衆議院

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第6号 平成26年3月25日(火曜日)

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平成二十六年三月二十五日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 江崎 鐵磨君

   理事 大塚  拓君 理事 土屋 正忠君

   理事 ふくだ峰之君 理事 盛山 正仁君

   理事 吉野 正芳君 理事 階   猛君

   理事 西田  譲君 理事 遠山 清彦君

      青山 周平君    赤枝 恒雄君

      安藤  裕君    池田 道孝君

      小田原 潔君    大串 正樹君

      大見  正君    門  博文君

      神山 佐市君    菅家 一郎君

      黄川田仁志君    小島 敏文君

      古賀  篤君    國場幸之助君

      今野 智博君    佐々木 紀君

      新谷 正義君    野中  厚君

      橋本  岳君    鳩山 邦夫君

      平口  洋君    堀内 詔子君

      前田 一男君    三ッ林裕巳君

      宮澤 博行君    山下 貴司君

      郡  和子君    田嶋  要君

      横路 孝弘君    高橋 みほ君

      大口 善徳君    國重  徹君

      椎名  毅君    鈴木 貴子君

      西村 眞悟君

    …………………………………

   法務大臣         谷垣 禎一君

   法務副大臣        奥野 信亮君

   法務大臣政務官      平口  洋君

   厚生労働大臣政務官    高鳥 修一君

   最高裁判所事務総局家庭局長            岡 健太郎君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  辻  義之君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          小川 秀樹君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    林  眞琴君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    西田  博君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           義本 博司君

   参考人

   (中央大学法科大学院教授)            小木曽 綾君

   参考人

   (少年犯罪被害当事者の会代表)          武 るり子君

   参考人

   (弁護士)

   (社会福祉法人カリヨン子どもセンター理事長)   坪井 節子君

   参考人

   (大阪学院大学教授)

   (一橋大学名誉教授)

   (弁護士)        村井 敏邦君

   法務委員会専門員     矢部 明宏君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十五日

 辞任         補欠選任

  小田原 潔君     青山 周平君

  黄川田仁志君     山下 貴司君

  末吉 光徳君     國場幸之助君

  三ッ林裕巳君     赤枝 恒雄君

  宮澤 博行君     堀内 詔子君

  大口 善徳君     國重  徹君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     小田原 潔君

  赤枝 恒雄君     新谷 正義君

  國場幸之助君     野中  厚君

  堀内 詔子君     宮澤 博行君

  山下 貴司君     黄川田仁志君

  國重  徹君     大口 善徳君

同日

 辞任         補欠選任

  新谷 正義君     佐々木 紀君

  野中  厚君     大串 正樹君

同日

 辞任         補欠選任

  大串 正樹君     前田 一男君

  佐々木 紀君     三ッ林裕巳君

同日

 辞任         補欠選任

  前田 一男君     末吉 光徳君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 少年法の一部を改正する法律案(内閣提出第一四号)


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     ――――◇―――――

江崎委員長 これより会議に入ります。

 内閣提出、少年法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、本案に対し、階猛君から、民主党・無所属クラブ提案による修正案が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。階猛君。

    ―――――――――――――

 少年法の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

階委員 ただいま議題となりました修正案につきまして、民主党・無所属クラブを代表し、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 政府提出の少年法の一部を改正する法律案は、少年に対する刑事事件における科刑の適正化を図るためとして、少年に対する不定期刑の長期と短期の上限の引き上げ等の厳罰化を図るものでありますが、警察庁の統計によれば、刑法犯少年の検挙人員はここ十年一貫して減少し、平成十五年に比べて半数以下になっております。さらに、刑法犯少年のうち殺人や強盗といった凶悪犯の検挙人員に限ってみれば、その検挙人員は平成十五年比でおよそ三分の一にまで減少しております。

 また、特に少年の場合、必ずしも刑の軽重を顧慮して犯罪を思いとどまるわけではなく、一般論としては、厳罰化による犯罪抑止効果は期待できないと考えられます。

 もっとも、被害者側の心情などを考慮して刑罰の適正化を図る必要があることは否定いたしません。ただし、この改正案の前提となった意見交換会において、被害者側は、そもそも不定期刑そのものの廃止を求めていたという事情があるわけでありまして、今回の改正は、それに沿ったものではないと考えます。

 そこで、政府提出の少年法の一部を改正する法律案から、少年の刑事事件に関する処分の規定の見直しに係る改正規定を削除するため、この修正案を提出した次第であります。

 以下、この修正案の主な内容について御説明申し上げます。

 第一に、罪を犯すとき十八歳に満たない者に対して、無期刑をもって処断すべき場合において、有期の懲役または禁錮を科す場合における刑の上限を「十五年」から「二十年」に引き上げる等の改正規定を削ることとしております。

 第二に、不定期刑の長期と短期の上限について「十年」と「五年」から「十五年」と「十年」に引き上げる等の少年に対する不定期刑の規定の見直しに係る改正規定を削ることとしております。

 第三に、所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、この修正案の提案理由及びその内容の概要であります。

 何とぞ、御審議の上、委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

江崎委員長 これにて修正案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

江崎委員長 この際、お諮りいたします。

 本案及び修正案審査のため、本日、政府参考人として警察庁生活安全局長辻義之君、法務省大臣官房司法法制部長小川秀樹君、法務省刑事局長林眞琴君、法務省矯正局長西田博君及び文部科学省大臣官房審議官義本博司君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんでしょうか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

江崎委員長 異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

江崎委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局岡家庭局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに異議ございませんでしょうか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

江崎委員長 異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

江崎委員長 次に、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本案及び修正案審査のため、本日午後二時三十分、参考人として中央大学法科大学院教授小木曽綾君、少年犯罪被害当事者の会代表武るり子さん、弁護士・社会福祉法人カリヨン子どもセンター理事長坪井節子さん及び大阪学院大学教授・一橋大学名誉教授・弁護士村井敏邦君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんでしょうか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

江崎委員長 異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

江崎委員長 これより原案及び修正案を一括して質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。階猛君。

階委員 改めまして、おはようございます。

 本日は、少年法の改正案の審議でございますが、その部分についてお尋ねした後、若干時間をおとりしまして、民法という基本法に関する解釈のあり方についてちょっと取り上げさせていただきたいと思っております。厚労省から、高鳥政務官にもお越しいただいております。よろしくお願いいたします。

 それでは、早速質疑に入ります。

 今回の改正なんですけれども、そもそもの経緯は、平成二十年の少年法の改正の際に附則の三項というのがありました。そこで見直し条項が設けられておりまして、「法律の施行後三年を経過した場合において、」「この法律による改正後の規定の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。」ということで、この法律による改正後の規定の施行の状況について検討を加えるということであります。

 しからば、平成二十年改正の中身は何だったのかといいますと、被害者の保護のために、傍聴の機会を与えるとか、あるいは情報提供の仕組みを充実させるとか、そういう内容だったわけです。ところが、今回の改正案の中身におきまして、その平成二十年の改正部分に対応する中身は入っておりません。

 なぜこの平成二十年改正の見直しとかけ離れた内容になってしまっているのか、この点について、まず大臣からお考えをお聞かせ願えればと思います。

谷垣国務大臣 確かに、委員が今おっしゃいましたように、平成二十年の改正少年法附則第三項というのがございまして、三年後にきちっと検討せよということでございました。

 そこで、それを踏まえまして、平成二十年改正少年法で導入された諸制度、今お触れになったような諸制度につきまして、見直しの要否を検討しようということで、平成二十四年の三月に、犯罪被害者の方や刑事法研究者あるいは弁護士等々で構成される平成二十年改正少年法等に関する意見交換会というのをつくりました。そこで、平成二十年改正少年法それからその他少年法に関して見直しが必要な事項について御意見を伺って、意見交換を実施してきたところでございます。

 その結果、平成二十年の改正少年法に関しては、犯罪被害者の方から、審判傍聴対象事件の範囲をもっと拡大すべきであるとか、あるいはモニターにより審判を傍聴できる制度を導入すべきであるというような御意見が示されたわけですが、他方、これらの見直しを行うことについては、消極、慎重な御意見が見られたわけでございます。

 具体的に申しますと、少年に対する影響、審判廷に被害者がいらっしゃらないということで、全く様子がわからないというような少年の不安とか、あるいは少年や保護者に対する心理的な負担ということを指摘される御意見もあった。それから、実際に傍聴が実施された事件の審判においては、これらの配慮によって少年が萎縮して、十分な発言ができない場合があるというような指摘もあったわけでございます。

 そこで、こういう状況を踏まえて検討しました結果、審判傍聴の範囲の拡大については、非公開が原則である少年審判について、現時点で傍聴対象事件の範囲を拡大しなければならないような制度上の問題があるとまでは認められない、これが一つですね。それから、先ほど申し上げたようなことですが、審判傍聴が許可された事件において実際に少年に影響を与えた事件もあり、審判傍聴の範囲を拡大することについては慎重な検討が必要である。それから、審判傍聴制度はまだ施行後間がなくて、現在、制度の定着に向けて関係者が鋭意努力している状況でありますから、審判傍聴制度の対象事件の範囲を拡大するかどうかについては、もう少し現在の制度が問題なく軌道に乗るのを見守ってから検討するのが相当であるというような御意見というか整理になりまして、そこでモニターによる視聴制度について、もう一点の問題ですが、モニター視聴制度は裁判の傍聴のあり方全般にかかわる問題であるから、少年審判のみの問題ではないということで今回の法案には盛り込まなかった、こういう経緯でございます。

階委員 まず意見交換会というものが開かれて、その場で、きょうも参考人としてお見えになられる予定の武さんからの御意見というのも伺っているわけですね。その場で武さんからは、今大臣おっしゃったように、傍聴対象事件の拡大、それからモニター視聴の、傍聴の導入ということが言われていまして、確かにそれに対して別な委員から反対の意見もあったわけですけれども、武さんが最終的に納得されないまま、いわば平行線のままになっているということであります。

 その後、法制審議会で今のような結論になったのだと思いますが、これは事務方で結構なんですけれども、なぜ武さんの意見を反映されなかったのかというところを、もう一度わかりやすく、なるべく簡潔に御説明ください。

林政府参考人 今大臣がお話しされたように、意見交換会がございまして、意見交換会は特に結論を出すものではないものですから、さまざまな審判傍聴の拡大等々についての意見もある一方で、先ほど申し上げたように、消極、慎重な意見もあった。

 その後、法務省においてそういった状況を整理して、先ほど大臣のお話にありますように、基本的に、審判の傍聴の範囲の拡大については、現時点で審判傍聴対象事件の範囲を拡大しなければならないような制度上の問題があるとまでは認められないということ、また、その審判傍聴が許可された事件において実際に少年に影響を与えた事件もあったということ、それから、制度の施行後間がないということで、いま少し現在の制度の進捗を見守る、こういったことを法務省の中で整理いたしまして、その上で法制審議会に諮問をして答申を得たということでございます。

階委員 済みません、法制審議会での議論というよりも、法務省の中での検討でそのように整理されたということになるわけですね、確認ですが。

林政府参考人 法制審議会への諮問の段階で、この問題については、検討の対象、諮問の対象としては外れております。

階委員 特にモニター傍聴の件についてあえて申し上げますけれども、実は、平成二十年の改正のときに私もこの場で質疑を行いました。当時は、きょう、いらっしゃいます鳩山先生が法務大臣でいらっしゃいまして、このモニター傍聴については、私の質問に対しても非常に前向きな御答弁をされていました。モニター傍聴を積極的に検討していく課題として受けとめていきたいという御答弁がありました。また、当時も与党でありました公明党の大口委員からも、モニター傍聴を導入する可能性について大臣にお伺いしたいという質問に対して、鳩山大臣から、これは今後のかなり優先的な検討課題として我々も勉強し、考えていかなければならない、こういう答弁があったわけです。

 にもかかわらず、意見交換会では被害者側の積極的に進めるべしという意見があったにもかかわらず、それらを全部無視して、結局モニター傍聴を入れなかったというのは問題だと私は思っております。

 この点について、大臣から、こういった経緯を踏まえて、モニター傍聴というものをもう一度考えていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

谷垣国務大臣 モニター傍聴につきましては、今までの御議論の経緯は私が先ほど申し上げたとおりでございます。

 それで、私としては、傍聴制度等々もあるわけでございますので、今後の定着の状況をもう少しよく見てみたいなと思っております。

階委員 その導入の状況を見るのがこの三年間という期間でございまして、三年たったのでやるべきものはやるということでございまして、さらに引き延ばすというのはこの附則の三年後見直しということにも反しているのではないかということを申し上げます。モニター傍聴については、私だけではなくて、大口先生やあるいは当時の中井洽先生からも強い要請があったということを踏まえて、ぜひ今後の対応をお願いしたいと思います。

 今回の改正案では、そういった平成二十年改正の内容には含まれていなかったものについて、むしろ積極的な対応がされているということであります。

 例えば少年の刑の引き上げでございますけれども、この少年の刑の引き上げというのは、何もこのタイミングで、つまり平成二十年改正から三年たった段階でやる必要はなくて、むしろ、本当にその必要があるのであれば、平成十六年の刑法改正で成人の有期刑の引き上げがされました、その時点で見直すべきではなかったかと思うわけです。なぜその段階で少年の刑もあわせて引き上げなかったのか、これは刑事局長からお願いします。

林政府参考人 平成十六年の刑法改正では、刑法を改正して、有期刑の法定刑の上限を十五年から二十年に改めるとともに、加重した場合の有期刑の上限を二十年から三十年に改めまして、これに伴って当然改めるべき点については附則により改正したところでございます。

 これに対しまして、少年法の刑事処分に関する規定は、可塑性に富み教育可能性のより高い少年に対しては成人以上に教育的な処遇が必要、有効であること等の理由から、少年に対する刑の緩和を認めるものであることから、これらの規定を改正するに当たりましては、年齢区分の是非でありますとかその減軽方法など少年法独自の観点からの検討が不可欠であり、このような検討は平成十六年の刑法改正の趣旨を超えて、平成十六年の刑法改正とともに改正することには相当でないために、平成十六年の刑法改正当時には少年の刑事処分に関する規定の見直しが行われなかったものであります。

階委員 その割には、今回の引き上げの理由として、平成十六年の刑法改正によって成人の刑と少年の刑の間が開いてしまったから、差が開いたものを縮めるということも言われているわけです。

 私は、平成十六年の刑法改正の際に少年の刑の引き上げを見送ったのが合理的な判断に基づくのであれば、今回引き上げるというのであれば、よっぽどの理由がないといけないと思うんですが、そのような観点から今回の引き上げというのは検討されたのでしょうか。もし単純に平成十六年の成人の刑の引き上げに合わせて今回やるというのであれば、私はちょっと納得がいかない部分がありますが、今回引き上げをされるその理由について、大臣からもお願いします。

谷垣国務大臣 平成十六年の刑法改正のときに少年の刑事処分に関する規定の見直しを行わなかったわけですが、これは、先ほど刑事局長が申し上げたとおり、少年法独自の観点からの検討が必要である、それでこういう検討は平成十六年の刑法改正の趣旨を超えるものであると当時理解されていたのだと私は思います。

 他方、今回の改正で不定期刑の長期と短期の上限を引き上げるわけですが、これは、無期刑と、それから、五年以上十年以下の不定期刑という有期刑の上限の間、十年以下という間に大きな乖離がございます。そこで、裁判例の中には、主犯者たる少年と成人も一緒に共犯だけれども従属的立場にあるというような事件などにおいて、成人に対する刑と少年に対する刑との間に不均衡が出てきてしまうというような指摘がございました。実際の裁判例においても、少年に対して科し得る有期刑の上限が低いために不本意な量刑をせざるを得なかったということを判示しているものがございます。

 そういうことから、裁判所の選択肢を広げることによって、少年が犯した行為に応じてより適正な量刑をなし得るようにする必要があるというのが今回の改正の趣旨でございます。

 それから、今回の改正で無期刑の緩和刑の上限を引き上げることとしておりますが、今回の改正によって不定期刑の長期の上限が十五年に引き上げられるのでありますから、無期刑を緩和して有期刑を科す場合の上限を引き上げない場合、無期刑の緩和刑より責任の軽い不定期刑の場合と無期刑の緩和刑の上限が同じになってしまって、相当ではない。あるいは、無期刑を緩和しないでそのまま無期刑を言い渡すこともできるのでございますから、無期刑と、緩和刑としての有期刑の上限との乖離を埋め、裁判所がより適正な量刑をできるようにする必要がある。こういったことから、こういう措置を今回とることにしました。

 したがいまして、今申し上げたことを要約いたしますと、今回の改正は、少年法独自の観点からの検討を行った結果と言ってよろしいかと思います。平成十六年の刑法改正時に少年の刑事処分に関する規定の見直しを行わなかったことと矛盾するものではないと私は考えております。

階委員 特に不定期刑の方、前段でお話しになられたことについてちょっと議論させていただきたいんですが、大臣が、引き上げる理由の中で、成人と未成年、つまり少年の共犯のときに刑罰に不均衡が生じるので、それを是正する必要があるという趣旨でございました。

 確認したいんですけれども、不定期刑の条文、少年法の五十二条で、少年に対して有期の懲役または禁錮をもって処断すべきときは云々となっておりまして、処断すべきときということですから、犯行時に例えば十八歳とか十九歳であっても、判決時に二十歳以上であればこの不定期刑の規定は適用されないということでいいのかどうか。もし仮にそうだとすれば、控訴とか上告がされて、控訴、上告なのか、抗告なのか、特別上告なのか、ちょっとその辺は定かじゃないので適宜言いかえていただければいいと思います。そういったことがされて、裁判に相当の時間がかかるというケースもあり得ると思うんですが、そういった場合でも、最終的な、例えば、最高裁の判断のときに当該少年がもう二十歳以上になっていたという場合には不定期刑の規定は適用されないということでいいのかどうか、ここを確認させてください。

林政府参考人 刑の言い渡し時において二十歳未満、少年である場合に、この規定が適用されるということでございます。

階委員 つまり、一審で決着がつかずに、さらに高裁とか最高裁に判断が持ち越された場合には、最終的に判断したところの年齢で不定期刑が適用されるかどうかが決まるということでいいのですか。

林政府参考人 その場合には、上訴の対象となった判決、刑の言い渡しがなされたそのものが、その時点における適用が少年であれば、言い渡しのときでございますので、それが適用になるということでございます。

階委員 つまり、例えば、破棄自判とかいうケースもあり得るわけですね。一審の判決が破棄された、そして上訴審で破棄自判という場合には、破棄されて自判したその時点の年齢によって不定期刑の適用の有無が判断されるということでよろしいですか。

林政府参考人 委員御指摘の、例えば、破棄自判というような形であれば、そのときの言い渡しになりますので、委員の言われるとおりでございます。

階委員 なぜこういうやりとりをしたかというと、よく、十八歳、十九歳の方と二十歳ぐらいの方、つまり少年と成年が同じ事件に共犯としてかかわったという場合に、一方は不定期刑、一方は成人の刑というのは不均衡が生じると言われるわけですけれども、犯行時には成年と未成年であったとしても、重大な事件であれば、当然裁判にも時間がかかる。上訴していけばなお時間がかかるということで、その結果、成年に達していれば、不定期刑というものはなくて、一般の成年の刑で処断といいますか刑が決まるわけですから、そうであれば不均衡は生じないのではないかということで確認させていただきました。

 そういう前提で言いますと、先ほど言った刑の不均衡を正さなくちゃいけないという大臣の理由づけについては、私は、必ずしも当たらないのではないかと思うんですが、この点、大臣、御見解はございますでしょうか。

谷垣国務大臣 ちょっと今、階委員のおっしゃったことを私十分に理解できているかどうかわからないんですが、現実に幾つかの事例で不均衡を生じているということがあるわけですので、私は、階委員のおっしゃる御指摘は必ずしも当たらないのではないかというふうに思います。

階委員 今の点については、済みません、事前に通告しておりませんで、先ほどの大臣の答弁を踏まえての私からの切り返しの質問でしたので、この点については、また後で御検討願えればと思います。

 もう一つ、よく被害者としては、不定期刑の上限十年では余りに低過ぎて、やはり被害者としてはもっと厳罰を望むという声を反映して、今回、不定期刑の上限を十年から十五年に引き上げ、また、下限も五年から十年に引き上げるというふうに言われるんですけれども、私、先ほどの意見交換会の議事録を見てみました。そうしましたところ、第六回までこの意見交換会が開かれていますが、最後の六回目で、武さんは不定期刑は不要と考えていらっしゃると。また、犯罪被害者の支援をされている弁護士さん、望月さんという方も不定期刑は不要だと言っていらっしゃいます。

 私は、犯罪被害者の声を酌むということであれば、不定期刑をなくして成人と同じように懲役何年というような刑に統一した方が、むしろ被害者の声を反映したことになるのではないかと思っております。

 これも、済みません、私もきのう議事録を改めて見ていて気がついたことでございますので、事前に通告はしておりませんが、不定期刑よりも、不定期刑は廃止した上で、一般の刑と同じような形に見直しをするということについては、どのようにお考えになりますか。

谷垣国務大臣 今の階委員の問題提起というか、あるいは武さんの御意見ということもあるわけですが、私は、今の問題は、少年法の基本的な、何というか、考え方の違い、違いかどうかわかりませんが、に基づくものではないかと思います。

 やはり少年法は、まだ少年は、悪にも染まりやすいけれども、逆に言えば、教育して更生していくということがやりやすいという面があります。したがって、不定期刑で、海外の事例を見てもいろいろな不定期刑の宣告の仕方というのがあると思いますが、少年法の場合は、むしろ大人に比べて下の方にフレキシビリティーを高めるということで、改善をした場合には早期に釈放もできるようにしようということだと思うんですね。

 問題は、そういう少年法の考え方がいいのかどうかということにかかってくるんだろうと思います。

 したがいまして、実は少年法については私も余りよく勉強はしていないんですが、やはり少年法の基本的な考え方は今も妥当性があるのではないかというふうに、私自身、今現在は考えております。

階委員 不定期刑を廃止したという諸外国の立法例もあるようでございますので、ぜひこの点についても、今回改正では見直されなかった点でございますけれども、検討していただきたいと思います。

 ここまで少年法の議論をさせていただきましたけれども、あえて言わせていただければ、被害者が望んでいて、また平成二十年改正の附則によって見直しの対象となっていたにもかかわらず、被害者傍聴制度の見直しは今回されなかった。また、厳罰化についても、不定期刑の上限を引き上げるという形で対応されましたけれども、被害者が本来望んでいた不定期刑を廃止するということについても対応がされていない。被害者の声を反映するという姿勢に非常に乏しいというふうに言わざるを得ないと私は思っております。

 ですので、ぜひこの点は、今後、少年法を見直しするときには改めていただければと思っております。

 済みません。この少年法については、国選付添人及び検察官関与の拡充という点もございますけれども、時間の都合上、この点はちょっと後回しにさせていただきまして、あとは厚労省の方にちょっとお聞きさせていただければと思います。

 お手元に資料をお配りさせていただいていると思います。

 「死亡一時金 時効で不支給」ということなんですけれども、この記事については後で委員の方には読んでいただきたいと思うんですが、国民年金の加入者が亡くなられたときに、遺族には死亡一時金というものが支給されます。その死亡一時金というのも、基本的には、死亡を知ったときから二年以内に請求しないと時効にかかってしまうわけです。

 問題は、失踪宣告がされた場合。行方不明になっていて、失踪宣告という民法上の制度によりますと、七年間生死不明であれば失踪宣告を申し立てて、それが認められると、七年たった時点において死んだものとして扱われるということであります。

 これまで厚労省は、死亡一時金の消滅時効の起算点について、最初は、亡くなられたとみなされる七年後の段階を時効の起算点として、そこから二年というふうに数えていたんですが、これは途中の平成二十一年ぐらいだったでしょうか、解釈を変えて、それからは、死亡したとみなされた時点ではなくて、失踪宣告がなされた時点から二年というふうになった、逆ですかね、失踪宣告がされた時点から二年ということになっていたのが、途中で解釈を変更して、死亡したとみなされたときから二年というふうに変えたわけです。

 これによって何が起きたかというと、当然、失踪宣告を申し立てるのは遺族側、遺族が任意のときに申し立てることができるわけですから、七年たったからといってすぐ申し立てるわけではなくて、十年ぐらいたってから申し立てるケースがある。その場合、十年たってから申し立てて、どんなに急いで宣告がされたとしても、その時点では、宣告が認められると、七年たった、死亡したとみなされた時点から二年以上とっくに過ぎていますから、もう時効は成立していて、一時金の支給は認められないというふうに解釈を変えたわけですね。

 このように解釈を変更したんですけれども、ここに来て、総務省に設けられております年金業務監視委員会、私が民主党政権時の政務官のときにこれはつくったものなんですけれども、そこでの指摘を踏まえて、再度、時効にかかる人たちを救済するために、起算点をもとに戻したということがありました。

 こういうふうに変転しているわけですけれども、これは、もとに戻したのであれば、途中の見直しによって時効にかかって一時金がもらえなくなった人について、一刻も早く調査を行って死亡一時金をお支払いすべきではないかと思っておりますが、この点、厚労省はいかがでしょうか。

高鳥大臣政務官 階委員にお答えを申し上げます。

 この死亡一時金でございますが、国民年金法上、二年を経過したときは、時効により、受給権が消滅することとされております。

 この二年の起算点につきましては、以前は、失踪宣告の審判の確定日としていたものを、平成二十四年五月に解釈を改めまして、死亡とみなされた日としたところでございます。この解釈変更は、年金受給権に関する判例や、老齢年金と遺族年金の重複給付を避ける必要なども踏まえまして、行ったものでございます。

 しかしながら、死亡一時金につきましては、新たな解釈の結果、委員御指摘のとおり、受給できない事例が生ずるおそれがあるために、死亡一時金の趣旨に鑑みまして、失踪宣告の審判の確定から二年間に請求があった場合には時効を援用しない、すなわち、運用で旧来どおり死亡一時金を支給するという考え方でございます。

 今後、速やかに、平成二十四年五月から今までの間に死亡一時金の請求を行っている方のうち、今回の対応の対象となり得た方について確認をいたしまして、支給を行う必要があると認められる方には個別に通知を行い、お支払いをすることといたしたいと考えております。

 また、日本年金機構のホームページにお知らせを掲載するなど、該当すると思われる場合は年金事務所にお問い合わせいただくよう、周知、広報を行ってまいりたいと存じます。

階委員 私も話していてちょっと混乱するような、ちょっと複雑な話なんですけれども、もう一回整理しますと、もともとは、平成二十年に社会保険庁の年金保険課から、消滅時効の起算日は失踪宣告の審判の確定日とするという通達というか回答がされていた。ところが、平成二十四年一月三十日に、七年間の、死亡があったとみなされた日に変えたということで、権利を失う人が出てきたので、それについてはやはり問題だということで、運用を改めるというのであれば、早急に調査して死亡一時金をお支払いすべきではないかということに対して、それについては前向きな回答をいただきました。

 ただ、問題は、こういった混乱が生じているわけですね。途中で解釈を変更するときに、権利を制限する方向に、一時金をもらえる人の権利を狭める方向での解釈の変更ということですから、私も民間の金融機関におりましたけれども、こうした、いわばお客様に対して不利益な変更については、慎重にも慎重な検討をするというのが普通の常識であります。

 ところが、今回の解釈変更について、そのような慎重な検討がされたのか。例えば法務省や外部の意見を聞いた上で解釈変更を行ったのかということについて、確認させてください。

高鳥大臣政務官 御指摘の解釈変更でございますが、日本年金機構から疑義照会を受けまして、判例や学説での消滅時効の考え方を参照して行ったものと承知をいたしております。その際、法務省等の外部の機関に意見等は特に聞いていないと承知いたしております。

階委員 確認ですけれども、内部での検討ということなんですが、その際、担当課だけでなく、例えば政務三役とかにも相談したということはあり得るのでしょうか。相談といいますか決裁したということはあり得るのでしょうか。

高鳥大臣政務官 担当部局の判断ということであって、政務三役には相談していないということでございます。

階委員 担当課の独断でこのような解釈変更をして、混乱を生じさせていると。私は、民間金融機関であれば、大変な問題だと思います。これは、経営者の監督責任という問題にもなりますし、最近でいえば保険金の不払い問題というのがありましたけれども、業務改善命令が出されてもおかしくない、民間金融機関であればそういう事例だと思っています。

 今回の件を受けて、厚労省の政務三役として、担当課の関係者に対して人事上の処分をすべきではないかと思われますが、この点、いかがでしょうか。

高鳥大臣政務官 国民年金の死亡一時金を受ける権利は、民法上の債権ではなく、公的債権として位置づけられておりまして、行政法規としての国民年金法を所管する省庁として解釈を行うという考え方で、平成二十四年五月当時、対応したものと承知をいたしております。このような考え方によりまして厚生労働省が解釈の変更を行ったことの正当性につきましては、今回改めて法務省にも相談したところでございます。

 ちなみに法務省からは、第一義的には国民年金法を所管する厚生労働省で適切に判断すべきとの考えが示されております。現時点では人事上の処分をすべき不適切な事情は見当たらないと考えておりますが、いずれにいたしましても、解釈変更当時の経緯や考え方をよく確認した上で対応することが必要だと考えます。

階委員 この件が問題があるからこそ、今、一時金をもらえなかった方を捜し出して、そして一時金を支払うという対応をされるわけですよね。だから、問題があったことはお認めになっていると思います。その原因を徹底究明して、必要に応じて人事上の処分を行うということも当然考えられるべきだと思います。

 その上で、今後こうした問題が起きないようにするために、厚労省としては、今回の件を受けてどのような取り組みを行うのか、この点についてもお聞かせ願えますか。

高鳥大臣政務官 お答えいたします。

 法解釈を行うに当たりましては、国民の権利義務に影響を与えるようなものにつきましては丁寧に対応することが大切だと考えておりまして、必要に応じて関係省庁に相談するなど、適切に対応してまいりたいと考えます。

階委員 そのように、担当課だけで、特に国民の権利を制限する方向でこれまでの運用とか解釈を変える場合には、私は、法務省に照会するなりして、なるべく幅広く意見を聴取した上で慎重に考えられるべきだと思っております。

 その上で、法務大臣にお聞きしますけれども、民事及び刑事の基本法を所管している法務省であります。また、大臣も所信におかれまして法の支配を貫徹すると力強くおっしゃっております。法の支配を貫徹する上で、今後、他省庁から基本法の解釈についてアドバイスを求められた際には、なるべく積極的に、それはあなたの省庁の問題だから自分たちで考えてくださいというだけではなくて、積極的にアドバイスをすべきではないかと思いますが、この点、大臣の御所見をお尋ねします。

谷垣国務大臣 私どもは民法その他基本法を所管しているわけでございますが、今の案件は、年金関係の法は本来厚労省において運用されるべきものでございますが、当然、時効というようなことになりますと、民法の、基本法の考え方との整合性というものが必要になってくるだろうと思います。

 したがいまして、そのような照会を受けましたときは、今までも行っておりましたが、私どもとして十分それにきちっと対応してまいりたいと思っております。

階委員 この件についてはここまでにしますので、高鳥政務官、きょうはお忙しいところ、ありがとうございました。御退席いただければと思います。

 残り時間がわずかでございますが、済みません、また少年法の方にちょっとだけ戻らせていただきます。

 もう一つ、少年法の今回の改正で、国選付添人及び検察官関与制度の対象の拡大ということなんですが、特に少年事件にかかわっている弁護士さんからは、付添人の範囲の拡大はいいんだけれども、検察官関与もそれに伴って同じ範囲で拡大されるというのはいかがなものかと。この件について、もしも同じ範囲で拡大されるとしても、実際の運用は、検察官が関与する場合というのはそれほどふえないんだということをぜひこの場で確認しておきたいと思います。

 この件について、1から3というふうに質問を用意しておりますが、最後の点でございます、簡潔に答弁をお願いします。

林政府参考人 今回の、検察官関与制度の対象事件が拡大される、そういうことに伴いまして、実際に検察官が関与する事件というものがどの程度見込まれるか、そういうものとしてお答えいたします。

 今回の法改正によりまして、死刑または無期もしくは長期三年を超える懲役もしくは禁錮に当たる罪というものに対象事件が拡大されるわけでございます。もとより、どの程度に検察官関与がなされるかは、個別具体の事件における裁判所の判断、裁判所によってこれは決められるものでございますので、そういった裁判所の判断いかんによるものであります上に、現行法の、現在の運用として検察官関与がなされた事件を見ますと、これは年に九件という数字から、また年二十六件という非常に低い数字でありますが、この年ごとの件数もまちまちでございます。

 そういったことから、一概に、今回の法改正により検察官関与の件数がどの程度増加するのかというのを申し上げることは困難でございます。

 もっとも、現行法の運用を見ますと、真に検察官関与が必要な事件に限って検察官関与の決定がなされていることを踏まえますと、今回の法改正により、検察官関与の事件数というものが対象事件の拡大に伴って大幅に増加するというようなことはないのではないかと思われます。

階委員 ありがとうございました。終わります。

江崎委員長 次に、田嶋要委員。

田嶋委員 おはようございます。田嶋要でございます。

 きょうは、まず、先週の質問で残ってしまいましたところから質問させていただきますが、死刑制度でございます。

 大臣にお伺いしますけれども、大変重い、根幹にかかわる問題でございますが、この死刑制度、あるいは制度の以前の執行にかかわる是非について、これは当然いろいろな意見があるのは言うまでもありませんが、大臣のもとで何らかの検討会を立ち上げる考えはおありでしょうか。

谷垣国務大臣 現在、私は、私のもとで死刑に関する特別の検討会をつくるということは考えておりません。

田嶋委員 よろしければ理由も教えてください。

谷垣国務大臣 これは、長いいろいろな法務省の中での経験もあり、中での議論はいろいろあると思います。そういういろいろなお声には私も十分耳を傾けていくつもりでございますが、やはり安定性も必要だということが一つございます。

 それからもう一つは、法務省としては特にこういうことを考えるつもりはございませんけれども、いろいろなところで御議論していただくのは結構だと思っておりますし、それについては十分耳を傾けていきたいと思っております。

田嶋委員 安定性が重要だというのはどういう意味かわかりませんけれども、やはり議論をするということは大変大事ではないかというふうに思います。

 ヨーロッパなんかの事例を聞きますと、執行をやめてから制度がなくなるのに半世紀以上かかっているような国々の御紹介もございまして、それだけ大変難しい問題であるからこそ、やはり、私は、国が議論を高めていくための貢献をしていただきたい。現に、民主党政権時代には、千葉法務大臣のもとでそういう議論もあり、そして報告書も出されておると聞いております。

 そういう意味では、状況はそこから二年以上たっておるわけでございますが、特に、先日も申し上げました裁判員の方々、そういった経験をして、死刑ということに関して向き合わざるを得ない立場に置かれた方々からの要請書も出てまいったわけでございます。

 そういう意味では、やはり刻々状況は変わっていると私は感じるんですね。だから、軽い問題ではないからこそ、ぜひ大臣には御検討をいただきたいというふうにあえて申し上げさせていただきたいと思います。

 しかし、現時点で、大臣はそのお考えがないということと同時に、国民の間の議論が高まることは大変結構なことだということで、政府のスタンスと分けてそのような御意見もいただきました。

 それに関しまして、次の御質問でございますが、資料の一ページをごらんください。これは前回も資料をつけましたが、最後のページで、ここまで至りませんでした。改めてつけさせていただきました。

 世論調査というのは、これをごらんいただくと、過去に八回行われております。直近が平成十六年でございますから、これも大分前でございますが、ごらんいただくと、上の表と下の表、つまり、質問の聞き方が一度だけ変更されているということでございまして、前回大臣がおっしゃっていた定点観測、同じ質問に対して反応がどう変化してくるかを見ることも大事だ、おっしゃるとおりでございます。

 そういう意味では、同じ質問で昭和時代に四回、そして平成に入って一回、次は上の方でございますが、平成に入って三回、世論調査が行われております。

 では、下の、前のときにはどういう聞き方であったかということです。賛成、反対で聞いていますけれども、下のちっちゃい字ですが、「今の日本で、どんな場合でも死刑を廃止しようという意見にあなたは賛成ですか、反対ですか。」ということで、上の表はそれがもう少し選択肢の中に書かれているわけで、「どんな場合でも死刑は廃止すべきである」、賛成か反対かということで、一見同じなような印象も受けるわけであります。同時に、若干言葉の使い方が違う。「すべき」という言葉が問いに入っているのが直近の三回なわけでございます。

 私、両方の質問を見ていまして、やはり質問の聞き方として、大臣が前回おっしゃったように、同じ質問をした変化、出てくる数字の変化を見ることも大事ということは私も否定はいたしません。しかし、この聞き方は、下のものも上のものも余りにも物事を単純化してしまっていて、本当の民意がどこにあるのかということを確認するには非常に不十分、役立っていないどころか、誤解を与え得る、結論だけを見て誤解を与え得るような質問になっているのではないかというふうに私は感じますが、まず大臣、どんな印象ですか。

谷垣国務大臣 こういう質問の立て方、若干変化がなかったわけではありませんが、基本的にこういう質問の立て方をしてきておりますのは、要するに、この問題の論点と申しますか、死刑制度の存廃に関する我が国の議論が、結局のところ、あらゆる犯罪について死刑を廃止すべきかどうか、つまり全面的に廃止すべきであるかどうかというのが最大の論点であろうということを踏まえまして、このような「どんな場合でも死刑は廃止すべきである」か、あるいはこれに対応する「場合によっては死刑もやむを得ない」という選択肢になっているわけで、こういう考えに基づいて繰り返し実施してきたということだと私は考えております。その上で、先ほど田嶋委員にも言っていただきましたが、定点観測といいますか、数字の推移を見ていくということとしているわけですね。

 また、こういう世論調査をやるに当たりまして、どういう選択肢を設けるのがいいのかというのは、社会調査の専門家の意見も伺って検討していかなければいけないことも、他方、事実でございます。

 ですから、私どもは、定点観測ということは大事だと考えておりますが、いろいろな御議論を踏まえながら、次回、これはいつやるかということはございますけれども、そういうことを検討しながらまた臨みたいとは思っております。

田嶋委員 世論調査の所管は内閣府ということでございますが、コンテンツにかかわる責任は、本件の場合、やはり法務省にあるかというふうに思います。

 それと、先ほど、政府としては検討会を行う予定はないとおっしゃいましたけれども、国民の間で議論が高まることは結構なことだと。そういう意味では、この世論調査を行うということも、やはり国民の中で、立ちどまって多くの人に考えていただく一つのきっかけづくりにはなろうかと思いますので、次、いつあるかわからないということでございますが、過去、平成に入って四回でございますから、恐らくそんなに遠くない将来に平成に入って五回目の世論調査があるんだろうなと私は思っておりますが、そのときには、定点観測で同じ質問さえしていればいいというごスタンスには大臣はないというふうに思います。

 そこで、私はあえて申し上げますが、死刑の話をするのであれば、死刑をやめるかわりにこういうことを考えるという部分に関しての情報が、やはり一般の国民の皆様には、例えば終身刑の話一つとっても、それは言葉も聞いたことがないという方もおいでかもしれません。そういう意味で、もう少し聞き方を、右から聞いたり左から聞いたり上から聞いたり下から聞く、いろいろな質問をすることで、全体としてどういう質問にはどういう反応があるかということを見ないと、一面からだけぱっと一言聞くという形では、私は本当に、これは何を調査しているのかもわからないような気がします。

 そういう意味では、定点観測も重要でありますが、次回はもう少し質問に肉づけをして、いろいろな角度からの質問を、終身刑に関する言葉も含めて聞くということを法務大臣のもとで検討していただけるということで、御答弁をいただきたいと思います。

谷垣国務大臣 今、田嶋委員が強調されたところまで、すぐ私、はい、そうでございますとはまだ申し上げにくいですが、十分、世論調査の専門家等の御意見も勘案しながら考えてまいりたいと思います。

田嶋委員 これまでは、業者さんと契約をして調査は実際行われているようですが、質問が一個ふえるとコストが倍になるというわけではないと思いますので、それはそんなに差し支えのあるものではないと思います。より国民の間での議論を深めることは大事なことだというのであれば、終身刑という聞きなれない言葉も含めて、こういうものを代替で考えたら死刑に関してはどう思うかとか、そういう聞き方もやはり必要になってくると思います。

 いずれにしても、やがてそれは表に出ることでしょうから、これも法務大臣に言いっ放しにしませんので、半年後、一年後、ずっとフォローしていきますので、ぜひ大臣にはしっかりとお願いをしたいと思います。

 最後にもう一つですが、前回これも申し上げました世論調査のマイクロデータの公表でございます。これは最後、ちょっとはしょってしまいましたが、残念なことですが、今日まで行われてきた死刑に関する世論調査の結果は全て廃棄をされているということが内閣府の答弁で確認されました。

 そして同時に、前回は言ったかどうか覚えていませんが、内閣府も、あるいは政府全体も、世論調査の結果をそんなふうに廃棄していてはいけないんじゃないかという議論がここ五年以内では起こってきたようでございます。

 そういう意味では、この死刑制度のみならず、世論調査の結果を捨ててしまうということをやめるような内部の扱いに今変えてきているという話を私はお伺いしておるわけでございます。これは内閣府の方の話でございますが。

 少なくともこの死刑制度に関する次回世論調査、遠くない将来に行われると思いますが、そのマイクロデータの保存、そしてそれの公表、つまり、集計結果だけを法務省が受け取るのではなくて、発注元は法務省でありますから、法務省がしっかりデータを返してもらって、そして一般国民あるいは研究者に対して資する形で情報を公開していく、そういうところまでしっかりとやっていきたいという御答弁を大臣からいただきたいと思います。

谷垣国務大臣 これは、世論調査の実施主体である内閣府がまず第一義的に御検討いただくべきものだと思いますが、現在、内閣府でも検討していただいていると聞いております。

 何を検討しているかということですが、今の、個票データの取り扱い、それを公表せよということでございますが、例えば、個票データに含まれる項目から個人が特定されるようなことがあり得るのかどうか、そういうことが起こってくるのかとか、それが世論調査における回収率の低下をもたらすことにならないか等々のことを、今、内閣府において検討していただいていると聞いておりますので、その状況を私どもは見守りたいと思っております。

田嶋委員 それは言わずもがなのことだと思いますし、オープンデータ、オープンガバメントという世界の潮流の中で、以前も、法務省のいわゆる会社の登記の関係も情報公開の問題点を指摘させていただきましたが、そういう個人情報の問題は当然クリアしなければいけませんが、基本原則としては国民に情報をしっかり開示していくということで大臣がリーダーシップを発揮していただきたい、そのことをお願いさせていただきますので、よろしくお願いします。

 あくまでも本件に関しては発注元は法務省でありますから、内閣府で考えてくださいというふうにはしていただきたくないというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 続きまして、少年法の関連で御質問させていただきます。

 私は特に、この少年法というものを、少年以外との比較においてきょうは質問させていただきたいと思いますが、まず冒頭、一番根っこのところで改めて確認ですが、なぜ少年は成人と分けて考えなきゃいけないかということを大臣に御答弁いただきたいと思います。

谷垣国務大臣 先ほど階委員の御質問にもちょっとお答えしたところでありますけれども、少年法の基本的な考え方として、少年は一般にまだ人格といいますか心身も未成熟である、人格形成途上にあるということだろうと思います。したがいまして、まだ固まっていない、フレキシビリティーがあるといいますか、悪いことにも染まりやすい、しかし反面、教育によって改善更生効果が成人の場合よりも期待されるという面もあるということではないかと思います。

 そこで、少年法は、そういう少年の特性を踏まえて、犯罪を犯した少年に、大人のように直ちに刑罰ということでは必ずしもなくて、少年の健全な育成を期して、保護、教育のための処遇を優先するという考え方をとりながら、事案に応じて刑事処分も含めた多様な措置を用意している、こういう考え方に立っていると考えております。

田嶋委員 この間、法務大臣にとっても最重要の再犯防止を、私も当事者の一人としてずっと研究というかいろいろさせていただいておりますけれども、いろいろ調べれば調べるほど、私は、むしろこの少年法の考え方というのは、成人にもこれからもっと強調されるべきではないか。今、心身の発達がまだ途上にあるとおっしゃいましたけれども、大体、心身の発達が途上にあって罪を犯して刑務所に入っている成人というのもたくさんいるし、やはりそれは個人差が大きいのではないかというふうに思うんですね。

 そして、今まさに、再犯防止のためには雇用の受け皿、雇用の受け皿のためには教育だ、あるいは刑務所の中も外も教育が大事だ、そういうことをおっしゃってきている、そういう流れになってきているということは、私は、むしろこの少年法の精神こそ成人にも適用されてしかるべきではないかというふうにまず総論として思っておるわけでございますが、大臣、そのようにお考えですか。

谷垣国務大臣 そこは非常に難しいところだなと思うんですね。

 なぜ一般成人の場合と区別して少年法が適用されているかということになりますと、一方で、人権を尊重して、大人の場合は、行為に対する責任を問うという考え方がやはり刑法そのほかの考え方にはあるだろうと思います。少年の場合には、もちろん行為に対する責任は問うということがないわけではありませんが、それよりか、やはり人格の形成途上であるということを重視している。

 大人の場合に、成人の場合に必ずしもそういう考え方がとられていないのは、結局、権力によって人格を、確かに、矯正のときには、教育によってある程度期待される人格に変わっていってほしいということはあるんですが、そこが刑法の場合にはやや抑制的であるという考え方があるのではないかと私は思っておりまして、そのあたりは、昔から言ういわば新派と旧派の刑法理論の対立にもあらわれているようなところで、そのバランスはなかなか難しいところがあるかなと思っております。

田嶋委員 しかし、こうやって法律としては別の少年法というふうに非連続の形で二つに分かれていますが、実際の人間が十九から二十になった途端に突然という話ではありませんから、私は、流れとして、今まさに法務省の最重要が再犯防止だとおっしゃるのであれば、もっともっと教育そして雇用につながるような、自分の足で立てるような人間に少しでも近づけていく、そういった努力は少年法ではなくてもやはり大事になってくるのではないかな、そのことをこれから各論で御相談させていただきたいというふうに思います。

 まず、先ほどの階さんの御質問とは方向性が少し逆なような印象もするんですが、不定期刑に関してです。

 私は、この不定期刑は、個別の対応、一人一人の事情が違うからということで刑期を決めずにやっているということには一定の役割があるのかなと思うんですが、これを少年にだけ適用しているということの理由を教えていただきたいと思います。

谷垣国務大臣 これは先ほど申し上げたことのやや繰り返しになりますが、被告が少年であって、人格形成の途上にある、したがって、弾力性もあるし悪にも染まりやすいが改善更生も期待できるから、処遇も柔軟なものにしようということがあるんだろうと思いますね。

 それから、若い人に対しては、ある意味で、これは被害者の感情とかいろいろなことがありますが、年少の者に対しては社会の寛容というものも、まだ幼いからという寛容が期待できる面もありますので、行為責任を重視した体系には必ずしもなっていない。しかし、成人の場合には、やはり行為責任というものがどうしても出てくるというところがあるのではないかと思っております。

田嶋委員 私は、いわゆる不定期刑というのは、一人一人更生の度合いにも差ができる、そういう意味で、短くすることもできるような対応だと思います。逆にしかし、例えばカナダのような事例で、上限を定めない不定期というものもあるわけでございまして、上限であれ下限であれ、要は画一的な、十年とかということにはやはり相当無理があって、だからこそ、例えば満期で刑務所から出てくる人は、一切更生保護のような形で支援をされることなく、いきなり出てきて半分がまた刑務所に戻ってきているというような矛盾がやはり起きている。だから、そこはやはり、成人であっても、一人一人の状況をもっと見きわめていくような刑務所内、所外の対応をしていかないと、私は再犯率の低下というのは実現できないというふうに考えておりますので、そのことは一言申し上げさせていただきます。

 続きまして、教育に関してでございますが、少年院における資格取得などの教育訓練目的のプログラム、それから刑務所におけるそれらとでは、実際、どういう人が適用対象となるかということで、どういう違いがあるかを御答弁ください。

西田政府参考人 お答えいたします。

 まず、少年院におきましては、少年の健全育成という観点から、在院者個々の特性とか必要性に応じまして、各種教育プログラムとか職業指導を初めとする矯正教育を実施しているところでございます。

 これに対しまして、刑務所におきましては、例えば、受刑者に職業に関する免許とかもしくは資格を取得させたり、あるいは、職業に必要な知識とか技能を習得させる必要がある場合においては、相当と認めるときには職業訓練を行うこととしております。

 その場合に、相当と認めるときという選定基準がございますけれども、これは、受刑者が職業訓練を受講することを希望しまして、かつ、期間が必要でございますので、残刑期が職業訓練に必要な期間を超えている、そういったこと幾つかがその選定基準となっているところでございます。

田嶋委員 もう一つ確認ですが、少年院や刑務所において、本人が希望する資格取得や職業訓練であっても、中に入っている期間が十分長くないという理由のために訓練を受けられない、そういう事例はそれぞれ少年院と刑務所で起きているんでしょうか。

西田政府参考人 お答えいたします。

 まず、少年院におきましては、在院者を収容する期間に応じて教育カリキュラムを編成しておりますので、原則として、収容期間が短いからといって、それのみをもって本人が職業訓練とかプログラムを受けることができないという事例はないと承知しております。

 一方で、刑務所におきましては、職業訓練をやるとなった場合には、やはりどうしても一定の期間が必要でございますので、残刑期がそれを超えていることがありましたら、そういった事情はあろうかと思います。

 ただ、職業訓練を募集するときには、選定基準を、どういう施設でどういった期間必要かということを受刑者に示しておりますので、残刑期が職業訓練に必要な期間を超えているということを受刑者本人もわかって希望するわけでございますので、そういったことはないんじゃないかと。具体的な数字は把握しておりません。

田嶋委員 やはり、刑務所における教育を受けたり資格を取ろうとすると、うんと狭き門だというような印象があるわけでございます。そういう意味では、少年であれば基本的にはそういう訓練の機会がたくさん与えられる、そして、成人の場合にはそうではないという印象を受けるわけでございます。

 資料の四をごらんくださいませ。

 これは特に性犯罪者の処遇プログラムでございますが、これをごらんいただくと、「刑事施設におけるプログラムの受講」というものが左の上のところにあって、それがあってもなくても保護観察所におけるプログラムも受けている。これは一個の事例でございますけれども、少なくとも性犯罪者の処遇プログラムに関しては、刑務所の中におけるトレーニングと刑務所を出た後のトレーニングが一貫性を持ってその人に適用されているという事例がもう既に行われているというふうに承知をいたしております。

 そこで、大臣にお伺いいたしますが、冒頭からの私の考えとして、少年に適用される形をできる限り大人にも適用していくことが再犯防止につながっていくというふうに私は考えておりますので、この性犯罪プログラムで採用されている、これも世界の趨勢からは二十年ほどおくれて日本では始まった、あの奈良で起きた事件が契機だと聞いておりますが、刑務所の中と外、矯正と保護がシームレスに連携している事例が既に起きておりますので、ほかの犯罪類型でも同じことができないはずはない。

 刑務所にあと半年しかいないので、本人が二年かかるプログラムをどうしてもやりたいと思ったら、残り一年半は外でやってあげたらいいじゃないですか。それが犯罪抑止につながるんだったら、それは本人のためでもあり、我々市民、社会のためにもなると僕は思うんですね。大臣、そういう考え方を採用できませんか。

谷垣国務大臣 基本的に、刑務所内の矯正と出た後の更生保護との切れ目のない連携をやっていくということは必要なことだと思います。委員がおっしゃったように、性犯罪に関してはそういうようなことがかなり試みられてきている。かなり成果を上げ得る分野だと思います。

 それで、刑事施設における処遇プログラムに基づく、薬物依存というようなことについても今おっしゃったのと同種の試みを行っております。

 それ以外にも、保護観察処遇におきまして、教育に関しては、矯正施設における教科教育等の実施状況を踏まえて、本人が在学していた学校等と連携した復学調整であるとか、あるいは高卒認定資格の取得に向けた助言指導、それから就労に関しては、矯正施設内での職業訓練の状況等を踏まえてハローワークと連携する、必要な公共職業訓練を受講できるよう指導助言を実施する等々のことを試みておりまして、今後とも、塀の中と外とのスムーズな、シームレスとおっしゃいましたが、そういう連携は努力をしていかなければいけないと思っております。

田嶋委員 おっしゃるとおり、性犯罪に加えて薬物やアルコールでもそういう対応が始まっていると聞いておりますが、やはり成人になってしまうと訓練を受けるチャンスが極端に少年よりも減ってしまっている。残刑期が短いとか、それから希望者しか基本的にはチャンスはない。希望してもない場合もありますけれども、希望しなければまずない。

 しかし、私は、半ば義務的にでも、本人のためにも、やはりトレーニングすべきはトレーニングすべきで、義務教育すら終わっていない成人もいるわけですから、だから、そういうところに対しては、もう少し幅広く教育ということを成人に対して適用していただけないかというふうに思っております。

 それでは、資料の五をごらんくださいませ。

 「刑事施設における収容人員の推移および職員数の推移」でございます。これはよく聞く話でございますが、過去十年ずっと、推移としては負担が下がっていると申しますか、収容人員を職員数で除した値ということでございます。

 次のページをごらんください。

 次の六ページは、ほかの国との比較。若干データは古いですが、これしかないということでございましたのでこれで見せておりますが、当時は日本が四、先ほどのデータですと、直近の数字で三・三でございます。三・三でも、世界の比較の中で、ここの中では一番高い、つまり職員の負担が大きいということであります。

 これは、職員の負担という説明ももちろんできますが、私は逆に、職員ではなくて、中にいる人たちがどのぐらいきめ細やかなそういう訓練やトレーニングを受ける機会を得ているかということにも直結をするのではないかというふうに考えております。

 そこで質問をいたしますが、少年院全体についての職員負担率は幾らでしょうか。

西田政府参考人 お答えいたします。

 平成二十五年で申し上げますと、少年院に収容されております一日当たりの平均収容人員、少年は三千五十四名でございます。これに対しまして、少年院の職員数は二千四百七十二名で、いわゆる職員負担率は一・二となります。

 以上でございます。

田嶋委員 少年院は一・二です、大臣。一・二ということはほかの国々の行刑施設並みですね。それで、日本の行刑施設の職員負担率は相変わらず極めて突出して高い。私は、それは、言いかえるならば、中に入っている人たちの受けるべき教育やトレーニングのチャンスがなかなか得られない、何かやろうとしても、これ以上刑務官の負担はふやせないから、トレーニングのこま数をふやすとかいうこともなかなか現場ではままならないという現実があるのではないか。

 次のページをごらんください。

 よく言われる再入率でございますが、五年再入率は、上から四つ目のところで、全体で五割ですね。これはもうよく知られた数字です。二人に一人は戻ってくる。一方、最後の資料、ページ八、少年院はどうか。少年院は、少年院にもう一回戻ってくる人と、そして少年刑務所や成人の刑務所に戻ってくる人、足し合わせると、上と下で大体二五%です。これも、因果関係は証明できませんが、少なくとも相関関係はある。

 だから、私が申し上げたいのは、大臣に最後にお伺いしますが、やはりこれは何としても、負担率を下げることによって職員数の充実、そして教育訓練プログラムを大幅拡充するということが、これはもう再犯率を下げるためには不可欠だと。

 そこは法務大臣のお力だけでは難しい部分もあろうかと思いますけれども、そのためには、私は前回PFIのことも質問させていただきました。純増の財源が難しいのであれば、さらに内部の、法務省の所管の中でのPFIも含めて財源を捻出していただいて、そして財務省と交渉して、自分たちの努力で下がった節約部分をこういったところに拡充して、刑務官の負担を下げて、中に入っている人の教育訓練チャンスをふやしていく、そういう方向にやっていただきたいというふうに思いますが、大臣、最後に御答弁をお願いします。

谷垣国務大臣 再犯防止対策の中で、それぞれ受刑者の種類に応じたいろいろなプログラムを用意するということを重視しておりますが、これをきちっとやっていくためには、基本的にそれを担当する人を得なければできない。

 先ほどの三・三対一・二というのは、少年院とまた職務が違いますのですぐに比較することは難しゅうございますが、今、刑務所の職員、刑務官がやはり非常にきつくなっているというのはおっしゃるとおりでございまして、特に女子刑務所においてそこは顕著なものがある。そういうことであれば、委員がおっしゃったような教育プログラムを充実していくというのも限界が出てきてしまうと私は思っております。したがって、定員増、これはなかなか難しいんですが、努力をしなければいけない大きな目標だと思っております。

 そこで、経費ですが、こっちで無駄を削減していく、あるいはPFIによって効率化をやっていくというようなことは、これはもう当然努力しなきゃいけません。それを努力したから、ではすぐ定員を認めてくれるかというわけでは必ずしもないんですが、やはりその双方の努力をあわせて行っていきたいと考えております。

田嶋委員 まだ、前回の説明で、Aと書いてある刑務所で、いわゆるPFIや公サ法の対象に入っていない刑務所が五カ所ほどございます。そういうことも含めて、私は、効率化を上げてもっとそういった財源をこちらに振り向ける余地はまだあると思っておりますので、今後とも協力して頑張っていきましょう。

 ありがとうございます。よろしくお願いします。

江崎委員長 次に、西田譲委員。

西田委員 おはようございます。維新の会の西田譲です。

 どうぞよろしくお願いいたします。

 さて、本日は、少年法についての質疑でございますけれども、この少年法、私も法律の専門家ではございませんので初めて勉強をしてみたわけでございますけれども、現行少年法、昭和二十三年、一九四八年の制定でございます。

 当時のことを想像しますに、恐らく、戦後の大混乱期、GHQ統治下にあるわけでございますけれども、社会の情勢を思うにも、恐らく孤児となった少年も多かったでありましょう。食糧難ということで、本当に日々の暮らし、衣食住にも事欠いていたような状況でありましょう。窃盗や強盗といった行為に走る少年、あるいは成人の犯罪に巻き込まれる少年も多かった。そういった時代の中にあって現行の少年法が制定されていったんだなということを改めて思い起こしたわけでございます。

 制定当時の、第二回国会でございますけれども、少年法の趣旨説明を見てみました。引用させていただきます。

  最近少年の犯罪が激増し、かつその質がますます悪化しつつあることは、すでに御承知のことと存じます。これは主として戦時中における教育の不十分と、戦後の社会的混乱によるものでありますが、新日本の建設に寄与すべき少年の重要性に鑑み、これを単なる一時的現象として看過することは許されないのでありまして、この際少年に対する刑事政策的見地から、構想を新たにして少年法の全面的改正を企て、もつて少年の健全な育成を期しなければならないのであります。

というふうに趣旨説明がなされておりました。

 当時の大混乱という一時的な状況、社会情勢だけではなくて、日本の将来に寄与する少年のために、健全育成のために少年法を改正するんだ。恐らく、その趣旨というものが殊さら大切にされ、これまで運用されてきたのではなかろうかというふうに思います。

 また、昭和二十三年制定以来、大幅に改正されたのが五十二年後の、西暦でいいますと二〇〇〇年でございます。五十二年間、社会情勢の変化は物すごくいろいろなところで起こっているわけでございますけれども、五十二年にわたって改正されず運用されてきた。そして、その後、二〇〇七年、八年と大きな改正がなされ、そして今回の改正、このようになるわけでございますけれども、恐らくこの間、家庭裁判所の中で少年審判というものを扱う中で実務を積み重ねてこられた結果、今日こうしてこの昭和二十三年当時の少年法の趣旨が大切にされてきたのではなかろうか。本当に家庭裁判所が頑張ってこられたんだなといったことを改めて当時の趣旨説明を見ながら感じたところでございます。

 そういった中にあって、今回の改正も、そういった実務を積み重ねてこられた中で、改善すべき点を改善していこう、必要な改正をしていこうということでのことであろうと思いますので、そういった観点に立って質問をさせていただきたいと思っております。

 さて、まず第一に、今回は、無期の緩和刑の上限が十五年から二十年、あるいは、不定期刑の長期十年が十五年、短期五年が十年ということで上限の引き上げがなされるわけでございますけれども、そういった上限を引き上げなければならないような背景があるのか、あるいは、これまで、現行の少年法での量刑に対する評価について何か変化があったのか、この点について刑事局にお伺いをさせていただきたいと思います。

林政府参考人 今回の改正におきまして、不定期刑の長期、短期の上限、または無期刑の緩和刑の上限について、これを引き上げるという改正でございますけれども、これについては、そういった引き上げる必要性があるというふうに認識しております。

 その中身でございますけれども、少年に対する有期刑の上限というものが、現在、五年以上十年以下の懲役または禁錮となっている。このことにつきましては、無期刑と、そして今申し上げた五年以上十年以下の不定期刑というこの有期刑の上限との間に非常に大きな乖離がある、こういったことが指摘されておりまして、実際の裁判例におきましても、量刑において支障が生じる、すなわち、少年に対して科し得る有期刑の上限が五年から十年の不定期刑と低いために不本意な量刑をせざるを得なかったことを判示しているものも存在するところでございます。

 こういったことの状況を踏まえまして、裁判所の選択肢を広げるという観点から、また、少年が犯した行為に応じてより適正な量刑をなし得るように、不定期刑の長期及び短期の上限を引き上げる必要があると考えておるところでございます。

 また、無期刑の緩和刑の上限の引き上げの必要性でございますけれども、今回の改正によりまして、不定期刑の長期の上限、すなわち有期刑の上限が十五年に引き上げられますので、無期刑を緩和して有期刑を科す場合におきまして、科し得る刑の上限を引き上げない場合においては、無期刑の緩和刑よりも責任の軽い不定期刑の場合と無期刑の緩和刑の上限が同じになってしまうということで、これは相当ではないと考えております。

 また、処断刑が無期刑の者に対しては、必ず緩和するわけではなくて、裁量によってそのまま無期刑を言い渡すこともできるわけでございますので、そうした場合には、やはりその無期刑と上限が十五年の緩和刑としての有期刑との間には乖離がございますので、そういったものを埋めて裁判所がより適正な量刑をできるようにする必要がある、そういうことから、今回の有期刑の上限を十五年に引き上げるのに伴いまして、無期刑の緩和刑の上限についても二十年に引き上げる必要があると考えております。

西田委員 ありがとうございます。

 まず、この不定期刑の長期十年、短期五年の引き上げのところでございますけれども、実際の裁判でも支障を来している、あるいは無期の緩和刑との間がないというお話がございましたけれども、そもそも、そういう技術的な話であるのであれば、当初から想定されていたのではなかろうかなというふうにも思うわけでございますね。

 ですから、ちょっとこれは質問の順序が変わりますけれども、そもそも、現行少年法で不定期刑、長期十年、短期五年というふうに期間を定めた趣旨というのはどういったことであったのか、これをお伺いさせていただきたいと思います。

林政府参考人 まず、不定期刑でこのような長期と短期の上限を定めている前提としての趣旨としては、少年につきましては可塑性がある、教育可能性が高いということから、成人に対する刑に比して教育を重視した刑を科すことが相当である、また、そういったことに対する社会の寛容性も期待できる、こういったことから、成人に対する刑の上限よりも、少年に対しては、不定期刑の長期と短期それぞれを上限を緩和しているということがございます。

 さてそこで、では、その上限を、短期の上限が五年で長期の上限が十年としている趣旨でございますが、この規定につきましては、実は、大正十一年の少年法、旧少年法と申し上げますが、その規定がそのまま現行の少年法に引き継がれたものでございます。

 旧少年法立案時の資料について、そういった具体的に明らかにする資料が見当たらないことから、確たることを申し上げるのは困難でありますが、一つには、やはり旧少年法でも死刑とか無期の緩和刑というものがございまして、その場合の科し得る刑の下限が十年だったということ、そしてまた、緩和刑として科し得る刑の幅というのも五年であったということでございます。

 そういったことから、不定期刑の長期の上限を十年とされていて、短期については、その幅である五年を十年から減じたものとして、短期についての上限を五年と定める、こういったことが考慮されたのではないかと考えております。

西田委員 ありがとうございます。

 少年法で出てくる一つ一つの言葉というのが、私なんかは時々非常にわかりづらくなるわけでございます。特に、長期であったりとか短期という言葉が時々、あれっということになるわけでございますけれども、そもそも、長期と短期の性格の違い、不定期刑を言い渡すときに長期、短期を定めるわけでございますけれども、長期と短期でそれぞれどう使い分けがなされるのか、その性格の違いについて教えていただければと思います。

 あるいはまた、そこで恐らく幅を持たせるんでしょうけれども、これは恐らく、少年の可塑性であったりとおっしゃっている部分、もしくは改善の見込みとか、そういったことがあろうかと思いますけれども、あわせてこの点についてもお答えいただければと思います。

林政府参考人 まず、刑罰というものでございますが、刑罰の機能としては、一つに応報というものがございます。それから、一般予防及び特別予防というものがありますけれども、基本的に、行為責任、犯罪からもたらされる行為責任の程度を超えて、予防目的で刑罰を加えることは許されないという刑罰の基本的な考え方がございますが、この点については少年に対する不定期刑についても同じでございます。

 そうしますと、不定期刑というのは長期と短期を定めるということになっておりますが、その場合の長期に着目しますと、長期については、それが行為責任の程度を超えるものであってはならないわけでございますので、基本的に行為責任を重視してまず決定されるものだと考えます。

 これに対しまして、短期は、可塑性に富む少年に対する教育、いわゆる特別予防というものを重視して決定されるものでございます。この短期を定めることによって、短期を基準に仮釈放を得られる要件が定められて、成人に比べれば比較的早期に仮釈放になるというようなこともございますし、また、短期を経過した場合に一定の要件のもとに刑の執行を終了するという、やはり成人に比べての早期の釈放ということがなされ得るものとして短期を定めております。

西田委員 ありがとうございます。

 今のお話、御答弁ですと、長期というのは、責任刑と言えばいいんでしょうか、責任刑の上限としてまずお決めになって、それが長期として責任刑の上限として決まって、そして、少年であるから、改善更生であったり政策的見地から短期というものを定める、それで幅ができている、こういう理解でよろしいでしょうか。

林政府参考人 今委員御指摘のとおりでございまして、まずは不定期刑の長期については行為責任が基準となる、それに対して、短期につきましては、その者、その少年についての可塑性に鑑みまして、特別予防あるいは教育という観点から定めるということでございます。

西田委員 ありがとうございます。

 大分わかりやすくなってきたわけでございますけれども、一方で、今回、改正案の五十二条の二項の方でございますけれども、これまでは不定期刑とあと定期刑もあったわけでございますけれども、今回から全て不定期刑になるわけでございますね。そして、不定期刑の上限も、短期も上がりますし、長期も上がるわけでございますけれども、一方で、この五十二条二項において、短期を定める際、処断刑の二分の一を下回らない範囲で定めるという新しい条文が書かれております。

 これは、現行少年法と比べてみますと、現行少年法は処断する刑の範囲内で長期、短期を定めなきゃいけないというふうになっていたわけですけれども、今回は処断する刑を下回っていいというふうになったわけでございますね。その辺はどういうふうに理解をすればいいのか、教えていただければと思います。

林政府参考人 まず、少年に対する不定期刑は、長期も短期も、いずれも刑でございます。したがいまして、基本的には、処断刑の範囲内において決定されるべきものであります。

 しかし、少年につきましては、その可塑性から、処断刑の下限を下回る期間で更生が可能であり、しかも、行為責任の観点から見ても、そのような期間において刑の執行を終了させることが許容されるような事案もあり得るところでございます。

 少年に対する刑については、成人に対する刑に比べまして、そういった教育という面を重視しますので、そういった事案についてまで一律に、処断刑の範囲内において短期を定めなければならないとすることは相当でないと考えるところから、今回、処断刑を下回って短期を定めるということを認めた改正となっておるものでございます。

西田委員 これまでは、長期も短期も、刑は刑であるから処断刑の中でやらなきゃいけなかった。しかし、今回から、処断刑に対する解釈が変わったということでよろしいんでしょうか。処断刑の範囲内でやらなきゃいけなかったけれども、処断刑を飛び出してもいいというような改正になるわけですけれども、処断刑に対する解釈を変えられた、一般的にそういう理解でよろしいんでしょうか。

林政府参考人 処断刑という概念そのものは変えておりません。むしろ、処断刑は変わっていない、その処断刑において、下回る場合に、その二分の一までは下回ることができるというような形で定めております。

西田委員 ありがとうございます。

 あわせて、この条文、その二分の一下回っていい、もしくは長期の二分の一ということを書いてあるわけでございますけれども、条件つきになっているわけでございますね。少年の改善更生の可能性及びその他の事情がある場合ということで条件がついているわけでございますけれども、気になるのは、その他の事情でございます。

 改善更生は、これまでも少年法の趣旨からしてよくわかるんですけれども、ここで、その他の事情とはどういった事情を想定されていらっしゃるのか、教えていただければと思います。

林政府参考人 例えば、長期を定めた場合に、処断刑の下限で長期を定めることもできるわけでございますが、そういった場合には、今回の条項を使いまして、短期を定めるためには幅を持たせる必要がございますので、そういったことで、処断刑を下回る短期の定めをすることが必要となります。そのようなことも、その他の事情ということに入ると思います。

西田委員 そうしますと、条件の中の改善更生の可能性というものとはちょっとニュアンスが違って、刑を宣告する際の技術的な観点というものがその他の事情という理解でよろしいんでしょうか。

林政府参考人 その他の事情といっても、それに限ることでございませんけれども、今のような状況を含むものでございます。

西田委員 ありがとうございます。

 本当に細かい議論が続いて恐縮でございますけれども、もう一点、今度は不定期刑ではなくて無期の緩和刑の方でございます。

 今回、上限が二十年に上げられるわけでございますけれども、一方で、下限は十年のままでございます。そうなってしまいますと、無期の緩和刑として、十年から二十年という十年の幅が出てくるわけでございますけれども、これは、無期の緩和刑の下限十年を十五年に引き上げなければならない、そういった議論はなされなかったのでしょうか。教えていただければと思います。

林政府参考人 もとより、今回、これまで十年以上十五年というところで、その中で緩和刑としての定期刑を決めるという定めでございましたが、上限の十五年を二十年に上げる場合に、では下限をどのようにするのかということについては当然検討がなされたわけでございます。それに対して、今回は、十年という下限については、それをそのまま維持しております。変更を加えていないわけでございます。

 これの考え方でございますが、実際、現行法の運用で無期刑の緩和刑としてどのような有期刑が言い渡されているかというのを見ますと、例えば、懲役十一年でありますとか十二年といった有期刑が無期刑の緩和刑として言い渡されている事案がございます。現状、こういった現行法の運用として言い渡されている事案に対して、下限を例えば十年を十五年に引き上げるとしますと、今行われているような懲役十一年とか十二年といった刑を言い渡すことができなくなるわけでございます。

 そういったことについては、現行法で果たしてそのような量刑を改めるような必要があるのかということを見ますと、特段そういった理由は存しないと考えまして、そういう意味で、今回、これまで行われているような十一年でありますとか十二年といった刑が相当な事案については、これまでどおり、無期刑の緩和刑としてそのような十一年、十二年の有期刑が言い渡せるようにするために、あえて無期刑の緩和刑の下限については引き上げを行わないとしたものでございます。

西田委員 ありがとうございます。厳罰化をする趣旨ではないということではなかろうかと理解をするわけでございます。

 一方で、無期の緩和刑で十一年、十二年が言い渡されているということでございますけれども、そうなってしまいますと、不定期刑の長期の上限の方が長くなってしまうといったところで、本来であるならば死刑、そしてそれを緩和して無期の緩和刑、そして不定期刑があるわけでございますけれども、理論上、逆転現象が起こってしまうのではなかろうか、そこをちょっと危惧するわけでございます。

 そこについて、これは通告していなかったんですけれども、もしお答えいただけるようでしたら、お願いしたいと思います。

林政府参考人 無期の緩和刑をする場合、基本的に処断刑は無期刑でございます。その場合の行為責任という考え方は無期刑ということになります。その場合に、先ほどの長期、短期を定める不定期刑、これは有期刑でございますが、それとの比較におきましては、やはり無期刑の緩和刑の責任が重いということにおいては逆転は生じていないということでございます。

西田委員 ありがとうございました。

 これまで、今回の刑の上限の引き上げについて、多少細かいお話、御説明をいただいてきたわけでございますけれども、やはり総じて、これは本当に、何かパズルのような、複雑なパズルを理論上そごを来さないように組み立てて組み立てて、そして何とか理論的に一本の筋を通された結果、この条文になったのかなというような、そういう印象を受けたわけでございます。

 今回の少年法改正について、よく新聞報道等では、少年法厳罰化、厳罰化と書かれているわけでございますけれども、御答弁をお聞きしておっても、厳罰化という印象は全く受けないわけでございます。

 一方で、これまで言い渡せなかった刑を担保するために幅を持たせる、そういった改正。先ほども、これまで無期の緩和刑として十一年、十二年を言い渡していたものを言い渡せるようにするためにというようにもおっしゃいましたし、私は、よく新聞報道でされている厳罰化というものには今回の改正は当たらないのではないだろうかというふうに思います。

 ただ、やはり厳罰化と言われると、少年法厳罰化は果たしていいのかという議論になってしまいますけれども、今回そういった議論ではないのではなかろうか。一方で、本当に深刻な、重大な犯罪に対して、言いかえれば一種の切り分けを行う、そういった改正なのかなというような印象を持つわけでございます。

 そこで、最後に大臣に、今回の少年法改正は、よく新聞報道等で言われている厳罰化であるのかという点について、御答弁をお願いしたいと思います。

谷垣国務大臣 西田委員のおっしゃるように、厳罰化と評する向きもあるんですが、私は、結論としてそれは当たらないと思っております。

 少年に対する科刑を一律に引き上げるというようなことを目的としているわけではございません。そういうことではなくて、現行の少年法の規定によって少年に科することのできる刑の範囲内では適切な科刑ができないという事案が幾つか現実に起きてきているわけでありまして、その枠を広げることによって、より適切な科刑を可能とすることを目的としたものでございます。

 やや具体的になりますと、先ほどからの御議論のような不定期刑の長期と短期の上限の引き上げについては、無期刑の次に五年以上十年以下の懲役というのでは、その差が、ちょっと間があき過ぎるということが一つございます。

 それから、先ほどから例が何回か出てきておりますが、主犯たる少年と従属的立場の成人で行うような犯罪の場合に、余りにも科刑の均衡がとれないような場合があり得るというようなことについて、少年に対して科すことができる枠を広げて、適切な科刑をしていこうというのが一つ。どちらかといえば重罰化に見えるところも、そういうことを狙っている。

 それから、先ほどから五十二条の問題で御議論になりましたけれども、不定期刑の短期が処断刑の範囲内で定めなければならないとされていたのを、少年の改善更生の可能性その他の事情に応じて、短期については、一定の場合には処断刑の短期の二分の一まで下げることができるようにするとか、これまで不定期刑を科すことができなかった処断刑の軽い罪についても、不定期刑を科して短期を定めることができるようにするという内容も、これは下の方にいわば柔軟性を広げていっているということでございまして、こういう全体構造をごらんいただけば、厳罰化というのには必ずしも当たらないということが御理解いただけるのではないかと思っております。

西田委員 ありがとうございます。

 私も、初めて少年法を勉強したんですけれども、ただ一方で、この少年法の一部を改正する法律案関係新聞記事を衆議院の事務局でまとめていただいたのを見ると、大抵、厳罰化、厳罰化、厳罰化と書いてありますので、ぜひメディアの方にもしっかりと勉強をしていただく必要があろうかなということを感じた次第でございました。

 次に、もう一点のテーマ、付添人そして検察官関与について、残り時間で質問させていただきたいというふうに思います。

 まず一点目でございますけれども、今回、国選付添人の拡大になるわけでございますけれども、一方で、家庭裁判所の調査官の方々の役割、それと付添人の方々の役割、共通しているようで実は違った役割があったりするようでございます。そこについてちょっと、裁判所の家庭局、お越しでございますので、教えていただければと思います。

岡最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 家庭裁判所調査官は、要保護性の審理において、行動科学等の専門的な知見に基づいて面接や心理検査などを実施し、その結果を分析して非行の原因や少年の問題点を明らかにし、少年の更生のため、どのような処遇や手当てが必要となるかなどの意見を付して裁判官に報告する役割でございます。

 これに対し、弁護士付添人は、法律の専門家として、非行事実の認定手続において、少年側の立場から主張や立証を尽くす活動を行うほか、要保護性の審理におきましては、家裁調査官の調査分析結果、明らかとなった少年の問題点に応じて、例えば少年の帰住先や就労先の確保といった環境調整活動や、被害者に対する被害弁償等に向けた活動を行うなどしております。

 このように、家裁調査官と弁護士である付添人は、その役割、専門性の違いから、異なる審理段階で活動を行ったり、同じ審理段階でも異なる場面で活動を行っているというふうに考えております。

西田委員 ありがとうございます。

 恐らく、調査官の方が今千六百人ほどいらっしゃるのでございますか、その方で一年間の事案を処理していかなければなりませんし、恐らく少年審判に対応するだけではないわけでございますし、そういった意味では、弁護士付添人の方々が実際に事件に関係した方々との調整であったり環境の調整といったものに機動的に丁寧に動くといった意味で、非常に必要性は認識するところでございます。

 一方で、検察官関与でございますけれども、検察官関与の意義と、これまでとても限定的でございましたけれども、そういった範囲に限定された意義も含めて、検察官関与の趣旨を簡潔に御答弁いただければと思います。

林政府参考人 検察官関与制度は平成十二年改正で導入されたものでございますが、その趣旨としては、一つには、少年審判におきましても事実認定というものが非常に重要であるということに鑑みまして、こういった事実認定に問題がある一定の事件につきましては、少年側以外の公益的見地からの視点による証拠の収集でありますとかそれに対する吟味を加えまして、これを踏まえて家庭裁判所が事実認定を行うことがまず適当であるということでございます。

 もう一つには、少年側が証拠と矛盾している主張をしている場合、裁判官は真相を発見するために少年に矛盾点を問いたださざるを得ないわけでございますが、そういった場合には、あたかも裁判官が少年と対峙しているかのような状況となります。そのようなことが、少年から見れば、自分が裁判官から信用されていないのではないかといった不信の念を抱かせる、そのことがひいては少年審判の教育的機能を損なうおそれがあるといったことで、こういった裁判官と少年との対峙状況を回避させる措置が必要となります。

 さらには、これは被害者の側から見た場合でございますが、審判が裁判官と少年側のみが関与する手続で行われ、そこで事実認定等が行われているとなりますと、被害者側から見れば、少年側の言い分のみが聞かれているのではないかといった不信の念も見られるところでございます。

 こういったところ、多角的視点の確保でありますとか裁判官と少年側との対峙状況の回避、そういったことを行うとともに、事実認定の一層の適正化を図るために、この検察官の関与制度というものが導入されたものでございます。

西田委員 もう時間がなくなってしまいましたので、何問か質問は省略をしたいと思いますが、この後質問したかったことは、検察官関与が施行されて約十数年たつわけでございますけれども、何か関与することによる欠陥があるのであればそれをお伺いしたいと思っておりましたし、今回拡大するに当たって、拡大しなければならないような具体的事例がどういったものがあったのか、そういったものもお聞きをしたかったところでございますが、時間でございます。

 最後に大臣に、これも御見解をお伺いしたいと思うんですけれども、付添人であれ検察官関与であれ、少年審判という仕組みの中では、よくある刑事裁判のように、より厳しい刑、処遇を求めて、あるいはより緩やかな刑を求めてともに戦い合うようなそういう関係ではなくて、裁判官の裁量のもとで、裁判官と協力して、少年の改善更生あるいは環境調整といったそれぞれの任務、役割を果たしていくことで協力し合う関係、少年法の理念にあるとおり、少年の健全な育成に資するのが検察官関与であり付添人の制度だと思うんですね。

 ですから、付添人はもうまるで弁護人だ、少年の立場にのみ立つんだというような考え方であったり、検察官が入ることで弁護人と対峙するんだとか、何かそういった意見をよく聞くんですけれども、私は、そういった意見こそ、むしろ少年法の理念とかけ離れたものであるのではなかろうかというふうに思うわけですが、大臣の御見解をお聞かせいただければと思います。

谷垣国務大臣 通常の刑事訴訟であれば、検察官がこちらの側面から光を当てる、それから弁護人が反対側の側面から光を当てることによって、激しく対峙し合うことによって事実を浮かび上がらせるという当事者主義的構造がとられていると思いますが、少年審判の場合には、検察官が関与し、あるいは弁護士が付添人につくといいましても、基本的に、委員がおっしゃったように、裁判所の職権のもとで、子供の、少年の改善更生、事実はもちろんはっきりさせなければいけないわけですが、検察官の関与も、公益的な立場から事実を明らかにしていくということであります。

 したがって、当事者主義的な構造がとられているわけではなくて、そういう職権主義的な構造の中で協力し合っていく関係というのは、委員のおっしゃるとおりだと思います。

西田委員 時間が参りました。大臣、御答弁をありがとうございました。

 そういった意味では、裁判所の指揮権の中で、国選付添人あるいは検察官関与の幅が拡大されるといったことは、これまで長きにわたって少年審判で御努力されてきた家庭裁判所の実績の上にあるものだというふうに私は評価をするところでございます。

 以上をもちまして質問を終わらせていただきます。

江崎委員長 次に、高橋みほさん。

高橋(み)委員 日本維新の会の高橋みほでございます。

 きょうもどうぞよろしくお願いいたします。

 さて、私が委員会に臨むときに、この黄色い資料、皆さんも持っていらっしゃると思うんですけれども、衆議院調査局法務調査室につくっていただいたこの黄色い冊子で私は勉強させていただいております。すごくよくまとまっていていいんじゃないかなというふうに、ふだんよく思っております。あと、犯罪白書、これもいただいておりまして、この犯罪白書も勉強させていただいております。

 私がどうやって使うかというと、こうやって必要なところに附箋をつけたりして、ぱらぱらっと見て、ああ、ここがいいな、今度の質問に使おうかなというような感じで勉強させていただいているんですけれども、実は昨日、法務省さんに、このいただいている資料以外の統計資料を、紙ベースのもの、冊子をいただきたいのでお願いしたいと頼んだところ、統計資料は現在ホームページでアップしてあるので、こういう紙ベースの資料は一冊も在庫がないということでした。

 もちろん、ホームページにアップしてあれば、資料として検索をかけて引いて見るということはできますけれども、網羅性がなくて、こういう犯罪白書のように、ぴらぴらっと見て、ああ、これは大事だよな、ここを質問しようとかということがすごく不便になると私は思うのです。

 それで、こういうような統計資料というものは、実際、在庫がないほど少なくしか印刷していないものなのか、そこまで予算を削っちゃっているのだろうか。法務省には紙ベースの統計資料、例えば保護統計年報や矯正統計年報などがございましたけれども、国会議員にはそのような紙ベースの冊子は必要ないと考えていらっしゃるのか。ちょっと疑問に思いましたので、きょうはお尋ねしたいと思います。奥野副大臣、よろしくお願いいたします。

奥野副大臣 高橋先生にお答えする羽目になったのでありますが、見渡すといないんですよ、事務方が。何でと、こう言っているんですが、いずれにしても、事務方から来ている資料によれば、在庫はございません、こういうことであります。

 今、お言葉の中にもありましたけれども、予算が厳しいという意味合いもあって、ハードコピーはできるだけ最小限の配付で、そして足らず前はホームページの方でやらせていただいているというのが今の実態であります。

 これに限ったことではないんですが、法務省というところは非常に財務省に盾突かない役所になっていまして、言われたら、はいはい、こう言っているのが法務省でありまして、私はその姿勢が気に入らないとずっと言い続けているんです。

 そういう意味で、この件ではないんですけれども、できるだけ法務省も財務省と渡り合いなさい、こういう話をさせていただいているところでありまして、御不便をおかけしたところについてはおわびを申し上げます。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 予算が少ないというのはもちろん存じ上げておりますが、これからも、法務省というのは大切な省庁だと思いますので、ぜひ皆さんで予算を獲得すべく頑張っていければいいなと私は思っております。

 ただ、こういう紙ベースの使いやすい資料を国会議員になかなか配付できないというのは、ホームページにアップされていますので、もちろん資料の内容を隠しているわけじゃないんですけれども、使いにくいので、なるべく国会議員に内容とか、そういう資料を使いにくい状態に置かせているのかもしれないなと勘ぐってしまうこともあるかもしれませんので、ぜひ、法務委員会分ぐらいの、ある程度の予備分ぐらいはつくっておいていただけないかなと私は思っております。

 今回の内容、本題に入らせていただきます。

 そもそも、少年法は、少年の健全な育成を基本理念として、非行のある少年の性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに、少年の刑事事件について特別の措置を講ずるとあります。

 今回の法改正は、少年に関する刑事処分の規定を引き上げたり見直すものですから、私から見ますと、やはり何といっても重罰化されているんじゃないかなというようなイメージを持っております。

 犯罪被害者の方や御遺族の方から見ますと、例えば、子供が殺されたのに、加害者が未成年だからといって、成年の加害者に比べまして短い刑期で刑務所を出所してしまう、少年院を出てしまうというのは、やはり感情からして許されないことでありますから、重罰化をするという、これはしていないという見解でしょうけれども、私はこれは当然の思いだと被害者側から見ると思っております。

 ただ、きょう何回もほかの方たちからも出ていますけれども、少年の可塑性、未成年の非行等には親とかの周りの問題もありますので、やはり成年と同じような方に引き上げていくのは少し無理があるのではないかなというような思いもあります。

 また、少年時に重大犯罪を犯したとしても、若いですから、やはり何年かたったら、ある程度のときに、かなり早い段階で社会復帰されることが多いかと思います。そうしますと、もっと教育的な見地から改善をしていくべきではないかなというのが私の意見でございます。

 また、たとえ厳罰化をしたとしても、特に再犯者の数は減らない、再犯者率は下がらないというふうに言われております。

 とするならば、今回の厳罰化をする、私は厳罰化と呼ばせていただきたいんですけれども、特にその効果というのはどのように考えているのかということをお伺いしたいと思います。例えば、これによって少年の更生に役立つ効果があるのか、再処分率が少なくなると考えているのか、検挙人数が少なくなるような効果があるのか、このような効果の観点からという意味で改正を考えていらっしゃるのか、法務大臣にお尋ねいたします。

谷垣国務大臣 先ほど西田委員にもお答えしたところでありますが、高橋委員は厳罰化というふうにおっしゃいましたが、私はこれは厳罰化に必ずしも当たらないのではないかと思っております。

 今回の趣旨は、今まで少年法で科することのできる刑の範囲内ではいかにもアンバランスが感じられることがあると判決等々でも指摘されていたところを、もう少し妥当な量刑ができるように選択肢を広げたというのが今回の目的でございます。

 先ほど申し上げたように、少年に対する不定期刑の長期、短期の上限の引き上げというのも、いきなり無期刑から十年というんじゃ、そこに間があき過ぎる、無期刑も今まで科することはできたわけですが、間が、すき間があき過ぎるとか、それから、少年が主たる行為者であって成年が従属的立場の場合などの量刑も、いかにもうまくいかない場合があるという御指摘がございました。

 それから、無期刑の緩和刑の上限の引き上げということもさせていただいております。

 他面、これまで、不定期刑の短期についても、処断刑の範囲内で定めなければならないとされていたのを、少年の改善更生の可能性その他の事情において、短期については、一定の場合には処断刑の短期の二分の一まで下げることができるとか、これまで不定期刑を科すことができなかった処断刑の軽い罪についても不定期刑を科すことができるように短期を定めることができる。そういう意味で、柔軟な対応を狙ったものでございます。

 したがいまして、今までなかなか妥当な科刑ができなかったところにしていくということに意味があるわけですので、私は、それは刑事司法あるいは少年審判の上では非常に意味があることだと考えております。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 谷垣法務大臣は、そうしますと、今回の改正は、選択肢を広げた、成年の科刑とのアンバランスを直す方向に持っていくというような科刑上の意味ということであって、実際上、この法改正をしたからといって、少年の再犯者率が減るとか検挙される人数が減るとか、そのような実際的な意味というのは全くないとお考えなのでしょうか。

谷垣国務大臣 例えば再犯率が減るとかいうことを直ちに申し上げるわけにはまいりませんが、行為の実態に応じた科刑をしていくということが、いろいろな意味で犯罪の抑止とかそういうものに役立ってくることはあるだろうと思います。

高橋(み)委員 ただ、そうはいうものの、では、なぜ成年の科刑に近づけていくかということ。成年としても、長期に収監していくということに対してはやはり一定の意味があると思います。それに形式的に近づけていくという場合は、やはり何らかの意味があってしかるべきではないか。形式的なもので、重罰化とかというのをマスコミで取り上げられるからそれを言わないのかとちょっと勘ぐりたくもなると思います。

 私は別に、今回の改正を嫌がっているとかよくないと言っているわけではなくて、重罰化する、それなら、もしかしたら抑止効果があるならば、それはそれでいいのじゃないかと思っている人間でございますので、この法改正によって何らかの効果を期待しているのかというのは、やはりきちんと検証するなり、これによってそういう効果がないと考えているなら、ないというようなことでもいいと思いますけれども、やはり、せっかく改正するならば、現状に目を向けた改正というのが私は必要なんじゃないかと思っております。

 今の話に続くんですけれども、私は、少年の再犯とかいろいろ今問題になっていることを考えますと、やはり、厳罰化とか今回の法改正をすることよりも、どちらかというと、非行少年の親とか周りの環境というのが一番問題じゃないかと思っております。そうしますと、子供を入院させたりすることよりも、親の教育というものが、僣越ではあるかもしれませんけれども、そこが問題になっていくかと思います。

 現在、実際、親の教育プログラムというものをつくって改善していくような動きというのはあるのか、お答えください。

西田政府参考人 お答えいたします。

 少年院の長は、必要があると認めるときは、保護者に対し、監護に関する責任を自覚させ、矯正教育の実効を上げるため、助言、指導その他の適当な措置をとることができるというふうにされております。

 少し具体的に申し上げますと、職員が保護者の相談に応じましたり、助言、指導を行ったり、あるいは、職員と在院少年それから保護者、この三者による面談、あるいは保護者会、親子のかかわり方をテーマとした講演会とか、そういった少年院における教育活動への参加を保護者に対して積極的に呼びかけて実施しているところでございます。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 ただ、伺いましたところ、長期に入院している方でも、大体三回ぐらいそういうような会を持たれているという話で、実際には三十分か一時間ぐらい、集団でお話を聞くというようなプログラムだと伺っております。それではちょっと余りにも足りないんじゃないか。

 また、少年が出てきたときに、親と周りが協力して少年の更生をもっともっと図っていくという面では、国がもう少し関与をしていった方がいいのではないかと思いますので、ぜひその点をもう少しお考えいただければと思っております。

 次の話題に行きまして、今回の改正では、家庭裁判所の裁量による国選付添人の対象事件の範囲を拡大するとのことです。これは、少年側にとりまして、私はとてもいいことだと思っております。

 ただ、この国選付添人、全額、費用を国で負担すると伺っております。国選弁護人は資力要件がありますので、これは当然だと思うんですけれども、無資力が選任の要件とされていないということは、つまり、子供の親が資力が十分あってとてもお金持ちでも国が付添人の費用を出さなければいけないということになりますと、これはいささか行き過ぎではないかというようなイメージがあります。

 もちろん、親が付添人の費用を出さないというようなことがあって、子供の保護に欠けるということもあるかもしれませんけれども、その場合ならば、後で親に請求すればいいという話になってくるのではないかと思います。

 このような制度をとらずに、資力要件を設けないというのは、国の財政状況から見ましてかなり問題があるのではないかと考えますけれども、いかがでしょうか。

谷垣国務大臣 今回、家裁の裁量による国選付添人制度の対象を拡大していく。

 それをやりますのは、一つは、現行法による国選付添人制度の対象とされていない事件の中にも、より適切な事実認定をしていくためには国選付添人が関与することが必要だな、なかなか事実関係の認定が難しい場合もございますから、そういうところは必要だなということと、それから、付添人が少年審判の段階から更生のために、立ち直りのためにいろいろな環境調整を行っていくことが、少年の再犯防止、更生に役立つというところから、これを拡大していこうというわけですね。

 そこで、資力要件を設けない理由ですが、裁判所がこの事件には少なくとも付添人が必要だなと考えた場合に、その裁量で弁護士である付添人を付すことができるようにしようということでございます。

 今までも資力要件は設けられてはいなかったんですが、仮に資力要件を設けるとしますと、裁判所がこの事件は付添人が必要だと判断した場合であっても、少年側に資力があるときにつけません、こういうことになってしまいますと、要件を欠くものとして、国選付添人を付することができない。それから、少年側が私選付添人を選任しない場合には、結局、弁護士の付添人なしに少年審判を行うということになります。そうすると、今回、対象事件の範囲を拡大することとした理由と整合しなくなってくるということでございます。

 それで、財政上いかがなものかという御懸念は、一つは、もちろん、私選をつければそれでいくわけですが、家庭裁判所において、国選付添人の選任の要否については法律で要件が規定されております、その要件を吟味して裁量権を行使していただけるものと。例えば、三十一条には、少年または扶養義務者が資力を有していれば、家庭裁判所は事後的に費用を徴収することができるというような規定もございますので、そういう規定も適切にまた使っていただくことができるのかなと思っております。

高橋(み)委員 一番最初のときに、法務省はお金が余りないというお話でしたので、本当の意味で、親がお金持ちの場合、一律にまず最初からお金を徴収しないという制度はやはり矛盾があると思います。お金持ちの親には後でお金を徴収するという制度をきちんと定めておくべきではないかと思いますので、この点は御考慮いただければと思っております。

 次に行きたいと思います。

 今回の法改正は、先ほども申し上げましたように、検察官が関与する割合が大きくなってきます。

 ただ、私が危惧することは、少年法による審判では予断排除の原則も伝聞法則も原則適用されない運用がされているというふうに伺っております。とすると、今までは、裁判官はそもそも、少年が罪を犯したんだというように考えた上で審判をして、それで伝聞法則も排除されているとなりますと、今までの取り調べの結果にかなり依存して、つまり予断だらけで今までは審判に臨んでいたというような印象がございます。ただ、もちろん、これは今までの裁判官が非行少年などの親のような立場で審判に臨んでいたから、一応何の問題もなかったというふうに思っております。

 ただ、これから検察官が多くの場合に入り込んでくる、参加するということになりますと、成人の場合ならば、被告人や弁護士側と検察側が対等な立場でやり合うというのが普通の公判廷の審理だと思うんですけれども、このようなところでは、少年にとっては、中立な裁判官ではない裁判官と、一応相手方とも思える検察官の、つまり、敵方、言い方が悪いかもしれないけれども、自分の味方でない人が二人いるというような状況になりがちではないかというふうにも危惧しております。

 これだけ検察官の関与を認めるのでしたら、予断排除の原則や伝聞法則の排除を撤回して、裁判官がある程度中立な立場で審判できるようにしていくべきではないかなというような考えもあるのですけれども、この点、いかがお思いになるでしょうか。

谷垣国務大臣 通常の訴訟では、先ほどおっしゃったような予断排除の原則であるとか伝聞法則というものが取り入れられておりまして、裁判所は、起訴状だけを見て、そして訴訟の場では当事者が提出した証拠によって判断していく、そして双方が激しく争う中で事実関係を確定していくということになりますが、少年審判の場合は、そういう構造をとらずに、職権主義的、保護主義とも言っておりますが、裁判所が職権で懇切に、少年の更生をやるためには何が一番いいかという判断をしていく、こういう構造でできているわけです。

 そこで、検察官が関与してくると、そういう本来の構造が否定されてしまうのではないかということでございますが、これは二〇〇〇年、十四年前の改正でできた制度でございまして、率直に申しますと、私、そのとき議員立法の提案者でございました。そのときも今のような御意見があったわけですが、その後、私、先ほど西田委員もお聞きになったことですが、検察官が関与して少年審判事件としてまずかったと思うような例があったとは聞いておりません。

 どういう狙いで入れられたかというと、ちょっと答弁が長くなってしまうかもしれませんが、従前、裁判所が親がわりと言ってはなんでしょうけれども職権主義的にやっていくと、裁判所とその行為者だけでなあなあでやっているんじゃないかと見られる場合もなきにしもあらずだった。そこで、検察官が関与することによって、少年側以外の公益的見地からの視点による証拠の収集とか吟味を加えていくことで、家庭裁判所が事実認定を行うことが適当であること。

 それから、その反面、懇切に家庭裁判所が少年と向かい合うといっても、場合によると、いろいろなことを子供が言ったりして言い争うようなことになると、そういう懇切に審判を進めていくという体制がとりにくくなって、やはりそれは検察官に果たしてもらうことが必要ではないかというようなこと、裁判官と少年の対決を回避するような仕組みも必要ではないか。

 そして、そのようなことによって、被害者側からの少年の言い分のみが聞かれているのではないかという懸念を払拭することもできるようになった。

 ただ、一つ申し上げますと、検察官が関与するのは事実認定のところでございまして、少年に対してどのような更生のための措置が必要かという観点については検察官は関与しない、そういう仕組みでございまして、検察官が関与する、あるいは弁護士である付添人が関与するといっても、当事者主義的な構造ではなくて、あくまで裁判官が主宰する職権主義的な構造というのを基本的に維持しながら行っているということでございます。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 ただ、先回法改正がなされたときの対象範囲と今回の法改正によって、やはり検察官が関与するということが莫大に多くなるというふうにも言われております。ですから、今までは問題がなかったかもしれないけれども、もしかしたら今問題になるかもしれないと私は少し危惧しております。

 また、最初の法改正のときに、被害者側の方が、裁判官と加害者がなあなあのイメージで審判をされているというところに対して危惧があったから法改正したとおっしゃられましたが、もちろんそれは大事な視点ではございますけれども、加害者側としては、それがなくなって検察官が来るというのは、自分の味方ではない人間が入ってくるということになると思いますので、やはり慎重な運用というのをぜひしていただければと思っております。

 今の話がちょっと続くんですけれども、今回の法改正でやはり検察官が重要な役割が多くなるということになりまして、検察官としましても、今までの成人に対する裁判とはかなり違う心構えとか態度などが必要なんじゃないかなというようなイメージがございます。

 例えば、少年だと、ちょっときつい言い方をしたりとかすると、反発をして真実ではないことを言ってしまったりということは往々にしてあるのではないかなと思っております。そうでありますと、今までの検察官よりももっと能力の高いといいますか、別の意味で教育能力とか教育経験などがあるような検察官の導入というものが必要ではないかなというようなイメージがございます。

 聞くところによりますと、ドイツでは少年係検察官という方がいらっしゃいまして、少年事件を扱うのにふさわしい資質が求められているというふうに言われております。この少年係検察官というのは、少年裁判所上、教育能力と教育経験を持つべき者とされており、行政規則上、教育学、少年心理学、少年精神医学、犯罪学、社会学の知識と、それに見合う職業教育が求められているとも言われております。

 先ほど谷垣大臣は、更生とか処分とか、そういうところには余り関係ないからいいんだ、余り検察官が立ち入ってはいないというお話だったんですけれども、ドイツでは少年を審判する上でこれだけ細かい配慮が行われているので、日本でもこのような検察官の能力の担保が必要かと思われるのですが、いかがでしょうか。

平口大臣政務官 お答えいたします。

 ただいま大臣が答弁をしたとおり、少年法は職権主義的な審問構造、これを採用しているところでございまして、検察官は、家庭裁判所の手続主宰権に服しながら、あくまでも審判協力者として審判の手続に関与するということで、刑事事件の訴追官あるいは原告官としての活動とはおのずと異なっているわけであります。

 そこで、先生御指摘のようなことは基本的に正しい御指摘だろう、このように思いますが、検察官が関与することになった審判において、少年の健全育成等を目的とする少年法一条、あるいは、少年審判の方式について二十二条で、懇切を旨とし、和やかに行うというふうなことも規定されているところでございまして、検察官にこのような能力が必要とされる、御指摘のとおりだろうと思います。

 現在、検察においては、少年法の趣旨に沿った事件処理がなされることの重要性を十分に認識した上で、一つは、具体的な事件において、上司の方が少年事件担当の検察官をきちんと適切に指導するということ、それともう一つは、少年事件は若手検事が担当することが多いんですけれども、その研修の中で少年事件に関する講義をきちんとやっていく、こういったような方向で対応いたしているところでございます。

 以上でございます。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 私は、もう少し能力を担保するような講義とか、いろいろな研究をされている方が必要じゃないかと申し上げたのでありまして、若手の方が担当するというのは、どちらかというと、人生経験がある方の方がいいのかなとちょっと思ってしまいましたので、そこはどうだろうかという疑問を呈させていただきたいと思います。

 今回の、私によりますと厳罰化なんですけれども、それにつきましては、何といっても、被害者の方とか被害者の遺族の方たちの意向というのもやはり無視できないものがあるかと思っております。これは、先ほども申し上げましたけれども、もちろん当然のことだと思っているんですけれども、ただ、このような厳罰化だけではなく、なぜ犯罪の被害に遭ったのかとか、今加害者がどのような思いを持っているのかなど、事実や加害者のことをよく知りたいというようなことも非常に思われていると思っております。

 最近では、凶悪事件の審判要旨が家庭裁判所によって公開されていると伺っております。ただ、当然、少年法は、「審判は、これを公開しない。」と決めておりますし、事件を起こした少年の名前、住所など、当該少年が事件の本人であることを推知することができるような報道を禁止しております。さらに、少年審判規則では、少年事件の記録等を見たりコピーするためには家庭裁判所の許可が必要だともされております。

 少年法の精神からいいますと、このような措置というのは大事なことではあるとは思うんですけれども、先ほど述べましたように、現在では一部を公開しているということです。この凶悪事件の審判要旨の公開というのは、どのような法的な根拠で行われているのかということをまずお伺いしたいと思います。政務官、お願いいたします。

平口大臣政務官 少年審判の際における記録等の対象の拡大をしたらどうか、こういう御指摘……(高橋(み)委員「凶悪事件の審判要旨の公開の法的根拠とかはあるのかということなんですけれども」と呼ぶ)失礼しました。

 少年法第五条の二というところで、「被害者等による記録の閲覧及び謄写」、そういう条文がございます。裁判所は、少年に係る保護事件について、二十一条の決定があった後、最高裁規則の定めるところにより保護事件の被害者等あるいは被害者から委託を受けた弁護士から、その保管する当該保護事件の記録の閲覧または謄写の申し出があるときは、理由が正当でないと認める場合及び少年の健全な育成に対する影響等で相当でないと認める場合を除いて、閲覧、謄写をさせる、こういう規定がございます。

 失礼しました。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 今、審判要旨の公開という話だったんですけれども、実際、傍聴というのも最近は許されるということになっていると伺っております。ただ、実際に申し出があったとき、どのくらいの割合で傍聴は許されているのか、許されない場合もあるのか、許した場合に、少年の情報等が外部に漏れている可能性というのはありましたのか、お尋ねいたしたいと思います。

平口大臣政務官 傍聴を認めなかった事件数、取り下げ事件数でございますけれども、平成二十年の十二月十五日から平成二十三年の十二月三十一日までに終局した事件のうち、傍聴を認めなかった事件数は二十七件、取り下げ事件数は四件ということでございました。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 最後になってしまったのですけれども、奥野副大臣にお尋ねいたしたいと思います。

 皆さんに出しました「少年院別の精神科医師数」というところをちょっと見ていただきたいのですけれども、ほとんどの少年院には精神科医もいないしカウンセラーもいないということになっております。私、やはりこれからということを考えると、何といってもカウンセラーなどの常備が必要じゃないかというふうに思っております。そしてまた、出所後のフォローということもとても大事な点だと思いますけれども、実際どのようなことをされていて、出所後、再犯などはされないようなことをしているのかという点、二点につきまして奥野副大臣の御意見を伺えればと思っております。

奥野副大臣 少年院に入ってこられる方というのは、大別すると、やはり障害をお持ちの方とかあるいは情緒不安定とか、また、全然違う意味で、家庭内不和というのでしょうか、そういう環境の中で育った方がおられますから、そういう意味では、少年ごとに担任の法務教官というのをつけて、きめ細かな個別指導をしているところであります。

 個別に指導する法務教官というのは、人間科学系の教育学あるいは心理学にたけている人たちですから、そういう意味で、心の安定あるいは心情の把握や安定に努めることが非常に得意な人たちだろうと思います。

 そして、精神上の障害を有する少年や情緒の不安定な少年を収容している少年院においては、やはり精神科医もたくさん置かなくてはいけないのでありますが、先生から出された数字はやや不足していると思います。これは今、医療刑務所あるいは医療少年院がお医者さんをなかなか配置できないというふうな難問を抱えているわけでありまして、これも予算の関係があるのですが、そういう要素があります。

 一方で、指導の問題を言いますと、沼田町の就業支援センターの例を申し上げると、大臣が来月伺うことにしていますけれども、農業実習を一年間していただいて、その技術を身につけた上で社会へ出ていただけるような形にしていこう、そんなことを学んでいただいているわけであります。

 本当に、農業を学ばせて、これも一年間なものですから単純に農業へすっと行けるわけじゃないんですけれども、そういう意味で、できるだけ農業についてくれということでやっているわけでありますが、実際上は、定員数十二人、一年間に十二人しか収容できない中で、これまでに農業に行った方は三人しかいないというような、非常に陳腐な結果になっているんです。

 いずれにしても、今申し上げたように、担当教官をしっかりつけて、社会へ出ても困らないようにいろいろな実習もさせて、そして社会へ出ていっていただこう、こんなような対応をしているところであります。

 私も、おととい、地元の奈良県に行きまして、農業法人の人たちに、少年院を退院した人たちを雇ってくれというお願いをしてきたところであります。

 そんなことで、できるだけ社会へ早くなじんでもらえるような教育をし、実習をさせて、社会へ出ていっていただきたいということには心がけているつもりであります。

高橋(み)委員 力強いお言葉、どうもありがとうございます。

 少年院に入所しているときの教育、そして、出てから正業につくということが本当に大事だと思いますので、ぜひそこにお力を配慮していただければと思っております。

 きょうは、ありがとうございました。

江崎委員長 次に、椎名毅委員。

椎名委員 おはようございます。結いの党の椎名毅でございます。

 いつもお世話になっております。

 本日、少年法改正ということで、四十分間質疑時間をいただきましたこと、改めて感謝を申し上げます。

 先日、大臣の所信に対する質疑においても、少年法改正について少し議論をさせていただきました。私が先日提示させていただいた問題意識と同じような問題意識で、階先生も最後の方に一言いただきましたし、今、高橋先生も同じような質疑をしておられたので、それとかぶる部分も少しあるかと思いますけれども、引き続き、先日提示させていただいた問題意識と同じところからスタートしてまいりたいというふうに思います。

 今回の改正ですけれども、適切な事実認定の確保ということから、大きく二つの改正が行われるということですけれども、一点目の、裁量的国選付添人の範囲拡大とそれに伴う検察官関与の範囲の拡大、この点について幾つか伺ってまいりたいというふうに思います。

 まず、大きく一点目、申し上げますと、これをそもそも連動させる必要があるのかという点から伺っていきたいと思います。

 先日も申し上げたところですけれども、国選付添人の範囲拡大というのは、日弁連にとっても比較的望ましいというか、ずっとやっていきたいと思ってきたことなんだというふうに思っています。

 日弁連特別会費という話をこの間もしましたけれども、ちょっともう一回させていただきますと、特別会費四千二百円というのを徴収していて、これで少年・刑事財政基金というのを設置して、少年保護事件付添援助というのを日弁連で行っているわけですけれども、今回の法案の改正で、要は、予算措置がつくということで、これが九百円値下がりするということです。弁護士会としては、やはり国費を入れていただくということで、ぜひとも進めていきたいお話だというふうに私自身も理解をしています。

 しかし、要は、国選付添人の範囲を広げるということと検察官の関与を広げるということは、必ずしも論理必然的に一致する話ではないんだろうというふうに思っておりまして、法制審の少年法部会、それから意見交換会などでも、弁護士付添人がつく場合と検察官関与の拡大というのは一応別個の問題だというふうに論点整理されているようです。政策的判断から、基本的には一致させるべきなのかなという議論の収束だと思いますけれども、このあたりはもう少し議論をした方がいいと思うんです。

 ここは、そもそも一致をさせる必要性がないんじゃないかという御意見もございますが、その点について大臣の御所見をいただければというふうに思います。

谷垣国務大臣 結論から申しますと、私は、検察官関与の対象事件を国選付添人の拡大と連動させるというか一致させることが必要だろうと考えております。

 それは、検察官関与制度の対象事件を拡大しないで、家庭裁判所が裁量で国選付添人制度の対象事件の範囲だけを拡大することにするとしますと、国選付添人がついた、非行事実を争うということになりますと、制度上、事実認定の過程に検察官が全然関与しないということになっちゃいます。

 しかし、こうしますと、先ほども、余り品のいい言葉じゃありませんが、少年と裁判所で、なあなあでというのは余り適切な表現ではなかったなと反省しておりますが、ややそういう疑義を、例えば被害者側を初めとする国民から持たれた面もなくはなかった。したがって、そういうあり方で十分国民の納得を得られるかというと、やはり国選付添人がついたというときには検察官も関与するということが私は必要ではないかというふうに思っております。

 それから、平成十二年、平成十九年の少年法改正で、同様の観点から、つまり、検察官、弁護士付添人が審判に関与する必要性や、あるいは検察官ないし国費による弁護士付添人の一方のみが審判に関与することが可能であるという制度が不都合じゃないかということを踏まえまして、検察官関与が可能な事件の範囲と国選付添人を付することができる事件の範囲を一致させてきた、十二年、十九年の改正でも、そういう前提の上で議論が進んできたというふうに思っております。

椎名委員 ありがとうございます。

 今までの議論の経過というのは、大臣おっしゃるとおりだと思います。

 他方で、先ほど日弁連のお話を少しさせていただきましたが、少年保護事件付添援助というもの等を利用して、今現状で付添人がついている事件というのは大体八千五百件ぐらいあるというふうに理解をしています。そのうち国選が三百件で、私選が八千百件ということだというふうに思います。これに対して、検察官関与事件というのは、直近ですと十三件、これは、僕の見ている資料の年代は、平成二十四年だと思うので、件数としては、前後はあると思いますけれども、十件台というレベルかというふうに思います。

 そういうことだというふうに理解をしていて、これに対して、では事実認定に問題があるのかというふうに疑問をやはり持つわけですね。

 同じような問題意識を持たれて、その質疑をされた共産党の先生がいらっしゃるわけですね。共産党の先生と問題意識が共通しているというところに僕自身ちょっと気まずい気分はあるんですけれども、でも、問題意識としてはやはり共通している部分があるので指摘しますと、平成二十四年六月十九日参議院法務委員会で、「国選付添人の範囲を拡大したらバランスが崩れて事実認定に問題が生じるということになりますと、今も相当バランスが崩れているということになるかと思うんですが、検察官関与のない国選付添人選任事件が増えているということで、バランスが崩れて事実認定に問題が起きているというような事態があるんでしょうか。」という質問に対して、最高裁長官代理人から、「弁護士付添人が選任されている一方で検察官の関与がないという事件におきまして、これまでのところ、事件の関係者等から審理のバランスを欠いているといった批判があったというふうには承知いたしておりません。」との発言がありました。これはコピペしているので、基本的にはそのままです。

 最高裁に伺いたいのですけれども、この認識は、基本的に今でも変わらないという理解でよろしいですか。

岡最高裁判所長官代理者 現在におきましても、弁護士付添人が選任されたが検察官が関与していないという事件において、事件の関係者等から審理のバランスを欠いているといった具体的な批判があったとは承知しておりません。

椎名委員 ありがとうございます。

 やはり裁判所としても、事実認定にバランスを欠いているということではないというふうに、今の御答弁でもそうだったと思うんです。

 そうすると、そろえるということについては、国選付添人の事件の範囲を拡大するということは、先ほど申し上げた、八千五百人の弁護士付添人が今ついていて、八千百人が私選でやっているという状況、この状況を追認して、なるべくなら国費を投入してほしいという要望がスタートラインなのかなというふうに私自身は思っていて、検察官関与事件の数が圧倒的に少ない中で、今の現状、裁判所の答弁からしても、そんなに問題がないということなんですけれども、やはりそれでも必要なのかということなんです。

 要するに、今回の改正において、検察官が、事実認定の補助者としてということですけれども、少年審判に関与をするということなんですけれども、従前こういった運用がなされてきて少年審判が行われてきた中で、それでもやはり連動させる必要性があるのかどうかというところですね。

 私自身の問題意識としては、先ほど高橋先生も指摘されていましたけれども、裁判官が一件記録を見て職権主義的に今まで証人尋問等、事実認定のための行為を行ってきたわけですね。これで特段問題がないということなんです。検察官が関与している事件というのも少ないということです。にもかかわらず、こういった件を再びふやしていこう、範囲を拡大していこうというところについて再度御意見をいただければというふうに思います。

谷垣国務大臣 付添人がつくということは、事実認定だけではなくて、早い段階から少年の社会復帰や更生を目指していろいろな活動をしていくという意味では、これは検察官と対峙する必要がない、それぞれの付添人の重大な仕事だと思います。

 しかし、私が申し上げているのは、仮に事実関係が争われた場合に、そこに弁護士付添人はついている、それで事実関係を争う、そういった場合に、例えば被害者の側から見た場合に、少年と裁判所だけで判断をしているんじゃないか、つまり、少年の側の言い分だけが通っていくのではないかという懸念が生じてくるおそれがあると思います。

 したがいまして、少年審判を、裁判所の裁量で弁護士である付添人をつけ得ることのできる事件と、それから検察官の関与できる事件というのは基本的に対応させていく制度的な必要はやはり否定できないんじゃないかと私は考えております。

椎名委員 ありがとうございます。おっしゃっていることの意味は十分理解をしています。

 他方で、今回の改正で検察官関与事件のカバレッジが広がるわけですけれども、一般保護事件のうちの観護措置決定を受けた少年終局処分というものを基準に考えると、それが全体で一万件なんですけれども、今回、長期三年以上の刑罰ということでいうと、あくまでも実数という意味ですけれども、実数で約八千件ちょっとぐらいになるということで、大体八割を超えるんですね。観護措置決定を受けて、さらには証人尋問等まで行われるとなるともう少し数は減るかと思いますけれども、そう考えると、やはり幾つか疑義がというか疑問が私の中で湧いてくるんです。

 あくまでもカバレッジが広がるだけであって、実際に指定するかどうかというのは、それは裁量的な運用の問題だというふうに理解はしています。とはいえ、全体のと言うとちょっと語弊があるので、あくまでも限定された一般保護事件のうちの観護措置決定を受けた少年終局処分一万件のうちの約八割を占めるということであるとすると、結構な数について検察官関与をしていくということになる。あくまでも事実認定の補助者としてという立場ではあるけれども、少年事件に対する関与が拡大するということで、どうもやはり少年刑事手続と類似してくるんじゃないかなというふうに思えてならないんです。

 私自身は、問題意識という意味でいうと、少年刑事事件との類似性ということを指摘したいと思いますけれども、その中でいうと、理由は大きく三つあると思っていて、今申し上げたカバレッジの広さと、もう一つが糾弾的な尋問をするのではないかという話ですね。

 例えば、取り調べに関与をした検察官が少年審判で本人尋問なんかを行うということで、まさに大臣がおっしゃったような、事実に争いがあるような場合というところでいうと、例えば、取り調べの時点では、検察官がというか取り調べ官が怖くてうその自白をしてしまったものを要するに審判廷で取り消しをして違うことを言いたいというようなことがあったときに、取り調べに関与した検察官が仮にもう一回ここで少年審判のところに出てくるとすると、同じような状況が生じてしまって、萎縮して本音を話せないんじゃないかというような問題があろうかというふうに思ったりもするわけです。

 さらにもう一点ですけれども、刑事事件との類似性という意味でいうと、先ほど来、大臣は丁寧に言葉を選んでいらっしゃいますけれども、被害者側の意思というものを御指摘されているわけですけれども、丁寧に言葉を選んでいらっしゃいますが、でも、被害者側の意思を代弁するという検察官の役割というと、やはり訴追官としての検察官の立場に大分類似してくるように私自身は思うんですね。公益としての立場であり、被害者の意思を代弁するというか、かわりに行う、そういう立場としての検察官がいるとすると、広い意味でいうと、応報刑論というか、要するに、刑事処分として、私刑が禁止されているからこそ、被害者の意思をかなえるために公益の立場から検察官が刑罰を論告求刑していく、こういう立場に近づいているようにやはり思うんですね。

 こういったところから、少年法のもともとの理念である保護主義それから職権主義、改善更生、社会復帰を目的とする大きな理念という意味からすると、少し乖離をしているんじゃないかなというふうに思うんですね。

 二〇〇〇年改正のときも、ちょっとの改正だからいい、今回も、前回の改正から比べるとちょっとの改正だからいいということで、全体として見てみると、当初の二〇〇〇年改正以前と見比べてみると、理念としては何か乖離をしているようにどうしても感じてしまうんです。

 そういう意味で申し上げて、ぜひ大臣の御所見をいただければというふうに思います。

谷垣国務大臣 確かに、検察官は関与できるようになった、そして弁護士である付添人もついた。そうすると、今委員がおっしゃったことは、まさに通常の刑事裁判そのものに近づいてきているという御認識ですね。

 だけれども、やはり全体の構造として、先ほどからも御議論のあったところですが、予断を排除して、そして当事者主義的な構造のもとに、当事者の主張、当事者の出す証拠、これだけで裁判所は判断していくという構造ではありません。やはり職権主義的な、そして少年法自体にも、懇切を旨として、和やかにという、少年に対する審判の基本的な姿勢というのはそこではあるんだと思うんですね。

 それからもう一つは、これは何度も同じことを申し上げているわけですが、検察官が関与するのは、事実認定を適正化していくというところで関与するのであって、ではどういうふうに今後の処遇を考えていくか、そういう、保護をどういうふうにしていくかということには検察官が関与するわけではない仕組みになっておりますから、依然として、やはり当事者主義的な構造とは違いがあるのではないかと私は考えております。

椎名委員 ありがとうございます。

 僕も事務方の方と話をしていたときにちょっとフランクに話をしてしまって、ちょっと言葉を選ばなきゃいけないんですけれども、誤解を恐れずに言うと、何となくいいとこ取りのように聞こえてならないんですね。

 事実認定のところについては、要するに、事実認定の適正化のために検察官の役割を強調し、違う場面では職権主義的なもので、保護主義的なものであるから変わりない、そういうことを、時に職権主義的な、時に検察官の役割を強調しというところで、また言葉を選ばないといけないんですけれども、非常に正直な話を申し上げると、すごく中途半端なような気がしてならなかったんですね。

 私自身の個人的な見解を申し上げますと、検察官の公益としての役割であったり、事実認定の適正化というのを強調するんだったら、少年刑事手続と少年審判手続をむしろ一緒くたにして、もうちょっと整理をして考えた方がいいと思うんですね。刑罰としての保安処分という考え方は常に昔からずっと議論をされてきた話ですけれども、少年手続の中で、非公開で刑事処分も言い渡せて保護処分も言い渡せるような新しい刑事手続をつくるということまで考えた方がいいと思うんですね。

 そのぐらい、今現状、私自身の感覚レベルで恐縮なんですけれども、もともと異なる制度だった少年審判と少年刑事手続とが少しずつ少しずつ近づいてきているようにどうしても見えてしまうように思うんです。

 という私自身の見解を少し申し上げて、次へ行きたいと思います。

 被害者の意思を強調し、そして被害者からの見え方、さらには一般からの見え方という意味で申し上げますと、それを代弁するのは、代弁するというかその役割を担うのは、実は、少年審判においては検察官ではないんじゃないかというふうに思っております。

 すなわち、何が申し上げたいかというと、先ほど階先生が一番最初に指摘をされたことだと思いますけれども、まさに平成二十年改正の部分なんじゃないかなというふうに思っていて、結局、被害者の意見聴取だったり傍聴だったり記録の閲覧、謄写だったり、さらには確定審判に関する被害者等に対する説明だったりとか、こういう手続をまさに、平成二十年改正のところで附則で見直し規定が入っているわけですけれども、こういった、見直して、さらに充実させていく、もしくは、今現実の運用をより被害者にフレンドリーにしていき、使い勝手のいいもの、そしてさらに被害者の不満のないようにという方向で進めていくというのが、筋論としてはそうではないかというふうに思うんです。

 そういう意味で、あくまでも事実認定に関して、被害者それから一般国民に見え方として疑義のないようにというふうに、言葉を選んで大臣はおっしゃっていますけれども、全体として見てみると、やはり被害者の意思をかなえるためというふうに聞こえてならないんです。

 やはり、今申し上げたように、平成二十年改正の部分をより運用として充実させていくとか見直しをしていくとかによって被害者の期待に応えていくということの方が重要ではないかというふうに思うんですけれども、大臣の御所見をいただければというふうに思います。

谷垣国務大臣 椎名さんの問題意識に私うまく答えられるかどうかわからないんですが、いろいろなほかの方法もあるじゃないかという御意見ですね。

 いろいろなことが考えられると思うんですが、家庭裁判所というものをつくって、少年審判事件、いろいろな問題もあったけれども、やはり日本なりに工夫をしてそれなりの制度をつくってきたんじゃないかと私は思っております。

 そして、私は、平成十二年のときの改正に提案者として答弁したものを昨晩ちょっと読み返してみたんですが、今、椎名さんがおっしゃったような発想の御議論もいろいろあったと思います。それで、職権主義的で、懇切を旨として、和やかに行うというような趣旨が、検察官が入ってくることによってだんだん崩れるのではないかというような御懸念もあったところだと思います。そして、その克服のために何をしたらいいのかといういろいろな議論が当然あり得るだろうと思いますね。

 しかし、事実を発見していくために、必ずしも当事者主義的構造をとらなくても、そこに付添人と検察官が関与して事実を探求していくというシステムは、ほかの工夫があるじゃないかと椎名さんはおっしゃるかもしれないけれども、やはり司法の場で開発してきた基本的な事実発見のためのノウハウじゃないかと私は思います。

 それで、そこまでやるならば、むしろ当事者主義に持っていっちゃうのはどうだという御議論だってないわけじゃないと思う。しかし、少年の場合、やはり可塑性ということもあり、また、では伝聞法則を入れたり予断排除みたいなことをやっていくと、どうしても裁判が長期化していくということはある程度出てくるんだと思いますね。だから、少年の場合に、審判といいますか裁判といいますか、そういうものに長く関与させるよりも、できるだけ短く結論を出していく工夫というのも少年の可塑性ということを考えたら必要なのじゃないか。

 そういうようなことをあれこれ勘案しますと、そういう中で、また、かつては事実認定等が厳正に行われているのかという疑問もなくはなかったというようなことを考えると、現在のこの仕組みは日本の経験が生んだ一つの方向じゃないかというふうに私は今一応評価をしているわけです。

 ただ、いろいろな御懸念があるようなこと、御議論が今までありました。それは、これからも実務の運用について何が問題なのかということは我々もよく見ていかなきゃならないと思っておりますが、現段階でお問いかけになれば、ちょっとお気に召すかどうかわかりませんが、そんなふうに私は思っております。

椎名委員 ありがとうございます。大臣の非常に真摯な御答弁をいただきまして、ありがとうございます。

 真実発見のための方法が幾つかあるだろうというのは、それは本当におっしゃるとおりかなというふうに思っています。

 私自身も、当事者主義こそが全てであるというふうに必ずしも思っているわけではないんです。なので、もともと少年審判という手続そのものがあったことについて、それはそれでずっと評価をしてきて、さらには、改正の歴史で見ると、先ほど西田先生もちょっと言及していらっしゃいましたけれども、長らくこの制度は国際的にも結構評価をされてきて、そんなに頻繁に改正をしてくる法律ではなかったというふうに私自身もこの少年法については思っています。

 ところが、二〇〇〇年から少しずつ制度が変わってきて、現行制度の範囲の中で少しずつ折り合いをつけてきたということかなというふうに思っています。なので、私自身もいろいろ検討していかなきゃいけない問題だなというふうに思っていますし、この法改正がなされた後の実務上の運用ということを見ていかなければならないことかなというふうに思っています。

 裁判の長期化の話も先ほど指摘いただきましたけれども、国際的にも、ダイバージョンとよく言われますけれども、こういった刑事司法的な手続というか少年手続に、それからさらに施設なんかになるべく近づけないで離しておくということ、そして教育によって少年をいい方向に導いていくというのが一般的な潮流だというふうに思いますし、それこそが評価されているということだと思うので、裁判の長期化自体は本当に避けなければならないことなんだというふうに私自身も思っています。

 そうだからこそ、大臣の真摯な御答弁に私自身も少し納得をするというか感じるところもあったので、私自身も引き続き実務を見守っていきたいなというふうに思います。

 そして、後半に私が投げかけた被害者の保護という意味でいうと、運用というか、ほかの制度について、さらに言うと二〇〇〇年改正の部分の見直しのところについて、もしさらに御所見があればいただければというふうに思います。

谷垣国務大臣 今おっしゃったことは、見直しをせよという条項について、これは先ほど階委員からの御質問でしたか、お答えいたしましたが、階委員からはちょっとあのときの考え方と違う案を出してきたんじゃないかとお叱りを受けたんですが、私も傍聴等を認めたというのはこの前の改正の大きな点だったと思うんです。

 ただ、現実を見ておりますと、やはり傍聴というようなことをどう許していくのかというのは、当事者である少年の心理等々にも影響するところがあり、まだ十分に経験が蓄積されてきていないような感じがいたします。

 そういう御議論をいただいたわけですが、ですから、傍聴のあり方、あるいはモニター等によってどうしていくのかということの可能性も一方視野に入れながら、今後いろいろな問題をやっていかなきゃいけませんけれども、現状においては、今までの経験と議論はこういうところなのかなと思っている次第でございます。

椎名委員 ありがとうございます。

 これも引き続き実務の状況を見ていかなければならないことかなというふうに思います。私自身もきちんと問題意識を持って事実の経過等を見てまいりたいというふうに思います。

 少し繰り返しになるかもしれないんですけれども、引き続いて、次の質問に参りたいと思います。

 事実認定の適正化という点でいうと、先ほど高橋先生も御指摘していましたけれども、やはり予断排除それから証拠法則という話はどうしても法律家としては気になるところの一つではありまして、このあたりについても御所見をいただきたいというふうに思うんです。

 事実認定の適正化をしなければならないということであれば、裁判官がやはり一件記録を見て心証を抱いた上で臨む、その上で、実は、それは違法収集証拠だったんです、違法に押収されたものであり争いたいものですとか、これは伝聞証拠なので、刑事手続だったら同意したくありませんというような、そういう証拠を見ることができる状況の中で家裁の裁判官が実際に事実認定に臨むということです。

 むしろ事実認定の適正化というところであれば、一旦、いわゆる起訴状一本主義的な考え方にのっとって、予断を排除した上で証拠のやりとりをするというところまで踏み込んで考えてみるべきではなかろうかというふうに思いますけれども、もし御意見をいただければというふうに思います。

谷垣国務大臣 先ほど椎名委員から、いいとこ取りであると言われてしまったんですけれども、私は、基本的に職権主義の構造をとった少年審判、それがやはり少年の人格の可塑性であるとか、悪にも染まりやすいけれども、改善の可能性も、固まっちゃった人よりはできる面があるというようなことを考えたときに、それこそ少年法にございます、懇切を旨として、和やかに行うという職権主義的な仕組みというのはやはり意義があるのではないかと思っているわけです。

 そういう中で、事実認定をきちっとしていく努力として今の方向があるわけでございまして、だから、すぐ当事者主義というところまでにはまだ相当間があるんじゃないかなと思うんですね。

 そういう少年の特性に対応した柔軟な方法という中には、やはり早く審判の結論を出してということもあるわけでございまして、職権主義がフレキシブルかどうかはわかりませんが、そういう少年の特性に応じた対応というのは、やはり事実認定をきちっとするということが入ってきても、依然として基本的な特質として残しておかなければならないんじゃないかというような感じを私は持っております。

椎名委員 ありがとうございます。

 やはり裁判の長期化の話をされてしまうと、そこは確かにそのとおりだなというふうには僕自身も思っておりますが、事実認定の適正化といって具体的な事例として法制審の中でも議論されていた、家裁から派遣されている委員が法制審の中で議論していたのが、オレオレ詐欺だったりとか、複数人による暴行、恐喝、傷害などで意見が異なることがあるというようなことで、事実認定に問題があるというふうに言っていたわけですね。

 こういったような事件だと、やはり旧来からずっと言われているように、こっち側の共犯者を、だまくらかしてという表現はちょっと適切じゃないかもしれませんけれども、誘導して、こちら側から意見をとって、逆のこっち側の被疑者に望むような自白を出すみたいな、そういうことも過去行われたことがあるということで、刑事訴訟法の教科書なんかにもよく取り上げられるような事例だというふうに思います。

 そうすると、まさに事実を争うというところの中で、捜査手続を含めたところについて少年の側から争っていきたい部分もあるかと思うんです。いずれにしても、将来的には検討した方がいい内容かなというふうに私自身は感じております。

 恐らく時間もないので、あと一、二問かなというふうに思いますが、次へ参ります。

 国選付添人の範囲を広げるという意味で申し上げますと、今回の改正については、あくまでも裁判所の裁量によって決めていくという、ここにも職権主義的な構造がとられているわけですね。

 しかし、当然ですけれども、通常の刑事事件であれば、被疑者が国選弁護人をお願いしたいというと、請求によって国選弁護人がつくわけですね。

 手続という意味でいうと、捜査からの、検察官送致、そこから検察官に行って、そこから全件送致ということで家裁に行くんだと思いますけれども、一番最初に、多分恐らく警察の捜査のタイミングからということで考えると、少年だろうが少年じゃなかろうが、被疑者国選という手続があって、請求によって国選がつくんじゃないかというふうに思うんです。しかし、家庭裁判所の審判というところに行くと、裁量により国選付添人ということになって、ここの連続性ということはやはり考えていかなければならないのかなというふうに思います。

 今回、請求により国選付添人をつけるという、少年の側から国選付添人をつけていこうという方向性で物事を採用しなかったところについて、その理由を含めて、こういった制度についての御所見をいただければというふうに思います。

林政府参考人 今委員御指摘のような、請求によって国選の付添人をつける、こういった制度についての議論というのは、実際に法制審議会の少年法部会等においてもございました。

 それに対しては、そのときの議論としては、やはり職権主義的な審問構造を採用したこの少年法のもとでは、家庭裁判所が後見的に国選付添人選任の必要性を判断すべきであるという意見、あるいは、観護措置をとられた少年の全ての事件について請求があれば国選付添人を付する、こういった制度が国民の信頼を得られるのか疑問である、こういった慎重またあるいは反対意見が出されたところでございます。

 また、実際上も、国費により弁護士である付添人を付する必要性に乏しい事件も請求の対象としてなった事件においても、そういう事件もあると考えられまして、どのような事件においてどのような活動のために弁護士である付添人を付する必要があるかということについては、対象とされている事件のこの対象範囲の枠内において家庭裁判所の適切な裁量、判断に委ねるのが相当である、こういった考えに至ったわけでございます。

椎名委員 ありがとうございます。

 そもそも、そういう審判の構造自体が職権主義的であるからという、大きな理由でいうとそういうことなんだと思いますけれども、今し方ちょっと質問のところで申し上げたように、捜査段階では、被疑者国選というのが少年か少年でないかにかかわらずつけられる、請求によってつけられるということを考えると、そこの連続性というのは、やはり今後検討していく課題かなというふうに私自身は思っております。

 もう時間もないので、最後に裁判所に聞きます。

 この制度をどう運用していくかというところで、今後の見通しということはやはりちょっと考えていかなければならないことだというふうに思います。法改正後の運用は、検察官関与についてそれなりに御意見がある中で、今までと同様に、重大事件というか争いのある事件に限って抑制的に運用していくべきだろうというふうに思います。

 そういう意味でいうと、例えば少年事件における否認事件とか証人尋問を行う事件とか、そういう事件を、数が参考になると思いますけれども、どのぐらいの数が今後見込まれるというふうに思われますか。

岡最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 検察官関与事件が実数としてどの程度拡大するかにつきまして、正確な予測は困難かと思います。

 ただ、今委員御指摘のとおり、少年が非行事実を争い、証人尋問が必要となる事案においては検察官関与決定がされることも多いところでございまして、ちなみに、平成二十五年に終局した一般保護事件のうち、今回拡大される範囲の対象事件において証人尋問が実施されたものは約百三十件でございまして、今後、検察官関与事件となるような事案がこれを大きく超えるようなことはないのではないかというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、改正法が成立し、施行されました場合には、改正後の検察官関与制度について、法の趣旨を踏まえた適切な運用がされていくものと考えております。

椎名委員 時間も来ましたので終わりますけれども、まさに運用をこれから見守ってまいりたいというふうに私自身は思っています。

 本日は、どうもありがとうございます。

江崎委員長 午後二時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時三十分開議

江崎委員長 休憩前に続き会議に入ります。

 午前に引き続き、内閣提出、少年法の一部を改正する法律案及びこれに対する階猛君提出の修正案を一括して議題といたします。

 本日、本案及び修正案審査のため、参考人として、中央大学法科大学院教授小木曽綾先生、少年犯罪被害当事者の会代表武るり子代表、弁護士・社会福祉法人カリヨン子どもセンター理事長坪井節子先生並びに大阪学院大学教授・一橋大学名誉教授・弁護士村井敏邦先生、以上の四名の方々に御出席をいただいております。

 ここで、当委員会を代表して、四人の参考人の先生方に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、公私とも大変御多忙のところをお差し繰りいただき、こうして出席賜りましたことを心から厚くお礼を申し上げる次第であります。それぞれ、少年法に対して非常に関心も強く、そしてまた真剣に取り組んでおられる先生方、代表の忌憚のない御意見を賜れば幸いに存じます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 議事の順序について申し上げます。

 まず、小木曽参考人、武参考人、坪井参考人、村井参考人の順に、それぞれ、時間が限られておりますが、十五分御意見をお述べいただき、その後、各委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願い申し上げます。また、参考人から委員に対し質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承をお願い申し上げます。

 それでは、まず小木曽参考人にお願いをいたします。どうぞ。

小木曽参考人 中央大学の小木曽と申します。本日は、ありがとうございます。

 私は、法科大学院で、刑事訴訟法や被害者と法といった科目を担当しております。少年法についてもそれなりに勉強をしております。今回の法案につきましては、法制審議会の少年法部会、それからその前段階の意見交換会にも出席の機会を与えられておりました。

 そのような関係で、今回の法案につきましては、第一に、法案が現行法の少年審判の構造を変えるものではないということ、第二に、少年に言い渡される刑罰を一般的に重くしようという意図に出たものではないことの二つの観点から、法案に賛成の立場で意見を申し上げます。

 お手元に発言要旨をお配りいたしました。

 まず第一の点であります。国選付添人の対象事件の拡大であります。

 被疑者の国選弁護権については憲法三十七条三項が保障するところでありますけれども、少年法は、家庭裁判所が少年の保護、教育に全面的に責任を負うという建前でありまして、裁判所が少年の後見的な役割を果たすということまで期待された制度であります。

 しかしながら、罪を犯したとされる少年にとって、みずからの言い分を聞いて、これを審判に反映してくれる法律の専門家に個別の助力を受けることができる、そのようなことによって事実認定が正しく行われるということは、審判手続の適正という意味でも、また再犯予防に向けた環境調整を付添人が果たすという意味でも重要なことであると考えております。

 したがいまして、裁判所が必要と考えたときに付添人を付すことができるようにしておくことが望ましいと考えられまして、裁量による国選付添人制度が平成十九年に導入されたわけであります。

 今回の改正は、現行法でカバーされない事案、例えば詐欺や傷害といった少年がかかわることがまれではない事案について、共犯者等がいて、供述が食い違ったりして事実認定が争われるというような事案につきましてもその対象を広げるもので、望ましい方向の改正であると考えます。

 また、被疑者の国選弁護が適用される事件の範囲より現在の少年法がカバーする範囲が狭いことから、少年が捜査対象になっている間には国選弁護人がつきますけれども、事件が家庭裁判所に送致されますと、国選付添人がつかないというおそれが生ずることが予想されますので、これを解消する必要があると考えます。

 二番目は、検察官関与対象事件の拡大の点であります。

 先ほど申しましたように、少年法は、家庭裁判所による職権主義的な審判、すなわち、事件の事実関係の調査、少年の資質や社会環境等の調査をいたしまして、その調査の結果をよく知った裁判官が事実認定及び要保護性の判断を一手に行い、対象少年についての最適な処遇を決定するという仕組みで行われております。

 したがって、家庭裁判所の裁判官は、いわば事実認定者、付添人、検察官というそれぞれの性質の異なる役割を一人で演ずることが求められているわけですけれども、複雑な事件においては、それが困難でもあり、また望ましくもないという場合のあることが認識されまして、検察官関与制度が導入されたと理解しております。また、それに対応する形で、義務的な付添人制度が導入されました。

 今般の改正案は、さきに述べた国選付添人の範囲が拡大されるのと同じ範囲に検察官関与の可能性を広げるものであります。

 そうしますと、この両者の範囲が一致しなければいけないのかという疑問が持たれるところであろうと思いますけれども、もちろん、これは検察官が関与しない場合でありましても、私選の付添人がつくことはありますし、国選付添人も裁量的に付され得る仕組みになっております。また、裁判所による職権主義的な審判構造という観点からいいましても、付添人が付される事件で必ず検察官の関与が必要である、論理必然的にそのようなことになるわけではありません。

 しかし、現行の検察官関与事件以外にも、裁判所が検察官の意見を聞いてみたいと思う必要を感ずる事案があることは法制審議会の部会でも指摘されているところでありまして、少年の保護、教育の前提は正しい事実認定であると思います。

 長く裁判官を務めておられまして、この部会の委員でもあられました植村立郎という先生がおられますけれども、この先生は、部会の中で、事実という像に多面から光を当てることが重要であるという意見を述べておられます。

 そうしますと、税金をもって少年に付添人が付されている場合に、裁判官が検察官の意見も聞いてみたいと思ったときにそうすることができない制度になっているということが、被害に遭われた犯罪被害者、それから税負担をしている人々の理解を得られるかどうかというと、疑問であると思います。

 この制度が導入されたときにも、検察官関与を許しますと、少年審判手続を被告人の刑事責任を追及する刑事裁判のように対審構造化して、少年を萎縮させて十分にその言い分を聴取することができなくなる、現行の保護、教育を旨とする少年法の理念と一致しないという懸念が表明されました。

 しかし、第一に、検察官関与の決定は裁判所が必要と認めるときにするものでありまして、裁判所が責任を持つ少年審判の構造は変化しておりません。第二に、ここまでの検察官関与の実績を見ましても、検察官関与決定のあった事件は年間約二十件前後でありまして、制度設計どおり、補助的な関与にとどまっているというふうに考えられます。

 したがいまして、今回の法案がやはり少年法のありようを大きく変えるということにはならないと考えております。

 三番目です。不定期刑の長短期の引き上げであります。

 少年法は、非行事実の認められた少年には原則として保護処分をもって臨みますけれども、やむを得ない場合には刑罰を科すことも認めております。今回は、この刑罰のあり方についての法案であります。冒頭述べましたとおり、法案は、罪を犯した少年を一般的により重く処罰する、例えば、現在五年の刑が科されるという行為に七年、八年の刑罰をもって臨むという結果を招くものではないと考えます。

 国が人に刑罰を科すことの根拠につきましては、さまざまな意見があります、見解がありますけれども、ここでは、国家、社会が刑罰という不利益をその行為者に科すことによって、罪を犯した者にその行為へのけじめをつけさせ、社会及び被害者が納得する、また、行為者は刑を受けることでその責任を自覚して、更生のきっかけとするというものではないか、ここではそのように理解しておきたいと思います。みずからの行為へのけじめが刑罰であるとしますと、その刑罰として受ける不利益は罪に見合ったもの、つまり、罪に照らして不当に長くても短くてもいけない、均衡のとれたものでなければなりません。

 現行法の五十二条の二項は、有期の懲役で処断すべき場合に原則として少年には不定期刑を科すことにして、その上限を十年としております。一方、五十一条の二項は、十八歳未満の者について無期刑で処断する場合にはそれを緩和するという定めを置いております。

 処断刑は、具体的な事件に際して、その罪の重さに応じて決められるものですけれども、現行法では、少年の犯した罪については、不定期刑の上限十年の次に重いのは無期刑ということになりまして、その間が開き過ぎているのではないかと思われるわけであります。もちろん、無期刑を緩和すれば結果的には十年から十五年の間の刑を言い渡すことができますけれども、そのためには罪の重さを示す処断刑としてあえて無期刑を選択することになります。これは量刑の原則に反します。無期刑に相当する罪ではないけれども、しかし十年では余りに軽過ぎるという事案がある、そのような罪があるということを示す裁判例も複数あるところでありまして、このギャップは埋められるべきではないかと考えます。

 したがって、法案は、少年がそのような類型の罪を犯した場合に、現行法では罪刑の均衡を欠くと思われる場合に、裁判所が選択することのできる刑罰の範囲を広げるものでありまして、前述いたしましたとおり、ある罪についての法定刑、処断刑を一律に重くするというような、いわゆる厳罰化ではありません。付言いたしますと、部会での議論の過程で、不定期刑の短期を処断刑以下とすることもできることにしたり、長期三年以上の刑に限定されていた不定期刑をそれ以外の場合にも適用することができるという工夫を凝らしております。

 四番目であります。無期刑の緩和刑の上限を引き上げることについてであります。

 もし不定期刑の上限が提案どおり十五年になるとしますと、現行の無期刑の緩和の有期懲役の上限十五年と同じになります。刑罰は、犯された罪の重さに応じて段階的に定められておりますけれども、有期の懲役より重い刑は無期刑であるはずであります。そうしますと、今のままでは、不定期刑の上限が仮に引き上げられますと、不定期刑の上限を超える無期刑の緩和刑というのがないことになります。これは、刑罰体系にそぐわないのではないかと思われます。

 これによって、少年であっても無期刑を科されるべきときは二十年の懲役刑を科すことができることになって、裁判官の選択の幅が広がります。ただし、二十年というのはいかにも長いという意見が当然あろうと思います。しかし、刑の長短、罪刑の均衡というのは相対的な概念であると思います。刑罰体系の中で比較されるべきものではないかと思います。既に国会では刑法を改正しまして、懲役の上限を二十年としておりまして、それ以前の懲役の上限は十五年でありました。したがって、これと現行少年法の五十一条二項が有期の懲役の上限を十五年としている部分は平仄が合うわけでありますので、懲役の上限が二十年ということになっているときに、少年法の五十一条の二項の上限を二十年とすることが、これまでの法制度と乖離するわけではないと考えます。

 さらに、ここでは刑の上限のみ五年引き上げることとしまして、下限はそのままにしております。このことからも、やはり今回の法案は、少年を一律に重く処罰するという意図に出たものではありませんで、罪に見合った刑罰を科すことができる制度の実現を目指したものというふうに理解しております。

 以上です。(拍手)

江崎委員長 どうもありがとうございました。

 次に、武参考人にお願いいたします。

武参考人 本日は、このような貴重な時間をいただいたことに、心から感謝をしております。

 私の息子、長男孝和は、今から十八年前の平成八年十一月、十六歳のときに、同じ十六歳の見知らぬ少年たちに因縁をつけられ、一方的な暴行で殺されました。

 事件とわかった直後、主人が私にこう言いました。俺たちは見せ物パンダになってもいいな、もうプライバシーも何もないぞと私に言ったんです。それまで、私は専業主婦ですし、このように人前で話をすることはとても苦手な性格でした。そんな小心者の私でしたが、それを言われたときに、子供の無念を思って覚悟を決めたのでした。こんな理不尽なことがあってはいけない。それに、少年法の壁もとても大きかったんです。この十八年間、全てをさらけ出して、声を上げ続けてきました。

 それから、平成九年十二月に、同じ思いの人と一緒に少年犯罪被害当事者の会をつくりました。そして、我が家が事務局となり、私が代表になりました。きょうは、四人の会の人たちと参加をしています。

 子供を理不尽な少年の暴力によって殺された親たちを中心に、一切の政治や宗教にとらわれることなく、当事者の立場で純粋に少年法の改正を訴えてきました。

 私たちの願いは、私たちの子供が味わったような悲劇を繰り返さないようにすること、子供たちをこれ以上、被害者にも加害者にもしないということです。

 今回の審議対象は、検察官関与の範囲の長期三年を超える懲役もしくは禁錮に当たる罪への拡大です。私たちは、事実認定の重大さを繰り返し訴えてきました。逆送されるか否かで事実認定の手続に大差があるわけですが、現行法では家裁の裁量で決められるわけです。家裁の審判においても、少なくとも被害者が死亡したり重傷を負ったりした一定の重大事件については、自白事件も含めて、検察官関与を家裁の裁量ではなく原則としてほしいと主張してきたのです。

 少年を保護、教育して更生させる、健全育成をするというのなら、本当に更生させることのできる制度にする必要があると思っているのです。更生の大前提となるのが、適正な事実認定です。事実認定をいいかげんにしてよいという理由はどこにもないでしょう。特に人を殺したり傷つけたりした重大事件においては、何をおいても事実を明らかにすることが不可欠です。事件の真相を明らかにする。それは、事件を起こした少年に対していかなる処分が必要かを考えるに当たっても必要不可欠なはずですし、被害者の名誉回復や尊厳の維持にも重要なことなのです。

 何度も申し上げているように、不十分な事実認定は、少年の更生にもつながらないばかりか、反する結果にもなるでしょう。実際、少年の再犯率は高いものになっています。私たちの会の人の加害者も、再犯している人が何人もいます。

 少年に甘いという単純な理由からではありません。きちんと事実認定をしないままで行われる少年審判の後には、一体何が起きるのでしょうか。少年は本当に反省ができるのでしょうか。厳密な事実認定を行わない現行制度のもとで、私たち大人は、少年に本当に更生できる環境を与えられているのでしょうか。

 実際にこういう例があります。

 審判では、被害者自身が殺された建物に少年を誘い込んだとされていた上に、殺害の動機も、被害者の言葉にかっとなって、とっさにその場に落ちていた布を拾って首を絞めて殺害したと認定されましたが、民事調停での少年の自白で、実際には、少年が被害者を建物内に誘い込み、用意した布で首を絞めて殺害していたことがわかったのです。審判に対する強い不信感が残ってしまいました。検察官不在の審判で、加害者側の言い分だけが通ったため、逆送にもならなかったと感じています。

 現在の審判では、このように少年のうそが通ってしまう現実があります。それが少年の更生にとってマイナスであることは明らかです。社会ではうそは通用しないという基本ルールを少年に教える義務が大人にはあります。厳密な事実認定は、被害者のみのためではありません。少年の更生を目的とする少年法の理念のもとにおいても不可欠なはずです。

 今回は、国選付添人についても拡大することが検討の対象とされています。

 私たちは、従来、国選付添人制度の対象事件の範囲の拡大について反対はしていません。身柄を拘束された少年に付添人をつけるのは、その少年の言い分をきちんと聞くために必要でしょう。私たち被害者は、少年の言い分を聞かずに審判をしてほしいなどと言うつもりは全くないんです。

 しかし、国選付添人制度の対象事件の範囲を拡大すると、審判の構造としては、少年側の人間が一人ふえるということにほかなりません。しかも、弁護士という専門的な立場の人です。これは、私たち被害者から見れば、審判が現行の審判と比較してさらに少年側の人間のみによって構成されるということです。

 私たち被害者はこれまでも、少年の主張だけを聞いて行われる審判に大きな不信感を感じてきました。国選付添人の対象事件の範囲の拡大は、私たちの不信感をさらに大きくするものです。

 審判は公正に行われる必要があるのは明らかです。もともと、少年が何をしたのかを明らかにする手続に少年側の人間しか出席しないという制度は、事実誤認を引き起こす危険が大きいものでした。そのような事態を避けるためにも、国選付添人制度の対象事件の範囲が拡大されるのであれば、付添人がつけられた事件についての事実認定には検察官関与が必要と考えます。

 適正な事実認定が必要だとしても、必ずしも検察官関与は必要ないという意見もあります。検察官関与に反対する意見です。検察官が審判に出席すると、少年が萎縮して話せなくなるとか、和やかに行われるべき審判制度に反するなどの理由が常に挙げられています。

 でも、逆送された事件で、実際に少年が何も話せなかったという例が何件あったでしょうか。実際には、刑事法廷においてさえ、きちんと話せる少年がほとんどだと思うのです。検察官が関与したからといって、直ちに審判が和やかでなくなるということにもならないと思います。そもそも、重大事件を起こした審判の場なのです。本来厳しい場であるはずなのです。

 ただし、私たちは、厳しい言葉で少年を追い詰めてほしいなどと言っているわけではありません。少年であることに配慮した質問の仕方というのはあるはずです。和やかにという意味は、そういうことではないでしょうか。

 不定期刑の見直しを求めます。

 被害者は、犯した罪に見合った適正な処罰というものがあるのではないかと思っています。犯した罪に見合った適正な処罰を実現してほしいので、有期刑上限の引き上げを望みます。目立った事件が起きたときに法改正が叫ばれることが多いですが、そのとき法律がなければ適用されない。今回の改正で上限を上げることがとても大切です。引き上げたからといって、全ての犯罪に適用されるわけではなく、裁判所が公正に判断して、罪に見合った適正な運用をすればいいのです。

 少年のときに罪を犯した受刑者は、十代や二十代なので、とても大切な時期を長期間拘束すれば社会復帰できないという声があります。矯正教育の問題など、まだまだ足りないところはあると思います。矯正教育のあり方を考えることは、とても必要で大切だと思います。

 ただ、絶対に忘れてほしくないことが一つあります。それは、十年や十五年、少年刑務所に入る少年がいれば、その反対側には、命を奪われた被害者がいるということです。私たちの会であれば、六十二歳で命を奪われた方もいますが、ほとんどが十三歳から二十四歳と、十代から二十代前半に命を奪われています。十数年で命を奪われて、その後の人生はないのです。そんな命を奪ったわけです。命はとうとい、地球より重たいと言います。それを考えると、十年、十五年は長いのでしょうか。罪に見合う罰は、厳罰化ではなく適正化です。これまで罪に見合った罰がなかっただけだと思っています。

 日本は法治国家です。かたき討ちは許されないのです。私たちの話を聞いたほとんどの人たちはこう言います。自分だったら、大切な子供が殺されたなら相手を殺しに行くと言ってくれます。でも、実際はしてはいけないのです。私たちはそんな思いを押し殺しながら生きているのです。だから、国が、たとえ少年であっても罪に見合った罰は与えていただきたいのです。上限を引き上げることは、罪に見合った罰を与えることができるようにするということですから、とても大事なことです。

 大阪地方裁判所堺支部での少年事件の判決で、無期懲役は選択できないが、現行法の有期刑では不十分だと判断されました。とても勇気がある判決文だと思いました。裁判員裁判も始まり、開かれた司法、開かれた裁判所という言葉がよく使われるようになりました。ようやく裁判官の方も、こうやって勇気を持って、そのような言葉を使えるようになったんだと思います。その勇気を持った判決文の言葉は本当に大事にしていただきたいと思います。

 私たちの苦しみ、悲しみは一生変わりません。でも、国として、私たちにも私たちの子供を殺した加害者と同様の権利を与えてくれたなら、それが私たちが自分たちの力で前を見ながら生きていく力になるでしょう。

 この法案審議が終わっても、引き続き少年事件の実態を見続けていただき、必要に応じてこれからも少年法の見直しをしていただきたいです。

 ありがとうございました。(拍手)

江崎委員長 どうもありがとうございました。

 引き続いて、坪井参考人にお願いいたします。

坪井参考人 私は弁護士でございます。ただ、皆様のお手元にお配りをしました資料の一番最後に、「社会福祉法人カリヨン子どもセンター」というパンフレットをつけております。十年前に、仲間の弁護士たちが中心になりまして、十五歳から十九歳まで、虐待や非行のために帰る場所がない、今晩泊まるところのない子供たちのためのシェルターを開設いたしました。きょうまで十年間、約二百五十名の十代後半の子供たちの居場所づくり、その子供たちの自立支援をしております。

 そうした、付添人として少年事件にかかわり、あるいは、シェルターの運営者として非行を起こした子供たち、虐待から苦しんだ子供たちに携わっている現場から、今回の少年法案について意見を述べさせていただきたいというふうに思っております。

 大部の資料をお手元にお届けいたしました。これは、今回の法案に対してどのような市民たち、弁護士たちの意見があるかを皆さんに知っていただきたいと思ってお配りしたものです。

 一ページにあります、少年法改正に反対する弁護士有志、そして研究者有志の会、これは、私、そしてこれからお話をする村井さんも入っておりますが、今回の少年法案に対して反対をする弁護士、研究者の意見書でございます。私が申し上げたい趣旨はここにあります。

 飛びまして十三ページを見ていただきますと、ただいま被害者の方の切々たる訴えがございましたが、少年犯罪被害者の中でもいろいろな御意見をお持ちの方がいらっしゃいます。十三ページにありますのは、佐賀バスジャック事件という少年犯罪の被害者であられました山口由美子さんの講演録です。山口さんは、被害者でありつつも、少年法の厳罰化あるいは検察官関与に反対をするという意見を常に述べておられます。

 さらに、十七ページ。被害者と司法を考える会、これは、子供さんを亡くされた片山徒有さんというお父さんがつくられている会でございますが、こちらでも少年法改正反対の意見を出されております。

 さらに、二十一ページをごらんください。二十一ページは、一昨日の新聞記事であって、先生方もごらんになっていらっしゃるかもしれませんが、神戸連続児童殺傷事件の被害者であられる、子供さんを亡くされました山下京子さんというお母さんの手記が載っておりました。

 その手記の一番最後の段落を見ていただきますと、加害男性から十通目の書状が来た、そういう内容なんですが、「加害男性は、生涯をかけて償いながら生きることを選びました。 彼が、自分の罪を真正面から見つめようとすればするほど、計り知れない苦痛が伴うでしょう。でも、いばらのような道を歩みゆく過程で感じる命の痛みこそが、償いの第一歩ではないかと思っています。」というふうにお書きになっていらっしゃいます。少年法のもとで裁かれた少年からの手紙、遺族との交流が書かれております。

 さらに、二十二ページ以下は、さまざまな市民や団体の意見書を載せておきました。子どもと法・21、市民団体の中で特に子供たちに寄り添う市民たちがつくっている団体ですが、こちらで、少年法改正法案に対して、特に国連の子どもの権利条約の視点から、いかにこの法案がおかしいかということを中心に述べてある意見書です。

 それから、二十六ページ。これは、裁判所の書記官、現場の調査官の方たちが出しました、全司法労働組合として出されました少年法骨子、これは骨子の段階で出していますが、見解として、刑の長期化、そして検察官関与に反対をするという意見です。

 それから、二十七ページ以下。これは、最近になりまして各弁護士会で会長声明を出しております。仙台弁護士会、埼玉弁護士会、そして静岡弁護士会というところで、この改正法案に対する反対意見を会長声明で出しております。

 こうしたところをぜひごらんいただきたいと思って、資料をお配りいたしました。

 私自身、付添人を長くしてきて、きょうは、どういう子供たちが非行少年なのかということをもう一度先生方に御理解いただきたいと思って、まずお話をさせていただこうと思っております。

 被害者の権利保障、これは本当に重要なことだと思っております。私は、少年事件の被害者の代理人もしております。少年法の中でどのように被害者が守られなければいけないかということについても痛感をするものですが、国会議員の先生方には、ぜひ、加害者たる少年たちが被害者であった歴史の部分にも着目をいただきたいと思います。

 私自身が虐待事件ということを知ったのは、実は付添人になってからでした。付添人をして非行少年と向き合いまして、その子がどうしてこのような犯罪を起こしたかということを話を聞いていく過程で、その子供の生育歴に虐待の影が見えなかったことがなかったからです。その虐待、身体的虐待も、あるいは罵倒、無視という心理的虐待も、そして最近ふえているネグレクト、世話をしてもらえないという養育放棄、そうした中で、子供たちが心も体も傷つけられ、ひとりぼっちでさまよい、そして荒れ狂って非行に陥った、その過程をつぶさに見せられました。

 その子供たちは、自分の痛みを救われたことがない、誰にも相談できたことがない、その中で人間不信に陥っています。大人なんか信じられないと言います。そして、自分の苦悩を言葉で表現できない、聞いてもらったことがない、人の話も聞けない、自分の痛みを誰にも救ってもらったことがない、人の痛みがわからない、そういう子供たちでした。

 被害者御自身が、厳罰化、厳しくと言うことを私は否定するものではありません。しかし、周りの人間たちが、この子供たちのそうした不適切養育や虐待を放置したまま、犯罪者になるまで放置した家族や学校や地域や、そして国の責任はどこへ行ってしまうんでしょうか。その人たちまでが一緒になってこの子供一人に責任を負わせる、そんなことでこの国の未来があるでしょうか。

 子供が刑務所で長期処遇をされた場合にどのようなことが起きるか。

 刑務所というところは強制労働をさせられます。そして、一日じゅう全て管理、監視された中で生活が行われていきます。そこでは、いわば何も考えなくても三度の御飯が食べられて、恐らく心を摩滅させていって、非人間的な生活をしようと思えばできてしまうところであります。そのような中に子供たちが入っていく、若いうちに入っていく。

 そもそも、人間性というものが育てられずに、人間らしさを失って犯罪に落ちた子供たちが、そのような中で人間性を回復していくことができるんでしょうか。罪の意識や贖罪の意識がその中で高まっていくでしょうか。社会に対する適応力もコミュニケーション能力もないまま、長期間の収容の後、社会へ戻ってきたときに何が待っているんでしょうか。

 私たちは、長期処遇を受けた子供たちが帰ってきたときの現場に立ち会ってきました。社会の動きについていけない、就労する方法もない、家族にも見捨てられている、そういう子供たちが生きていくのがどんなに大変か。そして、その中で、多くの子供たちが、就労のめどなく、生活を自分で再建することもできず、自立の力もなく、ホームレス化し、生活保護を受給していくような人間になっていってしまったり、あるいは、行き場なく再び犯罪に陥ったりしていく、そういうところを見続けてきました。

 このようなことが起きている中で、どうして子供たちの被害者への贖罪の意識も高まっていくということがあり得ましょうか。

 二〇〇〇年以降の少年法改正の厳罰化の中で、今の家裁の審判廷はぐんぐん変容しております。私たちは、付添人をしていながら、かつてだったらこれは保護観察だったという処遇が少年院送致になっているということを感じたり、逆送事件が確かに激増しているということを感じたり、あるいは、仮釈放までの期間がどんどん長くなってしまってなかなか子供が帰ってこないということを実感しております。

 今回の法案の中でさらなる長期化ということになった場合に、たとえその法律が適用される子供は一人二人にすぎなかったとしても、少年法全体が子供の長期処遇化の方向へ向かって変わっていくということは、もう火を見るより明らかだと思っております。

 子どもの権利条約三十七条(b)項に、子供の自由の束縛ということは最後の選択でなければならず、しかも、最も適当な短期のみにしなければならないとなっております。国連子どもの権利条約は日本政府が批准をしている条約です。この条約に違反をするような法改正をすることは許されない。

 しかも、日本政府は、二〇一〇年には国連の子どもの権利委員会から勧告を受けています。このような長期処遇に関して、それは避けなければいけないという勧告を受けている中で、このような改正を図ることが、一体、国際社会の中で許されていくのかという面にもどうか目を向けていただきたいと思います。

 本当の厳しさとは何か。カリヨン子どもセンターで、帰る場所がなくて少年院からやってきた男の子の事案をお話ししておきたいと思います。

 彼は、養育放棄を受け、ちゃんと育てられず、居場所なく、不良グループの中で年長の子供たちと一緒に取り返しのつかない事件を起こした子でした。

 彼が、地元へ帰れず、少年院から私たちのところへ戻ってまいりました。彼は、少年院の中で非常に厳しい教育を受けました。一年間の間は何をされているかわからなかったと言っていました。しかし、一年後、ようやく先生の言うことがわかってきた、そして、自分の起こした罪というものに向き合わされることのつらさ、本当に死にたいほどつらかったと言っていました。

 そして、付添人がずっと彼を支え続け、被害者への謝罪ということを彼に促し続けました。彼は、戻ってきて、スタッフと一緒に暮らしながら、就労先を見つけ、被害者と交流をし、きちっと、一生かかって被害弁償することを誓い、今も、月々一万円ずつですけれども、被害者に対する弁償を続けながらおわびを続けております。

 こうした子供たちの更生、これは、隔離からではなくて、本当の意味でそれを助けるたくさんの人たちがいて、被害者の権利保障も、そして子供たちの成長も助ける人たちがいて初めて実現することであります。先ほどの山下さんの手記も同じことをおっしゃっていらっしゃるんだというふうに思います。

 必要なのは、虐待あるいは不適切養育に着目した専門的な短期集中処遇、そして、できるだけ早期に社会の中での日常的な人間関係に戻して、息の長い司法、福祉、更生保護、多機関連携による子供の自立支援の継続だと思います。再犯を防止し、社会人として自立させ、被害者への本当の意味での償いをして、この社会が安全になる、それこそが少年法の理念だろうというふうに思っています。

 二〇〇〇年改正後の審判の変容は先ほど申し上げましたが、審判は、私たちが参加していて、かつての、裁判官が自分の人格をかけて子供と対話をし、子供の言葉を引き出し、そこに反省を求めていくという、厳しくも、しかもしみじみとした審判廷というのは見られなくなってきました。恐らく、内省を促すという言葉が二十二条に追加されたり、検察官関与があったり、逆送事件がふえていく中で、審判は刑事裁判のような趣をしています。裁判官は、追及し、説教をし、子供の口答えを許さない。私ども付添人がいても、付添人は黙っていてくださいと言われて、私たちが黙らざるを得ないような審判廷が出現しております。

 人間らしさを失った子供たちに何よりも必要なのは、まず、自分たちの言葉で子供が気持ちを表現できるようになること、それから人の言葉を受け入れるようになることです。少年法では、調査官面接、鑑別所技官の面接、そして審判廷で、あるいは付添人の面会で、子供と言葉で一対一で聞き合うという、子供の人間らしさを回復するための第一歩がそこで始まっていくのです。

 検察官の役割は、訴追であり、そして尋問をして国家権力による処罰をすることが役割です。一人一人の個人の検察官の問題ではなく、制度として、それが検察官の役割、お仕事です。今、審判の変容は、私たちとしては本当に回復不能なところまで来ていると思っていますが、ここに検察官関与が大幅な範囲で加わることができるとなってしまったら、瀕死の少年法が壊滅するのではないかというほどの危機感を感じています。

 裁判官が本当に事実認定に困っておられるのか。裁判所はそんなことはないとおっしゃっているはずです。全ての捜査資料がお手元にあります。裁判官は全ての捜査資料をお読みになる。そして、もし子供の話がわからなければ、どうしても第三者的にならなければ、そのためにこそ調査官がおられる。調査官がきちんと事実を整理して質問をする、それを裁判官がお聞きになればいいことではないですか。なぜ検察官が来なければならないのか。

 子供がうそをつくとおっしゃる。どうして子供がうそをつかなければならないのかをお考えいただきたいと思います。子供たちは大人不信です。信じられない大人にはうそをつきます。しかし、本気で、さまざまな試し行為にさらされながら、本当に大人の方も必死で子供に向き合っていくとき、子供たちは真実を語り出します。追及したり、尋問したり、その中では真実は発見されてこないのです。冤罪の危険もそこから高まっていくだろうというふうに思います。

 少年法が本来の使命を取り戻すために、今回の法案に対して私としては反対せざるを得ないということで意見を締めくくります。

 ありがとうございました。(拍手)

江崎委員長 次に、村井参考人にお願いいたします。

村井参考人 村井でございます。

 私は、一橋大学、さらに龍谷大学において少年法を講じております。現在は、大阪学院大学の法科大学院で刑法を議論しておりますけれども、少年法も専門としてやっております。二〇〇〇年の改正のときには、参議院の方に参考人として参加させていただきました。

 弁護士も一応やっておりまして、資料のところに、弁護士として付添人をやった経験を少し述べさせていただいております。数少ない中で、万引き事件ですけれども、少年事件をやりました。

 最初、私が少年に会ったときには、誰が来たのかわからない、警察官なのか弁護士なのか何だかよくわからない、弁護士というのに会ったことがないというのもあったんですけれども、それでどうしたものだろうかというので非常にかたい顔をしておりましたが、毎日のように会いに行きますとだんだんとその顔が変わってきまして、最後には、自分のような非行少年を何とか支えるような職業をしたいとまで言うようになりました。

 その後、それで勉強したかどうかというのはわかりませんけれども、そこまで言ってくれて、私は事件にかかわってよかったなというふうに思います。

 このときには、やはり調査官とも緊密に連絡をとり合いながら、少年の処遇をどうするかということを検討してきました。もちろん、検察官は一切かかわらないわけですけれども、少年事件ですが窃盗事件ですから、これで事実に争いがあると、今度の改正案では場合によっては検察官が立ち会う。私のような年寄りでも、検察官が立ち会ってやったらどうなるだろうかと非常に危惧を感じております。

 その意味で、検察官立ち会いは問題があるということと、刑罰を引き上げるという今回の法案については反対ということで、意見を述べさせていただくわけです。

 お手元にレジュメのようなもの、意見要旨を配っております。

 これはもう釈迦に説法でしょうが、少年事件というのは、基本的には刑事事件ではないということです。各国の状況を見てみますと、民事事件として明確に位置づける法制も多いですが、日本の場合も、家庭裁判所でこの事件をやるということの意味は、家事調停とのつながりにおいて、いわば家庭環境問題ですね、家庭環境というのが非行を犯す上で非常に重要な要素があるので、家庭裁判所で家事事件とあわせて考えていこうというのが家庭裁判所で少年事件を扱うことの意味です。

 そのために調査官というのがおりまして、調査官が事実を調べて、適切な処遇について裁判官にアドバイスする、これが家庭裁判所の役割であり、調査官の役割。付添人もあわせて一緒になって考えていく。

 いわば、行為の、事実の原因を探る、これは非常に重要なことです。事実をないがしろにしてはいけないという武さんの発言はそのとおり。事実を知る。ただし、その事実は、あくまでもその行為の原因を探って、その行為の原因になったものを除去していくということのために事実を調査するわけです。

 この調査は、調査官というのがおりますので、調査官が、社会学や心理学等の法律的なものだけではなく、いわば全人格にわたってその少年について調査を進めていく、それをもとにして審判が行われるというのが現在の家庭裁判所のあり方です。

 そこに検察官は必要でしょうか。私は必要ではないというふうに考えております。

 少年審判においては、もちろん被害者の方の意見もあるでしょうが、被害者、社会を含めて、一体、この非行を犯した、犯罪を犯した少年に対してどう対応するかを考える場です。

 二〇〇〇年の改正のときに、修復的司法の問題というのをかなり真剣に議会でも取り上げられたと思うんですけれども、それがどうなってしまったのか、残念なんですが、修復的司法というのは一つの考え方です、被害者と加害者が向き合って考えていくという形ですから。こういうふうなものを想定するのならば、新たな少年法のあり方というのを考えることができるだろうと思いますが、残念ながら、そこに検察官を関与させ、刑罰を上げるという形では、この修復的司法の考え方は生かされないことになります。

 検察官が入るということによって事実の究明がよりよくなるか。必ずしもそうではない。先ほど言いましたように、単なる非行事実の、何月何日に何をやったということを確定するだけの意味ではなくして、その原因を探ることに意味があるわけですから、その原因を探るという役割において、検察官は決して専門家ではない。後ほど言いますけれども、そういう専門家を検察官として割り当てるならば検察官立ち会いというのもあり得ることですが、日本の場合には残念ながら検察官はそういう役割を担っていないんですね。

 先ほど、裁判官が全ての役割を果たさなきゃならないと。必ずしもそうではない。付添人がおりますし、調査官がおります。調査官は事実を調査することができますので、非行事実を誰が告げるかということでいえば、裁判官が告げなくても、調査官が、こういう事実で君はこの審判廷に出ているんだよということを言えばいいんですね。証人尋問等が必要だったら、調査官がやればよろしい。

 これを実際上やっているのは、スコットランドの制度です。スコットランドの児童聴聞という制度がありますけれども、この中では、調査官がプレゼンテーションを行い、証人尋問を行うという形でやっております。

 これは、必ずしもそういう新たな制度をつくらなくても、調査官にできることです。現在のシステムの中でできることです。したがって、裁判官が全てをやらなきゃならないということでなく、現在のシステムの中でもできるというふうに考えております。

 証人尋問については、先ほど言ったように、必ずしも対質的、要するに当事者で主尋問、反対尋問という形でやる必要はない。

 最近の欧米、特にヨーロッパの状況としましては、尋問の方式、尋問という言葉は使わない、インタビューですね、コグニティブインタビュー、認知的手法というのを使って、少年だけではないんですけれども、基本的に、少年が自分の言いたいことを言う。言いたいことを言うというのは、事実に関しても少年に自由にしゃべらすというのが認知的手法です。これは非常に難しいことではあるんですけれども、認知的手法の専門家ならばそれができる。

 現在、恐らく警察からはイギリスに派遣されていると思うんですが、イギリスでは認知的手法で、警察の調べもそういう形でやってきている。警察はそうです。ところが、検察官はそういう訓練を受けていないんですね。残念ながらそれがないのが、現在の日本の検察官制度です。

 したがって、私は、日本の現在の検察官制度をそのままにした形で検察官が立ち会うのは反対である。一つは、検察官の立ち会いがもしどうしても必要ならば、ドイツの方式を参考にすべきである。ドイツでは、教育職、二年以上の経歴のある者が検察官として立ち会うことになっております。教育主義ですね。日本の保護主義、教育主義、これに合致するとすれば、こういう検察官を想定するということにならなければいけない。残念ながら、現在の日本の検察官はそうではない。

 したがって、検察官立ち会いについては、今のような制度改革を念頭に置かないと十分なものにならないということを強調しておきたいというふうに思います。

 少年刑の引き上げの問題ですが、これは立法事実が果たしてあるのか。先ほど、堺支部の判決がありました。確かに、そういう指摘はありました。しかし、それが全てではない。現実に、重い方に行っているという事実はあるんですけれども、しかし、これが引き上げられると、やはり重い方に引き上げられていくだろうということですね。

 長期と短期の幅が広がることによっていろいろ処遇上メリットがあるということが言われるんですが、それだったら短期を下げればいいということにもなるわけですね。なぜ長期だけを、長期を上げるのか。ここは大変に問題があるところです。

 成人事件とのバランス論も出されています。しかし、あくまでも、成人の事件と少年の事件は、先ほど言いましたように、違うんです。基本的には違うんです。これは少年法の分野だけではなくして、刑事裁判の領域に来たときにもこれを考えなければいけない。少年審判の場だけで保護主義、少年の非行原因、犯罪原因を考えるというのではなくして、刑事事件になって、刑事裁判になった場合でも、そのことを念頭に置いて裁判はしなければならない。

 ところが、現実を見てみますと、現在、例えば殺人を犯したということになって、争いがあって、検察官が逆送、刑事裁判所に送る、検察官が逆送して、それが起訴するという形になると、裁判員裁判になります。裁判員裁判では、裁判員の負担を考えて、非常に短期間で事を処理しなければならない。現在の裁判所の基本的な判断構造というのは、まさに犯罪事実だけに着目して、量刑においても犯罪事実に着目して考えるべきであって、生育歴だとかは関係ない、極端な言い方をしますと関係ないというのが裁判所のマニュアルにあるわけです。これでは少年事件はやれません。

 少年の生育歴を無視した形で少年事件を審理するというのは、先ほど言いましたように、犯罪原因、非行原因を探るということに反していることになる。これで裁判されて、少年が果たして納得するだろうか。納得しないまま刑を言い渡されると、その刑罰に対して不満だけが残って、更生の契機がなくなってしまう、そこが大変に問題のところです。

 少年院においては、今さまざまな形で処遇プログラムが考えられております。刑務所では、やはり労働をさせなきゃならないので、労働の間に処遇をするというのはなかなか難しいところがあります。そういう意味で、刑務所に入れるよりか、もし施設に入れる必要があるとすれば少年院ということになります。

 ただし、国際人権法の観点からいいますと、施設への送致というのはできるだけ避けるべきであるというのが、国際人権の考え方です。北京ルールズ、国連の最低基準規則の中にもそのことが書かれていますし、私がドイツで参加した家庭裁判所国際会議というのがありますけれども、その場でも決議として、施設収容はできるだけ避けなければならないということを決議で上げております。これが世界的なルールです。

 そういう点からすると、刑を重くして刑務所に入れるというのは、選択肢としては国際的にはあり得ないというふうに私は断言しておきます。

 以上です。(拍手)

江崎委員長 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

江崎委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小田原潔君。

小田原委員 自由民主党の小田原潔であります。

 本日は、質問をする機会をいただきまして、まことにありがとうございます。

 また、参考人の皆様、大変貴重なお話を頂戴いたしまして、感謝を申し上げます。

 特に、武参考人の、きょうのお話の中にはありませんでしたが、手記の中に、四人でとる食事も大変悲しかった、ぽっかりあいた中で、下の子がおいしいねと言うとそれだけで悲しくなった、大変胸の詰まる思いで読ませていただきました。

 坪井参考人の、少年のつらい立場を何とかして立ち直らせてあげたい、そのお気持ちもよく理解ができました。敬意を表します。

 この法案の審議の本質から少しずれるように聞こえるかもしれませんが、私自身は、検察を入れるか入れないか、どっちが事実認定がうまくいくかとか、量刑がやったことにふさわしいか、ほかの刑や罪との整合性がとれているかどうか、これを大人が議論することも大事なのでありましょうが、もっと大事なのは、犯してしまった罪はそれぞれが取り返しがつかないということ。あたかも、文化財にペンキで落書きをして、もとに戻すことはできないのと同じであります。

 特に、人に対してやったことは絶対にもとには戻らない、それがある量刑を重ねればチャラになるというものではないんだ、取り返しのつかないことをしたんだということをまずしっかりと認識してもらう。そして、反省し、そのとき乗り越えられなかった心の弱さを克服してこそ、その後、社会で生きていける人間になる、このことを教える、または気づかせることこそ更生でありましょう。

 自分のしでかしたことが、こんなにも無実の人を苦しめ、御家族を苦しめ、多くの社会人を自分にかかりっ切りにさせる。てんまつの重みから目をそらさずに受けとめて初めて目的が達成できるのではないかと思います。だからこそ、事実認定なくして反省なし、反省なくして更生なしというのが、押しなべて国民の思いであろうと思います。

 そこで、きょうは村井参考人にまずお伺いをしたいと思います。

 今回、拡大をしていく罪状の中には、窃盗、傷害、詐欺、恐喝、強制わいせつというものがあって、先生のお話ですと、少年の身体拘束事件の八割に当たると。これが悪いんだというように書かれているようにお見受けをいたしました。

 ただ、ここに挙げた一つ一つの罪状は、それぞれ常識を一線越えた強い意思がなければ犯さない罪であろうと思います。幾ら家庭環境が悪かった、ネグレクトされたといっても、だからといってこれほどひどいことをする引き金になるというのは、ぐれた気持ちがわからないでもないが、かなりの隔離があるように思います。

 また、これを犯した少年が、心の和んだ空間で自由に好きなことをしゃべることが本当に更生につながるのか。坪井参考人は、大人なんか全然信用できない、だからうそをつくと。確かに、そこまではよくわかります。しかし、全ての犯罪少年に一人一人弁護士の付添人をつけて、本当に望むべき結果が得られるのかどうか、治安が保たれるのかどうか、ここが私にはいま一つよくわかりません。思いを語ることには、都合のいい解釈やうそが入るように思えてなりません。

 坪井参考人が資料の中に入れてくださった神戸連続殺傷事件の十通の手紙の話がありました。これはこれで確かに大きな前進であるようにも思えます。しかし、その間、長きにわたり、この少年の語った特有な名前をさらにまねしたり憧れると称したりして、何人の模倣犯が生まれ、何人の無実の人たちがつらい目に巻き込まれたか。このことを思うと、本当に、一人一人の話を聞くことが、しかも、かわいがってかわいがって聞いてあげることが唯一無二の方法なのか、私にはよくわかりません。

 村井参考人に教えていただきたい。

 先ほど、万引きの事例を挙げました。きっとそうなんでしょう。詐欺、恐喝、強制わいせつで、自由に物を語らせて、やはりこの人は私の言うことを聞いてくれる大人だというふうに反省して、再犯しなくなったという事例があったのか、教えていただきたい。

村井参考人 現実に、どのような事件が再犯しないものであったかというのは、むしろ実務家の、私も一応実務家の端くれではありますけれども。

 例えば、詐欺等ではないんですが、かつてありましたコンクリート詰め女子高生殺害事件。この少年たちは刑務所に入りました。そのうちの一人、B少年と言っておりますが、この少年は、刑務所の中でコンピューターの技術を身につけまして、見事に更生しました。

 ところが、更生した後、社会へ出まして、自分が人殺しとみんなに言われているという妄想ができまして、そして脅迫、暴行事件。そのときの報道がすごかったですね、悪魔が帰ってきたと。それに、心配だったから、私は弁護人ではないんですが、ずっとその事件の相談を受けていたので、ずっと弁護人が相談を受けていてというか気にしていて、そして、どうもまずいというのでどこかへ引き取ろうというさなかに事件が起きたんですね。再犯といいますか、それが起きて、週刊誌でひどいことを書かれた。

 実はその少年は、社会に出てきて、非常に再生しようという気持ちでいったんですが、社会が、それは被害妄想もあります、自分の被害妄想もあるんですが、特に週刊誌によって物すごくたたかれた。それが再犯のきっかけになっているんですね。

 したがって、いろいろな事情で再犯をする少年もいます、恐喝の事件でもそうでしょうし。ですが、それが果たして少年自身の先ほどおっしゃったひどい性格等に依拠するのかどうか。必ずしもそうではないんですね。だから、そこをきちっと調べていかなければならない。再犯の事例についても、これは調査もしておりますけれども、再非行の可能性についてもありますけれども、それはいろいろな事情の中で、社会的な事情の中で起きていることである。そこを御理解いただきたいと思うんですね。

 具体的にどの事件だ、詐欺事件についてどうなんだと言われると、私は今、手持ちの資料がありません。

小田原委員 ありがとうございます。

 コンクリート殺人事件については、私も非常に大きな衝撃を受け、もう十年以上前だったでしょうか、それの綿密にルポルタージュになった文庫本が出たのを読みました。村井参考人は今、B少年の話をしましたが、あれには主犯格のA少年というのがいて、この子は、幼稚園のころからもう手がつけられなくて、花壇の花を根こそぎ全部抜いたりとか、親のところに行っても全く無気力で、手がつけられないまま、そういう少年に成長させてしまった、こういうことが書かれていたのを覚えています。

 B少年は、その審理の中に検察が入ったから再犯を起こしたのではないように今聞こえました。

 そこで、検察を入れた方が、もしくは入れない方が、事実認定ができるのか、ここについてお伺いしたいと思います。

 先ほど武参考人のお話の中に、引用として、民事調停をしたケースのお話をされました。十五歳の少女が十八歳の男性をみずから建物の中に誘い込み、そしてその場にあった布きれで口を塞いだら死んじゃった。こんなことを司法試験に合格した優秀な弁護士が信じて事実だというふうに認定する。これは常識的にはなかなかのみ込みづらいものがあります。結果的に、民事調停で全く逆の事実が判明した。男性の方が計画的に布も用意して殺害した。こっちの方が、普通の人が聞いてもそうだろうなというふうに思うのが人情でありましょう。

 さて、仮にこういうケースの付添人の方は、弁護士としての能力をどういうふうに思っているのか。もしくは、そういう結果をしでかし、二重にも三重にも遺族を苦しめたことにどういう責任をとることができるのか。また、その過程の中で、詰問調かどうかは私は知らない、しかし、たった一人の弁護士がその一人の少年の話を聞いて事実だと言う、その悪意のないリスクをカバーするためにも、第三者としての検察が事実認定をしていくということは、むしろ、事実認定をし、反省を促すことにつながるのではないか、このように思うのですが、検察よりも付添人の弁護士の方が事実認定にたけているというその根拠を、これは村井参考人でも坪井参考人でも結構なんですけれども、教えてください。

村井参考人 私は、検察官と弁護人とを比較して、弁護人の方が事実認定にたけているということは言っておりません。

 それから、今出された事案と逆の事案を一応出しておきますが、草加事件。

 草加事件においては、少年審判において少年の非行が認められて、民事裁判においてこれが覆されました。このときの有罪の、大きく有罪と言っておきますけれども、非行が認められた事実というのは、およそあり得ない、こんなことをどうして裁判官が信じるのという、血液型が、A型とB型が一緒になってAB型になったというような認定なんです。それはあり得ないでしょうというのが民事で認められたということです。

 一応、それだけです。

坪井参考人 ただいまおっしゃられた事案がどういうことだったのか、私には全くわかりません。

 ですが、まずは、一番申し上げたいのは捜査の問題です。

 子供たちの捜査をする警察官、そして検察官、その時点できちんと事実を明らかにしておくことがまず一番大事。この時点で子供の言い分をうのみにして警察官や検察官が書いて、調書をそのまま送ったのかもしれません。それはわかりません。

 もし警察官がきちっと、こんなことはあり得ないという事実を調べて、子供の話を調書にして裁判官に送っていたとしたら、審判廷で非合理的な弁解を子供がしたときに、裁判官はおかしいと思われるでしょう。幾ら付添人が、子供はこう言っているんですと言ったとしても、裁判官はきちっと捜査機関の資料を見ておられるわけですから、おかしいとおっしゃられたはずです。

 ですから、冤罪が起きるその危険は、審判廷というよりも、私は捜査機関のきちっとした捜査のあり方にあると思っています。

 さらに、裁判所において、付添人の仕事は、子供にうそを言わせることではありません。私どもは、決して子供を甘やかしもしません、子供に言いたい放題言わせもしません。しっかり語り合うということは物すごく大変なことなんです。そして、子供が自分の言葉を絞り出すようにして、腹の底から本当に自分の言葉を語るようになるまでは、本当に大人たちは大変な努力をしなきゃならないんです。

 そういう意味で、決して、子供たちに自由に言いたいことを言わす、うそを言わせている、それが付添人の仕事ではないということを御理解いただきたいというふうに思っております。私たちは、子供にうそを言わせたいと思っていません。真実を明らかにするために、子供に腹の底から本当のことを言わせようというふうに努力をしておりますので、それが付添人の仕事だということは御理解いただきたいというふうに思います。

小田原委員 坪井参考人の真摯なお仕事への姿勢、よくわかります。

 ただ、一番初めに小木曽参考人が、少年事案において、特に共犯というか複数の少年が同一の犯行にかかわった事案で、それぞれの少年の供述、事実認定が食い違うというお話がありました。きっとそういうこともいっぱいあるんだと思います。

 もしも坪井参考人のような、本当に真摯に心と心でぶつかる付添人ばかりであれば、少年同士の供述が食い違うことはないと思うんですけれども、どうしてこういうことが起こるのか、坪井参考人の御意見を頂戴したいと思います。

坪井参考人 共犯事件で子供たちの言い分が食い違うことは間々あります。そして、それは必ずしも誰かがうそをついていることばかりではないということもあります。事実というのはそこにいた人たちによって本当に違うんだ、記憶も違うんだということ、これは本当にあることです。ですので、そこに事実が一つしかないという視点でいくと、これはまたすごく大変なことになってしまうということは現実にあります。

 ただ、共犯者の場合、それでも、付添人同士あるいは警察官の捜査の中でも、事実が食い違っているということに関しては必死に調査をしていきます。一体何が本当なのかということはしていきます。

 食い違うということが起きてしまっているのは事実です。でも、それは大人の事件でも起きることであって、子供の事件だけに限られたことではありません。

 それでよろしいでしょうか。

小田原委員 ありがとうございます。

 大人の事件でも起きることだからこそ、検察が入った方が事実認定はしやすいのではないかという気もするのですけれども。

 最後に、村井参考人が、少年法で扱う事件というのは刑事事件じゃないというふうにおっしゃいました。きっとそうなんでしょう。しかし、特に家族を傷つけられたり失ったりした被害者には、それが刑事事件であろうがなかろうが、起こった事実は全く変わりがないわけであります。唯一、被害者の、また遺族の心が少しでも晴れるということがあるのだとすれば、本当に自分のやったことを真摯に受けとめ、それを乗り越えていく、一人真っ当な人間ができ上がったというその感動に接することができるのであれば、それがせめてもの心の救いではないかと思います。

 そこで、これまた言い方がぞんざいに聞こえるかもしれないですが、最後でありますので、どうか御容赦をいただきたいのですけれども、刑を軽くした方が、また取り調べを緩くして対話をした方が、窃盗、傷害、詐欺、恐喝、強制わいせつの再犯率が下がり、また更生率が上がるというのであれば、どんな格好でもいいですから、定量的に根拠を教えていただきたい。

 そういうものがあれば、いつかは、検察の方が高圧的で萎縮してというのが事実なのか、それとも、付添人が全人格をかけて理解できる大人であるということを示すことに異存は全くありませんが、どっちが事実認定にたけているかとか、どちらの方が少年が更生しやすいかというのは、定量的なデータで最後は示していただくしかないと思います。

 それについて、これもまた坪井参考人、村井参考人、何か参考になるものがあれば教えてください。

村井参考人 私が考えるところでは、少年の再非行率というのが最近上がっているということはありません。先ほどおっしゃったのは、むしろ、この法案によって再犯を抑えることができるのか、犯罪予防効果があるのかということを私なぞは疑問に思っているわけです。刑を上げることによって再非行なり犯罪が減るわけではない。現実の犯罪の状況というのは、このところずっと少年非行は減ってきております。凶悪犯罪は特にずっと減ってきているんですね。そういう事実を見ますと、この法案によって再犯を特に抑えるという効果は恐らくないだろう。刑罰の多寡ではないということです。

 よろしいでしょうか。

小田原委員 ありがとうございました。

 質問を終わります。

江崎委員長 次に、國重徹委員。

國重委員 公明党の國重徹でございます。

 予算委員会の分科会を除いて、初めて法務委員会で質問させていただきます。

 本日は、四名の参考人の皆様にここにお越しいただきまして、まずもって心より感謝と御礼を申し上げます。

 本日は少年法改正の質疑でございますけれども、私も議員になるまで弁護士として数多くの少年事件にかかわってまいりました。

 参考人の皆様に言うのはもう釈迦に説法だと思いますけれども、御存じのとおり、付添人の仕事は少年審判だけにとどまりません。非行や犯罪に走る少年というのは、家族関係が崩壊しているケースというのが少なくありません。そういったケースにおいては、親子間の中に入って家族関係を修復したりとか、また、退学の危険がある場合には学校とかけ合ったりもします。また、仕事を見つけるために奔走することもあります。被害者また遺族の方とお会いして、誠心誠意謝罪をして、被害弁償も進めます。また、被害者のお気持ち、遺族の方のお気持ちを少年に伝えて、少年の何が悪かったのか、どのようにして被害者に報いていくのか、そういった少年の反省を促していくこともします。

 つまり、付添人が少年の環境調整の多くを担っているというのが私の実感でございます。

 少ないかもしれませんけれども、私の経験上も、付添人がつくことによって、少年は変わります。大人とは、成人事件とは段違いに、少年というのは変わります。信頼できる大人が一人いれば、先ほど坪井参考人もおっしゃっていましたけれども、本気でぶつかる大人が一人いれば、少年は必ず変わると私は思っております。

 きょうは、本当に最愛の息子を亡くされて、私の地元でもあるところから武参考人にもお越しいただきました。

 私も、傷害致死事案の死亡事案を弁護士として担当したことがございます。遺族の方のその心情に比べれば、それはもう取るに足らないものかもしれませんけれども、ただ、少年自身も本当に打ちのめされておりました。壁に何度も頭をぶつけて、自分を本当に責めに責め抜いておりました。また、加害少年の両親も苦しみ抜いておりました。加害少年のお母さん、涙を流さない日はないというぐらい、毎日のように涙を流しておりました。

 その少年は、逆送されまして、実刑判決を受けて少年刑務所に入りました。私も、弁護士の仕事はそれで終わりだったんですけれども、その後も、目標を持たせてやりたいということで、少年刑務所に手紙も送りましたし、また、定期的に少年刑務所に会いにも行きました。

 何年かしまして少年が出所しまして、少年の仕事が決まるように私も尽力しましたし、こういったことを通して、少年は、遺族の方に対して一生かけて償っていかないといけないということで、今、就職して、御両親の働いている給料のお金とあわせて、ずっと毎月、被害者の方に被害弁償を継続して支払っております。

 少年の再犯防止、改善更生というのは、私は、少年本人のためのみならず、被害者また遺族の方々、ひいては社会のため、日本のためになるというふうに思っております。そういう点から、私は、今回の国選付添人制度の拡大というのは望ましいというふうに考えております。

 私と同じく弁護士として活動してきた坪井参考人にお伺いしますけれども、少年に付添人がつくメリットというのはどういう点にあるとお考えでしょうか。

坪井参考人 メリットにつきましても、今、議員が全て言っていただいたというふうに思っております。

 あと、もう一つ、もしつけ加えるのであれば、私が経験してきた子供たちが、先ほど申し上げたように、ひとりぼっちで、言葉を語ったことがない、その言葉を初めて代弁してくれる人に出会ったという、そこにおいては付添人の役割は非常に大きいというふうに思っています。自分の側で、自分の心を語ってくれる人がいる。言葉の持つ重みというのは大変大きく感じております。

國重委員 今、私は、付添人の立場からお話しさせていただきました。

 次に、武参考人にお伺いしたいんですけれども、その一方で、被害者、遺族の方々の心情とか被害回復というのは、当然これは大切にしないといけないことだと私も思っております。命を奪われた、これは戻ってこない、遺族の方がずっと一生傷を感じていく、そのお気持ちというのは本当に大切にしないといけないと思っております。その被害者、遺族のお気持ちを前にして、加害少年の立ち直りをどう支援していくのかということは、私たちがしっかりと考えないといけない問題だと思っております。

 先ほど武参考人は、付添人がつくということは少年側の人間が一人ふえるということなんだというふうにおっしゃられました。

 私も、至らないところは弁護士として活動する中でもたくさんあったと思いますけれども、ただ、被害者、遺族の方は、どうやって少しでもそれが被害回復できるんだろうかということで、本当に悩みながら、特にお亡くなりになったお母さんのところに行くと、土下座をして、どうやってこのお気持ちを伝えようかということは本当に悩み抜きました。

 武参考人は今、少年犯罪被害当事者の会の代表をされておりますけれども、被害回復における付添人の役割、また、付添人がつくことによって被害回復が何らかできる、こういうメリット、何かもしお感じになられることがありましたら教えていただきたいと思います。

 もちろん、武参考人の場合は、数ある少年事件の中でも死亡事案ですので、全くほかの少年事件とは質が違うと思うんですね。今回拡大の対象となる検察官の対象となっているような事件とは全く違うものですけれども、代表として、付添人がつくことによる被害回復の役割、またメリット、もし何か少しでもお感じになられていることがありましたら教えていただきたいと思います。

武参考人 とても難しい質問です。私の例もそうですし、会の人たちの例を見たときに、加害者に付添人がついたときにいい思いをしていないからです。とても難しい問題です。

 というのは、國重先生とか坪井先生のように、本当に正義を持ってこの加害者を立ち直らそうとすごい熱意のもとで付添人になるという人、そんな方ばかりだったらいいです。でも、私たちが経験したことは、加害者側についた付添人は、本当にこれが正義なのかなと思うようなことが多々ありました。

 例えば、入院費用を加害少年が払ったんだと審判廷で言います。それを払ってはいないんです。でも、被害者の方に確認をすることがないので、払っていたになるわけです。そのときに、付添人がもしそばにいたなら、本当に払ったのかと確認をすればいいわけです、幾ら払ったんだろうと。そういうことは多分していないと思います。最後まで、入院費を払った、誠意を見せたということで、それは情状で使われたと思います。その事件も保護処分でした。

 そして、うちの事件でもそうですが、加害少年は審判で言いました。武君は体ががっちりしていて、見るからにけんかが強そうで、自分は負けそうと思ったから、自分から手を出してやったんだと言うんです。とてもおかしいことを言っているんです。そのときに付添人がついているんです。それをちゃんと諭したり、そういうことがあるのかなみたいに諭すとか、何かを教えるということはしていないんです。

 私は、三年後に民事の時効が来ますので、仕方なく民事を起こしました。そのまま法廷で同じことを言ったんです。私は思いました。この少年は何も付添人から教わっていない、少年法のもとで何も教わっていないと思ったんです。

 人間として社会に、また、人として社会で生きるわけです。一番大事なことは何でしょうか。自分のやった罪、それをわかって、それを見詰めて、それを償うこと、やはりそれが大事なことだと思うんです。人として必要なことです。でも、それができていないんですね。

 だから、私は、付添人に願うのであれば、その願いはただ一つです。本当の正義を持って加害少年に付添人となってついていただきたい。ただ黒をグレーにしたり、逃げ道を教えたり、もちろん言葉で逃げなさいと教えることはありません。でも、それに近いようなことを言ったり、そこは想像ですけれども、調書を見てそう思うものですから。そういうことだけは避けていただきたいというのが願いです。

 それから、ある遺族の人が言いました。民事裁判を起こしたときに、加害少年についた弁護士さんがとてもよかった、それに私は救われたと言ったお母さんがおられました。それはどんなことかというと、民事裁判を起こしたときに、加害少年の付添人、それは民事でついた弁護士さんなんですが、いろいろな書類を進んで出してくれた。どうぞこれは使ってみてくださいと、進んで出してくれた弁護士さんがいたんです。ほとんど出しません、加害者側の弁護士は。弁護士さんは出さないことが多いのに、その方は進んで協力してくださった、それに自分は救われたとおっしゃったんです。そういう弁護士さんがふえていただきたいです。

 もう一つ言えば、被害者につく弁護士さんは少ないです。被害者のことを理解して、被害者の支援をする弁護士さんはまだまだ少なくて、まだまだ大きな声が上げられないんです。加害少年を保護しましょう、教育しましょう、そういう先生方の方が圧倒的に多いんです。加害者の人権、プライバシー、まだまだそれだけが強いんです。だから私たちは心細い思いをしているんです。

 突然事件に遭って、法律もわからない、知り合いの弁護士さんもいないとなると、被害者のことをやりましょうと。坪井先生たちのような団体、いいなと思いました。加害者にはあるんだと思ったんです。被害者にはありません。もちろん委員会はあるんですが、そうやって有志で熱意を持ってやる団体なんて、私はまだ聞いたことがないんです。

 だから、被害者のことをわかってくれる、応援してくれる本当の、私たちも異常に助けてほしいわけではないので、本当に必要なことを助けていただきたい。正義のある弁護士さんがふえてほしいです。

 ありがとうございました。

國重委員 武参考人、ありがとうございました。重い言葉、しっかりと受けとめました。ありがとうございます。

 私も弁護士として活動しておるときに、全てではありませんけれども、被害弁償、行って被害者の方と示談をしたりとか謝罪をさせていただいて、今おっしゃっていただいたように、後に被害者の方から、また御家族の方から感謝されたことも何度かございます。また、その被害者の方から、じゃ、次、國重弁護士、私の知り合いの事件をやってよということで、何年後かにお声をかけていただいたことも一件や二件ではございません。

 そのようにして、さまざまなケースはあるとは思います。今回、国選付添人の範囲拡大に伴って、私は、付添人のスキルの向上とか人間力の向上、これもまた弁護士会とかでしっかりと取り組んでいく必要があると考えております。

 次に、坪井参考人と村井参考人にお伺いしますけれども、武参考人のお話の中に、適正な事実認定というのは、被害の回復のみならず、加害少年の更生の大前提としても非常に重要なんだというふうにおっしゃられました。この適正な事実認定と加害少年の更生との関係、これについて思うところがあれば教えていただきたいと思います。

坪井参考人 適正な事実認定が加害少年の更生の大前提であるということに関しては、全く異論がございません。そのとおりです。

村井参考人 私も、先ほどの武さんの発言については賛成です。

 適正な事実、先ほどもお話ししましたけれども、事実をないがしろにしてはいけない。その事実をちゃんと少年に知らせる。その際に、少年が場合によってうそをつけば、付添人はやはりそれを正すという役割も当然あります。現にそれをやっているわけですね。その上で、真摯に自分の事件に向き合って、そして、その事実を認めたら、基本的には被害者に謝罪するということが出るわけです。

 だから、事実をきちっと認めないでやるというのはいけないことだというふうに思います。その意味では、更生に役立つために事実をきちっと認定するということの必要性に異論はありません。

國重委員 では、ちょっと時間の関係がありますので、本当は坪井参考人と村井参考人にお伺いしたかったんですけれども、どちらかにお伺いしようと思いますので、今から質問したいと思います。

 平成二十四年十月十五日に行われた法制審議会少年法部会の第一回の会議におきまして、東京家裁の嶋原文雄委員が、少年審判の事実認定に検察官が必要な場合もあるというようなことを述べられております。今うなずいていただいておりますけれども。

 具体的には、大要、ここで嶋原委員がどう言われているかといいますと、東京家裁においても否認事件が多数係属しております、最近多いのがオレオレ詐欺の否認で、これは詐欺罪です、否認の内容を法律的に整理するなどした結果、共犯者の証人尋問が必要だと判断される場合が多い、また、複数名での恐喝、傷害、そのときに関係者の供述がなかなか一致しないで、事案の真相はこうだというのを決めかねる、犯罪の成立と犯情の部分の両面で非常に難しい判断を迫られるということがあります、そのような場合には、やはり検察官的な立場の方に立ち会ってもらうことが必要なのではないか、必要性を強く感じていますというふうにあります。

 これについて、では、村井参考人、ここで検察官が必要だと言っておりますけれども、先ほど検察官は不要だというふうにおっしゃられましたが、この意見を聞いてどう思われるでしょうか。

村井参考人 今のような複雑な事件の場合に、確かに裁判官は事実認定に苦慮するだろうと思います。ただ、それが検察官が立ち会うことによって整理されるのかというと、必ずしも、これは民事の場合でもあり得るわけですから、事実の複雑なものは幾らでもあります。

 やはりそれを整理してやるのは裁判官の役割なわけですから、裁判官がきちっとする。その場合に、一人じゃ足りないので三人というようなシステム、法改正でできました合議制、私は必ずしも賛成ではないんですけれども、しかし、合議だと事実がより整理できるという考え方に基づいて国会がそういうシステムをつくられた。

 それ以上の形で、検察官が整理するよりか、先ほど言いました調査官がおります。裁判官を補佐するのは調査官でもあるので、調査官、付添人を通じて整理するということは十分にできるんじゃないかと私は考えております。

國重委員 では、最後の質問、一問よろしいでしょうか。

 最後に、武参考人にお伺いします。

 本当に遺族の方のお気持ちというのは苦しいと思います。私も、こういう少年事件とか犯罪ではないですけれども、私の四つ下の妹は十七歳で亡くなりました。突然、突発性のてんかんの発作でお風呂で倒れて溺死しました。そのときの両親の苦しみ、また、母親の悲しみの声。あんなに悲しい声を聞いたことはないというようなことでした。その後、母もパニック障害になりましたし、父も末期がんになりました。さまざま大変なこともありました。

 遺族の方というのは、本当にその立場にならないとわからない、同じような思いをした人じゃないと、その共感というのはなかなか難しいと思います。そこからしか見えない世界というのもあると思います。

 今回、少年法の改正ということですけれども、こういったこととはまた別に、何か被害者支援として今後望まれること、もちろん、私は弁護士出身ですし、保護主義の観点から、そういう少年の改善更生というものをしっかりやっていきたいと思っております。ただ、私は武さんのような経験をしたこともございませんので、武さんが思う被害者支援、今後このようなことがあればもっと被害者に優しい社会になるのにとか、被害者がもっと人生を強く生きていけるのにということがございましたら、最後に御意見をお伺いしたいと思います。

武参考人 私はいつも思うんです。私は十八年前、毎日死ぬことを考えました。大切に育てた息子を救えなかったからです。でも、私はこうやって十八年生きてこられたんです。

 なぜかなと振り返ったときに、私は、主人と一緒に声を上げました。それから、仲間を見つけました。それから、私たちの会を応援してくれる学生さんを見つけました。そして、私の近所の人たちが理解をしてくれたんですね。私は思いました。あれほど死のうと思っていた私も、生きる力があったんだと思ったんです。

 でも、私は、会の人たちを見て思うんです。四家族で始めた会が、今、三十家族を超えています。苦しそうに生きているんですね。私は、もう今、仲間を五人亡くしました。寿命からいっても短いんです。全てが事件のせいではありませんが、事件のことがすごく大きいと私は思っています。

 それで一番思うのは、まず理解が必要です。遺族は、孤立したり、そして偏見で見られたりするんですね。そうすると孤立してしまいます。まず理解が必要なんですね。犯罪被害に遭っただけで、ああ、被害に遭った人も悪かったんや、少年事件やからあれはけんかやと、すごくいろいろなことを言われてしまうんです。まずは犯罪被害者の現状をもっと知っていただきたいです。そして、やはりそれを一緒に見て、考えていただきたいです。

 私たちは、WILLという集会を一年に一回やっております。学生とやっているんですね。そういう被害者が行っている小さな会にもどうぞ足を運んでいただきたいです。そして、まず現状を見ていただいて、一緒に悩んでいただいたり考えていただいて、そしていろいろな専門の方々が何ができるか考えていただきたいんです。

 それが私は、本当に生きる力。みんなが地域に戻ったときに理解がある人ばかりではないんです。傷ついても、理解がなくても、振り払えるだけの力を持ってほしいんですね。それには、やはり皆さんのような議員の方々がまず理解してくださることはとても大事です。希望を持つんです。だから、地域で何かがあったときにはどうぞ参加をしていただきたいです。そういうことから始めていただけたら本当にいいなと思います。

 本当に、私たちは自分で頑張ります。力を出します。でも、その力を奪っているのが、もう一回振り返れば、この少年法なんです。この少年法をしっかり組み立てることで、私たちは本来の生きる力をもう一度持ち直すことができるんです。

 自分で生きていきます。私たちは生きていかなくてはいけないです。残された家族も生きていかなきゃいけないんですね。だから、少しでも、少しでもですけれども、力を入れなくても生きていけるように、私はそんな社会になってほしいなと思います。お願いします。

 ありがとうございました。

國重委員 ありがとうございました。以上で終了いたします。

 本日は、四名の参考人の皆様に貴重な御意見を賜りまして、改めて感謝申し上げます。ありがとうございました。

江崎委員長 次に、横路孝弘委員。

横路委員 四人の参考人の皆さんから貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。

 最近の日本で殺人事件はふえているのか減っているのか、少年の凶悪な事件はふえているのか減っているのかという世論調査を見ると、ふえているという回答が圧倒的に多いんですね。私も集まりでみんなにどうと聞いてみると、みんなふえていると言うんですよ。殺人事件は、たしか戦後最低を毎年この間記録して、千人を切ったはずです。

 なぜ、ではみんながそれをふえていると思うのかというと、やはりマスコミの報道ですよね。テレビや週刊誌を含めて、加害者の人も被害者の方もみんなその報道に翻弄されて、我々もその中に巻き込まれてしまっているという状況にあります。だから、本当に何が世論なのか、どういう選択が正しいのかということはやはりよく考えていかなければいけないなということを非常に強く感じております。

 今回は、貴重な機会でございますので、参考人の皆さん方にお伺いしたいというように思いますが、時間がありませんので、簡潔にお答えいただければと思います。

 最初に、坪井参考人に。

 法制審の議論をずっと見てみますと、やはり、一定程度凶悪な事件が存在して、現行法の枠の中では適切な科刑ができないと判断される事案が生じているから引き上げるんだ、こう言っておられるわけですね。現実に全体として凶悪事件がふえている状況にはありませんし、そうした事件がひっきりなしに生じているという状況でもありません。少年犯罪への対応で何か大きな弊害が今出ているのかというと、それで立ち行かないというふうな現状でもないと思うんですね。実際に少年犯罪についての科刑を見ても、上限に別に集中しているわけではないんですね。そういう状況の中で、この考え方についてはどのように受けとめられますか、坪井さん。

坪井参考人 私としては、現在の少年法の制度の中で何か科刑上問題が起きているというふうにはもちろん認識しておりませんし、処遇上、今の科刑では困るというふうには考えてはおりません。それほどの、例えば二十年というような刑を科さなければ処遇ができないというようなことが現場で考えられているということではないということは申し上げておきたいと思います。

横路委員 小木曽参考人にお伺いしますが、成人との罪刑の均衡、先ほども少し罪刑の均衡が求められているというお話がありました。それは、成人同士の犯罪の場合はもちろんそうだと思うんですね。しかし、それでは、少年の刑を緩和するというこの少年法の考え方と、どうその辺がマッチするのか。

 きょう午前中の法務大臣の御答弁でもやはり量刑の均衡ということを言われておられまして、つまり、妥当な量刑ができるように引き上げる、ケースによってこれが妥当だというような量刑を科すために引き上げるんだ、幅を広げて選択肢を広げたという議論をされていまして、基本にあるのはやはり均衡ということだと思うんですね。

 それと、少年法の方は刑の緩和措置をとっているわけでして、それは、よく言われるように、少年には、可塑性に富んでいる、教育可能性も高い、だから教育的な処遇が必要なんだ、人格が未熟な少年に成人と同じ責任を追及するというわけにはいかないんじゃないか、こういうようなことが言われておりますけれども、この均衡ということ、そして、今回の引き上げに関連して、同時に、少年法の精神というあたりをどのようにお考えでしょうか。

小木曽参考人 均衡と申しますのは、犯された罪と、それに対して科される刑罰、この均衡を言っているのでありまして、成人に科される刑罰と、少年に一般的に科される刑罰の間のその枠組みとして、成人に科される刑罰よりも少年に科される刑罰の方が緩和されているというのは、それはそのとおりでありまして、それは決して、均衡を失しているという問題ではありませんで、枠組みとして、成人に科す刑よりも緩和する、そういう仕組みになっているというわけです。

 罪刑の均衡と言っていますのは、正義というのは個別のものでありまして、それぞれの事件で犯された罪にどれだけ見合った刑罰を科すかということでありますので、今の制度で、強盗殺人というような場合に十年、ところが、共犯者がいたりして、その共犯者の方は数カ月先に生まれている、成人である、こっちの共犯者には重い刑罰を科すことができるけれども、しかし、数カ月後に生まれた共犯者、実はそっちの方が主犯であったというような場合には、それと同じだけの刑罰を科すことができないというような事態が生じているというのを、私は実務家ではありませんけれども、言われておりますので、そういう場合に均衡を失するのではないかというふうに考えます。

横路委員 小木曽委員にもう一つお尋ねしたいと思うんですけれども、不定期刑ですね、不定期刑の長期と短期というのがあります。法制審の議論で、裁判官の方が、まず、犯された行為から評価をして、刑事責任はどのようなものかというのを決めるんだ、これは長期刑だと。それから、もちろん、それに修正する要素があればそれにつけ加える。その上で、少年のいわば将来のことを考えて、あるいは改善更生の見込みというのも考えて短期刑というのを決めるんだ。こういうような説明がございました。

 それで、小木曽委員、委員をやっておられましたので、議論されていましたから御存じだと思うんですが、仮釈放の少年についての執行状況というのを資料をもらって見てみましたら、実は、平成十三年前後でもって非常に変わっているんですね。どういうふうに変わっているかといいますと、短期の経過前という事例が三〇%ぐらいあるんです、平成十三年より以前は。平成十三年というのは、いわゆる二〇〇〇年の改正があったときです。これからは、それが年間一人ぐらいずつになってしまって、減っているんですね。

 それから、もう一つは、長期の六〇%未満というのは、やはり二、三〇%ぐらい、それ以前はあるんですね。それ以後になると、それはもうずっとなくなっちゃうんです。そして、長期刑の八〇%以上というのと合わせると大体八割ぐらいというように、裁判官が、刑は、不定期刑で、長期と短期と決めてやっているんですけれども、実際の執行の方は、これは少年刑務所でもって判断して、いつ釈放するかというのを決めるんだろうと思うんですが、地方更生保護委員会が議論してやるんでしょう。それはまるで変わっちゃっているんですね。これはどういう流れだというように思われますか。法制審でたしか議論になっていたというふうに存じておりますが、もし御意見があればお伺いしたいと思います。

小木曽参考人 確かに、仮釈放を見ますと、高どまりをしているという議論があったと記憶しております。

 仕組みとしては、確かに、裁判所が長期と短期を決めて言い渡しまして、実際、行刑の現場で改善の進行状況を見ながら、地方更生保護委員会が処遇が終わる期間を決めるという仕組みになっているわけであります。

 個別の事案の判断になりますので、一つ一つの事案がどういうふうに判断されたから高どまりになったのかというのは、私はわかりませんけれども、法案が改正されたということで、刑が長い方に行くという、それがもしかすると、これだけの不定期刑が科されているのであれば、そのくらいは入っていないといけないというふうに行刑の現場で考えることがあるのかもしれないとは思います。

横路委員 村井参考人にも今の点をお伺いしたいと思うんですが、これは別に、犯罪が平成十三年以前と比べてさらに凶悪になったというわけでもなくて、むしろ昔の方が凶悪事件が多かったわけですので。それから、少年の質が変わってきたわけでも別にないと思うんですね。

 こういう変化というのは、非常に大きな変化なものですから、私はこの資料をもらってびっくりしたので、これはきちんと法務省と議論しなければいけない点だと思いますが、村井参考人、どのようにお考えでしょうか。

村井参考人 今、横路委員が御指摘のような状況になっております。これはなぜかというのはあれですが、ちょうど二〇〇〇年、法改正を契機としてそうなっているということは、やはりその法改正が影響しているだろうというように考えざるを得ないので、したがって、刑期を上げるということによる問題というのは、さらに、今回の法案についても同様な状況が出てくる可能性がある。

 ついでにちょっと言ってよろしいですか。

 仮釈放の状況について言いますと、成人の刑を上げるときにも、仮釈放をしやすくするために刑期を上げるんだということを言われました。しかし、現実はそうなっておりません。したがって、刑期を上げることによって仮釈放がふえるという状況は、恐らく今回の法案で刑を上げてもならないだろうというふうに思います。

 以上でございます。

横路委員 坪井参考人に、観護措置をとられた少年への国選の付添人制度の必要性ということで、現在は、少年の大体七〇%に弁護士の付添人が選任されているわけですね。

 特にお尋ねしたいのは虞犯少年の場合です。虞犯少年の場合も、調べてみましたら、その性格や環境に照らして、将来、罪を犯し、または刑罰法令に触れる行為をするおそれがある少年ということなんですが、平成二十四年でいいますと、少年審判が三百四十人になって、そのうち百二十八人が少年院送致あるいは児童自立支援施設送致処分になっているんですね。

 これは、全く今回も付添人の対象になっていません。この点について、どのようにお考えでしょうか。

 虞犯少年というのも、放置しておくと、その後どうなっていくのかというのは本当に大変心配なケースですから、しっかりやはりみんなでバックアップする必要があると思うんですが。どうぞ。

坪井参考人 国選付添人制度を実現しようという私たちの望みの中には、当然ながら、虞犯少年への国選付添人の実現も含まれております。

 虞犯少年というのは、これから本当に犯罪を犯してしまうかもしれないという、まさに今議員がおっしゃったとおり、非常に手厚い支援をしないと犯罪者になってしまうというおそれがある子で、付添人の選任の必要性というのは非常に高いと思っています。現実に、その中の四五%近くが施設処遇をされてしまっているという実情で、付添人がないまま処遇されているという現実から考えますれば、ここに付添人をきちんと国選でつける必要性というのは非常に高い。ただ、今回の議論においては、そこがすぽっと抜けてしまっております。

 そして、もう一つ考えられますのは、虞犯の少年の場合には、事実認定という問題がないわけです。非行事実というはっきりしたものがありません、おそれですから。そうすると、そこには検察官が関与する余地がないのです。今の法制度の中で、虞犯少年への国選付添人制度の実現ということになりますと、検察官関与の、立ち会いの余地のない国選付添人制度をそこで想定しなければならないということになって、恐らく、そのあたりは一つの、今回法案に上がらなかった理由ではないかなと私は考えております。

 財務省などの予算のなさというふうなこともおっしゃっていると思いますが、三百件のために予算が足りない云々という話でもないだろうというふうに思っておりますので、一番大きいのはそこなのではないかというふうに実は思っております。

横路委員 次に、村井参考人に、基本的なことなんですが、少年審判で何が必要なのかということです。

 もちろん、今まで議論されたように、非行事実の認定や保護処分の必要性の判断がまず適正に行われるということが第一ですね。しかし、それと同時に、家庭や学校や職場など、少年を取り巻く環境がどうなっているのか、それとどう調整するのか。例えば、子供が退学と言われているときに学校とどう調整するかというふうなことなど、やはりそういう仕事が非常に大事だと思うんですね。それはなかなか調査官はそこまで学校と交渉できませんから、これはやはり付添人の仕事でしょう。

 それから、少年の多くは家庭環境も悪く、さっきお話があったように、家庭で虐待をされたり学校でいじめに遭っているというような経験をしている者も多いわけで、非行行為や犯罪と同時に、少年の生育歴や人格など、やはり全体的に把握するということがどうしても必要になってくるわけですね。

 そして、一体どう理解をし、どう処遇をしたらいいのかということだと思うんですが、しかし、ある元裁判官の、最近新聞でインタビューに答えている記事を見たら、最近は最高裁も効率的な処理を求めるようになって、一人一人のニーズに合った措置を検討するという本来の少年法の理念から、どうも非行少年の行為の内容を重視して、それに見合う処分になるという発想で、そこだけに力が入っていると。そこだけというのは困るんですよね、だけというのは。

 いよいよ凶悪事件も減ってきましたし、私も少年刑務所や少年鑑別所を訪問してみて、入所定員よりもはるかに少ない人数に今なっています、少年院の方も、少年鑑別所の方も。ですから、ある意味でいうと、こういうときこそ少年法の理念に基づいた少年の処遇ということが可能だというように思うんですけれども、最近の状況について、村井参考人、どのようにお考えでしょうか。

村井参考人 今、横路議員が御指摘のことについては全面的に私は賛成でして、現在の状況といいますか、そもそも少年に対して何をする必要があるか。まさに地域との関係で、地域にどのようなリソース、少年を受け入れるようなものがあるかということをきちっと探って、それを提供するというのが実は調査官の役割だったわけですね。かつてはそういう形で、調査官や保護観察官もいるわけですが、それぞれにそういうリソースを持っていたんですが、それをちゃんと適用するというのがなかなか、調査をすること自体が難しくなってきて、リソースが開拓できなくなってきている。そういうのをきちっと充実させていかないと、少年法の理念に沿った処遇というのはできないと思うんですね。

 したがって、調査官の技法を、調査官を充実させるということとあわせて、実は裁判官も専門家でないんですよ、日本の場合には。家庭裁判所の裁判官は、できるだけ民事に移りたいとか、要するに家庭裁判所から抜け出すということを考えている。全てではないです、ごく少数の、少年事件に物すごく情熱を持っている裁判官もおります。この裁判官は、しかし、少年事件だけにかかわらせてくれという要求をすると、やめなさいという話になるというのが現実です。そういうような状況ではいけないので、裁判官も少年事件についての専門家でなければいけない。

 そういう意味で、そういう課題を持って、そうすればリソースも調べられるし、十分な措置ができるはずだと思っております。

横路委員 最後に、武参考人にお話を申し上げます。

 長い間、息子さんを亡くされて、声を非常に上げ続けてこられたということ、そして、厳罰を求めるというお気持ちはよくわかります。

 さっきお話があったように、その背景の一つは、やはり被害者の権利保護が余りにもないがしろにされてきたということにもあると思うんですね。加害少年のプライバシー保護が言われる反面、さっきあったように、事件の正確な情報、捜査や審判の進展がどうなっているのか、処分の内容が伝えられていなかったなんていうケースも何かあるようでございました。そういうことだとか、あるいは加害者に対する対応の中でも、被害者の皆さんの悲しみや苦しみが癒やされるということのないまま放置されているというようなケースなどもあったように思っています。

 したがって、一つはやはり被害者の皆さん方の権利保障が大事ですし、加害少年の方は、ともかく被害者や遺族の皆さんとの関係から目を背けずに向き合うことが非常に子供にとっても必要で、一生それは背負っていかなくてはいけない、先ほど坪井参考人からもお話があったとおりです。そのためのサポートも必要だと思うんですね。

 結局、加害者、被害者双方へのさまざまなサポートと、少年審判手続に関する関係者、裁判官も弁護士も検察官もやはり専門的なトレーニングが必要かなということを、皆さんのお話を聞いて非常に感じました。やはり児童心理などに関するプログラムや研修などをしっかりやっていくということが必要じゃないかと思います。

 貴重ないろいろな御意見、ありがとうございました。

 終わります。

江崎委員長 次に、西田譲委員。

西田委員 維新の会の西田譲と申します。

 どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、本日は、貴重なお時間の中で法務委員会に御出席いただき、御意見を頂戴することができました。また、委員の質問に対しても大変丁寧に御答弁をいただいておりますことを、私からも感謝と御礼を申し上げる次第でございます。本当にありがとうございます。

 それでは、質問に入らせていただきたいと思います。

 まず、坪井参考人と村井参考人にお伺いをさせていただきたいと思います。

 事実認定についての検察官関与というものが導入されて一定の期間が経過したわけでございますけれども、この間、逆に、この検察官関与が導入されたことによる明らかな欠陥、少年審判における欠陥といったものが評価されているのかという点について、御意見をお伺いできればと思います。よろしくお願いいたします。

村井参考人 一つは、私が、検察官立ち会いをした事件について、私が立ち会ったんじゃないんですが、立ち会った弁護人に聞いた、余り数多くはないんですけれども、聞いた事例があります。そうすると、これは実は、それほど争いがない事件であっても、かなり検察官が強権的、糾問的に尋問されるので、先ほど、萎縮するはずはないというふうに武さんはおっしゃいましたけれども、やはり少年はなかなかしゃべれないというような状況が出てきたというように、その事件については言われております。

 それから、現実的に、法的な意味で問題になったのは、二つ事件がありますけれども、大阪の家裁所長の襲撃事件、これが、検察官が立ち会って抗告したためにひっくり返ったというんですね。その意味では、検察官立ち会いの、検察官の立場からいえば効果があったということになるんですが、付添人の観点からいうと大変問題があって、最終的には、しかも無罪になっているというケースですね。

 それから、御殿場事件、同様の抗告、再抗告というのが繰り返された事件です。

 こういう形で、少年事件というのは、刑事事件の場合もそうですけれども、できるだけ早く、早期に解決して、早期に対応をするということが必要なんです。そうでないと、少年の一年というのは、我々にとっては、年寄りにとっては十年以上という形になるでしょうから、その一年をやはり大事にしなきゃならない。それこそ一日でも大事にしなきゃならない。それを早期に対応できないという状況ができるというのは、それ自体が大変な問題なんですね。抗告を繰り返すというか、検察官が抗告することによって、そういう事態が生じた事件がございます。

 以上でございます。

西田委員 ありがとうございます。

 先ほど坪井参考人の意見の中で、実際の少年審判の現場で、裁判官が説教臭くなったとか、少年の声を余り聞かなくなっているというようなことをおっしゃいました。現場がそういう状況になっているのは、これは大変だというふうに印象を持ったわけでございますけれども、そこについて、もう少しお話をいただければと思います。

坪井参考人 これは恐らく、二〇〇〇年改正の後、裁判官とお話をしていて出てきたこと、どの裁判官とは申し上げませんが、家庭裁判所の裁判官とお話をしていて。法が改正された、さまざまな理由でですが、その成果をある程度見せなければならないのだということをおっしゃっていらっしゃいました。

 やはり、御自分たちがそうしたいかどうかは別としても、少年に内省を迫れと書いてある、あるいは、事実認定を適正化するために検察官が来るかもしれない。検察官が来ないで済ませるためには、自分たちが厳しく、糾問的にやって事実を認定しなければならないという責任感を持つというような、さまざまなことがあるんだと思います。あるいは逆送が非常に多くなる。その逆送した後の審判廷、審判が吟味されることが出てくる。そのためには、刑事裁判にたえられるようにきちっとここで厳しくしておかなければと、いろいろな思惑がおありなんだろうとは思います。

 また、先ほどからありますように、少年審判に精通していない非常に若い裁判官が実は家庭裁判所にはいらっしゃることが多いんですが、そうした方たちは非常にエリートで、申しわけないけれども、本当に苦しんだ子供たちの気持ちを御理解になっていらっしゃらない裁判官も突然裁判官としていらっしゃる。そうすると、申しわけないけれども、その方たちが、子供の話を聞くというのがどういうことかおわかりになっていないという場合も多々見られるという状況もあります。

 さまざまなことが相まって、私がかつて二十年前に、裁判官が子供たちに最後、涙を流させるまでに迫っていく、そういう感動的な審判廷というのが見られなくなっているというのが現実なんです。

 よろしいでしょうか。

西田委員 ありがとうございました。貴重な御意見を頂戴しているというふうに思います。

 次の質問でございますけれども、本当に連続して申しわけないですが、坪井参考人と村井参考人にお伺いをしたいと思います。

 先ほどの御意見の中で、国際関係について触れられたところがありました。私の認識ですと、我が国は先進諸国の中でも、少年犯罪もしくは非行の発生率というものは恐らく物すごく低い状況にあるわけでありましょうし、国際機関から勧告を受けなければならないほど子供の権利が侵害をされているような状況には決してないというふうに思います。

 世界を見渡せば、確かに、生きることすらできない、生存の権利すら確保されていないような国、国民の権利がまだ未発達で、未整備で、生成途中の国もたくさんあるわけでございまして、そういった国とは我が国は全く違いまして、憲法を初めとして、国民の自由がこれだけしっかりと確保された国は先進国の中でもそうはないというふうに思っているわけでございます。

 一方で、国際機関からは、少年審判の件に関しては、自由の拘束について最低限であるべきで、日本もそうであれといったような、ちょっと説教じみた勧告を受けているという御紹介がございましたけれども、ほかの国に比べて我が国は少年審判、少年の事件に関して子供の権利がないがしろにされているといった状況、これは国際的に比較してそうと言えるのかということについて、御質問させていただきたいと思います。

坪井参考人 国連の子どもの権利委員会の審議というものは、私も日弁連の代表として何度か委員会に参加をして、政府報告がありまして、さらに、政府報告に対するNGO報告というものを各団体が出す。それを聞いた国際組織の委員の方々が、その国にとって何がもっとさらに子供の権利を推進するために必要かということを判断されて、そして勧告を出されていくのです。レベルが同じだから、こちらには言う、言わないというのではなくて、当該国にとって。かつての日本の少年法、例えば、国連に対しても政府報告というのが五年に一度されているんですが、一番最初の政府報告においては、日本の少年法は、要するに、検察官関与もない、裁判官が対話によって子供たちの言葉を引き出しという、まさに私が先ほど申し上げた少年法であることを政府は誇り高く報告しておったわけですね。

 そうした少年法であったのに、五年後の報告のときに、そこに検察官が関与する、あるいは、逆送事件において十四歳、十五歳の子でも刑事裁判に送られるという改正が起きた。それを見て、やはりそれはおかしいじゃないか、なぜそのようなことをしたのか、それは国際準則にも違反しているよということを勧告されているということなんです。

 決してほかの国に劣っているからという意味ではないし、よりよいということを常に国連の子どもの権利委員会は目指していますし、また、それはお説教ではなくて、あくまで対話の中なんですね。それが国連の現場のすごさだと思いますが、常に、委員と政府関係者、NGOが対話の中で、皆さんどうしましょうかという形の中で出てくる言葉なので、決して何か批判をされたとかいうことではない、それを受けとめて私たちはどうしましょうかと考えていく、その一助にしてほしいというあらわれだと思って受けとめていただければというふうに思っております。

村井参考人 今の坪井さんのでほぼ完了しているんですけれども、私は先ほど、家庭裁判所裁判官、少年裁判所裁判官の国際会議に出て、そこで決議があると言いましたけれども、この中で最も批判されたのは、決して、いわゆる発展途上国ではなくて、アメリカなんです。アメリカの少年司法というのが問題があるということで批判されています。特に、少年に対する死刑を科すのみならず執行している、この点では日本も同様であるということで批判されるわけです。その意味では、議員がおっしゃったように、発展途上国だから問題だということではないんですね。

 もう一つつけ加えますと、ヨーロッパ人権裁判所で少年問題で提訴される率というのは、イギリスが極めて高い。人権裁判所から勧告を受ける。日本の場合には、ヨーロッパ人権裁判所にオブザーバーという形でしか参加しておりませんので、直接そういうことはないんですが、実際上、個人通報という形が制度化されれば、そういう事態も生ずる可能性もあります。

 以上です。

西田委員 ありがとうございます。

 続きまして、武参考人にお伺いをさせていただきたいと思います。

 御意見の中でも、付添人である弁護士の方々が殊さら少年の立場、少年の立場と言う中にあって、時として本当に正義にかなっているのかと疑問を持たれるようなことがおありだというようなことをおっしゃいました。

 それは、本来の少年審判、つまり、少年の健全育成、もしくは更生改善を期すという少年法の趣旨がなかなか浸透していないといいますか、少年法の趣旨に沿っていない付添人の方々もこれまで非常に多く見られたという背景があってのことでございましょうか。

武参考人 私たちが自分たちの子供の加害者についている弁護士を見たときに、やはりそういう印象を受けました。私たちは、本当にその加害少年のことを考えていないのではないかとまで思われるような、そういうことを経験しておりますので。そういうことです。ありがとうございます。

西田委員 ちょっとこれは法解釈的なことでございますので、小木曽参考人と村井参考人の御意見を頂戴したいと思うんです。

 少年法は、当然これは少年の健全な育成、そして更生改善という大きな大義があるわけでございますけれども、一方で、先ほど村井参考人がおっしゃったとおり、我が国は死刑があり得る、まして無期もあり得るということで、必ずしも我が国の少年法というのは、全ての少年が健全に育成され得る、あるいは更生改善され得るという前提には立っていないんじゃないかというふうに思うのでございますけれども、いかがお考えでございましょうか。

小木曽参考人 まず、少年には保護処分が科される、それでいけない場合には刑事処分が科されるということになっております。

 そこで、一番初めに私が申しましたように、刑事罰を科すというのはどういう意味があるんだろうかということになるわけですけれども、これはいろいろな考え方がございます。特に、少年の場合には、恐らくそれによって反省を促すという意味が込められているわけでありまして、実際に行刑の現場でも教育効果があるような処遇がされるわけですね。

 ですから、刑罰を科すから少年をとにかく刑務所に入れて放っておけばいいんだとか、厳しくむちを打つように扱いさえすればいいんだという考え方が全体としてとられているというふうには私は理解しておりません。

村井参考人 少年法で、先ほど出ましたけれども、刑の緩和措置というのをやっているんですね。刑事裁判の場合でも刑は緩和しなければならぬ、これは少年法の精神を体現しているものです。

 死刑について問題があるんですね。

 死刑もできるだけ無期刑に緩和しなければならないということになっておりますけれども、先ほど言いましたように、やはり少年の死刑だけは避けるべきだというのが国際的な動向であるし、死刑の問題を議論するとこれはまたちょっと離れますのであれですけれども、まさに死刑は更生改善というのとは違う理念ですので、やはり少年法の理念からすると、死刑を存置するというのは問題があるというふうに考えます。

西田委員 ありがとうございます。

 次の質問に移りたいと思います。

 実は、きょう午前中、谷垣大臣とも質問のやりとりをさせていただいて、小木曽参考人から意見を述べていただいたのと同じような趣旨で、例えば、今回のこの改正は、無期の緩和に関しては下限を上げていないわけでございますし、これまでは処断刑の中でしか長期、短期を定められなかったものを、処断刑を下回る形での刑というものをつくったわけでございますね。だから、そういった意味では、厳罰化、厳罰化と言われるんですけれども、厳罰化という印象は私も決して持っていないということを大臣とも確認をし合ったところでございます。

 しかし、実際、新聞各紙を見ると、必ず少年法厳罰化という見出しが出るんですね。先ほど、マスコミの誘導甚だしいという指摘もありましたけれども、これも一つの大きなミスリードになって、違った世論が形成されてしまうんじゃなかろうかと思うんですね。

 そこで、小木曽参考人にぜひお伺いしたいんですけれども、厳罰化じゃないんだぞということを、やはりきちんと明確に、どう広めるべきなんだろうかというふうに、何か御意見がございましたらお伺いしたいなと思います。

小木曽参考人 ありがとうございます。

 それで、私も先ほど、一番初めの十五分の中で、多分三回ほどそれを繰り返したように思うんですけれども、それはそういう意図があったわけであります。ですから、先生方にもぜひ、そのようなミスリーディングな報道に接しましたならば、そうではないんだということを言っていただきたいと思います。

 私のところにもたまに電話がかかってきまして、いろいろ聞かれます。そこで言うんですけれども、記事になっているのを見ると、そんなこと言っていないことが載っているんですね。ですから、ぜひ正しく伝えるように、私どもも努力したいなとは思います。

西田委員 ありがとうございます。我々もそれはしっかりと留意をしていきたいというふうに思います。

 最後の質問でございます。武参考人にお伺いをいたします。

 今回の改正の内容とは直接の関連はないのでございますけれども、被害者の方々に対しても、いわゆる国費での弁護士の援助というものの必要性というものは、もう長く言われていることであろうかと思います。そういったことに関して、武参考人の御意見をお伺いさせていただきたいと思います。

武参考人 私たちもずっとそれを望んできました。ただ、私はやはり、そこでとても心配なことが出てくるんですね。

 といいますのは、今まで弁護士さんの仕事というのは、加害者側につく場合が多いわけです。被害者につくといえば、民事裁判のときが多いわけです。だったら、弁護士の方たちが被害者のことをもっと理解するようなことを、そういう勉強会というのか、もっと理解をするようになってから国選でそういう理解のある弁護士さんがつくようになってもらいたいです。

 今のままでは、理解のないまま、ただ被害者につくというだけでは、やはり被害者の思いがちゃんと伝わらなかったり、また傷ついたり、いろいろなことが起こってくると思うので、しっかりと被害者のことを理解した弁護士さんがまずふえてほしいです。

 そして、国選弁護人制度というのは、被害者にもつくっていただきたいです。先生方、どうぞ、それをぜひ、この何年かのうちにつくってください。お願いします。

西田委員 ありがとうございました。

 大変丁寧に質問に答えていただきましたことを御礼申し上げまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

江崎委員長 次に、椎名毅委員。

椎名委員 結いの党の椎名毅でございます。

 本日、四名の参考人の方、非常に御多忙の中、お時間をつくっていただきまして、貴重なお話を頂戴賜りましたことを、本当に感謝申し上げたいというふうに思います。

 特に、武参考人の、被害を受けた後の苦悩というか葛藤というか、やはり心を非常に打ちましたし、改めて被害者保護ということの大事さというものについて痛感をさせていただきますとともに、実務家として現場を常に知らなければならないということを改めて自分自身も肝に銘じさせていただきました。

 さらには坪井参考人に、私も弁護士なんですけれども、私自身は企業法務をずっとやってきていて、少年事件もやったことがなければ、刑事事件もほとんどやったことがないんですけれども、実務に携わっている、そして、犯罪を犯した少年の更生に向けてさまざま努力されている現場の声ということで、非常に私自身も勉強させていただきましたし、本当にとうとい努力をされていらっしゃるんだなということを改めて感じさせていただきました。

 こういった少年法というテーマは非常に難しいテーマですけれども、ちょっと幾つか伺ってまいりたいというふうに思います。

 この少年法の今回の改正、国選付添人、すなわち、要は付添人がついている事件に国費をつけていくという意味ですけれども、これを拡大するということは、日弁連を含めて弁護士会側の悲願なんだというふうに僕自身も理解しています。そうなんですけれども、それと検察官関与事件を合わせて連動して拡大させるということについて僕はすごく違和感を感じていて、この法案の話を一番最初に聞いたときからずっと腹落ちをしていないんですね。

 私自身も司法試験を受けたときに、刑事政策をやっていて少年法の話を勉強したんですけれども、私が司法試験を受けたのは一九九九年、ちょうど最後の法律選択があったときですけれども、このときまでは、要は二〇〇〇年改正がなかったので、検察官が関与しているという事実は私が勉強したときはなかったわけですけれども、それから十五年たって検察官関与事件というものが制度としてでき上がって、さらにこれがカバレッジが広くなるということで、このカバレッジという意味でいうと、正確に申し上げますと、約八割ぐらいということなんですけれども、国選付添人、一般保護事件のうち観護措置決定を受けた少年終局事件のうちの約八割ぐらいということで、結構なカバレッジに広がるということで、やはり、どうしても刑事処分に類似してくるように聞こえてしまうんですね。

 法制審の委員だった小木曽先生に伺いたいんですけれども、やはり法制審の中でも、国選付添人の範囲を広げていくということとセットで、検察官関与事件の範囲を連動させて合わせていくというような議論に、割とすっとそういう結論に落ちついているように読めたんですけれども、しかし、いや、検察官が関与することによって事実認定が本当に適正化するのかということについては少し疑問が拭えないんですね。

 武参考人のおっしゃっていたことは本当に重たいと思っていますけれども、やはり、先ほど國重委員もおっしゃっていましたけれども、法制審の中で出てきた家庭裁判所の方の御意見というのは、オレオレ詐欺とか複数名の恐喝詐欺とかなんですね。こういったところについて何か事実認定を適正化しなきゃいけないから、もっとカバレッジを広げたいという話を言っていたんですけれども、オレオレ詐欺は確かに新しい事件ですが、マルチの詐欺とか、昔から似たような事件があるわけですよ。複数名の恐喝詐欺というのは昔からあるんですね。にもかかわらず、それを突然ここで言ってくるというのは、ちょっと私自身は腹落ちしていないんです。

 何かやはり、裁判官の能力だったり、付添人の能力だったりという能力の問題のような気がしてならないんですね、制度の問題ではなく。そういったところについてちょっと御意見をいただければというふうに思います。

小木曽参考人 この話は、まず一番初めに、山形のマット殺人事件なんというのがありまして、現行法の、先ほど申しましたように、裁判官の役割が、一手に三人分をやらなければいけない、非常に大変である、事実認定も正しくできない場合があるということで、検察官が関与するべきではないかというようなことにまずなって、検察官が入るのであれば付添人も義務的に入れようということにまずなりました。

 次いで、付添人の範囲を、それ以外の範囲についても十分に少年の言い分を聞くべき事案があるからということで、付添人の範囲をさらに裁量的に広げるということになりまして、それで今回の話になっているわけです。

 これは、法制審議会の部会の議論でも、付添人の範囲が広がるから必ずそこに検察官が関与しなければいけないという議論にはなっていなかったはずでありまして、むしろそうではないという話になったはずであります。

 あくまでもこれは、裁判所が検察官にも事実を聞いてみたい、先ほど申しましたように、真実の像に多面から光を当てるという意味で、いろいろな立場の人々から意見を聞いてみたいということを望んだときに、それができるような仕組みにしておく必要があるだろうということで入ったものであると理解しております。ですから、付添人が広がるのであれば必ず検察官が関与しなければいけないという議論ではなかったはずであります。

 では、どの範囲でそれを必要な場合に入れるのがいいのかということになったときに、税金を使って付添人をつけるということとの関係で、税金を使って付添人をつけました、裁判官は、ではその事件で検察官にも意見を聞いてみたいなと思うけれども、これはそういう事件があるかないかという評価の差はあるところですけれども、ということになったときに、税金でもって付添人はついているけれども検察官には聞くことができないということになるのはよくないのではないかというので、その範囲は同じにするのがいいのではないか、そういう議論の流れであったというふうに記憶しております。

椎名委員 ありがとうございます。

 確かに別個の問題ではあるけれども政策的に一致をさせよう、そういう表現だったと思います。

 先ほど谷垣大臣にも私は申し上げたんですけれども、どうもやはりいいとこ取りのような気がしてならなくて、ある側面では職権主義だからと言って、ある側面では検察官の事実認定の能力をかりたいということを言っていて、制度と、当初、二〇〇〇年改正以前、検察官関与をする前に少年法の理念として持っていた保護主義、それから、要するに職権主義、そして改善更生、社会復帰を目的としているというこの大きな理念からは、やはりずれてきているような気がしてならないんですけれども、そういったところについて、坪井参考人と村井参考人の御意見をいただきたいというふうに思います。

 先ほど、小木曽参考人は、一番最初に、あくまでも裁量で付する、裁量で検察官の関与ができる範囲を広げるという、今までの運用として実数もそんなに少なくないというような話をおっしゃっておりましたし、事実という像に多面的な光を当てると今もおっしゃっていただきましたけれども、ということをおっしゃっていただいたので、全体としてこういう制度をつくるということは望ましいとおっしゃっていて、私自身も言っていることの意味は理解をしていて、それは納得しようとしているんですけれども、なかなかやはり腹落ちをしないので、ぜひお二人の御意見をいただければというふうに思います。

坪井参考人 椎名議員の腹に落ちないという気持ちは、全く同じなので、私も全くわかりません、なぜこういうふうになってしまうのか。ですから、政策的な配慮としか言いようがない、もうそれしかないんだろうと思っています。理論的には全く連動すべきものではないと思っています。

 そして、事実に多面的に光を当てると言うのであれば、刑事裁判以上に少年事件は多数の人がかかわります。例えば、鑑別所の技官、それから家庭裁判所の調査官、そして裁判官、それも合議もあり得るし、そして付添人。それから、現在は被害者意見聴取があります。被害者の方の意見も伺います。調査官も被害者の方から意見を伺います。そうした意味でいえば、刑事裁判以上に多面的な光が当たっている。

 そして、捜査側、警察、検察からは、全ての書面が裁判官のもとに届いています。刑事裁判であれば、これは弁護人がチェックをしますので、見られないものも全部裁判官は見られるのです。だから、そういう意味で、ここに検察官が入らなければ多面的な光が当たらないというふうには思えません。

 おっしゃっているとおり、やはり、裁判官自身、あるいは付添人もそうかもしれませんけれども、できれば楽をしたいというところへ逃げ込んでいるのかもしれないなと。それがこういうふうに、子供たちを犠牲にした形の制度改善を提言するところへ来てしまっているのではないかというふうに思えてなりません。

村井参考人 おっしゃるところは、まさに賛成なんです。私も、なぜ検察官立ち会いをセットにしなきゃならないかというのは不思議なんです。

 もともと弁護士会などで主張していたのは、現在、二十二条の二と二十二条の三がありますけれども、二十二条の三の二項の拡大でして、だから、純粋な付添人だけの拡大。ところが、実際上この法案の中では、二十二条の二の一項の拡大になったわけですね。もちろん必然的に二十二条の三の方も拡大になるんですけれども、それが、だから、私なぞからいえば、付添人の国選を全面化するという主張とのかかわりでいうと本末転倒の形になったと。なぜそうなったかということについては、やはり被害者からの要求なぞがあったということのようですけれども、必ずしも、先ほどから私は言っていますけれども、検察官がかかわることによって少年審判というものがよくなるというのではないだろうというふうに思います。

 検察官の意見を聞きたいというふうに裁判所がおっしゃるというのを、ちょっとよくわからないんですね。もし、捜査の状況ならば、先ほど坪井さんも言いましたけれども、捜査資料は全部行っている。そのほかの人の意見というのは、むしろ、ソーシャルワーカーだとか、ほかの国の状況を見ますと、多数の人の意見で少年審判が運用されています。ソーシャルワーカー、心理学者、そういう人たちの意見を聞くという必要性はあるでしょうけれども、検察官は、残念ながら、私は、ちょっと古いですけれども、十年以上前に調査したときに、検察官の意見、審判における、審判に出す意見ですけれども、その意見は、警察の意見のいわばなぞりのようなものだったんです。そこが、先ほど来言っているように、専門性がないということを言っているんですけれども、今のような状況で検察官の意見を聞いても余り意味がないというふうに思います。

椎名委員 ありがとうございます。

 他方で、被害者の保護というのは物すごく、本当に重要でして、被害者の保護というのは、刑事手続の中で常に置き去りにされてきている部分がやはりあるというふうに私自身も思っています。これは、刑事手続そのもの、ここで言っている刑事手続というのは、済みません、少年手続を含んで申し上げていますけれども、常に置き去りにされてきていて、これは、刑事手続というものの、そのものの性質上いたし方ない部分もあるわけですけれども、被害者のお気持ちを代弁する形で、公益の立場から検察官が訴追官としての役割を果たしているというのが仕事なんだというふうに思います。

 先ほど小木曽参考人は、刑事裁判に類似はしていない、あくまでも事実認定の補助者だからだというふうに検察官の関与についておっしゃっていただきました。おっしゃっていることの意味は基本的には理解はしていますけれども、大きな意味において私自身思っているのは、カバレッジの広さという意味でいうと、窃盗、詐欺、恐喝といった、要するに、一番長期で十年ということが定められているような、そういう罪についても含まれてしまうということで、カバレッジが非常に広がってしまうということと、それから、被害者の意思を強調するというところで、どうしても刑事事件に類似してくる気がするんですけれども、その点について、先生の御意見をもう一度お伺いできますでしょうか。

小木曽参考人 先ほどから、事実の適正な認定という話になっておりますけれども、これは二つ、事実の適正な認定という面があると思っておりまして、一つは非行事実の認定であります。もう一つは要保護性についての事実の認定であります。

 検察官が十分なトレーニングを受けていないというのはこの要保護性についての事実認定でありまして、その前段階の非行事実があったのかなかったのかという点についてのみ、現行法でも、それからこの法案でも検察官の関与ということを考えているわけでありまして、この部分については検察官はスキルを持っているというふうに考えております。

 それ以外の、いろいろなところから情報が上がってくるというもの、お話を聞いていて思いますのは、その情報は要保護性についての情報であろうというふうに考えます。ですから、検察官の役割がそれによってなくなるものではないのではないかというふうに考えております。

 それから、先ほどの御質問のときにお答えするのを忘れたのですけれども、付添人や裁判官の能力の問題ではないかと。これは私には何とも申し上げられませんけれども、もしそのようなことがあるのであれば、先ほど横路先生もおっしゃいましたけれども、トレーニングをするということは必要なのかもしれません。

椎名委員 どうもありがとうございます。

 まさにそうかなというふうに思っています。トレーニングというのは、本当に必ず、家裁であっても、それから弁護士であっても、検察官であっても、不断の努力として、少年事件の特殊性というものに応じて努力をしていかなければならないことだなというふうに私自身も思っています。

 被害者の保護という話を続けさせていただいて、武参考人に伺いたいなというふうに思いますけれども、先ほど私が申し上げたように、刑事手続という意味でいうと、置き去りにされているのが被害者なわけです。少年事件であろうがなかろうが、やはり被害者の方々の意見を酌み取られないということで、刑事手続に関して常に関与をしていきたいという御意見がいろいろなところから出てきていたのが流れだというふうに思います。

 そうであるにもかかわらず、マスメディア等の取材攻勢とかがあって、二次被害、三次被害みたいなものを受けてくる、そういう状況で、少年事件における意見陳述権だったりとか傍聴だったりとか、それから犯罪被害者給付金というものを充実させたりとか、それから先ほど議論にありましたけれども国選弁護をつけたりとか、こういった現状で使えるもの、さらには足りないもの、そういったものをより充実していって、被害者の気持ちをより酌み取っていって保護を充実させていくことが必要ではなかろうかというふうに私自身も思っていますけれども、ぜひ参考人の御意見をいただければというふうに思います。

武参考人 そのとおりです。今あるものをしっかりと運用していただいて、そしてその中身を本当に詰めていただきたい。

 例えば、こんなことがあるんです。この裁判所でできたこと、例えば意見陳述ができたけれども、こちらだとできない。そういう、当たった場所が悪かったねではだめなわけですね。だから、被害者ができるもの、参加ができることはしっかりとできるように充実させていただきたいし、当たった場所が悪かったとならないようにしっかりとそういうことはしていただきたいです。

 それからもう一つは、言ったように、被害者のための国選弁護人、本当にそういうことも充実することが大事ですし、給付金のことも。

 それからもう一つは、先生方にお願いしたいのは、各地で条例というのをつくっております。被害者支援のための犯罪被害者等の条例というのを各地でつくっていて、県や府や市がつくっているんですが、まだまだ少ないんですね。ここで事件に遭った人は、いろいろな条例でお見舞金が出たり、いろいろなことをちゃんと支援してもらえても、ちょっと隣の市になると何もないということがあるので、やはりこの条例というのも、ぜひ、どこにでもあるようになってほしいなと願っています。

 明石では、賠償金の立てかえ払い制度というのをつくったんですね。三百万まででした。でも、すごいなと思ったんですね。なぜなら、私たちは損害賠償を請求しても払われないんです。

 また振り返るんですが、それは審判廷でも言うんです、一生弁償していきますと。加害少年は言うんです、自分は悪いことをした、一生責任を、やはり償って、弁償していくと言うんですが、私たちの会の人に限っていえば、ほとんど払われないんですね。そういう現状もあるので、やはり条例でしっかりつくってもらって、それをちゃんと罪を犯した少年から回収するということをしなければ、私は、悪いことをしても逃げ得の国になってしまうと思うんですね。そういうことも考えていただきたいなと思います。

 ありがとうございました。

椎名委員 どうもありがとうございます。

 時間も来ましたので終わりますけれども、四名の参考人の方、きょうは、お忙しい中、貴重なお話を賜りましたことを本当に感謝申し上げたいと思います。

 どうもありがとうございます。

江崎委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 参考人の皆様には、大変御多忙の中を貴重な御意見を賜り、まことにありがとうございました。これから必ず当委員会も皆さんの意見を生かしながら、一層少年法の充実に努めてまいります。

 本当にきょうはありがとうございました。どうぞ御退席ください。(拍手)

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

江崎委員長 どうぞ速記を起こしてください。

 それでは、質疑を続行いたします。初めに、門博文君。

門委員 自由民主党の門博文です。

 本日は、質問の機会をいただきまして、まことにありがとうございます。

 谷垣大臣を初め法務省並びに関係省庁の皆さんには、大変お疲れさまでございます。また、江崎委員長におかれましては、長時間にわたるすばらしい委員会運営に心より敬服いたしております。

 参考人の皆さんから大変貴重なお話を承った後、再びこの少年法の一部改正について質問をさせていただきたいと思います。

 少年法は、少年が罪を犯したときに適用される法律であります。まず初めに、少年犯罪についてお尋ねをいたしたいと思います。

 健全な成長が望まれる子供たちではありますが、何らかの事情で罪を犯してしまいます。その件数について、昨今の推移を御説明いただけますでしょうか、お願いいたします。

林政府参考人 近年の少年の刑法犯検挙人員について見ますと、昭和五十九年以降は、平成七年まで減少傾向にありまして、その後、若干の増減を経まして、平成十三年以降増加しておりましたが、平成十六年からは減少しております。また、一定の少年人口当たりの検挙人員の比率についても同様に平成十六年から低下している状況にございます。

門委員 今お答えいただきましたのと、ちょっと参考になるかと思って、お手元にも資料を配付させていただいています。

 件数と少年犯罪の数について減少傾向にあるということでありましたので、それは何よりですけれども、そもそも少年の人口も減っているのも事実であります。さまざまな取り組みによって、名実ともに本当に減少傾向がさらに続いていくように、社会が、家庭が、そして教育現場が努力をしていかなければならないと感じております。

 さて、この少年犯罪、先ほどの参考人の皆さんとのやりとりの中にもありましたけれども、報道などを見てみますと、データ的には余り凶悪化していないという話もあったんですけれども、私は、自分が報道を見ていたときに、少年が行きずりの見知らぬ人を殺傷したりとか、そういうようなことに触れますと、自分たちが子供のころに感じていた、体験した以上に、理由もなく殺人を起こしてしまったりとかという意味で、凶悪化しているようなことが私には感じられます。

 そしてまた、最近の子供たちといいますと、ネット社会で、携帯電話とかLINEとか、いろいろな、我々が子供のときに体験したことがないような環境の中でも育っております。そんな中で、最近の犯罪の凶悪化のような犯罪の傾向、内容について、そしてまた、あれっと思うような今日的な犯罪の傾向、そんなようなものがあれば、具体的な事象を交えて御説明を賜りたいと思います。

辻政府参考人 お答え申し上げます。

 委員からただいまございましたとおり、事件につきましてはそれぞれいろいろな特徴がございまして、その事案事案によっていろいろでございますけれども、全体的には、先ほど法務省からもございましたが、刑法犯少年の検挙人員というのは、十六年以降、十年連続して減少となっております。また、凶悪犯全体の検挙人員も減少傾向にございますけれども、最近ではこの減少基調に下げどまりが見られまして、殺人に関しましては、この十年間を見てもほぼ横ばいの状況が続いてきているというようなことでございます。

 また、人口比でございますけれども、これでもやはり少年の方が成人よりは高くなっているという状況が依然と続いております。また、再犯者の占める割合が上昇している、あるいは非行の低年齢化というようなことが続いているというような状況にございまして、少年非行情勢につきましてはいまだ大変厳しい状況が続いているというふうに考えておるところでございます。

門委員 ありがとうございました。

 昨今の少年犯罪の状況について御説明を賜りまして、少しではありますけれども、状況がかいま見られたような気がいたします。

 さっき、スマホとか携帯の話をしたんですけれども、実は、私ごとですけれども、私にも子供が三人おりまして、上の娘が平成五年生まれで、去年二十になりました。二十になったということは、万一犯罪を犯したとしても少年法が適用されない年齢になってしまいました。

 ことしで平成も二十六年になりますと、この少年法の対象になる少年は平成七年生まれで、もう現在十九歳になろうとしています。それから、大体十歳ぐらいで、ひょっとしたら、低年齢化というのがありましたから、仮に犯罪を犯すとした場合、この法律の対象になる方の生まれたレンジというのは、大体平成七年から平成十六、七年。

 私も昭和四十年生まれですけれども、ここにいらっしゃるほとんどの皆さんからいったら、ついこの間生まれたような方々が実はこの法律の対象年齢に今なっているということを考えますと、いつの時代も年齢のギャップというのは絶えずあると思うんですけれども、今申し上げたようなネット社会とか携帯電話とかLINEとかということに象徴されるように、今、私たちの時代と違って、特別な環境で育った子供たちが、これからまたそういう、あってはならないことですけれども、犯罪の方に走ってしまうということについて、我々はやはりそういう意識をもう少し強く持って、自分たちの時代とは少し違うんだということを持って、今後も少年犯罪への対応をしていかなければならないなというふうに思うところであります。

 それでは、具体的にこの法律の改正についてお話を聞いてまいりたいと思うんです。

 まず、今参考人の皆さんから、いろいろな、生々しいというか、現実の現場で起こったような話を聞きまして、委員の皆さんも、午前中の質疑から、参考人の皆さんのお話を聞いて、いろいろなお考えも芽生えていることとは思いますけれども、心ならずとも犯罪に手を染めて、警察のお世話になって、子供たちが、罪を犯した少年がいろいろな手続を受けていくんですけれども、その手続の概要について、簡単で結構なんですけれども、改めて当局から御説明を賜りたいと思います。

林政府参考人 罪を犯した少年に対する手続の概要について御説明いたします。

 罪を犯した少年の事件につきましても、警察、検察が捜査をいたしますが、その結果、犯罪の嫌疑が認められる場合には、必ず家庭裁判所に送致をしなければならないこととされております。したがいまして、犯罪の嫌疑が認められても、検察官は、罪を犯した少年を刑事裁判所に直接起訴することはできず、また、起訴猶予を理由として不起訴とすることもその段階ではできません。

 検察官から事件の送致を受けた家庭裁判所は、調査を行いまして、調査の結果、少年審判を開始する必要があると認めた場合には、審判開始決定というものを行います。家庭裁判所における審判は非公開とされておりまして、家庭裁判所は、審判の結果、保護処分をする必要があるかどうかなどについて判断いたしまして、保護処分をすることが適当と認める場合には、少年院送致や保護観察などの保護処分に付する決定をします。他方、刑事処分が相当と認める場合には、検察官送致決定をいたします。これは逆送と通称呼んでおります。

 刑事処分相当を理由に検察官送致決定がなされた場合には、検察官は、これは今回は原則として起訴をすることが義務づけられることになります。そして、検察官が起訴をした後は、ここからは成人と同様に刑事裁判が行われます。その結果、有罪が認められる場合には、刑が言い渡されることとなります。

 なお、その刑の言い渡しを行う場合につきましても、罪を犯したときに十八歳未満の者に対しては死刑を科すことができないこととか、罪を犯したとき十八歳未満の者に対して、無期刑で処断すべき場合でも有期刑に緩和して科すことができる、あるいは、少年に対して有期の懲役または禁錮を科す場合には、原則として不定期刑を科す、こういった成人とは異なる特則が設けられているところでございます。

門委員 ありがとうございました。

 今、手続について概要を御説明いただきました。

 それで、今回の改正について、これもお手元の方に、もう一度、頭の整理というか、私も含めてさせていただこうと思って、資料をお配りさせていただきましたけれども、先ほどからの繰り返しになりますけれども、参考人の皆さんからのお話を聞いた上で、改めて、今回の改正を求めるに至った経緯、そしてまたその意図、それぞれのポイントについて御説明を賜れればと思います。

林政府参考人 まず、経緯でございますが、法務省におきまして、平成二十四年三月から七月にかけまして、有識者による平成二十年改正少年法等に関する意見交換会を実施して、少年法全般についてもあわせて御意見を伺って検討した結果、次の二点、まず一点として、家庭裁判所の裁量による国選付添人制度及び検察官関与制度の対象事件の範囲拡大、もう一点は、不定期刑の長期、短期の上限の引き上げなど少年刑のあり方についての見直し、この二点を行う必要があると考えまして、平成二十四年九月に法制審議会に諮問を行いました。

 法制審議会においては、部会での調査検討を経て、法制審議会総会においてさらに調査検討が行われた結果、総会の全員一致により、要綱のとおりの法改正を行うことが相当であるとされて、平成二十五年二月に法務大臣に対して答申がなされました。この答申に基づいて今回の改正案は提出されたものでございます。

 そして、今回の改正の意図でございますけれども、まず、家庭裁判所の裁量による国選付添人制度及び検察官関与制度の対象事件の範囲拡大につきましては、現行法の対象事件以外にも、少年審判手続における事実認定や環境調整に検察官や弁護士である付添人の関与が必要であると考えられる事件があること、また、被疑者国選弁護制度の対象事件の範囲よりも国選付添人の対象事件の範囲が狭いため不都合な事態が生ずるおそれがあること、こういった理由から、制度の対象となる事件の範囲を現行よりも一定程度拡大する必要がある、これが一つの目的でございます。

 もう一つは、少年刑については、現行の不定期刑の上限が五年以上十年以下となっていることにより実際の裁判において適正な量刑を行うことができない事案が生じていることなどから、不定期刑についてその上限と下限をそれぞれ引き上げる必要があり、これに伴って、無期の緩和刑の上限についても引き上げるなどの所要の法整備を行う必要がある、この二点が目的でございます。

門委員 ありがとうございました。

 先ほどの参考人の皆さんとのやりとりの中で特に私が気になりましたのは、刑期の上限を引き上げることについていろいろな御意見と質問が重なり合ったんですけれども、今回の改正のポイントの一つであります刑期の上限を引き上げること、不定期刑の短期を五年から十年に、そしてまた長期を十年から十五年に、それぞれ五年ずつ引き上げる、そして、無期刑の緩和刑を十五年から二十年に、これもまた引き上げるということになっております。

 今、局長の方からもお話をいただきましたけれども、特に谷垣大臣から、重なる部分、繰り返しになる部分もあろうかと思いますけれども、改めて、この刑期の上限を引き上げる、この背景とか意図、そういうお考えをちょっとお聞かせいただきたいと思います。

谷垣国務大臣 けさからたびたび議論があったところでありますが、少年に対する有期刑の上限が、無期の緩和刑としての定期刑を除きますと、五年以上十年以下の懲役または禁錮となっているわけですが、科せるのが、無期刑、そうでなければ五年以上十年以下の不定期刑ということになると、そこに乖離が随分あるなということが一つ指摘されていることでございます。

 それから、主犯者たる少年と従属的立場の成人、年はちょっとしか違わないんですが、こっちは成人になっている、こっちはまだ少年である、だけれども、実際に主導的にやったのは少年であるというような案件で、成人に対する刑と少年に対する刑との間に不均衡が生じてしまう、こういう指摘が従来ございました。

 実際の裁判例におきましても、少年に対して科し得る有期刑の上限が五年から十年の不定期刑と低いために不本意な量刑をせざるを得なかったということを実際判決文の中で判示しているものもございます。

 こういう状況を踏まえますと、裁判所の選択肢を広げることによって、少年が犯した行為に応じて、より適正な量刑をなし得るようにするために、不定期刑の長期それから短期の上限を引き上げるということが今回の一つの目的でございます。

 それから、今回の改正によりまして、不定期刑の長期の上限、すなわち、有期刑の上限が十五年に引き上げられるわけでございますから、無期刑を緩和して有期刑を科す場合におきまして、科し得る刑の上限を引き上げない場合、無期刑の緩和刑より責任の軽い不定期刑の場合と無期刑の緩和刑の上限が同じになってしまう、これはどうも相当じゃないんじゃないか。

 それからまた、処断刑が無期刑の者に対してはそのまま無期刑を言い渡すこともできるのでございますから、無期刑と上限が十五年の緩和刑としての有期刑との乖離を埋めて裁判所がより適正な量刑をできるようにする必要がある等々のことから、少年法五十二条を改正して有期刑の上限を十五年に引き上げるのに伴って、無期刑の緩和刑の上限についても二十年に引き上げる必要があるというようなことでございます。

門委員 ありがとうございました。そのあたりの今までの御検討していただいたことも含めて、よく理解をさせていただきました。

 それともう一方、これも何度も御答弁いただいていることで、繰り返しになって恐縮なんですけれども、今回、この改正をすることによって、刑期を長くするという、結果的に長くなるかどうかは別として、レギュレーションというか幅としては広げるということで、このことについて、非常に厳罰化につながるのではないかというような御意見もあちこちにあろうかと思います。この点についても、簡単で結構ですけれども、よろしくお願いいたします。

谷垣国務大臣 私、テレビで拝見しておりましたが、これも参考人との御質疑の中でも出てまいりましたし、今までも御意見がございました。

 それで、結論から申しますと、これは厳罰化を目指すものではないというふうに私は申し上げたいと思います。

 先ほど申し上げていましたように、現行の少年法の規定によって、少年に対して科すことができる刑の枠の範囲内ではなかなか適切な科刑ができない事案が指摘されてきた。そこで、少年に対して科することができる刑の枠を広げるということは、裁判所の選択肢を広げる、それによって適正な科刑をすることを目的としたものであって、少年に対する科刑を一律に引き上げるというようなことを意図したものでは毛頭ないということを申し上げたいと存じます。

門委員 ありがとうございます。私も全くそのとおりだというふうに理解をさせていただいております。

 いずれにしても、少年犯罪にかかわらず、犯罪には、その罪を犯した当事者、そしてまた被害者、そしてまたそれぞれの家族、場合によっては、その家族が御遺族になっていることもあります。それぞれの立場でこの罪と向き合う立場がおのずと違いますので、また、それから、法律の専門家の立場からの見方も違います。やはり、感情と法律とのはざまの中で、今回は適切な改正をしていただいているのではないかなというふうに私は思っております。

 さて、続いて、ちょっと突拍子もないようなことになるかもわからないですけれども、今回、この改正の一つの狙いに、これは法務省にそういうお気持ちがあったのかどうかはわからないですけれども、いずれにしても、この少年法を改正するということにつけて、こんなふうになったから、やはり罪は犯しちゃいけないんだよということで、子供たちに、少年たちに悟ってもらって犯罪を抑止するということもあっていいんじゃないかなというふうに思うんです。

 そう考えますと、今回、この改正も含めてですが、教育の現場において、子供たちに、少年法というのはこんなものだ、万一罪を犯せばこのような処罰を受ける、したがって、罪とは犯してはならないものだと教え悟らせるというのも、私は一つの考え方じゃないかなというふうに自分が思っているんです。

 自分の子供のころを思い出してみても、そんなことは学校で習ったこともなかったですし、もちろん処罰を受けるから罪を犯さないというのではなくて、そもそも人格の形成の過程で、心根としてそういうことというのは抑制されるべきではあると思います。

 しかし、そんなふうにも思いまして、きょうは文科省にもちょっとお声をかけてお越しいただいているんですけれども、まことに突拍子もない質問で恐縮ですけれども、教育の現場で、こういう子供に犯罪についての考え方みたいなことを教えることを既にやっていらっしゃるのか、やっていらっしゃらないとしたら、そういうことを一度試みに考えてみるということのお考えをお持ちかどうか、ちょっと教えていただけたらと思います。

義本政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のとおり、学校教育において児童生徒に法や決まりの意義、法に基づく公正な裁判などについて理解されることは非常に重要でございます。

 カリキュラムの基準でございます学習指導要領においては、大綱的な性質を持ちますので、現在、少年法そのものの内容を指導する旨を記載してはおりませんが、中学校あるいは高校の公民の教科書におきましては、少年法の理念、あるいは近年の少年法の改正の趣旨なども含めまして少年法や少年事件についての説明をしている教科書が数種類ございます。また、法曹界と連携した学校現場での取り組みといたしまして、弁護士によります出前授業としまして、少年事件の手続の流れや少年法の意義について指導する例もあるところでございます。

 文科省としましては、今後とも、学校現場での少年法の話も含めました法の意義あるいは役割に関する教育の充実に努めることを通じまして、児童生徒の非行の抑止にもつなげてまいりたいと考えております。

門委員 ありがとうございました。

 ぜひ、大学を受験するためだけの学問を学校で教えるのではなくて、本当に生きていくために必要なことを学校の授業のカリキュラムの中で取り上げて教えていっていただきたいなというふうに思います。

 本題に戻るんですけれども、谷垣大臣にお尋ねをさせていただきたいと思います。

 さっき、抑止になるかどうかという話もさせていただいたんですけれども、当然、法律というのは、そういう抑止、罪を犯した人そのものをどう裁いていくかということも本論ではあると思いますけれども、そのことによって、片っ方では抑止であったり、それから更生とか矯正、再犯の防止とかということも含めて、いろいろな理念がその中には入っていると思うんですけれども、今回の改正で直接もたらされることと、そして間接的にもたらされること、特に更生とか矯正の面について、何かこの件でお考えがありましたら教えていただけますでしょうか。

谷垣国務大臣 刑罰は何のために科すかと、えらい大上段に振りかぶって申し上げてなんでございますが、仏教の方では因果応報なんて申しますが、仏教の因果応報とはちょっと違いますが、応報というのは一つ刑罰の目的というか理念でございます。そういうことをやるとその結果に応じた責任を問われるぞという応報。それからもう一つは、やはりこういうことをするとこういう刑が加えられるんだ、罰が与えられるんだということで、社会一般の人々が犯罪に及ぶことをそういう刑罰の制度によって防止する、いわゆる一般予防ということも刑罰の目的でございます。それと同時に、具体的に犯罪を犯した人が、つまり特定の犯罪者ということになりますが、将来再び犯罪を犯さないように、刑罰を受けることによってもう二度とやらないぞというふうに持っていく特別予防と、大体三つの目的というか意味があるというふうに言われておりますが、これは少年の事件に関しても当てはまることだと思います。

 そこで、今回の立法は、ではこれによって何がもたらされるかと。例えば裁判所の量刑による裁量の幅を広げるということでございますが、裁判所に適切な刑を科してもらう、選択の幅を広げたということでございまして、直接これによって何が抑止されるということを目的としているものとは必ずしも言えないんだろうと思います。

 しかし、結果として、先ほど三つの目的を挙げましたけれども、それぞれの犯罪に対して適切な刑罰を科するということが長い目で見て犯罪の抑止にもつながっていくということは言えるのではないかと思っております。

 それで、少年受刑者の処遇につきましては、少年法は健全育成ということを理念としているわけですが、教育的な働きかけ、今も文部省にお問いになりましたが、教育的働きかけを実施していく、それで、社会復帰に資するためのプログラムを用意して、少年の更生のための処遇に努めるということだろうと思います。

 それから、受刑者は、しかしながら、二十六歳に達しますと、原則として少年刑務所から成人の刑務所に移されることになりますが、一般の成人の受刑者と同じように、引き続き、その者の持つ問題性に応じた処遇プログラムや職業訓練、このことは、今、再犯防止の中で特に重視しなければならないことでございますが、そういうものをきちっと実施していく。そして、少年が長期間刑事施設に収容される場合であっても、健全育成と円滑な社会復帰に向けて配意した処遇を行っていかなければならないということではないかと思います。

 そして、保護観察所におきましては、その保護観察の対象者等々に対しても適切に保護観察を実施して、改善更生、あるいは再犯防止を図っていかなければならないということではないかというふうに考えております。

門委員 ありがとうございました。

 今回は、これは修正案も提出をしていただいておりまして、時間がなくなって恐縮なんですけれども、修正案についても御質問をさせていただきたいと思います。

 二つの質問を用意させていただいたんですけれども、二番目の方でよろしゅうございますでしょうか。

 今回の改正は、現実に犯罪が起こって、先ほどもありましたけれども、特に被害者や家族、遺族になられた方からの要望も強かったかのように、私、先ほどから、参考人のお話も聞いて思っております。その声に対して今回修正案を提出されたことにおける、このあたりのお考えについて、お話しいただけますでしょうか。

階委員 御質問いただきありがとうございました。

 委員の問題意識は、私どもの修正案は、不定期刑、あるいは無期の緩和刑の引き上げを削除するものであって、被害者の要望に応えていないのではないかという点にあるかと思います。

 おっしゃるとおり、少年犯罪の被害者の意見を大事にすることについては我々も大賛成であります。その見地から、私も先ほど申し上げましたけれども、平成二十年改正のときに、本来三年後見直しの対象とされていた審判傍聴の対象事件の範囲拡大や、モニター傍聴の導入については、この見直しの意見交換会で参考人で来られた武さんも要望されていた点でございますから、こういった点にもぜひ取り組んでいくべきではないかと考えております。

 その上で、刑の引き上げをなぜ見送るかということなんですが、その意見交換会の場で武さんもおっしゃったのは、そもそも不定期刑の必要がないので廃止していただきたいということをおっしゃっていました。そして、仮に不定期刑を維持する場合に、刑の引き上げについてはどう考えるかということについて、意見はないということをおっしゃっていました。これは、そもそも廃止していただきたいということであるから、当然のことかと思っております。

 刑事裁判、最近では裁判員裁判で重大事件については審理が行われますけれども、その裁判員裁判で、何年以上、何年以下という不定期刑を定めるのは大変困難なことだと思いますし、既にアメリカやドイツでは不定期刑制度は廃止されています。むしろ、不定期刑を廃止して、弾力的な仮釈放の運用が可能となるような制度を検討すべき時期に来ているのではないか。また、そのことこそが被害者側の要望にも沿うものではないかというふうに考えておりまして、その観点から、私どもの修正案、出させていただいたものでございます。

 ありがとうございました。

門委員 ありがとうございました。

 時間が参りました。

 この改正が一助となって、一つでも犯罪が減って、一人でも罪を犯す少年が少なくなることを祈り、期待をしております。

 これにて質問を終了させていただきます。ありがとうございました。

江崎委員長 次に、遠山清彦委員。

遠山委員 公明党の遠山清彦でございます。

 きょうは、委員長は朝八時五十分の理事会からでございますし、大臣、副大臣、政務官も、朝から大変長い間御苦労さまでございます。

 簡潔に、最後の質疑者として質問させていただきます。

 まず、きょうの議題の少年法の一部改正につきましては、私、公明党の法務部会長をさせていただいておりますが、我が党として、この改正案に賛成の決定をいたしておることをまず表明いたします。

 この少年法の質問に入る前に、一点、矯正局長に御答弁いただきたいと思っております。

 過日、公明党法務部会の視察で神奈川医療少年院を訪問させていただきました。この施設では、知的障害を持っていたり情緒的に問題がありまして社会適応が難しい少年につきまして、専門的な治療処遇を実施しております。その実情を学びまして、大変勉強になりました。

 正直申し上げて、非行、犯罪に走ってしまった少年たちではありますけれども、私どもが施設で見た少年たちは大変明るい顔をしておりまして、処遇している方にいろいろ聞いたら、やはり社会にいるときに相当ないじめに遭ってしまっている、障害を持っていたりしまして。その結果として、犯罪を犯して非行に走り、施設に来たわけですけれども、逆に施設の中で非常に、ちょっと語弊はありますけれども、幸せそうな生活をしている様子を見て、いろいろ思うところがございました。

 ただ、これは、今後少年院法の改正案等が出されたときの審議でまた詳しくお話をしたいと思います。

 この医療少年院の施設がひどく老朽化しておりまして、特に体育館のひどさは目に余るものがございました。これにつきましては、私とともに視察をした佐々木さやか参議院議員が既に参議院の法務委員会の方で要望しておりますけれども、私からも重ねて早期の修繕を要望いたしまして、できれば来年度中にも、もう来月からですけれども、予算の関係はあろうかと思いますけれども、修繕に向けた着手をしていただきたいと思いますけれども、局長の答弁をいただきたいと思います。

西田政府参考人 お答えいたします。

 神奈川医療少年院は、おっしゃるとおり、昭和五十四年に建築されまして、建築後三十五年を経過する老朽施設でございます。したがいまして、経年に伴う劣化が随所にあらわれておりまして、先般御視察いただいた際にも、佐々木議員の方からも、体育館の雨漏りがひどいという御指摘を受けております。

 そんなことがございまして、現在、工事実施に向けて諸準備を進めておりまして、来年度、速やかに工事に着手したいというふうに考えております。

 以上でございます。

遠山委員 大変明快な御答弁をありがとうございます。来年度中に工事に着手するということでございますので、佐々木とともに感謝を申し上げたいと思います。

 さて、本日議題の少年法改正案でございますけれども、もう既に論点について大分重なるところもございますが、党を代表しての質問ですので御容赦をいただきまして、まず刑事局長に数字を伺いたいと思います。

 これから、この改正が成立いたしますと、国選付添人がいる少年事件の数がふえるわけでございます。これは平成二十四年の数字で結構でございますが、年間、国選付添人がいる審判の数は現状幾つで、また、先ほど来いろいろな委員から話題になっております検察官関与の事件数は現在何件なのか、確認をしたいと思います。

 そして、あわせて、今回の改正案が成立した場合に、それぞれの数字がどれぐらいになると見込んでおられるのか、御答弁をいただきたいと思います。

林政府参考人 今回の改正によりまして、例えばどの程度国選付添人の選任件数がふえていくか、その基礎となる数字でございますが、もとより、個別の具体的な事件における裁判所の判断いかんによるものでございますので、確たる数字を申し上げることは困難でございますけれども、まず、平成二十四年における現行法における国選付添人制度の対象事件というものは約六百件でございます。同じ平成二十四年で見まして、同年における今般の改正によって拡大する後の国選付添人制度の対象事件というものは、この六百件が約八千四百件ということになります。

 なお、これは過去の数字でございますが、平成二十年から平成二十四年までの過去五年間、国選付添人というのは対象事件に必ず全部つくわけではございませんので、その選任率などを見ますと、これまでの統計では約六〇%ぐらいでございます。単純にこれらの数字を計算しますと、国選付添人制度の対象事件の範囲を拡大することによって四千から五千件ほどの選任件数が増加する、これはあくまでも計算上の数字でございます。

 他方で、検察官関与についてでございますが、これもまた裁判所の個別判断でございますので確たることは申し上げられませんが、その上で、これまでの現行法の運用の検察官関与の事件というのは、経年で見ますと、少ない年で九件、また多い年で二十六件、こういったような数字でございます。しかも、年ごとの件数もまちまちでございますので、一概に今後どのような推移になっていくかということは申し上げることは困難でございますが、いずれにしても、これまでの運用自体が、真に検察官関与が必要な事件に限って検察官関与決定がなされているということを踏まえますと、法改正によって検察官関与事件の数が大幅に増加するということはないものと思われます。

遠山委員 今、数字の御説明がありました。もちろん、予断を持って数字を当局が言うというのはなかなか難しい面があると思いますが、局長、また大臣に一問した後にお伺いしますけれども、結局、予算の要求をするためにはある程度の数字を見込まないとできないので、あえて聞いてみたわけでございます。

 今お話ありましたとおり、この国選付添人がいる審判事件というのは、現行法のもとでは現在六百件、これが法務省の見立てでは八千四百件になるわけですから、これは十四倍にふえるということになります。そうしますと、私も弁護士出身ではありませんし、この分野は素人でございますが、今まで六百件だった審判の数が八千四百件に十四倍もふえるとなると、いろいろな別の疑問が出てくるわけです。

 まず、件数が純粋に大幅にふえますので、弁護士の手当てがきちんとできるんだろうか、こういう疑問が一つございます。それからもう一つ。いろいろ資料を読んでおりますと、一部では、審判の数が大幅にふえるので、付添人として弁護士はつくんだけれども、中には、経験不足だったり得意分野が違ったりして、少年審判の特質を理解していない弁護士さんがつくことで、少年の更生促進につながらないケースがふえてしまうのではないか、こういう懸念があるやに感じております。

 きょうの参考人質疑の中でも、参考人の方から、少年審判の特質を理解していない弁護士が実際いた、あるいはいる、こういう話もあったわけでございまして、これらの、大幅にふえることによって付添人の質が低下する可能性があるのではないかというような意見に対して、大臣として御見解をいただければと思います。

谷垣国務大臣 弁護士である付添人は、少年の正当な利益をきちっと守って、少年審判が適正な審判を行い、それから適正な処遇決定のために尽力してもらわなければいけないわけです。そして、そういう中で、少年がきちっと更生をしていく手だても講じていくことが期待されているわけですから、今、遠山議員がおっしゃるように、少年事件の特質、当然そういうものを十分理解した者でなければいけないということだろうと思います。

 ただ、急に相当、量が拡大することが予想されるわけですので、その準備はやはりきちっとしておかなければいけないということではないかと思います。

 そこで、日本弁護士連合会なんかのお話を伺いますと、相当、日本弁護士連合会もこれに向けた研究会であるとか研修をやっていただいております。また、各単位会においても同じような活動が行われておりまして、こういう取り組みを通じて付添人の適性を確保していくということをやはりきちっとやっていかなければいけないということではないかと思います。

 今、当然、司法試験の合格者がふえたりしている中で、職域の拡大ということも言われております。だから、職域の拡大ということも当然意識し、こういうこともそれに当たるんだと思いますが、それには、それに対応する資質、適性というものを磨く努力をしていただかなきゃいかぬ、こういうことではないかと思います。

遠山委員 大臣、ありがとうございます。私も同感でございます。

 その上で、先ほどちょっと予告しましたが、刑事局長に、国選付添人がつく審判がふえることに伴う予算の増額というのはどの程度であるのか、また、その確保については手当てをしっかりされているのか、お聞きしたいと思います。

小川政府参考人 お答えいたします。

 平成二十五年度予算の国選付添事業経費は約五千六百万円、平成二十六年度予算の同じく国選付添事業経費は約五億六千九百万円でございまして、改正少年法が成立、施行された場合に平成二十五年度と比べて増加する国選付添人の対象事件数の見込みなどを踏まえまして、約五億一千三百万円を増額した予算を計上しているところでございます。

遠山委員 済みません、ちょっと答弁者を私、間違えまして。

 今御答弁が明確にありましたように、今年度、平成二十五年度五千六百万円の予算で、非常に件数が少なかった、少ない六百件だったという数で五千六百万円が、来年度は五億六千万円台に、十倍以上の予算を確保しているという御答弁でございました。これはまさに、先ほど大臣がおっしゃった職域の拡大にも明確につながっているわけでございます。

 そこで、ちょっと角度を変えて質問させていただきたいんですが、これだけの国費、予算をつけて国選付添人を選任していくことになるわけでございますが、一部で、資力要件がないことについてどう考えるか、御指摘があると思います。きょうの委員会でも既に出ていたかと思いますが、つまり、少年自身は少年ですからともかくとして、その保護者の資産が十分にある場合でも国選付添人が選任をされて、今申し上げた五億数千万の予算の中からお金がつけられるということになります。

 この保護者の資力要件を設けない理由については、やはり国民の理解をしっかり法務省として求めていかなければいけないと思いますが、大臣の御説明を改めて伺いたいと思います。

谷垣国務大臣 確かに、国選付添人、これを広げていくと、当然その予算というものをお願いしなきゃいかぬということになります。

 まず、こういう裁判所の裁量による国選付添人を広げていくというのは、一つには、今までは国選付添人の対象とされていない事件の中にも、より適正な事実認定をしていく必要があって、それには国選付添人が関与することが妥当であるというような分野があるわけですね。それと同時に、付添人が少年審判の段階から環境調整を行うことによって少年の更生あるいは再犯防止に資するということから、今回こういう措置をとるわけですが、おっしゃるように、資力要件というのは設けていないわけです。

 それはなぜかといいますと、その前に、私選で付添人をつければ、もちろん、それはそれで結構なことなんですが、要するに、裁判所がこの事件ではやはり付添人をつけることが必要であるなと判断した場合に、資力要件をつけて、本人が私選をつけない、当事者ないしその保護者が私選付添人はつけないということになりますと、結局、弁護士の付添人なしに少年審判を行わなければならない。そうなると、今回拡大していった目的と相反する、そごが出てしまうということがございます。

 ただ、そこをやたらに、では付添人、付添人ということになれば、国費の無駄遣いじゃないかという批判も出てくる。

 そこで、家庭裁判所においては、国選付添人の選任の要否、これはいろいろなことをお考えになると思うんですが、やはり本人ないし保護者の資力の有無ということも一つの判断理由にされることもできる。

 それから、もう一つは、法律に、国選付添人が付された場合でも、少年または扶養義務者が資力を有していれば、家庭裁判所は事後的に費用を徴収することができるという規定もございますので、このあたりの規定を適切に使っていただくことも大事かなと思ったりしております。

遠山委員 そうすると、家庭裁判所の判断の要素としては、保護者の資力というのは残っている、それをどう運用するかというのは、それぞれの事案ごとに、裁判所ごとにということで理解をさせていただきます。

 次に、これもけさからずっと議論になっているんですが、少年審判に関与する検察官の役割についてでございます。

 これは、当然、先ほど来出ておりますとおり、検察官として関与する数は少ないとは思いますけれども、実際に母数が八千四百になったときに、先ほど刑事局長はそんなにふえないという趣旨の答弁をされておりましたけれども、普通に考えれば、やはりちょっとはふえるのかなという気もいたします。

 その際に、やはり、一般の刑事訴訟における訴追官としての役割と少年審判に関与する検察官の役割というのは根本的に違うんだろうと思いまして、その辺についての違いというか、検察官を関与させる、させないの判断基準にも影響してくると思いますので、大臣のお考えを簡潔に伺えればと思います。

谷垣国務大臣 これもきょういろいろ御議論になったところでございますが、少年法は、保護主義といいますか、職権主義的な審問構造、つまり、裁判官が懇切を旨として、和やかに行うというように定められているわけですね。

 そういう中で、検察官は、そこに関与する場合であっても、通常の刑事訴訟における原告官であったり訴追官であるという役割とは違いまして、あくまで、家庭裁判所の手続主宰権のもとで、それに協力して少年審判の目的を果たしていくという役割を持っている。ですから、当事者が対立構造の中で果たす役割とはおのずから違う。

 それから、もう一つ申し上げておかなければならないことは、あくまで、検察官が関与いたしますのは、事実認定について関与していくわけでございまして、少年としての今後の処遇をどうしていくかというような問題については、これは検察官は関与しないという仕組みになっております。

 これで当事者が対立するような手続になってしまうのではないかという御懸念もありますが、それに対しては、今のような手だて、手だてといいますか構造上、十分これを理解して運用していかなければいけないということではないかと思います。

遠山委員 ぜひ、今の大臣の考え方を検察に徹底していただきまして、非行事実を争うケースで少年が過度に不利な立場に追い込まれることがないようにしていただきたいと思います。

 次に、虞犯少年は、今回、国選付添人の対象事件としておりませんけれども、その理由は何なのか、刑事局長から。

林政府参考人 国選付添人制度の対象事件の範囲の拡大となりますと、当然、国費でもって賄われるわけでございますので、その必要性を慎重に吟味しなくてはいけないところでございます。

 虞犯事件につきましては、犯罪に結びつくような問題行動があって要保護性は高い、しかしながら犯罪に至らないような少年でございますけれども、そういった少年に係る事件については、それ自体は、罪を犯した少年と比較しますと、社会的に見て、比較上は重要な事件であるとまでは言えないという点。

 もう一つは、虞犯少年は、家裁係属前の手続におきましては身柄を拘束されることはないわけでございます。そうしますと、今回の改正の趣旨の一つでございます、付添人に、被疑者国選弁護の段階等、継続的な活動を保障できないことから生じる不都合というものを今回の改正で解消するという趣旨がございましたが、そういった点にもこの虞犯事件については直ちには当てはまらない。

 こんな理由から、今回、その対象事件の範囲とはされていないところでございます。

遠山委員 よくわかりました。

 最後の御質問でございます。

 先ほど来、これも出ているわけですけれども、刑期が延びる問題につきまして、刑期が延びるということは、単純にその少年の社会復帰がおくれるという懸念の声もございますし、また、日弁連の資料等を読んでおりますと、やはり少年の凶悪犯罪というのは近年減少しているわけだから、今、刑を引き上げる必要性は乏しいのではないかというようなお話があります。

 私ども党内の議論では、そういった意見にも配慮しながら、今回の改正案を部会として、また党全体として賛成を決めたわけでございますが、きょうの参考人質疑を伺いながら、やはり一方で、刑期を上げるということに対しての深刻な疑念等を持たれている方は意外と多いなという実感も私は持ったところでございまして、改めて大臣の御答弁を伺いまして、私の質疑を終わりたいと思います。

谷垣国務大臣 いろいろな御批判もあるわけですが、特に少年犯罪の動向が減ってきたとか、あるいは、こういう傾向があるからということで今回の改正を考えているというわけではございません。

 むしろ、先ほど来何度か御答弁を申しておりますように、例えば無期刑と五年以上十年以下の有期刑というのでは、無期も選択できるんだけれども、有期刑は五年以上十年以下だというのでは、その間にちょっとすき間があり過ぎて、裁判官とすれば、適切な判断を示していくのに非常に苦労する場合があるという御指摘。

 それから、これも何度も申し上げておりますが、共犯なんですが、一番主導した者はまだ少年である、年はちょっと違うけれども従たる成年、そういう場合に、また著しく量刑がアンバランスに、量刑といいますか結果がアンバランスになってしまうということの指摘がございまして、そういったものに対応していこう、裁判所の選択範囲を広げていこうというのが今回の主たる狙いでございます。

 それで、もちろん、少年に対する刑罰につきましても、罪刑の均衡というものは私は必要なことだと思います。犯した罪に対して著しく軽い刑を科すということは、やはり少年の特別擁護といいますか、そういう観点から見ましても、あるいは社会復帰、健全育成という観点からしても、対応した処遇が必要ではないかというふうに私は思います。

 もちろん、それに加えて、少年に適切なプログラムというものを少年刑務所の中でも、あるいは、二十六歳になったら一般の刑務所に移りますがそういう中でも、適切な処遇をきちっと用意してやっていくということが大事ではないかと考えております。

遠山委員 終わります。

江崎委員長 これにて原案及び修正案に対する質疑は終局いたしました。

 次回は、来る二十八日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後六時十五分散会


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