衆議院

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第17号 平成28年5月13日(金曜日)

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平成二十八年五月十三日(金曜日)

    午前九時二十八分開議

 出席委員

   委員長 葉梨 康弘君

   理事 安藤  裕君 理事 井野 俊郎君

   理事 城内  実君 理事 鈴木 馨祐君

   理事 吉野 正芳君 理事 井出 庸生君

   理事 逢坂 誠二君 理事 國重  徹君

      あかま二郎君    大隈 和英君

      大塚  拓君    奥野 信亮君

      門  博文君    金子万寿夫君

      上川 陽子君    工藤 彰三君

      今野 智博君    笹川 博義君

      田所 嘉徳君    辻  清人君

      冨樫 博之君    長坂 康正君

      藤原  崇君    古田 圭一君

      宮川 典子君    宮澤 博行君

      宮路 拓馬君    務台 俊介君

      宗清 皇一君    若狭  勝君

      階   猛君    山井 和則君

      大口 善徳君    吉田 宣弘君

      清水 忠史君    畑野 君枝君

      木下 智彦君    上西小百合君

      鈴木 貴子君

    …………………………………

   法務大臣         岩城 光英君

   法務副大臣        盛山 正仁君

   法務大臣政務官      田所 嘉徳君

   文部科学大臣政務官    堂故  茂君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          萩本  修君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  井上  宏君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           大西 康之君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           堀江  裕君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           浜谷 浩樹君

   政府参考人

   (厚生労働省職業能力開発局長)          宮川  晃君

   法務委員会専門員     矢部 明宏君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十三日

 辞任         補欠選任

  門  博文君     金子万寿夫君

  藤原  崇君     宗清 皇一君

  宮川 典子君     大隈 和英君

  若狭  勝君     務台 俊介君

同日

 辞任         補欠選任

  大隈 和英君     工藤 彰三君

  金子万寿夫君     門  博文君

  務台 俊介君     長坂 康正君

  宗清 皇一君     藤原  崇君

同日

 辞任         補欠選任

  工藤 彰三君     宮川 典子君

  長坂 康正君     若狭  勝君

    ―――――――――――――

五月十二日

 民法の一部を改正する法律案(井出庸生君外七名提出、衆法第三七号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律案(内閣提出、第百八十九回国会閣法第三〇号)

 出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案(内閣提出、第百八十九回国会閣法第三一号)


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     ――――◇―――――

葉梨委員長 これより会議を開きます。

 第百八十九回国会、内閣提出、外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律案及びこれに対する吉野正芳君外三名提出の修正案並びに出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案及び修正案審査のため、本日、政府参考人として法務省大臣官房司法法制部長萩本修君、法務省入国管理局長井上宏君、厚生労働省大臣官房審議官大西康之君、厚生労働省大臣官房審議官堀江裕君、厚生労働省大臣官房審議官浜谷浩樹君及び厚生労働省職業能力開発局長宮川晃君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

葉梨委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

葉梨委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。階猛君。

階委員 おはようございます。民進党の階猛です。

 きょうは大臣が九時五十分ぐらいには出られるということなので、ちょっと質問の順番を変えまして、一の4というところから伺っていきたいと思います。一の4、通告されていますよね。

 資料の一ページ目をごらんになってください。

 今回、入管法の改正で、偽装滞在者対策の強化ということが盛り込まれているわけです。その中で、この真ん中やや上あたりに罰則の整備という項目がございますね。これは、我々からすると、罰則の整備というよりも強化というのが普通の言い方ではないかと思いますけれども、この罰則の強化にマイナスの面があるのではないかという観点からお伺いしたいと思います。

 まず、難民の方が、いろいろな事情があって、入国審査のときは、観光目的で来ましたよということでちょっと本来の目的とは違うことを言って入国審査を受け、上陸許可を受けたという場合も、ここで書かれてありますような「偽りその他不正の手段により、上陸許可を受けて上陸し、」ということで構成要件に当たって処罰を受けるのかどうか、まずこの点について御説明をお願いします。

岩城国務大臣 お答えいたします。

 難民についてのおただしでありますが、改正後の入管法第七十条第一項第二号の二、すなわち今回新設する不正上陸の罪は、我が国で難民認定申請をしようとする者が偽りその他不正の手段により上陸許可を受けた場合についても、その適用が排除されるわけではありません。

 もっとも、その者が条約上の難民である場合であって入管法第七十条の二に規定する要件に当たるときは、今回新設する不正上陸の罪を犯してもその刑を免除することとしておりますので、真の難民が、例えば観光と偽って上陸許可を受けたことが同罪に当たる場合であっても、処罰されることはありません。

 そもそも、我が国で難民認定申請をしようとする者が迫害から逃げてきて本邦に何とか上陸したいのであれば、空港の入国審査場で直ちに難民認定申請をすることができますし、また、そうした事情を告げれば、一時庇護上陸という、難民の可能性のある者に簡易に一時的な庇護を与えるための手続によって上陸を許可されることになります。

 また、知人や支援者を頼り、これらの者と相談した上で難民認定申請しようとしているような場合は、ありのままを申告してもらえれば、知人訪問などの短期滞在としての活動を認めることが可能であります。

 したがいまして、上陸申請に際してうそをつく必要は全くなく、今回、不正上陸の罪を設けることによりまして、難民認定申請をちゅうちょさせることにはなりません。

 なお、何らかの誤解によりまして虚偽の申告をして上陸許可を受け、外形的には新設する罰則に当たる場合でありましても、実際の罰則の適用に当たりましては、その虚偽の内容、虚偽を述べた動機、真実を述べた場合に上陸許可を受けられた事案であったかなど、諸般の事情を考慮して捜査機関において処罰の必要性が検討されるものと思われ、入国管理局といたしましても、そうした事情を踏まえ、真に処罰に値する事案について捜査機関に処罰を求めていくことになるものと考えております。

階委員 捜査機関の訴追裁量権が適切に行使されるかどうかというところが極めて重要になってくると思うんですが、検察官の適性ということについて昨今の法曹養成制度のもとでちゃんと担保されているのかどうか、これは後ほど大臣が出られた後で別途質問します。

 今の御答弁の中で、最終的に難民認定がなされた場合であれば処罰も免れるという法制度のたてつけになっていますけれども、逆に言うと、難民申請が却下された場合は、難民として上陸することもできないし、今回新設された罪によって処罰されるし、ダブルパンチになるわけですよね。しかも、この難民認定というのは、過去の統計とかを見ると、なかなか認められないという実態もあるわけです。

 そういう中で、今回新設された罪によって、客観的にこの要件を満たす者については、ただでさえ難民認定の認定率は低いものが、こういった上陸段階で観光とか偽った者については余計に難民認定が認められなくなるのではないかということも危惧するんですけれども、この点についてはいかがですか。

岩城国務大臣 難民認定の申請につきましては、国際的な取り決めであります難民条約等に規定されている難民の定義にのっとりまして、申請者が難民条約の定義する難民に該当するか否かを個別に判断しております。我が国に庇護を求めようとする外国人が入国に際し入管法令に違反したといたしましても、その難民該当性が変わるものではありませんので、難民認定を妨げる事由にもなりません。

 したがいまして、入国目的を例えば観光と申告して上陸許可を受けたとしても、そのことをもって難民認定を行わないということはありません。

階委員 これは大変重要な答弁だと思って、今回の罰則の強化が難民認定にとってマイナスの影響を及ぼすことがあっては決してならないと思いますので、ぜひしっかりと運用をお願いしたいと思います。

 そして、この委員会でも清水先生が、そもそも立法事実があるのかという御議論をされていました。

 この資料の一枚目の左下のところに、今回立法に至った経緯として二つの文書を取り上げていますね。二つ目の第六次出入国管理政策懇談会報告書は清水先生が取り上げたもので、ここには罰則を設けるべきという記述はないんだという御指摘がありました。

 私の方も一つ目の「世界一安全な日本」創造戦略というところの該当部分をちょっと拝見させていただいたんですけれども、それを見ますと、確かに、近年は偽装滞在者が増加していることが懸念されているというくだりはあるんですが、「そこで、」ということで、「平成二十四年七月から実施している新しい在留管理制度により得られる在留外国人に係る情報等を的確に分析し、不法滞在者・偽装滞在者の実態を解明し、効率的な摘発や在留資格取消手続等の推進を図ることが必要」ということで、「取消手続等の推進を図る」というくだりはあるんですけれども、罰則の強化というのはないんですね。

 なのに、なぜこれをやる必要があるのか。私は、この閣議決定文書にあるとおり、取り消し手続、こちらの方をしっかり取り組んでいけばいいのではないかと思うんです、刑事罰によらずに行政処分ということで。なぜ行政処分ではだめなのか、この点についてお答えください。

岩城国務大臣 現行制度でも、偽りその他不正の手段により上陸許可等を受けた者につきましては在留資格の取り消しは可能でありますが、取り消し後の在留ができなくなるだけでありまして、発見困難な偽装滞在を企図する外国人に対する抑止策としては不十分であると考えております。すなわち、容易に発覚しない不正をたくらむ者にとりまして、運悪く見つかっても帰国だけで済むというのでは、十分な抑止力となり得ないものであると考えております。

 なおかつ、偽装滞在は、不正の手段で上陸や在留の審査をかいくぐるという行為の悪質性におきましても、本来入国できないはずの外国人が本邦に在留するという結果の重大性におきましても、不法入国や不法上陸に劣るものではなく、行為に見合った制裁を科すという意味でも、不法入国や不法上陸と並ぶ法定刑を定めた本罪を設けるのが相当である、そのように考えております。

階委員 私は、刑罰というのは謙抑的であるべきものだと考えておりまして、安易に刑罰を強化するという方向性については異議を述べたいと思います。

 そして、行政処分だけでは足りないんだというお話なんですが、今回、この行政処分の方も、一枚目の資料の真ん中、下の方に書いていますけれども、「在留資格取消事由の整備」ということで、所定の活動を行っておらず、かつ、他の活動を行いまたは行おうとして在留している場合、取り消し事由ということになっておりますね。ここも、「整備」とありますが、我々からすると拡大だと思っています。

 そして、こういう取り消し事由が拡大すれば、行政処分の方もなされる確率が高まってくる。行政処分がされた場合に、ことしの四月から行政不服審査法も改正になりましたが、この行政不服審査の対象に在留資格取り消し処分というのは含まれていないわけですね。裁判によらないとこの取り消し処分の取り消しをしてもらえないということであると、私は、手続として、処分を受けた側にとって余りに酷なのではないかと思っております。

 私は、今回、この取り消し理由が実際どういうふうに書かれているのかということについてもちょっと事務方から資料を取り寄せましたけれども、例えば現行法の六号の取り消し事由の記載例で見ますと、「あなたは、正当な理由がなく、在留資格「○○」に係る活動を継続して三カ月以上行っていないので、出入国管理及び難民認定法第二十二条の四第一項六号に該当します。」と。

 この程度の取り消し理由で処分が通知されて、そして、あとは裁判で訴えなさいというのは、処分を受ける側にとって余りに酷なのではないか、行政不服審査手続でちゃんと理由の開示もしっかりさせた上で、まずは裁判の前に簡易な手続による不服申し立ての手段を付与して、それでもなお争いがあれば裁判に持っていくというふうにするのが、手続保障としては処分された側にとって厚いのではないかと私は思います。

 こういう行政不服審査の対象に含めるということについてどのようにお考えになるか、御見解をお願いします。

岩城国務大臣 在留資格の取り消し処分について、行政不服審査の不服申し立てを認めるべきではないかといったおただしかと存じます。

 行政不服審査法では、外国人の出入国または帰化に関する処分について適用を除外しているところであります。入管法に基づく在留資格の取り消し処分も、この外国人の出入国または帰化に関する処分の中に含まれております。

 外国人の出入国に関する処分について行政不服審査法の適用が除外されているのは、まず、外国人の入国、在留に関する処分は、元来、国家主権に属しており、法務大臣の自由裁量行為であって、行政不服審査になじまないこと、そして、外国人の入国、在留について定める入管法の中で、その処分の性格に即し、不服申し立てに類した仕組みが整備されていることが理由と考えられております。

 なお、この入管法の中で整備されている不服申し立てに類した仕組みとして、在留資格の取り消し処分を受けた者がその処分を不服とする場合に、出国猶予期間の経過等で入管法違反となったことに伴い開始される退去強制手続におきまして、法務大臣による裁決での在留特別許可を求めることが制度的に保障されておりまして、これにより、不服を主張して救済を求めることができることとなっております。もとより、在留資格の取り消し処分の取り消しを求めるなどの行政訴訟、これを提起することは可能であります。

階委員 今、不服申し立ての方法として二つのことをおっしゃられました。後段の行政訴訟を提起するというのは、私が指摘したとおり手続的に非常に重くて、なかなか、あれだけの理由を通知されたからといって、すぐ提起できるものではないと思っています。だからこそ、裁判手続の前段階で不服審査の申し立てを認めるべきだということを申し上げたわけですけれども、他方で、大臣が、もう一つの不服申し立て手段として、退去強制手続において在留特別許可なるものを求める方法もあるんだということをおっしゃいましたよね。

 ただ、今回新設される在留資格取り消し事由が、先ほど読み上げたところが認められた場合は、出国猶予期間の指定が不要で、直ちに退去強制手続に移行するというふうにありますよね。ということは、先ほどおっしゃられたケースでは、出国猶予期間が経過すれば退去強制手続がされて、そしてその退去強制手続の中で在留特別許可を求めればいいんだと言いましたけれども、そもそも出国猶予期間というのはないわけだから、もう即座に在留特別許可を求めないと、行政手続の中では何も不服を申し立てられない。そんなに即座にできるとは思えないんですよね、処分された人が外国人ですから。

 だから、私は、さっき申し上げた方策では不十分ではないかと思います。この点について御見解はありますか。

    〔委員長退席、井野委員長代理着席〕

井上政府参考人 法制度のことにつきまして御説明させていただきます。

 出国猶予期間が与えられてそれが経過した場合には、不法残留状態になって退去強制事由に当たるわけですが、出国猶予期間が与えられないと直ちに退去強制事由に当たりまして、いずれにいたしましても、退去強制の手続の中で審査が行われ、その中で法務大臣による在留特別許可を求めるということになりますので、いずれにしても同じルートに乗っかってくるということではございます。

階委員 そういうことを言っているんじゃなくて、出国猶予期間があるかないかによって不服申し立ての準備ができる期間というのは変わってくるじゃないですか。出国猶予期間があれば、もうその段階からどうやって異議を申し立てるかということを考えられるわけだけれども、直ちに退去強制手続が始まると、準備する期間は短くなるじゃないですか。だから、私は、もっと別な不服申し立ての手段を設けるべきではないかということを言っているんですよ。どうですか。

井上政府参考人 この在留資格取り消しの制度につきましては、そもそも取り消しをする段階で意見聴取の手続というものがきちんと設けられておりまして、あらかじめ期日を指定して、そこで意見や証拠の提出ができるし、関係書類の閲覧もできるような、最初の処分の段階で非常に手厚い手続保障がまずとれるようになってございます。

 そのようなことも踏まえまして、あとは、いずれにしても、退去強制手続の中で、言い分がある場合には十分にそれを聞いて、手続的にきちんとした形で退去強制の手続を進めるようにしてまいりたいと思います。

階委員 新しく始まる仕組みなので、本当に今言ったようにちゃんと手続保障が与えられるのかどうか、大変懸念しておりますので、そこは、しっかり運用がされるようにしていただきたいというふうに思います。

 それとともに、でも、一回は退去強制手続になってしまうということ自体、退去強制手続の中で争えばいいんだということ自体、何か処分の正当性を前提としていますから、私は、ちょっといかがなものかと。その処分そのものの正当性を争うところで、裁判ではなくて行政手続の中で争うべきだという考えを持っていますので、ここは異議を差し挟ませていただきたいと思います。

 そこで、前後しますけれども、引き続きやや法解釈的なところを突っ込んでお聞きしたいと思います。

 今回、新たな刑事処罰の類型を求めるということなんですが、偽りその他不正の手段により上陸許可を受けるということは、直観的に言うと、在留カードというそれなりに価値のあるものを偽りの方法によって国からだまし取るわけだから、刑法でいえば詐欺罪に類するものじゃないかという感じもするわけですね。

 詐欺罪の過去の判例などを見ましても、最決昭和五十一年四月一日というところで、農業政策上の国家的法益の侵害に向けられた側面を有するものであっても詐欺罪に当たるということで、詐欺罪は基本的に個人的法益に対する罪ということなんですが、国家的法益に対する詐欺罪も成立し得るんだというような最高裁の判断もあります。

 そういう中で、在留カードをだまし取るような行為類型については、私は、現行の刑法でも十分対応できるのではないかと思っておりますが、この点はいかがですか。

井上政府参考人 まず、改めて申すまでもございませんが、詐欺罪は財産権を保護法益とした罪でございまして、人を欺いて財物を交付させた場合、あるいは財産上の不法の利益を得、または他人にこれを得させた場合に成立するものでございます。

 この点、今御指摘の今回新設いたします犯罪、つまり、偽りその他不正の手段によって上陸、在留の許可を得た者につきまして、それに伴って在留カードが交付される場合もあるわけでございますが、そのような事態についてどのような法益が害されるかということを考えますと、これは、当該外国人が不正の手段で上陸や在留の審査をかいくぐり、本来であれば受けることのできない許可等を不正に受けて本邦に上陸、在留するということによって、要は、我が国の出入国管理秩序が害されるということになるわけでございます。これが法益侵害の本質でございまして、それに伴って発行される在留カードというものが取得されることが法益侵害の本質ではないと考えてございます。それがベースにございます。

 次に申し上げたいのは、今回、犯罪の対象とするいろいろな在留の許可でございますが、在留カードが発行されるのは、そのうち所定の中長期在留者に対してのみでございます。許可の中で一番多いのが新規の短期滞在の上陸の許可でございますが、そのようなものが大部分を占める許可の中で、一部のものについてしか在留カードが交付されないということがあるということを一つ指摘させていただきたいと存じます。

 それから、ほかのいろいろな行政法規を見ますと、許可を不正に取得する罪というのがございまして、それに伴って、運転免許証も含めまして許可証のようなものが発行される例はございますが、いずれも、不正な手段で許可を得る罪というものを設けているところでございます。

 例えば、風営法でありますれば偽りその他不正の手段によって風俗営業の許可を受けた者、道交法でありましたら偽りその他不正の手段によって運転免許証の交付を受けた者、銃砲刀剣類所持等取締法であれば偽りの方法により拳銃等の所持について許可を受けた者等についての罰則が、本件と比較的同程度の法定刑で罰則が設けられておるところでございまして、ほかにも多数の例がございます。特に運転免許証につきましては、その不正取得については詐欺罪の成立を否定した裁判例もあると承知してございます。

 刑法の解釈でございます。偽りその他不正の手段によって許可を得て在留カードの交付を受けた行為、それが詐欺罪に当たるかどうか、これは、具体的な事案ごとに証拠に基づいて裁判所が判断するということになろうかと存じますが、以上申し上げました事情に鑑みますと、入国管理局の行政裁量を害する罪として、本件の新しい罪、七十条一項二号の二の罪を設ける意味は十分にあるものと考えております。

階委員 ほかにも刑法との関係でお尋ねしたい点もあるんですが、ちょっと時間の関係で一旦おいておきます。

 先ほど大臣の答弁にもありましたとおり、新たな処罰類型が設けられても、処罰範囲を適正な範囲に画するためには、検察官の訴追裁量権が適正に行使されることが大変重要だということだと思います。

 ところで、最近の法曹養成、いろいろな問題があるわけですけれども、資料の二ページ目をごらんになっていただきたいんですが、「苦境 法科大学院」、読売新聞の記事でございます。

 この中で、法科大学院を出た検察官について衝撃的なことが書かれていまして、真ん中より下の方に、「法科大学院の失敗は法曹の「質」に影響しかねない。」ということで、「「認めたら略式なんだけど、どうする?」。東京地検では昨年、法科大学院を出た新任の女性検事が、薬物事件などで否認する容疑者にそう持ちかけていたことが発覚した。略式起訴で済ませる代わりに否認の撤回を迫ったと受け取られかねず、取り調べ実習のやり直しを命じられたが、女性検事は反発。「一身上の都合」であっさり辞職した。」といったような驚愕の事実が書かれています。

 この事実は真実かどうか、お答えいただけますか。通告しておりますが、どなたでも。

盛山副大臣 昨年度採用の法科大学院出身の新任検事の中に辞職した者がいるのは事実でございます。しかしながら、プライバシーに関する事柄であることから、お答えは差し控えさせていただきたいと考えております。

階委員 プライバシーにかかわるといいますか、新聞に出ていますけれども、別に誰という話ではないわけですね。事例としてこういうことがあったというわけですから、こういう事例があったのかどうかということをお尋ねしているわけですけれども、あったのかなかったのかということだけお聞かせいただけませんでしょうか。

盛山副大臣 個別事件の取り調べ内容等につきましては、当該事件の関係者の名誉、プライバシーの保護の観点から問題がありますことから、お答えを差し控えさせていただきたいと考えております。

階委員 なかったということも言えないということだと思うんですね。

 それで、読売新聞ですから、政権に対してマイナスのことは言うわけがないと思っていまして、こういうことが新聞記事にもなっている、読売新聞の記事にもなっているということも含めて、法科大学院は、いろいろ問題点を指摘されているわけですね。

 今、ちょうど司法試験が行われているわけですけれども、四月に新たに法科大学院の新規の入学者も入ってきたということで、最近、さまざまなデータが出てきます。それで、私、毎年この時期に、ことしはどうだったのかなと思ってそういった各種のデータを見ますけれども、問題状況が、歯どめがかかるどころかますます深刻化しているということを直近のデータを見て思いました。

 まず、その次の資料を見ていただきたいんです。三枚目ですね。これは、法科大学院の入学定員数、入学者数、入学定員充足率の推移ということで、きょうは文科省にも来ていただいていますけれども、このところ毎年毎年、入学定員を大幅に減らしてきていますね。ちょっと前までは五千人以上いたわけですけれども、平成二十二年からどんどん減らしてきていまして、ことしは、定員は二千七百二十四人まで減らしました。他方で、それにもかかわらず、実際に入学した者は千八百五十七人、ついに史上初めて二千人を割り込みました。

 そして、入学定員充足率も、普通は、定員をこれだけ減らせば充足率も下げどまって回復してくるのではないかと思うんですが、定員充足率もさらに下がって六八・二%という惨たんたる状況です。

 こういう、法科大学院の入学者が下げどまらない理由について、文科省はどのように考えていらっしゃいますか。

堂故大臣政務官 お答えします。

 御指摘のとおり、平成二十八年度の法科大学院入学者は千八百五十七人となり、前年度に比べ三百四十四人の減少となりました。この入学者減は、平成十九年度以降一貫した傾向であります。

 入学者が減少している理由としては、法科大学院全体としての司法試験合格者率が高くなっていないことに加え、法科大学院修了後の進路状況等が不透明である一方、民間の就職状況が好転していることなどが影響していると考えられます。

階委員 後段の民間の就職状況が好転しているというのは、私は理由として当てはまらないのではないかと。なぜならば、私の資料の一番最後に、予備試験の受験状況についてグラフを掲げさせていただいておりますけれども、予備試験の方は、景気がよくなっても別に減っているわけではありませんね。堅調に推移しております。ここ三年ぐらいは一万二千人台後半で推移しているわけですね。

 結局、就職状況がよくなっても、司法試験を受けたいという人はいるんだと思うんですね。でも、法科大学院に入りたいという人は激減している。ここに大きな問題があるわけですね。質量ともに充実した法曹養成を目指すということで法科大学院を立ち上げて、逆の効果になっていると私は考えています。

 そこで、さらにお尋ねしますが、読売新聞でも取り上げられていましたけれども、法科大学院入試の前に適性試験というものを受けるというこれまでのルールでした。この適性試験で下位一五%ぐらいに入ってしまうと、事実上、法科大学院を受けられない、あるいは受けたとしても入れない、こういったことで法科大学院入学者のレベルを一定以上に確保してきた、こういうものがあったと思います。

 ところで、新聞報道によりますと、この適性試験をやめて、いきなり法科大学院入試を受けられるようにするようなことが検討されているとありました。私はとんでもないことだと思っています。

 と申しますのも、法科大学院の入学試験の競争倍率というのもグラフでつけさせていただいております。下から三枚目ぐらいにあるかと思いますが、法科大学院入学者選抜における競争倍率の推移ということで過去からずっと調べておりますけれども、当初、競争倍率四・四五倍だったということで、競争水準はかなり確保されていたと思うんですが、近年は一・八六倍ということで、最低のレベルになっていますね。

 かつ、本来は二倍以上なくてはいけないというのが文科省の方針だったと思います。一・八六倍まで下がっておきながら、ちょっと語弊があるかもしれませんが、さらに足切りをするための適性試験もなくすということは、ますます法科大学院入学者のレベルが下がってしまうのではないか。

 競争倍率が上向いてきている、高くなっているという中で適性試験を廃止するならまだわかるんですけれども、まさにこれは、貧すれば鈍するといいますか、本末転倒といいますか、競争倍率がどんどん下がって不人気が高まっている中で、レベルを確保するための適性試験をやめるというのは、とんでもない過ちだと思っております。

 この点について文科省の見解を伺います。

堂故大臣政務官 お答えします。

 適性試験は、法律学についての知識ではなく、法科大学院における履修の前提として要求される資質を試すものとして、法科大学院制度創設以来、全ての法科大学院出願者に受験が求められているものであります。

 一方で、法科大学院志願者の減少など、入学者選抜を取り巻く状況の変化や、入学者の多様性の確保の必要性等から、中央教育審議会法科大学院特別委員会のもとに設置されましたワーキンググループにおいて、法科大学院入試の基本理念の維持と入学者の質の確保を前提に、統一適性試験の利用を各法科大学院の任意とすべき旨の報告書が取りまとめられたところであります。現在、法科大学院特別委員会において、報告書を踏まえ議論が行われているところでございます。

 文部科学省としては、当委員会の議論を踏まえ適切に対応してまいりたいと思いますが、もとより文部科学省では、統一試験の見直しのみならず、昨年六月の法曹養成制度改革推進会議決定に基づき、法科大学院の規模の適正化や教育の質の向上を目指し、さまざまな取り組みを実施しているところであります。今後とも、こうした改革を一層加速させてまいりたいと思います。

階委員 重ねて申し上げますけれども、法科大学院入試の競争倍率が低下する中で、適性試験を中止するのは大きな誤りであるということを指摘したいと思います。

 その上で、司法試験そのものについても私は衝撃的な数字が出たと思っております。

 その次の資料を見ていただきますと、毎年の司法試験受験状況等についてということで、司法試験の受験者の推移を見たもので、ことしは、六千八百九十九人という数字で、前年より千百十七人も減っているわけですね。

 二年ほど前に法律を改正しまして、本来であれば五年間で三回しか司法試験の受験機会がなかったのを、五年で五回受けられる、そういう法改正が成立したので、ことしは五回目の人が初めて参加できる制度だったんですね。これによって増加する人数が大体三百人強あったと思っているんですよ。そういうプラス要因三百人がありながら、なおかつこんな千百十七人も減っている。

 先ほども言いました、予備試験の人気はあるけれども、予備試験というのは合格率が非常に低くて、予備試験の受験者がふえてもそんなに司法試験の受験者はふえていないという状況もあるんですが、そういったことも踏まえまして、この千百十七人のマイナスは何が原因になっているというふうに法務省としてはお考えになりますか。

盛山副大臣 今、階委員おっしゃったとおりでございまして、ことしの司法試験の受験者数は速報値で六千八百九十九人で、昨年より千百十七人減っているということでございます。

 この原因はどういうことかなというふうに正直我々自身も考えているわけでございますが、ことしの司法試験につきましては、現在なお実施中でございますので、受験者の属性等も正確には把握できていない段階でございますので、残念ながら今ここでその原因を明らかにすることはできません。

 今後、司法試験の実施状況も踏まえながら、関係機関等と連携して、可能な範囲で分析を進めていきたいと考えております。

階委員 事実として、司法試験の受験者は六千八百九十九人しかいなくなった、また、将来の司法試験受験者の供給源である法科大学院の入学者が、ついに二千人を割り込んで千八百五十七人になった。

 ところで、去年の司法試験の合格者というのは千八百五十人もいるわけですね。それだけ入学者も減って、将来受ける人がどんどん減ってくると見込まれる中で、千八百五十人というのは、何か、本当に試験として機能しているのだろうか、機能するのだろうか。

 昨年、法曹養成制度改革推進会議の決定で千五百人以上合格者を確保できるようにすると言っていますけれども、私は、この千五百人という数字も、今の司法試験の受験者の状況であるとか法科大学院の入学者の状況からすれば過大であると考えております。

 そういうことを私は思うわけですけれども、この千五百人以上という数字はどのようにお考えになりますか。

盛山副大臣 先ほどもお答えしたところでございますが、まだことしの司法試験を実施中でございますので、合格者数について所見をなかなか述べられる段階ではございません。

 しかしながら、いずれにせよ、司法試験の合格者数につきましては、司法試験委員会において、法曹となるべき学識及び能力の有無を判定する観点から、実際の試験結果に基づき適正に決定されるものと認識はしておりますが、今後とも、ことしの結果も踏まえて検討していかなければならないと考えております。

階委員 時間が参りましたので最後の質問にしますけれども、先ほど申し上げたように、予備試験の方は堅調に受験者が推移しているわけです。ところが、予備試験は本当に狭き門で、三%ぐらいしか受からない。他方で、法科大学院に入る人は減っていて、法科大学院経由で司法試験を受ける人も減ってきている。こういう状況があるわけですね。

 質量ともに豊かな法曹を養成する上で、やはりなるべく多くの人が司法試験に参加してもらえるような制度にしていかなくてはいけないと思うんですが、今の制度のままでは、なるべく多くの人が参加するのではなくて、どんどんどんどん先細りしていってしまう。だから、私はかねがね主張しておりますけれども、原則として法科大学院修了者にしか司法試験受験資格を与えないというのはやめて、希望すれば全ての人が司法試験を受けられるようにする、こういう方が質量ともに豊かな法曹養成には資するのではないか。これは、毎年データを見るたびにその思いは強くなる一方です。

 最後に、この点について改めて法務省の見解をお伺いします。

盛山副大臣 今、階先生がおっしゃったとおり、法科大学院につきましては、法科大学院全体としての司法試験合格率が、制度創設当初に期待されていたものとは大きく異なっております。法曹志望者の減少を招来する事態を生じさせる一因となっているというふうに多くの指摘がなされているところでございます。

 昨年六月の法曹養成制度改革推進会議決定では、こうした課題を指摘した上で、法科大学院が期待されている当初の役割を果たせるようにするために、平成三十年度までを法科大学院集中改革期間としまして、文部科学省において、法科大学院の抜本的な組織見直しや教育の質の向上などの必要な取り組みをするとされたところであります。また、法務省においても、法曹志望者数を回復させ、質の高い法曹を多数輩出していくため、法曹有資格者の活動領域の拡大や法曹人口のあり方の検討など、必要な取り組みを進めるとされたところであります。

 いずれにせよ、法務省としては、今申し上げた推進会議決定に掲げられた取り組みについて、文部科学省その他と連携をしながら、速やかにかつ着実に今後の検討を進めてまいりたいと考えております。

階委員 これで終わりますけれども、今、三菱自動車が大変な状況になっていますね。たった三週間で、自力では立ち行かなくなってほかの会社からの支援を受けるような話になっている。

 ところで、今度の法曹養成制度の問題、もう五年も六年も前からずっと問題を指摘し、そして国会でも取り上げてきたにもかかわらず、改善されるどころか悪くなる一方で、本当にこのままで私たちは未来の法曹システム、司法システムを保てるんだろうか、このまま司法システムが破綻してしまうのではないか、それほどの危機感を持っている。ぜひ皆さんにもそういう危機感を持って、この問題、集中改革と言っている間に破綻したら元も子もないですね。改革よりも、今すぐ抜本的に変革していく、そういう決意を持って取り組んでいただきたいということを申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

井野委員長代理 次に、井出庸生君。

井出委員 民進党、信州長野の井出庸生です。きょうもお時間をいただきました。

 私の質問が単調であるという御指摘をインターネットでいただきまして、きょうは頑張ってまいりたいと思っております。(発言する者あり)そうですか。でも、頑張ってまいりたいと、よろしくお願いいたします。

 先ほど、きょう、この案件を終局するというようなお話がありまして、私も審議の詰めの部分を協議させていただいてきましたものの、そうはいっても、一方で審議の継続を希望される方もおりましたので、その点について私としても大変じくじたる、また個人的には大変申しわけない思いでありますが、いただいた時間の中で質疑を尽くしてまいりたいと思います。

 これまで、報酬の問題、転籍の問題ですとか、大きな問題を聞いてまいりました。その中で、きょうは細かいところからまず確認をしてまいりたいんです。

 前回、十一日のこの委員会で、報酬のところ、私は、参考人の質問で、建設業、雨が降って仕事がなくて月に二万四千円、必要経費は引き落としもされていないというような話の紹介があって、技能実習生に実際に支払われる手取りの賃金が生計の維持に配慮をしたものとなるように、実習実施者にそういったことを促していっていただきたいと思うんです。

 その点について、前回、宮川さんは、例えば、もともと週五日の実習、勤務ということを予定しているにもかかわらず、実際、月に数日しか働いていないというような状況で、少額な報酬だということにつきましては、十六条一項一号に当たる、計画に従って実習を行わせていないという評価ができる場合があるのではないか、改善指導や計画の取り消しなど適切な対応を図っていくべきものだと考えている、そういうお話があったんです。

 そもそも、私、以前に実習計画というものを幾つか見させていただいたときに、その計画については、横に毎月、一月から十二月まで一年間、縦にやるべき作業、そこに時間が割り振られている。そしてまたお給料の方を見ましても、基本給といいますか、そういうものが明確に書いてある。

 ですから、日本の建設業とかアルバイトであれば、出た日数、時給、日給、そういう概念はあるのかと思うんですが、少なくとも、仕事がないから金を払えない、そういうことを、あの計画を見る限り、技能実習計画に明記されている基本給が払われていないという時点でそれはやはり計画違反ですし、そこは明確に線を引いて、そうした生活に窮するような実態というものをゼロにしていただきたいと思いますが、局長の答弁をお願いします。

宮川政府参考人 お答えいたします。

 実習生が安心して技能実習に専念できる環境を確保していくことは、大変重要なことだと考えております。

 このため、先生が御指摘されました、例えば、認定された技能実習計画上は週五日という形での実習を予定していたにもかかわらず、実際には例えば月に数日しか勤務がなくて少額な報酬しか支払われないというような場合には、今回の法律の十六条一項一号にございます、実習実施者が認定計画に従って技能実習を行わせていない場合に当たると認められ、改善指導、場合によっては計画の取り消しという形での厳格な対応を行うこととしたいと考えております。

井出委員 念押しになりますが、計画に示されている基本給を仮に下回るような実態がある場合は即それは改善指導、そしてまた、その指導が実らない場合は計画の取り消し、その計画が、そもそも実習先のそうした不正な行為によって計画が認められないというのであれば、私がお願いしている、やむを得ない事情による転籍も含めた、そういう厳正な対応をこの法律ができた暁にはやっていただきたいと思います。いかがでしょうか。

宮川政府参考人 今回の法律に基づきます技能実習計画の中には、報酬の内容が記載されるものと考えております。その内容に沿った形で、例えば週五日の実習という形であれば、当然のことながらそういう形で賃金が支払われるべき話ということになるにもかかわらず、実際には勤務がなかったといってその間の賃金を支払わないということであるのであれば、実習実施者が認定計画に従って技能実習を行わせていない場合に当たると認められ、改善指導、場合によっては計画の取り消し、計画が取り消されると技能実習ができなくなりますので、その際には当然のことながら転籍の支援という形のものにつなげていく、こういうふうに考えているところでございます。

    〔井野委員長代理退席、委員長着席〕

井出委員 報酬がきちっと支払われているかどうかというものは、説明責任とそれが果たされているかの実地検査、私はパトロールという表現を使いましたが、それが重要であることは前回も申し上げました。ここを受け入れ機関に対して三年に一回というところは、非常に今も不満であります。

 それともう一点、この実地検査で言われているのは、やはり予定調和の、あらかじめ何月何日に行きます、それでは実地検査の実効性が果たして本当にあるのか、そういう疑問もあります。

 そこで、予告なしの実地検査というものをこれから多少なりとも取り入れていただけるかどうかについて、見解を伺いたいと思います。

宮川政府参考人 外国人技能実習機構におきます実地検査につきましては、先日来申し上げておりますように、監理団体に対しては年一回、実習実施者に対しては三年に一回程度の頻度で訪問し、適正な事業運営が行われているか、実地に検査する。その際、技能実習違反等の不適正な事案を把握した場合には、是正を指導し改善を求める、こういう趣旨、目的で行おうとしているわけでございます。

 したがいまして、実地検査に当たりまして、例えば、証拠隠滅とか事実の隠蔽のおそれありと想定されるような事案に対しましては、先生の御指摘のような抜き打ちで実施するなど、予告をしない検査も含めて行ってまいりたいと考えております。

井出委員 証拠隠滅のおそれがあるですとか、それは、かなり悪質性が高いということが事前にわかっていなければいけないわけですね。そういう意味においても、ふだんの情報収集ですとか、また実地検査の回数が果たして本当に三年に一回でいいのか、そこのところは改めて疑問を呈させていただいて、私がお願いをしたいのは、あくまでも実効性、実のある実地検査をやっていっていただきたい、そういうことでございますので、そこをしっかりと考えていっていただきたい、そのように考えております。

 それから、また転籍の話をちょっと伺いたいんです。

 実習先の変更について、変更にかかわらず、実習生の相談というものは、これまでも応じてくる法律になっておりましたし、これからもそこは変わらないと思うんですが、実習先の変更、今回の審議で、やむを得ない場合に転籍を少し前向きに考えていくという話になって、では、その相談体制の支援の具体的な内容というものを何か変えていくのか、どういうふうに充実をさせていくのか、それを、今の段階でのお考えを伺いたいと思います。

宮川政府参考人 御指摘の相談体制でございます。

 新たに設立いたします外国人技能実習機構がその体制を整備することとしておりますが、一つは、時間や受け付け方法の面での実習生の利便に資するよう、従来からの電話による対応に加えまして、専用メールアドレスを新設し、これによる受け付けを開始することを考えているほか、対応言語につきましても、現在のところ、中国語、ベトナム語、フィリピン語、インドネシア語といった使用する実習生数の多い言語で対応することを考えておりますが、さらにこの内容を充実させるために、あわせてタイ語も検討したいと考えております。

 そういうことを通じまして、実習先の変更を求める技能実習生からの相談がある場合には、その相談に丁寧に対応することができる体制の整備を図ってまいりたいと思います。

井出委員 転籍について、前回、井上局長とのやりとりの中で、やむを得ない事情をどう認めるか。それは、結局は、技能実習制度の目的が適切に達せられるか否かの観点から総合的な判断になるというふうに最終的には言わざるを得ないと。例えば、倒産、経営悪化、人権侵害や不正行為、法令違反、これは現行でも転籍を認める理由になります。実習先で労使間の問題が生じた場合なども継続困難な場合として対象としておるところでございますと。ですから、ここまでは現行でもいいと。

 今後は、さらにこれに加えまして、明らかに指導力を欠いているなど、認定された計画の実施が見込まれない場合、あと、法令違反によって実習計画が取り消され、欠格事由になってしまった場合、また、相性の問題で客観的に実習の継続が期待できない、そういったものを例示いただいたんです。

 その二番目の、実習先の法令違反により技能実習計画が取り消されて欠格事由になってしまったような場合というのは、私は、これは現行でも転籍が認められるような理由の一つなのではないのかなと思って聞いておったんですが、この実習先の法令違反によって技能実習計画が取り消されて欠格事由になってしまったような場合というものは、これまでは転籍の対象にならなかったのか、それで、これからはそれをしてくれるということなのかどうか、教えてください。

井上政府参考人 技能実習計画の取り消しと欠格事由というのは新法になって初めて出てくる用語でございますので、今後のことということで位置づけたわけでございます。

 現行法のもとでは、いわゆる不正行為の通知ということをやってございまして、今後五年間の受け入れ停止あるいは三年間の受け入れ停止等の不正行為を認定したという事実を通知して、その場合には、行政指導で、ほかの技能実習生についても移っていただくという方向の措置をとっておるということでございます。それが、新法の中では、技能実習計画の取り消しでありますとか、それが欠格事由になるという法制がしっかりしてまいる、それに伴った転籍の支援を行うことになるということになります。

井出委員 一つ、明確化をしていただくという御答弁だったと。

 それと、もう一つ、今回の法律で、もともと政府の方で言われていたのは、二号から三号、四年目、五年目のときは転籍できるようになりますという話がありました。

 それに加えて、私の方で、一号、二号のときも、やむを得ない事情のときはきちっと認めるように明確化をしてくれというお願いをして、そこは前向きな議論をしてきたところでありますが、もともと政府の方で主張していた二号から三号の転籍を認めるというものと、私がお願いしてきたやむを得ない事情で転籍を認めるというものは、その性質が一体どのぐらい、同じなのか、性質が異なるのか。

 二号から三号の転籍を認めていく、計画が応用段階に入っていくから転籍を認めるというのは、私は、当初聞いていたときは実習生に付与される権利のように受け取っていたんですが、ただ、一号、二号で転籍をもうちょっと何とかしてくれよという話をしたときに、いや、一カ所で充実してという話があって、なかなか、転籍に対してずっと慎重だったわけですね。

 この二号から三号の転籍というものは、やむを得ない事情よりももう少し広く認められる設計なのか、そこの違いというものを御説明いただきたいと思います。

井上政府参考人 お答えいたします。

 特に、新法のもとの制度でいきますと、技能実習計画というものが、その内容の適正性、適当性というんでしょうか、ということを技能実習機構できちんと審査をして認定いたします。その技能実習計画は、実習実施者が、技能実習生ごとに、かつ、技能実習の段階ごとに、一号、二号、三号ですね、その段階ごとにつくるものでありますので、一応前提としては、認定された計画の期間中はそこでずっとその計画どおりやるというのが適当だろうということがオーソライズされておるわけでございます。

 それで、一号から二号に行く場合には、前も御説明いたしましたように、初歩の段階であるので、最初の三年間は一貫してやった方が原則的には効率的な、合理的な実習ができるだろうということでございますが、そこは委員御指摘のように、やむを得ない事情ということを考えますと、それは実習計画の期間中であっても、やむを得ない事情があれば転籍は認めるということにするわけでございますから、それは一号から二号に上がる段階も全く同じことにはなろうかと思います。

 そこは一応、いろいろなことを考慮してやむを得ない事情という判断はございますが、二号から三号に行く場合にはやはり応用ベースに入ります。そこでもう少し広く、希望すれば、そして受け入れ先があればということも出てまいります。その辺の支援ということも必要になってまいりますけれども、そこは移動が、実習先の変更ができるようにしたいと考えておるということになります。

井出委員 今、少しその違いをお話しいただきまして、両方とも、ですから、実習生は当然、実習の継続を希望していることは、一号から二号だろうと二号から三号だろうと前提だと思います。

 ただ、一号から二号のときは、実習生にとって非常に不遇、自分の責任がない、そういう不遇な状況の中でも、希望するから、やむを得ないときは何とかしようと。

 二号から三号のときは、継続を希望するにしても、少し実習生側に主体性というか、前向きに、例えば、三年間やってきた、ここでやるべきことはやった、もう少し体制の違う実習先に行って指導的な立場をやりたいとか、実習内容の高度化ということもあるかと思います。

 あともう一つは、実習内容がそうやって高度化すれば報酬の問題も出てくると思うんですけれども、一号から二号のときは、高い金が欲しいから転籍したいというのはちょっとだめです、より高いお給料のところに移りたいというのはだめですということは繰り返し答弁があったんですが、例えば、実習の内容が高度化して、どこか別のところに移りたい、二号から三号段階で、そこに報酬も、それに伴ってやはりもっと高いところに行きたいというようなケースも、そこでは検討の対象となるのかならないのか、そこのお考えを教えていただきたい。

井上政府参考人 二号から三号に移る場合も、報酬だけを目指して行くということになりますと、これは果たして真摯に技能を修得しようという意欲があるかどうか疑われてまいりますけれども、三号に移る段階で、より高い技能を修得しようということに基づきまして、その結果、契約上高い報酬がついてくるということはあり得ることだろうと思っております。

井出委員 そこの、三年の実習を終えて応用段階に入る、その応用段階の定義づけという問題なのかなと思いますが、一号から二号について、やむを得ない事情、二号から三号について、まず一定の研修を全うして次のステップ、応用段階に入ると。

 今回の法律の成立によって、転籍の認め方について、新しい法律によってできる基本方針にきちっと書いていただきたい。法務省のこれまでの指針というものは何度も紹介してきたんですが、新しく定める基本方針にまずきちっと書いていただくこと、それから、その中身の書きぶりについても、ここで今議論をさせていただいたようなことをきちっと書いていただけるかどうか、その点についてお答えいただきたいと思います。

井上政府参考人 法案の七条には、「主務大臣は、技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する基本方針を定めなければならない。」とされておりまして、その中で、技能実習の適正な実施や技能実習生の保護を図るための施策でありますとか配慮すべき事項等を定めることとしております。

 この基本方針におきましては、現行の制度の運用を前提としつつも、これまでのこの審議における御指摘を踏まえまして、実習先の変更を認める場合の考え方について、できるだけ明確に記載したいと考えてございます。

 具体的な内容は今後検討する、細部は詰めることにもちろんなりますが、技能実習制度の目的が適切に達成される場合で、技能実習生の人権保護の観点から、技能実習生が実習先の変更を求めることについてやむを得ない事情があると認められる場合には実習先の変更を認める、その旨のことを記載してまいりたいと考えております。

井出委員 それと、この転籍の問題は、前にも申し上げたんですが、やはり移動先があるかないかの問題なんですね。

 前回、私、そのことを伺ったときに、井上局長も、受け入れ先との関係、「最終的には民民の関係で受け入れ先がなければだめなことになりますが、それをどうやって探していくかという仕組みの問題であろうかと思います。」と。私も、まさに仕組みの問題だと思っております。

 私は、今回、明確に監理団体が、自分の持っている実習実施機関にどれだけ余力があるのか、場合によっては人をお願いするようなケースもあるかもしれない、今回は、ことしは希望しませんというような実習受け入れ団体があったとしても、もしかしたら、一人、二人、何かほかであったときに受け入れてもらうかもしれないけれどもいいですか、いいですよと、そういう約束事をふだんから交わしておく必要があるかと思っているんですが、前回の答弁ですと、監理団体が、実習先変更についてのいろいろな情報というのはしっかり持っているはずであるということでございますと。持っているはずと。

 だから、現行に対しての期待ベースのお話であって、私はそうではなくて、明確に、あらかじめあいている状況かをきちっと知っておく、今回はやむを得ない場合の転籍、また、そういうこともあるから、一人、二人受け入れてもらうこともあるかもしれませんよということを事前に、仕組み、制度として約束を取りつける、そういう仕組み、運用をぜひやっていっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

井上政府参考人 委員御指摘のとおり、新たな受け入れ先を速やかに確保するためには、監理団体が自己の傘下の実習実施者の受け入れ余力を常日ごろから把握しておくということが大前提になる、これは極めて重要なことであると認識してございます。

 そこで、新制度におきましては、現行の指針にかえて新たなマニュアルをつくっていくことになりますけれども、その中で、監理団体が実習実施者の受け入れ状況を常日ごろ十分に把握しまして、実習先の変更に的確に対応できる体制を構築しなければならないということを定めてまいりたい、検討してまいりたいと考えております。

 そしてまた、監理団体はそのように的確に対応できる体制を構築しなきゃならないといたしますが、機構の方もさらにすべきことがあるだろうということでございます。円滑な実習先の変更を行うためには、傘下の実習実施者の監理団体における情報だけでは十分と言えないという事態もあると思います。

 そこで、外国人技能実習機構は、法律に基づきまして、個々の事案の状況とか本人の希望も考慮して、許可、届け出の手続、事業報告等によって把握しておる全国の監理団体及び実習実施者の情報というものが機構の方にはございます。この情報を活用しながら、新たな実習先の調整を含めた実習先変更の支援等を行う方向で検討しておりまして、どのようなことができるかということをこれから詳しく検討してまいりたい。それをすることによりまして、実習先の変更の措置は適切に対応できるようになっていくだろうと考えております。

井出委員 ここまで、報酬と転籍、特に私がこだわってきた細かいところを確認させていただきました。

 その上で、一度大臣にここで伺っておきたいんですが、前回も申し上げましたが、報酬の実態、転籍が必要ないろいろな事情を発見していく上で、実地検査、パトロールとも表現をしましたけれども、それを、先ほど宮川さんに抜き打ちも検討してくれということもお願いをして、悪質性が高い、言ったら証拠隠滅されるようなときはそういうことも検討するというようなお話をいただきました。

 そこで、前回の大臣の答弁で、私は、実習受け入れ団体に三年に一度しか行かないというところを、どうしてもそれでは実効性が保てないのではないかと。大臣は、マンパワーの問題、検討するべきものは検討します、実地検査の回数、それからマンパワーの問題について、法務省としても、適切に対応できるよう、厚生省と協力をして検討してまいりたいと考えておりますと。

 三年に一度という、そこは私は最低ラインとしても不十分だと思っているんですよ。そこを何とか、最低ラインをもっと上げていく、そういう気持ちでこの法律が始まったら動き出していただきたいと思いますし、職員も、それはすぐには、いきなり予定していた三百三十人をふやすということも難しいのかもしれませんが、最低ラインを、三年に一度というところを何とか引き上げていただきたい、そこを強く要望しますが、答弁をお願いいたします。

岩城国務大臣 先般もお答えをさせていただきましたけれども、委員の問題意識、御指摘の点につきましては、十二分に中身について理解しているつもりでありますので、法務省といたしましても、厚労省とよく連携をして、協力をして、そして適切な対応を検討してまいりたいと考えております。

井出委員 いつも、十分に御理解をしましたと。きょうは十二分に理解をしていただいて、連携協力、そういう言葉も加えていただいたんですが、三年に一度というところ、そこだけ何とか、それを最低ラインとしているようでは、もうここは、私もさんざん申し上げましたが、ほかの委員も言ってきている分野ですし、数値設定をするというのは、政策上、なかなか変更は容易でないということも十分わかりますが、ぜひ、最低ラインがやはり三年に一度ですと、自信を持ってこれを終局というのも、自信を持って、はいと言うところも、なかなか私の気持ちとしても落ちないところがありますので、もう一度お願いいたします。

宮川政府参考人 まず、法務大臣からお答えいただく前に、現在の検討している状況を御説明させていただきたいと思います。

 外国人技能実習機構による実習実施者に対する実地検査、これは、今までも何度も御説明させていただきましたとおり、三年に一回程度の頻度、それができるような形でのマンパワーなり予算という形で考えてきたことでございますので、この三年に一回程度の頻度というのは、実施することは、これはあくまでも最低限としての基本だと思っております。

 対象の選定に当たりましては、技能実習生からの相談ですとか情報提供など、不正が疑われるような実習実施者、これを優先的に実施するなど、限られた体制、予算の中でできる限り実地検査の実効性が高められるよう、法務省ともよく連携協力して機構の取り組みを強化していきたいと考えております。

岩城国務大臣 ただいま宮川局長から答弁があったとおりでありますけれども、実地検査の実効性を高めていくためにも、マンパワー等の環境整備等も図らなければなりませんし、その辺を厚労省とよく連携をとって協議しながら検討してまいりたいと考えております。

井出委員 局長から、情報提供で優先順位をつけてやっていくと。そこは実地検査の方針としては大変結構かと思うんですが、三年に一回程度ですね、私は三年に一回とずっと言ってきたんですけれども、三年に一回程度というのが恐らく正確な政府の御主張だと思うんです。その三年に一回程度というものは、二年半に一回でも一年に一回でも、三年に一回程度に含まれてくると思いますので、そういう意気込みでやっていただけるかどうか、再度お願いいたします。

宮川政府参考人 三年に一回程度という意味するところは、三年に一回は必ず各実習実施者のところに行きたいという意味を踏まえまして、さらに問題のあるようなこと、あるいは不正が疑われるようなところ、そういうところについては、今先生がおっしゃった方向で、必要に応じて優先的に実施していくということを考えております。(発言する者あり)

井出委員 だめだという声も上がっておりますが。

 必ず一巡する、必ずの一巡が、今までのように、あらかじめいついつ行きます、そういうものであれば、一巡行ったとしても、それはちょっと実効性はどうなのか。むしろ、きょうお願いしているような抜き打ち、そういうものをふやしていただくというのも一つの政策であるかと思います。

 いずれにしましても、実地検査の部分が、とにかくこの制度の適正化、法律の文章を読めば適正化の項目は幾つか出てきていて、それが果たされるかどうかというものはこの実地検査にかかっていると言っても過言ではありませんので、そこは重々お気持ちを入れてやっていっていただきたいとお願いをします。

 それから、二国間取り決めのところでも細かくお聞きをしたいところが一つあります。

 作成の部分は前回伺いました。作成されたものを、きちっとつくっております、こういうもとにやっておりますと、それが日本と向こうとの関係できちっと使えるように、必ず公表するべきだ、その点を私からも、ほかの委員からも出ておりますが、その公表についてどこまで明確にやっていただけるのか、答弁を求めたいと思います。

井上政府参考人 二国間取り決めにおきましては、適正な送り出し機関を相手国政府に認定してもらう仕組みでございますとか、その認定の要件、さらに不適正な送り出し機関に対する必要な調査の協力でございますとか、帰国後の技能実習生に対するフォローアップ調査への協力など多岐にわたる内容を盛り込むことが想定されますが、現時点で公表できない項目として具体的に想定しているものがあるわけではございません。

 ただ、相手国政府との交渉の過程におきましては、我が国から相手国政府にさまざまな要望をする以上、相手国からの要望事項を踏まえることもあり得るところでございます。どのような項目が盛り込まれるか、国と国との間の交渉でございまして、それがわからないために、今現在ここで必ず公表すると言うことはできないという意味で、公表をする方向で考えておりますと前にお答えいたしましたが、外務省や厚労省とも協議の上、今後とも公表する方向で相手方との交渉に臨んでまいりたいと考えております。

井出委員 私も、そんなに公表できないようなものはないんじゃないかなと思っているのでそういうことを伺っているんですが、ぜひまとまったものをきちっと公表して、それが二国間、それから送り出し、受け入れ機関との間の信頼関係、そこにつながっていっていただくようにしていただきたいですし、別にこれは、秘密裏に、交渉過程は全部秘密だとか、そういうような類いの話でも、本当に何かあったらそれをきちっと検証しなきゃいけないと思うんですけれども、そういう話でもないのかなと思いますので、今、公表の方向というものは言っていただきましたので、そこも強くお願いをしたいと思います。

 次に、介護の問題、ここについても少し細かく伺いたいんです。

 日本語の問題で前回も伺いました。入国時の日本語能力というものが、今、N4。N3程度が望ましい。望ましい水準であるが、N4。さきの清水先生のお話を聞いておりますと、私の日本語能力も大変疑義がありますが。

 まず、入国時の日本語能力に関する確認、何かテストのようなものをやるのか、それをどうやって確認するのかというところを伺っておきたいと思います。

堀江政府参考人 お答え申し上げます。

 その確認は、今話題になっていますといいますか、ここで何度も紹介させていただいております日本語能力試験、それに準ずる試験もございますので、そうしたものでN3あるいはN3相当というふうになった者というのは、幾つか試験がございますので、そういうふうに取り扱うことで考えてございます。

 ちょっと一点だけ追加させていただきたいんですけれども、前回、この審議の場で朝三暮四というような話がありまして、そこのところを追加させていただいてもよろしゅうございますでしょうか。

 今ここで議題になっていますのは、日本語能力試験というのを基本に、それに準ずるものがあればそれもということなんですけれども、これがいわゆる外国人向けのものでございまして、私どもも、この間お聞きして、朝三暮四の話は初めてだなと思って少し調べさせていただいたところ、朝三暮四を日本語能力試験の方で出しているようなものは必ずしも確認されなかったんです。

 ちょっと紛らわしいのでございますけれども、日本語検定という、主に日本人を対象として、私は日本語が大好きなのでという人たちの能力試験のものがございます。そちらの方に四級とか三級とかいうところがございまして、そちらの方に朝三暮四のような事例が出ておりましたので、少し議論がずれてしまったのかもしれないということで。

 私の方で、N3、N4の方の試験例が公表されているので、それを見させていただくと、やはり、そのときにどういう接続語が入るのかというのを問うてみたり、比較的オーソドックスな問いになっていたなというふうに考えてございます。

井出委員 朝三暮四と言ってくれる外国の方に介護していただきたいなと私も思うんですが、それは何かそちらでお調べいただいたということで。

 それで、では、実際に、日本語能力試験またはそれに準ずるものを入国の際に義務づけて行うということでいいんですか。

堀江政府参考人 今の日本語能力試験あるいはそれに準ずるものというのは、似たようなものでいえば英検みたいなものでございまして、そういうのを持っている人に入国時の証明につけていただく、こういうような格好になると思います。

井出委員 そうしますと、やはり、母国といいますか、来る前の、向こうの国での日本語の勉強というのが大事かなと今思いました。

 それから、二年目にはN3に到達をしていくということが、この間も紹介しました中間まとめで言われているんですが、実習二年目、二号について、到達の水準として、指示のもとであれば、利用者の心身の状況に応じた介護を一定程度実践できるレベルと。利用者の心身、心も入っておりますので、必ずしも試験だけ通ればというようなものではないと思いますが、一号から二号に当たっても、今度は試験を受けて、何か証明というものを日本国内において取らせる、そういうことでよろしいかどうか、教えてください。

堀江政府参考人 詳細の制度設計はこれからでございますけれども、基本的には、やはりN3というのを取れているかというような話を、その同等程度を含めまして確認していく、こういうことだと思います。

井出委員 確認をして、でも、実際に、その試験のN3、N4というものを用いて、ここまで、中間まとめでもずっと議論をされてきているわけですから、やはりその試験を国内できちっと受けていただくというのが一番この中間まとめに応えることであると思います。ただ、それにとどまらないと思いますよ、それはもう最低条件であって、それでも利用者の心もわからなきゃいけないというようなことがここにも書いてありますので、ぜひそうしていただきたいと思います。

 この中間まとめに、介護の質の低下を防いだりいろいろなことをしていくために、適切な評価のシステムがなければいけないと。そこの設定によりますと、介護というのは非常に複雑な業務なので、余り肉体労働みたいに捉えちゃいかぬ、そんなようなことで、適切な評価システムを構築すると。

 ここに具体的に書いてあります。

 「一年目修了時 指示の下であれば、決められた手順等に従って、基本的な介護を実践できるレベル」、「二年目修了時 指示の下であれば、利用者の心身の状況に応じた介護を一定程度実践できるレベル」、それから「三年目修了時 自ら、介護業務の基盤となる能力や考え方等に基づき、利用者の心身の状況に応じた介護を一定程度実践できるレベル」。また、技能実習の延長、再実習、最長五年が実施された場合、これは制度の見直しによって実施された場合の到達水準は、「五年目修了時 自ら、介護業務の基盤となる能力や考え方等に基づき、利用者の心身の状況に応じた介護を実践できるレベル」。少しコピペみたいなところもありますが、だんだんレベルは上がってきているわけですよ。

 ただ、これは、前段のコミュニケーションの必要性というところの項目、「必要なコミュニケーション能力の確保」、さんざん言っている日本語の部分なんですけれども、ここの表現と極めて似通っているんですよ。業務全体の評価、「適切な評価システムの構築」と「必要なコミュニケーション能力の確保」。

 似通ってくるのは当然、日本語も大事だと申し上げていますから、それはそのとおりなんですけれども、ただ、日本語ができれば介護ができるのかという疑問も当然ありますし、その部分についての言及が、中間まとめの評価システムの構築、そこで示されているものを見ると、そうした日本語以外の部分の評価というものが果たしてどこまであるのかなというところは今疑問に感じております。

 考え方とか心と体の仕組み等を理解しろと書いてありながらも、評価の一つ、ここで示されている基準というものが日本語の能力と極めて似通っていることについて、そこをどうお考えなのか、答弁いただきたいと思います。

堀江政府参考人 きちんと利用者の方とコミュニケーションがとれるようにということの大前提として、語学能力要件というのを求めているものが一つございます。

 それと別に、この評価システムとしての到達度として、一年目修了時は、「指示の下であれば、決められた手順等に従って、基本的な介護を実践できるレベル」ということでございます。介護の実践で、高齢者の方なりをお預かりして、入浴をするとか体を拭くとか、そうしたようなことまでしていくわけでございますので、それが、「指示の下であれば、決められた手順等に従って、基本的な介護を実践できるレベル」、それはコミュニケーションという意味の部分も、かぶる部分もあるとは思いますけれども、介護固有の要件、それを評価していくことになるんだと思います。

井出委員 日本語の能力が重要でありますので、多少この表現ぶりが似てくるところは、私も一定の理解はいたします。

 ただ、そうであるとするならば、やはりこの日本語の部分ですね。さっき、必ず試験を受けるべきだということも申し上げましたが、ここが一層の重要度を持ってくると逆から見れば解することもできると思いますし、日本語のところは大変こだわり続けなければいけないのかなと思うんです。

 大臣に介護の話を、本当は厚労大臣に聞かなきゃいけないような気はするんですが、所管ということで岩城大臣に伺います。

 今、議論の中で、入国時、N4で入ってくるわけですね。それはN4の試験を通ったという証明をつけるというお話があって、そうしますと、やはりこっちに来てからの日本語勉強も大変大事ですけれども、向こうでやはり勉強をして、少なくとも、試験を受けてその証明書を持っていなきゃいけないわけです。

 そうすると、向こうでの国の教育というものが極めて重要であって、私は前にも申し上げたんですが、二国間の取り決めの中に、日本語の学習をしっかりします、そういうところを交渉して盛り込んでいただけると、それは日本の介護施設、日本人からしたら、そういう要件がない国よりそこの国に相談したいなというのは、もう自明の理になってくると思うんです。

 ぜひ二国間の取り決めの項目の中に、母国の送り出し前に日本語をきちっと勉強しますというようなものも一つの大きな要素として、日本側の出す希望として、日本側もいろいろ要求を出すと思うんですけれども、それをぜひ入れていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

岩城国務大臣 ただいまの話は私どもの方の所管ではないわけでありますけれども、やはり、委員が御指摘になる件は私自身は大事な点だと思っておりますので、今後、二国間のそういった協議の中でどの程度可能なのか、検討しながら取り組んでいく必要があろうと思っております。

井出委員 所管ではないというのは確かにそのとおりなので、ちょっと局長にも伺っておかなければいけないと思うんです。ただ、二国間取り決めは所管じゃないんですよね、恐らく。介護の日本語のレベルについては所轄なんでしょうけれども。

 まず、どちらに聞くのが適切かわかりませんけれども、局長にも提案をしますが、二国間取り決めの中に、送り出し国で日本語をきちっとやって試験を受けてくる、そういうものを日本側の要望として出していく。それがきちっと実れば、それは私が最初に申し上げたような公表ですね。公表して、安心の一つの材料となりますから、二国間取り決めの中の重要事項に母国での日本語の教育というものを入れていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

宮川政府参考人 御指名ですので、私の答えられる範囲で答えさせていただきます。

 二国間取り決めというものは、性質上、いわゆる職種、そういうものにとらわれない共通的なものでございます。したがいまして、先生が相手国政府にお願いしたいというようなものについて果たして二国間取り決めの中で入れられるかどうかというのは、いろいろ議論があろうかと思います。このあたりは、外務省も含めていろいろ議論しなければならない。ですから、そういう意味で、二国間取り決めの中に入れるかどうかというのは、今の時点でちょっとお答えしにくい部分はあろうかと思います。

 ただ、その交渉の過程の中で、当然のことながら、相手国政府からいろいろな要望もあり、こちらの方からも要望事項としていろいろなものを、交渉の過程の中で、先生が御指摘いただいたような、特に介護については日本語が重要だから、日本語についての取り組みを相手国としてもぜひ取り組んでほしいというような要望を例えば申し入れ、実質的な意味での先生の御指摘のようなものを実現していくということができるかどうかも含めて、関係省庁、法務省、外務省ともいろいろ御相談させていただきたいと考えているところでございます。

井出委員 要望もできないというようでは、ちょっとどうかなと。日本が二国間取り決めの中で要望するのは自由だと思いますので。向こうの教育体制とかそういうものでそれがかなえられるかどうかというのは交渉だと思いますけれども。

 ちょっと答弁をしていただく相手を間違ったんですかね、私が。

宮川政府参考人 失礼いたしました。

 要望することは当然のことながらできるわけですが、それが実現するに向かっての筋道という中で、二国間協定の中に入れられるかどうかというのは、さまざまな議論、相手国もありますし、そもそも二国間協定自身が介護だけの二国間協定ではない、すなわち技能実習制度を通じた共通的なものでございますので、相手国も特段介護を前提としたものの議論という形のものとは考えていない場合もあろうかと思います。

 いずれにいたしましても、二国間協定の性格、性質をよく考えた上で、二国間協定がふさわしいのか、それともそれ以外の形として相手国に要望し、それを実現してもらうという筋道をつくっていくのかという形のものは、今後議論していく必要があるんじゃなかろうかなと思っております。

井出委員 二国間がふさわしいのか、それ以外の、民間同士でとかというのもあるのかもしれないんですけれども。

 これは、どなたに責任あるお立場で答弁いただければいいんですか。二国間取り決めで、介護、日本語。そうすると、やはり大臣ですかね。

葉梨委員長 ちょっと、井上局長、あるいは、二国間取り決めがなかったとしても、介護について、そういうような日本語能力がない方を入れる、入国を許可するということはあるんですか。私から質問します。先ほどの堀江審議官のお話だと、そういう試験を通った方じゃないと入れないというようなお話だったようだけれども。

井上政府参考人 介護については今受け入れがございませんので、直接の例はないわけでございますが、いろいろな受け入れの中で、一定の資格を持っている場合に、そのことを受け入れの要件にするということは個別の分野ではあり得るんだろうと思います。

 それを、先ほど、二国間取り決めの中に入れるべきか、つまり、二国間取り決めは全分野共通のものとするという前提であれば、委員の御指摘は主として介護のことを念頭に置かれていると思いますので、その中に入れるのはどうかという議論がありますよということは一つあると思うんです。

 その場合に、全分野共通の二国間取り決め以外に個別分野ごとに別途やるか、その場合の取り決めの形とかレベルとかそういうものをどういうふうにするかというのは別途の議論だと思いますが、それぞれの分野ごとに必要な条件というものを二国間で話し合ってつけていくということはあり得ることであると思っています。

井出委員 実際、介護の実習生受け入れを検討している施設に話を聞きますと、むしろ、施設からすれば、監理団体とかを通じて送り出し機関と民間の関係で、うちの監理団体はどこそこの国と提携して、必ず向こうの日本語学校で勉強して試験を受けてから来ますというのが、アピールといいますか、一つのビジネス的な見地からいえばアピールポイントになるから、そこに取り組もうという監理団体、施設なんかは当然あると思います。

 ただ、そういうところに取り組む余裕や意欲のないところも含めて、このN4、N3問題というものはクリアをしていかなければいけない、そういう基準であると思います。ですから、可能な限り共通の、だから、そうすると二国間取り決めが一番、少なくとも、全ての国とそうしてくれるのが一番ありがたいんですけれども、そこはなかなか、相手国の教育体制というものもあると思いますので。いずれにせよ、日本語の教育を向こうできちっとやっていただくということは、これからいろいろな国との話し合いの中で前面に押し出していっていただきたいと思います。

 何かありますか。大丈夫ならいいですけれども、大丈夫ですか。

堀江政府参考人 今の委員の御指摘は、そちらの分野の考察になるんだと思いますけれども、一応、基本線は、個々の方の技能実習計画という、この認定基準というところに語学要件というのが入ってくるということを通じて、言ってみれば、入国時に求められるものは、ある意味、N4、N3が望ましいというような形になるわけでございます。

 当然、送り出し国の側でしっかり勉強してきていただきたいとは思うわけでございますけれども、その努力といいますか、その結果が個々の方の技能実習計画にきちんとかなうかどうかという認定基準をつくっていく、こういうことになりますので、要するに、簡単に申し上げますと、N4程度というのは確保された形で一号に入っていただける、こういうことになるんだと思います。

井出委員 現状ですと、N4についてはおっしゃるとおりなんですよ。でも、望ましい水準はやはりN3。だけれども、それはなかなか難しいから、N4から始まって、二年目にはN3にしてくれと。ですから、簡単に言っちゃえば、できるだけN3に近い、N3・5ぐらいで入ってきていただくのが私は一番いいんじゃないかなと思っているんです。ですから、N4の証明書を持って入ってくることはマストであると思います。

 ただ、ここは物すごく議論があって、その中で、N3が望ましい水準として、二年目について、二年目の業務への円滑な移行を図るということを書かれておりますので、もう一度、大臣、入国時に、N4が最低ラインなんですけれども、そこは相手国にきちっと協力を求めていく。それから、今、入ってきてから必ずN3にならなければいけない現状だと思うんですけれども、そこに対しては、当然、実習生自身の努力、受け入れ機関の努力、監理団体の努力もあると思いますが、そこも経営状況や施設の体制によって大きく差があると思いますので、そこについて一層の、政府としても、そこに重きを置いた取り組みをこれから検討していっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

岩城国務大臣 先ほども申し上げました、介護といった要件につきましては、厚労省において適切に検討されていくべきものと考えております。

 その上で、必要な事柄について二国間取り決めで実現するのか、別の方法がいいのかということにもよりますけれども、やはり私どもの要望というのはきっちりと申し上げることが必要だと思います。一般論として、二国間取り決めで実現すべきことにつきましては、取り決めの作成において適切に対応してまいりたいと考えております。

 それから、受け入れ施設の問題についてのお話もありましたが、これは私から言及すべきではないかと思いますけれども、委員の御指摘についてはよく理解できますので、その辺は厚労省において適切に対応していただけるものと思っております。

井出委員 厚労省に、介護の件で、この間夜勤の話をして、その体制の話をちょっと確認しておきたいんです。

 この中間まとめを見ますと、小規模な事業所は、常勤職員の一割、十人に一人というような数字が、それは指導体制の確立ということでそういう数字が示されているんですが、常勤職員の十人に一人の割合で人数を入れてくる。ただ、昼間その実習生を何人が指導する体制になるのか。また、夜ですね、夜勤を二年目以降やるときに、夜勤もしっかりした体制であればというような御答弁が前回あったんですよ。

 ですから、夜勤のしっかりした体制というのはどういう体制なのか。それは、本来、昼も夜もそんなに大きく変わっちゃいけないと思うんですよ。そうしたら夜勤が成り立たないよというような意見も出てくると思うんですが、しっかりした体制というものがいかなるものなのかについて見解をいただきたいと思います。

堀江政府参考人 検討会報告書の内容につきましては、委員の言われたとおりなのでございますけれども、例えば二年目の実習生に夜勤を認める場合でも、実習生一人で夜勤を行わせるのでなく、他の介護職員が配置されて、実習生による介護をサポートできるようにするといった対応、措置が必要だというふうに考えてございます。

 いずれにいたしましても、制度が施行されるまでの間に、技能実習計画の認定基準、それから厚生労働省と業界とが連携して作成される業界のガイドラインの整備を通じまして、安全上の懸念が生ずることがないように実効性を確保していく、こういう考え方だと思います。

井出委員 この中間まとめは、施設に対して、外国人の技能実習生の人数の割合については明確に示されている。ですから、これを守っていただければ、法律が始まって、急に何か日本じゅうの介護施設がどこももう半分ぐらい外国人だ、そういうことにはならないと思うんです。

 ただ、これをよく読むと、体制の部分はここにはそんなに明確に書いてないんですよ。今、夜勤の話で初めて、一人ではやらないと。それはもう、夜勤に限らず昼間だって、むしろ一年目、それは能力に差はありますから何とも言いがたいですけれども、昼間だって当然同じことが言えると思います。

 ここにも業界におけるガイドラインの作成というものが書いてあるんですが、当然、業界ですから、現場のことはよくわかっているから、それを尊重しなきゃいけない、尊重はまずされると思うんですけれども。ただ、ガイドラインがいつできるのかというところも聞きたいですし、まずしっかりした体制というものを確固たるものに、業界が主導的に決めていただいてもいいですよ。ただ、決めていただいたことは政府の政策としてやっていますから、そこは厚労省としても、きちっと責任を持てる体制、ガイドラインをつくっていただきたいと思います。

堀江政府参考人 仕組みの詳細につきましては施行までに整える、こういうことでございますけれども、再三御紹介させていただきますけれども、参考人質疑の際に、同検討会の座長の根本先生の方から、介護は、対人サービス、福祉サービスで、コミュニケーションが前提となり、利用者と実習生の人権をしっかり守る必要がある、危険なことが少ない部分から少しずつソフトランディングしていく形とすべき、こういうふうに御発言いただいておりまして、厚生労働省も基本的には、そういうものは頭の中に置きながら検討していくことになるんだと思います。

井出委員 そこは恐らく、施設、事業者側の方が、何かあったときはいけないということで、その危機感は強いと思いますが、それをちょっと頭に置きながら、少し厚労省のスタンスが弱いと思いますので、そこを何か不慮の事故とかのないようにサポートをやっていっていただきたい、そういうふうに思います。

 残り十分ぐらいになってまいりましたので、大きな議論のところを再度ちょっとやりたいんです。

 前回、大臣にこの制度の将来像というようなものを伺って、いつも言われるんですけれども、制度はこれからも活用していく、労働者の受け入れについてはこれと別だというお話だと思いますし、私もそれは一定理解はしているんです。

 ただ、そうはいっても、これは参考人からまず聞いた方がいいのかもしれないんですけれども、最初は一年だったわけですよね、それが三年になり、今度は五年になってくる。二〇〇九年の改正で研修から技能実習になって、そこで労働の性格が一層強くなったという鳥井参考人のお話もあったんです。

 研修というものは、実務、労働の部分と学び、学びの極端な在留資格は留学だと思うんですけれども、この制度というものが、日本への滞在時間がやはり長くなってきたり、労働法制上きちっと整えられてくれば、留学と職業的な在留資格との間に研修があるとすれば、研修というものがやはりだんだん労働の方に来ている、そういう意識はあるのかないのか、では、まず井上さんから伺いたいと思います。

井上政府参考人 平成二十一年の法改正で、それまでの研修プラス技能実習の仕組みから、一年目から技能実習ということの在留資格をつくったわけでございます。

 それの趣旨の一つが、一年目から雇用契約に基づいて修得すべき技能を要する業務に従事する活動をする、そういう形での技能実習制度、OJTによる技能の修得というものを正面から認めることになるんですが、それの趣旨というのは、雇用契約に基づくことであるということで、労働法上の労働者として保護が与えられることを明確にするということが大きなことであったわけでございまして、そのことによって実習の内容が研修から労働にシフトしたとか、させるという意図に基づくものとは余り理解しておりません。

井出委員 内容というか、仕組み、制度の問題なんですけれども、恐らく、研修、技能実習というものは、OJT、実務の部分、仕事の部分と学びの部分があって、特定の職業の能力がある人たちに認められている在留資格と、留学で認められている在留資格と、いろいろあると思うんですけれども、留学で例えば五年在留が認められるようなものがどれだけあるのか。

 私は、制度の位置づけの意味で、やはり技能実習制度というものが留学と職業的在留資格の中間にあるものだと位置づければ、だんだんだんだんこっちに近づいてきているのかなと。そういうところは、もうこれは事実上お認めいただいた方がいいんじゃないかなということをきょうお聞きしたいんですね。それはどうですか。

宮川政府参考人 お答えいたします。

 先ほどの井上局長からの答弁と重なる部分があるかと思いますが、一つは、研修期間と技能実習という形でやったものを、最初の講義の期間を除いて全て技能実習という形の中で行うのは、先ほど井上局長からの答弁にもありましたように、オン・ザ・ジョブ・トレーニングという、日本の企業の中での人材育成という手法を活用する中で、実際のところ働いている、働いているにもかかわらず労働基準法、最低賃金法の適用がないということは何とかしなければならないという観点で、労働法制を適用していくという意味があったと理解しております。

 それから、もともと一年だったものが三年になり、今回五年という提案をさせていただいているのは、技能の高度化なり、さまざまな職種を行っていく複数職種化など、技能のレベルを上げていくためには、やはりある程度、一定期間のオン・ザ・ジョブ・トレーニングが必要であるという観点で整理させていただいたところでございます。

 したがいまして、今回の施策を行っているからといって、いわゆる労働力確保対策としての性格を強めたとか、そういう趣旨のものではないということは御理解いただきたいと思います。

井出委員 あくまで技能移転、国際貢献だということは、多分最後に一言言っていただいてもよかったのかもしれないんですけれども。

 ただ、参考人の先生の中にも、だんだん労働的な性格が強まってきていますと明確におっしゃる方もおります。大臣に伺いたいのは、中長期的な議論、制度と別に、外国人労働者の受け入れ、中長期的な議論はあって、それは国民のコンセンサスを得て、法務省がかかわるべき部分はかかわっていきますというお話が前回あったんですけれども、その中長期的議論の中で、それは別とはいえ、この技能実習制度を、そこで総括なり、この制度の立ち位置というものをやはり議論しなきゃいけないと思うんですね。

 私は、技能移転という性格を残していくのであれば、その対象の職種をきちっと見直して、例えば、海外の特殊な料理をつくる能力のある方は今来られるというような話が前あったんですけれども、日本食なんかを海外でやっていただくために、日本食の技能実習とか、むしろあってもいいんじゃないかなと思うんですよ。ただ、その一方で、建設ですとか介護ですとか、それが技能実習にふさわしいのかなという思いもある職種もあります。ですから、中長期的な議論の中で、この研修制度というものをまず総括していただくこと。

 今回だって、職種はいろいろなものが拡大して人がふえるように見えますけれども、制度を改善して厳しくしたとなれば、どう転ぶかわからないんですよね。厳しくなったからやめようと、使わなくなる人もいるかもしれませんし、ふえるかもしれませんし。

 そういう意味では、この制度と労働者問題というのは別なんだとはいえ、中長期的な議論の中で必ずこの制度は検証しなければいけないですし、果たして今回の法律というものが、適正化と拡充の部分でどういう結論になるのか。微調整という意味の改善になるのか、抜本的に結果が変わってくるのかわかりませんが、中長期的な議論の中でこの制度というものは総括をして、今度検討するときは、この制度を存続させるべきなのか、広く認めるべきなのか、それとも物すごく縮小もしくは廃止するべきなのか、そういう大きい議論をやる必要があると思いますが、その点についてコメントをいただきたいと思います。

岩城国務大臣 基本的に申し上げれば、この外国人技能実習の制度は、新たな制度にして、それで、人づくりまた技能の移転等を通じて国際貢献に資したいという思いであります。

 一方、外国人の労働者としての受け入れ、この問題は、何度も申し上げてまいりましたとおり、これは別に議論していただく。なおかつ、中長期的なにらみで、その中でどう位置づけていくか、どういう取り組み方が可能なのか、それをこれから検討していく、前回も申し上げました、政府全体として検討していく、そんなふうに考えております。

井出委員 なかなか、最後もう一歩という思いもありますが、時間でありますので、今回は、特に今審議におきましては官僚の皆さんに大変お世話になりましたので、敬意を表して、終わりたいと思います。

 どうもありがとうございました。

葉梨委員長 以上で井出庸生君の質疑は終了いたしました。

 次に、清水忠史君。

清水委員 日本共産党の清水忠史でございます。

 改めて岩城法務大臣に、この間の議論を踏まえて、外国人技能実習法案の提案趣旨についてお伺いしたいと思います。

 この法案は、これまで繰り返されてきました受け入れ機関や送り出し機関によるさまざまな不正行為、人権侵害や労働基準法違反、こうしたものをなくしていく、根絶することを目的の一つとして出された、これは間違いありませんか。

岩城国務大臣 端的に申し上げたいと存じます。

 法務省としましては、現行の技能実習制度では仕組みとして十分に対応できておりません、今御指摘のありました人権侵害あるいは法令違反などの諸問題を解決するとともに、技能実習制度の趣旨の徹底を図り、技能実習制度の一層の適正化を行っていくため、本法案を国会に提出したものでありまして、御指摘のような不適正な取り扱いの撲滅、これが本法案のまさに主たる目的であると考えております。

清水委員 今、岩城大臣から、不正行為の撲滅という力強い決意、提案趣旨がございました。

 では、伺いますが、この間の質疑におきましても、私は、現在、技能実習生のもとに起こっている不正行為についてさまざま述べさせていただきました。例えば、強制帰国の実態、あるいは低賃金、劣悪な労働環境、さらには、穴掘りだとか資材運びなどの単純作業、きわめつけは実習生への直接の暴力を行っているところの写真も示して、さまざまな人権侵害などを告発させていただきました。

 これらの撲滅を目的とする、それが一つであると大臣はおっしゃったわけですので、これらの不正行為の実態を行政がしっかりと手のひらに乗せる、不正行為の実態を把握する、技能実習生のもとにどういったことが起こっているのかということをしっかりつかむ、こういうことが必要だと思うんですが、いかがでしょうか。

岩城国務大臣 委員御指摘のとおり、技能実習における不適正な取り扱いは依然としてなくならず、また、本委員会での質疑や参考人の方々のお話をお伺いしまして、さらにその問題を認識しております。

 そこで、法務省におきましても、実態をより適切に把握した上で、一層しっかりとした対応が必要であると考えております。

 法務省としましては、本法案に盛り込まれております種々の施策により、技能実習制度の趣旨の徹底を図り、技能実習制度の一層の適正化を行っていく所存でありますが、その際、技能実習が適正に実施されているか、外国人技能実習機構による実地検査はもとより、労働基準監督機関等の関係機関とも連携するなどして、実態をしっかりと把握してまいりたいと考えております。

 そして、不適正な取り扱いが認められた場合には、主務大臣による改善命令や技能実習計画の認定の取り消し、監理団体の事業の停止や許可の取り消し等厳正な措置をとり、技能実習制度の一層の適正化に努めてまいりたいと考えております。

清水委員 今、大臣は、適切に把握する、しっかりと把握する、こういうふうに答えられました。

 私は、四月十九日の当委員会におきまして、全国の実習生が実際に受け取っている賃金、これは、支払い予定賃金ではなくて、実際に毎月、日々受け取っている賃金について把握しているか、こう尋ねましたが、全くこれをしていないと。驚くべき答弁でありました。

 五月十一日には、強制帰国を防止する際の審査ブースで意に反して帰国させられようとしている実習生からの相談件数や、それを受けて関係機関に通報した件数についてもお尋ねしましたが、統計をとっていないということでありました。

 不正行為を根絶する上で、これらの実態を把握する。やはり、適切に把握する、しっかりと把握するというふうに岩城大臣は今答えられたわけですから、今後は、実習生が実際に受け取っている賃金、あるいは審査ブースで意に反して帰国させられるようになっている実習生の実態、通報件数も含めて、これらの統計をとるというふうに約束していただけないでしょうか。

岩城国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、実態をより適切に把握することが必要だろうと思っております。

 その上で、今御指摘のありましたような統計的な数字のことにつきましても、これはどのような把握の仕方が適切なのか、あるいはどういう取り組み、手法があるのか、そんなことも含めて検討してまいりたいと考えております。

清水委員 いや、検討してもらうでは困るんですね。そもそもこの法案を出すときに、実態を把握するようなたてつけにしていただかないと、本当に不正行為をなくせるのか、甚だ疑問だと言わなければなりません。

 角度を変えて聞きますけれども、この法律によって、今の大臣のような答弁で、送り出し国で不本意ながらも借金をさせられて、それがあるがために、来日した後も、さまざまな不正行為があっても文句を言えず我慢をし、移転の自由もなく、泣き寝入りをし、我慢をするかあるいは逃げ出さなければならないかというような実習生を本当に一人もなくすことができるのかというふうに私は思うんですよ。

 私、これは覚悟が問われていると思うんですよ、大臣に。さきの国会で刑訴法をやりました。私たちは、これは違憲の治安立法ということで大反対しましたけれども、そのときに上川陽子前法務大臣は、命をかけてこの法案をよりよいものにしていくと、命がけでというふうにおっしゃいました。

 内容はともかく、やはり大臣が、今度の法案によってこういった不正行為を根絶することができるのか。実習生の自殺とか、あるいは過労死というのもあるわけですよ。ヤギを盗んで食べなければならないような実習生を根絶できる、こういう決意ですか。

岩城国務大臣 先ほど来お答えしておりますとおり、本法案の主なる目的の一つが、そういった不適切な行為をなくしていくということでありますので、委員から御指摘のありましたような実態調査、こういったものを十分にするようにいたしまして、そういう行為がなくなるように努めていきたいと考えております。

清水委員 今、実態調査をしっかりやるとおっしゃられました。その中には、当然、技能実習生の賃金の実態だとか、あるいは強制帰国させられるようになっている人たちの実態、これも含まれるわけですね。

岩城国務大臣 先ほども申し上げましたとおり、実態調査を進める上でそういったことも把握をしていく、そのためにどういった手法が必要なのか、そんなことを検討していきたいと考えております。

清水委員 検討以前に、大臣自身のやる気が私は大事だと思いますよ。

 統計をとる、幾らもらっているのか把握するとどうして言えないんですか。できるかどうかは、いろいろ限界もあるかもしれません、手法だっていろいろ検討されたらいいです。しかし、大臣自身が、実態把握すると最初におっしゃったじゃないですか。これが検討でとどまるんですか。

 大臣の決意として、実態把握する、せめてそれをおっしゃってください。

岩城国務大臣 実態把握をするということは申し上げております。そのためにどういった手法があるのか、どういった取り組みが必要なのか、そういったことは前向きに検討していくということでありますので、そのことは御理解いただきたいと思います。

清水委員 統計をとるとはおっしゃられない。前向きな検討は当然のことながら、幾らもらっているのか、何人逃げようとしているのか、どうして逃げるのか、ここをつかまないと、幾らどんな法律をつくっても改善することはできないと私は思うんですね。

 私は新しいことを聞いたんです。統計をとられるんですかというふうに聞いたんです。しかし、これまでの答弁の域を出ておりません。こういう意気込みでは余りにも不十分だと、私は率直に指摘しなければならないと思うんですね。

 大臣は、この間、提案理由やあるいは答弁の中で、いわゆる実習実施機関の実習生に対する不正行為は増加傾向にあると認められております。その原因の一つとして、政府の指導監督体制が十分でないということもお認めになりました。きょうの私の質疑に対しても、しっかりと適切に把握すると言いながら、統計はとらない。これは、朝三暮四じゃなくて朝令暮改になるんじゃないかなというふうに私は思うんですよね。

 やはり、実習実施機関についても、具体的な体制とか人員とか、はっきり決まっていないわけで、細かいところはほとんど、主務省令で後で検討するということでしょう。私たち、どうやって、これが本当に機能するのかどうか確認することができるんでしょうか。

 実習実施機関の視察、これはまだできておりません。そして、技能実習生から直接、参考人としてここへ来て実態を聞かせていただくということも必要だというふうに私は思っております。そういう点では、質疑を終局するのではなく、引き続き徹底審議をしていくということが私は何よりもこれからのために必要であるということを強く求めて、時間が来ましたので質疑を終わります。

 ありがとうございました。

葉梨委員長 以上で清水忠史君の質疑は終了いたしました。

 次に、畑野君枝君。

畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。

 外国人技能実習法案、入管法改正案について質問をいたします。

 先日の参考人質疑で、技能実習生の申告権の問題が議論されました。技能実習生の不利益を解決する手段として申告権が本当に機能するのか、その体制があるのか、懸念があると指摘されております。

 法案の申告権について伺います。

 申告はどこにするのか、どのような手続を経て技能実習生に対して回答するのか、お答えください。また、最近の労基署に対する申告件数を伺います。

宮川政府参考人 お答えいたします。

 新制度におきましては、申告、相談の窓口を外国人技能実習機構に設置することとしておりまして、実習生の利便性を考慮し、直接来所という形に加えまして、電話でも受け付けることを検討しております。その際、実習生等から、本人確認のため、氏名、在留カード番号等を聴取するとともに、法令違反の事実の申告を受け付けることとしております。

 申告を受け付けた場合、外国人技能実習機構において、法令違反の疑いのある受け入れ機関に対し実地検査等を行うこととしており、必要な指導等を行った上で、申告者に対しましては、対応、経過等について可能な限り通知することを検討しております。

 また、昨年度の監督署への技能実習生の申告件数を私の方から報告させていただきます。

 平成二十七年におきまして技能実習生から労働基準監督機関に対してなされました申告件数は、現在集計中であり回答できませんが、平成二十六年における申告件数は百三十八件ということでございます。

畑野委員 労基署には引き続き申告はできるということでよろしいですよね。確認で。

大西政府参考人 委員御指摘のとおり、労働基準監督署でも引き続き受け付けをしておるところでございます。

畑野委員 技能実習生が申告権を持っているという説明はどこでどのような形で行われるのか、具体的にお答えください。

宮川政府参考人 まず、現在は新法に基づく申告はございませんので、監督署に対する申告でございますが、現行制度につきましては、実習生に対しまして、まず入国時に、労働条件等や出入国に関する行政相談窓口、この案内等を掲載いたしました技能実習生手帳を配付しております。入国後の監理団体が実施する講習におきまして、入管法ですとか労働基準法、あるいは技能実習に係る不正行為が行われることを知ったときの対応方法、その他、技能実習生の法的保護に必要な情報を含む科目を講習で実施することとされております。

 また、委託事業で実施しております母国語相談におきまして、必要に応じ、労働基準監督機関などの関係行政機関の連絡先を紹介することなどによりまして、関係行政機関への申告、相談の方法等について周知を行っているところでございます。

 こうした技能実習生手帳の配付ですとか監理団体による講習は新制度におきましても引き続き行っていくこととしておりますほか、新たに設置されます外国人技能実習機構におきまして、先ほど申し上げました相談、申告窓口、その際、母国語による相談、申告などをできるように取り組んでいきたい。このような取り組みにつきましても、実習生に申告等の方法が適切に周知されるよう取り組んでまいりたいと考えております。

畑野委員 技能実習生手帳というお話がございました。私も厚生労働省からこれをお借りしてきました。六カ国語ある。中国語版、ベトナム語版、インドネシア語版、フィリピン語版、タイ語版、それから英語版ということですね。これを読ませていただきました。きょう、お手元の資料のところに、左側は日本語、そして右側は各国語に訳したものをつけさせていただいております。

 労基署に対しては今も申告権はあるんですね、当然ながら。今後もあると。新たに機構につけようということなんですけれども、この手帳には申告権があると書いてないんですよね。見てみたら、あるのは、医療機関への自己申告という方の申告だけなんですよ。

 資料の一ページ目、行政相談窓口の案内というのは、右側は中国語が書いてありますけれども、「労働条件等の相談」と。相談の中から申告へといくのかもしれないけれども、申告ということはどこにも書かれていない。ですから、これは、今もきちっとそのことをやるべきだし、それから申告のフォーマットを入れるべきだと思いますが、いかがですか。

宮川政府参考人 御指摘のとおり、現在は、労働基準法に基づく申告の点について記載がないこととなっております。

 今後、この手帳につきましては、新しい制度においても引き続き行う際に、今回の新法の内容等をバージョンアップした形でやらせていただきたいと思っておりますが、その際には、労働基準法の申告もあわせまして、申告等についての適切な記載を行いたいと思っております。

畑野委員 いかにこの問題を真剣にやってこなかったかということの一つのあらわれだと思うんですね。

 それから、この手帳によれば、相談なんですけれども、私たちも視察に伺いましたが、JITCOの平日の勤務時間、午前十一時から午後七時まで、休日、夜間は相談することはできません。この間の参考人の発言にもありましたが、申告するというのはなかなか昼間はできない、見つからないようにやるというので深夜とか休日にせざるを得ないという話もありました。

 それから、言語も、今は六種類ですけれども、多様化することが予想されるわけですが、申告権を技能実習生が行使した場合に、適切に対応がなされ、技能実習生に対して明確な回答を母国語で行わなければ申告権の制度を設けた意味がないと思うんですが、この母国語の対応はどうなりますか。

宮川政府参考人 現状の報告をさせていただきますと、現在、先ほど御紹介ありましたように、母国語相談につきましては、JITCOの方で行っていただいているところでございます。また、全国の労働基準監督署等におきましては、外国人労働者向け相談ダイヤルや外国語に対応した相談員を活用することによりまして、技能実習生からの申告等についても適切な受け付けを行っているところでございます。

 また、この新法が成立した場合に新たに設立されます外国人技能実習機構の申告、相談窓口におきましては、使用する実習生数の多い母国語での相談を受け付けることができるようにしまして、適切な申告につなげていこうと考えているところでございます。

畑野委員 資料の五ページのところなんですが、JITCOの技能実習生に対する母国語相談というのがあって、今でいえば、中国語及びベトナム語は火木土、インドネシア語は火土、フィリピン語は木曜日ということだったり、それから、次の六の資料ですけれども、相談窓口、日本語のみというので、医師とか、メンタルヘルスアドバイザーとか、安全衛生とか、労災保険相談員とか。日本語ですからね。対応できてこなかったわけですね。

 そういう点で、今までの実態を見ると、本当にこの申告権に実効性があるのか、対応できるのかということは疑問があります。

 次に、技能実習生の待遇の問題についても伺いたいと思うんです。

 参考人意見の中で、月額の手取り額が三万円弱という例が紹介されました。仕事に使ういろいろな道具代を払えなくて、それも払ったらマイナスになってしまうという月給の状況、月の収入ですね。そういう点では、私は、生活できる最低限の賃金を月額の保障でやってくるべきではなかったのかというふうに思いますが、この点はいかがでしょうか。

宮川政府参考人 お答えいたします。

 実労働日数が少なくなるなどによって実習生の報酬が低くなるという御指摘でございます。

 例えば、技能実習計画上、週五日の実習を予定していたにもかかわらず、受け入れ機関側の都合で、実際には月に数日とかいう短い期間しか勤務できなかったということで少額な報酬を払うような例、こういうような場合に、現行制度におきましても、一つは、地方入国管理局が、計画に従った実習を行うよう指導するとともに、計画に従った実習が行われない場合の転籍等の検討を指導する。あわせまして、労働基準法第二十六条に基づく休業手当が適切に支払われていないと認められた場合に、同法にのっとった適切な休業手当を支払うよう労働基準監督署等が指導する。これが現状でございます。

 新制度施行後におきましては、外国人技能実習機構が、実地検査などによる関係書類の確認という中で、技能実習計画に従った取り扱いをしていないと認めた場合には、一つは、実習実施者に対しまして改善の指導、それに従わない場合、究極的には計画の取り消しを行うなど、厳格に対応するとともに、計画に従った実習が行われないというような場合に、実習生の転籍に向けた指導、助言という形のものに取り組むほか、先ほど申しましたような形での、地方入国管理局あるいは労働基準監督署等の関係機関との連携によって対応することとしたいと考えているところでございます。

畑野委員 これまでの対応の状況が少し報告されましたが、そういうものをちょっと資料でいただきたいんですね。具体的にどのように解決されているのかというものを、今出せるのか、今後出していただくのか、お答えください。

宮川政府参考人 お答えいたします。

 今のところ手持ちもございませんので、出せる資料があるかどうかも含めて検討させていただきたいと思います。

畑野委員 そういうものも、聞く前にきちっと資料を出していただくというのがやはり法案審議にとって大事だというふうに思います。

 それで、次に、実習先が倒産してしまった、実際に受け取るべき賃金を実習生が受け取れないというケースがあるというふうに聞いているんですね。失業給付だけしか払われないという場合も伺っております。受け入れ企業が倒産した場合の賃金保障の対策、どのような対策がとられてきたのか、伺います。

大西政府参考人 企業が倒産した場合に賃金が未払いになるという場合でございます。

 こうして退職した労働者につきましては、現在、賃金の支払の確保等に関する法律というのがございまして、この中で、未払い賃金の一部を立てかえ払いするという制度がございます。これにつきましては、技能実習生についても制度の対象となっておりますので、こういった形での保護がなされているところでございます。

畑野委員 これは幾ら返ってくるんですか。

大西政府参考人 現行の未払い賃金立てかえ払い制度につきましては、戻ってくる補償額でございますが、これは、立てかえ払いされる賃金につきましては、課税上、退職所得とされるため課税の額が少ないということ、あるいは立てかえ払いされる賃金から社会保険料が控除されないということ、こういうことを考慮いたしまして、立てかえ払いの額は、いわゆる手取り所得に近い金額として、未払い賃金総額の八割というぐあいに定まっているところでございます。

畑野委員 もう少し伺いたいんですが、技能実習生がこの立てかえ払い制度で対応されたという件数はありますか。

大西政府参考人 立てかえ払い制度につきまして、現在、技能実習生を特定した件数につきましては把握しておりません。そういう状況でございます。

 ただ、直近の例を幾つか調べましたところ、技能実習生につきましても立てかえ払いを実施したというケースはあるというぐあいに承知しております。(畑野委員「件数はわからないですか」と呼ぶ)件数は、済みません、集計しておりません。申しわけございません。

畑野委員 ですよね。ですから、これもやはりきちっと調べていただいて、出していただきたいと思うんです。

 皆さん、お手元、一番最後の資料九のところに、「立替払手続の流れ」というのをいただいたんです。これは、労基署に行ったり認定申請をしたり、いろいろな手続が、日本人だってこれは大変だと思うんですが、それを、言葉も本当に御苦労されているような外国の方に強いる。だから、私は、これはもっときちっと補償できるような体制がつくられてよかったんじゃないかというふうに思います。そういう改善が求められてきた。

 それから次に、年金の問題を伺います。

 技能実習生は、年金加入の対象とされております。先日の質問で、私も、技能実習生の死亡事故など痛ましい事例を御紹介いたしました。資料もそのときお配りをいたしました。それで、死亡事故について、技能実習生に遺族年金などが実際に払われているのか、把握されているか、伺います。

大西政府参考人 労災補償の関係について御答弁させていただきたいと思います。

 委員御指摘の死亡案件につきましては、私どもといたしまして、労災でないことが明らかな事案を除きますものにつきましては、前広に、労災補償制度というのがあるということをお知らせいたしました。その中から、現在、平成二十六年に起きた三十四件の死亡事故があると承知しておりますが、調べましたところ、その中で八件について労災申請がございまして、そのうち六件につきまして遺族補償年金の支給をしたところでございます。残りの二件については調査中という状況でございます。

畑野委員 それも、本当にきちっと渡っているのかという懸念が寄せられております。ぜひ正確に把握をするべきだと思います。

 次に、寮費の問題です。

 先日も岩城大臣に伺いました。私がこれをなぜ取り上げるかというと、住まいは人権だということなんですね、根本的問題として。それで、この適正化について、どのような着眼点で宿舎費の適否を見ていくのが適当かについてさらに検討していくとそのときお述べいただきました。

 それで、その後いろいろ聞きますと、高い家賃を取って実質的には低賃金になるという実態も報告されていますし、それから、この間、日弁連の方からは、雨が降ると畳のところが水浸しになる、布団も敷けないというような写真の実例も紹介いただきました。やはり、人間らしい住環境を提供する責任もあると思うんですね。

 あわせて、やはり、実習生が選べるということも、賃金をきちっと保障することとあわせてですけれども、そういうことも必要になってくると思うんですね。

 ですから、家賃については、文化的な最低限度の生活を確保する、あるいは賃金をきちっと確保していくという観点からも、明確な要件を定めていくことが必要ではないかと思いますが、いかがでしょうか。

岩城国務大臣 技能実習生が本当に安心して実習に専念できる環境を確保するためには、畑野委員おただしのとおり、宿舎費の金額が適正なものであることは重要でございます。前にも御答弁させていただきましたけれども、この適正な宿舎費について、より明確化していきたいと考えております。

 委員御指摘の点も踏まえまして、宿舎費を適正なものとする方策について、さらに検討してまいりたいと考えております。

畑野委員 このことも、もっともっと前から議論すべきことだったというふうに思うんですが、これは本当に直ちに改善していただきたいというふうに思っております。

 次に、介護の問題について伺います。

 外国人介護人材受入れの在り方に関する検討会中間まとめというのが出されておりまして、そこで既に実習生について言われております。「介護分野においては、適切な実習体制を確保するため、以下の介護固有の要件を設定すべきである。」一つは、「小規模な受入機関(常勤職員数三十人以下)の場合は、受入れ人数は常勤職員総数の一〇%までとする。」二つ目として、「受入れ人数枠を算定する基準となる「常勤職員」の範囲については、介護の技能移転の趣旨に鑑み、「主たる業務が介護等の業務である者」(介護職等)に限定する。」とあります。

 伺いますが、「介護職等」の「等」にはどのような職種が入るんですか。

堀江政府参考人 お尋ねの「介護職等」の「等」でございますけれども、あくまで新しい制度の実施設計の中で特定することになりますが、実務経験に基づいて介護福祉士試験の受験資格を得ることができる職種を想定してございまして、具体的には、介助員、看護補助者、看護助手等の職種であって介護を主たる業務とするものが含まれるというふうに考えてございます。

畑野委員 「等」と丸めて書いてあるけれども、具体的に聞くとたくさん出てくるということですね。本当に不明確な物言いなんです。

 それで、この委員会の議論の中で、夜勤業務について二年目以降の技能実習生に限定するという話がありましたが、これも問題で、どのような実習生を想定しているのか、伺います。

堀江政府参考人 二年目以降の実習生というのは、日本語の能力でいきますとN3程度の日本語能力が確保されているということでございまして、また、それも含めまして、技能等の水準も、指示のもとであれば決められた手順等に従って基本的な介護を実践できるレベル以上となります。

 その上で、例えば二年目の実習生に夜勤を認める場合でも、実習生一人で夜勤を行わせるのではなくて、他の介護職員が配置され、実習生による介護をサポートできるようにするといった措置が必要と考えておりまして、制度の施行までの間に、業界におけるガイドラインの整備等を通じまして、安全性の懸念が生じることのないように実効性を確保してまいりたいと考えております。

畑野委員 こういうようなやり方はだめですよね。

 それで、介護保険法とのかかわりについて伺いたいんです。

 介護保険法では、介護施設における人員の配置基準が定められております。先日の連合審査で、配置基準の一人に技能実習生を換算するのかという質問に対して、政府参考人は、検討を行うと答弁したんですね。否定しなかった。そういうふうに検討すると。私は、これは大問題だと思うんです。

 ちょっと確認しますけれども、介護実習を行う技能実習生があるとして、介護保険法上の介護施設職員としてカウントされるのか、つまり、技能実習生は介護施設が受ける介護報酬の対象となる介護サービスに当たるのか、伺います。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 介護は対人サービスでございまして、サービス提供に当たりましては、その質を担保し、利用者の不安を招かないようにすることが重要であると考えております。このため、これまで御議論されておりますとおり、技能実習制度における介護職種の追加におきましては、必要なコミュニケーション能力の水準の確保などの検討を進め、条件整備を行うということでございます。

 その上ででございますけれども、介護保険の配置基準あるいは介護報酬の取り扱いにつきましては、今後、関係者の意見、あるいは既に実施されておりますEPAの仕組み等を踏まえ、検討してまいりたいと考えております。

畑野委員 実習生というのは、この間議論されてきたように、みずからの意思で実習先を移転できない、これは解決されていない。高い保証金、この問題も解決されていない。そして、強制帰国もある。対等な労使関係もない。人の命を預かる、そういう現場ですよ、介護の現場というのは。いいんですか。

 私は、こういう一つ一つの問題を、きちんと委員会でもっと議論を尽くすべきだと思いますよ。私は、このような安易なことをやるべきじゃないというふうに強く申し上げます。

 最後に、入管法改正案について伺います。

 在留資格に規定される「活動を行つておらず、かつ、他の活動を行い又は行おうとして在留していること(正当な理由がある場合を除く。)」を、取り消し事由として新設を予定しております。また、在留資格を取り消す場合、当該外国人が逃亡すると疑うに足りる相当の理由がある場合は、出国猶予期間を定めず、直ちに退去強制手続に移行することも規定されております。

 監理団体などの不正行為が原因で失踪したケースでは、直ちに退去強制手続をとられることはあってはならないと思いますが、いかがですか。

岩城国務大臣 お答えいたします。

 新しい取り消し事由を定める二十二条の四第一項第五号は、その末尾に括弧書きで、正当な理由がある場合を除くと規定しております。

 御指摘の監理団体の不正行為が原因で失踪したケースにつきましては、失踪に至る経緯のほか、失踪後の在留状況も踏まえて判断することにはなりますが、例えば、技能実習生が監理団体や実習実施先から人権侵害を受けるなどして、やむを得ず一時的に技能実習を行うことができなくなったような場合には、正当な事由があると認められますので、そもそも二十二条の四第一項第五号に該当いたしません。したがいまして、新設する取り消し事由によって在留資格を取り消すことはできず、退去強制手続がとられる余地はありません。このような場合には、本人が他の実習実施者のもとでの実習継続を希望すれば、実習先の変更を支援していくこととなります。

畑野委員 続いて伺いますが、疑うに足りる相当な理由という、当局の主観による曖昧な要件で退去強制が濫用されるおそれがあるんです。どのような基準で判断するのか、明確に伺います。岩城大臣、お願いします。

岩城国務大臣 逃亡すると疑うに足りる相当の理由がある場合とは、在留資格を取り消して出国猶予期間を指定したとしましても、当該期間中に自発的に出国することなく、故意に入管当局に行方を知られないようにして退去強制を逃れようとすることが疑われ、その疑いを抱くことにつき相当の理由がある場合をいうものと考えております。

 その判断に当たりましては、当該外国人の生活状況、在留資格に応じた活動を行わなくなった経緯、背後関係の有無、取り消し事由が発覚した経緯、取り消し手続中の挙動等の事情を総合的に考慮することとなります。

 このように、逃亡すると疑うに足りる相当な理由の有無は、客観的な事実関係を踏まえて判断すべきものでありまして、当局が恣意的に判断できるものではなく、濫用の御懸念には及ばないもの、そのように考えております。

畑野委員 曖昧な言葉、例えば、行おうとしているとか、委員会でも議論になりましたけれども、そういうことがやはりあってはならないと思うんですね、法文として。

 最後に私申し上げますが、本当にいろいろな困難で失踪せざるを得なかった実習生が、申告をしても、普通だったら一週間から一カ月で解決されるのが、三カ月も待つとか、こういう事態があってはならない。こういう人権をしっかり守るということこそ直ちにやるべきだというふうに思います。

 多くの問題が未解決だと、引き続き討論を求めて、私の質問を終わります。

葉梨委員長 以上で畑野君枝君の質疑は終了いたしました。

 これにて両案及び修正案に対する質疑は終局いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十一分散会


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