衆議院

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第21号 平成27年6月9日(火曜日)

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平成二十七年六月九日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 奥野 信亮君

   理事 安藤  裕君 理事 井野 俊郎君

   理事 伊藤 忠彦君 理事 柴山 昌彦君

   理事 盛山 正仁君 理事 山尾志桜里君

   理事 井出 庸生君 理事 漆原 良夫君

      青山 周平君    大塚  拓君

      門  博文君    菅家 一郎君

      小林 鷹之君    今野 智博君

      田畑 裕明君    辻  清人君

      冨樫 博之君    藤原  崇君

      古田 圭一君    宮川 典子君

      宮崎 謙介君    宮澤 博行君

      宮路 拓馬君    村井 英樹君

      簗  和生君    山口  壯君

      山下 貴司君    若狭  勝君

      黒岩 宇洋君    階   猛君

      鈴木 貴子君    柚木 道義君

      重徳 和彦君    大口 善徳君

      國重  徹君    清水 忠史君

      畑野 君枝君    上西小百合君

    …………………………………

   法務大臣         上川 陽子君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 山谷えり子君

   法務副大臣        葉梨 康弘君

   外務副大臣        中山 泰秀君

   法務大臣政務官      大塚  拓君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    横畠 裕介君

   最高裁判所事務総局刑事局長            平木 正洋君

   政府参考人

   (警察庁長官官房総括審議官)           沖田 芳樹君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    三浦 正充君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    林  眞琴君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 岡田  隆君

   法務委員会専門員     矢部 明宏君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月九日

 辞任         補欠選任

  門  博文君     田畑 裕明君

  宮崎 謙介君     村井 英樹君

  山下 貴司君     小林 鷹之君

同日

 辞任         補欠選任

  小林 鷹之君     山下 貴司君

  田畑 裕明君     門  博文君

  村井 英樹君     青山 周平君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     宮崎 謙介君

    ―――――――――――――

六月八日

 治安維持法犠牲者に対する国家賠償法の制定に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一五一六号)

 同(池内さおり君紹介)(第一五一七号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第一五一八号)

 同(大平喜信君紹介)(第一五一九号)

 同(笠井亮君紹介)(第一五二〇号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一五二一号)

 同(佐々木隆博君紹介)(第一五二二号)

 同(斉藤和子君紹介)(第一五二三号)

 同(志位和夫君紹介)(第一五二四号)

 同(清水忠史君紹介)(第一五二五号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一五二六号)

 同(島津幸広君紹介)(第一五二七号)

 同(田村貴昭君紹介)(第一五二八号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一五二九号)

 同(畑野君枝君紹介)(第一五三〇号)

 同(畠山和也君紹介)(第一五三一号)

 同(藤野保史君紹介)(第一五三二号)

 同(古川元久君紹介)(第一五三三号)

 同(堀内照文君紹介)(第一五三四号)

 同(真島省三君紹介)(第一五三五号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一五三六号)

 同(宮本徹君紹介)(第一五三七号)

 同(本村伸子君紹介)(第一五三八号)

 同(山井和則君紹介)(第一六三七号)

 選択的夫婦別姓制度導入の民法改正を求めることに関する請願(古川元久君紹介)(第一五三九号)

 同(泉健太君紹介)(第一六三八号)

 民法を改正し、選択的夫婦別氏制度の導入を求めることに関する請願(古川元久君紹介)(第一五四〇号)

 法務局・更生保護官署・入国管理官署及び少年院施設の増員に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一五四一号)

 同(池内さおり君紹介)(第一五四二号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第一五四三号)

 同(大平喜信君紹介)(第一五四四号)

 同(笠井亮君紹介)(第一五四五号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一五四六号)

 同(斉藤和子君紹介)(第一五四七号)

 同(志位和夫君紹介)(第一五四八号)

 同(清水忠史君紹介)(第一五四九号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一五五〇号)

 同(島津幸広君紹介)(第一五五一号)

 同(田村貴昭君紹介)(第一五五二号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一五五三号)

 同(畑野君枝君紹介)(第一五五四号)

 同(畠山和也君紹介)(第一五五五号)

 同(藤野保史君紹介)(第一五五六号)

 同(堀内照文君紹介)(第一五五七号)

 同(真島省三君紹介)(第一五五八号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一五五九号)

 同(宮本徹君紹介)(第一五六〇号)

 同(本村伸子君紹介)(第一五六一号)

 裁判所の人的・物的充実に関する請願(漆原良夫君紹介)(第一六五四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 刑事訴訟法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四二号)


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     ――――◇―――――

奥野委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、刑事訴訟法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房総括審議官沖田芳樹君、警察庁刑事局長三浦正充君、法務省刑事局長林眞琴君及び外務省大臣官房審議官岡田隆君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

奥野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

奥野委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局平木刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

奥野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

奥野委員長 本日は、特に取調べの録音・録画制度の創設について質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。藤原崇君。

藤原委員 おはようございます。自民党の藤原崇でございます。

 本日は、取り調べの録音、録画についてということで、三十分、質問の時間をいただきました。理事の先生方には大変感謝をしております。

 刑事訴訟法の一部を改正する法律案ということで審議が行われている中で、取り調べの録音、録画についてもさまざまな先生方から既に質問がなされております。

 そういう中で、先般、委員会の視察ということで、代々木警察署ですか、本部留置、それから東京地検等を視察した経緯も踏まえて、自分の方でこの法律案で多少気になっているところ、それらについて質問をしていきたいと思っております。多少質問の量が多いので、最後まで行けるかどうかというのはあるのですが、順次聞いていきたいと思います。

 まずは、この録音、録画制度を法律上の義務規定として置くことになったその経緯と絡む問題ですが、基本的なところだと思います。検察及び警察ともに、不当な取り調べ等が問題となった事案が複数あると思っております。これらについて、法務省及び警察当局としてはどういうふうに認識をしているのかということ、担当者個人の問題なのか、制度的な問題があるんだろうか、そういうことについてどういう検討を行っているのか、その点について、法務省と警察庁、それぞれについての認識をまずは伺いたいと思っております。

林政府参考人 検察当局におきましては、これまで、例えばいわゆる厚労省元局長無罪事件等に関しまして、取り調べ等の問題点について検証を行ったものと承知しております。

 この検証におきましては、例えば、取り調べに関しまして、必ずしも相当と言いがたい、誘導等により客観的証拠等と整合しない供述調書が作成されたのではないかと疑われるものが少なからず存在したなどといった問題点が指摘されているところでございます。

 その上で、この事件及びこれらに関する一連の事態を受けまして、検察の在り方検討会議の提言におきまして、これらの背景としては、刑事司法制度が抱える構造的な問題点として、取り調べ及び供述調書への過度の依存というものが指摘されまして、捜査、公判のあり方を抜本的に見直して、新たな刑事司法制度を構築するための検討を行う必要があるとされたことでございました。

 そのような検討を経た上で、やはり、このような誤判等が生じる要因として指摘される取り調べ及び供述調書への過度の依存といった構造的な要因は改めて、より適正で機能的な刑事司法制度を構築しようとすることから、録音、録画制度を含みます本法律案を提出しているところでございます。

三浦政府参考人 警察庁におきまして過去の不適正事案の検証を行った例としては、いわゆる富山氷見事件及び志布志事件についてのものがございます。

 これらの事件の捜査においては、客観証拠の吟味、裏づけ、供述の信用性の吟味、また、参考人による犯人の特定供述の吟味が十分でなかったといったことや、取り調べあるいは捜査指揮のあり方などの問題点が認められたところであります。

 警察庁では、こうした事件等を受けて策定された警察捜査における取調べ適正化指針を踏まえまして、取り調べ監督制度を開始したほか、犯罪捜査規範を改正し、原則として深夜または長時間にわたり取り調べを行うことを避けることなどを規定するなど、適正な取り調べを徹底するための施策を講じるとともに、警察大学校等における教養などを通じて、捜査幹部はもちろん、第一線の警察官に対してもその浸透、定着を図り、不適正な取り調べの防止に努めているところでございます。

藤原委員 ありがとうございます。

 過去の事案、取り調べについて不適正な点があったということなんですが、実際、やはり裁判をやってみますと、公判廷で否認なり、あるいは共犯者、参考人の方が従前の調書と異なる証言をしたとしても、それで調書の信用性に勝つというのは、実はなかなか難しいところが正直あるんだろうと思っております。やはり、そういうことが、取り調べについてしっかり調書をとらなければという傾向になっていったのかなと思っています。

 そういう中で、取り調べを適正化するために、原宿警察署でちょっと見させていただきましたが、警察の取り調べ監督官でしたか、非常にいいことだなと思っておりまして、常に見ているわけではないんだけれども、どのタイミングかでは見られているであろう、やはりそういう抑止力というのは非常に大事なんだろうと思っております。そういう意味で、この可視化も、信用性の吟味、任意性の吟味と同時に、適正な取り調べに資するという意味では非常にいいんだろうと思っております。

 そういう中で、今回の対象の条文、刑事訴訟法三百一条の二、これは非常に長い条文になっておりますが、私の方で改めてこれについて見させていただいて、何点か気になった点について、法解釈の点でお伺いをしていきたいと思います。

 まずは、三百一条の二第四項一号、捜査の録音、録画をしなくてもいい場合、義務を外す場合ですね、これは、「記録に必要な機器の故障その他のやむを得ない事情により、記録をすることができないとき。」と規定されております。

 私の印象ですと、そんなに機器というのは壊れないのかなと思っておったんですが、代々木警察署の担当官によると、結構壊れることもありますと。調子が悪いこともあるということなので、実は、実務上、意外と大切になってくるのかなと思っておりまして、この点について明らかにしていただきたいと思います。

 例えば、機器が一台しかない警察署でその機器が壊れた場合、この場合と、警察署内に機器が二台あって一台壊れた場合、この場合でいろいろ変わると思うんですが、例えば、機器が故障した場合であっても、同じ警察署内に他に利用できる機器があるときは、この例外事由には当たるんでしょうか。また、同じ警察署内には一台しかないけれども、何キロ圏内、隣の警察署には録音、録画機器があるという場合、この場合にはやむを得ない事由に当たるのかどうなのか。

 この点について、最終的には裁判所の判断になるわけですが、まず、法務省、立法担当の見解をお聞きしたいと思います。

奥野委員長 ちょっと、藤原委員、さっきから代々木、代々木と言っているんだけれども、あれは原宿でいいんだろう。間違っているから。それをずっと速記をとられると、違うから。(藤原委員「はい、わかりました」と呼ぶ)

 林刑事局長。

林政府参考人 本法律案の刑事訴訟法三百一条の二第四項一号は、機器の故障等の外部的要因によりまして、現実的、客観的に見て当該取り調べ時に録音、録画の実施ができないような場合にまでなお録音、録画を義務づけるとすると、捜査機関に不可能を強いることとなるため、これを例外事由とするものでございます。

 この例外事由に該当する場合として、例えば、当該取り調べ室に配備されている録音、録画機器が故障しており、かわりに使用できる機器もないときや、あるいは、配備されている録音、録画機器が全て使用中であって、当該取り調べにおいてかわりに使用できる機器がないときなどを例外事由として想定しているものでございます。

 もとより個別具体的な事情で判断されますが、一般論として申し上げれば、例えば、警察署の取り調べ室で被疑者の取り調べを行う時点におきまして、当該取り調べ室に配備されている録音、録画機器が故障していたとしましても、同じ警察署内に配備されている他の機器を用いて現に録音、録画を行うことができる場合には、現実的、客観的に見て記録をすることができないとは言えず、この例外事由には当たらないと考えます。

 また、これに対しまして、同じ警察署内に配備されている他の録音、録画機器も全て故障中であるとか、あるいはまた使用中で、現に使用できる機器がほかにない場合には、仮に管轄区域が隣接するという別の警察署には使用可能な機器があったとしましても、通常は、当該取り調べを行う時点におきましては現実的、客観的に見て記録をすることができないと言え、同号の例外事由に該当し得るものと考えられます。

藤原委員 大変失礼しました。当時は代々木から通っていたので、ちょっと間違えてしまいましたが、原宿警察署ということで訂正をしたいと思います。

 録音、録画の義務を外すことについては、合理的な範囲で区切っているというお話だったと思いました。

 次に、第二号、「被疑者が記録を拒んだことその他の被疑者の言動により、記録をしたならば被疑者が十分な供述をすることができないと認めるとき。」これについて、ちょっとイメージとしてお伺いをしたいんです。

 録音、録画をしていた場合には十分に供述ができないなというふうになった場合、捜査機関としては、当該取り調べ全部を録音、録画の対象から外すのか、それとも一部だけ録音、録画を解除するのかというところですね、これは実際のところどういうふうに運用するのかなというのがイメージがちょっとつかめませんので、お伺いをしたいと思います。

林政府参考人 まず、本法律案で取り調べの録音、録画義務の例外事由に該当する場合には、録音、録画をする義務が解除されます。もとより、義務が解除されるだけでございまして、録音、録画が禁止されるわけではございません。捜査機関の判断によりまして録音、録画を実施することはもとより可能でございます。録音、録画を実施するかどうかは、その事案の内容、証拠関係、被疑者の供述状況等の具体的な事情を考慮いたしまして、個別の事件ごとに判断されることとなると考えられます。

 その際、一般論として申し上げれば、録音、録画義務の例外事由に該当する場合でありましても、捜査機関側が供述の任意性を的確に立証しなければならない立場にあることに変わりはございません。捜査機関は、個々の事件におきまして、録音、録画を行わないと供述の任意性についての最も的確な立証方法を失うというリスクもあることを考慮して、録音、録画の当否を判断することになるものと考えられます。

藤原委員 今、大事な御答弁があったんだろうと思います。

 録音、録画の例外事由に当たったとしても、あくまで義務が外されるということで、任意に録画をすることについては差し支えがないということで、その点は、なるべく任意に録画を広く撮った方が私もいいんだろうと思っております。これは現場の個々の判断ですので何とも申し上げられないのですが、ぜひそのような方向で検討していただきたいなと思っております。

 それで、次に、ちょっと一問飛ばしまして、録画を実施する際の事前告知についてお伺いをしたいと思っております。

 取り調べ室に、非常に大きな機械で、録音、録画の機器を置いております。こうなった場合に、事前告知ということで、検察庁でお伺いをした場合には、録音、録画をしていますということ、あとは、検察官によっては、証拠となるものですというふうに告知をしているということですが、それと同時に、もし告知をするのであれば、被疑者の不安を取り除くために、実際にその記録媒体を公判で再生する可能性というのはほとんどないんだろうと思っております。これは可能性は小さいと私は認識をしているんですが、少なくとも、全てのテープが公判廷で裁判官とか第三者の目に触れる、そういうものではないということ、これはあわせて説明するべきではないかなと思っておるんですが、これについて、取り調べを担当する法務省と警察庁、それぞれの御意見を伺いたいと思います。

林政府参考人 現在、検察当局におきましては取調べの録音・録画の実施要領を定めておりまして、その中では、「取り調べの冒頭において、供述者に対し、適宜の方法で、録音・録画を開始していることを告知する」、こういうふうになっております。

 被疑者が録音、録画の実施について不安を感じる理由は、具体的な事件の内容でありますとか、供述者の関心事項、また、刑事手続に関する知識の程度等の個別の事情によってさまざまでありますので、画一的に説明内容を定めて行うということはやはり困難であろうかと考えております。

 いずれにいたしましても、検察当局におきましては、具体的事件における個別の事情を踏まえまして、必要に応じて、被疑者に対して、録音、録画実施の趣旨でありますとか記録媒体の利用方法等について説明を行うなど、適切に対応していくものと承知しております。

三浦政府参考人 警察における録音、録画の試行におきましては、その実施手続を定める取り調べの録音、録画の試行実施要領に基づきまして、録音、録画を実施する際には、その旨を被疑者に対して告知することとしているところであります。

 録音、録画記録が公判で開示される可能性は小さい旨を告知すべきであるという御指摘があったわけでございますけれども、取り調べの録音、録画記録媒体は、やはり公判において再生される可能性は否定はできないわけでございまして、そうしたことを踏まえますと、一律に御指摘のような告知をするといったことは必ずしも適切ではないと考えているところでございます。

藤原委員 可能性が小さいと言いつつ、結局、録音、録画されてしまったら、これはなかなか目も当てられないというのが実際問題としてあるんだと思うんですね。

 ただ、その一方で、統計上の事実というのは恐らく言えるわけだと思うんですよ。昨年は一年間で何本のDVDが録音、録画で撮られて、そのうち何本が裁判所で再生されたか、これは客観的な事実を述べているだけなんだろうと思うんですね。可能性が小さいよというふうに言うと、確かに誤解を与える可能性もある。実際問題、何本中何本しか再生されていないと言っても実際は同じかもしれないんですが、そこは、そういう形で工夫をして。

 やはり被疑者にしてみると、これが誰か第三者の目に触れるのではないかと。特に、身柄拘束されていると、服とかも、自分のを持ってくる人もいるんですが、余りいい格好ではないような状況で調べをしているということで、第三者の目に触れたくないと思っている方もいらっしゃると思うので、やはりその不安というのは除去するように努力をしていく必要があるんだろうと思っております。

 その一方で、全く逆の方からの議論になってしまうんですが、逆に、録音、録画をしていることをあえて意識させなくてもいいのではないかという議論もあると思うんですね。今の取り調べでは事前に告知をしておると思うんですが、法律上は事前告知は要件とはなっていないと思うんですね。そうすると、事前告知をせずに黙って録音、録画を開始して証拠として使うということ、こうなった場合には、ある意味、被疑者の不安という面では特にないわけなんですね。もちろん、それがいいかどうかという問題はあるんですが。

 この点について、あえて事前告知をしないで調べをするという方法も考えられるんですが、こういう考え方は法律上許されるんでしょうか。

林政府参考人 本法律案の刑事訴訟法三百一条の二第四項におきましては、逮捕、勾留中の被疑者を対象事件について取り調べる場合に、捜査機関に取り調べの録音、録画を義務づけておりますけれども、録音、録画の際に被疑者に対する告知を義務づける規定を設けることとはしておりません。したがいまして、御指摘のとおり、録音、録画に際しまして、被疑者に対して録音、録画を行う旨を告知する義務はございません。

 その理由について申し上げますと、被疑者取り調べの録音、録画が被疑者の重要な権利利益の制約を伴うものではないことから、被疑者の同意を得なければ実施できないものではなく、したがって、録音、録画に際しまして、被疑者に録音、録画を行う旨を告知する必要まではないと考えられたことによるものでございます。

藤原委員 ありがとうございます。

 今のところ同意が不要であるということ、これは、何となく、法文を見ていればそうなんだろうなと。当然、身柄拘束のもとにあるわけですのであれですが、そこをあえて明らかにしていただきました。

 そういう中で、取り調べの録画、DVDで出てくると思うんですが、これについては、公判廷で任意性を争われたときには証拠として請求をしなければならないということで、いわゆる証拠の的確性に関する立証のために使うというふうに規定されているんですが、これはそれ以外の用い方もできるんでしょうか。具体的には、罪体の立証としてこのDVDを使うということも許されるのか、想定しているのかという点について伺います。

林政府参考人 取り調べの録音、録画記録というものは、取り調べにおける供述人の供述及びその状況がありのままに記録されたものであり、供述人の署名押印というものはありませんが、撮影、保存等の記録の過程が機械的な操作によってなされることで、記録内容の正確性も担保されております。

 そのために、現行法上、取り調べの録音、録画記録につきましては、供述の任意性の証拠としてだけでなく、犯罪事実あるいは情状を立証するための証拠、いわゆる実質証拠として用いることも当然にできると考えられます。現在の実務においても、取り調べの録音、録画記録は事案に応じて実質証拠として用いられていると承知しております。

 本法律案で、三百一条の二については、任意性が争われた場合に当該取り調べの録音、録画記録の証拠調べ請求を義務づけるとしておるわけでございますが、これはあくまでも、検察官が当該供述調書の任意性を立証し、当該供述調書を実質証拠として用いようとする場合についての規定でございまして、録音、録画記録自体を実質証拠として用いようとする場合について何ら制約をする趣旨ではないと考えております。

藤原委員 既に罪体の立証で何件か、試行段階から使われているというのも実は伺っているところなんですが、これは、防御側、被告人側にとっては、主に弁護人にとっては、実はかなりインパクトがあることなんだろうと思っております。

 従来ですと、接見をして話をしたとしても、もし本当に最後まで争うのであれば、調書への署名押印、ここをとめれば実際上は調書としては有効ではないということになるんですが、やはり、調べの中で話をしているのがそのままDVDで撮られて、それが罪体の立証で使われるとなると、従来の弁護人の弁護の仕方というのも変わってくるんだろうと思っております。余り注目はされていないんですが、刑事弁護の方も、録音、録画がふえていけば、対応を変えていかなければいけないのではないかなということを実は考えております。

 それと同時に、弁護人にしてみても、罪体立証で使われる可能性があるとなると、当然チェックはしなければいけませんし、全部をチェックするというのは事実上無理なんですが、やはり否認事件等になれば、当然、何かいい証拠はないのかということで、DVDを全部見ることもやらざるを得ませんし、さらに突き詰めて考えれば、取り調べを長くやっていれば、何かしらヒントになることとか、いろいろ雑談の中で出てくるんだろう。そうすると、さらに先の再審のときの証拠の新規性の判断も、場合によってはDVDがあると少し変わってくるんじゃないのかなということも考えております。

 これはまだまだ先の問題だと思っておりますので、この程度にしたいんですが、当然、罪体の立証に使われることがあるということは、これは、公判前整理手続に付されていない事件、いわゆる任意開示というもので弁護人に開示をするという方向でよろしいんでしょうか。

林政府参考人 被疑者の取り調べの録音、録画の記録媒体は、公判前整理手続等に付された事件におきましては、刑事訴訟法三百十六条の十五第一項第七号に該当します。したがいまして、そういった形で弁護人からまず要件を満たす開示請求があった場合には、適切な開示がなされるものと承知しております。

 その上で、検察官といたしましては、こういった公判前整理手続等に付されなかった事件につきましても、このような記録媒体につきましては、弁護人から開示を求められた場合等につきまして、適切に対応しているものと承知しております。

藤原委員 ありがとうございます。

 録音、録画の範囲を広げた場合には、担当官の、最終的な決裁官の負担もふえるというのがこの前の視察での検事の方々との意見交換会でありました。これは、弁護人の方も場合によってはそういうふうになるんだろうと。だからといってとめるとかそういう話ではないんですが、やはりそういう点もしっかりと認識をしていく必要があるんだろうと。捜査側の事情だけでなく、弁護側にとっても負担がふえる話になると思いますので、やはりこれは弁護士の側でもしっかりと研さんをする必要があるんだろうと思っております。

 次に、一個飛ばして、任意録画の対象範囲についてお伺いをしたいと思います。

 今回の法律案で、任意録画の対象にならない事件、つまり、裁判員裁判あるいは独自捜査事件以外の事件であって、かつ任意試行の対象となっていない事件、精神の障害等により責任能力の減退、喪失が疑われる被疑者であるとか、あるいはコミュニケーション能力に不安がある被疑者以外の被疑者であっても任意録画を広げるべきではないかなというふうに思っております。

 例えば、特に罪体に争いがある少年の事件の場合であるとか、一応普通の成人男性なんだけれども、よくよく話してみると、調べ官の言うことに迎合してしまう、いわゆる迎合性の高い被疑者と呼ばれますが、自分の意見というよりは、聞かれたことに、そうですね、そうですねと答えるような感じの人、あるいは、ちょっと前に遠隔操作のメールの事件なんかがあったんですけれども、将来的に公判廷で対立の先鋭化が予想される事件、そのような事件について、被疑者の弁護人あるいは付添人から、可視化をしてください、取り調べにテープをとってください、そういう申し出があった場合には、任意試行の対象でなかったとしても録音、録画を実施するのが、後の公判廷でのことを考えれば、検察側あるいは弁護側、警察側にとっても、みんなにとってプラスではないかなと思うんですが、この点について伺いたいと思います。

林政府参考人 検察におきましては、運用による録音、録画といたしまして、裁判員裁判対象事件、いわゆる検察官独自捜査事件、知的障害によりコミュニケーション能力に問題がある被疑者等に係る事件、さらに、精神の障害等により責任能力の減退、喪失が疑われる被疑者に係る事件、この四類型について、取り調べの全過程を含め、できる限り広範囲な録音、録画を行っているところでございます。

 また、平成二十六年十月一日からは、罪名を限定せずに、公判請求が見込まれる身柄事件でありまして、事案の内容や証拠関係等に照らして被疑者の供述が立証上重要であるもの、証拠関係や供述等に照らし被疑者の取り調べ状況をめぐって争いが生じる可能性があるものなど、被疑者取り調べを録音、録画することが必要であると考えられる事件について、積極的に録音、録画の試行に取り組んでいるものと承知しております。

 したがいまして、被疑者またはその弁護人からお申し出があった事件について、その内容の当否にかかわらず一律に録音、録画の対象とするということをしているものではございませんが、他方で、被疑者または弁護人の申し出内容というのも考慮要素の一つといたしまして、検察官において被疑者の供述が立証上重要であると判断したものなどについては、検察の運用において必要な録音、録画が行われることがあり得るものと承知しております。

藤原委員 警察庁さんにもお願いします。

三浦政府参考人 現在、警察におきましては、裁判員裁判対象事件及び知的障害を有する被疑者に係る事件について録音、録画の試行を実施しているところでありますが、これは、被疑者の供述の任意性等の立証を担保することを目的として行っているものでありまして、被疑者やその弁護人の申し出によって行うというものではございません。

 したがって、試行の対象事件か対象外の事件かを問わず、被疑者等が録音、録画を申し出たからといって録音、録画を実施するということは考えておりませんけれども、試行の対象外の事件については一切録音、録画を実施しないとしているわけではございませんで、個別の事件ごとに、事件内容、証拠関係、供述証拠の必要性といったものを考慮して、録音、録画を実施するということはあり得るものと考えております。

 御指摘のように、被疑者等が録音、録画を申し出たような事件について、こうした観点から、結果的に録音、録画を実施するということもあり得ると考えております。

藤原委員 ありがとうございました。

 弁護人が申し出るというのは、やはりそれなりに合理性があってのことだと思いますので、ぜひその点は考慮していただければと思っております。

 以上で質疑を終わります。

奥野委員長 次に、階猛君。

階委員 おはようございます。民主党の階です。本日もよろしくお願いします。

 この委員会で皆さん触れられておりますが、先週の水曜日の視察、私が印象に残ったことは二つありました。

 まず、取り調べ室を実際に見ることができたんですが、そこに設置されている録音、録画機器が非常に大きくて、しかも、被疑者の視界にいやが応でも入る位置にあるということです。コンビニの防犯カメラのように、カメラの大きさや設置場所などにもう一つ工夫があってもいいのではないかと思った次第ですが、この点については、後ほど時間があればお聞きしたいと思います。

 それからもう一つは、原宿警察署、こちらの警察官の方との意見交換の場で、警視庁の半田さんという警視の方がいらっしゃいまして、取り調べは捜査官と被疑者との間の心のキャッチボールだということをお話しされていました。涙は心の汗だというドラマのフレーズがありましたけれども、取り調べは心のキャッチボールだというのもなかなかの名言だなと思いました。要は、取り調べの中で、捜査官と被疑者がお互いにプライベートな情報を話したり内面をさらけ出したりしながら真実発見に近づいていく様子を、心のキャッチボールという言葉であらわしたのだと思うんですが、それが可視化によってできにくくなるという懸念を表明されていました。

 印象に残る言葉でしたので、終わった後に、私の方から、この半田さんという方に近づいていって、名刺を渡しまして、よろしくお願いしますと御挨拶したんですが、名刺は持ち合わせていないということで、彼の方から名刺を差し出されることもなく、私からは、それでは後でぜひ送ってくださいねと申し上げたんですが、いまだに何の応答もないということです。心のキャッチボールと言いながら、実際は、一方的に球を受け取るだけで、自分は球を投げ返すつもりが全くないのではないかというふうに感じました。

 私もずっと野球をやってきていまして、高校時代、下級生のときは、バッティングピッチャーとかをやらされました。先輩が好きなコースに投げるまで延々とボールを投げさせられる、これが昔の高校野球でありまして、まさに捜査機関というのは、被疑者あるいは国民との間でキャッチボールをするというよりは、国民にバッティングピッチャーをさせて、いい球だけ投げさせようとしているのではないかというふうに感じた次第です。

 こういう、捜査機関が国民の情報をとりやすくして、かつ、捜査機関の側からは情報を隠しやすいようなことがあっては断じてならないと思っています。日本国憲法では、民主主義あるいは基本的人権の尊重ということを定めておりますから、これに反するものですし、現行の刑事訴訟法も、当事者主義ということで、武器対等の原則というのがあります。こうしたことにも反するということであります。私は、今のような姿勢では、到底、心のキャッチボールも生まれないということをまず最初に申し上げたいと思うんです。

 感想で結構ですけれども、心のキャッチボールという言い方にそぐわない実態が見られるのではないかということを私は指摘したわけですけれども、法務大臣それから国家公安委員長、何か御感想はありますでしょうか。

上川国務大臣 委員会で現場の視察をされたところでの大変大事な印象ということで、ただいま階委員からの御指摘がございました。

 真実を発見する、究明するというところについて、お互いにキャッチボールをしながら、その気持ちを、あるいはその意図を、あるいはその行動をということで、しっかりと御自分から、みずからの意思で発言していただくということ、そのことについて、それぞれ担当されている方が、それぞれの個人のキャラクターというか、そういうものに基づいて、恐らくいろいろな形で努力をしながら現場でやっていらっしゃるとは思いますが、そこのところが、今のように、うまく機能することができるようにしていくということについては、絶えずその努力をしていかなければいけないというふうに思っております。

 今お伺いをして、その方が名刺をお出しにならないことについて今のように御判断をされるということにつきましても、階委員のお考えということで、大変大事な御指摘だなというふうに思った次第でございます。

山谷国務大臣 御視察いただきまして、ありがとうございます。

 適切な取り調べのもとに真相を究明していくということが大事だと思います。そうした中で、人間力というのがまた試されるというふうに思います。本当に総合的に、さまざまな研修の機会を通じて、さらに人間性を高めるためのそれぞれの努力というのをしていくことが大事だと考えております。

階委員 心のキャッチボールという言葉を使われるのであれば、まさに自分から心を開いていただきたいなと思った次第です。

 まず、国民から情報をとりやすくするということでいうと、昨今問題になっている、この委員会でも先日柚木委員が取り上げましたけれども、GPS捜査について、先日、重要な裁判所の判断が出ましたので、このことからまずお尋ねしたいと思います。

 きょうは、葉梨副大臣、警察庁にもいらっしゃったということで、この点については最適任の答弁者ではないかと思いまして、最初に葉梨副大臣にお尋ねします。

 資料一をごらんになってください。これは、先週、六月五日の朝日新聞の記事でございます。「令状ないGPS捜査 違法」という見出しですが、最初の方をちょっと読ませていただきます。

  捜査対象者の動向をつかむため、GPS(全地球測位システム)端末を任意で車両に取り付ける捜査手法について、大阪地裁の長瀬敬昭裁判長は五日に開かれた窃盗事件の公判で「(対象者の)プライバシーを侵害するもので、裁判所の令状なく実行されたことは重大な違法」との判断を示した。GPSの位置情報をもとに事件と被告らとの関わりを示す捜査報告書を証拠採用しない決定をした。

ということなんですが、この捜査手法の問題点を指摘されているわけですけれども、葉梨副大臣は、この捜査手法に問題があるとはお考えにならないですか。

葉梨副大臣 私が警察庁で刑事警察をやっていたときは、まだGPSというのはなくて、車の位置情報については自動車ナンバー自動読み取りシステム等において任意に位置情報を取得していたという記憶がございます。

 このGPSですけれども、裁判例、私も事務方に調べていただいたんですが、任意捜査として行うことができるというふうに判断した例もある、そして、今回のように検証許可状によらなかった点が違法であると指摘した裁判例もあるということで、いずれの考え方によるべきかなどについては、個別の具体的事例によるのではないかなということで、ちょっと即断しかねるかなというふうに思います。

階委員 それでは、国家公安委員長にお尋ねします。

 資料二をごらんになってください。これは、警察庁刑事局刑事企画課長の名前で、平成十八年六月三十日に各都道府県警察の長ほかの方々に発信された文書でございますけれども、今申し上げましたGPSを使った捜査の運用要領ということが定められているものであります。

 一枚めくっていただきますと、ぱっと見ておわかりになるとおり、黒塗りばかりです。まず、「定義」のところから黒塗りなんですが、その後、大事なことが定められておりますね。まず、「3 使用要件」の(1)では、「次に掲げる犯罪の捜査を行うに当たり、」ということで、その下に黒塗りになっているアからキまでは、どういう犯罪においてこの捜査手法を使えるかということが定められているわけであります。それから、(2)には、アからエまで、「次に掲げる物のいずれかに取り付ける」ということで、どういうものに取りつけられるかということが書かれているわけですが、これも黒塗りで国民からはわからない。

 それから、一枚めくっていただきますと、最後に「保秘の徹底」という項目がありまして、「移動追跡装置を使用した捜査の具体的な実施状況等については、文書管理等を含め保秘を徹底するものとし、特に次の事項に留意する。」ということで、秘密保持を徹底するということなんだから別に黒塗りにしなくてもいいではないかときのうもさんざん事務方とやり合ったんですけれども、よくよくお話を聞いてみますと、ここの黒塗りになっている部分がわかると、GPSの捜査によって得られた情報がどういう場合に使えて、どういう場合に使えないかということがはっきりしてしまうので隠さざるを得ないんだということでした。

 事ほどさように、どういう犯罪についてGPS捜査が行われるかわからない、また、どういうものにこの端末が取りつけられるかわからない、そして、どういうときにその得られた情報が表に出てくるかわからない、こういうものです。これは非常に、プライバシーの侵害ということもありますし、また、国民の行動の自由に大きな萎縮効果を及ぼすのではないかと思っています。

 そういう問題意識から、この五日の裁判では、ちゃんと法律で定めた手続を設けなければ違法だという趣旨の判断だったと思うんですが、こういうやり方でもなお、GPSの捜査、今の任意捜査というやり方で進めていっていいとお考えなのかどうか、国家公安委員長にお尋ねします。

山谷国務大臣 移動追跡装置は、その使用が捜査員が行う尾行を機械的に補助するにとどまり、通常の張り込みや尾行等の方法と比して特にプライバシー侵害の程度が大きいものではなく、かつ、その取りつけが車体を傷つけるような方法ではなく、公道上等で取りつけるなど、第三者の権利を不当に侵害しない様態で行うものであれば、任意捜査として許容されるものと考えているところでございます。

階委員 そういう認識が裁判所によって否定されたということをまだ余り重く受けとめられていないということは問題だと思います。

 それから、今議題に上がっているのは取り調べの可視化ということなんですが、と同時に、通信傍受の拡大ということも議題になっているわけです。

 GPS捜査というのは、この通信傍受の方との共通性もあると思っていまして、何が共通するかというと、先ほどの判断では、朝日新聞では、括弧書きになっていますが、「(対象者の)プライバシーを侵害するもので、」というくだりがありました。対象者のだけじゃなくて、対象者以外の、事件と何のかかわりのない人のプライバシーも侵害するおそれがあるということで、通信傍受とこのGPS捜査というのは共通点があると思っているんですね。

 要するに、誰が捜査の対象になっているかわからないということになりますと、我々は常に、ほかの人とのコミュニケーション、あるいはほかの人と会うことに対して疑心暗鬼にならざるを得ない、行動が萎縮してしまうおそれがあるわけですよ。まさにこれこそ、国民相互間の心のキャッチボールを阻害するような、そういうやり方だと思いますよ。この心のキャッチボールを不可能にするという意味では、本当に重要な問題です。捜査官も心のキャッチボールが大事だと言っているわけですから、みずから大事だと言っているものを阻害するようなことをやるのであれば、これは特別の立法を行うべきだと考えます。

 葉梨副大臣にもう一度お尋ねします。

 これは多分、上川大臣の御答弁だったと記憶していますが、六月二日に柚木委員への答弁で、今申し上げたようなGPS捜査は任意捜査として許容されるという裁判例があることを理由にして、法改正は必要ないというふうにお話しされましたね。その当時はまだ六月五日の裁判例が出る前ですから、それはやむを得なかったかもしれません。しかし、今、こういう裁判例が出た以上は、前提が変わったのでありますから、やはり立法は必要ではないかと思っています。

 まず、行きがかり上、葉梨副大臣にお尋ねします。

葉梨副大臣 先ほど御答弁させていただきましたように、任意捜査として認められるという裁判例もあるわけです。確かに、プライバシーの侵害ではないかという御意見もあるわけですが、およそ、尾行、張り込みというような捜査手法は認められているわけです。これは密行性が非常にある。

 ただ、尾行、張り込みをされていて、非常に権利侵害に当たるんじゃないかみたいなことを、特に相手にわかってしまう、ストーカーなんかの場合、つきまといというふうな形で言いますけれども、密行性がなくなって相手にわかるような状況になると非常に気持ち悪いという、これはもう当然あるわけです。

 ただ、そういう中で、相手の権利を侵害しない形での尾行、張り込みというのは捜査手法として認められている。まさに今、公安委員長、大臣がおっしゃられたとおり、これを補助するという形においてあるんだろうというふうに思うんです。

 ただ、やはり、先ほど申し上げましたように、個別の事案において、なかなか即断できるという状況ではございませんで、例えばその取りつけの手法が犯罪に当たるようなものであれば、これは警察においても任意捜査としては認められないというようなことでございます。

 いずれにしても、この六月五日の裁判例が出たからといって、すぐに刑訴法の改正に当たらなければならないのかということについては、いささか、さらにその要否を含めて慎重な検討が必要なのではないかなというふうに考えます。

階委員 尾行、張り込みというのは、生身の人間が行う行為ですから、おのずと時間的、空間的な限界があります。しかし、GPS捜査は、そのような限界がなく、いつでも、どこまでも追跡することができるということで、大きく違うと思います。

 また、通信傍受についても、今回の対象犯罪拡大、あるいは立会人不要ということによって、著しく範囲が拡大していますね。それによって、被疑者だけではなくて、事件に無関係な人までプライバシーを侵害されるおそれが高まっている。

 それから、先ほど指摘しましたように、このGPS捜査は内規によって運用要領とかが定められていますけれども、肝心なところは全部黒塗りで、どういう場合に我々のプライバシーが盗まれるのかということが全く明らかでない。

 こういうようなやり方で本当に国民の信頼は得られるのか、心のキャッチボールが捜査機関と国民との間で成り立つのかということを思うわけですよ。

 上川大臣にお尋ねします。

 通信傍受について、法改正、今いろいろ問題点を指摘させていただいておりますが、そもそも、先ほど言ったように、通信傍受の話とかこのGPSの話というのは、被疑者だけではなくて国民全体のプライバシーにかかわる問題で、だからこそ、国民の皆様に積極的に情報を開示して、広い理解を得た上で、しかるべき法制度をつくっていかなくてはいけないものだと思います。拙速に可視化と一緒に進めるような話ではなくて、私は、せっかくこういう裁判例も出てきたわけで、GPS捜査の許容性といいますか適法性に揺らぎが出てきているわけですから、今こそまさに、この点についても法的な制度、手当てをし、また、それとともに通信傍受の方も法制度を議論すればいいと思います。

 この二つについては別個独立に国会の場で議論すべきだと思いますが、法務大臣の御見解を伺います。

上川国務大臣 ただいま、GPS捜査ということでの御指摘の中で、通信傍受法の改正、今回録音、録画制度をお願いしながらということで、切り離していくべきだというような御指摘がございました。

 通信傍受法の改正を含めまして今回の法律案に掲げています諸制度でございますが、それぞれが証拠収集手段の適正化そして多様化と、さらに公判審理の充実化を図るという目的のために、この間、検察の在り方検討会議を初めとして、法制審議会におきましても長年にわたりまして御議論をいただいてきたものというふうに思っております。全てが一体として取り組むということの中で、取り調べと供述調書に過度に依存した状況を脱していくというところの中で御議論をいただき、今回の法案の審議をお願いしたところでございます。

 今、GPSの位置情報の取得につきましても、現行の刑事訴訟法のもとで行い得るものであるということでございますので、このことと通信傍受とを関連づけてあわせて検討するということにつきましては、必然的なものではないというふうに考えているところでございます。

 GPS捜査というのは、その目的に照らして執行しているということでございます。また、裁判の中でのさまざまな御議論の中で、今副大臣がお答えさせていただいたように、個々の中での判断ということもございますので、慎重な検討が必要ではないかというふうに考えております。

階委員 慎重に検討が必要だからこそ、通信傍受と一緒に、独立して議論すべきではないか。

 それで、今、法制度で問題ないようなお話もありましたけれども、まさに今の法制度では、令状ないGPS捜査は違法だということを指摘しているわけですよ、裁判所が。全くその重みを感じていらっしゃらないのは、私は甚だ問題だと思います。

 これは、対応が後手後手に回らないように、ぜひここは前向きに検討をしていただきたいと思いますが、もう一度、上川大臣、御答弁をお願いします。

葉梨副大臣 そこのところは、いわゆる位置情報の問題と通信傍受の問題というのを、プライバシーの侵害であるというふうな形で一緒にという議論ではあるわけですが、例えば携帯電話の位置情報を、捜査側が令状をとる場合は、検証令状でとれるわけですね。

 それから、GPSは、この場合は機器の取りつけということですけれども、もともとカーナビゲーションが始まった当時も、位置情報を米軍の衛星にみんなが提供しなきゃいけないじゃないかという議論もあったわけです。さらには、公道上の位置情報ということですと、先ほどもお話をしましたとおり、機械的に自動車ナンバー自動読み取りシステムで、ここを通った、あるいは高速道路の入り口のところでこのナンバーの車が通ったということも、これは任意捜査でできるし、あるいはGPSは、さっき携帯電話のお話もしましたとおり、検証令状でできる。

 そういうことに加えて、さらに、行動の自由というのが当然あるわけですが、どこに誰が行ったというのは、どういうところを通ったというのを捜査官が見ることは、これも任意でできるわけです。

 ただ、通信の秘密というのはそうではなくて、やはり当事者間の同意を得ないで通信の秘密を、侵すと言ったら変ですけれども、令状を得ながらそれを傍受するというのは、同じプライバシーの侵害ということで同列にということですけれども、なかなかそこのところは、今までの捜査の手法の積み上げ等々を考えますと、同列に論じるべきものなのかどうか。私は、別に論じていいのではないかと。

 さらには、先ほど申し上げましたとおり、検証令状ということで、現実に携帯電話の位置情報を検証しているという例もあるわけですから、今回は通信傍受法の改正ということで、別に論じてもいいのではないかなというふうに思います。

階委員 今、GPS捜査と通信傍受の違いをるる述べていただきましたけれども、少なくとも、通信傍受とGPSとの違いよりも、通信傍受と取り調べ可視化の違いの方がはるかに大きいと思いますよ。それを一緒にして議論して問題ないと言っているんだったら、なおのこと、同じプライバシーの侵害、しかも被疑者だけでなく一般人への侵害も含むものであれば一緒に議論してもいいと思いますし、別に、そもそも一緒にしなくちゃいけないと言っているわけではなくて、この法案とは切り離して議論すべしということに主眼があるわけですから、別に、別個に出していただく分には全く構いません。

 ということを申し上げて、私は、要するに、心のキャッチボールと言うけれども、国民の方から情報をとることばかりに熱心ではないかというところを我々はしっかりただしていきたいので、通信傍受とかGPS捜査については別途議論の場をちゃんと設けてほしいということを申し上げたわけです。

 きょうは、横畠長官にもいらしていただいています。今度は、国民から情報を得る方ではなくて、捜査機関側から取り調べの情報を出す、すなわち可視化のことについて、前回の議論に引き続き、憲法上の問題点を多少お伺いしていきたいと思います。

 横畠長官が前回の答弁で、取り調べの録音、録画の制度は被疑者の権利として設定するものではないというふうにおっしゃられました。しかし、私は、適正な刑事手続を受ける権利は憲法三十一条で保障される被疑者の権利ではないかと考えますが、この点、確認させてください。

横畠政府特別補佐人 憲法第三十一条が保障します適正手続というのは、国民に対して保障されているものでございまして、当然、取り調べも適正に行われることが必要でございます。

階委員 被疑者の権利だということを今おっしゃられたというふうに理解していいですか。

横畠政府特別補佐人 適正な取り調べを受けることは被疑者の権利でございますけれども、録音、録画の対象にすることそのものが具体的な権利であるわけではないと考えております。

階委員 適正な刑事手続を受ける権利は被疑者の権利だということは明言されました。

 その上でお尋ねしますけれども、前回の答弁で、取り調べの録音、録画の制度というのは、手続の適正を担保する、さらにそれを立証することに資する制度であろうかと思いますというふうにお答えになっています。

 そこで、取り調べの録音、録画が手続の適正に資する制度だと言うのであれば、全ての事件について録音、録画の対象にしなければ、適正な刑事手続を受ける権利の保障に差が生じることになって、憲法十四条一項に反するのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

横畠政府特別補佐人 前回もお答えしましたが、取り調べの録音、録画制度は、供述の任意性の的確な立証を担保するとともに、取り調べの適正な実施に資するという見地から導入するものと承知しております。

 しかしながら、全ての事件について録音、録画をしなければ、これがすなわち憲法第三十一条の適正手続の保障に欠けることになるということではないと理解しております。別の言い方をすれば、このような録音、録画が行われていなかったこれまでの取り調べが全て憲法違反であったということではないと考えております。(階委員「十四条一項との関係を聞いているんです。三十一条ではありません」と呼ぶ)

 十四条との関係で申し上げますと、さまざまな刑事上の手続がございますけれども、それぞれの手続そのものが適正であるかどうかということが議論になり問題であるわけでございますけれども、それが適正な手続である、合理的な手続である以上、その手続の対象になるかならないかということで憲法第十四条の問題になるということではないと考えております。

階委員 では、事件によって録音、録画がされる場合とされない場合があるということは憲法十四条一項に照らし問題がないということをお答えになったと思いますけれども、もしそういう趣旨であるならば、どういう理由でそのような区別が許されるのか。区別することの合理性を述べてください。

横畠政府特別補佐人 この取り調べの録音、録画について、憲法十四条という、不当な差別ということからしますと、全ての事件の取り調べを録音、録画するか、あるいは全ての事件の録音、録画をしないか、そういう問題ではなくて、やはり録音、録画にふさわしい事件についてこの制度の対象にするという問題であろうかと思います。

 録音、録画そのものにつきましては、先ほどの繰り返しになりますけれども、供述の任意性の的確な立証を担保するとともに、取り調べの適正な実施に資するという見地から導入するものでございますけれども、一方的に取り調べを受ける者の権利利益を設定するということではございませんで、やはり取り調べ、捜査の実態、実情から申し上げますと、取り調べ、捜査上の弊害というものも実際上考慮せざるを得ない、すべきものということでございまして、そこの兼ね合いの上で合理的な範囲の事件に絞るということは問題がないであろうと思います。

階委員 だから、合理的な範囲だというのであれば、なぜそこを裁判員裁判と検察直受事件に絞ることが合理的なのかということを聞いているわけですよ。そこの答えがされていないと思いますよ。なぜ合理的な範囲だと言えるんですか。

横畠政府特別補佐人 その部分はむしろ法務省からお答えいただくのが適当だと思いますけれども、私どもの理解しているところでは、裁判員裁判の対象となる事件については、やはり供述の任意性の立証ということが大変難しいというか、どのように立証するのかという問題がもともとあるのではないか、それに応えるという必要性は相当あるのではないか。

 また、検察官の独自捜査事件について申し上げれば、通常の警察送致事件のように、警察という機関、検察という機関がそれぞれ関与するということではなくて、検察官のみが捜査を行うということからすると、やはり録音、録画の必要性というものは高いのではないか、そのように理解しております。

 詳細は法務省からお答えがあると思います。

階委員 立法政策の話ではなくて、憲法論として、十四条一項に抵触しないのであればその理由を述べてくださいということを法制局長官に聞いているんですよ。そこは法制局長官の職責じゃないですか。納得できる説明がありませんよ。立法政策を今おっしゃったんじゃないですか。憲法論としてちゃんと答えてください。

横畠政府特別補佐人 立法政策として合理性があり、それ自体が適正な手続である以上、憲法十四条の問題にはならないということでございます。

階委員 憲法十四条に反しないのは、立法政策として合理的であると。立法が十四条一項に反する場合もあり得るわけで、私は、ちょっと今の答弁はよくわからないところがあります。後で私も勉強して、また機会があればお尋ねします。

 もう一つ、答弁で気になったところですけれども、手続の適正を担保する、さらにそれを立証することに資する制度だという御答弁でした。

 取り調べの録音、録画が手続の適正の立証に資するということは、私の理解だと、今までは、任意性の立証をするときに、取り調べを担当した検事さんとかを裁判所に呼んで、どういう取り調べをしていたのかというようなことを聞いたりして、ともすれば水かけ論のようなことになって、時間が延々とかかってきた。

 しかし、これからは、こういう録音、録画があることによって水かけ論にならず、迅速に結論が、かつ、より真実に近い結論が出るというところで立証に資するのかなと考えておりますけれども、さきに答弁したときには、どういう意味で手続の適正の立証に資するということをおっしゃったのか、確認させてください。

横畠政府特別補佐人 まさに取り調べが適正に行われていたかどうかの立証がしやすくなるということでございます。

階委員 だから、その手続の適正の立証に資する制度というのはどういう意味なのかというのを具体的に聞いているわけです。

横畠政府特別補佐人 それは、委員御指摘のように、従前でありますと、取り調べ官を証人として尋問して、言った言わない、そういった議論になり、それは、心証をとるというのはなかなか難しい面もあるかもしれない。そういう問題に比較しますと、録音、録画があれば、どのような取り調べをしたかというのがまさに可視化されて、任意性の判断等々について資する、そういう状況にあるということでございます。

階委員 録音、録画した方が迅速な結論が正確に得られるということで、まさに憲法三十七条一項の、全て刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な裁判を受ける権利を有するということにかかわってくるものだと思うんですね。

 この全て刑事事件において被告人が迅速な裁判を受ける権利を有するという憲法上の規定からして、可視化が受けられる人と受けられない人がいるということは、さっきと同じように、憲法十四条一項との関係で問題は生じないかどうかということをお尋ねします。

横畠政府特別補佐人 迅速な裁判を受ける権利というのはもちろん憲法で保障されておるわけですけれども、具体的に、事件がどのような事件であるのか、あるいはどのような点が争点であるのか、また証拠関係がどのようになっているのかというのは、まさにケース・バイ・ケース、さまざまな事件があるわけでございまして、一律に録音、録画をしなければ迅速な裁判の保障に反するということにはならないと考えられまして、したがって、憲法十四条の問題にもならないのではないかと思います。

階委員 この点についてもまた勉強させていただいて、恐らく参考人質疑のところで学者の方をこの委員会でも呼ぶと思うんですが、憲法違反だということを安全保障の関連法案で三人の参考人全てが言ったというのが先ごろありましたけれども、この法案についても憲法違反のおそれがあるのかないのかということをしっかり確認した上で、我々も議論を進めていきたいと思います。

 法制局長官、ここで御退席いただいて結構です。ありがとうございました。

 そこで、取り調べの適正化を図るために録音、録画ということを設けるというのが今回の法制度の大きな眼目なんですけれども、その範囲を、対象事件を一部に限定するということで、問題があるのかないのかということで、前回の私の質疑の中で、国家公安委員長からは、取り調べ監督制度というのを設けたので取り調べの適正化は図られるんだというような趣旨の御答弁がありました。

 先回、山尾委員からも、この取り調べ監督制度を設けた、平成二十年一月の警察の適正化指針ということの御紹介がありました。私もそれを見ておやっと思ったんですが、取り調べに関する監督の項目の中で、監督対象行為の中に、「殊更不安を覚えさせ、又は困惑させるような言動をすること。」あるいは「便宜を供与し、又は供与することを申し出、若しくは約束すること。」ということを捜査官がやっていないかどうか、これを監督しなさいということになっているわけですね。

 さきの視察の際に、取り調べ監督官からいろいろお話を聞き、実際に監督する様子も見させていただきましたけれども、これは、監督官が部屋の外から小窓越しに取り調べの様子を見ています。そこでどういう会話が捜査官と被疑者との間でなされているかというのは、私もその場にいたのでわかりますけれども、はっきり言って、声は聞こえません。声が聞こえない中で、さっき言った監督対象行為、「殊更不安を覚えさせ、又は困惑させるような言動をすること。」あるいは「便宜を供与し、又は供与することを申し出、若しくは約束すること。」こうしたことは監督不可能だと思いますよ。私は、この取り調べ監督制度の実効性は乏しくて、やはり可視化の方が重要ではないか、可視化をやる意義は大きいのではないかと思った次第です。

 取り調べ監督はこのままでいいんでしょうか。国家公安委員長にお尋ねします。

山谷国務大臣 被疑者取り調べ監督制度は、取り調べの適正化に資するため、捜査にかかわらない総務、警務部門が取り調べをランダムに視認するなどしてチェックするものであります。

 効果的な視認等のチェック機能を働かせることにより、不適正な取り調べを未然に防止していると認識をしております。また、視認や苦情等を端緒とした調査を行うことによりまして、取り調べの適正確保に役立っているものと認識をしております。

 被疑者取り調べの適正化に資するため、今後とも、被疑者取り調べ監督制度の適切な運用に加え、取り調べに関する捜査員への教養の充実等により、被疑者取り調べの適正化に努めるよう、警察を指導してまいりたいと思います。

階委員 全然聞かれたことに答えていないし、そもそも私の発問の意味を理解していないような気がするので、もう一度お尋ねします。

 今の取り調べ監督制度では、視認とか、あるいは、行動と言いましたか、何か動きを端緒として違反行為がないかどうかをチェックするんだと言いましたけれども、私が取り上げた、「殊更不安を覚えさせ、又は困惑させるような言動」であるとか「便宜を供与し、又は供与することを申し出、若しくは約束すること。」というのは、見ているだけではわからないですよ。会話の内容が聞き取れなければ、こういう行為があったかどうかわからないですよ。だから、今の監督制度では意味がないのではないか、実効性がないのではないかと言っているんです。

 これは、このままで、それでも意味があるというふうにおっしゃるんですか。私はおかしいと思いますよ。

山谷国務大臣 委員の御質問は、会話が聞こえなければおかしいのではないかということだというふうに思います。

 被疑者取り調べ監督制度は、捜査にかかわらない総務、警務部門が視認、目で見る等の外形的チェック機能を働かせることにより、不適正な取り調べの未然防止を図るもの、これは先ほどお答えいたしました。

 被疑者取り調べ監督制度では、取り調べ室内の取り調べ官の言動が不適切なものであったなどとして被疑者、弁護人等から苦情の申し出があれば、全て取り調べ監督官に通知され、必要に応じて調査を実施しているところであります。

 調査においては、取り調べ官等からの報告聴取、被疑者との面接等を実施することとしておりまして、これらによりまして、不適正な取り調べを抑止する心理的な効果が働いて、取り調べの適正化に資するものと考えております。

階委員 それも実効性が乏しくて、結局、事後報告であれば、さっきの言った言わないの話になるわけじゃないですか。

 監督をちゃんとやるんだったら、少なくとも音声が聞き取れるような工夫はすべきだと思いますよ。なぜそれをやらないんですか。

山谷国務大臣 事件の性質によっては、警察部内であっても、当該事件捜査に従事する者以外には秘密にしなければならない捜査情報や個人情報も多くあります。

 先ほども申しましたが、委員御指摘のような会話が聞こえるような設備、そのようなやり方をするということは情報管理や個人情報保護の観点からも適切ではないわけでありまして、苦情の申し出があれば、全て取り調べ監督官に通知されて、必要に応じて調査を実施しているということで、取り調べの適正化に資するものだと考えております。

階委員 今、司法取引によって、まさに「便宜を供与し、又は供与することを申し出、若しくは約束すること。」ということが適切にされるかどうかということをチェックする意義がより重要性を増す中で、今のような中途半端な監督制度では、到底、このような司法取引を可視化なしで導入することはできないなということを申し上げたいと思います。

 それから、取り調べの録音、録画義務の今回の改正刑事訴訟法上の位置づけなんですけれども、改めて条文を見てみますと、普通、取り調べというのは刑訴法の第二編の第一章の「捜査」というところに入るんだと私は理解しておりましたが、これは第三章の「公判」というところに置いていますね。

 これは何でそういうことを申し上げるかというと、法制審議会の特別部会の取りまとめの段階から、取り調べの録音、録画義務の規定が一番先に置かれるべきだと私たちは思っていたんですが、先に証拠能力の話があって、その後に録音、録画義務という流れになっているんですよ。だから、一般的な録音、録画義務があるということを定めた上で証拠能力の話に持ってくるのが、捜査の適正化、手続の適正化という観点からは当然の流れだと思うんですけれども、今回の条文はそうなっていません。

 具体的に申し上げれば、改正法の三百一条の二の第一項で録音、録画媒体の検察官による取り調べの請求義務というのがまずあって、同じ三百一条の二の第四項でようやく録音、録画義務の規定が出てくるわけです。まさに本当の例外中の例外という形で法文上は録音、録画義務が位置づけられていて、我々が今回取り調べの可視化を議論した経緯と全く相反するような法文上のたてつけになっているのは問題だと思います。

 この点について、大臣に御見解を伺います。

上川国務大臣 録音、録画義務につきまして、刑事訴訟法の第三百一条の二ということでの御質問でございますが、法制的な観点から、本法案の刑事訴訟法の第三百一条の二第一項の録音、録画記録の証拠調べ請求義務を前提として、その履行を確保するための措置という形で位置づけられているところでございます。

 録音、録画義務の規定そのものは、録音、録画記録の証拠調べ請求義務の関連規定として、これと同じ刑事訴訟法の第三百一条の二におきまして、証拠調べ請求義務についての第一項から第三項までの規定の後に、御指摘のとおり、第四項ということで置くのが相当というふうに考えているところでございます。

 法制的な理由から後半の章に置くことになるわけでありますが、原則として、逮捕、勾留中の取り調べの全過程について録音、録画を義務づけるというものでございまして、取り調べの適正な実施に資するものであるということにつきましては何ら変わるところはないというふうに考えているところでございます。

階委員 ややうがった見方ですけれども、このような端っこに置いているということは、三年後の見直しのときに、外そうと思えば簡単に外せるようにしているのではないかと思います。

 というのも、そもそも、取り調べの可視化を何のためにやるかというと、捜査の適正化を図るため、取り調べの適正化を図るためにやるわけですよね。だとしたら、百九十八条に取り調べの条文がありますよ。だから、その後ろに、百九十八条の二という形で取り調べの可視化の条文を置くというのが一般の常識に沿うと思いますよ。

 今までの議論を考えるのであれば、何のために取り調べの可視化をやろうとしているかということを考えれば、それが当然なんじゃないですか。いかがですか、大臣。

奥野委員長 それは法律をつくる話だから、向こうに最初に答えさせた方がいいよ。(階委員「では、局長、どうぞ。わかるように説明してください」と呼ぶ)

 刑事局長。

林政府参考人 まず、取り調べの録音、録画には、被疑者の供述の任意性等の的確な立証、判断に資するという点と取り調べの適正な実施に資するという効果がございます。これらの効果は、いずれも、記録すること自体、それ自体から生じるわけではございませんで、事後的に記録内容が吟味される、そういう録音、録画記録の利用、またはその可能性によるところでございます。

 そこで、法制的な観点からしますと、まず、事実認定者であるところの裁判所が録音、録画記録を利用できることを直接的に担保する仕組みとして、まずは検察官に公判段階における録音、録画記録の証拠調べ請求を義務づけることとしまして、その上で、その証拠調べ請求義務の履行を確保するための措置といたしまして、捜査機関には捜査段階における録音、録画を義務づけることとすることが合理的であると考えられます。

 このように、録音、録画義務は、法制的には、本法律案の刑事訴訟法三百一条の二第一項の録音、録画記録の証拠調べ請求義務を前提といたしまして、その履行を確保するための措置として位置づけられることから、この録音、録画義務の規定は、録音、録画記録の証拠調べ請求義務の関連規定としまして、これと同じ刑事訴訟法第三百一条の二におきまして、証拠調べ請求義務についての第一項から第三項までの規定の後に第四項として置くのが相当として考えたものでございます。

階委員 だから、取り調べの録音、録画義務を担保するために証拠調べ請求の規定を置いたというのであれば、こういう順番にはならないというのが普通の感覚だと思いますよ。

 端っこに追いやられた録音、録画義務についても、なお例外規定があるということで、先ほども藤原委員からもいろいろ御質問がありましたけれども、例えば、三百一条の二の第四項の二号、「被疑者が記録を拒んだことその他の被疑者の言動により、記録をしたならば被疑者が十分な供述をすることができないと認めるとき。」ということが取り調べの可視化の例外に挙げられています。

 ところで、この質問の冒頭で申し上げたように、この間、見に行って驚いたのは、機械がまさに取り調べ室の目立つところに、しかも大きなものが置かれていて、あれをいきなり突きつけられたら、被疑者の中には記録をしたら十分な供述をすることはできなくなりそうな、そういうふうにあえて持っていっているような気がするんですよね。わざわざああいうふうにしているということは、この二号の適用を容易にするための方策ではないかというふうにも見えるんですけれども、要は、あそこまで露骨に可視化しますよということを被疑者にアピールしなくてもいいんじゃないかと思うんですよ。

 この点について、法務大臣、なぜこういうような露骨な、被疑者が抵抗感を持つような体裁にしているのでしょうか。お答えください。

奥野委員長 ちょっと、大臣たちは見ていないと思うんですけれどもね。(階委員「では、お二人、事務方で結構です」と呼ぶ)

 では、まず林刑事局長。

林政府参考人 録音、録画機器は、取り調べ状況をブルーレイディスク等の記録媒体に記録するものでございまして、この記録媒体自体が刑事事件の証拠になるということに鑑みますと、その機能というものが非常に重要でございます。

 その観点から、現行の録音、録画機器につきましては、取り調べ官を含めました部屋の全体を映すカメラ、また、被疑者の上半身を映すカメラ、こういった二台のカメラで同時に撮影しまして、これを一つの画面に統合した上で、また、取り調べと並行して複数枚の記録媒体へのデータの焼きつけができるなど、記録の正確性でありますとか改ざんの防止というものを担保しようと考えて、現在、あのようなものとなっているわけでございます。

 もちろん、委員が言われるように、圧迫感を与えるというようなこと、心理的な圧迫感を受けやすいというような御指摘があることは承知しておりますので、今後とも、そういった形では、技術の水準の向上に応じまして、よりよい仕様の録音、録画機器の導入というものについては検討してまいりたいと思います。

三浦政府参考人 録音、録画の機材につきましては、先ほど法務省の刑事局長からも御答弁がありましたように、その記録の正確性や改ざんの防止を十分に担保するための機能を備えるという必要がありまして、現在警察における試行において用いている録音、録画装置も、そうした観点から仕様を定めたものと承知をしております。

 ただ、現在使用している装置については、実は都道府県警察の現場からも、いささか大き過ぎるといった、場合によっては調べ室内で凶器になってしまうといったような意見もございまして、今、警察庁におきましては、狭い調べ室でも支障が生じないように小型化を図るでありますとか、また、録音、録画の実施の都度必要となっている設置作業の負担を軽減するため固定式のシステムを導入するといった仕様の見直しを検討しているところであります。

階委員 どう考えても、わざと心のキャッチボールをできにくくするような環境をつくっているとしか思えないんですよ。銀行でもコンビニでも、カメラは小さくて、そして、ブルーレイですか、録音、録画するいろいろな機材は別室にありますよね。何もわざわざ一緒のところに置いて存在感を誇示する必要はないと思いますよ。

 全くもって、私は、取り調べの可視化をやりたくないという姿勢がこの点についてもあらわれているのではないかということを御指摘申し上げます。

 それから、同じ条文の三号には、いわゆる暴力団員の条項が入っております。今回、司法取引で合意制度とか免責制度とかありますけれども、こういったものについては暴力団員でも対象になるかと理解していますけれども、なぜ、この暴力団員については、すべからく、あらゆる事件について可視化の例外になるのかというのが、他の司法取引の制度との整合性という観点からも納得できないんです。

 この点について、事務方で結構ですので、お答えください。

林政府参考人 指定暴力団の構成員による事件につきましては、その実情に照らしますと、個々の取り調べごとに被疑者が録音、録画のもとでは十分な供述ができないと認められるかどうかを判断、認定し、それが認定できるときに限って録音、録画を実施しないこととするような仕組みとした場合には、捜査機関がそのような認定を行い、録音、録画を不実施としたこと自体から、組織を裏切って捜査に協力したのではないかとの疑念を抱かれるおそれが大きく、被疑者の心理的な不安等を十分に払拭できない点がございます。ひいては、その被疑者から十分な供述が得られるようにするための録音、録画の義務の例外として十分機能しない、そのように考えております。

 そこで、指定暴力団員に係る事件につきましては、これを一律に録音、録画義務の例外とすることとしているものでございます。

階委員 このことについても私は余り納得できていないので、また、ほかの制度との関係の中でもお尋ねします。

 それから、例外事由というのが、三百一条の二の四項の一号から四号までのほかに、三百一条の二の一項の柱書きの中にもありまして、要するに、「その他やむを得ない事情によつて当該記録媒体が存在しないときは、この限りでない。」というくだりがありますよね。いいですか、局長。そのくだりなんですけれども、「記録に必要な機器の故障その他のやむを得ない事情により、記録をすることができないとき。」というのは、さきの四項の一号の中で例外というふうに定めているわけですよ。これに加えて「その他やむを得ない事情によつて当該記録媒体が存在しない」というのを入れる意味がよくわかりません。

 「その他やむを得ない事情」というのが極めて曖昧な概念なので、私はこういうものは問題だと思いますけれども、「その他やむを得ない事情」とは一体何なんですか。

林政府参考人 三百一条の二の一項のところの「その他やむを得ない事情によつて当該記録媒体が存在しないとき」ということでございますが、これは、録音記録媒体が一旦作成されたことを前提としまして、その後滅失したような場合、このことを念頭に置きまして、「当該記録媒体が存在しない」ということでございます。

 したがいまして、そもそも録音、録画記録媒体が存在しないというのは、先ほど来申し上げております例外事由に当たる場合はそもそも録音、録画をしていないので、それは存在しないわけでございます、それが例外事由でございます。

 この場合は、一旦作成されることを前提としておりますので、この三百一条の二の「その他やむを得ない事情によつて当該記録媒体が存在しない」というものは、そもそも最初から録音、録画を行わないということを念頭に置いたものではございません。

階委員 唖然としました。それをなぜ被疑者、被告人が甘受しなくてはいけないのか。一旦記録したものを滅失したりなくしたのであれば、皆さんの責任として、証拠能力を否定すべきでしょう。何でそこまで尻拭いを被疑者、被告人に押しつけるのかがわかりません。

 もう時間が過ぎましたので、この点については大変問題だということを申し上げまして、質問を終わります。ありがとうございました。

奥野委員長 次に、鈴木貴子君。

鈴木(貴)委員 皆様、改めましてお疲れさまでございます。

 この法務委員会、ありがたいことに、今もこうして可視化がされているわけであります。この可視化されている委員会において取り調べの可視化について質問できる、この貴重な機会をしっかりと建設的な議論に持っていきたいな、このように思っております。

 そして、きょうは、皆様のお手元にも、A4一枚、両面でコピーをさせていただきました資料もお配りをさせていただいております。

 まず、前回の質疑から確認をさせていただきたいと思っております。

 前回の質疑で、鹿児島県警が取りまとめた「いわゆる志布志事件の無罪判決を受けた再発防止策について」という検証結果がホームページ上から削除されている、この件について、確認、そしてまた、その確認をされた後の対応についてお尋ねをしました。

 まず、国家公安委員長にお尋ねをいたします。この件について確認をしていただけましたでしょうか。

山谷国務大臣 先日の法務委員会で鈴木委員から御指摘があった後、鹿児島県警察に確認をいたしました。

 同県警察によれば、お尋ねの報告書については、平成十九年十二月から同県警察のウエブサイトに掲載されていましたが、一定期間経過した平成二十四年九月に、再発防止に関する同県警察の取り組みが着実に進んでおり、また、より進んだ施策が全国的に展開されてきていると判断し、一旦掲載を終了したとの報告を受けております。

 しかしながら、本年五月に出された国家賠償請求訴訟の判決を機に、謝罪文及び再発防止への新たな決意とともに、お尋ねの報告書を初め、これまでの警察の取り組みについて改めてウエブサイトに掲載する予定とのことでありまして、近々掲載されることとなるものと考えております。

鈴木(貴)委員 平成十九年から二十四年の九月まで掲載の後、一定期間がたったということで掲載をやめたという判断というのは、それはどなたの判断なんでしょうか。

三浦政府参考人 誰の判断ということについて具体的に確認をしているわけではございませんけれども、これは基本的に、鹿児島県警察において組織として判断をしたものというように考えております。

鈴木(貴)委員 その鹿児島県警において、まさに、今後もたゆまず、忘れることなく真摯に向き合わなくてはいけないこの件において、自分たちだけで、もう一定期間が過ぎたという自分たちの視点でその判断が下されたということは、本来はあってはならない姿勢なのではないのかな、私はこのように思っているところであります。

 そしてまた、先ほどの山谷大臣の発言の中で一点だけ気になったので確認をさせていただきたいんですが、再掲載をされる判断というのは、どなたの判断になるんでしょうか。

三浦政府参考人 この点につきましても、鹿児島県警察において組織的に検討の上、そのような判断をしたものというように承知をしております。

鈴木(貴)委員 本来であれば、鹿児島県警もそうでありますが、国家公安委員長として、所管の大臣としてしっかりと指導に当たるのが適切ではないのかなと。こういった判断、そしてまた、掲載を取りやめるといった行動が、まさに今、国民の信頼を回復したいと思っているその思いに連動しているのかというと、若干の疑問が残るのではないのかな、このように思っております。しかしながら、再掲載されるということでありますので、その点について私もまた確認をさせていただきたい、このように思っております。

 そしてまた、もう一点、前回の質疑からの引き続きになるんですけれども、私もこの委員会で、特別部会のメンバー構成、捜査機関、法務省関係者、こういった人たちの占める割合が三五%というのは若干偏重しているのではないか、そういった質問をさせていただきました。そしてまた、この間、六月五日の質疑では、山尾委員からも改めて、国の行政機関職員が何でこれだけ入っているのか、こういった質問に対し、林刑事局長が、「諮問の趣旨及び内容からしまして、刑事司法制度全般のあり方に関する調査審議が行われることが必要とされたことから、捜査の実情や刑事司法制度に関する専門的知識及び経験を有する実務家をも委員として任命する必要があったところでございます。」このように答弁をされております。

 ここでの私の疑問なんですけれども、こういった法に詳しい実務のプロが集まれば、これまで起こってしまった不当な捜査であるとかいわゆる不祥事といったものを未然に防ぐことは確かにできたのか。実際に捜査に当たっている人たちが、まさに、その不祥事を起こした、元凶と言ってはなんですけれども、張本人たちだったわけですよね。その人たちを改めて特別部会のメンバーにするということが果たして再発防止に資するのか、こういった疑問が湧いてきたんですけれども、林刑事局長、いかがでしょうか。

林政府参考人 今回の新時代の刑事司法制度特別部会への諮問事項として、もとより新しい時代の刑事司法制度というものを審議するわけでございます。特に、法制的には、刑事訴訟法というものについてのあり方を考えたわけでございます。

 そうした場合に、当然、刑事訴訟法というものは、裁判所、検察官、そして弁護人、また被疑者、被告人、こういったことを規律する法律でございますので、当然、その分野に精通した実務家、またそれに関する法律家、学者、こういった者は、やはりこの審議をする上での必要不可欠な構成要素であったと考えております。

鈴木(貴)委員 特別部会の場というのは、まさに今おっしゃったように、審議を尽くす、議論を尽くす場であって、この部会のメンバーのお人方がまさにその法案を書く皆さんではないわけですよね。あくまでも議論の場ということであれば、例えば、実際に、捜査関係者、司法関係者だけでなく、再審無罪が確定した、東電OL事件でいえばゴビンダさんであるとか布川事件の桜井さん、杉山さん、冤罪当事者の皆さん八人の方が、実際にはもう要望書を部会の方にも提出され、同時に、なぜ私たちの声を聞かないんだ、こういった要望、意見書まで提出をされているわけであります。

 この八人の皆さんの声というものは刑事局長も把握はしていらっしゃいますでしょうか。

林政府参考人 この新時代の刑事司法制度特別部会、長きにわたって開催されました。その間、外部の方からさまざまな意見が寄せられております。これにつきましては、当然、事務当局から部会の委員に対して、その部会の場に顕出する、提出するという形でそういった声を届けているところでございます。

鈴木(貴)委員 前回も、たしか、志布志事件の元被告にもヒアリングをしたというような答弁もいただいたかと思いますが、であるならば、再審無罪、いわゆる冤罪被害者の皆さんのヒアリング、何人の方から何度ほどされたんでしょうか。

林政府参考人 手元にある資料によりますと、法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会では、当初、刑事司法制度の現状とか問題点というものを把握するということを中心に開催されていた時期がございます。その後に、さまざまな論点整理をして、さらに議論をして結論に至っていくわけでございますが、特に刑事司法制度の現状や問題点を把握するという時期におきましては、平成二十三年十一月二十九日に開催された第五回の会議におきまして、志布志事件で無罪判決を受けられた方を含めてヒアリングが実施されたことがございます。

鈴木(貴)委員 つまるところ、三十回ほど開かれた会議の中でたった一回だけということでよろしいでしょうか。

林政府参考人 恐らく、ヒアリングという形で意見を聴取したことについては、この一回であろうかと思います。

鈴木(貴)委員 長きにわたってさまざまな分野の方から意見を伺ってきたと繰り返し答弁もいただきましたが、実際にふたを開いてみればたった一回だけであった。このたった一回をもってして、十分に話を聞いたと総括するのが果たして正しいのか、非常に疑問が残るな、このように思っています。

 前回も申し上げたように、心理学であるとか、もしくはインタビューの専門家、時にはまさに民間の企業のプロの方たちの意見なども積極的に取り入れていくということが非常に重要だったのではないのかなと思うのです。私も議事録を読みながらも、実際に民間からでも専門家の方を呼ぼうじゃないかという声も上がっていたにもかかわらず、最後の最後まで委員の中にも入っていらっしゃらない。

 これは、メンバーに入れることに何か支障があった、もしそういった背景があったのであれば、その理由について教えていただけますでしょうか。

林政府参考人 今言われた、新たに外部の方で委員になっていただこうとか、その方のヒアリングをしようとか、そういったことが法制審議会の中で議論されたということは、私自身、ちょっと把握しておりません。

 少なくとも、法制審議会の特別部会の委員、当然、実際に無罪判決を受けた村木厚子次官とか、それまで録音、録画を強く推進されてきた弁護士の方とか、また、こういった冤罪事件というものに対して非常に強く関心を持っておられた有識者の方、そういった方たちが委員になっておりますので、そういった方も含めまして、部会としてどのようにヒアリングを行ったり、あるいはどのような論点で議論をし、そしてそのためにはどのような審議をしていくのかということにつきましては、それは常にその都度部会において決められていきますので、その中で特に、本来、外部の方を入れるべきところを、結局入れられずに終わったというようなことがあったとは私は承知しておりません。

鈴木(貴)委員 部会の議論と、そして先ほど来ほかの委員からも指摘がありましたけれども、視察をしている中で、実際にこの点について部会ではどういった議論がなされていたのかなというような点が何点かありましたので、それについて質問をさせていただきたいと思います。まさに、先ほどからそれぞれの先生が指摘されていますが、カメラの機器についてであります。

 皆さんのお手元に、A4で、白黒で大変申しわけないんですけれども、資料もお配りをさせていただきました。写真二枚の方が、私が視察の際に撮影をいたしました東京地検取り調べ室の様子であります。視察に行かれた方が多かったと思うので説明はあれですけれども、上の写真の右奥にある、ちょっと背の高い、まさにブラックボックス、これがカメラになっているわけであります。その下の写真が、そのカメラの部分をちょっと大きくクローズアップして撮影したものです。

 裏を返していただきまして、これは、諸外国で取り調べの録音、録画がどうなされているか、イギリス、オーストラリア、そしてアメリカ、三つの例を出させていただきました。

 イギリスに関しては録音の機器の資料だったので、あくまでもこれはテープレコーダーなんですが、例えば2、これはオーストラリアなんですね。今、椅子が三脚あると思うんですが、実は、このテーブルの下、ちょっと黒くなってしまっていますが、そこに、いわゆる録画機器というものが机の下に備えつけられている。つまり、取り調べをしている最中には被疑者の視界の中に入らない、そういった工夫がなされています。そしてまた、白い壁の真ん中に黒い線のようなものが見えるかと思うんですが、これが、実は棒状のカメラになっています。いわゆる四角いカメラというものではなく、こういった形状のカメラを導入したというのは、こういった形状のものの方が心理的圧迫が少ないであろう、こういった専門的見地などが取り入れられているそうです。

 そして、三番目のアメリカでありますが、ちょうど部屋の隅に、監視カメラのごとく、これまた天井にカメラが備えつけてあります。ゆえに、死角はつくらない。そして、マイクというものも実は天井の方にありまして、取り調べの最中にはカメラそしてマイクも被疑者の視界の中に入らない、こういった工夫が諸外国ではなされているわけであります。

 そこで、今、日本なんですけれども、実際に先生方ごらんになっても、いわゆるカメラ、何か四角い大きなものが目線の中に入ってくる、こういったものになっているかと思うんですが、試行の段階で何ゆえあの機材を導入されたのか、選定基準というものを教えていただけますか。

三浦政府参考人 捜査機関には、必要に応じて、取り調べの状況が録音、録画された媒体を用いて被疑者の供述の任意性を立証することが求められるところ、取り調べの録音、録画を実施するに当たりましては、その記録の正確性や改ざんの防止を十分に担保するための機能を備え、記録の内容をめぐる裁判での争いが生じにくい機器を用いる必要がありまして、現在の試行において用いている録音、録画装置は、そうした観点からあの仕様が定められたものと承知をしております。

鈴木(貴)委員 今、私たち、コンビニに入っても監視カメラがあって、町を歩いていても街頭にもカメラがあってという、そういった世の中だと思うんですけれども、なぜ、あえてあの大きさの、真四角のあのカメラを選んだのか、その理由をお答えください。

    〔委員長退席、柴山委員長代理着席〕

三浦政府参考人 先ほど御答弁申し上げたような観点から、取り調べの状況を克明に記録するために、例えば、映像につきましては、被疑者の表情を撮影するカメラと、それから取り調べを広角に撮影するカメラを備えまして、これらで撮影をすると同時に、二つの映像を一つの映像として画像処理する装置を備えているものであること、また、音声につきましては、発声者ごとの複数のマイク、発声者ごとと申しますのは取り調べ官と被疑者ということになるわけですが、この複数のマイクを備えて、これらの音声を統合するためのミキサー装置を備えるということにしております。こうした機能を一つの装置の中で取り調べ室に設置するということといたしますと、結果的にああいった形のものとなってしまったということでございます。

 形状につきましては、何も必ず四角でなければならないというものでもございませんので、それは、もちろん費用との兼ね合いということがあるかもしれませんけれども、その点は今御指摘をいただきましたので、そこはまた今後の検討に生かしてまいりたいと考えております。

鈴木(貴)委員 つまり、現状では、今使われているあの形状の、あの大きさの、あの色のカメラが最善である、このような考えでしょうか。

三浦政府参考人 現在使用している装置につきましては、都道府県警察の現場からもさまざまな改善の要望が実は寄せられておりまして、警察庁では、まさに今、仕様の変更等も含めて検討中でございます。具体的には、狭い調べ室でも支障が生じないように小型化を図る、また、現在の装置は、録音、録画を実施する都度、設置作業をしなければならないということでありますが、こうした負担を軽減するために固定式のシステムを導入するといった、もろもろの仕様の見直しをまさに具体的に検討し、着手しているところでございます。

鈴木(貴)委員 これまで実際に使われている機器、どれぐらいの予算が使われているんでしょうか。

三浦政府参考人 録音、録画装置につきましては、これは各都道府県警察がそれぞれの都道府県の予算をもって整備をすることとされておりますけれども、警察庁におきましても、例えば平成二十七年度当初予算において都道府県警察における装置の整備に係る補助金を約一・四億円措置するなど、各都道府県警察に対して必要な支援をしているところであります。

鈴木(貴)委員 補助金で一・四億円ということは、全国津々浦々、それぞれのところで、それ以上の予算がもちろん使われていることになっているかと思うんですが、これは、導入するに当たって、こういったカメラの大きさがいい、こういったものがいいという現場の声を事前に聞いていなかったんでしょうか。

三浦政府参考人 最初に導入する段階では、初めての試みでもありまして、やはり必要とされる機能をきちっと備えたものでなければならないといったようなことで、ある程度私どもの方で主導して、こうした機器を導入したということであろうかと思います。

 ただ、実際、今、いろいろな試行を積み重ねている中で、先ほど申し上げたように、捜査員、現場の声も多数集めまして、そうしたものを踏まえて、現在、仕様の見直しなどについて検討しているところでございます。

鈴木(貴)委員 視察中にいろいろ私も伺わせていただいて、非常にびっくりして、そして記憶に残っている発言が、これだけ大きい機材だと、取り調べ室においてカメラ自体が凶器になるおそれもあるんですとおっしゃったんですね。非常におもしろいというか、凶器になるおそれ、そういったものを優先的に排除していかないといけないにもかかわらず、そういった大きな機械が、まずカメラだけでも一つ、録音のデッキだけでももう一つ、かつ、足元にはさまざまなコードが縦横無尽に狭い取り調べ室の中をめぐっている。そういった状況というのは、現場の声を全く無視した段階で進められているのではないか、こう思うんです。

 現場の声を聞かずして始めた、このこと自体が、取り調べの録音、録画に対して非常に後ろ向きな姿勢がかいま見えるのではないのかな、こう思うんですが、もし御意見があれば、もしくは反論があればお聞かせ願いたいと思います。

三浦政府参考人 取り調べ室に録音、録画の機器を導入するということにつきましては、私どもとしても、それまで経験のない試みでもあったわけでありまして、かなり慎重に検討して、どういう機材であればその目的を果たすのか、そうした観点から検討を重ねた上で導入したものというように理解をしております。

 もとより、その中では現場の意見というものもいろいろと聞きながら設置をしたというものではありますけれども、実際にいろいろな試行を重ねる中で、そうした現場の意見、やはりこの機器ではいろいろと使いづらい面があるといったような、そうした改善の要望なども寄せられているところであります。

 先ほど、凶器になるという発言があったということでございましたけれども、実際、中には調べ室の中で暴れる被疑者などもいるわけでございまして、そのために、例えば、現在では、取り調べ官のほかに補助者が二人必要になる、そういったような問題もございまして、これも現場に対する負担となっている、そういった声も上がっているところであります。

 そうしたもろもろのところも踏まえまして、そうした現場からの改善の要望にも応えるべく、先ほど来申し上げているとおり、機器の小型化でありますとか固定式のシステムといったかなり大幅な仕様の見直しについて、現在検討しているところでございます。

鈴木(貴)委員 機器に関しては最後一点だけ確認をさせていただきたいんですけれども、物づくり、技術においては先進国日本でありますし、たやすく技術の進歩というものは考えられると思うんです。そういった意味からも、この法案において、カメラだとか録音、録画の機器の改良であるとか導入の見直し規定というものは含まれているんでしょうか。

林政府参考人 こういった録音、録画の機器につきましては、当然、技術水準の向上に応じまして、よりよい仕様の録音、録画機器の導入が望まれるところでございますし、また、そういうふうに検討していくべきものと考えております。

 そのこと自体が、見直し条項、検討条項というような形で本法案に盛り込まれているわけではございません。

    〔柴山委員長代理退席、委員長着席〕

鈴木(貴)委員 先ほどから三浦刑事局長も、初めてのことだったのでいろいろ試行錯誤の結果なんだという答弁をいただいておりますが、ただ、取り調べの録音、録画制度等に関する国外調査といったもので、警察の皆さん、アメリカに行かれたり、イギリスに行かれたり、ドイツに行かれたり、香港に行かれたり、さまざま海外にも現地調査に行かれているはずなんですよね。それにも、もちろんポケットマネーで行かれていることではないと思いますから、予算を使って、まさに国民の税金を使って行かれているにもかかわらず、今になっても、いや、初期段階でなかなかわからなかったものでというような逃げの答弁というものはいかがなものかなと。

 この点を指摘させていただき、また同時に、この小型化、例えば天井に固定するとか、そういったこともしっかりと改善、そしてまた、現場の声を、そしてまた専門家の声を取り入れていただきたいと強く強く要望をさせていただきたいと思います。

 次に、例外事由について質問をしていきたいと思います。

 この例外事由、大きく四つあるんですけれども、まず一項目め、先ほど階議員からもありましたが、「記録に必要な機器の故障その他のやむを得ない事情により、記録をすることができないとき。」実際に試行、運用された中で、この例外事由に当たる機器の故障というものは何件ほどあって、どういった内容だったのか、教えていただけますか。

林政府参考人 これまでの検察当局の指針におきますと、取り調べの録音、録画の実施対象事件の中で、個々の取り調べについて一つのカテゴリーがございまして、そのカテゴリーというのは、取り調べに関与する通訳人の協力が得られない場合や、録音、録画を行うことが時間的、物理的に困難である場合など、録音、録画を行うことに障害がある場合、こういった場合については録音、録画を行わなくてもよいという形での指針が定められておりまして、お尋ねの、機器のふぐあいにより録音、録画ができなかった事案というのは、今言いましたカテゴリーの中に含まれるものと思います。

 したがいまして、機器のふぐあい自体の件数は把握しておりませんけれども、平成二十六年度の一年間につきまして、裁判員制度対象事件として録音、録画の対象とした事件の三千八百三十八件のうち、今申し上げた、取り調べに関与する通訳人の協力が得られない場合や、録音、録画を行うことが時間的、物理的に困難である場合など、録音、録画を行うことに障害がある場合、これに当たるという理由で、一回でも取り調べの録音、録画を実施しなかった事件の数をとりあえず調査しましたところ、七十件ということでございました。

鈴木(貴)委員 同じく三浦刑事局長に、今、林刑事局長からいろいろお話しいただきましたが、機器の故障というカテゴリーの中では、過去にどんなものがあったんでしょうか。

三浦政府参考人 これは必ずしも網羅的に把握をしているわけではないのでありますけれども、平成二十六年の十一月から十二月までという若干短い期間でありますけれども、この間に警察庁に報告があった事例としまして、直接的な機器の故障等を理由として録音、録画を実施しなかった例としましては、警察署の施設の工事に伴う停電がございまして、機器の電源が確保できなかった、こうしたケースにおいて、当初、録音、録画をする予定であったけれども実施をしなかった、こうした例があると承知をしております。

鈴木(貴)委員 全ての例外事由が非常に曖昧だということを私は問題意識として持っているんです。特に、一の機器の故障というのが、例えば今、三浦刑事局長からあった停電、こういうのは非常にわかりやすいかなと思うんですけれども、電源を入れても入らなかったとか、そういったことは機器の故障というカテゴリーにはどうしても入ってしまうと思うんですね。しかしながら、それが本当に機器の故障なのか、それとも、機材を操っていた人の人的ミス、過失も考えられるのか。

 例えば、あれだけコードがたくさんありましたから、コードの配線を間違えてしまっただとか、接触不良があっただとか、そういったものに関しては機器の故障というカテゴリーに当たるのか、その確認作業というものは果たしてされるのか。

 でなければ、変な話、捜査官、取り調べ官の裁量にある種委ねられているわけですから、何度も電源ボタンを押したけれども入らなかった、ふぐあいが生じて画像が全然モニターに上がってこなかった、こういったことで録音、録画というものを回避できてしまう、抜け道ができてしまうのではないのかな、このように思っているんです。

 実際に機器の故障で録音、録画できない、こうなった場合には、できないけれども取り調べは続行するのか、それとも、その際、被疑者に、今、かくかくしかじかこういう状況だ、修理をするか、それとも代替機ができるまで中断する権利があるだとか、そういった選択肢というものは与えられるんでしょうか。

三浦政府参考人 そういった極めて単純なミスで録音、録画が実施できない場合があるのかといいますと、実際の運用では、装置のモニターに録音、録画の状況が映し出されるわけでありまして、確実に録音、録画されているといったことを確認しながら行うわけでありますので、通常、そういう事態というのはなかなか想定しがたいものがあるというように考えているところであります。

 もっとも、実際に、結果的に録音、録画ができていなかった、つまり、録音と録画ができていたつもりでいたら、後で見たらされていなかったというようなケースにおきましては、それは個別のケースにおける判断ということでありまして、一概に申し上げることができませんけれども、そうした事情のもとで、その事情を裁判所に認めてもらえるかどうかということは、それは捜査機関側の責任で事後的に立証していく必要がありますので、最終的には、そこは裁判所において判断をされるということになるんだろうというふうに承知をしております。

鈴木(貴)委員 刑事局長に改めてお尋ねをします。

 録画してみたら、ふたを開いたら撮れていなかったという話ではなくて、しようという段階で、もう事前に、例えばモニターが動かないだとか、レコーダーが動かないという場合のことを今お尋ねしたんですね。その際に、被疑者が望めば、修理が終わるか代替機が手に入るまで取り調べというものは中断できるんでしょうか。

林政府参考人 こういった場合に、当然、例外事由に該当するかどうかということで、個別の判断でございますけれども、例えば、録音、録画機器が故障して、修理をするとしてもこれに相当程度の時間を要するような場合において、かわりに使用できる機器もなくて、現実的、客観的に見て当該取り調べ時に録音、録画が実施できないというようなときには、こういった例外事由に該当し得るということで、実際に録音、録画をする物理的なものがないわけですので、録音、録画をせずに取り調べを行うこととなろうかと思います。

鈴木(貴)委員 しかしながら、被疑者が取り調べの録音、録画を望んでいるにもかかわらず、被疑者の過失ではなくて、あくまでも施設側の過失によって録音、録画できない、されない、もしくは取り調べを中断してくれという要望が通らないというのはいかがなものでしょうか。

 本来であれば、そういった場合には、代替機を手に入れるか、もしくは、修理にどれだけかかるかもそれこそ個別の話だと思いますけれども、被疑者側の録音、録画の権利を行使する、この権利の問題とそごが生じるという危険性は、刑事局長、どのようにお考えでしょうか。

林政府参考人 この例外事由、三百一条の二第四項第一号というのは、機器の故障等の外部的な要因によって、現実的、客観的に見て当該取り調べのときに録音、録画が実施できないような場合にまで録音、録画を義務づけるということとなりますと、捜査機関に不可能を強いるということになることから、これを例外事由としたものでございます。

 そういったことで、こういった場合には、少なくとも、録音、録画をしなくて取り調べをすることは法的に可能となる、いわゆる録音、録画の義務が解除されるということになろうかと思います。

 もとより、その場合に、実際に録音、録画をせずに取り調べをするかどうかということ自体は、そのときの事情によって当該捜査機関が判断することになろうかと思います。

奥野委員長 わかりやすかったですね。

 どうぞ、鈴木君。

鈴木(貴)委員 答弁としてはわかりやすかったかもしれませんが、納得に値するものかという観点でいけば、これは別だと思います。

 本来であれば、そもそもの部会の立ち上がりも、捜査側による不当な、また違法な取り調べ、不祥事というものが根底にあったわけであります。であるにもかかわらず、この例外事由全て、一から四まで見てみても、まず目につくのは、その例外事由の判断というものが取り調べ官側の裁量に委ねられている。このことが大きな問題だと改めて指摘をさせていただきます。

 わかりやすい答弁だったかもしれませんが、しかしながら、今の答弁を聞いても、法の抜け道を防げるという法的な担保というものが全くなされていないということが明らかになる、非常にわかりやすい答弁だった、このように思います。

 この一だけでとまってしまっていては次に進まないので、次の例外事由の課題点についても指摘をさせていただきたいと思います。

 二つ目、「被疑者が記録を拒んだことその他の被疑者の言動により、記録をしたならば被疑者が十分な供述をすることができないと認めるとき。」とあります。ここでの、できないという判断、これは誰によるものになりますか。

林政府参考人 これは、当該取り調べに当たる捜査官が、当該そのときの事情に基づいて判断することとなります。

鈴木(貴)委員 ここでも取り調べ官側の裁量に委ねられていると明らかになったわけです。

 であるならば、被疑者が記録を拒んだということを証明する場面の録音、録画というのはなされるんでしょうか。

林政府参考人 委員御指摘のとおり、例外事由に当たるかどうかは、結局のところ、公判でこれが争われることがございます。そのときの立証方法、どのようなもので行うのかといった観点でお答えすれば、やはり、もとより被疑者が録音、録画を拒否している旨、あるいは録音、録画のもとでは十分な供述ができない旨、こういった発言をしている状況が記録されている取り調べの録音、録画記録、こういったものも、例外事由に当たることの立証に資する方法であろうかと思います。

鈴木(貴)委員 ということは、確認をさせていただきたいんですが、取り調べの録音、録画というのは、取り調べ室に入っていく段階から録音、録画がなされているという認識でよろしいんでしょうか。

林政府参考人 法的には取り調べに際しての録音、録画でございますので、文字どおり、取り調べが始まったとき、そして終了するまで、これが録音、録画の対象となっているわけでございます。

 ただ、現状の運用で申し上げれば、実際に取り調べ室に入ってくる、入室する段階から録音、録画は始まっておりまして、そして退室するそのときまで録音、録画が行われている、これが運用であろうと思います。

鈴木(貴)委員 入室から退室まで録音、録画の範囲にされるというのは、これは、仮に万々々が一この法案が通った際にも同じように運用されるという理解でよろしいでしょうか。

林政府参考人 現状におきましてもそういった運用がなされていることでございまして、基本的に、録音、録画が義務づけられている取り調べにおいて、そのように入室から退室までの録音、録画をしておくことは、いろいろな立証方法を得る意味でも有用でございますので、そのような運用がなされるものと考えております。

鈴木(貴)委員 そして、録音、録画を始めるに当たってというか、入室の段階からもう始まっているということなんですけれども、取り調べの部屋において、被疑者に対して取り調べ官側から、あなたは今、取り調べの録音、録画がされているんですよという告知というものが実際にされているのか、そしてまた、その告知の際の文言というか説明の仕方というものに関しては何かマニュアルのようなものがつくられているのか、教えていただけますでしょうか。

林政府参考人 現在の検察における取り調べの録音、録画については、その実施要領の中で、「取調べの冒頭において、供述者に対し、適宜の方法で、録音・録画を開始していることを告知すること」としております。したがいまして、現状の運用におきましては、まず録音、録画の実施は告知をしております。

 ただ、ここにありますように「適宜の方法で、」と言っておりまして、特に画一的な、統一的な告知の仕方というものを定めているわけではございません。

鈴木(貴)委員 告知がされているということだったんですけれども、今なぜその話を聞いたかというと、これは、最高検によるアンケート結果、試行されての、取り調べ官に対しての、千人ぐらいの規模だったと思うんですが、アンケートがあって、その中で、過去に被疑者が取り調べの録音、録画を拒んだ理由の中の一つに、テレビで使われると思ったという回答があったんですね。

 実際には、取り調べの録音、録画のいわゆるDVDがテレビ局に渡って、テレビに使われるということはもちろんないわけなんですけれども、ふだん、法律であるとか裁判であるとか刑事事件だとか、そういったところから離れた一般的国民にしてみれば、知識というものは正直持ち合わせていないという方も往々にしていらっしゃると思います。

 そういう意味でも、取り調べの録音、録画をするという告知だけでなくて、これがどういった場所で使われるのか、どういった目的によるものなのかという意図までしっかりと告知をする、こういったことも必要だと私は思うんですが、それについてのお考え、どのように受けとめられるでしょうか。

林政府参考人 実際の取り調べの録音、録画の実施に際しましては、やはり録音、録画をして取り調べる以上は、不必要な不安を感じていただくというようなことは、取り調べにとってはかえってマイナスであろうかと思います。そういったことから、当然、そういった不安というものを不必要に感じるようなことがないようにすることは、録音、録画の取り調べの場面においては実際に行われていることがあろうかと思います。

 ただ、それをどのように説明するかということとなりますと、まさしく、録音、録画というものがその後どのように使われるのか、証拠として使われるのか、あるいは公判に顕出されるのか、再生されるのか、あるいは弁護人に開示されてそれがどうなるのか、こういったことについては、誤解を招くような告知をすればかえってそれ自体が問題となりますので、なかなかそういったことは統一的には定められないことだろうと思います。

鈴木(貴)委員 統一的に定められないというのであれば、どのように国民の不安感情を拭う努力をされる考えをお持ちでしょうか。

林政府参考人 実際のところ、それは、取り調べの中で、取り調べ官と供述者との関係の中で、具体的な個々の事件に即して適切に対応していく以外になかろうかと思います。

鈴木(貴)委員 適切にということで、今、現場そしてまた運用面に投げかけられた答弁だったかと思うんですけれども、実際に、過去のアンケートなどでも、テレビで使われるのではないか、何のために使われるのかがわからない、こういった声があったという事実をしっかりと踏まえ、そしてまたそれを反映させていくべく、ただ可視化をしていますという告知だけでなく、そういった部分においても、もしかしたら捜査当局側だけでなく、例えば弁護人の方にそういった努力義務を課すのか、やり方というものはまさにいろいろ考えられるのではないのかな、このように提案をさせていただきたい、このように思います。

 そして、その他の例外事由なんですけれども、よく、暴力団員などの場合には、いわゆる自分が所属する組織を売るようなことはできないであるとか、恐怖心というものがあって、なかなか供述しなくなってしまう、供述がとりづらくなる、こういった指摘もされています。

 ただ、今現在も、確かに、録音、録画はされていなくても、調書という形で記録に残っているという意味では一緒だと思うんですね。しかしながら、録音、録画によって生まれる、これまでと違う、これまでにはない新たな不安というのはどういったものだと考えてのそういった見識なんでしょうか。

林政府参考人 やはり、取り調べの録音、録画をしない場合には、取り調べにおける被疑者の供述のうち、もちろん、供述調書に録取される内容につきましては、証拠開示でありますとか公判廷における証拠調べを通じまして、例えば共犯者などの知るところになる可能性があるわけでございますが、それ以外の供述内容、供述調書に録取されていない内容については、基本的にそういった可能性はないわけでございます。

 他方で、これに対しまして、やはり取り調べを録音、録画する場合につきましては、供述調書に録取されていない内容も含めまして、取り調べにおける被疑者の供述の全てが映像及び音声により客観的に記録されることとなるわけでございます。そして、そのような取り調べの録音、録画記録の内容は、証拠開示や公判廷における再生を通じまして、共犯者等の知るところとなる可能性がございます。

 したがいまして、組織的犯罪等におきまして取り調べの録音、録画を実施することとなりますと、やはり被疑者といたしましては、取り調べにおける自己の供述内容の全てが共犯者等の知るところとなる可能性があることを前提として、そのことが相当程度の心理的な圧迫を招くということは十分に考えられようかと思います。

鈴木(貴)委員 取り調べの録音、録画、いわゆるDVDというものは、公判廷において全てつまびらかに再生されるんでしょうか。

林政府参考人 もちろん、どのような証拠を請求し、また採用されるのか、これも、検察側からの請求もあれば、弁護側からの請求もございます。その上で、実際に採用されたときにどのような再生方法をとるかということも、当然、裁判によって判断されます。

 もとより、特に性犯罪のような事件において、再生方法について、被害者に配慮するというような再生方法をとる場合もありますけれども、少なくとも刑事訴訟法上の手続の可能性といたしましては、全てが公判廷で再生されるという場合がないわけではないわけでございます。

鈴木(貴)委員 それこそ、それぞれ個別で違ってくるということだと思うんです。であるならば、まさに個別の案件それぞれで、その時々に応じて運用面でさまざまな対応をとっていけばいい話であって、録音、録画の例外事由に値するとは思えないんです。本来であれば、そういった部分もしっかりと録音、録画をした上で、運用面において、それを実際に再生するのかしないのか、個別に判断をするということは可能じゃないでしょうか。

林政府参考人 録音、録画の義務づけの制度を法制審議会で議論したときに、やはり義務づけをした場合には、当然、録音、録画というものが、非常に件数もふえて、そしてまた、記録媒体の数というものも非常にふえてくるわけでございます。

 そのとき、これを特に性犯罪の被害者等との関係で議論されたわけでございますが、この記録媒体というものをどのように管理するのか、あるいは公判においてどのように活用するのかということについては、そういった被害者への配慮という観点からしっかり運用するべきであるということが法制審議会の中でも議論がなされまして、実際に、それを受けて、その後、関係者、法務省、警察、裁判所、そして弁護士会、こういったところで、今後できてくる記録媒体をどのように管理し、また活用していくのか、そのときの配慮事項は何かということを運用の中で議論したという経緯がございます。

鈴木(貴)委員 時間もやってまいりましたので、最後に両大臣に。

 これまでの質疑を聞いていただいた中で、やはり私は、改めて、この例外事由、取り調べ官側の裁量に余りにも委ねられ過ぎているのではないのか、例外事由の規定というのが非常にあやふやではないのかな、このように思うんですけれども、両大臣の見解を伺わせてください。

奥野委員長 時間が迫っているから、なるべく端的に。

 まず、上川法務大臣。

上川国務大臣 録音、録画を制度として義務づける、今回、初めてそうした取り組みをするところでございます。

 例外事由につきましてさまざまな御指摘をいただきましたけれども、やはりそれはあくまで例外ということで、原則は全面録音、録画ということでございますので、さらに、運用という面につきましても、今委員が御指摘いただいたそうした懸念がないように、適正に実施をしていくということが極めて大事だというふうに思っております。

山谷国務大臣 録音、録画制度については、取り調べで供述が得られなくなり、事案の真相解明に支障が生じることがないようにするとの観点も重要であり、原則、全過程の録音、録画を義務づけるとしても、一定の範囲で例外を認めることは必要と考えます。

 例外に当たるとして録音、録画をしなかった場合には、その判断は、後に裁判所によるチェックの対象となり、必要に応じて、捜査機関側の責任で例外事由の該当性を立証する必要があるので、例外が恣意的に運用されることはないと考えております。

 御懸念の点が払拭されるように努めてまいりたいと思います。

鈴木(貴)委員 最後に。

 前回の質疑を聞いていてもそうだったんですが、山谷委員長、いつも答弁で、非常に後ろ向きといいますか、法案の問題点というか、捜査当局側の課題というか、抱えている部分を前面に出して、この法案は、取り調べの録音、録画というのは我々にとって新しい捜査手法なんだ、新しい捜査手法を自分たちの腕と経験をもって使っていくんだ、そういった前向きな姿勢というものが感じられないなということを私は指摘させていただきたいんです。

 そしてまた、よく警察でも、視察でも言われました、カメラがあると、どうしても警戒心といったものがあって、なかなか心を開いてくれないんだ。

 委員長、そして両大臣、皆さん、今、この委員会を見てください。カメラがありますけれども、寝ている方もいらっしゃるじゃないですか。この国会の神聖な場において、国民の代表として選ばれた我々が、カメラがある中でもこういった態度を示すことができている。なぜか。それは、なれてしまっているからなんです。

 やり方によったら、もしかしたら、机の、一人一人の目の前にカメラが備えつけられていれば、あれだけの大きさのカメラがあれば、寝ない方だっているんじゃないでしょうか。しかし、カメラがああやって天井に据えつけられているから、マイクが遠くにあるから、今のような態度をとることができてしまっている。

奥野委員長 鈴木君、時間が来ていますから。お説はわかりましたけれども、時間を守ってください。

鈴木(貴)委員 はい。

 ということを指摘させていただいて、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

奥野委員長 次に、重徳和彦君。

重徳委員 維新の党の重徳和彦です。本日もよろしくお願いいたします。

 前回から若干引き続きの部分もあるんですが、私としては、この日本の刑事裁判手続というものが国際的にどのように評価されているか、そこに誤解があるのであればきちんと説明をしていくこと、そして、もし改めなければならない部分があるのであれば、それは迅速に対応するべきじゃないか、こういうスタンスで臨んでまいりたいと思っております。

 まず初めに、前々回から指摘をさせていただいておりますが、日本の刑事裁判手続に関して、昨年の七月に、国連の自由権規約委員会により最終見解というものが採択をされております。その中には、代替収容制度、俗に代用監獄と言われている制度、及び自白の強要について指摘されています。

 具体的には、この委員会では、「代用監獄の利用を正当化し続けていることを遺憾に思う。」とか、「起訴前における保釈の権利や国選弁護人選任の権利がないことが、代用監獄において強要された自白を引き出す危険性を強めている」とか、「取調べの実施に関する厳格な規則がない」とか、「二〇一四年の「改革プラン」において提案された、」これは日本政府から提案されたということだと思いますが、「取調べのビデオ録画義務の範囲が限定されている」ということについても指摘をされています。

 こういったことに対してフォローアップを求められていると思うんですが、この自由権規約委員会の最終見解に対する対応状況、どんな状況なんでしょうか、中山外務副大臣からお願いします。

中山副大臣 昨年七月に行われました自由権規約についての対日審査を踏まえまして、同委員会から出されました最終見解には、御指摘のとおり、刑事裁判手続に関する勧告が含まれております。

 同最終見解におきまして、刑事裁判手続に関連して、起訴前の勾留期間における保釈等勾留の代替手段の検討、被疑者の逮捕時から弁護人を依頼する権利の保障及び弁護人の取り調べ中の立ち会い、取り調べの継続時間の制限及び方法を規定する立法措置、それから不服審査メカニズムを保障すること等が勧告されております。

 これらの勧告につきましては、法的拘束力を有するものではありませんが、一年以内にその実施に関する情報を我が国から提出することが求められております。これらについては、関係省庁の取り組みや見解等を外務省にて取りまとめ、文書の形で同委員会に提出すべく作業中ということでございます。

重徳委員 この勧告が出されているわけですが、この勧告が出される前に、当然、日本国政府にいろいろと見解を求められていると思うんです。こう言われてもしようがないという部分もあるのかもしれませんが、あれだけ言ったのに何でこんな見解や勧告が出されるんだという部分もあるかもしれません。

 実際にこの委員会でいろいろな問題点を指摘しても、刑事裁判手続は我が国の刑事裁判の体系の中では全体としてバランスがとれているんだとか、いろいろな説明があるわけでありまして、にもかかわらず、国際的には、場合によっては一方的な指摘かもしれません、こういった指摘がなされているんですが、この自由権規約委員会に対しまして日本国政府から、見解が出る前にいろいろと意見を述べたんじゃないんですか。

中山副大臣 ありがとうございます。

 御指摘の勧告に先立ちまして、二〇一二年四月に政府報告を提出いたしております。その中で、我が国の刑事裁判手続についての立場を説明しているということであります。

 また、同報告書を踏まえた自由権規約委員会による対日審査の事前質問に対する回答の中におきましても、二〇一四年三月に、政府として、先生御指摘のように説明をいたしております。その上で、同年七月の対日審査においても、我が国の刑事裁判手続につきまして、その立場を説明したところであります。

重徳委員 当たり前といえば当たり前ですが、いろいろな意見を申し述べる機会があり、事前質問に対する説明もなされたということでありますが、こういった主張をしてきたにもかかわらず、こういう勧告が、特に刑事裁判手続の分野に関する勧告が出されたということについて、これはどのように認識をされているんでしょうか。説明が足りなかったということなのか、あるいは、制度の見直しはやらざるを得ぬというようなスタンスなのか、つまり、指摘されてもやむを得ないということなのか、どのように認識されていますでしょうか。

葉梨副大臣 足りなかったというよりは、しっかり説明はしたということだと思いますけれども、なかなか理解を得られなかった。これからも、しっかり理解を得るように発信する努力もしなければなりません。

 また、この国会で審議をさせていただいている刑事訴訟法等の改正案につきましては、公共の福祉、個人の権利は保護する、そして真実を解明して適正な処罰を行うという観点からバランスのとれたものを提案させていただいているというふうに考えておりますので、慎重審議の上、この法案を通していただきまして、また、この法案の内容についてもしっかりと理解を求めていくということが必要だと思います。

重徳委員 説明したけれども理解してもらえなかったと言うには、余りに基本的なところから指摘をされまくっていると思うんですよね。

 間もなく去年の七月の見解、勧告に対してフォローアップの説明をなされるということだと思うんですが、どんな内容の説明、フォローアップを提出する予定なんでしょうか。

林政府参考人 委員御指摘のとおり、国連自由権規約委員会の最終見解に含まれます幾つかの勧告につきましては、一年以内にその実施に関する情報を我が国から提出することが求められております。今後、それぞれの項目につきまして、関係府省間の関連する取り組み、それから見解等を外務省において取りまとめていただきまして、文書の形で同委員会に提出する予定でございます。

 法務省につきましては、本法律案の取り調べの録音、録画制度の内容等につきましても、関係府省庁と協議しまして、十分な理解を得られるように、適切な説明に努めてまいりたいと考えております。

重徳委員 今局長の、録音、録画についての説明をされるということでありますが、そもそもこの自由権規約委員会の指摘の中では、取り調べのビデオ録画義務の範囲が限定されていることが指摘されているわけなんですが、それに対してはどう説明されるんですか。つまり、実際に今、立法された、法案提出されているものがまだ限定されていることに対して問題視をされて、遺憾に思うという指摘があると思うんですが、これについては、もっとこれから広げていくんだとか、そういった趣旨のことも盛り込んでいく予定なんでしょうか。

林政府参考人 これまでも、取り調べの録音、録画につきましては運用等で行っていること、こういったことについては説明をしてまいったところでございます。今回、法律という形で、制度として録音、録画制度ができた、そのことにつきましては、当然、しっかりと国連に対して説明をすることがまず第一であろうかと思います。

重徳委員 制度ができたことというか、まさに今審議しているところでありますが、この制度の内容を、今回提出する法案の内容を前提として、恐らく、昨年、自由権規約委員会において、範囲が限定されているということではないかと思うんですが、あるいは、任意にやっていたということについて限定されていたと言われていたんでしょうか。今回の法案をつくることは既に織り込み済みのことじゃないですか。どうなんでしょうか。

林政府参考人 これまでもいろいろな制度化についての議論がなされていることについては説明をしてきているかと思いますけれども、今回は、やはり、もし法律が成立したならば、こういった制度ができ上がったこと、録音する内容について、またその趣旨について、十分に説明していくこととなろうかと思います。

重徳委員 ここは委員会であり、立法府の場でありますので、我々はまさに立法府の人間ですから、今回の法案を今後の方向性も含めてどういう形で成立させるかということもこの委員会で議論をした上で、今後の方向についても国際的に説明できるような方向で議論をしていきたいなというふうに私自身も思っておりますし、この法務委員会において議論した内容も含めて、立法府の意思も含めて、ぜひこれから自由権規約委員会の方に説明をしていっていただきたいと思います。

 それから、もう一つ、前から指摘しておりますアメリカ国務省の国別人権報告書、これも、えらいことが書かれているわけなんですね。NGOがこう言ったとか、一部の専門家、法律家によるとというような、引用の発信元が適切かどうかはわかりませんが、それにしても、この米国の国別人権報告書を読みますと、例えば、国家公安委員会の規則では、被疑者取り調べのルールがちゃんとあるんだということではあるけれども、「しかし、信頼できるNGOによれば、当局はこの規則を適切に執行せず、極端な事例では、依然として被勾留者に対し八時間から十二時間に及ぶ取り調べを行い、その間ずっと被勾留者を手錠で椅子につないだままにし、強引な尋問方法を用いた。」とか、それから、検察官の録音、録画についても言及をしております。「被勾留者の自白を復唱、または口頭で要約する」、つまり、一部、自分たちの都合のいいところだけ録音、録画しているのではないか。そして、そうした「心理的な威圧感を与える手法を、裁判所は確認できないかもしれない。」つまり、裁判所の知らないところで、わからないところでそういった自白の強要が行われていて、都合のいいところだけ録音、録画をされている。

 こういった指摘も、この委員会で指摘をすると、いや、そんなことはないという答弁が出てくるようなテーマについても、一方的にこういった内容のものがアメリカの連邦議会では指摘をされるわけですよね。

 こういったことに対する対応というのはどのようにされているのでしょうか。

中山副大臣 先生御指摘の米国務省国別人権報告書は、米国務省が、法令に基づきまして、日本を含む各国の人権状況につきまして連邦議会に報告するために毎年作成をしているものであります。

 同報告書におきましては、我が国の刑事裁判手続について、警察による同一被疑者の再逮捕、取り調べ時の心理的な強制による自白獲得、それから、取り調べ当局による選択的な録画編集等が取り上げられております。

 同報告書につきましては、国連自由権規約委員会からの最終見解とは異なり、我が国からの回答が求められているものではありませんけれども、いずれにしましても、我が国の立場及び現状を適切に発信してまいりたい、そのように考えております。

重徳委員 発信をしていくということでありますが、どういう場で発信するんですかね。発信が不十分で、逆に、NGOだとか一部の法律家からの指摘が丸々報告書に載って、それが連邦議会にそのまま報告されているわけですから、これを見た人は、日本というのはとんでもないところだというふうに受けとめられても仕方がないと思うんです。

 こういったことについて、どういう場があるんですかね。発信はもちろん必要ですけれども、連邦議会での一方的な指摘に対して、当たっている部分があるんだったらしようがないですけれども、今はそうじゃないということが前提の御答弁だと思いますので、そういったことについてはどういう場を想定されていますか。

岡田政府参考人 御指摘の国別人権報告書でございますが、国務省が作成に当たっております。

 私ども、さまざまな機会を捉えて日本の取り組みについてはこれまでも説明してきたというふうに思っておりますが、まさに、執筆に当たります国務省との関係におきましては、これからどういう形で働きかけをしていくのがよろしいのか、検討してまいりたいというふうに思います。

重徳委員 そういうのも前提として、これはまずいという認識なんですね。そこを確認したいんですが、何か余り危機感がないというか、もちろん検討はしていただきたいですけれども、この報告書のままではいけないと。だから、これは次回、いつ出るのか知りませんけれども、結構頻度高く出ていますね、毎年のように出されていると思います。早急に手を打たないとまた同じような状況が続くと思うんですが、その辺の認識というのはどうなんでしょうか。改めさせないといけない。

 あるいは、テーマによっては言われっ放しじゃないんですよ。日本国政府はこれに異議を唱えたという記述も項目によってはありますし、日本国政府は云々かんぬん、ちゃんと主張しているが、NGOによるとどうだと、両側の主張が併記されている部分もあります。

 日本国政府の言い分だけを全部載せてくれというところまでは、それはなかなかいかないかもしれませんが、それにしても、全く日本国政府が否定もしていない、主張もしていない、そういうふうに見受けられるような部分があるんですよね。こういったことはやはり改めさせなきゃいけないと思うんですけれども、いかがでしょうか。

中山副大臣 重徳先生が御指摘なさっておられる意味というのは、私どもよく理解をしております。日本の政府という立場でもそうですし、一個人、一政治家としても、日本の国情を正確に反映していないような現状が他国の今回のような報告書で仮になされているとしたら、それに対してしっかりと対応し、必要に応じて発信をしていくというのは、我々も相当検討しなければならないと思います。

 他方で、先ほど申し上げた国連の御指摘の部分と違いまして、回答の義務というのはないわけであります。その中で、こちらからしっかりとした戦略に基づかずに回答することによって、かえってその問題が必要以上にクローズアップされて、言葉が的確かどうかわかりませんけれども、飛んで火にいる夏の虫のような状況になって、かえって、うそが、風説が流布するような形で世界じゅうに伝播されてしまう、もしくはメディアで変な形で報道されてしまうようなことがあると、それがまた、うそが広がるようなことにもなりかねないということも同時に想定をいたします。

 ですから、幸い、日米安保の条約にも基づくような、世界でも冠たる同盟関係にある米国の議会でもございますので、今までの外交上のアセットも踏まえて、必要に応じて、適宜、必要なところと相談をしながら、ちゃんと戦略を練って、先生の御懸念を払拭できるような形でしっかりと対応してまいるように、私の方も頑張ってしっかり見ていきたいと思います。

奥野委員長 今のは外務省だけに任せておくんじゃなくて、やはり我々議会も、あるいは法務省も、ちゃんと外務省と調整しなきゃいけないということでしょう。そういうことをぜひやってもらいたい。

重徳委員 委員長からも御助言というか御提案がありました。

 何せ、やはり日本国政府の立場の発信というのは非常に弱いと思うんですね、全般に。まして、あらぬことが流布されるかもしれないから黙っているなんというんじゃ、逆だと思うんですよね。うそや悪口を言われるようだったら、もっとちゃん言っていかなくちゃいけないのであって、こういう問題は、ほかのさまざまな日本に対する、どの問題とはあえて指摘はしませんが、いろいろな言説が日本国について言われている大きな原因だと思うんです。

 やはり、はっきりと物を言う国になっていかなきゃいけない。我々議会人ももちろん頑張りますけれども、ぜひ政府の方でも、もっと言うべきは言っていただきたい。そして、改めるべきは、もちろん国内法を整備していかなくちゃいけないと思っております。

 その意味で、私たち法務委員会のメンバーは、先般、原宿警察署の視察などにも行ってまいりました。国際的には代用監獄というふうに指摘をされることもある留置場の問題とか、そういったことについても、我々議員も、現場を見て理解を深めなきゃいけないということも非常に痛切に感じました。

 その意味で、やはり前回、山谷委員長に申し上げましたけれども、捜査と留置は別部門にしているということを幾ら説明しても、同じ警察署の中にある二つの部門が、完全に別々ですから被疑者の人権は守られていますなんというような説明では、少なくとも、文面上そんなものを読んでも全く理解されないと思うんです。国連とかあるいは米国とか、外国の関係者に日本の現場も見てもらうとか、そういった工夫もしながら発信しないと、まるっきり文書のやりとり、口頭のやりとりでは、こういった悪い部分はずっと続いてしまうと思うんです。もちろん、もしかしたらさらなる問題が出てくるかもしれないけれども、それはそれでいいじゃないですか。

 そういう思いでいるんですが、山谷国家公安委員長、いかがでしょうか。

山谷国務大臣 御視察ありがとうございました。

 我が国の刑事司法制度下において所要の捜査を遂げるためには、警察の留置施設は重要な役割を果たしていると認識しており、また、捜留分離の原則は、警察においては十分に浸透し、定着したものと認識をしております。

 留置施設につきましては、これまでにも、国連自由権規約委員会委員長や副委員長の視察、また、国連拷問等禁止委員会の視察、参観を受け入れているところでありまして、今後とも、日本警察の立場、取り組みについて、国際的な理解を得られるように努力してまいりたいと思います。日本の立場、現状を発信していくように努めていきたいと思います。

重徳委員 今、視察を受け入れている、私もそこまで事実を確認した上で質問に立っているわけじゃありませんが、逆に、視察を受け入れたということであれば、にもかかわらず、いまだに代用監獄扱いの表現をされているのは、では一体なぜなんでしょうか。なおさら説明が足りない、あるいは何かしらの取り組みが足りないということなんじゃないでしょうか。どう受けとめていらっしゃるんですか。視察を受け入れたにもかかわらず、見てもらってもまだわからないということですよね。どうでしょうか。

 補足します。見てもらった上で、代用監獄だという表現で言われているわけですよね。留置場の現場も見てもらったんだけれども、いまだに、代用監獄だ、これでは捜留分離というほどの状況になっていないという、理解がされていないと思うんですけれども、何が足りないんでしょうか。

奥野委員長 では、警察庁の沖田総括審議官、わかりやすく答えてあげてください。

沖田政府参考人 実際の外国からの視察の際に、当然、私どもとして必要な御説明は申し上げたというふうには理解しておりますけれども、この問題については、委員からも御指摘のとおり、いろいろな立場の方がいろいろな形で働きかけを行ったり主張されている。

 私どもは代替収容制度という言い方をしておりますけれども、代用監獄制度というような言い方をされる方もいらっしゃいますし、そうした中で、結果的に、私どもの主張がそういった米国等の関係機関の文書の中には十分反映されなかったということでございますので、今後とも、関係機関と協力しながら、さらに積極的に受け入れるべき必要があればそれはぜひ受け入れまして、実態等につきましても、よりよく理解していただけるように御説明等してまいりたいというふうに考えております。

重徳委員 きょうは可視化のテーマでの議論なので、代用監獄の話を余り長々とやるつもりもなかったんですが、しかし、代用監獄というのは、国際用語にもなっているような、非常に重大な人権侵害だという象徴的な言葉でありますから、日本がまさにそれをやっていて、そしてまさにその日本語が世界にダイヨーカンゴクという言葉で象徴的に取り上げられているという状況は解消しなきゃいけないと思うんです。

 だから、本当にこの捜留分離の原則というのが、山谷委員長は十分浸透、定着しているということですが、それは、警察の組織の中では当然浸透していますし、定着していると思うんですが、こういったことは何のためにやっているかというと、やはり国際的な部分も含めて、人権を守るというか、人権にちゃんと配慮している国であることを示すためにやっているわけですから、何か自己満足のような状況に陥っているんじゃないかというふうにも受けとめられます。

 ここは、もちろん、いろいろな論者がいて、幾ら言っても通じない相手もいるのかもしれませんけれども、しかしながら、もっときちんとした主張を発信していただきたいと思います。

 その意味で、今度は上川大臣にお尋ねしたいんです。

 前回、取り調べの時間の配慮に関する警察の規則、あるいは最高検察庁の通達というものがあるという御答弁があって、その上で、上川大臣から、国内外問わず、実態を公表し、理解を求める、つまり、やることをちゃんとやっているんだということを御答弁されました。その意味内容を確認したいんですけれども、これは、例えば、明文化してちゃんとフォローアップの中に入れていくとか、そういうことなんでしょうか、どうでしょうか。

上川国務大臣 先回の御質問を受けて、取り調べが適正に行われなければいけないということで、検察当局として取り組んできた方策ということについて、平成二十年に、最高検察庁次長検事の通達という形で、取り調べに当たっての一層の配慮に関しまして、例えば、刑事施設等において定められている時間帯に就寝、食事、運動または入浴ができるよう努めること、あるいは、やむを得ない理由がある場合のほか、深夜または長時間にわたり被疑者の取り調べを行うことを避けること、また、被疑者の取り調べにおきましては、少なくとも四時間ごとに休憩時間をとるよう努めること、こうした定めを通知いたしまして、これに従って取り調べの適正確保に努力するようということで指示をしてきたところでございます。

 各現場の中で取り調べの適正の確保に努めてきたことにつきましては、例えば、平成二十四年に、いわゆるB規約の報告におきましても、その通達の内容及びそれに従った運用を行っている旨の報告をするなどしてきたところでございます。

 この通達を受けて、運用の中でしっかりと適正に実施しているということについては、不断にチェックをしなければいけない。これは、国際的に報告するためにということのみならず、実態としてもその通知にふさわしい取り組みがなされているということを絶えず確認していくということが大切である、そういう旨で、私、答弁をさせていただいたところでございます。

 同時に、海外に対しての説明におきましても、そうした旨の説明ということについても含めていくべきではないかということでありまして、ここのところは、関係府省庁と協議の上で適切な対応をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。

重徳委員 もう少し厳密にお聞きしたいことがあるんです。

 昨年の自由権規約委員会で指摘されたこととして、取り調べの実施に関する厳格な規則がないことに懸念を表明すると。それから、勧告の中にも、取り調べの継続時間に係る厳格な制限及び取り調べの方法を規定する立法措置を求めると。立法措置というのは、国際的に、日本で言う法律のことかどうかはわかりませんけれども。

 これに対応してフォローアップの意見をこの夏に出すということですが、これまで最高検の通達なんというのは既にあったわけだから、言ってきたんじゃないかと思うんですが、今回、では、それ以上に何を求められているのか、そして何を訴えていくのかということを知りたいんですけれども、どうなんでしょうか。つまり、この自由権規約委員会の指摘は当たっていると言わざるを得ないんですか。そうすると、通達とかそういうのではまだ足りないんでしょうか。それとも、どう言えばこの部分が解消できると認識されているんですか。

林政府参考人 この部分につきまして、例えば取り調べに関する時間についての立法的な措置、制限というものについては、実際の、現在の身柄拘束期間という中での取り調べということで、これを立法としてさらに制限するということについては検討しておりませんし、そういう形でお答えするのは困難だと思います。

 いずれにしても、現状、それに対して取り調べというものが適正になされるための措置が、例えば検察あるいは警察において、どのような形で内部的な規制のもとでそれに沿った適正な取り調べが行われていくかということを十分に説明させていただくというのがまず基本になろうかと思います。

重徳委員 それでは、最後の質問になりますが、前回、林刑事局長から、取り調べへの弁護人の立ち会いの場合の問題として、例えば、弁護人が取り調べに介入して取り調べ官の質問を遮ったりすることが可能になり、必要な説得、追及を通じて被疑者からありのままの供述を得ることは期待できず、弁護人の助言によって被疑者が質問の一部または全部に対して黙秘する中で、被疑者の供述が真実であるのかどうかということを判断することも困難となって、取り調べというものが現在の姿を全く変えてしまうことになるといった意見が法制審の中で出てきて、その結果、弁護人の立ち会いというのは難しいんだというような御説明がありました。

 この点も、可視化されていない中で弁護人がやたら遮る、やたら邪魔をするということでは何も供述が引き出せないじゃないかということはわかるんですが、余りに過剰な弁護とか不当な妨害というものは、可視化されている中であれば、逆に、今回の可視化というのは取り調べる側の不当な取り調べを牽制するものであるというような機能が専ら議論されていますが、逆に弁護側も、余りにアンフェアに被疑者を、不当に守るというのも変な言い方ですけれども、そういったこともやり過ぎじゃないか、こういうことも含めて白日のもとにさらされるわけですから、そういった意味で、本当にフェアな取り調べが行われるためにもこの可視化というものが資するのではないか、こうも考えるんです。

 弁護人の立ち会いを、今まではほとんど取り合うこともなかった議論を、可視化ということによって第一歩が踏み出せるようになるのではないかという考えもあると思うんですが、この点、どのようにお考えでしょうか。

林政府参考人 前回、取り調べへの弁護人の立ち会いに関しての意見として、実際に取り調べの過程で、弁護人から質問の一部を遮ったり、あるいは一部、全部に対して黙秘する、こういったような介入がなされるということが一つの取り調べのあり方全体の性質を変えてしまうという意見があったということを御紹介させていただいたところでございます。

 もちろん、これに録音、録画というものを考えたときに、今先生言われた、弁護人のそのような行為自体も、行き過ぎた行為については制約を受けるのではないかということでの御質問だと思いますけれども、今申し上げたような意見は、弁護人が取り調べに立ち会うことを制度として設けるとした場合に、その取り調べの場における弁護活動として、遮るとか黙秘を勧めるとか、そういったことについては、当然正当な弁護活動として予定されるということを前提として出ている意見でございます。

 そうしますと、やはり録音、録画制度が導入されたといたしましても、弁護人として、ある意味立ち会いが認められたことの結果として、そういった正当なものとしての弁護活動を行うということを前提として考えますと、結局、録音、録画制度が導入されていたとしましても、やはりそれは、取り調べの性質というものについては大きく変えてしまうだろう、このように考えておるところでございます。

重徳委員 最後にしますが、取り調べの姿を変えるのは、変えると思うんですよ、弁護人が立ち会うなんて今までやっていないわけですから。でも、それが問題ということじゃなくて、それによって、裁判、真相究明、そういったことがおかしくなるということが問題なわけですから、正当な弁護活動をやって何の問題があるんだという意見に、今の御答弁ではちょっと持ちこたえられないんじゃないかなということを指摘させていただきまして、きょうの質問を終えさせていただきます。

 ありがとうございました。

奥野委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

奥野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。井出庸生君。

井出委員 維新の党、信州長野の井出庸生です。本日もよろしくお願いいたします。

 午前中、心のキャッチボールという話がありましたが、まさに委員会の質疑もキャッチボールかなと。私はピッチャーではないのでたまに暴投も投げますが、きょうも直球勝負でいきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 私からも、まず、先日の視察で、きょうも議論のあった取り調べの機材について伺いたいのですが、主に警察のことで、国家公安委員長に伺います。

 私も視察に行って、入ったときに、実際の機材が人の背丈ぐらいある。検察庁の調べ室の方は広いですし、書架とかたくさんありますし、そんなに目立つ感じもなかったんですけれども、警察署の取り調べ室は、原宿署の案内いただいた部屋は割合広い、それでも私のアパートぐらいかなとも思いましたし、入ってまず目につくわけですね。

 調べ官はカメラを背にして話しますので、被疑者は斜め上から見られている形で、大変気になるんじゃないのかなというのがまず一点と、その後、警視庁の現場の方との質疑の中で、私がその機器についてちょっと邪魔じゃないかと聞いたら、やはり三人とも、邪魔だ、そういうことをおっしゃられました。

 私は、あの視察を踏まえて、あれは一台百万する、原宿署にたしか二台あるというような話だったかと思うんです。検察庁の方はあれでいいと思うんですよ。警察の方も答弁されていますけれども、検察庁というものは、ある程度警察で調べられた、捜査で出された、ある程度整理がついたところから検察庁の調べが入りますので、きちっと撮っていただいていいと思うんですね。ですけれども、警察の調べ、第一次捜査で取り調べがどう転ぶかわからない、紆余曲折があるという話もいただきましたけれども、そういうときにあのような機材で撮るのではなく、私は、視察に行って、まさにもうこれはICレコーダーしかない、とにもかくにも、とっておくために一番便利で手軽なのはICレコーダーなんだという思いを強くしました。

 そのとき、本会議の答弁で言われたのは、データを改ざんされるおそれがあると。それについて私がきょう一点申し上げたいのは、改ざんされるおそれよりも、ICレコーダーで一番気をつけなければいけないのは、スタートボタンをきちっと押したかなんですよ。そこをちゃんと確認するということをマニュアルで徹底していく。先ほど、この物々しい取り調べ機器というのは、改ざんを防ぐために、同時に複数で録音するために機能上必要なんだという話もありましたが、あれもICレコーダーを二台持っておけば全く問題ない。

 私は、検察のようなある程度整理された捜査で、ああいう広い部屋で取り調べるのであれば、今の機器をそろえていっていただけばいいと思うんですよ。でも、警察はまさにこれからやっていく、まだ初めの段階だ。警察の方では、ICレコーダーの録音で、映像がない、よく聞こえないと。聞き直すことは検察庁でも可能なんですよ。

 そうすると、やはり警察は、全てのことを考えても、ICレコーダーを持たせるしかない、もうこれで決まりだと確信を持って質問させていただきますが、いかがでしょうか。

山谷国務大臣 御視察ありがとうございました。

 現在使用している装置についてでございますけれども、都道府県警察の現場からも、機材の大きさとかそういうものでございますが、委員御指摘のような意見が寄せられているところでありまして、警察庁においては、狭い取り調べ室でも取り調べに支障がないよう小型化を図る、録音、録画の実施の都度必要となっている設置作業の負担を軽減するため固定式システムを導入するなどの仕様の見直しを検討しているところでございます。

井出委員 警察はかつて、パソコンも、人数が多くて公に支給されない、そこからウィニーといったようなソフトで重要な情報が流出するということで、予算を少しずつそろえてパソコンを配備した経過もあるんです。携帯電話も同じだったと思います。最初は幹部にしか公用の携帯電話が与えられない、それをだんだん公用の携帯電話を支給してきたと思います。

 私は、この録音、録画に関して言えば、もうICレコーダーしかない、これだったら三年先と言わず来年からでも実施できる、試行でもいいからやっていただきたい、そういうことをお願いしておきたいと思います。

 次に、取り調べの中身の話です。

 山谷大臣に、本会議とこの場所で、二度、いろいろと研究、研修を行っているという答弁をいただきました。私も少し調べて、いろいろ資料を当たってみたんですが、そのとき、平成二十四年の十二月に警察庁刑事局刑事企画課がつくっている「取調べ(基礎編)」、こういうものがありまして、その冒頭を読み上げますと、

  「捜査手法、取調べの高度化プログラム」(平成二十四年三月)を踏まえ、取調べにおいて真実の供述を得るための効果的な質問や説得の方法、虚偽供述が生まれるメカニズムとこれを防止するための方策等を始めとする心理学的な手法等を取り入れて取調べ技術の体系化を図り、これに基づいた研修・訓練を実施していくことにより、取調べに従事する全ての警察官が、人間の心理の理解に基づいた一定レベル以上の取調べ技術を習得していくことを目指している。

  本書は、科学警察研究所犯罪行動科学部捜査支援研究室の全面的な協力の下、北海道大学大学院仲真紀子教授(心理学)の助言を受け、取調べと関連する心理学の知見を取りまとめたものである。

大変中身の濃いものが書いてあるんですが、冒頭に出てくる北海道大学大学院の仲真紀子さんは、「取調べ(基礎編)」について絶賛をされているんですね。それはどういうところかといいますと、仲さんは、実は日本学術会議心理学・教育学委員会法と心理学分科会で、これをつくっていただくに当たって提言をしている、それを速やかに警察庁の方が取り入れてくれてこういう「(基礎編)」というものをつくってくれた、そういうことで大変絶賛をしておると。

 仲さんが特に褒めていらっしゃるのは、この「(基礎編)」の中で推奨されている取り調べは、自由報告、自分の言葉で話をしてもらうこと、特定の仮説を確認することに固執することなく一定の手続の中でオープンな質問をすること。この特定の仮説を確認するというのは、恐らく、警察や検察の見立てとか、そういったあらかじめ想定される調書に認めていっていただく、うなずいていっていただくということだと思うんですよ。「取調べ(基礎編)」というものは、提言をした心理学者からも大変高い評価を得たと。

 まず局長に伺いたいのですが、現在の調べは適正に、「(基礎編)」にのっとって進化を続けている、そういう理解でよろしいかどうか、伺いたいと思います。

三浦政府参考人 現在、警察におきましては、取り調べに従事する全ての警察官に一定レベル以上の取り調べ技術を習得させるため、取り調べ技術の体系化及び研修、訓練の充実に取り組んでいるところであります。

 具体的には、心理学的知見に基づく取り調べ技術習得のための教育訓練を全国において実践させるために、警察大学校に設置された取調べ技術総合研究・研修センター等において、各都道府県警察の取り調べ指導担当者等に対しまして、心理学的知見を取り入れて作成をした取り調べの教本、今御紹介をいただきました「取調べ(基礎編)」でございますが、こうしたものを活用したり、あるいはロールプレーイング方式の取り調べ演習を活用するといったことで研修を実施しているところであります。

 さらに、警察庁におきましては、警察大学校の研究・研修センターだけではなく、各管区の警察学校におきましても、今度は、各都道府県警察の取り調べ指導担当者等を対象としまして、取調べ技術専科等の研修課程を年十回程度開催し、年間で百数十名程度に対して教養を行っているところであります。

 また、それぞれの都道府県警察におきましても、こうした研修を修了した者が、実際に取り調べを行う者を対象に各種の専科などを行いまして、できるだけ取り調べに従事をする全ての警察官に一定レベル以上の取り調べ技術を習得させるための取り組みを推進しているところでございます。

 まだ道半ばとは思いますけれども、着実にこういう知見を生かした取り調べ技術というものが全国に伝播をしているというように認識をしております。

井出委員 一点だけ重ねて伺いたいのですが、仲真紀子教授がこの教本について絶賛をしている、自由に話をさせる、特定の仮説を確認することに固執することなく一定の手続の中でオープンに質問、教本では「自由再生質問」と書かれているんですけれども、確かに、この教本を見ても、自由に話をさせると。

 この自由に話をさせるというところに取り調べの指導、重きを今置かれているのかどうかというところだけ確認したいと思います。

三浦政府参考人 こうした警察大学校等の教養の中では、まさに御指摘のとおり、誘導性が低く、また正確な記憶を喚起させることに資する質問方法の工夫でありますとか、取り調べ官の聴取姿勢など、取り調べの相手方から正確な情報を可能な限り多く得るための基本的な手法などに重点を置いて教養を実施しております。

井出委員 ありがとうございます。

 そして、仲教授は、この警察の取り組みをよしと大変評価をしているんですけれども、一つだけ、仲さんが警察に求めているものでかなえられていないものがあります。

 この「取調べ(基礎編)」を警察庁がつくる前に、そのもととなった日本学術会議心理学・教育学委員会法と心理学分科会が出した「科学的根拠にもとづく事情聴取・取調べの高度化」という提言にも盛り込まれているんですが、一つだけかなえられていないものがあります。それが何だかわかりますか。

三浦政府参考人 大変申しわけございませんが、それはちょっと存じておりません。

井出委員 確かに、そう言っていただくのもいたし方ないかと思うんですが、その一つかなえられていないことが、まさに取り調べの録音、録画なのであります。

 この提言によりますと、提言の冒頭、要旨の部分の最後のところに、「事情聴取・取調べの全面可視化」「事情聴取・取調べで得られた情報は、後の検証に耐えられるように、正確に記録する必要がある。冤罪を防止するためにも、面接技術の維持と向上のためにも、事情聴取・取調べの全面的録画・録音を早急に制度化すること。」と。

 また、この仲教授は、録音の必要性について、次のように述べています。

 警察が一生懸命取り組んでおられる自由再生質問、一定の手続の中でオープンに、自由に話してもらうという取り調べ、この取り調べ方法に適した記録の仕方、調書作成の開発が必要である。自由報告では供述者から膨大な情報が得られる、そのため全てを筆記することは困難であり、録音が必要である。供述者の言葉を生かした調書が作成できるように、要旨、逐語録、電子媒体という三段階の記録法を整備する必要があるだろう。こういうことを言われております。

 私は、国家公安委員長に伺いたいのですが、警察が、あるべき取り調べ、正しい取り調べをやっていこうと教本を出している。その中には、自由に話をしてもらう、警察のストーリーに沿ってただうなずく、首を振るといったような調べではなくて、真実を話してもらうように、自由に話を引き出そうとしている。

 そうした調べをやっていく意味で、その記録をする意味でも、この可視化、録音というものは極めて重要であって、私は、正しい、これからあるべき調べというものとこの録音、録画というものは両立するものであって、この話を聞いて、もう一度、録音、録画が取り調べの支障になるのかどうか、この材料を見ればその両立は可能ではないかと思いますが、山谷国家公安委員長、いかがでしょうか。

山谷国務大臣 井出委員には取り調べの教本を丁寧にお読みいただきまして、まことにありがとうございます。

 こうした教本を活用しながら、実践的な取り調べの教養というのを、技術をますます高めていかなければならないと思っています。

 あるべき取り調べについてでありますけれども、具体的には、被疑者の取り調べは、特に、故意や目的、共犯の謀議等の解明、供述に基づく客観的証拠の発見などの点では、真相解明のため不可欠な役割を果たしておりますが、そのような場合にも、被疑者の供述内容を過信するのではなく、それが客観的証拠との整合性を有しているか、取り調べ官に迎合した結果の供述ではないかといった点などから、供述の信用性について慎重に吟味する必要があると思います。

 また、取り調べの前提となる適正確保の点については、取り調べ時間の管理や適切な取り調べ手法を用いることは当然でありますが、それに加えて、心理学的知見に基づく取り調べ技術習得のための教育訓練等を通じて、取り調べ官の総合的な育成に取り組んでいるところであります。

 これらの取り組みを進めまして、あるべき取り調べを達成することをなしていきたいと思っております。

井出委員 もう一度伺いたいのですが、警察が目指すべき一定のストーリーに沿った取り調べではなくて、自由に話をしてもらう取り調べをこれからやっていこうと、平成二十四年に教本をつくった。その自由に話をしてもらうものを、要旨をつくったり、後で検証したり、これは私は裁判での証拠として必要だということをこれまで申し上げてきましたが、これからあるべき取り調べを、それをしっかり記録していく上でも、私はICレコーダー派ですから、録音、録画とまでは言いませんが、録音は必ず必要であると思います。

 そのことは認めていただけないでしょうか。どうでしょうか。

山谷国務大臣 先ほどの心理学的な知見も取り入れてということでありますが、虚偽自白が生じるメカニズムや心理的要因、また、誘導性が低く、正確な記憶を喚起させる質問方法の工夫や、取り調べ官の聴取姿勢等、取り調べの相手方から正確な情報を可能な限り多く得るための基本的な手法、年齢、性別、境遇、性格等、相手方の特性に応じた取り調べ方法などについて教養教育を実施しているところでございます。

 録音、録画が公判における効果的な立証に資するという観点は警察としても当然重視しておりますけれども、それには、真犯人が検挙され、事案の解明が迅速的確に行われることが大前提でありまして、録音、録画によって被疑者が供述をちゅうちょしかねないという主張については慎重に判断を行っていく必要があると考えております。

井出委員 供述をしかねる部分、慎重に判断をしていくという御答弁のところ、警察のこれからあるべき取り調べと録音というものは両立できるものだ、私はそういうことを問題提起させていただきたい。

 私の質問にも一定のストーリーがありますので、次の質問に入っていきたいと思います。

 先日、林刑事局長から取り調べの可視化について、全面的録音、録画という言葉を頂戴いたしました。それは、私の、対象事件を事細かに決めないで被疑者や弁護人から証拠の要望があったときに録音、録画の証拠をしっかりと出す、それが出せなかったときには、今の法律の三百一条にも書いてあるんですけれども、裁判所はそれを却下する、そこさえあれば、取り調べの可視化の本当の目的を達せられるんじゃないか、そういう質問に対して、全面的可視化というお話があった。

 だから、私は、最初から最後まで全部、名前、住所、電話番号を言っているところからもうこれで終わりだというところまで撮れと言っているわけではありませんし、全く争いのない事件について撮る必要があるとも言っていないんです。真実をきちっと立証するために幅広に撮っていく、検察が今平成二十六年の通知でやっていただいている部分、その趣旨にのっとって私が提案申し上げていることに対して、林局長から、全面的可視化というお言葉をいただきまして、この言葉をこれから随時使わせていただきたいと思うんですが、可視化の対象事件について国家公安委員長に伺いたいと思います。法務大臣にはもう前にも伺っておりますので、国家公安委員長に伺いたいと思います。

 警察の場合、可視化の対象事件が裁判員の対象事件になる。裁判員の対象の事件は何なのかといいますと、裁判員制度を導入する際に、国民の関心が高くて社会的に重大な事件に裁判員を参加させるべきだ、そして、ここでもさんざん議論になりましたが、制度の円滑な導入をするために事件を限定する必要がある、そういうことで、今の一定の重大犯罪に限定をして裁判員はスタートしたわけです。

 さきの裁判員法改正でも、対象事件の類型化についてはまだ多くの議論があったところです。しかし、裁判員裁判の事件というのは、国民の関心が高くて社会的に影響が大きいものを制度の円滑導入のために限定しているのが今の状態です。

 それに対して、取り調べの可視化は一体何が目的なのかといえば、裁判で、客観的な証拠、供述に争いがあったときにそれをしっかりと出す、立証を尽くすということが一点と、それともう一点は捜査の適正化を図るということであって、立証責任を果たすことと捜査の適正化をしっかりと守っていくということが、私はなぜ裁判員制度に、国家公安委員長も申されました、最も必要性の高い、類型化したものが裁判員だと。私は、それは目的が違うと思っておりますし、類型化の仕方が誤っていると思います。

 端的に申し上げれば、やはり全面的な可視化、争いが起こり得そうなものを広く撮っていくのが取り調べの適正化と立証責任を果たす、この類型化しかないと思うんですけれども、国家公安委員長に見解を伺いたいと思います。

山谷国務大臣 制度対象事件の範囲を裁判員裁判対象事件に限定ということでございます。

 裁判員裁判対象事件は、取り調べ状況をめぐる争いが比較的生じやすく、また、専門家ではない裁判員が短期間のうちに審理を行うという制度の性格上、わかりやすい立証を行っていく必要性が高いものと承知をしております。

 以上を踏まえまして、録音、録画を行う必要性が類型的に高いものとして、裁判員裁判対象事件を制度の対象としたものと承知しております。

井出委員 もう一問、重ねて伺いますと、裁判員法の改正で、また三年後の見直しが入りました。これから、裁判員の対象事件に対してもいろいろ議論があると思います。

 裁判員の対象の事件の類型が変わって、裁判員の対象の事件が変わったとき、この取り調べの可視化もそれに応じて変えることが一体可能なのかどうか。大臣の見解を伺いたいと思います。

奥野委員長 先に事務方に答えさせますよ。

 三浦局長。

三浦政府参考人 仮に、裁判員対象事件の範囲が将来変わるということがあるとしますれば、そこを踏まえ、やはりこちらの可視化の対象というのも、それは制度上変わり得るものだというふうには考えております。

井出委員 今、変わり得るということで、私は、裁判員裁判の目的と取り調べの可視化の目的は異なるものだと理解をしておりますが、唯一共通するところは、争いのある事件にはやはり可視化が必要じゃないかと。争いのある事件にはやはり国民の感覚が必要だ、そういう声もあります。

 裁判員裁判というものは、重大な事件の量刑の重い軽いを市民に判断してもらうためだけに導入された制度ではないはずです。量刑だけに国民感覚が生かされることを求められたわけでは決してないと思いますので、この裁判員裁判の対象事件も変わり得れば、可視化も当然変わってくるし、一つの共通するところは、争いのある事件に対してどうするかというところだと思います。

 ただ、しかしながら、現状、もしこの法律が成立をすれば、裁判員対象事件だけが警察と検察の録音、録画、可視化がされる。ほかの事件は、供述に争いがあって、検察の方で運用的に撮っていただけるかもしれませんけれども、それが全てとも限りません。取り調べの録音、録画がないまま公判に、裁判に臨まざるを得ない、そういうことは容易に想像されるんですが、最高裁の平木局長に伺います。

 私は、さきの本会議で、最高裁刑事局が法制審の議論の中で述べてきた部分、録音、録画が任意性を立証する上で最も適した記録媒体だとおおむねの共通認識が得られている、録音、録画がない場合は、証拠調べを請求する側に現在よりも重い立証上の責任が負わされるという運用に恐らくなっていくだろうと。

 それはそのとおりだと思いますし、この法改正の趣旨もそうだと思うんですが、その後です。録音、録画義務が課されていない事件についても、被疑者の供述が鍵となる事件においては、リスクの意味合いという意味では同様のことが言えるのではないかというふうに考えていますと。

 対象事件じゃなくても、録音、録画がなければ、それは立証側、捜査側の、検察側のリスクとなりますよ、そういうことだと思うんですけれども、これは現場の実務的なお立場の意見かなと思うんです。

 最高裁に伺いたいのは、やはり対象事件のあるなしで、取り調べの証拠が、片っ方は録音、録画が必ずあって、片っ方はありません、そういう状況で、その法整備で、一般的に、裁判所として、全ての被告に公正中立な態度で公判に臨んで事実確認、事実認定ができるのか、そこを伺いたいと思います。

平木最高裁判所長官代理者 録音、録画媒体が証拠として提出されない場合に、供述の任意性や信用性につきましてどのような判断をするのかという点につきましては、個別の事案に応じまして各裁判体が判断するものでございまして、事務当局としてはお答えをする立場にはございませんが、委員指摘の裁判実務家の発言は、対象事件と対象ではない事件でその判断に違いを設ける趣旨の発言ではないというふうに認識しております。

井出委員 裁判所は一実務家の意見として法制審でそういうことを述べておりますし、私は、法の最終的な裁きをする人の立場に立てば、事件の種類にかかわらず、できるだけ証拠はあってほしいというのが裁判官の常だと思いますし、そこを検察は二十六年の通知、運用である程度クリアをしようとしている。警察の方は、確かに物的な捜査の時間、量が多い、そういうところはわかるんですが、それにしても、検察との取り組みに現状において大きな差がある。

 その上で、この間の視察ですけれども、取り調べ機器を検察と同じものを入れて、同じことをやろうとしている。物的に捜査のボリュームが全然違うのに、捜査も、検察の方は、ある程度方向性が定まってきた中で中盤から最終の捜査をやっていく、警察は、もう最初のわけのわからぬうちから始まっていくんだと。捜査の質も違うし、量も違うし、だったら、ああいう取り調べの機器も同じことをやる必要はないんですよ。

 撮れるものは撮っておくというのがまさに警察に求められていると思いますが、公安委員長に伺います。

山谷国務大臣 録音、録画制度は、その有用性を生かしつつ、一方で取り調べや捜査の機能に過度の支障が生じないバランスのとれたものとする必要があると考えておりますが、裁判員裁判対象事件以外の事件であっても、個別の事件ごとに事件内容、証拠関係、供述証拠の必要性といったものを考慮して、個別に録音、録画を実施するといったことはあり得るものと考えております。

井出委員 最後に若干キャッチボールのボールが届いたかと思いますが、また引き続きの議論をさせていただきます。

 ありがとうございました。

奥野委員長 次に、清水忠史君。

清水委員 日本共産党の清水忠史でございます。

 私も草野球をやっておりまして、声が大きいからおまえキャッチャーやれと言われまして、非常に肩は弱かったので、盗塁し放題でした。しかし、私は常にバッター勝負を心がけておりましたので、答弁者の皆さんの答弁をしっかりとリードできるように、限られた時間、精いっぱい頑張りたいと思います。

 きょうは、非常に世間も注目しております可視化の問題、この取り調べの録音、録画の趣旨と目的についてお伺いさせていただきます。

 改めて、上川大臣にお尋ねします。

 取り調べの録音、録画の目的は、被疑者の人権保障とともに、冤罪の防止、これも第一義的な目的であるというふうに私は思っています。

 昨日、法務省の説明をお聞きしますと、驚いたことに、冤罪の防止は目的に含まれていないという説明だったんですね。この間、いろいろ議論しておりまして、私への答弁にも、今回の刑事司法改革の目的は、数々の冤罪事件を契機にというふうに述べられておりますし、冤罪事件の防止という観点がなければ、そもそも成り立ち得ないのではないかと思っております。

 副次的な位置づけというのではなく、冤罪防止ということが今回の可視化、録音、録画導入の目的であるということを確認したいと思います。上川大臣、お願いします。

上川国務大臣 今回の法律案で御議論をいただいております各種制度、その中でも、ただいま御指摘の取り調べの録音、録画制度につきましては、この法律案の原因でありましたさまざまな事件がございまして、とりわけ、取り調べと供述調書に過度に依存している状態にその原因があったということを受けて、それに対して、適正な取り調べが行われるように、またその取り調べの方法につきましても多様化するように、さらに公判審理につきましても充実化をするように、こういう趣旨の中でこの制度も御議論をいただき、また提案をさせていただいているところでございます。

 録音、録画制度は、被疑者の供述の任意性等の的確な立証を担保する、取り調べの適正な実施に資する、こうしたことを通じて、より適正かつ円滑な、かつ迅速な刑事裁判の実現に資するということを目的とするものでございます。真犯人の適正、迅速な処罰とともに、誤判の防止にも資するというところに目的があるものと考えております。

清水委員 ありがとうございます。

 今、資料を皆さんのお手元に配付させていただいております。これは、検察の在り方検討会議の提言であります。ここに、「虚偽の自白によるえん罪を防止し、被疑者の人権を保障する観点から見ると、被疑者の取調べの録音・録画が有効であり、」云々と、これは貫かれているわけですよね。誤判を防止するとか真犯人を検挙するというのは当然のことですが、やはり、村木事件あるいは志布志事件、氷見事件、東電OL事件もありましたけれども、こうした冤罪被害者の声に応えて、冤罪を防止するということで、このように提言も出されているわけです。

 これは、このとおりお認めになるということで、もう一度確認をさせてください。冤罪防止ということです。ここにこだわっております。

上川国務大臣 今回の法律案につきましては、検察の在り方検討会議の提言等を含めて、この中にも明確に、「国民の安全・安心を守りつつ、えん罪を生まない捜査・公判を行っていくためには、」「取調べや供述調書に過度に依存した捜査・公判から脱却するよう、その在り方を改めていかなければならない」、こうした御指摘がございました。それを受けての法律案ということでございます。

清水委員 今、それを受けてのということで御答弁いただきました。ありがとうございました。

 次の問いは、山谷国家公安委員長、そして上川陽子大臣にもお答えいただけたらと思うんですが、この一連の冤罪被害者の方々が、口をそろえて、異口同音に、取り調べの可視化を求めてこられました。これがいよいよ法案になるということで、国民的にも注目を浴びているわけですが、これら冤罪被害者の方々は、この取り調べの録画、録音の制度について、どのような制度となることを求めていたか、このことについてはどう受けとめておられるでしょうか。どのような録画、録音制度であってほしいと希望していたか、そのことは御存じでしょうか。

奥野委員長 両大臣だな。(清水委員「両大臣に」と呼ぶ)用意ができた方から行きましょう。(清水委員「そうですね。ちょっと突然の質問なので、事務方でもいいです」と呼ぶ)では、事務方でいくか。

 林刑事局長。

林政府参考人 そのような形で、冤罪の被害者、また無罪を受けた方々、こういった方々が統一的にどのような意見を持っていたかはわかりませんけれども、少なくとも、いろいろなヒアリングの中で出てきた意見の中の一つとしては、やはり全過程の、全事件の録音、録画が行われるべきであるというような意見があったことは承知しております。

三浦政府参考人 私も個々の方々が具体的にどういう御意見をお持ちかということについてまで詳細に存じているわけではありませんけれども、ただ、いずれにしましても、そうした全事件、全過程についての可視化を求められる声が多いというように認識をしております。

清水委員 個々の方というよりは、ほとんど全員が全過程、全事件での録音、録画を求めておられます。この重大な法案に当たって、両大臣初め法務省、検察庁の方々が冤罪被害者の方々の思いをしっかりと受けとめるということがスタート地点ではないかと考えます。

 きょうは、今回の法案にどの程度、冤罪被害者らが求めていた全事件、全過程での可視化が反映されているか、検証したいと思います。

 最初に、法務省に伺います。

 今回、可視化の対象事件を裁判員裁判対象事件と検察官独自捜査事件に限定した理由は何ですか。端的にお答えください。

林政府参考人 今回、義務づけの内容が限定されているということでございますが、これにつきましては、全ての事件を一律に制度の対象とすることは、その必要性、合理性に疑問があり、制度の運用に伴う人的、物的な負担も甚大なものとなること、また、録音、録画制度は捜査機関にこれまでにない新たな義務を課するものであり、捜査への影響を懸念する意見もあるということ、そこで、法律上の制度といたしましては、取り調べの録音、録画の必要性が最も高い類型の事件を対象とすることが適当であると考えられ、そのようなものとして、裁判員制度対象事件と検察官独自捜査事件というものを対象としたということでございます。

清水委員 今のお話を伺いますと、これまで無罪となった全ての冤罪事件が可視化の対象に当てはまるのかどうか、疑問に思います。

 例えば、いわゆる村木事件と言われる郵便不正事件、そして志布志事件、PC遠隔操作事件、これらは検察官独自捜査でない場合、可視化の対象事件になりますか、法務省。

林政府参考人 御指摘の事件につきましては、本法律案の録音、録画制度の対象事件とはなっておりません。

清水委員 なっていないということであります。

 冤罪被害者の方々の思いから検察の在り方検討会議が始まり、そして、今回、一部ではありますが取り調べの録音、録画を導入しようということでありますが、対象事件は全事件の三%、裁判員裁判と検察官独自捜査事件。検察官独自捜査事件といえば年間百件程度ですよ。ほとんどの事件が可視化の対象とならない。しかも、今私が述べましたような冤罪事件が可視化に含まれないということになれば、本当にこうした被害者の方々の思いを受けとめたと言えるのか、検証しなければならないと思うんですね。

 例えば、痴漢冤罪、これも可視化の対象とならないと思うんです。今私が述べました郵便不正事件、志布志事件、PC遠隔操作事件、また痴漢冤罪も含めて、今後、これらの事件でどうやって、可視化することなしに冤罪を根絶することができるんでしょうか、お答えください。

林政府参考人 今回対象事件となっております裁判員制度対象事件及び検察官独自捜査事件、これ以外の事件につきまして、これを一律に制度の対象とするまでの必要があるとは言いがたいものと考えます。

 もとより、それ以外の、こういった対象事件以外の事件の中で録音、録画の必要性が高い場合もあると考えられますけれども、そのようなものについては、個別の事案の内容や証拠関係などによることから、そういった場合を法律上の義務の対象として厳密かつ明確な形で適切に定めていくことは困難であろうと考えております。

 検察におきましては、平成二十六年十月から運用を拡大しまして、事案の内容や証拠関係等に照らして、被疑者の取り調べを録音、録画することが必要であると考えられる事件については、罪名を限定せずに、新たな録音、録画の試行に取り組んでいるところでございます。

 こういった運用もあわせて考慮いたしますと、本制度の対象とならないこういった事件につきましても、運用におきまして必要な録音、録画というものが行われていくものと考えております。

清水委員 必要なものについては録音、録画を運用で行われるということですが、私が聞いたのは、対象事件とならない事件で、可視化をせずに冤罪はなくせるのか、こう聞いたんです。

 全ての事件を可視化する、運用でもいいですよ、ならば担保になるかもしれませんが、全ての事件ではないはずです。どうなんでしょう。冤罪をなくせるのか。なくすと言えなきゃ法案の意味がないと思うんですが、どうでしょう。

林政府参考人 検察におきましては、先ほど申し上げましたように、罪名を限定せずに、被疑者の供述が立証上重要であるものなどにつきましては、運用において必要な録音、録画を行っていくものと思います。

 この考え方は、やはり現在の裁判実務におきまして、被疑者の供述の任意性というものを判断する上での一番的確な証拠は録音、録画の記録媒体である、こういった認識がございます。そういった認識に立ちまして、自分たちの今後の供述の任意性の立証の手段というものを失ってしまうというようなリスクを考慮して、積極的に録音、録画というものを実施していくものと考えております。

清水委員 全然答えになっていないんですね。任意性を確保するというのは、これは録音、録画をすることができる事件について任意性を確保することができると言うんでしょう。私は、対象にならない事件でどうやって冤罪をなくすのかということの質問をしているのに、そのことにお答えをいただいておりません。

 では、上川大臣にお伺いします。

 これまで起きた冤罪事件は録音、録画の必要性は高くない、郵便不正事件、あるいは志布志事件、PC遠隔操作事件、あるいは日常的に起こっているかもしれません痴漢冤罪事件、これらは録音、録画の必要はない、このようにお考えですか。

上川国務大臣 これまでの事件、冤罪あるいは無罪ということで起きた事件の背景とか原因については、検証を含めてさまざまな検討がされているところでございます。

 何か一つのことによって全てが解決するということでは必ずしもなく、捜査のときの適正手続がしっかり守られ、そして捜査にかかわる一人一人の捜査員がそうした意識と、そしてその意味での行動をしない限りは、どういう制度をつくったとしても、真相を究明するという機能を果たすことはなかなか難しいのではないかというふうに私は思っています。

 その意味では、制度をつくると同時に、その制度がしっかりと運用されていく、そして運用しながら、しっかりとその問題、課題についてより深く見つけていくというプロセスそのものが非常に大事であるというふうに考えております。

 先ほど御質問の中に、こうした事件の可視化、録音、録画が進められれば、それで冤罪がなくなったという形だとするならば、そこのところは、むしろその捜査の仕方が、供述調書に過度に依存する捜査そのものが、そうした調書をつくることに非常に力を置き、それ以外のさまざまな配慮について非常に怠っていたのではないか、そういう問題があったのではないかというふうに考えております。

 録音、録画も一つの非常に大きな手法であるというふうに思っておりまして、しかも、それに適正にしっかりと取り組んでいくということが何よりも必要であるというふうに考えております。

清水委員 もちろん、取り調べ側の意識だけでは解決しないから、制度をつくってしっかりと運用させていくということ、そのとおりです。

 しかし、今回の法律や運用の中に、今、私が従前から述べているような事件が対象事件となっていないんです。では、これらは後回しでもいいのか、いつになったら対象範囲になるのか。もともと在り方検討会議で言われていたような事件が入らないということそのものが根本的に矛盾しているのではないかということを私は言いたいんです。

 今回、なぜ全ての事件を対象とするべきなのか。私は、一つに、いわゆる別件逮捕で、もともとは裁判員裁判の対象とならない事件で逮捕された被疑者が、取り調べによって、その後対象事件となるようなケースがあるから、この問題を提起しているんです。

 これは事務方で結構ですが、殺人事件では、最初に窃盗罪あるいは死体遺棄罪などで逮捕をしておいて、取り調べの過程で殺人容疑で再逮捕し取り調べるケースが往々にしてあると思うんですが、こうしたケースはありますよね。

林政府参考人 逮捕事実の身柄拘束の中での取り調べの中で、余罪についての取り調べがなされる場合というものもございます。

清水委員 最近でも、先月、三件、兵庫県の西宮市あるいは岩手県や栃木県で、別件で逮捕して、その後殺人容疑に変わるというような事件がありました。

 改めて確認ですが、窃盗事件や死体遺棄事件は録音、録画の対象とはなっていませんよね。これは確認です。

林政府参考人 窃盗事件及び死体遺棄事件は対象事件ではございません。

清水委員 そうすると、窃盗あるいは死体遺棄事件で被疑者の取り調べを始め、殺人容疑での取り調べに切りかわる場合、録音、録画はどうなりますか。

林政府参考人 今回の録音、録画義務は、当該身柄勾留がどういった事件に基づいて勾留されているかということではなくて、逮捕、勾留中の被疑者に対して対象事件について取り調べをするときには、今回の録音、録画義務の対象となります。

 したがいまして、例えば、任意性を立証する必要がある場合に、まずは録音、録画の記録媒体を公判においては取り調べ請求しなくてはならないという義務もそこに生じてまいります。

清水委員 つまり、殺人容疑に切りかわったら録音、録画を始めるということです。しかし、それ以前の別件で逮捕した取り調べというのは、全く記録媒体に残らないわけなんですね。

 布川事件についてお話をさせていただきたい。無罪となった桜井さんは、友人のズボン一本の窃盗で逮捕、勾留され、窃盗罪を被疑事実とする勾留の中で強盗殺人の自白をとられたという事例でございます。これが冤罪事件だったことは今では明らかですが、今回の法案ではこうしたケースを排除できないのではありませんか。

林政府参考人 逮捕、勾留中の被疑者に対して対象事件について調べた場合には、先ほど申し上げましたように、録音、録画の義務がかかります。

 したがいまして、その事件につきまして、対象事件について公判になった場合に、その供述調書というものをもし請求したとするならば、その場合の録音、録画記録媒体というものの取り調べ請求義務が生じます。もしそれが請求義務を果たすことができなければ、その供述調書の証拠調べ請求は却下されることとなります。

清水委員 つまり、今のお話は法案の中身を語られただけで、結局、別件で逮捕されて自白を強要される、例えば、午前中の取り調べで、おまえは窃盗だけじゃなくて殺人にも関与しているだろう、目撃証言もあると長時間密室で糾問的な取り調べを受けて自白をする、よし、では殺人容疑に切りかえるから午後から同じ供述をしろと。そこから録音、録画が始まるわけですよ。こういう事件を排除できないからこそ、全事件、全過程での録音、録画が必要ではないか、こうした観点で私はお話をさせていただいているんです。

 さらに、今回の法案には例外事由があって、録音、録画しなくてよいという規定がございます。今回、その事件が例外事由に該当するかどうか、誰が判断するんでしょうか。

林政府参考人 今回、対象事件についての録音、録画の例外事由というものの判断は、取り調べ官がその時点における事情に基づいて判断いたします。

清水委員 取り調べ官というのは、検察官、検察事務官、そして司法警察職員のことだと思います。

 なぜ、被疑者、弁護人ではなく、検察、警察、捜査機関側にその権限が与えられているんですか。撮らなくていい、例外事由を認める権限がなぜ捜査側に与えられているんですか。

林政府参考人 この判断につきましては、その時点における例外事由を判断するものについて、一番その情報に接している者であるからでございます。

清水委員 今回の刑事司法制度改革で一番批判にさらされたのは、捜査機関側ではありませんか。ずるをしている人にルールを委ねる、こういうことで本当に国民は納得するんでしょうか。

 私は、例外事由の二番目について、例えば、「十分な供述をすることができない」、これがなぜ例外事由になるのか、これについても甚だ疑問です。

 改めて、法案には書かれておりませんが、確認したいことがございます。

 被疑者には黙秘権が保障されています。例えば、被疑者が完全黙秘を宣言する、私は黙秘しますと。こうした場合、供述がとれにくくなる、とれないと判断して、録音、録画をしなくていいという例外事由になりますか、なりませんか。

林政府参考人 例外事由につきましては、例えば、今御指摘のあるように完全黙秘をされている、そういった状況のもとでは、「その他の被疑者の言動により、記録をしたならば被疑者が十分な供述をすることができない」という例外事由を立証することはできませんので、そういった場合、例外事由には当たりません。

清水委員 当たらない。つまり、完全黙秘をした場合は例外事由に当たらないから、そのまま可視化を続けるということですね。これはもう当然のことだと思います。まさしく、録音、録画するかしないかというのは被疑者の側に選択権が与えられるべきものであって、捜査官側がその例外事由を認めるというのは、私は納得ができません。

 さらに、今回、指定暴力団の構成員による犯罪を可視化の例外事由としています。これは、山谷国家公安委員長、なぜ指定暴力団の構成員については録音、録画しなくてよいという可視化の例外事由とされるんですか。

山谷国務大臣 三号事由のお尋ねと思います。

 組織的犯罪等において被疑者が報復を受けるおそれがあり、録音、録画をすると被疑者が十分な供述ができないと合理的に認められる場合について、このような場合にまでなお録音、録画を義務づけ、取り調べによる供述の獲得を断念するとすれば、捜査による事案の解明に大きな支障が生じるところであります。

 三号の例外事由の趣旨は、指定暴力団員による事件の実情を踏まえ、録音、録画による捜査の支障を回避し、暴力団犯罪に実効的に対処するため、指定暴力団員による事件であることそれ自体として独立の例外事由とするものであります。

清水委員 供述することによっての組織からの報復を恐れてしまう、こういう御答弁がございました。

 では、お伺いしますが、過去五年間、裁判員裁判対象事件で、指定暴力団の構成員による犯罪に係る事件のうち、被疑者の供述が明らかにされたことで、つまり暴力団員が供述したことを原因にして、当該被疑者がその所属する指定暴力団から報復を受けた事例は何件ありますか、警察庁。

三浦政府参考人 お尋ねのような報復事例について網羅的には把握をしておりませんけれども、暴力団員である被疑者が実際に組織から報復を受けた事例として、例えば、詐欺事件の被疑者として逮捕され、自身や共犯者の犯行を認める供述をした暴力団幹部が組織から指詰めを強要された事例等を把握しております。

清水委員 資料の一番最後をごらんください。ここに、今刑事局長が述べられました、暴力団の構成員の事件のうち、裁判員裁判になった件数はどれだけあるかを出していただきました。しかし、報復事例については網羅的に把握していない、何件あるかわからないということですから、このことだけをもって例外事由に当てはめるということは果たしてどうなのか。

 私は、あらかじめ言っておきますけれども、指定暴力団の構成員を擁護しているわけじゃありませんよ。もちろんこれは取り締まらなきゃならないし、壊滅させなければならないのは当然です。

 しかし、日弁連も、「本来、捜査機関が責任を持って供述者の身の安全を保証すべき筋合いであって、この問題を取調べの可視化と関連させること自体が適切ではない」、このように述べていることを重く受けとめていただきたいと思います。

 本法案が可視化の対象事件とするのはほんの三%ですから、しかも全過程で行われない、これでは冤罪被害者の思いは全く反映されていないと言わなければなりません。

 あすの参考人質疑も受けまして、さらに可視化の問題を深く掘り下げていく、その決意を申し上げまして、質問を終えます。

奥野委員長 次に、上西小百合君。

上西委員 上西小百合です。

 本日、質問の機会をお与えいただきましたことに、まずはお礼を申し上げます。

 先日からの御答弁、そして先週の視察に参加をさせていただく中で、この改正法案に対して課題がある、こういうふうに感じました。取り調べの可視化について幾つか質問をさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、私が究極において今回の改正法案に全面的に賛成することにちゅうちょを感じるのは、今回の改正法案が取り調べの全面可視化をすることを否定していることであります。

 例えば、初めて逮捕された直後の人間は、一夜にしてしらがになってしまったという例が報告されているぐらい、人生を悲観したり、そして、例えば思慮分別、冷静さを欠くような行動をしてしまったり、取り調べ官の威圧的な言動や泣き落とし戦術にはまって、真実や確信していることと違うことを供述してしまう、こういうケースも存在することがあるというふうにお伺いをしております。

 そのような取り調べの独特の雰囲気、厳しさの中で、取り調べの可視化を進める、進めるとは言いながらも、録音、録画されるのは裁判員裁判対象事件と検察の独自捜査事件だけで、可視化したら容疑者が十分に供述できなくなると検察官が判断した場合には録音や録画をしない例外が今回幅広く認められている点が、どうしても私には合点がいきません。

 本会議で、捜査機関が恣意的に可視化の例外事由を必要以上に運用した場合にそれを防ぐ担保があるのか、こういう質問に対して、上川法務大臣は、捜査機関が例外事由に当たると判断して録音、録画をしなかった場合に、公判で例外事由の存否が問題となった場合は、裁判所による審査の対象となり、捜査機関側の責任で例外事由を立証する責任がある、そのため、捜査機関としては、例外事由を十分に立証できる見込みがない限り、例外事由に当たると判断して録音、録画をしないことはできないと考えられ、例外事由が恣意的に運用される余地はないと御答弁され、余地はないということを強調されました。

 そこで、大臣にお尋ねをいたしますが、検察官が確信と自信を持って例外事由に相当すると判断して可視化しなかった取り調べを、司法権が例外事由に相当しないと判断し、当該取り調べの模様が録音も録画もされていないケースが生じた場合、これはどのような扱いになるのか、上川法務大臣にお伺いをしたいと思います。

上川国務大臣 被告人の供述調書が作成された取り調べにおいて、捜査機関が録音、録画義務の例外事由に当たると判断をして録音、録画をしなかった場合に、公判において検察官がその供述調書の証拠調べ請求をして任意性が争われれば、録音、録画義務の例外事由の該当性が問題となるわけでございます。

 そして、裁判所がこの点を審査いたしまして、結果として例外事由に該当しないというふうな判断をした場合におきましては、録音、録画記録の証拠調べ請求の義務違反となるわけでありまして、当該供述調書の証拠調べ請求につきましては却下をされるということになるわけでございます。

上西委員 証拠調べ請求の却下ということになるというわけでありますが、今、結局、司法権が例外事由に相当しないと判断するとそういうふうな形になってしまうということでありますから、やはり一刻も早く全面可視化をしなければならないと思うんですね。そして、三年間という時間もしっかりと見直していただくようにしなければならないのではないか、こういうふうに思います。

 そしてまた、幾ら考えましても、取り調べで供述した内容を公判の場所でぱっと覆してしまうような人間が、録音、録画されていることが原因で供述をしなくなる、こういうふうに判断されるれっきとした理由が私には見当たりません。それが、先ほどからお話が上がっております、たとえ組織犯罪でありましても、供述をしてしまえば、録音されていようがされていまいが、供述したことには変わりないと思いますし、視察で伺った検察庁の取り調べ官の方からは、可視化されれば、誘導、脅迫等で供述されたわけではないという証明になるので、それはそれでいいことだという御意見もありました。

 加えて、被疑者や参考人が公判廷で、誘導や脅迫等で供述させられたと弁明するチャンスを与えないための録音や録画、この録音や録画を調べられる側は、どのようなケースにおいて被疑者や参考人が供述しなくなると法案作成の過程では想定されたのでしょうか。これは具体例を挙げて御説明をいただけますでしょうか。

林政府参考人 本法律案の刑事訴訟法三百一条の二第四項第二号におきましては、「被疑者が記録を拒んだことその他の被疑者の言動により、記録をしたならば被疑者が十分な供述をすることができないと認めるとき。」を例外事由としているわけでございます。これは、例えば、録音、録画されると取り調べにおける発言が逐一記録されて、後の公判で自己に不利益な証拠として用いられるおそれがあるとして被疑者が録音、録画を拒否した場合、こういった場合などがこの例外事由に当たるものと考えられます。

 また、法律案の刑事訴訟法三百一条の二第四項第四号におきましては、被疑者の供述が明らかにされた場合には被疑者等に加害行為がなされるおそれがあることにより、「記録をしたならば被疑者が十分な供述をすることができないと認めるとき。」をこの例外事由としております。

 これにつきましては、例えば、振り込め詐欺グループの内部におきまして、多数名で、詐欺でとった金の一部を着服したメンバーに対しまして暴行を加えて死亡させたという傷害致死事件におきまして、被疑者が録音、録画のもとで、自己の犯行については詳細に供述するものの、共犯者の関与やグループの実態等については口を閉ざしている状況にあって、また、被疑者にグループの上位者からの威迫を伴うような口どめの指示がなされているような場合、こういった場合などにはこの例外事由に該当し得るものと考えられます。

上西委員 先ほど清水先生の質問でもありましたが、報復された事例が何件あるのか、こういったことに関しては、そこまで把握をしていないと。今御説明をいただいたような例があるというのはわかりましたが、実際、その件数、どういった割合でそういったことが発生をしているのか、そういったものもわからない。

 そして、私が先ほど申し上げましたように、録音、録画されているから供述ができないのか。実際、供述をしてしまえば、結局それは供述したこととして残るわけでありますから、それは、録音、録画するのかしないのかという理由にはならないと思うんですが、これに関してはいかがお考えでしょうか、再度お願いいたします。

林政府参考人 録音、録画しない場合の取り調べにおきましては、供述調書というものが作成された場合に、その供述調書に記載された内容、これが裁判等に顕出されたり、あるいは弁護側に証拠開示されたりすることとなります。

 他方で、録音、録画を行った取り調べにおいて、しかも供述調書が作成された場合とを比較しますと、供述調書に記載された内容のみならず、供述調書には記載されていない内容、すなわち、録音、録画の記録のもとで供述したこと全てが記録媒体という形で証拠開示なされ、あるいは裁判において公判廷に顕出される、このような形になりまして、録音、録画がされているかされていないかということにつきましては、供述する被疑者にとっては、将来、自分の供述が裁判等に出ていく範囲というものが格段に異なることになろうかと思います。

上西委員 ということは、事件に関係する内容が供述されて、録音、録画された場合は当然全て残るわけなんですけれども、そういったことで、事件に関係することは供述調書に記載をされていないという、選択もできるんでしょうけれども、そういうふうな認識をされていて、こういった例外事由を認められているということでしょうか。

 済みません、では、もう一回言いますね。

 録音、録画をされていると、結局、一から十まで証拠として残っている。そして、録音、録画されていない場合は、供述調書というペーパーでしか残らないから、報復であったり、そういったことにはならないという、それだけの理由で例外事由を認められているんでしょうか。

林政府参考人 取り調べの録音、録画につきましては、かねてより、そのメリットとして、被疑者の供述の任意性の的確な立証、判断に資する、あるいは取り調べの適正な実施に資するということがございますが、他方で、デメリットとして、被疑者が十分な供述をしづらくなる、取り調べや捜査の機能に支障が生じる場合がある、こういったデメリットがあるわけでございます。

 この中で、被疑者が十分な供述をしづらくなるという一つの点につきましては、先ほど申し上げたような、録音、録画下での供述が全て録音の記録媒体に記録されてしまいますので、そのことについて懸念をする被疑者というものが実際には存するということでございます。

上西委員 何回聞いても同じような御答弁しか出てこないので、次に移りたいと思いますけれども、やはり、今、私がずっと申し上げていますように、録音、録画をするかしないかが、そうやって供述しにくくなるのかしやすくなるのか、そういうふうなことで例外事由を認めるんだ、こういう言い分はちょっとおかしいんじゃないかと思いますので、ぜひ見直していただくというようなことも検討していただきたい、こういうふうに思います。

 また、任意の取り調べも含めて可視化しなくてもいい例外事由があるということは、強引な誘導尋問がされていないのかどうなのか等の検証がいつまでたっても完全にはできず、実質的に権力の冤罪再発体質は温存されたままであると言っても過言ではないように私には思えます。

 例えば、国民の記憶に新しい冤罪事件であった足利事件、一九九〇年に起きたこの足利事件では、容疑者として逮捕、起訴され、実刑も確定をして服役までしていた男性は、取り調べ当初、そして公判でも一貫して無実を主張していましたが、現在では想像もできないぐらい粗雑なDNA鑑定の結果を提示した取り調べ官から、おまえのDNAの型と現場に残った遺留品のものが完全に一致した、DNA型が一致するのは指紋の一致と同じぐらいおまえがやったことを示しているんだ、こういうふうに告げられた。いわば誘導尋問にも等しい取り調べ官の威圧の結果、ほんの一瞬、自分が犯人であると自白をし、その自白と不正確なDNA検査結果のみが有罪の決め手になった、こういうふうに言われています。

 その後、科学技術が向上し、精巧、精密なDNA検査で、遺留品への付着物が彼のものとは一致しないことが、事件から二十年近くがたとうとする二〇〇九年の五月、この再鑑定によりようやく判明をし、男性の無実が証明をされたのですが、男性にとっては、大切な人生の大部分を棒に振らされたわけであります。

 これはまさしく誘導尋問体質が冤罪を引き起こしたということにほかならず、今回の法改正の内容のままでは、こうした警察、検察の伝統的な体質を温存しているのではないか、こういう声も聞かれますし、私自身もそういうふうに思えてならないのですが、いかがでしょうか。

 足利事件があった一九九〇年前後の判例の中には、DNA鑑定はまだ信憑性に乏しいと断ずるものもあったと記憶しているのですが、当時のDNA鑑定技術を過度に信用した足利事件の捜査手法の反省も含めて、法務大臣の御所見をお聞かせください。

上川国務大臣 ただいまの委員からの御指摘の中で、非常に誘導尋問のような取り調べがなされてきた、そして、そうした手法が温存されることになるのではないか、こうした御指摘でございました。

 まさに、そうした誘導尋問のような取り調べがなされている実態について、録音、録画制度そのものを導入することによってこうした問題の解決に当たるということで、この制度の検討、さらには提案がなされたというふうに考えているところでございます。

 この法律案の取り調べの録音、録画制度におきましては、取り調べで供述が得られなくなる、真犯人の検挙、処罰ができなくなるというようなことにつきましても大変重要な観点だというふうに思っておりまして、今回、捜査機関に、原則として取り調べの全過程の録音、録画を義務づけているということでございますが、一部に例外規定を設けるということにつきましても排除するものではないというふうに考えるところでございます。

 例外事由に該当するということでございますけれども、先ほど来のお話にありましたが、録音、録画をすると、十分に供述できないだけでなく、それが外部にあらわれた被疑者の言動、二号でございますが、さらには客観的に加害等のおそれがあること、四号によって、合理的に認められるものに限定をされるということでございます。

 先ほども御質問ございましたけれども、被疑者が黙秘をしているというだけでは直ちに例外事由に該当するものではないということでございまして、捜査機関が録音、録画を実施せず、公判で例外事由の存否そのものが問題となった場合につきましては、先ほど答弁をさせていただきましたが、裁判所による審査の対象となり、そういう意味で、例外事由が恣意的に運用されるという余地がないというふうに考えるところでございます。

 今申し上げたこと、結論でございますが、本法律案の録音、録画義務の例外事由ということにつきましては、限定的であり、さらに恣意的運用を行うこともできないということで、例えば、例外事由に名をかりて、録音、録画を行わずに不適正な取り調べを行うといった、そうした余地はないものというふうに考えているところでございます。

上西委員 今、例外事由も恣意的には運用をされないからというような御答弁を大臣からいただきましたが、私が今申し上げました足利事件では、実際に誘導尋問でこういうふうな冤罪が生まれてしまった。不確定な証拠を示し誘導尋問するような、違法とも言える行為がなければ、そもそもこの男性は自白、供述をしていなかったというふうに私も考えますし、こういった冤罪を防ぐためにも、形式だけの改正法案ではいけない、本当に、国民の皆さん、そして冤罪被害者となられた方々の思いをしっかりと反映させる、中身のある改正法案でなければならない、このように思います。

 もうほとんど時間がないんですけれども、先週、これは朝日新聞なんですけれども、大阪地裁において、大阪府警が、裁判所の令状をとらないまま、捜査対象の男性や知人女性の車に、衛星利用測位システム、いわゆるGPS端末をつけて得た情報は、本来、司法のコントロールが必要であるから、それを得ないでした捜査は違法であるというふうな判断が出たということが公になりました。

 GPSの運用に関しては、同じ大阪地裁で別の裁判官が証拠採用したばかりで、刑訴法にはまだ当該規定がありませんし、最高裁判所で争われたこともありませんが、こういった場合、今後どのように御対応されるのかという御答弁をいただきたいと思います。

 つまり、捜査令状なくして警察に勝手に車にGPSを取りつけられた男性が、窃盗事件があった現場近くに自家用車が駐車されていた事実を取り調べ官に示された。それまでアリバイを主張していたが、窃盗の実行犯であることを自白した様子が録音、録画もされていた。しかし、公判では、起訴状朗読直後から否認をし、裁判所は、GPS端末から得た情報を違法だとして証拠採用しなかった。このような場合、どのような手続がとられるのか、御説明をお願いいたします。

奥野委員長 林刑事局長、時間が終わっていますから、先ほども同じような議論がありましたから、端的に。

林政府参考人 今の一般論で申し上げますと、検察官請求証拠が違法であるとして裁判所が請求を却下した場合、検察官はそれに対して異議の申し立てをすることができます。これを入れられた場合には、当該証拠は証拠として使用できることとなります。

 逆に、検察官が異議申し立てをしない場合、あるいは裁判所が検察官の異議申し立てを入れない場合には、裁判所は、排除決定をした証拠以外の証拠に基づき判決を行うものと承知しております。

上西委員 ありがとうございます。

 今御答弁いただきましたが、やはりGPSといったものが今後どういうふうに扱われていくのか、立法にも向けてしっかりと考えていかなければならないと思います。

 今回は可視化の点について御質問させていただきましたが、国民の皆さん方の意見、そして参考人、そういった取り調べを受ける方々の意見がしっかりと反映された改正法案になるよう、どうぞよろしくお願いいたしたいと思います。

 ありがとうございました。

奥野委員長 次回は、明十日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時二十五分散会


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