衆議院

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第5号 平成26年10月29日(水曜日)

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平成二十六年十月二十九日(水曜日)

    午前十時十五分開議

 出席委員

   委員長 奥野 信亮君

   理事 伊藤 忠彦君 理事 柴山 昌彦君

   理事 土屋 正忠君 理事 ふくだ峰之君

   理事 盛山 正仁君 理事 柚木 道義君

   理事 井出 庸生君 理事 遠山 清彦君

      赤枝 恒雄君    安藤  裕君

      池田 道孝君    大塚  拓君

      勝沼 栄明君    神山 佐市君

      黄川田仁志君    小島 敏文君

      古賀  篤君    今野 智博君

      末吉 光徳君    田所 嘉徳君

      田中 英之君    武部  新君

      鳩山 邦夫君    平沢 勝栄君

      前田 一男君    三ッ林裕巳君

      宮澤 博行君    郡  和子君

      階   猛君    横路 孝弘君

      高橋 みほ君    丸山 穂高君

      大口 善徳君    西田  譲君

      三宅  博君    鈴木 貴子君

    …………………………………

   法務大臣         上川 陽子君

   法務副大臣        葉梨 康弘君

   法務大臣政務官      大塚  拓君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 塩川実喜夫君

   政府参考人

   (警察庁刑事局組織犯罪対策部長)         樹下  尚君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    林  眞琴君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  井上  宏君

   政府参考人

   (公安調査庁次長)    小島 吉晴君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 河野  章君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 岩井 文男君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 可部 哲生君

   法務委員会専門員     矢部 明宏君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月二十九日

 辞任         補欠選任

  小田原 潔君     赤枝 恒雄君

  大見  正君     勝沼 栄明君

  門  博文君     武部  新君

  菅家 一郎君     田所 嘉徳君

  西田  譲君     三宅  博君

同日

 辞任         補欠選任

  赤枝 恒雄君     田中 英之君

  勝沼 栄明君     大見  正君

  田所 嘉徳君     菅家 一郎君

  武部  新君     門  博文君

  三宅  博君     西田  譲君

同日

 辞任         補欠選任

  田中 英之君     前田 一男君

同日

 辞任         補欠選任

  前田 一男君     小田原 潔君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、第百八十三回国会閣法第三〇号)


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     ――――◇―――――

奥野委員長 これより会議を開きます。

 第百八十三回国会、内閣提出、公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案につきましては、第百八十六回国会におきまして既に趣旨の説明を聴取いたしておりますので、これを省略いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

奥野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

 公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

奥野委員長 次に、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房審議官塩川実喜夫君、警察庁刑事局組織犯罪対策部長樹下尚君、法務省刑事局長林眞琴君、法務省入国管理局長井上宏君、公安調査庁次長小島吉晴君、外務省大臣官房審議官河野章君、外務省大臣官房審議官岩井文男君及び財務省大臣官房審議官可部哲生君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

奥野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

奥野委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。横路孝弘君。

横路委員 要約してテロ行為のための資金の提供等の処罰に関する法律案について、関連する法律も含めて御質問させていただきたいと思います。

 国連で、一九九九年に、テロリズムに対する資金供与の防止に関する国際条約というのが採択されました。これを受けて、二〇〇二年に日本では、テロのための資金提供の処罰に関する法律、それから金融機関の顧客等の本人確認に関する法律、外国為替及び外国貿易法の一部改正法と、条約ができて三年後にすぐ用意されたわけです。

 最初に刑事局長にお尋ねしたいんですが、このテロのための資金提供の処罰に関する法律というのは、この条約に基づいて、国内法の整備として制定されたというように理解してよろしゅうございますか。

林政府参考人 お尋ねのテロ資金提供処罰法でございますが、テロ資金防止条約の締結のために、その担保をする法律として制定されたものでございます。

横路委員 その後、マネーロンダリング対策のために各国がとるべき措置ということで、FATFの方から、四十の勧告、これは何回か出ているんですが、再改定され、さらに九の特別勧告というのが出ました。これが、二〇〇三年が勧告で、特別勧告は二〇〇一年から二〇〇四年ということでございまして、中身は、マネーロンダリングの処罰、それから顧客の確認といいますか本人の確定とか、あるいはテロ資金供与の犯罪、疑わしい取引についての届け出といったような点が中心でございました。

 これを受けて対日相互審査というのを行っているわけですが、第三次の対日審査というのが二〇〇八年に行われたわけです。その結果が、なかなか厳しいものでございました。履行されているものが四つ、大体いいよというのが十九、一部しか履行していないというのが十五、それから、全然だめですよというのは十もありました。

 そこで、政府の方でも、関係省庁連絡会議をつくって、この勧告に対してどう対応するかという御努力はされてきたと思うんですね。しかし、例えば顧客の管理について言いますと、犯罪による収益移転防止に関する法律の一部改正案ということで、これも、最初の二〇〇三年の金融機関等の本人確認法、二〇〇八年の移転防止法、二〇一三年の改正犯罪収益移転防止法とつくってきたんですが、そのたびにいろいろな注意を受けていまして、中には、二〇一二年から一三年、法務大臣と財務大臣宛てに、向こうのFATFの議長の方から、例えば平成二十三年の改正案についても、幾つかの不備事項にしか対応していない、金融関連のFATFの勧告のほとんどについては履行水準について大きな改善がないという勧告が、二〇一三年に、まさにこの法律を見て、その上で勧告されているわけですね。事務当局は向こうの事務当局ともいろいろと御努力をされてきたと思うんですが、これが最後には、ことし、二〇一四年六月二十七日の日本に関する声明になってしまうわけですね。

 日本の方で法律を何回もつくって、つくるたびに、だめだ、だめだ、だめだと言われて、最後には、わざわざ法務大臣と財務大臣にまでしっかりやれというような勧告を受けるというのは、これはどういうことなんでしょうか。日本の金融業界の方に問題があったのか、あるいは相手方の方が、確かに細かいいろいろな点の指摘を受けています、なかなか大変だったと思うんですけれども、これはどういう点でこういう事態になったのかということをちょっと御説明いただきたいと思います。

可部政府参考人 ただいま先生御指摘のように、二〇〇八年十月に対日相互審査が行われまして以降、FATFの全体会合の場で、これまで計十回のフォローアップを受け、その都度、日本の取り組みにつきまして御説明をさせていただいてまいりました。

 FATFは、勧告が求める義務を、指針等ではなく、強制力のある法令に明記することを求めておりまして、例えば、犯罪収益移転防止法につきましては、平成二十三年に御指摘のとおり法改正を行ったものの、依然として義務の一部が日本の法令で明記されていないなどの指摘を受けております。

 このため、今回、臨時国会に提出させていただいた犯罪収益移転防止法改正法案によってこうした指摘に対処するなど、法令による定めをさせていただくという対応が必要となっているところでございます。

横路委員 これは、内容的には、金融業界を含めて、大体そこは問題がなかったんですか。

 ただ、問題は、法令化するかしないか、日本の場合は、慣習でやっているよ、事実上やっているからいいでしょうと、こういうようなところで、こういうぐあいに何度も何度も指摘を受けるということになったんでしょうか。

可部政府参考人 御指摘のとおり、例えば、顧客管理でございますとか、あるいは疑わしい取引の届け出等につきまして、金融機関に対しては、金融庁の監督指針等に基づきましてある程度対応ができている部分もございます。

 しかしながら、それらは強制力を持った法律及び政省令による規定ではないということで、そうしたものについて法令上の規定が不備であるという指摘を受けており、また、それ以外に不足している部分もあるということで、今回、対応させていただくことを御提案させていただいているところでございます。

横路委員 ただ、例えば、テロリストの資産凍結、没収などのように、我が国の法制度と一体それが適合するのかどうかというような問題も中にはあったと思うんですが、そういう問題も、結局、最後には全部のみ込んだんでしょうか。

可部政府参考人 国際テロリストの資産凍結につきましては、対外取引につきましては、外為法によりまして資産凍結が行われてきたところでございます。

 しかしながら、国内における取引につきましては、法制上の凍結の手法が制度上整備されていないという指摘を受けておりまして、このため、国会におきまして今回の法案の提出をさせていただいているところでございます。

横路委員 そうすると、ことしの六月二十七日の日本に関するFATF声明の中で、二つの点が金融関係であります。金融及び非金融セクターに適用される予防措置の分野で、顧客管理措置やその他の義務が不十分であるということと、テロリストの資産の凍結メカニズムが不完全であるということ。この点は、今回の収益移転防止法と財産凍結法というこの二つの法律で完全にカバーされて、もう問題はないというように理解してよろしいんですか。

可部政府参考人 ただいま先生が御指摘をいただきましたのは、本年六月二十七日、FATFが発出をいたしました声明でございます。

 その声明におきまして指摘された事項のうち、テロ資金供与の犯罪化につきましては、本委員会で御審議いただいておりますテロ資金提供処罰法改正法案で対応できるものというふうに考えております。また、顧客管理につきましては、今臨時国会に提出をさせていただきました犯罪収益移転防止法改正法案で、また、テロリストの資産凍結につきましては国際テロリストの財産凍結法案で、それらの関連政省令とあわせて対応できるものと考えております。

横路委員 一つ、これから行われる第四次審査の中で、腐敗防止の観点ということで、PEPsというんでしょうか、重要な公的地位を有する外国人について顧客管理をしっかりしろという趣旨の提起がありましたよね。これはほとんどやってこなかったが、それも今回の措置で十分なんでしょうか。

 それからもう一つ、第四次審査の中では、国内の公的な立場の人間についても顧客管理を十分にしろと。つまり、資金の出入りなどの管理をちゃんとやれということなんでしょうね、きっと。それは、問題がないかどうかということをチェックしろということなんでしょう、この顧客管理をしっかりしろというのは。その点はどうなっているのか、これからの問題だとは思いますけれども。

樹下政府参考人 御指摘のPEPs、これは政府高官等の重要な公的地位を有する者を意味するものでありますけれども、特に外国のPEPsにつきまして十分な対応がとられていないということは、第三次の審査でも指摘されているところでございまして、これは、法律事項といいますか、むしろ政省令で対応すべきものというふうに考えておりますけれども、今回の法改正に合わせて対応を検討したいというふうに考えているものでございます。

 国内PEPsにつきましては、四次勧告にそのような記述があるのはそのとおりでございますけれども、ただ、マネーロンダリング対策の有効性を直接把握できない外国のPEPsというものと、おのずから対策の必要性の程度が異なるのではないかというふうにも考えておりますので、国内PEPsをどうするかということにつきましては、慎重な検討を行う必要があるんじゃないかというふうに考えているところでございます。

横路委員 今、政治とお金ということが問題になっていますね。せっかく第四次審査の中で腐敗防止という観点からこういう問題提起がされているので、しっかりこれを受けとめていただきたいということを申し上げたいと思います。

 それから、この委員会にかかっている本法案に関しては、そのFATFの声明の中では二つ指摘されています。テロ資金供与の犯罪化が不十分だということと、もう一つは、例の共謀ですね、パレルモ条約の締結と完全な実施ができていないという二点が挙げられているわけなんです。

 その具体的な中身は何かといいますと、いわゆる対日審査の中で指摘されている中に、幾つかの具体的なことが指摘されています。

 一つは、資金の収集がテロリストによって行われた場合のみを犯罪としていること。二つ目に、間接的な資金の提供、収集が対象となっているか不明であるということ。それから三つ目には、テロ行為の実行以外の目的でテロ組織及びテロリストのために資金を提供し、収集することが対象となっているのかも不明であるということ。資金が定義されていない、あらゆる種類の資産を含むとする特別勧告2の全ての局面を対象とするのに不適切であると。

 これとパレルモ条約の点なんですが、この今の四つの点についてちょっとお尋ねしていきたいと思うんです。

 これも、今までの会合の中で、法務省の方も、共犯の規定や予備罪の適用によって対処できるんだということなどを主張して説明してきたというように思うんですが、なかなか理解が得られないで今回のような法律案になったというように理解しますが、これらの指摘されている点について質問したいと思います。

 まず第一点は、非テロリストによるテロリストのための資金収集でございますけれども、現行法には、もちろん、テロリストに対する提供とテロリストによる収集を処罰し、未遂も罰するものとしているわけです。資金提供行為もそうですが、独立の犯罪としており、共犯ももちろん成立するわけですよね。収集についても同じだと思います。

 そうすると、どうでしょうか、現行法でもかなりカバーできる。先ほども、条約に基づいて国内法の体制としてつくったんだということなんですが、この非テロリストによるテロリストのための資金収集ができていないというのは必ずしも正しい指摘ではないように思いますが、いかがでしょうか。

林政府参考人 現行法上の資金提供は、まさしくテロリスト、テロ行為を実行することを企図している者に対する資金提供、あるいは、テロ行為を実行することを企図している者がその資金を収集する、この部分だけを犯罪化しておるわけでございますが、この場合に、テロの協力者が資金を収集するとか、また、テロの協力者に対して資金を提供するとか、こういったことについては、やはり犯罪化という形でのカバーができていないと理解しております。

横路委員 いや、共犯の規定でできるケースも多いんじゃないですか。

林政府参考人 もとより具体的な事実関係によるものの、現行法でも、確かに、刑法総則の共犯規定でありますとか、例えば間接正犯とかいう理論によって、間接的なテロ資金の提供を処罰できる場合もございます。

 ただ、例えば、ある者がテロの一次的な協力者に対して資金を提供した場合に、当該一次協力者が、実際のテロを実行する企図者に対して資金提供の実行に着手すれば、その場合には共犯の規定の適用が可能でございますが、実際に、もしその資金が一次協力者にとどまってしまった場合、すなわち、テロに対する一次協力者が、実際にはテロの実行を企図する者に対して資金提供の実行に着手していない場合には、これについては、現行の刑法の共犯規定によったとしても処罰することができないわけでございます。

 こういったことについても処罰できる、犯罪化するために今回の法改正があるものでございます。

横路委員 現行法も資金提供に関して言えば独立の犯罪としておるわけでございまして、それに対する共犯の成立というのは、テロの実行着手前の段階でも可能じゃないんですか。

林政府参考人 委員御指摘のように、テロの実行、いわゆる公衆等脅迫目的の犯罪行為そのものとの関係でいきますと、現行法上の資金提供罪というものは、これは予備的な実態がございます。その場合に、テロ、実際の公衆等脅迫目的の犯罪行為の実行がなされなくても、資金提供の段階だけで処罰が可能でございます。

 先ほど申し上げたのは、資金提供自体が現行法では犯罪化されているわけでございますが、それでは、その場合の資金提供が、一次協力者からテロの実行企図者に対してまだなされていない、資金提供自体の実行の着手に至っていないような場合、このような場合には、先ほど申し上げました、一次協力者に対してある者が資金提供をした場合に、それが一次協力者にとどまってしまっている、すなわち、テロの実行企図者の方にはまだ資金の提供に至っていない、実行の着手もなされていない、こういった場合には、資金提供そのものの行為についての共犯規定というものは、現行法上、刑法では適用できませんので、その部分をカバーする、犯罪化する必要があるということでございます。

横路委員 しかし、未遂も処罰されますよね。共謀共同正犯を適用してそういうことはできないんですか。

林政府参考人 一次協力者からテロの実行の企図者に対する資金提供というものを考えた場合に、今先生言われたように、未遂罪というのが現行法上もございますけれども、その場合、未遂というのは、あくまでも資金提供の実行の着手が必要でございます。すなわち、一次協力者からテロ実行の企図者に対して資金を提供することについての実行の着手が必要でございます。

 先ほど申し上げたのは、その実行の着手すらない場合。すなわち、ある者が一次協力者に対して資金を提供いたしました。本来、その資金はテロ実行企図者に提供されるべきものであったとした場合に、それが実際には一次協力者のもとにとどまってしまって、実際のテロを実行しようとしている企図者に対しては資金提供の実行の着手そのものがないような場合、このような場合には未遂罪を適用することができませんので、今回の法改正が必要だということでございます。

横路委員 後でまた議論しますが、非常に広がっていっているんですね、どんどんどんどん。それが問題の一つです。

 次に、資金の点なんですけれども、現行法でもテロ行為の定義を幅広く規定していますね。つまり、資金提供、収集行為の目的となる対象行為を具体的に明らかにしています。

 条約を見ますと、条約には、一条に資金の定義があります。それから、二条で対象犯罪を規定しています。条約に基づいての国内法の整備だとするならば、条約上は現行法でも問題がないということが言えるんじゃないでしょうか。

 殺人の場合などは予備罪もありますので、これもかなり処罰が可能で、広がるのではないかというように思いますが、この点いかがでしょうか。

林政府参考人 委員御指摘のように、条約上求めている義務との関係でいきますと、現行法上の資金という概念、これは、条約の求めを満たしているものと考えております。

 他方で、今回、FATFの方から資金の定義が限定的であるということの指摘を受けたことから、今回の犯罪の客体の拡大として、まず、物質的な支援というものを含むとともに、その他の利益という形での提供を、今回、犯罪の客体として拡大しようというものでございます。

横路委員 そこがよくわからないんですよね。

 条約で決められていることはちゃんとやっていますよ、しかし、FATFの方からは条約以上のことをさまざま要求してきている、それに対応するのに時間がかかったということなんでしょうが、特に資金提供については、そういうぐあいに条約上の定義もしっかりされておりますので問題ないと思いますし、予備罪があるものは、予備の範囲というのは結構広いので、物質的な支援や何かもその中に含まれてくるというようには考えられないんですか。

林政府参考人 まさしく今回、現行法では、資金提供ということを、本来はテロ行為そのものからすれば予備的な行為の中で、資金提供ということに限ってそれを犯罪化しております。その中での対象としての資金について、条約の義務は満たしているものの、FATFからそのような資金の定義では足りないという指摘を受けたことから、今回の資金提供罪の客体を拡大するというものでございます。

横路委員 FATFというのは非常に強い権限を持っているんですね。

 もう一つ指摘されている点は、テロ行為以外の目的での資金の提供、収集、これは改正法でも対象から外れていますよね。何でもかんでも処罰するのは問題だからということで対象外にしているんだと思いますが、FATFはこの点は何と言っているんでしょうか。

林政府参考人 御指摘のFATFからの指摘を受けた中で、テロ行為以外の目的でテロ組織及び個々のテロリストのために資金を提供、収集することが犯罪化されているか不明確である、こういう指摘を受けた部分がございます。ここで求められている犯罪化の問題につきましては、やはり処罰の必要性の観点から疑問がありますので、今回はこの点については改正法案に直ちに反映させることはしておりません。

 FATFに対しましては、今般の法改正によってテロ組織や個々のテロリストのための資金等の提供等については必要な処罰が可能となったことを踏まえて、丁寧に説明していきたいと考えております。

横路委員 もう一点、間接的な資金提供、収集の対象となっていないということで規定されて、これも改正案には入っていないんですが、間接的にも、先ほど言ったように間接正犯ということもありますし、そういうことで対応できるわけで、新たに規定する必要は私も全くないと思いますが、これはどういうことなんですか。NGOやNPOのことを言っているんでしょうか。

林政府参考人 今御指摘の、間接的な資金提供、収集、これがカバーされているかどうか不明確であるという指摘を受けた点につきましては、これは今回の法改正におきまして対応しているというふうにしてございます。

 まさしく間接的なという意味において、テロリスト、テロの実行を企図する者に対する資金提供、これが現行法上の資金提供罪の対象でございますけれども、一次協力者に対する資金の提供あるいはその他の資金提供についてを今回一定の限度で犯罪化しておりますので、間接的な資金提供、収集がカバーされていない、あるいはそれが不明確であるという指摘に対しては、今回の法改正で対応していくものでございます。

横路委員 もう一つ、六月段階の指摘には入っていないんですが、対日審査の中では、何か、資金の提供、収集の罪あるいは未遂というのは十年の懲役、一千万円以下の罰金なんですが、法人に適用された際には、テロの脅威とつり合いがとれず、低過ぎるという指摘がございますが、この点はどのようにされたんでしょうか。

林政府参考人 両罰規定としての法人の処罰等に関しましては、これについては、現行法上の罰金等についてそのまま維持するとともに、今回新たにつくられた、犯罪化されている間接的な資金提供については、相応の法定刑を定めているものでございます。

横路委員 もう一つ、改正案では、資金等の提供を行う側の処罰対象者として、一次協力者に利益提供を行う二次協力者、二次協力者に利益提供を行うその他の協力者というように拡大しているわけですね。予備行為の幇助というのを何段階にもわたって幇助することも処罰対象になっておりまして、テロ企図者との関係というのが極めて薄いところまで処罰の対象となっておりますが、これは刑法で言うところの共犯罪の類型が規定していないものではないだろうか、余りにも広過ぎるんじゃないかという意見が弁護士会などからもありますが、この点はいかがでしょうか。

林政府参考人 今回、資金提供罪について、一次協力者、また一次協力者に対する資金提供を犯罪化したり、資金収集を犯罪化しております。これにつきましては、それぞれの構成要件において、具体的に主観的な要件も加えて法定をしておりますので、全くその処罰範囲が不明確であるということにはならないものと考えております。

横路委員 ここまで規定しなくても、共犯の規定で対応できるんじゃないんですか。

林政府参考人 今回、資金提供が、当初はテロの実行企図者に対する資金提供のみでございました。それを拡大いたしまして、間接的な資金提供の場面をそれぞれ犯罪化しておりますが、それぞれの犯罪化している場面において、先ほど来申し上げております、本来、間接的な資金提供を受けた者が、さらにそれをテロ実行企図者の方に向けて、資金提供、資金を近づけていく行為、いわゆるそれらの資金提供の実行の着手に至らないようなケースもございます。そういった場合には、やはり先ほど来申し上げているのと同じように、現行の刑法の共犯規定では処罰が不可能でございますので、今回そのように規定しているものでございます。

横路委員 現行法では対処できないということになれば、刑法の総則に関する問題になるわけですから、これはやはり法制審の審議が必要だということになりませんか。

林政府参考人 今回のテロ資金提供処罰法自体は、法制審議会で取り扱います基本法そのものに対する法制定ではございませんので、もともと、平成十四年に制定されたテロ資金提供処罰法の際にも、法制審議会の審議にはかけられなかったと承知しております。その上で、テロ資金提供処罰法の改正ということで、今回も法制審議会での審議というものはなされていないものでございます。

横路委員 ただしかし、これは、共犯のいわば類型として想定していた問題じゃない、だから必要だという御答弁ですよね。それはやはり刑法の基本にかかわる問題じゃないんですか。

林政府参考人 刑法の共犯規定そのものを変更するものではございませんので、いわゆる基本法であるところの刑法の改正ということに至らないわけでございまして、その観点から、法制審議会の審議にはかけられていないものでございます。

 もとより、一定の予備段階の性質を持つものについてこういった特別法で犯罪化するということは他にもあることでございまして、それ自体が、刑法そのものの改正、あるいはそれに類似する改正に至るものとは考えておりません。

横路委員 私どもは、もともとの条約、それからそのときの法律にはもちろん賛成をしているわけでございますが、今回の改正案については、やはりちょっと範囲が広過ぎる、どんどんどんどん、いわゆる予備行為の幇助の幇助の幇助の幇助というと、やはり際限ないんじゃないかと。それはやはり、刑法総則の共犯の類型が規定しているところを超えているというように思われます。これが、FATFの勧告との関連もちょっと曖昧でございまして、私どもはそこが問題だということで、その点をまた同僚議員から金曜日に質問させていただきたいというように思っています。

 それで、一つは第四次の相互審査なんですが、新四十の勧告を受けて第四次の相互審査が開始されたわけですが、これはどうですか、リスクベースアプローチなどの新しい点もありますけれども、大体この新四十の勧告というのはクリアすることができるのかどうかという点と、四次審査というのは、今までの技術的な遵守状況から有効性の審査、つまり、法令で書かれていることを守っているのか、有効な対策になっているのかということを審査するというように伺っております。

 しかし、例えばマネーロンダリングのように、日本の場合は非常に少ないというようなケースもありまして、その辺のところをよほどしっかり説明しないと、ここでまた時間をとることになるのではないかということを心配しておりますが、この点はいかがでしょう。

可部政府参考人 御指摘のとおり、第四次勧告が出てございます。従来のFATFの相互審査では、各国のマネロン、テロ資金供与対策につきまして、法制度が整備されているか否かに着目した審査が行われてまいりましたが、先ほど御指摘ございましたように、本年から開始されておりますFATFの第四次相互審査におきましては、有効性審査が導入されております。すなわち、法整備の有無のみならず、マネロン、テロ資金供与対策がFATF勧告に即して効果的に実施されているかどうかといった運用面もあわせて審査が行われることになります。

 したがいまして、FATFとしても新しい試みでございますので、各国の審査状況を見ながら、必要な対応を検討してまいりたいと考えております。

横路委員 リスクベースアプローチは、割と日本では全銀協の方でガイダンスノートなどをつくってやってきているという実績があるようですから、これは余り問題にならないのかもしれませんが、いずれにしても、ここでまたもたついて時間をとらないように、御尽力をお願いいたしたいというように思います。

 それでは、これに関連しては結構でございます。刑事局長だけちょっと残っておいていただいて、あとの方は。

 ちょっと、例のISILと北大生の問題について質問させていただきます。

 北大の学生が戦闘員としてシリアへ行きたいということで、私戦予備ということで本人から事情を聴取し、本人も渡航を中止したということなんですが、これは今も捜査中なんでしょうか。

 私戦予備というのは、国家に戦争をしかけるわけですから、一定規模の人数で組織的に企てることが前提というように思いますが、今回のことは、この本人のことだけだったのか、仲間がいたのか、その辺のところもちょっと教えていただければと思います。

塩川政府参考人 お答えします。

 御指摘の事件は、大学生が反政府武装組織イスラム国に戦闘員として加わることを目的に我が国からシリアへの渡航を企てた、私戦予備・陰謀被疑事件でございます。

 この事件では、警視庁において、被疑者及び関係者の取り調べなどを行うとともに、複数箇所の捜索、差し押さえを行ったところでございまして、現在も事件の全容解明に向け捜査を継続しているところでございますので、その他の詳細については差し控えさせていただきます。

横路委員 イスラム国のリクルーターというのが日本にいるのかどうかということなんですが、この学生に対して、渡航費用とか生活費だとかというように資金的な援助をしていた人もいるようですし、イスラム国を紹介した人間もいるようなんですけれども、この人というのは、これは何か今の現行の法律に触れるんでしょうか。その辺はどうなっていますか。

塩川政府参考人 今御答弁したとおりでございますけれども、現在捜査中でございますので、その点については差し控えさせていただきます。

横路委員 国連決議二一七八号というのがあります。九月二十四日に決議されたものですが、テロ行為の実行、計画、準備、テロ行為への参加、テロ訓練の提供、テロの訓練を受けることを目的に渡航または渡航しようとすること、これらの渡航への資金提供、これらの渡航の組織化、便宜供与などを国内法で犯罪化することというような決議になっております。

 刑事局長にお伺いしますが、今審議中の改正案の中でこれらの要件というのはどのようにお考えですか。この事件とは別にして、こういうようなケースの場合、該当する可能性もあるというように見ておるんですけれども、いかがでしょうか。

林政府参考人 安保理決議二一七八との関係でございますが、これを履行するためにどのような法律で担保できるのかという観点からいいますと、やはり、テロ資金提供処罰法、現行法の二条一項などは、一部を担保している法律であると理解しております。(横路委員「改正法はどうですか」と呼ぶ)

 改正法は、まずは資金について客体を拡大しております。あるいは、今回、主体も拡大して、間接的な資金提供、収集を犯罪化しております。そういった意味において、二一七八を担保するものの趣旨には沿うものであると考えております。

横路委員 では、日本は、特に新しい法律をつくらなくても、大体今の現行法並びに改正法で対応できるというように理解してよろしゅうございますか。

河野政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど御指摘いただきました二一七八号につきましては、先ほど答弁にございましたとおり、刑法の私戦予備でありますとかテロ資金提供処罰法が関係し得るということでございます。そういうふうに現在理解しておるところでございますけれども、ほかの安保理加盟国がどういうふうにしているかということも踏まえつつ、必要に応じまして、詳細につきまして政府部内で検討していきたいと考えておるところでございます。

横路委員 新しくつくるのも、つくり方がなかなか難しいので、先ほどありましたように、この改正法と現行法でも十分取り締まりができるというように思います。

 それで、ISILの現状についてちょっとお伺いしたいと思うんですが、各国の過激派がイスラム国への参加、支持を表明したり、その傘下に入るというように、まだこの勢いはなかなかとまっていないように思います。

 こうした世界的なテロのネットワークができるというのはゆゆしき問題だと思いますが、こうした実態は把握されておられるんでしょうか。

岩井政府参考人 お答え申し上げます。

 ISILでございますけれども、御案内のとおり、いわゆるイスラム・スンニ派過激主義のテロ集団でございまして、イラクとシリアにまたがる地域で、イスラムそれから人間の基本的な価値に反する極めて非人道的な行為を組織的に行っております。ISILには、過去数年間に、約八十カ国から一万五千人の外国人戦闘員が流入しているという、十月二十三日、米国財務次官、コーエン次官からの発言というのもございました。

 今御指摘のテロのネットワークの部分でございますけれども、例えばアジア地域で申し上げれば、フィリピンにおきまして、もともとございますアブ・サヤフ派というテロリストが彼らの傘下に入るというような表明をしてみたり、あるいはインドネシアにおきましても、二〇〇二年だったでございましょうか、バリでテロ事件を起こしたジェマー・イスラミアという団体がありますけれども、その後身組織が同じく連帯を表明しているというような事案を把握してございます。

横路委員 私が心配なのは、やはりアジアなんですね。東南アジアというのは意外とイスラム教徒が多くて、イスラム教徒の六二%が東南アジアだと言われておりますし、過去においても、今お話があったインドネシアやフィリピンで問題になったわけですね。現実に、最近のいろいろなテロ行為というのを見ていましても、この地域は件数が非常に多いんですね。そうやってISILとも連携をとっていくということになると、アジアにおいてどうするかということが問題だと思うんですね。

 アメリカの太平洋軍のロックリア司令官の最近の会見で、約千人の戦闘員が東南アジア、太平洋地域からISILに参加しているというように発表されました。人数はこれから拡大していくだろう、勧誘はほとんどソーシャルメディアで勧誘しているというようなこともお話がありました。

 現にインドネシアでは、九月に逮捕された四人が新疆ウイグルの出身者だったとか、オーストラリアでも事件が発覚して十五人が逮捕されるというようなこと、その上に、今言ったような組織が参加を表明したり支持を表明したりするということなわけですね。あと、ISILの方は、例えば中国やインドに対しても関係を持とうとしているというように伺っております。

 そうすると、こういう東南アジアにおけるテロのネットワークができないように、こちら側のネットワークをしっかりつくって連携するということが必要だと思うんですね。

 ASEANにはASEAN地域フォーラムという組織もありますし、あるいはASEAN自身も、ASEANの中で政治や安全保障に関するネットワークをつくろう、そういう動きもあるというように聞いていますが、日本政府としても積極的にアジアにおける対テロのネットワークをつくるということが大変大事じゃないかと思います。ASEAN地域フォーラムというのは、中国も入っていますし、ロシアも入っていますし、アメリカも入っている組織でございますので、これをやはり積極的に推進していくことが今の段階で必要ではないか。

 どんどんどんどん膨れ上がっていく、資金面そのほかでこの勢いがいつまで続くかというのはありますけれども、しかし、現状は本当にゆゆしい事態なので、その点についてどのようにお考えでしょうか。そういう御努力をぜひお願いしたいと思います。

岩井政府参考人 お答えを申し上げます。

 御指摘いただきましたASEAN地域フォーラムにおきまして、テロ及び国境を越える犯罪対策の枠組みにおきまして、これまでもフォーラム参加国間でテロ対策に対する協力というものを行ってきております。

 具体的には、このフォーラムに分野別会期間会合というものがございまして、その一つにテロ及び国境を越える犯罪対策に関するものというのがございます。直近では、ことしの四月にインドネシアのバリで開催をされております。

 さらに、このテロ及び国境を越える犯罪対策に関する会期間会合では、過激化対策を含みまして、四つの優先分野におきまして、ワークショップなどを開催して協力関係を深めてきております。明年三月にはマレーシアでこの過激化対策に関しますワークショップというものが再度開催をされる予定でございます。

 先生の御指摘を踏まえてしっかり取り組んでまいりたいと思います。

横路委員 多分、これからアジアの中で非常に大きな問題になる危険性があるのは、中国のウイグル地区だと思いますね。あそこには東トルキスタン・イスラム運動というのがあって、これはもうISILとかなり深い連携を持っているということでございます。

 その今のお話の中には中国も参加していますよね。ロシア、中国、アメリカは参加していると思うんですが。

岩井政府参考人 ASEAN地域フォーラムでございますけれども、ASEAN諸国十カ国プラス非ASEAN十六カ国、プラスEUが代表参加ということで参加しております。合計二十六カ国プラスEUでございます。

横路委員 今、日中関係はいろいろ問題がありますが、中国も本当は多国間の枠組みにもっと積極的に参加してやるべきではないかということを私も申し上げているんですけれども、ぜひそういう御努力もお願いしたいと思います。

 次に、外国人の戦闘員、先ほど言いました八十カ国、一万五千人ということで、中身を見ると、やはりチュニジアとかサウジアラビアとかモロッコとかというのが多いんですね。その上で、ロシア、フランス、イギリスで、アメリカからも百人、中国からも百人というように報道されています。

 なぜ若者がイスラムに行くのかというのは、非常にこれはいろいろな問題があるというように思いますけれども、アラブの春と言われたのも結局挫折をして、あれをきっかけにシリアの中で市民運動が活発化して、それに対して今度はサウジアラビアがアサド政権打倒というので資金援助などを行って、だからサウジアラビアからもたくさんの人間が行っているわけですね。

 あと、もちろん、戦闘員の人たちというのはいろいろな経歴があります。欧州の場合を見ると、大体半分がイスラムの二世、三世、あとはそうじゃない一般の家庭の子供が多いということで、やはり失業者だとかというような人間。と同時に、結構学歴の高い若者たちも行っているということで、いろいろな要素があるというように思います。

 日本でも、七、八年前ですか、希望は戦争ということを発言した人がいて問題になったことがありますけれども、先進国も含めて、今、あちこちで世界を覆っている現実というのがあって、ジハードはすばらしいというようなことで、殉教して天国に行くことが何か目的化しているイスラム教徒もいるようでございます。

 こうした点などは、もともと、テロの根源をどういうぐあいに断っていくのかということが一番大きな課題だというように思っておりますが、空爆をやった結果はどうなんでしょうか、大分これで勢いはとまったんでしょうか。割とこの組織は、他のアルカイダなんかと違って、非常に統制がとれてまとまっている組織だ、中には旧イラク軍のスンニ派の兵士や幹部がそこに参加していると。イラクの北部地域を支配しているのも、住民が、シーア派の政権よりはスンニ派のISILの方がいいというような感じもあって受けとめているというような話も聞くわけでございます。

 この勢いはまだ伸びそうなんですか、おさまりそうですか。空爆の結果はどうだったんでしょう。

岩井政府参考人 今、何点か御指摘をいただきました。お答えを申し上げます。

 一つは、海外からISILへの参加が広がっている背景のような御指摘でございますけれども、さまざまな見方がございまして、お話にございました、二世、三世の移民たちが今居住している国において社会的不満とか疎外感を感じているといった事情、あるいはISILによりますインターネットを駆使した極めて巧みな広報活動等、複合的な理由が挙げられると思います。

 それから、空爆の効果という点でございますけれども、英米軍は、八月八日に、まずイラク・シンジャール山で、取り残されておりましたヤズィーディー教徒を救い出すということで、限定的な空爆と人道物資の投下を行いました。それから、シリアにおきましては、九月二十三日以降、スンニ派アラブ王制諸国五カ国とともにISILの本拠地に対して空爆を行っております。

 その効果でございますけれども、移動式製油所でございますとか、あるいは油田のある地域でございますとかの空爆によりまして、ISILの資金源にダメージを与えると申しますか、枯渇をさせるという点で効果を上げていると思います。それから、彼らが大規模に動くことはなかなか難しくなってきている、そういった大規模活動の阻止という点でも効果は上がっているというふうに認識をしております。

 それから、最後に、スンニ派、シーア派の話がございましたけれども、まさにISILの参加に向けて人が集まってまいりますのは、一つは、シリアにおきまして、アサド政権をアラウィ派と申しまして、シーア派の一部でございますけれども、これが、デモを行ってから極めて弾圧的な統治を始めた。それに対しますスンニ派の人たちの義憤というんでしょうか憤りというんでしょうか、そういうものも人を集める要因になっているというふうに認識をしております。

横路委員 ISILの主張も、例えば中東の国境線などというのは、ヨーロッパが第二次大戦の後、勝手に引いたんだ、だから国境線は関係ないなどという主張は、意外とアラブの中では受けているんですね。いろいろな要素が絡まっていてなかなか大変ですが、これは地上軍を派遣するということになるとさらに大変ですね。

 これはきょう議論する暇がないからやりませんが、集団的自衛権の行使を認めて、私は、朝鮮有事だとか、あるいは中国有事ですか、そういうようなことは余り具体的な危険性は感じないので、中東にアメリカ軍が地上部隊を送ったときに後方支援の要請をしてきたときに、そういう可能性というのが一番あると思います。今後は、閣議決定によれば、後方支援でさまざまなことができるわけでして、テロリスト相手で国家相手じゃありませんから、どこが戦闘地域だとか戦闘地域でないとかいったって、そんなのは意味が全くないので、ある瞬間にすぐ戦闘地域になってしまうわけですから、それを集団的自衛権の問題では一番心配しております。

 それはまた機会を見て議論させていただきます。ありがとうございました。

 法務大臣、申しわけありませんでした、質問の機会がなくて。この次にさせていただきます。

奥野委員長 これにて横路君の質疑は終了いたしました。

 次に、高橋みほ君。

高橋(み)委員 維新の党の高橋みほでございます。きょうはよろしくお願いいたします。

 先回、私、質問させていただいたときに、松島前大臣のお話を少しさせていただきました。そのとき、上川大臣からは、説明責任を果たすことがやはり大事なことであるというようなお言葉をいただきました。そして、現在、奥野委員長からも、いろいろな御配慮によって、説明責任を果たされる可能性があるかもしれないということを伺っております。説明責任ということは国民の皆様にとっても本当に大事なことであると思いますので、ぜひ松島前大臣の件に関しましては説明責任を果たしていただけるようにお願いして、本題に入らせていただきたいと思います。

 まず、今回のテロ資金提供処罰法の一部改正につきまして、ことしの六月十一日に委員会で審議されたときに、私も質疑させていただきました。ただ、その後、FATFが六月二十七日、本当に二週間後ぐらいなんですけれども、日本の法整備が不十分として、異例の名指し批判をいたしました。すなわち、二〇〇八年十月に採択された第三次相互審査報告書において指摘された多くの深刻な不備事項をこれまで改善してこなかったということを懸念しているというような内容でした。

 それで、このような一国を名指しで勧告するのは初めてのことだということも伺っております。それを考えましたときに、仮に、十一日にでも委員会で審議後きちんと採決して、そして本会議にかけられれば、このような一国を名指しされるという不名誉は避けられたのかとも思います。批判されるということを予想できながら、きちんと法整備を行うようにしなかった責任というものが私はあるのではないかと考えております。

 そこで、なぜ今まで法案を積み残してしまって、FATFから勧告を受ける羽目になったのか、まず最初にお伺いしたいと思います。

上川国務大臣 ただいま委員から御指摘がございましたけれども、本年の六月二十七日、FATF、金融活動作業部会によりまして、日本に関する声明が出されたところでございます。日本がこれまでにFATFから指摘された不備事項を改善してこなかったことに対しての懸念表明ということでございます。必要な法案を成立させることを含めまして、テロ資金供与対策等の不備に迅速に対処することを促されたということで、このことにつきましては承知しているところでございます。

 国際社会と協調してテロ対策に取り組み、かつFATFの要請に応えるために、本法案を十分に御審議していただき、また速やかに成立させていただくことが望ましいというふうに考えておりまして、この観点から、前国会におきましては、法案を提出した所管省庁の立場から本法案の重要性を御説明し、採決にまでは至らなかったものの、国会において議論がなされたものというふうに認識しているところでございます。

 法務省といたしましては、繰り返しになるところでもございますが、国際社会と協調してテロ対策に取り組み、かつFATFの要請に応えるためにも、十分な御審議と速やかな成立をお願いしたいというふうに思っておりまして、引き続き、立法府の御判断に資するよう、今回の法案の重要性を十分に御説明させていただき、審議に御協力させていただきたいというふうに思っているところでございます。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 確かに、慎重な審議というものは必要だとは思いますけれども、二〇〇八年に第三次相互審査報告書が出されたというときから考えますと、やはり何といっても、余りに時間がたち過ぎているのではないかなと私は思っております。

 次に、今私が一番関心を持っているところというのは、先ほど横路先生もおっしゃっていたんですけれども、いわゆる北大生事件というものであります。

 この北大生事件というのは、皆様御存じだと思いますけれども、シリアに渡って中東の過激派組織イスラム国の戦闘に加わろうとしていたとして、北海道大学の男子学生を刑法の私戦予備・陰謀の疑いで、十月の六日、事情聴取したという事件です。

 昔から私は傭兵部隊という存在の方がいらっしゃるということはもちろん存じ上げておりましたけれども、日本人で、外国での戦争、私戦に参加する人がいるということは余り考えたことがなかったので、この新聞報道などを聞いて、とても驚きました。

 そこで出されていた私戦予備罪というのはどういう条文だったのかというのを、刑法の教科書を見てみましたところ、外国に対して私的に戦闘をする目的で、その予備または陰謀をした者は、三月以上五年以下の禁錮に処す、ただし、自首した者は、その刑を免除するというものでした。

 これを見たとき、ああ、なるほどなと思ったんですけれども、そうしますと、今回のテロ資金提供処罰法の改正案を見てみますと、役務等を提供した場合も犯罪が成立することになります。とすると、このような場合、刑法の私戦予備と今回の法律とはどのような関係に当たるのかということが疑問になりました。この点、お答えいただければと思います。

林政府参考人 私戦予備罪とテロ資金提供処罰法違反の関係でございますが、まず、刑法九十三条の私戦予備・陰謀罪は、外国に対して私的に戦闘行為をする目的で、その予備、陰謀を行うことを処罰対象としておりますが、これに対しまして、テロ資金提供処罰法は、これは改正法も含めまして、公衆等脅迫目的の犯罪行為を実行しようとする者による資金等を提供させる行為や、これに対する資金提供等を処罰対象としております。

 この二つの、両罪が犯罪化される趣旨でございますが、私戦予備・陰謀罪につきましては、私的に外国に武力を行使することが我が国の国際関係上の地位でありますとか国家の存立を危うくする、だからこれを処罰するというものであるのに対しまして、テロ資金提供処罰法における犯罪は、公衆等脅迫目的の犯罪行為を実行しようとする者による資金収集でありますとかこれに対する資金提供がテロ行為の実行を助長、促進する、こういう点にあることに鑑みて、これを犯罪化しているということでございます。

 そして、この両罪は、目的の点において、私戦予備・陰謀罪が外国に対して私的に戦闘行為をする目的であるのに対しまして、テロ資金提供処罰法の犯罪は公衆等脅迫目的の犯罪行為の実行を容易にする目的という点で異なっております。

 また、構成要件に期待される行為につきましても、私戦予備・陰謀罪は予備、陰謀という非常に広い概念で定められておりますが、テロ資金提供処罰法につきましては、資金等を提供させる行為あるいは資金提供行為、こういうものを構成要件としている点でも異なっていると考えます。

高橋(み)委員 ありがとうございました。

 趣旨、目的、行為が異なっているということを伺いました。

 それでは、そういうふうに形式上異なるとは思うのですけれども、今回の事件は、勤務地シリア、詳細店番までと書いた求人情報が秋葉原の古書店に出ていたということに端を発するそうです。そして、応募してきた人をイスラム国の人間と面識がある元大学教授がイスラム国へ紹介したり、また、北大生の生活や渡航の費用などを調達したフリージャーナリストなどが登場してまいります。

 私は、この事件は、今回の法律に当てはめたときにどの構成要件に該当するのか検討してみましたが、かなり当てはめが難しいのではないかというような気がしました。もちろん、先ほどおっしゃったように、今回は私戦予備の方での捜査をしているということなんですけれども、例えば、今回の法律が改正されたとき、では、このような、私が先ほど述べた事実を前提にすると、今回の法改正におきましてはどのような条文に当てはまる可能性があるかという点から、適用条文などを教えていただきたいと思います。

林政府参考人 まず、今回の事件の実態というものについては把握できておりません。

 その上で、いずれにしましても、具体的に今回の事件がどの条文に該当するのかという、まさしく犯罪の成否につきましては、やはりそれは個別の証拠に基づいて判断される事柄でございまして、ここでお答えすることは困難でございます。

高橋(み)委員 私の言葉足らずだったと思うんですけれども、今回の事件と離れまして、例えば、先ほど述べましたように、勤務地シリア、店番までといったような募集情報を出していた。例えばこれがシリアの戦闘に対する募集だったと仮定した場合、ここに日本の方から行く人がいる、それを助ける人がいるという一般的なことで構いませんので、お答えいただきたいと思います。

林政府参考人 一般的な形でもそれがこういった条文のこの犯罪が成立するというようなことについてのお答えはできませんけれども、今回の改正の趣旨、観点からいきますと、一つ問題になり得るものとすれば、今回、資金の提供に加えまして、その他利益の提供というもの、これが改正においては処罰の客体として拡大されております。そういった観点から、今指摘されたような行為等がそういったその他利益に該当するのかどうかとか、そういった問題は出てこようと思います。

 ただ、それが具体的に今回の改正法の何条に該当する、成立し得る、そういう形でのお答えはできないということで御容赦いただきたいと思います。

高橋(み)委員 それでは、もう少し抽象的にしますと、例えば、テロ行為を企図する人がいて、それに参加しようとする人がいた場合、その人はこの改正の法律ではどこで処罰されることになりますか。

林政府参考人 基本的に、今回の改正あるいは現行法を通じてでございますけれども、テロ行為に参加するということ自体であれば、テロ行為を、公衆等脅迫目的の犯罪行為を実行しようとする者というものに当たり得ると考えます。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 そうすると、テロ行為を実際に実行しようとする人がいたら、そのテロ行為自体の実行行為者ということになる。ということは、その方に協力してお金を渡したり、いろいろな知り合いを紹介したりという人は一次協力者になる可能性があるということになるのでしょうか。教えてください。

林政府参考人 あくまでも、テロ行為を、公衆等脅迫目的の犯罪行為を実行しようとする者がいて、実際にその者に対してその実行のために利用する目的で資金等を提供しようとする者、これについては一次協力者という形で処罰の対象になり得ると考えます。

高橋(み)委員 ありがとうございました。

 ただ、これは私は実際の事件の概要を聞いて考えたんですけれども、テロ実行を容易にしようとする目的なのか、一次協力者の行為を容易にしようとする目的なのかというのは、やはり、当てはめてみようとするとかなり難しいのではないかなと思いました。今回の古書店の関係者の方とか、イスラム国へ紹介した人とか、お金を払ったジャーナリストさんとか、そういう人たちも、テロが目的なのか、一次協力者を助けるためが目的なのかというのは、やはり微妙なイメージが私はありました。

 それで、このような、二次協力者なのか、一次協力者なのか、つまり新四条一項に当たるのか、それとも新三条二項に当たるのか、少しわかりにくいという印象を受けましたので、他国の法制度がどうなっているのかということを少し調べてみました。

 お渡ししましたもので、「テロ資金処罰に関する主要国の法制の概要」というのがあります。これは衆議院の調査局法務調査室の資料から抜粋させていただいたものなんですけれども、フランス、アメリカ、イギリス、ドイツ、イタリア、カナダ、ロシアとありまして、これを見てみたところ、やはりすごくいろいろなつくり方をしていて、余り共通していないところもあるなというような印象を受けました。

 ただ、例えば、カナダの1というところの真ん中あたりなんですけれども、「直接又は間接に、財産を提供し、収集し、若しくは保有し、」云々かんぬんというふうにありまして、「直接又は間接に、」ということで、いろいろな行為に協力していくというような項目立てというか、構成要件がつくられているように感じました。

 今回のように目的で主体を拡大させていくというわけではなく、やはり今までの日本の刑法にあるように、行為者があって、それの幇助、教唆、そういうような共犯関係でいった方が、海外の法制度を見てもスマートではないかというような印象を持っているのですけれども、日本がこのような法改正をするというふうに決めた理由というものが特にありましたら、教えていただきたいと思います。

林政府参考人 確かに外国の立法例はさまざまでございます。そして、御指摘されたように、いわば直接または間接の資金提供等を包括的に処罰する、その中の区分を設けていない立法例もあると承知しております。もちろん、それも一つの考え方だと思います。

 今回の改正案につきましては、やはり、テロ行為の実行を助長、促進するということを犯罪化する、これが目的でございますが、これを処罰する趣旨でございますが、その危険性の程度にもやはり差異があるということに着目しまして、その助長、促進する危険性の程度に応じて、今回、それぞれ罰則を定めております。

 このような罰則の定め方というのは、やはり、テロ行為の実行を助長、促進する危険性の程度に応じて異なる法定刑というのを、罪を設けるということにしたものでありまして、罪と刑の均衡、罪刑の均衡という観点からも、こういった法改正の罰則の定め方が適切であると考えたものでございます。

高橋(み)委員 ありがとうございました。

 それでは、お渡しした同じ紙の下のところに、実は、法定刑というものも載ってございました。実は、ここを見たときに、日本は、今回、五年以下の懲役、罰金五百万円以下とか、七年以下の懲役、罰金七百万円以下というものを新設するという話なんですけれども、実は他国の法定刑を見たときに、日本よりもかなり重いなというような印象を受けました。

 実はアメリカのところでは、1は「十五年以下の自由刑若しくは罰金又は併科」、2が「二十年以下の自由刑若しくは罰金又は併科」とか、イギリスでは「十四年以下の自由刑若しくは罰金又は併科」というふうに書いてありまして、日本は、他国に比べると、同じような資金提供罪等の犯罪を犯したときの法定刑というものが少し軽いようなイメージがあるのですけれども、その点はいかが考えますでしょうか。お答えいただきたいと思います。

林政府参考人 確かに、日本よりもその法定刑の上限が重い罪を定めている国がございます。例えば米国が十五年であったり、英国が十四年という上限であったりしますが、日本の場合は、これにつきましては十年というものを上限にして、その中で、先ほど申し上げておりますその危険性の程度の差異に着目して個別の構成要件を分けまして、ある者は七年以下、ある者は五年以下、さらにはある者は二年以下という形で、十年を上限とした中でさまざま法定刑の差異を設けているものでございます。

 そういった意味で、確かに、ある国との比較においては、上限という意味において日本の法定刑の上限が低いということも実際は生じてはおりますけれども、それぞれの法定刑、一番適切な法定刑の選び方として、今回の改正案あるいは現行法の上限というものは適切であろうと考えております。

高橋(み)委員 ありがとうございました。

 私もこれが日本が軽過ぎると言っているわけではないんですけれども、この表を見たとき、海外はテロの資金などを提供するときに日本よりも厳しい目で見ているんだなということがわかりましたので、やはりこれから日本でも、もう少しこういうテロの資金の提供とかいろいろなテロに関係することには厳しく対処していかなければいけないなと思いましたので、その旨の質問をさせていただきました。

 次に、事実関係でちょっとさせていただきたいんですけれども、皆様にお配りした紙の中に新聞記事がございます。

 この左側の方の記事は、元自衛官の方がシリアの反政府組織の一員として政府軍との戦闘に加わったとされているものです。それで、右側の方は、千葉県のアルバイト男性が北大生とともにシリアに渡ろうとしていたというような記事です。

 これを見たときに、実際シリアには何人ぐらいの日本人が例えば渡っているのだろうか、そして、その中で、こういうような戦争というのかテロというのか、ちょっとよくわかりませんけれども、そういうものに参加する可能性がある人というものはどのくらいいるのか、それを日本国として把握しているのかということをお尋ねしたいと思います。

井上政府参考人 入国管理局としてお答えいたしますと、日本を出国する日本人の渡航先については確認しておりませんので、シリアなど、どこの国に何人の日本人が渡航しているかということは把握できてございません。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 今まではそれでよかったのかもしれないんですけれども、これからはやはり、日本人がそういう外国に行って戦闘に参加する可能性がある、それで日本人が戦闘に参加しているんだというような評判が立ってしまった場合、やはり日本国としてもある程度対処していかなければいけないと感じますので、これから、そのような資料などは何らかの方法でとっていくべきではないかと思いました。

 次に行かせていただきたいんですけれども、テロということで少しお尋ねしたいと思います。

 二〇二〇年に東京オリンピックが開催されることになっているんですけれども、最近でも、やはりオリンピックでテロというような危険性というのはかなり高まっていると思うんです。その点、日本ではどのようなテロの対策、警備をとるおつもりなのか、お尋ねしたいと思います。

塩川政府参考人 お答えします。

 二〇二〇年に東京で開催されるオリンピック・パラリンピック競技大会は、国際的に最高度の注目を集める行事であり、開催国としての治安責任を果たす必要があるというふうに考えております。

 このため、警察庁では、本年一月二十四日、組織委員会の設立に合わせ、警備局長を長とする二〇二〇年オリンピック・パラリンピック東京大会準備室を設置したところであります。警察として、オリンピック・パラリンピック東京大会におけるテロなどの未然防止を図るため、情報収集、分析を強化し、警戒警備を徹底するなど、諸対策を推進することとしております。

 加えて、大会組織委員会や関係機関と緊密に連携しつつ、大会警備に係る大綱方針や計画の策定などについても積極的に参画してまいりたいと考えております。

 こうした対策をとることにより、大会の安全の確保に向けて万全を期してまいりたいというふうに考えております。

高橋(み)委員 ありがとうございました。

 詳しいいろいろな警備をここでおっしゃっていただくと、それはテロをしたいという人がもしいた場合に問題になるかと思いますので、それ以上は伺いませんけれども、本当にぜひいろいろな対策をとっていただければと思っております。

 最後の質問になるんですけれども、共謀罪についてお尋ねしたいと思います。

 私が最初に述べました日本に関するFATFの声明では、パレルモ条約の締結と完全な実施ができていないということも指摘されていたかと思います。日本では、この共謀罪については今国会では取り上げられる気配がないようです。ですから、今回の法改正、今取り上げられている資金提供処罰法が改正されても、FATFの声明には満足に応えるということができない状況であるかと思います。

 そこで、どうして共謀罪を日本できちんと成立させていくような動きがないのか、まず質問をしたいと思います。

上川国務大臣 御指摘のパレルモ条約についての件でございますけれども、条約に署名したということで、国際社会と協調して組織犯罪と闘うということにつきましては、大変重要な課題でございます。条約の締結に伴う法整備に関してでございますが、やはりこれをしっかりと進めていく必要があるというふうに考えているところでございます。

 締結のための法案のあり方につきましては、国会審議等の場におきましていろいろな不安やまた懸念等も御指摘されたところでございますので、そうしたことを踏まえながら検討しているところでございますが、法案につきましては、今国会に提出するかということにつきましては未定ということでございます。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 ただ、この前の日本に対する声明でも共謀罪のことをしっかり考えていくべきではないかというようなものがあったのにもかかわらず、今の御答弁を伺った限りでは、どちらかというと余り前向きではないというような印象を受けました。

 前向きでない理由というのは、きっと、処罰をする人が広がってしまう可能性があるということが一番多いんだとは思うのですけれども、やはり諸外国とある程度歩調をそろえて、テロに関することとかその他の重要な罪に関しましては共謀ということもきちんと定めていく必要性があると思うのですけれども、それができない理由は何かあるのかなというような印象があります。

 もう時間が来ましたので、最後の御答弁は結構なんですけれども、やはり、諸外国から言われたことに関しましては、日本がきちんとした言い分があるならばそれはそれでいいと思うのですけれども、このような犯罪行為に関することについてはきちんとした日本の方針として対処できるように、法案の整備などをしていくように、ぜひお願いしたいと思います。

 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

奥野委員長 これにて高橋君の質疑は終了しました。

 次に、井出庸生君。

井出委員 維新の党、信州長野の井出庸生です。よろしくお願いいたします。

 私も、前大臣の説明責任は大事だと思っておりまして、きょう理事会で委員長からもちょっとお話しいただきましたが、引き続き、関係者の御努力を見守らせていただきたいと思っております。

 質問に入らせていただきますが、本論に入る前に、けさの朝刊の件で法務省の見解をいただきたいことがありまして、通告しておりませんので可能な範囲で結構なんですが、けさの朝日新聞の朝刊の一面に、無期懲役の受刑者の仮釈放が減っている、八年連続一桁で、終身刑化が進んでいるのではないか、そういう記事が出ておりました。

 記事の中身は、昨年一年で仮釈放された受刑者が八人で、八年連続一桁になった、その八人の平均在所期間は三十一年二カ月、二十年前と比べれば十三年ふえている、無期懲役の方が刑務所内で亡くなったケースは昨年十四人、これも五年連続で二桁になっていると。

 これは法務省が二十八日に公表したものをまとめて新聞記事になっているかと思うんですが、社会の厳罰化の傾向等もあるかと思うんですが、こうした傾向を今法務省としてどのように受けとめておられるか、答えられる方に答えていただければと思います。

林政府参考人 無期刑の仮釈放についての統計についてのお尋ねだと思いますが、私、詳細を把握しておりませんけれども、確かに、大きな傾向としては、無期刑で仮釈放になる者の人数が減少傾向にあることとともに、仮釈放になった場合における、その仮釈放になった者がどのぐらい刑務所に服役していたか、いわゆる刑務所においての収容期間、こういった統計についても、その期間が長期化している傾向にあるということは認識しているところでございます。

 それについてはどのような原因があるのかということについては、仮釈放自体は地方更生保護委員会において個別のケースに応じて仮釈放を認めるかどうかを判断しておりますので、その個別の事案の集積の結果、その統計というものができておりますので、その原因等については、ここで定かなものを持っているものではございません。

井出委員 今国会では裁判員裁判の制度を改正する法案も予定されているやに聞いておりましたので、実際受刑者となった人のそういった実態というものは広く取り上げていく必要があるかと思って、質問させていただきました。

 では、法案の方に入らせていただきます。

 テロ資金提供処罰法改正案なんですが、私も、先ほど委員の先生方から御指摘があった、刑法の私戦予備及び陰謀罪とこのテロ資金提供処罰法改正案、現行法のままでもそうなんですが、かなりの関連性、重なる部分があるのではないかなと思っております。

 さきの委員の先生方のお話の中で重なるところ、論点もありますので、私の申し上げたいところを端的に申し上げますと、きょうは、資料を一枚、表裏で用意しておりまして、この図表になっているのが、衆議院の調査局法務調査室につくっていただいた、テロ資金提供処罰法改正案と私戦予備・陰謀罪との比較でございます。その裏が、これは衆議院の法制局にお願いをしたんですが、私戦予備罪の解釈についてちょっと分析をしていただいたものです。

 私は、先ほど林刑事局長が答弁の中でおっしゃっておりましたが、私戦予備及び陰謀罪の私戦というものはかなり曖昧だと。テロ資金提供処罰法改正案は、私自身も厳密だという思いはあるんですが、ただ、その私戦の中にテロが入る可能性も私は排除はできないと思っている。ここがまず一点。

 そして、私戦予備罪の行為、先ほどの御答弁でも、私戦の予備または陰謀という広い概念となっておりますというお話がありました。この現行法改正案は、資金またはテロ行為の実行に資するその他利益を提供するとなっているんですが、六月十一日にこの法案審議をしたときに、林刑事局長の答弁の中で、利益というものは、およそ人の需要、欲望を満足させるに足りるものを意味しており、一切の有形無形の利益がこれに該当すると説明をされている。情報提供なんかも入るというような話もさきの審議の中であったかと思うんです。

 私は、今指摘した私戦の定義と、そしてその二つの行為を比べたときに、やはりどうしてもこの二つの法律というものは重なり合っている部分が残っているのではないかと思いますが、刑事局長、いかがでしょうか。

林政府参考人 今回、テロ資金提供処罰法改正案は、まず、御指摘のように、提供罪の客体につきまして、資金以外の土地、建物、物品、役務その他の利益であって、公衆等脅迫目的、いわゆるテロ行為等の実行に資するものを加えております。また、主体については、テロ実行企図者以外の者に対する資金の提供でありますとか、テロ実行企図者以外の者による資金等を提供させる行為、こういったものについても一定の要件のもとで処罰し得るものとしております。

 他方で、私戦予備及び陰謀罪は、外国に対して私的に戦闘行為をする目的で予備、陰謀を行うことを処罰対象とするものでございます。

 このように、この両罪につきましては、趣旨でありますとか構成要件は異なるものの、一般論として申し上げれば、もちろん個別の具体の事情にもよりますけれども、例えばテロの実行に資する資金の収集が私戦予備罪における予備行為と評価し得る、こういうような場合などにおいては、両方の罪というのが適用範囲が重なり合う場合があり得ると考えられます。

井出委員 重なり合ったときにどうするかというところが非常に問題だと思うんです。

 一番は、お示ししている資料の法定刑なんですが、私戦予備及び陰謀罪というものは三月以上五年以下の禁錮、改正案は、ごらんのとおり、十年以下の懲役から二年以下の懲役までさまざまなんです。その重なり合う部分の法の適用というものは、当然、個別の事例をやっていくのが前提だと思うんですが、ただ、少なくとも、この法律をつくる段階で、一般論として少し整理をしておく必要があるかと思いますが、いかがでしょうか。

林政府参考人 この二つの罪、私戦予備・陰謀とテロ資金提供処罰法における犯罪につきましては、それを犯罪としている趣旨等も異なります。

 したがいまして、重なり合う場合、それが全く同じ一つの行為で両方に適用がなされるような場合、一つの行為で二つの罪に該当するような場合には、観念的競合ということで罪が処理されることになります。具体的には、その場合には重い方の罪によって処罰されるという形になります。

 もちろん、その場合の重い方というのは、テロ資金提供処罰法の罪につきましては、今回の改正法によって、個別に幾つかの類型に応じて法定刑を定めておりますので、それぞれの法定刑と比較して重い方ということになります。

井出委員 今、重い方というお話がありまして、重ねて伺いたいのは、私戦予備及び陰謀罪というものがこれからも必要なのかということがまず一点。

 もし重い方を適用するというのであれば、テロには至らない、海外に、外国政府に対して戦闘を考えていたんだけれども何か夢物語みたいな話だった、軽微という言葉がふさわしいのかどうかわかりませんが、そういうもののために私戦予備罪というものの必要性があるのかどうかというところをちょっともう一度伺いたいと思います。

林政府参考人 先ほど両罪については重なり得ると申し上げましたが、一方で、その重なり合う場面というのは、具体的な事案によりますけれども、必ずしも大幅に重なり合うというわけでもございませんで、かなり限定的な事案においては重なり得るというふうに考えられます。

 そういった意味においては、私戦予備・陰謀罪の必要性というものについては引き続き存するものと考えます。

井出委員 ちょっと重ねて伺いますが、重なり合うということは、仮にテロ資金提供処罰法改正案が成立をして、それに該当する事件があったときに、その被告人、弁護人が、いや、これはテロ資金の対策の法律の方ではないんだ、そんなつもりはなかった、適用されたとしてもせいぜい私戦予備及び陰謀罪じゃないか、そういうケースというのはこれから想定されてくるということですか。

林政府参考人 両罪が重なり得る場合、その前提としては、両罪が成立するということが前提でございますので、当然、私戦予備・陰謀罪についても客観的に構成要件に該当し、また、そこについての違法性、責任が実際に認められる場合に初めて成立いたしますし、他方、テロ資金提供処罰法の資金提供罪あるいは資金収集罪にもそういった形で構成要件に該当して、当然、違法性もあって責任もある、こういった場合を前提として重なり合いますので、いずれにしても、今言われた、テロ資金提供処罰法を犯すつもりはなかったということについては、もちろん、そういった形での主張がなされることは実態としてはあると思いますけれども、そういった場合で、もしそれでテロ資金提供処罰法の行為等がなければ、まさしくそれは重なり合う場合ではないということになります。

井出委員 テロ資金提供処罰法、現行法、これ自体も十年間適用されたようなケースがなかったというのは六月の議事録を読ませていただいているんですが、私戦予備及び陰謀罪も同様に、適用されたケースは今までなかったのではないか。北大生の案件で初めてクローズアップされてきた問題だと思うんです。

 私は、テロ対策をやっていくというところの重要性は非常に重要だと思っているんですが、一方で、使われない法律をずっとそのままにしておくということはそれはそれでまた問題だと思いますし、そこをいま一度、使われない法律をどうしていくのか。先ほど私が申し上げたように、少なくとも、残すのであれば、やはり使い分けというものをきちっと明確にしていく必要があると思いますが、そのあたりはいかがでしょうか。

林政府参考人 刑法の私戦予備及び陰謀罪につきましても、またテロ資金提供処罰法の資金提供罪及び資金収集罪につきましても、これまでの処罰事例というものは承知しておりません。

 他方で、それぞれこのような犯罪を設けるべき趣旨、目的につきましては、それぞれ両罪は異なりますけれども、双方にそういった犯罪を設けておく理由がございますので、これはこのまま、これまでも維持されているものでございます。

 なお、テロ資金提供処罰法につきましては、今回、さらにそれにFATF等の要請を受けまして、改正を行うものでございます。

井出委員 この法律が、改正案の方は、公衆等脅迫目的の犯罪行為の実行を容易にする目的でそれを実行する者に資金等を提供しようとすることを防ぐ、そういう目的がある。片や、私戦予備罪は、我が国の意図に基づかない戦い、私的な戦いをやる人が出てきて、先ほど御答弁ありましたが、国際関係ですとか国家の存立にかかわるようなものを防ぐ。

 そこは、刑事局長のこれまでのお話で、立法の目的が違うというところもおっしゃっているんですが、私は、テロにも十分、日本の国際関係の支障になったり、国家の存立にかかわるものもあると思いますし、行為については先ほど申し上げたとおりなんですよ、予備または陰謀は広い概念であって、それと同時に、現行法改正案の利益を提供するというところも極めて広いと私は思っております。

 ですから、テロ対策を早くしていかなければいけないということはわかっております。しかし、その一方で、こうした問題が出てきているからには、この法案の採決までにやはりきちっとした整理をつけていく必要が、どうしてもこれは必要なのではないかなと。

 個別の事案でお答えがいただけないと思いますので聞きませんが、その北大生の事件も、先ほど高橋委員がちょっと聞きましたが、もし改正案が通った後であれば、関係者、本人含めて、どっちの法律でやるかみたいな議論にもなったかもしれないと思っているんですね。

 ですから、私戦予備罪とテロ資金の改正案について両方残すとおっしゃられたのは結構ですけれども、しっかりと区別をつけていただきたいと思いますけれども、どうでしょうか。

林政府参考人 私戦予備・陰謀罪というのは、委員の御指摘にもありましたように、国交に関する罪という概念でございまして、我が国の国際関係上の地位、国家の存立を危うくする行為の一つとしてこれが処罰されているものでございます。

 一方で、テロ資金提供処罰法の犯罪につきましては、これは、もちろん、国に対する脅迫目的というような形でのテロ行為がなされることもございますが、必ずしもそれには限定されておりませんので、広く社会に対しての脅迫という目的で行われる場合も処罰することになっております。そういった意味においては、これは、単に国家的な法益を保護するためだけではなくて、社会的な法益を保護するものとしてテロ資金提供処罰法がございます。

 そういった意味で、両者は、こういった形で犯罪化されている相応の理由があるものと考えております。

 その上で、法制面でいえば、それぞれの構成要件はかなり異なっております。ただ、実態面として、もちろんそれが重なり合う場合はあり得ると思いますが、重なり合った場合の処理につきましても、先ほど申し上げました、刑法で言いますところの観念的競合という形で処理されることが法制上定まっておりますので、法制面においてはきちんとこの両罪の区別、適用関係は整理されていると理解しております。

井出委員 私戦の予備または陰謀の概念は、法制局にちょっと調べていただいたところ、資金の調達、兵器・弾薬・食糧の調達、兵員の調達。私はやはり重なり合う部分が非常に大きいかなと思っておりまして、もちろん、テロ対策に日本がきちっと示すことは重要なんですけれども、ぜひ、きょうこういう問題を御指摘させていただきましたので、しっかりとその議論を最後まで尽くしていただきますようにお願いをして、終わりたいと思います。

 大臣、申しわけありませんでした。またお願いいたします。

奥野委員長 次に、三宅博君。

三宅委員 次世代の党の三宅博でございます。

 今回、時間も限られておりますので、御答弁の方も簡潔にお願いします。

 具体的な事件についてお尋ねいたします。

 質問の順番をちょっと変えまして、この法律案、改正案は北朝鮮による拉致事件に適用されるのかどうか、まずこのことをお聞きしたいと思います。

    〔委員長退席、土屋(正)委員長代理着席〕

上川国務大臣 御質問の件でございますけれども、今、テロリズムにつきましては国際法上厳格な定義があるというわけではございませんが、一般に、特定の主義主張に基づき国家等にその受け入れ等を強要し、または社会に恐怖等を与える目的で行われる人の殺傷行為等をいうものというふうにされているものと理解しているところでございます。

 委員が、その範疇の中のこの法律のテロということにつきまして、今申し上げたところにつきましての認識ということにつきましては一致しているかわかりませんけれども、七〇年から八〇年ごろにかけまして多くの日本人がその意思に反して連れ去られた拉致事件ということについて、我が国の国家主権にかかわる重大な問題でありまして、かつ、我が国国民の生命と安全に大きな脅威をもたらしたものであるというふうに認識しております。

三宅委員 今のお答えですと非常にわかりにくいんですけれども、当然、北朝鮮の拉致事件、これはもうテロ行為であり、やはりこの法案の対象にすべきだと思うんですよ。

 その中で、ちょっとお聞きしたいんですけれども、今度は、このような国家犯罪、国家テロを行っている北朝鮮、これはテロ国家ではないのかというふうに思うんですけれども、大臣、いかがお考えですか。

上川国務大臣 委員が御指摘をされましたテロ国家ということでございますが、この概念につきまして認識が一致しているかどうかわかりませんけれども、北朝鮮はかつて、韓国に対しまして、ラングーン事件や大韓航空機爆破事件などのテロ行為を実行したものというふうに承知をしております。また、我が国に対しましても、国民の生命と安全に大きな脅威をもたらしました日本人拉致事件というものを惹起したものというふうに承知をしているところでございます。

三宅委員 では、次にお聞きしたいのは朝鮮総連なんですけれども、朝鮮総連は、北朝鮮の日本における下部機関といいますか、この朝鮮総連に対してのお考えなんですけれども、朝鮮総連はテロ組織ではないのか。このあたり、いかがお考えですか。

上川国務大臣 御質問いただきました、朝鮮総連はテロ組織かということでございますけれども、委員が今御指摘なさいましたテロ組織という概念について認識が一致しているかどうかということについてはわかりませんが、これまで政府の認識として随時答弁申し上げているところでございますが、朝鮮総連は北朝鮮の強い影響下にあり、その活動について随時北朝鮮の指示、指導を受けているというふうに承知をしているところでございます。

三宅委員 さっき大臣がおっしゃいましたように、北朝鮮は、ラングーンの爆破事件、これは一九八三年の十月九日ですね、このときに、韓国の閣僚あるいはビルマの閣僚、こういった方々、十七名が死亡して、四十七名が負傷した。あるいは一九八七年十一月の大韓航空機爆破事件。こういった非常に大きなとんでもないテロ事件をずっと起こしてきた。

 なおかつ、その下部機関たる朝鮮総連は、日本国内においていろいろな工作といいますか、こういったことをしているわけなんですね。

 その中でも非常に大きな事件といいますと、これは昭和四十九年、一九七四年の文世光事件というのがありましたね。これは皆さんよく覚えていらっしゃると思いますけれども、韓国の光復節の式典で、在日韓国人の文世光が韓国へ行って、朴大統領を狙撃しようとした。その流れ弾が陸英修婦人に当たって亡くなられたということなんですね。

 この文世光を唆したといいますか、これは、朝鮮総連の生野支部政治部長の金浩竜。彼が文世光を唆して、狙撃の訓練等もやって、いろいろとバックアップしてこの事件を起こしたんですね。まさに、朝鮮総連というのはテロ組織というふうに規定して何ら疑いのないところではないかなというふうに思います。

 それから、拉致事件なんですけれども、朝鮮総連が拉致の実行部隊として多くの拉致をやっているんですね。有名なのは、政府認定被害者の原敕晁さん。これは、韓国で辛光洙が捕まって、原敕晁さんの合法的身分を手に入れて、背乗り目的で原敕晁さんに成り済まして、日本と韓国をずっと行き来していた。韓国で捕まって、軍法会議にかけられて死刑判決を受けたんですけれども、この原敕晁さんの拉致事件。このときに関与していたのは、朝鮮総連の大阪の商工会の理事長の李三俊であるとか、あるいは商工会の会長とか、こういった朝鮮総連の役員がずっとこれに入っていって実行した。原敕晁さんが勤めていた鶴橋の中華料理店なんですけれども、ここの店主が李三俊であって、彼がまさにこれの実行犯の中心だったんですね。これは辛光洙から指令を受けてやった。

 あるいは、同じく政府認定被害者の田中実さんですね。これについては、元朝鮮総連の洛東江といいますか、地下組織の構成員だった張龍雲さん、もうこの人は亡くなっているんですけれども、この人は、自分の著作で、自分が、あるいはまた曹廷楽、韓竜大といった朝鮮総連の人間が田中実さんの拉致の実行に関与した、実行したということを言っています。

 あるいはまた、これも政府認定被害者で久米裕さん。これは昭和五十二年の九月なんですけれども、このときに、同じく朝鮮総連の李秋吉が石川県の宇出津海岸で逮捕された。宇出津事件として有名なんですね。

 まさにこういったことで、北朝鮮の指示を受けて、朝鮮総連は、拉致の実行犯あるいはまた文世光事件の首謀者としてずっとやっている。これは当然、テロ組織として規定すべきではないかなというふうに思います。

 なぜ朝鮮総連がテロ組織であるということを断定しなくてはならないか。今回の法律案、FATFの方から、やはり日本に対して非常に厳しい指摘がされているわけでしょう。日本は、テロ資金供与の犯罪化につき国際基準に不合格、その後も改善が進んでいないということで、今回のこの改正案がされたわけですよね。ということは、朝鮮総連に対して当然厳しい取り扱いをしていかなくてはならないと思うんです。

 朝銀信用組合に、以前、公的資金の投入がされましたよね、一兆四千億、二回にわたって。FATFでこのことは具体的に指示はされていますか。

林政府参考人 大変申しわけございません、朝銀信用組合の公的資金の投入が本法案に該当するかどうかということの御質問ということでよろしいんでしょうか。(三宅委員「はい」と呼ぶ)

 いずれにいたしましても、犯罪の成否というものは収集された証拠に基づいて個別に判断されるべき事柄でございますので、そういった公的資金の投入等を前提として、それが該当するかどうかということについてはお答えは差し控えさせていただきます。

 一般論としてお答えすれば、改正法案四条一項の資金等提供罪が成立するためには、提供の相手方が、テロ行為の実行を容易にする目的でテロ実行企図者に対して資金等を提供しようとする者であることが必要でありまして、かつ、提供者において、このような相手方のテロ実行企図者に対する資金等提供罪の実行を容易にする目的で相手方に資金等を提供することが必要であります。そういった要件が満たされない場合には、本法の適用対象とはならないということになります。

    〔土屋(正)委員長代理退席、委員長着席〕

三宅委員 なぜこのことを厳しく尋ねているかといいますと、さっき言いましたように、朝鮮総連はまさにテロ組織だと。それに対してずっと資金提供していたのが朝銀信用組合でしょう。その朝銀が破綻したときに、日本の国民の税金、公的資金が一兆四千億円これに投入されたんですね。これはまさに今回の、協力者といいますか、ここに入ってしまうんじゃないかなというふうに思うんですけれども、いかがですか。

 それから、朝鮮総連なんですけれども、今、競売問題等もやっていますけれども、資金以外の土地建物、客体の追加ということになってきますと、朝鮮総連の土地建物も当然その範囲に含まれてくるというふうに認識するんです。

 朝銀信用組合に公的資金の投入、この行為は二次協力者あるいは二次協力行為に当たるんじゃないか。もしそうなってきたら、日本政府がやった金融機関の救済行為といいますか、このことがこれに該当するんじゃないかなというふうな疑いを捨てられないんです。いかがお考えでしょうか。

上川国務大臣 先ほど政府答弁ということでいたしたところでございますけれども、犯罪の成否につきましては、捜査機関により収集された証拠に基づき個別的に判断されるべき事柄ということでございまして、お答えにつきましては差し控えさせていただきたいと思います。

三宅委員 証拠も何も、さっき言ったでしょう。拉致事件、原さんやら田中さんやら久米さんの事件、あるいは文世光事件、全て証拠が挙がっているじゃないですか。事実そのものじゃないですか。朝鮮総連がそれにずっと関与してきた。その朝鮮総連に対して資金の提供をした朝銀信用組合が破綻したんでしょう。今度はそれに対して、日本国民の血税、公的資金を投入した。これはテロ行為に協力することになるんですよ。このことをやはりもっと厳しく考えていただかなくてはならないんじゃないかなと。

 それは、金融秩序というものを守っていかなければだめだということはわかるんですけれども、朝銀信用組合が破綻したところで、日本の金融秩序なんか何の問題もないんですよ。反対に、こういうふうな、朝鮮総連といいますか、ここに資金提供したこのような信用組合は、それこそ破綻させていかなくてはならない。にもかかわらず、これを救済してしまった。これは非常に大きな問題であるというふうに思うんですけれども、もう一度、大臣、いかがですか。

上川国務大臣 ただいま先生から御指摘がございましたけれども、犯罪の成否につきましては、あくまで捜査機関により収集された証拠に基づき個別に判断されるという事柄でございますので、お答えは差し控えさせていただきたいと存じます。

三宅委員 その辺の認識はやはり厳しく考えていただかないと。でないと、今回の改正案は何のためにするか、その見識といいますか、動機を疑われますよ。

 以上です。ありがとうございました。

奥野委員長 これにて三宅君の質疑は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十七分散会


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