衆議院

メインへスキップ



第35号 平成27年8月5日(水曜日)

会議録本文へ
平成二十七年八月五日(水曜日)

    午前十時三十分開議

 出席委員

   委員長 奥野 信亮君

   理事 安藤  裕君 理事 井野 俊郎君

   理事 伊藤 忠彦君 理事 盛山 正仁君

   理事 山下 貴司君 理事 山尾志桜里君

   理事 井出 庸生君 理事 漆原 良夫君

      池田 道孝君    岩田 和親君

      小田原 潔君    大塚  拓君

      門  博文君    門山 宏哲君

      菅家 一郎君    今野 智博君

      辻  清人君    冨樫 博之君

      藤原  崇君    古田 圭一君

      宮川 典子君    宮崎 謙介君

      宮澤 博行君    宮路 拓馬君

      簗  和生君    山口  壯君

      若狭  勝君    黄川田 徹君

      黒岩 宇洋君    階   猛君

      鈴木 貴子君    柚木 道義君

      重徳 和彦君    大口 善徳君

      國重  徹君    清水 忠史君

      畑野 君枝君    上西小百合君

    …………………………………

   法務大臣         上川 陽子君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 山谷えり子君

   法務副大臣        葉梨 康弘君

   法務大臣政務官      大塚  拓君

   最高裁判所事務総局刑事局長            平木 正洋君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  岡田  隆君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 河合  潔君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 露木 康浩君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 塩川実喜夫君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    三浦 正充君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    林  眞琴君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    小川 新二君

   政府参考人

   (公安調査庁次長)    杉山 治樹君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 鈴木 秀生君

   法務委員会専門員     矢部 明宏君

    ―――――――――――――

委員の異動

八月五日

 辞任         補欠選任

  辻  清人君     岩田 和親君

  簗  和生君     小田原 潔君

  階   猛君     黄川田 徹君

同日

 辞任         補欠選任

  岩田 和親君     辻  清人君

  小田原 潔君     池田 道孝君

  黄川田 徹君     階   猛君

同日

 辞任         補欠選任

  池田 道孝君     簗  和生君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 刑事訴訟法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四二号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

奥野委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、刑事訴訟法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、本案に対し、盛山正仁君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、維新の党及び公明党の共同提案による修正案が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。山尾志桜里君。

    ―――――――――――――

 刑事訴訟法等の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

山尾委員 ただいま議題となりました修正案につきまして、自由民主党、民主党・無所属クラブ、維新の党及び公明党を代表いたしまして、その趣旨及び内容の概要を御説明申し上げます。

 これまで、当委員会においては、政府提出の法律案について、数次にわたる参考人質疑や視察を含め、長時間に及ぶ丁寧かつ熱心な審査を行ってまいりました。委員会における議論を踏まえ、各党の真摯な修正協議を重ねた結果、今般、次のような内容の修正案を提出することで合意に至ったものであります。

 以下、この修正案の主な内容について御説明申し上げます。

 第一に、証拠収集等への協力及び訴追に関する合意制度について、検察官が合意をするか否かを判断するに当たって考慮すべき事情として、合意に関係する犯罪の関連性の程度を明記するとともに、合意のための協議の際に弁護人が常時関与することといたしました。

 第二に、通信傍受法について、傍受記録に記録されている通信の当事者に対する通知事項として、傍受記録の聴取等及び傍受の原記録の聴取等の許可の請求並びに不服申し立てをすることができる旨を追加するとともに、通信傍受についての国会報告事項を追加し、暗号技術を活用する方法により傍受の実施をしたときはその旨を国会に報告しなければならないことといたしました。

 第三に、附則の検討条項を次のように改めることといたしました。

 一、政府は、取り調べの録音、録画等が、被疑者の供述の任意性その他の事項についての的確な立証を担保するものであるとともに、取り調べの適正な実施に資することを踏まえ、この法律の施行後三年を経過した場合において、取り調べの録音、録画等の実施状況を勘案し、取り調べの録音、録画等に伴って捜査上の支障その他の弊害が生じる場合があること等に留意しつつ、取り調べの録音、録画等に関する制度のあり方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。

 二、一のほか、政府は、この法律の施行後三年を経過した場合において、この法律による改正後の規定の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。

 三、政府は、この法律の公布後、必要に応じ、速やかに、再審請求審における証拠の開示、起訴状等における被害者の氏名の秘匿に係る措置、証人等の刑事手続外における保護に係る措置等について検討を行うものとする。

 以上が、この修正案の趣旨及び内容の概要であります。

 何とぞ、御審議の上、委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

奥野委員長 これにて修正案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

奥野委員長 この際、お諮りいたします。

 本案及び修正案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官岡田隆君、警察庁長官官房審議官河合潔君、警察庁長官官房審議官露木康浩君、警察庁長官官房審議官塩川実喜夫君、警察庁刑事局長三浦正充君、法務省刑事局長林眞琴君、法務省矯正局長小川新二君、公安調査庁次長杉山治樹君及び外務省大臣官房参事官鈴木秀生君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

奥野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

奥野委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局平木刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

奥野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

奥野委員長 これより原案及び修正案を一括して質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。盛山正仁君。

盛山委員 おはようございます。自民党の盛山正仁でございます。

 今回の刑事訴訟法等の一部を改正する法律案につきましては、この委員会におきまして、これまで約六十時間にわたり、大変濃密な、また充実した審議が行われ、そして、その中で論点が整理、集約されてまいりました。また、我々各委員の問題意識、こういったことも明らかになってきたと思います。

 そういったこともございまして、我々は与党ではございますが、民主党、維新の党と共同いたしまして、公明党、自民党の方で共同で修正提案を先ほど提出したところでございます。

 本日は、きょうのこの審議がこの法律案についての最終局面であるということでございますので、我々が提出いたしました修正案に関連する事項を中心に御質問させていただきたい、そんなふうに思います。

 まず、取り調べの録音、録画制度について、法務省の方にお尋ねしたいと思います。

 取り調べの録音、録画制度については、これまで、対象事件の範囲が狭過ぎるのではないか、こんなふうに大分言われてまいりました。

 本法律案における対象事件の範囲は、現時点において必要性、合理性を十分検討した結果であり、まずはこの内容で制度を導入して、運用状況の蓄積を見つつ、対象事件のあり方について検討を行うというのが適切である、そんなふうに考えております。

 しかしながら、この検討について、政府原案の方では附則第九条で規定をしておったわけでございますけれども、私どもが提出いたしました修正案による修正後の同条第一項によりまして、従前の文言を修正するようにしております。

 すなわち、修正前におきましては、「取調べの録音・録画等が、被疑者の供述の任意性その他の事項についての的確な立証を担保するものであるとともに、取調べの適正な実施に資すること、」と並べまして、「取調べの録音・録画等に伴って捜査上の支障その他の弊害が生じる場合があること等」、こういうものを三つ並列で挙げておったわけでございます。

 しかしながら、我々の修正案といいますのは、この最後の、取り調べの録音、録画等に伴う支障その他、これにつきまして、前の二つの事項を踏まえた上で、最後の三点目に留意しつつ検討を加える、そういう修正を行おうというものでございます。

 二つのものと最後の一点を分けるというところが今回の我々の修正案のポイントであるということでございますが、法務当局においては、この修正をどのように受けとめて、そして取り調べの録音、録画制度についての検討をどのように行うか、それをまずお尋ねしたいと思います。

林政府参考人 政府案におきましては、「取調べの録音・録画等が、被疑者の供述の任意性その他の事項についての的確な立証を担保するものであるとともに、取調べの適正な実施に資すること、」ということに続けまして、「取調べの録音・録画等に伴って捜査上の支障その他の弊害が生じる場合があること等」を挙げまして、これらを踏まえて検討するとしていたところでございます。

 これに対して、修正案におきましては、両者を分離いたしまして、前者を踏まえて、後者に留意しつつ検討を加えることとされております。その趣旨は、取り調べの録音、録画等の趣旨、目的が前者にあることを明確にした上で、これを踏まえて後者に留意しつつ検討が行われるようにするために両者を分けるところにあると理解しているところでございます。

 法務省といたしましては、この修正後の規定に従いまして、取り調べの録音、録画制度のあり方について、運用状況を踏まえながら真摯に検討を行っていく所存でございます。

盛山委員 ぜひしっかりとした検討を行っていただきたいと思います。

 次に、合意制度について伺いたいと思います。

 この委員会の中でも、合意制度については最も多くの時間を費やして審議、論議がされました。その中で、いわゆる巻き込みの危険に適切に対処できるか、こういう点について議論がなされました。

 繰り返し、法務当局の方から、巻き込みの危険を防止するための制度的な手当てについての答弁があったところであり、十分かなと私自身は思っておったところでございますけれども、なお懸念を示すというような御意見もありました。

 そういうことで、今回、きょう提出いたしました修正案におきましては、刑事訴訟法第三百五十条の二第一項を修正して、検察官が合意をするか否かを判断するに当たって考慮すべき事情として、「当該関係する犯罪の関連性の程度」ということを明記することとしております。

 この修正は、関係する犯罪間に関連性がない場合、法律上合意をすることができないこととするものではない、しかしながら、被疑者、被告人の犯罪と他人の犯罪との間にどの程度の関連性があるかは信用性のある証拠が得られる見込みの程度と関連し得ることなどに鑑み、これを考慮事情として明記しようという修正でございます。

 例えば、検察官が勾留中の被疑者との間で合意をして、留置場の同房者から犯行告白を聞いた旨の供述を得るようなことがあると、巻き込みの危険が大きいのではないかという懸念がございました。こういった懸念を踏まえまして、この制度が基本的に想定しているのは、共犯である場合など、関係する犯罪の間に関連性がある場合であることを明らかにする意味というふうに我々は考えているところであります。

 このように刑事訴訟法を修正するということについて、どのように法務省は受けとめて、検察官が合意に係る判断を行っていこうとしているのか、伺いたいと思います。

林政府参考人 政府案におきましては、合意の対象となる事件に関して、被疑者、被告人の犯罪と他人の犯罪との間に共犯関係など何らかの関連性があるということは法文上は必要としていないところでございます。

 もっとも、これに対しましては、両犯罪の間に何らの関連性もない場合にも合意をすることができるとすると、例えば、検察官が勾留中の被疑者との間で合意をして、留置場の同房者から犯行告白を聞いた旨の供述を得ることも可能となり、いわゆる巻き込みの危険が高くなるのではないか、こういった懸念が示されていたところでございます。

 政府案におきましても、留置場の同房者から犯行告白を聞いた旨の供述を得るために勾留中の被疑者との間で合意をするようなことは基本的に想定されないところであり、他方、信用性のある証拠が得られる見込みがどの程度あるかを判断する上で、被疑者、被告人の犯罪と他人の犯罪との関連性の程度は、合意をするか否かを判断するに当たり、その他の事情というところで考慮することになると考えていたところでございます。

 今般、刑事訴訟法三百五十条の二第一項の修正は、先ほど申し上げましたような巻き込みの危険に対する懸念も踏まえつつ、被疑者、被告人の犯罪と他人の犯罪との間にどの程度の関連性があるかは信用性のある証拠が得られる見込みの程度と関連し得ることなどから、これを考慮事情として明記することとしたものと理解しているところでございます。そして、これによりまして、合意制度が利用される場合として基本的に想定されるのは、共犯事件など、両犯罪の間に関連性が認められる場合であることが示されることにもなると理解しております。

 検察官におきましては、合意をするか否かを判断するに当たりましては、両犯罪の関連性の程度も適切に考慮することとなるものと承知しております。

盛山委員 ぜひ、今の御答弁のとおり、適切な御判断をお願いしたいと思います。

 続いて、その合意制度でございますけれども、今回我々の提出した修正案におきまして、合意制度における協議についても修正を加えております。

 具体的には、刑事訴訟法第三百五十条の四ただし書きを修正して、被疑者、被告人及び弁護人の双方に異議がない場合であっても、検察官と被疑者、被告人のみとの間で協議の一部を行うことはできないこととし、他方、検察官が弁護人のみとの間で協議の一部を行うことは認めることとしたものであります。

 これは巻き込みの危険に対する懸念を踏まえたものでもございまして、被疑者、被告人及び弁護人の双方に異議がない場合であっても、検察官と被疑者、被告人のみとの間で協議の一部を行うことはできないこととするところにその趣旨があるわけであります。

 このような修正を加えたことによりまして、協議を行うに当たって常に弁護人が関与しなければならない、こういうことになるわけでありますけれども、これに対してどのように考えているのか、どのように受けとめているのか、法務当局に伺いたいと思います。

林政府参考人 政府案におきましては、合意をするための必要な協議について、基本的には検察官、被疑者、被告人及び弁護人の三者で行うこととしつつ、被疑者、被告人及び弁護人の双方に異議がない場合には、検察官はいずれか一方のみとの間で協議の一部を行うことができるとしておりました。

 弁護人が協議に関与することとする趣旨につきましては、被疑者、被告人の利益を保護しようとするところにあるわけでございますが、弁護人が関与することはいわゆる巻き込みの危険の防止にも資するものと考えられるところでございます。

 合意制度につきましては、これまでいわゆる巻き込みの危険に対する懸念が示されてきたところでございますが、政府案におきましても所要の制度的な手当てをしているところでありまして、この危険には適切に対処できるものとなっていると考えておりますけれども、今般の刑事訴訟法三百五十条の四ただし書きの修正につきましては、こうした懸念も踏まえつつ、いわゆる巻き込みの危険の防止についてより一層の確実を期する観点から、協議には弁護人が常に関与しなければならないこととしたものと理解しております。

 検察官といたしましては、当然のことながら、この規定に従いまして、弁護人の常時関与するもとで協議を行っていくことになるものと承知しております。

盛山委員 今のその御理解のとおりでありますので、そういった運用というんでしょうか、扱いをしっかり行っていただきたいと思います。

 もう一点、合意について質問します。

 一般的に犯罪捜査においては、その過程で生じる重要な事項を適時適切な方法で何らかの記録をしていくということが必要になると考えますけれども、その点は合意制度における協議についても同様ではないかなと思うところであります。

 したがって、合意制度の運用に当たっては、検察官が協議の過程で生じた重要な事項を適切に記録し保管することになると私どもは考えておりますけれども、この点について法務当局はどのようにしていくつもりなのか、御答弁いただきたいと思います。

林政府参考人 一般に、捜査において重要な事項につきましては適切に記録がなされるのが当然でありまして、現になされているものと考えております。

 合意制度における協議につきましても、自由な意見交換などの協議の機能を阻害しないとの観点をも踏まえつつ、その過程について、重要なポイントとなる事項につきましては当然に記録がなされ、これが適切に保管されることとなるものと考えております。

 この点につきましては、御指摘も踏まえまして、特に検察内部の指示文書等により周知徹底していきたいと考えております。

盛山委員 皆さんが同じような対応をしていただけるように、人によって対応が異なるといったようなことがないように、ぜひお願いしたいと思います。

 続きまして、通信傍受法について伺いたいと思います。

 通信傍受法の改正は、大きく分けて、対象犯罪の拡大、手続の合理化、効率化、この二つの柱だと思っております。

 対象犯罪の拡大につきましては、通信の秘密の不当な侵害につながるのではないかという懸念を前提に、振り込め詐欺に対応できるようにすることは認めるという意味で、詐欺、恐喝の追加のみを認めるべきではないかとの意見も見られたところであります。

 しかしながら、昨今の犯罪情勢を見ますと、暴力団による一般国民を標的とした殺人、放火等の凶悪事件や、外国人窃盗団を初めとする不良集団による組織的な窃盗、強盗の事件など、善良な国民生活を脅かす組織的な犯罪は依然として後を絶たない状況にございます。これらの事件の全容を解明し、首謀者に対しその責任に見合うだけの刑罰を科すこと、ひいては組織を壊滅させていくこともまた国民の方々が刑事手続に期待するところであり、そのような国民の切なる思いに応えていくのが我々の務めであると考えております。

 もとより、対象犯罪のあり方につきましては、最高裁判例の趣旨も踏まえつつ、通信の秘密の制約に見合うほどの重大性があるかどうかという観点からの検討も必要であると考えますが、その検討に当たっては、現実の犯罪情勢、国民生活に与える脅威といった視点も欠かすことができないと考えているところです。

 そこで、対象犯罪の拡大はどのような観点から必要であると考えているのか、法務当局に改めて答弁をお願いしたいと思います。

林政府参考人 組織的な犯罪等におきましては、首謀者の関与状況等を含めました事案の解明が求められるところでございますが、現行法のもとでは客観的な証拠を収集する方法が十分ではございません。そこで、その解明を図るために、末端の実行者など組織内部の者の取り調べによって供述を得ようとすることとなり、そのことが、取り調べ及び供述調書に過度に依存せざるを得ない状況となっている要因の一つとなっております。

 他方で、近時、一般国民を標的としました暴力団によると見られる殺傷事案が相次いでおりまして、また、特殊詐欺のような通信傍受法の施行後に新たに発生した犯罪事象による被害が深刻になっているなど、一般国民にとって脅威となる事案が社会問題化しておりまして、このような事案の解明の要請はより一層強くなっております。

 組織的な犯罪等におきましては、組織防衛の一環として、末端の実行者等が警察に検挙された場合には徹底して供述を拒否するよう厳しく統制がなされるなど、事案の解明に資する供述を得ることが非常に困難となっております。

 そこで、通信傍受法施行後の犯罪情勢の変化等を踏まえまして、通信傍受の対象犯罪をまず拡大することによりまして、一つには、組織的な犯罪等において事案の解明に資する客観的な証拠をより広範に収集することが可能となり、また、証拠収集に占める取り調べの比重というものを低下させ得ると考えるところでございます。

盛山委員 しっかりとした対応をお願いしたいと思います。

 通信傍受についてもう一点伺いたいと思います。

 今回の法改正で、特定電子計算機を用いる新しい方式の導入が想定されているところであります。この委員会でも長く、さまざまな観点から議論がなされましたけれども、運用上、デュープロセス、これがきちんと確保されるようにより一層の配慮も必要ではないか、こういうような議論がいろいろございました。

 そういう点で、きょう提出いたしました修正案におきましては、通信の当事者に対する通知事項を追加し、捜査機関が作成する傍受記録の閲覧、聴取等や、裁判官が保管する傍受の原記録の閲覧、聴取等、さらには不服申し立てをすることができる旨を通知することとするほか、本法律案により新たに導入する方式により傍受の実施をしたときはその旨も国会報告しなければならないというふうにしたところでございます。

 これらは、通信事業者等の施設において一時的保存を命じて行う傍受の実施についても同様であり、傍受の実施のより一層の適正化に資することが期待されているところでございます。

 この我々の修正案についてどのように法務当局は捉えているのか、答弁をお願いしたいと思います。

林政府参考人 現行の通信傍受法及び今回の政府案におきましては、その通信の当事者に対する通知の際に、傍受記録の閲覧、聴取等をすることができる旨を通知するということにはしていないところでございます。

 今般の通信傍受法第三十条の修正は、傍受の実施の適正をより一層確保するとの観点から、通信当事者に対する通知の際に、傍受記録の聴取、閲覧等ができること、傍受の原記録の聴取、閲覧等ができること、不服申し立てができること、こういったことをあわせて通知することとしたものと理解しております。

 捜査機関といたしましては、当然のことながら、この規定に従いまして、通信当事者に対する通知を適切にしていくことになるものと承知しております。

 また、政府案におきましては、本法律案において新たに導入することとしている方式による傍受の実施をした場合でも、その旨を国会に報告すべきこととはしていなかったところでございます。

 今般の通信傍受法の第三十六条の修正は、修正案の附則第九条第二項によりまして、今般の通信傍受法の改正規定についてのいわゆる検討条項が設けられることも踏まえまして、新たに導入される方式による傍受の実施のあり方や運用状況についての検討の資料とするために、それらの方式により傍受の実施をしたときは、その旨を国会に報告するとともに、公表しなければならないこととしたものと理解しております。

 関係行政機関といたしましては、当然のことながら、この規定に従いまして、国会に対する報告等を適切に行うことになるものと承知しております。

盛山委員 今御答弁にありましたが、しっかり受けとめていただきたいと思います。

 では、今後の検討についてちょっと伺いたいと思います。

 きょう我々が提出いたしました修正案におきましては、附則の九条二項、三項として、本法律案全体についての検討条項、そして本法律案に盛り込まれなかった諸制度についての検討条項を加えることとしております。

 刑事司法制度が、社会情勢や犯罪情勢の変化に対応しつつ、将来にわたってその機能を十分に発揮していくためには、その運用状況に十分目を配りながら、改善の余地がないかどうかを常に考え続けていくということが重要であります。そして、本法律案に盛り込まれている各制度についても、また盛り込まれなかった諸制度についても、引き続き検討を行っていくことが必要であると考えております。

 これらの検討条項に基づきましてどのような姿勢で検討を今後行っていくつもりか、御答弁をいただきたいと思います。

林政府参考人 政府案におきましては、取り調べの録音、録画制度以外につきましては検討条項を設けておりませんでしたが、修正案におきましては、取り調べの録音、録画制度を除く本法律案全体につきまして、施行後三年を経過した後に必要な検討を行い、所要の措置を講ずる旨のいわゆる検討条項を設けることとされております。

 これは、刑事司法制度は、その運用を重ねていく中で、必要に応じて改善がなされていくことを通じまして、よりよいものにしていく必要があるとの認識に立つものであると理解しているところでございます。

 法務省といたしましては、この規定に従いまして、本法律案全体について、その運用状況を踏まえつつ、真摯に検討を行っていく所存でございます。

盛山委員 制度というのは、改正して、それでパーフェクトになるというものでは決してございません。今後とも、ぜひ、これをステップにして、また改善の御努力をお願いしたいと思います。

 続きまして、国家公安委員長にお尋ねをしたいと思います。

 いよいよ、きょうでこの法案審議が終わるのかなと思っております。この法律が今後、衆議院を経て、また参議院に送られていくわけでございますけれども、本法律が成立したならばということになるわけでありますけれども、適正、的確な運用というものがやはり必要ではないかと思います。この委員会でも、参考人の方も含めて、いろいろな御議論がなされました。大臣の方からもさまざまな御答弁をしていただいたところであります。

 警察を所管される国家公安委員長として、デュープロセスというんでしょうか、この法律の趣旨をよく踏まえられて、どのように適正、的確な運用がなされるか、ここが我々としては大変大事なポイントではないかなと考えておるわけでございますが、山谷大臣のお考えというものをお伺いしたいと思います。

山谷国務大臣 本法案は、取り調べの録音、録画制度、通信傍受の合理化、効率化を初め、刑事司法分野の重要かつ多岐にわたる課題に対処するものでありまして、これら諸制度が一体となって新時代の刑事司法制度を形づくることとなると考えております。

 今回の審議を通じまして、私自身も、刑事司法制度の役割の重みや適正捜査の重要性について改めて思いを深くしたところでございます。

 御審議の上、改正法が成立、施行された場合には、同法を適正、的確に運用し、国民の安全、安心を確保するため、世界一安全な国日本を目指して、引き続きしっかりと警察を指導してまいりたいと考えます。

 取り調べの録音、録画については、重大で真相解明が最も強く求められる裁判員裁判対象事件を対象として全過程の録音、録画を義務づける制度への対応は、警察にとって重い課題と認識しておりますが、御審議の上、改正法が成立、施行された場合には、しっかりと取り組んでまいりたいと思います。

 また、通信傍受については、法の定める厳格な要件と手続に基づいて、これまでも慎重に運用してきたところでございますけれども、御審議の上、改正法が成立、施行された場合には、本委員会における御議論も踏まえ、同法を適正かつ効果的に活用し、振り込め詐欺や暴力団犯罪等、現に国民の脅威となっている組織的犯罪の脅威に的確に対処してまいりたいと考えます。

盛山委員 山谷大臣、ありがとうございました。

 この委員会の中でも何度もいろいろ御質問、そして御答弁をいただいたところでありますが、安心、安全の生活の実現、そして国民から信頼される警察というものの確立に今後ともぜひ御指導いただきたいと思います。

 大臣、御予定があれば、もうこれでどうぞ。

 最後に、上川法務大臣にお尋ねしたいと思います。

 時間が我々与党は限られているものですから、主要な論点に絞って御質問あるいは議論をしてきたところであります。

 我々も政府・与党の一員として、今回の刑事訴訟法の改正を出すときに、さまざまな疑問、懸念に答えることができるよう、あるいは、法制審等を通じましてこれまで十分な議論を踏まえて立案してきたつもりでございましたけれども、今回の約六十時間に及ぶ審議を通じまして、なお一層改善点があるんじゃないかということで、きょう、我々は四党で修正案というものを提出したところであります。そしてまた、この修正案を取り込むということができれば、この刑事訴訟法の改正の内容がさらに充実したものになっていくのではないかと我々は考えているところでございます。

 今回の刑事訴訟法の改正といいますのは、現在の刑事司法制度が取り調べ及び供述調書への過度の依存から脱却するために不可欠なものであり、ぜひ成立させるべきものと考えているところであります。そして同時に、刑事司法制度がその役割を十分に果たし、国民にとって頼りがいのあるものであり続けるためには、幅広い観点から不断の検討が必要であります。

 先ほど御答弁もいただいたところでありますが、法務省にはそのような検討を進めていくことを我々期待しているところであります。山谷大臣に対しまして、信頼される警察というものを確立してください、そういうふうにお願いしたところでありますが、法務省に対しては、信頼される検察あるいは司法制度、こういうことになろうかと思います。

 今後この法律が成立したならばということになるわけでございますけれども、今後の刑事司法制度の進化、発展を期しまして、どのように上川法務大臣として今後の制度のさらに一層適切な改善に向けて検討を行い、そしてまたそれを実現していくかにつきまして、お考えを伺いたいと思います。

上川国務大臣 ただいま委員から、この法務委員会におかれまして、委員の先生方から長時間にわたりまして大変さまざまな視点から御審議をいただき、この法律案につきましてのさまざまな論点ということにつきましてもクリアにしていただいたということで、この間の委員会の御審議に対しまして大変大きな御貢献をしていただいたものというふうに改めて感謝をしておるところでございます。

 そもそも、この法律案の趣旨でございますが、捜査、公判が取り調べ及び供述調書に過度に依存していた状態を改めまして、刑事司法制度全般にわたりまして機能的なものにする、適正なものにする、そして、国民の皆さんから信頼を得るということが何よりも大事である、そうしたことから、証拠収集手続の適正化、多様化、また公判におきましての審理の充実化を図る、こういうことで新時代の刑事司法制度の構築をする、こうした大きな課題、目的をしょってのこの法律案の提起でございました。

 まさに、刑事司法は国民生活の安全、安心にとりましての重要な基盤であるということでございますので、この点に鑑みて、この刑事訴訟法等の改正におきましても、ぜひとも改正をしていただきたいということを強くお願い申し上げる次第でございます。

 もとより、刑事司法の分野につきましては、社会情勢が変化をしていく、さらに、さまざまな捜査や公判の事情につきましても、それに応じましてたゆまぬ改革をしていくべきことであるというふうに思っているところでございます。その意味で、修正案の今回の御趣旨は、この諸制度の施行状況等を踏まえた上で検討を加える、そうした内容の修正案を御提示していただいたということでございまして、まさに認識を共有しているものでございます。

 刑事司法のさらなる進化、発展を目指しまして、たゆまぬ改革、そのために、たゆまぬ、絶えざる検討をしてまいりたいというふうに思っております。

盛山委員 ありがとうございました。

 たゆまぬ改革という言葉がありました。ぜひ、安全、安心の生活の確立、そして信頼される司法制度の確立に向けて、今後ともよろしくお願いしたいと思います。

 以上です。

奥野委員長 正午から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五分休憩

     ――――◇―――――

    正午開議

奥野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。黒岩宇洋君。

黒岩委員 民主党の黒岩宇洋でございます。

 各党の理事の皆様の御尽力、うちの党は山尾理事が大変力を傾注し、あと、各党の理事の皆様のお力のおかげで修正協議が調ったということで、このことに関しては本当に心より敬意を表させていただきます。

 私も今まで懸念していた一個一個の点については、この後、山尾理事の方からもつまびらかにすると思いますけれども、司法取引の類型について、他人型とはいえ、幾ら何でも赤の他人まで巻き込むのはいかがなものかといった問題点に対して、きょうは局長の答弁でも、実質的には共犯に限るんだという答弁もいただきまして、一歩前進したということは、私もこれはありがたいことだなと思っております。

 また、三百五十条の四のただし書きについても、私も何度か触れさせていただきました。被疑者、被告人にとって、弁護人が全く関与しないような状況というのは、これもやはり問題があるでしょうと。

 細かなことでいえば、三百五十条の六になりますけれども、この制度では、世界に例を見ない、司法警察員と司法取引、協議ができるという内容になっています。これに三百五十条の四のただし書きまで当てはめると、今度は、被疑者と司法警察員のみで、すなわち、検察官も弁護人も、法律の専門家がいない中で協議ができる、そして司法警察員から合意内容の提示ができるという、これまた世界に全く例を見ない制度であったわけですから、せめて三百五十条の四のこのただし書きを変えて弁護人の常時関与を入れたということは、これは私は大きな意義があると思っておるところであります。

 また、検討の附則九条、これも代表質問からずっとこだわってまいりましたけれども、これを検討するに当たって踏まえること、三点ありますけれども、一点目、二点目は、これはある意味、取り調べの録音、録画について積極的に評価する内容ですけれども、三点目に至っては、「捜査上の支障その他の弊害が生じる場合」と、これを決めつけてマイナスを並立させることは、これは矛盾があるだろうと私も指摘しておりました。

 この点についても、条文の内容立てを変えることによって積極評価というものを前面に押し出していただいたということも、私は評価できることだと思っております。

 さて、きょうでこの議論も終局になるのかと思うと大変お名残惜しゅうございますけれども、総論部分について何点か、確認の意味も含めてお聞きをしたいと思っております。

 まず、上川大臣にお聞きしますが、そもそも、検察における捜査、公判のあり方、この制度改革においては、取り調べの録音、録画、当時は可視化と言っていましたけれども、この録音、録画というものがやはり最も優先される改革テーマである、私はそう認識しておりますけれども、大臣はいかがでしょうか。

上川国務大臣 今回、刑事訴訟法の改正ということで御議論をしていただく過程で、取り調べの録音、録画制度ということについては、大変大きな比重を占めていたというふうに思っております。

 取り調べの録音、録画制度を含めましてさまざまな新しい制度、つまり、多様化を含めまして御検討をいただいたということでございますが、この録音、録画制度は大変大きな項目であるというふうに思っております。

 しかし、制度のみを導入したとしても、証拠収集においての取り調べが占める比重ということにつきましては、捜査、公判が取り調べ及び供述調書に過度に依存している状況については改善されないということでもございますし、また、公判廷における立証のあり方につきましても変化することはないということでございますので、その意味では、取り調べの録音、録画制度のみならず、証拠収集手段の適正化、多様化、及び公判審理の充実化を図るためのさまざまな制度を一体として刑事司法制度の中に取り込む、こうした必要性があるというふうに考えているところでございます。

黒岩委員 大臣、私は今、他の制度が全く不要だとか、そういったことを言っているわけではなくて、録音、録画についての評価をお聞きしたわけです。

 というのも、これも冒頭、概括的な質疑の中で、私は、すごく重要な検察の在り方検討会議の提言書、やはりこれの設計図に基づいて、その後、特別部会が議論をしたわけですし、その後の、今の刑事訴訟法等の改正につながっている。この流れを考えるにおいて、この提言書には、提言書は一章から四章で成るわけですが、その四章に「検察における捜査・公判の在り方」とあります。この中で、手法として、改革のテーマとして具体的に記されているのは取り調べの可視化だけなんですよ。「虚偽の自白によるえん罪を防止する観点から、取調べの可視化を積極的に拡大するべきである」と書いてあるだけなんですね。そこには、合意制度、ましてや司法取引、通信傍受、こういった単語は一切入っていないわけですよ。それはそうですよね。何せ、検察の不祥事そして冤罪事件、このことを契機として検察改革からスタートしたわけですから。

 その点において、私が冒頭質問させていただいたのは、やはり、十本の柱でも一本目に持ってきた、それが取り調べの録音、録画であるわけですから、この重要性、大きなテーマだと先ほど大臣はおっしゃってくださいましたけれども、これは大変大きな、重要な刑事司法改革のテーマである、この点は認識を共有することは可能ですよね。

上川国務大臣 冤罪事件に端を発しまして、検察の改革、さらにはさまざまな審議会、委員会を通じまして御議論いただいたその結果として今回の刑事訴訟法の改正となっているところでございますが、その構成する内容につきましての、やはり大変大事なものとして、この録音、録画制度というもの、しかも、対象範囲の中で全面的な録音、録画をする、こうした制度を導入するということにつきましては、大変重要な位置にあるというふうに考えております。

黒岩委員 ありがとうございます。

 であるからこそ、最初に申し上げたこの附則九条のあり方というのは重要だったわけですよ。やはり、被疑者の供述の任意性を的確に立証する担保であると、一点目はすごく評価している。二点目は、録音、録画は取り調べの適正な実施に資するんだと。だから、まさに在り方検討会議で積極的に拡大を図っていくべきなんだというものと合致しているわけですよ、この点まで。

 そして、この後、いろいろなことが起きてくるかもしれない。そういう場合に、それが、先ほど申し上げた捜査上の支障その他の弊害というものがあったらということ、やはりこれを後段に持ってきて、その場合にはまたその結果に基づいて所要の措置を講じようという、やはりこういう附則に落とし込むというのが、もともとの在り方検討会議の提言からすればやはり論理必然であると私は思いましたし、今の大臣の答弁をお聞きしても、その答弁と非常に合致した内容になっている、そのように理解をさせていただきました。

 それでは、この提言書には、新たな捜査手法についてはこういう記述があります。「我が国の治安状況に照らして、バランスを失するような強力な捜査手法の導入には、国民の理解が得られない」、このようにはっきりと明記されております。

 ここで警察庁三浦刑事局長にお聞きしたいんですけれども、今現在の我が国の治安状況、これは二十六年、最新版の犯罪白書で結構ですから、近時の、多分、〇八年からの統計だと思いますけれども、一般刑法犯の認知件数、人口当たりの発生率そして検挙率の推移、これを簡単にお答えいただけますでしょうか。

三浦政府参考人 刑法犯の認知件数の推移ということで申し上げますと、ちょっと、手元にあるのは過去十年分でございますので……(黒岩委員「〇八年からでいいです、犯罪白書に載っているもので」と呼ぶ)はい。

 では、平成十九年の数字で申し上げますと、認知件数は、この当時は百九十万八千八百三十六件でございました。その後、右肩下がりで減少してはおりまして、平成二十六年には百二十一万二千百六十三件という状況になっておりまして、戦後の歴史を見ましても、認知件数としてはかなり低い水準ということになっているところでございます。(黒岩委員「発生率と検挙率」と呼ぶ)

 それから、検挙率につきましては、これは余り大きな変化はございませんで、平成十九年には三一・七%、おおむね三〇%を少し超えるところで推移をしているところ、平成二十六年は三〇・六%でございます。(黒岩委員「発生率、人口十万人当たり。同じページに書いてあるでしょう」と呼ぶ)ちょっと今、発生率の数字が手元にございませんので、一度ちょっと確認をしてまた御答弁申し上げます。

黒岩委員 これは、事前に丁寧に通告というか、犯罪白書のこのページですよと言って、そこに一覧表があるじゃないですか、各国比較も全部載った。まあ、いいです。

 今、お聞きになったと思いますけれども、認知件数は、もうこの六年ぐらいで百九十万件から百二十万件まで下がっています。人口も若干減っていますけれども、発生率も、十万人当たり千四百件ぐらいから、今、千件程度に下がっているんですね。

 発生率においては、各国と比較すると、例えばアメリカだったら人口当たり日本の三・何倍ですよ。イギリスでも六・何倍、ドイツで七・何倍ですね。フランスはずっと五倍ぐらいでした、最近ちょっと統計が変わったので三倍ですけれども。

 検挙率も、三〇%で横ばい。

 と考えると、今言ったように、認知件数、発生率はどんどん下がってきている、しかも、主要先進国の中で断トツの一位をずっと続けている、今も続けている。発生率もどんどん下がっている。そして、検挙率だって、変わらず、いろいろな複雑化した犯罪の中でも、三〇%そこそこでずっと横ばいでいるということは、上川大臣、これはもう評価ですから、そうすると、先ほど申し上げた我が国の治安状況というのは少なくともよくなってきている、そうお考えになられますでしょうか。

上川国務大臣 治安状況の全体的な評価ということになりますと、いろいろな考え方があろうかと思いますが、今の犯罪の認知件数でありますとか検挙率のレベルということについては、治安がいい日本ということについての一つの証左であるというふうに思います。

 同時に、質の面で見たときに、一々の件数ではあらわされない犯罪の質という意味で考えてみますと、そこのところにつきましては、やはり組織性の高い犯罪が出てきているということもありまして、そうした被害については新たな事態があるというふうに思うところでございます。

 しかし、総じて申し上げれば、先ほどの各国との比較ということの絡みの中で、認知件数と検挙率ということについての定義がそれぞれ違うとは思いますけれども、私は、比較して、大変いい状態ではないかというふうに思っております。

黒岩委員 そうですよね。量と質の部分があるというのはこの委員会でも議論しましたけれども、でも、やはり一つの大きな目安で、これも、犯罪白書でどれだけ我が国が治安がいいかということを前面に出していますし、すばらしい数字なんですよ。

 そうなりますと、先ほど申し上げた、治安状況と、それにバランスを失するような強力な新たな捜査手法、これはなかなか目安となるような数値的なものはきっとないですよ。ただ、今回、初めて我が国で司法取引を導入する。しかも、当初は、これも世界に例を見ない、自己負罪型ではなく他人型で、そして第三者までも含めるという内容であると考えると、これは一定以上強力な捜査手法と考え得るかもしれない。また、通信傍受にしても、二十二の罪種が対象犯罪として加わった。これも強力な新たな捜査手法と言えるかもしれない。

 ただ、この新たな捜査手法というのは、やはり国民の権利を制約する場面も出てくる可能性がある。そして、冤罪の可能性をわずかでも高める可能性がある。その点において、やはりこの提言の意味するところは、バランスを失しない、すなわち、新たな捜査手法というものが謙抑的であってしかるべきだということを強く主張したんだ、私はそう理解しております。

 この点について、この後、いろいろな刑事司法の改革を進めていく中で、この謙抑性というものを私は大切にしていただきたい、この思いについて、上川大臣そして山谷国家公安委員長の御見解をお聞かせください。

上川国務大臣 今まさに、治安の情勢に鑑みて、バランスを失することなく、捜査手法につきましてもこれを抑制的に使うということについては、私は同感でございます。そういう意味におきまして、この法務委員会におきましてもさまざまな観点から御審議をいただいたものというふうに思っているところでございます。

 そもそも、今回の制度につきましても、そうした国民の皆さんの御理解、さらには権利利益につきましての侵害にならないような、そうした十分なる配慮をするということを考えた上で、提言に盛り込まれた文章をしっかりと踏まえた上で制度設計をさせていただいているというふうに思っております。

 しかし、同時に、これを適正に運用していくということは、さらに重要なことではないかというふうに思っております。どのような制度も完璧なものではないということでございますので、絶えず運用の場面でそれに謙抑的に取り組み、なおかつ、これを適正に運用することができ、国民の皆さんの信頼を得ることができるようにしていくということについては、たゆまぬ検討、検証というものが必要であるというふうに思っております。

山谷国務大臣 通信傍受の合理化、効率化や訴追に関する合意制度の導入については、実際の運用を見る必要はありますけれども、振り込め詐欺や暴力団犯罪など、悪質巧妙化する組織犯罪等の脅威から国民の安全、安心な生活を守り抜くために有用な捜査手法と認識しております。

 私といたしましても、これまで委員会において行われました議論の中で、慎重な運用を求める意見も拝聴してきたところでございます。今、黒岩委員の御発言もございました。法の趣旨を踏まえた適正な運用に配意しつつ、安全、安心を求める国民の期待に応えられるように努力をしてまいりたいと考えます。

黒岩委員 ありがとうございます。

 この点について最後に付言しますけれども、提言書の中には、新たな捜査手法、先ほど申し上げたように、具体的な名称は書いていませんでしたけれども、客観的な証拠収集とか、また、科学的、心理学的な手法を用いた捜査手法、こういったものを導入することも考えてくれという提言がありましたので、やはり、先ほど申し上げたように、国民の権利を制約するとか、また冤罪の可能性があるとか、そういったものとは別の、客観的な、また科学的な捜査手法というものを鋭意検討していっていただきたい、このことはお願いをさせていただきます。

 それでは、若干各論になりますけれども、司法取引、合意制度の引き込みの防止策ということで幾つも議論してきましたけれども、一点、その中の一つの柱に、虚偽供述罪の存在が大変な抑止力になるという指摘を、これは当局からもしてもらいました。

 これは林局長に御答弁いただきたいと思いますけれども、では、どの時点で虚偽供述罪というものが立件、起訴できるのか。これは、合意後、いつでもどこでも立件して起訴することができる。

 ただ、問題は、立件し、起訴することがそんなに簡単なことだろうか。これは、参考人質疑で元検察官の方が言っていました。要は、協議で合意に至るまで虚偽供述を見抜けなかった、自分がうっかりしていた、自分の失敗を認めることになるということですよ。そういうことですね、虚偽供述罪で立件し、起訴するということは。そして、その参考人いわく、それは自分だったらメンツにかけてもできないだろう、やりづらいことだ、こうおっしゃっていました。

 これは、検察にとってやはり一歩引き返すことなんですよね。引き返して立件、起訴することが容易にできると本当にお考えなのか、局長、御説明いただけますか。

林政府参考人 合意後の供述が虚偽であるということが明らかになった場合というのは、裏づけ捜査等を尽くした上で他人の公判等においても明らかになったような場合が考えられると思いますけれども、そういった場合におきましては、やはり検察官として、虚偽供述罪が成立するという証拠に基づいて判断ができる場合には、当然、合意の当事者である被疑者、被告人を虚偽供述罪で訴追することとなろうかと思います。

 自分のメンツとかいう問題で訴追が困難ではないかという点の御指摘があったと思いますけれども、合意制度を使う場合におきましても、やはり検察といたしましては、当然、合意制度を使うことについては、決裁制度などを通じまして組織として行っているわけでございますので、単に個々の検察官のみのメンツとか、そういったもので虚偽供述罪での訴追をちゅうちょするということはなかろうと思います。

黒岩委員 そう答弁するしかないですよね。

 私がこの点をあえて特出ししたのは、これも、検察官の、フロッピーディスクを改ざんするという、とんでもないあの不祥事ですよ。むちゃくちゃなことだ。そして、冤罪も幾つか起きてきている。そのときに、検察は、引き返すことができない、引き返す勇気を持っていない組織だという自己反省をしたんですよ。自分らは引き返せない組織なんだと自己反省をしたんですよ。

 では、引き返す勇気を持つにはどうするんだというときに、幾つか、検察官の倫理規程をつくったり、あとは、公判における、地検レベルだったら高検への報告とか、チェック体制をつくってきた。ただ、これも基本的には無罪に戻るときのための体制であって、今回の虚偽供述罪のように、新たに立件、起訴するための、引き返す制度とはまたちょっと別なわけですから、いざ引き返すといっても、やはり体制というものは強化しなきゃいけないし、その制度の中身ももっともっと充実しなければいけない。もちろん、法整備できればそれにこしたことはないですけれども。

 大臣、やはり、今申し上げた、検察というのはある見立てによって起訴、有罪まで突っ走っていってしまうんだという、この組織としての大きな大きな自己反省に基づいて、引き返す勇気という、これは精神的な言葉ですけれども、それをもっと超えて、今言った、制度、体制をつくっていくんだというところからスタートを切ったんですよ。このことについて、やはりさらにさらに強化し、拡充をしていっていただかなければ、今言った虚偽供述罪なるものが立件、起訴すらされない、となれば、抑止力にも何にもならないなどというようなことが起きてもらっても困るわけです。

 この点について、今申し上げた体制の強化、制度の拡充についての大臣としての前向きな思いをお聞かせ願えませんか。

上川国務大臣 今回の新しい制度を導入するに当たりまして、その中に虚偽供述罪というような制度を組み込んだ形でスタートするということでございます。

 この制度そのものが、先ほど来御指摘のように、国民の皆さんから信頼をされて、しっかりとした形で運用することができるようにしていくということになりますと、やはりこの点につきましては、絶えず検証を加えながら対応していく必要がある、私もそのように考えているところでございます。

黒岩委員 この点について今御答弁いただいたので、また、具体的に省内でも検討し、検察との対応を図っていただきたいと思います。

 それでは、もう時間もないことですので、通信傍受に関して、これも一点だけ確認をしたいんですけれども、立会人についてです。

 現行の立会人の役割についてという質問に局長も何回か答弁されてきていますが、これは、法文上、厳密に役割というのは二つだけなんですよね。二十条に、記録媒体の封印、そして十二条の二項に、当該傍受の実施に関して立会人は司法警察員または検察官に意見を述べることができる、法文上はこの二つだけなんですよ。

 さらに言うと、さっき言った、意見を述べることができる、この十二条の二項に呼応して、二十一条の三号で、意見を述べた場合には必ずその意見を書面にて裁判官に提出しなければならないという、この条文で補っているわけですね、この役割を。

 私が問題だと思うのは、今度、新たな制度で、特定電子計算機によって、確かに、この記録媒体の封印、すなわち媒体の改ざんというものは防げると私も直観的に思います。ただ、電子計算機は意見を述べることはできない。となれば、当然、書面が裁判官に提出されることもない。

 やはりこれは、事後的に記録媒体によって検証ができるという法務省の答弁なんですよ。だから立会人は必要ないと。だけれども、リアルタイムで、その場で立会人がいて、その場でいつでも意見ができるということは、私は、やはりこの通信傍受の濫用を防ぐ大きな大きな役割だと。この点が今回欠落する、ないしはその役割、効果が低減するのではないかと思っているんですが、局長、いかがですか。

林政府参考人 現行法上の立会人には、捜査官が傍受をしている通信の内容を聞いて確認するという権限はないわけでございます。そうしますと、立会人が行うものは外形的なチェックということになります。また、その意見につきましても、外形的なチェックに基づいての意見ということになります。

 その場合の、実際のリアルタイムの適正チェック、あるいは立会人がいることの心理的抑制、こういったものの効果に対して、今回の新しい方式による手当て、担保ができるのかという御指摘だと思いますけれども、やはり現行法上の立会人の権限がそういった外形的なチェックに限られているということに鑑みれば、今回の新しい方式において、少なくとも外形的なチェックの部分についての、その役割の代替的な機能というものは十分に新しい方式で担保されており、実際に、捜査官としましては、その後、自分たちの行った傍受の結果というものが、裁判所、裁判官に全てが行きますので、事後的な抑制が図られるということで、そのことが捜査官に対する心理的な抑制ということにつながっていると思います。

黒岩委員 その心理的な抑制の効果、これは今回修正ではなかなか条文上書き込めませんでしたけれども、しっかりと運用上で対応していただくことをお願い申し上げます。

 最後になりますが、大臣、これはお願いですから、聞いてください。

 何度も申し上げますけれども、もともとの出だしは、検察官の証拠改ざん、そして冤罪、このことを防ぎましょう、二度とやらないんだ、検察を改革しなきゃいけない、そして刑事司法も改革しなければいけない、ここからのスタートでありますので、今後も、今言った目的を成就するための改革をさらにさらに強力に推し進めていただくことをお願い申し上げて、私からの質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

奥野委員長 次に、鈴木貴子君。

鈴木(貴)委員 この法案審議も、先ほど伺ったところ、ここまで六十八時間強の時間を費やしてまいりました。こうしたかんかんがくがくの議論ができたことには、委員長初め理事、そしてまた各委員の皆さんの後押しにも、心から私も感謝をするものであります。

 さまざまな思いを持ちながら、この三十分という時間、国民の代表として、立法府の人間の一人として、前向きな答弁をいただけるよう、最後まで審議を尽くさせていただきたい、このように思っております。

 それでは、まず取り調べの録音、録画の部分なんですけれども、これまでの過去の答弁の中でも、取り調べにおいて真実の究明を行うためには、被疑者、被告人に対して不必要な不安を与えてはいけない、こういった旨の発言を林刑事局長もされておりました。そしてまた、三浦刑事局長におきましては、録音、録画の機材の質疑、やりとりの中で、小型化を図る、固定式のシステムを導入するといったもろもろの仕様の見直しをまさに具体的に検討し、着手しているところ、このような答弁もいただいております。

 ここで、法務大臣にお尋ねをさせていただきます。

 過去、この法案審議の場において、それぞれの刑事局長からこういった答弁をいただきましたが、今回の録音、録画の機器に関して、今後設置をする機器に関して、同じような、つまり、小型化そしてまた固定化、不必要な不安要素とならない、万全の考慮を配した機器導入についての法務大臣の見解を伺わせていただきます。

上川国務大臣 現在導入されている録音、録画の機器につきまして、この委員会におきましても、さまざまな御意見をいただいてきたというふうに思っております。とりわけ、圧迫感のないようにという、今の機器が大変大きなものである、こういう認識を各委員から示されたということでございますが、技術水準は絶えず向上している、そして、この録音、録画の機器につきましてもまたしかりでございます。

 そうした技術水準の向上に応じた形で、よりよい仕様の録音、録画機器が開発され、また、それを適用することができるように、この導入につきましても検討してまいりたいというふうに思っております。

鈴木(貴)委員 三浦刑事局長は、小型化そして固定化の具体的な検討をしている、このように答弁をされております。この点について、大臣の認識を、ぜひとも前向きな答弁をよろしくお願いいたします。

奥野委員長 どっちの大臣だ。(鈴木(貴)委員「上川大臣」と呼ぶ)上川大臣は余り関係ないんじゃないか。本当なら向こうじゃないか。警察だよ。何かさっきから法務大臣と言っているけれども、警察が準備するもののことを言っているんじゃないの。(鈴木(貴)委員「法案全体の所管の大臣ですよね」と呼ぶ)

 では、とりあえず上川大臣。

上川国務大臣 警察に係る部分につきましては、私ではなく大臣の方に聞いていただきたいというふうに思いますが、検察におきましても、技術革新というものにしっかりと配慮して小型化していく、当然のことだというふうに思います。そのような方向で検討を進め、また、導入についてもそのような配慮をしてまいりたいというふうに思っております。

鈴木(貴)委員 ありがとうございます。

 続いて、例外事由などについてもるる質疑をしてまいりました。特に三百一条の二、つまり、機器の故障等の外部的な要因によって、現実的、客観的に見て当該取り調べができないような場合を想定している、このような答弁が林刑事局長からなされております。

 ここでお尋ねをしたいんですけれども、客観的に見て当該取り調べができないということは、その客観的な主体は誰を想定しているのか。客観的に判断をしたがゆえに、その場において録音、録画のもとでの取り調べができないと判断をし、その場で録音、録画されていない状態で取り調べをするわけですから、客観的な判断というものは誰によってされるのか、どのような御認識を持っているのか、法務大臣にお尋ねします。

上川国務大臣 ただいまの御質問でございますが、実際にその取り調べを行う者が行うものというふうに思っております。

鈴木(貴)委員 取り調べを行う者が判断することが、客観性、客観的な判断に資するというお考えでしょうか。(発言する者あり)

上川国務大臣 例外事由に当たることについての判断はその取り調べを行う者ということではございますが、そこの客観性が担保されているかどうかということについてはチェックをされますので、その意味では、もしこれが客観性がないということであるならば、それは裁判の中で議論されることでございます。

 今、客観性に基づいて、この基準に基づいてしっかりと判断をするということでございますれば、取り調べを行う者でございます。

鈴木(貴)委員 今、大臣初め、副大臣そして政務官からもそれぞれのお席において発言もありましたけれども、私が今ここで疑問といいますか問題提起をしたいのは、つまり、取り調べ官が捜査当局の裁量によって判断をすることが、客観的な、第三者の視点を持ってやりますよと。しかしながら、その判断をしているのは当事者である捜査当局なわけです。

 これが、いわゆる一般論で、よく答弁でも使われますが、一般論で考えたときに、いかほど客観性が担保されるのか。こういったことは、私だけでなく多くの国民が、不安に、そしてまた疑問に思う点ではないか、このように思っているんです。

 そこで、私も前向きな提言をしていきたいと思っているんです。客観性の担保の問題が今俎上に上がっている。であるのであれば、例えば、機器が故障した、ほかに代替の機器もそこにはないとなった場合には、それこそ、維新の井出先生が再三この場において提言をされておりましたが、ICレコーダーを使う、準用するということも可能ではないか、予算的な面においてもそれは可能である、私はこのように思っております。

 今後、まさに見直し規定もあるわけでありますが、運用とともに、ICレコーダーの使用についても同じように検討される、このようなお考えはお持ちかどうか、法務大臣、答弁をお願いします。

上川国務大臣 今回、捜査の過程の中で、録音、録画の機器の故障に照らして例外事由を設けるということでございます。

 その例外事由につきましては、機器の故障というのも入るわけでございますが、これはあくまで例外中の例外であるということでございまして、もしここでこれを恣意的な形で運用するということになりますと、これにつきましては、裁判所におきましての審査の対象となるわけでございます。そして、それが例外事由に該当するものであったか、つまり客観性の部分について適正であったかどうかということにつきましては、捜査機関側の責任でこの例外事由の立証をする、こうした責務があるわけでございます。したがいまして、例外事由に当たると判断して録音、録画をしないというようなことで、恣意的にそれが運用されるという余地がそもそもないというふうに理解をしているところでございます。

 今、そのようなときにICレコーダーというような御指摘がございました。この間の議論におきましても、大変力強く、こうしたものを導入すべきではないか、こうしたこともありましたけれども、法制審議会におきまして、このICレコーダーによる録音を念頭に置きまして、録画は困難でも録音が可能な場合は録音、録画義務の例外としない旨の規定を設けるべきであるというような意見もあったというふうに思っているところでございますが、さまざま問題点も指摘されておりまして、答申には盛り込まれなかった、こうした経緯もございます。

 そうしたことから、これから録音、録画につきましてのさまざまな運用を重ねながら、しっかりと検証しながら積み上げていくというふうにしていくべきではないかというふうに思っているところでございます。

鈴木(貴)委員 もう少し前向きな答弁をいただきたかったものだなと思っているところであります。

 ただ、今の答弁、やりとりを聞いていても、委員の皆さんも、そしてまた国民の皆さんにおいても、いまだに課題といいますか検討事案というものは残っているんだなということが明らかになっただけでもよかったのではないのかな、このように思いながら、時間も限られておりますので、次の質問に移らせていただきます。

 司法取引の部分であります。

 私は、前回の司法取引の分野での質疑でも、捜査側の優位性の問題について再三質問をさせていただきました。

 なぜかといえば、実際に協議に入りました、そして、そこに仮に弁護士がいる、三者協議が行われるとされながらも、例えば合意に至らなかった。その際には、そこでの協議中に出たものは証拠として供述調書が使えないということになってはいても、しかしながら、それを足がかりにして捜査を行うということは、法律的にも何ら問題なく可能になってしまうわけです。ということは、どういうふうにその協議が始まり、転がっても、捜査側が被疑者、被告人よりも優位性を持っているということだと思うんです。

 特に、この間の質疑の際にこういった答弁をいただいたんです。質問で、協議を選んだ時点で、仮に合意が成立しなかった場合、協議の過程で検察官に提供した供述、情報から派生して自己に不利な証拠が出てくるリスクがあるじゃないかという問いに対して、そしてまた、協力行為とその協力者が受ける恩典、この先後関係というものは個別の案件であるというふうに林刑事局長からも答弁をいただいています。そしてまた、協議で合意がなされても、あくまでも裁判所に対する意見である、つまり、裁判所は、量刑に当たりまして、それに拘束されるものではないということなんです。つまり、制度設計からして、訴追側の絶対的優位性というものがここは担保されてしまっている。

 ここで、また提案をさせていただきたいと思います。

 この制度を導入する捜査側に、協議が始まったタイミングで、そういったありとあらゆるリスクについても説明をするという努力義務を課すということが必要になってくるのではないでしょうか。

 例えば、裁判員裁判が導入された際にも、裁判官が裁判員の皆さんに、説示という形で、こういった段取りがある、こういった手順である、そして皆さんの果たしていただく役割、意義はこういうものである、こういったルールだとか一連の流れというものを説明する、そしてそれが、裁判員裁判、つまり国民の皆さんの理解の増進にもつながってくる、こういったことがこれまでの裁判員裁判の見直しの中でも非常に明らかになってきたわけであります。

 であるならば、今回、この法改正において新しい制度の導入をするというのであれば、捜査当局の側から前向きに、そういった説明義務、努力義務、こういったものを持つべきではないかと思うんですが、上川法務大臣、いかがでしょうか。

上川国務大臣 今回、合意制度におきまして、協議の開始からその終了に至る過程には弁護人が関与するという仕組みでございます。

 弁護人の関与の目的ということでありますが、まさに、被疑者、被告人にとりまして、合意をするか否かや、また合意の内容等につきましては、その利害に大変深くかかわる事柄であるということでございますので、協議、合意が適正、公平に行われることを確保して被疑者、被告人の利益を保護する観点から、こうした弁護人の関与というものについて設けているところでございます。

 合意制度の導入後におきましてでありますけれども、今の御指摘につきましては、検察官、検察の方からその制度についての説明をするということでございますけれども、これはあり得なくはないとは思うわけでありますが、まさに弁護人がその役割を果たすということでございまして、この制度の利用におきましては弁護人と十分に御相談をしていただく、そしてその援助をしっかりと受けながら合意制度にかかわるかどうかということも含めて検討することになるということでありまして、通常は、その制度の内容、またその法的な帰結等につきましての説明、こうしたことについては弁護人から受けることになるというふうに考えられることでございます。

 したがいまして、制度の内容等につきまして、検察から義務という形で制度的な措置をとるというようなことの必要性はないというふうに考えているところでございます。

鈴木(貴)委員 今回、そもそも論として、先ほど黒岩先生もおっしゃられましたけれども、今回のこの法案がなぜ出てきたのか。まさに、捜査当局のこれまでの不祥事であったりだとか、証拠の捏造であるとか、さまざまな件に鑑みて、国民の信頼を回復するんだという思いが根底にあるということは共通認識を持っているかと思うんです。

 そういった意味でも、新しい制度を導入する、ましてや、本来であれば、司法取引というものがそもそもこの法案に組み込まれているということさえも疑問であり、私はそこからして問題があると思うんですけれども、捜査側の姿勢を見せるためにも、私は、あくまでも弁護人ではなくて捜査当局が、三者会談、協議が始まるタイミングで説明をしていくということの必要性というものを感じているところであります。

 そして、通信傍受についての質問に移らせていただきたいんですが、傍受の記録を明らかにしていくということは非常に重要である、このように思っております。

 ここでスポット傍受について前回もやりとりをさせていただきましたが、この間の傍受の質疑の際に、メールの傍受、これは三浦刑事局長だったと思うんですけれども、一概に何文字までが最小限なのかということを申し上げるのはなかなか難しい、このようにおっしゃっているんです。傍受はあくまでも最小限であるからこそ憲法にも抵触しないんだという答弁を上川法務大臣から前回私はいただいたんですけれども、しかしながら、同時に、答弁では、一概に何文字までが最小限なのかということを申し上げるのはなかなか難しいという答弁も同日いただいております。

 これは、判断できないのであれば、スポット傍受はできない、ひいては傍受ができないということになるかと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

上川国務大臣 通信傍受の制度そのものが適正に行われるように、そのことについては、さまざまな視点から、適正化を図るための運用がなされるべきだというふうに思っております。

 先ほど、何文字かという文字数についてというお話がございまして、三浦局長の方がそのようなことを意見として述べたということでございますが、スポット傍受の機能を的確に果たしていくための適正な文字数というものがあろうかというふうに思います。その点につきましては、現場の中でそのようなルールを決めて対応していくものというふうに考えております。

鈴木(貴)委員 スポット傍受の適正な、最小限度というか、見る部分の、メールですからいやが応にも文字数になってくると思うんですけれども、別に、それが十字だ、十五文字だということをここで答えてくれということではないんですが、であるならば、その基準というのは今後どのように設けられるんでしょうか。

上川国務大臣 これにつきましては、しっかりとしたルールを持って取り組んでいくものだというふうに思っております。

 まさに、スポット傍受につきましては、国民の皆さんのさまざまな権利に大変密接にかかわる部分ということでございますので、必要最小限の範囲で行われるべきものというふうに考えております。

鈴木(貴)委員 私も大臣と同意見なんです。最小限の範囲でやるべきだという意味で、私たちは全く同じところに立っていると思うんです。がゆえに、その基準というものが非常に気になるというか、気にしなくてはいけない、このように思っています。

 特に今回の、いまだこの世に存在しない、しかしながらできるとされている特定電子計算機なんですけれども、では、スポットを何分のところから、もしくはメールだったら、その頭のところからここだけスポットしました、そしてまた黒塗りにしました、また抜き出しましたというような記録というものはどのような形で残されるんでしょうか。

 例えば、レジのように、そのタイミングで横から紙が出てきて、一分スポットしました、そこからの一分三十秒は聞きませんでした、そしてまた一分間聞きましたというものが、逐次紙か何かで出てくるような機材になるんでしょうか。(葉梨副大臣「全て暗号化して記録媒体に残す」と呼ぶ)内容じゃなくて、聞いたかどうかなんです。

上川国務大臣 特定電子計算機の要件について満たす機能をしっかりと持っていくということでございます。暗号化を含めてのシステム開発ということで、これからしっかりとした技術的な検討を進めた上で開発をしていくということでございます。

 もともとの原記録そのものを、しっかりと暗号化して原記録として残すという、この部分がしっかりと担保できるような技術的なシステムになろうかというふうに思います。

鈴木(貴)委員 レクですとか、あと、デモのときですね、ログでそういったものも全て残るんだというような説明も伺ったんです。

 しかしながら、逆に、これからその機器というものがつくられるのであれば、ここでさまざまな提案をさせていただいて、それを盛り込んでもらうことも可能だなというような思いを持って、この場で提案をさせていただきたいんです。

 ログで残る、原記録を残すという話も今出てまいりました。しかしながら、中身について、文章であるとか会話の部分ではなくて、どこの部分を何分スポットした、その後の一分二十秒を聞かなかった、こういった記録というものを、目視できるような形で、例えば、それが一緒に紙で逐次印刷ができるようなものになれば、それだけでも、例えば署内で保管をしてもらう。そうなったときに、証拠開示などでその記録の部分を見せてくれと言えば、一応スポットがちゃんとなされているんだ、だらだらと二時間ずっと聞いているんじゃなくてちゃんとスポットがなされているんだという確認にもつながるのではないのかな、このように思っているわけです。

 残り五分となりました。

 ちなみに、葉梨副大臣、私も、葉梨副大臣にお尋ねするときには指名をさせていただきます。もしくは、葉梨副大臣が大臣になられたときに質問をさせていただきたいと思います。

 それでは、証拠開示についてお尋ねをさせていただきたいと思います。

 証拠の開示というのは、真相の解明という刑事司法の根本的な原則に応えるためにも、被疑者及び訴追側、双方のより適正かつ十分な立証活動のためにもなされるものだ、このように思っております。

 そういう意味では、今回は公判前整理手続に対して付された制度となっておりますが、本来であれば、証拠開示として一本で、それ単独で立法化を考えていくということも今後必要ではないかと思いますが、その検討の必要性について、上川法務大臣、答弁を願います。

上川国務大臣 御指摘の、再審請求審における証拠開示を制度化するということにつきましては、法制審議会の特別部会の議論においても指摘をされたところでございますが、さまざま問題点も存するということでございまして、その意味で慎重な検討が必要である、こうした御判断の中で、今回は法律案に盛り込んでいないというところでございます。

 この法制審議会の答申におきましては、御指摘の再審請求審におきましての証拠開示を初めといたしまして、今回の法整備の対象とされなかった事項についても、今後の課題として、必要に応じてさらに検討を行うことが考えられようとされているところでございます。

 今回、こうしたことを真摯に受けとめまして、また、委員の先生方からさまざまな御指摘をいただいたということでございますので、真摯に受けとめて、趣旨を踏まえて適切に対応してまいりたいというふうに思っております。

 修正案につきまして先ほど御報告いただきましたけれども、その中にもその旨の記載があるということでございますので、そのことにつきましては真摯に受けとめてまいりたいというふうに思っております。

鈴木(貴)委員 今の質問をしたのは、実は、そういった仕組みが今現在もあるわけなんですけれども、全体の約三%である、こういったデータも出ている中では、この証拠開示というものを単独で検討していく場というものをぜひとも設けてもらいたいと思っております。

 そして同時に、検討の場ということで関連してなんですけれども、再審請求審における証拠開示であります。

 この法案審議の際にも、上川法務大臣そしてまた山谷国家公安委員長、両大臣から、過去、例えば志布志、氷見、足利事件、そしてまた村木局長の事件など、反省をしなくてはいけない、捜査当局が国民の信頼を失墜させた、忌まわしきと私は言っていいと思いますが、そういった過去があるということを率直に答弁いただきました。

 そこで、改めてお尋ねをさせていただきます。

 足利事件では、取り調べの録音テープがずっと隠されていました。そして、なぜ再審請求が通ったかというと、この録音テープが証拠開示で表に出てきたからであります。

 布川事件においても、取り調べの録音テープ、毛髪鑑定、目撃証言のメモというものが証拠開示によって出てきたがゆえに、再審が通りました。

 東電OL事件も、これまた足利事件と同様、DNA鑑定であります。

 袴田事件においては、捜査機関(警察)によって捏造された疑いがあるということまで、再審を決定した裁判官が述べているわけです。ゆえに、死刑囚であった袴田さんでありますが、再審開始決定を受けて既に釈放されるという、非常に珍しい、しかしながら歴史に残るような判決が下されたわけであります。

 ここで、両大臣に最後、お尋ねをさせていただきます。

 こういった証拠開示によって、実際に命をつなぐことができた人もいる。無実であることを証明できた人もいる。過去に戻ることはできないけれども、二十年、三十年たって、奪われた人生をようやく取り返すことができた。この事実を受けて、再審請求においての証拠開示の検討の必要性について、ぜひとも両大臣の御見解を答弁願いたいと思います。

上川国務大臣 法制審議会の答申におきましても、こうした御指摘もございました。今委員からも、過去のさまざまな事件におきまして、再審請求審における証拠開示の必要性については大変重要なものだ、こうした御指摘もございます。

 必要に応じてさらに検討を行うということにつきましては、これはきちっと真摯に受けとめまして、その趣旨を踏まえた適切な対処をしてまいりたいというふうに思っております。

山谷国務大臣 一般論として申し上げれば、捜査機関が犯罪事実の有無等の立証に必要な証拠の存在を意図的に秘したりすることはあってはならないと考えております。

 警察においては、所要の捜査を行った上で、必要な証拠物件等は全て検察庁に送致しているものと認識をしております。

鈴木(貴)委員 検討の必要性を伺ったところでありますが、あとは山尾先生にバトンタッチをさせていただきたいと思います。引き続き審議をよろしくお願いいたします。

 ありがとうございます。

奥野委員長 次に、山尾志桜里君。

山尾委員 民主党の山尾志桜里です。

 五月十九日の審議入りから二カ月半、三カ月弱がたとうとしております。この間、六十時間を超える審議、そして二十人の参考人の方にも本当に大事な意見をいただきました。二回の視察にも行ってまいりました。

 そして、このたび、私は修正案の提案者ともなりました。率直に言って、百点満点の修正案ではないかもしれません。でも、最後の最後まで、これをできる限り百点に近づけるために残りの時間をしっかり使わせていただきたいと思いますので、どうぞ最後までおつき合いのほどをよろしくお願いいたします。

 まず、司法取引について伺います。

 これは、林刑事局長、先ほど盛山委員が丁寧に聞いていただいたことと一部かぶりますが、改めてお伺いをいたします。

 今回の修正案におきまして、考慮事情に、それらの犯罪の関連性の程度が明示をされました。提案者といたしましては、それらの犯罪の関連性の程度というのは、二つの犯罪に関連性が何らか存在することを前提に、その程度の濃淡を指すものであると解釈して提案をしておりますが、同じ認識でよろしいでしょうか。

林政府参考人 修正案の刑事訴訟法三百五十条の二第一項における「当該関係する犯罪の関連性の程度」は、合意の要件であります「必要と認めるとき」に該当するか否かの判断に当たっての考慮事情の一つとされておりまして、御指摘のとおり、合意の相手方である被疑者、被告人の刑事事件と証拠収集等への協力の対象となる他人の刑事事件とが関連する場合において、その関連性の度合いを意味するものと考えております。

山尾委員 そうしますと、先ほどと重なりますけれども、同房者による犯行告白など、関連性が全くないような事件については、事実上、この司法取引の対象とはなりがたいというふうに私自身は解釈をして提案させていただいておりますが、その点についても、局長、同じ認識でよろしいでしょうか。

林政府参考人 単なる同房者にすぎない場合のように、一般に被疑者、被告人と他人との間に何らの関係もない場合には、被疑者、被告人が当該他人の事件について捜査機関に提供できるような情報を持っていないことが多く、仮に何らかの情報を持っていたとしましても、断片的で簡潔なものにとどまるのが通常であると考えられます。

 したがいまして、制度上否定されるものとまでは言えませんけれども、基本的には、被疑者、被告人から全く無関係の他人の刑事事件に関する供述等を得るために合意をするということは、考慮事情からして想定されないものと考えております。

山尾委員 では、もう一点、ちょっと深掘りをして、先ほど局長の答弁で、関連性の程度と信用性ある証拠が得られる見込みというのは関係するという趣旨の答弁がございました。

 もうちょっとその中身をお伺いしたいんですけれども、これはここで何か確定させようと思っていません、一つ議論したいのは、私が思うに、関連性の程度が低い場合には、信用性ある証拠が得られる見込みというのはやはり低いだろうと思います。ただ、ここで一個、私が少し気になっているのは、非常に関連性が高い、まさに共犯型や対向犯型というように、まさに個別の事件で非常に関連性が密接だ、高いということがイコール信用性が高いということにはならないのであろうと。

 要するに、同じ事件を共犯や対向犯型で非常に密接にやっている場合は、逆にと言っては語弊があるかもしれませんけれども、なすりつけて巻き込むという、またちょっと別の意味の危険性があるのではないかというところをここで一言議論しておきたいなと思ったんですけれども、その点、局長、いかがお考えになりますか。

林政府参考人 ここでの合意制度というものは、合意に基づいての証拠収集の手段でございますので、あくまでも合意によって得られた証拠、例えば供述証拠は、その後、これまでも随時答弁しておりますように、必ず慎重な裏づけ捜査をするということ、そのことを通じてその供述証拠の証明力というものを判断していくという過程になりますので、合意をする時点において、その証明力というものの考慮事情というものが直接この条文の中に掲げられているわけではないと考えております。

山尾委員 言わんとすることは伝わったのかなというふうに思います。密接に関連していると、その証明力についてはまた別の意味の疑義も生じるということをお伝えしたかったということでございます。

 そしてまた、司法取引に関する修正について、必ず、常時、本人たる被疑者の弁護人が関与するというふうに提案させていただきました。例外があるよりも、ない方がいい。ただ、この委員会審議において、本人たる被疑者の弁護人というのは、巻き込まれるおそれのある他人に対しては何らのロイヤリティーもないわけで、あくまで弁護人の職務としての真実義務をどう捉えるか、非常に難しい問題があるんだということは私自身が指摘してきたとおりでございます。

 そこで、もう一点、これは法文上の話ではありませんけれども、協議の記録そして保管というものがやはり非常に重要になってくるというふうに私は思っています。

 先ほど、協議の過程で生じた重要なポイントについては当然記録を作成するんだという御答弁がございました。

 ここでちょっと確認をしたいんですけれども、協議の過程で生じた重要なポイント、日時とか場所とかもろもろあろうかと思いますが、今の時点でこういう部分がポイントなのだというところをもう少し具体化してお答えいただけますでしょうか。

林政府参考人 基本的に、合意制度の協議の過程について記録をするということについては、やはり合意制度の実施自体が捜査において重要な事項でございますので、それを適切に記録するという観点から必要であろうかと思います。

 その場合の記録すべき内容としましては、考えられるところとしては、やはり協議の日時とか、場所であるとか、あるいは相手方、そして協議の概要、こういったことがその記録の対象となろうかと考えております。

山尾委員 今言っていただいた、日時、場所、相手方、概要ということは大事な答弁かと思います。

 そしてまた、こういった記録を、いわゆる本人の事件、そしてまた巻き込まれる危険のある他人の事件、この公判が終わるまでの間は少なくとも保管をするということに努めていただきたいと思いますが、その点はいかがですか。

林政府参考人 こういった合意の過程における協議に関する記録につきましても、そういった形での記録となれば、当然、訴訟記録、事件の記録となりますので、それについては適切に保管がされることになろうと考えております。

山尾委員 ちょっとこの点は大事なので確認したいんですけれども、この協議の記録とか保管というのは、本当にやっているかもしれない、巻き込まれているのかもしれない他人の事件の公判においては、やはり非常に重要なものだと思うんですね。

 なので、この記録や保管の目的の中に、そういう他人の事件に関して証拠開示があり得る、その請求に要件が当てはまれば応じなければいけない、そういう目的が当然あると思うので、その保管の期間というのは一般論としての保管の期間ではなくて、巻き込まれている可能性のある、やったと言われている他人の事件の公判が終わるまでは少なくとも最低限保管をしておくということが必須であると思いますけれども、もう一度確認させてください。

林政府参考人 これは、事件記録となりますと、保管記録の保管期間がございますので、その保管期間までは適切に保管されることとなろうと思います。それによって、他人の刑事事件についての審判、そういったものについてもその期間の中に当然包含されるであろうと考えております。

 もし、他人の刑事事件と当該協議がなされた事件の記録の保管が時期的に非常に乖離しているような場合、こういった場合には、例えば、そういった他人の刑事事件にかかわるものとして謄本をつくって、そういうものとして保管しておくということも必要になってこようかと思います。

山尾委員 大事なところなので、ちょっと詰めさせていただきたいと思います。

 今、要は、保管の期間があって、それ以上に他人の事件の期間が長引いたとき、非常に乖離があるときは、そこを埋めるために謄本なんかをつくって保管しなきゃいけないねという答弁だったんですけれども、もう一度申し上げます、非常に乖離があった場合だけでは困ると思うんですね。

 少なくとも所定の保管期間を超えて他人の事件が続いている限りは保管をしてもらわなければ、他人の事件が続いているとわかっているのに、法律上の保管の期間が終わったから協議に関する重要なポイントの記録を廃棄しましたということでは到底承服できないんですけれども、もう一度御答弁お願いできますか。

林政府参考人 当該協議がなされた事件と他人の事件、これは別個の事件でございますので、基本的には、協議の記録というのは共通する証拠ということになりますので、通常は、ある段階で謄本をつくりまして、それぞれの証拠として保管されていくことになろうかと思います。

 したがいまして、委員が指摘されているような形で、普通は、他人の事件というのは、恐らく、もとの協議が行われた事件の保管期間の中で行われるとは思いますけれども、何らかの過程において謄本というものがつくられて、他人の刑事事件の記録としても保管されていくこととなると思います。

山尾委員 最後にもう一回確認しますけれども、ぜひ局長、責任を持って、他人の刑事事件の公判が終わるまでの間に、この協議に関する日時、場所、相手方、概要に係る捜査記録があったんだけれども、今、期間を超えたのでなくなってしまいましたということがない運用を担保していただけますか。

林政府参考人 協議の記録というものは、他人の刑事事件にとっては必要なものでございますので、ある時点において、その保管期間の満了のいかんにかかわらず、謄本などをつくることによって、他人の刑事事件の証拠ともするという形で担保されるものと考えております。

山尾委員 ぜひよろしくお願いをいたします。大事な御答弁をいただいたと思います。

 そして、今、記録を作成する、そしてきちっと保管をする、このことは、先ほど、内部文書で周知をするという答弁だったかと思います。

 ここでやはりお願いをしたいのは、さまざまな協議にまつわる捜査資料というのはあろうかと思いますが、ぜひその周知をする際に、大臣にもぜひお願いしたいんですけれども、必要でないものは廃棄してよいという周知の仕方ではなくて、保管することが原則なんだというような、証拠開示に備えて重要なものはきちっと保管をしなきゃいけないよ、こういう形でしっかりと周知するための通知なりを出していただきたいと思うんです。

 今まで、取り調べに関する記録をどのように扱うかという依命通知を見ていきますと、何度か私は質問でも申し上げたけれども、ちょっと読むと、例えば私が当時検察官だったとき、あれをどう受けとめるか。必要のないものは廃棄しろと書かれているのと、これは大事な記録だから原則保管だよ、廃棄するというのは本当によほどのことがない限りできないんだよ、本来は公の、国民の資料だよというふうに書いていただくのと、受けとめも随分違うと思うんです。

 その点について、大臣、一言、仮に通知を出す立場だとしたらばということなので、御答弁いただけますか。

上川国務大臣 合意制度に係るさまざまな協議にかかって文書の記録がとられる。これについては、今、しっかりと記録をとって、しかも適切に保管をするという局長からの答弁でありますが、まさに御指摘いただいたことを踏まえまして、検察内部の指示文書等によりまして周知徹底を図りたいというふうに思っております。

山尾委員 司法取引についてちょっと最後に確認ですけれども、修正案の附則九条二項の検討対象、この検討対象にまさに司法取引が含まれるんだ、しっかりこれを検討していくんだという趣旨で提案をしておりますが、同じ認識でしっかりと検討していただけますか。大臣、もしよろしかったら。

上川国務大臣 御指摘のとおり、今回の改正によりまして新たに導入される合意制度でございますが、この検討の対象となるということで理解をしているところでございます。

山尾委員 次に、通信傍受について伺いたいというふうに思います。

 今回、第三者による立ち会いのないやり方の傍受というものが改正案の中に入っております。それを代替する意味も含めまして、せめて、警察署の中で傍受をする場合には、その捜査に従事をしていない職員によって適正をチェックしていただくような仕組みの導入をぜひお願いしたいと思います。

 三浦刑事局長にお伺いをいたします。今、どのような仕組みを考えていらっしゃいますか。

三浦政府参考人 まず、特定電子計算機につきましては、これまでも御答弁をしてまいりましたとおり、技術的な措置を用いることによって、従来の通信傍受の方式において立会人が果たしている役割を漏れなく代替するものでありまして、特定電子計算機を正しく用いることによって適正性は確実に担保されると考えております。

 ただ、特定電子計算機を用いて捜査機関の施設において通信傍受を行う場合には、当該事件の捜査に従事していない警察官または警察職員、各都道府県においては適正捜査の指導を行う部署の警察官となるということを今念頭に置いておりますけれども、そうした者が、傍受または再生の実施状況について適正を確保するため、現場において必要な指導をする体制を整えるということを考えているところであります。

山尾委員 では、続いて伺います。

 今、必要な指導をする体制を整える用意があるという御答弁でございました。これに関しましては、要は、これからそういった今のような形で傍受がなされる中の一部においてなされるのか、それとも全件においてなされるのか、その点はいかがですか。

    〔委員長退席、伊藤(忠)委員長代理着席〕

三浦政府参考人 特定電子計算機を用いて通信傍受を行う事件につきましては、基本的に全ての事件において、さきに申し上げた指導を行うように努めることとしたいと考えております。

山尾委員 そうやって指導した記録についての扱い、何らかの記録が作成されるのか、作成されるとして、その記録はどのように保管をされるのか、御答弁をお願いします。

三浦政府参考人 こうした指導を行いました場合には、その結果を適切に記録し保管するようにするということを考えております。どういう保管の仕方をするかということはまた今後具体的に検討してまいりたいと思いますけれども、いずれにしましても、後日の検証にたえられるように保管をするということを考えているところであります。

山尾委員 そういった保管された記録につきましては、当然、要件を満たせばという前提つきなんですけれども、情報開示請求や国政調査や、場合によっては具体的事件の証拠開示の対象となり得るというふうに考えてよろしいですか。

三浦政府参考人 指導結果の記録が情報開示あるいは証拠開示等の各制度における開示等の対象になるか否かということにつきましては、それぞれの制度の要件に従って、個別具体的な事情について判断を行うこととなりますけれども、その結果、要件を満たすものであれば、当然、開示等の対象となるものと考えております。

山尾委員 そういった指導の体制を整えるということでありますけれども、この仕組みについて、現段階で期間の限定はないということを確認させてください。

三浦政府参考人 これは適正確保という観点からの制度でございますので、今後行われる特定電子計算機を用いた通信傍受について、そうした体制を維持し、実施をしていくということになると考えております。

山尾委員 大事なところは今答弁を聞かせていただきました。ただ、これから中身を詰めていくところもあるということは承知をしております。

 その上でお伺いしますが、その指導の内容として、これまでは第三者が立ち会いを果たしてきたので、いわば外形的な事項のチェックにとどまっていたわけですけれども、今度は、当然、捜査に従事していない方とはいえ、警察組織の人間がやる。その場合であれば、犯罪関連性があるのかどうかというその判断の適否も含めた内容にわたるチェックも可能になるのでありましょうし、可能であればすべきではないかというふうに私は思っているんですけれども、この点はいかがですか。

三浦政府参考人 具体的な制度設計につきましてはこれから検討させていただきたいと考えておりますけれども、通信傍受の指導につきましては、通信傍受を実施する個別具体の事件の捜査に従事している捜査員ではなく、県警本部等において適正捜査などについての指導を行う立場にある警察官等が行うことが適切と考えております。

 ただ、そうした者は個別具体の事件の詳細については把握をしておりませんので、犯罪関連性判断の適否等について果たして的確に判断し得る立場にあるかどうか、また、やはり、同じ警察部内とはいえ、特にこういう組織犯罪の捜査というのは非常に保秘を要求される、また、関係者のプライバシー、場合によっては通信の秘密そのものに触れている捜査でもありますので、そうした指導に当たる者にまでその内容にわたる確認まで行わせることが適切かどうか、その点については、これから私どもとしてよく検討させていただきたいと考えております。

山尾委員 今の答弁の一つの考え方自体は理解できなくもありませんけれども、今回、第三者ではなくて、いわば、警察の、捜査とは違う人間による立ち会いというような指導になる。だから、第三者よりはやはり当然第三者性は薄まるわけですが、その分、警察の人間だから、いわゆる適正な捜査の指導に入り込めるという面もあろうかと思いますので、ぜひ、その点はこれから詳細をしっかりと検討していただきたいというふうに思っております。

 次に、今回、修正案の附則九条二項の検討対象、先ほど法務大臣から、司法取引、これが九条二項の見直しに入るよという話をいただきました。

 もう一度大臣にお聞きします。これは、通信傍受についても九条二項の見直し対象に入るという理解でよろしいですか。

上川国務大臣 そのとおりだというふうに思っております。

山尾委員 通信傍受について、あと二点ほどお伺いをしたいと思います。

 これは、山谷国家公安委員長にお伺いをしたいと思います。

 通信事業者の負担について、これまでこの委員会の中で随分審議されてきました。細かいことではありません、私がちょっと申し上げたいのは、やはり、国家権力が民間の事業者に協力を依頼するというのはとても重たいものだと思うんですね。ちょっと気になっているのは、これまでの警察側の答弁だと、あくまでも協力は要請するものであって、断ることができるんだから、本当にだめなら断ればいいというように受け取れる内容の発言が出てきたかと思います。

 でも、私、改めて国家公安委員長にコメントをいただきたいのは、国家権力、しかも警察権力に何かを民間が依頼されるというのは非常に重たいので、やはり、依頼をする側が非常に抑制的、謙抑的であるべきだというふうに思うんです。特にこの傍受についてはこれから新しい手法も入るということの中で、ぜひ、捜査機関の負担が基本なんだ、そして、協力を要請する場合には、権力が協力を要請するということの重みをいま一度、いま一段かみしめていただいて、過度な要請、過度な負担にならないようにしていただきたいと思うんですけれども、山谷大臣の御見解を伺います。

山谷国務大臣 新たな方法による通信傍受の具体的な実施に当たりまして設備等の整備が必要となる場合には、通信事業者と十分に協議し、その負担が過度なものとならないように適切に対応してまいりたいと考えております。

山尾委員 もう一点、これはデロイトのことなんですけれども、前回、デロイトの第三者性について私は問題提起をさせていただきました。

 ただ、十分に答弁いただく時間をお与えできなかったので、ちょっと公正公平ではないなと思いますので、そのことについて、警察当局の方から何か説明があれば、短くいただきたいと思います。

三浦政府参考人 今回の経緯について、ちょっと概略を御説明いたしますけれども、今回の新たな通信傍受の方式につきましては、平成二十四年の十一月、法制審議会特別部会第十五回におきまして、警察幹事からその概要説明を行いまして、翌二十五年の三月、同部会の第一作業分科会第一回におきまして行われたヒアリングの席で、情報通信の技術部門の技官であります警察庁刑事企画課職員の方から、新たな傍受システムの具体的内容について、提案、説明を実施しました。その後、部会及び作業分科会における議論を経て、法制審議会の答申に盛り込まれたものであります。

 こういうことで、警察庁としましては、技術的措置をとることによって通信傍受の適正性を担保できる新たな通信傍受の方式について、技術的事項も含めて具体的内容を提案し、この提案について第三者の立場から客観的に確認をしていただくために、平成二十六年八月、デロイト社に対して調査研究を委託した、こういう経緯でございます。

山尾委員 今、技術的な事項について具体的な提案をされたという御答弁がございました。

 ただ、私が申し上げたのは、では、警察提案措置ということでデロイトに渡した資料というのは何だったのかとお伺いしたときに、答申案と、第一分科会の第一回の議事録アンド参考資料、これが全てだという御答弁なので、私は、正直言って、その二つの資料でまさに今おっしゃった技術的事項を具体的な中身で提案したと言えるのかどうか、正直、疑義が残っております。

 今後、参議院の方でもこういったテーマが上がることもあろうかと思いますので、ぜひ、最後まで説明責任を尽くしていただきたいというふうに思っております。

 そして次に、再審の証拠開示について、上川大臣に伺いたいと思います。

 今回、附則の九条三項で、必要に応じ速やかに検討していただく事項の一番最初に、再審に係る証拠開示というものが上がっております。やはり、私自身、提案者としての思いというのは、正直、検討する必要は疑いなくあるんだと思います。これまでのこの委員会の審議を通じても、恐らく大臣にも共有していただいていると思うんです。

 なぜなら、これはこの間も申し上げましたけれども、すぐにやらないと意味が薄れてしまいます。これから起きる犯罪は、十分かどうかは別として、証拠開示の手続に乗って公判を経ていきます。でも、今再審に残っている事件は、当時証拠開示がなかったがために、本来証拠開示されるべきだった証拠が開示されずに今再審段階にある、こういうものがあるわけですね。

 法務大臣は、唯一、この日本でただ一人、死刑執行を判断する立場にあられる方です。上川大臣にしか持てない説得力があろうかと思います。ぜひ、この再審請求に係る証拠開示の速やかな検討について、決意を伺わせてください。

上川国務大臣 再審請求審におきましての証拠開示の制度化につきましては、法制審議会におきましてさまざまな議論がなされ、手続構造の異なる再審請求審において通常審の証拠開示制度を転用することは整合しないこと、また、再審請求審における証拠開示について一般的なルールを設けること自体が困難である、こうした問題点が存したということで、慎重な検討が必要であり、今回は法律案に盛り込まないということでございました。

 しかし、他方で、答申におきましても、この再審請求審におきましての証拠開示を含めまして、今回の法整備の対象とされなかった事項についての今後の課題ということとして、「必要に応じて、更に検討を行うことが考えられよう。」こうした御指摘をいただいているところでございます。

 また、この委員会におきまして御審議をいただきました。そして、修正案のとおり、この問題につきましては、必要に応じ、この法律案の公布後速やかに検討を行うということとされたものでございます。これにつきましては、真摯に受けとめさせていただきまして、しっかりと対応してまいりたいというふうに思っております。

山尾委員 最後に、上川大臣に一言だけいただきたいと思います。

 今回、本当に長い充実した審議の状況を、本当に与野党の皆さんの協力で与えていただきました。そして、修正の中身につきましては、百点とはいかないかもしれませんけれども、見出すことができました。

 でも、一つ最後に乗り越えられなかった壁で、私が思うのは、やはり、最初に立ちはだかっていた、一括法案だというところです。ここをやはり乗り越えられなかった。それが修正の不十分さにもつながっているかなというのが正直な感想です。

 大臣、これから閣法で法案を出していかれると思います。これから出していただく閣法について、一括というのは、本当にぜひ慎重にやっていただきたい。ちょっとその点、課題や問題意識があったら、一言下さい。

上川国務大臣 この刑事訴訟法の改正につきましてのさまざまな論点をいただきながら、制度につきましても真摯に御議論をいただいたものということで、そのことの意味というものは大変大きいものであると思います。今御指摘の点も含めまして、大変問題提起をしていただいたものと思います。

 今回の一括したお願いということになりますと、今回は、冤罪に端を発し、これに対しまして、捜査の多様化、適正化を図る、公判審理の充実化を図る、さまざまなことに対して、新しい時代にふさわしい刑事司法の改正という形の中で国民に信頼をしていただくための取り組みということで、法制審議会におきましても、その前の検討会におきましても、大変真摯に御議論いただいた成果でございます。

 前進をさせていただき、また、それぞれプロセスの中でも十分に検証をしながら、たゆまぬ改革を尽くしていくということが極めて大事だということを改めて確認し、また、そのような形で進めてまいりたいというふうに考えております。

山尾委員 ありがとうございました。

 皆さんに感謝を申し上げて、質疑を終わりたいと思います。

伊藤(忠)委員長代理 ただいまをもちまして、山尾志桜里さんの質疑を終えさせていただきます。

 それでは、井出庸生さん。

井出委員 維新の党、信州長野の井出庸生です。

 きょうは、長丁場、時間をいただいておりますが、最後までよろしくお願いをいたします。

 きょうは、まず山谷国家公安委員長から伺ってまいります。

 この法案は、審議の最初、審議を通じてかもしれませんが、報道等では取り調べの可視化法案だと言われてまいりました。私は、審議の途中から、この法改正の魂、根幹部分は一体何なんだと。刑事司法制度を考える上で、被疑者、被告人の人権に配慮をすること、そしてまた一方で、警察、山谷さん自身もおっしゃっておりますが、治安の維持のため、安心、安全な国家のために、捜査、真相解明という部分が必要だと。そのバランス論が議論にあったことは、ここまで議論があったとおりなんです。

 ただ、私は、前に法務大臣には御答弁いただいたんですけれども、今回の改革の議論のきっかけというものは、やはり村木さんの事件、鹿児島の志布志事件、捜査のあり方が一から出直しを迫られた、この言葉も本会議で述べました。

 ですから、被疑者、被告人を取り巻く状況と、そして捜査の権限といったもののバランスを考えたときに、私は、今回の改革の魂、肝というものは、やはり冤罪をなくしていく、そういうところに一定の成果を出さなければいけない、そのことを今改めて思っております。

 この改革の本質部分、魂というところは何なのか、このことを法務大臣や最高裁の平木さんには伺ってきたんですが、改めて国家公安委員長に伺いたいと思います。

山谷国務大臣 治安基盤の強化、また適正捜査の重要性について、国民の願い、そしてまた思いを深くしているところでございます。

 本法案は、証拠収集手段を適正化、多様化する、供述調書への過度の依存を改めるという理念のもと、録音、録画制度や通信傍受の合理化、効率化等の警察にとっても極めて重要性の高い制度を、新たな刑事司法制度を実現するためのものとして制度化するというものでございました。このような本法案について、本委員会におきまして、これまで長期間にわたって充実した御審議をいただいたことに感謝を申し上げたいと思います。

 また、今回の審議を通じまして、私自身も、警察を所管する国家公安委員会委員長としまして、刑事司法制度の役割の重みや適正捜査の重要性について思いを深くしているところでございます。

 刑事司法制度のあり方は、国民の安全、安心を確保する上で極めて重要な課題でございます。新たな制度のもとでも適正捜査が徹底されるように警察を指導してまいりたいと考えております。

井出委員 今お話のありましたように、取り調べの適正化、一方で、供述に過度に依存をしない、そうした新たな捜査手法、そういうことで、全体として大きなパッケージで法案が審議されてきたと思うんですが、私は、この法案、改革の議論というものは、そもそも、こういう冤罪事件は何なんだと国民が極めてそのことに対して強い疑念を持つような、村木さんの事件とか、そういったものがきっかけであった、あれがなければこの改革の議論はなかったと思っております。

 そのことについて思いを共有していただけるのかどうか、改めて山谷さんに伺います。

山谷国務大臣 これまでも警察におきまして適正捜査についてさまざまな取り組みをしてまいったところでございますけれども、今回、この新たな刑事司法制度の法改正で、さらにそうしたことが進むのではないかと考えているところでございます。

井出委員 今、さらに進むというお話がありまして、今回の法改正の、取り調べの適正化というところの一番大きなテーマは、やはり取り調べの可視化であると私は思っています。そのときに、これまで、山谷国家公安委員長もそうですし、警察庁の三浦刑事局長もそうですし、私の方から、可視化についてもっと幅広く、そういうことをお願いさせていただいてまいりました。

 適正な取り調べがこの法改正によってもっと進むというお話が今あって、そうであるならば、可視化について、これまでの答弁では、まず対象事件は裁判員事件に対応していくことが精いっぱいだ、個別の事件によっては運用で取り調べの可視化をすることはあり得るというお話で、私は、その答弁がいまだ非常に消極的であると、この段に至っても考えております。

 取り調べの適正化がこの法案によって一層進むのである、そういう思いを持ってくださっているのであれば、取り調べの可視化をこの法案の対象事件以上に、可視化を進めていった方がいいわけですから、可視化の運用について改めて答弁を求めたいと思います。

三浦政府参考人 取り調べの録音、録画が取り調べの適正化あるいは供述の任意性の立証に大変有効な手段であるということにつきましては、警察としても重々認識をしているところであります。

 ただ、警察におきましては、裁判員裁判対象事件に限定をしても、数でいえば、今、年間三千件を超える事件、延べ四万回を超える被疑者取り調べを対象としまして、新しい取り組みとして始めているところであります。今回義務化をされるということになりますと、一定の期間のうちに、原則として全ての取り調べについて録音、録画をしていかなければならないということであります。

 現在、警察でも、こうした裁判員裁判対象事件等を中心に試行を始めているところでありますけれども、まだ時間数にして半分というところでありまして、これからこれを基本的には一〇〇%にしていかなければならない、大変これ自体が重い課題だというように認識をしています。

 これは、ある意味では警察にとってもまだこれまで経験したことのないことでありまして、果たして、裁判員裁判事件に限るとしても、その全てを録音、録画した場合に、捜査、真相解明ということにどれぐらいの支障が出てくるのかということについてはある意味では未知数であります。裁判員裁判対象事件に限るとしても、本当にこれで捜査がうまく進んでいくのか、正直それほど大きな自信は持っていない、ただ、何とかそうした制度のもとで可能な限り捜査が前に進むように努力をしていかなければいけないというような段階であるというように認識をしています。

 したがいまして、当分の間は、やはり裁判員裁判事件、義務化の対象としては裁判員裁判事件ということで、まずこれをやりこなしていくということに全力投球したいというように考えております。もとより、今後、こうした対象事件の施行等を重ねることで、現場のレベルでいろいろなノウハウも積み重ねられていくというように考えております。

 ですから、制度の対象外の事件につきましても、必ずしも一律に実施をするということではないとしても、事件や取り調べごと、個別に判断を行いまして、公判立証なども十分見据えまして、録音、録画を実施していく、そうした運用は十分に考えているところでありまして、そうした方向性を全く否定しているということではございません。

井出委員 今の三浦刑事局長のお話を聞いておりまして、私は今、おっと思ったことが一つあります。

 今、いろいろお話をされました。取り調べの可視化が大変有用なところもあって、その後、人的、物的なことに始まっていろいろなお話を今されましたが、今のお話の中で、捜査の、取り調べの支障、弊害になる、そういうところ、今まで言ってきた部分をマイナス面の部分でお触れにならなかった。それは意図的なのか、そこに書いてあるけれども読み忘れてしまったのか、そこを私は知る由もないんですが、取り調べの可視化をしていくときに、必ずと言っていいほど、捜査の支障になる、その他の弊害があるということが言われてきまして、この審議の、きょうという日になっても、なかなかその言葉を拭い去ることができていないというのが私の正直な思いです。

 しかし、私、きょう、警察の皆さん、国家公安委員長と三浦刑事局長に申し上げたいのは、取り調べの可視化の有用性、立証を担保することと取り調べが適正になっていく、そのことについては恐らくここにいる皆さん全て共有される思いだと思います。そして、私が以前この委員会で取り上げさせていただいたんですけれども、警察の取り調べというものも、教本をつくって、今までのように調書を認めさせる取り調べから、自由に発話をさせていく、その教本のもととなった心理学者などの提言によれば、そういう取り調べこそ、可視化が記録の面からもふさわしいという話がありました。

 ですから、取り調べの支障、弊害、そういう報告があるということは何度も言われてきましたし、私も理解をしておりますが、それはこれから克服をして、いつか、今の答弁のように、取り調べの可視化について論じるときに、捜査の弊害、捜査の支障、そういうことを本当に言わなくても済むように警察の方でも取り組んでいっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

三浦政府参考人 もとより、警察におきましても、今取り調べ能力の向上ということに組織を挙げて努めているところでありまして、今御質問にもございました警察大学校での研修等におきましても、新しい考え方に基づく取り調べの方法などについて研修を重ねているところであります。

 もちろん、そういったことで取り調べ官の技術を向上させていくということは警察として努力をしていかねばならないことではありますけれども、反面、やはり、録音、録画、カメラが入ることによってなかなか供述をしなくなる被疑者が実際に存在をしているということは、これまでの試行の結果においてもいろいろと出てきているところであります。

 やはりそういった捜査、真相解明への支障という問題とこの録音、録画という制度、どこに接点を見出すかといいますか、そこは今後もいろいろと考えていくべきところであろうとは思いますけれども、当面、やはり制度化された裁判員裁判対象事件がきちんと実現できるように、制度化のもとでも、捜査、真相解明に可能な限り支障がないようにということで準備をしていくということがまず最優先の課題かなというように考えておりまして、それ以外の事件につきましても、将来的な可能性を否定するわけではありませんけれども、現段階でそうした方向性について明確に踏み出すというところまで申し上げることはなかなか難しいというところを御理解いただきたいと思います。

井出委員 今の三浦さんのお話を踏まえて、山谷国家公安委員長に伺いたいのですが、取り調べを可視化したときに捜査上の支障がある、そのことについては、乗り越えなければいけないということは最初に言っていただきました。しかし、要約すれば、現時点ではなかなか問題があるというお話でした。

 きょう、この場で山谷さんにはっきりと言っていただきたい、お約束をしていただきたいのは、取り調べの可視化が捜査上の支障になる、そのことに対して、そのことを言わなくてもいいようにこれから警察として努力をしていく、そういうことをぜひお約束いただきたいと思いますが、山谷さんの答弁を求めます。

山谷国務大臣 警察においては、取り調べに従事する全ての警察官に一定レベル以上の取り調べ技術を習得させるため、取り調べ技術の体系化及び研修、訓練の充実に取り組んでいるところでございます。

 具体的には、心理学的知見に基づく取り調べ技術習得のための教育訓練を全国において実践させるため、警察大学校に設置された取調べ技術総合研究・研修センター等において、各都道府県警察の取り調べ指導担当者等に対し、心理学的知見を取り入れて作成した取り調べの教本を活用した教養、ロールプレーイング方式の取り調べ演習を活用した教養を行う研修を実施するなどとしているところでございます。

 現場レベルで、具体的かつ実践的なノウハウの積み重ねを大切にしてまいりたいと思っております。

井出委員 教養、ノウハウを積み重ねていく、そのことは大変大事だと思います。

 しかし、今回の議論でも何度も申し上げてまいりましたが、裁判所の方では、立証上、供述の任意性が争われたときに、録音、録画された記録が最良の証拠である、対象事件でそれがなければ、より一層のリスク、立証責任を捜査側が負うし、対象事件ではなくてもそういうようなリスクがあると。そこまで法制審の議論の中で裁判所は意見として申し上げております。

 私は、ノウハウを積み上げていく、教養をやっていく、その前向きな取り組みは大変結構だと思いますが、可視化の事件が拡大をしていかなければ、そうした裁判所の意識が変わってきている今、せっかく地道な捜査を尽くしても、警察が努力を尽くしても、裁判に負ける、事実上ほとんど立証を尽くされて有罪が認定できる状況なのに、録音、録画がなくて警察の地道な捜査の立証を果たせない、そういうケースがこれから出てくることが十分あり得ると思います。

 裁判できちっと立証を果たす上からも、取り調べの可視化が捜査上の支障になるということを一日も早くなくしていくことに尽力をしていただきたいと思いますが、改めて答弁を求めます。

山谷国務大臣 可視化でございますけれども、メリットを生かしデメリットを減らすべく、警察として最大限努力してまいりたいと思います。

井出委員 取り調べの可視化をこれからも我々もチェックしていかなければいけませんし、検証をしなければいけません。

 しかし、私は五月十九日の本会議で元警察官から聞いてきたことをお話ししましたが、取り調べの録音、録画というものは警察の中で取り調べ状況を逐一確認する意味においても有用である、そういうようなお話をしてくださった方もおります。ぜひ、その取り組みを加速していただきたい。これは、恐らく、この法案審議にかかわってくださった参考人の皆様初め多くの方の思うところである、そういうことを申し上げておきたいと思います。

 次に、通信傍受について伺いたいと思います。

 通信傍受は、きょうまた同じ資料を持ってまいりましたが、厳格な要件のもとでやらなければいけない捜査であるということは異論のないところであって、対象犯罪を限定して、通信傍受以外の捜査手段がないときに通信傍受捜査を行う、令状の発付、そして立ち会い、記録の閲覧、そういうたてつけになっておりましたものが、今回の法改正で変わっていく。

 私どもで提案をさせていただいております修正案では、通信の当事者に対して、これまで、傍受記録、犯罪に関連性の高い部分のみを通知していたのを、原記録も通知をしていく、その人たちが望むのであれば裁判所に閲覧を請求できる、裁判所の判断に不服がある場合は不服の申し立てができる、そういうことを通知していくという修正案を提案いたしました。

 私の問題意識としては、今まで、原記録の閲覧実績、原記録がきちっと確認をされてこなかった。要は、この間、三浦刑事局長とも議論しましたが、制度はつくってある、制度はつくってあるけれども、制度をきちっと実行しているところまでは警察の関知するところではない、その部分が警察の原記録に対するスタンス。それは、裁判所が原記録を持っているわけですから、その答弁は理解をするところでありますが。

 今回、修正案を提案させていただいて、私が懸念をしておりました記録を事後的にチェックしていくということが今までよりその役割を果たすことができる。そういう考えを共有していただけるのか、警察庁の答弁、また最高裁の平木さんにも同じ質問をさせていただきたいと思います。順番にお願いします。

三浦政府参考人 これまでも通信傍受を実施した際に原記録の閲覧制度というものはあったわけでありまして、事後的に検証され得る、そういうある意味では制度的保障のもとにあることが、実際に傍受を実施する捜査員にとっても、適正捜査を担保する大きな要素として機能してきたということはあろうかと思います。

 今回、この修正によりまして、そうした制度の存在というものがこれまで以上に当事者等に知らしめられる、また、こうしたことによりまして、そうした事後的なチェック機能というものがより働いてくるということであるとすれば、それは通信傍受のより適正な実施に資するものだというふうに考えておりまして、警察としても、そうした制度を設けていただくことについて、それは全く異存がないわけでありますし、むしろ、適正な傍受の実施ということが事後的に担保されるということにおいて望ましい制度であるというふうに考えております。

平木最高裁判所長官代理者 委員お尋ねの件は立法事項にわたる事柄でございますので、事務当局といたしましてはお答えする立場にはございませんけれども、委員御指摘の修正部分を含めまして、本改正法の趣旨につきましては、最高裁事務当局といたしまして、各裁判官に周知に努めるなどし、また、それを踏まえて十分議論してもらうという場を提供するなどして、法の趣旨を踏まえた適切な運用がなされるように努力していきたいと考えておるところでございます。

井出委員 今回、通信傍受の原記録の閲覧、傍受記録の閲覧について私の方からいろいろ質問させていただいたときに、平木さん、最高裁の方から、原記録の保存数、それに対する閲覧の要請とか、そういったものをきちっと調べていただいたことは、議論を進めていく上でかなり大きな材料を提供していただいたと思っております。

 通信傍受を再び検証しなければいけなくなってくるときがあります。

 そこで、警察、三浦局長に、お願いも含めて答弁を求めたいんです。

 傍受記録の方は通知しなければいけないので、通知はされていると思います。しかし、それが通知されて、それを実際見て、どういう状況になっているのか、そういうことについては網羅的には把握をされていない、都道府県警においてちゃんとケースがあるということは承知しているというお話でしたが、ぜひ、通信傍受の実施状況、傍受記録の取り扱いもそうなんですけれども、網羅的に把握していない、そういう答弁が今度はないように。特に通信傍受は、これはもう最後の一手でやる捜査であって、それでも通信の秘密とぎりぎりのバランスの中でやっている。ですから、その検証の材料というものはきちっとそろえていただかなければいけないと思います。

 その意味で、傍受記録の扱いについても、今後の検証に資するような材料、データをとりながら捜査を進めていっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

三浦政府参考人 具体的にどういうやり方をしていくかということは今後考えていかなければならないと思いますけれども、委員の問題意識も十分に踏まえまして、今後検討させていただきたいと考えております。

井出委員 もう一つ、事後の検証ということで、今回の修正案で、国会報告を充実する、特に、新方式、新しい技術が開発されてからその新方式で実施をされたものについても国会報告していくという修正を提案させていただきました。

 この件について具体的にイメージを伺いたいのですが、新手法で通信傍受を行った事件の件数ですとか、警察施設とは一体どの施設、またはどのレベルの施設で実施をしたのか、あと、またこれから詳しく伺いますが、先ほど山尾先生が質問された、警察署内の捜査と一線を画す警察の立ち会いというものがどの程度、どういう形でなされたのか、そのようなものをどういう形で国会に報告していくのか、今お考えのところを教えていただきたいと思います。

三浦政府参考人 現在行っております毎年の通信傍受の実施状況につきましては、事案の具体的な内容を明らかにすることによる捜査等への支障を回避しつつ、国民にもその実情を広く承知していただくという観点から、国会報告の制度が法律によって定められているものと承知をしておりまして、これに従いまして、傍受令状の発付件数や罪名、傍受を行った通信手段の種類、実施期間等を確実に報告しているところであります。

 この点について、修正案におきましては、特定電子計算機を用いて行う新たな方式により通信傍受を実施したときにはその旨も国会に報告をしなければならないものとされているところでありまして、警察といたしましても、国民に対する説明責任を的確に果たすといった観点から、今後も適切な国会報告の実施に努めてまいりたいと考えております。

井出委員 適切なという熟語で終わってしまったことは大変残念なんですが、新しい手法で通信傍受を実施する、私は、その新しい手法については極めて慎重であるべきだと思いますし、現行手法どおりやってくれということを何度もお願いしてまいりました。

 ですから、私の立場からすれば、国会報告を見たときに、警察署で傍受した件数は何割で少なかったです、そういう結果が出てきてほしい。しかし、三浦さんの立場からすれば、新手法はもう万全のものですから、それの報告数が多くてもいい、当然そういうスタンスで臨まれると思うんですが、やはり、通信傍受捜査が厳格であるというところは、補充性、ほかの捜査の手段を尽くしても通信傍受をする以外ない、そういうときに通信傍受捜査を行って、私は、便利になればその補充性のたがが外れるんじゃないか、そういう危機感を申し上げてまいりました。

 今後の運用のところで伺いたいのですが、これから警察施設で通信傍受が、何年か後、技術が開発されたら、法律で三年となっておりますけれども、できるようになりますが、警察施設とは一体どのような施設で通信傍受をすることを想定されているか、答弁をお願いします。

三浦政府参考人 それは、事件ごとにケース・バイ・ケースということもあろうかとは思いますけれども、基本的には、警察本部等における例えば会議室でありますとか、そういったような場所で行うということが一般的ではないかというように考えております。

井出委員 個別の事件ではなく、物理的な、例えば人員とか設備を設置する予算もあります、そういった問題から、例えば、今お話のあったような県警本部クラスであれば、全国で四十七ということになるかと思います。しかし、大都市圏であれば、小さな県の県警本部以上の警察署もあります。

 そのあたりの見通し、要はどのぐらいの数の施設で通信傍受を予定されているのか、想定を教えてください。

三浦政府参考人 そこまで詰めて具体的に考えているわけでは必ずしもないのでありますけれども、基本的には、先ほど申し上げたように、警察本部の施設等が中心となるのではないかというように考えております。

 一切警察署で行うことがないかと言われれば、そこは何とも言えないわけでありますけれども、ただ、いずれにしても、この通信傍受という捜査手法は極めて限定的な場合に行われるものでありまして、また、事案も、かなり規模の大きな組織犯罪でありますとか、そういった事案に使われるものでありますので、実際、傍受の実施をする主体としては、恐らく都道府県警察の本部がイニシアチブをとって実施をするということには違いはなかろうというように思います。つまり、警察署の捜査員が自分たちの判断で実施をするというようなレベルのものではないというように認識をしております。

 ただ、その場合、実際にどこで傍受を実施するかといった場合には、事件ごとの体制の問題でありますとか、どこを本拠として捜査をしているのかでありますとか、あるいは部屋の広さの問題でありますとか、いろいろな要素が絡んでくるというふうには思いますので、必ずしも本部だけでやるというように断定することはできないかと思いますけれども、いずれにしても、本部の捜査員が主導して実施をするということになろうかと考えております。

井出委員 設備の問題、予算の問題の観点から見ても、基本的に県警本部ということは、県警本部の数ぐらいの場所で傍受ができるような体制を今後つくっていく、そういう理解でよろしいですか。

三浦政府参考人 県警本部の中だけでやるというように申し上げているわけでは必ずしもありませんけれども、ただ、どこの署でも実施をするというようなことはおよそ想定をしておりませんで、県警の中でも限られた場所、施設において実施をするということが予想されているところであります。

井出委員 県警本部であれば四十七ですが、警察庁施設も含めればかなりの数になります。私は、場所も限定的にやっていただきたいと思いますので、またこの問題については改めて伺いたいと思います。

 もう一つ、今お話の中にもありました、通信傍受捜査というものは本当に限られたときにしかやらない、そういうお話がありまして、十五、六年の間に二百八十三の令状、その数字を見れば、確かに、事件数やほかの捜査手法から見れば、限定してやっていただいた数字なのかなと思います。

 これまでの運用では、通信傍受捜査というものは当然責任は県警本部ですが、必ず警察庁の指導を受け、場合によっては、警察庁で、いや、これは通信傍受を実施する必要はない、そういう判断もあったやに聞いております。

 この警察庁の指導というものが今後も維持されるのかどうか、答弁を求めます。

三浦政府参考人 特に制度的に何か警察庁の指導というものが定まっているというものではございませんけれども、例えば、地方の小県においては通信傍受を実施する機会というものがなかなか乏しいというところもございまして、そうした経験に乏しいような県などに対しまして、具体的にどういうやり方で実施をするといったようなアドバイスをするとか、警察庁には、ある程度、そういった全国の都道府県における捜査のノウハウのようなものが集積をされておりますので、そうした観点から、さまざまなアドバイス、指導をするといったようなことがこれまでもあったというふうに認識をしております。

 その点につきましては、必ずしも一件一件の全てについて詳細に手とり足とり警察庁が指導するということでは、これまでもそうではなかったろうと思いますし、今後もそうではないというふうに思いますけれども、ただ、通信傍受というのはやはり極めて重要な捜査手法でもありますので、全国でどういった実施状況にあるのかということについては、警察庁としても当然高い関心を持って見て、指導していきたいと考えております。

井出委員 制度ではないが現行されているという警察庁の指導が、通信傍受捜査の補充性、ここぞというときにしかやらない、その補充性に資するものであれば、それを維持していただきたい、そういうお願いをしたいと思います。

 そして、基本的に県警本部の施設で傍受していくと。先ほどの山尾先生の質問への答弁のところで伺いたいのですが、警察施設で通信傍受をするときは、捜査と一線を画した警察官が指導で入る。私は、何度も何度も、ここは第三者を、身内の施設でやるんだから第三者の方が存在する意義があるということを申し上げたんですが、残念ながら、我々の修正案の提案ではそこに至らなかった。

 そこで伺いたいのですが、警察本部で基本的に通信傍受をするのであれば、例えば監察の部署の人物であるとか、県警本部というものはそれなりに組織、人員もしっかりしておりますし、どの立場の人間、どのクラスの人間をその指導役に充てるかということはきちっと決めることができるし、決めていただきたいと思いますが、三浦さんの答弁を求めます。

三浦政府参考人 特定電子計算機は、これまで御答弁申し上げたとおり、技術的措置を用いることによりまして、従来の通信傍受の方式において立会人が果たしている役割を漏れなく代替するものでありまして、特定電子計算機を正しく用いることによってその適正性は確実に担保されると考えております。

 もっとも、特定電子計算機を用いて捜査機関の施設において通信傍受を行う場合には、当該事件の捜査に従事していない警察官または警察職員、今のところ、基本的には各都道府県において適正捜査の指導を行う部署の警察官が適切ではないかというように考えているところでありますけれども、その者が、傍受または再生の実施状況につきまして、現場において必要な指導をする体制を整えることを考えているところであります。

 ただ、まだこのスキーム自体はこれから具体的に検討していくというものでございまして、どういう者を充てるのが適切か、今のところ、先ほど申し上げたように、刑事部門の総括をするセクションなどにおいて、これまでも適正捜査についての指導などを行う者がおりますので、そういった者が実施をするというのが妥当ではないかと考えているところでありますけれども、詳細な制度設計については今後詰めてまいりたいと考えております。

井出委員 今、刑事部門を総括するセクションという話がありました。よく都道府県警にある刑事総務課ですとか、そういったところのお立場の方がされるのかと思いますが、都道府県警は、どこもそうなんですけれども、しかるべき立場になれば、捜査畑の人が管理職に行ったり、監察に行ったり、刑事捜査を総括する部門に行ったりすることもあると思います。そうすれば、そこにいる通信傍受の捜査員と一緒に仕事をしていたということはどうしても避けられないことだと思うんですね。

 私が一つ申し上げたいのは、監察ですね、県警にある監察というものは、どんなに目の前にいる警察官と昔仲がよくても、監察という立場において警察をきちっと指導する立場にある。ですから、私は、監察の立場にある人間がきちっと指導的立場に入るということが適任ではないかと思いますが、まだ制度設計されていないと思いますが、今の時点での、監察の立場をそこに登用することについてのお考えを伺いたいと思います。

三浦政府参考人 やはり現場において指導するというためには、例えば、通信傍受の法令や手続であるとか、あるいはある程度の技術的な事項に精通をして必要な指導が確実にできるということが反面大切であろうかというふうには考えておりまして、監察部門の人間が当たるのが適任かどうかということについてはやや疑問のあるところでありまして、先ほど申し上げたような適正捜査の指導を行うセクションの者であるとか、そういったところの者の方がより適切ではないかと今のところ考えているところであります。

 ただ、まだここは具体的に完全に確定しているわけでもございませんので、委員の問題意識も、監察ということはきょう初めて伺いましたので、そういったところも含めて今後検討してまいりたいと考えております。

井出委員 これから制度設計をされるということですので、よく議論をしていただいて、その結論、議論の結果をまた聞かせていただきたいと思います。

 もう一つ、警察施設での通信傍受の指導で伺いたいのですが、傍受しているときにどの程度立ち会うのか。最初の十分顔を出して、終わったらまた来るから電話してとか、そういう状況では到底困るわけであります。傍受をしている時間の間にどれだけきちっと一〇〇%立ち会えるかどうか、そのことについての見解を伺います。

三浦政府参考人 今のところ考えておりますのは、必ずしもこうした指導担当の者が常時そこの現場に張りつくということを考えているものではございません。一定程度の頻度で巡回をして、一旦そこに行った場合には、一定程度の時間滞在をしてその状況を見る、また、スポット傍受などがきちんと行われているかどうかといったところを確認する、そのような任務を付与することを考えているところであります。

 もろもろ、現場で指導する場合の負担の問題といいますか、その必要性等も含めて、具体的にこれからいろいろと詰めていきたいと考えています。

井出委員 一定程度ということで、警察という組織は大変真面目な組織でありますので、一定程度と言えば恐らく全てだろうと善意に解釈をさせていただいて、制度設計の議論を見守りたいと思いますが、一点ここで申し上げておきたいのは、やはりそういう指導的な立場の人間がいる時間が短いようでは、そもそもこうしたものをやる意味はない。

 これまでの通信事業者や地方公務員の方が立ち会っていることも、視察を見る限り、事実上遠くの場所にいる状態だったと思います。しかし、そこに人がいるかいないか、そのことに一定の大きな意味があると私は思いますので、その立ち会いの時間というものを十分に確保する制度設計をお願いしたいと思います。

 次に、司法取引の関係を伺ってまいります。

 司法取引については制度が生煮えである。例えば、参考人でいらっしゃった堀江貴文さんは、末端の人間の告発ばかり取引に応じて、例えば首謀者が自分の罪を認めたときにそれが司法取引の対象にならないのでは一方通行だろうと。また、もう一つ大事な議論があったのが、司法取引が成立した、司法取引をやった末端の人間に判決が出た、その後、司法取引が誤りだったとわかったときに、判決が出てしまっていてはどうにもならないと。そういうところもありますので、まだこれから議論をして検証していかなければいけないところが大変多いかと思います。

 そこで、まず確認で伺いたいのですが、今回の司法取引は、司法取引で出た新しい供述や証言によった捜査はしない、必ず裏づけ、追加の証拠をとる、そういうことを言ってきていただいておりますが、これは林刑事局長に伺うべきかと思いますが、その裏づけ捜査、追加の証拠を徹底していく、そのことについて改めて答弁を伺います。

    〔伊藤(忠)委員長代理退席、委員長着席〕

    ―――――――――――――

奥野委員長 ちょっと済みませんが、先ほど理事会でお話ししましたけれども、答弁は御紹介の後にさせてもらいたいんです。

 議事の途中でありますけれども、ただいま英国のジョン・バーコウ下院議長御一行が当委員会の傍聴にお見えになっておりますので、御紹介いたします。

    〔起立、拍手〕

奥野委員長 速記をとめて。

    〔速記中止〕

    〔委員長退席、伊藤(忠)委員長代理着席〕

伊藤(忠)委員長代理 それでは、速記を起こしてください。

    ―――――――――――――

伊藤(忠)委員長代理 林刑事局長。

林政府参考人 今回の合意制度でございますが、合意に基づいて得られる供述、証言などにつきましてはもとより証明力が低いというところから出発しているわけでございます。

 したがいまして、検察官といたしましても、その証言そのものを他人の刑事裁判に顕出したとしても、その低いままの証明力でございますので、当然、合意に基づいて得られる供述、証言につきましては、十分な裏づけ捜査というものを行わない限り合意制度の当初の目的を達することができないわけでございますので、必ず裏づけ捜査、緻密な、詳細な裏づけ捜査を行うことになる、またその必要があると考えております。

井出委員 今、証明力が司法取引の証言は低い、そういう話がありまして、その証明力が低い証言や供述でも、それが真実たる、本当に事案の真相解明に資する十分な裏づけの捜査、また新しい証拠が出てくれば、それは非常によかったということになりますが、そうならなかった場合は、この制度というものは捜査機関側にもそういうリスクがある、そういうことだと思いますので、司法取引というものの慎重な運用を重ねて求めたいと思いますし、また、今後しっかりと検証をしていかなければいけないと思います。

 そこで、伺いたいのですが、今回、修正案の本則、法律文というわけにはいきませんでしたが、協議の過程の記録の部分、これは、参考人の多くの方、また与党の委員からも、協議の過程というものは可視化をするべきだ、そういう意見が幾つも表明をされました。

 それに対して、自由な協議が妨げられる、そういうことで、自由という言葉には疑問を持つんですが、協議そのものがケース・バイ・ケース、事件そのものがケース・バイ・ケースである、そういう意味だと解釈をしております。

 この記録の部分、事件もさまざまで、協議もさまざまですので、記録もそんなに画一的なものにはならないと思いますが、検察庁の中で通知を出して、現場の検察官に混乱のないように、また、司法取引がきちっと適正に行われているかに資する、そういう記録をきちっとつくっていく、保存していく、そういうことを通知の中できちっと考えていただきたいと思いますが、林局長、いかがでしょうか。

林政府参考人 合意制度における協議の記録につきましては、検察内部で指示文書を出すことによりまして、きちんと記録がなされ、かつ、それが保管されるということについて周知徹底していきたいと考えております。

井出委員 検察庁の取り調べの可視化に対する昨年の依命通知もそうなんですが、法律で書き切れず、通知で、運用の部分で法律以上のことをやっていただく、そういうケースもあります。

 しかし、ここにいらっしゃった周防参考人がおっしゃっていたんですが、通知に頼ると、それは検察官の裁量に負うところが大きくなって、通知を出すということは、法律が必要である、そういうことを逆にはっきりと実感した、周防さんは取り調べの可視化の議論に関してそういうことを言っていたのですが、修正案を議論する中で、この部分は法文にという思いもありました。しかし、議論の中で、指示文書を出していただく、運用の中でやっていただくと。

 運用が見えてきて、ある程度その形が定まってきたら、また検証のときに、こういう一体的な運用ができるのであれば法文に書いてもいいだろう、そういう議論もあるかと思いますし、私はそのことを望んでおりますが、林さんの見解を求めたいと思います。

林政府参考人 合意制度における協議の記録というものについては、記録をつくる必要性、あるいは記録の性格、そういったものについてはさまざまなものがあると思います。単に他人の刑事事件における合意に基づく証言の吟味のため、その証明力の吟味のためというだけではなくて、少なくとも、捜査側からしましても、捜査の過程においての重要な事項については適切に記録していく、こういった必要性はもとよりあるわけでございます。

 そういったことで、これを法律で義務づけるかどうかということについては、必ずしもこれを制度の中で義務づける必要があるかどうかということについては、現時点ではそのようには思っておりませんけれども、もちろん、今回、合意制度については広く今後の検討の対象ということとされているわけでございますので、そういった合意に至る協議の過程についてどのような記録をするかということについても、当然、その検討の対象の範囲内には入っておろうかと思っております。

井出委員 次に、保釈の関係について、最高裁、平木さんに伺いたいと思います。

 保釈の問題は、大変議論に、お互いの思いに幅があって、現在の運用を明確化する、そういうことがこの法案の結論、修正の議論でも当初提出いただいた政府案どおりということになりました。

 私は、保釈は、起訴後の勾留に対する保釈だけではなくて、逮捕されてから起訴までの二十三日間も身体を拘束される、そういうことは同じだ、その勾留の延長ですとか勾留の請求ですとか、そういうものに対しても慎重に向き合っていただきたいと思っております。

 最終的には立法府の意思を法律でない形できょう最後にお示ししようと思ってはおりますが、これまでの議論を経て、十分承知はしております、平木さんがコメントできることは各裁判体の集積したものであって、平木さんとして何かを申し上げることはなかなか難しいとは承知をしておりますが、今回の法改正を機に、ぜひ、保釈の運用がより適正になる、私の思いとすれば、変わっていくということを期待したいと思いますが、平木さんの答弁をお願いいたします。

    〔伊藤(忠)委員長代理退席、委員長着席〕

平木最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 勾留、保釈等の身柄に関する判断は、被告人の身体拘束にかかわる重要な判断であると認識しております。

 委員御指摘のとおり、個々の事件におけます勾留、保釈等の判断は各裁判官の判断事項でございますけれども、保釈の判断につきましては裁判官の間でも議論が重ねられているところでございまして、個別具体的事件で罪証隠滅の余地が本当にあるのか、被告人に罪証隠滅の意図がどの程度あるのかなど、勾留や保釈の要件について、抽象的にではなく、個々の事件の事情に基づいて具体的に丁寧に判断するという保釈の判断の基本を改めて徹底すべきであるという議論がなされているところでございます。

 最高裁判所といたしましては、本改正案が成立した場合には、改正法案の運用に関する裁判官の協議の場を設けるなどしてまいりたいと考えておるところでございますが、そうした協議の場において身柄拘束の議論がなされる際には、本法務委員会での議論等を全国の裁判官に情報提供してまいりたいと考えております。その際には、本改正法案の対象となっております保釈に限らず、勾留等のその他の身柄拘束についての議論もあわせて情報提供してまいりたいと考えておるところでございます。

井出委員 裁判所、平木さんに、通信傍受の捜査の件でも一つお願いをしておきたいと思います。

 通信傍受は非常にこれまで令状が少なかった。ですから、それに接したことのある裁判官が少なくて、私は、通信傍受について余り深まった議論というものは裁判所内ではないのではないかと推測をしております。ただ一方で、令状請求する段階で捜査機関側が慎重に精査をしていた、そういう声もあるかと思うんですが、これから通信傍受捜査が減ることはないんだと思います。一定数ふえると考えるのが妥当だと思います。

 そこで、裁判所が通信傍受の令状を発付するときに、その中身を、今は、中身について、この令状だったら通信の秘密は守られているし、捜査の補充性もいいしとか、こっちはだめだとか、そういう議論、何か共通認識、そういうものは裁判所全体にはまだないかと私は思いますので、ぜひその辺の議論等をやっていっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

平木最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 本改正法案では、通信傍受に関しましてさまざまな新しい制度が盛り込まれております。裁判所の裁判官はまだその点について必ずしも十分把握、理解しておらないところだと思っておりますので、委員御指摘のとおり、本改正案が成立した場合には、最高裁判所といたしましては、全国の裁判官が改正法案について十分知る機会となるような情報提供を十分行うとともに、議論の場を提供するなどして、今後、本改正法案の運用が適切になされるように努力してまいりたいと思います。

井出委員 ここからは、一つ、さきに重徳委員の方で問題提起をさせていただいた、参考人にも来ていただいた緒方さんの事件について、警察の皆さんに伺いたいと思います。

 緒方さんの事件というものは、皆さんのお立場からすると、警察官が個人でやったものだ、組織的な関与というものが確定したものはない、そういうお立場なのかなと思います。私は、緒方さんの事件というものは、当然、捜査令状もないでしょうし、あの情報収集というものが捜査の一環なのか、もしくは、捜査ではない情報収集の一環なのか、そういうところから考えなければいけない問題だと思っております。

 私は、警察が捜査に直結する情報を得るには、ふだんからいろいろな情報をとっておく必要があるとは思っておりますが、ただ、この事件の最もいけなかったことは、違法な盗聴という行為をしたことだと思います。

 これは、情報収集ということはこれからも変わらないと思うんですよ。通信傍受はあくまで捜査のための情報収集、令状に基づくものですけれども、私が当初伺ったように、特定秘密になり得るようなものがひっかかってくることもあり得る。そしてまた、捜査に直結しない情報収集をしなければ捜査情報も得られませんし、これから先の時代、情報の量がふえたり、情報の質が多様化したり、そうした情報社会の中で情報をとっていくということは、三十年前と今とは、これからとは状況が違ってくると思います。

 緒方さんの事件がなぜ発覚したのかといえば、御本人たちが雑音に気づいたと。これからは技術の進歩によってそういうこともなくなるという反面、また技術の進歩によって、警察が思ってもみない、警察と言ったら失礼ですが、情報収集機関が思ってもみないような形で盗聴が暴露されるようなケース、アメリカでこの間ウィキリークスが一つの事例を取り上げましたが、そういう時代に入ってきている中で、警察は情報をとっていかなければいけない。

 私は、やはり、過去の違法な行為に対して、しっかりとそのことに向き合って、それを教訓にして前に進んでいかなければ、これから物すごい多くの情報と警察は向き合っていくことになる、そのときに、何かまずいことがあるたびにうやむやにして前に進むようでは、国民の理解、信頼というものは到底得られないと思いますし、これから、警察と言ったら失礼ですけれども、警察もその一つ、あらゆる情報機関がどんな状況で情報収集して、それがどういう形で世の中に出るかわからなくなってきております。

 そういう意味でも、過去に違法な行為があったらそれを認めて前に進んでいく、そういう方向転換が必要ではないか、それがこのタイミングではないかと私は思っておりますが、いかがでしょうか。

塩川政府参考人 お答えします。

 既にこの委員会で累次答弁させていただいているところでありますけれども、本件につきましては、警察としても厳粛に受けとめており、まことに残念なことであると考えておりますし、また、職務執行については適切にしてまいりたいというふうに考えております。

 若干付言して申し上げますと、各種の訴訟において、県の職務として警察官が盗聴行為を行った、こういった判決などがございまして、それにつきまして我々として申し上げているのは、県の職務としてというところまでは、そういう判決がございますと。ただ、県警内部の当時の調査においても、県警が組織として行ったというところは確認されておりませんので、また、そういったものについて断定されていることはないということを申し上げているところでございます。

 情報収集活動につきましては、今回御審議いただいている通信傍受法は、あくまでも捜査についてでございますので、それとは全く別物でございます。また、情報収集についても今議員の方からお話がございましたけれども、警察は、国民の生命、身体、財産の保護、また公共の秩序の維持、こういう観点から必要な情報収集を行っております。

 また、情報ということについて言いますと、情報の量が、特にサイバーの世界の中で非常にふえているというのは事実だと思います。そういったものにも対応できるよう、警察の責務を全うするために必要な情報収集活動ということは行ってまいりたいというふうに考えております。

井出委員 警察が捜査だけやっていたとしても、捜査の情報をとるには広い情報をとらなきゃいけない、そこはわかっていただけると思いますし、私は、日本の警察というものは、国内の行政の情報収集機関の中でもかなり情報収集能力が高い組織だと思うんです。警察の人とおつき合いして、別の情報収集機関の方のお話を聞いていて、同じ時期に出た同じ情報でも把握の内容が全然違う。ですから、能力の高さのせいなのかもしれませんけれども、捜査と情報収集、その両方をしょってきたという歴史が日本の警察にはあると私は思うんです。

 今、これから情報が多様化するというお話もありました。そういう中で、緒方さんの事件は、今お話があったように、さまざまな認定、裁判ですとか調査があって、それに基づいてこれまでの見解を述べられてきている。それ以上に何か警察の組織的な関与を疑わせる新たなものが出てきたとか、そうすれば、もしかしたら謝罪しなきゃいけないとかそういうこともあるのかもしれないですけれども、恐らくそういうことがないから、このままずっと来ているのかと思うんです。

 そうではなくて、これから警察が、最初の質問で申し上げましたけれども、質、量とも想像もつかない世界の中でいろいろな情報収集をしていかなければならない、そういう時代、環境になった。その要因をもってやはり過去ときちっと向き合わなければ、これからの情報収集時代の中で過去に向き合わないでずっとやっていくということは、私は到底成り立たないと思いますよ。

 私からは、もうこの件について答弁を求めません。次の委員に譲りますが、ぜひそこを肝に銘じていただきたい、そういうふうにお願いをしたいと思います。

 もう一つ、今回の議論の中で、新たな刑事司法制度とは何ぞやという話がありまして、恐らく、刑事司法制度にかかわるいろいろな方が御意見を述べられて、政府案の提出段階では、いろいろな案の中でよいものをパッケージとしてつくったというのが政府案だと思います。それに対して、私は、問題意識を持っていろいろ質問もしてきましたし、また修正も提案をさせていただいたんですが、これからの刑事司法を考えるときにどうしてもここで問題提起しておきたい視点が、やはり裁判の公開という問題です。

 法曹関係者にとって環境のいい刑事司法制度をつくっていくということも大事なんですが、これは参考人に来ていただいた江川紹子さんがお話をしているのですが、江川さんは、「私が一番気になるのは、裁判の公開、司法の透明性、国民による検証可能性といった問題がなおざりにされていないだろうかということです。」そういう話をされていました。

 私は、これは裁判や捜査に限らないんですけれども、やはり国民の目というものが裁判でも捜査でも大きな改革の要因で、裁判でも捜査でも不断の改革をしていく上で国民の目というものが一つ大変重要なものではないかと思います。

 まず、林さんに伺いたいんです。

 江川紹子さんは、せんだってありましたサッカーのFIFAの司法取引の事件を取り上げられて、起訴状と検察側の冒頭陳述を合わせたような書面が捜査当局からネットで公表されていて、日本でもそれを読むことができる。一方で、日本の裁判資料とか訴訟資料というものはどうかといえば、刑事確定訴訟記録法の制定以来、裁判記録の閲覧は、国民はほとんどできない。

 江川さん自身が、かつては裁判の記録を見て本を執筆したり、裁判にかかわること、事件にかかわること、そうしたものの記録を自分の目で見て、世の中に一定の発信をされてきたと思いますし、あの方が、日本の刑事司法について国民の理解を進めてくれるところ、いろいろな御意見はあると思いますけれども、ただ、国民に多くのことを知らせて、この間の参考人の意見陳述でもそうでしたけれども、そういうところでは一定の役割を果たしてくれていると思うんですね。

 ですから、訴訟記録、また証拠の問題ですとか、記録は最終的には検察庁の方に保管されていると思いますけれども、裁判が確定すれば、そうした過去の事件をもとに一つの問題を世の中に提起するということも公益上必要だと思いますし、そうした訴訟記録の公開についてどのようにお考えか、伺いたいと思います。

林政府参考人 刑事裁判自体は、公判において、裁判という形で公開はされているわけでございます。そこでさまざまな証拠等が出され、また、そこで出てくることについては基本的には非常に個人のプライバシーにわたることがありまして、この問題は、裁判の公開の問題と、そういった刑事裁判だけで使われるという証拠についてそこが公になることについての個人のプライバシーの保護といった観点、こういったものをどういうふうに調整するかという問題であろうかと思います。

 それで、現状では、刑事確定訴訟記録法というものがございまして、刑事訴訟法と相まって一定の要件を定めて、刑事裁判の確定記録へのアクセス、どのような場合にアクセスできるかということが法律に定められておりまして、それに基づいて、現状、そういったかなり難しいバランスというものを法律の体系の中で保っていると考えております。

井出委員 今回の議論の中ではこういった問題を余り取り上げることができなかったのですが、捜査もそうですし、裁判もそうですけれども、やはり国民の目こそが最大のチェック機能だと思いますし、また、それに応えていくことが、私は、裁判にとっても捜査にとってもより不断の改革を進めていく上で大切だと思いますので、新たな刑事司法というものを考えるときに、このことを頭に置いて、私自身もずっとそのことにはこだわっていきたいですが、ぜひその問題意識に向き合っていただきたい、そういうお願いをさせていただきたいと思います。

 時間も大分たってまいりましたので、上川法務大臣にまず伺いたいのですが、今回、修正案を提案させていただきました。ただしかし、私としては、大変じくじたる、何といいますか、今難しい心境でおります。

 それは、私が当初ここで主張をしていたもの、そしてまた政府が提案をされていた案との大きな開きの中から、修正協議で一つのものにまとめたのですが、本当に率直に申し上げて、私は、今回の修正がよかったのか悪かったのか、この二、三日、そこまでの思いを持っております。

 修正協議に入りますれば、細かいところの議論があります。細かい議論を見て、木を見て森を見ずということがあってはならない。自分なりに、この修正は、この部分の修正はなし遂げたけれども、全体的に見て法律の改善がなされたのか、そういういろいろな視点、思いの中で悩んで、修正案の提案に至っております。

 上川法務大臣は、この我々の修正提案というものをどのように感じられているか、よかったと思っていただけるのか、率直なところを伺いたいと思います。

上川国務大臣 刑事訴訟法の一部改正をめぐりまして、この法務委員会においての質疑、長時間にわたりまして、委員にさまざまな論点も御指摘をいただき、そして審議をしていただきました。大変熱意ある御審議をいただきながら、私も、一番基本となることについても絶えず考えながら、この審議に応じさせていただいたところでございます。

 政府案につきましては、冤罪に端を発し、この問題の解決のために、法制審議会も含めましてさまざまな御議論をいただき、一つの大きな体系として御提示をさせていただき、この間御審議をいただいたところでございます。そして、今回、理事の先生方を初めとして、委員の先生方、そして委員長も含めて、さまざまな修正協議の中で御尽力をいただいてきたものというふうに思っております。

 この制度そのものが国民の皆さんから信頼をされる、そして目的であります冤罪防止をし、また同時に、新しい時代にふさわしい刑事司法としてさらにこれを適用することができるようにするためには、たゆまぬ改革が必要である。そういう中にありまして、そのたゆまぬ改革の中での大きな論点ということを修正協議の中で御審議いただいたものというふうに考えております。

 このことも含めて考えますと、三年間、また検討、検証をしていくということでございますので、その検証にたえ得る運用ということ、そしてその中で、しっかりとデータにつきましても把握をし、また検証に付していく、こうした責務もあるというふうに思っておりますので、そういう意味で、修正協議の御議論については大変重要なものというふうに考えているところでございます。

井出委員 もう少し細かいところをお二人の局長にも伺いたいのですが、今回の修正で捜査機関側に新しい負担をかける、そういうことになると思います。警察の方では、通信傍受を警察でやるときに何としても立ち会いを、警察官でもいいからやってくれ、また事後チェック、原記録の通知もしてくれ、そういうお願いもしましたし、司法取引の部分でも、新たな考慮事情を検察官の方に入れていただくということになりました。

 ここで議論をさせていただいてきた私の思い、主張からしますと、堀江貴文さんが捜査機関の焼け太りということをおっしゃられていて、私自身も、改革の魂というものは、今回は冤罪防止に向けて一定の成果を上げることだろう、捜査機関の利便性を向上させるようなものであってはいけないし、実際に、司法取引と通信傍受については、それぞれの懸念から議論をさせていただきました。

 私の思いからすると、大変複雑というか、まだ後の委員の質問が残っているのにこんな思いを言うのも大変恥ずかしいんですが、不十分だという思いがあるんですよ。ただ、これからの刑事司法を考えてまた見直しや検討をしていくときに、これからの検証や再度の議論のときに資するような環境の整備はできたのではないか、私としては、自分自身の力不足なんですけれども、力不足とはいえ修正をさせていただいた部分を前進させたい、そういうのが私の今の率直な思いなんです。

 ですから、捜査機関には少し御負担をかけることになると思いますが、この修正案についてよかったと捉えていただけるかどうか、林さんと三浦さんに順番で伺いたいと思います。

林政府参考人 修正につきましては、特に刑事訴訟法の重要な部分について今後不断に見直していくといった点につきましては、やはりこれは当然必要なことでございますので、そういった点についての修正がかけられたことについては、あるべき刑事訴訟法を不断に追求していくという観点で重要な点であろうかと思っております。

三浦政府参考人 今回修正がなされた点につきましては、いずれも当委員会での長い審議の中で出てまいりましたさまざまな問題意識を体現したものだというように認識をしております。

 警察といたしましては、これまで積み重ねられた御議論の中でさまざまに示されましたいろいろな考え方、捜査に対するさまざまな御懸念というものもあったと思いますけれども、そうしたものをきちんと受けとめまして、適正な捜査、また、国民から見て信頼に足る、信頼に値するような捜査を推進していけるように、修正案の趣旨も十分踏まえながら努めてまいりたいと考えております。

井出委員 この議論をずっとやってきて、同僚の議員などとも話をしてきたんですが、さきの委員会のときに、私は、日本の捜査機関というものは非常に真面目で、世界に比べて信頼、評価が高いと。であるからこそ、捜査の手法が、権限がいたずらにふえるところを、他国並みになれば、それで胸を張っていいのかと。ほかの国から見たら、抑制的な捜査をしているにもかかわらず治安の状況がいい、それが日本の捜査機関についての評価だと思います。

 維新の党という政党は大変歴史も浅く、そういう意味では、いろいろなもの、特に今回の刑事訴訟法の議論なんかも、私自身も手探りでやってきたところがあるんですが、我々のような新しい政党が目指すべき刑事司法制度に対して申し上げられることといえば、やはり、日本の警察の抑制的な捜査、そして、にもかかわらず治安はいい。

 端的な例が通信傍受捜査であって、それが今回広がる。当然、犯罪情勢は大きく変わってきておりますから、その必要性もあると思います。

 一方で、重徳委員が取り上げられておりましたが、勾留ですとか取り調べの状況は海外から批判をされている。その状況は、法律上の改正とまではいきませんでしたが、一定程度の問題意識を持っていただけたのかなと思います。

 私は、改善しなければいけないところもありますし、その一方で、いいところもあると思いますし、そのいい部分を消してほしくない、そういう思いで今後の刑事司法というものを見ていきたいのですが、本当にまとまらない私の見解なんですけれども、大臣のお考え、感想をいただければと思います。

上川国務大臣 何よりも、国民に信頼される刑事司法でなければいけない。そういう中で、さまざまな機関が、それぞれ、捜査、あるいは公判、あるいはまたこのような形で検証していくということを繰り返しながら、よりよい制度になるように、さらにその先には安全、安心の社会づくりをしていく。こうした大きな方向性のもとでたゆまぬ努力をしていくということは、これは大変必要なことだというふうに考えているところでございます。

 その意味で、今回、刑事訴訟法の改正に伴いまして、さまざまな視点から御議論をいただき、制度そのものを鍛えていただくということについては、これは大変長時間の審議を尽くしていただいたわけでございますけれども、大変得がたい審議ではなかったかというふうにも思うところでございます。

 今回、この改正案が成立した暁におきましては、この法務委員会で御審議をされたこと、また参考人の方々から御意見を頂戴したこと、さまざまなことにつきまして、こうしたことをしっかりと踏まえながら、制度の適正、そして信頼に足る刑事訴訟制度の方向性に向けて最大限の努力をしてまいりたいというふうに考えております。

井出委員 今、お話しする直前のテーマで、捜査や裁判に対する一番大事なことはやはり国民の目だと申し上げました。

 私どもの党は、その意味では、歴史も浅く、一番国民の目というものを意識して議論をしなければいけないのではないかな、それができるのではないかなと思っております。それは、何か一方的な、ポピュリズムとかそういう話ではなくて、広く国民の思いに目を向け、また、国民の思いに目を向けるということは、当然、今までそういう捜査ですとか裁判に当たられてきた皆さんの声も聞く。

 そういう意味で、皆さんのお立場に立ってということを何度かこの場でも申し上げたことがあるんですが、これからも、余り頭でっかちにならずといいますか、国民の感覚というものを持ち続けて議論をして、せっかく修正をさせていただきました、幅広い見直し規定もつけさせていただいたので、ぜひ、少しでも刑事司法に対していい議論、国民の目が反映できるように、私の方も力を尽くしてまいりたいと思います。

 大変長期間にわたる質問におつき合いいただきまして、感謝申し上げます。ありがとうございました。

奥野委員長 次に、清水忠史君。

清水委員 日本共産党の清水忠史でございます。

 「叫びたし寒満月の割れるほど」。これは、一九四七年、福岡市で発生した殺人事件で、戦後初めて死刑判決を受けた西武雄氏の辞世の句です。一貫して無罪を訴えておりました。法務省が恩赦への前向きの答弁をしたことから、この西武雄氏の恩赦決定は近いとされましたが、残念ながら、共犯者には恩赦がなされたものの、一九七五年、西武雄氏の死刑は執行されました。享年六十歳。

 二〇〇五年、死刑が執行された後も、遺族と釈放された共犯者が、福岡事件は、捜査段階の拷問で自白したものであり、死刑執行の後にも再審請求が行われております。ことしも、国会でこの福岡事件を考える院内集会がございまして、私も参加をさせていただきました。

 ずっと西武雄氏の冤罪を訴え、再審を支援されてきたシュバイツァー寺の古川泰竜さんは、こう述べておられます。人間は完全ではない、過失を繰り返す、いかに名裁判長でも、誤判をなくすということは難しいだろう。

 だからこそ、法律がそれを防止する、二度と冤罪や誤判を生み出してはいけないという立場から、きょうは法案に対する質疑をさせていただきたいと思います。

 初めに、きょう傍聴にお見えの皆さんも、またインターネット通信をごらんの皆さんも、きのうからきょうにかけてこの衆議院法務委員会で一体何が起きているのか、よく理解できていないんだと思うんですね。

 この刑事訴訟法等の一部を改正する法律案は、取り調べの録音、録画は不十分ながら導入されるものの、新たな冤罪を生み出す日本版司法取引の導入や、憲法違反の疑いがかなり高い通信傍受、いわゆる盗聴法の拡大などが含まれておりました。この法案にはさまざまな問題があるということで、テーマごとに分け、そして参考人にもお越しいただき、丁寧に審議をしてきた。与野党本当に力を尽くしたというふうにも思っておりますし、委員長以下、委員部の皆さんにも感謝をしております。

 ところが、きょう私は、政府・与党と民主党、維新の党が合意したとされる修正案を手渡されました。この委員会の冒頭、趣旨説明が行われました。さらに、きょう、委員会での質疑を終局し、採決をする、こう朝の理事会でも確認をされております。せっかく今まで一生懸命丁寧に審議をしてきたものが、きょうの修正案の趣旨説明で、修正案も含めて採決。附帯決議に至っては、手渡されたのはつい先ほどです。これは、少し丁寧さを欠くやり方ではないかと思うんですね。

 ただ、私も、民主党、維新の党の理事の皆さんを中心に、与党の方々とも連日にわたる修正協議を根気よく行ってこられたということも承知をしております。

 そこで、冒頭まず、民主党、維新の党の、野党の修正提案者のお二人に今回のてんまつを簡単に御説明いただければありがたいのですが、民主党の山尾委員からお願いできますか。

山尾委員 お答え申し上げます。

 済みません、ちょっと手元に何月何日に最初の提案というものがないのですけれども、この修正協議、連日にわたって複数回繰り返してまいりました。もう清水委員御存じのとおり、私どもが最初に提案をした、いわゆる民主党、維新の党一本化案というところからスタートしまして、今回提案をさせていただいた修正案まで、率直に言って大きな乖離もございます。ただ、最終的にそれが合意をされたのは、昨晩のかなり遅い時間帯であったかというふうに思います。

 そこで、附帯決議につきましても、昨日のうちから提案をしておりましたけれども、本案があった上で附帯決議も不可分一体のものとして提案させていただきましたが、附帯決議の方は合意に至るのがきょうになってしまったということで、最終的に手渡ったのが本日だということについて、確かに検討していただく時間としては十分なものではないのかもしれないという点は、私自身も感じております。

井出委員 てんまつということで、七月の十四日、国会が波高くなる直前だったと思いますが、修正案を与党の方に提示させていただいて、恐らく約十回程度の修正協議をしてきたと思います。

 内容については、今私が御説明するまでもなく、清水先生は十分御存じだと思いますので、私の方から一点申し述べるとすれば、先ほど私も発言をさせていただいたんですが、今回の修正協議の中で、修正された部分は少ないと思いますが、その少ない部分をきちっと形にする、世の中に出したい、その修正については、私は議論を尽くした上での最終形だったと思っておりますし、そういうことがてんまつ、概要ということで御理解いただきたいと思います。

清水委員 お二人を初め野党委員の皆さんは、それこそ真摯に、ひたむきに委員会質疑にも取り組んでこられましたし、今回の修正協議におきましても大変な御奮闘をされたということは私も理解をしております。

 最初に民主党案という形で公表されたものがございました。これを見ますと、これは非常にいいものだというふうに感じておりまして、より多くの方々が賛同していただけるものではないかと非常に期待をしておりました。その後、維新の党の方々と共同して一本化案という形になったわけですが、その時点でも、いろいろ問題はあるものの、やはりこの委員会での議論を一定反映した項目になっていたと記憶をしております。

 それで、本来ならば、きょう修正案を出されたわけですので、引き続きこの修正案に対する委員会質疑を、必要に応じて参考人も招致しながら、徹底的にやるべきだと私自身は考えておりますが、民主党、維新の党、修正提案者である委員の方々自身がきょうの委員会採決に合意をされているということですので、それに資する修正の中身になっているというふうにお考えでしょうか。これは、代表して民主党の山尾委員にお答えいただければと思います。

山尾委員 質問の趣旨をしっかり捉えられているか、ちょっと不安なんですけれども、この修正案で一緒に提案をするのかどうかということは、私自身も、あるいは民主党の委員みんなでも、最後まで悩みながらの判断でありました。

 ただ、最終的には、やはり不十分ではあるけれども一定の進歩があるのではないかということと、提案をしていくからには、今回、見直しの中で、大きく傍受やあるいは取引、再審の証拠開示も含めて範囲には含めましたので、その見直しに当たって、三年後あるいはもしかしたら六年後も含めて、主体となってしっかりと検討していく責任をともに負ったんだろうというふうに私自身は非常に重く感じているところです。

清水委員 ありがとうございます。

 その苦渋の決断と言ったらいいんでしょうか、法制審を通じて一括法案として出された法案ですし、伝え聞くところによると、ガラス細工のようなもので、余り修正してしまうと全部が崩れてしまうという話もありまして、そういうかたい政府・与党のガードの中で、附帯決議も含めて随分御苦労されたというふうに思うんですが、やはり、その修正案の中身が国民にとって本当に受け入れられるものなのか、前進したと言えるのか、これは非常に大切なことだと思うんですね。

 個別に法案の関係についてお伺いしたいんです。

 附則九条に係る取り調べの録音、録画の見直しですね、これは民主党も維新の党も対象犯罪の拡大を一貫して訴えておられたはずですが、今回の修正案では、法律の中に対象範囲の拡大という修正項目はございません。裁判員裁判対象事件そして検察官独自捜査事件、全事件の三%にも満たないということそのものは変わっていないんですね。

 このことに対して、今これでいいのか、山尾委員に所見を伺いたいと思います。

山尾委員 私からは二点申し上げたいと思います。

 まず一点目は、まさに見直しの方向が、拡大の方向というふうにピンどめがされているのかどうかというところなんだろうと思います。

 法文を見ますと拡大という二文字はありませんので、なかなかその点は難しいところかもしれませんが、ただ、もともとの原案では、いわゆる立証に資するということ、取り調べの適正に資するということ、なぜかそれと並んで捜査上の支障があること、この三つがいわゆる並列的な形で並んでいたように思います。

 本来、取り調べの録音、録画というのは、前者の二つ、これが大事な趣旨であって、これを踏まえて私たちは今後見直しをしていくんだ、そして捜査上の支障については、その見直しに当たっての、一つランクが違う留意事項であるんだということで、私は、少なからず、これは拡大をしていく、プラスの方向に引っ張った修正だというふうな思いで提案をしております。

 もう一点は、見直すまでにも、もちろん運用で努力をしていただく必要があろうかと思います。そこも、今回、義務づけは裁判員裁判と検察官独自捜査、二・一%から三%ということですけれども、見直しまでの間の捜査機関での運用もしっかりと拡大する方向で、できる限り録音、録画に努力するんだということを、しっかりと附帯で、立法府の意思として示していきたいというふうに思っております。

清水委員 続いて井出委員にお伺いしたいと思うんですね。

 井出委員も対象犯罪の拡大について一生懸命述べられておりましたし、今やICレコーダーは井出さんの代名詞とも言えるくらい、この委員会でも、そんなにお金をかけなくても録音、録画できるじゃないか、それは被疑者、被告人のためだけじゃなくて、違法な取り調べをしないという、捜査官側を律する効果もあるんだという議論をされていたことは、私も印象に残っております。

 しかし、それでもプラスの方向になったというふうに確信を持って言えることがあれば、一貫して録音、録画の拡大を求めてこられた井出さんの思いをお聞かせいただけますか。

井出委員 取り調べの録音、録画につきましては、その対象事件をふやすということには至らなかったのですが、今回の議論、また修正の協議の中で、的確な立証を担保する、適正な取り調べに資する、その取り調べの可視化の目的、意義について、これは私自身も何度も申し上げてまいりましたし、そのことを、政府も、また委員も共有できている、そういうところは一つこの議論の成果であったかと思います。

 ですから、また三年後の見直しもありますが、私は、今回のこの法律文、附則でスタートしても、これを拡大していく、そう前向きに捉えておりますので、今回の修正案の提案に至って、そこの部分は附則のみの改正というところで一致をした、そういう思いです。

清水委員 今、お二人のお話をお伺いしておりまして、全体としてはプラスの方向なんだ、附帯決議で運用面でも努力を図るということになっていると思うんですが、それでは、共同提案者の自民党盛山委員にお伺いします。

 今、民主党、維新の党の修正提案者が述べたように、今後、可視化は大きく広がっていくのかどうか。私ども視察へ行ったときに、司法警察職員の方が、もうこれ以上の可視化は無理ですと言明されたことに、私は大変衝撃を受けております。きょうの議論を聞いておりましても、対象犯罪とされたものであってもしばらく時間はかかるだろうというような答弁があったと思うんですね。

 そこで、自民党として、与党として、本当にこれが国民に対して、村木厚子さんや、あるいはこの可視化の問題で参考人に来ていただいた周防監督の思いに応えることができるものであるとおっしゃるのであれば、具体的にお答えいただけますか。

盛山委員 先ほどの私自身の質問、そしてそのやりとりの中でもある程度明らかにしたつもりでございますけれども、今、山尾委員あるいは井出委員の方からの御説明にもありましたけれども、この間、相当な時間、我々は、政府・与党、そして民主党、維新の党さんと、どうすればいいのかということを議論させていただきました。もちろん、我々は政府・与党でございますので、最初に出した原案がベストだということで、我々は十二分にこれまでの審議を通して出したものではありますけれども、しかしながら、今、清水委員からの御指摘にもありましたとおり、六十時間を超えるような長い審議の過程で、あるいは参考人にもお越しいただいて、いろいろな質疑をいたしました、いろいろなやりとりがございました。答弁でもいろいろお答えをしたところでございます。

 そういったことも踏まえて、やはりこれについては我々としても修正しましょうということで、政府・与党の方も、政府・与党というんでしょうか、自民党、公明党でございますね、民主党、維新の党さんと四党で合意をして、改正をすべきであるということで本日の修正提案になった次第であります。

 この修正提案を踏まえて、けさの答弁にもありましたとおり、法務省も、あるいは警察庁の方も、関係の政府機関はこの修正を十分踏まえて今後やっていっていただけることになる、私はそういうふうに思っておりますし、そしてまた、この修正の内容が、国民の皆様に対しても十分理解をいただけるようなものであると我々は自信を持っております。

清水委員 意気込みはよくわかるんですが、大切なのは、本当にこれが実効あるものになるかどうかということだと思うんですね。

 資料をお配りしております。五ページ、これは、ことし六月八日、冤罪被害者の皆さんが連名で、「日本弁護士連合会会長 村越進様」ということで出した申し入れ書です。

 上のパラグラフ、赤線を引いておりますが、こう書いているんですね。「全事件の全面可視化を求めて活動されて来たはずの日本弁護士連合会が、なぜ取調官の裁量を含む抜け道だらけの可視化法案を飲まれて、「早期成立」などと積極的に警察や検察の思惑に乗った活動をされるのか、私たちは残念で納得できません。」とあり、下のパラグラフ、「現に布川事件では「取調官の裁量でなされた一部可視化録音テープ」」、つまり、自白するところだけを録音するという手法ですね、そして、「逮捕前の拘束段階で自白させられた「足利事件」」もございました。

 これらの経験は、やはり裁量に任せるのではなく、全事件、全過程で録音、録画してこそ実証が担保される、そして、参考人の段階からしっかりとそうした証拠を確保していくということが必要かと思うんですが、今回の修正案は、そうした取り調べ官の裁量という点では全く変わっておりません。

 上川陽子法務大臣にお伺いしたいと思うんです。

 いろいろ努力はしたものの、また、拡大の方向も見出せたという修正はあったかもしれませんが、今、冤罪被害者の方々が述べられたように、一部の可視化、そして一部の事件や一部の場面のみの録音、録画では結局冤罪防止にならない、新たな誤判を生み出す、こう警鐘を鳴らしておられるんですね。今回、このまま参議院に送ろうということですから、こうした声に、この可視化の問題、修正された中身も含めて、上川陽子法務大臣、どう応えられるつもりですか、お願いします。

上川国務大臣 今回の取り調べの録音、録画につきましては、法律上の制度として、録音、録画の必要性が最も高い類型の事件であります裁判員裁判対象事件及び検察官独自捜査事件を対象としているところでございます。

 他方で、検察の運用におきましては、平成二十六年十月から運用における取り調べの録音、録画を拡大いたしまして、事案の内容あるいは証拠関係に照らしまして被疑者の取り調べを録音、録画することが必要であると考えられる事件につきましては、罪名を限定しないで新たな録音、録画の試行の対象として積極的に取り組んでいるところでございます。

 制度と検察等の運用をあわせて考えるということでございまして、対象事件の範囲につきましては決して狭いものではないというふうに考えているところでございます。

 本制度につきましては、施行後三年が経過した後に、捜査機関の運用におきましての取り調べの録音、録画をしっかりと勘案しながら、制度の趣旨、目的を十分に踏まえた必要な見直しを行うこととしているところでございます。今回の修正協議におきましても、そのような視点で修正がなされたものというふうに考えているところでございます。

清水委員 類型的に必要性の高い事件というふうにおっしゃるんですが、今回の刑事司法制度改革あるいは検察の在り方検討会議の契機となった郵便不正事件というのは、村木さんの場合はたまたま検察独自捜査事件でしたから、この法律が通れば可視化されるわけですが、一般的にはされない事件なんですね。公職選挙法違反、志布志事件、十二人もの冤罪を生み出したこれも可視化されないんです。痴漢冤罪事件もしかりです。これで、もともとの刑事司法制度改革の思いに立った可視化だと言えるのかどうか、私は甚だ疑問なんですね。

 それで、今、上川陽子法務大臣自身が、三年したら見直しを行う、検討を行うということなんですが、当然それは拡大していくということで検討されるんですよね。よもや、拡大の範囲を限定したり、縮小したりというようなことはないというふうに言い切れますか。

上川国務大臣 今回、修正案におきましても、三年後の見直しにつきまして、その趣旨につきましては、メリット、デメリットを勘案した上でというところの文言につきまして大きな修正をしていただいたということでございます。

 その趣旨につきましては、冤罪防止のために今回さまざまな制度の改正をお願いしているということでございますし、また、新しい制度として、今回、対象事件につきましては限定されているとはいえ、全面的な録音、録画をするということであります。こうした新しい制度のスタートということでございますので、そうしたことについては十分なる検証をした上で、この方向については決して後退することのないようにしていくということが何よりも大事であるというふうに考えております。

清水委員 決して後退することのないようにという答弁がありましたので、そこは信頼したいというふうに思っております。

 ただ、先ほども申し述べましたように、例外規定、これは捜査官側の裁量によって録音をしたりしなかったりということですから、これについてはやはり重大な問題であるということを言わざるを得ません。

 次に、協議・合意制度、司法取引について修正提案者の意見をお伺いしたいと思うんです。

 司法取引というものは、無実の他人を巻き込む、引っ張り込む、新たな冤罪を生み出しかねない、こういう危険性が本質的に備わっている捜査手法だと思うんですね。

 私の記憶では、特に山尾委員を先頭に、この導入には非常に疑義を醸し出しながら、当初、民主党案にはこの司法取引は入っておりませんでしたから、落ちておりましたから、そういう点では、立場が変わったのかなと思われる方もいると思うんですよ。

 それで、本修正をもっても、例えば弁護人が常時立ち会うというふうに修正されたと言うんですが、それでも、そのことをもって本当に引っ張り込みや第三者を冤罪に巻き込むというような危険性というのはなくなったのかどうか。山尾委員みずからの質疑の中で受けとめた政府の感触とあわせて、また、この委員会で参考人の意見をずっと間近で聞いてこられた御自身の経験にも照らし合わせて、所見を述べていただけるでしょうか。

山尾委員 ありがとうございます。

 今回、司法取引に関して、修正案では大きく三つの点を付加しました。事実上赤の他人を除くということ、弁護人の例外なき常時立ち会いということ、そして三点目が、協議の記録、これが公判の終了までしっかり保管されて、証拠開示に備えられるという担保というのが運用でつきました。

 率直に言って、私、ずっと委員として質問してきたのを聞いていただいていたとおり、やはりこの司法取引という新しい制度が、新たな、類型的に非常に信用性に疑義がある証言をとりやすくする危険がある制度だということは、私もそう言ってきましたし、今もそう思っています。そして、この三点によってその新たなリスクを一〇〇%払拭できるのかと尋ねられると、一〇〇%というふうに自信を持っては答えられません。

 だからこそ、あの見直しの中にしっかりと司法取引も入れましたし、司法取引という制度を三年間なされるのでありましょうけれども、では実際にどういうことが行われたのか、そしてそれによって実際に新たな冤罪のリスクはあったのかなかったのか、そしてまた、虚偽を罰する制度もありますけれども、三年でどこまであり得るかわかりませんけれども、そういったことも含めて、司法取引の制度の是非そのものも含めて検討の対象というふうにすべきだと私は考えております。

清水委員 修正提案者の山尾委員をもってして、これで一〇〇%冤罪、引っ張り込みを防ぐことができるとは言えないというのは、まさに、先ほど私申し上げました、この制度が持つ本質的な危険、自分が助かりたいから誰かの罪を告白する、こういう心理的な働きによってこれまでも数々の事件が生み出されてきたことに鑑みますと、本当に一〇〇%でないものを導入していいのかどうかというのはあるんですね。

 私、林刑事局長と、弁護人が立ち会うことで引っ張り込みをなくすという担保になるのかという議論を随分やらせていただきました。

 弁護人というものは、その被疑者、被告人の弁護人であって、いわゆる告発をする第三者の弁護人ではありませんし、当然、その対象者の証拠、どのような犯行を行ったのか、こういう証拠がなければ、私は、いかに弁護人が常時立ち会おうとも、果たして、自分が担当している被疑者、被告人の証言のみをもって、必ず罪あり、取引に応じていいという判断ができるのかどうか。

 先に反論するわけではありませんが、後で公判で明らかにされると言いますが、それがされなかったら、うそをつかないという担保にはなり得ないでしょうし、虚偽供述罪というものを設けたので抑制できると言いますが、この委員会でも、偽証罪によって起訴されているものがあるわけですから、罰則があっても、虚偽の証言をしないということの歯どめには何らならないというふうに考えております。

 維新の井出議員も、やはり協議、合意の場面を可視化した方がいいんじゃないかと。これは一理あると思うんですけれども、大事なことは、どこで冤罪がつくられるかというと、協議に入る前の取り調べ、あるいは協議が終わった後の取り調べ、こういうところで、不当な取引や、あるいは自白の強要、合意の強要、こういうものが行われかねないというふうに思うんですね。

 これはちょっと、林刑事局長、通告していなくて大変恐縮なんですが、答えられる範囲で、弁護人を常時立ち会わせることによって、引っ張り込み、第三者の冤罪、これを根絶する、発生させないと言い切れますでしょうか。

林政府参考人 今回の合意制度、まず制度設計の出発点からして、特に共犯者による供述等に代表されるように、他人を巻き込む危険性がある、こういったことを出発点として制度設計をしているわけでございます。

 その際に、巻き込みの危険というのをどのように除去するのかということについては、これまでも述べてまいりましたが、三つの手当てがしてあるということを申し上げました。

 その中の一つが、当然、弁護人が協議に関与する、弁護人が同意しなければ合意ができない、こういった制度が一つでございます。もう一つが、虚偽供述について新設の罰則を設ける。捜査機関に対しての虚偽供述というものは、今まで罰則はなかったわけでございます、偽証罪しかなかったわけでございますが、そこの部分をさらに新設して埋めるというのがもう一つでございました。最後に、他人の刑事裁判において当該供述が合意に基づいてなされた供述であるということを明らかにする義務を課すということでございました。この三つが合わさって今後の他人の巻き込みというものを防ぐということをずっと申し上げてまいりました。

 特に最後の点でございますが、やはり最初の制度設計の中で、合意に基づいての供述というのは非常に危険である、証明力が弱いというところを出発点として制度設計しておるものですので、そのことを、実際は合意に基づいて供述しているにもかかわらず、それを隠した形で他人の刑事裁判で使われるということは、米国においてのさまざまな調査結果がございますが、ああいった形で、それが隠された形で、虚偽の証言が有罪の決め手になったというようなことがないようにするために、明らかに当初から合意に基づく供述であるということをオープンにする、こういうことを義務づけておるわけでございます。この部分が、他人を巻き込む危険性を除去する非常に大きなポイントであろうかと思っています。

 そのポイントをさらに補完する意味で、先ほど申し上げた虚偽供述罪の新設、それから弁護人の常時立ち会いといったことが相まって、他人の巻き込みの危険性を除去する制度設計としているものでございます。

清水委員 ずっとこの委員会でおっしゃられた引っ張り込み、巻き込みの防止策をただ述べられただけで、今回の修正によって、弁護人を必ず立ち会わせる、しかも、第三者の証拠が開示されないもとで、引っ張り込みや冤罪を一〇〇%根絶できるのかという問いにはお答えになられませんでした。私は、これも本当に問題だというふうに思っております。

 そのことは後で議論するとして、修正にかかわるところでもう一つ聞きたいんですけれども、附則第九条第三項についてです。

 この第三項を盛り込んだ趣旨は、法制審の答申で今後の課題と指摘されながら政府案には盛り込まれなかった項目について検討を行うことを明確にしたというお話でした。

 再審請求審における証拠の開示というのは、私もこの委員会の場で上川陽子法務大臣と何度も議論させていただきました。やはり、今の公判前整理手続だとか証拠開示の制度ができる以前の事件について、確定審について、再審請求審における証拠開示を義務づけるということは、法のたてつけ上、参考人の意見を聞く中でも、私は確信を持って、できることだというふうに思いました。

 上川大臣は、この委員会の場で、この刑訴法を成立させるということについては命がけで頑張っている、命がけというお言葉を何度かおっしゃられました。私、ちょっとうがった見方をしますと、意気込みはわかりますよ、しかし、この法案が通らなかったからといって、上川大臣の命が奪われるわけじゃないんです。しかし、再審請求審における証拠開示の制度が先延ばしにされたら、今まさに再審を求めて闘っておられる方々が、再審が始まらず、これは有用な証拠が出てこないとなかなか再審決定は下りませんからね。万一、証拠が出ないばかりに無辜の方が命を奪われる、これこそ本当に命にかかわる問題なんですね。検討条項に入ったと言うんですけれども、これは私、もう待ったなしの課題だと思うんです。

 そういう点で、上川大臣が本当に命がけと言うのであれば、人の命を救うことにこそ意欲を燃やしていただくことが必要だと思いますし、そういう意味で、私どもも求めてきた再審請求審の証拠開示、これはすぐに実現するべきだと思うんですが、いかがですか。

上川国務大臣 今回の附則の九条三項におきまして、再審請求審ということの御議論につきましては、これを附則の中に盛り込むという形で修正協議がなされたというふうに理解をしております。そして、同時に、必要に応じ、速やかに検討が行われていくべきものである、こういう認識も示されていたところでございます。

 私といたしましても、こうしたことにつきましては、しっかりと真摯に向き合ってまいりたいというふうに思っておりまして、この再審請求審の証拠開示の制度そのものにつきましても、真摯にしっかりと対応してまいりたいというふうに思っております。

清水委員 「必要に応じ、速やかに、」と確かに法案に書いております。

 では、上川陽子大臣自身の優先順位についてお話しください。

 ここには、「再審請求審における証拠の開示、起訴状等における被害者の氏名の秘匿に係る措置、証人等の刑事手続外における保護に係る措置等について検討を行う」。優先順位について、必要に応じ、速やかに、どの順番でやるんですか。

上川国務大臣 記載されたことにつきましては、それぞれ重要なことであるというふうに認識をしております。その意味で、必要に応じて速やかに検討してまいりたいというふうに思っております。

清水委員 先ほど山尾委員の質疑の中で、一番初めに再審請求審における証拠の開示、これが含まれていると。私は、その意見をお聞きして、やはり野党の皆さんの思いというのはこの順番にも示されているのではないかと思うんですが、そこをちょっとお聞かせいただけますか。ちょっと私、今の上川陽子大臣のお話を聞かせていただいて、ここに、附則の第三項に入ったことをもって、本当に必要に応じ速やかに再審請求審における証拠開示が行われるのかどうか、確信を持てないんです。お聞かせください。

山尾委員 お答えします。

 提案者としての私自身の理解は、この順番にはそれなりの意味があると思っています。最初に持ってきたのは、やはり検討すべき優先順位が一番高いからだというふうに私自身は理解をして提案させていただいております。

 そして、もう一つ言えば、これは明示は三つありますけれども、少なくともこの再審請求審における証拠の開示については、必要の有無についての判断はこの委員会の審議の中でほぼ終えているのではないかというふうに思っております。必要があるということを前提に、したがって、速やかに検討するという段階に入っているという理解で提案をしております。

清水委員 与党の自民党盛山委員にも同じ質問をしたいと思います。

盛山委員 今の山尾委員の議論、これまでこの委員会の中でるる述べられてきたところであります。

 我々四党で修正をした提案というものは、それぞれ重要なものであるという理解で我々は提出をさせていただいております。いずれも大事であります。

清水委員 いずれも大事ということで、必ずしもここに記載された順番ではないという点では、与党、野党、それぞれの認識というものは必ずしも一致をしていないのではないかというふうに私は言わざるを得ません。

 しかも、ここに「証人等の刑事手続外における保護に係る措置等について」とあるんですね。この三つだけじゃなくて、「等について」というのがあるんですね。

 これは自民党の盛山委員に私はお伺いするんですが、この第三項の「等」という言葉には会話傍受は含まれるんですか。

盛山委員 あくまで例示でございますので、それぞれ「等」ということで検討していくということであります。我々、会話傍受ということを想定して「等」ということを入れたわけではございませんけれども、例示を挙げたそれだけに限定するものではないということで、広く読めるように「等」としたものでございます。

清水委員 私、手元に、「新たな刑事司法制度の構築についての調査審議の結果」という書類を持っております。ここの第四というところに「今後の課題」という項目がございまして、この附則第九条三項に盛り込まれている再審請求審、起訴状や判決書における被害者の氏名の秘匿、そして証人保護プログラムが入っているんですが、四つ目に会話傍受が入っているんですね。ですから、私は、この附則第九条第三項に会話傍受というものが含まれているという認識を与党、野党が共有しているのかどうかというのは、これは、いわゆる冤罪被害者をなくすとか誤判を根絶するということと、いわゆる著しくプライバシーを損ねるような傍受を、室内盗聴あるいは社内盗聴をやるということで、これは法制審の特別部会でも余りにも難しいだろうということで落ちたものですからね。再審請求審なんかと同列に並べられると、私たちはやはり困るんです。

 このことについて、維新の井出さん、この「等」に会話傍受は入っているんですか。

井出委員 そこは修正協議の中でも議論がありまして、最初に挙げられている三つは例示で、「等」の中にいろいろ含まれると。そういう意味では、会話傍受もそこに入る、入らない、そういう議論も当然、修正協議の中でありました。

 我々、御説明あったお手元の資料と、今回修正の附則で出させていただいた三つプラス「等」というものは、やはりある程度の関連性はあります。ただ、その例示されているものが全てひとしく「必要に応じ、速やかに、」というレベルにあるかどうかといえば、それはそれぞれ個別に議論の深まりぐあいがあると思いますし、再審請求審の問題というものはこの委員会の中でも議論が深まっている、そういう事実があるということは申し上げておきたいと思います。

清水委員 私は、あえてこの会話傍受を附則に盛り込まず、「等」という言葉でごまかす、盛り込むというようなやり方だったとすれば、これはやはり、刑訴法の改正案に対していろいろな思いを持っている国民の皆さんに対する背信行為だというふうに思います。

 次の質問に行きます。通信傍受についてです。これは、民主党にどうしても聞かなければならない質問です。

 民主党は、現行通信傍受法、いわゆる盗聴法ができたときから一貫して、プライバシーの侵害、通信の秘密を侵す違法な捜査手法ということで、ずっと反対されてきました。

 二〇〇五年の民主党マニフェストには何と書いてあったか。民主党は、政権獲得後、盗聴法を直ちに凍結する、こういうふうにも書かれていたんですね。

 当初出された民主党案には、通信傍受がごっそり落ちていました。私も安心しました。いいものだなと思いましたが、今回、その民主党さんも含めて修正された中身を見ますと、通信傍受が残っています。しかも、対象犯罪は政府案そのままなんです。

 これで、今まで民主党を信頼し、通信傍受に反対してくれたであろう国民が、どう説明を受ければ納得できるのか。とりわけ、通信傍受、盗聴法の拡大に一貫して反対してきた私にとっては、ぜひそこを伺いたい。何か歯どめになっているのか、ここを教えていただけるでしょうか。

山尾委員 私もしっかりお答えしたいと思います。

 通信傍受については、清水委員もずっとこの委員会の中で、本当に的確な御指摘をされていたと思います。

 非常に共有をしていたのは、通信傍受で制約をされるプライバシー権というのは、二つの意味で非常に重大な権利であるということ。なぜかというと、やはりプライバシー、個人の情報をコントロールする権利、まさに精神的自由、心の自由、傷つきやすい自由であるということ。そして、さらにもう一点、清水委員がずっとおっしゃっていた、傷ついていることに気づかない制約の仕方であるということ。この二点が、私は、非常に重大な、やはり考えるべき点だと思っています。痛みがわからないと大けがをしますよね。そういう意味で、本当にその点は、私は清水委員と共有をしております。

 そして、最初の民主党案には、もちろんこの傍受についての拡大の要素というのはなかった、これも御存じのとおりです。

 民主党と維新の党で一本化案をつくる過程の中で、手法は維持しながらも、振り込め詐欺に該当するような三つの犯罪に限っては拡大するというふうになり、そして最終的には今回の修正案に至っております。

 その過程の中で、私の思いを二つ申し上げますと、まず一点、範囲のことですけれども、やはり、振り込め詐欺という社会的に非常に大きな問題になっており、市民の皆さんも、自分事のように大変不安を感じていらっしゃる。そういう情勢に応えるという意味で、振り込め詐欺を含めての拡大ということで、今の修正になっています。

 ただ、一方で私が申し上げたいのは、私自身の質疑でも申し上げましたが、社会的な状況の変化によって対象範囲が拡大するのであれば、その変化によって縮小することもあり得るのがまた論理必然であろうというふうに思っております。それはやはり、今後の見直しの中でも検討されるべき観点だろうというふうに考えています。

 そして、もう一点が手法の部分ですけれども、これは、正直申し上げて苦渋の選択であります。もちろん、第三者による立ち会いの維持ということが最も理想的なんだろうというふうに私は思いますが、それが、捜査機関内部の、捜査には従事していない警察官の、指導という名前の立ち会いになりました。

 きょう、この委員会の質疑でも、それが一体どういうものなのかということを一定程度明らかにしたというふうに思いますが、やはりこれは、実際にそれがどのように機能したのか、本当に立ち会いは第三者から捜査員にかわってよかったのか、私はそこはしっかりと見直しの中でまた検討していくべきだと思いますし、きょう委員会の質疑で出た、ちゃんと検証できるように、警察の方でも、当然、この法案を提出している法務省の方でも、しかるべき資料をきちっと積み重ねて用意をしていく必要があるんだろうと思っております。

清水委員 手法については苦渋の選択というお話がありました。振り込め詐欺については、社会的問題になっているのは確かです。しかし、私たち通信傍受については反対ですけれども、あえて含むというのであれば、別表第一に組織的な詐欺という項目を設けて、それのみを入れるという方法もあったかと思いますが、詐欺、窃盗、あるいは、その定義が非常に曖昧だと言わなければならない児童ポルノ犯罪、こういうものも全部認めちゃっている。

 傷つきやすい自由というのはおっしゃるとおりで、後で被害回復できないという特質を持っているのがこの盗聴被害ですから、そういう意味で、拡大をそのまま認めたということが国民の皆さんにどう映るんだろうか。山尾さんがおっしゃった思いが本当にストレートに届くのかどうか。

 あえて言わせていただくと、必要性のないものは落とすべきだという議論がありましたが、実際、今回も、現行の集団密航についてはそのまま維持されているわけです。今後、共謀罪などが対象犯罪などにされると、六百の罪名がふえて、本当に盗聴天国、監視社会にならざるを得ないという点で、苦渋の選択とはいえ、私が今回、民主党、維新の党の皆さんに言いたいのは、ここで妥協するべきではなかったということであります。

 それはそれとして、山尾さんが、いろいろな濫用防止策を設けるんだ。井出さんの質疑の中でも、警察とのやりとりがありました。それで、傍受の際に、警察署内で、立会人のかわりにならないが、せめてということで、当該事件を捜査していない警察に監視してもらう。ちょっとこれは、真面目に議論したのかなというふうに言わざるを得ません。

 緒方事件をどれだけやりましたか、この委員会で。志布志事件などでも、警察が違法行為をやっていたということに端を発して、そういう警察を警察が監視するということが本当にできるんでしょうか。プロ野球だってサッカーだって、同じチームの人が審判をやったらみんな怒りますよ。やはり第三者の立ち会いがあるからこそ、例えば、君がそこにいるだけで、外形的なチェックがきき、心理的な抑制が働くんだと思うんです。

 三浦刑事局長にお伺いします。

 先ほどの委員会でのやりとりに沿ってお伺いしますので、何か新しいことを聞くわけじゃないんですが、当該事件の捜査に従事していない警察官が、適正を確保するために現場で必要な指導を行う、指導した記録を残すと言うんですが、スポット傍受などの外形的チェックはやるんでしょうか。

三浦政府参考人 今回考えております、そういった指導をする立場の者につきましては、例えば、通信施設といいますか、施設への回線の接続が適正になされているかといったことでありますとか、それから、御指摘のスポット傍受がきちっとなされているかということについてもチェックをするという役割を担わせることを想定しております。

清水委員 いやいや、確認しますけれども、先ほど井出議員の質問に対しては、ずっと傍受をやっているわけではなくて、いわゆる暫時といいますか、監視をするというふうにおっしゃられたはずなんですね。私、ぼうっとしていませんからね、ずっとやりとりを聞いていますからね。それで、今は、スポット傍受の外形的なチェックをする役割を担うというのは、これは全然話が違いますよ。

 では、修正提案者の井出先生、今、警察の指導と言いますけれども、これはスポット傍受をやることになっていますか。

井出委員 その役割の中にスポット傍受に対するチェックが含まれる、そういうことを予定しているというのは、今局長がおっしゃったとおり、同じ認識を私も持っております。

 ただ、立ち会っている時間、そこにいる時間について今制度設計をされているというのが先ほどの私の質疑への答弁だったと思いますので、そこは重要なポイントを御指摘いただいていると思っております。

清水委員 あえて反論しますけれども、同じ組織の人が外形的なチェックをできるはずがありません。もっと言えば、常時立ち会いしなければ、立会人の役割というのは果たせません。

 では、三浦さん、もう一回確認しましょうか。常時立ち会いですか。

三浦政府参考人 そもそも、これまでの通信傍受で立会人が果たしてきた機能というのは、特定電子計算機の技術的な措置によって全て代替され、担保されているというのが基本的な考え方でありまして、それは何も変わるものではございません。

 ただ、いろいろな御懸念があるという中で、そうした警察内部におけるチェック機能というものを働かせるということで、今回のような、指導するという立場の人間を現場に行かせるということを考えているわけでありまして、したがいまして、立ち会いの機能自体は、特定電子計算機で代替され、担保されておりますので、必ずしも常時そこの場にいる必要はないというように考えております。

清水委員 常時立ち会いせずに、どうして立会人の代替ができるのか。恐らく、三浦刑事局長の御意見の背景には、特定電子計算機がその機能、役割を果たすからだということでずっと答弁されていると思うんですね。

 では、法務省林眞琴刑事局長にお伺いいたします。

 先般、私との質疑の中で、こちらにおられる漆原先生の当時の議事録を紹介しながら、現行法ができたときに、立会人の役割として三つあると。一つは、そこにいるだけで心理的な抑制になるということ。二つ目は、接続番号が間違っていないか、ケーブルが切れていないか、技術的な対応。三つ目が、まさに傍受している通信の該当性の判断。中身までは聞けないけれども、スポット傍受、林刑事局長自身が、スイッチがオン、オフ、入れたり切ったりというふうに述べられましたし、立会人はそれをすることができますというふうにおっしゃられているんですね。

 この立会人に関する役割というのは私は変わっていないと思いますので、仮に特定電子計算機を用いようが、私は、その特定電子計算機が自動的にスポット傍受、該当性の判断をするものでない限り立会人の代替にはならない、こう考えておりますが、いかがでしょうか。

林政府参考人 法律上、傍受は必要最小限において行うということが法律の求めているものでございます。それを実現するために、今、スポット傍受という実務上の一手法を使っているわけでございます。

 その際に、現行法では立会人がおります。その際に、スポット傍受というのは、外形的に見れば、ずっと通話を聞いているのではなくて、該当性判断でところどころスイッチのオン、オフというようなことを外形的にしておりますので、それをしているかどうかという範囲では、立会人はそれを外形からチェックすることが可能であります。

 しかしながら、実際にそれが必要最小限の傍受をしているかということについては、これは、通信の中身、内容を知らなければ、実際にオン、オフをしていても、それが必要最小限の傍受なのかというところまではチェックできません。現状は、現行法の立会人が行っているスポット傍受に対するチェックというのは、その限りにおいてのものでございます。

 その前提でいきますと、特定電子計算機を使った場合、特定電子計算機におきましては、全ての記録、傍受あるいは再生した記録は全て改変不能な形で記録されますので、そこにおいて、当然、通話の全体の開始の記録、終了の記録も残りますし、その中で、傍受した通信の開始の時刻と終了の時刻というのも全てこの原記録の中に暗号化されて残りますので、そういった形で、事後的に、スポット傍受をしていたのかどうか、必要最小限の傍受をしていたのかということがチェックされ得るということにおきまして、スポット傍受に対してのチェックというものは、特定電子計算機の機能において全て完全に代替されるということでございます。

清水委員 中身が聞けないからこそ憲法違反なんですよ。最高裁の検証許可状の話をしたじゃないですか、ここで。スピーカーで音を出して、そして立会人が切断することもできる、ここまで認めて検証許可状を出したんです。これがぎりぎりの憲法の要請ですよ。

 今、立会人がいなくても後で改変不能な傍受記録を見ればわかると言うが、後ではだめなんです。後でわかるというのは現行法でも同じじゃありませんか。原記録を見ればわかるんです。今回の修正で、原記録の通知、閲覧、これを拡大しようという話ですよね。後でわかっても遅いんです。執行現場で該当性の判断をやるというのが通信傍受に課せられた必要最小限の立会人の役割じゃありませんか。それともなんですか、漆原先生と議論をしていた当時の松尾刑事局長と林眞琴刑事局長との現行通信傍受法における立会人の役割、機能、これは違うんですか。変わっていないんだったら変わっていないとおっしゃってください。

林政府参考人 現行の通信傍受法における立会人の役割として、また権能として、その通話の内容を確認した上で切断をする、しないといったことは、現行の通信傍受法を制定するときに、それは役割ではないという整理をしております。その限りにおいて、私の述べていることと立法時の局長が述べていたことは同様でございます。

清水委員 会話の内容を聞くことはできないわけですが、立会人が果たしている役割は同様だという明確な答弁がありました。

 そこで、今度は資料を見ていただきたいんですね。資料の九番、十一ページ。

 これは、山尾委員も一度出された資料だと思うんですね。今回、通信傍受、盗聴捜査の合理化、効率化のために、立会人をなくし、警察署内で通信傍受捜査をやる、そのための、警察庁がデロイトトーマツコンサルティング社に提示した警察提案措置なんです。これがいわゆる今回の新方式のもとになっているというのは、この委員会でも繰り返し行われておりますので、疑う余地のないところだと思うんですね。

 それで、次の十二ページを見てください。

 上の段からいきますね。ここでは、特定電子計算機の機能について、警察庁の加藤課長補佐が作業分科会のメンバーに説明しているんです。こう説明していますね。

 「この正規の傍受装置には、あらかじめスポット傍受の機能を組み込んでおきます。」「スポット傍受の開始時からあらかじめ設定した時間が経過すると自動的に傍受が中断される機能など、スポット傍受の適正な実施に関する外形的な機能を指しています。」その後、「スポット傍受の方法により、聴取せざるを得ないことになります。これによりまして、スポット傍受が適正に行われているか否かということをチェックするという立会人の機能は、技術的措置によって代替できると考えております。」こう作業分科会のメンバーに説明しているんですね。

 では、確認します。

 これは法務省に聞きますけれども、今回の通信傍受法改正案第二十三条の二項、特定電子計算機の定義について記されております。「次に掲げる機能の全てを有する電子計算機をいう。」と。

 ここに、今、警察庁の加藤課長補佐が述べたような、あらかじめスポット傍受の機能を組み込む、こういう機能は入っていますか。

    〔委員長退席、伊藤(忠)委員長代理着席〕

林政府参考人 スポット傍受の機能というものは、今後、特定電子計算機を開発する際に、これは実務上組み込まれると思います。しかしながら、法定の機能という形にはしておりません。

清水委員 何という答弁をするんですか。

 これは、警察が、自動的にスポット傍受できる機能、これが備えられますと説明しているんですよ、作業分科会で。そして、条文には何と書いていますか。次に掲げる機能の全てを有するものが特定電子計算機と書いているじゃないですか。

 つまり、今ここで説明された、自動スポット傍受機能とでもいうんでしょうか、これが含まれていないということは、特定電子計算機の機能を有していないということじゃありませんか。

 もしそれを言うんだったら、これが含まれますという根拠、法律のどこに書いていますか。いいかげんなことを言ったらだめですよ。

林政府参考人 法定していないということですから、法律上、スポット傍受という機能は法定しておりませんので、法律のどこにも書いてありません。

 そこで、御理解いただきたいのは、法律で求めるというのは、必要最小限の傍受、再生を求めているわけでございます。必要最小限の傍受を実現するための一つの実務的な手段がスポット傍受の機能でございます。現行法におきましても、スポット傍受ということは法律上どこにも書いてございません。

 しかしながら、御視察のときにもごらんになったかと思いますけれども、実際の現行法の傍受機器には、スポット傍受を行う機能が組み込まれております。これは、必要最小限の傍受を求めるというのが法律の求めでございまして、それを実現するために、例えば、一定の期間、傍受すべき通信があらわれなかった場合には自動的にその通話が切れる、通話を傍受することができなくなる、しかし、その期間内に傍受すべき通信が始まった場合には、その期間を超えてでも傍受ができるように、スイッチをそのままオフにせずに傍受を継続できる機能、こういったものがスポット傍受の機能でございまして、これは、スポット傍受の機能があれば必要最小限の傍受をしているかということではございません。

清水委員 だめです。

 先日、私の質疑に対して、特定電子計算機に自動的にスポット傍受する機能はついているんですかと言ったら、ついていると言わなかったじゃありませんか。それは林刑事局長自身ですよ。それを今、入っているとか、あるいは、書いてはないけれども入りますとか。

 ここをもう一回よく読んでください。いいですか。「この正規の傍受装置には、あらかじめスポット傍受の機能を組み込んでおきます。」あらかじめですよ。次の資料に載せていますから、そこをちょっと見てください。

 この資料は、この作業分科会で出された資料であり、法務委員には配られておりません。この真ん中のところに、暗号化されてきた通信を、「データの受信・スポット傍受の実施」とあるんですね。「鍵が入力された所定の傍受装置によらなければ復号不可能=スポット傍受の確実な実施」。

 つまり、ここで加藤課長補佐が述べているのは、いわゆる「スポット傍受が適正に行われているか否かということをチェックするという立会人の機能は、技術的措置によって代替できる」、その技術的措置というのは何か。「スポット傍受の開始時からあらかじめ設定した時間が経過すると自動的に傍受が中断される機能など、スポット傍受の適正な実施に関する外形的な機能を指しています。」

 私も、デロイトトーマツのものを読み込みましたよ。警察提案措置で、そういう機能をつくってくれと出しているんですからね。では、そのことに対してデロイトトーマツ社は何と言っているか。「受信装置の設定ミスにより必要以上に傍受を実施してしまうリスクが考えられることから、」つまり、スポット傍受をせずに、捜査員が幾らでも聞いてしまうというようなリスクをなくすために、「送信装置において受信装置の設定を表示を実現する技術要素候補を調査しました。」

 これは、資料の十四ページ、線を引いております。「事業者の送信装置から遠隔でスポット傍受の時間設定についても確認することを考えております。」つまり、スポット傍受を警察署内でやらなくても、通信事業者の方からあらかじめスポット傍受のタイマーを設定すれば、自動的に警察署内でスポット傍受が行われる、そういう機能を考えておりますと言って、次のページのポンチ絵、通信事業者から送られる段に「スポット傍受の時間設定確認」と書かれているんですね。

 つまり、このときに警察が立会人をなくすことの代替となることとした技術的措置というのは何か。特定電子計算機自身が自動的に必ずスポット傍受をやるという機能を有していること、そして、通信事業者から伝送する際に、通信事業者の側で警察署内にある特定電子計算機のスポット傍受を設定できるということ、これを提案しているんですよ。作業分科会でも説明しているんですよ。

 そして、デロイトトーマツの回答は何と書いているか。「結果として、送信装置において受信装置の設定を表示の実現にあたっては、一般的な技術の適用が難しいことから、「A)ソフトウェアの作り込み」を行うこととしました。」ということで、やめているんですよ。

 警察自身が、これらの機能があってこそ立会人の代替となると言っているわけですから、これらの機能が入っていないのであれば、三浦刑事局長、これは立会人のかわりになりませんね、法律で書いている特定電子計算機は。

    〔伊藤(忠)委員長代理退席、委員長着席〕

三浦政府参考人 まず、今お示しの資料の関係で申し上げると、当日、当庁の職員が説明を申し上げたことも、今の赤線の部分ですけれども、「事業者の送信装置から遠隔でスポット傍受の時間設定についても確認することを考えております。」ということでありまして、事業者自身が何か遠隔操作でスポット傍受の時間を設定するというようなことは何も言っておりません。

 特定電子計算機の方であらかじめスポット傍受をする時間というのを設定するわけですけれども、その設定時間がどのようになっているかということについては事業者側から確認ができるというようなことでありまして、もし仮に、それによって、例えばスポット傍受がそもそも設定されていないといったような、法に従わない傍受が行われようとしていたような場合には、そうした送信が行われないというようなことが想定されるわけであります。

 いずれにしましても、立会人のこれまで果たしてきた機能というのは、これまでも申し上げてきたとおり、この特定電子計算機の技術的な措置、例えば原記録に改ざん不可能な形で記録をされるといったようなことで事後的に検証可能なものでありますので、そうした機能についてはこの技術的措置によって果たされるものと考えているところでございます。

清水委員 全然答えていないじゃないですか。

 資料の十五番をもう一回見てくださいよ。これは、何のためにこのポンチ絵を描いているか。いいですか、「検討中の傍受システムにおける不正の防止」ですよ。捜査官の不正を防止する。所定の傍受装置、特定電子計算機を使うんだが、スポット傍受の時間を意図的に極めて長くして全通話を傍受する、こういう不正を防止するために、通信事業者の側からあらかじめスポット傍受の時間設定を確認する、こういう機能を有することを考えていると。

 後で検証しても遅いんです。それは立会人の役割じゃありません。盗まれた通話は後で返せるんですか。

 繰り返しになりますけれども、では、これは上川陽子法務大臣に聞きましょうか、今の議論を聞いていただいて。

 特定電子計算機そのものが立会人の役割を代替するものではないんですよ、聞いていただいたように。それを、警察も法務省も、特定電子計算機が代替になる、後で確認できるから立会人のかわりになる。そんなばかな話がありますか。上川陽子大臣、所見をお答えください。

奥野委員長 ちょっと待って。先にあっち側。(清水委員「短くしていただいたら結構です」と呼ぶ)

 林刑事局長、短く答えてください。

林政府参考人 今回の必要最小限の傍受をしているかどうかというものが、特定電子計算機におきまして、傍受を実施されている間に行われた通話の開始及び終了の年月日、日時、そのうち傍受をした通信の開始及び終了の年月日、日時というものが全て改変不可能な形で自動的に記録媒体に記録されます。これが、必要最小限度の範囲に傍受が限られていることの担保となります。これが法律で求められているこの機能の全てでございます。

 そこで、その上で、さまざま技術的な措置として、今回、スポット傍受の機能をあらかじめ特定電子計算機の中に組み込んでおくという、これは実務的な措置でございます。どういう意味で実務的な措置かと申しますと、傍受は必要最小限で行わなくてはいけないものですから、それを現行と同様にスポット傍受という方法で行うことができるように、あらかじめその機能を特定電子計算機に組み込んでおくものでございます。

 その上で、送信側にその傍受を許可された期間などが表示される機能というものを提案しているのは、一つには、該当性判断のための傍受を必要最小限度の範囲に限るために実務上行われているスポット傍受につきまして、自動的に傍受を中断し、あるいは再開するまでの時間を捜査官が受信装置に設定し忘れてしまっているような状態で通信事業者から暗号化信号が伝送されてしまうようなことを防いだり、あるいは、通信事業者が傍受令状により傍受を許可された期間を超えて通信の暗号化及び伝送をしてしまうといったこと、こういった過誤を未然に防止するための実務上の措置でございまして、これ自体が法律上求められているわけではございません。法律上求められているのは、あくまでも、必要最小限度の傍受という、現行法と全く同様の傍受が求められているだけでございます。

奥野委員長 お待たせしました。清水さん。

清水委員 長いんですよ、本当にもう。

 私が聞いたのは、自動的にスポット傍受ができる機能があるんですかと。それは、今のパソコンだってスポット傍受は普通にできるじゃないですか。ただ、手動でしょう、それは。捜査機関側が設定するわけでしょう。一時間と設定したら一時間聞けるんですよ。それを防止するために、特定電子計算機そのものに、自動スポット傍受機能や、あるいは通信事業者の側から捜査機関側にスポット傍受を自動的にかぶせる機能を、あなた方、技術的措置に関して、これはデロイトトーマツ社への提案措置ということで警察庁が出しているんですよ。それが備わっていないじゃないですか、今度の法案では。

 では、一言だけ答えてください、林刑事局長。こだわります。

 あなたがおっしゃっている特定電子計算機というのは、電源を入れれば、あるいはこれを使用すれば自動的にスポット傍受をする機能がついているのかついていないのか。それが法令で求められるかどうかという議論は脇に置いておいてください。自動的にスポット傍受ができる機能がついているかどうか、これだけ答えてください。

林政府参考人 法令とは別にと言われましたので、お答えしますと、運用といたしましては、これまでと同様にスポット傍受を行うことになりますので、実際に傍受の実施に用いられる特定電子計算機には、例えば、電話の傍受の開始後、あらかじめ設定しておいた時間が経過すると自動的に音の再生が中断され、その際、傍受すべき通信等に当たると判断して引き続き聞くためには一定の操作が必要になるというような形のスポット傍受の機能が、これはスポット傍受を実務的に行うための機能として付されることになろうかと思います。

清水委員 あらかじめ設定したというふうにおっしゃいましたね。自動的にはできないんですよ。はっきりしました。

 ですから、警察署内で警察職員が、常時立ち会いもしないのに立会人のかわりになるとか、警察庁自身が作業分科会で、これは立会人の機能を代替するためにこういう機能を入れるんだと説明しておきながら、今回の法案で言われるところの特定電子計算機にはそんな機能はないんです。後で検証できてもだめです。該当性の判断は執行現場でやらなければならないんです。

 そういう点では、今回のデロイトトーマツからの提案は、これは警察提案措置が一〇〇%反映されたものではありません。ですから、これは立会人の機能にもならない。もうはっきりしたと思いますよ。これ以上この議論をやっても時間がかかりますので。

 あらかじめ委員長に述べておきますが、私の定められた時間が少しオーバーしても我が会派の中で調整しますので、それはよろしくお願いいたします。

 この盗聴法の対象犯罪の拡大について伺います。これは警察庁に聞きます。

 法制定後、この通信傍受という捜査によって逮捕した犯人の数は何人ですか。

三浦政府参考人 通信傍受法の施行から平成二十六年までに通信傍受を実施した事件に関して逮捕した人員数は計五百二十五人であります。

清水委員 そのうち、犯罪の首謀者と目される人は何人いましたか。

三浦政府参考人 五百二十五人の中での内訳というものは把握をいたしておりません。ただ、平成二十五年及び二十六年に通信傍受を実施した事件に関しまして、平成二十六年中に逮捕した人員数は百十名であったところ、そのうち、暴力団の幹部に当たるとして都道府県警から報告を受けた者は二十一名でありまして、通信傍受が暴力団等の犯罪組織中枢の検挙や組織の実態解明に一定の効果を上げているものと考えております。

清水委員 今おっしゃったのは、二十五年から二十六年の調査で暴力団の幹部が二十一人いたということだけであって、私の、五百二十五人逮捕したうち犯罪の首謀者は何人かという問いについては答えていただいておりません。これは答えられないんでしょうか。

三浦政府参考人 法施行後から平成二十六年までの逮捕人数を五百二十五人と申しましたけれども、それの全てにつきましては網羅的に把握をしておりませんで、先ほど申し上げた特定の年に関して調査をした結果を先ほどは御答弁申し上げたところでございます。

清水委員 特定の年についての結果と言いましたが、網羅的につかんでいないということなんですね。

 この通信傍受、盗聴捜査の有用性、必要性というのは、ずっとこの間議論してきたのは、首謀者の背後関係を調べるんだと。そして、その首謀者の検挙、逮捕に突き上げるためだということでおっしゃっていながら、五百二十五人のうちどれだけ首謀者の背後関係に迫ったのかという実態の数字が出てこなかったら、果たして、憲法を侵し、必要最小限と言いながら、関係のない犯罪でどんどん聞いている、この盗聴捜査の拡大をどうぞやってくださいなんてどうやって言えるんですか。少なくとも、この五百二十五人のうち首謀者は何人逮捕したのか、最低限これぐらいの資料を出さないと、本当に必要か有用かなんという議論ができないじゃないですか。

 これはやはり上川陽子法務大臣に聞かないとだめですね、法案提出者ですから。

 この通信傍受という捜査手法、今お聞きいただいたように、何人首謀者に行き着いたかわからない。上川大臣も答弁の中で、首謀者の背後関係という言葉を使っておられます。何人逮捕できたのか、これがわからないのに、必要性、有用性を判断できないじゃありませんか。それとも、何をもって上川陽子大臣は、この盗聴という捜査手法が首謀者の背後関係に迫る有用かつ必要な捜査手法だと言い切れるんですか。根拠があればお答えください。

上川国務大臣 通信傍受が行われた事件に関しまして、組織犯罪の首謀者を起訴して有罪判決が言い渡された事案ということで御紹介したいと思うわけでございますが、例えば、暴力団による組織的な薬物密売事案におきまして、その指示系統や薬物の組織的管理状況等を解明し、配下の構成員のほか、首謀者である組長を起訴して有罪判決が言い渡された事案、こうしたことがあるものというふうに承知をしております。

 ただいま、そのことを体系的に把握している件数という意味では先ほどのような答弁だというふうに思いますけれども、具体的な事案ということになりますと、今のような事案がこれまでもあったということでございます。

清水委員 結局、大臣も含めて、何人首謀者を逮捕したか答えられないんですよ。それでどうやってこの盗聴という捜査手法が有効かつ必要だと言い切れるんですか。とんでもない話だと言わなければなりません。逆説的に言えば、この盗聴捜査という手法を使わなくても犯罪組織の首謀者を逮捕することはできるわけでしょう。

 次の質問に行きます。

 私は、令状主義との関係で憲法上本当に問題だというふうに考えていることがありまして、これは通信データの一時保存という手法なんですよ。

 今回、通信傍受法の改定によりまして、いわゆる通信、通話の中身を一時的に保存する方式が採用されようとしているんです。これは、その場では該当性の判断がなされないままごっそり蓄積されるということだと思うんですが、林刑事局長、間違いありませんね。

林政府参考人 一時的保存をした段階におきましては、まず通信が一時的に保存されますけれども、それそのものを捜査機関において傍受できるわけではございません。

清水委員 もちろんそれはそうなんですよ、該当性の判断をやらなきゃならないですから。

 しかし、一時保存した通話の記録を丸ごと警察署内に持ち運ぶ、こういう意味と同じではありませんか。該当性の判断をする前に、警察署内に、全ての一時保存された通話が運び込まれる、送り込まれる、これは法案のたてつけ上、間違いありませんね。

林政府参考人 一時保存にも二つございまして、通信事業者において行う場合には、捜査機関の施設への伝送は行われません。

 他方で、特定電子計算機を用いた一時保存の場合には、特定電子計算機において一時的に通信の内容が暗号化された形で保存されます。

清水委員 暗号化されているとはいえ、全て警察署内に持ち込まれるということについてはお認めになりました。

 これは、いわゆる被疑事実との関連性にかかわって、令状主義と抵触するのではないかと思うんですね。つまり、差し押さえ令状というものは、当該捜査に必要な、裁判所が発付した、認めた押収物のみを差し押さえることができるわけです。通信傍受令状の場合は何か。これは、差し押さえることができるのは犯罪関連の通信のみとなっております。

 その上で、暗号化しているとはいえ、該当性の判断も含まれず、犯罪と関係のない通話もごっそり丸ごと警察署内に運び込むというのは、令状が認めていない、そういう証拠を持ち運ぶということになりませんか、林刑事局長。

林政府参考人 憲法三十五条の令状主義がございますが、そこにおいて、今回、通信傍受の場合にも、傍受令状で、捜査機関がその内容を知ることにより通信の秘密を制約することが許される通信を明示することが要請されます。そして、そのために、傍受令状に、傍受すべき通信が記載されるわけでございます。

 そして、本法案による通信の一時的保存というものは、その一時的保存自体が形式的に通信傍受法上の傍受の定義に当たることから、同法上、傍受として位置づけてはいるものの、一時的保存をされた通信は、暗号化により、その内容を知ることは不可能でありまして、この段階では何らかの権利利益の制約を生じているものではございません。

 そして、一時的保存した通信については、復号後に再生し、その内容を初めて知ることにより、その通信の秘密を制約することが許されるわけでございますが、その許される通信は、あくまでも、傍受令状に、傍受すべき通信として特定されて記載され明示されているわけでございますので、こういった憲法三十五条の令状主義の特定性の要請は完全に満たされていると考えております。

清水委員 暗号化されているから被害は出ないというふうにおっしゃるんですが、暗号化されていようと、しておらないとしても、該当性を判断する前に持ち帰る、これが本当に令状との関係で問題にならないかどうか。

 例えば、フロッピーディスクやDVDだって、それ単体では見ることや閲覧することはできなくて、パソコンだとかDVDプレーヤーにかけて初めて見ることができるんですね。通話の一時保存についても、特定電子計算機にかけなければならないものの、犯罪と無関係の通話も含めて全て持ち込まれるという点では、私は大変問題があると思うんですね。

 なぜこういうことを聞くかというと、現行法では、通信施設においてリアルタイムで聞かなければなりませんから、そういう点ではいろいろな補充性の要件というのが満たされると思うんですが、とにかく後でゆっくり聞こうということで、とりあえず令状を請求して発付してもらって、そして録音して、それをため込んで、聞きたいときに聞こう、データベース化しようというようなことが果たして令状主義に照らしてどうかという問題意識を私は持っております。

 質問をかえますけれども、一時的に保存された通信というのは、いつまで保存していいんですか。ずっと保存していいのか、返さなければならない期限があるのか、お答えください。

奥野委員長 清水君、同一会派といえども、畑野さんの時間を十分ほど経過していますけれども。それから、政府参考人も時間で来ているんです。ですから、余り乱すということはまずいと思いますよ。(清水委員「はい、承知しました」と呼ぶ)

 林刑事局長。

林政府参考人 一時的保存をする場合には、傍受ができる期間の終了時という、傍受のできる期間というものが決まっておりますので、そういった終了時まで暫定的に一時的な保存がなされるものと考えております。

清水委員 今、終了時までは保存ができるというお答えでした。

 私も急ぎますが、資料の八ページ、資料六番をごらんください。これは現行の通信傍受令状です。ここには有効期間を記すところがありまして、「有効期間経過後は、この令状により傍受の処分に着手することができない。」こう書いているんですね。

 今、いつまで保存するんですかと言ったら、有効期限までというふうにおっしゃったんですが、では、有効期限が切れた一時保存した記録というのは、これは聞けないんですか。

林政府参考人 基本的に、有効期間内に、傍受ができる期間内に、復号等の、これは再生という形になりますけれども、再生が行われる必要がございます。

清水委員 では、有効期間を超えたら聞けないんですか、この一時保存した記録は。

林政府参考人 有効期間内に傍受の手続に着手すれば、そこから十日間の間に聞くことができるということでございます。

清水委員 いや、それは私、間違いだと思いますよ。

 条文の第二十一条第八項には何と書いているか。「傍受令状に記載された傍受ができる期間内に終了しなかったときは、傍受令状に記載された傍受ができる期間の終了後できる限り速やかに、これを終了しなければならない。」つまり、有効期間が過ぎても、できる限り速やかにということであれば聞いてもいいんですよ。

 つまり、現行傍受法では、期限が過ぎたらもう聞けない、傍受できない。しかし、新しいシステムにすると、一時保存すれば、期限が過ぎても聞いてもいいんです。できるだけ速やかにと言いますが、それを調査、確認する機関はありません。

 私、きょうは、アメリカのNSAによる、日本政府と中央省庁、そして民間企業に対する盗聴疑惑も聞きたかったですし、緒方事件についても質問したかった。理事会懸案事項になっておりました。

 とにかく時間が足りません。こんなことでは、終局してこの刑訴法の一括法案を通すことなどは断じてできないということを申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

奥野委員長 次に、畑野君枝君。

畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。

 刑事訴訟法等一部改正案のこれまでの審議によって、政府案は、当初言われたような冤罪を防止するための法案ではなく、盗聴法の拡大、要件緩和と司法取引の導入を柱としたものであること、そこには、憲法と、捜査、刑事裁判における人権保障と適正手続に重大な問題があることが浮き彫りになりました。したがって、さらに徹底審議が必要であるという立場で質問をしたいと思います。

 先日、NHKの「所さん!大変ですよ」という番組で、ある盗聴事件が放送されました。番組ホームページの説明には次のようにあります。「今回取り上げるのは、西日本のある街で起きた“個人情報流出事件”。二十代女性のプライベートな情報が流出。その中には、部屋の中での会話まで含まれていたという。しかも、そのことに女性は全く気付いていなかったというのだから驚きだ。使われたのは女性のスマホ。全く気づかない間に、男に乗っ取られ、盗聴までされていたというのだ。」ということです。そして、番組で、犯人は、刑法第百六十八条の二第二項、不正指令電磁的記録供与罪により、懲役三年、執行猶予五年の刑に処せられたと報じられております。

 伺いますけれども、不正指令電磁的記録に関する罪の認知、検挙件数はどのようになっていますか。

河合政府参考人 お答えいたします。

 不正指令電磁的記録に関する罪の認知件数につきましては、平成二十四年が五十七件、平成二十五年が三十九件、平成二十六年が三十件となっております。また、検挙件数につきましては、平成二十四年が四十一件、平成二十五年が二十七件、平成二十六年が二十八件となってございます。

畑野委員 今の状況については、警察庁の資料をいただきまして、資料の一枚目につけさせていただいております。二〇一一年に施行されたばかりの法律です。

 捜査に当たった広島県警サイバー犯罪対策課の警部は、被害者の女性に犯罪事実を説明したときのことを次のようにコメントしております。犯人が当時の交際相手だったと告げるまで、非常に信頼していろいろな相談をしていましたので、かなりショックを受けてその場で泣き崩れる状態でした、非常に新しい犯罪だし、恐ろしい犯罪と言っているんですね。このように、個人の通信の秘密、プライバシーの権利を侵害する盗聴行為というのは、現職の警察官でさえ恐ろしい犯罪だと言っております。

 上川法務大臣と山谷国家公安委員長にこの件について御所見を伺いたいと思いますが、いかがですか。一言で結構です。

上川国務大臣 個人のプライバシーに係る極めて重要な事件だというふうに思っております。

山谷国務大臣 新しいテクノロジーによりそうした恐ろしいことが起きるという認識のもとに、また治安の向上に努めていきたいと思います。

畑野委員 お話があったように、盗聴が個人の通信の秘密、個人の人権を侵害する極めて重大な行為であるということは、この事件からも明らかだと思います。こういうことを本当になくさなくちゃいけないわけですね。しかし一方で、現行通信傍受法、いわゆる盗聴法はどうか。通信の秘密、プライバシーの権利を侵害する憲法違反の法律であると言われてきたわけです。

 そして、今回の、特に通信傍受法、盗聴法の改悪については、現在、全国から大きな反対の声が上がっております。私も、横浜弁護士会会長の反対声明を竹森裕子会長御本人から直接いただきました。それは資料の二枚目と三枚目につけさせていただいております。会長声明は、通信傍受について、「このような対象犯罪の安易な拡大は、先の最高裁判例に照らしても、憲法上許されないものというべきである。」として、通信傍受の対象犯罪の安易な拡大は明確に違憲であると断言されております。

 そもそも、憲法で保障された通信の秘密、プライバシー権は、人権の中でも、民主主義の根幹をなす極めて重要な権利であります。

 先日の参考人質疑で、長澤彰参考人は、「なぜ精神的自由権が大切なのか。まさに民主主義社会を形成するための基本的な権利だからなんです。これなくして民主主義社会はあり得ない、」こうおっしゃっておりました。国会で審議される法案について、国家の根幹である民主主義を破壊することになるから憲法違反であるという厳しい指摘がされるということはまれだと思うんですね。

 このような声について、上川法務大臣はどのように思われますか。

上川国務大臣 憲法二十一条に規定をしている通信の秘密ということでございます。これは、「侵してはならない。」と憲法に規定されているとおり、大変大事な基本的人権だというふうに思っております。

畑野委員 だから今の法案が問題だという声が上がっているということなんですね。そこについての言及がございませんでしたけれども、こういうことを進めたら、本当に国民の信頼を失いかねないというふうに私は言わざるを得ません。

 それで、この間、法案を出す上で、合憲性を担保する根拠として法務省は何と言ってきたか。

 資料の次のところにありますが、公式ホームページのQアンドAで次のように書いているんですね。「通信の秘密の保障も、絶対無制限のものではなく、公共の福祉の要請に基づく場合には、必要最小限の範囲でその制約が許されるということは、憲法解釈の常識です。」私にとっては非常識なホームページだと思いますよ、多くの異論の声があるわけですから。

 それで、伺いたいのは、この場合の必要最小限の範囲というのはどのように判断をされるのか、その基準について具体的にお答えください。

林政府参考人 通信傍受は憲法二十一条第二項の保障する通信の秘密を制約するものでありますので、その制約は必要最小限度の範囲にとどめなければならないわけでございます。

 現行通信傍受法による通信傍受は、一つには、別表に掲げるような重大な犯罪についての高度の嫌疑があり、犯罪の実行に関連する事項を内容とする通信が行われる蓋然性が認められ、他の方法によっては事案を解明することが著しく困難であると認められるときに、傍受すべき通信が行われる蓋然性のある特定の通信手段に限って、裁判官の発する傍受令状により行うことが許されるものとされておりますので、これによって、通信の秘密の制約は、必要やむを得ない場合に限定されているわけでございます。

 さらに、傍受の実施の際に行われる該当性判断のための傍受も必要最小限度の範囲に限定されておりまして、犯罪とは無関係の通信が傍受される場合においても、その範囲は断片的なものにとどまるわけでございます。

 その上に、犯罪に関連する通信とは認められなかった通信の記録は、傍受記録の作成の際に消去され、捜査官の手元には残されず、捜査官はその内容を使用してはならないこととされております。

 また、傍受の原記録というものは、裁判官が保管して、事後的に検証されることが制度的に保障されております。

 こういった制度のつくりによりまして、現行通信傍受法は、傍受に伴う通信の秘密に対する制約を必要最小限のものにする制度的な仕組みが設けられていると考えております。

畑野委員 厳格な要件になってこなかったから今議論になっているんじゃありませんか。何度繰り返しても答えになりません。

 上川大臣は、五月十九日の本会議で、現行盗聴法について次のように述べられました。「対象犯罪については、平穏な社会生活を守るために通信傍受が捜査手法として必要不可欠と考えられる最小限度の組織的な犯罪に限定」されるとおっしゃりながら、直後に、「通信傍受法の改正による対象犯罪の拡大は、通信傍受の運用状況や現時点における犯罪情勢、捜査の実情等を踏まえ、現に一般国民にとって重大な脅威となり、社会問題化している犯罪であって、通信傍受の対象とすることが必要不可欠」と、必要最小限度の判断を、社会情勢の変化を理由に簡単に変容させているんですね。何かの法案と同じじゃありませんか。戦争法案がこの問題で今、大問題になっているわけです。

 現行法で、必要最小限度として、暴力団等による組織犯罪四類型に限定したと言ってきたにもかかわらず、これを広く日常的な犯罪に広げる、その立法事実があるということは、当委員会では示されていないじゃありませんか。このような基準では、将来も安易に対象犯罪が拡大されるおそれを否定することはできないと思いますが、いかがですか。

林政府参考人 今回の対象犯罪の拡大に当たりましても、現行の対象犯罪、いずれも重大犯罪という形での限定がなされておりますけれども、今回の対象犯罪を拡大するに当たりましても、当該犯罪が通信の秘密を制約するに値する重大な犯罪であるかどうか、あるいは、さらにそれに加えまして、実際に通信傍受が有効な犯罪類型であるか、また、実際にそのような犯罪が社会の脅威となっているかどうか、こういったことを判断の基準といたしまして、拡大すべき対象犯罪として選択したものでございます。

畑野委員 人権の制約の基準としては全く無意味な御答弁です。法的な安定性に欠けると私は言わなくてはなりません。人権制約が最小限度である根拠とされた常時立ち会い制度も外すというんですから、この点でも整合性がないわけですね。

 伺います。

 通信傍受令状を発付するときに、その適法性に加えて、当然、人権侵害の可能性があり得るかどうかということも、必要最小限度の判断を裁判官がすることになると思うんですけれども、これはどのような資料に基づいて判断するのか、ちょっとお聞かせいただけますか。事前に言っていないことかと思うんですが、答えられたら言ってください。

平木最高裁判所長官代理者 委員お尋ねの点は、個別事件におきまして裁判官がどのような判断をするかということですので、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。

畑野委員 こういうことも明らかにならないわけですよね。ですから、本当に人権がきちんと担保されているのか、この制度そのものが問われてくるというふうに言わなくてはなりません。

 そこで、上川大臣に伺いたいんですけれども、憲法が刑事手続について十カ条も使って述べているんですね。人権規定を置いているのは第十条から第四十条までなんですが、この中で、第三十一条から第四十条まで、刑事手続について詳細に人権保障をしている。これはどういう意味であるか、伺いたいと思います。

上川国務大臣 今委員御指摘の条文でございますが、憲法の第三章の国民の権利及び義務に係る規定ということでございまして、そのうち十カ条につきまして刑事手続に関する規定に費やしているということでございますが、このことにつきましては、捜査官憲によります人身の自由の過酷な制限を徹底的に排除するためのものであるというふうに理解されていると承知をしているところでございます。

畑野委員 人権が侵害される危険性が高いということとともに、やはり、戦前の特高警察、強権捜査、国民監視と暗黒裁判という、戦前の教訓による深い反省によるものだろうというふうに私は思うんです。憲法尊重義務のある法務大臣として、この憲法の要請を軽視することになるんじゃないかということでこの問題を指摘してきたわけですね。

 刑事手続において人権が侵害されれば取り返しのつかないことになるというのは、冤罪事件の被害者である桜井昌司さん、盗聴事件の被害者である緒方靖夫さんの話からも私たちは伺ったわけです。だから、憲法は詳細に手続の重要性を規定してきたということです。

 時間が迫っておりますので、次に、傍受禁止規定について伺いたいんです。弁護士が規定されている問題で伺います。

 今回、対象犯罪が大幅に拡大いたしまして、対象事案も大幅に増加されることが予想されます。それで、傍受禁止規定というのは従前のままに出されております。

 今回もう一回聞きたいんですが、法案の第十六条に、「医師、歯科医師、助産師、看護師、弁護士、弁理士、公証人又は宗教の職にある者との間の通信については、他人の依頼を受けて行うその業務に関するものと認められるときは、傍受をしてはならない。」という規定を置いております。これは具体的にどういうことですか。

林政府参考人 現行の通信傍受法でいいますと十五条となりますが、その規定における傍受の禁止は、依頼者との個人的な信頼関係に基づいて個人の秘密を委託されるという社会生活上不可欠な職業に対する社会的な信頼の保護を図るものでございます。

 したがいまして、その対象となる通信は、弁護士等が委託者の依頼を受けて行うその本来的な業務に関するものに限られまして、例えば、弁護士事務所の経営に関する通信等は含まれず、また、弁護士等が被疑者であって、その旨傍受令状に明示されている場合はその者との間の通信については傍受が禁止されない一方で、他人の依頼を受けて行うその業務に関するものであれば、他人の秘密に関するものであるか否かを問わずに対象となるわけでございます。

 傍受した通信が他人の依頼を受けて行うその業務に関するものに該当するか否かは、傍受を行う捜査官がその内容から判断することとなりますけれども、傍受した通信は、全て記録媒体に記録され、事後的な検証の対象となり得ることから、捜査官による恣意的な判断が行われる懸念はないと考えております。

畑野委員 傍受をしてはならないと、それを判断する権限を持つのは誰ですか。

林政府参考人 傍受した通信が他人の依頼を受けて行うその業務に関するものに該当するか否かは、傍受を行う捜査官がその内容から判断いたします。もとより、その傍受した通信は、全て記録媒体に記録されて、事後的な検証の対象となります。

畑野委員 捜査機関が判断するのでは、この法文自体が適正に運用される制度的保障はないということを言わなくちゃいけないんですね。まさに、通信の秘密、プライバシー権に最もかかわる仕事じゃありませんか。

 私、聞きますけれども、傍受禁止規定に政治家、議員は入っていないですよね。確認と、その理由を一言で言ってください。

林政府参考人 現行の十五条の傍受の禁止の規定でございますけれども、これは、依頼者との個人的な信頼関係に基づいて個人の秘密を委託されるという社会生活上不可欠な職業に対する社会的な信頼の保護を図るという規定でございます。

 そこで、今回、この十五条に列挙されているのは、医師、歯科医師、助産師、看護師、弁護士、弁理士、公証人または宗教の職にある者という形で限定されているものでございます。

畑野委員 ここにいらっしゃる衆議院議員の皆さんも傍受の対象になるという御答弁だったというふうに思います。

 しかし、実際には、我々の活動というのは、国民の皆さんの負託を受けて、電話やメールでその大変な状況の御相談にも乗るわけですよね。ですから、この制度そのものが、いろいろ禁止規定をつけたって、誰かが聞くとなったら、それは運用で幾らでもやれるじゃありませんか。そういう点では、弁護士である議員の皆さんも傍受の対象になるということです。

 私、時間がもう本当にないので、この間、報道機関についても伺ったんですね。

 それで、資料は出しているんですが、もうお聞きする時間がないので、これは法律にはない、そして通達になっているというふうに伺っております。

 それで、通信の当事者が報道機関であるかどうか、これは誰が判断することになりますか。

林政府参考人 この場合は、傍受を実施している捜査官が判断することになります。

畑野委員 では、警察庁、法務省の通達による運用が適正になされているのか、どのように検証されているんですか。

林政府参考人 これまでの実施において、検察官における傍受という実績はございません。

畑野委員 結局、犯罪を追及する目的で取材を重ねている場合も報道機関はあるわけですよね。そういう点では、傍受の対象になるといったら、取材の萎縮効果になるじゃありませんか。最高裁は、報道の自由を守れと言っているわけですよね。憲法上の権利なんですよ。

 時間が参りましたが、現行法でも、そして今後の法改正でも、問題点は山盛りですよ。憲法に照らして、私たちは憲法に基づく法務委員ですから、こんな法案の採決は許されないということを申し上げ、廃案を重ねて強く訴えて、私の質問を終わります。

奥野委員長 これにて原案及び修正案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

奥野委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。清水忠史君。

清水委員 私は、日本共産党を代表して、刑事訴訟法等の一部を改正する法律案に反対、自民、民主、維新、公明各党共同提出の修正案に反対の討論を行います。

 今回の刑事司法改革の契機となったのは、相次いで明らかになった冤罪事件であり、こうした誤判、冤罪を根絶することにこそ、その目的があったはずであります。

 ところが、本法案は、冤罪被害者、国民が求めていたものとは正反対であり、到底認めることはできません。

 第一は、盗聴法を大幅に拡大していることです。

 憲法は、通信の秘密、プライバシー権の保障、刑事手続における令状主義を定めています。そもそも現行盗聴法は、こうした憲法の規定を乱暴に踏みにじる法律であります。本法案は、その違憲の現行法について、窃盗や詐欺など日常的に起こり得る犯罪にまで盗聴の範囲を飛躍的に広げるとともに、盗聴の際に義務づけられている通信事業者の常時立ち会いをなくし、通信事業所施設内に限られている盗聴の場所を都道府県警察署などの捜査機関の施設に広げ、大量の盗聴記録をいつでも聞くことができるように大改悪するものだと言わなければなりません。

 緒方宅盗聴事件について、今なお盗聴の事実を認めず、謝罪もしていない警察に、盗聴捜査を日常化させ、多くの国民の通信の秘密、プライバシーを侵害する権限を与えることは、断じて認めるわけにはいきません。

 第二は、司法取引制度の導入を盛り込んでいることです。

 捜査・公判協力型協議・合意制度、いわゆる司法取引制度は、被疑者、被告人を、無実の他人を巻き込んででも助かりたいという心理状態に置き、虚偽の供述によって他人を犯罪者に仕立て上げる危険性を本質的に持っています。冤罪の新たな温床になりかねないものであり、容認できません。

 第三は、取り調べの全面可視化に背を向けていることです。

 本法案に盛り込まれた取り調べの録音、録画制度は、その対象事件が極めて少なく限定されている上、例外事由が取り調べ官の裁量によって広範に認められる仕組みになっています。村木事件や痴漢冤罪事件などは、録音、録画の対象外であり、本法案による冤罪の防止はほとんど期待できないばかりか、新たな冤罪を生み出しかねず、認められません。

 その他、通常審における証拠の事前全面開示、代用監獄制度、人質司法の廃止、再審請求審における証拠開示など、国民の期待に応えてはいません。

 自民、民主、維新、公明各党の修正案は、政府案の問題点を根本的に変えるものではなく、反対です。

 以上、討論といたします。(拍手)

奥野委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

奥野委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、刑事訴訟法等の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、盛山正仁君外三名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

奥野委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。

 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

奥野委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

奥野委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、盛山正仁君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、維新の党及び公明党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。井出庸生君。

井出委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。

    刑事訴訟法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府及び最高裁判所は、本法が度重なるえん罪事件への反省を踏まえて重ねられた議論に基づくものであることに鑑み、その施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。

 一 検察官及び検察事務官並びに司法警察職員は、取調べ等の録音・録画に係る記録媒体が供述が任意になされたものかどうか判断するための最も重要な証拠となり得ること及び取調べ等の録音・録画が取調べの適正な実施に資することに鑑み、刑事訴訟法第三百一条の二第四項の規定により被疑者の供述及びその状況を記録しておかなければならない場合以外の場合(被疑者以外の者の取調べに係る場合を含む。)であっても、取調べ等の録音・録画を、人的・物的負担、関係者のプライバシー等にも留意しつつ、できる限り行うように努めること。

 二 保釈に係る判断に当たっては、被告人が公訴事実を認める旨の供述等をしないこと又は黙秘していることのほか、検察官請求証拠について刑事訴訟法第三百二十六条の同意をしないことについて、これらを過度に評価して、不当に不利益な扱いをすることとならないよう留意するなど、本法の趣旨に沿った運用がなされるよう周知に努めること。

 三 再審が無辜(こ)の救済のための制度であることを踏まえ、証拠開示の運用、刑事訴訟法第四百四十五条の事実の取調べの在り方をめぐる今国会の審議の状況の周知に努めること。

 四 通信事業者等の立会いがないため同時進行的な外形的チェック機能が働かないことを踏まえ、特定電子計算機を用いる傍受の実施において、該当性判断のための傍受又は再生を行うに当たっては、通信の秘密及びプライバシーの保護に十分に留意して、厳正に実施すること。

 五 適正に通信傍受が実施されていることについての説明責任を果たすため、客観的に通信傍受の実施状況を検証するための方法について検討すること。

 六 捜査に必要な機器等の費用は捜査機関が負担することが基本であることに鑑み、通信傍受に必要な機器等の整備に係る通信事業者の負担軽減に十分な配慮を行うこと。

 七 証拠収集等への協力及び訴追に関する合意制度の実施に関し、検察官は、合意をするため必要な協議に際しては、自由な意見交換などの協議の機能を阻害しないとの観点をも踏まえつつ、日時、場所、協議の相手方及び協議の概要に係る記録を作成するとともに、当該合意に係る他人の刑事事件及び当該合意の当事者である被告人の事件の公判が終わるまでの間は、作成した記録を保管すること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

奥野委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

奥野委員長 起立多数。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。上川法務大臣。

上川国務大臣 ただいま可決されました刑事訴訟法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。

 また、最高裁判所に係る附帯決議につきましては、最高裁判所にその趣旨を伝えたいと存じます。

    ―――――――――――――

奥野委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

奥野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

奥野委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三十二分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.