衆議院

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第12号 平成26年4月16日(水曜日)

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平成二十六年四月十六日(水曜日)

    午前十時三十分開議

 出席委員

   委員長 江崎 鐵磨君

   理事 大塚  拓君 理事 土屋 正忠君

   理事 ふくだ峰之君 理事 盛山 正仁君

   理事 吉野 正芳君 理事 階   猛君

   理事 西田  譲君 理事 遠山 清彦君

      安藤  裕君    池田 道孝君

      小田原 潔君    大見  正君

      門  博文君    神山 佐市君

      菅家 一郎君    黄川田仁志君

      小島 敏文君    古賀  篤君

      今野 智博君    末吉 光徳君

      中谷 真一君    橋本  岳君

      鳩山 邦夫君    平口  洋君

      三ッ林裕巳君    宮澤 博行君

      大島  敦君    郡  和子君

      横路 孝弘君    高橋 みほ君

      松田  学君    大口 善徳君

      椎名  毅君    鈴木 貴子君

    …………………………………

   議員           大島  敦君

   議員           階   猛君

   法務大臣         谷垣 禎一君

   法務副大臣        奥野 信亮君

   法務大臣政務官      平口  洋君

   財務大臣政務官      葉梨 康弘君

   最高裁判所事務総局民事局長

   兼最高裁判所事務総局行政局長           永野 厚郎君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局審議官)            氷見野良三君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    深山 卓也君

   政府参考人

   (国税庁課税部長)    岡田 則之君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           広瀬  直君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 鎌形 浩史君

   法務委員会専門員     矢部 明宏君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十六日

 辞任         補欠選任

  門  博文君     中谷 真一君

  田嶋  要君     大島  敦君

  林原 由佳君     松田  学君

同日

 辞任         補欠選任

  中谷 真一君     門  博文君

  大島  敦君     田嶋  要君

  松田  学君     林原 由佳君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 会社法の一部を改正する法律案(内閣提出、第百八十五回国会閣法第二二号)

 会社法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出、第百八十五回国会閣法第二三号)

 会社法の一部を改正する法律案(階猛君外一名提出、衆法第一五号)


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     ――――◇―――――

江崎委員長 これより会議を開きます。

 第百八十五回国会、内閣提出、会社法の一部を改正する法律案及び会社法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案並びに階猛君外一名提出、会社法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として金融庁総務企画局審議官氷見野良三君、法務省民事局長深山卓也君、国税庁課税部長岡田則之君、経済産業省大臣官房審議官広瀬直君及び環境省大臣官房審議官鎌形浩史君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

江崎委員長 異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

江崎委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局永野民事局長兼行政局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

江崎委員長 御異議なしと認めます。そのように決しました。

    ―――――――――――――

江崎委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。初めに、大島敦君。

大島(敦)委員 おはようございます。民主党衆議院議員の大島です。

 きょうは、会社法の改正案につきまして何点か質問をさせていただきます。

 法務委員会で質問をするのは生まれて初めてでして、会社法の改正案、懐かしいなという思いがしております。そういえば、私、大学のゼミは会社法でして、三十三年前に卒業して、まだ会社法がなくて商法だった時代なものですから、今まで三十三年間の変遷について初めて勉強させていただいて、特に企業統治のあり方について私の考えたところについて御質問をさせていただきたいと考えております。

 それで、特に今回の会社法の改正案の中で、昨年の六月十四日に政府で閣議決定をした日本再興戦略の中で、この社外取締役の導入についての記載がございます。これまで各政権がさまざまな成長戦略を出してきたと思うんですけれども、例えば、小泉政権ですと経済成長戦略大綱、あるいは、その後の政権ですと新成長戦略、日本再生戦略、そして日本再興戦略と各内閣ごとに日本の成長戦略についての決定がなされております。

 その中で、私がいつも思うのは、大体内容はそんなに大きくは違わないと思っていまして、書いている人がほとんど同じですから、内容は大きく変わりません、日本の課題というのも同じだと思っています。ただ、私が最近いつも考えるのは、こういうさまざまな成長戦略の中で、一ページ目が抜けているなと思っていまして、日本の課題というのは経営人材が枯渇していることだと思っています。

 ですから、奥野先生も日産自動車の取締役をされていらっしゃったということを伺っておりますので、一番最初のページに、この草食化した丸の内、大手町をいかに肉食化するかというページが抜けているのかなと思っています。

 ですから、どんなに規制改革、規制緩和をしても、どんなにさまざまなステージを提供したとしても、そこに果敢に乗り込んでいく、取り組む経営者が少なくなってきているのかなという思いがしております。

 今回、会社法の改正案を勉強させていただきまして、一番最初に書いてあるのが、「外部の視点から、社内のしがらみや利害関係に縛られず監督できる社外取締役の導入を促進する。」ということが規定されておりまして、このことは結構大切なことだと思っています。

 ですから、会社法の改正案のこの社外取締役のあり方について、日本の今までの、旧来の経営に対して揺らぎあるいは刺激を与える一つの弾みになるのかなと思っておりまして、その点につきましての現状認識、そして法改正の目的について谷垣法務大臣にお答えをしていただきたいと思います。

谷垣国務大臣 今の大島委員の問題意識にうまく答えられるかどうかわかりませんが、現行会社法、昔、会社法のゼミで研さんを積まれたということですが、私も実は今回この改正法に当たりまして会社法を勉強しましたら、有限会社がなくなっているんだとか、最低資本金の規定もなくなっているんだというようなところからスタートしたものですから、余り偉そうなことは言えないわけでございます。

 現行の会社法は平成十七年に成立をした。それで、平成十八年五月から施行されているわけですが、今委員のおっしゃった会社法におけるコーポレートガバナンスあるいはその背景に経営人材というものがどうかという御指摘は、私もそのとおりだと思います。

 それで、コーポレートガバナンスに関する規律につきましては、経営者からの影響を受けない社外取締役、その機能を活用するといったことを通じて、取締役に対する監査とかあるいは監督のあり方を見直すべきだという指摘がずっとされてまいりました。

 この指摘の背景には、日本におけるいわゆる企業統治といいますかコーポレートガバナンスが十分行われていない。恐らくその背景には、委員のおっしゃったように、では、経営人材というものはどうなんだという問題が伏在していると思いますし、今回、社外取締役をもう少し充実せよという中にも、果たしてその人材はどこにいるんだろうかという議論もずっとあったことも事実でございます。

 しかし、十分な企業統治、コーポレートガバナンスが行われていないということが、外国企業と比較した場合の日本企業の収益力が低いじゃないかとか、あるいは、株価も低迷しているのはそこに一つ原因があるぞという、内外の投資家の不信といいますか指摘がずっとあったんだろうと思います。

 それから、我が国の会社法制におきましては、従前から親子会社に対する規律が必ずしもきちっとできていないという御指摘がございました。それで、平成十七年の会社法案の国会審議を振り返ってみますと、衆参両院の法務委員会の採決に当たって、「親子会社関係に係る取締役等の責任のあり方等、いわゆる企業結合法制について、検討を行うこと。」という附帯決議がついてございます。そういった整備の必要性も当時からずっと指摘されていたということだろうと思います。

 それで、こういう状況のもとで、企業統治を強化する、あるいは、そういうことを強化することによってコンプライアンスを強化していく、そして企業経営の効率性の向上も図っていく、それから親子会社に対する規律というものをきちっと整備していこう、こういうようなことを目標としているのが今回の改正でございます。

 こういう改正を通じて、肉食系になるのかどうかちょっとよくわかりませんが、日本企業に対する内外の投資家からの信頼が高まって、日本に対する投資が促進される、日本企業に対する投資が促進される、そういったことがひいては日本経済の成長、発展に大きな力となるのではないか、こういった考え方で今回の改正法を出させていただいた次第でございます。

大島(敦)委員 ありがとうございます。

 谷垣法務大臣のお話を聞きながら、会社法の改正案というのは、コーポレートガバナンスあるいは投資家に対するコンプライアンスについて会社法の改正を順次行っているという流れだと思います。

 今回、成長戦略の中に社外取締役について規定を置かれたというのは、私は、法務大臣のお立場とは若干違う観点から、先ほど申し上げましたとおり、日本の企業経営に対する刺激と揺らぎを与えることだと思っていまして、私も衆議院議員になるまでは大きな会社に勤めておりまして、経営はしていませんけれども、サラリーマンをしておりまして、そのときの経験からすると、日本の会社というのは、どうしても社内で要は出世をしていくということになります。どうしても上を見て仕事をするのが日本の会社、組織でございます。そうすると、殻を打ち破るという経営者がなかなか出てこないところもあります。

 ですから、今回、特にボード、取締役になった、あるいはこれから取締役になろうとする方は、どうしても上を見ながら仕事をすることになりますから、守りの姿勢になってくるのが多いのかなと思っています。今回も、法案審議に当たりまして、私の知り合い、私が今から三十三年前、昭和五十六年に一番最初の会社員を始めていますから、大体、私の同僚とか友達というのは、運がよければ大きな会社、上場企業の役員に残れていますし、おおむね、大多数は子会社の部長なり役員になっている方が多いわけです。一人一人に聞いてみると、さまざまな意見があります。

 役員になっていらっしゃる方で、社外取締役を二人ぐらい入れている会社があって、それはちゃんと機能しているというお話でした。どういう機能の仕方かというと、月に一回開かれる取締役会で、その社外取締役の方が一つの議案について多角的な角度から論点を指摘することによってその決議が流れることもあるそうなんです。

 ですから、これは法案審議と同じで、野党が質問することによってさまざまな論点が精査をされますから、社外取締役、有効に活用という言い方はよくないかもしれないけれども、有効に社外取締役を生かすのであれば、企業にとって物すごくプラスになると思っています。そのことが、同質化した日本の会社経営に対してやはり刺激を与え、よりよい企業の戦略の決定につながってくるかなと考えております。

 もう一つは、今回、社外取締役だと、委員会設置会社、要は、半分以上が社外取締役であって、指名委員会あるいは報酬委員会、監査委員会かな、ボード、誰を社長にするのかも指名委員会が決めるという、五十七社、日本の上場企業の中でそういう形態をとられている会社があるということも伺いました。それがなかなか進んでいないので、今回の会社法の改正案につながったとも聞いております。

 この五十七社というのは、結構、冒険をしているかなと思います。この資料を読ませていただく中で、やはり経団連の皆さんが社外取締役について否定的なのはよくわかります。皆さん、多分、御自身の会社の中で取締役まで上り詰められて、ほかの方から意見を言われることについて、おっくうかなという気持ちはあると思うんです。人事権まで委員会設置会社へ渡すというのは、これはちょっとまかりならぬというふうに思うのもよくわかります。

 ただ、今回の成長戦略の中に、会社法の改正案で社外取締役について特記してあるのは、何回も述べましたけれども、日本の資本主義の会社法というのはOSですから、OSを変えるということの意思があるのかなと思っています。

 ですから、次の点について、攻めの経営を後押しすべく、社外取締役の機能を積極活用することとする、このため、独立性の高い社外取締役の導入を促進するための措置を講ずるなど、少なくとも一人以上の社外取締役の確保に向けた取り組みを強化する、日本再興戦略の中にあるんですけれども、社外取締役の設置の義務づけが見送られた理由につきまして、答弁いただければ幸いと存じます。

谷垣国務大臣 これはまず、法制審議会で相当御議論をいただきまして、社外取締役をより積極的に活用すべきであるという強い御議論もございました。これは、取締役会の業務執行者に対する監督機能を強化していくことが必要である、そういう強い御指摘もありまして、法制審議会の会社法制部会におきまして重要な検討項目として議論をされたわけでございます。

 ここは二つの議論が激しく対立をいたしまして、一つは、社外取締役の導入につきまして、社外取締役に監視される立場にある業務執行者の自律性に期待することには限界があるじゃないかということで義務づけに賛成する、これは強い御意見がございました。他方、義務づけるとかえって各会社の規模とか業種とか業態等に適した企業統治体制をつくっていくことが妨げられてしまう、社外取締役の導入は各会社の自由な選択に任せるべきだという、これまた強い御意見がございまして、非常な対立でございました。

 要するに、議論を重ねたんですが、なかなか、ではこれを義務づけるという形でのコンセンサスが得られなかったというのが過去の議論の流れでございます。したがいまして、滝大臣に対する法制審議会からの答申も社外取締役の選任の義務づけは盛り込まれていなかったということでございます。

 こういうものを含めまして、かなり義務づけに近い形にはなっているのですが、明示に義務づけるという形にはしない今回の改正案となって提出をさせていただいた次第でございます。

大島(敦)委員 ありがとうございます。

 私も、今回、衆議院調査局法務調査室がつくっていただいた資料をずっと読んでいると、法制審議会における議論は極めて丁寧にされているなと。私もこういう基本法の審議に当たっての法制審の中でのやりとりというのが、結構、A案、B案、C案で賛否についてそれぞれの立場から議論を進められて、そして大臣のもとに答申が上がって、それに基づいて立法化しますから、時の政府とか大臣の意思がなかなか入りにくい領域だなとは思います、基本法ですから。

 ただ、ちょっとこだわっている成長戦略の中、日本再興戦略の中に入れるという意味は、結構、日本をつくりかえるとか成長を促すという意味合いがあるものですから、そうすると、政治の意思が余り働き過ぎると答申の内容とおかしくなってしまうかもしれないんだけれども、ある程度、政治の意思を明確にしてもいい部分なのかなとも思ったわけです。

 確かに、上場企業は三千社ありますから、義務づけると少なくとも三千人の社外取締役を起用しなくちゃいけない。ただ、起用することと、そのことは私は必要だと思っていて、徐々にそうやってなれながら、社内の取締役会の議論を深めていくことが必要なのかなとも思うわけです。

 今回の議論に当たっては、現行法では監査役設置会社と委員会設置会社の二つしかありません。私はこれでもいいのかなと思っているんですよ。この委員会設置会社を生かして社外取締役を義務づけるという一つの方向性もあって、その先には、ある程度、時代がたってくれば過半数を社外取締役にするという領域まで行くのかなとも思うんです。

 ですから、今回の監査等委員会設置会社ですか、この中間的なところというのは、一つは一歩進んだのかもしれないけれども、若干、制度設計として中途半端な気持ちもしないでもなくて、その点につきまして、今回、監査等委員会設置会社を創設するその理由について、大臣からお聞かせいただければ幸いと存じます。

谷垣国務大臣 確かにこういういろいろな委員会の設置の仕方は非常に複雑でございますので、外から見たときに、日本の会社法制というのはなかなか、ある意味ではわかりにくくなっているようなところもあると思います。しかし、それだけ多様なメニューが可能になっているといえば、そういうことだろうと思うんですね。

 それで、おっしゃるように、現行法、今の法では監査役設置会社とそれから委員会設置会社、これは今度法律が変えられますと指名委員会等設置会社という名前に変えるわけでございますが、現在は監査役設置会社と委員会設置会社である。それで、現在、多くは監査役設置会社として行動していただいている。

 しかし、今回の立法の趣旨でございますが、監査役設置会社の監査役は、代表取締役の任免を含む取締役会の決議における議決権を有しておりません。そのことから、監査機能の強化には限界があるという御指摘が今までからずっとあったところでございます。それから、業務執行者に対する監督については、特に上場会社について社外取締役の機能を活用すべきであるという指摘は、これもまたあったところでございます。

 ただ、現行法では、二人以上の社外取締役を必ず置くこととされている委員会設置会社を採用する会社の数は、先ほど御指摘のように、極めて少数、なかなかふえません。それで、その原因として、社外取締役が過半数を占める指名委員会それから報酬委員会に取締役の候補者の指名や報酬の決定を委ねてしまうということに対する抵抗感があるという御指摘がございました。

 それから、監査役設置会社で任意に社外取締役を選任する上場会社の数は増加傾向にはございますが、大多数の上場会社で選任されてきているとまでは言えない状況でございます。その原因として、二人以上の社外監査役の選任が義務づけられている監査役設置会社で、さらに社外取締役を設置するということの重複感といいますか負担感が強いという指摘がされているところでございます。

 そこで、この改正法案では、業務執行者に対する監督機能を強化することを目的として監査等委員会をつくる、その中には、取締役で構成されて、かつ社外取締役が過半数を占める、そういう形での監査等委員会をつくって、そこで監査を行い、他方で監査役を置くことができないこととして、監査役は置かないということにして、社外監査役との重複感を生じさせないような制度設計にしたらどうだということで、監査等委員会設置会社制度というものをつくったわけでございます。

 なかなか答弁する頭の整理もいろいろ要るわけでございます。よろしくお願いいたします。

大島(敦)委員 谷垣大臣が、法案を答弁に当たって検討されるに当たりまして、結構複雑だと思うんですよ。監査役設置会社と委員会設置会社ですと、多分、外国の投資家の皆さんも極めてクリアにわかるわけですよ。今回の監査等委員会設置会社ですと、この中間的な形態ですから、この二つを足したような感じがして、理解するまで結構時間がかかるのかなと思っています。

 社外取締役を設置しなくちゃいけない、それに対してはある程度導入に当たってのインセンティブを考えなくちゃいけないということもあったのかもしれない。ですから、私としては、今回の法案については一定の評価はするんですけれども、従来どおりで委員会設置会社の義務化の方がスマートだったのかなということを再度ちょっと指摘させていただいて。

 でも、今回、法施行二年経過後に、社外取締役の選任状況その他の社会経済情勢の変化を勘案して、企業統治に係る制度のあり方について検討を加え、必要があると認めるときは、社外取締役を置くことを義務づける等所要の措置を講ずることとしております。

 ですから、二年たった後に、どのくらいの会社が今回の監査等委員会設置会社に移行してどういう会社形態をとるのかを勘案した後に、もう一度その後の方向性について議論をするということだと思うんですけれども、具体的にはどのようなことを想定しているのか、御答弁いただけると助かります。

谷垣国務大臣 委員がおっしゃったように、確かに附則の二十五条で検討条項というものがあって、これをきちっと使っていかなきゃならないわけですが、この趣旨は、コーポレートガバナンスに係る制度というのは、その性質上、完全ということはなかなかないんだと思いますね。要するに、我が国における企業統治を進めていくためにはやはり継続した議論が必要だという発想がこの規定の背後にはあるのではないかと思います。ですから、引き続きいろいろ実施状況を見ながら検討していくということでございまして、二十五条のような形になっている。

 それで、所要の措置は、二年を経過した時点で、その間の施行状況等を踏まえていろいろな影響、効果等を検証して、今後必要があると認めるときに講じられるものでございますけれども、文言の上では「社外取締役を置くことの義務付け」というような例示が書いてあるわけでありますが、現時点で検証の結果として何が講じられるのかということについては必ずしもまだ明確なイメージを抱いているわけではございません。

大島(敦)委員 今の規定の社外取締役を置くことを義務づける等というところは結構重要な文言だと思っておりまして、要は、時の政権あるいは政治の意思として、将来的には社外取締役について必置あるいは数をふやしていくという方向性が出ているのかなと思っています。ですから、ここのところはニュートラルに考えるよりも、政治の意思として将来は社外取締役をしっかりとふやしていくんだ、そのことによって日本のコーポレートガバナンスを上げ、私が考えている日本企業に対する刺激と揺らぎを与えた方が企業の中のビジネスのマインドが大きく変わってくるかなと思っています。

 企業のコンサルテーションをしている私の知り合いとお話しすると、一番難しい企業の改革は大きな企業の子会社だそうです。大きな企業の関連会社の子会社は、皆さん天下りというわけじゃないんですけれども、大体、本社から役員なり社長なりが送られてきますから、その役員なり社長というのは企業を前向きに改革するというマインドを高めていく動機づけがなかなか与えにくいというところがあります。

 これも企業の統治の一つのあり方だと思っていて、ですから、ここに対して社外取締役の数がふえることによって、誰を社長にするのか、誰を経営陣につけるのかというのが、これまでの、社内でこの方を上に順繰り上げていくというところから、もう少し飛び級の人事があったり柔軟な人事配置ができて、企業全体に対して、コーポレートガバナンスとは違った意味での成長につながる企業というのができ上がってくるかなと思っています。

 ですから、今回私がこの法案を読ませていただいて、この部分、社外取締役ということについて今後義務づける等の所要の措置というところについては、大臣もニュートラルというよりも積極的に答弁をしていただけると助かります。

 次に、もう一つ、一定の監査役会設置会社で社外取締役を置いていない場合、社外取締役を置くことが相当でない理由について、取締役の定時株主総会における説明責任を今回定めておりますけれども、なかなかこれは、監査役会設置会社で社外取締役を置かないときには、株主総会で、どうして置かないのかということを宣言して、内容について説明しなければいけない、この具体的な内容についてどのように考えるのか、これは局長の方からの答弁をお願いします。

深山政府参考人 今御指摘がありました、社外取締役を置かない株式会社がいかなる理由から置いていないかということですね。これは、当然のことながら、各株式会社の個別の事情によって異なります。そこで、各会社においては、その個別の事情に応じてこの相当でない理由を説明することになります。

 どのような場合に相当でない理由があると認められるかということをここで一般論として述べるということはなかなか難しいですし、また、余り単純な形で具体例を例示するということも、かえって、そう書けばそれでいいのかというような話になってしまって、妙に形式的な対応を招くことになるおそれもございます。

 ただ、一般論で申し上げると、これは、「社外取締役を置くことが相当でない理由」という特殊な書き方をしておりますので、置かない理由を説明するだけでは足りないという趣旨です。例えば、社外監査役が二名おり、社外者による監査、監督が十分であるとか、あるいは、社外取締役に適任者が見当たらないというようなことのみを説明しても、これは置くことが相当でない理由の説明にはなっていないというふうに一般論として考えられます。

大島(敦)委員 社外取締役を置くことが相当でない理由ですから、相当というところに着目をしていただいて、おざなりに説明するのではなくて、しっかり論拠を述べて会社としては説明しなければいけない、そういうことでよろしいですか。

深山政府参考人 御指摘のとおり、その時点における当該会社の個別の事情に応じて、相当でないんだという理由を言っていただかなくちゃいけない、こういう趣旨でございます。

大島(敦)委員 そうしますと、今の局長の答弁を受けまして、社外取締役導入促進への影響をどう考えるか。やはり説明を積極的にしっかりとするのを考えれば、社外取締役を置いた方がいいということも考える会社もふえるかもしれないので、その点につきましての大臣の御答弁をお願いします。

谷垣国務大臣 今、民事局長から答弁を申し上げましたけれども、この相当でない理由の説明、これは、株主総会で取締役が、質問を待たずに、自分から積極的に、直接口頭で、社外取締役を置くことが相当でない理由を説明しなければならない、こうされているわけで、これはかなり重い規定だと私は思います。

 こういうものがございますと、社外取締役を置いていない上場会社では、こういう説明を毎年定時総会でしなきゃならないということになりますから、率直に言いますと、今までも私は、幾つかの企業から、そんなことを毎年言うぐらいならば、この際、置くかという判断をしましたというような話も現に伺っているところでございまして、この社外取締役を置こうかと促していく力としては、現在のところ、かなり強力に作用しているのではないかというような感じを私は受けております。

大島(敦)委員 ありがとうございます。

 議決権行使助言会社という会社の、要は議決権行使助言基準を読みますと、総会後の取締役会に社外取締役が一人もいない場合とか、親会社や支配株主を持つ会社において独立性基準を満たす社外取締役が二人未満の場合には、議決権を行使して反対をした方がいいよと推奨されておりますので、議決権の行使をアドバイスする会社からも、これは、コーポレートガバナンスの立場から社外取締役については求め、そして、今の大臣の御答弁にあったとおり、今回の法律の中でも、要は積極的に説明するという非常に重い規定を置いているということですから、今後、株主総会においてもしっかりとした説明がなされるものと期待をさせていただいております。

 今の件に関しまして、法令に違反すると判断された場合の対応についてどう考えるか。ですから、これは、なかなか局長も答弁しにくいと思うんですけれども、法令に違反すると判断された場合の対応についてお聞かせください。

深山政府参考人 事業年度の末日において社外取締役を置いていない上場企業等の取締役が、法令の規定に違反をして、定時株主総会で、社外取締役を置くことが相当でない理由を説明しない、あるいは虚偽の説明をするというような法令違反があった場合には、その取締役は、取締役として負っている善管注意義務に違反した状態となります。

 また、この株主総会での取締役の説明義務のみならず、この改正法案が成立した場合には、法務省令で、社外取締役を置くことが相当でない理由を事業報告の内容として記載することも考えておりますけれども、このルールに違反して事業報告にこれを書かないということになりますと、これは、事業報告に虚偽の記載をした、あるいは記載すべき事項を記載しなかったということで、百万円以下の過料の制裁に処せられることになります。

 また、社外取締役を置いていない上場会社が、社外取締役の候補者を含まない取締役の選任議案を株主総会に提出する場合には、株主総会の参考書類にやはり社外取締役を置くことが相当でない理由を記載しなければならない、こういう法務省令の改正を考えておりますが、このルールに違反した場合、株主総会参考書類にこの理由を記載しなかった、あるいは虚偽の記載をしたという場合には、株主総会の手続の法令違反ということで、その取締役の選任議案に係る株主総会決議に瑕疵、取り消し事由があると判断される場合があり得るものと考えております。

大島(敦)委員 ありがとうございます。

 次に質問を移らせていただきます。

 監査等委員会設置会社の監査等委員の過半数は社外取締役でなければならないし、指名委員会等設置会社では各委員会の委員の過半数は社外取締役でなければならないとしております。

 その社外取締役に期待される経営に対する監督機能を果たすためには何人の社外取締役が必要かについて、先ほど私もるる述べてきましたけれども、今後はどのように検討するかについて、大臣の御所見を伺わせてください。

谷垣国務大臣 今の委員の御質問は、何人社外取締役を置くのが適切か、必要かという御質問で、これは、一般論でこうですとお答えするのはなかなか容易でないと思います。ですから、私は、今回の制度の概要を申し上げることによってお答えにかえないと仕方がないのかなと思って、立たせていただきました。

 それで、社外取締役は、業務執行者から独立して業務執行全体を評価して、その評価に基づいて取締役会において議決権を行使して、業務執行を適切に監督していくということが期待されているわけでございまして、今度の法案では、委員も先ほどおっしゃいましたけれども、監査等委員会設置会社には、監査等委員である取締役は三人以上、その過半数は社外取締役でなければならない、こういうふうにされているわけですね。

 それから、現行法上、委員会設置会社、今の委員会設置会社ですね、この場合も各委員会の委員は三人以上で組織して、過半数は社外取締役である。

 それで、こういった委員会が、全員が社外取締役でなければいかぬというふうにはしていない。そこまでは強制していない。それは、会社の状況などに応じて、社内の事情に精通した者、つまり社内取締役ということになりますが、そういう委員として参加する方が、そういう社内取締役がいる方が、監査等の実効性が高まる場合もないわけではないということを考慮したものでございまして、そういうふうに、一応いろいろなことを考慮しながらつくっておりますので、どのぐらいが必要かということは、最初にも申し上げましたが、必ずしも、私の立場から今申し上げるだけの材料はございません。

大島(敦)委員 やはり、一つの方向性としては、先ほど述べました議決権行使助言会社、あるいは、明確に置かない理由を述べる等々ありまして、方向としては社外取締役をふやしていくと。ただ、人的な資源として、すぐに、各社一人だと三千人ですけれども、五千人、六千人、結構大きな人材のプールが必要だと思います。そこのプールというのは、多分これから、制度を徐々に導入していく中でさまざまな形態があるのかなと。

 委員会設置会社で、役員の社長の人事まで委員会が決めるのか、あるいは、今回の監査等委員会設置会社のように、二人は、今も二人ですから、二人以上の社外取締役を入れて、そして、議論をしながら、監査役会設置会社ですか、従来の会社においても社外取締役を多分起用するようになると思いますので、その中での取締役会のあり方というのが、徐々に練度を高めていくと、日本の会社の意思決定がより精緻なもの、前向きなものになっていくのかなと考えております。

 続きまして、奥野副大臣に御質問をさせていただきたいんです。

 現行法では、過去に一度でも経営者の指揮命令系統に属したことがある者は、社外取締役、社外監査役の要件を満たさないとされております。今回、社外取締役及び社外監査役の要件について、原則として、就任前十年間に当該株式会社の役員等でなかったことに限定している合理的な理由、これは恐らく、法制審の中での議論、さまざまあったと思います。この十年というのは、いろいろな立場から考えると、従来でもよかったのか、なかなか難しいところでありますので、その点についての御見解を伺わせてください。

奥野副大臣 今お話しいただいている大島委員の考え方、よく勉強されているなと思って聞いているんですが、一番最初に言われた、草食系から肉食系だけは、ちょっと私は納得できていません。これは後で階さんと話をします。

 それで、今御指摘の件ですけれども、従来は、会社の中で業務執行者であった人たちは社外取締役になれない、あるいは親会社の業務執行者はマルです、それから当該社の業務執行者の近親者もマルです、兄弟会社の業務執行者もマルです、今までの法律ではそうだったわけですが、今度はそれらを、皆さん現役である限りはバツというふうに変えました。

 要するに、今まで取締役になれた人たちも、今度はもうちょっと厳しくしましたよというのが一つであります。その例が、親会社の業務執行者や株式会社当該社の執行者の近親者あるいは兄弟会社の業務執行者だったわけであります。それが今度はバツになりました。しかし、現役でなければオーケーというふうにしました。

 それからもう一つ。会社の業務執行者、あるいは、子会社の業務執行者では、一度でもそういう業務執行者だった者は、今までは取締役になれませんでした。しかし、今度は、その人たちについても基本的にはバツですけれども、十年たったら関係が薄くなるだろうからいいですよというふうにしたわけであります。それが今の御質問だろうと思います。

 その十年という論拠が本当にどういう理屈なんだと言われると、私も事務方に何遍も聞いているんですが、一つの丸い数字というのと、十年たてば何とか関係も薄れるだろうということでいいよというふうにしたと言うんですが、では私の事例を言いますよと言ったら、それだけは言わぬでくださいと言われているんですが、今十年たっています、たっているけれども影響力はかなりあります。

 だから、そういう意味では、十年が本当にいいかというと、一つの事務方さんたちの判断ではそれではいいだろうとおっしゃっていますが、特異な例としては十年たっても影響力は残っているよというケースもありますけれども、それは一つの線引きをしなくてはならないわけだから、一つ丸い数字で十年というふうに決めました。非常にフランクにお話ししました。

大島(敦)委員 奥野副大臣からの御答弁、まことにありがとうございます。御自身の経験、特に日本の社会ですと、役所の人事もそうなんですけれども、会社を卒業した後も影響力を持つ方が多いかなと思います。ですから、十年という、多分フランクに答弁していただいてありがとうございます。

 私は、日本の経営者に期待しているところが非常に多くて、皆さん物すごく優秀でいらっしゃっていて、多分、かつての日本経団連も二〇〇九年か、ワシントン事務所を閉めたりして、かつては中山素平さんとか、政府主導ではなくて財界主導で各国のインフラ輸出というのか、そういうことをやっていた時代があります。ですから、もっと時代が大分変化してきますけれども、そういうアグレッシブな感じが経営者の皆さんに欲しいなと思っておりまして、エールを送るつもりで肉食系という発言をさせていただいております。

 ありがとうございました。

江崎委員長 次に、階猛君。

階委員 民主党の階猛です。

 会社法改正案について質問させていただきます。

 会社と日本の統治機構を比較して言いますと、株主総会を構成する株主と国民というのは同じような位置づけではないか。その国民から選ばれる我々国会議員というのは会社でいうと取締役のようなものではないか。そして、その取締役から選ばれる代表取締役と対比されるべきは、国会でいいますと、内閣総理大臣がCEOであり、谷垣大臣はさしずめチーフ・コンプライアンス・オフィサーというような立場なのではないかと思っております。

 そういうふうに見ていきますと、国会議員の中でも、与党議員は社内取締役、野党議員は社外取締役のようなものでありまして、この委員会がもし社外取締役である我々がいなかったらどういうふうになっているんだろうか。もう全部その社内取締役、谷垣チーフ・コンプライアンス・オフィサーの言うことが全部通っちゃうようなことになったら、これは全く取締役会の形骸化になってしまうわけでありまして、だからこそ、やはり社外で独立した方がチェック機能を働かせるというのは非常に大事ではないか。

 そういうことを、野党としてしっかり責任を果たすという意味でも、今政府の方から出されている社外取締役の設置を法的には義務づけないということについては、物を申さなくてはいけないと思っています。

 きょうは、その点、それから後半については、ちょっとまた企業の社会貢献ないしは少数株主の保護といった観点からの御質問もさせていただければと思っております。

 まず最初に、副大臣にお尋ねしますけれども、私は前回の委員会の答弁で気になった御答弁がありましたので、その趣旨、真意を尋ねたいと思います。

 たしか小田原委員からの御質問に対して、トップマネジメントのあり方というような文脈の中で、トップマネジメントというのは違った感覚を持った人であるべきだろうと思います、そういうような感覚からいうと、本当に今のこの会社法でいいのかというと、私は反対しますよと言ってありますというようなことがありました。

 この発言の御趣旨について、もう一度御説明いただけますか。

奥野副大臣 そういう事実があったということは、私自身、ちゃんと意思があって、そういう発言をしてあります。

 その前に、ちょっと先ほどのコンプライアンスオフィサーの話ですけれども、総理大臣はCEOであります。ただし、内閣を構成している大臣は、私は執行役だと思っているんです。皆さん方は株主だろうと思います。そういうふうに位置づける方がいいんじゃないかなと思っていまして、では、社外取締役というのはどこにいるんだというのは、ちょっとまだ答えが出ていないところであります。

 それはそれとして、私は、日本の企業経営を正しい道へ歩ませていくためには、今までの商法なり会社法ではだめなんだということは私自身感じているんです。かといって、それでは、理想的な会社法というのが、先ほどの話の例を言いますと、草食系から肉食系といった、肉食系を見習えということなのかというと、それも違うと思うんです。やはり、草食系の延長線上で、日本の国の環境、日本の企業の実情、国民の価値観あるいは文化、そういったものを踏まえた上で、最善の会社法というのを最終的にはつくらなくてはいけないんだろうなと思っています。

 そのときに、最後の段階では社外取締役というのが過半数でなくてはいけない、あるいは大多数でなくてはいけないというふうに感じますけれども、今の日本の企業の実態等々から考えると、先ほど言ったいろいろな条件があると思うんですが、そういったことから考えると、今は、今皆さん方にお示ししている会社法でいいのではないかという判断に至ったというのが私の真の気持ちでありまして、それは、前回のときも遠山委員の御質問にお答えしたはずであります。

 そういう意味で、最初の段階でちょっと反対ということばかりがぴょっと出たものですから、皆さん方に誤解を与えたかもしれませんが、今申し上げていることが基本的に私の考え方であります。

階委員 てっきり、反対しますと言われたものですから、副大臣も社外取締役になられたのかなという気もしましたけれども。今の御説明と反対しますというのは全く正反対のことを言っていますから、ちょっとそこは御答弁としていかがなものかということを苦言を呈させていただきます。

 その上で、自民党さんも、選挙の前には政権公約、我々の場合だとマニフェストと呼んでいますけれども、そういうものを出されていらっしゃいます。我々が政権担当当時は、そのマニフェストで約束したことができなかったということで、谷垣当時総裁にも非常に厳しいお言葉をいただきました。我々も、大変反省はしつつ、何とかそういうことを繰り返さないようにということを自戒を込めて思っております。

 そこで、自民党さんの方で、選挙の前にJ―ファイルというものを出されていますね。二〇一二年の総選挙の前にも、あるいは昨年の参議院選挙の前にも出されていますが、その中では、「上場会社における複数独立取締役選任義務の明確化」というのが記載されています。この記載というのは、法制審議会の答申がなされた後にそれぞれそういう記載があるわけで、あえて、法制審議会の答申があったにもかかわらず、これを変えるということから、こういう記載になっているものだと思っています。

 ところが、今回の法案では結局、答申どおりということになっていますが、なぜそのようなことになって、社外取締役の選任が義務化されなかったのかということについて、大臣から、マニフェストを大事にする立場から、おっしゃっていただけますか。

谷垣国務大臣 今、階委員がおっしゃいましたように、自由民主党は、平成二十五年六月二十日にJ―ファイル二〇一三、総合政策集というのを発表しております。そこで、社外取締役の導入促進、上場会社における複数独立取締役選任義務の明確化など、各種具体策についてその導入、推進を検討して、企業統治改革を推進する旨が記載されていることは事実でございまして、私もそのことはよく承知しております。

 社外取締役の選任を会社法において義務づけるか否か、これにつきましては、法制審議会の会社法制部会においても最も重要な検討課題として取り上げられて、非常に厳しい、いろいろな御議論があったことは先ほども御答弁申し上げました。

 部会では、先ほどもお答えしたところですが、義務づけに賛成する意見と義務づけに反対する意見、これが激しく対立いたしまして、その結果、社外取締役の選任を会社法で義務づけることはコンセンサスが得られなかったわけでございまして、法制審議会の法務大臣に対する答申では、先ほど申し上げたように滝大臣に対する答申でございますが、社外取締役の選任の義務づけは盛り込まれなかったわけでございます。

 政府としては、これを受けまして、改正法案においては社外取締役の選任を義務づける旨の規律は設けないことになりまして、今回お出ししていることになっているわけです。

 しかし、提出するまでの過程ではさらに与党といろいろ御議論がございまして、当初の政府の案に比べますと、それをどう表現し評価するかは若干難しいところでございますが、私は、義務づけとは書いておりませんけれども、社外取締役を置くことについて相当強い、事実上促す内容を持ったものになってきた。これは、その間での政府と与党間のいろいろな御議論に基づくものでございます。

階委員 法制審議会の案よりも前進したことは私も認めますけれども、どうせ前進させるんだったら、法的義務のところまでいっても私は差し支えなかったんだと思っています。

 その点について、以下、議論をさせていただきます。

 まず、社外取締役の選任を義務づけなかった理由として、今も大臣の方から、コンセンサスが得られなかったという話ですけれども、パブリックコメントが会社法制の見直しに関してなされています。

 調査室の資料集にもそのパブコメの結果が書かれておりますけれども、A案、B案、C案という三案を示してパブコメを実施したわけですね。私は非常にこれも作為的だなと思っています。

 結果的に、C案という、現行法の規律を見直さない、つまり義務づけを見送るということが多数だったわけです。A案というのは、ざっくり言えば、広い範囲の会社で義務づけを認めよう、B案というのは狭い範囲の会社で義務づけを認めようということであります。

 このA案とB案、別個に見ていくとC案よりも少ない。確かにC案が、A、B、Cの中では一番多いんですけれども、AもBも、広いか狭いかは別として、法的に社外取締役の設置を義務づけようという案であることは変わらないわけですね。したがって、AとBを足したものとCを比べてみますと、AとBの足したものの方がパブコメの意見の募集結果だと上回っているわけですね。

 我々が出している今回の対案ですけれども、実は、狭い範囲で社外取締役の設置を義務づけるという案でございます。もっと言うと、B案よりもむしろもっと狭いぐらいの範囲で出しているわけでございます。

 当然のことながら、さきのパブコメの結果と照らしてみると、広過ぎると言われていた方たちにとってみると、我々の案は狭い範囲だからよかろうということになるはずですし、逆に、狭過ぎると言われていた方たちにとってみると、確かにそれ以上に狭い案だからけしからぬという向きもあるかもしれませんが、そもそも、今の政府の案というのは、狭い以前に認めないという案ですから、全くゼロのものよりは、プラス一でも二でも前進しているということですから、この方たちにとっても納得いただけるのではないか。

 要するに何が言いたいかといいますと、パブコメあるいは法制審議会でコンセンサスが得られていないということなんですけれども、少なくとも、我々のような狭い範囲で設置を、しかも一人以上でいいという案ですから、この範囲であればほぼ大方の同意が得られるのではないかと思っていまして、コンセンサスが得られないから義務づけは見送るというのは私は不適切ではないかと思っています。この点について、大臣の御見解を伺います。

谷垣国務大臣 委員は、資料に基づいて、パブコメについておっしゃったわけですが、これは、法制審議会会社法制部会が平成二十三年の十二月に取りまとめた中間試案について、パブリックコメントの手続を行ったわけです。

 それで、A案、B案、C案と、委員のおっしゃったとおりでございますし、そういう問題の立て方に対してもまたいろいろな御議論はあるんだと思うんですが、そのパブリックコメントの中で、社外取締役の選任を義務づけるという案に賛成する意見が多数寄せられたことも、これは事実でございます。しかし、現行法の規律を見直さないという案に賛成する意見も多数あったこと、これも事実でございます。

 さらに、パブコメを終えた後、法制審議会の会社法制部会におきまして、パブリックコメントの手続の結果も踏まえた検討が行われたところでございます。

 そこで今、民主党、階委員などがお出しになった法案と同様に、公開会社であり、かつ大会社である監査役会設置会社のうち、その発行する株式について有価証券報告書を提出しなければならないものに限定して社外取締役の選任を義務づける、これは民主党のお考え、そういうお考えでつくられていると思いますが、そういったことの当否もこのときの法制審議会の部会で御議論をいただいたわけでございますが、このときも依然として消極、積極、双方の立場が、かなり厳しい対立があったということでございます。

 委員は、A、B、C等々の分析から、コンセンサスを得ることは不可能ではないのではないかという御見解でございますが、私どもは、以上のような手続を踏まえまして、社外取締役の選任を義務づけること、それは、対象となる会社を限定しても賛否が分かれ得るものと考えて、コンセンサスを得ることが難しかった、一応こういう結論に達したということでございます。

階委員 それでは、範囲を限定した会社で議論させていただきます。

 今回の政府案では、今大臣もお話しされましたとおり、公開大会社で株券を上場している会社については、社外取締役を置かない場合は、置かないことにつき相当な理由を説明しなさいということです。我々の案は、同じ範囲の会社について、一人以上の社外取締役の設置を義務づけるというものでございます。

 議論を便利にするために、便宜、対象会社と言いますけれども、今の対象会社の中でもいろいろな規模や状況があるということから、先日のこの委員会でも、政府側の答弁ではなくて質疑者の方から、規模や状況いかんにかかわらず、一律に社外取締役の選任を義務づけるのは適切ではないというようなコメントがありましたけれども、私は思うに、仮に、規模が小さいものとか社歴が浅いものとかいうものは社外取締役は負担になるからやめた方がいいというのであれば、むしろ、私は逆ではないかという立場です。

 なぜならば、上場間もない、発展途上の株式会社であればあるほど、通常は株式を経営者一族が持っている割合が高くて、会社の利益と相反するような判断がされやすいのではないか、個人の利益を重んじやすいのではないかというふうに思います。とすれば、少数派に属する一般株主の利益を守るという観点から、社外取締役がなお一層必要性が増すのではないかと思っております。

 ですから、私は、株式会社の規模や状況にかかわらず、さっきの対象会社については社外取締役の選任を義務づけるべきだと思うんですけれども、この点、いかがですか。

谷垣国務大臣 今、階委員がお挙げになった例で、まだ創立それほど間がたっているわけではない、発展途上である、そういう企業であっても、当然のことながら、十分なガバナンスが行われている、適切な企業統治のもとに活動しているということは極めて大事なことだろうと私は思います。

 そのために社外取締役が役に立つという御議論は、私はそういう面は非常にあるだろうと思うんですが、他方、私も実は企業経営というのは実際にはしたことがございませんので、やや講壇設例的なことを申し上げるかもしれませんが、発展途上の株式会社というのは、いろいろな規模があると思いますが、その規模によっては、まだ社外取締役のコスト負担というのもあるんだろうと思うんです。そういう人材確保に伴うコスト負担が非常に重いな、置こうとすると、なかなか、会社がうまくいくかなというようなところも私はないわけではないだろうと思います。

 そこで、そういうところにまで義務づけていいのかどうかということがございますので、社外取締役の選任をそこまで一律に義務づけるのはどうかなと。私もまだ、企業経営の経験がございませんので、頭の中の判断にとどまりますが、今の委員の御議論に対しては、ちょっとそういうようなことを感じます。

階委員 規模の小さい会社にとってみると、コスト負担が重いということのほかに、よく言われるのが、そんなに業歴が長くないと、社外取締役を見つけるような人脈もないということで、人材を見つけるのが大変だというような議論もあるわけです。

 ただ、上場している会社であれば、規模のいかんにかかわらず、すべからく監査役会設置会社になっています。これは法令上、大会社であれば当然にそうなっていますし、中小会社であっても、上場規則でそうなっていますから、少なくとも監査役会設置会社である。監査役会設置会社であると、最低二人は社外監査役というのが必要なわけですね。この社外という点でいえば、社外取締役も同じなわけで、だからこそ、今回、新たな会社の類型を設けて、監査等委員会設置会社においては、社外取締役をそのまま監査等委員につけることによって、従来の社外監査役は必要なくなる。要するに、社外監査役と社外取締役は、ほぼ同じような人材で足りるということになっているんだと思います。

 すなわち、何が言いたいかといいますと、そもそも上場している会社であれば、社外から、監査役、取締役の違いはあれ、役員を引っ張ってこなくちゃいけない、そういう負担を負っているのは変わらないのだから、あえてここで社外取締役の設置を義務づけたとしても、社外監査役をなくする、さっき言った監査等委員会設置会社にすれば従来と負担は変わらないのではないか、こういう問題意識なんです。

 負担が重いとか人材確保が困難ということは、今述べたような理由で、私は理由がないと思っております。この点についてはいかがでしょうか。

谷垣国務大臣 私も十分な知見があるわけではありませんが、実は先日、大変個人的なことを申し上げていけませんが、私の大学のときのクラスのクラス会、毎年一回やっているんですが、ございました。ちょうどことしは大学に入りまして五十年目でございますが、ほとんどの同級生は、オーナーは別といたしまして、大企業に勤めていたような者はほとんどみんな引退でございます。

 そういう中で、数名、いろいろ動きがありましたのは、最後、実は自分は監査役をやっていたんだけれども、今度、社外取締役というのも入れなきゃならないので、もう引退して悠々自適しようと思ったら、社外取締役をやれと言われて、できるかなというような議論がございまして、なるほど、非常に小さなサークルではございますが、そういう社外取締役の確保にいろいろな動きが起こっているんだなというのを感じた次第でございます。

 それで今、階委員がおっしゃるように、確かに、上場企業であれば、社外監査役も必要だということで、今までその人材を確保されてきたと思います。

 一体どういう人が社外監査役になっているのか。これはいろいろだと思いますが、私の友人などで申しますと、弁護士をやっている者が社外監査役になっている例もございますし、それから、これから先はちょっと、後から検察庁から叱られるかもしれませんが、検察のOBなどもかなり社外監査役をやっておられる方、私は直接知っているわけではありませんが、新聞等で人事を拝見しますと、監査役になって、ああ、あの方も社外監査役を務めておられるのかと思ったりすることが多うございます。

 それで、確かにそういうことはあるんですが、では、人材として、社外監査役と社外取締役が全く同じ人材のところから、ある意味では重なっていると思います。しかし、では、弁護士の出身者の私が社外監査役は務まっても、社外取締役はあいつできるのかなと、そう言っちゃいけませんが、そういうふうに思うこともございますね。

 つまり、今までの訓練の資質が違うと思います。恐らく検察官の場合も、社外監査役としては十分な能力を発揮するということはあるんだろうと思いますが、では社外取締役としてはどうなのか、これも私はよくわかりません。

 そういう意味で、ある意味で確かに負担、経済的負担というような意味では共通なところがあるかもしれませんが、新しい人を探してきて、自分のところのことをうまく担当してくださる社外取締役を探してくるエネルギーというのは、これは人材不足ということと関係してくるのかもしれませんが、やはり相当なエネルギーを割いてやらなければならない課題ではないのかなという感じがいたします。

階委員 今の大臣の答弁を伺っていて、ああ、なるほど、だから法務省は社外取締役の設置を嫌がるのだなと思いました。

 というのはなぜかというと、検事さんがこれまで社外監査役として雇われていたものが、これが社外取締役になっちゃうと、自分の居場所がなくなって、言葉は悪いですけれども、天下り先がなくなっちゃうことを危惧して法務省はこういうものを出してきたのではないかというふうに感じるわけです。

 確かに、私は、取締役については、監査役と必ずしもイコールの能力が要求されるとは思っていませんけれども、ただ、日本の会社経営に対して、余りにも経営判断というか経営者の裁量というのが重んじられ過ぎたのではないか。特に、内部から上がってきた、要するに会社の文化とか常識に染まった考え方の人が、それぞれ独自の裁量、独自の文化でいろいろな物事を決めてきたということで、常識と外れたようなことが時には行われてきた。

 だからこそ、私は、チェック機能を果たせる人材が必要なのではないか。そのチェック機能という意味では、私は、検事さんであれ弁護士であれ、取締役というのは十分務まると思っていますから、何も法務省は天下り先がなくなるとか心配する必要はないので、これはやるべきだと思います。

 それから、先日、十一日の法務委員会で、民事局長の方から、社外監査役が二人いるということを説明するだけでは社外取締役を置くことが必要でない理由の説明にすぎませんで、相当でないというところまでの説明になっていないという、遠山委員からの質問に対する御答弁がありました。私もそう思ったんですが、遠山委員もその答弁を受けて、わかったようなわからないような話だねということをコメントされていました。

 ただ、私もその後、もう一回議事録を読み返してみて、これはこういうことなのかなと思ったのは、まず、必要でないという理由の説明というのは、社外取締役を置いたとしても、会社にとってメリットあるいはプラスがないという理由を説明することを指すのではないか。そして、相当でない理由の説明というのは、社外取締役を置いてもメリットないしプラスがないというのみならず、社外取締役を置くことがかえって会社にデメリットやマイナスを生じさせてしまうという弊害が起きるような可能性がある場合を指すのではないかというふうに思ったんですけれども、こういう理解でいいかどうか、先日御答弁いただいた局長からお願いします。

深山政府参考人 今御指摘ありましたように、社外取締役を置くことが相当でない理由を説明しなければならない以上、御指摘のとおりですが、置かない理由とか置くことまでは必要ないといった理由を説明するだけでは足りません。社外取締役を置くことがかえってその会社にマイナスの影響を及ぼすおそれがあるというような事情を説明しなければならないものと考えております。

階委員 つまり、相当でないというのは、置くことがかえってマイナスになるという、私は極めてレアケースなのではないかというふうに思っています。

 先ほども少し大島委員の質問に対して御答弁がありましたけれども、もっと具体的に、極めてまれなケース、ナローパスだと思いますけれども、どういう場合が社外取締役を置くことで会社にデメリットないしマイナスが生じる場合なのかということを御説明いただけますか。

深山政府参考人 これは何度もお話ししているとおり、各会社の個別の事情に応じて理由を説明していただかなくちゃいけないということもあって、こういうことであればいいんですということをここで一律の話として申し上げるということは困難でございますし、また、かえって、そういうふうな説明さえすればいいのかという誤解を招くおそれもあって、適当ではないと思っております。

 ただ、極めて例外的だというのは御指摘のとおりで、ごく普通の企業で相当でない理由を説明するのは相当困難であろうというふうには思っております。

階委員 具体的なことは法務省令には出るんですか。それとも、法務省令を見ても、今おっしゃったような理由で、そこは相当程度抽象的な内容にせざるを得ないということになりますか。どちらですか。

深山政府参考人 今、法務省令のお話が出ました。

 法務省令で、事業報告と株主総会参考書類にこの相当でない理由を記載することを義務づける予定としておりますが、その法務省令においては、社外監査役が二名おり、社外者による監査、監督として十分であるというようなことだけでは足りないということや、各会社のその時期の個別の事情に応じてこの相当な理由を述べなくちゃいけないというようなことを、まだ文言は決まっておりませんけれども、そういったことを法務省令で規定することを今検討しております。

階委員 多分、実務のガイドラインとしては非常に頼りないものがありまして、先ほどの御答弁にもあったように、説明を怠ったりした場合はもちろんですけれども、仮に、その説明が不十分だった、いわば、社外取締役を置くことが相当でない理由の説明自体が相当でないというような場合においては、これもやはり取締役の善管注意義務違反、忠実義務違反になるということでありますよね。(深山政府参考人「そういうことになります」と呼ぶ)ということですから、これは実務としては非常にやりづらい面があると思っています。

 一方で、会社が、そういった説明責任を果たす上で難しい判断を強いられ、それを守るために多大な労力、コストをかけるといったことを考えると、実務上の要請としては、端的に社外取締役の選任を義務づけてくださった方がよっぽど楽なのではないか。そういう観点から考えても、社外取締役を一人以上、しかも、さっき言った対象会社は極めて限定的です、そこで義務づけるというのは、実務の観点から見ても妥当ではないかと私は思っています。大臣からお考えをお願いします。

谷垣国務大臣 確かに、階委員のおっしゃるように、義務づけるという結論をもって法改正をされるというのも一つのお立場だろうと私は思います。

 それで、現実の効果がどれほど違うか、我々の案と民主党がおつくりになった案とどれだけ違ってくるのかということを、私は今、正確に見通す力はございませんけれども、我々の案は、法制審議会等で義務づけに対する批判も相当あったところからこういう形にしておりますが、先ほど来申しておりますように、法的にはともかくとして、事実的にはかなり強く社外取締役を設置するように促す内容になっているというふうに考えております。

 そこで、では、強く促すのと法的に義務づけるのとどこが違うかというと、この辺はかなりデリケートなところがあることも事実でございます。だからこそ、先ほど来の御議論のように、先ほど大島委員の御議論でもございましたけれども、二年たったらもう一回見直すようにというか、議論をしろとか、いろいろなことがあるわけでございますが、大きな流れは一致しているのではないかというふうに私は考えております。

階委員 ベクトルの方向は一緒だということはおっしゃるとおりなんですが、ベクトルの長さがやや足りない。もう一歩前に進んでもらえればいいし、前に進める上で、私が今いろいろ申し上げましたけれども、ハードルというのはないんじゃないか。むしろ、前に進めることで実務の要請にも応えられるのではないかということ。

 もう一点申し上げますと、よくダイバーシティーということなどが言われて、今、安倍政権でも、二〇二〇年までに指導的地位に女性が占める割合を少なくとも三〇%程度に持っていこうというようなことで進められて、いろいろ、先日も人事院総裁も女性を登用されたりということで、私はそれは好ましい方向性だと思っています。

 それに資するという意味でも、社外取締役の設置を義務づけることで、より女性を登用しやすくなるのではないか。会社によっては、過去の男女雇用機会均等法以前に採用された方がまだ多数いらっしゃったりすると、幹部のレベルに女性の候補が少ないのではないかと思っていますので、女性を幹部に登用するという意味でも社外取締役の設置というのはいいのではないかと思っています。この点に関して、大臣はどのようにお考えになりますか。

谷垣国務大臣 実は、この階委員の御質問は私の盲点でございまして、こういう御質問があるのかと思って実は伺ったわけでございます。

 もちろん、今、安倍内閣が取り組んでおりますように、女性の活躍の場を広げていく、女性の力をフルに使えるようにしていくということは、社会にとって極めて大事でございますが、社外取締役を義務づけたことがすぐにつながるのかどうか、全くつながらないとも思いませんが、すぐにどれぐらいつながるのか、ちょっと明確にお答えするのは難しいなと思っております。

階委員 ダイバーシティーの観点から社外取締役の設置を義務づけていくべきというような意見も、私が以前お話を伺った会社法の専門の弁護士さんはおっしゃっていますから、あながち荒唐無稽な話でもないと思っていますし、まさに女性を積極的に登用していくのであれば、今までのやり方に固執するのではなくて、思い切ってさらなる一歩を踏み出さなくちゃいけないということで、もう一歩前に進んでいただきたいというふうに我々は考えておりますし、それはもともと自民党さんも政権公約に書かれていたことですから、本来、自民党さんもやろうと思っていたことではないかと思っていますので、後押しをしたいという思いもあります。

 葉梨政務官、大変お待たせいたしました。

 今まで、社外取締役の設置で企業のガバナンスを強化して企業経営を効率化していこうと。これは、ともすれば企業の収益面だけに目を向けていましたけれども、企業の社会貢献というのも、もうかったものをどう使うかということについても会社法の見直しの中で必要な視点ではないかということで、ちょっと実例を挙げさせていただきながら葉梨政務官と議論をさせていただきたいと思います。

 お手元にお配りしております資料の一というのをごらんになってください。

 これは、日経アーキテクチュアという雑誌に載っていた、福武總一郎さんというベネッセホールディングスという有名な会社の会長さんのインタビュー記事でございます。

 「町おこしに経営の視点は不可欠」ということで、瀬戸内海の直島というところで、四半世紀に及ぶ取り組みで年間四十三万人の観光客が訪れるまでになった。何を行ったかというと、現代美術によって過疎地や傷ついた地域を地域の人と一緒に再生したんだということであります。

 私は、福武会長というのは経営哲学が大変立派な方だと思っていまして、この資料一の右側の方を見ていただくと、「政治も経済も文化も東京に集中しすぎて、このままでは日本が駄目になる。「人間」や「自然」というキーワードが欠落した場所で大きな意思決定がなされている状況では、人生を豊かにするような発想が出てくるわけがない。経済中心に考えることしかできなくなっているのです。本来は、人々が豊かな生活を送るために経済活動があるべきです。経済は文化の下僕なのです。」ということから、こういう取り組みをしてきた。

 ただ、この活動をする上で、経済基盤がしっかりしていないと活動は続かないということで、この方は、ボランティアや寄附、行政からの助成のみに頼らないということで、このページの最後の方に書いていますけれども、「具体的には、文化や地域振興を明確な目的とした公益財団を設立する。企業が発行する株式のうち、五%でも一〇%でもその財団が持つようにすればよい。」と。このことによって継続的に株式発行会社から配当収入が得られて、活動を継続することができるということであります。そういう企業を政府や経済界が評価していくことが大切だというようなくだりもあります。

 そこで、政務官にお尋ねしたいんです。

 この福武会長も、財団をつくって、そこに私財であるベネッセの株式を寄附したそうです。普通、経営者が持っている株というのは、時価の低いときに買っていますから含み益がたくさんあるわけです。含み益があるものを寄附しますと、含み益分について所得税がかかって莫大な税負担になって、それが寄附を思いとどまる原因になって、こうした活動が広がらない一つの要因になるわけです。

 ただし、その点については財務省も一定の手だては講じておりまして、そこがお配りしている資料の二の方であります。

 資料の二をごらんになっていただきますと、「公益法人等に財産を寄附した場合の譲渡所得等の非課税の特例のあらまし」ということで、個人が土地、建物、財産を法人に寄附した場合には値上がり益に対して所得税が課税されるんだけれども、公益法人等に寄附した場合に、その寄附が公益の増進に著しく寄与することなど一定の要件を満たすものとして国税庁長官の承認を受けたときは、この所得税について非課税とする制度が設けられているということであります。

 これをいかに活用していくかということがポイントなんだと思っておりますけれども、この点について、まず、現状、この制度、国税庁長官が一年間でどれぐらいの件数を承認しているのか、今議論しました承認された件数のうち株式に係るものはどれぐらい件数があるか、また株式について時価評価の総額は幾らになるかということをお答えいただけますか。

葉梨大臣政務官 お答えいたします。

 国税庁の事業年度というのが七月から翌年の六月までということでございますので、平成二十四年の七月から平成二十五年の六月までの一年間でございます。この租特の四十条第一項後段の承認件数は百九十六件、うち株式は二十三件で、その価格の合計は約百十億円となっております。

階委員 百十億円という金額をどう見るかということなんですが、東証の時価総額が今何百兆という中で、もうちょっとふえてもいいような気がします。こういう公益目的で寄附をする金額が、それで税制が優遇される金額がふえてもいいような気がします。

 ただ、国税庁の承認を受けるためにはいろいろな要件が課されておりまして、株の寄附の場合に気になっている点を一つ二つ申し上げますと、まず、資料二の二枚目、すなわち通し番号でいうと四ページですけれども、真ん中あたりに「ロ」ということがありまして、「寄附財産が、寄附があった日から二年を経過する日までの期間内に受贈法人の公益目的事業の用に直接供され又は供される見込みであること。」ということがあります。

 土地や建物でしたら直接供されるということでいいと思うんですが、株の場合、配当金を事業に充てるというのは直接供されるとも言えないような気もして、ちょっとこの点、気にかかるんですけれども、これはどのような運用になるんでしょうか。

葉梨大臣政務官 階委員おっしゃるとおり、株の場合は何に使うか。配当金ということになると、お金に色があるわけではないわけなんですが、これは、寄附をいたしましてから、ここにもありますけれども、おおむね二年間、その配当金の収入が公益事業に使われているということが要件になっておりまして、お金は一対一の関連性があるというわけではないんですけれども、その公益法人などが支出した公益事業の金額、それと収入の金額、これに合理的にこの配当が使われたというような、つまり、例えば十億の収入があって百億公益事業に使っているといった場合にはこの承認を行う。

 それから、この二年という期間ですけれども、寄附をした時点では二年間たっていないわけですが、所得税の猶予がございまして、その猶予があって、おおむね二年後に承認を受けたものについては所得税が免除されるという形になります。

階委員 もう一点だけお聞きしますけれども、承認要件の中で公益目的事業の規模に関するところがこの四ページ目の上の方にあります。「その事業を行う地域又は分野において社会的存在として認識される程度の規模を有していること。」ということなんですが、ちょっと漠然としていてわかりにくいので、この点について説明をお願いします。

江崎委員長 葉梨政務官、時間が来ておりますので、簡潔にお願いします。

葉梨大臣政務官 確かに、この社会的一定の規模というのは非常にわかりづらい表現という御指摘もあろうかと思いますが、ここに「四十条通達十二(一)」というのがございまして、そこに一定の社会的規模を有するものとして典型的な例を十項目ほど挙げております。ここにありますのが、学校、あるいは社会福祉法に規定する一定の事業、宗教等々でございます。

 ですから、個々の事業について全てを、典型的な例を網羅して挙げるということはできないわけですけれども、個々の事業が大体それに準ずるもの、類するものであるかどうかということを個別に判断していくということになります。

階委員 そこは、できればそのガイドライン的なものをつくって、広くこういう制度が利用されるようにすべきではないかということと、あと、大臣には、こういう観点で会社法の改正、企業の社会貢献を促進するという観点での改正というものを今後検討されたらいいのではないか。

 また、この点については、一般質疑の中でも改めて御議論させていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

江崎委員長 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。

    午後零時五分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時三十分開議

江崎委員長 休憩前に引き続き会議を行います。

 質疑続行。西田譲委員。

西田委員 日本維新の会の西田譲です。

 どうぞよろしくお願いいたします。

 この会社法はボリュームが、本当に大変な量がございまして、資料を見れば一目瞭然でございますけれども、それだけ、この会社法によって日本の企業価値をいかにして高めていくか、コーポレートガバナンスの強化、そういった観点への思いが詰められているのではなかろうか。

 実際に、平成二十二年、法制審議会、そして二十三年、中間取りまとめがまとめられ、パブリックコメントを募集され、そしてさらに法制審議会でそれに基づいて議論を深めて、今回の改正。衆議院の調査室がまとめていただいた要点だけを見ましても二十七項目と、本当にたくさんのボリュームのある今回の会社法改正なんだなということを思うわけでございます。

 中には、きょうも午前中の質問で、例えば社外取締役等については本当に中身の濃い議論がされておりました。多種多様な意見が今なおあるということを改めて認識するものでありますし、午前中はむしろきちんと義務化という方向での議論でございましたが、今の法案でいいとする意見も今なおたくさんあろうかと思います。

 例えば、企業の自主性あるいは企業の形態に応じたそれぞれのやり方をやはり尊重すべきではないかとか、もしくは人材の面でも言及がございましたし、今の法案の社外取締役の部分に関しての賛成する意見を聞いても、それはそれで、なるほど、ごもっともだなというところがたくさんあるわけでございます。

 実際、株式会社の数になりますと、八万社、登記上超えているわけでございまして、その全ての会社の必要性やニーズを完全に把握、その状況を全て把握して、そしてさらにルールにするという中にあっては、その状況や必要性にそれぞれ順位づけをしていくということが恐らく背景であったんだろうと思いますけれども、私は、これだけ多種多様な企業のニーズに優劣をつけて、もしくはその状況を把握して順位づけをしていくといったことが果たして可能なのかといったことについては疑問があるわけでございます。

 むしろ、今回の会社法改正というのは、今の会社法よりも別の形態の方が企業の多種多様な選択をより可能にさせる、そういった可能性を持つからこそ改正をするんだといった形態のものであるべきなんだろうというふうに思うところでございます。

 実際、社外取締役等について議論がされましたけれども、それ以外にもたくさんの論点がございました。パブリックコメントに寄せられた意見を見てみますと、ほかのパブリックコメント等ではなかなか見受けられないんですけれども、例えば最高裁からの意見が寄せられてあったりとか、あるいは経産省からも意見が寄せられてあったりとか、他省庁からも、今回の会社法に対しては、賛成、反対含めて非常にさまざまな意見が寄せられているなといった感想を持ったわけでございます。

 きょう、最高裁判所からも、そしてまた経済産業省からも参考人でお越しいただいておりますので、順次お聞きをしていきたいと思います。

 例えば、パブリックコメントの中で、最高裁からの提案といいますか意見といいますか、なされているんですけれども、一つは、多重代表訴訟の制度の創設についてでございます。これは、いたずらな争点化を予防する措置や取り扱いの管轄についての意見を最高裁から出されていらっしゃいます。また、キャッシュアウトの定めのところでは、この制度の創設は賛成ということでありますけれども、内容の一部、例えば取りやめや無効の定めについては、最高裁としては違った意見を持っていらっしゃる。さらには、組織再編については、株主からの差しとめ請求を認めることについては必要なしといった意見が最高裁からも出されておるわけでございます。

 当然、これは平成二十三年、そしてその後、約二年弱の間議論されてきたんだろうと思いますけれども、さあ、いざでき上がったこの会社法改正案について、これまでそういった意見を出された最高裁としてどう評価されるのか、これをお聞きしたいと思います。

永野最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 会社法の改正につきましては、今まさに本国会で御審議されているところでありますので、最高裁として本法案の内容について御意見を申し述べることは差し控えさせていただきたいと思います。

 ただ、今委員の方から御指摘のございましたパブリックコメントにつきまして、若干御説明させていただきたいと思います。

 パブリックコメントにつきましては、法制審議会で会社法制の見直しに関する中間試案についてパブリックコメントに付された際に、最高裁の方で、現場で裁判実務を担当している裁判官に情報提供いたしました。その結果、幾つかの意見が寄せられましたので、その意見の状況を取りまとめて法制審の御審議の参考に提出させていただいたものでございます。

 そういう意味では、もとより最高裁としての意見を表明したものではございません。これらのパブコメの意見につきましては、法制審議会において検討材料の一つとして御審議をいただいた上で、要綱案どおりの内容になったものと承知しております。

 いずれにいたしましても、最高裁判所といたしましては、改正法が成立した場合に、法の趣旨に従った運用がなされるように努めてまいりたい、このように考えております。

西田委員 ありがとうございます。

 パブリックコメントに最高裁から意見が寄せられているというふうに見受けられたものでしたから、一方でこれはすごいことだなと思いながら見ておったんですけれども、今のお話ですと、恐らく判事の皆さん方の個人の意見を取りまとめて、参考までにということでございますね。腑に落ちるところでございます。

 ただ一方で、経済産業省にきょうお越しいただいているわけでございますが、経済産業省からは、この調査室がまとめた二十七の要点の中で、意見の段階で、確かにこれは大賛成だというものも多数見受けられますけれども、一方で、これは反対だ、あるいは、導入するに当たってもいろいろな提案を経産省としても出されておるわけでございます。

 例えば、社外取締役の要件の対象期間については、もうこれだけスピーディーな世の中になってきたので、十年では長過ぎるので五年でいいんじゃなかろうか。あるいは、会計監査人の選任についての改正でございますけれども、現行法の中での議案提出請求権や同意権等で十分その独立性が確保されているから必要ないのではないか。あるいは、支配株主の異動を伴う募集株式の発行、これについては例外を認める新しい提案をされていらっしゃいます。

 多重代表訴訟についても、現行法下で、子会社の取締役に問題があったとき、親会社の株主保護は親会社の取締役の責任を追及することで十分担保できるということで、多重代表訴訟については導入は反対を表明されていらっしゃいました。

 さらには、親会社が子会社の株式を譲渡する際に株主総会の特別決議が必要とする改正、これについては、事業譲渡と同様に扱うのは不適切という理由で反対もされていらっしゃいます。

 さらに、組織再編についての株主の差しとめ請求を認めることは、濫用の懸念から必要なし。株主名簿の閲覧に対しては、株主権の適切な行使という観点から意見も述べていらっしゃいます。

 このように、今出てきた改正法は、当時、経済産業省として明確に反対をされたり、あるいは違う観点からの意見の提案もなされているものが多数あるわけでございますけれども、まず総合的に、今回の会社法改正に対して経産省としてどう評価されるのか、お聞きしたいと思います。

広瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 経済産業省といたしまして、近年、経済活動がグローバル化している、それから産業新陳代謝を促進しなきゃいけないという観点から、いずれにしましても、社会経済的に望ましい企業統治、コーポレートガバナンス、これを実現していくということは非常に重要だというふうに考えております。

 それで、今般国会に提出されております会社法改正案の取りまとめに向けて、委員御指摘のとおり、幾つかの論点につきましては経済産業省として、例えばグループ経営とか、あるいは組織再編を活用した競争力の強化に向けた企業の取り組み、こういったことを阻害することはないかという観点から、中間試案の段階での評価として、若干の問題提起とかあるいは慎重な意見を述べさせていただいたことも事実でございます。

 ただ、その後、法制審議会におきまして、こうした意見も踏まえながら、有識者も交えて、幅広い観点からじっくりと議論が行われて、私どもとしては、企業実務に与える懸念を払拭する形で具体的な結論が得られたものというふうに承知をしておりますので、現在御審議いただいている法案につきましては、経済産業省といたしましても積極的に評価しているところでございます。

西田委員 確かに、この中間取りまとめで意見を出されてから二年間でいろいろ御議論をされてこられてのことだと思いますけれども、ただ、当時の意見を見れば、まるっきり反対、正反対のところもあるわけですね。この二年間で議論がされて、確かに、今納得がいかれる形になったというふうにおっしゃいましたけれども、後顧の憂いがないのか、多少根に持っていらっしゃるのか。

 これはこちらが推察する話ではないですけれども、いざ、こうして出てきたわけですから、経済産業省と法務省が仲よく、先ほど申した企業価値の向上に向けての会社法改正ということで、一致団結して出されてきたものだろうというふうに思うわけでございます。

 ただ、表向きはそうであったとしても、やはり潜在するいろいろなニーズであったり多様な考え方を本当に担保できたのかといった点、ここは正直疑問があります。

 なぜ疑問があるかといいますと、先ほど申したように、やはり全ての価値やニーズを把握し切れるなんということは決してないと思うわけでございます。こういったルールをつくるときというのは、大抵、ルールをつくったときに、それを守らなかったら例えばどういう損害があるのかとか、つくったことによって逆にどういった損害があるのかとか、そういった特定の利益を想定しながらルールづくりをされることになろうかと思うわけですけれども、大抵、特定の利益なんというのは余り長い将来のことまでは想定できないわけですね。

 ですので、短期的に、恐らくこうした方がいいだろうということでルールづくりが行われていくと思うんですけれども、短期的な、こうであればいいだろうというルールづくりというのは、えてして規制の強化につながることが多いわけであります。

 実は、先ほど奥野副大臣が、肉食系、草食系があって、何も肉食系に転換をするということじゃなくて、草食系だけれども、これまで確立してきた秩序の中での文化であったり風土を大事にした上で発展していくんだとおっしゃいましたけれども、一方で、短期的な視野に立って規制を入れていくと、そういったものまでも破壊しかねないという懸念もあるわけでございます。

 ですから、私は、やはりルールづくりというのは長期的な視点というものが決してないがしろになってはいけないかなというふうに感じているところでもあります。

 そういった中で、大臣に今回の会社法改正の目的を改めてお伺いしたいと思うんですけれども、やはりこれだけ各省庁、経産省さんからですけれども、真っ向から反対するような御意見も寄せられた。そして、実際の実業界、産業界からも多種多様な意見が寄せられて、中には、AとBがあったら、間をとって妥協しようじゃないかというような形での改正も見受けられます。果たして、そういった妥協や譲歩ということで今回のルールづくりがされたのが適正だと言えるのかなというふうな疑問も私は感じております。

 そういったことも踏まえて、多種多様な意見がまださまざまある中でこれだという改正を出された、その目的を改めて大臣にお伺いしたいと思います。

谷垣国務大臣 法務省が所管しておりますのは、いわゆる基本法制、民事でいえば民法、商法、あるいは民事訴訟法、刑事でいえば刑事訴訟法、刑法、こういったような基本法典を担当しているわけですが、恐らく、こういう基本法典を改廃するとなると、社会の一番基本的な仕組みをつくるわけですから、やはり相当大きな価値観の対立が出てくるのはしばしばだと思います。

 実は私、閣僚を幾つかやらせていただきましたが、前にやらせていただいた財務省の仕事と法務省の仕事は随分違うなと思うことがしばしばでございます。

 財務省の仕事は、最後、基本的に、国民からいただいた税をどう配分するかとか、あるいはどういうところから税をいただいてくるか、言ってみれば、経済的利害を、どこから出していただき、どこに配分していくかという最終的にはお金の話、言ってしまえばそうですね。ところが、法務省の仕事は、しばしばそういう一番基本的なルールをつくっていくについての価値観の対立が最後出てまいります。

 どっちが難しいとも言えないんですが、極めて乱暴に申しますと、財務大臣の仕事は、金で解決がつくことなら俺がやる、解決つける、法務大臣の仕事は、けんかで解決がつくなら俺がけんかしてくるという、極端に言えばそのぐらいの違いがあるのかなと思っているところでございます。

 それで、この会社法の分野は、平成十七年に改正をして、十八年からこの法律が行われているわけですが、その中で指摘されてきたことが二つございました。

 一つは、もちろん会社法をつくったときからそうでございますが、やはり、日本の企業統治というのは改善の余地が非常にあるのではないかという問題意識がずっとございまして、それは日本の企業の、収益力も低い、あるいは株価も低迷しているという、内外の投資家の日本企業に対する不信感といいますか、もう一つ信頼が足らないというところがあって、それは、取締役、つまり会社の執行体制に対して、いろいろな観点からの意見が入ってきて、そこでもまれるということが少ないんじゃないかという投資家の見方があったと思います。

 それを今回は、社外取締役を活用することによって、そういう会社の執行体制に対する監督のあり方というものを改善できるのではないかということが、もちろん、いろいろそういう先ほど申しましたような価値観の対立がございましたけれども、一応このように整理して御提出ができたということであります。

 それからもう一つは、親子会社といいますか、今の企業は非常に複雑になっておりますので、そういう企業結合法制といいますか、そういうあたりで、やはり足らざるものを今回入れていこうということでございまして、狙いといえばそういうことになるわけだろうと思います。

 これで、日本の企業体質について国際的な内外の投資家からの信用が高まり、経済の効率が上がっていくことに資すればというふうに考えております。

西田委員 ありがとうございます。

 価値観の対立が法務省所管では多いというお話、やはり基本法を扱っていらっしゃる法務省ですから、結果としてそうなることなんだろうというふうにも思います。

 この会社法もそうですけれども、やはり企業の自主性、経営者は当然、自分の会社の利益をいかにして最大化させるかということを考えない経営者はいないと思います。株主だってそうであろうと思います。ですけれども、それぞれが具体的にどういうものを欲しているというのは、やはりなかなか完全に把握はし切れません。

 そういった意味では、基本法制というのは、そういった構成する方々が、自分の目的、その方ですらどういう結果が来るかわからない中で、そういった目的に向かって突き進むことができる最善の機会を提供し得ることができるような法律でなければいけないというふうに思います。結果として抽象的なことになってしまうかもしれませんが、やはりそれが基本法におけるルールなんじゃなかろうかといったことを思うわけでございます。

 残り時間で、ちょっと細かい点を何点か伺いたいと思います。

 一点、先ほど何度か議論になりましたけれども、社外取締役を置かない相当の理由というところでございます。これは、相当か相当でないというのを判断するのは、結果、誰になるのか、教えていただければと思います。

深山政府参考人 社外取締役を置いていない場合に、置くことが相当でない理由というのは、第一義的には、もちろん取締役が株主総会で株主に説明をする、そのことによって、会社の最高意思決定機関である株主総会においてその取締役の報告の内容や適否というものが最終的には審査をされ、取締役を選ぶ権限があるのは株主総会ですので、そういう形で、最後は取締役の適格性の評価というところに結びついていく、基本的な仕組みはそういうことだと思います。

西田委員 ありがとうございます。株主が判断をし、そしてその評価は取締役の責任ということでございますね。

 次の観点でございます。

 委員会設置会社ですけれども、一時期、設置会社の数は伸びているんですけれども、ここ最近ではまた減ってきているわけでございます。この背景についてどのように御認識されていらっしゃるのか、お聞かせいただければと思います。

深山政府参考人 今御指摘のあった、委員会設置会社の形態を採用する上場企業の数は近年多少の減少傾向にあるというのは、御指摘のとおりでございます。具体的には、二〇〇九年には七十一社であったものが、その後、少しずつではありますが毎年減少して、二〇一三年には五十七社になっております。

 もっとも、減少しているといっても、ピーク時と比べて全上場会社の中で十五社程度の減少ですので、その理由というのは個別の会社の事情によるところが大きいものと思いまして、むしろ問題なのは、委員会設置会社を採用する会社の数が極めて少数にとどまっているということ自体にあると思っております。

 その理由として一般に指摘されているところは、社外取締役が過半数を占める指名委員会そして報酬委員会に、取締役の候補者の指名と報酬を幾ら払うかということの決定を委ねる、そのこと自体に抵抗感がある会社が多いということにあるのではないかと言われております。

    〔委員長退席、土屋(正)委員長代理着席〕

西田委員 ありがとうございます。

 もう一点、細かい点でございますけれども、多重代表訴訟の制度の創設とあわせて、親会社の取締役あるいは取締役会に対して子会社の監督責任が付与されるわけですけれども、これに対しては、子会社の自主性であったりを阻害するのではなかろうかという反対意見が寄せられています。これについてどう考えていらっしゃるのか、お聞かせいただきたいと思います。

深山政府参考人 多重代表訴訟の制度というのは、完全親子会社の関係にある、一〇〇%子会社の関係にある場合に限ってのものですので、いわば親会社の一部のような関係に実質はなっております。

 したがって、子会社に対する過剰な親会社からの介入になるというのは、形式的にそう見える面はないわけではないんですけれども、一〇〇%子会社であることを前提としますと、いわば経済的に見ると一つの会社の内部のような面もございますので、一般的な意味での親会社、子会社の関係で親会社が子会社に過剰に介入するということを、何かそういう道を開くというものではないと思っております。

西田委員 御答弁ありがとうございます。

 会社法本体についての質問は以上にさせていただいて、次に、整備法について質問させていただきたいというふうに思います。

 今回の整備法、会社法改正に沿って九十五本の整備法改正が出されて、これが結果として分厚い冊子の要因になっているわけでございますけれども、一方で、その中で、水俣病特別措置法、これも関係する法律でございますが、これについては今回、整備法の改正案に入っておりません。このことについて、なぜ入っていないのか、法務省御当局にお伺いしたいと思います。

深山政府参考人 今お話に出た整備法案は、各省庁において会社法の改正法案に伴う整備が必要であると判断した法律の改正規定を一本の法案に取りまとめる形で立案したものでございます。

 ある法律の改正規定を整備法案に設けるかどうかという判断は、その法律の所管省庁の御判断ということになりますので、整備法に確かに、水俣病被害者の救済及び水俣病問題の解決に関する特別措置法、いわゆる水俣病特措法ですけれども、この改正規定が含まれていないということにつきましては、所管省庁である環境省の御判断によるものであって、法務省からそれ以上具体的なその理由等のコメントはできないものということでございます。

西田委員 ありがとうございます。

 民事局長、もう一点。

 九十五本あるわけでございますし、この水俣病特別措置法も関連するということで、手続としては、法務省側から例えば環境省に対して、所管する法律で関連するのがあるんですけれどもという、環境省に限らずほかの省庁もそうですけれども、法務省主導でなされたわけでしょうけれども、水俣病特別措置法は、法務省が改正しませんかと言っても、環境省さんの判断で入っていない、こういう理解でよろしいですか。

深山政府参考人 今回の会社法の改正法案は非常に影響するところが大きいものですから、時々こういうことをしますけれども、大きな法案を立案する場合には各省説明会というのを開いて、関係のある各省庁の担当者に来ていただいて、改正法案の概要を説明いたします。

 水俣病特措法につきましては、所管省庁である環境省から、子会社の株式等の譲渡について株主総会の決議は要しないということを内容とする特則を置くかどうかということについて協議を受けました。その後、環境省においてさまざま検討を続けているというふうに聞いておりましたけれども、結論的に特則は置かないこととしたという連絡を受けました。

 その結果、先ほどのように、環境省の御判断ということで、特措法を整備対象としないということにして法案を立案したものでございます。

西田委員 きょうは環境省からもお越しいただいております。今の民事局長の御答弁でございました、環境省の御判断としてお入れにならなかったその理由について、お聞かせいただきたいと思います。

鎌形政府参考人 お答え申し上げます。

 御質問の点は、子会社の株式譲渡に関する改正規定とのかかわりということと理解いたしますけれども、水俣病特措法におきましては、水俣病の原因企業が事業を行う子会社の株式を譲渡しようとするときは、あらかじめ環境大臣の承認を得なければならないとされております。また、救済の終了及び市況の好転まで、暫時それを凍結するということが法律上規定されてございます。環境大臣の承認の要件といたしましては、認定された患者の方々への継続的な補償金が確保されることや、公的債務の返済に支障が生じないと見込まれる、こういったことなどが定められてございます。

 今回の会社法の改正案におきまして、子会社の株式譲渡を行う親会社に対して株主総会の特別決議を義務づけるということになったわけでございまして、これにより、水俣病の原因企業が子会社の株式譲渡を行おうとする場合には、特措法に基づく先ほど申し上げました環境大臣の承認に加えまして、株主総会の特別決議が新たに必要となる、こういうことでございます。

 今回の会社法改正につきましては、水俣病の原因企業にその部分が適用されるかどうかにかかわらず、水俣病特措法の環境大臣承認の要件というものには変更はございません。

 そうしたところの中、環境省といたしましては、まず水俣病補償、救済の観点から、水俣病の原因企業の株式譲渡については、被害への補償や救済が確保されるように、この特措法に基づきまして環境大臣としての判断をしっかり行うことがまず重要であるという認識、それから、株式譲渡のための環境大臣承認の要件が現在整っている状況にはないということなどを判断した結果、この新規の義務づける規定を水俣病の原因企業の株式譲渡について適用しないとする内容の改正を行うような方針はとらなかったというところでございます。

西田委員 この水俣病特別措置法は、平成二十一年、当時、自民、公明、民主、物すごい協議をされて、我が党も園田先生、自民党は御地元の金子先生、公明党からも江田先生等が中心になられて、水俣病の問題の最終解決を図る、地域の紛争をこれ以上長引かせない、あるいは、これからも熊本水俣の環境を守っていく、そういった強い思いでつくられた法律で、これによって被害者の救済をしっかりとやっていくといった形でつくられたものでございました。これが特別措置法でございます。

 その特別措置法の枠組みを守るという意味では、今回は、環境省側からきちんとこれは入れるべきではなかったのかというふうに思うわけでございます。今の特別措置法の趣旨を継続して守っていく必要があるにもかかわらず、今回、新しく会社法が変わることによって、新たな権利行使の根拠が新たに付与されることになるわけです。そうすると、特措法の趣旨を逸脱した状況に置かれてしまうという認識になるわけでございます。

 そういった意味では、特別措置法の趣旨に沿っていないことになってしまったのではなかろうか、このように思うわけですが、いかがでしょうか。

土屋(正)委員長代理 環境省鎌形大臣官房審議官、時間が来ております。

鎌形政府参考人 お答え申します。

 今回の会社法の改正の規定の適用にかかわらず、特措法の環境大臣の承認の要件は変わらないということでございますので、水俣病補償、救済の観点から適切に対応していくということでございます。

 いずれにいたしましても、そのほかにも多くの関係者が水俣病問題の解決に取り組む中で、患者さんや被害者の方々が、原因企業による子会社の株式譲渡が容易になるのではないか、こういった不安を抱くおそれも考慮に入れまして、今回、環境大臣の承認要件でしっかりと取り組んでいくということで判断したところでございます。

西田委員 時間が来ました。ですけれども、これははっきりさせなければなりません。

 今回、この会社法というもので先ほど言いました新たな権利行使の根拠が付与されるわけでございます。水俣病特別措置法で確定した仕組みに対して、いわば横やりに近い形で会社法が入ってくるわけでございます。これをきちんと除外することこそが、これまで先輩方が本当に御苦労されてつくられた特別措置法の趣旨を守っていくということに不可欠だというふうに思うわけでございます。

 この点については、引き続き当委員会で言及してまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

土屋(正)委員長代理 次に、高橋みほさん。

高橋(み)委員 日本維新の会の高橋みほでございます。

 きょうもどうぞよろしくお願いいたします。

 既に同じ質問が何回か出ていると思います。御容赦をいただければと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 今回の改正は、内外の投資家の日本企業に対する信頼を回復して、投資を促進して、そして日本の経済成長を促す、そのようなものと伺っております。主な改正点としましては、コーポレートガバナンスという観点から見まして、監査等委員会設置会社を設けるということが一番のメーンだと私は理解しております。

 今まで、日本の東証の一部上場会社の約九八%が監査役会設置会社であって、監査役は取締役会における議決権を有していない、そのために取締役などの選任、解任の人事に関与することができない、ですから、業務執行者に対する監督が十分できない、そのような観点を防止するため、今回新たに監査等委員会設置会社を設置するということを伺っております。

 これにつきましては、今までも皆さん、いろいろな観点から御質問されていたと思うんですけれども、私は、今回の新しい制度をつくるということに異議はございません。

 しかしながら、今回お配りしました紙を見ていただきたいんです。一枚目なんですけれども、日本の株式会社の制度には、いろいろな機関のつくり方があるんですね。

 私が大学のころというのは、取締役がいて代表取締役がいる、そして取締役会があって、株主がいて株主総会がある、そして監査役もいましたというかなりシンプルなもので、とても覚えやすい上に、また一般の国民の皆さんも、株式会社というのはこんなものだよというようなイメージがすごくわかりやすかったと思うんです。

 もちろん、今このように、たくさんのいろいろな機関の設計が可能になったというのは、その当時のいろいろな要請があって、本当の小さい零細の株式会社から大きな大会社まで同じ仕組みでするのはよくない、いろいろな要請があってこのようになったとは思うんですけれども、この機関設計、余りにも多過ぎると思うんですね。今回の新しい監査等委員会も入れますと、会社の規模によって分かれているので重複はするんですけれども、二十四もある。これは私としては余りにも多いというようなイメージがありました。

 私は、制度というものは、新しい社会の要請に従いまして新しい制度をつくるというのは、もちろんいいことだと思うんですね。ですから、今回の制度の改正というか、新しい機関をつくる、機関設計を認めるというのもいいとは思うんですけれども、余り使われないものは削除していった方が、廃止していった方がいいんじゃないか。それの方が見やすいし、わかりやすいし、学生にとっては勉強もしやすいし、周りの会社を取り巻く人たちもわかりやすい。今回の一番の目的である、海外から日本の株式会社がどうあるのかというのも、どちらかというと制度をシンプルにした方が海外の投資家からわかりやすいという面があると思うのです。

 それを考えますと、やはりスクラップ・アンド・ビルドをしていくべきではないかというような印象を私は持ちました。

 その点からいいますと、例えば、委員会設置会社、東証第一部上場企業では二・五%しかないと伺っております。これでは使われていないので、これなどは廃止してもいいのかなというような、ちょっと暴論かもしれないけれども、思いました。

 そこで、谷垣大臣にお伺いしたいのですけれども、新しいものをつくるのもいいんですけれども、このように余り使われていないような組織形態というのを、これからちょっと、削除というのか、認めないような方式みたいな、スクラップ・アンド・ビルドという考え方を取り入れるべきだと思うんですけれども、いかがお考えでしょうか。

谷垣国務大臣 今、高橋委員が、極めて今の制度は複雑過ぎるんじゃないかという御意見をおっしゃいました。私も、実は今回、会社法を答弁するに当たりまして、教科書をまた新たに買い込みまして読んでみたら、あっ、有限会社もなくなってしまっているんだとか、結局のところ、平成十七年の改正は、何というんでしょうか、多様な機関、それぞれの企業規模や企業の実態に応じて多様な選択肢を用意しようという考え方であるんだと思うんですね。

 確かに勉強するときは大変だと思います。しかし、中心になっている制度がそんなに、よく読んでみますと、中心になって、中心的に利用される制度がそうたくさんあるわけでもありませんので、学生に教える便宜からいえば、教授がよくそこのところをお考えになって、やはり一番中心になるところから説明していけば、必ずしもわかりにくいわけではないのかな。かなりにわか勉強の者が無理して言ってはおるんですが、そういう気持ちがいたします。

 それで、スクラップ・アンド・ビルドをせよ、こういうことですが、今回の目玉が、先ほどおっしゃいましたように、監査等委員会設置会社というものを新たにつくる、これが一種の目玉であるということはおっしゃるとおりだろうと私も思います。社外取締役の選任を促して、その機能を活用して要するに会社の執行体制に対してきちっとガバナンスができるようにしていこう、こういうことでございますが、これも、会社の選択肢、今までの十七年につくられた会社法の選択肢をふやすという観点で考えられておりまして、今までの監査役設置会社あるいは委員会設置会社、こういうものに否定的評価を加えているというわけでは必ずしもございません。

 それから、委員会設置会社制度につきましては、これも社外取締役を活用していただこうということでつくった類型です。しかし、これはこれで、確かに使われている数は少ないんですが、社外取締役を活用していく上で一定の評価を受けているのではないかと思っておりまして、実務界から、もう煩わしいからこんなものはやめてしまえという意見は、まだ私は余り聞いておりません。

 したがって、これまで採用される例が必ずしも多くなかったとしても、委員会設置会社というようなものを廃止する必要まではないのではないかということで、今回のような御提案にさせていただいているということでございます。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 私が学生の勉強の観点から初めに言ったものですから、そこがちょっとメーンで答えられてしまったのかもしれないんですけれども、ただ、やはり海外から見たとき、わかりやすいかなという観点を私は心配しておりまして、どういろいろ評価を受けるかはこれからだとは思うんですけれども、余りたくさんあり過ぎてもちょっとわかりにくいというのは否めないかなと思っております。

 今回、この新しい監査等委員会設置会社ができた場合、これからまた、今までありました三委員会がどうなるかというのを注視していきまして、やはりこれを続けていくべきなのか、やはり要らないのかというのはちょっと考えてもいいんじゃないかと私は思っております。

 今回の改正では、上場会社のほとんどが採用します監査役会設置会社におきましては、社外取締役を置くかどうかというのは会社の任意の選択にかかわっているとなっております。東証一部上場会社では、社外取締役を置く会社が約六〇%と言われております。そのため、このような監査役会設置会社におきましては、取締役会の業務執行者に対する監査がいまいちだった、失礼しました、置いていない会社がいまいちですね。ですから、もう少し業務執行者から独立した社外取締役の監督機能を活用すべきだということからは、社外取締役をもっともっと取り入れていくべきだというのは私も理解しております。

 ただ、ここで民主党さんにお聞きしたいんですけれども、民主党提出の会社法の一部を改正する法律案では、一定の大会社には、取締役のうち一人以上は社外取締役でなければいけないというような法律の改正案をつくっていらっしゃると思います。私も、先ほどから申し上げましたように、社外取締役におけます会社の監督機能の重視という点からは、その点は特に評価はしているんですけれども、一人とは言わないで二人、もっと言えば半数というように、もう少し社外取締役を多く入れるべきだという法律の改正案でもいいのかなというような印象を受けております。

 そこで、今回の改正案におきまして一人にした理由というものを教えていただければと思っております。

階議員 御質問をありがとうございます。

 委員が先ほど、今回の法案の目玉として監査等委員会設置会社ということを挙げられましたけれども、まず、その形態をとる場合には、社外取締役は複数になるわけであります。

 それから、従来からある監査役会設置会社、こちらについては、御指摘のとおり、我々の法案が仮に通ったとしても一人でも足りてしまうということなんですが、これにつきましては、確かに、少ないではないかということもあるんですが、現状を見ますと、社外取締役選任企業比率は委員御指摘のとおり六割を超えておりますが、社外取締役がどれぐらいの人数選任されているかといいますと、だんだんふえてきているとはいえ、調査室の資料で見ても、二〇一三年、三〇・四%ぐらいという割合しか二人以上というところはないわけであります。

 そういう現状を踏まえまして、一口に上場大会社と言っても、株主構成を初めさまざまな事情があるだろうということで、今般の改正案においては、義務づける社外取締役の数は一名以上とした次第であります。

 ただし、企業統治のさらなる強化という観点からは、御指摘の複数の社外取締役の設置義務づけという制度は十分に検討に値するものと考えます。

 我が党といたしましては、今般の改正案において、社外取締役をまずは一名設置を義務づけて企業統治の強化を一歩前進させつつ、複数の社外取締役の設置については、維新の会を初め皆様と一緒にさらに議論を深めさせていただきたいと考えております。

高橋(み)委員 ありがとうございました。

 では、政府案では、民主党案と異なり、一人の設置も義務づけておりません。これでは、安倍総理が求めました、内外の投資家の信頼を得て投資を促進し、日本の成長を促すという観点からは、残念ながらちょっと遠いという感じが否めないんですけれども、この点、いかがでしょうか。

深山政府参考人 今般の改正の議論をしていただいた法制審議会の会社法制部会でも、今委員御指摘の、社外取締役の選任を義務づける、少なくとも一名義務づけてはどうかという指摘があり、その義務づけをするかどうかをめぐって、けんけんがくがくの大議論になりました。

 大きく二つの意見に分かれたわけですが、社外取締役に監視される立場にある業務執行者が自律的に既に選んでいる例が六割ぐらいあるわけですけれども、これに委ねているだけでは不十分で、既に六割まで選んでいるんだから、もう法律で一律義務づけたらどうかという意見と、いや、義務づけをすると、かえって、各会社それぞれが工夫をして自分の会社に合ったコーポレートガバナンス体制を構築する、そういう傾向を阻害してしまって、形式に流れる、むしろ、導入というのは自由な選択に委ねる、それで促すというのがよろしいという考え方というのが、最後まで激しく対立をいたしました。

 その結果、法制審議会の議論の取りまとめとしては、会社法で一律の義務づけまでするということについてはコンセンサスが得られませんでしたので、そういう法案にはなっておりませんけれども、しかし、社外取締役の機能を活用するために、その選任を強く促すというシステムを導入することでコンセンサスが得られた、こういうことでございます。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 きっと、導入をしたくない、お金を社外取締役にかけたくない、企業の内部のことを見られたくないという企業さんの圧力が余りにも強くて、今回は残念ながら一人の義務化ということはできなかったのではないかなと思うんですけれども、いろいろなほかのものでなるべく社外取締役導入を図るということでありますので、ぜひその点では頑張っていただきたいなと思ってはおります。

 ちょっと細かいことになっていくんですけれども、今おっしゃったこととちょっとかぶると思うんですけれども、今回の法改正で、社外取締役を置くことが相当でない理由というものを定時株主総会において株主に説明することが必要になるというふうにされるということを聞いております。

 社外取締役を置くことが相当でない理由というのは、実際はどんなものなんだろうかと私は考えていました。私が考えるところは、例えば、特殊な研究機関で秘密厳守が求められるような場合。この場合は、社外取締役を置かなくてもしようがないな、それを株主に言えば株主も納得してくれるし、周りの投資家たちも納得するんだろうなというようなイメージを持ったんですけれども、残念ながら、それ以外は、特別な、その相当な理由というのを考えても余り思いつきませんでした。

 そこで、実際、政府としましては、どのような業種などで、どのような理由がこのような相当な理由ということに該当すると考えているのか、一例をお示ししていただければと思います。

深山政府参考人 相当でない理由とは具体的にどういうものかというのは、何度か御答弁しているように、各会社の個別の事情によって異なりますので、こういうことであればそれに当たるということを一概に述べることもなかなか難しいですし、こういう業種のこういう場合ということをここで言うというのが適切かという点もちょっと疑問でございます。

 ただ、今言われた、極めて業務の内容が特殊、専門的である業種というのもあり得ると思います。そうすると、社外の者が、およそ業務、営業の内容、事業の内容を理解できないというようなことがあるとすれば、社外取締役がその機能を発揮しようにも、事業内容の把握ができない、余りに専門的、特殊であるためにということがあり得るように思います。

 ですから、今委員が御指摘になったようなケースで、一定の条件が重なると、相当でない理由が説明できる場合があり得るのではないかというのは、そんな感じが私もいたします。

高橋(み)委員 そうしますと、極めて特殊な業種で専門的な会社以外は、余り相当でない理由ということは想定できないというような解釈でよろしいんでしょうか。

    〔土屋(正)委員長代理退席、委員長着席〕

深山政府参考人 これは、業種だけの問題ではなくて、その会社のその状況、さまざまでございます。今私が申し上げたのは、委員が挙げた例で、例えばこういうことはどうかということであるとすれば、それは当たり得る場合があるのではないかということを申し上げただけで、それが典型例で、ほかの類型はおよそ考えつかないということを申し上げるつもりはございません。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 私も、個別具体的な例があるというのは当然理解はしておりますけれども、やはり、今の現状、最低一人ぐらいは社外取締役を入れた方がいいんじゃないかなというような意見でこの法律が改正されている以上、余りにも広くその相当な理由というのを認めてしまうと、この改正の趣旨を没却するということにもなりかねませんので、これは注視していかなければいけないなと私は思っております。

 今回の改正では、取締役や社外取締役の社外性の要件で、重要な取引先の関係者でないことという要件の追加は見送られたということを伺っております。

 重要な取引先の会社の方が、ある会社の社外取締役になる場合、もともと社外取締役を雇おうとしている会社の利益なのか、重要な取引先の関係者の利益を図るのかというのがちょっとわかりにくくなってしまうと思います。また、せっかく公正な観点からその会社の経営を見ようとしているのに、重要な取引先の利益を考えてしまうといった、余りよくないことも起こり得るのではないかと思っているんですけれども、今回、重要な取引先の関係者でないことというような要件の追加をしなかった理由というのを教えていただきたいと思います。

深山政府参考人 今御指摘のあったように、アメリカなどの諸外国では、株式会社の重要な取引先の関係者はその株式会社と取引関係に基づく利害関係があるということから、重要な取引先の関係者でないことを社外取締役の要件としている例も存在をいたします。

 そこで、我が国においても同様に、社外取締役の要件に株式会社の重要な取引先の関係者でないことを追加すべきだという指摘もかねてよりございます。ただ、取締役が社外取締役の要件を満たすかどうかということは、その取締役が関与した取締役会決議の効力に影響する場合がありますので、法的な安定性の観点から、一義的に明確であることが望ましいと言うことができます。

 そこで、法律上、仮に株式会社の重要な取引先というのを社外取締役の要件に加える場合には、この重要であるかどうかの基準というのを一義的に明確にしなければなりません。その基準を検討するに当たっては、分析的に考えますと、取引先がその会社にとって重要である場合、会社が取引先にとって重要である場合、両方に分けて考える必要があります。

 まず、ある取引先がその会社にとって重要かどうかというのは、その取引先の代替性があるかどうか、あるいは力関係、交渉力とか、あるいはその時々の会社の事業に、どこに注力しているといった事業内容といったものに左右されますので、これを一律の基準でこういう会社と法文で定義する、法令で定義するのは難しいと思います。また、その会社が取引先にとって重要かどうかというのは、相手の会社の事情ですので、一律の基準で定めることはより難しい。

 そういうようなことを考えますと、実は法制審議会の会社法制部会でも、重要な取引先の関係者でないことを要件とすることの是非について議論がされましたが、今言った重要な取引先と言えるための法令上の一律の基準というものについてコンセンサスを得ることができませんでした。また、その要件を加えるという考え方自体についても賛否が大きく分かれました。

 したがって、この点についてコンセンサスを得ることができなかったということから、今回の改正法案では、他国の例にあることは承知しながら、株式会社の重要な取引先の関係者でないことを社外取締役の要件とはしないという判断をしたものでございます。

高橋(み)委員 重要なというところが一義的に決まらないからというのはわからないではないのですけれども、やはり他国にはあるということ。そして、ある程度密接な取引先であった場合、その人がせっかく社外取締役になったとしても、なあなあの関係になってしまって、余り社外取締役としての監査機能を発揮できないという場合は、せっかく今回改正をしたとしても趣旨が没却されてしまう可能性もあると思います。これは今回の改正があった後、また考えていかなければならないものであると思っておりますので、これからも御議論していただければと思っております。

 これは私の杞憂かもしれないんですけれども、東証一部上場会社が社外取締役を置くことになりますと、社外取締役に天下りをしようとする者がたくさん出てくるんじゃないかなということをちょっと危惧しております。

 優秀な官僚さんの能力を生かすという点では、天下りというのも一定の評価があるのかもしれないんですけれども、関連企業に天下ったりしていると、もちろん行政と企業の癒着というのも生まれるかと思います。多くの社外取締役が必要なんだ、ではそこにはやはり官僚さんが行こうというようなこともあるのではないかなというふうに危惧しております。

 その点につきましてお尋ねしたところ、天下りとかは別の法制度で行うということも考えられるから、今回は関係ないというか考えられないというお答えだったんですけれども、この会社法の社外取締役の要件で規制しても構わないんじゃないかなと私は考えますけれども、谷垣大臣、いかがでしょうか。

谷垣国務大臣 天下りにどういう問題があるのか、公務員の規律の問題としても、あるいは官民の癒着の問題としても、今までいろいろな議論を積み重ねてきまして、いろいろな対策があることは御承知のとおり。これは非常に重要な案件だと思います。

 ただ、私の頭の中で、あるいはこの立案に当たりました法務省の中でも、今の委員のおっしゃったことについては極めて頭をクリアに整理しております。

 つまり、これは民事基本法でございますから、やはり私法として私的自治というものがございます。そういう中で、どういう人を社外取締役に選任したらいいのか。もちろん、重要な取引先をそのまま連れてきた場合どうなるかとか、これは民事の枠内での規律はございます。しかし、元役人である方はどうかというのは、これは民事の規律としては無関係である。

 したがいまして、この規定の中では、天下りはどうするというのは、一切考えない、また考えるべきではないというのが私の考え方でございます。私の考え方という以上に、法務省も基本的にそういう形でつくっていると思いますし、民事基本法というのはそうあるべきだと思っております。

 そして、もし、今委員が危惧されるように、天下り等々について極めて憂慮すべき問題があり得るのではないかということであれば、別個、天下り問題の対処の仕方の中で対応を考える必要が出てくる可能性は私も否定はいたしませんが、今回のこの立法とは直接、直ちに関係のあるものではないというのが私の考え方でございます。

高橋(み)委員 民事と規律ということをすごく強調されまして、確かに商法はそうなのかもしれないんですけれども、別にそこに、以前公官庁に勤めて、十年間勤めていない者ということを入れたとしても、それが民事の規律に反するとまではちょっと私の感覚では言えないんじゃないかなと思います。

 もちろん、ほかの法制度で検討するということも、それはそれでいいとは思いますけれども、今回の場合で、今何もしていない場合は、ある程度天下りの温床になる可能性も否定はできないのかなと危惧しておりますので、危惧しているということだけをお伝えしたいと思っております。

 次に行きまして、社外取締役は、善管注意義務に違反したような場合、損害賠償がどうなるのかという問題になるかと思うんですけれども、現行では、社外取締役は、定款の規定に基づき、責任限定契約というのを結んで、一定限度で免責が認められるということを伺っております。

 先ほどからの、社外取締役は会社の監査というか会社の統治にとってとても大事だ、だから社外取締役を入れるんだという論法ですと、できましたら、社外取締役にもそれ相当の責任をとってもらうという観点も必要なんじゃないかなというような気がします。

 もちろん、責任が余り重くなってしまったら社外取締役になる人もいなくなってしまうとは思うんですけれども、やはり、ある程度責任がなければ真剣にやらないというのは人間の常であるかもしれませんので、この責任限定契約を縮小するなど、社外取締役の責任を加重する必要性があると私は考えるんですけれども、その点、いかがでしょうか。

谷垣国務大臣 委員がおっしゃいましたように、株式会社の業務執行者に対する監督で、社外取締役に重要な役割を果たしてもらいたいという期待がございます。その意味で、極めて重要な役割を社外取締役が今後も果たしていかなきゃならないことは御指摘のとおりでございます。

 また、もう一つ委員が御指摘されましたように、現行法で、株式会社と社外取締役との間で、社外取締役が会社に対して負う損害賠償の額を限定する契約を締結することができるとされておりまして、この点については今度の改正法案でもこれを変更せずに維持しているというのも御指摘のとおりです。

 こういう責任限定契約を認めるという制度設計になっておりますのは、業務執行をあくまで行う取締役がいるわけですね。社外取締役は、みずからは業務執行を直接行うわけではない、専ら経営に対する監督、監査を行うことが期待されているわけでありまして、こういう表現が適切かどうかわかりませんが、責任が発生するリスクをみずから十分にコントロールすることができる立場にあるとは必ずしも言えないのではないか、そこが執行に当たっている取締役との違いではないか。それから、社外取締役の就任候補者を確保しやすくしなければ、なかなかこの制度が進んでいかないという考慮もこちらの方にあることはございます。

 こういう制度の趣旨は私は合理性があるのじゃないかと思っておりまして、今回の改正で適切な社外取締役の確保が一層重要になっていくことを鑑みれば、責任限定契約についての現行法の規律というのは維持する必要があるのじゃないか、禁止までしてしまうと妥当ではないのではないかというのが、現在の私どもの見解でございます。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 もちろん、適切な社外取締役を確保しなければならないという要請もあるんですけれども、今回、こういう法律が改正された後、社外取締役をいっぱい必要としていた場合、有名人が何件も、何回も社外取締役になって、ほとんど意義がないというような可能性というのもちょっと危惧しておりますので、このような問題点を指摘させていただきました。

 ただ、今回いろいろ申し上げましたけれども、この法律の改正というのは私はいいと思っておりますので、ぜひ頑張っていただきたいと思っております。

 ありがとうございました。

江崎委員長 次に、松田学君。

松田委員 引き続き、日本維新の会、松田学でございます。

 社外取締役の問題を中心に、いろいろな大臣のお考え等を聞かせていただければと思うんです。

 実は私、財務省をやめてから当選するまでの間、そんなに大きくない会社ですけれども、ある上場会社の社外取締役というのをやっていたんです。社外取締役をやってみて、確かに、日本の企業の経営改革というのは、いろいろな、人材の多様性といいますか、多様な人材が企業に入らなきゃいけない、これはよくわかるんですが、自分がやってみて、どれだけ大きな貢献ができるのかなというのは実感が余りなかったというのが実態なんですね。

 果たしてこれを広げていくことが本当に日本の企業あるいは日本経済の改革につながるのかどうかという、もちろん理念はわかるんですけれども、その辺についていろいろと議論をさせていただければと思います。

 日本の経済、これは戦略論の基本ですが、やはりみずからの強さに立脚するということだと思うんですね。よく言われているのは、いろいろな産業の型というのは寄せ集め型とすり合わせ型と言われていて、日本は、現場で協調しながらぴったりとした製品、自動車なんかも典型ですが、すり合わせをしてそこで勝ってきた。ところが、九〇年代は、ITに代表される寄せ集めの、いろいろなところからいろいろなものを組み合わせて新しいものをプロデュースしていく、そういう産業技術が変化したことが日本の失われた二十年の一つの原因だとよく指摘されることであります。

 例えば、日本の強さで、現場であるとよく言われるのは、強い現場、弱い本社、強い工場、弱い本社なんてよく言われるわけなんですが、アングロサクソン型の経営、あるいは中国もそうだと言われますけれども、現場を持ってもうかるのなら現場を持つ、もうからないんだったら現場は売却したりなんかする。ところが、日本は最初に現場があって、現場は一種の道場のようなものだという指摘もあって、一生懸命稽古をして結果は後からついてくる、そうやりながら強さを築いてきた。

 よくプロデューサー、ディレクターという比較をされますが、ハリウッドはプロデューサーがすごくすぐれていて、世界じゅうからいろいろなものを寄せ集めていいものをプロデュースしていく、日本の場合はむしろディレクターが強いんだというような比較もされるように、どうも日本型の企業と英米型と随分違うなという点があると思います。

 そういう観点に立ち至ってみますと、もちろん、社外からいろいろな人が、プロデューサー型の人材も必要だと思いますので、入るのは大事なんですが、社外取締役である必要があるのかなという点がございまして、やはり執行も監督も、意思決定というのは現場を知悉した人がやらないとなかなか困難じゃないかという実感があるんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

谷垣国務大臣 今、松田委員が御自分の経験からおっしゃった点は、私もかなり多くの経営者から伺ったことがございます。

 実は、この委員会でこの御答弁を申し上げるのは初めてではないんですが、経済界の非常に大物の方と申し上げていいと思いますが、いや、それは、社外取締役といったってなかなか容易じゃないんですよと。委員のおっしゃったこととまさに同じでございますが、たまにその会社に行って、急にこれどう思うと言われたってわからないんですよねとおっしゃった方がいらっしゃいました。そういう面は私は確かに否定できないんだろうと思います。

 しかし他方、その席におられたもう一人の著名な経営者が、最初にそう容易じゃないんですよとおっしゃった方に、いや、それはちょっと違うんですと。つまり、これだけの大物の社外取締役に来ていただくと、やはり説明しなきゃならない、この人にちゃんと納得できるように説明しなきゃいけないというところに緊張感があるんですよ、自分が育ててきた自分の後輩たちのような取締役がずらっと並んでいるところは何の緊張感もありません、こういう方に納得していただくような説明をしていくということにやはり意味があるという御説明を聞きまして、私は、ああ、そういうこともあるだろうなというふうに思いました。

 もちろん、いろいろな場合場合があると思いますから、一つで全てが妥当するとは思いませんし、特に、委員がおっしゃったように、会社の業務執行に当たられるという取締役、執行を担当される方には、その現場あるいは工場等々のいろいろな技術のあり方というものに関しても、それは経験と見識がおありでないとできないのではないか、このように思います。

 業務執行を監督するという今回の社外取締役に期待されている役割、これはいろいろなものがあると思いますが、それは必ずしも現場力だけではない面があるのではないか、そのことが日本の今までの企業統治に欠けている部分を補っていくかもしれない。まだどれだけの成果があるかわかりませんが、補っていくことを期待したいと私は思っております。

松田委員 私の場合はそんな立派な大物でも何でもなかったものですから、私に説明しても全然意味がなかったと思いますが。

 実際、何があったかというと、月に一回、取締役会というのがあって、そんなに大きい報酬をもらっていたわけじゃないんですが、社長さんが私を応援してくださっている、その社長さんの好意にきちんと応えなきゃいけないという方がどちらかというと私の気持ちとしては先立ってしまいます。

 それから、その会社の現場をやはり知らないわけですね。例えば、海外にいろいろな工場を持っている、その工場を見ているわけでもない。では、実際、自分が中国とかいろいろなところに出かけていってその会社の工場を見てと、そんな出張旅費を、迷惑をかけるわけにはいきませんし、そうすると、やはり現場を知っている取締役の意見が、ああ、そうなんだという感じで、それを上回るようなことを言おうとしても、それはかえって会社を混乱させるだけというような感じになっちゃうのが多くの実態ではなかろうかなという気がしないでもないわけですね。ということを私の体験として申し上げたいと思います。

 今回の法改正も、企業の経営革新という観点から、日本再興戦略あるいは成長戦略の中で出てきた話だろうと思います。日本再興戦略では、社内のしがらみや利害関係に縛られることのない社外取締役の導入を促進して攻めの経営を後押しするとか、あるいは、産業競争力の関係でも、内外の投資家の日本企業に対する信頼を高めて日本企業に対する投資を促進するということがうたわれているわけなんです。

 ところが、実態を見ると、お手元に資料を配付させていただきましたが、この図表二の方をごらんいただきますと、左側の色のついているのが社外取締役の比率で、日本はこの中ではびり、社外取締役が半数以上を占める企業の比率が薄い棒グラフですが、この中間にほとんどの国が入るという状況で、ここまで日本が特にアメリカ、イギリスと違うというのは何かやはり事情があるような、日本型の企業のやり方というか、そういうものがあるというふうに推察せざるを得ない面もあるんですね。

 現実に、今般、従来の監査役設置会社、指名委員会等設置会社の次の第三の類型として監査等委員会設置会社が設けられるわけですが、これまで、第二の選択肢だった指名委員会等設置会社が占める比率が非常に低い。十何年か前に導入されて、期待されたほどふえなかったということの理由が何であって、そして、この第三の選択肢を入れた場合、この第三の選択肢をとる企業はどれぐらいになるというふうに期待しているのか、お答えいただければと思います。

深山政府参考人 今お話があったように、会社法には既に、二人以上の社外取締役を必ず置かなければならない会社類型として委員会設置会社、改正法案では指名委員会等設置会社ですけれども、がございます。ただ、この類型の利用は、御指摘のとおり、極めて低い水準にとどまっております。

 その理由としては、社外取締役が委員の過半数を占める指名委員会と報酬委員会が業務執行者の指名それから報酬の決定の権限を持つということに対する各企業の抵抗感があるということが指摘されております。そこで、こういった抵抗感なく社外取締役を活用することができる制度として、監査等委員会設置会社制度を導入することとしたものでございます。

 もっとも、監査等委員会設置会社となるかどうかは各会社がそれぞれの実情に応じて選択することとなりますので、現時点においてどれだけの数の会社がこれを選択するかを予測するというのは困難でございます。もっとも、海外の機関投資家は社外取締役の選任を求める傾向が強くありますので、海外の機関投資家が大株主になっている監査役会設置会社を中心として監査等委員会設置会社が選択されていくということを期待しているところでございます。

松田委員 私がいろいろと日ごろから御指導いただいている元マッキンゼー東京支社長の横山禎徳さんという方がいらっしゃいまして、彼は日本のほとんどの業種について経営コンサルタントをやってきた経験で、日本のいろいろな上場会社の社長さんで、本当にこの人は社長になるべくしてなったという方は、五十人のうちせいぜい二人ぐらいだとおっしゃっています。要するに、日本の場合、社長が引退すると会長になり、そして相談役になっても会社にずっとしがみついている、ちゃんと会社にいさせてくれるような後継でないと指名しない、結局、今の社長さんにすり寄って、それで偉くなった人が社長さんになっているというような傾向が非常に強いというふうにおっしゃっていました。

 お配りした資料の上の図を見ていただきますと、これは日米英のCEOの報酬水準比較ですが、日本はアメリカの大体十分の一ぐらい、イギリスの五分の一ということで、やはり役員とか社長さんの報酬が、そのよしあしは別にして、実態面で見ると非常に低いということです。かつ、日本人は会社人間というように、生きがいは会社しかないということで、どうしても会社にしがみついてしまう。これがやはり、思い切った経営改革というか、先輩に気を使ってなかなか果断なる意思決定ができない、リスクがとれない、ここに非常に大きな問題があるようにも思います。

 ちなみに、日本の場合、会社共同体と言われるように非常に平等な、会社の中の役員報酬と従業員給与の比較をしてみましても、これはある数字ですが、東証一部上場についての調査で、平均で二十三・〇倍ということなんです。例外が日産自動車の百四十二倍なんですけれども、まあ二十三・〇倍。それが、アメリカの場合、売上高上位三百五十社では労使格差が二百七十二倍というような状態になっているんです。これは英米系企業と日本との大きな違いがあると思うんです。

 社外取締役の比率というのも一つの切り口かと思いますけれども、企業の経営改革というのは、やはりもう少し、日本の例えば人事面だとかあるいは経営のあり方の根本のところ、よく、現象にあらわれている背後の主要矛盾に着目しなきゃだめだというふうに言いますけれども、表面的な社外取締役というのもわかりますけれども、その点について経営改革をやるのなら着目しなきゃいけないんじゃないかなという感じがしております。

 それで、ちょっと時間の関係もありますので。私は、会社の経営改革ということを考えたときに、これは、日本の国の国柄とか社会のあり方とか、そういったものの特性に見合って、会社制度の組み立てというのをしていく必要があると思うんですね。

 そこで、一見、法務委員会に関係ない質問かもしれませんが、ちょっと大臣に。

 先般、私ども、改革保守というのが私たち日本維新の会の立場でございまして、大変大臣にも心強い御発言をいただいたんですが、集団的自衛権に関する内閣法制局の憲法解釈について、論理に飛躍があるというふうに批判されたと報道されておりますが、これは実際そうだったのかどうか。また、砂川事件判決は集団的自衛権行使容認の根拠になり得るというふうに大臣はお考えなのか。それを一言お聞かせいただければと思います。

谷垣国務大臣 私は、閣僚として執務するに当たりまして、特に国会という権威のある場で御答弁をさせていただくということになると、議事録にも残ります。もちろん、閣内の一員として連帯して責任を負わなければならない。全てにわたってそうでございますが、自分が直接責任を負えないことを、いろいろ考え方は持っているにしろ、自分が直接職責を担っていないことを国会で答弁することは極めて自制的であるべきだとみずからに言い聞かせながら仕事をいたしております。

 それで、こう思いましたのは、松田委員も財務省の御出身でございますが、私も委員の御出身の役所で閣僚をやらせていただきましたとき、もう今から十年以上前になるでしょうか、ちょうど今の島根県知事が財務官でいらして、溝口財務官とコンビを組みまして、一年間で三十数兆、為替介入をいたしました。

 これをするについては、かなりアメリカ等々の理解とかEU諸国のいろいろ反応がある中で、あらかじめ根回しをしたりとかいうことで、かなり苦心をして財務官も取り組まれたと思いますし、私自身も、それだけの金額を投入して為替介入をしていくということには、日々、相当緊張感を持っておりました。

 そのときに、率直に申し上げると、気軽に閣僚がいろいろなところで、特に国会の委員会なんかで、よくその辺の背景も御存じなく発言されるのを、極めてはらはらする思いでいたことがございまして、よくそういう閣僚のところに伺って、あんた、頼むからしばらく黙っていてくれよというようなことを申し上げた経験がございます。

 そういうことがありまして、私は今、松田委員のお問いかけなんですが、実は弱ったなと思いました。ただ、この間、記者会見である程度お答えしたことも事実でございますので、差し支えない範囲でお答えができたらと思っております。

 実は、あの議論は、我が党の中で、高村副総裁が、いろいろな集団的自衛権を見直したらどういう解釈になるかというような議論をされておりまして、閣僚としては、集団的自衛権をどう解釈していくかという法制局答弁に集約されているものはまだ変わっておりませんので、私は非常に申し上げにくいんです。

 ただ、高村さんのお考えをある意味で私なりに解説するというようなことで申し上げたんですが、それは、砂川判決が集団的自衛権の解釈に妥当するかどうかということにも関係してまいりますが、砂川事件がどこまで射程距離があるのか、古い判決でありますから、集団的自衛権、個別的自衛権ということまで視野に入れたものであるのかどうか、私、よくわかりませんが、必ずしも視野に入っていなかった可能性もございますね。

 ただ、私、最近の法制局見解を十分検討しているわけではないですが、サダム・フセインがクウェートに侵攻した当時、かなり網羅的に日本の内閣法制局の集団的自衛権の解釈を勉強した記憶がございます。そのときの私の記憶は、基本にやはり砂川判決があるなと思いました。それは、要するに、必要最小限の自衛力は日本国憲法も認めているというコンテクストの中で、つまり、ある意味での、砂川判決を一部下敷きにして、内閣法制局の見解の下にそういうものがあるという感じを受けました。

 それに加えて、必要最小限であるから、したがって個別的自衛権のみ許されるというのが、極めてラフに言えばそういう解釈でございますが、そこに本当に水も漏らさぬ論理の構築があるのかどうかというのは、私はよくわからないなと思って、しかし、内閣法制局がそのように判断をされ、閣議決定の上にそういう解決をされているのなら、それは政府の解釈として、しかもずっとそれが来ておりますから、確立した解釈でございます。

 ただ、そこにいろいろな論理の組みかえの余地はあり得るのではないか、私はそういう印象で今まで内閣法制局の見解を見てきたことは事実でございます。

松田委員 大臣、ポリシーに反して、踏み込んで御答弁いただきまして、どうもありがとうございました。

 全く私も同感でございまして、論理的な構成がいまいちちょっと恣意的に過ぎるような気がしないでもないものですから、我が党でも今ちょうど議論しているところでございますけれども、またこれは別の場でも議論していきたいと思います。

 それで、私は、会社というものもやはり国家観と非常に重要な関連をしていると思います。例えば保守とかリベラルとか言われていますが、きょうはこの議論はいたしませんけれども、同じ資本主義にも、よく言われるように三つある。株主資本主義、国家資本主義、公益資本主義というのがある。この第三の公益資本主義というのがこれからの選択肢だという議論はよくされています。

 考えてみれば、価値観の多様化した成熟社会でもございますので、単なる市場原理、株主にもうけさせるだけの会社ではないだろうというのもあります。また、中国のような国家資本主義でもない。そうすると、もう少し多様な価値観を反映した会社のあり方があっていいんじゃないか。

 私は、社外取締役というのは、これは一つの機能として、もしそれを考えるのであれば、例えば、いわゆる企業の社会的責任を踏まえたような多様な人を社外取締役に迎え入れるという考えがあってもいいんじゃないかと思いますが、大臣はいかがでしょうか。

谷垣国務大臣 今、委員の御質問が、必ずしも私、正面から受けとめられているかどうかわかりませんが、今回は民事基本法の改正でございますから、やはり選択肢の多様性を用意した。率直に申しますと、明示の義務づけはしておりませんが、かなり義務づけに傾いておりますね。ただ、どういう人を社外取締役にしたらいいのか、そのあたりは、やはりそれぞれの企業の歴史と伝統と申しますか、社内風土というものに鑑みてお考えになる余地は私は十分あるのではないかと思います。

 そういうことで、私、今の委員のお考えをうまく受けとめたかどうかわかりませんが、そういう意味での社外取締役の運用の仕方というのもあるのではないかと思います。

松田委員 理想に向けて、私はいろいろな手法があると思うんですね。国が制度で強制して一つの理想に導いていくというのもそうであれば、これは全く自由に任せて、自由放任、だけれどもそこはマーケットが評価する、マーケットの評価に委ねる手法というのがあろうかと思います。どちらかというと、保守の立場というのは自立というのを旨としますから、企業はそれぞれ自分の一番最適というものを選んで、マーケットの評価を受けてくださいと。

 そうやって考えていきますと、今回の社外取締役も、何もこれがいいと言うまでもなく、例えば各証券取引所が自分の市場をどういうふうにしていくか。自分の市場は社外取締役を設置した方がいいと考えるのであれば、自主規制みたいなものでつくっていくというのが本来の自立の考え方に即していると思うんですが、今般の法案にはそのような考え方というのが反映されているかどうか、ちょっと確認したいと思います。

深山政府参考人 御指摘のとおり、社外取締役の導入を促進するということを考えたときに、法律で義務づけるというようなことばかりではなくて、証券取引所の上場規則等で規律を設けることも一つの選択肢として十分考えられるところです。

 今回の法改正の前提となった法制審議会の要綱を取りまとめるに際して、民間における市場ルールによって社外取締役の選任を促すために、東京証券取引所等が定める規則の中で、上場会社は取締役である独立役員を一人以上確保するよう努める、そういう旨の規律を設ける必要があるという附帯決議を一緒にしております。

 この附帯決議を受けて、東証では上場規則を既に改正しておりまして、上場会社は「取締役である独立役員を少なくとも一名以上確保するよう努めなければならない。」という努力義務の規定を上場規則に設けておりまして、既に本年二月十日から施行されております。

 この改正法案は、上場会社等が社外取締役を置いていない場合には、置くことが相当でない理由を株主総会で説明するというルールを設けておりますが、これは、今の証券取引所の規則による努力義務をいわば法律で裏打ちする、コンプライ・オア・エクスプレーンのルールを日本的に取り入れたもの、こういうものとなっております。

松田委員 最近、行動経済学の分野で新しい考え方が出てきていまして、それは、政府の役割というのは、いわゆる完全な自由な競争に任せるわけでもなく、政府が強制するわけでもなくて、自由な選択肢、自由に選択できる選択肢を与えていく、いわゆる民間の経済主体に行動のベンチマークを与えて、各人がいいと思ったものを選択した結果として社会が望ましい方向に行くような、そういう経済学が非常に最近また出てきているんです。例えば建築基準法も、今の耐震基準というのが必ずしも十分でないとすれば、より厳しい耐震基準を設けてそれを標準仕様だとすると、ほとんどの人はコストをかけてもそっちの方を選択するというような、そういう研究結果もあるようでございます。

 そういう点からいいますと、今回の仕組みというのは、社外取締役を導入しない企業はちゃんと説明しろというのも、その一つの考え方を反映しているのかなというふうに思いますので、その面は私も評価しないわけでもないんですね。

 それはそれとして、評価できる面はあるんですけれども、よく戦後レジームからの脱却とかいろいろなことが言われていますが、日本の戦後システムというのは、どうしても実質的社会主義といいますか、自民党も保守といいながら、どちらかというと社民主義的なことを掲げていろいろなことをやってきた。そんな中で、企業のあり方も、最近コンプライアンスということがよく言われるんですが、日本の企業はナンバーワンは目指してもオンリーワンは目指さないと言われていますけれども、コアコンピタンスという言葉がありますよね、これから独自性を目指していくということをしてやっていかないといけない。そういう時代に、どういう企業のあり方がいいのかということです。

 戦後の日本だけが日本ではなくて、自民党は日本を取り戻すということを掲げていますが、その日本というのはどの日本なのか。

 いろいろな日本があったわけで、例えば、明治大正経済システムというのは、戦後のシステムとは大分違う風景がありました。私もちょっと勉強したんですが、企業の資金調達は、戦後は銀行融資が中心ですが、当時は株式が中心でして、資産の格差も非常にあって、それからリスクテークをするいわゆる財閥みたいなものもあったわけです。いわゆる資本家というのがいて、それから労働市場も非常に流動性が高くて、地方もすごく自立のマインドが強かった。今のアメリカよりもアメリカ的な面があったという日本がちゃんと過去にあったんですね。

 私は、これからの日本がもう一つ戦後システムを脱却するとすると、過去のそういう一つのモデルを日本はつくったわけですから、例えばこの会社法も含めて、経済関係の法制度を考えていくに当たって、本当の意味でのアントレプレナーシップといいますか、真の資本家というのを日本に取り戻していく、いわゆるサラリーマン経営者の弊害と言われていますけれども、そういうこともよく考えていかなきゃいけないと思いますが、大臣のお考えをちょっとお聞かせいただければと思います。

谷垣国務大臣 松田委員の問題意識にうまくお答えできるかどうかわかりませんが、確かに、日本も、我々が今、これが日本だと思っているものが全てかどうかと、もう少し頭を柔軟にする必要があるなというふうに私は思います。

 それと、もう一つ思いますのは、頭を柔軟にする必要はあるけれども、私はやはり、私の好きな人は、何だかおおらかさを持って前に向かって歩いていくような人が好きでございまして、日本の国も、何かつまらぬことにうじうじこだわるような日本じゃなくて、おおらかな自信を持って前に進んでいくような日本であってほしい、日本を取り戻すと言うときもそういう日本であってほしいと思っております。

 なんというと漠然とした話でございますので。今委員がおっしゃった中で、では日本の経済システムあるいは企業社会をどう発展させていくか。

 今回の会社法改正も一つはそれを狙いにしているわけでございますが、やはり一つは、経営者のリスクテーキングというものが必要なんじゃないか、攻めの経営を行っていくといいますか。そして、経営者がリスクをとるというだけじゃなしに、そういうリスクをとって新しい地平を開いていこうという経営者に対して、それを理解して投資していく資本家の存在が必要だろう、私はそのように思っております。

 ですから、そういうようなイメージのもとに健全な企業発展をどうさせていくか。そのためには、経営者がやはり適法かつ効率的な経営を行っていく、そしてリスクテークも適正なものとなるように適正なコーポレートガバナンスをつくっていく、こういう発想が必要なのではないかなというふうに思っております。今回の会社法改正もそのための一歩になれば、こんな気持ちでおります。

松田委員 どうもありがとうございました。

 ややもすると、日本の弊害というのは、何でも悪いことが起こると一律に規制をして、一番悪い人に標準を合わせて、もっと志の高い人がいるのにその人たちまでがちがちに縛ってしまう、いろいろなところでそれが見られるというのも、やはりいろいろな制度を考えていく上でぜひこの点も、志をもっと評価するような、まさにリスクテーキングというのは志を評価しないとなかなか起きないというふうに思いますので、やはり各人がみずからの価値判断というのをちゃんとやっていく。

 例えば社外取締役も、導入さえすればいいんだろうという免罪符みたいになってしまうと、先ほど私の経験を申し上げましたが、要するに私は何に使われたかというと、証券取引市場に対して、ちゃんとした財務省出身の社外取締役を置いているよと免罪符に使われただけだなということにならないように、これからも、いろいろな制度設計において、いろいろとその点もお考えいただければということを最後に申し上げまして、私の質問とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。

江崎委員長 次に、椎名毅委員。

椎名委員 こんにちは。お疲れさまでございます。結いの党の椎名毅でございます。

 本日、一時間も質疑時間をいただきまして、大変身に余る光栄でございます。一時間ということで、割と細かく議論をしていこうかなというふうに思っておりまして、そういった意味で、余り大臣に登場していただく機会もないかと思いますけれども、引き続きよろしくお願いできればというふうに思います。

 午前中からずっと社外取締役に関する議論というのが行われてまいりました。論点も大分詰まってきたのかなというふうに思っておりますので、私自身は社外取締役の論点ではないところについて聞いていこうかと思います。

 その前に、ちょっと社外取締役について私自身も思うところを一つ申し述べてまいりたいというふうに思います。

 先ほど松田先生が、リスクテークをする取締役を、リスクテークをする経営者をという話をおっしゃっておりましたが、私自身もそれは本当にそのとおりだというふうに思っています。

 今回、社外取締役というものを法制度化することの最大の意味は、内外の投資家からの見た目というところが大きいかというふうに思います。グローバルに見て、スタンダードに沿った形でコーポレートガバナンスの形態がそろっているということによって、正直、日本のコーポレートガバナンスに対する特に外国投資家の不信感というものを少しでも解消できればという程度のものだというふうに思っています。

 というのはなぜかというと、最後、松田先生もおっしゃっておりましたが、結局、制度をつくっておしまいじゃないんですよね。そうじゃなくて、社外取締役に法律上期待されている役割をきちんと実現できる経営者の人材プールをつくることの方がずっと重要かなというふうに思っています。その意味で、今回の法制度として、義務化をするか、それとも事実上義務化に近い状況に置くかというのは、私自身は論点としては割と小さいと思っています。

 それよりも、これからの十年、二十年の間に、実際に、社外取締役ですと言って非常勤で取締役会が開かれるときに訪れていって、会社の状況が余りよくわかっていないにもかかわらず、会社の経営に関して、特に経営の妥当性についてきちんと意見を述べることができる、そういう社外取締役になり得る人材プールをつくっていくこと、これが今後の日本の経済でやっていかなければならないことかなというふうに思っています。

 以上です。意見だけを申し述べさせていただきました。

 本論に入りたいというふうに思います。

 私自身は、今回、会社法の改正ということで、大きな論点から事務方からいろいろ御説明をいただきましたが、主に、企業統治、コーポレートガバナンスの部分と親子会社法制というところで、特に多重代表訴訟の部分について強く御説明をいただきましたけれども、実は、御説明を事務方からいただいたところではないところにも結構重要な問題があるんじゃないかなというふうに思い、本日、俗にキャッシュアウトと呼ばれる部分、それから親子会社法制と呼ばれるところについて、幾つか伺ってまいりたいというふうに思います。

 先週の与党側の質疑の中で小田原先生が聞かれていた部分と幾つか重なる部分もあろうかというふうに思いますが、御容赦いただければというふうに思います。

 キャッシュアウトというのは、いわゆる長期的な視野に立った柔軟な経営、株主総会対応の簡略化などによる迅速な意思決定とか、有価証券報告書の提出義務の簡略化とか、株主管理コストの削減といった観点から、少数株主をお金で排除する、そういうために行われるものでございます。

 具体的には、いわゆるマネジメント・バイアウト、MBOと呼ばれるもの、会社の経営を株主から委託されている経営陣がみずからその会社を買収してオーナー企業にしていくというマネジメント・バイアウトということ、それから、上場子会社、これのゴーイングプライベート、いわゆる完全子会社化というような場面で使われたりするものかなというふうに思っています。

 基本的には、第一段階として、上場会社であるところの上場されている市場で公開買い付けをして、それで買い付け者が支配株主になって、その上で、支配株主が主導して、少数株主に対して現金を払って対象会社から締め出すということだというふうに思っています。

 こういう関係上、少数株主の保護ということを物すごく重要に考えていかなければいけない部分だというふうに思っております。今回の法改正が少数株主の保護という観点からどの程度配慮されているのかというところを確認していく意味で、私自身、幾つか伺っていきたいというふうに思っています。

 現行法でも既に、このキャッシュアウトというのは幾つかテクニカルな方法で使われております。大きく分けて、三つ方法があり得ると論理的には言われています。株式併合という手段を使うのと、それから現金対価の組織再編、株式交換と合併ですけれども、三つ目が全部取得条項つき株式というものを使う、この三つの手段があると言われています。種々の理由により、実は、実務的には三つ目の方法しか今現状使われていないというのが正直なところかなというふうに思います。

 これに加えて、今回議論となっている会社法の百七十九条以下で、特別支配株主になった、いわゆる九〇%の株式を占めた人が、少数株主に対して株式売り渡し請求というものをできるようになるというふうに言われています。株式売り渡し請求というものをすると、手続上、この百七十九条の三というところには、対象会社であるところの会社の取締役または取締役会が承認をするということが一応条件になっています。

 この承認の内容について、一番最初に伺っていきたいというふうに思います。

 この少数株主の保護という観点からすると、株式売り渡し請求というものをされたときに、対象会社の取締役会になるべく適正な価格で買い取ってもらうということを気にしているというふうに思います。少数株主がその株価、要するに買い取り価格を気にしているということが前提としてある中で、承認をする際に取締役会は何をしなければならないのかということだというふうに思っています。

 取締役は、善管注意義務というものを会社法三百三十条、それからそれの準用する民法六百四十四条、そして忠実義務というのを会社法三百五十五条でそれぞれ会社に対して負っています。それを前提として、会社に対して善管注意義務、それから忠実義務というものを負っているわけですけれども、それを超えて少数株主の利益を保護するために何らかの義務を負うんじゃないかというふうに思う次第でございます。

 こういったところで、取締役は、こういった場面において、少数株主の保護という観点から、最善の価格を引き出すために特別支配株主と交渉する最高価格の引き出し義務みたいなものがあるんじゃないか、これはいわゆるレブロン義務というふうに表現されたりもしますけれども、こういった考え方もある中で、今回の法制度の中ではどういう対応をされるのか教えてください。

深山政府参考人 今お話に出ました株式売り渡し請求におきましては、少数株主である売り渡し株主の利益の確保を図るために、株式売り渡し請求には対象会社の承認を要するということになっているのは御指摘のとおりです。少数株主を含む株主の利益に配慮すべき立場にある対象会社の取締役が、善管注意義務に基づいて株式売り渡し請求を認めるかどうかを判断することとしているわけです。

 そして、その対象会社の承認が売り渡し株主の利益の確保のために必要とされている、この承認制度の趣旨からしますと、対象会社の取締役は、対価として交付される金銭の額が相当であるかどうかも確認した上で売り渡し請求を承認するかどうかの判断をしなければならないものと解されます。

 この点を明らかにするために、対象会社が株式売り渡し請求を承認した場合に、この場合には株主に対して事前備え置き書類を開示いたしますけれども、この事前備え置き書類の記載事項として、これは法務省令事項なんですけれども、株式売り渡し請求の対価の相当性に関する事項、それから、売り渡し株主の利益を害さないように留意した事項等を定めることを今検討しております。

 その中で、例えば第三者の算定機関から株式価格の評価書を取得した上でこれを承認したんだというようなことがあった場合には、そういったこともここに書かれていく、こういうことになります。

椎名委員 ありがとうございます。

 法制審なんかでも、あくまでも善管注意義務及び忠実義務は会社に対する配慮義務であるということを前提とした上で、こういう場面に限り、少数株主に対して一定程度配慮する義務というものを負うと考えるべきであろうというふうに書かれておりますが、そういった前提のもとで、今、法務省令の記載事項として、第三者から価格鑑定書等みたいなものをとったときに、それをベースにして、売り渡し請求権者である特別支配株主の提示した価格が妥当かどうか、そういったことを一応判断した上で承認するということだと理解をしました。

 後段私が伺ったところについてもう一度確認をしたいんですけれども、ということは、裏返すと、いわゆるレブロン義務のような形で、対象会社の取締役が特別支配株主に対して、最大の価格を引き出すために、もう少し価格を上げてください等々のお願いをしたり、そういったことをする義務までは負っていないということなんでしょうか。

深山政府参考人 今申し上げたとおり、承認を求められた取締役は、少数株主の利益の確保という観点から、その対価の額が適正かどうかも含めて承認するかどうかを決めます。

 そうすると、対価が低過ぎて問題であるという場合には承認をしないことになりますので、今度は、特別支配株主の方が、それでは幾らであれば承認ができるのか、自分たちが第三者に評価させたらこれだけの価格である、この価格を超えるなら承認しますよという形に、実際には価格交渉を行うということにこのシステムを通じてなります。

 つまり、特別支配株主の方が、どうしてもキャッシュアウトをしたければ承認を得なければいけませんので、得るためにさらに上乗せの価格の提示をしていくという形で、一種の交渉が成立するということになります。

椎名委員 ありがとうございます。

 実務上、本当にそのとおりに価格交渉が行われるようになることを私自身は期待したいというふうに思います。

 とはいえ、他方で、そもそも株式等売り渡し請求というのができる特別支配株主の要件は、冒頭私も少し申し上げましたけれども、九〇%の株式を持っているということです。株主総会を開けば、当然、自分の好みのというか、自分の意を酌んで動いてくれるような取締役を選任したり、現職の取締役を解任したりすること自体は可能になるというふうに思っています。事実上、そういった意味で、取締役と特別支配株主の関係は一定程度従属関係にあるというのは否めないところかなというふうに思います。

 他方で、今局長からおっしゃっていただいたように、対象会社の取締役が承認の可否を決めるに当たって、少数株主についても一定程度配慮をしなければならないということであると、利益相反的な状況に追い込まれることになります。

 こういった状況の中で、どのように取締役が本当に独立に、そして公正に、少数株主のことを考えながら、中立的に承認という判断をすることができるのか、その独立性、公正性の担保の手段というところについて伺いたいと思います。

深山政府参考人 先ほどもちょっと申し上げましたが、株式売り渡し請求について、対象会社の取締役あるいは取締役会の承認を受けなければならないというルールを設けたのは、売り渡し株主の利益への配慮という観点から、請求に手続的な制約を課すという趣旨でわざわざ承認を求めている。したがって、この趣旨からすると、取締役は、承認するかどうかの決定に当たっては、売り渡し株主の利益に配慮をして、善管注意義務に基づいて条件が適正かどうかを検討する役割を担うわけです。

 さはさりながら、相手は九〇%支配の株主であります。ということで、仮に対象会社の取締役が、株式等の売り渡し請求の条件が適正でない、そうであるにもかかわらず売り渡し請求を承認して、結果として売り渡し株主に損害を与えた場合、これは、売り渡し株主から善管注意義務違反を理由とする損害賠償責任を追及される、そういう立場に立たされます。

 結局、こういうシステムによって、対象会社の取締役の判断、あるいは取締役が独立して判断をする、あるいはせざるを得ないという形になっているわけでございます。

椎名委員 ありがとうございます。

 今おっしゃっていただいたとおり、売り渡し株主から善管注意義務違反ということで損害賠償請求ができるということでございます。

 訴訟を起こすというのは比較的初期コストもそれなりにかかるところでして、訴訟まで踏み切れる人がどこまでいるかというところが、ひとつ、今後の実務を見たいなというふうに思っています。

 今の、訴訟するにそれなりにコストがかかるという話に関連して、もう一つちょっと伺いたいんですけれども、売り渡し請求というものを特別支配株主が少数株主に対してそれなりの手続にのっとって行うと、特別支配株主が書面によって定めた取得日という日に自動的に売買の効果が基本的に発生するということで、株式の権利が移転をするということになります。他方で、特別支配株主は、取得日までは、株式等売り渡し請求権を撤回することもできるということになっています。

 少数株主は、今回のこの制度によって、株価の対価が適正かどうか、これを争っていく手段、それから、やはり売りたくないという手段、売り渡し請求の事前に二つ基本的に手段としてあります。価格決定の申し立てと、それから事前の株式の差しとめ、この二つの手段があるわけですけれども、こういった価格決定の申し立てをして、価格が妥当じゃないんじゃないかみたいな申し立てをした株主は、株主がこういった申し立てをした途端、特別支配株主が、では、いいやといって撤回をされてしまうと、訴訟に係る初期コスト等々がかかり、かえって売り渡し株主等に対して不利になる部分もあるんじゃないかというふうに思います。

 一応法律を読んでみると、株式等売り渡し請求というものを撤回するのには理由は要らないことになっています。請求をするときと同様に、対象会社の承諾というものが条件になっていますけれども、この承諾についても同じように善管注意義務の制約がかかっているだけだというふうに思います。

 こういった観点から、むやみやたらに安易に撤回をされてしまうと、結構、少数株主がかえって害されるのではないかというふうに思いますけれども、このあたりについて御所見をいただきたいなというふうに思います。

深山政府参考人 今御指摘のとおり、改正法案の株式売り渡し請求の撤回は、請求について対象会社の承認を受けた後は、取得日の前日までに対象会社の承諾を得た場合に限って行うことができることとされております。

 このようなルールを設けた趣旨は、まず、株式売り渡し請求の撤回を全く認めないということにしますと、売り渡し請求がされた後に特別支配株主の財務状態が悪化して対価の交付が困難となったというような場合に、対価の支払いの見込みがないにもかかわらず売り渡し株式等の取得の効果が先ほど言ったように自動的に生じてしまいますので、そうすると売り渡し株主が対価の支払いを受けられないという不利益をこうむるおそれがあります。

 このように、撤回の余地を全く認めないというのはかえって売り渡し株主の利益に反する不合理な結果につながるおそれがあるということで撤回を認めたわけですが、他方で、一方的な意思表示による撤回を何の制約もなく認めるということは、今度は売り渡し株主の予測可能性を害するということもありますので、これも今お話があったように、対象会社の承諾を得た場合には撤回をできる、こういうふうにして、対象会社の取締役あるいは取締役会が承諾するかどうかについては、善管注意義務に基づいて、合理的な理由があるかどうかというのを判断した上で承諾をするということになります。

椎名委員 るる御説明をいただきましたけれども、やはり少数株主が株価の裁定を裁判所に求めようと思って弁護士費用を積んで訴えをしても撤回をされてしまうという状況があり得ることだけは間違いないのかなというふうには思います。これによって少数株主が害されるかどうかについては、正直、実務の運用を見てみないと私自身はわからないんですが、そういう意味で申し上げますと、問題点ということで、一応問題提起だけさせていただきたいというふうに思います。

 引き続き、次に伺います。

 先ほど来、るる、キャッシュアウトというのは、おおむね上場企業のマネジメント・バイアウトだったり、上場子会社の完全子会社化のために使われることが多いということを申し上げてまいりました。しかし、この法のたてつけ上は、いわゆる非公開会社、譲渡制限会社ですけれども、こういった会社にも適用される、要するに、会社について何の区別もしていないで、この譲渡制限会社にも使われるというふうに書いてあるわけですね。

 でも、よくある譲渡制限会社というのは、典型的な例で言うと同族企業ですけれども、同族企業で家族経営をやっている会社なんかですと、経営陣に協力をしないとかいった人だけれども相続によって株式を持っているみたいな、こういう株主をむやみやたらに追い出したりとかに使われてしまうのではないかという懸念もあったりするというふうに思います。そういった観点から、私自身も、要するに、非公開会社というか、小さな会社まで適用しないという制度設計もあり得たんじゃないかというふうに思っております。

 さらに言うと、従前使われていたキャッシュアウトの手法ということで、先ほど申し上げた全部取得条項つき種類株式、これを使うということ、これをすると株主総会が必要ですので、株主総会に株主に出てきてもらって、自分の意見を言ってもらって、それでも問題があればキャッシュアウトという形で退場を願うという、こういった一定程度の手続を経ることも必要なんじゃないかというふうに思います。

 今回の法制度で、非公開会社を含めてこのキャッシュアウト法制をつくった理由というところを教えていただければと思います。

深山政府参考人 御指摘のとおり、今回創設した株式売り渡し請求の制度においては、公開会社でない株式会社を対象会社とする売り渡し請求も認めることとしております。

 その理由は、一つには、公開会社でない株式会社においてもキャッシュアウトを認めるメリットがあると考えられること。これは、先ほど委員の御指摘のキャッシュアウトのメリットのうち、長期的視野に立った柔軟な経営を実現するということや、株主総会に関する手続の省略による意思決定の迅速化といったことは公開会社以外にもメリットになるだろう、こういうことでございます。

 それと、もう一つは、現行法でキャッシュアウトの手法とされている、今お話に出ました、全部取得条項つき種類株式の取得の方法やあるいは金銭を対価とする組織再編も、対象会社が公開会社に限定されていないということとの均衡も考えたものでございます。

椎名委員 ありがとうございます。

 メリットが同じように妥当するとおっしゃっておりましたけれども、正直そんなに使われないんじゃないかなというふうに思っております。使われないからこそ、別に制度として同じようにカバレッジを持っておいてもいいかなという考え方はあり得るものの、同族企業だったり非公開会社の方が、少数株主の保護の要請というのは若干強いんじゃないかというふうに思うので、私自身は、ここは非公開会社まで含むべきではないんじゃないかなというふうに、この法文を読んでいて思った次第です。

 引き続き、次にちょっと行きます。

 金融庁に伺いたいんですけれども、先ほど、そのキャッシュアウトのメリットとして、上場している会社が有価証券報告書等を継続開示しなくていい場面をつくっていく、要は、それによって経営の効率化を図っていく、こういったメリットをるる申し述べたわけでございます。

 その中で、特に、現在使われている全部取得条項つき株式という手法を使うと、現状では、この継続開示義務というものがなくなるものだというのが一応金融庁の公式見解だというふうに思っています。それに基づいて実務は行われているというふうに理解をしています。

 今回、新しくこの株式等売り渡し請求というものができ、これに基づいて支配株主が株式取得をすると、その結果で一〇〇%子会社になるということ。こういった場合にも、やはり継続開示義務というのが続くという理解でよろしいですか。

氷見野政府参考人 現行の制度では、有価証券報告書提出会社の株主数が二十五名未満となった場合には、内閣総理大臣の承認を受けることにより有価証券報告書の提出を要しないこととされておりますが、ただし、当該承認の申請については、申請の日の属する事業年度の直前事業年度末を基準とする旨、内閣府令において規定されておりますので、御指摘のとおり、一定期間だけではございますが、継続開示義務が残る形になります。

 したがいまして、この内閣府令の規定につきましては、先ほど御指摘の法改正の趣旨を踏まえまして、会社法が改正された場合には適切に対応してまいりたいと考えております。

椎名委員 ぜひ、そこの内閣府令の改正は御対応いただきたいなというふうに思います。

 経営の迅速、合理化のために、この有価証券報告書等を作成する会社内部での義務というものを簡略化したいからこそキャッシュアウトするわけですから、こういったところについても、金商法及び内閣府令の対応というのを追ってしていただかないと、やはりメリットも半減してしまう部分があるというのは御指摘申し上げたいというふうに思います。

 引き続いて、次に行きますけれども、一個飛ばします。

 裁判所に伺いますけれども、今回、少数株主が株価について何かしら不満があるときに、百七十九条の八というところで、裁判所に価格決定の申し立てというものをすることができる、そういう制度設計になっているわけですね。

 商事非訟事件というものは、東京地裁でいうと民事八部というところでやるわけですけれども、こういったところ、実際、この価格決定をしていくことというのがどのぐらい現実的にできるのかというのは、少数株主保護という観点から、結構それなりに重要だというふうに思っています。

 裁判所は、やはりすごく優秀な法律家の集団ですので、手続という面について、当然、検証していくことはもちろんと思いますけれども、少数株主が気にしているのは、手続ではなくて価格なんだというふうに思います。より高い価格で買ってもらうというための条件闘争をしたい、だからこそ裁判所に価格決定の申し立てをするんだろうというふうに思っています。

 そういう中で、申し立てる側が、少数株主の側が、自分たちなりに価格鑑定をした、株価の算定をしたバリエーションの鑑定書みたいなものを恐らく出してくると思いますし、対象会社の側も、自分たちが承認をするに当たって使った第三者の鑑定書みたいなものを出してくると思いますし、それから、特別支配株主も、自分たちが、買い取り価格を算定するために使った鑑定書みたいなもの、三つぐらい出てくるんだと思うんですけれども、これを裁判所がどうやってえいやと決めるのかというのは、結構一つ大きな実務的な問題なのかなというふうに思っています。

 こういったものを本当に適切に裁判所に判断できるのかということ、それから、実際に、価格算定方法をいかにルール化していくかとか、一応、商事非訟事件には専門委員というものを選任できるというふうに言われていますが、この専門委員を選任するということを原則化していくとか、それから、相手方の価格算定の鑑定書の、例えば表紙だけじゃなくて計算式なんかも、こういったものも全部出して、一切合財議論をしながら最終的には専門家に任せていく、そういう運用にしていかなきゃいけないんじゃないかなというふうに思うんです。

 今現状、こういった価格決定の実務がどうなっているかというところと、実際の手続としてどういう運用がなされているか、今後どういうふうにやっていくのかというところについて、裁判所に伺えればと思います。

永野最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 現在、全国の株式価格決定請求事件の新受件数というのが大体百三十八件ございます。このうちの半数を超えます七十二件が、商事関係の専門部である東京地裁に申し立てられているという状況であります。

 委員御指摘のように、この株式の売買価格決定申し立て事件において適正な判断を実現するためには専門的知見が必要となってまいりますので、裁判所においては、委員の御指摘にもございましたように、まずは、会社とそれから申し立ての株主の方に私的鑑定書を出してもらうということを促しておりますし、必要に応じて裁判所が選任する鑑定人を選任する、またあるいは、今般、非訟事件で利用可能になった専門委員を利用するといったような運用上の工夫を行っているというところであります。

 さらに、裁判所全体として見ますと、司法研修所というところで、全国の裁判所を対象として、金融、経済分野に関する事件の審理運営に関する研究会を行っておりまして、この中でも、過去に価格決定に関する問題を取り上げたりしております。そういう意味で、東京地裁の八部の専門部のノウハウ等を全国に還元するなどして、適切な対応を図っていきたいというふうに考えております。

 なお、その運用につきましては、委員御承知のとおり、個々の裁判官の事件の審理に委ねられているところであります。今回、キャッシュアウトという新しい枠組みが導入されるということになりましたら、まずはその個々の事件の処理の中で、事案ごとに審理運営を工夫する中で、その積み重ねとして運用が形成されていくということになるのではないかというふうに考えております。

椎名委員 ありがとうございます。

 個々の事案ごとと言われちゃうと、それは本当にそのとおりなんですけれども、ぜひ、司法研修所でやっている研修の中で、実際にどういった手続で進めていくのが少数株主保護にとって望ましいかみたいなところも恐らく議論されるだろうというふうに思いますので、そんな中で、事実上、専門委員の選任を原則化することで、特に、その価格について、数字についてコメントをしていき、えいやと価格を決めるというのは裁判所としてなかなかやりづらいことではあろうかというふうに思いますので、この第三者の意見も、特にこういった株価のバリエーションを専門としている人たちというのは、小田原先生が所属していた外資系投資銀行なんかを初めとして、日本じゅう結構いっぱいいらっしゃいますので、こういったところでそのバリエーションをして、第三者の意見を裁判所としても聞くということを事実上原則化するような運用を、こういったことも進めていっていただきたいというふうにお願い申し上げたいと思います。

 このキャッシュアウトという法制は、ひとえに全てこの特別支配株主からの請求であり、少数株主というのは全て受け身に立っているんです。しかし、少数株主が自分から、自分の望む価格で売り渡したいという交渉をする、いわゆるセルアウトという法制度もあり得ていいのかなというふうには思います。

 法制審の中でも一応議論にはなったみたいですけれども、法制審の議事録を見ると、大きく盛り上がることもなく収束していったように私自身は理解をしましたが、自分で望む価格で少数株主が積極的にアクションを起こしていく、そういう手段というものを法制度として準備をしておくということも考えられるかなと思いますが、この点について御意見をいただければと思います。

深山政府参考人 御指摘のとおり、法制審議会の会社法制部会では、株式売り渡し請求の制度を創設するのであれば、特別支配株主以外の少数株主が、逆に特別支配株主に対して自己の有する株式を売却することができる制度、セルアウト制度をあわせて創設してはどうかという意見もございました。こういった意見は、一般的には、総株主の議決権の十分の九以上を有する特別支配株主が残りの株式を買い取らない状態に置くということには合理性がないというような認識が前提になっているんだろうと思います。

 ただ、この点については、例えば、あらかじめ出資割合が合意されているジョイントベンチャーの場合などを念頭に置くと、必ずしもそれを解消することに合理性があるとは言えないんじゃないか、むしろ弊害があるというような意見も法制審でありました。そんなこともあって意見の一致に至らなかったということです。

 それから、セルアウトを認めるというのは、少数株主の保護の手段ということだと思いますけれども、先ほど来出ていますように、特別支配株主がある場合の少数株主の保護については、キャッシュアウトの場面では、その会社の承認を要するとか、差しとめ請求なり価格決定の申し立てなりということで十分に図られていますし、これに加えて、逆に、特別支配株主に、意思に反して、少数株主の有する株式を買い取らせることを強制するという制度を重ねて創設することは、かえって特別支配株主に過剰な負担を課して、経済合理性のある株式の取得、保有を不当に阻害するんではないかというようなこともありまして、セルアウト制度の創設は見送るということになったものでございます。

椎名委員 わかりました。

 おっしゃっていただいたことについてはそれなりに理解はできるものの、この受け身に置かれている少数株主をそのままで放置しておくというのもいささか不便なところもありますし、かえって不安定な状況に置かれる可能性もあるわけですから、今後の検討課題としては、おいておいてもいいのかなというふうには思っています。

 時間も余りありませんので、このキャッシュアウトの話はそろそろ終えようかと思います。

 もう一点、ちょっと国税の方に来ていただいておりますので、国税の方にも一つ伺います。

 従前の方式として、キャッシュアウトは三つ方式があるというふうに申し上げました。株式併合、それから現金対価の組織再編、そして全部取得条項つき株式を使うというこの三つの方法があるというふうに先ほど申し上げたわけですが、実務的には三つ目のものしか使われていない。

 その実務的に使われていない理由は何かというと、株式併合については、株主を保護する手段がなかったということで使い勝手が非常に悪かったという点です。それについては今回の法改正で手当てがなされるという理解をしています。

 それに対して、現金対価の組織再編、株式交換、合併ですけれども、これについては税制上の問題から今まで使われてこなかったというのが実務的な流れだというふうに思っています。それは何かというと、非適格組織再編というふうに表現されておりますけれども、買収対象の子会社の資産に対して時価評価課税がかかるんだというふうに言われていて、非常に使い勝手が悪いというふうに言われています。

 今回の法制度で、一応、現金交付型の株式交換、それから合併というところにも、反対株主の差しとめだったり、それなりに制度としては手当てをされて、使える準備まではできているんですけれども、最後、税金の問題だけが残っているというふうに思っています。

 今回の改正を受けて、この現金交付型の株式交換、合併というものについて、国税としてどのようになるのか、事実として伺いたいと思います。

岡田政府参考人 お答えをいたします。

 いろいろな吸収合併のケースがございますので、合併決議において株主に現金が交付されることが予定されている場合ということを前提にお話をいたします。

 お答えに当たりましては、被合併法人から合併法人への資産または負債の移転の場面における被合併法人の課税関係という部分と、それからもう一点は、被合併法人の株主が合併に伴って金銭等の交付を受ける場面の株主の課税関係、二つがございますので、分けて御説明をいたします。

 まず、第一の被合併法人の課税関係でございますけれども、合併によって被合併法人の有する資産及び負債を合併法人に移転したときには、その合併のときの時価によりその資産及び負債を譲渡したものとして法人税の所得の金額を計算することとなっております。したがいまして、時価で計算した結果、資産及び負債の譲渡に係る譲渡利益額があれば益金の額に算入されますし、譲渡損失額があれば損金の額に算入されるということになります。

 次に、被合併法人の株主の課税関係についてでございますが、これは株主が法人である場合には法人税の課税関係が、また株主が個人である場合には所得税の課税関係が生ずるということでお聞きいただければと思います。

 具体的には、被合併法人の株主が合併によって交付を受けた金銭及び金銭以外の資産の価額を二つに分解して計算する形になります。株主が受け取った金銭等の価額のうち、被合併法人の資本金等の額に対応する部分を超える部分の金額は税法上は配当という形になります。一方、残りの部分、すなわち、株主が交付を受けた金銭等の価額から先ほど申し上げました配当とみなされる金額を差し引いた残額の部分につきまして、その株式を取得した原価と比較いたしまして、受け取った金銭の価額の方が多ければこれは差額が譲渡益という形になりまして、逆に少なければ譲渡損という形で税法上計算されるということになります。

椎名委員 るる御説明をいただきました。言葉だけだと理解をするのが非常に難しい、そういう内容かなというふうに思います。

 通常の、今回の法制度のキャッシュアウトを使うと、基本的には少数株主と特別支配株主との売買になるので、これは基本的に売買に対する譲渡所得課税がかかるということなんだと思いますけれども、それに対して、裏を返すと、対象となっている会社それ自体には何らの変更もないので、基本的にそこに課税関係で何か特殊なことが起きるわけではないというのが原則だというふうに思いますが、今るるおっしゃっていただいたことを要約すると、対象会社にも課税関係が起きるということで、いささか使い勝手が悪いということですね。

 非常にテクニカルで難しいんですけれども、結局、本来的にやりたいことは、少数株主から特別支配株主に対して株式を売買したいだけであり、そこの売り渡しに対して税をかければいいものの、対象会社である会社、子会社にも同じく税金の問題がかかってきて、子会社にも税金がかかってしまうということなんですね。そうである以上、今回の法改正がなされても、基本的には、現金交付型の株式交換、合併という手段を使ってキャッシュアウトをするということは恐らくないだろうというふうに思います。

 その結果、従前使われてきた全部取得条項つき株式と株式併合、そして、今回新しく定められた株式等売り渡し請求、この三つの手段が恐らく使われることになるだろうというふうに思います。これについては恐らく、場面場面を分けた形で、実際に買収をしたい側のニーズに合った形で使われていくことになるんじゃないかなというふうに思っています。

 引き続き、時間の許す限り、次の親子会社法制の話に入ります、結構な時間になってしまいましたけれども。

 親子会社法制について、一つ、一番最初に伺います。

 今回、八百四十七条の三というところで定められた多重代表訴訟が一つのメーンでございます。

 しかし、これは、説明をどんなに聞いても、その必要性というものが私自身は余りよくわからなかったというのが正直なところです。実務的に事業会社の事業部門の部長クラスに相当する、本質的には経営をやっているわけではなくて、親会社の社長が決めた方向性に従って経営をしている人、そういう人まで代表訴訟のリスクにさらしてしまうように私自身には思えてならなかったわけですけれども、これが何で必要なのかというのがいまいちよくわからないんですけれども、一応、考えてみたんです。

 純粋持ち株会社とその下に株式会社が幾つか並んでいるという形、それから、事業持ち株会社でその下に子会社が幾つか並んでいる形、幾つか頭の体操として考えてみたんですけれども、現実的に見てみると、例えば某有名銀行なんかですと、何とかFGと呼ばれる金融持ち株会社の社長とその下の重要な子会社である銀行の頭取はほぼ同じ人だったりするわけですね。そう考えると、親会社に対して訴えるだけで足りるのではないかというふうに思ったりもします。

 さらには、親会社の取締役は、事実上、子会社に対して監視、監督をする義務を忠実義務として負っているというふうに思いますけれども、そう考えると、今回の多重代表訴訟制度というものを採用するその必要性というのがいまいちわからなかったんですけれども、改めて教えてください。

深山政府参考人 多重代表訴訟制度を設けた理由ですけれども、御案内のとおり、近年は、持ち株会社形態や完全親子会社関係にある企業グループが多数形成されております。このような企業グループにおいては、実際に事業活動を行う完全子会社の企業価値がその完全親会社である持ち株会社の企業価値に大きな影響を与えるという関係にございます。

 今のお話の中で、完全親会社の代表者と完全子会社の代表者が同一人物である場合もあるじゃないかというお話がありました。そういう場合もあるのは承知しておりますが、そうでない場合ももちろん多数あります。

 今言ったような完全親会社と完全子会社の関係を前提としますと、完全子会社の取締役が子会社に対して損害賠償責任を負っているにもかかわらず、それが適切に追及されていない。しかも、株主は親会社だけですので、親会社の役員と子会社の役員とのグループ内の人的関係や仲間意識から、適切な責任追及が類型的にされにくいおそれがある。こういうようなときに、親会社の株主とすると、親会社の企業価値が損なわれている事態を回復するには、子会社における取締役の責任が適切に追及されなければならないということになって、そこにこの多重代表訴訟制度を導入する一番根本的な必要性がございます。

 そうはいっても、完全親会社の代表者と子会社の代表者が同じケースについては、それは同じ人なんだから、親会社の代表取締役の責任を代表訴訟で株主として追及すれば足りるじゃないかというお話があったと思います。

 一見すると確かにそうなんですが、よくよく細かく考えてみますと、通常の代表訴訟で追及できる完全親会社の取締役の責任と、多重代表訴訟で追及できる完全子会社の取締役としての責任の法的内容は、同一人物であっても異なるものです。

 通常の親会社取締役を被告とする代表訴訟で対応することで、必ずしも、十分に不利益の回復が図られるか、これは全く同じ責任内容であればどっちをやっても同じということになりますが、そこの違いがある関係で、通常の親会社の取締役に対する代表訴訟では完全に親会社株主の不利益が回復できない可能性がございますので、やや観念的な話ではあります、それはよくわかっているんですけれども、代表者が同一の場合であっても、このような多重代表訴訟を認めるメリットはあり得るということでございます。

椎名委員 よくわかります。でも、法制審の中でも議論にはなっていて、恐らく事業者の方々の御意見の結構なポーションを占めている部分に、事業会社の事業部門の部長クラス、要は本社でいうところの余り取締役に相当しない人たちが、親会社の、ホールディングス会社の定めた経営戦略に従って経営をしているだけみたいな人たちまで訴訟のリスクにさらしてしまうのではないか、そういうようなお話はあったと思います。やはりこのリスクは拭えないのではないかなというふうに思っています。

 先ほどキャッシュアウトのところでも話をしましたが、上場子会社の非公開化、いわゆる迅速な経営をしていくために、親会社も子会社も上場しているというような会社は幾らかあるわけですけれども、このうちの子会社について、非公開化して一〇〇%子会社にすることによって経営を迅速、合理化していくという流れがあったりするわけです。いわゆるゴーイングプライベートというふうに呼んだりします。

 これは、一部株主、特にアクティビストファンドとか呼ばれる人たちが、機会主義的なというか短期的な株主配当または株主に対する利益の配分等を要求することによって、そういった人たちに対応することによって、かえって経営が迅速かつ合理的に行われないみたいなこともあったりするわけですね。だからこそ、こういうゴーイングプライベートみたいなことをやるわけです。

 今回の多重代表訴訟みたいな制度を認めてしまうと、親会社の株主が子会社の経営に対して代表訴訟をすることができるようになってしまうということで、経営者側がゴーイングプライベートをして迅速、合理化しようとしたそういうニーズが、かえってかなえられなくなっちゃうんじゃないかなというふうに思ったりもしますけれども、その点について御意見をいただければというふうに思います。

深山政府参考人 今委員からもお話がありましたが、上場会社の完全子会社化、ゴーイングプライベートが行われるのは、一般論ですけれども、長期的視野に立った柔軟な経営を実現する、あるいは、株主総会に係る手続の省略による意思決定の迅速化、さらには有価証券報告書の提出義務等々のコストの削減、こういったことで行われる。別に上場会社の役員の責任追及を免れることを目的としてやるわけではありません。

 恐らく、御指摘の趣旨は、しかし、完全子会社について多重代表訴訟を認めると、今まで認めていない時代よりも子会社の役員の責任追及の可能性がふえる、そうすると、せっかくゴーイングプライベートをしても、トラブルの抽象的可能性がふえるという面があるのではないかということだと思います。

 ただ、これは、そこも今既に委員がお話しになったとおりなんですが、ゴーイングプライベートする前には少数株主が子会社にいたわけですね。親会社と違って、それこそ人によっては非常に積極的に、株主代表訴訟を一株で起こしてくるというような人たちがいた。そのリスクが遮断される。しかし、今度は親会社の株主から代表訴訟を受ける可能性が出てくる、こういう関係です。どちらが、どれほど、どうなのかというのは、なかなか判断がつきかねるところでございます。

椎名委員 ありがとうございます。おっしゃるとおりかなというふうに思います。

 他方で、先ほどもちょっと指摘しましたけれども、事業会社の本来的には取締役クラスではない人たちが上場子会社の取締役になることというものも十分考えられる部分であるので、こういったところに濫用的に使われないようにはしたいなというふうに思っています。

 濫用防止という観点からでしょうけれども、ちょっと通告しているところと順番が入れ違っていて恐縮でございますが、濫用防止というところで、恐らく、重要な子会社に限るということで、八百四十七条の三の四項で、最終完全親会社等における対象会社の株式の帳簿価額が総資産額の五分の一というふうな定めをしたんだというふうに思います。

 総資産額の五分の一というのはちょっとわかりづらいんですけれども、事業持ち株会社と純粋持ち株会社でもちょっとイメージが違うかなというふうに思いますが、ホールディングス会社の下に株式会社が幾つか並んでいるだけ、そういう体系であれば、五分の一というのは、恐らく、単純にグループの中の五分の一を占めるそれなりに大きな会社という意味だろうというふうに思いますが、事業持ち株会社というのが世の中には存在していて、親会社が事業も行っていて、資産も負債も負っていて、それに加えて一〇〇%子会社を幾つも持っているという状況があるかというふうに思います。

 そうすると、抽象論で恐縮ですけれども、五分の一というのはほぼ達成し得ないんじゃないかなというふうに思ったりもするわけです。それは何でかというと、結局、帳簿価額が総資産の五分の一と書いてあって、純資産の五分の一とは書いていないところに問題があるかなというふうに思っていますけれども、このあたりについての法制度を定めた理由を教えていただければというふうに思います。

深山政府参考人 確かに、今お話にあったように、重要な子会社のメルクマールとして、株式の帳簿価額が完全親会社の総資産額の五分の一を超える場合というルールにしております。

 これは、もともと、委員の御指摘にもあったように、実質的には従業員的な立場にある役員の責任追及が行われるというのは通常の代表訴訟との均衡から考えても不当だし、実質においてもそういう場合に責任追及が行われるということは余り考えられないので相当ではないということで、重要な子会社の役員であれば親会社の役員に準ずる立場だろうということで、どこかで重要性についてのメルクマールを引かなくちゃいけないという要請のもとで、既存の、これまでの会社法上の制度の中で重要性のメルクマールとなる要件を総資産の五分の一としているのは、御案内のとおり、事業譲渡、合併等々で株主総会の決議が不要とされる要件として用いられているものです。これをいわば参考にして、ここにも当てはめた。

 しかし、これは一種の立法的割り切りですので、純粋持ち株会社と事業持ち株会社において実態が異なるのではないか、特に巨大な重厚長大の事業会社という場合になかなかうまい切り口になっていないのではないかということ、そういう例を言われると、そういう場合もあり得ると言わざるを得ないと思いますけれども、しかし、法制度である以上、やはり会社法制全体でどういった大きさのものを重要な資産というかということを統一的に把握するという要請もありますのでこういうふうに割り切った、こういうことでございます。

椎名委員 ありがとうございます。

 時間も来ましたのでそろそろ終わります。テクニカルな話で事務方とお話をさせていただきまして、余りおもしろくなかったと思いますが、大変恐縮でございますけれども、これで終わりたいと思います。

 本日は、ありがとうございます。

江崎委員長 次回は、来る十八日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時一分散会


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