衆議院

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第18号 平成25年6月14日(金曜日)

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平成二十五年六月十四日(金曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 石田 真敏君

   理事 江崎 鐵磨君 理事 奥野 信亮君

   理事 土屋 正忠君 理事 ふくだ峰之君

   理事 若宮 健嗣君 理事 田嶋  要君

   理事 西田  譲君 理事 遠山 清彦君

      安藤  裕君    池田 道孝君

      小田原 潔君    大見  正君

      鬼木  誠君    門  博文君

      神山 佐市君    菅家 一郎君

      黄川田仁志君    小島 敏文君

      古賀  篤君    今野 智博君

      末吉 光徳君    鳩山 邦夫君

      林田  彪君    三ッ林裕巳君

      宮澤 博行君    盛山 正仁君

      八木 哲也君    小川 淳也君

      階   猛君    辻元 清美君

      今井 雅人君    西根 由佳君

      浜地 雅一君    椎名  毅君

      鈴木 貴子君    西村 眞悟君

    …………………………………

   法務大臣         谷垣 禎一君

   法務副大臣        後藤 茂之君

   法務大臣政務官      盛山 正仁君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 杵淵 智行君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    深山 卓也君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    稲田 伸夫君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    西田  博君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    齊藤 雄彦君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長) 小川  誠君

   法務委員会専門員     岡本  修君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十四日

 辞任         補欠選任

  古賀  篤君     鬼木  誠君

  末吉 光徳君     八木 哲也君

  枝野 幸男君     小川 淳也君

  大口 善徳君     浜地 雅一君

同日

 辞任         補欠選任

  鬼木  誠君     古賀  篤君

  八木 哲也君     末吉 光徳君

  小川 淳也君     枝野 幸男君

  浜地 雅一君     大口 善徳君

    ―――――――――――――

六月十三日

 自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律案(内閣提出第五二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律案(内閣提出第五二号)

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

石田委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房審議官杵淵智行君、法務省民事局長深山卓也君、法務省刑事局長稲田伸夫君、法務省矯正局長西田博君、法務省保護局長齊藤雄彦君及び厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長小川誠君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

石田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田嶋要君。

田嶋委員 おはようございます。田嶋要でございます。

 先々週の一般質疑の際に、受刑者の免除申請のお話を質問させていただきました。少しはしょった感もございますので、確認も含めて、改めてさせていただきたいと思います。

 お手元に資料を配付させていただきました。資料一でございますけれども、厚生労働省と法務省で御協力をいただきまして、この資料を作成していただきました。大臣、ごらんいただけますでしょうか。

 これまでも、刑務所内の受刑者も、年金の保険料を払うか、さもなくば、所得によっては免除申請をできるんだということで、平成十二年を初めとして何度か、その手続をしっかりやるような対策はとってこられたようでございますけれども、免田法案をやらせていただく中で、そういった状況というのが必ずしも徹底されていないということがわかってまいりましたので、先々週の質問で取り上げまして、これまでの取り組みに対して、ここに書いてございますが、新たな取り組み、大臣、ごらんになっていただいていますか、新たな取り組みということで、徹底していただくということを提案させていただいたわけでございます。

 これは、免田法案の附則というのが次のページにございますけれども、附則の第三条、これはまさに全党で協議をさせていただき、一致する中で、与党からの御提案ということで入れた部分でございますけれども、全く異論のない部分でございまして、こういったことで、もちろん免田法案というのは冤罪にかかわる話でありますが、本来、冤罪というのはあってはいけないわけでございますので、受刑者全員に対して、将来、出所した後のしっかりとした生活の支えの一助となる年金がきちんと免除申請手続されるということが大事だと思いますが、まず一問目に、新たな取り組みを出していただきましたが、大臣にお伺いいたします。

 新入の方というのは全国どのぐらいおいでかわかりませんが、この新たな取り組み、せっかくこういうのを考えていただいたので、そして、私のお見受けしたところ、厚労省と法務省は余りこれまで話したこともないような感じだったですね、だから、これからしっかりと協力をしていただいて、この新たな取り組みを具体化していただく。全国の刑務所で、新入の方にこういった徹底、周知、そして、期待としては全ての方、保険料をみずから払う方以外の全ての受刑者がこの免除申請をやれるようになる、そういう体制が整うのは大体いつごろだと考えてよろしいですか。

谷垣国務大臣 今、田嶋委員から御指摘の新しい取り組み、受刑者に国民年金の手続を徹底していくということは、今御指摘のように、厚労省と法務省がしっかり連携しなきゃいけないと思います。今も相談をきちっとしておりますが、速やかに実施していかなきゃいかぬということでございます。

 具体的にいつになるかは、ちょっと局長の方から答弁をさせたいと存じます。

田嶋委員 では、具体的な話と、それから、年間の新入の方々の数がどのぐらいになるのか、全国に幾つのいわゆる刑事施設があるのか、その数字も御報告ください。

西田政府参考人 お答えいたします。

 現在、厚労省の方と詰めておりますので、法施行までには通知、通達を発出いたしまして、できるようにしたいと思っております。

 それからあと、新入受刑者の数とその中の住所不明の数でよろしゅうございますか。(田嶋委員「それは次だったんですけれども、まあ、いいです」と呼ぶ)

 それでは、二十三年度の新受刑者、新たに刑事施設に入所する受刑者でございますけれども、これは、二十三年度におきましては二万五千四百九十九名でございます。

田嶋委員 新入が二万五千でございますけれども、では、刑務所全体で今どのぐらいの方々が入所しているかという数字と、それから、入所時に住所不定で入ってくる方々の数も教えてください。

西田政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申しましたように、平成二十三年、直近のデータでございますけれども、これの年間に新たに入ってくる新受刑者、これは、先ほど申しましたように、二万五千四百九十九名でございます。このうち住所不明であった者、これが五千三百八十九名、全体で約二〇%という割合になっているところでございます。

田嶋委員 幾つか聞いたんですけれども、いずれにしても、二割の方が住所不定ということがございます。

 谷垣大臣、きちっとやっていただけると思いますけれども、一つ気になるのが、住所不定だと、いわゆる住民登録ができない、住民登録ができないと、いわゆる免除申請が受けられない、こういうことになっておるというふうにお伺いをいたしております。

 そこら辺、今までは、本人の自分の意思によってアクションをとらないとケアしてもらえていないということで、実行上、どういう数字だったかというと、前回の資料をきょうはお配りできておりませんけれども、入所前に年金に入っていた方が六割近くあった、しかし、入所した後、年金を、引き続き保険料を払うか、あるいは免除申請の手続をした人は、わずか一三・七%です。そして、一三・七%のうち半分は免除申請をしたと言っているんですね。つまり、所得が十分にないから免除申請。つまり、免除申請した人は全新入の方の七%にすぎないんですね。ということは、先ほどの七%、それから保険料を自分で払った人、合わせると一三・七%ですから、およそ八五%以上の新入受刑者は、恐らく全員免除申請ができるはずなのに免除申請していないという現実があるんです。

 そういう状況の中で、今おっしゃっていただいた、二割ぐらいの方が住所も不定で刑務所に入ってきたということでございますが、ここの対応はどのようにしていただけるんでしょうか。

谷垣国務大臣 これは、要するに、住所の登録がありませんと申請ができないという仕組みになっていると思います。したがいまして、どうそれをするかということになるわけですが、刑務所に入っていて、刑務所に住民登録をするということについて、実際に行っている方もあるわけですが、心理的な抵抗を持っている方もいらっしゃると思います。

 実際には、住民票というか住民登録の取り扱いというのは、各市町村でみだりに公開しないような取り扱いをしていただいていると思いますので、心理的な抵抗を感ぜられる方にも、そういう市町村の取り扱い、適切に取り扱っているんだということをよく周知徹底して、住民登録をしていただくということで、この問題を乗り越えていかなきゃいけないんじゃないかと思っております。

田嶋委員 二割住所不定で入ってくる受刑者の方々にも、今、大臣のお話では、きっちり説明をして、刑務所をその人の住所ということで住民登録をさせて、そして年金の免除手続をする、そういうことで理解をいたしました。

 次の質問でございますが、新入受刑者に関してやっていただくのは大前提でございますけれども、よく考えてみればそれは新入の部分でございまして、改めてお配りした先ほどの資料の二ページ目をごらんくださいませ。

 これは免田法案の附則の第三条でございますが、「政府は、矯正施設に収容中の者に対し、国民年金の保険料の免除の申請その他の国民年金の保険料の納付等の手続に関し、必要な指導を行う」、こういうふうに修正をしていただいて、全党で合意しているわけでございますので、これはもう新入の方だけやればいいという話ではございません。

 私の理解は、この免除申請手続は、別に刑務所にいない人も含めて、本人が免除申請しようと思ったときにいつでもできる、そういう仕組みでございますね。そこはいいですか。

 そういう理解でおりますけれども、この第三条ということで、収容中の者全員にということで私は認識をいたしております。今後どのようにそこはやっていただけるのかということを御答弁いただきたいと思います。

谷垣国務大臣 既に刑の執行開始時の指導を終えて受刑中の者、こういう方にも、今、厚労省と、実際の、どういう用紙を配付するかとか実務的に詰めているところでございますが、そういう詰めをきちっと行いまして、必要に応じて適切に免除申請用紙を配付するといったこと、引き続ききちっと指導していきたいと思っております。

田嶋委員 先日、刑務所を私ども視察させていただきまして、大変にマンパワーで苦しんでおられる状況はよく見てきておりますので、こういったことで御負担をふやすのは非常に心苦しいところがございますが、しかし、前回も申し上げた、再犯を抑止するためにも、一助にはなると思います、雇用ということが最重要だと思いますが。そういうことで、ぜひ、一回きりのことでございますので、先ほどのお話で全国の受刑者というのは六万人弱ですかね、全国六万人弱の受刑者に一回徹底的に免除申請をやっていただくということが私は大事なんじゃないかというふうに思います。

 加えてもう一点、平成二十七年の十月から施行予定の、あと二年ちょっとですか、年金受給資格の短縮ということがございます。今、日本は二十五年という世界でも極めて長い年金受給資格でございますけれども、これが十年に短縮をされるということでございます。

 いわゆる無期懲役の方々、重罰化の傾向の中で、昔は二十五年ぐらい、今は三十五年ぐらい刑務所に平均しておるということでございますので、刑務所に入っている方が、二十五年もあるから、どっちみち受給資格なんかなさそうだからということで諦めている方が今までたくさんおりました。例えばアンケートをやっても、今さら手続を行っても受給資格二十五年を満たさないためという方が二二・六%、手続をしない理由の中で挙げられております。

 そういう意味で、これは全国的に影響が大きいと思いますが、刑務所の中の方々の免除申請に関しても、二十五年を十年とするということは私は大きなインパクトがあると思いますが、その点、重ねて、大臣、こういう制度の改正が行われますので、なお一層この免除申請を原則全ての受刑者にしっかりやってもらう、やらせるということが重要だと思いますが、もう一度改めてお願いします。

谷垣国務大臣 現状の年金制度についてもしっかり説明して理解を求めていくことは当然ですが、今おっしゃった制度変更、それから、これからもいろいろな制度変更がないとは言えないと思います。その都度、きちっと制度変更の趣旨を徹底していくように措置をしていかなきゃいかぬと思っております。

田嶋委員 ぜひよろしくお願いいたします。先ほどの一三・七%の数字が来年から激変していることを期待いたしたいと思います。

 続きまして、これも再犯防止についてでございますが、お伺いをいたします。

 先日、枝野さんが、いわゆる協力雇用主の関係等の質問をされておりました。ほとんどが中小零細企業であって、大企業はどうなんだという話もございましたが、私の方からは、保護観察対象者等の雇用に関する国や自治体の採用実績を教えていただきたいと思います。

齊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、地方自治体における保護観察対象者等の雇用の取り組みでございますが、平成二十二年の八月に大阪府の吹田市が地元の保護司会と協定を結びまして、保護司会が推薦される方を非常勤職員として雇うという枠組みをつくられまして、その後雇用を始めたというものがございます。

 現在、市町村レベルですが、このような枠組みをつくっている自治体は全国で十あります。実際に雇われた数はこれまで七名ということでございます。

 国の方は、ことしの五月、法務省におきまして、保護処分により保護観察に付されている少年一名を非常勤職員として採用したところでございます。

田嶋委員 制度を導入しているというところと実績があるというところは相当乖離がございますね。自治体では十自治体とおっしゃいましたけれども、実績のあるのは吹田市とそれから大阪市の一名という認識でございます。

 そして、国は、法務省が、この間ニュースにもなりましたので、一名でございますが、法務委員会になってすぐにそういうニュースを見たんですけれども、ちょっと私自身はやはり驚きました。初めて、第一号が今国でということで。

 そこで、比較できるのかできないのかはよくわかりません、違う制度ではあるんですが、一つ思いついて見てみたのは障害者雇用でございます。もちろん、これは制度も目的も違うわけでございますが、しかし、ややもすると、偏見、差別があったり、あるいは、ほっておくとなかなか採用が進まないという点で、私は似た問題も抱えているというふうに考えてございますが、厚生労働省にお伺いします。障害者雇用に関する国、自治体、都道府県、市町村、それから企業の採用実績、そして法定雇用率に関して教えてください。

小川政府参考人 お答え申し上げます。

 障害者の雇用を促進するために、障害者雇用促進法におきまして法定雇用率を定めております。公的機関につきましては、障害者等の雇用に率先して取り組むべき立場であることから、民間企業より高い数字を定めております。

 状況でございますけれども、昨年、平成二十四年六月一日時点におきまして、民間企業の実雇用率が一・六九%なのに対しまして、国の機関に関しては二・三一%、都道府県に関しては二・四三%である等、公的機関における実雇用率が高い数字であるとともに、いずれも前年度よりも実雇用率が上昇しまして、障害者の雇用は着実に進展しているところでございます。

田嶋委員 ちょっともう一回整理しますと、法律で決まっている法定雇用率は、民間企業が一番低いんですね。一・八%です。そして、国、都道府県、市町村は、全部二・一%と民間よりも〇・三ポイント高い法定雇用率なんですね。

 それに対して、今おっしゃっていただいたのは実績の数値でございますが、民間は一・八に対して一・六九、まだそこまでたどり着いていませんけれども、過去最高を更新している、みんな頑張っていただいているということでございます。法定雇用率を達成している企業は四六・八%、半数近く。一方で、公的機関でありますが、高い法定雇用率二・一%に対して、国の実雇用率は二・三一という数字を私は厚労省からいただいております。都道府県も市町村も二・一を上回る数字でございます。

 何を言いたいかおわかりだと思いますけれども、先ほどの御答弁でもありました、国が率先してやらなきゃいけない立場だから高い法定雇用率を設定している、当たり前のことだと思います。それと比較をすると、状況はいろいろ違うかもしれませんが、法定雇用率はもちろんないわけでございますが、今回、国が初めて採用を法務省で行ったということには、私は大変驚いたわけでございます。

 法務大臣にお伺いいたしますが、この保護観察対象者の雇用に関して、いわゆる協力雇用主の話もお伺いをいたしました。今、一万社近くあるんですか、一万社ぐらいですかね。そうですね。それで、実績としては年間二千名ぐらいですか。そういうような、決して、制度を導入している企業が必ず実績があるというわけではない点は同じでございますけれども、しかし、企業はもう長い歴史で、罪を犯して償って出てきた方を何とか社会にもう一度更生させたいという協力雇用主、篤志家の方々が全国に大勢いらっしゃる。

 一方で、なぜ、いわゆる同じように国が先頭に立つべし、自治体が先頭に立つべしと考えられるものがこれほどおくれてしまっているのか、あるいは今後どのように考えておられるか、大臣に御答弁いただきたいと思います。

谷垣国務大臣 私も、法務大臣に就任しまして、実際、いろいろな関係の施設を視察しました一番最初は、両全会という更生保護施設に伺いました。そこで、やはり再雇用というか、就職先を見つけるのがいかに難しいかというお話をいろいろ伺いまして、今の障害者の雇用の話もちょっと頭に浮かびまして、国がまず隗より始めよというか、国もそれなりの努力をしなければいけないんじゃないかと思いまして、事務方に、民間にお願いをしている立場の法務省が雇用しないというのはちょっとおかしいんじゃないかということを言ったわけであります。

 ただ、そのときに頭の中にありましたのは、やはりいろいろな、公務員法制もございます、それから、それぞれの役所の性質によっては、なかなかなじみがたい部署もあるいはあるだろうというようなことも感じまして、まず、よく検討してみろということを言いました。

 先ほどおっしゃいましたように、今、少年の保護観察対象者を試みに雇用したわけでございますが、この背景には、要するに、前に犯罪歴のある者を公務員にできないという規定が国家公務員法の中にございます。そういう中でできることは何かというので、今、差し当たってここからやってみようということで始めたわけでございますが、まだその辺の全体の公務員法制の検討やら、しなきゃならないことがあると思います。

 それと同時に、私どももこれをやってみまして、民間の雇用主の方もおやりになって、いろいろ試行錯誤をしながらやっておられるんだろうと思います。私どももこういう観察対象者を雇用しまして、どういうことが問題かというのをもう少し分析してみなきゃいけない。

 私の気持ちとしては、できるだけ国も、こういう更生のためにさらにこれを広げていきたいという気持ちがございますが、まずは、その辺のところをしっかりチェックするというか、経験を積んでみたい、こんなふうに考えております。

田嶋委員 今、制度の壁みたいなお話がございましたけれども、この法務省の一名というのは、そういう制度の壁は問題なかったということですか。

谷垣国務大臣 これは少年でございまして、ですから、少年を試みに採用するというような形で、今の国公法の壁を一応クリアしたことに、一応と言うと表現が悪いですが、しているわけでございます。

田嶋委員 そのおっしゃっていただいた今の制度がいつつくられた制度か存じ上げませんけれども、時代が変わってきているわけでございまして、それは昔は、障害者に対するいろいろな偏見、差別も、今よりうんと強かった。

 きのうの報告ですと、精神障害者、一番最後に雇用が始まっても、今は知的障害者を抜く数の雇用がもう既に行われつつある。それだけ時代は変わっているわけですね。公務員の世界だけ、前に罪を犯した者は一切入れないなんというルール自体、ちょっと時代おくれではないかなというふうに感じますし、やはり、ここはまさに、刑務所、そして出た後の更生、そして仕事を持つということが再犯防止に一番役立つ。大臣は所信表明で、それは最重要だと言っておきながら、やはりそういうルールで縛られているというのは、私はちょっと矛盾をしているというふうに思います。

 例えば、私から一つ言うならば、全国に千八百ほどの自治体がございます。それから、法務省を初め霞が関の役所があります。それは、業種によって、なじまないものはたくさんあるでしょう。民間の協力会社が土木関係、建設会社が多いのであれば、例えばの話、国土交通省の出先には何かそういうことをやってもらえるような仕事はないのかどうか。

 あるいは、千八百ある自治体、一自治体一人、そういうことを試みていただければ、今、年間二千人が民間企業で雇っていただけますから、一自治体一人やっていただければ大体二倍に数字がなっていくわけでありますので、例えばそういう目標を定めて、大臣にはしっかり取り組んでいただきたいと思いますが、重ねていかがですか。

谷垣国務大臣 今、地方公共団体については、全国の保護観察所から雇用のお願いをいろいろ、保護司の方々と一緒になって、積極的に進めているところでございます。

 それから、国に関しましては、先ほど申し上げたような問題がございますので、法務省がこれからやっていく経験は、例えば犯罪対策閣僚会議等々でほかの閣僚にも共有していただいて考えていただくというようなことを試みていかなければいけないと思っております。

田嶋委員 残りわずかでございますが、大臣にお伺いします。

 今まで刑事施設はどのぐらい御視察されましたでしょうか。

谷垣国務大臣 法務大臣になりましてからは、東京拘置所、仙台の刑務所、それから、この間、美祢の社会復帰センター、あと、少年院は男子、女子それぞれ仙台のものを拝見しました。

 昔は、私も自民党の法務部会や法務委員会にも籍を置いていたことがございますので、ちょっと記憶ははっきりいたしません。古くは、もうなくなってしまった中野刑務所なんというのも視察をさせていただいたことがございます。

田嶋委員 安心しました。きのう、一カ所という話を聞いていたので、私たちの方が多いじゃないかと思ったんですが、この間見させていただいて、やはり現場に行くということは本当に大事だと思います。ましてや、なかなか行けない場所でありますので、これから私も努めて行こうと思っております。

 女子刑務所なども見させていただいて、本当に過酷だなと。多分、一緒に参加した人は皆さん口々にそういう御意見を出されておりました。最後に、刑務官の女性の方からも直接お話を伺いましたけれども、みんなで励まし合って、心が折れないように頑張りますとかという感じで、本当に泣けてくるような感じでございます。

 ぜひ、外へ出てからの更生のいろいろなことも、まだまだ、今の政府の方の話の取り組みは必要ですが、中の方も何かできないのかなということで、例えば、保護司という民間の方々が、全国に四万人ぐらいですか、大勢おいででございます。経験者もたくさんいる。そういう方々は全部無償でございますけれども、中にも入って、保護司経験者を初めとした方を中途採用するというようなことで、二十代が圧倒的に多い刑務官、女子刑務官、そういう方々を支えていく。

 普通の職場よりもやはり人生経験が必要だと僕は思うんですね。そういうところにあんな若い人たちだけじゃ、それは心が折れますよ。だから、もう少し中途の、人生の酸いも甘いも知り尽くしたような人がもう少し見守ってあげるようなことをやらないと、結局はそれも再犯率につながっていく。つまり、刑務所内でのいろいろな形でのサービスといいますか、それが落ちていくのではないかと思うんですが、その点、何か考えられておりますでしょうか。

谷垣国務大臣 今、田嶋委員がおっしゃいましたように、女子の刑務所等々は過剰収容になっているわけですね。ところが、過剰収容になっている原因の一つが、女性ですから、男性の刑務官ばかりでやるわけにはいかない。だから、女性の刑務官を育てなきゃいけないんですが、やはり年齢構成が非常に若くなっているので、今委員の御指摘のような問題が起こるんだと思います。

 それで、今、公務員試験の採用区分の中では保護司を直ちに採用するというような仕組みはないんですが、平成二十四年度から、刑務官採用試験の中に社会人区分というのがございまして、三十から四十歳の方を採用するという仕組みがございます。そういうものをやはり活用していくことが必要かなと考えておりまして、あわせて、現在、やや年齢は若い方にちょっと偏っているんですが、そういう方々をしっかり育てていくということがやらなきゃいけないことだと思います。

田嶋委員 最後の発言ですが、とにかく、そういうことの実情、苦しい状況をやはり発信していく政府の努力も不足していると思います。

 いろいろな情報通信、前も申し上げました、いろいろな折に、ツイッターでもフェイスブックでも何でもいいから、こういうことで我々は苦しんでいるからもっと力をかしてくれと。保護司の方だって、やってくれる人はいると私は思いますよ。ただ、これは全部無償というわけにはいきませんから。そういう経験を生かせる場がここにあります、力をかしてください、そういうことをもっと発信していただきたい。

 同時に、PFIが何か女子刑務所はなかなか難しいという現状もきのうお伺いしまして、PFI方式で女子刑務所というのはなかなか難しいということを聞きました。そういうこともあるなら、なおのこと、そういう仕組みに頼らない形で、外の力を中でもかりるということをもっとやっていただきたい。

 そのことを最後にお願いしまして、御質問を終わります。ありがとうございました。

石田委員長 次に、西根由佳さん。

西根委員 日本維新の会、西根由佳でございます。よろしくお願いいたします。

 本日は、刑務所や少年院など刑事施設における医師不足の問題をまず取り上げたいと思います。

 まず、法務省にお伺いします。

 医師の定員が置かれている全国八十九の刑事施設のうち、医師の定員割れが起きている刑事施設は幾つでしょうか。また、全ての刑事施設を合わせた医師の定員が何人で、そのうち何人が欠員となっているでしょうか。

西田政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、全体の話から申し上げます。

 刑事施設の一般職の常勤医師につきましては、現在二百二十七名の定員をいただいております。この中、平成二十五年四月一日、本年四月一日現在では、百七十八名が勤務しておりまして、四十九名の欠員、約二割以上の者が欠員という状況にございます。

 それから、刑事施設は、本所が七十七、支所は百十一ございますけれども、この中で、一般職の常勤医師の定員がある施設のうち、一人も常勤医師がいない、医師不在庁と言っておりますけれども、これは全部で十六庁ございます。その内訳は、刑務所が八庁、少年刑務所が二庁、刑務支所が三庁、拘置支所が三庁というものでございます。

 また、一般職の常勤医師がいるものの定員に満ちていない、医師欠員庁と申しておりますけれども、これは全部で十九庁ございます。その内訳は、刑務所が十六庁、少年刑務所が一庁、拘置所二庁という状況でございます。

西根委員 おととい視察で訪れた栃木刑務所、私、気になって伺ったら、そちらの方は医師の欠員は生じていないというラッキーな状況みたいなんですが、今のお話ですと、全国三十五の施設で医師がいない、または足りないという状態、そして、人数的には約二一・六%欠員が出ている、こういうことでございます。

 刑事施設は、一般施設、医療重点施設、医療専門施設と、医療の重点度の区分で三つに分かれますが、定員割れが生じているのはこの三つのうちどの施設でしょうか。

西田政府参考人 お答えいたします。

 まず、医療専門施設と申しますのは、全国四カ所にあります医療刑務所でございまして、症状が重い患者を収容するという施設でございます。それから、重点施設と申しますのは、医療専門施設、医療刑務所以外の刑事施設であって、医療機器とか医師等の医療スタッフを重点的に整備した施設でございまして、全国に六カ所ございます。ですから、それ以外が一般施設でございますけれども、一般施設で対応が困難な患者をこういった施設で収容しているというところでございます。

 お尋ねの医師不在、欠員庁でございますけれども、これらの分類全ての刑事施設で発生しております。例えば、日本で最大のベッド数を持ちます医療刑務所である医療専門施設、八王子医療刑務所においても、本年四月一日現在で、定員十七名のところ現員が十名で、七名もの欠員が出ている状況でございまして、医療重点施設、一般施設の多くで医師の欠員が生じているという状況でございます。

西根委員 今のお話のとおり、全国四つしかない医療専門施設でも定員が割れているということです。

 今お話に出ました八王子医療刑務所、こちら、私、委員会視察とは別に個人で視察をしてまいりました。

 八王子医療刑務所は、東京矯正管区内唯一の医療専門施設で、身体疾患、精神疾患を有する受刑者のうち特に重篤な者を収容している、そして、今お話にもありましたように、医師の定員十七名のうち十名しか充足していないということです。この八王子医療刑務所の受刑者の定員は四百二十七名ですので、十人で持っているということは、単純に計算すると一人当たり四十二・七名を診ているということになります。八王子医療刑務所は重篤な患者が集まっておりますから、この割合は非常に医師が少ないと言えます。

 参考までに、一般病院がどうかと申しますと、厚生労働省の平成二十年の調査によれば、一般病院の医師一人当たりの担当入院患者数の平均は十・九人です。

 ここで法務省にお伺いします。

 刑事施設において、医師不足により刑事施設内で受刑者に治療を施せない場合、どのように対応しているのでしょうか。

西田政府参考人 お答えいたします。

 まず、そういった施設におきましては、非常勤医師を採用して、何か困ったときには面倒を見ていただくということ、それから、近隣の医療機関の医師を招聘して、往診という形になりますけれども、診療を行っていただいているほか、外部医療機関に通院させたり入院させたりということでやっております。

 さらには、先ほど申し上げました医療専門施設とか医療重点施設の医師による支援、医療共助を実施するなどして、厳しい状況ではございますけれども、矯正医療体制の万全を期すべく努力しているところでございます。

西根委員 今のお話の中で、外部医療機関に連れていく場合があるということでした。この外部医療機関に受刑者を連れていくとき、このときの問題点についてお聞かせいただけますでしょうか。

西田政府参考人 お答えいたします。

 まず、受診を受け入れる外部機関を探す、これが最初の最大の問題でございます。そうして、受け入れに当たって、どういった感じで受け入れていただいて治療するかという打ち合わせもするんですけれども、これがなかなか難しいことでございまして、最初のこれが困難な点でございます。

 また、受け入れてくれるということになった場合も、刑事施設外に被収容者を連行するわけでございますので、逃走とか身柄の奪回とか、そういったおそれは常にございます。

 そのほかに、病院の方もそうなんですけれども、一般の患者さんに対しても我々は気を使わなきゃいけませんので、接触しないように配慮するなど、保安警備上の問題も当然ございます。

 さらには、外部医療機関に入院する場合には、一名につき三名の職員が二十四時間見るようになります。したがいまして、当日の職員だけで三名でございますけれども、勤務管理上その三人には非番を与えなきゃいけませんので、合計六名の刑務官を毎日必要とするということで、職員管理上も配置上も非常に難しい、そういった問題がございます。

西根委員 今お話にありましたように、受刑者を外部の医療機関に連れていくというのは現場にとってかなりの負担だ、こういうことでございます。以前、法務委員会で大臣も、刑務官の特殊な職場環境、その受ける特殊なストレスについておっしゃっていらっしゃいましたけれども、医師不足によってさらに余計なストレスが刑務官にかかっている、現場に負担がかかっている、こういう現状でございます。

 受刑者の処遇改善という側面だけでなく、刑務官の負担軽減という側面からも、医師不足の問題は早く解決する必要があると考えております。

 では、なぜ医師不足が起きているのでしょうか。考えられる原因を教えてください。

西田政府参考人 お答えいたします。

 刑事施設の常勤医師が不足している原因ですけれども、まず、受刑者、被収容者は、詐病を用いたり、あるいは薬の処方を強要する者がいるなど、患者が被収容者であることからくる診療上の特殊性とか困難性がございます。

 また、刑務所の中でありますと、受刑者の病気、症例が限られていること、民間医療機関に比べて医療設備も機器も決して十分ではないことから、医師は、みずからの医療技術の向上はもちろんのこと、その維持すらできないのではないかという危機感を常に持っておりまして、こういったことが考えられます。

 また、民間医療機関に比べまして、給与等の待遇面においても決して恵まれているとは言えません。それから、国家公務員としての職務専念義務がございますので、外部機関に研修に行きたかったりしても難しい問題もございますし、地域医療に対して貢献するために兼業するということについても制限がございます。

 そういった勤務条件、勤務環境が社会の一般医師に比べてやはり魅力に乏しい、それが主な原因であるというふうに考えております。

 以上でございます。

西根委員 受刑者にも、犯罪傾向が進んでいる者、進んでいない者、おとなしい者、粗暴な者といろいろいるわけですけれども、受刑者の中には出所後にお礼参りに来るような者もいると聞いております。

 医師は、受刑者の疾患を治すために治療しているので、感謝されこそすれ、恨まれることはないようにも思いますが、個々の受刑者の性格もありますし、また、治療のため、時に厳しい指導をすれば、それが逆恨みされることもある。身の安全を守るため、受刑者の前では医師の名前を伏せることになっているそうですが、看護師の立ち話などから医師の名前が漏れてしまうこともあり、過去には、出所後の元受刑者に家族を殺害された医師もいたそうです。刑事施設内で働くということは、ある意味、命をかけていると言ってもいいのかもしれません。これは、医師のみならず、刑務官もそうだと思います。

 危険手当のようなものがついてもよいくらいの職場環境ですが、給与は、先ほどの話にもありましたように、国家公務員の給与体系に基づきますので民間の半分くらいしかないと聞いております。危険な上に給与が低い、半分奉仕のような仕事です。

 先日お伺いした八王子医療刑務所の所長さんは医師の方ですが、お話を伺っていて、大変な環境の中でも使命感を持って取り組まれていることがひしひしと伝わってまいりました。

 八王子医療刑務所は重篤な患者が多いので、刑務所内で息を引き取るケースもたくさんございます。平成二十四年では、出所者の二〇%が息を引き取って出たということでございます。死期の近い受刑者が、刑務所に来て、初めて人間らしく扱ってもらったということもあるそうです。前回の委員会でも述べましたように、社会的に孤立し、それゆえに犯罪に走ってしまう人が多いという現状を考えるとき、医療刑務所できちんとした医療を受刑者に施し、たとえ死ぬ間際であっても、自分の罪を悔い改めるような環境をつくることは大切なのではないか、このように感じております。

 また、今は、死んでしまうという特殊なケースではございましたが、通常の受刑者は存命のまま出るわけです。そのときに、社会復帰に大切なことは、健康な体を持って出るということが基本になります。ですから、刑事施設内できちんと医療を施して健康な体を持って出所してもらうということ、これは再犯防止の観点からも非常に重要なことです。

 このように大切な役割を果たす刑事施設での医療ですが、刑事施設で働く医師にとって本当に気の毒だと思うのは、民間で働く医師よりも危険で給与の低い仕事についているにもかかわらず、犯罪者を相手にしているというそのことによって、社会的な評価が極めて低くなっているということでございます。刑事施設に勤務しているという話をすると、何かミスをしてそんなところへ行っているんじゃないか、こういう目で見られてしまうんだというふうに私は医師から伺っております。奉仕の精神で取り組んでいるのに名誉も汚されてしまう、このような職場に医師が集まらないのは無理もないのではないでしょうか。

 刑事施設で働く医師のこのような過酷な職場環境について、どのようにお感じになりますでしょうか。大臣、お願いいたします。

谷垣国務大臣 刑事施設は強制的に受刑者を収容するわけですから、そこできちっと健康を守り、傷病を防ぐ、これは国の責務でもある、法律はそういうふうに仕組まれているわけですね。ただ、今局長が答弁し、西根委員がいろいろ申されたように、刑務所の医師、医務官は大変な特殊な厳しい状況にいるわけですね。

 それで、私も法務省に参りまして、こんなに医者の確保に苦労しているのかと、今までも私の選挙区なんかでも自治体の首長の非常な悩みの種は、自治体病院の医者を確保できないと必死になって医師の確保に飛び回る。ある市長さんなんかは、市長というのは医者の確保のためにこんなに苦労するのかと思ったとおっしゃった方がおりますが、刑務所の医務官の確保はそれに輪をかけた状況にあるというふうに私は思っております。

 したがいまして、今いろいろなことで手だてはないかということを研究させておりまして、例えば、ほかのところであると定年でもうおやめになるような方に、よし、まだ俺は、ここの診療所では定年になったけれども、よそへ少し、刑務所に協力してもいいと言ってくださるような方も、ありがたいお申し出もあったり、そういう方を何とかスカウトしてくるとか、いろいろな手だてを講じているわけですが、これは法務省だけで考えてもなかなか知恵が十分出てこない。厚生労働省とも、お知恵もかりなきゃなりませんし、外部有識者等々のお知恵もかりて少し抜本的に考えませんと、なかなか状況を一遍に変えるということは難しいのではないかと思っております。

 しかし、そういう知恵を集めて何とか道を切り開いていくために、私も先頭に立って頑張らなきゃいかぬ、このように思っております。

西根委員 今、手だてをいろいろ考えている、先頭に立って頑張っていただくということでした。

 きょうはもう時間が参りましたので、ここで切りますが、今後、ではどのようにしていったらいいのかということをともに考えるというのをまた次にしたいと思います。

 ありがとうございました。

石田委員長 次に、西田譲君。

西田委員 日本維新の会の西田譲です。

 今国会では、たび重なる一般質問の機会を頂戴いたしまして、本当にありがとうございます。

 また、先ほど来お話が出ておりますが、先日は、喜連川、そして栃木の刑務所の視察をさせていただきました。企画をいただきました委員長、そして御協力をいただきました法務省並びに現地の職員の方々には大変感謝申し上げます。大変有意義な視察をさせていただいたというふうに感想を持たせていただきました。

 さて、それでは、きょうの質問に入らせていただきたいと思います。

 まずは、時効というものについて、きょうはお伺いをさせていただきたいなと思っております。いわゆる民法で定めてある時効でございますけれども、まず法務省にお伺いさせていただきたいと思います。

 民法の百四十六条でございますけれども、「時効の利益は、あらかじめ放棄することができない。」という定めがあるわけでございます。時効の利益は、これをあらかじめ放棄することができない、これの解釈についてまずはお伺いをさせていただきたいと思います。

深山政府参考人 御指摘の民法百四十六条の規定は、時効というのは時間が経過したことの効果に基づく制度なので、これを当事者間であらかじめ放棄するというのはこの時効制度の趣旨に合致しないということ、また、実際問題としても、債権者が自分の強い力を使って債務者に放棄を強要するおそれがある、そうすると債務者の利益を保護できないということで、この二つの趣旨から、今述べたように、あらかじめ放棄することができないというルールが設けられているものでございます。

西田委員 ありがとうございます。

 まさしく今おっしゃったとおり、時効をあらかじめ放棄すれば、そもそも時効という概念そのものが存在しないということがございます。

 そして、あわせて、時効をあらかじめ放棄できないというのは、まさしく国家権力の濫用、暴走的な濫用が行われたときに、個人であったり、もしくは法人の権利を、そういったものから永遠に侵害され続けることがないように守るための条項だというふうに思うわけでございます。

 こういったものは、まさしくこの自由社会においてはとても大事な定めであるというふうに思うわけでございます。この民法における時効の定め、まさしく、これまでの私たちの文明社会の経験知といいますか、人間の英知の結晶がこの百四十六条にはあらわれているなというふうに私自身考えるわけでございます。

 この時効の定め、民法で定めている時効の定めがいろいろあるわけでございますけれども、特例を定めているもの、民法の時効に対して特例をもって定めた法律がこれまで何本かあったかと思いますけれども、それについて教えていただければと思います。

深山政府参考人 時効に関する特例といいますと、時効の中断あるいは停止という民法にある制度の特例を個別の法律で設けているものがございます。

 まず、時効の中断に関する特例の制度ですけれども、例えば、裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律というのがございます。この法律の二十五条では、認証を受けた裁判外紛争解決手続の終了通知一カ月以内に訴えを提起するといった要件を満たす場合には、認証紛争解決手続における請求のときにさかのぼって時効中断の効力が生ずるという特例を設けています。

 また、時効の停止制度についての特例ももう一つ申し上げますと、例えば、特定住宅金融専門会社が有する債権の時効の停止等に関する特別措置法という法律がございまして、この法律の第一条では、特定住宅金融専門会社がこの法律の施行日において有する債権について、債権処理会社の設立の日から一定期間は時効が完成しない、こういう特例を設けております。

西田委員 ありがとうございます。

 いわゆる住専のときでございますね。住専の解決について時効の完成を延ばすという趣旨の法律ではないかと思います。

 もう一つ、裁判外紛争、これについては、関連して今国会でも、いわゆる東日本大震災の原子力損害賠償紛争について、時効の中断を定めた特例というものが本当に目にもとまらぬ猛スピードで衆参成立したかというふうに思うわけでございます。

 特に今国会で、当然我々賛成をして成立させたわけでございますけれども、附帯決議は、時効の中断の特例からさらに進んで、中断だけではなくて時効そのものを完成させないための法整備も今後検討していくべきだというような附帯決議がついているわけでございます。

 実際に衆議院の方の附帯決議の後半部分を読みますと、「十分な期間にわたり賠償請求権の行使が可能となるよう、短期消滅時効及び消滅時効・除斥期間に関して検討を加え、法的措置の検討を含む必要な措置を講じること。」というような附帯決議がついているわけでございますね。

 でも、これは先ほど来申しておるように、民法の時効の定めというのは、我が国が誇る自由な社会において、個人や法人の私有財産をしっかりと擁護する、いわゆる自由の定めであるわけでございますから、特例を設ける際というのは慎重になり過ぎてなり過ぎることはないというような条文、考え方であるというふうに思います。

 よって、この時効の問題に関して特例を定めるときには、過去の事例との整合性も問題になりますし、あるいは憲法の問題、法のもとの平等という憲法に違背することはないのかといったことも考えていかなければならない、非常に大事な審議をしていかなければならない案件だと思います。

 大臣に御所見をお伺いしたいと思います。

谷垣国務大臣 東日本大震災の補償に関する時効の問題は、これは今の非常に重要な問題の一つだと思うんですね。

 先ほどの附帯決議がございます。もちろん、国会でなされた附帯決議でございますから、政府としては十分に尊重していかなきゃならないのは当然のことでございますが、ただ、時効制度は、今、西田委員がおっしゃったように、ある意味で人の権利関係にとって本質的な問題と私は思うんです。

 いつも言われているのは、三つぐらい時効制度の基礎が言われております。

 やはり、権利というのはみずから守らなきゃならない。全部他力本願、これは他力本願と言うと他力本願のところに叱られますから、これは撤回いたしますが、要するに、全部人に任せるようなことじゃいけないんだ。だから、権利の上に眠る者は保護しないという考え方が一つございますね。

 それから、長い間そういう権利関係だと人が信頼して、その上にいろいろな権利関係をつくっていったのに、何十年もたってからいきなりひっくり返るようなことでは法的安定性が保てないだろう。

 それから三つ目に、仮に訴訟なんかになるにしても、百年も二百年も前の証拠を出して、おまえ証明しろと言われたって、それはできないよというようなことで、時効制度というものはあるんだと思うんですね。したがいまして、民事関係の権利関係をつくっていくときの基本的な条件だと思います。

 ですから、今のように、では三年間本当に、不法行為の時効は三年でございますが、こういう非常に震災関係なんかでなかなかその権利主張も十分にできないときに三年でいいかどうかという問題は、これはもちろんあると思います。そこは十分に考えなきゃいけませんが、おおよそ時効制度は全部要らないんだということになると、つまり、未来永劫なくならない権利ということになってしまう。それが果たして全体の法の仕組みとしてたえられるかというと、そうではないと思います。

 したがいまして、大震災に関する権利救済とそういう全体の仕組みというものは十分よく、これはもちろん所管省庁が文部科学省でございますから、余りそれを乗り越えて私が答弁するのは差し控えますが、十分に検討していかなければならない問題があると思っております。

西田委員 ありがとうございます。

 まさしく大臣おっしゃったように、法的正義というものから逸脱するような法的措置というものがやはりあってはならないと思います。

 と申しますのも、今国会での文部科学委員会の審議の議事録を見てみましても、余りにもちょっと、もう時効なんてなくてもいいんじゃないかという一方的な議論が目立ったかに思いましたので、あえて法務委員会でこの民法の時効に対する考え方を聞かせていただいた次第でございます。

 さて、きょうは質疑時間十五分で、残り五分でございますので、この間のやり残しでございます情報国防、外患罪、大臣、またかということでございますけれども、この間ちょっと質問できなかった項目を何点か残しておりますから、質問させていただきたいと思います。

 前回は、いわゆる外患罪の条文の解釈、そして八十五条の復活の検討ということを提案させていただいたわけでございます。

 繰り返しになりますけれども、この情報国防というのは、対外諜報がありまして、インテリジェンスですね、それに対して防諜、カウンターインテリジェンスがあります。そして、前回から外患罪を取り上げているのは、外国、特に敵性国家からのいわゆる情報工作、逆情報であったりにせ情報、そういったものにどう対抗していくか、いわゆるカウンターディスインフォメーションと申しましょうか、ここに対する整備というものが必要になってくるわけでございます。

 しかし、このいわゆるカウンターディスインフォメーションというのは、単純な防諜と違って非常に法整備が難しい分野だというふうに思うわけでございます。と申しますのも、例えばにせ情報の流布、もしくは逆情報を流したというだけで、では罪に問えるかといったら、なかなか問えないわけでございますし、逆に言えば、言論の自由とのバランスというのも非常に大事になってくるわけでございます。

 しかし、この外患罪の八十一条というのは外国と通謀して武力行使をさせたということで定められているわけでございますので、外国と通謀して我が国ににせ情報、逆情報を流す、流布させるといった情報工作を行った場合に関しては、そういった場合に限れば立証できる可能性があろうかというふうに思うわけでございます。まさしくこれが刑法の外患罪、外患誘致罪ということになろうかと思うわけでございます。

 そこでなんですが、実際に、これまで、この刑法の外患罪が適用されたことがあるのか、お伺いをさせていただきたいと思います。

稲田政府参考人 お答え申し上げます。

 適用というのが、検察官が公訴提起をして裁判になったかということであれば、そういう事例は余り承知をしているところではございません。

 それで、検察庁の方でどういう処理状況になっているかということについて若干申し上げますと、近年、最近五年間で、刑法の外患罪についての検察統計上の数字で見ますと、平成十九年に、外患誘致による検察官認知、直受ということで受理が五件ございます。五名五件です。処理状況は、不起訴、罪とならずということにいずれもなっております。

 それから、平成二十二年にやはり、外患予備、陰謀により、検察官認知、直受の受理が二名ございます。これにつきましても、処理状況としては、不起訴、嫌疑なし二名となっておるところでございます。

 平成二十年、二十一年及び二十三年につきましては、検察庁における受理、処理はないという状況でございます。

西田委員 ありがとうございます。

 いわゆる私人による告発のみという状況だというふうに理解いたします。つまり、いわゆる司法警察が捜査をして送致をした案件はこれまでないということでございます。

 ただ一方で、特に近年でもそうでございますけれども、我が国が明らかな武力行使を受けているということはあるわけでございますね。例えばロシアの戦略爆撃機が我が国の領空を侵犯したり領土上空まで来たりということもあるわけでございますし、軍艦からのレーダー照射、これも立派な武力行使と言えるわけでございます。つまり、武力行使の事実はあるけれども、外国と通謀したという形跡はないので捜査はしなかったということになるんでしょうか。その辺、いかがお考えでしょうか。

稲田政府参考人 ただいまのお尋ねが、警察から検察庁に対して送致がなかったかということについてのことでありますれば、事実としてはなかったのは、先ほど申し上げましたように過去五年間ないんですけれども、ただ、どういう理由で警察が捜査をせず送致されなかったのかということにつきましては、私どもの方で承知するところではございませんので、お答えすることはできないということを御理解いただきたいと思います。

西田委員 早くも質問時間が終了してしまいましたが、殺人が起こってから捜査をするいわゆる一般の殺人事件と違って、外患誘致罪というのは常日ごろから捜査員を張りつけておかなければならないものでございます。根本的に違うわけでございますので、日ごろから捜査をしているのかしていないのか、これが非常に大事になってくると思います。こういった点についてもまた引き続き議論を深めていきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 ありがとうございました。

石田委員長 次に、椎名毅君。

椎名委員 おはようございます。みんなの党の椎名毅でございます。

 毎回毎回、質疑時間をいただいておりますこと、本当に感謝を申し上げたいというふうに思います。それと同時に、一昨日、刑務所の視察をさせていただいたこと、これについても、委員長、それから法務省の皆様方、そして関係各位の皆様方に本当に感謝を申し上げたいというふうに思っております。

 一般質疑三十分ということでございますので、先日質疑をし損ねた内容について、ちょっと時期におくれているかもしれませんけれども、質疑をさせていただきたいというふうに思います。

 要するに何かということですけれども、先日、本委員会で可決、採決をして、きのうの本会議で最終的に可決をした、薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部執行猶予に関する法律、これについて、十分に質問できなかったというところで伺ってまいりたいと思います。特に、薬物犯罪者の再犯防止という点について伺いたいと思います。

 きのう成立した法律自体は、私自身も、薬物犯罪の再犯防止というものに対して非常に資する第一歩だというふうに思っております。刑の一部執行猶予が認められることによって、施設内処遇とそれから社会内処遇の橋渡しがうまくできるように期待しております。

 しかし、たびたび、有名芸能人なんかが複数回、薬物犯罪で逮捕されるという例がテレビなんかで報道されるわけでございます。先週だったか今週だったかあたりも、昔から何度も逮捕されている有名な芸能人の方が薬物犯罪で逮捕をされたというニュースが報道されたところでございます。

 厚生労働省の方に聞くと、この薬物依存症という方、こういう患者として扱われている方が、三年に一回行う調査の推計で六千人程度いらっしゃると。厚生労働科学研究というもう少し違う研究によると、オーダーが二つ違っていて、十万人の単位で患者が推計されているというふうに言われているそうでございます。

 私自身も、この薬物犯罪というのを、犯罪とみなして処遇していくという流れから、もしかしたら、これは依存症という病気だとみなした上で治療につなげていくという流れに、昨日の法律を踏まえた上で、運用の中でどんどんそういう方向に変わっていくことも検討した方がいいのかなということを考えております。

 まず前提として、最初に内閣府の参考人に伺いたいと思います。

 薬物については、五カ年計画というもの、正確に申しますと第三次薬物乱用防止五カ年戦略というもので、この薬物対策、政府全般で行っていらっしゃるかと思いますけれども、その実施状況について伺いたいと思います。四つの目標というのを掲げて、国全体で取り組んでいるんだと思いますけれども、実施状況、そして現状の課題。

 それから、これが平成二十年につくられていますので、順調にいくと平成二十五年に次の五カ年計画が出るのかなというふうに想像しておりますけれども、その課題、教えていただければというふうに思います。

杵淵政府参考人 お答え申し上げます。

 政府では、御指摘のとおり、平成二十年八月に策定されました第三次薬物乱用防止五カ年戦略のもと、青少年による薬物乱用の根絶、薬物依存・中毒者の再乱用防止、取り締まりあるいは水際対策の徹底といった点を柱として諸対策を推進し、毎年その状況をフォローアップしてきているところでございます。

 平成二十四年中の少年による覚醒剤事犯の検挙人員は五年前の約五割、大麻事犯の検挙人員は同じく五年前の約四割の水準にまで減少するなど、この分野では一定の成果が見られるところでございます。

 しかしながら、最近の薬物情勢全体といたしましては、覚醒剤事犯の検挙人員は約一万二千人に上り、依然として高水準にあるほか、再犯者率は年々増加しているところでございます。また、合法ハーブ等と称して販売される薬物の使用事案が多発するなど、依然として厳しい状況にあるものと認識しております。

 このため、次期の五カ年戦略におきましては、薬物の再乱用防止対策の強化、合法ハーブと称して販売される薬物等新たな乱用薬物への対応等が重要な課題になるものと考えているところでございます。

椎名委員 ありがとうございます。

 恐らく五年前には、この合法ハーブというような言葉すら、もしかしたらなかったのかもしれません。先日の質疑で日本維新の会の河野先生も指摘しておりましたけれども、アンフェタミン系の薬物については、本当にちょっと配列を入れかえるだけで全然適用がなくなるというのはよく言われているところでございまして、やはりこういったところについて抜本的な対策をしていくというのも、これからは必要なのかなというふうに思います。

 それで、今御指摘があった再犯とそれから覚醒剤事犯というところでございます。

 日本については、ほかの国々と違いまして、薬物犯罪の中で覚醒剤の事案が物すごく多い、歴史的に見てそうだというのはよく言われているところだと思います。戦前のときは、ヒロポンとか言われてそもそも合法な液体だったわけですから、そういったところもありまして、この覚醒剤というものの使用が多いというのはずっと言われているところだと思います。

 それで、この薬物犯罪については、やはり同種犯罪を繰り返し行うという確率が非常に高いのではないかというふうにうかがわれるところでございますけれども、薬物犯罪で刑務所に入所した犯罪者が同種犯罪について再犯を行っているという再犯率について伺いたいと思います。

 まず、覚せい剤取締法で起訴された犯罪者の有前科率というのは、犯罪白書を見ると七一%というふうに書かれていますけれども、これは多分、恐らく、必ずしも同種前科というわけではないんだというふうに思います。ぜひ、同種前科の再犯率というところを教えていただければというふうに思います。

谷垣国務大臣 平成十九年の出所受刑者は三万一千二百九十七名なんですが、覚せい剤取締法違反が六千七百十六名です。そこで、この六千七百十六名のうち、平成二十三年末までに同一罪名、つまり覚せい剤取締法違反で再入所した者は、二千四百三十五名、三六・三%ということです。

椎名委員 ありがとうございます。

 やはり結構高いですよね。覚醒剤というのは、基本的にはやはり最後に行き着くところだと思いますので、少年のころから、それ以外の有機溶剤系のシンナー、それからトルエンといったところからスタートをしていって、だんだん入り口のドラッグから始まりまして、最終的に覚醒剤に行き着いていくというところで、もっと別のところの薬物まで含めると、もう少し高くなるんだろうというふうに思います。

 そんな中で、一昨日、栃木女子刑務所というところに行ってまいりましたけれども、この栃木女子刑務所、女子犯罪については特になんですけれども、覚醒剤の方の収容率というのが物すごく多くなっているというふうに伺っているところでございます。

 そんな中で、刑事収容施設法八十四条、矯正処遇の中で、刑務作業と、改善指導それから教科指導というのを行っておる、この改善指導というものの中でプログラムを受けているわけでございます。それから、更生保護法五十二条というので、社会内処遇の中では特別遵守事項として薬物プログラムというのを行っているわけですけれども、現在、こういったプログラムを刑務所の中で、それから社会内処遇で行っている状況について教えていただければと思います。

谷垣国務大臣 刑事施設内での薬物依存離脱指導、これは、麻薬あるいは覚醒剤、そのほかの薬物に対する依存がある受刑者に対しまして、まず、薬物依存であるということを認識させる、それから、薬物使用に係る自分の問題点が一体どこにあるのかということを理解させる、そういった上で、今後薬に手を出さないように生活していく決意を固めてもらって、そして再使用に至らないための具体的な方法を考えさせる、こういうことを目的として実施しているわけであります。

 それで、指導項目につきましては、薬物の薬理作用と依存症、薬物使用に関する自己洞察、それから薬物使用の影響、こういったものから成る十項目がございまして、三カ月から六カ月の期間を設けて実施することを標準としております。これが施設内処遇ですね。

 それで、社会内処遇での取り組みでは、保護観察所におきましては、簡易薬物検出検査、それから、ワークブックなんかを活用しまして、そういう教育課程で構成される覚せい剤事犯者処遇プログラム、これを特別遵守事項として義務づけているわけです。それで、平成二十四年十月から、今の、通していただきました刑の一部執行猶予制度の施行を見据えまして、そうなりますと、保護観察期間が長期化するということがあり得るわけですから、新たな薬物処遇プログラムを既に実施しております。

 なお、刑事施設での薬物依存離脱指導と保護観察所での薬物処遇プログラムに関する情報を、施設内と社会内で相互に引き継いで、有機的な連携を図るということをしております。

 それから、平成二十三年度には、薬物依存症の治療や支援を行う地域の医療、保健、福祉機関の関係機関との連携を図るため、地域支援ガイドライン、これは案でございますが、それをつくりまして、平成二十四年から、そのガイドライン案に基づいて関係機関の連携を図ることを今試行しております。

椎名委員 ありがとうございます。

 まず、矯正処遇のところから伺いたいんですけれども、今おっしゃったとおり、三カ月から六カ月程度でワンクールということで薬物指導を受けているということでございましたけれども、大体、刑務所の中では、一般教科指導、刑務作業、それからほかの改善指導というのがあるんだと思うので、その中の一環ということになるんだと思います。

 三カ月から六カ月でこの処遇プログラムをやるというのは、これは一人の受刑者という観点から見ると、覚醒剤使用で受刑している受刑者が、例えば大体一年半から二年いるとしましょう。そうすると、この二年間の間で、刑務所の中で、三カ月から六カ月のワンクールの改善指導というのは一回しか受けないということになるんですか、それとも何度か定期的に受けるということになるんですか。

谷垣国務大臣 基本的には一回ということです。

椎名委員 そういうことなんだそうです。矯正処遇についても、ほかの改善指導ということも含めると、どうしてもやはり薬物に関する指導プログラムというのは、二年間受刑している中でも、三カ月から六カ月のワンクール、ちなみに、一単元六十分で、十二単元で一クールと呼ぶそうですけれども、これが一回ぐらいしか受けられないということなんだそうです。

 保護観察についてもついでに伺いますけれども、きのう通った法律の、前の話で申しわけないんですけれども、仮釈放に伴う保護観察期間が大体五・四カ月が平均だというふうに言われております。その中で、二カ月半のプログラム、これが五課程あるというふうに言われておりますけれども、これもやはり恐らく一回程度しか受けられないんだというふうに思います。

 ここで、まさに、この処遇プログラムについて、大臣に評価というものを伺いたいんですけれども、これで十分だと思っていらっしゃるでしょうか。

齊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 社会内処遇の観点でございますが、二週間置きに五回のコアプログラム、先生御案内のとおりでございます。それから、一カ月置きのフォローアッププログラムというものを、実は平成二十三年に立ち上げました薬物処遇研究会で、覚醒剤だけではなくていろいろな薬物に汎用性のあるプログラムを開発して、今、昨年の十月から実施しているところでございます。

 これは、アメリカ等の理論に基づいて、日本も、国立精神・医療センターの先生方に、今の薬物治療に関する最新の知見を用いてつくっていただいているものでございますので、簡易薬物検査とあわせて非常に効果のあるものというふうに私ども理解しております。

椎名委員 ありがとうございます。

 内容という意味ではなくて、私が聞きたかったのは頻度ということなんです。

 後でちょっと伺おうと思っておりますけれども、アメリカなんかでドラッグコートというものがございまして、薬物事犯者については、通常の刑事司法手続ではなくて、薬物依存から回復させるための治療的な手続に乗せる。その経緯については、裁判官が法廷で、トリートメント、治療ですね、治療の修了時まで、大体一年から二年の間、集中的に監督をする、治療の全課程を修了した被告人については、基本的には刑事の罪に問わない、公訴棄却の決定を下す、そういう制度なんだそうです。

 この制度の中で、運用状況等を見てみると、自助団体とのコミュニケーションの中で、頻度として、要するに、研修というか治療というか、こういったものについては週に三回以上というようなことを言われているわけでございます。

 これに比して、先ほどの矯正処遇の中では、特別改善指導、例えば二年間の受刑期間でも、三カ月から半年、ワンクール、一単元六十分で十二単元、これが大体一回程度。それから、保護観察であっても、二カ月半のコアプログラム、二週間に一回のコアプログラム、五課程ございます、それからフォローアッププログラム、月に一回、これが大体、まあ何カ月か行われるわけですけれども、基本的にはやはり一回程度ということで、どうしても、よその国の治療プログラムと比べると、頻度として少ないように見受けるんですけれども、改めて、もし大臣の御所見があればいただきたいなというふうに思う次第です。

谷垣国務大臣 頻度ないし期間が短いじゃないかと。この点は、先ほど局長からも御答弁申し上げたような研究会や何かで、またいろいろ知見も提供していただかなきゃならぬと思っております。

 ただ、先ほどちょっとおっしゃったドラッグコートの事例などを見ますと、これはアメリカで薬物犯罪者を対象にかなり広く運用されるというふうに聞いておりますが、先ほどおっしゃったように、このプログラムに参加して、プログラムを修了できなかったら有罪認定される場合があるわけですが、修了した場合には起訴されることがなくなる、あるいは告発が取り消される、薬物乱用対策のために利用されていると。

 これは、先ほどもちょっとお触れになりましたが、裁判官によって、かなり徹底した監督のもとでの長期処遇をその特徴の一つとしている。だから、そういう意味では効果が上がるということもあるんだろうと思いますが、他方、ドロップアウトしていく者も相当多いということを私は聞いております。

 それで、こういうことも一つ大いに我々としても研究しなきゃならない対象であることは事実でございます。つまり、これは要するに、有罪認定を受けない段階でこういう処遇をしていく。先ほどから委員の御関心を聞いておりますと、要するに、薬物依存者は、犯罪として処遇するというよりも、むしろ一種の依存症という中で、それを治療するプログラムはないのかという御関心があるんだろうと思いますね。

 そういったことも、我々、ある程度、視野のどこかに置いておかなきゃならないと思いますが、現状では、やはり有罪認定を経て、薬物事犯者として処遇を義務づける。そうしないと、どういうことで根拠づけられるか、義務づけられるかということにやはり問題があるのではないのか。それから、脱落者もかなり多いということになると、その制度評価をどうするのかというような問題もあるんだろうと思います。

 私どもとしても、そういう海外の取り組みは十分に研究しながら、ただ、今のような観点は、日本にすぐ取り入れられるかなという気持ちがございます。

椎名委員 ありがとうございます。

 後で聞こうと思っていた話なので、それを話されちゃうと時間が余っちゃうんじゃないかなというふうにちょっと思っていたりはするんです。済みません。

 それはさておき、まず、脱落者の話なんですけれども、数字を見ると、受講中の被告人を含めますと、約七〇%程度がドラッグコートを修了するというふうに言われています。裏を返すと、ドロップアウトしているのが三〇%程度。これをどのように評価するかというのは、一つ評価の問題かなというふうに思います。

 他方で、このドラッグコートを修了した方々の再犯率というところについては、かなり低くて、一桁程度だったというふうに記憶しております。今ちょっと、ぱっと手元に数字が、見失ってしまったので、ちょっと覚えていないんですけれども、三%から五%程度だったような感じでございます。そういった形で、それなりにやはり効果は上がっているのかなというふうに思った次第でございます。

 それで、やはり問題意識として、先ほど大臣がおっしゃったように、基本的には、犯罪とみなして処遇をするかというのと、病気とみなして治療をするかという、根本的な発想の転換なんだろうというふうに思っています。この根本的な発想の転換をすることによって、後ほどさらに聞こうかなと思っていたところではございますけれども、保安処分というか、治療処分というか、結局、要は、犯罪を犯すおそれのある人に対して強制的な身柄拘束ないし何かしらの処分を行っていく、こういったところに関する憲法上の論点はもちろんあるわけでございます。この論点についても、せんだって私自身は伺ったところでもございますが、こういった観点についてもクリアできるんじゃないかなというふうに思うところでございます。病気とみなすことによって、治療を施してあげるという観点から考えていくことも非常に重要なのではないかなというふうに思っております。

 そういったところで、この治療処分、保安処分といったところについて、憲法上の論点というものについてございますけれども、ぜひ大臣にも御所見をいただければというふうに思います。

谷垣国務大臣 私が学生のころは、改正刑法草案というのがありまして、その中に保安処分を認める条項がございまして、当時、刑法の学界を二分するというか、大論争がございました。

 その論争を私は全部今克明に記憶しているわけではございませんが、そもそも保安処分というのはどういう考え方なのかということになりますと、一般には、先ほど病気として考えるということをおっしゃいましたけれども、行為者が持つ、将来犯罪を犯すんじゃないかという社会的危険性、昔は悪性なんという言葉で表現しておりましたが、そういうものを基礎にして、それに対して、社会的な保安を図ると同時に、本人の治療、改善を目的とする国家の処分である。だから、犯罪を犯したということを必ずしもそういう処遇をする要件にしていないものですね。ですから、保安処分もそういうことに立っているでしょうし、おっしゃった治療処分というのもそういう考えに立つんだろうと思います。

 そこで、病気とした治療でも、患者の同意はどうなのかということが、一般の病気でもかなり今厳しく問われる状況でございます。そういう中で、刑罰等の制裁ではないが、不利益処分を科するということになると、その根拠をどのように考えていくか、これは先ほどまさにおっしゃった憲法上の問題ということになってくると思いますね。

 それと同時に、もう一つ、憲法上の問題と言えるんでしょうが、人権の制約ということがかなり正面に出てくるだろうということです。

 それからもう一つの問題は、確かに、社会に危険を犯すような性格、行動がもう身についちゃっている人はいるかもしれない。しかし、そういう将来犯罪を犯す社会的危険性というのをどういうふうに定義して、どういうふうに認定していくのかということになりますと、ここは大変難しいことになります。具体的に犯罪を犯した人を処罰するというなら、具体的な行動をもとに処罰できるわけですが、そういう難しい問題がある。

 それから、では、そういう社会的危険性が認定されたとして、どういう処分を科していくのかというのも、これまたなかなか簡単ではないと思うんですね。

 このように検討しなければならない問題が非常に多い。そういうことで、私の学生時代の議論は、結局、保安処分は採用しないという方向で鎮静化したというか、言葉が適当かわかりませんが、そういう論争になっていたのではないかと思います。

 したがいまして、確かに、社会内処遇を考えていくときに、刑事政策として保安処分のような発想が全く不必要かどうかは私はわかりません。時々そういった、社会の中で矯正していくという中には、共通のような発想が出たり消えたりしている面はあるわけですが、正面からそれを認めるということになると、今なお相当問題が多いんじゃないかというふうに思っております。

椎名委員 どうもありがとうございます。

 まさにそのおそれという、犯罪を犯すおそれがあるということで不利益処分を科することに対する問題がどうしても解消できないというのは、確かにそうなんだというふうに思います。

 他方で、先ほど来、事実として確認させていただきましたけれども、やはり薬物犯罪者については、同種犯罪を犯す再犯率が物すごく高いということも考えると、再犯率の高い薬物犯罪者という形で考えてみると、将来、罪を犯す危険が高いということは一定程度認定できるんじゃないかなというふうに私自身は思っております。

 それで、治療処分というのは、強制的に身柄を拘束するなり、強制的に病院なりに行かせるなり、強制的に自助団体に送り込むなり、そういったことを考えると確かに不利益処分ではあるとは思いますが、他方で、薬物依存によって次の犯罪を併発するといった危険も鑑みると、治安維持だったり周りの人たちの人権を守ることもできるということ、それもまた事実なんだろうというふうに私自身は考えているところでございます。

 理屈の問題でなかなか解決しづらいところではありますけれども、何度となく法制審で議論にはなっているところでもありますので、ぜひ今後とも検討していただきたいなというふうに思いますし、私自身も今後とも引き続き勉強させていただきたいと思うところでございます。

 時間もちょっと早いですけれども、これで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

石田委員長 次に、鈴木貴子さん。

鈴木(貴)委員 新党大地の鈴木貴子でございます。

 まず初めに、きょう、初質問のお時間をいただきましたことを、委員長初め理事の皆様、そして委員の先生方に心から御礼申し上げます。

 また、先般の視察などで法務省の皆さんも大変お忙しかったかと思うんですけれども、レクなどでもお時間を割いていただきましたこと、皆さんの御尽力を無駄にしないためにも、しっかりと建設的な質疑ができるように頑張ってまいりたいと思います。

 視察の話がほかの委員の先生からも何度となく出てまいりましたが、私にとりましても、この間の視察は、大変思いの深いといいますか縁のある視察になりまして、実は、我が党の新党大地代表鈴木宗男が、三百六十五日間、丸一年間、法とルールにのっとりまして、行に入らせていただいた場所であります。

 人生、本当に生きていると何が起こるかわからないな、人生は本当に小説よりも、ドラマよりも奇だなということを改めてまた実感しながらも、法務委員に入らせていただいたこと、そして視察が喜連川だったこと、何か御縁があるような、この御縁をしっかりとまた取り組んでまいりたいと思います。

 まず、それに関連しまして、刑事施設の現状に関する質問をさせていただきたいと思います。

 視察でも、何度となく過剰収容の実情について話も出てまいりましたが、刑事施設の中でも特に刑務所の収容率が一〇〇%を超えている、そういったことが課題視されておりますが、今後、具体的にどのような対策を考えていられるのか、お聞きしたいと思います。

西田政府参考人 お答えいたします。

 現在、刑務所、少年刑務所、拘置所、これは刑事施設といいますけれども、全体の受刑者の収容状況は、未決の収容者を除きますと、いわゆる受刑者になりますけれども、これが、収容定員が七万二千五百六十二名に対しまして、五万九千六百七十二名入っておりまして、収容率八二・二%でございます。

 一時期、数年前の過剰収容期は、全国平均で一〇〇%を超えておりましたので、そのときから比べましたら幾分緩和されてきてはおります。ただ、御視察いただきました栃木刑務所を含めまして女子刑務所とか、あるいは長期の刑務所、累犯者の多い刑務所につきましては、いまだに過剰収容、高率収容の状態が続いておりまして、特に女子につきましては、幾つかの施設においては一〇〇%以上の収容率というような状況でございます。

 これにつきましては、一部の施設に対して負担を強いることになりますので、何らかの方法をとらなきゃいけないというふうに考えております。具体的には、一部の施設に収容者が集まらないように、収容調整という言葉を我々使っておりますけれども、収容調整を行いまして、簡単に言いますと、少し収容率の低いところに収容率の多いところから移送する、そういった方法を講じてとりあえず対応しているところでございます。

 ただ、収容動向と申しますのはなかなか予測ができませんので、現時点では何とかやっておりますけれども、これから急激にふえたりした場合には何らかの対応をしなきゃいけないようになるんじゃないかというふうに思っております。

 以上でございます。

鈴木(貴)委員 この間の水曜日も、視察などで、それこそPFI方式の社会復帰促進センターなど、民間事業者さんが運営されるような方式のところに視察も行かせていただきましたし、最近はそういった施設もふえてきているかと思うんですけれども、今後も継続してこのPFI方式を取り入れていくのか否かということについてお聞きさせていただきたいと思います。

西田政府参考人 お答えいたします。

 現在、我が国でやっておりますPFI方式の刑務所というのは四庁ございますけれども、これはいずれも、過剰収容の時期に、急速に、すぐに収容、キャパをふやす必要があって、可能な限り安価に、可能な限り少ない人数でということでPFI方式を使いました。

 そういった意味からいうと、今のところ、収容人員は一時期の過剰収容と比べましたら落ちついておりますので、そういった意味でのPFI手法を用いた刑務所の新設というのは当面ないところでございます。ただ、先ほど申しましたように、収容動向だけはなかなか予測ができませんので、今後もし急激にふえるようなことがあれば、そういった方法も考えなきゃならないと思います。

 それから、PFI手法ということで、民間委託という言葉から申し上げますと、これから新設のPFI手法はないかもしれませんけれども、既存の施設で、何らかの方法で、PFI手法なりほかの民間委託の方法なりが必要になった場合には、そのとき改めて検討しまして、一番いい手法を使わせていただきたいというふうに考えております。

 以上でございます。

鈴木(貴)委員 それも踏まえまして、先ほどのほかの委員の先生方のお話の中でも、刑務官の皆さん、また刑事施設の中で働いていらっしゃる皆さんの職場環境のような点についてもあったかと思うんですけれども、このPFI方式は、もしかしたら、今後、ほかの、既存の施設でも利用されていくかもしれないということも踏まえた上で、刑務官の皆さんの人員の調整といいますか、確保含め、バランス配分などはどのようにお考えでしょうか。

西田政府参考人 お答えいたします。

 まず、全体的な話を申し上げますと、やはり、先ほど申し上げましたように、収容人員は確かに落ちついてはおります。ただ一方で、中を見てみますと、高齢受刑者であったり、あるいは精神疾患を持っている受刑者であったり知的障害を有する受刑者、こういった、我々にとっては非常に処遇に特別な配慮が必要で、簡単に言いますと非常に手間がかかる受刑者というのは逆にふえております。

 そういった面からいいますと、職員の過重な負担というのは解消されたわけではございません。今は実は超過勤務とか休日出勤を常態的に強いている状況でございますので、職員配置をどういうふうに確保していくかというのは、今後もやはり引き続き考えなきゃいけないテーマというふうに考えております。

 それで、施設別の職員の配置なんですけれども、きょうちょっと話がありましたように、八王子医療刑務所みたいな医療刑務所ですとか、あるいは府中刑務所のように累犯で暴力団関係者がたくさんいるようなところと、あるいは一方で、市原刑務所のように交通事犯で非常に保安的なリスクが少ないところ、これについては、おのおのやはり負担が差がありますので、そういった意味で、収容対象と収容規模とその刑務所の機能に応じて定員を配分するということで、可能な限り公平に、応分に負担をするような配慮をさせてもらっているところでございます。

 以上でございます。

鈴木(貴)委員 今のお答えを聞かせていただきながら、二点、改めて追加で質問させていただきたいんですけれども、今お答えの中で、手間がかかる収容者という言い回しがあったんですけれども、私の次の質問項目にもちょっとかかわるので、この手間がかかるというのは具体的にどういったケースを指すのか。

 それともう一つ、質問といいますか、厳しい勤務を強いてしまっているという御認識があるということなので、ここは今後ぜひ環境の改善に取り組んでいっていただきたいし、我々も一体となって頑張っていかないといけないなと思いました。

 では、済みません、先ほどの手間がかかる収容者というのは具体的にどういう部分か、教えてください。

西田政府参考人 お答えいたします。

 手間がかかると申しますのは、私、簡単に言い過ぎましたけれども、まず、彼らを処遇して、彼らの二十四時間の生活を管理する上では、やはり身体障害とかそういったものは、職員が介護をしたりあるいは入浴をさせたり、そういった意味で手間がかかる受刑者もおれば、処遇困難で、なかなかこちらの処遇したいプログラムに乗らなくて、いろいろ規律違反を犯して、それなりのペナルティーも科さなきゃいけないような、そういった手間のかかる受刑者もおります。

 我々刑務官側というか施設側から見て手間がかかると申しますのは、そういったものが一番多いカテゴリーだと思います。

鈴木(貴)委員 あわせて、そこのカテゴリーには、例えば高齢による認知症など、そういった場合も含まれるのでしょうか。

西田政府参考人 お答えいたします。

 そうでございます。

鈴木(貴)委員 今の質問とちょっと連動する点もあるんですけれども、次に、刑事施設内の処遇に関する質問をさせていただきたいと思います。

 先ほど西根委員も医師不足についての質問をされていたんですが、私は、刑事訴訟法の第四百七十九条一項についてお尋ねをさせていただきたいと思います。

 その四百七十九条一項においては、「死刑の言渡を受けた者が心神喪失の状態に在るときは、法務大臣の命令によつて執行を停止する。」とあります。ここで言う心神喪失の状態とはどのようなことを指すのか。また、心神喪失の状態にあるという認識までどのようなプロセスで判断されるのか。そして三点目ですが、これまでに、過去の事例として、心神喪失の状態にある、それによって執行を停止するといった事例はあるのかないのかをお尋ねします。

稲田政府参考人 まず、お尋ねの第一点目の、刑事訴訟法四百七十九条第一項の心神喪失の状態にあるとはどういうことかということからお答えいたします。

 ここで言う心神喪失の状態につきましては、一般に、死刑の執行に際して、自己の生命が裁判に基づいて断たれるということの認識する能力のない状態をいうものというふうに理解されているところでございます。

 それでは次に、そういう状態にあるか否かの判断は、誰により、どのような方法によってなされるのか、こういう点でございますが、死刑確定者の精神状態一般につきましては、法務省の関係部局におきまして常に注意が払われており、必要に応じて、医師の専門的見地からの診療などを受けさせているところでございます。

 そのような慎重な配慮をしているところでございまして、法務大臣におかれては、このような専門的な見地からの判断をも踏まえて、心神喪失の状態にあることなどの執行停止の事由の有無を判断しておられるというふうに承知しているところでございます。

 最後に、これまで、刑事訴訟法四百七十九条第一項の適用を受けて死刑の執行が停止された事例はあるのかという点でございますが、そういう停止された事例は把握はしておりません。

鈴木(貴)委員 今のお答えからしても、日ごろ、受刑者、確定者の方と、言葉がいいのか悪いのかわかりませんが、時間を過ごす、顔を合わせていらっしゃる担当の刑務官の方などがその変化に気づかれ、声を上げられるのかなと思うんですけれども、今まで事例がないということは、逆を言うと、刑務官の方ですとか施設の皆さんがそういった心神喪失の受刑者はいないと判断をしているという認識でよろしいでしょうか。

稲田政府参考人 ただいまのお尋ねは、死刑確定者についてということでよろしゅうございますでしょうか。

 受刑者一般ということになりますと、ちょっと私、今手元に資料を持ち合わせておりませんので申し上げるあれではございませんが、死刑確定者につきましては、先ほど申し上げましたように、これまで、心神喪失の状態にあるということを判断した事例はないというふうに承知しているというところでございますので、その点からおわかりいただけるところだろうと思います。

鈴木(貴)委員 心神喪失であるということですから、もちろん、本人が、私にちょっと心神喪失の気があるので鑑定してくださいと声が上がることはないと思っております。

 例えば、弁護士の方、また面会に来られる親族の方など、定期的な接見をしており、よって、過去との比較などができる方からの鑑定の要請などもあるかと考えられますが、その場合には、死刑確定者本人の鑑定においての同意というものは求められるものでしょうか。

西田政府参考人 本人の同意が必要だと考えております。

鈴木(貴)委員 しかし、その場合、例えば、もし既に確定者本人が心神喪失の状態にあった場合、あった場合の上での面会の拒否であるとか鑑定の拒否というものは、果たしてどういった意味を持つのかなと私自身非常に理解に苦しむところであります。

 例えば、刑事施設に収容されている者が事理を弁識する能力を欠く常況にある、事理を弁識する能力が著しく不十分であるということで、面会を拒否し、成年後見手続上必要な鑑定人による鑑定ができずに申し立てが却下されるとすれば、精神障害者に対する適切な措置を目的とする成年後見制度の趣旨と矛盾をしないでしょうか。

 国民の裁判、もしくは審判も含めた意味ですけれども、を受ける権利が保障されていないと考えますが、見解をぜひともお聞かせ願いたいです。

西田政府参考人 お答えいたします。

 一般論で申し上げますけれども、当該本人が面会なりなんなりを拒否しましたら、できないというのが率直なところでございます。

鈴木(貴)委員 つまり、今のお答えから察するに、本人が、例えば認知症であれ、拘禁症状からくる精神疾患なり心神喪失の状態にあった者は、逆を言えば、第四百七十九条の一項を適用される、利用することがなかなか難しいというのが現状になっていて、この四百七十九条の一項の存在意義というものが非常に不明瞭で、意味あるものなのかなと感じております。

 今もお答えの中で、一般的な回答になりますがとありましたが、確かに、個別案件についての質問はお答えいただけないであろうと私も勉強させていただきました。そういう観点からも一般事例として質問させていただいたわけなんですけれども。

 ただ、皆さんに御理解いただきたいのは、現実問題、今この時間、いわゆる袴田事件、無実を訴えている袴田巌さん、四十六年間、再審請求を何度も拒否された結果、半世紀近く拘置されております。

 この袴田さんにはお姉さんがいらっしゃるんですけれども、お姉さんも、無実を訴えながら、そして信じながら、再審請求をしながらも、両親も兄も亡くなっていった。そしてまた、お姉さんの話によると、一九八四年ごろから妄想的な言動が見られているとおっしゃっております。そして、第三者といいますか、平成二十一年には東京拘置所も、認知症の症状があると回答をしていらっしゃいます。本人が鑑定人の面会を拒否しているということで、鑑定もできず、成年後見人の手続も行えていないというのが実態であります。

 ぜひ、法と根拠に基づいた適正な判断のもと、救われるべき命について考えていただきたいと思っております。ひいては、国民の、国の安心、安全のために汗を流すべきである私たち国会議員もそうですし、また同じ志を持っているであろう法務省の皆さんにも、ぜひとも、きょうこの時間、袴田さん初め家族の人たちがどんな思いで日々を過ごしているのか、一時間を過ごしているのか、一分を過ごしているのかを忘れないでいただきたいと思うところであります。

 そして、この機会に、ぜひとも谷垣大臣の見解も伺わせていただきたいと思います。

谷垣国務大臣 今、鈴木貴子さんの初めての質問を伺いながら、私は、昔、あなたのお父上が質問主意書でこの問題をお問いかけになったのを拝見したことがございます。親子でライフワークのように取り組んでおられるのかなと思います。

 今、さきにお触れになりましたけれども、袴田さんというお名前が出ましたが、私も、個別の再審請求の事由に当たるかどうかというのは、これは申し上げるべきではないと思います。だから、そのお答えは差し控えさせていただきたいと思います。

 ただ、やはり、先ほどからお引きになっているような、心神喪失の状況にある者は死刑執行はできない、こういう規定になっております。私も法務大臣になりまして、今まで、死刑の執行、これは私の負っている義務だとも思いまして執行を命令してまいりましたけれども、その点についてはきちっと判断をさせていただいたつもりですし、今の委員の御質問にもあるように、これからもそれは心してまいりたいと思っております。

鈴木(貴)委員 大臣、ありがとうございました。

 そして、今の大臣のお言葉の中で、ライフワークとして取り組んでおられるとありましたが、何ゆえに新党大地がこの問題をライフワークとして取り組んでいるのか、その背景もぜひともお考えをいただけるとありがたいな、このように思っております。

 また、ライフワーク、それこそ命という言葉がかかわっております。命をかけてでも取り組む問題、重い課題。それこそ今回の袴田さんの事件に関してもまた、刑事訴訟法四百七十九条一項、命のかかった、とうとい、とうといものであります。これもあわせて、大臣初め法務省の皆さん、そしてまた委員の皆さんにも、ぜひとも認識、御理解をいただきたいところだなと思っております。

 そして次に、取り調べの可視化に関する質問に移らせていただきたいと思います。

 今から二年前になるんですけれども、法務省の法制審議会で、法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会というものができました。そもそもの立ち上げ理由と、そして狙いを教えていただきたいと思います。

稲田政府参考人 法制審議会の新時代の刑事司法制度特別部会におきましては、今お話のございました取り調べの録音、録画制度の導入を初めとし、新しい時代において刑事司法制度がどのようにあるべきかということについて特に検討していただくということで、当時の法務大臣からの御諮問があり、審議を進めていただいているというところでございます。

鈴木(貴)委員 私も、法務省のホームページから基本構想を、ことしの一月に出たものなんですけれども、ダウンロードさせていただいて読ませていただきました。

 検討指針に、取り調べについて、「戦後六十余年にわたりこのような運用が続けられて我が国の刑事司法制度が諸外国に類を見ない独自の姿となってきた中で、それに伴うひずみもまた明らかになってきたと言わざるを得ない。」とありますが、具体的に、ここで言われるひずみとは何なんでしょうか。

稲田政府参考人 今御指摘のありましたのは、本年の一月に特別部会が出しました基本構想の中の話だろうと思います。

 これにつきましては、その前後の中でも述べられているところでございますけれども、刑事司法制度の中で、やはり供述の獲得ということに非常に重きが置かれるということが続いてきたことによって、取り調べ、そしてひいては供述調書に過度に依存する形で刑事司法が行われるようになっているのではないかという問題意識に基づくものを言っておられるものというふうに考えております。

鈴木(貴)委員 これはイエスかノーかの御回答でも結構なんですが、つまり、そのひずみの中には、密室の取り調べの中での自白の強要ですとか調査報告書の虚偽記載など、そういった過去の事例も含まれてひずみと考えていらっしゃるのでしょうか。

稲田政府参考人 基本構想は、もちろん、これは部会でお決めになられたものでありますので、私の方から細かいところにつきまして全部が全部正確に申し上げられるわけでもありませんし、また、申し上げるのが適当かどうかがありますけれども、いろいろなこれまでの刑事事件の中で裁判所からの御指摘を受けたこと、特に今、いわゆる厚生労働省の村木局長の事件が、無罪が確定しているわけでありますけれども、当該事件における取り調べの問題などがその根底にあることは、そのとおりでございます。

鈴木(貴)委員 そして、この基本構想ができたとあるんですけれども、二年間の集大成であろうなと思っております。

 この冊子の七ページ目のところに、「一定の例外事由を定めつつ、原則として、被疑者取調べの全過程について録音・録画を義務付ける。」という点と、「録音・録画の対象とする範囲は、取調官の一定の裁量に委ねるものとする。」とあります。

 原則として全過程に録音、録画を義務づけるというのがどういうことか、逆に、原則に当てはまらないケースというものは何かと私自身ちょっと調べてみたんですけれども、そうすると、御丁寧に、例外事由ということで箇条書きで書いてありました。例えば、「被疑者が十分な供述をすることができないおそれがあると認めるとき」「被疑者が著しく不安、緊張、しゅう恥心等を覚えるおそれがあること」「捜査に著しい支障が生じるおそれがあると認めるとき」「捜査上の秘密が害されるおそれがあること」とありました。

 委員の皆さんも今耳にされてどうかとお尋ねもしたいところなんですが、いずれの点も非常に漠然としていないでしょうか。正直、何にでも当てはまりやすそうな印象を私自身ちょっと持ちました。ある意味、どんな事案でも、十分な取り調べをすることはできない、一〇〇%はない、そしてまた、密室での取り調べに不安を感じない人もいないのではないかと思うんですけれども。

 こういった例外事由について、どのような見解を持っていらっしゃるのか、お答えをよろしくお願いいたします。

稲田政府参考人 この基本構想は、先ほどもお話ございましたように、約二年にわたって、約二年というか一年半ぐらいですか、ことしの一月の時点でございますから一年半ぐらいの御議論を踏まえて、その段階での審議会の部会としての一つの到達点としての議論をまとめられたものと承知しております。

 ただ、この中にございますように、これで全て終わっているわけではなくて、まさにこれから法制化を視野に入れて議論を進めていくわけでございまして、全過程の録音、録画を義務づけるとしたときも、一定例外事由が必要ではないかという議論がかなり有力にあり、それについて、議論の一つの方向性として、幾つかの今御指摘のありましたようなことが述べられているわけでありまして、その中身をどうするかということについても、まだこれから、議論をしている最中でございますので、今この段階でこれについてどうかということでありますと、それはまさに、審議会の部会における御議論の中間状況としか申し上げようがないという状況でございます。

鈴木(貴)委員 何においても、改善というかが必要だと思いますので、そうだなとも思いながらも、ただ、この部会といいますかこのメンバーが、法律のプロといいますか専門家によるものであり、しかも、ここでの問題点は、一般傍聴さえも許されていない、非常にクローズドな世界の中で議論が行われている。法務省の皆さんも、それこそ日々、改善、改革に汗を流していらっしゃるということを私自身認識しているという点でも、この議論自体、可視化の問題自体、もっとオープンにして話を進めていくべきでないのかなと思いました。

 今、質疑の持ち時間が終了いたしましたとありますが、最後に、新党大地としましても、平成十七年の結党以来、可視化について非常に訴えてまいっております。江田法務大臣のときにも約八万人の署名を提出もさせていただきましたし、また、谷垣法務大臣はもちろん御存じだと思いますが、平成二十一年には、日弁連の皆さんが百十二万人分の署名も国会に提出をされております。

 谷垣法務大臣は弁護士御出身ということですので、知識も経験も豊富で、何が公正か、公平かということへの理解も誰よりも深い大臣だと私は思っております。谷垣大臣、実力大臣の谷垣大臣の今英断をもって、被疑者はもとより、証人、参考人についての取り調べの全面可視化について、ぜひとも御検討をいただきたいと思います。

 済みません、きょうはありがとうございました。

     ――――◇―――――

石田委員長 次に、内閣提出、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。谷垣法務大臣。

    ―――――――――――――

 自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

谷垣国務大臣 自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 近時、自動車運転による死傷事犯数は減少傾向にあるとはいえ、依然として、飲酒運転や無免許運転など悪質、危険な運転行為による死傷事犯が少なからず発生しております。そして、このような悪質、危険な運転行為による死傷事犯であっても、現行の危険運転致死傷罪に該当せず自動車運転過失致死傷罪が適用された事件などを契機としまして、これらの罰則の見直しを求める御意見が見られるようになりました。

 そこで、この法律案は、このような状況を踏まえ、自動車運転による死傷事犯の実態に即した対処をするため、所要の罰則整備を行おうとするものです。

 この法律案の要点を申し上げます。

 第一は、危険運転致死傷罪の規定の整備です。

 すなわち、その一として、現行の刑法の危険運転致死傷罪における悪質、危険な一定の運転行為と同等に悪質、危険な運転行為である、通行禁止道路において重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為により人を死傷させたことも危険運転致死傷罪とした上、従来の危険運転致死傷罪とともに本法律案に規定することとしております。

 その二として、アルコール、薬物または一定の病気の影響により正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、そのことを認識しながら自動車を運転した上、客観的に正常な運転が困難な状態に陥って人を死傷させた者を、新たな危険運転致死傷罪の対象とし、現行の自動車運転過失致死傷罪よりも重い法定刑とする罰則を新設することとしております。

 第二に、いわゆる逃げ得の状況に対処するための罰則の新設です。

 すなわち、危険運転致死傷罪は、アルコール等の影響により正常な運転が困難な状態にあったことを要件としているところ、その重い処罰を免れるため、人を死傷させた後に、道路交通法の救護義務違反の罪を犯してでも、その場を立ち去るなどしてアルコール等の影響が発覚することを免れようとする状況が生じ得ることから、本法律案では、アルコール等の影響により正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転し、必要な注意を怠って人を死傷させた上、運転時のアルコール等の影響が発覚することを免れるべき行為をした者に対する罰則を新設することとしております。

 第三は、無免許運転による刑の加重の規定の新設です。

 すなわち、無免許運転の機会に人を死傷させた事案においては、無免許運転の反規範性や危険性がいわば顕在化、現実化したと評価できることから、本法律案の罰則を犯した者が無免許運転をしたものであるときは、それぞれ、道路交通法の無免許運転罪との併合罪加重以上の重い法定刑とする罰則を新設することとしております。

 その他、現行の刑法の自動車運転過失致死傷罪を本法律案で規定するなど、所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、この法律案の趣旨であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。

石田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

石田委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 ただいま議題となっております本案審査のため、来る二十一日金曜日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る十九日水曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三分散会


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