衆議院

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第7号 平成25年4月10日(水曜日)

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平成二十五年四月十日(水曜日)

    午前十時三十一分開議

 出席委員

   委員長 石田 真敏君

   理事 江崎 鐵磨君 理事 奥野 信亮君

   理事 土屋 正忠君 理事 ふくだ峰之君

   理事 若宮 健嗣君 理事 田嶋  要君

   理事 西田  譲君 理事 遠山 清彦君

      赤枝 恒雄君    池田 道孝君

      小田原 潔君    越智 隆雄君

      大見  正君    鬼木  誠君

      門  博文君    神山 佐市君

      菅家 一郎君    黄川田仁志君

      小島 敏文君    古賀  篤君

      今野 智博君    末吉 光徳君

      橋本 英教君    鳩山 邦夫君

      林田  彪君    三ッ林裕巳君

      宮澤 博行君    武藤 貴也君

      盛山 正仁君    吉川  赳君

      枝野 幸男君    階   猛君

      辻元 清美君    中根 康浩君

      西根 由佳君    西野 弘一君

      西村 眞悟君    宮沢 隆仁君

      大口 善徳君    大熊 利昭君

      椎名  毅君    石川 知裕君

    …………………………………

   法務大臣         谷垣 禎一君

   法務副大臣        後藤 茂之君

   法務大臣政務官      盛山 正仁君

   最高裁判所事務総局刑事局長            今崎 幸彦君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          小川 秀樹君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    稲田 伸夫君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           常盤  豊君

   法務委員会専門員     岡本  修君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十日

 辞任         補欠選任

  安藤  裕君     鬼木  誠君

  小島 敏文君     武藤 貴也君

  鳩山 邦夫君     越智 隆雄君

  三ッ林裕巳君     赤枝 恒雄君

  宮澤 博行君     吉川  赳君

  辻元 清美君     中根 康浩君

  今井 雅人君     西野 弘一君

  西根 由佳君     宮沢 隆仁君

  椎名  毅君     大熊 利昭君

同日

 辞任         補欠選任

  赤枝 恒雄君     三ッ林裕巳君

  越智 隆雄君     鳩山 邦夫君

  鬼木  誠君     橋本 英教君

  武藤 貴也君     小島 敏文君

  吉川  赳君     宮澤 博行君

  中根 康浩君     辻元 清美君

  西野 弘一君     今井 雅人君

  宮沢 隆仁君     西根 由佳君

  大熊 利昭君     椎名  毅君

同日

 辞任         補欠選任

  橋本 英教君     安藤  裕君

    ―――――――――――――

四月四日

 国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律案(内閣提出第二九号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律及び総合法律支援法の一部を改正する法律案(内閣提出第二八号)

 国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律案(内閣提出第二九号)


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     ――――◇―――――

石田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律及び総合法律支援法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として法務省大臣官房司法法制部長小川秀樹君、法務省刑事局長稲田伸夫君及び文部科学省大臣官房審議官常盤豊君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

石田委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局今崎刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

石田委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田嶋要君。

田嶋委員 おはようございます。よろしくお願いいたします。田嶋要です。

 きょうは、犯罪被害者ということで、支援を強化していく一環の法案に関する質問でございますが、ちょっと法案の一つ前に、一つお伺いを大臣にしたいと思います。

 司法試験の年間三千人合格者のニュースが流れてございまして、政府目標を撤回、これは今の時点では最終提言ではないという理解でございますけれども、前回の委員会でもいろいろ出たことにも関連するこういった話が検討グループから出てきたわけでございますが、日本の弁護士の人数、あるいはこれからどういうふうに弁護士の携わる仕事が広がっていくのか、きょうの犯罪被害者のことも含めてでございますが、所管されている谷垣大臣に、どういうイメージで日本のこれからの法曹界というものを考えておられるかという点に関して、御所見をお伺いしたいと思っております。

 と申しますのも、私も一時期アメリカの方に留学をしてございましたが、アメリカに住んでいてやはり実感できたことは、いわゆる日本の法学部を卒業してアメリカに行きますと、LLMというのを一年間学んで、そしてバーイグザムを受ける。あちらは州単位でございますので、私の友人も多くニューヨークかカリフォルニアあるいはワシントンDCで弁護士試験を受けておるわけでございますが、受けた印象としては、どちらも弁護士試験とはいうものの、日本のいわゆる司法試験とはかなり受けとめ方が違う印象を当時から持っておりました。

 私は受けてはおらないわけですが、MBAを取って、その後一年LLMに行って、せっかくだから留学の記念という感覚でバーイグザムを受けて、大体受けた人は通っているということだったんですね。だから、受ける認識としては、やはりこれは大体普通に勉強して受ければ、七割、八割、難しいと言われていたニューヨークローやカリフォルニアでも七割ぐらいが受かっていたということであります。

 あるいは、アメリカに住んでいると、いわゆる弁護士が大変多くいて、中には仕事のちょっと限られた弁護士が、いわゆるアンビュランスチェーサーという言葉があって、そんなような社会になっている。決して、そういった社会が日本にとって望ましいかどうかはわかりませんけれども、アメリカの訴訟社会の一面を見せているわけでございます。

 翻って、日本に戻ってきて、日本でアメリカに倣ったようなこういうロースクールがスタートをし、これで日本も、今まで極めて難しい、世界で最も難しいとも言われていた司法試験が大分姿形を変えていくのかな。そういう意味では、入り口の門戸は広げるかわりに、なった後の熾烈な戦いという、アメリカ式の、資格を持った方々の中で優秀な方と比較的そうではない方のふるい分けが行われるような、そういう方向にかじを切ったのだろうというふうに認識をいたしておりました。

 そういう中で、今回、三千人を目標にやってきたけれども遠く及ばないということで、数値目標はやめるというようなことになっておるようでございますが、しからば、今後、日本の法曹界、弁護士の世界というのはどういうような方向で考えていくのか。数値目標は設けないにしても、やはりそれでもアメリカ型の社会に近づけたいというふうに大臣としてはお考えなのか。それとも、少し、そうではなくて、違う方向を考えていこう、やはり少数精鋭の日本の形を守っていった方がいいというふうにお考えなのか。その点について御所見をいただきたいと思います。

谷垣国務大臣 田嶋委員の問題意識に正面からお答えできるかどうか、ちょっと自信がないんですが、三千人というのは現実的ではなかったなというのがあの検討会議の大方の理解のように私は思います。

 ただ、今、アメリカ型か、それとも少数精鋭かという対比でお話しになりましたけれども、日本においても法律家の役割、従来は、どちらかというと法廷を中心に以前はやっていたことは間違いありませんね。それをもっと広げていく必要があることは間違いないんだろうと思います。例えば、国際的な業務、大きな企業は、例えば商社とか、大ローファームの援助を受けて海外の展開なんかも十分できるでしょうが、では、中小企業等々、あるいは零細企業だって、現在の経済情勢では海外に投資をしたりあるいは進出しなければならない。そういう場合、十分なリーガルサービスの援助を受けているかどうかとか、多面的な、今までよりも広げなければならないことは私は明らかだと思います。

 ここから先はやや個人的な見解で、法務省の中で議論しても、必ずしもそうなのかどうか、皆さんがそうおっしゃるわけではないんですが、今まで、私どもが試験を受けたころは五百人ぐらいでした。それで現在、三千人というのはやや過大な目標であったとしても、そこまで急に広げるについては、それを教育するスタッフ等の層も必ずしも厚くなかったんじゃないかと私は思います。ですから、法曹改革、司法制度改革のときに、人口当たりフランス並みの弁護士が必要であるというのがいろいろな議論にあったと思います。これは、三千人というのを下げましても、それが何人になるかはこれからさらに詰めなきゃいけませんが、恐らくフランス並みには近づいていくんだろうと私は思っています。それを三千人まで加速するのはいささか息が切れる措置であったというのが現状ではないでしょうか。

 今、十分なお答えになるかどうかわかりませんが、そんな感覚を持っております。

田嶋委員 ふやし方のスピードがちょっと性急であったかという反省なのかもしれませんが、きょう取り上げます犯罪被害者の御支援をどうしていくのか、そういったところも恐らく一つの新たな領域として、今おっしゃった法廷の外の話として、やはり今後強化はしなきゃいけないというふうに思います。

 したがって、現時点で、ふやしたけれども仕事がないから余りふやさない方がいいというようなことではなくて、やはり、ふやす理由というか、しっかりとした活躍の場が、まだまだ潜在的には社会の弱い立場の方がいろいろいらっしゃるから、そこでもっと活躍もできるような社会にぜひしていただきたいと思います。

 たまたま今月号の「ほうてらす」に、私の地元の千葉の、チーム千葉という方々の御意見が載ってございますが、それを読んでいてもなるほどなというふうに思う発言が、いろいろな、それぞれ弁護士さんの若い方ですけれども、司法と福祉がきちんと連携をしていかなきゃいけないという御意見、あるいは、主戦場の裁判だけでなく、その前後に気を配れるようなそういう仕事をやるべきだ、そういうような御意見。やはり皆さん、思いが共通でございます。犯罪被害者支援への目覚めを書いておられる弁護士さんの方もおいででございますので、ぜひ、やはり活躍の領域を政府として積極的に御支援いただきたいということをまず冒頭申し上げたいと思います。

 それを踏まえまして、まず最初に、今回のこの閣法に関連した総論としてお伺いをいたします。

 政治というのは弱い立場の方に存在すると私は思っておりますが、弱い立場の方、弱者と言っていいのか、どういう方々を指すのかというカテゴリーはいろいろあろうかというふうに思っております。例えて言うならば、三つのカテゴリー、大臣の頭の中で一番押さえたい、こういう弱者にやはりしっかりと政治は頑張らなきゃいけないという思いがどこにおありなのか、そして、そういう中で、犯罪被害者というのをどのように頭の中で位置づけられておられるか、御答弁いただきたいと思います。

谷垣国務大臣 これも、田嶋委員の問題意識、この質問通告を伺いまして、事務方は答弁原稿を書かないということで、頭を抱えながら、ここに立たせていただいたわけなんですが。

 確かに、今、弱者とおっしゃいました。ただ、私は今、法務行政の責任者でございますから、弱者というだけじゃないと私は思っています。やはり法の基盤や何かをしっかりつくって、そして、法の支配をきちっと及ぼしていくことに努力をすることによって、国民生活全体の安心や安全を守らなければならない、それがまず基本だと思います。

 その上で、政治が手を差し伸べるべき相手はどういう方なのか、類型化するというのは本当に難しいんですね。でも、今委員がおっしゃいましたように、イメージとして、やはり、本当にそうかどうかは別として、国民はそれぞれ自分で判断をし、自治である、自立をしているというイメージがあって、そうすると、必ずしも御自分でおできにならない方がおられる、経済的な弱者もいると思います。それから、障害を負った方もいらっしゃるだろうと思います。

 三つという中に入れていいのかどうかわかりませんが、それは、犯罪被害者のような方、あるいは震災で被害を受けられたような方々、つまり、普通、予想しない突発的なことで今までの生活を支えられなくなったような方がいらっしゃるわけですね。ちょっと類型化はうまくできませんが、そういった方々に手を差し伸べていくのはやはり政治の役割だろうと思います。

田嶋委員 大臣が今、前半におっしゃったことは、もう言わずもがなだと思います。そういう意味では、もう全ての国民の生命と財産を守る、しっかりと政治の役割がベースとしてある前提に立って、その中でも、やはり弱者に対して、特別な支援の強化、配慮が必要になってくるというふうに私も考えておるところでございます。

 きょうのこの犯罪被害者というのは、私は本当に、中でも、ほかのどういう類型、例えば障害者の問題、難病を抱える方々の問題、いろいろなケースがありますけれども、どのケースと比較しても、決して、アクションを政府がとるに、あるいは支援策を強化するに、おくれをとってはならない、あるいは、支援がここはもう少し少なくていいとか、そういう判断が私はあってはならない分野だということで、政治家になって十年目でございますが、常日ごろから本当に、例えば、忘れもしない、いろいろな凶悪犯罪がございますね、そういったことを見聞きするたびに、そこを強く思う次第であります。

 そういう中で、やはり犯罪被害者の問題というのは、いわゆる三面構造というんですか、裁判官、検察官、被告人・弁護人、こういった中で、どうも、これはどこの国も一定程度共通なのかもしれませんが、何かほかの支援策に対して、おくれをとって、後追いで物事が動いているような印象を強く持ちます。

 アンケートの結果なども見させていただきましたが、改善が一体どの程度進んできているのか、基本法ができて、そして基本法を受けて、基本計画が一次、そして今、二次の中にあるわけでございますが、大臣、そこはどのように御認識されておりますか。

谷垣国務大臣 確かに、犯罪被害者をどう刑事手続の中で位置づけていくのかというのは、従前の制度の捉え方からすると難しい面があったことは事実だと思うんですね。この背景には、やや理屈を述べれば、国家権力が犯罪を摘発し、刑罰を与える、その反面として、個人の私的救済は禁ずる、自力救済は禁ずる、復讐は禁ずる、こういうことで、国家権力が刑事訴訟においても刑罰権の行使として独占的に行うという近代国家の制度の立て方が背景にあったんだろうと思います。そして、現在も、刑罰権は誰が行使するのかというのをぎりぎり詰めて考えれば、その近代国家の構造は覆せないんだろうと私は思います。それは必要なことだろうと思います。

 しかし、平成十二年ですか、犯罪被害者保護二法をつくりまして、やはりそこに被害者の立場といいますか、被害者の観点をもう少し刑事司法に入れていかなきゃならないということになりました。その流れは決して否定すべきものではないだろうと私は思っております。

 そこで何をやってきたかといいますと、証人尋問の際の付き添いであるとか、あるいは、特に性犯罪なんかで顔を見られたくない、遮蔽をしよう、あるいはビデオリンクを使おう、それから被害者等による心情を中心とする意見陳述制度を設けよう等々が導入されたのも、その流れだと思います。

 それで、平成十六年十二月に犯罪被害者等基本法が成立をいたしまして、そこにきちっと、基本理念としても、「すべて犯罪被害者等は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有する。」とこの基本法の中にも書き込まれたのは、非常に大きな進歩だったと私は思います。

 そこで、今、二次にわたる基本計画が策定をされまして、現在その二次の基本計画を受けてやっているわけでございますが、今、その二次の基本計画をどう実際に実現していくかというその過程にある、そういう段階だというふうに認識しております。

田嶋委員 いろいろ、おくればせながら法整備も進んで、この間一定の前進を見ているというのは私もそのとおりだというふうに思います。

 第二次犯罪被害者等基本計画というものを少し読ませていただきましたが、しかしながら、先ほどのアンケートも含めて、やはり昔から心配をしている側面というのが、まだまだ当事者、犯罪被害者の方々からは声がたくさん寄せられているというのも現実でありまして、私は、この犯罪被害者に対する支援というのは、本当に、できることは大臣にまとめて一日も早く強化をしていただきたい。

 そういった意味で、ちょっと今回の法案は、その中身そのものに反対というような中身ではないとはいうものの、しかし非常に不十分ではないかというふうに私自身は思っておるところでございます。

 少しこの中の記述で読み上げさせていただきますけれども、この調査、アンケートの結果、犯罪被害者、その精神状況が重症精神障害者相当とされる者の割合が、一般の方々に比べて何倍ぐらいあると思いますか、大臣。これは読まれましたか。ごらんになりましたか。

谷垣国務大臣 読みましたが、就任直後で、ちょっと細部まで十分……。

田嶋委員 これは第二次基本計画でございますけれども、この資料の「はじめに」というところに書いてございますが、やはりこれは驚くべき数字ですね。一般の人に比べて犯罪被害者が精神が健康状態でない、重症精神障害相当とされる方は一般の方の十倍近くだと書いてあるんです。二倍とか三倍じゃないですよ、十倍ですよ。だから、本当に、家族を殺されたとかそういうことで、気がおかしくなってしまっているような方がたくさんいるということを考えたときに、ほっておけない、本当にこれはしっかりと支えていただきたいというふうに考えます。

 それから、そのすぐ下のくだりに、加害者だけではなくて、犯罪被害者が捜査・裁判機関の職員、医療機関の職員あるいは報道関係者などなどから高い割合で二次的被害を受けている、すなわち、もともとの犯罪被害でショックを受けて苦しんでいるのに加えて、それ以外の、訴訟とかいろいろなプロセスの中で出会っていく人々の対応等によって苦しめられているという声が出ているということなんですね。

 ここはやはり肝に銘じて、できることならば、決してそういう二次的被害を司法の場では起こさせない、法務大臣の所管では起こさせない、そういうお気持ちで、苦しんでいる方々の立場に寄り添った施策をぜひともお願いしたいというふうに思いますけれども、今後の決意ということを改めておっしゃっていただきたいと思います。

谷垣国務大臣 確かに、おっしゃるように、犯罪被害者は非常に厳しい立場に立たされている方がたくさんいらっしゃいます。そういう方々に寄り添っていく、そういう気持ちで法務行政を進めたい、このように思っております。

田嶋委員 就任早々で余りしっかり読めていなかったという御答弁がございましたけれども、一つ、質問通告はございませんが、犯罪被害者週間というのはいつですか。

谷垣国務大臣 ちょっと記憶しておりません。

田嶋委員 こういう質問を余りやると不評になりますので控えますけれども、ただ、きょうはこういう犯罪被害者の法案を扱うわけでございますので、ぜひともこのぐらいは押さえていただかなきゃいけないんじゃないかな。十一月二十五日から十二月の一日、これが毎年、犯罪被害者週間ということで政府が閣議決定した中に入っておる週間でございますので、ぜひとも押さえていただきたいと思います。

 ちなみに、民間の認定NPO団体等が設けた犯罪被害者支援の日というのも別にございまして、これは十月の三日でございます。よろしくお願い申し上げます。

 それでは次の質問に入らせていただきますけれども、先ほど申し上げました、やれることはもうとにかく全てやってほしい、もちろん財政的な制約はあろうかと思いますが、そういう気持ちで取り組んでいただきたいというふうに思いますが、今回のこの法案の中身を見ますと、お粗末という言葉はよろしくないかもしれませんが、ちょっと、第二次計画で言われたからそれは今回法案化しましたよというような、非常に漸進的な、一個ずつ進んでいこうみたいな、そういう感じに私は受けとめるわけでございますが、大臣、どういうお考えですか。

谷垣国務大臣 これは、今、田嶋委員の御質問は極めて理念的なことを問われておられると思いますが、私はやはり、現状でできることをきちっと進めていく、そういうことでやらせていただきたいと思っております。

田嶋委員 大臣のやる気一つだと思います。あるいは犯罪週間ということも頭にきちんと入れていただいて、やはりこの犯罪被害者という方々、弱者と呼んでよいのか、一つの類型ですね、そこに本当に国が、最優先の方々だという御認識のもとにぜひ取り組んでいただきたいというふうに考えております。

 そして、原則論としては、私は、全て今すぐにということはできないかもしれませんが、刑事司法との関係で犯罪被害者が負担をする費用というのは、被害者に負わせるのはいかにも気の毒だ、申しわけない、そういう思いを持っておりますが、大臣はどういうお考えですか。

谷垣国務大臣 確かに犯罪被害者の方々に寄り添っていかなければいけませんが、今委員がおっしゃったことは、原則として犯罪被害者の刑事手続上の出費は国が賄うべきものだというお立場ですね。

 私は、そうお答えしたい気持ちはやまやまですが、刑事司法に関係する方は多数の方がいらっしゃいます。したがって、そういう方々に例えばどういう形で弁護の費用を出していくかとかいうのも、国選弁護というような制度が一方にございますが、やはり現状では、現在の日本の財政状況等々を考えますと、それぞれの資力に応ずるとか、いろいろなことを考えながらやらなければ実際にはできないというふうに考えております。

 先ほどおっしゃった、一歩一歩進めるのか、それともというお問いかけにもあるいは関連するかもしれませんが、現実に法務行政に責任を持たせていただいている立場からしますと、そういったことを考えながら検討を加えて、進められるところは進めていかなきゃいかぬ、こういうつもりでやらせていただきたいと思っております。

田嶋委員 財政的な制約は言うまでもないことだと思います。私は、その中でも、やれる範囲、自由度というのはかなりあって、それは大臣の腹一つでもあり、そして、情熱、思い一つでもう少しふやしていくことができるのではないかというのが私の基本的な考え方でございます。

 各論に入らせていただきますけれども、今回のこの法案が提出される以前から、例えば、事情聴取のために出頭というんですか、そういう言葉は余りよろしくないと思いますが、犯罪の被害者が出向いていく、そういった場合に、これまで、交通費や宿泊費、日当というものが、どのような形で、どのように支払われてきたかということを教えてください。

稲田政府参考人 お答え申し上げます。

 検察庁での取り扱いということで申し上げますが、検察官の取り調べた者等に対する旅費、日当、宿泊料等支給法第一項におきまして、検察官は、取り調べた被害者らに対しまして旅費等を支払うことができるとされております。その際の支払いの基準につきましては、同法で準用いたします刑事訴訟費用等に関する法律第九条により、航空賃を除きまして、「最も経済的な通常の経路及び方法によつて旅行した場合の例により計算する。」と規定されております。

 旅費等の支払いにつきましては、最終的には担当検察官の判断によることとなりますが、検察庁におきましては、支払いの適正や過誤の防止を図るため、原則として預金口座等への振り込みにより旅費等の支払いを行っているものと承知しております。

 この支払いの時期につきましては、被害者らの来庁事実や住居地の確認、本人確認、さらには、利用した交通機関を含めた路程の確認などを実施した上で支払うのが相当でありますことから、事後の支払いを原則としているものというふうに承知しております。

田嶋委員 刑訴法の二百九十二条の二に、心情の意見陳述というのがございますけれども、こちらに関してはどういうふうになっておりますか。来る場合です、出廷される場合です。

稲田政府参考人 ただいまお話ございました刑事訴訟法の規定に基づきまして、被害者が心情等の意見陳述のために裁判所に出廷した場合に関しまして、その交通費や宿泊費等を支払うための手続は現状ではございません。

田嶋委員 平日しか出廷はないようでございますが、そうなると、お仕事をされている方々の仕事との関係、アンケートにもいろいろな答えが返ってきておりますが、逸失利益を補填する、そういう考え方はございますか。

稲田政府参考人 証人などの日当の性質につきましては、証人らが裁判所に出頭することによる積極的な損失、すなわち、出頭に要した旅費以外の諸雑費の支出の弁償及び消極的な損失、出頭しなければ別途得られるであろう収入の喪失、いわゆる逸失利益の補償の双方を一定の限度内で行うという性質を有するものと考えられておりまして、この証人等の日当の算定に当たりましては、逸失利益の補填という考え方もとっているものと承知しております。

田嶋委員 とっておるということは、では、それぞれ職業によっていろいろ逸失利益の額には変動が、増減、多いケースと少ないケースがありますが、それぞれ対応できている、そういうことでいいですか。

稲田政府参考人 今お答え申し上げましたのは、そういう考え方に基づきまして法制度がつくられているということを申し上げたものでございまして、個別の証人の方等につきまして、具体的に損失を算定した上で補償するという仕組みになっているというものではありません。

田嶋委員 そういう意味では、今の一連の御答弁で、これまでの既存の制度であっても、犯罪の被害者が、被害とは別に、まさに司法にかかわるに当たって、二次的にというか、本来だったら、普通の人生であったら払わなくてもいいものを払わなきゃいけない、逸失利益の補填も含めて、そういう部分が発生をしている。そして、なおかつ、手続をして、事後に振り込みという形でしか発生せざるを得ない経費に関しては補填がされていないということが確認できたわけでございます。

 今回の犯罪被害者の旅費に関しましても、同様に、支払いは後日ということでございますが、何日後ですか。

稲田政府参考人 まだこれから制度が制定された後のことでございますけれども、できる限り速やかに支給ができるようにしたいというふうに考えておるところでございます。

田嶋委員 今までのことを話を聞いていただきまして、法務大臣にお伺いしたいんですけれども、私の主義主張は一貫してございますが、一時的であっても、なぜ、犯罪被害者に立てかえさせる、負担をさせる、それがいいというふうにお考えですか。

谷垣国務大臣 これはやはり制度の立て方も関係してくると思うんですが、犯罪被害者の参加人は、法廷に出ることを必ずしも義務づけられているわけではありません。出ようと思っていたけれども、やはり怖いから嫌だとか、出ていくことがプライバシーを暴かれて嫌だとか、そういう方もたくさんいらっしゃるので、結局、そのときにならなければ実際に出頭されるかわからないというのが今までの実例であったように聞いております。

 したがいまして、そういう形の中で、実際に出ていただいたらその後お払いするという仕組みができている。したがって、できるだけそれは事務処理を早くしなければならない、こういうふうに思います。

田嶋委員 役所を相手にして、後で振り込んでもらうみたいなことはあるのかもしれませんし、およそ役所のサービスがそれほど国民にとって満足の高いものであるケースは多くはないわけなので、仕方がないなと諦める場合も多いと思うんですが、やはりここは、冒頭申し上げた、ほかでもない犯罪被害者です。

 今の大臣の御答弁は、事前にはなかなかわからない、来るか来ないかもわからない、そのとおりだと思いますが、では、義務でないケースと義務のケースでなぜ分けなきゃいけないかという論理的な説明が私はないような気がします。

 それから、当日払えばいいじゃないですか。それは細かいことかもしれませんけれども、大臣にとっては細かいことかもしれないが、しかし、やはりこれはそんなに細かくないと私は思います。

 資料をお配りしてございますが、一ページをごらんいただきたいと思います。

 「問三十四 被害者参加人として裁判に出席するに当たって支出した費用額」、これは五十二件の平均値でございますが、旅費は五万円を超えています。それから、日帰りで帰るケースばかりじゃありませんので、宿泊費の平均が二万二千円を超えている。恐らくこれは平均が一泊ではないということですね。大臣、わかりますか、資料。一ページ目の一番上の左側です。その他の雑費がこれだけ。加えて、逸失利益が六万六千九百円。いろいろなお仕事をされているケース、それから子供を預けて来られる方もおいでですね。

 そういったことを考えると、決して細かい額で、どっちでもいいなんということにはならないわけでございまして、大臣、もう一回お伺いしますけれども、二週間かかるか三週間かかるか知りませんよ。我々一般の、普通の、犯罪被害者になっていない方々に対する行政サービスじゃないんです、これは。犯罪被害者に対する行政サービスですよ。

 私の考え方は、それはどんな少額であったって、すぐにその日にお支払いしてさしあげればいいし、そこを絶対にできなくする理由は私はないと思います。御答弁をお願いします。

谷垣国務大臣 制度を動かして、さらにどう改善できるかというのは十分考えなければならないとは思いますが、しかし、これは今、口座等に払い込むことを想定して制度をつくっていると思います。その場合に、仮においでにならなかったような場合にどうするか、そういったことも考えますと、今のような仕組みになっているわけですが、これはやはり、さらに改善の余地があるかどうかは、実行してみて考えていかなければいけないんだろうと思います。

田嶋委員 おいでにならなかったらどうするかじゃないんですよ。おいでになったことが確認できた後で、その日のうちに手続を済ませて、お帰りになるころにお渡しをする、そんなぐらいの行政サービスがなぜできないのかということを聞いているんです。

谷垣国務大臣 今、法テラスが支払うという形で制度がつくられております。法テラスは、直接出廷しているかどうかというのをわかりません。ですから、どうしてもそのような手続を直ちにとるというのは難しいと思います。

田嶋委員 それは、役所が決めた仕組みとしてそうなっているという話を今御答弁ありましたけれども、では、何で法テラスが関与しなきゃいけないんですか。

谷垣国務大臣 これは総合法律支援法の中にそのように定められております。

田嶋委員 今のルールが前提の御答弁でございますが、私が大臣に申し上げたいのは、役所の説明ではなくて、これが本当に正義なんですかということを申し上げているんです。

 それは、たかだか五万円じゃないかとおっしゃっていただきたくないんです。それはやはり、犯罪被害者からのアンケートは、第二次五カ年計画ですか、第二次基本計画がスタートしてすぐ、半年後にアンケートもやられた。その結果も私も見ておりますが、そういう声があるんですよ。そういう声があるんです。第二次基本計画の冒頭、先ほど触れました、その冒頭にも、やはり、簡易迅速な手続による救済、犯罪被害者の労力を軽減していかなきゃいけない、こういうことをうたっておるわけでございます。

 だから、抽象的にはそういうことを誰でも言いますけれども、では、具体の策として一個ずつ詰めていかなかったらだめじゃないですか。

 これは大臣が直接手を下すような大きな話ではないというふうにお思いだと思いますけれども、しかし、これは犯罪被害者一人一人にとったら本当に大変なことだと僕は思いますよ。

 そこは大臣、今おっしゃった理由は役所が書く理由です。役所がつくる理由はそのとおりだと思いますが、何でそれを乗り越えられないのか。会社の経営でも同じじゃないですか。できない、できないと言うんじゃなくて、どうやったらそれを乗り越えられるのか、まさに手続論ですから、手続なんて変えればいいんですよ、大臣の一存で。大臣に変えていただいて、少なくとも、その日に来たことが確認できて払えばいいと私は思いますよ。

 ちなみに、この法案でどれだけの予算が必要かというと、半年で一千二百万円ほどと聞いてございますが、算定根拠は。

小川政府参考人 お答えいたします。

 今御指摘ございましたように、半年分で千二百万円を計上しているところでございますが、予算の積算に当たりましては、被害者参加許可人数、これにつきましては被害者参加制度の運用実績に基づいて推計してございまして、平成二十五年度における参加見込み人数は千二百二十六人と推計してございます。

 それから、旅費につきましては、第一審刑事裁判所に出廷した証人に対する旅費支給額の平均額などを参考とし、日当と宿泊料につきましては、国家公務員などに対するその支給額などを参考として、それぞれ積算してございます。

 以上でございます。

田嶋委員 ちょっとよくわかりませんでしたけれども、いずれにしても、日帰りで帰っておられる方ばかりじゃない。かなりの方が、一泊、二泊、三泊、そういった方々が大勢いらっしゃるわけでございます。

 大臣、もう一度、しつこいですけれども、確認しますよ。

 これは手続上絶対不可能ということはあり得ません。そもそも二週間かかるなんという役所の普通の動作でやっていっていただいちゃ困る方々なんですから。私は、何としても、先ほど別の話もありました。心情の意見陳述も同じ、それから事情聴取も同じ。そういう方々への行政の対応を、健康で犯罪に巻き込まれていない一般の方々への対応と同列に扱ってほしくはないんです。

 ぜひともそこは再考をいただいて、何ができるかということを一度話し合っていただきたいというふうに私は思いますけれども、大臣、お願いします。

谷垣国務大臣 これはできる限り早くお届けできるようにするのは当然のことだと思いますし、何ができるかということは、さらに詰めなきゃいけません。

 しかし、他方、制度としては安定的に運用するということも考えなければなりませんから、その二つを、片っ方だけというわけには私はいかないのではないかと思います。

田嶋委員 取り組みを見守りたいと思います。

 引き続き、残りの時間で少し具体的な話をさせていただきます。

 これは、先日、質問取りに来られた皆さんにも申し上げたところでございますけれども、大臣、やはりこれも行政サービスですよね。法務省が行う行政サービス。町の区役所や市役所と同じですね。もちろん、きょうの委員のメンバーには首長経験者の方もいらっしゃるわけで、それを競って、住民のためにいいサービスを提供しようと努力をすることは中央官庁も私は同じだろうというふうに考えてございます。

 少し具体的な話をさせていただきますけれども、記録の閲覧、謄写ということも犯罪被害者はするわけでございまして、そのためにわざわざ来なきゃいけない。そこも恐らく旅費等は払われないわけでしょうけれども、コピーをするときのコピー代というのは一枚幾らぐらいですか。

今崎最高裁判所長官代理者 裁判所におきます扱いの御質問かと存じますので、私の方から答弁させていただきます。

 裁判所に被害者の方が証人としておいでになった場合、コピーによる謄写を御希望なさる場合には、裁判所構内に業者で設置しておりますコピー機を使用して謄写していただくということになります。

 その場合の謄写代金は、業者によって異なってまいりますが、いわゆるセルフ式の場合で一枚約二十円以下、業者の係員が作業を行う対面式の場合で一枚四十円から五十円程度が中心になっていると承知しております。

田嶋委員 これもアンケートにいろいろ声が寄せられております。何でこういうことに被害者がお金を払わなきゃいけないんですかと。それは税金がもとにあるからという理屈もあるかもしれませんが、何とかならないのかなと。半年で一千二百万円、それも予算は予算ですよ、もちろんそれは予算関連でございますけれども、どこか節約する、倹約することでこういうところを何とかならないのかと私は思います。

 残された時間はわずかでございますので、もう一問お伺いしますけれども、被害者ホットラインというのが法務省にございますが、フリーダイヤルは何番ですか。

稲田政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねは全国の検察庁に設置されている被害者ホットラインということではないかと思われますが、この被害者ホットラインにつきましてはフリーダイヤルではないというふうに承知しております。

田嶋委員 メールによる問い合わせは可能ですか、犯罪被害者が。

稲田政府参考人 現時点におきましては、メールによる相談の受け付けは、この被害者ホットラインでは行ってはいないというふうに聞いております。

田嶋委員 時間が来ましたので質問を終わりますが、大臣、資料の後ろの三つをごらんください。

 法務省の犯罪被害者ホットライン、それぞれの県にあるんですね。大臣、恐らく電話されたことはないですよね。私、電話してみました。やはり、その対応にちょっと気持ちがさらに暗くなりますよ、悪いけれども。だったら、犯罪被害者がこんなところにかけたら、もう本当にたまらないと思います。本当に泣けてきますよ、はっきり言って。しかも金がかかっているんですよ、電話をかけるのに。たかだか十円だという話じゃないんですよ。

 次のページをごらんください。

 これは私が自民党の馳先生とかと一緒に取り組んだ議員連盟、チャイルドラインですけれども、昔、電話は有料だったんですけれども、今はフリーダイヤルにしているんです。議連でやってこうなっているんです、スポンサーをつけて。チャイルドライン、子供たちが虐待から守られるために。

 そして、そのすぐ上、歴史の長い、いのちの電話。これは厚生労働省、半世紀の歴史がありますが、いのちの電話、インターネットで相談受け付けをしているんです。しかもフリーダイヤルもあるんです。何で犯罪被害者の仕組みにはそういうのがないんですか。

 冒頭申し上げました。少なくとも、いろいろな気の毒な方がおいでですけれども、犯罪被害者は劣後するような立場の方々ではない、少なくとも同列に、国が全力を挙げてやれることは全てやってほしいと申し上げました。予算が何億、何十億かかるならともかく、このぐらいのことはやれるんじゃないですか。それぞれの県の検察にこうやって電話番号を引くよりも、私は全国で同じホットラインでフリーダイヤルにした方が毎月の固定費は安いんじゃないかと思いますよ、人件費も含めて。英語のサービスもない。

 こういったことをきょうは最後にお願い申し上げまして、これは旅費を無料にするかどうかの話だけじゃないんです。もっと温かい、血の通った行政をやってほしい。これは裁判所も含めて、もっと血の通った、本当に大変な状況にある方々なんだということを肝に銘じてやっていただきたいということを最後にお願い申し上げまして、質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

石田委員長 次に、階猛君。

階委員 民主党の階猛です。本日もよろしくお願いいたします。

 本題に入ります前に、きのう発表されました政府の方の行方不明者であるとか相続未了の土地の取得に係る対策についてお聞かせいただければと思います。

 法務大臣も予算委員会等でお答えになられていたかと思うんですが、所有者不明とか相続未処理の土地については、不在者財産管理人制度を活用するということで検討されているんだというお話でございました。その検討結果というのが多分きのう示されたものだと思いますが、私が見ておりますと、法務省の民事局における取り組みですとか、裁判所における取り組みですとか、るる書かれてはおりますが、既存の制度の枠内での取り組みで、果たしてこれで十分なのかなという感じがしました。

 岩手県では、これも大臣御承知かと思いますが、制度をつくってほしいということです。財産管理人制度にかわって、市町村が管理権限を持つ制度の創設等により用地取得手続のスピードアップを図ってほしいという要望がありました。

 私、たまたま、おととい、民主党の復興調査会のメンバーで、この用地取得の問題のモデル地区とされている釜石の防潮堤の建設予定地の方に行ってまいりました。県の職員にもお話を聞いて、なぜ既存の制度でだめなのかということをいろいろお話ししているうちに、二つのことに気づきましたので、その二つについてお尋ねします。

 一つは、不在者財産管理人制度で弁護士さんとか専門職の方を雇う場合、当然報酬が発生します。その報酬の負担をもし市町村とか県が負担するということであれば、膨大に不在者財産管理人が必要ですから、その費用もばかにならないということだと思います。そこで、そういう不在者財産管理人制度を活用する場合の報酬については、誰がどのような方法で支払うのかということについて、今現在の結論をお聞かせいただけますか。

谷垣国務大臣 これは今の制度ですが、家庭裁判所は不在者の財産の中から相当な報酬を与えることができるとされておりまして、財産管理人の報酬額は、一般的には、財産管理人の請求によって家裁裁判官が判断して、そしてその額を土地の売却代金の中から支払うことになるというのが現在の制度でございます。

 一応、今それを前提に制度を組み立てているということでございます。

階委員 恐らくそんなに土地の値段が高くないと思うんですね、特に防潮堤の予定地なんというのはもう人が住めないというところですから。その売却代金から報酬というのはなかなか厳しいのではないかということがあります。それがまず一点です。

 もう一点、お話ししていて感じたのは、不在者財産管理人、私もそうですが、弁護士とか、普通の民間人ですよね、そういう方がいつまでその売却した代金を不在者が出てくるまで保管していればいいのか。何かそれが非常に負担を感じて、実際に手を挙げる人は少ないのではないかというようなことも言われています。そういった不在者財産管理人の売却代金等の保管義務はいつまで負うのだろうかということについて、どういう考えなのかお聞かせください。

谷垣国務大臣 これは、私も勉強してみましたら、条文にははっきり書いてないようですね。

 それで、これからは解釈論ということになるわけですが、一応、不在者の生死が判明するまで売却代金を保管する義務を負うということに恐らくなるだろう、解釈としてはなるだろうと思います。

 それからもう一つ、これは、さらに、さっき大した額にはならないだろうとおっしゃった。実際、そのお金がなくなってしまったら、その時点でその管理義務は終了することになるのではないかと思います。

階委員 ようやくこの釜石の防潮堤の建設地では、岩手県がとりあえず一件につき相続不在者財産管理人を選任するよう申し立てたということなんですが、防潮堤の建設予定地というのは、全体の取得予定の土地に比べれば本当にごくごくわずかな部分なんですね。その中でも、この防潮堤のところだけでも地権者が、物件として四十二件、権利者が二百十八人いらっしゃって、そのうちの一件だけが動き出したという話ですから、本当にこれは全体をやるには気が遠くなる話なんですね。

 そのために、今までの制度の手直しで十分なのかどうかということは、私はちょっと疑問に思っていまして、私、これは場合によっては法制度の見直しも必要ではないかなと思っています。この点、今どのようにお考えになるか。

谷垣国務大臣 先ほど階委員がおっしゃいました新聞に発表されていたというのは、復興庁の方で第二弾という形で発表されたものだと思います。まだ復興庁で根本大臣が発表されたという段階でございますが、今の階先生がおっしゃったところまではまだ十分検討はできておらないだろうと思います。

 私もちょっと伺いますと、与党の中でも、何か全体もう少し制度を変えられないかというような議論もされているようでございます。まだ私も十分そこは承知しておりませんし、役所の中でもそれが十分できているわけではありません。与党の御議論あるいは国会での御議論も十分注意してまいりたいと思っております。

階委員 では、私ども民主党としましても、何か既存の制度にかわる、いいものがないかということを考えさせていただいて、また御提案なりさせていただければと思います。

 時間が短くなりましたが、本題の方なんですが、前回の質疑で被災地の法テラスについて、大臣から非常に温かいお言葉、被災された方々に寄り添うんだというお言葉でした。私の方からは、犯罪被害者についても同じように寄り添ってもらえないだろうかということで、まずは、果たしてどういう法律のサービスができるかどうかわからないけれども、一回、無料法律相談、資力を問わずに、重大事件については無料法律相談の機会を与えてあげたらどうかということを申し上げました。

 残念ながら、ちょっと全体の予算の関係とかおっしゃっていて、前向きな御答弁ではなかったと思うんですが、改めてその点について大臣のお考えをお聞かせいただけますか。

谷垣国務大臣 確かに、無料法律相談というようなことを、今回、岩手では行ったわけですね。大変好評を得たと思います。

 ただ、これをどこまでどういうことに広げていくかということになりますと、ちょっと後ろ向きだとお叱りを受けるかもしれませんが、法的サービスを必要とされている方々にはいろいろな段階がありますので、そこは、どこまでをやるかということは、財政との関係もしっかり整理しながら検討していかなければならないのではないかと思っております。

階委員 もう一つ、先日私から御提案申し上げたのは、今現在、日弁連が自分たちのお金を出して法テラスにやってもらっている事業というのがあります。犯罪被害者のために告発状、告訴状を書いたりとか、被害届を出したりとか、事情聴取に同行したり、こういったことについても、私は、だんだん需要がふえているようですから、国費でやったらどうかということを御提案申し上げました。

 この点についてもやはり予算上の制約ということは言われていましたけれども、ここも御検討いただけないでしょうか。改めてお尋ねします。

谷垣国務大臣 今、日弁連委託事業という形でやっているわけですね。

 それで、そのあたりも、私どもとしては、二期の犯罪被害者計画の中で、これからもいろいろ、検討会議もつくりましたので、いろいろまた御意見が出てくるだろうと思います。そのあたりも十分に中で議論をしていきたいと思っております。

階委員 時間ですので終わりますけれども、やはり先ほど田嶋筆頭もおっしゃったように、犯罪被害者にどれだけ寄り添えるかというのが政治の使命ではないかなと思っております。いろいろな役所の常識からすると、そこまではちょっとというところもあるかもしれませんが、そこは政治の力で乗り越えていくべきだと思っています。

 その一環ということで、私ども民主党としましては、きょうのこの法案について、もう少しこの部分、改善すべきだということを修正案として後ほど提起させていただこうと思いますので、よろしくお願いします。

 ありがとうございました。

石田委員長 次に、西野弘一君。

西野委員 日本維新の会の西野弘一でございます。

 何か不思議な気分です。私は、学生のときから自民党の青年局で活動しておりまして、平成十八年に府議会議員の補欠選挙に出まして初当選しまして、ちょうどそのころ、谷垣大臣が大阪に来られたときに、遊説されているのを下働きで応援をさせていただいたのも覚えておりますし、その後、印象的だったのが、ちょうど震災の後に、野党の党首として、五百七十七の提案でしたか、自民党の党首としてまとめられて、当時、寂しい思いをされた直後であるにもかかわらず、一生懸命に、野党という立場を超えて、与党の皆さんの言葉は悪いんですけれどもお尻をたたきながら取り組んでおられた姿には、私は、当時地方議員でありましたけれども、すごく感銘を受けておりました。

 その大臣にこういった形で質問をさせていただくというのは本当に光栄でございますし、私のおやじも同じ派閥で長年お世話になっておりまして、きょう質問するんやということを大阪に電話しましたら、ああ、そうか、頑張れよということでございました。おやじの質問回数を二カ月でもう抜きそうな勢いで連日質問をさせていただいておりますが、きょうもしっかりと質疑をさせていただいて、いい御答弁をいただけたらなというふうにも思っております。

 その府会議員に当選した当時、ちょうどあの光市の裁判のことが連日メディアで報じられておりまして、正直、ミーハーな気持ちで、何かこの被害者の皆さんのために、自分もせっかく政治家の端くれになったんだからお手伝いできないかなという気持ちで、自分で当時の被害者支援団体の事務局に電話をしまして、その役員の方と連絡がとれましたので、お会いをしました。

 実はもう次の議会で、私、質問で、いろいろと皆さんのことで大阪でできることを質問させてもらいますからというような軽い気持ちでお会いをしまして、いろいろとお話しさせていただいたら、逆に被害者の方から、あなたには質問してもらわなくて結構です、まだ何にもわかっておられないので、あなたはもう少し私たちのことをしっかり勉強してから質問をしてくださいと言われて、その後、何度かお会いをしていろいろお話を伺ったり、本当に苦しい状況、お立場の中、皆さんが、自分たちのためではなくて、これから被害に遭われる方のために一生懸命に頑張っておられる姿に、もう言葉もないというか、自分の力不足というか、情けなさというか、むなしさとか、いろいろな気持ちがすごく複雑でありましたけれども、そういう思いの中で、きょう初めてこの犯罪被害者の皆さんのことを質問させていただきたいなというふうに思っております。

 今回出されたこの法律ですが、被害者参加人に対する旅費等の支給制度、これは先ほどの議論の中でもありました。確かに、完全に十分な制度とまではいかないかもわかりませんけれども、今までになかった部分が相当前進したというふうに思いますので、これは、被害者の皆さん方も今までこの制度をかち取ろうということで活動されてきたことでございますし、現に、この質問に当たっていろいろと連絡をとりましたけれども、この制度はありがたい制度なんだということで喜んでおられたと思いますので、これは評価させていただきたいなというふうに思っております。

 もう一つの、被害者参加人のための国選弁護制度における資力要件の緩和。これも、要件が緩和されるということでありますので、後ろに行ったのか前に行ったのかというと、当然前に進んでいるわけでありますので、当然、あえて反対を申し上げるということでもないのかもしれませんが、僕は、この資力要件というところにすごくひっかかりを覚えているんです。

 犯罪の被害に遭われた方というのは、その方に資力がある、被害に遭われた方がお金持ちだからとか、お金を持っておられないからということで区別されるということは私はおかしいと思うんです、理念としてそれは間違っていると思うんですが、なぜこの資力要件というものがそもそもこの制度にあるのか、お答えいただけますでしょうか。

谷垣国務大臣 いろいろ御縁のある西野委員とこういう形で議論をさせていただくことになりまして、余り私的なことを申し上げてはいけませんが、あなたのお父上も大阪で遺族会で大変頑張っておられた、私も京都の遺族会でございますので、そんな御縁もいろいろございました。今こうして議論をさせていただくこと、感無量の思いでございます。余り脱線してはいけませんので。

 それで、今、なぜ国選被害者参加弁護士に資力要件がつくのかというお話でございます。

 こういう制度、被害者参加人に国選弁護人をつけようということ、選定をしようということは、やはり一般論として、犯罪被害者の方には大変困窮しておられる方が少なくない、そういうことによって、被害者参加人として参加されたけれども十分に自分の主張ができないというようなことではいけない、だから何とかそれを補わなきゃということですね。それで、こういう資力の乏しい参加人が自分の主張を十分できないようではいけないという発想で実はこの制度をつくりました。したがって、資力要件というものが入ってきているということになります。

 そこで、もう一つ、先ほど来の御議論もある意味では共通のところがございますが、これは確かに一般論として、困窮しておられる方が多いのは事実だと私も思います。他方、弁護士による法律サービスを必要としておられる方も実は多様におられるわけですので、どこで線引きをするのかというのは、やはり現実の財政状況を考えると考えざるを得ない、こういうことでございます。

西野委員 今御答弁にありました、弁護士によるサービスを必要とされておられる方というのは、被害者の方とは別の、いわゆるそれ以外の方という意味ですか。

谷垣国務大臣 幅広くいろいろなところでおられると思います。例えば刑事事件であれば国選弁護というものも確かにあるわけでございますが、資力が乏しいのでなかなか弁護士に頼めないという方もいろいろなところにいらっしゃると思うんですね。

 どこにどういう手を差し伸べるのかというのは、ある程度全体を考えて制度設計しなければいけないのではないかと思っております。

西野委員 その御答弁からしましたら、要するに、被害者である、被害者でない、そういうことではなしに、資力のない方にはとにかく弁護士という法律上のいろいろなサービスを提供する、弁護士をいろいろ活用したいという方の中で要は資力のない方にそれをやる。資力のある方は、被害者であれ被害者でない方であれ、それは自分が資力があるんだからということですか。

谷垣国務大臣 それぞれの、どういう弁護士の法的サービスかによって、それは一律に決めているわけではもちろんありません。国選弁護のような制度もあれば、あるいは、法律扶助制度というもので資力の乏しい方をお助けするという制度もございます。

 それで、ここの今回設けようとするのも、被害者参加人の方に弁護士による援助といいますか、サポートをできるようにしようという制度でございますが、今、西野委員は、そういう被害者という非常に厳しい状況にある方には、資力要件を撤廃して、つまり、原則的に法律サービスを国費で行うべきだ、多分そういう発想がおありだと思います。

 ただ、全般的に見て、そういう制度をやった場合に、ほかのリーガルサービスを必要としている方々をどう扱うかという問題が、税金ですからやはり出てまいります。今の制度の立て方としては、資力がどのぐらいかというのももちろん議論があると思いますが、やはり資力要件というものを入れざるを得ないのではないかと当面私は考えているわけでございます。

西野委員 やはり理念というか、結果、その制度を立てた後には同じ結果になるのかもわからないんですけれども、要するに、お金があれば被害者であっても応分の負担を求めてもいいんだという考え方に基づくのか、いや違うんだ、本来は資力にかかわらず全ての方に国が国費でこの制度を利用してもらえるようにするべきなんだが、財政上の理由で今回はいたし方なく資力要件をつけたんだというのか。一見、結果は同じなんですけれども、その理念が違うということは、被害者の方にとっては受ける感覚というものが相当違ってくると思うんですけれども、もう一度御答弁いただけないでしょうか。

谷垣国務大臣 結論だけ言ってしまえば、国の財政も無限ではございませんから、リーガルサービスが必要な方、どこに焦点を当てて提供していくかという判断は現状では私は必要なものだと思っております。したがいまして、被害者の方でも資力が十分な方も、それは数は多くないかもしれませんが、いらっしゃる。ですから、資力のない方には弁護士の援助をもって法廷に臨んでいただこうということでございます。

西野委員 やはり僕が質問の能力が自分でないのかなと今思いましたけれども、僕は、大臣にやはりここでメッセージとして、本来は資力にかかわらず全ての方にこの制度を国費で使っていただきたいんだ、そう明確におっしゃっていただきたかったんですね。ただ今の財政事情でということで言っていただくということが、僕は被害者の方にとってはすごく大事なことだったんだなと思います。

 今の御答弁は、ちょっと僕の頭が悪いのかもわかりませんが、どっちの意味なんでしょうか。もう一度、わかりやすく御答弁いただけますでしょうか。

谷垣国務大臣 要するに、例えば医療でいいますと、資力のない方も一定の医療サービスが受けられなければいけない。それは保険制度によってそういうものをつくっている。その中にはもちろん国費、税も入っているということですね。

 まだ司法制度にはそういうようなものはできておりません。できておりませんし、また、そうするのがいいのかどうかも、これはいろいろ議論のあるところだと思います。

 そうすると、誰が財源を負担するかという問題がやはり出てまいります。それで、理念として、では全部、言ってみれば、国営と言うとちょっと言葉がいいかどうかわかりませんが、やるのかどうかといいますと、まだそういう議論を出せる段階ではないのではないか、つまり、必要な財政を必要なところに投入していくという発想でやらざるを得ないのではないか、私はそう考えておりまして、西野委員のお気持ちに必ずしも十分沿わないかもしれませんが、そのように考えております。

西野委員 なかなか、これ以上、議論をこの部分でさせていただいてもあれなのかなと思いますが。

 被害者というのはどういう方かというと、被害に遭われたというのはたまたまなんですよ。たまたま道の右側を歩いていたか、たまたま左側を歩いていたか。もしかしたら、それによって僕が被害に遭ったかもわからないですし、大臣が被害に遭われたかもわからないし、たまたまなんですよ。だから、裏返せば、僕らはたまたま被害に遭っていないだけなんですよ。

 では、たまたま被害に遭った方だけがその負担を背負うというのは、僕はそこが間違っていると思うんです。だから、負担はたまたま被害に遭っていないみんなも含めて全員で分かち合う、これは当然のことだというふうに思うんですよ。

 被害者の中で資力のある方と、今のお話でいうと被害者以外の方とを同列に扱って、財政上、どちらにいろいろなサービスを提供していくために措置をしていくかということの考え方でいうと、では、被害者は誰によって権利回復されていくかというお話もしていかないといけなくなってくると思うんです。

 先ほどもありましたけれども、当然、近代国家の成り立ちの中で、被害者の方が報復したりとか復讐したりということは、これは許されているわけではありません。だから、裁判においても、当事者というのはあくまでも国の側の検察と被告であるというふうに私も承知しておりますけれども、であるならば、では、被害者というのは、今のあれでいうと、単なる国の側の検察というところの範囲の中の一つの存在でしかないわけですよ。今まではずっとそれで来たわけですよ。やっと今、そうではなくて、少し被害者の方も独立して権利を主張できるところがようやく芽生え始めたという段階だというふうに思っているんですが、その中で生まれた制度がこれなんですよね。

 ですから、この国選弁護制度というところは、初めて、その権利を主張しようという苦しい活動の中でようやくかち取った被害者参加人制度の中の国選弁護制度なんですよ。だから、被害者の方というのは、ほかの方とは全く違う扱いでなければならないんです。被害者の権利をしっかりと確立していくというのは国の責任なんですよ。

 犯罪が起こった場合には、その加害者というのに一義的な責任はあることは当然ですけれども、だけれども、その犯罪を起こさせてしまった、犯罪を防げなかったというのは国の責任でもあるわけでありますし、当然、そういう意味では、被害者の方の権利を確立するというのは国の責任なんですから、やっと被害者の方がかち取ったこの制度の中で、被害者の方がその資力云々によって選別されるということは、何度も繰り返しになりますけれども、私はおかしいという気持ちなんです。

 ましてや、今回の国選弁護制度の予算額というのは幾らですか。

小川政府参考人 お答えいたします。

 被害者国選弁護制度の予算額でございますが、平成二十五年度政府予算案に計上された被害者国選弁護事業経費は五千六百万円でございます。

西野委員 僕は大阪人だからすぐにお金のことを思ってしまうのかもわからないですけれども、国の全体の財政の中でいうと、五千万というのはそんなに大きな数字じゃないと思うんです。

 ちなみに、平成二十三年度、弁護士への委託の届け出をした被害者の数というのが六百三十二人なんです。国選弁護士への委託をされた被害者の数というのは二百七十五人なんです。つまり、大体約半分なんです。要は、国選の弁護士をつけていただいたというのは約半分。さかのぼって、平成二十二年でいうと、届け出をした被害者全体の数は五百五十七人で、うち国選弁護士へ委託された方は二百七十人。大体半分ぐらいで推移しているんです。これは単純な計算です。

 この中にはあえて私選の弁護士をつけられた方というのもいらっしゃると思いますから、一概にこの数字がそのまま言えるわけではないと思いますが、ただ、資力要件を外して全員が国選弁護士に委託されたとしても、今の予算の倍ぐらいで、この数字を見れば、単純に言えば倍ぐらいの予算額があれば十分賄っていけるのではないですか。であれば、一億ぐらいなんですよね、今から五千万ぐらいプラスなんです。単純な話で申しわけないんですが。

 でも、このぐらいの予算獲得に向けて、何でもっと法務省は一生懸命に頑張られないのかな、ほかのことで結構、すごく一生懸命頑張っておられる姿を見ているだけに、何でこの部分でもう少し気概を持ってやっていただけないのかなと思うんですけれども、大臣、御所見があればお願いします。

谷垣国務大臣 先ほどの田嶋委員の、政治が手を差し伸べるべき者は一体誰なんだというお問いかけがありました。今の西野委員の御発言も、それと非常に関連のあることを問うておられるんだと思います。

 それで、確かに、今おっしゃったように、金額だけからすれば、これだけを見れば、私がこんなことを言っちゃいけませんが、さほどの額ではないかもしれません、それは。ただ、他方で、先ほど階先生の御質問にもあったわけですが、まさに犯罪被害者という方は、本当に偶然によって犯罪に巻き込まれて、家族を失う方もあれば、御自身が取り返しのつかないことになる方もいらっしゃる。しかし、それは、例えば東日本大震災で突然津波によって大きな損害を受けた方も、どちらに寄り添うべきかというと、これはなかなか判断は難しいだろうと私は思います。

 ですから、それがすぐに、ですからというのはやや論理が飛躍していると自分でも思いますが、そういうことを考えると、やはり一定の資力要件というものを求めることに、恐らく多くの国民は、ここはまた西野委員と私と判断が違うかもしれませんが、そういうことを考えたときにそこに資力要件を設けるということはある程度納得していただけるのではないかと私は思っているわけです。そこはいろいろなお考えがあると思います。

 そしてまた、これは実際のこれからの運用を見ながら、また、今も、あれは何でしたか、検討委員会といいましたか、検討委員会を発足させて、これから中でいろいろな御議論があると思います。そういった御議論にも十分耳を傾けなければなりませんが、現在の段階では、今申し上げたような考え方をもとに資力要件をつけている、こういうことでございます。

西野委員 まず、今お話しになった中で一つ目の、例えば震災に遭われた、被害を受けられた皆さんと比べてどうだという、これはもうナンセンスな話だ、当然そうだと思うんですが、私はむしろ、もしそのお話をされるのであれば、では、犯罪の被害に遭われた方が、今の被災者の皆さんのいろいろな支援をする制度と比べたときに、犯罪被害者の制度というのが果たしてどれだけのものなのか、十分なものなのかどうかということだけは、法務省としても、これは法務省じゃないのかもわかりませんけれども、法務省の所管する部分も当然あるでしょうから、ぜひ御検討いただきたいと思います。

 それで、もし劣っているような部分があれば、それは同じ水準に引き上げてもらえるようにぜひ検討を始めていただきたいと思うんですけれども、そこはいかがですか。

谷垣国務大臣 先ほどちょっと申し上げた、懇談会と申し上げましたか、平成十九年改正刑事訴訟法等に関する意見交換会というのが正式の名前でございました。そこで今の犯罪被害者の問題等も、まだ残された課題がございますし、今までの運用がどうだったのかということについてもいろいろ議論していただくことになっております。

 それで、今おっしゃったことは、ちょっと何でしたか、もう一回。(西野委員「被災者の方の支援策と比べて」と呼ぶ)それは、こういう議論の中で十分また詰めていかなければならないと思います。

西野委員 資力要件の話でいくと、被告の側の国選弁護人というのは、これは資力要件はありますか。ないんですよね。

稲田政府参考人 被疑者あるいは被告人の国選弁護人というお尋ねかと思いますけれども、資力要件は一定ございます。

西野委員 そうなんです、ないですよねと言いながら、あるんですよ、一定は。だけれども、それは当然、被疑者、まあ、被疑者、被告というところは、またこれをやり出すと難しくなるんですけれども、僕はそこの資力要件というのと被害者側の資力要件というのは全く違うと思うんです、意味が。そこは繰り返しの議論になるので、もうこれはこれでおいておきますけれども。

 ちなみに、被告側の国選弁護人がついたケースでいうと、数が二十三年度で四万九千三百二十九件なんですよね。それでいうと、二十三年度でいいますと約二百倍ぐらいの数がついているんですよ。

 この数字を並べ立ててどうのこうのということではないですけれども、やはりそこの部分で、先ほどから、国民から見たときに、資力要件というのは一定つけても仕方ないというコンセンサスは得られるかのごとくのお話でありましたけれども、では、一体、被告側にこれだけの数の国選弁護人がついていて、予算額でいうとどれだけですか。

小川政府参考人 平成二十五年度の政府予算案に計上されております被告人国選弁護事業経費は六十九億六千四百万円でございます。

西野委員 恐らく、国の財政全体のことを見ないで、ここだけを取り出して国民の皆さんにお話をすれば、片や五千万円、片や七十億近い額ですか。だから、そこだけを見ると、やはり国民の皆さんは、ではもう少し被害者の方にも何とかしてあげられないのかなというふうに思われると思います。

 また、法務省の方が質問をとりに来られたときにお話をしていて、ちらっとおっしゃったのは、要は、裁判の中でいうと二つの当事者、被告の側と検察の側である、国と被告の側だということで、被告の側には当然弁護人をつけないといけない。これはもう必須です、当然つけないといけません。でも、被害者側には検察もあるじゃないですかというようなことをおっしゃったんですけれども、この認識は正しいんでしょうか。

谷垣国務大臣 今のお問いかけは、私は大変重要なお問いかけだと思います。

 確かに、過去の刑事司法というのは、弾劾する検察官と、それから被告人と、そして裁判所ということですね。それで、被害者の方々から見れば、被告人の権利は守られているじゃないか、手厚く保護され過ぎているじゃないかというお考えもなかったわけではないと思います。だけれども、そういう発想で今までの制度がつくられていたわけですね。要するに、刑罰というものを科すわけだから、その手続はきちっとしなきゃならないという発想で来たわけです。

 それで、そういう背景の中に、私は今でも法務省でも申し上げているんですが、検察官が捜査をしたりあるいは公判を追行していくには、やはり、被害者の感情というもの、被害者の気持ちを背中にしょってやらなければ検察官の仕事は成り立たないと。検察官はやはりそういう気持ちを持って仕事をすべきだと思います。

 しかし、では、検察官は全て被害者の気持ちと同じでできるかというと、それは必ずしもそうではありません。やはり一般的な国益ということを、公益を考えて行動しなきゃならない。それは、被害者の方と必ず一致するかどうかわからないという面もあります。だから、検察官がバックアップできる、もちろん、被害者にかわって被告人、犯人を追及するという気持ちの中に一致する面もあります。そこは、必ずしも一致しない面があるなと考えたからこそ、昔はこの被害者参加制度というのは認められておりませんでした。そういう制度ができてきたわけですね。

 ですから、それをどういうふうに位置づけていくかということは、まだ、まだと私が申し上げるといけないかもしれません、道半ばのところが、まだ十分によくわかっていないところがあるんじゃないかというおそれを抱きつつ、私も先ほどから答弁させていただいているんです。

 ただ、最後まで行きますと、国家の刑罰権は誰が行使するのかという問題を避けて通るわけにはいきません。そこをどこに落ちつけていくかというその見方の違いが、今いろいろな議論になっているのではないか。

 だから、先ほどのことをもう一回お答えすれば、検察官はある意味では被害者の立場に成りかわって闘うという気持ちが必要ですけれども、全く一致するわけにもいかないんだろうと私は思います。

西野委員 恐らく、国家の刑罰権は誰が行使するんやという話になると思いますので、最終的に完全に、被害者と検察が全く一致するということには僕はなり得ないのではないかなと思います。

 ただ、そういう中で、だんだん制度が変わってきてはいますけれども、今までは、どちらかというと、こういう言葉を使っていいのかどうか、不適切かもわかりませんけれども、過去においては被害者の皆さんというのはまるで事件の証拠品扱いですよ、お話を聞いていれば。その中から、みずからいろいろな権利を獲得されてきて、やっとここまで来られているんだというふうに思いますが、やはり、今後の展開として、被害者の方も裁判に参加する中で、もう少し、ある一定独立した立場、独立した権利というものを行使できるようにしていくべきだと思うんです。

 今、公判前の整理手続なんかでも、被害者は恐らくそこに入っていろいろと意見を言うこともできないはずですし、実際に例えば無罪なんかになった場合に被害者がみずから上告するというようなことも、これは当然今の体系ではできないはずですから、そういったところまで最終的には議論をしていくべきだと思いますし、検討もすぐに始めていくべきだと私は思っているんです。

 そこまで行くまでにも、当面、裁判官と検察と被告という関係の中でも、被告に適正な罰を下す、また、いろいろな被害者が裁判にどんどん参加していく中で、いろいろな真情を吐露されたりする中で、場合によっては、被告もそれを受けて反省をさらに深くしていくということもあるでしょうし、結果、それが更生にもつながっていくかもわかりません。そういう観点においても、被害者の皆さんがこの司法の場に参加されるということは僕はいいことだと思っておりますので、参加しやすいようにしていくということは大事なことだというふうに思っておるんです。

 今後の方向性として、大臣、個人的なお考えでも結構でございますので、どのような方向が議論されていくべきだとお考えですか。

谷垣国務大臣 先ほど意見交換会というのをやり始めたと申しました。今、西野委員が示唆された幾つかの問題は既にその中で問題提起が行われております。

 ですから、今申し上げたような、当事者そのものではないという今位置づけですが、どこまで参加人の地位を高めていけるのかいけないのか、十分に議論していただかなければいけないと思っております。

西野委員 この制度、この資力要件というものに僕はこだわりを持ち続けたいのは、何度も蒸し返すようなお話をして申しわけないんですが、被害に遭われた方というのは何の落ち度もないんです。ちまたというか世間の中には、こんなことをしていたから被害に遭ったん違うかとか、あんなところに行っていたから被害に遭ったん違うかということをおっしゃる方もいらっしゃる。これはもう事実なんですよね。でも、そうではないということを、やはりいろいろな制度の中でも理念を示していくことでそうではないんだということを国民の皆さんにも御理解いただくということも、僕は国の責務だというふうに思っているんです。

 あくまでも犯罪を犯した加害者に責任があることは当然ですけれども、やはりこれは国の責任だというふうに思いますし、先ほどから何度もお話しさせていただいていますけれども、裁判においても、被告と、公益を侵したことに対する処罰をする検察側と、それを裁く裁判という関係の中で、被害者というのは少しその外に置かれているというか、今まではずっと外に置かれてきたわけですけれども、やっと基本法ができて、その中にもしっかりと理念が書かれて、被害者の権利回復、また被害者に補償をしていくのは国の責務だということも書かれているはずでありますので、そういった意味でも、その理念に基づいてこれからいろいろな制度を組み立てていただかないといけないなと思っているんです。

 もう一度お尋ねしますけれども、これからいろいろな制度をつくっていく上で、被害者が自分の生活を回復したりとかいろいろな補償を受けるというのは、これはもう基本法に権利だというふうに書かれているんですけれども、この権利回復に努めるというのは国の最大の役割の一つに間違いないと思うんですが、そのことにおいて、これから、いろいろな議論もされているということではありますけれども、具体的に、例えば大臣が今お考えになっておられる、いろいろな議論の対象となる事柄がおありでしたらお願いします。

谷垣国務大臣 今のところ、具体的に申し上げられるのは、第二次基本計画をできるだけ早く実行していくということにまず全力を注ぎたいと思っております。

西野委員 きょうの議論の中で、私がお願いしたかったというか、お答えいただきたかった答弁というのは、残念ながら、私も十分に引き出すことはできなかったなと思っているんですが、ただ、この第二次基本計画に書かれた内容を速やかに実行いただければ、被害者の皆さんにとってもまた大きな前進になることは間違いありませんので、冒頭に申し上げたように、大臣はあの厳しい状況で、個人的にも大変なときに、まさに滅私奉公であの震災復興に全力を傾けられた、あのときのお気持ちで、ぜひ被害者の皆さんの権利の確保にも当たっていただきたいと思うんです。

 きょうの質問に当たって、従来からおつき合いのある犯罪被害者の支援団体、みずからも犯罪の被害に遭われた、被害に遭われた家族の方なんですが、いろいろとお話をさせていただきました。ちょうどこの質問をする十分ぐらい前にもお電話がありまして、きょうの質問はこうこうこういうところでと、いや、そこはきょうの法律の趣旨と少しずれますのでとか、では、これはと、それは恐らく内閣府の所管になりますとか、いや、それは多分法務省ではないですとか、そんな電話のやりとりしかできなかったんですけれども。

 この参加人制度を初めとして、今、被害者の皆さんがかち取ってこられたというか、やっとの思いで回復されてきたいろいろな権利、制度というものは、残念ながら、そのかち取ってこられた当事者である被害者の皆さんには遡及して適用されることはないです。

 ですから、これからいろいろな制度を構築されていく、そのスピード感をどんどん増していただくということももちろんお願いしたいんですけれども、僕は、自分たちのことというよりも、これから被害に遭う方のために取り組んでこられた皆さんに、技術的に法律の遡及が無理であれば、期間をさかのぼって何らかの形でいろいろな給付制度をつくっていくとか、そういったことも少し議論を始めていただけないかなと思うんですが、いかがですか。

谷垣国務大臣 今、遡及というようなことにすぐお答えできるだけのまだ準備がないんですが、今非常に熱心にいろいろ研究もされ、御議論もいただきました。私は、今のお気持ちも受けて、懇談会もございますけれども、被害者の方々がよかったと思う制度を少しでもつくっていきたい、このように思っております。

西野委員 ぜひ御検討ください。

 今の制度をつくった方の中のお一人の方は、僕は直接お話を伺ったわけではないですが、私の知人から間接的に伺った話ですけれども、ある日突然に全然知らない男にガソリンをかけられて、全身九〇%のやけどを負われました。

 そのときには今ある制度は全くなかったものですから、医療費を払うのも大変で、でも、生活保護は受けたくないと。生活保護を何で受けなかったかなと聞けば、生活保護を受けるだけで、あの人は働かぬでも普通に楽に生活していくなということを言う人がいらっしゃったそうなんです。だから、生活保護も受けなかった。就職するにも、全身にやけどを負われているので、すごく環境に敏感で、空調がきちっときいたところでしかできない。だから、なかなか就職もできない。でも、医療費の取り立てもある、全身の痛みにも耐えている。

 でも、そういう苦しい中でも、いろいろな制度を確立するために頑張ってこられたんです。でも、その方には今の制度の恩恵は何もないんです。

 ですから、最後にお願いをさせていただきますが、そういった今まで活動されてきた方、今の制度では何の権利の回復もなされない方々にも、何とか、遡及することはできなくても、新たな制度で何かそういった権利の回復がなされるようなこともぜひこれから御議論をいただきますようにお願いしまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございます。

石田委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時九分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

石田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。椎名毅君。

椎名委員 みんなの党の椎名毅でございます。どうもありがとうございます。

 本日は、犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律及び総合法律支援法の一部を改正する法律案についての質疑ということで、機会をいただきました。まことにありがとうございます。

 本日は法案について幾つかと、それから、時間が余れば司法制度改革について引き続き興味を持って追及してまいりたいと思っております。

 まず第一に、法案についてですけれども、平成二十三年三月二十五日に第二次犯罪被害者基本計画というものが閣議決定されました。その基本計画には、今回の法律案の基礎となる被害者参加人への旅費の支給について、二年以内をめどに結論を出すということが書かれています。このたび、ようやく二年間経過して、平成二十五年の四月に法案という形で提出されたわけでございます。

 この間、平成二十三年の十一月から一月にかけて、先ほど田嶋先生が提示されましたアンケート、こういったものを行われており、それから、平成二十四年の六月から七月にかけて、犯罪被害者団体から三回にわたって聞き取りが行われているようでございます。この間、二年間ありながら、この第二次基本計画どおりのことが、結局、今回法案として提出されてきたわけでございます。

 しかし、先ほど来、日本維新の会の先生、それから民主党の先生方が指摘されていますように、犯罪被害者というものを刑事手続の中でどのように扱っていくか、そしてどのように保護をしていくかというのは、結構重要な問題だというふうに思っております。

 今まで、三面当事者の対立構造の中で、どうしても、刑罰権というものを全て国家が独占することによって、被害者というものが手続の中から疎外されてきたという現実の中で、今後どういうふうに被害者を扱っていくかというものについて、正直、もう少し実は真摯に扱っていただきたいというふうに思っている次第でございます。

 この間、犯罪被害者の参加人手続だけでなくて、例えば少年法に類似の手続があったり、それから、刑事訴訟法の三百十六条の三十九の一項というところですけれども、被害者参加人の付添人というところも定められている次第でございまして、例えばこういったところに旅費を支給するとか、そういった、要するに第二次基本計画に定められていることを超えて、もちろん予算の範囲内で、より被害者の手続を充実させていくというような検討はなされなかったのでしょうか。

 この二年間の検討状況についてお伺いできればと思います。

谷垣国務大臣 今委員がおっしゃいましたように、第二次の基本計画ができました後、その策定過程でもいろいろ、犯罪被害者団体の方々からお話も伺ってきたり、被害者の方々からもお話を伺ってきたんですが、それに加えまして、先ほど田嶋委員も引用されました、平成二十三年十一月から二十四年の一月にかけまして、この制度を利用された方々からのアンケート調査を実施して、御回答いただきました。それから、二十四年の六月から七月にかけまして、被害者団体等からヒアリングを実施してきた。おっしゃったとおりでございます。

 それから、被害者参加人に対する旅費といったものの性質をどういうふうに位置づけるかという観点や、あるいは、被害者参加人にできる限り負担をかけない制度はどうあるべきかというような観点も考慮しながら、裁判所等の関係機関とも協議をしながら検討を重ねて、今回の法整備に至りました。

 さらに、今、従来の刑事司法、刑事裁判の構造を超えてどこまで持っていくかということに関しましては、先ほど来御答弁もしておりますが、これはまだまだ長い検討が必要なのではないかと私自身も思っておりますが、まだ道半ばというところかもしれません。そのあたりの議論も十分これからやっていかなきゃいけない段階だと思います。

椎名委員 ありがとうございます。

 その間の過程で、犯罪被害者参加人という制度、これ自体は刑事訴訟法に盛り込まれたわけでございますけれども、恐らく、平成十何年でしたっけ、忘れましたけれども、犯罪被害者基本法という法律ができて、犯罪被害者全般について包括的に取り扱っていこう、保護していこうというような理念法ができ上がったわけでございます。それに基づいて、例えば少年手続やその付添人という制度ができ上がったわけでございますから、引き続き類似の制度についてまで同じような手続として検討してほしかったなと思うところでございまして、そういったところについても今後引き続き検討していただければというふうに思っております。

 さらに、この法律ができた基礎となる、犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律という法律で、施行後三年を経過したときに、この法律による改正後の規定の施行の状況について検討を加え、見直しを図るというような附則の規定があるわけでございますけれども、この犯罪被害者参加人という制度の見直しについて、例えば、今どういった検討が省の内部で行われていて、今後どういう方向性で検討していこうと思っていらっしゃるのか、教えていただけるとありがたいです。

谷垣国務大臣 平成十九年の刑事訴訟法改正で、被害者参加制度それから被害者特定事項秘匿制度といったものが導入されたわけでありますが、その施行状況について検討を行って、必要があると認めれば、その結果に基づいて所要の措置を講ぜよと、三年ということで書かれているわけですね。

 そこで法務省は、三年間の運用状況を踏まえて今検討を行っているところでございます。今までもアンケートをやったりヒアリングをやってまいりましたが、幅広く関係者の御意見も伺い、それから、平成十九年改正刑事訴訟法等に関する意見交換会、そこで質疑応答を通じた意見交換をやろうということで開催いたしております。そこで、見直しを行うべき課題であるとか、あるいは、そういった課題があるのかないのか、それは一体どういう内容なのかというのも明らかになっていくと思います。それを通じて、今後の方向性を定めていきたいと思っております。

椎名委員 そうすると、今の段階では、その見直すべき課題というのは検討会の中でも挙げられていないという理解でよろしいんでしょうか。

谷垣国務大臣 既に幾つか、先ほども西野委員の御質問にもございましたけれども、被害者団体等の要望を踏まえた意見が出ていることは出ております。

椎名委員 それを具体的に幾つかお示しいただいて、今後どうかというようなことをおっしゃっていただくことは可能でしょうか。

稲田政府参考人 まだ、その意見交換会自体が回数を重ねているわけではございません。三回程度の開会状況でございますので、本当のあらあらの状況ということで御理解いただければと思いますが、例えば被害者参加制度の問題につきましては、現在の公判前整理手続と被害者参加制度をどういうふうに関係づけるか、すなわち公判前整理手続への被害者の方の参加というような問題をどうするのか。傍聴という考え方もあろうかと思います。あるいは、訴訟活動の内容、現在、一定の証人尋問等に限られているところがこれでいいのかどうかというような問題もございます。

 また、そのほか、被害者参加以外につきましても、記録の閲覧、謄写のあり方等々、いろいろ御議論があるところでございまして、これからさらに詰めていきたいというふうに考えております。

椎名委員 ありがとうございます。

 公判前整理手続における被害者の参加というのは恐らく非常に重要な話になるかと思いますので、どうか引き続き御検討いただければというふうに思います。

 次に参ります。

 今回、改正案として提示されている新しい法律の五条というところを見ると、旅費の支払い主体が法務大臣になっていて、同八条を見ると、法務大臣が法テラスに支払い事務を委託するということになっております。刑事の証人だと、基本的には証人の旅費等は裁判所関係の予算、民事の証人だと、恐らく敗訴側の当事者負担ということになると思いますが、ここでは恐らく法務省関係予算ということなんだと思います。この法務省関係予算が、法テラスという組織を通じて参加した被害者に払われるということなんだと思います。

 では、そもそも法テラスとは何なのか、そういう話になるのかなというふうに改めて考えたいと思いました。

 法テラスなんですけれども、基本的には司法制度改革によって提案されたものであって、民事、刑事を問わず、あまねく全国において、法による紛争解決に必要な情報やサービスの提供が受けられる社会の実現を目指して、その業務の迅速、適切かつ効果的な運営を図るという趣旨で、総合法律支援法というので設置されたものだというふうに理解をしています。

 しかし、実態としては、もともと、それ以前に弁護士会に併設されていた財団法人法律扶助協会というところでやっていた法律扶助業務みたいなものを引き継いだり、それから国選弁護に関する業務、もともと各単位弁護士会でやっていたものを実際引き継いでいる、さらには、もともと弁護士会がひまわり基金という基金を立ち上げて公設事務所というものをつくっていたわけでございますが、これと同様な業務を、要するに、法テラスに常勤の弁護士を置くということで似たような業務を行っているということで、弁護士過疎を解消しようとしているということだと思います。

 これを改めて考えたときに、私自身、行政の肥大化じゃないか、民間の業務をクラウディングアウトするんじゃなかろうかとやはり思ってしまったわけでございます。

 さらには、もともと弁護士自治という考え方がございまして、戦前、司法大臣が弁護士とそれから裁判所というところについて監督権を持っていて、対立する検事やそれから裁判所の請求によって弁護士の懲戒がなされるというようなことが事例として多くございました。その結果として、政治犯、思想犯という形で多くの弁護士が扱われることもあったやに聞いております。

 こういった時代を経た上で、弁護士が、特に刑事裁判においてですけれども、国家権力と対置する立ち位置に立つ、それによって被告人の身分を確保していく、そういう立場に立つことを、きちんと独立した立場で、しかも自由に公正な立場で行うことができるようにという思想設計のもと、弁護士自治というものが理念的に置かれているんだと思います。

 しかし、こういった形で法テラスという制度ができ上がり、その下に弁護士が常勤で雇われる、さらには国選弁護の業務それから法律扶助業務といったものを行うに至ってきたことにおいて、この弁護士自治というのも脅かされているんじゃないかと、ちょっと危惧をしてしまったわけでございます。

 そういった中で、そもそもこの法テラスというものが設立されるに至った経緯の中で、どの程度こういった弁護士自治というところについての議論がなされてきたのかという点と、それから、現状、法テラスが民業圧迫、クラウディングアウトするような状況になりかけていること、こういうことについてのコメントがもしあればいただきたいと思います。

谷垣国務大臣 総合法律支援法ができた当時、私は余り法務行政あるいは法務畑でないところで仕事をしておりまして、はっきり当時の議論状況の記憶はございませんが、今回、法務省の事務方にいろいろ聞いてみますと、確かに、委員の御指摘のように、これは、法テラスと弁護士が契約したりいろいろなことがございますので、弁護士自治というものを脅かすのではないか、そういう観点からの御議論が随分あったように聞いております。

 それで、この総合法律支援法の中は、かなりそのことを意識して制度設計されているようでございまして、弁護士等の職務の特性を常に配慮しなければならないものとした上で、法テラスとの間で契約をしている弁護士等の職務の独立性というものも明記して、具体的な職務活動については弁護士は法テラスの指揮命令を受けないこととする、さらには、有識者等により構成される審査委員会を設け、契約弁護士等に対する契約解除等の措置に関してはその議決を得るというような規定もございまして、かなり弁護士の独立性や弁護士の自治という点には配慮した仕組みになっているのではないかと思います。

 それから、今、民業圧迫ではないかというお問いかけがございました。これは法務大臣としてではなく、一応私も弁護士の資格を持っておりまして、その仲間に聞きますと、確かに、弁護士がやる業務を法テラスにとられるというような危機感もないわけではないようでございます。

 ただ、やはり現実に今、特に東北の東日本大震災等々を見ますと、もちろん地元の弁護士会等々も被災者に対する法律相談や何かを懸命にやっておられるわけですが、またもともと弁護士過疎のところでもあり、それだけではなかなか手が届かない。やはり法テラス等の活動に負うところがあるというのは、これはそういう認識になっているんだろうと思います。

 いろいろ、そういう意味での問題が全く皆無とは申しませんけれども、法務省が全部介入するわけにももちろんいかないわけでございますが、法テラスの本来の意義を発揮するように我々も努めていかなければならないと思います。

椎名委員 ありがとうございます。

 まさに法テラスの制度そのものというより、いいところを生かして、民業圧迫のようなそういった弊害というものをなくすような制度運営、制度の改善の仕方というのをこれから引き続き考えていかなければならないのかなというふうに私自身思っております。

 少しだけ時間があるので、司法制度改革の話、それから法曹養成の見直しの話について改めて議論をさせていただき、問題提起をさせていただきたいというふうに思っています。

 現在、法曹養成制度について、検討会で見直しの作業の最中だと思います。つい先ごろ、中間取りまとめというものが提出されたところかというふうに認識をしております。私自身、この法曹養成制度の見直しということについて、国会でも改めてこの検証という作業ができないかというふうに考えております。

 私自身、ここに来る前、国会事故調というところで仕事をしておりました。この国会事故調という組織は、政府が原子力発電所の事故の原因の調査を行う、それから東京電力が原子力発電所の事故の原因の調査を行う、これと並列して、国会に併設された組織として、独立の第三者、しかも国民から選ばれた、国民の中から、すなわち何かというと、役所ではないところから選ばれた人間、こういった人間が事務局を構成して独立の調査、検証を行っていくという組織でございました。

 こういった、何か大きな問題があったときに幾つもの検証チームが走る、同時並行的に検証チームが幾つか走るということ、それで、幾つかの重なり合った、そして異なる視点から検証を重ねていくこと、これが重要だというふうに私自身考えています。

 司法制度改革について、十年という区切りを迎えて、見直しのちょうどいいタイミングではないかというふうに私自身思っています。後日、今度理事会で検討していただきたいなというふうに思っているんですけれども、当時の司法制度改革審議会の委員であった方々を法務委員会に参考人としてお呼びして、検証の機会を設けるということも検討していただきたいなというふうに思っています。

 と申しますのも、司法制度の存在そのもの、それから法曹養成という話、これは、要するに、我々一般民間人が個々人のいろいろ抱えている紛争を解決する最終的な解決手段として司法制度そのものが確保されているということ、強制力があるということを背景にして非訴訟的な解決を促している、要は社会インフラだと私自身は思っています。法曹養成というのは、この社会インフラを整えていくための非常に重要な制度だというふうに考えているわけでございます。

 よくテレビなんかで、弁護士の就職難というような問題が取り上げられるわけでございますけれども、これ自体は、若年層の就職難とか、高齢者の再就職それから再雇用といったような問題と同等に扱われがちだと思いますけれども、私自身は別に考えたいというふうに思っています。あくまでもこれは社会インフラの劣化に関するものだと思って、割と重要な問題だというふうに考えたいと思っています。

 余り時間がないので早々に行きますけれども、まず、今、検討の方向性について伺いたいと思います。

 まず、特に、弁護士会の内部でも結構意見がずれているわけでございますけれども、例えば、千葉県弁護士会、それから愛知県弁護士会、そして札幌弁護士会といったような単位会のレベルでは、法科大学院の修了を司法試験の受験の条件とするという現行のプロセス型の司法養成制度に対して、根本的な見直し、ノーを突きつけているわけでございます。

 現在行われている法曹養成制度のあり方検討会について、この法科大学院という制度そのものを見直すことまで含めた抜本的な見直しなのか、それとも既にある法科大学院を活用していくことを前提とした見直しなのかということについてお伺いできればというふうに思います。

 私自身、現在存在している成績の上がらない法科大学院について、この教育レベルを見直すという話、これ自体は重要だというふうに思っています。利用者である学生の方々の立場を考えると非常に重要な話であると思いますので、ここについての検討をすることはまず当然という前提に立った上で、それ以上に、今後の法曹の養成制度についてどのように考えていくべきなのかと。

 どうも、中間取りまとめ案を見ていると、現在既にある法科大学院の教育レベルを見直すという話以外に余り出てこないように見えておりますが、現場の弁護士会では、先ほど申し上げたような、法曹養成制度そのもののあり方について見直すような意見というのも出ているということを踏まえた上で、意見を聞ければと思います。

谷垣国務大臣 国会の中でも法曹養成は議論しなければいけないんじゃないかという委員の問題意識でございますが、今政府にいる私どもとしましては、まず政府の中でしっかり議論をやっていこうということで、関係閣僚会議、そしてそのもとに検討会議を置いて今議論をして、その検討会議が、きのう開催された第十二回会議で中間的取りまとめに向けた最終的な議論を行って、これからこれをパブリックコメント等にかけていくという段階でございます。

 そこで、今のロースクールをどういうふうに見ていくか。確かに、おっしゃるように、もうロースクールなんかは、どうでもいいと言うと変かもしれませんが、そういう予備試験、結局、昔の司法試験がよかったのではないかという御意見もあることは私も承知をしております。

 しかし、今回、今の議論の方向、中間取りまとめの方向でございますが、これは、プロセスとしての法曹養成ということをずっと今まで言われてまいりました。その中核が法科大学院ということでありますけれども、このプロセスとしての法曹養成の考え方を放棄して、そして法科大学院修了を司法試験の受験資格とする制度を撤廃するという考え方、これをとりますと、法科大学院の教育の成果も生かされないだろう、それから法曹志願者全体の質の低下を招くおそれがあるのではないか。だから、プロセスとしての法曹養成制度の理念はやはり堅持していこうというのが今の議論である、そして、それをどう実効的に、より機能的にさせていこうかというのが今の問題意識であるというふうに承知をしております。

 もちろん、これをパブリックコメントにかけて、またどういう御意見が出てくるかということを踏まえてよく検討しなければなりませんが、八月二日までに結論を出せと尻を切られておりますので、精力的に議論をしていただいて、いい結論を出していきたいと思っております。

椎名委員 どうもありがとうございます。

 引き続き、パブリックコメントでも恐らく私の提示したような問題意識について意見もあろうかと思いますので、法務省の方でもぜひとも検討をいただければというふうに思います。

 そして、委員長に改めて申し述べたいんですけれども、この法曹養成制度についての再度の検証について、国会側での検証についても御検討いただきたいというふうに思います。よろしくお願いいたします。

石田委員長 後日、理事会で協議させていただきます。

 次に、大口善徳君。

大口委員 公明党の大口でございます。

 まず、四月の九日の各朝刊で私も衝撃的な報道を見たわけでありますけれども、砂川事件で、田中耕太郎当時最高裁判所長官が、共通の友人宅で、当時アメリカの首席公使のレンハート公使とやりとりをしている。これが、一九五九年の八月三日、十一月五日、十二月十七日付の三通の公文書が明らかになって、どういうことかというと、田中長官が、砂川事件の最高裁判決が恐らく十二月であろう、それから、実質的な全会一致を生み出し、世論を揺さぶるものとなる少数意見を回避するようなやり方で運ばれることを願っている、こういうことを述べたということが公文書には載っているわけであります。

 もしこれが事実だといたしましたら、これは司法の独立ということにおいてゆゆしきことではないかなと思っておりますし、また、全会一致ということで他の裁判官に働きかけたとしたならば、これも大変な問題である。時期を伝えるということも含めて、これは法曹として事実解明をもっとしっかりしていかなきゃいけないな、こう思っております。

 そういう点で、法務大臣に、この報道についての御所感をお伺いできればと思います。

谷垣国務大臣 私も、その報道は大変関心を持って読ませていただきました。

 ただ、田中耕太郎長官とか砂川事件というと、何か少年時代の、少年時代と言うとあれですが、もう本当に若いころのことでございますから、これはアメリカの公文書館にあったというんですね。ですから、日本政府としてその真偽なんかを確認する、検証する手だてもないので、法務大臣としては、大体、司法部のことを語るのをできるだけ差し控えるんですが、この問題は、せっかくのお問いかけですが、なかなか申し上げにくい。

 やはり私は、歴史としてしっかり検証していただければ、そして問題点も歴史として検証していただければというふうに思っております。

大口委員 この事実関係につきましてはいろいろこれからも究明していくことになるんでしょうけれども、本当に事実だとしたならばこれは大変ゆゆしきことだということをここで私どもとしては確認しておきたいと思っております。

 さて、今回、犯罪被害者の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律、総合法律支援法の一部を改正する法律案でございますけれども、私もこれは、昨年六月の十五日に、第百八十回の法務委員会で質問をさせていただきました。とにかくしっかり進めるようにということでやってきたことがやっとこの法案という形で出てきたということで、これは私どもは、本当に早くこれを成立させて、犯罪被害者にとって安心していただけるようにしていかなきゃならない、こういうふうに思っておるわけでございます。

 ところで、被害者参加制度というのが平成十九年に刑事訴訟法の一部改正等をやられて、成った。それで平成二十年の十二月にスタートしたわけでございます。

 裁判員裁判でいいますと、二〇一一年の三月までに、大体一割ぐらいの事件についてこの参加の許可がされている。大体約一割ぐらいなのかな、こういうことで、二十一年には五百六十、二十二年には八百三十九人、二十三年は九百二人という形で許可されている。着実に定着をしているのではないかと思います。

 私ども、やはり、これまでの質問もありましたけれども、犯罪被害者という方を重要な当事者として位置づけるべきである、こういうふうに思っております。そういう点で、この被害者、遺族などが、傍聴席ではなくて、法廷のバーの中で、検察側の席に座って、被告人に質問し、意見を述べるということが可能になったということは非常に評価されるべきである、推進してきた者の一人としてそう思っておるわけでございます。

 さて、この被害者参加制度が施行されて三年経過したわけでありますけれども、いろいろ効用があると思います。やはり被害者参加人が犯罪被害者の立場から直接訴訟活動を行っていく、それによって、例えば裁判に有益な資料も顕出されたり、あるいは適切な刑事裁判の実現にも効果があるという報告も受けているわけであります。

 ただ一方、日弁連等は、被告人の防御権に対する重大な影響があるということで、手続二分制度ということを提案して、公訴事実の存否の判断手続についてはこれを認めない、刑の量刑の手続についてのみ認めるべきだ、こういう意見もあるわけであります。

 法務大臣、この被害者参加制度についての評価をお伺いしたいと思います。

谷垣国務大臣 今、大口委員から、今まで推進してきて評価されるべきものだと思っていると。私も基本的にそのように思っております。

 四年余り経過したところでございますが、裁判所から被害者参加の許可を受けて刑事裁判に参加された被害者の方の数も、年々増加してきております。それから、この参加制度を利用した方にアンケートをいたしましたところ、この被害者参加制度を利用した多くの方が、全般的な感想については肯定的な回答をしておられます。それから、昨年、法務省で実施した被害者団体等からのヒアリングにおきましても、被害者参加制度を利用した方から、「言いたいことを言えて本当によかった。判決にも遺族の感情を反映してもらえたと思う。」などという肯定的な御意見が見られたところでございます。

 私自身も、一生懸命これをやっておられる、この制度を推進しておられる方から、昔は要するに被害者は証拠だったんだ、それが、こういう制度ができて、きちっと光が当てられたというようなことを伺ったことがあります。こういうことを考えますと、おおむね今まで順調に来て、さらにどう推進していくかというところに今来ているのではないかと思います。

大口委員 今回の法案におきましては、そういう点で、旅費、日当、宿泊費について、しっかりと国費で対応する、それから国選弁護制度においては資力要件を緩和する。犯罪被害者の方あるいはその遺族の方というのは、犯罪に巻き込まれて、肉体的、精神的な被害を受けられている。加えて、経済的にも非常に苦しい状況にあるわけでございますので、やはりこの法案をしっかり推進していくことが大事だなということを思っているわけでございます。

 そういう中で、私ども、実は昨年、被害者の会の方から相談を受けたときに、被害者の会、あすの会の方からは、やはり証人と同様に、訴訟費用という形で、裁判所に請求して、裁判所から直接支給されることを望んでおられたわけであります。というのは、一々いろいろな手続をして、そしてまた、いろいろな証拠を提供してやるというのはさらに負担をかけることになるということで、簡便な方法でということを強く求めてきたわけでございます。今回、法テラスというものを活用したスキームにしているわけであります。私どもは本当にこれについてはできれば簡便にやっていただきたい、こう思っているわけであります。

 今回、「旅費、日当及び宿泊料を支給する。」こういうことで、五条の一項においてそうなっているわけであります。そして、二項において「額については、政令で定める。」こういうことであるわけです。

 それで、恐らく、証人、裁判員、あるいは国家公務員というようなことを念頭に置いて定めるとは思っておるんですが、やはりこれは、証人の場合ですと日当が八千円以内、裁判員等の場合は一万円以内。それから、宿泊費については、証人の場合は、甲地方においては八千七百円以内、乙地方においては七千八百円以内。裁判員の場合は、甲においては八千七百円、定額ですね、乙地方には七千八百円。こういうことで、裁判員についてはかなり配慮されているわけでございます。

 私は、先ほども述べましたように、犯罪被害者は本当は犯罪に巻き込まれて肉体的にも精神的にも被害を受けて、また経済的にも大変な思いをされているということでは、政令で定めるということでございますけれども、額につきましてはやはり十分にそういう立場を配慮したものになるべきではないかな、こう思っておりますが、この計算方法、支給基準等についてお伺いしたいと思います。

谷垣国務大臣 旅費、日当それから宿泊料、これは御指摘のとおり政令で定めるということになっているわけでございます。まだ具体的な額についてきちっと詰めているわけではありません。

 ただ、おっしゃいましたように、この法律が成立した後、刑事手続における証人をどう扱っているか、あるいは裁判員の旅費等々の額、それからもう一つ、やはり国家公務員等の旅費に関する法律における旅費等がどう決められているか、こういうものを参考にしながら決めていくということになると思います。

大口委員 大臣、そこで、やはり被害者参加人につきましては私は手厚くやるべきだ、こういうふうに思いますが、そこの方向性を出していただけますか。

谷垣国務大臣 方向性と詰められましても、まだ十分方向性を煮詰め切れてはないんですが、ただ、刑事の手続等の場合には、証人は出頭を義務づけられるというようなこともあります。それから、裁判員の場合は、かなり長期に及ぶ場合、自分の業務に影響してくるというようなこともあります。そういった点をどう比較考量していくのかというのは、一つやはり考えておかなければならないことかなとは思っております。

大口委員 では、逆に、被害者参加人について配慮すべきことをお伺いします。

谷垣国務大臣 この間から、先ほどからの委員会の中の御議論もおありですが、やはりこれは、犯罪を受けたことによって相当経済的にも困窮しておられる方がおられることも事実でございます。そういう方が、しっかり自分の考え方をこの手続において主張できないというようなことがあってはならないという観点、これは大事な観点だろうと思います。

大口委員 次に、請求の手続についてお伺いしたいんですが、被害者団体から、裁判所への被害者参加人からの必要書類の提出は、簡便な請求書一枚、それから、旅費の領収書だけという形で、手続を簡易にしてもらいたい、こういう要望があります。

 所定の請求書あるいは法務省令で定める資料について、今の犯罪被害者の方々の要望というものに対してどうお応えされるのか、御答弁を願います。

稲田政府参考人 先ほど大臣からも御答弁ございましたように、これは法律が施行された後に具体的な点につきましては定めていかなければならないことでございまして、現時点で確たることを申し上げられる段階ではございませんが、国家公務員等の旅費に関する法律において提出することとされている資料を参考にしながら、この必要な資料というのを考えていきたいというふうに考えております。

 ただ、具体的にはどういうふうなことになるかと申しますと、例えば電車代等の額は、原則として、国家公務員等の旅費に関する法律では、距離に従った定額制でございますので、通常、特に別途の資料の提出は必要とされておりません。ただ、航空賃を請求することが必要になる場合につきましては、通常、支払いを証明するに足りる資料ということで、例えば航空券の半券の提出をお願いするというようなことがあろうかと思いますが、この点につきましては、被害者参加人の方にとって過重な負担とならないように考えたいと思っております。

 また、所定の請求書につきましても、できるだけ簡易な書式をつくりたいというふうに思っております。

大口委員 もう一つ、裁判所の請求書等の送付事務について要望があります。

 在廷したその日のうちに、その日ごとにしていただきたい、それから、裁判所から請求書等を受け取った後、法テラスにおいて支給事務を行うことになるわけでありますけれども、法テラスからの振り込みは、裁判所から書類を受け取った後、一週間以内にしていただきたい、こういう要望があります。

 裁判所及び法テラスにおいて、お互いに連携をして、被害者参加人に速やかに支給される体制整備、これをどう行っていくのか、法務省、最高裁からお伺いしたいと思います。

今崎最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 裁判所といたしましても、今後とも、被害者参加人が公判期日等に御出席されるということを証明する書面のあり方でございますとか、あるいは被害者参加人からどのような資料を頂戴するか、受け取るかといったことについては、法テラスあるいは法務省と十分に具体的な運用方法につきましては協議を行ってまいります。関係機関と緊密な連絡を行った上で、速やかに参加旅費等の支給を受けられるような体制整備を図っていきたいと考えております。

 なお、ただいま、その日のうちに、その日ごとにというお話をいただきました。まだ具体的な運用のイメージが固まっているわけではございませんが、大まかな運用イメージを今申し上げますと、被害者参加人が在廷された当日分の被害者参加旅費をその日のうちに請求されるという場合には、裁判所といたしましては、審理が午前中に終わる事件であれば、もうその当日中に、審理が午後に終わる事件でも、遅くとも翌開庁日の午前中までには請求書を法テラスに移送することができるように現在検討しているところでございます。

 もっとも、事件によりましては、連日開廷されるような事件も裁判員等ではございます。そのような事件になりますと、毎回出廷されるごとに請求書を提出されるというようなことになりますと、かえって煩瑣になりますので、そのような場合には、むしろ、そういう御要望をいただいた場合には、一週間分の請求を一括して記載していただいて、これを法テラスの方に送付する、こういうようなやり方もあろうかと考えております。

 いずれにいたしましても、関係機関との協議等の際には、御指摘の点を踏まえつつ、被害者の視点に立って、手続、事務の細部を詰めていきたいと考えております。

 以上でございます。

小川政府参考人 被害者参加旅費等の支給手続の関係でございますが、法テラスにおきましては、裁判所から旅費などの算定に必要な資料が送付された後、速やかに算定、支給に着手することといたしまして、原則として被害者参加人が裁判所において旅費等を請求してから遅くとも二週間以内にはお支払いできるよう、現在、その運用について関係機関との間で協議、調整を行っているものと承知しております。

 また、法テラスにおきましては、一律、迅速に支給事務を実施する観点から、本部がその事務を担当する方向で検討していると承知しておりますが、必要書類の簡略化や裁判所からの書類受け渡しの迅速化などにつきまして、引き続き、最高裁判所を初めとする関係機関と協議、調整を進め、被害者参加人の経済的負担を軽減するとの制度趣旨に沿った体制整備に努めてまいりたいと考えております。

 以上でございます。

大口委員 次に、資力要件の緩和についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 国選弁護制度を活用されている状況を見ますと、平成二十一年、参加許可が五百六十で、弁護士への委託が三百六十七、そのうち国選が百三十一、平成二十二年は、八百三十九の参加許可で、弁護士委託が五百五十七、そのうち国選が二百七十二、平成二十三年が、九百二件の参加許可で、六百三十二の弁護士委託、そして二百七十五が国選ということでありますので、大体、参加許可の二割強から三割が国選ということでございます。

 しかし、やはり、もっとこれは国選が活用されるように推し進めていかなきゃならないということで、今回も、平均の審理期間が六カ月程度ということもあって、療養費等の額、それから必要生計費を勘案する期間、これを三カ月から六カ月に伸長させたということでございます。

 そういうことで、今、資力要件の基準額につきましては、現行は百五十万、こういうことであるわけですが、これは三カ月分の必要生計費と弁護士費用を加えて百五十万円、こういうふうに決められたわけですね。今回の改正によって、必要生計費の勘案期間が六カ月に伸長されるわけであります。

 そこで、現行の百五十万の基準額の計算根拠、それを当てはめた場合、今回の政令改正によって増額される基準額はどうなるのか、お伺いしたいと思います。

稲田政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま委員からお話ございましたように、資力要件の基準額の算定方法は、現行法上は、三カ月間の標準的な必要生計費に、一般に被害者参加弁護士の報酬及び費用を賄うに足りる額を足したものでございます。

 それで、その際の、三カ月間の標準的な必要生計費というものをどういうふうに算定しているかと申しますと、一カ月間の標準的な必要生計費につきまして、総務省統計局作成の家計調査年報における総世帯の平均消費支出額に基づいて、その額を算定しております。

 これを算定いたしましたのは、刑事訴訟法の一部改正法が成立いたしました平成十九年を基準にいたしておりまして、そのときが、今申し上げました総務省統計局作成の総世帯の平均消費支出額によりますと、二十六万一千五百二十六円、すなわち約二十六万円であったということでございます。さらに、その当時の弁護士の着手金の平均額を弁護士の報酬及び費用を賄うに足りる額ということで算定しておりまして、平成十九年当時が約七十万六千円、すなわち七十一万円であったという事実から、これを当てはめますと、二十六万円掛ける三倍と七十一万円を足すと、おおむね百五十万円になる。こういうことで、その額が資力基準額となったというところでございます。

 それで、これを、今後改正された際にどうするかということでございますが、これは今後法律が成立した後に政令で定めることになりますが、仮に現在行っておりますやり方と同じ方式で行いますと、現在、私どもが手元に持っております統計データ等を当てはめるという仮定の方法、これはまだ現時点における仮定のやり方でございますが、それで算出してみるというのが一つの方法だと思います。

 そこで、やってみますと、一カ月間の標準的な必要生計費でございますが、総務省の統計局作成の、先ほどの家計調査年報における平成二十三年の総世帯の平均消費支出額が二十四万七千二百二十三円、すなわち約二十四万七千円でございました。若干金額が下がっております。それと、弁護士の着手金の平均額も下がっておりまして、五十三万七千百二十五円、約五十三万円というようなことでございまして、これらを当てはめますと約二百万円程度ということになるのではないかと思います。

大口委員 これまではデフレだったものですから、平成十九年から算定基準は変わらなかったわけであります。

 しかし、日銀の政策決定会合で、異次元の量的、質的金融緩和、これによって、二年を念頭にできるだけ早期に物価安定目標二%を目指す、やっていく、こういうことになりますので、これからインフレ状況になっていきます。

 そういうことを考えますと、それは、適切に基準額をインフレに合わせて上昇させていくおつもりか、大臣にお伺いしたいと思います。

稲田政府参考人 私の方からお答え申し上げます。

 先ほども申し上げましたように、この基準額は、法律の成立後に、家計調査に関する各種の統計でありますとか、弁護士の報酬等に関する調査結果をもう一度きちんと洗い出しまして、その結果に基づいて適切に基準額を決定するということになっております。

 さらに、その後、今先生御指摘のように、経済情勢が予想を超えて変動するなど、算定の基礎が異なるということになりますれば、そのような場合には必要に応じ改定することは考えなければならないというふうに思っております。

大口委員 次に、犯罪被害者等対策全般については、第二次犯罪被害者等基本計画で二年以内にやることがあるわけです。今回の法案もその二年以内ということを実施するということなんですが、法テラスによるカウンセラーの費用等の公費負担、これが二年以内ということで残っているわけです。

 犯罪被害者等が提起する損害賠償請求訴訟等の準備及び追行の過程で、代理人である弁護士等がカウンセラー等を犯罪被害者等と打ち合わせに同席させることに対して、法テラスの支援を行うこと、これを二年以内に実施する、こういうふうになっているわけですが、これについては、実施をすぐにでもやるべきと思いますが、いかがでございましょうか。

谷垣国務大臣 今、カウンセラーなどの同席によって発生する費用、これは民事法律扶助制度で法テラスが支援しようということでありますが、これはまだ結論を申し上げるわけにはいかないのですが、関係機関と今鋭意協議をしているところでございます。

大口委員 二年以内ということですから、もう日を置かずにやるということでよろしいですか。

谷垣国務大臣 できるだけ早く結論を出します。

大口委員 それで、被害者の団体等のヒアリング、意見交換をされているわけでございます。

 その中で、一つは、被害者参加を許可された事件と併合審理あるいは区分審理、要するに、裁判員裁判とその対象でない事件の区分審理をされている場合、当該事件以外の事件についての訴訟行為を認めてほしい、これが一つ切実な要望がございます。それから、公判前整理手続についての参加ということがございます。

 この二点をちょっとお伺いしたいと思うのですが、特に、公判前整理手続については、実際、実務上、公判前整理手続には参加できていないんですが、事前の打ち合わせには裁判官、検察官、弁護人、被害者参加人の四者が協議を行うということが実務で行われている場合もある。これは大いに推し進めるべきではないか、こういうふうに考えますが、以上二点についてお伺いしたいと思います。

今崎最高裁判所長官代理者 今議員御指摘のうちの後者の点について、先にお話し申し上げます。

 御指摘のような運用、すなわち、公判前整理手続ではございませんが、それ以外の、事実上の事前打ち合わせの中で、裁判官、検察官、弁護人そして被害者参加弁護士が出席して打ち合わせをされるという例、裁判体においてそういうことをやっているという例はこちらも承知しているところでございます。それはやはり、訴訟進行に関し、必要な事項について打ち合わせを行うためということであろうかと思います。

 ただ、そのような運用を定着させるべきではないかということにつきましては、個々の事案において裁判体の方で判断することかと存じますので、回答は差し控えたいと存じます。

 以上でございます。

谷垣国務大臣 まず、参加制度の中で、対象事件と非対象事件があって、その場合、併合されている場合、他方については参加できないのはおかしいじゃないかということでございます。これは、既に意見交換会でもこのような議論が出されておりまして、ここでしっかり議論しなきゃならないことでございます。

 ただ、結論を出すには幾つかやはり考えておかなければならないことがございまして、例えば片っ方で、併合されているもの、Aさんはこっち側に参加している、B被害者はこっち側に参加している、その場合に、今の、両方させろということになりますと、双方がそういうことになる、そういう場合に果たしてどういう問題が出てくるかとか、そのあたりも十分影響を詰めておかなければ結論が出せないというような意味で、ここも相当な議論が必要なのではないかというふうに思います。

 それからもう一つは、公判前の整理手続ですね。ここでも、要するに、被害者は、場合によっては、例えば証人になる場合もあり得るわけですね。では、どういうふうに証言を、証人等々の証拠をやっていくかというのを整理手続でやる場合に、果たして実際に証人になり得る可能性のある方が入っているのがいいのかどうかとか、この辺は少しきちっと制度的な利害得失を詰める必要があるのではないか。

 いずれにせよ、これも意見交換会で出ておりますから、しっかりその中で議論を整理していただく必要があると思います。

大口委員 ありがとうございました。

石田委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

石田委員長 この際、本案に対し、階猛君外一名から、民主党・無所属クラブ提案による修正案が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。階猛君。

    ―――――――――――――

 犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律及び総合法律支援法の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

階委員 ただいま議題となりました修正案につきまして、民主党・無所属クラブを代表し、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 現在、資力の乏しい犯罪被害者等であって、国選被害者参加弁護士制度や民事法律扶助制度の適用のないものが弁護士の援助を受ける制度として、日本司法支援センターが日本弁護士連合会から委託を受けて実施している被害者法律援助事業があります。これは、生命、身体または自由等に関する犯罪による被害者等のうち、一定の資力要件を下回る者を対象に、弁護士による援助の必要性と相当性を要件として、弁護士報酬や費用等を援助するものであり、被害発生直後の早い段階から広範な援助を経済的負担なく提供することが可能であることから、資力の乏しい犯罪被害者等にとって、必要性が極めて高い重要な事業となっています。

 ところが、現在の被害者法律援助事業は、日本弁護士連合会の会費から事業費用が支出されており、制度の周知が進むにつれた利用件数の増加及びそれに伴う弁護士報酬等の支出の増大により、常に財源問題を抱える状況にあります。また、現在、被疑者、少年については、日本司法支援センターの本来業務として、被疑者国選弁護人・国選付添人制度が限定的ながら存在しますが、被害者については、国選被害者参加弁護士が制度化されているだけで、捜査段階における被害者援助については、何ら国費が支出されていない状況にあります。

 そこで、被害者法律援助事業を、従前の民事法律扶助制度と同様に、日本司法支援センターの本来業務として位置づけ、その費用について国費負担とするため、この修正案を提出した次第であります。

 以下、この修正案の主な内容について御説明申し上げます。

 日本司法支援センターの業務に、生命、身体または自由等に関する犯罪による被害者等である国民等を援助する業務として、無料の法律相談の実施及び刑事手続に係る援助を追加することとしております。このうち、無料の法律相談については、当該国民等の資力の状況にかかわらず、被害に係る契約弁護士等による法律相談を実施することとします。

 ちなみに、当委員会の委員長提案により昨年成立した東日本大震災の被災者に対する援助のための日本司法支援センターの業務の特例に関する法律では、被災者は資力を問わず無料の法律相談を受けられることとされており、この種の犯罪被害者等が置かれた過酷な状況と震災被災者の類似性を考慮すれば、かかる制度の合理性、必要性は優に認められます。

 また、刑事手続の援助については、当該国民等のうち、弁護士等の報酬及び費用を支払う資力がない者等を援助するため、適当な契約弁護士等に被害に係る刑事手続に関する業務を取り扱わせることとしています。

 以上が、この修正案の提案理由及びその内容の概要であります。

 何とぞ、御審議の上、委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

石田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 この際、階猛君外一名提出の修正案について、国会法第五十七条の三の規定により、内閣の意見を聴取いたします。谷垣法務大臣。

谷垣国務大臣 本法律案に対する修正案については、政府としては反対であります。

    ―――――――――――――

石田委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 まず、階猛君外一名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

石田委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。

 次に、原案について採決いたします。

 原案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

石田委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

石田委員長 次に、内閣提出、国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律案を議題といたします。

 この際、谷垣法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。谷垣法務大臣。

谷垣国務大臣 日本人の国際結婚、国際離婚の増加に伴い、近時、国境を越える子の連れ去り等の問題が顕在化してきており、ハーグ条約を締結することにより、国際的なルールに従ってこれらの問題を適切かつ迅速に解決することは、子の利益の観点から重要であると認識しております。

 私は、諸先輩方から、立法府におけるお裁きについて行政府に身を置く者が口出しするのは控えるべきであるとの教育を今まで受けてきたところでございますが、昨年国会に提出されたハーグ条約実施法案が全く審議されないまま衆議院の解散により廃案となったことにつきましては、私としてもまことに遺憾に思うところでございます。

 この法案は、ハーグ条約の実施に不可欠なものでありますから、ぜひとも速やかな御審議をお願いいたしたく存じます。

石田委員長 これより趣旨の説明を聴取いたします。谷垣法務大臣。

    ―――――――――――――

 国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

谷垣国務大臣 国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 この法律案は、国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の締結に伴い、我が国において子の返還及び子との面会交流に関する援助を行う中央当局を指定し、その権限等を定めるとともに、子が常居所を有していた我が国以外の条約締約国に子を返還するために必要な裁判手続等について定めるものであります。

 その要点は、次のとおりであります。

 まず、子の返還等に関する援助につきましては、第一に、これらの援助を行う中央当局を外務大臣と定めることとしております。

 第二に、子の返還等に関する援助について、その申請方法、子の住所等を特定するための手段、援助の決定の要件、子の個人情報に関する取り扱い等を定めることとしております。

 次に、子を返還するための裁判手続等につきましては、第一に、子の返還事由及び返還拒否事由のそれぞれについて条約に則した要件を定めることとしております。

 第二に、子の返還申し立て事件の管轄裁判所を東京家庭裁判所及び大阪家庭裁判所に集中し、非公開で審理を行うこととしております。

 第三に、子の返還申し立て事件の審理や裁判等に関する所要の手続規定を設けるほか、調停や和解による解決を図るための手続規定を設けることとしております。

 第四に、裁判手続中の出国禁止命令に関する規律を設けるほか、子の返還の具体的な執行方法等について定めることとしております。

 このほか、条約上必要な所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに可決していただきますようお願いいたします。

石田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る十二日金曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時五分散会


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