衆議院

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第2号 平成25年3月15日(金曜日)

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平成二十五年三月十五日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 石田 真敏君

   理事 江崎 鐵磨君 理事 奥野 信亮君

   理事 土屋 正忠君 理事 ふくだ峰之君

   理事 若宮 健嗣君 理事 田嶋  要君

   理事 西田  譲君 理事 遠山 清彦君

      安藤  裕君    池田 道孝君

      小田原 潔君    大見  正君

      勝沼 栄明君    門  博文君

      神山 佐市君    菅家 一郎君

      木内  均君    黄川田仁志君

      小島 敏文君    古賀  篤君

      今野 智博君    末吉 光徳君

      橋本 英教君    鳩山 邦夫君

      林田  彪君    三ッ林裕巳君

      宮澤 博行君    盛山 正仁君

      枝野 幸男君    階   猛君

      辻元 清美君    今井 雅人君

      西根 由佳君    西村 眞悟君

      大口 善徳君    椎名  毅君

      照屋 寛徳君

    …………………………………

   法務大臣         谷垣 禎一君

   法務副大臣        後藤 茂之君

   法務大臣政務官      盛山 正仁君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          小川 秀樹君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    深山 卓也君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    稲田 伸夫君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    西田  博君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    齊藤 雄彦君

   政府参考人

   (公安調査庁長官)    尾崎 道明君

   政府参考人

   (国税庁課税部長)    藤田 利彦君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           常盤  豊君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房年金管理審議官)       高倉 信行君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           神田 裕二君

   法務委員会専門員     岡本  修君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十五日

 辞任         補欠選任

  小田原 潔君     木内  均君

  門  博文君     勝沼 栄明君

  小島 敏文君     橋本 英教君

同日

 辞任         補欠選任

  勝沼 栄明君     門  博文君

  木内  均君     小田原 潔君

  橋本 英教君     小島 敏文君

同日

 辞任

  照屋 寛徳君

同日

            補欠選任

             辻元 清美君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

石田委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として法務省大臣官房司法法制部長小川秀樹君、法務省民事局長深山卓也君、法務省刑事局長稲田伸夫君、法務省矯正局長西田博君、法務省保護局長齊藤雄彦君、公安調査庁長官尾崎道明君、国税庁課税部長藤田利彦君、文部科学省大臣官房審議官常盤豊君、厚生労働省大臣官房年金管理審議官高倉信行君及び厚生労働省大臣官房審議官神田裕二君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

石田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。ふくだ峰之君。

ふくだ委員 皆さん、おはようございます。きょうはよろしくお願い申し上げます。

 それでは、始めさせていただきたいと思います。

 まず、個人保証の問題についてお伺いしたいと思っております。

 明治二十九年に民法が制定されて以来、本格的な見直しがなされないまま今日に来ているのではなかろうかと思います。社会が大きく変化をする中で、商取引も大きな変化を当然来しています。

 安倍総理が本会議でも、世界でナンバーワンの国を目指すと述べていますように、やはり経済の分野においても、もう一度日本はナンバーワンを目指していく、そして、企業経営がやりやすい、あるいはチャレンジ精神を持って新たなビジネスに取り組んでいく、そんな気概のあふれた世界ナンバーワンの国にしていくということのためにも、経済の根幹をなす民法の債権関係の部分というものを大きく見直しをしていくということは非常に重要なことではないかなというふうに思っております。

 そこで、まず、債権関係に関する民法の改正に関する見直しをなぜ今行っていく必要があるのかということをお伺いしたいと思います。

谷垣国務大臣 今、ふくだ委員がおっしゃいましたように、民法の債権法に関する部分、法制審議会でいろいろ議論していただいております。

 それで、今なぜ債権法の部分を改正するかというのは、二つ理由がございます。

 一つは、今委員がおっしゃったように、明治二十九年に制定をされまして、百数十年間、根本的な変革はこの部分では行われておりません。いろいろ取引状況の、あるいは経済社会、市民社会の状況も変化がございましたので、それに対応したものにしていこうというのが一つでございます。

 それからもう一つ、いろいろな実務で膨大な判例が集積されております。条文を見ただけでは、その判例理論によって、変遷というとちょっと言葉が違うかもしれませんが、現状の法の実情というのはなかなかうかがわれないところがある。したがいまして、この間に蓄積されました判例理論を条文の中に取り入れまして、法文を読んだだけで一般の市民の方にも、なるほど、日本の民法、債権法というのはこうなっているんだというものにしていきたい。この二つの目的がございます。

ふくだ委員 判例を読んでもわからないということになりますと、当然これは専門家じゃなければわからないということになってしまいますし、きょうのメーンテーマであります中小零細、小規模零細、こうした企業には法務担当とかいう方がいるわけではありませんし、大概、社長みずからが全てを担当するといいますか、それが現況でありますから、やはりわかりやすいということは本当に重要ではないかなというふうに思います。

 一方で、きょうは経済の側面を中心にお伺いしたいと思っておりますけれども、この戦後の日本を焼け野原の中から世界第二位の経済大国までまさしく成長させたのは、私たち自由民主党が自負することだというふうに思います。その中で、大企業もあるいは中小零細企業も、それぞれの役割というものをこの間果たしてきたんだろうというふうに思います。

 特に、多くの中小の零細企業は、大企業のある意味での下請だったりパートナーだったりして、中には大変厳しい時代もあったわけですから、そうした中でも、吸収弁としての機能も有しておりましたし、あるいは、高度な技術の部品を提供することによって、大企業が成長していく、あるいは海外に展開していく、そうしたところに随分と力を注いできたのではないかなというふうに思っております。

 景気がよい時代は、こうした大企業が規模を大きくする、海外に展開する、この企業の成長とともに中小零細企業も一緒になって成長してきたんだろうと思いますけれども、逆に、昨今になって、景気が鈍化をしてくることによって、いろいろなところで話を聞いても、仕事量が減って大変だという声ばかりが聞こえてきています。これからアベノミクスで、そういう状況は何年かすれば間違いなく改善されると当然思っておりますけれども、まだまだ地元の小さな会社にまでは及んでいないというのが現況ではないかと思います。

 こうした中で、私たち自由民主党の中小企業、零細企業に対する今までの政策というものが本当に正しかったのか、そこに何か有効的なものがあったのかということを振り返ってみると、実は、中小企業政策を何かやったというよりも、単に、大企業が成長していくことによって、それにある種寄り添っていたことによって、そして中小企業も栄えてきたのではないかなと思われる節が多分にあるのではないかなというふうに思っております。

 そこで、中小企業といっても、きょうは経産の委員会ではないですけれども、俗に中小企業と言われても、実はこの中には大きなものもあれば、町場でやっているものと、本当に規模がさまざまなんですね。これは、中小企業と言われて、特に経産や中小企業庁が対応しているのは、中小企業は俗に四百万社ぐらいあると言われているんですけれども、このうちの大体五十万社ぐらい、例えば海外展開できるだとか、あるいはさまざまな技術革新の補助金を入れて何かをチャレンジできるというのは、規模的に言っても大体五十万社ぐらいじゃないかと言われています。

 この中小企業庁も、あるいはこれに基づく中小企業支援機構も、いろいろな政策メニューを挙げて、何とか下支えをしようというふうに言っていますけれども、いろいろ中を見てみると、大体この五十万社向けのものが非常に多いんです。では、逆に言えば、残りの三百五十万社の本当に規模の小さい会社、でも、従業員、雇用も半分ぐらい支えていたり、経済に占める割合も、ここが輩出をしているものも非常に多いんです。

 そこで、この小さな、特に小規模零細企業、従業員も少なくて、ある意味では家族経営でやっているところも非常に多いわけですけれども、果たしてこれらの企業群に対して私たちが何が貢献できるんだろう、どんな施策が打てるんだろうということを考えた上で、実は今回、質問をつくらせていただいたんです。

 その中で、現在、先ほど大臣がおっしゃっていましたように、法制審議会の民法部会というものの中でさまざまな議論がなされていると思うんですが、まず、この部会のメンバーですけれども、どのような人たちがいるのか教えていただきたいと思います。

谷垣国務大臣 委員の問題意識、中小企業、中小零細企業に応えられるような政治あるいは立法を行っていこう、大変大事な視点だと思います。

 民法そのものは、市民社会の中の民事部分、一番基本的な法律ですから、個人から大企業に至るまで、皆一般原則として適用させなければならない。したがって、すぐに中小企業に即応するというわけにはいかない面もございます。ただ、今これを議論していくには、中小企業の方々にもやはり使いやすい、一番自分たちのインフラがここにあるなと思っていただかなきゃいけないんだと思うんですね。

 そこで、その制定を議論している法制審のメンバーですが、私が学生のころというのはもう数十年も前のころですが、そのころは旧帝国大学や名門私立の偉い法律の先生ばかりで成り立っておりました。

 今回、私が一覧表を誰々と、ずらずらお名前を挙げるのは差し控えますが、拝見させていただきますと、そういう法学研究者あるいは実務法曹家だけではなくて、経済界、金融界、労働界、中小企業もどこまで零細のお声を十分、本当に小さな零細企業というのは必ずしもいらっしゃるわけではありませんが、中小企業金融等々にも造詣の深い方、そういう方にも入っていただいておりまして、幅広い意見が吸収できる構成になっている、このように考えておりますし、また、そういう観点から御議論もいただきたいと思っております。

ふくだ委員 私も、この部会のメンバーのリストを見させていただいているんですけれども、今大臣も御答弁がありましたように、昔に比べると、入られている方々も大分いろいろな方々が確かに入られています。

 これを実際に見てみますと、それでもやはり中心は行政の関係の方だとか、あるいは大学の先生方とか弁護士の方とか、あくまで法制審ですから、いわゆる経済産業省の審議会とは違いますので、当然法律の専門家がたくさんいらっしゃって、その観点から議論がなされるということは重要なことだと思います。

 一方で、これはいわゆる債権関係の見直しでありますので、経済界からも委員が実際入られていまして、このメンバーを見させていただくと、例えば千疋屋さんの社長さんだとか東京ガスの総務部の法務室長さんだとか、あるいは三井銀行の法務部長さんだとか、いわゆるそういう民間の経済人の方々も確かに入られているんですね。

 少しだけ残念なのは、例えば、当然これは推薦母体があるわけですから、話を聞きますと、経団連の方々に御推挙いただいた方だとか日本商工会議所に御推挙いただいた方、あるいは全国銀行協会から御推挙いただいた方とか、こうした方で、それぞれの方々は立派な方でありますけれども、やはり規模感的に言うと、大きな規模の経営者の、経営というか会社の方々が多いのかなというのが私の実感でも実はあります。

 確かに、先ほど言いましたように、直接的な経済政策の議論をここで行っていくわけではないので、その意味では、小規模の零細企業の代表者までお声をかけて、どうだということは現実的ではないのかなということだと思います。

 でも、先ほど大臣もおっしゃいましたように、民法であり債権法の部分というのは、イコール直接ではないけれども、やはり企業人が社会の中で企業を営むという部分においては、本当に、追っていったらどこにたどり着くのという、多分ここに最後はたどり着くんじゃないかなというふうに思うんですね。

 その意味においては、やはりメンバーではなくても、こうした小規模零細企業の方々から何かしらの意見聴取をして、実際この中の議論に生かしていくということは重要な視点ではなかろうかなというふうに思っています。

 そこで、この法制審の部会で、審議にこうした小規模零細企業の意見を何か議論の中で反映をさせていく仕組みであったりとか、あるいは、もう何回か議論を積み重ねておられるでしょうから、その中でこんな形で実は意見も聞いているんだよというようなことがあれば教えていただきたいと思います。

谷垣国務大臣 この間、二月、中間試案が取りまとめられたところなんですが、今後、パブリックコメントに付すことにしておりまして、そこに小規模零細企業を含めたさまざまな方からできるだけ御意見を出していただいたのを受けとめたい、こう期待しているわけです。

 こういう基本法中の基本法でございますから、一般の方からすると、ややわかりづらいところもあるのではないかと思います。ですから、パブリックコメントに付するとき、できるだけわかりやすい説明といいますか、内容についてわかりやすい補足説明をしながらパブリックコメントに付していく、そういう工夫もできる限りしなければいけないと思っております。

 それから、それと同時に、これはこれからもやりますし、今までも積み重ねてまいりましたが、いろいろな分野の方々、団体であったり、いろいろな業種の方々との、必ずしも規模の大きくない小規模な意見交換会というのを、相当今までも積み重ねてまいりました。これからもそれは意図してやらせていただいて、委員の御関心のいろいろな問題点ができるだけ吸収できるように努力をしたい、このように考えております。

ふくだ委員 今大臣に御答弁いただきましたように、多くのパブリックコメントというのは、皆さんいろいろなところで見られていると思うんですけれども、本気で意見を聞きたいなと思っているパブリックコメントと、とりあえずパブリックコメントをやらないと世間から許されないからパブリックコメントをやりましたと、質問とかやり方を見ると、これは本当に明らかなんだと思うんですね。

 今大臣に御答弁いただきましたように、民法を変えるというのは本当に百年単位の話であるし、今回、多分またこれでいつか成案ができて、最終的な議論になるんでしょうけれども、またこれが決まると、当然これは、しょっちゅうしょっちゅう、毎年変えるだとか、三年後に見直しをしましょうとか、そういう類の法律ではないと思いますので、このパブリックコメントは、本当に意見を出しやすい形で、出しやすい環境の中で、そして、わかりやすい形の中で聞けるような体制をぜひお願いしたいなというふうに思います。

 そういう中で、やはり規模が小さい会社というのは、当然、いいところもあれば悪いところもあるんだと思うんですけれども、企業の経営に占める、いわゆるお金の融通というか、お金を借りたりとか支払ったりとか、そういうお金を取り巻く仕事の割合というのは、やはり大きいんだと思うんですね。

 それは、人がそれぞれの専門分野に分かれていないものですから、特定の人がたくさんやらなければならないので、お金の融通に関する割合というのは、話を聞きますと、やはり多いと聞くんですね。それは金融機関との交渉とかいろいろなことがあるんだと思うんですけれども。これはやはり、社内に法務部長とか経理部長だとか何とかとか、いないということが全ての前提になっているんだろうけれども、社長みずからがあっちへ行って、こっちへ行って、全部やっているというのが実態なんじゃないかなというふうに思います。

 私たちは、これで自民党政権に政権が戻って、まさしくこれからアベノミクスで成長戦略をとって新たな経済をつくろう、あるいは規制改革を行って、既存のマーケットだけれども、新しくビジネス分野をつくっていこうとか、いろいろなことをこれからやらなければいけないし、現実問題、起こってくると思うんですね。それは大きな会社だけではなくて、中小零細に至ってまで、やはりいろいろなビジネスチャンスが広がってこなければいけないし、来るんだろうというふうに思います。

 そうすると、当然、新たなチャレンジをしようと思うと、例えば、現金を持っていなければ、当然持っていないので、設備資金を借りたりとか、あるいは運転資金を新たに借りたりだとか、そうしたことを用立てないとチャンスに乗っていけないという側面というものがあるんじゃないかなと思うんですね。あるいは一方では、現在では景気がよくないから、会社の経営において運転資金が今至急に必要だという場合もあるんだというふうに思います。

 その際、現況では、一般的には金融機関から融資を受けてビジネスをやっているわけですけれども、企業が融資をしてくれというと、必ず個人保証を求められるというのが圧倒的なケースであります。

 そこで、企業が資金を借りるための制度ということについてちょっと伺いたいと思うんですが、まず、この保証制度は、今、現状の社会の中でどのような機能を有しているのかということを伺いたいと思います。

谷垣国務大臣 企業活動、経済活動をしていく場合に、どうやって必要な資金を調達していくか、これは基本的な問題だろうと思います。

 それで、自分の資産、信用だけでお金を借りられる人は、それでオーケーなんですね。ただ、自分の資産、信用だけではお金が借りられない、担保に提供するような不動産も十分に持っていない、そういうことになると、どなたかに保証人になってもらって、それで自分の信用を補って資金を調達する、こういう道がやはり開かれている必要があるだろうということで、こういう制度が現在存在しているのだと思います。

ふくだ委員 お金を借りるというのは、補助金じゃないので、当然、これは返すということが前提でありますし、貸す側も、やはり返してもらうということを前提として制度が成り立つんだと思うんですね。そのために、今大臣おっしゃいましたように、本当に返せるのかどうかわからないから、土地の担保だったり、だめだから、さらに、さっきの第三者の保証だったりということは、当然そういうロジックでつながっていくんだと思います。

 でも、これは本来、考えてみれば、企業に対する融資というのは、個人保証、特に第三者に行ってまでの、そうしたもので融資をされるというよりも、そもそも論で言えば、ある企業があって、そして、そこにはこれからやろうという商売に対する事業計画が当然あって、あるいは経営者の人柄だとか能力だとか、あるいは市場の有望性だとか、本来、そうした中で、金融のプロがよく言われますように、この社長だったら多分大丈夫だろう、担保が多少足りないかもしれないけれども、社長にかけてみようみたいな、そういうトータルな事業を判断し、経営者としての資質を判断して融資をされるというのが私はそもそも論なんじゃないかなというふうに思うんですね。

 でも、現況としては、経営者本人だけじゃなくて、今大臣に御答弁いただきましたように、家族だとか友人、知人、親戚、そういうところまで保証が求められるケースというのはやはり多いですし、これは果たしていいのかどうかという議論はありますけれども、私は、やはりここには少し問題があるんじゃないかというふうに思っています。

 逆に言えば、金融機関に、事業とか市場の有望性だとか、そうしたトータルなことで、結局、この会社に融資をしようとか、そういうことを判断できる人材が不足をしているんじゃないかなとある意味では思っています。

 これは昔、私のおじいさん、祖母とかに話を聞くと、昔も確かに個人保証というのはあったけれども、でも、営業の銀行マンが事業計画だとかそうしたことで判断をして貸してくれたケースも昔はよくあったんだと聞くんですね。

 だけれども、それは時代とともにやはり変わってきてしまったのかもしれませんけれども、今ではもう個人保証というのが当たり前になっていて、それが多分大前提という社会に今はなっているんじゃないかなと思うんですね。そうすると、やはりここにいろいろな問題点が出てきてしまうんじゃないかなというふうに思っています。

 そこで、先ほど大臣がおっしゃっていたようなプラス面の保証制度のところもあると思うんですけれども、一方で弊害というものもあるんじゃないかなというふうに思うんですが、弊害としてはどんな問題が、こうした法制審等を含めて、指摘がなされているのかを教えていただきたいと思います。

谷垣国務大臣 確かに、おっしゃるように、この問題は民法の制度だけではなくて、全体の金融システムあるいは金融機関のいろいろなノウハウとか、そういうようなものによって、あるいは、さらに政策金融というようなものもあるかと思いますが、そういうものも相またないと全体的なものがつかめないだろうと思います。

 しかし、余り話を広げてしまいますと議論が進みませんので、この保証制度に関しますと、私も、実は子供のころは、お年寄りが、保証人になってくれといっても、そういう判こだけはつくなとか言っているのを聞いたことがございます。しかし、さりとて、信用の足らない方に信用をどうやって補完していくかということは、これは何かなきゃいけない。

 今、弊害として起きますことは、一つは、頼まれると、やはり義理のあったりする人に頼まれると嫌とは言えない、怖いなと思いながら判こをついてしまって、案の定、うまくいかなくなって自分が支払わなきゃならなくなっちゃったとか、あるいは、実際、よく保証の意味がわからずに、ああ、わかった、こう判こをついてしまってとんでもないことになった。こういうような事例が、つまり、余り個人保証というものが、蔓延というと言葉は悪いでしょうが、利用されるがためにそういう弊害が起こっているという指摘はございますし、それは事実だろうと私も思っております。

ふくだ委員 これは経営者本人は、当然、その個人を保証するという部分においては、会社を存続させようと思えば金融機関の申し出に対して多分どんなことでものむんだと思うんですね。じゃないと、お金が借りられない、会社がおかしくなるということでありますし、今大臣御指摘ありましたように、第三者の話になると、これはやはり日本人特有のものというか、東北の震災で、きずなで、日本人というのは本当にお互いさまだと思って、いい国じゃないかと世界でも評価されていることの部分のマイナス面とすれば、人間関係がある人に頼まれるとなかなか嫌とは言えない。これが日本人のいいところのプラスマイナス面だと思うんです。

 かく言う私も、保証人になってくれと言われたことも当然あるわけです。でも、私、保証人になってくれと言われたときにも、政治家なんて、いつどうなるかわからないのが保証人なんかなれるわけないだろうと言って、それで相手も、確かにそれはそうだなと言って納得してもらったというのがあるんですけれども、これはなかなか人間関係は難しいですね。言われると、やはりどうしても、わかったということになるでしょうし、あるいは奥さんとか子供とか親族に至っては、もう全くノーと言える状態にはないんだというふうに思うんですね。

 その結果、今おっしゃいましたように、よければいいけれども、だめなときは一歩間違うと第三者まで全てを失ってしまうということが往々にして出てくる、悲惨な運命が待っているということもあるんだというふうに思います。

 そもそもこれは、ちょっと話がずれますけれども、大体こういうのは、今個人の会社というのはほとんど少ないですから、株式会社だったり、いわゆるそういう法人でやっている経営が多いと思うんですけれども、株式会社というのは会社法で規定をされているものであって、本来、例えば株式会社というのは有限責任というものが前提となって仕組みが動いていると思うんですけれども、これは大臣に聞くのもちょっと変かなと思うんですが、株式会社の形態で事業を行うことのメリットみたいなものをどんなふうに捉えられているかをちょっと教えていただきたいなというふうに思います。

深山政府参考人 今御指摘のありました株式会社形態で事業を行うことのメリットですが、まさに委員もお触れになったとおりですけれども、株式会社制度では、出資者である株主は、会社に出資する義務を負う以外は会社債務について責任を負いません。したがいまして、この制度を利用して事業するメリットというのは、株主有限責任の仕組みによって出資に伴うリスクを限定することにあるというふうに思います。

ふくだ委員 まさしくそれがメリットなんだと思うんですね。これは会社法の話で民法とは違うとはいえども、同じ法体系の中で、あくまで有限な責任の中で、というのは、全てを失ってしまう、身ぐるみ剥がれてしまうということになりますと、当然これは再起不能状態になってしまうということになりかねないので、やはり、あくまで、企業をやっていく、その取り巻く環境というのは有限責任ということが基本になっているんじゃないかなと思うんですね。でも、実際は、特に規模が小さくなればなるほど、このメリットというのが余り現実問題としては生かされていないんじゃないかなというふうに思っています。

 そうしますと、経営者は、やはり再チャレンジができると思えば新たなチャレンジということができると思うんですけれども、再チャレンジできないと思った瞬間に、チャレンジする心を当然失ってしまうんじゃないかなと思うんですね。逆に、金融機関、お金を貸す立場からすると、個人保証がないからいいかげんな経営をするんじゃないかとか、本来企業の所有物を個人に移しかえる人が出てくるんじゃないかとか、あるいは、全てを失うかもしれないという覚悟があるから経営を一生懸命やるんだから責任を負わせた方がいいとか、多分、それぞれの見る側から見ると、いろいろな立場によって、見る角度によって、解釈はやはり異なるんだと思うんですね。

 こうした中で、今、メリットであるはずの株式会社の形態で事業を行っていても、結局、現実には、出資者でもある経営者が、先ほど言ったように個人の保証みたいなものを、あるいは第三者も含めて負って、結果的に無限責任に近いことになってしまうという例があるんですけれども、これはなぜ、こういう株式会社である有限責任の本来の形なのに、一般論ですけれども、経営者が保証を求められてしまうのか、大臣、もし所感があったらお答えいただきたいと思います。

谷垣国務大臣 私も余り金を貸す立場になったことがありませんので、十分行き届いた御答弁になるかどうかわかりませんが、今、ふくだ委員が触れられたように、有限責任が原則なんですが、中小零細の場合には、必ずしも個人の資産と企業の資産といいますか信用というようなものが十分切り離されていないとか、あるいは、いろいろな会計書類等が不備であるという、現実にそうかどうかは別として、そういう理由のもとに、やはり何らかの信用の補完がないと難しいねというようなことで、こういうふうになってきているのではないかなと思います。

ふくだ委員 確かに、規模が小さくなればなるほどごっちゃになっているケースもありますし、あるいは、それをきっちりと区分している、政治もそうですよね。いわゆる政治の金と個人の金を区分する。昔はごっちゃになっているみたいな話もあったけれども、今はもう、ほとんど政治家は区分をされていますし、こうした区分をされている小さな会社もたくさんあるんですね。

 もしも、それでも経営者に保証を求めるということであると、例えば、これは疑問に湧いてくる、よく中小零細企業の経営者の方々から言われるんですけれども、だったら何で上場企業の経営者は個人保証を求められないのか。確かに、聞いてみると、いわゆる上場会社の人が個人の保証を求められたなんという話は聞いたこともありませんし、例えば名立たる会社が経営破綻しても、経営者が身ぐるみ剥がされて路頭に迷ったなんという話は、はっきり言って聞いたこともないですね、いろいろな再生のやり方とかが最近生み出されているということもあるんでしょうけれども。

 ですから、小さい規模の会社にしてみると、何でちっちゃな会社だけが、例えばそうした書類の区分や何かもきっちりやっているとすると、なぜこうした個人保証という話になっていくのか、もしそれがお金を貸すための大前提のルールだというんだったら、上場会社の経営者も保証を負わせればいいじゃないか、何でこれは違うんだということを、やはり規模の小さな経営者の方々はおっしゃるんです。これは結局、その後ろ側にあるのは、失敗したときに身ぐるみ剥がされて再チャレンジできないということをある種心配しているというところじゃないかなというふうに思うんですね。

 この中で、今回、法制審議会の部会で、第三者を含めた保証ということに対する被害の実態みたいなものも、当然、議論の中で掌握されていると思うんですけれども、この実態について教えていただきたいというふうに思います。

谷垣国務大臣 法制審議会で、中間的な論点整理、これは一昨年の四月十二日にまとめたものなんですが、このときにパブリックコメントをやりました。そのときに個人保証の実態に関する意見というのも相当寄せていただきまして、そういうのを拝見いたしますと、結局、個人保証制度のあり方を検討するには十分参考にしなきゃいけないんですが、小規模零細事業者、企業の代表者が生活の破綻を苦に自殺をしたとか、あるいは保証人になってくれた親族や友人に迷惑をかけたことを苦に自殺をするといった事例が報告されております。そういうことも十分意識していかなきゃいけないと思いますね。

 ちょっと委員の御議論を聞きながら思い出したんですが、私、十数年前に科学技術庁長官というのをやらせていただきまして、そのときに、日本からもっとアントルプルナーといいますか、科学技術等々自分の持っている技術をもとに起業する人が生まれるにはどうしたらいいかと、アメリカ、カリフォルニアやなんかへ行っていろいろ話を聞きますと、やはり七転び八起きする体制ができなきゃいけないと。そのときに、今委員のおっしゃっているような問題意識が大いに関係してくると思いますね。

 それからもう一つ、七転び八起きして八回目に成功したときには、今まで周りの人に迷惑をかけていたようなことを償えるような、補えるような利益を生めるような手法もなきゃいかぬということを、こっちの方はきょうの主題とはちょっと違うかもしれませんが、そんなことを思い出しました。

ふくだ委員 私も、二十数年前、大学時代にベンチャービジネスのゼミで、卒論は企業の育成だったんです。そのときにも、大臣と同じように考えて、どうしたらこの日本でチャレンジャーがふえていくのかなと。私も思い出しました。

 結局、個人保証も、金融機関の方々に言わせると、いや、それは、これではお金が貸せないですよと言うと、みずからがその資金を借りるために申し出たんだということを言うんですね。これは、みずから申し出るわけないんだけれども、実際は、建前上は、みずから申し出たということになっているんです。でも、これは実際に企業を経営された方ならよくわかると思いますけれども、半分強制的なようなものですから、断ったら借りられないだけですから、これは現実問題としては非常に厳しい状況になります。

 企業の血液というのは、やはり大きかろうが小さかろうが資金、お金の流れでありますから、このお金の話をないがしろにするというわけにはいかないんだと思うんですね。

 先ほどちょっと私が申し上げましたように、約三百五十万社と言われる小規模零細企業にとって、保証制度の見直しというのは非常に高い関心事項になっています。これは多分いろいろな意味で関心が高いんだと思うんですが、中間試案において、保証制度の見直しについては具体的にはどんな検討が今なされているのか、教えていただきたいと思います。

谷垣国務大臣 今、法制審議会で議論していただいているんですが、結局のところ、今まで御指摘のあったような弊害をどう回避できるか。

 しかし、さりとて、事業資金が借りられないような状況になってしまってはこれまた全く逆効果になってしまうということもございまして、今保証の弊害として指摘されているような点を踏まえまして、事業資金の借入について、その個人保証、これは経営者が自分のリスクで借りるときは経営者が保証するのは必要だろう、またやむを得ないだろう、しかし、それ以外のものは無効とするのはどうか、こういうような御議論があります。

 しかし、まだ、もちろん、それを決め打ちでそうすると言っているわけじゃありません。そういった方向が一つあり得るのではないかというような議論がなされているということでございます。

ふくだ委員 この法制審の中間試案が新聞に出たときに、本当に一面でしたよね。各紙いろいろ出ていましたけれども、そのときに珍しく、何人かの、いわゆる地元の会社の社長さんから電話がありました。

 会社の経営者が、法制審の試案とか法律の話が記事なんかに出たときに、小さな会社の社長が反応なんか普通しないですよ、ほかの分野においては。でも、本当に何人かの社長から電話がかかってきまして、ここに反応するというのは、やはり企業の経営者にとってみたら、個人保証の問題というのは多分経営と切っても切り離せないものが内在をしているんだと思うんですね。だから逆に、それで頭を悩ましたり、いろいろなことを考えたりされているから反応して、これはどうなっているんだ、資料をくれなんという声が私のところには少なくとも来ていました。

 そうした中で、きっとこれは、何とかしてほしい、今のままじゃなくて、さらにこの法制審の見直しの中で、現況からさらにいい形に何とかしてほしいという思いがやはりあるんじゃないかなというふうに思うんですね。

 この保証制度の見直しに当たって、先ほど、繰り返しのようですけれども、企業経営者が新たなビジネスに果敢に挑戦しやすい環境を法制度の面からも整備するという観点はどうしても必要だと思いますし、実質的に、現場の金融機関、これは金融庁だったりとか経済産業省だったりとか、トータルなことは確かだけれども、でも、冷静に考えると、追っていくと、中小企業庁、金融庁の経営者の保証についての議論をやっていたときのペーパーも二月ぐらいに見せてもらったんですね、勉強会みたいなものがあったみたいでありますし。その中身を見ても、最後に結局、こうやって追いついてくるところはどこかというと、やはり民法のここの部分なんですよ。

 ですから、そうした点から、法制度の面からもビジネスに果敢にチャレンジできるような観点でこの法整備を考えるという必要があると思うんですけれども、大臣の所見をお伺いしたいと思います。

谷垣国務大臣 私も、さっきちょっと昔の思い出話を申し上げましたように、そういうチャレンジできる仕組み、民法というのは一番の基本法ですから、そういう基本法の中にもそういう精神がどこかなきゃいかぬのだろう、また、民法だけでできるものとも思いませんが、何かそういうところがなきゃいかぬと私も思います。

 まだ法制審の議論も半ばでございますが、今の委員の御指摘も十分受けとめながら作業しなければいけないと思います。

ふくだ委員 これは、もともと横浜市会議員で、地方議員も含めて政治をしばらくやっていた私自身の反省でもあるんですけれども、今まで私たちが、自民党がと言ってもいいのかもしれませんけれども、こうした小規模零細企業に寄り添って本当に政策をつくり上げてきたのかな。この個人保証の問題というのは別に今始まったことではないし、悲惨な事態というのは前からあったことであるし、でも、これは、金融政策だったりだとか中小企業政策の中では、課題はわかっていたけれども、なかなか解決できなかったということも現実だと思うんですね。

 ですから、そんな意味において、今回のこの民法改正という、ある意味、経済行為の本質の部分、先ほど大臣も御答弁いただきましたように、これは社会の中の本質の部分でありますので、やはり第三者の保証を含めて、この保証の問題というものをここで徹底的に議論をするということが、小規模零細企業の三百五十万社の経営者の方々にいい意味でいろいろなメッセージを発信していくことになるんだろうと私は思うし、そして、その期待が、日本の将来のビジネスのチャンスをつくれるという期待につながっていくんじゃないかなと思っておりますので、この法制審の行方を、私も気にしておりますけれども、ぜひ大臣も目くばせをいただけたらなというふうに思っております。

 引き続きまして、がらっと話がかわりますけれども、今度は刑務所の障害者の話をちょっとさせていただきたいと思います。

 実は私、一期生のときに、PFIの刑務所である播磨の社会復帰促進センターを視察に行ったことがございまして、あのときに、障害を持たれている受刑者の方がいろいろな訓練だったり勉強をしている風景があって、正直驚いたんです。いろいろな訓練をしているのを見て、障害のある受刑者に対する行政の意識も随分、本当に、こんなことまでやるんだ、随分よくやっているなと実は実感をしました。

 でも、一方で、障害者の方が刑務所をついの住みかとして理解をしているとすると、これは本来、本末転倒の話であって、逆に言うと、大臣の所信にも書かれていますように、再犯防止というか、刑務所に戻ってこないようにするという側面から見ても、あってはならないことではないかなと思うんですね。

 なぜそう思ったかというと、訓練されている方に、この刑務所はどうですかと言ったら、いや、ここは生きやすいんだと言われたんです。これはどういうことかなと思って、でも、よくよく考えてみると、なるほどなと思わざるを得ない部分もあるのかなと思っているんですね。

 社会の変化とともに、多分、刑務所の中にいられる方々も、いろいろな方々が、多様な方々が入ってくることになるんじゃないかなというふうに思うんですね。

 そこで、まず、現在、受刑者の方で精神の疾患を有する受刑者というのはどれぐらいの割合いるのか、教えていただきたいと思います。

盛山大臣政務官 ふくだ委員同様、私も、この一月に播磨のセンターを拝見したところでございます。私自身も、ああ、こういうことをやっているのかな、そんなふうに感じました。

 さて、委員お尋ねの件でございますけれども、新受刑者に占めます精神疾患を有される方、この割合をちょっと見てみますと、平成十四年、千五百四十八名で、全体の五・一%でございました。それが、平成二十三年には二千六百六十六人で、全体の一〇・五%、こんなふうに大きく変化しております。

ふくだ委員 今聞いていますと、十年で五%ぐらい引き上がって、現在一〇%ということですから、随分と多くの方が精神の疾患を有して刑務所にいらっしゃるということだと思うんですね。

 これは、一般の社会の中においても、何らかの障害を持たれている方というのは残念ですけれどもふえてきている実情がある中で、当然、受刑者の中にも割合が高まるというのは、これはある種、相当たやすいんだと思います。知的障害あるいは精神障害を抱えた受刑者の皆さんが社会に適応できないで、軽微な犯罪を常習者として行ってしまうと、当然これは、出ては戻って、出ては戻ってとなりかねないのかなと非常に私も心配をしております。

 そこで、こうした方々が戻ってこないように、各施設ではどんな取り組みをしているのか、お聞かせください。

盛山大臣政務官 私自身も、バリアフリーといったようなことで障害者対策に携わっているものですから、委員と同じように、最近ふえてきているこういうことに対して、どうすればいいのかなとも思っております。

 我々の刑事施設の中では、精神疾患を有される処遇者に対して、いろいろ必要な投薬その他の治療、カウンセリング、そういったことをやっております。そして、それだけではなく、社会復帰のための支援策としまして、社会福祉士などによる、出所に際しての社会復帰に向けた相談や助言、そしてその他必要な福祉サービス、出所後また福祉施設に入所させるなど、そんなことも含めて実施しているところでございます。

ふくだ委員 多様な受刑者に対応するために、随分といろいろな御努力をされていると思います。これは、職員の皆さんも、障害であれば、ある意味では障害福祉の知見だったり、あるいは高齢者であれば高齢者福祉であったり、あるいは疾患であれば医療、さまざまな知見や技能を有することがこれからも求められていくのではないかなと思うんですね。

 そこで、障害者に対応するための仕組みとして、播磨に行って見たときに特化ユニットというものがあったと思うのですが、このユニットはどこの施設でもあるんでしょうかね。あるいは、そのために、先ほどちょっと福祉とか専門の方の話もありましたけれども、どんな形で配置しているのか教えていただければと思います。

盛山大臣政務官 ふくだ委員が行かれました播磨のセンターもそうでございますし、PFIの施設、こういったところで、三つの施設について、精神疾患を有される受刑者に対する特化ユニットというものを設けております。

 PFIでございますから、民間の創意工夫も活用しながら、精神面での安定を図るあるいは症状を軽減させる目的も含めて、陶芸ですとか農作業の訓練、こんなことをやっているところでございます。

ふくだ委員 先ほど一〇%という比率でありますから、本当に、いろいろな専門の職員を配置していかないとなかなか、これから多分数字も伸びていくでしょうから、対応しづらくなっていくのではないかなと思います。

 一方で、話を聞くところによりますと、受刑者の方でも、六十五歳以上の高齢者の方も随分とふえているのではないかというふうに聞いておるんですが、この実態の数字を教えていただけますか。

盛山大臣政務官 新受刑者に占める六十五歳以上の高齢者の割合を見てみますと、平成十四年は千九十七名、全体の三・六%でございました。これが、平成二十三年には二千二十八名ということで、全体の八・〇%、こんなふうに変化しております。

ふくだ委員 今数字を聞いても、一般社会と同様に、やはり高齢化も受刑者の中で随分進んでいるんだなということを思いました。

 そうなりますと、障害者にしても高齢者にしても、一般の社会の中でももともとなかなか生活しづらい状況にある中で、釈放されて、さらに、刑務所から出てきましたと言うと、正直申し上げて、出所後の居場所だったり仕事がなかなか見つからない。見つからないとどうなるかというと、生活できないから、例えばコンビニでお弁当を盗むとか、そういう軽微な犯罪をして、再犯ですから、またリターンで戻ってきてしまうということが考えられると思うんです。

 戻らないようにするために、地域定着支援センターというものを使って、何とかそれが戻ってこないようにするという仕組みを今やられているそうですけれども、このセンターの役割をちょっと教えていただけますか。

盛山大臣政務官 委員お尋ねの件でございますが、法務省といたしましては、高齢や障害により自立が困難、あるいは出所後の住居も定まっていない刑務所の入所者につきまして、地域生活定着支援センターと連携しまして、出所後に必要な福祉サービスに結びつける特別調整の取り組みを実施しているところでございます。

 また、その成果といたしまして、平成二十三年度には、刑務所などを出所した特別調整対象者五百九名のうち二百七十四名に対し、刑務所等在所中に、福祉施設への入所等の必要な福祉的支援を確保することができております。

ふくだ委員 このセンターですけれども、多分、これは法務省の立場からしますと、特別調整という話になるんだと思うんですが、今、この結果として、二十三年の状況というものをお話ししていただいたと思うんですが、この二十三年の状況の数字も私ちょっと見させていただいたところなんですけれども、これは大分その効果というのがあったと思うんですね。

 でも、よくよく見てみますと、多分これは、例えば高齢者の方々が施設とかに入って福祉サービスを受けるだとか、いろいろな対応ができていると思うんですけれども、実は、これは数字を追っていくと、障害者というカテゴリーにおいては、この特別調整の中でもまだまだ進めていかなければならない、そういうものが残っているんじゃないかなという気がするんですね。

 障害者というのは、多分、先ほど言いましたように、これから人数もふえていくということを考えると、たしか平成二十一年からこの特別調整は始まっていると思うんですけれども、まだ何年かですから、急にそれが何か一〇〇%の機能を持ってできるというような状況にはならないのは当然でありますので、高齢者がうまくいった、では次は障害者に対しても何とか居場所、仕事、そういうものが、厚生労働省と法務省と連携して、つながっていけるような環境をぜひさらに深化させていっていただきたいなというふうに思います。

 再犯防止をするということを含めても、そういうことは重要だと思うんですけれども、再犯を防ぐという目的を遂行するに際して、これは、先ほど言いましたように、一般の受刑者もいれば、高齢者もいる、障害者もいる、同一施設にいろいろな方々がいらっしゃることによって、逆にサポートが複雑化してしまって、密度の濃いサポートというのがなかなかできなくなってしまうんじゃないかなというおそれがあると思うんですが、この点は、大臣、どんな御見解でございますか。

谷垣国務大臣 再犯をどうやって防止し、少なくしていくかということを考えますと、それぞれの受刑者の犯した犯罪といいますか、それまでの成り立ち、それまでの自己形成といいますか、そういうものに着目しながら、それに応じたプログラムをつくっていくということは極めて大事だと思うんですね。

 そういう意味で、そういうことではありますけれども、今御議論がありましたように、精神障害者のような場合、本当に治療が必要であれば医療刑務所に入れる、しかし、それほどではない、軽微なものは一般の刑務所で処遇をしているというのが今の大体の実情でございます。

 そこで、では、精神疾患のある者、あるいは、いろいろな類型によってまとめてしまうのが本当にいいのかどうかというのも実はなかなか難しいところがございます。軽度の精神障害の方なんかの場合は、むしろ、一般の人と一緒に処遇した方がよいという場合もあるように聞いております。

 そこで、今、先ほど言及されましたPFIの三施設における特化ユニット、ここはある意味では試験的な試みではあるんですが、同じ類型の人を一つのところに集めて処遇するということをやっておりまして、こういう試みといいますか、こういう手法が果たしてどういう効果を上げてくるのか、そこを十分見ながら、今の委員の問題意識にも答えられる、どういう回答が出てくるのか、私たちも、そういうところを考えながら、この処遇をやってまいりたいと思っております。

ふくだ委員 これは、先ほど言いましたように、社会がいろいろ複雑化することによって、受刑者の方々も当然いろいろな方々が入っていらっしゃると思うんですね。

 私が心配しているのは、大臣のこの所信の中にもありましたけれども、とにかく再犯させない、戻させないために何ができるかということだと思うんですね。それには、ある種では、寄り添って、戻ってこない、そのためにできることを徹底的にやるということでありますから、いろいろな方々が、高齢者の方、障害者の方、あるいは外国人の方も今ふえているでしょうから、そうした方々にどうやって対処するかと考えたときに、集めるのがいいのか、どういうことがいいのか、職員の方々の御負担もたくさんかかると思いますので、これからどんな形がいいのかをぜひ御検討いただければというふうに思います。

 以上で終わらせていただきます。

石田委員長 次に、宮澤博行君。

宮澤(博)委員 改めまして、おはようございます。静岡三区の宮澤博行と申します。本日は、大臣の所信に対する質疑をさせていただきますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 先ほど、ふくだ委員がおっしゃったとおり、内閣総理大臣の施政方針演説、私は、キーワードはやはり、世界一の日本、ここだと思うんですね。そして、法務大臣の所信表明の冒頭にも、世界一安全な国日本をつくるんだ、そう述べられておりました。ですから、世界一安全な国日本を、法それから法の支配という観点からすると、やはり犯罪をいかに少なくするか、そしてそれを支える法曹をいかに養成していくかということになるわけです。

 ですので、本日私は、ここでは、法曹養成制度の検討についてと再犯防止対策の推進について、大きくこの二項目について質疑させていただきますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 まず、法曹養成制度の検討についてであります。ここでは、司法修習生への修習資金貸与制の課題と対策について質疑をさせていただきたいんです。

 まずは、この経緯から確認させていただきますけれども、平成十三年の六月十二日に出ました司法制度改革審議会の意見書、この中では、法曹養成制度の中核として法科大学院の設置が挙げられておりました。

 これに付随して、司法試験それから司法修習というところにも言及されていたんですけれども、司法修習については、給費制のあり方を検討すべきであるという文言が書かれています。つまり、司法修習生に対して給料、お金を差し上げていたのを、貸与制、つまり貸し出すという制度に変えるということがここから検討が始まったわけなんですけれども、結局、平成十六年の裁判所法の改正によって貸与制が導入されて、平成二十二年の十一月に施行された。それ以来、もう二年余りがたっているわけです。

 この間に、私の方にも実は現場からいろいろな声が届いております。実際、法曹になるには、大学に行って、法科大学院に行かなくちゃいけない。学費、これはやはり奨学金を得る人が多いんですね。これは、イコール借金なんです。そして、司法試験に受かって司法修習生になって、司法修習資金が貸与制になったということは、これまた借金。結局、トータルで一千万円ぐらいの借金ができるというのもよく言われる額なんです。ですので、法と正義のために一生懸命頑張りたいと思っている若者たちが、実はゼロからの出発ではなく、マイナスからの出発になってしまっているというのが現実です。

 こういうことがどういう問題を引き起こしているかというと、一点目は人材の問題です。志ある、能力のある優秀な人材が経済的な理由で断念してしまう。結局、裕福な家庭の方しか法曹になれないとなると、それが本当に弱者を守るための司法だろうかという問題が起こってしまうんです。

 もう一つは、具体的な業務に関してなんです。弁護士さんの数がふえてきました。そうすると、若者、就職難、弁護士さんも実は就職難がある、そして経営難もあるわけなんです。実は、年間所得が七十万円以下という弁護士さんが、平成二十年には二千六百六十一人いたんです。ところが、平成二十二年には五千八百十八人にふえてしまった。正義を守るという大義名分よりも、お金になるための仕事をしかねないというような状況なんです。ですので、貸与制に移行したのが本当に適切だったのかどうかは、これは考え直さなければならない時期に来ていると考えられます。

 ですので、まず一点目に聞きたいんです。貸与制による修習生のこの窮状、現状、これを認識していらっしゃるのかどうなのか、そしてこれに対する問題意識をお持ちなのかどうなのか、まずはこの点についてお聞きしたいと思います。

後藤副大臣 宮澤先生にお答えをいたしたいと思いますけれども、経緯については今先生のおっしゃったとおりで、そういうような経緯で、今、法曹養成のあり方そのものについての検討が進んでおります。

 そうした中で、以前の給費制から貸与制に移行したことによりまして、司法修習をしている方たちの生活、あるいはその後の返済等について、さまざまな議論があるということについては承知しております。

宮澤(博)委員 ありがとうございました。

 実は、人材が集まりにくくなるのではないのか、業務がお金目当てになるのではないかという問題だけではなく、別の現実も実は私は報告を受けておりまして、これは、貸与を受けるその修習資金の社会保険上の扱いと税法上の扱いについても、ちょっと問題があるやに聞いております。

 どういうことかというと、ある若者が大学へ行った、法科大学院へ行った、このときにはやはり保護者のお父さんの扶養に入っていたわけです。ところが、司法試験に通って司法修習生になって、資金の貸与を受けるようになったら、お父さんの会社から、社会保険の扶養から外れてくれ、国民健康保険へ移ってくれ、そういうふうに言われたようなんです。貸与ですからね、所得じゃないんです。それなのにどうして保険の上でこういうふうに扱われなければならないのかというのは、これはもう一度確認した方がいいと思われます。

 さらに、税法上のことについて。今申し上げたのは保険の話なんです。税法上は、これは貸与ですから、所得じゃないわけですから、この貸与された修習資金がまさか所得税の課税対象にはなっていないと思われますけれども、その点について確認させていただきたいですし、所得税の控除対象とされている扶養親族が、修習資金の貸与を受けたときに控除対象の扶養親族に該当しなくなるということはないとは思いますけれども、その点についても確認をさせていただきたいと思います。

藤田政府参考人 お答え申し上げます。

 一般論として申し上げますけれども、金銭の貸し付けを受けた場合で、その貸し付けを受けた金銭について返済することとされているときは、その金銭につきましては所得税法上の所得には該当しませんことから、所得税の課税対象とはなりません。

 それから、次に御質問がございました扶養控除の関係ですけれども、先ほど申しましたように、金銭の貸し付けを受けた場合で、その貸し付けを受けた金銭について返済することとされております場合には、所得税法上の所得に該当しませんことから、金銭の貸し付けを受けたことをもって所得税法上の扶養控除の適用がなくなることはありません。

 いずれにしても、国税当局としては、個々の事実関係に基づき、法令等に照らして適正に取り扱うこととなります。

神田政府参考人 健康保険についてのお尋ねでございますけれども、健康保険では、被扶養者の判断基準を、主としてその被保険者により生計を維持するものというふうにされております。

 司法修習生が修習資金の貸与を受けた場合、月額二十三万円の貸与を受けるということになります。この場合、主としてその親である被保険者によって生計を維持するものというふうには言いがたいことから、健康保険の被扶養者ではなく、基本的に国民健康保険に加入する取り扱いというふうになってございます。

高倉政府参考人 年金保険の取り扱いについてお答え申し上げます。

 年金制度におきましては、親に扶養されておられる方という場合には、御自身がお勤めで被用者年金の被保険者になっている場合は別ですけれども、そうでない場合には、二十になった時点で国民年金の第一号の被保険者となります。その方が、現在、先生お尋ねの貸与制に基づく貸与を受けられた場合におきましても、これは引き続き国民年金の第一号被保険者であることには変わりはない、そういう取り扱いにしておるところでございます。

宮澤(博)委員 ありがとうございました。

 税法の話も、社会保険上の話も、理屈としては確かにわかります。でも、この司法修習資金の貸与を受ける側からすると、借りているんだから、どうしてそういうふうな扱いになっちゃうのという疑問はやはり出てくるわけなんですよね。そうすると、この貸与制そのものが制度として適切かどうかということをやはり考え直さなければならない、そこにまで話が来るわけです。

 実際、給費制の復活を検討するということは今なされているのかどうなのか、それについて御答弁いただけますでしょうか。

後藤副大臣 宮澤先生にお答えを申し上げます。

 貸与制、先ほど経緯の御説明がありましたけれども、これは、もともとつくりましたときに、給費制のもとでの給与額との連続性にも考慮しまして、基本額が月額二十三万円というふうに定められておりまして、扶養家族や住居賃借の事情がある場合等には、最大で月額二十八万円という額になっております。

 平成二十三年に採用されてからこの制度になっているわけでありますけれども、一応、額としては司法修習生が修習に専念できる額にはなっているのではないかというふうに考えておりますけれども、先ほどから先生が御指摘のような、司法修習生に対して適切な経済的支援を行わなければならないという重要な御指摘については、認識をしっかりとしているところでございます。

 そして、今、具体的にお尋ねがありました。実際に給費制の復活について検討することはあるのか、そういう御質問についてでありますけれども、平成十六年の裁判所法の改正によりまして、経済的支援につきましても、司法制度改革の一環として、従来の給費制をいわゆる貸与制に変えたわけでございます。そして、平成二十三年には、法曹の養成に関するフォーラムというものを政府内につくりまして、この貸与制に関しまして、貸与された修習資金についての経済的な困難を理由とする返還猶予措置を講ずべきだとか、そういうような指摘を受けまして、同措置を講ずるための裁判所法の改正案も提出してきているというところでございます。

 そして、現在は、そうした措置に加えまして、法曹養成検討会議におきまして、司法修習生に対する経済的支援のあり方について、貸費制導入の趣旨及び法曹の養成に関するフォーラムのこれまでの検討等も踏まえながら、裁判所法の改正の趣旨も踏まえて検討を行っている、そういう状況でございます。

宮澤(博)委員 ありがとうございました。

 司法修習生が修習に専念できるような額ということ、確かにそれはわかります。ですけれども、今の若者、結構経済的に敏感なところがありまして、将来はどうなんだろうというところを見ながら就職先、自分の将来を決定している、そういう傾向があります。ですので、借金を負うのか、それだったらやめておこうか、また司法修習生も、交通費や滞在費を自分で出さなきゃいけない、それが司法修習資金として貸与制になるとなると、実は、修習に専念しづらい、行くべきところに行くのにお金がかかるんだったらその研修やめちゃおうかとか、そういうことも思っているようなんです。

 また、別の観点からすると、お医者さんのインターン制度、これは、この司法修習生の給費制を見習って、今の研修もしくはそのインターン生に対する給料が出たという経緯もあったらしいものですから、やはりこれは、先ほど返還猶予という話も出ましたが、給費制の復活も大いにこの俎上にのせるべきだと考えられますが、いま一度、いかがでしょうか。

後藤副大臣 先ほども申し上げましたように、今、法曹養成検討の会議におきまして、そうしたことも含めていろいろな角度から、新しい、有能で質の高い法曹をどうやって育てていくのか、一方で、制度としての例えば医師を育てる制度、あるいは一方で、ほかの公認会計士だとかいろいろな諸制度もございますが、そういうもの等、いろいろな制度を参考にしながら今議論をしているところでございます。

宮澤(博)委員 ありがとうございました。

 いろいろな制度との整合性で検討されるとおっしゃいましたが、この検討のときに大きく立ちはだかってくるのが実は財政負担、合理的な財政負担という言葉が貸与制導入の趣旨の中にもあって、新たな財政負担を伴う司法制度改革を進める上では、合理的な財政負担を図る必要があるというふうにされてしまっていたんです。つまり、法科大学院にお金がかかる、法テラスにお金がかかる、だったら、上げていた給与制ではなく、貸してあげる貸与制に変えるべきだという、ここからスタートしたやに私も聞いております。

 ですので、法と正義を守る法曹、この養成が本当にこれでいいのかというのはやはり考え直さなければなりません。お金じゃないところに価値があるんじゃないのかというところを、私たち政治に携わる者はいま一度考え直さなくちゃいけないと思うんです。

 実際、平成十年代の中ごろは、司法修習生の手当の予算は六十五億円から七十五億円ぐらいでした。合格者数が倍になったり修習期間が短縮されたりして、今に換算すると、一概には言えないかもしれませんけれども、近いところでいうと、やはり八十九億円から九十六億円、手当と貸与の実績があるわけです。

 では、その一方、平成十六年から二十二年の間で、法科大学院に対する財政支援は七十一億円から九十九億円、もしくは、その同じ時期、法テラスの運営費は、最初百十億円だったのが三百十一億円に上がっているわけです。

 この現実から見たときに、この貸与に関する、手当に関する六十三億円―七十五億円、八十九億円―九十六億円、これを削ってバランスをとるというその合理的な感覚が本当に適切なのかどうかというところまで踏み込まないと、この議論は適切な制度を生むことができないんじゃないかと思われます。

 この合理的な財政負担についてはどのようにお考えなのか、お聞きしたいと思います。

後藤副大臣 御指摘のとおりで、貸与制が導入された当時、その貸与制の導入の趣旨として言われていたことの一つとしては、司法制度改革において、新たな法曹養成制度の整備や、法テラス、日本司法支援センターの創設等、新たな財政負担を伴う司法制度改革の諸施策を進めるために、限りある財政資金をより効率的に活用するという観点から、司法制度全体に対して合理的な負担をやはりそれなりに求めていく必要があるという観点からこれが導入された、それが一つの説明であったことは事実でございます。

 先ほどから申し上げているように、この制度を検討するに当たっては、現在、司法修習生に対する経済的支援のあり方とかそういう問題について、法曹養成検討会議において検討しているところでございまして、この貸与制度の導入の趣旨のことについても十分に検討するべきだというふうに思っております。

 財政以外の理由として、例えば、貸与制導入の趣旨として議論されているのは、ほかに、公務員ではなく、公務に従事していない者に対して国が給与を支給するというのは、現行法上は非常に異例な問題である、そういうような議論も一方ではあるところでございます。

宮澤(博)委員 それでは、法曹養成制度の検討についての最後に、ちょっと大きいお話をさせていただきたいなと思うんですけれども、司法制度改革審議会の意見書の一つの柱としてこの法曹養成制度改革があったわけです。二十一世紀の司法を支えるにふさわしい、質、量ともに豊かな法曹の養成。大臣の所信表明の中にも、「質、量ともに豊かな法曹」、確かにございました。

 日本は、国際社会においては、通商国家であり科学技術立国として、確かにこれから司法の人材というものを育てていかなくちゃいけませんけれども、逆に、社会生活の関係においては、法律で社会の安定を求めるというのが今後適切なのかどうかという、そこの国家のつくり方、社会のつくり方まで目を向けていかないと、この制度改革というものは実を見ないのではないかと思われてしようがないんです。

 つまり、平成十三年の意見書ですよね。今、東日本大震災を経て、きずなということが注目されている。つまり、法律じゃないところで社会を安定させることに日本の価値があるんだ、そこに目を向けているわけです。

 その中で、若い弁護士が就職難であるとかお金のための仕事をしかねないとなると、質、量ともに豊かな法曹というものはむしろ二律背反であって、量がふえれば質が下がってしまう、そういうようなことも十分考えられます。

 ですので、法曹養成制度の改革の理念が適切に実現されようとしているのか、この質、量ともに豊かな法曹の養成というのは本当に現実的な命題なのか、これについてはどのようにお考えになっていらっしゃるでしょうか。

後藤副大臣 質、量ともに豊かな法曹の養成を行うことによって、社会の隅々まで法の支配が行き渡るようなそういう国で、社会の中で法律が守られ、また人権が守られ、そういう社会をつくるということが司法制度改革の目標でもありますし、今委員が御指摘されたような社会のきずな、そういう我々の民族や社会の温かさやあるいは人間関係というものと相まって、そういう制度的な担保をしていくということが絶対に必要であるというふうに思っておりますし、そのために司法制度改革は進めてまいっておりますし、そのためのいろいろな、さまざまな制度についての検討を進めている。

 法曹養成制度については、法曹養成制度検討会議において、そういう司法制度改革の方向性という全体の中で検討しているということでございますので、できるのかという質問に対しては、やらねばならないというふうに思っておりますので、委員のお言葉を大変な励ましと思って、しっかりやらせていただきたいと思います。

宮澤(博)委員 御答弁ありがとうございました。ぜひとも、若い弁護士さんたち、法曹の皆さんたちの励みになるような制度改革をお願いしたいと思います。

 大きい二点目の質疑に移ります。

 時間の関係がありますので、一括で質疑させていただきたいですが、よろしいでしょうか。

 私の近くにも保護司さんがいらっしゃいます。大臣の所信表明の中にも、再犯防止対策の推進、これが掲げられておりました。保護司さん、保護観察対象者を地域でケアする方というわけなんですが、この私の近くの保護司さんも職務と使命にすごく誇りを持っています。でも、今のままの状態ではだめなんだ、とにかく、もっと保護司の仕事、使命というものを社会に訴えて、保護司さんが能力を向上させて、そして保護観察対象者のために、そして社会の犯罪減少のためにやっていかなくちゃいけないということを強く思っていらっしゃいます。

 ですので、大臣が挙げられた再犯防止対策の推進、その中に、保護司、協力雇用主への支援の充実強化と入っておりましたので、ぜひここに力を注がれますよう御期待申し上げたいと思います。

 まず一点目、この保護司さんや協力雇用主さんへの支援の充実強化の具体策についてお聞きしたいと思います。

 そして二点目、私が把握している保護司さんの諸課題について、どのように対応策を考えているのかお聞きしたいと思います。

 広報活動、資格それから研修活動、拠点づくり、さらには人材確保、この四点について聞きたいんです。

 広報活動については、その私の近所の保護司さんが言っていたんですが、社会への広報活動を通じて職務の内容やその崇高さをみんなにわかってもらわなくちゃいけない。それだけじゃなく、保護司さん相互の中において使命というものを再確認するチャンスになるんだというふうに考えているんですね。

 それから、資格、研修について。資格については、確かに保護司法第三条に書かれておりますが、やはり保護観察の対象の方との人間関係を通じて社会復帰をやっていくわけですから、カウンセリング能力というものが非常に必要になってくるわけなんです。このカウンセリング技術の習得を進めるとか、能力の向上を図れるような環境をつくるとか、そういうふうにしていかないと、ただ会っているだけ、ただやっているだけではやはりだめなんです。実のある制度にしていくために、どのようなことを考えられているのか。

 そして、三点目の拠点づくりなんですけれども、更生保護サポートセンターが増設されるということを聞きました。平成二十四年度まで百五十五カ所だったものが、平成二十五年度は九十カ所ふえる、運営経費も百三十万円だったものが二百万円までふやしていただける。この保護司さんの活動を支援するために、更生保護サポートセンターはこの数でいいんでしょうか。少なくとも法務局の数と同じぐらいにして連携をとれるようにしなくちゃいけませんし、できれば市町村ごとに置くべきだと私は考えるんです。それについてはいかがでしょう。(発言する者あり)ありがとうございます。

 四点目、人材確保です。この保護司さん、結構御高齢になっていらっしゃる。私も市会議員をやっておりましたけれども、実は、民生委員さんとか福祉委員さんなんかは、市町村がちゃんと地域の人材を見て、次の方を補充してくるわけなんです。この人材確保、やはり市町村と連携をとらないといけません。法務局であっても、やはり数が少ないから市民との距離がある。だから、この市町村との連携強化を働きかけるにはどうしたらいいのか。この市町村との連携が地域ごとでばらつきがあるように見えますけれども、それについての対策はどうなのか。

 以上、お聞きしたいと思いますので、よろしくお願いします。

齊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 まず最初に、協力雇用主の方々への支援でございますが、法務省は、平成十八年度から、厚生労働省と連携いたしまして、刑務所出所者等総合的就労支援対策というものを実施してございます。

 その中で、協力雇用主さんに関しましては、例えばトライアル雇用制度、これは、試行的に刑務所出所者の方を雇用していただいた場合、最大三カ月間、月額四万円の奨励金をお支払いするという制度でございます。

 それから、身元保証制度というものもございます。これは、雇われた者が、業務上、雇用主さんに対して損害を与えた場合、一定額を限度として補償する制度でございまして、法務省は、その身元保証を行う事業者に対して支払うべき保証料を助成する事業に対して補助金を交付しているということでございます。

 いずれにいたしましても、刑務所出所者等の雇用に対して非常に御理解のある協力雇用主の方々のもとでの就労の拡大というのが非常に大切でございますので、平成二十五年度の予算案につきましては、例えば職場定着協力者謝金といったようなもので、いろいろ指導していただいたり、それから働く状況などについて報告書等を出していただいて、それに対して謝金を出すといったようなものも要求させていただいているということでございます。

 今後とも、協力雇用主の方々のもとで、雇用を拡大するため、これらの取り組みを着実に実施してまいりたいと思っております。

 それから、保護司さんの関係でございますが、まず広報、これは非常に大切でございます。保護司さんには、保護観察対象者に対する指導監督、補導援護、さらに犯罪予防活動という重要な仕事をしていただいておりまして、この意義について広報することは、保護司活動を一層スムーズにするものであり、また、やりがいを醸成するものと思っております。

 法務省では、毎年七月を強調期間としております社会を明るくする運動の中で、各種講演等におきまして保護司活動の意義等を広報しているところでございます。

 また、現在、保護観察所の幹部職員などが自治体や関係機関等を回りまして、保護司の仕事の意義を改めて御説明し、一層の協力を求めるなどのことをやっているということでございます。

 また、保護局内に、昨年十一月、保護司さんに関する広報も含めた広報を強化するためのPTをつくりまして、今、これに関して力を入れているところでございまして、今後とも、保護司活動の意義について広報に努めてまいりたいと思っております。

 さらに、保護司さんのカウンセリング技術等の向上等のお話がございました。人と接する仕事で難しい仕事でありまして、そういう技術を身につけていただくことは非常に大切なことと思っております。

 現在、保護司さんに対しましては、例えば初任研修、それから、年次が進むにつれて、その年次ごとの研修等を保護観察所において実施させていただいておりますし、さらに、地域の状況なども踏まえまして、年四回程度、保護観察官が赴きまして地域研修などもさせていただいております。また、保護司さんの自主研修のための教材などもつくらせていただいているということでございます。

 今後とも、保護司の方々の要望も踏まえつつ、保護司の活動に必要な知識、技能を習得できる研修や、研修資料の内容の充実を図っていこうというふうに思っております。

 それから、サポートセンターのお話が出ました。これは非常に、保護司さん方からもたくさんふやしてくれという要望を頂戴しております。おかげをもちまして、二十年度から整備を始めましたサポートセンター、先ほどお話がありましたように、今、百五十五カ所設置できました。また、二十五年度予算におきましては、新たに九十カ所の設置の経費を計上させていただいておりまして、合計で二百四十五カ所を設置するということの予定をしております。

 このように、更生保護サポートセンターの増設に努めてきたところでもございますが、今後とも、保護司の方々の活動の負担を軽減するとともに、意欲的に活動に取り組んでいただけるよう、保護司活動に対する一層の支援に取り組んでまいりたいというふうに思っているところでございます。

 それから、地方自治体との連携をさらに強化すべきであるというお話を承りました。保護司の人員、減少傾向にございます。そういうことで、適任者の確保という観点からも、市町村等自治体との連携が不可欠でございます。

 法務省では、保護司会に保護司候補者検討協議会というものを設置しておりまして、市町村など自治体の関係者の方々などにも入っていただきまして、保護司適任者に関する情報を提供していただくといったような仕組みの整備を今進めているところでございます。

 また、保護司会と地方公共団体の連携強化を図るために、社会を明るくする運動におきましては、総務大臣と法務大臣で連名で、毎年都道府県の知事さんに対しまして協力依頼の文書を発出いたしまして、この運動への参画を促すことにより、地方公共団体の保護司活動に対する御理解、御協力を求めているところでございます。

 また、昨年十月には、当局から全国の市町村長宛てに、保護司活動に対する御理解とか御支援をお願いしたいという文書を発出させていただきました。現在、保護観察所の所長等幹部が各自治体を回りまして、保護司活動に対する御理解、御支援、よろしくお願いしますということで、お願いに回っているところでございます。

 法務省といたしましても、保護司会と地方公共団体の連携強化が進むよう、今後とも積極的な取り組みに努めてまいりたいと思います。

 以上でございます。

石田委員長 質疑時間が終了いたしております。

宮澤(博)委員 ありがとうございました。

石田委員長 次に、遠山清彦君。

遠山委員 谷垣大臣、後藤副大臣、盛山政務官、改めて御就任おめでとうございます。

 特に、谷垣大臣につきましては、自民党総裁や財務大臣初め数々の要職を歴任されておりまして、そのような谷垣大臣を法務省に迎えたということは大変喜ばしいことだというふうに思っております。心から御活躍を期待申し上げます。

 また、私も、若輩、非力でございますが、本年から公明党の法務部会長を任命されました。また、私、後ろに座っております鳩山法務大臣のときでございますけれども、参議院の時代に一年間、法務委員長をさせていただきまして、法曹界出身ではございませんけれども、法務行政の重要性については理解をしているつもりでございます。しっかり与党の法務部会長の立場でまた法務行政を支えてまいりたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 きょうは、まず、朝から同僚委員からも御質問が続いておりますが、大臣の所信にもありましたとおり、世界一安全な国日本の構築というのがやはり政府の、特に法務省の大きな課題でありまして、私もその柱は再犯防止対策だというふうに思っております。

 もう大臣重々御承知のとおり、犯罪白書や法務省の資料で示されておりますとおり、犯罪者の約三割が再犯者でございます。この三割の犯罪者によって、日本で起こっている犯罪の六割が、正確には五七%という数字でございますが、惹起をしているということでございます。

 再犯者の数を減らすということが大きな課題であるということがわかるわけでございますが、私は、この対策で一番大事なキーワードは、やはり住まいとそれから雇用、この二つだというふうに思っております。

 その証拠ではありませんけれども、法務省の資料におきましても、刑務所を出所したときに適当な帰住先、帰る場所があった人となかった人を比べますと、刑務所を出たときに適当な帰る場所がなかった人の約六割が出所してから一年未満に再犯をしているという数字が出ております。また、職につきましては、保護観察中に職がなかった人の再犯率、これは職があった人の約五倍ということでございますから、刑務所を出所した後に再犯に走るか否かという問題と、出所した後に住まいと雇用があったかなかったかという問題は、高い相関関係にあるということがわかっているわけでございます。

 そこで、まず最初の質問になりますけれども、法務省の資料では、まず刑務所を出所する人の約半数が満期釈放者である、そのさらに満期釈放者のうち約半数が適当な帰住先、帰る場所、住まいがないということになっております。

 そこで、質問を二つに分けたいと思いますが、一つは、満期釈放者のうち半数の人が出所しても行くところがない、この人数、大体何人ぐらいの方が帰る場所がないのか。それから、法務省として、では、刑務所を出た後に行き先がない人たちに対して、どうやって住まいを確保していくかということについて、どういう対策をとってきたのか、また、特に来年度以降、どのような新たな対策をとろうとされているのか。その点について御説明をいただきたいと思います。

谷垣国務大臣 遠山委員から過分のお言葉をいただきまして、大変恐縮に存じております。

 大臣所信でも申し上げましたように、法務行政、本当に大事な分野でございます。全力を挙げて取り組みたいと思いますし、また、遠山委員におかれましては、与党公明党の法務部会長として、またいろいろ御指導、お教えを賜りたいと思っております。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 その上で、今のお話のとおり、再犯防止のためには、もう一回施設を出ていったときにやはり居場所がなければいけない、おっしゃるとおりでございます。

 そこで、今、まずおっしゃいました、平成二十三年度ですが、刑事施設から出所した者の総数は二万八千五百八十三名でございます。そのうち、満期釈放された者は、ほぼ半数の一万三千九百三十八名でございます。この満期釈放者のうち、六千六百十七名、約半数でございますが、出所時に、親族であるとか知人であるとか、あるいは雇用主、あるいは更生保護施設等々といった適当な帰住先、帰るところがないというのが実態でございます。

 そこで、こういう適当な帰住先のない満期釈放者について今まで何をしていたかということでありますが、その方たちから更生緊急保護の申し出がございますと、そういうときは、それに基づきまして、更生保護施設がございますから、そこに宿泊、保護等々の委託を行うということをやってきたわけであります。

 それから、平成二十三年度からは、緊急的住居確保・自立支援対策という名のもとに、NPO法人等への委託を実施するということをやってきております。

 今後とも、関係省庁だけではなくて、特に、やはりこの場合は民間団体等の御協力を得るということは極めて大事でございますので、そういう民間団体とも緊密に連携しながら、満期釈放者についても適当な帰住先を確保していく、これに大いに努めたいと思っております。

遠山委員 ありがとうございます。

 今、大臣みずから数字を言っていただきましたが、六千六百十七名の方が帰住先がないと。そうすると、先ほど私が出した数字でいうと、帰る先がなかった人の約六割が一年未満に再犯しているということを考えますと、六千六百人の六割ですから約四千人近い方が一年未満にまた犯罪を犯してしまう可能性がある、これは法務省のデータ上、そうなっているわけですね。

 だから、ここの数を減らしていけば、日本で起こっている犯罪全体の数を減らすことが一番効率よくできるという認識を、我々国会で、また政府で共有をして、対策の強化をしていかなければならないと思います。

 その上で、次に、就労の問題を伺いたいと思います。

 これはもう大臣御承知のとおり、刑務所の出所者は、本人の資質や前歴の問題もありますし、また、基礎学力の欠如、あるいは資格を一切持っていないということがございまして、よい就労先の確保というのはなかなか難しいんですけれども、法務省として、この問題にどのように取り組み、成果を上げていくのか。まず、大臣の御決意を伺いたいと思います。

谷垣国務大臣 先ほど遠山委員がおっしゃったように、保護観察中に無職であった者の再犯率、これは有職者の五倍あるというのが現状でございます。ですから、刑務所出所者等の職をどう確保していくかというのは、これは再犯防止や安全な社会をつくっていくためには極めて大事であることはもう申すまでもございません。

 この点は、行政でいえば、厚生労働省との連携がまず必要でございまして、平成十八年度から実施しております刑務所出所者等総合的就労支援対策、ちょっと舌をかむような名前でございますが、これによりまして、これまで約一万二千七百人が就労するに至っているわけです。

 このほか、就労確保に向けた取り組みとしては、刑事施設への就労支援スタッフというものをやはりある程度きちっとしておかなきゃいかぬということがございます。

 それから、雇用情勢の動向とかニーズを無視してやっていても仕方がありませんので、そういうものを踏まえた職業訓練を充実させていくというようなこと。

 それから、雇用促進のため、やはりこれも民間のお力をかりなきゃいけないという典型的な例ですが、協力雇用主に行政としていかなる支援をしながら雇用に御協力いただき、雇っていただけるかということも非常に重要な点でございます。

 それから、民間のノウハウを生かして、就職活動支援から職場定着支援まで継続的にきめ細やかに行う、寄り添い型と言っておりますが、そういう寄り添い型の支援である更生保護就労支援モデル事業というのを今推進しているところでございます。

 これも、先ほどの帰住先と同じように、行政の連携だけでできるものではありません。民間のお力をいかにかりて、民間に助けていただき、協力しながらやっていくかということに意を用いてまいりたいと思っております。

遠山委員 大臣、大変丁寧な御答弁、ありがとうございます。

 実は、今大臣の答弁の中にも出てまいりました協力雇用主の皆さん、この協力雇用主というのは、改めて確認をしますけれども、犯罪や非行をした人の前歴にこだわらずに積極的に雇用していただいて、その更生、立ち直りに協力する民間の企業の事業主の皆さんのことでございます。

 実は私、地元の一つが福岡でございまして、福岡の地元の協力雇用主の皆さんと大変深い交流がございます。皆さん、やはり社会貢献の一環として、出所者等あるいは非行少年少女を雇うというのはさまざまなリスクがあるわけですけれども、それを承知の上で立ち直りに協力するということで雇用していただいているわけです。

 きょうお配りした資料の一をちょっと見ていただきたいと思います。野口義弘さんという方の日経新聞に載ったインタビュー記事でございますが、この野口さんという方は、福岡県連合協力雇用主会の会長さんでございます。私、常に御指導いただいておりまして、この方は、北九州市内で御自身が経営する三カ所のガソリンスタンドで、約十七年間にわたって、もう既にことしでは累計約百人の非行少年少女を中心に雇用していただきまして、立ち直り支援活動をしてきております。

 インタビュー記事は後ほど読んでいただければいいんですが、ちょっとこの記事の下の方、上から五段目ぐらいのところを見ていただきたいんですが、野口さんの発言として、「面接にきた子ども」これは非行少年少女のことですが、「は必ず雇うようにしています。せっかくこれから立ち直ろうとしているときに、面接で断ってはそこでまた「やっぱりおれなんて」となってしまう。それでは意味がないですから。先入観を持たずに接したいので犯罪歴や補導歴も自分から話してくれるまで聞きません」。

 そして、その後のインタビュー項目で、そういう方々を雇っておりますといろいろな事件があります。ここに書かれているのは、十七歳の少年を雇ったら金庫のお金を盗んだと。そこで彼は何と言っているかといいますと、「もちろん最初は腹が立ちました。でも生まれながらに悪い人間なんていません。居場所がない寂しさから非行に走る子も多い。そこで誰かが手を差し伸べないと本当の悪人になってしまう。この人は自分が困ったときに助けてくれる人だと気づけば、その瞬間に子どもは心を開きます。」こういうお答えをされております。

 私、野口さんと何度か直接お会いをして、お話をいたしました。このインタビューでは尽くせないさまざまなエピソードを私も直接伺いましたし、特に北九州という土地柄、暴力団とのかかわりがありまして、非常に大変なんです。はっきり言うと、そういう組織から野口さん自身がおどされたことは何度もあるわけでございますけれども、それを毅然とはねのけてこういう活動を続けているわけでございます。

 ですから、大臣、こういう方々が全国でふえますと、当然に再犯者の数を減らすことにつながっていくわけでございまして、これは御答弁は要りませんけれども、私の要望として、ぜひ大臣、お時間のあるときに協力雇用主の方々とお会いをしていただきたい。もし福岡に来る機会があれば野口さんを御紹介いたしますし、また、全国にこういう方は多分ほかにも何人かいらっしゃると思いますけれども、直接大臣がお話を伺って、また激励をしていただければ、こういう方々はふえるんじゃないかと思っています。これは要望でお話をさせていただきます。

 その上で、この協力雇用主の数は近年増加をしております。法務省の数字では、平成二十年には六千五百五十六社だったのが、昨年には九千九百五十三社までふえております。ただ、問題は、実際にこういう方々を雇用している会社の数は三百六十四社のみでございます。ですから、約一万の会社が登録はしているんですけれども、実際に雇用しているのは三百六十四社。そしてまた、雇用されている人の数も七百五十八人と低い水準にとどまっております。

 ですから、今後の課題は、雇用主に参加をする企業をふやすと同時に、実際の雇用率を上げていくということが非常に大事になるわけでございます。

 そこで、大臣が先ほどの答弁の最後のところで触れました更生保護就労支援モデル事業、これは実は私の地元の福岡で全国に先駆けて平成二十三年度から実施をされております。この事業についてのこれまでの評価と、それから今後どういうふうに実施をしていくのか、その方針について伺いたいと思っております。

谷垣国務大臣 今、遠山委員から野口さんのお話、いろいろ御苦労も伺いまして、今おっしゃらなかったもっともっといろいろな御苦労がおありだろうと思うんです。本当にありがたいなと思います。ありがたいという意味は、感謝する、サンキュー・ベリー・マッチという意味でありがたいだけではなしに、本当になかなか、そういう方が存在するのが、よく存在しておられるなという意味でもありがたいことだなと、言葉の原義にまでさかのぼってお礼を申し上げたいと思っている次第です。

 ですから、私も、できるだけ機会を見つけてこういう協力雇用主の方とお会いをし、どうしたらその御苦労に報いられるかというようなこともいろいろ考えていかなきゃならないと思います。

 その上で、今おっしゃいました、そういった方を支援していく意味合いも含めまして、更生保護就労支援モデル事業というのを民間法人に委託して、矯正施設在所中から就職後の職場定着に至るまで、継続してきめ細かにやっていこうということですが、先ほどまず福岡とおっしゃいました。

 平成二十四年度は、全国六つの保護観察所で実施して、高い就職率、定着率を示しておりまして、この事業の寄り添い型の支援、就労がなかなか難しい出所者等の就労確保、職場定着になかなか効果を上げているんじゃないかなと思っております。

 平成二十五年度では、この事業の効果検証を実施することとしておりまして、その検証結果を踏まえて今後の事業のあり方をさらに検討していきたい、このように思っております。

遠山委員 ありがとうございます。

 齊藤保護局長に伺いますが、今大臣が御説明いただいた更生保護就労支援モデル事業について、今、民間法人に委託する形式をとっております。基本的にうまくいっている、成果を上げてきているという認識を私も持っておりますが、ちょっと現場からいろいろ声がありまして、そのうち一番大事な声というのは、この事業というのは単なる就労支援事業ではなくて、まさに更生支援、つまり立ち直り協力というものを兼ねている性質のものでありまして、さまざまな問題を抱えている支援対象者を実際に支援できるだけの能力とか経験とか知識、こういったものが求められると思うんですね。

 ですから、今後、この事業、検証していくと大臣はおっしゃったわけでございますけれども、こういう今の形式のままいくのかどうかというそもそも論もございますし、また、今の形式の文脈で申し上げれば、受託をする民間法人はそういったやや特殊な配慮を行う能力、経験というものがあるのかどうか、そういうところをしっかり重視した形でやっていただかないと、いわゆる単なる人材派遣、人材紹介会社がこれを請け負っても、やはり前歴のある人たちを支援するわけですから、非常に通常は求められないような配慮とか手続があると思いますので、そういった観点でしっかりと検討していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

齊藤政府参考人 お答えいたします。

 先ほど大臣から御説明ありましたように、更生保護就労支援モデル事業、刑務所出所者等に対しまして、継続的で非常にきめ細かい、また寄り添い型の就労支援ということであります。非常にいろいろな困難もございますし、それからまた非常に高い公共性も必要である、もちろんいろいろなノウハウも必要であるということでございます。

 そういうことから、委員御指摘のとおり、本事業の性格上、本事業を受託する事業者につきましては、まず更生保護事業に対してきちっとした御理解を持っていただいているということを前提に、例えば、刑務所出所者等とか、それから高齢者、障害者、ニート、引きこもり、そういった比較的就労が難しいと思われる方々に対する就労支援に関するネットワークを持っておられる方であり、かつ、これまでそういう方々に対して就労支援をされた経験があるといった方がふさわしいというふうに私どもは思っております。

 以上でございます。

遠山委員 ありがとうございます。

 続けて局長に伺いますけれども、私がお配りした資料の二枚目、資料の二を見ていただきたいと思います。

 先ほどの同僚委員への答弁の中で局長も言及されていたかと思いますが、来年度予算案で初めて協力雇用主関係の予算が計上されたんですね。実は、大臣、初めてなんです。新規でこういう予算を計上したので私は評価しているんですが、協力雇用主雇用促進旅費とか職場定着協力者謝金等で予算計上されたんですが、まだこれは全国を的としていて千七百万円という少額の規模の予算でございます。

 その上で、資料二をちょっと見ていただきたいんですが、これは、北九州市が来月、来年度から導入する仕組みで、報道されているわけでございます。要するに、元受刑者というか出所者や非行少年少女を雇用すると、残念ながら、その雇用主に経済的損失が生まれる。先ほどもちょっと言及しましたが、レジのお金を盗んでどこかに消えちゃったというようなことが起こり得るわけです。そういうリスクがありながら、やっていただいているわけです。

 実は、国の方は、この記事にも書いてありますけれども、出所者や保護観察中の少年を受け入れた協力雇用主に対して、受け入れた最初の一年間は、上限二百万円で被害が出た場合に見舞金を支給しております。ただ、一年間だけなんですね。だから、二年目にそういう事件が起こったら何も出ない。そこで、北九州市としては、少し支援対象者も広げまして、上限百万円の見舞金を二年目に被害が起こったら出しますよ、こういう制度なんです。

 そこで、御答弁は局長で結構ですけれども、私の提案は、まさにこの北九州の問題意識というのは実は全国で普遍的な要素がございまして、ぜひ法務省としても、雇った後の一年間だけの見舞金支給ではなくて、二年とか、場合によっては三年とか、問題の実情を見きわめた上で、精査した上で、少し期間も広げて、支援対象も広げるような改善をする。北九州方式を参考にしながら、少し全国的な協力雇用主に対する支援の拡充を図っていくというようなことを検討していただけないかと思いますが、いかがでしょうか。

齊藤政府参考人 お答えいたします。

 法務省におきまして、平成十八年度から、厚労省と連携いたしまして、刑務所出所者等総合的就労支援対策の一環として身元保証制度を導入しております。具体的には、身元保証業者が保証するのに必要な保証金を助成する事業に対して補助金を出しているということで、もう先生御案内のとおりだと思います。今後とも、この制度を活用して、協力雇用主の方々が不安なく雇用できるように努めてまいりたいと思います。

 期間の関係につきましては、私ども、例えば、保護観察の期間中であるとか更生緊急保護の期間内であるといった一つのやはり縛りがございますので、そのあたりも含めまして、また今後の勉強の課題にさせていただきたいというふうに思っております。

 どうもありがとうございます。

遠山委員 いずれにしましても、また大臣のリーダーシップで、この協力雇用主さん、先ほど取り上げられていた保護司さんも、本当にできる限りの支援を法務省としてもしていただいて、その延長線上にやはりこの再犯防止というものの目標の達成というものがあると思いますので、よろしくお願いをしたいと思います。

 時間がなくなってまいりました。最後の質問、簡潔にお聞きをしたいと思います。

 政府が、平成二十二年度から、難民支援の一環で第三国定住プログラムというものをやってきております。私も、公明党の難民政策プロジェクトチームの座長もさせていただいておりまして、この第三国定住プログラムを高く評価しているわけでございますが、第一陣、第二陣と二年度続けてミャンマーからカレン族の御家族を受け入れてきましたが、残念ながら、今年度、平成二十四年度は受け入れがゼロとなりました。

 私は、これがまた来年度どうなるかと非常に懸念をしておりまして、これでまた実績がゼロということになりますと、日本の人道支援が後退したと海外から見られるのではないかというふうに思っております。

 そこで、UNHCRですとか難民支援をしているNPO等からさまざまな提言が出されておりまして、家族概念の拡大ですとか、対象地域の拡大とか、選考基準の見直し等々が出ておりましたけれども、そういった見直しをしっかりした上で、ぜひ来年度は、ミャンマーの難民をタイの難民キャンプから一家族でも二家族でも受け入れられる体制でやっていただきたいと思っておりますけれども、関係ある省庁の大臣である谷垣大臣の御決意を伺って、私の質疑を終わりたいと思います。

谷垣国務大臣 今、遠山委員おっしゃったように、第三国定住難民の受け入れというのは、この難民問題の非常に重要な柱だと国際的にも認められているわけでございます。

 それで、我が国は今、パイロットケースとしてやってきたわけですが、一年目、二年目で九家族を迎えられたけれども、三年目はおっしゃるようにゼロになってしまった。もうちょっと家族の範囲とかいろいろなものを弾力的にしていかないとうまくいかないということで、いろいろな御提言もあり、見直しを行いました。今おっしゃいますように、何とか来年はきちっと受け入れられるというように全力を挙げなければいけない、このように思っております。

 そしてまた、さらにこれを延ばしていく、二十六年、二十七年、延ばしていく必要もあるわけでございます。懸命に取り組んでいい成果を上げたいと思っておりますので、またいろいろお教えをいただきますようにお願いいたします。

遠山委員 終わります。ありがとうございました。

石田委員長 次に、田嶋要君。

田嶋委員 民主党の田嶋要でございます。よろしくお願いいたします。

 まず、私からも、谷垣法務大臣、後藤副大臣、そして盛山政務官、御就任おめでとうございます。きょうから質疑スタートでございますので、野党のトップバッターとしてお世話になるところでございます。

 初めて法務委員会に参りまして、かなり法案も多いのかなという印象を受けておりまして、頑張っていかなきゃいけないということでございますが、まず冒頭、質問通告外でございますけれども、大臣の方に御所見を賜りたいと思います。

 きょう、複数の新聞のトップに成年後見の関係の記事が出てございました。公職選挙法の関係でございますけれども、申すまでもなく、二〇〇〇年に制度が変わった。制度が変わったにもかかわらずということで、現在のこの成年後見の中で、被後見人の方に選挙権が与えられていない、そういう状況に関しての東京地裁の違憲判決が出たわけでございます。

 もちろん、公職選挙法ということでは総務省ということでございますけれども、民法、後見制度の所管ということで、差し支えない範囲で、この昨日の判決を受けての御所見、どういった御感想をお持ちかという点を一点、お伺いしたく存じます。

谷垣国務大臣 私も、法務大臣になりまして、この法務委員会で与野党の皆様と実りある議論をして、少しでも日本の法務行政と申しますか、法の支配にも貢献してまいりたいと思っております。田嶋理事におかれましても、よろしくまたお教えをいただきますように、まずお願いを申し上げたいと思います。

 そこで、今おっしゃいました、昨日、東京地裁で出た成年被後見人の選挙権の問題でございます。裁判所の大変厳しい認識が出たな、厳しい判断が示されたなと思っております。

 今後の内容については、私どももこの判決をよく検討しなければなりませんが、国が訴えられているわけでございますから、制度の上では私が被告ということになっているわけでございます。これは選挙管理委員会ですかね、ちょっとそこは私もまだ十分整理しておりませんが。しかし、これは基本的に選挙法の問題でございます。だから、特に総務省等ともよく相談していかなければならないと思いますし、私の立場から、成年後見制度と選挙制度というものがよく調和するようなことは何かなということをよく考えてやってまいりたいと思っております。

田嶋委員 どうもありがとうございます。

 私も、こういう状況だということは余り詳しく存じ上げておりませんでしたが、たまたま、現在、インターネットの選挙運動解禁の関係で公職選挙法の見直しの議論がずっと続いてございます。公明党の遠山先生や御党の平井先生と一緒に各党協議を続けておるところでございます。この公選法も、まだまだネット選挙以外にいろいろな課題があるという状況でございますので、この点もひとつ、引き続き私たちも議論をしていかなきゃいけないことではないかなというふうに私自身も思っておりますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 それでは、きょうは、大臣所信に対する質問ということでございますので、先日の大臣からの所信を少しなぞる形で、気になる点に関して幾つか包括的、網羅的に御質問をさせていただきたいというふうに考えてございます。

 まず最初に、「はじめに」というところで、大臣の方からの発言でございますけれども、いろいろな「平穏な生活を脅かす重大な殺傷事案」ということで、その後に、「インターネット技術やその匿名性を悪用した巧妙、こうかつな事案等の発生、」こういうことを言っておられます。「怠りなく備え、」そして「効果的な対策を講じる」必要があるというふうに書いてございます。

 初めて法務大臣の所信を直接聞かせていただきまして、冒頭からインターネットという言葉が書かれていたことに新鮮な、少し意外な感じもしたわけでございますが、しかし、まさに今、ネット社会ということがますます、選挙運動も含めて大きくなろうとしている中でございます。こういうことに触れていただいたことは、大変時宜を得ているというふうに感じてございます。

 最初の質問でございますけれども、ここでおっしゃっておられます、「怠りなく備え、効果的な対策を講じる」。今日まで、法務省の所管としては、どういった具体的な対策をこのインターネットの関係、サイバーの関係で講じられてきたかというところに関しまして、たくさんあるかもしれませんけれども、具体的に御説明いただければというように思います。

谷垣国務大臣 私、十年前に、国家公安委員長、つまり警察を担当する仕事をしておりまして、その当時、警察庁におきましても、インターネット、ITの犯罪にどう対応していくかというのを、その当時、まだまだ陣容も少なかったものですから、極めて大きな課題となってまいりました。それで、十年たって今度は法務省に参りますと、やはり捜査の難しさとかいろいろな問題が出ているなと思っております。そこで、先日のような大臣所信を申し上げたわけでございます。

 一つは立法措置ですね。平成二十三年度に、いわゆるコンピューターウイルス作成罪等を新設し、それから、記録命令つき差し押さえ等のコンピューターや電磁的記録の特質に応じた証拠収集方法の整備等を内容とする法整備を行いました。

 それから、検察におけるサイバー犯罪の取り組みとしては、昨年十二月、検察当局で、まず、最高検にサイバー犯罪担当検事というのを置きました。それから、東京地検刑事部などにサイバー係検事というのもまたこれは置いたわけでございます。

 それから、今までこれを見ておりますと、主として、捜査等においては、まず第一に警察が当たると思いますけれども、いろいろな技術や知見の発展によりまして、イタチごっこみたいなところも正直言ってございます。ですから、サイバー犯罪等に関する検事等々の捜査陣に研修等を充実させて充実強化していくといったような改善策を昨年の十二月につくりまして、それで取り組んでいく。

 公表された改善策、これを着実に実行して、そして警察等の諸機関との密接な連携も必要でございます。引き続き、捜査方法をどうもっと高度なものにできていくかという検討をいたしたいと思っております。

田嶋委員 まさに今大臣おっしゃっていただきましたイタチごっこという言葉、本当にそうなるだろうというふうに私も思います。

 ネット選挙の解禁に関しましても、やはり議論が始まると、いろいろ悪い想像をし始めると、どこまでも、いろいろなよからぬことが起きるのではないか、こういう議論が出てくるわけでございますが、今大臣がおっしゃった中の捜査の難しさ、その難しさの一つの理由として、所信にも挙げられている匿名性ということがあろうかと思います。

 その匿名性は大変インターネットの特徴でもございますが、もう一つ、私は、今日的に、あるいはこれから法務省としてもいろいろとかかわってくるのではないかということで、国際的なボーダーがない、国境のボーダーラインがないという点を強調させていただきたいというふうに思っております。

 そういう意味では、先ほど警察との連携ということをおっしゃっていただきましたけれども、まさに国内の縦割りの役所間の連携は、もちろんこれは大事でございますが、事インターネットに関しては、国内法だけに閉じた議論というのはほとんど無意味に常時なってくるわけでございまして、基本的には全地球をベースにしたいろいろな取引等が出てくるというふうに考えるわけでございます。

 そういう意味で、国際的な面、国境を乗り越えた協力関係、あるいは今後の対策ということで、何か強調されたい点がありましたら御答弁いただきたいというふうに思います。

谷垣国務大臣 インターネットは大変便利なもので、現代生活にはなくてはならないものだと思いますが、その反面、今おっしゃった匿名性、それからさらに国際性、もう国境を越えていろいろな問題が起こってくるということでございますから、日本の捜査活動としてはそこの壁がある、それはおっしゃるとおりです。特に、どうやって証拠をきちっと集め保全していくかという点には、なかなか困難がございます。

 ネット犯罪に一番顕著にあらわれておりますが、現在は、やはり、国際性というものにどう対応して捜査等を遂げていくかというのは極めて重要な視点でございます。したがいまして、国際的な捜査共助とかそういったものをさらに推し進めていく、そういうことがなければ証拠も集められないということではないかと思います。警察等と連携するだけではなく、国際的な連携というものも常に念頭に置いて物事を処理していくことが必要ではないかと考えております。

田嶋委員 本当に、常に内外無差別の意識で取り組んでいただきたいと思います。私たちの暮らしの中にいろいろ入り込んでいる例えばツイッターやフェイスブックなども、そのロケーションは海外であったり、会社が海外であるわけでございますので、国内法の理解だけでは何ともならない部分がたくさん出てこようかと思います。

 もう一つ、インターネットに関しまして、御提言も含めてでございますけれども、これは悪いことを考え出すと切りがありませんが、当然、これだけ広く早く普及しているということは、いいことがたくさんあるからでございます。

 大臣所信の後ろの方でございましたけれども、いわゆるリーガルマインドの養成というか、法教育のことを書かれてございました。一つ手前にあります裁判員制度というのも、これは、遠い存在のようなリーガルな部分を国民に身近に感じてもらおうとするということで導入され、私もいろいろ心配もございましたけれども、かなり順調にいっているような印象も受けるわけでございますが、その後に発言されました法教育、こういった面でもインターネットの活用ということをより積極的に導入されたらどうなのかなというふうに思います。

 何かとおかたい、それから敷居が高い印象のあるこういう世界でございますので、法学部を出ていても同じでございますから、そういう意味では、テレビでよくありますね、お茶の間の法律相談みたいな、ああいう少しアプローチしやすいようなものというのは今でもあるわけでございますが、確かに、影の部分、いろいろ悩ましいものもたくさんあって、それが匿名性の問題や国境がないという問題に象徴される特徴によって、いろいろこれから対策も講ずることをしていかなきゃいけない。それには、国境を越える。ただし、同時に、このいい面をいっぱい活用していくということを恐らく余り今までなさってきていないのではないか。

 最近、私、実は、インターネット選挙の解禁の関係で、いろいろな民間のSNSの関係の会社、ベンチャーのプレゼンテーションを受けているんですけれども、やはり驚くのは、少しそういう世界にいた人間であったとしても、まさにドッグイヤーじゃありませんが、半年前とサービス内容が変わっているんですね。もうどんどんどんどん変わっていく。

 そういう意味では、法務省も例えば警察も、そういうベンチャーの方々との交流なんかも常日ごろからやりながら、悪い話のことのいろいろ想像力を得るということもですが、例えばこういうこれから大事になってきます法教育、どうやって国民の皆さんにリーガルマインドも少し高めていただけるかというときに、まさに、今のSNSのいろいろなサービス、新しいサービス展開を身近にまず御理解いただいて、それを導入していくというアプローチも絶対に大事になってこようかというふうに提言申し上げ、必要であればいろいろ御紹介もしたいと思いますけれども、御所見をいただきたいと思います。

後藤副大臣 今、田嶋委員から大変前向きなお話を伺いまして、いろいろ勉強させていただかなければならないというふうに本当に思っております。

 法教育というのは、あまねく社会に法の支配を行き渡らせる、そのために、法律家、専門以外の人たちに対して、リーガルマインド、法的物の考え方をできる限り身につけていただく、そういう司法制度改革の重要なパーツを法教育というのは担っているということを考えても、今御指摘いただいたような、非常に新しいツールであり、教育の普及推進についても、その利便性そしてまた手段として非常に参考になるというものを今後どう取り入れていくのか、十分に検討していきたいというふうに思っております。

 田嶋先生からいい御指摘を受けたと思っております。

田嶋委員 私も政治の世界に入ってだんだんそういうことに疎くなるわけでございますが、非常に新鮮であり、かつ、驚きます。去年聞いていた話と大分違うサービスが新たに始まるみたいなことがしょっちゅうあるわけでございますので、ぜひとも、だまされたと思っていろいろ聞いてみると、これはいろいろ参考になるし、悪い問題の起きるのをどう予防的に阻止するかという方と、なかなか世の中に敷居が高い存在と思われているこの世界をどう国民に身近なものと感じていただけるかという点に関して、利用価値が高いのではないかというふうに思います。

 少し長くなりますけれども、民間企業で、今、マーケティング手法で、単に物を売るということではなくて、非常にコモディティー化した物に関するストーリー、本人の非常に主観的なストーリーをつくっていくということで、大変なロイヤリティーを高めて、それによってその企業のその商品の売り上げを大変高く伸ばしているケースなんかも、つい最近話を聞きました。

 例えば、この法の話だって、自分と無関係の話だと何にも関心を持たないけれども、自分が非常に、こういう事例では違法になるのですかとかという、まさにテレビでやっているような話をネットを活用してやったら、もっともっとよくなるのではないかなというふうに考えてございます。

 それでは、次の質問でございますが、これは先ほどから与党の委員の方々からも、世界一安全な国日本の構築と。これは私も本当に大事だと実は思っておりまして、日本の成長戦略、民主党政権時代もいろいろ取り組ませていただきましたが、やはりこの国のブランド力というところの鍵は安全ということであるし、もう一つ私が思うのは、我が国の国民が、事実上、世界最長寿の国であるという、すごい、世界からうらやましがられるものをもう既に兼ね備えているというその点であろうというふうに思います。

 そういう意味では、この成長戦略という、経済産業省初め、そういった官庁が中心で引っ張る分野ではあろうと思いますけれども、法務省もやはり世界一安全な国をつくっていくという点では大変役割があろうというふうに思いますし、このブランド、ブランドと言っていいかどうかわかりませんが、日本の国としての強みというか、世界に対するアピールは決して衰えさせてはいけないというふうに思いますので、ぜひ成長戦略という観点でも頑張っていただきたいというふうに思います。

 その中で、大臣からは、再犯防止対策ということ、先ほど来御質問が出てございます再犯防止対策ということが非常に重要な政策課題であり、総理から特段の指示もあった、こういう書かれ方をしておるわけでございます。

 安全な国をつくっていくために課題はいろいろあろうかと思いますけれども、何ゆえこの再犯ということが特に強調されるのか。先ほど少し質問も出ましたけれども、改めまして、その点。そして、今回、この所信の中で設定されております今後十年での数値目標、この数値目標がどういう意味を持ってこういうふうに設定をされたのか、その点を数字を挙げて御説明いただきたいと思います。

盛山大臣政務官 委員、ありがとうございます。

 我々が認識しているところでは、約三割の再犯者によって約六割の犯罪が行われている、ここがポイントでございます。

 委員おっしゃったように、世界一安全な国日本、これが日本のブランドであり、よさ、特徴でございますから、欧米よりも安全な日本、こういう状況をどのように維持していくのか、あるいは、一層安全にしていくにはどうしていくのか、ここが大事だということで、政府全体として取り組もうということで、昨年、民主党政権のもと、七月に、犯罪対策閣僚会議において再犯防止に向けた総合対策が決定されたものでございます。そして、その重要性に鑑みて、今般、法務大臣が就任されるに当たって、安倍総理からも世界一安全な国日本をつくるよう指示があったというふうに考えております。

 そして、十年間の目標というところでございますけれども、過去五年間において二年以内の再入率、再犯ということですね、その平均値を二〇%以上減少させる、こういうような数値目標をつくっております。

 こういうことを実現していくために、現在取り組んでおります住居や就労の確保のための支援策等の実績を踏まえ、今後取り組む新たな施策による効果などをも考慮した上で、政府全体として、十年間の取り組みを通じて目指すべき努力目標として設定しております。その早期達成に向けて、さまざまな対策に取り組んでいきたいと考えております。

田嶋委員 この「世界一安全な」という第二の項では再犯防止のことだけに触れられておりますから、それだけ力を入れてやりということで、ほかは何もしないということではもちろんなかろうと思いますけれども、ここを改善していくことが数値に劇的ないい効果を出せるように、ぜひ取り組んでいただきたいと思います。

 以前から私も少し気になっている点は、その中でも特に性犯罪の再犯でございまして、これは非常に難しいというような、海外のいろいろな取り組みも、なかなか矯正が難しいというようなお話もいろいろと聞いてございます。非常に心を痛める分野でございますが、この点に関しては、特に何か違うアプローチをとられるのか、それとも、全体の中で同じようにこういった数値目標で、同じ政策で取り組んでいかれると考えているのか、御所見をお願いいたしたいと思います。

谷垣国務大臣 今おっしゃいましたように、性犯罪の再犯防止というのはなかなか難しいんですね。特に、私は、性犯罪の中でも、これは必ずしも役所に確認したわけではございませんが、要するに、子供に対しての性犯罪というのは、これはなかなか予防が難しい、予防というか再犯防止も難しいのではないか。それだけ社会的要請も多いし、その対策も、世界じゅうもいろいろ試行錯誤しながら進めているという状況ではないかと思います。

 そこで、これを防止するために、今、刑事施設と保護観察所では、心理学等々も導入しないといけないというので、心理学等の専門的知識に基づく性犯罪者処遇プログラムというのを実施しております。先ほど、どなたかの答弁でも申し上げたかもしれませんが、やはり、犯罪者の今までの犯罪歴あるいは犯罪の傾向、そういった傾向に即した処遇をしていかないと再犯防止の実が上がらない。今の申し上げた性犯罪者処遇プログラムというのも、そういったことでつくったものでございます。

 これは、海外で効果が実証されたプログラムを基礎としまして、平成十八年に導入したものでございます。そこで、昨年末、このプログラムの効果検証を行ったわけでございます。統計的手法を用いて行いまして、一定の再犯抑止効果があるなということが確認されました。

 そこで、法務省としては、本プログラムの効果検証等を踏まえて、さらにプログラムをよりよいものにしていかなければいけない、諸外国の取り組み事例も参考にしながらさらに検討を行っていきたいと考えております。

田嶋委員 ありがとうございます。

 本当に、いろいろな凶悪犯罪の中でも最も唾棄すべきジャンルの一つじゃないかと私も思っておりますので、ほかの国々の先進事例、いろいろな試行錯誤が、多分どこの先進国、どこの国々でも難しい課題だと思いますが、ぜひとも最新の情報を仕入れながらいろいろな試みをお願いしたいというふうに思います。

 もう一点、安全なというところに関してでございますが、これは逆に一切記述がございません。実は、過去にも一度も記述がなく、しかしながら、私は非常に重要な問題というふうに感じておりますのが、死因究明の問題でございます。あるいは、司法解剖や死体解剖の関係でございます。

 これは、谷垣大臣も以前、議員連盟に入っておられまして、たしか自民党政権の終わりぐらいの安倍政権のころですか、御提言をまとめられたというふうに承知をいたしておりますし、そのちょっと前には、この法務委員会としての提言も衆議院でまとめたという理解をいたしております。

 資料をおつけしておりますのでごらんいただきたいと思いますが、これは警察庁からの資料でございます。

 私も、実は、恥ずかしながら、このことを全く、そんなに最近までは知っていたわけじゃなくて、私の地元の千葉の大学が法医学教室を持ってございまして、恐らく大臣も何度もお会いされている岩瀬先生という先生、大変御熱心で、かつ、現状に対する極めて強い危機感をお持ちでございまして、私が直接御相談を受けたというのがきっかけでございます。

 民主党政権下でも、細川先生を中心にいろいろやられる中で法律が結実をしたということでございます。

 この表をごらんいただいても、日本はこういうことが時々ありますけれども、先進国の中でも極めて低い数字になっているということは、もう大臣も恐らく、提案をまとめられたころも多分今よりもさらにひどい状況だったと思いますので、これは何とかしなきゃいけない。

 確かに、既に亡くなった方ですから、死体ということでございますので、世界一安全な国と直接関係があるかどうか。しかし、いろいろちまたでは言われています。なぜ日本は自殺率がこれだけ高くて殺人が少ないのか、実ははっきり調べていないんじゃないか、そんなようなこともいろいろネット上でも書かれたりもしていて、根拠のない、不本意なそういう評判がつけられるのも困ったものでございます。

 そういう中で、いろいろ予算的な制約もあろうかと思いますけれども、こういう状況に関しては、今回、法務大臣として、当時の提案をされてから、以来大分時間がたってございますが、どのように現状認識されておるか、そしてまた、これはもちろん内閣官房を中心にいろいろやっておられると思いますけれども、今後どのようにここを予算も含めて対応していこうというふうにお考えか、御所見をいただきたいと思います。

谷垣国務大臣 田嶋委員おっしゃっていただきましたように、前の自民党政権の最後のころ、私もいろいろな方からお話を伺いまして、これは力を入れて取り組まなければいけないというので、いろいろ勉強いたしました。野党になりまして、野党総裁をやっている間、つい関心がほかの方にずれてしまいまして、今度法務大臣になってみましたら、なるほど、この間に民主党政権のもとでもいろいろ御努力をいただいて制度が進んできたなというのは大変よかったなと思っております。

 そこで、死因究明等推進法に基づきまして、内閣府に死因究明等推進会議というのが設置されております。私もそのメンバー、委員として参加するということになっておりますし、その下部組織で死因究明等推進計画検討会というのがございます。法務省担当者がここにも入っておりまして、ここで検討をさらに強力に進めていかなければいけないと思います。

 そういうことがございますので、私もいろいろな個人的な思いもございますが、自殺率の高さとどう関係あるのか私もよくわかりませんが、やはりこういうことをきちっと解明しておくということは避けて通れないことではないか、このように考えております。

田嶋委員 一度も過去に、法務大臣の所信の中でこの分野の発言は、検索したんですけれども一つも見つからずということで、役所がまたがるからかもしれませんけれども、偶然、大臣のお名前をその提案書の顧問というお立場で発見をいたしました。そういう意味では、所信には触れられておりませんでしたけれども、これは強い関心を持っていただいて、やはりこれは、法治国家の基本として、何かちょっと恥ずかしい現状があるのではないかなというふうにも思っております。ぜひよろしくお願いを申し上げます。

 それでは、少し時間が迫ってきておりますので飛ばさせていただきますけれども、刑事法制の部分に関して先に御質問させていただきたいというふうに思います。

 せんだって、デンマークから、私どものカウンターパートと申しましょうか、法務委員会の御一行がお見えになりまして、委員長のもとで、二時間ほどでしたか、大変有意義な議論をさせていただきました。

 やはり、直接そういう違う国のこういう分野の方と意見交換をするという経験はなかなかないわけでございますので、私も、どういうことに彼らが興味を持っておられるのかということに、非常に興味深く思ったわけでございます。先ほど来出ております治安のよさというようなことに関しても質問がございましたし、きょうは余りやりませんが児童ポルノの問題とか、いろいろと出ました。そして、やはり死刑制度の話も、質問が出たわけでございます。

 おつけをしておる資料の下から二枚目をごらんいただきたいと思います。死刑を廃止した主な国と死刑廃止の時期ということでございますけれども、デンマーク、一番下につけさせていただいておりますが、横紙の、こういう字のでかい表でございます。

 私も初めて、そのデンマークの方から口頭で直接聞かされて、ああそうなんだと思いましたのは、最後の死刑執行が十九世紀の末、実際に死刑の制度の廃止が一九七八年ということで、大変大きな時間的な乖離があるということで、調べてみると、大体どこの国も、中には、ドイツのように同じタイミングでということもあるわけでございますが。

 死刑制度の話というのは、確かに、私も、地元で時々、凶悪犯罪が起きた翌週の週末の懇親会とかになると、話が出たりもします。そして、私の受ける皮膚感覚も、圧倒的多数の人は、今のこの制度はやむを得ない、そういう意見があるというのは、世論、アンケート調査の結果と非常に符合するものを私も感じます。だから、いきなりどうということは私は申し上げないわけでございます。ただ、デンマークの我々のカウンターパートと話していて、何か違う星に住んでいる私たちに質問されているような感じがして。

 その次のページの資料をごらんいただきたいんですが、今、死刑制度に関してどういう状況にあるかを見ていくと、我が国は十年以内に執行があった。もちろん、先日、大臣御自身が判断をされたわけでございますが、そういう国々の国名を見、そして、過去十年以内に執行がなかったけれども制度は存置している国々を見、きょうはつけておりませんけれども、死刑制度を廃止している国々を見、というふうに考えると、やはりこれは、議論をして、国民的議論を政治家が引っ張ったという言葉がデンマークの方々からは大変印象的でございました。

 国民にぱっと聞けば、これだけ凶悪犯罪がなくならないんだから仕方がない、それは私もそう思います。そういう気持ちがある一方で、政治家は、一歩先を議論して、国民世論を形成していくリードをしたんだというようなことをデンマークの方々から聞いて、なるほどな、それがまさに、実際は執行はとまっているけれども制度が存置している、実際、制度がなくなるまでに大変な時間を要したデンマークのような事例なのだなというふうに思った次第でございます。

 日本と同じカテゴリーに存在する先進国は、アメリカや、国ではないかもしれませんが台湾、あるいは、限られている。どちらかというと先進国は廃止の国が多いという状況の中で、余り踏み込んだ発言は厳しいかもしれませんけれども、しかしながら、先日執行も行われて、私の方からお伺いしたいのは、大臣が、いつの日か日本で死刑の廃止される日が来るべきというふうにお考えなのか、あるいは、そういったことを議論するために、そういう議論の場を積極的に設けてスタートさせていきたいというふうに考えておられるか、その二点に関してお伺いしたいと思います。

谷垣国務大臣 今の田嶋委員のお問いかけは大変難しい問題でございまして、いつの日か廃止されるべきかどうかというと、実は頭を抱えてしまうというのが今の正直な私の気持ちでございます。そもそも刑罰なんかが要らない国になるならなおいいがという気持ちもございますが、なかなかそうはいかないのかなという気持ちもございます。

 そこで、私としては、この間、田嶋委員がおっしゃった、あのデンマークの法務委員会の御一行とは私も一緒に議論をさせていただいたので、いろいろなるほどなと思ったこともございました。

 ただ、率直に申し上げますと、今、ずっと世論調査を政府としても続けております。ちょっと詳細な数字は忘れてしまいましたが、多分、一九七〇年代の後半から八〇年代の初めにかけては、死刑が必要だなという人は五割近くだった、ややもすれば半数以下になってしまった。あの当時はそういう時期でした。ところが、現在はたしか八五%ぐらいになっている。それが一体どういうことなのだろうかということは、私もよくよく分析をしなければいけないと思っております。

 それから、この間もデンマークの法務委員会の方々に申し上げたんですが、人口当たりの犯罪を見ますと、日本はたしか、ちょっと正確な数は今ありませんが、記憶ですと、六十何人に一人の方が犯罪に遭っている、デンマークは十何人に一人の方が犯罪に遭っている。つまり、それだけ日本は犯罪に遭う確率が少ないということは言えると思います。それがすぐ死刑制度のあるなしに結びつくとも思いませんが、そういう治安のよさを一体どういうものとして理解していくのか。

 いろいろな議論が、国際的な動向ももちろん必要でございますが、やはり多面的な理解、多面的な分析というものがなければいけないのではないかと思います。

 もちろん、この死刑の問題に関しましては、今まで法哲学の上でもいろいろな議論が行われておりまして、これはもう甚だ奥深い議論であることも事実でございます。しかし、それと同時に、治安や犯罪のあり方といかなる関係に立つかというのは、よくよく掘り下げて議論する必要があるなと私は思っております。

田嶋委員 ありがとうございました。

 時間となりましたので、最後に重い質問をさせていただき恐縮でございますが、私も、法務委員会となりましたきっかけで、これからいろいろ研究をしていきたいというふうに思っております。御質問、ありがとうございました。

石田委員長 次に、階猛君。

階委員 民主党の階猛です。

 谷垣法務大臣を初め、法務省政務三役の皆様、どうぞきょうはよろしくお願いします。

 谷垣大臣は、弁護士の大先輩でもいらっしゃいまして、いろいろな会合でお見かけするたびに、いつも私のような若輩にも丁寧に御挨拶をしていただいて、私、いつも谷垣大臣のお人柄、本当にすばらしいなと思っていました。ぜひ法務大臣として、御見識そしてお人柄を十分に発揮していただいて、この国の法務行政を健全に発展させていただければと思います。野党でございますから厳しいことも申しますが、よろしくお願いします。

 早速ですが、憲法改正をまずお聞きしたいと思います。

 今回、大臣所信の中で、冒頭で、法の支配を守っていくんだという法務行政の目的をおっしゃっています。法の支配といえば、人の支配に対立する概念でございまして、人の支配によって国家権力が簡単に人権を侵害するようなことがあってはならないということで法の支配という考え方が生まれて、発展してきたということだと思っております。そして、その法の支配という観点からいえば、国の基本法であり、国家権力を制限する憲法というものは、やはり大事にしていかなくてはいけない。

 昨今、憲法の改正の議論が盛んに行われておりますけれども、私は、憲法の改正手続、九十六条、今どうするかという議論がありますが、まずその前に、そもそも、憲法改正というのは、法の支配の観点から見て、おのずから限界があるのではないか。

 例えば、憲法の三大原理と言われております基本的人権の尊重、国民主権、平和主義、こういったものは、改正の限界ということで、どのような改正手続であれ、手を触れてはいけないものではないかなというふうに考えております。ぜひ御見解をお願いします。

谷垣国務大臣 今の階委員のお問いかけは、恐らく、国法学と申しますか、憲法理論の一番難しい課題の一つ、憲法改正の限界という問題ですよね。これは、どういう法哲学、法理学的立場に立つかによっても随分違うんだろうと思います。法実証主義的な立場に立つのか、あるいは自然法的な理論に立つのかによっても恐らく違うんだろうと思います、私も余り法哲学のことはよく存じませんが。

 それで、限界があるという議論も非常に有力にございます。それはやはり、憲法制定権力にとって根本的な価値観は、新たな憲法制定権力が出てくれば別として、憲法制定権力のもとに生まれた憲法改正権力にはできるはずがないという理論の組み立て方だろうと思います。

 他方、事実的に改正されてしまっては、これはもう一つの極端な考え方でございますが、事実的に改正された場合、それを否定するわけにもいかないだろうという考え方もあると思います。むしろ、これは私も実はそういった見解の判断をするだけの学識はございませんが、例えば、そのときの理念的な見解によって余り限界を立ててしまうと、それが不都合が生じたときに、実力でもってぶち壊そうという動きも出てくるというような議論もかつて聞いたことがございます。

 したがって、極めて難しい問題であるというふうに私は存じておりまして、階先生の問題意識にどうも正面から答えていないような気がいたしますが、今のところそのように考えております。

階委員 十分問題の所在は御理解されていらっしゃると思っていまして、むしろ、事実上無限定に改正されることをどうやって防ぐかどうかということを実務的には考えなくちゃいけない、国政としては考えていかなくちゃいけないということなんだと思います。

 そこで、その九十六条の昨今話題になっている改正要件の話に移っていきますけれども、今三分の二という国会の発議の要件を二分の一に緩和すべきだという話なんですが、先ほど申し上げましたように、憲法の中の三大原理のような根幹にかかわる部分はなお厳しい要件でいくべきではないか。一方、統治機構のような話、あるいは地方自治のような話、こういったところは一定の緩和はしていいのではないか。

 こういう段階的な発議要件を定める。これは諸外国でも事例があるわけでございまして、例えばスペインなどでは、憲法体制の原理、あるいは国の基本原則、基本的権利及び公的自由、国王、こういったところについては厳しい要件にしまして、それ以外については緩い要件にしている、こういう定め方もあるようでございます。

 こういう憲法の条項によって改正要件を分けるという考え方については、いかがお考えでしょうか。

谷垣国務大臣 私、今のお問いかけに決して逃げるわけではないんですが、発議をするのは、すぐれて国会の権限でございます。したがいまして、今行政の場にいる法務大臣がお答えすべきことかどうかというのも実は非常に迷うわけでございます。

 ただ、この九十六条の問題は、今の日本国憲法は非常に硬性憲法である、しかも、硬性憲法の中でも極めて硬性度の高い憲法であると言われていると思います。そうなると、なかなか、現実に憲法改正が必要だと考えるか考えないかによってもお立場が違うと思いますが、現実に改正の必要度が高いと考えたときに、余りにも硬性度が高いのではないかという議論が出てくるのは、これは法務大臣としての見解というより、一国会議員として、あるいは一個人としての感じでございます。そういう中で、やはり改正条項のあり方というのは国会でしっかり議論いただくべきことで、法務大臣としてはこれ以上の言及は差し控えたいと思います。

階委員 お立場はわかっていますが、せっかくなので、もう一つだけお聞かせください。

 今、九十六条をまず先行して改正すべきという議論がありますけれども、この九十六条であれ何であれ、国民投票をするということになると経費も八百億程度かかると言われております。

 また、学者さんによっては、これは慶応の小林教授という方ですが、発議要件の緩和というのは、何に使うかわからないけれども、私にピストルをくれと言っているようなものだと。したがって、小林さんは、むしろ積極的に改憲を唱えている方なんですが、真に説得力のある改憲案を提案して、これを国民投票にかけるべきだと。真に説得力のあるというのは、その実体の部分の改正案を提示して国民投票にかけるべきだということで、九十六条だけを先行して、それだけを取り出して国民投票にかけるということに対しては批判的な見解を述べられています。

 この九十六条先行についてどのようにお考えになるか、せっかくですので御見解をお願いします。

谷垣国務大臣 これもなかなか法務大臣として御答弁をするということにはならないと思います。

 ただ、私、実は、自民党総裁の時代に自民党としての憲法改正案をまとめたわけでございます。そのとき思いましたのは、憲法改正に関してもいろいろな考え方があるだろうと思います。

 日本人は、明治以来、憲法改正というのは今の日本国憲法をつくったときだけでございます。それもいろいろな議論が、つまり、マッカーサー、駐留軍がいるときではないかとか、いろいろな議論があるわけでございますね。それに対してどういう見解をとるかはいろいろでございますけれども、今まで一度も、一度もというか、ほとんどというか、憲法改正をしたことがない、そのときに、第一条から、あるいは前文から最後まで全部一括かけたような、一くくりにしたような憲法改正の発議が果たしてできるものだろうかという思いは私にはずっとございました。

 そうすると、一つは、九十六条というところから議論を始めるという議論の仕方もあるだろうなと。あるいは別に、多くの方々が、憲法に関するイデオロギーや評価は別として、こういうあたりは、やはり長い運用の中で、現実的にちょっと不便や無理もあるねと思うところからやっていくのか、いろいろな考え方があるんだろうと私は思います。ぜひ、国会の憲法審査会の中で、そういう面も含めて御議論をいただけたらと思っているところでございます。

階委員 まさに全体を変えるというのは大変な話ですし、また一方で、九十六条だけを変えるというのも、これもまた両極端の話のような気がしておりまして、私は、全面的に見直すというところまでは必要ないかもしれませんけれども、やはり今、喫緊、両院のあり方ということが問題になっています。決められない国会ということで。衆参の役割分担ということなどは、もし九十六条を改正するのであれば、それとセットにして国民投票するべきではないかなというふうに思っています。

 私の考えはそこまでとしまして、次に、憲法ではなくて民法の話に移っていきます。

 民法については、今の大臣のお話からすると、逆に、民法というのは、膨大な法律を一遍に変えようという話なんですね。これが果たして国会での審議あるいは国民の理解という意味でたえ得るものかどうかという疑問をまず私は持っています。その上で、個別の気になるところを二点ほどお伺いします。

 まず、約款ということが、今回、民法の中で初めて明文規定が設けられるような中間試案が先日ございました。この中間試案の約款に関する部分を見させていただきますと、不意打ち条項という規定が設けられておりまして、この不意打ち条項は、約款使用者の説明、相手方の知識及び経験その他の当該契約に関する一切の事情に照らし、相手方が約款に含まれていることを合理的に予測することができないものは契約の内容とはならないというようなくだりがあります。

 私、実務的なことをいろいろな方からお聞きしますと、特に金融機関なんかでは、複雑な金融商品を説明する際に、説明資料で御説明する。パワーポイントとかを使って御説明します。約款というのはほとんど触れないというか、むしろ触れることは、お客様にとって何の理解の向上にもつながらないし、迷惑がられるということで、実務上は説明資料を使うんだそうです。

 その結果、もし今の不意打ち条項というのが入った場合に、今度は説明資料も、約款の条項が漏れなく説明の方にも入るように、非常に細かくなって、何のための説明資料かわからなくなるというような危惧が寄せられていました。

 こういう不意打ち条項についてというか、そもそもの約款の規定のあり方について、大臣の御見解をお願いします。

谷垣国務大臣 法制審議会の民法部会では、委員御指摘のように、約款に関する規定を新たに設けられないかという議論が行われております。これに対しては、やはりさまざまな議論というか懸念もあることも事実です。

 一方において、誰も読まないようなと言うといけませんが、思わざる条項があって、ああこんなだったのかと予期せざることが起こってしまった、それがとんでもない負担を招くようなものであったりすれば、それはおかしいねという議論があるのはよくわかりますが、他方、委員が御指摘されたような、実務上のいろいろな懸念があるぞというお考えもあります。

 実は、そこから先、私、申し上げにくいんです。私は今法務大臣で、法務大臣というのは法制審議会に諮問しておりますから、諮問して、議論していただいておりますのにあれこれと言うのは大変難しゅうございます。

 そこで、中間試案が二月に取りまとめられまして、今後、パブリックコメントに付される予定でございますので、パブリックコメントでどういう議論が出てくるのか、そういう実務運用の中からどういうお考えが出てくるのか、そういうことも十分に考慮に入れながら今後の議論を進めていってほしい、このように思っております。

階委員 ぜひ、こういう問題があるということを御認識いただいて、適宜対応をお願いいたします。

 もう一点、債権法改正で、今回の目玉となるのは保証人の保護ということでございます。

 私も、保証人の規定については、過度な保証人の責任というのはよくないだろうと思っていました。特に、一般の個人が保証する場合、見返りなしで、経済的なメリットがなく、リスクだけを負う。ある日突然、債務者がお金を返せなくなったからということで、何も見返りを得ていなかった保証人が責任だけを負わされるというのは私はおかしいだろうと思っていまして、リターンなくしてリスクなしという立場から、一般の個人の保証はなくすべきだと思っていました。

 今回、個人については、経営者の範囲で保証は認めようということが大きな方向性だと思っていますが、今、経営者と申しましたが、実は、この中間試案を見ますと、「保証人が主たる債務者の「いわゆる経営者」であるものを除き、無効とするかどうかについて、引き続き検討」とありまして、「いわゆる」というちょっと微妙な言葉がついています。

 この「いわゆる」という言葉の定義というか、「いわゆる経営者」というか、曖昧な言葉にすることによって、一方では、個人がどこまで保証できるのかどうか、金融機関を初めとした事業者の側でも悩ましいですし、また、この「いわゆる」ということが付されたことを奇貨として不当に保証を課していこうという悪質な事業者がいるかもしれません。

 そこで、「いわゆる経営者」の範囲というのを明確にする必要があると思っていまして、この点についても御見解をお願いします。

谷垣国務大臣 先ほど宮澤委員も個人保証の問題についてお触れになりました。

 一方で、やはり、現実にいろいろ活動していくための血液というのは資金でございますから、それを獲得するために自分の信用で足らざる部分を補う手段というのがなければ、経済は動かなくなってしまうだろう。しかし、他方で、そのために不測のリスクをしょい込み過ぎて再起も何もかなわない、それで悲惨な末路を遂げるというようなこともあってはならない。

 それで、今、確かに中間の案が出ておりますが、まだ方向性があれで完全に決まり切ったわけではありません。これから議論をさらに進めていかなきゃならないわけでございます。

 そして、委員のお話のように、「いわゆる」というのは定義は何かと言われても、いわゆるとしか言いようがないのでございますが、要するに、経営者の個人保証あるいはそれに準ずるものというようにやっていったときに、どこまでそれが含まれるのかというのが余り不明確になってしまうと、これはまた別な混乱を呼び起こすと思います。それらを含めて今後議論を詰めていただくということではないかと思います。

 済みません。個人保証を言われたのは、ふくださんがおっしゃったんですね。宮澤さん、済みません、間違えました。

階委員 ぜひこの点も問題意識をお持ちいただいて、適宜対応をお願いします。

 別の論点に行きますが、取り調べの可視化です。

 先般、一月に、法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会というところで基本構想というものが出されました。この基本構想、私もざっと読んでみましたけれども、そもそもこの基本構想が書き上げられる経緯として、あの村木事件というものを初め、特捜部などの検察の不祥事が相次いだということがありました。

 検察の不祥事というのも、まさに密室の取り調べの中でいろいろなことが行われていたということで、そういう問題意識もあって、大臣の諮問に応じて、この部会の中で検討が進められてきました。

 その中で、今回、取り調べの可視化についても言及がされているわけですけれども、この取り調べの可視化の関係のところを見渡しても、そもそも、この取り調べの可視化を通じて検察の信頼回復に努めていくんだという視点が抜け落ちているような気がします。

 出発点である検察の信頼回復というのがないと、ここに書かれている、まさに両論併記といいますか、一方で可視化を積極的に進めるようなことを言いつつも、一方で取り調べ官の裁量に委ねるといったような微温的なやり方も書かれているということでございまして、このような検討の仕方だと、私は、そもそものこの取り組みの趣旨が損なわれるのではないかと思っています。

 その点について御見解をお願いします。

谷垣国務大臣 今、階委員から、今の刑事司法制度特別部会の審議の進め方について御批判があったわけでございます。

 確かに、委員のおっしゃるように、これの一番最初のきっかけは、大阪地検特捜部のもろもろの事件、村木事件等々が発端になりまして、検察の信頼をいかに回復するか、検察の在り方検討会議というのがあったわけですね。それを踏まえて、今、法制審議会の中で新時代の刑事司法制度特別部会というのが行われております。

 それで、委員のおっしゃるように、最初、検察の在り方検討会議というのが一つのきっかけとなったことは間違いありませんし、そこの問題意識というのは当然踏まえなければいけないと思います。

 しかし、それと同時に、この新時代の刑事司法制度特別部会というのは、やはり時代の変遷に伴って、いかに新しい捜査手法があり得るかということも、検察の在り方検討会議の議論だけではないものも含まれながら、議論が進められていると思っております。

 そして、この特別部会は、在り方検討会議の委員を務められた方を含めまして、さらにいろいろな方に入っていただいて議論を進めております。

 それから、ヒアリングなどを通じまして、このヒアリングも、いろいろな刑事事件、もちろん村木事件の御関係の方もおりますし、いろいろな方のヒアリングもさらに積み重ねているところでございまして、これは私は、検察の在り方検討会議で始まった問題意識を十分踏まえながら進められているものと思っておりますし、また、今後そうでなければいけないと思います。

階委員 ぜひそこは、検察というのは非常に独立性の強い組織で、ちょっと政務が目を離すと独善的になりがちです。

 実は、今回、所信の中でも気になるところがありました。というのは、今の取り調べの可視化の話と検察改革のための取り組みというのが、別の段落に分けて書かれているんですね。

 検察改革の方は、刑事司法制度を国民からより一層支持、信頼されるものとするため、検察の改革のための取り組みを着実に実施してまいります、こういう抽象的な一文が書かれているだけであって、その中で取り調べの録音・録画制度の導入とかというのは本来位置づけられるべきところ、そこは切り離されて、まさに今おっしゃったような、新時代に即した刑事司法制度を構築するための一つのツールとして位置づけられているんですね。

 そういうところはぜひ目をつけていただいて、検察が独善的になりそうになったらしっかりチェックしていただきたいと思っております。

 そういうことを踏まえまして、先ほどもちょっと触れましたが、この基本構想の中で、二つ案がありますということで、一つは、「一定の例外事由を定めつつ、原則として、被疑者取調べの全過程について録音・録画を義務付ける。」ここでも「一定の例外事由」とか「原則として、」というちょっと緩めるような表現はありますが、これはこれとして、問題なのはもう一つの方です。

 もう一つの案というのは、「録音・録画の対象とする範囲は、取調官の一定の裁量に委ねるものとする。」ということなので、これはまさにお手盛りといいますか、取り調べ官が自分の都合のいいところだけを抜き出して録音、録画されると、かえって被疑者あるいは被告人の人権保護に資するどころかマイナスになるのではないかと思っています。

 ちなみに、私の地元で最近注目すべき裁判所の決定がございまして、資料一をごらんになってください。

 盛岡地裁の案件でございまして、最後の七、八行のところなんですが、「取り調べ最終盤の約五分半の映像については「内容を分かっていたのか、疑問を差し挟まざるを得ない。一方的な確認、録音でいささか恣意的。公正さに疑いがある」」などと裁判長から指摘されたということでございます。

 こういうことがありますと、むしろ、裁量で可視化をするということになると、検察の信頼回復どころか逆効果ではないか。裁判所が言われているように、検察の信頼をかえって地におとしめるのではないかと思います。

 こういった点からも、今掲げられている二案のうち後者の方については私はおかしいと思っていまして、ここについても大臣はきっちりチェックして是正すべきだと思いますが、いかがお考えでしょうか。

谷垣国務大臣 今委員が御指摘になったように、この基本構想では、一つは、一定の例外事由を定めつつも、原則として、被疑者取り調べの全過程について録音、録画を義務づけるというのが一つ、それからもう一つは、その録音、録画の対象とする範囲を取り調べ官の一定の裁量に委ねるものという、二つの制度案を念頭に置いて具体的な検討を行っていこうという趣旨でございますね。

 ただ、この基本構想は、これでもって何らかの制度の採否や内容を確定するというものではまだありません。今までに、確かに、その両方の、二様の議論があったことは事実でございますので、それまでの議論を中間的に取りまとめた、そして制度設計に向けた今後の検討の指針とするということで、これで一応まとめよう、中間まとめとしようということは特別部会の総意により規定されておりますが、さらにその方向性はどうしていくかということをこれで決めたわけではございません。それで、この二つの制度案を検討対象として、さらに具体的に議論を詰めていく、その上で最終的な制度のあり方を判断するということでございます。

 私としては、先ほどもほかの件で申し上げましたけれども、今、法制審議会に諮問をしている立場でございますので、まずは法制審議会においてどういう御議論を煮詰めていただけるか見守ってまいりたいと思っております。

階委員 そのような検察の問題に鑑みまして、我々の政権のときから、これは制度は変えておりませんけれども、運用の中で可視化の範囲を広げてきました。

 とりわけ、検察が直接一次捜査を行う事件、直受事件と言われておりますけれども、特捜部とか特別刑事部というところが担当する事件であります。こうしたところが可視化を積極的に進めていこうということで運用に取り組んできたわけですけれども、直近で、これは事務方で結構ですが、検察直受事件の取り調べの可視化の比率と、それから、その中でも全過程を可視化している比率、二つお答えください。

稲田政府参考人 お答え申し上げます。

 検察が行います独自捜査事件に関する録音、録画の試行状況についてでございますが、直近ということで、昨年七月に最高検察庁が検証結果を発表しておりますが、その発表以降の、昨年の春から昨年の暮れまでの八カ月間の分で申し上げますと、実施件数が七十八件、不実施であったものが四件でございます。したがいまして、実施率は約九五・一%でございます。この実施した七十八件のうち、四十八件、約六一・五%につきましては、検察官の取り調べの全過程の録音、録画が実施されたものというふうに承知しております。

階委員 これは、前回御報告いただいたときよりも大分数字が上がってきておりますね。これはいい方向に来ていると思います。

 運用はもう既にこういう状況でございますから、私は、これを制度化して、さらに検察の信頼回復につなげていくということを大臣として考えられたらどうかと思います。この検察直受事件の取り調べ可視化について早期に法制化を実現することについて大臣のお考えをお伺いします。

谷垣国務大臣 これは先ほどの御答弁の繰り返しになりますが、法制審議会でどう議論を煮詰めていただけるか、よく見守ってまいりたいと思います。

 それで、一つつけ加えますと、私、先ほど田嶋委員にも御答弁を申し上げましたが、十年前、国家公安委員長をやっておりました。そのときにも、こういった可視化のような議論がございまして、そのときは検察も警察も大変なアレルギー反応でございました。今日、今委員がお触れになったような数字も含めまして、なるほど、可視化というのにはメリットもあるという意識は大きく進んできている、それが十年前との違いだなと私は感じております。

階委員 可視化に対して前向きな御評価をいただいたことはありがたいと思っています。ぜひ、これからも可視化推進のためにお力を尽くしていただければと思っております。

 最後のテーマ、法曹養成制度について伺います。

 資料をおつけしておりますけれども、資料の二とか三をごらんになってください。

 資料二の方では、まず上の段が、法科大学院の入学定員と実際に入学した方の数の対比をずっと時系列で追ったものでございます。最初だけですね、入学定員を実入学者が上回ったのは。直近で見ますと、二十四年、右端ですけれども、四千四百八十四人の定員に対して実入学者は三千百五十人しかいないということであります。したがって、かなりの人件費などの法科大学院運営費に関する予算が空費されているのではないかという懸念があります。

 また、法科大学院の志願者、入学者の状況ということで、下段の方を見ていただきますと、まず、全体の志願者も右肩下がり、そして、社会人、非法学部出身の入学者、これは右下のグラフですけれども、こちらも、多様な法曹を養成するという当初の法科大学院設立の理念にもかかわらず、右肩下がりになっています。

 そして次のページ、法科大学院に入学するためには適性試験というのを受けるわけですけれども、この適性試験という試験の志願者の数も、平成十五年度から始まっております。当初、大学入試センターと日弁連法務研究財団、二つの組織で同じような試験が行われていましたので、両方受けるという人が多かったので、ここは、かために見まして、左側の大学入試センターの数字だけを御指摘しますけれども、平成十五年度で、志願者が三万九千三百五十人だった、そして受験者は三万五千五百二十一人だった。直近、一番下の平成二十四年度、ここでは志願者が六千四百五十七人、受験者が五千九百六十七人。志願者が激減しているわけです。

 最近では、法科大学院のみならず、大学の法学部も、法曹の人気が下がってきたことも私はあると思っていますが、非常に人気が下がってきているということも聞いています。

 この法科大学院の不人気の理由について大臣はどのようにお考えになっているか、お聞かせください。

谷垣国務大臣 今委員が数字を、グラフを示してお示しになりましたように、志願者が減少していることは、もうこれは間違いない事実でございます。

 その原因につきましては、今、法曹養成の中でもいろいろ議論していただいているところですが、一つは、司法試験の合格状況、当初の見込みといいますか意気込みとは随分違うじゃないかということもあると思いますね。それから、弁護士の就職状況もなかなか厳しいものがあるということがある一方、法科大学院には時間的にも経済的にも相当負担がかかるじゃないかというようなことが言われております。

 それだけにとどまるかどうかわかりませんが、現在のところ、そういう指摘がされて議論が行われておりますので、新しい法曹養成制度、どうやったら志願者がもう少し回復していくのか、より多くの優秀な人材を法曹界が吸収できるような制度全体についての検討が必要な時期に来ているのかもしれないと思っております。

階委員 最後にお尋ねしますけれども、私は、資料の四、五というのを見ていただきたいんですけれども、法科大学院の教育水準が低いのが一つ不人気の理由ではないかと思っています。

 資料四では、これはちょっと汚くて恐縮なんですが、平成二十四年の司法試験予備試験の結果です。これは法科大学院の修了レベルに達しているかどうかを見る試験なんですが、法科大学院修了者のこの試験の合格率が五・二八%になっています。

 一方、資料五を見ていただきたいんですが、これは平成二十四年の司法試験の方の合格率ランキングです。一番合格率が高いのはどこの法科大学院かなと思って見ますと、実は予備試験を合格した人が一番合格率が高い。これは何を言わんとしているかというと、結局、法科大学院というのは、法科大学院に通っていない人よりも教育水準が低いのではないかということで、ここに私は根本的な原因があると思って、そうだとすると、法科大学院をもっと厳しく教育水準を強化する方向に持っていかなくてはいけない。

 そこで、一つの方策として、今、法科大学院を出ないとなかなか司法試験は受けられない、予備試験をパスすれば受けられるんですが、それにはなかなか大変だということなので、これは競争を促すという意味で、法科大学院卒業という受験資格を撤廃すべきではないかと考えております。この点についてどう思われますか。最後にお願いします。

石田委員長 質疑時間が終了しております。簡潔にお願いいたします。

谷垣国務大臣 多分委員は、その言葉を申し上げるとそれがナンセンスだとおっしゃるのじゃないかと今伺いながら聞いておりましたが、司法制度改革のときに、単に一回の試験で決めるのではなく、プロセスで決めていこうという理念がございました。その理念にも私は捨てがたいものがあるなと思っておりまして、そういう観点からまいりますと、全部それを取っ払ってしまうには私はいささかちゅうちょを感ずるなというのが私の正直な気持ちでございます。

石田委員長 質疑時間が終了いたしました。

階委員 ありがとうございました。またよろしくお願いします。

石田委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

石田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。西根由佳さん。

西根委員 日本維新の会、西根由佳と申します。ありがとうございます。

 地元は大阪二区でございます。本日は、人生初の委員会質問ということで、大変緊張しております。

 実は、私の知人が京都出身でして、学生時代、谷垣大臣の選挙を手伝っていたそうです。午前中、階委員もおっしゃっていましたが、その知人も谷垣大臣はとってもいい方だと言っていましたので、ぜひ温かい御答弁をよろしくお願いいたします。

 きょうは、大臣所信に対する質疑ということで、日ごろ私が法務行政に関し疑問に思っていることを何点かお聞きしたいと思います。午前中の質疑と多少かぶるところもあるとは思いますが、どうぞその点は御容赦くださいませ。

 まず、刑務所関連の質問をさせていただきます。

 府中刑務所で、刑務官が受刑者に覚醒剤を渡したという事案についてお伺いいたします。

 先日の報道によりますと、府中刑務所の刑務官が受刑者に頼まれて覚醒剤を入手し渡したとして、警視庁が刑務官と受刑者を逮捕したとのことです。

 薬物事犯につきましては、脱法ドラッグの取り締まり強化や薬物事犯への一部執行猶予制度の導入など、国が一丸となって薬物事犯の撲滅に取り組んでおります。そういう状況下で、あろうことか矯正施設内で刑務官が薬物を受刑者に与えたという今回の事案は、本当に残念なことです。絶対にあってはならないことだと思います。

 この点につきまして、この再発防止策をどのように考えていらっしゃるのか、どのような防止策をとる予定なのか、お伺いいたします。

西田政府参考人 まず、府中刑務所の事案を発生させまして、御迷惑、御心配をおかけしまして、まことに申しわけございませんでした。

 お答えいたします。

 再発防止策につきましては、大臣からの指示もございまして、まず、緊急業務点検ということで、何点かやらせていただきました。

 一つは、全国の刑事施設において、被収容者の生活する部屋、それから仕事をする工場、そういったところの物品とか、所有している物品につきまして、一斉に点検することをいたしました。

 それからあと、暴力団関係者等、処遇に特に注意を要する者についての処遇の点検も指示をいたしました。

 それから、職員の持ち込むべきではない私物があってはいけませんので、そういった点にも、今回、点検をして、今やっているところでございます。

 次に、矯正管区長、これはブロック機関の長でございますけれども、これを緊急に招集いたしまして、本件の事案を詳細に伝えました。そして、今回の緊急業務点検について、遺漏のないようにしっかりとやるように指示をいたしまして、かつ、管内施設の、それがきちんとできたかどうかフォローアップをするように指示をいたしました。

 今後さらに講じる施策でございますけれども、当該受刑者、当該職員が今、捜査機関による捜査を受けておりますので、その全容がわかりましたら、問題点を抽出いたしまして、新たな対策を講じたい、こんなふうに考えておるところでございます。

西根委員 覚醒剤を渡した事案に関しては、今回が初めてと伺っております。しかし、これまでも、刑務官が受刑者に携帯電話を貸したり、お酒やたばこを渡したりという事案は起きてきました。そのたびに防止策はとられてきていたはずなんですけれども、これまでの防止策と比べて、今回の防止策に新しい工夫というのはあるのでしょうか。お伺いいたします。

西田政府参考人 お答えいたします。

 不祥事案があった場合には、今回の籠絡事案につきましても、案件が全て事情が若干異なるものですから、その都度、こういった不祥事案が起きた際にはこれをきちんと調査いたしまして、その事案事案に応じた再発防止策を指示するということをやっております。

 現場施設におきましては、これを職員研修とか協議会とかそういったことで一般職員にまで徹底をさせまして、それで、監督機関であります矯正管区、矯正局におきましては、これがきちんとできたかどうか、その実施状況につきまして点検をするということをやっております。

 したがいまして、今回の案件につきましても、従来どおりの指示、再発防止策がいいのかどうか、これは捜査の全容がわかりましたら、そこの点はきちんと整理をいたしまして、再度事細かな指示をしたい、こんなふうに考えております。

西根委員 同じようなことが繰り返されるというのは、これまでの防止策に余り効果がなかったということを示しているのではないかというふうに思っております。

 例えば、先ほど防止策の中で、管区長、ブロック長を集めた検討会議をなさっているということですが、この会議、要はブロック長という内部者だけの会議となります。そうではなくて、有識者や民間人など外部の意見も取り入れた形での検討会議、このようなものを行う必要があると思うのですが、その点につき大臣の御所見をお伺いします。

谷垣国務大臣 今回の事件は、刑事施設の中で刑務所の検察事務官が覚醒剤を渡したという疑惑で、今、私たち自身も静岡県警の捜査の対象になっているわけでございます。

 したがって、この事件そのものに関しては私どもは多くを語るわけにはまだまいりませんが、事実だとすれば極めて遺憾な事件でございまして、委員があろうことかとおっしゃいましたけれども、まさにそのとおりでございまして、深刻に受けとめております。

 したがいまして、先ほど矯正局長が答弁しましたように、緊急に行うことのできる措置はまず講じろということで、やってもらいました。それから、それ以外の不適正処遇防止も徹底を図るように指示したところでございます。

 そして、今後こういうようなことを繰り返さないようにするためには、あらゆることを考えなければなりませんが、今委員の御指摘も踏まえまして、外部の方々の意見も必要によっては聴取して、対応を講ずることも検討させたいと思います。

 ちょっと間違えまして、府中刑務所でございます。府中刑務所の刑務官でございます。

西根委員 積極的な御答弁、ありがとうございます。

 防止策を検討するに当たりましては、私は、刑務官も弱さを持つ一人の人間だという視点を持つことが重要だと考えております。

 例えば今回の府中刑務所の事案は、刑務官が受刑者に心理的に服従してしまったことに起因しております。きっかけは受刑者の違反行為を刑務官が見逃した、その小さなきっかけから、受刑者にそのことを上司に報告するぞとおどされたり、また受刑者から暴行を加えられるのではないかというそういう恐怖感、これを持ったことから心理的に受刑者に服従してしまって覚醒剤を渡した、このように理解しております。

 刑務官というのは、刑務所という閉じられた空間で犯罪を犯した人に向かうという大変にストレスのかかる仕事です。刑務官のメンタルケアが必要ではないかと思いますが、現在の刑務官のメンタルケア制度についてお伺いいたします。

西田政府参考人 お答えいたします。

 確かに、刑務官は非常に過酷な勤務をやっておりますので、そういったことも必要だろうということはございます。

 したがいまして、現在も、幹部職員等、監督者を窓口といたしまして身上相談制度を設けております。また、これも窓口をあけているだけではだめですので、幹部の方から積極的に定期的に面接をするといったことも今やっております。

 それからあと、現場施設だけではなくて、矯正管区、矯正局にも同じように幹部職員を窓口としまして身上相談制度を設けまして、担当業務や日常生活における職員の悩み等を相談できるような体制を整えているところでございます。

西根委員 矯正局に窓口があるということ、それから上司への相談制度があるということは伺っております。ただ、その上司もメンタルケアのプロではありません。また、刑務所というのは上命下服の構造です。つまり、規律を守るために部下は上司のことを絶対に聞かなければいけないという特殊な服従構造にあります。その中で上司への相談制度というものが果たして機能するのかというのは、極めて疑問を感じざるを得ません。

 この点、予算が必要な話にはなってしまうんですけれども、できれば外部のプロのメンタルケアの専門家、これが刑務官にかかわる制度というものをひとつ御検討いただけないかと思っております。この点につき御所見を伺います。

谷垣国務大臣 今、刑務所の職場の規律からいうと、なかなか上司に相談できるかというお考えをお示しいただいたわけです。

 ただ、私、今度の事案を見ていますと、やはり、ごく初期の軽微な段階に上司に相談をする、こういうことをしていればずっと違ったと思うんですね。ですから、内部でやはり相談窓口なり、何かあったときには上司に直ちに相談して、こういうことになったがどうしようかというようなこと、そういう職場環境をつくっていくことも一方で極めて大事だと私は思っております。そのことも既に現場には指示をしたところでございます。

 しかし、あわせて、心理的なケアも必要ではないか、専門家によるケアも必要ではないかと。この矯正局の職員の中には臨床心理士などの資格を持った人間もおります。ですから、今、外部とおっしゃいました。そういう相談の窓口にどういう人をまた配置するかということも含めて検討させていただきたいと思います。

西根委員 こちらについても積極的な御答弁をいただき、ありがとうございます。

 刑務官のメンタルケアは本当に大切だと思いますので、よろしくお願いいたします。

 メンタルケア制度以外にも、刑務所内の不祥事や事件をなくすためには、刑務所の仕組み自体を改善する必要があるのではないかと考えております。例えば、刑務官と受刑者の組み合わせが固定化されておりますと、そこで癒着が起きて不正が起きやすくなります。

 この点につき、刑務官の配置、刑務所間の異動について現在どのようになっているか教えてください。

西田政府参考人 お答えいたします。

 現在、刑務官の異動につきましては、職員個人の勤務実績とか適格性、つまり、当該職員の質、勤務成績や能力等に加えまして、本人の希望とか家族の事情等を総合的にしんしゃくいたしまして、任命権者が判断して実施しているというところでございます。

西根委員 今のお話ですと、基本的には任命権者の裁量で動かしているという理解でよろしいんですよね。

 もちろん、それぞれ、各刑務所での勤務で、家族がありますから簡単に転勤等も難しい事情はあるかもしれませんが、せめて刑務所内での配置がえなどを私は制度として確立するべきだと考えております。例えば民間でも、お金を扱うなどの不正の起きやすい部署では、定期的に、二、三年ごとなど、配置がえをしていると聞いております。

 そのような仕組み、制度的な異動、配置がえを検討していただく必要があると思いますが、この点につきお伺いいたします。

谷垣国務大臣 局長からも答弁がございましたけれども、もう少し詳細に申し上げますと、今、課長以上の幹部職員については、おおむね三年に一回程度の頻度で、施設を異にする異動を行っております。それから、係長以下の職員についても違う施設に持っていくという異動を行っておりますが、特に、採用五年目から十五年目、その職員については、少なくともほかの施設を一回は経験させるということをさせるため、これも全部できているわけじゃないんですが、可能な限りそういうことをやっております。それから、同一施設内においても、長期間同じ仕事を行うことにならないよう、少なくとも年に一回所内配置を行うようにしているところでございます。

 今おっしゃいましたように、勤務地の事情もございますので、全ての刑務官について定期的にというのはなかなか困難もございますが、引き続き、今のようなことを考慮しまして、そういう意味での人事管理上の必要性に基づいた異動をして、各施設内においても定期的に所内配置を見直していく、こういうことで、同一箇所において勤務をする弊害を防ぐようにいたしたいと思います。

西根委員 よろしくお願いいたします。

 それでは、再犯防止について話を移してお伺いいたします。

 まず、再犯、全犯罪を通じてお伺いいたします。

 このことに関しましては午前中にも質疑がありましたが、平成二十四年版犯罪白書によれば、再犯者の人数自体は減少傾向ですが、再犯者の比率は平成九年から一貫して上昇傾向です。平成二十三年は四三・八%となっております。再犯防止は重要な課題で、一部執行猶予制度に関する法案なども提出予定となっております。

 午前中にも指摘がありましたが、再犯防止については、出所者の就労支援、そして住宅確保が重要との指摘がございます。午前中とも少しかぶりますが、就労支援の取り組み状況についてお伺いいたします。

齊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 法務省では、平成十八年度から、厚生労働省と連携いたしまして、刑務所出所者等総合的就労支援対策というものを実施しております。

 その中では、刑務所出所者等に対しまして、職業相談とかそれから就職あっせん等もしておりますが、例えばトライアル雇用といったもの、これは、刑務所出所者を試行的に雇用してくだすった雇用主に対して、一定期間、一定の奨励金をお支払いするという制度もございます。

 また、身元保証制度というものもございまして、これは、雇用された刑務所出所者等が雇用主に対して業務上損害を与えたような場合、一定額を限度として賠償するという制度でございまして、身元保証業者に対する保証料の助成を行っているところに対しまして、法務省から助成金を出すという形での事業を行っているところでございます。

 さらに、やはり、前科があるということをわかりながら雇ってくださるという、いわゆる協力雇用主さん、この方々が非常に重要でありまして、その方々の増加ということに力を入れておりまして、おかげをもちまして増加傾向で、平成二十四年の四月現在で一万近い事業主が協力雇用主ということで登録していただいているわけでございます。

 そして、この協力雇用主の方々がさらに雇用しやすいようにということで、平成二十五年度の予算案におきましては、例えば職場定着協力者謝金といったようなものも入れております。これは、協力雇用主さんが刑務所出所者等を雇用していただいた場合、いろいろ生活関係なんかも指導していただく、仕事もオン・ザ・ジョブ・トレーニングでいろいろ指導していただく、そして、その生活ぶりとか仕事の状況などについて定期的に保護観察所にも報告していただくというようなことをしていただき、保護観察所はそれをまた本人の改善更生に役立てるということに使うというふうに考えております。そういうことに対する謝金などについても、今、予算案の中に入れていただいているということでございます。

 さらに、平成二十三年度から、更生保護就労支援モデル事業というものを全国の六庁で始めさせていただいております。これは、就労関係の専門の民間の事業者に対しまして就労関係の仕事を委託いたしまして、刑務所在監中からいろいろ相談に乗ってもらう、就職あっせんもする、勤めてからはさらに定着に向けた支援もしていただくという事業でございます。非常にきめ細かい、寄り添い型の就労支援を実施させていただいているということでございます。

西根委員 ありがとうございます。

 午前中の答弁でもありましたが、今出てきた制度の中の、刑務所出所者等総合的就労支援対策、これの就労実績が六年間で一万二千六百人、つまり、年換算ですと二千百人ということです。

 他方で、これも午前中の答弁にありましたが、大体年間出所者数が三万人弱としますと、年に三万人弱出所者がいて就労実績二千百人、これは決して高いとは言えません。財源がない中で、きめ細やかな対策をとられていることには大変敬意を表しますが、やはりボリュームが足りないと思います。

 この点、公的資金を投入してというのは、財源がない中、限界があると思います。ですから、午前中にも話が出ましたような、民間資金を活用する方法、これが大切と考えております。

 この点につき、私の地元の大阪では、日本財団とお好み焼きの千房を初めとした企業七社が組んで、職親プロジェクトという取り組みを立ち上げました。これは、刑務所や少年院を出た人に働く場を提供するための取り組みです。このプロジェクト立ち上げに当たっては、現場の保護官や保護司さんが働きかけもなさったと聞いております。

 こういった日本財団の取り組みのような民間資金を活用した就労支援の取り組み、これがぜひ全国に広がるといいなと思っております。

 この点につきまして、国が主導して推進するつもりがあるのか、法務大臣の御所見をお伺いいたします。

西田政府参考人 お答えいたします。

 今おっしゃいました職親プロジェクト、これは矯正施設から出ます出所者の就労等を支援するものでございまして、社会復帰するに当たりまして非常に有意義だというふうに私ども考えております。

 また、再犯防止にもこれは非常に役に立つのではないかと考えておるものですから、協力したいと思っておりますけれども、この職親プロジェクトはまだ始まったばかりでございまして、今後拡大、充実していくためには、まず、成功事例を一つでも多くつくりたい。これは千房の社長もおっしゃっているんですけれども、この成功事例を一つでもつくりたいということがございますので、当局といたしましても前向きに協力してまいりたいというふうに考えております。

 以上でございます。

西根委員 ぜひよろしくお願いいたします。

 次は、再犯のうちの性犯罪についてお伺いいたします。

 皆さんも御承知のとおり、犯罪を繰り返す傾向の強い犯罪として性犯罪が挙げられます。

 これにつきましては、午前中の質疑にも出ましたが、刑務所内の処遇プログラムに関して改善の方向を今検討していただいているとのことです。

 刑務所内のプログラム以外に、仮釈放になった者が保護観察中に受けることのできる社会内プログラムというのもあると聞いております。これに関しましては、法務省の分析結果で、一定の再犯防止効果があるとの結果が出ております。

 大変うれしいことなんですが、このプログラムは仮釈放になった人しか受けられません。つまり、保護観察がついている人しか受けられない。そうしますと、満期釈放になって保護観察がつかない人、この人についてのプログラムは現在あるのでしょうか。お伺いいたします。

齊藤政府参考人 お答えいたします。

 今委員おっしゃったとおりでございまして、現在実施しております性犯罪プログラム、これは保護観察中の指導監督の一環として、いわゆる特別遵守事項という形で、事実上、義務的に受けさせているものでございます。

 満期出所者の方につきましては、当然のことながら、保護観察を実施できませんので、この性犯罪プログラムのようなものは現状においては実施していないというのが実情でございます。

西根委員 この点につきまして、私の地元大阪では、昨年、大阪府子どもを性犯罪から守る条例というものを施行いたしました。これは、子供への性犯罪の前歴者に居住地などの届け出を義務づけた上、社会復帰支援として、その性犯罪前歴者が大阪府独自の更生プログラムを受けられるというようにしたものです。

 刑務所を出た後の性犯罪前歴者の取り扱いにつきましては、諸外国でもいろいろ対応されております。例えば、アメリカでは情報公開がされております。私は、情報公開が必ずしもよいとは思っておりませんが、ただ、満期出所者にも更生プログラムを受ける機会をつけるなど、何らかのアプローチが必要ではないかと考えております。

 出所後の性犯罪前歴者への取り組みにつきどのようにお考えか、教えてください。

谷垣国務大臣 午前中も田嶋委員の御質問にも御答弁を申し上げましたけれども、この性犯罪者の再犯防止というのはなかなか難しいんですね。だから、諸外国の事例も、午前中にも御答弁しましたけれども、諸外国のいろいろな試みも我々は参考にしながら工夫をしていかなきゃいけない。

 そこで、昨年七月二十日に、再犯防止に向けた総合対策というものの中で、一つは、性犯罪者に対する諸外国の取り組み事例、今申し上げたことですね、これを参考とした新たな対策を考えていこうというのが一つ。

 それからもう一つは、効果の検証等も踏まえて、性犯罪者を含む満期釈放者等に有効な支援を行うために、既存の制度や枠組みにとらわれない新たな施策を検討しなきゃならないということで、今やっているわけです。

 要するに、今までの建前を申し上げますと、満期で釈放されると、一応、刑罰という責めを果たしたということになりまして、そういう言葉が適当かどうかわからないけれども、晴れて外に出たということになりますので、どういうことができるのかはいろいろ難しい点がございます。

 そういった点も含めて、関係省庁とも連携しながら、より一層再犯防止に向けた効果的なプロジェクトは何か、そういった協議を煮詰めていきたいと思っております。

西根委員 ぜひお願いいたします。

 続きまして、法務省組織のあり方についてお伺いいたします。

 実は今回の質問準備に当たりまして、法務省内の、今来ている皆様も含めまして、たくさんの局、官僚の方からヒアリングを受けました。感じましたことは、巷間よく言われていることではありますが、やはり縦割りの弊害があるのではないかということです。

 例えば、刑務所内の処遇は矯正局、出所後の処遇は保護局というふうに局が分かれておりますが、本来犯罪者の処遇は、刑務所内、社会内で一貫して行うべきものです。特に、今国会では一部執行猶予制度法案の成立が見込まれるなど、刑務所内と社会内での連携はさらに重要性を増してきております。

 現状では、こういう点に関しまして、矯正局と保護局の連携という形でカバーがなされているようですけれども、一貫性を持った処遇を行っていくためには、組織のあり方をより機能的なものに見直す必要があるのではないかと考えております。この点につきまして、法務大臣の御所見をお伺いいたします。

谷垣国務大臣 組織のあり方は、いろいろな考え方が可能だと思うんですね。昔は保護局と矯正局は、随分昔の話でありますが、一つの局であった時代もございます。今、保護局と矯正局に分けておりますのは、やはり施設内とそれから施設を出た後、それから、施設内の問題でも、仮釈放の適否というようなことは、矯正にいる人を仮釈放するかどうかというのは矯正の中で判断させないで保護に判断させる、つまり、なあなあにならないようにしている、チェックをしているということもございます。

 今委員は、縦割りの弊とおっしゃいましたね。これは事務当局と相談したわけでも何でもないんですが、今、縦割りの弊というのを指摘するのは非常に多うございます。だけれども、私自身は、縦割りというのは官僚組織には不可避のものだと思います。つまり、この組織がどういう権限と責任を持っているか、はっきりしないと官僚組織というのは動かないと思います。

 したがって、基本に、権限と責任、つまりその弊害は縦割りと言われることです。それをどうやって弊害がないようにしていくか、つまり連携を図っていくかというのは私は基本なのではないかと思いまして、これはいろいろな考えがあると思いますが、私は今のところそう考えまして、矯正と保護、それぞれの職責、権限と責任をしっかり果たしながら、連携を果たすようにという方向で、弊害が出ないような、弊害をカバーしていくようにしたい、今のところはそのように考えております。

西根委員 もっともな御意見だと思います。いえいえ、賛成したという意味ではございません。

 確かに、仮釈放の決定権を矯正局ではなく保護局に置いているということは、公平さという意味で意味があるんですが、別にそこの権限だけにこだわるわけではなくて、保護局と矯正局の中にあるいろいろな業務を全て並べたときに、どの組み合わせで局にまとめておくのが合理的かということを改めて見直すのもよいのではないかというふうに申し上げております。

 日本維新の会は道州制を目指しております。皆様御承知のとおりと思います。道州制になった場合、多くの官庁が地方に移りますが、法務省は中央に残ります。けれども、法務省も、今のままの形に残すのではなくて、今申し上げたような観点から、機能的な形で中央に残すとよいなというふうに思っていると申し上げて、この関連の質問は終わらせていただきます。

 続きまして、外国人高度人材に対するポイント制による出入国管理上の優遇制度についてお伺いいたします。

 先日の報道によりますと、法務大臣は日本社会が持続的に発展していくためには積極的に高度人材を外国から受け入れる必要があると発言され、高度人材に対する出入国管理上の優遇措置を拡大するとのことでした。アベノミクス第三の矢である成長戦略の一環として高度人材の優遇措置は大変重要であり、法務大臣の御決断には敬意を表します。

 ただ、優遇措置の中身を拝見いたしますと、やや踏み込み不足があると感じました。

 二点ございます。

 一点目は、高度人材の親の帯同についてです。

 この制度は、子育て支援の観点から、高度人材が子供を帯同する場合に、その子供の世話を頼むため、高度人材の親、つまりおじいちゃん、おばあちゃんを帯同することを認めるものです。発想自体はとてもよいと思うのですが、この優遇措置を受けられるのは三歳未満の実子に限るとされております。

 まず、三歳未満という条件が非常に狭いです。親に子供を見てもらいながら働く場合、少なくとも小学校就学まで、つまり六歳ないし七歳ぐらいまでは見てもらいたい、こう思うのが普通だと思います。

 また、実子に限るという要件も問題があります。日本では養子縁組が余り定着はしておりませんが、海外に目を向けますと、実子と養子を区別していない国も多くあります。ですから、実子に限るというのもいかがなものかと思っております。

 三歳未満の実子に限るというこの条件の妥当性について、法務大臣の御所見をお伺いいたします。

谷垣国務大臣 委員が御指摘になった親御さんの帯同、これは出入国管理及び難民認定法の既存の在留資格では認められていないものなんですが、高度人材に対するポイント制を導入したときに、共働きの高度人材外国人の世帯に対する子育て支援という観点も入れなきゃいかぬ、それで優遇措置の一つとして一定の要件のもとでそういう制度をつくったわけなんですが、それが狭いという御指摘ですね。

 それで、去年の五月からこの制度を始めているんですが、今の優遇措置の要件は、制度設計のときに関係省庁との協議を踏まえて、今のところ、こういうふうにして三歳未満の実子に限るとしたわけですが、この制度につきましては、制度開始後一年をめどに実施状況を分析して、その結果を踏まえて制度の見直しについて検討するとなっております。今の委員の御指摘も踏まえて、どういうお声があるのか、そういうことを十分に踏まえて検討していきたいと思っております。

西根委員 よろしくお願いいたします。

 二点目の問題は、高度人材が帯同する配偶者についてです。

 配偶者の要件は特に入管法に定めがありません。したがいまして、民法の解釈により異性の配偶者のみを認める運用だと聞いております。法務大臣、この理解でよろしいでしょうか。

谷垣国務大臣 入管の処理の上では、日本国の国内法によって配偶者と認められるものを配偶者として扱っているということでございます。

西根委員 ということは、日本においては異性の配偶者ということに今はなっておりますから、異性の配偶者に限られるということになります。

 しかしながら、世界に目を転じますと、ゆっくりしたスピードではありますが、同性愛者の権利を保障する方向に動いております。二〇〇一年にオランダで初めて同性婚が認められ、結婚に近い制度を持つ国も合わせると、現在では同性カップルを法的に認める国が二十カ国を超えております。

 オバマ大統領も二期目の就任演説で、歴代大統領としては初めて同性愛者の権利の保障が課題であることを示唆いたしました。同性愛者など、いわゆるLGBTと呼ばれる人たちの権利を保障するのが世界の流れとなっております。現在、G7のうち、国または一部の州で同性婚やパートナーシップの保障が行われていないのは日本だけとなっております。

 ここで、皆様御承知のこととは思いますが、念のため、LGBTという用語について説明させていただきます。

 LGBTとは、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、それぞれの頭文字をとった総称です。レズビアン、ゲイは、同性に対して性的指向を持つ人。バイセクシュアルは、同性、異性両方に性的指向を持つ人。トランスジェンダーは、自分の性別についての自分の認識が身体的な性別と一致しない状態を指す包括的な概念でございます。今国会の参議院予算委員会でもテーマに出ました性同一性障害の方は、トランスジェンダーのうち医学的診断を受けた方となります。

 調査によって数値は多少変わるんですけれども、LGBTはおよそ人口の五%程度いると言われております。二十人に一人という割合ですので、決して珍しいことではありません。

 高度人材に話を戻しますと、一般に、LGBTにはグローバル人材の素養を持った人が多いと言われております。

 ここで法務大臣にお伺いします。これは質問通告していなかったかもしれませんが、現在、同性愛者であることを公にして日本に駐在している外交官がいるのを御存じでしょうか。御存じならば、その方についてお教えください。

谷垣国務大臣 そういう方がおられるのは事実でございます。

西根委員 済みません、突然質問して申しわけありませんでした。

 その方は、大阪・神戸アメリカ総領事のパトリック・リネハンさんという男性です。パトリックさんには、カナダで同性婚をしたカネグスケさんという男性のパートナーがいらっしゃいます。

 お配りした資料一の新聞記事にもありますとおり、このカネグスケさんに対して、二〇一一年九月に、日本政府が外交官の配偶者としてビザを出したようです。つまり、外交官については同性の配偶者が配偶者として認められたということです。

 ここで法務大臣にお伺いいたします。この扱いは外交官としての特例なのでしょうか。それとも高度人材の同性配偶者にも適用され得るものなのでしょうか。

谷垣国務大臣 これは、外交関係に関するウィーン条約に基づいて、「外交官の家族の構成員でその世帯に属するものは、」という扱いの中で認められているわけでございまして、外交官以外に及ぼしている措置ではありません。

西根委員 そうですか。残念なお話だと思います。

 今回の高度人材の優遇措置では、高度人材の配偶者として認められれば、その配偶者の日本での就労がこれまで以上に広く認められるということになっております。しかし、異性の配偶者に限られるとなると、せっかく優遇措置を拡大しても、同性配偶者を有する高度人材が日本で働くことを敬遠するのではないか、このように危惧しております。

 この点、激しい競争にさらされているグローバル企業は先を見て動いております。ゴールドマン・サックスは、三、四年前からLGBT学生向けの就職説明会を始めました。日本IBMは、一昨年から同性婚カップルにも結婚祝い金の支給を始めました。グーグルは、同性パートナーも扶養家族と同じ福利厚生サービスを受けられるようにいたしました。

 これらの取り組みは、いわゆるLGBTの人に対して無理解なままでいると優秀な人材を逃してしまう、こういう危機感からグローバル企業が始めていることです。

 企業がグローバル競争を勝ち抜く、その環境をつくるのが政府の役割と考えております。最終的にはLGBTの方の権利が保障される社会をつくるのが理想ではございますが、まずは、成長戦略の一環として、高度人材の同性配偶者の帯同を御検討いただきたいと思います。この点につき御所見をお伺いします。

谷垣国務大臣 やはり、成長のためにはどのような制度が必要かというのは、これは極めて重要な視点であることは私も否定いたしませんが、現在、日本の家族法、親族法等々が委員のおっしゃるような方向ではないというのは、やはり日本人の考える家族観と申しますか、そういうものが背景にあるというふうに私は思っております。

 今後それがどういう議論になっていくかというのは、これはまたこれからの課題でしょうが、少なくとも、現状においては、私どもは、今の日本の民法あるいは日本の入国法に従って判断をするという以上にはちょっとお答えができないわけでございます。

西根委員 残念ですが、この件に関しましては、また今後も質問を続けていきたいと思いますので、まずはその御答弁で理解いたしました。

 それから、LGBTに関しまして新しい情報が入りましたので、直前の通告ではありましたが、一つ質問をさせていただきます。

 昨日の中日新聞に、このような記事がございました。

 石川県などの採用試験、人権尊重に逆行。同性に引かれるか、女性として生まれたかったか、石川県などの教員・行政職員採用試験で、性的指向を尋ねる適性検査が続けられていることがわかった。性同一性障害や同性愛などの志望者の人権にかかわるとして、関係者団体は改善を求めているが、採用側の腰は重い。性的指向による差別根絶を訴える法務省も問題視しており、一二年六月の衆院法務委員会では滝法相が、当時の滝大臣が、不用意な導入がどれだけ人を傷つけるか認識が薄かったと答えた。ただ、地方自治体までには十分浸透していない。このような記事です。

 この記事にも出てきましたが、昨年六月の法務委員会で同様の問題が既に指摘されております。

 この委員会で指摘された事案は関東の事案と伺っておりますが、これにつきまして、二〇一三年三月一日の法務省報道発表の、平成二十四年における人権侵犯事件の状況についてというものに記載があります。ここに、人権侵犯事件として法務省が位置づけて記載をしております。この発表資料では、翌年度の試験では配慮が行われたと書いておりました。確かに、その当該行政団体では配慮がされたのかもしれません。しかし、同じことが別の地方公共団体で起きているという現状があります。

 確かに、地方自治体の試験問題には法務省の権限は及ばないのかもしれませんが、LGBTの方、性的マイノリティーの方への差別、偏見を解消することは、法務省の主な人権課題として掲げられているというふうに考えております。

 このような就職試験で、社会に出ようとしている若者がその入り口でつまずくというのは、とても胸の痛くなることだと思います。人材を損失するということは、国家にとっても損失だと思います。

 この点に関しまして、事前の通告でありましたので感想レベルで結構ですので、法務大臣の御意見をお伺いしたいと思います。

谷垣国務大臣 今委員がおっしゃったような報道があるのは承知しております。

 そして、一般論で申し上げますと、法務省の人権擁護機関でも、これは法務省の文書でございますが、「法務省の人権擁護機関では、性的指向を理由とする偏見や差別の解消を目指して、啓発活動や相談、調査救済活動に取り組んでいます。」このように記述しておりますが、法務省の基本的スタンスはそういうことでございます。

西根委員 はい、わかりました。その方向でぜひお願いいたします。

 続きまして、話題をかえまして、ひとり暮らしの御老人の孤独死にまつわる問題についてお伺いいたします。

 皆様御承知のとおり、ひとり暮らしの御老人が年々ふえております。そして、そういった御老人が孤独死にならないこと、これを防ぐのがまずの課題ではありますが、そこは法務委員会の所管ではございませんので、ここでは、気の毒にも孤独死を遂げられた御老人の遺品の整理の問題についてお伺いいたします。

 私の地元の大阪でも、公営住宅で御老人が孤独死することが増加しており、遺品の整理が問題となっております。

 お配りした資料二の記事をごらんいただいてもわかるように、このような公営住宅で孤独死を遂げられた御老人の遺品の整理には、各自治体、苦慮をしているようです。

 ここでお伺いいたします。身寄りのない、相続人のいない方が亡くなった場合の財産処分の規定を教えてください。

深山政府参考人 相続人がいない方が死亡した場合の相続財産の管理に関する制度として、民法上、相続財産管理制度がございます。

 この制度は、相続人がいないか、あるいはその存否が不明な場合に、利害関係人または検察官の申し立てによって家庭裁判所が相続財産管理人を選任し、家庭裁判所の監督のもとで相続財産管理人が相続財産を清算して、最終的に残った財産があれば国庫に帰属させる、こういう制度でございます。

石田委員長 質問時間が終了していますので、簡単に。

西根委員 はい、済みません。西田議員が時間を譲ってくれるとのことですので、少し続けてやらせていただきたいと思います。申しわけありません。

石田委員長 それでは、西田さんの範囲でよろしくお願いいたします。

西根委員 はい、済みません。ありがとうございます。

 今お話がありましたように、民法九百五十一条から九百五十九条で処理をされます。このとき、相続財産管理人の報酬は、民法二十九条二項により、相続財産から支払われるとなっております。しかし、このような老人の場合、相続財産がない、または少なくて、相続財産管理人の報酬が支払えない場合があります。その場合どうなるかと申しますと、これは運用で、申立人が相続財産管理人の報酬を支払うというふうになっていると聞いております。

 ということは、公営住宅で亡くなった方の遺品を整理するために、自治体が家庭裁判所に相続財産管理人の選任を申し立て、でも、その管理人の報酬が残された財産からは払えない、こういう状況のときは、自治体が管理人の報酬を負担しなければならなくなります。また、仮に報酬相当分の財産が残っていたとしましても、相続人を捜している間は、亡くなった方の部屋をそのままにしておかなければなりません。この間、公営住宅には手をつけられないということになります。

 このように、公営住宅で財産のない御老人が孤独死した場合、民法九百五十一条以下の規定の適用は実効的ではなく、かといって、ほかによりどころとなる法律もないという状態になっております。悲しい現実ではありますが、今後こういった事案がふえると見込まれております。

 孤独死を防ぐ対策が先決なのですが、まずは政府として、孤独死なされた御老人の遺品整理につき、法律の制定も含めて、法務の所管かどうかもちょっと判然とはいたしませんが、御検討いただけないかと思っております。法務大臣の御所見をお伺いいたします。

谷垣国務大臣 確かに、相続財産管理制度は、相続人がいないとき、いるかいないかわからないとき含めまして、相続財産全体、債務も含めて整理をしてしまおうというものですから、かなり重い制度なんですね。ですから、ある程度財産のある人だったら、それは十分役に立ちますが、孤独死をするような身寄りのないお年寄り、ほとんど財産も持っておられないような方に対しては、やや制度が重厚過ぎるというか重過ぎるというのは、委員の問題意識は私もよくわかります。

 では、いかなる手だてを講ずるかということになると、まだ私も十分考えておりませんけれども、なかなか法律上も難しい問題があるのではないかなと思いますが、これは関係省庁と連携しながら、どういうことを考えていったらいいか、ちょっと今まだ十分お答えはありませんが、検討してまいりたいと思います。

西根委員 長く、済みませんでした。どうもありがとうございました。

石田委員長 次に、西田譲君。

西田委員 日本維新の会、引き続きまして、西田譲と申します。

 西根さんの初質問でございまして、理事の先生方、多少時間を余分にいただきましたこと、本当にありがとうございます。私がいただいておった時間の範囲内でお許しいただきましたこと、感謝申し上げます。

 さて、谷垣大臣、国家公安委員長もなされ、財務大臣もなされ、そして法務大臣をされる、まさしく偉大な大臣でいらっしゃると私は思っております。自民党の県議時代に、谷垣大臣と今後の自民党についてというお話を実はさせていただいたことがありまして、そのことを思い出しながら、きょうは質問を考えておったところでございます。

 さて、私の方からは、大臣の所信に対する質問ということでございますけれども、法務省所管の全体の中で、夫婦別姓についての大臣のお考えをお聞きしたいと思っております。

 最近でございますと、平成十九年、内閣府の調査でございますけれども、反対が三五%、賛成が三六・六%、半賛成のような方々が二五・一%という数字が上がってきているわけでございます。

 また、その賛成の主な理由としましても、職場上、都合がよくなる、職場上、旧姓を名乗ることが法的根拠をいただくことでやりやすくなるといった御意見であったり、もしくは、これは認めてもそんな問題がないんじゃないだろうか、私から言わせれば、これは誤解であろうかなとも思うんですけれども。さらには、出生率の向上につながるという賛成の根拠もあるわけでございますけれども、どうして出生率の向上につながるのかわからないわけでございます。

 まず、大臣の、この夫婦別姓制度導入に対してのお考えをお聞きできればと思います。よろしくお願い申し上げます。

谷垣国務大臣 西田委員とこういう形で議論をさせていただくことになって、大変うれしく思っております。

 それで、選択的夫婦別姓制度というのに関しましては、個人の意見はとにかくとして、法務大臣としてはなかなか発言しにくうございます。それは一つは、私は、平成八年の法制審議会答申、もう大分前になりますが、そういう答申をいただいている立場を相続しているわけでございますので、一つはそういう立場がございます。

 しかし、他方、今委員も引用されましたけれども、この問題については、国民の意見は極めて分かれております。そして、家族がどうであるべきか、家族の形態がどうであるべきかというのは、やはり国民生活、国民のいろいろな生活の一番基本でありますから、進めるのがいいのか、進めない方がいいのか、これはいろいろ御議論があるんだろうと思いますが、少なくとも、多くの国民が、なるほど、俺たちの家族というのはこうでなければいけないよねという形で持っていかないと、いろいろな混乱が起こるんだろうと思います。

 今、これは定期的に世論調査をしておりますが、大体横ばいといいますか、やや、否定的な意見は、これは微増だと思いますが、まだ微増という段階かなと思いますので、私は、そういうことを踏まえながら、平成八年の法制審議会答申を受けておりますが、そういう立場も十分踏まえなければいけない、このように考えております。

西田委員 ありがとうございます。

 まさしく平成八年の答申のお話をいただきまして、大臣のお立場の御説明もいただきました。

 平成八年の答申ということでございましたけれども、このときの答申は、夫婦別姓だけではなくて、夫婦別姓にあわせて、離婚手続の簡素化、そういったことも答申の中にあったと思われますけれども、全体の印象といたしましては、これは家族制度の規制緩和につながるような民法改正であったように思うわけでございます。我が日本維新の会は、規制緩和、大変賛成する立場なんですけれども、家族制度の規制緩和というものは、これはまたちょっと違うわけでございます。

 まさしく、昭和二十二年、民法改正でございますけれども、いわゆる家制度の廃止がなされるわけでございます。当時の議論の中にあっても、家制度によって例えば女性が虐げられてきた、もしくは封建体制の残滓であるとか、そういった議論もされておったわけでございますし、有識者の方々からは、まさしくこの家族制度をこれから民主化するんだとか、親子関係、兄弟関係の民主化だとか、どういう意味があるのか、正直、私にはわからないのでございますけれども、当時の憲法二十四条に便乗した議論が、当時の有識者、学者さんたちの間でもなされたのではないかというふうに思うわけでございます。

 こういった昭和二十二年当時の民法の改正、そしてその後のいわゆる経済成長に伴っての核家族化、もしくは女性の社会進出といった、これはブームでございますね、こういったブーム、さらには、今日の膨大な社会保障、子育て支援を含め、高齢者福祉を含め、個人の生活という非常に私的な領域に政府がたくさん介入する時代になってきましたけれども、そういった状況になってきた中で、もう一度、家族の役割をきちんと見直さなきゃいけない、家族の役割をもう一度再生する必要がある、恐らくこれは谷垣大臣も異論のない意見ではないかと思います。

 まさしく、そういった中にあって、この平成八年の答申が家族制度の規制緩和につながるような印象を受けるわけでございますけれども、そうではなく、今後、家族の再生、そういったことに重点を置いてまずこの問題に取り組んでいかなきゃいけないと思うんですけれども、大臣のお考えを、個人的なところでも構いません、お聞かせいただければ幸いでございます。

谷垣国務大臣 私は、余り大臣は個人的な発言をしてはいけないと思っておりまして、だから、先ほど、平成八年の方針を踏まえてというふうに申し上げました。

 今のところは、その答弁でお許しをいただきたいと思います。

西田委員 恐れ入ります。

 この夫婦別姓、平成八年、いわゆる一九九六年でございますけれども、そこでの答申ですけれども、たしか九一年ぐらいから法務省民事局内ではもう議論がされておったのではないかと思うんです。

 当時の民事局参事官室の資料で、夫婦の氏の改正問題についてというペーパーがあるのでございますけれども、ここでも、諸外国の立法例ということで、ドイツ、フランス、イギリス、アメリカ、中国、韓国と。ドイツは、自分の氏がその共通の氏とならなかった一方は、その自分の氏を共通の氏の前に置くことができる。フランスは、妻は自己の氏を保持し、夫の氏を使用することができるものとされている。イギリスは、子は父または母の氏を選択することができる。アメリカでは、妻が夫の氏を称するかどうかは妻の自由であるとの方向が有力になっていると言われている。

 こういった形で、この資料を読む限り、九一年ごろから民事局の方では夫婦別姓への準備が進められておったんだろうなというふうに思うわけでございます。

 ただ、このスタート地点、とても大事だなと思っておりまして、本当にこのドイツ、フランス、イギリス、アメリカが夫婦別氏の方向で議論を進めていたのかどうか。これは通告もしておりませんでしたので、この資料の、立法の根拠となるような諸外国の、この四カ国の実際の立法を今度ぜひお見せいただきたいなというふうに思います。

 また、中国、韓国、これはもともと夫婦別姓の国、つまり、この両国というのは、姓は血族の証明でございますから、諸外国の立法例というのにはそぐわないわけでございます。

 こういう資料が九一年当時から配られておったということは、やはり夫婦別姓に向けての動きがずっと進んでおったんだろうなというふうに認識をいたします。

 さて、家族の話が、きょうの法務委員会では谷垣大臣からもいろいろな局面で出てまいりました。まさしく、家族制度の維持こそ、この自由社会を守っていくにとって不可欠なものであるというふうに考えております。

 私たち維新の会、自立という信条を共有した仲間でございますし、この自立という概念、自由社会の中で育まれるものだと思っております。この自由社会を構成するに当たって、家族という健全な基盤がなければ自由社会はやはり死に絶えてしまうと思いますし、この自由社会を構成する、国家の法秩序であったり社会規範、こういったものは、まさしく家族の中でこそ育まれ、そして、家族の中にあって、パイプラインとして未来へ過去から引き継いでつながっていくものでございます。

 そういった観点から、家族の重視、家族制度の再生、そういった観点で、ぜひ、法務大臣として、民事局の今後の行政を指揮監督していただけますようにお願いを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

石田委員長 次に、椎名毅君。

椎名委員 みんなの党の椎名毅でございます。

 このたび、初当選を果たすことができました。そして、本日、法務委員会におきまして、谷垣大臣や、それから政府参考人の皆様方、諸先輩の皆様方に質問の機会を与えていただきましたこと、大変感謝申し上げたいというふうに存じております。

 大変若輩者ではございますけれども、新人議員ならではの、国民の目線に近いフレッシュな視点で、かつ、法律家としてプロフェッショナルな視点で、国民の負託に応えるべく、精いっぱい委員としての活動を頑張ってまいりたいと思います。どうぞ御指導を賜りますよう、何とぞよろしくお願い申し上げます。

 特に、谷垣大臣におかれましては、法曹の大先輩だということでございますから、今後ともどうぞ御指導いただければというふうに思います。

 日本維新の会のお二方がそれぞれ家族のお話をされていらっしゃいました。このグローバル化と家族というのがどうやら一つのテーマのような気がします。私自身も、きょうは、そのグローバル化と家族というテーマの中で、ハーグ条約というものに関係していろいろ伺っていきたいというふうに思っています。

 私自身が本日提示したい問題意識ということでございますが、現在の法務行政それから司法行政が、この二十一世紀のグローバル化した日本の時代に、日本の社会の中に合っているのか、それとも合っていないのか、変えていく必要があるのかないのか、そういう問題提起をさせていただきたいというのが本日の主な趣旨でございます。

 特に、法務行政というのは、国民の人権保障、それから安心、安全の生活の確保という非常に重要な社会インフラでございますので、公平で国民にとって理解しやすい制度を維持していくことというのは非常に重要だというふうに思っております。

 しかし、これのみならず、このグローバル化した時代の中で、国際的なバランスというものも考えていかなければならないのではないかというふうに考えております。これが本日の私自身の伺いたいことのまず趣旨でございます。

 その前に、まず第一に、谷垣大臣にお伺いしたいと思います。

 政権交代を果たされて、自公連立政権ということが発足いたしまして三カ月たたれたと思います。まず、前政権と一番違うことということを教えていただきたいと思います。

 私自身、前政権がずっと手をかえ品をかえ提出しようとしてきた人権委員会設置法案というものに、ちょっと問題意識を持っております。

 パリ原則というものに従った形で、国家権力、司法、立法、行政のどれからも独立した国内の人権機構というものを三条委員会として設立するということを目途として、さきの野田政権は、解散する直前ではございますけれども、人権委員会法案というものを出しております。

 自民党の公約には、恐らく、これはやらないということを書いてあったような気がいたします。しかし、小泉政権のころから、実は、この類似の制度が出ては消え、出ては消えという形で、人権擁護法案というのが、類似の制度が提案されている次第でございます。

 私自身、国家権力からの人権侵害、先ほどの日本維新の会の西根議員の話にもあったような、例えば地方自治体の採用試験に性的指向を聞く、そういった国家権力による人権侵害というようなところで救済手段が必要だというのは、一般論として基本的には認めるんですけれども、どうも提案されていたこの人権委員会法案というのは、国家権力による人権侵害からの保護という観点というよりかは、むしろ何となく既存の制度に屋上屋をかけている、その結果として、国民の表現の自由等そういったものについて、むしろ弾圧的な効果、萎縮的な効果があるのではないかというような問題意識を持っておりました。

 谷垣大臣に御所見をいただければというふうに思います。

谷垣国務大臣 今、椎名委員がおっしゃいましたように、前政権のもとでもこの法案が出ておりました。それから、自民党時代も、題名は、題名というか法の名前は違いますが、かなり共通の趣旨の法案が出ておりまして、さまざまな議論がございました。

 したがいまして、現在は、これまでなされてきて、しかしなかなか前へ進まなかった、一度議論をもう少し整理してみなければいけないなと私は思っておりまして、そういう段階でございます。

椎名委員 ありがとうございます。

 国民の言論を封殺するような、そういった自由を害するような、そういう組織をつくらないというようなことだけはぜひともお願いしたいというふうにお願いをします。

 それで、本日、私自身の主に聞きたい主題でございます。ハーグ条約というところと、それから今後の家族法制のあり方というところについて主に聞いてまいりたいというふうに思っております。

 谷垣大臣の所信にもございましたけれども、今通常国会におきまして、ハーグ条約、これの締結に伴う国内実施法案というものが議論をされる予定になっております。これは、国際結婚における離婚に伴う国際的な子供の連れ去り、そういったものを論点としているわけでございますけれども、これ以外にも、国内の日本人同士の、また日本人と外国人との国際結婚における子供の連れ去りという問題についても、あわせて問題意識を提示させていただきたいというふうに思っています。

 日本人の国際結婚の件数は、二〇一〇年で三万件を超えております。日本国民の婚姻全体の約四・三%に至っております。そして、日本人の国際結婚における離婚というのは、二〇一〇年には一万九千件ということで、日本人の離婚全体の七・五%ということになっております。二十年前と比べると大分ふえているということでございます。

 こういう状況の中で、外務省のホームページによると、明らかになっているものだけで、外国政府から日本政府に対して提起されている子供の連れ去りの案件ということでございますけれども、すなわち、外国から日本人の女性ないし男性が子供を日本国に連れ帰ってしまったというような事案として提起されているものとして、アメリカで八十一件、イギリスで三十九件、カナダで三十九件、フランスで三十三件というふうに言われております。

 日本がハーグ条約を未締結であるということによって、二〇一〇年にアメリカの下院で、子供の連れ去りの問題について、日本という国を名指しで、連邦議会の下院で非難をする決議が出されたりもしています。千三百二十六号というような、そういう決議でございます。これに伴って、日本が子供の連れ去りを擁護するような国だというふうに考えられてしまうなど、日本の司法に対して国際的な信頼が下がるというような状況も生じています。これ自体は、私自身、日本の国益を最終的に損ねるというふうに思っています。

 まず、前提としてですけれども、今、日本が直面している国際的な子供の連れ去りといった問題、そして、一部には日本の司法が拉致司法などと呼ばれてやゆされている、そういう状況があるやに聞いておりますけれども、現状、どういうふうな事実認識をしていて、それをどんな評価をされていらっしゃるでしょうか。

深山政府参考人 今委員の方から、現状についての御意見がさまざま述べられました。そこで言われたこと一つ一つについて、それが違っているということを申し上げたいわけではありません。

 ただ、この三十年ほどの間に、この条約が効力を発効してからちょうど三十年ですけれども、日本人の国際結婚というのが非常に少なかった時代から、先ほど数字も御紹介あったように非常にふえて、これに伴って離婚も非常にふえたという大きな社会的な変化がございます。

 それに伴って、国境をまたいで不法な連れ去りをしてしまうという事案がまた非常にふえてきた、そういうことが社会的に顕在化してきて大きな問題と認識されるようになったということで、こういった事案、紛争を国際的なルールに従って適切に、迅速に解決する必要性が高いということで、ほかの国からは少しおくれていますけれども、今般、ハーグ条約を締結し、それに伴う国内担保法の整備をする、こういう方針に至ったというふうに承知しております。

椎名委員 ありがとうございます。

 ハーグ条約を締結するということの方向性ということについては、ぜひやるべきだというふうに私自身は思っております。

 そして、これを実施するための国内法の整備、それについて、法律案に具体的な子供の返還の手続というものが定められています。

 先ほど申し上げましたけれども、ハーグ条約の国内法の整備というのは、どういう事案を対象としているかということでございますけれども、日本人の方が国際結婚の離婚に伴って子供を海外から日本に連れ帰ってきてしまった場合、そういう場合を基本的には対象にしております。そして、海外の国を常居所地国と言っているようでございますけれども、そういうところから日本国に連れ去りをした場合において、手続としては、一回、子供を常居所地国と呼ばれるもともと住んでいた国に返還し、その国の家事審判その他家事手続に基づいて、子供の監護権それから親権といった問題、これを解決していきましょうというのが基本的なハーグ条約の内容だというふうに理解をしています。

 このハーグ条約の基本的な内容として、原則としては、子供に一定の年齢要件等、そういうような要件が満たされる場合には、基本的には、もと住んでいた国、常居所地国というところに子供を返還して、それからもとの国の手続でやっていきましょうというのが基本的な立ち位置だと思います。

 しかし、例外要件というのが定められておりまして、例外的に常居所地国に子供を返してはいけない事由というのが定められているわけでございます。私自身、この例外事由が広過ぎやしないかというふうにちょっと思っているわけでございます。例外事由が広過ぎた場合に、基本的には、子供の連れ去りに対する抑止力というか、そういうことをやめようと思う力が働かないで、結局、やはり事態としては余り変わらずに、国際的な日本の司法に対する信頼感というのは涵養されないのではないかというふうに問題意識として思っております。

 御意見を求めます。

深山政府参考人 委員御指摘の返還拒否事由、これは国内担保法の方で、日本法として規定がされていますけれども、その返還拒否事由は、条約で定められた返還を拒否できる事由を、文言の表現が一字一句同じという趣旨ではありませんが、日本の法律風に置きかえて、中身としては同じものを規定している。

 つまり、条約の国内担保法ですから、条約よりも返還拒否事由を広くしたり狭くしたりすることは条約違反になってしまいますので、そういうことがないように、言葉つきが全く同じだということはありませんけれども、実質は、返還拒否できる場合は条約で定まった範囲と同じにするつもりでつくっておりますので、今委員が言われたような御懸念は当たらないのではないかなと思っております。

椎名委員 文言はちょっと違うけれどもと言っているところが実は問題なんじゃないかなと思っております。

 一応、私の意見だけ申し述べておきますと、この条約の十三条というところに、「the judicial or administrative authority of the requested State is not bound to order the return of the child if」と書いてあって、要は、これこれの場合には返還命令を出すことは義務づけられませんという書き方になっているわけでございます。それに対して、基本的に今の日本の法律については、これこれの場合には返還をしてはいけませんという書き方になっていて、原則と例外が基本的には逆転しているのかなというふうにちょっと思った次第でございます。それが私自身の問題意識の背景にあるところでございます。御意見は求めません。

 この手続の中で、子供の返還は、家庭裁判所が直接の管轄になって手続を行うわけでございますけれども、子の返還を命ずる決定がなされたときに、子供というのは、訴えた、外国にいる離婚した後の片方の親、申立人が、子供の返還を裁判所を使って強制的にすることができるということになっております。この場合に、執行官という、民事執行、強制執行を行うそういった人たちが、無理やりとまでは言わないんですけれども、現状監護している親から引き離すことができるというふうに書いてあるわけでございます。

 これは、要するに、親子関係を無理やり引き剥がすということが妥当なんでしょうか。

深山政府参考人 最後に強制執行の手続が設けられていて、そこで執行官が関与するような仕組みになっているというのは御指摘のとおりです。

 ただ、執行官が関与するというのは、返還拒否事由があるかどうかということが裁判でさんざん議論をされて、最終的に裁判所がこれは返還をしなくちゃいけないケースだというふうに判断をして、それが確定した場合、その場合には任意に返還をしていただけるというのが普通です。どうしてもそれを任意に履行していただけないときに、最後の担保として強制執行制度を設けております。

 しかも、強制執行といっても、子の返還という内容ですから、最初は間接強制、御案内のとおり、返さなかったら一日当たり幾ら幾ら払いなさいという金銭的な制裁を加えて促す、こういう強制執行の手続をまず最初にとること、前置を義務づけております。

 その裁判をしてもなお返していただけない場合に、究極の手段として、今委員御指摘の執行官が関与するという手続がありますが、これは、執行官が子供のところへ行って、子供を物理的に取り上げるということではありません。

 このときのやり方は詳しく法律に書いてありますけれども、家庭裁判所が、返還を行う、国外に返還を実施するのに適切な人を決めて、この人に子供を託して国外に戻しなさいと。返還実施者と呼んでいますけれども、今子供さんが一緒にいる親御さんからその人に渡す。その過程で、執行官が、監護している親御さんを説得したり、もう裁判で決まったんだから従ってください、あるいは、抵抗されたときには、それはちょっとやめてくださいと言って排除をするというようなことで、最終的に、解放行為、つまり適切に返還をする人に渡す行為を助力する、そういうものです。

 しかも、その際に、子供の利益を害してはいけないということで、子供に手をかけることは法律上禁止されていますし、例えばお母さんに強制力を用いざるを得ない場合でも、子供に悪影響があればやってはいけないという形で、行為準則もきちっと法定しておりますので、いわば、条約上の義務を履行するための最後の、究極の手段として、できる限り子供さんの利益を守りつつ、やむを得ない措置として執行官の関与というのが制度化されている、こういうことでございます。

椎名委員 最終的には、最後の最後、無理やりではないというところで、やはり、そうすると、実効性が、可能性があるのかなというのはちょっと感想として思います。実効性がなければ、結局、要は、最終的には、子供をもとに戻して、当該国の家事手続にのっとらせることができないということになってしまうので、正直、相変わらず、今、現状と同じように、拉致司法とやゆされている現状が変わらないのではないかなというふうに危惧をします。

 先ほど局長がおっしゃっていたように、ハーグ条約の背景にある理念というのは、子供の利益、子供の最善の福祉という概念だと思います。これが何なのかというのが国際的にずれがあると僕は思っていて、子供の最善の利益という考え方にずれがあると、結局同じなんじゃないかなというふうに思っているのが私の問題意識です。

 要は、端的に申し上げますと、今の日本の離婚の実務におきましては、正直、母親と一緒にいることが子供の福祉に必ずかなうというような実務的な運用になっています。これに対して、先進国、ほかの国なんかですと、離婚は、夫婦間の、男と女、男と男、女と女の場合もありますけれども、それはさておき、男と女との間の関係の縁が切れるにすぎなくて、片親と子供、片親と子供という関係の、子供の関係を切ることまでを予定しているものではない。したがいまして、双方の親子関係を切らないことが子供の福祉にかなうという考え方に基づいて法律がつくられている、実務が行われているような国もあったりします。

 基本的に、今回のハーグ条約で、今、これを実行しようと思うに当たりまして、日本の中で要するに子の福祉というのは具体的に何なんだと。要は、最初に申し上げた方なのか、後に申し上げた方なのか、どういう考え方に基づいて運用されていくんでしょうか。

深山政府参考人 御指摘のとおり、この条約の根本的な目的は子の利益を確保するということでございます。

 子の利益というのが何なのかというのは、抽象的で、人によって判断が分かれるではないか、こういうことですけれども、このハーグ条約自体の仕組みが、まず原則として、もといた国で親権とか監護権のことは決めてくださいということで、まずは戻して、そこの裁判所で親権や監護権の争いをちゃんとしてから、どこかへ連れていくならそうしてください、こういう発想でできています。その際にも、もとの国に戻すことが子供の利益に反する場合は例外ですよと。

 つまり、原則的には、子供の利益を図るためには、夫婦子供、三人みんなで暮らしていたその国へ一旦戻して、そこの司法機関なりで親権や監護権を決めるのが、まず原則として子供の利益にかなう。しかし、個別の案件で見ると、それが必ずしも子供の利益に合わない、むしろ害する場合は返還拒否できる。この仕組み自体が、一つ、子供の利益というのは何なのかということの方向性を示していると思います。

 では、しかし、返還拒否するかどうかというのは家庭裁判所で御指摘のとおり決めるわけですが、そのときの子供の利益について裁判官の裁量はないのかというと、それは抽象的な概念ですから、なかなか、誰が判断しても、どの事例でも、どの裁判官でも全員同じというわけにいかないというのは御指摘のとおりですけれども、あくまで、この条約あるいはそれに基づいた国内法の要件への当てはめと判断という形で家庭裁判所の裁判官は判断しますので、一般の事件以上に何か非常に大きなぶれが出てしまうということはないと思います。

椎名委員 何でこんなことを聞いているかということなんですけれども、実は私のもとに、個別のNPOの名前は避けますけれども、日本の国内で、国内の普通の離婚をした、または離婚の手続中にある主に男性の方が、奥様が虚偽のDVを家裁などで主張して、それで、子供を連れ去ってしまったあげくに、家裁の手続の中でDVを主張されてしまったので、裁判所が面会交渉を停止するというような運用をしてしまって、家庭裁判所という場所、いわば公権力を使って子供に会えないというような結論になってしまうような人たちが何人も私のもとに訪れてきていて、こういった問題はやはり解消していかなければならないのではないかという問題意識を提示していただいたからでございます。

 私自身は何に問題意識を持っているかというと、結局、日本の家裁の実務なんです。なので、正直な話を申し上げると、法務委員会で聞くのがいいのかどうかという話は、ごめんなさい、あると思います。

 家裁の実務におきまして、結局、家事手続の中で、母親優先の考え方とか、もう身柄を、身柄という表現が正しいかどうかわかりませんが、身柄をとってしまったら、その事実が優先される。だから、先に子供を自分の手元に置いてしまって、面倒を一カ月でも二カ月でも三カ月でも見てしまったら、それが親権を決めるに当たって非常に重視をされる、そういう運用がなされている。継続性の原則というか、継続性の尊重というような考え方のようでございますけれども、そういう運用がなされている。

 家裁の今のこの運用が、返還をするかしないかを決める裁判の中で同じような運用がされると、結局、実務的には今の日本の実務と変わらないんじゃないかという問題意識を持っています。それで、今さっきちょっと頭出しをしましたけれども、要は、私自身、このハーグ条約の問題というのは、これを締結した後に同じような問題、不平不満が国内から沸いてくるんじゃないかというふうに思っています。

 すなわち、日本国内に在住の日本人同士の離婚、それから、日本国内における国際結婚のカップルにおいて、家裁で訴えをしていた段階で子供を連れ去られてしまったような場合、こういった場合に、海をまたいだ子供の連れ去りだったら保護されるのに、我々、海をまたいでいないで、日本で仕事をしたいから日本に居続けるんだけれども、海をまたいでいない子供の連れ去りについては保護をされないんじゃないか、それは不公平ではないか、そういう訴えをされる可能性があると思います。

 こういった日本国内での子供の連れ去りという問題が社会問題化しているという事実について御存じでしょうかということと、それから、知っていれば、どういう評価をしているでしょうか。

深山政府参考人 御指摘のとおり、日本国内においても、夫婦間のトラブルに起因して、他方の親の同意を得ずに子供を連れ去ってしまう例があるというのは承知しております。

 このような事態に至る原因や経緯、それから連れ去りの態様にもさまざまなものがあると思われますが、中には、子の利益の観点から問題があるというような事案も存在すると思っております。

 こういう場合、国内手続のことをちょっと付言いたしますと、こういった子の連れ去りが適切でない場合の救済手段としては、家庭裁判所に子の監護権者の指定と子の引き渡しの申し立てをして、それとともに、これらを本案とする子の引き渡しの保全処分の申し立てをする、こういったことなどが考えられるところです。

椎名委員 今、局長がおっしゃっていただいたように、家庭裁判所で子の監護権なり引き戻しなりの手続がありますということですけれども、要は、私のところに相談に来ている人たちは、その家裁が信用できぬと言っているわけでございます。

 この問題の背景にある考え方としては、家裁の実務の運用として、母親優先の考え方だったり、先ほど申し上げた継続性の尊重といった実務的な運用があると同時に、民法上の単独親権という考え方、これがあるというふうに思っています。

 ハーグ条約自体は、原則として、当該国の共同親権主義か単独親権主義かという考え方については、基本的に自由でございます。どちらでも構わないという考え方をしております。したがって、原則的に、ハーグ条約を締結するに当たって、日本の民法に定められている単独親権主義という考え方、これを見直す必要があるわけではないんだと思います。

 しかし、先ほど申し上げたように、ハーグ条約を締結すると、結局国内の中で、差別、俺らは保護されないみたいな、そういう異論、不平不満が出てくるんじゃないかというような話を申し上げたわけでございますけれども、早晩、この親権のあり方だとかを見直していく必要があるのではないかというふうに考えている次第でございます。

 共同親権主義という考え方をとると、結局、父親と母親相互が親権を行使することができます。それに伴って、何日かずつ面倒を見るという形になっています。アメリカなんかではツーツーファイブという考え方があるらしいですけれども、一週間七日のうちの二日はお父さん、二日はお母さん、残りの五日は、隔週でお父さん、お母さんみたいな形ですね。そうすると、この週は二日、五日でお父さん、次の週は二日、五日でお母さんみたいな、そういう面倒の見方をやっている州なんかもあるやに仄聞しております。

 そういった中で、要するに、日本の家族制度、親権のあり方、こういったことについて検討していくことが必要ではなかろうかというふうに思っております。仮に、親権について検討しなかったとしても、共同して監護をするというような、年間百日程度の面会交流を認めていくなどの実務運用で解消していく。

 この実務運用という話なんですけれども、私のところに話に来ている人が、家裁は信用ならぬと言っているわけです。それは、結局、家事審判の運用がなっとらんという話なんですけれども。だとすると、結局、家裁はどうすると従うのかというと、立法的な解決をすると、家裁は面会交流などを認めていくという対応にしていけるのではないかなというふうに考えていて、これを立法的に解決していくという発想もあるのではないかなということを思っております。

 ここまで事務方の皆様とお話をさせていただいたわけですけれども、ここまで来て、谷垣大臣の御見解をようやく伺いたいと思います。

谷垣国務大臣 今、椎名議員の発言を伺っておりまして、確かに、日本の国内でも、離婚して子供をどうするか悩んでおられる方はたくさんいらっしゃる。ひょっとしたら、椎名さんのところに行っておられる方と私のところに見える方は共通の方じゃないかと思うぐらい、私が伺ったのと同じことをおっしゃっておりました。

 それで、共同親権ですが、確かに日本の民法は、親権は単独、母親か父親にするか、どっちかに決めなきゃいけない。もちろん、変えることはできますが、どっちかに決める。むしろ外国では共同親権の国が多いというのは、私もそのように認識しております。

 そこで、ただ、私は余り、このごろ法律の実務から離れておりますが、私の解釈論が正しいかどうかわかりませんが、では、今おっしゃった、子供に対して会う時間といいますか、一緒に暮らす時間と申しますか、それが親権の存在とパラレルなのかどうかというのは、それはちょっと違うかもしれないと私は思います。

 それからもう一つ、親権ということになりますと、共同親権で、お父さんとお母さんが子供のいろいろな育て方に関して意見が一致すれば共同親権というのはいいですが、果たして意見が一致するんだろうか。つまり、諸外国で共同親権でうまくいっているんだろうか。これは、別れた後、さっきいみじくも椎名さんがおっしゃった、別れたらもう、要するに、一人の男と一人の女がいて、あとは子供との関係は切れないんだと。昔、恨みっこなしに別れましょうねという歌がございましたけれども、そういうふうになれば、多分、共同親権でも非常にうまくいくんだと思うんですね。ところが、私が知っている離婚の例でいくと、必ずしも、なかなかそうはいかない。そうすると、共同親権でうまくいくのかどうか。そのあたりもいろいろまだ議論があるのではないか。

 まだ私の認識はその程度のところでございまして、これ以上はちょっとまだ申し上げるだけの自信がございません。

椎名委員 どうもありがとうございます。ぜひ御検討いただければと思います。

 あとは、事務方の皆様方に、いろいろ質問を準備して、いろいろ御対応していただきましたが、ごめんなさい。

石田委員長 次回は、来る十九日火曜日午前十時二十分理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時三十分散会


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