衆議院

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第8号 平成26年4月1日(火曜日)

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平成二十六年四月一日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 江崎 鐵磨君

   理事 大塚  拓君 理事 土屋 正忠君

   理事 ふくだ峰之君 理事 盛山 正仁君

   理事 吉野 正芳君 理事 階   猛君

   理事 西田  譲君 理事 遠山 清彦君

      青山 周平君    安藤  裕君

      池田 道孝君    小田原 潔君

      大西 英男君    大見  正君

      門  博文君    神山 佐市君

      菅家 一郎君    黄川田仁志君

      小島 敏文君    古賀  篤君

      今野 智博君    末吉 光徳君

      橋本  岳君    鳩山 邦夫君

      平口  洋君    星野 剛士君

      前田 一男君    三ッ林裕巳君

      宮澤 博行君    郡  和子君

      田嶋  要君    横路 孝弘君

      杉田 水脈君    高橋 みほ君

      大口 善徳君    椎名  毅君

      鈴木 貴子君    西村 眞悟君

    …………………………………

   法務大臣         谷垣 禎一君

   法務副大臣        奥野 信亮君

   法務大臣政務官      平口  洋君

   最高裁判所事務総局民事局長

   兼最高裁判所事務総局行政局長           永野 厚郎君

   政府参考人

   (内閣法制局第一部長)  近藤 正春君

   政府参考人

   (内閣府死因究明等推進会議事務局長)       安森 智司君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 荻野  徹君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  辻  義之君

   政府参考人

   (総務省自治行政局長)  門山 泰明君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    深山 卓也君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    林  眞琴君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    西田  博君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    齊藤 雄彦君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  榊原 一夫君

   政府参考人

   (法務省情報化統括責任者(CIO)補佐官)    森田 勝弘君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 正木  靖君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            吉田 大輔君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           高島  泉君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  原  徳壽君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局派遣・有期労働対策部長)  宮川  晃君

   法務委員会専門員     矢部 明宏君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月一日

 辞任         補欠選任

  菅家 一郎君     大西 英男君

  三ッ林裕巳君     前田 一男君

  林原 由佳君     杉田 水脈君

同日

 辞任         補欠選任

  大西 英男君     菅家 一郎君

  前田 一男君     星野 剛士君

  杉田 水脈君     林原 由佳君

同日

 辞任         補欠選任

  星野 剛士君     青山 周平君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     三ッ林裕巳君

    ―――――――――――――

三月三十一日

 外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第三四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第三四号)

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

江崎委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として内閣法制局第一部長近藤正春君、内閣府死因究明等推進会議事務局長安森智司君、警察庁長官官房審議官荻野徹君、警察庁生活安全局長辻義之君、総務省自治行政局長門山泰明君、法務省民事局長深山卓也君、法務省刑事局長林眞琴君、法務省矯正局長西田博君、法務省保護局長齊藤雄彦君、法務省入国管理局長榊原一夫君、法務省情報化統括責任者補佐官森田勝弘君、外務省大臣官房参事官正木靖君、文部科学省高等教育局長吉田大輔君、厚生労働省大臣官房審議官高島泉君、厚生労働省医政局長原徳壽君及び厚生労働省職業安定局派遣・有期労働対策部長宮川晃君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

江崎委員長 異議なしと認めます。そのように決しました。

    ―――――――――――――

江崎委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局永野民事局長兼行政局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

江崎委員長 異議なしと認めます。そのように決しました。

    ―――――――――――――

江崎委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。初めに、橋本岳君。

橋本(岳)委員 皆さん、おはようございます。自由民主党の橋本岳でございます。(発言する者あり)ありがとうございます。絶大なる御声援をいただきまして、光栄でございます。

 この法務委員会で一期生のときに一遍質疑をさせていただきまして、二回目の質疑ということになりますが、きょうは死因究明制度について質疑をさせていただきたいと思います。

 先日の当委員会におきまして、民主党の郡委員がいろいろ重要な指摘をたくさんされました。そのときに私の名前も党の方の座長ということでお出しをいただいたわけでございまして、これは私もせにゃおえんな、こういうことでちょっとその続きと申しますか、いろいろさせていただきたいと思っております。

 資料が配付されていると思いますけれども、私の方で作成をいたした資料でございます。いろいろなことが書いてありますので、質疑の合間に眺めていただければいろいろ発見もあるのではないかなと。また、私の質疑の中でもここをごらんくださいということで見ていただくこともあると思いますので、お目通しをいただければと思います。

 多分きょうはいろいろ質疑が、通告はもちろんさせていただいていますし、それにできるだけ沿うようにはいたしますが、時間の関係そのほかでいろいろな質問が出るかもしれません。適宜御対応いただければと思っておりますし、大臣には最後に一言御感想を求めたいと思っておりますので、どうぞ聞いておいていただければと思います。よろしくお願いいたします。

 さて、では死因究明を何でしなければいけないのかなというところから話をしたいと思います。

 法務省の所管でございますが、戸籍法という法律がございます。ここの第八十六条に、死亡の届け出について規定がありますが、その2というところです。「届書には、次の事項を記載し、診断書又は検案書を添付しなければならない。」こういうことになっておりまして、要するに死亡届を出す、そこに死亡診断書ないし死体検案書がついていて、そこにドクターがなぜ人が亡くなったのかというのを書く欄があります。

 それは戸籍法に規定をされているわけですけれども、戸籍法を所管する法務省として、なぜ診断書とか検案書を添付しなければならないというふうにしているんでしょうか、教えてください。

谷垣国務大臣 今、橋本委員おっしゃったように、戸籍法はそのように定めているわけですが、これは人が亡くなった場合、戸籍に死亡した日、死亡した時間、それから死亡した地、場所ですね、地等の記載がされて、その死亡の事実が公証される、公に証明されるという仕組みになっているわけですが、そこで、そういった事項を証明する資料として、死亡診断書あるいは死体検案書の添付を求めて、戸籍の記載内容の真実性を確保しよう、こういう趣旨だろうと思います。

橋本(岳)委員 ありがとうございます。

 だから、法務省は、逆に言うと、死亡診断書などで必要な記載項目というのは死亡日時と死亡した場所、地だけだという話でありまして、では何で、なぜ亡くなったかという死亡に至る経緯を書く欄があるのか、なぜそれを調べなければいけないのかという話になりますが、これは法務省の所管なんですか。

高島政府参考人 お答えいたします。

 死亡診断書や死体検案書の作成につきましては、厚生労働省が所管しております。その中で、死亡に関する医学的、客観的な事実を正確に記入するように指導しているところでございます。

橋本(岳)委員 ちょっと意地悪な質問をしました。大変失礼をいたしました。

 厚生労働省さんが要するに死体の亡くなり方、人の亡くなり方については所管をされているということで御答弁があったわけでありまして、まさに、正確に書かれるべきということで指導されているというふうに伺いました。そうなんですよね。

 ただ、では、正確に書かれるべきということ自体はごもっともだと思いますけれども、実態はどうなのかという話で、ちょっと参考資料の方を見ていただきたいと思います。

 三枚めくっていただきまして、右下に十二という数字がある、円グラフが四つ並んでいるところがございます。「解剖率の多寡により死因は変わる」という見出しがついておりまして、東京都の二十三区、監察医務院が機能している、監察医制度がある、解剖率二一%のところと、東京都のそれ以外、多摩・島嶼部、ここは解剖率は五・五%と明らかに違うわけですけれども、そこで、書かれる死因が違っているよねというグラフが出ております。これは東京都監察医務院の資料よりつくらせていただきました。

 いろいろ指摘がありまして、不慮の事故死が多摩・島嶼部の方がちょっと少ない、これはそういうものが見逃されて病死扱いになっているんじゃないですかという指摘があったり、病死の中でも循環器系疾患の割合が少し高い、要するに、ほかの死因かもしれないところをそういうふうな扱いをしてしまっているのではないかというようなこと。

 あと、私は、資料には指摘がなかったんですが、グラフを眺めていて不思議だったのが、解剖率が高い東京都二十三区内の方が、死因不詳という記載があるんですね、四・八%。解剖率が低い、要するに検案だけで、あるいはほぼ恐らくこれは記載されているであろう多摩・島嶼部の不詳というのが〇・五%で、少ないんですよね。多分、解剖をしてわからなかったということはあるんだと思います。その結果として不詳になった四・八%という方が実は正しいんだと思うんですね。逆に言うと、解剖率が低いところは違う死因がついているんじゃないかなという可能性が指摘をされるようなグラフなのではないかなと思っているわけであります。

 だから、そういう意味で、厚労省さんは、正確に記載されるべき、客観的に、こういうことも書いておられますが、実のところどうなんですかということが問われるわけであります。

 それから、もう一個グラフを見ていただきたいと思いますが、十二のグラフの右上、十三の「医療現場では費用持ち出しでAi施行」という横棒グラフが並んでいるところがございます。Aiというのは、死亡時画像診断ということで、亡くなった御遺体に対してCTだとかMRIで画像を撮って死因を調べようということですけれども。

 日本医師会の調査によると、結構な割合の施設、調査に回答した施設の中でですから、その割合に意味があるかというとあれですけれども、ただ、八百七十六の施設がやったことがある。そして、どのような場合にやりますかというと、一番多いのは「治療中の患者以外の救急搬送後」であります。

 要は、救急車で突然患者が来るわけです。いろいろな処置のかいなく亡くなってしまいました。そうすると、死亡診断書を病院は書かなきゃいけませんが、それまでの経緯がわからないんですね。とにかく救命処置を一生懸命しました、だけれども救えませんでした。そういう人が多い中で、しようがないので、現場では、CTでも撮って何かわからないかなということで、実際にやったことがある。だから、誰が費用負担をしたか、「施設持ち出し」が一番多いわけです。

 そんな現状がある中で、費用負担というのは基本的に国はしていないんですよね、正確であるべきと言いながら。実際のところ、医療現場とかがしようがないから自分たちの持ち出しでやるんですよ、こういうことを。亡くなった人に関することですから、皆さん、真面目にされます。立派なことだと思います。政府はそれにあぐらをかいていませんか。そのように感じるわけであります。

 話を次の話にしますね。

 これは郡委員のところで、解剖率二〇%を目標という話がございました。警察庁の参考人の方から御答弁があったわけでありまして、監察医制度とかがあるところの数字を参考にしているんだから、そういうところもあるかもしれないし、今度、推進法もできるので、そこでの検討でできた組織も頑張るんじゃないかというような話で、警察は必要な解剖をするということで解剖率の向上に努める、こんな趣旨の答弁だったと思います。

 何というか、ドラえもんののび太君の答弁かと思いました。目標を立てます、やりますと言っておいて、では、二〇%、何でできていないんですか、ドラえもんがやると思っています、そんな話かなというふうに私は聞いて、少し腹を立てたところであります。

 さて、では、厚生労働省、監察医制度で二〇%を達成するように、日本平均で一一%ぐらいですから、残り九%ぐらい、監察医制度でやるということになっているんですか。

高島政府参考人 お答えします。

 現在、監察医制度は設けられておりますが、これは全国でやっているわけではございませんで、今、東京都とか横浜市とか、そういうところで、人口集中地域で行われているところでございます。

 その中で、解剖率につきましては、国として特段の目標は設定しておりません。基本的にはこの事務は都道府県の事務でございますので、都道府県の財政の範囲内でやっていただいている、こういうふうに考えております。

橋本(岳)委員 今、あっさりと、国として目標設定していないという話をされました。しかし、資料の一番最後のところ、「解剖率目標はいつ誰が達成するのか」というところの四角で、この解剖率二〇%というのは、そのときぱっと出てきた話じゃないんです。

 一番上は、衆議院法務委員会、この委員会で、下村委員長のときに提言書を出しました。そこにも、法医解剖数で倍増という表現をしてあります。当時一〇%ぐらいだったので、大体二〇%ぐらいということ。そういうところから二〇%というような数字は出ているし、そして、死因・身元調査法の審議のときに、これは郡委員が御指摘になりましたけれども、警察庁の舟本参考人が、二〇%、この数年で何とか向上することが目標と言っているんですよ。おかしくないですか。いつの間に旗をおろしたんですか。

 では、いいです。

 今、推進法に基づいて検討会をされています。では、検討会では、この二〇%を達成する、そういうふうに書いてあるんでしょうね。

安森政府参考人 お答えいたします。

 死因究明等推進計画検討会においても、死因究明の手法の一つとして実施される解剖の重要性については十分認識しております。必要な解剖が適切に実施できる体制づくりに向け、現在、種々検討が進んでいるところであります。

 この具体的内容につきましては、現在、まさに検討会において検討されている途中でございますので、現時点で事務局から明確に回答できることには至っていないところでございます。

橋本(岳)委員 状況としてはそうなんだろうと思いますから、議論中、そうですね、では、書いてあることを僕は期待したいですね。

 まさか政府が、法律をつくるときに、目標が困難ですと言ったんですよ。それで、さっきの高島参考人の答弁は、私は納得できない。警察が勝手に言ったんだ、厚労省は知らない、そんな話は通じませんよ。通じませんよ。

 あるいは、さっき、のび太君という言い方をしましたが、警察庁の司法解剖だけでも、これは十ページに「解剖率の地域間格差は大きい」というグラフが出ていますけれども、これは監察医制度も入っているグラフです。例えば、沖縄県二四%とか秋田県一四・二%とかは、司法解剖だけでこれだけの割合をほぼやっているものと思われます、監察医制度がないから、まあ承諾解剖があるかもしれませんけれども。片や、広島県二%、岐阜県二・六%。

 必要なものを必要なだけ解剖していますと言って、何でこんなに地域差があるんですか。本当に必要なことをやっているんですか。それとも、秋田県とか解剖率が高いところは、やたら殺人事件が多いとか、何か特殊事情でもあるんですか。やっていないんですよと言わざるを得ないですよね。

 だから、私は、郡委員の質疑というのは大変いいところを切り取っていただいた質疑だと思っていますし、その答弁、本当に腹を立てておりました。聞いていなかったですけれども、当時、後で議事録を拝見して、こんなおかしな答弁しているんだと思いました。

 そもそも、この死因・身元調査法ができたとき、警察庁が検討会をつくって、それをもとにできたと思っておりますが、検討会では、警察庁は、四十三件、犯罪死の見逃しがあったということを踏まえて、これをどうにかしたいということで新しい法律をつくろう、つくるべきだという提言があって、そういう運びになったわけですよね。それで、一つの目標として、要するに、必要なこともできていないかもしれないから、できるような体制をつくろう、だから二〇%を目指したい、そういう理由であったはずなんですよ。それをおろすなんて、どうしているんでしょうかという話でございます。

 これは、検討会が今内閣府の方でされているということで、鋭意取りまとめをされるんでしょうし、それをもとに閣議決定をされるということですから、きちんと、政府として、全体としてこういうものを目指すんだ、解剖率二〇%というのは、例えば何か合理的な理由があって変えるべきだというんだったら、それは議論して合理的に変えていただければいい。だけれども、そこで言われたその気持ちというのは守っていただかないと、必要なことをやっています、のび太君は何で成績が悪いんですか、僕は僕なりに自分で勉強しているんですと言っているのと同じですよ。ぜひ、そこはしっかりと御検討いただきたいと思います。

 さて、監察医制度の話が出ました。

 これは、制度としておかしな制度だと僕は思うんですよね、いろいろな経緯があるんだと思いますけれども。東京二十三区以外は、横浜市、大阪市、名古屋市、神戸市、全部、政令指定都市。なのに、実施主体は東京都、神奈川県、大阪府、愛知県、兵庫県ということで、実施エリアと実施主体がずれているんですよね。普通、政令市の中の事務は政令市でやるものだと、私も衆議院総務委員会というところにおりまして、そういう自治系の議論なんかもするわけですが、そういうふうに思うんですけれども、そういうことがあると、大阪都構想というのも合理的な構想だなと、この制度について言えば市と府がこんがらがったことをやっているので、僕は思ったりするところもあるんですけれども、厚労省、何でこんな制度になっているんですか。

高島政府参考人 監察医制度でございますが、都道府県知事が、特定の地域内における伝染病、中毒、または災害により死亡した疑いのある死体について、その死因を明らかにするために監察医を置きまして、検案をしても死因が判明しない場合には、これは遺族の承諾がなくても解剖できるという制度でございます。これは、昭和二十四年に制定されております。

 監察医が検案、解剖する対象地域が都道府県内の一部の地域に限定されている理由でございますが、これは、当時の伝染病予防法、今では感染症予防法になっておりますが、これによります感染症の予防対策、こういったものにつきましては都道府県知事が行うというふうになっております。

 監察医の解剖でございますが、解剖の実施に当たりましては、本来であれば、解剖というものは遺族の承諾が要るのでございますが、監察医というものは、承諾なく解剖できるという非常に強権的な色彩の強いものでございます。こういった観点から、さまざまな問題、これは死体の尊厳の維持とか、そういった面から問題が生ずるのではないかということで、伝染病とか中毒の影響が著しくあらわれる、特に戦争直後の非常に混乱した時代につくられたわけですが、こういったときに、そういった可能性が強くあらわれる可能性がある人口の密集地域、こういうことで限定したものでございます。

橋本(岳)委員 経緯というのはそうなんだろうと思いますが、いまいち、では何で政令市に移管しないんですかみたいなことはよくわからないなという感想もするわけであります。

 きょうは、総務省自治行政局長にお越しをいただいております。

 そういう地域、政令指定都市内でやる事業について都道府県が所管する、そんな事業というのは余りないと思うんですけれども、その辺の所感を教えていただけますか。

門山政府参考人 お答えいたします。

 ただいまお尋ねにありました監察医制度のような形で、府県の中の特定の政令指定都市の地域のみを対象にいたしまして府県の知事が事務を行うという形は、恐らく歴史的な沿革によるものだろうというふうに考えております。

 総務省として、完全に全ての制度について類似がないかというところを確実には申し上げられませんけれども、探しましたところで類似の仕組みというのは見当たらなかったということでございます。

橋本(岳)委員 類似のものは見当たらなかったということですから、余り例がないということは言えるんだろうと思うわけですね。

 よく言うじゃないですか、県庁所在地の政令市と県で余り仲がよくないとか、そこは、いろいろな事例はあるんだと思いますし、協力しながらやっているんだと当然思いますが、少なくとも、所管がねじれていることで、どのぐらい力が入るかというのは変わってくるようなこともあるんじゃないかと思うんですよね。

 これはちょっと何年の資料だか書いていないんですけれども、昔の厚生労働省さんの「監察医制度の現状について」という資料ですが、例えば愛知県名古屋市、平成二十三年中で、検案数六体、解剖数六体ということになっていますね。名古屋市は人口密集地域、それは間違いないです。それで、六体の解剖をしましたということで、一体どのぐらいの意味があるんだろうという話があったりということもあるわけですよね。

 このあたりの監察医制度の、しかも人口密集地域だけでやるんだったら、ある意味サンプル調査みたいな意味もあるんだとは思いますが、先ほどの話とあわせて、やはり解剖率をどうするのか考えるべきだと思いますが、検討会の報告ではどのように扱うつもりですか。

安森政府参考人 お答えいたします。

 現在、検討会において、御指摘のねじれ状況という議論はまだ出ておりません。ただ、地域的限定があるのがどうかという議論が出ているところでございます。

 そして、現在の方向は、今後適切に解剖等が行われる体制づくりを求めていく中で、厚労省としましても監察医制度のあり方というのを改めて検討していくという方向で今議論が進んでいる途中でございます。

 以上でございます。

橋本(岳)委員 先ほどの目標の話とあわせて、ぜひきちんと目標を持って、それをどうするのかという方向で御検討いただきたいと思います。

 次の話に行きます。

 これも郡委員の質疑で出てまいりました、警察庁が法医学会に対して司法解剖実施経費の値下げの提案をされているという御指摘がありました。

 では、法医学教室の状況はどんなものかということで、また資料の方を見ていただければ、先ほどの、解剖率の多寡により云々というものの上、十一ページのところですね。グラフはないんです、文字ですけれども、警察庁の報告書によると、司法解剖、行政解剖に従事する医師の数、百七十人ということになっています。当然ながら大都市に多いわけで、地方に行くと、岡山県一人とか広島県何人とか、そういう世界であります。

 法医学会から提言が出ていまして、「献身的努力によってどうにか維持されているのが現状である。」とか、「現状のまま推移し、」「政府の積極的な施策がない場合には、近い将来、各法医学教室において現在行われている法医解剖でさえ、十分に実施できない状態に陥る可能性がある。」こういう悲鳴に近い提言まで出ているという現状があるわけですね。

 その中で、警察庁さんから各種検査の今の単価というものをいただきました。資料御提供、ありがとうございます、本当は解剖もいただきたかったんですけれども。

 それで、現状に合わせて、数もふえているので、減価償却だとかそういうことも見直しをするということで予算の効率的実施を図るんだ、こんな話もある、やっているということで話をいただいております。ちょっと、ここはもう質疑を割愛します、時間がなくなってきましたので。

 それで、文科省さんに聞きたいんです。法医学教室がちゃんとやるかどうか、うまく回っていくかどうかということは、やはり大学を所管されている文科省さんの責任だと思うんですが、こういう話をされているということについて関心を持つべきではないですか。知っておられましたか、私が通告するまで。

吉田政府参考人 大学の法医学教室におきまして、警察からの委託に基づきまして司法解剖を行っている事例、これは年々増加傾向にございます。平成二十年度におきましては六千七百三十六件でございましたけれども、平成二十四年度におきましては九千二十四件という形でございます。それに伴いまして、法医学教室の教員の負担が大幅に増大をしているというところでございます。

 私どもとしては、大学の本来業務である教育研究等に支障が生じないように、業務負担に見合った十分な委託経費が措置されるべきだというふうに考えておりまして、司法解剖経費の見直しに関する検討状況については大いに関心を持っているところでございます。

 この話につきましては、前から、警察庁の方からは、この経費の見直しについては私どもも情報をいただいております。

橋本(岳)委員 ありがとうございます。前から情報をいただいておられた、知っておられたということで、引き続き関心を持って、予算の効率的な執行というのは大事な観点で、もちろん、やたら多額の委託費を払っていることがいいかというと、そんなことはないわけであります。

 だけれども、法医学教室というのは、もちろん、まず教育機関としての意味もありますが、ほぼこういう解剖制度によって運営が支えられているという面もあるわけでありまして、ほかのゼネコン業者みたいに、官公庁受注の単価が下がったから民間で頑張りますとか、そういうわけにいかないわけですよね。だから、そういう意味で、きちんとした維持ができるようにという水準で、その検査の単価あるいは解剖の単価、そうしたものを設定されるように要望を申し上げたいと思っております。よろしくお願いいたします。

 さて、もう一点、時間がだんだんなくなってきましたが、これも郡委員の質疑で亀岡大臣政務官が答弁をされましたが、地方の体制について、しっかり国が責任を持って実施できる体制をつくるという趣旨のお話をされました。

 地方自治体なり地方のいろいろな機関に何かをさせるというときに、やってくださいというお願いをするだけで物が動くかというと、動かないと思いますよ。きちんと法律に基づくなり、あるいは補助金を出すなりするというようなことが要ると思いますが、そうしたことについて御検討されているんでしょうか。

安森政府参考人 お答えいたします。

 死因究明等を進めていく上に当たっては、政府の取り組みとともに、地方における取り組みが重要であり、かつ、その連携が大切なんだろうと考えております。推進法では、死因究明とは、死体について、検案、検視、解剖その他の方法によりその死亡の原因などを明らかにすること、そして、死因究明の実施に係る体制の充実強化が喫緊の課題とされたところでございます。

 検討会におきましては、政府からいわゆる地方における取り組みの支援、すなわち検案、検視、解剖など、それぞれの機能、体制に対する各省庁からの支援策というものを今検討しておる最中でございます。先ほど申し述べましたが、その具体的な内容がまだまとまっておりませんので、確定的に申し上げることができないのが現状でございます。

橋本(岳)委員 では、まだ検討中ということですから、しっかり検討していただかないといけないと思っておりますし、さっきの解剖目標という話がありました。これはこだわりますけれども、もちろん解剖するのが全てだと思っていません。しかしながら、何の検査もしないで、検査の手段がなかった戦前とか戦後とかの、それこそ死体解剖保存法ができたころの話であれば、検案をして解剖するのは、もうサンプル的にしかしようがないよねということはあり得たと僕は思います。

 しかしながら、今、さっき言いましたAiというような、画像で遺体に傷をつけないで物を調べるとか、あるいはいろいろな薬毒物の検査だとか、そんなこともできる、警察の現場とかでもされていると思いますけれども。警察が必要だと思ったのをやるというところじゃなくて、検査をしてから、これは司法プロセスなのかそうじゃないプロセスなのかというのを本来は調べるべきなんだろうと私は思っていて、そういうものを目指すために、解剖率、本当は五〇%にしたいけれども二〇%という話が出ているのが、二〇%の経緯なんです。その思いはぜひ酌んでいただかなければ、いつの間にか目標がうやむやになって消えていて、必要なことをできるようにと言っているだけでは物事は前に進まないんですよね。

 資料の中で、一番後ろの、解剖率目標の上ですね、私の顔の吹き出しが出たあれがありますけれども、これは前回の法務委員会の質疑の中での話です。

 要するに、今私が言ったような話は全部ここでやっているんですよ、平成二十一年四月衆議院法務委員会。法医学教室の充実をどうするんですか、見逃し防止をどうするんですか、Aiをどうするんですか。全部どの省庁も、総合的に検討すべき課題だと言っている。平成二十一年にですよ、何年前ですか。

 それで、検討会ができた。立派な検討ができているんですよねと思っていたら、それこそ、解剖率目標、政府としては持っておりませんという断言をするような答弁まで出た。検討中ですから、これからきっと出るんだろうと私は信じておりますが、まさか答弁を覆すようなことなんかないよねと私は思っておりますけれども。

 まずこういう目標を立てて、それで、それをどう実現するかというときに、各省庁、では、どう分担をしようか、それをどう実現していこうか、予算をどうとろうかという話があって、連絡調整、連携というのが出てくるのであって、初めから各省庁でやらないといけません、連携をします、連携をします。誰もそれでセンターをとらない、目標に責任を持たない。そんな体制で今まで来ている。

 もし仮に、推進法は九月で切れますよ。検討会の役目は、それまでに閣議決定をつくって終わりですよ。だけれども、その後にできるものが、関係する閣僚が連絡調整をする、連携をする、それだけの会議だったら、つくる意味ないですよ。これまでと変わらないもの。違うでしょう。大きな目標があって、それをどう実現するかに調整が要るんですよね。そのような体制になっていないとおかしいと思いますよ。

 地方についても同じです。施策の検討をする期間じゃない、もう予算をとってやるという時期に差しかかっていると私は思います。

 ぜひそうした思いを酌んで、時間が参りましたので、ちょっと幾つか質問を割愛させていただきます、申しわけありませんが、最後に谷垣大臣の御所見、大臣も推進会議のメンバーですので、ぜひ感想を一言お伺いして、質問を終わります。

谷垣国務大臣 今の委員の御議論を伺いまして、このおつくりになった資料の、委員のお顔が吹き出しになっているのを拝見しますと、橋本さんのいら立ちが伝わってくるような御質疑だったと思います。

 やや求めておられる感想と違うかもしれませんが、私も今まで議員立法を何件かやってまいりまして、この役所だけの議員立法だったら割とスムーズにいくんですけれども、幾つかに関連するときはなかなか進まない。誰が中心になってやってくれるんだという実施になると、議員立法はできても、それを実際に活用していくとなると、行政が動かなければできないけれども、議員立法はしばしばそういうところで消化不良を起こしている例が多いというのを私も今まで体験してまいりました。

 恐らく、あなたのお父上、橋本龍太郎総理が内閣府や内閣官房をおつくりになろうというのも、橋本総理もたくさん議員立法をおやりになりましたから、そういういら立ちがあって、今の政府の体制ではなかなか難しい、そこで内閣府という発想になったんだろうと私は想像いたします。それで、今は内閣府で検討会を持ってやっているということになっているわけですね。

 私は、今まで議員立法のそういう問題点を見ますと、内閣府も今は肥大化で、むしろスクラップ・アンド・ビルドが必要だというような議論になっていて、先の展望はなかなかしにくいところもございます。だけれども、一つは、やはり議員立法は、こうやって国会で尻をたたいて、ねじを巻いていただかないと、なかなか進んでいかないという現実があると思いますし、そこでねじを巻くのもまた国会のお役割だろうというのを、今つくづく改めて感じた次第でございます。

 それからもう一つ、この間の郡委員の御質問、あるいは今の橋本委員の御質問で、私もちょっともう一回勉強をしてみたんです。

 私も、この議論が始まりましたときに、国家公安委員長をやめて間もないころでございましたから、今の長官が私のところに見えまして、こういうのをぜひ進めたいというお話があって、あのときは、やはりそういう熱意が非常におありだったというふうに思います。

 そして、私も議連の顧問をやらせていただいたわけですが、こうやって振り返ってみますと、困難はたくさんございます。まず、人も養成しなきゃいけない。人も圧倒的に足らないわけですね。それから、それを養成するにはやはり期間も必要だろう。それから、実際に実施していくためのいろいろな組織も必要だろうということになると、今お話しのように予算だということになりますと、まだまだ課題は物すごくあるんだと私は思います。

 結局のところ、今の政府の組織ですと、内閣府が中心になって牽引していかなきゃどうしようもないわけですが、今おっしゃるように、期限も切れる、そういうことでありますから、国会にも十分監視していただいてさらにこれを進めていかないと、なかなか進まないだろうと私は思います。

 私も内閣の中におりまして少しでもそういう努力をしたいと思っておりますが、今後とも、橋本委員初め、ねじを巻いていただきたい、このように思っております。

橋本(岳)委員 ありがとうございました。引き続き、機会をいただいたら取り上げてまいりたいと思います。

 以上です。終わります。

江崎委員長 次に、今野智博君。

今野委員 自由民主党の今野智博でございます。

 本日は、一般質問の機会をいただきまして、理事各位、先生方に厚く御礼を申し上げます。

 私は、きょう、一般質問ということで、何をテーマにということを考えまして、今ちょうど私自身が、自民党の司法制度調査会、きょう後ろに座っておられますけれども、鳩山先生を刑事の小委員長にお迎えして、そのもとで事務局長を仰せつかっておりまして、先日、その中の議論で、再犯の防止ということを取り扱いまして、具体的には保護司の皆さんの活動をテーマとしたわけですが、その中で、保護司活動につながる前の段階で、まずは、刑務所内での処遇、行刑の部分がどのようになっているのかということを、保護司につながる議論でもありまして、いろいろな御意見がありました。今、それを制度調査会の中でも提言としてまとめようということでやっているところです。

 きょうは、せっかくこうした場で御質問の機会をいただきましたので、行刑について、若干当局の方にお伺いをして、その後で、大臣、副大臣、政務官、それぞれから御意見を賜れればというふうに思っておりますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 まず、私自身も弁護士を七年ほどしておりまして、刑事弁護を、百件まではいきませんけれども、何十件かやってまいりました。その中で、弁護士活動というのは基本的には判決が出た段階で終了ということで、実際、受刑者になった方が刑務所内でどのような生活を送っているのかというところまでは、いろいろ受刑者からの手紙等で知る程度で、実際にはよくわからないということもございます。

 私自身、選挙区内を回っている中で、再犯者率の上昇ということがニュースなどで報道されまして、地元の方から、多分これは映画などの影響だと思うんですけれども、刑務所の中で実際受刑者はどういう生活を送っているのか、野球とかをやっているんじゃないかというようなイメージを持たれている方も結構いまして、まず、質問に具体的に入る前に、刑務所内の受刑者の日常の生活をちょっと当局の方から御説明いただければと思います。

西田政府参考人 お答えいたします。

 受刑者の食事とか就寝、その他の起居動作の時間帯については、法令に基づきまして、各刑事施設の長が定めるということにされております。受刑者はこれに従って生活するわけでございます。

 ちょっと具体的に、刑事施設におきます平日の一般的な例を申し上げます。

 朝、午前六時四十五分に起床しまして、洗顔、トイレを済ませまして、朝の人員点検を受け、その後、朝食をとりまして、居室を出まして、彼らが働く作業をする工場に向かいます。工場に向かって、入りました後は、準備体操ですとか、あるいは作業上の注意事項を確認するなどしまして、午前八時に作業を開始いたします。

 作業はおおむね午後四時四十分まで続けられますけれども、この間に、昼食時間及び二十分以上の休憩時間のほかに、毎日三十分以上の運動時間が設けられておりまして、さらに、入浴のある日、週二日ないし三日でございますけれども、この入浴日には入浴も行われます。また、この時間帯に、各種職業訓練と改善指導などのほかに、医務の診察ですとか、あるいは家族との面会なども行われるようになっております。

 作業を終了いたしますと、今度は居室に戻りまして、朝と同じ方法で夕方の人員点検を受けた後に夕食となりまして、午後六時ぐらいからは余暇時間ということになります。この余暇時間は、通信教育等の自習時間に充てたり、テレビやラジオを聞いたり、あるいは読書をするなどして、彼らが自由に過ごすという時間帯でございます。それで、午後九時になりましたら就寝ということになっております。

 一日、おおむねそういう時間帯でございます。

今野委員 ありがとうございます。

 私も、刑事弁護の中で、再犯者の方を何名か弁護したことがありまして、刑務所での生活というのは非常に厳しいんだというような話を聞いたこともあります。ただ、なかなかそれが犯罪、再犯の防止に結びついていないという現状があるのかなというふうに感じております。

 刑務所での生活を、どういうふうに処遇プログラムをするかというのは、昔から、刑罰の意義といいますか正当化根拠の議論の中で、目的刑論ですとかあるいは応報刑論というようなものがあって、ただ、日本の中では、そういった議論は脇に置いて、両方とも折衷した中で刑罰を科すんだというようなことが通説かなと感じておりますが、刑務所内での受刑者一人当たり、年間かなり多額の費用がかかって生活を送られているわけでして、これが更生に結びつかなければ、やはり国家としては非常なマイナスですし、我々一般社会で暮らす住民にとっても、再犯者率をいかに下げて治安をよくしていくか、本当に犯罪のない社会を築いていくためには必ず必要だろうというふうに思います。

 先ほど矯正局長に御答弁いただきましたけれども、実際、刑務所の中では、本当に朝早く起きて刑務作業等に従事するということが日課になっていると思いますけれども、ただ、実際、刑務所内で、職業訓練ですとか、あるいは、さらに進んで資格を取得するとか、そういうことを行わせる機会もあると思います。そういった職業訓練あるいは資格の取得がどの程度実際の刑務所内でのプログラムの中に組み込まれているのか、こちらについても当局の方から御答弁をお願いいたします。

西田政府参考人 お答えいたします。

 刑事施設、刑務所等における職業訓練というものは、受刑者に職業に関する免許とかもしくは資格を取得させまして、または、職業に必要な知識及び技能を習得させることを目的としております。

 職業訓練を充実させることは、受刑者の改善更生ですとか円滑な社会復帰を図る上で極めて重要と考えておりまして、現在、刑事施設におきましては、ホームヘルパー科、情報処理技術科、フォークリフト運転科等の職業訓練を実施しておりまして、平成二十四年度の職業訓練受講者数は延べで一万四千六百七十八人ということになっております。

 また、刑事施設において職業訓練によって取得できる資格につきましては、介護職員初任者研修修了、あるいは情報処理技術者、危険物取扱者、理容師と多岐にわたっておりまして、平成二十四年度の資格、免許等の合格者数は延べで六千四百六十四人というふうになっております。

 以上でございます。

今野委員 ありがとうございます。

 御答弁いただきましたように、職業訓練を受講されている方、あるいは資格を取得されている方もかなり多いわけです。

 ただ、これは私の弁護士時代の再犯者の方と接したときの感覚ですが、ちょっと具体例を挙げますと、その方はかなり窃盗の常習ということで、それこそ若いころから刑務所を行ったり来たりして、本当に、一般の社会で過ごす期間というのが、その方の年齢はもう六十を過ぎていましたけれども、五年間にも満たなかったんじゃないかというような方です。

 その方はよく熊手を盗む。熊手を盗むというのは、高価な熊手を盗むというわけじゃなくて、地方のスナックとかに行くと、熊手にお札をかなり入れてありまして、それを夜間に侵入してそのまま持ってきてしまうというようなことで、常習者として窃盗を繰り返していた方です。かなりの長期間刑務所にいたはずなんですが、そういった職業訓練ですとかあるいは取得した資格が、では実際、実社会に出て活用されているのかどうか。

 本当に、刑務所内で訓練を受けた、あるいは教育を受けたというだけで終わってしまって、なかなか実社会でそれが生かされていないんじゃないかなというような実態を感じていたんですが、実際、どの程度これが実社会の就労に結びついているのかということを御答弁いただけますでしょうか。

西田政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げましたように、刑務所における職業訓練と申しますのは、受刑者の勤労意欲を高めて、職務上の有用な知識とか技能の習得に役立つものでございます。したがいまして、出所後の就労についても非常に有効に結びつくというふうに考えております。ただ、刑務所を出所した受刑者全てに対しまして、刑務所での職業訓練や資格が就労に直接結びついたかということを追跡調査するというのがなかなか難しゅうございまして、把握できていないのが実態でございます。

 ただ、職業訓練受講者と非受講者、受講していない者の再犯状況を比較しましたところ、平成二十年中に出所した受刑者の平成二十四年までの再入率、再び刑務所に来た率を申し上げますと、職業訓練受講者が約二三%であるのに対しまして、非受講者は四一%ということになっておりまして、非受講者の再入率は受講者の約一・八倍ということになっております。

 この結果を踏まえますと、さらに職業訓練の効果を検証しまして、再犯防止に資する職業訓練の種目とか内容を改善していかなければならないというふうに考えておりまして、あわせて、職業訓練を受講した出所者の就労状況を把握することもまた重要であろうかと思っております。

 今後とも、私どもだけではできませんので、更生保護官署等の関係部局と連携を図りながら、出所後の就労状況等について情報把握をしたい、そのための方策を講じてまいりたいというふうに考えております。

 以上でございます。

今野委員 ありがとうございます。

 これは本当に把握している数字だけでもかなり差が出てくるのではないかなというふうに思います。

 実際、私自身も刑事弁護をする中で、そういった再犯の方というのは、何度も犯罪を繰り返して刑務所を出たり入ったりしているという中で、家族からもそれこそ見捨てられるような形で身寄りがいなくなってしまって、当然友人とかそういう人もいない、社会の中で頼りになる方がいなくて、情状の証人を探すにも本当に一苦労する。

 要は、根っからの犯罪志向者といいますか、そういう方というのは、仮に、いるのかもしれませんけれども、ごくごくわずかだ。再犯をされて刑務所を出たり入ったりする方も、私なりに考えるのは、社会との交流、接点、あるいはお世話になった人とのつながりとか、そういったものがあれば、犯罪に手を染めずに、実社会の中できちんと生活をしていけるんじゃないか、そういうものが逆になければ、それこそ、根なし草のように風で流される、そのときの一時的な感情で犯罪にまた走ってしまう。本当に、刑務所でのつらい生活を重々経験したにもかかわらず、そういった形で犯罪に手を染めてしまうというのは、そういう原因が一つ大きなものとしてあるのかなというふうに感じています。

 先ほど御説明いただいた中で、職業訓練が職業に結びついていけば、今の日本の再犯者率もかなり下がっていくのではないかということを考えていまして、今後再犯防止ということで法務省を挙げてやっていく上で、まさにそれを中心として考えていく必要があるのかなと。

 では、実際、職業訓練あるいは資格の取得を就労に結びつけるために、今後、法務省としてどのような取り組みを行っていくおつもりがあるのか、具体的に御意見をお伺いしたいと思います。

西田政府参考人 お答えいたします。

 おっしゃるとおり、資格取得、中でやった職業訓練と就労を結びつけるというのは非常に重要だと考えておりまして、法務省では、平成十八年度から、厚生労働省と連携しまして、刑務所出所者等総合的就労支援対策というものを実施しております。これは、刑務所内で受講しました職業訓練とか取得しました資格を就労に結びつけるために、就労支援において求人と求職のマッチングを促進することが重要であるという観点からやったものでございます。

 そのため、本年一月末、厚生労働省の協力を得まして、事業者が矯正施設を指定しまして、どこどこ刑務所というふうに指定をしまして求人情報を提供するというような新たな運用を開始することになりまして、その旨、ハローワークに通知されたというふうに伺っております。

 この運用がなされますことは、事業主にとってみますと、特定の訓練を受けた、いわば求める人材を多く収容している矯正施設に的を絞って求人ができるという利点がございます。また、受刑者にとっても、矯正施設に収容されている間に、受刑中に円滑かつ効果的に事業主の採用面接を受けられるようになるというふうにも考えております。

 さらに、この運用によりまして、受刑者は早期から就職先について具体的なイメージを持っていろいろな生活を送ることができますし、求人と求職のマッチングが促進できるのではないかというふうに期待しているところでございます。

 今後、矯正施設としましては、求人情報を受刑者等に対して積極的に周知しまして、新しい運用が全国で活用されて刑務所出所者等の就労支援が一層充実するように取り組んでいきたいというふうに考えております。

 以上でございます。

今野委員 ありがとうございます。

 実際、私が刑事弁護の中で扱った再犯者の方、先ほど窃盗の例を挙げましたけれども、もう一つ例を挙げるとすれば、振り込め詐欺に加担していた方で、それこそ、かなり朝早くから夜六時、七時ぐらいまでずっと振り込め詐欺のマニュアルに従って電話をかけ続ける。それでどのくらいの報酬があるかといえば、本当に数十万、少なければ数万円。見方を変えると、やっていることは犯罪ですから一〇〇%悪いんですけれども、かなり勤勉というか、熱心に朝から晩までやっているわけなんですよ。だから本当に、そんなことをするんだったら真面目に働けよというふうに思うんですが、なかなかそういう機会を得ないままに、働いた経験もなくそういった悪事に手を染めているという実態もありました。

 あとは、受け入れる側ですね。これは、いかに職業訓練等、資格を取ったとしても、受刑者、いわゆる前科者というような言葉がありますけれども、これを受け入れる社会の方としてもそういった偏見があって、受け入れて果たして大丈夫かどうかということもやはり就職をする上ではかなりネックになってくるのかなというふうに感じております。

 ですから、要は、これは一朝一夕ですぐ実現できるような話じゃありませんので、いかにこうした受刑者がきちんと就労して、そして社会内で更生して一定程度業績を上げるといいますか、そういった実績を積んでいくことが重要ではないかなと思います。

 そのためには、先ほどハローワークとの連携の話を御説明いただきましたけれども、ぜひ法務省でそういった活動をしているんだということを実際の民間の企業の側にももっともっと周知徹底を図るべくアピールしていただければと、またそのことが今後必要になってくるのではないかなと思いますけれども、この点についてはぜひ御所見を奥野副大臣に承れればと思います。よろしくお願いいたします。

奥野副大臣 今の御質問、私は、全般論として、日本人全体で取り組まなくちゃいけない大きな課題なんだろうと思います。

 安倍内閣は基本的にオリンピックに向けて世界一安全な国というものを目指しているわけでありまして、そのためにはやはり、犯罪に手を染めた人たちをいかに更生させるか、再犯を防止して社会の中へもう一度取り込もうじゃないか、こういう運動が一番大事だろうと思います。

 再犯防止をするためにいろいろな要素があるんですけれども、一番は、まず家族からスポイルされている、これが一番一つのネックになっていると思います。それから二つ目は、これは順番はどうあろうと、とにかく仕事をする技術を身につけさせるということも大事だろうと思います。それから三つ目は、もうあの刑務所には戻りたくないよという考え方も必要だろうと思います。

 どっちかというと、社会から孤立しちゃっている人たちをいかに更生させるかということが一番大事なことでありまして、今お話をずっと聞いていると、職業訓練をして社会へ戻してやろうということだろうと思います。私は、それは一面正しいと思います。しかし、まだまだそれだけではだめなんだ、こんなふうに感じるところですね。

 我々としてまだやらなきゃいけないことは、いろいろな多くの人たちを巻き込んでいって、再犯をさせない、そして社会へ復帰させる、そういうプログラムに我々の役所がリーダーシップを発揮できればプラスなんだ、こう私は思っております。

 先ほど、ハローワークへ展開方法を変えました、職業案内をハローワークへ出します、そういうようなことを矯正局長が御答弁したわけでありますけれども、そういったこともしておりますし、あるいは、協力していただいた就労支援企業に対してそれなりの謝金をちゃんと出していかなくちゃいけないということも必要だろうと思います。これは、具体的にはまだまだ少ないので、もっと来年からふやそうということで今動いております。こういう形で、できるだけ社会へ復帰できる環境づくりをしていくというのが我々の考えるべき一つの手順。

 それからもう一つは、先ほどちょっと刑務作業の話がされたと思うけれども、私は、何カ所か見てみて、あんな刑務作業じゃ戻りたくなるよ、こういうふうに感じるんです。だから、本当に厳しい作業をして、やはりあの刑務所にはもう戻りたくないというような意識を持ってもらうことも必要だろうと思います。

 いろいろなことを考えつつ、多くの人に協力していただけるようなプログラムを我々としてまだまだ開発しなくてはいけないことがたくさんあるというふうに感じているのが、今の所感と言われれば、そういうふうに感じるところであります。

 最後になりますけれども、今、自民党の中で、刑務所出所者等就労支援強化特命委員会というのをやっていまして、五月の終わりまでには全部答えを出そうということを考えて動いているわけでありますけれども、こういうグループともしっかりと手を組みながら、我々として積極的に進めていきたい、こういうふうに思っております。

今野委員 ありがとうございます。

 ぜひ、法務省、あるいは他省庁とも連携を図りながら推進していただければというふうに思います。

 これまでの議論とはちょっと視点を変えて、では、今、刑務所内で喫緊の課題として、よく報道でもされていますが、矯正医官が圧倒的に不足をしている。受刑者だから、そんな医療なんてという方も周りにいますが、やはり病気やけがで満足な職業訓練が受けられないですとか、あるいは、せっかくの処遇プログラムも受けられなければ全く意味がありません。まずは、心身ともに健康な状況でしっかりと刑に服して、職業訓練を受けて、そして社会に復帰をして更生させるというのが国家の役割でもあるのかなというふうに思います。

 その中で、医官がいないために、外部の病院に連れていくと、警備の費用とかで、医官を厚遇する以上の費用が余計にかかってしまうというような話も聞いていまして、それだと、まさに本末転倒になってしまいますので、この矯正医官の不足について、今後、法務省としてどのような対策を喫緊の課題としておとりいただけるのか、ぜひ谷垣大臣にお答えいただければと思います。

谷垣国務大臣 矯正医官が本当に不足して、矯正医療がもう非常にぎりぎりのところまで来ていると私は思っております。

 それで、今委員もおっしゃいましたけれども、矯正施設は、国家権力でもって人の自由を剥奪して、そこに入れておくわけですから、社会の一般的な医療水準から照らして適正な医療をきちっとやっていくというのは国家の責務でもあろうと思いますが、さらにそれを超えて、委員の御指摘のとおり、社会に戻ったときに、再犯防止という観点からも、社会の中できちっと対応していけるだけの健康状態というものを確保するということは、私は重要だろうと思います。

 そこで、今いろいろなことで足らなくなっているわけですが、去年の七月に、医師や弁護士等外部の有識者から成ります矯正医療の在り方に関する有識者検討会というのをつくりまして、さまざまな見地から検討いただきまして、ことしの一月に報告書をいただきました。

 その報告書には、やはり矯正医官の給与水準というのも改善する必要があるとか、やはりお医者様の生きがいとして医療技術が落ちていくというようなことではなかなかできない、だから医療技術の維持向上のための研修とか研究のあり方、機会、こういうものをどうするか、あるいは、公務員ですから、兼業というものは非常に制限されておりますが、それではなかなかいかない場合があるのではないか、それから、定年を過ぎてもまだ十分にやっていただける場合が多々あるとか、それから、地域医療との関係とか、いろいろな問題点を指摘していただきました。

 それで今、私は、それをやはりきちっと実施していかなきゃならないということで、私自身も、例えば給与の問題や兼業の問題になりますと、人事院と話をしなければなりません。人事院総裁に私どもの問題意識をお伝えして、検討していただくようにお願いするとか、今そういうことをやっておりますので、そういったことを速やかに具体化していく、その努力をしなければいけない、このように思っております。

今野委員 ありがとうございます。本当に喫緊の課題ですので、早急に進めていただければと思います。

 最後に、ちょっと時間がなくなってしまったんですが、そういった刑務所内での処遇プログラム、それがまた社会に出たときに、今度は、今後、刑の一部執行猶予制度も始まりますので、保護司さんにかなり大きな期待といいますか、かかると思います、また負担もかかると思います。ただ、一方で保護司の不足等も言われていまして、そちらについてもきちんと手当てをしなければいけないと感じておりますが、今後、そういった保護司さんの活動を支援するために、法務省としてどのような対応をお考えなのか。ぜひこれは平口政務官にお伺いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

平口大臣政務官 お答えをいたします。

 御案内のように、保護司の制度というのは我が国独特の制度でございまして、世界に例を見ない、非常に重要な更生保護の制度になっているわけでございます。

 ただ、基本がボランティアの力をかりているということで、無給の非常勤国家公務員、こういうことであります。したがって、ボランティアの方々が非常に重要な更生保護の任務を負うということで、現実問題としていろいろと負担が大きくて、困難な問題というのも幾つかあるわけでございます。

 こういったようなことを踏まえて、法務省としてもいろいろ努力をしているんですけれども、近年、残念ながら保護司の数が減少傾向にあるのも事実でございます。

 今法務省が一番力を入れておりますのは、更生保護サポートセンターの設置ということでございます。これは、保護観察の対象者との面接場所、あるいは保護司同士のいろいろと協議をする場ということで、保護司活動の拠点ということでございます。本年度予算で、前年度比百カ所増の三百四十五カ所、これを予算計上いたしております。

 それと、経験の浅い保護司の不安とか負担感を軽減するために、保護観察の対象者をベテラン保護司と複数で担当する、こういったようなことも予算計上いたしております。

 それと、幅広い層から多様な保護司の適任者を確保するために保護司候補者検討会というのを鋭意やっておりまして、平成二十五年度から全国八百八十六の全保護区でこれを開催できるように措置いたしております。

 今後とも、保護司の方々の御負担をできるだけ軽減して、誇りとやりがいを持って活動いただけるように所要の支援をしてまいりたい、このように思っております。

 以上でございます。

今野委員 ありがとうございました。終わります。

江崎委員長 次に、郡和子さん。

郡委員 民主党の郡和子です。

 まず冒頭、一九六六年、静岡市で起きました強盗殺人事件、これで死刑が確定しました袴田元被告の第二次再審請求で、静岡地検がきのう、再審開始を認めた静岡地裁の決定を不服として東京高裁に即時抗告しました。

 私はとても残念だなと思いました。今回弁護側の鑑定に当たった本田克也教授、DNAの専門家です、最新の知見を示したというふうに思っています。DNA鑑定の結果を初め、証拠の捏造の疑いが濃厚という重い判断に対して、検察はメンツから抗告したと多くの国民が受けとめたのではないか、そんなふうに思うところです。

 証拠改ざんの不祥事が次々発覚した後に、検察は、改革の一環として、倫理規程、「検察の理念」をみずから策定されています。「権限行使の在り方が、独善に陥ることなく、真に国民の利益にかなうものとなっているかを常に内省しつつ行動する、謙虚な姿勢を保つべきである。」この倫理規程が本当に生かされているのかどうか。これからさらに長い時間を要することになります。早く再審へのレールを敷いてほしいとまず冒頭申し上げて、質問に入りたいと思います。

 さて、スラジュ氏の強制送還中の死亡事件についての国賠訴訟であります。きのう控訴したとの小さな報道がありましたけれども、事実でしょうか。我が党の多文化共生議員連盟は、先月の二十八日に、控訴しないこと、また、国費送還のあり方の抜本的改善の検討に着手することなどを大臣に申し入れました。控訴の報道は事実なのかどうか、お尋ねします。

谷垣国務大臣 事実でございます。

 きのう、スラジュ氏、ガーナの方でありますが、その死因、制圧行為と死亡との因果関係の有無、あるいは制圧行為の違法性の有無等について、国側の考え方、主張と相異なる認定が地裁でされたということがありまして、昨日、三月三十一日に控訴したところでございます。

郡委員 送還中の制圧行為等のビデオ撮影については、三月二十七日の参議院の法務委員会で、大臣も、適切、適法を証明するのに有効な手法と評価される答弁をされました。離発着の際はビデオ撮影は控えるようにというふうに航空会社から言われているとの事情説明もございましたけれども、運航の安全確保に差し支えのない限り、強制送還、制圧のプロセスの記録保存と一層の可視化に最大限努めていただきたいと思います。法務省の取り組み姿勢を改めて確認したい。

 また、戒具の使用についてですが、内規が、この事件の発覚後、平成二十三年十二月十二日付で見直しが図られたようですけれども、戒具を使用する必要があると認めるときを、より具体的、限定的に明確化する必要があるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

平口大臣政務官 お答えをいたします。

 ビデオのことと戒具のことと二つお伺いになりましたので、それぞれについてお答えをいたします。

 強制送還において、入国警備官の警務行為が適法かつ適正に行われたことを証明するためにビデオ撮影をするということは非常に有効な手段である、このように思います。ただ、今まで、機内に入るまではそれができたんですが、機内に入るときに航空会社の方から断られる事案が結構あったものですから、我々も困っていたんですけれども、本件の事案後、退去強制手続における制止措置等の際のビデオ撮影要領というのを整備いたしておりまして、現在では、航空機内においても被送還者が抵抗することが予想されるような場合は、事前に航空会社に確認を行い、可能な範囲内でビデオ撮影を行う、このように改めております。

 また、戒具の使用でございますが、各種規程等の内規については、現場の職員の適法かつ適正な職務行為の遂行に資するために、より明確なものが望ましい、このように認識をいたしております。

 このような見地から、入国管理局において、これまでもいろいろと見直しを行ったところでございますが、今後も、規程、要領等の内容について、例えば矯正の方の例もありますし、また警察の方の例もありますので、そういったようなこともよく検討して、緊急時に関する規程のあり方を含めて今後とも検討していきたい、このように思っております。

郡委員 ありがとうございます。

 戒具の操法、第一節には、使用するときは、必要以上に緊縛し精神的に苦痛を与えたり、身体を傷つけてはならないというふうに書いてありましたし、それから、手錠の操法のところでは、留意事項の中に、食事及び用便等を制限することにならないよう使用するとございました。

 昨年のチャーター機による忌避者の送還の際ですけれども、長時間、食事の折も、それからトイレの際も拘束を解かれなかった実態をお伝えいたしました。内規を見直したというふうにおっしゃいましたけれども、実態をしっかり調査、検証していただきたいというふうに思います。

 次は、外国人の活用、前回の質問のときに中途半端に終わってしまったものですから、また聞かせていただきたいというふうに思います。

 去る一月二十四日の、第一回建設分野における外国人材の活用に係る緊急措置を検討する関係閣僚会議、この後の記者会見で、谷垣大臣は、足らざる部分は外国人の力をかりなければいけないけれども、それをどういう手法でやるのかということは幅広く検討しなければいけないというふうに述べられました。

 関係閣僚会議において国交省が配付いたしました「建設産業の担い手の状況について」と題する資料においては、建設産業の担い手の確保のために、外国人技能実習生等の活用促進が有効との認識を示し、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック関連の建設需要に対応する担い手を確保するという効果が期待できるとされております。

 そして、その関係閣僚会議で配付された今後のスケジュール等によれば、総理補佐官を中心に各省庁局長級による検討を行って、年度内をめどに関係閣僚会議で措置内容を決定することになっていたわけで、大臣も前回はそのように御答弁されました。

 年度末、きのうまでにはその決定がなされていないようであります。検討されているこの措置の内容、現段階で御説明をいただきたいと思います。

榊原政府参考人 お答えいたします。

 建設分野におきます外国人材の活用につきましては、委員御指摘のとおり、本年一月二十四日の関係閣僚会合におきまして、当面の時限的な緊急措置の決定を目指すことが確認されております。

 その措置の内容につきましては、現在、関係省庁間で検討がなされているところでありまして、いまだ措置の内容については最終的な決定に至っておりません。

郡委員 検討中で未定であるということで、その中身、おおよそのところも御説明がなかったわけですけれども、報道によれば、政府は、建設業で外国人労働者の受け入れをふやすために、二〇一五年度から外国人技能実習制度を拡大させる方針を固めたとされております。

 その前には、公明党と自民党の皆さんたちが提言をまとめて、これを出されております。

 公明党の提言では、東日本大震災の復興や東京オリンピック・パラリンピックの建設需要に対応するには、緊急かつ時限的な措置として、有能な外国人技能者の活用を促進することが有効策となると強調されております。具体的には、専門的知識、技術を有する外国人向けの特定活動という在留資格を持ち、一層の技能向上などを望む建設分野の技能実習生に対して、滞在期間が終了した技能実習生の滞在延長、期間上限は通算五年、それから、実習終了後に帰国した者の再入国、期間上限は三年を認めるという提案でございました。

 一方、自民党の提案では、建設分野の実習を終えた外国人について、技能実習生とは別に、特定活動などの在留資格を与え、建設現場での労働を認める制度を検討すべきとされております。

 労働力不足を補うために、技能実習制度もしくは元、現技能実習生を活用しようという議論が活発に表立ってされているというふうに認識をしております。

 大臣は、三月十九日の委員会答弁で、技能実習制度の見直しとは切り離した形で、緊急の労働力不足にどう対応していくか、この二つは一応別でございますというふうに御答弁されました。

 別というふうにおっしゃっているわけですけれども、建設分野に限って、もしこの報道のようなことがあって、この制度の上に滞在期間を積み上げていく、こういうような方式を決めた場合、私は、それはアリの一穴となって、技能実習制度全体にモデルとして広がっていくんじゃないかと危惧をしているところです。この点について、私の心配に対してどうお答えでしょうか。

谷垣国務大臣 技能実習制度は、今さら申し上げるのもなんでございますが、技能の開発途上国への移転による国際貢献という考え方でつくった制度でございまして、今の緊急の事態とか、そういうことに直接リンクさせるのはよくないと思います。やはりそれはそれで、長期の見通しのもとでこの制度をつくっていかなければなりません。

 そういった考え方のもとに、今、そちらの方ではその検討をずっとやってまいりまして、ことしの年央と言っておりますが、めどに、今まで指摘されたいろいろな問題点を改善していくということで案を出したいと思っております。

 一方、今御議論のオリンピック、パラリンピックの対応であるとか、あるいは東北の復興に建設労働者が足らないという問題も看過しているわけにはいかないので、やはりそのための努力はしなきゃいけないと思います。

 ただ、今おっしゃったように、それをリンクさせていくのではなしに、当面の問題は当面の問題として考えていくということで、この二つをきちっと区別しながら考えていく必要があると私は思っております。

 それで、今の段階は、三月三十一日が年度末でございます、もう四月一日になってしまいましたが、若干その調整がおくれております。今、まとめるための努力をしている最中でございますが、私が今申し上げたような考え方を基本に、最終的な案をまとめてまいりたいと思っております。

郡委員 私は、大臣の答弁は正しいと思います。しかし、今、与党内で行われている議論にしても、政府の中の議論にしても、やはりこれが一体となって議論されているというふうに思っているわけです。

 技能実習制度については、二十六年年央ということですから、まだちょっと先ですけれども、こちらの関係閣僚会議の方は、年度内をめどというふうにおっしゃっていました。これはもう過ぎてしまいましたけれども、まさか、その年央まで待つわけはないと思います。きっと近々にこの検討結果というのが発表になるんだろうというふうに思います。

 これの整合性、ここをどういうふうにするのかわからないので重ねてお尋ねしているわけです。今の大臣の御答弁でも、私はちょっと理解ができませんでした。しっかり、全く別なことであるというふうな形で議論を進めていただきたい。関係閣僚会議の結果を注視させていただきます。

 経済団体からはこの実習生の制度の拡充、また、日弁連からは反対に制度の廃止など、この制度をめぐっては賛否両論ある中で、外国人受入れ制度検討分科会での制度の抜本的な見直し、これは先ほどもお話ししたように年央ということですけれども、既に、私自身も申し上げましたとおり、これは一体となって議論をされているように、報道を見ても、一般の皆さんたちはそのように受けとめておられるんじゃないだろうかと思います。

 法務省として、二〇〇九年の衆参両法務委員会での附帯決議に沿って、「技能実習生の保護、我が国の産業構造等の観点から、総合的な検討を行う」というふうに附帯決議がされているわけですから、はっきりと、なし崩し的な制度の拡充はしない、緊急の制度とは関係がないというふうにここでお示しをいただきたい。はっきりお答えいただきたいが、いかがでしょうか。

谷垣国務大臣 先ほど御答弁申し上げたとおり、技能実習制度は、技能実習制度本来の目的があるわけですから。そして、今委員がおっしゃったように、議論の中には、両方を混同してと言うと言葉は悪うございますが、そういうふうな報道とか議論もないわけではありません。しかし、技能実習制度は技能実習制度自体として、やはり問題点を見直す必要があるということで議論を進めてまいりました。

 それから、オリンピックが決定しまして、そちらの方で今度は労働力をどうするかという議論が起こりまして、たまたま時期が重なったものですから、混同したような議論が、イメージを持っておられる方もあります。しかし、この二つはきちっと切り離していくべきものと私は考えております。

郡委員 与党の提言、それからマスコミの報道を見ますと、どうしても一体となって議論されているように受けとめざるを得ないように思います。

 政府は、これまで一貫して、単純労働での就労というのを認めてこなかったわけですよね。限定つきとはいえ、この方針を変えることになるのか、あるいは、変えずに、あくまで技能を有していることを前提として受け入れるのか、お尋ねします。

榊原政府参考人 本件緊急措置に関しましては、建設分野において即戦力となれる外国人材が求められていると承知しており、こうしたニーズを踏まえ、対応策を検討しているところでございます。

 なお、本件緊急措置は、復興事業のさらなる加速を図りつつ、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック東京大会の関連施設整備等による当面の一時的な建設需要の増大に対応することを目的としており、時限的、緊急的措置をとるものであり、これによって恒常的に建設分野での外国人の受け入れを行おうとするものではなく、従来の外国人労働者の受け入れに関する基本方針を変更するものではないと理解しております。

郡委員 今、局長からの御答弁でしたけれども、時限的、緊急的に行うものだというふうにおっしゃいました。

 その方々は、入国後、ほかの職場への移動は可能なのでしょうか。単身を条件にするのでしょうか。受け入れ機関はどういうふうに、どこが担うのでしょうか。賃金や労働条件、人権問題などのチェック機関をどうするんでしょうか。検討すべき論点、課題は少なくないというふうに思っています。

 与党の提言やマスコミの報道から見て、政府内で検討されている措置は、特定活動という在留資格を付与すると私は推測をするところですけれども、その場合、この特定活動の活動の種類はどのような規定となるのか。また、こうした在留資格を、出入国管理及び難民認定法の改正をすることなく、告示で定めるのかどうか。看護師、介護福祉士候補者は告示で特定活動というふうにされているわけですけれども、同じように告示で定めるのかどうか、お尋ねします。

榊原政府参考人 委員御指摘の特定活動という在留資格につきましては、我が国の社会経済情勢の変化等により、あらかじめ定められた活動類型のいずれにも該当しない活動を行う外国人の上陸、在留を認める必要が生じた場合に、臨機に対応できるようにするため設けられた在留資格であり、その活動内容については法務大臣が個別に指定することとなっております。

 本件緊急措置につきましては、いまだその内容は決定しておりませんけれども、この特定活動の在留資格で対応することも一案ですが、いずれにいたしましても、当面の建設需要に対応するための時限的な緊急措置としてどのような対応が適切か、関係省庁と緊密に連携し、検討を進めているところでございます。

郡委員 検討を進めているところだということで、お答えはいただけません。

 時限的、限定的であるということは繰り返しおっしゃっているわけですけれども、では、建設事業主、対象となる外国人を、技能実習生ということではなく、建設労働者として雇用する位置づけになるのでしょうか。その場合、労基法その他の労働法制が適用されて、日本人の建設労働者と均等な処遇を受けるというふうに理解をするんですけれども、それでいいかどうか。

 なぜこういうふうに言いましたかといえば、技能実習生も労働関連法は適用されているわけですけれども、賃金についても、上陸基準省令それから変更基準省令で、報酬は日本人が従事する場合の報酬と同等額以上であることというふうに定められているんですが、実態はそうなってはいないわけですね。

 二〇一〇年の制度改正以降も、技能実習制度のもとで労働関連法違反が後を絶たないのに、どういうように、制度上、日本人と同等という賃金、処遇等が実質的に現場で担保できるのか、その点について伺いたいと思います。

宮川政府参考人 お答えいたします。

 建設分野における外国人材の活用につきましては、具体的な枠組みは現在検討中でございますが、一般論として、外国人が労働者として業務に従事する場合、日本人と同じように、当該外国人労働者につきましては、使用者との間に使用従属関係が認められれば、労働基準法等の労働法規が適用されることとなります。

郡委員 適用されるはずなんですけれども、実態がそうなっていないから、私が申し上げているわけです。

 それから、技能実習生の拡充ということにもしなるとすれば、今も、やめる自由がないですとか、雇用先の移転がかなわないわけですよね。これをどういうふうにするのか。これらもしっかりと制度設計をしていく必要があるんじゃないかというふうに思います。

 公明党さんの提言では、外国人の雇用主に対しては、人権に十分に配慮して、身分、待遇の安定に努めなければならないというふうにされておりますし、自民党の提言案では、外国人労働者の人権や労働条件を守る監視体制を強めるよう促したというふうにあります。同じ問題意識を持っておられるんだろうなというふうに認識をします。であるならば、この技能実習制度の枠の拡充ということで果たしていいのか、そういうふうに私は強く指摘をしたいと思います。

 それで、オリンピックの建設需要の急増に対する緊急対処ですけれども、これは、我が国はもう既に経験済みです。

 一九九八年に開催されました長野オリンピックの施設建設、その他の関連工事は、資格外就労やオーバーステイの外国人労働者が支えた、そういうふうに承知しています。しかし、その外国人の労働者の皆さんたちが、工事終了に当たって、突然、不法滞在などとして摘発され、強制帰国させられたと当時のマスコミで大きく報じられ、人権機関からも批判を浴びました。

 長野県では、外国人登録者が一九九〇年におよそ一万人、九一年二月にオリンピック開催が決定いたしまして、その後、開催前年の九七年の六月には二万九千七百九十人と、およそ三倍に数がふえました。当時の証言によりますと、在留資格の有無にかかわらず、多くの外国人が建設現場で働いていたということが明らかになっております。

 しかし、当時は、外国人の労働者を受け入れるための法制度整備がされておりませんでした。未整備のまま多くの外国人をオリンピックのために働かせていた当時と比べて、現在、せめて制度は整えようじゃないか、こういうふうな視点があるということについては、一歩進んだというふうに言えるのやもしれません。

 ただ、このように、重要な課題を緊急措置の名のもとに短期間のうちに決めてしまおうとしている点、私はとても拙速だと思います。

 ここに、皆さんにはお配りしませんでしたけれども、週刊誌の特集の記事、それからこれは新聞の記事です。「外国人労働者 用が済んだら摘発」「長野五輪直前! 発覚した外国人労働者「使い捨て」事件」、こういうものです。

 長野オリンピックの際には、長野県警が、ホワイトスノー作戦というふうに銘打って、外国人の摘発を強化いたしました。一九九七年一月一日から九八年三月十四日までにこの作戦を展開いたしまして、入管、警察は、当時、施設建設のために働いていた非正規滞在などの外国人に対し、一九九七年十月末までに、十数回に及ぶ合同摘発を実施しております。入管法違反の検挙も百二十一件と、前の年の二・五倍に上がったということも報じられております。用済みとなった外国人労働者たちを一掃した形であります。

 実際、逮捕それから退去強制となった長野県内の外国人の数ですけれども、九六年の一年間で二百九人だったのに比べますと、九七年は十月の時点で三百八十六人に達したというふうにも報じられております。

 今の関係閣僚会議の議論や与党の提案を見てみますと、私は、この長野オリンピックのときと同様に、労働力不足を緊急に補うために外国人を使いたいという日本側のニーズ、これが明確にあるにもかかわらず、本来であれば発展途上国のニーズを満たすべき技能実習制度あるいは技能実習生の活用で乗り切るというような姿勢が見えているように思えてならないのです。

 長野オリンピックの当時、当面の建設需要を満たした後に、県警と入管で取り締まりを強化し、強制送還していったわけですけれども、今回は最初から在留期間の上限を決めて帰っていってもらおうと、形を変えているだけというふうに見えるわけです。

 私は、この長野オリンピックのことから学ぶとすれば、きちんと正面から、産業や労働市場の構造変化ですとか労働力需給のミスマッチなどの実態に見合った政策、制度、これを整備して、真正面から受け入れる覚悟というのを政府として持つべきだというふうに思います。

 そういう意味でも、業界と関係省庁が安直に技能実習制度を流用して、目先の、その場しのぎの手法で労働者を補うべきではないというふうに思うわけですが、大臣、御答弁ください。

谷垣国務大臣 今、委員が長野オリンピックの例をお挙げになって、委員の今おっしゃったことは、要するに、そのとき、多少不法であろうと、外国人労働者を不法滞在の者でも使って、その後摘発を強化したような事実があったのかと私もちょっと調べてみたんですが、そういうことは確認できませんでした。その今お持ちの資料を後でいただけるとありがたいと思っております。

 それで、建設分野における外国人材、オリンピック等々にどう対応していくかというのは、やはり小手先で考えずにきちっと考えるべきだと私も思っております。その際には、我が国の産業であるとか治安であるとか、あるいは労働市場への影響、そういう国民生活全体の影響も十分考慮に入れて、受け入れ体制のあり方をきちっと考えていく必要があるのではないか、私もそのように考えております。

郡委員 私も、この問題、長野五輪でも似たようなことがあったようだというふうな話を聞きまして、あちこちに資料をかき集めさせました。かなりのものが出てまいりました。これは、役所が出さないというんだったら、それこそ問題だというふうに思います。かつてこのようなことがあった、この経験にやはり学ぶべきであろうというふうに思います。

 今、それこそ人口減少、労働力の減少を迎える中で、外国人を受け入れるということをどういうふうに考えるのかというのは、まさに政府として、国としてどうあるべきかという議論になるわけでして、今回の建設の労働力不足を補うという次元だけでの議論では終わらないということを重ねて指摘いたします。

 それから、外国人の問題では、入管の牛久の管理センターで二人の死亡があったという小さな囲み記事を見させていただきました。入管施設の監視委員会というのが持たれているはずだと思いますけれども、これについても後ほどまた質問させていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

江崎委員長 次に、田嶋要委員。

田嶋委員 おはようございます。きょうも三十分質問させていただきます。

 先ほど、大臣、答弁を聞いておりまして、矯正医官の関係なんですけれども、ちょっと事前通告なしでございますが、これは、私どもが委員会から栃木に視察をさせていただいて、PFIと女子刑務所、そこでも現場の皆さんから状況は非常に深刻だという話を聞きまして、そして、昨年もことしの頭にも、いろいろなニュースも流れておりました。

 私、てっきりこの国会で閣法で出されるものと思っておったんですが、今のようなスピード感の対応で大丈夫なんですか、大臣。

谷垣国務大臣 私、急がなきゃいけないと思っているんです。

 それで今、先ほども申し上げましたが、人事院であるとか厚労省、総務省、それから文科省等々も協議中でございます。ねじを巻かなきゃならないと思っているんですが、相手方もあることで、今、いつとは明確にお答えできないのが残念でございますが、早く結論を出したいと思っております。

田嶋委員 限られた知識ですが、かなり病人の方が多い、体のぐあいの悪い方が入っている、そして、一人病院に行くと三人刑務官が必要だという話で、中の刑務官がもっと大変になるということで、今の刑務官の現場の御苦労の大きな要因の一つがそこにあるというふうに私は認識をしておるんですね。

 そういう意味で、こういう問題が何でもっとスピードを上げて解決できないのか、非常に疑問なんですよ。例えば、医師会だって、それはやりたくありませんとはとても言えない中身だと思うので、例えばそういう公的な任務を負っている方々が順番でやっていくとか、もう何らか仕組みを考えるしかないわけでございますから、これは本当に待ったなしだというふうに思っております。ぜひスピードを上げてやっていただきたいということを重ねてお願い申し上げます。

 それから、もう一つ、通告なしでございます。先ほど奥野副大臣の御答弁がございました。あれでは戻りたくなるよなという刑務所の中の御感想がございました。もう少しどういう意味かということを教えてください。

奥野副大臣 詳しくどういうふうに法律で定められているかわかりませんが、今刑務所へ入っておられる方が高齢者が多いということもあるのかもしれません。ただ、私の目から見ると、極めて単純作業、軽作業が多いというふうに感じたので、そういうふうに申し上げたんです。

 ただ、例えば網走の刑務所で私が目にしたのは、大変苦労をしている、ハード作業だなというふうに感じたものもありました。

 だから、刑務所ごとに、ここは高齢者がたくさんいるから軽作業というふうになっているケースもあるかもしれませんが、とにかく、刑務所へ行けば食事はついている、医療はついている、寝泊まりも自由だというような意識ではだめなんだ、やはり厳しく更生させるという意識をもっと持ってもらいたいものだなということで申し上げたわけであります。

田嶋委員 私も、何度も刑務所を見る中で、副大臣と同じような印象は持っておりまして、今の懲役刑の実態が非常に中途半端な感じがいたします。

 懲役の懲は懲らしめるということでありますから、もちろんそれは教育目的だけではないと思いますが、罪を償うという意味で、懲役という名にも余りふさわしくないものが多いし、一方で、出てきた後、何か役に立つのかなというような、全く役に立たない、むしろ、実社会での適応能力をどんどんそいでいくためのような活動が刑務所の中で長々と行われているのではないかなという印象を受けます。

 前回、少年院の中と比較して、もちろん少年院の方が教育目的が色濃く出されておるわけなんですが、刑務所の中でのあり方というのは、やはり今のままではいけないというふうに私自身感じております。

 あともう一つ、禁錮刑というのがありますね。禁錮刑というのはあるんですが、ほとんどの人は懲役刑を選ぶという話を聞きました。それは、やはり、じっとしているよりは単純作業の方が疲れなくて楽だわというような感覚があるのかなと私は見ておるんですけれども、副大臣、その辺はどうお考えですか。実際には、禁錮刑ではなくて懲役刑を選ぶ方の方が圧倒的に多いということのようですが。

西田政府参考人 お答えいたします。

 刑といたしましては、受刑者が懲役刑を選ぶとか禁錮刑を選ぶわけではなくて、懲役刑、禁錮刑というふうに判決がございます。

 ただ、現在、日本の受刑者の九九・五%以上は懲役刑でございまして、残りのわずかな禁錮刑についても、禁錮受刑者は、やはり日々無駄に過ごしたくないという気持ちがあるのだろうと思うんですけれども、作業をやるというふうに希望する者が多いのは事実でございます。

田嶋委員 だから、禁錮刑になっても、結果的には、懲役の方がいいということで、多くの人が作業を希望されるんですよね。そういう実態も、やはり副大臣がおっしゃった、あれでは戻りたくなるような作業がほとんどであるからこそ、そういう選択になっているのではないかなという印象を私自身は持っておりますので、ぜひ、更生ということを当然重視しながらも、懲役刑のその名にふさわしい形を考えていただきたいなと私自身も思っております。

 それでは、質問通告の順番で御質問させていただきますが、私も袴田事件の再審開始決定に関連してお伺いをしたいと思います。

 前回、死刑制度についてもお伺いさせていただきました。やはり大変重くて難しい問題だということを改めて国民の前に突きつけられたような印象なんですが、これは、死刑にかわる終身刑の導入ということもやはり法務省はきちっと議論を始められた方がいいのではないかと私は思っております。

 大臣、前回と今回では再審開始決定というニュースが流れる前と後でございますけれども、ああいったことが出てきた後、どんなお考えをお持ちですか。

谷垣国務大臣 委員の今のお考えは、死刑というのは、もし冤罪が起きたら取り返しがつかないということもある、今の無期ですと途中で出てくる場合もある、だから終身刑というものを導入して死刑を抑制していったらどうかというお考えのように思います。

 実は、私は、今から十年ぐらい前に、当時の私どもの与党体制の中でそのような議論が起きまして、私自身が座長になりましてかなり勉強を重ねた経緯がございます。

 そのときに幾つか感じた問題点、今も反すうしながらいるわけですが、終身刑については、結局、社会復帰の望みがない、そういう中で生涯拘禁されるというのが、やはり受刑者に相当な絶望感も与えるという感じを当時持ちました。それから、長期間の拘禁によって受刑者の人格がどうなるかというような問題点も当時指摘されました。もっとも、今のように死刑が確定しても長い間執行されないというと、同じような問題が起きているということもございます。

 当時の私が議論をしていたことから考えますと、まだ相当議論の余地が残っているなというのが私の今の正直な感想でございます。

田嶋委員 前も申し上げましたけれども、ヨーロッパなどでは、死刑制度も執行をやめてから制度をなくすまで半世紀以上かかっている国があるということを一つ見ても、そんな簡単なことではない。だからこそ、国民的議論は早く始めた方がいいのではないか。実際に袴田事件のようなケースが出てきますと、多くの国民がやはり冤罪ということをもう少し考えるようになってきていると私は思います。

 終身刑のいろいろな課題を大臣はおっしゃられましたけれども、当然同じぐらい死刑に関する課題もあるわけでございますから、そこは前回も申し上げました、もう少し政府も踏み込んでいただければいいのではないかというふうに思っております。

 もう一つお伺いします。裁判員制度が現在続いておりますけれども、死刑判決ということも裁判員が行わなければならない。そして、前回の提言の中で、これは非常に重いという提言もありましたが、再審開始決定、こういったことを受けまして、今後の裁判員制度に関して、従来と同様のあり方で本当にいいのか、死刑判決の可能性の高い事案には裁判員は入れていかないような、そういう何らかの工夫が必要なのではないか。大臣、その辺はどのようにお考えですか。

谷垣国務大臣 裁判員制度は、国民の感覚を裁判の内容に反映させよう、そして、司法に対する国民の理解と支持を深めていこうという狙いだったと思います。

 そう考えますと、最も深刻な犯罪であり社会の関心も高い死刑が言い渡されるような刑事裁判に裁判員が参加をするというのは、制度趣旨としては妥当なものである、むしろ、そういう制度をつくるのであるならば、こういう重大な事件にこそ国民が参画するということがあってよいのではないか、私は今でもそのように基本は考えているところでございます。

 しかし、また、いろいろ事実的な問題点もございまして、初めから、裁判を始めるときから死刑を求刑するというようなことが必ずしも決められるわけでもない、結局、公判が終わりの段階になってどういうふうにしていくかを決するというようなこともございまして、委員のそういう問題提起、このところ、しばしばそのような問題提起をお聞きして、私もそれなりに考えてみなければならないなとは思っておりますが、さて、裁判員制度というものをどう考えるかということも相まって、私は、今のところは、このような重大事件にこそ裁判員制度というのはあるのではないかというふうに考えております。

田嶋委員 そういう立場に置かれてみないとわからないことも多いと思うのですが、私もそういう立場に置かれたことはございませんが、裁判員制度はおおむね順調だという評価は私もしておりますけれども、導入前から、その点は結構きついんじゃないかなという心配はしておりました。そういう意味で、そういう声も出てきておりますので、それは現時点ではということでございますけれども、引き続き、その可能性を考えていただけないかなというふうに御要望を申し上げます。

 それから、もう一点だけその袴田事件に関しまして、関連してといいますか、きのうも参議院で御答弁をされておりました、現在、百三十一人が確定死刑囚ということで入っておるわけでございます。私は、この袴田事件に絡んでつくづく思ったのは、DNA型鑑定というのは、時代とともに、前にわかっていないことがどんどんわかってくるようになるということがはっきりしてきているのではないかなというふうに思ったんですが、その百三十一人の死刑囚の中で、当時のDNAの検査結果が決め手となって、証拠能力があると認められて、最高裁で死刑が確定したケースというのは何人あるのか、そのことを御答弁いただきたいと思います。

林政府参考人 ただいまお尋ねの、判決の中でDNA型鑑定が決め手となった件数というふうなことでございますが、お尋ねの人数については法務当局としては把握をしておりません。

田嶋委員 きのう質問通告をしまして、これはすぐには答えられないという御答弁が返ってきまして、では、すぐじゃなくてもいいから、時間をかけて確認してもらって答えていただきたいというふうに申し上げたわけでございますが、それは可能なんですか。

林政府参考人 お尋ねの中で、DNA型鑑定の結果が判決の中で例えば証拠として用いられたかどうかということについても、判決書の中で証拠の標目の記載方法等によっても異なりますし、一義的に明らかでない状況がございます。あるいは、証拠として証明する事実の内容でありますとか証拠としての評価等、これはそれぞれ、各事案ごとに判決の中での捉え方が一義的でないものですから、DNA型鑑定の結果が結局、各判決の中で証拠として採用されたということの捉え方を計上することについては、非常に困難なものがあると思っております。

田嶋委員 白黒はっきりしないものも多いかなとも思いますけれども、百三十一ケースでありますから、物理的に何も不可能はないし、そして、この百三十一人は死刑が確定しているんだけれども、法務省からは、まさに死刑執行していいのかどうかを毎日調査しているという話も聞いておりますので、データは手元に全てあるわけでございます。

 大臣、今のような事務方の御答弁でいいのかなと。これだけ袴田事件を契機に、私のような素人もDNAというのは信頼できると思っていたけれども、後から出てきたDNAが前のDNAを覆しているようなところがあるわけなので、これはやはり国民としてはみんな知りたいと思うし、知る権利があると思うんですが、大臣、今のような答弁のままでいいんでしょうか。

谷垣国務大臣 技術的には、今刑事局長が御答弁になったようなことで、なかなか簡単でないところがあると思います。

 しかし、私は、証拠の扱いそのものは、私が余り口出しすべきことではないと思っておりますが、再審等々、きのうも御答弁申しましたけれども、百三十一件で再審が八十ですね、当然、再審をするというようなことになれば、やはりその辺も洗い直されなければならない場合が多くなってくるのではないかと、ここは想像でございますが、想像しておりますから、そういう最新のいろいろな科学的見地に立った再審等々では、検証というのをしなければならないのではないかと思っております。

田嶋委員 ありがとうございます。

 きょうは、これに関してはこのぐらいでとめたいと思いますけれども、死刑制度を廃止したイギリスなども、死刑を執行した後で真犯人が出てきてしまって、それに社会が衝撃を受けて、それがきっかけとなって死刑の議論が行われ、執行停止、そして死刑制度廃止ということで、今、イギリス大使も一生懸命日本にも働きかけもされています。EUに加盟するためには、死刑制度があっては入れないということはもう周知の事実でありますから、我が国もそういうステージに来ているのかなということを感じます。

 袴田事件の話の後で、飯塚事件というのもニュースで流れました。この方はもう既に死刑執行後でございます。こういった話もありますので、これは大変重いと思いますけれども、やはり避けて通ることはできないテーマではないかというふうに私自身感じております。

 それでは、次のテーマに移らせていただきます。

 昨年やりました免除申請でございます。これは大臣にもこの間申し上げましたが、やはり定点観測をしっかりやるということが、言いっ放しの質問、答えっ放しの答弁にならない鍵だと考えておりますので、きょうは少し確認させていただきます。

 それでは、刑務所に入っている受刑者の総数、そのうちの年金保険料支払い義務年齢の者は今どれだけいるのかということ、それから、免除申請、超党派で附則に入れまして、昨年からスタートしました。九月に局長通知が出たわけでございますが、どういう取り組み状況でしょうか。

西田政府参考人 お答えいたします。

 まず、受刑者総数等でございますけれども、いずれも平成二十五年末時点の速報値でお答えいたします。収容受刑者総数は五万五千三百十六人、そのうち、年金保険料支払い義務年齢である満二十歳以上六十歳未満の受刑者数は四万五千二百五十二人、全受刑者数の八一・八%ということになっております。

 これらの者に対しまして、先ほどおっしゃいましたように、去年の九月二十四日から、新たに刑務所に入ってくる、つまり新受刑者に対しまして、刑執行開始時の指導において免除申請用紙を配付いたしまして、年金保険料の免除申請の指導を行っております。また、既に刑の執行開始時の指導を終えて受刑中の者についても、免除申請用紙を配付して指導を行いました。

 これらの実施状況につきましてちょっと申し上げますと、去年の九月二十四日から十二月末までの間において、新受刑者につきましては五百八十一人、新受刑者以外の者につきましては三千七百二十六人、合計四千三百七人が免除申請書を年金事務所等に提出しているという報告を受けております。

 以上でございます。

田嶋委員 後半の部分は資料一で配っておりました。ちょっと資料の一ページをごらんいただきたいと思います。

 要は、刑務所の中には、四万五千人、約八割が免除申請の資格がある年齢の方々だと。しかし、今の御答弁にもございましたが、新受刑者で五百八十一人、新受刑者以外で三千七百二十六人ということなんですね。きょうは四月一日ですから、年度が改まったわけでございますけれども、私の印象は、少し低いのではないかなということです。

 刑務所によって相当ばらつきがございまして、これは二ページ物の後ろのページだけ張りつけたんですが、私の地元の千葉刑務所などはかなり、どういう理由かはわかりませんが進んでいるようでございます。例えば、千葉刑務所はLAでございますから、十年以上入っている方がいらっしゃる。そうすると、今度の制度の変更によりまして十年で年金の受給資格が出てくるわけでございます。

 そういう意味では、一日も早くそれぞれの受刑者の無年金状態をなくしていくために、このアクションも、もちろん雇用の受け皿の方がより大きなインパクトがあると思いますが、この年金の関係も大事だと思うんです。

 大臣、これはだらだらやっていても仕方がないわけでございます。そして、最初は大変なんですが、一回、今入っている人が全員終われば、あとは毎年入ってくる新受刑者の部分だけに当然なりますね。

 それからもう一つ、これをごらんいただくと、免除申請は五百八十一人ですけれども、申請が認められた人はわずかに六人なんですね。これが総数かというと、把握していないというような答弁だったわけでございますが、ここも含めて、免除申請が認められないと要するにこれは免除にはならないわけですから、ここまでちゃんと、最後まできちんとやってあげないと、これは中途半端な印象でございます。

 大臣、ぜひ、いつまでにこれをやり切るということを、少し明確にターゲットを置いていただきたいと思うんですが、いかがですか。

谷垣国務大臣 今、刑事施設は、保険料の納付は国民の義務である、だから納付できる者についてはちゃんと払いなさいという指導、それと同時に、所得が少ないとかいう理由で払うのが著しく困難な場合には、申請によって免除の申し出ができるのでそれをやりなさいという指導をしているわけでございます。

 今、もう少しねじを巻けというのは私もわからないわけではないんですが、そもそも、免除申請を行う者を具体的目標として設定して、数量目標でやっていくというのは、本来自分で払うべき設計の年金制度というものとどううまくかみ合うかなというようなあたりが、私には若干疑問なところがございます。

 ただ、現実に再犯防止とかいうことを考えたときに、年金を受け取れるようにしていくということはこれまた大事なことでございますから、必要な手続をとることは重要だと考えておりまして、もっと手続をとりやすい環境をどう整えられるかについては工夫をしてまいりたいと思っております。

田嶋委員 何か、強力に推進することに若干ためらいがあるような御答弁の印象でございます。

 前のアンケートの結果でも、年金制度が自分の人生にとってどういう意味をなすのか、そういうことの理解も十分ある方が多いとは思いませんし、面倒くさいとかいろいろな理由で関心を持ってくれない。ある意味では、そういうハンディを背負っておるわけでございますので、やはりここは、再犯防止というその一点に絞ってこういうことも大事だということを私は申し上げております。

 新しく年度がかわりましたので、年度末の数字はもうすぐ集計されると思います。次回、臨時国会でまたこのフォローをさせていただきますので、ぜひよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 次に、もう一つ、ちょっと分野が変わりますが、これも昨年お伺いをした公共データの民間開放に関してお尋ねをいたします。次の資料二でございます。

 そういう意味では、前回質問した、死刑制度のアンケート調査のデータが一切ないんだというような状況、それも非常にお粗末でございますけれども、これは登記のことでございましたけれども、法務省のこの登記情報の公開状況が、世界的には、かなり先進国の中で劣る状況にあるということでございます。

 きょうは、政府CIO補佐官、法務省にも三名おいでなようでございますので、そのお一人においでいただきました。これは、問題としては指摘をし、大臣も昨年、前向きな御答弁をされておりますので、その後どういう状況になっていて、もう既に先進国最低の評価ではない状況になっているんでしょうか。いかがでしょうか。

 そしてもう一つ、これは安倍内閣の日本再興戦略の四十三ページに、二〇一五年度中に世界最高水準の公開内容にすると、これはきょうは添付していませんけれども、書いてあります。ということは、あとちょうど丸二年です、今年度と来年度で丸二年で二〇一五年度が終わるわけですから。最高水準にするためには、今ここが何といってもボトルネックになっておりますが、いかがでしょうか。

森田政府参考人 お答えします。

 社会保障・税番号制度に基づきまして、二〇一五年度、平成二十七年度に、商業・法人登記情報である法人の名称、住所のほか、番号制度の開始に当たって付される法人番号が公表されることを受けております。

 法務省として、この情報提供のための作業を進めているところでありますが、これらの情報については、オープンライセンス化、ウエブでの公開、それから機械判読可能化、オープンフォーマット化、バルクでの提供という、日本のオープンデータ憲章アクションプランにより実現を目指すべきとされている要件を満たすことになると承知しております。

 法務省のCIO補佐官としましては、番号制度の実現に当たり、商業・法人登記情報を提供する仕組みにつきまして、効率性、柔軟性、それから拡張性を備えたものになるよう指導をしてきたところですが、今後も実施に向けて引き続き必要な指導を続けてまいりたいと考えております。

田嶋委員 ありがとうございます。

 突然の御指名だったのであれでしょうけれども、要は、マシンリーダブルといいますが、マシンリーダブルも含めてあと二年でございますので、日本再興戦略に資する形で、法務省としても課題山積でございますので、この委員会で余りこのオープンガバメントの話は出ませんが、時々聞かせていただきます。

 大臣も、俺に関係ないというふうに思わずに、これは大事な話です。だから、データを全部捨ててしまったなんというのはあり得ない話ですから、それも反省をして、今やり方を変えているというふうに聞きましたので、ぜひともこの登記情報についてもよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 それでは、質問の時間が限られてきましたので、最後のページをごらんください。資料の一番最後、六ページ、これは新聞記事でございます。

 これも昨年御報告をいたしました、千葉市においての事件を起こした者の雇用、ようやく新聞記事になりまして、実施がされます。いろいろ批判もありますが、当然、それは国民の間の理解を広げて、排除ではなくて、やはりそういう人たちを受け入れていかなきゃいけない、先ほど副大臣がおっしゃったとおりだと私も思っております。

 では、大臣、大変重要なことだと昨年答弁いただきましたが、どのような進捗状況なのか。私は、千葉市が始めれば、今、政令市は大阪市と千葉市だけですから、政令市に関してはもう年内にばっちりやっていただかなきゃいけないと思っておりますし、それから、法務省だけではなくて、全霞が関でばっちりやっていただかなきゃいけないと思っておりますし、大企業も競って雇用を考えるような、そういう空気に持っていくのが大臣の役目だと思いますが、いかがですか。

谷垣国務大臣 地方公共団体については、平成二十二年八月に大阪の吹田で初めて保護観察対象者等を雇用する取り組みが開始されまして、保護観察所においては、保護司会長等とともに首長を訪問するなどして、その理解と協力が得られるよう働きかけを今続けているところでございますが、現在まで、全国では十四の府県それから市において同じような取り組みが始められております。

 それから、中央省庁では、去年の五月に、法務省におきまして保護観察対象少年を非常勤職員として雇用する取り組みを始めているほか、他省庁に対して保護観察対象者等の雇用受け入れに関する理解と協力を求めてまいりまして、まだ現時点では残念ながら御紹介できる段階にはございませんが、一部の省庁で同様の取り組みの実施に向けた具体的な検討はしていただいているものと承知しております。

 それから、大企業については、経済団体、企業団体、主要企業等の目に触れる広報誌に出所者等の社会復帰支援の重要性を説く記事を出していただくなどして、こういう方々の雇用に対する理解と協力を求めておりまして、先般、報道を通じて関心を持ったとして、広域で事業を行う大規模な法人から協力雇用主に御登録をいただくというようなこともございました。そして、実際に保護観察対象者を雇っていただいているというようなことも出てきておりまして、さらにこれは力を入れて理解と協力の輪を広げていかなければならないと考えております。

田嶋委員 ありがとうございます。

 出所者の雇用をお願いしますというのも大事なんですが、私のポイントは、犯罪被害者を一人でも減らすということなんです。そのためには再犯を減らす。そのためには、刑務所から出てきた人を排除すると結局自分たちの社会が悪くなるんだということを、やはり法務省、法務大臣、しっかりと言っていただきたい。私も、場所に行くたびにこの話はしておりますので、ぜひ一緒に頑張っていきたいと思います。よろしくお願いします。

 ありがとうございました。

江崎委員長 次に、高橋みほさん。

高橋(み)委員 日本維新の会の高橋みほでございます。

 きょうもどうぞよろしくお願いいたします。

 本日は、生と死、誕生と死に関しまして質問をしていきたいと思っております。

 まずは、死の方から質問させていただきます。

 三月の十九日、民主党の郡議員が死因究明制度について御質問されました。きょうも橋本岳議員が同じような点に言及されておりました。私も、以前から死因究明ということに関しましてはかなり興味がありましたので、きょうは、それに続ける感じで質問をさせていただきます。

 郡委員も述べられていましたが、現在、日本における司法解剖率というものはかなり低くなっております。お配りしました表を見ていただきたいんですけれども、一番下、全国の司法解剖の解剖率は四・九%、死体解剖でも全国で一一・一%となっております。これを見たとき、もし自分が死んだら、解剖される方に入るのか入らないのかわからないんですけれども、かなり心もとない気がしました。

 ただ、私が一番驚いたのは、その全体の解剖率が低いということではなくて、何といっても地域間格差があるということに大層驚きました。

 この表を見ていただきたいんですけれども、東京や兵庫で不審死をしたならば解剖に処される可能性が高く、二〇%程度ですのでそれが高いと言えるのかどうかはわかりませんけれども、一応高く、死因が特定され、もし犯罪があったら犯罪の捜査の端緒になるということになるかと思うんですけれども、見ていただければわかるように、その近辺の群馬や埼玉や千葉だったら解剖に処される確率がかなり低くなってしまいます。そうすると、もしかしたら犯罪による死だとしても、それが犯罪として捜査機関に認識されないことになります。

 これを裏返しまして、犯罪者の方から見ますと、埼玉県に死体を置けば、東京都に死体を置くよりも犯罪が発覚する可能性が低いため犯罪者に悪用されるということも考えられないことではないというふうに考えてしまいました。

 特に目立って低いのは、都会であるはずの愛知県というのもまた低くて二・六%、広島では何と二・〇%になっております。何で愛知でこんなに低いのか、広島で何でこんなに低いのかというのは、私はちょっとよくわからないところでありますので、まずは、これだけ地域間格差がある状況を放置しておいてよいものなのか、警察庁にお尋ねいたします。

荻野政府参考人 お答え申し上げます。

 警察が取り扱った死体に係る解剖率について、都道府県ごとに差が見られるというのは御指摘のとおりでございます。ここで、解剖率につきましては、警察が主体的に実施する解剖だけではなく、公衆衛生目的で行われる監察医解剖や、いわゆる承諾解剖といったものを含むものでございます。

 警察にとりまして、解剖は、犯罪の立証、犯罪死の見逃し防止のための一つの重要な手段でございまして、犯罪の捜査等の警察の責務に照らして、必要な場合に確実に実施すべきものでございます。

 警察におきましては、さまざまな調査、検査の結果や専門家の意見を踏まえて解剖を実施することにしておりまして、それぞれの事案ごとに、個別に解剖の要否を判断しております。そのため、警察が主体的に実施する解剖の実施率につきましては、各都道府県警察における一件一件ごとの判断の結果の積み重ねということになりまして、一概にその原因等を分析、評価することは困難であろうかと存じます。

 警察といたしましては、検視官の臨場率の向上を図り、現場の調査、死者の生前の人間関係の調査を徹底するほか、薬毒物検査、死亡時画像診断といった手段を活用するとともに、必要な解剖を確実に実施することによって総合的に犯罪死の見逃し防止に万全を期する所存でございます。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 ただ、今の御答弁は、実際は全くなっていないというような判断をせざるを得ないと思います。

 なぜならば、司法解剖、例えば、和歌山県は一四・一%もあるんですよね。ほかが、司法解剖で低いところではやはり四%とか、そういうところがあるんですけれども、そうすると、和歌山県では一四・一%も犯罪の嫌疑があるから解剖をしなければいけない死体が転がっているかということになってしまって、それは和歌山県の人にとても申しわけないというような気がしてしまいます。

 犯罪の可能性のある死体というのがそんなに地域的にばらばらにあるということは、どう考えても考えられないと思いますので、もう少しそこら辺はちゃんとしっかりと対処していただきたい、そのように考えております。

 これだけ解剖率が低いということは、やはり、代替手段というものを考えていかなければいけないというのは明白だと私は思っております。

 近年、Ai、オートプシーイメージング、死亡時画像診断を利用するということが行われているようです。Aiは、病院で通常使われていますCTやMRIを用いて遺体を撮影し、得られたCT画像などを医師が読影するということから成っているということになっております。

 Aiは画像診断ですので、遺体を損壊しない、これがとても長所だというふうに言われております。確かに、自分の親とかが亡くなったとき、どういう原因かはわからないけれども解剖しますかと言われたときに、ちょっと解剖まではというふうに思われる方というのは大変多いと思いますので、このAiというシステムはとてもいいんじゃないかと私は考えました。

 それでまた、このAiというのは、撮影時間というものがかなり短くなるというふうにも伺っております。CTでは数十秒、MRIでは一時間未満、解剖は半日ぐらいかかって結果の確定が半年以上もかかるというようなことも伺っております。そうすると、死因究明にかかる労力というのはかなり違うというようなイメージを持ちました。

 それでまた、Aiというのは、よく皆さん歯医者に行かれたときに画像を見るかと思うんですけれども、それになれておりますので、それほどグロテスクではないので、亡くなった方の遺族の人もそれほど恐怖感を得ることはないというような利点もありますし、最近では、遠隔資料などでコンサルトをすることによって中立的な診断が可能になるというAi情報センターというのもできているということを伺っております。

 私は、これを伺ったときに、例えば医療過誤のような場合、担当のお医者さんにたとえ非がなくても、やはりその遺族としましては、医療に過誤があったのかな、どうなのかなというような不安を持つかと思います。それを考えますと、画像で撮った場合、それを第三者にすぐに見てもらう。それは、それを見てもらったときに、いや犯罪でも医療過誤でも何でもなかった、単にこういう理由によって亡くなったんだよということを言うことというのは、遺族の方にとっても、そしてまた医療関係者にとってもいいことではないかと私は思いました。

 また、検査費用というのも、Aiというのはかなり安いと伺っております。概算なんですけれども、大体、CTでは五万円、MRIは十万円、解剖では二十五万円ぐらいかかるというふうに言われているそうです。

 よく、何で解剖率が上がらないかというときに、マンパワーが不足しているということも言われていると思うんですけれども、放射線医は現在四千人ぐらい、一般の臨床医も二十八万、放射線技師に至っては四万人いるので、数としては不足していない。逆に、法医学者百二十人、病理医は千八百人ぐらいで、やはり解剖をする人がいないということから考えますと、このAiというのはかなり強力に進めていくべきじゃないかなというような気がします。

 ただ、Aiにつきましては、死因の判明率が低いということも言われているそうです。ただ、私は、この本、「死因不明社会2 なぜAiが必要なのか」というところからちょっと数字をとらせていただいているんですけれども、この方によりますと、CTでは三〇%、MRIでは五〇から六〇%の死因が判明することということでしたので、解剖では七五から八〇%ぐらいの判明率と言われておりますので、確かに少し死因の解明率、犯罪の判明率というのは下がるとは思うんですけれども、解剖でも一〇〇%ではないということ、そして、この解剖率が余りにもお寒い状況ということに鑑みますと、やはりAiというものはかなり強力に推進していくべきではないかというふうに思っております。

 そこで、所管する官庁がばらばらで統一性がなく、全体としても解剖率が低い現在、Aiの導入を強力に進めていくべきだと思うんですけれども、谷垣法務大臣、いかがお思いでしょうか。

谷垣国務大臣 死因究明で、やはり解剖の重要性というのは、これはもう基本的に一番大事だと私は思いますが、今おっしゃったように、そのAiを導入する、そういうAiを含む科学的な手法といいますか科学的な調査を活用する、それによって死因究明がより効率的というか効果的にできていくという面があるんだろうと思います。

 今、死因究明等推進計画検討会、これは内閣府でやっていただいているわけですが、そのもとでもAiの活用というのはいろいろ御議論をしていただいていると私は承知しております。私も、その上の会議でございます推進会議のメンバーでございますので、このAi等の科学的な手法の活用については、私自身も進めていくということで頑張りたいと思います。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 今、谷垣大臣のお口からもおっしゃっていただいたんですけれども、内閣府でもAiの導入に向けてかなり積極的に取り組まれて今検討がされているということですけれども、実際どのような取り組みなのか、もう少し聞かせていただければと思っております。

安森政府参考人 お答えします。

 死因究明等推進計画検討会におきまして、死因究明の手法の一つとして実施される、いわゆるAiと言われておりますのは、死亡時画像診断と申しますが、重要性については十分認識されております。必要な死亡時画像診断が適切に実施される体制づくりに向けた検討が進められております。

 委員の御指摘のように、解剖といわゆるAiを組み合わせていく、より精度を高めていくということが検討されておるところでございまして、例えば、御遺体のCTを読むというのはかなり難しいことがございますので、死亡時画像診断に関する研修会を実施して、さらにその内容を充実化していく。また、子供さんの場合というのは、特にCTが有効ではないかという御意見がありますので、小児死亡例に対する死亡時画像診断の情報をモデル的に収集、分析すること等が今検討されている状況でございます。

 ただ、まだ結論が出たわけではございませんので、今のところは以上のお答えにさせていただきます。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 解剖を否定するわけではございませんので、おっしゃったように、解剖とAi、その他のものも組み合わせて、本当に見逃しがないかという観点からぜひいろいろ推進をしていっていただければと思っております。

 ただ、よく言われることなんですけれども、やはりAiの費用負担を誰が行うのか、費用を誰が出すのかというのが一番問題になってくるかと思います。医療保険は、生きている人の医療のために使われるべきものとされまして、Aiの費用には出せないということを伺っております。

 私は、例えば、家に帰ったら家の者が死んでいた、病気なのか事故なのかわからない。犯罪性がゼロに限りなく近いというような場合、犯罪性が限りなくゼロに近いと考えられる以外は、犯罪性があると考えるべきなのではないかと考えますので、Aiの費用というのは警察庁さんが出すべきなんじゃないかなというようなイメージを私は持っております。

 それ以外にも、例えば医療過誤があったのかどうかわからないような場合も、医療過誤がなかったと証明する必要性があるんじゃないかと私は考えますので、この場合でもやはり国が費用を出すべきではないかなと考えるんですけれども、警察庁さんの立場としましては、いかがでしょうか。

荻野政府参考人 お答え申し上げます。

 警察におきましては、死因の調査につきまして、現場の調査、死者の生前の人間関係の調査、それから薬毒物検査といったさまざまな手段を活用して、犯罪性の有無について判断をしているところでございます。

 死亡時画像診断につきましても、その手段の一つとして、昨年施行されました、いわゆる死因・身元調査法第五条に基づく検査として必要が認められた場合に、警察署長の判断で実施していただいているところでございまして、その費用につきましては警察が負担しているところでございます。

 また、医療事故について言及がございましたけれども、医療事故が疑われる事案につきましても、警察に届け出がなされて、警察が取り扱うこととなる場合もございます。そういった場合で、警察として犯罪性の有無を判断する上で必要と認める場合には、警察の委託によって、死亡時画像診断を実施していただくということがございます。そういった場合につきましては、その費用については警察が負担しているところでございます。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 今の御答弁をお伺いしていますと、例えば薬物検査など諸条件を勘案して必要と認めるときはAiをやるというようなスタンスだとお聞きしました。私は、そうではなくて、まず最初にAiをしておいて、それらと薬物検査などを組み合わせて、まず問題があるかないかというのを調べるべきじゃないかと思いますので、そういう考えの順番を変えるということも検討された方が、犯罪の見落としというところからは重要じゃないかと思います。ですから、それに関する費用というのは、やはり警察庁が出すべきものではないかと私は理解しております。

 では、厚生労働省さんの立場として、ちょっとお聞きしたいと思います。

 厚生労働省さんは、全国各地の医療機関が死亡した子供に原則、画像診断をすることにしたと伺っております。これは、近年、虐待死などが疑われる幼児の死亡事故が多いということからできた措置だとは思うんですけれども、ただ、この措置は、院内で死亡した全ての子供に遺族から承諾を得てAiを実施し、費用は厚生労働省と都道府県が負担するとのことです。

 通常、例えば虐待していた親が画像診断をやってもいいですかということを尋ねられたとき、受け入れるとは実は思えないんですね。ですから、承諾を得るという要件は不要だと考えるのですが、この措置に関しまして、厚生労働省さんにお伺いしたいと思います。

高島政府参考人 小児の死亡例に対します死亡時の画像診断につきましては、異状死死因究明支援事業の内数として今計上しております。

 この異状死死因究明支援事業、これは、公衆衛生上の観点から、解剖なり死亡究明をする必要があるものということで、解剖なり画像診断するものでございますが、この中に計上しておりまして、一億二千万の中で対応することにしております。

 今お話にありました、小児全員でやっていこうということでございますが、これはこれからモデル事業をやってまいります。モデル事業をやってまいります中で、基本的には、そのモデル事業の中の研究目的ということで、親御さん等から了承をとって画像診断をやっていくということを考えております。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 研究目的だからという話でしたけれども、やはり、子供の虐待死というのはかなり大きな問題だと思いますので、なるべく原則Aiをとるような法制度というか措置にしていくべきではないかと私は思っております。

 ちょっと話はかわりますけれども、Aiでは死体を取り扱う場所の問題があるということも伺っております。これは、死亡した方の遺体を病院内でいろいろと回すのは、周りの患者さんの目から問題があるんじゃないかということを私はお医者さんからちょっと伺いました。そのような点への配慮というものはあるのか、お伺いしたいと思います。

高島政府参考人 一般的に、病院の中で亡くなられた方がいらっしゃった場合に霊安室とかに置かれるわけですが、そういったときのお取り扱いにつきましては、各病院で通常の通院者との関係でいろいろ御配慮されていると思っております。

 一方で、死因究明に資する死亡時画像診断の活用に関する検討会というのを開いております。その中で、原則として、感染防止の観点や入院患者等への配慮から、専門施設において死後の画像撮影を行うことが望ましいという報告を受けておりますので、厚生労働省といたしましては、死因究明のための施設ということであれば、専門施設で画像診断ができるように、死亡時の画像診断システム等整備事業というものを起こしておりまして、死体を対象とした画像診断に関する施設整備に関しまして支援をしているところでございます。

高橋(み)委員 ありがとうございました。

 それでは、死という方は終わって、生というか、誕生という方に話題を移らせていただきたいと思っております。

 私は、近年、生殖補助医療が発達し、いろいろな方法で、今まで子供さんを持てなかった親御さんが子供を持てるという喜ばしい事態になっているかと思っております。

 ただ、これはいいことばかりではなくて、生殖補助医療が発展するにつれまして、今まで考えられなかったような問題も多く起きているのではないかと思っております。

 そこで、きょうは、生殖補助医療によって生を受けた子供と親の法律問題に関しまして質問をしたいと思っております。

 人工授精は一九四九年から行われ、既に半世紀の歴史を持っており、人工授精で生まれた子供は一万人以上に達していると言われております。さらに、体外受精も既に数千人生まれていると言われていまして、これが夫婦間でこれらの技術が用いられる限りは法的な問題は生じないのではないかと思っております。

 しかしながら、ドナーと呼ばれる第三者提供の精子による人工授精や体外受精によりできた子供というのは、生物学的なつながりは親とない可能性というものが高くなってくるかと思います。

 現行の法制度では、結婚している夫婦から生まれた子供は夫の子としての推定を受けますので、通常は嫡出子となりますけれども、生物学的な意味では親子でない可能性がある。そうですと、例えば、嫡出否認の訴え、すなわち法律上の推定を受ける父親が自分の子ではないと訴えるような場合があるかと思うのですけれども、この場合、現行法上どのような結論になるのでしょうか。

深山政府参考人 今御指摘があったとおり、民法においては、法律上の父と子、父子関係につきましては、妻が婚姻中に懐胎、要するに妊娠した子供は夫の子と推定するという嫡出推定規定があり、この嫡出推定が及ぶ子供につきましては、夫に限って、子の出生を知ったときから一年以内に嫡出否認の訴えを提起することができます。

 お尋ねのケースですけれども、最終的にはもちろん裁判所の判断ということになりますが、第三者の精子提供によって妻が子供を出産した場合も嫡出推定は及ぶものと解されますので、現行民法の解釈としては、夫が子の出生を知ってから一年以内に嫡出否認の訴えを提起することによって、その子との親子関係を否定することができるものと解されます。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 そうしますと、今の事例では、子の出生前に妻と夫が合意のもとに人工授精なり体外受精をした場合は嫡出否認の訴えはできなくなるのでしょうか、それともそうではないんでしょうか。

深山政府参考人 生殖補助医療を受ける前に夫婦間で合意があった場合、合意があったからといって嫡出否認の訴えができないという規定があるわけではないんですけれども、みずからAIDによる生殖補助医療を受けることを夫が同意しておきながら、後になって嫡出否認の訴えを提起するということが許されるかどうかというのは、これは事案による裁判所の判断ということになると思いますが、子の利益の観点から、権利の濫用として許されないという結論になる可能性も相当程度あると思いますし、現にそのような趣旨の判断をした裁判例もございます。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 また事例をちょっとお伺いしたいんですけれども、では、ドナーが生まれてきた子は自分の子であるので認知したいというふうな願いを持った場合とか、子供がドナーへお父さんであることを認めてほしいと認知の訴えなどを起こす場合というのは認められるんでしょうか。

深山政府参考人 今お話がありました、父から子供を認知する、あるいは逆に、子の方から父に対する認知の訴えを起こすというのは、これは嫡出でない子についてのみ認められております。したがって、嫡出推定が及ぶ子については認められておりません。先ほど述べましたとおり、第三者の精子提供によって出生した子供にも嫡出推定が及ぶものと解されますので、最終的には裁判所の判断ということになるわけですけれども、嫡出推定が及ぶ以上、精子提供者による認知、あるいは、子から精子提供者に対する認知の訴えはいずれも認められないことになると思われます。

高橋(み)委員 ありがとうございました。

 今いろいろな考えられるような事例を挙げてみたんですけれども、本当にそれでいいのかなというような場合もあるんじゃないかなというようなイメージを持ちました。

 それはなぜかといいますと、きょう午前中の質問でもあったんですけれども、現在DNA鑑定というのがすごくよく行われています。そうしますと、例えば親に全く似ていない子供というのがいた場合、自分の生物学的な親は誰なんだろうというふうに思って、知りたいというようなこともかなりあるんじゃないかというような印象を持っております。

 そうすると、子の知る権利という観点からしますと、やはり法律上こうなっているからではなくて、もう少し、本当に自分の生物学的な親が誰なのかというのを知る権利を認めて、それを子供に知らせるようなシステムにするなり法律を改正するべきではないかと思ってしまいます。

 スウェーデン、スイス、オーストリアでは父を知る権利が子供に認められていることも伺っておりますけれども、谷垣大臣、このようにいろいろな、今現実、まだ判例もはっきり固まっていないし、法律があるのでそのとおりにやっていくという答えなのかもしれないんですけれども、子供の観点から見ますと、このような生物学的なものではない、法律的に決めていくということに対してどのようにお考えなのか、お伺いしたいと思っております。

谷垣国務大臣 正直申しまして、大変難しい問題ですので、一刀両断の答えが私はまだできないんです。

 昔、私が学生のころ、我妻栄先生の親族法を、ちょっともう古いことですのであるいは記憶が間違っているかもしれませんが、そういう生殖補助医療なんかで人から精子の提供を受けた場合、複数の人からの精子を混合して受精させる。つまりそれは、親を知る権利なんというものは全然考えていない考え方、昔はそういうことが行われていたようですね。

 それで私は、結局この問題は今後どんなふうに発展していくのかよくわかりませんが、要するに、どういう条件のもとで生殖医療を認めるのか。やはり生殖医療の方のルールをつくっていくことと表裏一体の関係にあるように思います。いきなり生殖医療のルールのない中で親と子の関係を法律的に整理しろといってもなかなか実はできないところがございまして、前提に生殖医療のルールづくりというものが先行すべきではないかなというのが私の今の感じでございます。

高橋(み)委員 ありがとうございました。

 先ほどの質問は、どちらかというと、精子が夫のものでない場合どうなるかという話だったんですけれども、最近では、やはり卵子が別の、借り腹といいますか、そういう場合も起きているかと思います。その場合、現行法上、分娩した者が母となりますので、例えば卵子は夫婦のものを使ったという場合でも、代理に子供を産んだ方の子供ということになるかと思います。そういう場合というのも、本当に、自分の卵子で生まれたのに、おなかを借りたがばかりに自分の嫡出子となれないというのはやはりちょっとおかしな制度ではないかなというようなイメージもあります。

 これは、何といってもこれから法整備をしていかなければいけないところだと思うんですけれども、イギリスとかフランス、ドイツなどではもうきちんと法整備がされているというようなお話を伺っております。日本でもこれから法整備をきちんとしていかなければいけないと思うんですけれども、その際には、今までの法制度を、日本の民法にとらわれずに、これから新しくDNA鑑定などの精度も上がってくると思うので、やはり生物学的な親というような観点もきちんと見ていかなければならない時期じゃないかなと私は思っております。

 これはこれからの法改正に任せたいと思うんですけれども、きちんとした法制度にしていかないと、今もいろいろなところへ体外受精とかいろいろなことが行われておりますので、いろいろわからない、本当はどうなんだろうという人たちが多くなってきてしまう可能性もございますので、なるべく早目に法制度の整備をお願いできたらと思っております。

 きょうはどうもありがとうございました。

江崎委員長 次に、杉田水脈さん。

杉田委員 日本維新の会の杉田水脈です。

 きょうもどうぞよろしくお願いいたします。

 まず初めになんですけれども、罪刑法定主義に基づいて、事後法というのは私は近代法治国家であります日本では認められないというふうに認識をしておるんですけれども、今の日本政府の基本姿勢もそれでよろしいのでしょうか、谷垣大臣にお伺いいたします。

谷垣国務大臣 罪刑法定主義というのは、一定の行為を犯罪として処罰するためには、あらかじめ成文の刑罰法規で犯罪と刑罰が規定されていることを必要とするということでございまして、その実質的内容として、今おっしゃった遡及処罰の禁止、つまり、事後法の禁止ということが出てくる。そのこと自体は我が国の憲法三十九条にもきちっと書いてございまして、刑事裁判における基本的な原則だろうと思います。そして、これは日本だけではなく、近代憲法の一つの原則であるというふうに理解をされている。

 今委員のおっしゃったように、我が国の国法体制では事後法というものは認めないというのが現在の考え方だと思います。

杉田委員 それを踏まえてお伺いしたいんですけれども、昨年の一月に、ニューヨーク州の上院は、日本の戦時中の慰安婦の問題は人道に対する罪だと指摘をする決議案を採択しました。先ほど大臣がおっしゃったとおり、罪刑法定主義におきましては遡及処罰の禁止がありまして、事後法の禁止があって、今度、アメリカ合衆国の憲法の九条の中にも、事後法を制定してはならないというふうになっております。なので、事後法は認めないということになれば、これは全く無効だというふうに考えられるのではないかと私は思うんですが、大臣はどのようにお考えになられますか。

    〔委員長退席、盛山委員長代理着席〕

谷垣国務大臣 余り法的に詰めて考えたことがなかったわけですが、アメリカの国会がなさったのかな……(杉田委員「ニューヨーク州の上院です」と呼ぶ)ニューヨーク州の上院の御判断、私、論評は差し控えたいと思います。

杉田委員 明確な御答弁をいただけなかったんですけれども、慰安婦問題はちょっとここで一旦おきまして、きょうは、今、中国と韓国で続々と提訴されているいわゆる戦時労働者問題、それに付随した問題について、この事後法のことも踏まえまして質問をさせていただきたいと思います。

 中国では、今まで、いわゆる大東亜戦争時代に日本に徴用された戦時労働者の賠償請求を受理しておりませんでしたが、本年三月十八日、先月ですね、北京市第一中級人民法院が、元労働者と遺族三十七人が、三菱マテリアル、旧三菱鉱業と、日本コークス工業、旧三井鉱山の二社に対して、一人当たり百万元、約一千七百万円の賠償と謝罪を求める提訴を初めて受理いたしました。また、同様の労働者の問題で、これも先月の二十六日なんですけれども、河北省の裁判所に十九人と遺族四十四人が、日本政府と日本企業を裁判所に提訴いたしました。

 また、これに連動したように、韓国でも、これは二月二十七日、韓国の元徴用労働者が三菱重工業に対して、一人当たり一億五千万ウォン、約一千四百万円の賠償を求めて地裁に提訴をいたしました。韓国での同様の訴訟は、これで七件目になっております。

 韓国の最高裁は、二〇一二年に、一九六五年の日韓の請求権協定の、完全かつ最終的に解決をしている、締結国及びその国民に対する全ての請求権、いかなる主張もすることができないというこのような条文を無視して、個人の請求権は消滅していないという判断をいたしました。そして、これが高裁に差し戻しとなりまして、二〇一三年には、ソウルの高裁と釜山の高裁で、日本企業に賠償を命じる判決を出しています。近く、賠償を命じる最高裁判決が出る可能性が出てきております。

 韓国の最高裁が事後法で賠償請求を認めたということは、韓国は国際的に、うちの国は無法国家ですということを宣言したのと同様ではないかと私は思います。

 日本政府は、菅官房長官が、中国と韓国の戦時労働者問題に関しては、一九七二年の日中共同声明と一九六五年の日韓請求権協定で全て解決済みという見解を表明しております。

 今、谷垣大臣が答弁していただきました近代法治国家については、事後法というのは認められませんから、これは有効なので、日本の国の中では絶対に有効なことなんですけれども、先ほど申しましたとおり、事後法を認めてしまっている韓国、これは実質上、無法国家となっていますから、事後法で賠償を認めたということは無法国家そのものですから、また、管轄権が中国なんかはありませんから、中国と韓国で賠償を命じる判決が出た場合、現地の日本企業の資産を没収される可能性も出てまいります。

 日本政府は解決済みと言っているんですけれども、これは先ほども申しました、近代法治国家にのみ通用する公式見解なので、これだけでは対処できなくなるということも想定していく必要があるのではないかというふうに思います。

 現在、中国と韓国は、日本に対する歴史認識の問題を、例えば、習近平国家主席が先週はドイツで、日本軍が南京で三十万人以上虐殺したなどという演説をしたりとか、国家元首みずからが海外で宣伝戦を実施しております。これらの一連の戦時労働裁判は、国際的な情報戦の一環と認識してきちっと対処する必要があるというふうに私は考えます。

 実際に、こういう当事国以外は、この歴史認識問題、多分ほかの外国は無関心だと思うんですけれども、中国と韓国の一方的な宣伝だけが今海外にまき散らされているというふうな状態になっています。我が国は近代法治国家として、国際的な法の秩序を破壊すると見られる中国と韓国に対して、我が国の企業を守ることと我が国の名誉を守るために毅然とした態度で臨まなければならない。

 国際司法裁判所に提訴することが必要だと私は考えるのですけれども、もしも一連のこの戦時労働者裁判で賠償を命じる判決が出た場合、日本政府は国際司法裁判への提訴を視野に考えているのかどうか、大臣の見解をお願いいたします。

谷垣国務大臣 私は、自分の職務と直接関係のないことを御答弁することは原則として差し控えているんです。恐らくこれは外務大臣にお聞きになるべきことであろうと思います。

杉田委員 外務大臣にということで、これは確かに外務省の所管ではあると思うんですけれども、裁判のこと、そして法律のことというのは、我々普通の一般国民から考えれば、当然法務省というのが管轄をしておりまして、外務省も国際的に対応するときは、法務省、法制局など、そういった法律の専門家の方々と協議をしていく中で、海外に対してどのように対処をしようというふうな形になっているものだというふうに一般的には考えられますし、私もそうだと思うんです。

 今現在は、これはもう外務省だからといって、では、もう法務省はノータッチです、全くタッチしませんという形になっているのか。それとも、裁判のことでありますから、やはり専門家がたくさんいるのが法務省ということで、いろいろ連携をとり合いながらこの問題に対処しているのか、そのあたりのことをお尋ねしたいと思います。

谷垣国務大臣 それはいろいろな問題問題に応じて、当然のことながら、外務省と法務省が協議をするということはございます。それから、今委員がおっしゃったように、外務省よりも、むしろ法務省の方が海外の情報もとりやすい分野もございます。

 そういう意味ではいろいろ情報提供をいたしておりますが、それを超えて申し上げるのは差し控えさせていただきます。

杉田委員 差し控えさせてということなので、この場でいわゆる強制労働の実態についての質問をすることはいたしませんが、きょうは、ちょっと皆様に資料をお配りさせていただいております。

 今この問題、強制連行をさせられて、強制労働をさせられたというようなことで賠償が起こっているんですけれども、きょうは、この委員会をインターネットとかそういうので視聴されている皆さんもいらっしゃると思いますので、戦時中の労働者の実態というのが、これは戦前の朝鮮版の朝日新聞の記事なんですけれども、きょう皆さんにお配りをさせていただいております。

 ここにあるように、朝鮮人鉱夫には特別の待遇がされておりまして、まるで旅館住まい同様とか、それから、朝鮮人の鉱夫はすごく稼いでいたという、四百人が故郷に送金した総額は二カ月間で一万七千円、三カ月になりますと二万五千円を突破するというようなことが書かれているんですね。しかもこのほかに郵便貯金が一万三千円とかあってという、当時の朝鮮半島では千円あれば家が建てられた、このことを考えれば、韓国や中国が訴えている内容と余りにもかけ離れています。

 そのほかにも資料をつけさせていただいておりますが、強制などしなくても密航者が絶えなかった。日本に渡りたいということでどんどん密航する人が絶えなかったという記事が、これは本当に一部なんです、たくさん報道されています。

 このような記事がたくさんありますので、こういったことは、本当は日本はどんどんどんどん訴えていって、毅然とした態度で対峙をしていかなければいけないというふうに、今の日本の企業が守れないのではないかというふうに思うんです。

 ここで問題となってくるのが、昭和二十年の九月十九日に連合国の最高司令部が発令したいわゆるプレスコード三十項目。これによって、日本がこういうことを報道したりとか、国際的に声高に真実を叫ぶことというのが封印されています。一応、三枚目の資料のところに、プレスコード、抜粋ですけれども、皆様の方にお配りをさせていただいております。

 こういったことは禁止事項となっているんですね。例えば、極東国際軍事裁判所に対する批判、このときにはまだ開廷されていないんですよ、発令時には。なのに、この裁判を批判してはいけないということになっていますし、日本国憲法を起草したことに対する批判、このときには憲法起草されておりません。それなのに、でき上がってくる日本国憲法を批判してはならないということになっています。それから、検閲制度への言及だとか、合衆国に対する批判、朝鮮人に対する批判、中国に対する批判、連合国の戦前の政策に対する批判、戦争犯罪人の正当化及び擁護、これもしてはいけない、禁止項目になっています。それから、占領軍兵士と日本女性との交渉について、こういうことで、実際に占領軍の方々が日本に来てどういうことをしたかということも、放送することは禁止されています。占領軍の軍隊に対する批判、そういったことが全部禁止されている。

 このプレスコードというのがいまだに生きているのかいないのか、ちょっと私はその辺の認識はよくわからないんですけれども、今考えれば、本当に、こういうこと、日本は、報道が弱い、一面的な報道しかされていないと思うんですが、このプレスコードがまだ生きているかのようなことがされておりますけれども、今後、こういった国際裁判所に対しての提訴などを視野に入れていく上では、こういったこともきちっと考えて、日本は真実をきちっと訴えていかなければならないと思います。

 先ほど大臣の答弁の中に、いろいろ連携をとりながら、法務省の方が外務省よりも情報をとりやすいところもあるし、法律については詳しいところもあるということで、連携をとりながらやっているという御答弁をいただきましたので、私はちょっとほっとしておるんですけれども、こういったところ、これは大臣じゃなくても結構です、今後の日本の国際的な司法への対応ということについて、どのような方向性を持っているかということを、どなたでも結構ですので、御答弁いただけませんでしょうか。

谷垣国務大臣 今、御質問の趣旨が、ちょっと私、よくつかめているかどうかでございますが、これは司法への対応、もし国際司法裁判所への提訴のようなことをおっしゃるならば、それは基本的に外務省の判断になると思いますが、要するに、むしろそれよりも、委員のおっしゃっていることは、日本として、必要な情報なり必要な主張というのはきちっとせよということになるのではないかと思います。私は、そういうことは当然していかなければいけないことだと思います。

杉田委員 当然していかなければならないという力強い答弁をいただきました。どうもありがとうございます。

 それでは、次の質問の方に参りたいと思います。

 今、韓国人女性が海外遠征売春婦として、たくさん海外に来て売春をしているということについて質問させていただきたいんですけれども、韓国では、二〇〇四年に性売春特別法が施行されて売春婦の取り締まりが強化されたことで、かなりたくさんの、これは韓国の国会で朴宣映議員が実際に述べたことなんですけれども、海外遠征売春婦が十万人に達するという発言をしておりまして、そのうちの五万人は日本で売春を行っているということを明らかにしております。

 警察庁は、これを取り締まって強制送還をしているのか、昨年度の外国人売春婦の取り締まり状況というのをまずは御質問させていただきたいと思います。

辻政府参考人 お答えいたします。

 警察におきましては、平成十七年以降、健全で魅力あふれる町づくりのため、官民一体となった繁華街、歓楽街対策を推進しており、その対策の重点の一つとして、売春等の風俗関係事犯の取り締まり等を強化しているところでございます。

 平成二十五年中におきます検挙は一千三十件、六百三十九人で、このうち来日外国人の検挙は九十四件、五十人、うち韓国人は三十六件、十三人でございました。

 二〇二〇年のオリンピック・パラリンピック東京大会の開催を視野に、引き続き、外国人、日本人を問わず、売春等の風俗関係事犯等の取り締まりを強化するとともに、官民一体となった風俗環境浄化対策等に取り組んでまいりたいというふうに考えているところでございます。

杉田委員 先ほどの件数を聞くと、韓国は、日本で五万人売春婦が韓国から行っていると言っているんですけれども、その取り締まりの件数と余りにもかけ離れているという感想を私は持ちました。

 それで、これは、私は本当に一般人として、素人としてお尋ねしたいんですけれども、韓国人に限らず、外国人の売春婦の人たちが日本にとどまることができるというのはどういう理由でとどまれるんでしょうか。

 短期の滞在というのはあり得ないですね。そこで報酬を稼いではいけないわけですから、短期の滞在ではこういう売春とかは絶対できないと思います。では、その方々は何ですか。学生なんですか。就労ビザをとっているんですか。就労ビザで売春というのは、日本は売春というものは禁止されていますから、売春で就労ビザはとれるはずがないですね。それは、もしかして偽装結婚とかをされて日本にとどまっているんですか。どういった理由でこの人たちが売春という職業を日本ですることができるのかということをお尋ねしたいと思います。

辻政府参考人 検挙いたしました韓国人に関しましては、正規滞在が十一名、不法滞在が二名という形になっているところでございます。

    〔盛山委員長代理退席、委員長着席〕

杉田委員 余りにも少ないと思います。

 やはりここを徹底していっていただかなければいけない。先ほどオリンピック・パラリンピックのお話も出ましたけれども、売春大国日本みたいなことが世界じゅうに広まってしまうというのは絶対にあり得ないことだと私は思いますので、五万人と言われています、これを本当に徹底的に取り締まって、強制送還でもいいですから、返していただくような形をしていただきたいということ。

 それから、今現在、河野談話のことが、きょうも産経新聞の一面なんかにも出てまいりましたけれども、非常に国民の注目を集めております。この河野談話のことで、慰安婦問題なんですけれども、自分たちで応募していったりとかいろいろしていったにもかかわらず、六十年、七十年たったら、強制連行されて性奴隷にされたみたいなことを言っているわけですよ、韓国は。では、今来ているその五万人の売春婦の人たちも、六十年たったら、もしかしたら、日本に強制連行されて性奴隷にされたと言い出すかもしれないです。

 ですから、そういう甘い態度でいると、向こうは何を言ってくるかわからないというようなことがありますので、この部分も徹底して取り締まりというのを行っていっていただきたいというふうに思うんです。

 ここのところをもう一度、東京オリンピックを前に、日本が売春天国などとやゆされないように、先ほど言いました、韓国自身が五万人来ていると言っているんですね、それで検挙されている数というのは本当にそれだけですかという話になるんですが、今後どのように取り締まりを強化していかれるのか、もうちょっと強い部分をお聞かせ願いたいと思います。

辻政府参考人 先ほども御答弁させていただきましたとおり、私どもといたしましては、二〇二〇年のオリンピック・パラリンピック東京大会の開催を視野に、引き続き、外国人、日本人を問わず、売春等の風俗関係事犯等の取り締まりを強化してまいりたいというふうに考えているところでございます。

 春の定期異動に伴いまして、近く全国会議も開催されます。その場でも、売春事犯等の取り締まりの重要性について改めて指示をするということを予定いたしておりますし、また、捜査員の取り締まりの技量の向上、現在、売春事犯も潜在化、巧妙化ということが進んでおりますので、これに対応できるように、捜査員の捜査能力等の向上を図るために、捜査の実戦塾、こういったものもまた開催してまいりたいというふうに考えているところでございます。

杉田委員 それでは、次の質問に移りたいと思います。

 今、憲法改正国民投票法の改正案におきまして、この国民投票を十八歳以上ができるようにするというのに合わせて、選挙権年齢も予定より早く十八歳にするという議論があります。もともと四年ということで言われていたんですが、この国民投票法の改正、施行後二年以内に十八歳に引き下げるということを目指して、プロジェクトチームなんかを与党の間でも設置するというようなことを聞いておりますけれども、これにいろいろな問題が連動してくると思うんです。

 まず、聞いていきたいのは、こういった形で選挙年齢とかも十八歳になるというのを受けて、少年法、これはどうなっていくんでしょうか。どのようなスピードで本当に少年法も十八歳にしていくのか、これはいろいろな議論があると思いますが、今のその進捗状況というのをお尋ねしたいと思います。

谷垣国務大臣 少年法の適用対象年齢は、刑事司法全般で、成長過程にある若い方、若年層をどう取り扱うかということにかかわってくる問題でございまして、もちろん、公職選挙法をどうしていくか、それから民法をどうしていくか、よりそちらの方が一般的な法律でございますので、そちらの公職選挙法や民法等の年齢のあり方を当然視野に入れなきゃいけませんが、しかし、少年法固有の観点からやはり検討しないといけない面も多分にございます。

 そこで、こういう観点から少年法の適用対象年齢をどうするのかというのは法務省の中でも検討を行ってきたんですが、現時点で、十八歳、十九歳の者による刑法犯は減少しております。それから、少年に対する刑事処分のあり方については少年法の立場から検討がなされまして、平成十二年の法改正で、刑事処分可能年齢が十六歳以上から十四歳以上に引き下げられるというような法改正がなされてまいりました。

 こういった流れからしますと、十八歳、十九歳の者に対する保護処分の必要性が一律に失われたというふうには、評価しなければならないという事情ではないと私は思っております。少年法の立場からは、少年法の適用対象年齢を二十歳未満から十八歳未満に引き下げる必要性はないという今までの検討、結論でございます。

 それで、現在、与野党で、憲法の改正手続に関する法律との関係で、年齢条項について規定するいろいろな年齢のあり方、議論が行われていると承知しておりますが、今後、国会におけるいろいろな検討の状況も踏まえて、私どももさらに検討しなければならないとは思っております。

杉田委員 この国民投票法に関する報道の中で、こういったのがあるんですよ。見解は政府内でも異なるようで、例えば総務省は公職選挙法の選挙権年齢と民法の成人年齢は一致するべきとしておりますが、法務省は民法改正に慎重な立場を示していますというような、こういった報道のされ方をしているという部分もあります。

 今、慎重にならざるを得ないというような事情とか、そういったさまざまな議論がさまざまな角度からなされているということを大臣の方から御答弁いただきました。ただ、これは加速化していくと思うんですね。国民投票法が決まって、いよいよ選挙年齢とかが引き下げになるとなったら、それに伴って、少年法というのは一番注目されるところだと思いますので、議論のスピードというのはこれから加速化されていくと思いますので、十分な議論を尽くしていっていただきたいというふうに思います。

 今、少年法が一番注目を集めるんじゃないかというふうに申し上げましたけれども、もしも選挙年齢が下がったのと同時に成人年齢というのを二十から十八歳というのに引き下げるとなると、日本国内で三百を超える法律とか政令とかを改正していかなければならない。これは非常に大きな作業になると思います。

 この部分について、今現在はどのように考えていらっしゃるのか。そういうことも視野に入れてさまざまな準備がなされているのか。その検討の進捗状況というのを、こちらの方もお聞かせ願えたらと思います。

谷垣国務大臣 関係法令をどうしていくかですが、今それぞれの所管の官庁において検討をして、内閣官房で取りまとめをしております。

 そこで、検討対象法令数は、おっしゃったように、三百四十三ございます。内訳は、法律が二百八、政令が三十七、府省令が九十八。このうち九割については各府省における検討が既に終了しております。

 法務省分で申し上げますと、検討対象の法令数は四十五ございます。それで法律が三十六ですが、二十八まで検討が済んでおります。それから、政令が三あります、これは全部検討が済んでおります。それから、府省令が六、これは五つ済んでいるというのが今の状況でございます。

杉田委員 ありがとうございました。

 こういったことも多分なかなか遅々として進んでいないんじゃないかというような印象を私は持っておりましたので、今段階的にさまざまな検討がなされているという御答弁をいただきましたので、割と国民が混乱するという案件でありますので、進めると同時に、そういった広報、わかりやすい広報なんかもお願いをしておきたいと思います。

 以上のことをお願いいたしまして、私の質疑を終了とさせていただきます。どうもありがとうございました。

江崎委員長 本会議散会後直ちに委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。

    午後零時十一分休憩

     ――――◇―――――

    午後三時五十七分開議

江崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑続行いたします。椎名毅君。

椎名委員 お疲れさまでございます。本日、長丁場ですけれども、結いの党の椎名毅でございます。

 質疑時間三十分、一般質疑ということでいただきまして、ありがとうございます。

 本日、いわゆる尊厳死というテーマについて伺ってまいりたいと思いますが、その前に一点だけ、少し別の点についてちょっと伺います。

 きのう、非常に残念な判決が国際司法裁判所から出されました。日本国政府の特別許可書に基づく第二期南極海鯨類捕獲調査、いわゆるJARPA2というものですけれども、これについて、オーストラリアとニュージーランドとの間で、国際捕鯨取締条約の八条一項に定められた科学的調査目的に当たらないのではないか、そういう判断をされたところでございます。非常に残念な判決だなというふうに思います。

 これに基づくと、JARPA2という今行われているこのプログラムのもとで、同じような形で調査捕鯨をするということ、続けることがなかなか難しいということになるのかなというふうに思っています。

 しかし、捕鯨というのは、古代から我が国にある非常に伝統的な食料であり、それを確保するための伝統的なすばらしい仕事だというふうに思っています。石川県の真脇遺跡というところに、結構古い鯨骨があるというふうに言われてもおりますけれども、何千年も前から、鯨と日本人というのは結構親しみのあるところだというふうに理解をしていますし、現代でも、和田浦だったり太地町だったり鮎川だったり、こういうところで沿岸捕鯨をやっていますけれども、こういう文化としての捕鯨というものも非常に重要かなというふうに思っています。

 これらを保持して鯨食文化を維持するということ、これについては私自身も非常に思い入れを強く持っているところでございまして、今回の判決については結構重たく受けとめているわけでございます。

 国際司法裁判所というのは、一応、国連の一機関だというふうに理解をしておりますけれども、基本的には法執行権限がない組織だというふうに思っています。国内の普通の民事訴訟であれば、いわゆる間接強制とか直接強制とかいう形で、判決の履行を債権者の側で裁判所にお願いしていくということができるわけですけれども、現実に、こういう国際法上のICJによる判決というのは、法執行機関が存在していないということから、基本的にはそういったことは考えられないというふうに思っています。

 そうだとすると、一応、外務省に、今回の判決を踏まえてどのように考えるかということを伺いたいんですけれども、その前提として、こういった国際司法裁判所の判決の国際法的な効果というものについて伺えればというふうに思います。

正木政府参考人 お答えいたします。

 先生御案内のとおり、昨日、ICJが、第二期南極海鯨類捕獲調査が国際捕鯨取締条約第八条一項の規定の範囲内におさまらないと判示したことは、政府としても残念であり、深く失望しております。しかしながら、日本は、国際社会の基礎である国際法秩序及び法の支配を重視する国家として、判決に従う所存でございます。

 それから、先生も御指摘のとおり、日本は、六十年以上も前に国際捕鯨委員会、IWCに加盟しました。IWC内の根深い見解の相違や、近年見られるIWCの機能不全にもかかわらず、日本はIWCにとどまり、委員会が抱える問題に対して広く受け入れ可能な解決の方法を模索してまいりました。

 今後の具体的な対応につきましては、判決の内容を慎重に精査した上で、真摯に検討をいたします。

 それから、先生が御質問の、一般的に、ICJの判決の国際法上の効力という点でございますが、国連の加盟国はICJ判決の履行義務というものが課せられており、履行しない場合は国連の安保理が措置をとることができるというふうにされております。

椎名委員 ちょっと確認なんですけれども、履行義務があるというのは、国際法上、それは当然だというふうに思いますけれども、基本的には、この判決を踏まえた上で即時に安保理が何かをするという話ではなくて、あくまでもこれは、違法と宣言をした段階で、さらに何か国際法上のアクションが起きるとすると、もう一回、例えば安保理なりゼネラルアセンブリーというか国連総会なりで何かしらの決議がなされるという理解でよろしいですか。

正木政府参考人 お答えいたします。

 一般的な話で申し上げれば、これは安保理の方が措置をとるということでございますので、安保理のアクションが行われるのを待つということになると思います。

 ただ、今回のICJの判決後の対応につきましては、先ほど申し上げましたように、日本政府として、判決の内容を慎重に精査した上で、真摯に検討いたしたいと思います。

椎名委員 ありがとうございます。

 きのうのきょうですので、私自身も、判決文を打ち出して、結局、コンクルージョンと書いてあるところぐらいしか読めていなくて、全部は読めていないので、役所の方でも恐らく同じように、これから仮訳とかをつくっていき、対応を検討していくということになるかというふうに思いますけれども、ぜひ、水産庁それから農水大臣とも御相談いただきながら、今後も違った形で捕鯨を続けていくことができることを念頭に置きながら、対処を検討していただきたいなというふうに思います。

 それともう一つ、外務省にぜひお願いをしたいことがございます。

 捕鯨外交に関する今までのやりとりというのをぜひ検証していただきたいなというふうに思います。

 ノルウェーは、国際捕鯨取締条約、ICRWの付表に基づくモラトリアム、これについては、基本的に、五条三項だと思いますけれども、これに基づいて一応異議申し立てをして、異議申し立てをしている間ということで商業捕鯨を続けているんだというふうに思います。

 そういった中で、諸々の外交的な事実があって、いたし方なかった部分がたくさんあると思いますので、一概に非難をするつもりはもちろんないんですけれども、我が国が、商業捕鯨モラトリアムに対する異議申し立てを途中で撤回したわけですね。その後、結局、八条一項に基づく調査捕鯨という立ち位置で何とか捕鯨をやってきた。我々消費者の側としては、調査捕鯨によってとられた鯨そのものを可能な限り全部処分するという八条二項の規定に基づいて行われている処分によって鯨の肉を食べている、こういう状況だったと思います。

 言い方は余りきれいじゃないかもしれませんが、やはり本線は、基本的には、商業のための捕鯨というものを貫くことだったんじゃないかなというふうに思っていて、調査捕鯨、やはり実態と違うという判断を今回されたということですので、調査捕鯨という体裁をとりつつ、実態、商業捕鯨に類似する行為を行っていたと要は判断されたんだという部分もなきにしもあらずかなというふうに思っています。

 やはり本筋をこれから追求していくことも引き続き怠らずお願いをしたいなというところと、今までの外交のやり方の部分についてもぜひ検証をしていただきたいなというふうに私自身お願い申し上げたいというふうに思います。

 さて、本題に入ります。

 こちらは法務委員会ですので、尊厳死というテーマについてきょうは伺いたいというふうに思います。

 非常に重たいテーマでございまして、人の生き死ににかかわる部分であり、やはり死生観だったり、それから哲学だったりというところに大きくかかわる部分であって、さまざまな議論のあるところかなというふうに思っています。役所の側で政策的に誘導していくということが基本的には不可能な、そういう問題だろうというふうに思っています。

 そういった観点、そういった問題について、本日、それこそ真正面から聞いていきたいなというふうに思っております。

 尊厳死というのは、みずからの死に方に対する選択という文脈で、自己決定権の一部なんじゃないかというふうに考えられている部分があるかというふうに思います。患者の側でみずからの尊厳を確保したまま死を迎えるということ、さらに付随して申し上げますと、自分の望まない治療を受けない、自分が最後まで生き方を決める、こういう人生の生き方の部分が多分にあるのかなというふうに思っています。

 こういった考え方というところについて、やはり法律家としては、憲法上の権利というところから大上段に構えて議論をする方々も大勢いらっしゃいますけれども、本日、法制局の方にいらっしゃっていただいています。自分の死に方を決定する自己決定権という意味において、これが憲法上どう考えられるのか、憲法上保障されている権利なのかというところからスタートしてまいりたいと思います。

 問題となる条文は、憲法十三条、幸福追求権だというふうに思いますので、十三条について一般的にどう考えられているのかというところを含めて、御見解をいただければと思います。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 今、死に方に関する自己決定権ということで御質問がございました。

 御承知のとおり、憲法第十三条に規定されております生命、自由及び幸福追求に対する権利を一般に幸福追求権と呼んでいると承知しておりますけれども、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重が必要とされるという国民の権利であるというふうに承知しております。

 お尋ねの、死に方に関する自己決定権というのがこうした憲法上の保障される権利に入るかどうかということにつきましては、現段階で、これを一般的に論じた判例があるというふうに私ども承知しておりませんでして、一概に申し上げることはちょっと困難であろうかというふうに思っております。

椎名委員 ありがとうございます。

 類似するという表現が正しいかどうかはちょっと答えを留保しますけれども、輸血拒否事件という事件が以前ございまして、特定の宗教を信じている方が輸血を拒否する、治療行為を拒否する、そういうことで、まさにこの自己決定権、医療に関する、特に治療方針に関する自己決定権というものが争われた件がございます。

 これについては、そういった治療方針等について決めることも、一応、最高裁では、人格権の一内容として尊重されるというふうに指摘はされているところかなというふうに思っています。ただ、最高裁自体は、憲法上の権利かどうかというところについては特段言及をせず、この人格権の一内容として尊重されるべき治療方針に関する自己決定について、医師の側で望まぬ輸血を行ったということで損害賠償を認めている、そういう事件があったかというふうに思います。

 こういった事件を含めても、憲法上の権利かどうかというところについては種々議論があるところかなというふうには思いますが、やはり、治療方針を決定する、最終的には輸血拒否をすると死ぬ可能性もあるので、含意としてですけれども、死に方に関する自己決定というところも含んでいるかなと私自身は思いますが、そういったことを述べている、それについては人格権の一内容として尊重される権利であるということは言っているわけですね。

 こういった自己決定というものを考えたときに、患者がまさに望まない治療行為を、医療従事者が患者のことをおもんぱかって治療行為を中止したり、楽にしてほしいという意思が患者から示された、また家族から示されたということに応えて、積極的に薬物を投与する等によって、いわゆる安楽死という表現をするのが正しいかどうかはわかりませんけれども、そういった行為が今まで問題になった事例というのが幾つかあろうかというふうに思います。

 これは、刑法百九十九条で定める殺人罪だったり、二百二条で定めるいわゆる嘱託殺人だったり、こういった罪に医療従事者が問われる可能性があるわけですね。患者の自己決定、自分の意思のあらわれとして楽にしてほしいという意思表示をしていたとしても、医療従事者の側で延命治療を中止したり、それから積極的に薬物を投与する等によって、こういった罪に問われる事態があったりするわけです。

 しかし、事例の中でも、例外的に許容される場合もあるのではないかみたいな基準を出されている例もございますけれども、刑事局長の御所見、そういったところについて教えていただければというふうに思います。

林政府参考人 今の御指摘に対しては、これまでどのような事例があったのか、あるいは、それに対して裁判所がどのような判断をしたのかという形でお答えをさせていただきたいと思います。

 まず、積極的な安楽死と尊厳死に分けまして御説明いたしますが、まず、積極的な安楽死に関する事例としては、東海大学安楽死事件というものがございます。これは、医師であった被告人が、多発性骨髄腫で入院中の患者に対しまして、家族からの求めに応じて点滴等を外すなどの治療行為を中止し、さらに、すぐに息を引き取らせてほしいと強く要請されて、心停止の作用のある塩化カリウム製剤等を注射して死亡させた、こういう事案でございます。

 これに対しまして、横浜地方裁判所は、一つには、患者が耐えがたい肉体的苦痛に苦しんでいるとは言えない、二つ目には、生命の短縮を承諾する患者の明示の意思表示があるとは言えない、三つに、患者の肉体的苦痛を除去するために方法を尽くし、他に代替手段がないとは言えないなどの判示をして、この事案については殺人罪の成立を認めたものでございます。

 もう一つ、尊厳死。すなわち尊厳死は、死への末期症状に至るなどの生命維持装置に頼るほかには延命の方法がない場合に、本人の生前の意思に基づき、そのような処置を施さないか、あるいは、これを取りやめて尊厳のある自然な死につかせること、こういったものと理解しております。こういった尊厳死に関する事例といたしましては、医師であった被告人が、気管支ぜんそくの発作で昏睡状態が続いていた患者に対し、家族からの求めに応じて気道確保のために挿入されていた気管内チューブを抜いたところ、予期に反して患者が苦悶、苦しい呼吸を始めたために、患者に対して筋弛緩剤を投与し死亡させたという川崎協同病院事件というものがございます。

 これにつきましては、気管内チューブを抜いた、抜管した行為の違法性につきまして、最高裁判所は、被害者の回復可能性や余命については的確な判断を下せる状況にはなかったものと認められること、また、抜管を求める、管を抜くことを求める家族の要請は、適切な情報を伝えられた上でなされたものではなく、また被害者の推定的意思に基づくということもできないことから、この抜管行為は法律上許容される治療中止には当たらない旨判示したところでございます。

椎名委員 ありがとうございます。

 今の裁判例、幾つか理由を種々述べた上で殺人罪に当たるという判断をしているわけですけれども、これは裏を返すと、ごくごく限られた要件のもとで治療行為として許される可能性もあるというその余地自体は残している判決なんだろうというふうに思っています。

 基本的に、医療従事者が治療行為中に患者を死に至らせた場合、いろいろあるかと思いますけれども、典型的な例でいうと、刑法三十五条というところで違法性阻却をされる、また構成要件に該当しない、こういう形があるわけですけれども、今問題となったような事件においても、一応治療行為として許容されるかどうかというところについて裁判所としては検討していただいているわけですね。幾つか要件があるわけです。

 しかし、特に積極的安楽死と俗に言われる、まさに先ほど筋弛緩剤を注射したという事案については、医師の積極的な加害行為が加わっている関係上、やはり認められる可能性というのは非常に低い部分もあるので、こちらについてはまだまだ、もっとずっと大きな議論が必要かなというふうに私自身は思っていますが、他方で、延命治療行為を停止する、いわゆる消極的安楽死と表現をしたり、いわゆる尊厳死という表現をしたりするこういった行為については、先ほど御指摘いただいた、刑事局長のお話しされた部分を含めても、理由づけというのもやはりちょっと違う部分もあります。

 私の手元にあるのは、川崎協同病院事件ではなくて、同じく東海大学病院事件等でも、治療行為の中止については、患者の自己決定権の理論と、意味のない治療行為を行うことはもはや義務ではないという医師の治療義務の限界とを根拠に、一定程度の要件のもとに許容されるんじゃないかみたいなことを指摘しているものもあります。治癒不可能な病気に侵されている、それから治療行為の中止を求める患者の意思表示が存在する、そういったような話ですね。しかし、治療行為として許容されるかどうかについてを裁判所に委ねるということの難しさというのがやはりあるかというふうに思います。

 現実に、ほかにも問題となった事例はあるわけですけれども、尊厳死に関する議論が大きく進んだ事例でいうと、射水市民病院事件という富山の病院の事件ですね。こちらについては、治療行為の中止を行った医師について、かなり複数回の、一説によると五十回以上の取り調べを受けた上で、最終的には起訴されなかったという事案ですね。

 起訴をするかしないかを決める検察官のもとに身柄が送られる、または書類が送られる、さらには、その後起訴されて、裁判所に移管されて、裁判所で有罪か無罪かを判断する、こういうプロセスの流れの中で、治療行為の中止を行った医師を取り扱うというと、やはり彼らの社会的な生命という部分で非常に大きな問題が生じるんじゃないかなというふうに思います。逮捕、送検、マスメディアでの報道、大体このあたりで、政治家もそうですけれども、医師も当然ですけれども、社会的には信用というものを失ってしまう、そういう状況かなというふうに思います。

 だとすると、やはり法律を定めて、一定程度要件を明確化して、医師が明確に免責される要件を定めておくということの必要性についても、そろそろ検討しなきゃいけないのではないかなというふうに私自身は考えておるわけでございます。

 現場では、治療行為の中止をお願いされて、医師が結局判断がつかず、自分が刑事訴追をされる可能性というものを鑑みて、かえって治療行為の中止を拒否する、患者または患者の家族が望んでいないにもかかわらず、その治療行為を続けざるを得なかった、そういう選択をせざるを得ない状況というのも幾つかの事例で報告されているところでございます。

 非常に難しいテーマですけれども、ぜひ、このあたりについて、法制化をする必要性というところについての大臣の御所見などをいただけると大変幸いでございます。

谷垣国務大臣 今御議論の尊厳死、これは、死への末期症状に至るなど生命維持装置に頼らなければ延命の方法がないような場合に、本人の生前の意思に基づいて、そういう処置を施さない、あるいは、それを取りやめて尊厳のある自然な死につかせる、そういうことを意味しているというふうに理解しております。

 今、椎名委員はかなり自問自答されながら御議論を続けておられたと思うんですが、私が申し上げられることも、大体今の自問自答の中に入っているような気がいたします。

 私は、尊厳死については、もちろん、法的に例えばどういう権利として認められるか認められないかということは、法律的な立論だけではなくて、今の御議論の中にもありますけれども、医学とか、さらに道徳とか、宗教、倫理観というようなものと深くかかわっておりますので、なかなか法律的に定型性をつくって議論していくというのが極めて難しい分野ですね。

 恐らく、お挙げになった、医師がそういう行為をして何度も検察に調べられてというような事案でも、いろいろなことが想定されますから、十分注意義務を尽くしているのかとか尽くしていないのかとか、こういうことまで言いますと、非常に難しいですね。

 私は、法制化の必要性と今おっしゃいましたけれども、非常にそういう価値観にわたるものでありますので、少なくとも行政がお先棒を担いでと言うと言葉が悪いですけれども、委員もおっしゃったとおりですが、なかなか問題提起がしにくい事案であろうと思います。

 ですから、やはり、多面的な議論をしていただくという極めて抽象的なお答えしか申し上げようがないのでございますが、今のところ申し上げられるのはそんなことでございます。

椎名委員 ありがとうございます。

 おっしゃるとおりで、非常に難しいテーマだとは思いますけれども、私自身は、患者と医師に選択肢を用意してあげるという発想を持ってもいいのかなというふうに思ったところでございます。

 哲学的な議論に入らないまま、医師の免責を認めるというところに重きを置くことによって、患者の自己決定権に対する選択肢を提供するという考え方も、何を言いたいかというと、要は、裏を返すと、哲学的な議論になるべく踏み込まないで何か議論ができないかという問題提起をきょうはさせていただきたかったところでございます。

 厚生労働省の方々もお呼びしたので、最後に一つだけ伺いたいと思います。

 尊厳死の話を法制化することに対する強い反対意見というのはやはりあります。これは、患者の側が、医師から自分が終末期にあると判断をされたときに、患者と医者に存在している情報の非対称の観点から、やはり医者がそう言ったら自分は終末期なんだろうと思ってしまう、そうすると、家族に申しわけないので、自発的に延命治療の中止を申し出てしまう形で誘導されるんじゃないかというような反対意見が、多分、割と根強いんじゃないかなというふうに思っています。こういった情報の非対称というのを解消していかないと、尊厳死というものを法制化していくことはやはり難しいというふうに思っています。

 こういった観点から、情報の非対称によりもたらされるこういったネガティブの効果ということを考えたときに、どういった方法で極小化していくということが考えられるか、ぜひ教えていただければというふうに思います。

原政府参考人 お答え申し上げます。

 人生の最終段階における医療については、患者、家族に十分に情報が提供された上で、これに基づいて患者が医療従事者と話し合いを行い、患者本人の意思決定を基本として行われることが重要であると考えております。

 今、先生御指摘のようなさまざまな事件がございました。その中で、私どもとしては、平成十九年に、人生の最終段階における医療の決定に関する手続の流れなどを定めた終末期医療の決定プロセスに関するガイドラインを策定しております。現在、この周知に努めていますとともに、また、本年度の予算におきまして、患者の意思を尊重した人生の最終段階における医療を実現するために、医師だけではなくして看護師等を相談員として育成し、患者等に助言や情報提供を行う事業に取り組むこととしております。

 このように、その場面では医師が主導的にはなりますが、最終段階では医師以外の医療従事者も含めたチームで対応することが必要だと思っておりまして、そのためにどのような体制が必要か、今年度の事業で検討を深めていきたいと考えております。

椎名委員 時間も参りましたので終わりたいと思いますが、引き続き、私自身も検討していきたいなというふうに思っております。どうぞよろしくお願い申し上げます。

江崎委員長 次に、鈴木貴子さん。

鈴木(貴)委員 きょうも、こうしてまた質問の時間をいただきましたことを、委員長初め理事の皆さん、委員各位に感謝、御礼を申し上げさせていただきます。

 きょうは、朝鮮総連本部ビルの売却問題、そして、毎回私が取り上げさせていただいております冤罪問題の根底にある闇と、そして今後の対策といったところについて質問をさせていただきたいと思います。

 まず最初に、朝鮮総連本部ビルの売却問題から質問をさせていただきたいと思います。

 皆さんもこの問題についてはさまざま目にしたり耳にされているかと思いますが、過去の流れをまずざっくり振り返らせていただきたいと思います。

 昨年三月、まず一度目の入札がありまして、最福寺が四十五億一千九百万円で落札をされました。しかし、その後に、資金調達ができず、購入の断念。そして、二度目の入札で、今度はモンゴルの企業が五十億一千万円で落札したものの、今度は書類の不備が理由で東京地裁が無効の判断を下しました。その後に、執行抗告に東京高裁は棄却を出しております。

 まず最初の質問ですが、東京地裁は、三度目の入札を行わず、二回目からの開札手続に移られましたが、なぜ三回目の入札を行わなかったのでしょうか。

永野最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 ただいま委員の御質問にございましたように、本件については、新たに売却実施処分を行わず、開札からやり直しが行われたというのは事実でございます。

 事務当局といたしましては、個別の事案の内容につきまして回答することは差し控えさせていただきたいと思います。

鈴木(貴)委員 ちなみに、私がさまざま競売についてルールなどもちょっと調べさせていただいたんですけれども、一番札といわれる最高値をつけた入札参加者と基準価格の二〇%以上の差がある入札参加者は失格というルールがあるそうです。それでいきますと、今回、東京地裁が売却を許可しましたマルナカホールディングスは失格に当たります。マルナカホールディングスは二十二億一千万円という、まず一回目、二回目の入札で落札をした参加者、大体四十五億以上出しておりますので、そのルールでいきますとマルナカホールディングスは失格に当たります。

 東京地裁は、事実、失格の判断を下し、入札の保証金の返却まで行っていると伺っておりますが、これは事実でしょうか。

永野最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 入札の保証金の返却を行っているという事実はあると思いますけれども、ただいま委員の御指摘になられた失格という判断が行われているというふうには承知しておりません。

 ただいま委員の御質問の中で出てきたのは、次順位買い受け人の申し出があったかどうかということで、次順位買い受け人の資格があるかということと、入札人としての失格というのは問題が違うというふうに思います。

鈴木(貴)委員 今回、私がこの場でこの質問を取り上げさせていただいたのは、債権者であるRCC、整理回収機構を初め民間不動産の鑑定士の皆さんの中でも、この建物の評価額というのは往々にして四十億円から五十億円、こういった評価がついております。しかし、今回、本来であれば三度目の入札をするのかなと思っていたところで、それがされずに開札という制度をとられ、結果、マルナカホールディングスという会社が二十二億一千万円という、一回目、二回目の約半値以下の価格で売却が決定された。

 そもそも論として、債務の回収額が著しく減るということがわかっているのであれば、より多くの債務を回収するためにも、三度目の入札をするというのが妥当ではないのかなと思うんですが、いかがでしょうか。

永野最高裁判所長官代理者 裁判は、職権行使の独立が保障されている裁判官により、法と証拠に基づいて行われるものであり、法の定める手続に従った事件処理が行われるべきものであります。

 事務当局としては、個別の事案について、回答は厳に差し控えさせていただきたいというふうに考えております。

鈴木(貴)委員 最近、新聞を開いてもニュースを見ましても、日本と北朝鮮による局長級の会談が開かれるなど、拉致問題解決へ国民にも大きな期待が広がっている今日かな、このように思っております。今回の朝鮮総連本部競売の件が、日朝交渉、ひいては拉致問題の進展に少なからず影響が及ぼされるのではないのか、そういった危惧をする声も上がってきている、これもまた事実であると思います。

 こうした世論、国民の声に対していかがお考えで、またどのような対応でそういった世論の声に応えていかれるのでしょうか。

永野最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 繰り返しにはなりますけれども、事務当局としては、個別の事案についての発言は厳に差し控えさせていただきたいというふうに思います。

鈴木(貴)委員 破綻処理にこれまで日本政府としても公的資金を投入してきた、しかも莫大な額をしてきた経緯もありまして、少しでも入札によって高値をつけていただいて、より多く回収すべきでないか、また、それがより国民感情にも沿うているのではないのかなという観点から、今回、質問をさせていただきました。

 それでは、次の質問に移らせていただきたいと思います。

 まず、林刑事局長にお尋ねをさせていただきたいと思うんですけれども、一般論として、検察が重要視するのは、科学的知見に基づいた証拠、もしくはその証拠から得た判断でよろしいでしょうか。

林政府参考人 検察当局において検察活動を行うに際しましては、基本的には、法と証拠に基づき、それを的確に評価して行うということになると思います。

鈴木(貴)委員 では、科学的知見に基づいた証拠、そしてまた非科学的知見に基づいた証拠があれば、どちらが重要視されますか。

林政府参考人 証拠の評価ということでございますが、科学的な証拠と非科学的な証拠という、その言葉の意味するところが明らかでないと思いますけれども、いずれにいたしましても、事案に即して、その中での証拠価値判断を厳正に行うということになろうかと思います。

鈴木(貴)委員 皆さんもよく御存じだと思いますし、また、きょうも郡議員そして田嶋議員も質問の冒頭に触れていらっしゃいましたが、先月の二十七日に、私がずっと取り組ませていただいております袴田巌さんの再審開始の決定が静岡地裁により下されました。しかし、きのうの、それこそこの時間であったかと思います、大体四時四十四分ごろだったかと思うんですけれども、検察は即時抗告を行いました。

 ここで改めて林刑事局長にお尋ねをさせていただきます。

 静岡地裁は、その主文の中で、五点の衣類を科学的あるいは客観的に分析、検討した結果、捏造されたものであると疑わざるを得ない状況になっていると断じております。五十ページに書いてありました。そしてまた、この捏造疑惑に対して、検察官は、現実にはあり得ない空想の産物だとまで主張をしております。

 さまざまに、DNA鑑定、きょう、それこそ午前中の質疑などでも出てまいりました、そういった科学的知見を信じている、また重要性が一般的に広く認められているという上で伺わせていただきますが、検察官側が裁判官のこの言及に対して、科学的あるいは客観的に分析、検討した結果、捏造されたものであると疑わざるを得ない、ここまで言及している、このことに対して、なぜ空想の産物だと言い切ることができるのでしょうか。

林政府参考人 これまでの、再審決定に至るまでの審理の中で、そのような今回の証拠の評価等において請求側と検察側でさまざまな主張がなされた、その上で、今回、静岡地裁において再審開始決定というものがなされたと承知しております。

鈴木(貴)委員 事実関係の確認はしていないんです。事実関係はよくよく私もわかっております。そういったことを踏まえて、静岡地裁が再審開始の決定はしております。

 私が今、刑事局長に伺いたいのは、裁判官が新証拠を評価した上で、ここまで、検察側に捏造されたものであると疑わざるを得ない状況になっているとまで言及していることに対して、検察官が空想の産物だと断じれる、言葉は悪いかもしれませんが、そこまで吐き捨てることができるのかということを問うているんです。

林政府参考人 今回の決定を受けて、検察当局におきましては、三月三十一日に静岡地裁に、再審開始決定が、DNA型鑑定に関する証拠の評価などに問題があると考えられるほか、また、各種の証拠について、合理的な根拠がないのに警察によって捏造された疑いがあるなどとしている点について到底承服できるものではないとして、再審開始決定に対する即時抗告の申し立てをしたものと承知しております。

鈴木(貴)委員 きのう、私も静岡地検側が会見を開くのかなと思っておりましたが、静岡地検は会見も開かずに、たった一枚のコメントを出されました。

 そこには、次席検事のコメント、こうありました。合理的な根拠もないのに警察によって捏造された疑いがあるとしており承服できないと、会見ではなく紙切れ一枚、コメントで、この大きな、日本じゅうが、いや、世界じゅうが注目しているこの事件に関して、紙切れ一枚で返答をされました。

 もう一度申し上げます。主文の中には、五点の衣類は、DNA鑑定という科学的な証拠によって、袴田の着衣でない蓋然性が高く、犯行着衣でない可能性が十分あることが判明した、これは主文の四十九ページにはっきりと書かれております。また、重ねて申し上げますが、五十ページには、五点の衣類を科学的あるいは客観的に分析、検討した結果、捏造されたものであると疑わざるを得ない状況になると書かれております。

 こうしたことを踏まえましても、私だけの声ではないと思うんですけれども、もし、捜査当局が法と正義にのっとり、しかるべき捜査活動をしたというのであれば、何ゆえ再審の場でそれを証明しようとしないのでしょうか。なぜ抗告という手続をとるのでしょうか。

林政府参考人 検察当局におきましては、この静岡地裁における再審開始決定に対しまして、先ほど申し上げましたように、このDNA型鑑定に関する証拠の評価などに問題があると考えられる、また、合理的な根拠もないのに警察によって捏造された疑いがあるなどとしている点で到底承服できない、そのために、この再審開始決定が法の定める要件を満たすものではないと考えて即時抗告をしたというふうに承知しております。

鈴木(貴)委員 法と正義にのっとってしかるべき捜査をされているというのであれば、再審の場というオープンでかつ公な場でしっかりと説明責任を果たすというのも一つ検察に課された使命ではないのかな、このように思います。

 それこそ、検察というのは公益の代表であると定められているわけでありますから、そういう観点で考えれば、今回、四十八年ぶりに空を見られた袴田さんのためにも、検察側は再審という場所で正々堂々と法と正義にのっとって訴えるべきではなかったのでしょうか。

林政府参考人 再審請求がありますと、それは、刑事訴訟法の規定に定めた要件に従って、その要件を満たすときに限って再審開始の決定ができる、そのようになっておりますけれども、検察当局としては、今回の決定がその刑事訴訟法に定める要件に当たらない、そのように考えていたことから、今回、即時抗告を申し立てたと承知しております。

鈴木(貴)委員 今回のいわゆる袴田事件に関しては、国内はもとより、世界じゅうが注目をしている事件の一つと言っても過言ではないと思います。

 国連の拷問禁止委員会でも話題に上がっております。声明文も出されております。アムネスティも声明文を出しております。ホームページにも袴田さんの件を、そしてまた、袴田さんを自由にという署名活動まで行われております。そして、世界各国、さまざまな言語によってニュースとしても配信をされているという点においても、一般の刑事事件とは非常に異なる性質を持つ事件ではないのかな、このように思っているところであります。

 そういった中で、異例とも言われるこの捜査当局による証拠の捏造、まさに、捜査当局側に言わせると、非常にプライドを傷つけられる、いや、存在意義さえも問われる、そんな主文であったのではないのかな、このように思うところであります。

 そういった意味でも、私は、検察側にしっかりと説明責任というものを果たしていただきたい。国民の、世論の目に見える形でしっかりと訴えていただきたいし、何が事実かというものを最後の最後までただしていかなくてはいけないのかな、このように思っております。

 続いて、「検察の理念」について引き続きお尋ねをさせていただきたいと思います。

 林刑事局長が策定から携わられたということで、答弁の内容も非常に楽しみに期待をしているところであります。「自己の名誉や評価を目的として行動することを潔しとせず、時としてこれが傷つくことをもおそれない胆力が必要である。」このように書いてあります。法と証拠に基づいて適切に捜査、公判維持を行っていると常々、答弁また質問主意書でも返事が返ってきておりますが、つまるところは、検察はミスを犯さない、検察が間違いを犯すことはない、こういうことを言っているのでしょうか。

林政府参考人 「検察の理念」におきまして、検察としては、まずは、厳正公平、不偏不党を旨として行動すべきである、あるいは、基本的人権を尊重し、刑事手続の適正を確保する、あるいは、無実の者を罰し、あるいは、真犯人を逃して処罰を免れさせるようなことにならないよう、知力を尽くして事案の真相に取り組むなどとしております。

鈴木(貴)委員 今、林刑事局長が挙げられた点を鑑みましても、今回のいわゆる袴田さんの事件でありますが、正直、何ゆえ検察側が即時抗告をしたのかがやはりわからないんです。

 この事件というのは、非常に珍しいといいますか、特異な一面を持っていると思うんです。北は北海道、南は沖縄まで、全ての地方紙で、この袴田事件に関して、検察は即時抗告をすべきでないという論調の社説が出ているんです。そして、それが社説リレーという形で特集になって、ページさえも組まれているんです。先ほども言いましたが、検察が公益の代表者であると定められているわけです。すなわち、国民の声を、世論の声をないがしろにすることは言語道断であると思います。

 そういう意味から考えても、私は、即時抗告は今からでも撤回すべきである、このように考えますが、林刑事局長、どのようにお考えでしょうか。

林政府参考人 先ほども申し上げましたが、検察当局は、まずは、今回のDNA型鑑定に関する証拠の評価などに問題があるという点、あるいは、合理的な根拠もないのに警察によって捏造された疑いがあるなどとされている点、この点から、今回の決定が到底承服できるものでないと考えて即時抗告をしたものでございます。

 今後、この即時抗告審において、検察当局において適切に対処していくものと考えます。

鈴木(貴)委員 今後適切に対処をしていくというふうに考えますと今おっしゃられました。

 繰り返しになりますが、判決文、主文の中で、捜査当局による捏造の疑いがある、そしてまた、捏造されたと考えるのが最も合理的であり、現実的にはほかに考えようがないとも書かれています。また、このような証拠を捏造する必要と能力を有するのは、恐らく捜査機関をおいてほかにないと思われるとまで書かれています。さらに、あり得ないなどとしてその可能性を否定することは許されない。ここまで書かれている主文を、逆に、林刑事局長、過去に読まれたことはありますでしょうか。

林政府参考人 特に、私として、このような同種の決定に接したということを、今の時点で知るものではございません。

鈴木(貴)委員 それが全てだと思うんです。

 つまるところ、この主文は、今回のこの事件は異例中の異例なわけであります。林刑事局長ほどのベテランの局長であっても、過去に類を見ない主文が書かれている、発表されている。これは、検察として重きに重きに重きに受けとめなくてはいけない事実ではないでしょうか。何よりも検察の皆さんが事実のとうとさと重みというものをわかっているのではないでしょうか。

 今までのやりとりを聞いていても、検察は常に正しく、間違いを起こさない、まさに神がかったような発言といいますか、姿勢が見受けられるわけです。

 改めてお聞きします。林刑事局長、過去に検察は、人間の集まりである検察という組織は、誤りを、過ちを起こさないんでしょうか、犯してこなかったんでしょうか。

林政府参考人 先ほどの「検察の理念」におきましても、権限の行使のあり方が、独善に陥ることなく、真に国民の利益にかなうものとなっているかを常に内省しつつ行動する、謙虚な姿勢を保つべきである、このようになっておりまして、この検察理念の姿勢でもって検察活動を行うべきものと考えております。

鈴木(貴)委員 まさに、局長のこの答弁そのものに、さまざまなメッセージ性があらわれている。それは、何も質問している私だけでなく、こうしたカメラを使って今もこのインターネット中継を見ている国民の皆さんも感じられているのではないのかなと思います。

 これまで、私が林刑事局長に対して質問をさせていただきました。さまざまなメディアの資料も出させていただきました。弁護士から提出をいただいて、これまで明るみにならなかった証拠も出させていただきました。しかし、林刑事局長の口から、内省する、反省する、検証する、見直しをするといった言葉は一度たりとて出てこなかった。これが現実ではないでしょうか。まさにそういった検察の姿勢が、態度が冤罪を生む温床になっている、こう考えるのが一般論ではないでしょうか。それが国民の声ではないでしょうか。

 私は、今ここに国民の代表として立たせていただいているんです。鈴木貴子が質疑者であったとしても、鈴木貴子の声というのは国民の声である、このように受けとめて、林刑事局長、ぜひとも真摯な答弁をいただきたい、このように切に切に願うものであります。

 今のこうしたやりとりからも、改めてお尋ねをさせていただきたいと思います。検察庁法の第十四条というものであります。検察の自浄作用に期待ができないのならば、検察の責任者である大臣の責任にもつながる、こう考えざるを得ないのかなと思います。

 大臣にお伺いをする前に、林刑事局長にお伺いをさせていただきます。自浄作用がない、自分たちはこれだけのことを指摘されても反省をする必要はない、そのような態度をとられ続けるということは、逆に大臣に責任を転嫁しようとしているんじゃないか、このように思うんですが、林刑事局長はどうでしょうか。

林政府参考人 検察当局としましては、あくまでも刑事訴訟法の規定の再審開始決定の要件を満たすものではないという判断に立って、即時抗告をしたものと考えております。

鈴木(貴)委員 私は今、即時抗告だけに、一点に限ってだけじゃないんです。今、私の持ち時間では決して足ることはない、さまざまなこれまでの過去の検察の過ち、また内省すべき点についてお尋ねをしたわけであります。逆に言うのであれば、反省する必要がないのであれば、何ゆえ「検察の理念」を策定されたのでしょうか。

 原点に戻って、初心に戻って、一点質問させていただきます。林刑事局長は、どのような背景から、どのような必要性から「検察の理念」をお書きになられたのでしょうか。所信とともにお答えをいただきたいと思います。

林政府参考人 この「検察の理念」につきましては、検察の職員が、いかなる状況においても、目指すべき方向を見失うことなく、使命感を持って職務に当たるとともに、検察活動の全般が適正に行われ、国民の信頼という基盤に支えられ続けることができるように、検察職員に対して、日々の検察の精神と基本姿勢を示す、こういう目的で定めたものでございます。(発言する者あり)

鈴木(貴)委員 ありがとうございます。今、私の耳には、全然内省していないなという声が届いてまいりました。しかし、土屋先生も国民の代表でありますから、まさにそれが国民の声なんじゃないでしょうか。

 今のこの質問に対しましても、策定をされた張本人みずからが、常に書面を見ながら、下を向きながら内省をしていると読まれたところで、何一つ響いてこないんです。ここは委員会の場なんです。その質問に対して真摯に答えが返ってこないというのは、委員会軽視じゃないでしょうか。これは、国政調査権を侵害している、侮辱していると言っても過言ではないんじゃないでしょうか。

 時間も、五分前という紙もいただきました。大臣にも質問をさせていただきたいと思います。

 先ほどちらっと述べさせていただきましたが、検察庁法の第十四条、検察の権力の横暴、暴挙を防ぐために、必要であれば、大臣がその責任者としての存在を示すと定義されているところがあるわけですが、今のこの質疑応答を聞かれた大臣に質問させていただきたいと思います。

 大臣が今の質疑応答を聞いて、まず、検察にそもそもの自浄作用がある、このように判断をされているか。「検察の理念」というものが、策定されただけで終わらず、しっかりと運用されているのか。そして、大臣としては検察に対してどのような働きかけをされていくのかをお答えいただけますでしょうか。

谷垣国務大臣 検察も人間の組織でありますから、無謬ということはないでしょう。ただ、一つやはり心構えとして、日に新たに、日々に新たに、また日に新たなりという気持ちは必要だろうと思います。そういった気持ちが「検察の理念」にも書かれているんだろうと思いますので、それはよく踏まえてやっていかなければならないのは当然のことだろうと思います。

 それから、今までの議論を拝見しまして、私は今法務大臣として、静岡地裁の今度の御判断、それぞれの証拠の評価、これについては、行政の場にいる者としてコメントしようとは思っておりません。

 それからまた、検察がこの事件でどう行動するのか、それを私が言えば、いわゆる指揮権を発動するということになって、指揮権というものを私は持っているわけですから、未来永劫使うつもりはないとか、それから、今もすぐ抜くぞというようなことは申し上げるつもりはありません。

 ただ、今、国民の代表というふうに鈴木委員はおっしゃった。検察は公益の代表である、こういうふうにおっしゃった。それで、公益の代表というのは何かということです。

 私は、公益の代表というのは、こういう局面では、法と証拠に基づくということではないかと思います。国民の代表、私も国民の代表として今法務省で閣僚をやらせていただいているわけですが、この局面は、国民の代表として、つまり、何らかの民主的運動であるとか、何らかの社会運動であるとか、そういうような国民の声がいろいろあるのは私も承知しておりますが、そういうものとして、今法務大臣は、最終的にそれが全部否定されてしまうということになったらそれはいけないじゃないかといって、指揮権というものが認められているんだろうと思います。

 しかし、今の局面は、まず法と証拠に照らす、そして、今もいろいろ鈴木委員も御議論されましたけれども、証拠の評価が適正であるかどうか、そういうことをきちっと詰めていく、そういうことが大事ではないかと私は思います。

鈴木(貴)委員 質疑の時間も終了しました。

 最後に、大臣、真摯な答弁をいただきました大臣に感謝を申し上げるとともに、その大臣の今あった、日々新たに、この言葉は、私も含めて、また局長を初め全ての者に通じるところがあるのではないのかな、このような点と、私としましては、やはり法と証拠に基づいてしっかりと今後とも審理がなされ、無罪の者が罪に問われることのなきよう、公正公平で、誰もが安心、安全に生活できる日本の社会づくりのために、私も今後とも汗を流してまいりたいと思います。

 ありがとうございました。

     ――――◇―――――

江崎委員長 次に、内閣提出、外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。谷垣法務大臣。

    ―――――――――――――

 外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

谷垣国務大臣 外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。

 この法律案は、法律事務の国際化、専門化及び複雑多様化により的確に対応するため、外国法事務弁護士が社員となり外国法に関する法律事務を行うことを目的とする法人を設立することを可能にするものであります。

 以下、法律案の内容につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 まず第一に、この法人の社員は、外国法事務弁護士に限るものとし、その名称中には、外国法事務弁護士法人という文字を使用しなければならないこととしております。

 第二に、この法人の業務範囲については、自然人である外国法事務弁護士と同様に、外国法に関する法律事務等としております。

 第三に、この法人の業務については、原則として、全社員が業務執行権限及び代表権限を有するものとしております。

 第四に、この法人は、従たる事務所を設けることができるものとしております。

 第五に、この法人は、自然人である外国法事務弁護士と同様、弁護士会及び日本弁護士連合会に入会するものとし、その指導監督を受けるものとしております。その他、この法人については、弁護士法人とおおむね同様の規律とするとともに、所要の規定の整備を行っております。

 以上が、外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法の一部を改正する法律案の趣旨であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに可決くださいますようお願いいたします。

江崎委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、明二日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時四分散会


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