衆議院

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第9号 平成13年5月23日(水曜日)

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平成十三年五月二十三日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 土肥 隆一君

   理事 河野 太郎君 理事 下村 博文君

   理事 鈴木 宗男君 理事 米田 建三君

   理事 安住  淳君 理事 桑原  豊君

   理事 上田  勇君 理事 土田 龍司君

      池田 行彦君    熊谷 市雄君

      小島 敏男君    高村 正彦君

      桜田 義孝君    下地 幹郎君

      虎島 和夫君    中本 太衛君

      原田 義昭君    宮澤 洋一君

      望月 義夫君    山口 泰明君

      伊藤 英成君    木下  厚君

      首藤 信彦君    中野 寛成君

      細野 豪志君    前田 雄吉君

      丸谷 佳織君    東  祥三君

      赤嶺 政賢君    東門美津子君

      柿澤 弘治君

    …………………………………

   外務大臣         田中眞紀子君

   内閣官房副長官      安倍 晋三君

   外務副大臣        植竹 繁雄君

   外務大臣政務官      丸谷 佳織君

   外務大臣政務官      小島 敏男君

   外務大臣政務官      山口 泰明君

   政府参考人

   (外務省アジア大洋州局長 

   )            槙田 邦彦君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    藤崎 一郎君

   政府参考人

   (国土交通省航空局長)  深谷 憲一君

   外務委員会専門員     黒川 祐次君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十三日

 辞任         補欠選任

  虎島 和夫君     熊谷 市雄君

  土田 龍司君     東  祥三君

同日

 辞任         補欠選任

  熊谷 市雄君     虎島 和夫君

  東  祥三君     土田 龍司君

同日

 理事土田龍司君同日委員辞任につき、その補欠として土田龍司君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

五月二十三日

 国際労働機関憲章の改正に関する文書の締結について承認を求めるの件(条約第八号)

 最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃のための即時の行動に関する条約(第百八十二号)の締結について承認を求めるの件(条約第九号)

 相互承認に関する日本国と欧州共同体との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一一号)

同日

 女子差別撤廃条約選択議定書の批准に関する請願(原陽子君紹介)(第一九三八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際労働機関憲章の改正に関する文書の締結について承認を求めるの件(条約第八号)

 最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃のための即時の行動に関する条約(第百八十二号)の締結について承認を求めるの件(条約第九号)

 相互承認に関する日本国と欧州共同体との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一一号)

 国際情勢に関する件




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     ――――◇―――――

土肥委員長 これより会議を開きます。

 この際、植竹外務副大臣から発言を求められておりますので、これを許します。外務副大臣植竹繁雄君。

植竹副大臣 このたび外務副大臣に就任いたしました植竹繁雄でございます。土肥委員長を初め委員各位に謹んでごあいさつ申し上げます。どうぞよろしくお願いいたします。

 先週、私は、国連LDC会議、IEA閣僚理事会、OECD閣僚理事会に出席し、開発問題やエネルギー問題、国際経済問題などさまざまな問題について議論してまいりました。二十一世紀を迎えて、国際社会はこうした数々の課題に直面しておりますが、そのような中で、日本国民の期待と願望を実現できるよう最大限の努力をいたしてまいります。

 政治改革の面では、外務省の改革は最重要課題の一つであります。田中外務大臣のもと、外交に対する信頼を回復するため、力を尽くしてまいる所存であります。

 委員長を初め、本委員会の皆様の御指導と御協力をいただけますようよろしくお願い申し上げ、就任のごあいさつといたします。よろしくお願いいたします。(拍手)

     ――――◇―――――

土肥委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として、委員下地幹郎君の質疑に際し、外務省アジア大洋州局長槙田邦彦君、外務省北米局長藤崎一郎君及び国土交通省航空局長深谷憲一君の出席を求め、それぞれ説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

土肥委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

土肥委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。安住淳君。

安住委員 おはようございます。

 大臣、連日御苦労さまでございます。きょうも、外務委員会でございますので、どうぞ夕方までよろしくお願いをします。

 さて、あしたからいよいよASEMでの日中外相会談が北京で開催をされるということになるわけであります。きょうは、私の持ち時間は三十分でございますが、日中関係についての質問を中心にさせていただきたいと思います。官邸の方からも安倍副長官においでをいただきまして、質問をさせていただきたいと思っております。

 さて、全般の問題についてまずお伺いをしますが、歴史教科書問題、さらに農産物のセーフガード、また、小泉首相になってから特にこれは顕在化してきましたが、靖国神社への参拝の問題、日中関係は決して穏やかな状況だけではございません。米中間での軍用機の衝突問題等もあって、米中関係も非常に波が高い状態である。

 こういう中で、田中外務大臣の初めての外遊、そして外交デビューというのが日中外相会談になるわけでございますが、現在の日中関係についての現状、さらに、あしたのトウカセン外交部長との日中会談で具体的にどんなことをこちらから御提案なさるおつもりなのか、お答えを願いたいと思います。

田中国務大臣 安住委員にお答え申し上げます。

 あしたからASEMに行くわけでございますけれども、基本的なスタンスは日中共同声明にあるとおりでございます。ただし、時間の流れの中で、教科書問題ですとか李登輝さんの問題ですとか、そのほかいろいろな個々の問題が発生してきておりますけれども、基本的には、そういう問題を大所高所から、お互いの国益ですとかお互いの国の発展、世界、ほかの国に対する影響等も勘案しながら、原点を踏まえて、お互いの発展と友好のために、信頼関係構築のために尽くしてまいりたいというふうに考えております。

安住委員 そこで、今もお話がありましたが、まず、台湾の李登輝前総統の我が国への入国の問題について具体的に質問させていただきます。

 安倍副長官、御苦労さまでございます。

 実は、参議院の予算委員会でも、五月七日のトウカセンさんとの電話会談での発言の旨がありましたが、その問題に入る前に、やはり、李登輝さんが前内閣において我が国に入国をなさった、そのことについてまず検証をさせていただきたいと思います。と申しますのは、外務委員会では実質的にこの審議は一回もされておりません。自民党の総裁選を含めた政治日程で、委員会が全く開催されないままに政府側の対応が終始をしましたので、この問題にちょっと簡単に触れさせていただきたいと思います。

 ところで、田中外務大臣は、一議員としての見解を、私、調べさせていただきますと、この李登輝さんの森内閣当時の入国問題に対しては、大変慎重に取り扱うべきだという旨の発言をなさっていらっしゃったと思いますけれども、それでよろしゅうございますか。

田中国務大臣 どのような御病状かとかにつきましては、一議員としてメディアを通じてしか知り得ない立場でございました。それで、先ほども申し上げましたように、中台と日本の関係というものは日中共同声明というものが基本にあると思っておりましたので、私なりの思いがありましたけれども、現在は国務大臣でございますので、コメントは今の立場ではいたしませんので、御理解いただきたいと思います。

安住委員 経過は、ここで説明をしなくても皆さん御存じのとおりだと思います。四月の十日に正式な申請が出されて、結果的には十日以上、一言で言えばたなざらしの状態にしておいた。私は、その間の政府の混乱は、まさに拙劣の一語に尽きるんではないかと。もっといろいろな意味で、政治問題化をしたのは実は我が国政府の方であって、この問題を政治問題化させてはならない、そういう点からいうと、私はまさに前内閣の対応というのは大きな問題がある。

 入国を認めた、認めないの問題に行く前に、この四月十日から来日までの経緯について、副長官、率直な御感想を述べていただきたいと思います。

安倍内閣官房副長官 私は前の内閣におきましても官房副長官でございましたので、答弁をさせていただきたいと思うわけでございます。

 四月の十日に、李登輝氏側からいえばビザの申請がなされたわけでございますが、二十日に発給するまでの間、やはり、ビザを発給するかどうかというのは我が国にとりましても大変大きな問題であったわけでございますから、そのときのいろいろな諸情勢、要因を勘案しながら、また、李登輝氏が治療のためにぜひとも我が国を訪れたい、そして、我が国において治療することが必要であるということも、私ども、情報を収集した結果、それに間違いがないという結論に至り、一民間人であり、そして、かつ治療を目的とした人道的な措置であるということを勘案した結果、そういう判断をしたわけであります。

 しかし、どんな政策を決めるに当たっても、いろいろな意見があるのは当然でございますから、我が国の国益を考えながら真剣に議論をした結果、そういう判断をしたということでございます。

安住委員 いろいろな議論があってしかるべきだということについては同意はいたしますけれども、それと、政治問題化するのは別ではないでしょうか。つまり、この申請の問題を、我が党は、法治国家として法律に基づいて淡々と対応すべきだということを一貫して言ってまいりました。確かに我が党内にもいろいろな意見はありましたけれども、しかし、結果としてこれだけこじらせた、十日間も混迷をさせたということに関しては、やはり私は統治能力が問われているんではないかというふうに思います。

 そこで伺いますが、安倍官房副長官、四月十日申請を出したということ、これは結果的には台湾側の言っていることは事実であったわけです。しかし、それを受理していないとか預かっているとか、とても法治国家とは思えないような対応をしたのは政府でないですか。

 つまり、行政上の手続でいうと、ビザ発給の申請を出された場合は、対応は三つしかないはずです。申請を受理するか、不受理にするか、受理預かりをする、受理預かりというのは仮受理と実は申しますが。書類上の手続に不備がない限りは受理をしなければならないということは、我が国では、仮にどんな犯罪者であっても、また行政手続を行う場合であっても、そのことは何人も侵してはならない実は真正権利だと思うのですね。

 しかし、それに対してたなざらしを十日もしたということは、これは明らかに前内閣は法律上人権を無視したということになると思うのですけれども、いかがでございますか。

安倍内閣官房副長官 この問題について外交当局から私がつまびらかな説明を受けたのは後になってからでございますが、外交当局側の御説明は、李登輝氏の書類に不備が、必要な手続を経ていなかったために預かりおいたということだということでございます。その後、李登輝氏が申請をしたではないかという記者会見を行われたのは御承知のとおりでございますが、外務省の立場としては、それは李登輝氏の事実誤認ではなかったかということでございます。

安住委員 問題についてやりとりをするつもりはございません。なぜかというと、これは明らかに外務省側の対応のまずさをただ隠しているだけではないかと私は思います。申請を受理するかしないかの問題と、入国を認めるか認めないかは全く別の問題です。

 大臣、そこで、さきの李登輝氏の入国についての外務省側の対応というのはあれで間違いなかったでしょうか、手続上を含めて。私は、ちょっとそれは違うのではないかと思っておるのですけれども。

田中国務大臣 前政権のことでございますので、私はメディアを通じてしか知り得る立場にございませんでしたので、今の立場では、私が今後どうするかということは申し上げられますけれども、一応人道上の配慮であったという官房副長官の御意見ですので、そのように理解するしかないというふうに思いますが。

安住委員 安倍官房副長官が特に何を考えていらっしゃって、どう行動なさったか、私もよく存じ上げております。比較的考えも近かったので。私も、法に基づいて淡々とということは直接森総理にも実は申し上げる機会がありましたので。

 しかし、私は、いかなることがあっても、十日間も、申請をしていないとか受理をしていないという明らかなうそをついて、その間にいたずらにこの問題を引き延ばしたと。つまり、どういうことかというと、結論で申し上げますと、やはり、中台のような利害関係がかなり異なる国と地域を我が国が扱うときは、こういうふうに立場をあいまいにすることが実は非常に両国の関係を悪くする、むしろ立場をすっきりと最初から明確にした方がその後のトラブルを招かないし、また、関係を改善するには比較的早い改善の仕方があるというふうに私は思うのですけれども、いかがでございますか。

田中国務大臣 その点、安住委員と全く同感でございます。

安住委員 そこでお伺いしますが、結果的に李登輝さんは入国をなさって、治療をしてお帰りになりました。このことは現在の日中関係にとってプラスかマイナスか、どのような影響が出ているのでしょうか。

田中国務大臣 今後の糧にしたいというふうに思っております。

安住委員 もう少し具体的に発言をお願いします。今後の糧にするだけではわかりません。例えば具体的にどういうマイナスがあって、どういうプラスがあって、結果的に、今後のことに今から話が行くものですから、もう少し丁寧な説明をしていただきたいと思います。

田中国務大臣 今ほど安住委員がおっしゃったような、結果的に混迷してしまったというふうなことが再度起こらないように糧にしたいという意味でございます。

安住委員 そこで、小泉首相のこの問題についての基本的な考え方は、我が党が本会議で質問をしたときに、国益に沿って自主的な判断をしたというふうに答弁をなさいました、李登輝氏の入国については。

 安倍官房副長官にちょっと伺いますが、ここで小泉首相が答弁をなさった国益とは具体的に何を意味しますか。

安倍内閣官房副長官 国益ということは、もう委員御承知のように、一般論としては国家国民の利益であるわけでありまして、我が国の、日本の平和と安定を確保し、そして繁栄を守るために私どもが行動する、それが国益にかなうことである、こう考えるわけでありますが、その中に立って、我が国に対する信頼関係をしっかりと確立する、あるいは我が国の国家としての尊厳を守る、そういうことも国益につながる、私はこう考えているわけでございます。そうしたことを勘案したということでございまして、この李登輝氏のビザ発給に際しての国益というのは、総合的な判断をしたということでございます。

安住委員 いや、失礼ですけれども、よくわかりません。

 私が言っているのは、李登輝さんの入国を認めて、結果的には治療して帰っていただいた、このことは国益にかなっているというふうにおっしゃっているわけですから、どういう国益だったのですかと。このことに関しての国益を具体的に簡単に教えていただきたいと思います。

安倍内閣官房副長官 そのときの国益ということを、今安住委員が言われたように、これがプラスでこれがマイナスというか、それはつまびらかにすることが果たしていいかどうかということもございますが。あくまでも一般論に近いわけでございますが、そういう情勢において我が国が適切な判断ができるということを世界に示すことも、私は、それは国益にかなうことだと思います。

安住委員 私から言わせていただくと、法治国家としての尊厳を守ったということなのかなというふうに、私はそういう点での国益があると実は思っております。

 そこで伺いますけれども、五月七日の夕方、田中外務大臣はトウカセン外交部長と、外務大臣に就任して初めての電話での、これは会談というよりも就任のあいさつをなさったというふうに聞いておりますけれども、当時のこの会談の内容と状況について御説明いただきたいと思います。

田中国務大臣 きのうの委員会でも発言しておりまして、安住委員はもう全部御存じなのだと思いますけれども、会談の中身につきましては、外交というのは先方の立場がございますから、逐一細かいことについて発言はできません。しかし、私どもの基本認識は日中共同声明にあるということ、そういうことを踏まえての簡単な、表敬っぽいことでもありますけれども、話し合いをいたしました。話し合いというほどではありませんけれども、会話があったということでございます。

安住委員 ちょっと具体的にお話を伺いますけれども、今私も答弁をちょっとメモしましたが、日中共同声明を踏まえて慎重に対応していきたい、李登輝氏の訪日問題を含め、台湾問題については日中共同声明を踏まえ慎重に対応していきたいという旨の発言をなさったということでよろしいですね。

田中国務大臣 李登輝氏の問題というふうな個別の問題よりも、基本的にあるのは日中共同声明であるという認識の確認でございます。

安住委員 それでは、大変恐縮ですけれども、基本的なことを伺いますが、大臣がおっしゃっている日中共同声明を踏まえというのは、日中共同声明のどこを踏まえてというふうに思っていらっしゃいますか。

田中国務大臣 全文でございます。全体です。

安住委員 この話は答弁で委員会でもおっしゃっているのですが、これは台湾問題を私は今念頭に置いて質問させていただいているのですね。少なくとも、中国と台湾との関係についての日中共同声明で、どこを踏まえてどういう発言をなさったのか、教えていただきたいと思います。

田中国務大臣 台湾との関係は地域と民間に限って交流がなされておりますので、そういうことに限られているということでございます。

安住委員 いや、私が申し上げているのは、一九七二年の日中共同声明の第三項は大臣御存じですか。

田中国務大臣 存じております。

安住委員 そこでは具体的に、先ほど言った利害の違う中国と台湾との関係について、我が国の明確な方針を示しているはずだと思うのですね。そのことを踏まえてというふうにおっしゃったというのであれば、大臣のお言葉でそのことを述べていただきたいと思います。

田中国務大臣 台湾は中国の領土の不可分の一部であるという部分でございます。

安住委員 大臣もそういう認識を持っていらっしゃいますか。

田中国務大臣 「中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。」そして、「日本国政府は、この中華人民共和国」、中国ですけれども、「政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。」この部分でございます。

安住委員 私は、一連のインタビューとかを聞いていて、記事の内容が正確かどうかわかりませんけれども、大変気になっているのは、台湾が中国の一部であるという認識を大臣が持っている旨の新聞等々のペーパーをちょっと見たものですから、実は我が国は、理解をし、十分尊重はしますけれども、台湾が中国の一部であるということをコンファームしていないはずですね。そのことだけ確認をしたいと思います。

田中国務大臣 このような中国政府の立場を十二分に理解し、尊重するということでございます。

安住委員 そこで、具体的にその会談の内容についてお聞かせいただきますけれども、トウカセンさんとのやりとりは、私はこう思っております。これは、公式会談でなくてあいさつである。なおかつ、中国課長はその後記者さんにブリーフをなさっていらっしゃる、会談の内容について。ですから、詳細について申し上げられないというのは少し乱暴な話で、私は、言える話と言えない話が多分あるのだろうと思うのですね、現にブリーフなさっていらっしゃるわけですから。

 その中でトウカセン部長が何を言ったかに関しては、大臣がおっしゃるとおりだと思います。相手方が何を話されたかについてまで、私どもは聞きません。しかし、大臣が何を具体的にこちらから申し上げたかについては、今までの国会答弁では私は不十分だと思います。それは説明責任です。あいさつであればなおさら、初の外務大臣としての電話会談ですから、そのことに関して申し上げることと申し上げられないことがあるということは、私は、それを逆に判断すると、都合のいいことは言うけれども都合の悪いことは言いませんということになるのではないでしょうかという危惧をいたしますけれども、いかがですか。

田中国務大臣 お気に召さないかと思いますけれども、とにかく、こういうことは相手の立場もございますので、しかも近々お目にかかる機会があるわけでございますから、内容について、中国課長が何を言ったか私は存じませんけれども、それとは別に、国務大臣、外務大臣としての私の立場では逐一お話し申し上げるわけにはいきませんので、御理解ください。

安住委員 大臣は当時三十分弱電話で会談をなさって、非公式でしょうから、これは日本語で会談をなさいませんでしたか。

田中国務大臣 日本語であったと思いますけれども、最後に私がツァイチェンと言ったかもしれませんし、途中でちょっと英語がお互いに入ったかもしれません。

安住委員 トウカセンさんも、御存じのとおり大変日本語のお上手な方でございます。日本の経験も長い。お話によると、大臣の御自宅の方にも伺ったことがあるというぐらいの方だそうでございますが。本来の日中外相会談であれば、正式な会談であればお互い母国語で話すわけでありますが、お互い日本語で会談しませんでしたか。

田中国務大臣 ほとんどの部分は日本語であったというふうに記憶しておりますけれども。

安住委員 ですから、事務当局が用意したメモではなくて、個人的ないろいろな考えをお述べになったのではないかなというふうに私どもは実は推測をしているのですが、その中でこの李登輝さんの問題というのが出てきているわけです。今後のことでございますが、二度、三度というふうに入国を認めるわけにはいかないという旨の発言をしたと報道されておりますが、これは事実ですか、事実ではありませんか。

田中国務大臣 報道というのはいろいろの立場でされますので、すべてに対して私もコメントできませんので、これにはお答えをいたしかねます。

 初めに安住委員もおっしゃったように、基本的には表敬といいますか、短い時間内で簡単にお話をしていまして、そして北京でお会いするのを楽しみにしていますということでございますので、あとは別に細かいことについて、御報告申し上げるような質のものではございません。

安住委員 細かいことではございません。極めて重要な問題であります。

 つまり、もしこの報道どおりであれば、否定も肯定もしないということは、否定をしなければ言ったということを前提にいえば、一外務大臣が我が国の外交方針を、今安倍官房副長官が言った話をひっくり返すという話になりますから、私は、それはささいなこととかというのはちょっと違うのではないかというふうに思っているのですね。その中でそういう発言を、またそういう趣旨の発言をなさったのかどうか、それをもう一度伺います。

田中国務大臣 もう一度申し上げて申しわけないのですけれども、基本は表敬でございますし、私も立場というものがございます。先方も大変大きな、重い立場を担っておられますので、ですから、中身については御報告するわけにはまいりません。

安住委員 大臣、きょうの読売新聞にはまた別のことが書いてありました。教科書問題について何らかの対応をする、前向きに対応するという話を、大臣がこの電話会談で具体的措置をとるという旨の発言をしたことが、外務省を取材して、複数の関係者がそういう証言をしている。大臣、このことの事実関係は、ではいかがでございますか。

田中国務大臣 私は逆にメディアに聞きたいのですけれども、アーミテージさんの辺から始まりまして、どうしてそういうことが、あることもないことも、これはイエス、ノーじゃありません、個々には申しませんけれども、そういうふうなことが出て、そしてそれをまた私が一々コメントしなければいけないのか、不思議だなというふうに思っておりますけれども、これはもう近々御本人ともお目にかかる機会があると思っておりますので、それからの行動等で御判断いただきたいというふうに思います。

安住委員 大臣、事実をきちっと説明なさらないから、こういう揣摩憶測というか、いろいろな問題が逆に流布されるのではないでしょうか。公式会談でないからこそ、逆に言えば事務方が用意した話でなくて大臣が御自身の責任でしゃべられた話だから、きちっと説明をしていただかないといけないのじゃないですかと私は申し上げているのです。

田中国務大臣 今安住委員の口から出た言葉、揣摩憶測という言葉があなた様の口から出たのですけれども、そういうメディアにのっていることに一々反応はできません。むしろそれよりも大事なことは、あしたフェース・ツー・フェースでお目にかかってどのような会話がなされるか、これからが本当のスタートだというふうに認識しております。

安住委員 私は、普通の会談であってもそうですが、見ている方というか、もしかしたら一般の方は認識にないので、電話会談というと、電話でこうやってやりとりしていると思っていると思うのですよ。そうじゃなくて、電話会談というのは、実は何人かの関係者がいらっしゃって、大臣が例えばピンマイクを前に置いて、スピーカーでその発言を、例えばいろいろ通訳もいますから、そういうことでしている話ですから、つまり電話会談といっても、電話で直接個人的にやりとりをしている話ではないわけで、もしかしたら他国においてはそれをテープに、非公式であろうと公式であろうと、それはもうテークノートするというのは外交の常識ですね。大臣、そのことはまずいいですね。

田中国務大臣 私はほかの複数の国とも電話会談をしておりまして、そのとき私は初めてああいうえらく進歩した機械というものを目の当たりにしまして、これは録音はされていますか、するのですかということは最初に外務省に聞いておりますけれども、それはしていないということでございましたので、それをまず御報告申し上げます。

安住委員 日本の外務省はそうかもしれませんが、私は、中国は違うと思っているのですよ。多分録音しているに決まっている。

 ですから、大臣、おっしゃっていないのだったら、明確におっしゃっていないとちゃんと言わないと、逆に言うと私どもが、民主党が一番心配しているのは、そのことや教科書の問題もそうですけれども、テークノートされていて、ある種外交の中でカードに使われて、にっちもさっちもいかなくなるというのは、これはまずいなと思っているから、私どもはそういう質問を参議院でもしているのですよ。

 しかし、残念ながら大臣は、言わせていただきますと、御都合のいいところでは元気のいい声で、非常に厳しい目でお話をはっきりします。しかし御都合が悪くなると官僚の答弁を棒読みで繰り返すというのは、とても私は田中大臣らしくないと思いますけれども、いかがでございますか。

田中国務大臣 新米でございますので、これからアドバイスを拳々服膺しながら邁進いたします。

安住委員 外務大臣、もし外務大臣が私の立場で、同じような問題が起きて外務大臣に質問したら、多分相当厳しくやるんじゃないかと私は思うんですけれども、大臣、いかがでございますか。

田中国務大臣 それぞれの立場というものは私はちゃんと尊重できる人間であると思いますし、それだけの年の功は重ねているかしらというふうに思っております。

安住委員 もし今後、事実関係がいろいろな意味ではっきりした場合、李登輝問題について政府の方針と違うことを本当に言っていたということが明らかになったら、政治責任をおとりになりますか。

田中国務大臣 そのときに責任を持ってお話し申し上げます。仮定の問題にはちょっとお答えできません。

安住委員 安倍官房副長官、一言で結構でございますが、あしたからASEMに行くわけですから、この李登輝さんの問題について、一言で言えば今後もケース・バイ・ケースで対応していくということだと私は思うんです。そのことについて我が党の岡田政調会長も直接副長官にお話をしていると思いますが、政府の統一的な見解をお示し願いたいと思いますけれども、いかがですか。それをもって、大臣は新米だとおっしゃっていますが、外相会談にやはりきちっと臨んでもらうということが大事だと思いますけれども。

安倍内閣官房副長官 この問題につきましては、田中外務大臣も、その時々のさまざまな要因を勘案しながら情報を収集して判断をしたいということをおっしゃっておられます。小泉総理も全く同じ見解を示しておられますので、既に政府の見解というのは統一されているわけでございますので、改めて統一見解を出すのは必要がない、私はこう考えております。

安住委員 先日のテレビの話とちょっと違いますので大変残念でございますが。

 大臣、ソラナさん、イワノフさん、クックさん、これは全部外務大臣ですね。電話でなぜトウカセン部長さんとはもうそんなに親しく話をして、やはり私はイワノフさんやクックさんやソラナさんとも電話で就任のあいさつ等々をやるべきでないかと思いますよ。全然まだなさっていないということは、何か非常に抜けている部分があるのではないかなということを申し上げます。

 最後に、靖国問題を含めて、非常に今中国側はこの問題に大変強い関心を持っていらっしゃる。あした行けば必ず、小泉首相の靖国の参拝問題についてかなり中国側は阿南大使に対しても厳しい要求を突きつけてきております。最終的に大臣はどのような発言を中国側になさるおつもりですか。

田中国務大臣 靖国問題に触れます前に、私は、中国だけと話をしていて、ほかとしていないわけではございませんで、イタリーですとかほかとも話をしておりますが、時差もありますし、先方も皆様大変お忙しいわけです。例えばイギリスの外相は、たまたまどちらもばたばたして、回線がつながったんです、そして、ホールド・オンと言われて私待っておりましたらば、相手が、アイム ソーリー ヒー ラン アウト オブ ザ ルームとかなんとか言われて、出かけちゃったらしいんですね。ですから、すれ違いが非常にあって、ぴったりと合うということはなかなか難しゅうございます。事務方が大変よく努力してくださっているんですが、これは毎回やっています。そして、私も、これだけ委員会があったり、きょうもこれから宮中もあったり、公務があって走り回っている中で、寸暇を惜しんでも時差があったり、こちらが夜中で向こうが朝とかありますから。ですから、これは恣意的に中国だけやったというふうには思われないでいただきたいし、時間を見て、スーナー・ザ・ベターということは私は常に思っておりまして、事務方に言っております。

 次、靖国問題でございますけれども、今まで総理が御発言なさった経緯、総理の真意をそのとおり、もし尋ねられればですけれども、お伝えしなければならないというふうに思っております。

安住委員 ぜひ国益を損するようなことがないようにやっていただくことをお願い申し上げまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。

土肥委員長 次に、東祥三君。

東(祥)委員 外務大臣、おはようございます。自由党の東祥三でございます。

 田中眞紀子議員が外務大臣に就任されるそのときの状況はテレビで見させていただいておりました。歴代の外務大臣の中で、国益という言葉を使われた、日本の国民の生命と財産を守る極めて重要な仕事であるという認識をお持ちの方であると推察させていただきました。常に歯切れがいい論調で言葉を使われますから、そういう意味で本当の外交政策あるいはまた安全保障政策についての議論ができるのかなというふうに私はそのとき思いました。その後、田中外務大臣が、日本の外交について何を最大の優先順位にしているのか、また日本の今直面する外交問題の中で何が最大の課題なのか、そういう言及はほとんどなされていない、私の知る限り。その上で、久しぶりに外務委員会に来させていただきました。

 まず初めに、外務大臣の基本的な認識でございますが、今日本が直面する課題にどういうものがあるのか、その中でプライオリティーをつけるとするとどうなるのか、その点についてお答えいただければというふうに思います。

田中国務大臣 私のトータルなビジョンといいますか、外交の要諦ということは、就任いたしましたときに官邸での夜の記者会見で申し上げていることに尽きます。すなわち、国益とは何かということをまず考え、そして、近隣諸外国とのお互いの平和と安定のために、それに資するようにどのように私たちが働くかということが外交の要諦であろうというふうに考えます。これは私の本当に哲学でございまして、常にそれを一つのメジャーメントとして、そこに持っていってあらゆる政策判断をしなければならないというふうに考えております。

 そして、個々の問題についてプライオリティーをつけるようにというお話でございますけれども、まず何といっても日米同盟ですね。この強化というものは戦後やはり一番大事な基本でありますし、その中でもって、この午後もいろいろ先生方からお尋ねがあるんだと思いますけれども、いろいろな個々の問題がありますのでなかなか簡単にはいきませんけれども、最終的には冒頭申し上げたようなところに寄せていって、お互いが譲歩し合うところは譲歩し合い、腹蔵のない意見交換もしなければいけないと思っております。

 それから、もちろん中国ですとか韓国それから北朝鮮やらロシアとかASEAN、こうした近隣諸国との関係も大事ですし、そのほかもちろんEUとの関係もございます。きのうアフリカから大統領がお見えになりまして、窮状についていろいろ伺いました。医療の問題ですとか貧困の問題、教育の問題、たくさん伺いました。そういうふうに勉強させていただいていれば、最終的に至り着くところは、プライオリティーをつけるよりも、冒頭申し上げたような、国益とお互いの平和と繁栄、安定のためにどのように働くかというところに帰結いたします。

東(祥)委員 いみじくも外務大臣今おっしゃいました、日米同盟関係が極めて重要であると。また、小泉新総理が所信表明演説の中で、日米同盟関係を基礎にして、中国、ロシア、韓国その他の近隣諸国との友好関係を保っていくことが重要であると。プライオリティーはまず日米同盟関係に、二国間関係という視点から見るならば、あるんですよね。いかがですか。

田中国務大臣 そうとは申しながら、アメリカの言うとおりにあらゆるものにこちらが追随するというものではなくて、日本の地政学上それから歴史上の近隣諸国との関係もございますから、それらもトータルに勘案しながら日米の同盟を強化したいという意味でございます。

東(祥)委員 外務大臣の頭の中では同盟関係を結ぶということは一方に他が従属する、そういうとらえ方をされているんですか。

田中国務大臣 自由党さんとしての東先生の日米に対するお考えというのは大体私も理解できているつもりでおりますけれども……(東(祥)委員「本当ですか」と呼ぶ)党首の方の御意見とか御本も拝見しておりますので、私なりに理解できているつもりではおりますけれども、従属するとかしないではなくて、繰り返しになりますけれども、やはり日本は日本の地政学上の位置それから歴史というものもありますので、それをアメリカは理解してくださるでありましょうし、そうした中でもって日米関係をしっかりと強化するという意味でございます。

東(祥)委員 外務大臣、アメリカとの間に同盟関係を結んでいる。そしてアメリカの言うことに対して言いなりになる必要はない、そのとおりだろうと思います。

 でも、それをちゃんとするためには、日米間でちゃんと話し合いをしていなくてはいけませんよね。日米間における対話、とりわけ田中外務大臣が就任されて以来、当然、私の見えないところで、一番重要な関係ですから、日米間における懸案の問題、あるいはまた日米間において横たわる意思が疎通されない問題、種々の懸案事項というのはあると思いますけれども、多分、所信表明演説で小泉内閣が言われようとしているのは、そういったことも含めた上で、日本と米国との関係、これが日本の外交の基軸になるということをおっしゃっているのだと思うのですね。

 ただ、おっしゃられるとおり、では、具体的な中身になれば、それは話してみなくてはわからないわけですね。日米関係における最大の懸案事項というのは何なのですか。

田中国務大臣 当然、これからお聞きになる問題だと思いますけれども、日本の憲法の問題で、日米安保の問題もございますし、あと全部その一連の問題ですけれども、沖縄の基地の問題。今回、普天間の返還の問題等もありますけれども、SACOの問題でありますとか、いろいろな問題が個別にありますので、そういうことを全体の歴史の流れの中で、極東だけではありませんけれども、あらゆる地域、世界じゅうの動きの中で、どのようにポジティブにプラスの方向に持っていくかということだと思います。

東(祥)委員 基本的に同じ線だと思うのですが、今日的な状況で、日本が国際社会の中で位置づけられている状況、とりわけ北東アジアの状況、あるいは西太平洋地域というふうに言ってもいいかもわかりません。

 日本という国がある。隣の朝鮮半島においては、北朝鮮という、ブリンクマンシップという瀬戸際外交で、恫喝しながら自国の外交戦略を進めようとしている国がある。また核兵器を持っているかもわからない。また、ロシアという何千発の戦略兵器を抱えている国がある。安全保障の側面から見たときですよ。また中国という、一つは体制が違う、もちろん友好関係を結んでいるわけですが、近年における軍事がどんどん肥大化している国があります。さらにまた、先ほどお話がありましたとおり、台湾と中国とのかかわり合いという非常に難しい問題がある。他方、太平洋を越えて、アメリカという、世界で最も強い、また軍事的にこれに比する国がないほど力強い国が一方においてある。

 台湾地域を除けば、基本的には今申し上げた国々というのは、全部核兵器あるいはまた弾道ミサイル、こういうものを持っている国なのです。そこに囲まれているのが日本なのですね。

 そうすると、日本とアメリカとの間の対話、あるいはまた日米関係を強化していく、そしてまた田中外務大臣が多分やらなければならないのは、そういう戦略環境下において、日米が共同して、対北朝鮮問題、対ロシア、対中国、あるいはもっと先にいけばインドネシア、あるいはインド、パキスタン、こういう国々に対して、日本としてどういうとらえ方をしているのか、アメリカは、自分たちはどういうとらえ方をしているのか、ここで初めて、よく言葉だけ乱舞しますけれども、いわゆる戦略的対話というのが成り立つと僕は思うのですけれども、田中外務大臣、いかがですか。

田中国務大臣 要は、おっしゃりたい意味を総合的に一言で言うならば、日本の憲法問題であろうというふうに私は思っております。多分、東先生もそういうお考えではないかというふうに思うのですが、その問題について、長年タブー視されて、なかなか国会で議論されずにいました。そのためにいろいろな矛盾とかそごが生じてきた面が、国内においても、それから外国との関係においてもございましたから、それで、今回いよいよ、昨年からでございましたか、憲法調査会が衆参両院で設置されまして、もっと忌憚のないいろいろな意見を開陳して、この問題を検討してみようという方向になったわけでございます。

 私は、これはとても歓迎すべきことで、遅きに失したなという思いが個人的にはしておりますけれども、できるだけ早くその結論が収れんされていけば、今先生がおっしゃったようないろいろな問題も、かなりの部分がわかりやすく整理されるのではないかというふうに認識しております。

東(祥)委員 外務大臣、憲法問題というのは国の問題なんですよ。今申し上げているのは、日本とアメリカとのかかわり合いの問題で、対話をどうするのですかと。数年前から2プラス2というのがあります。今度やられるのでしょう。しかし、2プラス2の中で議論されているのは、そういうところは含まれていないのですよ。議題としてはのっているのですけれども。

 私が申し上げているのは、外務大臣になられたのなら、外務大臣のやるべきことというのは、日本の国内にあるアメリカとのかかわり合いの問題、米軍基地の問題、それは当然当たり前のことですよ。その上で、所信表明演説でも言っているわけですから、国際の平和と安全のためにも日本は積極的に貢献していくということですから。今一番初めに申し上げました北朝鮮、何か暴発すれば、それは即日本の国民の生命と財産にかかわる問題になってきますよ。北朝鮮の問題に対して、日本としてどういうふうにとらえるのですかという考え方がなければ、米国と議論することはできませんよ。

 中台関係の問題をどうするのですか。だれもが戦争を望んでいませんよ。もし一朝有事があったらどうするのですか。日本はどういうとらえ方をしているのですか。アメリカは、その点に対して、いかにして紛争がないようにするかということを考えているはずですよ。日本もそうでしょう。

 では、そのときに外務大臣と国務長官と議論できなくてはいけないですよね。そういうことは当然やらなくてはいけないのではないですかと僕は思いますと言っているのです。外務大臣はいかがですか。

田中国務大臣 おっしゃるとおり、憲法というのは、言わずもがな、日本国憲法のことですから国内の話でございますけれども、私が申し上げようとしたことは、そうした問題を日本でしっかりと確認して、国民的な、ベストはないかもしれませんけれども、ある程度のコンセンサスというものが得られていないと、戦後五十数年たったのに。これが今おっしゃっているような戦略的な対話、これはもちろん重要なことですから、2プラス2で、これを含めて大局的に、緊密に協議しなければいけないということは、言わずもがななわけですし、過去にもそういうことがされてきたと思いますが、基本にあるのは、やはり我が国がどのように憲法を変えるのか変えないのか。論憲という御意見もあるようですけれども、その問題が、やはり日本がきちっとコンクリートに、新しい時代ですからもう遅きに失していますが、しなければいけないのではないかという、それが根本にあるというのが私の認識なんです。

東(祥)委員 憲法問題については、後ほど僕やりますから。

 大事なことは、自分自身が意見を持っていなければ対話できないわけですよ、国務長官が来ても。それぞれのスケジュールについて話すのは、それは事務方にやってもらえばいいのです。北朝鮮の問題どうするのですか。中台関係の問題どうするのですか。

 外務大臣というのは、日本の外交の前線における最高責任者ですから、それは国民の議論を待ってと言ったなら、いつまでたったとしても、国民は、そういうことは当然日本の政治家がやってくれているのでしょうと。国民の生命と財産を預かるのが僕らの仕事ですから、国民の皆さん方は自分たちの身の回りのこと、日々の生活、安穏、そして将来のこと、どうぞそこに専心してください、それ以外のことは僕らがやります。だから政治家になっているのでしょう。

 外務大臣が外務大臣に就任されたわけですから、自分が望んでなったのかどうかは知りませんよ、また請われてなったのかどうか知りませんけれども、それを受けたわけですから、外務大臣は、最高責任者として、そういう問題について常に議論しておいてもらわなくては困るわけですよ。そういう頭を持っていてもらわなくては困るわけですよ。

 パウエル国務長官とお会いしたときに、いや、それは日本の憲法の問題ですね、今日本の憲法でいろいろ議論していますから。何を言っているのですかというふうになりますよ。そうでしょう。対話は成立しないではないですか。あなたはこういうふうに思われているのですか、私はこういうふうに思うというふうに言わない限り、対話は成立しないのではないか。

 そういう意味において、戦略的な対話、僕の一つの考え方ですけれども、そういうことがないかと僕は思うと言っているのです。外務大臣はいかが思われるのか。まだ答えていないのですよ。

田中国務大臣 私も一閣僚でございますし、これは連立政権でございます。したがって、連立の他党の皆様からの意見も収れんされておりませんし、私一人が、外務大臣として外交を全部担っているからといって飛び出すわけにはいきませんので、そうでなくても拙速だとかいろいろ言われて迷惑しておりますので、やはり皆さんの意見を聞かなければいけない。憲法調査会が衆参両方であって、先生、メンバーでいらっしゃいますか。(東(祥)委員「違います」と呼ぶ)そうですか。私はメンバーで、最初から、これは大変な関心事なものですから、ずっと……(東(祥)委員「憲法問題について話していないのですよ」と呼ぶ)ですから、お聞きください。ですから、そういうことをやはり民主的な手続でくみ上げつつ、それを参考にさせていただきながら、連立の内部で、そして閣内でよく話をしながら進めていく。全然意見を持たないで、延々と待っているということではございません。

東(祥)委員 どうも私の日本語がおかしいのか、私が言っている意味を理解してもらえないのか。外務大臣は、外務大臣なんですよ、外交の責任者なんですよ。外交の責任者というのは、自分自身の識見を持っていなければ外務大臣になってはいけないのでしょう。僕らは、政府委員制度を廃止して副大臣を導入していますよ。意味するところは、その道のプロがそのポストになってくださいということで僕らはつくっているのですよ。

 外務大臣に今なっているということは、外交に対して、細かいことは別として、日本の外交方針というのはこういうふうにするんだということを持っていてもらわなくては、一番初めに、大臣に就任されたときに、国益という、それは言葉だけなのかというふうに僕は思ってしまいますよ。もし何も勉強されていなくて、何も積み上げがなくて、そして大臣になった、みんながやってくれる、他党がいろいろ言ってくれる、それを待っていればいいんだ、それで外務大臣が務まるとするならば、そもそも今の動きというのはおかしいのじゃないですか。

 外務大臣はプロじゃなくてはいけないのですよ。あっちはプロですよ。パウエル国務長官というのはプロですよ。ラムズフェルド国防長官というのはプロですよ。イギリスだってプロですよ。あなたはプロじゃない、いや、私は自分自身の意見を言うことはできない、他党の議員の人たちが言っていることを聞かないとよくわからない、そうであるとするならば、大臣にいらっしゃる意味がないのじゃないですか。

田中国務大臣 この部屋にも今お三方外務大臣経験者がいらっしゃるわけでございまして、多分皆様外交で大変お骨折りをなさり、プロフェッショナルとして大変自負も持っていらっしゃると思います。その時々の時代の趨勢の中でいろいろな問題が発生してきて、その中でもって懊悩しながら御判断をなさってきているというふうに思いますので、外国の、アメリカの方はプロフェッショナルで、日本の外務大臣はプロフェッショナルでないというふうな、そんな卑屈な思いをすることはなくて、私が申し上げているのは、言葉足らずか表現が至らないのかと存じますけれども、内閣総理大臣がいらっしゃいますし、それから外交の責任者は私でございますけれども、閣内のいろいろな方の御意見、連立ですからほかの連立の党の御意見、そして憲法調査会の御意見を踏まえながら、やはりオールラウンドでいろいろな情報を集めながら進んでいくというのが民主的な方法であるというふうに思います。

東(祥)委員 これはちゃんと議事録に残るわけですから、いかに質問していることと答えていることがかみ合わないのか。憲法の問題というのはこれからやりますよ。憲法の問題を言っているのじゃないのですよ。外務大臣の外交の基本的な物の見方、考え方、何が課題であるのか、そういうことに対しては答えることができないということがきょうわかったわけです。(発言する者あり)質問の内容は抽象的じゃないじゃないか。私は、今の日本が直面する問題というのはこういうふうにとらえる、それに対してはどうですかということを言っているんじゃないですか。

土肥委員長 静粛に。

東(祥)委員 先ほど憲法というのが出てきましたから、憲法問題について質問させていただきます。

 憲法第九条というのは何が書かれているか、外務大臣、わかりますか。

田中国務大臣 戦争の放棄でございます。

 「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」これが一です。そして二は、「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」

 以上です。

東(祥)委員 おっしゃられたとおり、憲法第九条というのは二項目から成っている。一項目については、今おっしゃったとおり、戦争の放棄が書いてあるわけですけれども、これは日本民族のみの理想ではなくて、人類全体が二十世紀に到達した理想だと僕は思っています。憲法第九条第一項の戦争放棄というこの理念は、一九二九年のあの不戦条約や一九四五年に作成された国連憲章の武力行使禁止の理念と同じことだと私は思っているのですけれども、外務大臣、いかがですか。

田中国務大臣 理念といたしましては、同じだというふうに感じております。

東(祥)委員 そうすると、我が国というのは、みずからの憲法、日本国憲法と国連憲章の双方によって戦争を放棄しているということを確認することができると思うのですが、いかがですか。

田中国務大臣 それでよろしいと思います。

東(祥)委員 そうすると、つまり、日本というのは、憲法を改正しても、国連憲章のもとで国際紛争の解決のために武力行使を行うことはできない、そういうことになりますね。いかがですか。

田中国務大臣 国際法、国連憲章でございますけれども、第二条の四項では憲章に反する武力の行使を禁じております。そして、戦争の違法化は集団安全保障の大前提であります。日本は、憲法のもとで、武力不行使の義務を負っております。

東(祥)委員 そのとおりですね。

 一九四五年の国連憲章の第二条第四項を今お読みいただいたわけですけれども、そうしますと、戦争を放棄しているというのは日本だけじゃないのですね。ということは、国連の加盟国すべてなんだということを理解しておかなくてはいけないんだと思うのです。そうしますと、憲法第九条一項というのは日本国憲法に特殊な規定ではなくて、国連憲章に規定された普遍的な戦争放棄の義務を果たしている、そういう条項だというふうに私はとらえているのですが、いかがですか。

田中国務大臣 理念といいますか、思想上は同じであるというふうに考えます。

東(祥)委員 よく日本で、憲法第九条というのは、第一項、つまり戦争放棄が特殊な規定だというふうに言われているのです。日本国だけに特殊な規定じゃないのですね。既に、一九二九年にも当然それが書かれている。一九四五年の国連憲章にそれが描かれている。そして、日本国憲法に九条第一項として入れられているのですね。

 問題は、先ほど外務大臣が言われた九条第二項の問題なんですね。戦力不保持、こういうことを書いている他の国の憲法というのはないわけですよ。戦力不保持、陸海空の戦力を持たないと言っているのですよ。これはいかがですか。

田中国務大臣 ですから、このことについていろいろな意見が分かれておりますので、憲法調査会等でいろいろと議論が尽くされております。

東(祥)委員 どういう意味ですか。つまり、僕が言っているのは、憲法第九条第二項、戦力不保持の規定が、世界において日本の憲法が極めて特殊な規定が含まれている、そういうふうに僕は認識しているのですがいかがですかと聞いているのです。

田中国務大臣 すべてを承知しているわけではございません。

東(祥)委員 どういうことですか。別に特殊な規定ではないということですか。

田中国務大臣 ここはいろいろ御議論があるところだと思いますけれども、私は、ちょっと今お答えはできません。

東(祥)委員 では、勉強してください。

 さて、憲法第九条第二項において戦力不保持というふうに言っておきながら、日本というのは核兵器は持っていません、しかし、イージス艦四隻あるいはまたF15という超近代飛行機を二百機ぐらい持っているという、戦備においては最高水準、世界のトップレベルになるものを持っているわけです。そして二十四万人の自衛隊員がいる。防衛大学の卒業式に出席されたことがあるかどうか知りませんけれども、国民の生命を守るために一朝有事のときに自分自身の命を捨てる、そういう人たちですね。また、冷戦下においては、御案内のとおり、北海道においては四個師団の方々が、もしソ連から日本に侵攻があるとするならば自分たちはいつでも命を捨てる、そういう覚悟をしている自衛隊員ですよ。

 その自衛隊というのは、田中外務大臣、違憲だと思われますか、合憲ですか。

田中国務大臣 これは合憲でございます。

東(祥)委員 それでは、今度は本題に入ります。

 陸海空軍の不保持、持たないとしか書いていない憲法第九条第二項のどこに集団的自衛権が行使できないと書いてありますか。

田中国務大臣 これが常々言われているところの憲法の解釈の問題でございまして、憲法調査会でもこのことについて随分議論がございます。

東(祥)委員 どういう議論があるかというのは私も承知しておりますが、私が聞いているのは、どこに集団的自衛権が行使できないと書いていますか、そういう言葉、存在しないでしょうと。文言として憲法第九条には全く書いていないということをまず確認しなくちゃいけないのだと思うのですよ。

田中国務大臣 ですから、これは解釈でいるということになります。

東(祥)委員 解釈で見るということは、書いていないということでしょう。書いていませんね、いかがですか。

田中国務大臣 ですから、具体的には書いてありませんので解釈をしているということになります。

東(祥)委員 集団的自衛権の不行使、集団的自衛権を行使することが容認できない、これは憲法起草者の意思じゃないのだと思いますよ、何も書いていないのですから。

 だから書いていない。にもかかわらず、集団的自衛権を行使しないと初めて政府が言ったのはいつだか外務大臣御存じですか。これは吉田総理も言っていないのですよ。

田中国務大臣 今理解しておりますのは、岸内閣のころというふうに思います。

東(祥)委員 正式に答弁書が出てくるのは一九八一年ですよ、政府答弁書として、議論ではいろいろあるかわかりませんけれども。出てこないのですよ、集団的自衛権不行使というのは。

 それでは、外務大臣、お聞きします。

 憲法第九条のどこにも書いていない集団的自衛権の不行使、行使することができないということを、憲法改正の手続をしないで勝手につけ加えるのは、憲法をゆがめる解釈改憲であると僕は思っているのですが、いかがですか。

田中国務大臣 冷戦下の厳しい国際情勢が続いておりましたことは御案内のとおりですけれども、その時々の政権が日本の平和を守るために積み重ねてきた解釈がありまして、それなりの重みがありますので、したがって、先ほど来言っていますように、国会で活発な御議論をしていただきたいということになります。

東(祥)委員 僕の質問は、憲法九条のどこにも書いていない、集団的自衛権の行使は憲法上許されない、これは憲法を改正していないのですよ、四六年に公布して四七年に施行されたこの憲法に。にもかかわらず、解釈で、集団的自衛権は行使することができないと解釈改憲を進めてきたのですよ。わかりますか。(田中国務大臣「わかります」と呼ぶ)

 では、それについてどのように思われますか。

田中国務大臣 ですから、積み重ねてきた解釈にはそれなりの、時間の経過とともに重みがありますので、そういうことを私は申し上げているのです。

東(祥)委員 ちょっと待ってください。重みというのは、集団的自衛権を行使できないというのは、それは行使できないというふうに解釈を積み重ねてきたわけですよ、一番初めに、できないと。(発言する者あり)

 池田元外務大臣、もしやるのだったらここで議論したいと思いますよ。外務委員会でそういうのをやってください。徹底的に議論しましょう。今は外務大臣に聞いているのです。

田中国務大臣 これは解釈の改憲であるとは私は思いません。

東(祥)委員 そうすると、憲法第九条の積み重ねというのは、政治主導で行われてきたのですか。いかがですか。

田中国務大臣 民主的な議論の積み重ねの中でというふうに申し上げたいと思います。

東(祥)委員 外務大臣、今僕がしゃべっていることは、おかしい点があればお話ししていただきたいと思うのですけれども、民主的な議論といっても、憲法九条、その中には自衛権という言葉も出てきていないのですよ。まして集団的自衛権云々なんというのは出てきていないのですよ。

 そして、集団的自衛権の不行使というのは、自民党の中で、だれか大臣がいて、総理大臣がいて、そこで決められてきたものですかということを聞いているわけですよ。いかがですか。

田中国務大臣 そういうことも含めて議論されてきたことでございます。

東(祥)委員 そういうことも含めてというのは、政治主導で行われてきたのですか、時の内閣総理大臣が、だれが集団的自衛権を行使できないと言ったのですか、その理由はどういうことですかということを聞いているのですよ、もしそういうことがあるとするならば。僕はないと思いますよ。

田中国務大臣 その時々の政府が責任を持って、くどいようですが、やはり積み重ねてきたものである、その結果であるというふうに思います。

東(祥)委員 政府における最大の責任者というのはだれですか。

田中国務大臣 内閣総理大臣でございます。

東(祥)委員 内閣総理大臣ですか。内閣総理大臣がやってきたのですか。(田中国務大臣「いや、政府」と呼ぶ)政府。

 きょうこの質問をするに当たって、外務大臣は内閣法制局と相談してきましたか。

田中国務大臣 きょうはいたしておりません。

東(祥)委員 安全保障にかかわる憲法解釈、司法が今日まで判断してこなかったということを御存じですか。

田中国務大臣 長い間、内閣法制局と外務省の間でいろいろな対立といいますか、司法との間でです、あったということは存じております。

東(祥)委員 内閣法制局というのは内閣の中にあって、僕が言っているのは、司法、裁判所ですね。この安全保障問題に関しては、砂川事件云々というのがあって、最高裁判所としても、御案内のとおり、これは立法府と行政府における極めて重要な問題であって高度な政治判断を伴う、したがって立法府と行政に任せるということで、多分司法消極主義の視点なのでしょうけれども、介入してきていないのですよ。

 集団的自衛権が不行使であると、さっき言ったとおり憲法のどこにも書いていないのですよ。僕が言っているのは、内閣が、政府が政策的な判断に基づいてこういうものをやってきたのですよ。僕は間違っていると思っているのです。

 外務大臣、内閣法制局に、外交の専門家はいると思いますか。安全保障の専門家はいると思いますか。(田中国務大臣「ちょっともう一回。済みません、何ですか」と呼ぶ)

 いわゆる内閣においては、違憲なのか違憲でないのかというのを議論しているのは内閣法制局なんですよ。

 僕もだまされかけた。九〇年に僕は政治家になったのですけれども、安全保障の議論をするときに、政治家とお話をしていても、また外務大臣とお話をしていても、出てこないのですよ、内閣法制局長官を出してくださいと。内閣法制局長官と安全保障政策のことを議論していかなくちゃいけないのかと。初め自分自身、これは法律的なマターですけれども、法的な議論をする、それは内閣法制局長官が日本の外交、安全保障政策を決めているのか、この人とやらなくちゃいけないのかなというふうに、あるとき思っていた。

 ところが、気がつくわけですよ。内閣法制局には外交、安全保障の専門家は一人もいないのですよ。軍事の専門家も一人もいないのですよ。

 にもかかわらず、外務大臣は覚えていらっしゃいますかね、まだ議員になられていたかどうかわかりませんけれども、カンボジアにPKOを派遣するときに、機関銃一丁、二丁だとか、こういう議論が憲法に関して国会の中で議論されているのですよ。そういう議論を通して、これは違うと。外務大臣もよく言われますね、政治主導で国の安全保障というのを議論していかなくちゃいけないのですよ。

 多分、多くの方々、外交、安全保障にかかわっている方々、内閣法制局長官がこれまでどういうことを言ってきたのか、みんな自分たちの部屋にあると思いますよ。しかし、虚心坦懐に憲法第九条というのを読んだときに、それを拡大解釈されながら、書いていないものも、できない、そういう結論に達しているわけですよ。そして、集団的自衛権を……(発言する者あり)黙っていてくださいよ。では、議論しましょうよ。もしあれだったら、自民党の方から提案していただいて、この外務委員会で徹底的に議論しましょう。僕は今外務大臣と話しているんですから。

 何を言うか忘れちゃいましたよ。いかがですか、外務大臣。

土肥委員長 もう一遍簡潔に繰り返してください。

東(祥)委員 内閣法制局に外交それから軍事の専門家、安全保障の専門家はいないということをお認めになりますか。

田中国務大臣 まだそこまで内閣法制局長官とちょうちょうはっしする時間も何もありませんので。これについて諸先輩の御経験やら御苦労もおありになると思いますし、今国会を走り回っていまして、法制局の方ともなかなかそういう時間がないんですけれども、クリアヘッドで時間をかけてしっかり事実の確認というものもしたいと思います。

東(祥)委員 なぜ個別的自衛権が認められるのか。これは自己防衛だから当然だ、そういうとらえ方ですよね。外務大臣、いかがですか。

田中国務大臣 そのとおりでございます。

東(祥)委員 弱い者が強い者に守ってもらう、これがある意味では集団的自衛権ですよ。非常にわかりやすく言えば。田中大臣は国民に対して本当にわかりやすい言葉で語られますから。

 だれかが僕のところを襲ってくる。僕は体がでかいから自分で防衛することはできるかもわからない。しかし、自分から相手を突如として殴るということじゃないですよ。毎日社会面をにぎわしている暴漢が出る、国民がそういう危機に瀕している。その襲われたときに、そのまま放置しておけば自分が殺されてしまうから、自分は戦うことはできますね。

 そのときに、基本的には隣にいる人。僕もかつてありました。高校時代かな。ある道路を歩いているときに、前で一人の人がめためたにやられているんです。そのときに僕は百メーターぐらい後ろから歩いているわけですけれども、どうしよう、助けてあげようかなあげまいかな、近くに行く前までにこれが別れてくれればいいなというふうに思った。

 介入することはできるに決まっていますよね、困っている人がいるんだから。しかし、介入するか介入しないかというのは、自分で決めるんでしょう。もっと自分自身の身近な人がそこにいたらどうなのか。一目散で走っていくんじゃないですか、やられるかわからないけれども。それが集団的自衛権でしょう、簡単に言えば、わかりやすく言えば。

 ところが、自分自身を守るために防衛するためにはそれはいいですよ、他人が困っているときにそれを助けちゃいけませんよ、そんなことってありますかということを言っているわけですよ。だから、ほかのすべての国において集団的自衛権を認めていないという国はないんですよ。当たり前でしょうということ。いかがですか。

田中国務大臣 おっしゃる意味は理解いたします。

東(祥)委員 内閣法制局の集団的自衛権不行使の論理というのは、聞いていても多くの人たちはみんなわかりませんよ。集団的自衛権を行使することになると、必要最小限度の範囲を超えてしまうかわからない。何を言っているか国民は全然わかりませんよ。基本にやはり戻らなくちゃいけないんじゃないんですか。

 そういうことができる、しかし日本というのは、武力行使、そういうものは極めて自制しているんだ。やらないと言うことはできるんですよ。できるけれども、やらないということは言えるんですよ。権利は保有しているけれどもそれを行使することができない、そんなばかなことというのはないですよ、法律論で。権利があるならば、それを行使するかどうかというのは自分で決めることでしょう。常に行使することはできるんですよ。しかし、するしないというのは自分で決めることでしょう。

 ということだと僕は思うんですが、大臣、いかがお思いになりますか。

田中国務大臣 私は、個人としての思いはございます、今おっしゃることに対しまして。大変わかりやすくお話ししてくださいましたし、私なりに思いはございますけれども、やはり閣僚の一員でございますし、こういうことも含めて幅広く議論をしていきたいというのが小泉総理の御意見でございますので、その辺のことを御理解いただいて、そして、おっしゃるとおり国会で活発な議論がなされることを私は期待いたします。

東(祥)委員 そのお言葉を伺ってうれしいです。ぜひやってください。徹底的に議論してください。もう大分議論されてきているんだと思う。偏見にとらわれることなく。

 そして、さらにおかしなことは、昭和三十四年、当時、林長官だったかな、一言、武力行使一体化するという一文句ですよ、それが突如として大波のごとく、あの湾岸戦争のときに復活してくるんですよ。

 政治が主導していないんですよ。官僚が主導しちゃっているんですよ。外務大臣が言われている、官僚を打破する、政治主導だというのは、本当に政治家たちが勉強して、安全保障という、外務大臣が言われた、国民の生命と財産を守るという究極の問題ですよ。この問題に対しては、官僚に依存するのではなくて、この日本の国を一体どういうふうにしていくんだということを徹底的に議論していただいて、解釈の再検討を含めた上で、ぜひ外務大臣のイニシアチブで、総理とも相談していただいて国会に報告してくれるようにしてください。徹底的に議論しましょうよ。

 以上、時間が来ましたので、外務大臣の御検討を心からお祈りします。

土肥委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。

 先ほどの議論とがらりとまた立場は変わりますけれども、憲法第九条の大事さ、そういう問題についても議論をしていきたいなと思っております。

 大臣は、金曜日の所信表明の演説で、改革という言葉をたくさんお使いになりました。そして、日本外交の基軸に日米関係を置くということもるるおっしゃっておられました。

 私は、その日米関係の問題についてきょうは一緒に論議をしてみたいんです。御承知のとおり、日米関係は沖縄の問題を除いては絶対に語れないものであります。あの小さな島に米軍の専用施設が七五%も集中し、あそこに百三十万の沖縄県民が住んでいる。この問題を抜きにして日米関係を語られることは極めて危険でありまして、日米関係を語るなら、沖縄についてどういう認識を持っておられるか、このことが非常に大事だと思うんです。

 それで、きょう大臣もお持ちのようですが、これは沖縄県が作成した「沖縄からのメッセージ」、非常にコンパクトに沖縄の歴史、琉球王朝時代からそして米軍の占領下、その前の沖縄戦、そして今の基地問題についてまとめられております。

 それから、私たち日本共産党は、昨年の沖縄サミットの前に、世界への、沖縄の米軍基地問題の訴えの文書も出しました。英文も含めて、外務大臣は英語もお得意ですから、お渡ししておきました。

 実は、これを読んできたかというようなことを確かめるつもりは全くありません。大臣も大変お忙しい立場でありますが、今後、これからも幾度ともなく沖縄問題について議論を交わしていくと思いますので、ぜひその議論の際に参考にしていただきたいというような気持ちであります。

 そこで、沖縄の言葉に、沖縄県民がよく使う言葉に命どぅ宝、命こそ宝という言葉があります。今、NHKの朝ドラで「ちゅらさん」をやっておりますが、あそこの中でも、命どぅ宝が今後のドラマの展開の中でテーマになっていくのではないかと思います。

 この言葉が生まれてきた原点というのは、言うまでもなく沖縄戦であるわけですね。住民が住んでいる島で唯一あの地上戦が繰り広げられて、お年寄りから子供まで一般の県民が戦闘に巻き込まれ、犠牲になる。そして、当時沖縄に住んでいた県民の三名に一人があの戦争で命を失うという悲惨な体験を経験してきたわけですね。そういう中から、人間の命のとうとさ、ここを尊重するという意味で命どぅ宝という言葉が生まれてきたわけです。

 田中大臣、その命どぅ宝という言葉に示される沖縄の世界観というんでしょうか、沖縄県民の思いというものについてどのようにお考えなのか、まず最初にお伺いしたいと思います。

田中国務大臣 これはたしか五月十八日だと思いますけれども、先生からちょうだいしたパンフレットを読ませていただきました。

 それで、発音がちょっと悪くて申しわけないんですが、その命どぅ宝と言うんでしょうか、発音は先生が本場物でやっていらっしゃいましたけれども、命が宝であるというこの言葉にやはり象徴されているというふうに思います。平和を願う心、そして人の命とか尊厳を大切にする、それであろうというふうに思います。

赤嶺委員 本当にお忙しい中お読みいただきまして、大変ありがとうございました。これに加えて、私たち日本共産党の世界への訴え、これもまたぜひ機会を見つけてお読みいただきたいと思うんです。

 今、命どぅ宝ということについて、田中大臣の基本的な認識が言われました。そこで伺いたいんですけれども、大臣が大臣就任直後に批判をいたしました教科書の問題、教科書における歴史認識の問題。

 一般的に、あの戦争を美化し、そして、あの戦争に対する反省の立場を失った教科書について、私は、田中外務大臣の生の声で、それに対する批判を聞きました。その後いろいろ紆余曲折もあるようですが、実は、あの教科書というのは沖縄戦についても記述が大変ゆがめられているんです。どこでゆがめられているかといいますと、ひめゆり部隊は勇敢に戦った、このように記述されているわけですね。

 靖国神社の参拝と、それから、沖縄には平和の礎や健児の塔やひめゆりの塔があります。私は、五月三日の憲法記念日には健児の塔に参拝をしてまいりました。靖国神社に行けば、戦前は、お国のために命を捨てたその軍人さんの後に続けというような誓いを歴史的に立てさせられてきたものです。私は、健児の塔に行って、後に続けじゃない、二度とこういう戦は起こしてはならない、同じ参拝でも誓い方が全く違うなという私自身の思いを込めて参拝をいたしました。

 それで、今度問題になっている教科書の、ひめゆり部隊の記述を読まれたひめゆりの生き残りの先生がこのように語っているんです。この先生は糸満の平和祈念資料館で語り部の仕事もしていらっしゃいますが、その歴史教科書に、よくも勇敢などとと言って絶句しているんですね。あれは勇敢に戦った歴史ではない、私たちは看護要員として戦争に巻き込まれた、戦争を美化してはならないし、ひめゆり部隊という言葉自体が認識の誤りを露呈している、このように言っているわけですね。

 私は、日米関係が日本の外交の基軸、そして、日本の外交をどこをよりどころにするかという点でいえば、こういう侵略戦争を美化したり沖縄県民の戦争体験をゆがめたりするような、そのことをまた憲法第九条に結びつけて、いろいろ議論されるのは結構だと言いましたけれども、やはり、憲法第九条の中にある戦争放棄、軍隊を持たない、この立場で日本外交を展開してこそ本当の意味での国民の歴史的体験を背負った日本外交になるし、日米外交になるのではないかと思いますけれども、この点では外務大臣のお考えはいかがでしょうか。

田中国務大臣 政界には、先ほどの東先生のような自由党の先生もおられますし、また赤嶺先生のような共産党のお立場の方もいらっしゃるわけですけれども、沖縄戦に限らず、侵略戦争とかそういうものは、とにかく美化しようというような気持ちは、私個人としては全く持ち合わせておりません。

 ただ、教科書問題もおっしゃいましたし、私もひめゆり部隊は、小学校のときでしたか、モノクロの映画を学校で見に行ったことがあります。

 それから、今語り部のことをおっしゃいましたけれども、私ども夫婦の子供が沖縄に修学旅行に行きますと、先生がおっしゃる方かどうかはわかりませんけれども、そういう方たちから必ずお話を聞かせていただくといって、これは今の教育の欠陥、少し話がわきに行くかもしれませんが、公教育でも近代史というものをなかなか教えないで、いつも、縄文、弥生、古墳、飛鳥の辺からばかり繰り返していて、なかなか近代史は言わない。家庭内におきましても、終戦記念日といいますか、その辺になると何かそういうものが放送されたり、昔の戦争の体験者がおられる御家族は話をしますけれども、核家族化が進んでいますとなかなかそういうふうなことが、自分の問題として認識したり議論をしていくというようなプロセスは経ない若い世代が、うちの子供たちの世代なんかも、そういう語り部の話を聞いて、大変な勉強と、衝撃を受けるお子さんもおられるようですけれども、そういうことがございます。

 ですから、いろいろの立場の方がおられるわけですけれども、先ほどの命どぅ宝ですか、これについてはもうよく私は自分でも受けとめられると思いますけれども、教科書問題につきましては、これは文部省マターで、大変恐縮でございますけれども、これについては検定というものが厳正に一応なされておりまして、その採択は個々に任されるということでございますので、今の制度というものを御理解いただきたいというふうに思います。

赤嶺委員 前半、命どぅ宝にやはりいろいろ感慨を持っていらっしゃるその立場には私も賛成でありますが、教科書検定は適正に行われたというのでは、こういう教科書が出回っているようでは、アジアからも信用されませんし、何よりも、あの命どぅ宝を命からがら体験してきた沖縄のひめゆりの生き残りの先生が、この教科書の記述を読まれて絶句する、こういうことについて思いをはせないような、こういうことを踏まえないようなものでは、やはり日本外交というのは私は成功しないんじゃないか。

 私、もう一つ申し上げたいんですけれども、この本でも紹介されています九五年の少女暴行事件のときの県民決起集会、あのときに県民総決起大会でアピールを採択いたしました。このアピールの中で書かれていることをちょっと読み上げたいんです。

 私たち沖縄県民は平和を希求する民である。これは沖縄を支え続けてきた歴史的バックボーンであるとともに沖縄戦で未曾有の体験を経て一層強力なものとなり、自信を深めた世界観である。私たち沖縄県民の先人たちが選択した武器を持たない正しさ、力を解決の手段として排除する外交の正しさを私たちは多くのとうとい命の犠牲、多量の血を流す中で再確認した。私たち沖縄の心とは武器なき平和な沖縄の建設であり、全世界がそうあってほしいとの願いである。

 まさに沖縄県民がみずからの歴史的体験を経てたどり着いたものをアピールにまとめてみたら、御承知のとおり、憲法第九条を思い起こすような精神が書かれているわけです。ですから、その憲法第九条を、そこの大事さを外交の中に生かすという点で、試金石は、私は、あの歴史教科書に対する認識であっただろうと思います。

 田中外務大臣が最初におっしゃったことと、今教科書問題でとっている立場というものは、そこはもう外れてきている。今までの日本政府がやってきた日本外交、ああいう侵略戦争に対する反省が弱いと言われている、アジアから批判を受けているような、この中身に入りつつあるというような懸念を、意見を申し上げて、それで次の質問に移りたいと思います。

 次は、ランド研究所の問題でありますが、ランド研究所については、外務大臣はこれまでも、民間の研究機関の文書であり、それにコメントすることはできないということをおっしゃっているわけですが、それにしてもひどいんですね。ランド研究所の中身というのは、中国と台湾の軍事危機を予想して、沖縄の宮古諸島にある下地島空港をアメリカ空軍の拠点施設に使用するという考え方であるわけです。そして、アメリカが戦略を変更したら、アメリカが沖縄の土地を使いたいだけどんなことをやってでも使えるんだという思想が、このランド報告書の中にはあらわれていると思うのですよ。

 私、二月に河野外務大臣と、ヘイルストン中将の暴言について議論をいたしました。そのときにも、アメリカというのは、アメリカの覇権主義というのは傍若無人だ、沖縄に百三十万の人が暮らしているということについて全く念頭に置いていない、こういうような批判をいたしました。河野外務大臣は、その後の経過を見守っていただきたいという答弁でありましたが、そういうヘイルストン中将の暴言といい、今度のランド報告の、中台軍事危機を想定して新たに宮古島に軍事基地をつくろうといい、まさにアメリカの覇権主義そのものですよ。

 私、こういう問題が外交の公式の場に提起されてきたときに、外務大臣は、沖縄県民の立場に立って、こういう新しい世界の問題について、政権がブッシュ氏にかわり、かわったから中台危機が言い出されるようになって、そのために沖縄に新しい軍事基地をつくる、しかもあの中には、普天間基地も返さない、那覇の空港も米軍が使った方がいい、こういうようなことを言っているわけですからね、そういうようなものについて断固拒否する、外交の舞台に公式に上がってきたときに断固拒否するという立場をとるべきだと思いますが、いかがですか。

田中国務大臣 先ほど先生もお触れになりましたように、私も、さきの委員会で、ランド研究所のことは、民間のことでございますからそういうシンクタンクのことについてはコメントをすることは適当でないというふうに思いますけれども、あえて先生の今おっしゃったことすべて勘案して申し上げられますことは、沖縄に確かに百八十万の方たちがいらっしゃって、そしてそこに過重な負担がかかっている、い過ぎるということを何とか軽減しなければいけない、その努力を日米がともにいたしてきておりますし、その負担軽減のために、SACOの最終報告を着実に実施するというふうなこともございます。

 それから、政府はとにかく、民間ではいろいろな意見があるということはもちろん十二分にわかっておりますし、沖縄の人々のその痛み、心の叫びというものは十二分に理解しておりますけれども、やはりいろいろな世界情勢等もありますし、そういうものをすべて勘案しながら、御負担が軽減できるように、されるように、最善の努力を積み重ねていかなければというふうに思っております。

赤嶺委員 私、こういうところに、具体的な問題に来ると田中外務大臣の生の声が失われていくのを感じるのです。

 ヘイルストン中将のときも、本当に海兵隊のああいう放火事件について怒っていることについて、そしてその県民の怒りを抑え切れない知事はばかだというようなああいう態度。そして、中台関係が起きてくれば、新たに沖縄に軍事基地をつくろうという、たとえ民間の研究所のものであっても、空軍としっかり結びついた研究所ですよ、近々日本外交の舞台に上るということになるかもしれない。あるいは、今大臣、沖縄の県民の負担を軽減するためにSACO報告の実施ということをおっしゃっておりましたが、SACO報告についても後で議論しますけれども、SACO報告というのは、基地の県内たらい回しですよ。だれもあれが基地の負担の軽減なんてまともに考えている人はいないですよ。

 そういうようなときに、私がさっき質問をしましたのは、沖縄の基地強化が、新しく中台関係が言われて、宮古島に基地をつくるというような、あるいは沖縄の南西諸島に、南の島に基地をつくるというようなことが外交の公式の日程に上がってきたら、外務大臣としては拒否するということをしっかり言えますかということを伺っているのです。

田中国務大臣 それは仮定のお話でございますので、今はお答えをできません。

赤嶺委員 仮定と考えているのは、この永田町かいわいだけなんですよ。これが現実になるということをやはり沖縄の人たちは考えるのです。だから、これは仮定のことだとか民間の研究所の問題だとか、そういうようなところでこの問題をわきに置いてほしくない。

 一九七一年、沖縄国会が開かれていたときに、当時の琉球政府の屋良主席は、沖縄問題についての祖国復帰に関する建議書というのを出しました。あの中でこういうくだりがあります。日中間も国交回復の兆しが出てきたではないか、これはどういう政治家がどんなふうに切り開いていったかということはここであえて申し上げません、しかし、日中間の国交回復の兆しが出てきているにもかかわらず沖縄の基地は減らないのかというようなことを屋良主席は建議書の中で言っているんです。やはり、いつまでも日米関係の犠牲にするというようなやり方には、私は本当に怒りを禁じ得ません。

 それで、その下地島のことなんですが、最近、下地島空港そして波照間空港、ここに米軍の海兵隊の戦闘機が、空港管理者である沖縄県の自粛要請を無視して、地位協定を盾に強行着陸いたしました。

 実は、この下地島空港というのは、一九七八年七月に開港された民間機のパイロットの養成空港であるわけですが、つくるときから大問題になって、そして、当時の屋良知事が、運輸省とも何度も文書のやりとりをして、あの空港は軍事利用をさせないということが確認されて、そしてスタートをした空港であるわけです。

 その後、下地島空港に何度か米軍の戦闘機が飛来をし、そのたびに日米地位協定を盾にして、いや米軍は、民間の空港であっても民間の港であっても必要があれば使うことができるんだ、こういう日米地位協定の第五条を盾にとってずっと強行を繰り返してきているわけですけれども、下地島空港のスタートが軍事利用はさせないということでしたから、そして沖縄県議会でも、あの島の空港は軍事利用しないという県議会決議もあるわけですから、まずその沖縄県民の立場に立って、下地島については軍事利用するなということを日本の外務省としてアメリカに申し入れるべきだと思いますが、いかがですか。

田中国務大臣 先ほどSACOのことを申し上げましたけれども、米軍機は、日米の地位協定の第五条に基づきまして、我が国の飛行場に出入りする権利を認められております。そして、実際の使用に当たっては、米軍が当該空港管理者と所要の手続と調整を行うことになっております。そして、ちょっと御不満でしょうけれどもお聞きくださいますか、米軍が我が国の公共の安全に妥当な考慮を払って活動すべきことは言うまでもありませんし、そうしたことに私も意を払っていかなければならないというふうに思っております。

赤嶺委員 日米関係、それこそ私は外務大臣の生の答弁を聞きたいのです。外務大臣があの宮古島の地域や八重山諸島の地域について大変お詳しいということも、私は、八重山の地元の新聞で読んで見ております。波照間島というのは八重山ですから、波照間島にも米軍機は強行着陸していますからね。大臣が行かれたあの静かな島、静かな空港、あそこに米軍機がやってきたのですよ。地位協定で認められるというような、そういう外務省官僚が書いたような答弁をしていたら、沖縄問題も日米関係も変わらないのですよ。

 調整をしたと言われていますけれども、調整はしていませんよ。沖縄県は自粛要請をしたのですよ。沖縄県の自粛要請というのは、これを無視して着陸するぐらい軽いものなんですか、外務省にとって、何の意味もない紙切れなんですか。自粛要請をしながら、その自粛要請をはねのけて強行着陸する。

 竹富町の町議会は、何でこんな島に米軍の戦闘機が来るのだと言って、大変びっくりしているのですよ。下地島だってそうですよ。

 そういう地位協定の運用についても、一九八八年五月の内閣委員会で、外務省の当時の岡本北米局安保課長は、管理者の管理権をじゅうりんするような運用はしない、安保の運用だけ強制するつもりはない、このように当時の国会で答弁をしているのですよ。安保の運用だけ強制するつもりはないのだということを言っているのですね。

 地位協定上、民間の空港や民間の港を使う権限がアメリカにあるといっても、その理由だけで使うようなことはいたしませんということを言っているわけですから、沖縄県が自粛要請をしたということは、アメリカに対して断る立派な理由になると思いますよ、日本の外務大臣であれば。いかがですか。

田中国務大臣 当時の岡本安保課長の発言の経緯等もここにペーパーがありますが、御存じでしょうからあえて読み上げたりいたしません。

 こうした問題は、私は、一人の政治家として考えておりますことは、過去の経緯、それなりにいろいろ問題がありましたし、また御苦労もあったと思いますけれども、また原点に返るのですけれども、将来の展望としてどうあるべきなのか。日本の役割とか国民の皆様の将来、幸せのためにどのようなことを決めるかということを、もう少し時間をいただいて、それからまた、先ほどの民主党の先生もおられれば共産党の先生もおられる、自民党内には特にまたいろいろな方が、もっと怖い方がそろっておられますので、いろいろな意見を吸収しながら、決めるときは決める。

 しかし、私は個人じゃありませんから、閣内で、総理大臣もいらっしゃるわけです、総理は、こうしたことをすべて御存じの上で、検討していきたいということをこの内閣のスタンスにしておられますから、私は別に逃げちゃいませんよ、おりませんけれども、内閣の中で、濶達な、風通しのよい議論を、将来のために、国民の皆様のためにやりたいと思います。

赤嶺委員 私は、大臣が就任あいさつのときに、沖縄で実は自衛隊の基地も米軍の基地も見てきたのだと。そして、大臣就任をお考えでないときには、石垣島の市民大学で講演もしていらっしゃる、赤土の調査をしたということも聞きました。地元の八重山毎日新聞にもそれは載っております、報道されております。そして、その後の大臣の所信の中では、日本の外交を改革するというわけですから、その改革するという立場を聞いたればこそこういう質問をしているのであって、しかも、過去はともかくと言いますけれども、現在の問題を言っているわけですよ。

 沖縄県が自粛要請をしたにもかかわらず、それを無視して、ああいう小さな島の空港に強行着陸するようなやり方は、日本の外務省としても許せないのじゃないですか。たとえ地位協定があっても、ここはやめてほしいということを、地位協定第五条だって、あれは、緊急な燃料切れだとか緊急な事故の場合の使用を認めているのであって、今度の米軍の使い方というのは、いわば、米比共同訓練での作戦上の、戦略上の使い方なんですよ。こういう使い方を許したら、沖縄じゅう全部基地だらけになってしまうじゃないですか。どこで歯どめをかけるのですか。

 沖縄県民の苦難にこたえるというのであれば、外務大臣、下地島空港と波照間島空港を使うなということをアメリカに対してちゃんと主張する、ここから日本外交の改革を始めたらどうですか。

田中国務大臣 私、確かに波照間島に参りましたし、赤土の流出につきましては、主人が農林副大臣で、それは別件ですが、そうした環境破壊も見たいということで、上空からも見ましたし、視察もいたしましたし、市民の方からも大歓迎をしていただきまして、あの島も見ました。波照間の最南端に行って、地政学上どういうところかということは、暇でございましたので、まさかこんなポストにつくとはゆめゆめ思っておりませんでしたから……(赤嶺委員「今の議論に生かしてください」と呼ぶ)

 先生、よく御理解ください、私の基本は、過去いろいろあったし、それからいろいろな思いがあって、それは私なりにお粗末な頭で理解しておるのですけれども、やはり、今を踏まえて将来にどうするかということが政治なんですよ。しかも、外交は相手がある。

 したがって、アメリカが言っていますことは、日本もですよ、沖縄以外で訓練を行うことによって沖縄の負担の軽減につながる、こういうことをしなきゃいけない。だから、SACOも、先ほども申しましたけれども、いろいろなことがありますけれども、一極集中がいいなんて思っていないから、アメリカも日本もいい方向に努力をしているんだというポジティブシンキングを少し御理解いただけませんでしょうか。

赤嶺委員 私、この問題はこれで終わりにして次の問題に移ろうとしたのですが、今の答弁を聞いて、日本外交というのはこんな貧しさを持っているし、それを田中外務大臣も引き継いでいるのかと思って大変残念な気持ちですので、率直に申し上げます。

 アメリカがフィリピンで訓練をすることは、沖縄県民の負担の軽減ですか。米比共同訓練というアメリカの戦略上の目的に基づいてやった訓練であって、県民の負担の軽減というのは、後でつけた理屈ですよ。そんなのを、日本の外務省も沖縄の特別大使も、アメリカの司令官が言ったら、それをオウム返しに言うような、日本の外務省としてろくろく調べもしないでオウム返しに言うようなことはやめていただきたいと思うのですよ。私、そのことは本当に申し上げたいと思います。

 ヘイルストン中将が先にそういう発言をしたのですよ、沖縄県民の負担の軽減になると言って。それを外務省が繰り返し言い出しているのですよ。その官僚の感覚が答弁メモになって大臣のところに出てきて、大臣がそういう同じ言葉を口にするというのは、沖縄通だと言っているわけですから、もっと大臣の目で沖縄に通じていただきたいというぐあいに思うのです。

 時間がありませんので、次に、普天間基地の問題について質問いたします。

 普天間基地について、来月また代替施設協議会が行われるようです。政府は粛々と進めているようですけれども、その敷地建設現場にはジュゴンが見つかり、ジュゴンの保護が大問題になり、昨年十月のアンマンで開かれた国際自然保護会議では、ジュゴンの保護が明記された勧告決議が出される。世界の目が、あのきれいな海に米軍基地を日本政府は本気になってつくろうとしているのかという注目を集めています。

 そして、名護の市長が一番心配していました米軍の騒音問題でも、三月、四月に米軍が訓練空域外の訓練を名護上空で行って、名護市議会の怒りとひんしゅくを買った。現に、基地誘致派の議員の中でも、これでは米軍基地の使用協定を結んでも何の役にも立たない、使用協定そのものが何の役にも立たないという認識になってきております。

 そこで、この基地をつくる際に自民党と稲嶺知事が県民に公約した十五年の使用期限の問題ですが、この十五年の使用期限というのは、私たちは十五年の期限をつけて基地をつくるなどということには反対です。でも、政府は、外務省は、沖縄の稲嶺知事が提起した十五年使用期限について、基地移設の前提条件であるという認識を持っておられるかどうか、いかがですか。

田中国務大臣 十五年の使用期限の問題ですけれども、私は一議員のときから素朴な質問として、何で十五年なのだろうかという思いが、何で十四年でも十六年でもないのかなという思いが何となく、まだそれこそメディアを見るしか方法がありませんので、感じておりました。

 そうしましたら、たまたまこの大任につきましたら、最初にいらっしゃったお客様が稲嶺知事でございまして、私は素朴に、何で十五年なのですかということを目を見て伺いましたら、お答えはありませんでした。これはまず御報告いたします、事実ですから。

 それから後は、これはもうまた耳だこでいらっしゃると思いますけれども、この使用期限の問題につきましては、普天間ですけれども、平成十一年末の閣議決定にあるとおりでございまして、国際情勢もあり、厳しい問題であるという認識は持っております。だけれども、国際情勢の変化に対応しながら、代替施設を含めて、今現在沖縄にある米軍の兵力構成等の軍事態勢については、米国政府と協力をしてよく話をしていく。

 しかし、そうはいいながらも唯々諾々とやるのではなくて、国際情勢が肯定的に、ポジティブに変化するように、日本もあらゆる意味で、多角的にといいますかオールラウンドで努力をしていくということは言わずもがなでございます。

赤嶺委員 十五年使用期限問題で今外務大臣が読み上げた答弁というのは、私が外務省に質問をした答弁と一言一句変わらぬね。私も、この文言は暗記できるぐらい、本当に聞き飽きるぐらい聞いている官僚答弁なのですよ。十五年問題に新たな光を当てようとする姿勢が全くないなということを感じているのですが。

 十四年や十六年でなくて何で十五年かというのは、皆さん、自民党が言い出したことなのですよ。県民から十五年というような話は出ていないですよ。前回の県知事選挙のときに稲嶺知事が公約し、自民党がそれを支持し、十五年だったらできるのではないかといって、たとえ個人であっても、十五年問題についてそんな無責任な態度をとられたら困りますよ。十五年というのは基地建設の前提条件として認識しているのかどうかということを聞いているわけですから。

 時間がありませんので、もう一つ大事な質問を残しておりますので、もう一つの質問もさせていただきたいのですが、えひめ丸の問題です。

 えひめ丸の問題では、グリーンビルの司令官であったワドル前艦長に対して、司令官による行政的懲戒処分として減給二カ月を通告し、艦長職を解任、こういう措置になったわけですね。その中で、搭乗させた民間人の接待を最優先させた問題だとか、あるいは緊急浮上の操縦桿まで握らせていた艦長の責任という問題が明確になっているにもかかわらず、犯意または故意の違反行為はなかったということで、軍法会議にもかけないで結論を出したわけですね。

 これに対して、宇和島水産高校の関係者は、犠牲者の家族の方々は、余りにも軽過ぎる処分、怒りを通り越し、言葉がない、軍法会議は真相究明と不幸な事故を二度と起こさないためにぜひとも開いてほしい、こういうような要望を出しておられます。

 政府は、今回のアメリカの措置を認めるという立場をとっておられますけれども、被害者の心情を考えたときに、被害の内容を考えたときに、そしてこの事件の再発防止を考えたときに、ああいうアメリカのとった措置に、日本政府がそれを是認するというのは対米追随ここにきわまれりという感じがしますけれども、この問題について、いわば軍法裁判にもかけないでああいう措置をとったことについて、外務大臣はどのように考えておられますか。

田中国務大臣 えひめ丸のことにお答えを申し上げます前に、先ほどの十五年問題ですけれども、これはやはり私の思い違いではなくて、自民党が提案した数字ではございませんで、稲嶺知事さんや岸本市長さんが、かねてから、代替施設に十五年の使用期限を付するように……(赤嶺委員「その前に知事選挙でやったのです」と呼ぶ)そうです。知事選挙なのですね。これで勝ったかどうかはわかりませんけれども。(赤嶺委員「応援に行きましたか」と呼ぶ)いえいえ。

土肥委員長 ちゃんと手を挙げてやってください。

田中国務大臣 これは稲嶺知事や岸本市長がかねてから代替施設に十五年の使用期限をつけると言ったのであって、先ほど先生がおっしゃった、自民党が言い出したことではないのでございます。(赤嶺委員「とんでもない。自民党は応援したのですよ」と呼ぶ)

土肥委員長 手を挙げてください。

田中国務大臣 選挙の応援ではなくて、それは別問題ですからお返しします。

 それから、えひめ丸のことでございますけれども、えひめ丸につきましては、私も自分の家族にこれが起こったらどうかと思うと、本当に大きな衝撃を受けます。本当にお気の毒だというふうに思います。二度とあってはならないことだというふうにも感じています。

 ですけれども、遺憾の事故ではありますけれども、今私たちができるのは、これはアメリカで、結局アメリカが自分の政府の制度内でもって決定を下したことでございますから、私どもが特定の措置をこれから求めてくれとか云々ということも現実的には無理ですので、私どもが今できることというのは、再発防止に取り組むことでありますとか、それから早くえひめ丸の引き揚げ、これは私たちもお茶の間でも、何で早くやらないのかしらと、もちろん環境汚染の問題等もあるでしょうけれども、身内だったら、友達だったらと思うと、やはりあの引き揚げを早く急いでもらうとか、補償の問題も、今弁護人をつけたり、いろいろ個々の方がなさっているようでございますけれども、そういう残された重要な課題につきまして、引き続きアメリカに強力に申し上げていくということに尽きるわけでございます。

赤嶺委員 これで終わりますけれども、十五年使用期限というのは、稲嶺知事が知事選挙のときに公約をし、自民党がその公約に、責任ある立場から稲嶺知事の選挙を一生懸命応援した、この関係ですからね。ここに来て、自民党が知りませんということは絶対言えませんよ。それはもう大変な責任を負っている、与党としても。

 それから、今のアメリカの米原潜の問題についても、日本政府の態度というのは、一九九八年二月の、イタリアで起きたあの低空飛行に関するイタリアの人たちの犠牲に対するイタリア政府のアメリカへの厳しい姿勢に照らしてみても、本当に対米追随ぶりが目に余る。こういうことを変えずして、改革ということは言わないでいただきたいということを申し上げて、私の質問を終わります。

     ――――◇―――――

土肥委員長 次に、理事の補欠選任についてお諮りいたします。

 委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員になっております。この際、その補欠選任を行いたいと存じますが、先例によりまして、委員長において指名することに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

土肥委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 それでは、理事に土田龍司君を指名いたします。

 午後二時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十時五十八分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時開議

土肥委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 質疑を続行いたします。東門美津子君。

東門委員 社会民主党の東門美津子でございます。

 まず、田中外相の外相就任に対し、お祝いを申し上げたいと思います。このような重要なポストに女性がつくということは、同じ女性として、うれしく、また誇りに思います。また、田中外相の政治姿勢を見ますと、官僚の言いなりになることなく、御自分の目と耳でじかに国民の姿を見、国民の声を聞く姿勢をとっておられるようで、外相となられても、どうぞ、国民から遊離することなく、これまでと同様の政治姿勢が続けられて、田中外務大臣になって日本の外交が変わった、見えるようになったと言われるような御活躍を期待したいと思います。よろしくお願いします。

 質問に入りたいと思います。

 初めに、沖縄の基地問題についてお伺いいたします。

 沖縄は、第二次大戦終了後も長い間米国の占領下、施政権下に置かれ、復帰後約三十年たった現在も、国土の〇・六%にすぎない狭い沖縄に、在日米軍専用施設の四分の三、七五%が集中しています。

 町の中心部に基地が置かれているという現状は、地域の振興開発を図る上で大きな障害となっています。また、基地が存在することにより、航空機騒音や有害物質などの環境問題、米軍機の航空機事故、さらには、米兵による女性や子供の人権、尊厳を踏みにじるような事件、事故など数多く、沖縄県民がこうむっている被害は、言葉で言い尽くせないものがあります。沖縄県民は、今日まで、五十六年もこのような苦痛を強いられ続けてきています。

 事件、事故が起こるたびに、政府や米軍から、再発防止に努めますとか綱紀粛正を徹底しますとか教育の強化が繰り返し約束はされますが、状況は一向に改善されておりません。基地自体を本当に整理縮小しない限り、そのような事件、事故の根本的解決にはならないというのが沖縄県民全体の共通認識です。

 政府は、この問題について、SACO最終報告の着実な実施、それだけを繰り返すのみで、小泉首相の所信表明演説でも、従来の政府の姿勢から踏み出すことはありませんでした。しかし、SACO最終報告の実施のみでは問題の解決にはほど遠いということは、沖縄県民ならだれでもわかっていることです。どうか、この沖縄県民の声に真摯に耳を傾けられて、目に見える形での米軍基地の整理縮小に取り組んでいただきたいと思います。

 田中外相の沖縄基地問題についての基本認識をお聞かせください。

田中国務大臣 東門委員が長年経験していらっしゃる中からほとばしり出るお言葉、身につまされます。

 議員になります前も、沖縄問題というものにメディアを通じて接しますたびに、本当に身を切られる思いでありましたし、議員でないときも、一極集中ということの過重負担、これは十二分にわかっておりました。

 では、一体、世界じゅうからなかなか紛争もなくならないわけですし、ですから沖縄がいいなんて申しているわけではもちろんございませんで、これは私が政治家となる前からずっと考えていたことなんですけれども、日本国民として、また地球上の人間として、みんなが幸せであるためには、紛争というのがたくさんあって、そういう紛争をうまく調整するというか、人間の利害対立というものは洋の東西を問わず昔からあったわけでして、そうしたものの利害調整をいかにうまくしていくかということが政治の基本、政治というものがギリシャで生まれたころから、そういうものであろうというふうに思っております。

 そういうことを踏まえた上で、では、人間として、受益と負担の関係というものが必ずあるわけでして、社会でそれぞれ違った立場で、違った過去を背負いながら、違った地域で、違った未来を担って生きていく上で、受益と負担というものの関係をどのようにしっかりと認識して実際に自分が行動するかということは、私は、主婦のころからずっと考えてきておりました。

 国会議員になりましてからも、こういうことが、安全保障の問題だけではなくて社会保障制度もそうですけれども、私、長いこと社会保障制度の勉強をさせていただいて、約八年やってまいりましたけれども、あらゆる意味で、日本はかなり依頼心が強くて、親方日の丸、世界の中でも国内においても。そういうような価値観が支配していたのではないかと思うのですね。

 そのことによって、今おっしゃったSACOの問題にしても、そのほか、あらゆることが沖縄に象徴的にあらわれているというふうに私は思っておりまして、そういうことを自分のこととして解決する意欲と、それから実行するという、実際にやってみなければこれは机上の空論になってしまいますので、限られた人生の中で、あらゆる立場の違い、理念の違いを超えて、どうやってこれを調整していくべきかということの原点が、この沖縄問題であるというふうにとらえております。

東門委員 ありがとうございます。ぜひ、田中外務大臣の間に、こういうことが変わったんだ、沖縄問題もこのように進展したんだ、基地の状況も変わってきたんだということが出現するように、私は、本当に心から期待したいと思います。よろしくお願いします。

 次に、地位協定の改定問題についてお伺いいたします。

 田中外相の前任者であられる河野前外相は、地位協定の改定につきまして、運用改善について米国側と議論をして、納得いく状況にならなければ地位協定改定も視野に入れる、そういう旨の答弁を繰り返しておられましたが、四十年前につくられた地位協定は、当時の日米両国の力関係を反映して、米軍に特権的、優越的な地位が与えられています。また、当時は想定されていなかった環境問題など新たな問題も生じるなど、現在の状況と余りにもかけ離れており、もはや、運用改善でその場その場を繕うだけでは、次々と起こる問題には対応し切れない状況になっています。

 地位協定の抜本的見直しが必要であるというのは沖縄県民全体の声であり、昨年八月には、沖縄県から政府に対して、地位協定見直しの要請書を提出しています。大臣ももうごらんになったかと思います。

 河野前外相は、四月四日の本外務委員会での答弁において、地位協定の改定に取り組むとなれば、あらゆる部分についてこちらも主張しなければならないし、また、先方の主張も新たな主張があるかもしれないということは想像にかたくないとして、米国との交渉を避けたいようなニュアンスの答弁をしておられましたが、田中外務大臣には、どうか、この沖縄の住民の切実な願いに耳を傾けて、難航することをいとわず米国と交渉されて、地位協定の改定について積極的に取り組むことをお願いしたいと思います。

 沖縄県民と申し上げましたが、地位協定の問題は、沖縄県民だけの問題ではなく、これは全国民の問題だと思います。そういう意味で、やはり国民、県民の立場に立って、ぜひ、先ほどからよくお使いになっておられるポジティブにその問題に取り組んでいただきたいと思いますが、どうぞ御所見をよろしくお願いいたします。

田中国務大臣 地位協定の問題というのがえらく象徴的なことのようにとらえられていますけれども、本質論としては、人間の社会ですから、やはり地球上に不安定要因というものが、いつの時代にも、いつの世にも、どの地域にもございます。私がきょう午前中申しましたけれども、外交の要諦は国民の皆様の生命、財産、安全を守るということを考えましたときに、何かが起こってから、あれは失敗だったということは、政府というものは、為政者は許されないわけです。

 そこで、いろいろな苦難や矛盾を抱えながらも、例えばこの地位協定に関しましても、機敏に個々の問題に即応できるような体制、ですから、これが即、運用の改善ではなくて改正ということになれば一番いいわけでしょうけれども、やはりその運用の仕方も、もっとビビッドに、即応できるということをフランクに話をしていく、そして、それにはトータルなプランでどのようにあるべきかということと、個別に起こった事件、事犯についてどのように対応するか、これはやはり為政者の取り組みではないかというふうに私は思っております。

東門委員 そのとおりだと思います。為政者のお仕事だと私は思います。そういう意味から、やはり、基地を抱えてそこで生活している住民の立場からの発言だと思ってぜひお聞きいただきたいと思います。

 実は、ことし二月に放火事件が沖縄でありました。別に初めてではないんです、これまで何度も起こっていることなんですが。そのときに、放火容疑の米兵の身柄の引き渡しを米軍が拒否したということを契機としまして、そのときにも委員会で質問をしましたけれども、前外相は地位協定改定も視野に入れるというふうにそのときおっしゃったんですが、今即応性と強く強調されておりましたが、既に事件後三カ月以上経過をしております。いまだに、放火犯の起訴前引き渡しについて運用改善が決定されたという話は聞こえてきておりません。

 この問題についての日米間の交渉の進捗状況がどうなっているのか、ぜひ伺いたいと思います。その時点で前大臣は、放火もやはり明示的にちゃんと出していきたいという強い御発言があったものですから、ぜひお伺いしたいと思います。

田中国務大臣 これも本当に言うはやすく行うはかたしで、またあなたも同じだったわねと言われる結果になってしまったんでは何にもならないと思いますけれども、米兵、米軍関係の被疑者の起訴前の問題ですけれども、今おっしゃっているのは、地位協定の十七条の五項といいますか、これを改正すべきだという御指摘だというふうに思うんですけれども、犯人引き渡しの問題ですけれども、これは、沖縄県民の方々の強い御意見というものはわかっておりますが、同じ言葉を繰り返すようですけれども、やはり即応性というか、運用自体の改善の措置として、何かもう少し踏み込めるといいますか、機敏に対応できるようなもの、言葉の上だけではなくて、できるようなシステムといいますか、そういうものができないものかどうか。

 私も実はこれについて、大臣になって即、まずさわりのレクチャーがさっとありましたので、それはまた後日こういう質問が出たときに対応して詳しく勉強をしましょうという、タイムスケジュールが次から次へございましたのでそういう形でしか聞いておりませんけれども、これについてはかなりしつこく私の方から聞きまして、今の段階ではちょっとなかなか難しいという話は聞きました。ただし、今月の五月十五日、第一回目の日米協議、それを指示して実施するように言っておりますので、今後さらに協議をするように申します。

 そして、問題は、これは弁解じゃないんですが、政治家がスケジュールに追っかけられてしまうので、事務方にそれをお願いしても、それが上がってこないとそのままになってしまって、また委員会になるということがあって、後追いになるんですね。ですから、これをここで申し上げてもぼやきになるんだけれども、もう少しスケジュールといいますか、こういうときは集中的に事務方とかあるいは現場の方と議論をさせていただく、生の声が伝わるようにしないと、やはり役所の方でペーパーだけができ上がっていくというようなギャップがあるんですね。それを改善するには一人や二人じゃできませんので、副大臣や政務官もいらっしゃいますので、やはり政治家みんながアラートな状態でいなければというふうに思っております。

東門委員 いや、おっしゃるとおりだと思います。ぜひ、ペーパーだけではなくて、あるいは官僚の皆さんのレクだけではなくて、大臣みずからいろいろの場で議論をしていただきたい、そしてちゃんとした対応をしていただきたいと思うのです。

 大臣のお言葉の中に、やはり機敏に対応すると。しかし、今、運用の改善というだけでは……。常に新しいこと、何か事件が起こるたびごとに何か運用の改善で、運用の改善でと。ですから機敏になれないんだと私は思うのです。むしろ、地位協定をちゃんと改定する、もちろんこれはアメリカ側にこちらから提案をするということになりましょうが、その場を通してテーブルの上でちゃんと改定をする、そうすれば、一々何か新しい事件が起こるたびに、じゃ、これはどうしましょうかということにはならないで済むと思うんです。

 そういう意味でも、運用の改善というのではなくて、やはり地位協定を改定するという立場で臨んでいただきたいと私は思います。ぜひ御意見をお聞かせください。

田中国務大臣 繰り返しになって恐縮でございますけれども、今月の五月十五日、ついこの間でございますけれども、日米の協議を指示して、実施するように言っておりますので、その結果を早目に手に入れるようにいたしまして、また御報告いたします。

東門委員 ありがとうございます。今のことはわかりました、五月十五日の件は。

 その前の私の質問、大臣でなければどなた――大臣にぜひお聞きいただきたいと思うんですが、二月の放火容疑の米兵の身柄の件ですが、運用改善で対応したいということだったと私は記憶しております。その件、今までどういうふうになっていますか。それをぜひお聞かせいただきたいと思います。(田中国務大臣「外務省からでよろしいですか」と呼ぶ)はい、よろしいです。お願いします。私、政府参考人を要求しなかったので、ごめんなさい。

植竹副大臣 実は、今の委員のお尋ねでございますが、私も全貌を全部聞いておるわけではございませんが、実は、平成七年の刑事裁判手続に関する日米合同委員会合意によりまして、殺人、強姦等の犯罪につきまして起訴前の拘禁移転を可能にするということを、沖縄県民の方々の強い御意見を踏まえまして、運用改善措置をやってまいったわけでございます。

 この合意における「その他の特定の場合」の明確化につきまして協議することになりまして、今後、外務省といたしましても、鋭意努力してこれを推進してまいる所存でございます。

東門委員 確かに今のものは、私、特別個別に通告していなかったからだと思いますが、後で結構です、ぜひ、今のは平成七年の件のお話でございましたけれども、ことしの二月の放火……

植竹副大臣 追加して。身柄につきましては、既に日本側に引き渡しされております。今、公判中でございます。

東門委員 その運用改善ということはちゃんとなされたのでしょうか。そして、どれくらいの時間を要したのか御存じですか、おわかりですか。

植竹副大臣 その点につきましては、私も詳細に聞いておりませんが、後刻、委員特別のお尋ねでございましたら、直接御連絡申し上げます。

東門委員 はい、ありがとうございます。よろしくお願いします。

 この日米地位協定の問題というのは、これは日米安全保障条約と対になってきているものですから、私はとても大きな問題を持っていると思います。基地のある町で暮らしている人々、沖縄県のみならず基地所在府県、そういうところでは本当に大きな問題になっていると思うんですが、明文化しないと住民の権利、生活権というものも保障されない、健康に安全な生活をする権利さえも保障されないということがこれでは必ず出てくるんですよ。ですから、そこに一歩も二歩も踏み込んでいただいて、ぜひ田中大臣のもとで、日米地位協定、この部分がちゃんと改定されましたということができるようにお願いしたいと思います。

 もう一点ですけれども、同じ地位協定関連です。

 実は、ことしの三月、これは外務省の通報体制とも関係するんですが、キャンプ瑞慶覧内で、給油所地下の送油管からガソリンが流れ出して同基地内のわき水に混入していたということが判明しました。有害物質のベンゼンやトルエンが当初、排出基準の約十倍から十七倍の濃度で検出されていたようです。

 この問題については、一月二十日に住民が基地内の小川で異臭がすると米軍に通報したのに、米軍が那覇防衛施設局に連絡したのは三月の十日、汚染源である給油施設を閉鎖したのは三月末です。しかも、四月四日の米軍による報道陣に対する説明では、異臭が最初に確認されたのは昨年の十一月であるということが明らかになったわけです。この間五カ月もガソリン流出が放置されていたことになり、地下水脈を通じた広範囲の汚染の可能性も懸念されております。

 なぜ、これほど長期間ガソリン流出が放置されたのでしょうか。米軍の環境に対する意識は非常に低いと言わざるを得ないのではないかなと思います。

 政府は、昨年九月の2プラス2での環境原則に関する共同発表により、地位協定を改定しなくても実質的に環境保護は図られると説明をしてきましたが、この現実を見ると、とてもそのようには思えません。今回の事故における米軍の対応について、政府はどう認識しておられるのでしょうか。また、環境原則に関する共同発表は、今回の事故においてどのように適用されたのか。やはり、先ほどから申し上げておりますように、米軍の責任を明確化させるためにも、地位協定の改定が必要なのではないかと思いまして、ぜひ、政府の御見解を賜りたいと思います。

田中国務大臣 事務的に申し上げますと、本件は防衛施設庁によって現在対応されていることでございます。2プラス2もありますので、そういうときにこういう問題についても意外と耳に入っていないのかいるのか、私も今まで参加したことがございませんからよくわかりませんけれども、そういうことも詳しく、住民の皆様の声をよくそしゃくして、かみ砕いて、こういうケースもある、これはどうなんだろうか、これはおたくができることじゃないか、できなかったらなぜできないのかというような提案、プロポーザルの仕方をぜひやってみたいと私は思っています。

 それからあとは、御存じでしょうけれども、いわゆるJEGSという、環境原則に関する共同発表等もございます。それに基づいて一応今までもやってきているというふうに思いますが、環境問題というのは、沖縄だけではなくて、日本全体が、京都プロトコル、いわゆる京都議定書の問題がありまして、衆参の予算委員会等で随分テーマになっていることは御存じでいらっしゃると思いますけれども、そういう問題についても日本人はとても関心が深くなっています。

 それから、ごみの問題ですね。昨日も委員会で随分細かいお話が出ました。どうやって環境をよくしてこの地球を守っていくのか。それは産廃もあるし生活ごみもあるし、宇宙なんか、私は科技庁をやっておりましたけれども、宇宙にもスペースデブリといってごみをぼんぼん捨ててきちゃっているわけでして、向井千秋さんに、今度行くときは掃除機を持っていってがあっとしてきてくれないかと私は言ったのですけれども、そのうち本当に、宇宙ステーションをつくっても、それが飛んできてぶつかって、せっかくつくった宇宙ステーションの一部が破壊されるかもしれないというぐらいごみがあるそうですので、こういう問題は、ましてや今おっしゃっているような、基地内であろうとなかろうと、そういうような処理をするということは、メンタリティーが、基本が問題だと思うのですよ、地球市民として。

 ですから、そういう面でアメリカにも怒られる方がたくさんいらっしゃると思いますので、そういう啓発、啓蒙運動も兼ねて、2プラス2のときに必ず発言をいたします。

東門委員 とても心強い御答弁、ありがとうございます。ぜひよろしくお願いいたします。

 では、次に普天間飛行場代替施設の十五年期限問題についての政府の交渉姿勢と申しますか、そういうものについて伺いたいと思います。

 あちらこちらでその問題については質問がされているかと思いますが、普天間飛行場の移設につきましては、平成八年のSACO最終報告で決定されたものです。

 ここで強調しておきたいと私が思いますのは、沖縄県は普天間飛行場の返還について強く要望しました。といいますのは、普天間飛行場は市街地のど真ん中にありまして、周囲には多くの学校がある、何かあれば住民の生命の危険というのが本当にあるので、そういうことからしても、やはり返還をしていただきたいと強く要望してきました。しかし、県内移設でいいということはだれも思っていなかったという事実です。

 それにもかかわらず、政府は、SACO最終報告で移設先を沖縄本島の東海岸沖としたため、沖縄県や名護市では当時強い反発がありまして、名護市で行われた住民投票では代替施設の建設反対が過半数を占めました。

 その後、知事選において、代替施設の使用期限を十五年に限定することを公約とした現稲嶺知事が当選をされて、十五年期限を含む幾つかの条件が満たされるということを前提として、平成十一年、ようやく移設受け入れが決定されたという経緯があります。

 そして、政府も、同年十二月の閣議決定において、「沖縄県知事及び名護市長から要請がなされたことを重く受け止め、これを米国政府との話し合いの中で取り上げるとともに、国際情勢の変化に対応して、本代替施設を含め、在沖縄米軍の兵力構成等の軍事態勢につき、米国政府と協議していくこととする。」と決定されたものです。

 このような経緯を踏まえますと、政府は、十五年期限の実現に向けて最大限の努力をすべきであると思いますが、これまでの政府の交渉姿勢、これはもちろんマスメディアを通してが主ですが、見ていますと、まさに閣議決定の文言どおり、米国政府との話し合いの中で取り上げるだけでありまして、何としても十五年期限を米国に認めさせようという気迫は感じられないのでございます。

 基地問題で現在訪米中の稲嶺沖縄県知事も、アメリカのシンクタンクとの意見交換の中で、日本政府の基地問題解決への努力不足に不満を述べているとの報道がなされています。きっと大臣もお読みになったことと思います。

 交渉の仕方にしましても、本外務委員会での河野前外相の答弁を聞いていますと、沖縄県民がこう考えているとか、あるいは沖縄県民の感情がどうであるかとか、沖縄を矢面に立たせるばかりで、これでは、日本政府は当事者ではなくて、沖縄の意見を第三者的に米国に伝える仲介者のような立場に思えて仕方がないのですね。

 確かに、十五年期限問題は沖縄の側から政府に対し強く要請してきたものです。国内的には政府と沖縄県あるいは名護市との関係であるとしても、対外的には米国政府と日本政府との間の問題です。

 田中大臣には、対米交渉において、十五年期限の設定は、日本の安全保障政策の全体の中で絶対に譲ることができないものであり、それは日本国民、日本政府の意思であるとして強く米国に申し入れていただきたいと思いますが、外務大臣の十五年期限問題についての取り組み姿勢をお伺いしたいと思います。

田中国務大臣 先ほど午前中の討論の中でも共産党の先生からこの問題が提案されまして、答えはあの中に入っておりまして、もちろん満足はしていらっしゃらないというふうには思いますけれども。

 これは自民党との関係ということで、東門先生のお尋ねとはちょっとずれますけれども、稲嶺知事が選挙戦中に十五年という期限をお出しになったわけで、そして、自民党が稲嶺候補をバックアップしたということで連帯責任ということかもしれませんけれども、基本的には、やはり今後とも平成十一年末の閣議決定というものに従って適切に対処していくしかないのかなという思いはしております。

 今回は、まだ二十六日まで知事さんはアメリカにいらっしゃっているそうでございまして、最新の情報を見ますと、知事の発言が、自分が訴えていることは、日本政府のみならず日本国民全体に基地の問題をきっちりとわかってもらいたいということだったのであるというふうにトーンダウンなさっているというふうに、聞きようによっては思いますけれども、そこは、政治家でございますから、いろいろお立場もおありになるというふうに思います。

 要は、ポイントは、おっしゃっているような普天間の問題に象徴されているようなことだと思うのです。

 私は、外国もそうですが、日本でも、実はキティーホークのタッチ・アンド・ゴーを相模湾でやっているところに実際に仲よしの議員さん数名と、公明党の先生もおられたのですけれども、行きました。原子力空母キティーホークが動き回っている、実際にタッチ・アンド・ゴーの訓練をしているときに、米軍の輸送機に乗りまして、そこに着艦するのですね。トム・クルーズの映画かなんかで見たことがあったのですけれども、あれを一度やってみたいなと思っておりました、おてんばなものですから。

 それで、キティーホークの中、全部を見まして、そして、帰りはまたそこから後ろ向きにどんと出発して、一分置きにタッチ・アンド・ゴーをやっている訓練の中に入っていって、我々もエンジンをわあっとかけていって、どんと出発するのですね。内臓も目も十メートルぐらい前へ出ていってまた戻ってくるぐらいな感じで、大ショックでしたけれども。

 ただ、私があそこで一番学んだことは何かといいますと、アメリカの若い兵隊さんたち、その方たちが母国を離れて、この極東の地域の安全のために命をかけて働いているという実態を見たんです。そのことが私の一番ストライキングな出来事でありまして、あれをやったことによって、私も心臓検査をしなくてもこのか弱い心臓もしばらくもつかな、病院に行かずに済むということもありましたけれども、それ以上に、一番は、やはりアメリカ人があれだけの気概を持っているということ。日本の若い人のことを一々今申しませんけれども、テーマがかわってしまうからあえて申しませんが、ああいう方たちの激しい、えらくすさまじい訓練を目の当たりで接しました。その方たちに私は命を預けて実際に乗ったわけですよ。それで日本の現在の平和と安定があるということ。

 それから、横須賀で、自衛隊の潜水艦、停泊中でしたけれども、これも乗りました。私は、地方に講演とかでお呼ばれしたら、国内、もう必ず陸上自衛隊に行きます。実弾演習をやっているところは何度も見ましたし、日出生台も行きましたし、上越も行きました。日出生台も、講演を頼まれて行ったんですけれども、時間があったから、湯布院のわきの日出生台、前の陸上自衛隊だったそうですけれども、そこも行きました。そこで、現場で働いている兵隊さんたちのニーズを聞きます。

 沖縄の南西航空団、あそこも参りました。あそこでアラート部隊、御存じですか。日本人で、本当にすばらしい、こういう青年がいて、我々の平和が、安全が守られているということ。私、その方たちに、ちょっと長くなりましたが、これは私の安全保障に関するポイントですから申し上げますけれども、二十四、五歳の方たちが三、四人でチームで二十四時間体制で常にいるんですね。そして、スクランブルが起こって、━━━━━━━━━━━━━━━━━━━三分だか五分以内でもってすぐ身繕いをしてどんと発進するんですよ。それに私は発進しないでいいからと言って乗せてもらいました。金魚鉢よりか小さいところに乗せてもらって、恐ろしい体験をしました。

 その方たちに、私は、安全保障委員会に行って、現職の、当時は某大臣でしたけれども、きょうはおられませんけれども、その方にあなた方の生の現場の声を伝えます、あなた方は自衛隊員として何を一番希望しますかと申しました。ばっと若い人たちが前へ出まして、月給を上げろとかデートする時間が欲しいと言うと思うじゃないですか、多分そうだろうと思いましたら、最新鋭の整備だと言いました。僕たちは日本の領空を守るために命をかけて働かせてもらっているんだ、だけれども、どんなことがあっても、領空侵犯されていても追いつかないんです、この現場の声を防衛庁長官に伝えてほしいとおっしゃいました。

 私はそれを実行しました、委員会で。防衛庁長官も運用局長も皆さんおられましたよ、防衛庁関係者が。よくわかったとおっしゃったんです。わかったということは私はやると思ったんです、ばかで。ところがやられていません。がっかりしました。

 私が申したいことをもう一回言います。アメリカの兵隊さん、米兵も、ランクはいろいろあります、それなりに頑張っているんです、この地域の安全のために。何もしないで平和があるんだったらそんないいことはありません。冒頭に私は受益と負担ということを申しました。その中で、沖縄だけに一極集中していいなどということは毛頭考えていません。稲嶺知事がおっしゃったように、日本人みんながわからなきゃいけないんですよ。

 ですから、これには時間がかかると思います。かけてはいけない問題もあります。先ほど来おっしゃったことです。それらをしっかりと踏まえて、やはり、本気で本音の政治をやりたい、外交をやりたいというのが私の今申し上げられる、まだ就任して三週ぐらいですけれども、最大の言葉でございますので。少しわかっていただけますでしょうか。余り上手に表現できませんでした。

東門委員 お時間をとって御高説を伺った気もするんですけれども、全然反対の立場に立っておられるのかなと、最初はすごい期待をしておりましたけれども、何か今のお話を伺って、えっ、逆の立場、反対の、対極におられるのかなと、ちょっとまた一瞬しゅんとしております。

 大臣、軍隊が本当に、例えば大臣のお住まいのところにおられて、日ごろ、日常そういうのを見ておられて、ただ気まぐれに行って体験したということじゃなくて、そういうことで生活の中から出てくる実感なのかということが一点。

 軍隊は本当に住民を守るのか。もうそれははっきり大戦で示されています。沖縄を見てください。あれは、軍隊は守らなかった、むしろ住民を犠牲にして起こった悲劇なんですよ。それはわかっていただきたい。

 私は、そういう意味では、大臣の今の御高説、御熱演でしたけれども、そことは別の、逆の立場におるなと思うんですが、その件はまた委員会の席ではないところでぜひ一度お話をさせていただきたい。これはここでは時間がもったいないんですよ。私、時間がないんです。

 十五年使用期限の問題を私は伺ったのです。それをぜひお答えいただきたいと思います。

田中国務大臣 そうしますと、現時点において最大申し上げられますことは、やはり、今後とも平成十一年末の閣議決定に従って適切に対処していくということ以外にありません。

 私一人で独断専行できませんので、内閣全体の、総理もおられますし、それから連立でもありますので、ですから、私、先ほど憲法の話でも言ったんですが、あまねく大きな意見を、大きないろいろな声を、我が党にもいろいろな意見もありますので、それらを開陳して透明性を高めて、そして政治が決断をすること、実行をすることなんです。責任をとることなんです。その環境をつくるための一石は投じなければという覚悟はしております。

東門委員 外交の最高責任者は外務大臣です。もちろん任命権者は総理大臣ですけれども、外交は大臣に任されているわけですから、そこはぜひリードしていただきたいと私は思うのですね。

 この十五年の使用期限の設定というのは、沖縄県や名護市が代替施設を受け入れるために示した最も基本的な条件なんですよ。受け入れるに際してこれを条件に出して、そして、これが認められないことになれば、代替施設を受け入れるという意思決定の前提条件が根底から崩れてしまうことにもなりかねません。

 もし政府が米国と十五年期限について合意ができなかった場合のことですが、沖縄県や名護市から辺野古への移設を白紙に戻してほしいという要請があれば、政府はそれを受け入れますか。それとも沖縄県や名護市の意思を顧みずに移設を強行することもあり得るのでしょうか。田中大臣の御見解を賜りたいと思います。

田中国務大臣 今はオンゴーイングの途中でございますので、もう少し結果も見させていただきたいというふうに思います。

東門委員 いや、これは先ほど申し上げました、本当に前提条件、一番下にあるものです。これさえ守れないで、今、話によりますと、代替施設協議会ではいろいろ工法についても話が進んでいるやに聞いております。そういう中で、アメリカとの合意がなされずにそれだけ着工されるということになっては、沖縄県の県民の負担を軽減しますと本当に言葉ではいいのが返ってくるんですけれども、これは県民の負担の軽減にはならないんです。強化にしかならない。負担はさらにおぶさってくるんです。

 そういう意味で、これはぜひもう一度お聞かせください。よろしくお願いします。

田中国務大臣 東門先生の御意見をよく踏まえて、また検討をいたします。

東門委員 先ほど、朝、赤嶺さんからも質問があった件で、私もやはり一点申し上げておきたいと思うんです。

 大臣は、たしかあれは予算委員会でしたか、ちょっとテレビで見たんですけれども、ランド研究所の報告書に関する御意見がございました。そのときに、一民間機関の研究報告書であるからそれに対して一々コメントできないというような御発言だったと覚えておりますが、間違えていたらごめんなさい。

 この「米国とアジア」と題するランド研究所の報告書なんですが、これは米国防総省の委託を受けてまとめられたものだとされております。この報告書をまとめたのがザルメー・カリザド氏という方で、ブッシュ政権の国家安全保障会議の上級部長に就任しておられる。その内容は今後の米国のアジア政策に大きく影響すると見られているわけです。ですから、一民間機関の研究報告書であるとして看過することはできないと思うのですね。

 その報告書の中身なのですが、重複するところもあるかもしれません、報告書は、中国を強く意識して、その軍事力が米国にとって脅威になる可能性を指摘し、その対応策として、沖縄県の宮古島、下地島空港の使用など、琉球諸島南部の軍事基地化を求める内容となっています。これを読みますと、先日の空中給油機とヘリコプターの下地島空港への飛来も軍事基地化のための地ならしではないのかと、非常に危機感を感じてしまうのです。報告書では、見返りとして、在沖縄海兵隊の削減などが挙げられていますが、これでは沖縄が米国の軍事戦略により一層深く組み込まれることになり、絶対に容認できません。

 ブッシュ政権の登場によって、東アジアの緊張感は非常に高まっていると思います。中国との関係では、その位置づけを戦略的パートナーから戦略的競争相手として、国境付近の偵察飛行により軍用機の接触事故を引き起こして、台湾への武器供与問題でさらに緊張感を高めています。対北朝鮮政策でも、クリントン政権下で進められた融和政策がとんざしている。

 このような一連の動きを見ますと、米国は、東アジアでの覇権を守るため、台頭する勢力を封じ込めようとするかのようであり、そのために東アジアの緊張感が再び高まりつつあると感じられます。普天間飛行場の十五年期限を初めとして基地問題を議論すると、常に国際情勢の動向いかんという話が出てきますが、米国自身が国際情勢の緊張感を高める動きをしている状況では、いつまでたっても沖縄の負担は軽減されないとしか言いようがありません。

 政府は、米国に対して、このような力による封じ込め政策ではなく、対話による相互理解と緊張緩和を進めるよう強く進言すべきであり、また、下地島空港など琉球諸島南部の軍事基地化は断固拒否するべきであると思いますが、田中大臣の御見解を承りたいと思います。

田中国務大臣 ブッシュ政権とより一層緊密な、お互いの政権も誕生したばかりで、こちらは後発でございますけれども、緊密な対応を通じまして、政策の協調、どこができるか、どの辺が譲り合えるかということについて協議を図ってまいります。

東門委員 どうもありがとうございました。

 よろしくお願いいたします。期待しております。

田中国務大臣 ちょっとその前によろしいですか。訂正を。済みません。

 キティーホークは空母でして、原子力空母ではないというメモが入りました。失礼いたしました。

土肥委員長 次に、米田建三君。

米田委員 外務大臣、お疲れでございましょうか。

 先ほど、始まる前に、理事室で随分お疲れの様子で壁にもたれておられる姿を拝見し、私は同期生でありますから、思わずひしひしと胸に友情が込み上げてまいりまして、どうしようかなというふうにいろいろ考えましたけれども、しかしながら、まず冒頭で、心からの友情を込めながら、一つ苦言と申しましょうか、同期の友人の一人として御意見を一つ申し上げたいわけであります。

 外務大臣は、小泉改革内閣の牽引車と言われているわけであります。我々同期にとりましても大変な誇りでもございますし、大いに御活躍をいただきたいわけでありますが、この間の就任以来のさまざまな言動を拝見しておりますと、例えばいろいろな御発言で追及を受けた場合に、疲れておったとかあるいはちょっと不勉強だったとか、ある意味では極めて正直なお答えでもあったわけでありますが、やはり一国を指導する立場にあられるお一人であります、そしてまた外交という極めて国家の命運を左右するその仕事の最高責任者でもあられますので、極めて正直なお人柄の結果の御発言だろうと思いますが、ぐっと腹にしまって、私は、やはり政治家としてはそういうことをおっしゃってはいけないのではないかなと思うわけなんです。

 もし仮にこれが民間の企業の新任の社長さんでしたら、一気に株が暴落することは間違いないわけでありまして、アイアンレディー田中眞紀子らしくないな、もうちょっとでんと構えて、この際、いろいろ御多忙でしょうけれども、事務当局とも打ち合わせしていただいて、どこかでぽこっと休みをおとりになって、何か午前二時ごろからレクが始まるケースもあるというふうにさっきおっしゃっていましたが、どうか田中眞紀子外務大臣らしい、外交の重責を全うするためのそういう新たな決意を、ひとつまず冒頭お聞かせを願いたいと思います。

田中国務大臣 米田委員と私は同期の当選でございますし、私は、社会保障とか教育とかの勉強をさせていただいて、先生はずっと安全保障関係をやってこられていると思いますけれども、できるだけオールラウンドに勉強をしながら、国会議員、特にこれからの時代を担う国会議員というのはオールラウンドプレーヤーであって、そして俯瞰図的に物事を見られるということ、これが非常に大事じゃないかなということを自分で心してまいりました。

 ですけれども、細かいことも知らないといけませんけれども、余り細かいことだけになると木を見て森を見ざるになりますので、ある程度、役所の方とか学者の方は細かいことを御存じですから、そういう方たちからいろいろな意見を、機会を見ては話を聞いています。もちろん議員さんからも、諸先輩からも伺っておりまして、それらを常に勘案しながら、どういうような国づくりといいますか、どういうような政策を日本は打ち出すべきなのか、これが外交かどうかわかりませんけれども、国内におきましても、食料の問題ももちろんそうです、農業問題やら住宅問題やら、財政問題、社会保障制度、それこそたくさんありますけれども、トータルは、やはり行き着くところは、どこの国もそういうものを抱えていますから外交なのかなというふうに思っていますので。

 できるだけ客観的で冷静でなければいけないということは心にありますけれども、何せ人間なものですから時々壊れまして、今回とまらない列車に乗っているようなものですから、ちょっと寝不足がたたって時々ぽかをやりますけれども、どうぞ同期のよしみで、それ以外の皆様もどうぞよろしくお願いいたします。

米田委員 去る十八日に、当委員会で大臣のごあいさつがございました。大変力強い、すばらしい中身であったと私は思います。

 冒頭はっきりと大臣がおっしゃったのは、外交の要諦は、国益を守り、また増進することである、さらに、外務大臣として、我が国の安全と繁栄を確保し、国民の生命及び財産を守ることを最優先の課題として取り組む、そういう決意を表明されました。その御決意にのっとって、幾つか御質問を申し上げたいと思います。

 まず、これまたしばしば既に話題になっており、また追及もされている部分でもありますが、各国首脳との就任早々の電話会談、キャンセルキャンセルというふうに報じられましたけれども、大臣は、これはキャンセルではない、調整中なんだというお答えでありました。それはそれで結構だと思いますが、その調整は済みましたか。

田中国務大臣 先ほど午前中もお答えしましたが、例えばイギリスの外相の場合は、やっと双方の都合がついて、スケジュールの都合それから時差の都合、外国に出ていられることもありますから、こちらが着任したからすぐといっても先方がロンドンにおられないこともありますので、それで、つながったと思ったらば、ちょっとお待ちください、お待ちくださいと、こちらが待っている間に、あっ、こちらの部屋へ来ると思ったら電話機のあるところに来られないで部屋から出ていきましたので、またということになって、その後こちらがいろいろアクセスしてもだめということもあります。

 それから、こちらのいただいた質問書にはオーストラリアのことも書いておられますけれども、オーストラリアのダウナー外務大臣は、二十八日月曜日に、私が北京から戻った直後に訪日するのでお目にかかることになっていますので、大使館を通じた中でもって、電話会談は結構ですとあちら側からおっしゃっていることもありますし、その他、ロシア等それぞれあるんですけれども、なかなか外務大臣というのは走り回っているらしゅうございましてつかまりませんので、調整中というところが多うございます。

米田委員 大変多忙なことは承知をしておりますが、小泉総理は、主要な各国首脳との電話会談をきちんと終えられているわけでございます。例えば、まだ恐らく済んでいないと思いますが、ソラナEU上級代表は、元スペインの外相でもあり、そしてNATOの前事務総長でもある。それから、英国のパッテン欧州委員でありますが、元保守党の幹事長ですね、さらには前香港総督でもある。極めて世界的にも著名で影響力のある政治家でございます。

 世界第二位の経済大国の外務大臣として、早急によしみを通じていただきませんと、中韓、アジアは重視するけれども欧州は重視しないのかというふうな誤解を与えるといけませんので、どうか早急にひとつコンタクトをおとりいただきたいというふうに強くお願いをしておきたいと思います。

 次に、いわゆる教科書問題につきまして、御質問を申し上げたいと思います。

 大臣は、新しい歴史教科書をつくる会のメンバーが執筆に加わった新しい歴史教科書について、まず、就任直後の四月二十七日に、ああいう教科書をつくって事実をねじ曲げようとする人たちがいるというふうに批判をされました。その後、衆議院の五月十四日の予算委員会の質疑では、就任直後はメディアで報じられていることに基づき発言をした、就任後いろいろと勉強した結果、近隣諸国条項を含む基準に基づき厳正に検定した結果合格したものと承知をしておるというふうにお考えを修正されました。そういう流れであったというふうに理解をしていいですか。

田中国務大臣 どなたでもそうだと思いますけれども、閣僚になるときとそうでないときは情報源が違うと思います。もちろん先生もそうでいらっしゃるように、議員のときは、メディアを通じながら、こういうことが言われているということでもって、私もあのような発言をいたしました、就任直後でございましたから。たしか冒頭に、かなり早い段階で教科書問題を聞かれましたから、それまでの認識どおりを申しました。

 しかしその後、私は、外務省を通じて文部省にお願いをして、つくる会の教科書がどんなものか、現物をとにかく見せてください、手に入れてくださいと、そして文部大臣にも初閣議のときにお願いをいたしました。それを手に入れて、つぶさに、附せんがついたものは全部読みました。

 読みましたけれども、結局、ここから言うとまた怒られちゃうかもしれませんけれども、やはり教科書の検定というのは、文部科学省がやるものでして、また言っていると思われるでしょうけれども、お聞きください、いわゆる近隣諸国条項を含む教科書検定基準に基づいて審議されて、厳正に検定されているものである。日本は国定教科書ではなくて検定制度というものを採用しているわけですから、先生や私が議員なんかになる前に。

 したがって、今回いろいろな修正の要求が韓国及び中国から出ております。それを真摯に受けとめて、文部省が、実際の事実関係ですごい間違いがあれば、そこでまた知恵を出されると思いますけれども、この制度の中で私たちは検定制度を実行しているということは、これは一閣僚として申し上げざるを得ません。

米田委員 五月十四日の衆議院の予算委員会における大臣の御答弁は、全く妥当なんですよ。

 要するに、我が国の教科書検定制度というのは中国や韓国と違いまして、中国や韓国は国定教科書なんですね、国家がつくっている、国家の認識が示されているわけであります。我が国は、そうではなくて、執筆者の原則自由な記述を認めておる国であります。ただし、著しい史実の誤りやあるいはバランスを失した記述には検定意見をつけて修正を求める、こういう制度でありますから、四月二十七日段階の大臣の御発言だったら私はこれは問題だろうというふうに思いますが、五月十四日の予算委員会でのお答えは全く妥当なわけであります。

 なお、日本の制度についてさらに申し上げるならば、今度は教科書の採択の問題があります。これは、公立の小中学校におきましては、最終的な権限は市区町村の教育委員会にあるわけであります。ところが、実際の場面では実はいろいろな問題があるわけでありまして、その点につきましても、後で国務大臣としての御見解を伺いたいと私は思っております。

 その前に、今申し上げたとおり、中国や韓国の教科書は国定であります。我が国はしばしば両国からいろいろ注文をつけられておりますけれども、では、それらの国の教科書における我が国に関連する記述はどうなのかということを調べてみますと、私は、見過ごせない記述がたくさんあると思うのですね。

 例えば、これは韓国の中学校歴史教科書ですが、竹島について、竹島のことを韓国は独島と言うのです、日本が独島を強奪したというふうに記述しているわけであります。しかし、島根県竹島は我が国の固有の領土であるというのは、我が国の年来の主張のはずですが、いかがですか。

田中国務大臣 そう思います。

米田委員 また、元寇、今NHKの大河ドラマでやっているあの時代の話でありますが、これにつきまして、これは韓国の教科書ですが、元は日本を征伐した、日本征伐。軍艦の建造、兵糧の供給、兵士の動員を高麗、高麗というのは当時の朝鮮半島です、高麗に強要をした、二次にわたる高麗、元連合軍の日本遠征が失敗云々というふうに、まるで他人事のように、あるいは強要された被害者のように記述を済ませているのです。

 しかしながら、歴史的ないろいろな文書をひもときますと、高麗側が元に日本遠征を請うた、勧めた、そういう史実も実はあるわけであります。

 であるならば、これは、我が方から見たら、あの元の二度にわたる侵略を、高麗が先兵を務め、かつまた、その侵略をいわば促したのは高麗であるということになるわけであります。今日でもなおかつ、北九州各地には、当時の残虐な侵略のつめ跡ともいうべき地名等々がいろいろ残っているわけであります。元、高麗連合軍は上陸戦を敢行しましたから。これらも、我が国からしたら看過できない記述ですよ。

 あるいは、近代に至っては、いわゆる女子挺身隊の問題でありますが、これは、記述を見ると、慰安婦問題と混同しているのですね。女性までも挺身隊という名目で引き立てられ、日本軍の慰安婦として犠牲になったりしたなんという記述になっています。しかし、女子挺身隊というのは、一九四四年に発せられた女子挺身勤労令に基づく軍需産業部門の労働力不足を補う戦時徴用の一環であったわけで、いわゆる慰安婦問題とは関係ないわけであります。当時、朝鮮半島は日本の領土内であり、かつ日本国民であったわけでありますから。

 こういう混同も、放置をしたら、韓国の子供たちにこの誤った事実がこのままずっと伝えられたら、これは我が国の国益に反すると私は思いますよ。

 さらには、中国の教科書につきましてのいろいろな誤謬や過剰表現、これは時間の都合もありますから省きますが、重大な点は、確かに、中国との関係においていろいろな問題があります。しかし、一つ、我が国から見た場合に、日清戦争後の二十数年間に実に十万を超える中国の青年が我が国に留学をし、そして中国の近代化に貢献をした事実、あるいはその中から辛亥革命のリーダーが生まれたというふうな事実もあるのです。こういう中国の近代化に貢献したような事実は、ばっさり全部外されているのですね。一方的な加害者であったという位置づけの強調、このリフレインなんですね。

 こういういろいろな問題があるのですが、外務大臣、こういうことを勉強されたことはありますか、研究されたことはありますか、向こうの教科書がどうなっているか。

田中国務大臣 それだけを特化して、抜き出して勉強したことはございません。ですが、関連してお答えしてよろしいですか。(米田委員「はい、どうぞ」と呼ぶ)

 米田先生がおっしゃりたいこと、大体わかりますし、かつてもそういうふうなお話を折に触れて親しく伺ったこともありますので、コメントを、意見を申し上げたいと思うんですけれども、韓国、中国というのは一衣帯水の関係にあって、地政学上も近くて、しかも歴史も非常に密接不可分な関係で、長いつながりがある。そういう中で、そういうふうなお互いが、そういう歴史観といいますか、教科書自体の記述の仕方について言っているということはやはりなかなか難しい問題です。

 それから、家庭教育ですとかそれぞれ個人の世代でありますとか、どのようなバックグラウンドを持ってその方が生まれてきたか。よく政治家が戦争認識の問題で大臣をやめたり、ついこの間までもあったと思うんですけれども、御存じと思いますけれども、我々がバッジをつけるようになってからも何人もそういうケースを見てお互いにきていますけれども、これというのはやはり、何か抜きがたい、その方が、個人が持っている体験ですとか教育からくるものなんですね。

 ですから、それとは別問題ですけれども、一々教科書の問題について、この国でこう書いてある、こう書いてあるというのは、私は前も先生から伺ったことがありますが、私は国務大臣としてコメントはいたしません。

 もう一つ、時間を食うようですが――早口でしゃべりましょうか、早口でもしゃべれるんですけれども。そうしますと、私、自分の経験から思うんですよ。これは小中学校じゃなくて私がアメリカの高校にいたとき思ったんですが、一つの何かエポックメーキングなことが歴史上あると、それについて、いろいろな歴史家とか学者とかジャーナリストの意見を読ませるんですよ、先生がどれでもいいから読んでこいと。それでもって、一カ月ぐらいたちまして、みんなに意見を言わせるんです。だれがどういうことを言っていたか、どう言っていたか、最後にあなたはどう思うか。これだと思うんですよね。これが日本の教育にないということがこうした問題を惹起しているなということは、個人的に感じています。

米田委員 その最後の部分は全く同感であります。

 ただし、私が今申し上げているのは、中国、韓国は国定教科書で、国家の認識なんですね。その国家の認識である。それぞれの国で教育する、子供に教える我が国に関する記述の中に明らかに誤りがある。このときに、国定教科書ではない、原則自由執筆の検定制度における我が国の教科書にすら、向こうは政府が乗り出して抗議をしてきている。むしろ、我が国こそ、国定教科書であるがゆえに中韓両国に厳しい抗議をすべきではありませんか。

田中国務大臣 先ほども申し上げましたように、お互いの歴史とか個人認識に絡むものでありますので、米田先生のようなお考えがあることもわかりますけれども、そういうことをするとやはり、何度も言っているのは、ポジティブといいますか、やはりいい方向に落としどころを持っていくには知恵が必要でございまして、局地戦ばかりやっているとどんどん戦火が拡大していったりしますから、やはりそういうことよりも、よい方向に持っていくための知恵を出し合って、時間をかけるところはかける、ただし率直に意見を言うべきところはする、これがやはり要諦ではないでしょうか。

米田委員 率直に意見を言うべきところは言うと今おっしゃいましたね。では、これらの今私が指摘した問題について省内できちんと研究をして、そして、必要とあらば中韓両国に抗議しますか。

田中国務大臣 省内で議論はいたしませんでも、大きなポイントは閣内で、総理以下の皆様の御意見も聴取しながら進めてまいります。

米田委員 よろしくひとつお願いをいたします。我が国の、まさに外務大臣が十八日のごあいさつで申された国益にかかわる問題なんです。局地戦ではなくて、重大な事実の誤認や、あるいは歪曲が堂々とかの国の国定教科書でまかり通っているという事実を私は指摘させていただいているわけでありますから、ぜひよろしく、政府としてのきちんとした対応をお願いをいたします。

 なお、もう一つ伺いますが、外務省内では、諸外国の教科書の我が国に関する記述を研究し、そして、必要とあらばきちっと抗議をするというふうな作業をしてきたのか、またそういうセクションはきちんとあるのかどうか、ちょっと伺っておきます。

田中国務大臣 私はこれは文部省マターだというふうに思っておりますので、外務省にこういうことをただすこともございません。

米田委員 文部省に聞きますと、文部省は一部収集しているけれども、一番、世界諸国のを全部収集しているのは外務省だと言うんですよ。

田中国務大臣 資料が来ましたので、読み上げさせていただきます。

 中国、韓国を初め、他国の教科書における我が国に関する記述については、外務省認可の公益法人、役立つ公益法人もあるんですね、外務省認可の公益法人である国際教育情報センターを通じ、幅広く、定期的に専門家レベルでの意見交換を行ってきているそうでございます。今初めて知りました。

米田委員 先ほど、きちんと判断を内閣でいろいろ検討をされて抗議すべきだという私の意見に対して、閣内で検討すべき事項だというお答えをいただきましたね。それでよろしいですね、検討していただけますね。

田中国務大臣 お答えが、あなた様のお気に入るようなものになるかどうかはわかりません。保証のほどではありません。

米田委員 それと、もう一つ確認しておきたいんですが、これは一九九七年の第一回の日韓相互理解教育研究会、教育セミナーというのが韓国のソウル、韓国教育開発院の中で実は行われたわけでありますが、そのときに韓国側の学者が、いわば韓国側から日本にいろいろアプローチをしてきた結果報告をしているわけですね。

 その中で、文部省マターの部分は省きますが、外務省マターの部分として、平成四年二月一日に、外務省を通じて、安重根義士の義挙、それから関東大震災について、いわゆる挺身隊について、抗日独立運動について、この四項目にかかわる記述について是正要求が行われ、外務省を通じてと言っているんですよ、そして翌年から使用している新教科書には程度の差はあるが是正されているというふうな報告を韓国の学者さんがしておるんですよ、この場で。外務省はこんな事実ありましたか。

田中国務大臣 事務方からペーパーが来ましたので、これは外務省のお答えでございますが、日韓の間で種々の会議があり、歴史教育についても話し合われているということです。

 ただし、御指摘のセミナーについての資料は今現在手元には、これは通告なさっているんでしょうか、米田先生、通告していましたか。(米田委員「さっき追加でやりましたが。ばたばたしていて間に合わなかったものですから」と呼ぶ)追加じゃ間に合わなかった。そうでしょう、こちらもばたばたして間に合わなかった。資料は手元に持ち合わせておらず、後刻、確認して、改めて米田閣下のところに御報告申し上げます。

米田委員 いや、しかしさすが田中大臣で、私感動しましたよ。閣内で検討する、中韓両国への抗議を。たしかそう言いましたよね、さっき。これは戦後日本政治史上、最大の快挙ですよ。これは私もうあとの質問をやめてしまおうかと思うぐらいですが、本当にひとつ真剣にお願いします。

 それでは次に、これは外務大臣としてのみならず、そういう意味を超えまして、国務大臣としてひとつ御見解を伺いたいわけなんですが、教科書の採択制度、検定を合格した教科書をそれぞれ地域で採択する。これは先ほど申し上げたとおり、実は市区町村の教育委員会にあるんですが、実際はその下に調査員という形で、教職員組合の皆さんとか、あるいは関西地方のある地域に至っては特別の、特定のイデオロギーを持った団体がでんと構えていて、これが文部省検定とはまた別の、特別の彼らなりの検定基準をちゃんと持っていて、それでチェックする。つまり、それに影響されますから、出版社も最初から裏検定に通るような本をつくるとか、私は、ゆゆしき事態がこの間ずっと続いていたと思うのです。やはり教育委員会に権限があるわけでありますから、先ほどもアメリカの例をお話しになりましたが、オープンな、一般の広い国民の常識の目によって教科書が選ばれていく、この姿が健全なんだろうと私は思うのです。

 石原慎太郎東京都知事が十三年四月十二日、去る四月十二日に教育委員の皆さんの前で、教育委員の皆さんに責務を全うしてもらいたい、そして、そのことをきちんとやらないと、責任を果たすのが面倒くさければもう教育委員をやめていただきたいとまではっきりおっしゃいましたが、今まで長年続いてきたそういうゆがんだ形について、教育にも大変御関心の深い国務大臣としてどう思われますか。

田中国務大臣 その前にちょっと訂正しなけりゃいけないのじゃないかと思いますが、米田先生の御発言がちょっと大ざっぱだったのかもしれませんが、その採択ですけれども、公立学校については所管の教育委員会、国立とか私立学校は校長先生にその採択の権限があるんだそうで、御存じでしたでしょうか、そこを正確にお伝えします。

 それで、質問は何でございましたか。

米田委員 質問は、実際の採択は、そういった部分ではなくて、特定のイデオロギーを持った団体、あるいは実際には教職員組合が指定する調査員という立場の方々が教科書を決めてきた、そう言わざるを得ないような流れがあった、そのことについて私は問題だろうと。石原都知事も教育委員の皆さんを集めてちゃんとしてくださいというお話を四月十二日にされておるわけでありますが、国務大臣としてこれまであったそういう流れについてどう思われますか。

田中国務大臣 これは文部省マターではありますが、あえて申し上げれば、それは全く同感です。

 ですけれども、私は、やはり今の現状の中で、日本のこの制度、これは本当に聞き流していただきたいのですけれども、聞き流せなかったら議事録にとどめてもちろん結構ですが、要するに、いろいろな意見、価値観が多様化しているし、また、繰り返しますが、世代によってその方の受けた教育とか環境とかバックグラウンドで違いますから、やはりいろいろなものを読むとか議論をするということを日本は教育の中に取り入れた方がいいですね。もしも後ろに今おっしゃるようなそういう組織なりなんなりがついているということがあっても、それは全部排除することができないかもしれません、今後、石原知事の力をもってしても。であれば、やはりいろいろな意見があることを、読んで、自分の意見を持つような人間づくりに役立てた方が早いですね。

米田委員 私も同じように開かれた形で採択されるべきだと言っているわけであります。しかるに、今まで余りにも特定の色が濃過ぎたのではないか、こういうふうに言っているわけでありますから、基本は同じだろうと思います。

 さてそこで、教科書問題について最後にもう一つ伺いますが、社会民主党さんが社会新報の「主張」でも明確にうたわれているけれども、つくる会の教科書を採択させない運動を全国で強めるとか、あるいは民主党の鳩山党首が、これは民主党内でも大変な批判が出たというふうに伺っておりますが、韓国を訪問された際に、民主党としては特定の教科書の不採択の働きかけをするというふうなことを示唆されたというような報道もありました。

 私は、もし公党が、公の政党が特定の教科書をターゲットにして事実上の不買運動を進める、あるいはこれは、言ってみれば、思想、言論の弾圧をするための行動を党を挙げてやる、こういうことに等しいというふうに私は思うのですよ。公党がこのような方針を打ち出す、あるいは打ち出す可能性が民主党さんの場合は、党首がそうおっしゃっているのだから、まだあり得る、政治家としてこのことをどう思いますか。

田中国務大臣 あえてコメントはいたしません。

米田委員 歴史観のことを言っているのじゃないんだよ。歴史観を一つの政党がこれはだめだということで特定のターゲットにして、この民主主義国家日本における公党がそういう運動を組織的にやるなんということはおかしいじゃないか。コメントできなければいいですよ、ほかにもいっぱい質問があるので忙しいから次へ行きます。

田中国務大臣 それも日本の現状でございますから、政党の活動の一部としてそういうことをやっている、そういうことも含めて、そういう実態を見ながら、国民みんながやはり賢くならなければだめですね。

米田委員 大臣、我々は日本国憲法に基づいて政治家として民主主義の発展のために頑張っているわけでありますから、そういう動きがその大原則に触れるのではないか、私はそう言っているのですよ。それを何か達観した、悟りを開いた和尚さんみたいに、そういう国ですからなんて言われちゃ困るので、政治家は現象に対して決断をし、意思を示すのが我々の宿命ですから、私は、これは、きょう今すぐ答えをと言いませんが、いずれまた御意見を伺うときがあろうかと思いますが、ひとつよろしくお願いします。

 次に、李登輝氏へのビザのいわゆる発給問題でございます。

 四月二十七日の就任直後の記者会見で外務大臣は、二度、三度となると政治問題化するだろう、それから、再訪日を認めるかどうかに関しては李氏の病状も含めて考えなければならない、本当に悪ければ米国やシンガポールに行く方法もあるというふうに述べられました。述べられましたね。

田中国務大臣 それは就任直後のときの発言でございますね。ですからそれは、また何度も何度も繰り返しますが、メディアからしか情報源がありませんでしたので、そのとおりであるならそうかいなと思って発言をいたしました。

米田委員 御存じなかったのかもしれませんので、しっかりこの場で頭に入れていただきたいのですが、李氏が検査、治療を受けた倉敷中央病院の光藤和明医師、光藤先生という方なんですね、この方は、昨年十一月の李登輝前総統の台湾大学病院における心臓の冠状動脈狭窄のカテーテル治療に立ち会った方なんです。日本における心臓疾患の第一人者で、世界的な権威の一人でもあるわけです。その際に、再狭窄を起こす危険性があったことから、六カ月以内に再検査、場合によっては治療を行う必要があった。だから一生懸命訪日を希望されたという事情があるわけなんです。

 指のけがじゃないんですよ、それから、おしりにいぼができたとかおできができたという話じゃない。大臣、これは心臓病なんですよ、命にかかわる病気なんです。これはやはり、経緯を詳しく知っている、ちゃんと自分の病状を、流れをつかんでいただいているドクターに診てもらいたいというのは当たり前の話なんだろうと私は思うのですね。

 それで、就任直後は知らなかったとおっしゃいました。今きちんと御説明申し上げました。今振り返って、知らなかったとはいえ、就任直後の御発言はやはりまずかったと思われませんか。まずかったと思われるならば、やはり就任直後の、二十七日の段階の御発言は取り消していただきたい。

田中国務大臣 そうすると、これが七日の日中外相電話会談のときのように、何とかにまた引きずり込まれてもいけませんから、それに発展する可能性が大というふうに私なりに思いますので、コメントはいたしません。私の基本にあるのは日中共同声明というものでございます。

米田委員 大臣、別に裁判をやっているわけじゃないんだから。私は、あなたが事情は知らなかったと正直におっしゃったんで、事情はこうですよと申し上げているんです。だったら、その事情を聞いてみたらやはり二十七日の発言はちょっと軽率だったなと思いませんかという素直なお話なんですね、これは。

田中国務大臣 またあれから時間も経過をいたしまして、少しずつ、外務大臣というと河野先生が後ろにいるのかといつも思っておりましたが、最近振り向かなくなりましたので、少しは、ほんのちょっぴりですけれども、外務大臣としての自覚も出てきたかもしれませんので、コメントはいたしません。

米田委員 コメントしないというのでは弱っちゃうんだけれども。

 それで、例の五月七日のトウカセン外務大臣との電話会談なんですが、いろいろ報道されていますね、このビザ問題あるいは教科書の問題も含めて。新聞によっては、前内閣の対応を批判し、陳謝したとまで報道しているところもありますが。いずれにせよ、ビザの発給を今後は認めないというふうな話をトウカセン外相にされたのか、されなかったのか。さっきも議論がありましたが、改めて確認のために伺いたいと思います。

田中国務大臣 外交は相手があることでございますので、逐一、細かいやりとりについてはコメントを差し控えます。

米田委員 しかし、先ほどの議論であなた御自身がおっしゃったんですよ、就任の表敬のための電話であったと。そうすると、その表敬の電話のタイムを利用して相当な機密事項を話し合ったわけですな、国民にも明らかにできないような。どうですか。

田中国務大臣 だんだん裁判みたいになってきたじゃないですか。それは私のコメントですけれども。

 やはり相手の方のお立場、発言というものもありますし、そう軽率に、お友達と電話でこんにちは、元気と表敬で言ったのとは、お母様元気ですかと聞いた話とは違いますので、コメントや中身については御報告はいたしません。

米田委員 しかし、これだけメディアでも、一紙だけが先走って書いたというんじゃなくて複数の新聞にも報道されていますし、私は、これは外務大臣として国民に対してはっきり実際はこうだということを本当はおっしゃった方がいいと思いますよ。

 というのは、先ほどの質疑でも、あなたの一つの信条として、透明でありたいということを御自身でおっしゃっていたじゃないですか。こんなこと簡単じゃないですか。透明にした方が僕はいいと思うんですね。しかし、コメントをなさらないというので、きょうはコメントをなさらなかったということの確認をさせていただき、それで、あしたまた日中外相会談、北京で、ASEMへ行かれておやりになる。もし中国側から、この李登輝さんのビザ問題で、今後は発給しないようにというふうな要請が行われたらどう答えられますか。

田中国務大臣 現時点では仮定の問題にはお答えいたしかねます。

米田委員 いや、外務大臣、そういう要求が行われたらどう答えるかということに対して仮定の問題だから答えられない、ということは、まだどう答えるか考えていない、想定していないという意味ですか。

田中国務大臣 逆に、この問題以外で日本と中国の間にいろいろな問題がございますから、今現在は来なくても将来予期できる問題もあると思いますから、それらについてはあらゆる情報も集めて自分なりの意見は持っておりますけれども、今、開陳はいたしません。

米田委員 それでは、よき会談になるように参考までにもう一つ、李登輝氏の病気のぐあいを言っておきます。

 今回の倉敷の病院での検査の結果、以前詰まっていた五カ所のうち一カ所が再び詰まっているのが発見されて、また新たに一カ所の詰まりも発見されました。そういう状況であります。そして、今回時間が短かったために、検査から少し時間を置いてから治療されるんですが、それを一気にやったために相当な苦痛だったそうです。

 再検査は少なくとも半年後に再び行われることが望ましいというのが今回の検査、治療の結果だそうでありますから、その辺もちょっとこの辺に入れておいて、ひとつ堂々たる日中外相会談をやってきていただき、また、お帰りになったら様子をみんなで伺いたいというふうに今思っております。

 次に、私、ちょっとここで触れておきたいことが一つあるんですが、日台関係、日本と台湾の関係です。これは、私も実は改めて調べてみたら、なかなか大変な重みがあると私は思うんです。

 輸出入額も大変大きいものがあるわけでありまして、例えば台湾から日本への輸出、百六十六億一千三百六十八万八千ドル。それから、日本から台湾への輸出額、三百八十五億五千九百二十八万六千ドル。大きいんですよね。

 それから、人の往来もすごいんです。昨年、日本から出国した相手国別のリストでいうと世界で五位なんですが、実に八十四万四千九百七十七名が渡航しているんです。これは観光だけじゃありませんよ、ビジネスも含めまして。それからまた、台湾から日本への、向こうから来るお客さんは実に八十八万百八十名。これは大変な数ですよ。主要国の中でも、これはもうトップですね。これだけの密接で重要な関係にあります。

 また、我が国は資源のほとんどない国でありますが、物資が輸送されるルートとして台湾海峡というのは大変大きな存在であります。これは平成八年のデータで、その後はっきりしたものがないんですが、実に年間三千四百六十七隻の我が国の死命を制する重要な物資を運ぶ船が台湾海峡を通過しておる。

 これらの事実を考えたときに、私は、十八日にごあいさつされましたが、外交というものはやはり現実を見なくちゃいかぬ、現実を。中華人民共和国との公式な国交関係、これはだれしもが認知している事実でありますが、一方で、理屈はともあれ、台湾という一つの地域が、現実的な国家として、自由な選挙も行って、しかも世界に冠たる経済国家として成長し、我が国とも大変重要ないわば経済パートナーの地位にもうなっているというこの現実をやはり認識して、中国との関係の健全な発展は当然のことながら、李登輝氏のビザ問題を初め、この台湾の重みというものも外務大臣としてやはりしっかり胸に秘めていただかなくちゃならぬと思うんですが、いかがですか。

田中国務大臣 台湾との関係は、日中共同声明以降ですけれども、非政府間の実務関係として民間及び地域的な往来をしております。その結果として、今先生が読み上げられた、これは外務省が提出したものでしょうか、人の往来でございますとか相互の貿易ですとか、そのほかいろいろな交流が非常にあるということはよく承知しておりますけれども、順調に進むことはもちろん期待いたしますけれども、これはあくまでも先ほど申し上げたような枠内であるということを御理解いただきたいと思いますし、また、わかっておいた方がよろしいと思います。

米田委員 さっきの李登輝氏のビザの発給問題にまた戻りますが、いや、外相会談の話じゃありませんから安心してください。あの過程で、大変ぎくしゃくしましたよね、不透明ないろいろな動きがありました。その中で、実は私は大変問題だと思っていますのが、外務省の職員である槙田アジア大洋州局長の言動なんです。

 これは、まさに安倍晋三官房副長官、前内閣においても今日もそうだ、さっきも来ていましたけれども、安倍副長官がはっきりと公に、総理が決定したことについて外務省の一局長のために国がおかしくなったのは前代未聞だ、万死に値する罪である、万死に値する話だと。これは四月二十一日に各紙で、幾つかの新聞で報道されていますよ。こういうことを現職の官房副長官が指摘されたわけなんですよ。私はこれは大変なことだと思いますよ。あなたが就任される前ですが。

 そこで、ではなぜ、どこが万死に値するんだ、こういう話なんですが、これは実は重大な問題なので調査していただきたいのです。今これから申し上げるのは、私が公式にではなく、非公式に得ている話でありますが、例えば政府首脳等に伝える話として、李登輝は実は元気でぴんぴんしている、病気じゃないとか、これが一番。二番目、倉敷の先生、さっき申し上げたドクター、自分じゃなくても治療できるとドクターが言っていますと。三番目、台湾の医師会が訪日に反対していますとか、こういう報告を当時の森内閣の政府首脳に槙田さんが上げたというんですよ。

 もし調査をしていただいて事実ならば、これは官僚の越権行為ですよ。政治家の判断を最後は仰ぐ、そのためにはやはり官僚機構は正確な情報を上げなくちゃならぬでしょう。それを捏造して、いわばデマを流す、政治家に対して。これはやはり、まさに安倍官房副長官が万死に値する話だと言ったのは当然ですよ、これが事実ならば。安倍さんは、私も親しいんだけれども、なかなかクレバーな、回転のいい、しっかりした男ですから、私は、根拠なしで万死に値する話だなんて言うはずないと思いますよ。

 今、外務省の━━━━じゃない、改革、外務省改革で情熱を燃やしておられる外務大臣でありますから――ごめんなさい、改革です。外務省改革。━━を消して改革にしてください。穏当な表現に。

土肥委員長 議事録、━━は消してください。本人がそう言っていますから。

米田委員 それで、これが事実ならばやはり大変なことだと私は思うんですね。政治家の判断を誤らせる捏造した情報を与えた、それを提示したということになるわけです。

 もう一点、日本側の機関である交流協会の台北事務所というのがあるんですね。この山下所長に対しても、槙田氏はビザ申請を受けつけるなと指示を出した。政府内部で高度な政治問題に発展しちゃったこと自体が僕はおかしいと思っているが、ともかくその高度な政治問題、槙田さん本人があそこにいるけれども、こういうふうに指示したとも聞いているんです。槙田さん、御苦労さん。

 大臣、ですから、もしそういうことが事実ならば、これはやはり外務省改革、職員を叱咤激励し善導しておられる田中大臣としては、やはり槙田局長にもびしっとしていただいて、そして私はこれは何らかの、槙田さんにはお気の毒だけれども、これが事実ならば、ああそうでしたかで済む話じゃないと思いますが、いかがですか。それは調査してもらえますか。

田中国務大臣 粛清の部分は割愛していただいて、カットしていただいたからよろしいんですが。

 安倍官房副長官も、そういうことは個人的にお漏らしになったのか何か存じませんが……(米田委員「報道されています」と呼ぶ)報道ね。そしてまた今、次の内閣で残っていらして、御活躍でございますけれども、これは結論からいいますと、米田先生、当時の外務大臣は河野外務大臣なんですから、そしてそれを森内閣総理大臣が人道ということでもって決定をなさった、そういう結論が、政府決定が出ているわけでございますから、今になって局長が云々というようなことを、どちらがどうか私にもわかりませんけれども、まず森前内閣が、総理が、そして河野外務大臣が納得して、そのような御決断をなさったということが事実として残っていることを申し上げたいと思います。

米田委員 そうではなくて、結果がそうだからいいじゃないかという問題じゃないと僕は思いますよ。本当は粛々と処理されるべき一私人のビザ申請があれだけもめて、大きな政治問題化したのは、事態解決に時間をかけ過ぎたからなんですよ。その事態解決を遅延させる原因に槙田局長のこの発言が、事実ならば、間違いなくその遅延させる原因になった。だから、それは問題ではないのかと。官僚のいわば職分というものがあるわけでありますから、それを逸脱していたのではないか、この疑いがあるわけでありまして、しかも、官房副長官が明確にメディアに向かっておっしゃったわけでありますから、私はきちんと事実関係を調査していただきたい。

田中国務大臣 私は、官僚のやっていることを一々粛清したり、それはしつこくこだわり過ぎかもしれませんが、あるいは助長させたり、そんなことを思っておりません。客観的な事実、そして結果として、どのようにして、よい外交ができるような、開かれた、国益にかなった、そして世界の皆様にも信頼してもらえるような、世界の平和と安定に貢献するような外交をするかということが私の基本理念ですから、ですから、そのスタンスで、事実をファクトとして積み上げながら、将来私は責任を持ってやっていきたい、それが政治の責任ではないでしょうか。

米田委員 では、外務省としての調査はしないんですね。

田中国務大臣 ですから、今の私の粛清という言葉も訂正削除でございますけれども、すぐ乗っちゃうからいけないんですね、お友達だから。

 いずれにいたしましても、もうそれは前の内閣のことでございますから、私はここから、この新しい内閣、国民の皆様も期待してくださっている、そういう中で、やはり皆さん、役人の一人一人の方も、政治家も、気持ちを切りかえて、いい政治をやろうではないですか。

米田委員 ちょっとおかしいんだな。ボールの飛んでいる方向が違うんで、私はこれは大変大きな問題だと思います。槙田さんという外務省を代表する重い重い存在の方がこういう動きをしたということが事実ならば大変だと思いますよ。

 それで、外務大臣、提案です。私も親しいけれども、あなたも安倍晋ちゃんとは友達でしょう。聞いてみてくださいよ、何が万死に値したのか。万死に値するなんて、久々に聞く珍しい言葉ですよ。大変ですよ、これは。ぜひ聞いてみてください。槙田局長の何が万死に値したのか。そのくらい聞けるでしょう、安倍さんに。

田中国務大臣 余り親しくないんですよ。あなたがお親しいんで。

米田委員 じゃ、私が紹介しますから。会いますか、三人で。

田中国務大臣 きのうも、ナイジェリア大統領が来られて、会議のときに彼もいらしていましたから、お会いする機会はむしろ私の方が多いかもしれませんけれども、そんなこと、あちらもおっしゃらないと思いますし、これからです。これからやはり今おっしゃるような不安とか疑念がないように、責任を持って私が取り仕切ります。

米田委員 時間、もう終わりですか。

土肥委員長 もう終わりです。

米田委員 ほかに五問くらいあったんですが、またの機会に伺います。

 今の問題は、私は重大な問題だと思っておりますので、党内の外交部会を初めいろいろな場面でまた発言をさせていただき、外務大臣とじかにお話をする機会もあると思います。よろしくお願いします。ありがとうございました。

土肥委員長 この際、田中外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。田中外務大臣。

田中国務大臣 先ほどの東門委員からの御質問の際に、━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━これは第三国からの領空侵犯という趣旨でございますので、議事録から削除させていただきたいと思います。よろしゅうございましょうか。

土肥委員長 じゃ、そのように取り計らいます。議事録の方、よろしくお願いします。

 次に、下地幹郎君。

下地委員 田中外務大臣に質問をさせていただきたいと思います。

 米田先生のようなドスのきいた質問はできませんけれども、さわやかに質問をさせていただきたいなというふうに思っております。

 大臣、私は、沖縄の基地問題を中心にきょうは質問をさせていただきますけれども、沖縄の歴史というものをあらゆるところで感じながら、基地問題、沖縄問題の解決というのを考えていかなければいけない。基地問題一つではなくて、いろいろな問題があるんですね。

 一つには、今、熊本の地裁においてハンセン病の国の提訴の問題が出ておりますけれども、沖縄も、この問題、非常に深い問題があるんです。患者の皆さんの二〇%近くが沖縄の方であるということ、それと、アメリカ占領下の時代の琉球政府のハンセン病の予防法と、そして日本に復帰してからの日本政府によるハンセン病の予防法と、二つの政策を受けた患者さんというのは沖縄だけなんですね。

 そして、今度の裁判の結果の中にも、復帰前の政策は本土とは異なる経過をたどっており、隔離規定の運用状況や退所状況の実情などの証拠不明で、沖縄のこのものがなかなか立証できないという感じに書かれているんです。つまり、今度の裁判でも、沖縄の患者さんは取り残されるような状況に陥っているわけなんですね。それは、全部が歴史なんですよね。戦争というものから始まって、異民族支配という歴史があって、そして本土復帰をして、今もってそういうふうな状況にある。

 私は、政治家として、ハンセン病の熊本地裁の判決は認めて、控訴すべきじゃないということを言っておりますけれども、そういう背景からして、私なりに政治家としてそう感じております。

 私は、ぜひ外務大臣にも、私見がおありになったら、まずその問題、そして、こういう問題にも沖縄問題があるんだということを認識した上で、御答弁、ひとつお願いをしたいと思っております。

田中国務大臣 三月のころでございましたか、総裁選挙が始まる前のころでしたよね、たしか下地先生が、沖縄のハンセン病の方を私の議員会館に御案内くださって、親しくお目にかからせていただき、皆様のお話も短時間でしたけれども伺うことがございました。

 そして、おととい、きのうと総理官邸の門、あくあかないの話からいろいろあったこと、それから、これはもうマスコミに報道もされていますけれども、きのうの――ちょっとお静かに願いたいんですけれども。

土肥委員長 ちょっと静かにしてください。

田中国務大臣 きのうの閣僚懇のときにも、ぜひ総理に会ってほしいというような、会うべきではないかというか、会う時間をつくれるのではないかというふうな発言、私じゃありません、発言をなさった方もおられました。

 これも、私も、夜遅くにテレビをちょっと見ながら眠ってしまったから細かくはわかりませんが、いきさつもいろいろあると思います。

 私だったらお会いします。ただし、総理大臣が会うということは、私は今総理でも何でもないからいいですが、外務大臣ですが、総理大臣であったら、やはりこれは裁判とかあらゆる影響はかなり大きいんだと思うんですね。

 ですから、私が三月の段階で一議員であったときと、それから私が今のポストにいることと、それから総理はもっと重責を担っておられるわけですから、これはいろいろな、私なんかがわからないような情報とかお考えがおありになるんだろうと思いますが、沖縄のハンセン氏病の皆様が、この間お目にかかった方々が、本当に大変な人生を送っておられ、今現在も懊悩しておられるということは十二分にわかります。

下地委員 大臣、私はこの答弁になるのではないかという思いはしていたんですよ。

 だから、外務大臣になられたとき、そして外務大臣じゃないとき、そういうふうなときに答弁が違ってくる。やはり、政治家というものが行政の長になったとき、それで行政の長にならないとき、行政の長にならないときには自分の哲学やいろいろなものをお持ちになって考えをきちっと言われる。しかし、行政の長になるとなかなか表に出てこない。

 今、外務大臣になられていろいろなことをやられておりますけれども、私は、外務省に質問をしたり安保委員会でいろいろな質問をさせていただいたりしますけれども、本当に、ふだんお話しするとしっかりとした哲学を持って答弁をしていただくんですけれども、大臣になると全く違う答弁になってしまう。そして、私はなぜこんなことが起こるんだろうなという不思議さをいつも感じている。

 今大臣が、外務省で閣僚とばんばんけんかなされている、バトルをおやりになっている。僕の思っているこの不思議はここから解決をするんではないかなと期待しているんですね。政治家が行政の長になっても、官僚の言うことではなくて、しっかりと自分の考え方のもとでやっていくという姿勢をこれから貫いていかないと、僕は、官僚からも政治家は甘く見られるし、そしてなかなか国民の信頼はわかないと思いますよ。

 そして、外務省は大変な伏魔殿のようなところですと大臣はおっしゃっている。伏魔殿とは、陰謀だとか悪事の渦巻くところという意味になっているわけです。秘密主義だとか特権意識だとかという、そういうところを大臣はおっしゃっている、指摘をしているとは思うんですけれども、今大臣がやろうとしている外務省イコール伏魔殿解体計画、この解体計画がうまくいくかどうかは私は政治にかかっていると思う。だから、大臣は絶対に負けちゃいけないんですよ、官僚に。

 そして、よく週刊誌なんかで官僚が好きな政治家、嫌いな政治家と出ますよね。来年の統計は、間違いなく嫌いな政治家のナンバーワンは田中眞紀子大臣だと思います。それでいいんですよ。それが好かれるような政治家になったら、政治が、改革とおっしゃっている小泉さんの考え方が私は変わらないんじゃないかと。

 外交は継続性も大事だけれども、新しい切り口で二十一世紀をつくりたい、おやりになりたいというならば、今の信念みたいなものをずっとお通しになって、事務次官も出入り禁止、官房長も出入り禁止、北米局長も来ておりますけれども、出入り禁止にするかどうかわかりませんけれども、それぐらいの迫力で今おやりにならないと、日本の外交が政治に戻ってこない、そして本物にならないというふうに私は思っております。

 外務省は、外への外交をすることも非常に外交上大事なんですけれども、外務省の姿勢を今正すことも、将来の外交にとって非常に大事な部分でもある。それを外務大臣にぜひおやりいただきたい。

 そのことを期待しているわけでありますから、まず、これからの外務大臣の、外務省内における人事の問題や、そして松尾室長の問題、いろいろな問題がありますけれども、どんな姿勢で、どういうふうな解体の仕方をして、どういうふうな外務省づくりをお考えになっているのか、まずそのことをお話しいただいて、しばらくトイレに行っても結構でございますから。

田中国務大臣 基本的には、あなた様、下地さんのおっしゃっていることは間違いありません。私も信念としては同じです。

 しかし、ポストについては、私は二度目の大臣ポストをちょうだいしているのですけれども、ちょっと考えてください。国会議員になって、皆さんは、バッジをつける前とバッジをつけられて、御自身が、情報量が変わったとか、人の見る目が変わったとか、そういうことはおありになりませんか。同じことが閣僚になったらあるのです。殊に、情報量が、見えてくるものが、これはなられたらわかります、確実にそうです。副大臣、そうですよね。これはそうなんですよ。

 もう一回言います。皆様が一議員である以前、一般の、バッジをつける前と、なってから、人の見る目が、御自身も、御家族ですら変わっていませんか。そうでしょう。いいところも悪いところもあると思うのです。

 それがあって、逆に情報とかが見えてくるので、だから一過性で見ないで、ですから、一メディアがどう言った、複数が言ったからといっても、それですべては判断できないのですよ。時間も必要だし、やることはすぐばんとやりますよ、しかし時間をかけて、わあんとアイドリングしておいてどんと出た方がより効果が出ることもあるのです。その辺のタイミングは、やはり知識と経験と勘といいアドバイザーがいないとだめです。仲間がいないと、ひとりぼっちじゃ何もできないのです。これはもう絶対申し上げなきゃいけないことです。

 それから、私が伏魔殿と申しましたのは、外務官僚、キャリアとかノンキャリとか、それらだけじゃないのです。そこに出入りしているマスコミとか政治家とか、いるじゃないですか。それらが総合的につくり上げているのですよ。

 ですから、一々マスコミにも全部発言を、私が言っていることは正しいとか、これを言っていたらつぶされてしまいますよ。本来の外交をやらせてください。私は、外交をやる気でもって、命がけでやろうと思ってお受けしたんですから。だのに細かいことを、あれが細かくないとまで言われて、揚げ足をとられると、だんだん紙を見て、こうやった方がいいな、そういうことになっちゃうんですから。そうならないようになってくれとおっしゃっているのでしょう。私もなりたくないし、なるべきじゃないのです。

 だったら、みんなでやはり協力して、それを小泉総理がおっしゃっているじゃないですか。あそこでこう言っている、なぜ会わなかったんだ、なぜ断ったんだ、この新聞はこう言っているぞ、このテレビがこう言っているぞ、あの人がこう言っているぞ、なぜ電話をかけなかったんだ、なぜあれしなかった、そんなことを言ったら、スタートラインに着く前に足を引っ張って口を押さえられたら、ひっくり返るだけですよ。そんな政治はもうたくさんじゃないですか。もっとがんじがらめだったじゃないですか、今までの自民党は特に。そうですよ。これを変えたいんですよ。

 だから、小泉先生が言っているじゃないですか。民主党さんでも、私は民主党以外でもいいと思います、お友達はおられるし、国民の代表なんですから、国民の皆様の目線で、我々一緒に仕事をしようじゃないですか。世代も族議員も変えて、よくなって、本当に二十年たったら、あのとき日本が動いたんだ、変わったんだ、あのときに私たちは一緒にこの永田町にいてやったんだ、それが永田町だけではなくて霞が関の方たちも、そして納税者ですよ、納税者、その方たちが、やっぱり政治ってすごいな、参加してよかったと、何党であれ。投票する人もですよ。そう思えるようにならなければだめですよ。

 ですから、私、ちょっと話が違いますけれども、参議院選挙があるから、そのために、ふやすために、解体でも何でもないのですけれども、とにかく、そういうような選挙戦用にふやすとか減らすとか、ふえたらこの内閣はつぶすとかつぶさないとか、そういう視点もやめた方がいいですよ。

 この内閣の選挙の争点は何にしますか、皆さんで決めてくださいよ。例えば憲法改正をなさりたかったら言ってみてください。内閣に私は言いますよ、皆様のアドバイスがあれば。社会保障制度がいいですか。税制改正にしますか。何ですか。本当に何を、財政再建の何をプライオリティーにしたいか、おっしゃってくださいよ。私は一内閣一命題でいいと思っていますよ、何もやらないよりか、ひっくり返ったなんて言われるよりも。みんな期待しているんですよ。苦しんでいるんですよ。私も苦しいんですよ。

 トイレに行かせてください。かわりに副大臣がちょっと答えますから。

下地委員 今田中大臣が大声でお話しになられて、内容があったかどうかはまた別問題として、僕が言いたいのは、大臣もいて、副大臣も二人もいて、政務官も三人もいてという新しい体制になって、そこに政治があったと感じられるような外交をしてくださいということなんですよ。それが今感じられないのですよ。

 だから、改革という小泉内閣の中で外交をやろうとおっしゃっているのだったら、仲間がいないと言うけど、仲間はこれだけいるんですよ。ここに政務官だって全部いらっしゃるんだから。その中で、どういうふうな方向をしているのかというのはまずお示しにならないと、今、僕は田中大臣に申し上げたいのですけれども、小さなことでぐずぐず言われて、政治家が新しくやろうという姿勢が見えないことを皆さんおっしゃっているんだから、そのことを、こんな外交をしたいんだというのははっきりまず言わないと、何か、浮いた話で、キャンセルした何したということばかりで、四週間たっても外交が全く見えてこない。これは副大臣、あなたはどう思うのですか。

植竹副大臣 今委員お尋ねの件ですが、今回の小泉内閣のスタートに当たりまして、今委員が言われるように、改革と実行なんですよ。そのために、今までのような外交ではない新しい外交とするためには、既存のそういうシステムを根本からやっていくためには、かなり研究し、実態を調査してやっていかないとできないわけです。

 今回、例えば報償費の問題とか、いろいろな事件が外務省にあったわけです。そういうことを全部見ながら、田中大臣のもと、まず迅速にやるべく、実は我々、今お話しのように、副大臣及び政務官三人が集まり、それをどうやるか、実行に移すべく今やっております。

 そして、新しい日本の二十一世紀の外交に向けてやろう。それは、口幅ったい表現ですが、外務省改革からというぐらいの気迫は持っています。そして、我々日本人として日本人のアイデンティティーを持って、誤りなき二十一世紀に向けて行きたいと思っています。そのために我々は、ほかにも何人かの政務官おいでになりますけれども、やっております。そうやって、議員の先生方のその御熱意を感じながら、そしてサポートしていただきながら、新しい日本の外交というものをやりたいと思っておるところです。

下地委員 私は今、アーミテージさんの問題だとか李登輝さんの問題だとかロシア外相との電話会談とか、細かいことは申しません。そのことを非常に残念な結果だと私は思っているのです。

 やはりこれは、何も問題も起こらないものが問題化されて、それで大きな、こうやって外務委員会で論じなくてもいい、会えば終わりだし、電話すれば終わりだし、簡単なことができないからこんな状況にまでなってきている。そういうふうなものは、余りいい傾向じゃないと私は思う。

 外務大臣がちょうど帰ってきたので、外務大臣にもお話をしたいと思うのですけれども、重箱の隅をつつく細かい話は今私はしませんけれども、ただ一つだけ言えるのは、マスコミの間でも、外務大臣の資質がどうだとかこうだとかという話が出ましたよね。それは本当に残念だと僕は思うのですよ。

 これは、田中外務大臣も何でと思う気持ちで残念かもしれないけれども、私どものように支援している方も、私どもは、外交大好きで、とにかく頑張ってもらいたいと思う中でやっている人たちでさえも、私どもの国の代表、ただ一人ですよ、一億何千万人のうちのただ一人の外務大臣の資質が問われて、あしたから中国へ行かれるというふうなことは、私は余りいい傾向じゃないと思う。

 だから、私は、このいろいろな問題に対して、先ほど副大臣にも申し上げたように、外務大臣は、心配をなされている皆さんにきちっと、私が日本の外交を中心になって仕切って、そして国益を守るという、おなりになったときの初めの言葉、あれは大事な言葉ですよ。国益を守る。それからしか始まらないんですから。その言葉の上に、安心して外交は私にお任せくださいよ、小泉政権の中で私はしっかりやります、私はまずそのことを外務大臣から聞いてからいろいろな質問をしたい。それで私どもの質問ができる環境になるのではないかなと思っていますから。

 では副大臣、どうぞ。

植竹副大臣 今、委員御指摘のように、例えばアーミテージさんの会見、私自身がお会いしました。あるいはアルゼンチンの外相もお会いしました。しかし、大臣が考えておられることを十分に話し、誠意を持って人間が当たれば了解していただけます。ですから、時には外務大臣に対し苦いこともお話し申し上げます。そして、みんなでもってこの新しい外務省というものをやっていく。

 ですから、重ねて申し上げますが、その点をよく御理解いただいて、また、外務大臣の意図するその気持ちもわかっていただいて、お願いしたいということを申し添えさせていただきます。

田中国務大臣 質問を全部伺っていませんでしたけれども、私、フリーハンドで話させていただければ、だれを擁護するものでもなくて、では何で政治家に私はなったかという原点がいつもありまして、それは、政治は機能するものである。何が機能するかというと、夢なんですよ、目に見えない。

 今ここにいる皆様方、本当に御縁があってこうやっていて大変うれしいと思うのですけれども、地球の裏側にいる方たち、これから生まれてくる、我々が一生会うこともないような人たち、一緒に生きているんですよ。そういう方たちに向けて、やはり夢を実現する、夢を必ず現実のものにできるんです、政治は。私はそういうすごいすごい政治に対する夢があるんです。ただバッジをつけたいとか――しんどいと思ったら私は別にうちで寝転がっておせんべいを食べていてもいいわけですから。

 いろいろなことを言われるかもしれないけれども、やはり政治というのはすごくすごいものだなと思うんです。圧力もばあっと負荷がかかってきますよ。もうやめちゃおうと思うこと、しょっちゅうあります、この八年間も。でも、一晩明けて、それの何十倍、何百倍の、すごい結果とか友情とかみんなのエネルギーが――私は議員立法をいっぱいやってきています、この当選回数にしては。四本目をやっている途中で大臣になってしまったので今アイドリング中ですけれども。そういうときのエネルギーというのは、党派を超えて、世代とか族議員とか超えて、無所属、無派閥ですよ。それでもばんばんみんなが知恵を出してくれて応援してもらうから法律ができているんですよ。これなんですよ。そのことによって我々の生活は変えられるんです。

 大臣になれば逆にがんじがらめになることもあるんですよ。個人としての私の燃える思いがあるんです。それを実現できる。だけれども、大臣になれば、ねたむ方もいるでしょうし、もっとああなろうと思う方もいるでしょうし、いろいろあるでしょう。

 でも、それは目に見えないもの、心なんですよ。先ほども、皇居に行って、お昼、ナイジェリアの大統領と陛下とお目にかかってきましたし、きのうの晩もお会いしたし、その前の日もお会いしたし、それからアルゼンチンもほかの国の方もいっぱい同時に日本に来られていて、最大限公務をこなしながらやっていますよ。

 二時まで、この答弁要旨が来て、もういい、違う方法でやれと言っているのに持ってくるんですから。若い官僚はその中で一生懸命頑張っている。彼らから、改革してくれという手紙、投書、電話が、実名、匿名、今回の機密費の問題でいっぱい来ていますよ。多分上の方は言うな、言うなと言っているんでしょうね、自分のことだから。

 そんなこと関係ないんですよ。外交官になった、あるいは建設官僚でも厚生省でもいいですよ、皆さんやはりそれなりに夢があるんです。ノンキャリであっても、自分なりに生きがいがあって、一生懸命、命を賭して、時間をかけてやっているんじゃないですか。それが人生なんですよ。

 メディアの方も余計なことばかり放送して、私の一番肝心なところ、きょうはここを放送してくださいね、必ず。だのに、おもしろおかしいことばかり。でも、責任を持って、おなかが痛くても、トイレに行きたくてもやっているんですよ、我々は一生懸命。バーンしているんですから。そういうものがトータルでエネルギーで動くものなんです。ですから、つらいときもあるけれども、踏ん張れるところは一生懸命踏ん張るし。

 それから、やはり知恵者がいるんです。それは、学歴でも何でもなくて、世間の一般の方たちの声なんです。ですから、有権者の目線ということを私は言っています。

 小泉総理もそうです。そういう人があらわれるまでは私は総裁選挙なんか一度もコミットしたことありません。ちゃんちゃらおかしいと思っていましたよ、わけのわからないのが出てきて。小泉さんだけは、この人本気で死ぬ気だなと思いましたよ。その気になって、無にならなかったらできませんよ、これは。しゃべり過ぎですか。

 ですから、そういう思いであることを御理解ください。

下地委員 このエネルギーと夢があれば日本の外交は大丈夫ですよ。これを前面に国民に見えるように、小さなことでこういう田中大臣のすばらしいところが隠れることのないように、ぜひ頑張ってもらいたい。私どもは間違いなく応援団ですから、そのことをぜひ私の方からもお願いしたいなというふうに思っております。

 それでは、私は沖縄問題をさせていただきたいと思いますけれども、まず、沖縄は好きですか。

田中国務大臣 大好きです。

下地委員 沖縄が好きだと。好きな沖縄が今非常に苦しんでいますよ、基地問題で。七五%基地があるというふうな状況で、沖縄の県民はこの負担を何とかしてくれという思いがあるんです。

 この沖縄に基地が集中している今の安保の状況を大臣はどう思いますか。この負担の問題をどう思いますか。まず、客観的にお答えいただきたいと思います。

田中国務大臣 一極集中は決していいことではないということは、再三お答えしてきております。日本人全体が受益と負担について、こうした安全保障の問題も含めて考えていくべきだというふうにずっと思っております。

下地委員 大臣、きょうの委員会でも大臣経験者はいっぱいいますけれども、今おられないですけれども……(発言する者あり)長官は外務大臣じゃありません。大体、外務大臣が答弁するときに、沖縄の負担はわかる、沖縄の県民の方々にお願いをしなければならない御負担が数多くある、これは池田外務大臣のお言葉。全部読みますと時間がありませんから読みませんけれども、私どももこの沖縄の負担を十分に考えながらこれからの政策をしていかなければならない、そして地元の御理解と御協力を得るように粘り強く頑張りたいと。そして最後は、河野外務大臣のときも、これまでの沖縄の県民の皆様の御負担、お気持ちを十分に承知しておりますというふうに言うんです。

 答弁は、沖縄の負担はよくわかっている、沖縄は安保を支えなきゃいけないし、支えなきゃいけない状況で沖縄の負担はよくわかっていると言いながら、私もまだ五年間という短い期間しか国会議員という仕事をしておりませんけれども、答弁は、今外務大臣がおっしゃったように、私がおつき合いをさせていただいた外務大臣は全く今と同じ答弁なんですね。負担はわかる。だけれども現状は全く変わらない。これが五年間続いているんです。

 私は、初めに伏魔殿解体計画なんということを言いましたけれども、この裏には、この答弁の全部のものには、官僚がこの沖縄問題に関して非常に高い壁をつくっているんじゃないかな、そういうような思いをしているんです。私は、このことを外務大臣に、大胆に今度沖縄問題をどうするかということをお考えいただいて、わかりやすいように結論を出していただきたいと思う。

 先ほど東門先生の御質問もありましたけれども、今、稲嶺知事がアメリカに行っておりますね。この前もアーミテージさんとの会談で、沖縄基地問題は火山のようなものであり、何もなければ問題はないが、穴があけばマグマが飛び出るという事態になる、沖縄の場合、私有地が基地として取り上げられたという経緯があり、マグマは毎年たまっており、今のままでは常にマグマの上という厳しい状況である、日本政府は積極的に基地問題を解決する努力が足りない、私はボールを投げた、ボールは政府が十二分に検討し沖縄に返すべきだ、早くしっかりとした政府側の答えが欲しい、こういうふうな思いをずっと知事も持たれているし、外務大臣の答弁がずっと来ているこれのあかしがこの知事のアメリカでの言葉になっていると思うんです。

 このことに関して、外務大臣はどう思いますか。

田中国務大臣 これは、外務省の事務方の方、今、知事のこともおっしゃいましたけれども、そういう方たち、このペーパーは私も持っています、歴代と同じものを全部もらってありますから。ですけれども、これをつくっている方たちも矛盾を感じているのです。率直に申します。政治の決断がないからですよ。ただし、簡単に右左と決断ができないのですよ。それは、この地域を囲む不確実性とか不安定性という問題が、将来何かがあった場合に、国は、為政者はどういう責任をとるのかという先を見通した展望を持つのが政治じゃないですか。

 その中で、一極集中がいいとだれも思っていません。しかし、沖縄がストラテジックな面で最高にいい可能性があるということは、あなたとこの間、西表島でしたか、お話をしたばかりじゃないですか。

 ですから、その中で、アメリカの考えもあるでしょう、現在を踏まえて、将来にわたって、どのようにお互いが受益と負担、アメリカに対しても言うことは言わなければいけない、それは東門先生に申し上げました。言っても、アメリカはアメリカの考えもあるでしょうし、それをしっかりすり合わせもしていかなければいけないのですよ。

 最後は政治の決断です。決断がなかったからみんながこれを読んでいるのです。こういうものをつくっている役所の方たちも、本当にうんざりしている人がいっぱいいると思いますよ、私。

下地委員 大臣、私も五年間一応は勉強もさせていただきましたので、大体外務省の答弁というのはわかるのです。沖縄の基地に集中している負担はわかる、それから、大変だというのもわかる、しかし、今のアジアの状況は不透明性があるから、そう簡単に沖縄から軽減はできませんよ、そして、米国のプレゼンスを守らなければいけない、大体わかっているのです。

 それならば、この沖縄の負担を軽減するという作業をやりましょう、そして、安全保障のバランスを崩すことなくアジア太平洋地域の平和と安定を図ることもやりましょう、米軍のプレゼンスも守りましょう、この三つができればいいわけですよ。沖縄の負担の軽減もする、プレゼンスも守る、アジアのバランスも崩れない、そういう方法を私どもは模索しなければいけないと思うのです。それを今まで模索し切れていなかった。私は、今外務大臣にそのことを提案したいと思う。

 これは外務大臣のところにも届いていると思いますけれども、沖縄の地域。お立場があるからあれですけれども、やはり日本のこの不透明さというのは、朝鮮半島や中台関係、この二つは不透明さがあることだけは私は確かだと思うのですね。その中で、沖縄とグアムそしてフィリピンという、この三つの地域でバランスよく沖縄の今ある兵力を分散する、そのことによって、アジアの安定も図りながら沖縄の負担軽減も図るという方法を私はできると思っているのです。

 今沖縄には二万五千人の兵力がいます。一万五千人の海兵隊がいます。一番多いのはやはり何といっても一万五千人の海兵隊であります。そして、この海兵隊の訓練をローテーションする。一万五千人の海兵隊の四千人をグアムに行かす、そしてフィリピンに四千人を訓練に行かす、そして、六カ月ごとのローテーションをしながら、グアムを沖縄に戻し、そしてまた新たな人たちをグアムとフィリピンに行かす。そういうふうな作業をすれば、実質的には沖縄の兵力の削減もできるし、そして安全保障上も守られて、米国のプレゼンスも維持できる。こういうふうな形ができるのです。

 私は、だから、この前フィリピンに行ってまいりました。そして、バリカタンという演習も見てまいりました。フィリピンの国防長官にもお会いをしました。そうしたら、アメリカの訓練は受け入れてもいい、そういうようなことをはっきりと明確に言っております。

 そして、グアムにも行ってまいりました。カール・ギテレスという知事さんともお会いをしましたら、一月二十四日でありますけれども、沖縄問題はよく知っている、自分のグアムからも今米軍基地が、兵力が相当削減している、その兵力が削減したおかげで、六億ドルだったものが今四・六億ドルまで下がって非常に経済も厳しい、だから沖縄の海兵隊を受け入れていいですよということをグアムの知事さんもおっしゃっている。

 このグアムの知事さんもしっかりと自分の考えとして言われているし、フィリピンのレイエス国防長官も言われている。これをうまく沖縄の今の状況とかみしめながらおつくりになると、私はこの沖縄の削減ができるというふうに思っているのです。だから、五年間も同じ答弁はもうやめましょうよ。どうしたらできるかという方向をまじめに考えてもらえませんかね、まじめに。そこに政治があったというものじゃなければこれはできません。官僚ではできないです。

 そして、グアムの知事は条件一つだけです。絶対に訓練だけじゃなくて駐留してくれとグアムの知事は言っていました。フィリピンの国防長官は、訓練は受け入れてもいいけれども、経済が厳しいから訓練費用をぜひ払ってくれと。両方の条件はそれだけです。フィリピンはもう一つありました。フィリピンは、駐留をしないでくれと。だから、逆なのです。グアムは駐留してくれ、フィリピンは、訓練は受け入れるけれども駐留をしないでくれという条件がついている。それで演習場の使用料を払ってくれという話なのですね。

 私は、これは、外務大臣が本気で取り組めば、沖縄のこの問題、沖縄の県民が望んでいるような削減ができるのじゃないかというふうに思っておりますから、そのことをどうお考えか、まずお願いをしたいと思います。

田中国務大臣 かねてから下地先生からこの話は伺っておりまして、ここまでコンクリートに体を使って調べていらっしゃったということについては本当に敬意を表しますし、これもまたよく検討させていただいて、この委員会以外のときにも、またほかにも話す機会があると思いますので、ぜひ伺いたいし、それから、東門先生やほかの関係者、議員でない方も、皆様の、あらゆる方の意見を集約してお聞かせいただきたいと思います。

下地委員 手法はいろいろ違っても、沖縄選出の国会議員というのは、沖縄に一週間に何日かいるわけですから、その思いは一緒でありますから、ぜひそのことをしっかりと認識をしていただきたい。

 そして、僕が申し上げたいのは、先ほど米国のランド研究所の報告書の話がありましたけれども、このランド研究所の報告書というのは、海兵隊を減らしますよ、減らしますから下地島を使わせてくださいと。ゼロにしてもいいし、海兵隊をゼロにすることで嘉手納の空軍基地を下地にも少々使わせてくださいという提案なのですね。

 私は、七五%基地があるとして、海兵隊がゼロになったら沖縄の基地は二〇%下がりますよ、嘉手納でしか残らないわけですから。恐ろしいぐらいの負担軽減ですよ。この七五%もある基地が、この研究所の言われるようにゼロにする、海兵隊をゼロにして全部本国に帰すと万が一なるのだったら、下地島で米軍がこの訓練をやらせてくれということに関しては知事は真剣に考える、それぐらいの大きな意味があると私は思いますね。本当に海兵隊を沖縄からゼロにするという、七五%のうちの五〇%以上を海兵隊が持っている今の沖縄を、やってくれるというのだったら、私は意味が大きなものがあると思います。

 ただ、私が言いたいのは、もうそろそろ提案型でやりましょうと。私どもも、どうしたらということで提案をする。この米国の提案書も、外務省もしっかりと受けとめる。そして、外務省の中でも、どうしたらという、SACOを前向きにやりますというあの答弁だけじゃなくて、それに満足していない沖縄の人がいるのをわかっていながら同じ答弁を何回も何回も五年間やるというのじゃなくて、何かやりましょうよ、できますよということです。僕は、外務大臣が、行政のトップになった政治家が動けば変わると。だから、せっかく私は期待する外務大臣ですから、その提案型をぜひお願いしたいなというふうに思っているのであります。

田中国務大臣 一万五千人も海兵隊がいるということは多過ぎるということですけれども、ですから、もちろん今おっしゃったような御提案のような形もありますが、しかし、万一何かというときのこともやはり考えなければいけないわけですから。それは沖縄が一番負荷がかかっていますから、おっしゃる意味はよくわかります、誤解されたくないのですけれども。ではもう全然必要なくなるのかと。SACOだってここまで動き出してきているわけですし、現実に、現在は米軍施設の、もう御存じでしょうけれども二一%が日本に返還される、そういうことも実現の方向に向かってきている。

 やはり戦後とか、こういう協定が結ばれたころに比べて、アメリカも相当意識が変わってきていると思います。それは、いろいろな不祥事も起こっているし、やはり時代の趨勢と変化の中にアメリカもあるのですね。

 ですけれども、いつまでたっても沖縄が痛みを背負っていいわけでもないわけですから、この御提案は御提案としてしっかり前向きに検討しますけれども、では本当に極東、私たちのこの地域の安全が守られるのかということ、ではフィリピンとグアムに、今四千人ずつとおっしゃいましたか、振り分けていくということで本当にいいかどうか、エマージェンシーの状態というようなこと、そういうことも含めて、やはり2プラス2もありますし、もちろんその前にも先生方やほかの方にも話を伺いたいと思いますが、例えば、沖縄出身でも、お二人で大分お考えが違うのじゃないのですか。そういうこともやはりコンセンサスを得ていただかないと困る。それから、私は、この間も、その前も行ったとき、余り気にしていない方もおられるのですね、沖縄の方でもいろいろあって。それはいるのです、私は実際に知っていますから。

 ですから、いろいろな方がおられますから、政治は全員を満足させることはできないのですね。最大公約数はこれだというところを政治の責任で決断すればいいのですよ。責任とればいいのですから。今まで決断もしなかったから、このペーパーを読んでいましたのでしょう。それを申し上げたいと思います。

下地委員 大臣は負担が大きいと言ったじゃないですか。沖縄にそんな基地を残してもいいと言う人がいるの。

田中国務大臣 いろいろな方と、私は沖縄であなた様政治家以外の方ともお会いしています。ほかのオケージョンにも沖縄に行っておりますので。

下地委員 私どもは、東門さんも赤嶺さんも私も、方法は違うかもしれない、基地の整理縮小、みんな一緒ですよ。方法が違うだけの話であって、思いは全部一緒ですよ。全然、不統一はある意味ではないですよ。向こうは即刻出ていってくれという考え方、私どもは段階的に減らしていけという考え方。減らしていこうという考え方で、沖縄の選ばれている政治家の中でそんなことを思っているやつは一人もいませんよ。いろいろな事件や事故があって、そういうような重荷を感じながら、みんなある。しかし、日本の安全保障を守らなきゃいけない、だから我慢をしなきゃいけないな、そういう思いをずっと持っているのですよ。

 だれの話を聞いてそんなことを言うのかわかりませんけれども、そんなことを言うようじゃ、外務大臣としては問題ありますよ、それは。

田中国務大臣 私は自分の経験で、過去何度も沖縄に行って、そしていろいろな方とお目にかかっています。そういう中で、そういう御意見も言った方がおられるのです。それは事実だから私の経験で申し上げているのであって、私はその方に同意しているとは申し上げていません。整理縮小の方向に持っていく、このことは皆さんが望んでおられること。

 したがって、私はむしろ、基本的には受益と負担の関係、何度も申しますけれども、これは私の信念なんですよ。安全保障もそのほか社会保障制度もですよ。どれだけ自分が負担を担うのかということを、国民一人一人がそういう教育を、家庭教育や公教育で受けている方もいるでしょうし、そうじゃない人もいるのですよ。その中で、どこに落としどころを、ベストはないけれども最大公約数がどこかということを申し上げているのです。

 ですから、沖縄の人が全員がそんなことを言うはずないというふうなことは、おっしゃられると、私もちょっと悲しい思いをいたします。

下地委員 その負担の問題は、年金だとかそういうものは、自分の将来の人生設計の中の負担の問題。沖縄県民の、基地の抱えている問題は、百二十万人が一億二千万人の負担を背負っているというところに問題があるのですよ。そこを僕らは言っているので、そこが解消しなければだめだ、そんな思いが強いのだと。自分たちの将来の負担だったら受けます、それは。受けます。十二分に受けてやっていきますけれども、そうじゃない。何でと。

 二十七年間もアメリカの占領下に置かれ、それが終わっても七五%も基地がある、それが日本の安全保障を守っている。わかっているけれども、重いなと思っている沖縄の人がいるということは、それをしっかりと御理解いただいて、私はこの問題にぜひ取り組んでいただきたいなと思っています。

 それと、先ほど私が言った八千人、もし移動すると、今アメリカの飛行機なんか七十一機普天間にいるのですね、七十一機。一年間で一万四千回離発着するのですよ、一万四千四百回。あれだけのヘリコプターとあれだけの軍用機が一万四千回。これは普天間だけですから、嘉手納になるともう二万回を超えると思いますけれども。こういうふうな状況の中で、十万人のど真ん中にあるので、この八千人が動くと、この数もおのずと半分以下になります。人間だけ移動するわけじゃありませんから、全部が、機材も移動するので、物すごく生活にも大きな意味を与える。そういう効果がいくというのが一点。

 それと、沖縄で今いろいろな事件や事故を起こす場合に、ローテーション部隊というのが来るのです。

 僕も、パリス島といって、アメリカの方の訓練を見に行っている。高校を卒業して海兵隊の訓練しますよ。これをずっと見てきましたけれども、もう本当に大変な訓練して、軍人とは何ぞやというのを教えられている。感激するぐらいやります。

 訓練そのものをずっと見てまいりましたけれども、十九歳で沖縄に来るのですね、十九歳で。やはり元気いいのですよ。あれだけの訓練をしてくるわけですから、土曜、日曜となったら発散したい。僕の人生経験からしてもわかりますよ。土日は海に行ったり。僕の場合には本を読んだり映画を見たりという感じでありますけれども。

 だけれども、いろいろとそういうふうな問題がありますから、僕らが海兵隊にお願いしているのは、十九歳じゃなくて、二十になってから沖縄によこしてくれないかというお願いをしている。一歳違うだけでも違うぞ、あと一年間アメリカ本国で訓練をして、それから来るだけでも違うよと言って、そのジョーンズさんという大将にやると、それでは歩兵のローテーションが組めないと言うのですね。どうしても高校を卒業して訓練をした人じゃなければ、二十になるまでやると、第三師団まであるものが割り振りができないから、なかなか難しいという話なんですね。

 だけれども、私のこの案だったら、この四千九百人が来る、十九歳の子供が二つの部隊に分かれて、フィリピンとグアムに行って訓練をして、結局はみんな二十近くになってから沖縄に来る、それでまたローテーションするというのがありますから、そういう意味でもまた違う部分が出てくるというふうなこともあるので、二つのこういう意味も含めてこの問題は真剣に考えてもらいたいなというふうに思っております。

田中国務大臣 おっしゃっていることはよくわかりました。

 先ほどのことはもうこだわらないでください。いろいろな人がいるのですから、沖縄にも。済みません。

下地委員 よくわかりましたと言いましたから、期待して、時間は余っていますけれども、僕は質問を終わります。ありがとうございました。

土肥委員長 次に、上田勇君。

上田(勇)委員 公明党の上田勇でございます。田中大臣初め外務省の皆さんも大変御苦労さまでございます。

 大臣はテレビでも何かお疲れの御様子もございまして、あしたからまた中国訪問ということでございますので、外交日程もタイトになってまいります。ぜひ御自愛をいただければというふうに思います。

 昨日、きょうの質問の通告を行ったときに、そういうようなこともあって、きょうの質問に対する答弁、大臣に限らず、副大臣の方あるいは政府参考人でも結構だということは私の方から申し上げたのですけれども、なかなかうまく伝わっていなかったみたいでございまして、今後ともそういうことで、それぞれ担当の副大臣もいらっしゃるわけでございますので、私の方はそういう形で今後質疑をさせていただきたいというふうに思っておりますので、よろしくお願いをいたします。

 質問に入る前に、これまでの二日間にわたります質疑を通じまして、大臣のかつての発言を取り上げての、今の方針と違うのではないかというような質問がたくさん出ましたけれども、私は、これはある程度やむを得ないことだろうというふうに思います。

 というのは、やはり一人の政治家としては、だれもがいろいろな問題にいろいろな見解を持っていて、それはある程度自由に表明できるわけでありますけれども、これが大臣となれば、今の法律や制度も尊重しなきゃいけないし、行政の継続性ということの責任もあるわけですし、内閣全体の方針というようなことも考えなきゃいけないのでしょうから、一定の制約がある。先ほど大臣もおっしゃったように、情報量や情報源、おのずと変わってくるというようなこともあるので、これはよく理解いたします。

 ただやはり、なぜそのときの発言と今大臣になられての御見解とが変わったのかとか、そういう理由とか経緯というのは、もう少し御説明いただくともっとわかりやすいんじゃないかというふうに思うのです。また、きょうは質問に対して何回かコメントを差し控えるというような御答弁もございましたけれども、本当にそこまで機密性がある問題だったのかどうかなというようなことも感じます。これは率直な感想でございます。大臣はいつもオープンで非常にアカウンタビリティーを大切にされる方だというふうに私は思っておりますので、今回は御就任間もないということで非常に安全な運転をされたというふうにも思いますけれども、今後ぜひもっとオープンな議論をしていただければというふうにお願いをいたします。

 特に、大臣もおっしゃったように、やはり一議員の情報というのはおのずと限られる面もございます。だからこそ今度は、コメントできないとかでなく、あるいは理由に対する御説明をいただかないと、我々的確な判断ができないという面もありますので、これは今後、この委員会の議論を通じてまた建設的にぜひお互いに協力をしていきたいというふうに思いますので、またよろしくお願いをいたします。

 そこで、きょうの質問に入らせていただきますが、まず最初に、集団的自衛権の問題をお伺いしたいというふうに思います。

 大臣は、小泉総理の集団的自衛権に関するお考えを支持されているというふうにおっしゃっております。小泉総理の一連の発言には若干わかりにくい面もあるのですけれども、概括いたしますと、次のような点ではないかなというふうに考えております。

 集団的自衛権の行使というのは、憲法上は行使できない、禁止されているということ、それが一つ。また、その憲法の解釈を変えるというのもなかなか難しいというふうにも何回かおっしゃっております。また、手続とかプロセスというのはいろいろこれから議論しなきゃいけないことだというふうに思うのですが、集団的自衛権の行使を可能にする必要性というのはおっしゃっているんだというふうに思います。ただし、その行使というのは、他国において我が国が武力行使を行うといったことというのは全く想定されていないという、大体この三つぐらいの点が総理がおっしゃっていることではないのかなというふうに思いますし、田中大臣も多分同じお考えを共有されているというふうに理解をいたしております。

 そこで、集団的自衛権の行使を可能にする必要性があるということであれば、それはどういう場合、いかなる場合に、どういうような目的で必要性があるというふうにお考えなのか、その辺をまずお伺いしたいというふうに思います。

田中国務大臣 今いろいろな角度から研究してもいいのではないか、これは小泉総理がおっしゃっていることなんですけれども、それがまさしく行われているのが衆参両院での憲法調査会でありまして、それが全部リンクしてくることでございますから、それもこれも含めて研究をするということだと思うのですが。ちょっとかみ合わないで済みません。

上田(勇)委員 いや、私は、大臣は集団的自衛権の行使を可能にすることが必要だというふうにお考えなのかどうか、まずちょっとそこをお伺いしたいというふうに思います。

田中国務大臣 何度も言っておりますけれども、国際社会の中で平和と安定というものをしっかりと築いていく、守っていくといいますか、そういうふうな観点からいくと、日本は他国と協力して何をどうしていくべきかということの問題意識を今持っているということなんです。

上田(勇)委員 小泉総理は、多分これは自民党の総裁選挙のときだったと思うのですけれども、日米が共同訓練を行っているときとかというような場合を想定されて、集団的自衛権の行使の可能性が必要なのではないかというふうにおっしゃったのです。

 もちろんそういった場合もあるのかと思うのですが、これまでの集団的自衛権をめぐるいろいろな議論というのは、例えばPKO法のときの、日本のPKOの活動の範囲がどういうふうな制限を受けるのかとか、あるいは、湾岸戦争への費用負担あるいは掃海艇の派遣のときに、集団的自衛権、どこまで対応が可能なのかとか、あるいは最近では、東ティモールのPKO派遣にかかわって集団的自衛権の制約というのはどうなのかというようなところで議論がされていたんだというふうに思うのですね。

 いずれも、集団的自衛権の行使ということが禁止されているということから我が国の対応が決まってきたということだったというふうに思うのですけれども、これらのケース、これだけに限りませんが、こうしたケースにおいても集団的自衛権の行使の必要性をお感じになられているのか、それとも、事例として小泉総理が具体的に引かれたようなケースだけを想定されているのか。

田中国務大臣 ですから、もう御案内のとおりですけれどもあえて申し上げますと、国際法におきましては集団的自衛権というものは有しておりますけれども、実際は、日本は憲法九条というものがありますから、ですから本当は必要最小限度の範囲にとどめるべきものであるというふうに理解されていて、そして集団的自衛権を行使することは日本の憲法上許されていないというふうなことでずっと来ております。

 ですが、国連を中心にとかあるいは日米安保体制という面を考えて、従来以上にもう少し先に進めていろいろと検討してみる余地はないだろうかというふうなことが、あらゆる今おっしゃったような出ている事例としてあるのではないでしょうか。それをいろいろな方から意見を伺って検討する場、それを、それこそアカウンタビリティーもあるでしょうしトランスペアレンシーも必要だと思うのですけれども、そういう形でやっていくということが望ましいと思うのですが。

上田(勇)委員 今、日米安保のあり方も含めていろいろなケースでの対応というようなお話だったのですけれども、こうしたことを議論していくということは大変重要なことだというふうに思うのです。

 ただ、やはり非常に重要なことなので、ケースをちゃんと、どういうことなのか、どういう事柄を想定されているのか、どういう目的なのかといったことをちゃんと定義をして議論しないと、単なる言葉の遊びだけになってしまうんじゃないのかなというように非常に危惧しておりまして、その点は大臣も、議論の検討は大いに行うべしというお考えだというふうに思いますので、どういうようなものを想定して、どういう必要性があるのかといったことをぜひ明確にお答えいただければというふうに思います。

田中国務大臣 ですからそれは、私がもちろん外交の責任者であるから云々と畳みかけられることは承知の上で申し上げるのですけれども、やはり衆参両院で憲法調査会があって、その中で、今言ったようなことを相当議論されております。先生も御存じでしょう。

 私も最初から、この問題に関心があるから、憲法調査会だけは無派閥でも外さずに入れていただいておりますので、そうしたことはもっと平場で議論をもう少しできるような状態になった方がよろしいんじゃないんでしょうか。私がこう言ったからああということよりかも、むしろ皆様、先生方からいろいろな御意見を御開陳いただく方がより有益だというふうに思います。

上田(勇)委員 いや、私も憲法調査会の委員をやっておるのですけれども、そんな話は今具体的には議論は行われておりません。もちろん、期限を切っての中で日本の憲法のあり方について議論をしていく、そのとおりで出発をいたしました。そこで何らかの結論が出る、出さなければいけないのはもうそのとおりなんですけれども。

 今の大臣のお話でいうと、ということは、憲法調査会の議論が前提になるということは、これは憲法の改正が前提となるという意味での集団的自衛権の行使を検討するということなんでしょうか。

 というのは、今まで小泉総理も、憲法改正の話になると、憲法改正が前提なのか、それとも解釈の変更をされるのかというところがよくわからない面がございます。そういう意味で、これはこれから議論していくことだというふうにおっしゃるかもしれませんが、ただ、議論を始めるにも、やみくもに言ってもしようがないので、何らかの方向性が、お考えがあるのだろうというふうに思うのです。その辺、もう少しすっきりお答えをいただければと思うのです。

田中国務大臣 私も、憲法調査会で呼ばれている参考人の方を見ても、結構偏っているなというふうな思いがあります。あれは、護憲、それから論憲、いろいろおっしゃっていますけれども、そんなことを言われている割には、ちょっと形骸化してきているなと、後半私は実は思っておりました。

 憲法問題についてどうするかということ、今もちろん集団的自衛権のことをおっしゃっているわけですけれども、これについて、もう少し腹蔵のないいろいろな状態を、今まさしく委員がおっしゃっているようなことも想定しながら、もう少し機能するような、検討、研究に値するような、そういうこと、憲法調査会があるわけですから、例えばそこを切り口としてやってもらいたいなということを私は申し上げているわけなんです。

 私も、小泉総理が改憲論者なのかそうでないのか、護憲か、よくわからないのですよ。ですから、私は私なりの考えがある程度あるのですけれども、やはり皆さん、それを言ってくれとおっしゃっても、私、今申しませんから。これはまた閣内どうたらこうたらということになりますので、拘束されるから、そんな、乗りません。(上田(勇)委員「そんなことは言いません」と呼ぶ)いや、乗りたくないですから。ですから、やはりこれは、閣内で意見も聞かなきゃいけないし、また、何万という有権者から負託を受けていらっしゃる皆様方、先生方の御意見に心耳を傾けるという機会が必要だと思います。

上田(勇)委員 限られた時間ですので、この辺でやめますけれども、我々がこれを提起したということよりも、むしろ問題は、話題の提案としては、小泉総理がおっしゃったことでもあるし、田中大臣もそれを支持されるというふうにおっしゃったので、では、どういうお考えなのかということを提示していただくのは、逆に提案というよりも、まず、最初に問題提起をされた方がお話をしていただかないと議論は始まらないのではないかというふうに思います。

 これ以上はちょっと押し問答になってしまうというふうに思いますので、ぜひこの辺は、今後明確にしていただければというふうに思います。

 これは副大臣にお答えいただいても……。では副大臣、ぜひよろしくお願いいたします。

植竹副大臣 今委員お尋ねの、いわゆる集団的自衛権はどういうことかということにつきましても、例えば、領海外でいろいろな日米共同演習などをやっていますと、そのとき、米軍の方が攻撃を受けたときどうするかというような、非常に難しい問題なんかはあるわけです。これは例ですが、そういうときなどどうやっていくか、それをさらに検討しながらやっていく、それは憲法に抵触するのかどうか含めまして、そういうものを検討してやっていこうということでございます。

上田(勇)委員 言葉じりをとらえるつもりはないのですが、先ほど大臣がおっしゃったのは、もっと幅広いスコープでのお話だったと思うのですね。副大臣にお答えしていただかなくてもいいのですが、ただ、大臣と意思統一ができていないと副大臣にお聞きするわけにはいかないので、再答弁をお願いいたします。

植竹副大臣 今の点は、例えばということでもっとちっちゃいことで、大きな問題としまして憲法問題を含めました。

 この問題については、これから新しい時代について、今までの解釈というのは適当であるかどうかというような認識をさらに検討していくために、政府内においても憲法調査会を設置しましてやっていこう、それをさらに推進していこう。そのために、そういう発案から、小泉首相が積極的に、今回のものを進めていくということでございます。

上田(勇)委員 結論めいたことが出てこないので、この議論はこの辺にいたしますけれども、非常に重要なことなので、これはフィーリングだけではなくてきちっと詰めた議論をこれからしていかなければいけないので、ぜひその点は、まだこれからも外務委員会はございますので、ひとつ大臣、副大臣、また外務省の方々でもう少し具体的なお話を進めていただければというふうに御要望いたします。

 時間の制限もあるので、もう一つ、外務省報償費の問題についてお聞きをしたいというふうに思います。

 田中大臣は、就任記者会見でこういうふうにおっしゃっていますね。前内閣での対応には個人としては納得はしていない、国民の皆さんが納得のいく形で決着をつけていきたいというふうに述べられております。私も、これまでの外務省の説明の中には納得が十分いかない面もあるというふうに感じておりますので、この大臣の御発言、大変頼もしいものだというふうに受けとめております。

 そこで大臣、具体的にどういう点を指して納得ができないというふうにおっしゃったのか。また、そういう点については、大臣になられてから、まだ期間は短いですけれども、いろいろな調査もされたでしょうし、いろいろな聞き取りもされたのではないかというふうに思うのです。そうした疑問に、納得ができないというふうに思われていた点については、どういうようなことがあって、それをどういうふうに調べられて、また、何か改善が行われたのであれば、そういう点も御説明をいただければというふうに思います。

田中国務大臣 私は、報償費については、公開ということはできないと思いますが、実態を知ることによって改革をするということ、これが基本だろうというふうに思っております。そして、ごらんになったかどうかわかりませんが、きのうの参議院の予算委員会でも、このことについて私は発言をしております。

 それを簡潔に申しますならば、私も、このポストにつく前、予算委員になっておりました。そのときに、この機密費の問題が前内閣で出てきたときに、えらく手際よく、大臣以下課長さんぐらいまでの十六人の名前が出てきて、そしてお給料の返納ですか減額だか、それが一覧表がばっと出てきました。金額は書いてありません。論拠もないですね。それはもちろん、しかるべきポストにいた人たちがそういうことにかかわっていたということなんでしょうけれども、えらく手際よくて、びっくりしまして、こんなことでふたなんかさせないと思いました。

 ですから、大臣になってすぐに、これはどういう論拠で、全部トータルで幾らか、これを出してくれ出してくれ出してくれ、毎日毎日毎日ばかみたいに言っているのですけれども、出さないので、少し怒りましたらば、では出しましょうということになってきまして、それだけで結局八百九十万ぐらいですね。

 ところが、松尾某が今回三回逮捕されていまして、今わかっているだけでも二億数千万円の詐欺罪である。それで、一人のせいにして、一人を捕まえて、あとは幹部が十六人で、大変な高給をもらって退職するそうじゃないですか。

 ですから、そういう方たちがそれでお茶を濁すなんということは、それはもう絶対、国民として、私たち納得いかないという思いがずっとありました。したがって、どういうものなのか、項目、一番大きい順に見せてほしい、数を改ざんしないで。

 これまた次官が、頑張って頑張って、はいはい、はいはい、お返事はいいんだけれども、こちらが国会へ行ったら、どこかへ行っていなくなっているものですから、お留守のときに何度メモ入れようと、何度――これで秘書官、かわいそうです、半分ノイローゼになりますね。仕事の半分は、事務方に言ってください、言ってください、そればかり朝に晩に私に言われているのですから、かわいそうですよ。それでつぶされちゃうのですよ、内部の若い人たちも。ですけれども、内部からも、頑張れ頑張れが来るのです。

 それで、ある程度の数字は出てきました。私、これをやるについては、総理ももちろん機密費の減額ということをおっしゃっています。そうしたら、突然どこかの新聞でもって、外務大臣もわかっていて、一〇%強だと。何でトータルがわからないで一〇%強と。私もわかっていないのに、大臣がオーケーなんて載るのかと思って、ちゃんちゃらおかしいわよと思った。そうすると、それについてどうだどうだと質問が来るので、もういいかげん嫌になっちゃったのですが。

 そんなことはまた別問題といたしまして、減額をするということは、総理がおっしゃっているから、大前提。それから、今月中に内部の改革委員会から上がってきますが、私が行った晩ですよ、皇居の認証が終わった晩に、帰りがけにエレベーターに乗るときに、これは事務次官の責任で出すことになっておりますからと。そんな、詳細がわからないときに、これでよござんすねと言われたので、よくぞ私、お利口さんで、そのとき疲れていたのに頭が働いて、ちょっと見せてくださいと言って、立ちどまって見たのです。だめよ、これ、政治責任でやりますから、これは次官じゃなくて国務大臣にしてくださいと言ったら、えっ、あなた、やるんですか、そういう対応ですよ。

 ですから、政と官のせめぎ合いが、一対一じゃとてもできませんので、皆さんがバックアップしてくださること、世論がしっかり見ることなんですよ。そのことによって出てきているんです。ただ、向こうも瀬踏みしているんですよね、どこまで出せばと。自分の人事だとか、自分も異動させられるのかとか。それは、彼らにしてみたら長いこと積み上げてきているわけですから。ただキャリアでここまで来ていないんですよ。まだおられますね、ああ、いなくなっちゃった。

 ですから、そういうものを積み上げた中で、私は、機密にする必要がないものもあります。本来の機密費、これは外国にもシークレットファンドというのはあるんですから。本来に使われていないものもみんな機密費機密費といってやっているから、わけがわからないのだから、それらははっきり外しなさいと。会計学上わかるように項も目もはっきり出すように、それが一つ。

 それから、残金があるでしょうと。それから、円払いなのか、ドル建てなのか、現地通貨、何なのかと。差額が生じた場合は、価格の損益が出た場合はどうやってやっているんですかということも聞きましたよ。ああ、これは現金かもしれません。すぐ、わからない、忘れましたと言うのですから。ですから、それらもしっかり出してくださいと。だれが決裁しているのかということですよ。事務次官ですか、出先の場合は大使ですかと聞いていますよ。そうすると、みんなでもにゃもにゃもにゃもにゃ言うのですから、こっちは洗濯機の中でぐるぐるぐるぐる回されちゃうようなものですよ。(発言する者あり)頑張れ、一緒にやってください、それなら。

 ですから、そういう状態の中で、例えば、残ったお金については大蔵省に返す、そういう方法もあるじゃないですかと言ったら、その二つはできると言うのです。

 そして、過去の時系列的なものを出してくれと。BS見たいですよ、私だって。見たら、またほかの政治家が来たり、マスコミにしゃべったり。伏魔殿ですから、外務省の中にもそういう悪魔もいるし、外務省外から出入りしている中に悪魔もいるんですよ。本当に心配で心配でしようがないらしいですよ、先方さんが。ですから、私を信頼してください、政治主導でやりますからと。ちゃんと有権者は、どこかで仕切らなきゃだめなんですよ。そこまで言っております。

上田(勇)委員 大変一生懸命取り組んでいただいていることについては、本当に敬意を表します。

 それで、私もこの委員会で、機密費の問題について、とにかく、まずは報償費について、機密性の低い、先ほど大臣もおっしゃったように、必ずしも機密のものばかりではないんじゃないかという疑問が言われている。それを一緒くたにして計上して、それは全部機密ですというような言い方になっているんじゃないかということを申し上げまして、この問題の解決というか、問題の一番いい方法というのは、やはり透明性を高めることなんだというふうに何回かお話をさせていただきました。

 残念ながら、これまではやはり報償費というのは機密ですという答弁だったのですけれども、今度大臣がそういう御決意で取り組まれていることで、これは本当に機密の部分もあるというふうに思いますが、そうでない部分もあるんではないかという指摘が今されている。だから、そうでない部分というのはできるだけ公開をして透明性を高める、その中で使い道もおのずと適正になってくるのが自然な流れなのではないかというふうに思っております。

 それで、実はきょうの新聞に、報償費二割削減という話が出ておりました。事細かく報じられているので、これはかなり信憑性の高いことなのかなというふうに思うのですが、透明性を高める、そしてその中で報償費については二割を削減するという方向で今進んでいるのですか。

田中国務大臣 その記事は、きょうも朝早くて、七時から役所に行って勉強していますので、残念ですが、朝刊をまだ見ておりませんけれども、記事があるんでしょうか。見ておりません。

 それから、そんな数字を出すようなところまでいっておりません。

 きのう参議院の予算委員会で申し上げましたが、膨大で膨大でと。何でこんな時間がかかるのか、一カ月近くなるじゃないかと言うと、膨大だと。じゃ、あなた見たんですねと言ったら、いや私は見ていませんけれども、そう聞いていますと。じゃ、どういうことなんでしょうか、私を会計課に連れていくのか、どこにあるんですかと言ったら、それはおやめください、お出ししますと。そう言えば出てくるんですから。これはもうじんま疹物なんですよ。

上田(勇)委員 記事をごらんになっていないということでありますけれども、非常に事細かく書いておりまして、その中には大変いいことも書いております。これが新聞社の作文とはなかなか思えないので、こういった議論が外務省の中で行われているのに大臣に知らされていないとすれば、これは非常に重大なことではないのかなという気がいたします。

 それは省内のことでございますので、これ以上、知らないと言ったことは申し……(田中国務大臣「せっかくですから、いいですか」と呼ぶ)ええ、どうぞ。

田中国務大臣 いろいろ言うと、私はやはり新聞社というのも、ニュースソース云々ということで、記名記事にしてほしいですね。記名記事にすれば、その記者にどこから出たものなのかと。そうしないといつまでたってもイタチごっこで、ぐるぐるぐるぐる回って、これが出ている、どうだどうだと。

 私も一議員のときに、予算委員会とか何かで質問するときは常に、この記事どうですかと。それしかないですものね、ニュースソースが。

 だから、記名記事にするということを、議員立法でどなたかやっていただけませんか。

上田(勇)委員 ちょっと議論の方向とは違うのですけれども。

 ということは、今の御発言というのは、これは外務大臣も外務省も全く知らない、副大臣も知らないということなんでしょうか。そういうことであれば、これ以上お話ししても多分議論にならないと思いますので終わりますけれども、やはりこの報償費の問題は、連立政権の合意の中でもわざわざ一つの項目を設けて、十三年度予算については適正執行、それから削減も含めて厳正に対処していくんだということで合意をしていることでございますので、田中大臣また副大臣の皆さんのこれからの頑張りを期待したいというふうに思っておりますので、ぜひよろしくお願いをいたします。

 ただ、この記事が本当でないということなんですけれども、事実だかどうかというのはわからないのですが、ちょっと記事を見た印象で一つ言わせていただくと、もともと公開すべきであったようなレセプションの経費とかを公開しました、あとはもう一切いじりませんよというのでは、これは連立政権の合意の趣旨にも沿わないし、ぜひ、これだけで終わってしまうことがないようにお願いをしたいというふうに思います。

 それで最後に、時間になりましたので、きょうぜひお聞きしたいことが一つございます。これは植竹副大臣にお聞きをいたします。

 人種主義に反対する世界会議というのがこの八月、九月にかけて南アフリカで行われます。これは国連主催によります世界会議なんですが、かつてはアパルトヘイトという問題が起きていた南アフリカで開催されるというのは非常に大きな意義があるというふうに思いますし、我が国としてもぜひ、この会議の成功に向けて積極的な貢献をしていただきたい。そのためにもぜひ、外務省としても御努力をいただきたいというふうにお願いを申し上げます。

 そこで、何点かまとめて御質問いたしますけれども、この会議には、我が国が非常に重視しているという姿勢を示していただくためにも、なかなか大臣は御日程が大変だというふうに思いますけれども、ぜひ副大臣なりのクラスで御出席を検討していただきたいということ。もう一つは、この人種問題、人権問題というのは世界的にかなりNGOの皆さんが活動されている。ぜひ我が国もNGOの、この会議への参加そしてこれからの積極的な取り組みをバックアップしていただきたいということ。三つ目に、残念ながらこの会議、西側諸国とアフリカ諸国との間で過去への補償という問題をめぐって非常に対立していて、デッドロックになっているというふうに聞いております。この会議の重要性を踏まえて、デッドロック、ぜひ日本がリーダーシップを発揮していただいて、この成功に向けて御努力をいただきたいというふうに思いますけれども、副大臣、ぜひ御答弁をよろしくお願いいたします。

植竹副大臣 今上田先生お話しの人種主義に反対する世界会議ということでございますが、実は私はこういう問題については前からいろいろ、NGO的な、そういう人種差別の問題については私もそのメンバーに入っておりまして、非常に関心があるところなのでございます。

 したがいまして、この国際会議の意識を高める上からも、今回の八月の会議というのは大変重要だと考えておるところでございます。特に、南ア連邦ですか、長年にわたりアパルトヘイトと闘ってきたその国において、その国でこういう世界の会議ができるということは大変意義深いものだと私は考えておるところでありますし、特に、その中において、成功するかどうかというのは、やはりNGOの積極的な参加というものが一つのキーポイントになるんじゃないかと考えておるところであります。

 さらに、今お話しの補償費の問題も含めまして、いろいろな対応が各国の意見の食い違いからなされておりますけれども、やはりこの問題が解決するということが非常に現実的であり、これを処理していく、そのためには、人道上の問題ということについては非常に積極的な我が国の重要な政策でございますので、これを取り上げてやっていきたい、特にこれを主張して、外務省といたしましても、大臣や私どもいろいろ打ち合わせをしまして、積極的にリーダーシップをとっていきたいと考えておるところでございます。

上田(勇)委員 以上で終わります。

     ――――◇―――――

土肥委員長 次に、本日付託になりました国際労働機関憲章の改正に関する文書の締結について承認を求めるの件、最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃のための即時の行動に関する条約(第百八十二号)の締結について承認を求めるの件及び相互承認に関する日本国と欧州共同体との間の協定の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 政府から順次提案理由の説明を聴取いたします。外務大臣田中眞紀子君。

    ―――――――――――――

 国際労働機関憲章の改正に関する文書の締結について承認を求めるの件

 最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃のための即時の行動に関する条約(第百八十二号)の締結について承認を求めるの件

 相互承認に関する日本国と欧州共同体との間の協定の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

田中国務大臣 ただいま議題となりました国際労働機関憲章の改正に関する文書の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明申し上げます。

 この改正文書は、平成九年六月にジュネーブで開催された国際労働機関の総会において採択されたものであります。

 この改正文書は、国際労働機関において採択された条約がその目的を失ったこと等が明らかである場合には、総会が当該条約を廃止することができるようにするためのものであります。

 我が国がこの改正文書を締結してその早期発効に寄与することは、労働の分野における国際協力を一層推進するとの見地から有意義であると認められます。

 よって、ここに、この改正文書の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃のための即時の行動に関する条約(第百八十二号)の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明申し上げます。

 この条約は、平成十一年六月にジュネーブで開催された国際労働機関の総会において採択されたものであります。

 この条約は、最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃を確保するため即時のかつ効果的な措置をとること等について定めたものでございます。

 我が国がこの条約を締結することは、最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃を確保するための国際的な取り組みを推進するとの見地から有意義であるものと認められます。

 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、相互承認に関する日本国と欧州共同体との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 我が国と欧州共同体との間の相互承認に関する協力については、平成七年五月以降協議を始め、それぞれの国内制度についての調査研究を政府の専門家会合を通じて行った後、平成十年十月以来、政府と欧州委員会との間で協定の締結交渉を行ってまいりました。その結果、本年四月四日にブラッセルにおいて、我が方木村欧州連合日本政府代表部大使と先方ルンド欧州連合常駐スウェーデン代表及びカール欧州委員会貿易総局長との間でこの協定の署名が行われた次第であります。

 この協定は、通信端末機器及び無線機器、電気製品、化学品並びに医薬品について、我が国と欧州共同体との間で規格への適合性評価の結果や製品の試験データ等の相互承認を行うための法的な枠組みを定めるものであります。

 この協定の締結により、従来、我が国と欧州共同体との間で通信端末機器及び無線機器等の製品を輸出入する際に必要とされていた手続の一部を省略することが可能となります。その結果、これらの製品を相手側に輸出する際の費用及び時間が節約され、我が国と欧州共同体との間の貿易が促進されることが期待されます。我が国及び欧州の産業界からも、この協定の早期締結につき強い要望が寄せられております。

 また、我が国にとって初めての二国間相互承認協定であり、今後の他国との同種の協定の先駆けとなり得るという意義を有するものでもあります。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 以上三件につき、何とぞ御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願い申し上げます。

 以上です。ありがとうございました。

土肥委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。

 次回は、来る三十日水曜日に委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時五分散会




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