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第7号 平成13年4月4日(水曜日)

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平成十三年四月四日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 土肥 隆一君

   理事 小島 敏男君 理事 河野 太郎君

   理事 下村 博文君 理事 鈴木 宗男君

   理事 安住  淳君 理事 桑原  豊君

   理事 上田  勇君 理事 土田 龍司君

      池田 行彦君    北村 誠吾君

      下地 幹郎君    田中 和徳君

      虎島 和夫君    中本 太衛君

      野田 聖子君    平沢 勝栄君

      水野 賢一君    宮澤 洋一君

      望月 義夫君    渡辺 博道君

      伊藤 英成君    木下  厚君

      首藤 信彦君    中野 寛成君

      細野 豪志君    前田 雄吉君

      丸谷 佳織君    赤嶺 政賢君

      東門美津子君    柿澤 弘治君

    …………………………………

   外務大臣         河野 洋平君

   外務副大臣        衛藤征士郎君

   外務大臣政務官      望月 義夫君

   外務大臣政務官      丸谷 佳織君

   政府参考人

   (防衛施設庁長官)    伊藤 康成君

   政府参考人

   (総務省総合通信基盤局長

   )            金澤  薫君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   飯村  豊君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局国

   際社会協力部長)     高須 幸雄君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    藤崎 一郎君

   政府参考人

   (外務省欧州局審議官)  森  敏光君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    田中  均君

   政府参考人

   (外務省条約局審議官)  林  景一君

   外務委員会専門員     黒川 祐次君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月四日

 辞任         補欠選任

  桜田 義孝君     渡辺 博道君

  原田 義昭君     田中 和徳君

  宮澤 洋一君     北村 誠吾君

同日

 辞任         補欠選任

  北村 誠吾君     宮澤 洋一君

  田中 和徳君     原田 義昭君

  渡辺 博道君     桜田 義孝君

    ―――――――――――――

三月三十日

 米原潜衝突事故の行方不明者の救助、原因の徹底究明に関する請願(春名直章君紹介)

 (第八六六号)

 同(吉井英勝君紹介)(第九一九号)

 外務省機密費疑惑の徹底究明に関する請願(藤木洋子君紹介)(第八六七号)

 同(志位和夫君紹介)(第八九五号)

 同(大幡基夫君紹介)(第九二〇号)

 米原子力潜水艦グリーンビルによるえひめ丸沈没事故に関する請願(大森猛君紹介)(第八九四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際電気通信連合憲章(千九百九十二年ジュネーヴ)を改正する文書(全権委員会議(千九百九十四年京都)において採択された改正)及び国際電気通信連合条約(千九百九十二年ジュネーヴ)を改正する文書(全権委員会議(千九百九十四年京都)において採択された改正)の締結について承認を求めるの件(条約第一号)

 全権委員会議(千九百九十四年京都)において改正された国際電気通信連合憲章(千九百九十二年ジュネーヴ)を改正する文書(全権委員会議(千九百九十八年ミネアポリス)において採択された改正)及び全権委員会議(千九百九十四年京都)において改正された国際電気通信連合条約(千九百九十二年ジュネーヴ)を改正する文書(全権委員会議(千九百九十八年ミネアポリス)において採択された改正)の締結について承認を求めるの件(条約第二号)

 国際情勢に関する件




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     ――――◇―――――

土肥委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として、委員前田雄吉君の質疑に際し、外務省大臣官房長飯村豊君、外務省欧州局審議官森敏光君及び外務省経済局長田中均君の出席を、委員赤嶺政賢君の質疑に際し、外務省大臣官房長飯村豊君及び外務省北米局長藤崎一郎君の出席を、また、委員東門美津子君の質疑に際し、防衛施設庁長官伊藤康成君の出席を求め、それぞれ説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

土肥委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

土肥委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。下村博文君。

下村委員 おはようございます。自由民主党の下村博文です。河野外務大臣、よろしくお願いいたします。

 きょう各マスコミで報道されております教科書問題につきまして、河野外務大臣に対しまして質問をさせていただきたいと思います。

 この教科書問題は、河野大臣にとりましても、官房長官のときのいわゆる従軍慰安婦の問題等含めまして、今までのかかわり合いというのは大変に大きかったというふうに思います。

 そういう中で、中学校の歴史教科書、八社のうちのすべてが昨日合格ということで発表されたわけでございますけれども、この問題と、それからあわせて、特に近隣諸国、韓国やあるいは中国から、この教科書におきましては、ことしになってから特に大変な反応がいろいろ出ております。また、きょうの新聞等におきましても、韓国政府は、深い遺憾を表明する、また中国外務報道局長も、修正経ても反動的というような見出しで新聞にも記事が出ております。

 我が国の教科書は国定教科書ではございません。検定教科書です。なおかつ、一社だけということでなく、八社の中から実際にどの教科書を採択するかはこれからそれぞれの教育委員会が判断をするということでありますから、おのずと中国や韓国とは教科書の位置づけが違うわけであります。今後とも、教科書におきましては、検定システムの中で、国内外の政治介入があってならないというふうに思いますし、またそれをぜひ堅持すべきだというふうに思います。

 一方で、中国やあるいは韓国から強い懸念が表明されているということについては、十二分に別の次元で配慮する必要は当然あるというふうに思います。

 特に、中国との関係におきましては、今、ブッシュ政権になってから新たなる緊張関係がふえてくるのではないかということが予想される中で、これから我が国が、日米の基軸を中心としながらも、東アジアの発展と平和、特に経済的な関係の中で、中国との独自の友好関係をさらに強めるという姿勢を持つことは当然必要なことであります。

 また、韓国との関係におきましても、今、特に北朝鮮との関係で、韓国、アメリカ、我が国との関係の中での協議が進められているというふうに聞いておりますけれども、今後、ワールドカップも含めまして、韓国との友好を保つということは当然今まで以上に必要なことであるというふうに思います。

 その次元と教科書問題というのはやはり別に考え、そして教科書問題については、きちっと我が国のシステムを中国や韓国に対してさらに十二分に理解をしてもらうということがこれからさらに求められるというふうに私は思います。

 そういう中で、中学校の歴史教科書におきましては、これはもう大臣も御承知のとおりでございますけれども、特に扶桑社の教科書が、百三十七カ所において修正意見が出され、これがすべて大幅な修正がされた中で、教科用図書検定調査審議会において合格をしたわけでございます。

 この検定の考え方というのは、一つには、学習指導要領に基づくということ、二つ目には、申請図書の内容に誤りや不正確な記述がないということ、三番目には、特定の事項等に偏った扱いとなっていないこと、それから四番目には、いわゆる近隣諸国条項、国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がなされていること、また五番目には、児童生徒の発達段階に適応していること、これが検定基準であり、これに沿って今回の教科書もいずれも合格をしたというふうに承知をしております。

 特に諸外国から、中国や韓国から指摘をされておりました扶桑社の教科書についても大幅な修正がされた中で検定合格したわけでありますから、これについては、今後は他国に対して我が国の検定システムを理解をしていただくということが必要になってくるかと思いますが、この教科書について、まず河野外務大臣から御所見をお聞きしたいと思います。

河野国務大臣 議員が御指摘になられましたように、平成十四年度から使用される中学校の歴史教科書につきまして、文部科学省において、いわゆる近隣諸国条項を含む教科書検定基準などに基づきまして、教科用図書検定調査審議会の審議を経て厳正に検定が行われたものと承知をしております。

 昨日官房長官も述べておられますように、我が国の教科書検定制度というものは、民間の著作、編集者の創意工夫を生かした多様な教科書が発行されるとの基本理念に立つものでありまして、国が特定の歴史認識や歴史観を確定するという性格のものではなくて、検定決定したことをもって、その教科書の歴史認識や歴史観が政府の考え方と一致するものと解されるべきものではないということであります。

 我が国としては、平成七年の内閣総理大臣談話に示された過去の歴史に対する基本認識を踏まえまして、未来志向の見地から、近隣諸国との相互理解、相互信頼を一層強化しまして、責任ある国際社会の一員として国際協調を促進していく考えであり、そうした貢献ができる若い世代が育っていかれることを期待しております。

下村委員 昨年の秋以降、特に中国、韓国において、我が国の教科書の検定問題におきましてちょっと過剰とも思えるような反応がたくさんあったのではないかと私は思っております。

 二月の二十八日には、韓国の国会におきまして、日本国の歴史教科書歪曲中断を求める決議文というのが採択をされておりまして、当外務委員会委員長あてにも通知されてきましたし、我が国の政府の関係のところにもこれが来たということも聞いております。

 また、三月の十五日には朱鎔基中国総理はこのように発言しているのです。私も既に一部修正されたということを知っており、またこうしたニュースを聞いたことがある、しかし、アジア各国人民の反応に基づけば、こうした修正では不十分である、私は、これはだれかが日本の内政に干渉するという問題ではないと考える、これは日本人民と中国を含むアジア人民が世々代々の友好を保っていけるかに関係する問題であり、また日本人民の利益に関係する問題である、こういうふうに発言をされているわけであります。

 また、きょうの韓国の外務省の反応におきましては、声明の中で、一部歪曲された歴史教科書を通じ日本の若い世代が偏った教育を受ける場合、両国関係の発展を大きく傷つけるとして、深刻な憂慮ということを表明しているわけでありますし、また中国の外務報道局長においても、日本政府に対して、この教科書が合格したということは、負うべき責任を回避したという非難をしているということであります。

 今まで、これは今回の合格についても含めてでありますが、実際に外務省の方に、大臣の方に両国から教科書問題におきましてどのような反応、あるいは申し入れなり抗議なり来ていたのかについてお聞きしたいと思います。

河野国務大臣 議員御指摘のとおり、中国、韓国が御指摘の教科書の問題について非常に大きな関心を持っていたあるいは懸念も有していたということを、私のところに来られた方々からのお話でも私は承知をしております。

 韓国からは何人かの議員団がお見えになりました。中でも金鍾泌氏は、外務省にお見えになりましてこの問題についていろいろ話をされましたけれども、しかし、金鍾泌氏は御承知のとおり韓国におきます韓日議員連盟の会長でもあるという方でありますが、氏は、この問題に関し、内政干渉する考えは全くない、全くないけれども、両国の友好関係に悪影響が出ないようにひとつぜひしてほしい、こういうことを言われたわけでございます。私の方からは、その都度、検定制度というものについて御説明を申し上げまして、日本の国の検定基準に従って厳正な検定作業が行われることになりますということを申し上げたわけでございます。

 それから、同じく韓国からは、李廷彬韓国外交通商部長官から電話会談をしようという申し入れがございまして、電話でお話をいたしました。長官は、日韓間には懸案事項もあるが、良好な日韓関係に悪影響がないよう円満に落ちつくことを期待しています、こういうふうに言われました。

 それから、そうしているうちに韓国は内閣改造が行われまして、外交通商部の長官がかわられまして、新しい長官、韓昇洙氏が長官になられたわけですが、就任をされて翌日ですか、やはり電話で話をいたしました。同じように長官は、良好な日韓関係を損なわないように円満に処理されることを期待しております、こういう表現で話がございました。

 中国からは、王毅中国外交部副部長さんですが、王毅氏は在北京の野本臨時代理大使に対しまして、教科書問題の本質は日本が真に侵略の歴史を正しく認識し、これに対処するかどうかという問題だ、今や日本が日中共同声明、日中共同宣言などの重要な文書などで発表した約束を行動によってしっかり守るときである、日本政府はこのことを高度に重視して、侵略を否定し歴史を美化する教科書は採択しないことにしてほしい、そう言った上で、教科書検定は日本政府が責任を持って行うことだ、日本政府は中国側の立場を高度に重視し、実際の行動をもって両国関係の大局を維持するよう強く希望する、こういう話などがございました。

下村委員 それに対して、外務大臣あるいは外務省が今後どんな努力をどうされるかということでありますけれども、具体的にこの八社の歴史教科書の中でどの教科書を採択するかということは各教育委員会の採択によるわけでありますけれども、今後、新しい歴史教科書をつくる会の教科書が不採択になるような政治介入をすることはないかどうか。あるいは、合格をしているわけでありますが、さらに近隣諸国の意向を受けて修正を求めるという考えはないかどうかということについて確認をさせていただきたいと思います。

河野国務大臣 これはもう教科書検定の手順、手続というものは既に完了をしたわけで、文部科学大臣が検定という決定をなさったわけですから、私は、これがこれから変わるということはないというふうに申し上げていいと思います。

 それから、今お話しのように、これから地方でそれぞれの学校がどの教科書を使うかということになるわけでありますけれども、検定に合格した教科書の教育現場における採択につきましては、公立学校にあっては所管の教育委員会、私立学校にあっては校長にその権限があるというふうに承知しておりまして、これに政治が介入するということは考えられないことでございます。もしそういう政治的介入というようなことがあるとすれば、それが左から、左、右というのは最近余りはやらないといいますか、そういう仕分けは余り適当でないかもわかりませんが、昔風に言えば左からの介入も右からの介入も、そういう介入があってはならぬというふうに私は思っておるわけでございます。

 外務省といたしましては、特定の教科書に対する採択の可否を含めて、そのプロセスに介入するということは全くあり得ないことでございます。

下村委員 修正も求めないし、また採択における政治介入も求めないということでありまして、それはもっともなことであり、またそれをぜひしていただきたいと思います。

 一方で、先ほど大臣が説明をしていただきました中国、韓国等の懸念に対して、大臣としては、外務省としては今後どのように対応されるおつもりか、具体的なことがあれば、お聞かせ願いたいというふうに思います。

河野国務大臣 私は、努力をしたいと思います。努力をしたいと思いますが、なかなか難しい問題もあるのだろうと思います。

 内閣は、村山内閣の歴史認識というものをそのまま引き継いで内閣の歴史認識ということをお互いに閣僚はみんな認め合っているわけでございまして、そういう村山内閣当時の歴史認識というものが内閣の、いわば現在の日本の政治の歴史認識であるということは、これはもう韓国も中国もみんなそれを承知していて、そういう状況の上で日中首脳会談も行われれば、日韓首脳会談も行われているわけでありますから、そういう歴史認識を持ちながら、中国、韓国に説明をしていくわけでございまして、先ほど官房長官の談話でその辺のところは説明をされておりますから、そうした説明を私どもとしては両国にしていくわけでありますけれども、いつどんな場合でも内閣の歴史認識というものはこういうものであるということをしっかりとその前提として言う必要があるだろうというふうに思っています。

下村委員 そもそも検定中の教科書が、これは一切外部には出てはならないはずであるのにもかかわらず流出し、外国から抗議が提起されている、そういうこと自体が問題であるというふうにも思います。

 しかし、これは初めてのことではなく、中国が日本の教科書検定に抗議してきたことは過去にも何度かあったわけでありまして、一回目が、昭和五十七年夏のいわゆる侵略を進出というふうに書きかえたという誤報事件、このことから近隣諸国条項というのが出てきたわけでありますが。また、昭和六十一年には「新編日本史」の外圧検定事件というのがあったわけであります。

 実際、今回の検定合格もきのう発表されたわけでありますけれども、修正される前のいわゆる白表紙本、これをとって歴史を歪曲しているというふうに外国から抗議を既に受けていた。しかしその後、実際に、先ほど申し上げましたように百三十七カ所の修正を行って、その上で合格したわけでありますから、この扶桑社の教科書に対しても、外国が正確なことをきちっと把握されているのかどうかということについても問題があるし、また、これが我が国の一部マスコミを通じてその前の段階で諸外国に流れて、そしてその前の段階から抗議があるということ自体も、これは非常に不正確な中で誤解を生む。最初に申し上げましたように、侵略が進出と誤報されたというのと同じような中で、この歴史教科書問題も、修正前の白表紙本にのっとって、私からすれば過剰にあるいは実態のないことについて反応している部分も非常にあるのではないかというふうに思います。

 そういう意味では、まず、事前に、合格する前に、あるいは白表紙本の段階で外国に流出している、それを受けて中国や韓国が抗議している、これ自体が問題でもあるというふうに思いますが、これについてのお考えはいかがでしょうか。

河野国務大臣 検定作業中に、原本とでもいうのでしょうか白表紙本とでもいうのでしょうか、よくわかりませんが、そういうものが外に出る。これは、外国に出ることも、国内に出ることですら非常に問題だと私は思いますね。検定作業が厳正に行われるといいますか、フェアに行われるためには、そうしたことはあってはならない。何と言ったらいいのでしょうか、もっと静ひつな環境の中で、静かな環境の中で事実関係で誤りが正されていく、あるいはバランスがとられていく、あるいは教育上の視点に立った配慮がなされていく、あるいは近隣諸国条項についても配慮がなされていく。それらはいずれも、外の動きで影響されるということのない状況下で検定作業というのは行われるべきものでありますから、検定作業中に内容が流出するということはあってはならぬことだというふうに、それは私はそう思います。

下村委員 今大臣おっしゃったように、我々自身も白表紙本については事前に見ることができないわけでありますから、このことについては外務省として、関係機関、文部科学省に対してもあるいはマスコミ等に対してもきちっとした抗議をする必要があるのではないかというふうに思います。

 それというのも、大臣御承知だと思いますが、昨年の秋に、外務省出身元外交官の検定調査審議会委員が、扶桑社の教科書を不合格にするようほかの委員に対して電話や手紙で働きかけた問題があったわけです。これに対して文部科学省の方は、この委員を直ちに配置転換した。こういう、同じ委員の中でも本来こういうことをすべきでないということが厳密なルールとして、当たり前のこととしてすべきことを元外交官が破ったということでありまして、これは一部では外務省ぐるみではないかということも報道もされているわけですね。

 そういう中でのことでありますから、やはり外部流出をして、そして今回初めてのことじゃないわけですから、これによって中国や韓国が我が国の教科書問題について誤解、曲解をするということが、結果的に我が国との関係で悪化してしまうということはお互いにとって不幸なことでありますから、これについては看過してはならないことであるというふうに思いますが、これについてお聞きしたいと思います。

河野国務大臣 新聞でそうした報道を承知しておりますけれども、こうした問題については、文部科学省の中においてきちんと処理をされるべきものだろうと思います。外務省としてはこれに関知をしていないわけでございますから、所管の文部科学省においてきちっと処理をしていただきたいというふうに思います。私が答弁をするのはいささか所管外という感じもいたします。

下村委員 いや、私が申し上げているのは、委員の配置転換については当然文部科学省がすることでありますが、ただ、教科書問題で他国から誤解をされているということについての事前流出の問題等について、その辺の説明はきちっとやはり外務省としてする必要があるのではないか。この辺が、教科書問題の中で、今後さらに韓国や中国が我が国に対してどんな状況で抗議をしてくるか、要請をしてくるかということはちょっとわかりませんが、いずれにしても、ほっとけば関係悪化になるような状況だというふうに思います。そういう意味で、関係改善に向けてこれから努力をされる必要があるのではないか。

 二月に我が国の外務省の招待で韓国の若手国会議員が来られまして、私もお会いをしました。このとき、昨年当選したばかりの韓国の若手国会議員でありますけれども、やはりこの教科書問題については最初に発言をされました。それだけ、近くである国であってもお互いに理解されていないということを改めて感じたわけであります。

 特に教科書問題について、外務省として、今まで以上に多重、多層的、いろいろなレベルで我が国の教科書としてのシステム、また同時に、中国あるいは韓国のこれに対する理解、外務省としては一層努力をされる必要があるのではないかというふうに思いますが、今後の施策について最後にお聞きしたいと思います。

河野国務大臣 今回のこうしたことに関して韓国、中国がさまざまな発言をされたり、いろいろな状況があるいはあるかもしれない。しかし、外務省としては、全力を挙げてそうしたことがないように、日本との関係が、先方でもそう言っているわけですが、良好な状況というものを維持するために我々ができることは全力を挙げてやりたいというふうに思っております。

 私の感想を一言言えば、教科書問題についてやはり大変な関心を先方は持っているわけですね。その先方が持っている関心を日本に対して、議員もそうですが、先方の議員が日本へ来られた、あるいは日本から先方に行くと話が出ます、その話が出るときには、先方はその内容について議論をするわけですね。それに対して日本側は、内容については議論を余りしないで手続論で答えるわけです。日本側はあくまでも検定という手続がこうなんだからといって説明をする、先方は内容について説明を一生懸命する、そこのすれ違いがあるんですね。

 手続については、それはそう難しい手続じゃありませんから、こういう手順、手続でやっているんですと言えば、それは向こうは手続については理解をきっとされると思うんです。手続については理解をされるんだけれども、内容について、日本側の説明というものは手続に対する説明に比べると十分先方に対して時間もそれだけ費やさない、内容的にもそれだけのものがない、したがって向こうがすとんと落ちるところがないという場面があったように思うんですね。

 我々はやはりそういうところまで、手続論だけで先方に対して説明をするのではなくて、我々自身の考え方といいますか認識といいますか、そういうものについても十分議論をする、そしてお互いが違うところは違う、そうだというところはそうだという議論が進んでいってほしいなというのが私のこの問題についての感想でございますが、それはあくまで個人的な感想として、外務省としては全力を挙げて国際関係というものを良好に維持する努力をいたしたいと思っております。

下村委員 ありがとうございました。

土肥委員長 次に、伊藤英成君。

伊藤(英)委員 伊藤英成でございます。

 まず最初に、質問通告はしてございませんでしたけれども、今の教科書の問題について私からも結論をお伺いいたします。

 今もお話がありましたけれども、きょうの新聞各紙にも大きく報道されておりますけれども、この問題について、中国、韓国などから非常に強い怒りとか、あるいは深い遺憾といいましょうか、そういう声明あるいは談話等が出ているわけですね。本件については、私自身も、例えば中国当局からもあるいは韓国当局からも以前から話は聞いていた問題ではあるんですが、中国、韓国等のこうした声あるいは反応に対して外務大臣としてどのように認識をされるのか、そして今後どういうふうにしようと考えられるか、そのことについて伺います。

河野国務大臣 現在の中国、韓国の反応というものは、けさのニュースなどを見ただけであって、どこまで考えておられるか、どこまで反発しようとしておられるかということは、正直言ってまだよくわからない部分もございます。

 ただ、私どもとしては、誠心誠意、先ほども下村議員に御答弁を申し上げましたけれども、両国関係というものの良好な関係を維持する努力はしてまいりたいと思っておりますので、説明すべきところはできる限り説明をしてまいりたいというふうに思っております。

伊藤(英)委員 説明されるとして、今どういうふうに向こうの反応に対して認識しているのか、どう感じていらっしゃるのか。

河野国務大臣 伊藤議員は十分その辺は御理解をいただけると思いますが、こうした問題は少し落ちついて話をするということが大事じゃないかというふうに思っておりますので、直ちにどうするかということではなくて、先方は確かに、深い遺憾の意とかあるいは強い憤慨と不満を表明する、こう言って、非常にきつい言葉遣いでありますけれども、しかし、談話を我々としてはなお注意深く読んで、先方と落ちついた状況で話し合っていきたいというふうに思っております。

伊藤(英)委員 現在の外務大臣の認識は伺いました。非常に重大な問題でありますので、ぜひ一層真剣に取り組んでいただきたいと思います。

 次に、先般、四月の一日に南シナ海上空で起こりました米軍の偵察機EP3と中国軍の戦闘機の接触事故の問題でありますけれども、ブッシュ政権が発足いたしまして、中国に対する政策の変化ということがあるわけですよね。そういうこともあったり、あるいは台湾への武器供与の問題もあったりしているわけでありますが、今回のこの処理いかんでは米中関係は非常に悪化するかもしれない、こういう状況ですね。昨日も、江沢民国家主席の談話も出たりしております。

 そういう状況の中で、今の米中関係の現状についての認識、そして今回の問題のこれからの影響ということについてどのような認識、見解を持たれますか。

河野国務大臣 まず最初に申し上げなければならないのは、ブッシュ政権がまだ、アジア政策を担当する担当のスタッフが全部決まったわけではないという問題が一つございますので。つい先日も行われました、これはちょっと話が違いますけれども、北朝鮮対策をやろうという日米韓三カ国の政策調整会議のときなどでも、アメリカを代表して出てくる人はクリントン政権時代の人が出てきているんですね。

 したがって、まだブッシュ政権になってからのアジア政策というものが、こうだ、こうするんだと個々具体の問題についてはっきりとしているわけではないということをまず最初に申し上げた上で、さはさりながら、ブッシュ政権になって、やはりクリントン政権のときよりも、自分はどうもグレーゾーンといいますか、白とも黒ともつかない部分というものは余り多くしたくない、できるだけはっきりしたいと。しかし、こういう国際問題ですから、全部を白と黒でようかんを切るようにすぱっと切れるわけではありませんが、しかし、できるだけはっきりさせたい、そういうお気持ちがあるように我々は話を聞くと聞こえます。しかし、これは、新政権がスタートをするときですから、そういう気持ちというのはやはり出てくるだろうと思っています。

 そこで、アメリカの中国政策でございますけれども、これは、先般行われましたセンキシン副総理とアメリカ首脳とのやりとりを見ると、そこではそれほど厳しい、強い当たりではない。むしろ、米中関係というものも自分たちは十分考えてやっていこうと思っているというふうに言っておられるわけですね。それはクリントン政権時代とは言葉遣いが違う、一方はパートナーと言い、一方は今度は競争相手だと言うのは違うだろうというんですが、個々具体の政策までそうした違いが出てくるかどうかは、今申し上げたとおりまだわかりません。

 そういう中で今度の接触事故が起こったわけでございまして、我々としてもこの問題がうまく処理されることが非常に重要だと思っていますが、中国は今のところ比較的抑制された反応というふうに思います。例えば大規模な反米デモが北京の町を練り歩くとか、そういう状況は今まで承知しておりません。

 それからアメリカも、私、実はけさパウエル国務長官と電話で話をいたしました。アメリカに対しましては、これはできるだけ速やかに円滑な処理をすることが重要だと思うのでと言ったら、全くそうなんだ、自分たちもできるだけ速やかにやりたい、アメリカは速やかにやりたくても、中国側が速やかにやりたいと思っているかどうかはまた別なんですが、アメリカとすれば速やかに、できるだけ円滑な処理ができるようにしたいと思っていると。そこで、米中関係が余りこれでぎしぎしするようなことは十分慎重にと言ったら、自分たちも全くそれはそう思っているというような話で、私は、今の段階では、米中関係がこの問題をきっかけにひどく対立が厳しくなるとは思っていないのでございます。

伊藤(英)委員 現在の外務大臣の認識は伺いましたけれども、私はこの問題を非常に心配しております。文字どおり、中台問題もある、あるいは南シナ海のあたりの現在のいわば軍事情勢といいましょうか、その辺のこと等につきましても非常に心配をしておりますし、またほかの機会にしっかりと議論をしたいと思っております。

 最後にもう一つ伺いたいんですが、今ちょっと外務大臣からお話のありました朝鮮半島の問題であるんですが、この問題についてはアメリカも今政策の見直しをやっているんですね。つい最近国務省の人に聞きましたら、今月中ぐらいにはそれなりの形になっていくのかもしれないというふうに私は思いますが、今その見直しをしたりしているんですが、米朝のいわゆる枠組み合意の問題についての見直しということも議論になっていると私は思います。

 そういう意味で、米朝枠組み合意の見直しということについて、日本政府としてはどう考えているのか。そして、その中の軽水炉二基の建設の問題についても、現在の北朝鮮のエネルギーの状況を見たときに、そのうちの一基を火力発電にするという話は、これは北朝鮮の意向次第ということももちろんあるんですが、一つの重要な考え方ではないかと私自身は思ったりするわけですが、そういうようなことも含めて、どういうふうに枠組みの見直しについて考えられるか、伺います。

河野国務大臣 例の合意された枠組みというものだと思いますが、パウエル長官は、一月でしたか二月でしたか、この合意された枠組みというものは尊重する、遵守していくのが基本だ、しかし、これを改善できる方法があったりあるいはもっといい選択肢があればそれはそういうことも当然考えるんだと、その辺は非常にフレキシブルな考えを示しておられるというふうに記憶しております。

 今議員が言われた、KEDOの二つの軽水炉、軽水炉を二基つくろうということでKEDOがスタートをして、作業は大幅におくれておりますけれども、やっている中で、二基ある軽水炉のうちの一基を火力発電にするか、あるいは韓国から電線を引いて電力を送るかというような、案がいろいろあるんですが、私は、KEDOをスタートさせた、つまり軽水炉をつくるという考え方に立ってKEDOをスタートさせた原点を考えれば、それまで北朝鮮は黒鉛炉を持っていたわけですね、黒鉛炉を持っていたんだけれども、これではプルトニウムが出てきて核兵器に使われるおそれがある、そこで黒鉛炉を封鎖してそういうことのない軽水炉でいこうということでそこを変えたわけですね。

 つまり、軽水炉を北に提供しますよというのは、一つは核拡散というものを防ぐという戦略的意図があったというふうに私は認識しておりまして、その部分は全く解決しなくなってしまうわけですね、もし軽水炉をやめるということになると。いや、もちろん黒鉛炉に戻るわけじゃありませんから、また火力発電にしても、プルトニウムが火力発電で出るわけじゃございませんけれども。したがって、そのスタートの時点で黒鉛炉をやめて軽水炉にしようといったあのころの議論をもう一度よく読み返してみないといけないんじゃないかと思っております。

 現実的にこうした方が早くできる可能性がある、そういう視点からいろいろな案が出ておりますけれども、これはアメリカだけで決められる話じゃありませんから、KEDOメンバーがみんなで相談しなければなりません。とりわけ日本、韓国、韓国には非常に強い発言権があると思いますけれども、そうした仲間の意見を聞かなければ決められないわけですが、今二基ある軽水炉の計画のうちの一基を別にするということに直ちに進んでいくかどうか、私は余りそうならないのではないかというふうに思っております。

伊藤(英)委員 時間になりました。終わります。ありがとうございました。

土肥委員長 次に、前田雄吉君。

前田委員 おはようございます。民主党の前田雄吉でございます。

 私は、本日、日米関係でスターリンクの問題、そして日ロ関係で北方領土交渉の問題について取り上げさせていただこうかと思っております。

 まず、日米関係のスターリンクの問題でございますけれども、アレルゲンとなります毒性のたんぱく質を構成しますCry9Cを含みます組み換え遺伝子がトウモロコシのスターリンク種に混入した。これが今アメリカでは非常に困惑をきわめておりまして、このスターリンク花粉が二百メートルも飛ぶということで他のトウモロコシの二十八種に及んでしまっている。こうしたことがアメリカで起きているわけでございます。

 日本は食料の六割を海外に頼っている、依存している国でございます。西から口蹄疫、狂牛病が入り、東からはこのスターリンクということで、非常に食の安全が問題になっているわけでございますけれども、外務省の中でこの食料安全保障を正確に担当される部署というのはございますか。

田中政府参考人 委員御指摘のとおり、食品安全の問題というのが食料安全保障の観点から非常に重要な問題であるということは、まさに御指摘のとおりでございます。外務省の中で、私ども経済局の中で、まさに総合的な安全保障という観点から食料の安全保障ということについても担当いたしております。

前田委員 今御答弁いただいたわけですけれども、やはりこれからこうした食の安全保障の問題がクローズアップされる時代になってくると思いますので、ぜひこれからもしっかりと取り組んでいただきたいと思います。

 このスターリンク種ですけれども、Cry9Cは非常に恐ろしいアレルゲンでございまして、特に弱い子供たちが食べますスナック菓子等に混入しますならばアレルギー反応を起こすということで、非常に危険だと思います。

 こうしたいわゆる遺伝子公害、ジーンポリューションが食の問題にかかわってくることになれば、今後、これに対して何とか日本でも水際作戦をとりまして食いとめなければいけない、そのように思います。欧州では既にこうした食の安全を保つという意味で取り組みがなされていると伺っておりますけれども、この点いかがでございますか。

田中政府参考人 今委員お尋ねの食品の安全の問題につきましては、国際的なルールづくりということも行われておりまして、WHO、FAOのもとでのコーデックス委員会というものがございまして、この中で、欧州、日本、米国あるいは途上国も含め、特に遺伝子組み換え作物について、環境に与える影響、それから食品の安全という観点から一定の規格についてルールづくりをしようということでの作業が進んでいるということが一点ございます。

 それから、今お尋ねの欧州の例でございますが、まさに御指摘のとおり、欧州におきましては、狂牛病の問題であるとか口蹄疫の問題であるとか、あるいは遺伝子組み換え作物の問題ということで大変関心が強いということがございまして、九〇年に、これは欧州委員会の指令でございますけれども、GMOの環境放出に関する指令というものがつくられました。これは概要を申し上げますと、新たなGMOを市場等に放出することは一般的に禁止されている、欧州委員会の承認がある場合にのみこれが流通をしていく。また一方、EUを構成する各国におきましても、加盟国が、当該GMOが人の健康または環境に危険を及ぼすと正当な理由をもって考える場合には、暫定的に自国内における当該GMOの使用、販売を制限または禁止する、こういう仮決定ができるということになっております。

 ただ、今委員お尋ねの水際という観点からいいますと、これはまさにさっき申し上げましたように、コーデックス委員会等を通じ、これはOECDもそうでございますが、国際的なルールづくりをしようということで作業が進んでいるということでございます。

前田委員 ぜひ日本でも早くこうした危険な食物に対しての取り組み、ルールづくりをしていただきたいと思います。

 かつての食管法上、食糧検査官というのがございまして、今八千五百名みえるそうです。私は、こうした八千五百名を今度国際食糧検査官として海外各地に派遣して、日本に入ってくる食物を厳しくチェックしていく、そういう体制ができればと思っております。これは私の個人的な考えでございますので、また御検討いただければ結構でございます。

 いよいよ次に、日ロ関係の問題に入らせていただきます。

 今私は、日ロの外交、特に対ロ政策の政策決定過程あるいは遂行過程において、非常に乱れが生じている、この北方領土の返還交渉に当たる重要な時期に我が国の国益を損ねかねない、そうしたことになりかねないというふうに危惧しております。ちょうどイルクーツクの会談が終わりまして、二十六日付で小寺ロシア課長が交代されたわけでございますけれども、私は実は本日、この人事は東郷局長が強く官房人事課長さんに申し入れたということを伺っておりますので、このあたりを東郷局長に伺いたいと思っておりましたけれども、何かきょう十二時にモスクワにフライトされるということで、御出席されないということですから、この人事の説明を官房長の方からお願いできますか。

飯村政府参考人 委員御質問のロシア課長の人事でございますけれども、これは通常の人事ローテーションの一環として決定されたものであるということをまず申し上げたいと思います。

 当省におきましては、課長人事は人事課長が担当しておりまして、人事課長が関係局長とも協議しながら実質的な調整を行っております。これは一部の新聞報道でございますけれども、課長人事が特定の政治家の意向によって影響を受けるということはございません。本件人事についても関係者が政治家の意向によって影響を受けたとの事実は全くなく、あたかもそうであったかのごとき報道がなされていることは極めて遺憾であるというふうに考えております。

 もし委員差し支えなければ、私どもの考え方を最後まで言わせていただけたらと思います。

 具体的な話になりますが、特に一部のマスコミでは、本委員会筆頭理事の自民党の鈴木総務局長が関与されていたかのごとき報道がございますけれども、そのようなことは全くございませんでしたし、このような報道については、鈴木先生御自身も極めて不本意であろうと思われますし、先生に御迷惑がかかっていることは私どもとして申しわけなく思っている次第でございます。このような報道をなされることにつきましては、外務省の名誉のためにも、さらに鈴木先生の名誉のためにも、私どもとしては全く受け入れがたく、遺憾なことと考えている次第でございます。

 さらに、詳細にわたりますけれども、一部のマスコミでは本件異動の対象となった者が飛行機の中で首を申し渡されたということも報道されておりますけれども、既に異動日につきましてはそれ以上前、具体的には二週間以上前に内示済みでございまして、本人も了解済みでございました。かかる報道内容については、著しく誤解を与えるというふうに考えております。

前田委員 御丁寧な御答弁で非常にありがたい次第ですけれども、東郷局長がその人事を申し出られて、そこで調整されたということなものですから、その調整についてまた私は継続して伺いたい。

 きょうは東郷局長が見えないものですからまた次回の機会に譲ります。何か東郷局長は大使に御栄転されるという話も伺っております。この国会中は、ぜひ私はこの委員会に御招聘したいと思いますので、大使に転出されないように、また我が党の筆頭理事の安住さんから申し入れさせていただきますけれども、ぜひお願いいたします。(発言する者あり)

土肥委員長 静粛に。

前田委員 これからイルクーツクの会談の本題に入っていこうかと思いますけれども、十一月そして一月に河野外相が訪ロをされた。私は、一月に河野外相はよく頑張っていただいたというふうに思っております。四島返還を強く主張されたということで、私は、やはりこの外務大臣の御功績をたたえる次第でございます。

 反対に、一たんは首脳会談の日程をロシア外相が発表を認めたにもかかわらず後で覆された、あるいはプーチンにお会いすることができなかった。これはもう明らかにロシア側の不快感のあらわれだったと思います。こんな時期にあって外務省の中でも、私が伺っています限り、この日ロ会談というのは延ばすべきだ、三月に行うべきではないという話が多くあったと伺っております。

 しかし、森総理は政権の延命のためにみずから電話のレシーバーをとってこの会談を決定したと伺っておりますけれども、河野外相、これは本当でしょうか。

河野国務大臣 事実関係はかなり誤認があると申し上げざるを得ません。

 自分自身のことについて申し上げれば、確かにモスクワを訪問した際、イワノフ・ロシア外相との間で相当厳しい議論をして、我が国の主張というものを述べて相当な長時間のやりとりをしたということは事実でございますが、その結果が、首脳会談の日程が決まらなかった理由であったというふうにも私は思っておりませんし、それから、私がプーチン大統領との面会ができなかった理由についてお触れになりましたが、私自身はそもそもあのときに大統領に会いに行ったわけでもありませんし、大統領に会いたいと実は思ってもいなかったわけです。

 と申しますのは、十一月に私は一度モスクワに行っておりまして、そのときにプーチン大統領と会ってかなり、領土問題についてプーチン大統領の話も聞きましたし、私の主張もプーチン大統領にはその席で直接述べておりますので、その二カ月後にまたモスクワへ来たからまた会う。今度はでは何のために会うのかということを考えますと、私は、行ったからその都度会うという必要も必ずしもないなと。これが、総理からの言づけがあるとか親書でも携行するということであればそれを届けるということはあったかもしれませんけれども、私自身そうした役目を担っていたわけではございません。

 したがって、プーチン大統領との会見がなかったことは、そういうものを当初から私自身は予定をしていなかった。ただし、それを期待していた人たちがいたことは、これは事実。同行したマスコミの人たちからすればやはり大統領との会談というものは期待はしておられたかもわかりませんが、私自身はそういう思いはございませんでした。

 そして、二月の二十五日に首脳会談をということでかなり話は詰めて、一時はそういうことで合意ができたかに見えたのですが、イワノフ外相は、自分はそれでいいと思うが最終的にプーチン大統領の了承がなければいかぬ、もう少し待ってくれ、こういう話でありました。私は、それはそうだろうと思いました。しかし、何時まで待てばいいかと言ったところが、ちょっと時間は忘れましたが、先方が何時までと言う時間がたまたま私が飛行機に乗る時間より三十分か一時間ずれておりまして、そこまでは自分は待てないということを申しまして、さらに若干のやりとりをいたしました結果、では大統領の了解が得られればという条件つきで発表しようということで発表したのであって、そのこと自体も、私は意趣返しのようなことであったというふうには思っておりません。

 ただその後、今度はその二月の二十五日という日取りがだめだということになりまして、先方からいつならどうかというような話がありましたが、こちら側の都合が悪いということで延び延びになっていた。本来この首脳会談は昨年の十二月末にやるか、遅くも一月にはやろうと我々考えていたものですから、これが余り延び延びになることは適当でないと思っておりましたところ、総理から、一度首脳会談をやってみようということで総理とプーチン大統領との間で電話会談が行われた、それはそのとおりでございます。

 その席で三月の二十五日でどうだという話をされて、先方もその日なら了解ということで、そこで決まったということは事実でございます。

 ただし、それが政権延命のためにやったというのは事実ではないと思います。

前田委員 ありがとうございます。

 では、このイルクーツクの声明ですけれども、これは五六年の日ソ共同宣言を明記した、文書上しっかりと認めたということで成果があるというふうに日本政府の方は主張されておりますけれども、これはせんだって当委員会で河野外相が御説明いただいたように、もうこれは既に両国が批准したトリーティーでございまして、国際法上認められるものであるということから考えますと、私は、この再確認はむだではなかったかと。むしろ、これを再確認することによって新しいメッセージを、日本がこれで納得するのではないか、二島返還で納得するのではないかというメッセージを与えてしまうような危険性が出てしまった。そういう意味では、私は日本外交の汚点となることではなかったかと思います。

 とすれば、日ソ共同宣言から四十五年たった、この間に行われました日本のリーダーたちによる本当に涙ぐましい努力がやはり無になってしまったのではないか、そんなことを思って仕方がありません。

 ですから、一回この場でこれまでの経緯を一つ一つ確認させていただきたいと思います。

 七三年十月十日の日ソ共同声明であります。これは田中・ブレジネフ会談で、田中総理が初めて、未解決の問題が領土問題である、これを確認させました。そして、領土とは四島であると、二度にわたって周到にブレジネフ書記長に確認させたわけでございます。次に、九一年の四月のゴルバチョフの訪日に際して、海部・ゴルバチョフコミュニケが出され、解決されるべき領土問題の対象とは北方領土四島であり、四島の日本名である国後、択捉、歯舞、色丹は明記したわけであります。そして、九一年末のソ連の崩壊を受けて、九三年の東京宣言におきまして、日ロは法と正義の原則に基づき、北方領土問題、四島の問題を解決することを確認しております。

 こうした一つ一つの努力を積み重ねてこられたわけでありますけれども、これについてどう評価されるのでしょうか。

河野国務大臣 大変長い時間が経過をしておりまして、ロシア自体が、かつてはソ連邦であったものが現在はロシアに変わっているというぐらい、長い歴史と変化の上にこの問題が未解決でずっと残ってきてしまったわけでございます。

 一九五六年の共同宣言、あの当時は相当踏み込んで、一九五六年に平和条約をもう締結しようという決意でモスクワで交渉を行ったわけでございまして、当時は、平和条約を締結するためには大きな問題が三つあると。一つは戦争の終結をやる、もう一つは賠償問題について片をつける、三つ目は領土問題で決着をする、この三つを決着をつければ、もちろんそれ以外に抑留者の問題などもございますけれども、大きく分けてその三つの決着をつければ平和条約が結べるということで、相当思い切って踏み込んでいろいろな議論をしたわけですが、四島のうち二島までは何とか向こう側から明示的に引き出したわけですけれども、四島というのはとうとう合意ができずに、平和条約が結べずに、日ソ共同宣言という形で、戦争状態の終結ということだけは決めて、賠償問題も決着をつけて、そこで終わったといいますか、そこから始まったといいますか、そういうことがあった。

 それ以来、ソ連時代は非常に厳しい冷戦の時代でございましたから、その冷戦の時代には、ソ連側は、例えば日米安保条約のもとで米兵が駐留している間は云々とかいろいろ厳しい発言が出た。さっき議員は、一九五六年宣言はもう既に両国が批准している問題で、これは再確認する必要もないぐらいのものだというふうにおっしゃいました。確かに私もそのとおりだと思います。両国の首脳が署名をして両国国会が批准をしているんですから、それはもう本当にこれ以上のものはない、それぞれの国に義務的に存在するものだとすら私は思いますけれども、ただ、今申し上げたように、それは、その当時のソ連と日本の署名であった。

 そのソ連がロシアになった。ロシアになったときにロシアのリーダーは、これまでソ連邦がやってきたさまざまな国際的な約束はそのまま全部引き継ぎますと言ってはおりました。言ってはおりましたけれども、五六年からそれまでの間に、今申し上げたように、この五六年を否定するような発言がソ連側からあったりした経過もございますから、これはもう一度文章で確認ができればそれはできた方がいいというふうに私は思っております。

 長い経過の中でクラスノヤルスク合意というものができまして、何とか二〇〇〇年までには、つまり世紀をまたがずにこの問題を解決しようということであったと思いますし、それから、エリツィン大統領の非常に強い指導力と日ロ関係というものに対する思いがあって、ここは二〇〇〇年までに何とか処理をしたいという思いが双方にあったことも事実だと思います。

 しかし、それが皮肉なことに、その二〇〇〇年を迎えるちょうど正月にエリツィン大統領が引退声明をされる、そこでプーチン大統領に大統領がかわられるということもあって、ついに二〇〇〇年という約束のといいますか、両国で考えていた時間内には問題が解決しなかったという経緯があって、そしてことしになったわけです。

 私はやはり、今議員がおっしゃったように、これまでさまざまなことがあったわけですから、二〇〇〇年というクラスノヤルスク合意を踏まえて、これまでのこと、これまでのことというのは五六年宣言に代表される、ここから始まったんだということを確認し、さらに二〇〇一年からは何を目指してやるか、九三年の宣言を目指していこうという合意が両国首脳によってなされたということは、私は、それは非常に意味のあることだったというふうに思っているわけです。

前田委員 今外相もおっしゃられたように、本当に歴々たる交渉の経緯があるわけでございます。兵藤長雄元欧亜局長は、これを、忍耐強く息長く粘る正攻法とおっしゃられておりました。私もまさしくそうであると思います。

 そして、そうした四十五年の交渉の成果を踏まえるならば、私は、今回のこのイルクーツクは、やはり次の二点で非常にまだまだ危惧すべきところが多いと思うのです。第一に、五六年宣言について解釈の相違を非常に生んでしまっている。日本は、二島、歯舞、色丹は五六年宣言、東京宣言をあわせて考えるならば、あとは二島の返還を交渉するのみというふうな解釈をされている。しかし、ロシア側は、これはまだまだ、五六年宣言というのは重要であるけれども、両国関係の発展の基礎となる唯一の文書ではない、こう言われて、記者会見でもプーチン大統領は、あと二島の返還というふうなことを認められなかったということでございます。

 そこを考え合わせますならば、プーチン政権は、この二島の最終返還に日本の世論が到底応じないと分析し、国後、択捉両島の帰属の問題の協議のテーブルにのるポーズをとりつつ、最終的には翻って、二島の最終返還を日本側に突きつけてこの交渉を終わりにしようというプーチン大統領の新戦略が私はあるように思えてなりません。

 また、このイルクーツクの声明が失敗であると私が思います理由の第二点ですけれども、やはり交渉の期限を切れなかった。今サハリン州政府は、二年前から、北方領土に存在します一万人のロシア人に、土地などの所有権あるいは使用権の登録をさせる、徹底させる、そしてロシア語を使用してロシアの法律、文化、教育、生活習慣を厳守するように指示して、あるいはサハリン州政府は、北方四島をユネスコの世界遺産に登録することでロシア領であることを国際的に認知させて、またリゾートゾーンをつくり、欧米の企業に貸し出すことも検討しているというようなことを伺っております。

 こうした動きがサハリン州政府であるにもかかわらず、どんどん時間稼ぎをされているような気がしてしようがありません。こうしたプーチン政権の動き、あるいはサハリン州政府の動きを見ますと、やはり先ほど申し述べた二島返還決着というふうに収束させていこうというプーチン政権の新戦術があると私は思えてならないのですけれども、この点、外相はどうお考えでございますか。

河野国務大臣 日ロ関係というものは、先ほども申し上げましたように、なかなか難しい二国間関係なのでございます。さっきも申し上げましたように、冷戦時代あるいは日本とソ連と言われた二国間の時代、そういう時代を経て、今冷戦も終わり、日ロという関係は本当に、かつてのことを考えれば伸び伸びと自分たちの思いを述べることができる、そういう雰囲気になってきた。それだけでも私は、先輩、これまでやってこられた交渉担当者と我々とは随分違うというふうに思うのです。随分我々はロシア側に対しても率直に物を言い、時には厳しく問い詰めることすらある、そういうやりとりをしています。していますが、やはり何といっても、この二国間関係の難しさというものは否定できない難しさがあるわけです。

 今、五六年とおっしゃいますが、この五六年もなかなか、五六年自体を実行しようとすればまだまだ詰めなければならない部分があるのですね。議員は十分御承知のとおり、五六年で、平和条約を結べば、平和条約が締結されれば二島を、歯舞、色丹について日本に引き渡す、非常に大ざっぱな言い方ですが、そういうことになっているわけですね。そこで、平和条約が締結されれば二島は渡すよというけれども、平和条約が締結されれば、そこで領土問題は終わってしまうということにもなりかねないわけですから、その辺のことも十分考えて我々としては対応をしているわけです。

 一方、もう半世紀にわたって四島のかつての旧島民の人たちがこの島を見ている気持ちというものも我々は痛いほどよくわかりますから、何とかして、できるだけ早く、我々が主張する四島の帰属を決めて平和条約を締結するという我が国の方針をロシア側に理解をさせ、のませたいというふうに思っていて、それの期限を切るかどうかということになるわけですが、確かに、二〇〇〇年という期限を切って、我々もその期限の中で交渉をしましたが、期限を切っての交渉にはいい点もあればなかなか難しくなる点もあります。

 そこで今回は、イルクーツクでは、期限というものが、何年という物理的な期限の切り方はできませんでした。これは私の感じから率直に申し上げれば、日本側が切りたい、期限をつけたい、こう主張しても、ロシア側はそれに対して、具体的な期限を切るということが必ずしもロシア側とすれば了承できないということで、これは相当突っ込んだやりとりをした結果、結局期限は切らずに、できるだけ早い時期にということで今回は終わっているわけで、その辺を見ても、いかに日ロの交渉というものが難しいかということを理解していただきたいというふうに思います。

 しかし、先ほども申しましたように、我々は何としてもこの問題を解決しなければならぬ、そのためにできる限りの努力をいたしたい、こういうふうに今考えているところでございます。

前田委員 御答弁ありがとうございます。

 私は、今余りにも日本外交はロシアに対して譲歩のカードを切り過ぎているのではないか、こう思います。今は一たん引いて、国内世論が四島返還であるということを強く主張すべき時期ではないかと私は思うのです。

 川奈の提案にしましても、領土問題を国境の画定問題というふうにすりかえ、また、北方領土占拠の不法性という日本みずからの主張の最大の根拠をこれで失ってしまったということであると私は思うのです。

 終戦後に、八月十八日に、この千島列島にソ連が入ってきたわけでございます。私は先般、第二十六次の愛知の方の北方領土視察団の団長として現地を訪れましたけれども、そこで私は元島民の皆さんのお話を伺ってまいりました。千島歯舞諸島居住者連盟の元支部長の得能さん、そして現在の支部長の河田さんのお話を伺ってまいりました。非常に悲惨な目に遭われている。

 ソ連軍が学校に軍用犬を引き連れて入ってくる。銃も持ってくる。村長が射殺される。そして、夜しけた海に逃げ、子供たちが船が転覆していなくなる。親が半狂乱で捜し回って、朝方ついに百メートル先に子供の死体があるのに気がつく。そしてまた、収容所から日本に船で帰るその二時間前に二歳の子供が死んでしまう。それをおぶって、死んだ子供は船に乗せられないものですから、死んでいると言わずにおぶって日本に連れ帰って、函館で母親が泣き崩れる。そんな元島民のお話をいろいろ伺ってまいりました。

 また、譲歩のカードを切り過ぎている例の一つですけれども、この十年間に六十二億ドル、約七千億円の四分の三がキャッシュでロシア側に渡っている。そしてまた日ロ地先沖合漁業交渉で、三千三百トンから一気に八〇%減の六百六十トンに落ち、これは百七億八千万の損害である。根室市は年間予算が百八十一億でございます。こうした譲歩に対してどうお考えなのか。

 また、今北海道の中では座礁船の話がある。根室市は、ロシア船籍の座礁船を撤去するのに何と三千八百万かけて、昆布漁の害にならないようにということで、オイルを抜き取って沿岸で沈めるという作業を行ったということでございます。

 こうした多くの譲歩があり過ぎるということですけれども、何とか国内世論の喚起のために、四島返還の大きな声をしっかりまとめ上げるために、また外相に頑張っていただきたいと思います。いかがでしょうか。

河野国務大臣 議員もいろいろ勉強をされて、旧島民の方のお話を聞かれたり、さまざまな歴史についてもお調べになったりしておられるわけでありますが、現実の外交交渉というものがなかなかそう簡単なものでないこともまた御理解をいただきたいと思うんです。

 私は、一九五六年、日ソの共同宣言をやった鳩山一郎首相と、先方はブルガーニンですか、ソ連側の代表との会談などというものはやはり相当厳しい雰囲気の中でやられたに違いない、それに比べればということを先ほど申し上げましたけれども、しかし、現実に今交渉をしようとすれば、さまざまなアイデア、さまざまな条件をつくって一歩でも二歩でも進めたいという気持ちがあるわけです。

 そこで、かつては、政経不可分、政治的に進まなきゃ経済も進めないという政策をとったこともありました。しかし、先方がロシアになって民主化されて、市場経済を志向するという状況の中で、むしろ、経済を少し先に進めることによって、ロシア国民の日本に対する気持ちというものが、日本に対する理解というものが進むということがまた重要ではないかと。さっき議員は日本の国内の世論のことについてお話しになりましたけれども、日本の国内世論もそうですけれども、ロシアの世論というものも大事なんですね。

 そこで、今我々はさまざまな計画を立てて、主として極東地区が多いわけですけれども、ロシアに対して有償、無償の資金協力をしております。今ここに資料がございますけれども、有償の分が約五十六億ドル、無償は約七億ドルというのが実際の数字でございますが、こうした有償、無償の資金を支援する。あるいは、民間も投資をする、民間も先方と協力して仕事を、貿易をしていく。それによって日本に対する理解というものがだんだん定着をしていく。

 これは、何といいましても、大統領が領土問題をこうしたいと思っても、そこに住んでいる、あるいはその地域に住んでいる人たちが自分たちは絶対嫌だということになるとなかなか難しくなるわけですから、やはり日ロ関係というものをいろいろなところから糸口を見つけて進める努力をするということが必要だろうというふうに思うわけです。

 私としては、政治的な部分もあれば、経済的な部分もあれば、あるいは文化交流もあれば、あるいは人的交流を、さまざまな交流を行って、双方が理解し合って問題を解決するという目標に向かって進むことが、今考えられる一番いいアプローチの仕方ではないかというふうに思っているわけです。

前田委員 時間が来ましたのでこれで終わりますけれども、外相が進められている共同文献の改定とか、日ロ両国の世論の喚起ということは非常に大事だと思いますので、日本の世論が強く四島の返還を求めているということを主張させていただきまして、質問を終えさせていただきます。ありがとうございました。

土肥委員長 次に、土田龍司君。

土田委員 国連の安保理改革についてお尋ねします。

 九三年から始まった改革の論議は、非常に多くの国が改革の必要性を強調しているわけでございますし、あるいは七十三カ国が常任理事国や非常任理事国の拡大を求めているわけでございます。拡大枠や拒否権の扱いをめぐってまだまだ意見の集約ができていないというふうに思いますけれども、改革を進めていくには、何よりも加盟国の積極的な取り組みが不可欠であるわけです。そうした中で、改革の本格的な論議をさらに進める外交努力をする時期に来ているのではなかろうかというふうに思います。

 そこで、大臣にお伺いいたしますが、国連における安保理改革の現状について。二つ目が、議論が始まってから十年たつわけでございますが、二〇〇三年が一つの節目ではないかと言われておりますので、今後の展望についてお答えください。

河野国務大臣 議員がお話しになりましたように、もう安保理改革はその議論が始まって七年あるいは八年たつわけでございます。

 この間さまざまな議論が行われましたけれども、昨年、ミレニアムサミットが国連で行われたときを我々は一つのターゲットとして、国連内の、いわゆる国連世論といいますか国際世論といいますか、そういうものを盛り上げて、そのモメンタムを使って何とか改革に持ち込みたい、こう考えて、いろいろな作業をしてきたわけですが、昨年の国連総会、首脳が集まる国連総会におきまして各国首脳が次々と演説をなさる。まあ結果を見ると、総論は賛成だ、しかし各論になるとなかなかそう簡単ではないという結果のように思います。もちろん、我が国に対します支持は相当数に上ったことも事実でございますけれども、まだまだそれはそう簡単ではない、残念ながら簡単ではないというふうに思うわけです。

 今議員もお話しになりましたが、常任、非常任議席双方の拡大を大多数は支持していることがわかりましたけれども、今後、拡大後の安保理の具体的な議席数を幾つにするか、あるいはその折に拒否権の問題をどうするかとか、まだまだ議論し合意をつくり上げなければならない論点が残っているわけでございます。これらの点について、また、それらの議論は、もう大体、幾つになれば我が国は入れるかとか、幾つだと我が国は入れないとか、それぞれの国はそれぞれの見当をつけ始めておりますから余計話はなかなか進まなくなるという胸突き八丁の状況に今来ているわけでございます。

 御指摘のとおり、二〇〇三年を安保理改革で一つの目安にしよう、これは別に国連で決めているわけじゃございませんで、私ども国連改革を目指す仲間が、国連改革の話が始まってちょうど十年目には決着をつけようというので、二〇〇三年を一つのめどということにして作業をそれぞれしております。

 それは、いろいろな組み合わせで集まって話し合うということなどをしているわけですが、もうここまで来ると、日本が余り熱心にいろいろな国を集めて話をし始めると、あいつは自分が入りたいからやっているんだというふうになる。

 これは私も実際経験をしましたけれども、G8のサミットでも、あの中で安保理に入っていない国が幾つかあるわけです。もちろん日本もドイツもイタリーもそうでございますが、その中で、国際社会は公平に見て、日本とドイツはまあ入るんじゃないか、安保理を改革すれば入るんじゃないかと言われている、若干身びいきはあるかもしれませんが。そういう中で、イタリーはなかなかそう簡単じゃないぞということになると、イタリーの立場は非常に微妙な立場に立つわけですね。そうしたことなどを考えますと、これからの話はやはりかなり難しい話になってくるかもしれない。

 ただ、一つ言えますことは、アメリカが、今まで安保理の数をふやすことに非常に強く抵抗して、自分は賛成できないと。つまり、数をふやすということは、なかなか合意がつくりにくい、しかも機動性、素早く何か合意をつくるということは難しくなるから、余り数をふやすことは自分は賛成じゃないと言っていたアメリカが、クリントン政権の末期に、安保理の数をふやすことはいいんじゃないかと。これはもちろん公式に言ったわけではありませんけれども、全く非公式に、安保理の数をふやす、そしてふやすとすればこのくらいかなというような話を我々とするようになりました。アメリカをとにかく説得をして、安保理改革へのアメリカの理解というものが得られれば、次のステップへ進めるかなという感じはしております。

 ただ、私の個人的な意見と言うと少しどうかと思いますが、やはりその場合に中国だと私は思いますね。中国が日本の安保理入りに支持をするかしないかということは、やはり日本にとっては、次に考えなければならない大きな問題だということを私は思っております。

土田委員 アメリカの影響が非常に大きいというお話でございますが、さきの森総理とブッシュ大統領の会談の中でこの話が出たのでしょうか。あるいは、どういった話し合いがされたのでしょうか。

河野国務大臣 森・ブッシュ首脳会談の中では、安保理改革についての話がございまして、それを受けまして、日米共同声明の中にその文言を盛り込みました。すなわち、両首脳は効率性の向上を目的とする国連安保理改革推進に関する両国のコミットメントを表明した、この関連で、両首脳は日本の安保理常任理事国入りのため引き続き協力することで意見の一致を見た、こういうことが共同声明の中にも盛り込まれて、両国首脳は署名をしているという状況でございます。

土田委員 安保理改革を含めまして、国連のあり方といいますか、国連のことについても非常に重要なわけですが、どうもアメリカが少し国連から引いてきているのじゃないか。引いているという意味ではないのですが、多少、拠出金や分担金を少なくして、なるべくみんなにやらせようじゃないかというような見方ができるかと思うのですが、こういったアメリカの国連に対する取り組み方、これについてどういうふうに分析をされておりますか。

河野国務大臣 アメリカは、その議員の中に、国連との関係について非常に消極的な議員がおられて、相当発言権の強い議員でございますが、そうした議員の影響も受けておるのでしょうか。

 あるいは、私に言わせれば、アメリカという国自身がどうも、ああいう国際会議といいますか、マルチの場で何か物をまとめるということについて余り大きな期待をしていない。アメリカはどうも、バイの関係で、二国間で話を詰めるということに非常に熱心で、マルチでみんなが集まってその中で何か物をまとめようとすること、余りそういうことが上手でないといいますか、好きでないといいますか、あるいはそういうことに余り熱意がないといいますか、表現は適当でないかもしれませんが、むしろバイの方がマルチよりもアメリカは熱心だなという感じがするのでございます。それは、議員もおっしゃった、国連での議論も、アメリカは、さっきも申しましたように、数は少ない方が効率的だ、こういう基本的な認識があります。

 私がパウエルに言ったという話は何回もいたしましたけれども、私は国務長官に、国連の中で、例えばユネスコからアメリカが席を立っちゃうなんというのはいかがなものか、あるいはWTOだってアメリカがもっと協力をしてやったらどうかと。

 今問題になっております京都議定書の問題などもそうでございます。それからCTBTなんかもそうだと思いますが、どうもアメリカはそういう国際的な場で物事をまとめるということが多くないように私には思えて、アメリカがもっと国連に熱意を示してほしいという気持ちは、私は正直、ございます。

土田委員 きょうは時間がないので、はしょりまして、日朝関係について、北朝鮮との問題についてお尋ねいたします。

 昨年十月に行われた十一回目の交渉以来、再開がされていないわけでございますが、次回の交渉については、それぞれの本国で準備した上で交渉を行うということで一致しているわけです。いまだ次回交渉が開催されていないということは、日朝双方に、またはどっちかの国に、準備がまだ整っていないため会談ができない状況にあると思われるわけですが、現在、我が国自身の次回交渉へ向けた準備はどういった段階にあるのか、また、次回交渉の開催時期の見通しについてお答えください。

河野国務大臣 前回の国交正常化交渉が昨年の十月の末に北京で行われたわけでございます。その北京で行われました会談の中で、今回はこれでやめよう、次は双方の準備が整ったらやろう、こういうことで別れてきているわけでございまして、双方の準備が整ってきたかどうかというのは、まさに、先方の都合もありましょうし、我が方の都合もあるわけでございます。

 それはどういう意味かといいますと、前回の交渉の中でも若干の機微なやりとりがございまして、その分については双方ともに持ち帰って、よく分析をして対応を研究して準備を整える、そういう意味があったというふうに私は理解しているわけですが、その間に、朝鮮半島をめぐる環境が少し変わってきたということもございます。そうしたことなども計算に入れながら、しかし、でき得る限り早い時期に、正常化交渉というものは、やれるものならやりたいというふうに私どもは思っております。

 では、我々の準備は整ったのか、あるいはこういう御質問があるかと思いますが、その準備につきましてはいろいろなものがございまして、すべてに準備が整ったかどうかということになると、どんなことがあっても我が方の準備は万端でございますというところまでいったと言うほど自信はございませんが、我が方としては、今できる限りの準備は整えつつございます。

 一体それはどういうことか、こう言われると実は大変申しにくいことでございますが、日朝の会談が終わりますときに、双方での話し合いで、交渉の中身については一切対外的には言及しないという約束で前回の交渉を終わっているものですから、この間の交渉の内容あるいは今後の交渉のやり方等について申し上げることは控えさせていただきたいと思います。

土田委員 日本側の方はある程度の準備が整いつつあるだろう。多分、韓半島の問題もこれありというふうなことをおっしゃっているんですが、北朝鮮の方がいわゆる南北会談を延期しましたね、ちょっとその辺のことをもう少し詳しくお話しいただけますか。北朝鮮が準備できていないということなのか、我が国はある程度準備はできているというふうにおっしゃっているわけですから。

河野国務大臣 私が申し上げたのは、北の方ができていないと言ったわけではなくて、できていないのではないかというふうに申し上げたつもりでおります。

 我が方にとりましても、現在の朝鮮半島の状況の変化というものは、我々もまだまだ考えなければならない余地が実はございます。それは、アメリカの対北朝鮮政策がどういうふうになるかということも、我々としてはよく確認をする必要がございます。したがってTCOGなどという会議をやっているわけでありますが、それでも、我々とすれば基本的には従来の基本的な考え方は変えずにと思っておりますから、準備の状況はある程度整いつつあると先ほど申し上げたわけでございます。

 北朝鮮の側については全く推測の域を出ません。今お話しの南北会談の可能性が一体いつあるのかということについても、全く我々には判断をする材料が今のところございません。しかし、少なくとも、南北の赤十字会談が中止になったり、あるいはスポーツが統一チームをつくろうといって合意していたものができなくなったりという状況が次々とここのところあるわけでございまして、これはやはり何か政策的な変更といいますか、あるいは国内の事情であるかもしれませんが、何か変化があるんだろうということを我々推測をしているわけでございます。

土田委員 時間が来ましたのでやめますけれども、十一回目の会談が終わってから半年たった今、今大臣がお答えのように、いつ具体的な開催ができるかどうかというのがほとんどわからない。やはり拉致問題やたくさん懸案を抱えているわけでございますので、別に双方とも完璧な準備が整わなくても、やはり定期的といいましょうか、年に一回か二回が適当かわかりませんけれども、そういった努力をされていかなければなかなか進んでいかないんじゃないかなという感じがしております。ぜひ進めていただきますようにお願いをいたしまして、質問を終わります。

土肥委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 私は、最初に、アメリカの原潜の佐世保港における通告なしの入港事件について伺いたいと思います。

 私たち日本共産党は原潜の入港そのものに反対している立場でありますけれども、きょうの議論はそこではなくて、原潜入港の安全性の担保としてアメリカみずからが、日米両政府みずからが定めてきたルール、二十四時間前の入港についての通告義務、これを怠って、そして入港してきた。これはしかも、佐世保市長が外務省に問い合わせて、その外務省の答えそのものも、アメリカの実態をつかんでいないような入港のあり方であった。その限りでは、佐世保の市民から見れば、外務省は何をやっているのか、日本外交の大失態ではないのかと言われても仕方がないような事態だと思うんです。

 さすがに河野外務大臣も、この問題については非常に厳しい態度を記者会見を見る限りとっているように見えますけれども、ただし、三日の午前の記者会見では、米軍が通告漏れの原因について十分な説明があるまで、外務省として原潜の入港に協力できないというような考えを表明しています。これはインターネットでとった外務省の記者会見メモにも出ております。ところが、きょうの一部報道では、外務省では、きのうの午後のアメリカ側の説明で、つまり、自分たちが間違いでしたというようなアメリカ側の説明で納得して、そして協力できる状況になったというぐあいに態度を変えておられます。

 本当にきのうのアメリカ側の説明で協力できる状況になったのか。また、佐世保へのルール違反の入港と同様のルール違反の入港というのはほかには絶対にない、このように言い切れるのか。このことについて答弁をお願いしたいと思います。

藤崎政府参考人 お答え申し上げます。

 米原子力潜水艦シカゴの入港については、今委員御指摘のとおり、米側に対しまして、私どもの方から通報にミスがあったことについての指摘を行いまして、強い遺憾の意を表明し、再発防止について申し入れてきたところでございます。これにつきましては、二日、私の方から在京米国大使館臨時代理大使に対して申し入れを行い、また、改めまして大臣の指示に基づきまして、原因究明についてきちんとした説明を得たいという旨、三日に申し入れたところでございます。

 これに対しまして、三日午後に米側の方から、本件は米軍部内の連絡ミスの結果発生したものである、シカゴについては、当初から佐世保港に入港する予定だったにもかかわらず、第七艦隊の潜水艦部隊から在日米海軍司令部への連絡過程においてミスが生じたものであり、大変申しわけないという説明がございました。

 私どもといたしましては、本件は海軍部内の連絡ミスということでございますが、まことに遺憾であるということで再発防止策を協議するということとしておりまして、明日開催される予定の日米合同委員会の場で本件を提起することとしている次第でございます。

 米側も二度とこういうことを起こさないようにしたいということを言っておりますし、私どもといたしましても、こういうことが起こらないように米側としかるべく再発防止策を協議してまいりたい、かように考えております。

赤嶺委員 それ以外にルール違反があるのかないのか、そのことについても明確に答弁をお願いします。

藤崎政府参考人 それ以外にルール違反があったかどうかという御質問でございますが、過去に、二十四時間の期間内に通報が行われたということはございます。

赤嶺委員 私たちのしんぶん赤旗では、九七年から二〇〇一年までの間に、横須賀で四回、佐世保で八回、沖縄のホワイトビーチで二回の通報おくれなどがあり、ルール破りが横行している、このように言っています。河野外務大臣は、報道に基づいていつも質問するのはいかがなものかと言いますが、極めて具体的に、何月何日のどこで何が起きているかということを、この私たちのしんぶん赤旗ではきょう報道しております。

 それで、きのうの米海軍のミスでしたということで、これを了解して入港を許すというようなことではなくて、横行しているルール違反についてもきちんと整理をして、その責任が明確になるまでは少なくともあなた方の立場からは原潜は入港しないでほしい、入港に協力できる条件にはないという事態が続いていると思いますが、河野大臣はいかがですか。

藤崎政府参考人 今委員御指摘のとおり、過去に事前通報についておくれ等があったことは、先ほど御答弁申し上げましたとおり事実でございまして、これについては米側より、台風あるいはけが人等のやむを得ざる事情によって起きたものであるという説明がございましたが、私どもは、こういう場合におきましても二十四時間ルールというものが大事であるので、可能な限り二十四時間ルールというものは守られるようということを随時申し入れてきておりますし、今後今回のようなミスが起こらないように、私どもといたしましては万全の再発防止策を米側と合同委員会で協議したい、こういうふうに考えております。

赤嶺委員 私は、米側がいろいろその理由づけをしようと、その理由づけを国民に説明して納得してもらうということではなくて、無通報の出港というのもあるのですから、これだけの数のいわばルール破りが積み重ねられた上に今度の佐世保の事件が起きているのですよ。やはり、そういう点で日米間できちんと協議をして、それこそ入港を受ける条件にはないという強い態度を引き続き堅持してこの問題に対処していただきたいことを要望したいと思います。

 では、大臣どうぞ。

河野国務大臣 今北米局長からるる御答弁を申し上げましたように、これまでの今議員もおっしゃいました幾つかの例もございます。今回が私にとりましては全く納得ができなかったものですから、米側に対して強く申し入れをしたわけです。米側も早速にその原因等を調査して、遺憾の意をあらわしてきたわけで、私としてはこの問題は決着がついたというふうに見なければいかぬと思っております。

 再発の防止につきましては、先ほど御答弁申し上げましたように、日米合同委員会におきまして取り上げて、再発を防止するための何らかの方法、方途について協議をさせたいと思っておりますので、そちらに譲りたいと思います。

赤嶺委員 やはり腰が引けた、そういう対米交渉では対米交渉は進まないということを私は沖縄で体験している立場から一言申し上げて、きょうの本来のテーマであります機密費に移りたいと思います。

 この間の質問でもやりましたが、なぜ内閣官房の予算が外務省の職員の旅費差額に充てられているかという問題であります。

 旅費法によりますと、あくまでも内閣官房の予算は旅行命令権者の職員、つまり内閣官房の職員でなければいけないはずです。それから、旅費差額に充てる場合でも、現行の旅費法では、財務大臣と協議して定めないといけないと定められているわけです。

 ですから、何で内閣官房の予算が外務省の旅費差額に充てられているのか、そのことについて伺いたいと思います。

河野国務大臣 外務省といたしましては内閣官房の報償費について詳細をお答えする立場にはないわけでありますが、しかし、思いますのに、内閣総理大臣の外国訪問の際に、訪問団の活動条件を整えて、首脳外交を円滑に遂行し、成功裏に終わらせることを目的として報償費が支出されたものであって、内閣官房報償費使用の目的を逸脱したものではないと考えます。随員の内閣官房併任発令の有無にかかわらず、財政法に照らしても問題がないものというふうに私は理解しております。

赤嶺委員 そうすると、首相外遊の一行に参加をした外務省の職員というのは、身分を内閣官房の職員に変更した事実がありますか。

飯村政府参考人 お答え申し上げます。

 外務省の職員は、総理に同行をして外遊の際は、外務省の職員として同行させていただいております。

赤嶺委員 そうすると、首相に同行した外務省の職員への旅行命令権者は、外務大臣が出したのですか、それとも外務大臣の委任を受けた外務省のその部局から出たのか、いかがですか。

飯村政府参考人 ちょっと突然の御質問で正確ではないかもしれませんが、外務省の同行者は、出張ということで、外務省の旅行命令権者の命令を受けて出張しているということでございます。

赤嶺委員 これはさんざん議論されていたことですから、余り突然の質問でもないと思うのですが。

 そうなってくると、外務省の職員が首相一行に加わって、旅行命令も外務省の方から出たということになってくると、そこで使われた官房報償費というのは移しかえということにしかならないのではないかと思うのです。

 それで、財務省に聞きますけれども、予算の成立後において、予算の所管を変更するものを予算総則上は予算の移しかえというのでないかと思いますが、いかがですか。

土肥委員長 財務省、呼んでいますか。

赤嶺委員 財務省、呼んでいますけれども、来ていませんか。

土肥委員長 財務省は来てないです。

赤嶺委員 じゃ、いいです。財務省の質問は省略いたします。

 それで、予算の成立後、内閣官房の予算を外務省が使ってもいいという根拠、先ほど外務大臣は、財政法上も違法ではないということをおっしゃっていましたが、内閣官房予算を使ってもいいという根拠はどこにありますか。

飯村政府参考人 これは先ほど外務大臣がお答え申し上げたとおりでございますけれども、内閣総理大臣の外国訪問の際に、訪問団の活動条件を整えて、首脳外交を円滑に遂行するということで報償費が支出されたものと考えておりまして、内閣官房報償費使用の目的を逸脱したものではないと考えます。

赤嶺委員 前、二十七日に伺ったときに、私、宮澤財務大臣の、上納について財政法違反だということを紹介いたしまして、外務大臣はそれと同じ見解かと質問したのに対して、財務大臣の御答弁のとおりだ、このように上納が財政法違反であることを認めました。

 外務省の予算を内閣官房予算に移しかえすることが財政法違反であると言うなら、内閣官房予算を外務省予算に移しかえることがどうして財政法や予算総則に違反でないと断言できるのか。先ほどからの答弁を聞いていますと、明らかに矛盾しているのではないかと思いますが、いかがですか。

飯村政府参考人 私どもは財政法の解釈について有権的に申し上げる立場にございませんけれども、総理大臣の外国訪問というのは、官邸、それから外務省、さらには各省庁一体となって成功に導くために実施しているものでありまして、そういった目的のために報償費を使用するということは財政法違反ではないというふうに理解をしております。

赤嶺委員 皆さんは、外務省予算が内閣官房予算に上納された場合は財政法違反とおっしゃったわけですね。その場合には、やはり国会の議決を経ないで移しかえをするから違反だ、こういう認識で上納については違反だという認識を持たれたと思いますが、いかがですか。

飯村政府参考人 一般論として申し上げまして、総理の外遊に当たっては、内閣官房の予算、それから外務省の予算、これは外務省の場合は報償費でございませんけれども、一般経費、そういったものを総合して総理の外遊の経費を支えているわけでございまして、移しかえとかそういう問題ではないというふうに理解しております。

赤嶺委員 財政法の立場からいっても、旅費法の立場からいっても、やはり極めて不明朗なところがあるわけですね。あくまでも国家公務員の旅費や旅費差額というのは旅費法の規定に基づいて行われるべきで、そして、あなた方が外務省から官房機密費に上納がないという立場を本当に国民に納得される説明をとろうとするのであれば、やはり財政法も尊重して、財政法上も説明をするような金の流れになっていなきゃいけないと思うんです。明らかに外務省の職員の旅費差額を官房機密費から充てて行った。命令権者は外務大臣であるわけですから、旅費法でいえば、そこからも、首相官邸の官房機密費を使うのは移しかえになるわけですね。それから、旅費差額を充てることについても、財務大臣の許可を得なきゃいけない。

 そういう一切の手続を省いて行われる報償費、その性格にだけ説明の根拠を求めますけれども、私は、繰り返しますけれども、外務省予算を内閣官房の予算に上納することは財政法違反で、そして逆は財政法違反ではないんだ、そういうのは明らかに矛盾しているのではないかと思いますけれども、それはいかがですか。

飯村政府参考人 旅費の差額に充てられておりました内閣官房の報償費でございますけれども、繰り返しになってまことに恐縮でございますけれども、報償費は国の事務または事業を円滑かつ効果的に遂行するために最も適当と認められる方法によって機動的に使用する経費である。会計法上は、資金が取扱責任者に交付された段階において支出手続は終了しているものと理解をしております。したがいまして、一たん取扱責任者に支出された後の報償費の管理、使用については、形式上、会計法規上の問題は生じないという理解でございます。

 当然のことながら、取扱責任者には報償費の目的に合致した執行を行う責務が課されているもの、こういうふうに考えております。

赤嶺委員 時間が来ましたので終わりますけれども、最後は報償費は資金になると言われても、到底納得のできる答弁ではないということを申し上げまして、質問を終わりたいと思います。

土肥委員長 次に、東門美津子君。

東門委員 まず、防衛施設庁長官にお伺いしたいと思います。

 読谷村在の通称象のおりと呼ばれる楚辺通信所は、三月末をもって使用期限が切れまして、現在、期限切れ後の暫定使用が行われています。その通信所についてですが、楚辺通信所を管理していました米海軍安全保障グループ、ハンザ・グループと言われていますが、そのハンザ・グループが同施設から撤退したのはいつかということ。そして、撤退後しばらく、管理を民間会社に業務委託し、管理されていたようですが、現在、同施設を管理しているのはどの部隊ですか。よろしくお願いします。

伊藤政府参考人 御指摘のとおり、楚辺通信所につきましては、以前、ハンザ海軍通信保全群というものが使用しておりました。

 管理という言葉でございますが、施設の管理という意味で申し上げますと、在沖縄米海軍艦隊活動司令部というところが管理をしておるわけでございますが、使用部隊という意味では、先ほど申し上げましたハンザ海軍通信保全群というものが使用しておったわけでございます。これは平成十年の五月末まで。六月一日時点では既にこの部隊は使用しなくなったというふうに承知しております。

 現在でございますが、先ほど申し上げましたように管理部隊は同一でございますけれども、使用部隊といたしましては、米国防省の直轄部隊でございますところの国防通信沖縄分遣隊というものが使用しておる状況でございます。

東門委員 那覇防衛施設局は、米国防総省直轄のいずれの軍からも委託を受けていない国防通信沖縄分遣隊というふうに言っているようですが、この国防通信沖縄分遣隊はいつからそこに駐留しているのでしょうか。そして、これは新規配備というふうに理解してよいのでしょうか。

伊藤政府参考人 ただいま、いつからという御質問でございますが、詳細なところは実は私ども承知しておりませんが、平成十年の六月一日以降に使用を開始しているというふうに承知をしております。

 なお、今御指摘の配備という意味がどういう定義になりますのか、必ずしも私、理解できないというか、わからないところがございますが、いずれにいたしましても、国防通信沖縄分遣隊というものが使用しているということでございます。

東門委員 配備という言葉はあれなんですが、そうすると、この国防通信沖縄分遣隊というのは、それ以前はどこにいたのでしょうか。沖縄県にあったのでしょうか。あるいは、その性格はどういうものか、分遣隊の任務というのか、ぜひ教えていただきたいと思います。

伊藤政府参考人 申しわけございませんが、以前にどこにどういうふうにあったかということまでは、私ども承知しておりません。名称から見まして恐らく沖縄のこの使用のための部隊だというふうに思いますけれども、正確な意味で御質問にお答えするだけの資料を持ち合わせておりません。

東門委員 先ほどの御答弁の中で、平成十年の六月一日からというお話でしたでしょうか。では、部隊がそこの管理という言葉が正しいかどうかは別としまして、そこに入ったということを、県あるいは地元の読谷村にはその旨は通知されておられますか。

伊藤政府参考人 済みません、私今その関係の資料を持ち合わせておりませんが、通常、この種のものについて、必ずしも通知をするというルールになっていないのではないかと思います。申しわけございません、ちょっと事実関係を本日持ってきておりません。

東門委員 では、ぜひそれを後で教えていただきたいと思います。

 日米安保条約の第六条は、「アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。」とあります。施設・区域の使用は陸海空軍について認められるものであると理解しておりますが、国防総省直轄の、いずれの軍からも委託を受けていないその沖縄分遣隊の駐留根拠は何でしょうか。

伊藤政府参考人 条約の解釈に関することでございますので、私の方からお答え申し上げるのは必ずしも適当でないと存じますが、過去、いろいろと同種の御質問がございます。それにつきまして、このようにお答えしているところでございます。

 日米安保条約第六条に基づきまして、我が国において施設・区域の使用を許されますところの陸軍、海軍及び空軍とは、英文におきましては、固有名詞でございますところのアーミー、エアフォース、ネービーという表現ではございませんで、「ランド・エア・アンド・ネーバル・フォーシズ」とされております。この趣旨は、米国の陸軍省、空軍省及び海軍省に属する軍隊でなくては我が国における施設・区域を使用できないということではございませんで、陸上兵力、航空兵力及び海上兵力を構成する総体としての米軍であれば、日米安保条約の目的達成のため、施設・区域の使用を許される。

 これが過去、従来からも御答弁申し上げてきた内容でございます。

東門委員 今の御答弁を伺っていますと、そうすると、どういう部隊が入ってもいいということなんでしょうか。要するに、今までは、私たちの理解では、陸海空軍というふうに理解しておりました。それ以外のものが出てきたときにも総体的にこういうふうにまとめられるんだ、だから何が来てもいいんだというような解釈なんでしょうか。

伊藤政府参考人 ただいま御答弁申し上げたところと重複するかと存じますけれども、兵力を構成します総体としての米軍ということであれば、安保条約の目的達成のために施設・区域の使用を許されるということになろうかと存じます。

東門委員 よくわからないですが、また後で改めて質問をさせていただきます。

 次に、日米地位協定についてお伺いいたします。

 河野大臣は、問題が解決されることが大事であり、そのためには運用改善で対応する方が早くて現実的であるとおっしゃっております。確かに問題の解決は大事ですが、もっと大事なものもあると私は思います。

 前回の外務委員会の御答弁の中で、沖縄県民の負担には精神的な負担もあるということをお認めになられたわけですが、地位協定の問題は、まさにこの精神的な負担の問題であるということをぜひ強調しておきたい、そして御理解していただきたいと思います。

 第二次大戦終了後も、沖縄は長い間米国の占領下にあって、苦しみに耐えてきました。ようやく占領が終わり、この苦しみから解放されるかと期待したのもつかの間、占領時代と同じように米軍基地は存続し、治外法権のような地位協定により、県民の生活は脅かされ続けています。自分の国でありながら、今でも占領地か植民地の住民のような地位に置かれている県民の精神的な苦痛は、言葉では言いあらわせないものがあります。守ってくれるはずの日本政府は、米国との同盟関係の維持ばかりを気にして、沖縄県民の心の痛みに気づいてはくれないとの思いが強くあるのです。そのような状況の中で米兵による事件が次々と発生し、沖縄の怒りが爆発するのだということを知っていただきたいと思います。

 このような沖縄県民の精神的な苦痛をわかっていただきたい。ただその時々の問題が解決されればよいというものではないのです。

 確かに、その時々の問題解決のためには、運用改善の方が大臣おっしゃるように早く対応できるかもしれません。しかし、時間はかかっても、交渉が難航しても、日本政府が真剣に沖縄県民の声を聞き、そして沖縄のことを思い、米国政府と交渉してくれているということがわかれば、その方がはるかに沖縄県民の心は安らぐはずなのです。沖縄県民の負担を軽減するとおっしゃるわけですから、ぜひそのためにも地位協定の改定に取り組んでいただきたいと思います。

 大臣の御見解を賜りたいと思います。

河野国務大臣 日米地位協定が規定をしておりますものは大変幅の広いものでございます。せんだっても申しましたように、環境の問題やら何やらいろいろなものが地位協定の中で律せられているわけでございまして、地位協定の改定に取り組むとなれば、あらゆる部分についてこちらも主張しなければなりませんし、また、先方の主張も新たな主張があるかもしれないということは想像にかたくないのでございます。

 私は、現在の状況を見ていて、もちろん沖縄の皆様方が日常感じておられる問題というものがある、それはもう私もよくわかっております。したがって、そうした問題について解決をするための方途をさまざまなやり方で探ってきているわけです。

 例えば、今申し上げた環境問題などは、2プラス2で問題を提起して、そこで合意をして、地位協定の中ではありませんけれども、同じような効果のある文書というものを確認し合ったり、あるいはそれ以外にもさまざまな改善というものをしてきたことも御理解いただけると思うのです。

 そうした改善をし、恐らくこの地位協定を定めるときには環境問題はそれほど大きな問題ではなかったかもしれない、しかし、今やそれは日常生活の中で最も我々が配慮しなければならない問題の一つになっているわけでございますから、そうした問題にも我々は配慮をしていかなければならないというようなことなどを考え考えやっておりまして、私は、沖縄の皆さんからの御要請というものをじっと伺っておりまして、問題を一つずつ解決していくことが大事だという認識を持っているわけです。

 それは、私ども閣僚は閣議決定の枠の中で物を考えたりやったりしておりますから、閣議決定の中で考えるということが一つ。

 それから、少しでも問題を解決するために、今議員はそれだけではないとおっしゃいましたけれども、やはり問題があればできるだけ早く処理ができるということが我々にとって重要だと考えておりますので、運用の改善というものをやってきたわけですが、先般の問題の折には、この運用の改善だけで果たして処理ができるだろうかという不安を私は持ちましたので、運用の改善をさらに一歩踏み込んで、もっとわかりやすくといいますか明示的に、この場合にはこうだということをはっきり書けないものかということを考えておりまして、そうしたことが日米合同委員会を初め、そうした場で議論をされて、それがもう全く解決ができないということであれば、私は地位協定の改定も視野に入れるという気持ちを持っているということをかねて申し上げてきているわけで、この私の気持ちは、予算委員会でも申し上げ、沖縄に参りましても申し上げ、この席でも申し上げたつもりでおりますが、その気持ちはいささかも変わっておりません。ぜひその点は御理解をいただきたいと思います。

東門委員 改定をも視野に入れてということは私も確かに伺っておりますけれども、問題が起こる、事件が発生する、そうすると、そのたびに県民は、まだこれからもなのか、地位協定が結ばれて四十一年、ここまで来てまだこれからもなのかというやりきれない思いに本当にさいなまれます。

 そういう中で、国はというと、いつまでもそういう状況だと、何か対症療法的なものしかやっていない、本気で取り組む姿勢というものが見えない。何度も申し上げておりますが、やはり、沖縄県民のことをしっかり政府は見ていますよ、声を聞いていますよという形で出していただきたいと思うのです。これは、二国間の協定ですから、一方が申し出ればテーブルに着くことはできるというふうに私たちは理解しております。

 ぜひ、ここも主張すべきことは主張し、もちろん大臣がおっしゃるようにアメリカも言い分はあるかもしれません。今の日本とアメリカの同盟関係を見たときに、私は、一歩も二歩も日本は踏み出せるところにあると思います。ぜひその点で大臣のお力を投入していただきたいと思います。

 次に、十五年使用期限について伺います。

 その件に関しても、どうも政府は米国の顔色をうかがいながら恐る恐る話をしているようにしか見えません。確かに、この問題では米国の態度はかたく、交渉は難しいかもしれません。さきの日米首脳会談でも、ブッシュ大統領の話もありました。この問題にこだわることで、ある意味では日米安保体制に影響が出るかもしれません。しかし、十五年期限は、沖縄県知事と名護市長が約束した移設のための絶対に譲れない条件である。政府も閣議決定で重く受けとめると言っておられる以上、これは国民との約束であり、十五年期限の実現に向けて最大限の努力をするのは政府の義務であると私は考えています。

 日本は民主主義国家であり、政府は何よりもまず第一に国民との約束を重んじなければならないはずです。国民をないがしろにしてまで日米安保体制を守ろうとするのは本末転倒であるとしか言いようがありません。たとえ米国側がどれだけ嫌な顔をしようとも、十五年期限の設定は日本が日米安保体制を続けるための絶対の条件であると、不退転の決意で強く米国に伝えるべきではないかと思うのですが、大臣の御見解を伺いたいと思います。

河野国務大臣 十五年使用期限問題は、議員がおっしゃいますように、県知事あるいは市長の選挙における公約でもあったわけで、その公約を支持された多くの県民、市民の皆さんがいらっしゃるということを私どもは十分よく承知をしておりますから、このことは大変重いものだというふうに思っているわけです。

 アメリカに対しまして、私どもは、このことは会談の折には取り上げて、アメリカ側に、日本のといいますか、沖縄の県民の皆さん、市民の皆さんがどのくらいこの問題について強く考えておられるかということは理解してもらいたいということを、私も繰り返し何度となく言ってまいりました。今回は、政権がクリントン政権からブッシュ政権にかわったということもございました。総理も、非常に丁寧に沖縄県民の感情というものについておっしゃったということであろうと思います。しかし、それについて、ブッシュ大統領は、従来のクリントン政権時代よりは比較的強い調子でといいますか、はっきりとした調子でと申しますか、そのことについては困難であるということを言われたということだろうと思います。

 ただ、ブッシュ大統領も、困難だとは言いましたけれども、その後で、この問題は日米で引き続き協議をしていきましょう、こう言って会談は終わっているわけでありますから、これから引き続き協議をしていくということに当然なるだろうというふうに私は思っておりまして、普天間の移設の問題についての重要性を考えますと、この問題についてはこれから先もブッシュ新政権としっかり話し合っていかなければいけないというふうに思います。

東門委員 時間がないので終わりますけれども、最後に、京都議定書からの米国離脱について、外務大臣にお願いをしたいと思います。

 地球温暖化が進めば、サンゴ礁の白化現象、あるいは海面上昇による国土の喪失が起こると言われております。どちらも、日本にとって、沖縄にとっては大きな脅威です。地球環境面から見た安全保障という観点からも、日本政府は米国に京都議定書を守らせるべきだと思います。ぜひ最大限の外交努力をお願いして、私の質問を終わります。ありがとうございました。

     ――――◇―――――

土肥委員長 次に、国際電気通信連合憲章(千九百九十二年ジュネーヴ)を改正する文書(全権委員会議(千九百九十四年京都)において採択された改正)及び国際電気通信連合条約(千九百九十二年ジュネーヴ)を改正する文書(全権委員会議(千九百九十四年京都)において採択された改正)の締結について承認を求めるの件及び全権委員会議(千九百九十四年京都)において改正された国際電気通信連合憲章(千九百九十二年ジュネーヴ)を改正する文書(全権委員会議(千九百九十八年ミネアポリス)において採択された改正)及び全権委員会議(千九百九十四年京都)において改正された国際電気通信連合条約(千九百九十二年ジュネーヴ)を改正する文書(全権委員会議(千九百九十八年ミネアポリス)において採択された改正)の締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本件審査のため、本日、政府参考人として、委員桑原豊君の質疑に際し、外務省総合外交政策局国際社会協力部長高須幸雄君の出席を、また、委員赤嶺政賢君の質疑に際し、外務省総合外交政策局国際社会協力部長高須幸雄君、外務省条約局審議官林景一君及び総務省総合通信基盤局長金澤薫君の出席を求め、それぞれ説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

土肥委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

土肥委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。桑原豊君。

桑原委員 民主党の桑原でございます。

 国際電気通信連合、ITUの憲章及び条約の改正ということは、最近の通信技術の急速な進歩、そういったものに対応して組織をどう強化していくかという意味で、私は、その内容にあえて異を唱えるというものではございません。

 ただ、最初にお聞きをしたいのは、一九九四年から七年、そして一九九八年のミネアポリスからは三年、既に期間が経過をいたしております。こういう時代をリードするような非常に重要な内容の改正が、どうしてこんなに長い間国会に提出をされずに来たのか。

 今回のこの問題に限らず、外務省は、例えば世界遺産の条約などについても、それが採択をされてから二十年間も国会で批准されない。こういうようなことにも象徴されるように、どうもちゃんとしたタイミングで、そしていち早く議論をしていくという姿勢が乏しいのではないかということを、姿勢の問題としてお尋ねをしたいと思います。

 それから、特に、日本はこのITUについては、一九五九年から四十数年間にわたって理事国として中心的な役割を果たしてきておるわけですね。それから、分担金も世界の四つの国の一つとして最も重い分担金を支払っている、そういう役割を受け持っている国であるわけです。おまけに、一昨年の二月には、内海義雄元郵政大臣官房審議官が、このITUの事務総局長として、選挙に圧倒的な信任を得て勝ち抜いて就任をされているということで、単に情報先進国を目指してあるいはそういう意気込みという点で言うだけではなしに、やはりそういう意味での具体的な役割を果たしてきているはずなのになぜこんなに遅いのかということを、まず姿勢の問題と絡めて私はお聞きしたいと思います。

河野国務大臣 正直、条約を御審議いただくのに相当時間がかかっておりますことはおっしゃるとおりでございまして、この点はまことに申しわけないことだ、もっと適切に条約を処理していくべきであるというふうに私自身思っております。

 ただ、議員も御承知と思いますけれども、まことに難しいことに、外務省には御審議をお願いしなければならない条約がまだたくさん残っておりまして、数十本あるいは百本に近いかもしれませんが残っておりまして、その中には今御指摘の、私がこういうことを言うとおしかりをいただくと思いますけれども、おしかりを覚悟で申し上げれば、そう問題はないのではないかと思える条約も順番で残っていってしまっているということがございまして、私から、ぜひひとつ一度各党御協議をいただいて、円卓ででも条約について御審査をいただいて、問題がないものがあれば一度ばさっと処理をする、そしてその次からはやはりきちっとやっていく。今あれだけ残っているものの下に順に入れていくのはなかなか難しいのでございまして、何とかこれらの処理をさせていただきたいと実は思っております。むだ話で申しわけありませんが。

 今回お願いをいたしております案件にいたしましても、御指摘のとおり、我が国として重要視してこれまで参りました。そして、九四年に改正、ただ、その九四年の改正の折には、さらに再改正が行われるであろうということなどもありまして若干様子を見たということは事実でございますが、九八年の改正ということになりまして、今回はぜひひとつ御審議をいただいて御了承を得たいというふうに思っているところでございます。

桑原委員 大臣の御答弁は、どうもいかにも審議をため込んでいる国会にも何か責任があるような言い分で、そのような言い方に聞こえましたけれども、そういうふうにたくさんの外交懸案があるなら、それをどう本当に国を挙げてしっかりした審議をしてやっていくのかということは、まず外務省のそういった考え方そのものにそういうものがなければいかぬわけでして、やはりそのことをぜひ私はきちっとやっていただきたいということをあえてお願いを申し上げたいと思います。

 中身に入りますが、まず、今回の改正をもって、ITUに民間企業が参加をするということ、この促進を図っているわけでございますけれども、いわゆるITUの重要な役割といたしまして、電気通信に関する国際標準の決定、こういうものがございます。しかし、これは現実は、既に一定の有力な企業、国際的に活動しているそういった企業のいわゆる製品の仕様、世界的な支配的な製品の仕様、そういうものが事実上の国際基準として通用していて、それをITUが追認をする、こういうような形で、いわゆるデファクトスタンダードというものがあって、それを追認をするという形で、ITUの役割というものが非常に低く存在価値が見られているのではないか。

 そういう状況になっていきますと、これから、例えばそういうデファクトスタンダードを獲得する力のある企業が、ITUに参加する意義そのものを認めずに、みずからの力で市場を支配する、こういうようなことになりかねません。そうなると、こういった改正もますます効果が薄れていくわけでございまして、そういう意味で、これから一体ITUとしてそういう動きに対してどういう役割を果たしていくのか、このことが求められるわけでございまして、これはITUの存在価値そのものにかかわる重要なことだと思いますので、その点についてどういうふうに考えているのか、お尋ねをしたいと思います。

衛藤副大臣 お答え申し上げます。

 ただいま先生御指摘のとおり、デファクトスタンダードの例といたしましても、マイクロソフトのウィンドウズ等があるわけでありまして、これは、企業によるソフトの開発が事実上市場を支配いたしまして世界標準となった例でもあります。

 このように、今回のITUの関連二法におきましては、急速な技術進歩に伴い、民間の標準化フォーラムにおきまして市場のニーズに優先した標準が検討されておるわけでありまして、ITU以外の場でも標準の策定が行われております。

 ITUは、電気通信標準化の分野におきましてはこれまで主導的役割を果たしてきておりまして、その作成する国際標準は高い信頼を得てきております。民間事業者等の参加を促進する今般の改正は、民間の有するところの技術、ノウハウをITUの標準化作業によりまして一層反映させることによりまして、ITUとしてもニーズに応じたより迅速な標準化活動が可能となるようにするための法改正でもあります。

 我が国としましても、ITUを今後とも積極的に支援をしてまいりまして、その中で、ITUの標準化活動への我が国の民間事業者の積極的な参画をこれからも促進してまいりたい、このように考えているわけであります。

桑原委員 時間がもうなくなってしまいましたけれども、最後に、この条約改正とは関係ございませんが、一つだけお許しをいただいて、先ほど赤嶺政賢委員からもお話がございました、私どもの民主党としても、今回の佐世保の例の事前通報なしの無断入港について非常な憤りを持っておりますので、外務大臣のこの問題に対する強い決意と姿勢、そのことを、感想でも結構です、ぜひ一言お聞きしたいということで終わりたいと思います。

河野国務大臣 けさほど、アメリカのパウエル長官と京都議定書の問題につきまして電話会談を行いました折に、この問題に触れて、私から、現在我が国国内でも原子力潜水艦について非常に高い関心を持っていると、引き続きその通航に当たっては安全性確保などを要請したわけでございます。

 これに対しまして、パウエル長官は、今回起きた日本への通報の件についてはまことに遺憾に思っており、今後手続の厳格化に努めたい、こういうふうに述べておられます。昨日の出来事についても、長官は報告を聞いて十分わかっておられまして、通報の件についてはまことに遺憾であったということを述べておられたということを申し上げておきたいと思います。

 私としましては、これから先もこの種の問題については十分目配りをしてまいりたい、こう思っております。

桑原委員 どうもありがとうございました。

土肥委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 私も、国際電気通信連合、ITU憲章と条約の改正、これについて質問をいたしたいと思います。

 先ほど桑原委員の方からも質問がありましたが、このITUは、国際社会における目覚ましい発展を遂げている電気通信産業、本当に世界の諸国民に公平な恩恵を確保していくという意味でも大事な意味を持っているわけです。

 それで、先ほど質問にもありましたけれども、九四年の京都の条約第十九条の改正について、これは電気通信事業者に認めていた権限を工業団体にも認めるものだと理解するわけですけれども、それの一番のねらい。それから、その中で「当該連合員に代わって行動することができる。」とされている行動とは何か。さらに、各部門における会議や総会、全権委員会においての投票権はないということ、行動する場というのはあくまでも研究委員会であるという、これらの点についてまとめて確認をしたいのですが、いかがでしょうか。

高須政府参考人 お答え申し上げます。

 今回御審議いただいておりますITUの改正は、電気通信分野の民営化、規制緩和が最近非常に進んでいるということで、民間事業者が今後とも非常に重要な役割を果たしていくということを踏まえた改正でございます。

 具体的には、無線通信、電気通信標準化、電気通信開発という三つの分野で研究委員会というものがございます。この委員会では、従来から構成国の電気通信事業者、例えばNTTとかそういうところですけれども、それから放送事業者が構成国にかわって行動できるということはありました。

 しかし、九四年の改正では、さらに民間主導の研究開発が進んでいるということを踏まえまして、さらに加盟国の工業団体、企業も含めましたものですけれども、これについても、これらの研究委員会において構成国にかわって行動できる権限を付与するということが決まったわけでございます。この結果、各部門の研究委員会の効率性というものをさらに高めることになったわけでございます。

 では、民間事業者というものの具体的な活動は何なのかということでございますけれども、申し上げました無線通信、電気通信標準化及び電気通信開発という各部門の研究委員会の活動に参加するということになっているわけでございますけれども、その条件は、あらかじめ構成国の許可があるという場合でございます。例えば、各部門の研究委員会の会合に構成国が出席していないというときに、構成国の代表にかわりまして民間事業者が発言をするというのが一つの行動でございます。あるいは、勧告案に対する支持とか、その交渉をする、協議するということも行動になると思います。

 このような行動が認められるということでございますが、では、投票はどうなのかということでございます。これには特則がありまして、構成国が投票する可能性のある六つのITUの会議がありますけれども、そのうち、民間事業者等が構成国にかわって投票を行うことができるというのは三つの会議でございまして、具体的には、無線通信総会、それから世界電気通信標準化会議及び電気通信開発会議というところでございます。しかし、具体的にこの投票ができるのは認められた事業体という定義がございまして、電気通信事業者と放送事業者でかつ認められた者ということで限られてございます。

赤嶺委員 次に伺いますけれども、国際機関としてITU以外に、国連の食糧農業機構、FAO、それから世界保健機構、WHOのもとに共同でつくられているコーデックス委員会というのがあります。ここは、ITUの標準化活動における研究委員会と同様に、政府や民間が入って食品に関する基準などの勧告をつくっているわけですが、コーデックス委員会というのはかなりの強制力を持って、特に各国農業にも非常に大きな影響を及ぼしているわけですが、今回のこの委員会はコーデックス委員会とどのように違うのか、同じなのか、この点についてお願いします。

高須政府参考人 ITUの場合とコーデックスの違いということでございますけれども、ITUの場合には、電気通信及び無線通信という分野におきまして規格の標準化について勧告をつくり、それを公表するということになっておるようでございます。この勧告は、特定の規格を採用するということを強制するものでは決してなく、それを採用するかどうかというのは各国の政府、事業者の判断に任せられているということでございます。

赤嶺委員 ITUで決まった世界標準は、コーデックス委員会のように各国に押しつけられるものではないと。これについて、例えば今放送技術、NHKなどの地上デジタルTV方式、こういうのもあるわけですが、これが世界標準として各国の中で普及していく場合に、それは独自の努力が求められていくということになるのか、この辺についてももうちょっと具体的に説明をお願いしたいのですが。

金澤政府参考人 今は地上のデジタル伝送方式についてお尋ねだと思いますけれども、私どもの方式を世界的に広めていく上においては、私どもの独自の努力ということが必要でございます。

赤嶺委員 コーデックス委員会との違いというのも確認できました。

 そこで、ITUのいわば大きな任務と役割の期待もそこにあるのではないかと思いますが、昨年の世界電気通信標準化総会におきまして、インターネット国際接続の公平なコスト負担のルールを定めた勧告が承認されております。

 現在、アメリカのネットを海外から利用する場合、海外の事業者は、アメリカの国際回線の使用料などを全額払っています。しかし、アメリカからアメリカ以外のネットを利用するときは、アメリカの事業者は使用料を払っておりません。アメリカ以外の事業者が負担しています。これに対して、これまで多くの国が、公平なコスト負担のルール協定を要望してまいりました。この勧告はそれらの要望を受けてのものであるわけですが、アメリカは総会では留保を表明したと聞いています。ネットの料金の公平化について、その後の進展はどうなっているのか、お伺いします。

金澤政府参考人 昨年九月二十七日から十月六日までカナダのモントリオールで開催されましたITUの世界電気通信標準化総会、WTSA―二〇〇〇と言っておりますが、におきまして、通信料、それから伝送ロス等を考慮したインターネット国際接続に関する費用負担の原則に関する勧告というものが採択されております。本勧告につきましては、米国、ギリシャを除く国が賛成したということでございます。

 我が国としては、先ほど先生からも御指摘のございましたような費用負担の不均衡というものを考えまして、インターネットの世界的普及を一層促進する観点から、この勧告は有効な措置であるというふうに考えておりまして、日米規制緩和対話等におきまして、米国に対しまして、本勧告の受け入れを働きかけているというところでございます。

赤嶺委員 ぜひ、ネットの料金の公平さ、公平なコスト負担、本当に大事な課題でありますので、取り組みを引き続き強めていただきたいと思います。

 最後の質問になりますけれども、一九九八年のミネアポリスの条約第三十三条の改正について質問をしたいと思います。

 特に費用の回収のところで、受益者負担、そういう観点が指摘されておりますけれども、懸念されますのは、財政力の弱い途上国への影響であります。この点の懸念はないのかどうか、この点についても答えをお願いします。

高須政府参考人 九八年の改正におきまして、通信衛星の軌道、位置及び衛星が使用します周波数帯の登録などにつきましては、ITUが提供するサービスの費用を受益者から回収するということが提案されているわけですけれども、これにつきまして、ITUの財政収入に組み込む費用回収の原則ということを決めたわけでございます。

 これを具体的にどう適用するかということを一九九九年のITU理事会で決めました。ここでは、衛星の調整に関する費用の回収につきましては、途上国にも配慮しようという考え方から、途上国を含む全加盟国に対し、年一件は登録は無料であるという考え方を決めたわけでございます。ということになりますと、衛星打ち上げの実績が限られます途上国の場合には、このように、実際上は影響は少ないということになると思います。

赤嶺委員 途上国への影響を極力抑えるための努力をされているという御答弁もいただきました。

 これで質問を終わります。

土肥委員長 これにて両件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

土肥委員長 これより両件に対する討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決いたします。

 まず、国際電気通信連合憲章(千九百九十二年ジュネーヴ)を改正する文書(全権委員会議(千九百九十四年京都)において採択された改正)及び国際電気通信連合条約(千九百九十二年ジュネーヴ)を改正する文書(全権委員会議(千九百九十四年京都)において採択された改正)の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

土肥委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、全権委員会議(千九百九十四年京都)において改正された国際電気通信連合憲章(千九百九十二年ジュネーヴ)を改正する文書(全権委員会議(千九百九十八年ミネアポリス)において採択された改正)及び全権委員会議(千九百九十四年京都)において改正された国際電気通信連合条約(千九百九十二年ジュネーヴ)を改正する文書(全権委員会議(千九百九十八年ミネアポリス)において採択された改正)の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

土肥委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

土肥委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

土肥委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時七分散会




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