衆議院

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第14号 平成13年6月15日(金曜日)

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平成十三年六月十五日(金曜日)

    午前九時三十三分開議

 出席委員

   委員長 土肥 隆一君

   理事 河野 太郎君 理事 下村 博文君

   理事 鈴木 宗男君 理事 米田 建三君

   理事 安住  淳君 理事 桑原  豊君

   理事 上田  勇君 理事 土田 龍司君

      池田 行彦君    小島 敏男君

      高村 正彦君    桜田 義孝君

      下地 幹郎君    虎島 和夫君

      中本 太衛君    原田 義昭君

      宮澤 洋一君    望月 義夫君

      山口 泰明君    伊藤 英成君

      菅  直人君    木下  厚君

      首藤 信彦君    中野 寛成君

      細野 豪志君    丸谷 佳織君

      赤嶺 政賢君    東門美津子君

    …………………………………

   外務大臣         田中眞紀子君

   外務副大臣        植竹 繁雄君

   環境副大臣        風間  昶君

   外務大臣政務官      丸谷 佳織君

   外務大臣政務官      小島 敏男君

   外務大臣政務官      山口 泰明君

   政府参考人

   (防衛施設庁長官)    伊藤 康成君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   飯村  豊君

   政府参考人

   (外務省アジア大洋州局長

   )            槙田 邦彦君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    藤崎 一郎君

   外務委員会専門員     黒川 祐次君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十五日

 辞任         補欠選任

  前田 雄吉君     菅  直人君

同日

 辞任         補欠選任

  菅  直人君     前田 雄吉君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際情勢に関する件




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     ――――◇―――――

土肥委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として、委員伊藤英成君の質疑に際し、外務省大臣官房長飯村豊君の出席を、委員土田龍司君の質疑に際し、外務省アジア大洋州局長槙田邦彦君の出席を、委員赤嶺政賢君の質疑に際し、外務省北米局長藤崎一郎君及び防衛施設庁長官伊藤康成君の出席を、また、委員東門美津子君の質疑に際し、外務省大臣官房長飯村豊君の出席を求め、それぞれ説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

土肥委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

土肥委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。菅直人君。

菅(直)委員 田中眞紀子外務大臣、大変注目の中、連日の質疑を受けておられて御苦労さまです。

 きょうは、訪米を直前にして、地球温暖化の問題を中心に大臣と少し議論をしておきたいと思いますが、その意味で百年単位、千年単位の問題ですけれども、その問題に入る前に、一、二点だけちょっと確認をしておきたいと思います。大臣、いいですか。

 五月の十四日の予算委員会で、私の方から、外務省の機密費が官房機密費の方に上納されているという指摘に対して、調査をされると答弁をされました。そうですね、田中眞紀子大臣、私に。翌日になって辻元議員に、いや、役所に聞いたらそんなものはないということだったという余り田中大臣らしくないことを言われました。きちっとした返事をまだいただいていませんので、私が予算委員会で質問したときに約束された外交機密費の上納問題について、調査の過程がどうなっているのか、さらには、どの時期までにきちっと国会に報告をしていただけるのか、そのことをまず答弁いただきたいと思います。

田中国務大臣 前回のお尋ねに対する、上納金に関するお答えでございますけれども、これは、関係者によく伺いましたけれども、歴代の総理大臣、外務大臣、そして官房長官、まあ総理大臣全員じゃございませんけれども、からは、上納はなかったというお答えをいただいておりますので、そういうふうに結論づけざるを得ません。

菅(直)委員 本当にこれは田中眞紀子外務大臣らしくないですね。調査というのは、外務省の予算がどう執行されたかを調査されればわかるはずです。私もいろいろな経験者に聞きましたが、上納の可能性があるということを言われた方もあります。しかし、それは大臣としては、予算を調べればわかるわけですよ。外務省の外交機密費が何に使用されたかということを調べればわかるんであって、人に聞いてみたらこんな話だったからよかったなんというのは調査の中には入りません。ちゃんと答えてください。

田中国務大臣 恐縮ですけれども、先ほどの答えのとおりでございます。

菅(直)委員 そういう答弁しかできないところが、我々は田中眞紀子さんを応援したくてももう一つ大丈夫かなと思ってしまうところなんですね。

 ではもう一つ、これは後、同僚議員がやるようですが、いろいろな資料要求が委員会として出ていると聞いております。いろいろな会談について、田中大臣は自分の真意とは違った形で報道されているというような指摘を大分あちこちでされています。それならば余計に会談録を提出されればいいし、また、国会は国権の最高機関として、内閣は国会に連帯した責任を持っているわけですから、国会質疑に必要なものは当然出すべきであって、それを隠すのであれば、結局は、私もいろいろな厚生省のことでやりましたけれども、官僚の資料隠しと全く同じじゃないですか。それに手をかすようなことを田中大臣はやられているわけですか。

田中国務大臣 薬害エイズのときは、厚生大臣におなりになったばかりのときに、確かに私の会館にお出かけくださってお話をした経緯も、多分、菅先生、御記憶力よくていらっしゃるから覚えていらっしゃると思いますけれども、私は、ああいうふうないわゆる官僚隠し、エイズの問題、大変御尽力なさって、見事だと思って感服もいたしておりますけれども、そういう官僚による情報の秘匿、これは決してよろしいと思っておりません。

 したがって、私が、現在、きょうはここにおられませんが、議員仲間と一緒に、まさしく外務大臣を拝命する間際まで、今もう法案はでき上がっているんですが、この法案も、官僚による情報の秘匿、それによって政治がミスリードされた場合、特に幹部公務員の情報秘匿についての法律を議員立法でやっているぐらいでございますから、その私の政治家としての姿勢を見ていただいてもおわかりのとおり、私も、今おっしゃっていることは当たらないと思います。はっきり申しますと、官僚による情報秘匿があってはならないと思っています。

 ところが、次に、質問に対するお答えをいたしますと、今回のケースは、オーストラリアにいたしましても、イタリアにしても、ドイツも、すべての外務大臣が、日本で報道されているようなことは私たちの会談の事実とは違っていると。コンプリートファブリケーションという言葉を使っている国もあります。虚偽でありますとか、虚構であるとか、うそであるという訳ですね。それほど強い抗議をしてくだすっている。それは一対一じゃないんです。一人の外務大臣に対して複数のスタッフがいて、通訳がいて、こちらも同じ状況で話をしていて、複数で確認しているものと違っているということをおっしゃっているわけですから、会議録を出す出さないというふうにおっしゃっているようなケースとはまた違います。そして、外交というものは相手があるものですから、一方的に相手が何しゃべった、しゃべらないということは、信頼関係を損なうものでございますから、お出しできない、こういう理由でございます。逆に言うと、相手の国の外務大臣が言っていることをすべて拒否しろということなんでしょうか。私はそういう御趣旨でないというふうに理解しておりますが。

菅(直)委員 どうも外務大臣は、外国の大臣とか他の人の発言をよく引用されるのですけれども、私が言っているのは、内閣として国会に対して連帯して責任を持っておられるということなんです。官僚はあくまで内閣の中の専門的な知識を持つ人たちであって、もちろん、彼らが必要な資料を秘匿することは許されませんが、大臣も同じでありまして、大臣も、国会が必要とする情報についてはきちんと国会に説明する義務があるわけでありまして、他の国の大臣が何を言ったなんということを聞いているわけじゃありません。このことは後ほど同僚議員が話をすると思いますので、よく憲法六十六条を見て、内閣は連帯して国会に責任を負っているんだ、そのことの中で今後の答弁はいただきたいと思っております。きょうはメーンのテーマがありますので、この程度にさせていただきます。

 いよいよあすですか、アメリカに向かわれるそうでありますが、今、日米間あるいは世界の中で最も大きな案件は、一つは、ブッシュ大統領の提案しているミサイル防衛構想、そしてもう一つは、京都議定書を中心としたいわゆる地球温暖化を防止するための枠組みが果たしてこのままうまく機能するのか、それともアメリカの反対で崩れてしまうのかというぎりぎりのところにあるわけであります。大臣はアメリカではパウエル国務長官にもお会いになるそうでありますから、これは、アメリカでも担当は国務長官と環境関係の大臣と聞いております。

 そこで、先日のクエスチョンタイムで、ワシントン・ポストに田中眞紀子大臣が大臣就任前に意見広告を連名で出されたという指摘を我が党鳩山代表がいたしましたが、まず事実確認だけしておきたいと思います。これは、田中眞紀子さんの自分の意思でこれに加わられたわけですね。

田中国務大臣 本論の京都議定書に対する紙がございますけれども、これに触れる前に、大事なポイントですからはっきり申し上げます、導入部での話ですけれども。

 外国の外務大臣という枢要な地位におられる方の発言を信頼するということは外交の基本だというふうに思いますので、それをすべて否定してかかるような発言は、ちょっと私は、やはり日本の国会の中でされるのはいかがなものかというふうに思っておりますので、そこをまず申し上げて、この京都議定書に対する私たちの紙、意見広告を出しましたので、これに対するお返事は、もちろんいたしました。

菅(直)委員 いや、だから、事実だということですね。(田中国務大臣「もちろん」と呼ぶ)

 前の問題は余りぶり返しませんが、私は、日本の大臣として国会に対して説明責任があるんじゃないですかと申し上げているので、外国の大臣が言われたことについて、私がそれを否定も肯定もしておりません。ちゃんと聞いて話をしてください。ですから、日本の外務大臣として国会に説明する義務があるのかないのかを聞いたのであって、私たちからいえば、こういう問題になっているところの会談録は当然この委員会に出すべきだということを申し上げたので、話をずらさないでください、田中眞紀子大臣。

 話をもとに戻します。

 そこで、ブッシュ大統領は既に、この京都議定書の構造に対して致命的な欠陥があるという認識を示されております。また、昨日、スウェーデンのイエーテボリで行われた米国とEU首脳との会談でも、この問題では完全に決裂をした。つまりは、既にアメリカはこの京都議定書に戻る可能性はなくなったとこの二つのことから私は判断しますが、大臣はいかがお考えですか。

田中国務大臣 これも実際にお目にかかってお話も聞いてみたいと思っておりますし、私がアメリカ側と話をしたい幾つかのイシューがございますけれども、そのうちの大事な柱の一つになるというふうに私は思っております。

菅(直)委員 ですから、見通しを聞いているんです。私は具体的に申し上げました。六月十二日のブッシュ大統領の声明によって京都の枠組みは致命的な欠陥があるという指摘が既にある、また、EUとの首脳会談でもこの問題では合意ができなかった、そういう中ではアメリカはもはやこの枠組みに戻る可能性はないんではないか、それに対する見通しをお聞きしているんです。

田中国務大臣 ですから、もう一回私は申し上げますけれども、アメリカにお目にかかったときに、どういうようなやりとりであったのかということも伺ってみたいと思いますが、それに加えて申し上げるならば、それぞれの国にそれぞれの立場というものがありまして、それを尊重しながらよい方向に進めていくというのが外交努力でありまして、そこに外交の難しさもだいご味もあると思いますので、そういうことを踏まえまして事を進めていかなければならない、日本には日本の立場ももちろんございますが、そういうことでございます。

菅(直)委員 この条約、京都議定書はアメリカも調印をいたしております。批准がされておりません。

 お手元にグラフがあるかどうかわかりませんが、これはたしか外務省が出したグラフです。削減義務を負ういわゆる先進国でありますけれども、その中で、総排出量の五五%を占める国々が批准をした場合、及び国数もありますけれども、国数は十分でしょうから、その総量が五五%を超えた場合にこの京都議定書が発効するということは、大臣、もちろん御存じですね。イエス、ノーでいいですからどうぞ。

田中国務大臣 これが今いただいた書類でございますね。はい、合っていると思いますが。

菅(直)委員 いや、合っているじゃなくて、京都議定書が発効する条件は、先進国等の総排出量が五五%を超えたときというのが条件になっている、そのことはそういうことでよろしいですね。

田中国務大臣 はい、結構でございます。

菅(直)委員 よく聞いていてくださいよ、私の質問を。

 そうすると、五五%になるにはどうなればいいか。EUとロシアと日本を合わせると五〇%に達するわけであります。逆に、アメリカと日本がともに反対すれば、ともに批准しなければ、それだけで四四・八%、つまりほぼ四五%ということは、逆に言えば、それ以外の国々がすべて批准しても大変厳しくなる。今言われていますように、オーストラリアとかカナダをアメリカが巻き込めば、事実上日本がキャスティングを握る立場になるわけであります。しかも日本は京都議定書の議長国でありまして、私は、この問題は日本自身の批准をするかどうかにかかってきている。簡単に言えば、日本が批准すれば、ヨーロッパやロシアを含めてこの条約は発効する、そう思いますけれども、見通しとして大臣はどう思われていますか。

田中国務大臣 おっしゃるとおりでございまして、おっしゃっている数字も合っていると思いますし、おっしゃっている中身も正しいと思っております。

 ですから、そういうようなことをすべて勘案しながら、日本はこのことについて非常にナーバスで、そしてアラートでなければいけないわけでして、現に、お尋ね以上のことを申し上げますと、ASEMの会議におきましてもこういうことについて随分イシューとして取り上げられまして、そして、たまたまASEMというのは、御案内のとおり、ヨーロッパの外務大臣とアジアの外務大臣で、アメリカが中に入っていない会議です。でありますけれども、今くだすったCO2排出量が三六・八%というこのアメリカの数字、それから、先ほどおっしゃった日本とアメリカを足せば四四・八%にもなってしまうということはもちろん私たちの方も計算してわかっておりますし、アメリカというものの排出量が極めて大きいということ、それから経済的にも規模が大きいということを踏まえて、ヨーロッパの外務大臣やアジアの外務大臣が大変このことには、いろいろな活発な意見の交換もありましたので、委員がおっしゃっておられる意味はよくわかっておりますし、これは大変大事なイシューだというふうに思っております。それを踏まえてアメリカ政府に対して日本も発言をいたしたい。しないなんて言っておりませんから。

菅(直)委員 これに関しての四月十八日と十九日の参議院と衆議院の国会決議はよく御存じですか、中身は。

田中国務大臣 はい。理解いたしておりますが。

菅(直)委員 この中では、参議院の決議では「政府は率先して批准し、」とあります。衆議院の決議では「我が国は早期に批准し、」とあります。つまり、アメリカが批准をする、しないにかかわらず、「率先して」という意味は、先立ってということであります。「早期に」というのも、もちろん早くということであります。そう考えますと、政府としては、あるいは大臣としては、当然、国会決議があるわけですから、この方針でいかれるんですね。

田中国務大臣 私もそのように考えております。ですけれども、やはりアメリカという国を無視して進むことが果たしていいかどうかという議論もございますから、ですから、環境庁を中心でございますけれども、最後の最後までアメリカにも働きかけて、そして少しでも最終的に世界じゅうが納得するような形に外交努力を続けていくということが基本的なスタンスでございます。粘り強く、アメリカに対しても世界じゅうが働きかけていく。しかも、京都でこの議定書ができ上がった、議長国でございますから、日本の発言力、日本の影響力は世界じゅうが見ているということは当然でございます。

菅(直)委員 この問題は、大臣は理解されているかどうかわかりませんが、どういう構造になっているか。つまり、我が国が批准をすれば、ヨーロッパ、ロシアと一緒になれば、これが発効する可能性が高い。逆に言えば、アメリカはこの問題で孤立をするわけです。

 世界はどう見ているかというと、アメリカは孤立を恐れて、カナダやオーストラリアを巻き込むだけでは数が足りませんから、日本政府に対して、アメリカが批准しない以上は日本も批准しないように。アメリカが批准しないでも、日本が批准してしまえば発効してしまう。発効するということは、国際社会の中でアメリカは孤立することになります。

 これは、きょうはミサイル防衛問題は別の委員に任せますけれども、ミサイル防衛問題でも、NATOの多くの国は慎重論であります。そうすると、ブッシュ大統領就任以来、最も大きな外交案件であるミサイル防衛構想も、同盟国からも理解が薄い。そして、クリントン大統領のときにゴア議定書とまで言われるような形で決めたこの案に対して、ブッシュ大統領が離脱を表明したことによって世界じゅうからアメリカが孤立をする、こういう可能性を持った状況に来ているんです。

 そのときに日本が、いや、アメリカの様子を見てから考えます、アメリカが批准するかどうかが一番重要なんです、こういうふうに言っていれば、ああ何だ、日本の本音は、結局のところはアメリカが圧力をかけたものに屈して、みずから京都で議長を務めたにもかかわらず、その枠組みが壊れるのを、いわば共同正犯か従犯かは別として、認める気だなと。中には、今通産省が名前が変わりましたけれども、経済産業省などは、場合によっては、日本が壊したと言われなければ、アメリカが壊したと言ってくれるんだったら、壊れてもまあ仕方ないじゃないか、いいじゃないかと思っている節さえあるという指摘もあります。

 ですから、今の大臣の答弁は、わかって言われているのか、わかっていないのか、わかりませんが、つまり、現時点では、日本が批准するということが、アメリカに対して、この枠組みに戻ってくる最も効果的な手段である。以前ならもっと話をしてよかったんです。既に致命的に欠陥があるとまで言い、EUとの首脳会議でも事実上全く決裂状態にある中で、これ以上アメリカが批准するのを待つという姿勢は、結果的には日本は批准できないということになりますから、そのことは国会決議とも反する行動でありますので、そのことの認識を問うているわけです。いかがですか。

田中国務大臣 この批准のタイムリミットというのはないわけですけれども、スーナー・ザ・ベターでございます。これが基本にありまして、それから、それでは、基本的に小泉内閣が大変高い支持率をもらっているのは何かといいますと、今までのような意思決定の方法とか、それから、対米だけではありません、今までのような手法、外交も含めて内政、社会保障制度もそうです、財政再建もそうです、そういう手法をもうやめてほしい、もっと独自の新しいスタイルを確立してやってほしい、こういう国民の皆様の期待の声が八〇%以上の支持率を持っています。そして、その覚悟がある内閣のメンバーがそろっているんですね。

 すなわち、何を言いたいかと申しますと、アメリカからもっと私たちも、アメリカからだけではありません、世界と等距離で、日本が自立した、独立したしっかりとした政策を打ち出せる内閣なんですよ。ですから、アメリカ追随というふうに委員がおっしゃっている方が、何かかつてのステレオタイプの冷戦構造のころの対立構造で、日本はアメリカ追随かと思っていらっしゃるかと思いますが、既に時代がもう変わっているんですよ。変わっています、今現在。ですから、アメリカに対しても――いや、これからですよ。まだ二カ月たっていないんですから、焦らないことですよ。

 ですから、それよりももっと建設的に、アメリカまでも巻き込んで一緒に建設的にやっていきたい、そういう努力を日本は一番できるんですよ。しなければならないんです。おっしゃったこの資料、菅先生が下すったのを見ても、三六・八%もCO2の排出量のある国をおいて、京都でやったから、私たちはヨーロッパとやればもういいでしょう、そういう話じゃないんですよ。

 やはり、アメリカも一緒に巻き込んで建設的に、世界じゅうが、アメリカの国民の方も、そしてヨーロッパやアジアやみんな、地球市民としてよくなるようにかじを切っていこうというのがこの小泉内閣ですし、そういうメッセージを発信し、それぞれ、社会保障におきましても、財政再建におきましても、この外交におきましても、私たちは前を向いて、世界にメッセージを主導的に発信していくんです。

 ですから、先ほど来おっしゃっているアメリカの新聞に出したこの意見広告も、半分は民主党の先生方が共鳴なすったんですよ。我々六人と、それから先生方の議員さんです。古川先生にしろ五十嵐先生にしろ、荒井先生、前原先生、ぜひやろうといって、このペーパーをつくってくださったのは古川先生の事務所ですから、いいことを一緒にやるわけです。ですから、一緒にいいことをやりましょう。そういうことをぜひもう一回、原点を確認なさっていただけますか。

菅(直)委員 これは、ハンセンの控訴断念と構造がよく似ているんです。私たち民主党を含む野党は、もう判決が出た時点から控訴は断念すべきだと言って、最後、総理が決断されたことは評価します。私たちがこの批准をすべきだということを主張し、国会の意思としても早期批准、率先批准を決めたんです。

 ですから、眞紀子さん、もちろん国民の皆さんにわかりやすく言われるのは大いに結構ですが、私たちはもう少し専門的な立場で、国会という場で議論しているんですから、私が質問していることに、あなたは頭のいい人だから、きちんと対応して答えてください。

 今眞紀子さんが言われたことは一つとして反対じゃありませんよ。それを実現するために、つまり、大木前長官も行かれましたが、いろいろな方が行かれてぜひ戻ってきてくださいとやった。EUも一生懸命やった。しかし、ブッシュ大統領は既に致命的欠陥があると言い、そしてその姿勢はEUとの首脳会談でも変わらなかった。私が見るところ、アメリカが姿勢を変えることは今のままではあり得ないだろう。それは、田中眞紀子さんがパウエルさんと話をされてやられれば大したものですが、そう簡単ではないと思う。

 そこで、力学が必要なんです。物理学の力学です。つまり、五五%の排出量を持つ国々が賛成すれば、批准すれば、発効するんですよ。確かにアメリカは外れますから、アメリカは自由にやれるというけれども、自由にやれるというかわりに、ほとんどの国々がこれに賛成する中で、世界じゅうから孤立をするという、最もアメリカが恐れる構造、形になるんですよ。アメリカ国内でも物すごくそれに対して反発が出るはずですよ。

 つまりは、最も効果的にこの条約にアメリカを引き戻すには、端的に言えば日本がまず批准することじゃないですかということを問うているのに、あなたが答えているのは一般論で、一生懸命話しています。そんなことはわかっていますよ。私たちの六名がそれに入っていることももちろんですし、まさに私たちの意思がそのワシントン・ポストにも入っているわけです。

 しかし、今あなたは外務大臣ですから、今度は外務大臣として、政府の一員としてその立場で、つまり、パウエルさん、あなた方、ぜひ戻ってください、しかし、もし戻ってきてもらえないでも、国会決議もありますから、我が国は批准をしますよ、今度ボンで行われるこの京都議定書の中身を詰める協議の中で、かなり我が国にとっては受け入れやすい提案もプロンク議長から出ておりますから、そういうことを踏まえれば、我が国はそのボンの中でまとまれば批准しますよ、そうなるとアメリカは孤立するんじゃないですか、今のうちに考え直したらどうですかと、まさに先ほど一般論で言われたことを具体的に言うべきではないかということで、きょう、わざわざ私は、アメリカに出かける前にこの場に立たせていただいたんです。どうですか。

田中国務大臣 まさしくそうでございまして、要するに、日本で私が今度外務大臣という要職につかせていただきましたので、今まで個人で、民主党さんの議員さん六人さんと、それから私たち自民党六人であのような意見広告を出しましたけれども、今度は外務大臣としてしっかりと物を言えるわけでございますから、今委員がおっしゃったようなスタンスで、むしろ、余りペシミスティックにならずに、それから余り否定的にならずに、もっと建設的に、そしていい方向に持っていく、ポジティブエナジーと私は思っておりますけれども、そういう前向きのエネルギーを出して、そしてアメリカにもそういうような考え方にしてもらう、なってもらえる。

 しかし、あのブッシュ政権もまだ誕生して日が短いと存じますから、やはりいろいろな方の意見も聞かなければいけないし、今回欧州に行かれて、帰ってこられて、また問題点の整理をして体勢を立て直すという時間も必要だと思います。したがって、その中でまた日本の立場、それからほかのアジアの国々の声も私はASEMで聞いてきておりますから、それらも加えて、アメリカも一緒に批准をしましょうという建設的な努力を最後の最後まで続けたいというふうに思います。

菅(直)委員 それで、批准案件はこの国会中に出されるつもりはありますか。

田中国務大臣 よく検討もいたしておりますけれども、期間的に今国会は難しいと申し上げざるを得ません。

菅(直)委員 では、参議院選直後になるかと思いますが、次期国会には出されるつもりですか。

田中国務大臣 閣内でよく皆様のお声を聞きながら検討いたします。

菅(直)委員 国会決議からすれば、早期に、率先してとありますが、そうなれば、いつ出されるつもりですか。

田中国務大臣 その国会決議の重さというものは十二分にわかっておりますので、それも含めて検討いたします。

菅(直)委員 重さという言葉をよく使われますが、大臣は、国会決議というものは外務省、政府を拘束すると考えていますか、考えていませんか。

田中国務大臣 法的な拘束力はないというふうに思います。ですけれども、尊重はいたします。大変尊重しなければならないものであるということは、議員としてわかっております。

菅(直)委員 法的拘束力がないと言われましたが、憲法的拘束力があるかどうかをお尋ねします。憲法としては、私は拘束していると思いますが、いかがですか。

田中国務大臣 これは、尊重すべきものであるというふうに考えます。

菅(直)委員 憲法六十六条には尊重なんという言葉はありません。内閣は、連帯して国会に責任を負うているんです。尊重なんて言葉はありません。

 ですから、決議ですからある程度の幅はあります。しかし、少なくとも、国会決議に反する行動を内閣や閣僚がとられたときは、国会の意思としてそういう閣僚は私は罷免すべきだと思っています。そのぐらいの重さがあると思うんです。重さという抽象的なことではなくて、これは憲法六十六条の内閣と国会の関係に関することですから、抽象的な重さのことを言っているんじゃありません。

 ですから、この国会決議に沿った行動がとれないときには、責任をとられるつもりはありますか。

田中国務大臣 それは極めて野党的な論理のすりかえであって、これは先ほど申し上げたことになりますので、やはり重く受けとめて、尊重しながら、そして今、連立の与党でございますので、そうした皆様の意見もしっかりと受けとめながら歩を進めてまいります。タイミングは逃しません。

菅(直)委員 田中さん、野党的とか与党的とか、あなたは大変言葉がうまいけれども、私は憲法六十六条のことを言ったのであって、民主党の綱領のことを言ったわけじゃないんですよ。憲法六十六条は、別に、民主党、野党の憲法じゃありませんからね。

 憲法六十六条に、内閣は連帯して国会に責任を負うと書いてあるじゃないですか。その内閣が国会に対して責任を負っていて、国会の意思が、私は決議を改めて読みましたけれども、非常にはっきりした文章ですよ。あいまいじゃありませんよ。確かに、アメリカのこともいろいろ書いてあります。努力の目標として大いに書いてある。あるいは、その離脱に対して、参加を強く求めるとか遺憾だとか書いてあります。しかし、それはそれとして、我が国としては率先して批准する、早期に批准するという言葉が明確に入っているんですよ。野党的とか与党的じゃないんです。国会的なんですよ。

 この国会決議に反するような行動をとられる場合には責任をとられる覚悟がありますか。そのぐらいの覚悟でアメリカと交渉しない限りは、結局はいいかげんなことになるんじゃないでしょうか。いかがですか。

田中国務大臣 憲法の六十六条に、内閣は、行政権の行使については、国会に対し連帯して責任を負うと書いてございます。しかし、個別の事案については、尊重をします、そして重く受けとめる、それが基本だと思います。

菅(直)委員 まあ、法制局は多分そう言わないでしょうね。

 これは個別の事案についての決議なんですよ。個別の事案について、この条約について早期に批准するという決議なんですよ。率先して批准するという個別の事案なんですよ。抽象的な事案じゃないんですよ。この個別の事案について、早期に批准するんですねと聞いているんです。いかがですか。

田中国務大臣 ですから、再三申し上げておりますけれども、重く受けとめて、尊重をして判断をいたしますと申し上げております。

菅(直)委員 ですから、尊重して判断した結果、それができないときには責任をとられますかと聞いているんです。

田中国務大臣 やはり、民主党の皆様も私と一緒にこういう紙を出されたわけですから、いい方向に進めたいと思っていらっしゃいますのでしょうから、ぜひ、対決することよりも、よい方向に行くように一緒に協力をしていただきたいというふうに思います。

菅(直)委員 そろそろ、その程度にしますけれども、田中さん、私たちが後ろ向きじゃないんですよ。この問題では、私の方が皆さんより前向きなんですよ。そのときに内閣の一員としてどうされるのか、これは我が同僚議員がそのうち川口大臣にも聞きます。実際には、総理にも機会があれば詰めたいと思っております。

 ただ、総理の答弁を聞きますと、批准については一言も触れていません。つまり、アメリカを戻したいということはあるけれども、批准についてはこれまで一言も触れていないんですよ。結局、私が見るところは、アメリカが批准ということを物すごく恐れている、その圧力があるものだから、批准という言葉は使わないで、我が党のいろいろな議員がどうするんですかと言うと、いや、排出量の大きいアメリカが何とか戻ってくれるように努力しますと。それは当然です。

 ですから、その段階を過ぎた段階で、私たちは国会決議に基づいて、田中大臣にしろ川口大臣にしろ小泉総理大臣にしろ、少なくとも国会決議に反する行動をとれば、国会の意思としてそういう総理や大臣は認められないというのは、論理の上からいって当然じゃないですか。違いますか。私は憲法上のことを言っているんですよ。

田中国務大臣 ですから、そういう御意見、せっかちでいらいらなさっているのかわかりませんが、とにかく、いい方向に持っていくために、私が訪米できまして、そして、初めの質問の原点にお返りいただけばおわかりになると思うんですけれども、こういうことも含めて、アメリカも日本もみんなが一緒に、欧州もほかのアジアの国、地球市民と私はいつも言っておりますが、こういうことに直接声を発することもできないで本当に苦しんでおられる、あるいは先行きの不安を持っていらっしゃる方たちも地球上にいっぱいおられますね。そういう方たちのために、我々がみんなで批准できるように外交努力をしにまさしく私があした出発いたしますので、余りせっかちにならずに、事を小さくしないで、できるだけいい方向に行くようにみんなで協力をしていただきたい、後押しをまさしくしていただきたいということを申し上げ、まだ結果も出ていませんので、余りペシミスティックにならずに、もう少しゆったり構えて、結果がよくなって大したものだと。そして、民主党の皆様も一緒に私たちと署名をしてくだすってよかったし、やはり環境問題は守られたね、外交努力、政治努力が実ったというようなことになりますように、そうなるとまたちょっと小泉内閣の人気が上がっちゃうと大変かもしれませんけれども、それは別問題といたしまして、最善の努力をしてまいりますので、それをお伝え申し上げまして、私の答弁といたします。

菅(直)委員 もう一度だけ全体のことを申し上げて終わりたいと思いますが、今私は、田中眞紀子大臣の答弁を聞いていて、言われていることは一〇〇%賛成です。ですから、その上でのことを聞いているのですね。だから、仲よくやりましょう、ペシミスティックにいかないで楽観的にいきましょう、大いに結構、私もそんなにいつもいらいらしているわけじゃありません。

 ですから、先ほどハンセンの問題でも言いましたように、我々が主張し、それを小泉さんが受け入れてやられて支持率が上がることはそれは大いに結構なことで、私は、百年先、千年先を考えれば、この京都議定書の枠組みが崩れるかどうかというのは大変重要な、もうぎりぎりのところに来ている。しかも、世界の最大の国であるアメリカが、事実上というよりも、はっきりとこの京都議定書の枠組みを壊しに入っている。その段階で田中外務大臣がアメリカの外務大臣との会談に臨まれるわけですから、我が国の批准についてアメリカに聞く必要はないのです。

 我が国が批准するかどうかというのは、我が国で決めればいいのです。しかも、国会では批准するということを決議しているのです。それでいながら、今のような田中眞紀子さんにしては歯切れの悪い、ああでもない、こうでもない、批准についてまるっきりアメリカに相談に行くようなことを言われるのは、私は逆じゃないかと。

 つまりは、日本が批准したら発効する可能性が高いというこの厳然たる事実を先ほどのグラフでお見せしたのですよ。だから力学が働くというのです。発効しなければどの国も拘束されませんから、アメリカは孤立しません。発効した場合は、アメリカ以外の大多数の国はこれに拘束される、アメリカだけどうぞ自由にということになるけれども、それは逆に言うと、間違いなくアメリカの外交的大失敗になりますよ。

 私は、きょうは私からはミサイル防衛構想のことは言いませんが、日本がアメリカから自立した外交をしていく上で、安全保障問題から入るのはそれこそなかなか重いです。地球環境問題から入ることが、日本の外交戦略からいっても、国際的にも理解されるし、国民的にも理解される。まして、京都、京都、京都ですよ。ブッシュ大統領の言葉を聞いても京都アグリーメントですよ。

 これに対して、つまり、京都という日本の中では世界で一番有名な都市の名前がかぶさり、そして日本が議長国をやったときに決めたこの枠組みが二〇〇二年に発効できるかどうか、まさに我が国が批准するかどうかにかかっているのです。二〇〇二年に発効するのは、アメリカが批准しなくてもできるのですから、そのことをきちっと認識を踏まえて、まさに田中眞紀子さんが総論で言われた精神でもって、しかし中身はもうちょっとしっかり踏まえてアメリカとの会談に臨んでいただきたいことを最後に申し上げて、最後はにっこり笑って終わりにしたいと思います。

土肥委員長 次に、伊藤英成君。

伊藤(英)委員 伊藤英成でございます。

 きょうは、先般来の各外相会談の内容についてがメーンだと思っていますが、その前に一つ、まず政策的な話を伺います。

 大臣、靖国神社の公式参拝問題について伺いたいのですが、この委員会でも、大臣みずからは八月十五日には公式参拝はされない旨は、私の質問に対しても言われました。

 そこで、伺うのですが、八月の十五日、終戦記念日、そのときにA級戦犯が合祀されているあの靖国神社に小泉総理が公式参拝した場合に、日中関係を中心にしてその外交的な影響はどういうふうにあると思われますか、ないと思われますか。

田中国務大臣 あるかないかと二者択一であれば、もちろんあると思います。

伊藤(英)委員 どの程度深刻に受け取っていますか。

田中国務大臣 それは、せんだっての北京でのトウカセンさんとのお話もそうでございますし、それから民間の方の御意見もわかっておりますし、それからメディア等で報じられていることもわかっております。世代によって、またお立場によって考えも違うけれども、やはり中国とか韓国とかそういう国の方たちは非常にこのことにデリケートな反応を持っておられますし、靖国参拝について、合祀されているところに対する強い拒否反応というものがあるということは十二分に承知しております。

伊藤(英)委員 私の理解では、今もちょうどこの時間も中国の外交部から日本に来ていらっしゃると思いますが、非常に心配していますね。私もそう思っています。それで、先ほど外務大臣も、今の状況について、公式参拝された場合についての心配はされているわけです。

 それで、総理とこの問題について、外務大臣として、外交の責任者として、公式参拝問題について意見を言っていらっしゃるかどうか、そして総理に八月十五日の公式参拝はされない方がいいのではないかという意味での意見具申などされているかどうか、そして今後さらにされる予定があるかどうかを伺います。

田中国務大臣 総理と長時間にわたってお話しする機会はなかなかないのですけれども、それでも、私は何度もこのことについて意見具申という形で、ペーパーじゃございません、お考えをただし、そして私の意見を申し上げてきております。

伊藤(英)委員 それは、外交上も、外交的観点からも行かれない方がいいという意見を言っていらっしゃるのですか。

田中国務大臣 韓国や中国から、教科書問題はもう一番象徴的でございますけれども、あれも、それから靖国問題もイシューとしてあれだけ強い表明がございますので、それは総理も御存じでいらっしゃいますから、そういうことにも絡めて、そして個人的なときもいつも伺っております、靖国神社は本当に行かれるのですかと。靖国神社は参拝なさるのですかといつも伺っています。

 そうすると、おっしゃっています。先に答えも申し上げてしまいましょう。そうすると、御自分は、もう報道もされていることですから委員御存じだと思いますけれども、戦争を美化するものでもない、だけれども、戦争で亡くなった方たち、皆様、命をなくしてしまった方たち、傷ついた方たち、そういうすべての方に対して自分はこうべを垂れて参拝をしに行くと、いつもそれを繰り返しおっしゃっておられます。

伊藤(英)委員 もしも総理が八月十五日に公式参拝をされた場合に、いわば正規のといいましょうか、政府の外交チャンネルではほとんど対応できない状況になるのではないかということさえ言われる中国側の政府の方もいらっしゃるわけですが、外務大臣はその辺の深刻さは十分に踏まえていらっしゃるわけですね。

田中国務大臣 一々おっしゃられるまでもありません。意味わかりますか。言われるまでもないということです。わかっていますということです。

伊藤(英)委員 では、もう一度伺います。行った場合の影響はどうかと思われますか。

田中国務大臣 十二分にわかっております。言われるまでもなく感じておりますから、私は折に触れて総理大臣に伺い、そして意見も申し上げてきております。

伊藤(英)委員 それでは、一連の外務大臣との会談の件に移りますけれども、この会談につきまして、これはここでも外務大臣からも何度も、それぞれの外務大臣あるいは相手の政府等からも書簡が届けられている話があります。

 ちょっと伺うんですが、ドイツの外務大臣に対しては、ドイツ大使館に日本の外務省から照会をしてあの書簡をもらっているわけですね。それで、中国側にも同じような照会をしたのかどうか。中国側からは返事といいましょうか書簡が来ていないと思うのですが、それはなぜしなかったのか、しなかったとするならばなぜしなかったのか、伺います。

田中国務大臣 ドイツにつきましては、何月何日どの委員会、どの委員からかということは、私はちょっと失念いたしましたけれども、どうなったのか知りたいというお尋ねがありましたので、たまたまオーストラリアとイタリーからは即返事がございましたけれども、インターネットを通じてお気づきになったと思って、あちらからいただきましたけれども、ドイツ側からはなかったのに、質問の中で、どの委員会かちょっと覚えておりませんが、ドイツとの場合はどうだ、次はどうだ、どうだという話でしたので、こちらから照会をいたしました。そうしたら、フィッシャー外務大臣が外遊しておられたか、とにかくどの外務大臣も超多忙ですから、ドイツの在京のケストナー大使が確認をしてくださった結果が来ております。

 中国については、そういう御要請も特別来ておりませんし、意思疎通が頻繁によくできておりますので、いたしておりません。

伊藤(英)委員 外務大臣は、このミサイル防衛等に関連をして六月二日にコメントを出していますね。あのコメントには、日本国外務大臣として出したとか、あるいは外務省の見解と同じだとかいう話がこの場でもありました。ですが、いろいろな報道によりますと、外務省の事務当局の方は、どうも報道内容を否定することはできないから拒否したんだとかいうような話がいろいろと報道もされたりしました。

 そこで、これは官房長に伺うんですが、あの田中外務大臣のコメント、その性格についてですが、あの田中外務大臣のコメントというものは、これは外務省としての正式な見解ということが言えるんですか。官房長に伺います。

飯村政府参考人 お答え申し上げます。

 従来より申し上げておりますとおり、一連の外相会談の具体的な内容についての報道に関しましては、逐一コメントしないというのが私どもの立場でございますけれども、六月二日、今委員が御指摘になった大臣コメントというものは、大臣がみずからの御認識を述べておられるわけでございまして、これは私ども、重みを持ったコメントであろうと考えております。当然、外務大臣は外務省を代表しておられるわけでございます。

伊藤(英)委員 今まで外務大臣は、各委員会の場でも、いろいろな報道された内容について、個々の報道の内容についてはコメントしないということを再三言われておりますね。

 ところが、今まで、例えば五月十八日のこの委員会で桑原委員の御質問に対しては、これは朝日新聞の問題についてでありますが、そのときは、「昨日の朝日新聞の朝刊一面で、一〇%強を削減という記事が載っておりましたけれども、あれは外務省当局も私も全然知らないことでございましたので、このニュースソースがどこかということも含めまして、昨日の正午、朝日新聞社政治部長」云々とずっと言われて、そして、「こういうことがあるといけないというふうに強く抗議といいますか、御注意をした次第でございます。」というふうに、これについて、報道に対して抗議をしたことを言われました。さらには、今月十一日に入りましても、駐英大使等の人事に関する報道がありましたときに、報道四社に抗議をされておりますね。

 実は、私なんかも、委員会の場で大臣のお話を伺ったりしていますと、あるときは報道に対しても抗議もしたりアクションもとられるな、しかし、あるときは報道に対してはコメントしないんですよということを言われていたりして、なかなかどうも報道に対して一貫性がないではないかという印象を抱くんですね。どういうときに対応し、どういうときに対応しないんでしょうか。

田中国務大臣 一貫性がないとおっしゃいましたけれども、これは一貫性があるのでございます。

 なぜかといいますと、事後発生的に複数のことが例えば地雷のようにばばばっと起こった場合に、これを一々やっていると本当の外交ができなくなってしまうんですね。本論は、そういう事後発生的なことよりも本業をきちっとやることなんですよ。それをやっていけば、時間の経過とともに道はちゃんと見えてくるんです、なるほどねとわかるんですが、周りであちこち地雷ができて道がわからないような状態になった場合には、それにある程度対応もしなきゃいけないこともある。しなくても済むこともあるんですね、ああ、時間がたてばこれはわかるからいいと。しかし、これは、ミスリードされて、本業の、いいですか、本業の外交、政治に間違いを、予断を与えてしまったと思ったら、それはどんな細かいことであっても、どれだけエネルギー、時間がかかっても、だだだだっとたたきますよ。それが今回、冒頭におっしゃった六月二日付のコメントだと思うんです。

 これは、国会の場で答弁してきているミサイル防衛に関する政府の立場をずっとアメリカ側には伝えてきておりますけれども、六月五日の日に、各種の報道で誤った報道がされた。したがって、私の思いを言っていることと違った形で、余りに複数、多数から発信されたので、在京の米臨時代理大使を通じて、それを本国に言ってほしいということを申しましたところ、先方が可及的に速やかに本国に報告をしてくださいまして、私からの思い、私の政策、内閣の方針がアメリカ側に正しく伝わったわけでございます。

 そして同時に、これは確かに柳井大使にもそういうことを、間違ってミスリードされないように、在京アメリカ大使館、そしてまたアメリカにある日本大使館からも言っておかないと、先に手を打たないと、地雷をたたいているうちに道が本当にわからなくなってしまったらいけませんから。

 ですから、信念が変わったとかそういう発想はちょっとなさらないで、全体を俯瞰図的に見るということをやっていただくとわかるわけでして、細かいことばかりをやっていますとだめなんです。ただし、細かくても、もう一回申します、本当の道が見えなくなってしまう、本業ができなくなると思った場合には、それは具体名を挙げてでも、正確にきちっと責任のある対応をいたしております。これは大事ではないでしょうか。

伊藤(英)委員 私は、今のようなお話を聞いてみても、最近起こっている話はみんな物すごい重大な話ばかりなんですね。したがって、余計に、今の話を聞いていますと、やはりある意味では、都合のいいことといいましょうか、そういうことについては報道に対してコメントをする、しかし、本人にとって都合のよくないことについては、報道について一々コメントしませんというふうに言っているようにやはり思えますねということであります。(田中国務大臣「もう一回申し上げましょうか」と呼ぶ)いや、いいです。

 これは、ここでも議論にもなったことでありますけれども、この一連の外相会談の内容が報道されたことにつきまして、外務大臣は、先ほどのコメントでもそうでありますが、その事実はない、事実ではないというふうに否定もしていらっしゃるんですね。ところが、事実でないと否定しているんだけれども、リークがあったんだ、あるいは漏えいがあったんだということを言っていらっしゃると私は思うんですが、リークがあるというのは、どういう判断でリークがあるというふうに言われるんでしょうか。

田中国務大臣 そのことにお答えする前に、また誤解があるといけませんから、もう一回先ほどのことについて一言申し上げますけれども、外交的な基本的な方針、基本を誤解される、私はよくミスリードという言葉を使うんですけれども、違った方向に連れていかれてしまいそうになるときには、どんなことであっても、相手がだれであっても、違うということをばばばっと手を打ちますよ。それはそうじゃないですか。そういうことを言っているのであって、気が向いたからとか気が向かないとか、そんな御都合主義なんかではやっていませんよ、政治というものは。だからこれだけ自由民主党も信頼を得てきているんじゃないですか。ですけれども、自由民主党も曲がり角に来ているのは確かでございます、それはまた別問題。ですから、そういう意味ですので、思いつきであるとかなんとかじゃないということが一つですよ。

 それからもう一つ、今おっしゃったことですけれども、これはリークというか、何か外国語がお好きじゃない、お得意な先生もいらっしゃるようですから、日本語を極力申しますけれども、漏えいされていることはすべて真実だというような質問をなさった方もいたように私は覚えております、聞き違いかもしれませんが。漏えいしていることがすべて本当であるから怒るとか、本当でないとか、そうじゃないんですよね。わざとあたかも違うように、先ほど言った国の根本政策、内閣の方針を変えるような、あるいは人格攻撃に等しいことを言うことによって、基本方針を、いいですか、ちょっとよくお聞きください、基本方針を変えるようなことをわざと漏らすということもお漏らしなんですよね、リークなんですよ。

 ですから、リークがあったからこれは真実だろう、あなたの本音はあっちにあったんだろう、こっちにあったんだろうということで約一カ月間言われましたけれども、そうじゃないんですよ。意図的にそういうことをする。ですから、私は、メディアが、この報道が悪いと言うとマスコミがぎゃっと怒るけれども、報道もどこかから情報源があるわけです。では、情報源はどこか明らかにしてもらえれば、マスコミも、ミスリードしたり間違った情報を発信せずに済むんですよ。

 ところが、そこで何か違ったものが、私たちがやっていることがあって、マスコミが報道することがあって、その中間で違ったことを、真実を変えて漏らされることが頻繁にあるので、私たちは、この報道は違っている、これも違っていると言わざるを得ないんですよ。そのどれを言うかといったらば、もうおわかりでいらっしゃると思いますよ。英明な委員でいらっしゃるからおわかりだと思いますが、基本線と違ったこと、それによって違う方向に本文が曲解されそうであった場合には、これは違っておりますと言いますよ。どうして違っているんだ、では、あなたがそう言ったのか言わないのかと、入り口と出口の話しかしないんであったらば、入り口と出口の真ん中に通路があるわけですから、その真ん中のところで意図的にねじ曲げられているのでありましょう。言ってみれば、入り口も出口もわからないうちに、真ん中の、トンネルかパイプかは存じませんが、そこでもって何らかのことがされているということを申し上げているわけですよ。

 よくわかりましたでしょう。

伊藤(英)委員 先般、東京新聞に会談の内容がずっと報道されました。あの中には、先ほど言われた基本方針のことやらいろいろなことが述べられていたと思うんですが、あの内容は間違っているんですか。

田中国務大臣 何日付の東京新聞をおっしゃっているでしょうか。

伊藤(英)委員 六月八日の東京新聞に、会談のメモの全文といいましょうか、載っておりますね。

田中国務大臣 同じ質問が昨日衆議院の安保委員会で出ましたので、そこでお答えしてございます。多分それを下敷きにして質問なさっていると思いますけれども、私は、将来のある若い外交官のことをつるし上げたりするのは本当にかわいそうだと思いますし、自分もそういう若い世代の子供たちの親として、また、社会人として、外務大臣として、将来ある者の芽をつぶしてはいけないと思っています。そして、外務省の中で、本当にやる気があって頑張っている人たちはたくさんいますよ、在外公館にも、館内にも、この本省の中にも。本当にすばらしい人はいっぱいいるんですよ。そういう人がたまたま言われて通訳に出たからとか会議に立ち会ったから、そういう人の責任にするべきではないと思います、殊に本省の幹部は。そう思っています。(伊藤(英)委員「いや、そんなことは聞いていない」と呼ぶ)いや、そのことに行くんですよ。(発言する者あり)いやいや、関係あるんですよ。ちゃんと順序立てて聞かないから同じ質問をなさるわけですから、聞くときはよく聞いてください。じゃ、お静かに。

 それで、あの新聞でございますけれども、事実とは相当違っていまして、びっくりいたしました。そのことは、きのうの委員会での繰り返しになりますが、あのときに通訳をしてくれて、すなわち、こちらにも私と何人か役所の方がいて通訳がいる、向こう側も大臣と役所の方と通訳がいる、その中で、もちろん写真を撮っていた人もいますよ、両方の、ドイツや日本の。その中で、複数の我々が確認していることでないことがさもその会話であったように――そのことをおっしゃっていますでしょう。ドイツがこう言い、日本がこう言い、こんな脚色をどこでしたのか。

 かわいそうだけれども、私は彼を大臣室に呼びまして、副大臣もおられるところで、あれは合っているかと聞きましたら、違うので自分はびっくりしたと言いました。そして、自分がそのときにノートに書いたもの、それから自分が本省に打電したもの、どこのだれに本省でどのように報告をしたか、させられたかについても言いました。かわいそうでした。私は、彼を罰するべきではないと思います。だのに、御指摘の新聞を見たらば、自分が素直に報告したものではないものが載っていたとおっしゃっていました。かわいそうです。ですから、私は、ドアはいつでもあいているから、いつでも大臣室へ来てください、そして、いろいろなことが人生に起こるけれども、一緒に元気でやっていきましょうねと言ったら、ありがとうございますとおっしゃっていました。

 ですから、さっき言った入り口と出口、そして真ん中のところで何でそんなことが起こるのか。言ってみればメディアの方も犠牲者じゃないんですか、そういうことを言われて。だったら、今後は新聞も、まあテレビは難しいかもしれませんが、署名記事にしていただきたいですね、署名記事。これこそぜひ議員立法でみんなでやりませんか。これになると相当はっきりいたしますよ。そうしないと、こんなことが繰り返し起こったら、国益を損なうことになります。

伊藤(英)委員 今の話ですと、あの内容は通訳が間違っていたという……(田中国務大臣「違う」と呼ぶ)だれが間違ってあの記事を出したんですか。

田中国務大臣 違います、違います。通訳の人が、自分が通訳をしたことと、あるいはその中であった会話、自分がテークノートしてそれを本省に打電したことと、あの報道、六月八日付とが余りに違っていて自分がびっくりしたと言っていました。

 中身について言いますと、私たちが一番話をしたのは、私はユーロの問題に非常に関心がありまして、まさか外務大臣なんか拝命すると思っておりませんで、このユーロについては、世界の経済、金融に非常に影響力があると私は思うんですね。ですから、日本も、これだけ公債ばかりどんどん出さずに、まあ今度は三十兆に抑えるそうですけれども、こういうことではなくて財政再建をやって、金融を非常によくしていくためにはどうすればいいかというのが私は政治家としての最大の関心事の一つでありまして、そしてユーロのことを聞いたんです。その話をいっぱいしています。地球環境の話もしていますよ。そのことをたくさん彼も、通訳も覚えていたんです。安保なんというのは、安保しか書いてない。安保問題といいましたかね、四つぐらい。だのに、そのことが会話体で、自分が言っていないのに本省であのような形で発信されたので驚いたと通訳の青年が言っております。

 おわかりいただけましたか。

伊藤(英)委員 そうすると、今の話は、通訳は正しかったのかもしれないんだけれども、外務大臣の発言されたことと違う内容のものが本省から出されたという意味ですね。そう言われたですね。

田中国務大臣 ですから、本省だとは申しておりませんで、新聞紙上に載っていたものが、自分が通訳をした後にちゃんと本省に送ったものと違ったものが載っていたと言ったんです。

伊藤(英)委員 東京新聞には何らかのアクションをとられたんですか。

田中国務大臣 それは調べないとちょっと今はわかりませんから、後ほどお答えいたします。ちょっと今それはわかりません、どこのどこにどう対応したか、全部承知しておりませんので。

伊藤(英)委員 実は、先ほど来のお話なんかもみんなそうなんですが、今回この外務大臣の発言の問題がこういうふうに大きく問題になっているのは、私は、外務大臣が国会において事実と異なる発言をしたんではないんだろうかというようなことからこういうふうになっているわけですね。だから、今この委員会としても理事会としても、大臣の発言について説明をしてもらいたいということを要求しているわけですよね。だから、秘密会として理事会で外務大臣の発言したことを説明してさえくれれば、出してくれさえすれば、実はすべて本当は終わるんだと思うんですよ。この報道が正しいかどうかということについても、そういうふうになると思うんです。だから、資料を出されたらどうですかという話になる。秘密会でとか言っているわけでしょう、理事会は。だから、説明されたらどうですか、出されたらどうですか。

田中国務大臣 私が国会で事実と違う発言をしたとおっしゃっていますが、どういうところをおっしゃっているんでしょうか。

伊藤(英)委員 私が申し上げているのは、これは、議員がそうではないんだろうかと疑って、だから今、それを確認したいから資料を出してくださいということを理事会は要請しているので、それは委員長名で要請をしているんでしょう。

田中国務大臣 再度伺います。

 私が国会で事実と違った発言をしたと先ほどおっしゃいましたので、それはどこでしょうか。違ったら、訂正していただけますか。

伊藤(英)委員 私はそうは申し上げておりません。事実と異なる発言をしたのではないかと思って、だから、これは相手側の発言されたことはいいから、発言されたことについてまでは聞きませんよ、外務大臣が実際に発言されたことについて、これを出してくださいというふうに委員長名で要請しているということじゃないですか。

田中国務大臣 一つわかったことは、報道と事実が違っているのであれば書類を出せという御要求をなさっているのだろうというふうに思います。合っていますか。

 それから、もう一点は、私が国会の場で事実と違った発言をしたということを最初、伊藤先生おっしゃいましたから、それはどこなんですか。そんなこと、私しておりませんけれども。

 その二点をこちらから逆に伺います。

伊藤(英)委員 私はそうは申し上げなかったと思っています。

 私が申し上げたのは、異なる発言をしたのではないかという疑問を持ったから要求しているわけでしょう、これは。資料要求について、土肥外務委員長から外務大臣に、資料の提出を要求いたしますと。そして、四項目書いて、以上の記録を外務大臣の発言の部分に限り理事会に提出をしていただきたいというふうに、六月七日の時点も出されたのは、そういう意味で出されているんですよ。

 だから、外務大臣が、私の事実はこうであります、こういうふうに言いましたという話を説明すれば、それは理事会で秘密会でいいと言っているんだから、そういうことだからぜひ出していただきたい、こういうことであります。

田中国務大臣 外交というものは、再三再四申し上げておりますけれども、相手の国との信義、信頼関係もございますので、お出しするわけにはまいりませんけれども、それでも、事実とは違ったことが日本で報道されているということで、オーストラリアやイタリーやドイツ等があちらから、ドイツはこちらから何かあったらというお尋ねをしましたけれども。お聞きくださっていますでしょうか、大事なお尋ねだと思いますので。よろしいですか。ですから、ほかの国も、事実と違っているといって、おっしゃってくだすったりメッセージを発信してくだすっているわけですから、もうそれで必要にして十二分だろうと思います。

 もう一回申し上げましょうか。ですから、相手国との信義もありますので、これはお出しはいたしませんけれども、外国の外務大臣たちが日本で報じられていることは事実と違うということを言ってくださっているのですから、外国のそうした地位にある方たちの御発言の重さ、真実性も、日本の国会もやはり尊重しなきゃいけないんじゃないんでしょうか、国際社会の中で私たちも生きていくわけですから、仲よくしなければいけないわけですから。

 以上です。

伊藤(英)委員 後の処理といいましょうか、それはまたこの委員会で対応することになると思います。

 私としては、時間が参りましたので、終わります。ありがとうございました。

土肥委員長 次に、首藤信彦君。

首藤委員 資料は配っていただいていますか。遅いんじゃないですか。

 私も、私の前回の――訪米を控えての外相ですから大変お忙しいと思いまして、日米外交の基本姿勢についてお聞きしようと思いましたが、なかなか時間がないということです。まず最初に、その前に一点だけ確認させてください。

 今資料をお配りしていると思いますが、六月一日に私が、外相が中国のASEMの会議に出られていろいろ発言をされた、それに関しては今まで簡単な要約みたいなものをいただいているんですけれども、それでは内容がわからない、特にミサイル防衛計画、構想に関していろいろ御発言されているということで、英文のフルテキストを提出いただきたい、そうしないと、誤解があって、どういう表現されているのか、どういう問題を話し合われたのかわからないということで、再三再四、英文のフルテキストを出していただきたいということを申しております。これは、今お手元にお配りした、私の質問の中から抜き出したものですね。英語のフルテキストを下さい、概要でなく英語のフルテキストをお願いしますと書いてあります。必ずフルテキストをお願いしたいと書いてあります。ぜひフルテキストをお貸しくださいとまた別なところで言っています。

 その二枚目を見ていただきたいんですが、それに関して、最後にこうおっしゃったんですね。これは、外務省の公式記録に残っているのが上の部分なんですけれども、ASEMでの会議の英語のもの、御要望のものを、ちゃんと正確なものをお届けします。これはあくまでも、今までの関係でこういう形は出てきているわけですね。

 残念ながら、まだ英文の、英語のフルテキストが一切出てこない。これはどういうことなんでしょうか、外務大臣。

田中国務大臣 一日付で、あなた様のお好きな、委員お好きな英語でお出ししてあるんですが、お手元に届いておりませんか。

首藤委員 それは英語のフルテキストではありません。私は、議事録の英語のを要求しておりまして、それは議事録を読んでいただければわかりますように、英語の議事録のフルテキストを、どういう会談を行われたかというのを出してほしいと言っています。今外相がお示しになったのは、それは前々から配られている、ASEMで日本としてはこういう発言をしましたという日本語の要約の英語版なんです。残念でした。

 いかがですか。出していただけますか。

田中国務大臣 何か思い違いなさって、よくおわかりになっていないんじゃないんでしょうか。これ、要約ではなくて、これが英語の発言そのものなんでございます。疑るのは御自由ですけれども、でも、これは時間のむだでして、これがすべての発言でございます。

首藤委員 だから、議事録の、やりとりを含めて書いて出してくださいということを何度も要求してあって、それはおわかりになって、それで、フルテキストをお出ししますと言っているんですよ。これは、その流れでちゃんとなっているんですよ。

 だから、その二枚目の下の方を見ていただきたいんですけれども、そこでのんびりしてお笑いになっているかもしれないけれども、こう書いてあるんですよね。これは、実はビデオテープを起こしたものなんですよ。

 というのは、私はまさか議事録のフルテキストを英文で出してくるとは思わないので、驚いたんですよ。驚いたら、何とおっしゃったかというと、あの、英語ですね、あの、ASEMでの会議の、そんなにびっくりされなくても大丈夫です、御要望のことを、ちゃんと正確なものをお届けします、このようにおっしゃっているんですよ。ビデオテープ見てくださいよ。驚いたんですよ。私も、まさか英語のフルテキストを、議事録のフルテキストを出していただけると思っていないから、本当に驚いたんですよ。そうしたら、それを見て外相が、そんなにびっくりされないで大丈夫ですよ、御要望のものをちゃんと出しますと言ったんですよ。だから、私は本当に驚いて、ぜひよろしくお願いします、立派な外務大臣でしたという話になっているんですね。

 いや、その後ろから何かぐちゃぐちゃやって、ちゃんと出していないでしょう、あなた。外務大臣、いかがですか。

田中国務大臣 何度も同じことをお聞きになっていますけれども、これでお出ししてございます。

首藤委員 これ、理事会でもう一度検討していただきたいんですけれども、この議事録とビデオテープを見て、一体私が何を要求しているのか。これは要するに、ASEMで話した、いろいろなディスカッションがあって、それを、限りなく日本の関係しているところのフルテキストを出してくださいと。何か遠くで話していた、いろいろな国から来て、ヨーロッパの小さい国から来ている人たちが話しているのはわからない。しかし、日本側が話したことに関しては、日本人が関係することに関してはフルテキストを出してください、議事録を出してください、英語で出してくださいと言って、それを出しますと。

 出されたものは、それは前から配られている日本語の要約版の英語に訳したものですよ。全く違うものですよ。外務大臣、きちっとやってください。

田中国務大臣 これは、六月一日のお尋ね、質問を受けてお出ししたものですので、日本語のものを先にごらんになった方がよろしいんじゃないですか、英語お好きなようですけれども。これでございますよ。これ以上じゃありません。

首藤委員 そういうごまかしをあなた言われても困るんですよ。そんなごまかしを言われても困るんですよ。幾らテレビカメラに映って、そのときにピックアップしてくれるかもしれないけれども、そんなごまかしを言われても困るんですよ。

 それからもう一つ、委員長、これは委員長にお聞きしたいんですよ。

 上の部分は外務省の公式記録に残っているものですよ。それで、ホームページから落としたものですよ。下の方は、私がおかしいと。私は、外務大臣が、そんなにびっくりされなくていいですよと私がびっくりしたのをあざ笑っておっしゃった言葉も記憶しているんですよ。すごく鮮明に覚えているんですよ。どうしてこの部分が消えているんですか。くだらない冗談だって結構書いてあるじゃないですか。どうして落としているんですか、この部分が。議事録からどうしてここが削除されているんですか。委員長、どうして。委員長命令で削除を命じたんですか。委員長、いかがですか。

土肥委員長 委員長はそういうことはいたしておりません。

 ちょっと理事、集まってもらえますか。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

土肥委員長 記録を起こしてください。

 ちょっと事実的な問題が一つあるということ、それで、議事録とそれから外務省記録との間のそごがあるかどうかということ、それから、フルテキストというのはどこまでを意味するのかということについてももう一遍理事会で詰めてから皆さんに御説明したいと思います。

 以上でございます。

首藤委員 時間もだんだんとなくなっておりますので、訪米についてのことをお聞きしたいと思います。

 今回の外相の行かれる、一時間でどれだけ通訳を交えてお話しされるかわかりませんが、いろいろなことをフェース・ツー・フェースでお話しになるということですね。その中で、多少、外相が一歩踏み込んで話そうとされることには、アメリカ海兵隊の訓練の分散というのがあります。これは、下地議員が主張された、現地にも行かれて分析された立派な計画だと思うんですね。しかし、多少安全保障問題を長くやっている者からいうと、実はこれは長い話なんですよ、余り知られていないかもしれませんが。

 どういうことかというと、これは一つには、もちろん十五年問題とのバーターというような、そういう考え方もあるかもしれませんよね。十五年問題がなかなか解決できないので、それを少しでも解決しようとして、こういう形で海兵隊が減っていきますよ、こういう考え方も確かに一つあります。

 しかし、その考え方だとこれはちょっと話が違うんですよ。なぜかといいますと、これは分散すると経費が物すごくかかってくるんですよ。これは、移動の経費もかかれば、外相は英語がお得意なのでシナジーという言葉、御存じだと思いますけれども、それは一足す一が三になるような、統合することによって物すごく効果が出てくるということですよね。それがまさに沖縄の基地なんですよ。海兵隊の基地なんですよ。それを分散すると、三あるものを一、二、三というふうにやると、経費は三じゃなくて四・五ぐらいになっちゃうんですよ。これはもう常識なんですよ。

 では、問題は、だれが負担するのか。経済の苦しいフィリピンの人がそれを負担してくれるのか。あるいはオーストラリアが負担してくれるのか。負担できないですよね。もちろん、当然のことながら、思いやり予算とかそういうものをふやしていく。それでも、沖縄の海兵隊の部分が解決されればそれでもいいという考え方もありますよ。ホワイトビーチが戻ってくればという思いもありますよ。それはわかりますよ。しかし、これは御存じですか。このことはアメリカの冷戦後の太平洋戦略の一環なんですよ。

 冷戦後の世界においてどこが戦争になるかというと、世界で四カ所ぐらい挙げられたんですね。湾岸、もう実際に九〇年、戦争になりました。中央アフリカ、九四年、ルワンダ大虐殺がありました。それからバルカン半島、九二年からずっと続いて、今コソボがあって、まだ安定していないですよね。そして、専門家が指摘したのは、インドネシア及び太平洋諸島なんですよ。現実に起こっているのはわかるでしょう。今、マレーシアがかなり危なくなってきて、近いところからいえば、アチェ、西ジャワ、カリマンタン、イリアンジャヤ、アンボン、東ティモール、それからパプア、フィジー、全部物すごいポテンシャルを抱えた紛争地域なんですよ。これは紛争列島なんですよ。僕らは本当に真剣にここでやろうとして、だからこそ東ティモールの住民投票のときも私たちも何度も何度も行って、少しでもここの地域の安定を保とうとしているわけですよ。

 それで、フィリピンの今の問題、アブ・サヤフなんかが活動してミンダナオがおかしくなってくる。全く同じなんですよ。太平洋に物すごい巨大な紛争ポテンシャルがあって、それを沖縄とオーストラリアとフィリピンと海兵隊を展開して抑えるというアメリカの大構想なんですよ。

 外相、その後ろの方から聞かれるのもいいけれども、私の話を聞いてください。これは大変な問題で、日本の集団自衛権、まさにそのものの話題であり、しかも、アメリカが進めているPKOと地域的な集団安全保障体制をとろうというものとどんぴしゃり合うわけですよ。ですから、この問題に関して軽々に、これは経費節減なり沖縄の人たちのためにもなるということだけで乗り込んでいくと大変なことになるんですが、その辺は十分に御理解されていますか、外務大臣。(発言する者あり)

田中国務大臣 今ああいう御意見もありましたけれども、首藤委員がどう思っていらっしゃるかということも、沖縄に一極集中したいと思っていらっしゃるかどうかわかりませんけれども、まさか、よもやそうは思っていらっしゃらないというふうに考えてさしあげるべきだというふうに思いますけれども、やはり私たち与党が考えておりますこと、そしてまた党派を超えて各党の皆様の声をこうして聞かせていただいていますと、普天間での一極集中は決してよろしくない、沖縄の負担を軽減していかなければならない、これはやはり国民の皆様の声だろうというふうに思います。

 したがって、その中で、具体的な案として、費用対効果ももちろん考えなきゃいけません。それは、無責任に言っている人とは違って、ちゃんと責任のある内閣としてはそんなことはイロハのイでございますけれども、そういう中でもっていろいろな知恵が出てきていますので、そういうことによって沖縄県が担っている負担というものを軽減していく。そして、日米の基軸の中で私たちの国を取り巻いている不透明性や不確実性の中でどのようにして生きていくかということについて知恵を出し合う。そして、そうしたことをアメリカに対して、今まではどうであったか存じませんけれども、この内閣は世論の声を聞きながらしっかりとメッセージを発信する。自立した、自立といいますのはちゃんとした主体性のあるという意味ですよ。主体性のある外交をしたい。

 ただ、私が一番心配しているのは、時間が限られているということですね。相手の方、パウエルさんもヨーロッパから夜遅く帰っていらっしゃるそうでして、そして、その限られた時間の中で私と会ってくださる。時差の関係もおありになるでしょうし、頭の切りかえもなさらなきゃいけないでしょうし、大変でいらっしゃると思います。その中でこちらが話をするわけでして、その中でこういうようなテーマを話し合うわけですから、限られた条件の中でどれだけ正確に伝えられるか。しかも、いろいろな話がありますから、その中の一つとしてこれをどういうふうな言い方をするかということを考えてやらねばならないと思っておりますので、そういう努力をするということを申し上げております。

 以上です。

首藤委員 今、二つ間違いがありますね。一つは、そこからの不規則発言かもしれませんけれども、民主党が困るとかいう。民主党は、そうではないんですよ。民主党が主張しているのは、海兵隊そのものを削減していきなさいと言っているんですよ。冗談じゃないですよ。こんなもの、ちょろちょろっと行ってかえってコストがかかったりする問題じゃないんですよ。民主党は、沖縄のことを考えて、海兵隊そのものを減らしていきなさいと言っているんですよ。

 それからもう一つ……(発言する者あり)

土肥委員長 お静かに。お静かに。

首藤委員 もう一つの問題は、沖縄の人の苦しみとか軽減するためにとおっしゃいました。よく言っていただきました。沖縄出身の議員の方もおられるし、本当にそうだと思う。私も下地さんと沖縄で一杯飲んで、本当に沖縄の人の苦しみもよく聞きました。いろいろまた教えてください。

 ただ、僕は、多少はこの問題に関係している者としてこう言いたいんですよ。これは軽減することにならないんですよ。これは新聞記事だって既に、まあ新聞は参照しちゃいけないかもしれないけれども、沖縄基地の比重高まったかとの見方なんですよ、この海兵隊分散というのは。要するに、沖縄に新たなる付加価値を与えるということなんですよ。いいですか。太平洋、アジアの集団的な安全保障体制において沖縄を中心にして海兵隊を大展開させようという、沖縄にまさに負担が増加するやり方なんですよ。そこを知らないと、素人考えで、分散すれば楽になるという考え方は全く間違いだから、私はあなたがここで反論されようがどうあれ結構ですが、私が言ったことをきちっと頭の中に入れておいていただきたいと思うんですね。

 時間がないので、次の、ほかの重要なテーマに移りますが、例えば中東問題にどのように対応されますか。

 中東問題は、我々が、政変、首相を選ぶというので選挙をやったりしてもう忘れてしまいましたけれども、私たちの目の前で九二年から続いている和平がみんなめちゃくちゃになってしまったじゃないですか。それで、現在、中東ではどんどん銃撃が行われている。そういうような中東に関して、私は驚いたんですが、田中眞紀子外務大臣は、着任早々、まだソ連との間とも電話連絡が行かないときに、イスラエルのペレス外相とお話しになったでしょう。どういうことをお話しになりましたか。どういう展望をこれに持っておられますか。外務大臣、いかがですか。時間がないので。

田中国務大臣 沖縄の問題から申し上げなきゃいけませんけれども、削減が一気にできるような状態であるかどうかということを責任のある政党ははっきりと答えなけりゃいけないんですよ。海兵隊の訓練の移転ということはまず最初のステップとしてやらねばならないことでございますし、そうした中で米軍のプレゼンスが重要である。それは、私たちのこの地域のいろいろな不確実性や不透明性がある中で、そういうことを私たちは基本認識としてありますが、沖縄の負担を軽減するということのためにできることからやっていくということを私たちは言っているわけでございまして、そんなに一挙に全部やめてしまえみたいなことは責任のある政党、責任のある立場の人間が言うことではございません。

 次に、質問についてお答えを申し上げますと、ロシアよりも先にペレスさんと電話でしゃべったと、実態が御存じなくておっしゃっているので、よく落ちついて聞いてくださいませ。

 イスラエルは、五日の日に、あちらから電話がかかってまいりました。電話というものは、お互いに、かけましょうね、かけっこしようねといってできるものじゃございませんで、緊急性があるときに電話をかけます。だれでもそうなさるものじゃないでしょうか。ですから、ロシアより早まったんです。ロシアの方は、ずっと言っていて、なかなかつかまらなかったんです。相手の都合というものがあるということを少し考えていただきたいと思います。ですから、先にペレスさんから電話が来ましたので、今案じていらっしゃるようなアラブ、イスラエルの情勢について先方からのお話を伺ったという次第でございます。

首藤委員 どういう問題が――大臣、ちょっと聞いてください。私の顔を見て、フェース・ツー・フェースでお願いしますよ。パウエルさんじゃなくて、私にもフェース・ツー・フェースで顔を向けてください。私にもフェース・ツー・フェースで顔を向けてくださいよ。

 では、今、問題というのはどこにあると思いますか。もうパレスチナの方は難民キャンプに閉じ込められて、イスラエルの方はどんどん入植地が広がっていく。これはもう紛争はとまらないですよね。どういうような状況がある、そのように把握されておられますか。

田中国務大臣 今私は当日の会話録を探すようにお願いして、皆さん、スタッフがやってくだすっていますが、あのとき、基本的に私が申し上げたのは、暴力の悪循環を断たなきゃいけないということなんですね。

 要するに、あのキャンプ・デービッドの会談、これは私が外務大臣になる前でしたけれども、あれが崩れたことが大変私は悲劇だというふうに思っていまして、そして、とにかく悪循環を断つためにどうしたらいいか、そのことがペレス外務大臣からのメッセージの発信でもあり、したがって、日本はできることをいたしますよ、アラブ側にもこちらからもレターも出しますし、それから、変な援助もお互いにしないけれども、お互いにもう少し落ちついて、まず暴力をやめて、そしてやはりもう一回話し合いのテーブルに着けということを言っております。

首藤委員 では、どこが一体問題なんですか、崩れていくんですけれども。どこが問題だと田中大臣は把握されておられますか。そこがわからないと日本の中東外交の展望が開けないでしょう。どこが一番問題だと思われますか。

田中国務大臣 問題は、先ほど申しましたように、私の認識は、キャンプ・デービッドの、前のクリントン政権であそこまでいったのに惜しかったなということを思っておりますが、ペレス外務大臣から、田中大臣の就任に対する祝意がありまして、日本の中東情勢への貢献及びG8での役割にかんがみ、現下のイスラエル、パレスチナ情勢に関して説明を行いたいとし、至近の前向きな傾向として以下の二点につき説明がございました。

 第一点として、五月二十二日付のシャロン……(発言する者あり)

土肥委員長 お静かに。

田中国務大臣 だから、これがお答えでございますから、よくお聞きください。また同じ質問を繰り返してなさらないためにもよくお聞きください。

 五月二十二日付のシャロン声明によるイスラエル側の一方的停戦宣言以降、六月一日、テルアビブでの爆弾テロに対するイスラエル及び国際社会からの強い非難を受けてアラファト議長も停戦宣言を行い、当事者間に停戦への動きが出てきたことは評価できます。

 また、二点目といたしまして、先般公表されたミッチェル報告書に関して、イスラエル、パレスチナ双方とも若干の点について異論はあるものの、原則的受け入れを表明し、国際社会も広範に支持しており、今後、右報告書の内容の実施を進めていく必要があるということをおっしゃりました。

 これが質問に対する答えでございますから、よく反すうなさってから次の質問をどうぞ。

首藤委員 時間がもう終わりました。長らく演説をしていただいて、私の時間もどんどんなくなってしまったんですが、では、最後に一つだけ、立った……。

 外務大臣、ちょっとこちらを見てください。フェース・ツー・フェースで、私の顔もぜひ見ていただいて、横顔じゃなくて正面の顔、あなたの正面の顔、目と目を見詰め合ってお互いに真実を言おうじゃないですか。そうしなきゃ、パウエルさんと、迫力がないですよ。僕らみたいな浅学、何というか、能力もないような私なんかに対して目を向けられないようだったら、パウエルさんのような歴戦の勇士に対して目を向けられないじゃないですか。まあいいですよ。

 もう最後の質問です。

 南北和解の歴史的な会談から一年たちました。日本は何していますか。何をしますか。そして、もしかしたら、どこかで、新聞紙上で伝えられている怪しげなニュースかもしれないけれども、金正男さんというのはそういうことにも関係してこられたといううわさもありますね。その方に対して、何かそういうものを聞きただしましたか。よろしいですか。その点は、いいですか、三つですよ。何をしましたか、何をしようとしていますか、それから金さんに対してこのことを聞かれましたか、三つです。それで以上です。

田中国務大臣 金さんというのはどちらの金さんでございましょうか。もし金正男さんだということであれば、私はこの間の入国の方が金正男さんだということは特定ができない、できていないというふうに認識をいたしておりますので、まずそれについて、どの金さんかおっしゃっていただけますか。

首藤委員 それは、その前に金正男さんであるということを聞いております。

田中国務大臣 ですから、今申し上げましたとおり、そうであるとすれば、この間不法入国をなさった方が金正男さんであるということの人定はできずにおりますので、お答えのいたしようがございません。

 この一年間の間に南北間の対話と交流が大きく進展するなど、それまでに見られなかったような前向きな流れが見られております。また、先般、アメリカが対北朝鮮政策の見直しを完了したところでございまして、これを受けて米朝間の協議が行われ、北朝鮮と国際社会との対話が一層進展するように期待をいたしておりますし、日本も、日米韓の関係の中でできるだけ粘り強く努力をしていきたいと思いますし、これからも続ける覚悟でございます。

首藤委員 終わります。

土肥委員長 次に、土田龍司君。

土田委員 外交問題に入ります前に、やはりどうしても私が気になるのが、おとといの本委員会での、外務大臣がマスコミに対するコメントは一切しないんだという答弁を連発されたことに関して、非常によろしくないというふうに私は思っているのです。

 報道というのは、マスコミが世の中の動きや政治の動きについてみずから責任を持って取材して、国民にできるだけ早く知らせようということでございまして、大臣が就任のときのこの委員会だったと思うのですが、国会議員になってからの情報と大臣になってからの情報が随分違うんだ、普通の国会議員よりも大臣というのはけた外れの情報が入ってくるというふうにおっしゃっている。当然のことであると思うのですが、先ほど伊藤英成先生の質問に対して答弁をされておりましたけれども、どうも私はよくわからない、大臣がどういうときに答弁をして、どういうときに答弁を拒否されるのか。

 ですから、マスコミの報道に対してはコメントしないという態度がまずいと僕は思うのです。それは、ほかの人が、あるいは新聞記者が、あるいは何かの会合なんかで、新聞に出ていましたけれどもあれは本当ですかというふうに聞かれて、面倒くさいから一々言わないということはあってもいいけれども、外務委員会で委員の質問に対して、報道についてはコメントしないということは、やはり大臣の責任放棄だと思うのですよ。むしろ、そういった質問があったならば、よくぞ聞いてくれた、あの報道は違っているんですよ、私の趣旨と違うんです、私の本当の気持ちはこうですということを言わなきゃならない。それが外務大臣の責任であって、それがまたうまくいかせるためのことであると思うのです。

 ですから、おととい連発された、報道に対してコメントしないということについて、こういったことをこれからもお続けになるのか、あるいは報道全般についての御意見といいましょうか感想をお聞かせ願いたいと思うのです。

田中国務大臣 これには二つのファクターがあるというふうに思いまして、国民の皆様はメディアを通じるしか物事を知り得る手段がございません。したがって、説明責任ということは十二分に認識もいたしております。

 ところが、今では、すべてにコメントしない、しないと言っているというふうに思っておられるかもしれませんけれども、外務大臣職にある者は一人しかおりません。よろしいでしょうか。一人しかおりませんで、衆参両院も参りますし、それから、この外務委員会もあれば安保委員会もありますし、いろいろなところに走り回って発言をいたしておりますので、またこれは繰り返しになるかもしれませんが、この場でよく申し上げます。先ほども伊藤英成先生の質問にもお答え申し上げたことでもありますけれども、すなわち、相手の国との信義があって、ぺらぺら、右から左で、だれがこう言った、ああ言ったとかというふうなことはコメントをしないというのが外交上の信義なんですね。ですから、そういうことについてお尋ねがあってもコメントはしないということはあります。

 ただし、先ほど申し上げましたように、ほかの委員にお答えしたことと繰り返しになりますが、日本の外交の方式、国益もそうでしょうが、同時に世界を平和と安定に導くという方法の中で、一回に右から左に物事はできるわけじゃないんですね。時間があって、押したり引いたり、いろいろやっさいもっさいしながら外交というのはいい方向へ持っていくものなんですよ。ですから、それには知恵も忍耐も必要でして、その基本、日本はこうあるべきだ、こうしたいという問題があるにもかかわらず、それが誤報がされたときに、何でなんだ、何でなんだ、しかもそれが意図的な、事実をねじ曲げて、先ほど言いましたけれども、ドイツの外務大臣との会話のように違ったものがわざわざ報道されて、それが、どこでどう言ったか知りませんが、報道されたものについてコメントまでしていますと、そちらの方に道がそれてしまうんですね。

 ですから、基本が間違えると思うものについてはしっかりとコメントも意見も申し上げておりますが、そのほかの、地雷のような話ががちゃがちゃ来たものに全部やっていると本業に使うエネルギーと時間がなくなりますので、それともう一つは、相手の国との信義の問題、これにかかわるものはコメントはしていないというちゃんとした一つのポリシーに基づいてやっておりますので、各委員会でばらばらに聞いていらっしゃる方は、あのとき答えたはず、このとき答えなかった、何でだろうと思われるでしょうけれども、そういうようなメカニズムといいますか状態にあるということを御理解いただきたいと思います。

土田委員 ちょっと質問の趣旨が違うんです。おととい外務大臣の答弁の中で、こういう問題についてはどうですかという質問に対して、委員長という発言をしてお立ちになって、報道に対するコメントはいたしませんと一言で終わりになっているんです。そういう態度がだめだと言っているんです。それはだめだと言っているんです。そういうときにこそ、いや、それは報道が違っているんですとか正しいですとか、私の意見はこうですということをなぜ言わないかと言っているんです。

 前段の方はもう何回も話を聞きまして、わかりました。

 大臣の雰囲気を見てみますと、どうも感情の起伏といいましょうか、そういった気分で言っているような感じがしてならないから僕もそう言っているわけでして、やはり大臣としてのせっかくのチャンスを生かしてほしいという意味です。

 報道が違っているなら、違っています、こういうふうに違っていますと、その裏づけを言う必要はございませんけれども、そういったことでやらないと、せっかくの委員会で質問しているのが無意味になってしまうという意味でございます。

田中国務大臣 先ほども伊藤英成先生にお話し申し上げたんですけれども、もう一回申し上げますけれども、そういうようなマスコミ報道が地雷のようにばばばばばっとあるんですね。それに一つずつ、これはどうだ、聞かれる方は複数ですけれども、お答えしている方は一人なのです。

 ですから、衆議院も参議院も、外交部会も委員会もあるし、外務委員会もあれば安保もあるし、参外防もあるし、いっぱいある中で走り回っていると申し上げているのです。聞く方は御不満かもしれませんけれども、私は、それぞれにきちっと判断をして一つの物差しでお答えをしていますよ。

 ですから、出たもの全部が、これが違う、あれが違うと言えば、外交の本務を忘れているじゃないかと、どっちにしても言われるわけです。そちらだけやっていれば、コメントしないじゃないかと言われるわけです。

 ですから、コメントすることとしないことというのははっきりしていまして、コメントをするときはこのように時間をいただきまして、基本の外交や国益や世界の平和に貢献することが間違って言われた報道であったら、しっかりと言っていますよ。本来であれば、だから申し上げているじゃないですか、報道もちゃんと説明責任がありますよ。情報源を秘匿なんかしないで記名記事にしてください。国会でこれを議員立法でやってくださいよ。そうすれば、そこが間違ったらその記者が間違ったことになるんですから。それを、私たち情報源は言いませんと言われていて、それにひっかき回されたら委員会は動かなくなる。したがって、そのほかについてはコメントをしないこともありますということでございます。

 おわかりいただけましたでしょうか。ポリシーに基づいて、時間配分の中でいたしております。

土田委員 ポリシーに基づいて発言をされているように思えないから、こういう発言をしているのです。

 前回の委員会の後、理事会でどうしようかと話し合いをしたのです。こういう態度は、外務大臣、よくないし、これはやはりせっかくの機会をむだにしているんじゃなかろうかと。理事会として申し入れをしようかという話も出たんですが、結果的には、では、委員会の席でこういった意見を言っておいた方がよかろうということで今の発言になったわけでございます。

 ただ、ちょっと外交問題に入りたいんですが、いろいろな、こういった外交問題じゃなくて、今私が質問したような大した問題じゃないのがこの委員会で出てくるというのは、原因者はやはり大臣なんですよ。あなたが原因者なんですよ。今までの大臣の中で、こういったたぐいの議論というのはされたことがない。

 ところが、毎回毎回、あなたの発言に対して報道がなされたら、それが違うと言って、また、うそだとか本当だとかいって、毎回毎回こういうのが出てくる原因者がやはり大臣にあるんですよ。それをやはり理解してもらわないと、私は正しいんだ、間違ってないと言い張っても、そうはいかない。

田中国務大臣 私を個人攻撃なさるのは結構ですけれども、今、外務委員会あるいは予算委員会で外務省マターになっているのは何が一番大きなイシューで出てきますか。(土田委員「えっ」と呼ぶ)え、じゃないですよ。機密費の問題でしょう。この問題がいつもいつもテーマになっているのです。

 逆に申しましょうか。もしもこの機密費の問題、松尾事件がない状態で私めが外務大臣に赴任してきたら、随分、こうした問題が報道もされないし、委員の皆様もこんなことを聞かずに済んだんじゃないんでしょうか。

 この機密費の問題、すなわち税金の使われ方ですよ。我々国民が納めている税金がどのように使われているか、これが如実にこんな形で、松尾氏個人が一人でもって四億七千万円も着服していて、詐欺罪で四回もやられている。こんな中で、国民の皆様も注目し、問題であると思うから皆様も質問をし、それに関して報道がされている。

 だから、その中でもって間違った質問等があったり報道があれば、私たちは、これは外交の基本にそれると思うことと絡めてきたときには違いますよと申し上げていますが、それ以外のものであった場合にはコメントをしないで、早く外交本来の問題について議論をした方がよろしいんじゃないでしょうか。これはきちんと別に分けないと。

 では、私以外の外務大臣が来られて、全部それを無視して、すべて機密費も触れません、もうあれで、前内閣で終わりでございますと言ったら、皆様も、ああそうですかと言って、報道もなくて、これでよろしいというふうにお考えなんでしょうか。どちらかなんですよ。

 今は、これは産みの苦しみなんですよ。ですから、新しい方向に行くために経なければならないときを今私どもがお互いに過ごしているというふうに少し認識していただきたいと存じます。

土田委員 それは、大臣、あなた、思い上がりですよ。あなたが大臣になったからこの外務省の機密費の問題がまた始まったとおっしゃいましたけれども、あなたが最初の大臣就任のときに、再処分をしたいとかしっかりやりたいというふうに答弁しているのです。その後、委員会の質問に対してだんだんトーンダウンしたじゃないですか。総合的に判断したいとか、追加処分についても答えない。だんだんトーンダウンしているんですよ。あなたは、あたかも機密費は自分で暴いてやるんだというふうにおっしゃっているけれども、あなたの答弁はだんだんトーンダウンしているのです。大臣、それは思い上がりですよ。だったらば、早く出しなさいよ。

 この機密費問題について何カ月たっているんですか。一月の四日に調査会を始めて何カ月たっているんですか。あなたが大臣になって何カ月たっているんですか。何もしてないじゃないですか。それは思い上がりだ、大臣。

田中国務大臣 もう一回整理して申し上げます。

 私が大臣であろうとどなたが外務大臣にこの小泉内閣でなられようと、外務委員会の中でといいますか外務省関連の中で、機密費の問題を無視してといいますか、パスして取り上げないで済んだであろうかということを申し上げているのであります。私がなったから機密費が話題になっているんじゃなくて、まず機密費の問題ありきなんじゃないんでしょうかということを申し上げているのです。ですから、だれが外務大臣であっても、このことがテーマとしてこの委員会や参議院やほかの委員会で必ず上がってくるわけですね。

 ですから、同じことを申し上げています、そのことについて答える義務もあるし、それに関連した報道が山ほどある。だけれども、その中でもなぜか違ったものもあるので、本来のこの内閣としてやろうとしている方向と違うものについては、これは危ないと思うときはマスコミにもコメントもいたしますし、それから、先ほど申し上げたことですから繰り返しませんけれども、相手の国を通じて先方の国に意見を求めたりもいたしております。ただし、モグラたたきや地雷つぶしをやっていると、今も時間がなくなっていると同じようなことになりますので、そういうことはやめておりますと。

 そして、この外交機密費の問題のあり方については、十三年度分についてはできるだけむだをやめて残ったものは大蔵省へ返納する、十四年分につきましてはメルクマールをしっかりとして、減額するということは総理もおっしゃっているわけでございますから、それを申し上げていまして、ですから、この時期に外務大臣になった人はだれであってもこういうふうな立場になるんだということを申し上げているのでございます。

土田委員 大臣との議論は疲れます。なかなか言葉一つがかみ合っていかないような気がしてならないんですけれども。

 きょうは、最近話題になっているんですが、中国の海洋調査船の問題について、概略だけでございますが、質問させていただきたいと思います。

 我が国の排他的経済水域の中で活動している中国の海洋調査船をめぐって、いろいろトラブルが出てきているわけですね。内容については、事前通報の区域や期間を逸脱した活動が行われているではないかとか、そういったことについて国土交通省は外務省に毅然たる態度をとりなさいという要請をしたようです。

 そこで、中国の海洋調査船について、違反事件について外務省はどの程度掌握をされておりますでしょうか。

槙田政府参考人 今委員御指摘の日中間の海洋調査活動に関する相互事前通報の枠組みというのは、ことしの二月十三日に成立をしておるわけでございますけれども、それ以来、中国から十三件の調査につき通報がなされておりまして、これに対して、我が国としては十一件につき同意を与えております。残りの二件については現在審査中でございます。

 そういう中で、五月の末でございますけれども、中国側から事前通報がないままに調査を行っていると思われる調査船がございまして、それを確認した上で、中国側に対して、事実関係につき直ちに確認を求めるとともに、強く申し入れを行ったという経緯がございます。

 これに対しまして、中国側は、これが中国政府部内の連絡ミスによるものであるということを認めまして、我が方からの申し入れを受けて、直ちに我が国に通報を行って、同時に、中国側として、この日中間の事前通報の枠組みを非常に重視していて、この枠組みを遵守し、これが円滑に運用されるように努力していきたいというふうに私どもに言ってきておるわけでございます。

 委員御指摘の違反ということにつきましては、今申し上げた事案が一つございますけれども、そのほかにつきましては、先ほど申しました十一件につき同意を与えて、私どもが中国側と合意した枠組みに基づいて調査活動が行われているというふうに理解をしています。

土田委員 事前通告の期間と場所を逸脱した行為が一回だけあったということですね。それに対して大使館を通じて抗議をしたということですが、文書で抗議したんですか、口頭で抗議したんですか。どういった内容だったんでしょうか。

槙田政府参考人 具体的には、中国にあります日本大使館の公使レベルの職員から、中国側の、これは中国外交部の担当部局でございますけれども、これに対して、口頭で申し入れを行っております。それに対しては、反応は先ほど申し上げたようなことでございます。

土田委員 ちょっと最後の言葉がよくわからなかった。中国側から……。

槙田政府参考人 中国側からの対応というか反応というのは、先ほど私が申し上げたような反応があったということでございます。

土田委員 いわゆる中国側の連絡ミスといいましょうか、末端までは届いていなかったということですね。今後はもう二度とやりませんという回答であったということでよろしいわけですね。わかりました。

 そこで、やはりこの問題は非常に、海洋関係者だけじゃなくて、学者の中でも危惧する意見が出ているわけでございまして、どうも中国は、海洋調査ということだけでなくて、日本近海の資源調査もやっているんじゃなかろうかというふうな受け取り方をしている方もいます。実際に、エアガンによって調査をするとかボーリング調査をするとか、海洋調査で必要のない、資源調査もできるような方法をとっているというふうに言われておりますし、明確に海上保安庁が確認しているわけじゃないですが、ケーブルを引っ張っていたとか、こういった確認はされているようですけれども、どうもそういった節があるんじゃなかろうかという感じがするんです。

 その中で、いわゆる中国から事前通告をしてきて、外務省として回答する中に、エアガンを使っていいですよとか、ボーリング調査もしていいですよ、そういった回答を出すのが私は間違いだと思うんですよ。もちろん海洋調査に必要だというけれども、資源調査もできるような行為を認めることはおかしいんじゃないかと思うんですが、いかがですか。

槙田政府参考人 資源調査と言われるものは、これはもう委員先刻御存じだと思いますけれども、国連海洋法条約におきましても、その沿岸国の主権的権利というふうになっております。したがいまして、資源探査が我が国の沖合において外国によって行われる、経済水域において行われるということであれば、当然そういうものは認められないということになるわけでございます。

 また、今、私どもが日中間でつくりました相互通報制度というのは、したがいまして、資源探査を対象にしていない、すなわち、あくまでも科学的調査を行うという前提での話でございます。そこで、資源探査を行っているという明白な証拠と申しましょうか根拠があれば、当然これは我々は中止を求めるわけでございまして、中止を求めるべく、中国側に、その線に沿った強い申し入れを行うということになるだろうと思います。

 しからば、今まで行われたものの中に、今先生も御指摘になりました、エアガンを使用しているとかあるいはボーリングをやっているんじゃないのかということですが、これは厳密に申しますと、エアガンの使用とかボーリングが実施された、それはすなわち資源探査であるということになるかというと、必ずしもそうではない。あるいは逆に言えば、エアガンとかボーリングということがないものはすべて科学的調査かといえば、それはまたそうでもないであろうということでございますから、したがって、まさに、中国側が科学的調査として通報してくるものが具体的にどういうふうに行われるものであるかということを、この通報制度のもとでも、外務省のみならず各省庁が合い議をいたしまして、同意を与えていいのかいけないのかということを相談した上で回答してきておるわけでございます。

 先ほど十一件について同意を与えたというのは、そういう意味で、日本政府全体としてそういう協議をしながら結論を出して同意を与えているということでございまして、そこは当然科学的な調査、資源探査ではない調査が行われるということでそれに対する同意を与えてきておるということでございますから、これに違背するものであれば、繰り返しになりますけれども、中国側には申し入れをするということが当然のことだと思っております。

 そういうことで、私どもとしましては、我が国の海洋法問題についての基本的な権利といいましょうか立場というものは、当然踏まえて対応してきておると思っております。

土田委員 台湾も韓国もほとんどこういった海洋調査をやっていなくて、中国だけがしきりにやっているわけです。

 ことしの二月にこういった協定を結んだ。結んだ以降は、了解を得た分についてはお墨つきをもらったように堂々と調査をしているんですが、先ほどの質問の内容は、調査をすることについて同意を与えることはいいと思います、しかし、エアガンによる調査とかボーリング調査についてまでなぜ認めるんですかということなんです。具体的になぜ認めるんですかという意味です。

槙田政府参考人 これは、通報の際に、具体的な調査の目的あるいは方法についてあわせて通報があるわけでございまして、その中に、物によってはボーリングをやるということ、あるいはエアガンを使用するというふうなことが書いてあるということでございます。

 しからば、先ほどお答えしたラインで御説明したと思うんですが、そのボーリングあるいはエアガンがそうであるから直ちに資源探査であるというふうには結びつかないというケースもあるであろう、これは、本当にそういうことであるという場合もあるでしょうと。後者の場合であれば、当然これは中止を求めるわけでございます。

 今回は、そういう方法も用いられているということであるけれども、それは科学的な調査なのか、あるいは資源探査なのか、そういう仕分けをするならば、科学的調査であるということであろうという判断が各省協議の結果行われて同意を与えた、こういうことでございます。

土田委員 そういった判断をするのが間違いだと僕は言っているわけでして、エアガンによる調査とかボーリング調査をやれば、当然のことながら資源探査もできるわけですね。資源があるかどうか調査することができる。しかも、日本の外務省のお墨つきをもらって、堂々と一定期間の中で日本の近海をこういった資源調査されたらたまったものじゃないですよ。もしも石油やガスでも発生したら大きな国益に関する問題になってくるというふうに言わざるを得ないわけです。

 となると、もともとこの二月の口上書、これの取り決めがやはりよくないと思うんですね。通報の対象水域をあいまいにしてしまったということでございまして、日本からいうと東シナ海ですが、中国からいうと東海と言っている。こういった公式文書にわざわざ中国の言葉を使っているわけでございまして、具体的な水域の範囲を明記しないままこういったことをやってしまったということでございまして、この口上書についてはある程度の中国の譲歩によって成り立ったという感じはいたしますけれども、なるべく早い時期に、やはり再度といいますか、さらに明確な感じの外交文書を交わす必要があると思うのですけれども、どうでしょうか。

槙田政府参考人 委員は、恐らく、この事前通報制度の対象水域も明確でない、不明確ではないかというふうなお考えで今のような御指摘をなさっているんだろうと思いますが、この通報制度をつくるに至った経緯というものを改めて申し上げる必要はないかもしれませんけれども、要は、我が国の排他的経済水域において、我が国の事前の同意もなきままに中国の海洋調査船が頻繁に活動を行ったということがございまして、これはいかにもこのまま放置するわけにはいかぬじゃないかということで、こういう枠組みを、相当に難しい交渉ではございましたけれども、合意するに至ったという経緯があるわけでございます。

 かつ、さらに申し上げれば、この問題の根幹がどこにあるかと申し上げれば、それは、いわゆる排他的経済水域をどのように線引きするのか。つまり、東シナ海における日本と中国の海岸が相対しているその距離が四百海里未満でございますから、その中でどういうふうにして中国の経済水域と我が方の経済水域の線を引くのかという問題がございまして、これは日中間で完全に衝突しておる状況にあるわけでございます。

 つまり、そういう基本的な問題について衝突がありながら、その問題は別の場で交渉をするとして、この海洋調査船については現実的な解決を図っていこうということで交渉したということでございますので、その点は、委員、ぜひ御理解をいただきたいと思うわけでございます。

土田委員 時間ですが、最後に一問だけ。

 大臣、あしたからアメリカに行かれますのでエールを送りたいと思ったのですが、ちょっと時間がなくなったので、エールは次回にしまして、実は、大臣に聞いたらいいのですが、槙田さんに聞いた方が早いでしょうから。北朝鮮問題ですね。米朝協議、これはどういうふうに進展すると思っていますか。それだけちょっと教えてください。

槙田政府参考人 私が権威を持って申し上げることもできないと思いますけれども、米朝が、クリントン政権の時代にある程度の進展を見せたということがございます。ブッシュ政権において、米国が北朝鮮に対してどういう姿勢を示すのかということを私どもはずっと見守ってまいりました。それで、最近、ブッシュ大統領の声明にありましたように、クリントン政権とはニュアンスが少し違いますけれども、しかし、とにかく北朝鮮と話をしようということになったわけでございます。これがまた、そういう姿勢でいったときに今度北朝鮮がそれを受けるかどうかという問題はまだわからないわけでございます。

 そういうことで、不透明なところはたくさんありますけれども、しかし、全体の姿としては、米朝協議がこれから行われていくであろうという読みが持てるのではないかと思っておりまして、それがどのように今後進むのか、私どもも大きな関心を持って見ておるということでございます。

土田委員 米朝協議が進展しないと日朝協議も進展しない。話し合いが進まなければ拉致問題も平和交渉も進まない。平和交渉が進まなければ、極東の安全といいましょうか、このことについても何か話が進んでいかない。非常に時間のかかる話でございますが、ぜひ米朝協議がうまくいって日朝協議も進展するように、祈る気持ちでいるわけでございます。ぜひ大臣にも、この話が多分出るでしょうけれども、よろしくお伝えをいただきたいというふうに言いまして、質問を終わります。

 以上です。

土肥委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。

 もう大分この論議を交わしてきたわけですが、いよいよ訪米ということで、訪米に当たって、いま一度、改めて、沖縄が抱えている問題を中心に、日米関係をどんなふうに考えるのか、問いただしていきたいと思います。

 最初に、米軍の事件、事故にかかわる問題ですが、御承知のとおり、六月十三日午前七時二十三分ごろ、米軍の普天間基地の近くの民家に、米軍のヘリから、衣類や水筒、ガスマスクらしきもの、防弾チョッキなどが入った十三キロと十キロの袋二個が落下いたしました。海兵隊は、この落下物は普天間基地のCH53Eヘリが落としたものであることを認めております。現場の状況から見ても、人の上に落下すると重大な事故につながる可能性が高い事故でありました。

 早速、私たち日本共産党は被害者の住民にお会いしまして、お見舞いを申し上げて、そのときの話なんですが、その住民の方は、本当に大変なことだ、ヘリは、民家の上を飛ぶときでもドアをあけている、旋回をすれば落下するのは当然と。普天間基地あるいは市街地上空で旋回訓練をしているのですね。旋回訓練をしてヘリコプターが斜めに傾いて、ヘリコプターのドアが閉まってなかったから落下物が落ちてきた、ちょうど自分が庭の掃除をして、うちの中に入って二、三分もたたないうちに落ちてきたというのですよね。

 ですから、向こうの宜野湾市は、たびたび市議会の決議で、いわゆる宜野湾市の市街地上空での米軍の旋回飛行訓練は中止してほしい、こういう決議を上げて、何度も外務省に届けられていると思います。

 私、きのうも安保委員会で防衛庁長官にお伺いしたのですが、日本政府として正式に、市街地上空でのヘリコプターの旋回飛行訓練をやめなさいということをアメリカに申し入れる、そういう姿勢をお持ちであるかどうか、御答弁をお願いします。

植竹副大臣 ただいま赤嶺先生の御質問でございますが、まず、ヘリコプターによる訓練でございますが、実弾射撃訓練を伴う飛行訓練等とは異なりまして、訓練空域等に限って行うことが想定されているものではありませんが、しかし、これは無制限に許されるものではないと考えております。したがいまして、米軍は、我が国の公共の安全に妥当な考慮を払って行動すべきものであることは言うまでもないと思います。

 したがいまして、政府といたしましては、今後とも米国側に対しまして、訓練に際しては安全面に最大限払うように求めるとともに、地域住民の方々への影響を最小限にとどめるよう適正にするように申し入れております。

 したがいまして、十三日の件につきましては、橋本沖縄担当大使からウィリアムズ在沖海兵隊基地司令官に対し申し入れを行うとともに、また、日米地位協定室から在京米国大使館を通じまして在日米軍に対し申し入れを行っております。

赤嶺委員 今の副大臣の答弁だと、訓練空域であれば実弾射撃訓練ができるけれども、訓練空域以外では、その他の訓練、何をやってもとめられない仕組みになっていますと。地位協定上なっているんですよ、これは。

 それで、日本政府が申し入れられるのは、安全に配慮して訓練はしていただきたいと。

 私が申し入れているのは、市街地上空での訓練の中止を申し入れていただきたいということなんです。中止を申し入れるおつもりは、田中外務大臣、ないでしょうか。

田中国務大臣 今おっしゃった、ヘリコプターからの落下物、十キロが二個おっこったというふうなことは、やはり緊張感がないのではないかという感じもしますね。

 ですから、この中でもって、基本的に、その中止ということも含めますけれども、トータルに事実関係を申し上げますよ、ちゃんとパウエルさんに。これはどうだ、自分のところで起こったら大変でしょう、こういうことについてトータルでアメリカが何ができますかという中で、申し入れ、話をいたします。

赤嶺委員 ぜひパウエルさんに申し入れていただきたいと思うんです。それで、実は外務省の態度は、北米局長、そこにいらっしゃいますけれども、大体その後、日米安保条約で基地を米軍に提供しているんだから、米軍も練度の向上のための訓練は必要なんだから、訓練をやめなさいというわけにはいかないんですよというのが今までの日本の外務省の国会答弁の記録なんですね。これは実に悲しいことなんですよ。

 外務大臣、ぜひパウエル長官に、宜野湾市の事故について、どういうお考え、どういう立場で臨むかは別にしても、こんな訓練のやり方があるかと申し上げていただきたいと思います。

 それで、六月十二日に、今度は瀬戸内町の加計呂麻島に……(田中国務大臣「行ったことがありますよ、奄美大島」と呼ぶ)ああ、どうも。限られた時間で質問しておりますので。加計呂麻島に燃料タンク二個が漂着してきたそうです。これは、報道によりますと、米海軍嘉手納基地所属のF15戦闘機が航空自衛隊新田原基地に緊急着陸するため、燃料補助タンク八個を奄美地方と沖縄東方の海上に落とした、嘉手納基地に戻る途中、暴風雨に遭遇したための緊急着陸で、安全に着陸するため補助タンクを切り離した、このように報道されているんです。

 外務省、それは間違いありませんでしょうか。

植竹副大臣 間違いございません。

赤嶺委員 それで、通報の問題ですが、外務省は米国大使館から十一日夜に通報がありましたけれども、鹿児島県には十二日夜の八時にしか通報がなかったというんですね。

 そういう落下事件がいつ起こり、そしてどのような手順で当該地方自治体に連絡をされたか、ここもちょっと教えていただきたいと思います。

藤崎政府参考人 恐れ入ります、御答弁させていただきますけれども、実は、米側からの情報を受けまして、同日、那覇防衛施設局から沖縄県に対しまして、十二日に、福岡の防衛施設局から鹿児島県に、概要を通報したということを承知しております。

 ちょっと私どもの直接の担当でございませんので、施設局からの連絡について、以上の御答弁とさせていただきます。

赤嶺委員 外務省、防衛施設局から鹿児島県に連絡は行ったようなんですが、外務省がキャッチをした後、鹿児島県庁に届くまでの時間が余りにも遅いんですね。これで本当にそういう事故に対応できるのかという気がいたします。改善を求めたいと思います。

 同時に、米軍は、その当時、暴風雨に遭ったので、安全対策として燃料タンクを落下させて、新田原基地に緊急着陸したと言っているんですが、私、気象台に確かめてみたんです。

 あの南西諸島地域、奄美地域、沖縄地域で当時暴風雨は発生していたかどうかということを、十日、十一日、十二日、幅をとって確かめてみたんですが、暴風雨と言われるような気象条件はなかった、気象台はそのように私の問い合わせに答えておりますが、外務省はその辺は確認しておりますでしょうか。

藤崎政府参考人 お答え申し上げます。

 私どもが通報を受けておりますのは、十一日夕方、飛行訓練中の嘉手納飛行場所属のF15戦闘機六機が、激しい雷雨のため嘉手納飛行場に着陸することができず、航空自衛隊新田原飛行場に目的地を変更の上着陸した、こういうことでございます。

赤嶺委員 激しい雷雨があったかどうかというのは、外務省は確認なさっていますでしょうか。

藤崎政府参考人 お答え申し上げます。

 私ども、こういう通報を受けました際に、逐一気象庁等にこれを確認するということはしておりませんが、激しい雷雨のため目的地を変更の上着陸したという状況であったという、この激しい程度がどの程度の雷雨であったか等について今御説明することは、ちょっと私の手元に資料がないので御勘弁いただきたいと存じます。

赤嶺委員 ぜひ調査の上、その報告をしていただきたいと思います。

 といいますのは、私たち、沖縄に生まれ育った習性から、米軍が台風のため避難ということについて疑ってかかる習性が身についているんですよ。グアムで台風が発生したためにB52が沖縄にやってきました、ところがグアムでは台風も発生していなかったという経験が何度もあるものですから、その疑ってかかる私の習性、そして米軍の横暴から国民の命と安全を守らなければいけない外務省、そういうギャップを埋めるために、ぜひまじめな努力をしていただきたい、問い合わせたけれどもというようなごまかしはなさらないようにしていただきたいと思います。

 それで、きょうは、せっかく訪米なさるので、SACO合意に対する基本的な認識について伺おうと思っていたんですが、大分時間が経過してきていますので、そのSACO合意の大きな柱であります北部訓練場の移転問題を通して、SACO合意について考えてみたいと思います。

 北部訓練場ヘリパッドの移設についてなんですが、これはSACO合意の重要な柱であります。

 防衛施設庁では、北部訓練場地域の自然調査を行い、ことしの一月に、北部訓練場ヘリコプター着陸帯移設に係る環境調査の概要を発表いたしました。主として、米軍の運用上の観点から選ばれました五区域七カ所のヘリコプターの着陸帯移設候補地で多くの貴重な動植物が確認され、移設候補地は最終的な移設先として決定できませんでした。

 今後の継続調査の結果を踏まえて総合的に判断し、場所を決めるということになっているようですが、現在どういう取り組みになっているのか、この問題をどのように考えておられるのか。これは外務省でいいですか。では、副大臣。

植竹副大臣 今の御質問の点につきましては、外相もよくその点は考えておられます。

 私どもからのお答えとしましては、SACO最終報告におきましては、北部訓練場については、ヘリコプター着陸帯を同訓練場の残余部分に移設することを条件といたしまして、その過半が返還されることとなっております。

 さらに、このヘリコプターの着陸帯の移設につきましては、平成十一年、地元自治体の理解が得られましたことを受けまして、日米合同委員会において合意がなされ、環境への影響を最小限としながら実施することとなったのであります。

 ヘリコプター着陸帯の移設に当たりましては、防衛施設庁におきましてこれまでも環境調査がなされてきたところでありますが、さらに継続して調査が実施されることを承知しております。今、実施中でございます。

赤嶺委員 この一帯は全体が亜熱帯の雨林に取り囲まれていて、いわば、米軍から指定をされた七カ所を調査したら貴重な動植物が存在していたからそこにはできませんでしたと。しかし、別の場所を探しますと言うけれども、その別の場所は、私はないと思います。平地を指定してきてその平地でできないわけですから、あとは谷や川しか残っていないのですが、いかがですか。まだそういう場所があるのでしょうか。

伊藤政府参考人 この件につきましては、先般、たしか二月二十七日でございましたか、委員からも御質問を受けて、総合的に判断をするということを御答弁申し上げたと記憶しておりますが、私どもといたしましては、なお、その当時も申し上げたとおり、森の林齢だとか、あるいは今おっしゃられたような沢ですとか、そういったようなことが果たしてよりよいところがあるのかないのか、そういうことも含めて総合的にさらに継続調査をするということで、現段階ではまさにその調査に着手をしているところでございます。

赤嶺委員 そこで、外務大臣にお伺いしたいのですけれども、この北部訓練場のヘリパッド、過半は返還して、返還する地域にある七カ所のヘリパッドを残った十五カ所ぐらいある地域に新しく七カ所つくろうという計画なんです。そこが、つくる場所が、調査をしてみたらうまくなかったというのが、今の防衛施設庁の答弁なんですね。

 それで、今、樹木の年齢の若い木があるところを探してだとか沢だとかと言っていましたけれども、この地域は、山原全体の自然破壊が進む中で、この地域だけ豊かな自然が残されているのです。それで、ノグチゲラも、それから亜熱帯特有の小動物もみんなこの地域に集まっているのです。これについて、自然度の高い亜熱帯雨林が良好な状態で保存されている。

 国際自然保護会議では、この場所を動物の避難場所、このように言っております。ノグチゲラやヤンバルテナガコガネ、固有種、あるいは今、沢の話がありましたが、渓流には沖縄固有種のオキナワコヤマトンボなど、この地域でしか見られない貴重な生物、陸生脊椎動物、鳥類、植物など、みんな肩を寄せ合うようにしてこの地域に集まっているのです。これほどの狭い地域にこれほどの多様な生物が生息するところは、我が国では田中外務大臣も行かれた西表島とこの一帯しかないのです。そして、そこで育ってきた若い木というのは、イタジイの木はノグチゲラの巣づくりに一番適当な樹木として成長しているのです。あそこにある比較的新しい樹木というのは、これからノグチゲラが巣をつくる樹木なんです。

 こういうところを、樹齢が若いからとか沢に目をつけてとか、幾らSACO合意だからといって、そこにヘリパッドをつくって小動物や自然を破壊するようなものはやってはいけないんじゃないかと思いますが、いかがですか。

田中国務大臣 いつも赤嶺先生大変いい質問をなさって、具体的で、しかも疑り深いとおっしゃって、なるほどよく調査もなさっていますので、本当に……(発言する者あり)いやいや、さっきそうおっしゃったですね、沖縄に生まれ育たれて……(発言する者あり)済みません、私すぐにまぜちゃうのでいけないんですね、別々に申します。そうなんですよ。

 それで、やはり環境への影響、私は、これは普天間の移設もそうだし、そのほかを見ていて、沖縄それから奄美大島、さっき加計呂麻もおっしゃいましたので、あれは古仁屋から行くんだったかと思いますけれども、あそこはイルカもいますし、本当に、日本の人はみんな行って認識すべきだと思うほどすばらしい海洋生物やら自然やら植物やら、それから波照間島の小さな、もう本当に、地元の人は別にしょっちゅうこんなのあると言われるけれども、珍しい植物があって、私も、時間があればデッサンをしたかったので写真を撮ってきましたけれども、そういうものは再生不能なんですね、藻場の話もありましたけれども。

 したがって、この自然保護というものを――一度やったらなかなか戻せないんですよ。こういうことについての意識はやはり持たないといけないし、アメリカ側の方たちは、もうそこでわかる方は特に進んでいらっしゃると思うのですが、この安全保障の問題、基地の問題、それから私、前に科学技術庁長官をやっていたときに、ちょっと違うことを言うのですが、本当のことを、もとへ戻ってきますから安心して聞いてください。この原子力立地の問題も、非常に自然のすばらしいところに電源立地をしているのです。そういう中で、自然との共生、取水口があって排水があって海洋を汚す可能性もあるじゃないですか。そうじゃなく、今スクリーニングをやっていますが、そうとはいえ、こういう沖縄とか奄美大島は壊せない生態系が、天から与えられたものがあるのですね。

 ですから、そういうことについて、もう一回環境への影響の大きさを考えて、防衛施設庁にもう一回考えていただくように私からもお願いをいたします。

赤嶺委員 環境への影響の大きさを考えて外務大臣が防衛庁に再検討をお願いしたいという認識でいいわけですよね。私、言葉じりをとろうとは思っていません。この問題で話し合いたいということですよね。

田中国務大臣 再検討というよりも、まずちゃんと調査をしていただきたいということでございます。

赤嶺委員 それで外務大臣、この地域に、広島大学と琉球大学の生物の先生方が長いこと山原の山に入って調査をして、その報告書は外務省にもあると思います。さきの河野外務大臣も持っておられます。

 この琉球列島動植物分布調査チームは、すべての生物は互いに関係を持ちながら生活しているため、人的攪乱の影響は、生物の多様度が高い環境ほど大きい。直径七十五メートルのヘリパッド七カ所とこれに接続する道路の建設は、一、生息場所の消失と分断、二、赤土の流失、三、乾燥等により生態系に種々の悪影響を及ぼす。建設はこのような悪影響にとどまらず、動物の生活や行動にも影響を与える。例えば、音や鳴き声で交信する動物にとって、ヘリの騒音が繁殖の妨げとなることが懸念される。環境保全を国策の重要な課題とし、国民の先頭に立って環境保全に取り組むべき国が、もし、みずからの手で最も貴重な生態系の一つを攪乱することになれば、地域社会での環境行政に影響を及ぼすばかりか、国際社会における我が国のイメージダウンにつながる、このように指摘しております。

 これは、琉球大学と広島大学の生物の合同の研究チームの先生方の見解です。あの山原の山を隅々まで知り尽くしている方々です。

 それで、外務大臣の関係で言いますと、去年の十月にアンマンで開かれた国際自然保護会議では、この山原のヘリパッド建設についてこう言っているのです。

 この地域は、野生生物の避難場所としての役割を果たしてきた同地域が、固有種の生息地の劣化を引き起こし、頻繁に行われる軍事訓練が、絶滅のおそれを高めることを懸念し、保全計画と詳細な調査要請を決議した、こういうものでありますから、私は、世界も注目していると。

 そして、あんな狭い沖縄にあれだけの基地を置こうとするから、SACOというのは、実はあれは県内の基地の撤去じゃないんです。人口の密集している普天間から人口が少ない名護市に移そうだとか、あるいは北部訓練場なんてもう過半を返還しても、既設のヘリパッドはあるんですよ。あの地域、二十二カ所ヘリパッドはあるんです。返還するのは七カ所なんです。この七カ所、つくらないという態度をとれば、田中外務大臣も心配していらっしゃる自然の生態系が破壊されずにできるんですよ。

 ところが、さっき訓練の海外への移転と言いましたけれども、向こうはジャングル訓練センターとして強化するために、こういうようなヘリパッドの新しい再編強化が始まっているんですね。ちっとも訓練の削減なんて実感ないですよ。実弾砲撃訓練が金武町から本土五カ所に分散移転しましたけれども、まだ金武町の伊芸区は実弾砲撃訓練に悩んでいるんですよ。何も負担は軽減していないというんですよ。訓練の移転では負担は軽減しないんです。海兵隊が削減か撤退かということが県民の総意なんです。

 それはわきに置いて、やはりこういう貴重な山原を守るためにできる限りの努力をやっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

田中国務大臣 これは、突き詰めていくと極めて大きな日本の政策でありますし、それはもう前から気づいていましたけれども、この内閣がどういうふうに、急にはできませんけれども、私は初めから時代のかじを切っていく内閣だなというふうなことを思っていますので、こうした外交問題の中に極めて集中的にそういうものがあらわれてきているというふうに思っています。これまた財政構造の面でも、社会保障の面でも、いろいろなものが出てくると思いますけれども、トータルで、やはり民意を問うて、できるものならやはり国民投票、もちろん今すぐじゃないですよ、長い目で見て国民投票が必要になってくるようなことも出てくるなということを、私は内々考えています。

 それはトータルのお答えでして、このことについては、私は、食物というよりも生命連鎖だと思うんですよね、自然環境。これはもう人類が何十億年も前に地球上にあらわれてから今日まで来て、そしていろいろな科学技術が進歩をして便利になった。利便性、効率のよさ、それを追求していく、そしてその先にまた自然破壊がある。先ほどの菅先生から始まったきょうのこの委員会ですが、最後はまた自然を大切にしよう、環境を破壊しないでいこうという原点にやはり返っていくんですよね。

 そういう中で、この生命連鎖というものと、人間のお互いに対する不信感といいますか、そういうものを、科学技術を進める、軍事技術を進めるということと、それから、人間が本当に幸せだと生きるためにはどうあるべきか。環境問題もお互いの援助の問題もトータルで考えながら、そういう基本的な認識をきちっとつくって、そしてこういうものを、一々モグラたたきでやるのではなくて、こういう問題、一度壊してしまったらば二度と戻らない、そういう自然環境のことを言っていらっしゃる。それは拡大すれば、さっき言った地球上全体の環境の問題でもあるんですよね。したがって、人間はどのようにして自然とともに生きるかということ、人間がどこまで人を信頼できるか、善意でポジティブに生きられるか、いいエネルギーを出すかということにもこれは収れんされるなと、今お話を伺っていて感じました。

 したがって、この細かいことに、きちっとこのことに、御質問に特化して言えば、繰り返しになりますが、防衛施設庁にもう一回詳しく検討していただくことにいたします。よろしいでしょうか。

赤嶺委員 ぜひこれは、先々SACOの合意の見直しだとか日米安保、改憲だとか、一番難しい問題にぶつかると思います。私は、やはり日米の関係というのはそこまで行き詰まってしまっているというぐあいに見ているんです。そこは同意は求めません、もともと自民党と共産党、これだけの距離がありますから。しかし、自然を守るという点で、やはりだれが見ても道理のあることはやってもらわないと、これは本当にあの山原の山々、森々の小動物たちの避難場所になっている、あの地域の自然は破壊するなということをさらに強く訴えておきたいと思います。

 それで最後に、問題整理の上でちょっと聞きたいんですが、普天間基地の代替基地なんですが、八案出されて、それで、沖縄県の方に問題を投げていらっしゃる。沖縄県が一案に絞れという意味で投げられているのか、あるいは複数案をということで投げられているのか、その投げ方の性格、あるいは八案全部国にお返しして、つくるなというようなことも含めて問題を投げておられるのか、お聞きしたいと思います。

伊藤政府参考人 もう委員十分経緯は御承知のことだと存じますが、三工法八案と申しますものは、代替協議会六回の議論の積み重ねの中で、先般第七回の協議会において御説明をし、そして、その同じものを地元の名護市、あるいは県に御説明を申し上げているものでございます。この県、名護市への御説明と申しますのも、基本的には、県あるいは名護市の方からの御説明に対しまして、私どももいわば同席をさせていただきまして、詳しい御説明を補助的にさせていただいているという性格のものでございます。

 そして、第七回協議会で、正確にどのようなおっしゃり方か今手元にございませんが、私の記憶するところでは、この三工法八案を受けまして、地元名護市長さんは、地元の意見を集約してまた代替施設協議会に御報告するというふうに御発言されておると記憶しております。

 したがいまして、今おっしゃられましたような、何案に絞るとか絞らないとか、そういった議論は必ずしも出ていませんで、あくまで、地元の意見を集約して、また次の代替協議会で報告をされる、そこにおいてまた御議論があるということになろうかと思います。

赤嶺委員 最後に一つだけ確認します。

 つまり、一案に絞って地元の意見を集約せよということではなくて、地元の集約の仕方は多様だという認識でよろしいんですね。

伊藤政府参考人 そういうことにつきまして、代替協議会での御発言はなかったと私は記憶しております。

赤嶺委員 では、終わります。

土肥委員長 次に、東門美津子君。

東門委員 社会民主党の東門美津子です。どうぞよろしくお願いします。

 大臣、まず、外務省の沖縄事務所の橋本沖縄担当大使について、何かお聞きになっておられますか。

田中国務大臣 昨日、衆議院の安保委員会でしたかで御意見が出まして、伺いました。それ以前、私はお会いしたのは、先ほどあった普天間の移設の会議で初めてお目にかかって、橋本元総理のいとこさんでいらっしゃるということだけしか存じませんでした。

東門委員 実は私、院内のテレビで安保委員会の状況を見ておりまして、大臣のお答えを聞いて少し驚きました。私、六月一日にほぼ同じような、もう一〇〇%に近い同じような質問をしているんです。その私の質問に対する答弁の中で、大臣は、「今の東門先生の御発言は重く受けとめていかなければというふうに思います。」と御答弁いただいたんですよ。確かめてください。そして、きのう、質問に対して、事実かどうかわかりませんが、そういう報道があるということはちらりと聞いたことがございますが、今おっしゃったように細かい状態であるというふうなことは初めてとおっしゃっているんです。これはどういうことなんでしょうか。済みません。

田中国務大臣 六月十日のお尋ねがあったことは覚えておりますけれども、きのうは非常に細かく、どの委員でございましたか、私も毎日毎日委員会で相手が変わるので一つ一つ正確に覚えておりませんが、質問者の方が事細かくおっしゃいましたので、そのようにお答えしました。

東門委員 大臣、私も同じように細かく、ほとんど同じ資料を使っているんです。言葉も同じのを使ったんですよ。それに対してああいうお答えをいただいて、私は御検討いただけるものだと思っておりましたら、昨日の委員会で、初めて聞きました、こんな細かいの初めてですと。私の方が驚きました。委員会での質問に対して、大臣、どういうふうに、聞き流しておられるのかなと思ったくらいなんです。私たちにとっては真剣なんですよ。そういうふうなお答えが返ってくるというのは、本当に驚きです。

 もう一度、済みません、大臣のお気持ちを聞かせてください。

田中国務大臣 失礼しました。

 私、着任以来、統計をとってもらっていましたら、四千二百分を一人で答弁しているそうでございまして、頭が悪いもので、なかなか全部頭に入り切りません。もう本当に一人で集中砲火を浴びているような状態で、連日です、休みなしです。ですから、重要性は、皆様が感じながら絞り込んで質問なさっているのはわかっておりますが、はっきり言って全部は記憶できておりません、できる方が異常と思います。これは、歴代の外務大臣の中でもこれほどであったことはないそうでございますので。

 ですから、何度もおっしゃったことは、また確認も事務方の皆さんがやってくだすっていますので、それぞれ対応はなさっていると思いますが、それはおわびをいたしますけれども、一人の人間としてのある程度の限界もありますが、それは弁解ができないと思いますので、またどうぞおっしゃっていただくなりなんなりと、対応いたします。この場でなくても、また幾らでも質問書なりいただければ事務的にも対応いたします。

東門委員 お忙しいのはよくわかります。(田中国務大臣「忙しいんじゃない」と呼ぶ)いや、お忙しい。たくさんのいろいろな質問が来ることもよくわかります。でも、これは、やはり一国の外交の最高責任者としてのポストにつかれたら、もう当然だというふうに思わなけりゃいけないと思うんです。行政の外交面でのトップなんですよ。

 そういう意味では、本当に同じような質問がたくさん出ることもありましょうから、これを一件一件と、あるいは何時間と数えるのはどうかと思うんですが、しかし、本当に私はあの発言には怒りがありました。怒りを込めて大臣に御質問いたしました。ですから、あっ、忘れましたということでは困るんです。本当にこれからどうしていかれるか、お聞かせいただきたいと思います。

田中国務大臣 この沖縄担当大使の問題、これは、東門先生は、必要ないと思っておられるのか、もっと彼がファンクショナルであれとおっしゃっておられるのか、いろいろな意味があると思います。ちゃんと沖縄県のニーズをしっかりくみ上げて、暴言を吐いたりしないような適切な人にするべきだということが御趣旨であると思いますけれども、そのような前向きな対応をできるように、また指導をいたすなり検討いたします。

東門委員 では、えひめ丸について質問をさせていただきます。

 ことしの二月九日でしたか、これは皆さんの記憶にまだまだ新しいと思いますので細かいことは申し上げませんが、その後の調査、原因の究明について御質問をしたいと思います。

 三十五名乗り組んでいる中で九名が、残りは救出されましたけれども、九名がまだ行方不明のままであるという状況、その中で辛くも生き延びた生徒あるいは乗組員も、今もって心的外傷後ストレス、PTSDといっているようですが、精神的な変調に苦しんでおられると聞いております。

 そういう中で、事故の原因が本当に何だったのか、その真相究明はどうなっているのか、全然見えないと思うんです。外務省はその事故の原因の究明にどのように取り組んでこられたか、お答えいただきたいと思います。

植竹副大臣 事故の原因の究明でございますが、これは、米国の制度のもとで審問委員会という透明性の高い場でもって検討しながら進めておりますけれども、その結果の責任者の処罰は先般出たようなことでございます。

 なお、この事故は極めて遺憾な事故でありまして、このような悲劇が二度と繰り返されないようにしなければならないと思います。ですから、米国が御家族に対し、そのお気持ちを重く受けとめまして再発防止のために取り組むように期待しておりまして、その点について、その調査の結果を、内容につきましてはさらに私どももよく知りまして、そしていろいろなことを検討してまいりたいと思っております。できるだけの努力をするような努力を私どももしてまいりたいと思います。

東門委員 済みません、今の副大臣の御答弁、よくわからなかったんですが、査問会議は一応終わりましたよね。それで、審理記録はちゃんと出ていますよね。それは外務省に届いていますよね。

植竹副大臣 ですから、弁護士を選定いたしまして補償の手続を進めているものと了解いたしますが、米側と対話、話し合いも一部始まっておりまして、今後、当事者間の話し合いが引き続き行われていくものと思いますが、先ほど申し上げましたように、政府といたしましてもできる限りの支援をやっていきたいと考えておるところでございます。

東門委員 査問会議の審理記録はお手元にある。その中身ですが、ワドル元艦長への処罰というのはどういうふうに受けとめられていますか。私は直接見ておりませんが、私が聞いているところによりますと、何かそこの中では、過失致死だとか致傷の責任は全く問われていないというふうに私は聞いております。それに対して、外務省はどういう形で、今アメリカと対話対話とおっしゃるんですが、どのような対話をなさって、アメリカにどういうふうに要求をしているのか、あるいは外務省として独自に、特に原因の究明をされるのか、あるいはしておられるのか、しておられなければこれからなさるのか、そこをお聞かせいただきたいと思います。

 これは通告してありますから、できましたら大臣からお聞きしたいと思います。

植竹副大臣 アメリカの処罰の件につきましては、これはアメリカの問題でございまして、政府といたしましては、これに直接云々することは、コメントは差し控えます。

東門委員 あれだけの大きな事件ですよ。事故というよりも事件だと思います。そういう中で、これだけの被害者を出して、しかも本当にこれから未来のある子供たちをそういう状況に置いて、アメリカのあれですから言えませんということではないんじゃないでしょうか。

 ワドル元艦長の責任、それはやはり事故の原因を究明していく中で、外務省としてアメリカにしっかりと要求できる、追及していけるものだと私は思いますが、いかがですか。大臣、どうぞお願いします。

田中国務大臣 これは本当に極めて許しがたい事件でありますし、二度と起こしてはならないことでもあります。御遺族だけでなくて、私たち、自分のケースであったらどうかということを思ったら、これはもう簡単に片づけられる問題ではないということです。

 しかし、外国でのこの問題は、外国の法律で、アメリカの法律にのっとってあのような形で処罰がなされたわけなんですね。したがって、今私たちは、一番できることは何かといったら、もうこれは絶対再発しないこと、しないように、徹底的にアメリカの方にチェックをしなきゃいけませんよ、申し入れだけではなくて、おざなりではなく。それから、補償の問題、これは絶対にがっちりやらなきゃいけないと思っていますよ。

 それから、えひめ丸。

 私は、いつも仲よしの宇和島の議員さん、山本公一先生、私も宇和島に行ったことがありますし、あそこで闘牛場も行ったことがありますし、あの辺はよく行って知っていますけれども、早くえひめ丸の引き揚げをすることなんですよ。もう当事者にしたら、何でああやって、潮流が変わってしまう、環境が、石油を積み過ぎている、だったら、石油を抜く方法はないか。私は、大臣なんかになる前から何度も何度も山本公一さんに言っていますよ。

 早く船体を揚げないと、これは腐食するんですよ。もしも何かがあった場合ですよ。何かとは申しません、遺体がないかもしらぬという前提かもしれないけれども、あるかもしれない。家族にしたら、遺体だって、まだ死んだと思っていない人もいますよ、信じたくないんですから。なぜ引き揚げを早くやらないか、これは何でこんなに時間がかかっているのか。補償は時間がかかる、交渉だから。引き揚げは速やかにできます。

 科学技術相のとき、私、海洋センターの、海底に――ちょっとお静かにお願いできますか、先輩。海底に丸いものを沈めて海底探査するのに乗ったことがあるんです。入れて沈めてくれと言ったら、危ないといって沈めてくれませんでしたけれども。ああいうことができて、海底探査ができるんですよ。したがって、早くそれを集中的に日本も協力するならやって、政府も出費を惜しまずに、引き揚げること、そして再発防止をはっきりとアメリカに申し入れること、これです。

東門委員 私の次の質問は船体の引き揚げでしたけれども、大臣がおっしゃっていただいたので、ぜひ強くそれは申し入れていただきたいと思います。

 それから、補償の問題でしたけれども、それはある程度時間がかかるでしょうとおっしゃっているのはわかるんですが、査問会議が開かれたときに、その傍聴をするために、御家族の皆さん、何人かちょっと覚えていませんが、ハワイへ行かれているんです。そのときは、渡航費あるいは滞在費はアメリカの海軍が負担するということだったように私もマスコミの報道等で知りましたけれども、しかし、今もってその費用が支払われていないということなんですが、外務省は、そのこと御存じですか。これにどういうふうに対応なさいますか。

田中国務大臣 これは本来は、通告があれば、事務方から正式に、当時のときからわかっている人がいるんですけれども、こういうときは、今度、次回はぜひ通告していただいて、事務方から聞いていただいた方が正しいと思うんですね。事務方を逃さないようにしっかりつかまえておいた方がいいと思うんですけれども。

 私が持っていますペーパーによりますと、御家族が査問委員会傍聴のためホノルルに渡航した際の航空運賃、ホテル代等は、基本的にアメリカ側が直接支払ったということでございます。これが外務省が、ちょっと待ってください、ただし、国内の移動費の一部については御家族の立てかえ分があり、この分がまだ米側から御家族のもとに届いていない状況にあると御家族の方々からも伺い、承知しています。政府としては、このような状況が一刻も早く解消されるように、引き続き米国に求めていく。

 ですから、問題があれば、すぐに私は申します。ただ、これは私が着任する前の政府といいますか、役所のペーパーでございますので、そのままお伝えしました。私ができることはどうぞ何でもおっしゃってください。

東門委員 きのう私は通告をいたしまして、でも、通告はしますけれども、大臣にお答えいただきたいとお願いしてあったものですから、大臣にお答えしていただきました。

 その件についてはまた今後とも、これはしばらく続くことだと思いますので、ぜひよろしくお願いします。

 次に、今回の、田中大臣の発言がいろいろ報道されている問題について、私も一、二点、ちょっとお伺いしたいと思います。

 外務大臣が米国のミサイル防衛構想あるいは日米安保体制を批判したと報じられていることに対してなんですが、これは本委員会、私たちも、理事会でも資料の提出要求を行いまして、質疑でもその件を取り上げてまいりました。これに対し、大臣及び外務省は、相手国、関係国等との信頼関係を損なうおそれがあり、適切ではないとして拒否をされてきましたことは、私もずっとここの場におりますから、よくわかります。

 それで、何となくお互いの議論がかみ合わずに堂々めぐりが続いているわけですが、大臣のおっしゃる相手国との信義、信頼関係に配慮するということは、やはりとても大事だと思います。これは私、一切否定しません。それで出せない部分があるということもよく承知しておりますが、同時に、やはり国民の支持がなければ、外交政策というのも推進していくのは難しいのではないかと思われるんです。

 ですから、そういう意味で、国民にやはり、大臣のこれまでの発言、特に六月六日のコメントですね、報道のような発言は行っていない、特にこれはアメリカのミサイル防衛に関する報道なんですが、それに関する発言を行っていないとおっしゃったわけです。それは発言として、もちろんそのまま私は受けとめたいと思うんですが、ただ、やはり国民にわかる、国民にもわかってもらうということは大事じゃないかと思います。

 そういう意味では、やはり外務委員会理事会で資料を提出要求しているわけですが、それがなぜできないのか。いろいろ、先ほど言いました、信義の問題がある、信頼関係があるとは申しましたけれども、これはもう、新聞の報道あるいはマスコミの報道が全部うそならうそと、全部じゃなくて一部、こういうところが間違っている、こういうところが事実と違うんだということをおっしゃっていただいた方が、むしろ国民の方はそれを支持するでしょうし、大臣を支持するでしょう。それから、外務大臣がいつもおっしゃっている、本来の外交をなさりたいというとき、やはり国民が抱いている疑問に対して正面から答えていくということも大事ではないかと思いますが、いかがでしょうか。

田中国務大臣 今のことにお答えする前に、ちょっと早口で申し上げておきますが、えひめ丸の問題は、御地元ではありませんけれども、やはりアメリカの海軍の潜水艦の訓練についておっしゃっているわけですから、これは正確に、私、先ほど読み上げたものがございまして、これが、諸経費ですね、航空運賃の話ですとかホテルでありますとか国内移動費とか、これについて本当に責任を持ってお調べになるのであれば、どうぞ愛媛県の関係者、外務省、アメリカ政府ともよく相談をなさいまして、これが足りない、これが必要なんだということをきちっと一覧表を出していただけますか。ぜひお願いいたします。そうすれば――その正確なものがないと、ただアバウトなことを限られた時間のアメリカ滞在の中でアメリカ政府に申し上げられませんので、言いっ放しではなくて、確実に、正確なものをおつくりいただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。(東門委員「はい、わかりました」と呼ぶ)わかりました……。

 では、次についてお答えします。

 午前中、二回ほど申し上げてありますけれども、報道の方、いっぱいおられるんだけれども、外交、これがアメリカの問題も、だから私はしっかり記者会見をやりたいということをきのうも安保委員会で言ったんですが、これをしっかりして、正確に、幾ら言っても理解しない人も、したくない人もいるし、違う方向でやりたい人もいるのかもしれないし、そこまではわかりませんけれども、事実、ファクトはこれであるということを、いいか悪いかは、それは自民党も共産党もいますし、自民党の中にもいろいろな考えもおられますし、いろいろな考えがあるんですから、全員に気に入ってもらうものはできないんですよ。ただし、この内閣の責任において、閣僚として私が何を発信し、何を言われたか、相手がどのような反応であったか、それが事実なんですよ。その事実をしっかりとマスメディアを通じて国民の皆様にお伝えをするというのが一番シンプルで、一番大切なことなんじゃないでしょうか。

 ところが、そこで、思惑のある役人や思惑のあるメディアが入るか入らないか知りませんけれども、その発信している状態の政治家と、これがバイであったり複数であったりします、それと受け手であるマスコミを読む人、その中間でいろいろなものが入ってくるわけですね。ストレートでぴしゃっといってくれれば、後は有権者の皆さん、国民の皆さんの判断なんですが、事がそういかないじゃないですか。過去の行きがかりもあるでしょうし、自分の思惑もあるでしょうし、聞き違いも事実あるでしょうし、いろいろなことがあって、それが間違って報道されることがある。だから、私は、マスコミは記名記事を書いてほしい、活字の場合は。

 そうであったら、なのに、ニュースソースは明らかにしませんといって、明らかに発信者と受け手が違う形でもっていっている場合に、ミスリードされて、ここで、国会で、こうじゃないか、ああじゃないか、あそこで、何月はどうだどうだ、限られた時間の中で、一人に対して複数の人がわんわんわんわんと言われるわけですよ。それで、意見がぶれたとか間違っていたとか考えが違っているとか毎回違うとか何だかんだと言われている方はたまったものじゃありませんけれども、それでも責任の重さを自覚しておりますので、しっかりと私はこれでもお答えを申し上げているんです。

 すなわち、私は一つの物差しを持って答弁をしているんです。一々言われるものを全部コメントしていたら、これは時間も足りませんし、どうにもならない。モグラたたきや地雷がぼんぼんぼんぼん、地雷原を走り抜けているようなものです。

 私、今、この二カ月間で、もうじき二カ月になりますが、外務大臣をやってどういう感想を持っているかと、多分マスコミの皆さん一番知りたいと思いますよ、この質問。私がメディアなら、私に聞きますよ。一言ですよ、地雷原を走り抜けている、そういう心境ですよ。スタートのときは、とまらない列車に乗っているわと思いましたけれども、今やもう、地雷原をはだしで一人で走っているような気分です。でも、応援団はいますよ。それは皆様でありますし、役所の中にもいっぱいいるし、いっぱいおられるんですよ。

 だけれども、地雷をいつか踏む可能性ありますよ。ですから、これをやったら、一々コメントしていたら地雷になると思うものは答えていません。しかし、これが国益、世界の平和、安定、外交の基本になると思うものについては、それが、そうですよね先輩たち、間違えられたらいけないと思うことについては、しっかりと時間をもらって、これは間違えていますよということを言っているんです。

 以上です。

東門委員 あすですか、アメリカへ向けて御出発なされて、十八日にはパウエル長官と会談を予定されているということなんですが、十三日の委員会におきまして大臣は、日米外相会談についてですが、海外基地問題はもちろん正面から取り上げるとおっしゃって、日本の外相なので日本の声を伝える、そして米海兵隊の訓練の分散実施については、訓練のローテーションについては必ず具体的に提案する、フィリピンやグアムの訓練問題についても確実に発言することを約束すると述べておられますが、今回の日米外相会談では、沖縄の基地問題については、海兵隊の削減や基地の移転ではなくて、特に海兵隊の訓練の移転に焦点を絞って米国との協議に臨む方針なのでしょうか、お答えいただきたいと思います。

田中国務大臣 当委員会の中でもいろいろな意見があることはわかっております。先ほど共産党の赤嶺先生は、もう訓練の移転なんという問題ではないんだ、トータルでもって海兵隊がいなくなることなんだと。それぞれ考えが違うんですから、価値観が多様化しておりますし、考え方が違うんです。哲学が違うんです。その中でもって、今の時点で数十年後をにらんで、沖縄県の皆様にとって本当の幸せというのは何か、日本人全員が考えなきゃいけない。その声をアメリカに伝えてまいります。

 ですから、あらゆる声があるけれども、どれならできるのかということですよ。そして、一番いい方法はなくなることなんでしょうけれども、しかし、その状態になったときに、日本がこの極東のアジアの中でもって、本当にこの不透明性、不確実性のある中で日本は守れるのか。それが与党の難しいところじゃないですか。為政者が一番、世界じゅうが懊悩してきて、世界の歴史というのはこの歴史ですよ。だから政治が大変なんじゃないですか。だから人を得なきゃならないんですよ。こちらが人を得ていても相手が得ているかどうかわからないし、こちらがだめで向こうがよくてもだめかもしれない。政治、外交というのは人と人ですよ。言葉は悪いですが、腹といいますか、それだけのやはり能力もあるし、スタッフもあって、国の気合いがうわんと合ったときに、政治は、歴史は前へ出るんですよ。

 そういうときであるかどうかということは、私も感度を高くして、早く風邪を治して行きたいと思っていますが、どうも女性二宮金次郎というのですか、になったような感じで、いっぱいいっぱい荷物をしょって、これからはだしで地雷原を走り回るのかなという思いがしていますけれども、冷静に、客観的に、言うべきことはしっかりと言い、そして、それが、あなた言ったのにあれやらなかったじゃない、あれやらなかったじゃないと集中砲火を浴びないで済むように、皆様も、私が行っているたったの三日、四日間ですが、しっかりと問題点を整理していただいて、ただつるし上げれば済むという、そんな単純な世の中じゃありませんから、ちゃんと、これはよかった、これは次のときの課題だねというぐらいの整理をぜひしておいていただくように、首藤先生にもよろしくお願いをいたします。英語も少しは使うかも存じませんけれども、お許しを。できるだけ一〇〇%日本語でいたしますので。

 ありがとうございました。

東門委員 私が申し上げたいことは大臣おっしゃっていただいたので、その分は省きますけれども、本当に訓練の移転だけでは絶対にだめだと思います。といいますのは、ちょうど私は訓練の移転だけが出てきたときに、真っ先に頭に浮かんだのは、ベトナム戦争のころの沖縄の状況です。それはまたいつかチャンスがあれば、大臣に直接お話ししたいんですけれども、何が起こるかということは容易に想像ができるんですよ。

 ですから、訓練の移転だけではなくて、一番被害を受けるのは女性であり子供なんです、ですから、そこのところにもぜひ思いを寄せていただきたいと思うんですが、訓練の移転だけではなくて、本当に基地の縮小、削減ということです。もう海兵隊基地をどうするかということを考えていただきたい。海兵隊の訓練を移すのであれば、基地はそこに要らないはずなんです。そういうところからぜひスタートしていただきたいと思います。

 沖縄の問題が大きな問題である、心を痛めておられる、負担の軽減をしたいといつもおっしゃっておられる大臣です。それで、一つ私は提案をしたいと思います。

 すごい忙しい日程の中ですが、アメリカに行かれて帰ってきてすぐとは申さないまでも、なるべく早いうちに今度は大臣として沖縄に行かれて、タウンミーティングを持っていただきたい。そして、沖縄の人々の声を、前に議員として何度か行かれたと聞いておりますが、今回は大臣として行っていただいて、沖縄の基地の容認派、推進派もいます、もちろん。否定しません。しかし、反対派もたくさんいます。両方の意見を聞いていただきたい。女性たちの意見にも耳を傾けていただきたい。今回外務大臣として、これだけの米軍基地を抱えているのであれば、やはりこれは私は当然なさるべきだと思いますが、大臣のお気持ち、御意見をお聞かせいただけたらと思います。タウンミーティングをぜひ沖縄で持っていただきたいということです。

田中国務大臣 東門先生みたいなパワフルな人ばかりが出てきたら、私のようなか弱い者はつぶされてしまうと思いますので、また、帰路無事に帰ってこられそうであれば考えさせていただきます。

東門委員 無事にお帰りになることは絶対間違いありませんので、そして、特に六月という月、六月の二十三日は沖縄の終戦記念日となっております。沖縄慰霊の日です。そのあたり、小泉総理が行かれるかどうかわかりませんが、ぜひ大臣には沖縄に、今回は外務大臣として入っていただいて、本当に御自身の目でごらんになって、肌で感じられて、そして沖縄県民の声を聞いていただきたい。

 そうすることで、やはりこれからの外交、アメリカとの関係、そこに大きな一歩が踏み出せると私は確信いたします。それを見ずして、机上で、ここでどんなに頑張ったって、本当に心の通わない、血が流れていない、そういう政策になると思うんです。沖縄県民の声を本当に聞いていただきたい。私は、机上でああだこうだと言うことではなくて、ぜひ足を運んでいただいて、やっていただきたいと思います。それをお願いして、考えたいとおっしゃっていますので期待をしたいと思います。よろしくお願いします。

 終わります。

土肥委員長 次回は、来る二十日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時四十六分散会




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