衆議院

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第6号 平成28年3月23日(水曜日)

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平成二十八年三月二十三日(水曜日)

    午前八時五十分開議

 出席委員

   委員長 葉梨 康弘君

   理事 安藤  裕君 理事 井野 俊郎君

   理事 城内  実君 理事 鈴木 馨祐君

   理事 吉野 正芳君 理事 井出 庸生君

   理事 逢坂 誠二君 理事 國重  徹君

      あかま二郎君    青山 周平君

      小田原 潔君    尾身 朝子君

      大塚  拓君    奥野 信亮君

      勝沼 栄明君    門  博文君

      今野 智博君    笹川 博義君

      瀬戸 隆一君    田所 嘉徳君

      田畑 裕明君    辻  清人君

      冨樫 博之君    根本 幸典君

      古川  康君    細田 健一君

      堀内 詔子君    宮川 典子君

      宮澤 博行君    宮路 拓馬君

      務台 俊介君    宗清 皇一君

      若狭  勝君    階   猛君

      山尾志桜里君    山井 和則君

      大口 善徳君    吉田 宣弘君

      清水 忠史君    畑野 君枝君

      木下 智彦君    上西小百合君

      鈴木 貴子君

    …………………………………

   法務大臣         岩城 光英君

   総務副大臣        土屋 正忠君

   法務副大臣        盛山 正仁君

   文部科学副大臣      義家 弘介君

   内閣府大臣政務官     牧島かれん君

   法務大臣政務官      田所 嘉徳君

   外務大臣政務官      黄川田仁志君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 大塚 幸寛君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 露木 康浩君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局参事官)            中島 淳一君

   政府参考人

   (総務省自治行政局選挙部長)           大泉 淳一君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 高嶋 智光君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          萩本  修君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    小川 秀樹君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    林  眞琴君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    小川 新二君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    片岡  弘君

   政府参考人

   (法務省人権擁護局長)  岡村 和美君

   法務委員会専門員     矢部 明宏君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十三日

 辞任         補欠選任

  あかま二郎君     務台 俊介君

  上川 陽子君     堀内 詔子君

  笹川 博義君     青山 周平君

  辻  清人君     勝沼 栄明君

  藤原  崇君     田畑 裕明君

  古田 圭一君     尾身 朝子君

  宮路 拓馬君     古川  康君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     笹川 博義君

  尾身 朝子君     宗清 皇一君

  勝沼 栄明君     辻  清人君

  田畑 裕明君     根本 幸典君

  古川  康君     宮路 拓馬君

  堀内 詔子君     上川 陽子君

  務台 俊介君     瀬戸 隆一君

同日

 辞任         補欠選任

  瀬戸 隆一君     あかま二郎君

  根本 幸典君     細田 健一君

  宗清 皇一君     古田 圭一君

同日

 辞任         補欠選任

  細田 健一君     小田原 潔君

同日

 辞任         補欠選任

  小田原 潔君     藤原  崇君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

葉梨委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房審議官大塚幸寛君、警察庁長官官房審議官露木康浩君、金融庁総務企画局参事官中島淳一君、総務省自治行政局選挙部長大泉淳一君、法務省大臣官房審議官高嶋智光君、法務省大臣官房司法法制部長萩本修君、法務省民事局長小川秀樹君、法務省刑事局長林眞琴君、法務省矯正局長小川新二君、法務省保護局長片岡弘君及び法務省人権擁護局長岡村和美君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

葉梨委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

葉梨委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井出庸生君。

井出委員 おはようございます。維新の党、信州長野の井出庸生です。本日もよろしくお願いいたします。

 このところずっと問題提起されております再犯の防止ということについて、これまでも考えてきたんですが、きょうは、犯罪を犯した人の社会復帰ということ、また、それにつながると思って私がちょっと質問させていただきたいのが、恩赦、この二つについて質問をさせていただきます。よろしくお願いいたします。

 まず最初に、本当にそもそも論のところで恐縮なんですが、犯罪を犯した人が刑を終えて社会に戻る、ただ、その一方で、前科前歴というものもありますし、また、過去の犯罪が、報道等もあるでしょうし、インターネット等もあって、思わぬ形でクローズアップされることもあります。

 まず事務方に教えていただきたいのが、犯罪者の定義ですね、犯罪者というものが法律上どのように定義をされるのか、そして特に、犯罪者、一度犯罪を犯した人はいつまで犯罪者であり続けるのか、そこのところを教えてください。

片岡政府参考人 お答えいたします。

 犯罪者の定義ということでありますが、法律上、犯罪者を定義しているものはなくて、法律上の定義というのはお答えすることができません。ただ、刑法では、有罪の言い渡しを受けた者についての刑の言い渡しの効力、それが、時間の経過とともに言い渡しの効力が失われるという規定が設けられております。となりますと、いわゆる前科があることで資格制限等さまざまな不利益を受ける場合があるわけですが、そういうことがなくなるという場合があります。

 手短に申しますと、刑の執行猶予を受けた者が無事その執行猶予期間を経過したときは、その刑の言い渡しは効力を失う。また、禁錮以上の刑の執行を終えた者が、十年間、罰金以上の刑に処せられることなく経過した場合、罰金以下の刑の執行を終えた者が罰金以上の刑に処せられることなく五年間を経過したとき、いずれも刑の言い渡しが効力を失うという規定となってございます。

井出委員 ありがとうございます。

 今、禁錮などの刑だった場合は刑を終えて十年、罰金以下の罪については五年というものがありますが、その十年、五年の節目に、過去の犯罪が、十年なり五年なり法で定められた時間を経過したので、刑の言い渡しの効力、前科というものがなくなりますよというようなものが本人などに伝えられたり、何かそういうような機会、局面というのはあるんでしょうか。

片岡政府参考人 通知する制度はございません。

井出委員 十年ないし五年の期間を過ぎて、その方が、職場ですとか地域社会、また、御家族の冠婚葬祭、御結婚ですとか、そういったときに、私は昔、過ち、犯罪を犯しました、でも、十年、五年、そういう刑法で定められた期間、一生懸命生きてまいりました、そういうことを例えば正直に伝えたとして、それは、特に職場などで、では、この人はそれだけの期間を経ているということは、過去の犯罪について殊さら不利益が起こらないようにするとか、そういったことは実際にあり得るんですか。

片岡政府参考人 非常に難しいお尋ねです。

 個々の人によって捉え方がかなり違って、かなり心配性の方は、やはりそういうことを、例えば、今御指摘がありました、結婚とかの際に相手に言わないといけないとかいうことを考えまして、何とかならないかということで、そこで、恩赦、特に復権ということを調べられて、復権のお申し出があるわけです。

 これは、復権というのは本来そういう制度ではございませんが、ただ、そういう方も、それまでの経緯から復権の要件を満たしているという場合が多うございます。そういう場合は、そういう事情も含めて考慮して復権を認めて、これは中央更生保護審査会が行うものですから、合議によるものですが、復権が認められた場合は、非常によかったと言われる方がいらっしゃいます。

井出委員 今、恩赦の話も少しありまして、これから伺っていきたいと思うんですが、現実の社会を想像したときに、犯罪を犯して、刑を終えて十年たっていても五年たっていても、何かのきっかけで、職場ですとか、その人が一緒に生活している人が、その方の過去の犯罪について知ることもあると思いますし、正直な方は、自分から言っておかなきゃいけないと思って言うこともあると思うんです。そういうことで、実際、本人もかなり気にされるケースもあると思いますし、また、周りも気にされることもあると思うんです。

 十年、五年たった後に過去の犯罪がもとでその方が生活していく上で生じるような社会的な不利益というのは、これは、法律上といいますか、法務省としては、十年、五年たった後に過去の犯罪をもとに不利益をこうむるようなことがあってはいけないと言い切れるのかどうかを教えていただきたいと思います。

片岡政府参考人 先ほど言いました十年、五年の期間が経過したときですが、これは、有罪の判決の言い渡しの効力が失われるということは、平たく言いますと、その判決自体がなかった、なかったというのは、そのことで不利益を受けないという法律上の効果であります。

 ただ、犯罪捜査とか、ごく限られた刑事司法の分野で、やはり前科というのは、法律上の効果とは別の意味で前科データというのは保存しておかないといけないということで、特に、期間が経過した部分の前科のデータについては、犯罪捜査あるいは刑事裁判以外には外に出さないという厳しい取り扱いをしてございます。

井出委員 十年、五年たった後に、過去の犯歴によって社会生活上の不利益を受けるということはない、刑の効力が失われるので不利益はないという法律上の効果があるというようなお話だったと思うんです。

 そうすると、就職などで、その問題で犯歴のある方と雇用主とが対立をした場合、過去の犯歴、十年、五年経過して、そこが争いで不利益をこうむったというような、そういう訴訟、争いになったときというのは、今おっしゃったような解釈で、裁判というかそういうところに、今お話しいただいた法律上の効果というのはきちっと生かされるということですか。

片岡政府参考人 これは我々の経験上の話に近くなりますが、そういうことで、ある人の前科があるけれどもこういう意味だよと言うことは、前科があるよというのを公的に認めてしまうことになりますので、申しわけないかもしれませんが、それはお答えできないというような対応が今までの経験上一番いいかなと。

 あるいは、特に長期間たったものについては、先ほど言いましたように、ごく古い前科を掘り出すようなことをして、あるけれどもと言うこと自体が問題かなと思っていますので、恐らく、何もそこには介入しないということになろうかと思います。

井出委員 今のお話を推測しますと、刑を終えて五年、十年の間は、やはり前科ということで法律上も残るということだと思いますし、それが過ぎると、恐らく、その過去の犯罪というものが、本人のプライバシーに位置づけが変わってきて、それを殊さら公にすることはないというようなお話なのかなと思います。

 そうすると、今、インターネットで、いつまでも過去の犯罪、実名の報道、写真などが出たり、大きな事件、犯罪があれば、あの事件から三十年、四十年とか五十年みたいなこともあると思いますけれども、そういったものがいつまでも残っているというのは、法務省としては、そういうものが現実として残ったり、報道が繰り返されるということについてはどのようにお考えか。

片岡政府参考人 インターネットでのプライバシー侵害の話になろうかと思います。

 その点につきましては、法務省でも、人権擁護局が今、力を入れて業務を遂行しておりますが、事犯罪に関しましては、先ほどと同じ答えでありますが、かなり古いものが残っている、あるいはそれを残していること自体、やはりプライバシー侵害になるおそれがある、あるいは少なくとも御本人にとっては迷惑になるのかなというふうに考えております。

井出委員 大臣にお尋ねしたいんですが、今、犯罪を犯して、禁錮などでしたら十年、罰金以下でしたら五年がたてば判決の言い渡しの効力はなくなる、それによって社会上の不利益を受けることはないという法律上の効果があるというお話で、今、保護局長のお話を聞いていますと、やはり、五年ないし十年がきちっと何事もなく経過をすれば、過去の犯罪というものは、その方にとって、プライバシー、個人情報の一つになってくるのかなと思っているんです。

 私も以前は、前科前歴というものは本人のプライバシーだから、私、もともと報道をやっておりまして、前科前歴というものは慎重に扱わなければいけないということを会社で習ったんですが、それが実際、仕事をしていたり、また、仕事を離れて最近の報道を見ておりますと、前科前歴というものがとてもそういうふうに扱われているようには思えず、犯罪を犯した人が、五年ないし十年、きちっと生活、社会復帰をしていれば、その判決の言い渡しの効果はなくなって、それによって何か社会的な不利益とか制裁を受けることはないということを、一度はっきり大臣からもきょう御答弁をいただければと思うんですけれども、いかがでしょうか。

岩城国務大臣 刑の言い渡しの効力を失う場合につきましては、委員からも御指摘ありましたし、局長からお答えしたとおりであります。

 そこで、前科でありますけれども、刑の言い渡しの効力を失っていない場合でもプライバシーにかかわるものだ、このように承知をしております。

 いずれにしましても、プライバシーにかかわるものを大切に扱いながら、社会復帰を支援していくことが重要だ、そのように考えております。

井出委員 今、社会復帰を支援というお話もありました。

 これから、もう一つ伺いたかった恩赦について伺っていきたいんです。

 先ほど片岡保護局長からもお話がありましたが、恩赦というものは、もともと何か、日本でも、記録をさかのぼると日本書紀にそんなようなものが書いてあると。どこの国を見ても、王権ですね、王様とか皇族が、節目節目、慶弔ですとか何かのときに恩赦をすると。それは、いろいろな本を読んでいますと、一面では、裁判というものが必ずしも完全なものではない、人には誤りもある、そういうものを正す効果もあると指摘するような逐条解説もありますし、また、何か、ギリシャ語の恩赦という言葉の由来は、忘れるとか、時間の経過で水に流すとか、そういう意味合いもあるということを聞きました。

 私も恩赦法をちょっと今回勉強してみたんですけれども、最近、私がほかの法律を見ていると、法律には大体、総則があって目的があるんですが、この恩赦法というものは、古いとは言っても戦後ですが、そういう総則、目的というものがないんです。この恩赦法の目的というものを、ちょっとその御見解を教えていただきたいと思います。

片岡政府参考人 ただいま御指摘ありました、我が国、日本でも、上代、つまり、歴史上の記録が残っている時代から恩赦に相当することが行われていたということでございます。それから、諸外国を見ても、御指摘ありましたように、裁判の誤りを是正するということに用いられてきました。

 ただ、これは、諸外国も我が国もそうだと思いますが、例えば再審制度であるとか上訴制度であるとか、その他の刑事司法の制度によりまして、誤判の是正というのは、そちらの制度が充実してきたということで、恩赦の主たる目的ではなくなってきてございます。

 ということは、歴史上の恩赦の用いられ方とは現在若干変わってきている面もございますが、行政権によって国家の刑罰権を消滅させ、裁判の内容を変更させ、または裁判の効力を変更もしくは消滅させるものであるということしか言えないということでございます。

井出委員 恩赦というもののもともとの一つの目的の中に、片岡さんも私も申し上げました、裁判の誤りを正すような目的もあった、しかし、再審請求ですとか刑事司法制度の発達によって、恩赦をしなくても裁判の誤りというものを正す道が見つかってきた、そういうお話。

 ですから、そこの部分は、そういう使われ方は、使われていないのか減ってきているのか、そこは今、明確にはおっしゃっていただけませんでしたが、そうしますと、行政権で、裁判の判決が出たものに対して、何か、名誉回復じゃないですけれども、判決の効力を変える、減じる、恩赦で懲役がふえることはないですから名誉回復に資する方向だと思うんですけれども、ほかの刑事司法制度、刑事捜査の制度が発達をしてきても、なお行政がそういうことをする必要というのはどういうことがあるんですか。

片岡政府参考人 現状の恩赦の運用に照らしまして申し上げられることとしては、特に、有罪の言い渡しを受けた者の事後の行状等に基づいて裁判の変更もしくは資格回復といった、恩赦の刑事政策的意義が重要と考えられていると承知しております。

井出委員 余り明確にというか、行政がやる意図をお聞きしたかったんですけれども、運用の実態面の方をお話しいただいたのかなと思うんですが、恩赦には、王権、日本だったら天皇陛下、皇族の慶弔にまつわるときにされる政令恩赦と、もう一つ、犯罪を犯した個人が願い出て、審査をされてやる個別の恩赦とあるというふうに聞いているんです。その中で、今お話があった復権、犯罪をすることによって、何かその後、就職をする際に、前科のある人はこの資格は取れませんというような資格が世の中には五百ぐらいあるというような文献を見たこともあるんですけれども、その復権も個別の恩赦であると。

 私は、個別恩赦、復権というものは、一度犯罪を犯してしまっても、その後、真面目に更生されている方が本当に社会復帰をする上では大変意義があるかなと思うんですが、もう一方の、皇族、これまでの過去の経緯の部分なんですけれども、もっとさかのぼれば王権という考え方もあると思うんですけれども、皇族、王権の方から、日本だと最近では、昭和天皇がお亡くなりになられたときに政令恩赦があったと聞いておりますけれども、そっちの、政令恩赦の意義というものは現在もあるのかないのか、どのようにその意義が変わってきているのかというところを教えていただきたいと思います。

片岡政府参考人 政令恩赦ですが、これまで、皇室または国家の慶弔事に際して、政令で恩赦の対象となる罪や刑の種類、基準日等を定め、一律に行われてきたものであります。憲法施行以降では計八回実施されているものと承知しておりますが、いずれも、ただいま申しました皇室または国家の慶弔事に際して行われてきたというところに意義を見出しているのではないかと思っております。

井出委員 海外の事例を少し見ますと、アメリカでも合衆国憲法に恩赦の規定があって、ただ、日本は今、政令恩赦はずっとないやに聞いておりますけれども、個別の、本人が願い出て審査する恩赦は、常時、毎年数十件あるというように聞いておりますが、アメリカでは、恩赦が全くないような年もある。イギリス、カナダ、いろいろなところを見ても、日本ほどはその件数がないのかなというのがいろいろな文献を見てきた中での私の感想なんです。

 ただ、そうしますと、私は、個別の恩赦、社会復帰をするための復権というものは一つの意義があるかと思うんですけれども、天皇や王権の冠婚葬祭ですか、昭和天皇がお亡くなりになったときですとか、もっとさかのぼれば御成婚や御即位のときにも、そういう節目で恩赦があったやに聞いております。そういうものは、大昔の、王様、王権が裁判の誤りをなくしていくとか、そういうものともちょっと位置づけが変わってきているのかな、正直、その必要性があるのかなと思うんですよ。

 というのは、日本国憲法の前は、恩赦というのは恩赦令だったと聞いているんですけれども、完全に天皇陛下のおやりになることで、それが、日本国憲法になって、国事行為と一緒で、内閣の助言によってやる、行政が入ってくる。

 そのときのいきさつを見ますと、冒頭に少し議論をさせていただいたような、刑事司法の機能を一層完全な方向にするために運営をしなければいけないですとか、恩赦の審査が、従来の形式的なものより、より実質的なものに進まなければいけない、これは、恩赦法が制定されたときの恩赦制度審議会の最終意見書にそのようなことも書いてあるんです。

 そうすると、私の考えとしては、方向性としては、これからは、個別の恩赦は常時やっていただく。その件数が本当に適正かどうかというのはなかなか推しはかるところはないんですが、とにかく、個別の恩赦というものはやっていく意義があるだろうと。その一方で、政令恩赦というものを残している必要が一体どこまであるのかなという疑問がありまして、その点についての御見解をいただきたいと思います。

片岡政府参考人 御指摘のとおり、明治時代あるいは大日本帝国憲法下におきましては、恩赦は天皇の大権事項ということで、特に、意義とか、どういう内容であるべきかという議論はそれほどなかったように聞いております。

 最近におきまして、政令恩赦を考える際に、やはり、するかどうかに加えまして、内容をどうするかということが繰り返し議論になっているようでございまして、特に、刑事政策的に意義があるかどうかということでかなり議論がされているようでございます。

 ということで、政令恩赦も、かなり復権に重点を置いた政令恩赦になってございまして、そういう意味では、刑事政策的合理性が重視されるという運用がなされているのではないかと思っております。

井出委員 個別の恩赦は、昔の文献を見ますと、恩赦状ですか、何か書面を保護観察所長さんから受け取ったりするような場面もあると聞いているんですけれども、政令恩赦というものは、本人が恩赦を受けたということはわかるものなんですか。

片岡政府参考人 特に個別に通知はしないんですが、政令ですから当然公布されますので、それでわかっていただくというシステムになってございます。

井出委員 政令恩赦は、何かの法律違反の罪種に照らして、未成年の飲酒であるとか喫煙であるとか、そういうものについて罪を免ずるみたいなケースがあったということは聞いたことがあるんですけれども、それだと、本人の自覚、僕は、私は恩赦を受けたんだというところまでは至らないのかなと。言葉は悪いですけれども、非常に形式的なのかな、そういうことを言われる専門家もいるんです。

 個別の恩赦との違いですね、昭和三十年、四十年ぐらいだったかと思うんですけれども、昔の昭和の古い文献を見ますと、政令で恩赦を受けた人は再犯をする人が三割いる、個別の恩赦を受けた人は再犯率が三%だというような文献もありまして、私は、ああそうなんだ、なるほどなと思ったんです。

 ですから、そういうものをいろいろ見ていますと、恩赦、恩赦法というものがこれからも存続、必要であるとするのであれば、やはり個別の恩赦の方に力を入れていっていただきたいなと思いますが、その辺はいかがでしょうか。

片岡政府参考人 先ほど言いましたように、政令恩赦は、いろいろ国家的な慶弔事があったときに政令恩赦をするかどうかを考えるというような、タイミング、あるいはそういう出来事があってのお話でございます。

 常時行っている個別恩赦は、まさに常時行っておりますので、力を入れるとか入れないとかというより、日常的に常時行っている。御指摘のように、刑事政策的な合理性を重視するように努めていきたいと思っております。

井出委員 個別の恩赦について、手続の関係で伺いたいのですか、まず、刑を終えて、しかるべきタイミングで、犯罪を犯した人に、恩赦という制度があるということがきちっと周知をされるのかが一点。

 それともう一つは、恩赦を本人が出願したときに、出願先は、保護観察所であったり検察庁であったり、服役していれば刑務所だと聞いているんですが、その保護観察所、検察庁、刑務所が、本人からの恩赦の出願を受けて、いろいろ調べて、意見を付して、中央更生保護審査会、この間、同意人事がありまして同意しましたが、そこで審議をして、法務大臣のもとに行く。法務大臣が御決定をされて内閣にというような手続だと聞いているんですが、恩赦を出願したときに、どのぐらいの期間で結論を出さなければいけないとか、その辺の制度的なものがしっかりしているのかどうか、教えてください。

片岡政府参考人 御指摘のように、まず、さまざまな場所、刑務所あるいは刑務所の外等にいる人から恩赦の出願がありますと、刑務所の中にいる人は刑事施設の長、そして保護観察中の者は保護観察をつかさどっている保護観察所の長、そのほかの人ですと検察庁の検察官というような者が上申者としてまず第一次的にその検討に当たるわけでございます。

 その段階での期間の限度といいますか、それは特に規定はございません。

井出委員 過去の文献を見ますと、先日、同意人事のあった中央更生保護審査会のことを指していると思うんですけれども、恩赦の出願が多いような時期、確かに、ちょっと古いデータで恐縮なんですが、恩赦は、二〇〇〇年前後、一九九七年から二〇〇二年ぐらいまでの間は、八十件、九十件で推移をしているんですね。それが、一九七〇年代後半ですと、二倍の百六十件、百八十件ですとか、そういう時代もありまして、例えば一九六九年などは、恩赦にも特赦、減刑、復権といろいろあるんですけれども、八百五十二件あったという記録があって、二〇〇二年は九十六件なんですね。

 古い文献を見ると、審査会ですとか、恩赦の出願に対して、それに応えるだけの体制、人員がなかったというような文献も見たことがあるんですけれども、一つの出願がされたときに、例えば一年以内に結論を出さなければいけないとか、そういう期間が決まっていれば、それに応じて、人員ですね、この間の同意人事で私が思ったのは、その方の再任よりも、常勤、非常勤と、果たして人数が足りているのかなとか、そっちの方に思いが行ったんです。

 やはり、個別の恩赦の出願があったときに審査にきちっと期限を設けて答えを出すような、そういう制度設計にしていくべきだと私は思いますけれども、いかがでしょうか。

片岡政府参考人 現状の審査期間が長いのではないかという趣旨かと思いますが、事件はさまざまでございまして、例えば、非常に重い罪を犯した者、無期懲役囚からの恩赦の出願等にはやはり審査に時間がかかりますし、復権で時間的に非常に切迫している者は、その辺の事情も考慮して、中央更生保護審査会で急いで審査をしているというようなことも承知しておりますので、現状では、特に運用等を変える必要はないのかなと考えております。

井出委員 私も、恩赦の復権というものを知ってから、職業の資格などに係る権利を回復するものですから、そんなに重い罪だと、余り恩赦というのはないのかなと思っていたんですよ。軽い罪が対象で、割合すぐに出るのかなと思っていたんです。

 それがどうも、昔、保護司の方が手記を書きためた、財団法人日本更生保護協会というところが、昭和五十二年に、私が生まれる前ですけれども、「恩赦への道」という保護司の手記を集めたものがあって、それを見ますと、殺人事件、強盗殺人事件とか、懲役十五年ですとか、やむにやまれぬ事情で酒びたりの御家族を、酒乱で手がつけられないからあやめてしまった、自分も心中しようと思った、そういうようなケースもあるんですけれども、ただ、殺人や強盗殺人事件も、実際に恩赦を受けた方がいるんだなと思いました。

 そもそも恩赦というものは、罪を犯して刑を言い渡されて、復権の場合、刑期を終えられてからの申請になると思いますから、今おっしゃったような、私も最初ちょっと誤解していたんですけれども、罪の重い軽いじゃなくても、ある程度きちっと調査期間を区切って、重大犯罪を犯した人が大して期間もたっていないのにすぐに恩赦してくれと、それは慎重に審査しなきゃいけないと思うんですけれども、十分な時間が、もう十何年たって恩赦を受けた方のケースを見ておりますと、職場、地域、そういったものに最初はそのことを隠したり、相手方ものみ込んで言わないでやってきたんだけれども、それでもどうしてもということで恩赦をされるということです。ですから、これだけ長期間が経過をしていれば、ある程度調査期間というものは、私は、罪種によってそこまで左右される必要はないのかなと。

 むしろ、恩赦を申し出てもいつ結果が出るか出ないかわからない、そういうものよりも、きちっと一定期間を決めて結論を出しますよという方が、恩赦というものへの理解、出してみようかな、そういうものが進んでいくと思うんですけれども、いかがでしょうか。

片岡政府参考人 まず御理解いただきたいのは、例えば刑事裁判でも、交通事件の裁判と強盗殺人の裁判で審理期間が変わってくる。事件の審理についての時間というのは、やはり質的な、あるいはおのずから必要とされる審理期間があろうかなと思います。

 ただ、その上で、御指摘のありましたように、特に無期懲役を受けて仮釈放になって、長年、社会で再犯もなく過ごしてきて、その手記にあるかどうかわかりませんが、保護司さんが寄り添って、それこそ二十年、三十年とかけて真面目に社会で暮らして、やっと恩赦が与えられる、その時点でもうかなり御高齢になっている、今、イメージとしてはそういう運用がなされています。

 そしてまた、そのような事件の審理の期間についてお尋ねですが、そういうような事件が中央更生保護審査会に上がってきた場合、やはりそれでも、恐らくそういう事件のほとんどは、被害者、御遺族がいらっしゃる。その感情、特に、審理が長引く場合は、感情がまだ癒えていない場合もある。でも、片や、社会で長年、本人は真面目にされているということも場合によっては何らかの形で理解していただかないと、お伝えしていかないといけないというような、やはりそういう作業も必要になってきますので、一律に、はい、恩赦にしましたということでは片づかない事件が重大事件になるほど多いということで、おのずから審理に要する時間という質的な違いがあるということを御理解いただければと思います。

井出委員 恩赦の制度は、恩赦の出願があって、関係者に聞き取りをしたり、実際にその手記を見ますと、保護観察所の方が被害者のところに行って、恩赦にしてもいいかと。これは、恩赦を受けた方のケースしか載っていないので、拒否されたことはわからないんですけれども、中には、被害者の分も二人分生きてくださいというようなことをおっしゃられる御遺族の方もいるやに聞いているんです。

 今、片岡さんがおっしゃった被害者感情でいえば、被害者の説得に時間がかかるから、すぐに、はい、恩赦にしましたというわけにはいかない、でも、例えばそこから五年待てば、被害者がいいよと言ってくれるかもしれない、それで、恩赦の結論を出す時期を、では、その間、説得をするということではないのかなと思います。

 やはり恩赦というものが、これは私、いろいろ見ていて思うんですけれども、再犯防止、社会復帰をしていく上で、今、社会で支えていこうというところは大変あると思うんですよ。だけれども、犯罪をしたということは、最後、いつまでも本人の心の中には残り続けるわけですね。どんなに周りの家族、会社、友人が、本当に仙人のような人たちで、温かく見守ったとしても、本人の心の中にはその犯罪というものは残っていて、だから、やはり引っ越さなきゃいけないんじゃないかとか、自分の親戚、おいっ子、めいっ子が結婚するけれども、自分がいたら迷惑になるんじゃないかとか、そういうことを思って恩赦を申請するという方が多いなと思って見ていたんです。

 だから、私は、個別の恩赦というものは、当然、恩赦を受けられるような方ですからしっかり更生している人が前提ですけれども、その加害者の自責の念というものを少しでも軽くする唯一の方法かなと。これは、この手記を見ていますと、わらにもすがるような思いなのかなと思うんですよ。

 それに対しては、やはり一定の期間で結論を出してやっていただきたいと思いますけれども、どうでしょう。

片岡政府参考人 大変ありがたい御指摘をいただきました。

 私、言葉足らずでございましたが、被害者あるいは遺族の感情が癒えていないというだけで恩赦は絶対に認めない、そういうことではございません。ただ、本人が、被害者あるいは遺族への、例えば謝罪の意思を示しているかどうか、あるいは現に持っているかどうかということは、これは本人の改善更生という点からも非常に重要な要素になります。

 中央更生保護審査会の審議の内容に入りますので、ちょっと抽象的に言いますが、例えば、自分が殺した被害者の月命日に毎月お墓参りをして、それが二十年続いているというようなことは、これはもう、被害者の遺族はまだ大変厳しいお気持ちをお持ちだろうけれども、恩赦の対象となるべき本人は非常に改善更生の域に達しているのではないかという判断もされるケースもございます。

 ただ、私が先ほど申しましたのは、無期懲役のケース、本来なら生涯刑務所に入っていないといけない、それで遺族も納得し、場合によっては世間もそれで承知して、事件の裁判が終わったのを行政の力で変更するわけですから、やはり少なくとも、改善更生が、客観的にといいますか、何らかの形で強く示されているということが大事で、このようになっているものと承知しております。

井出委員 ありがとうございます。

 きょう、林刑事局長にも来ていただいているので、ちょっと伺いたいんですが、今は私、個別恩赦を、積極的に、少しいい面を捉えて話をさせていただいたんですが、恩赦というものは、一度出た判決、司法権の出した判断を行政の方で変えるということになって、そのことに対して大変慎重でなきゃいけないというような論文もたくさん見てまいりました。

 ですから、刑法、一律の法律の中で下された判決、司法判断に対して、個別具体を見て何かできることをやるのが恩赦だというような、ただそれは、法律のたてつけからすると恩赦の乱発というものは望ましくないと書くような論文も多数見ているんですが、刑事捜査、犯罪を犯した人がきちっと罪を償う処罰をしなければいけない立場からして、この恩赦の制度の必要性というものをどのようにお考えになっているのか、伺いたいと思います。

林政府参考人 恩赦の目的あるいは必要性というのは、先ほど保護局長からございましたように、法律というものが、ある意味、画一性を持っている、あるいは裁判の時点での固定性を持っている、こういったものから生ずる欠点を具体的な妥当性の観点から事後的に修正する、こういった機能を有しているんだと思います。

 そういった意味で、しかも、恩赦の制度は、存在理由についても歴史的にさまざまなものが入り込んでいて、しかし、最近では、やはり恩赦の中でも、どちらかといえば刑事政策的意義というものに重点を置いて運用するというような方向が見られるということは承知しているわけであります。

 その場合に、あくまでも判決、裁判自体は、やはり裁判の時点で個別の事情も当然考慮いたしますが、当然のことながら、公平性というものの観点から判断を下して、ある判決がなされるわけでございます。それに対する修正という機能としての恩赦の機能は、存在目的はあると思うんですけれども、根本が法の公平性というものから出発したものを事後的に修正するということになれば、それはやはり限定的な役割を果たすことになろうかと思います。

 刑事政策的意義があるからそれを積極的に活用しようということの一つの方向性は認められるとは思うんですけれども、その刑事政策的意義というものは、恩赦という制度、ある意味限定的な、あるいは例外的な取り扱いを行う制度をもって刑事政策的意義というところの活用に使うには、やはり制度の成り立ちからしてやや無理があるのではないかなと考える次第でございます。

 ですから、刑事政策的意義の部分については、やはり他の方法によって再犯防止、社会復帰に向けての取り組みというものが図られるべきではないかな、このように思います。

井出委員 かつては、王権に基づく、王族の何か慶弔があったときということで恩赦を一斉にされて、それは皇族の何か節目があったという、そこで平等性を担保しているんだというような話、公平性があるのかもしれないんですけれども、私からすると、政令恩赦、特に王権の、昔の概念の恩赦というものは、その意義が今あるのかなと。むしろ、社会復帰ということから考えれば個別の恩赦をやっていってほしいと思いますし、王権の方の恩赦は、もともと裁判の誤りを正すというような話もあって、今、再審請求ですとか取り調べの可視化ですとか、そういうものもこれから始まりますけれども、そうはいっても冤罪事件というものもなくならないから、そういう意味では、残しておく意義はあるのかなと思います。

 ただ、個別の恩赦の方は、さっき申し上げたんですけれども、更生している人が、自責の念、恐らく御本人がお亡くなりになるまで、程度の差こそあれ、そのことを、更生されれば更生されるほど思いを続けるのかもしれないんです。そういう人たちには、恩赦を出願する、恩赦というものがある、やってみようか、そういう権利に近いものがあるんじゃないかなと私は思っていて、それで、今、林さんは、それでも限定的、例外的というような、もちろん、裁判の中で、判決の中で事件の個別性、特異性もしっかり判断される、そうはいっても法律の公平性がある、だから、その例外として恩赦があるんだよということだと思うんです。

 ただ、私、恩赦を出した結果認められなかった、そういうケースの文献が余りないので、なかなかうまく申し上げられないんですけれども、更生して、保護観察司なり、本当にびっくりするんですけれども、この本を見ていれば、今では考えられないような公職に、ある程度公の仕事に最初いて、また戻っているようなケースもあるんですね。それは私もほとんど知らなかったんですけれども。

 だから、恩赦というものは、権利とはっきり断言することは私もしかねるんですけれども、ただ、一つの権利としての捉え方をしてもいいんじゃないかなと思うんです。その点は、片岡さん、いかがでしょうか。

片岡政府参考人 恩赦といいますのは、先ほども申しましたように、行政権によって、既に司法が下した判断の変更、場合によっては消滅というものを意味するわけで、やはり、有罪判決が確定した者あるいは服役した者についてそこまでの権利性を認めるということは、なかなか難しいかなと思っております。

井出委員 なかなか難しいという話がありまして、個別個別でやっていくのかなとも思いますけれども、ただ、恩赦が、出願したものが滞っているとか、そういうことはないようにしていただきたい。

 大臣に申し上げたいんですが、今、再犯の防止に力を入れていくと。一方で、犯罪の件数は減っていますけれども、質ですね、犯罪の質も変わってきて、性犯罪に対する罰則の下限の強化の議論もありますし、これは選挙権年齢が大きいんですけれども、少年法の年齢引き下げの議論もあります。

 私は、犯罪を犯した人をどんなに社会で支えても、本人の自責の念というものは残ると思いますし、あと、冒頭紹介した、インターネット等でいつまでもプライバシーがさらされるというところもございますので、ぜひ、犯罪を犯して更生を目指している方の権利を少しでも回復、権利を回復というのもちょっと言葉が余りよくないんですけれども、ですから、犯罪の効力を失うですか、もとの状態に戻るですかね、そのことについてもこれから思いをいたしていっていただきたいと思いますが、最後、一言だけお願いします。

岩城国務大臣 委員からお話がありましたとおり、再犯の防止は極めて重要な課題で、国を挙げて取り組んでおります。

 そんな中で、更生を図ろうとする、立ち直りを図ろうとする方々のためには、居場所と仕事が必要であります。民間のボランティアの皆さん方に支えられてそういった活動を続けておりますけれども、今お話がありましたとおり、罪を犯した方々が気持ちを新たに取り組めるような、そういう環境づくりにつきましても、私ども意を用いていきたいと考えております。

井出委員 終わります。きょうはありがとうございました。

葉梨委員長 以上で井出庸生君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前九時五十二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

葉梨委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。城内実君。

城内委員 自由民主党の城内実でございます。お時間をいただきまして、ありがとうございます。

 本日は、主に二点、法制度整備支援について、二つ目は司法修習生の給費制の復活実現の問題、そして、時間がありましたら、保護司の方々の待遇改善について質問させていただきたいと思います。

 まず最初の質問ですが、法制度整備支援の意義、重要性についてです。

 法制度整備支援というのは、具体的には、基本法令の起草の支援だとか、あるいは人材育成支援等を内容とするものでありまして、我が国は法治国家であり、法の支配を大変重視する国でありまして、その強化を国際社会に訴えてまいりました日本としては、世界各地の、特に開発途上国に対しまして、将来にわたり、国際社会における名誉ある地位の保持、そしてプレゼンスの向上のために、これは大変有効なツールであるというふうに考えております。

 実際、法務省法務総合研究所国際協力部、こういうのがあると実は私、知らなかったのですが、この国際協力部、インターナショナル・コオペレーション・デパートメントは、東京ではなくて大阪の方にあるそうですけれども、今、そのパンフレットを私は手に持っておりますが、そのあけたところに、亡くなられました元法務大臣の三ケ月章東京大学名誉教授が、こういうことを言っているわけですね。ちょっと引用させていただきたいと思います。

 アジア諸国に先立って、全く独力で、フランス法・ドイツ法・英米法、という世界の法制度の三大潮流を自らの栄養として取り込んだ日本の法律制度と法学は、かくて、漸く外に向かって自らの体験を語りかけるべき時を迎えたのである。

 私は、これを読んで大変感銘しました。

 思い起こせば、明治時代、まさにフランス人のボアソナード、フランス語で民法を起草した方で、これはどうも採用されなかったようでありますけれども、そういった方が本当に日本の法制度のために最大限努力されましたし、そして、フランス法だけではなくて、英米法、独法、いわゆるハイブリッドで、日本のこれまでのいろいろな伝統文化を踏まえつつ、ハイブリッドで法律ができた、法制度ができたということであります。

 こういった経験を生かして、今まさに、アジアやアフリカといった開発途上国の持続的成長のための環境整備や日本との経済関係強化、さらには投資環境の整備にも当然資するわけでありますから、その地域の民生を向上するだけではなくて、日本との経済関係の強化といった観点。さらには、当然、そういった国の、法治国家性という言葉があるかどうかわかりませんが、そういったものを高める、そういう役割を果たすわけですから、法を通じた世界平和の達成手段として、日本の安全保障の観点からも重要な意義を有するというふうに考えております。

 この法制度整備支援の意義、重要性、取り組みへの意気込みについて、副大臣にお答えいただきたいと思います。

盛山副大臣 城内委員は国際関係に大変お詳しいわけでもありますし、今おっしゃられた、そのとおりであると思います。あるいは、三ケ月先生がおっしゃった、そういう状況に今の日本がやっと来れたのかな、そんなふうに私自身も感じているところでございます。

 法務省では、法制度整備支援に関する基本方針をつくっておりまして、これを受けまして、法の支配の確立、グローバルなルールの遵守の確保、日本企業の海外展開に有効な投資環境の整備などの観点を踏まえながら、さっき城内委員がおっしゃったとおり、主にアジアを中心とした国々に対して立法支援や人材育成支援などの法制度整備支援活動を着実に実施してきております。

 このような支援は、議員御指摘のとおり、支援対象国の持続的成長に貢献するとともに、それらの国々に展開する我が国企業の安定した経済活動、あるいは法による平和的解決を促進するものとして、日本の安全保障にも重要な役割を果たすもの、そういうふうに私どもも考えております。

 私は、昨年の十二月に、法制度整備支援ということでベトナムとラオスへ行ってまいりまして、両国の司法大臣とも意見交換、協議をしてきたところでございますが、両大臣ともに、日本の法制度整備支援に対して大変高く評価をしていただいております。

 民法や刑法を起草するというところ、それからさらに、我が国の法曹関係者が現地に長期滞在をいたしまして、現地の司法省とともにシステムをつくっていく、あるいは人材を研修していく、こういうことに大変高く評価をいただいていて、ありがたいな、そんなふうに思ったところであります。

 いろいろな物の輸出も大事なんですけれども、目には見えない法のシステム、これを日本が輸出というんですか、現地の国に導入を図るよう働きかけをしていく、これは大変大事なことだと思います。

 そして、ベトナム、ラオスから言われましたことは、ほかの国と違って、日本は自分たちの国の現状を踏まえてやっていただけるのがありがたい、こういうせりふがございました。多分、ボアソナードのコードシビルは、フランスのものをそのまま輸入した、だからこそ日本でそのまま民法典として採用されなかったんじゃないかと思うんですが、日本はその現地に応じて対応を変えている、それが我々の強みではないかと思います。

 いずれにせよ、今後とも着実に、そしてまた戦略的な観点も踏まえまして、法制度整備支援に努めていきたいと考えております。

城内委員 今、盛山副大臣から、まさにベトナム、ラオスの御経験の話をされまして、私は非常に感銘を受けました。

 法制度整備支援は、これから日本が開発途上国に対して行うODAの本当に重要なツールの一つであるというふうに私は考えております。実際、まず最初に法制度整備支援が行われたのはベトナムだというふうに伺っておりますが、一九九四年のことであります。それから二十年以上にわたって、アジアを中心に行ってまいりました。

 現在も、経済財政運営と改革の基本方針二〇一五、これはいわゆる骨太の方針ですが、あるいは、インフラシステム輸出戦略、新東京戦略二〇一五、知財推進計画二〇一五といった政策のもとで、この法制度整備というのがしっかりと盛り込まれて、うたわれているわけであります。

 例えば、知財推進計画二〇一五では、新興国等の司法関係者等に対して研修を行うなど、知財司法人材の育成を積極的に支援するということが書かれておりますし、また新東京戦略二〇一五には、メコン地域諸国の発展が域内格差是正の観点から重要であり、法制度及び知的財産制度の整備を実施するということがしっかりとうたわれているわけでありますが、これまでの法制度整備支援における具体的な成果について、法務当局からお答えいただきたいと思います。

高嶋政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、これまで法務省におきましては、さまざまな法制度整備支援をやってまいりました。

 その具体的な成果ということですが、非常に多々ございますので、最近のものを紹介させていただきますと、ベトナムでは、二〇〇五年、二〇一五年に改正民法、それから二〇一一年、二〇一五年に改正民事訴訟法、また二〇一五年に改正刑法が成立しておりまして、カンボジアでも、二〇〇六年に民事訴訟法、二〇〇七年に民法が成立、インドネシアにおきましても、二〇〇八年に和解、調停に関する最高裁規則が成立するなどしておりまして、これらは我が国が法令の起草の支援をやっているものでございます。

 それから、人材育成の面に目を転じますと、ベトナム、カンボジア、ラオス、ミャンマー等の国々につきまして、合計二百回以上の本邦における研修を実施しまして、その参加人数は延べ二千人を超えております。法務省が支援した人材がそれぞれの国の司法の現場等で活躍し、多くの人が指導的役割を果たしているところでございます。

 現在も、御指摘のインフラシステム輸出戦略あるいは新東京戦略二〇一五等の政府の政策にのっとって法制度整備支援を推進しておりまして、最近においては、インドネシアでの知的財産に関する新たなプロジェクトを始めたところでございます。

 引き続き、着実かつ戦略的に実施していきたいと考えております。

城内委員 今、いろいろ具体的な成果について御説明がありましたが、特に最近では知的財産権の問題、これは当然、日本にとっても経済交流をする上で大事ですから、特に力を入れていただきたいと思います。

 先ほど盛山副大臣がおっしゃっておりましたけれども、日本の法制度整備支援のいいところは、相手国に日本の制度をそのまま押しつけるというのではなくて、我が国もそうでした、先ほど述べましたように、フランス法、英米法、ドイツ法など、既存の、これは中国系というんでしょうか、今までの、江戸時代から、前から伝わるいろいろなおきてや制度とうまく融合しながら、自国の文化に合った法制度をつくってきたということであり、当然、アジア諸国もそれぞれの国の独自の文化がありますので、その国の実情やニーズに合った支援をしているということでありまして、これが非常に大事だと。

 特に、相手国から高い評価を得られているというふうに副大臣もさっきおっしゃっておりましたが、その重要性に加えて、お互いにウイン・ウインの関係となる法制度整備支援については、私は、今後も積極的に、そして効果的に実施していかなきゃならないというふうに考えております。

 そのためにも、法律の専門家の活動を基礎としつつ、関係省庁、法務省だけではなくて、外務省あるいは警察庁、その他いろいろな省庁がございますけれども、あるいはジェトロとかJICAとか、さらには日弁連、各種経済団体とうまく連携を図りながらやっていくことが大事だというふうに考えますけれども、この点についての取り組みについてお尋ねしたいと思います。

高嶋政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のように、法制度整備支援を行うに当たりましては、既存の法令等をそのまま植えつけるというのではなくて、やはり相手国の歴史、文化、社会に適合し定着するように、相手国の主体性、自主性を重んじながら、法律の起草のみならず、執行、運用のための体制整備ということが大事なんだろうと思います。

 支援活動の内容としましては、現地への法律専門家の派遣、それから日本での研修、現地でのセミナー、これらの活動にアドバイスを与える日本国内の作業部会、こういったものを組み合わせて、相手国のニーズに合わせた活動内容としております。

 法律専門家だけではなく、国際協力機構、JICA、それから外務省、あと、法律関係では最高裁、日弁連等の関係機関とも協力しながら行っておりまして、当省がJICAとともに主催しております法整備支援連絡会というのがございますが、これを通じまして、その他の省庁、経済団体等とも連携を図っているところでございます。

 今後とも、関係機関との協力を強化し、効果的な法制度整備支援を実施してまいりたいと考えております。

城内委員 引き続き、積極的にこの分野について取り組んでいただきたいというふうに思っております。

 なお、先ほど法制度整備支援については法律家の活動が重要であるというふうに申し上げましたけれども、効果的な法制度整備支援の実施のためには、法曹人材が実際に現場で、現地で活動することが重要だというふうに考えております。

 例えば、最近の例で言いますと、先ほど知財の分野が非常に重要だというふうに申し上げましたけれども、ことしの二月八日から十一日の日程で、日弁連によるミャンマー訪問というのがあったというふうに伺っております。熊谷さんという元特許庁の専門家の方と、弁護士の方十九名がミャンマーに参りまして、ワークショップをしたり意見交換をして、それは大変高く評価され、現地の報道でも、テレビ等でも取り上げられたと。行かれた方がびっくりしたというぐらい、本当に我々が思っている以上に効果があり、感謝される、そういう分野であるということを改めて強調したいと思います。

 法制度整備支援において法曹人材が現地で支援活動を行う、その意義や重要性についてどのように考えていらっしゃるか、お答えいただきたいと思います。

高嶋政府参考人 お答えいたします。

 法制度整備に関することですので、やはり一番活躍していただく必要があるのは法律の専門家ということになります。

 それで、日本からの法曹有資格者につきましては、長期にわたって現地に派遣しております。長期専門家としては、一年以上現地に滞在しまして、その国の法制度の実情を調査、カウンターパートとなる行政機関等の職員への助言、支援する内容の企画立案の援助、それから現地機関との連絡調整などの活用を行っております。

 やはり法制度を運用していくということが非常に大事でありまして、その国ならではの生ずる疑問や問題点、あるいはどこでも生じ得る問題点、こういうのはやはり法律家ならではの支援できる部分というのがございます。また、現地で行うセミナーや本邦研修を補足するという面も大事でございます。

 こういう点で、現地に長期間、法律の専門家が派遣されるということは非常に有益だというふうに承知しております。また、それによりまして現地の法律関係者との間に信頼関係ができまして、これがまた我が国との関係をよくしていくためには非常に大事だというふうに考えているところでございます。

 もう一つ申し上げますと、法曹人材が法律家としての観点から現地での調査を行うことによりまして、その国の法制度の実情や法的課題に応じたきめ細やかな支援ということが可能になりますので、そういう点でもやはり長期間の滞在というのは大事なところであり、外国からも評価されているところでございます。

城内委員 一言で言うと、外交上のツールとして非常にこれは重要である、しかも効果的だということが今の御答弁からもうかがえるわけであります。

 次に、国際的な分野における法曹人材の活用の重要性について、改めて質問させていただきたいと思うんです。

 私は個人的には、例えばASEAN地域などの各国大使館に積極的に法務アタッシェ、法務省かあるいは日弁連の弁護士さんでもいいんですけれども、法務アタッシェを置くことが重要じゃないかと思います。また、法制度整備支援だけではなくて、海外の現地における法制度の調査研究等を通じた、海外展開をする日本企業等にいわゆるバックアップ支援、そういった分野についても、関係省庁や日弁連などと連携して、弁護士さんを初めとする専門家の活用というのを積極的に進めていくべきだというふうに考えております。

 この点につきまして、実施状況はどうなっているか、お答えいただけますでしょうか。

萩本政府参考人 在外公館への法務アタッシェの配置につきましては外務省の所管になりますので、法務省の所管の範囲でお答えしたいと思います。

 委員御指摘のとおり、日本企業の海外展開、特に中小企業の海外展開を法的な側面から支援することは重要な政策課題でして、そのためには、弁護士を初めとする法曹有資格者の専門性をいかに活用するかも重要なポイントの一つであると認識しております。

 そのような観点からの取り組み、専門家の活用の具体例を御紹介しますと、例えば今委員から海外現地における法制度の調査研究というお話がありましたけれども、現在、法務省におきましては、海外に進出する日本企業にとって有益な情報を収集し、それを広く提供するという取り組みを進めております。平成二十六年度から、日本企業の進出が特に期待される東南アジアの国々において、現地の法制度やその運用の状況、現地に進出した日本企業や海外在留邦人が直面する法的問題の実態などにつきまして、弁護士に委託して調査を行っておりまして、平成二十八年度の政府予算案でも、同様の調査委託を実施するための予算を計上しているところでございます。

 また、委員からは関係省庁や日弁連との連携という御指摘もありましたが、政府全体の取り組みとしまして、内閣官房に国際法務に係る日本企業支援等に関する関係省庁等連絡会議が設置されておりまして、その中で、日本企業や海外在留邦人が海外において直面する法的問題に対し、関係省庁や日弁連を含む関係機関、団体が連携して対応し支援する方策についての検討を進めております。

 法務省としましては、引き続き、海外に展開する日本企業の支援といった分野におきましても、弁護士を初めとする専門家の活用が進むよう、関係省庁や関係機関とも協力して、必要な取り組みを進めてまいりたいと考えております。

城内委員 今お答えにありましたけれども、弁護士さん初めいろいろな人材を連携しながら活用していくということは非常に重要だと思います。ただ、ここで給費制の問題になるんですが、では、そういった人材が確保できるのかという問題なんですね。

 というのは、法曹志望者が今激減しているではないですか。これは清水先生も前回この給費制の問題を質問されましたけれども、私も聞いていて、全くそのとおりだと思いました。法科大学院適性試験受験者数、二〇〇九年度は一万七千九十七人。法科大学院入学者数が当時四千八百四十四人。これが、何と二〇一五年度で、法科大学院適性試験受験者数が三千五百十七、これはもう五分の一以下。そして、法科大学院入学者数が、二〇〇九年度で四千八百四十四人、二〇一五年度は何と二千二百一人、二分の一と激減しているんですね。

 先ほど、前半部分、法制度整備支援には人材が活用されなきゃならないと言いますけれども、今これだけ有為な人材が法曹を志望しなくなっているという実態がありますが、これは、その要因の最大の理由の一つとして、平成二十三年に実施されました給費制から貸与制への移行によると私は確信しているんですけれども、この点について、副大臣はどのように考えていらっしゃいますでしょうか。

盛山副大臣 法曹志望者の減少の要因の一つとして司法修習生の経済的負担があるとの指摘がされていることは、承知しております。また、前回の委員会でも、清水先生からも御指摘があったところでございます。

 他方、平成二十五年六月の法曹養成制度検討会議の取りまとめにおきましては、司法試験の合格状況における法科大学院間のばらつきが大きく、全体としての司法試験合格率が高くなっていないこと、司法修習終了後の就職状況が厳しいこと、法科大学院において一定の時間的、経済的負担を要することから、法曹を志願して法科大学院に入学することにリスクがあると捉えられていること、これらが法曹志望者の減少の原因として挙げられているところであります。

 しかしながら、きょうの、あるいは先日の、城内先生あるいは清水先生の問題意識をしっかり念頭に置きながら、司法修習生に対する経済的支援のあり方について、法曹養成制度改革推進会議決定を踏まえてしっかりと検討していきたいと思います。

 法曹になりたいと思えるような環境をどのように整えるか、そこが大事なポイントであると思っております。

城内委員 実際、私は、当初はこれは貸与制でいいんじゃないかというふうに思っていたんですが、いわゆるビギナーズ・ネットの人たちの意見を聞いているうちに、これは大変だなと。やはりこれは、国民の理解を貸与制じゃないから得られないということは絶対にないと思います。国民の皆さんも必ず理解するはずです。

 と申しますのは、皆さん、まず、法科大学院に行かれる方、私立、国立ありますけれども、年間八十万とか百万円授業料を払って、それで、お金がない人は奨学金、返さなきゃいけないもの、あるいは返さなくていいものがあるにしても、借金を抱えながら法科大学院に通って、そしてまた、司法修習生になって給料をもらえない。

 兼業も多少できるようになったみたいですけれども、では実態はどうかというと、一日できて一時間、週末に三時間程度。というのは、司法修習生ですから、勉強の量が半端じゃないわけですね。

 したがって、私は、重い貸与金の債務があるから法曹界を断念する人が本当に数多くいるという実態を聞いて、驚愕いたしました。

 金持ちしか弁護士になれない、金持ちじゃないと検察官、裁判官になれないということであれば、私は、有為な人材が抜けていくということであれば、これは日本の社会にとってもよろしくないと思いますし、実際、弁護士さんもそうですけれども、社会的な貢献を積極的に行っております。いろいろな方に聞いたんですけれども、司法修習生として国からお金をもらって、自分はいわゆる準公務員というか公的な立場で社会に恩返しするという考えがやはり体にしみついているというふうにおっしゃる方も何人もおられました。

 そこで、ここで法曹の道を断念したある方の声を御紹介したいと思います。

 この方は、法科大学院で奨学金を借りていた。その合計額は、借りていたお金は約六百万円。そして、家庭が裕福でないため、このようにも言っております。

 ことし、父が病気で倒れ、今までの仕事を続けることができなくなってしまいました。今まで生活してきた家も売却しなければならない状況です。現在、私の母が昼と夜の仕事をかけ持ちして家計を支えており、母は、体力的には非常にきつい状態である。私には兄弟もおり、兄弟の学費もまだ必要な状況です。また、父の医療費が今後も必要になってきます。このような状況で一年間の司法修習へ行き無収入の状態で過ごすことは、母にさらなる負担をかけてしまうことになります。今の私に家族のために何ができるかを考えた結果、私が働いて両親や兄弟に仕送りをする、また、私の仕事が落ちつきましたら、遠隔地に住む両親を呼んで一緒に暮らすことによって家族の生活を支えたいという思いが湧きました。今後、私の後輩たちが経済的な事情から司法修習へ行くことを断念することがないような制度改革が行われることを切に祈りたい。

 そのお母様がこうおっしゃったそうです、法曹はお金がある人しかなれないんだね。この言葉は、非常に私は胸に突き刺さりました。

 こういうことはやはりあってはならないと思うんですね。本当に苦労して、やはり社会に貢献したい、あるいは、弱者の立場に立って弁護士の活動をしたい、人権を守りたい、こういう人が法曹の道を断念してしまったら、私は本当にこれは日本の社会にとってよくないというふうに思っておりますが、その点について副大臣はどのようにお感じになっているか、お願いします。

盛山副大臣 大変重い御発言だと、今、城内議員の御説明を伺って感じたところでございます。

 平成二十四年の裁判所法改正に際して、政府は、「法曹に多様かつ有為な人材を確保するという観点から、法曹を目指す者の経済的・時間的な負担を十分考慮し、経済的な事情によって法曹への道を断念する事態を招くことがないようにする」との附帯決議がなされております。

 先ほど来、城内委員がおっしゃっておられるように、有為な人材が経済的事情によって法曹への道を断念することがあってはならないと認識しておりますし、また、国内でのいろいろな社会貢献もそうでありますし、先ほど来、城内委員御指摘のような、海外に対して日本がいろいろな形で貢献をする、こういったことを考えましても、立派な有為な人材が法曹の道へ進んでいただきたい、そんなふうに私自身も感じているところであります。

 そして、先ほどの附帯決議におきましては、司法修習生への経済的支援については、「司法修習生の修習専念義務の在り方等多様な観点から検討し、必要に応じて適切な措置を講ずること。」ともされております。

 そして、その後も検討が進められておりますけれども、現在のところ、先ほども申しました司法修習生への経済的支援のあり方について、推進会議決定において検討するとされているところでございますので、今後とも、法曹養成制度改革連絡協議会を通じまして、最高裁判所等とも連携協力しながら必要な調査検討を早期に進め、前向きの結論が出るように検討を進めてまいりたいと考えております。

城内委員 副大臣から非常に前向きな御答弁がありました。給費制をぜひ復活させていただきたいと思います。

 司法修習が終わって数百万の借金を抱えて、では法制度整備支援で英語も勉強して海外でなんということは、非常に考えにくいんですよね。ですから、有為な人材を活用する意味でも、あるいは、法制度整備支援を、これから言葉も使って世界に打って出ようという人材をもっと輩出するためにも、私はやはり給費制をとにかく早く復活することが大事だと思いますので、その点を強調させていただきまして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

葉梨委員長 以上で城内実君の質疑は終了いたしました。

 次に、國重徹君。

國重委員 公明党の國重徹でございます。

 本日は、死因究明制度の充実強化についてお伺いさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 死因究明につきましては、昨年九月四日の当委員会におきましても、京都、大阪で相次いで発覚した青酸化合物による連続殺人事件を通して、薬毒物検査など科学的な証拠の重要性について訴えさせていただきました。今回は、それに引き続いての質問となります。

 本年一月一日に厚生労働省より発表されました平成二十七年人口動態統計の年間推計によりますと、昨年の年間死亡数は一昨年に比べて二万九千人の増、高齢化を反映して、近年増加傾向にあります。また、警察に届けられて警察が取り扱うことになった死体は平成二十七年で約十六万三千人、十年前より約一万四千人増加をしております。

 しかし、日本の死因究明制度というのは、諸外国に比べて必ずしも十分なものとは言えません。所管が複数の省庁をまたがっていることとか予算上の問題等の多くの課題があって、なかなか抜本的な対策が進んでいない、これが実情でございます。

 前回の質問の折、上川前法務大臣は、この死因究明体制の充実に向けた取り組みについて、「大変重要である」と述べられた上で、法務省としても、関係省庁としっかりと連携をしながら積極的に推進をしてまいりたいと答弁をされました。

 このたび大臣、副大臣がかわられましたけれども、今後も引き続きこの死因究明制度について積極的に取り組んでいっていただきたいと思います。岩城大臣が今、席を外しておりますので、副大臣、政府を代表して、今後の意気込み、また決意をお伺いいたします。

盛山副大臣 いろいろ御指摘、あるいは重要なポイントにつきましての御発言、ありがとうございました。

 我々としましても、充実した検視や司法解剖の実施による死因究明は、刑事事件における真実の発見、あるいは適切な捜査、公判の遂行のために重要である、そんなふうに考えております。

 昨年、法務委員会で当時の上川大臣が発言したところでございますけれども、法務省といたしましては、関係省庁と連携しながら死因究明に対する施策を積極的にこれからも推進してまいりたい、そんなふうに考えております。

國重委員 昨年、当委員会でもさまざま審議されました刑事訴訟法の改正法案、これにつきましては、捜査、公判が、取り調べ、また供述調書に過度に依存している、こういった状況を打開するために取り調べ以外の証拠収集方法を整備しようということで、さまざまな議論をしてまいりました。

 死因究明というのは、科学的で客観的な証拠収集の手段でございます。その強化は法務省が持っている問題意識とも合致するものであると思いますので、ぜひ今後も積極的な取り組み、今後もというか、より一層の取り組みをよろしくお願いいたします。

 続きまして、死因・身元調査法に基づく薬毒物検査の実施状況に関してお伺いをいたします。

 資料一をごらんください。

 死因究明というのは法律が非常に複雑にまたがっているんですけれども、今回お聞きするのは薬毒物検査の実施状況ということで言います。

 まず、犯罪死体及び変死体のうち犯罪の疑いがある死体については、犯罪捜査の一環として司法解剖が行われて、客観的、科学的な死因の調査が行われることになります。一方、変死体のうち犯罪にはよらないと思われる死体とその他の死体、すなわち非犯罪死体、これについては司法解剖は行われませんけれども、必要に応じて死因・身元調査法に基づく検査や解剖、いわゆる新法解剖が可能です。

 先ほど申し上げました京都、大阪の青酸化合物による連続殺人事件では、結果的に薬毒物検査が決め手となりました。日ごろより、一見非犯罪死体と思われるものについても検査がしっかりと行われていれば、連続して殺人が行われることは防げたかもしれない、私はそう思います。

 この事件も踏まえ、昨年質疑をさせていただいた折に、地域差なく広く薬毒物検査を実施していくべきだ、このように申し上げましたけれども、その後、警察庁として薬毒物検査の実施についての方針に変更等はあったのか、変更等の有無とその内容についてお伺いをいたします。

露木政府参考人 昨年九月以降に方針を変更したというわけではないのでございますけれども、前回の委員の御質問以降に施策を具体化したものとして、青酸化合物等に係る毒物検査の実施がございます。

 警察におきましては、これまでも必要な薬毒物検査を実施してまいりましたけれども、ただいま委員御指摘のとおり、昨年、一連の青酸化合物が使用された殺人事件の見逃し事案が発覚をしたということなどを踏まえまして、平成二十八年度から、原則として犯罪死体を除く変死体及びその他の死体に対しまして、青酸化合物等が検出できる測定器または青酸化合物を検出できる試験紙を用いた検査を実施する方向で検討を進めているところでございます。

國重委員 ありがとうございました。

 今答弁いただいた件、一歩大きな前進であるというふうに思います。

 今回、青酸化合物の検査をする、原則として全ての変死体とその他の死体に実施するということですけれども、ここで使用されるのは簡易の検査キットだと思います。これは、検知管というものをつけかえることで何種類かの薬毒物を検査できるものだと聞いております。また、警察庁としては、これまでも各都道府県警察に各種の検査キットを使用して検査するように指導されてきたとも聞いております。

 ただ、今回は青酸化合物の検査のみということですけれども、ほかにも、例えば一酸化炭素とかアルコールとか睡眠導入剤、こういった検査がある中、なぜ青酸化合物の検査のみを実施するのか、答弁を求めます。

露木政府参考人 昨年、先ほども申し上げましたとおり、一連の青酸化合物が使用された殺人事件に係る犯罪死の見逃し事案が発覚をしたこと、あるいは死因究明等推進計画において薬毒物検査の充実が挙げられていることなどを踏まえ、青酸化合物の検査を変死体及びその他の死体に対して実施することとしたものでございます。

 委員御指摘のとおり、一酸化炭素あるいはアルコールなどの検査についても、今までも予算措置などをやってまいりましたけれども、今後ともその点についてはもちろん変更はございません。ただ、一酸化炭素でありますとかアルコールについては、死体所見あるいはその他の捜査によって判明することが多々ございますので、一律に全ての死体について実施をするまでの必要はないであろう、このように考えております。

國重委員 ありがとうございました。

 今回の件、本当に大きな一歩だと思いますけれども、今後、できるだけ検査の幅を広げて、また慎重に適切に実施していっていただきたいと思います。

 続きまして、検視の質の向上についてお伺いいたします。

 死因の究明のためには、個別のケースに応じて、必要な場合には適切に検査また解剖が行われなければなりません。そのためには、その前段階である検視において適切な判断がなされることが極めて重要でございます。この検視というのは、資料一にある変死体の下にあるところでございます。

 前回の質問の折にも、検視の重要性について述べて、検視に当たる警察官、いわゆる検視官の増員と質の向上については訴えさせていただきました。数の側面につきましては、検視官の数についても、また検視官の現場への臨場率についても上がっているということで、評価をいたしております。

 ただ、数の面では上がっているけれども、質の側面というのは一体どうなんだろうか。まだまだ問題があるのが現状ではなかろうかというふうに思います。

 ここで、具体的な事例を通して確認をしていきたいと思います。

 資料の二をごらんください。

 これは、先日報道されました川崎市の老人ホームにおける連続転落死事件の記事です。入所者の方が相次いで転落死して、結果的に三名の方がお亡くなりになりました。当初は、事件か事故かの判断がつかないとされておったものが、後に容疑者が別件で逮捕されたことをきっかけに本件が発覚したというものです。警察の初動捜査の不十分さ、要は検視の甘さが新聞各紙で報じられました。

 そこで、まず確認なんですけれども、本件、つまり川崎市の老人ホーム連続転落死事件について、入所者の方の死亡が警察に届けられた後、警察がその死亡を把握した後、これらの御遺体というのは、犯罪死体、変死体、その他の死体、このいずれと判断されたのでしょうか。結論のみ答弁を求めます。

露木政府参考人 委員お尋ねの三件の墜落死事案については、いずれも継続捜査を要する変死体として扱われたものと承知をいたしております。

國重委員 今、変死体で扱ったという答弁がございました。

 そうしますと、資料一を見ていただきましたらわかるとおり、変死体の方に分類されました場合には、刑事訴訟法二百二十九条に基づいて検視が行われることになります。そして、その検視によって犯罪の疑いがある死体だと判断されなければ、その後は、必要に応じて、死因・身元調査法に基づいて検査と解剖、いわゆる新法解剖が実施されることになります。

 検査を判断する主体については、死因・身元調査法第五条第一項で、警察署長が行う、また、解剖を判断する主体についても、死因・身元調査法第六条第一項によって、警察署長が行うというふうに定められております。

 それで、警察署長が適切な判断を下すためには、そのために必要な当該死亡に関する検視の報告、また、身辺調査の結果等の情報が警察署長に届いていることが不可欠ですし、法文もそのことを前提にしていると思います。

 これで間違いないのかどうか、法文の解釈、また、実際の運用がどのように行われているのか、お伺いいたします。

露木政府参考人 まず、法文の解釈につきましては、ただいま委員御指摘のとおりでございます。

 実際の運用として、お尋ねのこの事案でございますけれども、お尋ねの三件の墜落死事案に関しては、死体や現場の状況、検視の結果等について警察署長に報告がなされたというふうに承知をいたしております。

國重委員 わかりました。

 この件については報告があったと。一般的にもあるということで理解いたしましたけれども、今回の三件の転落事件というのは、平成二十六年の十一月から十二月にかけて、わずか二カ月足らずのうちに相次いで発生したものです。三件それぞれ別の検視官が派遣されて現場に臨場していたけれども、事件として認識されず、結果として被害者をふやすことになってしまいました。

 普通に考えれば、その老人ホームで聞き取りさえすれば、つい先日も転落死があったよとか、そのいずれも同じ人物が当直勤務をしていたよとか、そういう証言が得られたり、何らかの事件性をにおわせる点に気づくはずじゃなかったのか、なぜ検視官がその怪しさに気づけなかったのかと非常に疑問がございます。

 また、先ほど審議官がおっしゃったように、警察署長が本件のことを、これは三件ともしっかりと認識していたというのであれば、なぜ事件性の疑いがあるということを思わなかったのか、これについても疑問がございます。

 これは警察署長が、一件一件のそのときは認識していたんだけれども、でも、同じ場所で亡くなっているということを気づけなかったのか、仮に気づいていたとしても、適切な対応、捜査がなされなかった。そうなると、この警察署長への報告、果たしてこれがどれほどの意味をなしているんだろうか、単なる報告、形式的なものにとどまっているんじゃないかというふうに思わざるを得ません。

 そうしますと、この報告に基づいて警察署長によって行われる検査とかまた解剖、いわゆる新法解剖、この要否の判断についても実質的な判断はされていないんじゃないか、熟慮されていないんじゃないかという疑念が浮かんでまいります。

 つまり、必要な検査や解剖がきちんとされていない可能性があって、さらに言えば、それによって犯罪の見逃しが起こっているんじゃないか、こう私などは推認してしまうわけでございます。

 今回の事件では、さまざまな問題点が浮き彫りになったと思います。警察として、犯罪死を見逃しかけた今回の事件の原因をどのように分析し、今後どのような対策を講じていくのか、答弁を求めます。

露木政府参考人 今御指摘の三件の墜落死の事案でございますけれども、これはいずれも目撃のない墜落事案でございました。また、御遺体には墜落所見と明らかに矛盾する外傷がなかったということと、CT検査は実施をいたしまして、その結果、死因は墜落死と見て間違いないといったことでございますので、この認知の当時には、直ちにそれが犯罪によるものであるかどうかということの判断がなかなか難しかったというふうな報告を受けております。

 なお、一般論となりますけれども、今回のような不審死が連続したような場合には、それが同一施設内のものかどうかということも含めまして、関連情報の迅速な集約、分析が重要でございまして、そのあり方については、必要に応じて、今後改善を図っていくべきものと考えております。

國重委員 今御答弁いただきましたけれども、捜査のプロとして、この二カ月の間に同じ老人ホームから転落死のこういったものがあった場合に、しかも、その老人ホームは、当直した、今被告人になっているこの人物をその後当直から外したというようなことがあるわけですから、やはり私は、そのときに本当にきちんとしたものがなされていたのかというような疑いがどうしても残ります。

 ただ、私がここで言いたいのは、しっかりと警察署長に報告をして、これが形式的なものではなくて、それによってしっかりと必要な検査、解剖なりこういったものを実施してもらいたいということが私の主眼でございます。

 この老人ホームというところで、本当は安心して本来ここに住んでいただく、また御家族の方もそこに安心して預けていただく場所でこのような事件があったわけですから、二度とこのようなことは起こしてはならないということで、今後、より一層気を引き締めて、初動捜査の質の向上、また情報共有の徹底、こういったものに取り組んでいただきたいと思います。

 続きまして、死因・身元調査法に基づく解剖、これまで何度も出ていますけれども、いわゆる新法解剖についてお伺いいたします。

 この新法解剖というのは、我が国の死因究明制度にあったすき間を埋めるために整備された制度でございます。

 それまでは司法解剖と承諾解剖、監察医解剖というものしかなかったということで、犯罪の疑いがある死体でなければ、承諾解剖、遺族の方の承諾がなければ解剖できない。また、監察医解剖というのは、非常に監察医がいるところは限定されております、東京二十三区、大阪市、神戸市等ということで、全国でたしか五つだったと思いますけれども、それ以外のところでは実施されない、すき間の部分がある。感染病になったりとか、また、一旦非犯罪死と思われたけれども、実際解剖したら犯罪性が疑われたというようなものもございます。こういったことで、そのすき間を埋めるために整備をされた新法解剖でございます。

 この新法解剖は、先ほども申し上げましたとおり、死因・身元調査法第六条第一項において定められております。

 先ほどは主体となる警察署長にフォーカスをして申し上げましたけれども、改めて、この条文はどうなっているかといいますと、「警察署長は、」少し飛ばしまして「法人又は機関に所属する医師その他法医学に関する専門的な知識経験を有する者の意見を聴き、死因を明らかにするため特に必要があると認めるときは、解剖を実施することができる。」こう定められております。

 警察署長が解剖の要否を判断するに当たって、医師その他法医学の専門家の意見を聞くことというふうになっておりますけれども、現場では、どのような場合に法医学の先生とかに意見を聞くことになっているのでしょうか。お伺いをいたします。

露木政府参考人 委員今御指摘の死因・身元調査法第六条第一項の規定に基づく専門家の意見の聴取、これは、警察署長が解剖すると判断をしたときにそのように意見を聞くという趣旨であるというふうに承知をいたしておりまして、そのように私どもも指導いたしておりますけれども、実際の運用といたしましては、警察署長が解剖をするべきかどうか判断に迷ったようなときにも法医学者その他の専門家の方々の御意見を聞くというふうに運用されているものと承知をいたしております。

國重委員 ありがとうございました。

 今御答弁をいただいて、法文上は確かに意見の聴取というのは義務ではない、これが法の解釈になるんだというふうに思います。

 ただ、逆に、解剖を実施すると決めていない場合に、法医学の専門家の方の意見を聞かなくてもいいということにもなっていない、適時適切な場合に聞くということになっているというふうに思います。

 今、御答弁では、ケース・バイ・ケースでそういった専門家の意見を聞くということだったんですけれども、私が法医学の先生方からお話を聞きますと、その方々というのは、かなり司法解剖を行われている方、御経験のあるベテランの方ですけれども、そういった方に聞きますと、我々に、この事例を解剖すべきかどうか、先生どうでしょうかというふうに聞かれたことというのは一度たりともないというふうに、その方たち、三名の方ですけれども、おっしゃっておりました。

 果たして、その三名の方だけが、本当にそうなのかというのは調べてみたいところでありますけれども、やはり実際に、過去にさまざまな事件とか事故の見逃しがあるわけです。死因究明制度、時津風部屋事件とかを初めさまざまな犯罪見逃し、このような事件があったわけです。

 警察の皆さん、本当に日々さまざまなことで頑張っておられることと思っています。その上で、警察の皆さんには、ぜひ、自分たちの判断だけでは不十分な場合もあるんだ、自分たちは医学のプロじゃないんだということを謙虚に認識、自覚していただいて、そういった専門家の方の意見を謙虚な姿勢で伺うというような運用、お取り扱い、こういったもので今後やっていただきたいというふうに思います。

 最後に、検査や解剖が実施された後に問題になる採取された臓器や体液等の試料の保管のあり方についてお伺いをいたします。

 この採取された試料というのは、ある程度の死因の予測を立てて、そこにターゲットを絞った検査項目が実施されると聞いておりますけれども、逆に言えば、疑いがかからない項目は検査がされない。だから、後で、捜査の状況が変わって、新たな項目についての検査が必要になる場合もあるわけでございます。

 また、DNA鑑定などについても、状況によっては再鑑定の必要が出てくる場合がございます。本年一月に福岡高裁の宮崎支部で逆転無罪判決が下された強姦事件でも、決め手となったのはDNA型の再鑑定でした。ただ、この事件でも、捜査機関の試料の保管のずさんさが指摘されております。

 理想を言えば、試料はなるべく保管されていることが望ましいんでしょうけれども、ただ、それには、スペース確保とか、また保存期間の問題など、さまざまな課題が出てきます。

 そこで、まずは、犯罪にかかわることが明らかである司法解剖に付した死体の試料の保管について、しっかりとした制度を整えていくことが必要だというふうに思います。この点については、昨年のこの当委員会で質問した折にも、林刑事局長の方から、「現在、関係機関等と協議をしているところ」と答弁がありましたけれども、その協議のメンバーというのは一体誰で、どのぐらいの頻度で行っているのか。協議の状況についてお伺いいたします。

林政府参考人 法務省といたしましては、司法解剖において採取された臓器等の鑑定試料の取り扱いについて、昨年のその答弁以降も、現在もなお関係機関等と協議中でございます。

 前回御答弁させていただいた以降の状況についてお答え申し上げますと、法務省におきましては、具体的には法務省刑事局でございますが、刑事局が警察庁及び法医学会等との間で協議を行っております。昨年の九月四日以降も複数回にわたりまして、こうした警察庁の担当者及び法医学会との協議の場を設けることによりまして協議を行っております。

 具体的な協議事項でございますが、主として、司法解剖に伴って採取、保存された臓器を、その返還を希望する御遺族に対しまして返還するための手続をどのようにつくるか、こういったことを主たるテーマとして協議をしております。

 こういった返還手続を遺漏なく行うためには、警察庁及び法医学会の御協力が必要不可欠でありますので、今後とも、この両者の御協力を得ながら協議を鋭意進めてまいりたいと考えております。

國重委員 ありがとうございました。

 昨年よりかなり具体的にはなりましたけれども、ぜひしっかりと前に進めていただくよう、よろしくお願いいたします。

 では、大臣が戻られましたので、最後に大臣に質問して終わりにしたいと思います。

 臓器の試料の保管等について、これを適切に整備していくためにはさまざまな課題があると思います。先ほどの林刑事局長の答弁にもありましたとおり、御遺族への対応もその一つです。臓器の返還の問題、また、遺族の方が臓器の保管を知らされていなかったことに起因するトラブルも発生しております。実際に解剖するのは法医学の医師でしょうけれども、こうしたトラブルの矢面に立つことまで全部を法医に任せているのではなくて、政府としてもしっかりとバックアップをしていくべきだというふうに思います。

 試料の採取、保管の重要性、それを遺族や社会に認識してもらうための取り組みというのは、政府でもできることでございます。法務省には、司法解剖に伴う試料の保管、また試料の御遺族への返還も含め、適切な体制の確保に向けてリーダーシップを発揮していただきたいと思いますが、これについての大臣の御所見、また死因究明制度全体に対する大臣の意気込み、決意をお伺いいたします。

岩城国務大臣 司法解剖に伴い採取、保存された臓器の返還手続を定めることにつきましては、その返還を希望される御遺族に対して適切に対応するという観点からも重要であると考えております。

 このような返還手続を遺漏なく行うためには、法医学会の御理解と御協力が必要不可欠であるため、法務省としては、今後とも警察庁と連携しつつ、法医学会の御理解と御協力を得ながら、適切に協議を進めてまいりたいと考えております。

 また、我が国において死因究明の実施に係る体制の充実強化は依然として重要な課題であると認識しておりまして、法務省としても、関係する施策について関係省庁と連携しながら積極的に推進してまいりたいと考えております。

國重委員 この問題、なかなか進まないところがございますので、岩城大臣のリーダーシップで、ぜひ一歩前進の死因究明制度の充実強化、よろしくお願いいたします。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

葉梨委員長 以上で國重徹君の質疑は終了いたしました。

 次に、階猛君。

階委員 民主党の階です。

 きょうは一般質疑ということで、さまざまなテーマについてお伺いしようと思っていたんですが、まずは、きのう起きましたブリュッセルでのテロについてお尋ねしたいと思います。

 私、この事件をニュースで見ましたときに、二つ疑問というか驚きがありました。

 一つは、私の印象では、ブリュッセルとかベルギーというのは、比較的中立的な国で、余りテロには狙われにくい国なのではないかということを考えていただけに、なぜ狙われたのかというのが一つです。

 もう一つは、ブリュッセルは国際機関が集中していまして、EUの議会などもありますから、空港は、当然、非常に高度なセキュリティーを備えているんだろうと思っていましたが、そこであのような大規模なテロが起きてしまった、これはどうしてなんだろう、こういう疑問が湧いたわけです。

 そこで、先ほど午前中に、外務省と、あと法務省の公安調査庁の方にそのあたりのことを率直にぶつけましたところ、彼らも、なぜそこで起きたのかということについては、明確な理由というのはまだ見当たらないんだということでした。

 私は、このこと自体が日本にとって非常に危惧すべき事態だと。といいますのも、要するに、テロは今や世界じゅうどこでも起き得るんだ、しかも、警戒している空港でも起き得るんだ、こういうことでありまして、大変な危機感を持ってテロ対策には臨まなくてはいけないということを我々は認識すべきだと思っております。

 大臣の所信について、先般、私どもの逢坂委員もテロ対策ということでお尋ねしていましたけれども、今回の事件を受けまして、改めて、テロ対策の重要性に関する大臣の認識及びこれからの取り組みの姿勢についてお尋ねしたいと思います。

岩城国務大臣 今回のベルギー・ブリュッセルにおけるテロ行為は、いかなる理由でも許されないことでありますし、全ての犠牲者及びその御家族の方々に心から哀悼の意を表するとともに、負傷者の方々に心からお見舞いを申し上げます。

 昨日、総理大臣から、より一層緊張感を持ってテロ対策に当たるよう指示があったことを受けまして、同日、公安調査局、公安調査事務所に対し、関連情報の収集、また、全国の地方入国管理官署に対して、厳格な上陸審査の徹底を改めて指示いたしました。

 法務省におきましては、これまでも、我が国への入国を試みるテロリストを水際で確実に阻止するため、警察等関係機関との連携を図りながら、さまざまな水際対策を行ってまいりました。今後も、入国審査体制の強化及び一層の情報活用を進め、テロを未然に防止するための水際対策に全力を尽くしてまいる所存でございます。

階委員 水際対策ということでいえば、これも法務省のもとにありますけれども、入管局の役割というのも大変重要だと思うんですね。でも、入管局が幾ら水際対策をやっても、不幸にしてテロリストが入国してしまう。その後は、公安調査庁が、警察などとも連携して、ちゃんと不審人物の動向をウオッチしてしかるべき対応をとる。この部分も、先ほどお話を聞いていると、情報収集の面にしてもまだまだ少し弱いのではないか、お話ししていた印象ですけれども、そう感じました。

 この点についても、大臣から、今後どのように公安調査庁は取り組んでいくのか、見解をお願いします。

岩城国務大臣 国際テロに関しましては、公安調査庁において、テロの未然防止に向け、国際テロ組織等の動向に関する情報の収集、分析、国内において国際テロ組織とのかかわりが疑われる不審人物や組織の有無、及びその不穏動向に関する情報の収集、分析、テロの標的となるおそれのある施設に関係する不穏動向に関する情報の収集、分析などを行っているものでございます。

 今、委員から御指摘がありましたとおり、今後さらに、国内の関係機関、さらにまた国際機関と連携を十二分に図って、対策に万全を期すよう努めてまいりたいと考えております。

階委員 大臣、今の答弁は、先般、この事件が起きる前の逢坂委員に対する答弁と全く同じです。これではまずいと思うんですね。

 先ほど言いました、今や、どんな国でも、どんな場所でもこういったテロが起き得るという認識、危機感を持っていただいて、従来の紋切り型の対応だけではなくて、新しいこともしっかり進めていかなくちゃいけない。

 改めて、大臣、この部分、外国人観光客もふえておりますし、これからサミットもありますし、オリンピックなど国際的な大きなイベントがあるわけです。本当に、これは起きてからでは遅いんですよ。本当に危機感を持って対応してもらいたいということを改めてお願い申し上げます。

 そこで、用意していた質問に入ってまいります。

 振り込め詐欺救済法という法律がありました。葉梨委員長と、私も議員になった当初、最初に手がけた議員立法。これは、葉梨委員長からもいろいろな御指導をいただきながら、与野党で協議しながら法案の内容を詰めていきました。ありましたと言いましたけれども、今もあるんです。

 そこで、何を言いたいかといいますと、資料をお配りしておりますが、一枚目をごらんになってください。「振り込め詐欺救済法の制度概要」ということで皆さんにお配りしております。

 どういうものかといいますと、振り込め詐欺で被害金が口座に振り込まれる、口座を凍結して、そこにあるお金を基本的には被害者に返してあげましょうということです。支払い手続を行った結果、被害の申請がなかった分、これについては預金保険機構の方に納付しまして、これを犯罪被害者の支援に充てていこうというたてつけになっております。

 今現在は、この資料の一枚目にありますとおり、犯罪被害者等の子供に対する奨学金、あるいは犯罪被害者等支援団体に対する助成という二つの種類があります。そして、前者については、奨学金といいますけれども、いわゆる貸与型であります。

 この件につきまして、このたび、私は法案の立案にかかわったんですが、役所は教えてくれなかったのでニュースで知りましたけれども、報道で知った内容で、貸与制ではなくて給付制へ移行しようということでありました。

 給付制にして、給付水準は、大学生について、国立大学の授業料を賄える水準、大学生だと月額五万円、この程度を支払う。それから、受給資格は、犯罪被害者等の子供であって、学費の支弁が困難となった者ということでありました。それ以外にも、規定にはないんですけれども、予算の制約もあって、希望者全員ではなくて年間三百人ぐらいだということも伺っております。

 私としては、この給付型奨学金制度、特に犯罪被害者については、理不尽な目に遭って進学の希望が断たれるということはどのようにしても避けなくてはいけないと思っていますから、これは絶対やるべきだと思っております。ですから、このような方針が示されたことは非常に意味のあることだと私は思います。

 ついでに付言をしますと、先ほど城内委員から、司法修習生の給費制の復活という話がありました。ただ、それ自体単体で見れば、私はもっともなことだと思うんですけれども、国の制度全体のバランスを見たときに、まずはそこよりも優先すべき部分があるのではないか。その一つが、この犯罪被害者、不幸にして親御さんなどを失って進学の夢が断たれようとしている方に給付型奨学金をする。しかも、この給付型奨学金は五万円ですから、せいぜい授業料部分なんですね。給付型奨学金は授業料の部分ですけれども、先ほどの修習生の給費制は、そもそも修習生は授業料は要らない、授業料じゃなくて生活費の部分を面倒見ましょうという話ですから、そういう意味でも、私は、どちらを優先すべきかというと、この犯罪被害者の方だというふうに考えております。

 そこで、きょうは、金融庁の方でこの問題についてプロジェクトチームということで取り組まれてきた牧島政務官にお越しいただきました。

 今回、このような制度を導入された、そこに至った考え方、それから、先ほど言いましたとおり、給付水準は国公立大学の授業料程度である、あるいは三百人という人数的な縛りもあるという中で、これをもっと拡充する余地はないのかどうか、このあたりについて御見解をお願いします。

牧島大臣政務官 お答えいたします。

 階委員におかれましては、振り込め詐欺救済法に基づく奨学金事業について、これまでも取り組んできてくださっておりますし、深刻な犯罪被害を受けた子供たちにきちんと給付して授業が受けられるようにしなければならないというお考えに、私どもも同じ思いでございます。

 金融庁、内閣府、財務省の政務官を主体とするプロジェクトチームにおいて検討を行いました。犯罪被害者等の子供に対する奨学金事業を、このたび、今御報告ございましたとおり、貸与制から給付制へ移行するといった内容を報告書としてまとめ、三月十七日木曜日に公表いたしました。

 経緯といたしまして、これまでの貸与制の奨学金事業における借り手の経済状況を見てみますと、必ずしも高い所得とは言えない御家庭が多く、奨学生の数が伸び悩んでいた状況にありました。このため、本来減少していくことが望ましい振り込め詐欺等の被害金を原資とすることではございますが、その点を踏まえて、今般、これを給付制に変更することが望ましいと判断いたしました。

 給付制の奨学金事業の実施に当たっては、今後の申請状況や預保納付金の発生状況を踏まえつつ、奨学金を真に必要とする犯罪被害者等の子供に給付できるよう、広報と周知を含めてしっかりと取り組んでまいりたいと思います。

 また、上限およそ三百人という想定というお話もございましたが、仮にそれを超えるおそれがある場合には、ほかの奨学金制度と同様に、学力基準及び家計基準を用いて選抜することが考えられます。

 当面、この規模で事業を実施してまいりたいと思いますけれども、将来的に奨学金事業の規模を拡充するかどうかについては、この奨学金事業が、本来減少していくことが望ましい振り込め詐欺等の被害金を原資としているということを改めて肝に銘じ、今後の申請状況や預保納付金の発生状況を勘案しながら、必要に応じて検討してまいりたいと考えております。

階委員 今、御答弁の中でも悩ましいことを言われていました。制度を拡充していくためには、被害がふえて、しかも被害金が還付されない、こういう状況がさらに続き、あるいはそれが拡大していく、こういう事態が必要となってくるわけですね。

 私は、本来の給付型奨学金制度というのは、そういう犯罪被害が将来にわたって継続することを前提とするのではなくて、やはり単体で、給付型奨学金制度それ自体でちゃんと財源を確保して持続していくべきものだというふうに考えるんですね。

 大臣は、もちろん、振り込め詐欺自体を撲滅し、かつ、万々が一被害に遭われたらその被害者を救済する、だから、こういう納付金がたくさんたまっていて給付型奨学金というのは、本来あってはならないというお立場だと思うんですね。そういうことも踏まえまして、今のこういう仕組みについてどのようにお感じになっているか、お答えをいただけますか。

岩城国務大臣 まず、階委員が振り込め詐欺救済法成立に御尽力なされましたことに敬意を表したいと存じます。

 支援一般についての所感で申し上げますと、犯罪被害者等の子供が経済的理由によって教育の機会を制約されることは、大変残念なことだと思っております。その支援の制度があることは、これは望ましいことだとも考えております。

 そこで、この振り込め詐欺救済法につきましては、ただいま御説明がありましたけれども、金融庁の所管であります。法務省とすれば、振り込め詐欺等は減少させていかなければならない立場でありますし、また、振り込め詐欺等の預貯金口座の残金は、その被害者にこそ返金されるべきものであります。それらの金銭を原資として別の犯罪被害者等の子供を支援するところにある意味複雑な性格があるもの、そのように感じております。

 しかし、犯罪被害者等の子供の支援が必要である、そういった現実と、振り込め詐欺等の預貯金口座の残金が相当額に上っているという現実を見ましたときに、この給付型奨学金制度というものは、現在のところ一つの現実的な知恵である、そのように考えております。

 いずれにしましても、犯罪被害者等の子供の支援は必要なことでありまして、また、本制度の適正で効果的な運用に期待するとともに、法務省としては、犯罪そのものを減らし、新たな被害の発生を防いでいくことに全力を挙げて取り組んでいかなければならないと考えております。

階委員 原資としてどうあるべきかという問題はおくとしましても、やはり、こういう犯罪被害者の御子弟の皆さんがちゃんと進学できるような給付型奨学金、そのニーズは厳然としてある。それに対して対応されたことに対しては、私も敬意と感謝を申し上げたいと思います。

 ただ、その上で、文科副大臣にもお越しいただいていますが、これはやはりこの範囲でとどめてはいけないと思うんですね。今国会でも、給付型奨学金制度について、与野党問わずいろいろな議員さんが取り上げてきました。きのうの本会議でも取り上げられてきました。慎重に検討するという答弁が繰り返されておりますけれども、やはりこういう厳然としたニーズがある中で、振り込め詐欺の被害に頼らないで、国としてちゃんと財源を確保して、一刻も早く、特に困っている方、恵まれない方に対して給付型奨学金を支給するような体制を早急に整備していただきたいと心より思うわけですが、副大臣の見解をお願いします。

義家副大臣 お答えいたします。

 現在、大臣の指示のもと、省内で、この給付型奨学金、どのような範囲で、あるいはどのような財源で、どのような対象者で行えるかというシミュレーションを随時行っておるところであります。

 今の議論にあったように、特にしっかりと救ってあげなければならない子供たちがいるのも厳然たる事実でありまして、例えば、現在、養護施設等々で暮らす子供たちにとっては罪はないわけですね。だから、経済的理由によって進学等を断念せざるを得ないような状況であることを放置することはやはり大変無責任なことであろうと思っていますし、この検討をしっかり進めた上で、発表できる段になりましたら、改めて具体的にお答えしたいと思います。

階委員 発表できる段というのを心待ちにしていますけれども、今の段階で、その時期のめどなんというのはおありでしょうか。お答えいただけますか。

義家副大臣 まず、今、めどがはっきり立っているものですけれども、返還月額が卒業後の所得に連動する所得連動型奨学金、これは、平成二十九年度進学者から適用することを目指し、昨年九月に有識者会議を設置して制度設計を進めるとともに、システムの設計、開発に着手しております。まず、これが今、現在進行形で行われているところであります。

 御指摘の給付型奨学金については、財源の確保や対象者の選定など、導入するに当たっての検討が必要な個別のものについては具体的に議論されているところですが、いつまでに明らかにできるかというのは、私、大臣の許可も今得ておりませんので、ただ、気持ちとしては、大臣はかなりこれを大切なものとして認識し、最優先のものとして認識して今省内で議論されているということは事実ですので、御理解のほどよろしくお願いいたします。

階委員 副大臣もぜひ下からどんどん突き上げて、早く結論を出すようにお願いします。

 副大臣、政務官、きょうはありがとうございました。御退席ください。

 次のテーマに移ります。

 実はきょう、この委員会が終わりますと、私も吉野委員もそうなんですが、検察官適格審査会の委員でございまして、そちらの会議に出ることになっております。私も昨年からこのメンバーに加わりまして、門外漢の目から見ると、これはちょっとおかしいんじゃないかなと思うことがいろいろあります。その点について、きょうは二つ提言をさせていただきたいと思っております。

 まず一つ目ですが、法務大臣、この検察官適格審査会、検察官がちゃんと職務にふさわしいかどうか、過去の経歴、いろいろな行状も見ながら審査するわけですけれども、その適格審査会の会長としてどういう資質を備えている方がふさわしいと思われるのか、まずこの点について御見解をお願いします。

岩城国務大臣 これから検察官適格審査会の会議が開かれるとのことでありますが、この会長は、検察官適格審査会委員の互選により選任されることとされているものと承知をしております。したがいまして、私としましては、会長にはどのような方がふさわしいかにつきましては、検察官適格審査会において議論いただくべき事柄である、そのように考えております。

階委員 いや、そんなことでは困ると思います。

 というのも、大臣所信五ページ目には、「刑事司法制度を国民の皆様からより一層、支持・信頼されるものとするため、検察改革のための取組をたゆまず実施してまいります。」こういうくだりがあります。まさにその考え方に基づいて、検察官適格審査会のより充実強化を図っていくべきだと私は考えます。

 そこで、今現在、互選と言われておりますが、会長をどのように選ぶかということで、私は驚いたんですけれども、きのう、そこの事務局の方が来られまして、今回はこの方でという推薦というか根回しがありました。その中で示されたのは、日本学士院会員の出身者。検察官適格審査会は十一人いるんですけれども、その中のメンバーの一人は日本学士院会員の出身者ということになっています。

 その方はどういう方かということを聞きますと、民訴法の学者さんなんだそうです。その前の方は刑訴法の著名な学者さんでありまして、こういう方であれば会長としていいのかなと思ってはいたんですが、今度は民訴法ということで、果たして検察官の適格審査にふさわしいのかどうかというふうに私は思います。

 そこで、御提案なんですけれども、そもそもその十一人の構成をどうするかということについて、検察庁法という法律で定められております。「国会議員、裁判官、弁護士、日本学士院会員及び学識経験者の中から選任された十一人の委員」ということで、私も吉野委員も国会議員ということで参加させていただいているわけです。

 ただ、民訴法の学者でもいいということであれば、もうちょっと幅広く、一般の方から選ぶ、あるいはジャーナリストの方から選ぶ。

 以前、私どもの政権のときに、検察の在り方検討会議というのがありました。その中には、必ずしも刑事訴訟の専門家とは言えないような方々も入って、しかし、そういう方々の常識に照らして検察というのはどうあるべきかという議論がなされたおかげで、昨年の刑事訴訟法の改正ということにも結びついているわけですよ。

 私は、ここでそろそろこの検察官適格審査会のメンバー構成についても考え直す時期に来ているのではないかというふうに思いますけれども、この点、いかがでしょうか。

岩城国務大臣 委員の選任方法については、現在のところ、お話がありましたとおり、衆議院議員四名及び参議院議員二名の委員は各議院において選出されております。その他の委員は法務大臣が任命することとされておりますが、日本弁護士連合会会長についてはその地位にある者を、最高裁判所判事については最高裁判所において互選された者を、日本学士院会員については日本学士院において互選された者を、学識経験者については司法制度に関し学識経験を有する者を任命しているところであります。

 そこで、委員のお話は、もうちょっと幅広く選任していって、いろいろな考え、いろいろな経験をお持ちの方を幅広く推薦したらどうか、委員に任命したらどうかということでありますので、御指摘も踏まえまして、今後検討をしてみたいと考えております。

階委員 ありがとうございます。

 もう一点提案したいのは、この適格審査というものにも二種類ありまして、一つは定時審査、二つ目は随時審査というものです。随時審査というのは、その名のとおり、何か問題があったときにその人について審査を行う、定時審査は、全ての検察官について三年ごとに審査を行うということであります。

 この定時審査、我々はこれからそれに臨むわけですけれども、全ての検察官、ずらっと名簿がありまして、その中で、病歴がある人とか懲戒歴がある人というのはちょっとマークが付されていまして、主にそれを見てくださいというわけですよ。ところが、我々は全ての検察官について審査するという義務を負っているわけですね。それで我々がちゃんと審査しましたとお墨つきを与えろというのは、いかにもこれは我々に責任を転嫁しているということで、問題ではないかと思います。

 定時審査のあり方についても、私はむしろ、全てを審査するというのは無理がありますから、随時審査の方を充実させる、例えば、過去に冤罪になった人を起訴した検察官、あるいは、不起訴としたんだけれども検察審査会によって不起訴不当だとか起訴相当になって結論が変えられた、そういう検察官、こういった人も対象に加えた上で随時審査を幅広く行っていく、こちらの方がより実効性ある適格審査会になると思いますが、この点についても御見解をお願いします。

岩城国務大臣 定時審査それから随時審査についてのお話がありまして、御提言もあったわけでありますが、検察官適格審査会においては、その定めたルールに従って中立公平な立場で審査を行っていただいているものと承知をしております。

 そして、検察官適格審査会は、法務大臣から離れた立場で中立公平に審査を行うことが予定されており、その具体的な審査のあり方の当否について私の立場から所見を述べることは、適当ではないと考えております。

 したがいまして、検察官適格審査会における具体的な審査のあり方につきましては、まずは検察官適格審査会において議論していただくべき事柄である、そのように考えております。

階委員 では、この後、議論させていただきます、適格審査会がありますので。

 話題を移します、TPPについて。

 これは、予算委員会で大きく二つ議論になりました。一つは、ISD条項、これが我が国の司法権の独立性との関係でどうなのかという点。それからもう一つは、著作権に絡んで、法定損害賠償制度とか追加的損害賠償制度を入れるようにというふうに協定で求められておりますが、これは現在の法体系のもとで認められるのかどうか。この二つでございました。

 その答弁、法務大臣は少し混乱して、しばらくしてから政府統一見解というのが出てきたという経緯もございました。

 そこで、私もこの二点については非常に重要だと思っていますので、改めてそれぞれについて確認させていただきたいと思います。

 まず、前段の問題。

 きょうは外務省の黄川田政務官にもお越しいただいていますけれども、ISD条項に基づいて投資家が我が国を訴えるときに、投資家の選択によって我が国の司法裁判所に訴えることもできますけれども、通常は、TPPで認められる国際仲裁廷、こちらで判断を仰ぐということになっていると思うんですね。それに対して我々日本国としては、もう協定に合意した以上、その仲裁廷で判断することを拒むことはできないと思うんですね。

 ところが、この仲裁廷の判断、本当に中立公平、客観的に妥当、そういう判断が出されればいいと思うんですが、必ずしもそうではない。我が国の公の秩序、あるいは我が国の常識、商慣行、そういったものに反する可能性もなきにしもあらずだと思うんですね。そういった場合に、我が国として、仲裁廷の判断に対して不服を申し立てることがちゃんとできるのかどうか、これをまず確認させていただきたいんです。

 不服申し立ての手段について、まずそこまで政務官にお答えいただけますでしょうか。

黄川田大臣政務官 ISDS仲裁に基づく国際仲裁廷の判断に対する我が国の不服申し立て手段とその実効性についてでございますが、TPP協定におけるISDS条項に基づく投資仲裁は、他の投資関連協定と同様に、紛争の迅速性が重視されております。したがって、仲裁は一審制でございます。我が国の控訴、上告に該当するような上訴制度は設けられておりません。

 ただし、裁判所が正当に構成されなかったこと、手続の基本原則からの重大な離反があったことなど限られた場合には、仲裁判断の取り消し手続が認められることもございます。また、仲裁判断に決定的な影響を及ぼす性質の事実の発見を理由として再審手続が認められることもございます。

階委員 取り消しとか再審というのは、仲裁廷の中で行われることなんでしょうか、日本の裁判所とは別個に行われることなんでしょうか。そのあたり、ちょっとはっきりしませんでしたので、今の取り消しとか再審というのはどの場所で行われるのかということを教えていただけますか。

黄川田大臣政務官 まず、この件に関しては、仲裁廷に取り消しまた再審を求めるということでございます。

階委員 そのことは、私も不勉強だったのできょう初めて知りましたけれども、それ以外、例の政府統一見解で何と書いていたかといいますと、改めて民事執行手続を裁判所に申し立てることで当該裁判所の判断で決することもあるというくだりがありました。ここで言っている裁判所というのは、国際仲裁廷ではなくて、日本の裁判所を指しているということだと思います。

 そこで、日本の裁判所に民事執行手続が係属して、そこで日本国として、これを執行するのはおかしいよと。例えば、投資家が日本国に対して損害賠償請求をして、それが仲裁廷で認められて、仲裁廷では確定した。それが、いざ執行するといったときに、日本国としては承服できないということで、執行に任意には応じない。任意には応じないと、日本の裁判所に相手方の投資家は執行手続の裁判を申し立ててくると思うんですね。そういう場で、日本国としては、ちゃんと異議を述べて仲裁廷の判断を覆す、そういうことは可能なのでしょうか。その点についてお答えください。

岩城国務大臣 TPP協定におきまして、紛争当事者は、原則としてISDSの仲裁判断に遅滞なく従うと定められております。したがいまして、仮に仲裁判断で外国投資家に対する賠償が命じられた場合には、政府として、基本的にはその賠償義務を履行することになります。

 しかし、理論上は、実際に個別具体的な事案において我が国が賠償金を任意で支払うかどうかについては、判断の対象になった紛争を所管する省庁が中心となって政府全体で検討することになることが考えられ、私の立場でお答えできる事項ではありませんが、仮に我が国が任意に賠償金を支払わない場合、外国の投資家が仲裁判断を強制的に執行するため、我が国の裁判所に執行力の付与手続を申し立てることが考えられます。そのためには、仲裁法に基づいて、仲裁判断について執行決定が必要となります。その手続において、我が国の裁判所が、仲裁判断について、日本における公序良俗に反しないことといった執行決定の要件を満たさないと判断すれば、執行決定が出されず、当該仲裁判断に基づく強制執行がなされないことになるものと承知をしております。

階委員 先ほど、国際仲裁廷というのは一審制だという話もありました。日本の司法裁判所とは違って、日本のこれまでの秩序とか、さまざまな商慣習あるいは法体系、そういったものに必ずしも詳しくない方が判断されると、間違った判断がされる。それに対して、何かTPP協定では、原則として執行に応じなくちゃいけないというようなくだりもありましたけれども、私は、それは非常に危険だなと。政府統一見解で、執行手続で争うこともできるようなことを書いていたので、そこで今、私はお尋ねしたわけですよ。

 執行手続という中で、日本の裁判所で、ここは日本の言い分はちゃんと貫く、こういうことをむしろ積極的に行うべきだと私は考えます。何か、極めて例外的に執行手続の中で公序良俗違反を主張したりできるみたいなことを言いましたけれども、私は、そういう姿勢だと、このTPP協定を結んでISD条項が入れられるというのは、甚だ不安が募るばかりだなと思います。

 先ほどの答弁、あのままでいいんでしょうか。私はちょっと問題だなと思いますが、いかがでしょうか。

岩城国務大臣 私が先ほどお答えしたことは、実際、そのときの個別のケースによりますけれども、こういったこともあり得るということでございます。

階委員 極めて例外とかそういうことじゃなくて、やはり政府統一見解では、当事者が任意に払うということもあれば、改めて民事執行手続を裁判所に申し立てることで当該裁判所の判断で決することもある、両者並列の規定になっているわけですよ。今おっしゃられたのは、むしろ任意で払うのが当たり前であって、例外的な場合に執行裁判所の判断を仰ぐみたいな話ですから、この統一見解とも整合性が問われるのではないかと私は考えます。

 後で議事録を精査させていただきますけれども、ここはぜひ、引き続き、委員長初め理事の皆さんでちょっと検討の対象にしていただければと思います。委員長、よろしくお願いします。

葉梨委員長 しっかりお聞きおきしておきます。

階委員 そこで、もう一つ、TPPの関係で、知的財産の関係ですけれども、資料の三枚目をごらんになってください。

 第十八章の七十四条というところに知的財産に関する損害賠償の定めがありまして、七十四条の六項、七項、八項を抜粋して入れております。六項の方は著作権関係、七項の方は商標について、それぞれ権利侵害とか不正使用があった場合に、当事者国、日本も含めてですけれども、(a)、(b)、いずれかの制度を採用してくださいということになっていますね。(a)がいわゆる法定損害賠償、(b)が追加的損害賠償で、政府としては、(b)は日本国の法体系上難しいので(a)をやりますということになっていると思います。

 そこで、この(a)をとる場合の規定が八項にあります。「六及び七の規定に基づく法定の損害賠償は、侵害によって引き起こされた損害について権利者を補償するために十分な額に定め、及び将来の侵害を抑止することを目的として定める。」こういうことになっています。

 後段の方に「将来の侵害を抑止することを目的として」というくだりがありますけれども、他方で、この件が予算委員会で問題になったときの統一見解、この件についての統一見解がありまして、今申し上げました「「将来の侵害を抑止することを目的として定める。」との点は、将来の侵害抑止の効果の発生を副次的な目的とする適切な方法によって定めることでも足りる趣旨と解釈できる。」というくだりが第二段落にあります。

 私は、この文言をどう見てもそういう趣旨には解釈できないんですが、解釈できるとする根拠について、まずはお答えいただけますか。

黄川田大臣政務官 TPP協定第十八章の七十四条8についてですが、法定の損害賠償について、「損害について権利者を補償するために十分な額に定め、及び将来の侵害を抑止することを目的として定める。」と、おっしゃるとおり規定しております。

 一方、第十八章五条は、「各締約国は、自国の法制及び法律上の慣行の範囲内でこの章の規定を実施するための適当な方法を決定することができる。」と規定しており、TPP協定の知的財産章の規定の実施については、各締約国に裁量を与えているというふうに解釈できます。

 実際に生じた損害を十分に補償することにより将来の侵害を抑止する効果を生じさせることを目的とする制度が存在すれば、TPP協定の規定を満たすことができると解釈できます。

階委員 将来の侵害を抑止することを目的とする制度をつくることは、我が国の法体系上、あるいは最高裁判例上、可能なのかどうか、法務大臣、お尋ねします。

岩城国務大臣 将来の侵害抑制の効果の発生を副次的な目的とする損害賠償制度を規律することでTPP協定の要請を満たすか否かにつきましては、TPP協定の所管省庁または著作権法等の国内法の所管省庁において判断されるべき事項でありまして、法務大臣として答弁することは差し控えたいと存じます。

階委員 TPPの話ではなくて、一般論として聞いています。将来の侵害の抑止を目的とする損害賠償制度、これを日本国法に設けることはできるんでしょうか。

岩城国務大臣 我が国の不法行為に基づく損害賠償制度は、被害者に生じた現実の損害を金銭的に評価し、加害者にこれを賠償させることにより、被害者がこうむった不利益を補填して、不法行為がなかったときの状態に回復させることを目的としたものであり、填補賠償の原則にのっとったものであって、将来における同様の行為の抑止等を本来的な目的とするものではありません。

 もっとも、加害者に損害賠償責任を負わせることにより、同種の侵害が抑止され、一般予防が図られるという副次的効果が生ずることは認められるものと認識をしております。そして、こうした効果の発生を副次的な目的として損害賠償制度を規律したとしても、填補賠償の原則と矛盾することになるものではないと考えられます。

階委員 今の御説明なんですけれども、最高裁は、それと矛盾するようなことを判示しております。平成九年の最高裁判例では、「不法行為の当事者間において、被害者が加害者から、実際に生じた損害の賠償に加えて、制裁及び一般予防を目的とする賠償金の支払を受け得るとすることは、右に見た我が国における不法行為に基づく損害賠償制度の基本原則ないし基本理念と相いれないものである」というふうに述べておりまして、実際に生じた損害の賠償は求めていいんだけれども、制裁及び一般予防を目的とするものはだめですということを言っています。

 ここでは、副次的かどうかということは問うていないわけですね。なぜ、主たる目的だとだめなんだけれども副次的な目的ならいいのか、この点についてお答えいただけますか。

葉梨委員長 質疑の時間が終了しておりますので、簡潔にお願いいたします。

岩城国務大臣 平成九年七月十一日付の最高裁判決は、我が国の不法行為に基づく損害賠償制度が、被害者に生じた現実の損害を金銭的に評価し、加害者にこれを賠償させることにより、被害者がこうむった不利益を補填して、不法行為がなかったときの状態に回復させることを目的としたものであり、懲罰的損害賠償制度のように、将来における同様の行為の抑止等を本来的な目的とするものではないこと等を判示したものと認識をしております。

 もっとも、この最高裁判決は、加害者に損害賠償責任を負わせることにより、同種の侵害が抑止され、一般予防が図られるという副次的効果が生ずることがあることは認めているものと認識をしております。そして、こうした効果の発生を副次的な目的として損害賠償制度を規律することが最高裁判決と矛盾することになるものではないと考えられます。

 したがいまして、法定の損害賠償制度について我が国がとる対応は、最高裁判決に反するものではないと考えられます。

階委員 もうこれで終わりますが、確かに最高裁判決は、副次的に効果が生じることは認めていますけれども、副次的な目的とすることまではどこにも書いていません。だから、私は、これは問題ではないかということを常々思っております。

 またこの点についても引き続きこの委員会で取り上げさせていただくよう委員長にもお取り計らいをお願いしまして、終わらせていただきます。

葉梨委員長 以上で階猛君の質疑は終了いたしました。

 次に、逢坂誠二君。

逢坂委員 民主党の逢坂誠二でございます。

 きょうは、いわゆる選択的夫婦別氏問題について御質問したいと思います。

 この点に関しましては、もう御案内のとおり、昨年十二月十六日の最高裁大法廷判決の中で言及されているわけであります。一部、その判決を途中省略して引用させていただきますけれども、論旨には、「(例えば、夫婦別氏を希望する者にこれを可能とするいわゆる選択的夫婦別氏制)を採る余地がある点についての指摘をする部分があるところ、」「そのような制度に合理性がないと断ずるものではない。」ということが言われているわけであります。そして、「夫婦同氏制の採用については、嫡出子の仕組みなどの婚姻制度や氏の在り方に対する社会の受け止め方に依拠するところが少なくなく、この点の状況に関する判断を含め、この種の制度の在り方は、国会で論ぜられ、判断されるべき事柄にほかならないというべきである。」こういうことを昨年十二月の最高裁判決の中に書かれているわけであります。

 私は、これを読みまして、今までのいろいろな最高裁判決に比べると随分踏み込んでいるなという気がするんですね。

 例えば、これは、嫡出子の財産分与、相続に関するような判決、これの判決の中にこう書いてあるんですね。「相続制度をどのように定めるかは、立法府の合理的な裁量判断に委ねられているものというべきである。」この程度にとどめているわけですね。

 ところが、今回の判決というのは、「この種の制度の在り方は、国会で論ぜられ、判断されるべき事柄にほかならないというべきである。」裁判官がそこまで意識をして、ほかの判決との整合性まで意識をして書いたかどうかは別にして、文字面だけを見る限りにおいては、随分突っ込んだ書き方をしているなという印象を私は受けているわけであります。

 そこで、まず法務省にお伺いしたいんですけれども、これまで、選択的夫婦別氏制度について法務省でどのような取り組みがされていたか、まず御紹介ください。簡潔にお願いします。

小川(秀)政府参考人 お答えいたします。

 まず、平成八年の答申以前の取り組みから御説明したいと思います。

 まず、法務大臣は、昭和二十九年七月の段階で、「民法に改正を加える必要があるとすれば、その要綱を示されたい」という包括的な諮問を行って、これを受けて、法制審議会民法部会身分法小委員会が、昭和三十年七月に、民法親族編の仮決定及び留保事項というものを出しまして、その中で、「夫婦異姓を認むべきか否か等の問題につき、なお検討の必要がある」としております。

 このような中、国連が一九七五年の総会で、同年を国際婦人年とし、それに続く十年を国連婦人の十年とする決議を採択し、加盟国が女性の地位向上のための施策を企画、推進していくことを提唱いたしました。

 これを受けて、我が国におきましても、昭和五十二年に女性の地位向上のための国内行動計画が策定されましたが、平成三年四月にその改定がされ、その中で、法務省は、男女平等の見地から、夫婦の氏や待婚期間のあり方を含めた婚姻及び離婚に関する法制の見直しを行うこととされております。

 このような状況のもとで、法制審議会民法部会身分法小委員会は、平成三年一月に、民法の婚姻に関する規定の見直しに着手し、法制審議会は、平成八年二月、選択的夫婦別氏制度を導入することなどを内容とする民法の一部を改正する法律案要綱を答申いたしました。

 その後、法務省は、平成八年それから二十二年の二回にわたって、法案の提出に向け、法制審議会の答申を踏まえた改正法案を準備いたしましたが、この答申の内容については、国民の間にもさまざまな意見があったほか、与党内においても異論があったことなどから、改正法案の提出にまでは至らなかった、こういう経緯でございます。

逢坂委員 今紹介していただきましたとおり、随分早い時期から、昭和三十年ぐらいから法務省も夫婦別氏制度について検討していた、さらに、法案の提出まで、その直前まで行っていたというような経過がある。私は、この話を聞いて、政府は割と積極的にこの問題に取り組んできたんだなという印象を持つわけであります。

 そこで、内閣府にもきょう来ていただいておりますけれども、内閣府の方ではこの夫婦別氏制度についてはどのような取り扱いをされているか、簡潔にお願いします。

大塚政府参考人 お答えいたします。

 私ども、男女共同参画基本計画の閣議決定を取りまとめておりますが、過去四回の計画の中で、まず最初、第一次の計画、平成十二年でございますが、その中で、いわゆる社会の制度、慣行の中に、明示的には性別による区別を設けていないけれども、結果的に男女に中立に機能しないものがあるということで、そういう考え方に立ちまして、選択的夫婦別氏制度の導入につきましても、国民の意識の動向を踏まえつつ、引き続き検討を進めるとしたところでございます。

 この基本的な考え方はその後の計画にも受け継がれておりまして、昨年末に第四次の計画を取りまとめました。ちょうど同時期にお話のあった最高裁判決が出たことも踏まえまして、こちらにつきましても、例えば、家族形態の変化、ライフスタイルの多様化、国民意識の動向、それから女子差別撤廃委員会の最終見解等も考慮して、選択的夫婦別氏制度の導入等の民法改正等に関しまして、司法の判断も踏まえ検討を進めるとされたところでございます。

逢坂委員 今、内閣府からも紹介いただきましたが、第一次の男女共同参画基本計画から第四次、今に至るまで、夫婦別氏制度というのは計画の中に位置づけられている。こういう点から見ても、歴代の政府、どこが政権を握っていたかは別にしても、これは割と積極的に取り組まれていたのではないかなという印象を持つわけであります。

 内閣府、もうよろしいです。ありがとうございます。

 そこで、法務省に改めて伺うんですけれども、選択的夫婦別氏制度を導入するに当たっての課題というのはどういうふうに整理されておられるか、簡潔に説明をお願いします。

小川(秀)政府参考人 お答えいたします。

 選択的夫婦別氏制度を導入した場合には、夫婦の双方が婚姻後もみずからの氏を称することができるという新たな選択肢が設けられるというメリットがあるものと考えられます。もっとも、その場合には、別氏を選択した夫婦の間の子供が必ず夫婦の一方と異なる氏を称することになるなど、我が国の家族のあり方に影響を及ぼすものと考えられます。

 このように、選択的夫婦別氏制度の導入の問題は、我が国の家族のあり方に深くかかわるものであり、平成二十四年の世論調査の結果を見ても、国民の意見は大きく分かれている状況にございます。

 また、選択的夫婦別氏制度を採用する場合には幾つか課題がございますが、第一に、別氏を選択した場合に、子の氏をいつどのような方法で定めるべきか、第二に、別氏を選択した夫婦の子について、一旦定まった子の氏を他方の親の氏に変更することを認めるべきか、第三に、現行法のもとで成立した同氏の夫婦についても別氏を称することを認めるべきかといった点が課題になるものと認識しております。

逢坂委員 確かに、政府もこれまでこの問題には割と前向きに取り組んできた。だけれども、越えなければならない課題もあるということだと思います。

 そうはいうものの、昨年十二月の判決でありますけれども、改めて読ませていただきますと、「この種の制度の在り方」、すなわち選択的夫婦別氏制度などを指しているわけでありますけれども、「国会で論ぜられ、判断されるべき事柄にほかならないというべきである。」ということなんです。これは、確かに国会に球は預けられている、ボールは来ているわけでありますけれども、私は、法務省もこれまでこうやって取り組んできているわけですから、この点、無関与でいいというふうには思わないんです。

 国会の議論の推移を見守るということだけでいいのかどうか、法務大臣の考え方をお聞かせください。

岩城国務大臣 御指摘のとおり、昨年十二月十六日の最高裁判決において、この選択的夫婦別氏制度導入の是非については、国会で論ぜられ、判断されるべき事柄であるとの指摘がされております。

 選択的夫婦別氏制度を導入した場合には、先ほど民事局長から答弁がありましたとおり、その夫婦の間の子が必ず夫婦の一方と異なる氏を称することになるなど、我が国の家族のあり方に影響を及ぼすことが考えられ、これによって家族の一体感が失われる、あるいは夫婦間の子供に好ましくない影響が生ずるなどといった観点から、さまざまな意見が交わされている状況にございます。

 このように、この夫婦の氏の問題は我が国の家族のあり方に深くかかわる問題でありますので、また、国民の間にもさまざまな意見がありますことから、慎重に対応を検討する必要があると考えております。この点は、最高裁判決の前後を通じて変更はございません。

 いずれにしましても、国民的な議論や国会における議論の深まりを関心を持って注視していく必要があると考えております。

逢坂委員 一般論としては大臣はそう言わざるを得ないんだというふうに思うんですが、私は、今、この問題を、最高裁から、「国会で論ぜられ、判断されるべき事柄にほかならない」というふうな、ボールがこちら側へ来ている状況の中で、ただ単に、それでは国会で論じてくださいと言っても、これは、論ずる場というのは、ありそうでいてなかなかない。例えば法務委員会でこういうやりとりを幾らやっても、大臣の側は、これは国会ですからということで、議論が深化するというふうにはなかなか思えないんですね。だから、何か議論の核になるようなものがなければまずいんじゃないのかなというふうに私は思うわけですね。

 閣法提出の直前まで検討されていたというのは過去に数回あるわけでありますけれども、私は、この議論を、本当は国会で論ずるものではあるんですけれども、その議論の柱というか核にするために、閣法を出すというのも一つの手なんだろうというふうには思うんですね。これは、もちろん国会には与党議員もいるわけでありますから、そんなお考えというのはないでしょうか。

岩城国務大臣 ただいまのところは、先ほども申し上げましたとおり、私どもは、国民的な議論、さらに国会における議論、これを注視してまいりたいと考えております。

逢坂委員 それが一般的な議論だとは思うんですが、ただ、やはり私は、核になるものがないとなかなか議論が進まないなという考え方は変わらない。もし核がないままでこの議論を進めようとするならば、例えば憲法審査会のように、それぞれの委員が意見を闘わす場みたいなものの設置がなければなかなか厳しいのかなというふうにも思うわけです。

 委員長、国会にボールが預けられているわけですね。そういう中で、委員長、これはどのように考えますか。これはまさに法務委員会で議論しなければならないことだと思うんですが、いかがでしょうか。

葉梨委員長 後刻、理事会で協議をいたしましょう。

逢坂委員 その際に、先ほど私は閣法という言い方をさせていただきましたけれども、これはやはり、議員有志が、ある種、立法して出す、そのことを議論することによって、それを一つの題材にしてやっていくという方法もあるのだろうというふうに思っています。あるいは、議員有志ではなくてどこかの党が議員立法としてこれを提出する、そしてそれをまさに題材としてここで議論していく。そのことが、最高裁の、ある種こちら側に投げられたボールに応えることになるのかなというふうに思うわけです。

 この問題については、各党各会派の皆さんも、議論してくださいね、議論してくださいねということは多分おっしゃるんだとは思うんですが、放置しているだけでは議論が深化しないというふうに思います。先ほど委員長は、理事会で協議をするというふうにおっしゃられましたけれども、議員立法がもし出てくる、あるいはどこかの会派からそういう提案があるということになったら、ぜひ積極的に取り扱っていただきたい、そのことをお願いしたいわけでありますけれども、最後に委員長、いかがでしょうか。

葉梨委員長 必ずこういう形になるという出口を決めるということではなくて、理事同士でいろいろな話を、忌憚のないところを議論しようじゃないですか。その中からどういう方法がいいのかというのは出てきますし、また、現場においてそういう形の話をするのがいいのか、別の形がいいのかというのも、皆さんとの話し合いの中からいろいろな出口が出てくると思います。

逢坂委員 終わります。ありがとうございました。

葉梨委員長 以上で逢坂誠二君の質疑は終了いたしました。

 次に、清水忠史君。

清水委員 日本共産党の清水忠史でございます。

 法務委員会の所管でございます人権擁護に関する件について、きょうは質問させていただきます。

 初めに、いよいよ参議院選挙も迫ってまいりましたけれども、後援会の活動の定義について伺わせていただきたいと思います。

 後援会とは何か。日本共産党にも後援会がございます。政治家の皆さんにもそれぞれあるんだろうと思うんですが、後援会とは、やはり特定の政治家や政党を支援する。当然ですね。後援会の行事、例えば演説会を、うちの党でいえばよくやらせていただいております。後援会員であればどなたでも参加できるんですが。あるいは後援会のニュースを発行し、ニュースを読んで政党や政治家の活動を後援会の皆さんに知っていただき、そしてまた後援会員の拡大のために努力をしていただく。選挙になれば当然、政党、政治家を当選させるために、一生懸命支持を広げていただき、募金なども集めていただく。これが私の思うところの一般的な後援会の定義というかイメージなんですが、岩城法務大臣は、どのような後援会のイメージを持っておられますか。

岩城国務大臣 私の後援会のことを申し上げますと手のうちをさらすことになりますので、一般的に申し上げますけれども、特定の政治家の政治信条に賛同し、その政治家の活動を支える組織だ、そのように考えております。当然のことながら、後援会の会報等を発行することもその活動の一環だと思っておりますし、また、国会議員であれば、国政報告の会合を行うことなども後援会の活動だ、そのように認識をしております。

清水委員 本日は、土屋正忠総務副大臣にもお越しいただきました。

 土屋総務副大臣も同様の認識でよろしいでしょうか、後援会について。

土屋副大臣 今、法務大臣がおっしゃったようなことを考えております。

清水委員 ありがとうございます。

 それでは、資料の三を見ていただけますでしょうか。

 これは、土屋総務副大臣のホームページを紹介させていただきたいと思うんです。とても立派なホームページでして、参考にするところがいろいろあるんですが、国会レポートと、そして後援会ニュースと、二種類のニュースをアップされているというわけでございます。

 土屋総務副大臣、それぞれの違いについて端的に教えていただけるでしょうか。

土屋副大臣 これは、副大臣というよりも、政治家として問われていることなんだろうと思います。

 私は、国会議員になる前は市長を二十二年しておりました。その前は市会議員をしておりました。そのころから後援会をつくって、ずっと後援会の活動をしてきて、後援会で市政ニュースなどを出していたわけであります。

 ところが、国会議員になったものですから、国政全般にわたって、また選挙区もふえたものですから、国政を中心に、不特定多数にも読んでいただこうということで、国会レポートというのを作成し、印刷をしております。共産党ほどの回数は到底なかなかいかないわけでございますが、そういう活動をしている。

 従来どおり後援会がありますものですから、もちろん国政のニュースも政治家としての活動ですから載せるけれども、もうちょっと属人的な、例えば集会をやりますとか、あるいはこんなことがありましたとか、活動日誌のようなことも含めて、もうちょっと後援会員との間が近くなるような、そんな編集をしておりますが、法的に申しますと、広く政治活動でありまして、別に、後援会のニュースはこうでなければならない、あるいは国政報告はこうでなければならないということはない、このように理解いたしております。

清水委員 私も土屋総務副大臣と全く同じ考えでございます。

 今おっしゃられたように、不特定多数という言葉が出ましたけれども、これは、国会議員として広く国民に活動を報告する、有権者に伝えるというのは当然のことで、後援会は市長さんの時代からある後援会だというふうにおっしゃっておられましたが、支援してくれている後援会に向けたニュースだということの理解だと思うんです。私もそのとおりだと思うんですね。

 続いて、資料をもう一枚めくっていただきますと、土屋さんの紹介ばかりするわけじゃないんですけれども、立派な後援会ニュースを出されておりまして、「おかげさまで三選を果たし、」という言葉があります。この「おかげさまで」という言葉を辞書で引きますと、何と書いているか。他人から受けた助力や親切に対して感謝の意を込めて言う言葉。ありがとうという意味ではないかと思うんですね。

 一応、公選法には挨拶規定の制限というのがありまして、いわゆる不特定多数に挨拶も込めたニュースを配ることはできないとされているんですね、公選法では。街頭でお礼を述べることもできないということになっているんです。

 しかし、土屋正忠総務副大臣は、あくまでもこれは後援会ニュースで、後援会に限定した人に対しての挨拶ということなので、私は、これは通常の内部行為だというふうに思いますので、全く問題はないというふうに思っております。

 土屋総務副大臣、このように、政治家の後援会が、不特定多数に頒布する、ばらまくという目的ではなくて、先ほどおっしゃられましたように、みずからの後援会員に、後援会として後援会員に限定して後援会のニュースを読んでいただく、これ自体は私は問題ないことだと思うんですが、所見はいかがでしょうか。

土屋副大臣 私のニュースを紹介していただいて、ありがとうございます。

 私は、今の御質問に答える前に、基本的な、公選法上の文言の規定については、後刻、選挙部長がお答えいたしますが、その背景にある物事の考え方について、私はこう理解しているということを政治家としても申し上げたいと思います。

 私たちは、日本国憲法に基づいて、日本国民は、結社の自由、思想信条の自由、表現の自由、こういう根本的な民主国家としての基本原理を持っていると思います。

 したがって、こういう立場に立って、個人においても政治活動はできるし、それから、政治資金規正法上からいきますと、政党、政治資金団体、そしてその他の政治団体と三つに分かれるわけですが、その三つとも、また個人も含めて、政治的見解を申し述べたりするということについて、あるいは、そのことをネガティブあるいはポジティブに両方述べること自体が、これは基本的に憲法で許された行為だと思っております。

 その上で、公職選挙法の立ち位置というのは、選挙をお互いに条件を同じくしてフェアにやる、そのために一定の規制をかけています。それは、事前運動の規定、あるいは事後運動のことも含めて、そういう構成になっているんだろうと思います。

 そういう考え方に立って、後援会ニュースも発行しますし、それから、国会レポートと称するか、国政レポートでも名前は何でもいいと思うんですが、そういうことを出すことについて、全く堂々と今までやってきたわけであります。

 なお、御指摘のありましたこれは、受かった後で半年後ぐらいに出した、八月ですから、選挙が終わって半年後ぐらいに出した、B4の裏表で、これは今表面だけなんですが、きちっと中身を書いて、二、三面では集団的自衛権のことを書いて出したわけであります。したがって、こういうレポートでありますから、例えば、顔だけでかく出して、選挙ありがとうございましたとか、そういうことを書けば、これは事後運動ということになりかねませんが、そういうふうな一連の記事の中の一個の見出しですから、これは当然許容の範囲じゃないかと思います。

 なお、ちなみに、「おかげさまで」というのはどういう意味かは別にしても、「三選を果たし、」というのは事実でございます。それから、永田町の真ん中で働いているというのもこれは事実でございますから、それ以上のものでもない、それ以下のものでもない、こういうことに御理解いただければと思います。

清水委員 ありがとうございました。

 いろいろ言われましたけれども、要するに、後援会の内部活動、後援会ニュースを後援会員に読んでもらうということそのものについては問題ない、信念を持ってやってこられた。そして、ちなみに言いますと、挨拶規定というのは期限がなくて、私、調べますと、半年後であろうが一年後であろうが十年後であろうが挨拶してはいけないというふうになっておりまして、これ自体を公職選挙法を論じる際にいろいろ議論するべきだというふうに思っております。総務副大臣は、質問、ここで結構ですので、どうもありがとうございました。

 結局、今、土屋総務副大臣にいろいろ聞かせていただきましたけれども、法務大臣の所見も聞かせていただきましたけれども、内部活動ですから、結社の自由、表現の自由というお言葉もありました。

 ところが、こうした後援会の正当な活動を弾圧する事件が起きております。

 去年十二月、兵庫県福崎町、人口二万人弱の姫路市の少し上にある小さな町なんですが、この町長選挙で、候補者の後援会便りを公職選挙法の文書違反として、兵庫県警捜査二課と福崎署が、選挙告示直後から、つまり、選挙期間中から町民に対して不当な捜査を行い、著しい人権侵害が発生しております。

 福崎町では、五期二十年にわたりそれまで町長を担ってこられた、これは日本共産党員なんですけれども、嶋田町長の後継者が当選されました。ちなみに、この方は共産党ではございません。

 警察は、選挙期間中から現在に至るまで、新しい町長の後援会や嶋田前町長に連日の呼び出し、張り込み、尾行を執拗に続けております。

 私は、去る三月二十日、この間の日曜日、福崎町を訪問しました。そして、実際に被害に遭っている方々からじっくり話を伺いました。

 内部資料とはっきり書かれている後援会ニュースを町民に見せて、いいですか、おたくのところにこういうニュースは届いていないかという聞き込みを選挙期間中から開始したわけです。

 それだけじゃないんですね。許しがたいのは、警察が、あなたは後援会員かと聞くんですね。後援会でないならば、私は後援会ではありません、あるいは後援会をやめましたという紙に署名捺印してくれないかと、警察が後援会員の家を訪ねてやっているということなんですね。全く信じられないようなことが起こっております。

 法務大臣に一問お伺いします。

 日本国憲法第十九条、「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。」とあります。この条項は、戦前の深い反省の上に立って明記された非常に重いものだと思うんですが、この憲法十九条について、法務大臣の所見を伺います。

岩城国務大臣 お答えいたします。

 憲法の政府としての一般的解釈につきましては内閣がお答えすることになりますが、その場合に、法務大臣は内閣を代表してお答えする立場にないことをまず御理解いただきたいと存じます。

 その上で、法務大臣として所管を離れ、憲法の規定について所見を申し上げることは差し控えさせていただきたいと存じますが、過去、平成二十四年三月十三日の参議院予算委員会の場におきまして、当時の野田総理が、「憲法十九条、思想及び良心の自由は、一般に、内心について国や地方公共団体が制限し、又は禁止することは許されないという趣旨であると理解をしております。」と答弁されたことがあるのは承知をしております。

清水委員 かつての総理大臣がそのように重要な答弁をされているということですよね。

 あなたは後援会員かどうか。例えば、岩城大臣の後援会のお宅に警察が来て、あなたは岩城さんの後援会に入っているかどうか、こんなことを聞くこと自体が、とんでもない、国民の内心に土足で踏み込む憲法違反の人権侵害だと私は思っております。

 実は、選挙期間中からこうした聞き込み、張り込みが行われますので、町役場とかあるいは候補のところに、もう警察が来て怖いから、私は投票に行くのをやめますという電話が複数入るわけですよ。それで、町の選挙管理委員会が福崎署に対して、選挙妨害になるからやめてくれと言ったのにもかかわらず、こうしたことが引き続き行われているということは大問題だと言わなければなりません。

 私は、執拗に呼び出しをされるような異常な捜査について暴露したいと思うんですが、刑事が連日自宅にやってきて、任意同行を求めるというんですよ。断っても断ってもやってくるというんですよ。

 法務省にお伺いします。

 刑事訴訟法百九十八条では、このような任意の出頭要請についてどう規定していますか。端的にお答えください。

林政府参考人 まず、被疑者に関しましては、刑事訴訟法百九十八条第一項で、検察官、検察事務官または司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べることができる、このように定めております。

 また、参考人につきましては、同じ刑事訴訟法の二百二十三条第一項で、検察官、検察事務官または司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者以外の者の出頭を求め、これを取り調べることができると定めております。

清水委員 聞いていない条文まで答える必要はありませんよ。

 私は、もう一回聞きますよ。出頭を拒み、または出頭後、いつでも退去できる、こういう規定は書いていませんか。そこだけ答えてください。

林政府参考人 私が申し上げた二つの根拠のところの中で、まず、被疑者につきましては、刑事訴訟法百九十八条第一項ただし書きにおいて、逮捕または勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、または出頭後、いつでも退去することができると定められております。

 また、被疑者以外の者につきましても、同法二百二十三条第二項において、そのただし書きが準用されておりまして、出頭を拒むことができることとされております。

清水委員 たとえ被疑者であっても、出頭を拒むことができるわけですよ。被疑者でも何でもない後援会員をつかまえて、自宅に連日刑事が押しかける。

 実際に来られている方にお話を聞きました。何回来るんですかと聞いたら、ことし一月、十七日間、刑事が来ました。二月、二十七日間来たそうです。毎日じゃないですか。三月、二十日時点で十三日間、刑事がやってくるんです。拒んでも拒んでもチャイムを鳴らし、呼び鈴を鳴らし、出頭要請をする。余りに異常じゃありませんか。

 さらに、病気で入院している人の病院まで押しかけていって、会議室で一時間の事情聴取をやっているんですよ。志布志事件でありましたね、鹿児島県警が、病気の人の病院まで行って取り調べをするというようなとんでもない捜査が。これは糾弾されたはずですよ。全くおぞましいやり方だと思うんですね。

 法務省は、例えばこのような人権侵害を受けた人、被害をこうむっている国民について、どういう救済や対応の仕方があるのか、教えていただけますか。

岡村政府参考人 一般論でございますが、法務省の人権擁護機関では、全国の法務局、地方法務局において、あらゆる人権問題について相談に応じております。

 人権侵害を受けたとする方々からの人権侵害についての申告があり、人権侵害の疑いのある事案を認知した場合には、人権侵犯事件として調査を行い、事案に応じた適切な措置を講ずることといたしております。

清水委員 済みません、確認なんですけれども、被害を訴えられた、申告された方の相手側、いわゆる加害者側が国や地方公共団体であっても、その対象に当てはまりますか。

岡村政府参考人 再び一般論でございますが、法務省の人権擁護機関で取り扱う人権侵犯事件の相手方、すなわち、人権侵犯をしたとされる者につきましての限定はございません。

 一般私人も、国または地方公共団体の公務員も、同様に対象となります。

清水委員 警察庁に伺います。

 警察法第二条の二項について読み上げていただけますか。

露木政府参考人 警察法第二条第二項でございますが、「警察の活動は、厳格に前項の責務の範囲に限られるべきものであつて、その責務の遂行に当つては、不偏不党且つ公平中正を旨とし、いやしくも日本国憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等その権限を濫用することがあつてはならない。」と規定されております。

清水委員 「いやしくも」というんですけれども、卑しい限りだと私は言わなければなりません。だって、執拗な警察の違法捜査によって、心の病に侵された人もいるんですよ。

 私、ここに診断書のコピーを持ってまいりました。連日、執拗な張り込み、尾行、呼び出しを受けて、この方は、傷病名、恐怖症性不安障害、希死念慮、これは自殺願望のことです、希死念慮を伴う不安状態が続いている。抗うつ剤を投与するも不安定な状況です、上記のとおり診断すると。こんな、国民に自殺願望を持たせるような違法な捜査が人権侵害でなくて一体何だというんですか。

 私は、憲法の保障する権利や自由だけではなく、身体生命まで脅かすような違法きわまりない捜査は、警察庁は、兵庫県警に対しても福崎署に対しても、直ちにやめるように伝えるべきではありませんか。

露木政府参考人 個別事案の捜査に関するお尋ねでございますので、お答えは差し控えさせていただきたいと存じます。

 なお、一般論として申し上げますと、警察では、常に不偏不党、厳正公平な立場を堅持するとともに、関係者の基本的人権に配慮しつつ、選挙の公正の確保に資する観点から、刑罰法令に触れる行為があれば、法と証拠に基づき適切に対処しているところでございます。

 警察庁といたしましても、各都道府県警察に対して、今申し上げたことについて、各種会議における指示を初め、あらゆる機会を利用して指導教養を図っているところでございます。

清水委員 刑罰法令に触れる行為があれば捜査するというふうにおっしゃるんですが、去年の十二月十七日に国民救援会の皆さんや町民の皆さんが福崎署に抗議に行っているんですよ、こんな違法捜査はやめてくれと。そのときに福崎署の副署長が、後援会ニュースを後援会員に届けることが悪いことなんですかと尋ねた際に、副署長は、直ちに違法とは言えないと言ったんですよ。

 違法ではないと言ったこと、つまり、刑罰行為に触れないことについて執拗な捜査が今日まで行われているということは、不偏不党、中立公正どころか、まさしくこれは、ある意図を持って人権侵害の弾圧捜査をやっているということじゃないですか。私は、そのことを厳しく指摘しておきたいと思います。

 資料の一枚目をごらんください。

 これは、市民的及び政治的権利に関する国際規約であります。第十九条には、「すべての者は、干渉されることなく意見を持つ権利を有する。」と。警察に干渉されることもない、あなたは後援会に入っていますか、入っていませんか、後援会をやめてくれませんか、こんな干渉を受けることはだめだ、こう書いております。二十五条(b)項には、「普通かつ平等の選挙権に基づき秘密投票により行われ、選挙人の意思の自由な表明を保障する真正な定期的選挙において、投票し及び選挙されること。」とある。

 投票所を出てきたら、警察の人に誰に入れたのかと聞かれたという人の話も聞いてまいりました。小さな田舎町だからといって、こんなことが行われていることを放置していていいんですか、法務省、警察庁。誰もこれは、政党とか政治家にかかわらない問題だと私は思うんですよ。

 それで、二〇一四年の国連自由権規約の委員会も、このような、公選法はいろいろ問題があるんです、前近代的な公選法の規定が撤回されない現状であっても、表現の自由等へのいかなる制約も控えるべきと勧告しているんですね。

 今の公選法は、本当にめちゃめちゃなんですよ。例えば、インターネット選挙が解禁されましたけれども、電話で支持を呼びかけるのはオーケーですよ、選挙期間中。ところが、メールはだめなんですよ、ファクスもだめなんですよ。ところが、ツイッターとかフェイスブックのメッセージ機能で支持を呼びかけるのはオーケーなんですよ。

 同じ相手に対して、メールはだめで、LINEやフェイスブック、ツイッターのメッセージ機能はオーケー。全くこれは、十八歳選挙権が始まりますけれども、高校生や若い皆さんには理解できないというふうに私は思うんです。

 それで、自由権規約委員会というのは、日本も合意して設置されている、条約なんですね、唯一の解釈機関です。日本国憲法九十八条の二項では、日本国が締結した条約及び確立した国際法規は、誠実に遵守することを必要とする。

 人権規約委員会からは、日本の公選法というのは前近代的ですよ、拡声機を使った宣伝だとか文書の制限だとか、あるいは戸別訪問、今アメリカで大統領予備選をやられていますけれども、アメリカの選挙というのは戸別訪問が基本ですからね、こうしたことはもう世界的な趨勢に合わせるべきだということを繰り返し繰り返し勧告されているにもかかわらず、まともな反論もせずに、今日まで、がんじがらめの公選法を盾に今回のような弾圧事件が行われているというのが今の実態なんですね。

 法務大臣にお伺いします。

 この国際規約に照らしても、国民の人権を擁護し、思想及び信条の自由を脅かすことのないよう、警察に対して即刻、違法な弾圧捜査、やはり人権擁護の責任者は、岩城法務大臣が人権擁護の責任者ですから、これをやめさせるということが大事だと思うのですが、いかがですか。

岩城国務大臣 ただいまのは公職選挙法についてのおただしですか。(清水委員「いや、違います。弾圧事件をやめさせろという話です」と呼ぶ)個別事案ですね、失礼しました。

 具体的な事案を前提としてのお尋ねでありますので、これは捜査機関の活動内容にかかわる事柄でございますから、お答えは差し控えさせていただきます。

清水委員 捜査中であっても、現に人権侵害が行われているんですから、それを放置するんだったら、何のための法務省ですか、何のための人権擁護なんですか。

 一人の政治家として、岩城大臣、岩城大臣自身の後援会の方が同様のことをされたらどのように思われますか。捜査中のことだからといって放置することを許されますか。それをお答えいただきたいと思います。

岩城国務大臣 個別的なことにつきましては、先ほども申し上げましたとおり、差し控えさせていただきますけれども、人権侵害を受けたとして法務局に申し出があった場合には、先ほど人権擁護局長が答弁したとおりでございます。

清水委員 最後、岩城さんにはちょっと指摘しておきたいことがあります。

 刑事訴訟法第百九十三条、百九十四条は、検察庁に警察の捜査を適正化する権限を与えています。

 このことについて私が思い起こすのは、実は鹿児島県警の志布志事件なんですよ。これは本当に、繰り返しの呼び出しや自白の強要ということが行われ、無罪になりまして、その後、国賠も確定して、国が被疑者、元被告らに六千万円支払うという決定が出て、検察も上告断念して確定した事例です。

 この中で裁判所が検察庁に対して何と言っているかというと、警察は自白を強要する違法捜査をした、検察も公判を漫然と継続したと指摘して、だから、警察が暴走したときには検察がそれにしっかりと歯どめをかけなければならないということを述べた判決文だというふうに私は思うんです。

 岩城大臣、個別の事案については答えられないということなので、一般論で、法律に基づいて結構ですが、こういう違法な捜査がされた場合、やはり検察庁としてしっかりと警察の捜査を適正化させる、やはり、そうした目配りやあるいは調査というのは、どの事件にかかわらず法務大臣自身の責任であると私は思うんですが、いかがでしょうか。

岩城国務大臣 おただしの刑事訴訟法百九十三条また百九十四条についてでありますけれども、一般論として申し上げますと、御指摘の刑事訴訟法第百九十三条は、刑事事件についての公訴提起及び公訴維持に全責任を持つ検察官に司法警察職員に対して必要な指示、指揮を行わせ、事件処理の適正化を図るために設けられたものであると承知しております。

 なお、同法第百九十四条は、このような百九十三条の指示、指揮の履行を確保するための規定であるものと承知をしております。

清水委員 時間が来ましたので終わりますが、後援会員に後援会ニュースを配布するというのは通常の内部行為であり、何ら問題ありません。警察による違法な捜査を直ちに中止し、町民に謝罪することを強く求めて、質問を終わります。

葉梨委員長 以上で清水忠史君の質疑は終了いたしました。

 次に、木下智彦君。

木下委員 おおさか維新の会、木下智彦でございます。本日は、お時間をいただきまして、ありがとうございます。

 いろいろときょう聞いておりますと、なかなか個別の話についてはお答えづらいということかなと思っていたんですけれども、きょう、私の方も少し個別の事例を挙げてお話をさせていただきたいと思います。

 どういった話かといいますと、東京の荒川区にあります島野製作所という中小企業さん、資本金が九千万円ほどで従業員が三百五十人ほどの会社さんなんですけれども、そこはすごい、すばらしい技術を持っている。そこの会社さんが世界に名立たる会社さんであります米国のアップル社と契約を結んでおりまして、そこで起こった、現在係争中の事件なので、なかなかコメントもしづらいところかと思うんですけれども、これをちょっと例示させていただきたいと思うんです。

 今どういうふうな状態になっているのか、どういうふうな事案なのかということを、まずちょっと簡単に説明いただければと思います。簡単で結構です。

小川(秀)政府参考人 今御指摘ありました島野製作所とアップルの間の訴訟の関係でございますが、取引関係にあった両者につきまして紛争が生じ、アップルによる債務不履行や不法行為があったとして、島野製作所の方が損害賠償請求の支払いを求める訴えを東京地方裁判所に提訴したものと承知しております。

 島野製作所の提訴につきましては、アップル社の方から、裁判管轄がカリフォルニア州の裁判所で行うという契約行為があるとして、裁判管轄合意の有効性が争われ、東京地裁において本年二月十五日、中間判決の上、本件訴えについて日本国裁判所に管轄がない旨の被告の本案前の主張は理由がないとの判断がされた事案であるというふうに承知しております。

木下委員 ありがとうございます。非常に簡潔に、すばらしくお答えいただいたと思います。

 そうはいいながら、ちょっと中身を見てみたんですね。そうしたらどんなことがあったかというと、島野製作所さんの主張としては、アップル社から新型の部品の製造を依頼されていて、それが突如、増産してくれとアップル社から言われた。それによって、必要な設備投資とか雇用を行って大々的にやっていこうというふうに言って設備投資をしたらしいんですね。設備投資をしたら、今度はアップルからほとんど発注がなかった。これによって大量の在庫を抱えるようになってしまった。

 アップルは、その上どうしたかというと、彼らの主張ですけれども、両社の合意に反してノウハウを移転して、ほかの海外のメーカー、これは台湾かどこかだと思うんですけれども、そこに類似商品を製造させていた。

 たまたまちょっと私がその対象商品を持っているので持ってきたんですけれども、こういうマックブックと言われるパソコンなんですね。ここに、これはコンセントなんですけれども、コンセントにこうやると、ここが磁石でくっつくようになっているんです。この磁石のところもすごく便利なんですけれども、磁石でやるので、なかなか接触が悪いんですよね。この接触の悪いところの中にちっちゃいぽっちが何個かついていまして、これの中にちっちゃいばねがついているらしいんです。それで接触をぴたっと密着させるようにしている。これはすばらしい技術だなと思って見ていたんですけれども、そういうノウハウを持っている会社さんがこういうふうなことを言われた。

 その上、もっと言われたのが何かというと、アップルとの取引を再開させてくれというふうにずっと言ったんですけれども、ようやく何とか、わずかな発注量だけれども取引が再開された。そうしたら、今度は納入価格の大幅な減額を要求してきた。それだけではなくて、要はリベートも要求してきた。リベートはどういうことかというと、発注を再開するために、納入済みの在庫についても上で、上でというのは、さっき言った減額要求をした、それと同じ差額分をリベートとして、バックリベートという形でアップル社に払ってこい、そういうことを言われた。

 私は、こういうふうな話を聞いていて、まず裁判より最初に公取が独占禁止法違反か何かで調べるべきなんじゃないのと思ったんですけれども、そういうことがなかったので、これに対して原告として島野製作所は訴えた。

 アップルは、ここが問題なんですけれども、要は、二社間の契約、アップルと島野さんとの契約の中では、契約以外の全てのことについてはカリフォルニア州立裁判所で行う、そういうふうなことを契約書の中に書いてあった。だから、そういうふうな訴えは日本でやるんじゃなくてカリフォルニアの裁判所で行うべきだ、そういうふうな形で主張しているんですね。

 その他にもいろいろアップル社は主張していまして、公正性を欠いたらいけないのでちょっとだけお話ししますと、それ以外のところでは、契約締結時点では優位的な地位にあったのはむしろ島野だ、島野から供給をとめられてしまうと深刻な打撃を受けるので、契約締結時点においてアップルが優越的地位にあったかどうかであり、契約締結後の事情は無関係だとか、そういうような感じのことを言われています。

 そこで、先ほど言われた中間判決があったんですね。

 中間判決の中で一番大きな問題というのか判断の基準になったことというのが何かというと、一定の法律関係に基づく訴え、こういうことがあるんです。要は、どういうことかというと、契約条項では、原告、被告の間の訴えであるというほかに何らの限定を付しておらず、その基本となる法律関係を読み取ることは困難だ、だから、一定の法律関係に基づく訴えというふうに認めるわけにいかないと言っているんです。

 この一定の法律関係とは何かというと、民事訴訟法の中に規定されていて、要は、一定の法律関係に基づく訴えに関しては、書面でされなければ効力はないというふうに書いてある。だから、この一定の法律関係というのが契約書の双方の契約の中にはちゃんと規定されていないので、幾らカリフォルニア州立裁判所で訴えを起こすんだというふうに言ったところで、日本でやってもいいんじゃないかという中間判決が出た、こういうことなんですね。

 今私が説明したんですけれども、何となく釈然としないところがあって、一定の法律関係とは何かということをもう少し詳しく教えていただきたいんです。お願いします。

小川(秀)政府参考人 お答えいたします。

 御指摘ございました一定の法律関係というのは、民事訴訟法の三条の七の第二項、それから、同じく民事訴訟法の第十一条二項にある文言でございます。

 まず、民事訴訟法第三条の七の第二項、これはいわゆる国際裁判管轄に関する規定でございますが、財産権上の訴えをいずれの国の裁判所に提起することができるかについて定める合意というものは、一定の法律関係に基づく訴えに関してしなければ、その効力を生じないものとしております。

 また、国内の裁判管轄に関する規定であります民事訴訟法第十一条の第二項も、財産権上の訴えに係る国内の管轄裁判所を定める合意は、一定の法律関係に基づく訴えに関してしなければ、その効力を生じないものとしております。

 これらの規定が定めております一定の法律関係というのは、合意の対象となる訴えが特定していることを意味するものでございます。

 この趣旨は、とりわけ国際裁判管轄の場合を例にして申し上げますと、こういった合意によっていずれの国の裁判所に訴えを提起することができるのか、それから、国内でいえば、国内のいずれの裁判所に訴えを提起することができるのかについて、当事者に大きな影響を与えるものであることから、当該合意の対象にいかなる訴えが含まれるのかについての当事者の予見可能性を確保する必要がある、こういう観点から、合意の対象となる訴えが特定していることを求めるという趣旨でございます。

木下委員 非常に簡単にというのか、うまく説明をしていただいたと思うんですけれども、そうはいいながら、その一定というのはなかなか難しい問題だなと。

 今ちょっとお話しされている間に、もともとの契約の条項を見たんですけれども、もう一度お話しさせていただきますと、アップル社と島野さんは、契約書の中にこういう条項があるんですね。契約内容との関係の有無にかかわらず、あらゆる紛争はカリフォルニア州の裁判所が管轄する、こういう契約を結ばれている。恐らく、さっきのお話だと、この契約内容との関係の有無にかかわらず、あらゆる紛争は、こういうふうに言っているから一定じゃないんだということだと思うんですね。

 では、そこで、この話は後でもうちょっと整理しながらお話しさせていただきたいんですけれども、そのときにもう一つあったんです。今、国際裁判管轄の話の後に国内の話も少しされました。民事訴訟法の第三条の七のところは国際裁判管轄について言っている、それは二〇一一年の民事訴訟法改正で創設されたものだと。もともと、この契約書は二〇〇九年に発効しているものらしいんですね。ということは、契約書が交わされた後にでき上がっている。

 ただ、ここで言われているのが、民事訴訟法の中には、国内の管轄の合意について第十一条で同じように言っていまして、一定の法律関係に基づく訴えに関して行うべきだというふうなことがあって、国内で書いてあることを国際契約の中でどうするかというふうなことで、裁判所がこう最後に言われているんですけれども、条理に基づき判断されるべきだと。

 この条理に基づき判断されるべき、この意味を教えていただけますでしょうか。

小川(秀)政府参考人 財産権上の訴えに係る国際裁判管轄に関する合意の効力について定めます民訴法三条の七というのは、今御指摘ございましたように、平成二十三年の改正により新設された規定でございます。この改正法の附則第二条第二項によれば、改正法の施行前にした合意については、民事訴訟法三条の七の規定は適用されないものとされております。

 そこでということになりますが、この改正により、国際裁判管轄に係る規定が設けられる以前において、財産権上の訴えについて日本の裁判所が管轄権を有するか否かの判断基準としましては、一般論として、当事者間の公平、裁判の適正迅速を期するという理念により条理に従って決定するのが相当であるとした裁判例、これは最高裁の確定した判例でございまして、こういった判例に基づいて、先ほど御指摘ございましたように、条理に従って決定するというのが一般的な実務でございます。

 その際の考慮要素としては、当事者間の公平、裁判の適正迅速を期するという理念により条理に従って決定するということとされております。

 その上でですが、一般論としては、このような裁判例を踏まえながら、民事訴訟法三条の七の規定が適用されない国際裁判管轄に関する合意については、裁判所が個別の事案ごとにその有効性を判断しているものと承知しております。

木下委員 ありがとうございます。

 難しいですよね、この辺の考え方。というのは、契約書を結ぶ方が先にあって、後で法律ができた。ただ、そのかわり、中に、それに関連というのか想起されるような決まりがあったので、裁判所はそういうふうな判断をしたというふうな話なんですね。

 こういうふうな話は、私は今、私自身がしゃべりながら思っていたんですけれども、何かアップルの肩を持っているような感じの話し方になっていて、自分の本意ではなくて、実は、こういった日本の、技術を持っているけれども、中小企業さんであるとか小さい企業さんが、アメリカの、アメリカと特定するものではないですけれども、大きな企業さんと契約するときには必ずこういう問題が出てくる。

 というのは、私も二十年ほどサラリーマンをしておりまして、その際に、大きな会社だったんですけれども、必ず一番最初に、契約書を結ぶ際に、この管轄裁判所の話が出てくるんです。必ず会社のフォーマットの中には、日本国内でやることとか東京でやることとか、こういうふうなことを相手と結びなさいと言われる。相手は当然違うことを言ってくるわけです。

 そうなると、お客さんと話して戦うよりも、まず最初に、会社の中の法務部というのがありまして、ここが、言えば、先ほどから、きょうお話しされているような國重さんみたいな方であったり階さんであるような、弁護士上がりのような人と戦うんですね。契約書を結ぶのに七割、八割、そこで力を費やしちゃうぐらい、営業マンはそうやってやっていく。それができるのは大企業だからだ。中小企業はなかなかそうはいかないんですよ。

 そうなったときに何が必要なのかというふうにちょっと考えていて、これは経産省さんにも今度またこういうふうなお話をしていこうと思っているんですけれども、やはりその中小企業さんを何とか下支えする、そういうものが必要なんじゃないのかと。

 というのは、アップルはどんな感じかというと、すごい国際弁護士さんがずらっと多分いるでしょう。この話を、契約するときもそうだし、訴訟を起こされたときもしっかりやられている。ただ、恐らくこういった会社さんは、法務部すらまともなものはまず持っていらっしゃらない。ですから、顧問弁護士を雇われて、町の顧問弁護士さんだったりする。

 そういう形になっているんだけれども、もっとそこに何かしら、国際弁護士と戦えるような弁護団が、日本の政府がうまくセーフティーネットのように、下に土台がある、もしも何か困ったときに顧問弁護士経由でそういったところに頼めるとか、そういったプログラムがあればいいなというふうに思っていて、こういうふうな話をさせていただいているんです。

 そうはいいながら、今、法務省さんとしてできることは何なのだろうと思ったときに、きょう質問させていただきましたが、この一定の何々とか条理に基づくというふうな話がありましたし、しかも、これはもともと、契約書が結ばれた後にこういう条項がつくられている。これを考えると、もう条項はつくられていますけれども、もっと一定の法律関係云々をもう少し特定して、どういうことを言っているのかであるとか、そういった法整備がまだまだ必要なんじゃないかなというふうな思いでこういうお話をさせていただいております。

 大臣、ここで最後にお話しさせていただきたいんですけれども、こういった法律の整備、これは公平にやっていかなければならないと言いながらも、より明確に、しかも、よりわかりやすい形でそういった日本の企業を守ると言ったらあれですけれども、当然、逆のパターンもありますから。というのは、日本の企業がこういう形で訴えられる可能性だってあるんですけれども、そういった整備にどんどん手をつけていっていただきたいんです。それを、大臣、やっていただけるかどうかということをお話しいただければと思います。

岩城国務大臣 先ほどのお話にありましたとおり、民事訴訟法第三条の七が設けられたことによりまして、国際裁判管轄に関する合意についても、日本国内における管轄裁判所に関する合意と同様に、一定の法律関係に基づく訴えに関してしなければならないことが明らかとなりましたことから、合意の有効性に関し、当事者の予見可能性が向上したものと認識をしております。

 民事訴訟法第三条の七の規定につきましては、事案に応じ、裁判所において適切に運用されていると承知しており、引き続きその実務の運用を見守ってまいりたいと考えております。

木下委員 最後と言いながら、一つだけお話しさせていただきますと……

葉梨委員長 簡潔に。

木下委員 今のところで、今のお話であればなおのことなんですけれども、この有無にかかわらず、あらゆる紛争というふうに書いちゃったからだめなだけで、今のお話を全部聞いていると、関係の有無にかかわらずじゃなくて、本契約に起因するあらゆる紛争はというふうに書いてしまえば、やはり一定の法律関係というふうになってしまうんじゃないかと思われますので、そういうことも含めてちゃんと整備していくことを大臣にもう一度お願いさせていただきまして、私の質問を終わらせていただきます。

葉梨委員長 お願いだけでよろしいですか。答えを求めますか。

木下委員 お答えしていただけるなら。大丈夫ですか。ありがとうございます。済みません。

岩城国務大臣 委員の御提言を受けとめさせていただいて、今後、どういうふうにするか、いろいろなことを考えてみたいとは思います。

木下委員 大変ありがとうございました。

葉梨委員長 以上で木下智彦君の質疑は終了しました。

 次に、上西小百合君。

上西委員 上西小百合です。

 本日は、質問の機会を頂戴いたしましたことにまずは感謝を申し上げます。

 去る二月七日、TBSの「サンデー・ジャポン」という番組内で、元衆議院議員の杉村太蔵氏が、覚せい剤取締法違反で逮捕されました元プロ野球選手の清原和博氏に対して発した永久追放という言葉に更生保護の観点から反論しました私のブログがマスメディアで取り扱われ、さまざまな意見が私のもとに寄せられましたし、大臣も所信表明で再犯防止対策の推進について言及をされていますので、更生に関する啓発活動についてお伺いをしたいと思います。

 平成二十八年度の法務省所管予算説明を拝見いたしますと、再犯防止対策に全体の約三分の一に当たる計二千七百九十一億八千万円が組まれていますし、これまでも相応の予算が費やされてきました。再犯率の高さを鑑みますと、これは予算の確保ということで評価をいたしたいと思いますが、現状は、清原氏の報道を受け、ネット等で、更生の権利はない、社会にもう出てきてほしくない等の声があふれ、更生保護ネットワーク等の民間に支えられる法務行政に携わる法務委員の一人としては残念な気がしてなりませんので、何とか国民の皆さん方の意識転換をしていただけるように尽力をすべきだというふうに思っております。

 法務省は、薬物の問題を抱えた方々に対してどのような支援、指導を行っているのか、お聞かせをいただけますでしょうか。

片岡政府参考人 確かに、世の中の人の中には、他人が捕まったり裁判で有罪になったりしますと、あいつはもう終わりだなどと心ないことを言う人もおるわけですが、更生保護の活動はまさにそこが始まりでありまして、そこから改善更生、社会復帰という本人の立ち直りに向かって、更生保護はそれを支援する、支えるという活動をしてございます。

 しかしながら、薬物事犯は非常に厳しい現状にございます。例えば、覚醒剤事犯の刑務所出所者のうち約半数が五年以内に再び刑務所に戻っている、刑務所に入所しているという現状にあります。

 そのため、保護観察所におきましては、専門家に開発していただきました専門的処遇プログラム、これは認知行動療法を母体とするものですが、そういうプログラムとか、あるいは簡易薬物検出検査、我々は尿検査とか呼んでいますが、それを継続的に実施しているところであります。

 また、保護観察期間中に限らず、薬物事犯者とは非常に息の長いつき合いが必要ということ、つき合いというか指導が必要ということでありまして、あるいは地域全体で理解をしていただき、それを支えていただく、特に医療機関等との連携が非常に求められているところでございます。そのために、昨年の十一月ですが、厚生労働省と共同で地域連携のためのガイドラインを策定して、各自治体にも配付しまして、理解を求めているところでございます。

 そして、ことしの六月ですが、刑の一部の執行猶予が施行になりまして、保護観察期間がより長くなるということで、より強力な保護観察を実施していきたいと思っております。

 以上でございます。

上西委員 詳細な御説明、ありがとうございます。

 やはり更生に関しては、地域の皆さん、住んでいらっしゃる周りの方々がしっかりと支える、孤立させないというふうな取り組みが欠かせないと思いますので、そういった形で引き続き御尽力をいただきたいというふうに思います。

 さて、次に、インターネットを悪用した人権侵害に関してお伺いをいたします。

 近年、SNSの発達により、それを悪用した行為もふえてきており、特定の個人のプライバシーに関する情報の無断提示、差別的な書き込みなどの情報がまさに無法地帯のように流され、それに関して苦しむ被害者も出てきています。表現の自由は、匿名性の有無にかかわらず尊重されるべきでありますけれども、今申し上げたような事態は看過できません。

 人権擁護局からこれに対して取り組みをお伺いしましたところ、法務局にインターネットを悪用した人権侵害に関する相談が平成二十六年は四千三百九十件あり、このうち人権侵犯として立件したものは千四百二十九件ということでしたから、まず数字を拝見しますところ、非常に職員の方々が一生懸命に取り組んでくださっているなというふうに感じているんです。

 ただ、インターネットを我々が普通に拝見しますと、非常にたくさんの、目にするのもはばかられるぐらいの汚い言葉があふれ返っている割には、この相談件数自体、分母自体が非常に少ないというところが気になっているんです。

 法務局の啓発活動と被害者からの削除要請の手順についてお聞かせをいただけますでしょうか。

岡村政府参考人 法務省の人権擁護機関では、全国の法務局、地方法務局の窓口、電話などで、インターネット上の人権侵害を含む人権問題について人権相談に応じており、人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は人権侵犯事件として調査を行い、事案に応じた適切な措置を講ずるなどいたしております。

 具体的には、インターネット上の人権侵害について被害の申告を受けた場合には、被害者に当該情報の削除依頼の方法を助言するほか、調査の結果、プライバシー侵害や名誉毀損等の人権侵害に該当すると認められるときは、法務局が当該情報の削除をプロバイダー等に要請するなど、適切な対応に努めております。

 また、法務省の人権擁護機関では、「インターネットを悪用した人権侵害をなくそう」を啓発活動の年間強調事項の一つとして掲げ、各種啓発活動を実施するとともに、ポスター、リーフレット、新聞広告、法務省のホームページなどにおいて、相談窓口の周知を行っております。

 今後とも、このような取り組みを通じて、インターネット上の人権問題に適切に対応してまいりたいと考えております。

上西委員 こういうふうな被害に遭ってしまった場合、例えば、裁判をしなければいけないんじゃないかとか、警察に届けなければいけないんじゃないかというふうに、やはり被害に遭った方は非常にハードルが高く感じてしまうのが多いと思うので、こういった制度がある、国がこういうふうな制度をつくっているというのは非常にすばらしいことだと思います。

 これを少しでも多くの方に知っていただきたいというふうに思うわけなんですけれども、いたずらに拡散すると、これはこれで、受付の方で対応し切れずに、かえって相談者を失望させてしまう場合もありますので、念のため、私の方から人権擁護局に確認をさせていただきましたところ、与えられた力の中で真摯に対応していきたいという心強いお言葉をいただきました。

 メディアの皆さん方のお力添えも賜りながら、一人でも多くの方にこの制度を発信するということが必要だと思っておりますので、ぜひ、ここにいらっしゃる委員の先生方に、広報活動も議員の活動の一つというふうに捉えていただいて、広報活動にお力添えをいただければなというふうに思っております。

 加えて、ネット上で人権侵害を行っている加害者側にも啓発が必要だと考えております。

 ヒアリングをしますと、単に憂さ晴らしをしたかったというふうな意見が多く、匿名で書き込んだ側には、会社や知人などにばれないから大丈夫、こういうふうな思い込みが強くあるようです。

 そして、ただの個人の悪意ある書き込みなのに、我々、みんな、国民、こういうふうな形で主語が大きくなっていて、そのため述語もそれにつられて非常にきつくなっていて、この単なる一個人が何か大きなものを代弁しているかのような印象を受け、それを受けた被害者は、世間から自分が否定されているような錯覚を覚えてしまう、こういうふうな状況です。

 ですから、加害者には、本来の匿名でしか発せられないような切実な言葉ではなく、人をののしるだけの汚い言葉に伴う責任、これを自覚してもらう必要が私はあるというふうに思っております。

 匿名とはいえ事件と認定されれば、捜査で発信者は特定され罪を問われるわけですし、その事前段階においても、プロバイダー責任制限法に基づき、人権侵害を受けた被害者は人権侵害の情報の発信者の情報開示請求を行うことができるわけですから、ネット上の書き込み、情報発信には匿名であっても責任が伴う、これをしっかりと周知していくというのも、被害者救出と同時に抑止力につながる大きな課題ではないかというふうに私は考えているんですけれども、これに関して、法務大臣の御見解、そして対応策が何かあればお聞かせをいただければと思います。

葉梨委員長 簡潔にお願いをいたします。

岩城国務大臣 国民の一人一人が人権を尊重することの重要性を正しく認識し、たとえ匿名であろうと、他人の人権に十分に配慮した行動をとるようになっていくことが肝要であると考えております。

 匿名の書き込みも、調査をすれば発信者を特定することが可能な場合があることを周知することも、軽率な書き込みを抑止することにつながるとともに、事の重大性を認識させることになるとも考えておりまして、啓発活動で活用する啓発教材においてもそのことに言及するなど、取り組みをしております。

 今後も、引き続き効果的な啓発を検討し、実施してまいりたいと考えております。

上西委員 ありがとうございます。

 今、私とほぼ同じような考え方で、啓発活動をこれからもしていただくということで、非常にありがたい御答弁だというふうに考えております。

 国が国民の人権を守る、こういうものを守るために戦うという姿勢は、国民に必ず希望を与えるものだと私は実感をしております。私も、人権侵害の被害者となられた方々の声に真摯に耳を傾け、そして、まずは国民が人権を正しく理解できる社会、これを法務省の皆さん、そして法務行政をお支えくださる関係者の皆様方とともにしっかりとつくり上げていく、こういうことをお誓い申し上げまして、質問を終えたいと思います。

 どうもありがとうございました。

葉梨委員長 以上で上西小百合君の質疑は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時三分散会


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