑務所におきまして受刑者の方が手づくりで製作をいたしました刑務所作業製品、さまざまありますけれども、いわゆるCAPICというブランドで販売がされているところでございます。

 これは受刑者の方が手に職を得るという効果がまず期待をされている。私は、それ以上に、こうした製品を手作業でつくり上げて、それが必要とされて、世の中で購入されて、さまざまな場所で役に立っていく、そうした社会貢献の経験をするということは社会復帰に向けた大きな心の支えになるというふうに確信をしているわけであります。そして、さらに、環境に優しい製品を製作するということによって、地域や地球全体の環境保全に役立つという感覚、感性を得るということは、社会に必要とされているという自信にも大いにつながっていくだろうと考えております。

 いわゆる製品の製作について、例えばですけれども、木であるならば、国内の間伐材を積極的に使用して、国内の森林管理あるいは二酸化炭素吸収源対策にも貢献をしていくということも同時に大切な視点だと私は思いますけれども、いかがでしょうか。

滝国務大臣 今委員から、刑務所の作業の中でできた製品をCAPICというブランドにして買ってもらっている、こういう御指摘がございました。その中には、当然、全国の刑務所で木工品を製品にする作業をしているところがそれなりにございます。大量に使っている中では、今御指摘のように、網走刑務所が、敷地の中にある森林から出る間伐材で、パレットという運搬用のお皿、大きな、お皿と言っては合いませんけれども、木の枠をそこでつくって各地に提供しているというのが、いわば実際の社会の中では広く出回っている部分もございます。

 そういうことはやはり大事にしていくというのは、御指摘のとおりだと思います。

樋高委員 続きまして、環境教育についてお尋ねをしたいと思います。

 私自身、環境の政務官のときに、省内で環境教育に関するプロジェクトチームを立ち上げました。これは、もちろん役所の中の若手の方から先輩の方々のみならず、外部の有識者、あるいは、教育というテーマでありますので文科省の皆さんにも参加をしていただいて、さまざまな提言をさせていただいたわけでございます。検討チームを特命という形で立ち上げさせていただいて、積極的に取り組んできたところであります。

 そのかいあってか、環境教育等促進法という法律が昨年の六月に改正をされまして、そして、この法律に基づく基本方針においても、私が常日ごろから問題意識を持っておりましたけれども、いわゆる自然体験活動などの実体験を通じた学びの重要性を盛り込ませていただきました。

 この基本方針に従って、いわゆる環境教育などを一層推進していただきたいと思うわけですけれども、このことは、環境行政だけではなくて、法務行政にも十分に資するというふうに私は思っております。

 例えば、受刑者の方、あるいは保護観察対象者の方々に対して、自然体験活動あるいは動物愛護活動、一方で農業の作業などにも従事をしていただく環境を整えていくということは、矯正教育あるいは再犯防止という観点からも重要であるというふうに思いますけれども、この点について、副大臣、いかがでしょうか。

谷副大臣 お答えを申し上げます。

 今委員から御質問ございました。

 大きく二つあると思いますが、まず、受刑者、そして保護観察対象者、こういう人たちに対して、自然体験活動あるいは農作業を通したそういう体験、こういうものを通して再犯防止あるいは矯正を図っていくという観点から申し上げます。

 まず、現状の問題として申し上げますと、刑務作業として農作業、あるいは職業訓練として農業園芸科を持っている、こういう刑事施設が、全国で現在二十二施設、三百十六人がそれに従事しております。また、PFI刑務所の中でも、例えば島根のあさひ社会復帰促進センター、こういうところでは、いわゆる小動物と申しますか、例えば盲導犬パピー育成プログラムとか、あるいはホースプログラム、こういうようなものを取り入れまして、動物愛護プログラムを実際に実施している、こういう現状がございます。

 また、保護観察対象者についての現状は、これは私も視察をいたしましたが、茨城の就業支援センターでは、成人の観察対象者が露地野菜等の栽培を行って、現実に農業の訓練を実施している、こんな状況がございます。

 いずれにしましても、農作業とか自然体験活動を通して受刑者や保護観察対象者の改善更生、社会復帰に資していくということは大変重要なことだと思っておりまして、今後とも、そうした視点から取り組みをしっかりやってまいりたい、このように考えております。

樋高委員 環境学習の効果というのは、特に若い方々、少年少女の方々については、より一層高い効果が期待できるのではないかというふうに思うわけなんです。持続可能な社会に必要な知識やあるいは態度を育成していく上でも、特に少年院において、例えばですけれども、ビオトープを設置する、あるいは、先ほど来申し上げております自然体験学習をよりしっかりと行っていくという環境教育が必要だというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

谷副大臣 御指摘のとおりでございますが、特に、少年院における自然体験活動というのは、在院者の情操を豊かにして、また、健全な心身の成長に当たる上で大変重要な分野だと思っております。

 現状を申し上げますと、全国で五十二庁少年院がございますけれども、全庁においては、野菜とか花の栽培等の農園芸の実習なども実施しておりますし、それぞれの少年院においては、登山とかキャンプとか、あるいは遠足や自然体験活動、こういうものを通してそうした環境意識の向上に努めている。ひいては、こういう活動が、今後の少年院在院者の再非行防止や環境意識の向上により寄与していくもの、こういうふうに考えております。

樋高委員 自然体験、農業活動、そしてあるいは動植物との触れ合いを通じて、人間は自然に生かされているんだという実感を持つこと、そして、それがゆえに人間の命はとうといものだという認識に到達をしていただく、これは受刑者の方々、保護観察対象者の方々の更生にきっと役に立つというふうに思っております。

 また、そうした体験を通じた環境学習というのは、受刑者の方々などの環境意識の向上、また、彼らの国内外の社会問題全般への関心を喚起することにもつながり得るというふうに思っておりますので、力強く、しっかりと結果を出していただきたいというふうに思っております。

 一方で、保護観察対象者の方々をケアする、いわゆる保護司さんについてのお尋ねでございます。

 私の選挙区においても、もちろん全国でも、保護司の皆様方、本当に大変な汗をかいていらっしゃるということを、特に、私自身も法務行政に取り組ませていただく中で、地域の声も聞いているわけでございます。きょうから刑法の一部改正がいよいよ議論されるということで、保護司さんの活躍に本当に頼っていかなくてはいけないという現状を鑑みた中で、いわゆる立ち直りをしっかりと支援していくということが必要だと思っておりますが、そのためには、やはり保護司の方々の御尽力が不可欠でございます。

 しかし、保護司の方々の活動が、最近、さまざまな要因で難しくなってきたという話も耳にするわけでございますけれども、その現状と課題、そしてそれについての現在の取り組みについてお伺いをいたしたいと思います。

谷副大臣 お答えの前に、樋高委員が日ごろから保護司活動に大変御尽力を賜っておりまして、心から感謝申し上げたいと思っております。

 そういう中で、現在、保護司が全国で約四万八千人おります。こういう方々が、犯罪のいわゆる減少のために、また、再犯防止と改善更生のために大変頑張っていただいている。心から感謝申し上げたいと思っております。

 現状の課題を申し上げますと、まず一つは、近年、特に保護観察対象者の家族や地域からなかなか支援が得られにくくなってきている、こういうことで保護司の活動が大変困難な状況になっている。また一方では、新任の保護司の確保というものもなかなか難しいという状況にございます。そういう意味では、近年、保護司の人数が減少傾向にある、こういうふうに私たちは捉えております。

 そこで、この保護司の方々の負担軽減あるいは保護司活動の支援、こういうふうなことで、現在、法務省としては、大きく二つの取り組みをしておりまして、一つは、保護司の方々が自宅でそうした保護司活動がなかなかできにくい、こういうふうなこともございまして、地域に更生保護サポートセンターを設置する、これは神奈川でもお取り組みいただいておりますが、そういうこととか、あるいは、新しい保護司を選出するための保護司候補者検討協議会、こういうものを設置しまして、今、その活動をいたしております。

 いずれにしましても、結論としては、ことしの三月に提出をされました、保護司制度の基盤整備に関する検討会、この報告書をしっかり踏まえながら、保護司の方々の活動に対する支援を積極的に取り組んでいきたい、このように考えております。

樋高委員 保護司の方々の活動というのは、保護観察対象者の立ち直りに向けて、なくてはならないと思うわけです。その保護司の方々の活動を円滑にしていくためには、まず、今、四万八千人という話がありましたけれども、まだまだ足りない。定員というのはあるのでしょうか。確保がなかなか難しくなっている、担い手の方がまだ足りないということでありますけれども、しっかりと確保していただくということと同時に、何よりも、保護司さんの活動をより多くの国民の皆さんにわかっていただく、理解と協力が得られるような環境をやはり法務省が整えなくちゃいけない、その責任があるというふうに思っております。

 国として一層支援が必要であると思いますけれども、法務大臣の御見解を伺いたいと思います。

滝国務大臣 今、刑法の一部改正もお願いしているところでございます。やはり、再犯を防止するという観点からは、保護司さんの活動というものに相当頼っていく必要がございます。そういう意味でも、今委員の御指摘のとおりだと思います。

 とりあえず、今やっておりますのは、保護司のサポートセンターをできるだけふやしていく。現在、百五十カ所ぐらいしかございませんけれども、それを少しでも多くふやしていく。要するに、今まで個人のお宅で保護司さんが面接をしている。しかし、それでは都会的な地域では限界があるものですから、できるだけサポートセンターで面接できるようにしていくというのが物理的な面では必要なこと。

 しかし、それ以上に、やはり保護司さんもだんだん高齢化してまいりました。したがって、今回も、少し、最初になるときの年齢を一歳だけ上げる、そういう、大変いじましい、きめ細かいこともしないと、なかなかふさわしい人がついてくれないという問題もございます。

 いろいろな面できめ細かくサポートしていく必要はございます。

樋高委員 保護司の皆様方がしっかりとした活躍ができるように、活動ができるように、御尽力いただけるような環境整備、責任を持ってお願いをいたしたいと強く要望させていただきたいと思います。

 続きまして、ESD、いわゆる持続可能な開発のための教育の推進についてお尋ねをさせていただきたいと思います。

 さきにリオで開催されました地球サミット、いわゆるリオ・プラス20についてでありますけれども、そこで取りまとめられました成果文書というのがあります。持続可能な開発のための教育、いわゆるESDと呼ばれている考え方でありますけれども、これを法務省においても積極的に進めていくことが私は必要であるというふうに思っております。

 二〇〇五年から二〇一四年の十年間は、我が国日本の提唱に基づいて、国連ESDの十年として定められておりまして、二年後、一四年、最終年には世界会議が日本で開催をされることが決定をしていると伺っております。この会議で日本が世界にリーダーシップを発揮していくためにも、このESDの取り組みを法務省も含めた政府全体として盛り上げていくということが必要だと思っておりますけれども、法務省の所掌事務の中においてこのESDに関連する行政分野はどのようなものがございますでしょうか。

谷副大臣 法務省が所管する所掌事務の中で、このESDに関係する分野としては、特に法務省が取り組むべき人権擁護局が所掌する事務、そういうところがこれに関連する分野であると思います。

 なお、関係省庁連絡会議ができておりまして、その中に人権擁護局長がオブザーバーとして参加いたしております。

樋高委員 今、人権の分野であるというお答えだったと思いますけれども、国内外のさまざまな人権問題につきまして、現状や背景をしっかりと把握して、問題の本質を理解し、社会の人々の協力、連携して主体的に取り組む、そういった力を養うということが人権擁護に関するESDに求められているというふうに考えます。

 法務省として、こうしたESDの取り組みを進めるために重要な役割を担っていると私は期待をしているところでございますけれども、この人権擁護などに関するESDを進めるためにどのような取り組みを行っていこうとお考えでしょうか。

谷副大臣 まず、現状のことから少し触れたいと思いますが、人権擁護行政を所管する法務省としては、大きく、人権啓発活動、それから二つ目に人権救済活動、この二つの分野で取り組みをいたしております。

 特に、そのうちの人権啓発活動については、シンポジウムとか講演会などのほかに、小さな子供さんの、小学生を対象とした花の育成を通じた人権の花運動とか、あるいはまた人権教室とか、全国中学生人権作文コンテスト、こういうようなものも取り組んでおります。

 また、人権救済活動については、全国の法務局、地方法務局においてさまざまな、電話、面談、インターネット等による人権相談に応じておりますし、特に人権侵害の疑いのある事案については、それを調査して、その結果を踏まえて適切な救済措置を講じているということです。

 なお、自治体が担う子供たちの人権問題を相談する体制として、子どもの人権一一〇番、SOS―eメール等々、あるいは子どもの人権SOSミニレター、こういうものを活用しながら、その取り組みを現在行っているところでございます。

樋高委員 国連ESDの十年の締めくくりの年でございます二〇一四年に向けて、法務省におかれましても、今おっしゃいました人権啓発あるいは救済に関して、ESDについて積極的に取り組んでいただく。そして、世界会議、日本で開催されますけれども、存在感をしっかりと法務省としても示していただきたい。その会議はオブザーバー参加ということでありますけれども、むしろ主体的に取り組んでいただきたいということを期待しております。

 大臣の御決意を伺いたいと思います。

滝国務大臣 この問題は、もともと、ESDを提唱したのは二〇〇三年ということでございましたけれども、日本が提唱したものでございます。それが最終年の二〇一四年に日本で開催されるというのは大変意味のあることでございますから、もともと環境省とか文科省がその中心になってきたと思いますけれども、法務省としても、全体の日本のために少しでも実績を上げていく努力をしてまいりたいと思います。

樋高委員 今大臣から実績を上げていきたいという答弁をいただきましたけれども、それをぜひ実体としてしっかりとした形にしていただいて、法務行政の立場からも、日本の環境政策を力強く前進させるということに全力で取り組んでいただきますことを強く要望申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

鉢呂委員長 次に、中島政希君。

中島(政)委員 改革無所属の会の中島でございます。

 私、前回の一般質疑の際に、二・二六事件の裁判記録が漏えいしていたということについて御質問いたしました。六月十五日でございましたけれども、委員長もかわられまして、また、新たに委員に加わられた方もいらっしゃいますので、二・二六事件の裁判記録が漏えいしていた、どういうことか、もう一回ちょっと説明いたします。

 二・二六事件の軍法会議の裁判記録というのは、戦後、GHQが接収いたしまして、それが日本に返還されて、東京地検が保管しているということでございます。二・二六事件の裁判記録は一級の歴史的資料でございますので、学会の関係者や民間の研究者がこの公開を非常に望んでおるということもございまして、私も、研究者の方々から御依頼を受けまして、平岡大臣の時代に、平岡さんの秘書官を通じて、法務省の担当の皆さんとこの問題について話をし、お願いをしたわけでございます。

 法務省としてこれを公開した方がいいのではないか、法務省が自分で公開した方がいいんじゃないか、あるいはそれができないのであれば、信頼できる学者グループに委嘱して、そのコピーを研究してもらって、そのまま公開するような方向はとれないのかということを要請いたしまして、現場の方々にいろいろ御検討いただいたんですが、結論的に言うと、できないということだったんです。法務省が自分で公開することもやらぬ、民間に委嘱して公開することもできない、原本をコピーさせることもだめだ、こういうお話だった。

 ところが、本年の四月二十二日に、朝日新聞の書籍広告欄に民間の出版社から、二・二六事件裁判記録の原本を複写した出版物を刊行したという書籍の広告が出ました。委員の皆様のところに資料として配付してございますが、そうした広告が載った新聞が出まして、私もびっくりいたしました。

 そして、その実際に販売されている本、これですけれども、私も見ました。委員の皆様のところに資料として一枚だけコピーをしてありますけれども、ごらんになってください、どう見てもこれは本物としか思えなかったわけでございます。法務省、東京地検が厳正に管理して、非公開のはずのこの資料が、学者にもコピーさせないと言っていたようなものが、いつの間にか流出して、あろうことか、三万七千八百円の定価がついて売られていた、どうなっているんだ、こういう話ですね。

 こんな不可解なことはございませんので、私は、六月十五日の当委員会で、事の経緯について法務省の御当局に説明を求めました。質問させていただきました。刑事局長は、御答弁をいただきまして、販売されているこのコピー、原本のコピーのようだ、間違いないようでまことに遺憾であるということをおっしゃいました。しかし、どういう経緯でこれが流出したのかはすぐにはわからないので、鋭意、調査をしているところであるという御答弁をいただきました。

 前回の私が質問したときから大体五十日ぐらいたちまして、かなりの時間もたちましたので、調査も進んだことと思います。改めて、この調査の結果を御説明いただきたい、このように思います。

稲田政府参考人 お答え申し上げます。

 前回、六月十五日の当委員会におきましても御答弁申し上げましたように、この二・二六事件の記録につきましては、平成三年ごろでございますが、当省におきまして、この記録を一般の方といいますか、研究者を中心でありますけれども、これに閲覧をしていただくことの妥当性ということを検討しようということになりました。

 それは、おっしゃるように、それまで全く公開をしていなかったことから、閲覧をしたいという御希望がありましたことからそういう検討をいたすことにしたわけでありますが、その際に、軍法会議について知見を有しておられた弁護士の方、これは戦前から既に法曹資格をお持ちの方だったようでありますので、軍法会議のことについて実質的に関与されたことがあるというふうに伺っておりますが、この方に検討を依頼したということがございました。なお、この方は既にお亡くなりになっておられます。

 その際に、どのようにしたかということにつきまして、今回、検察当局及び法務当局におきまして、この亡くなられた弁護士の方の御遺族や、さらに今回出版された書籍の編集者に事情を聞くなどして調査をいたしました。

 その結果、この検討を依頼しました平成三年当時、検察庁の方でこの弁護士の方に対しまして、当該事件の訴訟記録の写しを検討のためにお預けしていたということがわかりました。

 これは、本来、その検討が終了した段階、その終了というのは、この記録につきましては閲覧を学術研究等のためにすることは結構であるという御意見をいただいたというふうに承知しておりますけれども、その際に、この写しは回収することを予定していたわけでありますが、若干、ここがどうしてかというのは、ちょっと二十年ほど前のことなのでわかりませんが、回収しないまま、その弁護士に写しを預けたままにして、結局、預けたままになっているということをきちっと引き継いでいなかったということが判明いたしました。

 その後、先ほど申し上げましたように、この弁護士の方がお亡くなりになられ、この御遺族から書籍の編集者にその写しが渡されたということが確認できたわけでございまして、それが今回出版されたというふうに理解しているところでございます。

 なお、検察当局におきましては、この今の調査の過程、六月からの調査過程の中で、この書籍の編集者の方から、この写し自体は全て返していただくというふうにいたしたところでございます。

 以上でございます。

中島(政)委員 返していただいた、いただくということなんですね。

 しかし、これはもう出版されているわけですよ。それで、これは法務省も何か参考資料としてお買いになったようですし、私はこれを国会図書館で借りているんですけれども、国会図書館も買っているんですよ。この出版自体は、違法じゃないんですか、あるいは不正じゃないんですか。出版を取りやめるようなことを出版社には言っていないのですか。

稲田政府参考人 お答え申し上げます。

 御遺族の方から書籍の編集者の方にこの写しが渡された経緯につきましては、いろいろと両者の間でやりとりがあったようでございまして、ただ、私どもといたしましては、私人間のことでありますので、これをどうこうするというわけにもまいりません。

 そういう意味では、もともとのきっかけのところで、私どもの方で回収をすべきものをしなかったという落ち度があるわけでございまして、そういうことも踏まえて、私どもの方で出版を差しとめてくれとまでは申すことはできないのではないかというふうに考えております。

中島(政)委員 いやいや、これは大変なことじゃないんですか。まあ、はっきり言って非公開文書の漏えいですよね。それが営利目的で出版されて、もうけている人がいるわけですよ。この一連のことについて、では誰が責任を持つんですか、おとりになるんですか。

稲田政府参考人 今申し上げましたように、本件につきましては、本来返していただくべき記録の写しを預けたままにしていた、その後、それもきちんと引き継がれていなかったという記録の管理上の不適切な面があったということでございまして、その意味で、大変申しわけないというふうに考えております。

 ただ、何分にも、二十年以上前のことでございまして、誰がどういうふうにこの管理をしていて、それをどの段階で返してくれと言うべきであったのかというようなことにつきましては、現実にはなかなか確認がしにくいところもございますし、いずれにしましても、かかわった担当者がほとんど退職しているということもございまして、私どもの方でその責任を問うということが現時点ではできる状況にないということを御理解いただきたいと思います。

 いずれにいたしましても、今後、このような事態が発生することがないように、十分注意していきたいというふうに考えております。

中島(政)委員 私もこれを見せていただきまして、編集者の方が解説をしておりまして、どういう経緯でこれを手に入れたかというようなことが書いてあります。今おっしゃったようなことが書いてあります。

 その中で、本記録の出版の妥当性について検討を依頼した、そのことについて依頼をされた、先ほど出た方は原さんという方なんですけれども、原さんという法務大尉ですね、原さんが、妥当である旨を回答した報告書を提出したとここに書いてあるんですけれども、その報告書というのはあるんですか。

稲田政府参考人 現時点では、もう既に保管はしていないというふうに承知しております。

中島(政)委員 ちょっと文書管理がいいかげんじゃないかと思うんですね。

 お役所というのは、どこでも文書の管理に大変うるさいものだと思いますし、市民感覚からいうと、法務省というのは一番それが厳しい。我々は法務局へ行っても、判こ一つなくても、書類一枚足らなくても突き返される。そういう、法律の番人として文書に一番厳しくなきゃいけない法務当局だと思うんですね。それが、関係する文書も残っていない。しかも、一方では販売されている、こういう事実があるわけですよね。これは大変ゆゆしいことで、私は、よく調べていただいて、こういうことが二度とないようにしていただかなきゃいけないというふうに思います。

 ただ、私は、このことを追及して責任者の首をとろうとか、そういうことを思っているわけじゃありませんで、こういうことが起こる背景は、法務省が歴史的な文書の公開について消極的な姿勢をとり過ぎているんだ、こういうことなんですよ、問題は。私が言いたいのは。

 二・二六事件への関心というのは、民間でも学会でも非常に強いです。そうした需要があるから、こういうことが起こるんですね。違法に出版するというようなことも起こってくるわけですよ。今回のことはまことに遺憾なことですけれども、別に私は、責任者を追及してどうとかしろということではなくて、これをきっかけに、一定の期間を経過した歴史的な価値のある文書というものは適切に公開したらいかがかということを言いたいわけなんです。

 法務省には、戦前の司法省以来の、二・二六もそうですけれども、こうした重要な文書というのがたくさん保管されているはずなんです。外交文書もそうですけれども、一定期間を経たら、こういうものは研究の用に供する、これは大事なことだと思うんですね。ぜひそういう視点で考えるきっかけにしていただきたいと思って、私はこの問題を取り上げたわけでございます。

 最後に大臣に、今の局長の答弁も踏まえて、二・二六事件を初めとする歴史的文書の公開を具体的に検討されるかどうか。私は、ぜひ大臣にリーダーシップを発揮していただきたいと念願するものですが、今の局長と私の問答を踏まえて、大臣の前向きなお話を聞きたいと思うんですが、いかがでございますか。

滝国務大臣 今委員の御指摘のように、公開してもいいかどうかの検討を依頼した、その文書が流出したという、何とも皮肉な話でございます。

 しかも、そのときの結論は、公開してもいいというようなことを今委員が御指摘になりました。そういうことであれば、これは当然、公開をすべきという方向を確認する必要があるだろうと思います。

 私は、今委員のおっしゃるように、おくればせながら、公開に踏み切る。しかし、どれを公開するか。今お持ちの部分だけなのか、あるいは、その他の附属書類があるのか、そんなこともこの際あわせて必要かもしれませんけれども、いずれにしても、個人の、いわゆるここに出てくる登場人物のプライバシーの問題があるでしょうから、少なくとも、公開の判定を依頼した文書だけは、これはいいというそのときの結論であれば、それに従って公開した方がいい。それは早速、そういう手続に入りたいと思います。

中島(政)委員 今、大臣から大変前向きな、いい御答弁をいただきまして、私も非常に満足いたしました。ぜひ大臣、よろしくお願い申し上げます。

 時間が参りましたので、終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

     ――――◇―――――

鉢呂委員長 次に、第百七十九回国会、内閣提出、参議院送付、刑法等の一部を改正する法律案及び薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。滝法務大臣。

滝国務大臣 刑法等の一部を改正する法律案及び薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律案について、その趣旨を便宜一括して、改めて御説明いたします。

 近年、我が国においては、犯罪をした者のうち再犯者が占める割合が少なくない状況にあることから、再犯防止のための取り組みが政府全体の喫緊の課題となっており、効果的かつ具体的な施策を講ずることが求められています。この両法律案は、犯罪者の再犯防止及び改善更生を図るため、刑の一部の執行猶予制度を導入するとともに、保護観察の特別遵守事項の類型に社会貢献活動を行うことを加えるなどの法整備を行おうとするものでございます。

 この両法律案の要点を申し上げます。

 第一は、刑の一部の執行猶予制度の導入であります。現行の刑法のもとでは、懲役刑または禁錮刑に処する場合、刑期全部の実刑を科すか、刑期全部の執行を猶予するかの選択肢しかありません。しかし、まず刑のうち一定期間を執行して施設内処遇を行った上、残りの期間については執行を猶予し、相応の期間、執行猶予の取り消しによる心理的強制のもとで社会内において更生を促す社会内処遇を実施することが、その者の再犯防止、改善更生のためにより有用である場合があると考えられます。

 他方、施設内処遇と社会内処遇とを連携させる現行の制度としては、仮釈放の制度がありますが、その社会内処遇の期間は服役した残りの期間に限られ、全体の刑期が短い場合には保護観察に付することのできる期間が限定されることから、社会内処遇の実を十分に上げることができない場合があるのではないかという指摘がなされているところです。

 そこで、刑法を改正して、いわゆる初入者、すなわち、刑務所に服役したことがない者、あるいは刑務所に服役したことがあっても出所後五年以上経過した者が三年以下の懲役または禁錮の言い渡しを受ける場合、判決において、その刑の一部の執行を猶予することができることとし、その猶予の期間中、必要に応じて保護観察に付することを可能とすることにより、その者の再犯防止及び改善更生を図ろうとするものです。

 また、薬物使用等の罪を犯す者には、一般に、薬物への親和性が高く、薬物事犯の常習性を有する者が多いと考えられるところ、これらの者の再犯を防ぐためには、刑事施設内において処遇を行うだけでなく、これに引き続き、薬物の誘惑のあり得る社会内においても十分な期間その処遇の効果を維持強化する処遇を実施することがとりわけ有用であると考えられます。

 そこで、薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律を制定し、薬物使用等の罪を犯した者については、刑法上の刑の一部執行猶予の要件である初入者に当たらない者であっても、刑の一部の執行猶予を言い渡すことができることとするとともに、その猶予の期間中必要的に保護観察に付することとし、施設内処遇と社会内処遇との連携によって再犯防止及び改善更生を促そうとするものでございます。

 この刑の一部の執行猶予制度は、刑の言い渡しについて新たな選択肢を設けるものであって、犯罪をした者の刑事責任に見合った量刑を行うことには変わりなく、従来より刑を重くし、あるいは軽くするものではありません。

 第二は、保護観察の特別遵守事項の類型に「善良な社会の一員としての意識の涵養及び規範意識の向上に資する地域社会の利益の増進に寄与する社会的活動を一定の時間行うこと。」、いわゆる社会貢献活動を行うことを加えるなどの保護観察の充実強化のための法整備であります。保護観察対象者に社会貢献活動を行わせることにより、善良な社会の一員としての意識の涵養及び規範意識の向上を図ることは、その再犯防止及び改善更生のために有益であると考えられることから、更生保護法を改正して、社会貢献活動を義務づけることを可能とするほか、規制薬物等に対する依存がある者に対する保護観察の特則を定めるものです。

 このほか、所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、刑法等の一部を改正する法律案及び薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律案の趣旨であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いをいたします。

    ―――――――――――――

鉢呂委員長 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として法務省保護局長青沼隆之君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鉢呂委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鉢呂委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、これを許します。橘秀徳君。

橘(秀)委員 民主党の橘秀徳でございます。

 法案の審議に、質疑に先立って、まずは、本日午前中、死刑確定囚の二人の執行をされたということであります。いつ執行命令をされたかなどなど、概要についてお聞かせをいただければと思います。

滝国務大臣 今委員の御指摘のとおり、本日、二人の死刑確定囚につきまして、死刑の執行をいたしました。

 いつ執行命令を出したかについては、これは公開するわけにはまいりませんけれども、この数日間の間で改めて確定をし、そして執行命令をさせていただいた次第でございます。

橘(秀)委員 ありがとうございます。

 大臣、就任の記者会見の中で、冤罪のおそれがないなど、検討して具体的に執行の判断をしていくということを述べられています。

 私、問題意識として、やはりきちんと、死刑というのは法務大臣の責務であると思っておりますので、刑事訴訟法の第四百七十五条の一項では「死刑の執行は、法務大臣の命令による。」、そして第二項で「判決確定の日から六箇月以内」という規定もあります。

 死刑未執行者が、二〇〇三年末の時点で五十六人だったのが、既に百三十人を超えるような事態になっています。今後、この執行に当たっての大臣のお考えなり、お示しいただければと存じます。

滝国務大臣 最初のときにここで申し上げたかと思うのでございますけれども、死刑の執行については慎重に判断をしなければならない、もとより当然のことでございます。

 したがって、今後どうするかということについては差し控えさせていただきますけれども、具体的な案件に沿って、やはり死刑の執行やむなしという判断をした場合には、当然その決定をちゅうちょすることはできない、こういうふうに考えて、今回もそのような決定をさせていただきました。

 今後の問題については今ここで申し上げるわけにはまいりませんので、最初に申し上げた見解を今改めて御披露させていただく次第でございます。

橘(秀)委員 どうもありがとうございました。

 私としては、加害者の人権をより必要以上に強調されるような形ではなくて、やはり遺族の方々、被害者の方の思いというのを体現していただきたいと思っております。

 それでは、法案の審議の方、質疑の方に移っていきたいと思います。

 今回の改正案については、既に昨年十一月、十二月と、参議院先議で、法務委員会で論点が出し尽くされるほど出ていると思いますので、参議院での審議を踏まえて、それを深める形で御答弁をいただければと思っております。

 まず、大臣が今言われましたとおり、法改正で二つのことの実現を目指す。一つには、刑の一部の執行猶予制度を実現すること、それから二番目に、保護観察の特別遵守事項の類型に社会貢献活動を加えることでございます。

 社会貢献活動については、昨年十一月二十四日の参議院側の法務委員会で、青沼保護局長が、活動内容として、公共の場所での清掃活動や落書き消し、二点目に福祉施設における介護の補助の活動、三番目に公園の緑化活動といったものが考えられるという御答弁でしたが、十一月からですから既に数カ月が経過をして、その後、試行の過程でさまざまなものを考えていると答弁されておられましたが、試行、先行実施の中身または成果について、ひとつお答えをいただきたいということ。

 それから二点目に、さきの十一月の参議院の答弁で言われた三つ以外で新たに加えられたようなもの、これについてお答えいただければと存じます。

青沼政府参考人 お答えいたします。

 法改正を見据えて、平成二十三年度から、全国の保護観察所において、現行法の枠組みの中で社会貢献活動の先行実施をしているところでございます。これまでに延べ六百人以上の保護観察対象者がこの活動に参加している現状でございます。

 委員御指摘の活動場所等について、その後の展開ということだと思いますけれども、例えば違法広告物の撤去、あるいは動物園での飼育補助、使用済み切手の整理といった新たな活動もこれに加えて実施しております。

 今後、法施行までの準備期間により幅広い種類の活動内容を試行するなどして、社会貢献活動によって期待される処遇効果が得られるよう、工夫を凝らした活動内容を検討してまいりたい、こういうふうに考えております。

橘(秀)委員 ありがとうございました。

 前に言われておりました公共の場所での清掃活動ということで、ちょっと諸外国の事例を見てみましたら、シンガポールでおもしろい事例があって、裁判所が矯正仕事命令というのを出す。コレクティブ・ワーク・オーダーという英語だそうなんですが、略してCWO。このTシャツを着て、犯罪を犯した人が公園とか団地で清掃する。要は、私はごみを捨てましたとTシャツに書かれたものを着てやるようなことが行われているということでありました。

 ここまでになると、今度はやられる方の人権の問題もあると思いますので、芸能人の方で麻薬の犯罪が昨今あったり、そうしたことに非常に配慮されながらお進めいただきますことを御要望いたします。

 それから次に、今回の二つの法律の改正によって保護司さんの仕事の量に与える影響、そのことについて谷副大臣に御答弁いただきたいと存じます。

谷副大臣 今御指摘いただきました件についてお答えいたします。

 今回の社会貢献活動において、特に保護司の方々に対して、その活動の場所あるいは活動の実施の内容等について、大変御協力をいただくということになります。

 また一方では、保護観察対象者の増加が見込まれる、こういうふうなことも懸念をされますので、そういう中で、保護司の方々に対する指導協力というものは大変重要なことになってくるというふうに思います。

 法務省としましては、当面、二つのことを考えておりまして、一つは、保護観察官に対する指導の強化、そして、もう一つは、保護司の方々に対するより一層の御協力ということになるわけですが、特に、保護観察官が実施している薬物事犯者に対する専門的処遇プログラム、これを充実させるということは大事だと思います。

 また、従来の保護司の皆さん方が受けている研修内容を、より体系的な、あるいはこの動きに即応した効果的な内容にしていかなければいけない、このように考えております。そして、保護司の方々に過度な御負担がかからないように、保護司活動に対する支援の充実を一層取り組んでいきたい、このように考えております。

橘(秀)委員 ありがとうございました。

 そこで、私、地元の選挙区で、保護司会の皆さんに直接、現場の声ということで、今回の質疑に先立ってあちこちでお伺いしてきたんですが、率直な感想というのは、もう大変な状況にあるということであります。非常勤の国家公務員ということであるんですが、実質ボランティアでされている。特に、財政の状況についてはかなり厳しい、持ち出しも含めてたくさんあるということを伺ってきました。

 そこで、保護観察制度の改善と保護司会の財政基盤の強化についてということでお伺いしていきたいんですが、参議院側でも魚住裕一郎先生の質問がございました。

 冒頭お伺いしたいのは、平成二十四年度予算における保護司実費弁償金の総額と、あと、一人当たりどの程度になっているのか、そのことについてお伺いしたいと思います。

青沼政府参考人 お答えいたします。

 平成二十四年度の予算におきましては、保護司実費弁償金の額は、合計で約四十九億一千四百万円を計上しております。一人当たりということになりますと、それを約四万八千人で割った数字ということになりますので、それで御容赦いただきたいと思います。

橘(秀)委員 この実費弁償金なんですが、実は、平成十九年度の数字を見ると五十九億五千四百七十二万二千円ということで、五年ないし六年で十億円減ってしまっている状況にあります。少年事件の減少等々、いろいろな要因はあると思うんですが、それにしてもちょっと減り幅も多いということを今思っている次第であります。(発言する者あり)おっしゃるとおりです。

 それから、保護司会活動の分担費についてもお伺いいたします。

 これは逆に、平成十九年度、保護司会一カ所平均約二十万円であったのが、平均約七十万円、一億七千六百万円から六億一千万円までふえている。ただし、この間、地方財政の悪化に伴って、地方の市とか自治体からの保護司会に対しての補助が大きく減って、全体としては大きく減ってしまっている状況にあるということ。

 保護司制度の基盤整備に関する検討会の報告書を読ませていただきましたら、平成二十二年度、五十地区の抽出調査で、保護司定数一人当たり約五万四千円という額になっています。内訳として、保護司会の会費の収入が一万円、国から保護司会活動分担経費が一万二千円、地方公共団体からが一万二千円、寄附金収入が一万一千円ということで、これは平成十九年に比して一万三千円も減額になってしまっています。

 何か、寄附金とかいろいろな会費にしても保護司さん御自身がお金を大分入れているような状況にあったり、あと、保護司会の財政状況について、現状をどのようにお考えかをお聞かせください。

青沼政府参考人 お答えいたします。

 まず、委員御指摘の、前半部分の十億程度弁償金が減っているのではないのかというふうなお話がありましたけれども、これについては、主に少年事件を初めとする保護事件件数の減少によるものでございまして、単価を下げたりといったようなことはしておりません。

 それから、各保護司会の財政状況についてでございますけれども、私の方で平成二十二年度に全国から五十地区の保護司会を抽出して調査したことがありましたので、それについて若干御紹介させていただきますと、調査対象となった保護司会の平均収入額、平均支出額はともに約四百万円でございました。内訳を見ますと、保護司からの会費が一九%、国からの保護司組織活動援助費でございますが、これが二三%、それから地方公共団体等からの補助金、助成金などが二一%、それから寄附金が約二〇%でございました。

 委員御指摘のとおり、実は、この寄附金というのも、ほとんどは保護司の方の寄附金でございまして、会費及び寄附金を含めるとかなり、相当額を保護司会の収入を保護司さんに頼っているというのが現状でございまして、この点については、地方公共団体の補助金、助成金の減少に伴って国の負担をふやすというふうな努力をしているというのが今の現状でございます。

橘(秀)委員 それから、地元でいただいた御要望の中で多かったのが、実費弁償の制度、これは今、事後精算という形になっております。簡単に言うと、現状では立てかえ払いをしているということ、ここでまず負担が大きくなっていることと、その会計処理の事務も非常に煩雑であるということ。要望として、私の方も、こうした方がいいんじゃないかと思うのは、あらかじめ、事前に支給する制度にできないものかどうかということであります。

 いわゆる予決令、予算決算及び会計令の五十七条、五十八条の規定があるとは思うんですが、これに関して、何とか検討することはできないでしょうか。

青沼政府参考人 委員御指摘の点については、所管が異なりますので私の口からは何とも申し上げられませんけれども、御指摘の要望があるということは真摯に受けとめております。

 法務省といたしましては、保護司の皆様の御負担を考慮して、活動後速やかに実費弁償金を支給するよう、より一層迅速な会計事務に努めるといったことで対処をしていきたいというふうに考えております。

橘(秀)委員 ありがとうございます。

 財務省さんの方の所管になるんですが、予算決算及び会計令五十七条では、前金払いのできる経費の指定、各号で指定をしてあって、それが保護司さんの事例では当たらないということ。五十八条で、概算払いができる経費の指定とあるんですが、これも当たらないということなんでありますが、五十八条の第一号には旅費というのもあって、八キロ以内の移動なら千百円とかいろいろな規定があると伺ってはいるんですが、やはり、事前精算の形、財務省さんの方と協議をするなり、ちょっと入れ込むようなこともまた要望させていただきたいと思います。

 それから次に、事務局機能の強化ということで御質問いたします。

 保護司制度の基盤整備に関する検討会報告書の中で、「現状と課題」の三点目に「保護司組織の脆弱な基盤」ということ、この対策、方向性のところに「「更生保護サポートセンター」の設置拡充」という欄がございます。

 おととし七月に保護司さんの自宅が対象者に放火され、全焼するという本当に痛ましい事件がありました。法務省さんの方も、これできちんと、物損の場合の最大二千万円の補償制度を創設されたり、非常に努力をされていると思います。加えて、この更生保護サポートセンターについて、昨年までが五十五カ所で、今年度予算で百カ所増加させる予定と予算をつけていただいているんですが、最新の整備状況についてお伺いいたします。

青沼政府参考人 委員御指摘のとおり、今年度中にさらに百カ所を増設し、全国で合計百五十五カ所になる予定でございまして、本年新たに設置予定の百カ所のうち、本年八月一日現在で七十一カ所が既に開所しておりまして、その余についても開所準備を今しているところでございます。

橘(秀)委員 ありがとうございます。

 この更生保護サポートセンターの整備について、本当に一生懸命やっていただいていることに感謝申し上げたいと存じます。

 ただし、またちょっと問題がございまして、保護司会さんの方でお話を伺う中で、そもそも保護司会長さんは保護司会の行事で月に十四から十五日間拘束をされているということ、さらに、ほとんどが保護司会事務に従事をされている。

 平成十六年の調査では、地方公共団体の職員さんが事務に当たられている例が一八・二%、それから、社会福祉協議会の職員さんが当たられているのが五・六%、それ以外の四分の三、約七五%については保護司さんたちが御自分で事務をされているという現状を伺いました。

 そこで、この更生保護サポートセンターは、すばらしいと思うんですが、新たなサポートセンターの設置場所を見つけてくるのも保護司さんたちが自分たちでされているということであります。サポートセンターを新たにつくるためにまた保護司会の中に新たなチームをつくって探すということで、またこれが大変になってしまっているということであります。つまり、保護司さんたちの負担を減らすためのサポートセンター、サポートするためのサポートセンターをつくるのにサポートが今足りないんじゃないかということであります。逆に現場に負担をふやしてしまっている実態があるということ。

 サポートセンターをつくっていくためには、法務省さんの方でよりきちんとサポートをされる必要があると思いますが、この点、いかがでしょうか。

谷副大臣 今、橘委員御指摘の点は、大変重要な要望ということで私どもも受けとめております。

 現在の取り組みを三点だけちょっと申し上げたいと思いますが、一つは、法務省としては、総務大臣と法務大臣の連名で、毎年全国の都道府県知事宛てに社会を明るくする運動に対する協力の要請などもいたしております。

 それから二つ目でございますが、保護観察所の長が地方公共団体の長のもとに出向きまして、保護司活動の重要性というものを御理解いただきながら、今御指摘いただきましたような更生保護サポートセンターの設置場所の確保について、強く依頼、要望をしているという現状にございます。

 それから三つ目は、全国の保護司会長に対するアンケート活動などをしまして、そういった御要望を具体的にお受けしたり、あるいはそういうものを受けて、効果的な連携方法はどうすべきか、こういうことについても今取り組みをしているところでございます。

 いずれにしましても、この問題は非常に重要な問題でございますので、私どもはより一層、総務省を初めとする関係省庁との積極的な協議をするとともに、ここのところを強調しなければいけませんが、保護司会任せにすることなく、しっかり取り組みをしていきたい、このように考えております。

橘(秀)委員 ありがとうございました。

 昨年の十一月二十四日、中村哲治議員の御質問に対しての当時の大臣政務官であられました谷副大臣の御答弁が、保護司会に任せるんじゃなくて、保護観察所としてしっかり保護司会をサポートしていく、地方公共団体との連携、二つのことを言われておられました。一層御努力をお願いしたいと思っております。

 それから、今年度の予算で保護観察官の増員も図られるということ。保護司さんたちのサポートのためにも、またこの保護観察官についてもより一層ふやしていくことをお願いしたいと思っております。

 それから、サポートセンターができたにしても、現状、一カ所当たりの助成額が、企画調整保護司さんの経費というところ以外は、通信運搬費として一カ所年間わずかに十万円しかつかないということ、ここもちょっとまた持ち出しとか負担になることが予想されます。ここで、一層予算の拡充を含めてお願いをしたいと思っております。

 そこで、問いですが、来年度の予算編成、概算基準をどのようにしていくおつもりか、大臣から、意気込みも含めて御答弁いただければと存じます。

滝国務大臣 サポートセンターの年間資金が十万円というのは、前から私も地元でたびたび聞かされている話でございます。要するに、資金面も保護司さんにお願いをする、そんなことでようやく保護司さんの活動ができ上がってきたというのが実態だろう思います。しかし、国の事業としてお願いしているのに、実際の活動費もままならないということであっては申しわけない話でございます。

 大変厳しい中でございますけれども、まだ来年度の予算基準というのは、合っているようで少しずれ込んでいますから、その中で再点検をしながら、少しでも御不満を解消できるような予算要求ができればというふうに思っております。

橘(秀)委員 大変ありがとうございました。

 心強い御答弁をいただきましたので、また保護司さんたちにかわってお願いを申し上げます。

 それでは、もう一つ、最後にちょっと御提言申し上げたいのは、世の中、保護司さんたちは一体何をされているのかというのを知らないという方が本当に多いと思います。広報についても、例えば、家庭裁判所の仕事というのも私は全く知らなかったんですが、中学生とか子供のころに「家栽の人」という漫画を見たり映画を見たりして、ああ、こういうことをされているのかということを知ったところもありますので、何かもうちょっと広報で、例えば漫画であったりドラマや映画の作成だったり、そうしたところで工夫をして、より世の中に知らしめて、寄附金がふえるような、そういう仕組みもまた御検討いただければということを御提言申し上げたいと思います。

 それでは最後に、今回の法改正の対象でもあります薬物犯罪対策についてお伺いいたします。

 覚せい剤取締法違反の検挙人員、かつて、戦後すぐの時代に五万人以上いたときから漸次減ってきたとはいえ、昭和三十二年から昭和四十四年までは、ほとんど検挙される方がいなくなった時期がございました。これに対して、減る傾向にあるとはいえ、覚せい剤取締法違反検挙人員、平成二十二年度で一万二千二百人。それから、大麻取締法や麻薬取締法違反などの検挙人員が、二千三百六十七人、これは二十一年から減ったとはいえ、多くなる傾向にございます。この薬物犯罪の現状認識についてどうお考えになるか。

 それから二点目は、今回の法改正のインパクト、どのようによい影響が与えられるのか。

 それから、薬物犯罪については厳しく取り締まりすべしという意見も多々ございます。東南アジアや中国と比べて、特に密輸関係は非常に甘いんじゃないかということも言われる中であります。

 法律については厚生労働省さんの所管になると思うんですが、運用面で厳しくすべきという御意見もございます。現在、覚せい剤取締法違反の方では、実刑が五九・七%、執行猶予が四〇・三%と、執行猶予の判決が出る傾向が強くなっていると思いますが、この点について、また御所見を大臣からお伺いしたいと思います。

滝国務大臣 今委員から、覚醒剤の件数が横ばいというか、その横ばいの中でも多少上がりぎみだという御指摘がございました。確かに、覚醒剤は、最近では昭和五十年代の終わりがピークで、それからぼちぼち下がってきたということで、今、そういう中では、上がったり下がったりというか、依然として低い状況、まだ完全に下がり切っていないと言った方がいいのかもしれません。そういう状況でございます。

 それに対して、大麻の方は、これはもうウナギ登りに上がり続けているというのが実態でございますから、覚醒剤だけで安心していられないのでございまして、大麻の方は依然として上昇。

 やはり、そういうようなことをにらんだ再犯防止政策を進めなければいけないというふうに理解をいたしております。

橘(秀)委員 ありがとうございました。

 あとは、何か身近なところですぐ若者の手に入ってしまう脱法ドラッグ、禁止薬物と成分がほとんど変わらない、微妙に変わるだけで、これがなかなか抜け道になっている。大分規制を強化していただいている中でもあるんですが、これも関係省庁とまた御協議いただいて取り締まり等をお願いしたいと思います。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

鉢呂委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時六分散会


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