衆議院

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第14号 平成28年4月27日(水曜日)

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平成二十八年四月二十七日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 葉梨 康弘君

   理事 安藤  裕君 理事 井野 俊郎君

   理事 城内  実君 理事 鈴木 馨祐君

   理事 吉野 正芳君 理事 井出 庸生君

   理事 逢坂 誠二君 理事 國重  徹君

      あかま二郎君    大隈 和英君

      大塚  拓君    奥野 信亮君

      勝沼 栄明君    門  博文君

      上川 陽子君    今野 智博君

      笹川 博義君    田所 嘉徳君

      辻  清人君    冨樫 博之君

      藤原  崇君    前川  恵君

      宮澤 博行君    宮路 拓馬君

      若狭  勝君    階   猛君

      山井 和則君    柚木 道義君

      大口 善徳君    吉田 宣弘君

      清水 忠史君    畑野 君枝君

      木下 智彦君    上西小百合君

      鈴木 貴子君

    …………………………………

   法務大臣         岩城 光英君

   法務副大臣        盛山 正仁君

   法務大臣政務官      田所 嘉徳君

   厚生労働大臣政務官    太田 房江君

   国土交通大臣政務官    宮内 秀樹君

   最高裁判所事務総局総務局長            中村  愼君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  井上  宏君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           大西 康之君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           堀江  裕君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局次長)           苧谷 秀信君

   政府参考人

   (厚生労働省職業能力開発局長)          宮川  晃君

   参考人

   (独立行政法人都市再生機構理事長)        上西 郁夫君

   参考人

   (独立行政法人都市再生機構副理事長)       花岡 洋文君

   法務委員会専門員     矢部 明宏君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十六日

 辞任         補欠選任

  笹川 博義君     青山 周平君

  宮川 典子君     井上 貴博君

  若狭  勝君     八木 哲也君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     笹川 博義君

  井上 貴博君     宮川 典子君

  八木 哲也君     岡下 昌平君

同日

 辞任         補欠選任

  岡下 昌平君     若狭  勝君

同月二十七日

 辞任         補欠選任

  笹川 博義君     勝沼 栄明君

  古田 圭一君     前川  恵君

  宮川 典子君     大隈 和英君

同日

 辞任         補欠選任

  大隈 和英君     宮川 典子君

  勝沼 栄明君     笹川 博義君

  前川  恵君     古田 圭一君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律案(内閣提出、第百八十九回国会閣法第三〇号)

 出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案(内閣提出、第百八十九回国会閣法第三一号)


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     ――――◇―――――

葉梨委員長 これより会議を開きます。

 第百八十九回国会、内閣提出、外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律案及び出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、参考人として独立行政法人都市再生機構理事長上西郁夫君及び独立行政法人都市再生機構副理事長花岡洋文君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として法務省入国管理局長井上宏君、厚生労働省大臣官房審議官大西康之君、厚生労働省大臣官房審議官堀江裕君、厚生労働省職業安定局次長苧谷秀信君及び厚生労働省職業能力開発局長宮川晃君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

葉梨委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

葉梨委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局総務局長中村愼君から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

葉梨委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

葉梨委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。今野智博君。

今野委員 おはようございます。自由民主党の今野智博でございます。本日は、質疑の機会をいただきましたこと、皆様に感謝申し上げます。

 限られた時間ですので、早速、本日は外国人の技能実習制度ということで、関する質疑を始めさせていただきます。

 外国人技能実習生は、現在、我が国に十九万人以上おりまして、少なからず我が国の社会にインパクトを持っている数字ではないかなと私は思いますけれども、こうした技能実習生の実態となると、一般の方にはなかなか伝わりにくいところがまだまだあるのかなという気がしております。

 そこで、まず最初に、現在我が国にいる技能実習生がどのような職種、分野で実習を実際にされているのか、その点について御質問いたします。

宮川政府参考人 お答えいたします。

 平成二十八年四月現在におきまして、技能実習制度のいわゆる対象職種、具体的には、技能実習二号への移行が認められている職種として七十四職種百三十三作業ございます。

 このうち、平成二十七年におけます技能実習二号への移行者数の多い順で見ていきますと、一番多いのは鋳造、鍛造のような機械・金属関係の職種、二番目は紡績運転のような繊維・衣服関係の職種、続いて建設関係の職種、それから食品製造関係の職種、農業関係の職種となってございます。

今野委員 ありがとうございます。

 衣服とか機械とか、いろいろ職種がございまして、そうした中で具体的に実習生の方々は作業に従事されているというふうに思いますけれども、さらに突っ込んで、そうした実習生がそのような職種、分野で具体的にどのような作業に当たられているのか、全てというわけにいきませんので、幾つか例を挙げて御説明いただければと思います。

宮川政府参考人 お答えいたします。

 技能実習生の具体的な実習の内容の例でございますけれども、例えば、繊維・衣服関係の職種であります紡績運転職種、その中での、糸をよる合撚糸作業という実習では、業務用の糸のパッケージを材料にいたしまして、専用の機械を用いまして、二本以上の糸を引きそろえて均斉なよりをかけて強度の大きい糸や特殊な風合いの糸などの製作を行い、天然繊維あるいは化学繊維といった紡績糸などを製造している作業がございます。

 また、農業関係職種でございます耕種農業職種、施設園芸作業で実習している技能実習生は、温室あるいはビニールハウスなどの施設におきまして、耕運機やトラクターなどといった各種の農業機械も活用して栽培や肥料の取り扱いなどの作業を行い、野菜、花卉等の園芸作物の生産を行っているところでございます。

今野委員 実習生がさまざまな分野でそうした作業に従事をしている。これは、ほとんどは日本人が今まで行ってきた仕事とほぼ同じなのかなという気がしておりますが、ただ、この技能実習制度は、法文の趣旨、目的は、あくまでも、「人材育成を通じた開発途上地域等への技能、技術又は知識の移転による国際協力を推進する」ということが目的としてうたわれております。

 現在までに、そうした技能実習制度の制度趣旨、目的のとおり、先ほど御説明いただいたような具体的な作業が海外への技能移転に成功して国際貢献に実を上げたというような事例があれば教えていただきたいと思います。

宮川政府参考人 お尋ねの、制度趣旨に沿った海外への技能移転が果たされた具体的な事例でございますが、これは、公益財団法人国際研修協力機構が帰国した実習生の近況報告をまとめた事例集によりますれば、一つは、紡績運転の職種で技能実習を行ったベトナムの方が、日本の繊維メーカーで専門技術と作業工程の管理方法を身につけ、帰国後に、もとの会社の技術系の管理職に復職し、後輩たちの教育を任されているというような事例、あるいは、農業関係の職種で技能実習を行った中国の方でございますが、日本のイチゴ農家でイチゴ栽培の温室管理や土壌改良等の技術を身につけまして、帰国後には、みずから農業法人を立ち上げまして、日本の鉄骨製ビニールハウスを用いた高付加価値作物の栽培に成功した事例などがあると承知しております。

今野委員 ありがとうございます。

 先ほど御紹介いただいたのは、今まで数多くの技能実習生が我が国で技能を実習して、それを本国に持ち帰ってさまざまな活動をされたという中の一つの例だというふうにお伺いいたしました。

 あくまでも我が国の技能実習制度はそうした制度趣旨、目的を持った制度でございますが、ただ、皆様も御承知のとおり、なかなかそういった制度趣旨が理解されていないといいますか、先日の参考人質疑においてもある参考人がおっしゃっておりましたが、本音と建前ということで、あくまでも建前としてはそうした制度趣旨、目的がありますけれども、本音という部分で単純に労働力の不足を補うというような形で、また、それがために、この技能実習制度をめぐっては、制度趣旨を完全に逸脱したようなさまざまな不正行為が、私も含めてですけれども、耳にされているところでございます。

 ちょっと確認として、まず、今まで把握されている具体的な不正行為の中身、内容について教えていただきたいと思います。

井上政府参考人 お答えいたします。

 まず、近いところで、平成二十七年における不正行為の概況でございます。これは、不正行為を通知した件数が総数で三百七十件ございます。

 不正行為の類型別に多いところから順次御紹介いたしますと、一番多いのが賃金等の不払いで、百三十八件ございます。これは、割り増し賃金の不払いを含めまして、手当、報酬の一部または全部を払わない場合の不正行為になります。

 その次が、偽変造文書の行使、提供が六十二件。これは、不正行為を隠蔽する目的で偽変造文書を提出するなどした不正行為になります。

 その次は、技能実習計画とのそご、三十九件。これは、提出しておる技能実習計画と著しく違う内容の作業をさせていたような場合になります。

 それ以降に行きますと、名義貸しといいまして、申請と異なる別の機関に技能実習をさせるでございますとか、労働関係法令違反で、いわゆる三六協定を超えて時間外の労働をさせたなど、そのような不正行為の類型が比較的多いのが実情でございます。

今野委員 ありがとうございます。

 今、さまざまな不正行為の類型について挙げていただきました。

 ざっと私が調べた範囲において、先ほどお答えいただいたように、やはり労働関係法令に関する違反が最も多いのかなという気がいたしております。特に、単純に言えば、賃金の不払い等がかなり散見される。

 こうした技能実習制度の制度趣旨を逸脱した不正行為、残念ながらこれが指摘されているわけですが、この不正行為の背景にどのような要因があるか、そこをどうお考えなのか、法務省にお伺いしたいと思います。

井上政府参考人 委員御指摘のように、平成二十七年の数字でいきますと、労働関係法令違反、賃金不払いも含めますと、全体の約半分を少し切るぐらいの量になりまして、やはり一番多い類型になってまいります。

 このように、労働関係の法令違反を初めとしまして、法令遵守につきましての意識が低い、つまり、制度の趣旨を十分に理解せずに技能実習生を低賃金労働者として使ってしまう監理団体や実習実施機関がなおある、そこが不正行為がなくならない原因であると考えてございます。

 そういう状態が続いているということにつきましては、監理団体や実習実施機関などに対する政府の側の指導監督体制が十分でなかったこともある、そのように認識しております。

今野委員 お答えいただいたように、政府側の監督等が十分ではなかったということも確かにあると思います。それで今回の制度改正につながっているわけですが、私も、実は、七年か八年ほど前に弁護士をしていた当時、地元の深谷市である繊維関係の会社の方から御相談を受けまして、それは、帰国した技能実習生から過去の賃金の不払い分として訴訟を起こされて、どう対応したらいいかというような案件でした。

 当時私は、技能実習制度について当然詳しい知識もありませんで、そうした問題が司法の中で徐々にこれから問題になりつつあるということは把握はしていたんですけれども、そのとき初めて詳しい実態というものを見聞きしました。

 つい昨年も、やはり私の選挙区、地元で、農業に従事している方の意見交換会の場で、技能実習生が数人で失踪してしまって大変な問題になっている、入管からかなり厳しい指摘を受けて今後の是正をしなければいけないんだというような御相談もいただきました。

 私、そうした現場の方々と話をしていると、やはり技能実習制度の制度趣旨というものが完全に間違って捉えられていると。本当に、現場の方々は、今、例えば農業とか繊維産業とか、いわゆる三K職種みたいな形で日本人が敬遠する分野において、外国人技能実習生を受け入れて少しでも労働力の不足を補いたい、それがまさに本音という部分で出てきている話だと思いますけれども、やはりそうした現場の声というのをよく耳にします。そうした現場の考え方が前提としてある以上は、労働関係の法令違反というのはなかなか収束してこないのかなということも懸念されるわけであります。

 先ほどその要因についてお考えをお述べいただきましたけれども、まだまだ現場においてはそうした考え方が払拭されていないのが現状だと思いますので、今回のこの制度改正においてさまざまな改正案が用意されている。例えば、一例を申し上げれば、海外の送り出し機関が実習に行かれる方から高額な保証金を取っているがゆえに、実習生が言うことを聞かなければいけない状況に置かれている、そうしたことが低賃金で厳しい労働環境に置かれる温床になっているのではないかというような指摘もあるわけでございます。

 そうしたさまざまな要因に対して今回の法改正がどのような対策をとっているのか、基本的なところだけで結構ですので、教えていただければと思います。

井上政府参考人 まず、国内的な法制の整備の関係から御説明させていただきます。

 技能実習法案におきましては、制度の趣旨に沿った適正な運用を確保するために、まず第一に、実習実施者が作成する技能実習計画について、技能実習法案に基づいて設立される外国人技能実習機構がその適否を審査して公的に認定する仕組みをつくります。そして、各段階の修了時における技能評価を義務づけることによりまして、目標を持った計画的な技能等の修得の確保を目指すこととしております。

 第二に、監理団体の許可制や実習実施者の届け出制、そして技能実習計画の認定制等を通じまして、主務大臣の立入検査や改善命令、許可、認定の取り消し等の権限を定めまして、国が監理団体や実習実施者をしっかりと監督できる仕組みを整えることとしてございます。

 さらに、法務、厚労両主務官庁の所管にわたる技能実習制度の運用管理を一元的に行う機関といたしまして外国人技能実習機構を創設いたしまして、ここに、一元的な業務といたしまして、技能実習計画の認定、監理団体の許可に関する調査、実習実施者等に対する実地検査等の管理監督業務及び技能実習生に対する相談対応や援助等の技能実習生保護業務を担わせることとしております。

 その他は、法案の外側のことでございますが、委員御指摘のように、海外にある送り出し機関の適正化につきましては、送り出し国との間の政府間取り決めを結ぶことにより、送り出し国政府の協力を得ながら、そちらの国の中での適正化を進めていくというようなこともして、あわせて制度全体の一層の適正化に努めることとしております。

今野委員 ありがとうございます。

 改正の、規制の強化といいますか、これが今後の技能実習制度の適正化にどのように影響を与えていくか。私は、本当に、送り出し国の送り出し機関の監視体制といいますか、今までのような不正が横行しないような体制づくりがまず一つ重要だと思います。ただ、これはある意味、相手国の管轄の話。国内法でそれを規制するのが実際問題としてはなかなか難しい現状にあるのではないかと思います。

 ですから、まず、我が国としては、国内の監理団体あるいは実施機関をいかに適正に管理監督していくか。先ほどお答えいただいた、その体制の核というか柱になるのが、私は、今後新たに創設される外国人技能実習機構ではないかなというふうな気がしております。

 今までは、これは民間の団体ですが、技能実習生に対するアドバイスですとか指導監督をしていた同じような機関として、国際研修協力機構、JITCOという機関があったわけですが、今後、外国人技能実習機構と今までのJITCO、その役割の違いといいますか、技能実習機構というのはJITCOとどこがどう違うのかというのを御説明いただければと思います。

宮川政府参考人 お答えいたします。

 今回、外国人技能実習機構は、この法案に基づきまして新たに設立される認可法人でございまして、技能実習計画の認定や実地検査等を行う主体として法律上位置づけられることとなります。

 一方、現行制度において実施しておりますいわゆるJITCO、国際研修協力機構、これは法的根拠というものはございませんで、いわゆる民間団体としての巡回指導を国からの委託として行っているわけでございます。

 したがいまして、仮に、例えば機構が実地検査を行うといった場合に拒んだ場合には、新しい法律に基づく外国人技能実習機構におきましては、新たな計画の認定を行わないことに加えまして、必要に応じて主務大臣が立入検査等を行わせて、既に認定した計画についての取り消しを行うことが可能となるような仕組みが今回新たに加わることとなっております。

 このように、今までの法的根拠のないJITCOによる巡回指導よりも実効性を持って制度の適正化を担う役割、これを外国人技能実習機構が果たしていくこととなると考えております。

今野委員 ありがとうございます。

 時間が来たので質問をこれで終えますが、今後、しっかりとした技能実習機構が、先ほど御説明いただいたように、法的権限のもとに運営されていって、この技能実習制度が適正化のもとでさらに我が国に根づいていくことを私も委員の一人としてしっかりと監視していくことを申し上げて、質問を終わります。

 本日はありがとうございました。

葉梨委員長 以上で今野智博君の質疑は終了いたしました。

 次に、吉田宣弘君。

吉田(宣)委員 おはようございます。公明党の吉田宣弘でございます。本日も先日に引き続き質問の機会を賜りましたことに、心から感謝を申し上げたいと思います。

 限られた時間でございますので、早速質問に入らせていただきたいと思います。

 まず最初に、介護職の技能実習という、これから先の、将来の課題でございますけれども、この観点から数点質問をさせていただきたいと思います。

 介護職を技能実習制度として取り入れていくというふうなことに当たっては、先日も参考人の先生五名の方からたくさんの御教示をいただいたところでございますけれども、利用者の人権と実習者の人権というのが双方しっかり保障されなければならないというふうなことが重要であると私は考えております。利用者の方は、サービスを受ける側ですから、恐らく一〇〇%の満足というものを求めていらっしゃる。一方、実習生はあくまで実習生であって、いわば見習いということで、利用者の一〇〇%の要望というものに応えるにはちょっと無理があるんだろうというふうに思っております。

 とすれば、施設介護また在宅介護など一人きりの実習とか、また、先日の参考人の先生からも意見がございましたが、一人きりでの夜勤とか、こういうのはやはりなかなか難しいし、やってはいけないというふうに私は思っております。やはり、利用者それから実習者双方にリスクがあるようなことになってはいけないというふうに思っております。

 この点、先日の根本参考人から、介護職の技能実習というものはできるところから少しずつ行うべきであるというふうな御意見をいただいたところでございますが、介護の実態をきめ細かく捉えて、利用者、実習者双方の人権が十分に配慮されるような、そういった細やかな検討を私はぜひ求めたいと思うんですけれども、当局の所感をお伺いしたいと思います。

堀江政府参考人 お答え申し上げます。

 利用者、実習生双方の人権が十分に配慮されるようきめ細かな検討をすべきとの御指摘は、まことにそのとおりだというふうに考えてございまして、厚生労働省の平成二十七年二月の検討会の取りまとめにおきましても、御指摘の在宅介護、訪問系サービスでございますが、これは、利用者と介護者が一対一で業務を行うことが基本であるため適切な指導体制をとることが困難であること、利用者、技能実習生双方の人権擁護を図る必要があることなどから、実習実施機関から除外すべきというふうにしてございます。

 また、夜勤業務を初め、少人数の状況下での勤務、緊急時対応が求められる業務等につきましては、安全上の懸念が生ずることのないよう、業界団体におけるガイドラインの作成等によりまして、二年目以降の技能実習生に限定するなど適切な対応を図るべきということがまとめられてございまして、根本先生はそちらの方の委員長をしているということでございます。

 さらに、その報告書では、介護分野は、特に有効求人倍率も高くて、人材確保がなかなか大変なところも多うございます。開設後年数の浅い施設が、経営がまだ軌道に乗らないうちに技能実習生を受け入れた場合には、技能実習生に対する適切な指導体制がとれないといったおそれがございまして、こうした懸念を回避することが求められますので、設立後三年以上経過した施設を対象とするというようなことも盛り込んでございます。

吉田(宣)委員 今御説明もいただきましたけれども、介護は対人サービスでございますので、そこを踏まえた本当にきめ細やかな対応というのがやはり十分検討されなければならないというふうに思います。

 もう一点、介護の職種追加を行うに当たって、やはり現場の御意見というのは極めて重要だろうというふうに思います。そういった意味においては、関係団体へのヒアリングなど、現場の視点に立った検討もぜひ加えていただきたいというふうに思っておりますけれども、これまでどのような取り組みを行い、今後どういうふうに取り組んでいくのか、その点について、また当局より御説明いただきたいと思います。

堀江政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほどの検討会の検討途上で、構成員には介護分野の業界の方ですとか有識者にも参加いただいて、現場の御意見、知見もいただいておりますし、また、先行してEPAの方で外国人介護人材を受け入れているわけでございますけれども、そうした取り組みをしていただいています介護施設等へのヒアリング、これも平成二十六年の十一月にしっかり行っておりまして、こうしたものも踏まえながら、検討会の報告書の考え方、具体的な制度設計の考え方を取りまとめたものでございます。

 また、法の五十四条に基づきまして、事業所管大臣は、事業の実情を踏まえた取り組みに関する協議等を行うために、当該大臣及び関係者により構成される事業協議会を組織するということが法律にございますので、介護職種を追加する場合、介護サービスの特性に基づくさまざまな懸念に対応するため、事業の実情を踏まえた取り組みが重要と考えてございますので、今後具体的な制度設計を進める中で、この事業協議会の活用ということについても具体的に検討を進めてまいりたいと考えてございます。

吉田(宣)委員 もう一点、私は、介護職の実習生、これは対人サービスであるということを踏まえて、まず日本語の習得というのは必須だとは思いますけれども、これだけではなくて、日本の文化であったり、また習俗であったり、日本人の勤勉さ、真面目さであったり、そういった気質の部分も十分理解してほしいなというふうに思っております。

 そういった日本人のいわゆる気質的なところというものを理解した実習生が母国に帰ったときも、これは必ず役に立つことだというふうに私は思っておりまして、そういった観点から、今の私の、日本の文化といったものもしっかり理解してほしいという点について、岩城法務大臣から御所見をいただければと思います。

岩城国務大臣 これまでも、実習生の皆さんには、例えば餅つきなどの正月行事や地域で行われますイベント、あるいはさまざまな行事等に参加されるなどして、日本の伝統文化あるいは日本人の物の考え方等を理解していただく機会があったものと考えております。

 特に、介護の職につきましては、委員のお話のとおり対人サービスでありまして、日本式といいますか日本流といいますか、そういった介護技能を実地で修得するためには、日本の人との接し方についての理解が不可欠であると考えております。

 そこで、やはり、日本人の心を理解することによって日本式の介護技能を深く体得していただき、それを母国に持ち帰って生かすことができるために、そういった環境の整備また取り組みが必要であると思っております。

吉田(宣)委員 今大臣から、餅つきであったり地域の行事であったり、そういったところに積極的に実習生に参加していただくような機会もぜひ本当につくっていただきたいと思いますし、そういった方向での検討も、ぜひ当局によろしくお願いしたいと思います。

 次に、今度も参考人の方からの御意見をもとに質問なんですけれども、実習生がやりがいを持って実習に臨むためには、実習生の人権が十分保障されなければならない。そして、こういった観点から、先日参考人としてお越しいただいた村尾参考人が、監理団体の横のつながりがほとんどとれていないというふうな現状認識をお示しいただきました。

 監理団体同士の横のつながりが十分になされたら、これはこれで、実習生の人権保障というものもいろいろな知恵が出てきて深まるのではないだろうかというふうに思っております。

 こういった意味から、監理団体の自主的な取り組みというものをぜひ私も期待したいと思うんですけれども、監理団体同士で、頑張ろうというふうなことで何か催しをしたりとか、そういったときには、当局の方からも、そういった取り組みについてはぜひバックアップとか支援をしていただきたいなと思うんですけれども、この点に対する所感を教えていただければと思います。

宮川政府参考人 御指摘の監理団体につきまして、例えば、監理団体同士の自主的な取り組みとして、技能実習制度の指導あるいは地域との交流に関する好事例、課題等の情報、あるいは気づきを得るための連携強化ということは、適正な技能実習の実施あるいは技能実習生の保護を図る上で大変有効なものだと考えております。

 このため、厚生労働省といたしましても、こうした連携強化のための意見交換の場あるいはセミナーなどの開催に当たりまして、必要に応じて講師の派遣を行うなど、積極的な対応を行っていきたいと考えております。

吉田(宣)委員 同じく村尾参考人から、本当に非常にありがたい御意見をいただいたというふうに思っています。

 それは何かと申しますと、今般、規制が強化されるわけですけれども、実習生のためならそういった規制の強化も喜んでしっかり取り組んでいきたいというふうな御意見が示されたところでございます。

 私は、今般の法改正を踏まえて、今後、実習実施者による人権侵害事案というものは二度と起こさないというふうな厳格な運用というものをぜひお願いしたいと思いますけれども、当局の受けとめをお聞かせください。

井上政府参考人 人権侵害事案を二度と起こさないようにするためというのは、今回の法改正における適正化の一つの大きな柱でございます。

 本法案におきましては、受け入れ機関による技能実習生の人権侵害を防止するために、例えば、旅券等を取り上げる行為に対する罰則の整備、あるいは、技能実習を強制する行為などをした監理団体に対する罰則の整備、また、法的権限に基づいて指導監督できる外国人技能実習機構の創設、さらには、実習実施者等の不正行為を申告したことを理由とする技能実習生に対する不利益な取り扱いの禁止及び罰則、さらには、外国人技能実習機構における技能実習生に対する相談、援助業務の実施などの措置を講ずることにしております。

 法務省におきましては、これらの措置を適切に運用することによりまして、技能実習生に対する人権侵害の防止を確実に図ってまいりたいと考えております。

吉田(宣)委員 次に進みます。

 また参考人の先生、多賀谷先生から御意見をいただいた点なんですけれども、外国人技能実習生というのは日本の企業にとっても損にはならないというふうな御意見がありました。私の質問に対するやりとりの中で、実習生がしっかり日本で実習をして、今度母国に帰ってしっかり母国の発展のために頑張るということですけれども、グローバル化された企業活動の中で、そういった途上国に日本の会社があるという場合もあるんだろうと。

 日本で学んだ実習生が母国に帰って日本の企業で仕事をするというふうなことが私はあってもいいと思うし、そこで力を発揮して母国の発展に寄与するとともに、またそれが、副次的な効果なのかもしれませんけれども、日本の企業にも役に立つということは、私は非常に好ましいことだろうというふうに思っております。

 そういった観点から、今回業種も拡大されるわけでございますけれども、そういった点に資するような改正があるのかどうか、それについてちょっとお教えいただければと思います。

宮川政府参考人 お答えいたします。

 今回の制度見直しにおきましては、現在三年間に限られております実習期間を五年間まで延長することができまして、これまで以上に高度な技能などを修得できるようにすることとしております。

 また、これまでの全国的規模での職種に加えまして、地域限定の職種や、社内検定を活用した企業独自の職種の追加、あるいは複数職種の同時実習、これらによりまして多様な技能修得ができるようになることとしております。

 これらの措置によりまして、従来に増して充実した技能修得が可能となりまして、帰国した実習生が母国の経済や社会の発展に一層寄与することが期待されております。

 また、母国におきまして、日本の技能や文化、日本語を学んだ実習生、こういう方々が増加することは、海外に事業展開する日本企業にとっても、優秀な現地人材の確保という意味でも好機となるものと考えているところでございます。

吉田(宣)委員 一挙両得みたいなところもあるのかなと思いますので、そういったところからも、ぜひ運用の面も取り組んでいただければと思います。

 続きまして、今度は坂本参考人からいただいた意見なんですけれども、坂本参考人は、この法案の改正についてまだかなり心配が残るというふうなお立場からの御意見をいただいたところですが、その中にあっても、今回の法改正の中で実習生の申告権が認められたということについては高く評価するというふうな御意見をいただきました。

 相談体制が拡充するというふうなことだと思いますけれども、私は、実習生の立場に立った、心に寄り添った申告権の制度運用というのをぜひ強く要望したいところでございますけれども、当局の所感をお聞きしたいと思います。

宮川政府参考人 お答えいたします。

 新制度におきましては、一つは、技能実習生の申告権を法律上明記いたしまして、申告をしたことを理由とする不利益取り扱いも禁止してございます。

 また、外国人技能実習機構が母国語相談を行い、法違反が疑われる事案については、法的根拠に基づき、より実効性のある実地検査につなげていくこととしております。

 さらに、実習実施者の倒産あるいは天災等により技能実習の継続が困難になった場合、新たな実習先を確保するための連絡調整等の支援を外国人技能実習機構が行うこととしております。

 こうした場合におきまして、それぞれの技能実習生の事情や意向を尊重し、実習生に対する相談、支援が適切に図られるよう取り組んでまいりたいと思っております。

吉田(宣)委員 次に、同じく坂本参考人から、今度は保証金について懸念の御意見が出されました。

 保証金について、坂本参考人から、現実にはなくならなかったこと、それに伴い、罰則を伴う法的根拠が必要であるというふうな御意見がございました。

 改正前の制度でも保証金について禁止されているということは承知をさせていただいておりましたが、罰則がなくて担保されていなかったために、今般の法改正で監理団体に罰則をもって規制することになったというふうに理解をしております。

 これで国内における保証金の問題は私はクリアされるというふうに思っておりますけれども、残念ながら、送り出し国の団体というのは、これは日本の法律でございますから規制の対象外ということでは、別の方策というのが必要になってくるのかなというふうに思っております。

 送り出し国においてこの保証金の問題を解消するための政府の取り組みについて確認をさせていただきたいと思います。

井上政府参考人 送り出し機関につきましては、外国にある機関であるために、我が国の政府当局の力だけで対処するのには正直なところ限界がございます。保証金を徴収するような不適正な送り出し機関を排除するためには、法務省、厚生労働省の合同有識者懇談会の報告書でも提言されておりますように、送り出し国政府の協力を得ることが大変重要になってまいります。

 そこで、外国の送り出し機関の適正化のため、各送り出し国との間で二国間取り決めを作成して、各送り出し国政府において、自国の送り出し機関の適格性を個別に審査し、適正なもののみを認定する仕組みに順次移行していきたいと考えてございます。

 そして、この取り決めにおきましては、送り出し国政府に対しまして、帰国した技能実習生から事情を聞いて送り出し機関に不正がないかどうかを調べてもらう。不正が疑われたら、その機関について調査してもらいまして、不正が認められましたら、その機関を確実に排除していただく。さらには、失踪者を多く出している送り出し機関についても調査して、不都合があれば排除していただく。そのようなことも求められるような内容を盛り込む方向で交渉してまいりたいと考えております。

吉田(宣)委員 国際貢献でございます。送り出し国には本当にそこはしっかり働きかけをしていただいて、この制度が適正に運用されるように協力をしていただきたいと思います。

 残り数点、質問を用意しておりましたが、時間が参りましたので、ここで終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

葉梨委員長 以上で吉田宣弘君の質疑は終了いたしました。

 次に、階猛君。

階委員 民進党の階猛です。

 きょうは、二つの法案、出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案、それから外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律案について、質問をさせていただきます。

 いずれも、介護について適用範囲を拡充していこうという方向性だと思っておりますが、ただ、技能実習生の方は法律事項ではないというふうにも伺っております。

 これからの議論の前提として、介護について、技能実習生の職種の中に加えられるということはもう確定的だということでいいんでしょうか。確認までにお伺いします。

岩城国務大臣 階委員御指摘のとおりでございます。

階委員 では、そういう前提で、以下、お伺いしていきます。

 きのう、質疑が合同審査で行われました。二〇二五年で介護人材の不足する人数が三十七万七千人という、大変な数字が政府側から答弁でありました。

 今回の法改正で、まず入管法の改正で介護の専門的人材は積極的に受け入れる、他方で、技能実習生の方では、介護の単純労働者は技能を五年で、最長五年間で身につけてもらって、本国に帰って本国で働いてもらう、大体こういう趣旨だと思っております。

 これを前提にして、技能実習が最長五年ということになれば、今の資格制度のもとでは介護福祉士の資格の取得も可能だと思います。他方で、今回の入管法改正の趣旨からすると、介護福祉士の資格を取った人は積極的に受け入れようということですから、ここでちょっとした矛盾があるのではないかと思っています。

 すなわち、技能実習五年間の間に介護福祉士の資格を取った人は、入管法改正の趣旨からすれば、積極的に国内に、在留資格を認めればいいのではないかと思うんですが、この点についてはどのように整理されているのか、お答えください。

岩城国務大臣 まず、技能実習制度におきます介護職種の追加は、介護の技能等を修得して、母国に持ち帰ってそれを生かしてもらう、そのことを目的とするものでありまして、実習修了後、引き続き我が国で就労することを予定するものではございません。

 そのため、仮に技能実習による介護業務従事を実務経験として介護福祉士の資格が取得できたといたしましても、我が国に在留したまま、技能実習から介護への在留資格変更を認めることは適当でないものと考えております。

階委員 そこで、さらにお伺いします。

 外国人技能実習生が資格は取りました、でも、今御答弁されたように、本国に戻らなくちゃいけない。一回本国に戻りました、しかし、今度また日本で介護福祉士として働きたいということで再入国した場合は、今回の入管法の法改正によって介護の在留資格が認められるということですから、これはお認めになられるのでしょうか。

 つまり、一回戻って再入国した場合は介護福祉士として元技能実習生も働けるのかどうか、この点についてお答えください。

岩城国務大臣 階委員も御承知だと思いますが、我が国で介護福祉士資格を取得するには、現行制度上、三つのルートが、三通りございます。

 一つは、介護福祉士養成施設に指定されている大学、専門学校等において必要な知識及び技能を修得して資格を取得する方法、これを養成施設ルートと申します。また二つ目には、一定以上の介護等の業務に関する実務経験を経た後に国家試験に合格して資格を取得する方法、いわゆる実務経験ルートです。三番目が、福祉系高校において必要な知識及び技能を修得した後に国家試験に合格して資格を取得する方法、これがいわゆる福祉系高校ルートに当たります。この三通りがございます。

 一方、在留資格「介護」につきましては、当面、養成施設ルートで介護福祉士資格を取得した者のみを対象とすることとし、その旨を上陸基準を定める法務省令の中で規定する予定であります。

 したがいまして、養成施設を経ないで介護福祉士資格を取得した技能実習生が一旦本国に戻ってから再度入国したといたしましても、現段階では在留資格「介護」を付与することは想定しておりません。

階委員 結局、技能実習生の場合は、資格を取って幾ら一回本国に戻っても、再度入国して介護の資格で在留することはできないということが言われたわけですけれども、それは非常に合理性がないような気がしますね。

 同じ資格なのに、一方で養成施設ルートを通った方については介護福祉士として業務従事を認めて、他方で実務経験ルートについては認めない。なぜなんでしょうか。私は合理性がないと思うんですが、お答えください。

岩城国務大臣 その理由はなぜかということでありますけれども、これは、技能実習制度と、それから在留資格で介護を創設する、その二つの目的がそれぞれ異なるからでございます。

階委員 技能実習生と在留資格の話を比較しているわけじゃないんですね。技能実習制度と在留資格を比較しているわけではなくて、同じ介護福祉士の資格を持った人でありながら、実務経験ルートで資格を取った人は在留資格は認めず、養成施設ルートで資格を取った人は認める、これはなぜなんでしょうかということです。

岩城国務大臣 失礼いたしました。

 我が国では、専門的、技術的分野の外国人については積極的にこれまでも受け入れてまいりました。そこで、今回創設しようとしております介護の在留資格も、専門的、技術的分野において外国人を受け入れようとするものでありまして、介護分野における単なる労働力確保のために創設するものではございません。

 そこで、養成施設ルートに限定する理由でありますが、介護福祉士資格については、多様な人材層において介護に係る専門的能力を有する者を養成確保し、介護人材の量の確保と資質の向上の両立を図るため、先ほど申し上げました三つの資格取得ルートを設けているものでありますが、いわゆる養成施設ルートに限定する理由としては、次のとおりであります。

 まず一つに、教育水準。すなわち、養成施設ルートの教育内容は、専門的、技術的分野の代表的な就労資格である技術・人文知識・国際業務等において求めております大学卒または専修学校の専門課程修了と同水準であると認められ、他の就労資格との整合性がとれるという点でも問題がまずないということが挙げられます。

 二つ目に、現在、介護で就労するための在留資格はEPA対象者に付与される特定活動のみでありまして、そのほかに、我が国の介護施設で、いわゆる実務経験ルートの国家試験受験資格を得るのに必要な三年以上の経験を積む機会がある人はいないということが挙げられます。

 三点目、「日本再興戦略」改訂二〇一四におきましても、「日本の高等教育機関を卒業し、」という形で、養成施設ルートの者のみを想定した記載がなされております。

 以上のことから、まずは養成施設ルートの者から受け入れを行うことが適当であると考えております。

 なお、他のルートについては、介護福祉士資格取得方法の一元化の状況等も踏まえまして、また、我が国の産業及び国民生活に与える影響等も勘案しつつ、関係省庁と連携し検討を行ってまいりたいと考えております。

階委員 検討を行うということなんですが、今の御答弁を聞いていると、何か法科大学院の議論を聞いているような気がするんですね。同じ弁護士資格を取るとしても、法科大学院を出て取る人は本流で、予備試験で、法科大学院に行かないで取った人は傍流だから、本流の方を大事にしようみたいな、それと何か似たような話を聞いた気がします。

 実際問題、養成施設ルートの方だけに在留資格を認めるということをおっしゃったわけですけれども、果たしてそれで、意図したような介護の専門人材がちゃんと日本に来てくれるかということなんですね。

 大臣のお話に出たEPAの方でいうと、資料の一枚目につけておりますけれども、資料一枚目の右下の方に、確かに、EPAによる受け入れは、就労コース、就学コース。先ほどの御答弁に即して言えば、就労コースというのは実務経験ルート、就学コースというのは養成施設ルートとほぼイコールだと思いますが、EPAについては、こういう二つのルートが用意されているわけですね。

 ところが、実際には就学コースということを選んで介護資格を取る人はいないということが最近だそうです。それで、就労コースにたくさんEPAの人は流れている、こういう実態があるわけですね。

 今回、在留資格を創設したけれども、こういう就労コースは認めないということであれば、EPAの実例に照らして、果たして本当に介護の高度人材というのは日本に来てくれるのだろうかという疑問があります。この点については、どのようにお考えになりますか。

岩城国務大臣 御指摘の件につきましては、内容につきましては理解をさせていただきましたけれども、先ほども申し上げましたとおり、当面、三つの理由から、養成施設ルートの者から受け入れを行うことが適当であると考えておりまして、そのほかのルートにつきましては、その実施状況等も見ながら、関係省庁と連携し検討してまいりたいと考えております。

階委員 厚労省の太田政務官にも来ていただいております。

 きのうの連合審査で、政務官もお聞きになっていたかと思うんですが、今後、介護人材が非常に不足する。三十七・七万人という数字も出ていたと思うんですね。

 今回、建前としては、技能実習の方はそういう人材の不足に対応するものではない、入管法の方は、高度な人材に限ってですけれども、介護人材の不足に対応するものだというふうに理解しておりますが、果たして、この法改正で、どれほどこの介護人材の不足という問題についてプラスの影響があるのかどうか、この点について、具体的な数字を示して説明していただければと思います。

太田大臣政務官 お答えを申し上げます。

 今、法務大臣の方からるる御答弁がございましたように、外国人介護人材の受け入れについては三つのルートがあって、技能実習制度、それから在留資格「介護」の創設、さらにはEPA、こういうふうにあるわけでございますけれども、それぞれの制度の趣旨に沿って実施をするものであるということは先ほど来御答弁のあったとおりでございます。

 私ども厚労省といたしましては、先ほど、三十七・七万人、これは二〇二五年、団塊の世代が全て後期高齢者になるというところでの、介護人材の不足のいわばピーク時と言っていい数字でございますけれども、これに向かって介護人材を確保していかないといけないということは事実でございます。

 ただ一方で、先ほど来お話もございますように、今の三つの外国人人材の受け入れというのは、人材不足への対応ではなくて、それぞれの趣旨に沿ってということでございますし、そもそも、外国人人材の受け入れ範囲の拡大については、労働市場や日本人の処遇改善への影響、あるいは国民生活等への影響も踏まえて、全体的なコンセンサスの中で進めないといけないということを基本に考えなくてはいけないと思っております。

 したがいまして、まず私どもに求められていますのは、国内で潜在化している介護福祉士さんを含めまして、国内での介護人材の確保ということを基本に考えていきたいと思っておりますので、今申し上げました三つのルートについては、これから始まるものもございますし、それぞれの人数について、これぐらいということを見込むことは現時点では困難であるというふうに考えております。

階委員 介護人材の不足というのは、もう三十七・七万人という数字も出して厚労省は把握していらっしゃるのに、その三十七・七万人をどのような形で埋めるかということについては抽象論に終始しているわけですね。これは非常に私は将来に不安が大きいと思っています。

 こういう中で今回法改正を議論しているわけですけれども、私は、もっと根本的なところを考えていかなくちゃいけないだろうと思っています。

 参考人の方から、いろいろないい提言がありましたね。クオータ制によって受け入れの上限を定めた上で介護人材を入れていくとか、あと、そもそも労働市場補完性ということで、まずは日本の方で賄えるようにした上で足りない分は外国人の方を入れていくとか、それから韓国の雇用許可制、こういったことも入れて、これは私は非常に意味があると思っていますけれども、企業が公募をかけた上で、応募がない部分を海外人材で埋めていって、政府が責任を持って、相手国にも不正な派遣を禁じるような、そういう措置をとる。

 こういう、もっと根本的なことをやらないと、三十七・七万人、将来の不足というのが見えている中で、私は不十分ではないかと思いますが、大臣の御所見をお伺いします。

岩城国務大臣 階委員から、参考人の方々の御意見等も踏まえまして御提言があったわけでありますけれども、私どもといたしましては、先ほど来答弁を重ねて申し上げてまいりましたとおり、そうした方向で、とりあえず制度を運用していくことが大事だと思っております。

 その上で、将来的には、その状況等も見ながら、今、階委員から御指摘のあったそうしたさまざまな提言、そういったものも踏まえて総合的に検討していくべきものであると考えております。

階委員 どうも今回の入管法を見ていると、先ほど来指摘しておりますとおり、帯に短したすきに長しといいますか、中途半端だと思っています。

 技能実習制度については、これは本来どんどん拡充していくというものではなくて、やはり本当に技能実習として、本国で役に立つ部分について必要なところをやっていくということだと思っています。

 技能実習については、むしろこの委員会でも人権侵害ということがいろいろ実例を挙げて紹介されていましたけれども、この技能実習については、拡充よりもまず適正化だということは、私もそのとおりだと思っています。

 適正化という中で、今回の法改正には、実習生の保護体制を十分しっかり整備しましょうということで、通報・申告窓口を整備したり、人権侵害行為等に対する罰則等を整備したりといったようなことも設けられていますけれども、問題は運用なんですね。制度を運用する役所の側、法務省を含めてですけれども、そこがちゃんと制度を運用する人権感覚があるかどうか。また、罰則ということであれば、これは裁判所も絡んでくると思いますが、最高裁の方も、こうした外国人の人権についてちゃんと問題意識を持っているかどうか。こういうことが非常に大事だと思っております。

 厚労省の政務官、もうお帰りになって結構です。

 そういうことで、私は、昨今、法務省あるいは最高裁において、人権感覚、これは外国人というよりも国内の、日本人に対する人権感覚が疑われるケースが間々あると思っていまして、そこをちょっとこれからお尋ねしていきたいと思っています。

 まず最初に私がお聞きしたいのは、甘利大臣の問題が国会でも議論されましたけれども、その中で私がおやと思ったのは、これは甘利大臣の問題と離れて、一般論でちょっと議論させていただきたいんですが、資料の二ページ目、三ページ目に、予算委員会でこの問題を取り上げたときの私の議事録をつけさせていただいております。何を私が問題にしたかということなんですが、二ページ目の一番最後のところをごらんになっていただければと思います。

 「私は、不法占拠の建物であっても、その建物の所有者が所有権を持っているということは否定しません。ただし、不法占拠をしているのであれば、土地所有者であれば出ていってくださいと言えるわけです。建物を取り払ってくださいと言えるわけです。そのためには、土地の所有権をまず取得する。それをやれば、お金を払わなくても、出ていってください」と。

 なぜそういうことをしないで税金の無駄遣いにつながるような補償金を支払うのかということを問題視しまして、これについてURの理事長からは、今回の移転補償については、これまでの公共事業の施行として一般的に行われてきた補償の内容に倣ったものだと。一般的にと言ったんですね。

 だから、私は一般論として聞きたいんですけれども、今回は、土地を不法占拠している人に対して移転補償料だということでお金を払っているわけですけれども、先ほど引用したとおり、これはまず、不法占拠者に立ち退けと言う前に、その底地になっている土地をURならURが取得する、取得してしまえば、不法占拠者に対して所有権に基づいて出ていけということが言えるわけです、お金を払わなくても。なぜそういうことをやらないのか。これは、財産権の保障が憲法に定められていますけれども、財産権の保障を非常に不合理に拡充し過ぎているんじゃないかと思っております。

 まず、この点についてURから御見解をお願いします。

上西参考人 前回の予算委員会で私の方からお答えしたのは、千葉ニュータウンの北環状線の道路に関する補償についての基本的な理由ということでお答えしたつもりでございます。

 一般的にどういうふうに考えるかということですけれども、いろいろな考え方があるわけですけれども、当機構といたしましては、取得しようとする土地上の不法占拠物件を移転しようとする場合、委員御指摘のとおり、先に土地を取得して、妨害排除請求により処理を図る方法も十分あり得るというふうに思っております。

 ただし、例えば不法占拠物件であっても、占有状態が非常に長期化しているような場合、裁判所が何らかの権利があると認める可能性があると、案件によっては法的措置により解決を図ることが困難な場合もあるというふうに考えております。このような場合には、不法占拠物件について移転補償を行うこともあり得るのではないかと考えており、過去にも、移転補償を行った事例や、収用委員会裁決において移転補償が必要である旨示した事例があるというふうに承知しております。

 不法占拠物件に対しましては、まずは妨害排除請求を行うことを検討すべきという委員の御指摘はもっともだと考えますけれども、事業の進捗やその経緯、法的措置に出た場合のリスク等、これらに要する時間、費用、さまざまな要素を総合的に勘案した上で、専門家の意見も聞きながら、個別の事案に適切に対処すべきものというふうに考えているところでございます。

 以上でございます。

階委員 今、理事長も、原則は妨害排除請求ということはお認めになられたというふうに理解してよろしいんでしょうか。うなずいていただければ結構です。お答えになりますか。

葉梨委員長 お答えになられた方が正確。

階委員 では、お答えください。

上西参考人 お答えいたします。

 当機構としては、個別の案件ごとに、専門家の意見を聞いた上で、まずは所有権に基づく妨害排除請求ができないかを検討すべきだと考えます。その上で、妨害排除請求が困難な場合には移転補償を行うこともあり得るというふうに考えております。

階委員 やはり、まずはということで、先に妨害排除請求できないかを検討して、それができないときに初めて不法占拠者に移転補償料ということなんですが、それができるかできないかというところが、基準を示してくれと私は委員会の外でもURの職員さんとやりとりしましたけれども、全くその基準はないということでした。現場判断でやるということだと、非常に恣意的で、かつ、不正行為の温床になりかねない。これは大変問題だと思っています。

 URを監督する立場である国交省にも来ていただいておりますので、この点について、監督する立場として、あるいは、国交省自身も公共事業のために多々こういう、いろいろなところで移転補償料を支払うケースがあると思うんですね。同じように国が移転補償料を支払うときに、どういう不法占拠者に対する考え方をとっているのか。二点、お答えください。

宮内大臣政務官 お答えをいたします。

 用地取得につきましては、事業全体の実施方針や事業の進捗、関係者との交渉状況等を踏まえまして、最も合理的な方法を選択することが必要であると考えております。

 事業予定地内に事業実施上支障となる不法占拠物件がある場合は、妨害排除請求により物件の除去を行うことも考えられます。

 しかし、妨害排除請求を行う場合は、一般的には地権者から底地を取得した上で訴訟を提起することになり、一連の手続には相応の時間を要したり、事業が遅延する可能性もあります。また、継続して不法占拠が行われているケースでは複雑な背景や経緯を有している場合も多く、事業の進捗等の諸事情を勘案いたしますと、訴訟による処理がなじまない場合もあると考えられます。

 このような事情を踏まえまして、妨害排除請求ではなく補償による対応を行うことが、過去の法制局の見解と用地補償実務の積み重ねによりまして、一般的に認められているところであります。

 不法占拠者への補償金の支払いは一律に否定すべきものではなく、各事業者が個別事案の事情を総合的に勘案し、最も合理的な方法を選択することが重要と考えております。

 妨害排除請求、移転補償のいずれの方法をとるべきかということにつきましては、判断に当たって、該当すべき要因が案件によりさまざまであるということにより、一律の基準をつくることは困難であるというふうに考えております。

階委員 法務大臣にもお尋ねしますけれども、民法上は、所有権者であれば、お金を払わなくても立ち退きを要求できるわけです、妨害排除請求権ということで。ところが、それをやらなくてもいいケースがあるんだということで、国交省もURも言いました。これは、ごね得とかやり得を認めることになって、財産権の保障といえば聞こえはいいですけれども、私は、そうじゃなくて、法秩序をむしろ破壊しているんだと思いますよ。

 法務大臣として、こういう運用については異を唱えるべきだと私は考えますが、いかがでしょうか。

岩城国務大臣 一般論といたしまして申し上げますと、国や独立行政法人が、その所有する土地を不法占拠している者に対しまして移転補償金を支払う義務はないものと考えております。

 もっとも、用地取得の手段として、不法占拠者との間で移転補償金に関する合意をした場合、この合意が有効なものとして支払い義務を生じさせるか否かは個別の事情に応じて決められるものである、そのように認識をしております。

葉梨委員長 両案審査との関係において質問してください。

階委員 もちろんです。人権の問題に関連して言っています。

 そこで、民間企業が経営判断で、これは法律的には払わなくていいけれども、もっとほかの利益を優先して払うということはあり得べしだと思いますけれども、国が国民の税金で払う場合でもそういうことが許されていいのか、あるいはまた、法秩序を守るべき立場の国が、そういう法秩序に反した人に対してやり得、ごね得を許すようなことがあっていいのかと思うわけですよ。

 問題は、公共的なところがこういう法秩序を破壊するような行為に対していわば力をかしているような、そういうことになると思うんですが、そういう問題意識をもっと持たれた方がいいと思いますが、大臣、どうでしょうか。

岩城国務大臣 公共事業におきまして、用地取得の方法としてどのようなものが適切であるか、そうした政策判断につきましては、それぞれ所管省庁において判断されるべきものと承知をしておりますので、私の方からこのことにつきまして答弁をさせていただきますことは差し控えさせていただきたいと存じます。

階委員 法秩序を守るべき法務大臣の立場から、こういう実態について、何ら問題ないのかどうかということだけ、端的にお答えください。

岩城国務大臣 その件につきましては先ほど申し上げたとおりでありますけれども、重ねて申し上げさせていただければ、一般論として、国や独立行政法人が、その所有する土地を不法占拠している者に対して移転補償金を支払う義務はないと考えております。

 ただ、用地取得の手段として、不法占拠者との間で移転補償金に関する合意をした場合、この合意が有効なものとして支払い義務を生じさせるか否かは個別の事情に応じて決められるものである、そのように認識をしております。

階委員 ということは、大臣としては、特にこれは我々としては関知しないということをおっしゃっているのか。今、法律の解釈的なことだけおっしゃられたわけですけれども、不正、あるいは法の支配にちょっと反するようなことが行われているわけですけれども、ここは法務大臣としては異を挟む余地はないということですか。

岩城国務大臣 公共事業の施行として、一般的にさまざまなことが行われているんだと思いますけれども、それは私どもの所管ではございませんので、お答えする立場にはないということで御理解いただきたいと存じます。

階委員 そういうことであると、先ほど、技能実習生の話で、人権侵害が多々あるということもこの委員会で指摘されております。この人権侵害をなくそうということで法改正をするわけですけれども、果たしてそこに本当に力が入るのかどうか。

 やはり、不正は見逃さないという大臣の姿勢がないと、幾ら法改正をしても運用で骨抜きになるんじゃないか、そういう疑念は拭えないわけですよ。だから、私は、こういう不正に対してもっと厳しく大臣は立ち向かわなくちゃいけないと思っているんですが、本当に今の答弁でいいんですか。

岩城国務大臣 公共事業にかかわる問題につきましては、先ほどお答えしたとおりでございます。

階委員 非常に私は残念であります。技能実習の法案について、はっきり言って、法律を変えても、果たして今までの人権侵害がなくせるのだろうかということをちょっと感じました。

 そこで、次に、人権の問題を引き続きお尋ねします。

 資料の四ページには、先般、国連人権理事会に任命された、表現の自由を担当する専門家である特別報告者が訪日調査を終えたということで、記者会見をされたということです。大臣も御担当になっている特定秘密保護法がきっかけとなって今回調査をされたわけですけれども、このデビッド・ケイ特別報告者によると、記者に対する萎縮効果を生じさせ得る部分は全て削除するよう法改正すべきだというような厳しい指摘があったわけです。

 報道されておりますとおり、報道の自由のランキングは近年どんどん下がってきておりまして、ピーク時、民主党政権のとき、二〇一〇年は十一位であったものが、今は七十二位になっております。

 こうした状態を踏まえて、大臣は特定秘密保護法の担当もされているわけですけれども、この特定秘密保護法、表現の自由を萎縮させたり制約したりしているのではないかと私は考えますが、この点、いかがお考えになりますか。

岩城国務大臣 まず、お尋ねの世界報道の自由度ランキングについての所感の方からお答えをさせていただきたいと存じます。

 このランキングにつきましては、民間の組織の順位づけでありまして、どのような基準で、どのような判断で行ったかということは承知しておりませんことから、その評価に関してはお答えを差し控えさせていただきたいと存じます。

 特定秘密保護法については、施行されて一年以上が経過いたしましたが、今のところ、報道が萎縮するというような事態は生じていないものと認識をしております。

 いずれにしましても、引き続き、特定秘密保護法の適正な運用に努めてまいりたいと考えております。

 そこで、特定秘密保護法について、表現の自由、報道の自由を制約することにならないのか、それについてのお答えをさせていただきたいと存じます。

 特定秘密保護法上、特定秘密は、法律に限定列挙した防衛、外交、スパイ防止、テロ防止の四分野二十三の事項に関するものに限って指定するものとされております。

 さらに、情報保全諮問会議の有識者の意見を踏まえて作成いたしました運用基準では、これを五十五の事項の細目にさらに限定、細分化するとともに、必要最小限の情報を必要最低限の期間に限って指定すること、法令違反の事実を指定し、またはその隠蔽を目的として指定してはならないこと、指定する情報の範囲が明確になるよう努めることなどの原則を示しております。

 加えまして、法律の運用状況につきましては、情報保全諮問会議の委員の意見を付して、毎年国会へ報告するとともに、公表するものとしております。

 また、内閣府に、特定秘密の指定等の適正を確保するために検証、監察を行う組織として、内閣府独立公文書管理監や情報保全監察室が設置されているほか、不適切な指定等があった場合に職員等が通報できる仕組み、これも設けております。

 国会においては、両院に情報監視審査会が置かれ、立法府が常時監視する仕組みもできております。

 このように、恣意的な特定秘密の指定を防ぐための何重もの仕組みが設けられております。

 そして、特定秘密保護法第二十二条第二項では、出版または報道の業務に従事する者の取材行為につきましては、「専ら公益を図る目的を有し、かつ、法令違反又は著しく不当な方法によるものと認められない限りは、これを正当な業務による行為とするものとする。」と規定しております。したがいまして、通常の取材行為は、刑法第三十五条の正当な業務による行為に該当し、処罰対象となりません。

 このように、特定秘密保護法では、恣意的な特定秘密の指定が行われないよう配慮されておりまして、また、通常の取材活動が処罰されることもなく、報道の自由などに十分に配慮した運用が確保されるもの、そのように認識をしております。

階委員 ランキングについては民間の団体が発表されたのでコメントする立場にないとおっしゃいましたけれども、この国連人権理事会に任命された特別報告者デビッド・ケイさんの指摘については、これもコメントする立場にないということでよろしいんですか。

 ここに書いているようなさまざまな指摘があって、今お話があったように、報道、取材の自由への配慮というのは確かに秘密保護法には明記されておりますけれども、デビッド・ケイさんによれば、ないよりはましという程度だということで、萎縮しているということの懸念は払拭されないといったようなことも言っているわけですね。こうした指摘を真摯に受けとめる、そういうお気持ちはないんでしょうか。

岩城国務大臣 デビッド・ケイさんに対しまして、事務方の方で時間をとって特定秘密保護法については説明をさせていただいたという報告は受けております。

 そこで、特定秘密保護法に関しては、政府といたしましても、このデビッド・ケイ国連特別報告者の御関心にお応えできるように、特定秘密に指定できるのは具体的に列挙された事項に関する情報に限定されており、他の国と比べても広範ではないこと、そして、特定秘密保護法は表現の自由及び報道の自由に配慮しており、報道関係者の通常の取材活動などは処罰対象とならないこと、運用基準において通報制度が設けられていること、そして、特定秘密保護法の運用の適正を確保するため二重、三重の仕組みを構築したことを含め、特定秘密保護法の法制度や運用の状況等について、誠意を持って説明を行ったというふうに承知しております。

階委員 今、経済的自由権に属する財産権の保障ということについて議論し、また精神的自由権に属する表現の自由、報道の自由について議論させていただいたわけですけれども、前者については私からすると不合理に手厚く保障していますし、後者については安易に制約しているということは、私どもだけじゃなくて、この国連の特別報告者からも指摘されているわけですね。

 こういう、人権感覚と相入れない、つまり、普通は、表現の自由は財産権など他の人権に優越する地位を有するということが一般の考え方なわけです。表現の自由は財産権などの他の人権、経済的自由などに優越するということについて、大臣はそれはちゃんと理解されていらっしゃいますか。

岩城国務大臣 表現の自由、その優越的地位ということについてのおただしでありました。

 憲法の政府としての一般的解釈につきましては内閣がお答えすることになりますが、法務大臣はその内閣を代表する立場にないことを御理解いただいた上、一般的な解説書によることについて申し上げますと、おおよそのところ、表現の自由の制限は、経済的自由権よりも特に厳しい基準によって審査されなければならないというような意味で用いられているものと承知をしております。

 その理由につきましては、経済的自由権が不当に制約された場合、民主制の過程によって是正可能であるが、表現の自由については、国民が主体的に政治的意思決定に関与する上で不可欠の言論活動や情報の取得の前提となるものでありまして、これが侵害されますと民主制の過程自体が損なわれることになることが挙げられているものと承知をしております。

 また、表現の自由が個人の人格の形成やいわゆる自己実現にとって不可欠であることも理由として挙げられているもの、そのように承知をしております。

階委員 後ろの人が紙を出してそれを読み上げるというのは、法務大臣としていかがなものかと思いますね。

 民主制の過程というのはどういう意味ですか。そのままお答えください。

岩城国務大臣 民主主義が確立される、その過程だということだと考えております。

階委員 民主主義が確立する過程というのはどういうことを言っているんですか。民主主義は確立していませんか、今。お答えください。根本的なことを理解されていないんじゃないかと思っていますから、すぐお答えください。

葉梨委員長 階委員に申し上げますが、全て人権の問題ということであれば必ず法案審査の問題だということになれば、何でもということになりますので、一般質疑ではございませんので、両法案審査の関連において御質問をお願いいたします。(階委員「済みません。答弁を求めます」と呼ぶ)

 いや、この答弁は岩城大臣にしていただきますけれども、両法案審査との関連において。この場は一般質疑ではございませんので。それでは、岩城法務大臣。(階委員「お答えください。時計とめてください」と呼ぶ)いや、今調整して。

 岩城法務大臣。

岩城国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、財産権、経済的な自由権、こういったものの回復というのは後でできますけれども、表現の自由の回復は、後で回復するということが、比べて難しいということでございます。

階委員 結局、民主制の過程とか後で回復とか、余りちょっと理解がされていないんじゃないかというふうに伺いました。

 要するに、法律をつくらないと間違ったものを変えるということはできないわけですけれども、法律を改正して間違ったことがあれば是正するということをやらないと過ちは直せないわけですけれども、ただ、法律をつくるためには、議会で多数をとらなくちゃいけない。議会で多数をとるためには、選挙で皆さんの民意を得なくちゃいけない。ところが、選挙で表現の自由が制約されてしまうと、言いたいことも言えなくなるので、民意が間違った方向に流れてしまう。

 こういうことで、表現の自由の制約は、一回なされてしまうと、民主制の過程によって、間違いがあっても是正することはできない、こういうことなんですね。だから、表現の自由というのは、ほかの人権よりも非常に重い優越的な地位があるということなんですよ。

 ところが、先ほど来聞いていますと、そのあたりの優越関係が逆転しているんじゃないかということでお尋ねしました。

 人権感覚ということは、この法案の審議をする上で非常に重要な問題です。

 もう時間もなくなってきましたので、最後にもう一つ、人権感覚について取り上げておきたいことがあります。死刑についてです。

 死刑について、資料の五ページ目、これはちょっと前の記事で、三月の記事でしたけれども、岩城法務大臣になってから五カ月で死刑執行が四人なされた。このときは二人なされたということなんですが、そのうちの一人、鎌田死刑囚のアンケートの回答には、法廷で、警察や検察で話したことは真実でないと言っても裁判官は聞く耳を持たないと捜査、公判を批判していたり、あるいは、もう一人の吉田死刑囚については、持ちつ持たれつの中、知恵を出し合い、共謀へと及んだ悲しい結果だったということで、主犯格とされたことを否定していた。

 こういうことで、完全に自分が死刑になってもしようがないということを自覚した上で死刑執行されたのかどうか。これは、記事によると少し疑問があるわけですね。

 大臣は、死刑執行命令にサインをするお立場で、非常に重い職責を担われている。そこで、死刑執行の命令にサインするに当たって、大臣は、裁判記録を読んだりして、慎重に検討されていたのかどうか。このことについてまずお聞かせください。

岩城国務大臣 端的にお答えさせていただきますと、死刑執行の判断につきましては、今御指摘のありましたとおり、裁判の記録等、あるいは捜査記録等、さまざまな資料等、十分に時間をとって私自身読ませていただきまして、それで判断を、重い判断でありますけれども、させていただいたということでございます。

階委員 十分な時間をとって、どういうところに重きを置いて精査されたのか、その点についてもお答えください。

葉梨委員長 質疑の時間が終了しております。簡潔にお答えください。岩城大臣。

岩城国務大臣 さまざまな該当者の、人生の歩み方とか、それから犯罪に至った動機とか、当時の環境とか、そういったことも踏まえながら、関係記録を十分に精査させていただきました。

 また、刑の執行停止、再審事由の有無等についても検討いたしまして、これらの事由等がないと認めた場合に死刑執行命令を発することにしてまいりましたし、これからもそのようなことに留意をして対応していきたいと考えております。

階委員 また改めてお伺いしたいと思います。

 きょうは終わります。ありがとうございました。

葉梨委員長 以上で階猛君の質疑は終了いたしました。

 次に、木下智彦君。

木下委員 おおさか維新の会、木下智彦でございます。本日もお時間いただきまして、ありがとうございます。

 十分間しかないので淡々とやりたいんですけれども、と言いながら、ちょっと今の階さんの質問を聞いていて思ったんですけれども、死刑制度の話。今まで何度かお話を聞かせていただいていたので、もう一度確認したいんですけれども、大臣が、確定判決後の判断というふうに今おっしゃられたんですけれども、判断の本当の要素はあるのかどうか。

 これは前にもちょっとお話しさせていただいたんですけれども、確定判決がされて、検察庁から送ってこられる。六カ月以内に実質的にはやらなきゃいけないといいながら、この間聞いたら百二十八人でしたかね、確定判決者がいましたけれども、百二十八名全部が六カ月以上を超えていたと。

 その中で、大臣として実際に何を判断するのか。今おっしゃられていたのは、すごくすれすれのことを言われたと思うんですけれども、当然、その経緯について確認はされるでしょうし、裁判の内容にそごがないかどうかということを確認される。ただ、もう確定されたものについて、大臣がそういった面以外のところで判断されることは、私は今の法律上ではないんじゃないかなというふうに考えているんですけれども、大臣、その辺、どう思われているかということをお伺いいたします。

岩城国務大臣 このことにつきましては、やはり裁判所が慎重な審理を尽くした上で確定するわけであります。そういうことでありますけれども、自分自身が責任を持って重い判断をし、責務を全うするためには、自分自身もしっかりと記録等を精査し、そしてまた、刑の執行停止、再審事由の有無等、これらについても慎重に検討して、自分が納得しない限り、これは命令を出せないというふうに考えておりますし、これからもそのような取り組み、対応をしていきたいと考えております。

木下委員 ありがとうございます。そういった要素が当然重要なんだというふうに思います。

 ただ、今の、私もお話しさせていただきましたが、実質的には、六カ月というふうにいいながら、延びちゃっていることが多い。判断、判断といいながら、大臣はそんなことはないと思うんですけれども、今まで、過去、延ばし延ばしされてきて、一切執行の命令をされていない方もいらっしゃる。

 これがいいか悪いかというのは別だと思うんですけれども、ここを法律的にもう少しクリアに私はしていくべきなんじゃないかなと。改正も含めて視野に入れて、その辺の御検討をこれから先続けていっていただきたいなと思います。

 時間を半分ぐらいとってしまいました。済みません。

 では、本題をお話しさせていただきます。

 きょうはどんな話かというと、前回、大臣はいらっしゃいませんでしたが、参考人質疑がございました。時間がないのでぱっぱとお話しさせていただきますが、参考人で、いいお話が結構あったと思うんです。

 それは何かというと、一つは、非常に優良な監理団体の方が、特定の名前を出しますと、Jプロネットというところの方が来られていました。聞いていると、二〇〇五年から受け入れを開始して、今まで二千六百人程度の実習生を受け入れてきたと。

 では、実際に人権問題、人権問題というよりも、私が聞いたのは失踪ですね、失踪等の事件がありましたか、どれぐらいありましたかというふうに聞いたら、ここ六年ぐらいはないというふうに言われているんですね。一年で六人ぐらいあったときも最初はあったけれども、ここ六年ぐらいはない、唯一あったのが、四年ぐらい前に一人いたと。ただ、その人はすごい技術を持っていて、帰るというぎりぎりになったときに急にいなくなってしまって、どこか、その技術を持ってスカウトされたような感じのことを言われていたんですね。

 それを聞いていて、ここの会社さんみたいなところが、会社さんというか監理団体さんみたいなところが日本じゅうにあれば、今回の法案についての問題はすごく少なくなるんじゃないかなと思ったんです。

 それで、何をしているのかなと聞いてみたら、要は、同じ監理団体の中でいろいろなところに対して、企業さんに人が入っているんですけれども、そういった人たちがまとまって、監理団体として日本語のスピーチコンテストをやったり、日本語の研修みたいなことをやったりとか。それが、物すごく意欲的にみんなやっているらしいんです。全国大会みたいなこともしたりというふうに言われた。

 前回私が大臣にお話しさせていただいたんですけれども、実習制度として日本に来て技術を持って、それを世界に広めていく、国際貢献をしていくんだといったときに、やはり日本を好きになってもらわなきゃいけないよねというお話をさせていただいて、大臣もそれは御納得いただいたと思います。

 こういう取り組みがあったら、恐らく本当に理想的だと思うんです、私が聞いている範囲では。

 私は思うんですけれども、これは提言なんですけれども、こういうのを監理団体にさせているのではなくて、政府がこういったことを推奨していったらどうかな。要は、実習生が入ってきて、監理団体によっては、そういうことをやる力を持っていないところもたくさんあると思うんです。そういうことも含めて、日本政府としてやる。実習は、その地域でやる、派遣されたところでやる。そういった感じのことをやってみるというのは、一つ何かあるんじゃないかな。

 大臣、まとめて御答弁というのか、最後、御見解で結構です、あと三分ぐらいしかないと思うので。

 もう一つ、そこの会社が言っていたのは、要は、自動車の組み立てなんかに関して、今まで単純工だというふうに言われていて、職種に加えられていなかった。ただ、これを加えてほしいんだというふうに彼は言っていたんです。何と言っているかというと、結局、来る国は東南アジアの国が多い。そういったところに日本の自動車工場、日本だけじゃないですね、自動車工場がたくさんある。そういうことを考えたら、日本でそういう日本式のノウハウを持って本国に帰ってもらって、そういった工場の中でリーダー格として働いてもらうようになることこそ、国際貢献に通ずるものなんじゃないか、こういうことを言われているんです。

 私、これは単純にやると、なかなか難しい部分はあると思います、単純労働だというふうに言われかねない部分も確かにあるから。ただ、一つのやり方として思うのは、では、普通に受け入れてどうこうじゃなくて、例えば海外に工場を持っているような会社さん、そういった国から来てもらって、日本の本社の工場で働いてもらいます、それで帰ってもらうというのは企業でやればいいというふうな話はありますけれども、そういったところに逆に政府として何らかの補助をするとか、そういうことを積極的にやる方が国際貢献につながるということもあり得るんじゃないかと思っているんです。

 だから、こういったことも、外国人技能実習制度の枠内かどうかは別として、これを法務大臣に聞くべきことなのかどうかというのもありますけれども、政府として推し進めていっていただきたいと思いますので、御提言をさせていただきたいと思います。

 大臣、そこまでのことについて御意見があれば。

岩城国務大臣 まず、参考人のお話から、スピーチコンテストについて御提言がございました。こうした取り組みは、日本語能力向上の取り組みについて、広く日本文化への理解を高めるものでありますので、推奨すべきものであると考えております。

 そこで、新しい制度におきましては、実習実施者や監理団体がこうした取り組みに積極的に取り組んでいることを優良な受け入れ機関としての評価要素の一つとして位置づけるなど、こうした取り組みがさらに広がるような必要な支援等を検討してまいりたいと考えております。

 それから、国際貢献について、もっと政府の方がいろいろと取り組みを進めていくべきではないかというおただしでありますけれども、このことにつきましても、運用面でどういった取り組みが可能なのか検討をしていくべきものであると考えております。

木下委員 ぜひ進めていっていただきたいと思います。

 もう一つ、最後にあったのが、これは慶応大学の教授の方からあったんですけれども、そもそも、この制度自体がちょっと問題な部分があるんじゃないか、本音と建前というのがあるんじゃないかというふうに言われていたんです。なぜかというと、実習をしに実習制度で来る人たちというのは、技術を教えてもらいに来るわけです、言い方をあれすれば。なのに、それで給料をもらう。そこで本音の部分と建前の部分が出てくるんじゃないのというふうな話をしていました。

 だから、もう時間がないのでこれぐらいにしておきますけれども、私は常々、今までも言わせていただいていますけれども、実習制度の部分で、労働力の確保というのに関しては、やはりまた違う制度をしっかりと論じていっていただくべきだと思っています。大臣もこれはもう御理解いただいていると思いますので、以上にさせていただきます。

 ありがとうございます。

葉梨委員長 以上で木下智彦君の質疑は終了いたしました。

 次に、井出庸生君。

井出委員 民進党、信州長野の井出庸生です。本日もよろしくお願いいたします。

 法案の質問に入る前に、一点、最高裁にきょう来ていただいておりまして、先日報道されましたハンセン病施設の特別法廷、裁判の公開原則というところに大きな疑義があったことに対して、最高裁の方で結論を出して談話を発表された。「裁判所による違法な扱いがなされたことにつき、ここに反省の思いを表すものです。」という最高裁判所裁判官会議談話というものもいただきました。一連の問題が「ここに至った時間の長さを含め、心からお詫びを申し上げる次第です。」このような談話を出されているんです。

 ただ一方で、新聞報道などを見ますと、最高裁事務総局が長年にわたって裁判官会議を経ないでハンセン病の御関係の方の裁判を特別法廷でやってきたことが憲法の裁判公開の原則に反しているんじゃないか、そういう指摘に対しては明確に答えていないというような報道がされておりますし、私も、長年にわたって裁判官会議を経ないで事務総局としてそういうことをやってきたというのであれば、憲法の趣旨に反していた、そういうことがないようにしたい、そういうところもきちっと表明をするべきではないかと。

 そういうことで、きょう見解をいただきたいんですが、いかがでしょうか。

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 今、御質問の中で、まず、事務総局の方の専決権限を行使していたというところにつきましては、昭和三十五年以降の事務総局の運用というところが専決権限の行使の趣旨に反していたということで、この部分については相当でなかったということで報告書の方にも記載させていただいていますし、今後、このようなことのないように努めてまいりたいというふうに考えております。

 もう一点の憲法の公開の原則の関係でございます。

 憲法の公開の原則の関係につきましては、我々の事務総局における調査というところは、あくまでも司法行政行為としての開廷場所の指定というものについての調査というのを行ってまいりました。その中で、指定行為というところで、指定対象となった場所が、やはり公開の原則をおよそ満たさないような場所を指定していたということになりますと、指定行為自体の違法性あるいは憲法の問題というのが出てくるわけでございます。

 今回、調査の結果によりますと、非常に資料が残っていないという問題があるわけですけれども、昭和二十三年当時から、公開の関係の資料が残っているのは昭和三十五、六年ぐらいのところまで、断片的な事件におきまして、公開の関係、法廷の客観的形状でございますとか、あるいは、現実にかなり傍聴人がいたという報告でありますとか、掲示等を行っていたというようなこと、断片的なものではございますが、そういう集めた資料に基づきまして、今回の調査の結果では、指定行為自体において憲法の公開原則を満たさないような場所を選定したような事案は見当たらなかったという結論を出しているところでございます。

 ただ、この問題につきましては、全体としてやはりこの指定行為が裁判所法六十九条二項に違反するということについては明確に認め、反省しているところでございまして、今後、司法行政の事務の任に当たる者としては、その行為自体がやはり裁判自体の合法性といいますか相当性というところに非常に影響を与え得るということも考慮して、やはり今後とも、このような過ちを踏まえまして、これを教訓にいたしまして、このようなことのないように努めてまいりたいというふうに反省しているところでございます。

井出委員 今、個別の指定については、数少ない資料も調べていただいたと。ただ、全体としてこうしたことを続けてきたことに対しては、今、きちっと思いを答弁していただいたのかなと思います。

 裁判の公開というものは極めて大事なものであります。今、裁判員制度をずっとやっておりますし、被害者、加害者、また当事者への配慮で、裁判が、いろいろな遮蔽を設けたりとか、そういうことが今、かつてより柔軟に運用されていると聞いております。

 よく裁判所は、ここでやりとりさせていただくと、個別の裁判体の判断についてはいろいろと事務総局の方で口を挟めないということを繰り返しおっしゃられていますから、このハンセン病の裁判の関係も、やはりそういうやり方で、現場、現場に任せて、事務総局が余り全体的な運用をしなければここまでの形にはならなかったと思いますので、くれぐれも、ぜひ今御答弁いただいたことを踏まえて今後の司法行政に当たっていただきたいと思います。

 最高裁の方、ありがとうございました。もう結構です。

葉梨委員長 中村局長、御退席ください。

井出委員 法案の方に入っていきますが、きょうはまず、外国人技能実習に介護を追加する、しない、そのところから少し伺っていきたいんです。

 先日、視察に行きまして、EPAで来られている若い方お二人、これから日本で活躍してほしいな、そういう方がいらっしゃいました。その一方で、入国管理局に行ったときに、たまたまだったんでしょうが、不法滞在を摘発して、ちょうど今、いろいろな手続をしているところですというところに遭遇をいたしました。三十人ぐらい不法滞在で摘発された人がいて、うち半数が技能実習からの脱走組というような状況でして、日本に来る外国人の光と影といいますか、明と暗の両方を本当に一日で見た思いがいたしました。

 技能実習に介護を入れていくということが、対人サービスである、日本語の問題もあって極めて慎重でなければいけないということはこれまでも言われてきたんですが、まず、そもそも技能実習の法律を見ますと、恐らく九条の一号や二号で対象の職種というものを読み込んでいくのではないかなと思うんですが、実際は、法律外で職種を今までも決めてきていると思います。

 ただ、法律を読む限り、九条の一号と二号を見ると、何がだめで何がいいんだみたいなところが余りにも書き込みがなさ過ぎて、ちょっと、この法律上、職種の指定というものが漠とし過ぎているのではないかと思うんですが、改めて、技能実習ができる職種が法文上どういうたてつけになっているかというところを少しわかりやすくコメントいただきたいと思います。

宮川政府参考人 まず、現行制度でございますけれども、あるいは今回の法改正の制度も基本的には同じ仕組みでございますけれども、仕組みのたてつけといたしましては、職種という概念が法令上明定されているわけではございません。あくまでも、今回の法律によれば、一定の評価システム、いわゆる技能検定ですとか、それに準ずるような形での検定を行っていただく際のそういうものがあるということで、個別の計画を認定するに当たってそういうもので評価をしていきますという形で行っております。

 その評価に値するものを現在ですと厚生労働省の方で決めているわけでございますけれども、今後はそれを主務省令などで明確にしていこうということは考えておりますが、いずれにいたしましても、一つの計画を認定するに当たりまして、評価システムができているということ。

 その評価システムとしては、いわゆる職種としての三要件、すなわち、反復する作業のみによってできるものではないこと、相手方の母国におけるニーズがあること、それから能力評価システムがあること、これらを中心に、実務的には、業界団体なり業所管庁の同意なり考え方を踏まえて、その点を専門家会議の意見を聞いて判断していく、こういう仕組みになっているところでございます。

井出委員 この法律は、省令ですとか、法務省、厚労省の指針といった、法律外のところでいろいろな実態が決まっておりますが、非常に重要なところですので、ぜひ、運用、省令、そういうところも議論をさせていっていただきたいと思います。

 先日、四月二十二日に参考人の質疑をしまして、私も非常な勉強をさせていただいて感謝をしているんですが、そのときに、まず、神奈川県立保健福祉大学の名誉教授である根本さん、外国人介護人材受入れの在り方に関する検討会の座長をお務めになった方がいらっしゃって、そのとき、介護を技能実習生として導入するときに懸念があって、それについて対応しなければいけない、そんなことを幾つか例示されたんです。

 一つが、技能移転の対象となる業務の内容、範囲を明確化すること、ですから、実習生が介護をやりに来て何の業務をやるのかということを明確にしろと。二つ目が、必要なコミュニケーション能力の確保、恐らく日本語のことだと思います。三つ目が、適切な評価システムの構築。四つ目が、適切な実習実施機関の対象範囲の設定。五つ目、実習体制の確保。六つ目、日本人との同等処遇。第七が、監理団体による監理の徹底。

 これは、座長をお務めになった検討会の中で出てきたお話ということでお話しされているんですが、そのまとめとして、検討会としては、技能実習制度本体の見直しの詳細が確定した段階で、今挙げた介護固有の具体的方策をあわせて講じることによってさまざまな懸念に対して適切に対応できることを確認した上で、新たな技能実習制度の施行と同時に介護の職種追加を行うことが適当だ、そういう結論に達したということを紹介されているんです。

 ですから、技能実習制度そのものの適切さが一つある。その上で、介護は、今言った七つの項目にきちっと対応できることを確認した上でやらなければいけない。この確認というものを、一体、どれだけの時間をかけて、どういうイメージで実行していくのか、今お考えがあれば教えてください。

堀江政府参考人 お答え申し上げます。

 根本先生から説明があったものの中で、コミュニケーション能力ですとか、先ほども御質問ございましたけれども、介護に不安が起きないように、要はイメージの低下が起きないように、あるいは適切な処遇で、日本人労働者の処遇環境の改善の努力が損なわれないように、そして、一番大事なところでございますけれども、対人サービスなものですから、介護の質の担保を行って、利用者そして技能実習を行う方、双方の人権がきちっと守られるようにすることというような課題について、詳細を検討会の報告の方でまとめていただいたものだと考えてございますので、今回、法が成立いたしまして実施に向けましては、この報告書に書いてあることをしっかりと具体化していくことだというふうに考えてございます。

井出委員 少し具体的に伺いたいんです。

 例えば、根本さんが挙げられている、適切な実習実施機関の対象範囲を設定する、これは、その後、根本さんは質疑の中で、施設についてこのようにおっしゃっているんです。

 施設が介護の人材不足でない、そういう建前は、建前というのも変な言葉なんですけれども、どこまでも貫いていかなくちゃいけないと思います、あくまでも社会貢献と申しますか、国際貢献の一環として、余裕のあるところというか、そういうような志に燃えているようなところ、ところというのは施設ですね、そういう施設から技能実習生の受け入れをやっていくべきだろうと思いますと。さらに、日本語能力等もあると思いますが云々と述べられているんです。

 この根本さんのお話を解釈しますと、やはり介護の技能実習生を受け入れる施設、受け入れ機関というものは、経営的に少し余裕があって、人手不足で猫の手もかりたい、経営も苦しいから安く人を雇いたい、そういう施設はだめだ、実習生に来てもらって、働いてもらって、きちっと帰ってもらう、そういう面倒がしっかりと見られると。

 そうなると、当然、経営力といいますか、施設の体力といいますか、そういう部分が問われてくると思うんですけれども、経営面から見て、この施設は実習生受け入れを許可しよう、こっちはちょっと難しい、何かそういう物差しが今後用意されるのかどうかを教えてください。

堀江政府参考人 お答え申し上げます。

 午前中、吉田先生の質問の方でもちょっと述べさせていただいたんですけれども、やはり、今委員おっしゃいますように、介護の分野、特に求人倍率がほかと比べれば高いところでございまして、かつ、施設も新しくふえてきているというようなところがございます。

 そうしてみると、最初、オープンする際に人を一生懸命集めなきゃいけないといったようなときに、がさがさと技能実習生を集めて人数だけ合わせましたというようなことではサービスの質が担保できないでしょうというようなことで、根本先生に委員長をしていただきました検討会の中では、その辺についての危惧があって、こうした懸念を回避することが求められることから、基本的には設立後三年以上経過した施設を対象とすることが望ましいというふうに結論づけているところでございます。

 また、例えば、午前中もございましたが、一人で在宅介護をするようなことはできませんとか、あるいは、夜間に一人でしていただくようなことは相当経験を積んでからにしていただく必要がありますねというような議論を朝の方で吉田委員ともさせていただきました。

井出委員 そうしたことが、これからこの法律ができて、では、介護をやりますといったときに、何か新たなガイドラインがつくられて、根本先生がおっしゃったようなことがきちっと明示的に、監理団体や受け入れ先や、そういうところにきちっと徹底されていくのかどうか、そこを改めて伺います。

堀江政府参考人 少々聞き落としていたり間違えていましたら申しわけございません。

 基本的に、そのあたりは、今の三年たたないとできないというようなことについて、法が定まりましたら、法令の方でしっかり担保していきたい、こういうふうに考えてございます。

井出委員 冒頭申し上げましたが、この法律は、省令ですとかガイドラインによるところが非常に大きくて、この法律を成立させる、結論を出す、その上に当たっては、やはり運用も、きちっとやりますじゃなくて、こうしますというものを議論の中で少し具体的に出していっていただきたい。

 介護の、私は経営的な体力がしっかりしていることを一つ例示として挙げましたけれども、これからしっかり、そういうことを検討しますじゃなくて、もう一歩踏み込んだ、ガイドラインの大枠といいますか、こういうことをきちっとやっていくんだねということをぜひ残りの審議の中できちっと担保していただきたいと思います。

 それと、日本語の問題なんですが、私、非常に印象に残っている一つの言葉があって、言語は国家のDNAである、国にとってその国の国語というものは、文化から暮らしから全てに通ずるDNAである、そういうことをおっしゃっている方がいて、海外を見たときに、移民政策をやっている国で、きちっとその母国語を教えている国は、ある程度ほかの国に比べると問題が少ない、むしろ、そこをおろそかにすると、何か各国ごとの孤立したまとまりができてしまって、いろいろなトラブルのもとになるというようなことをおっしゃっている方がいる。

 私は、在留資格であろうと技能実習であろうと、日本語の習得をしていただくということは大変重要だと思っております。

 介護の対人サービスという意味においては、これは、今までの議論の中では、日本語のN3、N4と、従来、もう少し厳しくした方がいいというところの一個下でおさまったと聞いております。ただ、やはり運用として、最初の入りは、日本語の能力、また学ぶ気のある人たちからきちっとお願いしていく。そこは、日本語をもとに何かトラブルが起こらないように、そういう慎重なスタート、人材の確保というものを図っていくべきだと考えますが、その点についてはいかがでしょうか。

堀江政府参考人 御案内のように、技能実習生に求められる日本語の水準につきまして、入国時は、N4、基本的な日本語を理解することができる程度を要件としつつ、N3、日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる程度が望ましい水準、二年目以降についてはN3程度が要件というふうに報告の方でもまとめられているところでございます。

 この報告をまとめられたのがせんだっての参考人質疑の根本委員長でございますけれども、参考人質疑の際にもお述べいただいていますように、介護は対人福祉サービスで、コミュニケーションが前提となります、利用者と実習生の人権をしっかり守る必要があり、危険なことが少ない部分から少しずつソフトランディングしていく形とすべき、こういうふうに御発言いただいておりまして、そういうお考えのもとでこの報告書もまとめていただいているものと考えてございます。

井出委員 けさ、牛丼屋に寄りましたら、早朝ということもあって、外国人の方が二人、店員をやっておりまして、やはり日本語のできる方が、ちょっと年は若かったけれども責任者のようなことで、私の注文の不備を直してくれました。日本語は非常に大事ですので、これからももう少し議論を深めさせていただきたいと思います。

 介護の話はちょっと一旦おきまして、次に、ずっと聞いてきました実習生の転籍の問題と、もう一つ、待遇の問題について伺いたいんですが、実習生の転籍については、先日十九日の委員会の中で、大臣から最後に御答弁をいただきました。そのときに、基本的には、問題のある実習計画は最初の段階で排除される、実習先の変更を希望する場合は実習機構に相談することができるようになると。

 その後なんですが、例えば、実習実施者が明らかに指導力を欠いていたり、実習実施者による人権侵害や不正行為が行われたことにより実習継続が困難、そのように認められる場合には、実習機構は、実習先の変更を認めて、新たな実習実施者が作成した技能実習計画を審査の上認定する。その後は、一つの実習先でやることが望ましいので、自由に変更できる仕組みを原則とは考えていない。なお、相性が悪いといったことが客観的にも技能実習の継続を困難ならしめるほどの事情であれば、転籍の可否を考えることにもなる。それだけで直ちに転籍を認めるのが相当ではないということは言われているんですが、そういう御答弁をいただきました。

 その前段に、前の議論で井上さんからも、指針に書いてある、実習生みずからの責めによらない理由であれば少しは転籍を認めるよというようなのが今の考え方なんですが、私がそこのところを聞いたところ、技能実習生側に責めがあるというのは非常に悪質な場合であると。例えば、より高い賃金を求めて失踪する、指示や命令を聞かずに労働を放棄して働かなくなってしまうとか業務を妨害する、そういう非常に悪質な場合でございまして、そうでない場合は、いろいろ事情もございますので、環境が許せば、運用上かなり広く技能実習を継続する方向で動いているという実情があると。

 ちょっと私は思ったんですが、これから、一年、三年だったものが五年で、その三年から五年については運用で転籍が少し検討されるとなっておりますが、私が先日取り上げた技能実習生の入国・在留管理に関する指針、これがちょっと厳し過ぎるんじゃないかと。それに対して井上さんも岩城大臣も、実態はもう少し広くやっていますという御答弁だったんですけれども、そうしたら、こっちを実態に合わせて、これを機に書き直していただきたい。そうすることでこの制度はもう少しよくなるんじゃないかと思いますが、まず、井上さんに書き直しの提案について見解をいただきたいと思います。

井上政府参考人 お答えいたします。

 現在の指針につきましては、責めがない場合には在留の継続ができるところをかなり明確に書いてしまっておりまして、それを逆に読むと、それ以外はだめと誤解されてしまうおそれがあるとすれば、そこは御指摘のとおりでございます。

 今度、制度が改まるに際しまして、ガイドラインも全体的にちょっと見直すべきというか、章立てから何からいろいろ変えていく必要も出てくると思います。今、まさに継続すべき案件については継続するのが相当だ、技能修得意欲があって、今後も技能実習を続けさせるのが相当だというような案件についてはかなり柔軟に認めているという運用の実情がございますので、その辺も踏まえた形で、ガイドラインというか、そういうものの作成を検討してまいりたいと思います。

井出委員 大臣にも伺いたいんですが、現在の、技能実習生が転籍できるかどうかの指針というのは、技能実習生本人の責めによらない事由で実習の継続が困難である、そのとき本人が継続を希望している、そういうときは、いろいろ、新たな実習先を探すことが望まれますと。この望まれますというのもちょっと変えてほしいなと思います。

 今、井上さんがおっしゃったように、私も、この指針というものは、要は、給料のより高いところというのは私もだめだと思いますけれども、労働ですから、労働契約を結んできて、その契約がきちっと履行されているかということは、やはり一つ、実習生と実習実施機関との間であると思うんですね。

 これを読むと、交通事故でいえば一〇〇、ゼロの、全ての責任が実習実施機関になければ転籍が認められない、そういう印象をこの文面から受けるんですね。ただ、トラブルというものは、一〇〇、ゼロなんというものはほとんどない。実習生が売り言葉に買い言葉で何か言ったことも、実習生の非と認定されることもあるかもしれませんし。

 ですから、特に労働上のトラブルというものは、もう少し両者の言い分をきちっと聞いて、ああ、もうこれはやむを得ないな、ほかに移した方が、継続を本人も望んでいるし、真面目にやってくれているな、そういう方たちに何とか転籍の場が用意されるような、そういう方向性に持っていくべきだ、私はそういう提案をしたいんですが、大事なところですので、大臣からもコメントをいただきたいと思います。

岩城国務大臣 技能実習生の実習先の変更につきましては、委員御承知のとおり、実習先が倒産したり、不正行為通知を受けて実習が継続できなくなった場合のほか、実習先からパワハラ等重大な権利侵害を受けるなどして現在の実習先で技能実習計画に沿った適切な技能実習を継続することが困難である場合には、その実習先の変更を認めることとしております。

 労働契約の不履行、契約をめぐる争いなどの事由が存在する場合、委員御指摘のようなそういった事由が存在する場合については、かかる事由の存在が客観的にも技能実習の継続を困難ならしめるほどの事情であれば、転籍の可否を考えることとなるものと考えております。

 また、現行制度におきましても、客観的にも技能実習の継続を困難ならしめるほどの事情であって、かつ、単なる一方的な感情にとどまるような場合でない限り、転籍について柔軟に対応しているところ、これは先般も御答弁させていただきました。

 新しい制度では、こうした御指摘を踏まえまして、技能実習生の転籍を認める場合について関係者によりわかりやすいものとなりますよう、一般に公表するマニュアルにおいてより一層明確な記載をするなどして、実際の運用内容との整合性を図ることを検討してまいりたいと考えております。

井出委員 今、検討していただくというお話がありました。

 現状は、実習実施機関の倒産や不正行為、またパワハラですとか重大な人権侵害と今例示があって、井上さんに確認をしたいんですけれども、出入国管理及び難民認定法第七条一項第二号の省令にいろいろ細かいことが書いてあって、このとおりこの制度がいってくれればもう少しいいなと思うんですけれども、なかなかそうはいっていないのかなと思います。

 この省令に違反すると、読みますと、五年間受け入れできないとか、三年間受け入れできないとか、そういう罰則といいますかペナルティーもきちっと明示をされているんですけれども、この省令に違反する行為というものは、この指針の現状の不正行為、これはもうイコールでリンクしていると。この不正行為ですね、実習実施機関の倒産や不正行為とあって、重大な人権侵害ですとか、今大臣からもう少し例示もありましたけれども、この省令違反と不正行為というものが、私はイコールであっていいんじゃないかなと思うんですけれども、現状はどうなんですか。

井上政府参考人 お答えいたします。

 このガイドラインに記載してある実習実施機関の倒産や不正行為云々の不正行為といいますのは、委員御指摘の、上陸基準省令の中で受け入れ停止期間をもって定めている不正行為の類型、そのことをまさに指しているところでございます。そこに当たるところはもとより、それ以外の場合にも、技能実習生の責めがない場合はたくさんあり得るだろうということではございます。

井出委員 そうしますと、省令違反、不正行為があったときは、当然、受け入れ機関はここにあるペナルティーを科される。現行においても、省令違反があれば、転籍については、実習実施機関や監理団体が協力して新しいところを探すことが望まれますというところにすうっと流れていく、今、そういうお話をいただいたと思うんです。

 あと、もう一つ伺いたいのが、技能実習法の十九条と五十一条の関係なんです。

 この十九条と五十一条が恐らくこの省令の根拠となっていると思うんですけれども、何かあったら通知、報告をしなきゃいけないのが十九条で、五十一条が、継続ができるように、実習機関、監理団体が、ほかの実習機関、監理団体と連絡調整その他必要なものをやっていく、そういう文言になっています。

 私は、そもそも、不正行為や倒産をしてしまった、実習生とトラブルになった実習機関が、その実習生のためにほかの実習先を確保できるのかと。まず、恐らく監理団体がその中心を担わなきゃいけないと思いますし、もう一つ、五十一条は、実習機構が主語にはなっていないんですね。新しい受け入れ先を探すというところに実習機構が法律的にもしっかりかかわっていくことが明示されることが大事なんじゃないかなと考えているんですが、ちょっとその点についての認識をいただきたいと思います。

井上政府参考人 お答えいたします。

 技能実習法案における、実習継続困難な場合における関係者の責務のお尋ねであると存じます。

 まず、十九条等によりまして、実習の継続が困難になった場合には、まず第一次的には実習実施者において継続のための必要な措置を講ずるべきこととされておりますが、御指摘のように、その人が不正行為の主体であるようなときには、果たしてその人にさせるのが適切かというと、疑問がある場合がございます。そうすると、まず、その上で監理をしている監理団体が、自分の監理団体の中にいるほかの実習実施者など、あるいはさらに関連の監理団体等にも声をかけるなどして探していく、それが五十一条の一項の方の構造でございます。

 そして、二項は、主務大臣が必要な指導助言を行うことができるということで、例えば監理団体でもうまくいかなかったときには主務大臣が出ていきますよという構造になってございますが、ここに機構が出ていないじゃないかという御指摘であったと思います。

 機構につきましては、同じ条文の八十七条の第二号というところに、要するに、機構の固有の業務として、技能実習生の保護を図るために、「相談に応じ、必要な情報の提供、助言その他の援助を行う業務」というのが記載されてございます。この一般的な機構固有の業務の中で転籍の支援なんかを行うものという解釈のもとにこの法案はつくってあるところでございます。

井出委員 本音を申し上げますと、今言っていただいた八十七条の二号ですとか五十一条の文言も、私は、全体的に、やむを得ない事情でほかの移籍先を探す人たちにとっては心もとない文言ではあるかなと思うんです。最初に申し上げましたガイドライン、指針を含めてもう少し議論をさせていただきたいと思います。

 もう一点、待遇の話なんですが、これは私、転籍とセットだと思っております。というのは、井上局長はこれまでの議論の中で、私がもう少し転籍いいじゃないかと何十回も聞いてきたんですが、そうすると、局長の方から、賃金のより高いところに行くというのはだめだと。そのお話が、大体、私の方から例示を求めないで局長の方から例示していただけるというのは極めてレアケースなんですけれども、それが何回も今までありました。

 ただ、私はそれを今すごく前向きに受け取っているんですが、ほかのところが賃金が高いからほかに行きたい、それは、ある程度、待遇面の法整備、運用というものをきちっとやっていくことで、そこを解決できれば変な転籍みたいなものも減ってくるのではないか。そういう方向で少しこの問題を解決していきたいなと思っているんです。

 そこで、法務省にお願いをして、技能実習のための雇用計画書という、JITCOの方でサンプルをつくっているものを見させていただきました。労働時間、休憩時間、一週間、年間の労働日数、労働時間数とか、そういうものが書いてあって、賃金についても書いてあります、基本賃金それから諸手当。時間外労働の割り増し賃金は除くと書いてあるから、残業代は入っていないのかなと。ちょっとそこを教えていただきたいところでもあるんですが。

 ただ、今までの議論をやっておりますと、実習生の側は恐らく、一年ないし三年と、先ほど木下さんが優良監理団体と評価された先日の参考人の方のところですら、夢を持ってお金をために来る、そういうお話もあったので、ですから、事前の契約の中で、これは会社員ではありませんから、正社員ではありませんから、日本の労働者でいえば契約ですから、ある程度、年収といいますか、三年間なり一年やればこれだけの金額が出ますよというところもきちっと計画で明示した方がいいんじゃないか。

 あと、これを見ていて、残業代も非常にトラブルのもとになっていると聞いておりますけれども、残業代についてもやはりきちっと明示した方がいいんじゃないか。

 この二点について伺いたいんです。

宮川政府参考人 お答えいたします。

 労働条件の明示の関係でございますが、技能実習も労働でございますので、適切に実施されるためには、技能実習生が、あらかじめ、技能実習期間中の労働条件、この中には、賃金の額もありますし、割り増し賃金率も当然入ると思います。そして、技能実習の内容、どういう仕事で、その結果、例えば試験の合格に向けてどういう実習をやっていくのか、そういうことの内容などをよく理解した上で技能実習が行われるということが非常に重要だと考えております。

 このため、現行制度におきましては、雇用契約書など、日本語に加えて、母国語によっても作成するなどして、雇用契約の内容が技能実習生に十分に理解できるようにしなければならないこととされておりまして、入管手続におきましては、これらの関係書類を提出させる形でチェックをしておるところでございましたが、新制度におきましても、こうした事前の労働条件の明示の取り扱いということにつきましては、このようなチェックという形のものを踏襲して、適切に対応してまいりたいと思っております。

井出委員 一番のトラブルのもとである残業については、これからは明示をしていただけることになりますか。

宮川政府参考人 労働基準法の考え方というのは、まず基本の労働時間があって、それを上回るような形の場合に割り増し賃金を払う。最低基準としての労働基準法はございます。労働契約が決められなくても、労働基準法上のものは守らなければなりません。

 ただ、当然のことながら、技能実習生は外国の方でございますので、日本の労働法制について熟知しているわけではない。そういう意味で、現在も行っているとは思いますが、割り増し賃金率、何時間たつと幾ら払うのか、これは、企業によって日本の労働基準法を上回る形のものをやる場合もありますので、割り増し賃金率を幾らにするかという点については労働条件として明示すべきものと考えておりますし、その辺のところは、明示することをチェックさせていただければと考えております。

井出委員 もう一つ待遇の関係で、日本人と同等以上の報酬であるということが言われております。ただ、日本人も、会社によって、業種によって、地域によって最低賃金も違いますので、日本人と同等以上の報酬というものは、極めて難しい、具体的に何かを保障するものではないなというのが正直な感想です。

 そうはいっても、賃金にばらつきがあるからほかに行っちゃうわけですよね。行きたいといって脱走してどこか別のところに行ってしまう、そういうことだと思うんです。地域や業種で、公務員の人事院勧告じゃないんですけれども、やはり技能移転、研修ですので、仕事ではありませんし。仕事ではないんですよね、私も最近、そう言い聞かせるように頑張っていますけれども。

 ですから、やはりそういう一定の基準、余り地域差が出ないように、研修生でこの職種というものは、それは毎年というか定期的に見直しも必要だと思いますよ、いろいろな経済状況とかで。そういう基準づくりというものも、それは考えるのは大変ですけれども、それで変な脱走とか転籍が減ることを考えれば、一考の価値は十分あるんじゃないかと思いますが、どうですか。

宮川政府参考人 先生御指摘の賃金の問題につきましては、従来から御説明させていただいているとおり、現行の入管法令で、日本人が従事する場合の報酬と同等額以上ということが定められております。この規定は基本的に引き継いでいくつもりでございますが、それのチェックといたしましては、外国人技能実習機構に対しまして、実習実施者に、日本人が従事する場合の報酬と同等額以上であることの説明責任を課し、技能実習計画の認定を受けるという立て方にしていきたいと思っております。

 したがいまして、認定後においても、実習実施者が認定を受けた技能実習計画に従って日本人との同等処遇を担保していないと認められる場合には、是正指導あるいは改善命令等によって実効性を担保していきたいと考えております。

 先生御指摘の、例えば職種別とか地域別とか、いろいろな基準をつくればということでございますが、技能実習生を含め労働者に支払われる賃金というのは、先生も御指摘のとおり、企業規模ですとか個々の労働者に求められる役割、責任の大きさなど千差万別でございまして、職種別あるいはまた地域別であったとしても、企業横断的な基準を一律に定めることはかなり困難ではないかと考えております。

井出委員 そうすると、ほかに行きたいというような欲求を解消していくということになかなかならないと思いますし、日本人と同等というのは、最初は本当にすうっと聞いていたんですけれども、いや、これは答えはないだろうというのが私の今の実感であります。ただ、ここは非常に重要な問題だと思いますので、また引き続きやりたいと思います。

 どうもありがとうございました。

葉梨委員長 以上で井出庸生君の質疑は終了いたしました。

 次に、清水忠史君。

清水委員 日本共産党の清水忠史でございます。

 本日も、外国人技能実習制度、出入国管理及び難民認定について質問をさせていただきます。

 参考人質疑や昨日の連合審査会におきまして、より一層この法案の問題点が明らかになったと思うんですね。

 技能実習制度が、技能移転ではなく、国際貢献ではなく、国内の人材不足を補う制度であり、支配従属的な労使関係のもと、さまざまな人権侵害が発生している。にもかかわらず、このたびは制度を介護の分野にまで拡大するというものであります。

 四月二十五日、日弁連主催の院内集会に参加をいたしました。ここで、技能実習生で衝撃的な人権侵害を受けたという方のお話を伺いました。

 縫製工場で働いていた元実習生、中国人女性でございます。送り出し機関に対して二十万中国元、今のレートでいいますと三百四十万円の保証金を借用書として書かされた。一年目の手取りが月五万円、休みは年間二十日程度。二年目は給料が月六万円、休みは年間一日だけ。三年目も、月額七万五千円ということであったと言われております。

 不満を述べても、本国で高額な保証金を没収されるのではないかと、労働者としての権利を主張できず、人権侵害とも言える過酷な労働を強いられてきたというお話でありました。

 岩城法務大臣、例えば、このような実習生に直接お会いして、深刻な被害を受けた、あるいは逃亡せざるを得なかったという生の声を直接伺ったことはこれまでございますか。

岩城国務大臣 私自身、そういった声を直接お伺いしたことはございませんが、間接的に聞いてはおります。

清水委員 私は、ぜひ直接お話を伺うべきだと思いますよ。そうすれば、今回の法案によってこのような人権侵害や法令違反をなくすことはできないし、それよりもまず、これらのことを根絶することに力を入れるという概念が私は生まれてくると思うんですね。

 現行の難民認定法第七条におきましても、入国審査官は、来日する実習生が保証金を徴収されていないかどうかを確認することが規定されていますよね、現行法でも。これが機能していないということなわけですよ。本来、そこで確認しないといけない。あなた、保証金を取られていますか、どうですかと。ところが、これがうまくいっていない。

 この間、井上入管局長も、これを取り締まること、送り出し国のこともあるので非常に困難だというふうに答弁されてきました。前回の私の質問に答えまして井上入管局長は、各送り出し国との間で取り決めを作成し、各送り出し国政府において自国の送り出し機関の適格性を個別に審査してもらい、保証金の徴収を行うような不適切な送り出し機関を排除していく、順次そのように移行していきたい、こう答弁されましたね。

 そこで、法務大臣にお伺いするんですが、そのような取り決めが二国間によってなされない場合、文書において明示されない場合、その送り出し国からの実習生については受け入れないということでよろしいですか。

岩城国務大臣 送り出し国との間の取り決めでは、送り出し国の政府において、自国の送り出し機関の適格性を個別に審査し、適正なもののみを送り出し機関と認定するなど、送り出し国政府の協力を得ながら送り出し機関の適正化を図る枠組みをつくっていく考えでございます。

 こうした送り出し機関の適正化のための枠組みについては、その必要性について相手国に丁寧に説明し、必要な内容を取り決めに盛り込むことができるよう粘り強く交渉してまいりたいと考えております。

清水委員 いや、私が聞いたのは、それは努力していただいたらいいんですけれども、そうした取り決めがなされない、努力を、働きかけても相手が拒否する場合もありますし、明文化されない場合もありますよ。その場合は受け入れないんですかとお伺いした。もっと逆説的に聞けば、そうした取り決めが明文化されない相手国であっても受け入れるということですか。

岩城国務大臣 先ほどもお答え申し上げましたとおり、必要な内容を取り決めに盛り込むことができるようにしっかりと交渉してまいりたいと考えております。

清水委員 いや、交渉するのはしていただいたらいいんですけれども、だから、その交渉が妥結しない場合は受け入れないのかと聞いているんだけれども、なかなかそうは答えてくれない。

 連合審査会でも、田所政務官は、その取り決めがなされない場合であっても、相手国やあるいは送り出し機関、そして実習生のやる気を阻害してはいけない、だから受け入れるんだと堂々と述べられましたよ。私は驚きました。これでどうやって担保がとれるのかというふうに言わざるを得ませんね。

 そもそも、送り出し国との政府間取り決めというのは公表されるんですか。

井上政府参考人 相手国との関係もありますので、現時点ではまだ未定としか言いようがございませんが、外務省や厚生労働省とも協議の上、我々は基本的には公表する方向で考えております。

清水委員 いや、TPPの交渉文書みたいに黒塗りで出てきても困るんですよね。あれを印刷したらトナーはすぐなくなりますよ。

 相手国との関係があるから必ずしも公表されるものではないというふうにおっしゃいました。まあ、努力はするというふうにおっしゃるんだけれども。

 これでは、二国間でどのような取り決めがなされたのか、不適正な送り出し機関を排除するという項目が盛り込まれているかどうかも、技能実習生本人初め関係団体や国民、私たち国会議員にもわからないと思うんですよ。

 これは、どうして実効ある取り決めが二国間によってなされたと言い切れるんですか、公表されない場合。

井上政府参考人 もう一度お答えいたします。

 答弁の重要部分は、基本的には公表する方向で作業を進めるということを申し上げたつもりでございました。

清水委員 いや、基本的にということは、例外的にということもあるわけじゃないですか。しかも、岩城大臣にお伺いしましても、そのような項目が明文化されなければ受け入れないとは述べられませんでした。

 私は、全くこの政府間取り決めというものが、不適正な送り出し機関を排除するものでもないし、いわゆる法外な保証金や違約金契約を結ばされる技能実習生を根絶することにはならないということが改めてはっきりしたと述べておきたいと思います。

 次に、入管法七十条関係、偽装滞在者対策への対応。

 今回は、その罰則の新設と強化が盛り込まれております。法案では、偽りその他不正の手段により上陸許可や在留資格変更等を受けた場合に、不法入国などと同等の罰則を設けるとしています。

 この偽装滞在者対策の推進の根拠とされた文書の一つである、二〇一三年に閣議決定されております「世界一安全な日本」創造戦略には、八ページにこういう記述がございます。「近年は、偽変造文書や虚偽文書を行使すること等により、身分や活動目的を偽って在留許可を得ている偽装滞在者が増加している」と。

 そこで伺うんですが、偽装滞在者は、この間どれほど増加していますか。

井上政府参考人 お答えいたします。

 まず、御指摘の偽装滞在者でございますが、これは、基本的には、偽変造文書や虚偽文書を行使するなどして身分や活動目的を偽り不正に在留許可を受けている者をいいますが、広い意味では、必ずしも当初から活動目的を偽っていたわけではないが、現に有する在留資格では認められない活動をしている者も含まれております。

 それで、お尋ねの偽装滞在者の状況でございますが、偽装滞在者というものは、その性質上、表見上は正規の在留者として把握されます、入管のシステム上はでございますね。そうすると、当局の調査等によって具体的な摘発行為なんかを行ったことによって初めてその在留資格が偽装のものであるということが発覚されてくるものでございますので、偽装滞在の実態の全容について把握、分析して、全体的な規模を正確な数字で答えることはなかなか困難なものが性質上ございます。

 そこで、偽装滞在者の実態の一端をあらわすものはないかということでございますが、在留諸申請において虚偽文書を行使した疑いのある場合などには、在留資格取り消し手続を行うことが現行法上ございます。その結果、在留資格を取り消した件数というのが、今回の偽りその他不正の手段による処罰に比較的実態が近いものがあると思いますので、その数字を見ますと、平成十六年以降、平成二十三年まで年々増加いたしまして、その後も高い水準で高どまりしておるという状況にございます。

清水委員 非常に重要な法案を審査しておりますので、与党議員の皆さんにもぜひこの議論を聞いていただきたいというふうに思っておりますが、残念ながら定足数が、この委員会、本当に入れかわり立ちかわりということで、大変遺憾に思っているわけであります。

 今の入管局長、偽装滞在者の数は把握していない、なかなかつかむのが難しいということでありました。その一環として、在留資格を取り消した数を述べられましたけれども、今入管局長が答えられたのは、いわゆる二十二条の四、この在留資格の取り消しでいう一号から十号まで。例えば、七号の日本人の配偶者等だとか、あるいは八号から十号の中長期在留者のことも含めて高どまりしているというふうにおっしゃったんですけれども、私が聞いたのは、今回の法案で問題になっている偽りその他不正の手段、これがポイントになっていますので、一号から五号、いわゆる上陸申請が虚偽であった、在留資格を取り消したという件数は幾らか、わかりますか。

井上政府参考人 最近五年程度のことを申し上げますと、大体百九十二件から二百六十五件の間で推移してございます。

清水委員 それを年代別におっしゃっていただけますか、この五年の。

井上政府参考人 平成二十三年が二百六十五件、平成二十四年が二百四件、平成二十五年から二十七年までが各年百九十二件ということでございます。

清水委員 減っているじゃないですか。高どまりと言うんだけれども、二百六十五件から百九十二件に減っている。

 だから、偽装滞在者の数はわからない。いわゆるこの一号から五号、不正、偽り、虚偽の申請によって入国した者を取り消した数についても減っているということですよね。ですから、今回この罰則の新設と強化をもたらした立法事実ということについて、引き続き私は問うていきたいと思うんです。

 例えば、偽装結婚とかいうものは、公正証書原本等不実記載罪という、法律なんかで、今でも罰則でもって十分取り締まることができるわけですよね。あえて、この一号から五号、そんなにふえてもいない偽装滞在者、確証がない、こういうもとでなぜ罰則を設ける必要があるのかということです。

 改めてお伺いしますが、今回、偽装滞在者に罰則を設けようということの一つの根拠とされている文書に、第六次出入国管理政策懇談会報告書というのがあります。この中で、偽装滞在者に対し罰則を設ける必要がある等の記述はありますか、報告書に。

井上政府参考人 お答えいたします。

 先ほどの取り消し件数につきまして、ちょっと補足させていただきたいと思います。

 さらにその前五年といいましょうか、制度ができたのが平成十七年でございますので、それ以来を申し上げますと、最初は四十二件、五十一件、百五件、八十二件、百四十八件などのペースからだんだんふえて、二百六十五件がピークでございまして、そのように全体に十二年くらいを見ますと、ふえてきて高どまりになっている。ちょっと後ろの五年だけ、私、取り出しましたので、誤解を与えたとしたら、申しわけございません。補足させていただきます。

 そして、今のお尋ねの出入国管理政策懇談会報告書の記載でございますけれども、これは、平成二十六年十二月に取りまとめた報告書についてのお尋ねと存じます。偽装滞在者対策の強化が必要である旨の記載はございますが、罰則について直接的には記載はされておりません。

清水委員 記載がないということであります。

 今、誤解を招いたらというふうにおっしゃっていましたが、私は全然誤解していません。この三年間は全然ふえていないわけですからね。ピークから減っているというのは事実ですよ。

 この第六次出入国管理政策懇談会は十八回の会合が開かれているんですが、その中で、偽装滞在者に対して罰則を設ける必要がある等の発言をした委員がいましたか。

井上政府参考人 お答えいたします。

 平成二十六年九月二十九日に開催されました第十三回の会合におきまして、委員のお一方が、偽装滞在対策としての罰則の強化に言及されたと承知しております。

清水委員 偽装滞在者対策の強化について聞いているんじゃなくて、罰則を設けるべきと言明した方がいますかという問いなんですが、いかがでしょうか。

井上政府参考人 罰則を強化するという方法もあるかもしれませんというような形で言及されております。

清水委員 今、井上入管局長が言われたのは、おっしゃるとおり、これは、第十三回の懇談会でのノレーンさんという外国人の委員の方の発言を用いられたと思うんですが、私、この議事録、今手元にあるんですけれども、この方は確かに、罰則を強化するという方法もあるかもしれません、こう述べているんですが、これは不法残留者数がテーマになっているんですよ。不法残留。あくまでも、これは、偽装滞在者を取り締まるために罰則を設けるとか強化するという文脈で述べていることではないんです。

 百歩譲って、いや、それも含まれているんだということであったとしても、その後続けて何と言っていますか。罰則を強化したとしても、いずれにしても、この数をこれから劇的に減らすというのはなかなか難しいのではないかと思います、つまり、罰則を設けても減らすことはできないというふうに述べているんですね。

 ですから、私はいよいよ、新たに罰則を設けることの根拠というのが乏しいのではないかというふうに言わなければなりません。

 それで、また改めてこれを聞くんですけれども、井上入管局長、数はふえていない、わからない、そして、いわゆる有識者の報告書や懇談会でも、偽装滞在者に対して罰則を設けろと明確に言った人はいない。なぜ今回、偽装滞在者に罰則を設けたんでしょうか。端的に。

井上政府参考人 お答えいたします。

 かつては不法滞在者が大変ばっこしており、問題になってございましたが、さまざまな対策をとったところ、不法残留者はかなり減らすことができたということでございます。そのかわり、近年は、単純な手口による不法滞在ではなくて、偽装滞在の形で不法就労する者、そういう問題が深刻化してきているというところでございます。

 そこで、考えますに、偽りその他不正の手段で上陸や在留の許可を得る、そういう行為を本質としてございますけれども、不正の手段で上陸や在留の審査をかいくぐるという行為の悪質性、あるいは本来入国できないはずの外国人が本邦に在留するという結果の重大性におきまして、既に処罰対象としている不法入国や不法上陸に劣るものではないという実態がございます。

 それは処罰に値する行為ということは明らかでございまして、言ってみれば、今は在留資格の取り消ししかできず、処罰範囲に穴があいているという状態であったというところでございます。

 それで、結局、行政的な在留資格の取り消しだけでありますと、これは見つかって取り消されたら帰ればいいだけということになりまして、発見困難な偽装滞在を企図する外国人に対する抑止策としては不十分であるということから、不法入国や不法上陸と並ぶ法定刑を定めた本罪を設けることとしたものでございまして、これは、出入国管理政策懇談会報告書を受けて決めたものではなくて、入管として、近年の偽装滞在問題の状況に照らしまして、本罪の創設が必要という判断をしたものでございます。

清水委員 入管として決めたということなんですけれども、そうしたら、改めて入国審査のあり方について伺いたいんですけれども、例えば、偽りその他不正の手段というのは非常に悪質だと。例えば、水際で、空海港で、入国審査官が、ここで言ういわゆる偽りその他不正の手段を見破った場合、どういう対応をしていますか。その時点で見破った場合。

井上政府参考人 まず、上陸申請の段階でありますので、恐らく、上陸して日本で何をしようとしているかという活動につきましての、偽りその他不正の手段による申告があった場合だと思います。それを見破った場合には、まずは上陸を拒否するということになろうかと思います。

清水委員 それに罰則はあるんでしょうか。

井上政府参考人 今現在、その申告する行為に対する罰則はございません。

清水委員 要するに、偽りその他不正の手段で入国しようとして、その現場で入国審査官が見破った場合は、あんた帰りなさいと、罰則はない。ところが、それを見破れずに入国した場合については罰則を設ける。これは合理的ですか。

 私、この上陸申請そのものに萎縮効果をもたらすようなものだと指摘をしたいんですよね。だから、一旦許可処分が行われた後でも、在留資格取り消し手続や退去強制手続というのは同様にできるわけですよね。なぜ罰則を設ける必要性、合理性があるのか。これは、刑罰の謙抑性にも反するものだと私自身は考えております。この間議論をしてきたように、偽装滞在者の数も、ふえているかどうかの確証もない。入国管理局が勝手に判断したというんだけれども、この間の有識者の報告書や懇談会ではそうした議論は出てこないということです。

 もう一つ確認しますが、この罰則は技能実習生にも適用されるんでしょうか。

井上政府参考人 お答えいたします。

 技能実習生がどのような場面で出てくるということを念頭に置かれているかちょっとわかりませんが、法律上は、要するに、「偽りその他不正の手段により、」ということで何ら限定はございませんので、在留資格にかかわらず、この定めてある構成要件の行為が認められれば罰則の適用があり得る、そういうことでございます。

清水委員 結局、第六次出入国管理政策懇談会でも出ていない、法令違反や人権侵害により逃亡した技能実習生に対しても、場合によっては適用し得る。こういう法律であるということは、私は重大だと思います。

 それで、もう一つ、この入管法にかかわって、二十二条の四第一項、新設される第五号について議論したいと思います。

 在留資格の取り消し事由の拡大なんですね。これも、技能実習生に対しても、その活動を行っておらず、かつ、ほかの活動を行い、または行おうとして在留していることをもって在留資格を取り消すというふうになっております。

 四月十九日の当法務委員会で、井上局長は、この五号にかかわってこう言っております。「新しい五号の取り消し事由が必要となる背景といたしましては、やはり、本来の活動をやめて他の活動に入っていると思われる者が、他の活動の立証が難しくて、三カ月待たないと取り消せないというような場合がございます。しかし、その間に所在不明になってしまうということがこれまでも随分数はございまして、」というふうに、これを根拠にされているんですね。

 そこで伺いたいんですが、日本に在留し、その後所在不明になった外国人は何名いるか。また、技能実習生のうち、本来の活動をやめてほかの活動に入っていると思われる者が、ほかの活動の立証が難しくて、三カ月たたないうちに所在不明になった人数は何名か、教えていただけますか、この間。

井上政府参考人 最初の質問をちょっと聞き落としてしまいました。

葉梨委員長 では、もう一回お願いします。

清水委員 井上局長自身が、先日、委員会で、「本来の活動をやめて他の活動に入っていると思われる者が、他の活動の立証が難しくて、三カ月待たないと取り消せないというような場合がございます。」こう述べているんですね。「しかし、その間に所在不明になってしまうということがこれまでも随分数はございまして、」こう述べておられることについて、私は伺っているんです。その数。

井上政府参考人 前回私が申し上げたことの数字に一番近い統計といたしましては、入国警備官が摘発をいたしまして、そこで技能実習先から失踪した技能実習生であるということを当局が把握したのですが、まだ在留資格がありまして、退去強制手続をとるだけの事実もなかったので監理団体へ引き渡した人数というものの統計がございます。それは、平成二十五年が二十一人、二十六年が七十九人、二十七年が九十五人となってございます。

 この監理団体に引き渡した後、所在不明になった人たちがどれだけいるかということにつきましては、二十五年が八人、二十六年が二十人、二十七年が十五人。つまり、摘発の後、在留資格があるうちだったので監理団体に引き渡したんだけれども、その後所在不明になってしまったという者の人数がそれだけあるということでございます。

清水委員 資料の一枚目をごらんください。今、井上入管局長がお答えになられた数字がそのまま記載をされております。

 それで、井上局長は答弁で、「所在不明になってしまうということがこれまでも随分数はございまして、」というふうに述べておられたんですね、立法事実として。

 平成二十七年、昨年度は十五人ということなんですね。この十五人というものを随分な数として、いわゆる、その活動を行っておらず、かつ、ほかの活動を行いまたは行おうとして在留していることをもって在留資格を取り消すと。これは、随分な数と言えますか。

井上政府参考人 引き渡した後、所在不明になった者の比率で考えますと二二%以上ということになると思いますので、それは一定の比率であると思います。

 それを随分と評価したことについて御指摘がございましたので、あるいはこれからはもう少し慎重な言い回しをした方がいいかとは思いますが、一定数の所在不明が出ているということは間違いないものと理解しております。

清水委員 私は、この規定が余りにも曖昧だということを言いたいんですよね。

 例えば、逃亡せざるを得ないような実習生が、NPO団体や市民団体、労働組合に一時的にかくまってもらう。その間、例えばボランティア活動をやる。これがこの規定に当てはまるとされて、在留資格を直ちに取り消されて強制帰国させられるというようなことで運用されるのではないか。

 それ以外にも、これは技能実習生に限った話ではなくて、就労などの在留資格を有する外国人が、例えば次の仕事に移る間、引っ越しする間、この期間をもってほかの活動をしようとしているということで認定されるおそれもある。

 私は、これは著しく不安定にさせる条文だということを言いたいわけです。

 最後に、同委員会で井上局長は、失踪した後、不法在留状態になったりして摘発された技能実習生からの聞き取り調査をやっておられるんですけれども、その動機として、人権侵害的なことは比較的少数だ、より高い賃金を求めて失踪しているのが過半数だ、こういうふうに述べておられるんです。

 二〇一五年十一月から二〇一六年三月までの間、失踪した実習生の失踪動機の内訳ごとの人数について明らかにしていただきたいという質問をしようと思ったんですが、時間がないので、私の資料二枚目をごらんください。

 これは、失踪した技能実習生に係る失踪動機聴取結果なんですね。この真ん中の列、平成二十七年十一月から平成二十八年三月の間、千四百七十八名から聞き取りをしております。確かに、賃金が安いと答えたのが八百八十一人、過半数を超えておりますが、アンケートで回答するのは一つだけなんですよ。複数回答を求めていないんですね。下の方を見ていただいたらわかりますように、強制帰国とか、最低賃金以下とか、暴行を受けた、労働時間が長い、保証金、渡航費用の回収等々、逃亡した理由というのはさまざまなんですよ。

 ですから、井上局長がここでおっしゃられたような、人権侵害的なことがあったというのは比較的少数というのは、私はこれは当てはまらないということを言いたいわけであります。

 私は、この失踪という言葉に非常に違和感があります。冒頭申し上げました中国人実習生のように、やむにやまれず、いても立ってもいられず逃亡する、こういう実習生がいる。この背景には何があるか。労使対等でなく、不平不満を言えば本国に送り返され、膨大な保証金を取り上げられる。

 そして、この間議論してきたように、送り出し国の不正行為については二国間取り決めでやるというんだけれども、それは公表されないこともあるし、それが作成されなくても受け入れはするというんですから、これでどうやって根絶することができるのかということを言いたいわけであります。

 引き続き、法案の徹底審議を求めていきたいと思います。

 終わります。

葉梨委員長 以上で清水忠史君の質疑は終了いたしました。

 次回は、来る五月十日火曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時六分散会


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