衆議院

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第23号 平成27年6月12日(金曜日)

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平成二十七年六月十二日(金曜日)

    午前十時三分開議

 出席委員

   委員長 奥野 信亮君

   理事 安藤  裕君 理事 井野 俊郎君

   理事 伊藤 忠彦君 理事 柴山 昌彦君

   理事 盛山 正仁君 理事 井出 庸生君

   理事 漆原 良夫君

      尾身 朝子君    大塚  拓君

      門  博文君    菅家 一郎君

      小松  裕君    今野 智博君

      辻  清人君    冨樫 博之君

      藤原  崇君    古田 圭一君

      細田 健一君    前川  恵君

      宮川 典子君    宮崎 謙介君

      宮澤 博行君    宮路 拓馬君

      簗  和生君    山口  壯君

      山下 貴司君    若狭  勝君

      重徳 和彦君    大口 善徳君

      國重  徹君    上西小百合君

    …………………………………

   法務大臣         上川 陽子君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 山谷えり子君

   法務副大臣        葉梨 康弘君

   外務副大臣        中山 泰秀君

   法務大臣政務官      大塚  拓君

   最高裁判所事務総局刑事局長            平木 正洋君

   政府参考人

   (警察庁長官官房総括審議官)           沖田 芳樹君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  辻  義之君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    三浦 正充君

   政府参考人

   (警察庁警備局外事情報部長)           瀧澤 裕昭君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    林  眞琴君

   法務委員会専門員     矢部 明宏君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十二日

 辞任         補欠選任

  冨樫 博之君     小松  裕君

  宮川 典子君     尾身 朝子君

  宮路 拓馬君     前川  恵君

同日

 辞任         補欠選任

  尾身 朝子君     細田 健一君

  小松  裕君     冨樫 博之君

  前川  恵君     宮路 拓馬君

同日

 辞任         補欠選任

  細田 健一君     宮川 典子君

    ―――――――――――――

六月十二日

 治安維持法犠牲者に対する国家賠償法の制定に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第一七三一号)

 同(斉藤和子君紹介)(第一七六五号)

 同(畠山和也君紹介)(第一八五八号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一八五九号)

 別居・離婚後の親子の断絶を防止する法整備に関する請願(冨岡勉君紹介)(第一七三二号)

 同(伊藤渉君紹介)(第一七六七号)

 同(柴山昌彦君紹介)(第一七六八号)

 同(馳浩君紹介)(第一八六〇号)

 裁判所の人的・物的充実に関する請願(横路孝弘君紹介)(第一七三三号)

 同(大口善徳君紹介)(第一七七〇号)

 同(柴山昌彦君紹介)(第一七七一号)

 同(遠山清彦君紹介)(第一八六二号)

 同(柚木道義君紹介)(第一八六三号)

 選択的夫婦別姓制度導入の民法改正を求めることに関する請願(大口善徳君紹介)(第一七六六号)

 同(高木美智代君紹介)(第一八一六号)

 法務局・更生保護官署・入国管理官署及び少年院施設の増員に関する請願(柴山昌彦君紹介)(第一七六九号)

 同(遠山清彦君紹介)(第一八六一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 刑事訴訟法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四二号)


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     ――――◇―――――

奥野委員長 これから会議を開催させていただきます。

 開会に先立ちまして、民主党・無所属クラブ所属委員に対し、御出席を要請いたしましたが、御出席が得られません。やむを得ず議事を進めます。

 内閣提出、刑事訴訟法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房総括審議官沖田芳樹君、警察庁生活安全局長辻義之君、警察庁刑事局長三浦正充君、警察庁警備局外事情報部長瀧澤裕昭君及び法務省刑事局長林眞琴君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

奥野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

奥野委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局平木刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

奥野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

奥野委員長 本日は、特に取調べの録音・録画制度の創設について質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。國重徹君。

國重委員 おはようございます。公明党の國重徹でございます。

 本日は、刑事訴訟法等の一部を改正する法律案、そして先ほど委員長の方からもございました取り調べの録音、録画の創設に関して、きょうは質問をさせていただきたいと思います。

 先日、六月十日に、布川事件の冤罪被害者である桜井昌司さんを初め五名の参考人の皆様に当委員会までお越しいただきまして、それぞれの意見陳述、また当委員会の委員からさまざまな質疑をさせていただきました。私も、体験に基づく言葉、ほとばしる言葉、これは本当に心に刺さったものがございました。

 この参考人の意見陳述、参考人質疑、これに関して、上川大臣、また山谷国家公安委員長、ごらんになられましたでしょうか。まず、その確認をさせていただきたいと思います。

上川国務大臣 インターネット中継によりまして拝聴させていただきました。

山谷国務大臣 速記録を読ませていただいております。

國重委員 上川大臣、また山谷国家公安委員長はともにごらんになったということですけれども、ぜひ、山谷国家公安委員長には、お忙しいのでなかなか時間をとって見るのは難しいかもしれませんけれども、特に桜井さんの意見陳述等に関しては、また改めてインターネット中継等でごらんいただければと思います。やはり、文字ではなくて、しゃべっている、言葉に詰まって、いろいろな感情が吐露された部分もございますので、またぜひそれも見ていただければと思います。

 その中で、お二人とも見られたということですけれども、冤罪の痛みを御自身の痛みと感じて、本当に一人の痛みに同調して、冤罪のない社会、そして冤罪の苦しみに悩む人がいない法律にしていただくために、ぜひ真剣に考えていただきたいと、本当に冤罪者一同は思っています。桜井さんの言葉でございます。

 この桜井さんのさまざまな意見陳述、また参考人の皆様のそれぞれの意見を聞いて、大臣、また国家公安委員長、どのように感じられたか、また、今後、それぞれの職務を行うに当たってどう生かしていこうと考えられるのか、お伺いしたいと思います。

上川国務大臣 先日の参考人質疑でございますが、五名の皆様から、取り調べの録音、録画制度も含めまして、今般の刑事訴訟法等の一部改正をめぐり、さまざまな御意見を大変丁寧に、また大変思いを込めてお話をされたということで、この場をおかりしまして心から御礼を申し上げたいというふうに思っております。

 布川事件の桜井参考人を初めとして、いずれの御意見におきましても、御自身の体験、また御経験、さらには御見識、御学識ということで、そうしたものを踏まえての真剣な思いというものが本当に感じられるということでございました。私にとりまして、その一言一言の重みというものを感じたところでございます。

 今回の新しい時代の刑事司法制度のあり方につきましては、まさに改革の契機となりましたさまざまな冤罪事件が二度と起こらないようにするために、繰り返さないようにするためには、刑事司法が真に国民に信頼をされるものでなければならない、そのためには何をなすべきか、この大きな問いに対して、いずれの参考人の方々も、御意見の違いはあるということでございますけれども、しかし、その問いに対して真摯に向き合い、そして真剣な言葉を述べられたというふうに思っております。

 取り調べの録音、録画も含めまして、今回の法律案の中には、さまざまな制度、新しいものもございますので、そのことについての御議論を尽くしていただき、また可決の暁には、実際の刑事訴訟の現場の中でしっかりと適正な運用を図る、このことが何よりも大事だということも感じた次第でございます。

山谷国務大臣 五名の参考人の方々、それぞれの立場から御意見を述べられたわけでございまして、本法案の審議を進めていただくに当たりまして非常に貴重な機会であったと考えております。

 犯人でない人を犯人と誤認して、その人が刑に服するようなことはあってはならない。我が国の治安に責任を持つ国家公安委員会委員長としても、刑事司法制度の役割の重み、そして適正捜査の重要性について、改めて思いを深くしたところでございます。

國重委員 それぞれ、上川大臣、また山谷国家公安委員長から言葉がございました。本当に今のお言葉、参考人の皆様のそれぞれの思い、意見というものをしっかりと受けとめて、これからの法制化、また適正な運用にしっかりと取り組んでいただきたいと思います。

 やはり、刑事司法というのはその人の人生に大きな影響を及ぼします。私も、一年間ぐらい争った刑事事件で、最後、無罪判決を言い渡されたときに、その被告人がその場で泣き崩れた姿も見ましたけれども、本当にそれが胸に焼きついております。そういった思い、こういったものも踏まえながら、私もしっかりと今後の刑事司法のあり方に取り組んでまいりたいと思います。

 桜井参考人が先日の参考人質疑の中で、耳に痛い言葉だと思いますけれども、警察、検察は信用できないものだと体験として知っている、警察というのは、職業的冤罪製作者といいますか、常に悪い人と出会って、常に人を疑うというか人の言葉を信じないんですよ、こういうようなお言葉を言われました。

 私の実務上の経験で、本当に一生懸命、日夜頑張られている警察の皆様がいらっしゃることも知っております。頭が下がるような思いをしたこともあります。ただ、やはりその一方で、職務熱心の余り行き過ぎた取り調べがされている、そういうような事件にも当たったこともございます。

 今回、取り調べの録音、録画、法制化の第一歩ということですけれども、冤罪の防止、こういった観点からも、やはり、密室の取り調べというものに対して私は大きな懸念を持っております。冤罪の防止、適正な取り調べ、これをしっかりと担保していくためには、できる限り取り調べの録音、録画というのは広く実施していくべきだと思っております。

 一方で、身柄事件だけをとってみても、約十一万人が身柄拘束されていて、刑事手続に付されている現状がございます。その全てに録音、録画を直ちに実施していくことは極めて難しいということも理解できます。

 ただ、警察においても、今後、録音、録画の試行に取り組む中で、捜査の現場で、録音、録画のノウハウが向上していく、実際に録音、録画というものをやっていく中で、これはかえって自分たちを守るものにもなる、自分たちの取り調べ、今まで違法な取り調べだと言われることもあったかもしれないけれども、録音、録画をすることによって、そういうことを言われることもなくなる、さまざまなメリットもある、そういうことが現場の中で浸透してくるようなことになれば、それに伴って、裁判員裁判対象事件以外の事件についても録音、録画を積極的に実施していくことも、そういった方向性もあり得るんじゃないかと私は思っておりますけれども、警察庁の見解についてお伺いいたします。

三浦政府参考人 警察におきましては、裁判員裁判対象事件に限定されているとはいえ、年間三千件を超える事件、延べ四万回を超える被疑者取り調べを対象として、録音、録画という全く新しい取り組みを始めたところでありまして、また、裁判員裁判対象事件一つ一つが、国民がその解決を期待する大変重要な事件でもあるわけでございます。まずは、制度対象事件に集中をしてまいりたいというように考えているところでございます。

 もっとも、今後は、現場レベルで具体的かつ実践的なノウハウが積み重ねられてくるものと考えておりまして、制度の対象外の事件につきましても、事件や取り調べごと、個別に判断を行いまして、事案解明への支障が少ない場面では、公判立証なども見据えまして、録音、録画を実施していくといった運用は十分に考えられるところでございます。

國重委員 今の御答弁の中で、制度対象事件以外の事件についても録音、録画を実施していくということは、運用として十分に考えられるという答弁でございました。

 なかなか、警察というのは、私も今までやりとりしてきましたけれども、かたいというのがありますけれども、今、そういった方向性も十分考えられるというような答弁でしたので、ぜひ、これに関して、まずは運用で広げていっていただきたい。

 よくこの委員会でも、井出委員初め、ICレコーダー等でもできるんじゃないか、もっと簡易なやり方でも進めていくべきじゃないかというような意見もございました。さまざまな方法を駆使して、少しでも積極的に実施していっていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 続きまして、被疑者取調べ適正化のための監督に関する規則の施行状況について伺います。

 配付資料をごらんいただければと思いますけれども、これは資料一、二ということで、平成二十三年から平成二十六年の被疑者取調べ適正化のための監督に関する規則の施行状況について、ここで示されております。

 この中で、さまざま、「監督対象行為の類型」というのがありますけれども、「殊更に不安を覚えさせ、又は困惑させるような言動をすること」というのがこの類型の中にありますけれども、これは具体的にどのような意味内容なのか、お伺いいたします。

沖田政府参考人 取り調べにおきましては、その性質上、取り調べ官が意図するとしないとにかかわらず、被疑者は多少なりとも不安を覚え、あるいは困惑することもあるものと考えられますが、それを前提といたしまして、御質問の「殊更」ということでございますが、これは、わざと、あるいは故意にという意味でございまして、例えば、事件と無関係な家族について、被疑事実を認めないと家族を逮捕することになるなどと申し向ける、こういった言動がこれに該当するものと解しております。

國重委員 ちょっと、わかったような、わかっていないようなということで、私もそこまではまだ明確には理解できないんですけれども、先日、原宿警察署に視察に行かせていただきまして、非常に貴重な経験をさせていただきました。その中で、取り調べ監督官の方からもお話を丁寧に伺いました。非常に勉強になりました。

 そのときに、驚いたのが、監督対象行為、こういうものがある、その中で、今言われた、「殊更に不安を覚えさせ、又は困惑させるような言動をすること」、こういったものもあると。では、この警察署では去年は何件ぐらいそういうものがあったんですかと言ったら、ゼロ件ですということで返ってきまして、そのときに、これは正直なところ、私の実務感覚に照らして、それはあり得ないだろうということで、率直に思いました。

 この取り調べ状況についての報告書、これを見ても、例えば平成二十六年は、被疑者取り調べの件数が百四十四万七千九百八十八件あって、先ほどの、「殊更に不安を覚えさせ、又は困惑させるような言動をすること」、これはわずかに三件、この監督対象行為全て合わせても三十二件ということで、非常に少ない。

 少ないのは一面ではいいことなんですけれども、一面では、この監督対象行為というのは、もちろん実効性はあると思います、あると思いますけれども、やはり実効性に乏しい面があるんじゃないか、また、身内に甘いと言われても、これは仕方がないんじゃないかというふうに私は率直に思いました。

 今回の取り調べの録音、録画というのも、冤罪防止、適正な取り調べを担保するためのものです。この監督制度というのもその一つの手法としてあるわけですから、ぜひこの実効性を高めていっていただきたいと思います。

 私は、もう件数は少々多くなってもいいと思うぐらいなんです。しっかりと、こういったことについて、より実効的な方法で取り組んでいっていただきたいと思いますが、今後の取り組みについてお伺いいたします。

沖田政府参考人 取り調べ監督制度につきましては、主に捜査に携わらない総警務部門の者が、取り調べをランダムに自分の目で視認するなどしてチェックするものでございますけれども、こうした実効性を高めるため、例えば、都道府県警察では、本部長の指名する警察官を巡察官として警察署に派遣いたしまして、実際に視認したり、あるいは警察署に対する指導を行っております。

 また、警察庁では、都道府県警察におけるこの制度の施行状況につきまして、毎年一回、実地点検を行い、必要な指導を行うなどしているところでございます。

 さらに、監督対象行為が行われたと疑うに足りる相当な理由がある行為については、厳正に調査を行うことによって、監督の実効性を高めているところでございますけれども、委員からも御指摘のとおり、こうしたものをさらに実効性を高めるために、今後も不断の見直しを行ってまいりたいというふうに考えております。

國重委員 わかりました。ぜひ、今後しっかりと、さらにさらに取り組んでいただきたいと思います。

 今も申し上げましたとおり、平成二十六年では、約百四十五万件の被疑者取り調べのうち、監督対象行為となるのはわずかに三十二件。そうであれば、私は、こういった対象になる事件に関しては、取り調べの録音、録画をやるべきじゃないかというふうに思うんです。要するに取り調べの適正化が疑われるというような事件ですから、ぜひこれに関しては運用として録音、録画をやるべきじゃないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

三浦政府参考人 取り調べに係る苦情を受理するという制度もあるわけでございますけれども、そうした場合には、監督部門において調査を実施し、監督対象行為の有無を確認する、このようにされております。

 調査においては、関係書類の閲覧、捜査主任官等からの報告聴取、取り調べの外形的状況の確認、取り調べ官等からの報告聴取、被疑者の面接等を実施しておりまして、その結果は捜査主任官に通知をされまして、任意性に疑いが生じるような行為があれば、取り調べ官に対する指導、取り調べ官の交代等の適切な措置がとられることとなります。

 そのため、以後の取り調べについて苦情の申し出がなされるといったような事態が生じることは考えにくいと思っておりまして、先ほど申し上げた措置に加えて当該取り調べの録音、録画を行う必要性というのは、必ずしも高くないのではないかと考えているところであります。

 もっとも、一切しないというわけでは必ずしもないわけでありまして、先ほども申し上げましたように、事件や取り調べごと、個別に判断を行いまして、公判立証なども見据えまして、録音、録画を実施していくといった運用についても十分に考えられる、そのように考えます。

國重委員 私は、この件数自体も非常に微々たるものですし、先ほど御答弁いただいて、警察段階においても、対象事件以外にも積極的に運用として録音、録画を実施していく方向性というのも十分あり得るというようなことがありましたので、それほどの負担にもならないと思うんです。もちろん取り調べ担当官をかえるというのは当たり前のことかもしれないですけれども、そういった行為をされるという人は非常におびえているでしょう、心理的な圧迫を非常に受けていると思いますので、ぜひこういったものに関して、運用面で、録音、録画、また広く進めていっていただきたいと思います。

 では、次の質問に移ります。

 録音、録画による被害者のプライバシー保護等に関してお伺いいたします。

 私、司法修習の検察修習で驚きましたのは、性犯罪事件の調書、これを初めて見たときに非常に衝撃を受けました。自分自身の初体験とか性癖とか、そういったことまでつまびらかに、そのとき見た調書には書いておりました。ここまで書くんだということで、非常に衝撃を受けたことを覚えております。

 被疑者の取り調べの録音、録画、これがされるようになりますと、調書というのはその一部だけが書かれているものであって、録音、録画というと全てがそこで記録化されます。

 そのため、性犯罪の事件で取り調べの録音、録画を実施しますと、事件に直接関係のない被害者の方のプライバシー、これが、時に被疑者が全て真実を言うわけではなくて、いろいろな、虚実織りまぜて話す場合もあります。被害者の方が傷つくようなことを言う場合もあります。こういったものも含めて、全て記録化されることになる。

 この記録が証拠開示をされたり、公判廷で証拠調べの際に再生されることになれば、性犯罪の事件で一回物すごく傷ついて、さらに傷ついてしまうことになる。こういった点から、被害者の保護をどう図っていくかということも重要な観点になってくると思います。

 本法律案の取り調べの録音、録画制度、これは性犯罪等の事件についても適用されることになっておりますけれども、被害者のプライバシー保護をどのようにして図られることになるのか、お伺いいたします。

林政府参考人 御指摘のとおり、今回の録音、録画のもとにおきますと、被害者のプライバシー等が全て入った形で録音、録画の記録媒体というものが残ることになります。そのようなことから、性犯罪については録音、録画の義務の対象からむしろ除外すべきじゃないかという議論も検討の過程ではあったわけでございますが、結論におきましては、性犯罪等を一律に除外するわけではない形での制度が、今回、構築しているものでございます。

 結局、性犯罪等の事件におきましては、記録媒体についての証拠開示でありますとか、公判廷における証拠調べの際の再生、こういったところで、御指摘に当たります被害者のプライバシーというものに対して、また被害者の名誉というものが侵害されないような形で、そういう形で証拠開示あるいは公判廷の証拠調べの際の再生、こういうものが行われるべきであろう、こういう結論に達したわけでございます。

 したがいまして、そういった事件につきましては、一方で被疑者の取り調べの録音、録画を義務づけることとしつつも、証拠開示あるいは公判廷における再生を適切に行う、これを関係者、法曹三者、あるいは警察においてもそうですけれども、そういった形で、こういった点の被害者のプライバシーの保護を十分にそれぞれの立場で図っていくということを検討しているところでございます。

國重委員 わかりました。

 被害者のプライバシー保護も極めて重要だと思います。

 その一方で、被告人の防御権というものにも配慮しないといけない。被害者のプライバシー保護を踏まえた措置をしながら、被告人の防御権にも配慮した、こういった措置が適切に講じられていくことが重要だと思いますけれども、その点についての見解を伺います。

林政府参考人 先ほど来申し上げました、記録媒体の適正な管理、証拠開示、また公判廷における再生、これにつきましては、これまでにも、法務省、最高検、警察庁、また最高裁及び日弁連、こういったところの担当者で検討会を設けまして、これについて、いかにして被害者のプライバシーの保護を行っていくかということを検討し、取りまとめたことがございます。

 その中でも、例えば記録媒体の証拠開示に際して付される条件というものがございますが、その内容につきましても、やはり事案の内容や防御の準備の観点も踏まえてそのような条件を設定するということとされておりますし、また、記録媒体の証拠調べの方法につきまして、弁護人から意見が出された場合には、それらも踏まえつつプライバシー保護に配慮した取り扱いを検討する、こういったような取りまとめがなされたところでございます。

國重委員 わかりました。

 では、時間が迫っていますので、次の質問に行きたいと思います。

 取り調べの録音、録画の例外事由としまして、「被疑者が記録を拒んだことその他の被疑者の言動により、記録をしたならば被疑者が十分な供述をすることができないと認めるとき。」は、取り調べの録音、録画義務の例外事由に当たるとされております。ただ、この例外事由、裁量による恣意的運用がなされるんじゃないかというような指摘がありますし、先日の参考人質疑の中でもそのような指摘もされました。

 どのような場合に、「被疑者が十分な供述をすることができないと認めるとき。」に当たるのか、恣意的な運用を防止するために捜査官の判断基準の共通化のためのガイドラインの策定、こういったものも今後考えていくべきだと思いますけれども、これについての見解を伺います。

林政府参考人 今回の録音、録画義務の例外事由につきましては、単に録音、録画をすると十分に供述ができないというだけではなく、外部にあらわれた被疑者の言動でありますとか、あるいは客観的に加害等のおそれがあること、こういったことによって、合理的に、録音、録画をすると十分に供述できないということが認められる場合、このような形に限られております。したがいまして、例えば、被疑者が否認や黙秘をしているだけで直ちにこういった例外事由に当たるわけではございません。

 また、捜査機関がこのような形で例外事由を認定した場合にも、結局、最終的には、これは公判におきまして裁判所の審査の対象となります。そういったところから、捜査機関においても例外事由が恣意的に運用される余地はないと考えております。

 いずれにしましても、例外事由の適正な運用というものを今後していくためには、やはり今後、この制度が施行されるまでの間に当たりまして、検察当局においても十分に適切に検討していかなくてはいけないと考えております。

國重委員 ぜひよろしくお願いします。

 済みません、時間が参っていますが、最後、大臣に、通告していますので、簡潔にお願いいたします。

 本改正案の附則九条、ここには、施行三年後に取り調べの録音、録画等に関する制度のあり方について検討を加えるということになっております。

 今まで委員会でさまざまな委員から鋭い意見も出ました。こういったものも踏まえて、この検討の場をどのように設置しようと考えているのか、今の見解をお伺いいたします。

上川国務大臣 見直しに当たりまして、どのような検討体制を設けるかということにつきましては、現時点で確たることを申し上げることはできないところではございますが、さまざまな観点からの検討がなされるようにする必要があるということについては、そのとおりだというふうに思っております。

 捜査機関の運用によるものも含めまして、取り調べの録音、録画の実施状況等を勘案しながら、制度の趣旨等を十分に踏まえた検討を行うことが重要であるというふうに考えております。その意味で、そのような観点から適切に対応してまいりたいというふうに考えております。

國重委員 ぜひよろしくお願いします。

 裁判員裁判は平成二十一年五月にスタートして、第一回会議はその年の九月に開始されております。非常に注目されている録音、録画制度ですし、メンバー構成も、幅広いメンバーとなるようにする必要もあるでしょうし、また、そういう検討会議の内容も、透明性を確保して、その内容も公表していくというようなことも重要になってくると思います。

 ぜひしっかりと、充実した検討となるように、三年たってからというよりは、その前々からしっかりと手を打ちながら、適切な運用が図られるように取り組んでいっていただきたいと思います。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

奥野委員長 次に、山尾志桜里君。

 これより山尾志桜里君の質疑時間に入ります。

    〔委員長退席、安藤委員長代理着席〕

    〔安藤委員長代理退席、委員長着席〕

    〔委員長退席、安藤委員長代理着席〕

    〔安藤委員長代理退席、委員長着席〕

奥野委員長 これにて山尾志桜里君の質疑時間は終了いたしました。

 次に、重徳和彦君。

重徳委員 維新の党の重徳和彦です。

 直前まで一時間ほど、この委員会も不正常な状態に陥っておりました。この委員会のテーマによらず、各委員会、そして国会審議、国会運営全体にわたって、今非常に、政府・与党と野党との間で、さまざま、国会運営上の不正常な状態が続いております。

 これは、各委員会にわたってもこういう影響が出てくるわけですから、この委員会に限らず、政府・与党として、きちっと各党が納得して審議に臨むことができるように、最大限の御尽力を払っていただきたいということを冒頭申し上げたいと思います。

 さて、きょうは、刑事訴訟法の改正の可視化について議論をさせていただきます。

 まず、また基本的なところなんですけれども、これまでいろいろな議論、そして前回の参考人質疑を聞いておりまして、特に、当事者たる冤罪の被害に遭われた方などなど、さまざまな立場からの御意見を聞くにつけ、やはり、今回、なぜ、対象事件が絞られて、全事件、全過程の録音、録画ができないのか、ここを改めてお聞きしたいと思います。

林政府参考人 本法律案の取り調べの録音、録画制度は、原則として被疑者取り調べの全過程の録音、録画を義務づけることなどを内容とするものでありますが、これを全ての事件に一律に制度の対象とすることは、その必要性、合理性に大きな疑問があり、制度の運用に伴う人的、物的な負担も甚大なものとなります。また、本制度は、捜査機関にこれまでにない新たな義務を課するものでございますので、捜査への影響を懸念する意見もございます。

 そこで、法律上の制度といたしましては、取り調べの録音、録画の必要性が最も高い類型の事件を対象とすることが適当と考えられたことによるものでございます。

重徳委員 必要性、合理性、これはさまざまな角度から検討する必要があるんだと思います。そして、新たな制度ですから、人的、物的な負担が、程度はどう見積もるかはありますけれども、新たな負担がかかるのは、これはもう当然のことではあろうかと思います。

 やはり、差し当たり、当面、今回の、パーセンテージでいうと三%なんというふうに言われますけれども、全事件の中の三%からスタートをするけれども、これからは基本的には広げていく方向であるという理解でよろしいんでしょうか。

 それから、この間、東京地検の方に視察に行き、意見交換をしたときにも、ちょっと腑に落ちなかったのが、可視化して録画されたビデオ、映像を上司の方が全部、スピード、速度を一・五倍に上げてチェックしているというようなことをおっしゃっていたんですが、そんなことが求められている制度ではないと思うんですよね。任意性が争われたときに、後で振り返ることができるような制度になることが可視化の本来の、本来というか、今回の想定されていることでありましょうから、だから、人的な負担といっても、全編チェックしてからじゃないと起訴ができないとか、そういうことではないと思うんですよ。

 だから、今回はそこからスタートはするんだけれども、適切な人的、物的負担を考慮しながら、これからその適用範囲を拡大していくというふうに理解をしていきたいと思うんですが、この広げていくという話はこれからずっと続けていきますので、とりあえずこの点については御答弁不要です。

 次に、例外規定、何度もここで議論になっております。やはりこれもちょっとおかしいんですよね。

 四つ、第一号から第四号まで例外規定があって、私は、三号、四号は、組織犯罪によって報復される可能性がある、そういうことを防止するために例外を認める、この方が具体的でわかりやすいと思うんです。

 それに比べて、一号は、「記録に必要な機器の故障その他のやむを得ない事情により、記録をすることができないとき。」なんてあるんですね。機器の故障をイの一番に想定すること自体、どうかしていると思いますね。

 それから、第二号では、「被疑者が記録を拒んだことその他の被疑者の言動により、記録をしたならば被疑者が十分な供述をすることができないと認めるとき。」とあるんですが、この間、取り調べの部屋を見て、録画の機器がこれですというのを見てきましたけれども、供述する方の目の前にどおんと威圧的にカメラが置かれて、これで記録を拒むなと言われても、拒みたくなるような環境だと思います。

 こうした例外規定、非常に違和感があるんですけれども、どうなんでしょうか、改めて御説明いただきたいと思います、この一号、二号について。

林政府参考人 まず、本法律案の刑事訴訟法三百一条の二第四項第一号におきましては、記録に必要な機器の故障その他やむを得ない事情により記録をすることができないというときを例外事由として設けております。

 この趣旨でございますが、これは、機器の故障等の外部的要因によりまして取り調べ時に録音、録画の実施ができないような場合にまでなお録音、録画を義務づけるとしますと、捜査機関に不可能を強いるということになるからでございます。

 もとより、こういった形で、録音、録画の機器の管理というものは、当然、捜査機関において適切に行うべきでございますけれども、実際には、適切な管理等をしていたとしましても、故障の発生を完全に防止することは困難でございますし、また、機器が故障した場合において、他の機器も全て使用中であるというような事態も生じ得るわけでございます。

 そういったことから、こういった機器の故障というのを、あくまでもやむを得ない事情の一つの例示といたしまして、例外事由として掲げているものでございます。

 また、第二号におきましては、「被疑者が十分な供述をすることができないと認めるとき。」ということが例外事由となっております。

 これは、録音、録画をしたならば、その内容を問わず、本来、録音、録画をしなければ供述できるであろうことを十分供述することができない、こういったことがこの例外事由の要件でございます。ある特定の内容の供述を前提として、そのような供述ができるかどうかを判断するものではございません。

 この場合にも、「被疑者が記録を拒んだことその他の被疑者の言動により、」という要件を設けてございまして、記録をしたならば被疑者が十分な供述をすることができないかどうかを判断する認定事情を、外部的にあらわれました被疑者の言動に限定しているわけでございます。

 こういった形で、本来、録音、録画について、適正にその例外事由が定められたことによりまして、捜査への支障を極力減らすというための趣旨でございます。

 いずれにいたしましても、こういった例外事由がございますが、例外事由に当たる場合には記録媒体を証拠調べ請求することは必要ないわけでございますが、他方で、それ自体で、その場合の供述調書の任意性が認められるわけではございません。あくまでも、任意性を立証する責任はその場合にも残っているわけでございまして、ただ、本法律案で定めております、供述調書を証拠調べ請求した場合に、当該取り調べの記録媒体も証拠調べ請求しなければ、供述調書自体が請求が却下されるという関係にございますが、このような例外事由に当たる場合に、そういった記録媒体の証拠調べ請求の義務が仮にないという、例外事由に当たる場合はないわけでございますが、それが任意性の立証というものを不要とするという関係にはなっておりません。

重徳委員 それは、後段の部分は当然そうだと思うんです。供述調書だけでは不十分だから、録画された記録というものをもって任意性を立証する、補強するわけですから。だけれども、その任意性を立証するためのツールをそう簡単に手放しちゃっていいような例外規定になっていることが問題だと思うんですよ。

 つまり、機器が故障しているんだったら、直してから取り調べるべきですし、それから、井出委員がよく言われているICレコーダーだって、ICレコーダーだけで済まそうということばかりじゃなくて、基本的な録画機能は本来の録画機器でやって、バックアップとしてICレコーダーを使うとか、そういうことは幾らでもできるわけですから。

 機器が故障していたからやむを得ません、しかし、そのときには取り調べ官は供述調書のみをもって勝負しなきゃいけない、これは非常に厳しいことだな、何か非常に矛盾したことだと思うんですね。法律上例外として認められているにもかかわらず、その場合、検察官側からしても非常に厳しい状況に追い込まれるわけですから、矛盾していると思いますけれどもね。

 それから、被疑者が記録を拒むということについても、この条文の書きぶりも、「十分な供述をすることができないと認めるとき。」というのは非常に簡単なんですよね。普通は、十分な供述をすることができないやむを得ない事情があると認めるときとか、書きぶりそのものも、非常に、当然のように認められるような例外規定だと思います。

 ここがやはり、前回の参考人質疑において桜井さんが、機器が故障していたらやらなくていいんだとかいうそんな簡単なものじゃないだろうというふうな、やや憤りも感じながらのお話だったと思います。

 こんなことでは、検察官のためにもならないし、もちろん、本来の可視化の目的も遂げられないと思いますけれども、何かもう一言ありますか。

林政府参考人 今回の例外事由につきましては、捜査官、取り調べ官において、まず、その例外事由に当たるかどうかを認定するわけでございますが、当然、実際に例えば被疑者が十分な供述をすることができないと認められるということに当たるかどうかということは、後の裁判におきまして司法的なチェックを受けるわけでございます。その場合には、被疑者が十分な供述をすることができないと認めるということを立証しなければなりません。したがいまして、今回の例外事由の判断、取り調べ官における判断におきましても、それを恣意的に運用することはできないということになろうと思います。

 実際にそれをもし恣意的に運用したという場合におきまして、結局のところ、取り調べ官は例外事由に当たる、そして録音、録画をしなかったにしても、裁判におきまして例外事由には当たらないと判断された場合には、やはり任意性の立証という手段、記録媒体というものを、それは存在しないわけでございますが、そういった立証の手段を失ってしまうというリスクをこの取り調べ官、捜査機関は負っておるわけでございますので、そういったことからも、こういった捜査機関が恣意的に運用することは困難であろうかと思っております。

重徳委員 最初の質問で申し上げたとおり、ただでさえ三%の事件に絞られているわけですから、その上、例外規定を余りに認めていくというのは、いずれ、取り調べにおいては録音、録画当たり前、こういう状況にしていかなければならないと思うんです。このときに、あのとき、最初恐る恐るで、何を恐れてか、例外を簡単に認めてしまうような規定がある、そのこと自体、後で見返したら非常に恥ずかしいこと。

 というのは、前々回議論しております、国際社会から見ても日本は立ちおくれているというのは再三指摘をされているわけですから。いまだこんなことすらできない、やろうとしたら例外規定が非常に大きな穴として設けられている、その結果、可視化もフルでは実現できないばかりか、その例外だと思って裁判に臨んだ検察官自身も、任意性の立証をほかの方法で立証していかなくちゃいけない、こんな何かすっきりしない理屈ではないかなと私は思います。

 そして、次に参りますが、今回の可視化は、過去の、最近もありました冤罪事件の反省を受けて、大いなる見直しが必要だということで取り組んでいるわけですけれども、例えば選挙違反事件の志布志事件とか、氷見事件、これは強姦罪でしょうか、こうした裁判が今回の可視化の対象外となる。こういうことについては、まず、過去の反省に立ち返って、こういった事件がちゃんと含まれるような組み立てにするべきではなかったかと思うんですけれども、こうした事件が今回の可視化の対象外となるのはおかしいんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか、大臣。

上川国務大臣 ただいまお触れになっていただきました公職選挙法違反事件であります志布志事件でありますとか、強姦事件としていわゆる氷見事件ということでございますが、本法律案の録音、録画制度の対象とならないということについては、御指摘のとおりでございます。

 法律上の制度といたしましては、この録音、録画の必要性が最も高い類型の事件を対象とするということで、裁判員制度対象事件と検察官独自捜査事件が挙げられているわけでございます。それ以外の事件につきましては、録音、録画の必要性が個別の事案によりまして異なるということでありますので、法律上の義務の対象とするということにつきましては困難であるというふうに考えているところでございます。

 検察におきましては、被疑者取り調べの録音、録画が必要と考えられる事件につきましては、罪名を限定しないで、積極的に録音、録画に取り組んでいるところでございます。

 制度の対象とならないそうした事件であっても、検察の運用で必要な録音、録画が実施されることとなるということでございまして、御指摘のこの二つの事件のような事件につきましても、被疑者の供述が立証上重要なものであるなどにつきましては、検察において、必要に応じて録音、録画を実施しているものというふうに承知をしております。

重徳委員 それでは、今後は制度上も法律上も拡大していくんだ、任意の話はわかりました、これまで再三御答弁いただいておりますが、今後、制度上も拡大していく方向で検討していくんだというふうに考えてよろしいでしょうか。

 これは、附則の九条なんかもあるわけなんですけれども、対象とされる事件、そしてその全過程、今回は大分絞られていますけれども、どうも附則九条の書きぶりが気になるんですよね。前向きな部分も書きつつ、捜査上の支障その他の弊害が生じる場合があること等も踏まえて今後検討していくということなんですが、今後は、その対象となる事件は拡大する方向である。まさか縮小される、そんな可能性はないというふうに考えてよろしいんでしょうか、大臣。

上川国務大臣 御指摘にございます附則の第九条で、施行後三年が経過した後に必要な見直しを行うということで検討条項を設けているところでございます。

 制度そのものが、これまでにない新しい制度であるということで、実際にその制度を運用してみないと、なかなか、その効果あるいは課題等につきましてわからないところもある、こういう問題意識のもとでこの条項を設けているということでございます。

 今の段階で、この見直しの方向性について定めるということをしているわけではございませんが、いずれにいたしましても、捜査機関の運用によるものも含めまして、この制度も含めての実施状況をしっかりと検証し、そして、制度の趣旨にしっかりと検証を加えた上で、さらなる見直しに向けての取り組みということになろうかというふうに思っております。

 これまでの経緯等も含めますと、取り調べの録音、録画についての取り組みにつきましては、後退をするというようなことにはならないというふうに思っております。

重徳委員 後退することにはならないという今御発言がありましたけれども、幾らでも、効果、課題、カメラが大き過ぎるとか、視察に行った委員は全員感じたような課題も既にあるわけであります。

 そういったこともどんどん解消していって、捜査当局側としては、これはもう現場の声として、それは今までのやり方が変わっていきますから、供述が引き出しにくいとか、検察官の取り調べのスキルが、果たして調書作成能力が維持できるかどうか、いろいろな懸念はあると思いますけれども、やはり、難しいから次はちょっと縮小、後退させるというようなことは、あってはならない方向性だというふうに思います。

 これまでの質疑の中でも、裁判所においても、録音、録画というものを前提とした裁判というものが既に行われつつある、裁判所の証拠の採用としてもそういう傾向があるというような指摘もありますし、前にとにかく向かっていくという決意は、大臣今おっしゃったとおりでありますし、我々もきちんと前に向かっての課題の指摘などをしていきたいと思っております。

 ところで、同様の趣旨の質問を山谷国家公安委員長に申し上げたいんですけれども、先般から、視察のときに、警察官、警視庁の方が、心のキャッチボールということをおっしゃっていました。心のキャッチボールがカメラの前ではやりにくくなるというような趣旨だったとは思うんですね。

 ただ、そのときに、私は、両面においてあれっと気がついたことがあるんですけれども、一つは、キャッチボールと言うけれども、そもそも取り調べ官と被疑者というのは対等な関係でキャッチボールをやるわけではないですから、信頼関係、友情関係が生まれるような関係にはないと思うんですね。それは、巨大な国家権力をしょった個人、そして組織に対して、ずっと一人で拘束状態にある被疑者でありますから、対等なわけがない。

 そして、長期間孤独に身柄拘束をされれば、早くその状態から解放されたい、できるだけ罪は免れたい、こういう思いに置かれている被疑者が、警察官、取り調べ官の示唆することに対して、この人の言うとおりにすれば罪が軽くなるかもしれない、早く解放されるかもしれない、そういう期待を持って、ある意味すがるような思いになってくるというのは、これは想像がつくところだと思うんです。まして、早く自白をすれば楽になるよなんというふうに言われたら、自白した方がいいのかなというふうに思う。

 これは、だから、決して、友情関係、信頼関係というよりは、中にはそういう関係を構築するような取り調べ官もいらっしゃるかもしれませんけれども、基本的にやはりベースが違うと思うんです。

 そういう意味でのキャッチボールという言葉に対する若干違和感があったという一方で、やはり、犯罪者、真の犯人であることも当然多い被疑者でありますし、再犯を繰り返すような人物もいるわけですから、そういう被疑者に対して、そう生易しいことでは十分な供述が引き出せないことも、これは一方で容易に想像がつく。時に言葉が厳しくなったり、あるいは、どうなんでしょう、取り調べ官も少し被疑者に対して歩み寄るというか、同調する、あなたの言うこともわかるよ、その気持ちもわかるよというようなこと、厳しく当たる、あるいは少し同調するような言葉、こういったことも恐らくキャッチボールの中の一つだと思うんです。

 だけれども、それは非常にカメラの前ではやりづらい、こういう心理というのは取り調べ官には必ずあると思うんです。そういったことも含めて心のキャッチボールと言われていたんだろうな、こう想像するわけなんです。

 私は、仮に、少し乱暴な言葉で追及するとか、あるいは、俺もあんたの気持ちはわかるよ、こんな犯罪者の気持ちがわかるようでは被害者が浮かばれない、そういう見られ方もするでしょうけれども、しかし、そういったことも含めて、可視化が当たり前になってくれば、見る側にとっても、それはわかる、取り調べというのはこういうものだというふうにわかると思うんです。そういう段階に至るぐらいまでに、本当の意味で被疑者側も取り調べ側も萎縮しないような、そんな可視化の将来像というのを描くべきではなかろうか。

 そういうことも含めて、やはり、この可視化というものがどんどん制度化し、そして、今、任意でなされている部分も必ず拡大していく方向でやっていくんだ、こういうふうに捉えてよろしいでしょうか。

山谷国務大臣 先日の答弁でも申しましたけれども、カメラと機材の改善というのはこれから考えていきたいというふうに思います。

 録音、録画の制度化に当たっては、事案の真相解明への影響についても留意が必要でありまして、録音、録画の有用性を生かしつつ、一方で、取り調べや捜査の機能に過度の支障が生じないバランスのとれたものとすることが必要だと考えております。

 このような観点から、制度の対象は、裁判員にわかりやすい立証が求められるなど、類型的に録音、録画の必要性が高い裁判員裁判対象事件とすることが適当と考えております。

 なお、対象範囲を含めた今後の録音、録画制度のあり方についてでございますけれども、全事件、全過程の録音、録画についても、将来の議論の対象としては必ずしも排除をされるものではないと思いますが、裁判員裁判対象事件の録音、録画の実施状況を丁寧に検証しながら検討をすべきものだと考えているところでございます。

重徳委員 山谷国家公安委員長からも、必ずしも排除されるものではないと、やや消極的ながらも、拡大していくことをお認めになる発言がありました。

 やはり、やるからには、可視化というのは当たり前にしなくちゃいけないと思うんですね。この間から私も、こだわるようですけれども、国連からもさんざん指摘をされています。ですから、最初、林局長にも申し上げましたように、例外規定というのを余りに簡単に認め過ぎるような規定になっているんじゃないか、こういうことを思うわけでございます。

 そして、弁護人の立ち会いについてもこれまで申し上げてまいりました。

 これまでの冤罪事件、例えば氷見事件でも、身内が間違いないと認めているんだということを密室で言われたら、やはり俺が悪かったのかなと思う、それから、罪を認めざるを得ない状況に陥って、同意する以外のことは、意見を述べることは刑事から禁じられて、刑事の言うことだけを事実だというふうに認めて署名をさせられるとか、こういう状況があるわけです。

 可視化というのは、私は、事後的な、あるいは間接的な、ある意味抑止力だとは思うんですが、弁護人の立ち会いというものも、それはフルで、十日間、二十日間の取り調べの間ずっと弁護人が隣についていたら、さすがにこれは取り調べもやりにくいだろう、しかし、ルールを決めて、一時期だけ、何時間に十何分、まあ、ちょっと決め方はわかりませんけれども、やはり今のやり方はフェアじゃないんじゃないかというようなことを、本当に限りなく孤独な被疑者の立場から、少しアシスト、サポートをするような立場で、フェアな取り調べが行えるような、そんな、取り調べに弁護人が立ち会う余地というのは全くないんでしょうか。

 この辺を局長にお聞きしたいと思います。

林政府参考人 取り調べへの弁護人立ち会いということが議論されるときには、取り調べには必ず弁護人が立ち会うということ、これを制度化する、このことの是非はいかん、こういうような形で議論が必ずされてきております。

 それについては、これまでも法制審議会等での議論でもございましたが、基本的に、取り調べの録音、録画ということとの対比でいきますと、弁護人が取り調べに立ち会うということになりますと、まさしく取り調べ自体の性格が変わってしまう、取り調べの機能を大幅に損なうおそれが大きいという意見がございまして、これを制度化するということについては、今回、取り入れられていないところでございます。

 他方で、制度という意味ではなく、例えば検察官による被疑者の取り調べへの弁護人の立ち会いを認めるかどうかというのは、もちろんこれは現行法上でもそれが禁じられているわけではございません。

 取り調べを行う検察官において、今申し上げました取り調べの機能を損なうおそれでありますとか、取り調べにおける関係者の名誉とかプライバシー、あるいは捜査の秘密というものもございますけれども、こういったものが害されるおそれなどを考慮して、事案に応じては適切に判断していくべきものと考えております。

重徳委員 もちろん、現行法上も禁じられているわけではないので、やろうと思えばできるんですけれども、それは大体取り調べ官側から、立ち会ってくれということは禁じられていないけれども、そんなことを積極的にやるような現状ではないということでありましょうから、まだまだ不十分な御答弁だとは思います。

 あと、最後に、きょうは中山副大臣にもお越しいただきましたけれども、例えば、米国国務省がつくっている国別人権報告書、こういったことに対して、今の日本の刑事訴訟手続が全然野蛮で不十分なものであるというふうに指摘されていることに対して、前回、副大臣が、特段回答の義務がない、国務省の指摘に対する回答の義務がない、そういう中で、しっかりした戦略に基づかずに回答することによって、かえってその問題が必要以上にクローズアップされて、うそが流布するような形で世界じゅうに伝播されてしまう、そういうリスクもあるんだから、いわば慎重にやらねばということだったと思うんです。

 しかし、もう既に日本の現状が、うそかどうかは、それはやりとりする中でしかわかりませんが、相当悪いメッセージが世界じゅうに伝わっているわけですから、今さらそこを気にする段階じゃないと思うんですね。

 ですから、今回のこの見直しも、ちょっと十分な御答弁とは受けとめられないんですが、可視化もこれから拡大していくんだというようなメッセージもきちんと海外に伝えていくことによって、より理解が深まる方向にしか行かないと思いますが、中山副大臣、どうでしょうか、さらに、きちんと海外にこの取り組み、そして、まだ不十分な御答弁なので、まだまだ、この審議を通じてですけれども、これからもっと日本の刑事訴訟制度を高い次元に持っていくんだということをぜひ国外にも伝えていっていただきたいと思うんですが、そのあたりを含めて御見解をお願いします。

中山副大臣 ありがとうございます。

 まず、御指摘の九日の本委員会での答弁に関しましては、我が国の立場及び現状を必ずしも正確に反映していない指摘が他国の報告書等でなされる場合には、必要に応じて適切な発信をしていくことを検討する必要があるとの趣旨を申し上げたものであります。

 同時に、具体的には、御指摘の米国務省国別人権報告書に含まれる刑事裁判手続に関する指摘については、関係省庁と協議の上、我が国の立場及び現状への理解を得るのに何が効果的な方法なのかということをしっかりと検討してまいりたいというふうに考えております。

重徳委員 国内問題であるとともに、国際的な問題でもあると思いますので、ちょっとここは私もこだわっていきたいというふうに思っています。

 その意味で、最初の、こだわるようですけれども、例外規定が緩過ぎると思います。この点は、引き続き、議論してまいりたいと思います。

 以上です。

奥野委員長 次に、井出庸生君。

井出委員 維新の党、信州長野の井出庸生です。

 きょう、こうした形の委員会になりまして、委員長も、あの梅雨空のような、曇った、湿った表情をされておりますが、一刻も早く正常化して以前の闊達な議論になっていくように、そのことを私からもお願い申し上げます。

 可視化に集中して、きょう、二回目の質問の機会をいただきました。やはり、取り調べの可視化の本質的な論点である対象事件について、きょうも国家公安委員長に伺いたいと思います。

 取り調べの可視化は、裁判の立証において有用性がある、しかし、取り調べに支障を来す、そういう御答弁がずっとここまで言われてきました。

 その中で、きょう一つ伺いたいのは、先日、五月の十九日に私が本会議で質問をさせていただきました。あの際も、私は、可能な限り、取り調べの支障に可視化がなるということは当たらないのではないかということを幾つか項目として挙げさせていただきましたし、また、裁判の立証に資する可視化というものをはなから限定するのはおかしい、そういう趣旨で、るる質問をさせていただいたんです。

 あの本会議の後半で、国家公安委員長は、警察には、社会に不安を与える犯罪の検挙、立件等を通じ、安全、安心を求める国民の期待に応えるという責務がある、こうした観点から、取り調べを通じて事案の真相を明らかにすることは極めて重要であり、録音、録画制度については、取り調べや捜査の機能を損なわないよう、類型的にその必要性が高い裁判員裁判事件を対象とすることが適当、そういうお話をいただきました。

 この前段の、社会に不安を与える犯罪の検挙、立件を通じ、安全、安心を求める国民の期待に応えるという責務、こうした観点から、取り調べを通じ事案の真相を明らかにすることは極めて重要、これはまさに、言葉からすればおっしゃるとおりかと思うんです。

 ただ、一方で、安心、安全を求める国民の期待に応える、そして、取り調べを通じて事案の真相を明らかにする、そのことは、私は、犯罪をした人を逮捕して、取り調べをして、裁判できちっと立証を尽くして、罪を償ってもらう、そこまで持っていって初めて、安心、安全を求める国民の期待に応えることであって、事案の真相を明らかにすることだと思うんですね。

 この前段の、大変言葉としてはすばらしい言葉ですけれども、そのために可視化を、では限定していいです、そういう話ではないと思うんですよ。可視化もできるだけ幅広くやって、裁判で立証を尽くすことまでが、真相の解明であって、安心、安全の国民の期待に応えるという責務にほかならないと思います。その点、いかがでしょうか。

山谷国務大臣 御指摘の答弁でございますが、録音、録画には、任意性の立証に有効な面がある一方、被疑者から供述が得られにくくなるなどの側面があるため、その対象は、録音、録画の必要性が類型的に高い裁判員裁判対象事件とすることとされたものと承知をしている旨を述べたところでございます。

井出委員 類型的にその必要性が高い裁判員裁判事件を対象とする、そういうことを今も、そしてずっとおっしゃってきているんです。

 私は、端的に申し上げれば、可視化の対象を裁判員事件に絞るということは、罪の重い、重大な事件には取り調べをちゃんと可視化する、だから、重大な事件に対してはしっかり立証を尽くすけれども、ほかの事件は今までどおりやっていく。そういう線引きがある以上、この本会議の答弁、安心、安全を求める国民の期待に応えるという責務、そして、取り調べを通じ事案の真相を明らかにするということは極めて重要だ、この二つは、むしろ取り調べの可視化をして、裁判できっちりと、供述に争いがあった場合に任意性の立証まで尽くして、初めて言えることなんじゃないでしょうか。

 事件を限定することは、むしろこの言葉を言えなくしていると思いますよ。いかがですか。

三浦政府参考人 録音、録画の実施が公判における効果的な立証に資するという点は、そこは警察としても当然認識をし、重視をしているわけでありますけれども、その前段として、しっかりとした事件の真相の解明、そのために、必要に応じ被疑者の正しい供述を得るということが、その前提となる事件の真相解明のためにやはり必要である。そのバランスをどこでとるかということを考えた場合に、裁判員裁判対象事件といいますのは、実際に公判で任意性が争われる比率も高く、また、裁判員にとってわかりやすい立証が求められている、そうした観点から、先ほど大臣が類型的にと申し上げたのは、そういう趣旨でございました。

 そういった事件について、全過程の録音、録画の義務づけという制度化を図ることが適当である、そのように考えているわけであります。

井出委員 今の三浦刑事局長のお話ですとか、山谷国家公安委員長のこれまでの話を聞いておりますと、真相解明という言葉が出てきますね。私は、その真相解明という言葉は、やはり警察が容疑者を逮捕して、起訴して検察の方は立証を尽くす、その有罪の認定を捜査機関が当初想定された立証を裁判で尽くして、初めて真相の解明だと思うんですよ。

 山谷さん、はっきりお伺いしますが、では、取り調べの可視化をしたら、あなた方の言う真相解明というものは、これまでどおりの取り調べなんですか。そうではなくて、裁判で供述の任意性が争いになったときに、きちっとした客観的なデータを出して、その取り調べの状況の真相を裁判所で明らかにして、そこまでやって初めて立証を尽くして、国民の安心、安全の期待に応えるんじゃないですか。どうですか。

山谷国務大臣 公判での立証等において録音、録画が有用であることは言うまでもありませんが、その大前提となるのは真犯人の検挙と事案の解明でありまして、警察は、その役割、責務から、録音、録画による捜査への支障について、検察に比して、より慎重に判断する必要があるということを御理解いただきたいと思います。

井出委員 検挙ですとか事案の解明。検挙は、確かに、犯罪の疑いの極めて濃いことが疑われれば、令状をとって検挙できると思いますけれども、事案の解明というものは、今までのように被疑者と警察が向き合ってやらなければ得られないものなのか。

 この間も山谷さんにお聞きしました。警察の取り調べは変わってきているんですよね。警察の取り調べは、前、私が、心理学の教本、警察がつくった取り調べの基礎、ああいうもので自由に話をしていってもらう、そういう方向に変わってきていると思うんですよ。

 皆さんのおっしゃっている事案の解明とか真相解明というのは、これからは、単に調書を完成させることじゃなくて、裁判所での立証も含めて、要は、取り調べの可視化をして、裁判所での立証をして、有罪の認定をきちっとして罪を償ってもらう、そこまでいって、初めて事案の解明、真相の解明なんじゃないでしょうか。いかがですか。

三浦政府参考人 被疑者の取り調べにつきましては、例えば、故意でありますとかあるいは目的といった犯罪の主観的要素でありますとか、あるいは共犯関係における謀議の状況等の解明でありますとか、あるいは真犯人のみが知り得る犯罪の全容の解明でありますとか、また、供述によって新たな客観的証拠が発見をされるという場面も多々ございます。そういった点において、事案の真相解明のために大変重要な役割を果たしているところでありまして、その取り調べの重要性というものは、今後においても変わるものではないというように認識をしております。

 もとより、客観証拠が極めて豊富にあって、何ら被疑者の供述を得なくても立件ができるというような事件であれば、ある意味、苦労はないわけでありますけれども、必ずしもそうした事件に限るわけではありません。

 やはり被疑者に語ってもらう、そのことによって事件の立件といいますか、真相が解明をされて、そして、委員御指摘のように、それがあって初めて公判が始まるわけでありますので、その中で立証が尽くされて有罪判決を得るというのが、私どもで行っている、もちろん検察とともに行っている刑事司法の作業であるというように認識をしておりまして、やはりその前提が崩れてしまうということについて我々は大変大きな危惧を抱いている、そういうことでございます。

井出委員 今お話ありました、供述によって新たな証拠が得られるですとか、被疑者しか知り得ない事実を明かしてもらうというところだと思うんですけれども、それは、今までのように、第三者に見られないことを前提に取り調べをしなければ、必ずしも成立をしないものなのか。

 私は、本会議の、社会の、犯罪検挙、立件を通じて、安心、安全の国民の期待に応える、取り調べ、事案の真相を明らかにする、その言葉をもって可視化の限定を正当化されていることが、これは法制審でも恐らく似たような議論があったと思います。

 第十八回、事務方が、その基本的な考え方、試案を出してきた。そのときに、その冒頭の、第何ページまでかは忘れましたが、これまでの取り調べというものがいろいろ果たしてきた役割は大きい、そういうことが書かれていて、そこにいらっしゃった法制審の委員が一様に驚きの声を上げているんですよ。十八回のその基本的な考え方の説明の後、九人の委員が発言をしておりますけれども、そのうち、私がカウントしたところ、六人が、あり得ない、今までのこの一年半の我々の議論は何だったんだと。

 私は、法制審の議論でも、やはりこれまでの警察の取り調べの直すべきところを直すというところで、法制審の皆さんは協力されてきたと思うんですけれども、その十八回の段階で、あたかもこれまでの捜査を肯定する部分が非常に多いような考え方の書きぶりに、皆さん、大きな疑問が出た。

 そこから、その第十八回があって、今、きょう、この場まで何年たっているか、ちょっと詳細には私もカウントしておりませんけれども、意識が、この間の本会議の答弁で、やはり余り変わっていないのではないのかなと。どうしても、警察から、今までやってきたことは正しい、可視化はやむなくやっていくんだ、そういう部分がまだ拭えない、そういうふうに言わざるを得ないと思います。

 もう一つ、警察のこれからの可視化について伺いたいのですが、六月九日の法務委員会で、裁判員裁判対象以外の事件であっても、個別の事件ごとに、内容、証拠、供述証拠の必要性といったものを考慮して、個別に録音、録画を実施するといったことはあり得るものと考えていると。このあり得るものと考えているというところが、私はまだまだ非常に消極的だなと受けとめております。検察庁が昨年の六月に依命通知を出して、できるだけ多くの事件を幅広に可視化していく、そういう通知を出された姿勢とはまだまだ大きな乖離があると考えております。

 実際、対象事件以外でも、個別に録音、録画を実施することはあり得るものと考えているとおっしゃっていますが、では、その運用の部分、警察は一体どこまで、裁判員裁判以外のもの、特に我々がずっと懸念している供述に争いが生じそうなものに対して、どこまで運用で可視化をやっていくおつもりか、具体的に教えていただきたい。

    〔委員長退席、柴山委員長代理着席〕

三浦政府参考人 御指摘の答弁は、現在は試行の対象としていない裁判員裁判対象事件以外の事件について、一律に録音、録画の対象とするということは考えておりませんけれども、将来の運用の姿として、個別の事件ごとに、事件内容、証拠関係、供述証拠の必要性等を考慮して、個別に録音、録画を実施することはあり得るものと考えているという旨を述べたものでございます。

 対象外の事件の録音、録画についての具体的な運用方針ということでございますけれども、これはまだ、今後の録音、録画の実施状況等を勘案しながら、今後において検討をしてまいりたい、このように考えております。

井出委員 今後の実施状況を見て検討していきたいと。

 可視化が、この法律ができて三年後に、この法律に沿った可視化の状況になっていくと思います。では、始まるまでに三年待って、そこからまた何年かやってもらって、その状況を見て運用を検討していくというのでは、もうほぼ運用については警察の方はゼロなんじゃないか。それに対して、検察庁の方は、これまでの可視化の試行の中から、平成二十六年の六月に、ああいう通知という一定の結論を見出しているわけですよね。

 山谷国家公安委員長に伺います。今の刑事局長の答弁ですと、運用はしばらくしないと言っているに等しいと思いますけれども、いかがですか。

    〔柴山委員長代理退席、委員長着席〕

山谷国務大臣 警察といたしましては、録音、録画の試行に積極的に取り組んでおりますが、裁判員事件だけをとってみても、ようやく五割程度にたどり着いたところであります。これを法の施行までの間に確実に実施できるようにしていくこと自体、警察にとっては極めて重い課題であります。録音、録画が、事案の真相解明等に与える影響を慎重に見きわめていく必要があると考えております。

 まずは、現在の対象範囲の中で、録音、録画をしっかりと行ってまいりたいと考えております。

井出委員 ですから、まずは対象の中をやっていくんだ、法律で定められた範囲でやっていくというお話だと思います。大変残念な答弁だったなと思います。

 法務大臣に伺いたいのですが、警察の方は、裁判員裁判の、法律で定められた範囲に追いつくのがやっとだ、今そういうことで、その運用の、私は少しでも幅広くやっていただきたいと思っているんですけれども、それは難しい、そういうお答えでした。

 一方で、検察庁の方は、昨年の六月に依命通知を出して、争いがありそうなものは少し幅広に、関係者の供述が立証の肝になりそうだったら、そういうところも可視化をやっていく、そういうスタンスを打ち出しております。

 これから、さまざまな事件を検察庁が立証していくときに、もう何度も申し上げているんですけれども、警察の一次捜査の、警察段階での供述調書というものの任意性が争われるケースというのは、私は非常に多いと思うんですよ。それは何でかといえば、どの事件を見ても、検察庁より警察の取り調べの方が時間も長いんですから。それはもう、そのボリュームから見れば、そういうことは容易にあると思うんですよ。

 可視化をしている。可視化は限定している。それでは裁判に支障が出ると私は思いますよ。それでよろしいんですか。

上川国務大臣 検察当局の立場からいたしましても、公判立証に責任を負っているということでございまして、その意味におきましても、最も適した証拠と考えられる取り調べの録音、録画記録、これによりまして的確な立証をするということにつきましては、これは大変大事だということで、先ほど、最高検の依命通知という話がありましたけれども、積極的に取り組んでいるということでございます。

 警察におきましても、ただいま、この裁判員裁判対象事件にしっかりと制度としての取り組みをする、こうしたことで大変前向きに実施していただけるというふうに思っておりますけれども、この録音、録画の持てる力ということについての考え方については、私は、警察も検察も変わらないということで考えているところでございます。

 検察において、この運用の中で取り組む事件につきましても、警察から送られてきた中で検察の録音、録画ということに付する事件、こうしたことについては、本当にしっかりと自由に語っていただくことができるような、そうしたことも含めて、適切に、しっかりと取り組んでいかなければいけないというふうに考えております。

井出委員 先日の参考人質疑を聞いておりまして、私は、可視化の範囲が全事件の三%にしかならないというところは大変疑問を持って臨んできたんですが、そうはいっても、全面的な全事件の可視化を求められていた周防さんを初め、あと、私はまた別の場所でお話をお聞きしましたけれども、村木さんを初め、これをとにもかくにも、いろいろ不満はあるけれども、第一歩としてこれを成立させてほしい、そういう声も真摯に私は聞いておりました。

 そういう声を聞いて、この法律を前に進めていくために、我々の方でも新しい考えや新しい運用の仕方というものを何か提案できるものがあるのではないか、そういうことを少し考えなければいけないなと思っておるのですけれども、やはり、少なくとも現段階においては、検察庁と警察の方で大変運用の取り組みに差があると言わざるを得ません。

 山谷さんにお伺いをしますが、やはりその運用の部分、私は、確かに、現状、法律の部分の対応だけでも厳しいんだ、そうおっしゃいますけれども、やはり、できるだけ広く、可能な限り対応していく、そういう御意思をきょうここではっきり示していただかなければ、私としても、では、この法律に最終的にどう向き合うか、どういうアイデアが我々で出せるか、そういうところをこれから考えていく上で、警察の可視化運用の部分、そのことについての思いをもう一度改めて伺いたいと思います。

山谷国務大臣 今後は、現場レベルで具体的かつ実践的なノウハウが積み重ねられていくものと考えております。

 制度の対象外事件についても、事件や取り調べごと、個別に判断を行って、事案解明への支障が少ない場面では、公判立証なども見据えて録音、録画を実施していくという運用は、十分に考えられると考えております。

井出委員 もう少し協力的な御意見、お考えをいただきたいと思うところですが、まだ法案の審議の時間はありますので、これまでの御答弁に比べれば一歩前進をしていただいたのかな、そういうふうに思っております。

 あともう一つ、山谷国家公安委員長のこれまでの答弁の中で、私が疑問に感じたところをきょうはっきりとさせていただきたいんです。

 六月九日の法務委員会で、きょうも先ほどおっしゃいましたが、裁判員裁判の対象事件というものは、比較的供述の争いが生じやすい。それは、確かに統計的にそうかと思います。また、専門家ではない裁判員が短期間のうちに審理を行う、わかりやすい立証が必要であると。そういうことで、裁判員裁判の可視化の必要性をお認めになっているんですけれども、私は、この答弁というのは、確かに、聞いていれば、そうだなと思うんですけれども、しかし、この答弁を正当化してしまうと、取り調べの可視化を裁判員裁判の裁判員のためにやるんじゃないか、そういう趣旨にこの答弁を受けとめました。

 そうではなくて、私は、取り調べの可視化というものは、警察の捜査、取り調べを適正なものにしていく、もう一つは、立証の有用性、立証に資する、その二つが目的だと思います。裁判員のために取り調べの可視化をするのではないと思いますけれども、いかがでしょうか。

奥野委員長 山谷大臣、強い意思表示をお願いします。

山谷国務大臣 御指摘の答弁でございますが、録音、録画には、任意性の立証に有効な面がある一方、被疑者から供述が得られにくくなるなどの側面があるため、その対象は、録音、録画の必要性が類型的に高い裁判員裁判対象事件とすることとされたものと承知している旨を述べたところであります。

 今、井出委員言われたように、取り調べの可視化は裁判員裁判のためにやるのか。そうではなくて、取り調べの録音、録画制度の目的でございますが、被疑者の供述の任意性等についての的確な立証を担保するとともに、取り調べの適正な実施に資することというふうに考えております。

井出委員 おっしゃるとおりだ、そのとおりだと思うんですけれども、なぜこういう話になってしまうのかといえば、それは、目的の違う裁判員裁判というものと、取り調べの可視化の対象というものを一致させたからこういう話になってくるのであって、今、明確にそこの御答弁はいただいたんですけれども。

 法務大臣に伺いたいのですが、裁判員裁判の対象事件、さきの法改正で議論をさせていただきましたが、私は、対象事件というものは、今の重大事件に限定する類型化に疑問を持っている、これから変わっていくべきだ、そういう思いで見直し規定というものを、皆さんに御理解をいただいて、継続する形にさせていただきました。

 大臣もそのときおっしゃっていましたけれども、国民が参加するにふさわしい事件というものを突き詰めて類型化していくのが、本来の裁判員裁判の対象事件の決め方だと思いますし、また、取り調べの可視化というものも、一つは、捜査の、調べの適正化、もう一つは、公判の、任意性、供述の争いが生じたときにその立証をきちっとやっていく。

 取り調べの可視化の、争いが生じたときにきちっと立証をしていくというところ、もう一つ、裁判員裁判の、国民が参加するにふさわしい裁判とは何かというところ。私は、争いが生じたときに、国民が参加して、その争いの生じたところを見てもらう、一つの意義もあるかなと思っております。

 可視化の対象事件と裁判員裁判を今回一致させようとしていることで、私は、裁判員裁判の対象事件というものも、これもまた、見直しの考え方、今の類型化でいいのかどうかというところは、これは、より今の類型化ではいけないと思っていますし、裁判員裁判の事件の対象、あり方というものをこれから深く議論していかなければ、その必要性が今回の法制によって出てくると思いますけれども、いかがでしょうか。

上川国務大臣 先ほど委員が、まさに御質問があった、録音、録画の対象が裁判員裁判になるということで、そこのところについて御質問をされておりましたけれども、そもそも、二つの制度は目的が違うということで、それぞれの目的に照らして御議論をいただいた上で、この対象犯罪について決めていく、そういうことであるというふうに思っております。

 したがいまして、裁判員裁判の範囲を拡大する、あるいは録音、録画の方の対象を拡大する、これについて、こちらが拡大したから録音、録画の制度も拡大する、あるいはこちらが拡大すれば裁判員裁判が拡大するというような、そういう物の考え方ではなく、それぞれの制度そのものをしっかりと見詰めて、その理念と目的に照らして、対象の犯罪、対象事件を限定していく、そういうものであるというふうに考えております。

 委員から御指摘があった先ほどの山谷委員長の方の御質問そのものを考えれば、まさに二つの制度は別の目的に照らしているものだというふうに私も思っておりますので、今、その意味で、片方がふえれば片方の方にも該当するのではないか、そういう考え方については、立っているものではございません。

井出委員 裁判員裁判の対象の類型化も、まだ私は議論が不十分だと思っていますし、それを再び議論するときに、恐らく、可視化の対象というものを、目的が違うものを重ねております、重ねておりますけれども、可視化の対象としたことも議論の中に一つ加えるぐらい、それだけ、目的の違うものを一致させるということは大きいということは申し上げておきたいと思います。

 本当はICレコーダーのさらなる有用性を証明したかったんですけれども、時間になりましたので、また機会があると思います、きょうは終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

奥野委員長 休憩時間が非常に短くて恐縮ですが、午後一時十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時五十三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時十分開議

奥野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 再開に先立ちまして、民主党・無所属クラブ及び日本共産党所属委員に対し、御出席を要請いたしましたが、御出席が得られません。やむを得ず議事を進めます。

 質疑を続行いたします。柚木道義君。

 これより柚木道義君の質疑時間に入ります。

 これにて柚木道義君の質疑時間は終了いたしました。

 次に、清水忠史君。

 これより清水忠史君の質疑時間に入ります。

 これにて清水忠史君の質疑時間は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時五十六分散会


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