衆議院

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第19号 平成25年6月19日(水曜日)

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平成二十五年六月十九日(水曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 石田 真敏君

   理事 江崎 鐵磨君 理事 奥野 信亮君

   理事 土屋 正忠君 理事 ふくだ峰之君

   理事 若宮 健嗣君 理事 田嶋  要君

   理事 西田  譲君 理事 遠山 清彦君

      青山 周平君    穴見 陽一君

      安藤  裕君    池田 道孝君

      大見  正君    門  博文君

      菅家 一郎君    黄川田仁志君

      小島 敏文君    古賀  篤君

      今野 智博君    末吉 光徳君

      田中 英之君    鳩山 邦夫君

      林田  彪君    三ッ林裕巳君

      宮澤 博行君    盛山 正仁君

      階   猛君    辻元 清美君

      今井 雅人君    西根 由佳君

      西野 弘一君    大口 善徳君

      椎名  毅君    鈴木 貴子君

      西村 眞悟君

    …………………………………

   法務大臣         谷垣 禎一君

   法務副大臣        後藤 茂之君

   法務大臣政務官      盛山 正仁君

   外務大臣政務官      城内  実君

   政府参考人

   (警察庁交通局長)    倉田  潤君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    稲田 伸夫君

   法務委員会専門員     岡本  修君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十九日

 辞任         補欠選任

  小田原 潔君     青山 周平君

  神山 佐市君     田中 英之君

  今井 雅人君     西野 弘一君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     穴見 陽一君

  田中 英之君     神山 佐市君

  西野 弘一君     今井 雅人君

同日

 辞任         補欠選任

  穴見 陽一君     小田原 潔君

    ―――――――――――――

六月十八日

 児童買春・児童ポルノ禁止法改正問題に関して、拙速を避け、極めて慎重な取り扱いを求めることに関する請願(西村眞悟君紹介)(第一一三六号)

 治安維持法犠牲者に対する国家賠償法の制定に関する請願(宮本岳志君紹介)(第一一三七号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一二三二号)

 同(吉川元君紹介)(第一二三三号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一二五七号)

 子供の連れ去り、親子引き離しを禁止する法整備に関する請願(上野ひろし君紹介)(第一二〇〇号)

 同(馳浩君紹介)(第一二五八号)

同月十九日

 裁判所の人的・物的充実に関する請願(階猛君紹介)(第一二八三号)

 同(辻元清美君紹介)(第一二八四号)

 同(大口善徳君紹介)(第一三六七号)

 治安維持法犠牲者に対する国家賠償法の制定に関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第一三五七号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一三五八号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第一四二四号)

 同(笠井亮君紹介)(第一四二五号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一四二六号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一四二七号)

 同(志位和夫君紹介)(第一四二八号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一四二九号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一四三〇号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一四三一号)

 法務局・更生保護官署・入国管理官署及び少年院施設の増員に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一三五九号)

 同(笠井亮君紹介)(第一三六〇号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一三六一号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一三六二号)

 同(志位和夫君紹介)(第一三六三号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一三六四号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一三六五号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一三六六号)

 複国籍の容認に関する請願(横路孝弘君紹介)(第一四二三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律案(内閣提出第五二号)


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     ――――◇―――――

石田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として警察庁交通局長倉田潤君及び法務省刑事局長稲田伸夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

石田委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。階猛君。

階委員 おはようございます。民主党の階猛です。

 きょうの本題に入ります前に、前回の議論の続きを少し行わせていただきたいと思います。

 前回の質疑の冒頭で、上田人権人道大使のいわゆるシャラップという発言について取り上げました。

 その後、復興庁の水野さんという参事官の暴言が問題になって、その方は既に職を外されたということでございまして、私は、この水野さんの問題と同じように、上田人権大使の発言も非常に問題があるのではないかと思っています。

 そこで、まず、きょうは城内政務官にお越しいただいていますが、前回の質疑のあべ政務官の答弁で、上田大使の処分は、平松総合外交政策局長からしかるべく口頭の注意を行ったということでした。任命権者である外務大臣を初め政務三役の方はこの処分には関与しなかったのかどうか、これをお答えいただけますか。

城内大臣政務官 お答えいたします。

 本件につきましては、岸田外務大臣の指示により、平松総合外交政策局長から上田人権人道大使に対して行われたということであります。

階委員 そこで、しかるべく口頭の注意という答弁だったんですが、具体的にどのような口頭の注意だったんでしょうか。

城内大臣政務官 上田人権人道大使の発言につきましては、委員御指摘のとおり、その表現ぶりについて必ずしも適切ではなかったというふうに考えておりまして、上田大使に対して平松総合外交政策局長より、この旨、しかるべく口頭による注意を行ったところであります。

階委員 表現ぶりが適切ではなかったので、しかるべく注意を行ったと。しかるべくというのは、具体的にどういう注意をしたのかという質問なんですが、具体的にどういう注意だったんですか。

城内大臣政務官 しかるべくとは、その表現ぶりについて必ずしも適切ではなかったということであります。

階委員 その処分が適当であったかどうかということなんですが、問題の発言は、資料一というところに、これは外務省の方で該当部分を抜き出していただいたところなんですが、この問題の発言というところは、下の方に書いていますけれども、下線部分ですが、笑わないでください、何で笑っているのですか、黙ってくださいというようなくだりです。

 この問題の発言は、「有罪を得るために被収容者の自白に頼り過ぎることは中世のものだと指摘されたことに対する反論の中で行われた」というのが前回のあべ政務官の答弁でした。

 ところで、先ほどの資料一の中で、上田大使は反論したというんですが、具体的にどのような反論を行ったのかというのが、訳されているところからでは明らかになっていません。中世では決してありませんとか、日本はこの分野において最も先進的な国の一つですとは言っていますけれども、その論拠がないんです。

 その論拠について、果たして言われたのかどうかということをお尋ねいたします。

城内大臣政務官 御指摘の、有罪を得るために被収容者の自白に頼り過ぎているのではないかといった趣旨の発言は、モーリシャス出身のドマ委員を含む複数の委員からなされたものであります。

 これに対しまして、日本政府代表団、法務省の方でありますが、その方から、検察官は自白のみに依拠することなく、裏づけ証拠はもとより、客観的な証拠を十分に収集し、的確な証拠によって有罪判決が得られる高度の見込みがある場合に限って起訴することとしており、公判においても同様に、客観的証拠に基づく十分な立証を行っているものであり、自白だけで有罪判決が下されているものではない等、反論を行ったものであります。

 かかる中、モーリシャス出身のドマ委員より、再度、中世という言葉を用いて同趣旨の発言があったところ、日本政府代表団から改めて、さきに述べた同旨の反論を行った上で、さらに上田大使から、最後のクロージングリマークスの中においても、時間の制約もあり、繰り返し説明することは避け、中世という先方発言にのみ反論したものであります。

階委員 私が上田大使の立場であれば、論拠を示した上で中世では決してありませんと言えば、こういう笑い声が起きるということはなかったと思います。

 それと、人権人道大使という大変重々しい名前がつけられているわけですけれども、人権人道大使というのはいかなる目的のために設けられて、どのような活動を行うことが求められているのかということを改めてお尋ねします。

城内大臣政務官 お答えいたします。

 人権人道担当大使は、人権人道分野における我が国の取り組みを強化する目的で設置したものであり、具体的には、国連人権理事会や国連総会第三委員会を含む国際フォーラムにおける人権人道関連国際会議への出席、各国との間での人権人道問題に関する政府レベルでの協議等に従事しております。

階委員 恐らく、今回の発言はもうインターネットを通じて全世界で見られておりますから、今後、人権問題について各国と協議をする上で、上田さんで果たしてうまくいくのかどうかという問題があると思います。

 また、説明の中で、先ほど申し上げましたように、やや足りない部分があったと思っていますので、私は、今回の発言というのは、単に表現ぶりの問題ではなくて資質にかかわる問題だと思っています。

 そのようなことを勘案すれば、注意処分で終わらせるのではなくて、私は解任のような重い処分も考えるべきではないかと思っていますが、この点、いかがでしょうか。

城内大臣政務官 今、階先生からの御質問がありましたが、私自身も映像を拝見させていただきました。また、さきに述べたとおり、上田大使の発言は、その表現ぶりについて必ずしも適切でなかったというふうに考えております。そうしたことから、岸田外務大臣の指示に基づき、主管局長である平松総合外交政策局長より、しかるべく口頭による注意を既に行ったところであります。

 他方で、これまで上田大使はさまざまな人権人道関係の国際会議に出席しており、こうした場において適切に対応してきたものと認識しております。上田大使からも、自身の表現ぶりが必ずしも適切ではなかったことについての深い反省の意が示されたところでありますし、また、外務省として、現時点でこれ以上の対応は検討していないところであります。

 いずれにしましても、外務省としては、国際会議等において引き続き適切な対応がとられるよう、十分しっかりと指導してまいる所存であります。

階委員 我々政治家もそうなんですが、公人たる者は、批判を受けたり嘲笑を受けたからといって反発するのはいかがなものかと思います。先ほど申し上げました水野さんの問題もそうですけれども、政府としては、やはり官僚あるいは大使のそうした行動についてしっかりコントロールするといいますか、言動を慎むようにちゃんと対応すべきだと思っております。

 この問題は以上にしますので、政務官、結構です。ありがとうございます。

 今、上田大使の問題を取り上げましたが、その上田大使が出席した拷問禁止委員会で、取り調べの可視化を進めるようにという勧告が出されました。その勧告内容が十四日から再開された法制審議会の特別部会においてちゃんと伝わっているのかどうか、これを法務省にお尋ねします。

稲田政府参考人 御指摘の最終見解につきましては、その訳文が整いました段階で、事務当局の方から特別部会の委員及び幹事の方々に対しまして資料としてお渡しすることとさせていただきたいと考えているところでございます。

階委員 このように、国際会議の場でも、取り調べ可視化を進めるようにということなんですが、資料二をごらんになってください。「取り調べ可視化後退」という大きな見出しがついていまして、法制審議会の部会でこのたび案が示されたというんですが、一月の段階で法制審議会の部会が示した案よりも後退しているのではないかという記事であります。

 その実際の中身が資料三のところにつけられています。「取調べの録音・録画制度」ということで、考えられる制度の概要ということなんですが、これはまず、第一という見出しがついています。実はこの録音、録画制度は、前にも取り上げましたように、第一と第二という二つの案が両論併記になっていまして、第二の方は、取り調べ官の一定の裁量に録音、録画を委ねる制度ということで、これは非常にまずいということは指摘しました。

 他方、第一の案についても、原則として被疑者取り調べの全過程について録音、録画を義務づけるとなっているんですが、例外の範囲が広過ぎるのではないかということはこの資料二の記事の中でも指摘されておりますし、また、全過程について録音、録画を義務づけるという場合の事件の範囲についても、これは狭過ぎるのではないかという意見があります。

 資料三で取り上げられているのは、いわゆる裁判員制度対象事件について逮捕または勾留されている被疑者を取り調べるときということで、現在試行中の検察官直受事件や知的障害の方が被疑者となっている事件については対象が及んでおりません。この点について今後どのような対応をされるのか、今のまま裁判員制度対象事件の身柄拘束事件のみに限定される趣旨なのか、それともこれから幅を広げていく趣旨なのか、お答えください。

稲田政府参考人 まず、特別部会での議論についてでございますが、特別部会におきましては、その迅速かつ円滑な審議を行うために、本年一月に取りまとめられました基本構想に沿いまして、検討事項について二つの作業部会を設けまして、そこでたたき台などの作成を行わせた上で特別部会で実質的な検討を行うという手順で調査審議を進めることとなっております。

 本年六月十四日に開催されました特別部会の第二十回会議におきましては、作業部会から現段階までの検討状況の報告を受けて、今後の検討の方向性などについての議論が行われたところと承知しております。

 そこで、問題の取り調べの録音、録画制度につきましては、御指摘の第一の制度案、すなわち、一定の例外を定めつつ、原則として被疑者取り調べの全過程について録音、録画を義務づける制度の対象につきまして、そもそも一月に定めました基本構想におきまして、裁判員制度対象事件の身柄事件を念頭に置いて制度の枠組みに関する具体的な検討を行い、その結果を踏まえ、さらに当部会でその範囲のあり方、すなわち対象事件の範囲のあり方についての検討を加えるという方針が示されたところでありまして、作業部会ではこの方針に沿いまして、まず制度の枠組みについて、例外事由のあり方を中心として具体的な検討がなされたわけでございます。

 そのために、先ほど御指摘の配付資料におきましても、第一の制度案の対象事件について、裁判員制度対象事件の身柄事件という記載になっておりますけれども、この制度の具体的な対象事件のあり方につきましては、制度の枠組みに関する具体的な検討が行われた後にさらに検討されることとなるというふうに承知しております。

 また、検察当局では、現在、裁判員裁判対象事件だけではなく、知的障害によりコミュニケーション能力に問題がある被疑者に係る事件でありますとか、いわゆる独自捜査事件で被疑者を逮捕した事件につきまして、全過程を含め、できる限り広範囲な録音、録画を行うなどの試行の取り組みを行ってきているものと承知しておりますし、今後も、これらの事件あるいは精神障害等により責任能力の減退、喪失が疑われる被疑者に係る事件につきましても試行の対象として、着実かつ積極的な録音、録画への取り組みを継続していく方針であるというふうに承知しております。

階委員 まず裁判員制度対象事件について検討して、その後、その検討結果をもとに対象事件を広げていくという二段階の議論をされるということなんですが、そうすると時間がかかるわけですね。

 実は、この検討が始まってからもう二年ぐらいになります。そもそも、なぜこれが始まったかというと、今回、厚労次官に昇格が内定された村木さんが危うく冤罪になりそうだったということから、検察の捜査のあり方について徹底的に見直して信頼回復を図ろうということで始まっています。村木さん、あの有為な方が、一歩間違えば、今ごろ厚労次官どころか職を失いかねなかったという非常に重要な問題が当初あったということが、だんだん薄れかけているということを私は危惧します。

 一刻も早くこの検討、結果を出して、法制度化に進むべきだと思っています。いつまでこの検討を続けるのか。結論を急がせるのが私は妥当だと思います。大臣、その期限を示していただけませんでしょうか。

谷垣国務大臣 法制審議会の特別部会、作業部会でたたき台を今つくって、検討状況を踏まえながら、この間も議論をしていただきました。

 時期につきましては、現時点でまだ確定的な期限を、ここまでと区切って申し上げる段階には至っていないと思います。

 いずれにしましても、さらに充実した審議を詰めていただくように我々配慮してまいりたいと思っております。

階委員 ぜひ、その点について早期に結論を出すよう、大臣の方のリーダーシップをお願いいたします。

 それともう一点、可視化の絡みでいいますと、最近の新聞記事でございますけれども、最高検が石川前代議士の任意の事情聴取を試みたんですが、石川さんがみずからのICレコーダーでの録音を求めたために、担当検事が捜査の内容が外部に漏れる可能性があると拒否して、聴取が中止になったという記事がありました。

 参考人、被疑者を任意で事情聴取する場合、自主録音を認めるべきではないかということを前にも大臣にはお尋ねしたとおりでありますが、大臣も消極的な姿勢でした。

 私は、情報漏えい等の弊害を懸念するのであれば、資料四に、刑訴法の二百八十一条の四、五といった、目的外使用の禁止であるとか目的外使用した場合の処罰規定、こういったものを設ければいいのではないかと思っています。こうした法制上の措置を講じた上で自前録音を認めるべきではないかと思うんですが、この点について大臣の御所見をお願いします。

谷垣国務大臣 この件については、以前にも階委員と議論をさせていただいたことがございます。

 一般論としてまず申しますと、在宅の被疑者や参考人による取り調べ状況の録音を認めるということになりますと、録音媒体が適正に取り扱われる担保というのは、これはなかなか難しゅうございます。そこで取り調べ状況が公にされるなどして、事件関係者の名誉、プライバシーが害されるおそれというものが無視できません。それから、捜査の秘密が保持できなくなって、通謀とか罪証隠滅に利用される懸念もございます。こういったことが問題点として今までも指摘されてまいりました。

 そこで、今おっしゃいましたように、録音媒体の目的外使用を禁止するというような規定を設けることによって問題点を解消できるかということでございます。

 それで、証拠開示の場面では証拠開示の目的外使用が禁止されているということはもちろんございますが、それだけではなくて、開示の必要性に比して開示による弊害が大きい証拠は、そもそも開示されないという仕組みになっております。つまり、被告人側の手には渡らないという仕組みとなっているのが一つございます。

 それから、捜査機関による一定の証拠収集が終了していない捜査段階では、関係者の協力確保や罪証隠滅工作の防止等の観点から、秘密保持が強く要請されているということもあると存じます。

 こういうことを考えますと、今の委員の問題提起でございますが、私は慎重に考えなければいけない、こういうふうに思っております。

階委員 さらにこの点については私も検討し、議論をさせていただきたいと思います。

 法案について入っていきますが、今回の法案については、賛否両論の立場から、非常に重要な御意見をいただいています。私も、非常に悩ましい法案であるな、慎重にこれは考えなくちゃいけないなと思っています。

 そういった観点から、以下、お尋ねしていきますけれども、今回の法案の三条二項で、「自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるもの」という文言があります。

 まず、「自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気」というのは非常に曖昧な表現でございまして、そういった病気というのは過度に広がる懸念があります。かつ、これを政令で規定して絞りをかけられたとしても、それが妥当なのかどうか、なお、それが広がり過ぎる懸念があるのではないかと思っておりますけれども、その点について大臣はいかがお考えでしょうか。

谷垣国務大臣 この病気という点に関しては、既に道路交通法は、その症状に照らして、自動車などの安全運転に支障を及ぼすおそれがある、そういう病気として政令で定めるものについては運転免許の欠格事由としておりまして、運転免許試験に合格しても免許を与えない、または免許を保留する、あるいは免許を受けた者の免許を取り消す、免許の効力を停止する等々規定しております。

 そこで、この今度の法案の第三条第二項に言う「自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるもの」という規定でございますが、これは、道交法で運転免許の欠格事由の対象とされている病気の例を参考として、その症状に着目して、自動車の運転に支障を及ぼすおそれがあるものに限定するという考え方で組み立てております。

 こういう点からしますと、「自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるもの」という規定ぶりは、相当程度に具体的でもあり、かつ、さらに政令による限定をするということにしているわけでございますから、過度に広がり過ぎるという懸念は当たらないのではないか。

 それから、現実に、その政令を定めるに当たりましては、医学の専門家等々から、対象とする病気とかその症状などについての専門的な意見も聞いた上で、この第三条第二項の危険運転致死傷罪の対象とすべきものを適切に規定していきたいと考えております。

階委員 一方で、限定し過ぎることによる問題といいますか、限定されると、その病気に当たった患者さんにとってみると、偏見が生じるということで、そういった観点からの懸念も示されています。

 私は、政令に委任するということが、国会の立場として、こういう重要な、賛否両論ある中で、いいのかどうかということも考えていまして、ちょっと通告はしていないんですが、これは政令ではなくて国会でちゃんと詰めて、法律上、文言化すべきではないかと思うんですが、この点について、大臣、もし可能であれば御見解をお願いします。

谷垣国務大臣 今の点は、先ほど御答弁したことの繰り返しにもなりますが、既に道交法等の規定の例があって、相当限定できるということが一つございます。

 他方、やはりこの規定は、病気そのものに着目するというものではない、症状に着目した規定である。このことは、今委員が御懸念の点からしましても、十分にそこを意識して、しかも、この法案をつくりましてからもその点の周知徹底というのは私は必要なことではないかと考えております。

階委員 ぜひ、そこは重要なポイントだと思いますので、よろしくお願いいたします。

 あともう一つ、懸念しているのは、第三条の一項の方で「アルコール又は薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」というくだりがありますが、この薬物というのは特段限定がないようなんですが、例えば医師が処方する風邪薬なども含まれるのかどうかということをお願いします。

稲田政府参考人 本法律案におけます薬物は、それ自体を限定しているものではございません。

 ただ、現行法に規定されている第二条第一号におきましても、また今回の第三条第一項におきましても、そういう意味では薬物というものには限定がないわけでありまして、医師が処方する薬でありましても、これを服用した上で、正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、このことを認識しつつ運転し、客観的にその薬物の影響により正常な運転が困難な状態に陥って人を死傷させた場合には、三条一項に該当し得る、理論的にはそういうふうになると思います。

 ただ、問題は、個別の具体的な事案における事実認定の問題とはなりますが、一般的に風邪薬や花粉症の薬はそれほど強い眠気を誘うものではないというふうに考えられておるところであり、一時的に多少眠くなるようなことがあるとしても、通常は正常な運転が困難な状態という、この法律の条項で言う状態にまで至るものではないのではないかというふうに認めているところでございます。

 なお、先ほど私、答弁の中で、特別部会の関係で作業部会と申しましたが、作業分科会の誤りでございますので、訂正させていただきたいと思います。

階委員 一般的には風邪薬や花粉症の薬で自動車の運転に支障を及ぼすおそれがないということなんですが、確認ですけれども、よくそういった薬の注意書きで、この薬を服用したら自動車を運転しないでくださいというのが書かれていたりしますけれども、そういった注意書きがあるにもかかわらず、それを無視して薬を服用して、仮に自動車の運転に支障が及んで事故が起きたという場合に、三条一項の適用がないと言い切れるかどうか、これは大臣でしょうか、お願いします。

谷垣国務大臣 あくまで個別具体的なこと、事実認定にわたる部分もあるのでございますが、この条文の要件として申し上げますと、本罪では、薬物の影響によって正常な運転に支障が生じるおそれのある状態で運転するということに対する認識、故意が必要でございます。

 そこで、被疑者、被告人が例えば今おっしゃったような注意書きを読んだとしても、そのことだけをもって、薬物の影響によって正常な運転に支障が生じるおそれがある状態にあることの認識を持っていた、故意を持っていたということにはならないと考えます。

 しかし、例えば、過去にその薬を服用して突然仮睡状態となったことがある、自分の体に関連してそのような薬理作用があるんだということを具体的に認識して服用したような場合は、正常な運転に支障が生じるおそれがある状態に対して認識していた、故意があったということになるのではないかと考えます。

階委員 ありがとうございました。

 危険運転致死傷と危険運転過失致死傷とで罪の違いがあるわけですけれども、過失か故意かということで、当然故意の方が私は重いと思っているんですが、今回、罰則の方で、三条一項の危険運転致傷罪を犯した者の方が、四条の過失致傷で免れるべき行為をした人より犯情は重いと思うんですが、法定刑は十二年以下の懲役ということで同一になっています。

 この点について、私はバランスを失するような気がするんですが、どのようにお考えでしょうか。

稲田政府参考人 まず、前提といたしまして、それぞれの、三条一項と四条の法定刑をこのような刑期にしたということについて申し上げます。

 第三条第一項の危険運転致死傷罪は、現行の危険運転致死傷罪と同様の構造を有するものでありますことから、同条と同様に、致死と致傷の場合で法定刑に差を設けることとし、酒酔い運転で人を死傷させた場合の処断刑が現行で科し得る刑としては十年六月以下の懲役となることとの均衡でありますとか、第二条の危険運転致死傷罪の法定刑が致傷の場合十五年以下、致死の場合が一年以上二十年以下となっていることとの均衡も考慮し、三条一項の場合の法定刑は、致傷の場合は十二年以下の懲役、致死の場合は十五年以下の懲役というふうにしたところでございます。

 次に、四条の関係でございますが、これはこの構成要件自体が、酒気帯び運転の罪、これは三年以下の懲役、自動車運転過失致死傷罪、七年以下の懲役または禁錮、証拠隠滅罪、二年以下の懲役のいわば複合形態であるということから、これらの法定刑の合算より重い法定刑を規定することは相当ではなく、また現行の自動車運転過失致死傷罪では致死と致傷で同じ法定刑とされておることから、この罪につきましても同じく法定刑に差を設けることは相当ではないことも考慮して、本罪の法定刑は十二年以下というふうにしたものでございます。

 両方の罪のいずれも、個別の事案におきましては飲酒等の量、犯行態様、被害者の負傷の程度などがさまざまであり、罪質が必ずしも合致していない両罪の犯情の軽重を一概に論ずることは困難とは考えておりますが、両罪はいずれも、行為者がアルコールまたは薬物の影響によりその走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、その認識を有して自動車を運転したことを要件としているものの、三条一項の罪においては、客観的に正常な運転が困難な状態に陥ったことが必要であるとされる一方で、四条においては、このような要件は不要でありますが、その一方で、その運転時のアルコールまたは薬物の影響の有無または程度が発覚することを免れる目的で、その影響の有無または程度が発覚することを免れるべき行為をしたということを要件としているわけであります。

 したがいまして、三条一項の致傷罪と四条の罪は、今申し上げましたように、構成要件に異なる部分がございますし、罪質も異なっているということでございまして、最初に申し上げましたように、それぞれを十二年以下としたのはそれぞれの理由があるところでございますので、必ずしもこれで均衡を欠くものであるというふうには考えておりません。

階委員 これで終わりますが、先ほど危険運転過失致死傷と申し上げたのはちょっと言い間違いで、過失運転致死傷です。

 それから、きょうは亀岡の事件の御遺族の方もいらっしゃっていまして、今回の議論の中で私はちょっと取り上げませんでしたけれども、無免許運転で重大な事故を起こした場合、危険運転致死傷に含めるべきではないか、こういう議論もあります。恐らく同僚の委員からその点については取り上げられると思いますが、この点についても私は重要な問題だと認識しております。

 以上で終わります。ありがとうございました。

石田委員長 次に、田中英之君。

田中(英)委員 おはようございます。自由民主党の田中英之でございます。

 まずは、法務委員会にて質疑の機会をお与えいただきました委員長を初め各委員の皆様方に心から感謝を申し上げさせていただきたいと思います。

 私、法務委員会での質問はこれが初めてになります。聞きづらい点があるかもわかりませんが、お許しをいただきながら、質疑をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 今回、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律案が提案されたわけであります。私自身は京都市の出身でありまして、選挙区に京都府の亀岡市も入ってございます。ですから、いろいろと御遺族の皆さんやまた関係者の方からこの件についてお話をお聞きする機会がございました。

 また、当初、鹿沼市での事故、実は京都市でももう一つ、てんかん等々で祇園という歓楽街での事故もございました。そして、無免許運転については亀岡市と同様に名古屋市でもございました。

 こういった大きな事案があり、その他、ほかにもこういう問題を抱えることはあったというふうには認識いたしておりますけれども、とりわけ、悪質な運転行為によって人の命を奪ったり人を傷つけたり、要件として飲酒をしたり無免許の運転とか、こういったものの厳罰化を求める意見というのは今日まで多々あった、ですから、恐らく提案があったものと認識をいたしております。

 悪質きわまりないそういった事案について、間違いなく、今、大きな四つの事故のことは申し上げましたが、御遺族の皆さんというのはなかなか理解がしにくい部分があったと思うんです。そういった意味で、今回、この国会の中で議論がされる、そういった機会ができたということは大変意義のあるものであろうかというふうに思っております。

 そこで、冒頭ではありますけれども、まず、改めてになりますけれども、今回のこの法律案が新たに提出されるに至った経過について御説明をお願いしたいと思います。

稲田政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御指摘もありましたように、最近、特に一昨年、昨年にかけての危険、悪質な運転行為による重大死傷事犯といたしましては、栃木県鹿沼市内におきまして、てんかんの疾病を有して投薬治療を受けており、てんかんの発作により意識を喪失して人身事故や物損事故を起こした経験があって、医師から運転をしないよう指導されていた上、てんかん発作の予兆を感じていたにもかかわらず、大型特殊自動車の運転を開始し、時速約四十キロメートルで進行中にてんかんの発作が起きて意識を喪失し、自車を右前方に逸走させ、歩道上を歩行していた被害者らに衝突させて六人を死亡させたという事案が発生いたしました。

 また、愛知県名古屋市内におきましては、無免許でかつ酒気を帯び、無車検、無保険の普通乗用車を運転して、交通整理の行われていない交差点に向かい進行するに当たり、前方を注視し道路状況に応じて徐行するなどの自動車運転上の注意義務を怠り、交差点に設けられた横断歩道上を自転車で進行していた被害者に自車右前部を衝突させて死亡させ、同人を救護するなど必要な措置を講じなかったという事案もございました。

 また、京都府亀岡市内におきましては、無免許で普通乗用車を運転して、連日の夜遊びによる寝不足などにより強い眠気を催すなどしていたにもかかわらず、直ちに運転を中止すべき注意義務を怠り仮睡状態に陥り、自車を右前方に逸走させ、小学校に登校するため道路右側路側帯を歩行中の被害者に背後から自車を衝突させるなどして、三人を死亡させ、七人を負傷させたという事案も発生したところでございまして、いずれにつきましても、今申し上げたような事実で起訴されたわけでございます。

 このように、今回の法律案は、近時におきましても悪質、危険な運転行為による死傷事犯が少なからず発生しているという状況があり、かつ、今申し上げましたそれぞれにつきまして、現行の危険運転致死傷罪に該当せず、自動車運転過失致死傷罪が適用されたということを契機といたしまして、これらの罰則の見直しを求める御意見が見られるようになった状況を踏まえまして、自動車運転による死傷事犯の実態に即した対処ができるようにするための罰則の整備につきまして、昨年九月に法制審議会に諮問が行われたわけでございます。

 そして、本年三月、法制審議会からの答申を受けまして、それに沿って、悪質かつ危険な自動車の運転により人を死傷させた者に対する新たな罰則を創設するなど、所要の罰則を整備するための法律案を提出させていただいたという経緯でございます。

田中(英)委員 今、事案の説明をいただきました。御答弁の中にも、悪質なこういう状況下においてのものについては、当初、おのおの危険運転致死傷罪というものを求めておられたけれども、実質には自動車運転過失致死傷罪、この部類になってしまうということから、御遺族初め、これはいろいろと報道もありますので、国民の皆さんもどうなっているんだというような、こんな状況でおられたという事実があると思うんです。ですから、恐らく、法制審のさまざまな議論を含めていただいて、今回、この法案には、一定、全てのものを網羅した形で含めてはいただいているものであるというふうには認識をいたしております。

 そこで、法律案の中身についてでありますが、今回、この法律案、例えば第二条また第五条に関して、特に第二条は、類型はもともとありましたけれども、危険運転致死傷罪の方に追加する。また、第五条の方は、これは過失運転致死傷罪ですけれども、もともとあったものをそこに追加するという形のもの。また、こういったものが特別法に移されるということでありますし、三条、四条、六条といった部分も新しく規定して、刑法から特別法という形で制定されようとしているところであります。

 特別法にされようとする理由についてお伺いしたいと思います。

稲田政府参考人 一般に、刑罰法規につきまして、刑法の中に規定するのか、特別法に規定するのかということについて、特別のルールがあるというふうには認識をしていないところでございます。

 ただ、今回の場合、今御指摘のありました条項の中で、特に、法律案の二条六号の通行禁止道路でありますとか、先ほども御議論のございました三条二項の病気については、具体的内容についてかなり技術的に詳細な事項に至るまでの規定が必要であり、かつ、道路交通法令や医学的知見などの変化に応じて柔軟に見直す必要もあるということから、政令で委任するという必要があろうかというふうに考えているところでございまして、そのような規定につきまして、基本法である刑法にこのような政令の委任規定を設けることは相当ではないという考慮がございました。

 また、無免許運転による刑の加重規定のみを特別法に規定する場合には、条文のつくりといたしまして、危険運転致死傷罪や自動車運転過失致死傷罪を刑法に残したまま条文を引用するというような形で、非常に法律としてわかりにくくなってしまうということもございますので、そこで、自動車運転により人を死傷させる行為に対する罰則を一まとめにして法律で規定した方が、国民の皆様から見てわかりやすさという点で積極的な意義があるというふうに考えまして、今回、刑法に従来規定しておりました危険運転致死傷罪と自動車運転過失致死傷罪を、ともに新法として特別法の方に規定することとしたということでございます。

田中(英)委員 ありがとうございます。

 ですよね。実は、大変わかりにくいという部分があったと思うんです。特に国民の皆さんには、今回、この事案をもって、わかりやすく、こうだからこうなったんだということが一定理解できるように整備をしていかなければならない、その第一歩であるのかなというふうに思っております。

 谷垣大臣、次の予定もあられるといいますので、この中身の部分のことを後に回して、先にちょっと大臣にお伺いしたいことだけ御質問させていただきたいと思います。

 今回、法改正がされる、新法にされるということでは、一定の理解のできる部分は当然あります。しかし、今回、この法律案ができ、このような形で提案されたというのは、いろいろと、事件の内容の中で、また裁判がある中で、無免許というものの取り扱いについてはかなりいろいろな意見があったというふうに私自身は思っております。

 この無免許ということでありますけれども、京都の場合ですと、御遺族の方、地検も、また京都府警も、危険運転致死傷罪、これで起訴しようと当初は思っていたんですけれども、結果論として、無免許というこのカテゴリーが、実は、運転をする技能を有しているか有していないかというこの一つの、かつて国会の中でも審議された際の御答弁にもありますとおり、技能を有しているということ、この文言によって、危険な運転をする、そのようにはならない、そのようなニュアンスで伝わってしまうような捉え方がされているんですね。

 しかし、例えば亀岡で起こった事件というのは、一度も免許を取っておられない方が再三にわたり無免許運転を繰り返して、その数度目の中に事故を引き起こした。一度も免許を取っていないということなんですね。免許というのは恐らく、その技能をするための練習をしたり、また法律も学んだ上で運転免許証というのが交付されるというふうに考えるときに、どう考えてもこの部分については悪質だなと思われる国民の皆さんも当然多いと思うんです。

 そこで、無免許運転ということについてでありますけれども、なかなか、危険運転致死傷罪に含めていくということが現段階では難しいとは伺っております。しかし、やはり、こういった事案を見ながら、故意とも言えるようなこういった無免許運転による事故を危険運転致死傷罪の対象にも含めていけるように考えていかなければならない。もしくは、無免許運転というものを、今回特別法としてピックアップされる致死傷罪の部分がありますので、無免許運転というこのカテゴリーの中での法律というものも考えていくべきではないかな、その中で厳罰化を図っていくことができないのかなというふうにも私自身は考えておりますけれども、その点について大臣の御答弁をお願いしたいと思います。

谷垣国務大臣 田中委員は、亀岡が選挙区でいらっしゃいますから、この問題に関しては、御遺族のお気持ちも体しながら、非常に苦労されてこられたわけですね。かつては、私も、中選挙区時代は亀岡を選挙区としておりましたので、田中委員の御苦労はよくわかるわけでございます。

 そこで、今の問題でございますが、昔は、こういう交通事故は、いわゆる業務上過失というもので罰せられた。つまり、過失犯を重くするということで罰せられていたわけですね。どうもそれでは足らないんじゃないかということになって、危険運転致死傷罪というものが生じてきた。

 その考え方は、いわゆる傷害罪、傷害致死罪、これはちょうど傷害罪、傷害致死罪と罰則は同じなんですが、つまり、傷害というのはやはり故意がなきゃいけませんから、暴行するということに故意がなきゃいけない。それと並ぶものに引き上げていこうという発想で危険運転致死傷罪が出てきた。だから、傷害罪における暴行と同じような程度の故意が必要だということで、この法律がつくられたわけですね。

 今、今度の亀岡の事犯などを念頭に置きまして、無免許の場合、どうするのか。法制審議会でも相当御議論をいただきました。

 実は、二つ問題点がございまして、今回の事件は、確かに、今まで全然免許も取っていないし、何回も無免許を繰り返してきたということはあるわけですが、無免許というのが、一般に、傷害罪における暴行と同じようなものと評価できるのかというのは一つありました。

 それから、もう一つありましたのは、今回の場合も、夜通し運転して、自分がどうしても運転中眠ってしまうような状況に追い込んでいたことと、ああいう大きな被害が起きて、亡くなられた犠牲者も出てきたという間には、明らかに因果関係がございます。しかし、無免許そのものとの間に因果関係があるのかというと、なかなかこれは難しいなということがございまして、それで今回のような立法にした。

 ただ、無免許の方の罪は今までよりも重くして、そして、今回は危険運転ということになると思いますが、無免許と危険運転との併合罪で重くしていこう、こういうことを選択したのが今回の立法でございます。

 そこで、まずは、本法律案の無免許加重の罪について実際に運用して、その上で、今委員がお触れになったような問題点、どういう問題点があるかについて、さらに議論を詰めていく必要があろうか、このように考えております。

田中(英)委員 御答弁ありがとうございます。

 法制審の中でいろいろと審議、議論をされる中で、確かに、暴行罪等々と一緒にするのがどうかという部分も、私自身も資料を見させていただきました。

 法の罰則というのは、バランスをとるということも、先ほど階委員の質疑の中にも、他の分類でありますけれども、バランスをとってというふうなことをおっしゃっておられました。その部分は一定理解できるところもありますけれども、やはり、もともと免許を持っていない時点で、運転するべきでない者が運転をしていたということ。

 確かに、事故との因果関係が無免許であったかということ、これは専門家の皆さんの中では直接的にはつながってこないというお話がありますけれども、いろいろと調べさせていただく中で、例えば、交通事故総合分析センターなんかが実はいろいろと調査されている中で、無免許運転をする人は、事故を引き起こす、それも重大な事故を引き起こす率がやはり高いというふうにも言われているんですね。

 ですから、確かに、直接的に結びつけるのが難しい、もしそうおっしゃるのであれば、恐らく無免許運転の分類もあると思いますので、差をつけながら、今後の中で考えていただければなというふうに思います。

 谷垣大臣、済みませんでした。ありがとうございます。

 今、無免許運転の取り扱い、今後についてということを少しお伺いしました。私自身は、当然ながら、今回さまざまな事案がある中で、決してこれは忘れていただきたくないんですね。

 無免許で運転すること自体がそもそもやはりだめであるので、危険運転致死傷罪と直接結びつかないというのであれば、しっかりとそのことを加味した法律案というものも、今後は国会の中で議論をしながら、また、そういったものをつくっていかなければならないのではないかということを少しここでは申し述べさせていただければというふうに思います。

 そこで、もともとの法律案の内容の中身に少し戻らせていただきたいと思います。

 三条に規定されている、先ほども少しございました、正常な運転に支障が生じる状態。実は、わかるようでわかりにくいものになっているのかなと思います。

 ですから、例えばどういった状況が正常な運転に支障を生じる状態であるか。今回、アルコールの部分や薬物また病気の部分でそれぞれあると思うんですが、どのような状況が正常な運転に支障が生じる状態であるか、このことについて御説明願いたいと思います。

稲田政府参考人 今お尋ねの「正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」と申しますのは、現行の危険運転致死傷罪にあります「正常な運転が困難な状態」、これは従来、道路及び交通の状況などに応じた運転操作を行うことが困難な心身の状態というふうに定義されてきているところでございますが、そこまでになっていることは要しないと考えるところでありまして、一般には、自動車を運転するのに必要な注意力、判断能力、操作能力が、そうではない、すなわち、こういう支障が生じるおそれがある状態ではない場合と比べて相当程度減退して危険性のある状態にあることが必要であるというふうに考えております。

 具体的に申し上げますと、例えばアルコールの影響による場合は、一般の道路交通法に定めます酒気帯び運転に該当する程度のアルコールを身体に保有している状態にあればこれに該当するものと考えられます。

 もっとも、この罪は、酒気帯び運転罪のように客観的に一定程度のアルコールを身体に保有しながら自動車を運転する行為を処罰するものではございません。あくまでも運転の危険性や悪質性に着目した罪でございますから、アルコール等の影響を受けやすい者につきましては、酒気帯び運転に該当しない程度のアルコール量であったとしても、自動車を運転するのに必要な注意力などが相当程度減退している状態にあると認められる場合には、正常な運転に支障を及ぼすおそれのある状態に該当し得るものと考えております。

田中(英)委員 ありがとうございます。

 アルコールを例に挙げて今御説明いただきまして、この一文ではなかなか読み取れないところであったかと思いますので、御説明いただいて、一定の理解がしやすい状況になったのかなと思います。

 アルコールの部分でいうと、泥酔と言われる状況にあるのはもう危険運転致死傷罪の方にもともとから含まれているということでありましょうし、酒気帯びという部分について、改めて、致死十五年以上また致傷十二年以上の厳罰化を図っていく、そういう状況をここは酌んでいただけたのかなというふうに私自身、認識、理解をさせていただきたいというふうに思います。

 また、新しくですけれども、第六条になります。少し冒頭申し上げました、先ほど来申し上げているとおり、京都府の亀岡の事件にいろいろとお話を聞いてまいりましたので、無免許運転の加重の規定が新設されているということ、これについて私自身は一定の理解をする一人であります。

 ただ、無免許運転の取り扱いが今日まで不十分であるという御遺族初めさまざまな方々の声があったのも一方では事実であろうかというふうに思います。

 ですから、ここで少し確認をさせていただきたいんですけれども、今回、ここではあくまで無免許運転、この形式で問うということ、それでよろしいんでしょうか。

稲田政府参考人 まさに御指摘のとおりでございまして、第六条の無免許運転による加重の規定は、第二条から五条までの罪を犯したときに無免許運転をしていた者である場合には、その者が実際に進行を制御する能力や技能があったか否かを問わず、また、無免許であることと人の死傷との間の因果関係の有無にかかわらず適用されるものでございます。

田中(英)委員 無免許運転という、実は危険運転致死傷のときによく出てくる、進行を制御するその能力があるかないか、こういったことではなくして、無免許であるということで、一定今回は当てはめて厳罰化、加重をしていくという認識でいいというふうに私自身、今御答弁いただいたものというふうに思っております。

 それでは、最後の一問になるのかなというふうに思います。

 今、この法律案が、私自身は、いろいろな事案のものを含めて、その事象に対処できるような形にしていただけているものという意味では、一定の理解と評価はさせていただきたいと思います。ただ、あくまでもこれは、無免許運転であったり、飲酒運転であったり、薬を飲んで、そのような状況になってしまって事故を起こしたりという、そういったものを解決するあくまでも第一歩であるなというふうな認識でいます。

 それで、名古屋市や亀岡市で起こった事件というのは、先ほど来申しているとおり、実は危険運転致死傷罪というものにはなってこなかったんですよね。先ほどから申し上げているとおり、無免許運転であっても、進行を制御するその技能はあるということで、ならなかった。

 では、事故を起こして、その進行を制御する技能をどこで判断するかということ、実は私自身そこに疑問を感じました。事故を起こした人が運転している姿を直接見るわけでもなく、また、事故を起こされてからその人の運転の技能を改めて見るわけでもないんですね。要するに、恐らく事故の現場をもってその判断をされるということになるんですが、どうも私自身には、それでもって技能を有する、有しないを判断することが果たしてできるのかなという、実はこの疑問が残っております。この点についてお伺いできますか。

稲田政府参考人 現行法の危険運転致死傷罪、今回の法案での第二条の危険運転致死傷罪のうち、いわゆる無技能類型と呼んでおりますが、「進行を制御する技能を有しない」という要件につきましては、この危険運転致死傷罪が設けられた際の国会審議におきまして、単に無免許であるというだけではなく、ハンドル、ブレーキなどの運転操作をする初歩的な技能を有しないような、運転の技能が極めて未熟なことをいうと説明し、これを前提に御審議いただいて、成立、施行に至ったというふうに承知しております。そして、施行後の裁判実務においても、それと同様の解釈で、この要件に該当するか否かについて判断されているというところでございます。

 そこで、今お尋ねは、進行を制御する技能を有するか否かという点についてでございますが、これは、具体的に申し上げますと、もちろん運転免許を有しているか否かということも一つの要素ではございますが、それまでの運転経験、あるいは事故に至る前の運転の状況、当該事故の態様などを総合考慮して判断されることになると考えております。

 また、これは故意犯でございますので、本人にその状況についての認識が必要でございますが、技能を有しないという評価自体の認識が必要なわけではなく、これらを基礎づける事実、例えば無免許であること自体であるとか、運転の経験がほとんどないこと、あるいは現実にハンドルやブレーキなどの運転操作を行うことができなかったことなどを認識しているかどうかによって判断されることになるというふうに考えているところでございます。

田中(英)委員 今、御答弁で、そういった運転の経験があるかどうかということも一つあると思いますけれども、運転の経験があるかというのは、基本的には、運転免許証を一度でも取得していなければ、ここは本来なら判断できないと思うんですよ。

 ですから、そういった意味では、例を挙げると、この亀岡の事象になりますけれども、一度も免許を取得していないんですね。たまたま数回、無免許にての運転があった中で、ハンドルを握って車を動かすことはできる、そういった状況にはあったのかもわかりませんけれども、例えばルールを守ってとか、そういう状況で実は運転をしているものではないというふうに考えたときに、ハンドルを握ってエンジンをかけてアクセルを踏んだら車は動くものですから、単に真っすぐには。ですから、そういう状況には、運転の技能を有するとそれがいうのかは別として、私自身は、それを有するともしおっしゃるのであれば、おかしな話だなとやはり思ってしまうんですよ。これは間違いなく、私だけじゃなくして、多くの委員の皆さんも国民の皆さんも、ここの部分はどうなんやろうというのが今の現状だと思うんですね。

 そのことはしっかりと認識をいただいて、例えば、今回、一度も免許を取得していない、この部類については、実は法律案にも触れられていないんですね。免許を取得して、例えば更新するのを忘れていて失効してしまった、こういうケースも当然ながら、無免許で運転してしまったということはあると思うんです。無免許でも、その差がやはりあると思うんですね。

 そんなことは、本来ならどっちもだめなんですけれども、無免許運転の中にも重さ、軽さ、こういったものがあってもしかりかなと思うと、先ほど大臣に申し上げましたとおり、この無免許運転の部分については、これからも忘れ去られることがないようにしっかりと、やはり、こういったことで事故が起こって、多くの方がお亡くなりになって、その周りにおられる御家族の方がどのような思いでおられるかということを我々は決して忘れてはいけないと思います。

 ですからこそ、この無免許についての議論というものは、当然ながらやり続けさせていただかなければならないですし、先ほど大臣に申し上げたとおり、危険運転致死傷罪、この中に含めていくことができるかどうかの議論と、もし、そこには難しいというのであれば、私自身は、この無免許運転というもの、このことによって事故を起こした事象については、特別な形で、無免許運転致死傷罪とか、こんな形で、やはり国民の皆さんにわかるようなこの法律案のつくり、今後、同じようなことが起こって、御家族の方々もしんどい思いをされることがないようにしていただければなというふうに思っております。

 今回の、この新法ができるということについては、私自身、一つ一つの事案を一定酌んでいただいた、このことはよくよく理解もできておりますし、こういった問題を解決する第一歩を踏み出してくれたな、こういった認識です。

 ですから、私自身は、今後の中で、この無免許運転等についての取り扱い、この議論というもの、そして、国民の皆さんにもわかりやすい、そういう法律案をしっかりとつくっていく、これが政治の現場で取り組んでいかなければならない、そういう問題であるということを最後に申し述べさせていただきまして、私の質疑を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

石田委員長 次に、遠山清彦君。

遠山委員 公明党の遠山でございます。

 まず、議題となっている法律案につきましては、今、私も公明党の法務部会長をさせていただいておりますが、部会あるいは政調で党として慎重に審査をいたしまして、賛成することを決めております。

 二年前の鹿沼での登校児童六人がクレーン車ではねられて死亡した事故や、先ほど来出ております昨年の四十六人もの方々が死傷された関越自動車道での高速バスの事故、そして、京都・亀岡市の集団登校中の児童十人がはねられて死傷した事故など、痛ましい、あってはならない事故が続いてきた実情を考えれば、今回の法律は必要な措置であるというふうに判断をしたわけでございます。

 しかしながら、既に同僚議員からいろいろな観点から御質問が出ておりますけれども、今回、厳罰化をする、重罰化をする特別法に関して、さまざまな指摘、特に一部の法律家等からは懸念の声があることも事実でございます。

 本日は、それらを念頭に、幾つか、法務省そして政務三役の皆さんから確認の意味で御答弁をいただきたいと思います。

 まず第一点でございますが、これまで基本法である刑法に定められていた自動車運転過失致死傷罪と危険運転致死傷罪を、刑法典から抜き出して特別法に移した理由というものについて、法務省としてどう考えるか。

 これは副大臣御承知だと思いますが、危険運転致死傷罪等についての国民の意識を高めるという観点からすると、刑法から抜いて特別法に移すことは逆行しているのではないかというような御指摘があったり、あるいは、刑法から特別法に移すということの背景に、特別法だと政令を引用することができるということなどが法律家から指摘をされているわけでございますが、その辺も念頭に置いて、特別法に集約をした理由を端的に御答弁いただければと思います。

後藤副大臣 遠山委員にお答えを申し上げます。

 御指摘のとおり、危険運転致死傷罪や自動車運転過失致死傷罪は、現在、刑事の基本法でございます刑法に規定されておりますが、法律案第二条第六号に規定されている通行禁止道路、あるいは第三条第二項の病気の具体的内容については、今まさに先生から御指摘のありましたように、技術的に詳細な事項に及ぶものであります。また、道路交通法令や医学的知見などの変化に応じて柔軟に見直すため、政令に委任する必要があるところから、基本法たる刑法にこのような委任規定を設けることは相当ではないとまず考えられます。

 また、無免許運転による加重規定のみを特別法に規定する場合には、危険運転致死傷罪や自動車運転過失致死傷罪を刑法に残したままその条文を引用することになりまして、一見して、わかりやすさの点で難があるというふうにも考えたわけでございます。

 そこで、自動車運転により人を死傷させる行為に対する罰則をまとめて一つの法律として規定する方が、国民にとってわかりやすさという点で積極的な意義があると考えられますことから、御指摘のあった刑法に規定されている現行の危険運転致死傷罪及び自動車運転過失致死傷罪とともに、新法として特別法に規定することとしたものでございます。

遠山委員 明快な御答弁、ありがとうございます。

 続きまして、刑事局長に伺います。

 本法律案の第二条六号関係で、危険運転の類型への追加として、いわゆる通行禁止道路の進行というものが今回追加をされております。これに関しましては、通行禁止道路というのは政令で定められるとされておりますが、より具体的には、例示で結構ですけれども、どのような道路をこの法律で言うところの通行禁止道路と指すと解釈できるのか。

 それからもう一点は、通行禁止道路だからといって、全ての通行禁止道路に道路標識があるわけではございません。これは法務省の皆さんよく御存じのとおり、道路交通法第四条の中で、次の三つの要件のいずれかを満たさないと標識は立てられないわけでございます。一つは、道路における危険を防止する必要性、あるいは二つ目の要件として、その他交通の安全と円滑を図る必要性、そして三番目に、交通公害その他の道路の交通に起因する障害を防止する必要性、この三つの必要性のうちいずれかを満たさないと道路標識はつかないんですね。

 そうすると、私も全国で幾つの通行禁止道路があるのかわかりませんけれども、恐らく、車を運転していて、通行禁止道路と認識せずに、いわばうっかりミスで入ってしまうことは十分あり得る。うっかりミスで通行禁止道路に入って人をはねてしまったといった場合にこの罪が適用されるのかどうか。ここは曖昧だと後の法執行で大変支障を来しますので、ちょっと御説明いただけますか。二つの点について、まとめて。

稲田政府参考人 本罪の通行禁止道路でございますが、これは、道路交通法で通行が禁止される道路の中で、その道路を禁止に反して走行することの危険性や悪質性が類型的に高いもの、すなわち、ほかの通行者から見て、自動車が進行してくるはずはないという前提で通行していて、禁止に反して自動車が通行した場合には、回避するための措置をとることが通常困難であるという意味で、類型的に危険性や悪質性が高いものを選定するということとしているところでございます。

 これは具体的には政令で定めるわけですが、現段階で考えておりますのは、まず車両通行どめ道路、例えば歩行者天国などがそれに当たると思います。それから自転車及び歩行者の専用道路。それから一方通行道路を逆走する場合であります。それと高速道路の逆走、これは中央分離帯から右側の部分を走るということに限定して対象とすることを想定しているところでございます。

 そこで、今の御指摘は、通行禁止道路であるかどうかを標識等によって認識ができなかった場合はどうなのかということであろうかと思います。

 もとより、これは故意犯でございますので、通行禁止道路を進行しているという故意がなければ、この第二条第六号の危険運転致死傷罪は成立しないこととなります。したがいまして、今御指摘のように、標識等が仮にないとか、標識等を見落として通行禁止道路を進行しているという認識がなければ、危険運転致死傷罪は成立しないことになります。

 ただ問題は、その認識がどの段階で生じているかということにもよるわけでありまして、人の死傷の結果が生じる前に発生している必要はあるということで申し上げておりまして、したがいまして、最初は通行禁止道路であることが認識できなかったけれども、仮に通行禁止道路を進行している途中で通行禁止道路であることを認識した場合でありましても、これはほかの要件の問題もございますが、その事故の時点で自分が通行禁止道路を進行しているという認識をしていれば、この罪は成立するということでございます。

 なお、先ほど歩行者天国を例で申し上げましたが、これは歩行者専用道路の規制であるのが通常だそうでございますので、ちょっと例としては適切ではなかったかもしれませんが、いずれにいたしましても、車両通行どめとされている道路はこの規定に該当させる予定にしております。

遠山委員 刑事局長、わかったような、ちょっとわからないようなところもある御説明でしたが、実際の運用に当たっては、この辺が曖昧だと、要は、ポイントは、故意で、通行禁止道路だとわかって入って事故を起こした場合と、うっかりわからずに入って事故を起こした場合とでは、恐らく判断が異なってくる可能性があるというふうに認識をしておりますが、それは個別の事故とか事案に即して司法等で判断をしていくわけでございますので、ここで余り想像だけで話してもしようがないところがあるわけですが。

 もう一点、ちょっとこの通行禁止道路で伺いたいんですけれども、道路交通法第八条の二項に基づいて、実は、警察署長が政令で定めているやむを得ない理由があるとして、通行禁止道路を通行することを許可されている人がおります。例えば障害者の方々の一部は通行禁止道路を通行することが許可されているんだろうと思いますし、その他のケースもあるというふうに役所から聞いておりますけれども、いずれにしても、あなたは通行禁止道路を通行していいですよという許可を警察署長から得ている人が通行禁止道路に入って事故を起こした場合はどういう対処になるのか、御答弁ください。

稲田政府参考人 本法律案の二条六号の通行禁止道路は、「道路標識若しくは道路標示により、又はその他法令の規定により自動車の通行が禁止されている道路又はその部分であって、これを通行することが人又は車に交通の危険を生じさせるものとして政令で定めるものをいう。」とされているところでございますが、道路標識により自動車の通行が禁止されている道路でございましても、これは道路交通法八条二項に基づくところだと思いますが、警察署長が政令で定めるやむを得ない理由があると認めて許可をしたときには、当該道路を通行することが許されるとされている場合がございます。

 この警察署長の通行許可を得た場合には、通行が禁止されておりませんので、当該車両にとりましては、当該道路は通行が禁止されている道路またはその部分に当たりません。したがいまして、今申し上げました警察署長の許可を得て道路を進行した場合には通行禁止道路を進行したこととはならない、したがって、第二条の危険運転致死傷罪は成立しないということでございます。

遠山委員 わかりました。

 もう一点、通行禁止道路の進行によって引き起こされた事故について伺いたいんですが、これは、この要件を危険運転の類型に加えたことに批判的な立場の人からよく指摘されますけれども、他の類型との比較、特に赤信号を殊さらに無視して危険な運転をした場合と比べて、単に通行禁止道路に入っていって事故を起こしたという要件と、赤信号とわかっていて、それを殊さらに無視して突っ込んでいって事故を起こした人と、同じ危険度の運転だとみなすことには無理があるのではないかという指摘がありますが、これに対しては法務省はどういう反論ですか。

稲田政府参考人 まず、赤色信号無視という類型、これは現行の危険運転致死傷罪の中にあるわけでございますが、これにつきましては、青色信号に従って進行するほかの通行者にとりましては、赤色信号を殊さらに無視して自動車が進行してくることはないはずであるという前提で通行しておりますことから、赤色信号を殊さらに無視し、かつ重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為が、類型的に見て危険性、悪質性が高いものと考えられるということからとられているところでございます。

 ところで、通行禁止道路を進行する類型につきましても、道路交通法上、自動車の通行が禁止される道路のうち、ほかの通行者としては自動車が進行してくることはないはずであるという前提で通行している、類型的に高度の危険性のあるものに政令で限定することとしている、これは先ほど申し上げたとおりでございます。したがいまして、このような通行禁止道路を進行し、かつ重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為は、それ自体、赤色信号無視の類型と同等に、類型的に見て高い危険性、悪質性があるというふうに考えられるというところであろうと思います。

遠山委員 わかりました。

 それで、大臣、お帰りになりましたが、政務三役の方で結構でございますが、次にお伺いをしたいのは、この法案の第三条二項で、危険運転致死傷罪の対象となります、「自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるもの」と規定がありますけれども、具体的にどの病気を対象としているのか、また、その病気に関しての医師の診断や症状により柔軟な対応をとられることを考えておられるのか、御答弁いただきたいと思います。

谷垣国務大臣 今、遠山委員お尋ねの三条の、政令で定める自動車の運転に支障を及ぼすおそれのある病気、これは病名だけで一律に対象とするのではございません。

 道交法におきましても、運転免許の欠格事由が一定の病気で定められておりますが、そういった病気の例も参考にいたしまして、そして、特に、病名、この病気だということよりも、その症状に着目して、自動車の運転に支障を及ぼすおそれのあるものに限定することというのでこの条文をつくっているわけでございます。

 それで、道交法の運転免許の欠格事由は、一定の症状を呈するてんかんなど、そういった病気が対象とされているところでございますが、本罪の、政令で定めるに当たりましては、これはやはり医学に関する専門家などから、対象とする病気やその症状などについて専門的な意見も聞かなきゃならぬと思っております。その上で、第三条第二項の危険運転致死傷罪の対象とすべきものを適切に規定していかなければならないと考えております。

 こういう方針で政令をつくることによりまして、個別具体的な事案においても、医師の診断や病状によって適切な対応が可能であると考えております。

遠山委員 谷垣大臣、今のやりとりをもう少し続けますけれども、非常にこれは重要だと思うんですね。

 つまり、今てんかんということをおっしゃったわけですけれども、病気による運転特性、つまり、病気の影響で起こる運転の特徴というものは、病名ではなくて症状に依存すると。大臣もおっしゃって、私も次の質問で聞こうと思ったポイントなんですけれども、つまり、てんかんだから全部運転がだめだということではなくて、てんかんを患っている方の中でも、その症状がどういう症状なのかによって運転の特性というのは決まるわけでございますから、病名だけで、あなたはそういう病気だから危険運転をしますよ、する可能性があるよとみなされてしまうと、これは医学的にも、定義として、非常に曖昧な判断基準になります。

 また、質問をまとめてちょっと大臣にお聞きしたいんですが、先ほどてんかんということが出たのであえて伺いますけれども、平成二十四年九月に当時の滝法務大臣が法制審議会に諮問を行って、そして、七回の審議を経まして、本年の三月十五日に谷垣法務大臣に答申があったわけでございます、この法律のですね。

 それで、問題は、その法制審議会で七回審議をされている間にも、日本てんかん協会という団体から伺ったところによりますと、例えば、てんかんの方が家庭科の実習に参加できなかったり、理科の実験に参加できなかったり、授業への参加が制限される事例が全国的にあった。あるいは、専門学校で資格を取得しようとしたときに制限をされたという、さまざまな不利益の事例があるということを私も伺っております。

 そうしますと、この法律が施行された後に、こういったてんかんの方々に対する不利益や、あるいは、場合によっては差別の助長がされるのではないかという懸念が指摘されているわけでございまして、もちろん、文科省とか厚労省とか、関係省庁はほかにもあるわけですが、人権擁護を担当する法務大臣として、これらの問題についてどういうふうに対処されようとしているか、お答えいただきたいと思います。

谷垣国務大臣 今委員が御指摘の件は、非常に大事なポイントだと思います。

 そこで、まず、この法律の政令で定める病気ということについてもう少し申し上げますと、正常な運転に支障が生じるおそれがある状態というのは、正常な運転が困難な状態、これは二条一項の規定でございますが、つまり、道路、交通の状況に応じた運転操作を行うことが困難な心身の状態、そこまでは至らないけれども、自動車を運転するのに必要な注意力あるいは判断能力、操作能力がそうでないときの状態に比べて相当程度減退している、そうした危険性のある状況をいう、一応こういうふうに定義ができると思います。

 そこで、発作によって意識喪失に陥る場合を例にとりますと、現に正常な運転に支障を生じている状態に限らず、将来の走行中のある時点で発作による意識喪失に陥る具体的なおそれがある場合。例えば、薬を飲む、服薬によって発作を抑えることによって運転が可能だという方はたくさんいらっしゃいます。事実、免許を取って運転しておられます。ところが、その薬を飲むということを、あえて飲まないというような状況は、客観的に走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態に当たると解されて、その認識も必要となるわけでありますから、そういう意味では、対象範囲をそういうような考え方できちっと限定していく必要があるわけですね。

 それから、医学的な判断ということになるわけですが、自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気について政令を定めるに当たりましては、先ほども申し上げたことでありますが、専門家の方々から、対象とする病気やその症状などについて専門的な意見もよく伺った上で決めていくということでございます。

 その上で、患者団体などが大変御懸念をお持ちのことは私もよく承知をしております。それで、繰り返しになりますが、要するに、病気だけではなしに、先ほどのような、服薬をするかしないか、症状があらわれて服薬をしているかしていないか、そういう具体的な症状に着目しなければならない、こういうことであって、特定の病気、病名だけで一律に判断していく、そういう仕組みにはなっておりませんし、厳にそれは避けなければいけないことだと考えております。

 それで、この第三条第二項は、政令で定める一定の病気の影響によって正常な運転に支障が生じるおそれがあるという危険性がある状況で、かつ、そのことを認識しながら運転して、その危険性がいわば顕在化してくる、そして正常な運転ができなくなって人を死傷に陥れたという観点、その危険性あるいは悪質性という観点から、相応の処罰を可能にすることが必要だという観点からこういう罰則が設けられたわけであります。

 ですから、そういう極めて限定された症状に着目し、限定された構成要件になっているわけでございますが、その上で、今のような趣旨、特定の病名に着目しているのではないんだ、症状に着目しているんだということは正しく理解していただく必要がある。ですから、この運用に当たっては、まず周知、啓発という点が極めて重要なのではないかと考えております。

 今後、政令で具体的に定めていくに当たりましては、こういう考え方を基本に、先ほど申し上げたように、専門家の御意見も十分に伺いながら、対象とする病気やその症状などの学問的な観点もよく伺いながら、関係機関とも相談しながら決めていく、そういう慎重な手続をとりたいと思っております。

遠山委員 大臣、大変御丁寧な、そしてわかりやすい御答弁をありがとうございました。この点は本当に大事なところだと思っておりまして、大臣から丁寧に、明確にお答えいただいたこと、本当によかったと思います。法施行後に不当な不利益や差別が助長されないように、また大臣からさまざまな指導力を発揮されることを期待しております。

 最後の質問になるかと思いますが、ちょっと一問飛ばさせていただいて、先ほども出ておりましたけれども、第六条関係で、無免許による加重についてこの法律は規定がございます。

 無免許運転を加重類型として定めたことについては私どもも賛成をしているわけでございますが、一方で、交通事故の被害者の遺族の方々あるいは団体からは、救護義務違反、つまり、事故を自分が起こして、その事故現場で自分でひいてしまった人が倒れている、この倒れている人を一刻も早く病院に連れていく、あるいは通報することによって救護をする義務があるわけですけれども、この救護義務をしないで、それに違反をして、被害者をそのまま置き去りにして、何もしないで立ち去ったことに対しても罪の加重をすべきでないかという意見があったり、あるいは、そもそもこれは基本的なことですけれども、車検をとっていない、あるいは保険に入っていないような車両を故意に運転しているような場合でも加重をすべきではないかというような御意見があったかと思います。

 今回、無免許だけ加重類型ということで追加をした理由は何なのか、御説明をいただければと思います。

谷垣国務大臣 無免許加重については、先ほど田中委員にお答えするときも若干触れたわけですが、ちょっと舌足らずなことを申し上げました。

 無免許運転による加重の規定を今度新たに設けました。そうすることにしている趣旨は、無免許運転が自動車運転のための最も基本的な義務に反した極めて規範意識を欠いた行為である、そして、運転免許制度が予定する必要な適性、技能あるいは知識を欠いているという意味で、抽象的、潜在的ではあるけれども危険な行為だという前提の上で、無免許運転で人の死傷という結果が生じた場合には、今の反規範性やあるいは危険性がその時点で顕在化してくる、現実化してくる、そういう評価をしまして、道路交通法上の無免許運転罪との併合罪よりも重い加重要件、加重の刑罰をつくったというのが趣旨でございます。

 そこで、救護義務違反等々の場合はどうなんだと。これも法制審議会でいろいろ議論はしていただいたんですが、道交法の救護義務違反罪では、自分の運転に起因して人の死傷が発生した場合、法定刑は十年以下の懲役または百万円以下の罰金となっているわけですが、その法定刑は、死傷結果が自分の運転に起因していることを含めて評価するということで重い刑を科することとされていて、道交法の救護義務違反でその反規範性や危険性については評価を十分しているという整理をいたしました。

 それから、無車検とか無保険に関しましては、これも御議論いただいたんですが、仮にそういう無車検、無保険の運転をして死傷の結果が生じたとしても、それが無車検の反規範性といいますか危険性の顕在化、現実化と言えるか、そこはちょっと結びつきが難しいんじゃないかと。

 ですから、無免許運転のように、無免許運転の危険性、反規範性が顕在化したとは認めにくいのではないかという観点から、無免許運転に関して先ほどのような加重の条文を設け、今回は救護義務違反やあるいは無車検、無保険と一緒にはしなかったということでございます。

遠山委員 ありがとうございます。

 もう終わりますけれども、一言だけ。

 先ほど田中先生の御質問の最後、大臣がおられないときにも御指摘があったんですが、無免許運転にも種類があると。つまり、人生で一度も免許を取らずに、人によっては十何年も二十年も車を運転している無免許の方と、免許は取ったんだけれども、期限が来て失効した後に更新せずにずっと運転をしている場合の無免許運転で、どちらが悪質なのかというのは、ちょっと立場によっていろいろ違いはあると思いますが、無免許運転と一言に言っても中身にいろいろ違いがあるということだと思いますので、これはまた法施行後の運用のところで、きちんと国民が納得できる判断基準というものをつくっていっていただきたいということを申し上げて、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

    〔委員長退席、土屋(正)委員長代理着席〕

土屋(正)委員長代理 次に、田嶋要君。

田嶋委員 民主党の田嶋要でございます。

 今、遠山先生のお話を聞いておりまして、この無免許運転のこと、少し理解が深まったような、混乱が深まったような、そんな感じがしておりますけれども。要は、道路交通法による併合罪よりもさらに高い加重ということにしたんだという御説明でございましたが、では、そこまで行きながら、危険運転の方にはそれでも入れないんだというところを、もう一度整理して御説明いただきたいと思います。

谷垣国務大臣 無免許が危険運転に入らないという点ですね。

 これは先ほどお答えしたことでもございますが、一つは、もともとこの危険運転致死傷罪というものは、今までは業務上過失で罰せられたものを、もう少し重い手段で、重い刑罰を科そうと。傷害あるいは傷害致死の法定刑も同じなわけでございますが、つまり、傷害あるいは傷害致死に必要なのは暴行ですね、少なくとも、それに匹敵するような危険なものでなければならないというのが第一点。

 そこで、無免許運転は、確かに、反規範的な行為、危険な行為、そういう潜在的なものでありますけれども、では、暴行と比べられるかというのは一つございました。

 それからもう一つは、原因関係というか因果関係の問題でございます。

 亀岡の事件を例にとりますと、要するに、眠りもしないで遊びほうけて車を運転していた、その結果眠ってしまったというものと、あの悲惨な結果との間には因果関係はあるわけですが、無免許との間の因果関係というと、いささか答えが出しにくいなということがございまして、危険運転致死傷罪の中に入れますと、危険運転致死傷罪の罪質が変わってしまうおそれもあるのではないかというようなことをいろいろ議論して、実は、詰めなきゃならない問題がまだございますけれども、差し当たって、そういう観点から、危険運転致死傷罪に新たな類型は入れるけれども、無免許は今回は入れない。

 それで、無免許の方は、新しい類型をつくって、その危険性が顕在化したということで、加重した条文を新たに設けた、こういう整理でございます。

田嶋委員 ありがとうございます。

 それでは、順を追って全般の質問をさせていただきますけれども、一部には、厳罰化や処罰対象拡大ということでは限界がある、そういうような批判も聞きますが、昨今のいろいろな悲惨な事故を踏まえて、万能ではないけれども、やはり厳罰化の方向というのは避けて通れないというのが私自身の考えでございます。

 それで、まず最初に、現行法をベースとしたものがこちらに新たに取り出されて第二条ということでございますが、新たに第三条一項というものを新設したその意味、どちらも故意が前提にあることは間違いないと思いますが、この第二項というのはどういう意味合いがあるのかということを簡単に御説明ください。

谷垣国務大臣 第二条第一号の罪、「アルコール又は薬物の影響により」というところでしょうか。

田嶋委員 ごめんなさい。

 第二条に加えて、今回、第三条一項を新設した意味でございます。

谷垣国務大臣 第二条第一号の類型は、アルコールまたは薬物の影響によって正常な運転が困難な状況になっている、そのことを認識しながら自動車を運転して人を死傷させた場合、これを第二条の第一号では規定しているわけでございます。

 それで、第三条第一項の罪は、アルコールあるいは薬物の影響によって正常な運転に支障を生じるおそれがある状態、ここまでが故意が必要でございます。自分がそういう状況になっているのは、そういう故意が必要だ。そのことを認識しながら運転した上、客観的には、その認識はないけれども正常な運転が客観的には困難な状態に陥って人を死傷させた場合を処罰対象としている。

 正常な運転が困難な状態に対する故意が二条一号の場合には必要である、ところが、三条一項の場合には、正常な運転が困難な状態になっているというところまで故意は必要ではない、おそれがある状態に対する故意で足りるというのが違うわけでございまして、それぞれの違法性あるいは有責性に応じてこういう二つの区分けをしている。ですから、若干、三条の方が二条よりも軽いといいますか、そういう位置づけでございます。

田嶋委員 今まで、危険運転はいわゆる二条相当のものしかなくて、それ以外は、業務上過失致死あるいは自動車運転過失致死というものしかなかったために、私は、きのう、中二階のような位置づけの項目を一つ入れたんですかというような質問もさせていただきましたけれども、今の御説明でも、故意の程度が違うというふうに理解をいたしました。

 具体的に、午前も少しございましたけれども、アルコールの場合、アルコールで酔っている状況ではどういうふうに違うんだ、三条の一項の適用はどういう場合、二条の適用はどういう場合ということを、もう一度確認させてください。

谷垣国務大臣 第三条一項のおそれのある状態というのは、現行の、つまり第二条の正常な運転が困難な状況ということまでは要しない、さっき申し上げたところでございますが、自動車を運転するのに必要な注意力あるいは判断能力、操作能力が、酒や薬物が入っていないときの状態と比べて相当程度減退して危険性のある状況にあるということでございます。

 もう少し具体的に申しますと、アルコールの影響による場合であるとしますと、酒気帯び運転に該当する程度のアルコールをとった、摂取したという状態にあれば、これに該当するというふうに考えます。

 その上で、第三条第一項の罪が成立するためには、先ほど申し上げたように、客観的に正常な運転が困難な状態になること、ここまでは故意は必要ではない、そういうふうに申し上げさせていただきたいと思います。

田嶋委員 要は、いわゆる道交法上の酒気帯び運転というものであれば、少なくとも三条一項のリスクは冒すんだ、その可能性があるんだという理解でよろしゅうございますか。はい。

 それでは、続きまして、階先生からも御指摘ございました薬物についてお伺いします。

 きょう、薬物は非常に広い範囲を含むんだという説明がございました。しかし、この言葉、薬物というのは、大体普通の人は、お薬というふうには読まずに、違法のドラッグとか、そういうようなニュアンスで読むのではないかと思いますが、いわゆる違法な薬物と治療のために薬局さんとかで買う薬とを全く同列に扱って罰則が適用されるんでしょうか。違いはないんでしょうか。

谷垣国務大臣 今まで、薬物によって現行の危険運転致死傷罪が適用された例としては、覚醒剤であるとか、あるいはいわゆる脱法ハーブ、脱法ドラッグ、それから睡眠薬、それから精神神経用剤とか抗不安薬、こういったものがあったということでございます。

 そこで、今の御質問は、風邪薬等々の市販薬あるいは医師から処方される薬物、薬、こういうものが第三条一項の薬物に入るのかという御質問だと思うんですね。

 それで、これは、それが外れるわけではないということをまず申し上げたいと思います。

 それは、処方された薬物でありましても、運転者の精神的、身体的な能力を低下させて正常な運転が困難な状態を生じさせるような薬理作用のあるものであれば、正常な運転が困難になるという意味においては麻薬や覚醒剤と変わるところがありませんので、市販薬や医師が処方した薬であることをもって薬物の対象から除外するということは適当ではないと考えております。

 仮に、そういう限定をしますと、例えば、市販の睡眠薬を大量に服用したり、あるいは医師に偽りの症状を訴えて処方を受けたそういう薬物を服用して、その薬理作用を認識しながらこの罪を犯すということもあり得るわけでございまして、当罰性の高いものがそれを外すと外れてしまうというふうに思います。

 ただ、一つつけ加えておきたいのは、最も一般的に、風邪薬などの市販薬は、それほど強い眠気を誘うものではないと考えられて、一時的に多少眠くなるようなことがあっても、それが直ちに正常な運転が困難な状態になるというふうには考えておりません。

田嶋委員 大臣おっしゃるとおり、脱法、違法なドラッグでも、あるいはちゃんとしたお薬でも、現象として正常な運転が困難な状態に陥る可能性はあるわけですから、そこで線を引くのは難しいかもしれないです。

 ただ、私、ちょっとお話ししていて、先ほどの、無免許か免許をちゃんと持っているかの違いも同じような感じもするんです。無免許だからといって危険運転の構成要件にはしない、だから加重なんだというお話でございますが、脱法の場合と普通のお薬とで危険な可能性は同じようにあったとしても、法律上の扱いという意味では、その規範性という意味では全然違いますよね。したがって、そこにやはり何らかの差をつけるべきではないかなというふうに考えますけれども、大臣、いかがですか。

谷垣国務大臣 これは、確かに反規範性が全く同じではないかもしれませんが、お医者様に処方されたものでも、あるいは市販の睡眠薬でも、先ほど申し上げたことですが、その薬理作用を利用しようと思って大量に服用したような場合に果たして反規範性が全然違うかというのは、私は難しいんじゃないかと思います。もちろん、そういったことが、具体的な事案によって量刑の上で裁判官が変えることはあり得るかもしれませんが、構成要件としては、こういうことで外すのはやはり不当なのではないかと思います。

田嶋委員 無免許のときの話と同じで、先ほどの理屈で、いわゆる危険運転の方の構成要件には無免許は入れないんだ、加重なんだという話を聞いておりましたので、今のこの脱法のような話、先ほどの覚醒剤、これを市販の薬と同列に扱うというのは若干クエスチョンで、脱法ドラッグの場合、例えば加重というような扱いができないのか、そういうことを御指摘申し上げたいと思います。

 もう一点だけ、この薬に関しましてお手元に資料を配っておりますけれども、市販のこういうお薬、先ほど階さんからもございました。この三のところに書いてございますが、「服用後、乗り物または機械類の運転操作をしないこと」、明確に「運転操作をしないこと」というふうに書いてありますが、先ほどからの大臣の御答弁ですと、そうはいっても、大半の人は、そんなにいきなり、めちゃくちゃ眠くなる人は多くはないかもしれないということで、一応ただし書きみたいな感じで扱われているのが現実だと思います。

 しかし、今回、こういうふうに新しい法律の中で、いわゆる覚醒剤だけじゃないんだ、薬物というのは市販の風邪薬も花粉症の薬も全部入るんだとなれば、もう少しこういったところの書き方、そして一般の方々に、ああ、そうなんだというふうに、薬物という言葉からはなかなかうかがい知れない奥行きの深さといいますか、幅の広さといいますか、これをもう少し注意喚起するように、実務上、運用上、改正すべき点が周知の面でいろいろあると思いますけれども、大臣、その点いかがですか。

谷垣国務大臣 確かに、田嶋委員の御指摘は、私もそのとおりだと思います。刑罰法規というのは国民の行為規範となるものでございますから、施行前に十分注意喚起をするというか、いろいろな意味での啓発活動をするということ、周知徹底を図るということが必要だと思います。

 ですから、これが成立しました場合には、今、田嶋委員が御指摘の点も含めまして、十分周知もしたいと思っておりますし、また関係機関ともよく連携していろいろな対応を考えていきたいと思っております。

    〔土屋(正)委員長代理退席、委員長着席〕

田嶋委員 次に、病気の方の御質問をさせていただきます。

 先ほどの御質問で、大臣、繰り返し、病名だけで判断はしない、症状に着目するんだというお話がございました。これは通告はございませんけれども、関連ということで、今回、認知症に関してはどういうふうな扱いになっているかということをお伺いします。

稲田政府参考人 条文上は、認知症を明示的に除外するというふうにはなっておりません。

 問題は、今後、この法律を成立させていただいた後に規定する政令の中でどのように規定するかという問題であろうかというふうに考えておりますが、法制審議会での御議論の中では、認知症につきましては、認知症の症状によっては、罹患した方については、違法性であるとか責任能力とかいう点において、刑事責任を問い得ない場合がほとんどであろうということで、そういう面で既に除外されるのではないかというふうな議論がなされてきたところでございます。

田嶋委員 病名じゃないんだ、病名ではなくて症状なんだという限りは、絶対そういう症状が認知症では起き得ないということは多分言えないわけでしょうから、症状に着目する限りは、あらゆる病気がそういう意味では病名にかかわらず平等に扱われる、そういう点は確認させていただいてよろしいですか、大臣。

谷垣国務大臣 政令で具体的に病名も書くことは書くんです。だけれども、今局長が答弁いたしましたのは、これはどうなるか、まだ結論は決めているわけではありませんが、法制審議会では、認知症はその対応から外した方がいいんじゃないかという御議論が行われてきたということでございまして、しかし、その上でやはり一番大事なのは症状であるということでございます。

田嶋委員 病名だけでは判断しないというのであれば、特定の病名だけ外すという議論も何かちょっと変な感じがしますね。症状に着目をしているんだという点をやはりしっかりと守っていただきたいというふうに思います。

 それからもう一つですが、病気がありながら正当に免許を取得される方は大勢おいでなわけでございますが、では、正当に免許を取得した方でも危険運転が適用され得るんでしょうか。

谷垣国務大臣 それは先ほどもちょっと申し上げましたが、例えば症状を抑えるために、薬を飲むことによって抑えられる病気というのは幾つもあると思います。しかし、そういう人が、自分は飲まなければ何か危険な症状が起こるけれども、あえて飲まずにそのことを知って運転をすれば、適用される可能性というものはございます。

田嶋委員 そのあえてというところが大事ですね。あくまで、故意をしっかりと認識しているかどうかという点が大事だということだと思います。

 それからもう一点、加重に関してお伺いをいたしますが、無免許は今回六条で加重でございますけれども、無免許と同じように、不正な免許の取得あるいは更新というのもあろうかと思いますが、この加重の方は、無免許運転のみが構成要件となっておりまして、不正な免許の取得というものはなっていないようでございます。

 まず最初に、道路交通法上はそれぞれどういう罰則規定になっているのかという確認をさせてください。

倉田政府参考人 お答えいたします。

 不正に免許を取得した者につきましては無免許運転と同様の罰則でございまして、現行では、現行と申しましょうか、先般道路交通法の改正がされましたけれども、それ以前は一年以下の懲役でございましたが、改正により、三年以下の懲役ということになってございます。

田嶋委員 おっしゃっていただきました改正がされて、しかし、いずれにしても、無免許と不正な免許の取得は同じ刑罰だということでございます。

 そこで、今回の本法第六条の加重というのは無免許運転のみを構成要件としている、その理由を大臣からお聞かせいただきたいと思います。

稲田政府参考人 ただいま御指摘の、運転免許を不正に取得した場合と無免許運転の場合とを同列に扱うべきではないかという点につきましては、確かに、法制審議会でこの法案についての御議論をいただいた際にも議論をいたしたところでございます。

 ただ、不正取得の事例というのはほとんど、要するにインチキで受験をしたような事例でございまして、同等に扱うのが適当かというような議論もございまして、今回は無免許運転と同様には扱わないというふうな整理をしたところでございます。

田嶋委員 私、先ほどから出ている故意ということを考えますと、不正に免許を取得する方がその時点での行動に相当故意があるような、無免許運転以上に悪質な場合はたくさん考え得るんじゃないかなというふうにも思うわけでございますが、そこは、大臣、いいんですか。加重の対象にはしない、危険運転というよりも、現在こういう法改正の提案でございますが、無免許運転だけでいいんですか。

谷垣国務大臣 いろいろな事例を考えますといろいろな可能性がありますので、私も今、いろいろな事例を全て快刀乱麻を断つごとくお答えする自信はありませんが、今局長が答弁をしましたように、今回はやはりそこまで含めることにちょっと無理、まだすぐにはそこまで行けないかということだったんだろうと思います。

 ですから、今後どうしていくかということは、無免許の場合でも議論がありますので、その辺は十分にまた検討する必要があると思っております。

田嶋委員 次に、過労についてお伺いします。

 道路交通法の六十六条では、過労というのは病気、薬物と比較をしてどのように扱われているかを御答弁ください。

倉田政府参考人 お答えいたします。

 道路交通法第六十六条によりまして、病気等と同様に、過労につきましても、過労運転について禁止をしているところでございます。

田嶋委員 今回、二条でも三条第二項でも病気と薬物のみでございまして、過労に関しては構成要件から除外されておりますが、それはどういうお考えかという点も大臣にただしたいと思います。

谷垣国務大臣 過労運転は、場合によっては極めて危険性が高い、悪質性もあるという場合が十分あるだろうと私は思います。

 しかし、いろいろ今回の議論の過程で、医学界でも、では過労をどういうふうに定義していくか、なかなか過労の定義が難しいなということが一つございました。その中でも、類型的に危険性の高いものを捉えて構成要件としていく、どういうふうに明確に規定することができるかという御懸念が一つあったと聞いております。

 それからもう一つは、居眠り運転を引き起こす過労運転では、意識のある状態と無意識の状態、その状態を行き来しながら最終的には意識を失うというメカニズムであるということでございますが、そのうちどの段階で過労運転の故意を認めるのかの判断も難しい、こういう議論もされたようでございます。

 それから、もう一つありました議論が、過労運転は非常に厳しい労働条件の中で働いて起こることでございまして、それを運転手本人だけの責任とすることができるかという議論もありました。

 いろいろな議論の評価は、私はその議論が全部正しいのかどうかわかりませんが、そういう御議論があったことは事実でございまして、そういう中で、過労を今回の中で類型化していくのは難しいなという判断、現時点ではそういうことではないかと私は考えております。

田嶋委員 先ほどの病気、病名、症状という話とちょっと比較して考えますと、やはり現象面というか、どういう症状なんだということが大事なんだということから考えると、今おっしゃったように過労をどう定義するかが難しいということではなくて、過労はこういう現象、症状、見た目にこういう状況だという形で捉えていけば、これは病気であろうが過労であろうが、今大臣がおっしゃった着目すべき症状なんだという点では同じことができ得るのではないか、そんなに困難なことではないんじゃないかという感じも私はいたしますが、改めて、いかがですか。

谷垣国務大臣 確かに危険性というのはあるんだと先ほど申し上げました。ただ、やはり刑罰でございますから、構成要件をどれだけ明確に規定していくか。先ほど申し上げたような、例えば何を故意とするかというような点でも非常に難しい点がございますので、今回の法案ではそこまではしなかったということでございます。

田嶋委員 曖昧さが残るという意味では、今の三条二項の「病気として政令で」というところもいろいろな議論、いろいろな指摘があるわけでございますが、先ほどの道路交通法の今の書きぶりというか決め方とはずれている。過労だけ外すというのは逆に非常に不思議な感じがいたします。そのことを申し上げておきたいと思います。

 それから、残りの時間、わずかでございますけれども、昨日、谷垣会長の自転車議連に私も参加をさせていただきましたが、今回は自動車だけに着目をしておりますね。自動車に比べればそれは自転車はという議論はそのとおりだと思いますが、お配りした資料の二枚目をごらんください。

 自転車は、事故は被害者の事故件数の方が圧倒的なんですけれども、死亡事故は二倍も違わないんですね。つまり、第二当事者というのは被害者という意味です、第一当事者というのは加害者という意味ですから、自転車が加害者になっている死亡事故は、被害者のケースと比べて、同じとは言いませんけれども、かなりあるということですね。

 これは、車と全然違う点は、唯一ではないかもしれませんが、歩道をぶっ飛ばすということですよね。自動車は歩道は走れないわけですけれども、自転車は本来、原則的には走っちゃいけないんだけれども、それは現実には起きていないわけでありますので。

 大臣には、この法律の範囲外ではございますが、今回、この危険運転致死傷というのは適用されないということなんでしょうけれども、今後、自転車に関してはどう考えておられますか。

谷垣国務大臣 きのうは自転車議連へ御参加いただきまして、ありがとうございました。

 本法は、当然、その対象としているのは自動車と原付自転車、原付二輪だけでございます。

 それで、今一番御指摘になりましたのは、歩道を暴走するというのは非常に、極めて危険な行為でございます。これは警察庁の方から御答弁いただく方がいいと思いますが、今までは歩道通行可というのが至るところにございまして、自転車に乗る者は当然歩道を走っていいものだとみんなが意識していると思います。しかし、車両でございますから、やはり車道を走るというのが原点である、そこをきちっと整備していく必要があると思います。

 そうしますと、実は車道は余り、危険で走りにくいところもある、そこをどうしていくかという問題もございます。

 その上で、今のような暴走等のルールをどうしていくか。これは十分検討しなければならないと思っておりますし、ルールをつくると同時に、ルールというか法令で規定すると同時に、最近、非常に自転車もふえてまいりましたけれども、マナーの悪い人が極めて多いというのを憂慮しておりまして、私はそういう教育も必要だと思います。

田嶋委員 車と比較をすればというふうには思いますけれども、例えば、下りの坂道を暴走してくるような自転車は十分動く凶器で、死亡事故が起き得ると思います。そういう意味では、危険運転の話には自転車は対象外だというふうに今後も言い続けられるのか、私は疑問だというふうに思っております。

 最後の一点ですけれども、高齢者に関する御質問をさせていただきたいと思います。

 資料の三ページ以降をごらんくださいませ。

 今回、いろいろ厳罰化の流れ、しかし、恐らく数的に今後心配しなきゃいけないのは高齢者の事故だということは、さまざまなデータを見れば明らかなわけでございまして、高齢者の運転免許証の自発的な返還みたいなこともいろいろと行われておるわけでございますけれども、今のところは免許証の自主返納ということでございます。

 現在の免許証の更新の仕組みは、六十九歳までにゴールド免許の方が更新をすれば、七十四歳までは免許の更新ができるというわけでございます。

 私は、免許には有効期限を設けて、幾つになったら全部没収なんというのはやはり難しいと。ただし、現実問題として、自分の運動能力を過信しているケースが世の中普通だと考えれば、やはりもう少しその辺は小刻みな免許の更新。それから、予算をつけた、例えば、田舎の方はともかく、過密な都市部に関しては免許を自発的に戻すことを促進させるような予算の獲得、そういうことも今後考えていかなきゃいけないんじゃないか。

 たまたまきょう見た本にも、一番危ないのは、検挙、違反経験はあるけれども事故経験がない運転者、こういう運転者がやはり一番自分に自信を持ち過ぎてしまうということがあるようでございます。これは、先ほども出ました交通事故総合分析センターの方のお話でございます。逆に、最も安全な運転をしているのは、事故は経験しているけれども違反で検挙されたことはない、そういう方はむしろ安全運転を心がけるだろうということです。

 最後に大臣にお伺いいたしますが、高齢者ということで一律にというところはいろいろ議論もあるかもしれませんが、現実問題として、これから高齢者が加害者になる、被害者になる事故はふえる一方だと思います。そういうことから考えたときに、免許証の更新に関して、少しルールをきつ目にするというか、狭目にするというか、そういうことを考えた方がいいのではないか。これは大臣ではないですね、ごめんなさい。これは最後に警察庁からその辺のお考えを伺いたいと思います。

倉田政府参考人 お答えいたします。

 高齢運転者に関する取り組みといたしましては、これまで、七十歳以上の者を対象に、加齢に伴って生ずる身体機能の低下が自動車等の運転に影響を及ぼす可能性があることを理解してもらうための高齢者講習の導入、あるいは、七十五歳以上の者について認知機能に関する講習予備検査の導入、また、運転免許取得希望者や運転免許保有者がみずからの運転に関する適性の有無を相談する運転適性相談の実施、申請による運転免許の取り消し、これはいわゆる自主返納でございますが、この制度の周知、また、身体機能の低下等により自動車等の運転に不安を覚える高齢者が運転免許証を返納しやすい環境の整備、また、運転経歴証明書の交付制度の導入及び同証明書の身分証明書としての機能の強化等の施策を講じてきたところでございます。

 御指摘の免許証の更新の問題につきましても、高齢運転者には身体機能の低下等に個人差もございますし、高齢運転者の負担も考えなければならないかと思いますが、十分な検討が必要であろうかなというふうに考えております。

 また、自主返納の環境整備につきましては、公共交通機関の整備あるいは高齢者の生活実態等も踏まえながら、幅広い観点からの検討が必要でございますので、関係省庁とも連携しながら研究してまいりたいというふうに考えます。

田嶋委員 御提案は、七十歳過ぎたら毎年更新、転ばぬ先のつえということで、よろしくお願いします。ありがとうございました。

石田委員長 次に、西野弘一君。

西野委員 日本維新の会の西野弘一でございます。

 きょうは、危険運転致死傷罪の点、また、その他いろいろと御質問させていただきたいなというふうに思っております。

 そもそも、この危険運転致死傷罪は、平成十三年の痛ましい飲酒事件の被害者の皆さんの署名運動から、世論の高まりを受けてこの法律が施行されて、警察庁によりますと、以後、飲酒運転による事件は減少しているというふうに言われておりますけれども、こういう痛ましい事件を受けて法改正で厳罰化されて、それによって世論の高まりがあって、皆さんが飲酒運転をしたらいかぬというようなことになって、結果的にこの事件が減少してきているのではないかなというふうに思っております。

 私は、あえて、事故ではなく事件と申し上げたいなというふうに思っております。飲酒運転によって人をあやめたり傷つけたりというのは、これはもう事故ではなくて、事件ですよ。ですから、そういう認識できょうは質問をさせていただきたいなと思っております。

 車は、一方で市民生活に大変な利便をもたらしてくれるんですけれども、そういう一部の不届きな者が運転することによって凶器と化すわけであります。

 先般、残念なことがありまして、衆議院の議員会館の地下駐車場に車をとめようとしておりましたら、車のナンバープレートを前の方に倒したような車が議員会館の駐車場の中にありました。これはもう明らかに、恐らく、高速道路の速度の取り締まりを免れるため、オービスの取り締まりを免れるための工作をしているんじゃないかなというふうに思います。

 国民の皆さんに向けて、こういう危険な運転をしてはいけないということの先頭に立たなければいけない我々のこの政治の中に、どなたが乗られている車かわかりませんけれども、そういう車が議員会館の地下にあるということは大変残念だなというふうに思っております。また、そういう状況の中で、本当に残念だなというふうに思っております。

 さて、質問に移らせていただきます。

 危険運転致死傷罪の規定の整備において、三条の部分で、もう先ほどからたび重なって議論もあるところでございますが、運転に支障を及ぼすおそれのある病気、正常な運転に支障が生じるおそれのある状態で自動車を運転し、よって正常な運転が困難な状態に陥り、人を死傷させた者というところの規定の部分で、病気、病名ではなくて、その症状がどうかということに立って判断するということでございますが、この症状の判断というのは、本当に正確に、正常な運転ができるのかどうかということの症状の判断というのは、きちんと線引きをしてできるんでしょうか。

稲田政府参考人 お尋ねは、今後の政令でどのように症状という部分を規定していくかということであろうかと思います。

 ただ、これにつきましては、先ほどから御答弁申し上げておりますように、病気の症状というものにきちんと着目をした内容にするのみならず、医学に関する専門家の方でありますとか、そういう方の御意見を頂戴した上で、これは罰則の構成要件でございますので、きちんと明確に規定するようにしていきたいというふうに考えております。

西野委員 ちょっと話はずれるかもわかりませんけれども、マイナンバー法案も成立しましたので、このマイナンバーはさらにいろいろな活用がこれから議論されると思います。そういう中に、既往歴であったりとか、どういうお薬を使っているのかということも、将来ですけれども、そういうのも入れていけばいいと思うんです。そうすると、免許更新のときにもそういうものを活用して、自動的に、そういった情報をいろいろな関係機関で共有していけばいいのではないかなというふうにも思っております。

 また、先ほどからもいろいろな質疑がありますけれども、この法改正によりまして、いろいろな新しい差別を生み出すのではないかなんということの懸念の質疑もありましたけれども、私もそこは懸念しているところなんです。

 まず、もちろん、その症状によって正常な運転ができない方には運転をしてもらったらいかぬということは共通の認識だというふうに思いますが、一方で、その症状によって免許を取れない人が、社会においていろいろな生活をしていく上で支障があってはならないのではないかなというふうにも思っております。

 今、運転免許証を取られてほとんど運転せずに、免許証は何のために取ったんですかと聞くと、唯一の身分証明書になるので取りましたというような方も恐らくたくさんいらっしゃいますので、むしろ、マイナンバーもできましたので、これを運転免許証のかわりに新たな身分証明書として活用していけばいいのではないかなと個人的には思っております。

 含めて、病気の症状によって運転免許証を取れない方が、そのことによって、例えば雇用であったりとか社会生活において不利益をこうむらないような社会をつくっていく必要があるというふうに思いますが、そのあたりの御検討はされているんでしょうか。

倉田政府参考人 お答えいたします。

 一定の病気等の症状が生ずることを理由として免許が取り消される等の方につきましては、社会生活等について支障が生じないようにするためのいろいろな措置というもの、例えば公共交通機関の利用の促進等々の措置、これを政府全体としてもいろいろと考えてやっていくということは大変重要な課題であるというふうに考えておりまして、警察庁といたしましても、関係省庁と連携をしながら、そうした施策の推進につきまして努力をしてまいりたいというふうに考えております。

西野委員 病気の症状によって免許を取ることができない方が社会生活に支障を来すようなことがないように、今御答弁いただきましたけれども、しっかりいろいろな関係と連携しながらそういう社会をつくっていただきたいなということをお願いしておきたいなというふうに思っております。

 続いて、これも先ほどから質疑のあるところでございますが、亀岡の事件はなぜ危険運転致死傷罪で立件できなかったのか、私はいまだに腑に落ちないと思っています。

 この被告は無免許運転の常習者でありましたし、また、そのことによって、無免許で何遍も運転しているから運転できるようになった、だから技能があったという御判断だというふうに思います。また、先ほどからの御答弁であれば、直接、無免許とこのことが因果関係がないというような御答弁もあったと思います。

 もう一度伺いますが、なぜ無免許運転が亀岡の事件のケースで危険運転致死傷罪の規定に入らなかったのか、御答弁いただけますか。

谷垣国務大臣 先ほど来御答弁してきたことの繰り返しになるかもしれません。

 亀岡でこの件で処理をしなかったのかというのは、これは、具体的な捜査当局等々のことになりますから、私からお答えは差し控えさせていただきたいと思いますが、今回の立法との関係で申し上げますと、大きく言って二つ問題点がございました。

 一つは、もともと、この危険運転致死傷罪というのが、委員も先ほどできたときの経緯をおっしゃいましたけれども、それまでは業務上過失、つまり過失犯として処罰をされていた。しかし、単なる過失犯ではないんじゃないか、もっと重い刑責を問わなきゃいけないんじゃないかと。

 そこで、傷害致死というのに着目をしまして、傷害というのは、あくまで致死の結果までは認識しなくてもいいけれども、少なくとも相手方を殴るとか蹴るとかいうことによって傷害致死を負わすわけですから、その傷害、暴行については故意を持ってなきゃいかぬということですね。それで、ちょうど法定刑もそれと同じものとして危険運転致死傷罪をつくったわけでございます。したがって、その危険運転という中には、少なくとも暴行と言えるようなものでなければいかぬということで、この条文をつくった経緯がございます。

 また、国会の議論の中でも、危険運転行為の一つであるし、進行を制御する技能を有しないということがございますが、これは当時の国会審議で、単に無免許であるというだけではなくて、ハンドル、ブレーキ等の運転操作をする初歩的な技能を有しないような、運転の技能が極めて未熟なことをいうと。これは当時の当局の説明でございますが、それを前提に御審議をいただいて、成立をしたということがございます。

 つまり、そうすると、無免許運転というのは、確かに潜在的には危険な行為でございますが、今のような中で、故意に暴行を加えるというのと同じような類型と言えるのかどうかというのが一つの問題点でございました。

 それから、もう一つの問題点は、先ほど委員もお触れになりましたことでございますが、無免許とその悲惨な結果との間に原因結果という関係が認められるかどうか。恐らく、捜査をしていくということになりますと、無免許と結果との間の、例えば亀岡の件でも、無免許と結果との間の因果関係は、ある場合にはやはり認めにくいのではなかろうかなという感じがいたします。むしろ、夜通し運転をして遊び回ったあげくに、疲労こんぱいして眠ってしまう、そこのところにその原因行為は認めることができると思いますが、因果関係がなかなか定型的には認めにくいのではないかということがあったと思います。

 この二つの理由によりまして、今回、危険運転致死傷罪には加えていないわけでございます。

 ただ、本当にそれでいいのかという御意見がございまして、今回は無免許を加重する新たな条文もつくりまして、今回はそれでまずやってみようということでございます。今後、そこにまたどういう問題点があるか等々については、いろいろと検討していかなければならない、こういうふうに考えております。

西野委員 なかなか不明瞭な基準を、不明瞭な中でも少し明瞭に近いところにはなってきたのかなというふうに思います。また、無免許による加重を新設されたというところで、厳罰化されたという方向性には私も賛同したいなというふうにも思っております。

 この点について、きょうも傍聴にお越しいただいているということでありますが、交通事故、交通事件の被害者の団体の方からはどのような意見があって、またどのような回答をなされてきたのか、御答弁いただけますか。

稲田政府参考人 この法案の立案に当たりましては、法制審議会において御議論をいただいたわけでありますが、その際に、部会で、二日間にわたりまして十三の交通事故被害者団体の方から、ヒアリングという形で直接御意見、御要望を伺ってきました。

 その御意見、御希望は多岐にわたるものではございましたが、特に刑事実体法による罰則の整備という点から申しますと、例えば、無免許運転であった場合を危険運転致死傷罪の対象とすることなどの危険運転致死傷罪の適用対象の拡大を求めるものでありますとか、ひき逃げをした場合の厳罰化を求めるものなどもございました。

 法制審議会では、これらのヒアリングの結果、考え得る対応、方策案を審議した上で、今回の要綱案をまとめていったというような過程になっているところでございます。

西野委員 被害者の皆さんからすると、やはり納得がいかないところもたくさんあるというふうに思っておりますので、引き続きいろいろな御意見を伺っていただいて、そういった意見が反映できるように御検討いただきたいなというふうに思っております。

 例えば、東京の一番人の多いところ、渋谷のハチ公の前で日本刀を振り回した、その結果、たまたまどなたかを傷つけて、その方が命を落とした、これとこの亀岡の事件というのは同じだと僕は思うんですけれども、その点について、御認識はいかがですか。

稲田政府参考人 ちょっとどのような形でお答えすればいいのか、にわかにあれでございますけれども、確かに、御指摘のような、群衆がたくさんいる中で特に凶器となります刃物のようなものを振り回すという行為は非常に危険でございます。

 他方で、自動車の運転というのは、そのこと自体、潜在的に危険なものでありますし、その中で、亀岡の事件のように、特に前の晩から寝ないで運転をしているというような行為が非常に危険であるということも、それは同じように考えられるところもあるのかもしれませんけれども、その一方で、やはり交通事故の場合、それまでの運転の経路の中でどういうことが起こり、そして最終的に事故に至ったのかというその全体の流れの中で事故の発生ということがあるわけでございまして、そういう観点と一般的に今おっしゃられたような場合とが一概に同じになるのかというのは、ちょっと私、何とも申し上げにくいところがあるところでございます。

西野委員 みんな、渋谷のハチ公の前では日本刀を振り回さないんですよ。それは、そんなことをしたらどうなるか、簡単にわかるからなんですよね。その感覚を、無免許で車を運転することもそれと同じだという認識を、国民の皆さん全員がそういう認識に立てばこういうことは起こらないわけだと思うんです。だからそこが必要であって、飲酒運転による事件も減ってきているということでありますけれども、それはいろいろな痛ましいことがあって、そういう認識を皆さんが深めたからだと思うんです。

 だから、無免許も同じぐらいに危険なことなんだという認識を皆さんに深めていただくということはとても大事なことである。ですから、この法律のたてつけを考えていくときにも、そういう観点に立って、厳罰化すればいいんだということではなくて、その先に、もう二度とこういったことを繰り返さないようにすることが大事なんだという観点でやっていかなければいけないと思っております。

 ですから、先ほども、無免許にも種類があるという御議論もありました。確かにそうだと思いますよ。一度免許を取って、知らない間に免許が失効していて、これも無免許でありますし、わざと免許を取らずにずっと乗っていて、自分は安全に運転できる技能を持っていると思い込んでいることも無免許の状態でしょうし、もしくは、免許を一度取って、何かの違反行為を繰り返して取り消しになって免許が失効している、これも無免許という状況ではあると思うんですけれども、少なくとも、免許を取り消しになったとか、わざと免許を取っていない、一度も取ったことがない、これで運転をしたということは、日本刀をハチ公の前で振り回すのと同じだというようなことの観点に立つべきだというふうに私は思っておるんですが、もう一度その点について御答弁いただけますでしょうか。

稲田政府参考人 無免許運転というものが自動車運転のための最も基本的な義務に違反したものであって、そういう意味では著しく規範意識を欠いた反道徳的といいますか反規範的な行為であるということはそのとおりでありますし、また、運転免許制度が予定する必要な適性、技能及び知識を欠いているという意味で、抽象的、潜在的ではあるけれども危険な行為、これは、先ほど私が答弁で申し上げました無免許運転が危険というのはまさにそういう意味での危険を申し上げたことではありますけれども、そういうものであるというのはまさにそのとおりだろうと思います。

 そういう意味で、無免許運転で人の死傷を生じさせた事案については、無免許運転の反規範性であるとか危険性が顕在化、現実化したものというふうに評価できるということで、今回、無免許運転での併合罪よりも重い処罰を可能とするようにしたわけでございます。

 したがいまして、今回の改正によりまして、無免許運転一般について、事故を起こした場合については処罰の範囲を広げることが可能になり、それによって、それぞれの事案に応じて適切に対応することができるのではないかというふうに考えているところでございます。

西野委員 一歩前進なのかわからないんですけれども、僕は、免許がないということは、すなわち技能がない、だから危険運転致死傷罪を適用できるんだというようなことに変えていくことができなかったのかなと、何度聞いてもこの辺は腑に落ちないところがあるんですけれども、次の質問に移らせていただきます。

 無免許運転をさせないために、いろいろな方法があると思うんです。例えば、車を買えない、車を借りられない、これは、物理的に無免許の者は車も買えないし車も借りられないということにすれば運転できないと思うんです。

 例えば、個人の間でちょっと車を貸してえなということになったときに、免許を持っているのかなということを一々なかなか確認できないですよね、人間関係とかもあるでしょうし。例えば、従業員の方が二、三人とかいうようなちっちゃな会社であれば、もしかしたら免許が失効しているかもわからないんですけれども、運転するたびに免許を持っているのかということを確認するのもなかなか、人間関係でしづらいところもあるんじゃないかなと思っておりますので、あえてそこは、個人の関係であっても業務上の関係であっても、車を人に貸すときには、必ずその方が免許を持っているのかどうかを確認する義務を貸す方にも課せばいいんじゃないかなというふうに思うんですが、その点についてはいかがでしょうか。

倉田政府参考人 お答えいたします。

 今国会において成立をいたしました改正道路交通法では、無免許運転の根絶を図るため、無免許運転者に対する罰則が、一年以下の懲役または三十万円以下の罰金から、三年以下の懲役または五十万円以下の罰金に引き上げられたところでございます。

 また、同法では、無免許で自動車等を運転するおそれがある者に自動車等を提供する行為、これを禁止する規定も新たに設けまして、その罰則としましては、三年以下の懲役または五十万円以下の罰金が科されることとされたところでございます。

 さらに、同法では、自動車の使用者が当該自動車を無免許の者に運転させる行為に対する罰則につきましても、一年以下の懲役または三十万円以下の罰金から、三年以下の懲役または五十万円以下の罰金に引き上げたところでございます。

 自動車等を提供する者がこれらの規定に違反しないためには、御指摘のような確認を行うことも効果的と考えられますことから、警察におきましては、交通安全教育等を通じ、同法の内容の周知徹底にあわせて、広報啓発に努めてまいりたいと考えております。

 ただ、これを義務とすることにつきましては、同法に係る広報啓発等の取り組み後における無免許運転の実態も踏まえ、国民に対して過大な負担とならないかどうか、十分な御議論が必要ではないかというふうに考えております。

西野委員 国民に過大な負担にはならないです。そんな、車を貸すときに、免許を持っているのか、これは確認しないと貸す方にも義務があるんだと言われたときには、それぐらいの確認をすることは全然過大な負担にならないと思いますので、ぜひその点については検討いただきたいなというふうに思っております。

 また、これは飲酒運転のときにもいろいろな議論があったと思いますけれども、飲酒運転のときには、酒気を帯びていればエンジンがかからないような、何かそういったものを導入してはどうだということもありましたけれども、同じように、今、運転免許証にはチップが入っていますし、例えばエンジンをかけるときに免許証を差し込まないとキーを回せないとか、何かそういったことも導入すればどうなのかなと思いますけれども、そういう検討というのはなされてきたんでしょうか。

倉田政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のような仕組みを自動車に導入することも、無免許運転を防止する対策の一つとして考えられるところでございます。

 その導入に当たりましては、当該自動車の運転者と免許証の所持者が同一であることを認証する装置を新たに開発し、装備することが必要でございます。

 したがいまして、現時点では、御指摘の点につきましては、運転者と自動車が認識している運転免許証の所持者との同一性をどのように確認するかという本人確認に係る技術面の課題、また、本人確認のための装置の装着、維持管理に要する費用を誰が負担するのかというコスト面の課題等があるものと認識をしておりまして、今後、新たな技術の導入のあり方等につきまして、自動車メーカー等を初め関係機関、団体等と連携し、研究してまいりたいというふうに考えております。

西野委員 ぜひいろいろな方法を検討いただきたいなというふうに思っております。

 先ほど、痴呆症の方の議論もあったり、また免許の更新の高齢者の問題の議論もありましたけれども、私、そもそも、一度免許を取ったら後の更新はほとんど簡単な講習を受けるだけとか、そういったことでできるというのが問題なんじゃないかなと思います。免許を取って何年かたって、本当に免許を取得したときと同じだけの運転の技能があるのかどうかということをやはり一回一回チェックするべきだと僕は思うんです。

 免許取得時と同じぐらいの難しい試験をやるとまでは言いませんけれども、それと近いような、せめて技能のテストはするべきだというふうに思いますが、そういう検討とか議論はあるんでしょうか。

倉田政府参考人 お答えいたします。

 運転免許の取得時には、必要な運転技術、知識について、実技や学科試験において確認しているところでございますが、委員の御指摘の点につきましては、ペーパードライバー等で運転技能が不十分な者や交通法規の改正の理解に乏しい者等について、運転免許証を安易に交付しているのではないかとの御懸念ではないかと考えます。

 運転免許更新の際には、適性検査のほか、更新時講習の受講が義務づけられているところでございます。講習におきましては、違反状況や免許取得期間に応じて受講者を区分いたしまして、優良運転者に対しては三十分間、一般運転者に対しては一時間、違反運転者に対しては二時間、初心運転者に対しては二時間の講習を実施いたしまして、最近における道路交通法令の改正点や自動車等の安全な運転に必要な知識等についての講義を実施しているところでございます。

 委員御指摘の免許更新時における実技試験等の導入につきましては、更新申請者への新たな時間的、費用的負担というものもあろうかと思いますので、十分な検討、慎重な検討が必要ではないかというふうに考えているところでございます。

西野委員 最後に一言申し上げて終わりますけれども、やはり、委員の先生方の御認識も同じだと思うんですけれども、交通事故、またいろいろな飲酒による事件であったりとか無免許の事件というのは、これを防ごうと思うと、それぞれ国民の皆さん一人一人が、いかにこういったことが危険なんだ、結果として人の命を奪ったり人を傷つけたりするんだということを認識することだと思うんです。厳罰化するということも、どうしてこれだけ重たい罪になるんだということを通じて、いかに危険なことであるか、いかにやってはいけないことであるかということを認識いただくための一つの手段だというふうに思っております。

 今回、一歩前進ではありますけれども、先ほどからもずっと議論もありましたし、私も質疑をさせていただきましたけれども、いろいろな点を踏まえて、より国民の皆さんに、無免許運転、飲酒運転、こういったものがいかに危険なのか、過労運転も危険だということを認識いただけるように、これからもいろいろと政策を講じていただきますようにお願いしまして、質問を終わらせていただきます。

石田委員長 次に、椎名毅君。

椎名委員 おはようございます。みんなの党の椎名毅でございます。

 本日、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律案の質疑ということで、三十分お時間を頂戴しました。ありがとうございます。毎度毎度でございますけれども、いろいろ伺ってまいりたいと思います。

 質疑順が最後ということで、いろいろ前の委員の皆様方と重なっている部分も幾つかございますので、適宜、準備、通告させていただいたものを、恐縮ですけれども、飛ばすときは飛ばすと申し上げますので、飛ばさせていただいて、質疑させていただきたいと思います。

 まず第一に、新しい法律案によりまして、交通事故の重罰化というところについては一定程度は目的が達成できるんだろうというふうに思います。

 そんな中で、私の中でやはり懸念事項としてある部分というのは、先ほど田嶋先生からも御指摘がありましたけれども、高齢者の事故というところがあるかというふうに思っております。

 交通事故において高齢者が運転者となって事故を起こす例というのは非常に多くなってきております。しかも、高齢者につきましては、なかなかこういう危険運転等の類型には該当しないような、非常にわかりやすい、アクセルとブレーキを踏み間違えるとか一時不停止だとか、そういった、よくあるような交通事故の要因によって事故を起こしている例が多い。その背景にあるのは、やはり身体能力の低下だったり注意力の低下だったりというところにあるというふうに言われております。

 まず、ちょっと議論の前提に、警察庁の参考人に伺いたいんです。

 まず前提としてですけれども、事実の確認ですが、交通事故による死亡者に占める高齢者の比率、それから、交通死亡事故の中で高齢者が運転者となる、第一当事者となる事案、これが全体の中でどういった割合で存在しているかというのを教えていただければというふうに思います。

倉田政府参考人 お答えいたします。

 交通事故による死亡者に占める六十五歳以上の高齢者の割合は、平成十四年には三七・七%であったところでございますが、平成二十四年には五一・三%となりまして、この十年で一三・六ポイント増加をしているところでございます。

 また、交通死亡事故の中で六十五歳以上の高齢者が運転者であり、第一当事者となる事案の全体に対する割合につきましては、平成十四年に一四・七%だったところ、平成二十四年には二二・九%となり、この十年で八・二%増加をしているところでございます。

 他方、第一当事者の場合でございますが、六十五歳以上の高齢運転者の免許保有者十万人当たりの死亡事故件数は、平成十四年の十三・〇九件に対し、平成二十四年は六・三一件と半減しているところでございます。

椎名委員 ありがとうございます。

 高齢者につきましては、被害者となる件数も非常に多いということで、死亡者の数が物すごく多い、全体の中での半分を超えているということでございますし、高齢者が運転者になる、第一当事者になる、要するに加害者になる、そういった死亡事故というのは二〇%を超えているということで、結構多いということなんだというふうに思います。

 こういった中で、高齢者の第一当事者となるような事案を防止していくということ、これが死亡事故を減少させるに当たってもつながってくる部分があるのではないかというふうに考えております。

 先ほど田嶋先生の質問に対する御答弁でも警察庁の参考人の方からいただきましたけれども、運転免許の更新に講習等を課すということで現在対応されている部分があるかというふうに思っております。

 これが実際どの程度効果が上がっているのかというところについて、検証等の結果がもしあればいただきたいのと、高齢者が加害者になる事故というのを減らしていくための抜本的な対策というのをもし考えていらっしゃればというところを伺えればというふうに思います。

倉田政府参考人 お答えいたします。

 七十歳以上の者が運転免許の更新をする場合に受講を義務づけている高齢者講習、これは、安全運転の継続を支援するために、身体機能の低下が自動車等の運転に及ぼす影響を踏まえた安全運転について指導しているところでございます。

 高齢者講習導入、これは平成十年十月でございますが、この直後、同年十二月に受講した者の受講後一年間の事故率は、同年齢層の事故率よりも約二割低いものとなっていたところでございます。

 また、認知機能検査や運転適性相談等を端緒に、認知症を理由として運転免許の取り消し等の行政処分を受けた六十五歳以上の者は、平成二十四年は四百七十一名となっているところでございます。

 このほか、平成二十四年における六十五歳以上の者の運転免許の自主返納数は約十一万二千件となっているところでございまして、また、先ほども申し上げましたが、六十五歳以上の原付以上運転者の免許保有者十万人当たりの死亡事故件数は、平成十四年の十三・〇九件に対しまして平成二十四年は六・三一件と半減しておりますので、これらの取り組みは一定の効果が認められるのではないかというふうに認識をしているところでございます。

 今後も、高齢運転者による事故等の実態を踏まえながら、効果的な施策を検討してまいりたいというふうに考えております。

椎名委員 ありがとうございます。

 免許保有者十万人当たりの死亡事故の比率が下がっているということでしたけれども、他方で、運転免許保有者に占める高齢者の割合というのが、僕の手元にあるデータだと、平成二十三年で一六・二%、それに対して、交通死亡事故件数による、高齢運転者の事故というのが二一%ということなので、やはり、全体の運転免許保有者の中での高齢者の比率と比べると、高齢運転者の事故というのはまだまだ大きいのかなというふうに私自身は考えるところでございます。

 これは、質疑通告したときに、実はてっきり法務省、大臣にも通告したつもりだったんですけれども、通告のところには書いていなくて申しわけないんですが、大臣にもぜひ伺いたいんです。

 例えば高齢者、あくまでも例えばですけれども、身分犯のように、高齢者で交通事故を起こしたところについて加重をするというアイデアもあろうかというふうに思います。基本的にやはり、今回、道路交通法についても厳罰化が図られてくる。それで、前回についても、酒気帯びのところについて厳しくなったということが世の中に周知されると、一般の善良な規範意識の高い人たちは、お酒を飲んだら運転を差し控えるようになるわけでして、飲酒運転というのは件数としては徐々に減ってくるという効果がそれなりに見られているんだろうというふうに思います。

 そういう意味で、高齢者の方々で自主返納をしている方々もふえていると伺いましたが、とはいえ、やはりまだまだ自分は大丈夫だと過信している人たちもいるんじゃないかというふうに思うんです。そんな中で、例えば刑罰法規で少し加重をかけることによって萎縮効果というか、そういったものを与えることによって件数をさらに減らしていく発想というのはないかという点を伺えればというふうに思います。

谷垣国務大臣 なかなか御答弁が難しい御質問ですが、私は、今の高齢者による事故をどう減らしていこうかという問題意識は極めて共有いたしますが、高齢者だけをいわば身分犯的に刑を加重していくというのは、今の私の感覚からしますと極めて難しいのではないか。

 憲法十四条等をどうするかというような大だんびらを持ち出すまでもなく、高齢者でも十分運転能力のある方もいらっしゃるわけですし、それが事故を起こした場合の加重犯ということでしょうけれども、やはり高齢社会になるに当たって、どういうことをこういうルールとして考えていかなきゃならないのかというのは、多面的に議論をする必要がありますが、今の、身分犯的に刑を加重していくというのは、ちょっとまだ私の中では熟さないなという感じがいたします。

椎名委員 ありがとうございます。

 もちろん、例えばというのを強調したとおりでして、それを必ずしもやるべきであるとすごく強調しているわけではないんです。

 要は、先ほども少し申し上げましたが、酒気帯び運転のところで、例えば、その規則を厳しくすることによって、お酒を飲んだら運転する人が減ったと。無免許運転等についても、罰則を厳しくすることによって、交通事故が減ることの効果が期待できる、こういうことがあるのであれば、例えばそういう相関関係があるのであれば、やはり、今後、高齢者の方々に事故を起こしてほしくない、ただし、適正に運転している方は適正に運転をしてほしいというところで、今し方、警察庁の参考人の方がおっしゃっていただいたような御努力に加えて、刑罰法規という観点でも何か考えていってもいいんじゃないかなという、今後の課題として御提言申し上げる次第でございます。

 では、次の質問を伺います。

 三番目として通告していたところは、他の先生方が幾つか質問をされていたので、それは飛ばします。

 その次に、またちょっと事実関係の確認ということですけれども、平成十九年に自動車運転過失致死傷という犯罪類型ができ上がって、基本的に、交通事故は全てこの自動車運転過失致死傷というのと、それから、殊さら重大なものについて、平成十三年にできたこの危険運転致死傷罪というものが適用されるという運用におおむねなってきたのかなというふうに思います。

 昔は、先ほど大臣がおっしゃっていたとおり、業務上過失致死傷というところが適用されていたわけで、法定刑の上限が五年ということだったと思いますが、おおむね今の運用はそういう運用だというふうに思います。

 他方で、データを見てみると、必ずしも、この業務上過失致死傷というのが全く適用されなくなっているわけでも実はなくて、年に二千件ぐらいはあったり、ここ数年でも年に二千件ずつぐらいあったりするみたいです。

 これについて、どういった場合で適用されていて、今後これが減っていくのか、それとも維持されるのか。重罰化という観点からすると、この業務上過失致死傷というのが適用されているのはどうもちょっとしっくりこないなという観点から質問をさせていただきたいと思った次第です。

谷垣国務大臣 私も椎名委員の質問通告を拝見しまして、えっ、まだ自動車に関して業過が使われているのかというのが最初の反応でございまして、事務当局に教えてもらったんですが、二類型あるようです。

 一つは、平成十九年に自動車運転過失致死傷罪が創設される以前に発生した事件については、改正法ができた後でも、その改正前のいわゆる業務上過失によって処断される、こういうのが一つあります。だけれども、これはどんどん減っていくということだと思います。

 それから、もう一つは、自動車運転過失致死傷罪は、自動車の運転上必要な注意を怠った結果、人を死傷させた場合に適用されるので、例えば、自動車を路側帯にとめて、そして、運転者がおりようとして運転席のドアをあけたところに二輪車が突っ込んできたというような事案では、自動車による死傷事犯ではあるんだけれども、運転上の過失に基づかないということで、業務上過失が適用されるんだということのようでございます。

 したがいまして、こういう類型は今後も業務上過失で処理されるのではないかと思います。

椎名委員 済みません、ありがとうございました。何か勉強になってしまいました。どうもありがとうございます。

 大臣おっしゃったとおり、第一類型についてはなくなっていくんだろうと思いますけれども、確かに条文上、その「自動車の運転上必要な注意を怠り、」と書いてある以上、自動車の運転に関する過失以外に適用はされないので、おっしゃるとおりなんだなということだと思います。

 引き続き、次の質問を伺います。

 厳罰化、重罰化という流れの話の中で、今回、平成十九年のこの自動車運転過失致死傷という罪ができたときも、もともと業過で五年だったものが七年になり、基本的には法定刑上は重罰化の流れに進んできているんだというふうに思います。

 他方で、言い渡し刑の部分で、データを見てみると、おおむね、ボリュームゾーンという意味で言うと、懲役一年から大体二年ぐらいの間で執行猶予がつくというところがボリュームゾーンとしては多くて、言い渡し刑としてはそんなに余り変わっていなさそうな、要するに、自動車運転過失致死傷ができた平成十九年前後で余り変わっていないのかなというふうに思うんですけれども、実際問題、実際の言い渡しとして、重罰化という流れは起きているんでしょうか。

稲田政府参考人 裁判所の言い渡す刑のことでございますので、なかなか法務当局から評価を申し上げるのはいかがかと思うところもございますが、もともと自動車運転過失致死傷罪を創設した趣旨は、自動車の運転による過失致死傷事犯の中に飲酒運転中などの悪質かつ危険な行為によるものや多数の死傷者が出るなどの重大な結果を生じるものが少なからず発生している、そのような死傷事故に対する業務上過失致死傷罪による処罰について、量刑や法定刑が国民の規範意識に合致しないとして、罰則の強化を求める意見が見受けられるようになり、また、自動車運転による業務上過失致死傷事件の科刑状況を当時見たところ、法定刑や処断刑の上限近くで量刑される事案が増加していたということから、特に飲酒運転等の悪質かつ危険な自動車運転により重大な結果が生じた事案などにおいて、事案の実態に即した適正な科刑を実現することを可能とする必要があるというのが当時の立法の趣旨とされております。

 そういう意味で、従来、従来というのは平成十九年より前に、適正な量刑を行うことができていた事案についてまで一律に宣告刑の引き上げを意図したものではなかったのではないかと認識しております。

 それで、十九年に自動車運転過失致死傷罪が創設されて以降の量刑の状況を見ますと、従来の、十九年以前の業務上過失致死傷罪では科し得なかった五年を超える例えば七年であるとか六年という懲役または禁錮を言い渡された事案もございまして、その点におきましては、改正法の趣旨をも踏まえた運用がなされているものというふうには考えております。

椎名委員 どうもありがとうございます。

 引き続き伺ってまいりたいと思います。

 まさに、重罰化というところについては、重罰化というより、今の話ですと適正化というところで、本来重罰を科すべきものについて法定刑の上限でシーリングをはめられると申しましょうか、そういったことを避けたいということで、重罰化というよりかは適正化ということなのかなというふうに伺っておりました。

 それで、適正化という観点から、今回、危険運転致死傷罪にもう一つの類型として三条というのが新しくつけ加わってきたわけでございます。危険運転致死傷罪というのは、大体、できた平成十三年から、毎回毎回、使い勝手が悪いというふうに昔からずっと言われてきて、先ほど来大臣は傷害致死の事例をよく出されていますけれども、講学的には結果的加重犯というふうに言われる犯罪類型でございまして、故意犯プラス過失犯、そういう類型でございまして、特に故意の部分について物すごく難しい、立証も難しいし、事実認定もなかなか難しいというところで、使い勝手が物すごく悪いと言われてきたというところでございます。

 交通事故が大体七十万件前後ある中で、この危険運転致死傷罪というのは毎年大体二百件前後ぐらい適用されているということだと思います。重大事犯がどのくらいあるのかというところについては僕の中で全部把握しているわけじゃないので全くわからないんですけれども、やはり少し少ないんじゃないかなというふうに今までの運用では思っております。

 そういう意味では、やはり、今回の新しいこの三条が追加されるという意味では非常にすばらしいことなのではないかなというふうに基本的には思っているところです。

 そんな中、危険運転致死傷罪は、結果的加重犯というところで、どうしても罪刑法定主義と俗に言われる刑罰の明確性の原則という観点から構成要件を明確に定めていかなければならないし、構成要件の明確性と、それに対する故意の明確性ということをどうしても要求していかざるを得ないので、なかなか立法する側からしても難しいんだろうなというのははたで感じていたところではもちろんあるんです。

 他方で、今回、通行禁止道路を通行する行為というのを新しい類型に一つ入れました。しかし、これで本当に十分なのかというのは、ちょっと私自身も疑問を持っているところでございます。やはり危険な行為、危険運転行為を全部類型化するというのは物すごく難しいので、どうしてもこういう形で規制が後追いになってしまうということは否めないところではございます。

 例えば、今までいろいろな先生方が御指摘いただいていたように、無免許による運転行為というのもそうですけれども、あと、過労による運転行為といったところについて、こういったことも類型化して、危険運転致死傷罪というところに入れていくというのも検討すべきことではなかったのかなというのを、ちょっと改めて伺いたいと思います。

谷垣国務大臣 今回の法案は法制審議会からいただいた答申に沿って立案したものでございますけれども、どういうことがそれまでの過程で、法制審議会で、何かほかに対象として加えるべき類型があるのではないかという中で、今おっしゃった無免許運転あるいは過労運転、これにつきましては調査審議が行われたところでございます。

 結論としては、危険運転致死傷罪には今回は入れないという結論になったわけでございますが、その理由を、今までも随分、きょうも御答弁申し上げてきたところでございますが、無免許につきましては、先ほど申し上げたような傷害罪に必要な暴行に匹敵するようなものが類型的に無免許で認められるかという点と、人の死傷との関係で無免許に因果関係が認定できるかというのが主な点であったと思います。したがいまして、ここは無免許との加重要件を新しい条文で入れたということで処理をしたということでございます。

 それから、過労に関しては、これも先ほど御答弁したところでありますが、悪質性や危険性というのは確かにこれはあるものである。しかし、一つは、過労の定義の難しさというのが御指摘があったところ、それからもう一つは、故意の認定の難しさといいますか、居眠り運転をする場合には、意識のある状態とない状態を行き来しながら最終的に意識を失う、どこに故意を求めるかが難しい、こういう御議論があったところです。

 それに加えまして、要するに、厳しい労働環境の中でこうなっているときに、責任は運転手だけなのかというような議論もございました。こちらは必ずしも法制審議会としてたくさん意見があったわけではないと思いますが、そういう御意見も一部にはあったということでございます。

 そういう御議論で、今回は先ほど申し上げたような結論になっているということでございます。

椎名委員 ありがとうございます。

 無免許については、いろいろな先生方がいろいろ御議論をされてきたところなので、そこについては言及しませんけれども、過労についてちょっと私の考えを申し述べたいと思います。

 危険運転致死傷罪、今般、二条型と三条型という、要は二つの類型ができ上がっているわけですよね。二条型については、要するに危険な運転行為をした上で人を死傷させる場合ということなのかと思いますけれども、三条類型については、アルコール、薬物によりとか病気によってということが前提ですけれども、基本的には正常な運転に支障が生じるおそれがある状態というところをまず前提としていて、そこを故意の対象としている、こういう犯罪類型で、その結果として正常な運転が困難な状態に陥って人を死傷させるという、二段階の結果が生じるということなのかなというふうに思いますが、過労なんかについては、三条型の類型で規定することというのが何か不可能ではなさそうに、僕自身は法文を読んでいてちょっと思ったんですね。

 だから、過労をどう定義するかという話はもちろんあると思いますけれども、過労によって正常な運転に支障が生じるおそれがある状態という規定の仕方をすると、少なくとも、疲れているな、眠いなぐらいまで認識しておけば、そこそこ刑罰対象に組み込めるような定め方もできそうかなというふうに思うんです。

 過労というのは、この間の関越自動車道の交通事故の件がございましたけれども、あれはやはりテレビの映像で見ると衝撃的でして、バスが路側帯というか、路側帯の壁の中で真っ二つになっているという映像を見るとやはり非常に衝撃的でして、ああいったようなことが起きてしまうということもあるので、過労についてはぜひ今後とも引き続き検討していただきたいなというふうに私自身は思います。

 さらに、次に伺います。あとは条文の細かいところについて幾つかちょっと確認させていただきたいなというところでございます。

 結果的加重犯の故意の対象というところで、改めてちょっと整理をしたいんですけれども、二条一号と三条の本文中に存在している、アルコール、薬物の影響により「正常な運転が困難な状態で」というのと「正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」というところで、どういった違いがあるということの、程度論なんでしょうけれども、具体例を交えて教えていただけるとありがたいです。

稲田政府参考人 まず、二条一号の方の「正常な運転が困難な状態」と申しますのは、道路及び交通の状況などに応じた運転操作を行うことが困難な心身の状態をいうということでございまして、例えば、酒酔いの影響により前方の注視が困難であったり、ハンドル、ブレーキなどの操作の時期やかげんについて、これを意図したとおりに行うことが困難であるなど、現実にこのような運転操作を行うことが困難な心身の状態にあることをいうと考えております。

 それから、「正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」というのは、今申し上げました正常な運転が困難な状態にまでは至らないものの、自動車を運転するのに必要な注意力、判断能力、操作能力が、そうではないときの状態に比べて相当程度減退して危険性のある状態にあることをいい、アルコールの影響による場合を例にいたしますと、酒気帯び運転罪に該当する程度のアルコールを身体に保有している状態にあれば、これに当たると考えられます。

椎名委員 ありがとうございます。

 そうすると、「正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」というところについて今おっしゃっていましたが、酒気帯び運転罪に相当する程度の状態があればということですけれども、要は、呼気一リットル中〇・一五、これを卑近な例に直すと、ビールでいうと例えば大瓶一瓶分とか、そういったようなものを飲んで運転しているということまで、要するに、大瓶一本分のビールを飲んだという実態があって、大瓶一本分のビールを飲んだということさえ認識していれば、この三条が適用されるということで基本的には間違いないという理解でよろしいでしょうか。

稲田政府参考人 故意の認識の内容は、まさに先ほど申し上げましたような状態を認識しているということでございますので、今のアルコールの例で申しますと、先ほどお話がございましたように、酒気帯び運転罪に該当する程度のアルコールを身体に保有していることの認識があればいいわけでありますので、それがどの程度の具体的数値かとか、どの程度の支障を生じるという評価の点まで認識している必要はないというふうに考えております。

椎名委員 ありがとうございます。

 時間も来てしまったのでこれでやめますけれども、今回、こういった形で新しい類型ができ上がったということ自体は、私自身は非常に評価をしたいというふうに思っております。先ほども申し述べましたけれども、この危険運転致死、故意の認識の対象がものすごく難しい、立証も難しいということで、適用されてこなかった例も多数あるわけでございまして、こうやって新しい類型ができ上がるということは本当にいいことだというふうに私自身は思っております。今後は、これの運用状況を見守った上で、私自身も随時取り組んでまいりたいなというふうに思っております。

 ありがとうございます。

石田委員長 次回は、来る二十一日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時五分散会


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