衆議院

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第16号 平成25年6月7日(金曜日)

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平成二十五年六月七日(金曜日)

    午前十時三十分開議

 出席委員

   委員長 石田 真敏君

   理事 江崎 鐵磨君 理事 奥野 信亮君

   理事 土屋 正忠君 理事 ふくだ峰之君

   理事 若宮 健嗣君 理事 田嶋  要君

   理事 西田  譲君 理事 遠山 清彦君

      安藤  裕君    池田 道孝君

      小田原 潔君    大見  正君

      門  博文君    神山 佐市君

      菅家 一郎君    黄川田仁志君

      小島 敏文君    古賀  篤君

      今野 智博君    末吉 光徳君

      鳩山 邦夫君    林田  彪君

      前田 一男君    宮澤 博行君

      盛山 正仁君    枝野 幸男君

      階   猛君    辻元 清美君

      今井 雅人君    西根 由佳君

      大口 善徳君    椎名  毅君

      鈴木 貴子君    西村 眞悟君

    …………………………………

   法務大臣         谷垣 禎一君

   法務副大臣        後藤 茂之君

   法務大臣政務官      盛山 正仁君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    稲田 伸夫君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    齊藤 雄彦君

   法務委員会専門員     岡本  修君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月三日

            補欠選任

             鈴木 貴子君

同月七日

 辞任         補欠選任

  三ッ林裕巳君     前田 一男君

同日

 辞任         補欠選任

  前田 一男君     三ッ林裕巳君

    ―――――――――――――

六月六日

 刑法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三七号)(参議院送付)

 薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律案(内閣提出第三八号)(参議院送付)

同月七日

 国籍選択制度の廃止に関する請願(横路孝弘君紹介)(第七八一号)

 同(遠山清彦君紹介)(第八三四号)

 もともと日本国籍を持っている人が日本国籍を自動的に喪失しないよう求めることに関する請願(横路孝弘君紹介)(第七八二号)

 同(遠山清彦君紹介)(第八三五号)

 民法を改正し、選択的夫婦別氏制度の導入を求めることに関する請願(前原誠司君紹介)(第八一六号)

 治安維持法犠牲者に対する国家賠償法の制定に関する請願(阿部知子君紹介)(第八二〇号)

 同(大畠章宏君紹介)(第八二一号)

 同(笠井亮君紹介)(第八二二号)

 同(横路孝弘君紹介)(第八二三号)

 同(照屋寛徳君紹介)(第八三三号)

 同(小川淳也君紹介)(第八三六号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第八三七号)

 同(中川正春君紹介)(第八三八号)

 同(岸本周平君紹介)(第八四五号)

 同(小宮山泰子君紹介)(第八五三号)

 同(篠原孝君紹介)(第八七六号)

 同(穀田恵二君紹介)(第九一一号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第九一二号)

 法務局・更生保護官署・入国管理官署及び少年院施設の増員に関する請願(大口善徳君紹介)(第八五二号)

 同(奥野信亮君紹介)(第八七七号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 刑法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三七号)(参議院送付)

 薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律案(内閣提出第三八号)(参議院送付)

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件

 死刑再審無罪者に対し国民年金の給付等を行うための国民年金の保険料の納付の特例等に関する法律案起草の件


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     ――――◇―――――

石田委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 死刑再審無罪者に対し国民年金の給付等を行うための国民年金の保険料の納付の特例等に関する法律案起草の件について議事を進めます。

 本件につきまして、奥野信亮君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、日本維新の会、公明党及びみんなの党の五派共同提案により、お手元に配付いたしておりますとおりの死刑再審無罪者に対し国民年金の給付等を行うための国民年金の保険料の納付の特例等に関する法律案の草案を成案とし、本委員会提出の法律案として決定すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。田嶋要君。

田嶋委員 提出者を代表いたしまして、本起草案の趣旨及び内容について御説明を申し上げます。

 死刑確定者は、仮釈放もなく、再審により無罪となるといった極めて例外的な場合を除いて社会に復帰する余地がないことから、国民年金の保険料を納付し、あるいは免除申請の手続をとるインセンティブを持ち得ません。このため、こうした納付等の手続を行わないこともやむを得ないと認められますが、死刑確定者が再審で無罪となって、死刑という究極の刑罰を科されたことについて無実であることが判明した場合であっても、納付等の手続を行っていなければ、老後の所得保障の支柱である年金給付が受けられないこととなります。再審で無罪となった者にこのような不利益を負わせることは酷であり、国家により特別に救済する必要があります。

 そこで、死刑に処せられた罪について再審において無罪の言い渡しを受けてその判決が確定した死刑再審無罪者について、国民年金の給付等を行うための国民年金の保険料の納付の特例等に関し必要な事項を定めるべく、本起草案を提出するものであります。

 次に、本起草案の主な内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、死刑再審無罪者は、死刑判決確定日から無罪判決確定日の前日までの期間における国民年金の保険料を、無罪判決確定日から起算して一年を経過する日までの間に一括して納付することができるものとしております。

 第二に、保険料が納付された場合には、国は、国民年金法の規定による老齢基礎年金等の支給開始年齢に達した日の属する月の翌月以後に死刑再審無罪者となった者に対し、当該者の請求により、当該者に係る保険料が納付されたものとみなして無罪判決確定日の属する月までに支給されるべき老齢基礎年金等の額に相当する額の特別給付金を支給するものとしております。

 第三に、この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行するものとしております。

 なお、この法律の施行日前に死刑再審無罪者となった者についても同様にこの特例を適用するものとしております。

 また、政府は、矯正施設に収容中の者に対し、国民年金の保険料の免除の申請その他の国民年金の保険料の納付等の手続に関し、必要な指導を行うものとしております。

 以上が、本起草案の趣旨及び主な内容であります。

 何とぞ速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。

    ―――――――――――――

 死刑再審無罪者に対し国民年金の給付等を行うための国民年金の保険料の納付の特例等に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

石田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 この際、本起草案につきまして、衆議院規則第四十八条の二の規定により、内閣の意見を聴取いたします。谷垣法務大臣。

谷垣国務大臣 本法律案については、政府としては異議はありません。

石田委員長 お諮りいたします。

 死刑再審無罪者に対し国民年金の給付等を行うための国民年金の保険料の納付の特例等に関する法律案起草の件につきましては、お手元に配付いたしております起草案を委員会の成案とし、これを委員会提出法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

石田委員長 起立総員。よって、そのように決しました。

 なお、ただいま決定いたしました法律案の提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

石田委員長 次に、内閣提出、参議院送付、刑法等の一部を改正する法律案及び薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。谷垣法務大臣。

    ―――――――――――――

 刑法等の一部を改正する法律案

 薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

谷垣国務大臣 刑法等の一部を改正する法律案及び薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律案について、その趣旨を便宜一括して御説明いたします。

 近年、我が国においては、犯罪をした者のうち再犯者が占める割合が少なくない状況にあることから、再犯防止のための取り組みが政府全体の喫緊の課題となっており、効果的かつ具体的な施策を講ずることが求められております。この両法律案は、犯罪者の再犯防止及び改善更生を図るため、刑の一部の執行猶予制度を導入するとともに、保護観察の特別遵守事項の類型に社会貢献活動を行うことを加えるなどの法整備を行おうとするものです。

 この両法律案の要点を申し上げます。

 第一は、刑の一部の執行猶予制度の導入であります。現行の刑法のもとでは、懲役刑または禁錮刑に処する場合、刑期全部の実刑を科すか、刑期全部の執行を猶予するかの選択肢しかありません。しかし、まず刑のうち一定期間を執行して施設内処遇を行った上、残りの期間については執行を猶予し、相応の期間、執行猶予の取り消しによる心理的強制のもとで社会内において更生を促す社会内処遇を実施することが、その者の再犯防止、改善更生のためにより有用である場合があると考えられます。

 他方、施設内処遇と社会内処遇とを連携させる現行の制度としては、仮釈放の制度がありますが、その社会内処遇の期間は服役した残りの期間に限られ、全体の刑期が短い場合には保護観察に付することのできる期間が限定されますことから、社会内処遇の実を十分に上げることができない場合があるのではないかという指摘がなされているところでございます。

 そこで、刑法を改正して、いわゆる初入者、すなわち、刑務所に服役したことがない者、あるいは刑務所に服役したことがあっても出所後五年以上経過した者が三年以下の懲役または禁錮の言い渡しを受ける場合、判決において、その刑の一部の執行を猶予することができることとし、その猶予の期間中、必要に応じて保護観察に付することを可能とすることにより、その者の再犯防止及び改善更生を図ろうとするものであります。

 また、薬物使用等の罪を犯す者には、一般に、薬物への親和性が高く、薬物事犯の常習性を有する者が多いと考えられるところ、これらの者の再犯を防ぐためには、刑事施設内において処遇を行うだけでなく、これに引き続き、薬物の誘惑のあり得る社会内においても十分な期間その処遇の効果を維持強化する処遇を実施することがとりわけ有用であると考えられます。

 そこで、薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律を制定し、薬物使用等の罪を犯した者については、刑法上の刑の一部執行猶予の要件である初入者に当たらない者であっても、刑の一部の執行猶予を言い渡すことができることとするとともに、その猶予の期間中必要的に保護観察に付することとし、施設内処遇と社会内処遇との連携によって再犯防止及び改善更生を促そうとするものであります。

 この刑の一部の執行猶予制度は、刑の言い渡しについて新たな選択肢を設けるものであって、犯罪をした者の刑事責任に見合った量刑を行うことには変わりがなく、従来より刑を重くし、あるいは軽くするものではありません。

 第二は、保護観察の特別遵守事項の類型に「善良な社会の一員としての意識の涵養及び規範意識の向上に資する地域社会の利益の増進に寄与する社会的活動を一定の時間行うこと。」、いわゆる社会貢献活動を行うことを加えるなどの保護観察の充実強化のための法整備であります。保護観察対象者に社会貢献活動を行わせることにより、善良な社会の一員としての意識の涵養及び規範意識の向上を図ることは、その再犯防止及び改善更生のために有益であると考えられることから、更生保護法を改正して、社会貢献活動を義務づけることを可能とするほか、規制薬物等に対する依存がある者に対する保護観察の特則を定めるものです。

 このほか、所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、刑法等の一部を改正する法律案及び薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律案の趣旨であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに可決くださいますようお願いいたします。

石田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

石田委員長 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として法務省刑事局長稲田伸夫君及び法務省保護局長齊藤雄彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

石田委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、これを許します。黄川田仁志君。

黄川田(仁)委員 自由民主党、黄川田仁志でございます。

 私は、現地、現場主義を標榜しておりまして、現地、現場の地元の意見を踏まえて質問させていただきます。

 それでは、早速質問に移らせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 今回の二つの法改正の影響を見据え取り組まなければならない政策に、社会内処遇の体制整備があります。そのことは、先ほど大臣が申し述べられました提案理由説明の中でもおっしゃっていたとおりでございます。

 地域社会の中で、保護観察などの処遇対象者が、人とのかかわりから再犯を食いとめることができるという統計結果もございます。社会内処遇の体制整備を考える場合、従来の保護司さんを通じてのつながりだけでなく、国と地域との密接で包括的な連携が必要不可欠であると思いますが、大臣はどのようにお考えでしょうか。

谷垣国務大臣 犯罪や非行を犯した者もいずれは社会に帰ってくるということを前提としますと、その立ち直りを促して再犯防止を図っていく、それには、こういった人が地域社会の一員として根を生やすというか、受け入れられるような体制、改善更生や社会復帰に対する体制を整えていく、そのためには地域の理解を深めていく、私は不可欠だろうというふうに思います。

 それで、そういう仕事に当たっていただいているのが、今御指摘がありましたように、保護司を初めとする更生保護ボランティアの方々。多大な貢献をしていただいて、社会復帰や再犯防止のために大きな力を発揮していただいているわけですね。そうしますと、法務省としては、そういう方々の活動ができるだけやりやすくなるように積極的に支援をしていく、これは当然必要なことでございます。

 それから同時に、今おっしゃいましたように、国と保護司さんとがよい関係をつくって協力していくというだけじゃなしに、自治体初め地方公共団体、あるいは地域の学校、こういったところを初めとするいろいろな関係機関、地方団体等々、保護司というのが一体どういう活動をしているのか、よく理解をしていただくようなことも進めていかなければならないと思います。

 そういうことで、法務省としても、国と地域の連携を一層深くしていくということが今極めて求められている、努力をしなければいけないことだと思っております。

黄川田(仁)委員 今、大臣から、保護司さんとの関係ではなく、地方自治体、学校、そういうようなもっと幅広い地域との連携が必要であるというようなお話をいただきましたが、今、法務省が実施している地域との連携にかかわる、この法案の影響を踏まえて、新たな取り組みがあれば紹介していただきたいと思います。

齊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 平素から、例えば社会を明るくする運動など広報活動なども行っておりますし、それから、学校と保護司さんの連携活動等を通じまして、地域との連携、地域の御理解の促進ということを図っているところでございます。

 最近の取り組みといたしましては、保護司候補者検討協議会というものの設置がございます。これは、平成二十年度から進めている施策でございますが、この検討会に、自治体の方、自治会の方、それから地域の教育関係者の方、そういった方に入っていただきまして、保護司としてふさわしい方に関する情報などをいただくというふうなことをやっております。

 この協議会ですが、昨年度までに、八百八十六ある全国の保護区のうち四百五十カ所に設置を終えております。本年度予算で全ての保護区に設置することとしております。これによりまして保護司さんに関する情報も入りますし、また、これを通じて地域の皆様の御理解を促進しようというふうに思っております。

 それから、更生保護サポートセンター、これは自治体の御協力を得て設置をしておりますが、こういうものの設置も通じて地域の皆様の御理解をさらに促進していきたいというふうに思っております。

黄川田(仁)委員 今、保護局長から紹介がありました取り組みの中で、更生保護サポートセンターの設置について特に取り上げてお話しさせていただきたいと思います。

 まずは、更生保護サポートセンターの設置事業の概要と現時点での設置状況、今後の事業目標などをお答えいただきたいと思います。

齊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 更生保護サポートセンターは、保護司さんの活動拠点ということでございまして、集まっていただいて会議を開いていただいたり、それから、保護観察対象者との面接の場所などを設置した活動の拠点ということでございまして、平成二十年度から整備を進めさせていただいております。

 昨年度までに全国で百五十五カ所設置させていただいておりまして、本年度予算で九十カ所増設させていただくということになっております。全部で二百四十五カ所ということになるわけでございます。

 このように、更生保護サポートセンターの増設に努めてきたところではございますが、今後とも、保護司活動に対する支援に一層取り組んでまいりたいというふうに思っております。

黄川田(仁)委員 現時点の状況を御説明いただきましたが、今後の展望といいますか、これをもっと幅広く全国展開していくということで進めていくという方向性でよろしいのでしょうか。

齊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今ちょっと希望をとっていますと、全国八百八十六の保護区のうち、半数ぐらいから設置したいという御希望などもいただいております。さらにふえれば、可能な範囲で、予算等の問題もありますが、ふやしていける方向で努力したいというふうに思っております。

黄川田(仁)委員 なるべくたくさん設置していかないと、今この法改正に当たって、より保護司さんの負担が大きくなるということでございますから、積極的に進めていっていただきたいというふうに思っております。

 ここで、私が地域の現場から直接聞いた更生保護サポートセンターにかかわるお話をさせていただきたいと思います。

 私の地域では、サポートセンターを新たに設置するに当たり、保護司会や地方公共団体が大変苦労されております。何に苦労されているかと申しますと、今回の法改正の影響により、保護観察の処遇対象者の増加が認められることから、面接場所の確保や、市役所、社会福祉協議会、病院との連携のためにもサポートセンターを設置したい、こういう願いがございます。しかし、無償で使える物件の確保は、保護司会が率先して行わなければならないというのが現状でございます。

 困った保護司さんたちは、何とか市役所の一部に無償貸与で入居させてもらえないかと地元の市役所に相談に行きました。相談を受けた市役所は、設置に関する条件を聞いて、率直に言って驚いたということでございます。必要な備品などの財政措置はかなり少額で、ちゃんとセンターを機能させるためには地方公共団体の独自の予算が必要になってくる。そのためには地元議会の承認を得ることが必要なんですが、なぜその地域にサポートセンターが必要なのかという法務省からの明確な説明や意思表示がなく、どうしたものかと苦慮している次第でございます。

 今後、サポートセンターを必要な地域に広く設置し、社会内処遇の基点として機能させるためには、このやり方ではいけないと私は思っております。もともと保護司会活動がかなり盛んな地域であれば対応できるかもしれませんが、そうではない一般的な地域でセンターの設置場所を探すことまでボランティアである保護司さんに負担をかけることはいかがなものか。社会内処遇の体制整備に当たり、法務省は、地方公共団体など地域の構成員に対し、人的にも財政的にももっと積極的に関与すべきと考えますが、いかがでしょうか。

齊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 更生保護サポートセンター、地域との連携を図るということから、地方自治体関係の施設等に設置されることが多いというのが実情でございます。設置に当たりましては、地方公共団体など御協力くださる方々に対して、私ども、保護観察所の方からも十分な説明が必要だというふうに思っております。

 法務省といたしましては、サポートセンターの運営に関する経費に関する措置をさせていただいております。おかげをもちまして、この経費関係、私どもで負担させていただいている額も年々増加させていただいているという状況でございます。

 また、先生御指摘のとおり、やはり、御協力いただく自治体の方々等に対して十分な御説明をせぬといかぬということでございまして、これはもう保護司会だけに任せるのではなく、保護観察所に対しては、自治体等への説明等につきましては積極的にみずから行うようにというふうな指示なども行っているところでございます。

黄川田(仁)委員 先ほどの質問で述べましたとおり、今回の法改正の影響により、保護観察など地域で処遇を受ける対象者がふえるということはほぼ確実でございます。その際、現場で対応するのは保護観察官の皆さんです。今、説明させるようにと言いましたが、保護観察官の皆さんがもっと活躍しなければなりません。しかし、同じく地域で活動されております保護司さんに保護観察官について尋ねてみると、とにかく毎日とても忙しそうだ、とても頑張っているので、何か悪くて、相談もしにくくて、気が引けてしまうという声を耳にします。

 そこで、ここ最近の保護観察官の定員数の推移、担当処遇者の数と比較した保護観察官の適正な定員数を教えてください。

齊藤政府参考人 お答えいたします。

 保護観察官は、第一線におきまして、保護司さんを含めた地域の方々と協力して保護観察対象者に対する処遇などを行っているところでございます。

 管理職を除きまして、第一線で保護観察等の具体的な処遇に当たっている保護観察官の数でございますが、平成二十五年度は九百八十二人というふうになっております。

 平成二十四年の全国の保護観察所の保護観察の取扱件数ですが、八万八千九百四十二件、これは速報値でございますが、そのようになっておりまして、保護観察官一人当たり、保護観察事件につきましては約九十一件を担当しているということでございます。もちろん、それ以外の業務も担当しているということでございます。

 増員の状況でございますが、例えば平成十八年度でありますと、第一線で勤務している保護観察官というのは約六百五十人という状況であったわけでございますが、先ほど申し上げましたように、平成二十五年度には九百八十二人ということでございまして、七年間で約三百三十人増加しているということでございます。

黄川田(仁)委員 増員に努められているということでございますが、今回の法改正に伴う影響を踏まえますと、社会内処遇の体制整備のためには現在の保護観察官では全く足りないというふうに思っています。積極的な財政措置が必要と思われますが、法務省のさらなる意気込みをお聞かせいただきたい。

齊藤政府参考人 お答えいたします。

 刑の一部猶予制度の実施に当たりましては、成立後、実施まで準備の期間がございます。その間に関係機関とか団体等とより一層緊密な協議と連携をしつつ、さらに、施行後の期間の経過に応じて保護観察対象者がだんだん累積してくる、数がふえてくるということもございますので、そういうことも見据えながら、必要となる処遇の実施体制の整備に努めてまいりたいというふうに思っております。

黄川田(仁)委員 ありがとうございます。

 さて、社会内処遇の体制整備を進めるに当たり忘れてはならないのが、先ほどから登場しております保護司さんでございます。

 地域の保護司さんは、費用弁償のみのボランティア公務員であります。処遇対象者のためのみならず、地域の安心、安全のため、時には自分の懐から持ち出しをしてまで活動しておられます。大変な敬意に値する方々でございます。

 しかし、ここ何年もこの法務委員会で問題提起がされているとおり、保護司さんの数は年々減少しております。また、なり手不足のため、現在、役を引き受けてくださっている保護司さんに負担が重くのしかかっているのが現状です。

 国の更生保護行政と地域をつなぎ、これまで社会内処遇を成立させることができたのは、保護司さんの皆さんのおかげでございます。今回の法改正によって保護司さんの仕事はふえると見込まれますが、今の現状ですと大変厳しい状況でございます。

 この厳しい状況を解決するために、ベテラン保護司の方々や専門家によって提言が作成されました。皆様のお手元の資料をごらんいただきたいと思います。

 この報告書は、保護司制度の基盤整備に関する検討会によって作成されました。平成二十四年三月二十一日付で出されたということでございます。

 この中で、日ごろ、再犯防止、安心、安全の町づくりのために努力されている保護司さんの皆様が考える社会内処遇の体制整備、特に、保護司制度について取り組まなければならないことが列挙されております。これは本当に現場の保護司さんの言葉でございまして、大変いい提案だというふうに思っております。

 その中で特に注目したいのが地方公共団体との連携強化、十七ページから十九ページまででございます。これらの提案の中で、地方公共団体との連携強化のための項目のうち、現時点での法務省の取り組み状況を教えてください。

齊藤政府参考人 お答えいたします。

 地方公共団体との連携強化の取り組みは種々やっておりますが、その一つといたしまして、今委員御指摘の報告書をいただきまして、その中に書いてございます、地方公共団体の理解をさらに進めるようにといった項目などもございます。

 それに関しましては、昨年の十月、私の名前で、全国の市町村長に対しまして、保護司活動に対する御理解とか御協力をよろしくお願いしたいというふうな文書を発出させていただいております。

 現在、全国の保護観察所の所長ないし幹部が、保護司さんの皆様と一緒にこの文書を持って自治体を回りまして、保護司の現状とか、さらに要望等について御説明し、またお願いに回っているという状況でございます。

黄川田(仁)委員 今お話しの中で、全国市長会や町村会を通じて各地方公共団体に文書を発送したということでございますが、私、見させていただきましたが、この文書では、今回の法改正の影響を見込んでの更生保護行政をどう改革するつもりなのか、特に、保護司制度についてどう考え、地方公共団体にどんな協力を求めているのか、それぞれの状況に合った形で具体的に提案と協力を依頼するという必要があると思います。例えば、更生保護サポートセンターの設置に当たっての場所の無償貸与のお願いがそれに当たると思います。

 また、単にこのように文書を発送しただけで話が進むほど、この問題は簡単ではございません。フォローを続けていくことが大切です。安心、安全の町づくりのためにパートナーとして協力してほしいということを地方公共団体にしっかりと伝えるために、足しげく通い、協議する必要があると思いますが、御見解はいかがでしょうか。

齊藤政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおりでございまして、先ほども少し答弁させていただきましたが、この文書を持って、全国の保護観察所長と幹部に、保護司会の幹部の皆さんなどと一緒に今自治体を回らせているところでございます。

 この文書に書いてあることは、一つは、自治体の職員の皆さんに保護司活動の内容について御理解していただく場をぜひつくっていただきたいということと、それから住民の皆さんにも同様の場をつくっていただきたいというようなこと、それから、保護司活動に当たって、会議をする場所とかいろいろな場所が必要なので、そういう場所の提供等について便宜を図っていただきたいということ、それからさらに保護司さんの候補者に関する情報を提供していただきたいという四つのことを抽象的に書いてあるわけで、御指摘のとおり、この文書に具体的なサポートセンターとかそういうことは書いてございません。

 ただ、こういう文書を持っていきまして、それぞれの地域ごとのニーズについて保護観察所の幹部の方から自治体の方に対して御説明等をさせていただいているということでございます。

黄川田(仁)委員 そうですね、所長が回っていっているということはお聞きしておりますが、市役所の市長の方に聞いてみましても、ああ、挨拶に来たねということだけで、全くもって伝わっていないというような状況でございます。

 更生保護サポートセンターを設置してもらいたいというのも、これをもってして設置をお願いしたということになっているようなので、もうちょっと具体的に文書なり、また、再度所長が出向いて個別具体的に、全国一律、同様にするというのは難しいということは聞いておりますが、地元の保護司会から要望があったら速やかに対応して、法務省から、こういう更生保護サポートセンターの設置をしたい、ですから地方公共団体においては場所等の提供をお願いします、そういうような文書、通知があると、これは国の取り組みなんだよということで、市長以下、議会に対しても説明がつきやすいということでございますから、それについて対応していただきたいというふうに思っています。いかがですか。

齊藤政府参考人 お答えいたします。

 地方公共団体から一層の御理解を得るため、保護司会任せにするのではなく、保護観察所としても、しっかりそれぞれの地区の保護司会の御要望に耳を傾けて、それをきちっと把握した上で、自治体にさらに重ねて、必要に応じて行って、お願い等をする、御説明等をするということをさらに進めていきたいというふうに思っております。

黄川田(仁)委員 ありがとうございます。そのことをしっかりと徹底していただきたいと思います。

 本当に保護司さんたちは困っているんですね。持ち出しもやって、その上、更生保護サポートセンターの設置まで自分たちで役所に交渉しなければいけないのかということで、やはりそのあたりは、しっかり法務省、これは今回の法改正でさらなる負担をかけるんですから、これ以上このサポートセンター設置に対して負担をかけないように、もうちょっと現場と連絡をとりながら、しっかりとした、通知が欲しいところはちゃんと通知を出す、説明してほしいところには説明しに行くという態度で臨んでいただきたいというふうに思います。そのことを強く要望いたします。

 また、こちらの検討会の資料に戻るんですが、この中の提案も、特に十九ページにある(ウ)のところですね。この(ウ)の提案は、法改正とか財政措置を伴わない、現場の努力でできることを提案しています。この提案も、非常に気を使って、法改正、財政措置というものは時間がかかることだから、そうではなく現場の対応でできることをやってほしいということで列挙されておりますので、このこともしっかりと御検討いただきたくお願い申し上げます。

 お答えいただきたいと思います。

齊藤政府参考人 お答えいたします。

 保護司制度の基盤整備に関する検討会の提言、昨年の三月に報告書を頂戴いたしました。保護司さんの本当に心からの痛切なメッセージだということで、真摯に受けとめさせていただいております。

 地方自治体との協力も踏まえて、実に多項目の提言をいただいておりまして、その一つ一つ、予算が必要だ、必要でないにかかわらず、一つずつ今実行をしているところでございます。

 例えば、保護司さんの関係で申しますと、複雑な事件については複数で担当していただきたいとかいったような要望もいただきました。本年五月から、積極的に、困難な事件等につきましては、保護司さんの御要望を聞いて、例えば複数で担当していただくとか、そういったような制度を次々と導入しているところでございます。

 今後とも、きちっと提言を踏まえて施策を進めていきたいというふうに思っております。

黄川田(仁)委員 最後に、今回の二つの法改正を機に、再犯防止の取り組みをより多くの国民の皆様に知っていただく必要があると思います。特に、地域との連携を進める上で、更生保護とは何か、地域の保護司さんたちがどのような活動をしているかということを知ってもらうことがとても重要です。

 法務省独自の情報発信はもちろんのこと、例えば、犯罪対策閣僚会議を通じて、より積極的な情報発信をすることは可能でしょうか。現在の情報発信の取り組みとあわせてお答えいただきたいと思います。

谷垣国務大臣 きょうの黄川田さんの御質問は、社会内処遇というのは極めて大事じゃないか、それは相当民間の方に頼っていかなきゃできない。中心になるのは保護司さんということでしょうけれども、保護観察官ももっと充実をする必要がある。それから、本当に頑張っていただいている保護司さんの活動をしっかり支えていくためには、地域との連携なんかをもっとしっかりとれと。まことにポイントをついた御質問だと思います。

 サポートセンターのことについてもいろいろ御議論いただきましたが、私のところにも、幾つか現場から、こういう問題点があるぞとか、こういうところはもう少しできないかとか、いろいろお話を承っておりますので、そういったことをできるだけ生かしながら頑張らなきゃいけないと思っているところでございます。

 それで、今、もっと広報活動にも取り組めということですが、私どもの今の基本的な考え方は、昨年七月の犯罪対策閣僚会議、これは民主党政権時代でございますが、再犯防止に向けた総合対策、これは、基本的に政権交代がありましても、私どもこれを踏襲してやっております。それで、その中でも、保護司活動に伴う負担の軽減、それから地方公共団体との連携の充実、保護司制度の基盤整備と充実強化、こういったことが強くうたわれているわけですね。

 それから、ついこの間、五月、もう一回、この犯罪対策閣僚会議で、犯罪に強い社会の実現のための新たな行動計画の策定の基本方針というものが決められまして、その中で、保護司など民間関係者に対する支援の充実による活動の活性化、これを重点取り組み分野にしているわけでございます。こういったことをやはりきちっとアピールしていくということが、保護司さんたちに本当に頑張っていただく上で必要だと思います。

 いろいろなことをしておりますが、林田委員おられますが、今度、私、熊本へ参りまして、熊本で、やはり協力企業、社会に更生させるために雇ってくださっているところとか、あるいは保護司さんとか、いろいろな方とお話をしてこようと思っております。これは、閣僚が行って、大勢の方を集めて演説だけすればいいというものではないと思います。車座トークといいますか、要するに、向こうの御意見も私に伝わるように、私たちが考えていることも向こうに伝わるようにという、膝を交えてというと変ですが、そういうことも少し工夫させていただくことが広報活動には役立つのではないか。いろいろなことを考えなければなりませんが、そんなこともやっていきたいと思っております。

黄川田(仁)委員 大臣も、みずから出向いて車座でお話しいただくということでございますが、法務省も今まで保護司さんたちに任せている部分が多かったと思いますが、これからこの法改正に向けては、さらなる社会内処遇ということが拡大しますから、法務省も地域に出ていって、保護観察官も含めて、より綿密な対応を自治体等を含めて行っていただきたいというふうに思っております。

 そのことをお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

石田委員長 次回は、来る十一日火曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時十一分散会


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