衆議院

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第8号 平成26年11月5日(水曜日)

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平成二十六年十一月五日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 奥野 信亮君

   理事 伊藤 忠彦君 理事 柴山 昌彦君

   理事 土屋 正忠君 理事 ふくだ峰之君

   理事 盛山 正仁君 理事 柚木 道義君

   理事 井出 庸生君 理事 遠山 清彦君

      安藤  裕君    池田 道孝君

      小田原 潔君    大塚  拓君

      大見  正君    門  博文君

      神山 佐市君    菅家 一郎君

      黄川田仁志君    小島 敏文君

      小林 史明君    古賀  篤君

      今野 智博君    末吉 光徳君

      平沢 勝栄君    三ッ林裕巳君

      宮澤 博行君    湯川 一行君

      階   猛君    横路 孝弘君

      鷲尾英一郎君    高橋 みほ君

      丸山 穂高君    大口 善徳君

      西田  譲君    鈴木 貴子君

    …………………………………

   法務大臣         上川 陽子君

   法務副大臣        葉梨 康弘君

   文部科学副大臣      丹羽 秀樹君

   法務大臣政務官      大塚  拓君

   最高裁判所事務総局人事局長            堀田 眞哉君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  松岡 正樹君

   政府参考人

   (内閣官房法曹養成制度改革推進室長)       大塲亮太郎君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    深山 卓也君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    林  眞琴君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    西田  博君

   政府参考人

   (法務省人権擁護局長)  岡村 和美君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  井上  宏君

   政府参考人

   (公安調査庁長官)    寺脇 一峰君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           中山 峰孝君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  新村 和哉君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局食品安全部長)       三宅  智君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局次長)           勝田 智明君

   法務委員会専門員     矢部 明宏君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月五日

 辞任         補欠選任

  神山 佐市君     小林 史明君

  末吉 光徳君     湯川 一行君

  郡  和子君     鷲尾英一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  小林 史明君     神山 佐市君

  湯川 一行君     末吉 光徳君

  鷲尾英一郎君     郡  和子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第九号)

 検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第一〇号)

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

奥野委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官松岡正樹君、内閣官房法曹養成制度改革推進室長大塲亮太郎君、法務省民事局長深山卓也君、法務省刑事局長林眞琴君、法務省矯正局長西田博君、法務省人権擁護局長岡村和美君、法務省入国管理局長井上宏君、公安調査庁長官寺脇一峰君、厚生労働省大臣官房審議官中山峰孝君、厚生労働省健康局長新村和哉君、厚生労働省医薬食品局食品安全部長三宅智君及び厚生労働省職業安定局次長勝田智明君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

奥野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

奥野委員長 次に、お諮りします。

 本日、最高裁判所事務総局堀田人事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

奥野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

奥野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。黄川田仁志君。

黄川田(仁)委員 本日は、貴重な質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 また、改めまして、上川法務大臣、就任おめでとうございます。上川大臣に対しては、私、初めての質問になりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 本日は、国民の皆様が大変心配されておりますエボラ出血熱についての法務行政を中心とした対応に関しまして質問をさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 先日、政府におきまして、エボラ出血熱対策関係閣僚会議が開催されたと聞いております。会議で確認されたことや新しく決まった対策について教えていただきたいと思います。

 また、閣僚会議を受けまして、関係省庁対策会議が開催される旨も聞いております。ここで決定されたもの、今後の方針などについても教えていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

松岡政府参考人 お答えさせていただきます。

 エボラ出血熱につきましては、我が国にとっても、国民の生命、健康を守る上で重要な課題となっておりまして、これまでも関係省庁が連携をとりながら対応してきたところでございますが、政府全体として万全の体制で臨んでいく必要があることから、先般、十月二十八日、総理が主宰する関係閣僚会議を立ち上げたところでございます。

 この関係閣僚会議におきましては、エボラ出血熱に関する現状を確認するとともに、総理から、関係機関と緊密に連携し、検疫の徹底、迅速な初動検査、二次感染の防止、医療体制の確保など、発生時の対応の強化に万全を期すとともに、国民に対し迅速かつ的確な情報提供を行い、国民の安心、安全の確保に努めるよう御発言がございました。

 また、こうしたことから、本日、関係省庁の局長級を構成員といたしますエボラ出血熱に関する関係省庁対策会議を開催し、課長級会合の設置等を行うこととしているところでございます。

 今後、本対策会議等におきまして、関係省庁の連携を確保し、必要な対策について万全を期してまいりたいと考えております。

黄川田(仁)委員 本日、関係省庁対策会議が開かれるということでございます。本日進められる議論についても反映していただきたいというふうに思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 今のお話にありましたように、政府が一体となってやっていくということでございますので、法務省においてもこれは例外ではないということでございます。

 この閣僚会議に先立ちまして、その前に、厚生労働省所管の検疫と法務省所管の入管審査との連携強化の取り組みも始まっておると聞いております。その取り組みについてお聞きしたいと思います。

 まず初めに、厚生労働省から、エボラ出血熱の水際対策として取り組まれている検疫の具体的内容について教えていただきたいと思います。

三宅政府参考人 検疫所を所管しております厚生労働省食品安全部でございます。

 検疫所におきましては、アフリカにおけるエボラ出血熱の発生状況等を踏まえ、出入国者に対して、エボラ出血熱の発生状況等について注意喚起を実施しております。

 また、入国者に対して、空港において日ごろから実施しているサーモグラフィーによる体温測定に加え、九カ国語のポスターや検疫官の呼びかけ等によって自己申告を促し、問診、健康相談等を実施、さらに、各航空会社に対しまして、流行国に二十一日以内に滞在した乗客は、空港到着後、検疫官に自己申告するようお願いする旨の機内アナウンスの協力を依頼しております。

 また、流行国への滞在等が把握できた在留邦人に対しまして、所属する企業、団体等を通じ、エボラ出血熱の予防などの必要な情報の提供や、帰国時における検疫所への自己申告のお願いなどを実施してきております。

 また、先般、これらの検疫対応に加えまして、ギニア、リベリア及びシエラレオネへの二十一日以内の滞在歴が把握された者については、一日二回、体温測定など健康状態を確認し、また、十月二十四日からは、可能な限り、過去二十一日の流行国の滞在歴を確認することができるよう、検疫体制の一層強化を行い、各空港における検疫所と入国管理局の連携を強化し、さらなる検疫強化を図ったところでございます。入国管理局におかれましては、検疫業務に非常によく協力をいただき、感謝申し上げております。

 引き続き、国内外におけるエボラ出血熱の状況等を踏まえつつ、必要な検疫体制を整備してまいる所存でございます。

黄川田(仁)委員 今の御説明、厚生労働省の検疫の内容に関する報告を踏まえまして、入国審査における連携強化の具体的な取り組みについて教えていただきたいと思います。

井上政府参考人 入国管理局における取り組みにつきまして、具体的に説明させていただきます。

 八月十六日から、検疫所におきましては、エボラ出血熱の発生国の国籍を有する者に対して、必ず過去二十一日以内の当該国での滞在歴を確認することとしておりますが、入管当局におきましても、これらの国籍を有する乗客が入国審査に参りましたときには、検疫所で既にその確認をしたという書類を受け取っているかどうかということをチェックいたしまして、まだ検疫を通っていないというお客様につきましては検疫所に誘導する、そのようなことをしてございました。

 先般の十月二十四日からはさらに検疫体制が強化されまして、全ての乗客に対しまして二十一日以内の滞在歴を確認することとされましたので、入国管理局におきましては、入国審査に際しまして乗客全員に対して確認する必要がありますが、迅速にするために、主要九カ国語に翻訳したボードをつくりまして、それを示しながら漏れなく確認できるようにいたしまして、検疫を通っていなかったお客様につきましては検疫の方に誘導する、そのようなことにしておられます。

 そのような形で検疫所との連携を強化してございますので、今後とも、水際対策に遺漏なきように努めてまいりたいと思います。

黄川田(仁)委員 もう少し教えていただきたいんですけれども、検疫とか入国審査を通る方々、基本的には申告によってということなんですけれども、そういう受動的な取り組みじゃなくて、当局から積極的に情報を収集して、そういう申告漏れがあった方もしっかりと捕捉して、また検疫に戻すという取り組みとかはされていないんでしょうか。

井上政府参考人 エボラの発生国からの直行便がありませんもので、その国から来たお客様を把握するということはなかなか難しい点があるのでございますけれども、そうは申しましても、航空会社の方から提供される乗客に関する情報によって乗機地が把握できるところも一部はございますので、そのように少しでも参考になる情報を集めまして、乗客の把握に努めておるところでございます。

 そのような可能な努力をいたしまして、検疫所との協力は今後とも緊密に図ってまいりたいと考えております。

黄川田(仁)委員 ちょっとしつこいようですけれども、今は検疫と入管でダブルチェックをしている状態ということで、これは、エボラに対してそういう強化がされたというか、今までも適宜やられていたということですか、特別やり始めたということなんですか。

井上政府参考人 数年前にインフルエンザが流行いたしましたときにも、同様に検疫との体制の強化を図って、協力してやってまいりました。

黄川田(仁)委員 インフルエンザのときと同様な体制の強化ということをやり始めたということでございますけれども、これはある意味、安全保障というか危機管理の問題でございます。他の外国の例を見ると、相当厳しい措置をやっている例も見受けられるということでございます。

 例えば、報道によりますと、オーストラリアは、エボラ出血熱の流行国からの入国を厳しく制限しておりますし、ビザ申請の受け付けを停止したりしております。政府においては、人道支援活動も停止したりしているということです。また、オーストラリアの永住権を持つ人が流行国から渡航する場合は、出発前三週間の隔離義務を設けて、入国後も検査や経過観察を実施するというふうになっております。また、カナダは、エボラ出血熱の流行国の国民が申請するビザ発給を一時停止しております。また、既に受けたビザ申請は一旦差し戻すという対応をとっているということで、多くの国がこういうことをやっているというわけではございませんが、オーストラリアとかカナダはこのような厳しい対応をとっております。

 これは、国連の場においても、ここまでする必要はないということでいろいろ批判もございますが、それを受けて、安保理決議におきましても、そういう孤立化をしてはいけないというようなことも言われております。

 しかしながら、アメリカとかでは、例えば、リベリア、シエラレオネ、ギニアの三カ国からの全ての渡航者の受け入れを五つの空港に限定して、検査体制の強化や予防措置をとられているということでございます。

 そこで、日本も、国連安全保障理事会の決議を尊重して、鎖国のような対策はとらないという決定をしているということでございますが、このアメリカの例を見るように、入国に関して空港の制限を設けたり、そういうことをしなくてはいけないという検討はされていますか、どうでしょうか。

新村政府参考人 お答えいたします。

 米国の疾病対策センター、CDCによりますと、エボラ出血熱の流行国でありますリベリア、シエラレオネ、ギニアの三カ国から米国への入国者数は、一日に約百五十名に上ると推計されているということでございます。それらの国からの入国者の受け入れにつきましては、本年の十月十一日以降、五カ所の空港に集約して対応を行っていると聞いております。

 一方で、我が国におきましては、本年十月の一カ月間にこの三カ国から入国した者の総数は十五名と検疫所では把握しておりまして、西アフリカ諸国と密接な関係にある米国とは状況が異なると考えております。

 我が国におきましては、入国できる空港の制限は行っておりませんが、海外から人が入国する三十カ所の空港がございますが、その全てにおきまして、先ほど来御答弁ありましたように、法務省等の関係省庁の協力も得ながら、可能な限り、過去二十一日以内の流行国への滞在歴を確認することができるように、流行国からの個々の入国者に対するきめの細かい働きかけを行っているところでございます。

 今後とも、エボラ出血熱の流行状況や検疫対応を含め、流行国からの入国者数等の情報も注視しつつ、エボラ出血熱対策に万全を期してまいりたいと考えております。

黄川田(仁)委員 国際便等が乗り入れている三十の空港で検疫が今のところしっかりと実施されているというところはわかりました。

 また、各医療機関とも連携をされているということでございますが、先ほどもお話ししましたように、今が大丈夫だから今後も大丈夫だということではないというふうに思いますので、今後想定できるものについては、その対応を一生懸命考えていただきたいと思います。

 今私が皆さんにお配りしている資料、これは、今御説明があったように、ここに三十の空港のリストが載っております。ここでしっかりと検疫所が設けられてエボラ出血熱に対する対応を行えることになっているということでございますが、ちょっと私が心配しているのは、これらの地方空港がそうなんですけれども、中国や台湾、韓国からの乗り入れが多いというところで、先ほど直行便はないという話でございましたが、特に中国とか韓国を経由して入ってきた場合は、なかなか今の段階でしっかり捕捉することはできないということです。

 SARSの例もありましたように、名指しするのもはばかられますが、中国とかは、そういう感染症が出た場合も隠してしまうこともございますので、このあたり、乗り継ぎの空港でのチェックが万全にとれているかどうか、そういうことに関しても中国にしっかりしてもらうようにとか、他国に対しても呼びかけていく必要があるのではないかというふうに思います。

 また、お配りしている資料二なんですけれども、これは、特定感染症並びに第一種感染症指定医療機関を示したものでございます。ごらんになっていただいてもわかりますように、首都圏や大阪、関西圏には複数の医療機関があることがわかりますが、それ以外の地域には、一つの医療機関で二床のベッドしかないということでございます。全国でも、四十七医療機関で九十二床のベッドしかないということであります。

 幸いにして、今のところ、特定感染症や第一種感染症にこれらの医療機関が対応したことはないということでございますが、日々の研さんは重ねているものの、まだ経験したことがないということで、空港の現状、また医療機関の現状を考えても、水際で、入国管理や検疫の部分でしっかりと取り組まなければならない課題はあるというふうに思っております。今晩、関係省庁の会議、また課長級会議も設置されるというふうに聞いておりますので、具体的な取り組みをしっかりと検討していただきたいというふうに思っております。

 本日は法務委員会でございますから、特に法務省におかれましては、現状の入国管理体制に満足することなく、国民の命の安心、安全を守るために、アメリカの空港制限のような諸外国の取り組みをよく研究して、それをやれと言っているわけじゃないですけれども、しっかりと情報収集をして、他国がどういう取り組みをやっているか、どういう思想のもとやっているかということをよく研究して、今後のエボラ出血熱の水際作戦についての積極的な取り組みをしていただきたいというふうに思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 さて、このエボラ出血熱に対する取り組みとしては、水際作戦、どうやって入ってこないようにするかということと、入ってきてしまった場合にどう対応するかということの二つに分けられると思います。そこで、あと残りの時間は、患者が出た場合を想定して、法務省でこれからどういうふうに考えていかなければいけないかということについて質問していきたいというふうに思います。

 私が気になっていることは、エボラ出血熱に対する誤解から生まれる人権侵害についての対応でございます。

 アメリカと日本では違いますが、アメリカでは、地方分権が進んでいるということでもありまして、エボラ出血熱に対する対応も州が主体となって決定できる仕組みがあるということです。ニューヨーク州やニュージャージー州では、エボラ出血熱が流行するギニア、シエラレオネ、リベリアから帰国した医療従事者に対して二十一日間の強制隔離をするという方針を州で決定したということでございます。それで、この方針によって、実際に、国境なき医師団の職員である女性が、症状がなく、検査でも陰性であるにもかかわらず、シャワーのない病室に隔離されるという事態が発生し、囚人的な扱いといいますか、非人道的な扱いに対して、これは人権問題であるというような批判も起こっております。

 しかし、これらの二つの州の対応については、エボラ出血熱の特徴をしっかりと理解していれば起こらなかったこと、これはやり過ぎであるということはオバマ大統領や国連も言っておることでございます。

 幸い、現在、日本におきましては感染を疑われる人や感染者はおりませんが、アメリカのような先進国でも、正しい知識に基づかず、イメージ先行で隔離等の非人道的な対応が発生しているというのが現状でございます。

 ですから、法務省は、人権擁護の主管官庁でもありますので、エボラ出血熱の国内対策として、このような人権侵害を想定して何らかの対応を実施する必要があると私は考えておりますが、いかがでしょうか。

岡村政府参考人 感染症の患者等に対する人権問題が発生するおそれがあれば、差別や偏見をなくすため、正しい知識と人権の重要性についての理解を深めていただけるよう、厚生労働省とも連携しつつ、啓発活動に取り組んでまいりたいと考えております。

黄川田(仁)委員 今までも、エイズやハンセン氏病など、しっかりとした知識に基づいて人権をしっかりと守っていきましょうということはやっていただいていると思いますけれども、これも、エボラ出血熱の対策について政府一体でということでございますので、エボラ出血熱についてある意味特出しして、考えられる対策を講じていただきたいというふうに思っております。

 例えば、人権擁護にかかわる法務省職員、人権擁護委員、地方自治体等にアメリカで起きている事例などを周知して、万が一エボラ出血熱に関する人権救済の申し立てがあった場合に迅速に対応できる基盤を今から整えていくということをしていったらどうかということを個人的に考えております。起こってから正しい知識の普及ということではなく、起こる前に、せめて職員とか人権擁護委員には正しい知識を身につけておく努力をしていただきたいということで、これは私からの提案なので答えていただかなくても大丈夫なので、検討していただきたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 最後に、大臣にお伺いしたいと思います。

 本日の質疑を通じて改めて私が感じましたことは、エボラ出血熱に対する対応は、政府一丸となって対応していくことが不可欠であるということでございます。多くの対応には医療機関など専門知識が必要でありまして、そういう意味では、厚生労働省の役割が大変大きいということは理解しております。しかし、法務省初め各省庁がみずからの特性を最大限に発揮してこの危機管理に対応すべきであると私は考えております。

 これまでの議論を踏まえて、今後の取り組み方針につきまして、法務大臣の御意見をお聞かせいただきたいと思います。

上川国務大臣 エボラ出血熱の感染状況というのは、当該国の三カ国のみならず、二次感染も含めましてグローバルになっているということで、国民の皆さんは大変心配をしていらっしゃるということでございます。

 感染症のこうした対策について、十月の二十八日に、先ほど委員御指摘のエボラ出血熱対策関係閣僚会議が開催されまして、その折に、行政による対応の強化でありますとか、医療機関における適切な対応、さらに、国民の皆さんの理解と協力、こういう三つのことにつきまして大きく確認をされ、こうしたことに対して、全て、協力しながらオール・ジャパンの体制で取り組むということになったところでございます。

 法務省につきましては、入国管理の水際作戦について強化をするということ、さらには、先ほど来御指摘のございました人権擁護というところにつきましても所掌しているということでございますので、その両点につきましては、法務省としてもしっかりと取り組んでまいりたいというふうに思っております。

 特に国際空港におきましては、三十空港ということでありますが、水際作戦の現場ということでございますので、ここにつきましては、ルールをしっかりと決め、そしてそれが実際に実行することができるように、またさらに、とり得ることにつきましてはこれからさらなる議論をしながら進めていくということでありますので、そうしたことを随時チェックしながら、しっかりと対応するというところについては徹底してまいりたいというふうに思っております。

黄川田(仁)委員 時間も参りましたので、以上で質問を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。

奥野委員長 次に、階猛君。

階委員 おはようございます。民主党の階です。

 きょうは、法曹養成制度について取り上げたいんです。

 法曹養成制度が司法改革の中で大きく変わりまして、当初は、法科大学院ができることによって今までより質量とも充実した法曹が育つだろうと思われていたのが、全く逆の方向に来ている。

 それで、この問題については、私も、平成二十二年に総務大臣政務官をしているときに総務省の政策評価という中で取り上げてきましたけれども、それ以来、政府の方として抜本的な対策がとられてこなかったということで、どんどんどんどん状況は悪化しているということです。

 資料一をごらんになっていただきたいんです。

 これは、司法試験受験者数、合格者数、合格率の推移というグラフなんですけれども、まず、受験者は、直近でいいますと、いわゆる三振制、すなわち、法科大学院を出た後五年間に三回受けて失敗したら受験資格を失うというのが、この間法律が通ってなくすことが決まった影響で、五年以内だったら五回まで受けられるということになりました。結果、受け控えがなくなって、直近では少し受験者数が盛り返しておりますけれども、一方で、合格者は、三千人という目標が平成二十五年になくなりました。それで、ことしは千八百十人ということで、合格率にすると二二・五八%、これは過去最低ということになっています。

 そこで、合格率が低迷しているということで、千八百十人という合格者数は絞ったのではないか。つまり、与党、自民党さん、公明党さんからも、この四月には、合格者を千五百人にしたらどうかとか、千八百人にしたらどうかという提言がされました。それを受けてあえて合格者を絞ったのかなというふうに私は見ておったんです。

 しかし、子細に検討してみると、資料二をごらんになってください。

 これは、毎年の合格判定基準とか受験者の点数の推移を見たものですけれども、ちょっと文章の中に盛り込まれていますので見づらいんですが、例えば、合格判定基準で、平成二十四年、平成二十五年は総合点七百八十点以上を合格にしていますが、直近、二十六年は七百七十点以上ということで、合格ラインを十点下げています。そして、もっと細かい得点の分布の表を見て調査しますと、仮に昨年と同様の七百八十点を合格最低ラインとしたとすると、ことしの合格者は千六百五十五人にとどまっていたようなんです。それから、仮に、昨年は二千四十九人合格していますので、同じ二千四十九人を合格させようとすれば、今度は最低点を七百五十四点、すなわち昨年よりも二十六点も低く設定する必要があったということです。

 こういった数字が何を意味しているかということなんですが、要するに、与党の提言があったからとかそういうことではなくて、受験者のことしのレベル低下が著しかったので、合格ラインを一応引き下げたんだけれども、それでもなお合格者数は大幅減少となった。いわば、意図せざる合格者減ということだったと思っています。

 こういう理解を法務大臣も共有しているかどうか、お答えください。

上川国務大臣 司法試験の合格者数の減少に対して、水準とのかかわりの中で減少している理由について委員からの御指摘でございますが、司法試験の合格者については、司法試験委員会におきまして、司法試験の合格の水準を満たすと判断した形で決められるということでございます。そのことについて前年より減少したということでございます。

 司法試験の合格者につきましては、法曹となるべき能力の有無、能力があるかどうかということを判定するという観点から、司法試験考査委員の合議によりまして委員会で判定をするということでございますので、司法試験委員会において適正に決定しているというふうに考えているところでございます。

階委員 では、二千四十九人、昨年と同じぐらい採ったらどうだったのかということなんですが、実は二千四十九人採るとさっき言ったように合格点を大幅に下げなくちゃいけないということで、結局、合格ラインに達する人が少なかったから、受験者のレベルが下がったから合格者が減ったんだということだと思うんですね。それでよろしいですよね。

 先ほど大臣がおっしゃったのは、一定の水準を満たす人を合格にするということなんですが、その水準に達する人が昨年よりも二百人以上減ったということでよろしいですよね。

上川国務大臣 平均点が下がったということで、先ほど、十点ということであります。また、数字……(階委員「平均点じゃない、合格最低点」と呼ぶ)合格最低点、こうした問題につきましては、試験問題の難易度とか、あるいは受験者の得点の分布ということがどのような状況にあるのかという種々の要素というものが影響しているというふうに思っております。

 したがいまして、御指摘のように受験者のレベルの低下があったということを一概に判断するということは難しいというふうに思っておりまして、あくまで実際の試験結果に基づきまして、法曹となろうとする者に対して必要な学識、能力を判定するという観点から判定が行われた結果として、前年より合格者数が減少したというふうに考えております。

階委員 言っていることがわかりません。

 先ほど、一定の水準を満たせば合格だと言っておったんですが、昨年より二百人以上減ったということは、一定の水準を満たす人がそれだけ少なくなったということじゃないんですか。

上川国務大臣 あくまで、試験内容、試験の問題の難易度とか、あるいは受験者の得点の分布、こうしたことによって、種々の要素によって最低の状況が影響されるということでございますので、委員会におきましてこうしたことを勘案しながら決めたというふうに思っております。

階委員 そこを認めないと話が前に進まないんですよ。常識的に考えてくださいよ。

 あるいは、私が最初に思ったように、与党から千八百人とか千五百人という提案があったから減らしたんだというなら、それでも結構ですよ。

 逆に聞きますけれども、その提言があったから減らしたということですか。後ろから言わないでください、大臣に聞いているんだから。

上川国務大臣 先ほど来の御指摘に、提言ということでございますけれども、これにつきましては、事務局を通じまして司法試験委員会に報告をされているということにつきましては承知をしているところでございます。

 その上で、ことしの司法試験の合格者数ということでございますけれども、司法試験委員会におきまして、法曹となるべき学識及び能力の有無を判定する観点から、実際の試験結果に基づいて適正に決定されたものというふうに承知をしているところでございます。

階委員 だから、提言は関係ないということですよね。うなずかれました。

 だとすると、客観的に言えば、一定の水準を満たす人は合格にするわけだから、その水準を満たす人がことしも二千人あるいは二千五十人いれば、その人たちは合格したわけですよ。だけれども、ことしは千八百十人ということは、合格水準を満たす人がそれしかいなかったということですよね。当たり前のことを聞いているんですが、話を前に進めるために、端的に答えてください。

上川国務大臣 基本的にはそのようなことだと思います。

階委員 それで結構です。

 そこで、平成二十五年七月の法曹養成制度関係閣僚会議において、司法試験合格者数を三千人程度とする数値目標は現実性を欠くものであり、当面、このような数値目標を立てることはしないという決定がされました。

 しかしながら、ことしのように何の前ぶれもなく合格者数が意図せざることで削減されたのでは、法曹志願者にとっては不意打ちとなってしまい、ますます法曹志願者が減少する要因になります。明確な数値目標を早急に立てる必要があると思います。

 その場合の数字ですけれども、現時点では、合格者三千人目標が存在することを前提に入学してきた法科大学院の修了者が受験生となっていますので、当面は、その期待権にも配慮して、極端に合格者数を減らすのは適当でないと考えております。しかしながら、他方で、今、大臣もお認めになった受験生のレベル低下や、新規法曹の就職難という状況もあります。そして、ことしから司法試験を受け始めた二年前の法科大学院の入学者より、昨年の入学者が四百五十二人も減少しています。そして、ことしは、後でも言いますけれども、そこからさらに四百二十六人減少しています。こうした諸事情を考えれば、来年以降は、ことしの千八百十人よりもさらに減らして、千五百人程度を数値目標とすべきではないかと考えます。

 この点について、大臣の御所見をお願いします。

上川国務大臣 司法試験の年間の合格者数につきましては、平成二十四年八月から開催されました法曹養成制度関係閣僚会議及び法曹養成制度検討会議におきまして議論が行われたところでございます。

 実際、司法試験合格者数が二千人程度にとどまっているということ、また法曹有資格者の活動領域の状況ということ、さらには司法修習後の弁護士の登録数の状況等を考慮し、昨年七月の関係閣僚会議決定におきまして、これまで三千人程度とすべきと目標がされてきたわけでございますが、それが事実上撤回されたというところでございます。

 同決定におきましては、あるべき法曹人口について検討するということで、法曹人口についての必要な調査を行い、その結果を二年以内に公表するとしているところでございまして、これに基づいて、現在、内閣官房の法曹養成制度改革推進室におきまして、多角的な視点から法曹人口について調査を実施中ということでございます。司法試験の年間合格者数の目標に関する検討につきましても、その結果を踏まえて行いたいというふうに考えているところでございます。

 現段階におきましては、調査そして分析を迅速に進めるということについて考えてまいりたいというふうに思っております。

階委員 全く危機感が足りないと思いますよ。先ほど申し上げましたように、四年前から、我々の政権のときからこの問題は指摘していたにもかかわらず、いまだに合格者数の数字も出せない。

 三千人が現実的でないということで撤回したのは、これは当然のことですが、評価しますよ。ただし、その後、何人にするかという数値目標がないと、ことしのように合格者はいきなり減らされる。まあ、自分たちの成績が悪いから減らされたんだという意味では自業自得かもしれませんけれども、ただ、余りにその目標がないと、心配でおちおち勉強もしていられないということだと思います。ここの点については、司法試験の合格者、早急に目標数値を示すべきだと思いますよ。

 もう一度、大臣のお考えを聞きたいんです、官僚の答弁ではなくて。お願いします。

上川国務大臣 現在、内閣官房法曹養成制度改革推進室が多角的な調査をしているということでございます。

 先ほど来お示しいただきましたその一覧の中で示されているそうした状況をしっかり踏まえ、また分布等につきましても十分に検討をし、さらに法科大学院のさまざまな今の取り組みの実情等も精査をさせていただきまして、そうした要請に応えるべく、最大限の努力をしてまいる所存でございます。

階委員 合格率が過去最低になったということなんですが、資料三をごらんになってください。

 これは、法科大学院等別合格者数ということで、法科大学院の合格率を高い順に上から並べたものでありますけれども、それに加えて、予備試験合格者の合格率も加えて見たところ、これは例年どおりなんですが、合格率トップは予備試験合格者です、六六・八%。法科大学院の中でトップのところが五三%、京都大学法科大学院。三〇%を超えるところはわずか九校しかないんですね。ことしの司法試験受験者が修了した法科大学院は七十四校もあるんです。そのうち九校しか三割を上回っていないということなんですね。

 他方で、資料四をごらんになってください。

 これは、平成二十一年三月三十一日、自公政権下での閣議決定ですけれども、何が書いてあるかというと、司法試験における法科大学院修了者の合格率と予備試験合格者の合格率を均衡させましょうということです。要するに、どっちのルートで来たかにかかわらず、最終的な司法試験の合格率が同じようになるようにしましょうということなんです。

 こういう閣議決定もあるんですが、実態は、先ほど申し上げたように、予備試験合格者が七割近く、他方で法科大学院修了者は三割を下回る合格率のところが圧倒的多数という状況です。

 そもそも、修了者の七、八割が司法試験に合格するという政府目標で法科大学院というのはつくられたわけでございまして、法科大学院修了者と同等の学力を有するとされる予備試験の合格者も、当然、七、八割の合格率があればいいと思うんですね。今の実態は、予備試験の方は大体七割近くいっていますから、まあまあいい水準だと思います。他方、法科大学院は、今の教育水準だと、当分、七、八割にはいかないでしょう。

 こういうことを考えると、閣議決定を遵守するという観点からも、先ほど大臣もお認めになりました、司法試験受験者のレベル低下をこれ以上防ぐという観点からも、当面の措置として、予備試験合格者数についてはさらに増加させていかなくてはいけないのではないかと思いますが、この点についてはいかがでしょうか。

上川国務大臣 ただいま委員御指摘いただきました司法試験予備試験ということでございますが、法科大学院を経由しない人にも法曹となろうとする道が確保されるということで設けられたものというふうに理解をしているところでございます。法科大学院修了者と同程度の学識、能力を有するかどうかということでございまして、そのことを判定する試験として予備試験というのがあるということでございます。

 この合格者につきましては、その制度の趣旨ということを踏まえてみますと、実際の試験結果に基づいて司法試験委員会において適正に決定されるということでございまして、ことしにつきましては明日ということで予定をしているところでございます。

 予備試験のあり方につきましては、二十五年七月の法曹養成制度関係閣僚会議決定におきまして、予備試験の結果の推移、そして、予備試験合格者の受験する司法試験の結果の推移ということで先ほど委員から御指摘がございました七割の合格者数とか、そういうことにつきましても、データの収集をしっかりと継続して行った上で、さらに法科大学院教育の改善状況ということについても検討した上で、二年以内に結論を得るということで、鋭意、今、法曹養成制度改革推進会議のもとで検討を進めているところでございます。

 先ほどのお話のように大変厳しい状況の中での現状であるということは、私もそのように思っておりますので、最大限、これについて取り組むべく全力で頑張っていきたいと思っております。

階委員 予備試験合格者をふやすということは、私も、本来あるべき姿じゃなくて、法科大学院のレベルが上がって、法科大学院を修了して司法試験に合格する人がどんどんどんどんふえていって、予備試験ルートを来た人をはじき出すような感じになると理想だと思うんですね。本来の姿は、法科大学院を修了した人の合格率が予備試験を上回ってもらいたい。予備試験の合格率を下げることによって両者の格差を縮めるんじゃなくて、法科大学院がどんどんどんどん上がっていって、最終的には、予備試験合格者よりも司法試験の最終合格率が高くなることによって法科大学院修了者の合格者に占めるシェアが上がるというのが理想なんですけれども、今は全然そうなっていなくて、当分それは望めないので、法科大学院の教育の向上を待っていては、どんどん合格者のレベルが下がっていく状況にはとても追いつかないだろうということで、今のようなことを申し上げました。

 だから、二段階で、当面の策とその次の策ということを考えていかなくちゃいけないと思います。

 そこで、その次の策ということにかかわるんですが、きょうは文科副大臣にもお越しいただきました。法科大学院についても、司法試験の合格者と同じように、定員の削減ということを考えていかなくてはいけないと私は思っています。

 修了者の七、八割が司法試験に合格するという政府目標でした。しかし、法科大学院教育の実態は、先ほど申し上げましたとおり、合格率低迷で、法曹志願者の法科大学院離れを招いています。平成十九年には五千七百十三人、法科大学院の実入学者、実際の入学者がいました。しかし、ことしは二千二百七十二人まで激減しております。

 さらに、資料五、最後のページをごらんになってください。

 これは、適性試験の実受験者数と法科大学院全体の実入学者数の推移ということです。法科大学院に入るためには、前年に適性試験というものを受けます。ですから、適性試験の受験者数と法科大学院の実入学者数というのは比例関係にあるということで、このグラフを見てもおわかりのとおり、年々、適性試験の実受験者数が減ってきて、そして法科大学院の実入学者数も減ってきているということがおわかりになると思います。

 来年の実入学者数を予測する上で、ことしの、平成二十六年の適性試験の実受験者数が基準になると思うんですが、この数字は、示されていますとおり、四千九十一人です。四千九十一人を前提とすると、過去三年を見てみますと、大体、高いときでも四六%ぐらいの実入学者数の割合ですから、四六%で仮に計算してみますと、私の試算では、千八百八十二人ぐらいが、来年の四月の入学者になってしまうということであります。

 今、定員の削減ということも文科省が中心となって進められているようでございますけれども、まだそれでも三千八百人ぐらいの定員だということで、私どもの感覚でいうと、それでは余りに多過ぎるだろう。来年、千八百八十二人、二千人を下回るという予測もできる段階で、来年度の総定員は最大でも二千人程度に削減すべきではないかと私どもは考えますが、この点はいかがでしょうか。

丹羽副大臣 先ほど階先生のお話をいろいろと拝聴させていただきまして、本当に階先生は、法科大学院また予備試験制度それぞれに御理解がある方だと改めて思っております。

 現在、法科大学院の入学定員につきましては、昨年六月の政府の法曹養成制度検討会議の取りまとめの指摘を踏まえ、実入学者との差を縮小していく方向でもございます。

 具体的には、公的支援の見直しのさらなる強化策等を通じて、法科大学院に対して定員削減の取り組みを促してまいりました。その結果、平成二十七年、来年度の入学定員は、ピーク時からおよそ半減の約三千百七十五人となる見込みでございます。

 さらに、中央教育審議会の大学分科会法科大学院特別委員会では、プロセスとしての法曹養成の安定化を図るための検討が行われております。そこの中では、現在、政府の調査検討が進められております累積合格率七割から八割を目指せるような定員規模の検討を明示するということで、当面の間の入学定員を三千人からさらに削減する方向で取り組むべき旨の議論がなされております。

 文部科学省といたしましても、入学定員のさらなる見直しの促進に向けてまいりたいと思います。

階委員 もう副大臣もおわかりのとおり、対応が後手後手で、定員を減らしても、それ以上に実入学者数が減るという状況がここ数年続いてきているんですね。この状況を変えない限り、いつまでたってもイタチごっこみたいなことで、法科大学院の不人気が続く。定員があり余っている状況ですよ。三千百七十五人に来年は減らすということですが、それでも、入学者は二千人を切るという状況の中で、定員の三分の一以上は空白になってしまうということなので、もっともっと定員は削減すべきだと思います。

 定員を削減した結果、気になるのは、先ほどの資料三に、法科大学院別の合格率というのを掲げました。地方の法科大学院が、名前は言いませんけれども、合格率の低いところに固まっていますよね。そこで、気になるのは、法科大学院の定員を減らしていった場合、どうしても、ちゃんとした教育をしているところを残すということで、地方は、合格率も低いというところからすると、削減の対象になってしまうだろうということで、地方で法科大学院に通えなくなってしまうという問題が生じ得ると思います。

 ところが、私がこの問題を考えるに当たり、重要なのは、地方に法科大学院があることではなくて、地方に法律家がちゃんと根差して、そこで仕事をすることだと思うんですね。

 ですから、法科大学院自体は仮に都市部にあったとしても、そこに地方から出てきて通う人に対しては、在学中の学費とか生活費を免除するような仕組みをつくり、しかしながら、そのかわり、法科大学院を修了して弁護士になったら、ちゃんと地元に帰る。地元に帰らなければ、免除したものはちゃんと払ってもらいますよみたいな、そういう仕組みにすべきではないかと思っていますが、この点について、副大臣、いかがでしょうか。

丹羽副大臣 現在、予備試験につきましては、階先生おっしゃるように、経済的事情や既に実社会での十分な経験を積んでいるなどの理由により法科大学院を経由しないという方にも法曹資格取得のための適切な道を確保するという旨で導入されたわけでございますが、法科大学院の学生や学部在学生から多くの受験者、合格者が出ているといった実態もございます。

 現在、政府に設置されております法曹養成制度改革推進会議のもとで、そのあり方について御議論がなされております。

 一方、法科大学院につきましては、司法試験の合格状況や入学者の選抜状況が著しく悪いといった点が、課題が深刻な法科大学院が地方によっては一部ございますけれども、こちらに対しましては、公的支援の見直しの強化等により、地方の法科大学院の質の向上に向けた取り組み、また、共通到達度確認試験の導入、さらには認証評価の抜本的な見直し等、法科大学院教育の改善充実に向けた取り組みを早急に取りまとめていきたいと考えております。

階委員 最後に一問だけお聞きします。

 司法制度改革の中で、当初、年間三千名の司法試験合格者を輩出することを踏まえて給費制を廃止したはずです。しかしながら、私がきょう申し上げたように、法科大学院の定員も司法試験の合格者も減らさざるを得ないというのが実情だと思います。

 そうすると、三千人合格者を輩出することを前提とした場合に比べ、法科大学院や司法研修所の運営に係る財政負担が幾分軽減されると思います。軽減された分を何に使うかということなんですが、二つ考えなくてはいけないことがあります。

 一つは、一部の団体から、司法試験に合格しても経済的理由で司法修習を諦めるという声を聞きますので、その実態を調査した上で、真に必要であれば、修習中の生計費支援措置の導入を検討したらどうかということです。

 それから、もう一つは、弁護教官の処遇が低くて、なり手がいないという声も聞きます。この点についても、最高裁の方で実態を調査して、必要があれば、処遇の引き上げを検討すべきではないか。

 この二点について、最後、端的で結構ですので、お答えをお願いします。

奥野委員長 簡単にお願いします。上川大臣。

上川国務大臣 ただいま御提言ということでございますけれども、経済的理由に関連する事情につきましては、昨年七月の法曹養成制度関係閣僚会議というところで、貸与制を前提ということで、その旨の実施がなされているところでございます。

 実施したばかりということでございますが、現状、その動きも十分に念頭に置きながら、しかるべき対策ということについては考えてまいりたいというふうに思っております。

堀田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 弁護教官につきましては、日弁連の協力を得ながら、これまで適任者について必要数を確保できているというふうに認識をしているところでございます。

 日弁連の協力を得ます過程におきまして、適任者の確保が容易ではないという話を耳にすることはございますが、最終的には必要な人材確保は果たされているという認識で現在おります。

階委員 もっと踏み込んだ調査を最高裁もしてください。それから、法務大臣にも、先ほどの点はよろしくお願いいたします。

 以上です。ありがとうございました。

奥野委員長 次に、鷲尾英一郎君。

鷲尾委員 民主党の鷲尾でございます。

 きょうは、外国人技能実習制度を中心に、国内は今、さまざまな成長の制約があるという中の大きな一つとしては、人材の確保と言われております。この人材の確保という中で、さまざまな議論があるわけです。いろいろな方向性の中で議論がなされていると承知していますが、特に外国人の活用については、国内の実情、それから、ほかの制度との関係でいきますと、かなりちぐはぐになっているんじゃないかと思っております。そのことをきょうはただしながら、建設的な対応を求めていきたいというふうに思っております。

 まず、来年度から、特に構造的な労働者不足があるということで、建設産業の担い手不足、これにつきまして、外国人材の活用をしていこうと。これは、私もお聞きしたときに、もうどうしようもないのかなということを感じたところであります。特定活動ということで、建設の現場に、外国人技能実習制度で実習をした方に限って、また管理者としてふさわしい管理者が監督をしながら外国人人材を活用していくという方向が出されておりまして、来年度にも本格的に運用されるのではないかと仄聞しているところでございます。

 ただ、これは建設分野における外国人材の活用に係る緊急措置であって、中長期的には、国内の人材確保をしっかりとやっていこうという意見もあれば、一方で、産業競争力会議なんかは、持続的な経済成長を達成していくために必要な外国人人材の活用のあり方について国民的議論をやれ、そういう提言もしているわけであります。

 ただ一方で、これからお話しする外国人技能実習制度については、歩調がなかなか合っていないのではないか。この六月の第六次出入国管理政策懇談会の外国人受入れ制度検討分科会の報告を見ますと、日本の成長の制約と言われているものに対する危機感というのがどこまであるのかなと思わざるを得ないと思っているわけであります。

 外国人技能実習制度について具体的に質問したいと思いますけれども、この外国人技能実習制度は、そもそも、技能、技術、知識の移転、日本のそういういい部分についてほかの国に移転をすることによってその国に貢献をしていくんだという建前なわけですね。ところが、報告にもありますけれども、その建前を逸脱するような事例が多々あると言われております。

 これは何でそうなのかというところを今法務省がどう認識しているか、まずお聞かせいただきたいと思います。

井上政府参考人 お答えいたします。

 入国管理局が監理団体とか実習実施機関に対して、不適正な受け入れが行われたとして、調査の上、不正行為を認定して通知した数をまず申し上げますと、平成二十三年は百八十四、二十四年が百九十七、平成二十五年は二百三十となっております。これらの不正行為がどのような類型かという点でございますけれども、三年間いずれの年も、一番多いのは賃金の不払い等の労働関係法令の違反でございます。

 このような状況から推測いたしますと、一部の実習実施機関では、制度の趣旨を正しく理解せずに、技能実習生を労働力不足を補うための低賃金労働者として受け入れていることが不正行為の背景にあるのではないかと考えられるところでございます。

鷲尾委員 制度の趣旨を理解していないから違反が多いということであります。

 この外国人技能実習制度は、企業単独型と団体監理型というのがあると思いますけれども、これは、どちらに違反事例というのは多いんですか。

井上政府参考人 先ほどお答えいたしました数字のうち、大部分は団体監理型でございます。

鷲尾委員 これは何で団体監理型が多いんですか。

井上政府参考人 いろいろなことが考えられるかと思いますけれども、やはり監理が不徹底になっているんだろうと推測されるところでございます。

鷲尾委員 もうちょっと何で団体監理型かとちゃんと分析しておいてもらいたいです。これは、制度の趣旨を正しく理解していないと言いますけれども、本当に、いわゆる受け入れ側だけ正しく理解していないと言えるのかというところなんですね。

 というのは、制度の趣旨というのは、技能や技術、知識の移転ということですよね。日本のいい技術、いい知識をほかの国に移転する国際貢献だ、こういうことですね。これは実際、報告書にもそう書いてあるわけですよね。「帰国後に修得した技能等を用いて現地の工場で活躍するなど、現地の経済に貢献できている例も多い。」とちゃんと書いてありますよ。

 書いてありますけれども、これは本当にちゃんとフォローアップして調査しているのか。これは、多分、委員の方がこういう例もありますよと言っただけなんですよ。政府としてちゃんと調査しているんですか、フォローアップ。

井上政府参考人 技能実習制度が果たしている役割の評価につきましては、これは厚生労働省の委託事業でございますけれども、平成二十五年度に、公益財団法人国際研修協力機構、JITCOでございますね、こちらが、帰国した技能実習生に対して実施したフォローアップの調査がございます。それによりますと、約九七%の技能実習生は技能実習の効果について役に立ったと回答しておりまして、その多くが、何が役に立ったかといいますと、習得した技能である、そのように挙げておるということでございます。

鷲尾委員 では、フォローアップはできている、しっかりできているんだという認識ですか。

井上政府参考人 フォローアップにつきましては、回収率が必ずしも十分に高いとは言えませんけれども、可能な調査の仕方の一つであるということで、参考にしてまいりたいと考えております。

鷲尾委員 ほら、ぬるいわけですよ。

 ちゃんと制度の趣旨を徹底するんだったら、その趣旨にのっとって政府も動いてもらわないといけないんじゃないですか。受け入れ機関側に正しい理解が足りない、監理監督を厳しくしますと報告書にもちゃんと書いてありますけれども、そういうものはどうなんだと私は申し上げたいわけです、本当に制度の趣旨をしっかりと適正化するならば。

 私は、中途半端だなと思うんですね。これは、冒頭申し上げたようないろいろな議論の方向性があって、中途半端にしか制度が運用されていないことがこういう違反事例につながっているんじゃないか。決して受け入れ機関のみの問題ではないんじゃないかと私は思うわけであります。

 だって、技能実習制度の拡充も検討されていますね、この報告書にもありますけれども。この拡充を検討されている背景は何ですか。

井上政府参考人 委員が先ほど御指摘いただきました出入国管理政策懇談会の外国人受入れ制度検討分科会の報告書によりますと、技能実習制度につきましては、問題点を徹底的に改善した上で制度の活用を図るという基本的な方向性が大勢であるという理解を示してございます。

 そこで、六月に閣議決定されました「日本再興戦略」改訂二〇一四におきましても、国際貢献を目的とする趣旨を徹底して制度の適正化を図るということを前提といたしまして、その上で、より高度な技能の習得の必要性でございますとか、適正化を実現するインセンティブ等を考慮いたしまして、優良な受け入れ機関に限定して制度の拡充についても検討していく、そういう方向性が示されておるところでございます。

鷲尾委員 ちょっと、拡充の趣旨としての答弁は、よくわかりませんね。優良な受け入れ機関で受け入れしますとしか言っていないわけですよ。

 私が申し上げたいのは、技術移転のニーズがある、先ほど、技能実習生が帰国した後のアンケート調査で役に立ったという非常にアバウトな回答をもって役に立っているというようなことをおっしゃっていますけれども、では、技能実習生が本当にその国でこれは役に立つぞと思って技能実習に参加しているかどうかというところなんです。

 逆に言うと、日本国内において、日本の産業界のニーズに基づいてこの外国人技能実習制度を活用しているんじゃないですかということですよ。ほかの国のニーズがあって、そのニーズに基づいて外国人技能実習制度を運用するということが、この制度の趣旨からしたらそうなりますよね。ところが、日本のニーズに基づいて外国人技能実習をやっているんじゃないんですかと私は思うわけですよ。そこに優良な受け入れ機関かどうかという答弁なんか必要あるわけじゃなくて、要するに、相手先のニーズに基づいて日本が決めるということが本来のあり方なんじゃないですか、外国人の技能実習制度であるならば。どう思いますか。

 委員長、済みません。これは、私は、通告のときに、政府参考人は陪席可能であって、場合によっては答弁に応じていいよと質問通告で言っているんですよ。基本的に政務に答弁してくれと言っているのに、さっきから局長ばかり答弁されたら困るんですよね。

 ちょっと、政務、お願いしますよ、答弁してください。

奥野委員長 この問題というのは、たしか内閣府だったか内閣官房が全体を統括していて、外務省、それから法務省、厚生労働省、その全体で運営しているはずですから、僕は、外務省も入ってこないと、今の質問には一部答えられないような気がします。

 そういうことで考えて、今は、ここの中では法務省が主要ですから、皆さん方で、お互い助け合いながら答弁してください。

葉梨副大臣 実は、昨日も内閣府で産業競争力会議のフォローアップ会合というのが開かれまして、私も、関係省庁の副大臣とともに出席をしてまいりました。外務省もそうですし、それから厚労省も、またさらには経産省、あるいは国交省、全てこれはかかわる問題ですので、法務省として全部を統一した見解というわけにはいかないわけですが、そもそも、この技能実習制度というのは、鷲尾委員御指摘のように、まさに国際貢献ということで整理をされておるし、ですから、我々としても、国際貢献に資するような機関がしっかり監理をしていかなければ入国というのを認めるわけではない。

 もう一つ論点としてございますのは、さらに中長期的な検討ということで、今、生産年齢人口が非常に減少をしている。これを何とかしなければいけないということで、外国人の労働者をどう受け入れていくかということについてはまた別の観点から国民的議論を深めて、中長期的に検討していこうということで、これは、委員御指摘の技能実習制度とはまた別の論点だというふうに我々は考えておりますし、また、日本再興戦略においてもそのようになっているというふうに認識をしています。

 外国人の技能実習制度は、あくまでやはり国際貢献であるという趣旨にのっとって行われるべきものと考えます。

鷲尾委員 葉梨副大臣に御答弁いただいて、国際貢献ということであるならば、相手国のニーズにのっとって技能実習制度というのは運用されるべきであって、中途半端に日本側のニーズでもって拡充するというのはおかしいんじゃないですかと私は申し上げているんです。

 ぜひその点をお含みいただかないと、不良な受け入れ機関というのは、外国人だけが低賃金だなんて、これはあってはならない話ですよ。これはしっかり監督してもらわなきゃいけない。それが正しい理解が足りないんだとするならば、今、葉梨副大臣がおっしゃったように国際貢献なんだというのであれば、国際貢献という趣旨にのっとった形で政府も運用してもらわなきゃいけないわけですよ。

 それを拡充するというのは、国際貢献の趣旨として、例えば、具体的に、東南アジアの国のどこそこが、こういう技術にニーズがあるから日本でも受け入れてくださいよとなるのが普通なわけです。ところが、そうなっていないじゃないですか。日本の産業の状況に応じて、こういうのを場当たり的に拡充しようとしているんじゃないですか。そういう、政府のある意味散らばったような議論が、逆に言うと、現場の監理監督に、首尾一貫した姿勢を阻害しているんじゃないかと思っているわけであります。

 そこは、国際貢献とおっしゃるならば、それで初志貫徹といいましょうか、その考え方で貫徹をしていただいて、これからの拡充の議論は、私もずっと見ておきますから、相手国のニーズに基づいて国際貢献すべきなんです。日本側の産業界のニーズと関係ないんですよ。そういう大前提を忘れちゃいかぬというふうに思います。

 ちなみに、どうして私がこういうことを申し上げるかというと、私は新潟ですけれども、新潟のみならず、地方の農業分野は今、担い手不足が大変なんですよ。

 これは、どことは言いませんが、レタスとかキャベツとか葉物の野菜なんというのは、とるとき大変なんです。一個一個カットしていくんです。昔は大学生のバイトを使ってやっていたと言うんですよ、農家のおやじさんが。今はそんな大学生のバイトはいないと言うんですよ。誰がやっているかというと、外国人がやっているんですよ、そういうのを。外国人が切って、やっているんですね。では、それは本当に相手国のニーズにのっとっているのかどうか。

 その農家さんのコメントをもう一つ紹介しますけれども、自分がけがをしたらやめようかと思っていると言うんですよ。日本人の後継者がいない。これは、農水省が日本人の後継者育成のために頑張らなきゃいけないし、それは私も常々言っていることなんですけれども、現場で働いているのは外国人。よく働くと言うんですよ。彼らがいなかったら経営できないと言うんですから。そういう現実もあるんですよ、実際。

 これは、本当に国際貢献から成るものなのか、日本の構造的問題を場当たり的に外国人活用によって乗り切ろうとしているのかどうか。現実にのっとって制度というのは運用しなきゃいけないわけですから、そういう現実もあるんだということを、葉梨副大臣、内閣府でいろいろ議論があったということでありますので、外国人技能実習制度だって過去そういう使われ方をしているんだと。では、そういう農家さんで働いている方、その受け入れ機関としてふさわしいものかといったら、ふさわしいんですよ、別に違反しているわけじゃないんですから。

 だから、優良な機関かどうかの問題じゃない。その人たちが正しい理解をしているかどうかといったら、理解していないかもしれないですよ。これは国際貢献だから雇っているんだというのじゃないんですよ。もうこの人たちがいなかったら経営できないかもしれない、そういうかつかつの思いでやっているという方々もいらっしゃいますよ。そういう人たちは、監理団体をいかに規制強化しようとも、そういう趣旨を理解するというよりは、現実を見て、何とかこの制度で助けてもらおうと思うに決まっていますから。理想は理想。現実もありますから、そこをわきまえてもらわなきゃいけないと私は思います。

 きょうは厚生労働省さんに来ていただいているので、一方で、経済連携協定に基づく外国人看護師、介護福祉士の受け入れの枠組みがあるんです。これは逆に相手国のニーズがあるわけですよ。相手国のニーズがあるし、連携を強化するために日本としては受け入れると言っているんです。これは外国人技能実習制度の、いわゆる技能実習二号の対象には入っていない。一号には入ると思うんですけれども、単純な労働じゃないから。

 これはどうですか、外国人技能実習制度を活用できるんですか、できないんですか。

中山政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、技能実習制度の対象となる職種については、三つほど要件がございます。我が国の法令に抵触しないものであること、それから単純労働ではないこと、送り出し国の実習ニーズに合致することといった要件を満たす必要がございます。

 この要件を例えば看護師について当てはめてみますと、保健師助産師看護師法において、看護業務を行うには日本における看護師免許がなければ行うことはできないとされておりますので、看護師につきましては、外国人実習制度は活用できません。

 では、次に介護分野ということでございます。介護分野につきましては、先ほどの要件に加えまして、二号移行対象職種というところまで検討を考えますと、さらに要件がもう一つ加わりまして、実習の成果が評価できる公的評価システムがあることといった要件も加わってまいります。

 さて、こういうことを踏まえた上で、介護分野について考えてみますと、日本再興戦略におきまして、以下の指摘がされております。少し長くなりますが、読ませていただきます。既存の経済連携協定に基づく介護福祉士候補者の受け入れ及び介護福祉士資格を取得した留学生に就労を認めることとの関係について整理するとともに、日本語要件等の質の担保等のサービス業特有の観点を踏まえつつ、年内をめどに検討し、結論を得るというふうに指摘されております。

 したがいまして、厚生労働省といたしましては、関係者の御意見を十分に伺う観点から、外国人介護人材受入れの在り方に関する検討会を十月三十日から開始いたしまして、今まさに議論しているところでございます。

 いずれにしましても、厚生労働省といたしましては、法務省と連携しつつ、適切に検討を進めてまいりたいと考えております。

 以上でございます。

鷲尾委員 看護師は難しいでしょうね、やはり。介護士の方ですけれども、今お話があったとおり、これから検討されるということでありますけれども、外国人技能実習制度でできるんだったら、やったらいいです。ただし、今副大臣がおっしゃったような国際貢献という趣旨にのっとってやはりやらなきゃいけない。だって、受け入れ機関にも相応の規制をするんだから。

 その上で、一方で、経済連携協定に基づく受け入れ枠組みだと、これはもう外国人技能実習制度の枠外でどんどん入ってきていいということになっているわけです。建設分野はとにかく東京オリンピックまで、外国人技能実習制度は国際貢献、EPAに基づく介護についてはもうどんどん入ってきていい。こういうちぐはぐな、もうちょっとまとまって議論した方がいいんじゃないのと。まあ、それをやっているということなのかもしれませんけれども、まとまって議論した方がいいんじゃないかというぐらいちぐはぐなんです。

 今、副大臣もおっしゃったように、中長期的には別途考えましょうと。何とも、中長期的に考える前に、足元から抜本的に考えようよと言いたくなりますよね。まだ、中長期的。中長期的というのはいつだと私は言いたくなります。

 実際、介護士は、これだけ、では入ってきていいよ、入ってきていいよと言うと、今、それこそ労働市場の改革ということでさまざまな法律も通らんとしているところでございますが、これはどういう状況になるか予断を許しませんけれども、今、介護士さんの現場というのは、これもまた大変で、離職率も大変高いわけですよ。その中で外国人を活用するというのは、本当にこれはどうなっていくんだろうと。

 一方で、介護する人たちが足りない、足りない、報酬を上げよう、上げようとしている中で、外国人の受け入れをふやすとどうなるか、気が気じゃないと思いますけれども、この点はどうお考えですか。

勝田政府参考人 外国人の受け入れと介護職員の労働条件の関係についてお答えしたいと思います。

 もとより、外国人労働者を受け入れることによって、介護関係の労働者の皆さんの労働条件が低下するといったようなことがあってはならないというのは御指摘のとおりかと思っております。

 したがいまして、例えばEPAで受け入れております場合にも、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上でございますとか、いろいろな条件をつけてございます。

 また、それ以外にも、もちろん外国人を受け入れるということだけではございませんが、国内の人材、離職防止でございますとか人材確保といった観点から、介護、看護職員の勤務環境改善のため、さまざまな施策に取り組んでおりまして、外国人活用によりまして労働条件が悪影響を受けないよう、私どもとしても取り組んでまいる所存でございます。

鷲尾委員 まあ、受けないということなんでしょうね。受けないようにやるんだ、そういうことですね。そういうことだと思います。わかりました、受けない。見ていますよ、本当に、受けるかどうか。私は、あるんじゃないかと。そんな自信満々に言えるのかなと思っておりますが。

 ちょっと質問をかえますけれども、JITCOという組織がありまして、この技能実習制度を監督している組織でありますけれども、この外国人受入れ制度検討分科会の報告に基づけば、新しい組織を、しかも、規制を強化する、国際貢献の趣旨にのっとって、どうやらその理解が足りず趣旨を逸脱した不適切な受け入れ機関について監理を強化するんだ、今現在の規制では不十分だ、新しい組織をつくろうということも報告されているわけであります。

 この新しい組織に関連してJITCOについてお聞きをしたいんですけれども、外国人技能実習生の受け入れ事業の評価、認定というのを行っているとありますけれども、この評価、認定の趣旨を、ちょっと時間がないので手短にお答えください。

井上政府参考人 JITCOが行っております外国人技能実習の評価、認定は、実習制度全般ではございませんで、そのうちの監理団体になることのできる団体の例外的な場合につきまして、法務大臣が個別に告示するシステムをとっておりますので、その告示を行う場合に、その実施機関として必要な設備や体制を有しているかどうかを判断するに際して、そういう専門的評価を行うことができる能力があると認められた法人の評価ということで、法務省としてこれを参考にしている、そういうことでございます。

鷲尾委員 参考にしているということですから、逆に、受け入れ機関、評価される側としては、あくまでも参考ですから、その評価に対して、おい、ちょっとこれは違うんじゃないのかという不服を申し立てするような、そういう機会というのはあるんでしょうか。

井上政府参考人 要するに、JITCOの評価は法務大臣の判断に対する拘束力はございませんので、法務大臣のした処分に対して不服があれば、その中でJITCOの認定、評価が参考にされているかどうかを争うことはできる、そういうことになります。

鷲尾委員 参考といっても、評価しているのがJITCOだけなわけですから、やはり、ちょっとその評価は違うんじゃないのと言う機会が幅広く持たれるべきだと私は思ったものですから、質問を申し上げました。

 この技能実習制度の趣旨の徹底を図るために強制権限を付与した新組織をつくるとされていますけれども、この新しい組織とJITCOの関係というのはどうなるんですか。

奥野委員長 井上局長。終わっていますから、端的に。

井上政府参考人 新しい監理組織の内容、どういうことをするかにつきましては、先ほど答弁がありましたが、十一月上旬から法務省、厚労省の合同の有識者懇談会を開いて、そこでもその内容は検討しておるところでございます。

 今後、同懇談会での検討結果等も踏まえまして、所要の法改正等を検討してまいりますので、その中でJITCOとの関係も明確化されてくるものと考えております。

鷲尾委員 この外国人の活用の問題は、中長期的な問題ではなくて喫緊の課題だと思っておりますので、もっと緊迫感を持って政府全体として議論を進めていただきたいということを申し添えまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

奥野委員長 次に、丸山穂高君。

丸山委員 維新の党の丸山穂高でございます。

 私からも、法務行政に関する諸々の事項につきまして御質問させていただきます。

 まず、前回も少しお話しさせていただいた登記所の備えつけ地図のお話に関連して、同時に国交省の方で地籍調査をやられていると思うので、この関連のお話を伺いたいんです。

 前回のお話、大臣からの御答弁で、ことしの四月一日で、法務省さんが見ている登記所備えつけ地図を、新規に変えていく、いわゆる旧公図からきちんとした事実関係に基づくものに変えていけているのは、現在五五%達成している。ただ、進捗がおくれているので、何とか迅速にできるようにやっていきたい、特に八カ年計画の六年目で等々、お話がございました。

 ただ一方で、もう一つの、国交省の地籍調査の方を見ますと、十一月四日の朝日新聞の記事なんですけれども、これによりますと、全体の二十八万六千二百平米のうち、終わったのがことし三月末までで五一%と国交省の方は言っています。一方で、東京都二二%、大阪市九%と非常に都市部がおくれているのは間違いなくて、これを何とかしなければいけないんです。

 まず、事実関係として、この五一%、五五%、近いようで、ずれが、国土は広いので、数%でもかなりの広さになると思います。このずれがあるのと、私、非常にびっくりしたのは、同じようなことを二つの省庁で分かれてやっているということも驚いているんです。このあたりのデマーケーションといいますか、まず、役所の方に伺いたいんですが、このずれについての解説をお願いします。

深山政府参考人 今委員からお話がありました、登記所備えつけ地図の作成作業と国交省で行っている地籍調査事業のそれぞれの関係についてまず御説明いたします。

 登記所備えつけ地図の作成作業は、都市部の地図混乱地域など公図と現況が大きく異なる地域、これは、全国で調査の結果、六百六十平方キロ程度あるということが平成十五年当時にわかっておりますが、これを対象としています。それ以外の地域を対象としているのが地籍調査事業です。

 したがって、全国で二十八万平方キロある中の、九九・九%は地籍整備。地図混乱地域等々で、法務省でやる地図作成作業の対象地域が六百六十ですから、特別な部分をやるというふうにまず地域を分けております。

 こうやって対象地域を区別するということは、平成十五年の六月に内閣に設置された都市再生本部で、民活と各省連携による地籍整備の推進という方針が掲げられまして、公表されているものですけれども、この中で、この二つを分けて、実施主体も、登記所備えつけ地図の作成作業は全国の法務局がやり、大部分の面積を占める地籍調査事業は市区町村がやるというふうに異なっているという形で決まっております。

 なお、市区町村が実施する地籍調査をした成果として、非常に精度の高い地図が得られます。これは、登記所に送付をされて、登記所備えつけ地図として備えつけられるという法的な仕組みになっておりますので、地籍調査が進むと、登記所備えつけ地図の精度が上がったものの枚数がふえていくということになります。

 それで、次のお尋ねであった、面積として五一%というマスコミ報道がされている地籍調査の進捗率と、登記所備えつけ地図の整備率が五五%と、四%の乖離がある点はどうしてなのかというお尋ねです。

 前回の国会の場でも答弁申し上げましたが、この五五%という数字は、全国の登記所に備えつけられている地図のうち、現地再現性のある、測量精度の高い地図の枚数の割合です。地籍調査の進捗率、新聞報道されている五一%というのは、国土全体の面積比で考えて、地籍調査が終わった面積というのが五一%である、こういうことです。

 これもよく考えてみますと、登記所に備えつけられている地図が皆同じ縮尺のものであればほぼ同じになるはずなんですが、実は、登記所に備えつけられている地図というのは、縮尺が五百分の一のものから二千五百分の一のものまであります、大きさはほぼ大体同じぐらいなんですが。そうすると一枚当たりの面積が大分違いますので、地図の枚数の割合を根拠にしている五五%という整備率と面積比で四%の乖離があるのはそういう理由だと思います。

    〔委員長退席、土屋(正)委員長代理着席〕

丸山委員 国土、土地の把握というのはやはり国家として基本の部分だと思います。それが、三百年前の太閤検地とかいうのならまた別なんですけれども、この現代において、特にこの問題は非常に災害時に重要になってきます。阪神大震災のときもそうでしたし、今の東日本の被災地でも土地の把握ができないがゆえに復旧復興が進まないというところもあるというふうな形ですので、ここをしっかりやっていただきたいんです。

 法務省さんの方は、基本的には家屋調査士に依頼されているんですかね。一方で、国交省さんの方は各地方自治体に委託をして、そして、実は、各地方自治体も、補助率が九五%なので、五%で済むんですよ。でも、一方で、私も地元で聞いてみましたら、やはり優先順位が低くて、予算、人員を割けないという声を聞きます。

 そして、なおかつ、そういった意味では、法務省さんの方も似たような状況だと思うんですけれども、前回も、これは予算の点も大事だと大臣はおっしゃっていただきましたけれども、国交省さんとの連携をもう少し明確に意識しないと、結局、今のお話だと、要は内包していると。結局、最後は法務省さんの登記所備えつけ地図に来るわけですから、予算がばらばらで縦割りになってしまうのは、私も役所にいましたので、どうしても難しいのもあるんですけれども、一方で大事な問題ですので、ここはきっちり連携していただけるということでよろしいんでしょうか。

深山政府参考人 確かに、さっきお話ししたとおり、登記所備えつけ地図の作成作業、法務省が行っているものと、御指摘のとおり、市区町村への補助金を国土交通省が出して国土交通省が行っている地籍調査事業とは対象地域のすみ分けはしておりますし、主体も違いますし、やり方も、法務局のものは国の直轄の形で予算を支出し、国土交通省の方は国交省の予算から補助金を出していくという形の事業です。

 ただ、先ほど言いました平成十五年の方針で、国の責任において全国の都市部の地籍調査を推進するんだということがうたわれました。それは平成十五年の話です。

 ということなので、今までは縦割りでしたけれども、平成十六年度からは、地籍調査事業で市区町村が行う都市部の地籍調査に登記所が協力をする、登記官がその地域の地図とか境界についていろいろな専門的知識を有していますので、地元の法務局の登記官を地籍調査事業の地元説明会とか現地調査に派遣をして協力をしていくというようなスキームを構築して、そういう連携の努力は一生懸命しているところでございます。

丸山委員 本当に、言葉だけじゃなくて、しっかりやっていただきたいんですけれども、こういう登記の問題はいろいろなところで今ぽろぽろと何か不備が見当たるような気がします。

 次の質問も関連していくんですけれども、今、空き家の問題が日本全国ですごく問題になっていまして、そして、議員立法で空き家対策の特措法の準備も皆でしていただいていて、これは大事な問題で、早急にやらなければいけないと思うんです。

 これも、結局、自治体の担当者に聞くと、空き家は、すぐ、近所の方から苦情が、これを何とかしたいというのが来ます。瓦が飛んできて危ないとか、草がぼうぼう、ごみが散乱しているみたいなのが来て、まず役所がやるのは、所有者を確認していく作業の最初にやるのは、やはり登記を確認する作業だと思います。

 今回、特措法を議員立法で議論していますけれども、ここでも最後はやはり行政代執行をして撤去するということなんです。一方で、誰が持っているかの把握をやるのは変わらないわけですよ。そこの人に是正を求めていくと、作業は結局一緒なんです。空き家に関しても未登記の空き家が今非常に多くて、現場の自治体さんは困っています。これは、結局、土地も同じで、空き家も今同じような現状にあると思います。

 法務省さんとしては、この空き家の問題、恐らく相続のときに結局登記されなかったとか、また民民の話で等々いろいろな理由もあるんでしょうけれども、この登記の問題が根本にすごくあるようでして、これを国交省さんだけじゃなくて法務省さんも一緒になってやっていかなければ、この登記所備えつけ地図の問題、そして空き家の問題、ともに難しいと思うんですけれども、この辺をどのように認識されていますか。

大塚(拓)大臣政務官 委員御指摘の空き家問題は非常に全国的に社会的に大きな問題になっているものと承知をしております。なかなか建物の所有者が把握できないということで、防災上、衛生上、景観等の観点から非常に地域住民の生活に深刻な影響を及ぼしている事例も多々ある。報道などでもよく取り上げられているところでございます。

 これに関して、所有者を把握できる仕組みとして法務省所管ということでお答えを申し上げますと、建物を含めた不動産の権利に関する登記というものがございます。この不動産の権利に関する登記は、民法の百七十七条の規定を受けて、物権変動の過程を登記簿に記録をし、これを公示するという対抗要件の制度となっております。すなわち、これは私的自治の原則のもとで、物件を取得した者は登記をしなければその権利を第三者に対抗することはできないという仕組みの範囲の中で、公示方法として機能しているというところがございます。

 したがって、なかなか委員の思いに応えるところまでいけないのかもしれないというふうにも思っておるわけでございますけれども、相続によって建物の所有権を取得した者についても、御本人が積極的に登記をすることを望んでいないという場合にまで権利の所在を公示させるということは、この制度の中ではなかなかできないということになっております。不動産の権利に関する登記制度によって現在の所有者を常に把握することができるような仕組みにするというのは、この制度のみではやはり難しいというふうに言わざるを得ない。

 ほかの省庁、例えば総務省所管の固定資産税の課税台帳とか、そういうところもございます。それから、委員が御指摘になられました議員立法の動きというものが与党でなされているということは承知をしているわけでございます。こうした中でいろいろな仕組みというものが工夫をされているように聞いております。

 そうした中で、法務省としても、さまざまな協力、登記情報のデータ提供等、そうしたことをしていく中で、できるだけこの空き家問題が、未登記ということが解消できるように協力をしてまいりたい、このように考えているところでございます。

丸山委員 現行法上、非常に難しいのは重々わかっております。ただ、やはり現状の問題に現行法が追いついていないんじゃないかという問題提起で、それは、今、政務の皆さんも、そうだそうだとうなずいていただいています。これは難しいです。現行法上できないので、変えるとすると、法の安定性との関係だとか、その辺、難しいのは重々わかっているんですけれども、現状、大変なことになっていて、そして、恐らくこの部分は、未登記の空き家の問題は新しい特措法でも結局問題が残ったままになるところですので、これはきっちり政府の方でも考えていただきたいと強くお願い申し上げたいと思います。

 時間がないので、この話ばかりはしませんけれども、やはりこの登記は、国の方の把握というのが今本当に、先ほど来申し上げているように、ぽろぽろと抜け落ちているんじゃないかという事例がすごく生じています。

 もう一つは、いわゆる無戸籍の方の問題です。先ほどは土地の話、家屋の話、そして次は人の話でございます。どれも国にとってみれば大事な、いわゆる基礎の部分だと思うんです。

 今、報道ベースですけれども、無戸籍の方が全国に二百七十九名いらっしゃるということを法務省が調査されたというふうに聞いています。

 まず、その事実関係と、そして、調査結果が出てきた、全国の市区町村に話を入れて結局返ってきたのが一割だというふうな報道なんです。つまり、これは一割だということは、単純に十倍しても二千七百九十人。恐らくもっといらっしゃるんじゃないか、各市町村がしっかり調べたら。全員、一人一人を調べたわけじゃなくて、窓口で把握したということだと聞いていますので。

 そうすると、三千人、下手するともっと日本国じゅうで戸籍のない方がいらっしゃるということになりかねないと思うんです。恐らくそうなんだと思うんですけれども、このあたり、まず調査の結果、そして現状の認識、どのようにお考えか、よろしくお願いします。

深山政府参考人 今委員御指摘のとおり、先般、本年十月十日現在で二百七十九名の無戸籍の方を法務省としては把握しているという発表をいたしたところです。

 これは、本年の七月三十一日に法務省の民事局の担当課長の通知を発出して、市区町村の職員等を通じて各地の法務局が無戸籍者の存在に関する情報を集約するという取り組みを開始した成果でございます。まだ始めて二、三カ月というところなんですけれども、今申し上げたとおり、十月十日現在、これは毎月集計していますが、直近の二回目の集計のところで、全国の市区町村が千八百九十六ございますが、その約一割に当たる全国の百八十七の市区町村から、法務局に対する情報提供として、先ほどの人数の方がおられるという報告がされたところです。

 これは、ほかの九割のところは報告がされていないわけですけれども、そういった自治体というのは大きく二つに分かれていると思っていまして、実際に無戸籍者の存在に関する情報を持っていない、つまり、市区町村の窓口に来られた方で無戸籍者であるということを市区町村が把握している方は一人もいないという自治体もおありだと思います。それから、これは一部の自治体から個別に聞いている話ですけれども、各市区町村が持っている個人情報保護条例との関係から、把握はしているんだけれども、その無戸籍者の方の情報が個人情報に当たるので、それで法務局に対する情報提供をちゅうちょしている自治体もおありだというふうに聞いているところです。

 そこで、こうした九割の市区町村における無戸籍者の情報についても、今の二つの理由のどちらなのか、本当に把握している方がおられないのか、いるんだけれども一定の事情で出せないということなのかということを把握しようと思いまして、つい先日ですが、本年の十月三十日に法務局に対して、報告をしていない市区町村については、その理由を確認した上で、今月の十日までに法務省に全国の法務局から報告をするようにというような指示を発したところです。

 また、情報提供をちゅうちょされているという個人情報保護条例との関係についても、法務省から法務局を通じてしている各市区町村に対する情報提供の要請というのは、戸籍法三条二項に基づいて、法務局長の権限の行使として行っているもので、法律上の根拠に基づくものですので、個人情報保護条例、いろいろなタイプのものはありますが、法律上の根拠に基づいて公の機関からの情報提供の要請を受けた場合には、それについて出すことについて障害があるということは普通考えにくいことなので、何らか、市区町村の側に誤解があるのではないか。

 つまり、我々の報告の要請というのが法的な根拠に基づく権限の行使であるという御認識がなくて、一般の行政協力依頼だと思って、そうだとすると、個人情報だから一定の手続を踏まなくちゃとか、あるいは出しちゃいけないんじゃないかというちゅうちょをされているんじゃないかと思います。

 ということで、我々の出している要請が法的根拠に基づくということを、十月十七日付で事務連絡を発出して、法務局を通じて再度リマインドしていただくというような取り組みもしているところです。

 こうしたことを通じて、できる限り速やかに、今度、九割の市区町村の分も含めて、無戸籍者の情報を把握するように努めていきたいと思っているところです。

    〔土屋(正)委員長代理退席、委員長着席〕

丸山委員 しっかり、できる限り早くやっていただきたいんですけれども、これはやはり氷山の一角だと思うんですね。

 そして、その中には、恐らくこういうケースが多いというふうに聞いているんですけれども、夫の方に連絡をとるのをちゅうちょしてしまう、特に、戸籍に入れる場合には、いわゆる親子関係の不存在の確認の訴えか、もしくは前夫の嫡出否認なり、いわゆる民法の七百七十二条の嫡出推定の部分が関係して、結局、前の夫に連絡をとりたくない、このままの生活の安穏、安定を維持するためにいや応なく出せない人も多いというのが多々指摘されているケースですね。これに対するどんなフォローをしていくのか。

 そして、無戸籍であると問題がいっぱい出てくると思います。免許証が取れない、住民票がとれない等々。

 そもそも、国として、把握していないというのは、国民の皆さんの把握ができないというのはすごく問題だと思いますので、そういった意味で、民法そのものの問題を考えていくのか、それとも、先ほど申し上げたような、そもそも訴えが要るという申請制度の問題を考えていくのか。または、例えば、ほかの国だと母親だけでも出せるとか、もっといけば、子供自身が一定の年齢になれば出してもいいんじゃないかというのもあると思います。

 この辺の制度の問題、もっといけば、周知の話等もありますけれども、フォローや対策についてどのようにされるおつもりなのか、お答えいただけますか。

深山政府参考人 御指摘のとおり、無戸籍者の方は、戸籍がないことによって、社会生活を営む上でさまざまな不利益をこうむっているものと思っております。そういった不利益な状況を解消するには、何といっても、届け出をしていただくなど何らかの具体的な行動をとっていただいて、戸籍をつくる手続をとっていただくということが何よりも重要だと思っております。

 そこで、無戸籍者の存在に関する情報を集める、集約するというお話はしましたけれども、それと同時に、市区町村が無戸籍者の存在を把握した場合には、法務局に行って戸籍をつくるための手続の説明を受けてくださいというような相談の案内を一律にしております。既に、法務局に相談に来られた無戸籍者の方については、各地の法務局で懇切丁寧に手続を案内するという取り組みをしております。

 ただ、無戸籍者として存在を把握されているけれども、いまだ法務局への相談に来られない方もいますし、それから、案内を受けても、やはりいろいろな事情でちょっと積極的に行きにくいという方もおられると思います。そういう方については、それぞれいろいろな事情があって、中には、例えば、私は無戸籍であることを周辺に隠しているので、そういう無戸籍者だということで役所からアクセスされると困るんだというようなことを言われる方もおられるようです。

 さまざまな事情や状況がありますので、そもそも、把握した市区町村と法務局とがよく相談をして、そういった積極的に来られない方については、こちらの側から、市区町村と法務局の側から、相談の上で、手続案内にこちらからアクセスをするということも行うことと最近しております。

 こういったことによって、今後は無戸籍の状態を解消される方も少なからず出てくると思いますけれども、その点も含めて、その点も情報収集いたしますので、無戸籍者が、把握された無戸籍の方がすべからく戸籍ができる、無戸籍の状態を脱するというような状況を目指していきたいと思っております。

丸山委員 やはり、まずは把握していただいて、そして、できる限りそういう方をなくしていくというのが基本だとは思うんですけれども、先ほど申し上げた制度の問題や、そもそも、いわゆる三百日問題というのが非常に根本の部分にあると思います。根本の部分の議論は急には進まないのはわかっていますし、軽々には言えないのもわかっていますけれども、大事な点なので、政務の皆さんも聞いていただいていると思います、御認識は一緒にお持ちいただいていると思いますので、しっかりとこの問題をよろしくお願いします。

 そして、ちょっと時間が、かなり丁寧にお答えいただいているので時間がないので、重なっていない部分をメーンに、今までの質疑と重なっていないところで、難民の申請の話をお伺いしたいと思います。

 今、非常に難民の申請がふえているという現状で、実はこれが本当の意味でのいわゆる難民の方々ではなくて、就労目的で入ってきている方が非常にふえているんじゃないかという問題を昨今指摘されています。現に、数字としてかなりこの申請件数がふえていますよね。

 そうした中で、そういう方は、要は窓口の話も聞いていますと、来て、そういうふうにすれば、六カ月たてば就労ができるんだ、そしてまたさらに、今の現行制度としては、お伺いしたところによりますと、申請したら、もちろんそういう変なのは不認定になると思うんですけれども、なったとしても、さらにもう一回申請すれば、もう一回同じ手続ができて、その間就労ができてしまう。

 だから、学生としてこっちに来ている間に難民申請をしてしまって、それが六カ月たてば、学生の間は働ける時間は決まっていると思うんですけれども、一方で、難民申請してから半年たてばその就労時間の限定がとれてしまうので、国内で就労がよりできてしまう。そしてさらには、悪質な場合には、これがさらにもう一回、不認定になっても出すことができてしまう。

 要は、この制度の瑕疵を利用して、難民という名の外国人労働者が国内に入ってくるという極めてゆゆしい事態に直面していて、そして今後どんどんどんどん増加する懸念があるんですけれども、この点、法務省さん、非常に問題だと思いますけれども、どうなっておりますか。お考えと対応策をお伺いします。

井上政府参考人 お答えいたします。

 難民認定申請の数は、本年は、十月末時点で既に昨年を上回る四千件と、大幅な増加が続いておる状況でございます。

 その中を見ますと、正規在留者からの申請というものが最近特にふえておるというところが実態でございまして、委員の御指摘ございましたけれども、その背景としては、正規在留者である申請者に対しては、申請から六カ月が経過すると、就労活動が可能な在留資格を一律に付与する取り扱いとしたことが一因となっていると考えているところでございます。

 難民認定申請者の中には、そのような情報が口コミで広まって我が国での就労をしようとしている者もおると思いますし、あるいは、不法就労がばれて摘発された後になって、退去強制を免れる目的で急遽申請に及ぶ者も少なからず存在していると思われますが、このような本来の目的とは異なる申請が増加いたしますと、適正な案件処理に支障を来しまして、真の難民を迅速かつ確実に庇護するという制度本来の趣旨を損ねるものと考えてございます。

 そのような問題意識のもと、現在、難民認定制度のあり方につきまして、法務大臣の私的懇談会である第六次出入国管理政策懇談会のもとに難民認定制度に関する専門部会を設けまして、専門的な観点から御検討、御議論をいただいているところでございます。

 本年末を目途に専門部会から政策懇談会に対して提言を行っていただけるよう議論を進めていただいておりますので、当局といたしましては、その提言や御議論を踏まえまして適切に対応してまいりたいと考えております。

丸山委員 年末に提言が出てくるということですので、それを踏まえまして、早急に制度の改正を含めまして、しっかりやっていただけるように強くお願いしたいと思います。

 最後に、イスラム国への参加計画で日本人学生が聴取されている、いわゆるイスラム国への学生の参加計画の件でお伺いしたいんですけれども、私戦予備及び陰謀罪での話をかけて学生の聴取をしていると思うんですけれども、刑法九十三条の私戦予備・陰謀罪に幇助や未遂は適用されるのかどうかという点を、まず、テクニカルなので事務方にお伺いしたいんです。

林政府参考人 まず、未遂犯についてでございますけれども、刑法四十四条では「未遂を罰する場合は、各本条で定める。」というふうに規定しておりますので、それの観点から見ますと、刑法九十三条の私戦予備及び陰謀罪につきましては、こういった未遂犯を処罰する旨の規定はございません。したがいまして、未遂犯の処罰はされません。

 他方、幇助犯について申し上げますと、一般に、処罰規定のある予備行為を幇助した場合というものにつきましては、通貨偽造準備罪の幇助の成立を認めた大審院の判例でありますとか、出入国管理令上の密出国予備罪の幇助を認めた高等裁判所の判例などがあると承知しておりまして、また学説上もこれを認める見解もあることから、この予備の幇助というものは観念し得るものと認識しております。したがいまして、具体的事案の証拠関係によるものの、私戦予備及び陰謀罪の幇助犯についても処罰できる場合があり得るものと承知しております。

丸山委員 なぜこのお話をお伺いしたかというと、今回の北大生の件は、本人が行こうとしてということなんですけれども、これに関して、要は、幇助、いわゆるジャーナリストの何がし、そして大学教授の何がし、彼らがやはり、大学生本人ももちろん反省すべき点、大丈夫か、これでいいのかという責めを受けるべき点があるんですけれども、一方で、周りの、幇助犯の、要は手助けをするところに関してやはり厳しい、罪にしても、世間からのなぜそういうのをやるんだというところの追及があるところだと思うんです。

 現行法上、例えば同じ国家の法益に対する罪で内乱罪とかそういったところには幇助や未遂が独立の罪として規定されていますけれども、この私戦予備・陰謀罪に関しては全く幇助の部分等がないがゆえに、未遂がそもそもないという話ですけれども、ないがゆえに、例えば幇助であれば減軽ということなので、かなり軽い刑になってしまう。そうすると、こういった、先ほどのジャーナリストや大学教授といった周りを規制していかなければ、そもそもの根本解決にならずに、また同じような学生さんが出てくることが懸念されます。

 周りを抑えていくために、このあたりの検討は非常に大事だと思うんですけれども、法務省さんの方で、この辺は議論されたり検討を考えられているということはないんでしょうか。また、どのようにお考えでしょうか。お伺いしたいんです。

林政府参考人 まず、幇助犯でございますが、刑法六十三条で、「従犯の刑は、正犯の刑を減軽する。」とされておりまして、正犯に比べれば、長期、短期、それぞれ二分の一ずつ減軽された刑が科せられるということになります。

 こういった、幇助犯を正犯と区別しているのは、もとより幇助犯というものが、みずから犯罪を実行する正犯者と比較すると、その性質上、一般的、類型的に責任が軽いとされているからでございます。そういったことで、捜査機関により収集された証拠に基づいて幇助犯と認められた行為については、当然のことながら、正犯の刑を減軽した処断刑の範囲内で刑を科すというのが限界でございますし、またそれが相当であると考えております。

 予備・陰謀罪に関与する者の中に悪質な者がいる、そのような御指摘で、そのような者についてどのように考えるのかということの御質問だと思いますけれども、これにつきましては、私戦予備及び陰謀罪に関与した者については、もとより、事実関係や関与の度合いに応じまして、幇助犯ではなく同罪の共同正犯が成立する場合もありまして、その場合には、当然、本犯として処罰されることになると考えております。

丸山委員 もう時間が来ましたので終わりますけれども、共同正犯としてやるという手もあります。そして一方で、ほかの同列の並んでいるのを見ると、ここの罪だけすごく瑕疵があるように見えます。今回の件を踏まえて、恐らく同様の件はまた出てくると思いますので、どうやって防いでいくかというのは大事な点でございますので、ぜひ御議論をいただいて、しっかりとした対策ができるようにお願い申し上げまして、私、丸山穂高の質疑を終えさせていただきます。

 ありがとうございました。

奥野委員長 次に、井出庸生君。

井出委員 維新の党、信州長野の井出庸生です。よろしくお願いいたします。

 きょうは、裁判員裁判について伺いたいと思います。この国会で制度の法改正も予定されているやに聞いておりますので、きょうは、その法案審議の前段として、裁判員のことについて伺っていきたいと思います。

 まず、大臣にお伺いをしたいのですが、平成二十一年五月二十一日から裁判員裁判が始まって、四年と半年になります。この裁判員裁判の現状に対する大臣御自身の評価、また、大臣御自身が今まで新聞、テレビ等で裁判員のニュースをごらんになって、何か印象に残っているようなものがあれば、あわせてお聞きしたい。お願いいたします。

上川国務大臣 御質問いただきました裁判員制度でございますけれども、平成二十一年五月にスタートいたしまして、約五年がたっているということでございます。

 この間の裁判員制度の実施状況を見ますと、裁判員の候補者には八〇%近い方々が裁判所に出頭いただきまして、そして、裁判員等に選ばれた方々にも熱心に審理に取り組んでいただいているというふうに認識しているところでございます。

 また、裁判員裁判におきましては、検察当局といたしまして、わかりやすく、迅速で、しかも的確な主張、立証に努めておるということでございまして、その他の関係者も、それぞれわかりやすい裁判の実現に向けて取り組んでおられるというふうに承知をしているところでございます。

 裁判員の御経験をされた方は、裁判所が実施したアンケートに対しまして、九五・二%の皆さんが、裁判員として裁判に参加したことについて、よい経験と感じた旨の御回答をしているところでございまして、裁判員の皆さんも充実感を持って審理に取り組んでいただいているというふうにうかがわれるところでございます。

 このような状況でございまして、わかりやすい裁判の実現に向けました法曹三者の御努力ということについては、一定の成果が得られているものと評価してもよいのではないかというふうに思っておりまして、裁判員制度、約五年ということでございますが、おおむね順調に実施をされて、また同時に、国民の皆さんの間にも定着してきたものというふうに認識しているところでございます。

井出委員 大臣御自身が裁判員裁判に関する報道等で何か印象に残っているようなものがございましたら、伺いたいと思います。

上川国務大臣 特定の事件、事案につきまして何らかの所感ということでございますけれども、個別具体の事件の内容等に言及することにもなりかねないということでございまして、法務大臣としてのお答えということにつきましては差し控えさせていただきたいというふうに思います。

井出委員 裁判の終わったものであれば一言いただけるかと思ったんですが、そのようなお話ということで。

 今、大臣から、法曹三者の努力と、検察当局もわかりやすい立証に努めてこられたと。私もそういうことはいろいろなところで伺っているんです。

 林刑事局長にちょっとお伺いしたいんです。

 わかりやすい立証を検察当局がしていくときに、それまでの、裁判員裁判になる前と後で大分法廷の様子もさま変わりをした、特に検察官のプレゼンテーション能力というものは格段に上がったということを聞いております。

 ただ、その一方で、準備がかなり負担になるのではないかなと裁判員裁判が始まったときに私は見ておったんですが、その負担感というのは、今、何か現場の声として、正直ちょっとこれ以上はきついとか、そういう声というものはあるのかないのか、ちょっと率直なところを伺いたいと思います。

林政府参考人 裁判員制度が開始されまして、制度の上での特徴的なところとしましては、まず、裁判員裁判対象事件については必ず公判前整理手続というものが行われるということでございます。その中で、現実の裁判員裁判本体において、わかりやすく、また迅速的確な裁判が行われるようにするための準備というものが、当然、公判前整理手続の中でも行われております。そういった公判前整理手続の遂行、それから実際の裁判員裁判における訴訟の遂行、両面におきまして、当然、検察当局としても、わかりやすい、しかも的確な主張、立証に心がけておるということでございます。

 もとより、前と比較して、その部分について、よりわかりやすい、的確な主張、立証に努める努力というものがなされるということについては、それまででは行われていなかったことをさらに充実して行うということでございますので、それなりのまた関係者の努力であったり事務の遂行というものは生じておると思いますけれども、それを負担と称するかどうか。負担という形での受けとめ方ではないと思っております。

井出委員 負担という言葉は、ちょっとマイナスのイメージで、適切ではなかったかなと私も思っておりますが、ただ、おっしゃったように、今、公判前、そして公判の検察の取り組みが従前とは大きく変わっているところは間違いないのかなと思っております。

 今、負担という言葉があったんですが、率直に伺いたいんです。例えば裁判員の対象の事件がこれからふえるとすると、現状は一定の重大事件なんですけれども、私はもう少し枠を広げた方がよいのではないかと思っているんですが、仮に事件の件数がふえた場合に、それを負担と捉えず前向きにやっていただける実務体制ですとか、そういったものが、今、検察当局に、前向きなお気持ちとして、現状そういう能力というものがあるのかないのか、忌憚のないところを伺いたいと思います。

林政府参考人 裁判員制度対象事件についての訴訟遂行、またそれに対する捜査等については、当然、丁寧な、しかも、そこにかなりの労力を費やした上での捜査及び訴訟遂行がなされているものと理解しております。

 そこで、今後の裁判員制度対象事件がもしふえた場合にどうかというのは、それについては、そういった観点で体制を眺めてみたということがまだございません。したがいまして、そのときにたえ得るのかどうかとかいうことについては、まさしく対象事件の拡大というものがどのような範囲によるものかということが前提にならないと判断ができないと思います。

井出委員 私は事件の対象についていろいろ議論したいと思っておるんですが、そのときに、今の御答弁、またさきの御答弁、負担と捉えずやってきたというところを守っていただければなと思います。

 今度、法改正が準備をされていて、その主な改正点は、長期間に裁判が及ぶようなときに裁判員裁判でなくてもよいようにする、また、東日本大震災のときにあったような、被災した際の裁判員の招集等において法改正をするやに伺っております。

 私、その法改正の前段となっておりました、裁判員制度に関する検討会が昨年の六月に取りまとめた報告書を読ませていただきました。率直な感想を申し上げると、長期にわたるものを外していく、それは恐らく、余り異論が出にくいものかなと。震災への対応ということも理解できる。しかし、その他の部分の議論というものをどこまで尽くされたのかなというところに少し疑問を持っております。

 きょう、一つ伺いたいのが、まず、死刑事件に対する裁判員の参加の可否なんです。

 前大臣の所信に対する質疑のときにも私はこの問題にちょっと触れたのですが、やはり死刑判決というものにかかわる裁判員というものは、その思いというものをずっと持ち続けることになる。実際、一審で死刑判決にかかわった裁判員が、二審でその被告が無期懲役になって少しほっとする、そういう気持ちもあったというような新聞記事もこの間の質問のときに紹介をさせていただきました。

 私は、死刑事件というものに裁判員が参加をするかしないかということについて、もっともっと徹底した議論を尽くしていくべきではないかと思っておりますが、その件についての大臣の見解を伺います。

上川国務大臣 委員が御指摘をいただきました、平成二十五年六月に裁判員制度に関する検討会におきまして出された結論でございます。この検討会につきましては、平成二十一年の九月から平成二十五年の六月までということで議論をしていただいたというふうに思っております。

 一部の委員から、死刑求刑事案につきまして、裁判員の負担軽減の観点から、これを対象とし続けてよいか、議論が必要ではないかという御意見が述べられたというふうに承っております。

 これに対しましては、例えば、死刑求刑事案は、国民の関心が高い重大な刑事事件の最たるものということでございまして、そういう意味で裁判員裁判が実施される意義が大きい、こういう御意見もございました。また、被害者等は心理的負担を感じながらも刑事裁判にかかわっているということでございまして、裁判員は、その負担が大きいとしても、社会の一員としてこれを避けるべきではない、こういう御意見もございました。また、検察官としても、求刑の内容は公判審理が全て終わってから初めて決めることができるものであって、あらかじめ起訴の段階あるいは公判前整理手続段階でこれを明らかにできるものではないなどといったような御意見が見られたところでございます。死刑求刑事案を裁判員制度の対象事件から除外することについて、消極の意見が大勢を占めたということでございます。

 このような検討会での御議論も踏まえまして、この点に関する法改正につきましては、法制審議会への諮問ということは行わないということで、今国会に提出しております裁判員の参加する刑事裁判に関する法律の一部を改正する法律案につきましても、御指摘の点での法改正は含めていないという状況でございます。

井出委員 今お話があった、死刑対象事件というものをどこで定義するのか。裁判の最初から、これは死刑になりそうだから裁判員にしないということは到底あり得ないと思うんですが、私は、刑事裁判の論告求刑の段階において死刑の求刑がなされた後に、では、その最後の判決文を書く作業に裁判員にそのまま継続して加わってもらうのか、もしくは、もうそこで外れたいという人を希望制にして外せるようにするかとか、確かにまだまだ尽くすべき論点はあるかと思います。

 そして、今回は、そこのところ、消極的な意見が占めて盛り込まれなかったということなんですが、ただ、この報告書の二十ページに、「裁判員裁判における死刑判決の問題について、現時点で法改正の必要がないとしても、引き続き、議論自体は進めていくべきとの意見もあった。」そのようにも書かれておりまして、ぜひ、今回の法改正にもよらず、その議論の場というものを確保していただきたいと思うんです。

 この裁判員裁判の制度というものは、今回法改正をすると、もうこれで一つの完成形、これ以上の見直しの機会というものが果たして得られるのかどうかというところを伺いたいと思います。

上川国務大臣 御指摘の点でございますけれども、この裁判員裁判というものは、国民の皆さんの理解と協力の上で成り立つということでございますので、そうした国民の皆さんの関心の高い重要な制度ということでございます。

 今後も、その施行状況をしっかりと注視しながら、必要に応じまして、制度上あるいは運用上の措置の要否も含めまして検討してまいりたいというふうに思っております。

井出委員 私の認識ですと、裁判員法の附則九条、法が開始されてから三年を目途に見直しをかけていく、その見直しが今回これから審議する法改正だと思うんですが、ぜひ、これからも引き続き見直していく、そういう枠組みというのを維持していくことも私は必要ではないかなと思いますが、そこの御見解はいかがでしょうか。

上川国務大臣 ただいま委員の方から、継続して検討をということの趣旨だというふうに思いますけれども、そのような大変大事な制度であるということでございますので、実態、施行状況を十分に注視しながら、必要に応じまして、制度上あるいは運用上の措置の要否も含めまして検討してまいりたいというふうに思っております。

井出委員 今回の改正案を提出するに当たって、平成二十一年から二十五年六月まで、四年間で十八回、この検討会が議論を重ねてきた。裁判員裁判を始める際も、検討会は非常に長い期間をかけてきて、そして国会の審議を経た。

 ただ、いろいろな経過を見ますと、やはり前回の法改正のときの国会審議のウエートというのも少し少なかったのではないかなと思いますし、当然、これからの法改正の議論というものは、国民が参加する裁判員裁判ですから、慎重な審議、もちろん、法曹三者に対する参考人質疑ですとか、実現が可能かどうかわかりませんが、裁判員を経験された方の声というのも必要なのではないかなと思いますし、ぜひ丁寧な、慎重な議論をやっていきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 時間になりましたので、終わります。

奥野委員長 次に、西田譲君。

西田委員 次世代の党の西田譲です。本日もどうぞよろしくお願いを申し上げます。

 さて、きょうは、まず最初に、理事会の許可をいただきまして、一枚、資料といいますか写真をお配りさせていただいておりますが、実はこれは沖縄の辺野古の米軍基地の写真でございます。我が党の議員団が本年九月十九日にこちらに視察に伺ったときに、我が党の中丸議員が撮影をさせていただいたものでございます。

 また、実は、きょうこれから行う趣旨と同等の質問は、せんだって地方創生の特別委員会でもさせていただいたところでございますが、きょうは法務省所管、法務委員会でございますから、ちょっとそこに関連して質問をさせていただきたいと思います。

 まず、この写真でございますけれども、右上の写真、これは米軍のフェンスに、明らかに米軍のものではないのぼりを、恐らく勝手に取りつけてあろうかと思うわけでございますし、右下の写真に関しましては、これも米軍のフェンスに、暑さしのぎのテントをくくりつけて、そこで何かしら座って活動していらっしゃるわけでございますね。

 恐らく、こういった活動のためには、これは公道でございますから、道路使用許可といったものが当然必要になってくるのであろうと思いますが、視察した議員団の話を聞くと、近くにいらっしゃった沖縄県警の方に、道路使用許可はとられているんですかとお尋ね申し上げたところ、よくわからないという答えであったそうでございます。

 また、この左上そして左下、左側の写真は、辺野古の工事現場、工事車両の出入りするゲートでございます。いわゆる蛇腹のゲートが設置をされているわけでございますが、そこにいろいろなのぼりが、これも好き勝手に取りつけられておるわけでございまして、これも恐らく米軍が取りつけたものではないことは明らかでありましょうし、仮にこれが県警の持ち物であったとしても、県警がこういったのぼりをつけるはずもないわけでございましょう。勝手につけているわけでございますね。

 これが今の実際の辺野古の基地の状況でございまして、よくのぼりを見てみますと、公安調査庁は「内外情勢の回顧と展望」という冊子を毎年出して、いわゆる情報収集、情報貢献の一環としてお仕事をしていらっしゃるわけでございますが、そういった中で公安調査庁の監視対象となっている団体ののぼりも見受けられるわけでございますね。

 こういったことについてどう評価をされていらっしゃるのか、率直にお聞きをしたいと思います。

寺脇政府参考人 お答え申し上げます。

 沖縄におきまして、米軍普天間基地の名護市辺野古への移設に反対する過激派等が、反対派市民団体などとともに、辺野古周辺に全国から活動家を動員いたしまして、抗議集会や座り込みなどのさまざまな反対運動を繰り広げていることは承知をしております。

 私ども公安調査庁といたしましては、引き続きこうした動向につきまして関心を持って見てまいる所存でございます。

西田委員 ぜひ関心を持って見ていただきながら、やはり必要があれば、実際に付与された権限の中で、その権限を適正に行使するといったことも必要なんじゃなかろうかというふうに思うわけでございますね。

 本来、昭和二十七年、公安調査庁が設置をされたその経緯を見れば、まさにこれを放置するというのは公安調査庁のレーゾンデートルを自己否定するようなものでございますから、しっかりと監視をし、必要があれば、しかるべき権限に基づいた行動がなされるべきだというふうに考えます。いかがでございますか。

寺脇政府参考人 温かい御支援、ありがとうございます。私ども、しっかりと努力をしてまいりたいと思っております。

西田委員 踏み込んだ前向きな御答弁、本当にありがとうございます。

 今国会では、公安審査会委員の同意人事がたしか既に提案をされて、国会に出されているのではなかろうかと思います。二名の分でございますね。

 私、昨年の通常国会でも質問させていただきましたが、この公安調査庁が持つ情報収集そして情報貢献の機能というのは、我が国の防諜体制、カウンターインテリジェンスの体制において不可欠の存在であり、非常に大切な役割だと思っておりますが、この公安審査会が頭にぽつんと乗っかっているおかげで、まさしく盲腸のごとく、本来果たすべき公安調査庁のカウンターインテリジェンスの機能が抑制されてしまっているのではなかろうか、こういった指摘をさきの通常国会でもさせていただいているわけでございます。

 事実、オウムの際にも、破防法の適用はされませんでした。我が党のさきの質問で他の議員からもありましたが、朝鮮総連等に対しても明確な行動の意思が全く見られない。私は、そういったことは、やはり公安審査会が頭の上に乗っかって、まるで盲腸のごとく我が国のカウンターインテリジェンスの体制を弱体化させていることに起因するのではないかというふうに考えております。

 これは、恐らく長官からは御答弁できない案件ではなかろうかと思いますので、大臣の所見をお伺いしたいと思いますが、いかがでございましょう。

上川国務大臣 公安調査庁と並びまして、公安審査委員会についての御質問ということでございます。

 公安審査委員会は、国家行政組織法に基づきまして、法務省の外局として設置されたものでございます。破壊活動防止法と無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律の規定によりまして、公共の安全の確保に寄与するために行う破壊的団体及び無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関し、適正な審査及び決定を行うことを任務としているということでございます。

 この破壊活動防止法及び団体規制法の適用につきましては、国民の基本的人権に重大な影響を及ぼすことから、その適用に当たりましては、公正妥当な判断が求められるというところでございます。そこで、裁判官と同様に、関係法令にのみ拘束をされ、良心に従い、独立してその職権を行う委員長及び委員で構成された公安審査委員会において、その適用につき判断させることが適当というふうに考えております。

 公安審査委員会は、破壊活動防止法及び団体規制法の適用につき重要な役割を担う必要な機関であるというふうに認識しているところでございます。

西田委員 ありがとうございます。昨年の答弁とほぼ一緒でございましたが、これは私、法務委員会に所属する限り、訴え続けていきたいと思っております。

 我が国の防諜体制、カウンターインテリジェンスの機能を強化する意味では昨年の特定秘密保護法は大きな一歩前進でございますが、あわせて、破防法の復権といったことを考えたときに、公安審査会のあり方、これは廃止も含めて検討することによって、大幅に我が国の防諜体制というのは向上すると確信をいたしておりますので、ぜひ御検討いただきたいと思っております。よろしくお願いを申し上げます。

 次の質問に移りたいと思います。

 特別永住者制度についてきょうはお伺いをしていきたいと思っております。

 特別永住者制度、当然、一般の永住制度とはさまざまな違いがあるわけでございますけれども、まず、基本的なところでございます。

 我が国は、平成二十六年六月現在で三十六万強の特別永住者の方がいらっしゃるというふうな数字があるわけでございますけれども、まず、特別永住という資格と一般の永住との違い、例えば、退去強制事由のレベルが違ったりとか、あるいは、日常的に、いわゆる永住者における在留カードに値する特別永住者証明書、こういったものを常時携帯する義務がなかったりとか、更新手続が非常に簡単であったりとか、あるいは再入国の有効期間が長かったりとか、普通の永住、一般の永住と特別永住との違いがいろいろあると思うんですけれども、いま一度ここをきちんと整理したいと思います。

 これは入国管理局長にお伺いをしたいと思います。特別永住の資格と一般永住の資格の具体的な違いについて教えていただきたいと思います。

井上政府参考人 お答えいたします。ただいま委員の方からあらかた御紹介いただいてしまったような感じでございますけれども、改めて整理して申し上げます。

 まず第一点目は、上陸審査のときの個人識別情報の提供という点がございます。永住者につきましては、上陸審査に対して、個人識別情報、つまり指紋と顔写真でございますけれども、これの提供が義務づけられてございますけれども、特別永住者についてはその提供が免除されております。

 二点目として、上陸拒否事由がございます。永住者、特別永住者ともに、再入国許可を得て戻ってくる上陸の場合でございますけれども、永住者につきましては、入管法五条一項各号に規定する通常の上陸拒否事由の該当性を審査して、これに該当する場合には上陸を拒否するということになりますけれども、特別永住者につきましては、上陸拒否事由への該当性は審査しないことになっております。

 第三点目は退去強制事由でございまして、一般の永住者は、入管法二十四条各号に規定する退去強制事由に該当した場合には退去強制の対象となるわけでございますけれども、特別永住者につきましては、内乱、外患、国交に関する罪等、我が国の重大な国家的利益が侵害されたような場合に限り、退去強制の対象となります。

 四点目は、特別永住者証明書の携帯義務でございます。一般の永住者は、それに相当するものは在留カードでございますけれども、これを常時携帯する義務がございますが、特別永住者は、特別永住者証明書というカードになりますけれども、これを携帯する義務はございません。

 その他、再入国期間の許される年数の相違等々、何点か違いがございますが、重立ったところは以上でございます。

西田委員 局長、ありがとうございます。

 本当に、さまざまな違いが具体的に、しかも広範で、より深くあるわけでございますけれども、こういった、特例制度に当たると思うんですけれども、まず、どうして特別永住者という制度が与えられたのか、どうしてこういう措置がとられているのか、その背景、理由について教えていただきたいと思います。

井上政府参考人 お答え申し上げます。

 特別永住者の制度は、いわゆる入管特例法におきまして、終戦前から引き続き我が国に在留し、いわゆる平和条約の発効により本人の意思にかかわりなく日本の国籍を離脱することになった者と、その子孫であって、我が国で出生し引き続き在留している者につきまして、その法的地位の安定化を図るために入管法の特例を定めたものでございます。すなわち、日本国の国籍を離脱することになった経緯とか我が国における定着性に鑑みまして、特別の配慮が必要であるというところが大きな背景事情であると考えてございます。

西田委員 これまでも、特に大きな見直しというのは、九一年、日韓の覚書を根拠としてなされているというふうに理解をしておるんですけれども、たしか当時、海部総理のときでございますね、海部総理、そして盧泰愚大統領との間で首脳会談がなされ、そして、当時、我が国は中山外務大臣であったかと思いますが、先方と交わされた日韓の協定、協定に対する覚書、こういったものを論拠として今日の特別永住制度があるというような理解でよろしいでしょうか。

井上政府参考人 一点、大事な答弁漏れを補充していただきまして、ありがとうございます。

 御指摘のとおり、日韓の覚書に基づきましてこの特別永住者の制度の法制化が図られてございます。そのような問題が背景にございます。

西田委員 ちょっと外れますけれども、私も、この日韓の九一年の覚書があって今日の特別永住という資格があると思っておったんですけれども、内訳を見てみますと、米国人、アメリカ人の方もしくはカナダ、そういった方々、もしくはその他の国といった方々が数百名程度、全体三十六万数千のうちの三十六万人が韓国人だったりするんですけれども、数百程度、アメリカ人、カナダ人、もしくはその他の国というのがあるんですが、それはどういった背景なのでございましょう。

井上政府参考人 突然のお尋ねで、十分な調査ができておりませんけれども、要するに、特別永住者は国籍離脱者及びその子孫でございますので、当初の国籍は韓国、朝鮮及び台湾であったと思われます。

 以下はちょっと推測になってしまいますけれども、例えば、特別永住者が他の国の国籍を有する方と結婚してその間に子供が生まれた場合に、その子供の国籍がその他国の方になる場合などが想定されるところでございますが、網羅的には、少し調べないと正確なお答えができません。

西田委員 急な通告にもかかわらず御答弁いただきまして、ありがとうございます。

 この入管特例法でございますけれども、結局、やはり戦後処理といった背景といったものが当時あったことは十分理解をするわけでございますけれども、この九一年改正でも明記をされておりました、子々孫々にわたってまでずっとこの特別永住の資格を付与していくと。この子々孫々までというのはどういう理由があるのでございましょうか。もし把握をしていらっしゃったら、教えていただきたいと思います。

井上政府参考人 お答えいたします。

 やはり平和条約国籍離脱者の子孫でございますので、まずもって日本の国籍を離脱することになったいきさつというものがございますし、その子孫につきましても、本邦で出生し、引き続き本邦に在留するという要件が特にかかってございますので、やはり本邦における定着性というものも大きく考慮されているものと考えております。

西田委員 この特別永住制度は、今、さまざまな議論がまた沸き起こってきているわけでございますけれども、私は、確かに制度疲労している部分もありますし、むしろそれ以上に大きな問題があるんじゃなかろうかというふうに思っております。

 特に、子々孫々にわたってまでほぼ自動的に特別永住の資格を持っていく、これは、その人の立場になってみますと、日本ではない、ほかの祖国の国籍をある意味持つわけでございますから、その人のアイデンティティーというのは一体何だろうか。日本に生まれ、日本で育ちながら、しかし、自分は日本人ではないということ、常に自分は何者であるかというアイデンティティーを自分自身に言い聞かせながら、そして自分の存在そのものを証明していかなきゃいけないような立場に置かせてしまうことが果たしていいのだろうかといった問題意識を持つわけでございます。

 私は、この特別永住制度を子々孫々まで付与するといったことは、やはりもう一度考え直す必要があるのではなかろうかというふうに考えるのでございますけれども、ここについては大臣のお考えをぜひお聞かせいただきたいと思うんですが、いかがでございましょう。

上川国務大臣 ただいま委員の方からさまざま御指摘をいただきました。

 この制度についてのこれまでのさまざまな経緯と、今に至るプロセス、そしてその後ということでございましたが、先生の御意見ということについては拝聴させていただきました。

西田委員 ありがとうございます。

 制度疲労といったこととあわせて、本当に、今後もそういった方々が常に自分の存在証明をしていかなきゃいけないような状況に置くことが果たしていいのかといった問題意識をぜひ御理解いただきたいというふうに思います。

 あわせて、関連なんですけれども、やはりちょっとこれは気になる問題なんですけれども、せんだって、十月二十五日でございましたか、日韓議員連盟が韓国の議員連盟と共同声明を出されました。上川大臣も日韓議員連盟に所属をしていらっしゃるというふうに把握しておるわけでございます。

 私、この日韓議員連盟、設立は一九七〇年代だったというふうに伺っているわけでございますけれども、当然、当時からこの議員連盟の存在意義、存在理由というのは非常に大切だというふうに思っております。中国やソ連、北朝鮮に対峙しなきゃいけない中にあって、地政学的に考えても、日韓、日米韓の連携といったことが恐らくこの日韓議員連盟設立当初の存在理由ではなかったかというふうに思うわけでございますが、事今日、この十月二十五日に出てきた声明を見ますと、やれ外国人地方参政権を日本側で推進することといった共同声明を出されていたり、もう言うまでもなく、憲法十五条は、公務員を選定、罷免する権利は国民固有の権利と明らかに憲法に示されておりまして、あわせて、地方参政権などといって参政権を国と地方で分割する概念なんかないわけでございます。これは超党派でございますが、こういったことがなぜ日本の国会議員と韓国の国会議員の共同声明に盛り込まれているのか、非常にやはり問題意識を持つわけでございます。

 あわせて、日中韓での共同教科書の実現に向けて、両国の歴史教科書をそれぞれ参考書として使おうじゃないか、そんな提言までされているわけでございまして、これはもう全くもって主権国家としての矜持をなくしてしまっているんじゃなかろうかというふうに感じるわけでございます。

 それぞれ世界にはいろいろな国がありますけれども、国家というのは、その国の固有の歴史と伝統と慣習を過去と現在と未来のそれぞれの国民で共有するような精神の共同体が国家であるわけでございますから、他国が、もしくは他の民族がそこに入り込む余地なんかはこれっぽっちもないわけでございます。それなのに、共同で歴史の教科書をつくろうと。これは、もってのほかというふうに思うわけでございます。

 例えば、イギリスとフランスだって、フランスに行けばナポレオンは英雄ですけれども、イギリスに行けば侵略者でございます。ですけれども、そういったそれぞれの国の歴史的対立を前提とした上で、それぞれの国が努力をして友好関係をつくっていく、これが国際政治の現実ではなかろうかというふうに思うわけでございます。

 そういったことを無視して、以前、東アジア共同体という妄想がはやったこともありましたけれども、それを想起させるかのような日中韓共同教科書の実現とか、そういったことは、やはりやっちゃいけないこと。

 国際政治の現場において、ボーダーレスなんということはやはりあり得ないんですね。経済はボーダーレスです、世界はボーダーレスです。しかし、政治はボーダーフルなんですね。ボーダーレスの政治というのは、これは帝国主義の行動ですから、こういったことはきちんと警戒をしていかなければならないという中にあって、非常に残念な今回の日韓議連の共同声明ではなかったかというふうに、この場をおかりしてお訴えさせていただきたいというふうに思います。

 もう一問、これはもう御答弁は結構でございます、男女平等についてお聞きをしたかったんですが、時間が来てしまいましたので、もし次回、また一般質問の機会をいただけるのであれば、そこでぜひ、法務省、法務大臣としての、人権擁護行政をつかさどる大臣の男女平等に対するお考え、上川大臣は男女共同参画担当大臣もなされておりましたので、その御意見をぜひお聞かせいただきたいと思います。ぜひよろしくお願い申し上げます。

 以上で質問を終わります。

奥野委員長 次に、鈴木貴子君。

鈴木(貴)委員 今回もこうして質問の時間をいただきましたことを、まず冒頭、感謝、御礼申し上げます。

 さて、まず最初に、きのうの参議院の予算委での大臣の答弁について質問させていただきたいと思います。

 きのうの参議院の予算委において、民主党の水岡議員が、西川大臣の過去の収賄容疑に関する質疑をなされました。その際、上川大臣は答弁で、具体的な事案に照らしてはお答えできないと述べられましたが、西川大臣のこの件に関しましては、一九七一年九月、今から四十三年も前で、完全なる終結案件であります。でありながら、答弁できない、答弁拒否が見合うと判断された理由は何なんでしょうか、大臣、お答えください。

上川国務大臣 四十三年前であるからということだけではなくて、個別の案件ということでございましたので、答弁は差し控えたいということで申し上げたところでございます。

鈴木(貴)委員 過去の法務大臣、例えば谷垣大臣もそうでありましたが、過去の終結案件に関しては、個別の案件であっても言及をされていらっしゃいます。当法務委員会においてもそうでありますし、また、質問主意書など、閣議決定をなされたペーパーの上でもそういった言及もなされているわけであります。

 上川法務大臣だけがなぜ答弁拒否ができるのか、その特別な理由をぜひお聞かせください。

上川国務大臣 昨日の状況ということでございますが、お隣に御本人がいらっしゃったということもございますし、また、いろいろ関係する御議論もありましたので、その中での答弁ということで、差し控えさせていただきたいというふうに申し上げたところでございます。

鈴木(貴)委員 西川大臣のことをおもんぱかってということでありますが、であるならば、ここは答弁拒否ではなく、法と証拠に基づいて適正な捜査が行われたがために西川大臣の件に関しては不起訴処分がなされたと、正々堂々とおっしゃるのが、西川大臣の名誉のためでもあり、また、上川法務大臣としての答弁のあるべき流れではなかったのかなと思うのですが、なぜ、法と証拠に基づいて適正な捜査がなされたではなく、答弁拒否をされたのかの理由をお尋ねさせていただきます。

上川国務大臣 四十三年前のこうした事情につきまして結論が出たということにつきましては、そのとおりだというふうに思っております。私、そのことについて詳細に存じ上げるところでもございませんでしたし、また、そのことについてまさに議論があったということでありましたので、その場におきまして、答弁は差し控えたいというふうに申し上げたところでございます。

鈴木(貴)委員 ありがとうございます。

 過去には、法務大臣になれば、個別の案件に関してはお答えできない、そしてまた、法と証拠に基づいて適正な捜査が行われる、法務大臣はこの二つさえわかっていれば答弁を乗り切れるんだというような失言をなされて、実際に問題になったことは、今この委員会の中がどよめいていることだけでも明らかであると思います。そういった意味でも、上川大臣はそのようなお考えはないものであるということを改めて確認させていただいたわけであります。

 次の質問に参らせていただきます。

 前回の質疑で、大臣は答弁で、特定の事件につきまして法務大臣が所感を述べることについては、具体的事件に対する検察の活動に重大な影響を与えたり、あるいは影響を与えるのではないかという国民の疑念を生じかねないと再三にわたって述べられておりました。また、与え得る影響の具体的な例をお示しくださいとの追加質問に際しましては、文字どおりでございますとの返答をいただきました。

 具体的な例示ができなくては、本当にそのお考えを持っているのかと疑念を抱いたわけでありますが、改めて、上川大臣が考慮されております、上川大臣の発言によって検察の活動に与え得る重大な影響とは何なのか、お示しください。

上川国務大臣 先回の先生からのさまざまなやりとりを通じて、私自身、そのような発言をしたということで理解をしているところでございますが、特定の事件について法務大臣が所感を述べるということにつきましては、具体的事件に対する検察の活動に重大な影響を与えたり、あるいは影響を与えるのではないかとの疑念を国民に生じかねないということで、検察庁法十四条の趣旨を没却しかねないために、控えるのが相当である、こういう趣旨のお話をさせていただきました。今でもその考えは変わりません。

 そして、さらに、検察の活動に重大な影響を与えるということにつきましては、具体的にどういう意味かという御質問がございまして、そのときについても同じ言葉で返したところでございます。

 法務大臣は、検事総長に対し具体的事件について指揮し得る権限を有しているということではございますが、具体的事件について所感を述べることについては、捜査の方向性等について指揮権を行使しているとの疑念を生じかねないということで、答弁を差し控えるのが相当というふうに考えたものでございます。

鈴木(貴)委員 私がここの点について何度となく今質問させていただいているのは、まさに裁判、司法においては、法と証拠に基づいて適正な捜査、そして裁判も公判が行われている、このように私も信じております。ゆえに、大臣の発言によって捜査当局の活動に影響が及ぼされる、こういった発言をされるというのは、逆に検察や裁判所の信頼が揺らぐ原因になりかねないと私は危惧をしているから、このように質問させていただいているわけであります。

 どんなことがあっても法と証拠に基づいて適正な捜査活動を行われている検察に対して、重大な影響を及ぼすかもしれないというこの矛盾点、大臣、どのように反論されますか。

上川国務大臣 ただいまの御質問でございます。

 国会におきましては、個別事件の事実関係を前提とした議論をすることにより、国会での議論が裁判所の判断に影響を与えかねない上に、裁判所の判断が国会での議論に影響されているのではないかとの疑念を社会に抱かれる可能性もあるということでございまして、司法権の独立に影響を与えるおそれがあるということで、答弁を差し控えるものというふうに考えております。

鈴木(貴)委員 今大臣まさにおっしゃったとおり、司法は独立をしているわけであります。これは私どもも、中学校などでも学んでいる教科書にしっかりと、たしか、私の記憶が確かならば、図柄入りで載っている話であります。

 その点を鑑みますと、やはり、時の一法務大臣の見識、見解といったものが司法に予断を与えることなどというのはあり得ない、このように思うわけでありますが、上川大臣の発言が、重大な、しかも、ただの影響ではなく、重大な影響を及ぼしかねないと再三にわたっておっしゃられるその理由を端的に述べていただけますでしょうか。

上川国務大臣 司法権は独立をしている、裁判官は法と証拠に基づいて判断するということでございます。

 私の法務大臣としての答弁ということについて、裁判所の判断に重大な影響を与えることではないかという御質問でございます。

 国会におきましては、個別事件の事実関係を前提とした議論をすることにより、国会での議論が裁判所の判断に影響を与えかねない上に、また、裁判所の判断が国会での議論に影響されているのではないかという疑念を社会に抱かれる可能性もあるということでございまして、司法権の独立に影響を与えるおそれありということで、答弁を差し控えるというふうに承知をしております。

鈴木(貴)委員 何度となく、社会への疑念、国民の疑念に対しての発言がなされておりますが、今の答弁を聞きながらも、まさにこの答弁が、国民に、果たして司法はこれでいいのだろうか、こういった疑念を持たせかねないなと私は思っているところであります。

 次の質問に移らせていただきます。

 まず、「検察の理念」について伺わせていただきます。

 上川大臣、「検察の理念」を御存じでいらっしゃると思いますが、この趣旨及び背景をどのように認識されていらっしゃいますでしょうか。端的にお答えをお願いいたします。

上川国務大臣 「検察の理念」という御質問でございました。

 この理念につきましては、作成された経緯ということでございますが、いわゆる厚生労働省元局長無罪事件等の一連の事態を受けまして、検察の在り方検討会議が設けられたところでございます。その提言におきまして、個々の検察官にみずからの使命そして役割を再認識させる、そして日々の職務の指針とすることができるよう、基本規程を定めることが求められたところでございます。

 この「検察の理念」につきましては、この提言を踏まえ、検察がみずから策定したというふうに理解をしております。

鈴木(貴)委員 ありがとうございます。

 この「検察の理念」の前文には、「あたかも常に有罪そのものを目的とし、より重い処分の実現自体を成果とみなすかのごとき姿勢となってはならない。」このようにあります。

 答弁しやすいように、ちょっと今、例を挙げて質問させていただきますが、ある鑑定手法について、有罪判決を維持するために、Aの事件と呼ばせていただきます、Aの事件の裁判では信用性あり、そしてまた、別の事件、Bの裁判では信用性なしと、真逆の主張をした場合には、この検察の理念に応える十分な姿勢だと思われますか。

上川国務大臣 ただいま、具体的なケースを想定しての御質問ということでございますが、そのような仮定の質問ということでございますので、答弁は差し控えたいというふうに思っております。

鈴木(貴)委員 では、質問を変えさせていただきます。

 例えば、被疑者に無罪の可能性がわずかでも残っていれば、また、その人が無罪だと証明できる可能性が残っていると思われた場合には、上川法務大臣はその可能性を明らかにすべきだと思われますか。

上川国務大臣 少し方向を変えての御質問ということでございますけれども、御質問の全体像がちょっとわかりにくいということでございまして、今のようなことに対して明確な答弁ということにつきましては、差し控えさせていただきたいというふうに思います。

鈴木(貴)委員 では、例えば、その被疑者がグレーであれば、グレーのまま有罪判決をすることは、これは法と証拠に基づいた適正な捜査だと思われますか。

上川国務大臣 今の御質問につきましても、ちょっと、主体がどなたかということについて、それを適正な判断をする者が誰なのかということについて……(鈴木(貴)委員「それは裁判所です」と呼ぶ)

 そうしますと、裁判所が判断するということでございますので、答弁をすることはできないということでございます。

鈴木(貴)委員 今、私がその質問をさせていただいたのは、つまり、裁判所、司法が判断すべきという答弁でよろしいですか。

上川国務大臣 法と証拠に基づいて判断をするということでございます。

奥野委員長 鈴木君。もう時間は終わっていると思いますよ。

鈴木(貴)委員 私が今のこの質問の前に伺ったときに、仮定の質問には答えられないと大臣は述べられました。今お答えいただいた私の質問も、まさにこれは仮定の質問でありました。

 一つの質問に対しては、答弁に窮するときには、答えられない、個別の案件には答えられないと答弁拒否をされながら、また別の質問に関しては個別の案件であっても答えを述べられる。ここに、私は、答えの不公平さがあると思うんですが。

奥野委員長 鈴木さんに申し上げますが、ちょっと今の話を聞いていると、全貌がわからない中で局部的なことを言われるものだから、答弁ができないというふうに感じているところもあると思うんです。だから、またチャンスを見つけて質問していただきますけれども、全体像をまず言って、それから答弁を求めた方がいいと思いますよ。

鈴木(貴)委員 はい、ありがとうございました。

 答弁拒否をされないような質問をしっかりと考えてまいりたいと思います。

     ――――◇―――――

奥野委員長 次に、内閣提出、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。上川法務大臣。

    ―――――――――――――

 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案

 検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

上川国務大臣 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を便宜一括して御説明いたします。

 これらの法律案は、政府において、人事院勧告の趣旨に鑑み、一般の政府職員の給与を改定することとし、今国会に一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案及び特別職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案を提出していることから、裁判官及び検察官についても、一般の政府職員の例に準じて、その給与を改定する措置を講じようとするものであります。

 改正の内容は、次のとおりであります。

 第一に、一般の政府職員について、平成二十六年度の給与改定のため、俸給月額を若年層に重点を置きながら引き上げることとしておりますので、判事補等の報酬月額及び九号以下の俸給を受ける検事等の俸給月額についても、これに準じて引き上げることとしております。これらの給与の改定は、一般の政府職員の場合と同様に、平成二十六年四月一日にさかのぼってこれを適用することとしております。

 第二に、一般の政府職員について、給与制度の総合的見直しのため、平成二十七年度から俸給月額を一部の号俸を除いて引き下げることとしておりますので、裁判官の報酬月額及び検察官の俸給月額についても、これに準じて引き下げることとしております。これらの給与の改定は、一般の政府職員の場合と同様に、平成二十七年四月一日から施行することとしており、これに伴う所要の経過措置も定めております。

 以上が、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案の趣旨であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに可決くださいますようお願いいたします。

奥野委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時六分散会


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