衆議院

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第19号 平成26年5月23日(金曜日)

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平成二十六年五月二十三日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 江崎 鐵磨君

   理事 大塚  拓君 理事 土屋 正忠君

   理事 ふくだ峰之君 理事 盛山 正仁君

   理事 吉野 正芳君 理事 階   猛君

   理事 西田  譲君 理事 遠山 清彦君

      安藤  裕君    池田 道孝君

      小田原 潔君    大見  正君

      門  博文君    神山 佐市君

      菅家 一郎君    黄川田仁志君

      小島 敏文君    小林 鷹之君

      古賀  篤君    今野 智博君

      佐々木 紀君    末吉 光徳君

      中谷 真一君    橋本  岳君

      鳩山 邦夫君    平口  洋君

      三ッ林裕巳君    宮崎 謙介君

      宮澤 博行君    村井 英樹君

      小川 淳也君    郡  和子君

      横路 孝弘君    高橋 みほ君

      大口 善徳君    椎名  毅君

      鈴木 貴子君    西村 眞悟君

    …………………………………

   法務大臣         谷垣 禎一君

   法務副大臣        奥野 信亮君

   法務大臣政務官      平口  洋君

   最高裁判所事務総局家庭局長            岡 健太郎君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    林  眞琴君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    西田  博君

   参考人

   (京都産業大学法務研究科客員教授)

   (慶應義塾大学名誉教授)

   (弁護士)        安冨  潔君

   参考人

   (株式会社日本総合研究所理事長)         高橋  進君

   参考人

   (移住労働者と連帯する全国ネットワーク事務局長) 鳥井 一平君

   参考人

   (公益財団法人国際研修協力機構専務理事兼事務局長)            新島 良夫君

   法務委員会専門員     矢部 明宏君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十三日

 辞任         補欠選任

  小田原 潔君     小林 鷹之君

  門  博文君     中谷 真一君

  黄川田仁志君     村井 英樹君

  今野 智博君     佐々木 紀君

  田嶋  要君     小川 淳也君

同日

 辞任         補欠選任

  小林 鷹之君     小田原 潔君

  佐々木 紀君     今野 智博君

  中谷 真一君     門  博文君

  村井 英樹君     宮崎 謙介君

  小川 淳也君     田嶋  要君

同日

 辞任         補欠選任

  宮崎 謙介君     黄川田仁志君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 少年院法案(内閣提出第三八号)

 少年鑑別所法案(内閣提出第三九号)

 少年院法及び少年鑑別所法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第四〇号)

 出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案(内閣提出第五五号)

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件(外国人の受入れに係る諸問題)


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     ――――◇―――――

江崎委員長 これより会議に入ります。

 内閣提出、少年院法案、少年鑑別所法案及び少年院法及び少年鑑別所法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の各案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として法務省刑事局長林眞琴君及び法務省矯正局長西田博君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんでしょうか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

江崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

江崎委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局岡家庭局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんでしょうか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

江崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

江崎委員長 質疑の申し出がありますので、これを許します。階猛君。

階委員 おはようございます。少年院法等の二回目の質疑ということで、私が最後のバッターになりますので、よろしくお願いいたします。

 さて、本題に入ります前に、五月十五日に、熊本の少年鑑別所で逃走事件が起きたことについてお伺いしますけれども、最高裁の方から、三点お答えください。

 なぜこの逃走を防げなかったのか。それから、このような事件、再発を防ぐための方策。さらに、今回の事件に関して関係者の処分をどうするのか。三点についてお尋ねします。

岡最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 委員御指摘の事案は、本年五月十五日、熊本家庭裁判所八代支部職員が、窃盗未遂の事実により観護措置決定を受けた十七歳の男子少年を熊本少年鑑別所へ官用車で押送し、午後三時九分ごろ、熊本少年鑑別所に到着した後、少年の身柄を鑑別所の職員に引き渡す前に少年が逃走したというものでございます。

 通常であれば、押送車両を鑑別所の車庫に入れた後に、職員が車庫のシャッターを閉めるのを待ってから降車するところ、本件では、少年が便意を訴えていたことから、車庫のシャッターがおりていない状態のまま担当職員二名が少年とともに降車し、少年の身柄を鑑別所職員に引き渡す前に、腰縄を握っていた職員の手が緩んだすきに少年が逃走したものということでございまして、押送担当の職員が通常と異なる手順をとったことや、腰縄の保持が不十分だったことが原因というふうに考えられます。

 押送中の少年が逃走するという事態が発生したことは、まことに遺憾でございまして、周辺住民の方々に御心配をおかけし、また関係者の皆様に御迷惑をおかけしたことについて、大変申しわけなく思っております。

 本件を受けて、熊本家庭裁判所では、直ちに少年の押送を担当する職員を対象に、押送の手順や留意点などを改めて指導し、また、幹部職員が熊本少年鑑別所に出向いて、押送の際の手順等について改めて確認を行っております。

 最高裁家庭局としても、全国の家庭裁判所に対し、事務連絡を発出し、少年の身柄の取り扱いなどについて注意を喚起したところでございます。今後、さらに問題点の分析を進めて、必要な再発防止策を講じていく予定でございます。

 また、関係者の処分につきましても、今後さらに調査を進めた上で、厳正に対処することになるというふうに考えております。

 以上でございます。

階委員 通常のやり方と異なる仕方で身柄を引き渡そうとしたということで、その理由として、便意を催したと訴えられたというのがあったんですが、これは、少年が偽計手段としてそういうことを言われたのかどうかということは、確認できていますでしょうか。

岡最高裁判所長官代理者 少年が押送車両内で便意を訴えていた、また到着したときも便意を訴えたということで、職員としては、急ぐべく、通常の手順と異なる方法をとってしまったということでございまして、少年が便意を訴えていたことが虚偽かどうかというところは確認できておりません。

階委員 恐らくそこがポイントなのではないかと思っておりますので、そこはちゃんと調べてください。

 偽計を用いて逃走を図るというのは、刑法でいうと、加重逃走罪に当たるのか単純逃走罪に当たるのかわかりませんけれども、いずれにしましても、成人の刑事事件で勾留中の人が逃げると逃走罪ということになると思いますが、今回の場合は、お聞きしたところだと、少年鑑別所に送致されて観護措置がとられている少年については刑法の逃走罪の規定の適用はないということだそうです。

 今回、偽計手段を用いたのかどうかというのはまだ定かでありませんけれども、中には、いろいろな策を弄して逃走を図るという人もいると思います。

 そこで、こういう観護措置の少年も千差万別です。罪の軽い人から重い人もいます。逆送されるような方もこの中にはいるわけです。そう考えると、少年だからといって逃走罪が全部適用されなくていいのかという問題意識があります。刑法の適用、逃走罪の適用を検討すべきではないかと思いますが、大臣の御見解をお聞かせください。

谷垣国務大臣 今、階委員がおっしゃったように、刑法九十七条の規定によりますと、裁判の執行により拘禁された未決の者となっておりますので、これは、被疑者または被告人として勾留状の執行によって拘禁されている者をいうということになります。したがいまして、少年鑑別所送致の観護措置をとられている少年はこれに該当しないということになるわけです。

 今回の案件が単純逃走罪かどうかというのは私もよくわかりませんが、いわゆる単純逃走罪で考えてみれば、つまり、暴行等の特別の手段は用いていない、いわゆる単純逃走罪ということで考えてみれば、こういう今の規定方式になっているのは、つまり、裁判の執行により拘禁された既決または未決の者に限られている、これは一つは、被拘禁者が逃走することについては、そうした行為に出ない期待可能性が低いというような説明が教科書ではなされております。

 それから、帝国議会の議事録によれば、これは調べてもらったんですが、逃走罪の主体を広くすることは酷に過ぎるという当時の議論で、同罪の主体を裁判の執行により拘禁された既決または未決の者に限定したということのようでございます。

 そうしますと、さて、どういうふうに考えていくかということですが、一つは、余りにも広げることは酷に過ぎるとか、期待可能性がないとかいうような趣旨が、さて、現在どこまで通用するかというような問題。

 それから、諸外国の法制をちょっと見てみたんですが、ドイツ、フランスなどにおいてはむしろ、単純逃走罪は不可罰というふうになっているようでございます。それは、先ほどの期待可能性とか酷に過ぎるとかいうような議論が恐らく背景にあるのではないかと思います。

 つまり、そういった諸外国の法制、それから、こういう立法理由が現在も通用するのかどうか、その辺を含めて少しよく考えてみないと、なかなか単純には決められないんだと私は思います。そういうような認識に今の私は立っております。

階委員 原則逆送事件、殺人とかそういうことを犯した少年も観護措置になることもあり得るわけでして、仮にそうした人が逃走した場合は、成人の被疑者、被告人が逃走した場合と同じように近隣住民は不安を覚えるはずですから、そうした観点からも考えていただければと思います。

 少年鑑別所についてお伺いします。

 私は、この少年鑑別所という名前に違和感を常々持っておりました。昔、練馬の鑑別所が練鑑とか言われて、少年に対する悪いレッテルの代名詞になっていたような記憶もありますけれども、この少年鑑別所という名前が、歴史があるものだというふうにお聞きしていたんですけれども、調査室からいただいていた資料によりますと、過去に少年観護所と少年鑑別所というのがありまして、それが統合されて少年保護鑑別所という名前に一旦なった後、昭和二十七年から少年鑑別所に改称されたということであります。

 今申し上げたように、もともとは少年観護所と少年鑑別所だということもありますし、今回新しく、地域住民への相談ということも法律上位置づけられています。

 そんなことから、民主党政権時代にもこの法案を閣議決定しているわけですけれども、私は名称のことについて少し意見を申し上げまして、たしか対外的には少年鑑別所ではなくて別な名前を用いようというような議論もあったかと思います。そうした議論の経過を確認させていただきたいのと、現政権においてそれが引き継がれているのかどうか、大臣、お答えください。

谷垣国務大臣 これは階先生の方がよく御存じなわけですが、民主党政権当時、平成二十四年当時、少年鑑別所の名称につきましては、法律上は少年鑑別所という名称を残すこと、しかし、非行の専門機関としての役割については、地域に受け入れられやすく国民が利用しやすくしていくため、通称を使用することを検討したと。これは階委員がそのイニシアチブをとられたというふうに聞いておりますが、そういう検討の経緯は承知しておりますし、私も就任しまして、そういう報告を事務当局から受けました。

 そこで、私も鑑別という言葉を少しまた、経緯等も調べてみたんですが、特にこういう行刑関係といいますか、犯罪に関するようなことは、制度に名前をつけますと、長い間たっていくと、やはりいろいろなイメージが付着してくることも事実だろうと思います。ですから、例えば少年院なんかでも、何とか学院とかいうような名前を、法律上は少年院なんですが、そういう名前を使っている例ももちろんあるわけでございます。

 他方、こういう用語は全てそうでございますが、ある意味では手あかがついてくる、しかし、ある意味では、そこで仕事をしている者は、私どもの少年鑑別に当たっている者も、自分たちの鑑別という仕事についてはかなり誇りを持ち、その名称にも愛着を感じているという面もあるということだろうと思っております。

 そこで、今回も、確かに新しい業務も加わっているわけですが、しかし、中核的な業務は今まで鑑別と言われていたものであるということは変わりませんので、私どもは、やはり鑑別という名前は維持していこうということで一応整理をさせていただいております。

 ただ、愛称等をどうしていくかということについては、今後、それぞれの施設で、あるいは全体で統一するかどうかは別としまして、考えていく余地はないわけではなかろう、こんな認識でおります。

階委員 私も、どういう名称がいいんだろうということで、ない知恵を絞っていたわけでございますけれども、過去には、監獄という名称が刑事施設ということで変更されたケース、平成十七年の監獄法改正でそうなったわけですけれども、そのときもやはり監獄という名前が要はイメージが悪いということで、変えられたケースもあるようです。

 やはり、歴史、由緒ある鑑別所という名前、職員の方がプライドを持っているのはわかりますけれども、今の時代に合っているのかどうか、それから、新しい仕事が行われるようになったときに名が体をあらわすものになっているかどうか。こういうことを考えた場合に、例えば、新たな名称、通称でもいいですが、少年観護育成支援センターとか、そんなふうな名前でもいいのかなと思っております。

 大臣それから副大臣にも、御意見がありましたら、お願いします。

谷垣国務大臣 今伺ったお考えも一つあるのかなという気はいたしますが、いずれにせよ、少しそういう方面の御議論もまた国会でもいただけたらと思っておりまして、当面は、やはり私は、先ほど申しましたけれども、職員等の、私もちょっと聞いてみました、鑑別という用語それからその職域に誇りを持っている方がかなりおりまして、そのことも重視しなければいけないなという気持ちがございます。

奥野副大臣 想定外でありまして。

 私も、階さんと我々のところが鑑別所という言葉で議論しているということを聞いて自分ながらにいろいろ考えてみたんですが、動物を鑑別するというのならその方がいいんだろうと思うんですけれども、人間を鑑別するというのはやはりちょっと違うなという感じを受けているものですから、代案を出せよと僕は事務方に言って、一応代案を私も聞いています。

 ですから、もし皆さん方が私と同意見ならば、事務方とよく相談していただいて、今、階先生がおっしゃった少年観護育成支援センター、これも一つの考え方だろうと思います。ですから、よく話し合っていただいて、時代に合ったものにしていただければいいんではないかなと個人的には思っております。

階委員 奥野副大臣、私の考えを代弁していただいたと思います。

 やはり鑑別というのは、私のこれまでの経験からいうと、ひよこの鑑別というのが真っ先に思い浮かぶわけでして、人間の鑑別というのは、私はちょっと余りにも人間を動物扱いしているというか物扱いしているというか、そういう印象を抱くわけです。そういう点から、今回の法改正を契機にこうした名称の問題についても光を当てていただきたいと思っておりました。

 先ほども申し上げましたけれども、今回、少年鑑別所に法律上、新しい機能が明記されたということであります。非行及び犯罪の防止に関する援助ということですけれども、現行法に比べて新たな少年鑑別所法案においては、条文上も位置づけて積極的な扱いをされた、この狙いを教えていただけますでしょうか。

谷垣国務大臣 現行少年院法の第十六条の二第一項の規定がございまして、少年鑑別所は、家庭裁判所等以外の者からの依頼に基づいて、家庭裁判所からの依頼というのは本来業務でございますが、そういった方々以外からの依頼に基づいて少年の資質を鑑別する、これを一般少年鑑別と言っておりますが、それを行ってきております。こういった業務は、家庭裁判所の行う少年に対する調査または審判などのために行う鑑別等々とは支障を来さない範囲で行うというのが今までの扱い方でございまして、副次的な業務として位置づけられておりました。

 それで、これを一般少年鑑別と呼んでいるわけですが、少年鑑別所は非行のある少年に対する鑑別実務を通じて蓄積した非常な専門的知識、技能を有しておりまして、これは地域社会の非行及び犯罪の防止に相当寄与することができるのではないかと思っております。地域における非行問題に関する専門機関として少年鑑別所は役割を果たしていくことができる。

 それから、再犯防止に向けた総合対策というのが平成二十四年につくられておりますが、この中でも、少年非行の防止が非常に重要な課題として議論される中で、少年鑑別所が専門的知見に基づいて地域社会における非行、犯罪の防止に寄与することが期待されておりました。

 そこで、新しい法案では、少年鑑別所の長は、地域社会における非行及び犯罪に関するいろいろな問題について、少年本人からの申し出ということもあると思います、それから、保護者からの申し出、それ以外の方からもありますが、そういう方々からの相談に応じること、それから、非行及び犯罪の防止に関する諸機関の求めに応じて技術的助言などを行うこと、こういったものを本来業務として位置づけていくということにしたわけでございます。

階委員 今、従来は副次的業務であったものを本来的業務に改めるんだということでした。

 お手元に資料をお配りしておりますが、今、大臣の表現で一般少年鑑別というふうに言いあらわされていたと思いますが、要は、一般の方が来所したり電話によって相談をする件数、全国五十二だったと思いますが、少年鑑別所それぞれの受け付け件数を示しております。平成二十五年一年間で、トータル一千四百六十八件という件数でございますけれども、例えば私の地元の盛岡などでは、年間で十一件ぐらい。副次的だったということもあるのかもしれませんけれども、余り利用されてこなかった。

 私は、今回、本来的な業務にするのであれば、より活用を促していく方策が必要なのではないかと思っています。

 その上で、一つ気になること。新しい法案の百三十一条で、専門的知識及び技術を必要とするものに応じるというようなくだりがあります。専門的知識及び技術を必要としなくても、さまざまな相談に応じてあげるのが、私は地域の非行の防止などに役立つのではないかと思っております。

 この文言、余り厳密に解釈すべきではないのではないかと思っておりますが、この点、大臣、解釈の方針を明らかにしてください。

谷垣国務大臣 この規定は、少年鑑別所が有する少年非行に関する知識経験、知見に基づいて寄与できることをやっていきたいという趣旨でございまして、特に能力が発揮できますところは、犯罪少年の心理分析とか、それから少年非行に関する専門的知見、技術と経験、こういうものを活用することだと思うんです。

 自分の子供の育ち方あるいは非行のあり方で悩んでおられる御両親からの相談なんかにはいろいろなものがございまして、中にはやはり、ちゃんと勉強するようにどう指導したらいいかというような依頼もあるわけでございます。これは必ずしも鑑別所でなくたってできるわけでございますし、やはり、鑑別所の専門的知見が中心であって、単なる一般相談に応じる責務はないということを明らかにしたものだというふうに私は理解しております。

 こういう、非行少年を育てたり、その保護者の御苦労に対して、誠実に対応することはもちろん必要でございますが、この規定は、そこまで全部責務として負うわけではないということを明らかにしたもので、適切な運用に努めてまいりたいと思います。

階委員 専門的知識及び技術を必要としなければ相談に応じないということだと、ちょっとハードルが高い感じがしますので、そこはぜひ運用上誤解がないようにしていただければと思っております。

 それから、この一般相談は学校の職員なども利用できるというふうに伺っておりますけれども、忙しい中、来所するというのはなかなか大変なことですし、電話では、なかなか細かいことが口頭では伝えにくいということもあります。また、多少離れた地域から来るのは大変だということもありますので、メールでの相談なども受け付けるようにしたらどうかと思うんですが、この点、いかがでしょうか。

谷垣国務大臣 今おっしゃった、学校からの相談などには積極的に応じていく必要があると思っておりますので、そこはちゃんと応じていきたい。

 それから、今のメールですが、差し当たってこういう業務を設けましたので、一般相談をしやすい環境を整えるという意味で、専用の電話回線を全庁に配備するというような準備は今いたしておるわけでございます。また、メールについてどう扱っていくかは、まだ整理ができているわけではありませんが、この電話の専用回線の利用状況、運用状況を見ながら検討していきたいということでございます。

階委員 今やメールは頻繁に使われているわけでございまして、そういうツールも活用して一般相談をふやしていただければと思っております。

 この一般相談の目的は、地域社会における非行及び犯罪の防止のためということだと思っています。条文上そうなっております。

 そこで、そうした効果が上がっているのかといったこととか、あるいは、相談件数がどうなっているのかということを積極的に公表して、広報して、この活用を促していくべきではないかと思っております。この点について、大臣の御見解をお願いします。

谷垣国務大臣 やはり、専門的知識、知見を利用していただくためには広報も必要だろうと思いますし、それから、委員がおっしゃったように、では援助業務を実施していくけれどもその効果の検証をしないということでは、やはり実績が上がらないのだろうと思います。

 ただ、効果の検証、実はなかなか難しいところがございまして、学校やあるいは御本人、保護者、いろいろな相談が寄せられる中で、どういう効果があったかという検証、我々もやりたいし、やらなきゃいけないんですが、プライバシー保護の観点等々もございまして、網羅的に全部の情報を把握していくのは相当問題点もあろうかと思います。

 しかし、そういう問題点はあるけれども、やはり、効果の検証ということをどういう手法でやればいいのか、積極的に考えていかなければいけないと考えております。

階委員 従来の少年鑑別所のイメージは、やはり一般社会と隔絶されているイメージがあったと思うんですが、こういう活動を通じて地域に貢献しているんだ、地域にとって必要不可欠なものなんだということで、イメージを変えていく手段にもなり得るかと思っていますので、ぜひ積極的に御検討をお願いします。

 それから、少年院の方に話を移したいと思います。

 少年院の矯正教育についてなんですが、先日、この委員会の皆さんと一緒に八王子の少年院を視察させていただきました。非常にありがたいことに、現に入院されている少年たちとお話をする機会もありました。

 私、そのときにちょっと気になったのは、就職の模擬面接というのをやっておられて、それを見たんですね。教官の方が、その模擬面接のときに、自分は少年院を出たんですということを正直に答えていた少年に対して、そういうことを言うとマイナスになる場合もあるから、例えば、親の介護をしていたとかそういう言い方もあるよという話をしていたのが気になりました。

 私は、うそを言ってその場を取り繕って就職したとしても、本人も苦しいでしょうし、また、万が一発覚した場合には、かえってその後の立ち直りを阻害することもあり得るのではないかと思っています。確かにマイナスのことを伝えるのは勇気が要ることかもしれませんけれども、自分がやったこととしっかり向き合わなければ反省も更生もないと思っています。

 先ほど申し上げたような教官の指導については改めるべきだと思うんですが、大臣のお考えはいかがでしょうか。

谷垣国務大臣 私も少年院に参りまして、SSTと呼んでおりますが、テレビゲームじゃありませんが、ロールプレーイングゲームというようなことをやって、それぞれ社会に復帰したときにどういう問題に遭遇するかというのを、それぞれ役割分担をしながらその研究をするというようなことをやっているわけですね。

 それで、階委員がおいでになったときのその階委員の問題意識も実は職員から聞きまして、中でもいろいろ議論をいたしました。私、結論から言えば、事実と異なることを述べるような指導をすることは、指導する側としては適切ではないと思います。やはり、そういう基本的な筋はきちっと通していかなきゃいけないと思います。

 ただ、職員の話も聞きまして、いろいろ悩みが深いなと思いますのは、今、ハローワークなどを通じまして協力雇用主の方々なんかには、これは少年院にいた子だけれども雇ってほしいということを言って、実際、いや、自分も昔はやんちゃしていたからわかるよと言って雇ってくださるありがたいところも随分出てきておりますが、就職が決まる中では、それを明らかにして決まるというのはまだまだ少数でございます。正直に自分は少年院にいたということを言った場合に、大部分の場合は、それじゃ無理だなということになってしまうのがほとんどである。ここに非常に悩みがございます。

 ですから、違ったことを言うというのは、私は教育指導の方針としていいとは思いませんが、全部を明らかにする、それは階委員のおっしゃるように勇気も要ることですが、全部を明らかにするということで果たしてやっていけるのかどうかというのは非常に迷いが正直言ってございまして、そういう表現は、私、こういう委員会の公の席で言うのはいいかどうかわかりませんが、やはり、その間、職にはついていなかったということは事実でございますから、そういう表現とかいろいろなことがあり得るのかなと、実は職員と議論をして思いました。

 それから、あのSSTの役割の中には、うそをついたらどうだというようなことはもちろん論外でございますが、いろいろな検討の過程があるんだろうと思いますね。つまり、そこで、君、正直に言ったのはよかったね、だけれども、その後、それが雇用先にわかっちゃったらどうするのか、そのときにそれを問い詰めたらどうするのか。そういういろいろな試行錯誤の過程を、疑似体験といいますか、それをみんなで、そうなったとき君はどう対応するのかというような役割はあそこはあるんだろうと思うんです。ですから、運用の仕方はいろいろだなと、職員と議論をしまして感じた次第でございます。

 ただ、原則は原則でございますので、委員の御指摘も踏まえながら、中での運用というのはよくよくまた研究していきたいと思っておりますし、それから、やはりもう少し御理解をいただいて、協力雇用主のような方々が、わかっていても、よし、雇ってやろうという理解者をさらに広げる努力というのはしなければならないことだと思います。

階委員 理想と現実のはざまで大変なこともあるかと思うんですが、少年院で教育されている方々も、少年院を出たということを隠さなくても就職できるような、そういう高みを目指した教育ということをぜひ心がけていただければと思っています。

 時間が来ましたので終わりますが、最後に一点だけ申し上げます。

 私が少年院の方とのやりとりの中でもう一つ気になったのは、犯罪被害者への償いの気持ちです。中には、被害者に謝っても形式的なものだから意味がないというようなことを言っている子供もいまして、私は正直言ってかちんときました。被害者の方が聞いたらどうなんだろうと思いました。そういうところにもぜひ配慮をいただければと思っています。

 きょうは、どうもありがとうございました。

江崎委員長 これにて各案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

江崎委員長 これより各案を一括して討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 まず、内閣提出、少年院法案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

江崎委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 次に、内閣提出、少年鑑別所法案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

江崎委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 次に、内閣提出、少年院法及び少年鑑別所法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

江崎委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました各法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんでしょうか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

江崎委員長 異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

江崎委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

江崎委員長 速記を起こしてください。

     ――――◇―――――

江崎委員長 次に、裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件、特に外国人の受入れに係る諸問題について調査を進めます。

 本日は、各件調査のため、参考人として、京都産業大学法務研究科客員教授・慶應義塾大学名誉教授・弁護士安冨潔先生、株式会社日本総合研究所高橋進理事長、移住労働者と連帯する全国ネットワーク事務局長鳥井一平君及び公益財団法人国際研修協力機構専務理事兼事務局長新島良夫さん、以上四名の方にそれぞれ御出席いただいております。

 この際、参考人それぞれの皆様方に一言お礼の御挨拶を申し上げます。

 大変御多忙の中をきょうは御出席いただき、それぞれのお立場から忌憚のない御意見を賜りますようお願いを申し上げまして、委員会を代表してのお礼の御挨拶といたします。よろしくどうぞ。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、安冨参考人、高橋参考人、鳥井参考人、新島参考人の順に、それぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言いただくようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。

 それでは、まず安冨参考人にお願いをいたします。

安冨参考人 安冨でございます。

 本日は、外国人受け入れに関する諸問題について意見を述べさせていただく機会を頂戴いたしまして、大変光栄に存ずる次第でございます。

 外国人受け入れの諸問題というふうに申しましても、いろいろな観点があろうかと思います。私は、刑事法を専門とする者でございますので、外国人の受け入れが治安に与える影響を最小化するという観点から、外国人の受け入れ拡大に当たって留意すべき点を中心に意見を述べさせていただきたいと思います。

 昨年、平成二十五年でございますが、来日外国人犯罪の検挙件数、これは一万五千四百十九件、検挙人員につきましては九千八百八十四人と、前年よりもわずかに増加しておりますが、近年の傾向といたしましては、警察、検察、あるいは入国管理局、そして社会全体の治安に対する取り組みによって減少傾向にあります。しかし、平成二十四年に第一審で判決を受けました被告人六万三千六百八十四人のうち、通訳人がついた外国人被告人、これは二千四百四十五人ということになっております。おおよそ二十六人に一人という割合でございます。これを考えますと、やはり治安の観点からの対策ということにつきましては、依然として必要な状況であるというふうに考えます。

 平成三十二年、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けまして、観光立国の推進、あるいはさまざまな分野における外国人労働者の問題など、外国人の受け入れに積極的な議論がいろいろとなされておりますけれども、それはそれで大切なこと、大事なことだと思います。しかし、我が国の治安の維持ということも決して無視できない重要な視点であるというふうに考えます。

 特に、観光立国の推進の観点から査証の緩和やクルーズ船の上陸手続の迅速化などの手続の簡素化、迅速化が求められております。これにつきましては、適切に対処する必要があるというふうには言えるでしょう。しかし、隣国であります大韓民国では、クルーズ船乗客や乗り継ぎ客の査証免除などを実施したところ、訪韓する外国人を増加させることに成功はしたものの、不法滞在者も増加させてしまったという報道も見受けられるところでございます。

 我が国で普通に暮らす国民の安定した生活を守るためには、テロリスト等や不法入国者を確実に水際で阻止し、不法就労や資格外活動を含む不法滞在者の摘発、検挙という観点からの措置についても忘れてはならないだろうと思います。

 このような観点から、出入国管理及び難民認定法、以下、入管法というふうに呼ばせていただきますが、この入管法上の問題のある外国人、入管上の管理上のハイリスクのある者と言ってもいいかもしれませんが、そういう問題のある外国人を確実に発見する必要があります。我が国への上陸前と上陸後に分けてこれからお話をさせていただきたいと思います。

 まず、我が国への入国に当たりましては、査証と入国審査という二段階でのスクリーニングがあります。査証は、我が国を訪れようとする外国人が在外公館において事前に申請するもので、比較的時間に余裕のあることから、必要に応じて追加資料の提出を求めるなどして時間をかけて審査をすることが可能であります。しかし、入国審査の方は、空港や海港における審査ブースでの自己申告情報に基づく対面審査によって、限られた時間の中で上陸の許否を判断する必要があります。一部の問題のある外国人のために、審査ブースでの審査に時間をかけ、大多数の歓迎すべき方々をお待たせするわけにはいきません。

 このことを考えますと、観光立国推進の見地から、ASEAN諸国を中心に査証免除の対象国が拡大しておりますが、治安上懸念のある国を対象とする場合には、査証免除とするか否かについて慎重な検討が必要であると考えます。

 査証免除は訪日外国人の拡大につながる措置の一つであるというふうには思いますが、そのために我が国の安全を犠牲にするということはできません。査証免除を行っても不法滞在や犯罪、テロ等の問題を生じないような仕組み、体制の構築とセットで査証免除について検討されるべきものと考えます。

 また、そもそも訪日外国人の増加のためには、査証免除を含む手続の簡素化というよりも、外国人の方が日本を訪れたいと考えるような、いわばコンテンツといいましょうか、内容の充実の方が大事だというふうに考えます。例えて言えば、おもしろいテーマパークがあって、仮に入場料がそれなりでも、そこに何度も訪れるということはあるかもしれません。他方、中身がつまらなければ、入場料が幾ら安くても客は来ないということになるのではないでしょうか。

 話題はかわりますが、平成十九年の二月一日以降、入管法に基づきまして、本邦に乗り入れる全ての船舶及び航空機から、乗客等の氏名、生年月日、国籍といった身分事項の事前提出が義務づけられております。特に、空港に乗り入れる航空機につきましては、その多くが事前旅客情報システムを通じて入国管理局に提供されております。また、入国管理局においては、入管法違反者情報のみならず、犯罪歴、関係行政機関から入手した国際テロ等を企図するおそれのある外国人及びその関係者の情報等をリスト化して整備しているというふうにも伺っております。これらの事前旅客情報と入国管理局のリストとを照合することにより厳格な入国審査を行うことができます。

 しかし、テロリストや外国における犯罪歴等の情報を網羅的に把握するということは困難であると考えられます。そういたしますと、入国管理局におきましては、これまで以上の情報収集を行い、かつ、収集した情報を分析し、問題のない外国人と問題のある外国人とを区別できるようにすること、これが重要になってくるのではないかと考えます。

 今回、国会に提出されております入管法の一部改正法律案におきましては、本邦に入る航空機を運航する運送事業者等から、乗客の予約に関する記録を上陸審査前に入手できるようになり、それによれば、個々の乗客の身分事項のみならず、複数の乗客相互の関係、例えば同行者でありますとか、そういう情報なども事前にわかるということのようでございます。このことで、入国管理局が取得できる情報の質と量、これが大幅に増加することになり、事前旅客情報とリストをあわせて活用することで問題のある要注意人物を迅速に割り出すことができることにつながるというふうに考えます。

 このように厳格さを維持しつつ迅速な入国審査を行うためには、昨年十二月に閣議決定されました「世界一安全な日本」創造戦略でも述べられておりますが、出入国管理に関するインテリジェンス機能の強化が不可欠となってきていると言えるのではないでしょうか。

 インテリジェンス機能が強化されることにより、情報収集の質と量が増加し、かつ、収集された情報を迅速的確に分析し、問題のある外国人に係る情報を全国の空港や海港が共有することによって、水際での不法入国、不法滞在を企図する者の阻止が可能となり、より社会的コストが少なく効率的な不法入国者等に対する対策がとれるものと考えます。

 したがいまして、観光立国を安心して推進するためには、入国管理局において警察等関係機関等と連携を強化し、情報収集をしっかり行っていただき、ハイレベルな分析を行うことでテロ対策を含む水際対策の強化を図っていただきたいと思います。

 続いて、個人識別情報の取得について申し上げたいと思います。

 平成十九年の十一月から、我が国に上陸しようとする外国人に対し、指紋や顔写真という個人識別情報の提供が法律上義務づけられております。これによりまして、上陸申請者と旅券名義人との同一人性の確認及び入国管理局が保有する要注意人物との照合をより正確かつ迅速に行うことが可能となりました。

 また、過去に退去強制歴がありながら、偽変造旅券や他人名義の旅券を利用して繰り返し不法入国をしようとする者についても、入国管理局が保有する被退去強制者の指紋及び顔画像と照合することにより確実に発見できるようになりました。

 個人識別情報の活用による退去命令者及び退去強制者数は、個人識別情報を活用した入国審査の実施から平成二十五年三月末現在までの間で累計約三千八百人に上るとのことでございます。この数字以上に、我が国への渡航を諦めた犯罪者等がいるであろうということを考えますと、我が国の安全にとって極めて有意義な成果であるというふうに考えております。

 もっとも、過去の退去強制歴が発覚するのを避けるために偽装指紋事案も発生していると聞いております。これに対しても厳格に対処する必要があります。その意味におきまして、警察等捜査機関への告発、通報や、偽装指紋の発見のための機器の改善ということも必要ではないかと考えます。

 さらに、平成二十一年の八月からは、ICPOが保有しております紛失・盗難旅券のデータベースを入国審査に活用しており、これにより、紛失・盗難旅券を悪用したテロリストや、我が国での不法行為を企図する者等による不法入国事案への対処が図られているというように伺っております。

 ここまでは、上陸前の措置について述べてまいりましたが、次に、上陸後における問題のある外国人の確実な発見について述べたいと思います。

 今から二十一年前になりますが、平成五年、我が国における不法残留者数は約三十万人に上りました。その後、これまでの水際対策や摘発強化の推進によりまして、不法残留者数は、平成二十六年一月一日現在、約五万九千人まで減少しております。

 しかし、数が減少しているからといって、審査や取り締まりの手を緩めれば、厳格な審査等の結果として我が国への入国を諦めていた犯罪者や不法滞在をもくろむ者がまたどっと押し寄せてくるおそれも否定できません。入国管理局には、引き続き、この数が限りなくゼロに近づくよう努力を重ねていただく必要があります。

 また、一見して違反者とわかる不法残留者が減少する一方で、近年、偽変造文書あるいは虚偽文書を行使すること等によりまして、身分や活動目的を偽って在留許可を得ている偽装滞在者が増加していると承知しております。

 我が国に不正に入国、在留を図ろうとする外国人は、審査や取り締まりが厳しくなれば、その網をかいくぐろうと、新たな手口を考えるものであります。我が国の治安を守るためには、彼らの新たな手口に対応して、これらを防止、発見する仕組みをつくり、常に適切に対処していかなくてはなりません。

 このような状況にありまして、平成二十一年の入管法等の改正によりまして、平成二十四年の七月九日から、中長期在留者を対象として、法務大臣が在留管理に必要な情報を正確かつ継続的に把握する新しい在留管理制度が導入されました。これによりまして、住居地や所属機関に関する届け出義務が課されたほか、中長期在留者に関する情報の継続的な把握を目的として、入国管理局の職員による事実調査権が拡充いたしました。私も、このときの改正に当たりまして、出入国管理政策懇談会の専門部会のメンバーとしてかかわらせていただきました。当時は、点による管理から線による管理というようなことが言われたものであります。

 このように事実調査権を拡充したものの、実効的な措置を実施するためには、警察など国内の関係機関との連携は必須のことでありまして、これまで以上に緊密な連携を期待しているところでございます。

 ここまで、我が国の治安の維持という観点から入管行政に係る措置について意見を述べてまいりました。ここで、入管法違反に係る罰則等の強化について一言述べさせていただきたいと思います。

 現行法の制度におきましては、上陸しようとする外国人の申告する活動が虚偽であれば、上陸が認められることはありません。例えば、我が国で働くことを目的としていながら、観光目的です、このようなことを偽って入国しようとする外国人については、その意図が明らかであるときには上陸が認められません。しかし、巧妙にうそをつくなどして入国審査官を欺いて上陸許可を得た場合、このこと自体は、今の段階では犯罪ではございません。欺いて取得した在留資格を取り消すことができるにとどまります。果たしてこのままでよいのかどうか、検討する必要があるのではないでしょうか。

 以上、主として我が国の治安、安全を守るという観点から意見を述べさせていただきました。

 もとより、私は外国人の受け入れ拡大に反対という立場ではございません。外国人労働者の受け入れについては、いろいろな議論があるようでございますけれども、高度外国人材の受け入れ、観光立国の推進については大いに進めるべきであるというふうに考えております。

 しかし、受け入れの拡大は、これを悪用しようとする者への対処策とあわせて検討されなければなりません。一方だけを見た議論というのは、約三十万人の不法残留者を六万人を下回るまで減少させたこれまでの努力を無にし、我が国の安全を犠牲にすることになりかねません。

 もちろん、外国人犯罪など治安の問題を殊さら取り上げて偏見を助長するようなことがあってはならないのは言うまでもございません。しかし、ルールを守って入国、在留する大多数の善良な外国人に対して、我が国のよさを理解してもらい、一層友好関係を築いていくためにも、また、訪日外国人の方々に対するおもてなしのためにも、ルールを守らない者への厳格な対処はあわせて行っていかなければならないと考えております。

 委員の皆様におかれましては、こうした観点を含めまして、今後の外国人受け入れの議論を行っていただきたいということをお願いして、私の意見といたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

江崎委員長 どうもありがとうございました。

 次に、高橋参考人にお願いいたします。

高橋参考人 御紹介いただきました日本総合研究所の高橋でございます。

 本日は、当委員会でお話しさせていただくことを大変光栄に存じます。私からは、経済を見ておる目から、あるいは、私も一時金融業界に身を置いたこともございますので、そうした経験を通して、高度外国人材の受け入れということについて意見を述べさせていただきたいというふうに思います。

 まず、高度外国人材の受け入れ促進の必要性ということでございます。

 昨今、企業活動や研究分野のグローバル化が進展して、世界的な高度人材の獲得競争が起きていることは御案内のとおりでございます。日本の企業、社会につきましても、今後ますますグローバル化していくことが求められる中で、海外からの有能なあるいは有益な人材を獲得し、登用することの必要性はさらに高まっていくことが想定されます。

 ただし、現実には、日本は人材獲得競争では十分な成果を上げているとは言いがたいと思います。むしろ優秀な人材の流出を招いている状況ではないかと思います。その背景には、日本が長期にわたる経済の低迷に苦しむ一方で、中国を初めとする新興国の経済発展が起きて、こういう中で、日本の相対的な地位あるいは相対的な魅力が低下したことがあるのではないかと思います。ジャパン・パッシングなどと言われる現象は、その象徴ではないかと思います。

 しかしながら、私は、ここに来て状況が大きく変化しつつあるというふうに感じます。

 海外を見てみますと、新興国経済がスローダウンしておりますし、あるいは、新興国のリーダー格でありました中国についても構造問題が表面化しております。一方で、国内を見てみますと、皮肉なことではありますけれども、デフレが続いたことによって、あるいは円高が是正されたことによって、日本のコスト、これは相対的に低下しております。そして今、デフレ脱却、経済再生の動きが始まっております。このように、日本を取り巻く内外環境が大きく変わり始めております。そういう中で、アジアの先進国あるいは成熟国としての日本の安定感が改めて見直され始めている状況ではないかというふうに思います。

 今こそ、日本をアジアのあるいは世界の人、物、金、情報のハブとしてアピールして、巻き返していくチャンスではないかというふうに思います。例えば、国際金融センターとしての地位の回復、あるいは科学技術の研究開発のプラットホーム化、それからいろいろな世界的な企業あるいは機関のリージョナルヘッドクオーターの設置、こうしたことを促進すべく、換言すれば、日本を世界一ビジネスや研究をしやすい国とすること、これを目指して、さまざまな制度改革や環境整備を行っていくべきときではないかというふうに思います。

 また、さまざまな学術、産業分野での高度外国人材の活用は、我が国の研究・技術レベル等の国際競争力の強化につながることにとどまらず、日本での外国人の生活を通して、日本の文化や立場にかかわる国際理解を促進し、送り出し国と日本との間の交流の拡大、あるいは日本の海外での市場形成などにも役立つものでありますし、海外への日本のプレゼンスを拡大する方策であるとも言えると思います。

 特に、アジア諸国などにおける外交面での緊張関係の高まりのもとでは、さまざまな側面での人を通じた理解の促進は、日本とアジア諸国間の良好な関係を構築する上でも極めて有益と考えられます。

 なお、外国人材の増加は日本人の就職の機会を奪うものではないかとの懸念もありますけれども、グローバル競争の中ではそもそも高度人材に国境はありません。また、日本人の高度人材の育成という観点からも、切磋琢磨し、競争を勝ち抜く環境をつくるという観点から、高度外国人材への門戸開放は有効というふうに考えます。

 ただし、外国人を搾取して、安く使って、日本人の職を奪っているというような内外からの批判を招かないようなルールづくりは極めて大切だというふうに考えております。

 続きまして、具体的に取り組むべき方策の方向性ということで申し上げさせていただきたいと思います。

 高度人材ポイント制は平成二十四年五月から始まり、約二年が経過しております。一定の効果があったと評価できると思いますけれども、高度人材の受け入れ、ボリュームとして考えても、まだまだ十分な受け入れには至っていないというふうに思います。

 そこで、高度外国人材の活用促進のために、施策面、制度面において一層の改善を行うことが必要というふうに考えます。

 第一に、他国との比較において日本が選択されるよう、遜色のない条件を整備することが不可欠であります。これまでの優遇措置の有効性を国際的な視点から見直すことが必要だというふうに思います。

 多様な人材、高度な人材を量的に確保、登用できる状況をつくり出すためには、特に入国の条件になりますポイント制、ここを見直すことが有効であると考えます。

 例えば給与面のポイントですけれども、若年研究者の賃金というのは世界的に見ても決して高くはないと思います。高度な研究を行う貴重な国際的な人材を確保するためには、このような年収条件について、実態や必要に応じて柔軟に見直すべきというふうに考えます。

 第二には、高度外国人材の受け入れ促進に当たっては、企業側の受け入れ条件や社会福祉を含めた生活環境の改善など、個人が有効かつ健全に研究や業務に従事できるように、生活全体での支援を充実させることが重要だと思います。

 例えばでございますけれども、私も若干金融界の経験がございますので、そうした経験から申し上げますと、世界の金融界、とりわけ投資銀行部門では非常に活発にグローバル展開が行われております。そこで働くいわゆるインベストメントバンカー、彼らの活動はボーダーレスでございまして、とりわけアジアでは、東京は、シンガポールや香港、こういった国際金融都市と競合しております。彼らはこういった国際金融都市を仕事場として選択するわけですけれども、彼らは単身ではなくて家族帯同で動くことが多いわけでして、どの金融都市を選択するかということに当たって、彼らは、トータルな生活条件のよしあし、こういったものについて極めて重きを置いて判断しているというふうに考えられます。

 親あるいは家事使用人等の帯同、ナニーサービスやベビーシッターの有無、子弟の教育環境の整備など、彼らの外国での暮らしのストレスを軽減し、あるいは現地に適用しやすくする生活環境、こういったものを日本も意識して整備していくことが必要であるというふうに考えます。

 昨今は、交通機関などで英語の表記が随分進んでおりまして、そういう面ではかなりの進展が見られると思います。ただ、実際に彼らに伺ってみますと、例えば、病院であるとか教育施設、あるいは日常のスーパーやコンビニに行ったときに全く英語の表記がない、そもそも自分の買いたいものがどこにあるのかということさえもわからない、そんな生活面でのストレスを感じておりますので、まだまだ日本として、高度外国人材の受け入れのための環境整備としては、やることが多くあるというふうに思います。そうした措置は、決して高度外国人材だけではなくて、これからふやそうとしている外国人観光客、短期滞在者の方たちにとっても有益な措置になるというふうに考えます。

 話を戻しまして、第三に、既にでき上がった高度人材ということではなくて、これから高度人材になり得る人材、いわば高度人材の卵というような人たちについても、私は、積極的に日本で受け入れ、就学から雇用までを一貫した流れにしていくということも必要ではないかというふうに思います。

 留学から就職に至る一貫支援を関係省庁で連携して構築すること、これも今後の課題と考えます。

 第四に、産業や就業の形態が非常に多様化しております。これに対応するためには、業種や職種によって設定されるべき滞在のための期間なども多様であるべきですし、特に長期滞在による効果も適切に評価し、必要に応じて在留期間の延長などの措置も講じられるべきであるというふうに考えます。

 ただし、一方で、制度の厳正な運用は重要な課題だというふうに思います。量的な増加や期間延長などの緩和促進を進める一方で、時代に応じて高度人材の定義を修正することも想定しつつ、しかしながら、制度が厳格に運用されて、弊害が是正されていくというようなことが同時に行われる必要があることは言うまでもないというふうに思います。

 私からの陳述は以上でございます。ありがとうございました。(拍手)

江崎委員長 どうもありがとうございました。

 次に、鳥井参考人、お願いいたします。

鳥井参考人 鳥井と申します。

 このような場で発言をさせていただきまして、非常にありがたく感謝しております。

 私は、移住連の事務局長というものを務めております。移住連といいますのは、移住労働者と連帯する全国ネットワークといいます。

 私たちの移住連は、一九八〇年代からこの日本の労働市場の求めによって急増した移住労働者とその家族、ニューカマーの人々に対する差別、人権侵害や労働問題を取り組んできた各地のNGOや労働団体によって一九九七年につくられた全国ネットワークです。

 また、私自身は、個人加盟の労働組合であります全統一労働組合のオルグを職業としております。近年、オルグを職業なんと言う者は余りおらないんですけれども、化石に近いかもしれませんが、私は胸を張ってオルグを職業としておると申し上げる次第であります。

 この全統一労働組合で、一九九一年からニューカマーの組合加入が相次ぎ、これまで、四十カ国、約四千名以上のさまざまな国、とりわけアフリカ、南アジア、中国からの労働者が登録しております。年間平均で二百件ほどの相談を受け、使用者との交渉などを行ってまいりました。また、一九九三年以来、いわゆる外国人春闘を取り組んでまいりました。

 また、技能実習生ネットワーク、これは二〇〇〇年に、当初、外国人研修生問題ネットワークとしてスタートしておりますけれども、この運営委員も務めております。

 そのような経験と、移住連での全国のNGOのネットワーク活動を通じた現場からの立場で、意見を申し述べます。

 なお、私は、これまでの活動について、昨年六月、ワシントンにおいて、アメリカ政府、ケリー国務長官から、TIPヒーロー賞を授与されております。それらについては、恐縮ではありますが、お手元の新聞記事などを御参照いただければ幸いです。

 さて、今回は、外国人受け入れに関する諸問題についての意見陳述ということですが、現在のこの日本社会が取り組むべき課題として、外国人の受け入れを促進するのかしないのか、受け入れるのか受け入れないのかというよりも、私は、いかにして受け入れるのかという課題に政治が応えていくべきだと考えています。

 まず、これまでいかに日本が外国人を受け入れてきたのか、現状を述べたいと思います。

 今、外国人受け入れについて活発に議論されていますが、人口減少、労働力不足に対応するための外国人材活用については、二〇〇五年から二〇〇八年にも、政府、政党、経済団体などから相次ぎ提起されました。また、それを経て、二〇〇九年には入管法と住民基本台帳法が改定され、外国人登録法が廃止されましたことは御案内のとおりです。

 二〇一二年七月から始まったこの新しい在留管理制度は、戦後の日本の外国人政策の中において歴史的な制度変革でした。

 多くの外国人は、日本人と同じように、住民として住民基本台帳にも登録されるようにもなりました。ただ他方で、この制度は、外国人の適正な在留の確保に資するため、その在留状況を継続的に把握するとしていますが、その把握は、在留外国人に対する義務を多く履行させ、罰則を強化し、管理することで実行されています。

 例えば、引っ越しをした場合の住居地変更届の遅延は、十四日を超えると入管法のもとでの二十万円以下の罰金と住基法のもとでの五万円以下の過料が二重に科され、九十日を超えると在留資格が取り消されることになるなど、外国人の利便性の向上ではなく、監視の強化となっています。

 在留外国人は、本当に住民としてこの社会に受け入れられていると言えるでしょうか。

 また、新しい在留管理制度では、日本で暮らす非正規滞在者を、これは子供であってもですが、構造的に締め出し、見えなくしようとしました。

 不法滞在者などとも言われますが、ここでは、国連や私たちがふだん使用する非正規滞在者と言わせていただきます。

 実は、非正規滞在者たちは、今や、地域、学校、職場の大切な一員となっています。いや、不可欠な存在と言ってもいいでしょう。一九八〇年代のいわゆるニューカマーの外国人は、多くは非正規滞在でした。

 ところで、不法就労は犯罪の温床キャンペーンというのがありますが、どこを探しても、非正規滞在者の彼、彼女たちが犯罪の温床になったという統計データは存在しません。それどころか、三十年以上にわたって日本の経済活動を下支えしています。企業活動を活性化させ、私たちの日々の生活を支えてきました。

 ある者は、金属プレス、メッキ、ゴム、プラスチックなどの製造業で、ある者は、今まさに焦点となっている建設分野や解体の現場で、ある者は、居酒屋で癒やしを提供しました。長野オリンピックの建設需要に対応し、厳しい現場で一生懸命働いたのも、彼ら、彼女らです。そして、サービス残業に抗議の声を上げ、未払い残業代支払いの先駆けとなったのも、彼ら、彼女ら、非正規滞在者です。また、ある者は配偶者となり、地域の重要な一員ともなっています。そして、総じて、彼ら、彼女らは、私たちに地球というものを意識させること、つまり、この世界、国際社会の一員であることを認識させることともなっています。

 この非正規滞在者の顔を思い浮かべますと、この三十年近く、私はさまざまな相談をやってきましたから、百の相談に百の物語といいますか、一人一人の物語があるわけです。ただ、きょうは、時間の関係でそれを語ることは許されておりません。

 日本政府は、滞在が非正規となっても、特別に在留資格を与える在留特別許可を与えてきました。婚姻などを通しての日本人や永住外国人とのつながり、日本への定着、人道的な配慮で法務大臣が裁量で許可を与えるというものですが、いまだ約六万人の人たちが非正規滞在者としているわけです。

 ただ、欧米諸国、韓国等では、一定の条件を満たせば一斉に滞在を認める制度、アムネスティーも実行してきていますが、日本ではまだ行われたことがありません。二〇〇九年七月に、新たな在留特別許可に係るガイドラインが設けられましたが、まだまだ許可を受けるハードルは高いのが実情です。

 さて、二〇〇九年の入管法の改定では、外国人技能実習制度も新しくなりました。皆様御周知のとおり、技能実習が在留資格として分離しました。ただ、そもそもの技能実習制度の目的に変更があったわけではありません。研修を拡充するものとして創設され、開発途上国への技術移転を目的としているものです。

 しかしながら、一九九三年の制度創設以降、技能実習制度では不正行為が横行し、この社会に対して労働基準の崩壊と人権侵害をもたらしています。

 これに対し、不正行為が制度趣旨を理解しない一部の不心得者によるものと反論される方もおられるようです。しかし、それが一部であれば、私たちのような非力なNGOであっても、行政の協力も得、とっくの昔に解決させています。これははっきりと断言できます。

 事実は、実態はどうであるか。例えば、残業代時給三百円の職場に駆けつけます。社長、使用者、監理団体に是正を求めても、どうして自分のところだけに来るのか、同業者はみんな同じなのにと、逆に私たちに訴えかけてくるわけです。当然、JITCOの監理も入っている職場です。

 つまり、現場の状況と制度の中身、どこを見ても、要因は制度設計そのものに問題の核心があることは明らかです。すなわち、労働者を労働者として受け入れない制度に、全ての問題の根源があります。

 二〇一〇年七月から新制度となりましたが、研修を分離独立させたことは、長年にわたり私たちと意見交換をしてきた法務省による努力でもあります。

 しかし、新制度となってからも、技能実習制度においては、禁じられているはずの保証金はさまざまに名目を変えて存在し続けていますし、名義貸しも減少しておらず、二重契約も多く、時給三百円から五百円の残業代や最低賃金も下回る給料、強制貯金に加え、通帳、印鑑やキャッシュカードの取り上げも続いています。強制帰国やセクシュアルハラスメントも相変わらず報告されています。

 さらに、制度劣化の元凶だった団体監理型を技能実習の基本類型として認め、不正行為の中心的役割をしてきた受け入れ団体を監理団体としてしまいました。今度は、制度の適正な運用を図る機能を負わせています。二〇一三年四月の総務省の行政評価でも、監理団体による監査がほとんど機能していないことも明らかになりました。制度が存続する限り、不正行為、人権侵害、労働基準破壊はなくならないでしょう。

 さらに、国際貢献といいながら、実は国際的な批判、勧告を受けています。国連からは、二〇〇八年、自由権規約委員会、二〇〇九年、女性差別撤廃委員会、二〇一〇年、人身売買に関する特別報告者、二〇一一年、移住者の人権に関する特別報告者。また、アメリカ国務省人身売買年次報告書でも、二〇〇七年以降、毎年、労働搾取や人身売買の観点から研修・技能実習制度に対する懸念が表明され続け、現代の奴隷制度と指摘されているのです。

 さて、次に、今いかに受け入れようとしているのかについてです。まず、やはり外国人技能実習制度についてです。

 出入国管理政策懇談会の分科会での議論を受け、四月四日の経済財政諮問会議・産業競争力会議合同会議の提出資料で、法務省は、多くの意見は、技能実習制度の目的に沿った活用がより一層行われるようにし、制度の拡充等の改革を検討するとしています。

 しかしながら、この多くの意見が、開発途上国からの要請を受けたものでしょうか。技能実習生自身が国際貢献の意義を認めている、あるいは認めていたのでしょうか。制度の拡充を主張する団体は、技術移転の国際貢献のために制度の拡充を求めているのでしょうか。多くの疑問がこの説明だけでも湧き起こります。

 さらに、制度の拡充政策等を進めていくには、優良な受け入れ団体等への集約を促進するとしています。

 しかし、優良な受け入れ団体の優良とは何をもって判断するのでしょうか。制度の目的上、法令遵守は自明です。いかに開発途上国に技術移転を行ったのかが優良とされるべきで、不正行為が顕在化しなかったことをもって優良とするのは、制度上間違っております。また、集約を促進するといいますが、受け入れ団体を集約して、かつ受け入れを拡充するというのも、相矛盾しています。

 次に、建設分野における外国人材活用に係る緊急措置についてです。

 前述したような多くの批判を受けてきた技能実習制度の上に積み上げる形で出されたのが、今回の緊急措置です。緊急措置は、外国人に特定活動の在留資格を付与するとしていますが、政府は、残念ながら、現在の技能実習制度の継続、拡大を前提としてこの措置を決定しました。しかし、先ほど述べたように、外国人労働者受け入れと技能実習制度とは縁もゆかりもないはずです。

 国交省は、不法就労や人権問題などを懸念する声もあることから、技能実習制度を上回る新たな特別の監理体制をとしています。しかし、これは全く実態に即しておらず、的外れです。技能実習生の不法残留はごくわずかです。それどころか、雇用先の不正行為や人権侵害に対して逃げる自由さえない拘束状況にあることが奴隷労働との指摘、批判を受けているわけです。

 また、二〇一〇年に監理が強化されたはずなのに、問題は引き続き起こっています。監理を強化させるという既に失敗した政策を繰り返すのでしょうか。

 緊急措置は、復興事業と二〇二〇年オリンピック・パラリンピック東京大会の関連施設整備のために、即戦力となり得る外国人材の活用促進を図り、オリンピック・パラリンピック東京大会の成功に万全を期するとしています。

 技能実習制度で起きる人権侵害への国際批判に、日本政府として真摯に向き合うことなく、この制度を活用する形で緊急措置を決定したことは大きな誤りです。

 オリンピック憲章では、スポーツを文化と教育と融合させることで、オリンピズムが求めるものは、努力のうちに見出される喜び、よい手本となる教育的価値、普遍的・基本的・倫理的諸原則の尊重などに基づいた生き方の創造であるとうたわれています。

 これは、オリンピズムの根本原則のうちでも第一番目の原則です。この精神に基づき大会を開催する東京を抱えるこの日本だからこそ、外国からいかに人を、労働者を受け入れるかの措置の決定は、フェアプレー、フェアトレードのよい手本を国際社会に示すチャンスだったのです。

 しかし、まだチャンスはあります。議論は行われています。いかに受け入れるべきかについて、ぜひ国会議員の皆様にも真剣に議論していただきたい二つのことを述べます。

 第一に、技能実習制度の廃止の道筋をつけた上で、今現在、実際は文字どおり労働をしている技能実習生を、名実ともに労働者として受け入れるべきです。

 私は、人手不足の実態を日々、目の当たりにしています。事業主からも直接に訴えを聞いています。技能実習生が欲しいわけじゃない、働き手が欲しい。今、この社会には労働者がもっと必要なのです。外国から人を受け入れ、日本人とともに働いてもらうということが求められています。

 事実、多国籍な職場は活気にあふれ、日本社会全体を豊かにしています。この三十年近い間の事実、外国籍住民が二・五倍になってきた地域社会を直視することが求められています。あえて重ねて言いますが、外国人がいるから犯罪がふえたという事実もありません。

 労働者を労働者として受け入れるべきだと思います。今、さまざまな分野での人手不足に対応を求められています。技能実習制度は廃止した上で、真正面から受け入れられないか、この社会が真剣に考えるチャンスです。

 第二に、今の技能実習制度に対しては、実習実施期間の延長や再技能実習、受け入れ人数枠の増加、分野の拡大や対象職種の拡充をしてはなりません。業界からの要請や他の省庁からの要望を許してしまえば、現場では間違いなく実習生に対する権利侵害はふえます。既に述べたとおり、制度の構造上、実効性を持って監理できる機関が、当初も、そして新制度施行後も確立されていないからです。そして、国際貢献という建前と労働力不足を補うという実態が限りなく乖離し、問題は一層深刻になるばかりです。

 つい一週間前、この法務委員会で谷垣法務大臣が、技能実習制度を小手先でいじって労働力不足に対応しようというのは、筋が違うし、無理だと思うと、郡和子議員の質問に答えられています。私も、まさに谷垣法務大臣のおっしゃるとおりだと思います。

 また、高度人材に関しては積極的に受け入れるとしつつも、労働者としてどうしていくのか、労働者としての処遇を与えるという意味でも、政府全体としてきちんと議論をしていくということは必要とも答えられています。そこに、まさに私が冒頭述べた、いかにして受け入れるべきかというところに重なっています。

 二〇〇五年から二〇〇八年の外国人材の議論、二〇〇九年の新しい在留管理制度の議論でも、そして今の外国人受け入れ議論も、外国人を人たる労働者として受け入れる観点、人権の観点が欠落しています。残念です。私は、二〇〇九年五月八日、ちょうど五年前にも、同じようにこの衆議院法務委員会で入管法改正審議の際に参考人として意見を述べさせていただきました。しかし、残念ながら、それ以降、人たる労働者が労働者として、そして人権の視点を持って、いかにして受け入れるのかという議論は余り進んでいません。

 いまだこの社会は、日本の成長に資するため外国人を活用するという狭い視点、人たる外国人を監視し、日本にとって都合が悪そうな外国人を排除するという視点から抜け出すことができず、外国人受け入れの全体像を捉え損ねています。

 既に、この社会に多くの外国人労働者そしてその家族が働き、暮らしています。政府は、この事実から目をそらし、外国人の権利を保障する法制度の整備を怠っています。本来であれば、人を人として受け入れるために、人権、人格権が尊重され、多民族・多文化共生社会を制度的に保障するための整備をすべきです。

 人口減少社会への対応、復興、オリンピック・パラリンピックへの対応が関心を集める中で、外国人人権基本法や人種差別撤廃法、国内人権機関などの法整備及び所管庁の設立などの制度設計を始めるチャンスです。

 外国人をいかにして受け入れるのかに対する答えです。

 繰り返します。労働者を労働者として受け入れるべきです。今こそ、ごまかしの、小手先の労働者補充策である技能実習制度を廃止し、真正面から労働者を受け入れる政策にかじを切るべきです。その際には、もちろん労使対等原則がしっかりと守られ、雇用先の移動も自由にせねばなりません。使い捨ての労働力ではなく、ともに働き、ともに暮らす、この社会を支える一員を迎えるためにです。

 国会議員の皆様が、事実を直視し、決断してくだされば、それはきっと必ず実現できます。

 既に多民族・多文化共生社会は始まっています。相互尊重の社会を私たちは必ず実現できます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

江崎委員長 どうもありがとうございました。

 次に、新島参考人、お願いいたします。

新島参考人 ただいま御紹介いただきました、国際研修協力機構、JITCOの専務理事、新島でございます。

 私からは、外国人技能実習制度の円滑、適正な運営を支援するJITCOという団体の活動、事業を通じまして把握いたしました実習制度の現状、あるいはJITCOの活動、課題等について御説明を申し上げたいと思います。

 お手元に配付してございます参考資料を適宜参照いただければというふうに思います。

 技能実習制度そのものにつきましては、繰り返しになるようでございますけれども、開発途上国からの若者を中心にいたしまして、我が国の産業現場で技術、技能を習得することによりまして、母国の経済発展を担う人づくりをしていくということが目的でございます。

 受け入れの仕組みについて簡単に申し上げますと、送り出し機関と受け入れ団体双方、相手国と我が国でございますが、この間で協定を結びまして、実習生が入国をする。原則二カ月の講習を経た上で、団体傘下の実習実施機関、受け入れ企業で、雇用関係のもとで実習をする。さらに、二年目に移行する際に、所定の技能検定あるいはこれに準ずる技能評価の試験を受けていただいて、これにパスした者がさらに二年間の実習を行う、こういう仕組みになってございます。

 制度自体は一九九三年にスタートしてございます。当時は、研修一年、特定活動一年ということでございましたが、九八年に、研修一年、実習二年ということで計三年ということになったわけでございます。

 二〇〇九年におきましては、大きな改正がございまして、技能実習という在留資格が新設されるということで、実習生の法的な保護あるいは法的地位の安定を目的とした制度改正が行われたということでございまして、その後も制度の適正運用に向けたルールが整備されて、現在に至っているということでございます。

 対象となる職種でございますが、これは、制度をスタートしたときには十七職種ということで、かなり狭い限定的な範囲でございましたが、現在は、これが追加になっておりまして、六十八職種にまで拡大をしてございます。

 技能実習生の在留者数でございます。最近の動向を申し上げますと、リーマン・ショック以降の経済情勢を反映いたしまして、二〇〇八年の約十九万人というのがピークでございまして、その後、この数年、減少傾向ということでございますが、毎年五万から六万の方が入国をして、現在、技能実習生の在留者数ということでは、二〇一三年末の数字でございますが、約十五万人の方が在留をされているということでございます。

 これを国別、国籍別に見ますと、特に技能実習二年目、二号に移行する人の内訳でございますが、二〇一三年度につきましては、中国は全体の六九%、ベトナムが一五%、インドネシア、フィリピンが六%、タイ二%という状況になっておりまして、近年の傾向といたしまして、中国の受け入れがかなり減少してきているということでございます。二〇〇五年度には中国が八五%というデータがございますが、二〇一三年度には六九%ということで、かなり低下をしているということですが、その一方で、東南アジア諸国、特にベトナム、フィリピン、タイからの受け入れが増加しているという傾向が見られます。

 これは、産業分野別に内訳を見ますと、繊維・衣服関係二〇%、それから、機械・金属関係が二〇%、農業関係が一四%、食品製造関係が一四%、建設一〇%というような産業分野別になってございます。

 最初、一九九五年ごろの数字といいますのは、実習生の数が三千六百人程度でございましたが、現在五万ということで、この二十年間で大幅に増加をしているということでございます。

 この技能実習制度につきましては、さまざまな課題が指摘されているわけでございますけれども、この約二十年の間に八十万人以上の途上国の若者が日本で技能実習をして、帰国をしてございます。帰国をした実習生、あるいは国内外の関係者、企業等の声を聞きますと、技能実習制度は一定の成果を上げていると考えておるということでございまして、制度は国内外において定着をしてきているのではないかなというふうに見ておるわけでございます。

 我々の組織でございますJITCOでございますが、この実習制度の中核的機関ということで、技能実習制度にかかわる関係の団体、企業への各種支援を通じまして制度の発展に貢献をしてきたというところでございます。

 この技能実習制度の基本的枠組みにつきましては、法務省の指針あるいは厚生労働大臣の公示という形で定められております。それぞれの所管する行政官庁が許認可、行政指導、監督、処分ということを行う、JITCOは受け入れ団体あるいは受け入れ企業に対する助言、支援を行うという役割分担になってございます。

 JITCOの役割、体制、事業等でございますけれども、この団体は一九九一年に、法務、外務、厚労、経産、国交の五省共管によって設立をされるということで、二〇一二年四月から、内閣府所管の公益財団法人に移行をしてございます。

 体制でございますが、本部、それから全国十三カ所に駐在事務所がございますが、合わせて約二百五十名の体制で事業を行っております。

 どんな事業を行っているかということでございますが、これにつきましては五つの柱立てになってございます。一つは円滑な送り出し、受け入れ支援、第二に適正化支援、第三に成果向上、第四に実習生保護、第五に広報啓発ということでございます。

 送り出し支援といたしまして、JITCOは十五カ国の外国政府窓口と協議を行いまして、討議議事録、RDを締結いたしまして、双方の情報交換、あるいは送り出し機関の情報提供等を求めているというところでございます。

 また、円滑な受け入れを支援するためには、入管局へ提出いたします入国在留関係の申請書の点検、取り次ぎということで、これは年間約十三万人ほどの件数を扱っております。それから、技能実習に移行する際の実習計画等についての評価も行っておりまして、その結果につきましても入管局に報告をするということになっております。

 それから、適正かつ円滑な受け入れを促進するということで、ガイドラインを策定いたしましてその周知を図るということと、技能実習生向けには、日本で健康、安全、安心して生活が送れるようなさまざまな情報提供を、母国語を使いまして行っておるという状況です。

 それから、実習につきましては、これが効果的、効率的に行われるということで、多数のテキスト、教材を作成しておりますし、各種セミナーを開催いたしまして制度の周知、適正化に努めているところでございます。

 さらに、受け入れを行っております監理団体、実習実施機関に対しましては、毎年約一万件の巡回指導を行っております。特に中小零細企業が多いわけでございまして、労働関係法令の知識が不十分な面もございます。これらを中心に助言指導を行っておる、特に労働法関係の部分が中心になるということでございます。

 指導項目として見ますと、やはり長時間労働であるとか、あるいは受け入れ時の健康診断の未実施、あるいは割り増し賃金の不適正な事案というふうなものがありまして、これらにつきましては改善指導を行っている状況でございます。

 また、実習生から母国語でフリーダイヤルによります直接相談を受けるという母国語相談事業を行っております。

 こういった巡回指導あるいは母国語相談等におきまして把握した事案につきまして、中には重大かつ悪質な事案というのもあるわけでございます。そういうものにつきましては、行政の改善指導による解決ということで、関係行政機関へ情報提供しているというところでございます。

 技能実習制度につきましての評価につきましては、やはり、監理団体あるいは技能実習生等々、積極的な評価をいただいていると我々は考えております。

 実習生が帰った後、どういう状況にあるかということで申し上げますと、復職した人が四割、あるいは転職二割、起業一割五分というふうなことで、四分の三の方が何らかの形で就業し、母国の産業において貢献をしているということが見てとれます。

 それから、最近、海外展開をする中小企業におきましても、グローバル人材の育成ということで、外国の現地スタッフを日本で研修、実習するという効果が高いというような評価もございます。

 JITCOから見た制度の課題ということでございます。

 先ほども申し上げましたように、十五万人の在留者がいる、一応制度として定着をしているということでございます。そういった中で、一方、労働関係法令違反あるいは人権侵害、不法残留というような指摘もあるわけで、こういった課題も指摘をされているわけでございます。

 今後の課題といたしましては、やはり、制度本来の趣旨、技能の移転を通じた国際協力ということがこの実習制度の意義でございます、この意義を認めた上で、制度の目的に沿った活用が一層行われるようにするために、制度の適正化を図りながら、制度を拡充していただきたいということが、この制度を利用している団体、企業から多く聞かれる意見でございます。

 具体的には、実習実施期間の延長あるいは再実習制度の導入というふうなことで、これは、より高度な技能習得のためという狙いがあるわけでございますし、対象職種の拡大につきましては、やはり、生産現場の中で多能工化あるいは生産方式の革新というようなことで、そういった動きを踏まえての職種の追加、拡大という話がございます。

 それから、受け入れ人数枠のあり方についても要望がございますが、原則、常勤職員の二十分の一ということでございますが、特例枠で五十人未満は三人というようなことがあるわけですが、この部分についての緩和あるいは見直しというふうなことも言われておるわけでございます。

 現在、国におきまして、技能実習制度の見直し検討が行われておるわけでございます。JITCOといたしましては、技能移転による国際貢献という制度趣旨に即した検討が十分行われることを期待しておるところでございます。

 以上で説明を終わります。(拍手)

江崎委員長 どうもありがとうございました。

 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

江崎委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。初めに、三ッ林裕巳君。

三ッ林委員 自由民主党の三ッ林裕巳です。

 このたびは、外国人の受入れに係る諸問題についての参考人質問の機会をいただき、深く感謝申し上げます。

 また、参考人の先生方におかれましては、大変示唆に富んだお話を伺い、まことにありがとうございます。深く感謝申し上げます。

 二十分という短い時間での質問ですので、参考人の先生方全てに御質問できかねますので、その点はお許しをいただきたいと思います。

 まず、最初にお話しされた安冨先生にお伺いいたします。

 治安が重要であるということで、私も本当にそのとおりであると思います。そして、先生が最後にお話をされた、入管に虚偽の申告をして入国され、そして、その後それがわかっても在留資格を剥奪するだけであると。虚偽をして入れば日本は在留資格を剥奪されるだけ、本当にこのようなことでいいのかと、私も先生のお話を聞きながら感じたわけです。

 やはり治安をしっかりと、外国から入国される方々に日本は入管制度がしっかりしているんだと、そういう点から、これからのその点についての取り組みについて、先生の御見解がありましたらお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

安冨参考人 お答えいたします。

 非常に基本的なといいますか、非常に重要な問題の御指摘でございまして、今直ちにこの全ての内容に関する答えを持ち合わせているわけではありませんけれども、これからますます国際化が進み、多くの外国人の方が来日される、あるいは来日を希望されるという中におきまして、不適切な理由で入国を試みるというような方に対して、まず一番重要なことは、水際でそれを阻止するということだろうと思います。

 一旦入国をされますと、それを追跡していくということにつきましては、入国管理局の警備当局を含めて、あるいは警察を含めて、国内組織がいかな連携をしても、なかなかそれを捕捉しということも難しいと思います。ですので、さまざまな機関の連携のもとに、さまざまな情報、先ほど申し上げましたようなICPOからの情報であるとか、あるいは国内機関の情報であるとか、そのような情報を集約して、いわばそういうリスト、入管の審査官に、リスト等のマッチングをして、その情報を入国審査の場面で生かすような、そういう方策を今後検討していくことが重要ではないかなというふうに思います。

 以上でございます。

三ッ林委員 ありがとうございます。

 現在でも、APIS、事前旅客情報、それとインテリジェンス機能を高めるということで、これらのことをしっかりと対応していかなくてはいけないというお話でありました。どうもありがとうございます。

 続いて、高橋参考人にお話を伺いたいと思います。

 本年の四月四日に、国家戦略特区における外国人労働の検討について、第二回経済財政諮問会議・産業競争力会議合同会議におきまして、優秀な人材の受け入れ、留学生の積極的な活用、オリンピックに向けての当面の建設人材不足を補うため、外国人建設技能者の活用が必要である、また、移民政策と誤解されない点に配慮しつつ、女性の活躍推進や中長期的な経済成長の観点から、十分な管理体制のもとでさらなる外国人材の活用の仕組みについて検討を進めていただきたい、このような安倍総理からの指示がありました。

 そして、高度人材の積極的受け入れ、これは、先生が先ほど申された、国境はない、私もそのとおりであると思います。アジアの先進国として、高度人材の積極的受け入れ、これは私も当然やっていくべきであると思います。

 私は、大学の医学部の教授をしておりまして、そのときに、中国の新疆医科大学というところから留学生を受け入れいたしました。日本で数々の業績を上げて、日本に約三年滞在いたしまして、御夫婦とお子さん一人で三人でいらして、それで日本で生活をされたわけです。

 帯同者、この場合は奥さんが研究者で、日本で留学を受け入れたんですが、御主人の方が、新疆ウイグル自治区のニュースキャスターをやっているかなりレベルの高い方でありまして、この方が、日本に来て、帯同者に対する処遇が非常になっていないということで、その御主人は、東京ドームの清掃、そういったことをやられていて、本当に御苦労されているなと。ただ、このまま日本で研究は続けていられないということで、日本で業績を積んで、UCLAの方に留学されまして、そしてそこで、御主人の、帯同者の処遇も非常によくて、現在はグリーンカードを取得されてアメリカで生活されている。

 中国の研究者は、中国ではどうにもならない、日本を経由して、アメリカで最終的にはやるんだ、こういった経験を私はいたしました。

 こういった意味で、先生のお話は、本当にこれからの、日本も帯同者に対するしっかりとしたことをやっていかなくてはならない、このように思っております。

 先生にお伺いしたいのは、日本は、高度の技能や知識を持つ高度人材をふやすことと、労働移民は認めない、この二分法をやっておりますけれども、我が国の女性の潜在力を発揮させるため、そういう観点から、今、育児や介護のために就業できない女性が二百二十万人おられます、こういった点で、就業できる、国内の本当にこれから仕事をしたいという女性をサポートする意味でも、外国人の介護分野また家事の補助、こういったところでサポートを検討すべきと思いますが、先生の御所見をお伺いいたしたいと思います。よろしくお願いします。

高橋参考人 御質問ありがとうございます。

 私も、日本でこれから非常に少子高齢化が進む中で、労働者が不足していくといったときに、幾つかの対処の仕方があると思います。一つはやはり出生率を上げること、それから女性、高齢者、あるいはまだ十分な職についていない若者、この人たちを活用すること、それから三番目として外国人を活用していくこと、こういった選択肢があると思いますけれども、できることであれば、やはり国内の労働資源をフル活用することが必要だと思います。その最有力候補は女性だというふうに思います。

 女性がやはり外に出て活躍するためには、育児、家事あるいは介護、こういった面での家庭内での支援というのが不可欠だというふうに思います。そして、今、国内でそういった支援に従事する人たちが十分に確保できるのであれば問題はないと思いますけれども、もしそこが十分に量的に確保できないということであれば、そういった分野について外国人の方を入れるということも考えられることではないかというふうに思います。

 ただし、既存の枠組みを考えてみますと、議員御指摘のように、高度人材か、あるいは移民労働者、単純労働者かという二分法でございますので、こういった中に育児、家事支援をする方をどういうふうに入れていくかというのはなかなか難しいところだと思います。あるいは、先ほどお話があった、技能労働者についてもどういうふうに位置づけしていくのかということはいろいろ問題だと思いますし、こういった家事、育児支援の方たちを、では、既存の制度の中にうまく入るのか入らないのかということも含めて、私は、この外国人労働者の受け入れということについて、幅広く、二分法に限らない議論をこれからやっていくべきではないか。あらかじめ、受け入れるべきだとかそうでないということは私からは個人的には申し上げませんけれども、そういったことについての議論をタブーなくやっていく必要があるのではないか。

 もちろん、私は、個人的に、単純労働者を受け入れるべきであるとは全く考えておりませんけれども、今までの二分法ではない仕組みあるいは考え方をこれから議論していかなくてはいけないのではないかというふうに考えております。

三ッ林委員 ありがとうございました。

 私も、本当に先生のお話のとおり、これから外国人の受け入れ、こういった高度人材の受け入れはしっかりやっていく必要があると思いますし、また、日本の女性の活力をサポートする意味での外国人の育児また介護といった分野での就業、この点も検討していくべきではないかなと先生のお話を伺って本当に強く感じました。ありがとうございます。

 また、観光立国に向けた取り組みについてお話を伺いたいと思います。

 現在、インバウンド観光、外国人が国内に来るこのインバウンド観光は、日本にとって確実に需要の見込める、成長分野の一つであると思います。現在、日本の出国者数は世界で十位、アジアで二位、そして、日本の入国者数は世界で三十位、アジアで八位、かなり入国者数でおくれをとっているということで、観光立国に向けた取り組みとして何が最も重要な要件であるのか、またどういった取り組みが必要であるのか、この点について、安冨先生、高橋先生、お二方の参考人に御意見を伺いたいと思います。安冨先生からお願いします。

安冨参考人 お答えいたします。

 観光立国の今後の推進ということは、我が国にとっての活性化を図る上でも非常に重要だと思います。

 私の視点から申し上げれば、それを迎えるに当たって、今回、クルーズ船の入国審査等の迅速化等を検討されておりますけれども、さらに一層そういう面を含めるとともに、やはり、問題のある外国人の入らないような形での手続を周到に今後検討して構築していく必要があるというふうに考えております。

 以上でございます。

高橋参考人 まさに委員御指摘のとおりだと思います。

 私は、日本の持っている潜在力からしますと、今の一千万人の入国者、観光者、これはふえていますけれども、まだまだ少ないというふうに思います。日本の持っている、例えば食文化の豊かさ、あるいはホスピタリティー、南北に連なる気候の多様性、いろいろなことを考えますと、今の観光客の二倍、三倍を十分に呼び込めるだけの潜在力はあると思います。あるいは、特に地方の活性化ということを考えた場合に、この観光客の誘致というのは決め手の一つだというふうに考えます。

 したがって、あらゆる手を使って日本への観光客をふやすことが、経済活性化、社会の活性化、地域の活性化という観点から必要だと思います。

 その手だてですけれども、やはり、今私が申し上げた日本の持っている潜在力を生かすための取り組み、例えば、食文化の豊かさだとか、あるいは日本の文化の豊かさ、そういったものをいかにコンテンツとしてまとめて、とりわけアジアの諸国にアピールして、そしてリピーターを呼び込むことが重要ではないかというふうに思います。

 もちろん、観光客を大量に呼ぶことに関してはリスクもあるわけでございます。したがって、優良な観光客を何回も何回も呼んでくる、楽しんでもらうという観点が必要ではないかと思いますので、例えば、ビザを緩和して大丈夫なところについては、引き続きそういうことを進めていったらいいというふうに思います。

 以上でございます。

三ッ林委員 本当に示唆に富んだ御意見、ありがとうございます。

 安冨先生が言われた、治安はしっかり守るということで日本の魅力を出すこと、これが重要である。これは高橋先生も同じような御意見で、やはり、日本の食文化、日本に来たいと思っていただくこと、これが重要であって、今、自動化システムとか入国のいろいろな方法、あとビザの緩和とかがされておりますけれども、それで入国者数がふえるわけではない。やはり本当は日本の魅力を発信すること、そういったことであると思います。そういった観点から入管制度を見ていくということであろうと思います。本当にどうもありがとうございます。

 時間もないので最後の質問になりますけれども、JITCOの件について新島参考人にお伺いいたしたいと思います。

 不法残留の割合、これは、JITCOの役割は非常に重要であると思いますし、これから伸びて大きくしていくこと、これが日本の少子高齢化の中で本当にまた有効な手だてとなると思いますけれども、不法残留の割合と今後の具体的な取り組み、また不適正な監理団体、こういったことに対して今どのような取り組みが行われているのか、具体的に教えていただきたい、このように思います。よろしくお願いします。

新島参考人 技能実習についての不法残留と申し上げますと、失踪ということになろうかと思います。

 最近の失踪のデータでございますが、二〇一二年度で約千五百人でございます。トータルが十五万人でございますので、一%という状況でございます。国別では、先ほど申し上げましたが、中国が数的に多いので、やはりパーセンテージとしては中国が多い。その次がベトナムというようなことでございます。

 それで、取り組みでございますけれども、こういった要するに法の外に出るということでございますので、これにつきましては、我々、相手国政府との間では、やはり不法残留、失踪というのは技能実習制度の円滑な運営にとっては非常にマイナスであるということで、協議のときには強くこれは申し上げるということで対応しておりますし、各受け入れ団体、監理団体に対しましても、失踪した場合のマイナス面というような点につきましては我々としても周知をしている。

 どういったケースがあるかというようなことで、最近も、例えばネット関係のそういうものに巻き込まれるとか、いろいろ事案もございますので、そういった注意喚起を今しておるというところでございます。

三ッ林委員 どうもありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

江崎委員長 次に、遠山清彦委員。

遠山委員 公明党の遠山清彦でございます。

 まず、四人の参考人の先生方、きょうは、お忙しい中お出ましいただきまして貴重な御意見を賜りましたこと、私からも心から感謝を申し上げたいと思います。

 私は現在、公明党の法務部会長を仰せつかっておりますし、また、先ほど鳥井参考人からかなり批判をされました、外国人の受け入れ拡大の一環として緊急措置として行いました、建設分野に限定をした技能実習生の拡大の政策を立案した一人でございまして、後ほどまた率直な御意見を伺いたいと思っておるところでございます。

 それで、早速でございますが、各参考人に質問させていただきます。

 まず、安冨参考人にお伺いをしたいことが一つございます。

 これは本来、対政府質疑で政府に見解を聞いた方がいいかもしれませんが、参考人のお話を伺っておりましたら、要するに、外国人の人材を受け入れるのはいいんだけれども、入国の際に巧妙なうそを言って在留資格を得て入ってくるような外国人についての対処、これをしっかりしなきゃいけないということをおっしゃっておられました。

 私、同感なんですが、実は先日、こういう相談を受けたんですね。

 これは、中国系の日本人経営者が中華料理屋さんを経営しております。長崎県でしておるんですね。中華料理屋さんとして結構成功している経営者の方なんですが、一つ大きな悩みがあると。何でしょうかと聞いたら、自分の中華料理屋さん、何店舗か持っているんですけれども、そこのシェフとして契約をして、当然、その雇用契約を利用して日本に入国をしてきて、労働ビザをとって長崎に入ってきて、自分のお店で働く。

 ところが、私の記憶では、この五年間ぐらいで四、五名のシェフがある日忽然と消えてしまって、部屋に行ったら、人によっては、場合によっては、荷物はそのまま、身だけいなくなって、失踪してしまう。びっくりして、八方手を尽くして捜したら、東京都内の、自分の長崎の中華料理屋よりもいいお給料を出す中華料理屋のシェフにおさまっていた。

 本人は、当然、シェフで、いなくなったら困るという商売上の理由もありますし、自分の会社との契約で中に入ってきたわけでありますから、大変激怒して、そして、法務省の入国管理局に、自分との雇用契約で入国したのに、お給料が高いからといって失踪して東京の中華料理屋さんに勤めているということは非常に不義である、よって、この理由から在留資格を取り消してくれないかということを言ったら、それはできないということだったそうでございます。

 私、もちろん法務省の役人出身でもございませんし、こういう場合にどう対処するのか。何かテレビの法律相談みたいでございますが、要するに、どうも結構頻繁に、入るときのウインドーになった契約を事実上放棄して違うところへ行ってしまうようなケースがあるということでございまして、こういった問題については安冨参考人はどのようにお考えになるか、お聞きをしたいと思います。

安冨参考人 お答えいたします。

 今議員が御指摘になられましたような事案につきましては、私は承知しておりませんので、詳細についてどのようにお答えするのが適切であるのか、正直なところ非常に困っておるんですけれども、ただ、入国の段階では中華料理のシェフとして正規に入国をされておられるということでございますので、入管法上は問題はないのだろうというふうに理解しております。

 あとは、国内におきます賃金等の労働契約上の、あるいはお店とそのシェフとの間の契約の関係ということでございますので、それは、入管法上の問題ではない、契約の問題ということで、最初に入られたお店の方からすれば契約不履行だということで、解決される問題ではないかというふうに考えるところでございます。

遠山委員 恐らくそういう答えになると思っておりましたが、要するに、民間の雇用契約上の問題として法的に争いをするしか解決方法がないだろうということだと思いますが、外国人の受け入れが進みますと、こういった問題も、つまり、入るときにここの職場に行きますといいながら、実は別の職場を本当は目的にしていたということでトラブルが起こる可能性は十分あるし、鳥井さんなんかはもしかしたらこういう問題も扱ってきたのかもしれません。

 そこで、高橋参考人にお伺いをしたいと思います。

 参考人のお話の中で、一義的には高度な外国人材を念頭に置いた御発言だと思いますが、日本でどういうふうに外国人材を受け入れるかということについて、さまざま具体的に条件のお話をされておりました。東京は香港やシンガポールと競合している、特に外資系のかなり有能な高度な人材から見れば、アジアのどこかを拠点にと考えたときに、東京、香港、シンガポール等で競合しているというお話がありました。

 それから、私自身、イギリスに六年留学をして、向こうで修士、博士を取ってきたわけでございますが、その私自身の個人的な体験に基づいても、私のイギリス人の友人なんかは、日本に行って拠点をつくって働きたいんだけれども、先ほどおっしゃっていた生活環境、語学環境で大きな問題があると。

 高橋さんが御指摘になっていたのは、英語の表記が、日本の交通機関とかで進んできたけれども、学校、病院、スーパー、コンビニでは少ないということが一つあると思います。

 それから、もう一点、私がよく言われたのは、日本にオフィスを出したときに、一番彼らが欲しいのは、ありていに言います、英語ができる事務員だと。ところが、日本で、うちの会社で、うちの東京のオフィスで働く英語ができる人材というと、これもありていに言いますが、ハイスペックな人が多い。高学歴な、例えばアメリカで修士号を取りましたとか、イギリスで修士号を取りましたとかという人が手を挙げてくる。そうすると、オーバークオリフィケーションですから、学歴が高いので、それなりのお給料を上げなければ働く側も困るわけですね。

 彼らが欲しいのは、要するにコピーをしたり、電話の受け取りをやったり、本国との連絡をしたりする事務作業をする人で、英語がぺらぺらにしゃべれる人。こういう人材が日本は極めて少ない。香港やシンガポールはいっぱいいるんですね。

 実は、こういう観点で見ると、タイのバンコク。これは日本人の方は余り知らないんですが、国連機関のアジア本部が二十以上集積されているのはバンコクです。なぜバンコクなんですかといったら、物価の安さとかいろいろあるんですけれども、実はそのうちの一つが、高卒でも英語をしゃべれる事務員がいっぱいいるというんですね。

 だから、彼らが求めている人材というのは、日本だと、英語ができるといったら、今言ったように留学していて、高学歴で、ハイスペックな人ばかりが想定されておりまして、そういう人は条件面で合わない。アジアのほかの国で、国際機関が多いところとかあるいは企業がたくさん進出しているところというのは、実はそういう人材の供給ができるということを、私も友人から指摘されてなるほどなと思ったわけでございます。

 こういった観点も含めて、日本がこれから本当に高度な外国人材を受け入れていくときに、もちろん、まさに来週我々が審議する入管法の改正等で法的にいろいろと手当てするんですが、今私が申し上げたところは、法律を変えただけでは改善されない分野だと思うんですね。そういったところも含めまして、重ねての御答弁をいただくことになるかもしれませんけれども、日本でどういう環境改善をしていくべきなのか、少し深掘りしてお話をいただければと思います。

高橋参考人 にわかには深掘りできないと思いますけれども、一つ英語について申し上げると、日本は、中学校から、早ければ小学校から英語を教えようかという状況になってきて、学生の間に十数年英語を学ぶにもかかわらず、おっしゃったような、ハイスペックではないミドルのスペックに対応できる人材が少ないというのは、私は、やはり日本の教育の問題が大きいというふうに思いますので、国際センターとして東京なり日本を育てていくためには、英語を日常にこなせる人材をどれだけつくっていくかということを教育あるいは職業訓練の問題として考え直す必要があるのではないかというふうに思います。

 それから、生活という観点に立ちますと、御指摘もあり、私も申し上げたとおりですが、やはり、家族について何かあったときのお医者さん、あるいは学校の教育の問題、あるいは例えば住宅を賃貸するときとかそういうときに、本当に高度人材であれば難なく見つかるんでしょうけれども、高度人材の卵だとかそういう人たちがなかなか、自分の住むべき住宅、保証人が要るとか、そういうところは制度改正、今たしか行っておりますけれども、いろいろなところで障害に当たっているというふうに私もいろいろ伺っておりますので、そういった点を総合的に勘案して変えていくというような措置が必要ではないかというふうに思います。

 済みません、深掘りはできておりません。

遠山委員 貴重な御意見、ありがとうございます。

 続きまして、鳥井参考人にお伺いをしたいと思います。

 実は、私、さっきも申し上げた技能実習制度、先日政府でお決めになった、我々はその前に与党内で議論して、提言を国土交通大臣に届けたわけでございますけれども、その政策を策定する過程の中で、技能実習制度の今のさまざまな問題点について私どもなりに調査研究をさせていただきました。正直申し上げて、私は愕然といたしました。

 ある製造会社では、公には朝から夕方まで働いていることにしていたけれども、夜になると工場の遮光カーテンを全部閉めて、深夜一時、二時まで過酷な労働を強いていた。たまたまタイムカードが全部出てきて、私もそのコピーを日弁連の弁護士さんからいただいて見ましたけれども、ほぼ一カ月にわたって休日なし、朝七時半に出勤をして、大体終わるのが深夜の一時とか二時とか、そういう状況でございました。

 あれを見れば、まともに人間らしい生活をしているとは思えない状況に一部の研修生が置かれている実態というのがよくわかりましたので、よって、実は緊急措置を政府に提言するときには、とにかく、処遇ですとか人権ですとかに最大限の配慮をするようにということを繰り返し国土交通省にも申し上げた上で、あの政策を提言させていただいたところでございます。

 他方で、問題は尽きないという状況なんですが、鳥井さんはお話の中で、世界四十カ国、四千名以上の外国人で日本に来られた方を世話してきた、年間二百件以上の相談を受けているということなんですけれども、お伺いしたいのは、鳥井さんが今までそうやって外国人の滞在者を支援している中で、最も多い相談というのは何なのか。最も多い、またこれかというのは何なのかということをお聞きしたいということ。

 それから、特に先ほど申し上げた技能実習制度、一部、奴隷制度なんという御表現もありましたけれども、そういう表現を使うからには、これはひどいなというような事案があったかと思うんですね。ですから、鳥井さんの今までの御経験の中で、これはちょっとひど過ぎるというようなことを一つ具体的に教えていただければと思います。

鳥井参考人 御質問のあった二つについて、一つ目からお答えいたします。

 私は、これを長くやってまいりました。私どもの組合だけではなくて、首都圏は実は、外国人労働者が入れるといいますか、入っている労働組合があるわけですね。私は先ほども、私どもの組合は、アフリカ、南アジア、中国と申し上げました。あと二つの組合は、欧米諸国の労働組合、それから、もう一組合はラテンアメリカ、日系労働者ですね。

 この三つの組合、新橋と川崎にありまして、私どもは上野にあるんですけれども、この三つの組合で、ほぼ日本で働くカテゴリー、全てのカテゴリーと言ってもいいと思いますけれども、こういう方たちの問題を取り組んできているわけです。これはもう二十年以上続いておるわけです。

 労働問題というのは、これはもうはっきりしていまして、三つ、これはもうほとんど余り変わらないんですね。賃金未払いと解雇、そして労働災害です。

 ただ、外国人の場合には、ずっと長く労働した中では、交通事故だとかあるいは税金問題、こういうことの相談が労働問題とかかわって直接的に出てきます。

 近年は、組合員として長くいる者もいるものですから、子供の教育問題だとか、こういうことも課題になって相談に来る。そういう場合には、地域のNGOや地域の議員の皆さんにもお願いをしたりしてフォローしていただく、こういうようなことになっております。

 二つ目のとてもひどい事例ということですと、非常にスキャンダラスな事件はあります。これを挙げますと、びっくりするような事件というのがあるわけですね。とりわけセクシュアルハラスメントにかかわる事件では、とても表現できないような、事業主が特定の研修生、技能実習生を別のところに住まわせて日々通う、こういうような事例とか、これは最終的には、私どもで保護をして、裁判所に訴えて和解をしておりますから特定することはできませんけれども、そういうような事例があります。

 ただ、私はこういうスキャンダラスな事例を申し上げますけれども、ほとんどの場合、不正行為というものがあっても、ほとんどの社長さんたちはごく普通の方です。今申し上げたような方は特別な方です。これは確かに一部です、ほんの一部です。ほとんどの社長さんは、そんなに悪い方はいらっしゃいません。

 これはイメージしていただければわかりますけれども、大体皆さん、中小零細企業で、製造業で頑張っておられる方、農家の方々です。地域で本当にいいおやじさんだったりするわけですね。私もお会いして、なぜこの社長が、時給三百円とか、残業が一カ月に二百時間とか二百三十時間、こういう状態になっているんだろうということなわけですね。

 ですから、これはやはり構造的な問題というところに目を向けないと、ひどい事例を挙げてこれを何とかしようということではなかなか解決しないんじゃないかなというふうに思っている次第です。

遠山委員 ありがとうございます。

 また、鳥井さんのそういう日々の支援活動に心から敬意を表したいと思います。

 最後に、新島参考人に流れ的に自然に伺いますが、今、鳥井さんがおっしゃったこと、それから私がさまざまなところから情報提供を受けたいわゆる不正行為とか不祥事とかそういったもの、やはり一つ共通して浮かび上がるのは、当然JITCOとしては、そういうことはいかぬよと言っているわけですし、行為によっては完全に違法行為で訴えられるということなわけですが、ただ、今ほとんど団体監理型でやっていますよね。ですから、監理団体が、その傘下にある個々の企業がどういうふうに技能実習生を扱っているかということについて、きちんと目が届いていないんじゃないかという指摘が繰り返しなされております。

 私は、技能実習制度のさまざまなメリット、これを全て否定するつもりはありませんけれども、先ほど鳥井さんが紹介していたように、国際社会の一部から相当厳しい御意見があることも認識をしておりまして、これから来年にかけての技能実習制度のあり方についての抜本改革については、真剣に取り組まなきゃいけないなと思っているところでございます。

 そういったことも踏まえまして、現時点での御見解で構いませんので、JITCOとして、こういった不正行為や人権侵害等が具体的に報告されていることについて、また監理団体がきちんと監理監督できていないのではないかという御指摘について、どういう対応をとられているのか、お伺いをしたいと思います。

新島参考人 不正行為に対する対応いかんということでございますけれども、先ほども申し上げましたが、JITCOとしましては、年間約一万件ということで、かなりのパーセンテージになりますけれども、監理団体それから実習実施機関に対して巡回指導をしているということでございます。

 そういった中で、労働法が当然重点になりますけれども、いろいろな事案がございます。改善指導をして、そこで一応理解を得られればそこで終わりですけれども、これはひどいというような案件があれば、これは当然、関係行政機関に通報するという対応をとらざるを得ないということで処理しております。

 それから、先ほども申し上げましたが、母国語による相談というのもJITCO本部でやっております。そういう中で、そういう事案が持ち込まれた場合には、内部で議論しまして、対応をどうするか、これはやはり行政機関に任せるべきであろうということであれば、当然そういった対応をとっていくということでございます。

 監理団体の監理が不十分だという指摘がございます。これを受けましてといいますか、昨年総務省から勧告がございまして、それを受けて法務省におきましても、監査のやり方等については新たに基準をつくってしっかりやるようにという指導がなされております。

 JITCOといたしましても、こういった新しい監査の方法につきましてセミナー、講習会を開催したところ、我々が把握している監理団体は約二千団体ほどあるんですが、千を超える方からの参加があったということでございますので、監理団体もかなり関心は強いのかなというふうに思っています。

 そういったセミナー等を通じまして、不正行為というのはあってはならない話でございますから、対応してまいりたいと思います。

遠山委員 新島さん、JITCOとして最大限の努力をこの分野はしていただかないと、恐らく来年の抜本改革の議論では相当な抜本的な見直しを我々与党もせざるを得ないと思っておりますので、ぜひ御努力を強化していただきたいということを申し上げて、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

江崎委員長 次に、郡和子委員。

郡委員 民主党の郡和子です。

 四人の参考人の皆様方には、それぞれのお立場から御意見を御開陳いただきまして、本当にありがとうございます。

 私は、国会議員になって間もなく丸九年になるんですが、その前は田舎の放送局におりました。現場にこそ解があると思って、あちこちの現場を回って取材をさせていただき、番組をつくってきたという経緯を持っております。

 その点でいいますと、先ほどのお話の中で、鳥井参考人が、やはり現場にこそ解ありというふうなことでお話があったんじゃないかなと思っております。特に、日本の成長に資するために外国人を活用するというような、狭いそういう観点ではなくて、また、人を、外国人として、認めないかのような、監視をするというような見方ではなく、また、日本にとって都合が悪いというところを隠す、排除する、そういう視点から抜け出すことが重要であるというふうなことを言っておられまして、大変重要な指摘だなというふうに受けとめさせていただきました。

 また、実は、先週の当委員会におきましても、私、外国人の家事労働について私なりの意見を申し上げたわけです。

 そこで、まず、高橋参考人にお話を伺いたいのです。

 高度外国人材の受け入れ環境を改善するとともに、多くの我が国の女性の潜在力を発揮する観点から、家事の補助、それから介護の分野での外国人のサポート、これについても検討すべきというふうに提言をまとめられたわけですけれども、私は、女性を活用するためという前段があることについても疑問に思っています。

 つまり、家事や介護やさまざま無償ケアと言われるものがありますけれども、これは、実際に多くを担っているのは女性ですけれども、実は、その無償ケアを再分配するのは、ほかの国の女性たちではなくて、まずは男性もやるべきことだ、責任を負っている、そういうふうに思っているということであります。

 そういう意味におきましても、外国人に家事労働等のサポートをしてもらう、こういう提言に対しては、私は非常に疑問を持っているというふうにこの委員会で申し上げたわけでございます。

 しかも、外国人の家事労働者については、さまざまな問題や課題があって、ILOの百八十九号条約について言及をさせていただきました。

 高橋参考人にお伺いをいたしますけれども、この百八十九号条約というのを御存じでいらっしゃいましょうか。

高橋参考人 済みません、中身については存じ上げません。

郡委員 申しわけありません。

 実は、これは、家事労働がいろいろな労働の法の守りの中には入れられなかった、見えないところですることによってそれこそ奴隷的な働き方になっていたというような指摘もあって、これをディーセントワークにしよう、働きがいのあるしっかりとした労働として認めようということ、画期的だったと思うんですけれども、これが二〇一三年に発効しておりまして、日本政府もこれに賛成の票を投じているんです。

 こういうふうなこともしっかりと議論をする前提として持っていただきたいなというふうに実は思っているものですから、まず冒頭、指摘をさせていただきました。お許しをいただきたいと思います。

 また、高橋参考人らが、ことしの四月四日に、「持続的成長のためのグローバル化の課題」というふうに題して、経済財政諮問会議また競争力会議の合同会議の中で、中期的に目指すべきグローバル化の姿ということで資料を御提出されております。それを拝見させていただきました。「高度外国人材、技能のある外国人材が活躍できる環境の構築」で、技能のある外国人材とは具体的にどのような人材を想定しておられるのか、改めてお聞かせいただきたいと思いますし、このたび関係閣僚会議で緊急措置による受け入れが決まった建設分野というのは、この外国人材に入るのかどうかということをお聞かせいただきたいと思います。

高橋参考人 正確な定義は、私、今存じ上げませんが、一定の職業をこなしていく、あるいは仕事をこなしていく上で必要なスキル、技能を持っている人たちを技能労働者というふうに考えております。

 それから、建設分野ですけれども、この分野については、日本でかつて技能実習を受けて、そして技能をつけた方々、こういう人たちを対象に、また日本で働いていただくことだというふうに存じ上げております。

郡委員 私自身、この報告書というか、この資料を読ませていただいて、「高度外国人材」、これはポイントなどをつけていくということで大体のところは理解できるんですけれども、それと並列をする形で、「技能のある外国人材が」というふうになっている。この技能はどういうふうなものを想定されているのか、ちょっとわかりにくかったものですから、聞かせていただいたところでございます。

 また、高橋参考人、日経新聞のインタビューの記事を読ませていただきました。高い技能や知識を持つ高度人材をふやし、労働移民は認めない二分法を維持したまま、人手不足の建設業、製造業から看護、介護まで受け入れを拡充するのは難しいし、国際貢献が主目的の技能実習生の受け入れを無定見にふやすのも問題がある、新たな枠組みが急務だというふうに話されておられたと承知しています。そして、ドイツやオーストラリアでは労働市場テストを実施している、単純労働移民の受け入れとは異なる、日本もこうした制度を将来的に考えるべきだというふうにお答えになっておられました。その一方で、技能実習制度の抜本的な見直しとして、監理運用体制の強化、一層の拡充ということを提起されていて、監督強化ですとか、JITCOの機能強化、そういうようなことなどを挙げられているわけなんです。

 この間もいろいろとやりとりがあったかと思います。技能実習制度の適正化の施策というのは、これまでもたび重ねやってきたはずなんですね。しかし、なかなか不法が少なくならない、人権侵害もおさまっていないということを考えますと、なかなか、実習制度の抜本的な見直しとして拡充が求められているこの点についても、実効性が乏しいんじゃないだろうかと思うんですけれども、高橋参考人はいかがでしょうか。

高橋参考人 済みません、私は経済財政諮問会議の委員もやっておりますので、その委員として提言する立場と、それから民間の企業の理事長としての立場がございますので、ちょっと私見ということで申し上げさせていただきたいと思います。

 技能実習については、拡充という言い方はございますけれども、先ほど鳥井参考人が御指摘になったような点、私も常々感じております。

 国際貢献、国際協力が建前の制度が、今や日本の労働力を確保するための制度に変質し始めている。単純に今のまま拡充いたしますと、そのひずみがより大きくなっていくというふうに感じております。したがって、拡充することは必要なのかもしれない、すなわち、日本の労働力を確保するという観点での拡充は必要かもしれませんが、一方で、鳥井参考人が御指摘になったように、彼らを労働者として受け入れ、労働者として守るという観点をより強く打ち出さないと、このひずみはさらに大きくなるというふうに思います。

 したがいまして、制度を拡充といったときに、単純にボリューム的に大きくする、あるいは問題点を是正するということだけではなくて、この制度の持っている本質的な問題点のところに切り込む必要があると思います。

 したがいまして、本当にまだこれから検討しなくちゃいけない制度の見直しに際して、私見でございますけれども、例えば労働者を保護するという観点であれば、出入国管理の行政だけでは無理だと思いますので、厚生労働省の観点から、労働者の保護という観点からの監督であるとか、そういった省庁横断的な支援体制なりというものもつくっていくことが前提ではないかというふうに思います。

 それから、国際貢献ということですが、ここについても従来と少し変わってきていると思いますのは、例えば、相手国側からこういう人材を育ててほしいというニーズがあることだけが国際協力ではなくて、日本に技能、スキルの卵を持っておる人たちを呼んできて技能を育ててあげる、そして母国に送り返すということが、二重の意味で国際貢献になる。一つは、日本の企業が海外で活躍することにもそれはつながるわけですね。それからもう一つは、特にアジア全体での労働者のスキルを上げていくという観点での国際貢献という観点もありますので、国際貢献ということについてはより広い観点から見直しをしつつ、しかし、制度のひずみを是正するために技能実習制度というものは見直していく。

 ですから、私は、拡充といったときに、繰り返しになりますが、ボリュームを大きくする、その上で制度を少し是正するというような観点では多分いけないのではないのかな、より抜本的な踏み込みが必要だと、あくまでも個人的な見解でございますけれども、感じております。

郡委員 ある部分、すごく意を強くさせていただきました。私もそうだというふうに思います。

 このインタビューの中でお答えになっていらっしゃるように、無定見な実習制度の拡充はやめるべきだというふうにおっしゃっている、まさにそのとおりだろうなというふうに思います。

 今、何が起こっているかというと、この実習制度では、労働力が不足しているところに企業の皆さんたちが安価で労働力として受け入れている、その結果、今度は日本人の雇用もそれではままならなくなってくる、こういうことも起きているということをやはり直視していかねばならないんじゃないだろうかというふうに私自身思っているところです。

 さて、次に鳥井参考人にお伺いいたします。

 お話の中で、国連の自由権規約委員会等々からたび重なる勧告が出されていることについても触れておられました。在留外国人に対して、日本人と同じように住民として受け入れられてきたというふうには言いがたいということをおっしゃってこられたわけです。

 具体的にどのようなことが挙げられるのか、先ほどもちょっとお話にございましたけれども、幾つか例を御紹介いただければと思います。

鳥井参考人 私、先ほど、技能実習制度をめぐるさまざま具体的な事例について、スキャンダラスという言葉を使いましたけれども、実は、ほとんどの場合がいわゆる法違反があるわけですね。労働基準法違反というのはたくさんありますし、賃金ですと、時給三百円から五百円、しかも、これは残業代です。残業代というのは御案内のとおり二五%増しですから、それは一・二五で割ると一体幾らになるのか。こういう状態になっています。

 あるいは、強制帰国というのがあります。これは例えば山梨県で起きた事件ですけれども、技能実習生がドライクリーニングで技能実習をしていた。現在、ドライクリーニングというのは技能実習にありません。縫製で入ってきたわけですね。ですから、彼女たちは自分たちで勉強して、これはおかしい、残業代も三百五十円だ、これもおかしいということで、社長に、縫製をやらせてほしい、そして賃金もちゃんと払ってほしいということで、それまではアパートに戻ると。これは私どもに決して連絡があったわけじゃありません。自分たちで勉強して、そういう要求をした。

 そうすると、三日後に、朝、アパートのドアをドンドンドンとたたく者がいる。朝、七時過ぎです。十五人ぐらいが一斉になだれ込んできて、彼女たちをバスに乗せて空港から連れ去ろうとした。六人のうち三人が逃げて、近くの方が私の方に連れてきていただいて、保護をして、最終的にはこれは中国でも大変な問題になりましたけれども、そういうことがあります。

 あるいは、先ほど申し上げましたように、小さなセクハラといいますか、セクハラは、本当に残念ながら、社長さんたちは酔っ払って、夜、女性の技能実習生に、今現在、技能実習生は比率的には女性が多いですから、女性たちをからかいに来るということが起きています。

 それ以外に、労働災害になって、労災保険の手続がわからない、これは監理団体もわからないということで、けがをしたので帰りなさいと。これは建設です。つい最近起きた事例です。こういう建設の中で、労働災害というのは元請責任があるわけですから、大手の会社がしっかりと労災保険を掛けているにもかかわらず、そういう事件が起きると、仕事を切られるんじゃないかということで、技能実習生を帰してしまえというようなことが起きてしまう事例がたくさん起きているわけです。

 以上です。

郡委員 私自身も技能実習制度のさまざまな問題というのを聞かせていただいたところでありまして、ですからこそ、上に乗せる形での建設労働者の受け入れについては反対だということで、この間もこの委員会でもお話をさせていただきました。

 しかし、人が不足しているということはあるわけでして、それでは実際にどういうように対応できるのかについて、鳥井参考人、お考えがあればお聞かせください。

鳥井参考人 議員御指摘のとおり、私、先ほども述べましたけれども、人手不足は間違いなく進行しているわけですね。これは、私、労働組合の立場ですけれども、中小零細企業の社長さんたちとは長いつき合いですから、ざっくばらんにいろいろなお話をします。非常に困っています。とりわけ、東京オリンピック、そして東北の復興、こういうことを考えますと、たくさんの労働者が必要なわけです。

 このことについて、技能実習生ではなくて労働者として受け入れるということで言いますと、誤解を恐れずに言いますと、まず一つは、技能実習生という看板をまず変えるべきです。労働者として受け入れるということであれば、これは事業主もその覚悟ができるわけですね。そして、社会も労働者を受け入れているという覚悟ができているわけです。ですから、緊急措置として、特定活動というのは確かに一つの手だと思います。そのことについては、実際の中身を議論するということで進めていけばいいのかなと思います。

 そして、加えて一点だけ。これもまた誤解を恐れずに申し上げますけれども、我が国は、残念ながらアムネスティーは一度も行っておりません。三十年間、オーバーステイの労働者が確かに減少しました。しかし、減少したのは、ただ単に取り締まっただけではなくて、在留特別許可があったわけですね。在留特別許可でこの社会に定住した人たちがいるわけです。

 緊急措置で国土交通省が技能実習生を活用するといった場合に、帰国した技能実習生をも使うんだ、そうすれば手に職を持っているから即戦力だというふうにおっしゃっています。しかしながら、先ほどJITCOの参考人の方から資料の提示がありましたけれども、データの提示がありましたが、国に帰って四〇%近くの方が関連した仕事についておられるということですが、実は、この調査は、もともとの調査対象者に対する回答者が一七%です。そうしますと、関連した職についておられる方は八%です、実際の数字は。ですから、ここのところは、勘違いなさると、私は何回も中国やベトナムに技能実習で訪ねておりますが、ほとんど関係ない仕事をやっております。

 それから、そういう意味で今誤解を恐れずにと申し上げましたのは、実は、もう長くこの日本で建設関連で働いている外国人労働者がいるんですね。それが非正規滞在者なんです。

 確かに、非正規滞在者を全てアムネスティーといった場合には、国の制度としては問題があるのかもしれません、私は本当はそう言いたいんですけれども。しかし、一定の条件、例えば、事業主が証明をしておる、五年間以上の実務経験がある、そして非正規滞在、オーバーステイというだけの違反であるというような基準をつくって、オリンピックアムネスティーをぜひ実施していただきたい。そのような人権にかかわるアムネスティーがあると、オリンピックにふさわしい労働者が生まれてくるのではないかなというふうに思っております。

 以上です。

郡委員 なるほどというふうに私も思わせていただきました。

 私、実は、JITCOの新島参考人にもお話を伺おうと思ったんです。今、鳥井参考人が触れられた、母国に戻ってその仕事についているかどうかのアンケートの調査がございますけれども、これに対して、この数、実数は一体何なのだということをちょっと御説明いただこうと思ったんですけれども、鳥井参考人が触れられました。

 もう時間がなくなってしまいましたので、申しわけありません、質問も割愛させていただきますけれども、私自身は、日本人は、あるいは日本は、異文化体験というのが総じて乏しいんだろうというふうに思っています。私もそうだというふうにも思います。

 先ほど、来日外国人の犯罪は減っているんだというふうな御指摘もありました。ネガティブな意識というのを払拭して外国人を受け入れるということ、ともにウイン・ウインの関係になって、単に労働力だけでなくて社会全体を活性化していくんだという思想に、やはりここはいい機会ですから立つべきではないかなというふうに思っているということを申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

江崎委員長 次に、西田譲委員。

西田委員 日本維新の会の西田と申します。

 どうぞよろしくお願いします。

 参考人の皆さん、本当にきょうは、貴重なお時間、こちらへお越しいただき、貴重な御意見をいただいております。ありがとうございます。

 今最後、郡委員が時間がないということで新島参考人への御質問を割愛されましたけれども、実は私も同じ疑問点がございましたものですから、ちょっと頭がその方向に行っているうちに、引き取らせていただいて、私の方からもお聞かせいただきたいと思っております。

 制度の趣旨は、技術移転による国際貢献でございます。ですので、もう二十年近くにわたって運用がなされている中にあって、どれだけこの制度がその制度の趣旨を達成できているのかというのは、まさしく、日本で研修、あるいは今は実習でございますが、を終えた方々が本国に戻られてどのような状況でいらっしゃるのか、この検証なくしてこの制度の検証はできないというふうに思っております。

 私も、たび重なる法務委員会の質疑で、昨年もことしも実は伺わせていただいておりまして、法務省としてそういったことを把握されているのかといったことを質問してきましたが、そのたびに答弁はJITCOの方でなさっていらっしゃると。

 私、本来これは、JITCOの方でやることなのか、自主的にやっていらっしゃるのか、その辺はちょっとわからないのでございますけれども、まず数の問題でございます。

 一七%でございますね。検証しているとはなかなか受け取りにくい数字でございます。そういったことについて、状況を教えていただければというふうに思います。

新島参考人 先ほど申し上げました帰国後の就業状況の調査でございますが、この調査自体は、実は国からの委託事業で実施しております。独自の事業ということではなくて、国からフォローアップ調査ということで予算をいただき、その範囲で実施をしているという調査です。

 それで、今ほど回収率が低いというお話がございましたけれども、これは、実習生が帰るときに、帰った後でこちらに返送してほしいという趣旨の調査票を出します。したがって、その実習生が帰国後何カ月かたった後、今の状況を直接我々に回答するという形で集計したものです。

 したがいまして、総数一万四百四十五人でございますけれども、実際に回答があったのは千七百八十六ということでございまして、これをどう見るかということはございます。パーセンテージが低いからその分低いんだ、割合も低いんだと見るのか、標本数全体が全体の傾向をあらわしていると見るのか、ここはいろいろ議論があろうかと思いますが、限られた範囲内で調査をしたところこういう形であったということで、御理解いただきたいと思います。

西田委員 ありがとうございます。

 済みません、もう一度、その委託事業だというところについてお聞かせいただければと思うんですけれども、これはアンケートを委託されているということなんでございましょうか。

新島参考人 技能実習制度を運営するに当たっての全体的な委託事業を受けています。先ほど申し上げました巡回指導等もこれは委託事業で、その中にこのフォローアップ調査が入っているということでございます。個別ということではなくて、全体の中にこういう項目が入っているということで実施しておるものでございます。

西田委員 たび重なって申しわけございません。新島参考人の今の御説明をお聞きしておりまして、私、先ほど申したように、この制度の検証というのは、まさに、研修、実習を終わられた方々がどうされているかというふうに思うのでございますが、この考え方についてどのような御感想をお持ちなのか、教えていただきたいと思います。

新島参考人 フォローアップ調査につきましては、先ほど申し上げたことでございますが、これ以外にも、我々、相手方政府窓口といろいろチャンネルがございます、定期協議等をやっておりますので、そういう状況の中で、母国に帰った後の就職状況等については、一応できる範囲で把握をするということで、いろいろな好事例というのも具体的にあるわけでございます。お手元に配付しました資料の十三ページでございますが、復職して活躍しているとか、起業しているとか、いろいろな具体的な事例もございます。

 当然、こういった、効果測定という観点から見れば重要ですので、こういうフォローアップ調査に限らず、我々、日ごろの活動の中で、特に相手方の送り出し機関なり政府なりと情報交換しながら、把握に努めてまいりたいと思っております。

西田委員 ありがとうございます。

 ことし四月の当委員会の質問で、谷垣大臣に私が伺わせていただいた内容があるんですけれども、きょうも新島参考人の方から国の内訳についてのお話がありました。中国が大体八五%から今はもう六九%、約七〇パーでございますね。減っているとはいえ、引き続き、依然として大多数が中国からだということでございます。

 ということは、私は、今のこの技能実習制度というのは、言葉をかえれば、技術移転による国際貢献だというふうに言えば聞こえはいいんですけれども、中国への技術移転による中国への貢献だという実態になっているというふうに思うわけでございます。

 実際、中国というのは、報道ベースですけれども、昨年は無人探査機が月面にまで着陸しているような国でございまして、そういった国に技術移転で国際貢献をする必要がどこにあるのかというふうに率直に思うわけでございますね。

 そういった意味から、この制度をもう一度考えていく必要があろうかというふうに私は実は思っております。参考人の御感想をお聞かせいただきたい。私は、そういう今中国に偏っている状況、これは、中国への貢献制度と見られてもおかしくない状況になっているというふうに認識するんですが、参考人の御意見があればお聞かせいただきたいと思います。

新島参考人 特定の国に偏っているのではないかという御指摘でございますが、この技能実習制度そのものが民間ベースの受け入れでございますので、国別に受け入れ数を定めるというような仕組みになっておらないわけでございます。

 具体的には、送り出し機関と受け入れ機関との間の協定でボリュームが決まるということでございまして、先ほど申し上げたように、十五の国とやっているということでございます。

 最近の傾向は、先ほど申し上げたように、八割以上あったのが今七割を切る状態だということで、この傾向は、多分これからも少し続くんだろうというふうに思っております。

 やはり、国内でのニーズ、海外進出企業がどういう国にターゲットを絞るかということとの兼ね合いもあろうかと思います。あるいは、それぞれの相手国の経済水準、賃金格差がどういう状況にあるかというようなことを踏まえた動きだと思います。

 中国について、途上国なのかという御指摘がございますけれども、中国といっても、かなり広い範囲で経済活動をやっておりますので、業種によりましては、やはりそういったニーズはあろうかと思いますし、日本の企業も現地に進出をしているわけでございますので、そういった観点から見れば、必ずしもそれが全く不適切ということではなかろうと思います。

西田委員 ありがとうございます。

 今、制度改正の議論が盛んですので、引き続き、そういった観点からも私は意見を言っていきたいなというふうに実は思っております。

 済みません、実習生にある程度特化しての質問になってしまっておりますが、次に、きょうは、高橋参考人からも影の部分についてのいろいろなお話がありましたけれども、それは決して影ではなくて、制度そのものなんだというふうなお話でございました。

 私も、個人的な知り合いの中で、技能実習制度、もしくは研修制度のころから長年活用されていらっしゃる企業さん、何軒も、何社も存じ上げておりますし、受け入れの団体さん方との交流もあるわけでございます。中には、完全に安価な労働力のみという発想で受け入れていらっしゃる方々もいらっしゃいます。あるいは、来る研修生もしくは実習生も、単に出稼ぎ、単純に出稼ぎという感覚で来ている研修生もおりました。失踪した研修生、実習生もおりました。

 どういうことかといいますと、こちらに来る前に本国で借金漬けになっているとか、あるいは、来て、中国人でございましたが、今もらっている金額よりも高い金額をもらえると。来ると、やはり一定の中国人ネットワークにあって、それにひっかかるんですね。そうすると、おまえ、一日そこでやっても一万円ももらえないんだったらこっちに来いと。こっちに来いというのが、実はアンダーグラウンドな業界であったりとかすることもあるやに伺いますし、私は、やはり、この制度が持っている改善していかなければいけない点というのは、いろいろなところに要素があろうかというふうに思っております。

 制度そのものといった問題意識というのは私も理解するものでございますが、では、制度をなくせばいいのかというと、なかなかそういうことではないのではなかろうかというふうにも思います。やはり、運用の実態をきちんと見きわめて、しかるべき改善策をやっていかなきゃいけないというふうに思います。

 この問題は、実習生に問題がある場合もありますし、受け入れ企業に問題がある場合もありますし、監理団体に問題がある場合もありますし、もしくは送り出しの団体に問題がある場合もあります。それぞれの類型をしっかりと把握して適切にやっていかなきゃいけない。そういった意味で、やはりJITCOさんに求められる役割というのも非常に多いんだろうなというふうに思っております。

 さて、実は、監理団体についてちょっと伺いたいと思うんです。

 監理団体といいましても、大抵、中小企業の事業協同組合さんが多うございます。よく、外国人研修生、実習生受け入れのために事業協同組合をつくりますというお話があるんですけれども、では、成り立つのかといったときに、大体、実習生百名入れると成り立つと言われていますね。なぜかといいますと、実習生一人当たりにモニタリング料で月一万円取るんだ、そうすると、協同組合には月百万円入って、それでようやく、事務員さんであったり巡視員もしくは営業の方の人件費も出て、事務所代も出て、だから、百人何とか実習生を入れれば成り立つから頑張ろうというお話を聞くわけです。

 私は、制度の発展の中で、何でもっと商工会議所さんとか商工会さんが技能実習制度を活用しなかったんだろうかというふうに率直な疑問を持っておりました。当然、監理団体になれるというところで、商工会議所、商工会さんがなれるわけでございますし、私は、そういった既にある団体さんが外国人実習生、研修生を受け入れるというふうにやる方がよっぽどスムーズであろうかというふうに思っていたわけですけれども、新島参考人、その辺、何か分析をされていらっしゃったら、ぜひ教えていただきたいというふうに思います。

新島参考人 受け入れ団体であります監理団体の種別でございますけれども、協同組合型というのがやはり相当数ございます。圧倒的多数が協同組合型ということで、ほかに、商工会とか商工会議所、公益法人というようなことでございます。

 協同組合自体につきましては、それぞれの根拠法がございます。それに基づいて設置をされて、その事業の中で技能実習生受け入れ事業等があるというふうに理解しておりまして、実習生受け入れのためだけの協同組合というのは、本来、協同組合としては成立しないはずでございます。

 そういったことでございますので、我々としましては、協同組合の設立に当たっての適切な取り扱いと申しますか、そういったものが求められると思います。当然、これ自体は非営利ということですから、これで何か利益を生み出すという趣旨の団体ではないというふうに理解をしてございます。

西田委員 ありがとうございます。

 それでは、ちょっとここからは、一旦、実習生を離れたいと思いますけれども、安冨先生に質問をさせていただきたいと思います。

 昨年のこの法務委員会の質問で、私、法務省として不適正な入国管理があったんじゃなかろうかという質問を実はいたしました。個別の案件なのでございますけれども、イタリアで首相暗殺事件を起こしたテログループ、赤い旅団というのがあるわけですが、そこの理論的支柱、精神的支柱と言われたスターリン主義者のアントニオ・ネグリというのがおりました。何とびっくり、我が国に昨年四月、入国をしたわけでございますけれども、イタリアでは強盗傷害で実刑判決を受けているわけでございます。

 そういった入国管理の実態があるということの中で、この国は本当に大丈夫か、水際での不適格な外国人の防止が果たして本当にできているのか。安冨先生は先ほど、それぞれの機関との情報の共有であったり、しっかりとやっていかなきゃいけないということをおっしゃいました。まさしくそのとおりでございますが、今の我が国の入国管理体制をそういった面についてどう御評価されていらっしゃるのか、お聞かせいただきたいと思います。

安冨参考人 お答えいたします。

 今のケースについては、私、実は、恥ずかしながら存じてございません。

 仮に、万が一、そういう外国での犯罪を犯した人が我が国に入ってくるということは、これは水際でとめないと絶対にいけないことだというふうに思います。

 先ほど申し上げましたことと若干重複いたしますけれども、これは、ICPOなり、あるいは外務省、あるいは警察機関を含めて、全世界的にも、あるいは国内機関も、諸機関が情報の共有をするというところで、やはり入国の審査に十分な資料提供がされること、これが第一だと思います。

 ただ、現状といたしまして、私も聞いているところですけれども、必ずしも今そういった情報が十分に共有されていることではないということは恐らく実態としてあるんでしょう。それがこういう結果になったのだろうと思います。

 これは、そういう意味では、今のようなネットワーク社会においては情報共有ということを一層徹底するべきだというふうに私は考えます。

西田委員 ありがとうございます。

 高橋参考人にお聞きしたいと思います。

 高度外国人ということがございました。高度人材獲得ということでございますけれども、先ほど来、例えば語学のお話があったりとかしておりますけれども、在留資格の面で、高度人材獲得、我が国は今出おくれているというお話がありました。

 高度人材獲得に向けて、特に在留資格の面で、もっとこうであればなというようなところがございましたら。例えば、昨年私は、法務委員会の視察でロスの総領事とお話をしていたんですけれども、ロスの総領事は二重国籍を早く認めてくれないかというようなことをおっしゃるので、これはちょっと難しいなと思いながらお話を伺っておったんですけれども。

 実際、高度外国人材獲得に当たって、やはりそういったことも一つの要素として考えられるのか、もしくは、ほかにも何か在留資格の面でどうかという点がございましたら、教えていただきたいと思います。

高橋参考人 高度人材が日本に在留していただけるというのは、私は、非常に日本の競争力を高める上で有益なことだと思います。

 ただ一方で、従来ですと、在留資格を取るといろいろな優遇制度がなくなってしまうということがあったと思います。ですから、在留資格について、ここでは新しい資格をつくろうという話になってきたんだと思いますけれども、私は、基本的にはそういう方向は正しいのではないかというふうに思います。

 それから、日本に滞在するといったときに、やはり日本は非常に労働の流動性が低いという特殊性がありますので、例えば、一旦就職ができればずっといくけれども、なかなか見つからない場合には非常に生活も困ってしまうとかという状況だと思いますので、そういったところにも十分配慮してあげるということが必要なのではないのかなというふうに思います。

西田委員 ありがとうございます。

 最後の質問でございます。安冨参考人と、そしてもう一度新島参考人にお聞きしたいと思っております。

 きょう、実は、参考人の方で実際に受け入れ団体の方にも来ていただこうと思っておったんですけれども、皆さん出たがらなかったんですね。なぜかというと、こういったところに出て何かいろいろ言うと、生意気だということで今後の受け入れに支障を来すんじゃないかと心配しているんだなんてことをおっしゃって、では、実際どういったことを御要望されますかといったら、やはり入管の審査の基準の明確化だというようなことをおっしゃっているわけでございます。やはり裁量行政で非常に曖昧だという中で、認められるケース、認められないケースのばらつき、これは何とかならないかとおっしゃいました。確かにそうなんだろうなというふうに私も思います。

 ですけれども、一方で、法務省の入国管理行政というのは、外国人をどんどん受け入れましょうという目的のためにやるものでは決してないというふうに思うわけでございます。適正な外国人、不適格な外国人の峻別といったものをきちんとやっていかなきゃいけない。そういったことを考えれば、今の入国管理行政というものに一定の裁量の幅というものをやはり継続して持っていただかないといけないんじゃなかろうかというふうに思うわけでございますが、この点について、新島参考人と、そして最後に安冨参考人に御意見を頂戴したいと思います。

新島参考人 入国に当たっての基準ということでございますが、私が申し上げるのもおかしいんですけれども、現在の仕組みを申し上げます。

 法務省の省令によりますと、具体的に基準が決まっているわけですね、上陸基準省令という形で、こういった要件が必要ですと決まっておりますので、その範囲の中での判断の話というのが多分あるのではなかろうかと思います。

 相手方の政府窓口と議論する際に、やはりこの点は言われることもございます。どういう人が入れて入れないのか明確にしてほしいという話はあるんですが、それは法務省の省令で具体的に決まっておりますということで一応御理解はいただいておるんですが、そういったことで規定をされている、そういう仕組みになっているということでございます。

安冨参考人 お答えいたします。

 今の参考人の回答されましたところと重複する部分もあるんですけれども、まず、入国審査の場面での判断というところでは、私も先ほど申し上げましたように、短時間のうちに処理をしなければいけない。しかし、そこに至るまでの過程で、適切なる資料、情報というものが入国審査官のところに行っていれば、そこで審査ができると思うんですね。

 たび重なって申しわけありませんけれども、やはり、情報を集約して、入国審査のためのインテリジェンス機能を高めるということの促進を今後していく。ルールとしては法務省令なりなんなりでつくられていたとしても、それを現場で動かせるためには、いわばエビデンスといいましょうか、そのルールに当てはめるための資料、これが必要だと思います。そのための情報を適切に収集して、窓口で適切なる裁量運用を図るということ、これが必要なんじゃないかなというふうに考えます。

西田委員 時間でございます。

 終わらせていただきます。

 鳥井参考人には質問できなかったことをおわび申し上げます。申しわけございません。

江崎委員長 次に、椎名毅委員。

椎名委員 結いの党の椎名毅でございます。

 本日、四名の参考人の先生方、大変御多用の中、このような機会を設けていただきまして、貴重な御意見を御陳述いただきましたこと、まずもって私からも感謝を申し上げたいというふうに思います。

 私からは、幾つか伺いたいことがあるんですけれども、まず最初に、高橋参考人に伺います。

 日本が経済成長していくために、外国人、特に高度の外国人を受け入れるということは非常に有意義なことであるという趣旨のお話をいただきました。しかし、今現状において、日本は人材獲得競争に負けているというようなお話もあったかというふうに思います。そういった観点から、私が少し興味を持っている外国人の受け入れ、特に留学について伺いたいんです。

 昨今、日本に留学をしてくれる方というのは、それなりに一定数いるんだと思います。しかし、留学を受け入れるというのは、これもやはり都市間競争なんだというふうに思います。今、私が学生だったころに既に言われていたことだったと思いますけれども、日本に留学する人は大体二流で、一流の人は大体アメリカに留学をする、一・五流ぐらいの人がイギリスに留学をする、大体そういうことを昔から言われていたかなというふうに思っています。

 今現在、日本人の高校生が、例えば、灘高を出て東大に行かずにエールに行く、筑駒を出てハーバードに行くとか、こういう人たちが既に出てきています。日本人の高度人材になり得る方々が既に日本の大学というものを見捨て始めている中で、日本の大学で留学を受け入れていくということ、これが果たしてどうなのかというところは非常に大きな課題だというふうに思っています。東大が全科目、アンダーグラッドで英語化をするというような話が報道されたが、にわかに否定されたりとか、迷走している部分も結構あります。

 今後、高度人材を受け入れていくためには、やはり大学の学生の時代から受け入れて、育て上げていき、そして日本で働いてもらう、こういうスキームをつくり上げなきゃいけないと思うんですね。そうすると、日本の大学の英語化を含めて、国際化を図っていくことというのは非常に重要だと思いますけれども、こういったところについて、高橋参考人の御意見をいただければというふうに思います。

高橋参考人 御指摘のとおりだと思います。

 日本に来る留学生の数、質ということを考えた場合に問題になるのは、やはり日本の高等教育機関に来て本当に一流の教育が受けられるのかということと、もう一つは、将来就職がきちっとできるのか、ここが非常に大きいと思います。

 したがいまして、学力という観点からは、やはり日本の高等教育の質をさらに上げていくということをしないと、委員御指摘のように、日本からの人材流出も招いてしまうということだと思います。したがって、国内人材であれ海外人材であれ、超一流の人材を日本に集めるために高等教育の質を上げる必要があるというふうに思います。

 ただし、超一流でなくても、いわゆる一流あるいは一流半の人材でも日本にとってこれから非常に有益だと思いますので、そこは超一流だけということで狭く考える必要はないというふうには思います。

 それから、もう一つは、やはり日本で就職できる環境、ここは非常に必要だと思います。一方で、日本の企業を考えてみますと、労働力不足が非常に深刻になってきて、いわゆる工場労働者だけではなくて中間管理職も不足してきているという観点に立つと、例えば海外で日本の企業に就職した人、そういう人たちを日本にもう一回研修等で連れてきて、そこで磨いて、また母国に戻してあげて、結果的に、中堅人材、グローバルな人材を育てていくとか、そういう観点もあると思いますので、ぜひとも、高度人材の卵である留学生を出しも入りもふやすということで政策を集中していく、それから、その裏側で日本の教育の質を上げていくということが必要ではないかと私は思います。

椎名委員 ありがとうございます。

 先ほど遠山先生も御指摘していましたけれども、必ずしも高スペックでない英語をしゃべれる人というのもそういうニーズがあるというのは、私自身も非常にいろいろな方々から指摘をいただくところでして、そういう意味で、超一流からそうでない人たちまで、さまざまな方々を日本にどんどん受け入れて日本で教育をしていくというのが非常に重要なのではないかなというふうに思います。

 そういう点に関連してもう一点なんですけれども、国際的に著名な大学の誘致というのを日本でやっていくべきだと僕自身は思っているんですね。

 インシアードというビジネススクールがフランスにありますけれども、これがアジア・キャンパスをつくろうとしたときに、一回東京を候補地に挙げたんですね。しかし、最終的にはシンガポールに行きました。

 シンガポールは、国際的に、高度な大学の誘致をするというプログラムをしております。その結果、何が起きているかというと、インシアードという世界で最もすぐれたビジネススクールの一つだったり、シカゴ大学のビジネススクールだったりというのがアジア・キャンパスとしてシンガポールにあったりします。さらには、シンガポール国立大学、NUSというのがエール大学と提携プログラムをやったりしています。

 こういった形で、日本に高度人材を受け入れるという過程の中で、学校という組織そのものまで受け入れていくということまでやっていかなきゃいけないと僕は思っていますけれども、もしよろしかったら、引き続き、高橋参考人にコメントをいただければというふうに思います。

高橋参考人 当然、そういうことも考えるべきだと思います。

 ただ、前段階で、今ITの社会でございますので、例えばカウンターパート、海外に非常に優秀な大学を見つけて、そこと共同事業をするとか共同単位を取れるようにするとか、たしか、シンガポールはそういうこともやっていたというふうに思いますので、誘致だけではなくて、海外の大学との交流を深めていくことで学生、教員ともに交流させること、そこも含めて必要ではないかというふうに思います。

椎名委員 ありがとうございます。

 少しずつ進んではいると思いますけれども、加速させないと、本当に人材獲得競争に負けてしまうと僕は思っておるので、結構危機感を持っております。

 次に、安冨参考人に伺いたいと思います。

 先ほど、鳥井参考人から、非正規在留者という方々が地域社会の中でかなり大きな影響力を持っているという御指摘があったかというふうに思います。私自身も、知人の中で、障害のある方だったりして、決して、結婚のマーケットの中で、有利にお嫁さんを探していくことができるような方ではないような方という意味なんですけれども、そういう方々が、オーバーステイだったり資格外労働だったりをしている外国人の方々と結婚をしたりしている例というのを数多く見ていたりするわけですね。

 こういった方々は、悪い人もいますけれども、他方で、結婚をして、そういった障害のある方だったり、要するにハンディのある方々の生活の面倒を見てくれたりして、日本の方々に非常に役に立っている部分もあるという実例を幾つか見ていたりするわけです。

 やはり、こういう例を見ると、必ずしも、オーバーステイだったり資格外活動、要は、投資活動とかいって実はパブで働いているみたいな、こういうようなことだったりするわけですけれども、そういったものを必ずしも厳格に取り締まるということだけが解ではないのではないかというふうに思ったりもするわけです。

 ぜひ、安冨参考人に、例えば特別在留許可を柔軟に認めていくだったり、こういった非正規の在留者、滞在者の方々に対するお考えというのをいただければというふうに思います。

安冨参考人 お答えいたします。

 今委員御指摘のとおり、さまざまな形での非正規在留者の方がいらっしゃることは承知しております。中には、日本の社会生活の中になじんでおられる、また、いろいろな日本人の方との関係も、深い関係をお持ちの方もいらっしゃるということも承知しております。

 問題は、不法滞在ということに形式的には当たるわけでございますので、ただ、それを機械的に取り締まって、そして退去強制をするということではいかがなものかなというのは、私もそう思います。今委員御指摘のとおり、特別在留許可等の柔軟な対応というようなこともあっていいんだろうと思います。

 やはり、そこには、本当に、そういう意味で、社会に打ち解けて、社会の中で、日本の中で暮らしていらっしゃるという方と、中には、そうではなくて、あくまでも偽装で、自己の日本にいたいという理由で、何らかの偽装工作をされて不法滞在しているという外国人の方もいらっしゃると思います。

 そういう意味では、まさに特別在留許可を出すかどうかということの法務大臣の裁量でございますので、そこらあたりの的確なる運用ということがここの課題ではないかというふうに思います。そういう意味で、個別の事案について、個別に適切に入管当局が対応していかれるということを私は期待しております。

椎名委員 ありがとうございます。

 済みません、ちょっと重ねてなんですけれども、それを、一定程度、何かルール化するとかというところまで考える必要ということ、考えることというのはできるんでしょうか。それとも、個別的な事情を重点的にきちんと判断するためには、やはり裁量が広い方が望ましいとお考えなんでしょうか。

安冨参考人 これは私の私見でございますけれども、ルール化するということは、どうしてもそこには硬直化を招きます。そういう意味では、今の個別の事案に柔軟に対応できるというふうにするということでは、今のような制度のまま維持されていてよいのではないかというふうに考えます。

椎名委員 ありがとうございます。

 次は、技能実習生の話について伺いたいと思います。

 鳥井参考人のお話は、まさに現場の事実をお語りになっていて、非常に感銘を受けたところでございます。

 私自身も、そもそも、名目である国際貢献と、それから実態である単純労働者の受け入れという、この実態の乖離について非常に指摘をしてきて、これをさっさと廃止して、単純労働者の受け入れという形にかじを切った方がいいというふうに思っています。

 その中でも、先ほど鳥井参考人が御指摘されていたところについてちょっと深く幾つか聞いてみたいんですけれども、不適正事案と俗に言われているような事案の中で、いろいろな事案があるとおっしゃっておりましたが、その中で、先ほどお答えの中で、大半の人が実はいい経営者なんだ、非常にいい人なんだというふうにおっしゃっておったかというふうに思います。

 こんないい人がなぜそんな時給三百円とかで労働者を搾取しなきゃいけないんだというふうにおっしゃっておりましたけれども、なぜそういうことが起きてしまうのかというところについて、恐らく、多分そういった実施機関の方々にもいろいろインタビューをされていらっしゃると思うので、ぜひ、そういった優良な経営者の方々がなぜ、パスポートを預かったりとか強制貯金をさせたりとか、さまざまな労働法違反のようなことをしているのかというところについて伺えればというふうに思います。

鳥井参考人 御質問のあったことなんですけれども、つまり、これはやはり制度的な問題なんですね。

 経営者はみんないい人なんです。しかも、我が国はすばらしい労働法を持っているわけですね。技能実習生には労働法が適用されるわけなんです。あるいは、例えば中国であれば、中国にも労働契約法、これは今の日本の労働契約法よりもある意味ではいい法律ができています。このようなものがどうして働かないのかということなんですね。それは構造にあります。

 本来、労働基準、労働条件は、個別の労働契約でまず決まるわけです。ですから、受け入れておられる、今の言葉で実習実施機関、つまり企業、農家と技能実習生との労働契約で決まるはずです。この労働契約は入管に届け出されております。この内容に法律違反があるわけじゃありません。ところが、この技能実習生をめぐって、この制度の中で、送り出し機関、送り出し会社というものまであります。これと別の契約を結んでいるわけですね。あるいは、送り出し会社、送り出し機関と監理団体の間で契約を結んでいるわけです。そして、監理団体と実習実施機関の間で、表向きの契約と実際は違った契約、口頭での契約もあります。これらががんじがらめになって大変なことになっている。

 ですから、一つ一つを捉まえてみますと、私は送り出し機関にも行ってきましたけれども、送り出し機関の方は、やはり送り出した実習生は適正に扱われてほしい、そうでないと、今まで長くやっておりますから、地域での信頼が失われてしまうんだと言われる方もいらっしゃるわけですね。しかしながら、それ以外の契約がいろいろがんじがらめになって、いろいろなところでお金を抜いてしまうということもあってこういうことが起きているということになろうかと思います。

 ですから、この制度は一日も早くやめて、いわば善良な社長さんが善良な社長さんとしていていただけるような制度といいますか、労働契約で決めていくという制度に変えるべきだろうというふうに思っております。

椎名委員 ありがとうございます。

 引き続き、技能実習生について、新島参考人に伺いたいと思いますけれども、先ほど来、皆さん、効果の判定という話について伺っていらっしゃいますけれども、ちょっとそれをさらに私自身も伺いたいと思います。

 この技能実習制度自体は、一年目で二級に切りかわるそのときに技能検定試験を受けるわけですけれども、最後、その三年目を終了したときに一応、技能検定試験三級レベルに受かることが相当であるというふうにされているはずだと思いますけれども、しかし、実際この技能検定レベル三級の試験を受ける人というのはほとんどいないというふうに聞いています。

 先ほど鳥井参考人もおっしゃっておりましたけれども、実際に母国に帰られて仕事をしているというその仕事の内容自体は研修した内容とは全く違う仕事をしている人が結構多いと。参考人からお出しいただいた資料でも、帰国後の就職先における地位とかフォローアップの調査ということですけれども、回答数が千七百しかないんですよね、千七百八十六。帰国した技能実習生の約半数は来日前より地位向上と書いて、「n=807」と書いてあるんですね。

 でも、先ほど、制度が始まってから二十年間で全体として八十万人という数字を挙げていただいたかというふうに思いますけれども、こういった方々が、八十万人全部とまではなかなか言えないですけれども、きちんとフォローアップをするための体制づくりというか、そういったところまできちんとできているのかというところと、それで、実際に、そのJITCOの方々、それから、国の方含めてですけれども、現地で実際にヒアリングをした上でこういう調査結果を出しているのか、ちょっと教えていただければというふうに思います。

新島参考人 先ほど申し上げましたように、この調査自体は郵送で調査をしておりますので、ただ、国からの委託ということで調査しておりますけれども、この調査の仕方についてはいろいろなことがあり得ると思います。場合によっては現地へ出向いて調査するということもあり得るでしょうし、もっと母数をふやすということもあろうかと思います。

 ただ、現状はこういう状況でございまして、これでいいと我々思っているわけではありませんけれども、技能実習の成果が上がるように、我々としても、これはある意味では制度の本来の趣旨でございますから、ここはきちんとやっていくべきだろうと思います。

椎名委員 ありがとうございます。

 時間も参りましたので、最後の質問になりますけれども、私自身は、技能実習制度そのものの結構根本的な問題点の一つに転職ができないことというのがあるというふうに思っています。

 先ほど、遠山先生の御指摘の中で、きちんと労働ビザをとって働いていた中国人のシェフが別のところに行ってしまったということがあったかと思いますけれども、外国人技能実習制度については、基本的には、ここの実施機関でその研修をするとなると、そこから逃げようがないわけですね。やはり、そういったことというのは大きな弊害としてあるかと思いますけれども、最後に、鳥井参考人に、職場を変えることができない、移転の自由がないというところに対して、どういった問題があって、どういったことをお考えになるか、御意見をいただければというふうに思います。

鳥井参考人 私たちのこの民主主義社会の労働契約の根本原則というのは、労使対等原則というものがあるわけですね。これは、この日本社会、日本だけではなくて、民主主義社会における最も大切な柱の一つだと思います。この労使対等原則が働かないのが奴隷労働となるわけです。一つ一つの労働条件が、賃金が安いだとか、住んでいる寮が汚いだとか、そういうことを奴隷労働といっているわけじゃないんですね。つまり、対等ではないということのうちの最も大切なものが、足かせがあるということです。つまり、逃げることができない。

 先ほど一%という数字が出ました。これは、世界的に見て、こういう制度の中で、いわゆる制度外に出た者が一%というのは非常に少ないです。しかも、失踪ということですから、失踪というのは、私どもが、不正行為があって保護した者も、事業主が失踪届を出しますと失踪数にカウントされてしまいます。ですから、そういう数字だということもお含みおきいただきたいなと思っております。

 企業移動の自由というのは、どこへでも行ってしまっていいという意味ではありません。労働契約が、新たな、労働条件が非常に悪い、あるいは事業主が非常にまずいことを行う、このときに、手続をとって、同業種の、同じ職種の企業に移動する自由を与える。つまり、手続上、そういう手続を持つということが、大切な、この制度上でいいますと、今すぐできることとすれば、制度が厳正に運営される一つの柱になるかもしれませんね。

 以上です。

椎名委員 どうもありがとうございます。

 本日、本当にお忙しい中、ありがとうございました。

 これで終わります。

江崎委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 きょうは、特に参考人の方々には、貴重なお話をいただいて、本当にありがとうございました。会を代表して、心から厚くお礼申し上げる次第であります。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

 どうぞ御退席ください。(拍手)

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

江崎委員長 速記を起こしてください。

     ――――◇―――――

江崎委員長 次に、内閣提出、出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。谷垣法務大臣。

    ―――――――――――――

 出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

谷垣国務大臣 出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 経済のグローバル化や少子高齢化の中で、今後、日本経済を新たな成長軌道に乗せるために、高度の専門的な能力を有する外国人材の受け入れを促進することが求められております。また、我が国の国際化の進展とともに、観光立国実現に向けて官民一体の取り組みがなされた結果、昨年の外国人入国者数は初めて一千万人を超え、二〇二〇年に東京で開催されるオリンピック・パラリンピックに向けて、今後、その数がさらに増加することが見込まれるところであり、出入国管理上、問題を生じるおそれが少ない外国人の出入国手続の簡素化、迅速化を図ることが急務となっております。

 この法律案は、以上に述べた情勢に鑑み、所要の法整備を図るため、出入国管理及び難民認定法の一部を改正するものであります。

 この法律案の要点を申し上げます。

 第一は、高度の専門的な能力を有する外国人材の受け入れの促進のための措置であります。これは、現在「特定活動」の在留資格を付与している高度の専門的な能力を有する外国人材を対象とした新たな在留資格「高度専門職(第一号)」を設けるとともに、この在留資格をもって一定期間在留した者を対象とした、活動制限を大幅に緩和し在留期間が無期限の在留資格「高度専門職(第二号)」を設けるものです。

 第二は、クルーズ船の外国人乗客に係る入国審査手続の円滑化のための措置であります。これは、法務大臣が指定するクルーズ船の外国人乗客を対象として、簡易な手続で上陸を認める船舶観光上陸許可の上陸許可の制度を設けるものです。

 第三は、一定範囲の短期滞在者に係る出入国手続の円滑化のための措置であります。これは、自動化ゲートを利用できる対象者の範囲を、頻繁に来日し、我が国に短期間滞在する外国人のうち、事前に指紋等の個人識別情報を提供して審査を受け、出入国管理上問題を生じるおそれが少ないと認められて登録されたものに拡大し、その外国人の上陸許可の証印を省略できるようにするとともに、上陸許可の証印にかわる上陸許可の証明手段を設けるものです。

 以上が、この法律案の趣旨であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。

江崎委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る二十八日水曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二十八分散会


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