衆議院

メインへスキップ



第39号 平成27年9月4日(金曜日)

会議録本文へ
平成二十七年九月四日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 奥野 信亮君

   理事 安藤  裕君 理事 井野 俊郎君

   理事 伊藤 忠彦君 理事 盛山 正仁君

   理事 山下 貴司君 理事 山尾志桜里君

   理事 井出 庸生君 理事 漆原 良夫君

      石川 昭政君    尾身 朝子君

      大塚  拓君    門山 宏哲君

      神谷  昇君    菅家 一郎君

      木内  均君    今野 智博君

      鈴木 憲和君    辻  清人君

      冨樫 博之君    古田 圭一君

      宮川 典子君    宮崎 謙介君

      宮澤 博行君    宮路 拓馬君

      簗  和生君    山口  壯君

      山田 美樹君    若狭  勝君

      黒岩 宇洋君    後藤 祐一君

      鈴木 貴子君    柚木 道義君

      重徳 和彦君    大口 善徳君

      國重  徹君    清水 忠史君

      畑野 君枝君    上西小百合君

    …………………………………

   法務大臣         上川 陽子君

   法務副大臣        葉梨 康弘君

   法務大臣政務官      大塚  拓君

   最高裁判所事務総局刑事局長            平木 正洋君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 河合  潔君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 露木 康浩君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    三浦 正充君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 高嶋 智光君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    林  眞琴君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    小川 新二君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    片岡  弘君

   政府参考人

   (法務省人権擁護局長)  岡村 和美君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  井上  宏君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           佐野  太君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           木下 賢志君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           吉田  学君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    藤井 康弘君

   政府参考人

   (海上保安庁警備救難部長)            秋本 茂雄君

   法務委員会専門員     矢部 明宏君

    ―――――――――――――

委員の異動

九月四日

 辞任         補欠選任

  門  博文君     神谷  昇君

  藤原  崇君     山田 美樹君

  階   猛君     後藤 祐一君

同日

 辞任         補欠選任

  神谷  昇君     木内  均君

  山田 美樹君     鈴木 憲和君

  後藤 祐一君     階   猛君

同日

 辞任         補欠選任

  木内  均君     門  博文君

  鈴木 憲和君     尾身 朝子君

同日

 辞任         補欠選任

  尾身 朝子君     石川 昭政君

同日

 辞任         補欠選任

  石川 昭政君     藤原  崇君

    ―――――――――――――

九月三日

 外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律案(内閣提出第三〇号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律案(内閣提出第三〇号)

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

奥野委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房審議官河合潔君、警察庁長官官房審議官露木康浩君、警察庁刑事局長三浦正充君、法務省大臣官房審議官高嶋智光君、法務省刑事局長林眞琴君、法務省矯正局長小川新二君、法務省保護局長片岡弘君、法務省人権擁護局長岡村和美君、法務省入国管理局長井上宏君、文部科学省大臣官房審議官佐野太君、厚生労働省大臣官房審議官木下賢志君、厚生労働省大臣官房審議官吉田学君、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長藤井康弘君及び海上保安庁警備救難部長秋本茂雄君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

奥野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

奥野委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局平木刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

奥野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

奥野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。國重徹君。

國重委員 おはようございます。公明党の國重徹でございます。

 本日は、死因究明制度に関してお伺いをしていきたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。

 今から三カ月前の本年六月四日付の毎日新聞の朝刊に、昨年十一月以降、京都、大阪で相次いで発覚した青酸化合物による連続殺人事件の記事が掲載されております。この記事によりますと、二件の殺人罪で逮捕、起訴された被告人は、ほかに、少なくとも結婚、交際していた男性六人の殺害を認める供述をしているということであります。

 昨日確認したところによりますと、現在までに三件が起訴され、引き続き捜査が行われているということですので、被告名等についてはあえて触れませんけれども、死因究明に関することについて少し述べさせていただきたいと思います。

 記事によりますと、これらの事件が発覚したのは、自宅で急死した当時七十五歳の男性を検視した捜査員が、その男性と被告が新婚だった、あと、それ以外にも、自宅から他人名義の印鑑が多数出てきたということで、念のため遺体から血液を採取するように指示をして、鑑定をした結果、青酸化合物が出てきた。そこで、被告の周辺を調べてみると、過去に結婚、交際した高齢男性約十人が相次いで死亡していたことが判明し、しかも、多額の遺産を譲り受けた形跡が続々と出てきた。これによって事件が発覚したというふうにされております。

 また、この被告が過去に交際した男性のうち、バイクの転倒事故で死亡した当時七十一歳の男性については、たまたま解剖時の血液を大学が保管していた。この血液を鑑定してみると青酸化合物が検出されて、二件目の疑惑が浮上したということでございます。

 二件とも、個人、捜査員の機転と、また、大学が血液をたまたま保管していたというような偶然が立件につながっております。

 これまでも、平成十九年のいわゆる時津風部屋事件など、犯罪死を病死と誤って判断して犯罪を見逃す事例が頻発して、死因究明制度のあり方が社会問題にもなりました。

 犯罪死の見逃し防止のためには、諸外国に比べても脆弱と言われる我が国の死因究明制度の改革に取り組んでいくことが不可欠です。

 我が党におきましても、死因究明の施策は個人の生命の尊厳を守る最後のとりでである、こういった認識のもと、プロジェクトチームを立ち上げまして、先月二十五日に、平成二十八年度予算の概算要求に向けた重点要望を、山谷国家公安委員長、下村文科大臣にそれぞれ申し入れたところでございます。

 さきの刑事訴訟法等の改正案の審議におきましては、現在の刑事司法は取り調べ、供述調書を過度に重視する状況にある、こういった意識のもとに、新たな証拠収集方法、いわゆる司法取引とか通信傍受の対象犯罪の拡大についても議論をしてまいりました。

 死因究明は、科学的で客観的な証拠収集の手段でございます。これを強化することは、捜査、公判が取り調べ、供述調書に過度に依存している状態から脱却すべきという法務省の問題意識にも合致いたします。法務省がリーダーシップを発揮して、関係省庁と連携して、死因究明制度のより一層の施策の推進に取り組んでいくべきだと考えますけれども、これに関する大臣の認識、見解をお伺いしたいと思います。

上川国務大臣 委員から御指摘をいただきました死因究明制度の充実強化ということについては、大変重要な課題であるというふうに認識をしているところでございます。充実した検視あるいは司法解剖の実施による死因究明につきましては、刑事事件における実体的な真実の発見あるいは適切な捜査、公判の遂行のために大変重要であるというふうに考えているところでございます。

 法務省といたしましても、関係省庁としっかりと連携をしながら、死因究明に関する施策につきましては積極的に推進をしてまいりたいというふうに考えております。

國重委員 今、大臣からも前向きなお言葉をいただきました。

 さきの刑事訴訟法等改正案の審議におきましては、先ほども申し上げましたとおり、合意制度、いわゆる司法取引、また通信傍受の対象犯罪の拡大、これについてはさまざまな課題、問題点等も審議の中で与野党の各委員から御指摘もあったと思います。でも、やはり必要性もあるというようなことで、今回、あえてこの法案を衆議院においては通したわけです。死因究明制度はより客観的で科学的なものですから、大臣のリーダーシップでぜひともこれは前に推し進めていただきたいと思います。

 続きまして、我が国の死因究明制度というのは、先ほども申し上げました、諸外国に比べて大きくおくれております。その理由の一つとして、死因究明に関する所管がばらばらであって、責任主体が不明確であるという点が挙げられます。

 本来であれば、死因究明を行う専門的で中立的な機関が全国的に整備されることが望ましいと思いますけれども、直ちにそのような機関を整備して制度の抜本的な変革を実現することは、現実的には難しいように思われます。

 そこで、中長期的には専門機関の整備を目指しつつ、まずは、現在の制度の運用をいかに改善するか、これを考えていくことが重要であると考えます。

 配付をさせていただきました資料一をごらんください。

 これは、警察における死体取り扱いの流れのチャート式の表であります。一番下に書いていますとおり、「数値は平成二十六年中に警察庁捜査第一課に報告のあったもの。交通関係及東日本大震災による死者を除く。」ということになっておりますけれども、この中で、昨年度中の全死者数は、推計で百二十六万九千体でございます。このうち、警察へ届け出がされたのは十六万六千三百五十三体、全死者数の約一三%になります。

 警察に届け出があった死体、御遺体については、死亡が犯罪によることが明らかである犯罪死体と、犯罪による死亡の疑いがある死体である変死体、そしてその他の死体に分けられます。変死体は昨年度で二万百六体ございまして、これは警察へ届けられたうちの約一二%になります。

 そして、この変死体に分類されたものに関しては、このチャート式の下の矢印ですけれども、検視が行われることになります。犯罪見逃し防止のためには、初動段階であるこの検視の精度を上げる必要がございます。

 検視について定めました刑事訴訟法二百二十九条では、その第一項で、「変死者又は変死の疑のある死体があるときは、その所在地を管轄する地方検察庁又は区検察庁の検察官は、検視をしなければならない。」ということで、検察官が主体である旨が書かれてあります。ただし、二項で、「検察官は、検察事務官又は司法警察員に前項の処分をさせることができる。」と、代行検視の規定がここで定められております。

 そこで、この検視について、実務上、主として誰が主体となってこの検視を行っているのか、実務上の取り扱いについてお伺いいたします。

林政府参考人 検視につきましては、検察官がみずから検視を行うか、司法警察員等にいわゆる代行検視をさせるかについては、具体的事案ごとに個別に判断しているわけでございますが、実際の運用といたしましては、代行検視が行われる事例が多いものと承知しております。

國重委員 ありがとうございました。

 今、代行検視が多いというような答弁でありました。私も、現場の方のお声を聞きますと、ほとんどが代行検視がされていると。刑事収容施設で亡くなった場合には検察官が検視をするんだけれども、それ以外の場合は、ほとんどと言っていいほど警察が検視を行うというふうに聞いております。

 そうしますと、初動捜査であるこの検視の実効性を高めるためには、検視官の増員とともに、この検視官の資質の向上が重要になってくると思いますけれども、これに関する現在の取り組みについて警察庁にお伺いいたします。

露木政府参考人 お尋ねの検視官についてでございますけれども、平成二十一年度から平成二十五年度にかけまして、地方警察官の増員などを全国的に行いまして、体制を強化してまいりました。平成二十年度には全国で検視官が百六十人でございましたけれども、平成二十七年度、今年度には三百四十人となっております。その結果、検視官の現場への臨場率につきましても、平成二十年には一四・一%でございましたが、昨年、平成二十六年には七二・三%まで上昇しております。

 また、研修についてでございますけれども、検視官につきましては、着任前に、警察大学校におきまして、解剖実習を含む死体取り扱いに係る専門的な研修を数カ月間行っております。さらに、その後につきましても、その資質を向上させるために、毎年、全国会議を開催するなどいたしまして、各都道府県警察における参考事例等についての情報共有を図っているところでございます。

 警察といたしましては、引き続き、各都道府県警察の死体取扱件数や臨場率の推移を見守りながら、犯罪死の見逃し防止に必要な体制の確保に努めてまいる所存でございます。

國重委員 ありがとうございました。

 検視官の増員ということも、ここ近年で見ますと、本当に数人単位でふえているにすぎないということでございます。これは、きのう資料をいただきまして確認をさせていただきました。ただ、警察も今、マンパワー不足の状態のこともあると聞いておりますので、検視官をふやすためには、やはり警察員の増員も必要かと思います。

 それとともに、今、資質の向上に向けた取り組み、研修等もおっしゃられました。非常に重要なことだと思います。ただ一方で、現場の方から聞きますと、研修とかで専門性が高まると、こだわりの落とし穴というか専門の落とし穴ということで、自分の目視で十分だということで、かえって解剖とかを軽視するような傾向性がある場合もあると聞いていますので、そういったことも含めて、資質の向上に向けた取り組みをぜひよろしくお願いいたします。

 続きまして、検視の報告にかかわる書類作成等の事務の合理化について伺います。

 検視に関する報告書の様式、内容、これは全国各地域によってまちまちであると聞いております。死体取扱件数がふえて検視の負担も増大している中で、やはりこれは合理化を図っていかなければならないということで、この検視に関して、平成二十六年六月に閣議決定された死因究明等推進計画の中で、「法務省において、関係省庁と連携しつつ、警察等における死体取扱数の増加に対応し、事案の内容に応じて検視の報告に係る書類作成等の事務を合理化することにつき、検討を進めていく。」とされております。現在の取り組み状況について伺います。

林政府参考人 死因究明に関する施策を進めていく中で、やはり警察等における死体取扱数は増加してまいりますので、そのことに伴いまして、検視の報告に係る書類作成の事務というものを合理化しようとして、現在、法務省におきましては、警察庁、海上保安庁と協議を行っているところでございます。

國重委員 協議を行っているということなんですけれども、これは、閣議決定は去年の六月にされておりまして、もう既に一年以上が経過しております。やはり、この死因究明制度をしっかりと推し進めていく上でも、こういったものについても、目標時期等も定めて、しっかりと取り組んでいただきたいと思います。

 続きまして、再検査、再鑑定を可能にするための、死体の血液、体液、臓器等試料の適切な保管についてお伺いします。

 再度資料一をごらんいただけますでしょうか。

 先ほど、犯罪による死亡の疑いがある死体は変死体といって、検視が行われると言いました。検視をした結果、犯罪の疑いがあると判断された死体につきましては、司法解剖が行われることになります。また、検視に回ったそれ以外の死体のうち、警察署長が必要と認める場合には、薬毒物検査や死亡時画像診断などの検査を実施することになっております。

 そこで、死因究明に当たっては、司法解剖、またこの検査というものが重要になってまいります。昨年度検査が行われた死体は、ここにも書いてありますとおり、十万百九十二体ということになっております。また、司法解剖がなされたものは八千六百八十四体になっております。これらには、遺体の血液、リンパ液などの体液とか、また臓器等が用いられます。

 では、その検査また司法解剖を行った後の試料ですね、血液とか体液とか臓器等、これについての保管は現在どのように実務上取り扱っているのか、お伺いいたします。

露木政府参考人 検査の部分についてお答えをいたします。

 死因・身元調査法に基づきまして警察において検査を実施しました死体の血液等につきましては、各都道府県警察において、個別事案ごとに判断をした上で、必要性が認められる場合には適切に保管がされているものと承知をいたしております。

林政府参考人 司法解剖に伴って採取された臓器等の鑑定試料につきましては、鑑定処分許可状の効力、あるいは死体解剖保存法等の規定に基づきまして、解剖医あるいは捜査機関において、必要に応じて適切に保存、保管しているものと承知しております。

國重委員 今、それぞれ警察庁、法務省から答弁がありました。何かきちっとした明確なルールというよりは、必要に応じて試料を保管する、こういったことが現状であると思います。

 ただ、やはり現実に犯罪の見逃しというようなことが事例として起きていることは事実ですし、また、検査についてどうやって行うのかといいますと、現場では、たくさんある検査項目をフルセットで行うのではない、ある程度の死因の予測を立てて、そこにターゲットを絞って必要な検査項目を実施しているというふうに聞いております。つまり、疑いがかからなければその項目は検査されないことになって、これが犯罪の見逃しにつながります。また、司法解剖を行った死体についても、その後に捜査の状況が変わって、再検査、再鑑定の必要が出てくることもあります。

 現状、警察は、取扱件数が多いという事情などから、試料を使い切って、ほぼ残さないこともあるというふうに聞いておりますけれども、現場の意見をしっかりと聞いて、適切な試料の保管システムを早急に構築すべきというふうに考えます。

 再鑑定をするための試料の保管については、法務省が法医学会、警察庁とも意見交換をして協議しているというふうに聞いておりますけれども、その進捗状況についてお伺いいたします。

林政府参考人 委員御指摘の点につきまして、再鑑定を可能にする試料の保管等につきましても、やはり現在、関係機関等と協議をしているところでございます。

國重委員 今、あっさりと、協議をしているところですというのがあって、これは、私も、きのうもさまざま意見交換をさせていただきました。大分前からこれについては協議をしているということですけれども、この死因究明制度に関して、時津風部屋事件とパロマ事件とが起こって社会問題になって、今、これに力を入れていくところですので、この保管の問題、これは非常に重要でございます。後で検査をしようと思っても、それが保管されていないということであれば、直接証拠がないということになります。

 特に、死因究明というのは、これで挙げられるのは死に関する犯罪、殺人罪、業務上過失致死罪、こういったことになってまいります。裁判員制度でもこれが取り扱われることになります。裁判員の方は素人ですので、やはりできるだけわかりやすい裁判にするためにも、また、死因究明、犯罪見逃し防止のためにも、この保管は極めて重要だと思いますので、先ほどと同じく、目標の時期もしっかりと決めて、ぜひ、これに関しても、しっかりとした保管のための基準といったものを確立していただきたいと思います。

 続きまして、薬毒物検査、死亡時画像診断等の地域間格差の是正についてお伺いいたします。

 先ほど申し上げました検査、また死体に対する解剖状況、これに関しては、都道府県により大きく差が存在するのが現状でございます。

 解剖に関しましては、平成二十六年中の死体取扱数に占める解剖総数の割合を見ますと、高い都道府県、これは、神奈川県が三四・三%、一番低いところが広島県で、一・八%です。この高低差、実に三二・五%ございます。

 次に、薬毒物検査につきましては、この実施割合の高いところ、長野県、九七%、一番低いところが神奈川県、八・五%。この高低差、八八・五%ございます。

 また、死亡時画像診断の実施割合、一番高いところが山梨県、五三%、低いところ、これは、警視庁、東京都、〇%、神奈川県、〇・一%ということになっておりまして、この高低差、五三%ということになっております。

 解剖の実施件数が多い都道府県では検査の件数が低くなるというような相関関係、こういった事情もあるかと思いますけれども、それを考慮した上でもなお、やはりこの地域間格差は著しく大きいというふうに思います。また、この背景には、地域ごとにある都道府県警察のカルチャー、文化、傾向性、これまでの慣習、こういったものがあるというふうにも聞いております。

 薬毒物検査、死亡時画像診断等の地域間格差の是正に向けて、今後、取り組みが重要になってくると思いますけれども、これに関する見解、今後の取り組みについて伺います。

露木政府参考人 私ども警察が実施しております薬毒物検査等の件数につきまして、都道府県によって差が見られるというのはそのとおりでございます。

 ただ、薬毒物検査にいたしましても、あるいは死亡時画像診断につきましても、先ほどちょっと委員がお触れになりましたけれども、警察で実施するものだけではございませんで、司法解剖等の際に執刀医があわせて実施するというものもございますし、また、死亡時画像診断につきましては、救急搬送先の病院において実施されるというものも一定数ございます。これも、各都道府県においてそれぞれ数字はまちまちということでございます。したがいまして、警察で実施した件数のみで取り組みの是非を判断するというのはちょっと難しいのかなというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、警察庁といたしましては、引き続き、検査あるいは解剖が適切に実施をされ、犯罪死の見逃し防止に資するように、必要な予算の確保に努めるとともに、都道府県警察を指導してまいりたいと考えております。

國重委員 この地域間格差の是正に関しても、これは、今取り上げた問題ではなくて、もう数年前から言われ続けている問題ですので、これについても、今答弁でもありましたけれども、都道府県警察への指導等、ぜひよろしくお願いいたします。

 続きまして、司法解剖謝金、検査費等に関してお伺いしたいと思います。

 死因究明制度は今、日本は諸外国に比べて脆弱ですけれども、しっかりとした体制をつくっていく上でも、この謝金、検査費等の十分な確保というのは極めて重要であると考えております。

 ここで、それぞれについて法務省、警察庁、海上保安庁に聞こうと思いましたけれども、時間の関係で、少し海上保安庁に聞いていきたいと思います。

 資料一の裏に資料二というのを用意しております。これは、海上保安庁の司法解剖謝金、平成二十七年度予算の積算内訳でございます。

 これに関して、「司法解剖謝金」と書いて、この内訳のところで、1のところでは、例えば司法解剖謝金として百十八体掛ける九千百九十円ということで書いております。ただし、実際には、一体が一時間でできるわけではなくて、平成二十六年度、司法解剖にかかった時間は平均して二・九時間というふうに聞いております。この数字が入っておりません。ですので、実績ベースと比べますと非常に乖離がございます。予算をとっているものよりも実際に使った金額の方が多いということで、この予算で賄っているわけではないという現実がございます。

 これはぜひ是正しないといけないと思っておりますけれども、今後の取り組みについて伺います。

秋本政府参考人 ただいま先生から御指摘いただきました点でございますが、海上保安庁では、取り扱う死体の解剖につきましては、従来から、解剖に係る謝金や経費を実際には適切にお支払いしてきているところでございます。

 ただいまの先生の御指摘も踏まえまして、引き続き、実績に合った必要な予算の確保に努めてまいりたいと考えております。

國重委員 私がきのう聞いたところによりますと、今回からはしっかりと時間も入れて予算の確保に努めていくということも聞いております。ぜひよろしくお願いいたします。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

奥野委員長 國重君の質疑は終わりました。

 次に、山尾志桜里君。

山尾委員 おはようございます。民主党の山尾です。

 きょうは、先日、矯正医官の法案をこの法務委員会で通過させましたけれども、刑務所の中のお医者さんにかかわる問題点、前回質問できなかった二つのテーマがございますので、その二つを質問させていただきまして、そして残りの時間で、以前から維新の重徳委員が何回か取り上げてくださっています司法面接について、これもまた議論したいというふうに思います。テーマは三つになろうかと思いますので、よろしくお願いいたします。

 まず、刑務所の中のお医者さん、特に専門的な分野のお医者さんが足りておらず、実際には刑務所に入るべき人たちが入らずにいるという状況についてお話をしたいと思います。

 資料をごらんください。資料の一ページ目であります。

 「透析できず受刑延期百三十人」、これは去年の一月の時点の新聞記事です。刑事裁判で実刑判決が決まったのにもかかわらず、人工透析が必要なため刑務所に入っていない人が百三十人以上いるという状況が、去年の一月、この取材で判明をしております。

 改めてこの場で、一年以上たった今現在、人工透析の治療が所内で受けられないという理由で刑務所に入っていない人たちは何人いるんでしょうか。

林政府参考人 平成二十七年九月三日現在でお答えしますと、刑務所で人工透析治療ができないとの理由で刑の執行を停止して収容待ちとなっている者の人数は百十名でございます。

山尾委員 では、実際、刑務所の中で人工透析の治療を受けて受刑ができている人たちは何人いるんでしょうか。

小川政府参考人 お答えいたします。

 本年九月三日現在でございますけれども、計四十一名の被収容者が、刑事施設におきまして、刑事施設に整備されている人工透析機器によって治療を受けております。そのうち四十名が受刑者でございます。

山尾委員 受刑者四十名、受刑できないでいる人百十名。だから、受刑できている人が半分以下なんですよね。これは、私も知らないで恥じておりますけれども、大変驚くべき事態だし、やはり早急に解決しなければいけない事態かというふうに思います。

 現在、全国のこういった施設で透析機器というのは何台あって、それは何台がしっかりと稼働できているんでしょうか。

小川政府参考人 人工透析機器につきましては、現在、全国の矯正施設のうち、十一カ所の刑務所及び拘置所に計五十七台の人工透析機器を整備しております。

 実際の稼働数につきましては、稼働数としてお答えするのはちょっと今データがございませんけれども、医師の不足ということもございまして、機器を用いた治療を実施できる医師が確保できないというふうな事情で人工透析機器を稼働できないことがあることも事実でございます。

山尾委員 機器は五十七台、受刑待ち百十名、受刑している人は四十名、医師不足もあって五十七台の機器全部がちゃんと稼働しているわけでもないということで、問題点が見えてまいります。

 機器が足りていない、そしてまた、それ以上にしっかりと人工透析機器に習熟している刑務所の中の医師が足りていない、この両方があるんだと思いますが、この解決策としていかなる解決策を予定しているのか、お答えできますか。

小川政府参考人 今後の対応策についてということでございますけれども、先般、矯正医官の兼業等に関する特例法が成立いたしたところでありますので、こういった人工透析に対応できる医師も含めて、医官の確保に努めてまいりたいというふうに考えております。

 また、今後、腎臓病患者等の受刑者もふえていくと予測されますので、その辺の体制整備を図っていきたいと考えております。

 また、現在、国際法務総合センターの整備を進めておりまして、平成二十八年度に運営を開始する予定にしておりますので、ここにおきましても、医療設備を設けまして、人工透析機器を整備していきたいというふうに考えております。

山尾委員 今、三つのことを言っていただきました。

 まず一点、この間この法務委員会で通過をしました矯正医官、兼業ができたり研修がしっかり受けられるということによってこの状況を改善していきたいと。一助になるということはなるんだと思いますし、その点は、この法案は意味がある法案だというふうに思います。ただ、この受刑待ちの人数ですとか、あるいは、やはり人工透析というのは相当専門的な技量が必要ですので、必ずしも、この法案を通したからといって、この状況がすぐに改善されるというふうにも思えない状況であるわけです。

 あと、二点目で、さらにこれから、やはり受刑者の高齢化、そしてまた当然医療の高度化もあって、刑務所に入るべき人間が人工透析を必要としている、これがふえていくんだろうということで局長からもお話がありました。

 これは、おっしゃったのでお聞きをするんですが、どのようにふえていくというふうに予測を立てて、今後どのようにそれをしっかり、今でも足りていない部分をふえた部分まで含めてカバーしていくということは、ある程度青写真はお持ちなんでしょうか。お伺いします。

小川政府参考人 お答えいたします。

 人工透析治療を必要とする腎臓病患者の今後の予測につきましては、明確な予測は困難でございますけれども、過去十年程度の数字を見ますと、やはりだんだんふえている状況にございます。

 腎不全の患者数で申し上げますと、平成十七年では六十数名でございましたけれども、これが平成二十六年におきましては八十名ということになっております。収容人員全体における腎不全患者の割合を見ましても、平成十七年は〇・〇八%前後、現在は〇・一三%程度でございますので、全体的にふえている状況でございますし、これは生活習慣病等の増加が背景にあると思われますので、今後も同様な状況ではないかというふうに考えております。

 また、これに対する対応でございますけれども、先ほど申し上げたように、国際法務総合センター、先ほど二十八年度運営開始と申し上げましたけれども、正確には、二十八年度に完成しまして、二十九年度から運営を開始する予定でございますけれども、ここに矯正医療センターという医療センターを設ける予定でございますし、そこに三十床分の人工透析機器を整備するということを予定しておりますので、こういった対応であるとか、そのほかの既存の刑事施設における体制のさらなる充実ということもあわせまして対応していきたいというふうに考えております。

山尾委員 この国際法務総合センターなんですけれども、私が調べた限り、本来であれば今年度、ことしの九月にもスタートするという予定で最初計画がされていたように思うんですけれども、その事実確認と、そのスタートが、今でいうと、平成二十九年度と二年前後おくれているわけですけれども、その理由を教えてください。

小川政府参考人 お答えします。

 国際法務総合センターの開始予定でございますけれども、二十七年度中の完成といいますか運用開始を予定していたことはございませんけれども、もともとは平成二十五年度中の完成を見込んでおりました。それに比べればおくれている状況があるわけでございますが、希少猛禽類の保護という問題があったり、あるいは予定地周辺のインフラ整備の完成が平成二十八年度になるといった外的要因がございましたので、事業計画の調整を行う必要が生じました。

 そのため、もともと二十五年度中の完成を見込んでおりましたけれども、平成二十六年度になりまして、平成二十八年度、具体的には平成二十九年二月に完成する予定ということで予算措置を受けておりまして、平成二十六年十一月に着工し、現在工事を進めているところでございます。

山尾委員 おくれの理由を聞く限り、予想外のことが起きたとか、そういうことではなさそうなのですが、とはいえ、今着工がスタートしているということですので、工事を進めている間に中の計画をしっかり練っていただいて、完成から運用までの幅をできるだけ縮めるように、今できることを最大限やっていただきたいというふうに思うんです。

 今お聞きをしましたら、透析用の機器は三十台を予定しているというふうにお伺いをしました。これは何名が治療可能になる予定なんでしょうか。

小川政府参考人 矯正医療センターにつきましては、現在、運営に関する入札手続中でございますけれども、その中では、整備する人工透析機器は三十床でございまして、これを毎週月曜日、水曜日、金曜日の午前中に一回最大三十人に対して実施をする、また毎週火、木、土の午前中に一回最大三十名に対して実施をする予定というふうにしておりますので、これが実現すれば最大六十名の治療が可能となる予定でございます。

山尾委員 今、受刑待ちが百十名ですので、六十名追加で対応できることになっても解消されないということになるんですけれども、その分についてはいかがされる御予定なんでしょうか。

小川政府参考人 先ほど申し上げましたように、ほかの矯正施設におきましても人工透析機器が配備されているところがございますので、それが運用できる矯正医官の確保等に努めまして、なるべく十分に活用できるように努めていきたいというふうに考えております。

山尾委員 今のお話を前提とすると、今人工透析ができる施設の設備はそのまま据え置いて、そこにさらに専門的な医師がちゃんと来られるようにする、それプラス、新しい施設で透析可能な受刑環境をつくる、こういう予定だというふうに決まったということでよろしいんですか。

 何か、以前聞いたときには、もしかしたら全部そこに集約させるという選択肢もあり、また、ただやはり既存のものは置いておくという選択肢もあり、まだ決まっていないというような状況もあったかと受けとめていたんですが、決まった、要するに、今あるものは置いておく、さらにセンターをふやす、こういうことで方針が決まったと伺ってよろしいんでしょうか。

小川政府参考人 お答えします。

 ただいま申し上げましたのは一般的な方針ということでございまして、透析を必要とする受刑者をどのように集約するかにつきましては、人工透析治療を必要とする患者数の動向等も勘案しながら考える必要がございますので、現時点において明確に決定しているわけではございませんし、方針について明確にお答えすることはできない状況でございます。

山尾委員 ちょっとおかしいと思うんですね。

 今局長の答弁で、やはり、この十年の推移を見ても、人工透析を必要とする受刑者はこれから伸びていくトレンドだ、こういう認識をお示しになった。そして、今の待ちの状況を勘案しても、どう考えても、新しいセンターをつくって三十台を稼働させて六十名を診られるようになっても、そこに全てを集約できるはずはないというのが数字を見た上での当然の分析だと思うんです。

 そう考えていくと、一カ所に集約はできない、集約センターはつくりながらも、既存の、今あるものも稼働しながら、何とかよっこいしょと、あわせてこの状況を解消していくというふうになろうかと思うんですけれども、その点、もう一度お伺いしてよろしいですか。

 というのは、どう考えても、やはりこの状態は早く解消しないといけないと思うんですよ。それを、新しいセンターをせっかくつくるんだったら、二年後の時点でこの状況を解消できるという青写真が欲しいわけですよね。解消できるかどうかもわからないながら新しいものをつくって、ちょっとはよくなるんだということではいけないと思うんです。そこの部分をどのようにお考えなのでしょうか。

小川政府参考人 お答えいたします。

 人工透析を必要とします患者数につきましては、全体的にふえていくだろうと予測はしておりますけれども、実際にどの程度ふえるかというのもその状況を見る必要がございますし、また、機器の整備につきましては先ほど申し上げたとおりでございますけれども、医師の確保であるとか、そういった人的な体制整備の問題もございますので、そういった状況を勘案しながら、今後検討していきたいというふうに考えております。

山尾委員 収容待ちの中には暴力団関係者もいるのではないかと推測しますけれども、その点、どのように把握されていますか。これは刑事局長でしょうか。お願いします。

林政府参考人 人工透析治療ができないとの理由で刑の執行を停止した場合には必要な調査を行うわけでございますが、その調査については、透析が必要かどうかといったことを調査事項としておりまして、停止されている者が暴力団組員であるかどうかということについては調査の対象となっておりませんので、全体の人数等については把握していないところでございます。

山尾委員 やはりこれは把握していただいて、世の中にちゃんと報告していただきたいなというふうに思います。

 だって、本来は刑務所に入るべき人間が、自宅にいて通常の生活を送りながら、病院に通って人工透析の治療を受けているという状態なわけですよね。そういう者の中に、例えばですけれども、やはりこれからさらに再犯を犯す危険が高いかもしれない者として暴力団というのも一つのメルクマールでしょうし、やはりそれは、実際に待っている者が受刑しない間に再犯を犯したら誰が責任をとるんでしょうかということを考えるんですよね。

 ちなみに、この記事の中には、三段目ですけれども、「殺人などの凶悪犯はいないが、現役の暴力団員らは含まれているという。」というふうに書いてあるんですけれども、法務省としては、一切、待ちの人間の中に暴力団組員、関係者がいるかどうかという調査は行っていない、したがって把握をしていないということでよろしいんですか。もう一回確認します。

林政府参考人 刑の執行の停止をする場合に、個別の事案については当然その把握はできておると思いますけれども、全体として、人工透析治療ができないという理由で刑の執行を停止する中に暴力団組員というものが何人いるのか、あるいはその周辺者というものが何人いるのかということについては、把握しておりません。

山尾委員 では、ちょっと重ねて聞きますけれども、実際、待っている人が百十名、中で透析を受けている人が四十名というふうに聞きました。そうすると、多分、全体で約百五十名、本来なら人工透析をやりながら受刑をする必要があり、その中の四十名が実際に行っている。

 誰を先に刑務所に入れて誰を待たせておくかという判断は、誰がしているんですか。そして、私は、当然、暴力団組員なのか否か、関係者なのか否かが、実際に待ちの状態で一般社会の中にそのまま置いておいていいのかどうかという判断の基準の中に本来入っているのではないかというふうに思うんですけれども、その点はどうなっているんでしょうか。

 ちょっと通告をここまで細かくしていませんけれども、話の流れですので、もし今お答えできるところがあったら教えてください。

林政府参考人 刑の執行の停止等について検察官によって決めるわけで、それは個別の事案ごとでその判断をしていきますので、統一的な全国的な基準というものがあるわけではございません。

山尾委員 検察官が決めているということであれば、検察官たる局長にもお伺いしたいんですけれども、執行停止するかどうか、その判断においては、当然、その人間が暴力団に関与しているか否か、一般社会に置いておくことの危険性をどのように捉えるかという判断を検察官が個別にしているはずだと思うんですけれども、その点はいかがですか。

林政府参考人 当然、個別の事案等に鑑み、それを前提としまして、その際に、当該刑の確定者に対して、人工透析治療ができる刑務所等があるかどうかということをまた個別事案で判断して、結局、できるとなれば当然刑の執行指揮をいたしますけれども、そうでない場合には、このように刑の執行の停止をして、受刑待ち、収容待ちということになるわけでございます。

山尾委員 本当に、待ちの状態があるという状況もさることながら、その中で、今あるリソースの中で振り分けるときに、何の基準も示すことができない状態で、個別に判断をしていますと言うだけでは大変困るというふうに私は思うんですね。

 ちょっと引き続きこれは別のときに質問していきたいと思いますけれども、恐らく何らかの基準があって、当然、やはり一般社会に置いておいては危険が高い者についてはできるだけ早く刑務所に入ってもらおう、矯正してもらおうという判断の中で運用されているというふうに思うんです、そうなっていなければ困るんですけれども。

 ただ一方で、この記事にあるとおり、これは誰がどういうふうにこの記者さんに対して言ったかわかりませんが、現役の暴力団員らが含まれているという記事が事実だとしたら、もしかしたら本当に、局長がおっしゃったように、個々でやっているだけでこれといった統一的な基準がないから暴力団まで受刑待ちに入っちゃって、実際、今この状況でも困った状況になっているということではないんですか。

 大臣、いかがお考えになりますか。ちょっとコメントをいただけますか。

上川国務大臣 収容できないという状況の中で、つまり、医療関係の理由によって収容できないという理由によって社会の中で治療を受けるということになっているわけであります。

 その際、いろいろな問題が起きない範囲の中でそれぞれの事例において検察官が判断をしているということでありまして、それは、今おっしゃったような暴力団であるかないかというようなことがあって、それについて判断するということも恐らく入る、いろいろな要素の中に入っていると思いますが、社会的に見て特に問題がないというような事例に限って、そうした判断をしているというふうに思っております。

山尾委員 今把握していないということなので、では、お願いしたいと思いますが、局長、これは統一的な基準はないというふうにおっしゃった。それでは、今、この百十名の中に暴力団組員あるいは関係者がいるのかいないのか、いるとしたら何名なのかということを調べて、何らかの形で御報告をいただきたい。もし含まれている、暴力団員も受刑待ちで一般社会に今いるということであれば、やはり統一的な基準がないということの問題はより一層浮かび上がってくると思いますし、まず、その調査をしていただいて、報告をいただけませんか。

林政府参考人 その点については、今後のどこかの時点で調査をしたいと思います。

山尾委員 どこかの時点でとおっしゃらずに、人数も限られているわけですから、速やかにお調べいただいて、御報告をいただきたいというふうに思います。

 それでは、次に参ります。

 皆さん、もう一枚資料をめくってください。これは、刑務所の中の出産そして育児という、数は多くないかもしれないですけれども、その子供の福祉にとっては極めて重大な事柄なので、取り上げたいというふうに思います。

 まず、この資料ですけれども、二〇一四年の年末の記事です。これは、笠松刑務所の中で、妊娠八カ月で収容された女性が、出産のときには手錠をはめることになるよと聞かされて、悲しいけれども仕方がないというお手紙を内縁の御主人に書いたんですね。その内縁の連れ合いの方が関係機関に、出産のときに手錠をしないでもらえないかと働きかけて、実際にはこの女性は手錠なしで出産をすることができた。そして、このことをきっかけに、法務省の中で、出産の際は手錠を外すという指針が初めてまとめられたということであります。

 これは矯正局長にお伺いをすればよろしいんでしょうか。この事案の前については、個々、出産の際に手錠がかかっていたのか、かかっていなかったのか、これは当時も今も把握できていないんでしょうか。

小川政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の取り扱いの変更の前でございますけれども、従前におきましては、女子の被収容者が外部の病院において出産する際に手錠、捕縄をどのように使用するかにつきましては、各刑事施設の判断に委ねられておりましたので、具体的には把握はしておりません。

山尾委員 この事案以降は、通達に従って、妊娠中の受刑者が出産する場合には手錠はつながれていない、こういう運用がなされているということでよろしいんですか。

小川政府参考人 お答えいたします。

 御指摘がありました笠松刑務所の事案を契機としまして、法務大臣から、それまでも出産時に手錠等を使用していない施設がありまして、そこで特段の問題が起きていないのであれば、他の施設においても今後は手錠を使用しないようにすることという御指示をいただきました。

 その結果、女子被収容者の出産時におきましては、少なくとも出産のために分娩室に入室している間は手錠及び捕縄を使用しないという取り扱いとすることとなりまして、平成二十六年の十二月に矯正局から各刑事施設に通知を発したところでございます。

山尾委員 それでは、以後はということで、その点は一つ改善されてよしとしたいところなんですけれども、どれぐらいの数がいるんでしょうか、妊娠している女性受刑者の経年の数の推移、そしてあわせて、出産をした女性受刑者の経年の数の推移。これをわかる範囲でお答えください。

小川政府参考人 まず、全国の女子受刑者のうち、妊娠が確認された人数でございますけれども、平成二十四年度以降把握をしておりまして、平成二十四年度が二十七人、二十五年度が二十五人、二十六年度が十五人でございます。

 次に、女子受刑者による出産数でございますが、これは平成二十年以降把握してございますが、まず、平成二十年から平成二十五年までの数字を申し上げます。これは年度ではなくて暦年でございます。平成二十年が十七件、二十一年が二十一件、二十二年が十七件、二十三年が二十五件、二十四年が十四件、二十五年が十七件でございます。また、平成二十六年は年度で把握をしておりますが、二十六年度は十五件でございます。

山尾委員 数の多い少ないではありませんけれども、実際に二桁の数の女性が刑務所の中で妊婦として暮らし、そして、同じように二桁の数の子供が受刑者の出産という形でこの世に生まれてきているということをまず私たちは認識したいというふうに思うんです。

 さっきの手錠の件から、私は、では、生まれた後の子供たちはその後どんなふうに育まれているんだろうということを思いまして、少し調べましたら、皆さん、もう一枚ページをめくっていただくと、これはまた出産の話であります。

 真ん中のところに線を引いていますけれども、刑事収容施設法、これは六十六条一項、二項ですけれども、刑務所長が認めれば、受刑者と子供は最長で一歳六カ月まで実は所内で一緒に過ごせるというふうに法律は定められております。刑務所内で母子が最長一歳六カ月まで一緒に住めるんだ、これは実は法律がそうなっていて、その法律はもちろん今も法律としてそこに厳然としてあるわけなんですね。

 まず、ちょっとこの趣旨を確認したいんですけれども、この法律の趣旨、目的、なぜこのように定められたのか、局長、お答えください。

小川政府参考人 お尋ねのように、刑事収容施設法の第六十六条におきましては、母親である女子の被収容者が、一定の年齢、具体的には一歳、または特別の事情がある場合は一歳半でございますけれども、これに達するまでの子につきまして、刑事施設内で養育したい旨の申し出をした場合に、一定の要件でこれを許すことができるというふうに規定をしております。

 その趣旨でございますけれども、刑事施設は本来乳幼児を収容する施設ではございませんので、また、環境も乳幼児の生育に好ましいとは言えないところでございますけれども、女子の被収容者の中には、入所するときに乳幼児がいたりだとか、あるいは収容中に出産したりして、外部にその子の養育を依頼できる適当な者がいない場合もあり得ます。そういったことを考慮しまして、当該被収容者が希望する場合において、相当と認めるときにはこれを認めることができるとされたものというふうに承知しております。

山尾委員 では、実際に施設内で養育をされた事例があるのかないのか、あるとすれば、どのような期間、どのような形で養育されたのか、教えてください。

小川政府参考人 お答えいたします。

 過去五年間のデータでございますけれども、刑事施設内で子の養育を許した事例は三例ございます。

 ただ、期間としましては、乳児院等への引き取りが調整されるまでの比較的短い期間ということでございまして、三例のうち、一番長いものが十二日、それから短いものが八日という状況でございます。

山尾委員 過去五年で三例、八日から十二日ということでありましたけれども、そうしますと、やはり外の施設への引き取りを前提として、そこが決まるまでの間、施設の中に子供さんがいる、実際はこんな運用になっているのかなというふうに思います。

 それで、これは実際、二〇一三年に有識者会議が立ち上がっていまして、女子刑務所のあり方研究委員会、この報告書によりますと、妊産婦や出産後の受刑者と子供の支援を充実させるべきだという報告書が出ております。

 この新聞記事を見ると、一番下の段、「指摘を受けて法務省は、刑務所内での育児が可能かどうか、内部で検討を始める。」というふうにあるんですけれども、これは実際にはどのような内容でどのような検討が始められているんでしょうか、教えてください。

小川政府参考人 御指摘がありましたように、平成二十六年十一月七日でございますが、外部有識者から成ります女子刑務所のあり方研究委員会から法務大臣に対しまして要望書が提出されておりまして、その中で、妊産婦、出産し子育てをしている受刑者、さらにその子供に対する支援を実施すること、子供のいる受刑者については母子関係に配慮することという要望をいただいております。

 これを受けまして、現在、矯正局におきまして、女子被収容者が刑事施設内で子を養育することが本人の改善更生であるとか子の成長のために望ましいことなのかどうか、また、実施に当たっての問題となる点は何かなどを検討するための勉強会の開催を考えておりまして、今、その勉強会の開催に向けまして準備をしているところでございます。その過程で、先ほどのあり方研究委員会の外部有識者との意見交換も実施したところでございます。

山尾委員 その勉強会はいつごろ開催される予定なんですか。

小川政府参考人 具体的な時期は決めておりませんけれども、そもそも要望をいただいたのが昨年の十一月七日でございますので、なるべく速やかに立ち上げて検討していきたいというふうに考えております。

山尾委員 昨年の十一月から、今九月ですので、一年以内には勉強会の立ち上げぐらいまではいっていただきたいなというふうに思うんです。

 それで、これは、法律と今の実際の運用にやはりちょっとギャップが出てきていると思うんですね。法律自体は、少なくとも、一項においては、女性がやはり中で養育したいというふうに申し出をして、それが相当であれば、「これを許すことができる。」というふうになっているわけです。要は、施設が決まるまでの待ちの間だけ、極めて短い時間仕方なく置いておくとか、そういう趣旨ではないはずなんですね、法律自体は。ただ一方で、大変難しい、環境整備もあるでしょうし、それ以前に、本当にそれが母子にとって、特に子供にとっていいことなんだろうかという問題も当然出てくるというふうに思います。

 いずれにしても、過去五年で三例、極めて短期間、母子がともにいたということですけれども、ちょっと一点お伺いしたいんですが、では、それ以外の事例というのは、外の病院で出産をした、出産をした後すぐにその母子は離れ離れになるんでしょうか。それとも、数時間とか半日とか一日とか一緒にいて、その後別れるということになっているんでしょうか。その点、教えてください。

小川政府参考人 御指摘のように、外部の病院で出産をすることがほとんどでございます。刑事施設の中で養育をしない場合には、外部の病院から退院する際には親族等に引き取ってもらうということになるわけでございますけれども、実際いつ退院するかというのは事案によってさまざまでございまして、翌日ぐらいに退院する場合もございますし、また数日間、あるいは一週間ぐらい入院を続けるということもございますので、それはもう個別の事案によってさまざまでございます。

山尾委員 としますと、運用としては、出産後、退院するまでは母子が一緒にいて、その後別れるという形の運用が現状だということでお伺いしていいんでしょうか。

小川政府参考人 先ほどの刑事収容施設法六十六条による刑務所の中での養育ということを希望されない場合には、おおむね今のような、退院のときに別れるというふうな扱いになろうかと思います。

山尾委員 ちょっと確認したいんですけれども、なろうかと思いますということで、ちょっとだけ心もとないような気がするんですけれども、本当に、刑務所の中での母子の養育体制をどのように考えるのかということは、さっき申し上げたように、しっかり勉強会を立ち上げていただいて、極めて深い議論をしていただきたいというふうに思うんです。

 私が何で退院まで云々かんぬんということを言っているかというと、やはり一つの運用としては、外の病院で出産をして、大体数日はそのまま病院にいて、三日とか四日とか母子が病院の中で一緒に過ごし、普通であればそれで自宅に帰っていくわけですけれども、出産を経験した多くの女性受刑者にとって、出産後半日、一日、場合によっては、一般的な形であれば数日間とか、病院の中で子供と一緒にいる時間を持つことができるということは、恐らく女性受刑者の、大半とまで言っていいかわからないですけれども、多くの方にとっては、御本人の更生、あるいはお母さんが更生していくことによるその後の子供の利益に物すごく資する三日間、四日間になるというふうなことを私は思うんですよね。

 なので、ちょっと今心もとないなと思ったのでもう一回確認したいんです、今運用でそうなっているならいいんですけれども。

 ちょっとやはりお伺いしたいのは、普通だったら、その日に退院することというのは少ないんですよね、出産した後に。大体三日とか四日とかは病院で過ごすんですけれども、私の運用上の提案としては、やはり子供を出産した後に病院でのいろいろな、教えをもらったりだとか、体を休めたりだとか、ある意味守られた施設で母と子が一緒にいる数日間だとかいうものが、体にとっても、心にとっても、母子の関係にとっても必要だということは、これは受刑者であろうが受刑者でなかろうが、受刑者の子供であろうが受刑者でない方の子供であろうが、多分ほとんど一緒だと思うし、さらに受刑者という特殊な要因を考えたときには、本当に母子二人の将来のために、もしかしたら一般の母子以上に得がたい大事な数日間になろうかというふうに私は思うんです。

 そこで、もう一度お伺いしたいんですけれども、出産をされた場合に何日ぐらいで退院をされる例が多くて、そして退院されるまでしっかり母子が基本的には一緒にいるんだよという運用が実際されているのでしょうか、いないのでしょうか。もし今わからないのであればまた次回でも構いませんので、そこは今の現状をはっきり把握をしたいので、もう一度答弁をお願いします。

小川政府参考人 病院で出産後に何日ぐらい入院をするかにつきましては、先ほど申し上げましたように個々のケースによってさまざまでございますし、また具体的な日数等については把握をしておりませんので、今お答えすることはできません。

 ただ、いずれにしましても、入院している間に引き取り先に引き取られるとか、あるいは退院するときに引き取られるということになろうかと思います。

 一方、いつ退院するかは、基本的にはお医者さんの判断に従って対応することになりますけれども、入院の継続の必要がないということになったのに入院を継続することにつきましては、病院側の負担も大きいですし、また刑事施設の方の警備の負担も大きいところがございますので、一般的に申し上げますと問題があるのかなというふうに考えております。

山尾委員 この問題はちょっと引き続きやっていきますけれども、少なくとも、十人、二十人という数としては少ない、でもやはり大変に特別なケアを要する受刑者の出産という事例でありますので、基本的なことぐらいは把握をしていただけませんか、矯正局。

 これが通常の出産における退院日数と大きくかけ離れているんだったらば、本当にかけ離れていていいんだろうかということをやはり検討しなければいけないですし、実際に法律が認めている刑務所の中の養育をどうするのかという勉強会をこれから立ち上げるというときに、では、その前提となる、今の運用で母子が一番大事な時期をどれぐらい一緒に過ごせているんだろうという基本的な情報がなければ勉強会だって勉強できませんので、そこをちょっと一度把握していただけませんか。もう一度、局長、答弁をお願いします。

小川政府参考人 先ほどの勉強会の立ち上げも予定しておりますので、委員御指摘のとおり、入院日数等につきましても調査をしていきたいというふうに考えております。

山尾委員 大臣、細かいことではありません。今の議論を聞いていただいて、やはり私としては、まず今できることは、出産後の極めて貴重な何日間かを母子が一緒に過ごすような運用を、その意義を肯定的に、積極的に捉えて前に進めていくということは、これは法律の改正とか何にも要らないですし、やっていただく価値のあることではないのかなと。

 当然、わかりますよ、入院が長引けば、その分、一日六人刑務官がついていかなきゃいけないとか、病院の態勢も大変だとかあるのはわかりますけれども、それが実際に母の更生、あるいは子供に与える影響、そして母が更生することによってその子がどういう環境で育っていくのかという本当にお金にかえられない価値を生むことを考えれば、やはりこれは一つ、運用上の改善というか、検討していただく価値のあることだというふうに思うんです。

 刑務所の中の養育は勉強会を立ち上げてしっかり議論していただきたい、そういうふうに思うんですけれども、大臣、御所見はいかがですか。

上川国務大臣 女子の受刑者の皆さんのさまざまな課題につきましては、これまでも研究会におきましていろいろな角度から御提言をいただきました。

 そして、先ほど局長の方からもありましたけれども、妊娠、出産、そして育児、その後の子育て、こういうことにつきましての、女性の一番大事な、命を産むということでありますので、そのライフステージに応じた形でどのように今の現状がなっているのか。

 そして、先ほどの、手錠をして分娩台に乗るということ自体が、女性の感覚としては考えられないようなことが行われてきたということがありまして、私も直ちに指示をいたしました。そして、通知もして改善をしているということであります。

 それ以外にも、授乳でありますとかさまざまなことがありますので、それを入院時だけではなくて妊娠からトータルに、妊娠がわからずに入所してくる女性刑務所の受刑者もいますので、そういうことをきめ細かく把握しながら、しっかりと全体像を持って取り組んでいくということでの勉強会を立ち上げるべく、一年間かけて今準備、検討をしているところでございますので、なるべく早くこの勉強会を立ち上げまして、今のような一連の流れの中で、さらに実際に運用というところにつきましても、でき得ることはできるだけスムーズに、速やかにやってまいりたいというふうに思っております。

山尾委員 大臣に今ここまで言っていただきましたので、本当に大臣にしかできない大きな前進をぜひしていただきたいというふうに思います。

 そして、基礎資料については、ぜひしっかり把握をしていただきたい。改めて私の方からも報告を求めますので、しっかりと調査をしていただきたいというふうに思います。

 司法面接、あと二分になってしまったので、何を聞こうかなと思うんですけれども、司法面接の本体については、私はまた改めて別の機会に聞きます。ぜひやっていただきたいと思うんですけれども。

 これは、せっかく刑事訴訟法の熱冷めやらぬこのうちに、皆さんに見ていただきたい資料がございます。

 資料の五なんですけれども、左下の写真なんですけれども、ちょっと黒く潰れてしまっているところがあるのですが、御容赦ください。次回、ちゃんとカラーのものでお渡ししたいと思います。これは神奈川の、正確に言うと、子どもの権利擁護センターかながわの写真です。

 このカメラを見ていただきたいんですけれども、これは司法面接室に取りつけられているカメラです。これを見てください。左手前に広角固定カメラ、ちょうど真っ黒になっちゃっている天井の隅っこ、角っちょに、エレベーターの角に置いてあるようなカメラ、この二台のカメラで司法面接室が録音、録画されています。小さいですよね。小さいんです。

 一枚めくってください。

 これは、実際に別室で司法面接員が面接している状況を児童相談所の方あるいは警察そして検察官が一緒にモニターして、ライブで見られるようになっているわけですけれども、どのように映るか。これは、写真十四とある写真ですけれども、こんな白黒よりも極めて鮮明にもちろん映っています。

 そして、左上の大きな画面が、パン・ティルト・ズーム・カメラという、先ほどでいえば角っちょにあった、エレベーターについているようなちっちゃなカメラの画像で、要するに、子供の動きに合わせて動きもできますし、ズームもできるようになっています。それで、右下が、さっきの写真でいえば、左手前にあった広角固定カメラで、もちろん話を聞く側と聞かれる側が固定でちゃんと映されるようになっています。

 カメラが小さいんですよ。そして、しっかり証拠化に耐えられるようなものになっております。ぜひ、これをまずは参考にしていただいて、これからの録音、録画、全面的な可視化に向けて準備を進めていただきたいのですが、大臣、これを見た感想を一言お願いして、終わりにしたいと思います。

上川国務大臣 子供の目線で考えていくということにつきましては、特に司法面接ということの中でこれまでも御議論いただいてきましたけれども、私も、子供の目線ということを第一義に考えていくべきことだというふうに思っております。

 その意味では、今のような施設のことにつきましては、大変参考にさせていただきたいというふうに思っております。

山尾委員 ぜひ参考にしていただいて、子供、そして大人の録音、録画もしっかりと進めていただきたいと思います。

 終わります。

奥野委員長 さっきの山尾委員の質問、いろいろあったけれども、矯正局長の答弁は私から見ていてもかなり不十分、もう少しちゃんと調べて、山尾さんのいろいろと知りたいことに対応してあげてください。それだけお願いしておきます。

 これにて山尾委員の質疑は終了しました。

 次に、柚木道義君。

柚木委員 民主党の柚木道義でございます。

 きょうは、質疑の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 本日は、日々さまざまな犯罪報道等がある中で、とりわけ、まだこれは捜査中の案件ですが、大阪の寝屋川で中学校一年生の少年少女が殺害されたり、それから、ことし二月には、川崎で中学校一年生の男の子が、ああいった形で、本当に全ての国民の皆さんが胸を痛めるような、そういう事件もあり、それに対応する形で、政府におかれましても、あるいは当該自治体、関係機関等におかれましても、その原因の分析、そして再発の防止に向けたさまざまな取り組みがある中で、犯罪加害者を生み出さない、そういった視点、そしてまた、犯罪被害者も同様に生み出さない、そういった視点を持ちながら、質疑をさせていただきたいと思います。大臣にもポイント、ポイントで見解をお伺いさせていただきたいと思いますので、質疑をしっかりフォローいただければと思います。

 資料に「再犯の現状と課題」という形でつけさせていただいておりますが、これは、もう委員の先生方よく御承知の再犯の現状と課題ということでございます。

 ここにありますように、約三割の再犯者が全体の六割の犯罪を引き起こす、そして、これはグラフにもありますが、入所二度目の方の五年以内の再犯率は初めての方よりも二倍近いとか、満期釈放の方の五年以内の再犯率が仮釈放の方よりも二〇ポイント以上高い、あるいは、再入の方の中で、適当な戻る場所、住まい、そういったものがない方の六割、六割というのは本当にすごい数字だと思いますが、一年未満に再犯、そういったデータがあります。

 きょうは、それに対して、その後のさまざまな対策、性犯罪の方々への矯正プログラムであったり、あるいは福祉スタッフ、これは更生保護施設におけるスタッフ倍増、さらには受刑者の就労支援強化、あるいは子供たちの避難場所、居場所づくりなどなど、こういった資料をおつけさせていただいておりまして、順次質問をさせていただくわけです。

 実は、とりわけ今回の寝屋川の事件、まだこれは容疑者でありますし、八月二十一日に逮捕され、容疑を否認し、その後、黙秘をされていて、九月二日の段階で十日間勾留延長、こういう状況ですから、あくまでも報道ベース、あるいは容疑者という状況ではあるんですが、幾つかの段階で、場合によっては、この中一の少年少女が殺害されることを防ぎ得る、そういうタイミングであったり、あるいは、この間の政府なりの施策が、仮にこの容疑者が真犯人ということであれば、これは時系列で少し質問もさせていただきたいんですが、仮に十分にアプローチできていれば、ひょっとしたら、これも可能性、結果論の部分がありますが、防ぎ得たかもしれない。やはり、政治というのは、その可能性に対して、今後どういう形でそれを生かしていくのかも含めた議論が重要だと思いますので、そういった視点を持ちつつ、幾つか伺いたいんですね。

 事件の前に、主に対策についてまず伺った上で、ちょっと事件と関連して伺いたいと思いますが、こういう事件を起こさないための取り組みとして、一つは、来年度の概算要求に対しても百三十七億円を計上して、刑務所出所者等の再犯防止という形で、非常に特出し的な形での取り組みが行われる形になっております。

 そして、その中で、資料にもおつけしておりますように、出所者にとっての仕事と住まいの確保、そのための支援策というものが進められていくわけでございますが、その対策の概略と、そして、これは事務方でも結構ですし、上川大臣御自身がその対策に取り組んでいく上での御認識、決意のほどを伺えればと思うんです。どちらからでも結構ですが、答弁をお願いできますか。

小川政府参考人 法務省におきましては、刑務所の出所者等の特性に応じた処遇や住居の確保、就労支援等の再犯防止対策をさらに推進する必要があるというふうに考えております。

 御質問の中にありましたように、そのための予算としまして、概算要求におきまして約百三十八億円を計上しているところでございますけれども、その内容としましては、更生保護施設等の受け入れ機能の強化及び保護司活動の基盤強化であるとか、協力雇用主への支援や雇用ニーズに対応した職業訓練の拡充であるとか、あるいは広域的かつ効果的な就労支援を推進するための矯正就労支援情報センターの設置等を盛り込んでいるところでございます。

 こういった施策によりまして、さらに再犯防止の施策を力強く進めていきたいというふうに考えております。

柚木委員 必要な施策だと思いますし、かつ、有効であろうとも思うわけです。

 資料の二ページ目には、そういった政府の取り組みに対して、スタッフ倍増、そして、まさに居場所づくりですね、居場所のない方が一年以内に六割が再入所という、これは本当に、逆に言うと、そういう状況の方々が、犯罪加害者にも当然人権はあるわけですが、そういう状況で社会に出てしまっている。こういう部分も含めた対応がしっかりと求められる。

 そして、就労支援に対しても、次のページにつけておきましたが、就労支援情報センターをしっかりと強化していく、そういう視点があるわけでございます。

 同様に、次に伺いますが、そういった再犯防止の取り組み、これは実効性の確保が重要なわけですが、性犯罪の方の再犯防止のための矯正プログラム、これが、二〇〇四年に奈良県で小学校一年生の女の子が殺害されたことを一つの契機に、カナダのモデルを我が国に導入する、そういった形で、この間、実際にプログラムの運用、そしてまた調査分析が行われているわけですが、このプログラムの現状と課題、今後のさらなる対策等について、これについても御説明いただけますか。

小川政府参考人 お答えいたします。

 刑事施設におきましては、強制わいせつ、強姦等の性犯罪等を行った受刑者のうち、再犯につながる問題性の大きさなどを判定した上で、常習性、反復性が認められるなど、性犯罪の原因となる認知の偏りであるとか自己統制力の不足等がある者を選定して、性犯罪再犯防止指導を行っているところでございます。

 この性犯罪再犯防止指導を受講している人員につきましては、平成二十二年度は四百五十一人でございましたけれども、その後増加しておりまして、平成二十六年度におきましては四百九十二人ということになっております。

 この効果検証の結果につきましては、平成二十四年に検証結果を公表してございまして、この指導に一定の再犯抑止の効果が認められましたけれども、一方、逸脱した性的関心であるとか反社会的な思考であるとか、各受刑者にさまざまな問題点があるわけでございますけれども、その問題点を的確に把握すること、さらに、その問題点に応じた指導を行うということについて、課題も見つかったところでございます。

 この検証結果を受けまして、平成二十五年に外部有識者を招きまして検討会を行いまして、この性犯罪再犯防止指導がさらなる効果を発揮するためには、個々の受刑者の問題性に応じた指導を展開するために、指導者の専門性を向上させることが重要だという指摘をいただきました。

 そこで、今後の方針でございますけれども、指導者育成について、現在、毎年専門研修を実施しておりますほか、外部の専門家をアドバイザーとして定期的に施設に招聘しまして、指導に係る助言をいただいております。また、今後は、最新の知見を研修内容に取り入れるなど研修のさらなる充実を図るほか、長期間指導に携わった指導者のノウハウを施設間で共有するための執務資料をつくるといったことで、指導者の専門性のより一層の向上に努めてまいりたいと考えております。

柚木委員 それぞれの成果と課題について、私も資料の中で、一ページ目の裏側に、「刑事施設における性犯罪者処遇プログラム受講者の再犯等に関する分析結果」ということでありまして、受講した受刑者とそうでない方に対しては、受講していない方の再犯可能性が、した方の一・二五倍、これは全体のものですが、一定の効果。そして、今後の課題として、「逸脱した性的関心等へのより効果的な介入、」あるいは、「個々の受刑者の動的リスクに対する介入の在り方、社会内のフォローアップ等がある。」と。さらには、今後のプログラムの充実を図るため、外部有識者等の意見も聞きながら改善方策について検討予定と。今、御答弁もあったわけですね。

 大臣、ここから少しやりとりさせていただきたいのが、今、それぞれ、仕事あるいは住居、そういったことへの支援策による再犯の防止、そして性犯罪に対する再犯防止のプログラム等について御答弁もいただいたわけですね。

 寝屋川の事件はあくまでも容疑者段階ですから、その状況でということと、あと、個別の言及ということではなくて、こういう事件等が起こるたびに再犯防止の議論は起こるわけで、そういう一般論としてという形で結構なんですが、私、これを調べれば調べるほど、本当に残念なことが今回多々あって、例えば、この矯正プログラムについては、先ほど申し上げましたように、二〇〇四年に奈良県で小学校の女の子が殺害されたことを契機に二〇〇六年五月に導入、この調査も行われているわけです。

 今回の容疑者、過去にも前科前歴があって、まさに今回と同様の手口で、中学生に道を聞いて車に連れ込んで監禁、そしていろいろなけがも負わせ傷害容疑での逮捕、そしてそれぞれの犯罪に対しての服役とあって、このプログラムをひょっとして受ける機会があったのかなかったのかということも調べてみると、徳島刑務所に、重罪の方ですよね、十年以上とか無期刑の方、ここに彼は、容疑者は収監されていたことがあって、二〇〇二年から十二年服役している。これは恐らく少しの差でプログラムを受講されていなかったんだろうなということもあって、もちろん、プログラムを受ければ再犯がゼロになるというわけではありませんが、こういう部分についても、非常に残念、悔やまれるなという思いもあります。もう少し早く導入をされていたらとか、そういう思いは当然あるわけです。

 そこを悔やんでも仕方がないわけですが、それ以外に、少し時系列で、今回この事件で逮捕されるまでに、幾つか、今後の再犯防止、抑止という観点から、ちょっと言い方は悪いですけれども、一つの事例というかケーススタディーとして検証することが私は非常に重要だと思います。今後、解明が進んで全容が明らかになって、そしてその上で結構なんですが、しっかりぜひ検証していただくことが大事だと思うんですね。

 なぜならば、まず、この事件というのは、実際に殺害されてしまう二日前に、一度、都内で職務質問で任意同行されていますね。これはたしか秋葉原だったと思います。そのときに、実は、任意同行された際に、恐らく前歴も含めて把握されていた可能性があって、しかも、スタンガンであったり手錠であったり、あるいは薬物の注射器等を保持していて、結果的に、その段階で違法性という部分について認められないということで解放されることになったと聞いておりますが、いわゆる再犯防止という観点から考えたときに、結果論ですが、そういう任意同行いただいたようなことがあったときに、その方の前歴等がどういう形でそこは活用されるのか。

 あるいは、私、矯正プログラムを調べる中で、こういう傾向の方が、では、仮にそういう形で任意同行されて二日後にこの犯罪を犯しているとするならば、その任意同行されたこと自身も、結果的に、解放されたことによって、場合によっては犯罪衝動、欲求みたいなものの一つの誘因となり得るのかどうなのかとかを含めて、専門的な分析も加える必要があると思うんです。

 いずれにしても、一旦は任意同行したという事実があったわけですね。ですから、当然、違法性がないのにいつまでもそういう形で勾留したり取り調べしたりということは逆に人権上許されないわけですが、再犯防止という観点からしたときに、その方々のいろいろな情報がその段階で共有されたり、場合によっては、専門的な知見を持った方が、これは一年以内ですからね、仮にこの方が、容疑者が真犯人だとすれば。リスクが高い時期なわけですね。そういった中で、そういう一つの機会があったときに、それを未然に防ぐような対応、手だてというものが考えられなかったのか、考えられないのか、これは非常に悔やまれるところです。結果的に、これは本当に難しかったのかなとも思うわけですが、そこで何とかできなかったのかなという思いが非常に私、強くあるんです。

 これはもちろん、まだまだ捜査段階ですから、今後、非常にレアな事例かもしれませんが、そういう機会を捉まえて、再犯防止に向けた何らかの一つの仕組みというものを検討いただくことが可能なのかどうなのか。

 これは、今、ちょっとメモがあると思うので、それも踏まえて、御所見で結構ですから。私は、一つの契機だったと思うんですね、このタイミング。いかがでしょうか。

上川国務大臣 冒頭に、幼い子供の命が失われたということで、寝屋川の事件の犠牲になられた、また、命ということで大変痛ましい事件だというふうに思っておりまして、その意味では、一日も早く真相が解明できるようにしていくということについては、国民の皆さんが切望しているのではないかというふうに思うところでございます。

 個別の事例についてお答えすることができない状況でございますので、一般論ということでの御質問でございますが、再犯防止につきましては、刑法犯の件数は低下しているものの、やはり再犯率が高まっているということをしっかりと受けとめて、これについては、この間、再犯防止対策をいかに進めるかというのは、政府を挙げての大きな取り組みになっているところでございます。

 そこで、二十八年度の予算におきましても、この再犯防止に対してどう取り組むかということにつきましては、大きな重要な項目の柱の一つとして掲げて、そして予算のお願いをしているということでございまして、そういう意味で、施策につきましてはしっかりと充実し、とりわけ、仕事と住むところについては、委員御指摘のとおり、この二つのところにしっかりと着目をすることによって、地域の中で孤立をさせないということが何よりも大事だということでありますので、そうした方針にのっとって政策を進めていこうと、こういう中で、取り組みを全力を挙げてやっているところでございます。

 今、性犯罪というところに委員からお触れをいただきましたけれども、この再犯については、やはり実態、そしてその対策につきましての効果検証ということは絶えずやっていく必要があるというふうに思っておりまして、特に、刑事、それから矯正、保護がそれぞれ保有している情報を相互に利用し、そして総合的に一元的に管理することによりまして、施策の効果検証も実を上げることができるのではないか、あるいは再犯要因の分析にも資するのではないかということでございまして、そういう意味で、そうした活用を可能とするような刑事情報連携データベースの開発なども行う予定でございます。

 こうした検証を絶えずしながら、具体的に絶えず起きていることに対してしっかりと肉薄していく、そうした努力を通じることによって再犯の防止に資するものというふうに思っておりまして、こちらにつきましてもしっかりと取り組んでまいりたいというふうに思っております。

柚木委員 答弁の内容については、私もそこはそのとおりだと思うんですね。

 今、答えられないのはわかった上で聞いているわけですが、あえて私が個別の事案に関連して全体の対策という視点で申し上げているのは、今おっしゃっていただいたように、この事案についても、真犯人がわかって判決が確定してという状況の中でということになりますが、やはりぜひ、今おっしゃっていただいたように、再犯の実態、対策の有効性、そういったことを、しっかりと調査研究を行っていただいて、残念ながら、この人に対しては役立たなかったんですね、これまでの取り組みが。この容疑者が真犯人であれば、役立たなかったんですね。

 安倍総理のもとでも、犯罪対策閣僚会議の中で、「犯罪に戻らない・戻さない」という取り組み、来年度の概算要求も含めて今対策が講じられている。そして、我々の政権のときにも、排除から包摂へと、これは別に変な意味じゃなくて、本当に、社会の中で支えるということが、排除というか、そういった厳しい処罰等だけでは防ぎ得ない中で、まさに来年度の概算要求にも入っている、いろいろな形での生活、就労支援策の必要性、有効性を提示している。

 ただ、その中に、実は既に、二十四年七月の、当時の民主党政権の犯罪対策閣僚会議の中で、性犯罪対策についてはこういう文章もあるんです。「関係省庁の連携の下で、再犯リスクの特に高い者に対する更に効果的な施策を検討する必要性がある。」同じなんですよ、答弁。

 そして、今回の容疑者、十二年の受刑から出てきて、満期釈放で、事実であれば一年未満で再犯。

 満期釈放者の過半数が五年以内に再入所。

 大臣、これは一般論という視点で結構なんですが、ぜひ先ほどの調査にあわせて御検討いただきたいのは、先ほど冒頭にもデータでお示ししたように、帰る場所がない方に関して言えば、出た方の三割ぐらいが、実際に居場所がなくて刑務所に二年以内に戻ってくる。この六千四百人の数字でいえば、二千百人強ぐらいの方が戻ってくる。残念ながらこういう現実もある。

 そういう中で、今回の事件が全容解明された上で結構なんですが、保護観察対象とならない満期釈放者に対しても、これは、言い方はちょっと重要だと思いますが、社会における新たな支援策、場合によっては保護観察体制の見直しですね。アメリカのメーガン法のように、居住が全部明らかになって、どこに前科のある人が住んでいて、そういうことをすることのプラスマイナスもあります。しかし、これだけ再犯率が高い中で、そして今回こういう事件も起こっている中で、事件の全容が解明された上で結構ですので、もしこの容疑者が真犯人であった場合には、やはりこういう保護観察対象とならない満期釈放者に対しても、これは、仮釈だけじゃなくて、社会における支援の強化だけではなくて、保護観察体制の見直しも場合によっては必要になってくるんじゃないのかなと思われるわけです。

 これは仮定の話ですが、再犯率の部分も含めて、一般的にこういうことが、この事件の全容解明が進んでいく中で、私は、ぜひ体制の見直しについては検討してみたい、そういうお考えをお示しいただきたいと思うんですが、いかがですか。

上川国務大臣 今、政府一丸となって取り組んでいる再犯防止に対してのあらゆる施策については、これは、予断を持たずに検討し、そして取り組んでいく必要があるというふうに思います。

 とりわけ、今申し上げた、共有している問題意識の中で、居場所と仕事、こうしたところに着目をしながら、さまざまな再犯の実態、あるいは対策の効果等の検証を積み上げていくということ、これが何よりも大事である。

 そのためにも、先ほど申し上げたとおり、刑事、矯正、保護、それぞれが保有している情報の一元的な取り組みをすることによりまして、先ほど、性犯罪の場合の処遇プログラムを受けた、受けないによりまして再犯率がかなり違う、有意な差がある、こうした御紹介もいただきましたけれども、こうしたことをしっかりと分析しながら、対策につきましても絶えず考えていかなければいけない、取り組んでいかなければいけないというふうに考えているところでございます。

 今御指摘いただきました御意見につきましては、大変貴重なものというふうに考えております。しっかりと受けとめさせていただきたいと思います。

柚木委員 理解したつもりなんですが、確認の意味でお尋ねしますと、今回の事案が全容解明の上で結構ですよ、本当に。その上で、冒頭に答弁いただいた、まさに再犯の実態、対策の有効性などを含む総合的な調査研究の事案として、ぜひ今回の事件を含めて対応を考えていただきたい。確認の意味で御答弁いただけませんか。

上川国務大臣 再犯の実態につきまして、また、それの検証ということにつきましては、あらゆる事件について対処するということでございます。

柚木委員 ちなみに、これは一つ事務方に確認なんですが、二十四年七月の犯罪対策閣僚会議の中で、再犯防止対策の数値目標値、これは、過去五年における二年以内の再入率を平成三十三年までに二〇%減少させる。これの進捗状況、余り細かい通告ができていなかった部分はあるんですが、わかれば答弁いただけますか。

片岡政府参考人 お答えします。

 当時、二年以内の再入状況二〇%というところからスタートしてございます。最新のデータではそれが一八・一%ほどになってございまして、このままでいけば、二割、一六%を何とかいけるんじゃないかと思いますが、何しろ再犯の状況なものですから、予断を許さない状況であることは変わりありません。

 以上でございます。

柚木委員 その中で、犯罪のそれぞれの中身、高齢者であったり青少年であったり、あるいは今回の性犯罪であったりの部分でいうと、たしか性犯罪の部分が余り芳しくないということだったように承知をしておりますので、ぜひ、先ほどの大臣の御答弁も踏まえて、実効性の上がる、そして、本当に今回の残念な痛ましい事件、一つ一つの事件は確かにレアケースかもしれませんが、かけがえのない命が奪われたことは変わりありません、こういったものを生かした形の、本当に実効性のある対策をお願いしておきたいと思います。

 それで、今、犯罪加害者を生み出さない、そういう視点で質問させていただいているわけですが、同様に、もちろん加害者も含めてですが、被害者を生み出さないための取り組みも必要でございます。どちらも当然セットという部分があるわけです。

 それで、伺いたいんですが、ことしの二月に川崎市において、中学校一年生の上村遼太さんですね、ああいったことがあって、そしてこれは、文科省においてのさまざまな調査と対策、川崎市においてもそういった形での対策がまとめられております。

 安倍総理大臣も、実は、予算委員会の中で、これは与党議員の質問への答弁ですが、「子供たちを守るのは私たち大人の責任であります。このような悲しい出来事を二度と繰り返さない、できることは何でもやっていくとの思いで、今後取り組んでいきたい」と。学校や教育委員会や警察や児相、児童相談所との連携が十分だったかどうかということも含めて検証しながら、再発防止策をしっかり考える必要があると御答弁いただいているんですね。

 事務方がお答えいただく前に、上川大臣、この報告書は、概要も含めてで結構なんですが、目を通されましたか、川崎市の報告書。文科省の報告書ですよ。だから、いいんです、通していなければ通していないでいいんです。

上川国務大臣 報告書につきましては、現段階で目を通しておりません。

柚木委員 これは、所管が文科省で、実は私、文科委員会で質問した事案でもあるんですが、当然、法務省だったり警察庁だったり、関係省庁、自治体、関係機関との連携ですね、そういったことがこの間も繰り返し指摘をされてきた中でやはり起こっている事件です。ですから、お忙しいのはわかっていますが、ぜひお目通しもいただき、この後お聞きするんですが、具体的な対応についても、大臣としてのリーダーシップをしっかりお願いしたいんですね。

 それで、警察庁にお越しいただいておりますが、この報告書にも指摘をされている学校警察連絡協議会、学校警察連携に係る協定の現状、課題と、もう一点、これも時間がないのであわせて答弁をお願いしたいんですが、要保護児童対策地域協議会への警察としての現状の関与の実態、課題、認識について御答弁いただけますか。

河合政府参考人 お答えいたします。

 少年の非行や被害の防止のために学校と警察が連携することは大変重要であります。

 御指摘の学校警察連絡協議会でございますが、これは、本年四月現在、全ての都道府県で約二千三百の協議会が設けられております。また、学校警察連絡制度につきましては、全ての都道府県で運用されておりますけれども、一部の自治体においてまだ協定が未締結というものがございます。これらも含めて、学校と警察の連携に係る協定が未締結の自治体に対して締結を働きかけるなど、学校と警察の連携はより一層強化してまいりたいと考えてございます。

 次に、要保護児童対策地域協議会への警察の関与でございますけれども、この要保護児童対策地域協議会におきましては、警察が構成員として参加をし、関係機関から提供されます児童虐待事案等の個別ケースに関する情報の共有を積極的に図っているところであります。その結果として、被害の重篤化を回避するべく対応を図っているということでございます。

 今後とも、要保護児童対策地域協議会に積極的に参加するなど、関係機関等と緊密な連携を図り、児童虐待の早期発見と児童の安全確保を最優先とした対応を徹底してまいりたいと考えてございます。

 以上でございます。

柚木委員 その先に聞きたいことがあるので、あわせてお尋ねします。

 これは矯正局だと思いますが、まさに縦割りを排した多機関連携の観点、そして社会的資源の有効活用という趣旨から、少年院法、少年鑑別所法の改正で、ことしの六月から、少年院、少年鑑別所の有する専門的知識、技術を地域で活用できる地域援助機能が立ち上がっていると思いますが、その概要と立ち上がりの現況等について御答弁いただけますか。

小川政府参考人 御指摘のように、少年鑑別所法におきましては、非行及び犯罪の防止に関する援助が少年鑑別所の本来業務として規定されたところでございます。

 少年鑑別所は、これまで、非行少年に対する鑑別の実施を通して、さまざまな知識、技能が蓄積されてございます。これを地域社会の非行及び犯罪の防止にこれまで以上に積極的に生かすことができ、非行問題に関する専門的機関としての役割を果たすことができるようになったというふうに認識をしております。

 取り組みの内容でございますけれども、援助のやり方につきましては、少年あるいは保護者その他の者からの相談に応じる個人援助と、機関、団体からの求めに応じる機関等援助に大別されております。また、援助の方法としましては、例えば、情報の提供であるとか、助言であるとか、各種の心理検査の実施であるとか、心理的援助であるとか、研修、講演等がございます。

 各鑑別所でどのくらい対応したかにつきましては現段階では承知しておりませんけれども、具体例を若干御紹介いたしますと、個人援助の例としましては、子供の問題行動や非行について保護者からの依頼によって心理相談に応じたり、子供の発達上の問題を調べるために心理検査等を実施したりした事案がございます。また、機関等援助の例としましては、検察庁の求めによりまして被疑者に対して知能検査を実施するであるとか、小中学校での法教育を実施するとか、特別支援学校の求めによって児童の問題に関する相談へ対応するとか、子ども・若者支援地域協議会や要保護児童対策地域協議会への参画といったことをやっておりまして、幅広く対応しているところでございます。

 ちなみに、本年八月十九日でございますけれども、本年の少年院長会同及び少年鑑別所長会同の結果を踏まえまして、「少年矯正NOW」という広報レポートを作成しておりまして、法務省のホームページに掲載してございます。この中にも、地域援助業務の具体的な例について紹介しているところでございます。

 以上でございます。

柚木委員 それぞれ御答弁ありがとうございます。そういう取り組みは非常に重要かつ有効だと思うんですね。

 他方で、これまでそういったことをやってきている中で、あるいは今後やっていく中で、これは資料にも、三枚目ですか、裏表、あるいは次のページとつけておりますが、現実として、全ての方に、今のようなお取り組み、あるいはその相談援助機能にアクセスをしていただけていれば、逆にこういう状況にはない中で、やはり、「児相・学校など 行政の対応に限界」であったり、「親の養育力向上 解決のカギ」という見出しだったり、その裏面を見ていただくと、「居場所なき子どもたち」という形で、厚労省によりますと、これは二〇一三年度ですけれども、児相などが一時保護した件数が全国で約三万三千三百件で、十年前に比べて一万件はふえている。これは三割増ですよね。

 やはり、今のようないろいろなお取り組みをいただく中で、あるいは並行して、その子供たちの居場所づくり、場合によっては避難、保護、そういった役割は非常に重要だと私は思っていまして、次のページに、これは、東京都内に全国で初めて二十四時間対応の子供シェルター、お話を伺ってまいりました。全国に今広がっていて、私の地元岡山県にも子どもシェルターモモ、私も何度かお話を伺ったことがあって、賛助会員になっているんですが、取り組みが広がりつつあります。

 ただ、残念なことが、先ほどの寝屋川の事件、防ぎ得た部分がひょっとしてあったんじゃないかという部分に関連して言うと、実は、大阪においても、来年の春、こういったシェルターが立ち上がる予定になっていると。一つ一つの施策がより早く、そしてより広範に広がっていくことが、犯罪被害者、加害者を生み出さない意味で重要だと思うわけです。

 これは、当然、関係省庁、機関、自治体との連携も必要になってくるんですが、大臣、これは、方向性という意味でぜひお考えをお示しいただければありがたいんですが、こういうシェルターの必要性ですね。

 これは、ここの、カリヨン子どもセンターというんですけれども、自立支援、それから児童養護、それぞれ重要です。他方で、働きながらとか学校に行きながらという要件もあって、もう少し、シェルターの中でも、中間的な、働いたり学校に行ったり、そのステップアップのための、ここに、最後のページに書いたのは、ハーフウエーホームということを今お考えで、立ち上げられる準備をされているそうです。

 どうしても、児童養護施設や自立援助ホームにそれぞれの要件があったり、いきなりそこに行って、いろいろな医療的なサポートも必要とされる方が、例えばその中間的なシェルターからそちらへ移行していただくとかも含めて、やはりそういう受け皿が必要ではないかというお考え、そしてまた取り組みがあって、実際に、前のページの名古屋のNPO法人子どもセンターパオというところが同様の取り組みを行っているということであります。

 御所見を伺いたいのは、この種のシェルターの必要性。これは、私は、できればやはり都道府県に一カ所ぐらいあれば、そこにアクセスできた方が、巻き込まれたり、逆になったりということを防ぎ得る一つの受け皿になると思いますので、そのシェルターを広げていく、それを、関係機関あるいは関係省庁と連携していく必要性、その認識と、もう一点は、こういう中間的な施設の必要性、有効性、もちろん、今のお立場でという部分と、議員としてというお考えも含めてで結構なので、こういうことの取り組みは私は非常に重要だと思うんですが、お考え、方向性をお述べいただければ幸いです。

上川国務大臣 被害者を生み出さないための施策ということで委員から御指摘がございました。特に、子供たちが被害者になるリスクに対して地域社会でどう取り組んでいくのかという大きな問題意識の中での御指摘であるというふうに受けとめさせていただきました。

 先ほど、少年鑑別所の新たな役割ということで、地域において専門的な集団がいるということでありまして、ほかのさまざまな機関としっかりと連携をして、地域全体で子供たちを守り抜く、このことについては、これはすき間のないようにしていく必要があるのではないかというふうに思っております。

 その意味では、民間のさまざまな取り組みをしていただいている、シェルターでありますとか、あるいは今、NPOの中間施設というふうなお話がありましたけれども、具体的なケースについてもお話しいただきましたが、そうした皆さんの御活動ということについては、大変重要な役割を担っているというふうに思うところでございます。

 大事なことは、いろいろな施設あるいは取り組みをしているところの部分がちぐはぐにならないように、地域の中でしっかりと子供たちを守っていくということについて連携を深めていく、情報交換をしていく、そして取り組んでいくということが何よりも大事だというふうに思っております。

 今、法務省の方でも、政務三役を中心といたしまして、キャラバン活動ということで動いておりますけれども、やはりそれは、地域の中のさまざまなネットワーク、既にあるネットワーク、あるいは足りないところ、あるいは取り組みについて進んでいるところ、こうしたところを訪問させていただきながら、いろいろな角度で課題や問題を把握させていただいて、よりすき間のないようなネットワークづくりに資するというような形で取り組んでいるところでございまして、その意味で、こうした取り組みにつきましても、大変重要だというふうに思っております。

柚木委員 ありがとうございます。

 法務大臣が委員長をされておられる、官民連携の取り組みでもある社会を明るくする運動中央推進委員会、これは、犯罪対策閣僚会議とも連携しながらこの間もお取り組みいただいていると思いますから、そういった場を通じて、ぜひ連携を深めていただきたいと思います。

 もう時間ですので、最後に短く一つだけ聞きます。これは方向性だけで結構です。

 この間、虐待の事案、本当にいろいろな、皆さんの記憶にもあるのは、例えば厚木の五歳の男の子、お父さん、お父さんと言っていて、お父さんが出ていっちゃって、餓死しちゃった。足立区では、三歳の子がウサギ小屋に閉じ込められて殺された。

 本当に、児相、学校、警察の連携は、今の児福法改正とか虐待法とか、いろいろなスキームだけではこれは限界がある。

 その中で、元警察庁の方がNPOでシンクキッズというのを立ち上げて、やはりそういう連携の仕組みをしっかり法定化して、義務化してやらないと防げない、関係の副大臣の会議の中でもそういう議論をされています。

 その連携を、報告を義務化するような、そういう議論を進めることの必要性、この認識があれば、大臣、ぜひそういうことを考えていきたいと最後に一言お述べいただければと思いますが、いかがでしょうか。

上川国務大臣 虐待の問題は大変大きな社会的な課題であるということでございまして、政府としても、副大臣を中心に、今、政策をいかに積み上げていくかということで議論しているところでございます。

 さまざまな御意見がございましたけれども、しっかりと参考にさせていただきながら、対応していくべく努力をしてまいりたいというふうに思っております。

柚木委員 以上で終わります。ありがとうございました。

奥野委員長 これにて柚木君の質疑は終了いたしました。

 次に、井出庸生君。

井出委員 維新の党、信州長野の井出庸生です。きょうもよろしくお願いをいたします。

 すっかり朝晩涼しくなってまいりまして、熱かった法務委員会も、何だかちょっとけさあたりは少し寂しい気持ちになってきたのでありますが、でも、どこかの時期で報告とか言っていますと、私なんぞはいつまでここにいるかわかりませんので、一回一回、きょうも大事に質問をしていきたいと思います。

 まず、きょうもまた引き続き、警察庁三浦刑事局長にお越しをいただきました。まず一言感謝を申し上げた上で、厳しく質問をさせていただきたいと思います。

 もう申し上げるまでもなく、通信傍受の関係なんですが、今度、新しい機材が入って、通信傍受、再生というものは一回限りだ、リピートして聞き直したり、一度傍受が終わったのに、いや、こんな傍受じゃだめだ、やり直せ、そういうようなことはあり得ない、そういうお話がありました。

 三浦さんのこの間の答弁の中で、「スポット傍受を行います際には、最初に時間などをきちんと設定して、」と。この設定は、機械ではなく人のやることだと思いますので、警察施設でやる場合は、しっかり警察の指導、立ち会い指導というものをやっていただきたいと思います。

 そしてまた、通信傍受が終わって傍受記録を作成する際にも、「犯罪関連性の通信でありますとかそういったものをきちんと選び出して最終的に傍受記録を作成する、そうした過程などが的確に行われているか、そうした確認などを行うといったことが今のところ想定される」と。この最後の傍受記録の作成も人のやることだと思いますので、しっかりと立ち会って指導をしていただきたい。

 その中で、果たして、通信傍受を警察の施設の中でやるときに、その傍受の途中経過においてきちっとした捜査が担保されるのか、私は、やはり、常時、立ち会い指導をしていただきたいと。そこまではまだ考えていない、「指導が常時存在しなければ適正が確保されないというものではないということは重ねて申し上げておきたいというように思います。」という三浦さんのお話があって、そこはまだ若干の議論をさせていただきたいんですが。

 前回伺ったんですけれども、警察施設内で通信傍受、持ってきたデータを再生していて、これは例として伺いたいんですが、例えば一時停止をする、一時停止して、どこかに行って、また戻ってきて聞いたり、もしくは、続きはまたあした聞こうとか、そういうことというのは、現状、この機械、また想定においてあり得るのかどうかというところを教えてください。

    〔委員長退席、伊藤(忠)委員長代理着席〕

三浦政府参考人 犯罪関連通信等の傍受すべき通信に該当するかどうかを判断するために、現行法あるいは改正法案は、必要最小限度の範囲での聴取等を認めているところでありますけれども、その具体的方法については、スポット傍受について通信傍受規則等が定めているほかは、特段の規定が置かれていないものと承知をしておりまして、その聴取等の範囲が必要最小限度にとどまるのであれば、御指摘の、聴取中の一時停止ということを行うこと自体が法律上排除されているというものではないと承知をしております。

 ただ、改正後の法第二十三条第二項第八号におきましては、特定電子計算機の機能として、一時的保存された暗号化信号について、復号をしたときに全て自動的に消去することが定められております。そのため、一度復号しましてスポット傍受を行った通話のうち、犯罪関連通信等に当たらないなどとして捜査機関が聴取を行わなかった部分については、この法による消去の後は、一時的保存された暗号化信号がもう既に存在をしないという状態になりますので、それを復元して、また改めて聴取するということは、これは物理的にも不可能ということにされているところであります。

 他方、刑事手続において使用するための傍受記録作成用の媒体には、捜査機関がスポット傍受によって既に聴取した通信のみが保存をされまして、そこから犯罪関連通信等以外の通信を消去して傍受記録を作成することになるわけでございますけれども、その作業の過程において、その媒体に保存されている内容及び傍受記録を再度聴取するということは、これは法律上排除されるものではございません。ある意味、当然の前提とされているということだと承知をしております。

井出委員 後半の部分でおっしゃったのは、警察の方で聞かなかったものは基本的にはもう二度と聞かない、聞いて、その中で犯罪関連性の高い傍受記録を作成していくその過程においてはもう一度聞くというようなことがあり得る、そういうことかなと今思って聞いていたんですけれども。

 ただ、傍受記録というものも、犯罪関連性というものが一体いかほどなのかなと。犯罪に直結しないようなこともあるんでしょうし、そこのところはちょっとまだ私もイメージが湧いていないんですね。そこは捜査に専従している捜査員でなければ判断できないようなところかなとも思っておりますので、私が求めております立ち会い指導というものがそこにどれだけかかわっていけるかというところは、もう少し考える必要があるのかなと思います。

 もう一つ、この一時保存の関係で前回伺って、一時保存をしたならば、それが、傍受令状に記載された傍受ができる期間内に終了しなかったときは、記載された傍受ができる期間の終了後できるだけ速やかに、これを終了しなければならないと。

 私の問題意識としては、一時保存したものを一週間も十日も持っているのではなくて、速やかに、やはり捜査に必要があって一時保存をしたものですから、捜査をすぐ尽くすべきだという問題意識なんですけれども、ここは何か、例えば、法律上はできるだけ速やかにとなっておりますが、実際の運用で、一両日中に聞くとか、そういうことを徹底していくようなことというのは難しいのでしょうか。

三浦政府参考人 いつまでに再生をするかということだと思いますけれども、それにつきましては、今後、恐らく、そういった運用の方針、もう少し細かな方針について定めていくというようなことになっていくだろうと思います。

 具体的にどういう形でそういった方針を設けるかということについては、まだこれからの検討ということでございますので、確たることを申し上げる段階ではございませんけれども、いずれにしても、先ほど委員御指摘ございましたように、改正後の法律の二十一条八項といったような規定もございますので、こうした規定の趣旨などにも従って、そういった再生を適正に実施していくということになるんだろうというように考えております。

 また、前回も申し上げましたように、捜査の実際を考えましても、通信傍受というのは特に捜査上の高い必要性があって実施をするものでございまして、ある意味、傍受をしたものがどういう内容のものであるかというのは、当然、早くそれを知って次の捜査に生かしていくということが求められるわけでありますので、実際問題としても、そんなに著しく長い期間、保存した状態で、それを再生もせずに放置をしておくといったようなことは通常考えられないというように考えています。

井出委員 今お話がありましたが、通信傍受の捜査というものは、実際に既に犯罪行為があると推認されていて、それに対していろいろな捜査を尽くしているんだけれども、通信傍受以外ない、補充性ですね、そういうときにやるんだと。やみくもに、何も事件も発生していないのに令状をとってきて通信傍受ということは、おおよそあり得ないと。

 ですから、そういう法律のたてつけですので、通信傍受の捜査というものは、何かの新たな事件を見つける端緒というよりは、捜査を尽くしている、対象がある程度はっきりしている事件の最終の確たる証拠といいますか、もう一つ最後の決め手をとりに行く、そういう捜査なのかなと。当然、相手まで特定して通信傍受をしているわけですから、通信傍受で確たる証拠、またそこから付随する明確な証拠が出てくれば速やかに立件するということになると思いますので、今検討されていると言われた運用の方針、ぜひきちっと検討していただきたい、そういうふうに思います。

 この通信傍受、警察施設内で傍受をする、一時保存したデータを再生する、そこは施設内でやることなので、立ち会い指導の警察官が要るということを私はずっとお願いしてきているわけなんですが、実際、今まで警察施設でやったことがないものを県警本部のような大きい施設でこれからやっていくことになりますよね。

 そうしますと、もちろん、捜査中にほかの警察官がその部屋に入ってきても困るわけですし、私は、しっかりそれをちゃんと監視すると言ったら変ですけれども、ちゃんとそこにそれなりの、何かあったとき動けるようなそういう十分な体制を組むと思うんですよね、実際は。ぎりぎりの人数で、関係の捜査員だけで通信傍受捜査をやるということは、特に機械の開発直後、始まった直後というのは、おおよそ考えられないと思うんですよ。

 ですから、私がここで、常時立ち会いの立ち会い指導にしてくれ、そこまでの必要はないということをずっとやってきているんですけれども、ただ、実際始まったら、やはりそれなりに人がつくと思うんですよね。ですから、そうすると、事実上は立ち会い指導だ、そういう体制が組める、そう言ってもらっても差し支えないと思うんですけれども、いかがですか。

    〔伊藤(忠)委員長代理退席、委員長着席〕

三浦政府参考人 確かに、新しい方式を始めるに当たりまして、さまざまなこれまでになかったこと、いろいろな機械の操作でありますとかを含めまして、さまざまなことが出てまいりますので、そうした指導というのがかなり綿密に行われるべきであるということは当然だろうというふうに思います。また、警察官だけではなく、技官といいますか、そうした通信技術等の知識を持った者についても、恐らくその場にいるというようなことが多くなってくるだろうというように思います。

 ただ、それが全ての時間において必要かといえば、そこはまた別の問題でありまして、傍受の適正自体は、重ねて申し上げているように、暗号化処理をされて改ざん不可能な原記録を通じて傍受の全ての過程が検証可能である、こういった特定電子計算機の機能で担保をされているわけでありますので、それをきちんと適正に確実に使用していくといった観点などを考慮に入れながら、そうした指導の体制についてもきちんと考えていきたいと思いますし、事実上、その結果、かなりの時間そこの場所に存在をするといったようなことは、それはケース・バイ・ケースではありますけれども、あり得ることだというように考えております。

井出委員 日本の刑事司法、特に警察は、この間の刑訴法の関係でいろいろな問題がある捜査の例もありましたが、一方で、大きい事件をきちっと精密な捜査をやって、ほかの国に比べればその検挙率が高い。ですから、私は、警察の、慎重にも慎重を期して捜査をする、そういう御性格、体質というものはかなり信用しておりますので、ケース・バイ・ケースと言わず、ぜひやっていただきたいな、そのように思います。

 参議院の方でまだこれから議論もあると思います。私の方でもまた必要とあらば質問をさせていただきますし、ここまで来ると、毎回そこにいていただかないと何か寂しいぐらいの思いなんですが、きょうは三浦さんにはこれで質問を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。

 そうしましたら、次に、この間ちょっと聞いていた再犯防止のことについて伺いたいのですが、前回、運転免許を持っていた人が失効してしまうんだったら、それぐらいは何とかした方がいいんじゃないかという問題提起をさせていただいて、後日、刑務所に入っていない一般の人でも、免許が失効して三年間放置すると本当に資格を失ってしまう、三年以内だったら何か猶予の期間がある、そのことを刑務所の受刑者に対しても、出所後に、一般の人が三年間の猶予を設けられているものが適用されるようにはなっている、そういう話がありました。

 また、もう一つ、携帯電話を何とかできないものかと言ったときに、社会復帰しやすくなるようにお金を与えていて、それが大体七万円ぐらいだという話があって、七万円あれば携帯電話を持てるんじゃないかなと思ったんですが、例えば出所のときに与えるお金も、これは多分、与え過ぎると、税金で何なんだという話もまた出てくると思いますし、例えば、お金を与えるのか、そうでなくて社会復帰しやすい能力、運転免許を与えるのか、それはそれぞれいろいろな考え方があると思うんです。

 特に運転免許がなければ、仕事もできないし、地方では生活もできませんし、確かに、受刑者の中には交通犯罪、そういった人に対しては慎重な扱いが要ると思うんですが、例えば自分でその費用が出せるですとか、希望している、刑務所での収容の態度もいい、そういった人たちに対して、もう少し、運転免許が刑務所の近くの教習所で取れるようにするですとか、そういうことを考えてもいいのではないかなと思うんですね。

 お金がある人は外に出ても取るかもしれませんし、この間、刑務所を出るときの一時金のお金の話を聞いていて、お金を与える、与え過ぎてはいけない、だったら、何とかもう少し免許も、一律だめということではなくて、当然自己負担も必要ですけれども、そういうことが、国民の理解の得られる範囲でそのやりくりが実現可能ではないかと思いますが、その点について伺いたいと思います。

小川政府参考人 お答えいたします。

 委員の御指摘の運転免許の関係は、運転免許を持っていない者について、受刑中に取得をする機会を与えたらどうかという御指摘というふうに承りました。

 現時点で、職業訓練とかの一環として、免許の指導とか運転技能を与えるというふうな指導をしている施設はございませんので、現実的には、委員の御指摘は、例えば受刑中に教習所に行かせて、そして運転の勉強をするとか学科の勉強をするような機会を与えてはどうかという御趣旨かというふうに承知をするところでございますけれども、そういった外部での活動というのも、作業とかあるいは改善指導の一環としてどこまで行わせるか、認めるかということになるんだろうと思います。

 自動車の運転免許の場合には、就労に有益だということは当然あるわけでございますけれども、反面、仕事だけに使うわけではなくて、日常生活の生活の便であるとか、あるいは楽しみのために使うということも当然ありますので、そういった意味では、就労に特化した内容ではないということもございます。

 そういったことも含めて、外部でそういった車の技能を身につけるような機会を与えることが適切なのかどうかについて慎重に検討する必要があるのかなというふうに考えております。

井出委員 ぜひ検討を進めていっていただきたい。刑務所に行ったら免許が取れるみたいな仕組みにしてしまえば到底国民の理解は得られないと思いますが、受刑者の態度ですとか、一部費用が負担できるとか、そういう状況に応じてケース・バイ・ケースで対応もできる話ではないかなと思いますので、検討していただきたいなと思います。

 再犯防止の関係で、少し、予算の関係、それから職業訓練の関係の話を伺いたいのですが、八月の三十一日に、法務省から平成二十八年度概算要求が出た。一般会計が七千六百九十四億円。このうち、矯正関係費と更生保護関係費を合わせると大体二千六百億円を超えている。

 数字を見れば、額としては法務省予算の中では結構大きい割合を占めているんだなと思うんですが、ただ、その一方で、再犯防止のところを見ますと、前にも触れましたが、例えば協力雇用主への支援ですとか、保護司活動の基盤強化ですとか、受け入れ側の充実を目標としている。

 一方で、矯正施設内の話はどうなんだといいますと、矯正施設内は、残念ながら、まず耐震化が必要である、矯正、更生以前の話なんですが、そこに予算が割かれております。

 ただ、さはさりながら、もう少し詳しく見ますと、再犯防止対策・施設内処遇の充実強化、刑務官等四百九十八人の定員要求にもなっておりますし、就労関係でいいますと、東日本・西日本就労支援情報センターを設置したいと。また、雇用ニーズに応じた職業訓練の拡大等ということで、私も先日、もう少し社会のニーズに応じた訓練をということを申し上げたんですが、そういうところも入っているかなと思うんです。

 まず、ざっくばらんに伺いたいんですが、二千六百億円というお金は、法務省全体の予算の約三分の一ぐらいにはなるんですかね。数字としては大きいと思うんですけれども、実際、予算は、矯正局としてはこの予算要求で十分だ、これをきちっと認めていただければ、この間示していただいた再犯防止の数値目標、そういうものを達成できるぞ、そういう感覚でいらっしゃるのか。いや、そもそも削りに削られて困っていて、要求すれば怒られちゃう中で、なけなしの、不十分を前提とした我慢の要求なのか。どちらかというところをざっくばらんに言っていただきたいと思います。

小川政府参考人 平成二十八年度概算要求におきましては、矯正施設における再犯防止の対策経費としましては、委員御指摘のように約三十八億円を計上しているところでございます。

 内訳としましては、これも御指摘がありましたように、就労情報の広域的な提供ということで、矯正就労支援情報センターの整備につきまして約十七億円を要求しておりますし、また、そのほか、処遇をさらに充実させる経費であるとか就労支援をさらに充実する経費としまして二十一億円を計上しているところでございます。

 矯正局としては、必要なものにつきましては要求、計上をしたというふうに考えておりますので、今後、実現のために努力をいたしまして、再犯防止にしっかり努めていきたいというふうに考えております。

井出委員 私の感想を申し上げますと、極めて控え目な御答弁をいただいたのかな、もっともっと要求していいのではないかと思います。

 それはどうしてかといいますと、概算要求の資料の中で、再犯防止対策推進の項目の課題としても挙げられているんですが、刑務所に在所中もしくは釈放直後に就職が内定する刑務所出所者数というのは、平成二十六年だとわずか二百六十人だと。刑務所の出所者というのは年間二万五千人いる。百人に一人が職を内定して出るという、これは極めて残念な状況と言わざるを得ません。

 前回、再入所者、刑務所に再び入ってくる人の割合が半数近く、刑務所に入ってくる人が年間二万五千人というような話もしましたが、やはり再入所をなくしていくということが、これはもっともっと受刑者一人当たりの矯正関係の予算をふやしたとしても、逆に、人数が減っていけばその分の予算は減るわけですから、ぜひそういう観点でやっていっていただきたいなと思います。

 受刑者の社会復帰後の就職に当たっては、やはり就労支援、職業訓練が非常に大事かなと思うんですが、刑務所の職業訓練というものは、それぞれの刑務所で行っているものと、また、大きい刑務所にそれぞれ小さい刑務所から推薦とか希望があって職業訓練をする、そういう二つのタイプがあると聞いております。

 これは、私は総務省の行政評価局の方の数字をちょっと拾ってみたんですが、総務省の行政評価局が去年の三月に、刑務所出所者等の社会復帰支援対策に関する行政評価・監視、調査結果に基づく勧告というものを行っていて、それによりますと、法務省は、平成二十四年度、六十二の刑務所の中で三十二種目の職業訓練を実施していると。この職業訓練の定員が、まず四千七百八十九人と五千人に満たない。受刑者というものは、一日平均にすると六万人いる。さらに、この五千人に満たない職業訓練の定員の受講者というものが七割弱にとどまっている。

 これは極めて職業訓練の定数自体も少ないし、活用自体も少ないと思うんですけれども、その点の問題意識というものは今きちっと認識をされているのかどうか、伺いたいと思います。

小川政府参考人 職業訓練は、再犯防止のためにも非常に不可欠だと考えておりますし、充実して実施をしていく必要があるだろうと考えております。

 ただ、受刑者もさまざまな者がおりますので、やはりその資質を勘案しまして、職業訓練の効果がある者を選別しまして、そして職業訓練を実施するということになります。

 ただ、訓練を実施している人員につきましては、年々増加しておりまして、これは計画人員で申し上げますと、平成二十三年度は四千五百五十九人でございましたけれども、平成二十七年度におきましては六千六百九人までふえておりますので、毎年毎年増加しておりますし、さらに人数もふやして、職業訓練自体を充実させていきたいというふうに考えております。

井出委員 社会復帰をする上で仕事というものは大事ですし、勤労の義務というものはもう言わずもがななんですが、一日の受刑者が六万人近くいて、そもそもの職業訓練の枠が六千六百九人の定員しかない。だから、六万で六千ですから、全員が希望したら倍率が十倍ということになっちゃうと思うんですけれども、これはもう少し、勤労の義務という観点からして、さっき予算に対して極めて控え目な答弁をいただいたんですが、種目とか定員を大胆にふやしていく、そういう問題意識、要求ができないものかどうか、御見解をいただきたいと思います。

小川政府参考人 矯正局としましては、職業訓練を行う体制、人員とか、あるいは施設の設備等の体制も必要になりますので、そういったものをできるだけ充実させていって、できる範囲で充実させていきたいというふうに考えております。

 平成二十八年度の概算要求におきましては、先ほどの人員よりも多い、対前年度千三百四十人増の七千九百四十九人分の職業訓練計画の予算を計上しているところでございます。

 これで十分かどうかという御指摘はごもっともでございますし、また、さらに充実も図っていかなければいけないとは思いますけれども、指導に当たる人員の確保であるとか、あるいはどういった科目あるいは種目について職業訓練を実施するのか、あるいは職業訓練についてこられるような、効果があるような受刑者がどのくらいいるのかということも勘案しながら進めていかなければいけませんので、着実に充実を図っていきたいというふうに考えております。

井出委員 大臣にも一点伺いたいんですけれども、今お話しさせていただいたんですが、一日当たり収容者が六万人近く全国でいて、職業訓練の定員が六千人、来年の概算要求は定員が七千人。そもそも、全員が希望しても十人に一人しか受けられない。

 恐らく、職業訓練を一気に充実させるというのは、施設の問題、それに従事する刑務官の問題とかもあると思うんですが、刑務官の増員が、二十八年で四百九十八人定員を求めているという話もあったんですけれども、ここは少し頭を切りかえて、与えられた予算の中でじゃなくて、与えられる予算をもっとふやしていく、そういう決意で行動していくべきではないかと思いますが、その点についての見解をいただきたいと思います。

上川国務大臣 大変力強い応援の弁をいただきまして、ありがとうございます。

 刑事収容施設の中におきまして、受刑者の皆さんが出所後に地域の中でしっかりと自立していただくためには、仕事と居場所ということで、とりわけ仕事については力を入れているというところでございます。

 仕事ということで、今職業訓練ということでございますけれども、その前に、全体の皆さんに対しては、刑務作業という形で規則正しくしっかりと勤務をしていただきながら、社会のニーズに応える形で、作業を通じてさまざまなスキルも身につけていただき、また責任を持った取り組みもしていただくということ、これが基本でありまして、その中に、職業訓練という形で、刑務作業の一環として、一形態として実施をしているというところでございます。

 もちろん、いろいろな資格を持って、そしてチャレンジしていこうという方に対してしっかりとプログラムを提供することができるように、そのバランスも含めてしっかりと組み立てながら、予算につきましても大胆に獲得していくべく一層の努力をしてまいりたいというふうに思っております。

井出委員 ありがとうございます。

 各刑務所で職業訓練がどういうふうに行われているのか。確かに、局長がおっしゃったように受刑者にもいろいろな人がいて、職業訓練になかなか合わない、そういうところもあるかと思うんですが、ただ一方で、社会復帰、そしてまた勤労は義務ですので、どういうスタンスで臨まれているのかわからないんですが、もう少し、働くようにしっかりと誘導していくというか、お尻をひっぱたくというか、本当に仕事につけるようにこの職業訓練というものを充実しなければいけない。

 総務省が平成二十二年から二十四年までの三年間の各刑務所の職業訓練の実態を調べているんですけれども、例えば、札幌刑務所の建築塗装科、平成二十二年は定員十人、受講者一人。府中刑務所の自動車整備科(二級)も、平成二十三年、定員十人で受けた人は一人。また、福井刑務所の内装施工科、定員二十人に対して受講者は三人。こういうところがかなりありまして、定員が七割に満たないという話もある一方で、これは本当に職業訓練が実施されているとも言えないんじゃないかなというような事例があると言わざるを得ません。

 そして、総務省の方でも、去年の行政評価の勧告の中で事例を示しているんですが、こうした職業訓練、実際に利用している人が一人しかいない、三人しかいないとかというところに対して、それはどうしてなんだ、そのことに対する明確な答え、それに対する原因の分析や定員を充足させる取り組みを行っていないと総務省に言われてしまっているところが山形刑務所ですとか福井刑務所ですとか幾つかあるんです。

 確かにおっしゃるように受刑者にもいろいろな人がいるというのはわかるんですが、やはり何でこんなに職業訓練が不調なのか、そこの分析と改善をやっていかなければいけないと思いますが、局長の見解を伺いたいと思います。

小川政府参考人 今御指摘がありましたように、実際実施している職業訓練についても、希望者が少なかったりあるいは受けている者が少ないというふうな科目もこれまであったというふうに承知をしております。その科目と、実際の雇用ニーズだとか社会がどんな職業訓練を求めているか、その内容のマッチング等についても検討する必要がありますので、総務省等の指摘を受けまして、矯正施設におきましても、例えば雇用主の方々の意見を聞いてどんな職業訓練がふさわしいのかとか、あるいは有識者の意見も聞いて科目を組み直してみるとか、そういった工夫をしているところではございます。

 まだまだ不十分かもしれませんけれども、そういった検討の結果も踏まえまして、職業訓練の科目につきましても、毎年毎年新しい科目をふやし、例えば介護福祉科であるだとか、あるいは建設関係の工事であるだとか、社会のニーズが高く、また受刑者もやりたいというふうな希望が高いものについて拡大をしたり再編をしたりしているところでございますので、引き続き、検討と改善を行ってまいりたいというふうに考えております。

井出委員 もう一点具体的に改善をお願いしたいのが、大きい刑務所でほかの刑務所からの希望や推薦を募ってやる職業訓練なんですけれども、推薦をいろいろな刑務所が出してもそれを受ける側が余り推薦を受けていない、そういうこともこの行政評価では言われているんです。

 例えば、訓練を実施する大きい刑務所が小さい刑務所から推薦された候補者の全てを受け入れている例もあるんですよ。これは調査しているのは名古屋刑務所なんですが、名古屋刑務所の建築塗装科、小型車両系建設機械科、これは推薦された者は全部受け入れているということで、定員の充足率が一〇〇%だったり、八五%、九〇%だったりしているんです。推薦というものは、書類の審査だと思うんですけれども、私はこの名古屋刑務所のようなケースが当然なんじゃないかなと。ほかの刑務所を見ると、どうもそうではない。

 これは、私の思いとしては、もっと予算をとって、どんどんどんどん職業訓練の枠もふやしていただきたいんですが、その前に、現状の職業訓練の中でも、職業訓練を受ける側の刑務所の消極的な姿勢が少しあるんじゃないかな、そういう思いを持っているんですが、その点についてはいかがですか。

小川政府参考人 御質問にありましたように、職業訓練は特定の刑務所で特定の科目を行うという体制が前提となりますので、そういった職業訓練を実施していない施設から希望する受刑者の推薦を受けて、そして、それを受け入れた上で実施するという形になります。

 ところが、この点につきまして、推薦をする施設と受け入れる施設の調整が不十分ではないかという御指摘をこれまで受けたところでございまして、確かに、十分調整がなされておらずに、受ける施設の方で推薦をされた者を受け入れていないという事例もあったようでございますので、昨年だったと記憶しておりますけれども、積極的に調整をするようにという通知を出したところでございます。

 引き続き、そういった調整をしっかり行わせて、行うべき職業訓練についてきちんと行えるように対応してまいりたいというふうに考えております。

井出委員 通知を出されていて、その効果がまず上がっているのかどうか。

 この問題を考えますと、恐らく、送り出す刑務所側は、職業訓練を受けてこい、みんな頑張ってこい、ちゃんとやってこいと言って送り出すと思うんですけれども、大きい刑務所が、小さい刑務所が自信を持って送り出している者をそもそもはねる理由があっていいのかどうかというところ、受刑者がいろいろな方がいるというところはあると思うんですけれども、受刑者がいろいろいるというのは送り出す方の刑務所の判断であって、やはり原則としては一〇〇%受け入れていくのがこの制度の趣旨なんじゃないかな、そう思うんですけれども、それはどうでしょうか。

小川政府参考人 御指摘の点でございますけれども、職業訓練を実施する刑務所の方は、全国の施設といいますか、多数の施設から推薦を受けて、その中から職業訓練に適格かどうかというふうな観点で審査をしていくんだろうと思います。

 その中で、推薦する刑務所の方では自分の施設の中で考えているので適格ではないかと考えるんだけれども、実施する方では職業訓練の効果がより上がりそうな受刑者を選びたいというふうなことで、受け入れないケースが出てくるというふうなことはあるんだろうと思います。

 また、取得する資格の難易度であるとか、あるいは過去に規律違反があるかないかだとか、あるいは職業訓練の内容とその受刑者の前科前歴等の関係で問題がないかどうかだとか、さまざまな観点で受け入れる刑務所の方は検討することになりますので、そこですれ違いといいますか、受け入れない者が出てくるということは起き得るんだろうと思います。

 いずれにしても、そこは、実施している職業訓練を、定員をきちんと満たして、十分な効果が上がるように実施できるように、引き続き指導してまいりたいというふうに考えております。

井出委員 少しわかりやすく例を示しますと、例えば鹿児島刑務所はほかの刑務所から建設機械科の訓練候補者を受け入れているんですね。毎年定員が三十人ずつなんですが、平成二十二年度から二十四年度までの三年間で四十五人の推薦があった。しかし、鹿児島刑務所は、残念ながら、このうち三十五人を不採用にしてしまった。また、同じく、農業園芸科については、十三人の推薦を受けているんだけれども、このうち九人を不採用にしている。

 理由としては、建設機械科と農業園芸科は刑務所の中じゃなくて外でやるような職業訓練なので、今局長がおっしゃったような、恐らく慎重な判断というものをされたのかなと思うんです。

 ほかにもちょっとお示ししたい例があるんですが、例えば、府中刑務所で、自動車整備科(板金塗装)の訓練科目というのがあって、これも、ある時期に六人の推薦を受けて、四人を落としてしまった。

 これは書類審査によって訓練生の選定が行われているんですが、府中刑務所が落選させた理由として、例えば、ある人については、シンナーの吸引歴があるからだめだと落とした。しかし、それを推薦している刑務所側は、長期間シンナー吸引歴がなくて、依存傾向はないと判断したから送り出している。

 また、別の受刑者は、暴力団関係者と判断したため、この選定基準から落とされた。でも、その受刑者を送り出した側の刑務所は、その受刑者は警察から暴力団離脱承認書を受理しており、暴力団関係者ではない、そういうものをもって送り出している。

 例えば、体のこともあるんですね。アレルギー、ぜんそくがあるから板金塗装には向かないと判断された。でも、その刑務所側からすれば、ぜんそくの発作が実際起こっていなくて、また軽度であると判断しているから送り出している。

 こういう事例を見ていますと、やはり、職業訓練、送り出す方ももっとたくさん送り出してほしいなという思いもあるんですが、受ける方が、いかんせん消極的なんじゃないか。

 確かに、上の刑務所が判断しなければいけないというのもわからなくもないんですが、最初に紹介したような全体の数値、訓練の利用率がこれだけ低いとなると、やはりこの制度自体も見直して、職業訓練をさせるかどうかは推薦側の刑務所に一任するとか、そういうことを考えていただかないと、今の枠の中でまずしっかりやっていただかなければ、私がさっき申し上げたような職業訓練をどんとふやしても、利用率が低調であればそもそも元も子もありませんので。

 実際にこうやって総務省の方の詳しい調査で、これはちょっとおかしいんじゃないか、そういう事例がはっきりと示されている。通知をされているとおっしゃっていますけれども、そこの問題意識というものを改めて持っていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

小川政府参考人 御指摘につきましては、いずれにいたしましても、職業訓練の定員の中で、その定員を無駄にすることがないようにしっかり実施していく、そのための選別をどういうふうにするかということでございますので、引き続き、矯正施設、刑事施設の間での連絡調整といいますか、それをしっかりさせていきたいと思いますし、また、もっと職業訓練を実施できる、あるいは、その職業訓練に適格な者がいるのに、定員が限られていることによって十分実施できていないということがあるのであれば、さらにその実態も把握した上で拡充に努めるといったことで、さらなる充実を図っていきたいというふうに考えております。

井出委員 最後に大臣に伺いたいのですが、矯正医官の法律のときから少し問題意識を持ったんですが、犯罪をした人が刑務所にいる、それは刑に服しているわけなんだから、二度と刑務所に来ないようにきちっと厳しく刑に服してもらうということも大事ですし、今、世の中には、何でそんな犯罪をした人にそんなに税金をかけるんだ、そういう話もあります。そうした中で、矯正医官のときには、やはり健康は大事だ、そういう話をしていただいた。

 私が前回と今回申し上げている運転免許もそうですし、この職業訓練は、いずれ受刑者は社会に必ず帰るわけですから、極刑というものもありますし、中には中で亡くなられる方もいると思うんですが、ただ、ほとんどの受刑者はいずれ社会に復帰する。憲法で勤労の義務がある。

 ですから、この職業訓練を、運転免許もそうなんですけれども、これは決して受刑者に対する何か優遇とか税金の使い過ぎとかそういう話ではなくて、やはり再犯を減らす、犯罪をした人にきちっと社会復帰をさせる、そのことが、日本の治安ですとか刑事司法行政全般を見ても、それはよいことだと思いますし、そこの発想を大きく変えていただいて、再犯防止というものに取り組んでいただきたいと思いますが、大臣の見解をいただきたいと思います。

上川国務大臣 国を挙げて再犯防止を大きな課題にしているということで、特に仕事と居場所という大きな柱を立てて注力しているところでございます。

 そのうちの仕事ということについては、地域にまた戻って、そして自立した生活を営んでいただきながら、そして二度と再犯しない、そういう大きな目的の中で仕事をしっかり持っていただく。そういう意味では、地域社会の中で受け入れていただく企業家の皆さん、そのニーズに合わせた形で、また、刑務所の中の処遇ということにつきましても連携をしながらやっていく必要がある。地域と、また施設の中の連携ということについては、これまで以上に取り組んでまいりたい。

 そのときに、職業訓練ということにつきましても、大変大きな柱の一つになっていくのではないかということで、先ほど申し上げたように、社会のニーズにふさわしい資格、あるいはそれにふさわしい職業訓練ということについては、絶えず検討しながら進めてまいりたいというふうに思います。

井出委員 社会の受け入れ側にいろいろな取り組みをされていることは、いろいろな取り組みを見れば明らかだと思いますので、送り出す側の職業訓練というものにもきちっと目を向けていただきたいと思います。

 終わります。どうもありがとうございました。

奥野委員長 井出君の質疑はこれにて終わりました。

 次に、清水忠史君。

清水委員 日本共産党の清水忠史でございます。

 私は、本日は、薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律、これは、二〇一三年六月に成立いたしまして、いよいよ来年六月から法が施行されるということになっております。

 かつて私が大好きだった漫才師で、寛太・寛大さんという漫才師がおられまして……(発言する者あり)知りませんか。大阪では有名なんですけれどもね。持ちギャグが、ちょっと待ってねというんですね。ちょっと待ってねというギャグなんですね。

 このギャグができた由来というのは、かつて、売れない漫才師というのは、キャバレーだとか、大人しか入れないような夜の劇場で、前座として舞台に立つわけですね。前座が終わって、次にいよいよ踊り子さんが出てくる。しかし、なかなか出てこない。お客さんからは、色気のない漫才師は早く引っ込め、出ていけ、早く踊り子を呼べというやじが飛ぶ。そのときに、寛太・寛大さんが、ステージの袖にある楽屋に向かって、おねえさん、そろそろどうですか、出てきてくれませんかと声をかけると、楽屋から大きな声で、ちょっと待ってねという声が返ってくる。お客さん、聞いていただいたとおり、ちょっと待ってね。ここから生まれたというギャグで、ちょっと待ってねというギャグがあるんです。

 何のために私はこれを説明しているかといいますと、長い導入になりましたけれども、いよいよ刑の一部執行猶予、これまでは執行猶予といいますと、懲役二年、執行猶予三年と、実刑のうちの二年を丸々全部執行猶予するということだったんですが、このたびは、例えば、懲役二年のうち、一年六カ月は実刑、残りの六カ月について執行猶予する、そしてその六カ月の執行猶予期間については、とりわけ薬物事犯者の場合、一年から最長五年の間、保護観察期間を設ける。

 しかし、現状のままこの法制度が始まると、大阪も含めまして、全国の保護観察所、保護観察官あるいは社会復帰調整官など、現場は、ちょっと待ってねどころか、とても対応することができないという現状についてお示しし、厚生労働省も含めて、法務省の対応策を確認させていただきたいと思います。

 それで、初めに、やはり刑事施設内の処遇だけではなく、社会施設で処遇した方が、あるいは社会内で処遇した方が、本人の更生や自立につながるということを思った法律の趣旨だというふうに思うんですが、それを裏づけるような根拠やデータというのはあるんでしょうか。

片岡政府参考人 お答えいたします。

 ただいま御指摘のように、薬物事犯者の再犯防止、非常に重要な課題であると認識しております。

 薬物事犯者のいわゆる再犯率ですが、もともとほかの犯罪よりも高いということでございまして、むしろ、最近では、減少どころか若干なりとも増加しているのでないかということを示す各種のデータが出ております。

 その中で、社会内処遇、今、どのような効果が認められるか、そういうデータがあるかというお尋ねだと思いますが、端的に言いまして、刑務所出所後、保護観察を受けたかどうかで区別するデータとして、満期出所者と仮釈放で出た者のいわゆる五年内再入率、出所後五年以内で刑務所にまた再犯で再入したかどうかを示すデータでございますが、これは、薬物事犯者、覚せい剤取締法違反の満期釈放者ですが、六〇・二%であったのに対して、仮釈放者は四一・二%と、約二〇ポイントの差があるということになってございます。

清水委員 今お答えがありましたように、保護観察のついた仮釈放者の方が再犯率はかなり低いということですから、社会内処遇が一定効果を果たしているということは言えると思うんですね。

 それで、いよいよ来年の六月から法が施行される。そこで、裁判所では、日本で初めてといいますか、刑の一部を執行猶予する判決が下されていく。当然、薬物事犯者も含めて出所者が社会へ出てくるということなんですが、この制度が導入されることによって、保護観察対象の薬物事犯者というのは今後どう推移していくというふうに見通しておられるでしょうか。法務省。

片岡政府参考人 お答えいたします。

 刑の一部執行猶予、あるいはそれに保護観察を付するかどうかは、あくまでも裁判所が判決において言い渡すもので、正確な数字を予測するということは困難でございます。

 その上であえて申し上げますと、覚醒剤事犯者についてですが、これは保護観察の数字になりますが、平成二十六年において約四千人を仮釈放で受け入れております。

 仮にこの四千人が全員一部執行猶予となるということであれば、この一部執行猶予のもとにおける保護観察は比較的長期になりまして、これも仮にですが、平均三年間の保護観察ということでありますと、四千人掛ける三でございますので、三年間で累積で一万二千人、あるいは、その四千人の中で三千人、二千人ということであれば、掛ける三ということで、いずれにしましても、三年間の累積で考えますと、一万人前後という大きな数字になると類推しております。

清水委員 累積していきますので、非常に保護観察対象者、薬物事犯者がふえるということを今お答えいただきました。

 これは厚生労働省に伺いたいんですけれども、もちろん、薬物取締法違反ということで処罰の対象になっているわけなんですけれども、例えば、WHO、世界保健機関は、薬物依存は病気と定義していますし、アヘン、大麻、そして覚醒剤などの依存症は薬物関連精神障害と分類しているわけなんですね、薬物依存は病気であると。厚生労働省も同様の認識でしょうか。

藤井政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のように、世界保健機関、WHOによる国際的な診断ガイドラインにおきましては、アルコール、アヘン、大麻、鎮静薬、睡眠薬、コカイン等による依存症候群は精神疾患とされておりまして、厚生労働省といたしましてもそのように認識をしております。

清水委員 厚生労働省も、薬物依存については病気である、疾病であるということの認識が明らかになりました。

 つまりは、病気であるわけですから、刑事施設内で懲らしめて再犯を防止するというよりは、社会施設へ、つまり処罰から治療へ、この流れが、国際的にも国内でも今後推移していくんだろうなということだと思うんです。医療機関や社会施設等を利用して更生に道を開くというのがこの法律の趣旨でしょうから、そこはわかるんですが、問題は、その受け入れ体制が十分かということなんですね。

 ことし二月十九日に、犯罪対策閣僚会議再犯防止対策ワーキングチーム幹事会、福祉・医療的支援タスクフォース合同で、申し合わせということで、「刑務所出所者等に対する福祉・医療的支援の充実・強化等について」という文書が出されています。

 ここでどういう現状認識をされているかといいますと、「薬物依存に関する治療や専門的支援を行う医療・保健・福祉機関の数が不足している」と。とりわけ、薬物依存の医療機関というのは本当に不足していると思うんですね。

 法務省は、なぜ薬物依存患者の治療に取り組む医療機関が少ないのか、不足しているのか、このことについてどのように認識されているでしょうか。

片岡政府参考人 お答えします。

 保護局、あるいは法務省全体でもそうですが、何分、医学的なものについては専門外というところも多うございますので、そういったことを踏まえまして、平成二十三年からでございますが、専門家医等の専門家を構成員として、厚生労働省の関係部局等もオブザーバーに招いて、保護局の主催で薬物地域支援研究会という研究会を開催しております。そして、平成二十六年九月には同研究会から提言をいただいたところであります。

 今の委員御指摘のところですが、薬物依存のある刑務所出所者等に対する地域の支援体制がいまだ極めて不十分であると同提言で指摘されておりますが、その原因として、薬物依存が病気であるという認識、これがまず薄いのではないかという御指摘の上で、さらに、制度論としても、薬物依存症の治療の診療報酬体系においても、例えばアルコール依存症治療のような加算が設けられていないなど、制度的な問題もあるということ、そしてまた、今後、刑事司法機関、地域の医療、保健、福祉機関や民間支援団体がさらに一体となって支援の充実に取り組むことが必要であるというような御指摘がなされております。

清水委員 今答弁ありましたように、薬物依存というものが、やはりまだ、病気である、治療が必要であるということの社会的認知という点が医療機関も含めて非常に徹底されていないということ。

 先ほど、アルコール依存と比して診療報酬体系の問題に言及されました。確かに、診療報酬として、アルコール依存のように加算がないんですよね。いわば診療機関としては、メリットがないと言ったら、お金のためだけにやっているわけじゃないでしょうけれども、ここはやはり是正する必要があると思いますし、中央社会保険医療協議会、中医協に対しても、診療報酬改定、厚生労働省に答申を出しているところですから、法務省としても、病気ということなわけですから、アルコール依存などと差異を設けるのではなく、しっかりとした診療報酬をつけてもらいたいということはぜひ協議、実現していただきたいと要望しておきます。

 このタスクフォースの申し合わせ文書について、厚生労働省は、この申し合わせにおいて、「依存症治療の拠点となる医療機関を中心に、地域における連携体制モデルを構築すること。」との対策を提起されているわけなんですね。現状どうなっていますでしょうか。

藤井政府参考人 お答え申し上げます。

 薬物依存症対策といたしましては、私どもも、薬物依存症者が必要な医療を受けられる体制の整備、あるいは、社会復帰に向けた医療機関、行政、自助団体の連携体制の整備等が必要であると考えてございまして、平成二十六年度から、全国五カ所の医療機関を依存症治療の拠点機関として位置づけまして、依存症に関する専門的な相談、治療及び回復の支援、また、関係機関や依存症者の家族等との連携、調整等を試行的に実施しているところでございます。

 今後、この試行事業の成果をもとに支援体制のモデルを構築するなど、薬物依存症の治療、回復のために地域において関係機関が連携して支援を行う体制の拡充に向けまして、さらに取り組んでまいりたいと考えております。

清水委員 今、治療拠点機関五カ所、ここを拠点に、いろいろ地域との連携モデルも進めていくという答弁がございました。

 そういう拠点に薬物依存に対する知見を集積させていくということも文字どおり重要だと思うんですが、先ほども法務省からお話ありましたように、現行、仮釈放の三千人から四千人というところが累積されていくわけですから、一万とか一万二千人。薬物依存者、あるいは治療が必要、何らかの支援が必要という人たちに適切な処遇ができなければ、この刑の一部執行猶予制度を実施する意義が私は問われると思うんですね。

 資料の一をごらんください。これは法務省からいただいた資料です。「医療機関、精神保健福祉センター等に通院、通所して治療・支援を受けた薬物依存のある保護観察対象者数」ということで、昨年四月から九月の半年間に調査をされたものなんですね。全体で百四十九名。先ほど言いましたように、現行では保護観察対象者は三千から四千、全てが薬物事犯というわけではありませんけれども、やはり相当な数があるわけで、それに比べて、支援を受けた人が百四十九人ということなんですね。

 私、ここでもっと注目しているのは、四十七都道府県のうち、一人も診療機関への通所だとかあるいは民間団体の支援というものを受けたことがない、ゼロというところが二十六県あるわけなんですね。たまたまその県には支援を必要とする人がいなかったのか。私は、そんなことはないと思うんですね。やはり、地域の適切な、通院だとか通所だとか、そういう施設がなかったからだというふうに思っていまして、これは本当に、今、法務省として、率直なところ、やはりこうしたことが全国的に不足している、現状、こういう認識ではありますか。

片岡政府参考人 お答えいたします。

 今委員御指摘のとおりでございます。今一番の問題意識あるいは心配事でございます、この委員御指摘の表と関連するんですが、専門的治療を行う、あるいは支援を行う機関が存在しないという都道府県があるという、地域によって、そういう支援を受けたくてもその地域にそういう機関がないという都道府県、この表と多少ずれますが、我々把握している限りでは、二十四の都道府県がそういう実施機関がないということでございます。

 ちなみに、この表は、県境をまたいで治療を受けている人も入っていますので、ちょっとずれていますが、我々の把握しているところでは、二十四都道府県がそういう実施機関がないということでございます。

清水委員 今お話ありましたように、二十四県ではそうした治療機関がないということなんですね。

 このまま法律を施行しますと、一層支援を受けられない薬物依存者が出所されるということはもう明らかです。先ほどのタスクフォースの申し合わせでも、「法務省及び厚生労働省は、保護観察所や医療・保健・福祉機関による薬物依存者への支援が円滑かつ効果的になされるよう、連携の指針となるガイドラインを定め、関係機関に周知すること。」とあるわけですが、このタスクフォースの申し合わせが二月十九日ですから、もう半年になるわけで、進捗状況をちょっと教えていただけますでしょうか。法務省。

片岡政府参考人 先ほどの研究会、お話ししましたが、その研究会の専門家の御意見も伺いながら策定しています。目標としては年内あるいは年度内に策定したいと思っていますが、今、非常に我々が注目しているのが、そのガイドラインの内容の、ちょっと触れますと、保護観察中の医療的、福祉的支援に関する関係機関等との連携のみならず、刑事施設入所中の段階から出所後のそういう医療的、福祉的な支援を目指したアセスメントあるいは連携が必要だという、その具体的な連携についてのガイドライン、あるいは、保護観察終了後にももちろん当該対象者には支援が必要ですから、その取り組みも、こういうことをすべきじゃないかというガイドラインの中に盛り込まれるということで、非常に我々としても期待しているというところでございます。

清水委員 今のは非常にいい答弁だと思いまして、保護観察対象者だけに限ってガイドラインをつくるというよりは、刑事施設内にいるときから、この人にはどういう治療や支援が必要か、また、保護観察が終わった後もさまざまなフォローアップを進めていくという答弁だったと思うんです。

 今のそのガイドラインの中に、医療機関や支援機関を、例えば空白県に設置するとか、さらにはそうした施設を恒常的にふやしていくとか、もっと言えば、法施行後、支援が受けられないという薬物依存者を一人も出さないとか、そうしたところが私は肝要だと思うんですが、こうしたことについてはまだ検討されていないということなんでしょうか。法務省でもいいですし、これは連携して検討するということですから厚生労働省でもいいんですけれども、お答えできるのであれば。なければ、まだこれからだということでも構わないんですけれども、ちょっと確認させていただけますか。

片岡政府参考人 ごく簡単に申しますと、まさに今それを協議中でございまして、法務省のあれですと、まず、アセスメント、本当に治療がどの程度要るのかどうかをしっかりしていただいて、仮に帰住先との関係で専門的な医療が受けられないときに、例えば帰住先の調整をするとかいうことが必要になってまいりますので、それらを含めた、先ほど御指摘ありましたが、施設内にいる段階から調整していくということが非常に重要だと思っていまして、そのためのアセスメントということも非常に重要だと考えております。

藤井政府参考人 ガイドラインにつきましては今法務省の方から答弁があったとおりでございますけれども、先ほどの医療提供体制の確保につきましては、先ほど拠点医療機関につきましてお答えを申し上げましたけれども、私どもとしては、それ以外にも、依存症治療に効果があると言われております認知行動療法につきまして、できるところがまだ限られているというようなお話もございましたけれども、地域の精神保健福祉センターでの実施の助成をいたしましたり、あるいは職員に対する研修をしたりということを、これは今年度の予算事業の中でも取り組んでおります。

 治療ができるところの拡大に向けまして、私どもとしても取り組んでまいりたいと考えております。

清水委員 ぜひスピードアップして対応を充実していただくということは、もう当然だと思うんですね。

 大臣、私も、大阪保護観察所へ行きまして、現場の保護観察官や社会復帰調整官からいろいろお話を聞かせていただいて、本当に、保護観察対象者の方に治療機関、診療機関あるいは支援機関を紹介する、あてがうというのにもう四苦八苦されているんですよ。

 それで、これはもう一回確認なんですけれども、出所者に対して医療機関を紹介する、それを見つけてくる、入院先を探す、それはそもそもどこに責任があって、誰の仕事の任務として行っているんでしょうか。

片岡政府参考人 お答えします。

 仮釈放等保護観察対象者ということであれば、やはり保護観察に影響しますので保護観察所、あるいは、施設に入っている者は更生保護施設等の担当者が病院等に連絡をしたりして探しておりますが、ただ、満期出所者もいるということを考えますと、保護観察だけで全て手当てできるかというと、ちょっとそれは難しいかなと思います。

清水委員 ちょっと大臣に、もしよければ感想をいただきたいんですけれども、医療機関が不足しているという認識は法務省も持っていると。厚生労働省とガイドラインを作成する中で、今後さまざまな対応はしていくと。それはそれでいいと思うんですけれども、先ほども言いましたように、法が施行されると保護観察対象者がどんどん累積されていくわけですよ。今でも現状不足している。ですから、こういう状況で法が施行されるとなると、例えば野球に例えると、まだ守備についてグラブもはめていないのに、いきなりノックの練習が始まるということになると思うんですよ。そういう場合は、すぐにグラブをはめるか、もしくはノックするのを待ってもらうかというような状況だと思うんですよね。

 これは、現場の保護観察官や調整官だけに診療機関を探してこいとかいうことではちょっと限界があるというふうに、私は今、現時点でですよ、努力しているのはわかりますが、非常に危機感を持っているんですけれども、どのように認識されていますか。

上川国務大臣 御指摘のとおり、刑の一部執行猶予制度が実施されますと施行後の期間が毎年経過をするわけでありますけれども、その間、保護観察対象者が累積増加する、こうした状況でございまして、その意味では、保護観察官の業務負担だけでも大変重くなるというところでございます。

 また同時に、薬物ということになりますと、今御指摘のような、病院を探す、処遇についても、地域の中での各施設についても、つながりをどうするかということについてもサポートしていくということが必要になる。

 そういう意味では、保護観察官の仕事を支える上でも、全体の中で支援体制についてはしっかりとしていかなければいけないし、病院との連携も含めてシームレスに取り組んでいかなければいけないことであるというふうに考えます。

清水委員 今、実際に保護観察所で働いている職員がどういう過重な状況にあるかというのは、機会があれば、大臣にも、別に大阪に限らずですけれども、ぜひ実際に現場の声を聞いていただきたいと私は思うんですね。

 新たな覚醒剤事犯者処遇プログラムの受講が特別遵守事項として定められるわけで、二週間に一回程度のペースで五回、保護観察所へ行って、保護観察を受けている人、執行猶予中の人は、そこで、認知行動療法だとか、いろいろなワークブックをするわけですよね。同時に、そこで、簡易薬物検査、尿検査をして、陽性反応が出なければいいし、出れば、警察だとか検察庁と相談してまた服役してもらうという措置についてもやらなければならない。これが終わってからも、フォローアップということについても、月一回のペースで任務としては続くわけなんですよ。これは最長五年になりますからね。五年間ということですから、これは、受ける方にも負担がありますし、それに対応する方にも負担があるというふうに私は思うんですね。

 今現状、任務についている保護観察官は何名いるでしょうか。

片岡政府参考人 ただいまの御質問の趣旨に鑑みまして、第一線の保護観察に当たっている保護観察官ということに限らせていただきますと、平成二十七年度の数字で九百六十六人となっております。

清水委員 二〇〇四年からずっと更生保護法の見直しが始まりまして、有識者会議からの提言で、当時六百数十名だったんですけれども、倍増を求められているんですよ、もう千三百人にしろと。この有識者会議の提言には、「公務員の定員削減を目指す行政改革が進行中であり、厳しい定員事情にあることは承知しているが、」という前置きもちゃんと書いて、しかし、「国民の安全・安心を確保することは国の基本的な責務であり、国民が必要とする分野に予算・人員を集中すべきであると考える。」よって、保護観察官は倍増という提言があるんですね。

 当時の千三百人という数字から見ると、この間ふえてきているとはいえ、まだまだ足らないというような状況だと思いますし、保護観察所における処遇実施体制の整備というのがやはり不可欠ではないか。

 先ほど答弁いただいたんですけれども、保護観察官を支えるための連携だとかいうことは当然大事ですけれども、実際現場で働いているのは彼らなわけですよ。繰り返しになりますけれども、法が施行されると、どっと保護観察対象者がふえる、どう考えてもこれは支え切れない。現場からは、ちょっと待ってどころか、もっと待って、やめてくれ、対応できないと。

 だから、法施行するのであれば、やはり人員を確保していくということも含めて、私は、これは予算にかえられないという提言も出ているわけですから、大臣、ここはちょっと重みを持って検討していただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

上川国務大臣 保護観察所の体制を初めといたしまして、必要な体制の整備ということについては大変大事な項目でございまして、平成二十八年度の概算におきましても、法務省といたしまして、保護観察所の保護観察官等につきましては八十八名の増員を要求しているところでございます。とりわけ、この薬物検出検査、先ほど御指摘ありましたけれども、薬物処遇プログラムの効果的な実施、さらに、身寄りのない薬物事犯者を受け入れる薬物処遇重点実施更生保護施設、こうしたところの拡充というところについても予算要求をあわせてしてまいり、必要な体制整備については全力で取り組んでまいりたいというふうに思っております。

清水委員 今後、自立更生促進センターというところに専従職員を配置しますから、現行の観察官だとか調整官がそちらへ回るということになると、現場は現場でまた人手不足に陥るわけなんですね。こうしたことについてもしっかりと認識していただいて、職場の整備、拡充については急いでやっていただきたい。今、そういう決意も込められていたと思いますので、信頼したいと思います。

 最後に、裁判所の方にお伺いしますね。

 これまでは刑の範囲内の執行猶予だったわけですけれども、これからは、判決宣告時にその対象者に対して、一部執行猶予、あわせて保護観察期間を宣告するわけですよ。

 普通は、改悛の状が見られるかどうかとか、あるいはその対象者が出所した後は家庭に戻れるのか、独身なのか、住むところはあるのか、帰住先がないのか、あるいは地元にまた薬物に手を染めるような不良グループや悪い仲間がいるのかいないのかとか、そしてちゃんとした施設に、例えばダルクのようなリハビリ施設につなぐことができるのか、こういうことまで見越さないと、一部執行猶予を判断したり、ましてや、五年という保護観察期間をその時点で判断するということは非常に難しいというふうに思うんですが、裁判所としては、いよいよ来年六月からこれが始まるのに関して、どのように運用していこうと考えておられるんでしょうか。

平木最高裁判所長官代理者 刑の一部執行猶予制度が施行された際には、当事者から一部執行猶予を意識した主張、立証が行われるものと思っておりますが、いずれにしましても、事件を担当する裁判官が、個々の具体的な事件において必要な証拠調べを行い、当事者の意見を聞いた上で、被告人に対して刑の一部執行猶予がふさわしいかどうか、執行猶予期間をどのように定めるかなどを法律の要件に従って適切に判断することになるものと思っております。

 もっとも、刑の一部執行猶予はこれまでにない新しい制度でございますので、どのようなものが一部執行猶予にふさわしいのか、猶予期間をどの程度に定めればよいのかといった点につきまして、各裁判所において制度の施行に向けて議論をしているものと承知しております。

 最高裁判所といたしましても、裁判官が議論する場を設けたり、立法時の議論状況を周知したりするなどして、各裁判官において適正な判断ができるように支援してまいりたいと考えておるところでございます。

清水委員 引き続きこの問題を取り上げてまいりたいと思います。

 きょうは終わります。ありがとうございました。

奥野委員長 これで清水忠史君の質疑は終了しました。

     ――――◇―――――

奥野委員長 次に、内閣提出、外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。上川法務大臣。

    ―――――――――――――

 外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

上川国務大臣 外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 技能実習制度は、開発途上地域等への技能等の移転を図り、その経済発展を担う人づくりに協力することを目的とする制度として、我が国の国際貢献において重要な役割を果たしていますが、一方で、同制度に関しては、制度の趣旨を理解せず、国内の人手不足を補う安価な労働力の確保策として使われており、その結果、労働関係法令の違反や人権侵害が生じている等の指摘があり、指摘されている問題点の改善を行い、制度の趣旨に沿った運用の確保を図る必要があります。また、こうした制度の適正化を前提に、この制度の活用を促進するため、制度の拡充を図ることも求められております。

 そこで、技能実習を実施する実習実施者やその実施を監理する監理団体に対し必要な規制を設け、管理監督体制を強化するとともに、技能実習生の保護に係る措置等を定め、あわせて優良な実習実施者や監理団体に対してはより高度な技能実習の実施を可能とするため、本法律案を提出した次第であります。

 この法律案の要点を申し上げます。

 第一に、技能実習の基本理念及び関係者の責務を定めるとともに、技能実習に関し基本方針を策定することとしております。

 第二に、実習実施者が、技能実習生ごとに、かつ、技能実習の段階ごとに作成する技能実習計画について、主務大臣の認定を受ける仕組みを設けた上、修得した技能等の評価を行うこととすること等により、制度の趣旨に沿った運用の確保を図ることとしております。

 第三に、実習実施者及び監理団体が、技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護について重要な役割を果たすことに鑑み、実施の届け出及び監理団体の許可の制度を設けるとともに、これらの者に対する主務大臣の立入検査、改善命令、許可取り消し等の権限を定め、技能実習制度の適正化を図ることとしております。

 第四に、技能実習生に対する人権侵害行為等について、禁止規定を設け、違反に対する所要の罰則を規定すること等により、技能実習生の保護を図ることとしております。

 第五に、外国人技能実習機構を認可法人として新設する枠組みを設け、技能実習計画の認定及び監理団体の許可に関する事務、実習実施者及び監理団体に対する実地検査、技能実習生に対する相談及び援助等を行わせることとしております。

 第六に、制度拡充の一環として、現在、技能実習は二段階となっていますが、新たに第三段階を設け、第二段階の目標を達成した者は、この第三段階に進み、優良な実習実施者及び監理団体のもとで、より高度な技能実習を行うことを可能にすることとしております。

 このほか、所要の規定の整備を行うこととしております。

 最後に、この法律案の施行期日は、平成二十八年三月三十一日までの間において政令で定める日としておりますが、外国人技能実習機構の設置等に関する規定については、公布の日から施行することとしております。

 以上が、この法律案の趣旨であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。

奥野委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時四十分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.