衆議院

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第2号 平成25年10月30日(水曜日)

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平成二十五年十月三十日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 江崎 鐵磨君

   理事 大塚  拓君 理事 土屋 正忠君

   理事 ふくだ峰之君 理事 吉野 正芳君

   理事 階   猛君 理事 西田  譲君

   理事 遠山 清彦君

      安藤  裕君    池田 道孝君

      小田原 潔君    大見  正君

      門  博文君    神山 佐市君

      菅家 一郎君    黄川田仁志君

      小島 敏文君    古賀  篤君

      今野 智博君    末吉 光徳君

      橋本  岳君    鳩山 邦夫君

      平口  洋君    三ッ林裕巳君

      宮内 秀樹君    宮澤 博行君

      村井 英樹君    横路 孝弘君

      高橋 みほ君    大口 善徳君

      椎名  毅君    鈴木 貴子君

      西村 眞悟君

    …………………………………

   法務大臣         谷垣 禎一君

   法務副大臣        奥野 信亮君

   法務大臣政務官      平口  洋君

   最高裁判所事務総局人事局長            安浪 亮介君

   最高裁判所事務総局経理局長            垣内  正君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          小川 秀樹君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    深山 卓也君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    稲田 伸夫君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  榊原 一夫君

   政府参考人

   (公安調査庁長官)    尾崎 道明君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 新美  潤君

   政府参考人

   (国税庁課税部長)    岡田 則之君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           神田 裕二君

   政府参考人

   (防衛省経理装備局長)  伊藤 盛夫君

   法務委員会専門員     矢部 明宏君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月三十日

 辞任         補欠選任

  小田原 潔君     宮内 秀樹君

  末吉 光徳君     村井 英樹君

同日

 辞任         補欠選任

  宮内 秀樹君     小田原 潔君

  村井 英樹君     末吉 光徳君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律案(内閣提出、第百八十三回国会閣法第五二号)

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

江崎委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として法務省大臣官房司法法制部長小川秀樹君、法務省民事局長深山卓也君、法務省刑事局長稲田伸夫君、法務省入国管理局長榊原一夫君、公安調査庁長官尾崎道明君、外務省大臣官房審議官新美潤君、国税庁課税部長岡田則之君、厚生労働省大臣官房審議官神田裕二君及び防衛省経理装備局長伊藤盛夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

江崎委員長 異議なしと認めます。そのように決しました。

    ―――――――――――――

江崎委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局安浪人事局長及び垣内経理局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

江崎委員長 異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

江崎委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。初めに、黄川田仁志君。

黄川田(仁)委員 おはようございます。自由民主党の黄川田仁志でございます。

 臨時国会の冒頭、トップバッターとして質問に立たせていただくことを大変うれしく思っております。

 では、早速質問に入らせていただきたいと思います。

 先日、衆議院予算委員会におきまして、他党ですが、日本維新の会の中田議員から、外国人や外国資本による防衛施設周辺の土地取得についての質問がありました。さらには、自由民主党では、党内に安全保障と土地法制に関する特命委員会を設置し、この件について具体的な検討を進めているところでございます。

 安倍総理は、予算委員会の答弁の中で、政府として、防衛施設周辺の土地のあり方について、安全保障上の重要性に鑑みて、関係省庁間の連携を図りつつ、制限の必要性や個人財産の保護、国際約束との整合性の諸事情を総合的に考慮した上でしっかりと検討していきたいと、これまでの政権よりも踏み込んだ発言をされました。これからの日本の安全保障政策を考える上で非常に重要な発言であったと私は思っております。

 そこで、本日は、この外国人や外国資本による防衛施設周辺の土地取得についての法務省管轄事項を中心に質問させていただきます。

 この件については、もう何年も前から各委員会で取り上げられ、当然、法務委員会でも取り上げられております。その質疑の際、必ず取り上げられている法律があります。それが外国人土地法です。この法律についてお尋ねします。

 まず、確認の意味を込めまして、この外国人土地法の概要を御説明していただきたいと思います。よろしくお願いします。

深山政府参考人 今お話のありました外国人土地法、これは大正十四年の法律でございますが、外国人や外国法人が日本において土地に関する権利を取得することを原則として認めるとともに、その例外を定めた法律でございます。

 外国人や外国法人による土地に関する権利取得の例外としては二つございまして、第一に、相互主義の観点から、外国人や外国法人が属するその外国の法律が、日本人による土地に関する権利の享有を制限しているときは、政令によって、そういった外国人や外国法人の日本における土地に関する権利の享有についても同様の制限的な措置をとることができる、これが一つ目です。

 二つ目は、国防上必要な地区については、政令によって、外国人や外国法人の土地に関する権利の取得につき禁止をし、または条件もしくは制限を付することができる、これが二つ目でございます。

 もっとも、外国人土地法のこれらの規定に基づく政令というのは、現在、定められておりません。

黄川田(仁)委員 ありがとうございます。

 今、民事局長に説明いただきましたが、日本には、安全保障上の観点から、外国人及び外国資本による土地取得を制限する法律があります。今言われたように、大正時代、大日本帝国憲法下でつくられて、それも現在残っているということでございます。

 お手元の資料が、それを示している外国人土地法の原文でございます。一目見てその古さがわかると思いますが、これが何かと議論の場に出てきます。この法律を使って、今の日本の抱える外国人等による土地取得の取引の規制を何とかやりたいというふうに思うのですが、残念ながら、できておりません。これはどうしてなのか、これも確認する意味で、お答えいただきたいと思います。

深山政府参考人 外国人土地法に基づく政令を制定して、外国人や外国法人の土地取得を制限することにつきましては、まず、外国人土地法第四条の「国防上必要ナル地区」という言葉かと思いますが、これは大日本帝国憲法下における陸海軍の軍事活動を前提とした規定でございまして、その趣旨自体が現行の憲法に合致しないおそれがあるという問題が一つございます。

 また、制限の対象となる権利、それから制限の態様、制限違反があった場合の措置等については、法律では具体的に規定はございませんで、政令に包括的、白紙的に委任がされておりますが、現在の憲法の四十一条それから七十三条の六号にこういった包括的な白紙的委任が違反するおそれがある、こういった理由から、今日において、外国人土地法により、外国人や外国法人による土地取得の規制を行うことは難しいと考えております。

黄川田(仁)委員 御説明のあったとおり、憲法に合致しないということで、存在するんですが使えないというところでございます。

 では、この法律の所管官庁である法務省は、外国人等による土地取得に対する規制について、どのように対処すべきだというふうに現在考えておるのか、説明をお願いいたします。

深山政府参考人 安全保障上の問題がある土地の取得に対する規制がどうあるべきかということにつきましては、外国人土地法を廃止して、これにかわる新たな法律を整備するという手段もあると思います。

 そういった手法も含めて、個人の財産権の保護の観点等の諸事情を勘案した上で、法務省のみならず関係省庁が連携をして検討すべき課題であると思っております。

 法務省の立場というのは、民法を初めとする民事基本法を所管しておりますので、そういった立場からこうした検討にもしっかりと協力をしていく、こういうことになろうと思います。

黄川田(仁)委員 今の答弁を聞いても、今、法務省の口から、廃止してという言葉も出ましたが、はっきり言って、この法律は全く使えない法律なんです。法務省が、今のお話のように、どうやってもこの適用、運用ができないということを正式に判断しているのであれば、この法律は廃止すべきだと私は考えております。

 ちょっと今、いい法律だなと冒頭出ておりましたが、これは長年にわたる各委員会での答弁を見ていますと、この外国人土地法があるがゆえに新しい法律をつくることをおくらせているように私は感じています。

 外国人土地法の所管は、先ほどから述べているように法務省でございます。しかし、法務省は、先ほどの答弁どおり、関係省庁と連絡をとってというお話をされておりますが、法務省は規制官庁じゃないんですね。なので、この法律、土地規制を進めていくためには、関係省庁が実態を調査した上で対応すべきだということを、従来、各委員会で述べております。

 しかしながら、法務省は、所管官庁、でも規制官庁じゃないからほかの省庁にやってもらいたいというふうに言っているんですが、この法律があるがゆえに、法務省以外の関係省庁からすると、外国人土地法がある以上、法務省がやるべきではないかということになってしまうわけでございます。この土地規制の話が出るたびに、あちらこちらの委員会に行って、法務省がこのように説明する。こういうことでは誰も責任をとらない。国土を守るという国家として最も基本的な問題が、関係省庁間で仕事の押しつけ合いをやっているというのが現状であると私は見ております。

 では、規制官庁ではない法務省が、そもそも、なぜこの法律を所管することになったのか、経緯をお答えいただきたいと思います。

深山政府参考人 外国人土地法が制定された大正十四年当時、この法律は外務省、内務省及び法務省の前身である司法省が所管しておりまして、さらに、先ほど述べましたこの法律の第四条というところに基づいて、「国防上必要ナル地区」を定める場合には、陸海軍当局と協議の上、その範囲を定めるものとされていたところでございます。

 当時の司法省が所管省庁に含まれていた理由は、外国人土地法がそれまで明治時代にできた太政官布告によって禁止されていた外国人による土地取得等を民法の原則どおりに認めるものである、民法は原則として外国人に土地の取得を認めていますので、認めるものであったために、民法を所管しているということから、司法省も所管省庁の一つとなったものと思われます。

 もっとも、現在、外務省等は所管から外れて、法務省のみが所管省庁とされておりますが、その経緯は、先生の御指摘もあって、調べたんですけれども、戦後どのような経緯で抜けてしまったのか、今法務省だけになっているのかというのは、調べた限りではちょっとわからなくて、申しわけないんですけれども、その経緯は不明と言わざるを得ないところでございます。

黄川田(仁)委員 経緯は不明ということでありますが、もともと、外務省、そして陸海空軍も関係していたという法律で、推測するに、推測の話をしてもしようがないですね、今残っているのは法務省だということになってしまったと。

 しかし、戦後の混乱期、いろいろあったと思います。法務省が所管する前は陸海空軍があって、移管するときは陸海空軍はなくなってしまって、海軍省、陸軍省、なくなってしまった。また、外務省も条約だけを取り扱うということになって、残ってしまったのが司法省、法務省ということになったと思うんです。時代の流れで、法務省が外国人土地法を受け持つようになったということだと思います。

 しかし、法律の性格上は、本来、今日の防衛省が主に担わなければならないのではないかというふうに考えます。これまでの議論を踏まえ、今後、安全保障上問題がある土地取得に対して、防衛省が積極的に関与していく必要があると思いますが、いかがでしょうか。

伊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 防衛省といたしましては、防衛施設周辺におきます外国人等による土地取得につきまして、我が国の安全保障にかかわる重要な問題であるというふうに認識しております。

 本年一月に、小野寺大臣から御指示をいただきまして、自衛隊施設の周辺の状況につきまして調査をいたさせていただきまして、七十四カ所におきまして、対馬等の離島や司令部機能を有する自衛隊施設のうち、こうした施設に隣接する土地の現況調査をいたしました。

 常日ごろ、防衛省・自衛隊は、基地の警備、部隊の運営をきちっとやっておるところでございますが、今回調査したところでは、現時点におきましては、特段の部隊の運営に支障を及ぼすような状況というのは確認できておりません。

 ただ、調査の方法は、登記所に行きまして、登記簿から、登記簿上の所有者を確認するという状況で行ったものでございます。こうした調査を継続して行うとともに、防衛省といたしましては、この防衛施設周辺の土地の取引の問題につきまして、関係府省庁と連携を図りつつも、安全保障上の重要性に鑑み、制限の必要性、個人の財産権の保障の問題、それから国際約束上の問題もございますので、そうしたものとの整合性等、諸事情を総合的に勘案して、今後検討してまいりたいというふうに考えているところでございます。

黄川田(仁)委員 今後検討するということでございますが、今、調査した結果、制限をする必要性は、事態は生じていないという認識だということでございます。

 このお話は、二〇〇九年三月十一日の法務委員会において、稲田先生の質疑においても同じような答弁をされているところでございますが、ちょっと確認をもう一回したいと思います。

 その当時の答弁なんですが、「基地の警備を含め部隊の運営についてはその地域の特性に合わせまして適切に実施してきており、現時点では、外国人等による自衛隊基地周辺の土地の買収が部隊の運営に直接の影響を及ぼしているとは認識しておりません。現時点で、外国人等による対馬の土地の取得を制限する必要性のある事態は生じていないものと認識しております。」と。

 当時、認識していないので余り必要じゃないのかというようなニュアンスでありましたが、今回の安倍首相の答弁も受けて、今防衛省から、必要のある事態は生じていないという認識ですが、検討するというのでもいろいろなニュアンスがあるんですけれども、これは重要だと考えて、今後しっかりと積極的に検討していくというふうに捉えてよろしいのでしょうか。

伊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 本検討につきましては、しっかりと検討してまいりたいというふうに考えております。

黄川田(仁)委員 ありがとうございます。しっかりと検討していただきたいと思います。

 また、外務省も元来この法律にかかわっていたということもありまして、外務省の政府参考人にも来ていただいておりますが、この外国人土地法について外務省の見解はございますでしょうか。お願いします。

新美政府参考人 お答え申し上げます。

 外務省といたしましても、安全保障上の観点から、今委員から御指摘ありましたような土地の利用あるいは取得のあり方について検討することは重要であると考えております。

 関係省庁との連携も図りまして、今もございましたが、土地取得の規制の必要性、個人の財産権の保護、そして国際約束との整合性の問題もございます。そういった事情を総合的に考慮して、検討してまいりたいと思っております。

黄川田(仁)委員 ありがとうございます。

 この外国人土地法という名前は外国人を名指しして規制しているわけなんですが、外国人を限定しているということに対して外務省は問題は感じているんでしょうか、どうなんでしょうか。

新美政府参考人 先ほど法務省から御説明ございましたように、今の外国人土地法については政令もなく、実態上は適用されていないということでございますが、一般論として、外国人、今議論になっております外国人の土地所有に対する規制については、例えばサービス貿易に関する一般協定、GATS、ガッツと呼んでおりますけれども、そういう協定に日本を含め多くの国が入っております。

 この協定に基づきまして、外国人等によるサービスの提供にかかわる土地の取得あるいは利用については、いわゆる最恵国待遇、そして内国民待遇をすることが各加盟国は義務を負っております。

 したがいまして、外国人等がサービスを提供するに際して我が国の土地を取得あるいは利用するということについては、このGATSの協定の締約国として、原則、国籍を理由とした差別的制限を課すことは認められていないということでございます。

黄川田(仁)委員 外国人を特定して差別することはできないということなんですが、安全保障上の観点から特別に問題がある場合は制限できるということはあるんですか。

新美政府参考人 二点お答え申し上げたいと思います。

 まず、GATSですね、WTOのサービス貿易に関する一般協定、これに加入するときにいわゆる留保を行っている場合については、そして、例えば、その留保が今委員から御指摘があったようなものである場合については留保が適用されるということはございますが、日本は、GATSに入ったときに、いわゆるこのような留保は課しておりません。

 二点目は、GATSの規定の中に安全保障例外という規定がございまして、これは投資協定や経済連携協定においてもよくある規定なんですけれども、安全保障にかかわることについては例外が認められるというような趣旨の規定でございます。

 これは、いわゆる各国の規定に関する適用あるいは解釈の積み重ねから見ますと、例えば戦争のとき、戦時に緊急にとる措置、あるいは国連憲章の義務を果たすために基づきとる措置、かなり限定的な場合にのみ適用されるという理解あるいは解釈が一般的でございまして、この条約のこの規定が適用されるというのはかなり厳しいのではないかと思います。

黄川田(仁)委員 外務省の今の答弁を聞いているように、WTOなどの国際約束違反というふうに外国人土地法はなってしまう、何らかの法律をつくる場合もなかなか厳しい、外国人ということを限定してしまうということは厳しいということなんですね。だから、もうこの外国人土地法というものは全く適用できない、どういうふうに法改正してもだめだということをここではっきりさせたいというふうに思っております。

 しかし、かわりの法案がなくて廃止ということは、逆に後ろ向きに捉えられてもいけませんが、この法律についてそういう不毛な議論を続けていくのは、きょうこの場限りということにして、しっかりと新法を制定するという方向を見据えて、前に進んでいきたいというふうに思います。

 その新法には、この外国人土地法の精神といいますか、そういうものをしっかりと受け継いで、土地の権利移転に関することについて、安全保障上の問題を、関係省庁、防衛省、外務省、法務省、しっかりと考えていっていただきたいと思います。

 規制官庁である、安全保障といいますと、先ほどお話ししたように、答弁にもあったように、防衛省が中心というふうになってくるとは思いますが、法務省も、土地の移転、権利に関することですので、しっかりとかかわっていただきたいというふうに思っております。

 これまでの議論を踏まえて、安全保障上問題がある土地取得に対して法務省が取り組むべきことは何か、安倍内閣の閣僚として、法務大臣の御意見をお伺いしたいと思います。

谷垣国務大臣 きょう黄川田委員が取り上げられた問題は、我が国の国益にとって極めて大きな重要な問題だと私も考えております。

 今までの御議論を通じて明らかになってきたことは、今の外国人土地法が、現行の憲法なりあるいは日本が加盟している国際条約との関係では実際上極めて使えないというか、そういうものになっているということも事実でございます。

 そうしますと、今後のあり方としては、安全保障上、外国人が取得すると問題があるような土地に関しては、どういう規制目的で、どういう規制手法が合理的であるのかというのを、これはきちっと検討しなければなかなか進まないということになろうかと思います。

 それで、これは、つまり、ポイントを絞らなければいけないでしょうね。それは、まず規制官庁という、さっきおっしゃいましたが、そこでしっかり検討していただく。法務省は、土地等の一般的な取引、基本法を所管しているわけでございますから、また、この基本法とそのポイントを絞った法制度がそごするようでも困ります。ですから、そういうことを考えていくに当たっては、法務省も十分規制官庁と腹を合わせながらと言うとちょっと言葉は悪うございますが、十分御相談に乗りながら、協力し合ってやっていくということが必要ではないかと考えております。

黄川田(仁)委員 私が大臣に最後にお願いしたいと思うのは、こういう言葉があるのかどうか、消極的縦割りといって、結局、今まで、この外国人土地法は法務省のものであった、関係省庁は所管じゃない、大事なのはみんな認識しているけれども、関係省庁で関係省庁でと言って、結局、誰も責任をとらないわけです。法務省は持っているけれども、それは規制官庁が、それぞれの個別でやる件だと言って、結局、安全保障上極めて重要なこの課題がたなざらしにされてきたということでございます。

 現在、この外国人土地法は法務省が持っているということでございますから、今までの議論、そして、なぜ法務省が今持っているかという経緯も踏まえて、その点は、きょうの議論も踏まえて、法務省の方でも議論を整理して、関係省庁にしっかりとこの問題に取り組んでいただくよう、政府の閣僚でしっかり緊密に連絡をとってやっていかなければ、なかなかこれは前に進んでいかない。各省庁で縦割りでやっている限りでは仕事の押しつけ合いになってしまうので、その点、指導力を発揮していただきたいということをお願い申し上げまして、本日の質問とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。

江崎委員長 次に、階猛君から発言を求められております。階猛君。

階委員 おはようございます。民主党の階猛です。

 臨時国会、引き続き法務委員会に所属させていただきましたので、谷垣大臣、政務三役の皆様、よろしくお願いいたします。

 きょうは、資料をさまざまお配りしておりますけれども、まず最初、谷垣大臣がまだ当選三回目のときに書かれた、中央公論の一九八七年四月号に掲載された論文をお出ししました。

 「われら自民党議員「スパイ防止法案」に反対する」という題名がついておりまして、この「われら」というのには、今、自民党でいいますと、大島理森代議士であるとか、今回の特定秘密保護法案に反対の意思を表明している村上誠一郎代議士も含まれております。

 私は、質問に入ります前に、ここはざっくばらんにお聞きしたいんですが、党の進めていこうとするスパイ防止法案に対して、こういう公の雑誌で反対の意見を表明されるということは、なかなか若手議員として勇気の要ることではないかと思っておりまして、この論文を出したときに、どういう党内からの反発なり、あるいはさまざまな意見なりというのがあったのかどうか、それから、この法案については最後まで反対をし続けられたのか。

 こんなことをお聞きしますのも、去年、ちょうど谷垣大臣が自民党総裁でいらっしゃったころに、例の社会保障と税の一体改革法案をめぐって、民主党の中でもけんけんがくがくの議論をしました。

 私は、三党協議による修正の合意に基づく修正案というのが、民主党のよって立つ社会保障改革を骨抜きにしかねないということで反対の立場を表明しまして、この論文、谷垣先生も当時、逐条で批判を書かれたというふうに書かれていますけれども、私も逐条で、党内の議員向けに、ここはこうだからおかしいということをペーパーとして出したんですけれども、なかなか当時、民主党では私のような意見は顧みられることなく、三党合意で法案が通ったということがあったわけです。

 そのような私の経験上、谷垣先生も当時いろいろな御苦労がおありになったのかなと。ここは、大臣というよりも議員として、当時どういうような御苦労があったのか、また、反対の立場を貫かれたのかということをまず質問に入る前にお聞きしたいと思います。

谷垣国務大臣 大分古いことでございますので、私も余り記憶ははっきりしていないところもございます。

 しかし、当時のスパイ防止法は、内閣法ではなく、議員立法として、推進が必要だとおっしゃる方々がそういう議論をされていたわけですね。当時は、党内でも相当大きな議論でございまして、反対だという方も相当多かったわけです。

 特に、余り苦労した覚えも正直言ってないんですが、結局、その法案は廃案に、廃案になったのか、あるいは提出に至らなかったのか、記憶がはっきりいたしませんが、結局、現在に至るまでその法律は成立されてなかった。

 私、今、その中身も、実は、もう二十数年前に書いたもので、今回この資料に、階委員から出していただきましたけれども、ちょっと朝早くてそこまで目を通す余裕がなくて、中身も十分正確に記憶しているかどうかわかりません。

 ただ、この問題を考えますときに、当時は情報公開法もなかった、それから公文書管理法のようなものもなかったわけですね。やはりそういうものとの整合性が必要であるという議論をした記憶がございますので、現在の状況とは若干違うかな、こんなふうに思っております。

階委員 余り苦労がなかったということであれば、それはそれでうらやましい限りでありまして、私は当時、大変な思いをしまして、今も国会議員でいるのが不思議なぐらいなことも経験しました。

 ただ、さはさりながら、やはり国会議員である以上、党内で決められる、あるいはこれから決めようとすることについて、国家、国益のため、あるいは国民のために、これはおかしいということであれば、敢然と自分の持論を主張していくというのは非常に大事なことだと思っていまして、私は、そういう意味で、今回この論文を拝見しまして、反対するというだけではなくて、その中身についてもしっかりしたことが言われていて、多分廃案になったとおっしゃいましたけれども、その廃案になった大きな要因としてこの論文があるのではないかというふうに思いました。

 そういう意味では、谷垣大臣、当時は三回生、今の私も三回生ですけれども、非常に若手の中ですばらしい活動をされてこられたんだなというふうに私は思います。

 その上で、この論文、まだ朝早くてお読みになっていないということなんですが、私は、その中身について、すばらしいものがあると思った理由を何点か言いますけれども、まず、一ページ目の最後の方に、「わが国は、自由と民主主義の下で、今日の繁栄を築いてきた。今後も自由と民主主義を国政運営の柱としなければならないというのは、日本国民の揺るぎなき信念であろう。このような国家体制を前提とする限り、国政に関する情報は、主権者たる国民に対し基本的に開かれていなければならない。国民が、国政に関する情報にアクセスすることは自由であるのが原則なのだ。そして、この国政に関する情報に、防衛情報が含まれることも論を俟たない。」

 その下の段ですけれども、「なんでも秘密だというのでは、自由の原則が崩れてしまう。例外の認定は限定的でなければならないのだ。まして刑罰で秘密を守ろうという場合は、よくよく絞りをかけておかないと、人の活動をいたずらに萎縮させることになりかねない。」ということで、全く私も、一〇〇%この考え方に賛同いたします。

 私は、この中で、自由と民主主義を国政運営の柱とする以上、こういう立場をとるということなんですが、まさに自由民主党でございますから、自由と民主というのは一番の価値を置いている党なんだと思います。

 その点でいいますと、今回の特定秘密保護法案ですが、自由の中でも、表現の自由を支える知る権利をないがしろにしかねないということと、それから、民主主義ということでいえば、民主主義である以上、行政の情報はほかでもない国民全体の共有財産だということで、アクセスできるのは当然だというふうに思っています。

 自由と民主を掲げる自由民主党の総裁であった谷垣大臣であれば、今もこの見解に基づいて、特定秘密保護法については敢然と批判するということはあっていいと思うんですが、どのようにお考えでしょうか。

谷垣国務大臣 先ほども申し上げたことでございますが、やはり全体の体制というものの中で個々の法案も判断されなければならないと私は思っております。

 先ほども申し上げましたように、当時は、情報公開というようなものの基本的な仕組みもできておりませんでした。それから、現在は公文書管理というのも、法案ができております。

 そういうものがあるところとないところでは、考え方が、今もおっしゃったような縛りのかけ方というのも私はかなり違ってくるのではないかなと考えておりまして、先ほど引かれたような、当然、私も、現在なお自由民主党におりますから、自由と民主主義を基本とするというのは現在でも当然のことであると思っておりますし、基本的な原則は今も同じことだと思っておりますが、個々の法律をめぐる環境といいますか、個々の法律の具体的な部分に対する評価というのは、当時とは少し違ってきているところがあると考えております。

階委員 もうちょっと、特定秘密保護法案にかかわる部分について、この論文とのかかわりを具体的に聞きますと、二ページ目の右側の二段落目、「法案の基本的な思想は、防衛秘密は守らなければならないということである。それが、国民の自由という原則の例外であるという認識は稀薄である。だから防衛秘密を守るためには、本来のスパイ行為のみならず、たまたま手段が相当でなかった情報収集活動や過失による秘密漏示行為まで処罰しようとする。」ということなんですが、ここで指摘されている「手段が相当でなかった情報収集活動」ということについて言えば、今回の秘密保護法でいうと、例えば、取材行為に関しては、著しく不当な方法を二十一条二項で処罰しておりますし、取材行為以外の一般の情報収集行為に関しては、違法行為に必ずしも当たらない、その他の特定秘密を保有する者の管理を害する行為というものを処罰する二十三条というのもあります。

 したがって、「手段が相当でなかった情報収集活動」を今回の特定秘密保護法案で処罰しようとしている点、それから、過失犯については二十二条の四項、五項に明文の処罰規定がある点、この谷垣大臣の論文からすると、今の部分については少なくとも問題があると思うんですが、この点について御見解はいかがでしょうか。

谷垣国務大臣 私がもう一つ今考えておりますことは、たびたびそういうようなことも委員会でも申し上げていると思いますが、その任にない者が公の場で議論をすべきではないということももう一つ私は信条として持っております。

 もちろん、内閣というのは合議体でございますから、内閣の決定については私も共同して責任を負わなければなりません。しかし、今所管の大臣は森まさこ大臣でいらっしゃる。したがって、現にそうやって提出される法案について、私はこの委員会で私の個人としての考えを申し上げる立場にはないと思っておりまして、ぜひ、階委員におかれましても、森まさこ大臣と議論をしていただけたらありがたい、このように考えております。

階委員 ただし、閣議決定の場で、大臣もこの法案について了とするか否かというのを議論されたと思うんですが、その閣議では賛成されたと思いますが、賛成された理由についてお聞かせ願えませんでしょうか。

谷垣国務大臣 これは、先ほど申し上げましたように、私、当然賛成したわけでございます。

 それで、賛成した理由は、先ほど申し上げたように、当時と情報公開あるいは公文書管理のあり方が相当変わってきている、そういう中では個々の要件の判断も変わってきている、こういう考え方で私は賛成をしたわけであります。

階委員 もうちょっと踏み込んだといいますか、よりその個々の問題点に対してどう考えるかということをお聞きしたいと思うんですが、例えば、もう一つこの論文の中で書かれてあることとして注目すべき点、二ページ目のやはり右側の方の一番下の段ですけれども、「どんな行為が処罰されるかは判決が出るまでわからないというのであれば、人は「ヤバイかも知れない」と思った途端にその行動を(本来許されている行為かも知れないのに)トーン・ダウンさせるであろう。このような萎縮効果のつみかさねこそが、自由な社会にとって一番問題なのである。」と。

 まさに、この萎縮効果ということについても、例えばこのページの左側の方にも書いていますけれども、「この法案については、ジャーナリストの取材活動への制約や一般人にまで処罰が及ぶことへの警戒は語られるが、自由であるべき政治活動が制約され、萎縮するのではないかという点も私は危惧する。」ということで、我々政治家の政治活動も萎縮するのではないかというような危惧もこのとき表明されているわけですね。

 こうした点からも、やはり特定秘密保護法、どんな行為が処罰されるかということでいえば、特定秘密がどのように指定されたのかというのは、情報を入手する方からはわからない。また、一旦情報を入手した、例えば政治家が入手したときに、その情報は、これは国政上重要だからといって、党内で共有して議論できるのかということも、処罰されるのかどうかということもわからないわけです。あるいは、取材に応じてそれを語るのも許されるのかどうかというのもよくわからないという中で、まさに萎縮効果ということでいえば、今回の法案についても多分に問題があるのではないかと思っております。

 この萎縮効果という点について、谷垣大臣はどのように判断され法案に賛成されたのか、教えてください。

谷垣国務大臣 萎縮効果という問題は、何というんでしょうか、民主制の運用の中で極めて大事だと、現在、私も依然としてそう考えております。

 ただ、細かなことは、細部にわたっては森大臣にお聞きをいただきたいと思いますが、その点で、私がこの文書を書いた当時から比べますと、いろいろな配慮が払われているというのが私の認識でございます。

 今、委員のお問いかけとはちょっと離れるかもしれませんが、当時の考え方と私の考え方が若干違ってきている点が一つございます。

 それは、野党自民党の総裁をしておりましたときに、なかなか野党として、与党のやっておられることにどう判断していくか、具体例は申し上げませんが、判断が難しいことがしばしばございました。特に外交とか安全保障に関する問題でありますと、ある意味で、野党として欠点をつくことはいろいろできます。欠点をつくことができますが、いろいろな大きな事情から、内閣総理大臣から、野党の党首として、例えば本当に機微な情報まで共有しながら協力を求められたときには、また考え方が違ってくるかもしれないなと思いながら仕事をしておりました。

 恐らく、安全保障情報なんかになりますと、例えば同盟国から提供されるような極めて機微な情報もあるかもしれません。しかし、野党党首として、それに関しては何らの秘密保持の義務も負っていないわけですね。そういうもとでは、野党の党首が、与党の、つまり内閣の、政府の人たちと判断を共通にしながら協力していくことができるだろうか、そういう制度は必要なのではないかという問題意識を私は野党総裁のときに強く持ちました。

 今回のこの法律がすぐにそれに応えるものではなく、むしろ国会法の問題になるのかもしれないと思っておりますが、そういう形で、つまり、当時の政治状況は、与党は与党、野党は野党で、それがずっと続いている状況でございました。余りそういうことを恐らく野党の方も意識されなかったのかもしれないと思います。しかし、政権交代というものが起こって、野党党首としてはそういう問題意識を非常に持つようになったということは申し上げておきたいと思います。

階委員 私は、制度よりもやはり信頼関係というのがまず前提としてないと、幾ら制度として秘密漏えいを防止しようとしても、やはり政治家同士の信頼関係がなければ絵に描いた餅に終わると思っていまして、多分、谷垣大臣が野党自民党の党首だったときは、そういう信頼関係が築けるという前提があったからそういうお考えにもなったのかもしれませんけれども、未来永劫そういう政治家が党首かどうかというのはわかりませんので、今言ったようなことが常に一般論として当てはまるのだろうかという思いはちょっとしました。

 その上で、我々は、やはり原則に立ち戻って、谷垣大臣もこの論文に書かれているように、情報公開が原則だということで情報公開法の改正に努めてまいったわけです。

 我々が政権のときに、私も政務官として携わったわけですけれども、資料二というもの、通し番号でいうと三ページですが、こちらをごらんになっていただきたいんですが、我々がやろうとした情報公開法の改正の概要。これは今度の国会でも特定秘密保護法案と並行して審議される予定と伺っております。

 きょう、ちょっとざっくり説明しますと、国民の知る権利の保障ということで、開示情報を拡大し、手数料を見直し、開示決定の期限を短縮し、不開示の場合の決定には理由をちゃんと記し、それから、不開示を不服として情報公開訴訟になった場合には、インカメラ手続、あるいはボーン・インデックスという資料を出させるなどとして、情報公開訴訟を実効的なものにしよう、こういうものに我々が政権のときに取り組んできました。

 これを整えた上で、本当にやむべからざる事情がある場合には秘密の保護というのも考えればいいと思っていまして、まず前提として、こういった情報公開法改正に取り組むべきではないかと思っています。

 この情報公開法改正について大臣としてどのようにお考えになるのか、御見解をお願いできますでしょうか。

谷垣国務大臣 私も、情報公開というものの充実は非常に重要だと思っております。ただ、今議論になっておりますことは、情報の中には、公開することが国益に必ずしも合致しないというものがある、それをどう扱うかということで議論がされているわけですね。

 それで、今の現行の情報公開制度は、かつてとは、随分進んできておりますが、さらに何が必要かということについては、私は、法務大臣としては、所管外のことでございますから、今所見を申し上げることは差し控えたいと思います。

階委員 確かに、情報公開法は、総務省なり、今回移管されて内閣府ということも議論されていますけれども、情報公開法それ自体は所管外だと思うんですが、この中で、情報公開訴訟にインカメラ手続を導入する、あるいはボーン・インデックスという資料を出させるということも含まれておりますので、その部分については法務省もかかわると思いますので、その部分に限ってでもいいので、御見解をお聞かせください。

谷垣国務大臣 これは、またそういう御相談があれば、当然、総務省とも、法務省としてよく御相談に乗っていくということだと思いますが、現在、特別申し上げるように見解をまとめているわけではありません。

階委員 では、その点については、今後また国会の中でも、別の委員会でも議論になると思いますので、よろしくお願いいたします。

 次のテーマに移らせていただきます。

 私は、震災で、津波で大きな被害を受けた岩手県の議員でございまして、震災の復興にこれまで取り組んでくる中で、やはり、今も仮設住宅に何万人も暮らしていらっしゃる、この方を早く、落ちついた、居心地のいい住まいに移っていただく、これが喫緊の課題であるというふうに認識しております。

 ただ、そのために一つ大きな障害がありまして、一つだけではないかもしれませんけれども、私にとっては最大の障害ということで受けとめていますけれども、リアス式海岸で、狭い平地はほとんど浸水して住めない状況になっている、その中で、どうやって移転先、新たに住居を構える先を確保するのかということで、復興をするための用地の確保というのが一番の問題だと思っております。ただでさえ土地がない中で、山を削って高台を整備したり、あるいは低い土地であればかさ上げしたりということをしていかなくてはいけないんですが、そのような土地を確保していかなくてはいけない。これは非常に自治体の方でも苦労されています。

 今回、復興庁が中心となって、新しい用地取得加速化プログラムというものをまとめられたわけですね。この資料でいいますと三を見ていただきたいんですが、表題には、「復興事業のための様々な特例措置、運用改善策を講じることにより、所有者が不明の土地などの取得を飛躍的に加速化。」とありまして、幾つか矢印があって、それぞれの対策を書いております。

 まず、土地の権利者を調査した上で、所有者がわかっていれば用地取得交渉をする。その場合には、権利者調査や用地取得事務の補償コンサルタント等への外注を推進するとか、実務支援チームで市町村をきめ細かく支援してやっていくということでいいかとは思うんですが、問題は所有者等が不明の場合でございまして、二つやるべきことがある。一つは、財産管理制度の活用である。それからもう一つは、土地収用制度の活用である。

 後者の点についてはこの委員会とはちょっと離れますので、私は、前者の財産管理制度の活用ということについてきょう議論させていただきたいと思います。

 ここで、財産管理制度の活用ということの具体的な中身については、次のページにも書いておりますけれども、端的に、これは政府参考人の方からでも結構なんですが、従来の財産管理制度の運用と比べてどのように改善されたのかということを御説明いただけますでしょうか。

深山政府参考人 まず、財産管理制度における管理人候補者の拡大ということがございます。法務省としては、被災三県の地域の弁護士会、司法書士会に対する財産管理人候補者の推薦依頼を行いまして、約五百名の弁護士及び司法書士を不在者財産管理人の候補者として確保しているところでございます。

 また、裁判所から聴取したところによれば、各家庭裁判所における運用上の工夫として、復興事案に関係する自治体の不在者財産管理人の選任申し立てにつきましては、不在者の従来の住所地、これが本来の申し立てる裁判所ですが、のみならず、買い取り対象不動産の所在地の家庭裁判所への申し立てを認めること、また、一般的に添付書類としてさまざまなものを要求していますが、添付書類としては、買い取り対象不動産のみを記載した財産目録の提出を許容するといった柔軟な対応をとって、迅速な審判に向けた努力をしているということでございます。

 こうした迅速な審判に向けた努力のほか、各家庭裁判所では、「財産管理制度の利用に関するQ&A」を作成して自治体に周知するというような活動をしてきておりまして、こういった運用上のさまざまな工夫の結果、不在者財産管理人の選任申し立てから選任までの期間は、通常の事案ですと一カ月程度かかるところが一週間ないし二週間程度に短縮していますし、不動産の買い取りに必要となる不在者財産管理人の権限外行為の許可申し立ての手続につきましても、申し立てから許可までの期間は、通常の事案ですと三週間程度かかるものが一週間程度に、それぞれ短縮しているという形で改善が進んでいると承知しております。

階委員 今、従来長くかかっていたものが大分期間が短縮されますというお話だったんですが、その前提としては、財産管理人の候補者である弁護士さんとか司法書士さんに容易にアクセスできること、それから家庭裁判所での審理がすぐに行われること、つまり裁判官がいることだと思っていますけれども、資料の通し番号五ページで、「加速化プログラムの具体的内容」ということで幾つか箱がありまして、上から四つ目の箱に、「財産管理人の候補者の確保・拡充」という見出しで、岩手県は百五十七人ということが書かれております。

 弁護士、司法書士の中で財産管理人の候補者がこれだけいると、何となく十分じゃないかというふうに思われるかもしれませんけれども、私は岩手県なので、地域の事情を申し上げますと、岩手県の場合、東北新幹線沿線、つまり内陸の方は縦にたくさん弁護士とか司法書士さんがいるんですが、被災地であります沿岸、リアス式海岸に沿ったところにはほとんどいないと思うんですね。

 その点について、まず事実関係として、沿岸にどれだけの弁護士さん、司法書士さんがいるのかということを教えていただきたいのと、それから、家裁の支部とか出張所についても、久慈市とか宮古市とか大船渡市にしかないというふうに認識しておりますけれども、それぞれについて、常駐の裁判官というのはどれだけいるのかということを事実関係として教えてください。

深山政府参考人 まことに申しわけないんですけれども、今手元で、私のところでわかるのは、岩手県について、弁護士さんが六十三名、司法書士さんが九十四名が候補者として確保されているということ……(階委員「それは聞いていない」と呼ぶ)それで、その内訳ですよね。その地域ごと、あるいは都市ごとにどういう配置になっているかということは、申しわけないんですけれども、今ちょっと手元に資料がございません。

階委員 恐らくそんなことだろうなと思って私も聞いたんですけれども、やはり、本当にこれが短期間でワークするというためには、そこまでちゃんと調べた上で言っていただかないと、百五十七という数字だけをひとり歩きさせるのは私は問題だと思います。

 それから、裁判官の常駐の数字もわからないんですか。これは最高裁かな。

深山政府参考人 もちろん、最高裁に聞けばすぐわかることなんですけれども、私自身は今、手元に正確な数字を持っておりません。

階委員 具体的に、弁護士、司法書士、裁判官へのアクセスが本当に可能かどうかということをちゃんと関係省庁である法務省とかあるいは最高裁の方でも調べていただいた上でこういうプログラムをつくっていただかないと、また被災地から不満が上がってくる。いつも後手後手で、不満が上がってくると、またそれに対応ということになるので、私はそういう姿勢は問題があると思っています。

 その上で、私が申し上げたかったのは、このようにアクセスが容易かどうかというのが判然としない、そうであれば、やはりなるべく不在者財産管理人が少なくて済むような、もし不在者財産管理人が、例えば、一つの土地に対して権利者が複数いて、その複数の権利者が行方不明だった場合に、現行制度だと普通は不在者一人一人について管理人を選ぶんですけれども、これが少なくて済むようにするために、一人でも足りるというようなことにすれば、司法書士、弁護士、裁判官が少ない中でもこういう財産管理制度を円滑に進めることができると思うんです。

 そういう複数の不在者に同一の不在者財産管理人を選任する運用をするべきではないかと思っておりますけれども、この点について、大臣からお願いします。

谷垣国務大臣 できるだけ不在者財産管理人の数を減らして有効に働いていただこうという御提案でございますが、例えば共同相続人の中に複数の不在者がいる場合、これは利益相反があるということも多々あるわけですね。したがって、そういうことを考えますと、原則としては不在者ごとに異なる管理人が選任される仕組みに今なっているわけで、それは十分な根拠があるのではないかと私は思っております。

 それで、確かに今委員がおっしゃったように、岩手県の沿岸部でどれだけすぐに人が確保できるかというのは、私ももうちょっとよく勉強してみなければわからないんですが、けさ、こういう御質問をいただいて、事務当局に聞いてみますと、今、不在者管理人が三十件ぐらい被災地で選任されているということのようでございます。

 それで、問題は、それがもっともっとどんどんふえてくるのか、あるいはどこまで必要性があるのかということでございます。

 確かに、盛岡にはいるけれども久慈にはいないとかいうことになるとアクセスは若干難しいところがあるかもしれませんが、今三十件程度ということであれば、先ほどの数字の上ではかなりまだゆとりがあるのではないかと私は思っておりまして、直ちにそういう利益相反があるような場合に一人の管財人に絞らなければならないという状況では、そういう必要性があるのかなというのは、私は、委員の御質問にもかかわらず、まだ十分得心はできていないんです。

 それから、遺産分割がまだ終わっていない場合に、同一の管理人が複数の不在者を代理することになると、利益相反、先ほど申し上げたように、十分に保護することができなくなるので、これは引き続き財産管理人の選任状況もよく見ながら、不足が見込まれる場合どうするかというのは、もう少し我々も具体的に詰めて考えたいと思っておりますが、直ちに一人の管財人に絞る必要があるのかどうか、ちょっとまだ私は十分得心していないという状況でございます。

階委員 三十人というのは、恐らく自治体が選任を申し立てているケースだと思いますけれども、これから先、民間の方でもいろいろな土地の売買とかが行われてくる中で、同じように行方不明の権利者がいる場合というのもあると思うんですね。そうしたところでも、不在者財産管理人を選ぶことが問題になってきます。

 また、自治体の方でも、この間、釜石の鵜住居というところでモデルケースをやって、不在者財産管理人の申し立てをどうやってスムーズにしていくかということを検討して、ようやく結論が出たばかりですので、これからそのモデルケースを広めていくという段階ですので、これからが本番になってくると思うんですね。

 ですから、今の段階で足りているとはいっても、これからどんどん不在者財産管理人のニーズというのは高まってくるので、足りなくなってから手を打つのではなくて、早目早目に手だてを講じなくてはいけないと思っています。

 それで、運用では不可能だということで、資料四、通し番号でいうと六ページから七ページというところをごらんになっていただきたいんです。

 民主党の中で被災地の議員が中心となって、議員立法で土地の処分の迅速化に関する法律案というのをつくりました。この通し番号六ページの一番下に、「復興整備事業に係る不在者財産管理人に関する民法等の特例等」ということで書かせていただいております。

 これは、不在者財産管理人が要するに利益相反という問題があるがために個々の権利者ごとに選任されなくてはいけないというネックがありますので、私どもは、民法百八条という利益相反を防ぐための規定について特例を設けまして、利益相反が類型的に生じる場合ではあるけれども、この場合、つまり、復興のための用地を取得するという大きな公益的な目的があれば、共同相続人全体の利益を害さないような手だてを講じた上で、不在者財産管理人は一人でもいいですよというような仕組みを設けようとしたわけです。

 このような制度を新たに設けることについて、この委員会ではなくて復興特別委員会の方で、前国会で私は質問したわけです。それで、根本復興大臣の方から、そういう制度が可能かどうか、理論上しっかりと詰める必要があるというふうに答弁されたので、法務省の方に、何がこの制度をつくる上で支障になるのかということを尋ねたところ、次の資料五というところなんですが、法務省民事局から回答が来ました。

 ここで言っているのは、まず、通し番号八ページのところですと、真ん中あたりですけれども、「しかし、土地等の財産を共有する複数の不在者に同一の不在者財産管理人を選任することは、遺産分割以外の場面であっても、原則として双方代理の規定の趣旨に反することから相当でないところ、遺産分割協議は、以下のとおり、共同相続人等の間で利害の対立が先鋭化しやすい場面である。」ということで、以下、具体的な利害対立が先鋭化しやすい場面を挙げています。

 ただ、私どもとしては、この双方代理の規定の趣旨に反するということは重々承知の上でその特例措置を設けようとしているわけでありまして、この規定があるから問題で、だめなんだというのは、私は、ちょっとためにする議論ではないかと思っています。

 次のページ、通し番号で九ページ目の最後に、下から三、四行目に、「仮に、第六条第一項」、この第六条第一項というのは、私どもの法案で、さっき指摘した民法の百八条の特例を設けるというところなんですが、「仮に、第六条第一項を設けたとしても、選任された弁護士等不在者財産管理人に不可能を強いることにならないかが問題となる」というふうに書かれていますけれども、そこは、不在者財産管理人が、彼らの任務としては、法律に基づいて、利益相反の類型的に生じる場合ではあるけれども、公益のためにちゃんと仕事をするんだということを認識してもらえれば、特段問題ではないというふうに考えております。

 こういうような見解をちゃんと法務省民事局というクレジットが入った形で出してきたことに対しては非常に敬意を表しますけれども、ただ、ちょっとこの中身では私は納得しかねておりまして、何とか、被災地の切実なニーズに応えるためにも、制度の見直しということについて大臣の方でも検討そして実行に進んでいただけないかということをお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

谷垣国務大臣 階委員の問題意識は、今御説明をいただいてよくわかりました。今の階さんのお話も、民法百八条の趣旨は趣旨としてもちろんあるんだけれども、より大きな公益目的のために、それを乗り越えることが必要ではないかという御議論ですよね。

 ただ、私は、百八条はただ漫然と置かれているのではなくて、やはりそこに利害対立が生じて、その法務省の意見書にも書いておりますが、実際、選任されたけれども、その利害対立を全く無視するわけにはなかなか代理人としてもいかない場合が多いし、それではかえって紛争が拡大してしまうという場合も多いのではないかというふうに、私は、委員の御意見にもかかわらず、今のところはそのように考えております。

 そうしますと、委員の問題意識にお応えするのは、先ほど、やはりもっとそういう財産管理人になるような方にアクセスをしやすくする、あるいはその数を確保する、そういうことによって物事が滞らないようにするということがまずやるべきことかなというふうに考えておりまして、先ほどおっしゃったように、三十件弱というのは、ちょっと階さんのお感じになっているところとは違うのかもしれません。我々もさらにそこはよく見て、これは裁判所や司法書士会やあるいは弁護士会に働きかけるということもさらにやらなきゃならないのかもしれません。その辺はよく見ていきたいと思っております。

 現状では、階委員の御議論でございますが、ちょっとそこのところ、我々はまだ踏み切れないものを感じております。

階委員 確かに、リスクという点でいえば、不在者財産管理人、利益相反の立場に置いたときに、なかなか個々の不在者の利益を守れないんじゃないかということはあるのかもしれません。

 ただ一方で、では、一人に一人、不在者財産管理人を選んだからといって、行方不明者の利益をしっかり守れるのか。私は、どっちにしろと言ったらちょっと語弊がありますけれども、不在者がどういう権利を持っているのかということはなかなか周知されない、また知り得ないことだと思っていますから、複数選んだからといって、どれだけその利益の保護に資するのかということがあると思っています。

 であるとすれば、やはり被災地の復興、今本当に、復興を加速化するということで、安倍内閣でも最優先で取り組むということですから、やはりここは復興を最優先にして、今申し上げた問題についてはちゃんと前に進めるべきではないかというふうに思うんですが、改めてどうでしょうか。

谷垣国務大臣 要するに、権利者の意思が明確でない場合にどう進めていくかという問題ですよね。

 確かに、所在不明の方、それから生死不明のような方々の問題はどう処理するのかというのは、単に不在者財産管理人を置くというだけではなかなか解決しない問題があり得るだろうとは思います。しかし、そこまで今踏み込むことができるのか。やはりその不在者財産管理人を活用するというところまでしかまだ私どもの頭は行っていないことも事実でございまして、そのあたりは、きょうの階委員の問題意識も私ども頭の中に置きまして、さらに問題点はどこにあるのかということはよく研究してまいりたいし、見てまいりたいと思っております。

階委員 ありがとうございます。

 ちょっと論点がずれますけれども、被災地で、地権者の中には御高齢の方もたくさんいらっしゃいます。それで、身寄りがない方とかもいらっしゃいます。そういう高齢の地権者が成年後見人をどの程度利用されているのかということをお聞きしたいんです。

 きょう、ちょうど昼に、日本司法書士政治連盟の院内集会というのがあって、成年後見制度利用促進法について皆さんに広めたいということもあるようですが、その前ぶれというわけでもないんですけれども、被災地の中での成年後見人の利用状況について、おわかりになっていることを教えてください。

深山政府参考人 高齢の地権者のうち、どの程度の者が成年後見制度を利用しているかということについては、実は正確なデータは把握しておりません。そういう形での統計数字がありません。

 ただ、成年後見制度全体の利用状況については最高裁判所の方で把握していて、事務総局の家庭局が実情調査というのを毎年やっておりますけれども、二十四年中に後見等が開始された者、これは、成年被後見人、被保佐人、被補助人、任意後見の本人と全部含みますが、この総数が一年間で三万一千四百五十六人でございます。これは、男性が一万二千六百二十九人、女性が一万八千八百二十七人と、女性の方がちょっと多くなっています。

 この一年間で後見等が開始された者のうち、六十五歳以上の高齢者が占める割合は、男性については八千四百十九人、割合で約六六・七%、女性については一万六千二百二十七人、割合にして八六・二%でございます。これは全国的な数字でございます。

 細かく言えば、被災地の、被災三県それぞれについてのデータもございますが、とりあえずは、まず全国はそういう傾向で、被災地もほぼ同様、細かく言えばともかく、ほぼ同様の傾向でございます。(階委員「人数は」と呼ぶ)

 同じく二十四年で、被災地、被災三県で、例えば盛岡、つまり岩手県では、男性が八十八名、女性が百六名、後見等が開始していますが、そのうち高齢者が占める数ですけれども、男性については五十四人、女性については八十三人でございます。

階委員 大臣におかれましては、高齢社会でございますし、被災地でもこういう問題は起きると思いますので、成年後見人の制度についてもよろしく御賢察、お願いしたいと思っております。

 次のテーマに移ります。死刑制度についてお聞かせください。

 まず、事実関係ですけれども、谷垣法務大臣になられてからの死刑執行の状況を教えていただけますか。

稲田政府参考人 谷垣法務大臣が御就任になられましたのが昨年の十二月二十六日であったと思いますが、御就任後、本年の二月二十一日に三名、本年四月二十六日に二名、本年九月十二日に一名の死刑がそれぞれ執行されているという状況でございます。

階委員 それで、死刑制度についてなんですけれども、ことしの五月、私は別のテーマで国連の拷問禁止委員会を取り上げましたけれども、この国連拷問禁止委員会の方から死刑制度についても勧告が行われています。それは御存じでしたでしょうか。大臣、それは御存じですか。

谷垣国務大臣 勧告があったことは承知しております。

 それから、ちょっと先ほどの答弁の中で、一部管財人と言いましたのは、不在者財産管理人の言い間違いでございますので、訂正させていただきます。

階委員 勧告、死刑制度については幾つかあるんですけれども、一番最後の方に、死刑を廃止する可能性を検討することというのもあります。

 こういった勧告も受けて、大臣として、死刑制度について、廃止する可能性を検討するというようなお考えはありますでしょうか。

谷垣国務大臣 私は、この死刑の問題については、法務省なり法務大臣が主導してこうせよああせよということではなくて、国民の中でどういう議論が起こってくるかということがまずあるべきだと思っております。私のところにも、特に死刑制度に反対される方々がしばしばおいでになりまして、そのお考えも伺っており、またあるいは、死刑を既に廃止した国から大使などが来られて、そのような御意見をおっしゃることもございます。

 しかし、私は、今の段階は、まず国民の中でどういうふうにこの問題について議論が行われるかをまだ見守る段階だと思っておりまして、積極的に法務大臣として、あるいは法務省として主導してそのような議論を進める段階ではないと考えております。

階委員 大臣の御意見というよりは、世論の動向を見た上で決めていきたいということに聞こえたんですけれども、大臣の死刑制度に対するお考えといいますか、肯定的なのか、あるいは否定的なのかということはございますでしょうか。

谷垣国務大臣 まず、私は、個人の意見というよりも、法務大臣でございますから、現在の法制度の中で裁判所が判断をしてきたこと、これはやはりきちっと守るべきだというふうに思っております。したがいまして、法務大臣としては、きちっと死刑を、もちろんこれは極刑でございますから慎重に判断を加えなければなりませんが、執行していくことが私の職責だ、こう考えております。

 その上で、死刑に関しては、もう今さら申し上げるまでもありませんが、賛成論、反対論、種々の議論がございます。これは、哲学的にやっていくと尽きることのない議論があると存じますが、私は、死刑制度というものが日本の治安あるいは安心、安全を守る上で重要な役割を果たしてきたというふうに認識しております。

階委員 私も自分の考えを申し上げますと、私は、犯罪被害者支援というのを弁護士時代からやってきまして、重大犯罪で御家族を亡くされた方のお話とかを聞く機会がありまして、やはり、その被害者の方が味わった苦痛とかその御遺族の方の心情を思うときに、やはり死をもってしなければ償い切れない罪というのはあるというふうに考えております。

 それを国家による殺人と見るかどうかというのは、また私は別なんだと思います。死をもって償わなくてはいけない罪があるときに、もし自分がそういう罪を犯したならばみずから死を選ぶであろうと思うんですが、なかなか人間、そんなにみずから死を選ぶということは容易でないものですから、それに対して、国家があえて、本来は死をもって償うときに国家が余りかかわらない方がいいのかもしれませんけれども、やむを得ず国家がかかわらざるを得ないということなのかなと思っております。

 ただ、国家がかかわる場合に前提となるのは、冤罪は絶対にあってはならないということで、冤罪をなくすことをまずしっかり確保した上で、死刑執行というのはやむを得ざる場合には行ってもしようがないのかなというのが今の私の見解です。

 その上で、刑訴法四百七十五条一項というので、法務大臣が死刑執行命令をすることになっています。先ほど大臣は、大臣として法を守るんだとおっしゃっていましたけれども、要はこの条文を守るということなんだと思いますが、法務大臣が死刑執行命令をするという刑訴法四百七十五条一項の趣旨はどういうものなのかということを、これは事務方でも結構です、御説明いただけますか。

稲田政府参考人 刑事訴訟法四百七十五条第一項は、死刑が人の命を奪う極刑でありまして、一旦執行されると回復が不能であるということから、その執行手続を特に慎重にし、法務の最高責任者であられる法務大臣において、死刑判決に対し、改めて再審、非常上告などの非常救済手続をとる必要の有無を確かめるなど慎重な手続をとった上で執行に移ることが相当であるとの趣旨から、死刑の執行については、通常の裁判の執行は検察官の指揮のみをもって行うとされている刑事訴訟法四百七十二条の例外を設けたというふうに解釈されているところでございます。

階委員 死刑判決が確定するまでには、場合によっては最高裁の判断も経ているわけですね。それを、さらに慎重を期すために、法務大臣、谷垣大臣は違いますけれども、場合によっては法律家とは全然縁のないような政治家が判断して、最高裁の判断を覆すこともあり得るわけですよね。

 この制度について、もしこれをちゃんと、その本来の趣旨に基づいて慎重に慎重を重ねて適切な判断をさせようということであれば、やはり法務大臣というのはそれなりに、それなりにと言ったら語弊がありますね、法務大臣としてはやはり見識が求められますし、命令書にサインするまでにいろいろ調べたり、あるいは確認したりということは必要かと思うんです。

 谷垣大臣のもとで死刑執行が行われてきたわけですけれども、そういう死刑執行命令を発令する際に大臣が留意されている点がございましたら、教えていただけますでしょうか。

谷垣国務大臣 これはまず一般論になりますが、先ほど申し上げたように、法治国家のもとで裁判所が示した判断というのは基本的に尊重する必要があるだろうと思っております。ただ、他方、これは極刑でありますから、自分なりに慎重に判断していかなければならないということも考えておかなければなりません。

 それで、やや私的な感情になりますが、私は今まで死刑執行を命令してまいりまして、その都度、関係書類は非常に丁寧に読んだつもりでございます。そして、そのときに感じますことは、こんな幸せな育ち方をした人間が何でこんな凶悪なというようなことを感ずることは今まで一度もありませんでした。つまり、やはりこれは非常に厳しい成長過程を経てきたなと思います。だから、やや感傷的な言い方になるかもしれませんが、こういう生き方しかできなかったのかなという思いを持つこともございます。

 それで、私はもちろん弁護士の出身ではございますけれども、長い間政治の場におりまして、練達の刑事裁判官であるとか検察官、あるいは刑事弁護を長い間やってこられた方のそういう専門的な見識からすれば、私ははるかに劣ると自分でも思っております。

 しかし、三十年政治の場にいた者が、やはりそれなりの、また裁判官や検察官と違う目で、こういう人生しか送れなかったんだなという、つまり、その犯罪者の生きざまと言うと変な言い方になるかもしれませんが、そういうものもやはり誰か理解しなければいけないんじゃないか、こういう思いで記録をできる限り丁寧に読んで、私なりに納得をして命令をする、そのことは心がけているつもりでございます。

階委員 率直なお話をありがとうございます。

 今大臣の方からも謙虚な御発言があって、刑事弁護の専門家に比べれば、自分はそこまでには至らないということもおっしゃっていただきました。ただ、政治家はやはり国民の代表でもありますから、国民の目で見てこの死刑というのはいいのかどうかというのも判断するんだと思います。

 国民の目ということでいえば、裁判員制度が導入されまして、まさに国民から選ばれた裁判員が今の制度のもとでは死刑判決も判断できるということなんですけれども、制度開始以来ことしの六月までに、裁判員裁判で死刑が宣告されたのは二十人ということを聞いています。

 私は、民意を反映するといいますか、国民の目で死刑を判断するということであれば、大臣の死刑執行命令ということもあるわけでございまして、一般国民にも国民の目で判断させるために死刑という極刑を判断させるのは、酷といいますか、ちょっと過重ではないかなと思っております。

 私も弁護士出身ですので、死刑になるかどうかというときに無罪を主張するケースというのも多々あって、無罪と死刑というのはまさに天国と地獄のような違いでございまして、しかも、そういう死刑か無罪かを争うような事件というのは、膨大な証人であるとか記録が出てくるわけでございます。それを裁判員に判断させるのは、なかなか私は酷ではないかと思っていますが、裁判員に死刑を判断させる必要性があるのかどうかということについて、大臣の御見解をお願いします。

谷垣国務大臣 今の階委員の御意見は、裁判員制度の存在にもかかわってくる問題じゃないかと私は思っております。

 確かに、死刑が求刑されるような事件で裁判員に判断を求めるというのは、非常に重い責任と申しますか、重い判断を裁判員にお願いすることにならざるを得ないと思いますね。しかし、裁判員制度というものは、もともと、裁判と裁判内容に対する、司法に対する国民の理解をさらに深めていくためにこういう制度を採用しようとした。

 そういう中で、死刑の制度というのは最もある意味では国民の関心が深い事件だと思います。死刑を求刑されるような事件というのは、やはり相当世間の耳目を聳動させ、人々の治安感情や何かにも大きな影響があるわけですから。裁判員制度が取り入れられるとすれば、一番国民に関心のある事件、ここに裁判員に判断を仰ぐというのは、私は、制度を取り入れた趣旨からしますと、それを避けていて、果たして裁判員制度というものが十分に機能するだろうかという感じも実は持っております。

 委員がおっしゃるように、確かに重い負担をお願いしているということは、私もそれはそう思いますが、一方で、裁判員制度を取り入れるという決断をしたのなら、今のあり方は一つの方向じゃないかと思っております。

階委員 そこはちょっと私は意見を異にするところでございまして、特に先ほどの、法務大臣の死刑執行命令という制度がある以上は、そこである程度国民の視点というのは取り入れられているのではないかと思っていますから、ちょっとそこはまた御議論させていただければと思っております。

 次に、取り調べ可視化についてなんですが、今死刑制度について御議論させていただきました。死刑制度を現状存置するという立場で大臣もおられるというふうに承りましたので、そうであれば、私が申し上げたように冤罪を防がなければならない。無辜の不処罰と言いますけれども、そういうことを絶対に防ぐためにも、違法、不当な取り調べが行われて、虚偽の自白が起きるようなことがあってはならないと私は思っています。

 そこで、取り調べの可視化の必要性、なおのこと十分に我々は自覚して取り組んでいかなくてはいけないと思うんですが、その点について、大臣、いかがでしょうか。

谷垣国務大臣 先ほどから委員が御議論されておりますように、死刑の場合、やはり冤罪というものがあってはならないということが一番の基本だろうと思います。

 それで、可視化の必要性ということをおっしゃったわけですが、現在、検察におきまして、死刑に当たる事件というのは、たしか内乱罪を除きまして全て裁判員制度の対象事件となっておりまして、これは今試行ではございますが、全て録音、録画をしながら取り調べをする、捜査を進めていくという体制をとっております。

 それで、録音、録画制度等のあり方については、今法制審議会で御議論をお願いしているところでございます。この特別部会がことし一月につくりました基本構想では、録音、録画の必要性が高い事件を制度の対象とするのが相当とされておりまして、その具体的な範囲は、今委員が御指摘になったようなことも含めて判断を、これから議論をされ、整理されていくものというふうに私は考えております。

 この問題については、取り調べに与える影響や、国民の安心、安全を求める期待にも十分に配慮しながら、バランスのとれた検討を行う必要があると思っておりますが、いずれにせよ、今法制審で議論をお願いしておりますので、私としては、そこで十分な議論が行われることを期待しながら見守っていくというのが今の私の立場でございます。

階委員 その特別部会の審議状況について、これは事務方で結構ですので、二つお聞かせください。

 まず、六月十九日の私のこの委員会の質疑で、私の方から、拷問禁止委員会で取り調べの可視化を進めるようにという勧告が出されて、その勧告については、ぜひ特別部会の委員とか幹事の方に資料としてお渡ししてくださいということをお願いして、稲田政府参考人の方からは、それを準備が整った段階で行うという答弁でした。この点について、行われたのかどうかというのが一つ。

 もう一つは、六月十九日の質疑の段階では第二十回の特別部会でしたけれども、その後の開催の状況と、どういう議論が行われているのかということを簡潔に教えてください。

稲田政府参考人 まず、拷問禁止条約の委員会の最終見解の点についてでございますが、今御指摘の法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会におきましては、来月、十一月の七日に第二十一回の会議が開催される予定でございます。御指摘の最終見解につきましては、その会議に先立ちまして、事務当局から、特別部会の委員及び幹事の方々に対しまして各種資料を事前配付いたしておりますが、その際に、法務省において作成した仮訳をあわせてお渡しすることにいたしております。現に、一部の方には既にお渡ししております。

 次に、部会の進行の関係でございますが、今申し上げましたように、来月の七日に次回会議が開催される予定でございますが、六月の会議の次は実はその二十一回の十一月七日になるわけでございまして、その間は、作業分科会、これは二つに分かれて分科会を行っておりますが、これがそれぞれ四回ずつ会議を持ちまして、基本構想の中で定められております検討事項につきまして、鋭意専門的立場から詳細な議論をされているという状況にございます。その結果が第二十一回と第二十二回で報告がなされ、それを踏まえて御議論をいただくことになっております。

階委員 私の方から、六月十九日に、もう第二十回まで特別部会が開かれて、早くこれは法制化を進めた方がいいのではないかということも申し上げました。

 それで、民主党では、きょうお配りしている資料の六、通し番号でいうと十ページということで、議員立法で取り調べ可視化法案をつくって前国会に提出しましたけれども、残念ながら廃案に終わっております。

 中身を簡単に言うと、今現在試行が行われている取り調べの可視化について法制化をするということと、これに加えて、取り調べ状況の録音、録画の努力義務を全ての事件について課していく。それから、被疑者が逮捕、勾留されている事件において被疑者が申し出た場合に、捜査機関による取り調べ状況の録音、録画を義務化する。それから、これは大臣から御批判を受けましたけれども、逮捕、勾留されていない被疑者及び参考人について、みずからによる取り調べ状況の録音を可能とするということなどを盛り込んだ法案です。

 残念ながら、この法案は廃案になっていますけれども、今政府の方でも検討を進めているようでございますが、前回の質疑の段階では、取りまとめの時期とかあるいは法制化の時期について、大臣からは、まだ申し上げる段階に至っていないという御答弁でしたけれども、今この時点で、法案化の大体の時期とかいうことをお示ししていただけることは可能でしょうか。

谷垣国務大臣 申しわけありません。法制審議会、この部会の議論が、いつの段階で、どのようにまとめられるか、まだ私としてお答えできる段階ではございません。

階委員 ぜひそこは早急に、村木さんの事件が起きて、取り調べの可視化を進めていかなくてはいけないということが世の中で大きな意見となってきてから大分たちますので、進めていただければと思っております。

 次のテーマですけれども、ちょっと次のテーマは時間の関係で割愛しまして、また犯罪被害者支援については別の場で御議論させていただければと思います。

 今国会でやはり私は早急に手当てをしなくちゃいけないというのは、非嫡出子の相続分の民法の規定の違憲判断について是正措置をとるということだと思っています。

 大臣が所信的挨拶で、嫡出でない子の相続分を嫡出子の相続分と同等とするなどの措置を講ずる法律案を今国会で提出する予定と述べましたが、まだ提出されていないようです。その時期というのは、会期も短いわけですけれども、いつごろを考えていらっしゃいますでしょうか。

谷垣国務大臣 法務省としては、ああいう最高裁の決定を受けまして、嫡出でない子の相続分を嫡出子の相続分の二分の一とする部分を削ること等を内容とする改正法案を今国会に提出しようと、今準備を進めているところでございます。

 それで、提出時期ということでございますが、現在、手続を進めている最中でございまして、まだ具体的な提出時期をいつだということはちょっとはっきり申し上げにくい段階でございますが、速やかに提出できるように努力してまいりたいと思っております。

階委員 報道とかで漏れ伝え聞いているところによると、自民党の中で反対意見があるということだそうです。

 ただ、法案の成立がどんどんおくれていくということになると弊害があるのではないかと思っておりますが、その法案がおくれた場合の弊害について、これは事務方で結構ですので、どういうことが考えられますか。

深山政府参考人 問題になっています民法の規定は、相続に関して私人の間の法律関係を規律する規定でございまして、今回、この規定が違憲と判断されたわけですが、この規定をそのまま放置するということになりますと、国民にとっては、相続に関して従うべき準則が不明確になる。条文上は二対一というのが残っていて、しかし裁判所は、これは違憲、無効であって、裁判所に行けば一対一になる、こういう状態で、国民の間に混乱を引き起こすということになりかねないと思っております。

 こうした国民生活への混乱といった弊害が生ずることが想定されるために、法務省としては、速やかに改正法案を今国会に提出できるよう努力しているところでございます。

階委員 ですから、早く提出するということだと思うんですね。

 確かに、立法府に属する個々の議員は、いろいろな見解があるでしょう。また、提出された法案が通るかどうかはその議員の賛否によるとは思うんですけれども、ただ、行政府としては、最高裁に違憲判断された法令を放置しておくということは、やはり憲法上問題があるのではないかと思っています。

 なぜならば、憲法七十三条の一号ですか、法律を誠実に執行するのが内閣の義務だというふうになっておりますが、違憲の法律を誠実に執行するというのは、九十八条一項あるいは九十九条の、憲法が最高法規で、違憲とされる法令には効力がない、あるいは憲法尊重擁護義務を全ての公務員が課されるということに抵触するというふうに思いますので、これを行政府としては早く閣議決定して国会に提出するということが正しいあり方であって、自民党の中の状況がどうであれ、それは国会の中の話として、行政府としては、すぐ国会に提出して、この委員会の場で議論に付するというのがあるべき姿ではないかと思っておりますが、この点、いかがでしょうか。

谷垣国務大臣 最高裁判所で法令違憲の判断があった場合には、行政府としては、その趣旨に従った措置をとることが期待されているというふうに考えております。また、内閣法制局においても、過去に同様の見解を述べていると考えております。

 ただ、今委員のおっしゃったように、直ちにとおっしゃいましたが、議院内閣制のもとでどのようにその意思を形成していくかというのは、やはり手順、段取りが必要だと私は考えております。今はその手順を速やかに進めるように努力しているところでございますので、今申し上げられることはそこまででございますが、努力をさらに継続したいと思っております。

階委員 まず、違憲と判断された法律を行政府が誠実に執行するということはあり得ないことでございますので、早くこの矛盾を解消していただくように行政府として対応していただければと思っております。

 あと、平成八年、ちょっと古い話ですけれども、法制審議会の答申では、非嫡出子の相続分規定の見直しのほか、再婚禁止期間の短縮や選択的夫婦別姓制度の導入についても盛り込まれたということを聞いておりますけれども、これについて、つまり、再婚禁止期間の短縮や選択的夫婦別姓制度の導入については大臣はどのようにお考えになるのか。

 安倍内閣のもとで女性の活躍の場を拡大していこうということが成長戦略の柱としてうたわれているようですけれども、それとの関係でいうと、特に選択的夫婦別姓制度というのは女性の活躍の場の拡大にも資するのではないかと思いますが、この点について、大臣、どのようにお考えになりますか。

谷垣国務大臣 委員がおっしゃるように、確かに法制審議会が過去にそのような答申を出されているということは私も十分承知しております。

 ただ、今回考えておりますのは、先日の最高裁決定、要するに民法九百条第四号ただし書きの規定をめぐる問題で、まず法案を、改正の案をお出ししたいと考えております。そして、違憲状態を速やかに是正していきたいと考えているわけでございます。そのため、今おっしゃったような案件については、一緒に行うということは今のところ考えておりません。

 そして、これらの問題はいずれも、我が国の家族のあり方であるとか、そういった問題に深くかかわる問題でありまして、国民の間にも多様な意見があると思います。その辺を含めて十分に検討しなきゃならないことだというふうに考えております。

階委員 それでは、最後のテーマですけれども、法曹養成制度改革について少しお聞きします。

 資料七をごらんになってください。通し番号でいくと十一ページなんですが、「法曹養成制度改革の推進について」。

 二十五年七月十六日の決定でございますけれども、この法曹養成制度改革の推進についてということなんですが、法曹養成制度改革は司法制度改革の中で一旦行われた。ところが、それが現実的にうまくいかなかったということで、今それを見直そうとしていると思っています。

 そういう中で、この文章の「はじめに」の下の方を見ますと、「法科大学院を中核とする「プロセス」としての法曹養成制度を維持しつつ、質・量ともに豊かな法曹を養成していく」というくだりがありますけれども、何かこれは、今の法曹養成制度ではうまくいかなかったということを余り、十分に認識されていないというか、反省が生かされていないように思うんですけれども、何かこの文章についておかしいというふうに思いますが、この点はいかがでしょうか。

谷垣国務大臣 法曹養成制度につきましては、現在、法科大学院ごとの司法試験合格率のばらつきが随分甚だしいではないかとか、あるいは法曹志願者が全体として減少してきているじゃないかというような、さまざまな指摘がされているわけでございますが、今までいろいろ検討してまいりまして、ことしの七月に、先ほど委員が読み上げられた「法曹養成制度改革の推進について」ということを関係閣僚会議で決定したわけでございます。

 それで、この中では「法科大学院を中核とする「プロセス」としての法曹養成制度を維持しつつ、」ということを書いておるのが、反省が足らないじゃないかということでございます。

 私も、確かに問題はたくさんあると思いますが、あのときの改革は今までの養成制度に比べてかなりドラスチックな改革でありまして、そこに今、従来の制度とのつながりや何か、いろいろな問題が起きていることは事実だと思っておりますが、基本としてのプロセスということは維持していくというのが、やはり今までの議論の結論といいますか流れでございまして、私どもは、その上で問題点をできるだけ速やかに解決していきたい、こう考えているわけでございます。

階委員 時間が来ましたので、法曹養成の問題についてはまた次回ということで。

 本日はありがとうございました。

江崎委員長 次に、西田譲君から発言を求められております。西田譲君。

西田委員 ありがとうございます。

 こんにちは。日本維新の会の西田譲でございます。引き続き法務委員会ということで、よろしくお願い申し上げます。

 またこうして谷垣大臣と引き続きこの法務委員会の場で議論を深めさせていただくことを大変光栄に思っております。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 通常国会に引き続きまして、我が党、ウイングも広く、幅の広い質問が来ようかと思いますけれども、ぜひよろしくお願い申し上げます。

 さて、質問に入らせていただきます。

 昨日、大臣の所信的挨拶を頂戴いたしました。その中で、法務行政の取り組みについて触れておられたわけでございます。再犯防止、そして犯罪被害者の保護、出入国管理行政であったり、もしくは司法制度改革等、重要かつ喫緊の課題がさまざまあるわけでございますが、私の方では、その挨拶の中の一文をちょっと取り上げさせていただければと思います。

 尖閣諸島関係については、関係機関と連携し、適切に対応する、こういう一文が大臣の御挨拶の中にあったわけでございます。恐らくこのことは、法務省所管の中にあっては、入管行政並びに公安調査庁の業務に当たることについて触れられたのではないかというふうに思うわけでございますが、まず、きょうは入管局長にお越しいただいておりますので、これに関連して、具体的にどういうことなのかということについてお教えいただければと思います。

榊原政府参考人 お答えいたします。

 入国管理局におきましては、尖閣諸島関係事案に対して、早期の情報収集のほか、必要に応じて上陸防止活動や違反調査を行うなど、あらゆる状況に適切に対応するため、周辺海域において警戒警備を行っている海上保安庁の巡視船に入国警備官を乗船させ、海上保安官及び警察官とともに警戒活動に当たっております。

西田委員 御答弁ありがとうございます。

 この問題はまた改めてお伺いする機会を持ちたいと思います。具体的などういった活動ということについては、もう少し掘り下げることは次の機会にしたいと思うんです。

 次に、公安調査庁の分野について、この尖閣諸島関係の業務、具体的にどういったことを指されておるのか、お答えいただければと思います。

尾崎政府参考人 公安調査庁は、尖閣諸島関係につきまして関連情報の収集、分析を行うとともに、得られた情報や分析結果を必要に応じて適時適切に関係機関に提供しているところであります。

 なお、提供した情報等の具体的内容につきましては、今後の業務遂行に差し支えがありますので、答弁は差し控えさせていただきたいと思います。

西田委員 ありがとうございます。

 御答弁に限界があるというのは、その業務の内容上、十分理解をしているところでございます。情報の収集そして分析、尖閣諸島関係について行っていらっしゃるということでございます。

 これは確認でございますけれども、そういった業務のいわゆる根拠法というのは、破防法でよろしいのでございましょうか。

 破防法、いわゆる暴力主義的破壊活動を行った団体に対する規制措置をもって公共の安全に資するというものでございますよね。その中の第二十七条ですけれども、「公安調査官は、この法律による規制に関し、第三条に規定する基準の範囲内において、必要な調査をすることができる。」というところが、いわゆるその業務の根拠法となっているということでよろしいのでしょうか。確認でございます。

尾崎政府参考人 当庁の調査権限の根拠につきましては、委員御指摘の破防法の条文及び団体規制法の該当条文に基づいております。

西田委員 ありがとうございます。

 尖閣諸島周辺での情報収集、分析といったこと、公安調査庁の業務として、私も実はすんなり入ってくるわけでございますけれども、これは恐らく、例えば国際テロ要覧でございますか、発行していただいておったり、あるいはそういった要覧を発行するだけでなく、きちんと関係機関に対して、日ごろから、公安調査庁の、例えば国際テロに対する情報収集、分析の結果を情報貢献という形でされていると思うんですが、そういった活動があるからだと思います。

 そういった活動があるから私もすんなり入ってくるわけでございますけれども、実際、この国際テロリズムに対する調査といったもの、どういったことをやっていらっしゃるのか。お答えいただける範囲で結構ですので、教えていただけますでしょうか。

尾崎政府参考人 公安調査庁は、内外の関係機関との協力体制を強化するなどいたしまして、国際テロ組織等の動向に関する情報の収集、分析に努めるとともに、国内におきましては、国際テロとのかかわりが疑われる人物や組織の有無及びその動向に関する情報の収集、分析に努めているところでございます。

 なお、出入国管理法第二十四条の二に基づくいわゆる法務大臣のテロリスト認定につきましては、その第二項の規定によりまして、公安調査庁長官が意見を述べることができるとされているところでございます。

 得られた情報や分析結果につきましては、必要に応じ適時適切に関係機関に提供しているところでございます。

西田委員 ありがとうございます。

 今、出入国管理法に基づいて公安調査庁長官が大臣に意見をすることができるということも一つの調査活動の根拠であるというふうに私は理解したんですけれども、恐らくそういうことでいいのかと思います。

 そうなってくると、国際テロリズムに対するいろいろな公安調査庁の調査活動というのは、やはり今おっしゃった出入国管理法、そして、もう一度確認ですけれども、そういったことに関しても根拠法は破防法ということでよろしいのでございましょうか。

尾崎政府参考人 御指摘のとおり、破防法、それから団体規制法ということになります。

西田委員 ありがとうございました。若干ちょっとしつこく聞いてしまった感があるわけでございますけれども。

 さて、今国会でございますけれども、以前から総理が意欲的に設置をおっしゃっていらっしゃいました、いわゆる日本版のNSCでございますけれども、いよいよその設置法、この臨時国会に提出され、本日も特別委員会での審議が行われているのではないかというふうに思うわけでございます。

 私自身、さきの通常国会での法務委員会でも指摘をさせていただきました、アメリカのいわゆるNSCを模倣する形で、最初、日本版NSCの構想があったわけでございますけれども、それでは、なぜアメリカにおいてNSCがアメリカの外交防衛政策をリードできているのかといったことをしっかりと分析した上で模倣していかなければならないということを前回も申し上げたところでございます。

 まさしく、NSCでございますけれども、そのもとにCIAがあって、そのCIAが、NSAやDIAといった国防省の情報部門であったり、あるいは国務省のINRでございますか、そういう情報機関をしっかりと束ねている、総数で約十万人ほどの、情報機関からの情報収集をきちんとアメリカのNSCは束ねて、そして政策決定を行っている。当然そういった情報が上がってくるものに対して正しく処理できる、もしくは、こういった情報が欲しいといったものを正しく現場に伝えることができるという会議の能力、そういったものがあって初めて、アメリカではNSCがしっかりと機能しているのではなかろうかというふうに思うわけでございます。

 ですので、そういったことをきちんと踏まえて日本版NSCというものの設置に関して動いていかないと、単に形だけを持ってきた、これではまるでポチョムキン村のようになってしまうわけでございますから、そうならないように、危惧をしているところでもあります。

 さて、そういった観点からでもございますけれども、先週の本会議での質疑において、我が党藤井孝男議員から、総理に対して質問をさせていただきました。独立をした情報機関の設置が必要ではないか、総理に対してこういった質問をさせていただいたわけでございます。

 その際の総理の答弁は、情報機能の強化を図ることは大変重要だが、そのあり方については、さまざまな議論があるので、まずは、政府全体の情報収集・分析能力の向上を図るとともに、内閣の情報集約・分析機能を強化してまいりたいという御答弁であったわけでございますけれども、これは、端的に言えば、新しい情報機関を創設するのではなくて、既存の機関の能力を向上していこう、まずそこからやっていきたいということでございました。そのように私は解釈をしたわけでございます。

 アメリカにおいても、NSC、設置は一九四七年の国家安全保障法であって、その設置と同時にCIAが位置づけられているわけでございますね。一九四七年の国家安全保障法によって、NSCの設置と同時にCIAを置いて、情報収集をきちんと管理をやっていこうという体制をつくったわけです。

 CIAといいますと、歴代長官の中でも、アレン・ダレス長官なんて有名でございますけれども、まさしく、そういった歴代長官のみなぎる愛国心があってアメリカの情報機関が整っていったのではないか、私、このように勉強させていただいたわけでございます。

 やはりアメリカの形をまねるだけじゃなくて、日本も、なぜアメリカのNSCがうまくいったか、それはやはり設置と同時に独自の情報機関を設置したからだというところが大きいと思うんですけれども、この点、大臣、いかがでございましょうか。

谷垣国務大臣 確かに、私も、アメリカのNSCは、それと同時にCIAをつくったというふうに承知しております。

 日本における議論がこれからどういうところになっていくのか、まだ十分私も予測できないところがございますが、私も、この間の本会議で、総理が「まずは」とおっしゃったところはよく聞いておりました。

 ですから、いろいろな考え方があると思いますが、それを前提といたしますと、まずは、法務省では公安調査庁の情報収集・分析能力をもっとつけていく、頑張って広げていく、拡充していくということが、まず我々がやるべきことだろうと思います。

 それで、さらにそれに加えて、やはり政府全体の内閣の情報集約あるいはその分析機能を強化していきたいということもおっしゃっているわけでして、我々も、公安調査庁はそういう意味での情報コミュニティーの一環でございますから、その中での連携協力というのもさらに心を用いていかなきゃいけない、こんなふうに考えております。

西田委員 ありがとうございます。

 私も、総理の「まずは」という言葉、大変重要な三文字ではなかったかなというふうに思っているわけでございます。

 そして、今の大臣の御答弁、公安調査庁においても、その方針を受けて、機能を強化していく、情報コミュニティーの一員としてしっかりと役割を果たしていかなければならないというようなことをおっしゃいました。

 それを受けてでございますけれども、公安調査庁長官、日本の安全保障にとって本当に大切な時期に重要なNSCが設置されるわけでございますけれども、そこにおける非常に大切な情報コミュニティーの一翼を担う役割を持っているわけでございます。

 ほかでいえば外務省、警察庁もしくは防衛省、そういったところとまさに肩を並べて大切な役割を担うポジションに来るのではなかろうかと思うわけでございますけれども、今後どのようにNSCにおける情報コミュニティーのうまい循環に貢献をされていかれるのか、お聞かせいただければと思います。

尾崎政府参考人 審議中のいわゆるNSC法案におきましては、関係行政機関の長による情報提供等を定めた規定が設けられております。当庁もその中に含まれております。公安調査庁は、情報コミュニティーのコアメンバーの一つであり、今後とも一層的確な情報提供が期待されているというふうに考えております。

 公安調査庁といたしましては、これまでも、調査の過程で得られた情報、資料のうち重要なものにつきましては、官邸、内閣官房等に報告しているほか、適宜政府の関係機関に情報を提供しているところでございますけれども、今後とも、情報収集・分析能力の強化に努めまして、一層情報の面で貢献してまいりたいというふうに考えております。

西田委員 尾崎長官、ありがとうございます。大きな期待をしっかりと認識し、頑張っていくんだという心意気をお聞かせいただいたところでございます。

 しかし、私、その心意気は、まず心意気ありきだと思うわけでございますけれども、非常に大切なのはわかるんですけれども、では、果たして実際にどのように機能強化していくのかといったときに、実は、先ほど来しつこいほど確認してまいりました、公安調査庁が今までやってこられた、そしてこれからも破防法という根拠法に基づいて動いていくという部分に対して、どうしても心配を覚えるわけでございます。

 気持ちは立派であってもどうであっても、根拠法は今のところ破防法そして団体規制法になるわけでございます。昭和二十七年に破防法を制定されまして、これもさきの通常国会で私申しましたけれども、この六十年、一度も適用されたことがない法律でございます。

 これは破防法を適用するような事案がなかったからよかったねということでは決してなくて、前も申しましたが、公安審査会という盲腸組織が上に乗っかっているおかげで、オウムのときも適用されませんでしたし、そしてまた、今日、例えば、我が国民が拉致されている、そしてまたミサイルを向けられている、そういう北朝鮮という国家と密接な関係にあると既に認めている朝鮮総連に対しても適用できない。こういった形骸化した破防法が根拠法という中では、私、今後非常に心もとないというふうに思うわけでございます。

 そういった中にあっては、公安調査庁の今後の業務について、この破防法からいま一歩踏み出すような法整備といったものの必要性を感じているわけでございますけれども、長官、いかがでございましょうか。

尾崎政府参考人 公安調査庁といたしましては、将来設置されるであろうNSCからの政策的な情報要求に的確に応えるべく、情報収集・分析機能の向上を図りまして、できる限りの貢献をしていきたいというふうに考えております。

 なお、御指摘のような当庁の業務遂行に必要な法整備につきましては、その要否をも含めまして、法を執行する立場から検討を継続する所存でございます。

西田委員 長官、ありがとうございます。法を執行する立場からの検討を重ねていくということでございます。

 そういった状況の中で、また、今後NSCが本当に機能していくということを考えたときに、大臣からもぜひ御答弁をいただきたいと思います。私は、公安調査庁の業務というのは、破防法、団体規制法を根拠法としている心もとない状況から一歩踏み出すべきではないかというふうに考えるわけですが、大臣のお考えはいかがでございましょうか。

谷垣国務大臣 国家安全保障会議を創設しよう、これを機に、政府全体としても、もちろんその中に公安調査庁も含まれるわけですが、情報の収集・分析能力を高めていく、当然そういうことにならなきゃいけないわけですね。

 そのために、公安調査庁の、先ほどから、さらに一層研さんしていくということでありますけれども、現代的な要請に対応するために何をしたらいいのかというのは、さらに詰めて考えなきゃいけないと思っております。

 そういう議論も十分に我々も検討していきたいと思っております。

西田委員 ありがとうございます。前向きな答弁をいただいたと理解をしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 ただ、これは実は、先ほど階議員の質問の中でもちょこっと関連する考え方かなとも思うんですけれども、こういった問題、あくまで公安調査庁とはいえ行政組織の一つでございまして、行政組織である以上、やはり行政評価であったり監査あるいは情報公開といった分野についても怠りなく、機能強化とあわせて置き去りにしてはならない分野だと思いますので、そういったことに関しても、きちんとフォローする体制がなければ機能強化はできないということもあわせて申し添えさせていただきたいというふうに思います。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 さて、残りの時間で時効の問題についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 これもさきの通常国会の法務委員会で若干取り上げさせていただいたことでございます。また、新聞報道ベースでございますけれども、損害賠償の時効そのものについて特例を設けるべきだという議論がなされているというふうに私は存じているわけでございます。

 昨日の大臣の御挨拶の中でも、一番大事なことだと私は思うんですけれども、法秩序の維持、そして法の支配の貫徹、日本のこの開かれた自由な社会を守っていく上で最も大切な制度について力強く御挨拶をいただいたのではないかというふうに思っているわけでございます。

 言うまでもなく、法の支配というものが踏みにじられてしまいますれば、国民の自由であったり、生命財産、そういったものが擁護できないのは自明であるというふうに思います。当然、私たち国会議員においても、この国の国政に携わる立法活動、そして審議をするに当たって、長年、世代を超えて積み重ねられてきた、相続されてきた法秩序を破壊するような行為は決して許されるべきではないというふうに思いますし、また、この国の行政が、法治主義から逸脱していくのを看過するような怠惰であったり無責任、そういったことも許されてはいないというふうに考えます。

 さきの通常国会でも触れた時効の問題でございますけれども、時効という概念は、文明社会の英知、そして経験の結晶だというふうに私は考えておりますし、法秩序の上で欠かせない考え方、これこそが時効であるというふうに思います。

 大臣の御答弁でも、たしか三つの基本的な考え方というものを御披露いただいたのではないかなというふうに思います。

 一つが、権利の上に眠る者は保護しない。一つが、経過する時間軸の中で確立された法的安定性。一つが、実際の訴訟において何百年も前の話を持ち出されたのではかなわない。こういった時効に対する大臣の三つの基本的なお考えをさきの質疑では御披露いただいたのではないかと記憶しているところでございます。

 さて、そういった中で、民法の不法行為に係る損害賠償に係る時効の問題、いわゆる民法七百二十四条の定めについてでございます。

 民法七百二十四条、こうあるわけでございます。「不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。」と。民法七百二十四条の定めであります。

 きょうは、民事局長がお越しでございますので、まずこの立法趣旨を確認したいと思いますが、前段の三年の短期消滅時効の立法趣旨についてお教えいただければと思います。

深山政府参考人 御指摘のように、民法七百二十四条前段は、不法行為による損害賠償請求権は被害者が損害及び加害者を知ったときから三年間で時効消滅すると規定しているところです。

 このような三年間という短期の消滅時効が定められた趣旨は幾つかございます。まず、損害賠償の請求を受けるかどうか、どのような範囲で義務を負うのかなどが不明確である結果、加害者が不安定な地位に置かれる、それから、歳月の経過とともに被害者の被害感情も鎮静化すると考えられる、さらに、不法行為は、通常、未知の当事者間に、予期しない事故に基づいて発生するものであるため、歳月の経過とともに加害者の責任の有無や損害の立証は困難になる、こういった三つの点を考慮したものとされております。

西田委員 ありがとうございます。

 補足をしようと思って私も平成元年の最高裁の判示を持ってきておりますが、せっかく持ってきたので。平成元年十二月二十一日の最高裁でございます。民法七百二十四条後段の規定は、不法行為によって発生した損害賠償請求権の、失礼しました、これは二十年の方ですね。

 昭和四十九年十二月十七日の最高裁、これが三年の短期消滅時効について述べております。「民法七二四条が短期消滅時効を設けた趣旨は、不法行為に基づく法律関係が、通常、未知の当事者間に、予期しない偶然の事故に基づいて発生するものであるため、加害者は、損害賠償の請求を受けるかどうか、いかなる範囲まで賠償義務を負うか等が不明である結果、極めて不安定な立場におかれるので、被害者において損害及び加害者を知りながら相当の期間内に権利行使に出ないときには、損害賠償請求権が時効にかかるものとして加害者を保護することにあると解される」、まさしく民事局長に御答弁いただいたままでございます。

 続いて、後段の二十年の除斥期間についての立法趣旨についてもよろしくお願い申し上げます。

深山政府参考人 七百二十四条の後段では、不法行為による損害賠償請求権を、不法行為のときから二十年間で消滅すると規定しているところです。これは、同じ条文の前段の三年の短期消滅時効と相まって、不法行為をめぐる法律関係の速やかな確定を図る趣旨から、被害者側の認識を問わずに、一定期間の経過によって法律関係を画一的に確定させるため、損害賠償請求権の存続期間、すなわち講学上の除斥期間を定めたものであるとされております。

西田委員 ありがとうございます。

 これこそ先ほど申した平成元年十二月二十一日最高裁判決、まさに、最高裁でも同じように、今、民事局長に御答弁いただいた内容が確認をされているわけでございます。

 こういった立法趣旨を踏まえれば、つまり、どうであれ、特定の者に対して民法七百二十四条を適用しない特例、そういったものはこの立法趣旨に反する、もしくは立法趣旨を踏みにじるといったものであることは明確ではないかなと思います。

 結果として法秩序の維持にとって重大な危惧を持つわけでございますけれども、大臣の御見解をお聞かせいただければと思います。

谷垣国務大臣 先ほどから御議論のとおり、民法七百二十四条、短期消滅時効、除斥期間が設けられた趣旨は、不法行為をめぐる権利関係を速やかに確定しようということだろうと思うんですね。

 ただ、それがあらゆる場合に貫徹されなければならないのか、それに対する例外等を設けることができるのではないかということは、現に三月十一日の震災以来、来年の三月十一日が来れば三年たつわけですが、どうかという議論が今されていることも事実でございます。

 一般論で全部言い尽くしてしまうこともできませんし、具体的に、どういう目的でどういう手法にするのかということも丁寧にこれは議論する必要が恐らくあるんだろうと思いますが、そういう例外規定を設けること自体が法秩序を踏みにじることになるというふうには私は必ずしも考えておりません。合理的な理由と合理的な手法であればでき得るということではないかと思っております。

西田委員 御答弁ありがとうございます。

 御当局の御答弁で結構でございますけれども、特定の者に対してのみ民法七百二十四条の適用を除外するような立法措置というのがこれまであったのであれば教えていただきたいと思います。

深山政府参考人 この時効の特例として著名なものとして、住宅金融専門会社の債権債務の処理に際して、特定住宅金融専門会社が有する債権の時効の停止等に関する特別措置法という法律が平成八年にできております。

 この法律は、議員立法ではございますけれども、第一条で、特定住宅金融専門会社がこの法律の施行日、これは平成八年六月二十一日でございますが、この施行日において有する住宅ローン債権等について、この日から一定期間、実際には平成十年七月二十五日までですけれども、この期間は時効が完成しないというルールを定めています。ですから、原則としては、この期間に時効が完成する債権でもこの要件に当たる債権については時効は完成しないという特例です。

 こういった法律の趣旨は、住宅金融専門会社の債権債務の処理において、債権処理会社というものを法律上つくって、これは実際にできた会社の名前は、当時は住宅金融債権管理機構、現在の整理回収機構でございますが、ここに大量の債権が一時的に譲渡されるということが制度的に予定をされておりました。そうなりますと、その中に時効の完成が迫っているものが含まれていたとしても、個別に時効中断の措置を講ずることが事実上困難だ、こういった特殊な事情があることから、一定期間時効が完成しない、こういった特例が設けられたものでございます。

西田委員 ありがとうございます、民事局長。

 住専の処理に関しての特例措置が二年間ということで設けられたということでございますけれども、済みません、確認ですが、特定の者に対してということであったのでございますか。

深山政府参考人 これは、いわゆる住専、住宅金融専門会社が各住宅ローン債権として大量に持っている債権です。ですから、債権者の方は一つの会社で、債務者の方は物すごくたくさんの数、こういうことでございます。

西田委員 ありがとうございます。

 当時の立法状況を見ても、やはり大変例外的な措置をとられたんだなというようなことがわかるわけでございますし、特定というよりも、当時大量の方が対象になったわけでございます。

 私、今回のこの時効に関する特例の議論というのは、あくまで特定の者に向けられたものであるというところも実は危惧する一つの要因でございます。

 民法を言うまでもなく、憲法第十四条、法のもとの平等があるわけでございます。「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」でございますね。

 ここにおける「すべて国民」というのは、当然法人も含むと解釈されるわけでございますけれども、特定の者に対してこの民法七百二十四条を適用しないということは、まさしくこの経済的、社会的差別に当たるという中で明らかに憲法十四条に違背するというふうに思うわけでございます。大臣、この点はいかがでございましょうか。

谷垣国務大臣 憲法十四条の規定は、絶対的な平等といいますか、そういうものを必ずしも定めたものでは、保障したものではない、差別するというか区別する合理的な理由がないのに差別ないし区別するということが禁止されているという趣旨であろうと思います。また、そういうことを判示した判例も多数出ているのではないかと思います。

 したがって、事柄の性質上、合理的と認められる差別的な取り扱いをすること自体はこの憲法十四条は否定しているところではございませんので、法のもとの平等と反するかどうかというのは、具体的な規制手法あるいは具体的なそれを適用する対象、そういうものの関連の中で検討されるべきものだというふうに私は考えております。

西田委員 ありがとうございます。

 時効の問題、これは先ほども申しましたように、時効というのは、文明社会の中で自由を擁護するために、数百年にわたる経験知、これを集約して民法規定とされたものというふうに私は考えているわけでございます。御挨拶でも大臣おっしゃったとおり、まさしく、法秩序の維持や法の支配の貫徹、こういったことに関して時効というものはやはり非常に大切な考え方であるというふうに思うわけでございます。

 繰り返し前国会からこの問題を取り上げるのは、どうしてもこの問題を議論するときに一つ危惧するわけでございます。確かに、救済をしなければならない国民の方に対する思いというものは十分共有するものであるわけでございます。一方で、国家権力が国民の権利を擁護するというふうに見せておいて、一部の国民の権力を擁護するということのように見せかけて、実は、国家権力が国民全体の権利をいずれ侵害したり、簒奪していくことにつながる、権力の濫用を正当化するロジックに転化する、そういった歴史がこれまでも多々あったわけでございますし、そういった歴史はきちんと私たちは踏まえなきゃいけないというふうに思うわけでございます。

 大臣の前で大変おこがましいのでございますけれども、最後に、私、きょう、エドマンド・バークを引用させていただければと思います。「フランス革命の省察」でございますけれども、二百二十年前に、バークは既に、フランスのありさまを見て、この時効の問題に対してきちんと省察をしていたわけでございますね。

 引用します。「時効の限界を実定的に確定し、それを侵害から保障することは、文明社会自体が組織された目的の一つに属します。」時効というものを確定することは、文明社会を構成するに当たって非常に大切だということを言っているわけでございますし、「一度時効が揺がせられるや、貧窮した権力の強欲を唆かすに足る程大きくなった財産ならば、如何なる種類であれ安全なものはありません。」一度時効が揺るがされるや、国民の財産は安全ではなくなってしまうと。

 さらに、フランスの国民議会に対してこう言っているわけでございます。立法権力を大いに尊重はしていますが、さりとて、議会が所有権をじゅうりんし、時効を覆すといったことを認めれば、あなた方、フランスは、未曽有の専制支配の樹立に終わるだけであります。

 さらに、こうつけ加えています。立法議会が審議を行っているのは、所有権の保障のためではなくその破壊のためである、いや破壊されるのは所有権だけではありません。それに安定性を与える全ての規則と原理、これもまた破壊されるのです。

 バークは、時効について、フランス革命を見てこのように省察を加えているわけでございますが、私は、このバークの省察を、今我が国で時効そのものについて特例を加えようとする議論をするときに、やはりどうしても思い起こしてしまうわけでございます。

 ですので、大臣、法の支配の貫徹という、まさしく自由社会で一番大事な要諦をつかさどる法務大臣でいらっしゃる谷垣大臣には、この議論に際してぜひとも熟議を加えていただければというふうにお願いを申し上げまして、私の質問を終わらせていただければと思います。

 ありがとうございました。

江崎委員長 次に、椎名毅君から発言を求められております。椎名毅君。

椎名委員 おはようございます。

 本日、大臣の所信的挨拶に対する一般質疑ということで、三十分の質疑時間をいただいたことに感謝申し上げたいと思います。今国会においても、私も法務委員として一騎当千の活躍をしていきたいというふうに思っております。

 また、奥野副大臣と平口政務官、御就任おめでとうございます。引き続き、ぜひよろしくお願いできればと思います。

 大臣が以前おっしゃっていたみたいに、野党議員として、司法の解釈の参考になるような質問ができるように、一生懸命頑張ってまいりたいと思います。

 昨日の大臣の御挨拶で、法曹養成制度について、質、量ともに豊かな法曹を養成する制度の構築に向けて迅速な施策の実施及び検討を進めていきますという話をおっしゃっていただきました。本日は、この法曹養成制度について、特に司法修習生の修習資金の貸与制の課題というところについて、つまびらかに伺ってまいりたいというふうに思います。

 通告していた質疑に入る前に、簡単なイエス・ノー・クエスチョンで済みませんけれども、大臣にちょっと伺いたいと思います。ビギナーズ・ネットという団体は御存じですか。

谷垣国務大臣 存じております。私のところにも、そのメンバーの方がお見えになったことがあります。

椎名委員 ありがとうございます。御存じであれば、本当にありがたいなというふうに思います。

 ビギナーズ・ネットという団体は、司法修習生の修習資金の給費制復活のために、大学生やロースクール生、司法修習生、それから若手法律家のネットワークを組んでいる、そういう団体でございます。今現在、二千三百名以上いるということだそうです。

 今現在、ここしばらく衆議院の議員会館の前とか参議院の議員会館の前とかでも若いお兄ちゃんたちが旗を掲げてデモをしていたので、ごらんになった方も大勢いらっしゃるかと思いますけれども、非常に活動が活発化しています。なぜ今このタイミングで活発になるのかということを含めて、後でちょっとこのあたり御案内申し上げたいというふうに思います。

 本題に入りたいというふうに思います。

 平成十六年の裁判所法改正で六十七条二項が改正されて、もともと、司法修習生は、その修習期間中、国庫から一定額の給与を受ける、こういう規定になっていたわけですけれども、ここが修文されて、さらに、六十七条の二というのが入って貸与制というものが盛り込まれたわけでございます。

 これは、周知期間と、それから一年の法改正による猶予ということがあって、平成二十二年十一月から施行されて適用されています。修習生でいうと、新六十五期、平成二十二年の十二月だと思いますけれども、修習をスタートした新六十五期から適用されておりまして、新六十五期と六十六期、今までこの二期の修習生の方々が貸与制という制度を受けております。

 この制度によれば、御承知のとおりだと思いますけれども、基本的には月額二十三万円の貸し付けを無利子で受けている、大体一年間で総額三百万円弱ぐらいの借金をすることになります。将来、法曹資格を持った段階で、一定の猶予期間を経た上で返済をしていく、そういう制度になっているかというふうに思います。

 修習生というのは、修習に行く前に法科大学院に行って、そして法科大学院を卒業した後に司法試験を受けて、そして、無事合格をすると司法修習生になれるということなんだそうですけれども、法科大学院に行く際に貸与型の奨学金を受けている方々も大勢いらっしゃいます。

 日弁連の二〇一一年のアンケートによると、貸与型の奨学金の平均値というのが大体四百二十万円ぐらい、給与、貸与の別なく援助を受けた金額というところでいうと、もうちょっとふえて、平均で約五百万弱という指摘を受けています。修習に入る前にこのぐらいお金を既に借りている人たちがいらっしゃいます。多い人だと二千万から三千万借りている人がいるということも指摘がされています。

 その後、法曹になった後、要は、その三百万がさらに上乗せされるわけですけれども、平均でいうと七百万ちょっとぐらいになるのかもしれませんけれども、お金を借りた状態で法曹資格についていくということです。

 それで、無事にちゃんと就職できるならいいんですけれども、例えば、二千人の修習生のうち、裁判官になれるのは毎年大体百十人、検察官になれるのは毎年大体七十人、そうすると、残り大体千八百人ちょっとぐらいが弁護士になるということなんだと思いますけれども、弁護士の登録をする日、一括登録日というのがあって、修習終了直後にみんなが一括して登録をする日というのがあるんですけれども、この一括登録日に登録できない人というのが大体四百人ぐらい、これが二〇一一年のデータだそうです。

 その後、二カ月ぐらいの間でまた就職活動を一生懸命やって、二百五十人ぐらいが就職、登録するので、二カ月たつと未登録の人は大体百五十人ぐらいに減っています。しかし、就職難というふうに言われていますが、実際に数字でいうと、大体千八百人ぐらいのうちの四百人ぐらいが登録できなかったりするわけです。

 こういうふうに、就職することもままならない、難しいというような状況で、借金をしょって出て、借金をしょって法曹資格についていくというのもなかなか難しいわけでございまして、こういう中で、修習中に給費がもらえないということで、優秀な人がどんどん修習を差し控えたりとか、法曹になることを思いとどまるというか避けたりするような状況になっているというふうに思います。

 先ほど大臣も階先生の質疑のときに一言お触れになりましたけれども、法学部を受験する人が少なくなったりとか、ロースクールに行く人が少なくなったりというようなことも指摘されているのは御承知のとおりだというふうに思います。

 この修習生の現状について、まず、細かい点について、事実確認という意味で幾つか簡単に伺っていきたいと思います。

 まず、ちょっとばっと幾つか質問しちゃいますけれども、厚生労働省の参考人に対して、健康保険と年金の支払いについてというところ。

 これは、健康保険について、修習生には所得がない、貸与を受けているという状況ですけれども、みずから健康保険を払うということでよいのかということです。両親それから配偶者、こういった方々の扶養として入ることはできないのか。もし、みずから健康保険、国民健康保険だと思いますけれども、これを払うとすると、その内訳、貸与による修習資金が月額二十三万だとすると、大体どのくらいか。年金については、国民年金をみずから払うということでよいのか。例えば免除猶予措置等のあり方、金額、これは一万五千円だと思いますけれども。

 次に、国税庁の参考人に対して、税の控除について。

 同じく、司法修習生は所得がないので、当然所得税は発生しないわけですけれども、では、両親それから配偶者といった方々に対して、扶養家族として、扶養家族の側の税額控除の対象になるのかという点。

 三点目が、最高裁判所の参考人ですけれども、最高裁判所として把握している現状として、修習生には所得がないけれども、実務修習地において、例えば、新たに不動産を借りる場合にどういった契約名義で借りているのか、自分の名前で不動産を借りることができているのかという実態。それから、修習生が裁判所の裁判官の官舎に入ることができるのか。みずから健康保険に入る場合には、実務修習地で実際に研修を行っている裁判所の共済組合診療所、こういったところを利用することができるのか。そして、司法修習生には所得がないわけですけれども、例えば子供を持つ修習生について、認可保育所の利用資格という意味でいうと、どういった扱いを受けているのか。

 こういった事実を、把握しているレベルで簡単に教えていただければと思います。

神田政府参考人 司法修習生が修習資金の貸与を受けている場合の社会保険関係の適用などについてお尋ねがございました。

 被用者保険の被扶養者になるためには、主としてその被保険者によって生計を維持するということになってございますので、月額二十三万の貸与を受けているという場合には、一般的にはこれには該当しないということから、被用者保険の被扶養者でなく、健康保険は国民健康保険に加入することとなります。

 この場合、単身世帯で申しますと、被保険者や世帯ごとに課されます応益割の保険料を、年額五万三千円、月額ですと約四千四百円を御負担いただくことになります。

 また、これに加えて、所得等に応じました所得割の保険料を御負担いただくことになりますが、所得の低い世帯については応益割の保険料は最大七割軽減するということになってございますので、例えば、単身で収入が修習資金のみである場合には、全国平均の保険料で申しますと、修習資金については応能割の所得に応じた保険料は課されませんので、七割軽減後の応益割の保険料で申しますと、年額約一万六千円、月額約千三百円の御負担ということになります。

 それから、年金につきましては、やはりこの場合、被用者保険の適用の対象とはなりませんので、国民年金の一号被保険者ということで、年額で申しますと約十八万円、月額ですと約一万五千円の御負担ということになります。

 ただ、この場合も、単身で収入が修習資金のみである司法修習生の場合で申しますと、申請していただくことによって全額免除になるということもできることとなっております。また、三十歳未満でありますと、単身であると親と同居しているとを問わず、収入が修習資金のみであれば、申請していただければ納付猶予ということになります。

岡田政府参考人 所得税の扶養控除について御質問にお答えいたします。

 一般論として申し上げますけれども、金銭の貸し付けを受けた場合で、その貸し付けを受けた金銭について返済するということになっているときには、その金銭については所得税法上の所得には該当いたしません。このため、扶養されている者が、金銭の貸し付けを受けたことをもって所得税法上の扶養控除の適用がなくなることはございません。

 いずれにしても、国税当局としては、個々の事実関係に基づきまして、法令等に照らして適正に取り扱うこととしております。

安浪最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 現在の貸与制のもとで、司法修習生に対しましては、安んじて修習に専念できるようということで、委員御指摘の基本額二十三万円が貸与されておるところでございます。

 ただ、給与所得者というわけではありませんもので、不動産を貸す大家さんの側で、司法修習生の経済面に不安を持って、貸し控えたり、両親などを賃借の名義人にするよう求めたりというような事例も一部にはあるように承知しております。

 こうした大家さん側の判断について私どもの方があれこれ言うべき立場にないのはもとよりでございますけれども、このようなケースにありまして、修習生の側の方から、大家さんへの説明の必要上、裁判所に対しまして、修習生として採用されておるということ、あるいは毎月きちんと貸与を受けられる地位にあるということの証明書が欲しいというようなことの申し出がある場合がございまして、そういう場合には、所定の証明書を発行するなどの配慮をしておるところでございます。

 そうしたこともございまして、今まで私どもが承知しておるところでは、借りたくてもどこも借りられなかったというようなことで住居を確保できなかったというケースはないと承知しております。

 それから、裁判所の官舎の件でございます。

 裁判官が今入っております宿舎は、国家公務員宿舎法二条三号に定める宿舎でございまして、この宿舎には国家公務員を居住させるということとされております関係で、司法修習生は国家公務員でないため、この宿舎には居住できないものと考えております。

 それから、最後に、認可保育所の利用資格の件でございます。

 これも、地方自治体の中では、保護者の置かれた状況につきまして、就労と就学とを区別し、就労者の方を優先する取り扱いを定めているというところもあるやに聞いております。その場合に、司法修習生のこの修習の課程というものを、いわば就学と同視して、優先度の方が下がっているというようなこともあるようには聞いております。

 ただ、実際の認可保育所の利用申請に対しまして地方自治体がどのような検討過程を経て判断して決めておるのかは承知しておりません。

 ただ、この問題に関しましては、小さな子供のいる司法修習生につきましては、実務修習地の配属庁の決定の過程におきまして、本人の希望も踏まえて、できる限りの配慮をしてまいっているところでございます。

垣内最高裁判所長官代理者 裁判所内の診療所の利用について御説明申し上げます。

 実務修習を行っております裁判所のうち診療所が設置されてございますのは、各高等裁判所本庁所在地の八カ所でございます。

 このうち、保険医療機関となっておりますのは、東京高等裁判所庁舎内の診療所でございまして、ここにおきましては、それぞれ修習生の方の健康保険を利用していただいて、治療費の三割を自己負担していただいた上で保険診療を受けていただくことができております。

 他の高等裁判所庁舎内の診療所におきましては、保険医療機関ではございませんものですから、このような保険診療を受けていただくことはできておりません。ただ、治療費を一旦全額御負担いただきまして診療を受けていただくということは可能でございます。この場合には、後日、各自の健康保険の保険者から保険者負担分の医療費の支給が受けられることがあると承知してございます。

椎名委員 いろいろお答えいただいて、本当にありがとうございます。

 まず、幾つかコメントだけさせていただきますけれども、税額控除と年金の扶養控除の関係でいうと、ずれがあるというのは今御指摘いただいたとおりで、健康保険については、みずから、要するに修習生が自腹で貸与を受けた二十三万円の中からお支払いをする。それに対して、税金については、所得税も発生しないし、扶養という扱いで、両親だったり配偶者だったりの扶養下に入って、配偶者だったり両親だったり、一応控除対象になって、そこそこメリットがあるということで、多少扱いが違うというところで、ちょっとバランスを欠いている気もいたします。

 さらには、今の健康保険の話については、要は職場なわけですよね、裁判所とかで研修を行っているわけですけれども。これは同じように、検察庁に聞かなかったですけれども、検察庁の中の共済組合の診療所もほぼ同等だというふうに思いますけれども、要は、職場にある診療所、東京以外は保険診療所ではないので、健康保険を使って診療に行くことができない、そういう状況にあるわけですね。職場の診療所を使うことができないというのはなかなか難しいなというところでございます。

 さらには、認可保育所の件と不動産の件というのはそのとおり、そういう実態があるというふうに私自身も聞いています。

 時間もないので次に行かなきゃいけないんですけれども、これは、修習生の立場というか、法的な立ち位置というのがやはり余り明確ではないというところに一つ結構大きな原因があるのかなというふうには思っていたりはします。

 先ほど、裁判官の官舎の点については、修習生は公務員ではないので、そこは使うことができないというふうにおっしゃっておりました。

 昔は、司法修習生の法的立場というところについては、一般的に公務員に準じる立場というふうに評価をされていました。我々も、自分が修習生のときは準公務員というふうに言っていたかと思います。

 そのときの評価の大きな根拠の一つが、平成十六年改正前の裁判所法二項、先ほど読み上げた、修習生は、その修習期間に国庫から一定の給与を受けるというこれと、修習生が修習に専念をしなければならないという義務、この二つを根拠に、一般的にそのように評価をされるというか解釈をされるというふうに理解をされていたと思います。

 しかし、平成十六年の裁判所法改正で貸与制に変わったということで、多少扱いに変化が生じたのかなというふうに思います。

 次の質問もあわせてちょっと聞いちゃいますけれども、労働基準法というのは、通常、国家公務員には適用されないわけですけれども、国家公務員に準じる立場なのかどうかという点も含めて、仮に国家公務員に準じる立場でないとすると労働基準法の適用はどうなるのか、仮に国家公務員に準じる立場であれば労働基準法の適用関係はどうなるのかということについて、法務省の参考人の方に伺いたいと思います。

小川政府参考人 まず、お尋ねのありました、修習生の法的な立場について御説明いたします。

 司法修習生は、先ほどからもお話がありますように、公務員ではございませんで、裁判所法上、法曹に必要な能力を身につけるための修習を行うべき者と位置づけられております。このような司法修習生の法的地位は、平成十六年の裁判所法改正により給費制から貸与制に移行しても何ら変更されていないものと承知しております。

 なお、司法修習生は公務員ではございませんが、従前は給与の支給が公務員に準じて行われていたことから、その意味で、公務員に準じた面があったものと承知しております。

 次に、労働基準法との関係でございますが、司法修習生は、公務員に準ずる、準じないとは別に、いずれにせよ事業または事務所に使用される者ではなく、労働基準法上の労働者の性質は有しないということでございますので、労働基準法の適用はないとされてきたものと承知しております。

椎名委員 非常に説明に苦しい、難しい立場なんです、修習生というのは。

 本当によくわからなくて、ほかとの比較でいうと、ほかとの比較がよくされるんですけれども、例えば防衛大学の学生、これは一応公務員なんだと思います。公務員であり、かつ、お給料をもらっている。私も先日、朝霞の駐屯地で行われた観閲式にも参列いたしましたけれども、防衛大の学生や防衛医大の学生は、自衛官として総理の前を非常に立派に行進されているわけですね。学生ではありますけれども、自衛官というか、そういう形です。

 横の比較でいうと、公認会計士、これは完全に民間人でありまして、同じく三年の補習所というところに通わなければならないんですけれども、三年の補習所に通うといっても、別にこれは給料が出るわけでも何でもなくて、公認会計士というのは基本的に、公認会計士試験に受かったら大体監査法人というところに就職をして、就職をした結果、その監査法人から補習所というところに通うということで、監査法人から給料をもらっている、完全なる民間人です。さらに言うと、この補習所というのは、公認会計士協会というところで、民間で運営されている、そういう組織です。

 医者は、医師資格を取った後、研修医になりますけれども、これは民間または公立の病院に勤務をすることになって、普通に給料をもらいながら仕事をしています。医者については、研修医の立場については、医者に対して直接補助金が出るわけではなくて、研修医に対して給料を十分に払うことができるようにという趣旨で、病院に対して補助金が落ちているかというふうに思います。

 こういった、ちょっと中途半端な、わかりづらい法的立場にいる、よく比較に出されるほかの立場の人たちとも若干違う、こういう修習生について、修習専念義務を課しているにもかかわらず経済的な対価をもらえないということについて、ちょっと質問をしている時間もないので、ごめんなさい、コメントだけしておきますが、違憲訴訟というのが実は起きています。ことしの八月ぐらいに、こういう立場であるにもかかわらず給料をもらえていない、貸し付けであるというところについて、違憲ではないかというような論点もちょうど提示されているところです。

 あと、頑張って二問行きます。

 裁判所法改正の制度ができ上がった理由の一番最大の背景は、予算措置というところだと思います。貸与制を取り入れることによって、どれだけ予算上のメリットがあるのかというところ、将来的にどれぐらいの予算上のメリットがあると考えていたのか、そういうところについてお答えを裁判所からいただければと思います。

垣内最高裁判所長官代理者 貸与制が導入される前の平成二十一年度の予算におきましては、給費制のための司法修習生手当といたしまして約百九億円が計上されておりました。

 これに対しまして、平成二十三年度予算におきましては、この年の十一月に採用される修習生から貸与制の対象となったわけでございますが、これに伴いまして、修習資金貸与金として約二十四億円が計上され、それから、それ以前に採用されておりました司法修習生に対する司法修習生手当として約六十五億円がそれぞれ計上されてございます。

 それから、司法修習生が今後、将来的にどうなるかということでございますが、将来的な予算上の影響、これにつきましては、修習生の人数、それから貸与を希望される方の割合、こういうところに左右されるところが大きゅうございますので、その見通し、お答えするのはなかなか難しいのでございますけれども、修習生の人数等が現状と同程度で推移すると仮定いたしますと、二十五年度予算額と同程度、約六十四億円ということになるのではないかと存じております。

 なお、修習資金貸与金は、給与として支給する修習生手当とは異なりまして、いずれ返還されるものでございますので、将来的には歳入予算にも影響が生じてまいる、こういうことになると思います。

椎名委員 ありがとうございます。

 百十億毎年使っていたものが六十四億になったということで、大体三十数億ぐらい減っているということでございます。

 人件費なんてなかなかふやしてほしいということが言いづらいところでございますし、裁判所の予算というのもなかなか、当然ですけれども、事業官庁ではないので、お金を分捕ってくるというのはすごく難しいところであるのはよくわかりますけれども、三十数億なんですよね。復興予算の流用だとかそういうので問題になる金額と比べると、そんなに大きくはないかなというふうに思います。ぜひともここを見直してほしいなというお願いをするとともに、最後に大臣に対して一問質問させてください。

 六月二十六日の法曹養成制度検討会議取りまとめ、この取りまとめが出た後に、先ほど階先生も触れていましたけれども、新しい会議が設置されたことになると思います。それを受けて、修習生の経済的支援というところについて、幾ばくかの言及がもちろんあったのは承知をしております。

 それを承知してはおりますけれども、ぜひ、給費制の復活というところについて、御所見をいただきたいというか、御意見を賜れればなというふうに思います。

谷垣国務大臣 確かに、ことしの十一月から始まる六十七期の修習生から、今おっしゃったような経済的支援がスタートするわけですが、修習生の給費制の復活ということは、これは法曹養成制度検討会議の取りまとめにおきましても、「貸与制を導入した趣旨、貸与制の内容、これまでの政府における検討経過に照らし、貸与制を維持すべきである。」という考え方が示されたところでございます。

 したがいまして、私としても、それを踏まえて、同様に考えているところで、委員のお考えにちょっと沿えない答弁でございますが、そういうことでございます。

椎名委員 ありがとうございます。

 そうなるんだというのは理解をしておりますけれども、先ほど来申し上げてまいりました司法修習生の立場は、公務員に準じる立場といって、結構不安定な立場です。

 先ほどちょっと言及しましたけれども、なぜこのビギナーズ・ネットが今このタイミングに活動しているのかというと、彼らのメーンアクターは、ことし司法試験に受かって、これから修習に行く新六十七期の方々なんです。新六十七期、十二月に修習生になると、公務員に準じる立場ということで、政治的な活動ができないということで、今このタイミングなんです。

 したがいまして、政治的な活動もできない、お金ももらえない、さらに言うと、さまざまな不利益等も、今事実関係として御案内いただいたとおり、幾つか問題もあるというところで、給費制の復活をぜひ本当に検討してほしいなというふうに思います。

 間違いを正すのもリーダーの役割です。少なくとも、今の現状の不十分さにぜひ対応していただければと思います。谷垣大臣のお言葉はわかっておりますけれども、どうぞ御検討いただければと思います。よろしくお願いします。

 ありがとうございました。

江崎委員長 それでは次に、鈴木貴子さん。

鈴木(貴)委員 新党大地の鈴木貴子です。

 前回に続きまして、今回もお時間をいただきましたことを心から御礼申し上げます。

 今回は、証拠開示制度、そして刑事事件における再審請求の制度のあり方について、谷垣大臣に見識、また見解を伺いたいと思っております。

 二〇〇四年、刑事訴訟法の一部が改正され、公判前整理手続が導入されたことに伴いまして、通常審では証拠の開示が、一定の請求権が保障されることになりました。ただ、これは一定請求権ということなので、全てがまだまだ開示されているわけではなく、中には、検察によってその証拠の開示を拒否しているという事案も出ていると認識をしております。これは、刑事訴訟法第一条にある検察の実体的真実の発見という検察官の義務に反するものでないかと私は考えます。

 そもそも、警察そして検察の捜査ですとか、あと証拠を持ってくるということは、国民の税金が使われているわけです。ひいては公共の財産という側面もあるかと思います。そういった観点から考えますと、こうした検察の一方的かつ独断的な判断によって証拠の開示の拒否が決定されるべきなのか、非常に疑問を持っているところであります。

 谷垣大臣は、こうした証拠の開示について、また検察の拒否、こういったことについてどのような見識をお持ちでしょうか。

谷垣国務大臣 現行の証拠開示制度は、おっしゃったように、平成十六年の刑事訴訟法改正によりまして、公判前整理手続、それから期日間整理手続を行う事件については、検察官手持ち証拠の開示の範囲が従来に比べて大きく拡充されたわけでありますが、被告人の防御の準備のために必要なものは基本的に開示されることになったわけですね。

 現在、法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会で、時代に即した新たな刑事司法制度の構築に向けた調査審議が行われているわけですが、その中で、証拠開示制度についても、ことし一月に基本構想というのを策定しましたけれども、そこで、争点及び証拠整理と関連づけられた現在の証拠開示制度を維持した上で、例えば検察官が保管する証拠の標目等を記載した一覧表を交付する仕組みを設けることなどについて、また、それについては懸念を示す向きもあるわけですので、その採否も含めた具体的な検討を行うというふうにされておりまして、現在、その検討がされている。

 私は、法制審議会で審議を、諮問し、お願いしている立場でございますので、まずその審議の推移をよく見守ってまいりたい、こう考えております。

鈴木(貴)委員 大臣、ありがとうございます。

 今、大臣のお言葉にあった懸念されている事項というのは具体的にどういったことなのか、お聞かせください。

稲田政府参考人 これまでも証拠開示については幾つかの御議論があったわけでございますけれども、基本的にはやはり、証拠というものは確かに捜査機関が収集した公共の財産ではございますが、他方で、関係する方々の個人のプライバシーでありますとか名誉等にもかかわるものもございます。あるいは、今後の捜査活動あるいは当該事件の公判の遂行というような観点から、これを明らかにすることが捜査の遂行等に支障を生じる場合もございます。また、当該証拠が当該事件においてどの程度の重要性を持つものなのかというのは、それぞれの事件によって異なってくるわけでございます。

 そういうことも踏まえまして、平成十六年の司法制度改革の際の御議論の中で、まず争点を明示し、そこで証拠関係を整理し、その明示された争点の中で、必要なものについて、それぞれの主張に関連する関係で開示をしていくという手続が定められた、これが平成十六年の改正の趣旨でございまして、それを踏まえて現在の運用もなされているというふうに承知しているところでございます。

 また、当事者間で争いがある場合には、裁判所が裁定手続を行い、その裁定によって証拠開示が命じられれば、それに対して検察官は当然開示をしていかなければなりませんし、そのような運用を行っているところであるというふうに考えているところでございます。

鈴木(貴)委員 今、個人のプライバシー、また名誉という言葉も使われていたかと思うんですけれども、関係各者の名誉とプライバシーを守るべきと考えるのであれば、被告人の名誉、プライバシー、こういったことも守られるべきではないのかなと思っております。

 先ほど、それこそ階先生が用意されていた、昔、谷垣大臣が書かれたあの論文の中にも、「例外の認定は限定的でなければならないのだ。」、そんな一文もありましたが、基本的に通常審で証拠開示が今進められている、そういった中で検察が例外的にその開示を拒否する、もしその拒否というものが例外であるならば、それは非常に限定的に対応すべきでないのかな、このように思っております。

 こうした一方的な、証拠選別という言葉があるかわかりませんが、証拠の選別というのは、果たして真に公正公平な判決を生むのかというところを大変危惧しております。

 ここで、大臣にお尋ねをさせていただきます。

 検察の都合に合わない証拠、検察によって意図的に隠された証拠というものは過去あると思われますか。

谷垣国務大臣 私は、過去のその例を必ずしも法務大臣として報告を受けているわけではありません。

 ただ、刑事裁判をめぐっては、例えば被告人の経験のある方などがいろいろな本をお書きになっている。私も読んだことがございます。したがいまして、そういう中では、今御指摘のようなことがいろいろ議論されて、記述されているということは承知しております。

鈴木(貴)委員 大臣の検察、司法への信頼というものを改めて今実感したところで、こうした過去の事例をぜひとも御紹介させていただきます。

 例えば、皆さんもよく御存じだと思いますが、東電OL事件。被害者である女性の口や胸部に、当時被告とされていたゴビンダさんとは異なる血液型、DNAが付着していたにもかかわらず、公開しなかった。事件当時、検察は、爪からは何も検出されないと存在自体を否定していたにもかかわらず、後々、再審の際に、第三者のDNAが爪の付着物から検出されました。

 まだあります。布川事件。第三者の女性が被告人とは違う人間を目撃したという発言、捜査メモを検察は長い間伏せていました。

 こういったことは、報道などでも、また再審裁判の中でも明らかになっている事実であると思います。

 こうした過去の例を見ましても、検察は本当に法と正義にのっとり公正公平であるのか。こうした事実を踏まえて、裁判所を欺くような検察官の証拠提出行為について、改めて大臣の見解をお聞きしたいと思います。

谷垣国務大臣 個別の事件について私が申し上げることは差し控えたいと思いますが、もちろん、法の精神、法の趣旨にのっとって、きちっとした立証活動、公判活動あるいは捜査活動を行わなければならないのは当然のことだろうと思います。

鈴木(貴)委員 法の趣旨といったところは、法の趣旨というか、再審請求などでは、そもそもその法というものが非常にあやふやになっているところも問題なのかなというふうにも思うんですけれども。

 事実問題として、再審無罪になった東電OL事件、布川事件、足利事件、また厚生労働省の村木局長の事件などなど、数限りなく出てくるとは思うんですけれども、こうした検察による隠蔽とも言える体質を防ぎ、これ以上の冤罪被害者を出さないための再審請求のあり方というものを、建設的な考えというものを示していかなくてはいけないのかなと思っております。

 ここで、再審請求のあり方についての質疑に移らせていただきます。

 刑事訴訟法四百三十五条六号、有罪の言い渡しを受けた者に対して無罪を言い渡すべき明らかな証拠を新たに発見というものが再審においては大前提となっております。

 ただ、事件発生時などの現場状況や証拠を改めて見直していく中で見えてくる新事実が、ここで言われる無罪を言い渡すべき明らかな事実となる可能性は誰も否定できないと思います。

 再審でも、最低限、通常審同様の証拠開示が保障されるべきではないでしょうか。なぜ再審では証拠開示が規定されていないのか、大臣の見解をお尋ねいたします。

稲田政府参考人 お答え申し上げます。

 再審請求審につきましては、確かに、証拠開示について定められた規定はございません。これは、再審請求審におきましては、検察官は、裁判所が再審開始事由の存否を判断するために必要と認められるか否か、請求人側から開示を求める特定の証拠につき必要性と関連性が十分に主張されたか否か、開示した場合における関係人の人権、名誉の保護や今後の捜査、公判に対する影響などを勘案しつつ、裁判所の意向を踏まえながらこれに対応するものということで運用されているものでございまして、現実に再審請求審自体が職権主義の構造をとっているところから、このように行うのが適切であるというふうに考えているところでございます。

鈴木(貴)委員 過去にそれこそ何度も何度もこの答弁を練習されたかのような、よどみのない発言に、今ちょっと若干びっくりしながら聞いているんですけれども。

 時間もあと三分ほどということで、ぜひともここは大臣にお伺いをさせていただきたいと思います。

 証拠開示などで、制度化することで、罪なき人が苦しんでいる今の現状は変えられると思っております。ゆえに、先ほどのように、通常審でも証拠の開示が、一定の限度を持って、範囲を持ってはおりますけれども、そういった法の改正などが進んでいることかと思います。

 例えば、先ほど私も過去の事例ということで何点か話しましたが、近々でいうと、名張の毒ブドウ酒事件、そして、五十年近く死刑囚とされながらも無実を訴えている袴田事件。また、私の地元北海道では恵庭OL殺人事件というものがありまして、実は、最近になりまして、検察側が被告人のアリバイの成立を認識しながらも証拠を隠していたということが明らかになりまして、今、この恵庭OL殺人事件は、再審の動き、可能性が非常に高まっているという事実があります。

 また、きょうも死刑制度についての言及もありましたが、私は、死刑賛成また容認派の皆さんこそ、冤罪事件というものは誰よりも真摯に取り組まなくてはいけないと思っております。この罪なき人の冤罪による死刑の執行こそが、死刑制度における最大の、そして許されざる弊害であると考えるからです。

 谷垣大臣みずからも弁護士であるということも私も承知しております。心ある決断、そしてまた英断によって、救われる命、また救われるであろう人生があるということも、谷垣大臣ももちろん熟知されているかと思っております。ぜひとも谷垣大臣には、人権派の法務大臣として、日本の司法制度を改革し、歴史に名を残していただきたい。いや、谷垣大臣の英断と決断で歴史に名が残るものと私は心から信じております。

 最後に、人権派法務大臣谷垣大臣に、最後の決意と信念をお聞かせいただきたいと思います。

 私の今回の質問、証拠の開示、そしてまた再審制度のあり方について、谷垣大臣の見解をいただきたい。

 また同時に、最後につけ加えさせていただきます。この法務委員会もインターネット中継がされております。聞いているのは私一人ではありますが、私も国民の代表として質問させていただいております。ぜひとも、この最後の質問、谷垣大臣には、私の後ろにいる国民へのメッセージもある、また日本の未来へのメッセージでもある、このような思いを持って、最後の見解、いただきたいと思います。

谷垣国務大臣 先ほど申し上げたように、捜査あるいは公判の活動、当然のことながら、法の精神にきちっとのっとったものでなければならないことは当然であります。

 それで、証拠開示につきましては、先ほど申し上げましたように、今、法制審議会の方で議論をしていただいておりますから、ぜひともそこできちっと議論を積み重ねた結論を私どもいただきたい、こう思っているところでございます。

 再審につきましては、今いろいろ過去の再審事例もお引きになりました。ただ、やはり再審というのは、いわゆる三審制のもとで論議をして結論を得たものの、いわば例外と申しますか、非常救済手続として設けられているということはやはり踏まえておかなければいけないと思っております。

 白鳥事件の最高裁の決定で、確定判決における事実認定につき合理的な疑いを抱かせ、その認定を覆すに足りる蓋然性のある証拠をいい、疑わしいときは被告人の利益にという刑事裁判における鉄則が適用されると判示しているのは、これは非常に重要なことでございます。

 十分この白鳥事件の決定の精神を踏まえて、もちろん、再審を認めるか認めないかは行政府の我々が申し上げることではありません。裁判所において、このような精神で的確に運用されるものと期待しております。

鈴木(貴)委員 ありがとうございます。

江崎委員長 どうもありがとうございました。

 これをもって質疑終了です。

     ――――◇―――――

江崎委員長 次に、第百八十三回国会、内閣提出、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案につきまして、第百八十三回国会におきまして既に趣旨の説明を聴取いたしておりますので、これを省略いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

江崎委員長 異議なしと認めます。そのように決しました。

    ―――――――――――――

 自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

江崎委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 ただいま議題となっております本案審査のため、来る十一月一日金曜日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

江崎委員長 異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る十一月一日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これをもって散会といたします。

    午後零時十八分散会


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